違う!シンビオートが勝手に! (ゴランド)
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番外編 夢時々桃太郎

読者の皆さん明けましておめでとうございます。
前の更新からかなり経ちましたが番外編の投稿です。2020年もよろしくお願いします。

なお番外編はギャグ全開で書いているので頭を空っぽにして読む事をオススメします。作者の人何も考えてないと思うよ。



 

昔々ある所にお爺さんとお婆さんが居ました。お爺さんは山へ芝刈りにお婆さんは

 

 〜〜中略〜〜

 

 なんやかんやで桃太郎が生まれて犬、猿、雉の三体を吉備団子を食べさせ仲間にしました。そして鬼を退治する為に鬼ヶ島に向かいましたと。まぁコレは分かる。分かるよ?コレがオーソドックス、正道を行く物語の流れだからね。

 

「で、さ。早々に質問ごめん。何で桃太郎が二人も居るの?」

 

僕こと舟頭の来正恭生は目の前に居る二人と彼等が連れた動物(?)に目を向ける。

 

「どう見ても俺が桃太郎だろうがぁッ!」

 

「い、いやでも僕も桃太郎であってその…」

 

 緑谷君に爆豪君、どちらも何故か桃太郎と名乗り、桃から生まれお爺さんお婆さんに育てられたと言う。(ちなみに二人は別の桃から生まれた)

 

うん、どこからツッコミを入れれば良いのかな?

 

「えーっと犬?の……麗日さんと切島君で合ってる?」

 

「うん」

「おう」

 

 頭に犬のつけ耳を装着した二人はそう答える。犬…犬かぁ……。

 

「狼とかチベタン・マスティフなら分かるけどさ。君等って雑種犬だよね?なんでわざわざ鬼退治に志願したの?正直勝てるイメージ湧かないんだけど」

 

「デク君が心配で……」

「爆豪を放っておけねぇからな」

 

「着いていく理由同じなの⁉︎そこまで被らなくても良くない⁉︎」

『お前等は足手纏いだから引っ込んでろと言ってやれ』

 

そんな事言わないからね?

くそっ、頭の中が濁声で響く。相変わらずトゲのある発言……!

 

他にも猿(飯田君、尾白君)、そして雉(常闇君、青山君)が居るけど……うん、猿はともかく雉の配役おかしくない?片方カラスなんだけどそれで良いの?

 

「悪鬼との狂宴に遅れを取るつもりは無い」

「僕の白鳥の如きキラメキを魅せてあげるよ☆」

 

 あ、ごめん前言撤回。この場に雉一匹も居なかった。

あれ?それじゃもうコレ桃太郎じゃなくない?

 

「話してる所悪い、ちょっといいか?」

 

 すると僕に話しかけて来る一人の男性……あ、轟君じゃないか。こんな所まで来て一体どうしたんだろうか?

 

「鬼退治の為に鬼ヶ島に行きの舟を出してくれねぇか」

 

うわああああああああ‼︎増えたよ畜生ぉぉッッ!

 

『桃太郎が増えたぞ やったなキョウセイ』

「おいやめろ」

 

 

 

 

 そんなわけでもうツッコミを入れるのも一々面倒臭くなったのでこのまま全員乗せて舟を出す事にしたよ(投げやり) うん思考を放棄するのって楽でいいなぁ。

 

……え?鬼に対して多過ぎるんじゃ無いかって?戦いを前にそんな甘い事言ってられないよ。かの宮本武蔵だって巌流島の戦いで複数の味方で小次郎を袋叩きにしたって言う説も有るしね。

 

『結局、圧倒的な暴力の前では誰もが無力だって事だ』

「それが真理なのかもね……」

 

 あっそう言えば(唐突) 轟君は何故かお供を連れずに来ていたけど……ねぇ君は犬猿雉が居なくて大丈夫なの?

 

「……? 何言ってるんだ。危険な鬼退治にわざわざ動物達を巻き込む訳にはいかねぇだろ」

「うん、ごもっとも」

 

 そんな他愛も無い会話をしているとあっという間に鬼ヶ島に到着する。さて、それじゃ僕等は此処で待ってるから皆鬼退治頑張ってね。

 

「え、着いてこないの?」

「いや僕舟頭だよ?普通考えて戦力に含まれないでしょ?」

 

「いや私達よりは頭が回るでしょ?」

「この人数を乗せた舟を一人で漕げる時点で腕っ節もね」

 

「くっ、此処ぞとばかり正論出して……!」

 

 あぁ分かったよ連れて行ってやるよ!お前を、お前等を連れて行ってやるよ!

 

『その先にオレはいるぞ』

 

 止まらないシンビオートBB素材作られそう(小並感) でもすぐに止まるけどね。

そんな事よりも鬼と言っても僕は見た事無いんだよね。どんな見た目をしているんだろう。

 

見つけ次第 撫 で て み た い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ?何見てんだ見せ物じゃねぇぞ」

 

 しばらく歩くと、そこには飾りの角を付けた見覚えのある集団が居た。まぁ見覚えがあるとか鬼以前に顔面に手を装着している時点で変質者と言った方が正しいと思う。

……と、言うかさ。

 

「なんだ偽物の鬼か。はぁ…(クソデカ溜息)」

 

「人の顔見て溜息吐くのって失礼だろ」

 

『見てるのは顔じゃなくて手だけどな』

 

 うん、まさしくその通り…って、確かコイツ等って敵連合の死柄木弔に側近の黒霧⁉︎他の人達は見覚え無いけど どうしてこんな所に⁉︎

 

「おやおや。まさか一人で来るとは……我々"鬼連合"も舐められたものですね」

 

 鬼 連 合 っ て な ん だ よ

 

「なんだか血が良く似合いそうな方ですね」

「よーし、それなら早速血塗れにしちまうか!アホか!そんな事する訳ねーだろ!」

「結構可愛い顔してるじゃない。嫌いじゃないわ!」

 

「なんだこの混沌とした空間」

『面白い奴等ばかりだ。目がイッてるJKに全身タイツの変態とオカマ。喰ったら腹を下しそうな面子だな』

「食べる前提なのやめて(懇願)」

 

 なんだこの違和感。色々とおかしい気がするのにこれが自然(当たり前)だと思ってしまうような……クソ、何故か今日に限って頭が働かない……!

 

「待てお前等」

 

 すると全身の一部が焼け爛れた肌を持つ不気味な男性が現れる。また新手か⁉︎僕に対してこの数って、いくらなんでもピンチじゃね?と言うか桃太郎達はどこに行ったんだよ!

 

「もしかすると…コイツが噂の桃太郎と言う奴じゃないか」

 

えっ、違うけど。

 

「ほう、この者が桃太郎…!」

「初めて見ました」

「へぇー、結構ハンサムじゃない」

 

 あれ?なんで僕が桃太郎前提で話が進んでるの?僕って舟頭だよ?剣技も使えないし動物達も連れてない一般ピープルだよ?

 

「馬鹿か荼毘。コイツはどう見ても桃太郎じゃないだろ、刀どころか団子すら持っていないぞ」

 

 あ、珍しく死柄木と意見が合った。いや、敵と意見が合うのは複雑な心境だけとさぁ!

 

「馬鹿はお前だ、もっと考えてみろ。真正面から堂々と挨拶して来たのは恐らくなんらかの策を講じているからだろ。恐らくだが桃太郎と言う正体を隠し俺達の背後から襲い掛かるつもりだ」

「考え過ぎだろ。ゲームと現実を混合してんじゃねぇぞ」

「現実をゲームに例えているお前にだけは言われたくない言葉だな」

 

 うん、僕も考え過ぎだと思うんだ。桃太郎本人もそこまで考えてないと思うよ。

……あれ?そもそもこの時代にゲーム機なんてあったっけ。

 

「……分かったそれじゃこうしよう。俺とお前、先にコイツを殺した方が正しいと言う事でいいな」

「は?」

 

は?

 

『デスゲームの始まりだ』

 

待って?

待って?(困惑)

 

「おい、いきなり何を言って───」

「お前馬鹿か?此処に来てる時点で桃太郎じゃ無いにしろ敵の可能性が高いだろ」

 

「ぐっ、至極真っ当な事を……!」

『ヒーロー志望が敵に常識を説かれるとは世も末だ』

 

クソッ、反論出来ないッッ‼︎

 

「それに殺しても俺はどうも思わん」

『そうかい。なら死んでもらおうかァ‼︎』

 

シンビオートの こうげき!

 

ごしゃっ

 

しがらきはみがわりをつかった!

荼毘にこうかばつぐんだ!

 

って、肌が焼け爛れてる人ォォーーーーーッ!?

 

「て、てめぇ…っ」

「俺の側に居たのがわr

 

 

ごしゃっ

 

 

「あっ」

 

 シンビオートの続け様による投石で死柄木もダウンした。あの(ヴィラン)よく顔面に石材ぶつかるなぁ。……あれ?火傷跡が酷い方ってマスクとか着けてないから下手したら死んでるんじゃ(震え声)

 

『死んでしまった者は仕方ない。念仏でも唱えておけ』

「おおっと、全く悪びれる様子が無いぞシンビオートこの野郎!ほら謝って⁉︎僕も謝るから!」

『何故そんな事をする必要がある?倒すべき敵に今更頭を下げても意味は無いと思うぞ』

 

 いや、そんな事……あ、うん。確かにその通りかもしれない。

 

「おい!いきなり何するんだ!ヤメロォ!ナイスゥ!」

 

「えっ、うん?どっちなの?」

 

「弔くーん、大丈夫ですか?あっ、でも血塗れで素敵だねぇ」

 

 あれれー?この連合、なんか思った以上に身内にドライなんだけど。敵の内部事情ってそう言う物だったりするのかな?僕としては敵サイドって仲間なら対して情が深かかったりするんだけど。

 

「弔⁉︎ おのれ、此処は一先ず退却を……!」

 

 そう呟きながら腕に該当する箇所からワームホールを形成しその場から退避しようとするのが見て分かる。ちなみに死柄木と荼毘と言う人はデップーみたいな全身ピチピチタイツの人に引きずられている。

 

『FUCK!塩を撒いておけ』

「海水なら腐る程あるけど塩は……って、あ逃げられた」

 

 いつの間にか敵…あ、いや鬼連合?が何処かに行ってしまった。流石にこれ以上追跡する事は不可能だ。

……あれ、それじゃこれで鬼退治終了なの?桃太郎でもないのに?

 

「来正君〜〜!鬼は見つかった?」

 

「見つかったけど逃げられたよ」

 

正確には退治した(主にシンビオートが)だけど。

 

「えっ⁉︎桃太郎でもないのに⁉︎」

「うん、もうそれ言ったから」

 

 驚く緑谷君達。………なんか釈然としねぇ。だって舟頭が石投げて鬼を追い払ったって事実 僕でも信じたく無いんだけど。

 

……よし、帰ろうか!最初から鬼は居なかったし鬼退治もしなかったと言う事にしておこう!金銀財宝?金は天下の回り物。もう使われて此処には無かったよ いいね?そう言う事だ!

 

「…と言う訳でこの話はやめよう ハイ!やめやめ」

 

 

 

 

 

「何がと言う訳だ人間共ォォ!!」

 

 声がした先。そこには金髪で朱瞳の少女が居た。背丈こそ低いものの全身に纏う炎とオーラが正しく鬼を体現していると言って良いだろう。

……あれ、もしかして鬼?

 

「いい話で終わらせようとしているが退治もされてないしちゃんと実在しているからな!我は此処に居るぞ!」

 

 マジかよ鬼って実在したんだ(今更) て言うか鬼が女の子ってよくあるソシャゲみたいな容姿だけど……そこはつっこまないようにしよう。

……あれ?それじゃあの鬼連合って奴らは?

 

「知らん」

「えっ」

「勝手に此処に住み着いていた。赤の他人だ」

 

 それじゃ僕の努力は一体……、いや言う程努力してないケド。

 

「てめぇが親玉ならテメェを殺せば万事解決って訳だ!」

 

「えっ、いや爆豪君相手は曲がりなりにも女の子だよ?」

『うわ、引くわ』

 

「先にテメェ等をぶっ殺してやろうか!」

 

「き、貴様ァーーーッ!我を(わらし)と罵ったかァ!」

 

 すると二人の怒りの矛先が僕に向いて来る。いや罵ってないから!別に馬鹿にした訳じゃないから!

 

『別に馬鹿にした訳じゃない。けど、指摘されて怒髪天を衝くって事は自分がガキだって認識してるんだろ?』

「シンビオート!!」

 

「き、貴様ァ!もはや許せん!この大江山の茨木童子を敵にした事を震え上がり死い逝くが良い!」

 

「い、茨木童子だとぉ!」

 

 茨木童子と言えば平安に大江山を拠点にし、酒呑童子と共に京で暴れ回ったと言うあの茨木童子か⁉︎

 

「クハハハ!なんだ我も捨てたものでは無いな!そうれ人間共よ、我が名に怯え、恐れ慄くがいい!」

 

「あの茨木童子がこんな女の子だなんて…!」

「茨木童子ってどう言う鬼だっけ?」

「あれだ。何度も腕斬られたヤツ」

「そもそも茨木童子って何?」

 

「恐れ慄かんか貴様等ァ!!」

 

 うん、まぁ仕方ないよね。現代っ子ってそこまで鬼の事知ってる人って少ないと思うんだ(偏見) で、和んでる雰囲気をぶち壊す事になるけどアレかなり強いぞ?多分今まで戦って来た中でも手強いヤツだ。この場にいる全員でも勝てるかどうか……。

 

「そ、そう!そうだ!今の我はかの渡辺の綱にさえ勝る程の強さを持つ鬼の首領!羅城門茨木童子よ!」

 

 直後、ゴォッ!と焔の中から巨大な腕が現れる。コレがかの鬼の力だと言うのか……うん、こりゃ勝てねーわ。ハハッ、無理だコレ。

 

「ほら三人共、桃太郎でしょ後は頑張って」

「僕等に任せるの⁉︎此処は皆で協力すべきじゃ」

「いやいや、僕はもう頑張ったから後はそれ以外の人がやるべき事だ。それに一介の舟頭に過ぎない僕がレイドバトルのボスめいた強さをした鬼と戦うべきじゃ無いと思うんだ」

 

「レイドバトル…素材…イベント……うっ、頭が……!」

 

なんかあっちはあっちで変な電波を受信してるし。まぁいいかこの隙に僕は帰ったら彼女を作る為に一人で舟に乗って帰らせてもらう!(今世紀最大の死亡フラグ)

 

『お前が戦わないのは構わない。けどそうなった場合誰が代わりに戦うと思う?』

「万丈か?」

『バンジョーは居ない、カズーイもな』

 

 あ、そっちなの?熊の影が薄い方なの?ところでス◯ブラ参戦おめでとう。

 

『しかし、そんな事もあろうかと鬼退治三銃士を連れて来たぞ』

「鬼退治三銃士?」

 

 僕が首を傾げていると謎の車が出現。そこから見知らぬ三人組が姿を見せたのだ。

何故に車?いつの間に助っ人を?時代背景フワフワし過ぎじゃない?と言う疑問を他所にシンビオートはそれぞれの人物紹介を済ましていく。

 

『鬼殺の剣士。継国縁壱」

「お労しや兄上」

 

『異国の小鬼殺しゴブリンスレイヤー』

「ゴブリンか?」

 

『誇り高き波紋使いジョジョ』

「散滅すべしディオ!」

 

「心強いけど、どれも違うぅ‼︎」

 

「……兄上は何処に」

「ゴブリンではないのか」

「吸血鬼じゃ無いのか⁉︎」

 

ここには十二鬼月が居なければ小鬼も居ないし吸血鬼も居ないんだよ!人選完璧に間違ってると思うんですけど(超推理)

 

「何かと思えばたったの三人か!雑兵を幾ら並べたとは言え我に敵うと思うなよ!滅びこそ我が喜び、死に行く者こそ美しい。さぁ我が腕に抱かれ息絶えるが良い人間共ォォ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大江山(おうち)帰る!

 

結論から言おう。イバラギンは普通に退治された。

鬼絶対滅殺マンによる剣技で宙に浮いてたマスターハンド、クレイジーハンド擬きはあっという間に木端微塵に刻まれ、ゴブスレの絶え間無い投槍、弓矢、火炎瓶、東阪、etc、etcと言う魔界村並の波状攻撃を喰らい身動きが取れない所を黄金の精神の巨漢から超暴走機関車の如く凄まじいパワーの拳をスタープラ◯ナと同等のラッシュで叩き込まれワンターンスリーキルされたのだ。

 

なにこれむごい。

まぁ、最終的に何が言いたいかと言うと。

 

「己、この外道!鬼!悪魔!ちひろ!鬼舞辻!」

「いや違う!シンビオートが勝手に!」

 

けっきょく あっとうてきなぼうりょくのまえでは だれもがむりょくなんだなって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

『やっとお目覚めか?起きたならさっさと顔を洗っておけ』

 

 結果的に今の今までの出来事は夢だった。それもその筈、現代人の僕が舟頭をやってるのはおかしいし、三人も桃太郎が居たし、お供も動物じゃ無かったし、お供も動物じゃ無かったし(二回目)

 

 取り敢えずあれ以上イバラギンの追い討ちが無かった事に安堵しつつも僕の中で一つの懸念が残った。

 

…嗚呼、一度でいいから鬼を撫でてみたかったなぁ。

 

 

 




上鳴「お前の好みってどこまでいける?」
来正「獣はどストライク。あとは人型から不定形のものまでならギリイケる」
上鳴「マジかよ(畏怖)」



〜〜キャラクター紹介〜〜


『来正恭成』
性癖のストライクゾーンが広い。最近、鬼の魅力に目覚め始めた。

『茨木童子』
元ネタは頼光四天王の渡辺綱と争い、羅城門の鬼と同一視されている茨木童子。キャラクター自体はFate/GrandOrderに登場するイバラギン。
ちなみに作者はランサーの方を間違ってレアプリズムにしてしまったと言う黒歴史が(吐血)
ランサーが売られた!この人でなし!

『継国縁壱』
元ネタは鬼滅の刃より。日の呼吸を扱い鬼舞辻を恐怖で震え上がらせた公式チート。1800の内、飛び散った1500の鬼舞辻の肉片をすぐさま滅ぼすって本当に人間なんですかねこの人(震え声)

『ゴブリンスレイヤー』
1にゴブリン2にゴブリン。三度の飯よりゴブリンぶっ殺すの大好きな人。えっ、イバラギン?あの生への執着心と意地汚さはゴブリンではないのか……?

『ジョナサン・ジョースター』
元ネタはジョジョの奇妙な冒険第一部より。その身体能力が近距離パワー型スタンド並と言うやべー人。歴代主人公の中で人柄が最もマトモなのがこの人だけってマジ?




 よくもまぁこんな深夜のテンションで書かれた雑な番外編を投稿しようと思ったな……。ちなみに本編の方は近日投稿予定です。

 そう言えばたつき監督の新作アニメの『へんたつ』が放送された記念に主人公とシンビオートをジャパリパークにぶち込んだ番外編を書いてみたいけど需要あるんですかね……?


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1話 違う!シンビオートが勝手に!

初の短編作品。
よくもまぁこんな酷い出来の作品を投稿する気になったな。

8/5連載化しました。


『GYAOOOOOOOOOOOOO!!!』

「ああああああああああああああああっっっ!?」

 

やぁ皆。主人公だよ。超常社会を楽しんでいるかな?

超常社会と言えば画面の前の皆はどんな"個性"を持ってる?

 

僕の"個性"は『シンビオート』と言って謎の寄生生命体を身体に宿した特異的な個性なんだ。シンビオートを身体に纏えば超人的な力を発揮できるしシンビオート自体スライムみたいな軟体生物だから立体起動装置みたく縦横無尽に移動したり、海賊王を目指すゴム人間みたいな攻撃もできるんだ。

 

まぁ、一つ欠点があるとすればさ

 

『GYAOOOOOOOOOOOOO!!!!』

「頼むから言う事聞いてくれないかなぁ!!!」

 

シンビオート(コイツ)自身に意思がある事かなぁ!!

個性を発動すると高確率で身体を乗っ取られるんだよね!ホント、コイツ何年経っても言う事聞いてくれないんだよ!

 

『GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA』

「大事な試験なんだから今日くらい僕の自由にさせてよシンビオート!」

『FOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』

「なに?君も合法で暴れられるのを楽しみにしていただって?よくもまぁそんな知恵が働くよね!」

 

そんな口論をシンビオートとしている内に機械仕掛けの敵を次々と薙ぎ倒して行く。

いやさ、ホントコイツ戦闘大好きだよね。日常生活の中で敵が現れると身体の主導権を奪ってブン殴ろうとするから抑えるのに一苦労するよ。鬱憤が溜まっていたのかな。ものすっっっごく暴れてるよ。

 

パンチ一発で仮想敵をバラバラにしたり、仮想敵の頭部を鋭い牙で噛みちぎったり、高所から一気に踏み潰したりさ。どう見ても敵の所業で周りの受験生がビビって近づいて来ないんだよね。

あークソ!これで不合格になったら全部お前に責任擦りつけるからなシンビオート!

 

『WRYYYYYYYYYYYYYYYYY!!』

「えっ?結局僕と運命共同体なんだから連帯責任だって?畜生が!!」

 

そんな時だ。

僕達の前に、超巨大な仮想敵が現れたのは。この試験において倒してもポイントにならず障害物としての役割を果たすのだ。

 

そんな逃げる一択の仮想敵を前にしてるんだけどさ。

ねぇ、なんで真っ向から突っ込もうとしてるのさシンビオート。ねぇ、お願いだから逃げようよ。頼むからさ!

 

ちょ、待って⁉︎

シンビオート!シンビオート!困ります!困ります!アーッ!困ります!シンビオート!アーッ!シンビオート!アーッ!困ります!

マジでやめてくださいお願いします困りますからシンビオートォ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『わーたーしーが!投影されたーーッ!おめでとう!君は実技試験一位となって突破だ!』

「……ハイ、アリガトウゴザイマス」

 

後日、雄英高校から試験合格の通知があったよ。

ハハハ、ホントもう死ぬかと思ったわ。なんかオールマイトの姿が映ってるけどもうどうでも良い気がして来た。

うん、今日は温かいココアを飲んでさっさと寝ることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで無事に雄英高校に入学できた僕は初日から首から上がカラスっぽい感じの生徒と友達になった。

名前は常闇踏影と言ってなんか中学二年生に発症する思春期特有のアレな感じが口調から読み取れるけど、まぁ気にしなくていいよね!

 

「お前の疾風怒濤の鬼神の如き活躍は耳にしている。これからもよろしく頼む」

 

「いや違う、アレはシンビオートが勝手に」

 

僕自身の個性を説明すると常闇君は「ほう」と関心したように呟く。

 

「俺と似た系統(タイプ)の個性か……コイツの名は黒影(ダークシャドウ)

『ヨロシクナ!』

 

「お、愛嬌のあるタイプだね。僕の方はシンビオートって呼んでいるんだ。ほら挨拶して」

 

僕がそう呼びかけると身体から黒い不定形な物体が現れ、僕の腕に纏わり付いていく。そのままシンビオートが小さな身体を作り出すと常闇君に向かって指をさす。

 

『FUCK YOU』

 

「『!?』」

「違う!僕の意思じゃない!シンビオートが勝手に!」

 

コイツ!なんで初対面で喧嘩を売ってんだよ!

ホントマジでいい加減にしろよシンビオートコラァ!

 

そんな僕達の元に金髪の三白眼の不良っぽい学生がやって来る。

えっと、誰だろうか。ちょっと見た目が怖いけどもしかしたら優しい人かも……

 

「テメェが一位の奴か……、実技が一番だからって調子に乗ってんじゃねぇぞクソドブ野郎が……!」

 

前言撤回。ただのDQNですね分かります。

いや、分かりたくないよ。

ともかく彼は何らかの誤解をしているに違いない(超速理解)。

それなら一刻も早く弁解をしなければ(使命感)

 

「いや別に調子に乗ってる訳じゃ───

 

すると、シンビオートが僕の身体の主導権を奪い目の前の不良っぽい彼に向かって口を開く。

 

『GO TO HELLLLLLLLLLLLl!!!!』

 

「んだとクソがァ!!!」

 

「違うううううううう!!シンビオートが勝手にぃぃぃいいいいいいッッ!!」

 

 

 

 




『主人公』
彼は主人公。名前は出てないけど主人公。幼少期から寄生生命体と共に生きる苦労人。
ヒーローを目指しているけど、個性の所為で敵に間違えられる。ま、是非もないよネ!
よくデッドプールやアニメ版アルティメットスパイダーマンの如く第四の壁を越える事があるが気にしない方面で。


個性『シンビオート』
主人公の中に棲まう人格を持った黒塗りの謎の寄生生物。
取り憑かれた人間は超人的な腕力や敏捷性を得る。ちなみに主人公の人格を塗り潰される訳でもなく比較的良好な共存関係にあるらしい。



『シンビオート』
バトルジャンキーのヤベー生命体(やつ)
強そうな相手には喧嘩を売っていくスタイル。

ちなみに主人公の中は住心地が良いらしい。




多分続かない。



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2話 違う!シンビオートが勝手に個性把握テストを!


何 故 続 け た し





 

 やぁ画面の前の皆 主人公だよ。

 目の前にはシンビオートと不良みたいな学生が喧嘩腰で睨めっこ。

 ホント参っちゃうよ(白目)簡単なあらすじとしてはアッチ(不良学生)が喧嘩を売って来てコッチ(シンビオート)が挑発。はい以上。

わーお単純明快。

 

「面白ぇドブ野郎が…今ここで決着つけてやんよぉ……!」

 

『I'LL BEAT YOU…!(翻訳:ボコボコにしてやる…!)』

 

「ストップ!ここ学校!教室だから!初日から暴力沙汰はマズイって!」

 

「なんだぁテメェ……!」

 

『GRUUUUUUUUUUUU……』

 

 うわっ、怖ッ!二人が並ぶとメチャクチャ凶悪な絵面になるよ。

 "個性"犯罪防止ポスターに載せれば凄い効果になりそう。とにかく僕は二人……いや、一人と一体の間に割って入る。

 

「いいかシンビオート?ここはあくまで勉学に励む場所なんだ。勝手に出て喧嘩は売っちゃダメ!」

 

『WRRRRRRRRRR……』

 

「喧嘩を買っただけ?屁理屈をこねても無駄だからね!今後そう言うのは控える事!さもないとチョコ買ってやんないからね!」

 

 そう言うとシンビオートは大人しくなり僕の体の中へ戻っていく。チョコの事を話題に出せばすぐに大人しくなるからこの手に限る。

 さて、問題はコチラをずっと睨み続けている彼だけど……。

 

「オホン……えー、さっきはゴメン。僕の"個性"は結構特殊でさ、何か気を悪くさせたなら謝るよ」

 

「うるせぇ!テメェの何でも指図するような言い方が気に入らねぇ!」

 

 流石に無茶苦茶過ぎないその理由⁉︎

 

「やめたまえ君達!ここは勉学に励む場所!決して喧嘩をする為に用意された訳ではない!」

 

「ハッ!いい子ちゃんコンビかよ!」

 

「いっ、いい子ちゃんとはなんだ!いい子ちゃんとは!」

 

「んじゃ、テメェどこ中だよ!端役が!」

 

「ぼ……ッ!俺は私立聡明中学校出身の飯田(いいだ)天哉(てんや)だ!」

 

「聡明ィ〜?いい子ちゃんどころか くそエリートじゃねぇか。ぶっ殺し甲斐がありそだなぁ!」

 

「ぶっ殺し甲斐⁉︎君ひどいな本当にヒーロー志望か⁉︎」

 

「ちなみに僕は羽門土中学校だよ。よろしくね」

 

「テメェに聞いてねぇわボケ引っ込んでろ!!」

 

辛辣⁉︎

どさぐさに紛れて自己紹介したのは悪かったけどそこまで言うかな⁉︎

ショックを受けている僕だったが教室のドアの前で固まっている二人の生徒の姿を見つける。とりあえず、手招きをしてこちらへ呼び出そう。

 

僕に気付いた二人は教室内へ入ってくる。

 

「いや、ごめんね。なんか騒がしくてさ」

 

「ううん、大丈夫」

 

「あそこの二人どうしたんだろう」

 

「いや、最初はあそこの不良っぽい学生が僕に喧嘩をふっかけて来てなんやかんやであの騒ぎ」

 

「さ、流石はかっちゃん。雄英でもブレない……」

 

「かっちゃん?……まぁいいか。僕の名前は来正(きせい)恭成(きょうせい)。よろしくね」

 

「あっ、どうも緑谷出久です!」

 

「麗日お茶子です よろしく!」

 

 緑色のボサボサした男子生徒と茶髪の麗らかな雰囲気をした女子生徒が自己紹介をしてくれた。

なんか常闇君や"かっちゃん"?って不良っぽい生徒に飯田だっけ?そんな感じの生徒と比べると見劣りすると言うか……なんかフツーって感じの容姿で安心感がある。

 

「こちらこそ……っと、コッチの紹介がまだだったね。コッチの名前はシンビオート。ほら挨拶」

『FUCk「さっきの事忘れてないよね」……HELLO』

 

 油断するとすぐに罵倒が飛ぶの

 

「(挨拶した⁉︎)すごい"個性"だね!一体どんな──」

 

 

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」

 

 

………

 

………………

 

………………………

 

………………………………

 

 

((((((なんか居る⁉︎))))))

 

 声の発生源は教壇の裏で寝袋に包まれた小汚い人だった。

うん、どう見ても不審者ですね分かりますとも。

……あれ、もしかしてこの人って教師だったりする?

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限君達は合理性に欠けるね」

 

「先生⁉︎」

 

「担任の相澤(あいざわ)消太(しょうた)だ。よろしくね」

 

やっぱり先生か〜〜ッしかも担任〜〜〜ッ!

……でも、おかしいな。確か雄英高校って教師の資格を持ったヒーローから授業を受けられるけど、こんなヒーロー見た事ないな。

全身を覆うタイプのコスチュームで見た目が分からないとか?

 

「早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ」

 

 アレは……雄英高校の指定運動着(ジャージ)

なんで?ガイダンスは?困惑する僕達は先生の言う通り着替えグラウンドへ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「個性把握テスト!?」」」」」

 

クラスメイト達の声がグラウンドに響き渡る。

状況を簡単に説明すると担任の相澤先生が「個性把握テストやるぞ」と言って皆混乱中。

うん、改めて考えるとおかしいよね。

 

「入学式は!? ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事、出る余裕ないよ」

 

 え、そうなの?なんかグラウンドに来る前に体育館の方をチラッと見たら入学式の準備してた気がするんだけど気のせい?

 

「雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り。お前達も中学の頃からやっているだろう? 個性禁止の体力テスト」

 

 

 

 

 

 

「実技入試成績のトップは来正だったな。中学のときソフトボール投げ何メートルだった?」

 

「えーっと、……確か51mでした」

 

俺は67mだクソが……!

 

 僕より上と言いたいのは分かったから耳元でボヤかないでくれないかな爆豪君。怖いんだよ!先生を目の前にして聞こえないようにしている分、心のみみっちさが……。

 

「じゃあ個性を使ってやってみろ。思い切りな」

 

 そう先生にボールを渡された俺は爆豪君の鋭い視線に少々ビクビクしながらも白い線の枠の中心に立つ。

 

(敵撃破P48、レスキューP32の計80Pの実技試験トップ。今年からヒーロー科の枠を増設させ推薦組を除く計38名の生徒の頂点に立つが……如何程のものか)

 

 何故か先生が意味深そうな視線を向けているが無視しよう。と言うかそんな気怠るそうな視線を向けないでください。爆豪君と言い先生と言い……、そんなに僕の事が嫌いですか(震え声)

ともかく言われたからには全力でやってみよう。

 

「よし、腕だけでいくよ」

『山盛りポテトとチョコを所望する』

「それは帰ってからね」

 

 僕の右腕にシンビオートが纏わり付き、不定なソレは次第に巨大な腕を形成する。

ボールを掴んで、そのまま大きく振りかぶって……一直線にッ!!

 

『「オラァッ!!」』

 

 僕とシンビオートの掛け声と共に球は空へ向かって放たれる。

しばらくして計測用のボールは重力に沿って地面へ落ち結果が先生の持つスマホに出される。

 

来正恭成 701.6m

 

「ッし!」

『身体が温まってないからまだ本調子じゃない』

「そう?と言うかお前に体温ってあったっけ?」

 

 700m超えの記録に思わず俺はガッツポーズをしてしまう。シンビオート自身はまだイケるらしいが……。

他愛も無い会話する僕達をよそにクラスメイト達の声が耳に入って来る。

 

「なんだこれ!! すげー面白そう!」

「701mってマジかよ……」

「個性思いっきり使えるんだ!! さすがヒーロー科!!」

 

 確かに皆の言う通りちょっと楽しい感じがする。自由気ままに個性を使うのは中々……あ、いや待った。自由気ままは流石にアウト。僕の個性を自由にしたらシンビオートが勝手に暴れ始めるのがオチだ。

 

 そんな事を考える僕の近くで計測していた相澤先生。何故ものすっっごく不満そうな表情を浮かべているのかな。

いや、確かにちょっと騒がしいけど少しは多目に見てもらえると嬉しいな〜〜……って。

 

「……面白そうか。ヒーローになる為の3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

……相澤先生?

 

「よしトータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

 

相澤先生!?

 

 いや、まぁ確かに一人減って計20人でキリが良くなるけど除籍⁉︎

除籍ってあの、除く籍と書いてのヤツですよね!?

嘘だと言ってよバーニィ……。

 

「これから3年間雄英は全力で君達に苦難を与え続ける。更に向こうへ…PlusUltraさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうした 何を焦っている?』

「どうしたもこうしたも無いよ!除籍処分だよ⁉︎やばいって!これは何がなんでも上を目指さなきゃヤバいって‼︎」

 

『Hmm……オレ達の力なら除籍処分は有り得ないな』

「分かってないなぁシンビオート。分からない?あの先生の目」

 

僕は気怠そうな表情を浮かべる先生をチラリと見る。

 

「アレは俗に言う養豚場の豚を見る目だ……!『あぁ今回の豚の出来は悪いな。さっさと処分しよう』って感じのいつでも除籍処分して良いような目だよ……!」

『お前はつくづくチキン(ビビり)だな。そんなワケないだろう』

 

 

第1種目は50m走。

 

 通常は二人一緒に走るところを今年から生徒数21人となったので三人一組で走る形式となったらしい。

とりあえず個性を使って良いと言われたのでシンビオートを呼びかけるがどうにも乗り気じゃないらしい。

 

『ただ走るだけなら興味は無い。お前で勝手にやれ』

「別に良いけどさ、力だけは貸してよ?除籍処分って事は今後一切お前は自由に外へ出られないし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()からね」

 

 

『……………』

 

 

「お、おい。なんかお前の身体、変な黒いのに覆われてるけど大丈夫か?」

 

「あ、気にしないで。これが僕の個性で……え?ちょっと待って。なんでシンビオート勝手に僕の身体を乗っ取ってるの?ちょっと⁉︎なんで触手を前に伸ばしてるの?

何故そんな張り切っt『CHOCOOOOOOOOOOッ!』

 

あ゛あ゛あ゛あ゛ああ゛ああああああ゛あッッ!?

 

 

 

………

 

……………

 

…………………

 

 

来正恭成 記録2.63秒

 

 

 いやぁ、あの時はびっくりしたね。言い表すなら安全バー無しでジェットコースターに乗った感じ。

 

 なんか周りの反応としては「人間の皮を被った化け物」とか「変身ヒーローじゃなくて変身ヴィランだった」「巨人が蔓延る世界で調査兵団に入れよ」って言われた。

いや、まぁ。そんなリアクションされるのは慣れているけど

 

流石に「横に落ちる変態」って言われたのは初めてだった。

と言うかさ、さっきまで乗り気じゃなかったのに何で僕の体を操ったの?

 

『オレ達の将来(チョコ&ポテト)の為だ。無論、力を貸すに決まってるだろう!』

 

つくづくコイツは現金なヤツだなぁと改めて実感した。

と言うか身体の自由より食欲って、それで良いのかシンビオート……。

 

先程の測定による謎の疲れでダウンしているところに赤髪と金髪の男子生徒二人がやって来る。

 

「おーい無事か?」

 

「さっき奇声を発しながら走って……いや?飛んでか?ともかく凄い記録出してんな」

 

「ハハ、どういたしまして」

『なんだコイツら。さては妨害目的で近づいて来たな』

 

 うん、とりあえずシンビオートは本当に静かにしてくれない?

 

「僕は……」

 

「知ってるよ、来正だろ?実技試験が一位の。俺は切島鋭次郎よろしくな!」

「俺、上鳴。さっきの何だったんだ?なんかグロい姿になってたけど」

 

「それは──『オレ様を呼んだか?』

 

「うひゃあ出た⁉︎」

 

「なんだァ⁉︎そのドロドロしたヤツ!」

 

「僕の個性って言うか……ともかく名前はシンビオートって言うんだ」

『ハァイ ジョージィ』

 

「へー、そうか『リューキュウ』みてーな変身するタイプじゃないんだな(ジョージィ?)」

「結構面白い個性だな。けど、俺の個性も負けてないぜ(ジョージィって誰?)」

 

『せいぜい、オレ達の邪魔をしないようにな』

「ちょっと⁉︎……あー、ゴメン。ウチの子さコミュニーケーション能力が超がつく程、と言うか一切無いからさ……」

 

「苦労してんなお前……」

 

「ハハ……もう何年も一緒にいるから慣れたよ」

 

 それに困る事と言われても街中で敵を見かけると僕の意思関係無しに突っ込んで行ったり、身体の主導権を奪われるくらいだから。

そう二人に告げると何故か微妙なリアクションをされた。

……あれ?もしかして慣れている僕がおかしいパターンなのコレ?

 

 

 

 

 第二種目は握力測定。

コレはシンビオートの腕を形成して、ただ握るだけ。

切島君はフツーにやったが、上鳴君の場合は握力測定器に【帯電】の個性で電気を流し結果を弄ったらしい。

……握力とは?

 

 先生は特に気にしてないから良いみたいだけど、隣の黒髪ポニーテールの女子生徒は万力で測ってるんですがコレってどうなんですか先生。

 

「問題無し」

 

握力とは(哲学)

 

 

 

 続いて第3種目……おっと、悪いけど立ち幅跳びについてはカットさせてもらうよ。えっ、なんでかって?それは………

 

 

『GYOOOOOOOOOOOOOOッッ!!』

「また前にィィィィイイイイッッ!!」

 

 

……こう言う事。前方に落ちる変態の場面を二回見せるのは流石にあれだからね。ぶっちゃけると、もう思い出したくないから。

 

 

 次は第四種目の反復横跳び。

反復横跳び……個性使って良いとは言われたけど、どう使えば良いんだろうか……。

そう考える僕の目の前に低身長のブドウのような独特な髪型をした生徒がボールを組み合わせたようなのようなナニカをトランポリン代わりにして凄まじい記録を出していた。

 

「凄ッ!?何アレどうやったの⁉︎」

 

「はっ、野郎に褒められても嬉しかねぇな!引っ込んでr『ぶち殺すぞヒューマン‼︎』すみませんでした」

 

 シンビオートに顔面を鷲掴みにされ素直になる生徒。ちなみに名前は峰田実と言うらしい。しょうがないよね、こんな見た目が映画に出てくるエイリアンみたいなのに脅されたら仕方ないと思う。

 

『どうするコイツ処す?処す?』

 

 やめたげてよぉ!

 

 その後峰田君に教えてもらったけど、どうやら峰田君の個性"もぎもぎ"により弾力性と自分以外にくっつく粘着性を兼ね備えた球体を沢山取り出し己の身体をバウンドさせると言う反動を利用した方法で記録を伸ばしたようだ。

 

 それを聞いた僕は峰田君の案を参考に左右両側ににシンビオートを変化させたロープを張る。

これによって弾力を利用し、更にコイツ自身が僕を引っ張る事によりスピードが加速すると共に記録も伸びる!

勝ったな風呂入ってくる(入れません)

 

『これでいいか』

「よし、それじゃあお願いするよ」

 

 そう言った直後、激しい衝撃が左右から交互に襲いかかる。

お、おお……結構いい感じ。これなら中々良い結果が出そうだね。

後で峰田君にお礼を言っておかないと。

 

『よし、余裕みたいだな。このままで良いか?』

「うん、このまm……あ、待って。ダメだこれ」

 

 左右にシェイクされ脳や臓器、胃の中身までもが激しく揺らされる。うん、キツイねコレ(震え声)

シンビオートが生み出すこのエネルギーはまさしく土星エンジン(空中分解寸前)!お願いだからやめて!死ぬゥ!色々な意味で死ぬゥ!

 

『分かった、このままはダメなんだな。よしスピードを上げるぞ』

「えっ」

 

 

…………

 

 

測定終了後、僕は盛大にキラキラをブチ撒ける結果となった。

高得点の代わりに僕は周りから同情と慈悲が混同したような視線を向けられる事となった。

知ってる。アレでしょ?実際は心の奥底で嘲笑ってるんでしょ?

 

すると麗日さんがポンと僕の肩に手を乗せて来る。

なんだよ今さら憐れみなんているかァ!

 

「分かるよ、私もそうだったから」

 

麗日さんはそう一言だけ呟くと次の測定を行うため移動していった。

 

何がしたかったのだろうk……え、()()

それってどう言う……え?

 

 

 

 

 

 麗日さんのカミングアウトに対しモヤモヤする感情が残ると共に第四種目のハンドボール投げが行われる。ちなみに僕は最初の方で既に測定を終えているため、投げなくても良いらしい。

 

まぁ、一応アレが全力だったから見学でいいかなぁと思い、その場で体育座りしている。

 

 

──ドォンッ!!

 

 

八百万百 記録612m

 

でさ、握力測定に万力を使っていた子がボール投げなのにボールを大砲を使って撃ち出してる件について

 

()()なのに何で()()?測定してんのは砲撃じゃなくて投擲なんだよなぁ。

そこら辺どうなんですか先生。

 

「問題無し」

 

ソフトボール投げとは(哲学)

 

「死ねぇッッ‼︎」

 

 そんな考えをしながら空を見ていると謎の掛け声と共に発生した巨大な爆発音に驚き爆豪君の方へ視線を向ける。

 

 

爆豪勝己 記録705.2m

 

「俺が上」

 

 そう呟くと同時にこちらに向かって中指を立てた。

……いや、なんでそんな敵意剥き出しなワケ?そこまで露骨にされると泣くよ僕。

 

『GYAa「ステイッステイッ まだだッまだだッ!」

 

 ニタァと邪悪な笑みを浮かべる爆豪君にシンビオートはご立腹だ。だからやめなって!ここで問題起こせばそれこそ除籍処分を受けるから!すると少し調子に乗ったのか、爆豪君が更に口を開く。

 

「何か言い返してみろや"負け犬"野郎が!」

 

『負け犬……"敗北者"…?』

 

えっ、待って。この流れは……

 

『取り消せよ…今の言葉!』

 

「取り消せだとォ?断じて取り消すつもりはねぇな!」

 

 乗るなシンビオート!戻れ!

あんなの言わせておけば良いんだ!と言うか何でそんなにノリノリなの?

さては仲良いだろ君達。

 

 

 

『アイツ、()()()を馬鹿にしやがった。キョウセイはオレに棲家(生き場所)をくれた!お前にキョウセイの偉大さの何が分かる!これからヤツ以上の記録を出しに行く!後に続けキョウセイ!』

 

 やだ、ちょっと嬉しいけど人前で言われるの滅茶苦茶恥ずかしいや。でも言っておくけど最初にやったアレで全力だからそんなに距離伸びないと思うよ?

 

『その方法を考えるのはお前の役目だろ。』

「アッ、ハイ」

 

 結局、僕任せなんだね。うん、大体予想はしていた。いやだけどどうしたものかな………あっ、そうだ。

 

「先生、もう一度測らせてもらって良いですか」

 

「まぁいいが…既に一回終わってるから、やるのは一回だけだぞ」

 

 そう言われ、ボールを渡される。さっきまでそうだったが僕は視野を狭めていた。先生が"個性"を有用し最大限の力を発揮する事が良いならば、決して投げる動作に拘らなくて良いんだ。

と言うかレーザーや爆発の反動で空飛んだり、万力とか電気使って握力測定してる時点で気付くべきだった。何というか、僕自身変なところで頭が固いところがあるなぁ……。

 

 

『やり方は決まったか?』

「勿論。任せてよ」

 

 

 投球フォームは最初の時とは変わらない。違うのはここから。

まずは腕を後方に思い切り伸ばす!そのまま伸びきった反動。球威に乗せ天に向かって射出!

 

まだだッ!まだ終わらんよッ!

 

 測定用のボールにはシンビオートの一部を取り憑かせている。

切り離したシンビオートも遠隔操作が可能!空中に漂うボールに纏わり付かせた一部の形状を(カイト)のように変化させ更に距離を稼ぐッ!

 

来正恭成 記録1124.3m

 

「よおぉッしッッ!」

 

「「「「「1km越えたぁぁぁあああッ‼︎」」」」」

 

凄まじい達成感と周りからの歓声に包まれる僕だったが爆豪君が怒りに満ちた表情を浮かべているのに気付く。

 

僕は堂々の1km越えの記録。

それに対し貴方は挑発した癖にアッサリと記録を抜かされた敗北者。

随分と差がつきました 悔しいでしょうねぇ。

 

……と、心の中で呟いておく。

いや口には出さないよ?だって怖いし。

そう思っていると、僕の身体からシンビオートが上半身を形成し始め爆豪君に向かって中指を立てた。

 

『俺が上』

 

「ぶっ殺すぞテメェ等ッ!」

 

「違う!今のはシンビオートが勝手に!」

 

 





主人公'sプロフィール

来生(きせい)恭成(きょうせい)

名前の元ネタは 寄生・共生 から
一人称は僕。

誕生日 5/4日
身長 168cm
体重 67kg

・好きなもの
動物全般、ヒーロー物のアニメ・コミック


来生's目:よく死んだ目に変わる
来生'sボディ:意外と筋肉質
来生's気質:苦労人
来生's体内:シンビオートの棲家

出身中学校:『羽門土(はもんど)中学校』
元ネタはMARVELのヒーロー候補生の訓練施設
【キャンプ・ハモンド】より。




『シンビオート』

主人公君の中に棲まう謎の黒塗りの寄生体。
英語に疎い人が海外版ヴェノムを観た時の不気味さをイメージしているが、普通に喋れる。
しかしコミュニケーション能力が悲惨な事になっている。

誕生日 宿主と同じ
身長 標準6フィート(約180cm)から変化
体重 標準85kg

好きなもの
チョコレート、ポテト

シンビオート's舌:長い
シンビオート's目:でっかい白目
シンビオート's肌:黒くてテカテカ
シンビオート's全身:筋骨隆々のスライムボディ





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3話 違う!シンビオートが勝手に記録を!

「さーて、現状の小説評価どうなってるかなー」ポチ

 赤 バ ー

「ファッ!?」

単純に驚きました。そんなに続きが見たいかのかよォ!
おら投稿したぞ あくしろよ(早く見ろよ)




 

 やぁ画面の前の皆、主人公だよ。

爆豪君とシンビオートの仲が滅茶苦茶悪い事以外は順調に進んでいるけど、そのせいで爆豪君が怖くて直視できない。

 

そんな事をしていると次は麗日さんの番らしい。さっきから見ていたけど麗日さんの個性ってどんな感じなんだろう。

 

「それ!」

 

気の抜けるような声を上げながら麗日さんのボールはどんどん距離を伸ばしていく。

おお!凄い。どこまで飛んでいくんだろう!

 

 

…………あれ?本当にどこまで飛んでいくのアレ?

 

 

麗日お茶子 記録 (無限)

 

「「「「「無限出たぁぁぁああッ!?」」」」」

 

 いや、本気でどこまで飛んで行ったのアレ⁉︎もしかして宇宙の果てまで飛んで行ったと言うオチじゃないよね?

そんな驚いている僕だけど隣にいる約2名が最も驚いていると思う。

 

「」

『』

 

 ほら、驚きすぎて口が塞がらなくなっているよ。爆豪君とシンビオートがすっごい表情見せてる。

いや、それもそうだよね。自分が一番だと思っていたらそれ以上の記録を易々と越えられたんだし。

 

「やったぁ!見た見た?来正君!」

 

「うん、ちゃんと見ていたよ。でも彼等の傷口を抉るから今言うのはやめておいて」

 

「え?……あっ(察し)」

 

 麗日さんは何も言わずその場から離れる。そんな傷に塩を塗る結果となった麗日さんの次は……緑谷君の番だ。

なんか見るからにガチガチに緊張してる感じだね、それに……"個性"を使っている様子も見られなかったなぁ。

 

「緑谷君はこのままだとマズイぞ」

 

「ったりめぇだ!無個性のザコだぞ」

 

『お前、緑谷(アイツ)の事になるとムキになるよな。意識してんのか?』

 

「ガチで殺すぞテメェ!!」

 

………ん?()()()

 

「えっ、無個性って。緑谷君、無個性なの?」

 

「いや、流石にそれは無いだろう」

 

 

「緑谷君は入試時に0pの大型敵を殴り壊したからな」

 

「へぇ、成るほd……待って今なんて?」

 

 殴り壊した?……あー!なんか連撃による蓄積ダメージで大型敵を破壊したのね。うん、そーゆーことか。

 

「いや、パンチ一発だぞ」

 

「えっ」

 

 僕の腑抜けた声と共に必死の形相を見せる緑谷君がボールを投げ飛ばす。上空高く投げ飛ばされたボールはそのまま失速していき……

 

緑谷出久 記録48m

 

「……え?」

 

「な…今確かに使おうって…」

 

 絶望で立ち尽くしている緑谷君。どう言う事だろう?飯田君の話が本当ならあんな記録は出ない筈だけど……。

いや緑谷君自身、何が起きたのか理解できてないって感じの顔をしている。

これって一体……?

 

「"個性"を消した。つくづくあの入試は『合理性』に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう」

 

 そう思っていると、先程とは打って変わって髪が逆立った状態の相澤先生が立っていた。

……と言うか、さっき個性を消したって……?

 

「消した…!!あのゴーグル……そうか……!」

 

知ってるのか雷電…じゃなかった緑谷君!

 

「視ただけで人の個性を抹消する"個性"!抹消ヒーロー【イレイザーヘッド】!」

 

「イレイザー?俺…知らない」

 

「名前だけは見た事あるけど……」

 

 チラチラとクラスメイト達からイレイザーヘッドについての声が上がる中、シンビオートが口を開いた。

 

『イレイザーヘッド……聞いた事がある』

 

「知ってるのかシンビオート!」

 

常闇君がシンビオートに問いかける。

え?いや、お前知ってるの?

 

『あぁ……詳しくはキョウセイが代わりに説明してくれる』

 

さては知ったかぶりだなオメー。そんな僕に期待の視線が突き刺さる……。

いやなんで皆、緑谷君そっちのけでコッチ見てんの?今、相澤先生が大事な話しているんだよ?

そっち注目してあげてよ、ねぇ!

 

 

………………

 

 

 あぁ!分かったよ!説明してやるよ!どうせ後戻りは出来ないんだ!

お前を!お前等を!イレイザーヘッドについて詳しくさせてやるよ!

 

「イレイザーヘッド……アングラ系でマイナーなヒーローの為、然程有名とは言い難い。本人自身メディアの露出を嫌ってて情報は少ないけど、その個性と捕縛武器を合わせた相手を無力化させるのに優秀なヒーローと言える」

 

『……と言うワケだ』

 

「「「「「成る程……」」」」」

 

 うん、とりあえずさ。シンビオート、今後こう言うのはやめてくれない?僕は凄まじい戦闘を目で追えるような解説役じゃないんだから、それにそんな語彙力あるワケでもないし。

 

……あ、続きやって大丈夫ですよ相澤先生。

 

「……個性が制御できないんだろ。また行動不能になって誰かに助けてもらうつもりだったか?」

 

「そんなつもりじゃ……!」

 

先生の言葉に緑谷君の表情が弱々しくなっていくのが見て分かる。

会話の内容はあまり聞き取る事が出来ないけど、これってもしかしてアレだよね?

 

やべーぞ!『教育的指導(教師の立場を利用したパワハラ)』だ!

 

しばらくして、意気消沈した緑谷君が二回目のソフトボール投げを行う事になった。

やばい、見ているだけでちょっと胸が苦しくなって来た。

 

「指導を受けていたようだが……」

 

「除籍宣告だろ」

 

「彼が心配?僕は全然」

 

『まぁ所詮はザコ。オレ達には遠く及ばないと言うワケだ』

 

「いや、雑魚って酷くない?……ところで君、誰?」

 

あ、どうしよう。このクラスの生徒、ドライな人が多い。

いや一番酷いのはザコ呼ばわりしてる身内だけども。

と言うか緑谷君……、せっかく知り合いになれたと思ったのに。

 

「しかし奴は災難だな、死神に運を刈り取られたと同義」

 

「常闇君」

『相変わらず何を言ってるか分からないなこのトリ』

 

「ちょっと黙っていようか」

 

「……奴のプレッシャーは計り知れない。奴は凄まじい記録と言う名の枷に縛られているのだからな」

 

 枷?縛られる?待って。それってつまり前の人の計測がヤバくて緊張してるって事?

確かにそれは災難だね。前が麗日さんと爆豪君に………。

 

 

 

…………

 

………………

 

……………………

 

 

 うわぁああああッ僕もだぁああああッッ!!

ごめんよ緑谷君!僕のせいでプレッシャーがぁぁぁぁぁあああッッ!!

 

神様お願いします!どうか、彼に力を!力を貸してあげてください!もう罪悪感がハンパじゃないんでお願いします!何でもしますから!(ん?今、何でもって……)

 

 

 すると僕の願いが通じたのか緑谷君が腕を大きく振りかぶると凄まじい轟音と衝撃を伴いボールが天高く投げ飛ばされたのだ。

 

 

SMASH!

 

ドォンッッ!!

 

 

 

……………

 

 

 えっ、何?緑谷君って理知的なタイプかと思ってたけど実はゴリッゴリの近距離パワー型タイプの個性持ちなの?

何故か、指がえげつない色になってるけど、ドォンッって……生身で出しちゃダメな音とソニックブームが出たんだけど、どう言う事?

それにさっきの、オールマイトの一撃に匹敵……

いや、それ以上の威力が出てない?

 

え、やだ何アレ怖い。

緑谷君怒らせたら確実にヤバいタイプじゃん。

喧嘩したら事故で首から上が消し飛ぶヤツじゃん。

 

「み、緑谷君…大丈夫?」

『凄いな、お前。ザコだと思ってだけどザコじゃなかったんだな。ザコ呼ばわりは撤回してやる』

 

「え?あ、うん。ありがとう……?」

 

思わず緑谷君の所に近寄ってしまったけど……うん、コレ重症だね!

肉がグッシャグシャだもん。内出血どころか骨も砕けてるね!

 

「とりあえずさ、保健室行こうか」

 

「えっ!?い、いや!でもこの後もまだ測定あるし!」

 

「いやいや、でもこのまま怪我を放っておいたら余計に悪化するかもしれないし……」

 

「いやいやいや!」

 

『いやいやいや喧しいぞ、語彙力0なのかお前等。そんなに怪我を治したければ怪我を無くしてやる』

「えっ、無くしてやるってどう言う意味───

 

 

がちゅっ

 

 

するとシンビオートは口を大きく開き、そのまま緑谷君の右腕に喰いついた。

……えっ、()()()()()

 

 

「「「「「うわぁぁぁああああッ!?」」」」」

 

 

 

 広がるは阿鼻叫喚の地獄絵図。

緑谷君の負傷した指どころか腕に喰らいついたシンビオートの姿にクラスメイト達の悲鳴が上がる。

シャンクス!響ショックで腕がァ!

 

……いや冷静に分析している場合じゃないよね⁉︎

何やってんだミカじゃなくてシンビオートォ!!

※錯乱中

 

「何やってんだよ来正お前ーーーッ!」

「ぎゃぁぁぁああああああああッッ!!遂に恐れていた事態にーーーッ!」

「違う!シンビオートが勝手n………ちょっと待って峰田君。遂にってどう言う事?どう言う事なの、ねぇ?」

 

「うわぁぁぁ……あ、あれ?」

 

 困惑する緑谷君の腕からシンビオートが離れる。グロテスクな映像が視界に入ってしまう事に警戒していたけど……あれ?腕がある。って言うか無事?……そもそも怪我が治ってる?

……あぁ!シンビオートが治癒させたのか。

あー、そーゆー事ね完全に理解したわー(白目)

 

とりあえずはまだ混乱してる彼の状態を確認しないと。

 

「大丈夫?緑谷君?」

 

「だ、大丈夫……あれ?本当に大丈夫だ!」

 

「いや、どっちなの?」

 

 困惑する緑谷君に対してシンビオートが「してやったり」って感じの表情を浮かべてるけど……。あー、本気でびっくりした。

 

「もしかして治してくれたの?」

 

『その通り。オレ様に感謝しな』

「正確にはシンビオートの能力で自然治癒力を高めただけだよ。多分体力消耗してると思うけど……」

 

「あ、確かに言われると思いの外、疲れt「デクァ!」ひぃっ⁉︎」

 

そこに鬼のような形相で手の平から爆破を起こしながらこちらに向かって駆けて来る爆豪君の姿があった。

怖っ!?凄ぇ怖ッ!?

 

「何ださっきのはよォ!」

 

「ちょ、ちょっと⁉︎どうしたの爆豪君、落ち着きなって!」

 

「うっせぇ!そこどけや殺すぞ!」

 

何に気が障ったのか狂戦士と化した爆豪君。そんな彼の前にシンビオートが立ちはだかる。

 

「シンビオート?……お願いだから刺激しないでね」

『…………』

 

「なんだァ、テメェ………」

 

するとシンビオートは爆豪君の胸に指を当て、こう呟いた。

 

『お前、コイツ(緑谷)より下だったな』

 

シンビオートお前コラァ!!

なんか予想は出来たけど、コラァ!!

 

 ぶ っ 殺 す 

 

「違う!シンビオートが勝手に!やるならシンビオートだけn「ついでにテメェもぶっ殺す」なんて日だッッ!!」

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

「んじゃパパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ」

 

その後、無事に個性把握テストは終了し先生の声と共に皆の結果がデータ化されて投影される。

僕の順位は……上から数えて二番。良し!2位だ!

1位は……八百万と言う大砲とか万力とかを持ち出していた女子生徒。3位は轟君と言う氷を操っていたクールな男子生徒だ。

ちなみに4位は爆豪君で悔しそうにこちらを見ているが絶対に目を合わせないようにしておこう……。

 

『2位かよ…!あの"ハッピャクマン"ってヤツ、相当のやり手だな』

「いや名前は"八百万(やおよろず)"って読むみたいだよ。確かにとんでもない個性だったね」

 

 倒れるだけで腹筋ワン○ーコアとか最後の方はバイクに乗っていたし……あれ?一応僕達、まだ学生だけど免許云々とかは大丈夫なのかな?

 

そして順位の一番下を確認すると、そこには『緑谷』と言う知っている名前が……。

そうか、緑谷君……ダメだったのか。

 

「緑谷君……」

 

「大丈夫……だよ」

 

 大丈夫には見えない。

それは当たり前だよね、先生は最下位を除籍にすると宣言した。もし先生の言うことが本当ならば……。

 

どんな言葉をかければ良いか分からない僕だったが、突如として、僕に代わりシンビオートが緑谷君に向かって口を開いた。

 

『安心しろよ緑谷』

「シンビオート…?」

 

『お前の出した【結果】は確かに良いものじゃないな。だがお前がその結果に至った【過程】は決して無駄なモノじゃない』

 

「「え?」」

 

……あれ、シンビオート?

君、シンビオートだよね?こんなカッコ良いこと言って偽物じゃないよね⁉︎

そんな僕の思いを尻目にシンビオートは言葉を続ける。

 

『お前が歩んだ道である【過程】。それは今のお前に大きな影響を与えた。今が駄目なら次は今よりも もっと大きな自分になれ。この程度の挫折でお前は【結果】を捨てるのか?』

 

「シンビ…オート……!」

 

緑谷君の瞳に光が灯る。

……シンビオート、僕が間違っていた。そしてやっと気付いたよ。

彼にかける言葉。それは「ヒーローになれる」って言う言葉だったんだね。

そんな僕の思いを感じ取ったのかシンビオートはニヤリと笑みを浮かべる。

 

『だから………』

 

 

 

 

 

 

 

『安心して除籍されてオレ達の踏台になれ』

 

 

ああ、良かった。いつものシンビオートだ。

 

 

 

………

 

……………

 

…………………

 

………………………

 

 

 

シンビオートお前コラァ!!

 

 

 

「なんなんだお前、空気読むという言葉どころか概念が存在しないのか!」

『空気を読む?AIRと言えば良いのか?』

 

「翻訳しろとは言ってないんだよ!お前!お前お前お前お前ッーーーーーッッ!!」

 

 コイツ!珍しく感動させたと思ったらこうだよ!そんな僕達だが不意に先生の声が耳に入って来る。

 

「…と、そこで喧嘩している者を含め君達に言い忘れていた事がある。除籍と言ったな、ありゃ嘘だ

 

あぁ、そうですか!ですけどコイツに言い聞かせることがあるので後にしてくれませんk………今、何て?

 

「君らの個性を最大限引き出す合理的虚偽

 

 

………

 

……………

 

…………………

 

………………………

 

 

「「「「はぁっ?!?」」」」

 

 

緑谷君、麗日さん、飯田君。そして僕の声がグラウンドを木霊する。

待って?え、嘘?USO?偽り?

すると横で見ていた八百万さんが口を開いた。

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない。ちょっと考えれば分かりますわ」

(((気付かなかった……)))

 

絶望したッ!先生の悪どいやり方に絶望したッッ!!

さすがに初日から除籍とか!先生嘘を吐くのも大概にしてくれませんか!?

 

『なんだよ、されないのか除籍処分』

「ハハハよし、お前はホントもう黙ってて」

 

シンビオートがこれ以上余計な事を言う前に体の中で静かにしているよう言い聞かせておく。

 

それにしても除籍処分にすると言った時の先生の眼差し……アレって本当に嘘だったのかなぁ?

 

『結局、全員ハッピーだから問題無しだろ』

「さっきまで自分が何を言ってたか覚えてる?」

 

とにかくこれ以上考えないようにしておこう。

初日から疲れた……帰ったらココアを飲んでリラックスしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 雄英高校初日。

 この日は午前中で終わり、次の日から本格的に授業を受ける事になる。もちろん雄英の校則などの説明も少しだけしてもらったが「詳しくは各自プリントに目を通しておけ」との事。

 

いやぁ、本当に疲れた。

爆豪君と…轟君だっけ?何故か二人がずっとコッチ見てるんだもん。怖いよ。僕の想像していた高校生活ってこんな殺伐としたものじゃないのに……。

 

『なぁに、心配は要らないぞ。オレ達なら奴等がかかって来ても返り討ちにできるさ』

「うん、その原因を作ったのが君だって事を自覚してね(半ギレ)」

 

「おーい!一緒に帰らないーー?」

 

 シンビオートと話していると後ろの方から麗日さん、飯田君、緑谷君といった良識のあるメンバーがやって来た。

僕は三人と同じ位置に並び立つように歩く速さを遅くする。

 

「来正君。今日の個性把握テストの結果見事なものだったよ!」

 

「うん、まさしく圧巻って感じだね!」

 

『当たり前だ。なんせオレ達にできない事はないからな!』

「それは言い過ぎだよ。ところで緑谷君、指は平気?」

 

「うん、リカバリーガールに治癒してもらったけどシンビオートの処置のお陰で大事には至らなかったって」

 

「いやー、凄いね!デク君の指をホントに治したんだね!」

 

 それは良かった。ハッキリ言って初日からクラスメイトが大怪我って洒落にならないからね。……あれ、デク君って緑谷君の事?

それって蔑称じゃないの?と緑谷君に聞くと顔を赤くして「それで良いんだ」と言った。

……それで良いのか(困惑)

 

すると機嫌を良くしたシンビオートはフフンと笑う。

 

『そうだ、オレ様を褒め称えろデク。お礼はチョコでいいぞ』

「調子に乗らないの。帰ったらちゃんと食べさせてあげるから」

 

と言うか何気にシンビオートも緑谷君の事をデクって呼んでるし……。

 

「そうそう、シンビオート君も凄かったよね」

 

「うん、……シンビオート君?」

『シンビオート……君』

 

「そうだよ?どうかした?」

 

 驚いた。シンビオートに君付するのって初めてだから……。麗日さんって何というか表裏の無い性格なんだね。

 

「いや、ありがとう。そう言ってくれたのは麗日さんが初めてだよ」

 

「そうなのか!それならば俺も言わせて貰おう!シンビオート君と!」

 

「よろしくねシンビオート君!」

 

うん、なんか僕も一緒に褒められてる感じで嬉しい

 

『いや、君付されても嬉しいと思わないが……』

「シンビオート!?」

 

 

 

 

『……けど、悪い気はしないな』

「……全く」

 

「うん、それじゃよろしくね!デク君!飯田君!来正君!シンビオート君!」

 

 僕はシンビオートと一心同体だ。シンビオートから伝わる温かな気持ちを確かに感じながら"僕達"は友達と言う存在に喜び合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、あの時 僕に踏台になれって言ったけどアレは一体……(震え声)」

 

「違うッ!あれはシンビオートが勝手にィ‼︎」

 

 

 

 





キャラクター紹介

『緑谷出久』
誰もが知ってるであろう主人公(原作)

 初期スパイディの如くナード(オタク)って所がアメコミ意識してる感がすごい。
感覚で戦うよりも理論的に考えながら戦うタイプ。
中の人がナランチャだったり愈史郎だったりする。
主人公への印象は「あ、苦労してるんだなぁ」と自分と似通ったものを感じ取ったらしい。


『麗日お茶子』
ヒロイン(えっ、梅雨ちゃんがヒロインじゃn
大衆の面前でブチ撒けた事に共感を抱き、そのまま友達となった。
シンビオートや主人公については「怖いけど愛嬌のある個性を持った人」と言う認識。


『飯田天哉』
メガネが本体のいい子ちゃん。
真面目で騙されやすいキャラクター。爆豪に主人公と揃っていい子ちゃんコンビと呼ばれる。コスチュームがクソカッコ良い。
主人公への印象は「好成績の切磋琢磨し合える仲間」と真面目な評価。
原作でも、もっと活躍して良いのよ(チラッチラッ


『爆豪勝己』
真ヒロイン(えっ
クソを下水で煮込んだような性格。実技1位の来正に突っかかる。
シンビオートとは馬が合わず口喧嘩が絶えない。

…………

ねぇ、知ってる?かっちゃんはシンビオートとトラウマ(ヘドロヴィラン)を重ねているみたいで、過剰に反応してるんだって。

<マ-イ-ニィ-チ-ヒト-ツーマ-メチシィ-キ〜


『八百万百』
チート個性持ちのお嬢。
僕のヒーローアカデミアすまっしゅ!での個性把握テストにて『握力1.2t』『ボール投げ28km』と言うトンデモ記録を出していたが、測定結果を少しだけ低くする事に。(※それでも一位である)
すげぇよモモは……。


『常闇踏影』
中二病患者。
主人公と初日で知り合った生徒。シンビオートから『トリ』と呼ばれている。主人公とは個性が似ているらしく親近感が湧いたらしい。




3話まで投稿したがこのまま短編で終わらせて良いのだろうか?
それとも連載化して続きを投稿した方が良いのだろうか……?


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4話 違う!シンビオートが勝手にハンデを!

さーて、今の状況はどうなってるかなー?

赤 バ ー

ランキング入り

ファッ⁉︎敵のスタンド攻撃かッ⁉︎(ガチ困惑)

多分今回はギャグ要素が薄め。




『Hey Good Morning!朝はチョコをふんだんにぶち込んだカプチーノ コーヒー抜きを所望する!』

 

「ん〜〜〜〜……朝はココアで勘弁して……」

 

 僕の朝は目覚まし時計やアラーム音ではなくシンビオートの声で覚醒する。どうにもシンビオートは目覚まし時計などの高い音は苦手らしくいつも元気なコイツの第一声で目を覚ましている。

 

…て言うかカプチーノのコーヒー抜きってクリーム状の牛乳だけじゃん。僕はベッドから起き上がると洗面所に向かう為、階段を降りる。

 

 冷たい水で顔を良く洗った後、鏡越しの自分の髪型を確認しながらクシで髪の毛を()かしていく。

……直後、ピョンと変な擬音を出しながら寝起きの状態へ戻ってしまう。どうして僕の髪の毛質って硬いというか、癖になりやすいと言うか。

 

『相変わらずとんでもないハネ毛だな。全部の髪の毛引っこ抜けばサラサラした髪でも生えてくるんじゃないのか?』

「そう出来ていれば苦労はしないよ。……あぁ、ねむ……」

 

「なんだ、いつも通り寝起きはシャキッとしてないな」

 

 眠気が未だに残る僕がリビングへ行くと"おじさん"が朝食を用意していた。軽く手足を動かしてから席に着き朝食を目の前にすると改めて空腹を感じてしまう。

 

「たまには小鳥の囀りってので起きてみたいんですけどね。まぁ聴こえるのは車の音とコイツのガラガラ声ですけど」

『オレ様はハスキーボイスだ。ガラガラじゃない』

 

いただきます。と呟きトーストを手に取る。

 

「ありがとうございます おじさん。いつもすみません」

 

「一々お礼なんて言わなくてもいいさ、使わなくなった屋根裏部屋を貸しているだけだからな。ただし、掃除当番はしっかりやってもらうがね」

 

「勿論、そのつもりですよ」

 

「それでいい、さて朝はいつも通りココアでいいかな?シンビオートはいつものようにホットチョコレート入りだったか。マシュマロも入れるかな?」

 

『気がきくなジイさん。愛してるぜ』

 

「だからジイさんはやめなって」

 

 おじさんは"恩人"なのだからその態度は改めてないと……って、こんなやり取りするのこれで何度目だっけ。もう何年もやってる気がするんだけど。

 

「別にいいさ気にしてない。ところでテレビのチャンネルを変えてくれないかね」

 

「え〜……僕は『今日のにゃんこ』を観たいんだけど」

 

 そんな談笑を交わしながら朝食を食べ終えた僕は制服に着替え雄英高校へ行く支度を済ませる。

 

「なんだ?もう行くのか」

 

「うん。ちょっと朝から友達と一緒に行こうって約束しているから……それじゃ行ってきます」

『ジイさんもオレ達が居ない時にくたばってんなよ!』

 

 全くシンビオートはもう……、呆れながらも玄関のドアに手を掛けようとした瞬間、おじさんの声が僕の耳に届いた。

 

「改めて、雄英高校入学おめでとう。頑張ってな」

 

「……うん、頑張るよ」

 

 

 おじさんは身寄りの無い僕を居候として受け入れてくれた上にヒーロー生となる事も許してくれた。

 

ありがとう。そして行ってきます スタンおじさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい大変だー!あそこで敵が出たぞ!」

 

「よし、さっさと学校へ行こうかシンビオート!今ここで行ったら学校に遅れる可能性もあるしね、だから勝手に身体の主導権を奪って空へ落ちるのは勘弁してぇぇえええええええええええええッッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりは今朝からシンビオートの我儘に付き合ったと言うワケか。つくづく身内に甘いな」

 

「それを言われると恥ずかしいね。朝から立体起動しまくって全身がバッキバキでツライよ」

『結局見るだけで終わっちまった』

 

 見るだけで終わって良かったんだよなぁ(安堵)。身体を乗っ取られている事が日課と化しているけどさぁ。なんで一日最低一回は敵が出てくるの?少しは働けよ!個性を使いたいなら人様に迷惑をかけない所でやってくれない⁉︎

 

そんな僕とシンビオートを交互に見た後、常闇君は呟く。

 

「悪鬼を体に埋め込まれているのはかなり苦痛……いや、疼くのではないか?」

 

「うーん、どうだろう。最初は違和感バリバリだったけど慣れるとなぁ……」

『お前等も同じだろ?トリ頭に真っ黒クロスケ』

 

『相変ラズ、(くち)ワリーナオマエ』

「確かに、コイツ(黒影)と共に在るのは自然と身体が馴染んでしまうな」

 

 なんだかんだで僕と常闇君は個性で似ているところがあるから気が合うんだよね。……いや、口調は全く似てないからね?そこだけはハッキリ言っておくよ?

 

 そんな事を話していると雄英の校門前で色々な部活動が勧誘している場面に出くわした。十を超える部が色々な生徒に声を掛けているのが分かる。

 

「来たれ剣道部!」

「化学部にドーゾ!」

「ヒェッヒェッヒェッ……オカルト研究部に入らないか?」

「サポートアイテム研究サークル!貴方も実験受けてみませんか?」

「テーブルゲーム部見ていきませんか!えっ、カードゲーム?そんな事よりクトゥルフとパラノイアやろうぜ!」

 

「面妖な者達ばかり……」

 

『お前の頭も面妖だけどな』

「コラッ!……それにしても雄英高校って、部活にも気合入れてるよね」

 

「左様。ヒーロー科が目立つがその影に凡ゆるスポーツ、研究等の実績を残すと聞く」

 

 常闇君が謎の体勢をした状態で説明を行う。

……その体勢は何なのだろうと聞きたいけど触れてはいけないんだろうなぁ。

 

「へー、それじゃあ……サポートアイテム研究サークルとかってコスチューム関連のアイテムを開発してるのかな?だとしたr「興味があるのですネッッ!」うおっ⁉︎」

『なんだぁ……テメェ……』

 

「おっと、申し遅れました!私サポート科一年の発目(はつめ)(めい)と申します!」

 

「サポート科一年、俺達と同じ学年の……」

 

「そこの黒い寄生生物を連れたアナタ!サポートアイテムに興味がおありで?」

 

「いや、まぁ確かに興味はあるけど……」

『オレ様が寄生生物だと⁉︎殺すぞ女ァ!!』

 

「シンビオート!ストップ!マジでやめて!……うひぃッ⁉︎」

 

「ほほーう、アナタ。中々鍛えていますね……もし、コスチューム関連で相談事があるなら、この私に言ってくださいね!!それじゃ失礼します!」

 

「嵐の如き勢い。何者だあの女……」

 

「格好つけている所悪いけどさ、あの子フツーに自己紹介してるからね?」

 

「………」

 

『トリの奴はなんで格好つけてたがるんだ?しかも難しい言葉も使うし』

『ソーユー"オトシゴロ"ミタイダゼ。……オレモワカンネ』

 

シンビオートォッ!

ダークシャドウッ!

 

 本当、僕と常闇君は似ているところがあるから気が合うのだと再確認できた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雄英高校の授業は何と言うか普通だ。全てがヒーローに関する事ではなく、英語の授業ではプロヒーローのプレゼントマイク先生が担当するが内容は本当に普通だ。

 

『HEY!HEY!HEY!HEY!HEEEEEEY!!!』

 

コレ(シンビオート)さえなければの話だけどね。

 

「おっと!元気が良いなシンビオート!そう言うわけで代わりに来正に答えて貰おうか!Please Say the Answer(答えをどうぞ)!!」

 

「違います!さっきのはシンビオートが勝手に!」

 

 

 午前の授業が終わると様々な科が昼食のために集う食堂が混雑し始める。ここではランチラッシュの作る料理を格安で食べる事ができると言う。

 

「結局、白米に落ち着くよね!」

 

『オレ様はチョコが良いぞ!』

 

「落ち着く!」

 

「ランチラッシュだ……!サイン!サインください!」

 

『オレ様はチョコが良いぞ!』

 

 麗日さんは日替わり定食、飯田君はカレー。緑谷君はカツ丼である。確かに白米に落ち着いてるね。

 

「でも、白米じゃなくても、うどん美味しいよね」

『オレ様はチョk「いや、もういいから」

 

 その後しつこくチョコを要求するシンビオートにランチラッシュがチョコレートパフェを作ってくれた。「試作品だから食べてもヘーキヘーキ」だそうだ。さすがは被災地に無償で食事を提供するヒーロー。コレにはシンビオートもご満悦。

 

 

 

 そして、午後の授業。眠たくなるタイミングだがこの時間では眠ろうとする生徒は居ないだろう。

何故ならば………

 

 

「わーたーしーが!普通にドアからやって来たぁ!」

 

 

 あのNo.1ヒーローオールマイトが教師として出るのだから!

 

『アイツだけキャラデザがおかしくなってるぞ。どうなってんだよ編集部』

「一応言っておくけどさ、オールマイトはあの状態がニュートラルだからね?」

 

 まるでコミックから現実に出てきたような風格に僕は思わず息を飲む。本当にヒーローとして僕等は平和の象徴から教えを受ける事が出来るんだから。

 

「早速だが、今日はコレ!戦闘訓練!そしてそいつに伴って、こちらッ!」

 

 オールマイトがリモコンを操作すると教室の壁が迫り出て来る。そこには番号の書かれたロッカーが現れる。何このハイテク教室?秘密基地かなんかなのかな?

 

「入学前に送ってもらった"個性届け"と要望に沿ってあつらえた……戦闘服(コスチューム)!着替えたら、順次グラウンドβ(ベータ)に集まるんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおお……本当に要望通りのコスチュームだ!」

 

 コスチュームを身に纏った僕は歓喜の声を上げる。擦れないし伸縮性もバッチリだし通気性抜群だ!

 

『けど、オレ様から見ればまだ地味過ぎるぜ。もっと腕にSILVER(シルバー)巻くとかさ』

「これで良いんだよ。……それに、僕らの個性じゃコスチュームで居る時の方が少ないからね」

 

 戦う時は大体シンビオートを上から纏うからなぁ……でも憧れのヒーローと同じ格好をするくらい別に良いよね?

そんな僕の元に黒のコスチュームに身を包んだ上鳴君がやって来る。

 

「へへっ、どうだこのコスチューム。中々良い感じだろ」

 

「うん、今時のって感じがするね」

『パッとしない感じだな』

 

 おおっと、やめようかシンビオート。上鳴君が少なからずショックを受けてるから。

 

「ちなみに僕のコスチュームの感想はどうかな?」

 

「ん?おお、渋いな!黒のコスチュームにダイヤのマークもついてんのか!」

 

「そうそう!元は星マークなんだけどアレンジを効かせたんだよね!他に何か感想は無い?」

 

「そうだな、まるで歴戦の兵士って感じがするな」

 

 うんうん、分かってるな上鳴君!

 

「うん!それで?」

 

「いや?それだけって感じだな。なんかあんま派手じゃないって感じ」

 

「あ、いやそうじゃなくて……常闇君はどう思う?」

 

 僕は隣で黒いマントを装備した常闇君に話しかける。うん元々顔も黒い事も合わさって余計にカラスに見える。

 

「中々良い趣味をしている。……が、俺の外套も中々の衣だろう」

 

「うん、素晴らしく素敵なコスチュームだね」

『トリにしては良いセンスをしている。けどオレ様からすればまだ地味過ぎるぜもっと腕にシルバー巻くとかSA!』

 

「シルバー……!」

 

「うん、常闇君。心動かされているところ悪いけどやめとけやめとけ……って、ダメだ聞いてない」

 

 ダメだコイツ、早く何とかしないと……。そう思いながら振り返ると無駄にキラキラした感じの生徒が僕の前に立っていた。ホッ!いつの間に!?

 

「見てごらんよ☆僕の煌めくコスチューム☆」

 

「おお、西洋の騎士みたいでイイね!赤のサングラスもいい味を出してる!そしてそのマント!良いセンスだ。ところで僕のコスチュームを見て何か……」

 

「キラめきが足りないね☆」

 

「あ、うん…それは知ってる……」

 

 しばらくすると着替え終わった何人かが更衣室から出て行く。……悔しさに囚われ僕はその場で膝をついてしまう。

 

「皆、キャップ知らないのかな……?」

『やっぱり地味過ぎるぜ。もっとシルバー巻くとかさ』

 

 クソァ!シンビオートまで地味って言った!しかも二回も!そして何故シルバーをそこまで推す?

 

「なんでだよ!【キャプテン・アメリカ】は凄いんだぞぉッ!周りと比べて地味かもしれないけど肉体一つに経験と技術でカバーする圧倒的強さを誇るんだからな!」

 

「おう!よく分かんねぇけどお前の言葉確かに胸に響いたぜ!んじゃ、先行ってるからな!」

 

 切島君がなぜか地味と言うワードに反応したけど嬉しくない。憧れのヒーローがこうも知名度が低いとは思わなんだ……。

……いや、きっとアレンジが加えてあるからパッと見じゃ分からないんだ!そうに違いない!

 

「もしかしてトレードマークの盾か!盾がダメなのか!」

『そもそも知ってるヤツが居ないんじゃないのか?』

 

それを言われたら戦争だろうがシンビオートォ!

 

 

 

 

 

 更衣室からグラウンドβへ向かうと、既に何人かの生徒達が揃っていた。すると僕の元にピンクと黒のコスチュームを纏う麗日さんがやって来る。

 

「あ、来正君!コスチューム渋いね!」

 

「そういう麗日さんこそ。良いコスじゃないか。ロックマンを意識してるのかな?愛嬌のあるフォルムをしてるよ」

『結構パツパツだな対魔忍でも目指す気か?』

 

「ハハハ、シンビオート君。相変わらず痛い所突いてくるね……ところで対魔忍って何?」

 

「シンビオート?対魔忍じゃなくてアイマイミーの間違いだよねぇ!自分と同じく身体にフィットしてるって意味の間違いだよねぇ!」

『はぁ?何を言ってるんだ。どう見てもそれにしk「チョコ食べる?」アイマイミーの間違いだったわ』

 

 油断するとすぐにヤバい事言い出すからなシンビオートのヤツ。それにしてもキャップの事を知ってるクラスメイトは居ないか…そりゃそうだよね。MARVELなんて昔のヒーローアニメ、コミックの事を知ってる同年代なんて見つかる筈も無いか……。

 

「そのコスチューム似合ってるね来正君!その衣装もしかしてキャプテン・アメリカを意識してる?」

 

「ハイハイ、どうせ僕のコスチュームはダサくて地味……待って?今、キャプテン・アメリカって言った?」

 

「う、うん。でも国旗をイメージしたカラーにしては色味が控えめだからステルススーツかなと思ったんだけど……」

 

 

…………

 

………………

 

……………………

 

 

 

同士(親友)よ……!君のコスチュームもとても似合ってる!その衣装のVサインを模した角飾りに笑顔にも見えるマスク。さてはオールマイトリスペクトだね!」

 

「……! 分かるの!?」

 

「もちろん!……あれ?このコスチュームって、もしかして自分で製作したの?」

 

「えっ?あ、うん。これだけは譲れなくて……母さんに貰ったジャンプスーツを基本に自分なりに……」

 

「いいねソレ!自主製作(ハンドメイド)のコスチュームなんて憧れるよ!スパイダーマンも最初はそうだったもん!」

 

「それね、分かるよ!最初だけは自分だけのスーツで行きたいって気持ちがあるんだ!」

 

「そっかぁ〜〜〜!いいなぁ、僕の場合は"個性"の関係でコスチュームがほぼ無意味に等しくなるからなぁ……」

 

「そんな事ないよ!憧れのヒーローを意識したコスチュームは魂のこもった装備なんだ!無意味じゃないよ!」

 

グッグッグッ パシッ!

僕等は無言で手を組み合う。

 

「仲良くなってる!先の短い間に何があったん!?」

 

「いや、ただこれからの高校生活で魂の友、謂わばソウルメイトに巡り会っただけだよ」

魂の友(ソウルメイト)……意味同じだろ』

 

「うん!……僕、雄英に来て良かった!!」

 

(み、緑谷少年…私がいる時よりも活き活きとしてないか……⁉︎)

 

 何故かオールマイトが悲しそうな表情を浮かべている気がするがきっと気の所為だろう。

 

 

「鬱陶しいんだよッナードコンビッ!クソ共が群れてんじゃねぇよ!」

 

「いやぁ、まさか緑谷君が語り合えるとは思わなかったよ」

 

<おい!聞いてんのか!

 

「僕の方こそ……、ところで君の推しは誰かな?僕は断然オールマイト!」

 

<無視してんじゃねぇよデクてめぇ!

 

「僕かぁ…、僕はコミックとかそう言う創作上のヒーローが好きだけど、そうだね。やっぱりリューキュウやミルコ辺りかな。いいよね動物の個性って……ん?」

 

<………(無言の威圧)

 

 緑谷君と話し込んでいるとコチラを睨みつける爆豪君の姿が視界に飛び込んで来た。さっきから声はしていたけど、もしかして僕等に話しかけて来たのかな?

 

「あー、えっと……ごめん爆豪君、さっきなんて言ったか教えてくれないかな?ちょっと話し込んでてさ……」

『お前、ガッツリ無視されていたな。なぁどんな気持ち?一方的に敵視しているヤツから無視されるのってどんな気持ち?』

 

「〜〜〜〜〜〜ッッ!!」

 

 憤怒の形相で言葉にならない声を上げる。やべぇ……相当頭に来ているよコレ。と言うかシンビオートは頼むから煽るのをやめて欲しい。

 

「全く、少しは雄英生としての自覚を持って欲しいところですわ」

 

「あ、いやゴメン。ちょっと気の合う友達と会って、つい嬉しk──

 

 八百万さんの声が聞こえた方向に視線を移した瞬間。僕は絶句した。そこにあったのは剥き出しの二つの山。

決してヒーローコスチュームとは言い難い、一昔前のヒーローアニメに出てきそうな敵役の女幹部がしていそうな格好。

 

つまり何を言いたいかと言うと八百万さんが凄まじい露出度のコスチュームを着ていたのだ。

 

「ちっ、ちちちちちィッ!?」

『あ、痴女だ』

 

シンビオートォ!!ストレートに言うなァ!

 

「痴女とは失礼な……コレは私の個性を最大限に引き出す為に作られたコスチュームですわ」

 

「そ、そうなんだ。結構大胆なコスチュームだね」

『ふーん、エッチじゃん』

 

 だからシンビオートォ!オブラートに包んで喋って!一々ストレート過ぎるんだよ!なんで会話のキャッチボールで全てを剛速球で投げるかなぁ!?

 

「分かるよそれ!コレをデザインした人って絶対にスケベだよ!」

 

「うん、ワイトも…じゃなくて僕もそう思うy────

 

 再び振り返った視線の先。そこに居たのは手袋と靴しか装備していない露出度90%と言う八百万さんが霞んで見える女子生徒(透明人間)だった。

 

「痴女ってレベルじゃねぇ!!」

『露出魔がいるぞォ!』

 

だからシンビオート言い方ァ!

 

「露出魔って!女の子にその言い方は酷いぞーっ!」

 

「違う!シンビオートが勝手に!ゴメンえっと……」

 

「葉隠だよー」

 

「あ、葉隠さんね。僕は来正だよ……しかし、思い切ったデザインだね……」

 

「酷いよねこんなの!手袋と靴だけって…!もっと気合を入れて欲しいよね!」

 

「あ、うん。そうだよね……」

 

 言えない……、透明人間の葉隠さんにとってコスチュームどころか全裸の方が個性を最大限に活かせるなんて口が裂けても言えない……!そんな思いを胸に秘めた僕だが八百万さんが発した言葉に耳を疑う事となる。

 

「そうですか?寧ろ私の場合、注文より隠されていますが……」

 

「「えっ」」

 

 僕と葉隠さんの声が重なる。え?いやそんなまさか……八百万さんにこっそりとどのような注文だったかを聞いてみる。

 

「それは【機密事項】で【プライバシー】を効率良くするため【自主規制】と言う形状に……」

 

「」(声も出ない)

 

「オイ、オイ……どんな感じだったんだよ教えろよなぁ!」

 

『なんだこのチビ?どっから現れた』

 

 しばらくフリーズしていたであろう僕に峰田君が声を掛ける。

……うん、別に言っても問題無いと思うけど八百万さんって天性の露出魔じゃないよね?所々自主規制(ピーと言う)音が流れていたんだけど。

 

「………スリングショットやマイクロが生易しく見えるレベル」

 

「「「「!?」」」」

 

 

 

 

 

 

 しばらくしてコスチュームに着替えたクラス全員が揃い、ヒーロー基礎学が始まった。なんか峰田君が「ヤオヨロッパイのエロコスについて詳しく」と言っていたが彼だけには教えちゃダメな気がしたので無視する事に。

 話は戻るが第一回目のヒーロー基礎学はヒーローとヴィラン。2対2の屋内戦を想定した訓練らしい。

 

 ちなみに誰と組むかはくじ引きで決める事になっており、21人中1人だけ余る事になる。

 

「そのため、このクジの中に入っているアタリを引いた生徒はとある条件で別のチームに組み込まれるぞ!」

 

「条件?それって一体……?」

 

「それは後からのお楽しみだ!まずは誰が引くかな?「俺だッ!」おぉ!爆豪少年か!」

 

 爆豪が高らかに声を上げクジの入った箱に手を突っ込む。とりあえずアタリと言う名のハズレを引く確率は1/21。

……うん、最後に引くとしよう。残り物には福があるって言うし。

 

「おぉ!私達同じチームだね!よろしくデク君!」

「あっ、う、うん!よろしく麗日さんッ!」

 

「NICE BODY‼︎(よろしく頼むぜ八百万)」

「え、えぇ。そうですわね峰田さん?」

 

 緑谷君と麗日さんは仲良くチームか。峰田君については本音と建前が逆になってるけど……うん、気にしない方向で!

 

「よろしく!」

「頑張ろう!」

 

「同じチームとしてよろしく頼む」

「あぁ」

 

 あれ、なんでかな?アタリが出ないぞ?そろそろ出てもおかしくないんだけど……。

しばらくして、僕を除いた全員がクジを引き終わる。するとオールマイトが僕の元に歩み寄って来る。

……待って?ちょっとそれ以上口を開くのはやめて!聞きたくない!その言葉を聞くのは嫌d

 

「おめでとう来正少年!君はアタリだ!」

 

『やったぞキョウセイ!残り物には福があるって本当だったんだな!』

「うわぁぁぁぁぁああああああッッ!!」

 

 福じゃねぇ!厄だコレーーーッ!周りから「あぁ、コイツが選ばれたのか」って感じの冷たい視線が突き刺さる……!

流石のオールマイトも僕の心情を察したのか、さっさと授業を進めてくれた。

 

「さて!このアタリを引いた生徒である来正少年!君はこの"超圧縮重り"を身につけてもらうぞ」

 

「超圧縮重り?」

 

「そう、サポート科が開発してくれたアイテムだ!数値を設定することによってその分の負荷が身体にかかる重りだ。来正少年には体重の1/3分の重りを手足につけて参加してもらう!」

 

 そう言うとオールマイトは僕の手足に重りをつけて数値を設定し始める。……ぐぉっ、重ッ!?この状態で戦闘訓練ってキツくない?

 

「ぐぅぅッ!僕ってこんなに重かったっけ⁉︎あークソッ!授業が終わったら絶対痩せる!」

『グダグダ言って情けないぞ』

「うん!全部合わせて28kgのハンデを背負ってもらった来正少年にはクジで選んだチームに加わってもらうぞ!」

 

 成る程、約30kg近くの重りか………あれ?僕の体重ってこの前測った時じゃ67kgだったけどその1/3って22kgの筈だけど、オールマイト間違っているのかな………?

 

 

…………

 

………………

 

……………………

 

 

 ちょっと待って!?シンビオートの体重分を割ったヤツだコレーーー!!

(※シンビオートの体重は標準85kg)

そっちなの!?僕じゃなくてシンビオート基準なのッ!?

 

「だって、そうでもしないとハンデにならなくない?」

 

「いや!でも結構辛いんd『余裕だな』シンビオート⁉︎」

 

『この程度、オレ様にはハンデの内にも入らないな』

 

「いや、何言っt「分かった、それなら半分にしようか」えっ」

 

 

 28kg→43kg デデドン!(絶望)

 

 

 

ひぎぃぃぃいいいいいいッ!?

 

「あ、あのさ。半分にした私が言うのも何だけど大丈夫?」

 

「ぉごごっごごが(翻訳:それなら少しは加減して)」

『平気へっちゃら と言ってる(と思う)』

 

シンビオートコラァ!!

ショックを受けている僕を他所に、オールマイトは"E"と言う文字が書かれたクジを取り出す。

 

「Eチーム!青山少年に芦戸少女達と組んでもらう!」

 

 西洋の騎士風のコスチュームを着た金髪の男子生徒、そして桃色の肌をした女子生徒が僕に視線を向けていた。

 

「同じチーム同士よろしくー!」

 

「足は引っ張らないでね☆」

 

「う、うん…よろしく頼むよ二人共。あと、できれば肩を貸してくれるとありがたい───」

『なんだ、この色物コンビ。役に立つのか?』

 

「「えっ」」

 

「違うッッ!シンビオートが勝手にィッッ!」

 

 




来正恭成'sコスチューム

・コスチューム's全体
キャプテン・A(アメリカ)リスペクト。暗めの紺色に銀と赤のラインが少し入っている。

・コスチューム's付属品
円盤(フリスビー)型のバックラー×2 硬さはイマイチ。壁、地面などに跳ね返るように作られ、トリッキーな攻撃に応用可能。

・コスチューム'sヘッドギア
バイザーと言うよりはヘルメットに近い。通信、記録、音楽と多機能。口元にマスクを展開できるロマン溢れる仕様。
マスク展開時は『スター・ロード』意識。

・コスチューム's胸マーク
星では無くダイヤマークに変更。流石にそこまで真似する度胸は無かった。

・コスチューム'sポケット
色々な箇所に付いている。チョコが常備されている。



人物紹介

『スタンおじさん』
 主人公の恩人であり亡くなった両親の友人。白髪と日中常に付けているサングラスがトレードマーク。
主人公は彼の家に居候しており使われていなかった屋根裏部屋を使わせてもらっている。某屋根裏のゴミとは違って待遇は良い方なので悪しからず。
marvelファンの人には分かるかもしれないキャラクター。


〜〜用語説明〜〜

・『キャプテン・アメリカ』
marvelコミックに登場するキャラクター。生ける伝説、星条旗のアベンジャーとも呼ばれるヒーロー。星マークが特徴的なシールドを利用した戦闘が凄まじい。
主人公が最も推しているヒーロー。


・『クトゥルフ』『パラノイア』
TRPGのゲームの一つ。死にゲーに友情破壊ゲームと言われている。ちなみに作者はやった事がない。と言うか周りにTRPGを知っている人がいない。
クソァッ!!TRPGやってみたいなコンチクショウ!

……やっぱ動画で見てる方が良いや。


・『MARVEL』
超常黎明期が起こるずっと昔の"個性"がまだ発現されてなかった頃にアメリカ中心に流行ったヒーロー漫画(コミック)
鋼鉄の鎧を纏う天才社長、生ける伝説と呼ばれた戦士、雷を操る神と言ったヒーローが登場しており今でも根強い人気がある。しかし最近の若者にはウケが悪いらしい。


・『スター・ロード』
地球人と宇宙人のハーフ。ガーディンズ・オブ・ギャラクシーの中心メンバーでありリーダー的存在。元々はトレジャーハンターであり命知らずの冒険者。




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5話 違う!シンビオートが勝手に戦闘訓練を!

前回のあらすじ

らめぇ!それ以上重くしちゃらめぇ!
それ以上重くしたらやばいのぉぉおおおお゛っ!


今回は諸事情により海の向こう側から更新させていただきます。
飛行機揺れて怖かった(迫真)




 やぁ画面の前の皆。重りの重量を解除してもらった主人公だよ。

今僕等は……

 

『おいデク。怪我をするんならもっと軽い怪我をしろ。お前はいちいち手を壊さなきゃ気が済まないのか?』

「ご、ごめん………」

 

『あんな力が出せるならアイツを殴ってやれば良かったのに』

「流石にそれは無理だよ!?」

 

 訓練一発目から怪我をした緑谷君の治療をしています。シンビオートの治癒能力で応急処置を施し、保健室に連れて行った後リカバリーガールから「念の為に回復する様子を見たい」と言って来たので彼の腕にシンビオートを包帯のように纏わせた状態にしている。

 

「私と同じ個性かと思ったけど厳密には違う感じだね……」

 

「そうですか?僕も詳しくは知りませんけどシンビオートはリカバリーガールと同じく治癒させてるものかと……」

 

そう答えると「大雑把にはね」とリカバリーガールが返す。

 

「そのシンビオートは謂わばドクターフィッシュと同じだね。老廃物(怪我)を食べると同時に身体を活性化させ自己治癒力を促進させる。そんな感じに緑谷の怪我を回復させたんだろ」

 

「へぇ……よくそんな事が分かりますね」

 

「伊達に長生きはしてないよ」

 

「成る程……凄い事してるんだねシンビオート」

『……オレ様、デクのウ○コ食ってないぞ』

 

「老廃物ってそう言う意味じゃないからァ!」

 

 全くコイツは……少しそもそも老廃物に怪我ってルビが振られているのにわざわざ糞って言うかな?

……まさか分かってて言っているのか?

 

「でも凄いよ来正君!回復系の個性は滅多に無いんだよ!これなら色々と応用を効かせる事が出来──「アンタはさっさと怪我を治す事に集中するんだよ!」痛ッ⁉︎す、すみません……」

 

 リカバリーガールの持つ杖に突かれた緑谷君は痛そうに頭を抑える。……と、言うか良く五体満足で済んだね。下手したら腕を切除してもおかしくないと思うんだけど。

 

「ま、とにかく。アンタの個性だけど回復は実戦向きじゃないね」

 

「実戦向きじゃない……と、言いますと?」

 

「あくまで回復すると言っても可能なのは応急処置だけ。骨折とかは無理矢理治そうとすると歪むし回復出来るのはシンビオートが纏う部分のみ。そして最大の弱点はアンタ自身が無防備になる事」

 

「……あぁ、確かに。現に今も緑谷君の腕に引っ付いてますしね」

 

 そう考えると治癒は使い所が限られる事になる。うーん、でもシンビオートの性格を考えると戦闘スタイルとか変わらない気がする。

 

『デクはさっきからブツブツうるさいしな。やっぱり取り憑くのはキョウセイが一番いいな』

「なんかソレはソレでショック……」

 

「さて、もういいよ。ほらパインアメ舐めながら授業戻りな」

 

『チョコ!チョコは無いのか!』

「わなげのチョコレートならあるよ。3粒お食べ」

 

 投げられたチョコを器用に口でキャッチするシンビオート。わなげって懐かしいなあのチョコ。まだ何処かで売ってたりするのかな?

 

『FOOO!カラフルなチョコだ!サンキューバアさん!』

「こらっ‼︎失礼しましたリカバリーガール。それじゃ緑谷君先に行ってるからね。」

 

 二人に一礼すると僕は授業へ戻る為、グラウンドβへ駆けていった。……あ、パインアメ美味い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません戻りましたオールマイト先生」

 

「ムッ、戻って来たか来正少年!緑谷少年はどうだったかな!」

 

「問題は無いみたいですよ。でも治癒を数回に分けて行うみたいなのでヒーロー基礎学の参加は難しいみたいです」

 

 それにしても驚いたよ?緑谷君のゴッドハンドクラッシャー(仮)で屋内に吹き抜けの天井を作り出すって……これ訓練だからね?怪我したらダメな奴だから。もし担当が相澤先生だったら除籍宣告されてるところだったからね?

 

「悪かったね。それじゃ来たところで悪いが……EチームとGチームの出番が来たーー!!」

 

「Gチーム……と、言うと」

 

「ウチらの事だよ」

 

「つーわけだ。手加減はしないぜ来正!」

 

「上鳴君!そして……えーと」

 

耳郎(じろう)響香(きょうか)だよ。アンタがハンデ背負ってるのは知ってるけどこっちが勝たせてもらうからね」

 

 耳元からイヤホンのようなプラグが伸びているのが特徴の女子生徒である耳郎さん。何というかロックな気がする(小並感)

 

「そうか、よろしくね耳郎さん。でも、こっちも負けるつもりは無いよ」

『耳とアホのコンビ……こっちも色物枠か』

 

「「は?」」

 

「シンビオートォ!」

 

「それじゃあヒーロー側のEチームは時間が経ったら屋内に突入だ!敵側のGチームも頑張れよ!」

 

 

 

 

 

 

 いつも通りのシンビオートに安堵()しながら僕はコスチュームの隅々を念入りに探る。とにかく今の内に出来ることを確認しておかなきゃ。

 

「ヘッドギアの機能はと……うぉッ!?」

 

 口元にマスクが展開した!こういう機能もあるんだ……。しかも全く苦しくないから通気性もバッチリみたい。アントマンのマスクみたいに展開式なのか。

 

「何そのコスチュームいいなぁー!」

 

「いいでしょコレ?いやぁ、コスチュームの申請書類に細かい設定を書いておいてよかったよ。芦戸さんは……見たところ軽装って感じだけど……個性関係でそんな衣装になったのかな?」

 

 芦戸さんのコスチュームは……コンビネゾン?かなりラフな格好だと言う事が分かる。すると彼女は「フッフッフ」と不敵に笑い始める。

 

「その通り!ちなみに私の個性はこれッ!全身から酸を出す!」

 

 手を銃の形に見立て指先から液体が噴出する。そのまま山なりに放たれた酸は地面に落ち……て………

 

じゅわあぁぁぁ(※地面が溶けていく音)

 

うわぁ、どっか映画で観たことあるぞ。この場面。

 

『オイ、地面がエイリアンのワンシーンみたく溶けてるぞ』

「うん思い出した。それだよそれ!うん、芦戸さん。絶対に人に向けて酸を放っちゃダメだからね!」

 

「えーッ!」

 

「いやいやいや!とても心強い個性だけど……心強すぎて、人に向けちゃダメなヤツだからコレ!」

 

「そんなぁ……」

 

 いやぁ、今の内に知っておいて良かった。彼女自身理解はしているけど人に向けたら危ないなぁ!

内心ホッとしている僕に青山君が声を掛けてくる。

 

「僕の個性☆知りたいかい?」

 

「うん。知りたい」

 

「僕のは眩しくて☆派手な個性☆」

 

「成る程。で、どんな個性?」

 

「僕の個性のキラメキはクラスで1番☆」

 

「分かった、分かったから。どんな個性なの?」

『早くしないとその口縫い合わすぞ』

 

 シンビオートが鉤爪をチラリと見せながら呟いた言葉に青山君は無言となる。うん、これは早く言わない君が悪いと思うよ?

 

「……おへそからレーザーが出るんだよね☆」

 

「「おお!」」

 

 蒼い光線が腹部から放出される。まるで流星のように輝く光景にに思わず歓喜の声が漏れてしまった。

え、なにこれ普通に凄いし純粋にカッコいいな!

 

「凄いよ!オプティックブラストみたいな個性は初めて見たよ!」

『目じゃなくてヘソだけどな』

 

「いやいや。出す部分は置いといて、純粋に攻撃として頼もしい個性だね!……青山君?」

 

あれ?何故かお腹を抑えてその場で疼くまってるけど……大丈夫?

 

「……けど、1秒以上放出するとお腹痛くするんだよね☆」

 

「えっ」

 

「……あぁ、そう言う」

 

 青山君は個性持ちで良くあるデメリットを抱えたタイプなんだ。

個性は便利だけど全てがそうじゃない。ノーリスクで個性を使える人がいればその逆も然り。

それにしても、お腹が痛くなるのかぁ………

 

『なんだ、ただのウ○コ垂れかよ』

「コラッ!そう言うの失礼だから!特に青山君のタイプには失礼だからね!」

 

「………」

 

ジッとこちらを見つめる青山君。

……いや違う、さっきのはシンビオートが。

 

「いや、違うから!ホント僕はそんな事思ってないからね!」

 

「僕の眩さは簡単に理解されるものじゃないのさ☆」

 

「あ、大丈夫みたいだね」

『色々とすげーヤツだな』

 

 うん、色々な意味で彼が強いのは分かった。えーと、二人の個性は危ないヤツに強力だけどリスク有のヤツ。

ふーむ………。

 

『コイツ等が役立たずって事は分かったな!』

「シンビオートォ!!」

 

 いや、違うんだ。僕は決してそんなことを思っていない。そう訴えかけようと僕は二人に視線を向ける。

 

「こらぁ!青山はともかく私の個性は激強なんだからね!」

 

「キラめきでは僕がNo.1だね☆」

 

「ワーオ、この二人メンタル強くね?」

 

 シンビオートの辛辣な言葉を二人は全く気にしていないようだ。ある意味で妥当なパーティー(チーム)な気がするよ。

 

「さてと…今のうちに作戦コードとその内容でも決めておく?」

 

「何それ!本当にヒーローやってるみたい!」

 

「ハハハ、いやヒーローだからね?」

『オレ様が活躍する作戦は確定だな』

 

「僕がキラめくのも確定☆」

 

「私もここぞと言う時に活躍するのも確定!」

 

成る程成る程。全員自己主張激しい事は分かった。

……あれ、なんで皆ジッとこっちを見ているの?どうしてそんな急かすようにキラキラした眼差しを向けて来るの?

 

「……一応聞くけど、それ考えるの誰?」

 

「「ん?」」

 

『キョウセイだろ?』

「少しは考えようよ君達ィ!!」

 

 ヤバい、この二人をこのままにしたら色々と酷い結果になりそうだ!そう考えていると通信機からオールマイトの声が響く。

 

「それじゃ!準備も整ったようなので始まるぞ!そして来正少年はハンデとして重りを付けてもらってるから忘れずにな!」

 

「あぁ、そう言えばそうだっt──あ゛あ゛あ゛ッッ!!超重ォッ⁉︎シンビオートお願い!」

『しょうがねぇな』

 

『……意外と重いな』

「それをもっと重くしたのが君だって事を忘れないでね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、周囲を警戒しつつ進むよ。爆豪君みたいに奇襲を仕掛けてくる可能性が高いからね」

 

「オッケー任せて!」

 

「分かっているよ☆」

 

 ビルに侵入した僕等は慎重に内部を進んでいた。互いが死角を補うように奇襲を警戒しながら部屋を一つ一つ確認して行っている。

 

「あの二人が相手……と言っても僕はそんな上鳴君と耳郎さんの個性に詳しくないんだよね。二人は知ってる?」

 

「僕かい?全然☆」

 

『使えねーなこのウ○コ』

「汚い言葉を使うんじゃありません!』

 

「私知ってるよ。上鳴は電撃を使って、耳郎ちゃんはイヤホンみたいに音を出したり聴く事が出来るんだ!」

 

「ふーん……えっ?」

『成る程!お前良く見てるな!ジュースを奢ってやろう』

 

「マジで!ゴチになりまーす!」

 

『オレ様は謙虚だからな9本で良い』

「それ僕が奢るんでしょ?知ってる。……いや、そう言う事じゃなくて!それが本当ならさ……」

 

「僕等の位置バレてるね☆」

 

 

 

「その通り!喰らいな電撃!!」

 

「背後から⁉︎シンビオート盾だ!」

『生温い電撃だなぁ!』

 

「くそ!ノーダメかよ!」

 

「よし、そのまま防御しつつ前進!」

『全速前進DA!』

 

「ふははー!強いぞー!かっこいいぞー!」

 

「圧倒的だね。でも僕思うんだけど☆」

 

『効かねぇ!ゴムだから!』

「君、ゴムじゃないでしょ、でどうしたの青山君」

 

「一方通行の通路で敵が現れた時ってさ☆」

 

「うん、ごめん!今防ぐので精一杯だから後にしt」

 

「大体、敵に囲まれるのがオチなんだよね☆」

 

……えっ、それって……!?

 

「背を向けてる今がチャンスッ!」

 

 青山君の言った通りになった。上鳴君の電撃を防いでいる間、ガラ空きになった背後から耳郎さんが現れたのだ。

 

「二人共ッ!個性で応戦を──「遅いよッ!」

 

 すると耳郎さん耳から伸びるプラグが彼女のブーツに挿し込まれた。ちょっと待って⁉︎アレってまさか……!

 

「ご存知!音響装置だッ!」

 

 僕の予想通りにブーツに装備されたスピーカーから発せられる超音波が僕等に襲いかかる。

 

「頭に…響くッ!?」

 

「全くエレガントじゃないよ!☆」

 

 超音波の影響により二人共苦しみ始める。僕はヘッドギアのお陰か頭がキーンとする程度だ。

だけど、この中で最も苦しんでいるのは二人じゃない。

 

『GYOOOOOOOOOッッ!?』

 

 シンビオートだ!不味い、まさか耳郎さんがこんな芸当をできるだなんて……!あぁ、クソ!コスチュームでそう言う対策できれば良かったのに!

 

「うぇえッッ⁉︎なんか凄い挙動してるぞシンビオート!」

 

五月蝿い五月蝿い五月蝿い鬱陶しいィッ!!

 

「ん?☆」←シンビオートが青山の足を掴む

 

「あっ」

 

 え、シンビオート?何やってるのシンビオート?なんで青山君の足を掴んでぶん回し始めてるのシンビオート?

 

どっかへ逝ってろォォォォォオオオッッ!!

「いやソレ青山君んんんんんんッッ!!」

 

 投げられた青山君は耳郎さんに向かって凄まじい勢いで投げられる。このまま耳郎さんと激突する………!

 

「うわッ!?ちょ、危なッ!?」

 

……ワケもなく耳郎さんは咄嗟に躱し、青山君は壁に顔面を打ち付ける結果に終わった。うわ、痛そう。

 

「上鳴!奇襲は失敗!一先ず逃げるよ!」

 

「ちょ、おい待てって!!」

 

逃げるか逃げるのか尻尾巻いて逃げるのかァ!!

「うわぁッ!ストップ!落ち着くんだシンビオート!ほら!チョコ!チョコあるから落ち着いて!」

 

落ち着いた

 

 うわぁ!急に落ち着くな!落差が激しいんだよ!

とりあえず、どうみても混乱しているのが分かるからすぐにでも落ち着かせる為にポケットから常備している徳用チョコを取り出す。

 

「……ほら、甘いのあげるから落ち着いて。2個で良い?」

『やーだ!3個!3個が良いィ!』

 

「3個か⁉︎甘いの3個欲しいのか? 3個……イヤしんぼめ‼︎」

 

「よぉ〜〜〜し!よしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし……たいしたヤツだよシンビオートお前は」

 

 これは持論だけどシンビオートが暴れそうになった時はストレス解消の為にチョコを食べさせてあげるのが一番だ。あー、それにしても僕もペット飼いたいなぁ。こんな流動体のスライムボディじゃなくて毛皮のモフモフボディを撫で回したい……。

そんな事を思っていると芦戸さんが青山君を引きずりながらやって来た。

 

「とりあえず、青山連れて(回収して)来たよー」

 

 うん。人を物みたく扱うのはやめようか。あとマントを掴んで引きずるの可哀想だからやめてあげてよぉ!

 

「武器にするなんて☆酷いね☆」

 

「うん、ごめんよ。でもアレはシンビオートが勝手に」

 

「許そう☆」

 

「マジかよ心広いな君」

 

 青山君って変だけど結構良い人なんだな。

 

「それにしてもさっきのは奇襲はヤバかった。青山君が(本人の意思は関係無の)特攻を仕掛けてなかったら確実に僕は捕まっていただろうね」

 

「そうだよね、て言うかさっきの見てたけどシンビオートの弱点って……」

 

「うん。"音"だよ。正確には超音波や高周波等の比較的高い音だね。特に金属同士が擦れる音がね……」

『全くだ!あんなものこの世から消えて無くなってしまえば良いんだ!ファックッッ!!』

 

「そうなんだ……ごめんね。私がちゃんと相手の個性を教えていればこんな事には……」

 

「気にしないでよ。それを言うなら弱点を伝えてなかった僕にも非はあるしね。それと青山君さっきはごめん。顔からぶつかったけど大丈夫?」

 

「全然平気☆」

 

「でも、サングラスがヒビ割れてるよ」

 

「うわ、マジか……ほらシンビオートも謝って」

『許してヒヤシンス』

 

さては謝る気ねぇなオメー。

 

『アレは事故だ。それに元々は鬱陶しい音を出した耳たぶの女が原因だ。つまり耳たぶがグラサンを壊したのと同じだ』

 

「納得☆」

 

「うーん、この超速理解」

 

「それじゃ、プランBで行くとしようか」

『プランB?ねぇよ、そんなもん』

 

「いや、あるからね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おいオレ様イヤだぞこんな作戦』

「いや、もう決めた事だからさ。残念だけど最後まで付き合って貰うよ」

 

『ぐぬぬ、帰ったらチョコをたらふく食ってやるからな!』

「はいはい、分かってるって……と、お出ましか」

 

「へぇ、アンタ一人で来るって大した自信だね」

 

「それはどうも。でも君だって一人だよね」

 

「まぁウチにも作戦はあるからね」

 

 互いにジリジリと躙り寄る。さて、相手が隙を見せてくれればいつでも動けるんだけど……。

 

「シンビオート、君からも何か言いたい事があるなら言ってごらん」

『お前……()()()()()()が大丈夫か?』

 

シンビオートォ⁉︎

 

 何を血迷ってるんだコイツ!!確かにクラスの中で一番胸のサイズが小さいとは思っていたけど何故抉れてると言った⁉︎言え!

 

『だって、女は男より胸がでかい筈なのにあの耳女はキョウセイの胸板よりも平べったいぞ』

「シンビオートォ!今すぐ口を閉じろ!……違うんだ耳郎さん!さっきのはシンビオートが勝手に!」

 

 そう言うと耳郎さんはニコリと笑みを浮かべた。

……あ、あれ?もしかすると許された?

 

 お 前 を 殺 す 

 

だよね。知ってたよ畜生がぁ!!

 

「臓物ぶち撒けろォ!」

 

「シンビオート、バネだ!」

『分かってる!』

 

 スピーカーから爆音が発せられた瞬間、僕の脚にシンビオートを纏わりつかせ大きな跳躍を行い回避する。そのまま僕は背中にマウントしてある物を耳郎さんに向けて投擲する。

 

円盤(フリスビー)ッ⁉︎」

 

「盾だッ!」

『いやフリスビーだろ』

 

 盾だよ(譲れぬ信念)

僕の投げた盾だけど耳郎さんに易々と避けられてしまう。まぁ流石に簡単には当たらないよね。と、言うわけでさ。

 

「頼んだよ青山君!」

 

「分かってる☆」

 

「やっぱり伏兵を……っ!」

 

 迫るレーザーを耳郎さんは回避しようとするが盾の投擲に体勢を崩されていた為か避けきれず片脚の音響装置に命中し、破壊に成功する。

 

「よし、ナイスだ青山君!」

 

「やるね……けどっ!スピーカーはもう片方ある!」

 

 耳郎さんのイヤホンジャックがもう片方のスピーカーに繋がれ爆音が室内に轟く。それと同時にシンビオートが激しく暴れ始める。落ち着けシンビオート!

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッ!!』

「ッッ!シンビオート踏ん張れ!あと少しの辛抱だ!」

 

「あと少しって!いつまで持つかな!」

 

「そうだね。でも、少なくともスピーカーの音は聞かなくて済みそうだ!」

 

 僕がそう言った直後、ガンッ!!と激しい音が響き、スピーカーから発せられた音は途絶える結果となる。

 

「何が……これって、さっき投げたフリスビー!?」

 

 だから円盤じゃなくて盾なんだけど。まぁとにかくスピーカー装置を両方とも破壊する事に成功したので良しとしよう。

 

「まさか、さっき投げた円盤(フリスビー)を跳ね返らせてスピーカーを破壊したワケ!?」

 

「その通り。ホントは手元に戻らせるのを想定していたけどね」

『良くもやってくれたな耳たぶ!!』

 

 やっぱりキャップのようにはいかないな。いつも思うけど、どうやってるんだアレ?まぁいいか、僕は腕にシンビオートを纏わせるとダガーのように尖らせる。

 

『CHECK MATE(翻訳:詰みだ)』

「動かない方が良いよ。シンビオートは相当気が立っているから……終わったら謝っておいてね」

 

すると耳郎さんは降参の意を見せるように両手を上げる。

 

『動いたら喉の奥にオレ様を突っ込んで気持ち悪い感触で奥歯をガタガタ言わせてやる』

 

「何それ、考えただけでも嫌なんだけど」

 

「それは同感だね。とにかく……青山君。君は上の階に居であろう上鳴君をお願い。遠距離で攻撃できる君ならきっと……」

 

 その時だ。僕が視線を逸らした瞬間、シンビオートが何か焦ったように声を発した。

 

『待てキョウセイ!コイツ何か隠し持っているぞッ!』

「ッ!?耳郎さん、そこを動くな!」

 

「悪いね、私は何も持ってないよ!ただ、()()は隠していたけどさ!」

 

 耳郎の背後に姿を現したのは赤く灯されたランプとセットのボタンが目に付く建物に必ずと言っていい程設置されてある物だった。

 

「警報装置ッ!?」

『クソッ!奴にボタンを押させるな!』

 

「もう遅いッ!」

 

 僕等の言葉も虚しく耳郎さんは非常用の警報装置ボタンへ拳を叩きつけた。

 

Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎Beep‼︎

 

 直後、警報装置から騒々しい音量が解き放たれ、反響しやすい作りとなっている屋内に響き渡る。コスチュームに付いているスピーカーとは段違いの音量にシンビオートは堪らず形を崩していく。

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッ‼︎』

「ッ!奥の手を隠していたのかッ‼︎」

 

「来正君☆」

 

 青山君が警報に気付き駆けつけて来た。とてもありがたいけど、ここからじゃ距離が遠い!

 

「もう遅いよ!ここからの距離からレーザーを撃ったとしても十分に回避できる距離だ!」

 

 シンビオートは音にやられ、僕は重りで十分に動けない。このままだと確実に捕縛されるだろう。

……けど、まだ終わっていない!

 

「青山君!コード"リパルサー"だ!」

 

「いいけど☆怪我しちゃダメだよ☆」

 

そう言うと共に青山君は()()()()()()()()()()()()()()

 

(なっ⁉︎来正に向けてレーザーを!)

 

 僕はもう一つの盾を構えレーザーが直撃するタイミングに合わせて……今だっ!

 

「パリィッ!!」

 

ガシャアッッ!!

 

 瞬間、レーザーが盾に弾かれ警報装置に命中する。すると先程まで鳴り響いていた音は消えビル内はシン…と静まり返る。

ヨシ!キャップとアイアンマンの合体技!一度やってみたかったんだよねコレ!

 

「なにぃっ⁉︎(嘘でしょ!レーザーの軌道を盾で無理矢理変えたの⁉︎)」

 

 驚いている!今なら耳郎さんを捕縛できる……と、言いたいところだけど、シンビオートが警報装置の音でやられてうまく身体を形成できない!

 

(アイツ(青山)個性(レーザー)は長続きしない!それに来正は重りの影響で素早く動けない!コイツを確保すれば勝機はまだある!)

 

 僕に向かって駆け出すと同時にテープを取り出す耳郎さん。このまま捕まえる気なんだろう。ハッキリ言って今の僕じゃ彼女に太刀打ちできそうにない。

 

「と、言うわけで出番だよ芦戸さん!」

 

僕がそう言った直後、()()()()()芦戸さんが飛び込んで来た。

 

「確保ォ!」

 

「……は? えっ!?」

 

 一瞬のうちに耳郎さんはテープを巻かれ拘束される。て言うか芦戸さんの手際凄いな。

 

「よっしゃ!作戦成功ーーーッ!」

 

「僕のキラメキのおかげ☆」

 

「皆ありがとうね。おかげで誰一人捕まらずに索敵役を無力化できたよ」

 

「…えっ、いや、芦戸どこから入って……?」

 

「窓だけど?」

 

 あ、なんか耳郎さんがまだ把握しきれていないみたい。そりゃビックリするよね。窓の外から入って来たと思ったら捕まってるんだもん。

 

「窓……外から登って来たの!?」

 

「音が響く屋内からじゃどうも場が悪いからね。ちょっと反則スレスレ行為をやらせて貰ったよ。プランBは大成功ってところかな」

『オレ様が囮をしてやったんだ。褒め称えろ』

 

「さすがシンビオート!やるぅー!」

 

「中々やるね☆僕程キラキラしてないけどね☆」

 

 いやぁ、ノリが良くていいなこの二人!これにはシンビオートもご満悦だろう。

 

『キラキラするのは何か嫌だ』

「いや、そこは乗ってあげなよ……で?どうするの上鳴君。多分、さっきの騒ぎを聞きつけて近くに隠れているんでしょ?」

 

 すると通路の曲がり角からひょっこりと顔だけを覗かせて来る上鳴君の姿が。

 

「やっべぇ…耳郎ホントに捕まってんじゃん……」

 

「アンタ……ずっと見てたの?」

 

「いやだって、あの状態のシンビオートに攻撃したら逆上されて酷い目に遭わされると思って……」

 

「男のクセしてビビるな!……いや、否定はできないけど」

 

否定はしないんだ!?……あ、いや僕も否定できないけどさ。

 

「一応言っておくけど、これは流石に分が悪いと思うよ」

『もし降参しなかったらそこのウ○コ垂れをケツに突っ込んでやる』

 

「僕、全身ソフトなんだよね☆」

 

「何されるんだよ俺!?」

 

 ホント、字面だけ見ると何されるんだろうね(白目)さて、僕としてはこのまま降参してくれると嬉しいんだけど。

そうでないとシンビオートがアー ナルホドってところにヤバい事をしでかす可能性が高い。

そう考えていると上鳴君がニヤリと笑みを浮かべる。

 

「へ、へへ……確かにこりゃピンチだ……けどな、飯田の演技で思いついたぜ……」

 

「何を言って──「動くんじゃねぇ!」えっ」

 

一歩でも動いたら核にセットした自爆装置を起動してやらぁ!死にたくなきゃ大人しくしてな!!

 

…………えっ?

 

「「はぁぁぁあああッ!?」」

 

 屋内に女子二人の声が響く。何を血迷ったのか上鳴君は高らかに自爆宣言した事に僕等は戸惑いを隠しきれなかった。いきなり何を言ってるんだ……?

 

「ちょっと!?何言ってんの上鳴!」

 

『アホかコイツ?いや、最初からアホか』

 

「それね、同感」

 

 上から芦戸さんシンビオート、耳郎さん。味方である筈の彼女からもこの言われようである。上鳴君は泣いても良いと思うよ。

 

「お前ら揃いも揃って酷くね!?」

 

「はー、アホらし……もういいからコイツ捕まえてちゃって」

 

「おい耳郎!どっちの味方だよ!?」

 

 それじゃあ耳郎さんのお言葉に甘えt…………あっ。

 

「待てよ?……そう言う手で来ちゃったかぁ」

 

 そうか、考えるとこれも有りなんだよなぁ。あー、この考えは流石に思い付かなかったなぁ……。

僕が額を抑えていると耳郎さんが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

 

「は、何?まさかコイツの事信じてるの?」

 

「いやいや!流石にソレは無いって!……無いよね?」

 

 女子二人が僕を疑うような目で見つめて来る。ちょっと心が折れそうになったけど負けるな僕。

 

「そうだね。流石にコレは嘘だと分かるよ……でも、コレってその嘘が本当って事を想定した訓練だからさ」

 

「へ、どう言う事?」

 

「一体どう言う事だってばよ……」

 

 なんで言った張本人である上鳴君も理解してないの(真顔)

 

「あー、例えば実際に敵が爆弾仕掛けたとしたらさ。刺激させないように従うでしょ?」

 

「うん、そうだね」

 

「つまりはそう言う事。この訓練はその敵との戦闘を想定した訓練だから……うん、正直言って成すすべ無いね。ゴメン」

『……は?』

 

「「はぁぁぁああああああああああああッッ!?」」

 

 再び女子二名の声が屋内に響き渡る。いや、だってさ敵の言う事を無視するのって僕達ヒーロー側としてはマイナスだからね。いやまさか上鳴君が偶然とは言えその戦法で来るとは……。

 

「よっしゃぁぁ!勝った!勝ってやったぞぉぉおっ!!」

「うっそでしょ……こんなアホらしい作戦で勝つなんて……」

 

「いや、正直言って侮っていたよ。火事場の機転恐ろしや……」

 

「いやいやいや!関心してる場合じゃないでしょ⁉︎突破口は!?」

 

「(今のところ)無いです」

 

 芦戸さんの言葉に返事をすると、ガクリと項垂れる様子を見せる。悪い事をしたなと思っていると青山君が口を開いた。

 

「ねぇ☆」

 

「ん?」

『どうしたウ○コ』

 

んー、このシンビオートの相変わらずさ。

 

「ホントに打開策は無いの?☆」

 

「……相手次第だね」

 

「……分かったよ☆」

 

 そう僕等が話すと通信機からオールマイトの声が聞こえて来る。その声は少々戸惑いを感じる。

 

『えーと……来正少年?それは降参で良いのかな?』

 

「あー、いや。待ってくださいオールマイト。せめて決着はつけさせてください」

 

 そう一言告げると、オールマイトは「手短にな!」と応えてくれた。さて、終わりにしないとか……。

 

「おーい、上鳴君。勝利の美酒に酔っている所悪いんだけどさ、まだ勝負はついてないでしょ?ほらヒーロー側の捕縛がまだ済んでないんだからさ」

 

「あ、そっか!ワリィな」

 

 そう僕が言うと上鳴君はテープを取り出し僕等の元へ駆け寄って来る。3m…2m…1m……。そろそろ"頃合い"かな?

「あ、上鳴君。言い忘れていた事があったよ」

 

「ん?何を──「さっき成す術無いと言ったね。ありゃ嘘だ」えっ」

 

僕は上鳴君の腕を捻り、一気に組み伏せる。

ついでに捕縛用テープも遠くに放り投げておく。

 

「今だ二人共!上鳴君を取り押さえろ!」

 

「あだだだだッ!?ちょ、お前ッ、さっき成すすべ無いって……!」

 

「そりゃ実際にああ言われたら大人しくするしか無いけどさ。君を無力化すれば自爆装置を起動せずに済むでしょ?」

 

「……えっ?」

 

「それに僕は成す術無いとは言ったけど()()()()とは一言も発してないからね」

 

「……はい?」

 

「つまりはさ、先生の言葉を借りると合理的虚偽ってヤツだよ」

 

「………はぁーーーーーッ!?」

 

『え、えっと……ヒーローチームWIN!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちくしょう!お前なんか嫌いだァ!」

 

「いや、本当ごめんね。でも悲しいけどコレ訓練なんだよね」

 

 僕等ヒーロー側が勝利を収める事には成功したが、どうにも最後のヤツが納得しなかったみたい。

まぁ、僕も最後の最後で騙し討ちで負けたら納得いかないよ。

……そう考えると上鳴君には本当悪い事をしたなぁ。

 

「さて、この訓練でのMVPだが……耳郎少女に答えてもらおう!」

 

「まぁ、コレはフツーに来正ですね。他の二人の個性を発揮させて作戦勝ちって感じ。私も弱点突いたけど最終的に無力化されてたし」

 

 僕か!何というか歯痒いと言うか……。嬉しいけど小恥ずかしい感じもするなぁ。

 

「成る程……それじゃその来正少年が最も良いと思ったのは誰かな?」

 

『もちろんオレ様だよなぁ!』

「うーん、普通は耳郎さんを挙げる所だけど……個人的には上鳴君かな?」

 

『「……は?」』

 

「お、俺ぇ⁉︎」

 

 シンビオートと耳郎さんの腑抜けた声に遅れて上鳴君の声が上がる。すると、シンビオートと耳郎さんがその場で項垂れる……えっ、そこまでショックだったの⁉︎

 

『嘘だろ!?こんなアホより俺が下だって言うのか!?』

「私よりもこんなアホの方が評価上って……⁉︎」

 

「お前等!言っていい事と悪い事があるぞ!」

 

「いや、別にそう言っているわけじゃないよ。僕自身、上鳴君の咄嗟に自爆装置を設置したって言う脅しは良いと思ったからだよ?人質とかの脅しはヒーローに対して最も有効な戦術だからね」

 

「でも。お前それを無視して……」

 

「いや、アレは単純に上鳴君のミスだね」

 

「ミス?」

 

「そう、油断したせいかヒーロー側に何も言わず捕まえようとしていたからね。何も要求しないんじゃ返り討ちに遭うのがオチだよ?」

 

「えっと……つまり?」

 

「うん、僕達に 装備を捨てろ〜 とか 腕を後ろに組んでしゃがめ〜 とか予め言っておけば何事も無く勝っていたね」

『あーあ、勝利をドブに捨てやがって。アホだな』

 

 上鳴君には悪いけど、何も考え無しに言ってくれて助かったよ。あと、シンビオートはバカと言うのをやめなさい。

 

「……うわぁぁぁぁぁッッ!勿体無いことしたぁ!!」

 

『やっぱアホだろコイツ』

「せめて、気持ちの良い人って言ってあげて。ストレート過ぎるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 午後の授業を終え、ガラス製の壁で出来た廊下に夕焼けが射し込む頃。音を立てながら教室の扉を開いたのは腕に包帯を巻いた緑谷君だった。

 

「お、緑谷君じゃないか。腕は大丈夫?」

 

「うん、バッチリ。でも迷惑をかけてゴメン」

 

『元気なようで良かったな』

「その通りだね。……でも今後はあんな大怪我は勘弁して欲しいな。皆ドン引きして少しの間だけど葬式ムードになってたし」

 

「ご、ご迷惑をおかけしました……」

 

 いや、ホント。相澤先生が無言で睨んで来るからついでに除籍宣告を食らうんじゃないかとヒヤヒヤしたよ。あぁ、嫌な汗掻いた。

そんな話をしていると僕達の元にクラスメイト達がやって来る。

……いや、正確には緑谷君中心にだけど。

 

「俺は切島鋭児郎!今、皆で訓練の反省会をやってるんだ!」

 

「君、中々やるね☆エレガントには程遠いk「私、芦戸ね!そうそう、青山と話してたんだけと私達も来正に頼りっぱなしじゃ駄目だって思ったよ!」

 

「俺、瀬呂範太な!」

 

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」

 

「オイラは峰田!」

 

 どんどん彼の周りにクラスメイトが集まり、アイドルみたいな扱いになる。いやぁ、何て言うかさ。魂の友(ソウルメイト)が人気になると不思議とコッチも嬉しくなるね、そう思わないかな常闇君。

 

「騒々しい……が、魂の波長が共鳴せし者達の宴。余興も少しは愉しむ……か。フ、俺も随分とヤキが回ったものだ」

 

『なぁ、このトリは何で机を椅子代わりにしてるんだ?座りたいなら椅子に座ればいいだろ?』

「おっと、そこまでにしてもらおうかシンビオート。それ以上いけない」

 

「その通りだ!それ以上机を椅子代わりにするのはやめて貰おうかッ!」

 

「うん、確かにそれも一理あるね。それじゃ常闇君それ以上(黒歴史を晒すのは)やめようか」

 

 成長したら入学から患っているのを悶え苦しむ結果になるからね。……それともヒーローになったら、そのキャラを貫いていくのかな?

やめとけ、やめとけ。死ぬぞ(比喩無し)

 

『また"オトシゴロ"ってヤツか?』

 

『イヤ、コレハ"恥晒シ"ッテ言ウミタイダゾ』

 

『成る程。また一つ賢くなったな』

 

『エッヘン』

 

「コイツ等……ッ!」

 

「ダメだ常闇君。こう言うのは下手に刺激すると更に余計な事を言い出すんだ。堪えろ……!今はグッと堪えろ……!」

 

 怒りに身を任せようとする常闇君を宥める。いつもシンビオートを止めている僕に隙は無かった。

……ちなみに、いつも止められてないだろって言うのは無しね。

そんな事を思っていると緑谷君が「あっ」と声を漏らす。

 

「そ、そういえばかっちゃんは?」

 

「かっちゃん……爆豪君の事?」

『ヤローならさっき帰ったぞ』

 

「そうなの⁉︎」

 

「うん、声を掛け辛い雰囲気でさ。皆は止めていたんだけど……って緑谷君どこへ行くの⁉︎」

 

 緑谷君は教室を飛び出し、階段を駆け降りて行く。何処に行くんだ⁉︎あとコスチュームのまま行くのはやめて!君の場合は色々な意味で不審者に見えるから!

 

「ちょっと、かっちゃんに言わなきゃいけない事が!」

 

「待って待って!爆豪君を追いかけてどうするの?察するに君と爆豪君の関係は良く無い感じなんだよね?それならあのタイプは放っておいた方が良い事くらい君でも分かる筈だよね……?」

 

「分かってる。分かってるけど───

 

 

 

 

───かっちゃんは()()()()でもあるから」

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 やぁ画面の前の皆、茂みの中からこんにちは。主人公だよ。

 

「こっからだ!俺はこっから!俺はここで1番になってやる!」

 

 

 

 

 

 

「心配で見に来たけど……、その必要はなかったかな」

『ク、クク……まだだ。まだ笑うな……!』

 

 緑谷君と爆豪君が心配で見に来たけどどうやら無事に終わったらしい。話のほとんどが聴き取れなかったけど最後に爆豪君が涙目になりながら一番になる宣言している場面に遭遇している。いやぁ、シンビオートは連れて来たくなかったなぁ。

今も隣で「m9(^Д^)プギャ-」してるんだもん。バレたら確実に殺されるなぁ(震え声)

 

『それにしてもデクって変なヤツだぞ。泣顔ヤローが嫌いなのになんで憧れなんだ?』

「複雑な関係ってヤツだよ 口では説明し辛いんだろうね。僕としては喧嘩して仲直り。二人は幸せなキスをして終了って流れが好ましかったんだけど………冗談だよ、だからそんな疑わしい目を向けないでよ」

 

「身から出た錆よ。どちらかと言うと私は仲良くハグが好ましいわ。それに簡単に言い表せない関係だからこそ素晴らしいんじゃないの」

 

「素晴らしいかどうかは置いといて僕個人としては二人が仲良くなるのを願っていますよ。魂の通った友人として」

 

「魂の通った友人……その表現嫌いじゃないわ!」

 

『気持ち悪いなお前ら』

「失礼だぞシンビオート」

 

 まぁ、とりあえず。ここは何も言わず去るとしよう。うん、そうした方が皆幸せ。……ん?どうしたのシンビオート。

 

『ところで、さっきから俺達は誰と話しているんだ』

「いやいや、何言ってるのさ。此処には僕と君と──「あ、隣失礼」

 

 隣に視線を向けると、そこには鼻息を荒くしビデオカメラを構えたえぐいコスチューム(ドスケベ衣装)の女性がそこに居た。

 

「うわぁぁぁぁぁああああッッ!?」

『ゲェッ!野生の痴女 が あらわれた!』

 

「あぁ、コスの事ね。気にしないで、これがニュートラルだから」

 

 良く見るとこの人はうち(雄英)の倫理を担当するヒーロー。ミッドナイト先生だった。おっと、18禁ヒーローなのに高校に居ていいのか?と言う質問は受け付けないからね。

 

「と言うかあなた教師ですよね。何やってるんですか⁉︎」

『あなたを盗撮と名誉毀損の容疑で訴えます!理由はもちろんお分りだな!』

 

 ほら!ワザップシンビオートだって言っていますよ先生!

………いや、ワザップシンビオートってなんだよ。

 

「何言ってるの。教師だからこう言う事が()()()出来るんじゃない。あぁ、良い場面が撮れたわ……!これだから教師はやめられないのよね!」

 

 駄目だこの先生。何とかしないと……!良く倫理の授業を担当しているね⁉︎

何なの?もしかして反面教師として学べって事なの?それなら納得だね(白目)

 

……ちょっと待ってシンビオート。体を形成して何するつもり?知ってるよ、これって いつもの十八番(やらかすオチ)でしょ⁉︎

待って!心の準備が出来てない!……いや、準備出来る出来ない以前の問題でそもそも相手の逆鱗を撫でる行為をやめt

 

『いい歳の癖して変な趣味かよ。世も末だな』

 

は?(重低音)」

 

違うんですッ!シンビオートが勝手にィ!

 

 

 





キャラクター紹介


『青山優雅』
色物系不憫キャラ。
凡ゆるヒロアカ二次小説で青山優雅を除外し、オリ主をアドバンス召喚されているであろう不憫キャラが定着しつつある。金髪の子かわいそう。レーザー自体威力は高いがデメリットが目立つ。

作者自身、コスチューム改良すればアイアンマンみたいにリパルサー的なヤツを両手から発射とか出来るんじゃね?と考えている。


『芦戸三菜』
黒目触覚ピンク肌エイリアン系女子。
異形系の中でかなりのルックスを誇る女子生徒。何気に身体能力もクラスの中でも上の方で個性が凶悪と将来有望。
こう……人外系女子っていいよね……。


『上鳴電気』
ウェーイ系のチャラ男キャラ。
シンビオートからバカと呼ばれるのが定着しつつある男子生徒。電撃使うキャラって強キャラが多いけど、コイツに至ってはどんな扱いにすれば判別しにくい。
バカだけど、やる時はやる愛されキャラになるといいなぁ。
原作でも、もっと活躍させても良いのよ?


『耳郎響香』
目つき悪い女キャラすこ……。
ギャップ萌えと言いますか?男勝りだけど時折見せる乙女な部分と言うか?そう言うの含め超すこだ……。
えっ、彼女がヒロインの予定?
作者の技量では耳郎ちゃんをヒロインにするのは難しいです(手が震えるんです勘弁してください)


『ミッドナイト』
18禁ヒーロー。最近のお気に入りは爆豪の涙目一番になってやる宣言のシーン。
倫理の授業を担当するが本人自身が倫理的にグレーゾーン。
年齢については触れないで差しあげろ。


〜〜用語解説〜〜

・アントマン
蟻のように小さくなる"アントマン"とそれの対となるジャイ"アントマン"へのサイズへの変化が可能なヒーロー。
アントマンは初代、二代目とそれぞれ存在するのだが、初代は精神を病んだり二代目は強盗を行なったり。
……これでもヒーローなんです(震え声)
まぁ、エンドゲームではアントマンが人々を救う鍵となったので問題無いね!


・オプティックブラスト
X-MENメンバーであるサイクロップスの能力。両目から光線を発射し続けられる。
しかし注意して欲しいのがあくまでも"発射し続ける"ので特殊なバイザーを付けている必要がある。


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6話 違う!シンビオートが勝手に委員長を!


日本よ私は帰って来た!
と言うワケで最新話の投稿です。

あ、ついでにオリキャラの登場です(唐突)



 

ハァイ、画面の前の皆。

SM嬢スーツを着た先生にイケない事をされかけたけど事なきを得た主人公だよ。

……ちなみにミッドナイト先生と何があったのかは何も言わないからね。いや本当マジで勘弁してください(懇願)

 

そんな僕等が登校していると門の方が騒がしい事に気づく。最初は部活動の勧誘だと思っていたんだけど、どうやら違うみたい。

 

「オールマイト出してください!いるんでしょう!」

「少しだけでも良いんで取材を!!」

 

 あー、マスコミね。多分オールマイト目当てなんだろうけど、こりゃ凄いね。人混みの所為で学校に入れないなぁ。

するとシンビオートが小さな体を形成し口を開く……けど、割り込みさせてもらうよ。

 

「先に言っておくけどダメだからね?」

『オレ様がインタビューを……何で分かった?』

 

「君と何年の付き合いだと思ってるの?」

『15年と11ヶ月。そろそろ誕生日だなチョコケーキを買いに行こう』

 

「ハイハイ、数週間後に買いに行こうね……で、話は戻すけど君が取材を受けてもロクな事にならないからやめておこう」

『何でだ?取材を受ければ一躍有名だ。受けない手はないだろ?』

 

 うん、まぁそうだね。確かにテレビに出てみたいって気持ちはあるよ?無いと言うと嘘になるからね。

でも、そうは問屋が卸さないんだよなぁ。

 

「あの人達の目的はあくまでオールマイト。僕等はその他大勢に該当されるからだよ。待遇が良くて名前が生徒Kで顔が映されないのがオチだよ」

『FUCK!!クソ共が!オレ達をコケにしやがって!ブッ殺してやるッ!』

 

 シンビオートが怒りの表情へ変わると僕の身体の主導権をうばいはじめる。あーもう!こうなるからインタビューは受けたくなかったんだよ!

 

「落ち着きなって!そんな事していると皆から爆豪君と同列に扱われるよ!」

『それは嫌だ。クソ共は気に入らないが今日はここまでにしてやる』

 

 すると先程までとは打って変わって大人しくなる。そこまで爆豪君とは同列に扱われたくないのか……。爆豪君は泣いても良いと思う。いや、つい昨日泣いたばかりだけど。

 

『でも少しは映るくらい良いんじゃないのか?』

「いや、やめておこうよ。(主にシンビオートの所為で)ロクな事にならないんだから」

 

『それじゃあアイツ等はどうなんだ?』

 

 そう僕が言うとシンビオートが手を形成しとある方向に指を向ける。

 

「オールマイトの授業はどんな感じですか?」

 

「そうだね☆一言で言うならエレガントでトレビアン。そして僕に相応しいって感じかな」

 

「すげぇ!テレビじゃん!もしかして全国中継!?」

 

「わーい!テレビ映るの初めて〜〜〜ッ!」

 

「ママ見てる〜〜?私、テレビに映ってるよ〜〜〜!……え?映ってない?何で?」

 

「いや もうマイトっちとはマイトマイクの仲だから‼︎そりゃもうトップDJとなるとね!いろんな繋がりができちゃうワケ!」

 

 そこには青山君、上鳴君、芦戸さん、葉隠さん。と見知った生徒がテンションを上げて取材を受けるどころかテレビに映ろうとしている姿が……!そして英語担当の教師は何やってるの⁉︎曲がりなりにもヒーローでしょ!?

 

「いや、いいのよ。アレで帰ってくれたら一番平和なんだから」

 

「あ、ミッドナイト先生。おはようございます」

『うわでた』

 

「は?」

 

「シンビオートォ!……いや本当もう勘弁してください。蝋燭片手に縄で縛ろうとするのはやめてくださいトラウマになりかけました!」

 

「あら、あの程度で根をあげるなんて情けないわねぇ」

 

 僕としては倫理の教師が生徒に高度なプレイを仕掛けた事実に情けなく思うんだけど!と言うか蝋燭と荒縄を常備するヒーローってどう言う事だよ!

 

「とにかく…、アナタがそう言う技術を求めるなら私はいつでも歓迎するわ」

 

「えぇ、分かりまし……はい、今なんと?」

 

 今さっき、ヒーローが生徒に高度なプレイ技術を教えてあげると言うヤバい事を口にしなかった?聞き間違いだよね(震え声)

 

「とりあえず、マスコミと山田はなんとかしておくから来正君はあそこの生徒達を連れて行きなさい」

 

「分かりました……後、山田って誰?」

 

 僕は先生の言う通りマスコミがミッドナイト先生に気が向いている内に青山君達を教室へ連行する。上鳴君がまだ映りたいと言っていたがシンビオートが彼の頭を掴んで『ブチ殺すぞ』と呟いたら、大人しくなった。

……あと山田って誰なんだろう。

そう考えながら学内へ行こうとするとシンビオートが口を開いた。

 

『なぁ、ミッドナイトがストリップ紛いの事してるが大丈夫なのか?』

 

ミッドナイト先生!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのままストリップ行為でマスコミの気を逸らすと言う高度なテクニックを目の当たりにした僕は教室内で意気消沈していた。

どんどん雄英高校の恥部が曝け出されていってる気がするんだけど……。

 そんな僕を尻目に相澤先生とのホームルームの時間がやって来る。

爆豪君と緑谷君が注意されたけど本題はそれじゃないらしい。

 

「急で悪いが今日は君等に……学級委員長を決めてもらう」

 

……あれ?なんか普通だ。てっきりこの後、臨時テストとか訓練〜とか大穴で殺し合いをしてもらう(嘘)だと思ったんだけど。

 

「はい!委員長、俺やりたいです!」

 

「俺もやりたい!」

 

「ウチもっス」

 

「僕の為にあr「リーダーやるやるーーー!」

 

「オイラのマニフェストはスカート膝上から30cm‼︎」

 

 次々と手が上がっていく。いやぁ皆、凄いやる気だね。

あと芦戸さんに遮られてる青山君ェ……、峰田君についてはノーコメント。敢えて言うなら女子達にゴミを見るような目を向けられるからやめとけやめとけ。

 

『オレ様がやる!!他の奴等はすっこんでろォ!!』

 

「んだと!テメェよりかは俺の方が出来るわ!!」

 

『ブッ殺すぞ!昨日デクにやられてヒィヒィ泣いていた奴に務まるかこの野郎!!』

 

「テメェ!どこで見ていたこの野郎!殺す!いや、消すぞコラァ!!」

 

 一部はヒートアップし過ぎてヤクザ映画のワンシーンみたいな勢いになってる 特に隣の方が。

ちなみに僕はやらないよ?いや、だってさ委員長って毎朝早く来て放課後は一番最後まで残って、資料とかを職員室から持って来たり……色々と忙しそうだし。それに僕が手を挙げたらすぐ隣で起きている抗争が更に激しくなるのが目に見えてるからね。

 

でも、リーダー(委員長)かぁ……キャップみたいに"あのセリフ"を口に出来るのかな?

 

 

…………

 

………………

 

……………………

 

 

ヒーロー科Aクラス・アッセンブル!!

 

………あ、一瞬だけど心が揺れたわ。

 

 

「静粛にしたまえ!多を牽引する責任重大な仕事だぞ!やりたい者がやれるものではないだろ。周囲からの信頼あってこそ務まる聖務!」

 

 僕がウットリしていると飯田君の声が室内に響く。いつの間にか爆豪君とシンビオートの喧嘩も止まっている。

 

「民主主義にのっとり真のリーダーをみんなで決めるというのならこれは投票で決めるべき議案!」

 

『腕そびえ立ってるじゃねぇか!』

 

 投票で決めると言ってるのに自分自身を立候補するって……自分でやりたい気持ちが滲み出ている事がよく分かるね。

……投票かぁ。まだ皆の事はよく分かってないけど飯田君でいいかな?

 

『おいキョウセイ!聞かなくても分かるがオレに投票するんだよな!』

「シンビオート。残念だけど君の席ねぇから」

 

『!?』

 

 

 

 しばらくして結果発表。

緑谷君3票、八百万さん2票により委員長と副委員長が決定。へぇ、緑谷君が委員長か。やりたかったみたいだし良かったね緑谷君。

 

「ぼぼぼっ!僕ぅ!?」

 

いや君って立候補していたよね?何で驚いてるの?

……えーとちなみに僕は何票だったのかなと……うん、0票ね。成る程、僕に人望が無いって事がハッキリわかんだね(震え声)

 

「何でデクに!?」

 

「まぁお前に入れるよりかはマシだけどな」

 

「1票!?僕に1票!僕の事を選んでくれた人が居たと言うのか……っ!」

 

……しかし、殆どの皆に1票ずつ入ってるのって何気に凄い事だよね。0票なのは僕に麗日さん。そして轟君の三人だけなんだから。それ以外に必ず1票って……。

そう思っていると前の席に座っている上鳴君が話し掛けてくる。

 

「いやぁ、お前0票だったな。ドンマイ」

 

『嫌味かソレは!殺すぞ!』

 

「うぇッ!?物騒な事言うなよシンビオート!」

 

『五月蝿いッ!何でオレ達がバカなお前よりも下なんだ!おかしいだろ!』

 

「そりゃお前等が別の奴に投票したからだろ!フツーは自分に票を入れるもんだろ!」

 

『五月蝿い!御託は聞かん!その票、貰い受けるッ!』

「やめなってシンビオート!そう言うシステムじゃないk……待って上鳴君、今なんて言った?」

 

 自分に投票って……そんなの有りなの!?え、まさか皆……いやいやいや、さすがにそれは有り得ないよね!

そう思っているとシンビオートとダークシャドウが互いに話し始めた。

 

『えーマジ?自分に投票?』

『キモーイ!』

 

『自分に投票するのが許されるのは小学生までだよな!』

 

『『キャハハハハハハハハハ!』』

 

「それ以上やめろシンビオート‼︎あとダークシャドウも!皆がそんな事するわけないでしょ!そうでしょ皆!………皆?」

 

どうして露骨に目を逸らすの?

どうして顔を下へ向けてるの?

どうして「ごめん」って呟いてるの⁉︎ねぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み。僕は緑谷君達よりも先に食堂へ向かっていた。

ちなみにその緑谷君だが昨日の休んでしまったヒーロー基礎学第一回目の内容を纏めていたノートを教室で写している。麗日さんや飯田君も僕と同じく彼にノートを貸しているみたい。持つべきものは友達だって事が分かるね。

 

 でも僕はシンビオートの機嫌の管理の為に食堂へ向かってしっかりと食事を取らないと駄目なんだ。機嫌を損ねるとシンビオートは拗ねたり言う事を聞かなかったりするからね。

 

……いや、いつも言う事を聞かずに好き勝手してる気がするけどさ!もしかしてジムバッジを一定数持ってたりしないと駄目だったりするの?

 

「さて……何を食べるかな。煮魚定食とかラーメンでも良いし……あ、タコスもあるんだ知らなかった」

『なぁ、ちょっと良いか?』

 

 どうしたのさシンビオート。一応言っておくけどチョコレートパフェなら週に2回にしておいてよ?僕のお小遣いも無限にあるわけじゃないんだから。

 

『それもあるけど、アレを見ろ』

「アレって………八百万さん?」

 

 そこには食券機の前で何やら困っている様子の八百万さんの姿があった。どうしたんだろう?もしかして小銭を落としちゃったとか?

 

『そんな事はどうでもいい!副委員長の座を奪い取るチャンスだ!殺れ!!

「シンビオート!?」

 

 いつまで引きずってんのさ!?いい加減諦めなよ!そしてもう一回言うけどそう言うシステムじゃないから!

 

「どうしたの八百万さん。困ってるみたいだけど」

 

「あ、来正さん。実はこちらの食券機なるものですが、どこにもカードの挿入口が見当たらないんです」

 

「成る程ね、それなら……えっ、カード?」

『何言ってんだコイツ』

 

「はい。クレジットですが……もしかするとここ(雄英)専用のクレジットカードがあったりしますか?」

 

 そう呟きながら八百万さんは黒いカードを手にする。

黒のクレジット……ブラックカード……だと……⁉︎

えっ、本物?何?もしかすると八百万さんって……お嬢様⁉︎

 

「え、あ、いや……現金じゃないと多分駄目だと……」

 

「えっ、それしか無いのですか?とても不便じゃありませんか?」

 

「不便!?い、いやさ。とりあえず僕が奢るからカードはしまいなよ」

 

「そ、そこまで好意に乗るワケには……!」

 

「大丈夫だって、いやホント。だからカードを落とさないように早く財布の中に……」

『黒……オレ様への当てつけのつもりかッ!』

 

 するとシンビオートがカードを持った手をバシンと叩いてカードが宙を舞って……ってシンビオート!急に何を!?

 

『だってどう見てもオレ達に対して自慢してるぞこの嬢ちゃん。どうするキョウセイ処す?処す?そして副委員長の座を奪う?』

「気持ちは分からんでもないけど実行しないで!?ってヤバ!カードが!」

 

 とにかくシンビオートを腕に纏わせて伸ばそうとした瞬間、白い何かが別の所から飛び出し、カードはその人物の手に収められた。

 

……えっ?さっきのって……糸?

 

呆気に取られていた僕等だが、その生徒の声で現実に引き戻される。

 

「おっと。クレジット対応をお求めなら、まずは先生に相談するのをオススメするよ」

 

「えっ、あ、すみません……」

 

「そこの君、もしかして彼女と仲が良い人?もし恋仲ならちゃんと見守ってあげないと駄目だよ?」

 

「うん、同じクラスだよ。八百万さんを助けてくれてありがとうね。あと恋仲じゃないよ」

『オレ達に感謝しなイイトコ育ちのお嬢ちゃん。そんでもってカードを見せつけて嫌味のつもりか?』

 

 シンビオート!全くこの口の悪さ……。

八百万さんは顔を真っ青にして僕等に頭を下げて来た。

 

「す、すみません!そんなつもりでは……!」

 

『感謝しろって言ったのに何で謝るんだよアホなのか?』

「シンビオート!ごめん八百万さん。コイツいつも口が悪くてさ……別に気にしてないよ。困った時はお互い様って言うしね」

 

 僕はカードを拾ってくれた生徒に手を差し出しながら自己紹介をする。もちろんシンビオートも一緒に。

 

「君も八百万さんを助けてくれてありがとう。えーと、僕の名前は来正恭成。こっちは八百万さんで黒い方はシンビオートだよ」

『GOOD MORNING』

 

今は昼だけどね!

 

「自己紹介感謝するよ。ボクの名前は赤糸虫(せきしむ) 知朱(ちず)。趣味はカメラの青春真っ只中のヒーロー科一年さ」

 

 赤糸虫君ね。声が高いから一瞬、女の子かなと思ったけどズボンを履いてるしそれは無いか。と言うか同じヒーロー科なんだね。

 

「ヒーロー科……と言うことはもしかするとB組の方ですか?」

 

「ビンゴ!景品としてボクと食事できる権利をあげよう」

 

 妙にノリが良い()と僕等は一緒に食事をする事となった。ちなみに八百万さんが食券を持って頼むまでも紆余曲折の冒険があったのは言うまで無いだろう。

 

「へぇ!そっちのクラスは災難だったね。ポップコーン片手に観戦したかったよ」

 

『そりゃ残念だ。せっかくオレ達の活躍が見られたのにな!』

「勘弁してよ……」

 

 現在、僕等は互いに初日での体験談を話し合っていた。と言うか僕達A組だけ入学式行かなかったって……自由も大概にしてくれませんか相澤先生……!

 

「ですが驚きました。てっきりBクラスの方々もやっているものだと」

 

「基本的に先生の自由がある程度認められているからね。その点、ボクの担任のブラドキングは生徒大好きの熱血先生。君等のクラスにならなくて良かったと思うよ」

 

「うん同感だよ相澤先生ものすごく怖いからね。特にシンビオートを見てる時の目が………」

『オイオイ、その分オレ様が睨み返してる。それでおあいこだ』

 

「それが原因だってこと分かんないかなぁ⁉︎」

 

「しかし、赤糸虫さんはとても素晴らしいお人ですね。見ず知らずの私を助けてくれるなんて」

 

「平気平気、ヒーローとして無償での人助けは当然だよ。でもお金をくれるって言うならサービスのチップで構わないよ」

 

「そうですか?ならこちらに小切手がありますので好きな金額を……」

 

「ステイ!八百万さんステイ!赤糸虫君が言ってるのはユーモア!ジョークだから真に受けないで!」

 

 僕は咄嗟に八百万さんが取り出そうとしたものを無理矢理押し戻す。それ以上いけない!僕等庶民にこれ以上のお金持ちしかできないような事を見せるのはやめて!

 

「そ、そうですか?で、でしたら後程にケースに詰めて……」

 

「送り方の問題じゃないんだよ!」

『やっぱり遠回しにバカにしてるなオメー!』

 

 僕等のやり取りを見て赤糸虫君がやや戸惑った様子で声を掛けて来た。

 

「えっ、なに?もしかして本物のお嬢様?」

 

「た、多分……あ、いや違う。確実にお嬢様。しかも箱入り」

 

 だって、食券どころかテーブルを見て「コレが噂に聞く多人数共同スペース……!」って呟いていたもん。

なんかお嬢様って金髪で派手な髪型をして高笑いしてるイメージだったけど八百万さんは真逆なんだね。

 

「あ、居た!」

「おや八百万君に……見ない顔だが君は?」

 

 そう思っていると緑谷君達が遅れてやって来た。八百万さんはともかく赤糸虫君の事を知らないんだっけか。

 

「お友達の登場?邪魔ならボクは失礼しようか?」

 

「いや、このままで大丈夫だと思うよ。三人共隣は赤糸虫君って言うんだ。そして左から順に麗日さん、飯田君に……」

 

「あ、知ってる。そこの緑髪の……そう!緑谷君だよね。0pの敵を殴って粉砕した人!」

 

「やはり噂になっているのですね」

 

「そうそう!アレは凄かったよ!」

 

「流石だな緑谷君!」

 

「い、いやそんな事……!」

 

 みるみる内に顔を赤くしていく緑谷君。おそらく女子二人に褒められ内心嬉しいんだろうね。分かるよ、その気持ち。

しかしソレを黙っているワケもなくシンビオートが突っかかり始めた。まただよ(笑)

 

『Hun!オレ様だってぶっ壊した!デクは怪我したが、オレ様は1位の上でブッ壊したんだ!つまりオレの方が上だ!』

 

「も、もちろんだよシンビオート君……」

 

 うーん、この勢いのある謎理論。

そこに麗日さんが「あ」と声を出す。

 

「でも今はデク君が委員長だからシンビオート君よりも上じゃない?」

 

『!?』

「言われてみればそうなるのかな?」

 

 シンビオートがショックを受けているが先程の理論?の流れから察するに麗日さんの指摘は正しい事になるね……多分。

 

『キョウセイ!今すぐデクを倒すぞ!そしてオレ様が上に立つ!』

「何で君はいつもそう原始的発想を。そして何度も言うけどコレそう言うシステムじゃないから!」

 

「委員長と言えば、飯田君は委員長になれなくて残念だね」

 

「悔しい……が、ここぞというときの胆力や判断力は他を牽引するに値する緑谷君が委員長に相応しいんだろう。俺もそう判断し君に票を入れたからな」

 

「いっ、飯田君が入れたの!?」

 

「あ、私も入れたよ」

 

「麗日さんまで!?」

 

 へぇ、凄い人望だね。なんか0票だった僕と違うから色々と妬いちゃうな。……いや別に羨ましいワケじゃないからね?ホントだよ?

 

「ちなみに来正君は誰に票を入れたんだ?」

 

「飯田君だよ?」

 

「ほう!俺か………って何ィ!?」

 

「いやぁ、飯田君は爆豪君や常闇君とか態度の悪い人にしっかりと注意できる度胸を持ってるからね。それに真面目でリーダーシップもあるからね」

『それに眼鏡キャラだからな!』

 

 いや確かに眼鏡キャラって大体は理知的な人物が多いけどソレはステータスに入れて良いものなのか……?

そんな疑問を持つ僕だが飯田君の様子がおかしい事に気づく。

 

「リーダーシップ……フッ、フフフ……ハッ⁉︎だ、だが"僕"は君の期待に応えられなかった……!すまない来正君!そしてありがとうっ!」

 

「あらら、ものすごい真面目だね。気を抜くのも大事だよ?」

 

「いや、僕はこれくらいでも良いと思うよ?なんか覚悟のススメっぽくてカッコイイしね。……ところでそっち(B組)の委員長はどんな感じなの?」

 

「うん、こっちは懐の広い姉御って感じかな。あ、でも物間って言う性格がアレな生徒が最後まで委員長をやりたがって色々言ってたけど最後にチョップで沈んだよ」

 

「武力行使!?」

『なんだよ、やっぱり力ずくでも良いんじゃないか』

 

「あー、いや。何というかどのクラスにもブッ飛んだ人っているもんなんだね」

 

「ブッ飛んだ人?」

 ↑腕を壊してでも訓練に勝とうとした生徒

 

「まぁ、そのようなお方が居るのですか」

 ↑個性把握テストで大砲やバイク等を使った生徒

 

「……あー、いや何でもない」

 ↑色々ブッ飛んでると自覚してる生徒

 

 僕以外のブッ飛んでいる生徒が委員長と副委員長だと言う事実を目の当たりにした僕だったが、麗日さんが飯田君に声をかける。

 

「さっきから飯田君、俺じゃなくて僕……もしかして坊ちゃん?」

 

「いやその理屈はおかしい」

 

 それを言うなら飯田君以外にも緑谷君に赤糸虫君。そして僕自身もそうだ。その流れだとここ一帯の男子生徒が全員坊ちゃんと言う事なるんだけどソレは……。

 

「いや赤糸虫君は何か違う感じだけど、緑谷君と来正君オタクって感じ?なんていうかその…美少女ゲームとか好きそうな…アイドル馬鹿にされると急にマジギレしてくる感じの……あと、漫画も保存用に2冊買って来るような……」

 

「おっと麗日さん心は硝子だぞ?」

 

 ヤメロォ!僕等の身体と心は既にボドボトダァ!とにかくこれ以上の話題は僕と緑谷君の尊厳と命に関わる!それにもう隣で緑谷君が涙目になってるから話題の転換をしなくては(使命感)

 

「そんな事よりも飯田君の話だよ!……もしかすると飯田君はどこかの企業の子息だったりする?」

 

「あぁ、いや……俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男さ、ターボヒーローインゲニウムは知ってるかい?」

 

 ターボヒーロー『インゲニウム』と言えば迅速な対応を可能とするヒーローだ。クイックシルバーのような高速移動の個性持ちであり僕も良く知ってる。

 

「うん!もちろんだよ!東京の事務所に65人もの相棒を雇ってる大人気ヒーローじゃないか!」

 

「あとはインゲニウムを筆頭としたチームIDATEN(イダテン)も活躍の機会の無い個性を持った人達をスカウトし、後々にヒーロー資格を取得させている事も有名ですわね!」

 

「凄いね、それは………ちょっと待った。ボクが当ててあげるよ。君はその次男と言ったね?つまり君の兄は……!」

 

「そう、赤糸虫君の言う通り!インゲニウムは僕の兄さ!」

 

「あのインゲニウムの⁉︎わっ、わっ……!こんな身近に有名人の親族の方がいるなんて‼︎さすが雄英!」

 

『オイオイデクのヤツテンション上がり過ぎじゃないか?』

「まぁまぁ。いいじゃないか少しくらい」

 

 まぁ、確かに。緑谷君の気持ちは分からんでもないけどさ。流石に周りの迷惑を考えて………

 

「良ければ今度遊びに来るかい?」

 

「えーーーーーーッ⁉︎いいの⁉︎ウソ‼︎やったーーーーー!」

 

「初対面で悪いけど…ボ、ボクも良いかな?記念に写真を撮ってみたいし」

 

「フフ、勿論だとも!来正君はどうかな?気さくな兄だ。スーツの試着も頼んでみようか?」

 

「行きます!(即答)」

『キョウセイ!?』

 

 うるさい!インゲニウムと会えるチャンスだ!シンビオートが何かを言っているが気にしn────

 

 

WOOOOOOOOOOO〜〜〜〜!!

 

 

GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッ⁉︎

「シンビオート!?」

 

《セキュリティー3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください》

 

『なんだッ⁉︎急に頭にガンガン響く音がッ!おい!誰でもいいからこの音止めろッッ!』

 

 どう言う事なんだ?いきなり警報音が鳴るなんて!しかも、セキュリティーって……!?

 

 すぐ近くにいた上級生の話を聞くと、どうやらこの警報は雄英校の敷地内に何者かが侵入した際に発生すると言う。

すると食堂内に居た生徒達は出入り口に向かって津波はたまた雪崩の如く押し寄せて行く。

 

「痛たたたッ!?」

 

「さすが最高峰。危機への対応が迅速だ!」

 

「迅速すぎてパニックに!」

 

「避難するってレベルじゃないんだけどコレ!」

 

 やばい、シンビオートはさっきの音にやられてマトモに扱えない!このままだと下敷きになる人も出るし、暴動だって起こるかもしれない!

どうすれば……ってあれ?なんか背中に白くて粘り気のあるものが……イ゛ェ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!?

 

「っと、ごめんね。押しつぶされそうになってたみたいだから助けてあげたんだと……不要だった?」

 

「い、いや ありがとう赤糸虫君。しかし上へ落ちる感覚なんて久しぶりに体感したよ……ねぇ、君の個性ってもしかすると」

 

「うん。ボクの個性は"蜘蛛"さ。壁に張り付けるし糸をこうやって手首の腺から出せるんだ。こうやってね!」

 

 そう呟きながら手を人混みの方へ向けると白い糸が放出され、見慣れた女子生徒である八百万さんを釣り上げた。

釣り上げられた八百万さんはこちらに気付くと頭を下げて来る。

 

「あ、ありがとうございます。おかげで助かりました」

 

「いいよ、さっきも言った通り無償で人助けするのがヒーローさ。

そうそう、ちなみに君達は赤と青のスーツを着た蜘蛛の力を持つヒーローの事は知っt「スパイダーマンでしょ」……ッ! 知ってるの!?」

 

「勿論!……と、じっくりと語り合いたいところだけど、今はこの状況を打破しないとね」

 

 そう呟きながら、人混みの中をジッと見つめる。チラホラとA組の皆以外にも生徒達を落ち着かせようとする者や、パニックで個性を使おうとする者、押しつぶされかけている者と このままだと怪我人が出る事は間違いない。

 

「よし!命令される感じで嫌かもしれないけど、作戦はこうだ!赤糸虫さんは押しつぶされる又は下敷きになっている人を食堂内の2階スペースへクモ糸で釣り上げるんだ!」

 

「任せて!」

 

「次に八百万さんだけど、メガホンや電光案内版……それが無理なら簡単な標識で良いから作って対処法の知らない生徒達に指示を送ろう!」

 

「分かりました……ですが、この慌てよう。こちらに気付く人は少ないと思いますが、如何しますか?」

 

「あっ、そうだよなぁ。メガホンを使っても周りの声で掻き消されるからなぁ……!」

 

 なんとか解決法を頭から捻り出そうとしていると回復したシンビオートが身体を形成し始める。

 

『ここはオレに任せろ』

「シンビオート!……一応言っておくけど、全体の一、二割しか考えがまとまってないならソレは作戦とは言えないからね!」

 

『心配するな、オレ様に良い考えがある!』

 

あ、ダメそう(確信)

 

『いいか?今朝の事を思い出せ。あのマスコミ達を誘導した時の教師達を参考にしろ』

「……成る程、なんでも良いから生徒達の気を引けって事か!考えたねシンビオート!」

 

 よし、それなら何とか行ける気がするぞ。とりあえず今朝に先生がやった事を……事を………あれ?なんか思い出してはいけないような出来事があった気が………あっ(察し)

 

『よし、イイトコのお嬢ちゃん。ストリップで気を引け!』

 

「ストリップ?あの、来正さん。それは一体どう言う作戦なんでしょうか……?」

 

違うッ!シンビオートが勝手にッ!

 

 






キャラクター紹介

オリキャラ'sプロフィール
赤糸虫(せきしむ)知朱(ちず)

一人称はボク

・個性"蜘蛛"
蜘蛛っぽい事がだいたいできる。手首に発達した腺から分泌されたクモ糸の放出、壁への張り付き、未来予測に近い第六感等が使える。

誕生日 7/2日
身長 162cm
体重 55kg

・好きなもの
写真撮影、カメラ、おばさんの手料理

赤糸虫'sヘッド スパイダーセンス有
赤糸虫's首 喉仏が見当たらない
赤糸虫's口 軽口が絶えない
赤糸虫'sボディ 意外と細い

親愛なる隣クラスの生徒でありB組の21人目。
元ネタは皆さんご存知"スパイダーマン"。
これからこの人物が主人公にどう影響を与えていくのかは未定。
つまり見切り発車ですね分かりまs(無言の腹パン)

『ミッドナイト』
蝋燭と荒縄を持ち出しに生徒に手を出しかけたヤベー人。マスコミ相手にストリップ紛いの事をし、倫理的な意味で色々と喧嘩を売っている。主人公にトラウマを植えかけた。

『八百万百』
財布の中身はブラックカードでびっしりのお嬢様。食券の買い方も分からない箱入り娘で純粋無垢な女子生徒。ちなみにこの後ストリップ紛いな事をやって避難を成功させた模様。


〜〜用語紹介〜〜

・クイックシルバー
X-menとアベンジャーズにて登場した高速移動を可能とするヒーロー。双子の姉がスカーレットウィッチ、父がマグニートーと凄い家族構成である。勘違いされやすいがクイックシルバーの能力は高速移動ではなく、あくまでも高速移動を可能な程の身体能力である。


・スパイダーマン
親愛なる隣人として知られる有名なヒーロー。大いなる力には大いなる責任が伴うと言う名言を残している。多次元のスパイダーマンは誰もが不幸な目に遭ってるのでトムホ スパイディは幸せになって欲しい。




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USJ編
7話 違う!シンビオートが勝手に先制攻撃を!


前回のあらすじ

Q.皆がパニックだ!どうする?
A.ストリップしかありますまい。

「シンビオート⁉︎」

結果 いつもの。




 やぁ画面の前の皆、主人公だよ。あの後ストリップ紛いで気を引いた後、飯田君の判断で生徒達を落ち着かせる事に成功したよ。いや、本当にやるとは恐れ入った……。

ちなみに警報についてはマスコミによる騒動らしくシンビオートも怒り心頭で落ち着かせるのに時間を費やした。

 

その後、緑谷君は委員長権限で飯田君に委員長を譲る事になってめでたしめでたし……。

と、なったら良かったんだけどね。

 

「ねぇ、アンタが八百万にストリップ紛いの事をさせたってマジ?」

 

「その辺詳しく聞きたいんだけど」

 

「ねぇどうする。処す?処す?」

 

「ヤオヨロッパイのストリップについてkwsk」

 

勘弁してください……

 

 違うんだ、あれはシンビオートが勝手に八百万さんにやらせたものであって僕は全く関与してないんです!いや、本当に!だからイヤホンジャックを構えたり、強酸性の溶解液を垂らしたりしながらにじり寄って来るのはやめて!あと、芦戸さんのは洒落になってないから!死ぬからソレ!

 

『大変だな。どうする?潰すか』

「元はと言えば君の所為だからなッッ!あと平和的解決でお願いねッ!」

 

「待ってください皆さん。来正さんはあくまで私に最大限に生徒の皆さんを安全に避難させるような作戦を提案してくださったんです。それを咎めるのは見当違い思います」

 

 八百万さん……確かに自分にも非はあったけど、そんな僕を庇ってくれるの?どうしようこの歳になって久しぶりに泣きそうになって来るんだけど。

ごめんよ八百万さん。今までセレブを自慢して来るお嬢様と思っていたけど君もヒーローとしての心を持っているんだね。

 

「それに……」

 

「それに?」

 

「その、何というか。皆さんが私に尊敬の目を向けている事実に、その……少し高揚感と言うものが………」

 

 八百万さん!?違うよ八百万さん!少なくとも生徒の殆どが向けていたのは尊敬の目じゃなくて色情が混ざった奇異の目だよ!

 

「おい来正!アンタの所為でヤオモモがやばい方向に目覚めかけてるんだけど!?」

 

「違う!アレはシンビオートが勝手に!僕は一切関与してないッ!」

 

「シンビオートを止められなかったアンタにも責任はあるでしょうが!」

 

 否定できないぞ畜生めッ!だ、だけどストリップと言っても八百万さん自身は厚着の衣装を脱いでいっただけであって決して下着姿になったとか如何わしい事はしてないから!(震え声)

 

『口で言っても身体は正直だなァ……!』

「悔しい……でも、悪い気がしません」

 

「来正ィ!!」

 

「違うゥ!シンビオートが勝手にィッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 本日のヒーロー基礎学は救助(レスキュー)訓練。ここから少し離れた訓練所で行うのでバスに乗って移動する。いやだけど訓練所って敷地内だよね?なのにバスで移動って雄英って頭おかしいと思う。

まぁ、そんなわけでコスチュームに着替えてバスへ乗り込む事に。

 

……緑谷君、体育着なんだ。そう言えばあの時訓練でコスチュームをボロボロにしちゃったんだっけ。一応サポーターやグローブとかは装着してるみたいだけど。

 

「やぁ緑谷君。最低限の装備だけは整えたみたいだね」

 

「来正君!うん。どうやらサポート科の人達がこれだけは簡単に揃えてくれたみたいなんだ」

 

「サポート科?サポート科……うーん何か忘れてるような……」

 

 頭の中でピンク色の髪をした女子が過っているんだけど……どこで会ったかなぁ……?そう思っているとシンビオートが緑谷君の服装をジッと見つめる。

 

『中々似合ってるぞデク。この前のクソダサコスチュームより遥かにマシなんじゃないのか?麗日もそう思わないか?』

 

「あー、確かに!なんか色々とね」

 

「シンビオート⁉︎」

「麗日さん⁉︎」

 

 なんでや!緑谷君の手作りコスチューム格好良かったやろ!麗日さんだって地に足ついた感じって言ってたじゃん!

 

「うん、言ったけど……それはそれ、これはこれだから」

 

『つまりはダサいって事だろ』

「クソッ!これだから素人は分かってないッ!あのダサさが逆にいいんじゃないか!」

 

「ありがとう、来正君……ちょっと待って⁉︎少なからずはダサいと思っていたの⁉︎」

 

「1-A集合ーーッ!どうした君達!早くバスに乗りたまえっ!」

 

 

 

 飯田君の号令の下、バスに乗り込んだ僕等は訓練所までの時間をクラスメイト同士の会話で潰す事になった。

えっと、隣は……。

 

「蛙吹梅雨よ、梅雨ちゃんと呼んで。来正ちゃんとこうやって話すのは初めてね」

 

「あ、僕の名前覚えてくれてたんだね……でも、いきなり名前でちゃん付けってハードル高いなぁ」

『そうか?カエル女がそう呼べって言ってるからいいだろ。なぁツユチャン』

 

「あら、ありがとうねシンビオートちゃん。怖そうだけど意外に怖くないものね」

 

『どういたしましてだ。そう言うお前こそ醜い癖して良い性格をしてる』

 

「……醜い?」

 

ゴルァ!シンビオートォ!!彼女のどこが醜いんだよッ!カエルらしい水々しさのあるツヤツヤ肌とつぶらな瞳がとても可愛いだルルォ!もう一度カエルを侮辱してみろ消炭にするぞテメェこの野郎ッッ!

 

「「「「えっ⁉︎」」」」

 

「あっ………んん゛っ!失礼。シンビオートが変な事言ってごめんね?ちなみに僕はカエルの事は醜いとは思ってないよ?」

 

「とても嬉しいわ来正ちゃん。梅雨ちゃんと呼んで」

 

「あー、もうちょっと仲良くなったらでいいかな?」

 

 彼女をちゃん呼びをする勇気はまだ無いからね。色々とレベルアップしてからちゃん呼びをさせて欲しいな。

……いや、偉そうな事いってゴメン。ほんとはヘタレなだけですハイ。

 

「…え、何?さっきの怖かったんだけど」

 

「かっちゃんよりも迫力があった……!」

 

『気にするなコイツはただのケモナーで目の前で動物を馬鹿にした瞬間に地獄突きが飛んで来るだけだ』

 

「「怖っ!?」」

 

 失礼な!僕はただの動物好きな人間だ!皆だってそうでしょ!

……え、違う?そんなー。

 

「それにしても緑谷ちゃん、あなたの個性オールマイトに似てる」

 

「えっ!?そうかな?いやでもあの…僕はえっとその……」

 

「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトはケガしねぇぞ。似て非なるあれだぜ」

 

 切島君の言う通り。確かにオールマイト並の威力は出ていたけど、大怪我必須のデメリットは持ってないんだよね。

……あ、でも。

 

「確かにそうかもしれないけどさ、もしかしたらと言う可能性もあるよ?かのワイルドタイガーと同じように緑谷君のもオールマイトに似た個性って場合もあるし」

 

「来正君!?」

 

 緑谷君が驚いたような顔を見せる。そんな驚かなくても、憧れのオールマイトと似た個性なんだから誇ってもいいんだよ?

 

「へー、俺の硬化は対人じゃあ強ぇけど増強型のシンプルな個性は俺のよりも派手でできることが多いからな緑谷が羨ましいな」

 

「でも最近になって発現したのは珍しいね。僕の予想じゃあまりのパワーで幼少期の頃から無意識に暴発しないようにブレーキが掛かって、体型もある程度ガッシリした現状でようやく個性が発現したんじゃないの?」

『成る程な、デクはナヨナヨしてザコみたいだからな。チビの時は使えなかったのか』

 

うーん、この相変わらずのシンビオートクオリティ。

 

「なんか納得だわ。だとすると緑谷ちゃんは私達よりも出遅れてるのね」

 

「しょ、精進します……」

 

 緑谷君がションボリとした表情を見せる。大丈夫だって僕も出来る限り訓練に付き合うしさ。

そう思っていると切島君が僕に向かって口を開く。

 

「そういやよ!ワイルドタイガーって誰?」

 

「くぅッ!MARVELだけでなくTiger&Bunny(タイガーアンドバニー)すらも!時間の流れは残酷だッ!」

 

 最近の若者はヒーローに対する礼儀がなってない!

……スタンおじさんっぽい言葉遣いになった僕に緑谷君が励ますように声を掛けて来た。

 

「知ってるよ!人気の無いベテランヒーローと若手の新人ヒーローがコンビを組むバディヒーローアクションアニメ!」

 

「さすが緑谷君!分かってるじゃあないか」

 

ビシ ガシ グッ グッ!

 

 ユウジョウ!さすがマイソウルフレンド緑谷君。これでまた一つ語れるヒーローが増えたと言うワケだ。

 

「えっと、なんだそのタイ……?面白いのか?」

 

「タイバニはいいぞジョージィ……。色々なヒーローが出てくるし切島君に似たヒーローも居る」

 

「マジで!?(つーかジョージィって何⁉︎)」

 

「エロいヒーローは!?」

 

「居るよ峰田君、ちなみに薄着のコスチューム纏ってる」

 

「帰ったら早速レンタルしなきゃ(使命感)」

 

 いいぞ、その調子だ。どんどんクラスにタイバニを広めてやる……!そんな思想をひっそり掲げている僕に麗日さんが興味深そうに聞いてくる。

 

「そんなに面白いの?」

 

「なんかビジネス的な所もあって勉強にもなると思うよ……多分」

 

 まぁ、すぐに沼に引きずり込んであげるよ。

……いや、リアルな話じゃないからね?

 

「ビジネスねぇ、確かにヒーローって人気商売みたいなもんだよな」

 

「確かに切島君の言う通り個性が派手なほど人気が出やすいしね」

 

 確かに、MARVELとかでもアイアンマンとキャップではアイアンマンの方が人気だしね。……キャプテンもカッコいいのに!

 

「派手で強ぇと言えば爆豪、轟、来正の3トップだろ」

 

『なんだギザギザの割に分かってるじゃないか』

 

「おうよ!あと、ギザギザじゃなくて切島な!」

 

「シンビオートがゴメンね。けどインパクト的には緑谷君も中々だと思うよ」

 

「ぼ、僕ぅ!?」

 

 良い意味でも悪い意味でもインパクトを残したからねと伝えると緑谷君が再びガックリとする。あ、いやごめんね?決して悪気があったワケじゃないんだよ?

そう僕が言い訳していると爆豪君が声を荒げる。

 

「あぁッ!?俺とデクを同じ土俵に並べんじゃねぇ!」

 

「ま、まぁまぁ 別に同じく並べたワケじゃないよ。ただ緑谷君も爆豪君程じゃないけど凄いよねって話だよ……」

『まーたムキになってるな、デクの話題になるとこうだ。デクの前で泣いたんだから少しは自重したらどうだ?』

 

「テメェ…ブチのめすぞ……!」

 

 やばい爆豪君の感情爆発五秒前だ……!と言うかミッドナイト先生が爆豪君の泣き顔を盗撮していた事をバラしたら絶対に殺されるな。うん!僕は極力関与しないように徹しよう!

 

そして頼むからそれ以上刺激しないでよシンビオート!

 

「いやぁ、こりゃ人気でねぇわ。来正はともかく爆豪のクソを下水で煮込んだような性格じゃあな」

 

「なんだテメェのそのボキャブラリーは!」

 

 上鳴君!?なに火に油を注ぐような事を仕出かしてるの⁉︎言っちゃ悪いけど馬鹿なのか君は!……いや周りからはバカ呼ばわりされてるけどさぁ。

 

「低俗な会話ですこと」

 

「でも私、こう言うの好きだ!」

 

「しかし来正も大変じゃないのか?このような個性で」

 

「いや、そんな事は……ってうぉッ!?なんか触手みたいなものが!」

『さてはオレに対抗してるなテメー!』

 

「驚かせてすまない。あと俺はお前に対抗しているつもりも無い」

 

 あー、びっくりした。横を見たら触手が伸びていたんだもん。シンビオートからたまに触手が生える事もあるけど他人のとはこうも違うんだね。

そんな事を思いながら僕は触手を伸ばして来た生徒に向かって手を差し出す。ちなみに地獄突きじゃなくて握手だよ?

 

「いや、こちらこそ失礼な事を言ってごめんね。知ってると思うけど僕は来正だよ、よろしくね」

『なんだよ敵じゃないのか、それなら安心だな』

 

「俺は障子だ。……意外と素直な奴なんだな」

 

「うん、意外とね」

『意外とって何だよお前等』

 

 なんて言うんだろう。シンビオートは口こそ悪いけど純粋な面があるからなぁ。人によるかもしれないけど憎めない部分があるんだよね。

 

「成る程な、もしかするとプロヒーローになれば人気も出るかもな」

 

「ん?いやいや。僕等は人気が出るかどうかは微妙だと思うよ」

『おい、それはどう言う事だ』

 

 いや、言葉の通りだけど?断言させてもらうけどシンビオートは子供達にウケが悪いと思う。せめてギャングオルカとか怖さとシャチ特有の可愛さとかを持っているヒーローじゃないと。

それにしてもギャングオルカ可愛いよね

ナデナデしたい

 

「そうかしら?シンビオートちゃんも愛嬌があってとても良いと思うわ」

 

「あー、確かに。来正君がプロヒーローになったらシンビオートのぬいぐるみとか販売されそう!」

 

「なにそれ欲しい!」

 

………んん?なんか変な情報が僕の耳に入って来たんだけど?

シンビオなんちゃらのぬいぐるみが何とかって聞こえたんだけど⁉︎

 

「えっと……ちなみに聞いておくけどさ女子の皆はシンビオートの事どう思ってるの?」

 

「「「「マスコット枠?」」」」

 

『フフン』

「皆、正気か!?」

 

 よく見るんだ!君達の言うマスコットって黒光りのテカテカしてスライム状の鋭い牙を剥き出しにしたものに向けて言うものなのか⁉︎

そんな女子達の美的センスに驚愕している僕の耳にとある人物の声が届いた。

 

「おいおいおい!マスコット枠たぁ、良い度胸だなァ!ここに真のマスコットである峰田実が居る事を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 

「峰田君………なんで簀巻きにされて上に顔面陥没してるの?しかもその状態でそう言い切るのってある意味で尊敬するよ」

『ブドウ頭がブドウ顔になってるぞ。どう言う状況だ?』

 

 それは僕にも分からん。話を聴くと事の顛末は麗日さんが低俗な話が好きだと言う捻れ曲がった情報を耳にした峰田君が低俗な発言をしてこの始末らしい。

うーん、残当。

 

「心臓破裂させていいかな?」

 

「バスが汚れるわ。着いてからにしましょ?」

 

「命だけは……命だけはお助けを……」

 

『ブドウ頭でサッカーしようぜ。コイツボールな』

 

「「「それだ」」」

 

「来正君。止めなくて良いの?」

 

 やめてくれ緑谷君。僕は何も見ていないし聞いていない。だから関わるのはやめとけやめとけ。

 

 

 

 

 

 

 数分後、峰田君は無事(?)に解放され訓練所に到着した。まぁ訓練の最中に事故に見せかけた事態が起きない事を祈るばかりだ……。

と言うか此処の訓練所凄くない?あちこちにアトラクションのようなものがあるんだけど。

 

『おい見ろ!サメが居るぞ!サメだ!殴れ!』

「おっと、例えサメ殴りセンターだとしてもそれ以上は僕が許さん」

 

 サメ可愛いのに。いや、人を襲ったりしたら殴るのはやむを得ないけど。と言うかシンビオートめサメ映画の影響を受けたな。

 

「なぁ、ここに身長制限があるけど俺はここに入れないのか?」

 

「おっと?やばいぞ。著作権的な意味で嫌な予感がして来た」

『なぁ、ここってユーエスジ「おっと、そこまでだ。それ以上いけない」

 

 ネズミの方よりは大丈夫かもしれないけど、うーんコレは大丈夫なのか?周りを見ると関西の方にある大型アトラクションに似通った箇所がある。

えぇ、大丈夫なの?此処……。

そう思っていると宇宙服を模したコスチュームを纏ったヒーローが僕等の前に現れる。

あのヒーローは確か……。

 

「スペースヒーロー『13号』だ!災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」

 

「わあ~!私好きなの13号!」

 

……と、緑谷君の言う通り13号先生は救助で活躍しているヒーローだ。個性ブラックホールで瓦礫の撤去や被災者を吸い寄せる等の個性を巧みに使い活動しているんだよね。

ただ、暴れん坊のシンビオートにはどうにもウケが悪いみたいで興味なさそうにしている。

 

「水難事故、土砂災害、火災、暴風etc…あらゆる事故や災害を想定し僕がつくった演習場です。その名も──」

 

その名も?

 

 

「ウソの災害や事故ルーム!略して『USJ』!」

 

 

 最終的にUSJじゃねーか!!

やばい!ネズミの王国よりはマシだけど著作権的に雄英高校がピンチになるぅ!

 

『……もう話は終わったか?』

「まだ終わってないけどある意味で終わりそうになってるんだよ……!」

 

 くそっ!他人事だと思って……僕等は運命共同体だってのに!

……え?そこは僕なら何とかしてくれると信じているだって?嬉しい事言ってくれるね。つまりは僕に丸投げと言うワケだね分かるとも(白目)

そう考えながら意外にも先生からありがたいお話を聞く。

 

「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘訓練でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。助けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな」

 

……雄英に来て良かったと思う。これは言わば……そう、"大いなる力には大いなる責任が伴う"だね。架空と現実でもヒーローの思想には隔りは無いんだな。……今度、新しく友達になった赤糸虫君とスパイディ談義する時にこの話題について話してみようかな?

 

『……zzZZ……んあ、話は終わったか?』

 

……そう言う所だぞシンビオート。

もう少しシンビオートも興味深く話を聞いてくれたら色々とマシになってくれると思うんだけどなぁ。

 

『オイ、キョウセイ』

「どうしたのさ、大人しくしているならそのまま──」

 

 

()()()()()?』

 

 

 

シンビオートが言うアレ。

この施設の丁度中心部に黒い渦が在った。その引き込まれるような闇の向こう側から現れたソレと目が合う。

 

「っ!?」

『……おいキョウセイ。アレは何だ?』

 

 僕が警戒すると同時にシンビオートが身体に纏わり付き始める。直後、先生の声が響く。

 

「一塊になって動くな!13号生徒を守れ!あれは(ヴィラン)だ!」

 

 敵……敵だって!?そんな馬鹿な!いや先生のいつもの(合理的虚偽)と言う可能性だって……!

 

「先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが…」

「どこだよ?せっかくこんなに大衆引き連れて来たのにさ」

 

『先日……Hun!あのマスコミ共を招待した奴等か!』

「そう言う事か……!」

 

 シンビオートの言葉で僕は理解する。先日起きた警報はマスコミによるものだけどその侵入を許した原因が奴等と言う事。

多分こちらの情報を得る為の陽動作戦だったんだろうね。

 

 いや本当に参ったよ、本当の意味で絶体絶命の危機的状況に追い込まれているのだから。クソッ!

 

「まぁ、ラスボス(オールマイト)が居ないなら誘き寄せれば良いか……」

 

 手のようなオブジェを身体中に身に付けた男の視線が僕等を射抜いた気がした……いや、確実にこちらを見ている!

まずいッ!奴等の狙いは僕達か!?

 

 

「子供を殺せば来r──

 

 

ごしゃ

 

 

……ん⁉︎なんか一人が急に倒れたんだけど?しかも何故か血がドバドバ出ているし⁉︎と言うか何で皆は敵側(あっち)じゃなくて僕の方を見…て……。

 

『NICE SHOT!』

 

そこにはレンガブロックを手にしたシンビオートの姿が……レンガブロック⁉︎

 

「」

「死柄木?……死柄木ぃッ!?

 

 

「……シンビオート?とりあえず初手でレンガを投げつけた事について弁明を聞かせてもらおうか」

『敵だろ?とりあえず一人ヤっておいた』

 

 シンビオートォ!?そのヤの字はどう言う意味だ⁉︎殺じゃないよね⁉︎お願いだからそうだと言ってよ!

あと、ついでに言っておくけど敵だから何でもやって良いワケじゃないかな!

 

「「「来正君!?」」」

「やべぇよ…来正やべぇよ……!」

「うわぁぁぁぁぁああ!!遂に恐れていた事がぁぁぁああああッ!!」

「よし、ナイスだ来正!」

 

「違うんです!シンビオートが勝手に!……って何言ってるんですか相澤先生!?」

 

 

 





キャラクター紹介

『蛙吹梅雨』
カエル系ヒロイン。
分泌したり舌の扱いに長けた女の子(意味深)。
カエル可愛いよね……。


『障子目蔵』
触手の扱いに長けたクラスメイト(意味深)。
クラスメイトの中でもシンビオートの純粋さにいち早く気づく。
索敵に長けた個性だが筋肉質だから戦闘も得意だと思うのよ。


『謎のヴィラン』
身体中に手をくっ付けた不気味な人。顔面をレンガブロックで強打しノックアウト。マスクが無ければ即死だった……。

ちなみにそれを見た相澤先生はご満悦だったらしい。
それで良いのかヒーロー……。



〜〜用語説明〜〜

・ワイルドタイガー
Tiger&Bunnyと言うアニメーションに登場する主人公。
『ハンドレッドパワー』と言う5分間だけ身体能力を100倍にする個性(能力)を扱うベテランヒーロー。
ヒロアカ世界では"一部の"ファンに人気である。




主人公から滲み出るケモナー属性。
シンビオートが可愛いって、嘘だと言ってくれよバーニィ…。


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8話 違う!シンビオートが勝手に水中戦を!

前回のあらすじ

『シュミレーションゲーム』かと思ったら
『アイワナ』だった。by死柄木




 

 

 やぁ皆、主人公だよ。今僕等はどこにいるでしょうか?

答えは船の上。あ、いや正確には水難ゾーンに設置された船の上なんだけどね。

 

 何故、こんなところにいるのかと言うとシンビオートがレンガブロックでストレートを決めた直後に相澤先生が敵達に向かって奇襲。

13号先生の指示の下、演習場から出ようとすると黒いモヤの敵にそれぞれ別の場所へ飛ばされたんだ。

 

……なんか僕に対して「貴様は念入りに嬲り殺す」と言われた気がしたけど恐らく幻聴に違いない。うん、そうに違いない。

 

「しかし大変なことになったわね」

 

 そんな事を考えていると蛙吹さんが緑谷君と峰田君を連れて船に登ってきた。

 

「水中を見てきたけど此処にいるのは私達だけみたいね」

 

「ハァ…ハァ…い、息が……じ、人工呼吸……誰か人工呼吸を……ちなみに女子でお願いするぜ」

 

「……よし、皆無事みたいだね」

 

「うぉいッ!俺は無視かよ!」

 

 そんなに元気なら人工呼吸の必要はないと思ったから(小並感)……で、この状況どうしようかな?

下を見ると大量の敵達が待ち構えているし。

 

『なぁ、アイツらは殺していいんだよな?聞かなくても分かるぞ。奴等は敵だろ?敵なんだろ?じゃあブッ殺す』

 

うちのシンビオートはこんなにも殺る気満々だし。

 

「どうしよう、遅かれ早かれ僕等が危険な目に遭うのは確実だねこりゃ……と言うか先日のヤツと関わってるよね?」

 

「うん、単純に考えればあのマスコミ乱入は情報を得るためにヤツらが仕組んだってことだ」

 

「でもよ、オールマイトが来たらあんなヤツらけちょんけちょんだぜ!」

 

 そうなんだけどさ、そもそも先生の姿が見当たらないんだよね。今日はオールマイト先生が見てくれる筈なんだけど……どう言う事なの?

 

「峰田ちゃん。殺せる算段が整ってるから連中こんな無茶してるんじゃないの?そこまでできる連中に私たちなぶり殺すって言われたのよ」

 

特に僕なんかは念入りにって言われたしね(白目)

峰田君が蛙吹さんの発言に唖然としていると水中の敵達が陣を組んで迫って来る。

 

「う、うわぁぁぁぁああっっ!大漁だぁぁぁ!」

 

やばい迫ってきたぞ!どうする?どうすれば……!

……あ、でももしかすると相澤先生の合理的虚偽でリアリティを追求した演技だと言う可能性がまだ残っt

 

ドスッ

 

「チッ、ちゃんと狙えよ!」

 

「うるせぇ奴等は上に居るんだ!狙いなんか定まらねぇよ!」

 

「分かってんのか!あの黒い変なのを連れたガキを殺せって念入りに言われてるんだからな!」

 

うわぁ、ぼくの真横に石槍がとんできたぞぉ。

 

「どうする?多分真っ先に僕が狙われると思うんだけど(名推理)」

 

「……ヤツらにオールマイトを倒す術があるんなら…僕らが今すべきことはそのたくらみを阻止すること。戦って勝つこと」

『さすがはデクだ!コイツら全員ぶっ潰すぞ!』

 

 わーい、マイソウルフレンドとウチの子がすっごいヤル気満々だぁ。逃げる選択肢は無いのかなぁ……。

 

「でもそれ、とても難しい作戦になるよ。僕等が戦うのは危険だと思うけど……」

 

「その通りだぜ!雄英ヒーローが助けに来てくれるまでおとなしくが得策に決まってらい!」

 

「下の連中明らかに水中戦を想定してるよね?それに奴等は船を中心に旋回しているだけで襲って来ない」

 

 あれーっ?緑谷君、話聞いてなくない?コレってわざと無視してるの?それとも集中すると周り見えなくなるタイプ?

緑谷君的には後者なんだろうけどさ、もし前者だったら泣くよ?

 

「奴等は僕等の個性…手の内を知らないんだ」

 

「確かに。蛙の私を知ってたらあっちの火災ゾーンにでも放り込むわ」

 

「……つまり、僕等の個性を最大限に発揮した短期決戦で乗り切るって事?」

 

「その通りだよ……来正君、お願いだ。君の協力が必要だ!」

 

………あー、クソ。もしも僕が親友で断れないのを見越して、そう言ってるのならホント、いい性格をしていると思うよ……。

 あぁ、分かったよ!やってやるよ!やればいいんだろう!どうせ後戻りはできないんだ!先にどんな地獄が待っていようと、君を、君らを(外へ)連れて行ってやるよ!

 

「よし、作戦を立てよう。まず───」

 

 

 

 

 

 とりあえず作戦が一つ決まった。正直言うと……うん、アレだ。

 

「やめとこう」

 

「「えぇっ⁉︎」」

 

「どう言う事かしら?」

 

 蛙吹さんに問われるが、そもそもこの作戦は緑谷君の強力な一撃を放つ事を前提としているので彼の大怪我が必須事項となっている。

友達として言わせてもらうけどさ、僕反対だからね⁉︎

 

 それじゃあ、あれか?友人が「今から自分の足折るわ」って言ったら止めるよね?誰だってそーする 僕もそーする。

そう伝えると皆、渋々と納得したような表情を浮かべる。

 

「いや、確かに現状はソレが確実だけどさ。せめてそれは最後の策って事にしておこうよ?」

 

「確かにそれもそうね。……でも反論すると言う事は何か別の作戦でもあるのかしら?」

 

 蛙吹さんはそう僕に尋ねる。勿論、僕だって考えてはある。その作戦は───

 

ドスッ

 

「いい加減にしろガキ共!降りてこいや!」

 

「待った!分かった!分かったから交渉!話し合いをしよう!」

 

「「「来正(君/ちゃん)⁉︎」」」

 

 僕が考えた作戦。それは平和的交渉(話し合い)である。

……いや、だって皆が極力傷つかないようにするためだから!お願いだからそんな失望したような表情を向けるのやめてくれない?

 

『何をしてる。一人残らずぶっ飛ばすんだろ?』

「少し静かにしてて……貴方達の要求を聞きたい!」

 

 それに、コイツすぐに暴れるんだもん。こんな船の上でシンビオートが暴れたら蛙吹さんはともかく他の二人が水中に落ちる可能性があるからね。

 

「どうせ僕等じゃこの人数を相手に成す術が無い!なので命だけは取らないでくださいお願いします、何でもしますから!」

『ん?今、何でもって』

 

 言いましたが何か?……何か?(二回目)

 

「ハハハ!聞き分けの良いガキは嫌いじゃないぞ」

「おい、勝手に話を進めようとしてんじゃねぇ!……いいだろう命だけは取らないでやる」

 

「やったぜ」

 

「お、おい……大丈夫なのかよ……!」

 

「でも時間稼ぎには十分。今のうちに何らかの脱出の方法を……」

 

 後ろから峰田君達の声が上がる中、シンビオートが僕に向かって語り掛けてくる。

 

『おい、()()()()()()()()大丈夫か?』

「………あぁ、向こうから襲って来ない限り平和的にね?」

 

 とりあえず敵達の情報を出来る限り引き出してみよう。さすがに口は堅いと思うけど……まぁ、あまり期待しないようにしておこう。

 

「とにかく、貴方達は何の為に僕等を襲うんだ?冥土の土産話としては教えてくれていいんじゃないのか⁉︎」

 

「ハハッ!いいだろう教えてやる!」

 

「マジで?(この敵の頭がドラックス並みなの?)」

 

 まさかの即落ち2コマ並の展開の速さに脱帽なんだけど。

……まぁ、いいか。うん、気にしない方面で行こう そうしよう。

 

「俺達の目的はあくまでオールマイトだ!対オールマイト用の兵器があるらしいが……、まぁそんな事は知った事じゃないがな!」

 

「………成る程、僕等はあくまで"ついで"だと」

 

 対オールマイト用の兵器と言うワードで確信した。

間違いない。この敵達は"本気"でオールマイトを殺す気なんだ。

何らかの陽動では無く、本気でやるつもりなんだ。

 

「さて、そろそろお前等の姿も見飽きた所だ。本題に入らせてもらおう」

 

「分かった!……あ、その前にシンビオート」

『オラァッ!!!』

 

 刹那、シンビオートが腕に纏わり僕の背後を"殴りつけた"。

 

「ぐぎゃッ!?」

 

「「「えっ!?」」」

 

 突如として聴こえて来た悲鳴が響いた直後、壁にめり込む形でカメレオンのような敵が姿を現した。

なんかカメレオンと言うよりは潰れたカエルみたいになってるけど。

 

「交渉は失敗……でいい訳だね」

 

「来正君、いつから気付いて?」

 

「僕は知らなかったよ。シンビオートが背後から敵が来てるのを知らせてくれたんだ……ただ、まぁ。交渉失敗しちゃったかぁ……」

 

 あーあ……、最終的にこう言う手段になるんだね。うん、まぁ敵の方は最初から交渉する気が無かったから仕方ないのかなぁ。僕は横に居るシンビオートに視線を移す。

 

『一、二、三……とにかく沢山だ。大きいヤツは10点で小さいヤツは1点。女は特別に3点だ』

 

 ワーオやる気満々。こりゃ止められないと言うか止めたところで止まらないね。

 

「と言う訳で『僕が囮になってる間に三人は逃げ出す作戦』をやろうか」

 

「ダメだ来正君!君一人じゃ危ない!それに水中じゃまともに身動きが……!」

 

 敵達の居る場所へ行こうとする僕を緑谷君が呼び止めようとする。ありがとう緑谷君。でも違うんだよね。

 

「それについてだけど逆なんだよね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()シンビオート!」

『久方ぶりの戦闘かァ!!』

 

 僕が船の上から落ちる直前、黒の姿へ変わり水中へ飛び込む。

……あ、さっき殴った敵はついでに連れて来ました。さぁ地獄の始まりだ(白目)

 

「バカなガキだ!自分から飛び込んぐぇあッ!?」

 

『ハハハ!プレゼントありがとうなァ!大事に使ってやるぜ!』

 

 先程のカメレオンの敵をハンマーのように振り回し敵がどんどん薙ぎ払われていく。

うん、シンビオートって戦闘中は見境なくぶっ壊そうとするから味方を確実に巻き込むんだよね。あー、三人とも連れて来なくて良かった。

 

「水中だ!水中から攻撃しろ!」

「水の中じゃ俺達の方が有利だ!」

 

『ハハハハハ!!何で逃げるんだァ?もっと楽しもうぜぇ!!』

 

「助けt……おごぉッ!?」

 

 カメレオン敵を地上の方へ投げ飛ばした後、そのまま水中へ戦場は変わる。あの敵大丈夫かな……死んでないよね(震え声)

 

「た、助けてぇ!!」

「ふざけるなぁ!こんなの聴いてねぇぞ!」

「ママーーーッ!!」

 

『何処へ行くんだァ……?』

 

 水中にて伝説の超サイヤ人が敵達を掴み投げ飛ばし、殴り、蹴り、自由自在に動き回る。残念だけどシンビオートって水中戦も得意なんだよね。僕も普通に息ができるし。

 

「そこだ死ねぇッ!!」

 

 瞬間、後方から石槍を持った敵が接近しシンビオートの身体へ鋭利な得物が突き刺さった。

 

「やったぜフラン!」

 

 フランって誰だよ。とツッコミを入れる暇も無く、シンビオートが敵の頭を掴む。うん予想通りだね(白目)残念だけど強固さ柔軟性と兼ね備えるコイツに石槍が通用しないんだよね。

 

『戦場で女の名前を言うときはなァ!死ぬ一歩手前のヤツが言うセリフなんだよォォ!!』

 

 君はどこの御大将だとツッコミを入れる暇も無く石槍の敵は拘束された状態で猛スピードで……あ、待って?シンビオート。それさすがn

 

ゴッ!!

 

 うわぁ、船体に敵が深々と突き刺さった……。

水上に顔を出す僕等に緑谷君達が船の上から顔を出している事に気付いた。

うん、凄いって羨望の眼差しを向けてくれるのは嬉しいんだけどさ。今はそんな事思ってる場合じゃないや。

 

「ごめん緑谷君さっきの発言は撤回する!すぐにさっきの作戦やって!(ヴィラン)達が死ぬゥ!!!

 

「「「!?」」」

 

 いや、だってさ。あくまで囮のつもりだったのにシンビオートが三国無双並みの蹂躙っぷりを見せて確信したよ。

 

「オイオイオイ、アイツ等 死ぬわ」

『死ねよやぁぁぁああッッ!』

 

 うん、もう隠すつもりも無いけどシンビオートがこうすると思ったらから極力戦闘は避けたかったんだよ!コイツは敵と認識したら一切容赦しないからね?

それにもうシンビオート自身が「死ね」って言っちゃってるし。

 

「こんなところに居られるか!もう俺は帰らせてもらう!」

『まぁまぁ、ゆっくり楽しんでいけよ。たった今、程よい大きさの"うちわ"が手に入ったところだ』

 

 ブンブンと振り回し水の流れを無理矢理変えていき……待って?うちわって何?

 

『大雪山下ろしぃぃぃいいいいいッッ!!』

 

 うわぁぁぁぁぁッ!湖に渦が出来てるぅぅうう!そしてソレうちわじゃねぇ!どっちか言うよ芭蕉扇とかの類だ!!シンビオートのやつ、いつの間にゲッターなんか観たんだ⁉︎

……あ、僕と一緒に観てたんだったわ。

 

「シンビオート!そこまで!そこまでにしておくんだ!」

『止まらねぇ!オレはその先にいるぞ!』

 

 だから止まるんじゃねぇぞ……って言うこと?やかましいわ!

あぁ、やばい。水中がどんどんヤバい事になって来てる。なんか竜巻が発生してるんだけど?何コレ。自然災害でも起きてんの?いや、僕等は起こしてる側だけどさぁ!

 

「来正ちゃん、シンビオートちゃん!その辺にしてそろそろ飛ぶわよ!」

 

「蛙吹さん!ほらシンビオート、コレが終わったらチョコをあげるから行くよ!」

『オレはまだまだ物足りないぞ』

 

「あー、もう!ゴデバのチョコ!それ買ってあげるから!」

『ゴデバだと⁉︎分かった!それにコイツ等の顔も見飽きて来た所だしな!』

 

 蛙吹さんが来たところで僕等は水上へ上がり渦巻きに巻き込まれている敵達が峰田君のモギモギで一箇所に固まっていく様子を眺める事となった。

 

 あ、シンビオート。その手に持っている敵はそろそろ離してあげて。

……え、うちわ代わり?やかましいわ

 

 

 

 

「いやぁ、緑谷君ありがとう。おかげで(敵達の命が)助かったよ」

 

「なんだよ!最初から敵共をぶっ飛ばせるなら最初からそう言えよな!」

 

「それ、この惨状を見ても同じ事言えるの?」

 

 敵達は峰田君のモギモギで一塊となったけど、水辺についてはタイタニック号の如く沈む船とその船の破片らしきものが浮かび上がり所々が凸凹で目立つと言う有様。

 

こ れ は ひ ど い

 

『さーてボーナスタイムだ。一人ずつ目玉を抉る。その後は手足の指を一本ずつ切り落としていこう』

「おっと、シンビオート。いつの間に冗談を言えるようになったの?笑えるね」

 

『…… なんでオレが冗談を言わなきゃならないんだ?』

「おっとぉ、ごめん今の無し、やっぱ笑えない」

 

 本当に冗談だったら良かったんだけどさ。青ざめている敵達がコッチを鬼でも見るかのような視線を向けて来るし。

……いや、僕は鬼じゃなくてヒーロー。あと言っておくけど違うからね?シンビオートが勝手にね……?

 

「さて、どうするこれから?僕としてはこのまま外へ出てヒーローへの救援を呼びたい」

 

「うん、僕もそう思うよ水辺に沿って広場を避けて出口に向かうのが最善だ」

 

 そう言えば、先生ってレンガの不意打ちをした直後に敵達に襲い掛かったんだよね?なんか忍者みたいな戦法をとるな。汚いさすが忍者きたない。

 

「…相澤先生、やっぱり僕らを守るため無理を通して敵の群れに飛び込んだと思うんだ」

 

 よーし!僕等はさっさと出口へ向かおうか‼︎うん、緑谷君がとても行きたそうな顔してるけど気の所為だよねッ!

 

「痛たたたたっ⁉︎い、いや邪魔になるようなことは考えてないよ来正君!ただ隙を見て少しでも先生の負担を減らせればって」

 

「いやいや、負担を減らすってどうすれば……」

『よし、まかせろ』

 

 うん。それじゃあシンビオートは手元にあるレンガブロックを地面に置こうか。そんでもってソレを投げる以外の方法を聞こうじゃないか。

 

『これで殴って倒す』

撲殺⁉︎

 

「……それじゃああくまでバレないように様子見をしましょう」

 

『Sneak Kill……!』

「蛙吹さんはそう言うつもりで言ったわけじゃねーから」

 

 何?レンガを手にCQCでもしろと?CQCの基本を思い出せと言われてもやった事無いから無理だからね?

 

 そんなシンビオートを身体の中に戻しながら身を潜め僕等は相澤先生のいる中央のエリアに近づく。そこには相澤先生が敵達を倒して行く姿が写っていた。

どうやら緑谷君の心配は気鬱だったみたいだね。

 

「さて、皆。ここから離れ───っ‼︎」

 

「お、おい、相澤先生の肘が()()()()()()?」

 

「敵の個性か……!」

 

 右肘に怪我を負い徐々に動きが悪くなってきている。まずい。このままじゃ先生は……!

 

「急いで助k「駄目だ」来正君⁉︎何を……!」

 

「ごめん、でもさっき言った筈だよね『様子見』だって。僕等がやるべき事は敵を倒すんじゃなくて先生が時間稼ぎしている間にここから逃げる事だ」

 

「……っ、来正君は、相澤先生を……」

 

 そんな顔しないでよ⁉︎僕だって助けに行きたいけど場数や技術も少ない僕等が乱入しても状況を悪化させる可能性だってあるんだ。

ここは先生を信じて逃げるのが得策だ!

 

「それに、僕等の先生はプロなんだ!そう簡単に───

 

ドシャッ

 

……え?

 

「教えてやるよイレイザー・ヘッド。そいつが対平和の象徴【怪人脳無】」

 

 

 僕等の目の前には地に組み伏せられた血に塗れた先生の姿が……。

 

『即落ち2コマ』

「シンビオート!?」

 

 やめろ!おい!そう言われるとそんな風に見えて来るから!!脳剥き出しの怪人と先生の姿が変な角度で見えて来るからやめろ!!

そう思っていると、僕等を別々の場所へワープさせた敵がその場に現れた。

 

「13号はやったのか」

 

「行動不能にはできたものの散らし損ねた生徒がおりまして…1名逃げられました」

 

「……は?」

 

 うっわ なんかもの凄く殺伐としている。

ヤバいぞアレ。今僕等が出て行ったら確実に殺しにかかるくらいの不機嫌さだ。

クソ、このままじゃ先生どころか僕等も絶体絶命だ。どうすr

 

「さすがに何十人ものプロ相手じゃかなわない。あ~あ今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」

 

……えっ、帰るの?マジで?コンビニ行くついでにみたいに軽くない⁉︎

 

「帰る?帰るっつったのか!?」

 

「でも気味が悪いわ緑谷ちゃん 」

 

「うん。これだけのことをしといてあっさり引き下がるなんて……きっと何か裏があるんじゃ」

 

『敵の人、そこまで考えて無いと思うぞ』

「真顔でなんて事言うのシンビオート」

 

 さすがに敵がそこまで考えて無しじゃ──あ、いや待って?

もしかして本当に考え無しに気分で帰ると言っている可能性も微レ存……?

 

あれ?なんか手が身体中にくっ付いた敵がコッチの事見てない?いや、でもそんなまさか……あ、確実にコッチの存在気付いてるわ。

 

……まずいッ!シンビオート!何でも良いから奴を止めるぞ!

 

「あっ、そうだ。帰る前に平和の象徴としての矜持を少しでも──

 

 

ごしゃ

 

 

……あれ?なんかあの人、また倒れてるんだけど。

どうしたの貧血?と言うか血がドバドバ出ているんだけど

 

……ん、なんだろうこの既視感(デジャヴ)。隣の方に原因がありそうな…と言うか確実にあると言うか……うん、聞けば分かるか。

 

「シンビオート?」

『隙だらけだったからな。レンガを投げておいた』

 

シンビオートォ!?

誰がそこまでやれと言った!いや、結果的に助かった?からいいけどレンガを投げなくても。

……え?僕が何でも良いから止めるぞって……?

 

………あっ(白目)

 

「死柄木⁉︎……貴様!一度ならず二度までもッ!」

 

「違う!シンビオートが勝手に!!」

『………えっ?』

 

 




何気ない(いつも言ってる)一言がシンビオートを傷つけた。


〜〜用語解説〜〜

・大雪山おろし
ゲッターロボシリーズに登場する技。
掴んだ相手を自分の体を中心に回転して振り回し、遠心力をかけてから上方向に投げ飛ばす荒業。
決して竜巻を発生させる技ではありません。


・ドラックス
正式名称はドラックス・ザ・デストロイヤー。
ガーディアンズオブギャラクシーの一員であり怪力と凄まじいスタミナ、物理耐性を兼ね備えた戦士。ちなみに知能は低い方であり、MCU版ではことごとく頭の悪さを発揮してくれた。

主人公が言った「頭がドラックス並み」とはそう言う事である。




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第9話 違う!シンビオートが勝手に演習場を!

新作の仮面ライダーがとても格好良かった(小並感)
終盤の必殺技シーンは美しさも感じてしまいましたが……分かる人いますかね?




やぁ画面の前の皆、主人公だよ。

ところで皆は人とぶつかったらどう謝る?ごめんなさい?それとも土下座?

それじゃあ人にレンガを投げたらどうする?

 

「お前……人に向かってモノを投げるとか……どう教育されてるんだよ、ええ?」

 

「すみません。僕じゃなくてコイツが悪いんです」

『え、だってお前が何とかしろって』

 

僕だったら正直に答えるよ。

……え、この場合は責任転嫁だって?あー、ごめん。なんて言ってるか分からないなー!

何気に何事も無さそうに復活した敵の……死柄木だっけ?そいつは額を抑えながらこちらに向かって呟く。

 

「そうか……じゃあ、殺すしかないよなぁ」

 

『殺す?おい。アイツ、オレ達を殺すんだとよ。それじゃあオレ達がアイツを殺しても問題はねぇよなぁ!!』

「やめろシンビオート!」

 

 いや、確かにこちらに非があったけど!その頰を叩かれたら叩き返すような理論はやめて!

……あぁ、こりゃもうグダグダ言っても意味は無いみたいだね。

 

「随分と教育がなってないな……。ママに人を殴っちゃ駄目って言われてなかったのか?」

 

『悪いなぁ。あいにくママのしつけがなってなくてなァ!!』

「皆ッ!今の内に相澤先生を!」

 

 三人に向けて叫ぶ僕に緑谷君が心配したような声色で口を開いて来る。

 

「来正君は!?」

 

「化物には化物を、ハルクにはハルクバスターを。怪人には怪人をだ!コイツは僕等が相手をする!」

『オレ様は怪人じゃあ無いが、暴れられるんなら怪人でもイイぜ!!』

 

 正直、勝てるか分からない。でもヘイトが僕に集まっている今なら相澤先生を安全に避難させる事ができる。せめてクラスの皆が脱出するまで持ち堪えられれば理想的なんだけど。

 

……もし、キャップやアイアンマンがこの立場だったらさ。必然的に皆を守る為に戦うよね!

 

「シンビオート、戦闘準備だ」

『やっと出番か。喜べお前等 待ち望んだオレ様の晴れ舞台だ』

 

 おっと、第四の壁的な発言はそこまでにしてもらおうか。そろそろシリアスなシーンに突入するから。

 

「クソ、なんなんだお前等。さっきから変な事ばかりグチグチと……此処は漫才の会場なのか……?あぁムシャクシャする、気が狂いそうになる……!毒だ、お前等は毒だ!徹底的に殺してやる……!」

 

『毒呼ばわりとは酷い野郎だ』

「その酷い野郎に二度もレンガをぶつけた君が言える立場じゃないけどね」

 

けど、毒。毒かぁ……、いいなソレ。

確か毒って英語でPoison(ポイズン)だっけ?あと他には……。

 

「……Venom(ヴェノム)

『ヴェノム?良いセンスだ、それじゃあそう名乗ろうか』

 

 えっ、何で名乗るの?何故このタイミングで?

……いやヒーローらしくて良いかも。それじゃあ名乗らせてもらおうかな。タイミングは合わせてよね?

 

「僕等は毒だ お前達にとっての(ヴェノム)だ───

「カッコいいなぁ その台詞。それじゃ───

 

 

「『We are VENOM(僕/オレ達はヴェノムだ)』」

 

「殺せ、脳無」

 

 

 直後、(ヒーロー)(ヴィラン)がぶつかり合う。互いに組み付き合い力と力か拮抗する。しばらくしてその状態を壊したのはコチラの方だった。

 

『随分と無口だなァ!その口は飾りか!?』

 

 顔面を掴みグルグルと振り回し投げ飛ばす。しかし脳無と言う敵は壁や地面に衝突しながらも体勢を立て直してしまう。

見たところシンビオートと同じパワータイプか!

 

『おい!返事くらいはしろよ!』

「来てるぞシンビオート!大盾だ!」

 

 跳躍しながら振りかぶってきた腕を形成した大きな壁で防ぐ。瞬間、脳無の攻撃を受け止めた盾の一部が拳に変化し顔面を殴りつけた。

 

『……おっ』

「効いてない?」

 

 強めに殴りつけた筈なのに微動だにしない。結構、脳が揺れるくらいの衝撃だったのに……いや、脳は剥き出しだけどさ。

 

『ぶっ倒れておけッ!』

 

 近くにあった街灯をへし折り脳無に叩きつけた……が、効いてない。 くそっ!表情をピクリとも動かしやしない!せめて痛そうな表情でもしてくれたらよかったんだけど!

 

『効いてねぇなッ!』

「なんだコイツ、さっきから……っ!」

 

 殴っても、投げても、腕をハンマーのようにぶつけても何度も立ち上がるどころか攻撃が一切効いてないみたいだ。

まさか、コイツの個性なのか!?

 

「シンビオート!さっきから戦って違和感は無いか⁉︎」

『違和感?そりゃ、さっきから手応えが無いし何も無い所を殴ってる感じだ』

 

手応えが無───うぉッ!?

コイツ、僕等の足を掴んで投げ飛ばしたのか!?

 

『ッ───!ブッ潰してやる!』

「落ち着けシンビオー……って、ちょっと!?」

 

 その場に落ちていたと言うかシンビオートが折った街灯を持って僕等に向かって飛んできた!!

 

「嘘だろッ!」

『HolyShit!』

 

 咄嗟にその場から飛び退いた直後、さっきまでいた場所に街灯が突き刺さる。

危なッ!あとついでに突き刺すなら元の位置に戻して欲しかったんだけどなぁ!!

 

『アイツやりやがったな……!』

「体勢を立て直すッ!」

 

片手を盾に、片手をハンマーのような形へ形成させる。

 

「アイツは確実に突っ込んで来る。なら、取るべき戦法はカウンターだ」

『それならラクでいいな』

 

「───ッ!」

 

 来たっ!5m、4m、3m……そこだッ!シールド!!

盾を前に突き出すと同時に相手の拳も突き出され、互いに衝突し合う。……瞬間、盾が融解し脳無の腕を飲み込んだ。

 

「今だッ!」

Break(ブッ壊す)!』

 

 腕が飲み込まれ身動きが取れない状態の脳無の顔面にハンマーをガツンと撃ち込んだ。流石にこれは応えたのだろうか。一瞬、後退するような素ぶりを見せた。

 

『ハハハッ!ザマァ見ろだ!』

「シンビオート……いや、脳の部分を殴らなかった分良かっ───ッ!?」

 

 直後、脳無が片方の腕をこちらの顔面に伸ばして来た。

僕は飲み込んでいた腕を解放すると咄嗟に身を黒い巨体を持つ敵を一本背負いの要領で投げ飛ばす。

 

『Shit!まだピンピンして……!』

「いや、違う!そもそも"効いてなかったんだ"!」

 

 先程の攻撃は僕等の一撃に怯んだのではなく、攻撃に勢いをつけるために一歩引いたのだと理解した。

いくら攻撃しても感じない手応えの無さ、そして顔面に対する攻撃もほぼ無傷。

 

これらから推測すると───

 

「衝撃吸収の個性かッ⁉︎全身ヴィヴラニウムなんて大概にしろッ!」

 

 これじゃブラックパンサーの立場が無いぞ!またワカンダからヴィヴラニウムが密輸されたのか⁉︎

そんな馬鹿馬鹿しい事を考えていると、横の方から声が聞こえて来る。

 

「思ったより苦戦してるなぁ、なんだよ実力は口だけか?」

 

『うるせぇレンガぶつけんぞ。そもそもお前が戦え』

 

「おいおい頑張れよなヒーロー。これくらいの障害乗り越えてみろよ」

 

『面倒臭い。殺すか』

「やめろシンビオート!殺すな!」

 

 片手を斧に形成し始めたシンビオートを抑える。このまま勝手な事をさせる訳には行かない。

 

『キョウセイ!コイツ等はオレ等を殺しに来たんだぞ!それじゃ殺しても別に構わないだろう!』

「だからと言って殺していいわけ無いでしょ!」

 

『目の前に居るのは敵だ!殺しても問題無い!』

「目の前に居るのは人だ!殺していい訳無い!」

 

「……なんだよコイツ等。いきなり仲間割れか?」

 

 うるせぇレンガぶつけんぞ。

そう心の中で毒づきながら言い争いをしているとシンビオートが『チッ』と舌打ちをする。

……おい、シンビオート コラ。

 

『それじゃあ殺さなければ良いんだろ!』

 

 そう言うと斧の形に形成した腕を脳無の足に叩き込む。すると刃は深々と黒い肉体に食い込む結果となった。

 

『よぉし、食い込んだ───おおおおッ⁉︎』

 

 直後、脚をまた掴まれグルグルと遠心力を利用して振り回される。

うおおおおおッ?もしかして最初の方にジャイアントスイングしたのを根に持ってるの⁉︎

 

『〜〜〜ッ!いい加減にしろッ』

 

 振り回されながらもシンビオートは腕を伸ばすと鋭利な爪を突き立て脳無の顔面に傷をつけた。

すると掴んでいた手の力が緩み勢いよく投げ飛ばされる。

 

「〜〜〜〜っと」

『クソ、やってくれるなアイツ!やり難いったらありゃしない』

 

 受身を取り、ダメージを抑えながら立ち上がる。確かにやり難い相手だろう。

……が、先程シンビオートの爪による()()()()()()()()。そう考えれば渡り合う方法はいくらでも考えられる!

 

「シンビオート、とにかく奴に色んなものをぶつけて攻撃しよう!足を止めるんだ!」

『シューティング!ヘッドショットで高得点狙うか!』

 

 そう僕が言うとシンビオートは嬉々として足元のタイル。街灯、近くの壁と言った設置されたものを剥がしたり取り外し、ソレを脳無に向けて投げつける。

脳無はソレを受け止める、体当たりで壊すなどをしながらこちらに向かって来る。

 

 徐々に僕等の周囲が酷い有様になっていくけど……うん。まぁ、あれだよね……、敵の所為でこうなったと言う事にしておこう。

 

『ハハハ!これは中々面白いな。次はどうする!』

「うん、周りが酷い事になってるけど……とりあえず良し!」

 

 僕がそう言うと体を低姿勢の四足歩行の状態で脳無に向かって走らせる。

残り数m。互いがぶつかり合いそうになる瞬間、僕は()()()()()()()

 

「うっ───おおおおッ!!」

『随分なムチャをするな。さすがはキョウセイだ』

 

 個性を解除した事により黒塗りの巨体から元の姿へ変化する。そうすると自ずとサイズも小さくなる為、脳無の股下をスライディングする形で潜り抜けた。

 

「シンビオート!後ろから掴め!」

『来たか!』

 

 直後、再びシンビオートを全身に纏うと勢い良く後ろから押さえつけるように脳無の後頭部を掴み地に叩きつける。

 

「気付いた?シンビオート」

『何がだ』

 

「コイツ、再生しているぞ!」

『………何?』

 

 今さっき気付いた事だけど足と顔面にあった筈の傷が見当たらない。斧や爪による裂傷がそんな簡単に治る筈も無い。恐らくだけど、この脳無と言う敵は複合型の個性持ち。しかも自然治癒(オートヒーリング)とは……衝撃吸収に加えウルヴァリンのように回復持ち……厄介な相手だ。

 

「やばいぞコレは……!」

『つまりはブッ飛ばし放題で傷つけ放題のサンドバッグって事だな』

 

シンビオート!?

いや、違うから!そんなつもりで言った訳じゃないからあの脳味噌剥き出しの敵を物欲しそうな目で見ちゃいけません!

あんなの家に置いとけないからね!

 

「コイツに対してダメージを期待できないって事!」

『成る程、それじゃどうするんだ?』

 

「脳筋的な戦法になるけどコイツの再生を上回るダメージを与える。物理攻撃は吸収するけど、それ以外の方法でトコトンやるしかない」

『つまりは?』

 

そう問いかけるシンビオートに僕は答える。

 

「好き放題にしろ」

『……これだからお前と一緒に居るのはやめられないなぁッ!!』

 

 両手の爪が鋭利なモノとなり脳無の身体に突き立てられる。直後、肉を裂くように縦、横、十字と言うように切傷をいくつも作っていく。

時折、敵の攻撃を来る事を伝えシンビオートは上手く避けてくれる。

……駄目だ。やっぱり引っ掻き程度じゃすぐ再生される!

 

『それじゃ次はコレだ!』

 

 嬉々として片手を斧。もう片方を真っ直ぐに伸ばし槍のように鋭利に形成する。しかも形成した武器の所々に棘が生えている。

……うわぁ、殺意満々。殺すのは無しだからね?

 

『分かってる!そうじゃないと楽しめないからなぁ!』

 

 待って、それどういう意味?

そんな僕の意見は無視されシンビオートは身体を一回転させながら勢いを付けた斧を振るう。相手はその場から飛び退き、攻撃を躱すがシンビオートも追いかけるように跳躍し空中の敵に向かって形成した槍を突き出す。

 

「………!」

 

『そう来るか!!』

 

 身体を捻る事で槍を躱し、がら空きになった懐に拳を叩き込もうとする脳無。しかしその攻撃に対しシンビオートは無理矢理体勢を変えながら斧を振るい相打ちになるような形で互いは吹き飛ばされる。

 

『………はッ!空中で避けるとは考えるくらいはできるみたいだな!』

「いや楽しんでる所悪いけど、もう回復していってるぞ……!」

 

 先程、相打ちによって付けた筈の傷が徐々に回復していっているのが目に見えて分かる。さっきまでの攻撃も悪くなかったけど駄目だ。もっと絶え間無く攻撃を与え続けないと……!

 

『そうか!ならアトラクション巡りと行くか!!』

「はぁ?なんでアトラクションををををををををッ!?」

 

 瞬間、シンビオートは脳無の顔面を掴みながら走り出した。地に、壁に、設置されたものに敵を叩きつけながら走る。

……ちょっと待って。脳無を武器にして演習場を壊してない?

 

『ハハハハッ!!楽しいな楽しいなぁ!!』

 

 壁に脳無を押しつけながらガリガリと壁に一筋の跡を残しながら壁面が破壊し駆け抜ける。

うーん、これ後で弁償されないよね(震え声)

 

『サッカーしようぜ!お前ボールなッ!!』

 

 敵を放り投げ蹴りを入れ、山岳地帯へシュウゥゥウウッ!超エキサイティン!とハイテンションなシンビオート。

と言うか衝撃吸収の個性を持っている筈なのに吹っ飛ばされてるけど……何?もしかして吸収できる威力に許容量があるの?

 

そんな事を考えながら山岳ゾーンへ走り出す僕達。大きく跳躍し脳無が吹っ飛ばされたであろう場所へ向かう。

 

「個性を使うのは禁止だ使えば殺s『WRYYYYYYYY』──ぐぼぁッ!?」

 

 あれ?なんか踏んでいるような……って、うわっ!?よく分からないけど手から電気が出てる人踏んづけてる!

やばっ、生きてるよね⁉︎……脈あるし息もしているから生きてるねうん!

 

「うおッ!?上から来正が降って来た⁉︎」

 

「何をしていますの⁉︎」

 

「あ、八百万さんに耳郎さん!……と、上鳴君……だよね?」

 

 三人は此処に飛ばされて来たんだね……と言うか上鳴君、顔のパーツがおかしくなってない?なんか左手で描いたようなアホ顔になってるし。

 

『誰だこのアホ顔。敵か?』

「いや、それ上鳴君だから!……と、ごめんね!ちょっと取り込み中だから!」

 

 三人の無事を祈りながらも地面に上半身が埋まった状態の脳無を発見する。うわっ犬神家の一族みたいな状態になってるんだけど⁉︎

そんな状態の脳無の脚を掴むとそのまま跳躍を行う。

 

『オイオイどうした!!旅行はこれからだぞッ!!ハハハハハ!!』

 

 ご満悦そうな声色を発しながら敵を片手にUSJを駆け抜ける。一応言っておくけど言動はアトラクションを駆け回る玩具を片手にした子供だが、実際は化け物が化け物を片手に暴れまわってる光景だからね?

 

『……おっ、まだまだ元気みたいだな!』

「いや怪我自体はまだ負っている!この状態でドンドンダメージを与えるんだ!……あと、あまり物を壊さn『次はあそこにするか!!』

 

 すると今にも倒れそうなボロボロな建物が密集した地帯に向かって大きく跳躍しビルの屋上から敵を叩き付ける。そのままゴウン!とビルの一部が崩れ脳無は重力に沿って落下していく。

 

『おいキョウセイ!次はどうすればいい?』

「よし、拘束して身動きを取れないようにするんだ!……あと、あまり壊さないようにね?いや、ほんとマジで」

 

 落下している途中、ビルから鉄骨を引き抜くとU字に曲げ地面に叩きつけられた脳無の両脇に突き刺さる。

そのまま固定され身動きが取れない脳無を踏み付け、蹴り、そばに落ちていた鉄骨を脳無の頭に振り下ろす。

 

……うん、どう見ても行動が敵のソレだけど……気にしないでおこう。そう考えていると脳無を引っ張り出し上空へ思い切り投げ飛ばした。

 

『ハハハハハ!そろそろ締めと行こうかッ!!』

 

 そう言うとシンビオートは近くに置いてある重機を上空へ投げ飛ばし自身も同じく跳躍を行う。そのまま重機にしがみ付く形で脳無に向かって落下していく。

これって、アレだよね。うん、ついでだから言わせてもらおう。

 

『「ロードローラーだッ!!」』

 

 ズシンッ!!!と轟音を鳴らしながら重機が脳無に直撃する。

………あっ、これ大丈夫?なんか調子乗ってたけどコレ死んでないよね?もう途中から死体持ってたってオチじゃないよね……(震え声)

 

「なんだよお前……、何をしてるんだよ……!」

 

『よお、さっきぶりだな。お土産の脳無のタタキだ。生のままで食うなよ?腹を壊すだろうからな』

「一応、と言うか断言しておくけど食用じゃないからねコレ!」

 

 気が付けば再び中央へ戻って来たのだろう。アトラクション巡りを終えた僕等の目の前に首を掻き毟る敵が居た。

……なんかもの凄く痒そうだけど、薬処方してもらった方がいいんじゃないアレ?

 

「…………!」

 

「シンビオート!臓器は避けておいて!」

『注文が多いなッ!』

 

 ボロボロになった状態で向かってくる脳無に対しシンビオートの腕から突起した触手を複数伸ばし敵の四肢を貫き釘のように壁に打ち付ける。引き抜こうと動く脳無だが手の平にも触手を打ち付けておく。

 

「これで無力化には成功した……これが対オールマイト用の兵器だと言う事は分かっている。ヒーロー達が来るのも時間の問題だ」

 

「……なんだ?もう勝ったつもりでいるのか?」

 

『もう勝負ついてるから』

「挑発しないで。……まぁこればかりはシンビオートに同意だよ。もうこの敵は動かない。仮に動いたとしたら身体を千切りでもしないと……ッ!?」

 

 待てよ?千切りでもしたら……⁉︎

 

「なんだよ。ガキのくせして案外気付くの早いな……まぁ、もう遅いけどな」

 

 手のようなマスクをつけた敵は隣のワープホールに手を突っ込むと壁に打ち付けられた脳無の側に現れる。

直後敵の手が脳無の腕に触れた瞬間()()()()()()

 

「ッ!!」

『コイツ、仲間の腕を!』

 

 そのまま黒い巨体の敵は己の身体を引き裂き貫いていたシンビオートの触手を引き抜いていく。さらに、塵となった腕は瞬く間に再生していき元の状態へ再生されていった。

 

「うっわぁ……いつ見ても気持ちワリ。おい脳無、今度はしくじるなよ」

 

『なんて言う再生の早さだ』

「ウルヴァリンの比じゃない……!」

 

 さっきまでの攻撃がほとんど無駄となる回復力。正直侮っていた。シンビオートと僕ならコイツを倒せるのではないかと心の何処かでそう思っていたが、先程の光景でそれが無理なのではと考えてしまう。

……けどそれ以上に……。

 

「仲間になんて事を……ッ!」

 

「なんだよ ヒーローが敵に向かって説教を垂れながすのか?」

 

 この死柄木の"殺しに対する躊躇の無さ"に僕は気圧されていた。コレが敵。そこら辺にいるチンピラのような敵とは一味も違う殺意!

 

「かっこいいねぇ!さすがは高校生ヒーローだ!そんなペラペラ喋っているなんてさぁ!でもな、コイツは仲間じゃなくて駒なんだよ」

 

『駒か、……ハッ そんな玩具が無いとオレ達と戦えないお前の姿は滑稽だな。どこでそれを手に入れた?通販で買ったのか?』

 

「そんな玩具と仲良く遊んでボロボロになってる姿はもっと笑えるぜ?……コイツはな薬とか色んなものを投与して脳を弄った結果こうなった。分かる事は自我が無いからとても扱いやすい兵器ってところだ。だから買うのは諦めな」

 

 死柄木の発した言葉に対し僕は手に力が入り始めると同時にとある事が頭に浮かんだ。

小さい頃から何で仮面ライダーって敵組織に許さんって言ってるのか分かったよ。

あれだ。目の前で被害者(改造された人)を無理矢理戦わせているからなんだね。そんなの見て怒らないヒーローがいるのか?いいや、いない。絶対にいないね。

ましてや、その人を兵器呼ばわりするなんてさ……。

 

そう頭の中で考える僕にシンビオートが語り掛けて来る。

 

『頭に血が上ってるぞ落ち着け』

「……ごめん、悪かった」

 

 シンビオートの言う通りだ落ち着け。それに今は目の前の事に集中するんだ……!

相手は一人から三人になった。神出鬼没のワープ個性持ちに脳無、そして触れたら確実に大ダメージを受ける個性を持つ敵である死柄木も居る。

正直、あの脳無だけでも厄介だって言うのに……!

 

『いいか、お前は勝つ事だけを考えてろ。美学やプライドなんかは邪魔だ、殺されるぞ。……百歩譲って殺すのだけは勘弁してやるからサッサとオレに勝つ為の方法を教えろ』

「………分かった。あと、さっきはごめん」

 

『別に気にしてない。それじゃ第二ラウンドと行くか』

 

 シンビオートの言葉に僕はそう呟く。

「覚悟は決まった」そう自分に言い聞かせると、シンビオートを纏った腕からブレードを形成させ構える。

 

「勝てると思う?」

『オレ達なら勝てるさ』

 

 そう返すとこちらへ走って来る脳無に刃を深々と突き刺し、そのまま巴投げの要領で後ろへ投げ飛ばす。しかしワープホールが目の前に出現し脳無が再び出現する。

が、予想通り。斧を形成しタイミング良く脳無に振り下ろし地へ叩きつける。

 

「そのまま地面に固定だ!」

『分かった』

 

 シンビオートの一部を脳無に纏わせ、動かないように縛り付けたあと残り二人に向かって触手を伸ばす。

 

「おい」

 

「分かっていますよ死柄木」

 

 そうワープ個性の黒霧が呟くと自身の目の前にワープホールを作り出し触手が僕の目の前に飛び出し、逆に吹っ飛ばされてしまう。

体勢を無理矢理立て直す頃には脳無はシンビオートの一部を引き千切りこちらへ向かって来た。

 

「ふりだしに戻ったッ!」

『面倒くさいな』

 

 脳無に注意が向いていたが、気付けたのが奇跡だった。

いつの間にか僕等の"後方から手が伸びて来た"のだ。

それに対し飛び退く事で距離を取る。どうやらワープ個性で僕の死角から死柄木の手をワープさせていたみたいだ。

怖いな!と残り数cmでミンチより酷い事になっていた事実にビビりまくると同時にあのワープ個性を利用できるのではないか?と言う考えが湧き上がる。

 

『利用できそうだって言ってるがどうやる?』

「その前に聞いておきたいんだけど"分の悪い賭け"と"チマチマやる戦法"どっちを選ぶ?」

 

『勿論。勝率が高い方だ』

「了解、突っ込め!」

 

 そう言った直後、シンビオートは脚をバネのように変化させ前方へ飛ぶ。把握テストの時のような横に落ちる感覚が襲って来るが今はどうでもいい。脳無も向かって来るが身を翻しスルー。

目的はただ一つ、黒いワープホールだ。

 

僕がそう思っているタイミングで目の前に小さめのワープホールが出現した。よし、アレなら"ギリギリ通れる"!

 

「シンビオート、一時的に解除だ!」

『怪我はするなよ!』

 

 そう言うとシンビオートを纏わない僕は小型の盾を取り出し黒いワープホールへ突っ込んだ。

 

「何!?」

 

「うおおおおおおッ!!」

 

 直後、盾はボロボロに崩壊し周囲の景色も先程と少し違う場所へ変わる。どうやらワープホールを使ったショートカットは成功したようだ。

目の前で驚愕している様子の死柄木に向かって盾を二つ同時に投げつけるが両方とも掴まれ塵に化す。

 

……が、僕の狙いは死柄木じゃない。

シンビオートを纏った腕をゴムのように伸ばし黒いモヤを纏った黒霧に向けて巨大な拳を突き出す。

 

『さっきはよくもやってくれたなぁッッ!!』

 

「ッッ!?」

 

 更にシンビオートの一回り大きくなった拳が黒霧を確実に捉えた。先程はモヤに隠されて分からなかったけど爆豪君と切島君が攻撃を仕掛けた時、危ないって呟いていからね。必ず実体のある箇所があると考えた。

それじゃあどう攻撃すれば良いか?その方法は至極単純。()()()()()()()()()()()

 

直後、巨大な黒の拳はモヤを纏った敵に命中し吹き飛ばす事に成功する。

 

「ぐ───ぉぉおッ!?」

 

「チッ、何やってる黒g『余所見してると怖いエイリアンに臓物ブチまけられるぞ、こんな風になぁ!』

 

 そう叫びながら鉤爪が形成され目の前の手のようなマスクを着用した敵に向かって突き出した。ギリギリの所で躱され脇腹を軽く抉り、敵の鮮血が宙を舞う。

 

『チッ、外れたか』

 

「ッ痛ぇ……、ヒーローだろ。少しは加減してくれよ」

 

『なんで加減しなきゃいけない?グダグダほざくな』

 

「まぁ、いいか……それよりさ。腕はそのままでいいのかい?」

 

『腕……?』

「……ッ!」

 

 そう言われて僕等は気付く。鉤爪の先からボロボロとシンビオートの腕全体が徐々に崩れ始めていた事に。どうやら鉤爪で攻撃した瞬間触れられていたらしい。

数秒後にはシンビオートの片腕はドサリと地面に落ちてしまう。

 

『腕がやられた!』

「いや、僕自身の腕は平気だ!一刻も早く腕を形成し───ッ⁉︎」

 

 瞬間、どこから現れたのか脳無が僕の身体を掴み一撃、二撃と拳を叩きつけられる。それに加えて地面に叩きつけられ

すると徐々に胸部分のシンビオートの装甲が剥がれ、黒い液体が地面にボタボタと零れる。

まずい、このままじゃ───!

 

「成る程な、おい脳無。その黒い奴から中に居るのを引っ張り出せ」

 

 無言でシンビオートの上顎を掴み肉を裂くような音を立てながら僕の顔が露わとなってしまう。

まずい……!引きずり出される……ッ!

 

『ッ!しまっ───』

 

 そのまま成す術も無く僕は引き剥がされてしまい放り投げられる。ゴロゴロと地面に転がる僕は何とか立ち上がり構えを取る。

 

「どうするヒーロー。もう安全な場所で戦えないぜ?」

 

 マスク越しから嘲笑うような声が響く中、シンビオートが僕に語りかけて来る。

 

『fuck!大部分がやられた!十分に戦えないぞ!』

「………いや、まだだ」

 

 そう言うと僕は盾と刃を腕から形成する。

多少身体は痛むけど、まだ脚は動かせるし頭も働かせられる。それに、(ガワ)が無くなった程度で戦闘が行えない程、僕等は貧弱じゃない。

 

「サポートを頼む」

『死ぬなよ』

 

 そう呟くと僕はヘッドギアのマスクを展開する。……よし、壊れてない。戦う準備を整えた直後に再びシンビオートが口を開く。

 

『勝てるか?』

「さてね、でもサノスを相手するよりは全然マシだよ」

 

 そう呟き、脚にバネを形成し敵に向かって跳んだ。脳無が拳を突き出して来るがそれを盾で受け流し腕に刃を突き立てる。

しかし痛覚が無いのか、または鈍いのか。全く気に留めずに僕の脚を掴み振り回して来た。

 

「この程度ッ!」

 

 足先に黒の刃を形成し脳無の指を切る。すると掴んでいた手の力が緩み放り投げられる。

 

ッ───!肺から息が全て出される。

まずい攻撃が来る……立て!とにかく防御を……!盾を構えてガードしろ!

その直後、脳無がタックルを仕掛けて来た。全身に衝撃が伝わり後方へ吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐ……ッ!!」

 

 ミシリと腕から不快な音が響く。内側から炎のように痛み広がっていくのを感じる。恐らく左腕は使い物にならないだろう。

……まだだ、この程度で根を上げるなッ!そう自分に言い聞かせ、無事な方の腕にシンビオート纏わせる。

 

「シンビオート、頼むぞ……!」

『死ぬなよ』

 

「おいおい、まだやるってのか?……それじゃあ望み通り殺してやるよ。脳無やれ」

 

 死柄木の言葉を聞き脳無はコチラに向かって拳を振りかぶって来る。チャンスは一回。失敗したら多分死ぬ。成功したら……あぁ、もう考えるのはやめた!

 

 脳無が振りかぶって来る拳を僕は身体を回転させ、拳を捌いて回避しながら懐に飛び込み───

 

「これでッ!」

FINISH(最後だ)!!』

 

形成した黒の剣を脳無の胸に突き立てた───。

 

 

 

 

 

 

 

「は………?」

 

 

死柄木の腑抜けた声が漏れる。

それも仕方の無い事なのかもしれない。

 

「そんな小さな剣で倒せると本気で思ってたのか?」

 

僕の最後の抵抗。

形成したのは僅か10cm程の短剣(ダガー)だった。その程度の刃で脳無を倒せる筈も無く僕は黒い巨体の敵に首を掴まれ締め上げられていく。

 

「息……が………ッ!」

 

 コイツ。力が凄まじい……ッ!このまま窒息……いや、圧断する気かッ⁉︎早く……早く何とかして………ッ⁉︎

 

「来正君ッ!!」

 

 意識が朦朧としていく僕の視界に飛び込んで来たのはコチラに飛んで来る緑谷君だった彼は何故か拳を振りかぶり、力を込めて………って緑谷君⁉︎何してるの君!なぜにこっちに向かって腕を振りかぶって……えっ、ちょっと待って?なんで僕に向かって来てるの?待って、やめて、死にたくn

 

「SMASH!」

 

ゴォッ!!!

 

 直後、僕に凄まじい暴風が襲いかかった。バラエティで見かける芸人が巨大扇風機に向かって進むアレとは比較にならないレベルで僕は大きく吹き飛ばされる。

 

 う わ ら ば 

 

 飛ばされた僕はそのまま地面にキスする羽目となる。し、死ぬかと思った……ッ!緑谷君が寸止めしてなかったら今頃、首から上が無くなっていた……!

そう思っていると僕を吹き飛ばした張本人(緑谷君)が駆け寄って来る。

 

「大丈夫!?来正君!!」

 

「だ、大丈夫 だけど何で僕に……?」

 

「ごっ、ごめん!だけどアイツに物理攻撃は効かないからさ!本当にごめんッ!」

 

 そう言いながら頭を下げる彼の姿に良心がチクリと痛む。確かに言われてみればアレが良かったのかもしれないが、ボロボロになった緑谷の腕を見て僕は罪悪感を覚えてしまう。

 

「さっきのはびっくりしたよ。オールマイトの一撃に匹敵……いや、それ以上だ」

 

「………ッ」

 

「そう言えば忘れていた……!」

 

 僕と緑谷君は立ち上がりファイティングポーズを………あ、ダメだ。今、片腕が折れてるんだった。

それに加えて緑谷君も片腕がボロボロで見た目がグロい事になっている……あ、やばい。なんか血を流し過ぎたのかなんか謎の浮遊感が襲いかかって来た…………あれ、なんか本当に浮いてない?

 

「無茶し過ぎよ来正ちゃん」

 

「蛙吹さん!?」

 

「梅雨ちゃんと呼んで」

 

 僕と緑谷君は蛙吹さんの舌に巻き取られ彼女の元に引き寄せられる。すると僕達よりも小さな身体を持った峰田君が両手に紫色の球体を持ちながら前に出る。

 

「おっ、お前等は何でそんなに無茶するんだよ〜〜〜ッ!」

 

「え、いや……」

 

「そんなんだとオイラだってやらなきゃいけない空気になっちまうだろうがぁ〜〜〜〜ッッ!」

 

 涙を浮かべ、ガタガタと膝を震えさせながら彼は叫ぶ。今にも逃げ出したいと言う気持ちがコチラにも伝わって来ると言うのに、峰田君は()()()()()()()()()

 

「オイラは怖いんだよッ!あんな敵と戦うと思っただけでチビりそうになる……だけどッ!そんな怖ぇ敵に()()()()()()()()()()()()()()()()()と思っちまったんだ!」

 

「峰田君……!」

 

「責任取れよなッッ!オイラも立ち向かうから死なないように頑張ってくれよッッ!!」

 

「緑谷ちゃん、腕は大丈夫?」

 

「な、なんとか……峰田君、僕等で頑張ろう!」

 

「わ、分かってらぁ!そんな事ッ!今度はオイラ達が守る番だ!」

 

 三人は僕を守るように立ち、それぞれ構えを取る。片腕がダメになろうとも、恐怖に蝕まれようとも、勝ち目が無いと分かっていようとも、その姿は僕にとってのヒーローだった。

 

 

「友情ごっこは楽しいかい?……それじゃ、やれ」

 

 

脳無が三人に向かって走り出した瞬間、演習場の入口から爆音が響く。

僕等の前に希望が、平和の象徴が現れた。そのヒーローの登場に安堵し、泣き、笑う者が増えていく。

 

「もう大丈夫。私が来た……ッ!」

 

 怒り心頭の様子で現れたオールマイトは一瞬で僕等を入口近くに運び……えっ、待って。オールマイト速すぎない?団長のチョップを見逃さなかった人でも目で追う事出来ないんじゃないのコレ。

 

「来正少年。その様子を見る限り頑張ってくれていたようだね」

 

「いや、僕は……」

 

「ありがとう。皆を守ってくれて……次は私が君達を守る番だ」

 

 僕はオールマイトの言葉に安堵を覚えた。安心した所為か、その場に膝から崩れ落ちてしまう。三人が心配して駆け寄って来たので厚意に甘え肩を貸してもらう事にした。

 

「あとはお願いしますオールマイト」

 

「あぁ!ついでに演習場をここまで壊してくれたんだ。その分もキッチリ返してやらないとな!」

 

(……あ、違います。それはシンビオートが勝手に)

 

そんな事実を言う暇も無く脳無とオールマイトの激闘が始まる。

 




今回はギャグ少なめ。戦闘主体だから仕方ないね。



キャラクター解説

『脳無』
敵連合の対オールマイト用兵器。ぶっちゃけ、こんなのに勝てるわけねぇだろ。と言いたい程のチート級個性持ち。marvelに出てもおかしくない見た目。


〜〜用語解説〜〜


・ハルク
天才物理学者のバナー博士がガンマ線を浴びた影響により興奮すると緑色の巨体に変身した姿。MARVEL中トップクラスの身体能力を持つ本当の意味でやべーやつ。

・ハルクバスター
アイアンマンことトニー・スタークが作り出した対ハルク用人型決戦兵器。MCUのインフィニティ・ウォーではバナー博士自身がコレに乗り込んだ事もある。

・ヴィヴラニウム
ダイヤモンド以上の硬度と強度を誇り、且つ軽量。さらに限界まで振動と運動エネルギーを構成分子内に吸収して硬度を増す上にウラン以上のエネルギーを秘めているトンデモ鉱石。
キャップの盾やブラックパンサーのスーツに使われている。

・ブラックパンサー
ワカンダ国の君主であるティチャラがスーツを纏った姿。儀式によって強化された身体能力に天才的な知性と厳しい鍛錬、格闘術を兼ね備え、更には最先端技術を駆使するヒーロー。

・ウルヴァリン
動物的な感覚、反射神経、回復能力。そして骨格にアダマンチウム合金と言う世界最硬の金属を組み入れられたヒーロー。ちなみに人よりも老化が遅く現時点では100歳を越えていたりする。

・仮面ライダー
主人公が仮面ライダーに変身し、怪人と言う敵と戦う特撮ヒーロー。日本で生まれたこのヒーローは現在でも高い知名度を誇る。

・サノス
MARVELにおいて最強の敵の一人。高度な文明を誇るタイタンの統治者の息子。MCU版においては宇宙のバランスを保つ為にインフィニティ・ストーンを使い全生命体の半分を消し去る。
しかしコミック版においては死の神デスに一目惚れして銀河中の魂をプレゼントするために宇宙を虚無へ帰そうとするやべーやつ。

すみませんサノスさん、デスは既に彼氏が居るんですよ………。



感想欄で見かけたのですが、淫夢用語って控えた方が良いんですかね………?



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10話 違う!シンビオートが勝手に宣戦布告を!



投稿が遅れてしまいました。
プライベートの都合上、色々ゴタゴタして投稿するのに時間が掛かりました。本当に申し訳ない。




 

 

やぁどうも皆、主人公だよ。

……ちょっとごめん、今、腕が痛いから軽口は言えそうにないね。

 

 オールマイトの登場により敵達に動揺が見られる。その間に僕等が出来る事と言えば此処から避難することだ。僕等のNo.1ヒーローは最強なんだ!と言わんばかりに先生は周囲の敵を圧倒していく。

 

もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな……。

そんな無双っぷりを見せつけられると()()()()()()()()が無駄になった感じがするので色々と虚しい気持ちに包まれる。

 

うん、まぁ いいや(投げやり)

だってオールマイトだしね、仕方ないよ。あの人ってRX並の補正(?)を持っているだろうからどうせすぐに敵達を倒すだろう。

 

「それじゃ皆。早くここから逃げよう……痛たた、クソ。腕がもげそう」

 

「無理しちゃダメだよ来正君」

 

「緑谷ちゃん。それはブーメランよ」

 

 片腕が思い切りボロボロになって紫色に変色している緑谷君にそんな言葉を掛ける蛙吹さんに感謝しつつ、この場から早く離れる事にする僕達。こんな事ならシンビオートを戻しておけば良かったなぁ。

……そう言えば何か忘れている気がするんだけど気のせいかな……?

 

「……あっ」

 

「お、おい!いきなり思い出したように言葉を漏らすなよ!」

 

「どうしたのかしら来正ちゃん」

 

「いやさ、オールマイトにあの脳無ってヤツの個性を伝え忘れていたけど……伝えた方が良いのかな?」

 

「何言ってるんだよ!あのオールマイトだぜ?そう簡単にやられる訳n───

 

 

 

「ぐおおおおおおッ!shit!」

 

「いいぞ脳無。そのままだ、そのまましっかり抑えつけていろ」

 

どう言う状況!?

オールマイトが脳無を掴み、その掴まれている脳無がオールマイトを掴んでいると言う絵面、字面共に大変シュールな光景に僕は呆気に取られる。

 

……目を凝らすと敵の個性によるワープでそう見えるだけだった。なーんだびっくりしたなと安堵すると………いや、安堵してる場合じゃなくない?

脇腹から、かなり血が流れてるけどオールマイト大丈夫?

 

「これしきの事で……グォオッ!?」

 

 あ、駄目なやつだこれ。思い切りグォオッ⁉︎って言ってた上に口から血を吹き出していたし。

……えっ、これってもしかしなくてもピンチ?

 

 そんな事を思っていると隣から誰かが飛び出すのに気が付く。

ボロボロの腕を揺らしながら緑谷君はオールマイトに向かって………いや何やってんの君!?

 

「オールマイトォ!」

 

「オールマイトォ!じゃないよ!腕壊れたまま突っ込むやつがある⁉︎」

 

 やばい、このままじゃ緑谷君が怪我を負うどころの話じゃない!

最悪殺される可能性だってある事を想定した僕はシンビオートを呼び出そうとした瞬間、()()()()()

 

「どけ!邪魔だデク!!」

 

「かっちゃん⁉︎」

 

 爆音の正体は爆豪君の攻撃によるものだった。更に次の瞬間、脳無の半身が凍り付くと同時に死柄木達の元に何かが降り注ぐ。

 

「ッ!?」

 

その降り注いだ何かは爆発を起こし、周囲に煙が充満する。そんな煙幕が漂う中に死柄木に向かって人影が接近するのを僕は見た。

 

「おるァッ!!」

 

「ぐッ!?」

 

「切島君!?」

 

「加勢しに来たぜ緑谷!」

 

 よく見ると切島君以外にも八百万さん、耳郎さん。轟君に加え上鳴君も居る事に気付く。

右手を構えた轟君を筆頭に皆は口を開いていく。

 

「平和の象徴はてめぇらごときに殺れねぇよ」

 

「スカしてんじゃねぇぞモヤモブがぁ!」

 

「私達を甘く見ないでもらいましょうか」

 

「ウチ等はコレでもヒーロー志望だからね」

 

「ウェ〜〜……な、舐めるなよ!」

 

「皆……、コレは頼もしいよ!……一名は除いてだけど」

 

「おい、そりゃねぇだろ来正⁉︎」

 

 うーん、一瞬アホ面のままだったけど?言っちゃ悪いけど今の上鳴君はどうも頼りにならないと言うか……いや、戦力としては有り難いよね。僕自身、贅沢言える立場じゃないしね。そんな僕の元に八百万さんが駆け寄って来た。

 

「酷い怪我……、待って下さい。今包帯を創りますわ!」

 

「うん、ありがとう。出来れば緑谷君の分もお願い。あっちの方が重症だからさ」

 

 そう言うと八百万さんは鉄の棒を添え、グルグルと包帯を巻いていく。手慣れている感じからすると応急処置の訓練とか受けて来たのかな?流石はセレブ。

 

「つーか、そんな怪我してるならシンビオートに治して貰えばいいでしょ」

 

「それもそうなんだけどさ耳郎さん。今、あいつはお取り込み中により使えない状態なんだよね」

 

「ハァ⁉︎何それ!上鳴より使えないじゃん!」

 

 おっと……心は硝子だぞ。

そんなやり取りをしていると黒霧と呼ばれている敵を押さえつけている爆豪君が声を上げる。

 

「動くな!怪しい動きをしたと俺が判断したらすぐ爆破する」

 

「ヒーローらしからぬ言動……」

 

「それを言うなら来正の方がもっと酷いと思うぞ?」

 

 おっと……心は硝子だぞ?(二回目)

色々と泣きたくなって来たけど、そうこうしている間にオールマイトは脳無の拘束から抜け出す事に成功する。

横腹を抑えているけど、かなりのダメージを喰らったのかもしれない。

 

「攻略されたうえに全員ほぼ無傷。すごいなぁ最近の子供は。恥ずかしくなってくるぜ敵連合」

 

 何やらネガティブ発言を口にし始めた敵連合のリーダー。このままオールマイトに任せれば恐らく勝ってくれる筈なんだろうけど……それは得策じゃない。そう思った僕は前に出て死柄木に向かって口を開く。

 

「その通り。戦力的にはコチラの方が有利だけど……今の内に回れ右をして帰ってくれたら嬉しいんだけど……どうします?このまま勝ち目の無い戦いに挑むか、それとも逃げるを選択して体勢を立て直すか。……頭の良い貴方ならどれが最善か分かると思いますけど?」

 

 そう僕が言うと周りは驚いたような表情を浮かべる。

いや、仕方ないでしょ?確かにオールマイトが居てくれれば安心出来るけど……、オールマイトはヒーローである以前に人間だ。

怪我だってするし体調だって崩す。このまま戦わせるのも危険だと思う。

 

いや、中学校卒業したばかりの僕が何様のつもりなんだと思っているだろうけど……僕だってヒーロー志望だ。怪我人を無理矢理戦わせたくない。

 

「へぇ、……それじゃあ」

 

 瞬間、視界の隅で脳無がピクリと動くのを確認した。すると、凍り付いた身体はバラバラに崩れていき、そこから新しい肉体が植物が成長するかのように生えていく。

僕は咄嗟に皆に向かって言葉を投げかける。

 

「気をつけろ皆!あの黒い(ヴィラン)は再生能力持ちだ!」

 

「うぇっ⁉︎気持ち悪っ!」

 

「なんだあの再生スピード。半端じゃねぇ……!」

 

「その通り。脳無はオールマイトの100%にも耐えられるよう改造された超高性能サンドバッグ人間さ」

 

 僕とシンビオートが与えた以上のダメージを簡単に再生させた脳無。ハッキリ言って状況は最悪だ。こんなのにどうやって勝てば良いのか分からない。

何か抜け道があれば……!

 

「それじゃあまずは出入口の奪還だ」

 

 相手がそう呟いた瞬間、脳無は爆豪に向かって駆け出した。僕等が目で追えないスピードで突進をしたのだろう。

爆豪君が居た場所に脳無は立っていた。

 

「かっちゃ───」

 

「あ?」

 

「うわっ!爆豪君がワープした⁉︎」

 

「違ぇよ黙れカス!」

 

 相変わらずな辛辣に心を痛めながら僕は爆豪君が先程まで居た所に視線を移す。そこには背骨折りの状態で捕まったオールマイトの姿があった。

 

「オールマイト!」

 

「庇ったのか……、流石は平和の象徴だなぁ。脳無そのまま背骨をへし折ってやれ」

 

「ぐぉぉおおおおッ!!」

 

 何とか脱出を試みようとするオールマイトだが脇腹の傷の所為で抜け出せないらしい。爆豪君達が助けようとその場から動こうとするが死柄木はこちらに向かって言い放つ。

 

「おいおい………()()()

 

「「「ッ!」」」

 

「今、脳無はゆっくりとオールマイトの身体を反らし始めている所だ。もし動いてみろ、オールマイトは一瞬であの世行きだぜ?」

 

「ッ!テメ────」

 

 爆豪君が一歩踏み出した瞬間、脳無の腕に力が入ったのかオールマイトから声が上がる。

 

「ぐあッッ!」

 

「ハハハ、動くなって言ったろ?お前、馬鹿か?」

 

「ッ!」

 

 こちらを嘲笑うかのように両手を広げる死柄木。手を模したマスクの所為で表情は伺えないけど、ニタリと笑っているのが言動で丸わかりだ。

 

「生徒の前で醜態を晒している気持ちはどんな気持ちかなオールマイト」

 

「ぐっ───!」

 

「さて……、それじゃあどうしてやろうかな」

 

……状況は最悪だ。敵連合と言う奴等の目的はオールマイトの殺害。そして僕等はそのオールマイトを人質に取られている。僕の予想通りなら……死柄木は好き勝手やった後にオールマイトを殺す事が簡単に予想できる。

 

 だからこそ、こう言った事態に備えて保険を掛けておいた。後は時間の問題だ。いや、本当に時間の問題なんだよなぁ……。

 

「……よし、お前」

 

「………」

 

「そこで突っ立ている腕に包帯を巻いたお前だよ」

 

「あ、僕?」

 

 なんだろう、急に呼ばれたけど……あっ、なんか嫌な予感がして来たぞ?

 

「お前には死んでもらおうか」

 

「直球!?」

 

 こいつ⁉︎ストレート真ん中で攻めて来やがったッ!何とか時間稼ぎしようと思ったけどそれどころの話じゃない!

 

「お前には散々レンガを投げられたからなぁ……!」

 

「違う!シンビオートが勝手に!」

 

「だとしても連帯責任だろうが」

 

 くっ!敵なのに正論を言ってくるとは……!

だとしても死ねって直球過ぎやしませんかねぇ!?

やばい、このままだと保険が無駄になるどころの話じゃなくなるんだけど!早くしてくれないかなシンビオートのやつ!

 

「貴様ッ!私の生徒に……!」

 

「安心しろよ。ちゃんと一対一で殺してやるから」

 

 安心できる要素が一切無いのは僕の気の所為じゃないよね?クソ、少しでも時間稼ぎができればオールマイトを助けられるんだけど……!

 

考えろ。どうする?こんな時、キャップならどうする?

……あぁッ駄目だ!キャプテンなら真っ先に自分の命を捧げるぞ!自己犠牲精神凄いな流石キャップだチクショウ!

 

せめて、せめて別のキャラクターなら一体何を考える?

一体何を─────

 

 

 

「おい、そろそろ良いか?さっさt「ダンス対決だ」…は?」

 

ダンス対決だと言ってる

 

「「「「「「………えっ」」」」」」

 

 

 腑抜けた声が開始の合図と言わんばかりに僕はリズムに乗りながらその場で足踏み、手を激しく振り、体全体を回転させるなどの動きを行う。

 

「何をやってるんだお前……?」

 

「ダンス対決だよ、アンタと僕のね」

 

 自分ながら見苦しい事を呟きながら腰を振る。画面の向こう側の人達は何を血迷ったのか困惑しているに違いない。大丈夫、僕自身も多少は困惑しているからね(白目)

軽く投げやりになりながらも僕は八百万さんに向かって指をさす。

 

「よし、八百万さんの番!」

 

「えっ、あっ、はい!?」

 

「やるね!流石はお嬢様だ!」

 

 うん、流石にスターロードをチョイスしたのは今でも後悔している。相手がNGシーンのロナンようにダンス対決に乗ってくれるなら良いけどさ。これって逆に相手を怒らせるだけで終わると思うんだけど。

 

「お前……、本当に何をやっているんだ?黒霧、分かるか?」

 

「いえ……ですが警戒をする事に越した事は無いでしょう。相手は子供の中でも中々頭がキレるようですから」

 

……あれ、何か勘違いしてない?それなら好都合。ハッキリ言わせてもらうけどこのダンス自体には意味無いからね?ふしぎなおどりで相手のMPを奪う効果とか無いからね?

 

「もしかして来正君の個性……?」

「踊るのが個性なのか?」

「なんでアイツはこんな時に踊っていられるんだ?」

「気でも狂ったんじゃねぇの?」

「期待したウチが馬鹿だった」

「死ね」

 

 後半から辛辣ゥ!!中でも爆豪君はストレート過ぎるよ!控え目に言って死にたくなって来たけど、それでも僕は踊るのをやめない。いや今すぐにでもやめたいけど!

 

「……まぁ、いいか。すぐに殺せば問題無いよな」

 

 問題しか残らないと思うんですけど(名推理)

何この極端な理論⁉︎この敵の頭の中は0か100かで物事を決める訳なの⁉︎

おおお、落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない、……いや踊りながら落ち着ける訳ないんだけど……あっ。

 

「……で、お前はいつまで踊ってるつもりだ。いい加減ウザいからやめろ。て言うか何のつもりだよソレ」

 

「何って、お前の気を逸らしているんだよ。おめでたい奴だな………それと()()()()()()()()()()()

 

「上だと────

 

ゴオッ!!

 

 瞬間、頭上を警戒していた死柄木は黒い何かによって()()()()()()()

 

……あー、うん。頭上注意って言うと大抵は上以外への注意は疎かになるけど、まさか本当に引っかかるとは思わなかった。言ってみるもんだね。

 

「上から来ると言ったな。すまん、ありゃ嘘だ」

 

「き、来正!今何やったんだ?つーか騙し討ちかよ汚ねぇ!」

 

 戦っている相手の言葉を鵜呑みにしている方が悪い。なので親善大使のように言わせてもらう。僕は悪くねぇ!

まぁそんな事はどうでも良いとして、どうして急に相手が吹っ飛ばされたのかと言う切島君の疑問に答えさせてもらおう。

……と、言っても目の前の光景を見れば分かるかもしれない。

 

「馬鹿な……何故、私達を攻撃する!」

 

「どう言う事だ……、どこか欠陥があったのかよ……!」

 

 

 

 

「なんで()()()()()()()()()()()()()()ッ!?」

 

 

 

 

 目の前には死柄木に攻撃した脳無が僕等に背を向けて立っていた。

相手だけでなく、クラスの皆も驚愕の表情を浮かべていた。

そりゃあ、びっくりするよね。さっきまでオールマイトを殺そうとしていた相手が急に仲間割れするなんてさ。

 

……と、言うわけで答え合わせの時間です。

みるみる内に脳無の身体は黒い粘液状の何かに覆われていき、鋭い白眼がギロリと現れた。そのままグパリと剥き出しの牙が並んだ口が大きく開かれる。

 

ハハハハハ‼︎救世主の登場だ!!』

 

「その声……シンビオート君!?」

 

 聴き覚えのある濁声に緑谷君は反応を示す。いやぁ、それにしてもただでさえ凶暴だったシンビオートが更に凶悪な姿になったなぁ。僕に憑いていた時よりも身体が大きい。

そんな事を考えていると黒いモヤを揺らしながら敵の一人が口を開く。

 

「貴様……まさか脳無を!」

 

「お察しの通り。脳無の身体にシンビオートを取り憑かせて貰ったよ」

 

 ちなみに取り憑いたのは脳無にダガーを突き刺した時だ。刺した瞬間にシンビオートを身体の中に潜り込ませ身体を寄生させてもらった。あのままじゃ倒せないんで搦め手を取らせてもらったよ。

 

そんな僕の言葉に応えるかのようにシンビオートは腕をグルングルンと回し口端を吊り上げる。

 

『この身体は強い。が、居心地は最悪だな。薬品臭いし、身体中はバキバキだ……おっと、言っておくが主導権はオレが握っている。もうコイツに命令が届く事はないからな』

「と、まぁ。コイツの言う通り、オールマイトに加えてその平和の象徴に対する切り札もこちら側だ……もう一度言わせてもらうけど、今の内に回れ右して帰った方が良いですよ?」

 

 まぁ、無事に帰れればの話だけど。そんな事を口にすると身体中に手を付けた敵が首をガリガリと掻き始める。

 

「ああ、クソ。このヒーロー気取りのガキが……!」

 

 憎悪の篭った目をこちらに向けながら相手は駆け出す。両手を広げ確実に自分を殺そうと感情的になっているのが分かる。

 

Bang‼︎

 

「うおッ⁉︎」

 

「狙撃⁉︎……まさか!」

 

「すまない皆!先生たちを呼び出すのに時間がかかってしまったッ!」

 

 敵の腕を撃ち抜いた弾丸が飛んできた方向を見ると、そこにはプロヒーローである教師達を引き連れた飯田君の姿があった。

 

「1ーAクラス委員長、飯田天哉!ただいま戻りましたッ!」

 

「飯田君!」

『居ないと思ったら教師にチクっていたか、判断がいいな』

 

「ふざけやがっ───ッ⁉︎」

 

 死柄木の身体に向かって弾丸が無慈悲に放たれる。

やべぇよ、スナイプ先生容赦無いんだけど……!目の前で人が撃たれている光景がトラウマになりそうなんだけど……⁉︎

 

そんな事を思っていると敵は黒い靄に覆われ弾丸は別の方向へワープしてしまう。どうやらこのまま逃げるらしい。

 

「死柄木弔!!撤退を!」

 

「…今回は失敗だったけど今度は殺すぞ、平和の象徴オールm」

 

シンビオートは

レンガを 投げつけた!

 

しかし塵にされてしまった!

 

「三度目の正直だ。そう何度も喰らうと思うn

 

ごしゃ

 

シンビオートは

レンガを 投げつけた!

 

こうかは ばつぐんだ!

 

 

『三度目の正直?何言ってるんだアイツ』

「シンビオート⁉︎」

 

 隙を生じぬ二段構え⁉︎シンビオートのやつ高速で学習してるの⁉︎と言うかそのレンガは何処から持って来たんだ?……あっ、もしかして今って捕まえるチャンス?

 

「シンビオート逃すな!触手で捕らえるんだ!」

『よし来た!』

 

 そう応えながら植物のように腕を伸ばし敵を掴む事に成功する。

……が、ワープホールが途切れブツンと音を立てながら伸ばした腕は千切れてしまった。

 

『逃げられたな』

「……駄目か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事の顛末を話そう。

あの後、教師達が残った敵達を制圧して負傷者は僕と緑谷君の二名となっており他はそれほど大した傷も無く全員無事と言う結果に終わった。

あと脳無についてだけど、何故か不気味な程に静かで抵抗も無く警察に引き取られる事となった。シンビオートが脳を突いたりしていたけど……まぁ、それは良しとしよう。

 

ところで相澤先生、13号先生。そしてオールマイト先生の怪我について。13号先生とオールマイト先生については安静にしていれば問題無いらしいけど、相澤先生は頭部へのダメージが凄まじく目に後遺症が残るらしい。

……今でも思うけど僕はあの時、先生よりも緑谷君達を優先してある意味で見捨てる形となってしまった。

シンビオートは気にするなと言ってるけど………僕は罪悪感で胸を締め付けられる事となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………そんな事件から臨時休校を挟み2日が経過した。

教室に入った僕は皆が無事だと言う事実に安堵すると同時に僕は何処か戸惑いを感じていた。そんな僕に気付いたのか上鳴君が肩に腕を回して来た。

 

「おいおい、なに暗そうな顔してるんだよ!敵達を相手に大活躍した主役なんだからもっとテンション上げていこうぜ!」

 

「あ、うん……そうだね。ありがとう上鳴君」

 

「……ねぇ、どうしたのさ来正。アンタちょっと暗過ぎるよ?」

 

そんな僕に見兼ねたのか耳郎さんが声を掛けて来る。

 

「あぁ、いや………」

『気にするな。コイツはあの後、ナーバスになってるだけだ。もっと救えた〜とかもっと戦えたとかウジウジ呟いてな』

 

「……はぁ? 何それ自惚れてんの?」

 

 シンビオートの言葉に耳郎さんは呆れたような表情を浮かべる。

……おぉう、なんて言うんだろう。これが養豚場の豚を見るような目と言うんだろうか。心に物凄く突き刺さって辛い……。

 

「アンタさ、私達や先生も助けた上に敵達と戦ったんでしょ?それって十分に凄い事じゃん」

 

「……えっ?」

 

「確かに先生は大怪我負ったけどさ。アンタが助けに来なかったら私や八百万。あとついでにこいつ(上鳴)もどうなっていたか分からなかった。……素直に来正は凄いと思うよ。だからそれでイイじゃん」

 

「………耳郎さん」

 

 耳郎さんの言葉を聞いて僕は心の何処かで温かいものを感じる。

……そうか、ちゃんとヒーローらしく助ける事が出来たんだね。

 

「……ありがとう、なんかスッキリしたよ」

 

「いいよ、お礼なんて。て言うか逆にこっちが言う側でしょ」

 

「……ハハッ、そうだね」

 

「なになに〜〜〜?」

「なんかイイ感じの気配をキャッチしたぞ〜〜〜〜?」

 

 

 ニッと笑う耳郎さんに釣られて僕も笑っていると背後から何者かが忍び寄って来る。振り向くとニヤニヤと不敵な笑みを浮かべた芦戸さんと葉隠さんが立っていた。……いや、葉隠さんは透明だから分からないけど。

 

「やめてよ二人共。そう言うんじゃないから!」

 

「その通りだよ二人共、現時点で耳郎さんに対してはそう言った感情は抱いてないからさ」

 

「その通r───待って、それはそれでムカつくんだけど」

 

「皆!朝のホームルームが始まる!私語を慎んで席に着け!」

 

「あー、飯田君。残念なお知らせだけど……座ってないの君だけ」

 

 僕がそう言うと悲しそうに飯田君は席に座る。

……うん、なんと言うかさ、頑張ってるけど空回りしてる感じが否めないね。

 

「そう言えば、今日のホームルーム誰がやるんだろ?」

 

「そうね。相澤先生はケガで入院中のはずだし…」

 

 芦戸さんと蛙吹さんの会話が耳に入って来る。それを聞いて僕は不安に……いや、さっき耳郎さんに言われた通りだ。後から何か出来たと悔やんでいても仕方の無い事なんだ。

 

先生は僕等を守ってくれた。なら僕等に出来るのは、これからも先生の教えをこれからも守っt───「おはよう」

 

「「「「「先生復帰早ええええッ!」」」」」

 

 視線を向けた先には全身を包帯でグルグルに巻いた相澤先生が。

……よし、ちょっと理不尽かもしれないけど言わせてもらうよ?

 

シ リ ア ス 返 せ

 

『なぁ、どんな気持ちだ?気持ちを一新にしようとしたら台無しにされたのはどんな気持ちだ?』

「何度も言うけど言わせてもらうよ。心は硝子だぞシンビオートォ!」

 

「うるさい静かにしてろ」

 

「あ、すみません」

 

 怒られてしまった 解せぬ。

 

「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ戦いは終わってねぇ」

 

「まだ!?」

 

「まさか敵の襲撃が⁉︎」

 

「何が始まるんです?」

 

『大惨事大戦だ』

「コマンドーは確実に関係無いからね」

 

 僕等の疑問に相澤先生は包帯の下から見える眼差しを細め呟く。

 

「……雄英体育祭が迫ってる」

 

「「「「「クソ学校っぽいの来たあああ!!!!」」」」」

 

……あぁ、そう言えば雄英の体育祭ってこの時期に開催されるんだっけ。オールマイトが教師になったり敵連合が攻めて来たりと色々な事があったからすっかり忘れてたよ。

 

 どうやら敵に侵入された事により今年は今までのと比べ警備を五倍に強化するらしい。まぁ、オリンピックに代わるビッグイベントに加えて雄英の危機管理体制が盤石だと示すって考えなら納得だね。

 

「年に1回、計3回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ。その気があるなら準備は怠るな!」

 

「「「「「ハイッ!!」」」」」

 

 相澤先生の言葉に僕を含めたクラス全員の声が室内に響く。ヒーローとしての第一歩を踏み出す為、僕等は気持ちを一新にするのであった。

 

『今度はちゃんと格好付けられて良かったな』

「よしシンビオート黙っていようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み。体育祭を目前にしてクラスの皆はどのように目立とうするか計画を立てたりソワソワと落ち着かない様子の者が居る。

ちなみに僕はソワソワと落ち着かない部類に入る。だってめちゃくちゃ緊張するし、さっき相澤先生に「選手宣誓するだろうから何言うか考えとけ」って言われたし。

 まぁ、それは置いておいてこんなタダでさえキャラの濃いクラスの中で異彩を放つオーラを纏う者が一人。

 

「デク君、飯田君、来正君、頑張ろうね体育祭」

 

麗日さんである。

もう見た感じから色々と様子がおかしい。なんと言うか覚悟ガンギマリして今にもジョジョ風の擬音が出てきそう(小並感)

話によると麗日さんは金銭目的でヒーロー科に入ったらしい。第三者から見ると志はみっともないかもしれないけど、言い換えれば貧乏な家族の為に頑張ってくれている良い人柄とも言える。

 

「そんなにお金に困ってるならバイトでもしたらどう?」

 

「うーん、そうなんだけどここら辺に良いバイトが無くて……」

 

『文字通り身体で稼ぐバイトはどうだ?短時間の上に高給料だ』

「シンビオート!?」

 

「ちょっと、それについて詳しく」

「麗日さん!?」

 

 

 そんなやり取りがあった昼休みも過ぎ、放課後の時間となる。先生の話が終わり教科書を鞄の中へ詰めていると麗日さんの声が室内に響く。何だろう?と視線をそこへ向けると廊下に多数の生徒が教室を覗き込んでいたのだ。

 

「出れねぇじゃん!何しに来たんだよ!」

 

「敵情視察だザコ」

 

 あぁ、成る程。体育祭を前にして話題になってる僕等を見に来たって感じね。ナチュラルに雑魚呼ばわりされてる峰田君ェ……。

廊下の生徒達に向かって爆豪君が煽りまくってるけど止めた方が良いよねコレ。そう思ってると人混みを掻き分けて気怠そうな生徒が前に出てくる。

 

「噂のA組どんなもんかと見に来たが随分と偉そうだよなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」

 

「あ、いえ違う違う。爆豪君はヒーロー科の中でアレな部類なだけなので」

 

「あ゛?」

 

『ハハハ!アレな部類だと!もっと言ってやれキョウセイ!』

「……この黒いのもアレな部類です」

『!?』

 

「ふーん……知ってた?そんな俺らにも学校側はチャンスを残してくれてる。体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしい」

 

 知 っ て た

……と言うより、それよりも酷い目(初日から除籍処分)に遭いかけたんですけど(半ギレ)

とにかくコレって挑発しているけど……宣戦布告って捉えて良いのかな?それならあまり刺激しないようにしn……

 

『宣戦布告のつもりだな、それなら今この場で手脚が無くなっても問題無いよなぁ!!』

 

「うぉッ!何だコイツ!?」

 

何やってるのシンビオート!?

 全身から鎌とか斧とか色々生やして今にも襲い掛かりそうな雰囲気だ。いや、こうなる事は薄々分かっているつもりだった!だって多数に挑発されて我慢出来る訳ないしね!……いや、納得してる場合じゃないよ!

 

「やめろ!落ち着けシンビオート!」

『そう言うな、これからが良いところなんだ……さぁて、三枚下ろしに挽肉、ミキサー。好きなのを選ばせてやるぞ』

 

「ぐっ、やめろ!このッ……"落ち着け"ッ!」

 

『落ち着いた』

「うわぁ!いきなり落ち着くな!」

 

 あ、なんか屋内訓練の時でもこんな事あった気がする。と言うかいきなり落ち着いてどうしたのさシンビオート。

 

「大丈夫?チョコ食べる?」

『…………』

 

 へんじない ただのしかばねのようだなんで黙ってるかはさて置き、生徒数名がコチラにヘイトを向けているのが分かる。

たった数名か……うん、今のところその程度で済んで良かっt

 

「上にあがりゃ問題ねぇ」

 

「隣のB組のモンだけどよぉ!ヴィランと戦ったっつうから話聞こうと思ったんだがエラく調子づいちゃってんなオイ!」

 

「るせぇ、引っ込んでろ」

 

………っと、十数名に増えたけど予想の範囲内。

ほとんどが爆豪君に対するものだからコチラとしては問題はn

 

『おい、そこをどけ有象無象共。お前達は眼中に無い、さっきのヤツは何処だ!見つけ次第ミンチにしてやるぞ』

「シンビオート⁉︎」

 

「有象無象?」「俺達は眼中無いだと?」「なぁ、アイツ生意気じゃね?」「どうする処す?処す?」

 

「違う、シンビオートが勝手に!……ほらシンビオート謝って!どう見ても100%怒ってるから!ほら!謝って!」

 

 例え相手が起こっても僕等は同じ人間に加えて日本人!争いではなく話し合いで解決するのが一番!だから頼むからこれ以上刺激する事は言わな……待って、どうしてシンビオート笑ってるの?

なんでそのままコッチにサムズアップするの?ねぇ、待って頼むからそれ以上何もしないで?あ、ちょっと!待てストップ!やめて!

お願いだから待っ────

 

 

『FUCK YOU‼︎』

 

「「「「「体育祭を楽しみにしとけ……」」」」」

 

 

「違うんですシンビオートが勝手に!!」

 

体育祭荒れるだろうなぁ(血反吐)

 

 







事件後も 態度変わらぬ 寄生体

恭成 心の俳句。




〜〜用語紹介〜〜

『ロナン』
別名ロナン・ジ・アキューザー。人為的に強化された肉体を持つクリー人。MCU版ではキャプテン・マーベル相手に逃げたり、パワーストーンを手に入れサノス相手にイキったり、スター・ロードにダンス対決を申し込まれたりしている。
ちなみに妻はインヒューマンズのクリスタルだったりする(現在、離婚中)




次回は日常だったらいいなぁ。


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閑話 シンビオートとの華麗なる日常


けものフレンズ3面白くて執筆遅れたんですけど?
どうしてくれるんですか?(責任転嫁)

ところでスパイディがMCUに帰って来ましたね。
やったぜ(ガッツポ)




 

【何がしたいの?】

 

「……これで良しと」

『一々許可を取るのは面倒臭いな』

「はいはいそうだね」

 

「来正君、ちょっとトレーニングについてアドバイスを……あれ、何書いてるの?」

 

「肉体強化の為にトレーニング訓練室の使用許可書を書いてるんだよ。緑谷君も知ってると思うけど放課後は自主練習用に色々な設備が解放されるんだよね。でも競争率高いから早く提出しなきゃだけど」

 

「そ、そうか!いつもはそのまま帰ってたけど……そうか自主練習の為、授業以外にも使って良いんだった!盲点!」

 

 そんな緑谷は頭を抱えつつもブツブツと何かを呟き始める。またこれかぁ…と若干呆れながらも来正は彼を呼びかける。

 

「……あー、もし良かったらこれから一緒に訓練どう?」

『頼むなら今の内にしておけ、しないなら俺達だけで行くからな』

 

「えっ、いいの!?……お、お願いします」

 

 青山君が仲間になりたそうな目を向けている……。

 

「えっと……青山君も一緒にどう?」

 

「華麗な僕にトレーニングは似合わないのさ☆」

 

「あっ、うん」

 

 

 結局二人で訓練室へ行く事となったけど、青山君何がしたかったんだろう。

もしかして本当はついて来たかったのではないかと言う疑惑でモヤモヤする中、僕は教室を出て行った。

 

 

 

 

【終着地点はゴリラ】

 

「あ、緑谷君に来正君!」

 

「二人も来ていたか」

 

「障子君に葉隠さん!」

 

 トレーニングルームに行くと障子君と葉隠さんが自主練習を行っていた。ミットとグローブを装備した様子を見る限りスパークリングをやってるのかな……?

 

 軽い準備運動を終えた僕等は一言を障子君に告げ、ミットを借りる。グローブは……まぁ、最初はパンチの感触を覚えるという事で無しいいかな?

 

「それじゃ軽いスパーリングでもやろうか」

 

「えっ、最初は基礎トレーニングじゃなくて?」

 

「あー。とりあえず緑谷君がどんな感じなのか知りたくてさ。さぁ、どっからでも来ていいよ!」

 

「いや、でも……」

 

 緑谷君は何か納得がいかない様子だ。どうしたんだろうか……あっ、個性の有無についてかな?

 

「言っておくけど個性は無しでね。使ったら確実に死人が出るからね」

『ほう、誰が死ぬって?』

 

「僕とシンビオート」

『それは困ったな……ん?』

 

 だって緑谷君に殴られたら消し飛ぶと思うんだけど(名推理)そう言うと緑谷君は渋々納得したように構える。

 

「そ、それじゃ早速……SMASH!」

 

そのまま手にはめたミット目掛けて拳を突き出し──

 

グギィ

 

あっ、やべぇ音が緑谷君の手首から聞こえた……。

 

「〜〜〜〜ッ!?」

 

「おぉう、手を捻ったか……」

『間抜けな姿を晒してる暇はないぞデク』

 

 目の前で悶絶する緑谷を眺めつつ呼びかけると、彼は立ち上がり再びファイティングポーズを取る。

 

「大丈夫、このまま続けよう……!」

 

「待って、そのまま殴ろうとしないで痛めてるんでしょ!」

 

「腕が折れながら動くのはある程度慣れてるから!」

 

「問題はそこじゃないから!」

 

 一種のサイコパスかな?と思いながら緑谷君の手にシンビオートを纏わせる。アレだね、緑谷君って基礎以前に戦闘慣れしてないよね。

そう伝えると苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

 

「うぐっ、それは……」

 

「それは俺も感じていた。緑谷は個性こそ戦闘向けだが、戦闘技術自体が乏しい。緑谷は今まで訓練はしてこなかったのか?」

 

「そっ、そそそそそれはその色々あってほら僕の個性は確かに戦闘向きだけど腕壊しやすくてそっ、それに最近発現したばかりだからその───」

 

 障子君の発言に思い切り目が泳いでいる緑谷君。なんか個性について聞くとめっちゃ動揺するんだよね、なんでだろ?

 

「持論だけど、僕としては基盤となる格闘技にある程度慣れた上で徐々に個性を組み合わせて行く。そうなると異形系個性の障子君はその逆で、個性を組み合わせた事を前提の格闘技をやっていく感じかな?」

 

「その通りだ、俺の長所はとにかく手数が多い事だ。それを伸ばす為に日頃から腕力強化に励んでいるからな。あとは一つ一つの器官を同時に扱う事に慣れるのも大事だな」

 

「そりゃ凄いよ、確か片手の握力540kgだっけ?単純計算で割ると三本の内、一本の握力だけで180kgって事でしょ。うーんこのゴリラの体現者」

 

「ゴリラは力、知性、優しさを兼ね備えた賢獣だ。褒め言葉として受け取っておこう」

 

「ねーねー、緑谷。二人共全く聴いてない感じだよ」

 

「だっ、だから別にやましい気持ちは……えっ?」

 

 

 

 

【闇が深い系主人公】

 

「フンッ!ハァッ!賢者の拳を受けてみろ!」

 

 タイタスさん筋肉の力お借りします!と、障子君にU-40出身の光の戦士の知識を吹き込んだら何か変な台詞を吐き始めていた。タイタスさんならポージングしろよなぁ!

 

「ッ!」

 

 そんな緑谷君だけど激しいラッシュを受け止める。いなす、受け流す、と凡ゆる防御を見せていき……あれ?よく見ると緑谷君、凄くない?喧嘩とかした事無いって言ってたけど捌ききってるって凄くない?(2回目)

 

「常人三倍以上のラッシュを受け止めてるのって僕でも難しいんだけど、どう言う事……?」

『デクの癖して中々やるな』

 

「あぁ、爆豪との戦いも見たが緑谷は攻撃は苦手だが防御や受け身が上手く出来ている」

 

「何か秘訣とかってあるの?」

 

 葉隠さんがそう聞くと緑谷君は頷き呟き始める。

 

「う、うん。そこはかっちゃんにいつも爆破されたり、小突かれたり、殴られたりされてたから慣れていると言うか……」

 

(((闇が深い………)))

 

僕等はこれ以上踏み込んではいけないと悟った。

 

 

 

 

【女子生徒の将来の向こう側】

 

 緑谷君、障子君のスパーリングを眺めていると葉隠さんがはなしかけてきた。

 

「いいなー、なんか私だけ仲間外れな感じー」

 

「葉隠さんは鍛えたりはしないの?」

『鍛えたところで見窄らしい筋肉すら見えないけどな』

 

「なにぉう!舐めないでよね!こう見えて少しは鍛えてるんだからね、ほら!」

 

 シンビオートの挑発に葉隠さんは裾を上げて腕に力を思い切り入れる。僕はそれに対して目を大きく見開いた。

 

「おぉ!……透明で全く分かんないや」

『直に触れば分かるだろ?』

 

 おっとシンビオート。それセクハラになるからね?触らないじゃなくて触れないんだよ?そんな事をしていると葉隠さんががっくりとした様子で項垂れた。

 

「なんかなぁ、私の個性って透明なだけで緑谷君達と比べると全く強くない感じだよね」

 

「そうかな、僕としては葉隠さんの個性は正直言うとかなり強いと思うけど?」

 

「えぇッ!強いの⁉︎」

 

「ほら、透明人間を相手にしたとしてさ。見えない相手の動きを予測なんて出来ないでしょ?気付かれない内に背後から殴られるって場合もあるし」

 

 BIGBOSSなんてスニーキングからのCQCで兵をあっという間に無力化できるからね。ちなみにCQCの基本を思い出すのよと言われても僕はCQCのやり方が分からないのて無理です。

 

「そっか!それじゃ私がバリバリ鍛えればもっと強くなるって事なんだね!」

 

「うん、まぁそう言う事かな」

 

「よーし!そうと言うなら頑張るぞーー!」

 

そう言うと葉隠さんは脱ぎ始めた。

 

………うん?

 ぬ ぎ は じ め た !?

 

 

「何してるの⁉︎」

 

「何って……脱いでるんだけど?」

 

「此処で⁉︎男子の目の前で⁉︎」

 

 マジかよ本物のストリップショーを披露し始めたんだけど⁉︎なんなの、もしかして女性って脱ぐのが好きなのかな(偏見)

 

「……もう、来正君のエッチ。女の子の身体をジッと見ちゃダメだよ?」

 

「……そもそも、透明で見えないからね?と言うか葉隠さんは人前で全裸になるとか倫理的にどうなの?」

 

「………ッ!?」

 

 よし、表情は見えないけど きっと驚いているんだろうから言わせてもらうよ。

この子に倫理観念は無いのか!?

 

……い、いいや落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない。

それに此処はヒーロー養育で有名な雄英高校!倫理観念ならプロヒーローがキッチリ育ててくれt───

 

 

『私が倫理担当よ!……え、青春?撮影しなきゃ(使命感)』

倫理担当の18禁ヒーロー。

 

 

雄英の女子生徒は全滅だ───」

 

「どうしたの、いきなり不吉な事呟いて!?」

 

 うちの倫理担当が欲望に塗れたある意味で峰田君より危険な人だった事を失念していたッ!

 

「お願いだから葉隠さんはその体を使って法は犯さないでね」

 

「本当にどうしたの!?」

 

 

 

【決め台詞】

 

 黄昏ているとトレーニング室に切島君と尾白君の二人がやってくる。どうやら二人共、格闘技術を磨く為に特訓するらしくよかったら一緒にやるか?と言われたのでお言葉に甘える事にした。

 

「どっからでもかかって来なァ!!」

 

「行くよシンビオート、思い切りだ」

『壊れても自己責任でな!』

 

 シンビオートが全身を覆い、僕の身体は黒の巨体へ変貌を遂げる。

体の方はシンビオートに任せており折角なので僕は口の方を動かす事にした。

 

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ────アリィッ!!」

 

 シンビオートのラッシュが切島君に襲いかかる。一回これやってみたかったんだよね。まぁ流石にファスナーを取り付けるような能力はないケド。

 

「アリーデヴェルチ」

『さよナランチャ』

 

さよナランチャは(いら)ないです。

 

「〜〜〜〜〜〜ッッ!効かねェ!」

 

『オレの攻撃を受けきるとはな!……だけどさっきのは全力じゃないからな、手を抜いていただけだからな、三割の力でやってたからな、本当だぞ』

「負け惜しみはしなくていいよ……けど、シングのように岩石並の皮膚だ。正直言って破れそうに無いよ」

 

「シングってのは分かんねぇけど、そらそうよ!鍛錬に鍛錬を積んで鍛えたこの個性!簡単に破れはしねぇぞ!」

 

──ゴハァ(吐血)

ファンタスティック・フォーも知らないとは……!これだから時間の流れは残酷だッ!

 

「しっかし、お前ってよく色んな台詞がポンポン出るよな。さっきの……さよナランチャ?」

 

「さよナランチャは(いら)ないです」

 

「そ、そうか……けど、俺もそう言う決め台詞入れた方が良いのかなぁ?」

 

「確かに。先生も言ってたけど体育祭ではプロにアピールするチャンスって言ってたしな」

 

 見てもらうには注目を集める、そして注目を集めるに目立つようにしなければならない。そう言われると確かにヒーローの決め台詞って大事なんだなぁ。

 

『こりゃ二人は高難易度だな。タダでさえ地味な個性だ。オレ様の影で悔しがるといいさ』

 

「「地味……」」

 

「シンビオート!……でも、ほら。二人は格闘戦を主体としているんだから格好良く動けばかなり目立つと思うよ?」

 

「格好良くって言ってもよ、例えばどうするんだ?」

 

「やっぱり決め台詞かな?『It's clobberin' time(鉄拳制裁タイムだ)!』とか……」

 

「おおおッ!いいなそれ!他には何があるんだ?」

 

 どうやら好感触らしい。よしファンタスティック・フォーをオススメしよう(使命感)

それにしても他かぁ、作品繋がりで何か無かったっけ?

 

「……ムッシュムラムラ?」

 

「ムラムラ!?」

 

「尾白君はどっちが良いと思う?」

 

「ええっ!?……そ、それは来正が決めた方が良いんじゃ……」

 

(おいぃぃぃいい!?ムラムラはねぇだろ!て言うか尾白は諦めるなよ!)

 

「うーん、鉄拳制裁とムラムラ……うーん……」

 

「鉄拳制裁!鉄拳制裁で頼m───」

 

「ムッシュムラムラの方がユーモアがあって良いかな」

 

「チクショーーーーーーーッッ!!」

 

「ははは…、ドンマイ切島」

 

「尾白君は………」

『特に思い付かないな』

 

「ッ!?」

 

 シンビオート!?言っちゃいけない事をッッ!

確かに一瞬そう思っちゃったけど口に出す事はないだろうがッッ!それを言ったら戦争になるぞ!?

 

「尾白君!別に悪気があったわけじゃ……」

『地味過ぎる上に拳法を使うヒーローなんか特に目立つような台詞は存在しないな、早々に諦める事だな』

 

「シンビオートォ!!」

 

 

 

 

【目立つには】

 

「私だって目立ちたい!」

 

「確かに葉隠の場合目立ちそうにないからね」

 

「アピールの為には個性以外に何かしら必要かもしれないわ」

 

「と、言うわけで来正君にアドバイスをいただきに来ました!」

 

『ヨシ!良い心がけだ』

「ヨシ!じゃないけど?なんで僕なの?目立つなら青山君あたりに聞きにいけば良いでしょ?」

 

 葉隠さんと耳郎さん、そして蛙吹さんが自然に僕の元へやって来た。来たぜぬるりと……!と言う具合に違和感なくコチラへ接近して来た時は口から心臓が飛び出るかと思った程だ。ある意味凄いと思う。

 

そんな僕の質問に葉隠さんが「うん」と呟き答える。

 

「聞いたけど全く役に立たなかった!」

 

青山君ェ…役に立たないって青山君は何を言ったんだ?

……僕のようになればいいさ☆とか?

うん、言いそうだね!そして役に立たないね!

 

「でも、なんで僕なのさ」

 

ハッキリ言って目立つような事なんて心当たり無い───

 

「「「敵の前で踊った」」」

 

ガッツリ心当たりあったわ

 

 正直忘れていた。

ほぼ投げやりの状態で注意逸らす為に体を動かしていたから頭から抜けていたよ。

だとしても体育祭で目立つかぁ……。

 

「……歌いながら戦う?」

 

「「歌いながら⁉︎」」

 

「いや、それってかなり難易度高くない?歌いながらってキツイよ」

 

 ヘーキヘーキ。適合者になれば簡単に出来るさ(暴論)

あれだよSAKIMORI(防人)のように歌って踊れて戦える系のアイドル兼ヒーロー的なの目指せばいいんじゃない?IKUSABA(戦場)に立つUTAME(歌姫)って感じで。

 

「サキモリって何!?」

「イクサバって何!?」

「……ウタメって何なのかしら?」

 

 うーんシンフォギアも分からないかぁ。蛙吹さん辺りは「ごはん&ごはん」って言うとしっくり来ると思うんだけどなぁ。

 

「あ、あのさ来正」

 

「どうしたの?耳郎さん」

 

「そ、その……歌って踊れる系のヒーローって言うか……そう言う作品ある?女の子がカワイイ奴」

 

「……そんな事もあろうかと此処に貴女向けの作品が」

 

「でかした!」

 

 お前も適合者になるんだよォ!と言わんばかりに耳郎さんにオススメすると放課後、嬉々とした様子で教室を出て行く。

多分あの様子だとレンタルしに行ったな(確信)

 

 

 

 

 

 

………後日、絶唱ショックによりダウンした耳郎さんの姿があったのは言うまでもない。

 

 

 

 

【カメオ出演】

 

「そう言えば、雄英ってかなり広いけど掃除って誰がしてるんだろ」

 

 ふと、僕は思った事を口にした。

放課後となり飯田君、麗日さん、緑谷君といつものメンバーで帰る事となったけどこんなに大きな学内なんて掃除しきれるのだろうか?

 

「誰と言っても……俺達が掃除をしているじゃないか」

 

「そうじゃなくてさ、他の学科とか玄関とか。あとは訓練施設とか?雄英って用務員雇ってるのかな?」

 

「だとしたらかなり大変そうだよね……」

 

 麗日さんが賛同の声を上げる。給料は弾みそうだけどかなりの重労働になりそう。ハッキリ言って雄英の敷地の広さって頭おかしくない?

 

「最近のヒーローは無茶をし過ぎる!大丈夫だと見栄を張るが後々になって後悔する事になる!もっと自身を大切にしなければならん!」

 

「は、はぁ……確かにそれはごもっともです」

 

「あ、用務員さん居るよ!」

 

 噂をすれば何とやら。てっきり掃除用ロボットとかが掃除を行なっているものだとばかり……ん?

 

「どうしたのさ緑谷君、まるで知り合いにでも会ったような顔して」

 

「へっ!?あ、いやいやいや!?何!何が!?いや、なんでもないよ!」

 

 落ち着こうか。とにかく落ち着こう。"いや"を何回いってるの?ちなみにこれで四回言ったよ?

………不吉だ(ミスタ風)

そう言えば用務員の人って二人いるんだね。えーっと?金髪でガリガリな痩身の人に白髪でサングラス掛けた人……うーん、どこかで見た事ある風貌だなぁ。

 

「おお、恭成。帰りは買い出しに行ってくれんか?シチューを作ろうにも人参とジャガイモを切らしていてな」

 

「分かったよ。ちょうど駅まで行く用事があったから……ん?」

 

…………うん?待って、ちょっと言わせて?

色々と突っ込む所があるけどこれだけ言わせて?

 

何やってるのおじさん!?

 

「どうした恭成。そんな此処に居ない筈の人間と会ったような顔をして」

 

「いや、いやいやいや!その通りだけどさ!何してるのさこんな所で!」

 

「何をと言われれば見れば分かる通り廊下のモップ掛けだ」

 

「見れば分かるよッッ!」

『それじゃ何で問いかけた?』

 

 そう言う問題じゃないんだよ!何でおじさんが此処に居るの⁉︎何でおじさんがモップ掛けをしてるの⁉︎何でおじさんは僕に説明を行わずに買い出し頼んでるの⁉︎

 

……あぁ、もういいや。そんな事は重要じゃない(投げやり)

 

「そう言えばそちらの方は?」

 

「えっ!?わ、私は……」

 

「こっちは俊徳。私と同じ用務員でな先人としてのアドバイスをしている所だ」

 

「そ、そう言う事だよ、よろしく頼むよ来正しょ……君」

 

「はい、こちらこそ……あれ?僕の名前教えましたっけ?」

『なんだこの怪しいオッサンは?』

 

「What's⁉︎え、えっとだね……」

 

「ハッハッハッ、私が恭成の自慢話をしないと思ったか?耳にタコができる程言い聞かせたからだ。タコと言えばオクタビアスと言う科学者がタコのような多脚アーム実験を行ってると聞いている。そして私が若い頃はデヴィットと言う少年が居てだな。彼は正しく天才的だった───」

 

 あっ(察し)、これ長くなるパターンだ。いつも聞いてるからハッキリと分かんだね。

 

「それじゃ僕等は失礼するよ……ほら、逃げるよ早く早く!」

 

「え、あ、そ、それじゃあさようなら!?」

 

 

 

 

「あのご老人は君の叔父なのか?」

 

「そう、僕を育ててくれてる親代わりのね」

 

「親代わりって事は両親は………」

 

 やめとけやめとけ。コイツは話すとこの後暗くなるパターンだ。

え、それでも聞きたいって?しょうがないなぁ。

 

「両親亡くなってスタンおじさんが引き取った。ハイ終わりチャンチャン」

 

「………早ッ!?終わるの早すぎない!?」

 

「しかもアッサリと⁉︎一番大事そうな(両親が亡くなった)所について軽すぎる!?」

 

『文句が多いな。嘘でも混ぜておけば良かったか?』

「……あれ、もしかして何か期待していた?一応言っておくけど両親は事故死って事になってるからね?」

 

「あ、いやそう言う事じゃなくて……」

 

「冗談だよ冗談。でもさ僕がバーナビーやパニッシャーみたいに親族殺されて『俺の憎しみは消えない!』みたいな事を大衆の面前で言い放つ復讐系キャラに見える?」

 

「ごめん、私てっきり無理矢理明るく演じて実は内面では復讐に燃える系のキャラだと思ってた」

 

「「麗日さん(君)⁉︎」」

 

「ハッキリ言うね!?」

『ある意味で清々した性格だな』

 

 正直、それを言うなら轟君のようなタイプだと思う。何か目の周りの火傷の跡とか闇が深そうだし……て言うかアレって踏み込んじゃダメな奴だよね?

 

「は、話は戻すけど来正君のおじさんって何者なんだろうね?」

 

「ちょっと強引な閑話休題ありがとうね緑谷君」

 

「しかも名前からして外人?」

 

 麗日さんの言葉に僕は顎に手を添える。スタンおじさんは……うん名前"は"外人で合ってる筈だけど……うーん……。

 

「分かんないの!?おじさんなのに!?」

 

「いやぁ、それがさ。小さい頃に何をしてるのか聞いたら映画監督を務めていたって言ってたんだよ」

 

「映画!?大物の予感!」

 

「それは素晴らしい仕事じゃないか!「次はピザの配達員」……ん?」

 

「日に日によって何をしていたのか違ってくるんだよ。バスの運転手だったり警備員だったり、次の日に聞いたら郵便配達に漫画家、軍人、司会者、挙げ句の果てには大企業の御曹司だったりしたよ」

 

「……あのさ、君のおじさんって何者なの?」

 

「……さぁ?」

 

 ホント、何者なんだろうね(真顔)

待って、いや本当に何なのウチのおじさん?何か訳が分からなくなって来たんだけど……うぅむ。

 

「……もしかすると宇宙人だったり!」

 

「麗日君!?それは流石にあり得ないんじゃないのか!」

 

「地球外生命体、エボルト……その発想は無かったッ!」

 

「来正君!?」

 

「そうなると地球の監視者とか世界を創り出した神々(セレスティアルズ)に等しい存在だったり?」

 

「いや、それが本当だったとして君のおじさんは何者なんだ!?」

 

「だから分かんないって言ってるんだよ!!(半ギレ)」

『分かった!アイツは……ヤギね!』

 

うん、それは絶対無いわ

あとヤギなら隣の金髪細身の方だからね?

 

 

 

 

【容疑者 耳郎響香】

 

「ここら辺は涼しくていいなぁ」

『なんか静かですね…川沿いには誰も居ないし街とはえらい違いだ』

 

おっと詠唱はやめておきなよシンビオート、団長が死ぬ。

そんな事を話していると僕等は川の中に人影を見かける、何だろうと思い覗き込むと見知った顔の人物がそこに居た。

 

 

「あれは……蛙吹さん?こんな所で特訓かな?おーい、蛙吹さん何しt─────」

 

しかし、そこには失神したかのように水面に浮上してきた蛙吹さんの姿が………!

 

「蛙吹さん!?」

『死亡確認……』

「いや、生きてるよ……でも誰がこんな事を……!」

 

とにかく僕は周りを見渡す。けど、こんな簡単に犯人が見つかるわけ────

 

「あ」

「あっ」

 

そこには、水中にイヤホンジャックを挿した状態の耳郎さんの姿が……。

 

『……犯人お前だろ』

「耳郎さん、自首しよう」

 

「ちょっと!事故だから!いや、待って、本当だからそのまま無言で立ち去らないでちょっと、待って!」

 

 

 

 

【真犯人 上鳴電気】

 

『なんか静かですね…川沿いには誰も居ないし街とはえらい違いだ』

「天丼ネタかな?だけど詠唱はやめといてね。団長が死ぬ」

 

 どこかで見た事のある導入シーン。安心してください使い回し(コピペ)じゃありませんよ。

まぁ、そんな事はさておき流石に何度も事件が起こる筈も無く僕は不意に川を覗き込むと、そこには水死体のように浮かび上がって来た蛙吹さんの姿が……って

 

「蛙吹さんんんんんんん!?」

『死亡確認……』

 

だから死んでねぇよ。

 

「一体誰がこんな事を─────」

 

振り向くとそこには耳郎さんの姿が……。

 

「耳郎サァン……」

『 ま た お 前 か 』

 

「待て待て待て待て!違うから!今回は本当に私が犯人じゃないから!」

 

「本当ォ?」

『証拠はあるのか?おら出せよあくしろよ』

 

「えーと……あ」

「あっ」

「あ」

『あ?』

 

そこには川に手を突っ込み電気を流している上鳴の姿が……。

 

「アイツが()()()()犯人です(即答)」

「えっ」

 

「ちょっと来てもらおうか上鳴君」

『安心しろ任意同行だ……ちなみに拒否した場合、お前の指をへし折る』

 

「待て待て待て!いや違う!弁明させてくれ!」

 

この後、無茶苦茶弁明された。ついでに蛙吹さんは無事だった。

 

 

 

 

【けものとフレンズ】

 

 

 僕こと来正恭成は動物を心の底から愛している。と、言っても過激な動物保護団体のようにマタギや狩りを否定するワケではない。逆に狩り等は生態系を維持するのに必要な措置であると考えている。

それに個性の発現により科学技術が大分進歩した今の時代において動物達の研究も進み今では中々良い環境の中で動物達は恵まれている。これ以上僕が何かできると言う訳では無い。

出来る事と言えば捨てられた猫や犬の里親を探してあげるくらいだ。

本音としてはすっっっっごく飼いたいけどね?

飼いたいけどね!(二回目)

 

「ラッシャセー」

「一名で。お願いします」

 

 と、長話失礼。

大分静かだけど実はシンビオートは置いて来た。この戦いにはついて来れないからな。話題は変わるけど皆は猫好きかな?

僕かい?大好きSA☆

それでは皆さん、僕は今どこにいるでしょーか?

 

そう、猫カフェである(唐突)

 

 ここの猫カフェは行きつけの店であり、僕はほぼ常連の客となっている。んー、この空間、この空気、匂い、猫の鳴き声、愛くるしい姿。五感全てが癒されていく……あぁ、楽園とはこんな近くにあったんだな………。

 

「すみません、お客様。相席よろしいでしょうか?」

 

「構いませんよ。猫を愛する者同士、拒む理由が何処にありましょうk───」

 

「あ」

「あっ」

 

そこには、口田君の姿が……。

 

「……座ろうか。これも何かの縁だしね」

「……!(ありがとうと言ってる)」

 

 

 

 

 

 

 

「良いよね猫。口田君はここの猫カフェは初めてなんだっけ?君はどの猫に触ってみたい?」

「……!」

 

「ほほうクリスちゃんか。お目が高い、あの子は人懐っこい上に手を出すとお手をしてくれるんだ。猫なのにビックリするだろう?」

「………!」

 

「え、僕のオススメかい?僕はミロくんかな?彼を撫でると液体の如く溶けていくんだ……あのリラックスした饅頭のように柔らかな毛並みは触覚共に視覚をも癒す殺人毛玉さ」

「……!」

 

「おっと、まぁまぁそう慌てなくても大丈夫。それと君は何か勘違いしている。此処では人のオススメが最高と言う訳じゃない、相手は僕等と同じ生き物。食堂の料理と違って呼吸もするしストレスだって感じる。だからこそ此処では自身の勘を頼りに選んだその子を時間をかけてゆっくりと愛でてあげるといいさ」

「……ッ!?………!」

 

「お礼はいいよ、ここで同士と巡り会えたんだ。今回は初めてって事だから僕がお金を払おう」

「!?〜〜!」

 

「大丈夫、スタンプカードが貯まって丁度無料だからね、これくらいどうって事無いさ」

 

 一方的なマシンガントークのように見えるけど、こう見えて口田君とはちゃんとコミュニーケーションは取れてるよ?心が綺麗な人なら彼が何を言ってるか分かると言うアレだね。

まぁ、そんな事はどうでも良いとして、今はただこの瞬間を味わうだけだ。

 

そんな時である。

 

「ラッシャセー」

 

「一名です。空いてる席なら何処に……あ」

「あっ」

「あ」

 

そこには変装こそしていたが僕等の担任である相澤先生の姿が……。

 

「失礼しm「まぁお茶でも飲みましょう」……ッ⁉︎(コイツ、いつの間に!)」

 

 

 

 

 

 

 

 結果を話そう。

意気投合しました。や っ た ぜ

 

「やはり猫はイイですよね。この愛くるしさ、自分に見せてくれる無防備さと言い最高……」

「減らず口はどうでもイイ……待て、ソイツは首の部分を撫でてやれ」

「……!(猫について語っている)」

 

この後、無茶苦茶語り合った。

 

 

 

 

【決戦前日】

 

 

『つい先日、保須市にてプロヒーローのクリアナイトが死亡しました。このヒーロー殺害は今話題となっている連続殺人犯によるものだと警察は判断しており────』

 

「最近の若者はヒーローに対する礼儀がなっとらん!やれもっと出来ただの、やれ自分ならもっとこうしただの、ヒーローがどのような思いをしているか気遣いが足りん。私が若い頃にはグラントリノと言うヒーローが居たが奴はクールで仕事の早いヒーローだっだ」

 

「ハイハイそうだね。でも僕の晴れ舞台なんだからそっちの話をしてよね?」

 

 本日晴天。今日は朝から紅茶と意識高くオサレな飲み物を口に含んでいた。いやぁ、調べてみたけど朝に紅茶って結構体に良い感じみたいなんだよね。

スタンおじさんのいつもの長話を流しつつも僕はこれから始まるであろう体育祭に向けて気を高めていた。

 

「おお、そうだったな。もうそんな時期になるのか」

 

『遂にボケちまったか?』

「シンビオート!……でも晴れ舞台かぁ。僕等が此処まで来れるとは思わなかったよ」

 

「そうか?お前は人一倍は努力していた上にヒーローの事を四六時中考えていた。当然の事だと思うがね」

 

「ハハ、そうかな?なんか照れるよ……あっ⁉︎やばッ!"今日のにゃんこ"間に合うかッッ!?………ッし!間に合ったッッ!あ、スタンおじさんチャンネルはこのままだからね?あー、録画したのとリアルタイムで観るのとは全く違うなぁ」

 

今日の猫も程よい可愛さだなぁ。あぁ、癒される。

 

「おっと、四六時中ヒーローと動物の事ばかりの間違いだったな、それで?準備はちゃんと済ませてるか?」

 

「勿論だよドリンクに体育着。そんでもって、学生証でしょ?あとサイン用に色紙も幾つか持って行こうかな?」

『チョコも忘れるなよ。大切な燃料だ』

「分かってるよ」

 

 思えばいっつもチョコ食べてるよねシンビオート。栄養がそのまま僕にも行き渡るから僕自身糖尿病にならない事を祈るばかりだね。

……体育祭終わったら病院に行って診てもらおうかなぁ(遠い目)

 

「……なぁ、二人共」

 

「どうしたのスタンおじさん。そろそろ出発するんだけど……行ってらっしゃいのハグでもするの?」

『そしたら接吻へ移行するのか?』

 

 やめろシンビオート、それ本気で背筋が震えたから。

 

「それはお前の恋人にやってくれ……私はかれこれ数十年間生きて来たがお前と言う息子が来て止まっていた時間は有意義なものとなった」

た」

 

『なんだ藪から棒に。遺言のつもりか?』

 

 それ不謹慎だからやめなさいシンビオート。

……待って、なんか本当に遺言に聞こえて来たんだけど?え、何?おじさん死ぬの?おじさんたった数話しか登場していないのに死ぬの⁉︎

「……何か失礼な事を考えているようだが私はまだ死なないからな」

 

「あ、そうなの?」

『流石のしぶとさだなジイさん』

 

だから不謹慎!

 

「当たり前だ。お前さん等が見せてくれるこれからが楽しみで死んでられるか。いいか?くれぐれも悔いのないお前さん達なりの有意義な時間を過ごすようにな」

 

「……勿論!」

『それじゃ、さっさと一番になって周りを有象無象として嘲笑ってやるか』

 

うーん、この黒塗り畜生寄生生物!

バッグを持って玄関に向かうとおじさんが再び声を掛け、高らかな声を上げた。

 

「Excelcior!常に上を目指して行け!」

 

「うん、それじゃ行ってきます!」

 

 その言葉を聞くと僕は玄関のドアに手を掛け、ヒーローとして常に向上心を胸に外へ踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【???】

 

 

 

「あぁ、気分が悪くなるぜ。この後ヒーロー気取ってるガキ共が汗水流す所なんて観る気が失せる」

 

「そう口にする事はありませんよ死柄木。雄英生の個性を深く知るチャンスなのですから」

 

『黒霧の言う通りだよ。観るんだ死柄木、これは君の成長に必ず繋がっていくものだからね』

 

「そう言う先生は観ないのか?最近は脳無の研究で忙しいんだってな?」

 

『あぁ、死柄木に付着した"アレ"を弄ると面白い反応を示すんだ。とても興味深いよこれは……!喜べ、もうすぐだ!もうすぐで君の強力な(センチネル)が誕生する……!』

 

 

 

 

 

 




〜〜キャラクター紹介〜〜


『来正恭成』
アニオタで適合者でケモナーで糖尿病の疑いあり。
部屋の至る所にAV(アニマルビデオ)を隠しているのは秘密だ!

救いようがねぇな!この主人公⁉︎


『尾白猿夫』
モブ顔で尻尾の生えたクラスメイト。個性と顔は地味だけど、逆に尻尾って筋肉の塊だから肉弾戦になるとめっぽう強い気がする。


『口田甲司』
無口だが何故かコミュニケーションが可能な人物。主人公とは動物好きの仲として第2のソウルメイトとなった。
こう見えて口田君の身長186cm。デケェ!


『相澤消太』
こっそりと変装して猫カフェに来た所を主人公に確保される。
主人公が縮地とかスタプラザワールドの如く瞬間移動で背後に立った事に驚愕していたがその後、猫好きの仲間としてプライベートのみ仲を深める事となる。
ちなみにこの事は口田君も合わせて三人の口外禁止事項となっている。



『クリアナイト』
オリヒーロー。ヒーロー連続殺人犯の犠牲となったのだ……。今後の展開、とあるキャラを引き立てる為の犠牲の犠牲にな。




『スタンおじさん』

マジで何者なのこの人?もしかして地球を監視している地球外生命体だったりs───

【エラー検出 これ以上の見聞は許可されていません。直ちにアクセスを遮断してください。繰り返しますこれ以上の───】



『???』
全ては一人の為の魔王。
シンビオートの残骸を利用し何かを作り出している真っ最中らしい。




〜〜用語紹介〜〜



『ザ・シング』
ファンタスティック・フォーの一人。宇宙線の影響により全身が岩石のように変化してしまう。戦う前には「It's clobberin' time!」と叫ぶのがお決まりとなっている。
ちなみに宇宙忍者ゴームズ(日本版ファンタスティックフォー)では中の人繋がりで「ムッシュムラムラ!」と叫んでいる。

なぜこうなったし


『戦姫絶唱シンフォギア 』
萌えと言うより燃えアニメ。女の子ばかり出て来るアニメだと思ってみたら良い意味で裏切られる作品。XV完結ッッ!
これからもついてこれる奴だけついてこいッ!


『SAKIMORI』
すごい防人。常在戦場
もしかして→風鳴翼


『ごはん&ごはん』
ビッキー可愛いヤッター!
XV編ラストの夫婦喧嘩もアツゥイ!


『エボルト』
仮面ライダービルドにて悪役を務めた地球外生命体。その正体は星を破壊し、そのエネルギーを自分の物とするブラッド星の星狩り族である。
仮面ライダーエボルに変身したり、万丈にエボルト一部の遺伝子が混ざっていたり、スカイウォールで日本を分断したり、戦争を起こしたり、桐生戦兎にライダーシステムを与えたりしたのも全部エボルトの所為なんだ!
Q.なんだって!それは本当かい?
A.本当です。


『セレスティアルズ』
marvelにおいて人類を生み出したと言われている神々。その姿は全長600mのバケツ頭ロボットのように見える。
MCU版ガーディアンズオブギャラクシーではコレクターがインフィニティ・ストーンの説明した時に登場。実はそのコレクターの住処であるノーウェアがセレスティアルズの頭部だったりする。


『団長』
俺は鉄華団団長オルガ・イツカだぞ……!
こんくれぇなんて事はねぇ……!
だからよ、止まるんじゃねぇぞ……。
キボウノハナー♪






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体育祭編
11話 違う!シンビオートが勝手に体育祭を!



今回はちょっと短め。
次回から本腰を入れていきます。




 

 やぁどうも皆、主人公だよ。

今日から始まる雄英体育祭。正直言って緊張して来たね、だって超が付く程のビッグイベントだよ?逆に緊張しない方が凄いんじゃないかな?

切島君は気張って硬化してたし、爆豪君は手汗で小さな爆破を起こしてたし、蛙吹さんに至っては仮死していたよ。シンビオートが無理矢理起こしたけど……。

 

「緑谷」

 

「轟君…なに?」

 

「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う。けどお前オールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねぇが…お前には勝つぞ」

 

 なんか宣戦布告的なのが始まった。轟君って意外と戦闘狂な面があったりするの?

 

「ついでにお前にも勝つぞ来正」

 

「僕!?……あー、うん。お手柔らかに頼むよ轟君。お互いベスト尽くして頑張ろうね」

 

なんかケンカ腰なので、まずは手を差し出す。とりあえず握手!こうやって敵意が無いことを証明する。うーん合理的!

 

「仲良しごっこじゃねぇんだ。ヘラヘラしてんな」

 

辛辣ゥ!?轟君って爆豪君程ストレートじゃないけど冷たいんだけど!

……あ、待ってシンビオート。今はダメだからちょっとシンビオート⁉︎おいストップやめてシンビオーt

 

『それじゃあ体育祭では敵同士だよなぁ!今この場でバラバラに引き裂かれても問題は無いな!!』

「問題大有りなんだよシンビオート⁉︎落ち着いて!轟君もなんか言ってあげて!」

 

 頼む轟君!君はクラスの中でも空気が読めるクールな男!そのイケメンフェイスから放たれる言葉でシンビオートもクールにさせてあげるんだ!

 

「言ってやるよ。俺は()しか使わねぇ、左を使わずトップを取る」

「轟君!?」

 

やばい、どうしてA組の上位陣って僕も含めてだけど問題起こす人達ばかりなの!?絶望した!上位陣の問題児達の多さに絶望したッ!

 

『お前……!』

「待て待て待て待とうかシンビオート!ここは笑って流そう!そうすれば丸く収まるから……ね!」

 

頼むシンビオートどうか笑ってくれ……!

 

『……エフッ』

「えふ?」

 

『エフッ…エフッ!エフッ、エフッエフッ!』

 

シンビオート?おーい大丈夫?シンビオート!おーい!

 

『ハハハハハハハハハハ!!お、おい!キョウセイ!お前の言う通りだ!確かにこれは笑えるな!』

「え、あ、うん?なんか言った僕?」

 

『コイツ、要は"手を抜いて優勝する"って言ってるんだぞ。負けた時、これ以上無い言い訳になるなぁ!』

「シンビオート!?」

 

「何が言いてぇ、言うならハッキリ言ったらどうだ」

「轟君!?いや、違う!シンビオートが勝手に!」

 

「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのかはわかんないけど…そりゃ君の方が上だよ」

 

 え、緑谷君?なんで君が代わりに答えるの?そして何故か空気の流れが変わって来たんだけど?

 

「みんな…本気でトップを狙ってるんだ。最高のヒーローに。遅れをとるわけにはいかないんだ……僕も本気で獲りに行く!」

 

あ、忘れてた。

緑谷君も戦闘狂な面があったんだっけ(白目)

……い、いや、でもさ。だからといってこんな殺伐としなくても良い気がすると思うんですがそれは。

 

「テメェ等、オレを無視してテッペン獲りに行くとかふざけんじゃねぇぞ!一番はオレだザコ共がッ!」

 

 爆豪君エントリィィィイイイッッ!?そうだよ忘れてた!爆豪君がこの状況下で黙っている筈もなかったよチクショウ!

 

「………」

「………」

「………」

 

 待って?なんで三人してこっち見てるの?どうして期待が篭った眼差しを向けてるの?ねぇ、なんで周りの皆は息を飲んで見守ってるの!?誰か何とかしてくれない?ねぇ!ちょっと!?

ここは何とかして穏便に済ませきゃ(使命感)

 

「……別に言う事は無いよ、ただ僕も全力を尽くす。それだけだ」

 

「「「………」」」

 

 Yeah!決まったぁ!どうだ僕のクールかつ穏便な決め台詞!我ながらどうかしてしまいそうだ……!

 

「強者らしく多くは語らねぇって事か」

 

……ん?

 

「スカしやがって、テメェのその余裕ブチ壊してやるよ」

 

……what?

どうして二人共そんな敵意剥き出しなの?ねぇ、どう言う事なの教えて緑谷君。

 

「……来正君、僕も全力で行く!!」

 

 

 

 

 

 

……せ、

 

選択誤ったぁぁぁああああああああああッッ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで出場する全生徒が集まったぜ!これから始まるのはA〜Kのヒーロー科、普通科、サポート科、経営科が入り混じった大乱闘!ヒャアすげぇまるで闇鍋のレッツパーリィだァ!(投げやり)

 

「アイツが来正…」「オレ達が有象無象だってよ」「ふざけてんの?」「ぶっ殺したる」「アイツ調子乗ってね?」「ねぇどうする処す?処す?」

 

チクショォォッッ!どうしてこうなったッ!僕はもっとこう全力で楽しんでいこうぜ!みたいな友情!努力!勝利!の三原則が合わさった大会を期待していたのに!何で!始まる前から!ギスギスしてるんだよッッ!

 

そんな事を思っているとステージ上に際どい衣装を纏ったミッドナイト先生が声を高らかに叫ぶ。

 

「選手宣誓!!」

 

「ミッドナイト先生なんちゅう恰好だ」

 

「さすが18禁ヒーロー」

 

「18禁なのに高校にいてもいいものか…?」

 

 上から順に切島君、上鳴君、常闇君。確かに18禁ヒーローなのに高校の教師とは一体全体どう言う事なのだろうか。デビュー当時はもっと凄い衣装らしく、これなら対魔忍の衣装の方がマシだと思うんだけど。

 

…………。

 

………………。

 

………待てよ?つまり際どければ際どい程、それは健全なのでは⁉︎(錯乱)

 

「つまり全裸になれば全年齢対象!?」

 

「落ち着け来正。意味が分からんぞ」

 

「来正、お前…天才かよ……!」

 

「峰田。お前も落ち着け」

 

 常闇君の声に僕はハッと我に返る。そうだった、全裸ってもう18指定じゃん。全年齢対象じゃねぇじゃん。

とりあえず気を紛らわす為に隣にいる飯田君に声を掛ける。

 

「しかし、緊張するね。正直手が汗でびっしょりだよ」

 

「それも踏まえてだ。プロとして大衆の面前でパフォーマンスを十分に発揮できる素質を身に付ける一環なのだろう(来た…選手宣誓!委員長として、ここ二週間ずっとスピーチの練習をして来た!今こそ練習の成果を果たす時ッッ!)」

 

「選手代表1-A 来正恭成!」

 

「あ、僕か。は──「はいッ!!」……い?」

 

 

「「「「「……………」」」」」

 

「「「「「……………」」」」」

 

「「「「「……………」」」」」

 

 

…………………。

 

 

………………………。

 

 

……………………………。

 

 

………い、

 

飯田君!?

 

 

「ねぇ、さっき二人返事しなかった?」「あっちヒーロー科だよな?」「何で二人分なんだ?」「誰か間違えたの?」「マジー?キモーい!」「間違いが許されるのは小学生までだよねー!」「「キャハハハハ!」

 

 

 やめたげてよぉ!飯田君のライフはもうゼロよ!

ちょっと飯田君涙目になってるから!彼の体と心はもうボトボドダァ!

……こうなったら。

 

「……や、やだなぁ!シンビオート!お前が返事しちゃダメだろぉ!?」

『は?』

 

この場を解決する策。それは……僕自身が飯田君になる事だ(僕が犯人と言う事にしておこう)

 

『おい、何言って───』

「かぁーーーっ!困るわー!勝手に喋るような個性持ってめちゃくちゃ困るわー!さっきもシンビオートの奴が返事して困るわー!いえ、違うんですよ皆さん。さっきのはシンビオートが勝手に……ね?それじゃ前の方失礼しまーす」

『あとで覚えておけよ……!』

 

 飯田君がボソリと「すまない」と呟いていたが聞こえないフリをしておこう。だって返事したのはあくまでシンビオート(という事になってる)からね!

……シンビオートには後でたらふくチョコを食わせてあげよう。

 

とりあえず舞台へ上がりマイクの前に立つ。

……よし、これでも練習して来たんだ。いきなり噛む事はないだろう。

……フラグじゃないからね?

 

「んんっ……宣誓!僕達雄英生一同は!各々の学科の練習、訓練の成果を発揮し、これまで支え導いてくれた先生方、仲間達そして家族の皆様の期待に応えられるように正々堂々と全力で尽くす事を誓います!」

 

 どうよ、この王道中の王道の選手宣誓は!誰も文句が言えない完璧な宣誓ッ!あぁ、良すぎて自分でもどうかしてしまいそうだ……!

 

おっと、ミッドナイト先生。そんなつまらなそうな顔しても駄目ですからね?絶対やりませんから、絶対ですよ!

……フリじゃないですよ?

 

「選手代表、一年生。来生k──『お前達雄英生って、醜くないか?』

 

 

「「「「「……………」」」」」

 

「「「「「……………」」」」」

 

「「「「「……………」」」」」

 

 

 

…………………。

 

 

………………………。

 

 

……………………………。

 

 

 

 

「………んんっ!失礼しました。選手代表一年、来生k『この雄英に入りし者共!その命、このオレ達に返上しろ!』シンビオート!?」

 

 コイツ…ッ!いつかやるかと思っていたが今この場でだとぉ⁉︎頼むシンビオート!それ以上唯我独尊的な台詞を吐くな!せめて穏便に冷静に言ってくれない⁉︎

 

『……もはや雄英生はヒーロー科のみで良いと思っている。それ以外の科は解体する』

 

((((((((シンビオート!?))))))))

 

シンビオートォ!?何お前理不尽なパワハラ上司みたいな事言ってるの!?穏便で冷静じゃない!唯我独尊の意味知ってるのお前⁉︎

 

『オレ達が一位となる。お前等はオレ以下。これは決定事項だ』

 

「ふざけんな!」「そんな横暴許されると思ってるのか!」「この黒塗りのドロドロふざけんな!」「来生って奴も同罪だ!」

 

僕は悪くねぇ!僕は悪くねぇ!

悪いのはシンビオートって黒塗りのドロドロした生物なんだ!

 

「シンビオートコラァ!謝って!今すぐあやm『FUCK YOU!!!』中指立てるなぁ!」

 

『GO TO HELLッ! KILL THEM ALLッ!!』

 

「ふざけんな!」

「控えめに死ね!」

「最低!」

「ヒーローの恥!」

「この寄生虫野郎!」

「どんだけ自信過剰なんだよぶっ飛ばしてやる!」

 

『さっき寄生虫言った奴前に出ろ!頭をカチ割って脳髄をジュースにしてやるぞッ!!』

 

だれかたすけて

……いや、待てよ。希望はまだある!Aクラスと言う名の一筋の光がッッ!僕等は友達だよね?どうにか弁明してくれないかな皆ッ!?

 

「あかん……!来生君大ピンチだよ!」

 

「どうにかして助けてやんねぇと……!」

 

 麗日さん、上鳴君!信じていたよ!二人共僕の親友だ!やっぱり持つべきものは友達だね!

 

「……手を出すな二人共」

 

……えっ、どうしたの常闇君?

 

「手を出すなって……いやいやどう見ても来生ピンチだろ」

 

「はよ助けないと!」

 

「お前達の中ではそうなのだろうな……()()()()()()()()

 

おーい、常闇君?拗らせるのも大概にしておきなよ?何?こっちの状況見えてないの?実は君って実は鳥目だったりする?

 

「「ッッ!?」」

 

いや、ッ!?じゃないからね?普通にこっちSOS送ってるの。分からないの?ねぇ。

 

「ヤツの手の内で踊らされている傀儡へ化している事を他の奴等は気付いていない。……否、場を支配されている事にすら…な」

 

「そうかッ!来生君自身は悪役(ヒール)を演じる事によって体育祭全体の土気を高めているんだ」

 

「来生、オメェと言う奴はよぉ……!」

 

へぇー、成る程。僕も知らなかったわ

よし言わせてもらうけどさ。

お前等は目が見えぬのか……?(世紀末救世主風)

 

Aクラスの皆が色々言ってるけど、ちがうからね?

別にヒールとか演じてないからね?これ全部シンビオートの仕業だからね?

くそ!こんな所にいられるか!僕はクラスの皆が居る所に戻るぞ!

 

別に宣誓は終わってるし問題無いよね?

……無いよね?

 

「来生君……」

 

「あぁ、緑谷君。いやぁ大変な事になっちゃったね」

 

「うん、……だけど君に気付かされたよ」

 

やっぱり緑谷君は話が分かr……今、何て言った?

 

「えっと念の為に聞くけど……何がかな?」

 

「僕達ヒーロー科だけじゃなく、会場に居る全員が上を目指しているんだ。上には上がいる。これまで君に助けられてばかりだったけど、それじゃダメなんだ」

 

そう呟き、彼は僕に向け拳を突き出す。

 

「僕達A組は君に挑戦する!!だから、手加減は無用だ!全力で上を目指すッッ!!」

 

 緑谷君だけじゃ無い。周りの皆が戦士としての目へ変わっていた。全力で上を目指すと言う言葉が口だけじゃない事が分かる。彼等の想いを無下にしないように僕は拳を握り、応える。

 

「……上等ッ!(だから違うんだよ、シンビオートが勝手にィ!)」

 

体育祭荒れるだろうなぁ(血涙)

 

 

 






マイソウルメイトにも届かぬ思い。
たすけて by主人公



〜〜キャラクター紹介〜〜

『轟焦凍』
復讐を胸にするno.2ヒーローの息子。オッドアイでクールで強くてCVが梶◯貴と、主人公属性をこれでもかと詰め込んだキャラクター。
個性把握テストやUSJ襲撃にて目立つ活躍をした主人公に対し対抗心を燃やす。
コイツを越えられなきゃら親父に復讐なんかできねぇと勝手に目標にされている模様。







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12話 違う!シンビオートが勝手に障害物競争を!


 今年の秋アニメは豊作なのでとても楽しみ。ちなみに本日からヒロアカ4期始まります(露骨な宣伝)
ところで、今秋のなろう枠アニメがどれも面白そうなものばかりってどう言う事なの?(困惑)




 

 

 やぁ、前回シンビオートの所為でほぼ全員からロックオンされた主人公だよ(白目)

どうしてこうなるかなぁ。確かに飯田君が言い間違えたのをシンビオートの仕業に仕立てたのは悪いと思ってるけどさ、ここまでする?

……うん、シンビオートならやりかねないね!

 

そんなわけで(?)

第一種目は障害物競走。4kmもあるこのスタジアムの外周を走らなければならないんだよね。

そして説明しているミッドナイト先生が

 

『コースを守れば何をしたって構わないわ』

 

と言ったもんだからさぁ。

 

「おい、アイツだ…」「コロス…コロス……」「流れ弾が当たっても事故だよなぁ?」「猪突猛進……」「早速一人脱落か」

 

確実に全員が潰しに掛かって来るじゃないですかやだー!!

やべぇよ、これやべぇよ……!前に出たら後ろから撃たれる所か蜂の巣にされるパターンだよコレ。

 

「後ろで待機しておこ」

『オレ達に攻撃したならやり返せばいいだけだ。ビクビクする必要は無い』

「いや、そう言われてm「ごめん、ちょっと通して!」

 

「あぁ、すみません……あ」

 

「えっ?……あ!」

 

あれ?赤糸虫君じゃないか、6話に登場した以来の新たなソウルフレンドになりうる赤糸虫君じゃないか!(歓喜)

 

「やぁ来正君、こんな所で何してるの?特等席で種目の観戦のつもり?」

 

「あー、いや……後ろから刺されたくないから」

 

「成る程ね、ちなみにヒーロー科以外を解体って本当?」

 

「いや違う、あれはシンビオートが勝手に」

 

「分かってるよ、君ってそんなタイプじゃないだろうしね。ちょっと前の方失礼するよ。僕も取り敢えず上を目指さないといけないからね」

 

 そう言いながら赤糸虫君は前へどんどん進んでいく。あぁ、何というか。ちゃんと良心が此処に存在していたんだなって……!

あれ?おかしいな。早起きしたからかな?目から熱いものが溢れて……。

 

「あ、そうそう!前に行かないならそのまま閉じ込められても知らないよ?」

 

「……えっ、何?なんて言っt

 

 

START!

 

 

 僕が赤糸虫君に言い掛けた瞬間スタートの合図が鳴り響く。

刹那、全生徒はゲートに向かって走り出して行く光景は凄まじいもので赤糸虫君の言われた通り、確かに観戦している感じに思える。

 

「……それじゃ、僕達も行こうかシンビオート」

『It's Blood festival time!』

 

……それ、皆殺しって意味じゃないよねシンビオート?

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 後方で黒塗り畜生寄生生物とその宿主が色々とやっている中、ゲート前では混乱が起きていた。

 

「いだだだ!」「てめぇ押すな!」「ちょっと!早く前へ行けよ!」「構わねぇ、ドンドン進め!」「前だけを見ろ!」「あ゛あ゛っ!イッタイアシガーッッ!」

 

『さーて、実況して行くぜ!解説Are you Redy?ミイラマン!』

『お前が無理矢理呼んだんだろうが』

 

 そんな光景を二人のプロヒーローであるプレゼント・マイクとA組担任であるイレイザーヘッド、相澤消太が盛り上げ役を務めるらしい。(約一名不満タラタラである)

 

『早速だがミイラマン!序盤の見所は!?』

『今だよ』

 

 相澤の言う通り、序盤のゲートは狭く設営されており百を簡単に越す人数が一斉にゲートを通過するのは困難。その為、現在進行形で生徒達は篩にかけられているのだろう。

 

「成る程な。それじゃあやる事は簡単だな」

 

 そんな中、A組の轟焦凍は右手を突き出し個性である氷結を使用し妨害と共に一気に前へ出ようと画策する。

……が、そんな彼の右手に"白い何か"が纏わり付いた。

 

「ッ!?」

 

「悪いけど、ここから先は通行止めになりまーす。チケットのお持ちの方だけお通りください!」

 

 轟が上を注目すると、そこには天井を走りながら糸を射出する赤糸虫の姿が映っていた。

 

「うわっ!?なんだこれ!」

「ネバネバする!?」

「だっ!?おいやめろ!くっ付くだろ!」

「コレ取れないんだけど!!」

 

 強度の粘着性を誇る糸に絡まり、生徒達は更に混乱して行く。しかし赤糸虫の行動はこれだけでは終わらない。

生徒達の頭上を駆け抜け会場の外へ飛び出すと、ゲートの出入り口に向けて糸を大量に放ったのだ。

 

「最後にごめんね、本日は閉店になります。残念ですが出直して来てください!」

 

「クソッ!この糸野郎ーーッ!」

「オイオイオイ!爆豪そんな暴れんな!どわっ⁉︎やべぇ引っ付いて動けねぇ!」

「よし、私の酸で溶かす!」

「待って⁉︎それ私達も溶けちゃわない⁉︎」

 

『なんとぉーーーーッッ!B組 赤糸虫知朱!前へ出ると同時にトラップを張り巡らしたーーッ!』

『あの短時間で前へ出ると同時に不安定な体勢でネットを張るのは簡単じゃない。余程の鍛錬を重ねたか、或いはアイツ自身が天才なだけか』

 

「ハハハ!!いいぞ赤糸虫!B組の力を見せてやれーー!」

 

『これはB組担任のブラドキングもご満悦ゥーーーッ!!こりゃ今年の優勝はA組では無くB組で決まりかーーーッ!?』

 

「……あの先生、よく喉潰れないなぁ」

 

 プレゼント・マイクの大声に多少ながらも呆れを見せる赤糸虫。ゲート付近でごった煮状態となっている他の生徒達を眺めつつも余裕の笑みを浮かべる。

 

(さーて、意外と上手くいったけど。このまま走った方が良いかな?一応、物間君から言われた通り序盤からA組への妨害は上手くいったけど……うん、まぁトップも維持できている事だしこのまま体力温存かな?)

 

 思考し、チラリと再び後方に視線を向ける。意外にも手間取っているヒーロー科を筆頭とする後続の生徒達を見て安堵すると軽い気持ちで走り始めた。

 

「まぁ、深く考えなくてもいいよね?そんな簡単に前へ出てくるような生徒なんて居るはずも無いよn──『ズシンッッ!』──ん!?」

 

 

 自身のすぐ後ろから衝撃と音が響く。何事かと振り向くと赤糸虫は驚愕の表情を露わにする。それもその筈、そこにはずっと後ろに居たであろう黒の巨体が"ヒーロー着地の姿勢"で佇んでいたからである。

 

『今、オレ達の事を呼んだか?』

「膝がイタァイ……」

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 やぁ、どうも皆たった今膝を痛めた主人公だよ!ははは!誰か医者呼んで(懇願)。

ヒーロー着地すると本当に膝が悪いとは思わなんだ。クッソ痛いわ(真顔)

 

「さっきぶりだね、……じゃ、僕達急ぐから!」

『隣 失礼』

 

「えっ、………えッッ!?」

 

『オイオイオイオイ!どうなったんだ!イリュージョンか!それとも魔法でも使ったのか!?アイツ空から降って来たぞ!どう言うことだコレ!』

『別に。タネも仕掛けも無い、ただ飛んで来た それだけだよ』

 

 相澤先生の言う通り、僕は混雑したゲートは通れないと判断した。

だとしてもどうやってゲートを通れば良い?

どこか抜け道はあるのではないかと画策した結果、僕は()()()()()()()()事にした。うーん、自分でも何を言ってるか分からないね!

 

『それにミッドナイトも言っていた通り、コースを守れば何をしたって構わない。必ず"ゲートを通過しろ"とは一言も言ってないからな』

『まじかよ!そこまで頭回ってんのかよアイツ!大胆だな!』

『いや?やる前に直接ミッドナイトに質問してたぞ』

『律儀だなオイ!?』

 

だって、反則して失格されるの怖いし……。

まぁミッドナイト先生がノリノリで「そう言う大胆なの好きだから許す!」許可貰えたから良いけど。と言うか自由が売りにしてもフリーダム過ぎやしませんか?

 

「えっ、あ?ちょ、ちょっと待ってよ!あ、あのさ!えっと?あー……うん!負けないよ!」

 

「うん、とりあえず落ち着こうか。すっごい どもってるよ」

 

 なんか緑谷君みたいな慌て方してるよ?さっきまでの陽キャ特有のマシンガントークはどうしたのさ。

 

『おい、団体客のご来訪だ。出迎えてやれ』

「団体客……⁉︎」

 

後方へ注意を向けると、そこには轟君を筆頭としたAクラスの皆が追い上げて来る光景が広がっていた。

 

「前に出てんじゃねぇぞ!クソ糸に寄生虫野郎!」

 

「お前等にトップを譲る訳にはいかねぇんだよ」

 

『ハハハ!そう来なくちゃ面白くない!』

「ヒェッ、すげぇ怒ってる……!」

 

 と言うかさっきの全部赤糸虫君の仕業だけどなんで僕も入ってるの?おかしくない?

 

「ハハハッ!ヒエラルキー崩れたり!今日の為にオイラが暖めておいた必殺技を見せてやるぜ!」

 

「峰田君!?」

『必殺技?』

 

「オイラの必殺!GRAPE RUSH!」

 

すると峰田君はこちらに向かって頭部のモギモギを千切っては投げ、千切っては投げを繰り返して来る。

 

「危なっ!?」

『面倒臭いブドウだ!』

 

 面倒臭いどころの問題じゃない。当たれば即リタイアのクソゲーだよコレ?弾幕シューティングでももっと救済措置ある分マシだなチクショウ!正直言って峰田君の事を侮っていた!

このレースと言う状況下において峰田君は脅威以上の他でもない存在だよ!

まだまだ大量に投げられるモギモギ。万事休すかと思いきや目の前に蜘蛛の巣が張り巡らされる。

 

「助太刀いかが?」

 

「赤糸虫君?ありがとう助かった!」

 

「いいよ、お互い様って事で」

 

走りながらも礼をしつつ、その場から離れる。

とにかく蜘蛛の巣のお陰で妨害出来た!これならすぐに追い付く事は出来まい!(フラグ)

 

「こんなの!」

 

「よし、でかした芦戸!」

 

『アッサリと破られた。いや溶かされたな』

「フラグ回収早ッ⁉︎」

 

「怖いねそっちのクラス!」

「ごもっともだよ!なんでウチのクラスって殺意マシマシの個性持ちばっかりなの?」

 

 と言うか絶対にアレ僕を倒す為にAクラスの皆結託してるよね?僕もAクラスなんだけどなぁ……。

って、やばい!そんな事言ってる間に峰田君が凄い勢いで迫って来た!なんか爆豪君と轟君より凄くない!?

 

「ヒャア!待てよこのリア充共!死に去らs───

 

ゴッ!!

 

「「えっ」」

 

瞬間、峰田君が横へ吹っ飛ばされた。

……えっ、何事?

 

「え、ちょっと峰田k『ターゲット タイリョウ』ッ⁉︎」

 

 そこには雄英の入試で見た大量の仮想敵の姿があった。しかも遠くには0pの巨大仮想敵の姿も確認できる。

 

『さぁ、いきなり障害物だ!まずは手始め第一関門ロボ・インフェルノ!』

 

「まじか……、これが障害物ってわけ⁉︎」

 

「ヒーロー科気合入り過ぎじゃない?」

 

 全くもって同感である。と言うか雄英の資金ってどこから出て来るの?地面を掘り返すと金が溢れてくるわけ?

そんなくだらない事を考えていると近くのロボット達が僕等に向かって近づいて来る。

 

『ブッコロシタラァヨ!ブッコロシタラァy『雑魚が出しゃばるな!!

 

 しかし、そんな仮想敵に深々とシンビオートが形成した腕によって貫かれ機能停止に追いやられる。

 

『ブチコロブチコロブチコロ──「悪いけどさ、もう少しアップデートしてもらってから出直して来なよ───っと!」

 

 隣の赤糸虫君は糸を引っ付け、ジャイアントスイングの要領で振り回して周囲の仮想敵達を撃破していく。凄いな、細身だけど仮想敵を軽々持ち上げられるパワーがあるんだね。

 

「よし、追いつい──って!仮想敵かよ!」

「マジか!ヒーロー科あんなのと戦ってたのか!」

 

『おい、後ろから押し寄せて来たぞ』

「まじか」

 

 ゲート付近で足止めされていた生徒達が追いついて来た事に焦りを感じてしまう。どうにかしてこの場を切り抜けないt「どけ!」うおっ、轟君⁉︎

 

「せっかくならもっとすげえの用意してもらいてえもんだな」

 

 そう呟いた直後、0pの巨大仮想敵の周りを氷河に覆われるかの如く巨大な氷壁が現れた。

……マジで?これ轟君がやったの?えっ、やばくね?轟君の前世って実はアイスマンだったりしない?

 

「この程度で足止めのつもりかよ」

 

 こ の 程 度

 

「来正。お前も少しは本気を出したらどうだ?」

 

「えっ、あっ、うん。……そっすね」

 

 言えない……結構本気だったの口にできないんだけどソレは。

い、いやまぁ?膝怪我してるから本気だせなかったって事で。かーっ、辛いわー。膝怪我して本気出せない僕辛いわー。

見苦しい言い訳をしている僕を無視して轟君は前へ進む。いやぁ、それにしても0pの敵が見事にバラバラだよ。

今更だけど巨大仮想敵って緊急時にはシェルターにもなるんだよね?

 

あぁ、中に誰も居なくてよかっt……っ!?

 

「クソ親父が見てr「轟くーーーん⁉︎」あ?「前!前ーーーッ!」……何言ってるんだアイツ……ッ!?」

 

 

 

瞬間、轟君の居た場所が爆発を起こした。

 

 

「えっ!?何!何が起きたの⁉︎」

 

「おい、見ろ!凍ったデケー敵の中から()()()()()()()!」

 

 驚愕の声が上がり生徒達の声で騒めく中、実況を担当するプレゼント・マイクの声が響き渡る。

 

『オイオイオイオーーーイッ!!この程度で終わる訳ねぇだろ?雄英は更なる試練を与えていくぜーーーッ!ちなみに()()()の製作はサポート科が行った!文句があるならサポート科の奴等に言えよ!!』

 

「……待って、アレって、……えっ、マジで?」

 

 ソレを見た僕の語彙力が凄まじく低下しているのを自分でも実感できる。その2mはあるであろう青と紫の巨体を持つ風貌。

 

「センチネルじゃね、アレ?」

 

……い。いや、冷静になれ。まだ慌てる時間じゃない。そもそもアレはセンチネルなのか?いや、ちがう。例えそうだとしてもアレは擬きだ。

うん。よくよく見れば全く違うように見えて来たぞ?

そうだそうに違いない!

 

『第一関門は続くぜェーーーッ!ロボ・インフェルノから変わり、エンド・オブ・センチネルズだ!個性を持っている奴を見つけ次第ビーム撃ってくるから気をつけろよ!つーか、見た事あるロボだなえーと……分かるかミイラマン?』

『俺に聞くな知らん』

 

結局センチネルじゃねーか!

 

「うわぁ!来正君があまりの事態に発狂したぁ⁉︎」

 

「落ち着くんだ皆!たかがロボット!慌てる必要は無い!」

 

 それフューチャー&パスト見ても同じ事言えるの?

体育祭が終わったら飯田君にX-menのDVDを貸してあげるとしよう。

と言うか雄英ってやっぱり頭おかしわ。これ体育祭だよね?何でわざわざアレを持ち出して来るの?コレガワカラナイ

 

……あれ、そう言えば赤糸虫君は?

 

「やぁどうもロボットの皆。大体のロボットは好きだけど君達の事は嫌いだな!」

 

と言いながらセンチネルに糸を射出し───あっ、普通に弾かれた。

 

 

「あっ、……違う違う。今のは嫌いじゃなくて気合って言おうとしt───」

 

 

チュイン!!(レーザーが放たれる音)

 

ゴオッ!!(爆炎が上がる音)

 

 

「赤糸虫くんんんんんんんんんッッ!」

『オイオイオイ、アイツ死んだわ』

 

──僕、これが終わったらスパイダーマンの続編を見るんだ……。

 

やばい、なんか記憶に無い走馬灯が過ったんだけど何これ⁉︎

 

『安心しなァ!センチネル光線(ビーム)は音と光は派手だが殺傷能力は無いぜ!最悪、失禁するぐらいだから安心だな!』

『汚い(確信)』

 

なんだ。良かった……いや良くなけど?

なんか爆心地で赤糸虫君がヤムチャポーズでグッタリしてるんだけど本当に殺傷能力無いんだよね?

 

『まぁ全身が痺れて動けなくなるが……流石に死体蹴りはされねぇだろ!さぁ!この難関を突破出来るやつ出て来いや!』

 

あぁ、良かった……いや、だから良くないけど?(二回目)

気がつくと周りはビームや悲鳴が飛び交う阿鼻叫喚の地獄絵図と化しつつあった。

何これ(真顔)

 

『こりゃ酷い。地獄に行ってもこんな殺戮ショーは見られないな、そう思うとオレ達はとてもラッキーだな』

 

 アンラッキーの間違いだと思うんだけど?(名推理)

いや本当に誰なの?センチネル擬きを作ろうとした大馬鹿はさ。先生怒らないから今すぐ出て来なさい。

 

「おっと、私の事を呼びましたか!」

 

「えっ」

 

 振り向くと桃色の髪をした全身重装備の女子生徒が現れた。

なんかこの娘、どこかで見た事あるんだけど……。

 

「……えっと、どちら様?」

 

「ははは、私の事をもうお忘れで?……ところでどちら様でしょうか?」

 

『お互い忘れてるのに、仲が良く見えるな。正解はオレ様を寄生生物呼ばわりした奴だ。あの時の恨みをここで晴らしてもいいんだぞクソ女ァ!!』

 

 あ、思い出した。常闇君と居た時に僕の身体をペタペタ触って来た人だこの人。

と言うかあのセンチネル擬きって君が作ったの?

 

「いえ、正確には我がマイベストフレンドが『もし仮にセンチネルが実在したら』と言う何気ない発言を参考にし、サポート科全体で制作した対個性アンドロイド!個性持ちを発見次第に攻撃を仕掛ける仕様となっています」

 

ははーん、さては君が発端だな。

ど う し て く れ る ん だ

 

あっ、ちなみに赤糸虫君も同罪ね。まさか友人関係だとは知らなかったけど。

そうこうしている内に一体のセンチネル擬きがこちらへ接近してくる。

 

『個性所持者ハッケン。排除ヲ開始スル』

 

「おっと、では私はこの辺d『まぁ、待て』……へ?」

 

あれ、急にシンビオートが逃げ出そうとしたサポート科の人を掴んだけど……何してるの?

 

『よくあるB級パニック映画じゃ黒幕が自分の作り出した兵器にやられるのがオチだろ?それを今試したくなってな』

 

それってどう言う───あっ(察し)

 

『ほらよ』

 

「痛っ、乱暴な事はよしてくれまs『個性排除』……えっ」

 

『排除スル』

 

「あ、ちょっと、待っ─────

 

ゴオッ!!(火柱が上がる音)

 

「さ、サポート科の人ォォォォォオオオッ!?」

 

『おぉっと!!事件の発端であるサポート科が次々とやられていくぅーーー!まぁ自業自得だし仕方無いんじゃね?』

 

ひでぇ。

仮にも教師なのにこの言い草。教え導く立場としてプレゼント・マイク先生それで良いんですk───(相澤先生をチラッと見る)───あ、いえ別に何でもないです、そう言えばマイク先生よりも酷い先生居たわ。

 

……と、サポート科の人の犠牲(死んでない)を無駄にしないように今の内にここから出なきゃ。こんな所に居られるか 僕は先に行くぞ!

 

『おぉっと!ここでヒーロー科屈指の悪役(ヒール)来正が前へ出たーーッ!つーかアレ、囮にしてたけどアリなの?』

『アリじゃねぇの?』

 

「あ、あいつ!他の生徒を囮にしやがった!」

「外道通り越して悪魔かアイツ!」

「許せねぇ……!」

「どのみちロクなやつじゃねーんだ!見つけ次第やるぞ!!」

 

「違うぅ!シンビオートが勝手にぃ!!」

 

 






 最初はレオパルドン辺りを出そうとしたけど強すぎるのでセンチネルに変えました。と、言っても擬きなのでそこまでの脅威になってないかなーと思います。
何名か光線でダウンしてますが……まぁ、大した怪我じゃないから騒ぐ程でもないか……。



キャラクター紹介

『赤糸虫知朱』
B組の21人目ことオリキャラ。まんまスパイディの能力が使えるのでスパイダーセンスも使用可能。
……えっ?センチネル擬きのビームを思い切り喰らってただって?それはピーターと比べて赤糸虫君ちゃんが彼程の反射神経が無かったと言うことで……あと、ギャグ補正が足を引っ張りました。


『発目明』
さらっと赤糸虫君をベストフレンド呼ばわりしてたキャラ。センチネルによる蹂躙はだいたいコイツのせい。いい奴を亡くしたよ…………。
※あの後、無事に生き残りました。



〜〜用語紹介〜〜

『アイスマン』
初代X-menメンバーの一人。永遠の若者でありキャラクターでありオメガレベルのミュータント。
簡単に言うとものすっっごく強い。


『センチネル』
対ミュータント用の人型兵器。ミュータント(能力者)を見つけ次第ぶっ殺そうとする、(サーチ&デストロイ)上にミュータントを出産する可能性のある人間も敵と見做すと言うやべー解釈をしたりする。
X-menフューチャー&パストの未来において相対するミュータントの能力に合わせて自身の能力を変化させ、ミュータントは絶滅寸前まで追い込まれた。





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13話 違う!シンビオートが勝手に頭部を!

 最近オチがつまらなくなって来たと思っているそこの貴方。最後にINDETERMINATE UNIVERSE(万能エンディング)を流してください。
RoundaboutでもOK。

ケムリクサとジョジョのEDは共に万能だってはっきり分かんだね。ところで、たつき監督の次の作品はいつ見られますか?



 やぁ、どうも。センチネル軍団を乗り越えて第二関門に向かっている主人公だよ!いい感じに僕にヘイトが溜まって来てるから今夜は夜道に気を付けないと背後から刺されるかもね(ブラックジョーク)

ハハッ、どうした?笑えよベジータ。

 

そんな現実逃避をしていると目の前に巨大な渓谷が……って、なにこれ。

 

『第二関門はどうさ!?落ちればアウト!それが嫌ならはいずりな!ザ・フォール!』

 

 うっわ、何この高さ!?いつの間にこんなステージ作ったの?さすが雄英高校、相変わらず規模がデカい。そしてその作成費は何処から出て来るのだろうか。

 

『どうする?這いずって行くか?それとも、走って行くか?』

「君のお好きにどうぞ」

『それじゃ、飛んで行くか!』

 

 シンビオートが全身に纏わり付くと強靭な脚力を生かした特大跳躍を見せ、難無く巨大な溝を渡る事に成功した。

 

「ナイス着地。80点」

『満点じゃないのか?……と、追いついて来たか!』

 

 後ろの方へ顔を向けると、ロープの上を凍結させながら移動する轟君に上空を爆破の勢いで飛んでくる爆豪君の二人の姿があった。

 

「まずい、シンビオート!前へ行って!前!」

『そのくらい分かってる』

 

「逃すかよ!」

「死ねぇ!」

 

「危なっ!?」

 

 後方から爆破と氷が横切る。人に向けて個性使うなんて、お前ら人間じゃねぇ!(特大ブーメラン)

 

『激しいデッドヒートを繰り広げつつも三名とも第2関門を楽々と通過ーーーーッ!』

 

「妨害にも程があるよ君達⁉︎選手宣誓で正々堂々と言った僕の気持ちを汲み取ってくれない⁉︎(懇願)」

 

「ンな義理はねぇ」

 

「そんな事言われなくても後で正々堂々ブチ殺してやるわ!」

 

 信じられるか?この二人うちのクラスの優等生なんだぜ……?

なんでそんな性格になったのかは興味があるけど闇が深そうで手を出す事が出来ないんだよなぁ。

 

『ハッ!よくもまぁそんな性格に育ったな。闇が深い家庭の事情とやらか?』

「シンビオートォ!」

 

「………ッ!」

 

ヤロウ……タブー中のタブーに触れやがった……!

轟君なんかギリィッ!と親の仇を見るような眼差し向けてるんだけど!違うんだ、これはシンビオートが勝手に言ったのであって僕は関係無いから!

……え、そんなの関係無い?あっ、はい そうですか。

 

 

『早くも最終関門、一面地雷原!地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!目と脚酷使しろ!あと心の地雷が埋まってるから気をつけろォーーー!飛び出すモノローグで人格破壊すんなよ!』

 

えっ、何その心の地雷って?

なんか嫌な予感が────

 

ドォン!!

【お父さん大好き】

 

『………は?』

「えっ、何これ?」

 

 轟君が踏んだ所から文字が飛び出して来たけど……これが心の地雷?

……なんか思ったよりホッコリするモノローグだなぁ。

 

「嘘だ…そんな訳……嘘だァァッ!」

 

「崩れ落ちた⁉︎」

 

 ウッソだろお前!アレのどこで人格崩壊する程のダメージが!?

 

「ハッ、ンなモンで俺がやられるとおm」

 

ドォン!

【デク最近凄い】

 

「ぐぁあああ゛ああああ゛ぁあああッッ‼︎」

 

「爆豪君もやられた!?そこまで緑谷君の事嫌いなの⁉︎」

『いいぞもっとやれ』

 

 即落ち2コマ並のスピードで崩れ落ちたんだけど⁉︎別に相手を凄いと思う事は恥ずかしいもんじゃないよ?

あとシンビオートは人に指向けて笑うんじゃありません。

……しかし、ここを通るのかぁ。

 

『オイ、いいからさっさと足を動かせ。奴等がくたばっている内にな』

「……地雷音にビビって僕の中で閉じこもってる君が言える立場じゃないと思うんだけど」

 

 

『おおっーと?ここで来正、慎重に行き始めたーーッ!爆豪と轟コンビの二人を見てチキンになったか!?』

 

『誰がチキンだ!この程度、難なく乗り越えられる!……キョウセイがな』

「ハイハイ、僕任せ僕任せ……っと、来たか!」

 

 後方から大量の生徒達がやって来た!A組の生徒達が大きくリードしてるようだけど……あ、皆が地雷ゾーンに踏み入った。

 

ドォン!

【2キロ太った】(麗日)

【Fカップ】(八百万)

 

「「いやぁぁぁあああッッ!」」

 

ドォン!

【カゲたまに邪魔】(常闇)

【虫美味しい】(蛙吹)

 

「「………ッ!」」

 

 こ れ は ひ ど い

第一関門では肉体面を攻め、最終関門では精神面を攻めるとは!呆れるほど有効な戦術だ!

でも段々と趣旨がズレて来ているのは気の所為だろうか?

 

『……チッ、おい走れ』

「えっ、何言ってるの?そんな事したら……」

『いいから走れ!追いつかれるぞ!』

 

え、いやいや。分かってるのシンビオート?

ここの地雷は殺傷力こそ無いけど、強力な音と光が襲いかかって来るんだよ?君にとってここは本当の地雷原に匹敵するヤバい地帯だ。

それを────

 

『もちろん分かって言ってる。が、ここでノロノロ歩いていれば追い越されるのは時間の問題だ』

「それは……」

『それにだ。PulsUltraと言うだろ?いい加減オレ様も限界を超えなきゃならないからな。また脳味噌丸出し野郎が襲って来ても返討ち出来る為にレベルアップだ』

 

……そうか、シンビオートはUSJ事件を引きずっているのか。

そうじゃなきゃこんな馬鹿みたいに突っ込むような真似をしようとしないだろうからね。

 

……よし。

 

「あぁ分かったよ!連れてってやるよ!どうせ後戻りはできねぇんだ!この先に地獄が待っていようともお前を!1位へ連れてってやるよ!」

『そうだ、その意気だ。オレの事は気にせず走り続けろ』

 

 シンビオートが言うなら仕方ない。ここからはフルスロットルで行かせてもらう!

全身にシンビオートが纏わり付いた直後、地面を蹴り上げる。

 

「行くぞ!ここからは僕達のステージだ!」

『止まるんじゃねぇぞ……』

 

 それ言った奴死んでるけど大丈夫?

もしかしてお前、死ぬのか……?

 

『おぉーっと!トップの来正恭成!まさかの強行突破に出たぁぁ!まじかよ自殺行為だぞ!』

『その割に楽しそうじゃねぇか』

『当たり前だろ、こんな面白そうな展開実況しない訳にいかねぇだろぉが!』

 

 クソ!あそこは楽しそうにしやがって!!こっちは地雷を踏みまくってシンビオートが子供が遊んだ後のグチャグチャスライムみたいに崩れかけてるんだぞ!

 

『Gu……GYaa、aa Aa…ッ!』

「しっかりするんだ!ここを乗り越えればすぐに落ち着く!」

 

 断続的に地雷が発動する。吹き飛ばされる事はないが爆発すると同時にシンビオートが体が崩れかけてしまう。トップを維持はしているがこのままではシンビオートがいつまで持つか分からない。

……あれ?何か忘れているようn

 

BOOM!!

【シンビオート正直ウザい】

【寄生虫みたいな真似して恥ずかしくないの?】

 

『は?』

「………いや、だって事実じゃん」

 

あ、心の地雷が埋まっていた事忘れていた。

ドスの効いた声を放つシンビオートを落ち着かせ僕等は再び脚を動かし──

 

【キョウセイ、いつも喚いてウザい】

【お前の顎は緩んでいるのか?業者に直してもらえ】

 

「は?」

『事実だろ?』

 

………やばい。シンビオートの体が崩れるよりも先に僕達の信頼関係が崩れそうなんだけどコレ。

 

【お前がウザい】

【お前の方がウザい】

【は?】

【は?】

【屋上に行こうぜ】

【久しぶりにキレちまったよ……】

 

『おいアイツ等、地雷で会話してるぞ』

『ある意味で仲が良いな!だがここで後方から轟と爆豪が追い上げて来たァーーッ!』

 

復活早ッ!地面に氷の幕を覆って追い上げて、爆破で空を飛んで地雷を無効化ってずるいなソレ!

……あれ?なんか血涙流してるけどもしかしてダメージ残ってる?

 

「どけやぁァ!ついでにぶっ殺してやる!」

「悪く思うな。……今、俺は最高に機嫌が悪い」

 

おーっと、一応言っておくけど僕の所為じゃないからね二人共。

え、関係ない?成る程、そうですか ははは。

 

だれかたすけて

 

「シンビオートこの状況不味い。ここは一旦大人しく一位の座を開け渡そう。うんそうしよう」

『巫山戯るな!合法的にアイツらに指差して堂々と笑うことが出来るチャンスを逃してたまるか!!』

 

そう言うとこやぞシンビオート。

何?君って常に誰かを踏み台にしないと気が済まないの?

……ん?踏み台………あっ(唐突な閃き)

 

 

『……お、おおおお⁉︎こりゃどう言う事だ!トップの来正!いきなりその場で静止ィイ〜〜〜〜ッ⁉︎もうバテたのか!それとも勝負を諦めたかァ〜〜〜〜!?』

 

「ンな事はどうでもいい!一位は俺だ!」

「邪魔だ!俺が上だ!」

 

『ここで轟、爆豪の二人が前へ出たァーーー!一位争いが始まったぜ!さて優勝はどっちになるかなぁ!どう思うよミイラマン!』

『どうでもいい。……が、一人忘れてるぞ』

『ホワッツ?』

 

 

 

 

 

「邪魔だ!半分野郎!」

「クソ、邪魔なのはお前だろうが……!」

 

「感謝するよ二人共」

 

「「!?」」

 

 

 ありがとう二人共。僕の前に出てくれて。

ここじゃあ、シンビオートの本領を発揮しきれなかった。

広く、広大な遮蔽物や障害物と言ったものが何も無い此処じゃ()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……肩に黒い何かが……いつの間に⁉︎」

 

「この肩にへばりついているのはまさか……!」

 

「ご存知!」

オレ様(シンビオート)だッ!』

 

文字通り。君達二人を踏み台にさせてもらう!

迂闊に飛べば地雷を踏む可能性があるけど、地雷原そのものを飛び越せば問題無いッッ!

 

『これは、まさかの来正!前の二人を利用してパチンコの要領で飛んだァァァ〜〜〜〜ッッ!』

 

よし!前へ出れた!このままなら……!

 

「まだだッ行かせるかよッッ!」

 

「オレの前に立つんじゃあねぇよ寄生虫野郎がァ!」

 

……が、引き離したと思った二人はまだ食い付いて来る。

轟君は氷を断続的に重ねるように加速。爆豪は爆発の火力を高め更にスピードアップをして来た。

 

不味い、このままだと僕普通に攻撃されると思うんだけど。

そうなったら順位下がるどころかシンビオートが今日一日使えない可能性もある。

 

どうすれば────

 

 

BOOOOM!!!

 

 

「「「ッ!?」」」

 

『後方で大爆発!なんだあの威力!?偶然か故意か!?A組緑谷、爆風で猛追!!』

 

突如として響いた爆音。

後方には巨大な爆煙の中から吹っ飛んだ来た緑谷君の姿が………うん。

 

 ま た 緑 谷 君 か

て言うか、こっちに向かって突っ込んで来てるけど着地の事考えてなかったの!?

 

………あー、ハイハイ!分かったよ!友達のよしみだ着地の際は受け止めてあげるよ!

僕が後方の緑谷君にアイコンタクトを送ると、それに気が付いたのかコクリと頷く素振りを見せた。

 

おお、僕の考えを一瞬で読み取るとは流石緑谷君だ!

………あれ?なんで君、一回転するの?なんで手に持った鉄板を思い切り振りかぶってるの?

なんで地面に叩きつけようとしているの?

 

 えっ、待って。それ至近距離にいる僕、危険なんだけど?

ちょっ緑谷君待っ───

 

 

ガッ!!(叩きつけられる音)

 

『あ、終わった』

「自爆するしかねぇ」

 

……ハハッ、南無三ッ!

 

 

BOOOOOOOOOOM

 

 

 

 

『ば、爆発〜〜〜〜ッッ!緑谷の妨害により自身を含めた四人の姿が爆煙に包まれるゥーーー……… い、いや!その中から一人!何者かの姿が現れる!アレはなんだ!鳥か⁉︎飛行機か!?いや……!』

 

 正解は直立不動の姿勢でゴールに向かって吹き飛ぶ僕でした。

うん、死ぬかと思った(小並感)

背後スレスレに爆発が起きたけど咄嗟に盾を何重にも張ったお陰で大事にはならなかった。

 

『…シテ…コロシテ……』

 

 ほぼ瀕死状態に陥ってるコイツを除いてだけどねッ!

………いや医療班ーーーーッ!不味い!何が不味いってスーパーマンが敵に回った位に不味い!いや、クラークはよく敵に洗脳されるけどさ。

 

と言うか、あの時に咄嗟に盾を張ったのは()()()()()()()()なんだよね。至近距離で凄まじい音が襲い掛かるのは分かっていた筈なのに。シンビオート程の奴がどうして………!

 

『……ギ、ギリギリ…いける気がした………』

「うん、その結果がコレだけどね」

 

 ドロドロに溶けかけているシンビオートが地面に溢れないよう気を配りながら、僕は眼前に広がるステージに向かって脚を動かす。

 

「でもさ、シンビオート助かったよ Thank you(ありがとう)

You're welcome(どういたしまして)

 

 

『波乱の雄英体育祭1年ステージ!!オイオイオイ!このままで良いのかお前等!マジでコイツが優勝しちまうかもしれねぇぞ!けど、こう言う展開も良いよなァ!!テメェは悪か!それとも正義か!?来正恭成、堂々の一位ィーーーーーー!!』

 

 

………………。

 

……………………。

 

…………………………。

 

 

あ、そうか。僕、一位か。

ちょっと、ごめんシンビオート。少しの間、地面に置かせて。うん、ごめんね?大丈夫、すぐに済むから。

 

…………スゥーーッ……ハァ……。

 

 

「………い、よっォッッしゃぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああッッッッ!!!」

 

 

 僕は両腕を空に向かって振り上げる。ただただ、嬉しかった。喜びの感情が溢れて止らない。そんなVサインを掲げる僕を……いや、僕達を讃える声が会場内に響き渡った。

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

「え゛え゛ッ!更衣室に戻っちゃ駄目なんですか!」

 

「ごめんなさいね来正君。すぐに次の種目が始まるし、一位のあなたがレースに到着してすぐに姿をくらますのは色々と問題があるの……特にマスメディア的な問題で」

 

 ミッドナイト先生の答えに僕は肩を落とす。シンビオートの回復の為に更衣室へ一旦戻って良いか相談したんだけど、見事に却下されてしまったのだ。

 

「大丈夫?シンビオート」

『大丈夫に……見えるか?……ゴフッ』

 

 駄目そうですねコレは。うん、僕の為に盾になってくれたのは嬉しい事だけどホント、この後どうしよう。一応回復する手段は他にもあるけど方法がなぁ……。

 

「一位おめでとう!」

 

「凄いね!来正君!」

 

「お。ありがとう二人共」

『HA、HA……媚びへつらうつもりなら無駄だ……ぞ……』

 

 緑谷君と麗日さんが声を掛けて来るもののシンビオートは相変わらずの態度を取る。無理はしないでよ?

 

「どうしたのシンビオート君!なんか子供に散々グチャグチャにされたスライムみたいになってるよ!?」

 

「うん、シンビオートのダメージが酷くてさ。かなり困ってる」

『ハァ…ハァ……チョ、チョコ……いや、もう頭で良いから寄越せ…』

 

やだ、何か不吉な事を口走っているんだけどコイツ。

 

「今はチョコは持ってないの?」

 

「僕が24時間365日ずっとチョコを常備してると思ったら大間違いだよ」

 

 仮に麗日さんの言う通り僕が常日頃チョコ持ち歩いていたらポケットの中がベッタベタになってるからね?体育祭なのにズボン汚したくないからね、嫌だよそんなの。

 

「それじゃあ、僕にできることがあったら何でも言ってよ!」

「うん、私達、友達だからね!」

 

「そっか……ありがとう。二人t『今、なんでもって言ったよな?』

 

シンビオート?急にどうしt……あっ(察し)

 

「ど、どうしたのシンビオート君?いきなり肩を掴んで…」

 

『お前の顔面はジューシーに見えて涎が止まらなくなる』

 

「へ?ジューシーってどう言う意味───

 

 

がちゅ

 

 

 刹那、シンビオートは牙が並ぶ顎を大きく開くと緑谷君の首から上に齧り付いた。もう一度言おう。頭部に齧り付いたのである。

 

………あれ?何だろうこの既視感(デジャヴ)。入学した時にもこんな場面見かけた気がするんだけど。

 

 

 

「「「「「うわぁぁぁああああああッ!?」」」」」

 

 

 

 広がるは阿鼻叫喚の地獄絵図。

緑谷君の頭部に喰らい付くシンビオートの姿にクラスメイトどころか他学科の生徒、観客席の人達の悲鳴が会場内に響き渡る。

 

……あ、思い出した。これってシンビオートが緑谷君の腕に喰らい付いた時と同じ光景だわ(白目)

 

 

…………いや、何やってんだシンビオートォ!?

 

 

「何やってんのさ⁉︎吐け!吐き出さない!」

『クッソまずい』

 

誰が味の感想を吐けと言ったァ!!

 

「つ、遂にやりやがったぁぁぁあああ!」「何やってんだよ来正お前ーーーッ!」「やべぇよ…!来正やべぇよ…!」「クソ!こんな所いられるか!俺は部屋に戻らせてもらう!」「み、緑谷君ンンンンンンンン!?」「アイツは大した事が無いから私でも倒せる。そう思ってた時期が私にもありました」

 

 

「違う!!シンビオートが勝手に!!!」

 

 




 前回僕のヒーローアカデミアが今日から始まると言った矢先、台風によって放送が延期された件についてお詫び申し上げます。おのれ台風……。
また、この度 台風19号によって被災された方々に心からお見舞い申し上げます。




〜〜用語解説〜〜

『スーパーマン』
知名度共に戦闘力トップクラスのヒーロー。
【空を見ろ!鳥だ!飛行機だ! いや、スーパーマンだ!】
本名はクラーク・ケント。
地球育ちのクリプトン人であり社会人とスーパーヒーローの二重生活を送っている。



前書きの通り終盤で万能EDを流した読者の方に一言。

どうあがいても名曲の無駄遣い



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14話 違う!シンビオートが勝手に騎馬戦を!

 皆さんは僕のヒーローアカデミア見ましたか?サーナイトアイの予知がカッコ良かったですね。
外伝作品のヴィジランテも相澤先生の過去が判明したので気になった人はジャンプ+などで見れますよ。 単行本出ろ……。

ところで、本編の方はもっと学校らしいイベント増やしてくれませんかね?もっとクラス全体がワチャワチャする光景を見たいんじゃ……。



 

 ハロー皆さん主人公だよ。

おっと、いつものように『やぁ、皆』と始まるとは限らないよ?

 

「し、死ぬかと思った……」

『デク。しっかり休んでいるか?休養は大事だぞ』

 

……まぁ、前回。緑谷君の首がマミられた件だけど無事だからね?

まぁ。タグにギャグがある時点で生きてる事は察しはつくだろうけど。

 

 そんなこんなで元気を取り戻したシンビオートだけど、その元気になる過程での捕食シーンが全国報道されてる件。

うーん、死にたい(吐血)

 

………しばらくニュースとネットは見られないだろうなぁ。

 

 

 

「雄英体育祭1年第二種目は騎馬戦!」

 

……と、話題が逸れちゃったね。

続いての種目は騎馬戦らしく一種目の結果が良ければ良い程、高ポイントが割り振られるらしい。

 

「そして、予選通過一位の選手に与えられるポイントは────

 

えっと、二位が205Pだから必然的には僕達一位は210Pになる訳だn───

 

 

1000万ポイント!!

 

 

…………ゑ?

 

待って?いや、待って?

 

 

「制限時間は15分。ポイントの合計が騎馬のポイントとなり───」

 

 

 待ってと言ってるんですけど聞こえてない?

1000万と言った?0の数間違ってない?え、嘘でしょ?千じゃなくて万なの?

 

………FUCK!!

 

 

「それじゃこれよりチーム決めの交渉スタートよ!」

 

 

ハハハ、ミッドナイト先生。

それは僕に対する当てつけですか?畜生!

 

あぁ、分かったよ!やってやるよ!この先にどんな地獄待っていようともお前を(ry

 

「誰か僕と組む人居まs『速攻で全員離れていったぞ』ジーザスッッ!」

 

 え、何?もしかして僕だけ組む人居ない?まさか一人で騎馬戦に出ろと言わないよね?言わないよね!?(二回目)

 

『なぁに、オレとお前とで二人一組だ。いざとなればオレ達でやれば平気だろう』

「実質一人なんだけどそれは」

 

 クソ、やっぱり待っているだけじゃ駄目だな(確信)

けど15分もあるんだ。とりあえず、常闇君や緑谷君。……あとは八百万さんとか赤糸虫君ももしかしたら組んでくれるかもしれない。

 

まぁこの内の何人かは僕と組んでくれるだろ(フラグ)

 

 

 

 

 

 

 

「チーム?いいよ」

 

「早ッ!いいの?ありがとう!」

 

 一人目である赤糸虫君に交渉を持ちかけたらまさかのOK。正直言ってそれで良いの赤糸虫君。もしかしたらシンビオートが迷惑かけるかもだよ?

 

「うーん……まぁ、それはそれで仕方ないって事で」

 

「ありがとう!いや、本当にありがとう赤糸虫君マイベストフレンド!」

 

「わ、分かった…、分かったから。近い。全体的に物凄く近いから……」

 

 

「いやぁ、どうなる事かと思ったよ」

『これで不安要素は無くなったって訳だな』

 

ハハハこやつめ、一番の不安要素が何を言ってるんだか。

 

「それじゃあさ。俺も組んでいいか?」

 

「ん、いいよ。来正君はどうする?」

 

「僕は赤糸虫君に任せるよ………あれ?」

 

……どこかで会ったような々…。

青髪でなんか気怠そうな……こう、相澤先生に何処と無く似た雰囲気の………あー、やばい。最近会った筈なんだけど〜〜〜ッ!

 

「……あっ!もしかして君。ヒーローオフ会でバックドラフトの肘の位置に熱弁してた……!」

 

「いや、誰だよ⁉︎俺を忘れたのか!」

 

「あのさ、来正君。ボク思うんだけど、人の顔はしっかり覚えないと失礼だよ」

 

 言い返せねぇ……!クソォ、シンビオートはどこで会ったか覚えてる?………あれ、シンビオート?なんで身体形成してるの?

 

『あぁ、覚えてるぜ。オレ達に喧嘩を売って来たクソ野郎だよなぁ!それじゃあ交渉を始めようかァ!!』

 

「うぉっ!なんだよ!」

 

 シンビオート!?て言うか今思い出したけど、彼ってA組に直接宣戦布告して来た生徒じゃん!と言うかその時の事を未だに根に持ってるの!?

 

『さぁ、どう料理してやろうか!三枚下ろしと肉叩き。ミキサーもあるぞ!』

「シンビオート?それ交渉じゃないから!交渉(物理)だからほんと落ち着こうか、ねぇ!」

 

「クソ!放せ!この……"どっか行け!"」

 

 

 

 

『落ち着いた』

「うわぁ!?急に落ち着くな!……って、ちょっとシンビオート?どこ行くの?

 

 これから赤糸虫君と組まなきゃいけないんだけど?くそ!コイツ話聞いてn、いやホント何処へ行くんだよシンビオートォ!!

 

 

「「…………」」

 

「あ………悪い」

 

「あー、うん。いや大丈夫。そんな事より、一人減っちゃったけどどうしようか?」

 

 

 

 

「………へぇ、良い個性だね」

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

「組んで」

 

「え、あの、いや」

 

「組んで(土下座)」

 

「あの、顔を上げt」

 

組んで(懇願)」

 

 

 現在、残り数分となった今。僕は麗日さんと緑谷君に土下座をしていた。

……え、理由?組んでもらう為だよ(半ギレ)

 

「い、いや別にいいけど何もそこまでしなくても……」

 

「だって緑谷君。僕に向かって堂々と宣戦布告して来たからてっきりA組の誰もが組んでくれないのを覚悟していたんだよ?」

 

「あっ、あれは言葉の綾と言うか………」

 

 そうなの?あー、良かった(安堵)

もしも誰も組んでくれない事態になったら本気でシンビオートと僕の二人で一人組(?)という謎理論の元に騎馬戦に参加していた所だった。

 

「とにかく二人共、よろしくね。………で、どうして僕から離れているの?」

 

「……いや、だって」

 

「油断していたら頭食べられるかもしれないし……」

 

「違う!それはシンビオートが勝手に!」

 

 いや、本当にごめんね?アレは不可抗力だったし……止める暇も無かったけどさ。

 

「それに、ここだけの話なんだけどシンビオートがチョコを食べるのって好みってのもあるけど、明確な理由があるんだよね」

 

「理由?」

 

「フェネチルアミンって知ってる?チョコとかに含まれる化学物質でさ、シンビオートはそれを餌にしてるんだよ」

 

 小学生の頃だったかな?、シンビオートがチョコを食べさせた後と前とで様子が変わった為、個性の専門家などに話を聞いた結果、シンビオートがチョコ食べるのは偏食家とか好みの問題じゃなくて、チョコレート中に存在するフェネチルアミンを摂取する為だと言うのだ。

 

「えっと……それじゃ僕の頭に噛り付いたのと何か関係が?」

 

「そのフェネチルアミンってアドレナリンからも供給できるからね。文字通り君から栄養を貰ったんだよ……まぁ、後遺症は出ないだろうから安心してね」

『味は最悪だったがな。砂糖水にクソを混ぜたような味だ』

 

 表現が汚い(確信)

 

「ほほう!それはとても興味深いですね!一位の人!」

 

「「「うわぁっ!?」」」

『出たな諸悪の根源』

 

 背後に振り向くと、ピンク髪のサポート科の人が立っていた。

たしか第一関門ではレーザーに直撃していた筈だけど、乗り越えられたんだね。

 

「ハハハ、いやぁ。我ながら素晴らしいロボットの制作に携われて良かったと思いますね!ところで、この私。発目明が製作したベイビー達を使ってみる気はありませんか?」

 

『使うだと?』

「どういう事?」

 

 話によるとサポート科は自身が製作したアイテムを持ち込めるらしく、騎馬戦ではそのアイテムを僕達も特別に使用する事ができると言うのだ。

……まぁ、この発目さんが言うには自身のベイビー?が大企業に注目してもらう為に僕等の立場を利用すると言う訳らしい。

 

「どうする皆?僕はどっちでも良いと思うけど……」

 

「うん、僕は賛成かな。生き残る為にアイテムを使えるのは とても有り難いからね!」

「私もいいよ!……シンビオート君はどうする?」

 

「あー、シンビオートね?一応聞いておくけど『別にいいぞ』そうだよね。君ならそう言うと……えっ、いいの?」

 

てっきりファッキューと呟いて中指立てる位は想定していたけど……え、本当に良いの?

 

『勝ち上がる為だからな。グダグダと否定してばかりじゃいられない。それに加えてオレはまだ本調子じゃあ無いからな特別に今までの事は水に流してやる』

 

 そうシンビオートが言うと右手を形成し、発目さんの前に差し出す。

 

『仲直りのハンドシェイクだ』

「では、お互い"良い関係"でいましょうね」

『あぁ、"良い関係"でな』

 

 

「なんか仲直りして良かったね」

「うん。確かに」

 

 

 

 

 

 

 

『(ククク馬鹿め。オレ様がそう易々と背中を預けると思ったか このクソ女が。ボロ雑巾になるまでコキ使って後は全身の至る栄養を吸い尽くしてやる……その時になるまでオレ様の贄になってもらうとするか……)』

 

「(フフフこれは好都合。良くも悪くも目立ち注目を浴びているこの方を利用すれば私のアピールにもなりますし、何よりこの黒い生命体にはとても興味が唆られます。散々利用した後はじっくりと私の為の礎となってもらいましょうか……)」

 

 

「『(最後に勝利するのは私/オレだ!)』」

 

 

「フフフ……!」

『ハハハ……!』

 

 

あっ、これはお互いロクな事考えてないヤツだ。

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

「麗日さん、発目さん、来正君!シンビオート君よろしく!」

 

「うん!」

「はい!」

「よし!」

『祭りの始まりだ……!』

 

 緑谷君を騎手として僕を前に女子である発目さんと麗日さんの二人は後方といったオーソドックスな騎馬を組んだ。

直後、プレゼント・マイク先生の声が会場中に響き渡る。

 

『よ~し組み終わったな!準備はいいかなんて聞かねえぞ!さぁ行くぜ、残虐バトルロイヤルカウントダウン!』

 

「3…2…1……スタート!!」

 

 ミッドナイト先生の声と同時に周りの騎馬がこちらに向かって一斉に駆け出して来る。

 

「実質1000万の争奪戦だ!」

 

「ハッハッハ〜!緑谷君頂くよ!」

 

『ハハハ!大量だなコレは!!』

 

 おそらくだけど、ほとんどの騎馬が僕達を狙って来ている。覚悟はしていたけど、正直圧される光景だ。

……でもそんな光景に1人だけ上半身裸の女の子が居るんですがそれは。

 

『ここはどうする?』

「作戦としては二つあるよ。一つは 一対多の無謀な混戦に挑むか。もう一方は尻尾巻いてでも逃げて高得点を維持するかだけど……」

 

「もちろん逃げの一手!」

 

 ですよねー、と言うわけでここから離れて───!?

 

「足元が沈んでいる⁉︎」

 

「あの人の個性か!」

 

『チッ、早く抜け出せ!奪われるぞ』

「そんなの分かって……ちょ、シンビオート暴れないで!逆に沈むから!」

 

 あ、やばい。下半身が埋まった⁉︎予想以上にこの地面深い⁉︎ボボボボッ!助けて!緑谷君!麗日さん、発目さん!!

 

「二人共、顔避けて!あと、僕にしっかり掴まってて!!」

 

 瞬間、地面を抜け出すと共に身体に浮遊感を感じる。

どうやら緑谷君が背負っているジェットパックによって脱出できたらしい。

 

『ハハハ!こりゃイイ!中々やるなサポート科!』

 

「えぇ、そうでしょう!そうでしょう!この発目明の名前を覚えておいてくださいね!」

 

 あれ、予想以上に仲良くなってる。……なんかお互いに利用し合って最後にはボロボロにして使い捨てると思ってたけど……杞憂だったみたいだね。

 

「耳郎ちゃん!」

 

「分かってる!このッッ!」

 

「耳郎さんのイヤホンジャック!ここまで伸ばせるのか!」

『オレに任せろ』

 

 僕らが空に居るにも関わらず遠距離から攻撃してくる耳郎さん。しかし、それをシンビオートは難無く弾き飛ばす事に成功する。

 

『音を出せない耳郎など恐るるに足らず。ただの胸部装甲の薄いお前にオレ様が負けると思うか!』

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!」

 

「落ち着け耳郎!」

「どう見ても挑発だよ!」

 

「覚えておけよ来正ィィィイイイ!!」

 

 うん。コレは僕は悪くないよね?なんで僕に怒りの矛先が向いているの?何故?

……っと、そんな事を考えている間に麗日さんの履いているホバーブーツにより何も起こらず地面へ着地する。

 

「どうですかベイビーたちは!可愛いでしょう?可愛いはつくれるんですよ!」

 

「うん!機動性バッチリ!」

 

「……私が浮かしとるからやん」

 

 うーん、なんだろう。この噛み合ってないようで微妙に噛み合ってない会話は。と言うか麗日さんは……なんだ?こう、嫉妬だろうか?

発目さんとは仲良くして欲しいんだけど。

 

『おい、好感度は今の内にバッチリ上げておけ。デクはチョロいからな、放っておくといつの間にか取られるぞ』

 

「えっ、シンビオート君。どうしたの急に……?」

 

『……チッ、この鈍感女が』

 

「なんで舌打ち!?」

 

 シンビオート。よく分からないけど麗日さんに変な事を吹き込むのはやめなさい。あと、その舌打ちをやめろと言ってるのに……。

 

『さぁ、まだ開始から2分と経ってねえが早くも混戦混戦!1000万を狙わず2位から4位狙いってのも悪くねぇ!』

 

「奪い合い?違うぜ!これは一方的な略奪よォ~!」

 

「この声は……峰田君!」

 

 でも声だけは聞こえて、姿は見えないんだけど?

周りにはこっちに障子君が迫って来て………いや、障子君一人で何してるの!?

……まさか、誰とも組めずに一人で(震え声)

 

「待って!障子君の背中!」

 

「フフフ、よく見破ったなぁ〜〜……」

 

「なっ⁉︎小さな体(キャラデザ)を活かして、身体を覆い隠している!?」

 

 やばい、アレは厄介だ。ここも逃げて───!?

 

「と、取れへん……!」

 

「峰田君のモギモギ!?着地の瞬間を狙って罠を仕掛けたのk───緑谷君伏せて!」

 

「えっ⁉︎……うわっ!?」

 

 ピンク色の鞭みたいなものが峰田君の居る所から伸びて来た!?

………まさか、コレは……!

 

「私も居るわよ」

 

「蛙吹さんまで!」

 

「梅雨ちゃんと呼んで!」

 

「おっるァ!舐めてんなよA組ィ!」

 

「背後からも来t『屈めデク!』うわぁっ!?」

 

 無理矢理シンビオートに押さえつけられた緑谷君の頭上に煌めく青い光が通り過ぎる。

こ、この無駄に自己主張の激しいレーザーはまさか……!

 

「そう、その通り。僕さ☆」

 

「青山君!」

 

「決着を付けに来たぞ。黑を纏いし者よ!」

 

 青山君め……常闇君と尾白君の二人と組んだのか!

 

「レーザーの持続時間は短いけど☆」

 

「その欠けた穴を闇で埋める!黒影(ダークシャドウ)!」

『アイヨ!』

 

「正面から来る!」

『面白い、どっちが上から決めるとするか!』

 

 黒影の拳を僕はシンビオートを纏い受け止める。やばい、あぁクソ!騎馬を組んでいるから本当にやり難い!

 

「オイオイオイ!俺達も忘れてもらっちゃあ困るぜ!」

「ケロッ!」

 

「飛龍!ウロコを飛ばせ!」

「分かった!」

 

「常闇君☆僕のキラメキで援護だよ☆」

 

 しまった!三方向からの同時攻撃が緑谷君に!?

クソ、同時になんかシンビオートで防げる事出来ないし………あっ。

 

「緑谷君、ごめん!」

 

「えっ、いきなりごめんっt────」

 

 直後、僕は青空に向かって緑谷君を放り投げた。

 

「ああああああああああああああああ!?」

 

「み、緑谷君ーーーー!?」

 

「二人共屈んで!」

 

 二人にそう告げると頭上スレスレに凄まじい弾幕が通る。直後、空高くに居る緑谷君をシンビオートの腕を伸ばし引き寄せる事に成功した。

 

「よし、回避成功!」

 

「これを回避と言い張るの!?」

 

 回避出来たから回避でいいんだよ(適当)

 

「だが、もう脱出不可能よ!!」

 

「1000万は俺達のものだ!」

 

「一位は俺達が頂くッ!」

 

 徐々に周囲に騎馬が集まって来ている事に気付く。このままじゃ確実にハチマキが奪われてしまうだろう。

 

「不味い、囲まれた!」

 

「強行突破で行こう!無理矢理でも良いから飛ぶんだ!」

 

「駄目!引っ付いて飛べない……!」

 

「緑谷君 最大出力だ!何としてでもこの場から脱出しないと!」

 

 バシュウウウ!と空気が噴出される音が響き、浮遊感を感じはするが一向に上へ進まない。やはり麗日さんのブーツについたモギモギが邪魔か……!

 

「今だポイントを奪え!」

 

「俺達の勝ちだぁぁぁああ!!」

 

……もう背に腹は変えられないか!!

 

「シンビオート!麗日さんの足(ホバーブーツ)を切り落とせェーーーーッ!」

『シャアッッ!』

 

ばつん!!

そんな断ち切れる音が響くと同時に僕等は重力に逆らい上空へと高く飛び上がる。しかしバチバチと音を立てながら黒煙が上がるホバーブーツの姿を見た発目さんはショックを受けている。

 

「あああああああッッ!!ベイビーが無残な姿にィ!」

 

『ハハハ!!残念だったな!アッハハハハ!』

 

 今、笑ってる場合じゃないよシンビオート?気がついて無いと思うから言うけどさ。()()()()()()()()!!

 

「調子に乗ってんじゃねぇぞクソがァ!」

 

「かっちゃん⁉︎それアリなの!?」

 

「うるせぇ!とにかく死ねや!」

 

 上空にいる僕等に向かって一人飛んでやって来る爆豪君。相変わらずシンビオートと同レベルの口の悪さだ。

 

「シンビオート!」

『分かってる』

 

 爆破をする瞬間、手首にシンビオートを巻き付け攻撃を逸らす事に成功する。流石のシンビオートでも爆破を喰らえばひとたまりもない。

 

「と、言うわけで勝負はまたの機会にねッ!!」

『顔洗って出直して来るんだな』

 

「うぉおッ⁉︎クソがぁぁあ!」

 

 そのまま投げ飛ばされた爆豪君は自分の騎馬に向かって落ちて行く。………あ、瀬呂君がキャッチした。あー、無事で良かった。流石に体育祭で大怪我ってシャレになってないからなぁ。

 

 

 

 

 

 

「クソがぁぁ!!追え!クソ髪追え!」

 

「頭叩くなっての!つーか、今は冷静になれって!」

 

「〜〜〜ッ!!(そうだ冷静になれ……、あの寄生虫野郎は何で俺と戦わなかった?ヤツはデクと同じクソナードだが抜け目の無ぇ野郎だ……何か隠している事が───)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   /\/\/\∧

  < バーカ! >

   V\/\/\/

\    |    /

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    /   ヽ

\ m {0}/"ヽ{0}m /

  |っ| ヽ_ノ と|

 / ム  `ー′ ム \

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`/ /     ノ /

/ |     (_ \

\_)      \_)

 

※シンビオート

 

 

 

 

「クソがぁぁああああああああああああああ!!」

 

 

「見え見えの挑発に乗るんじゃねぇ!」

 

「おいよせ爆豪!立ち止まるな!」

 

「乗るな爆豪!戻れ!」

 

 

 

 

 

『ハハハハハ!!おい見ろ!下で悔しがっているアイツがゴミのようだ!ハハハハハ!』

 

うわぁ、笑い声も伴って悪そう(小並感)

あとでバルスされて目をやられないようにね?

 

「着地お願いシンビオート君!」

 

『オレをクッションにするとはな……後でたらふくチョコを食わせてもらうからな』

「はいはい、チョコは分かったから────ん?」

 

 急に周りが暗くなったけどコレは……鳥?

 

「いえ、鳩の大群ですよ!」

 

「身動き取れない!」

 

「視界も最悪だ……!」

 

 大量の鳩が僕等の周りをグルグルと飛び、動きを制限されてしまった。こんな事を出来る人は一人しか居ない……!

 

 

「翼を持つもの達よ。彼等を中心に旋回し動きを封じるのです!」

 

 

「口田君の生き物ボイス……!」

『FUCK!! 小賢しい真似をしやがって!』

 

 考えてみればここは屋外で空を飛ぶ事のできる鳥達に命令を下す事も可能だ。流石同じ動物を愛するソウルフレンドと褒めてあげたいところだ。

と、そんな事を考えていると緑谷君が腕を正面に突き出した。

 

「正面突破だ!僕が大技で鳩を吹き飛ばす!三人共踏ん張る準備と共に来正君は僕の指を治す準備をして!「嫌だよ」よし!それじゃあ……待って?今、何て言ったの来正君」

 

 

「え、だから嫌だよそんなの」

 

「ええ!?」

「来正君何で!?」

 

「だって怪我するし」

 

「た、確かに僕の指は壊れるけど、すぐにシンビオート君が治してくれるし……」

 

「いや、そうじゃなくてさ。……こんな可愛らしい鳩達に危害を加えるのは反対って事なんだけど、言ってる事分かる?」

 

 そう言うと緑谷君達はショックを受けたような表情を浮かべた。

何だよ、古今東西全ての動物に優しくするのは当然だろ(偏見)

 

 

「え、えぇ…(こうなったら、無理矢理でも……!)」

 

「あ、そうだ緑谷君。言い忘れてた事があった」

 

 僕は緑谷君が突き出した腕を掴み、呟く。

 

「もし、無理矢理でも突破しようとしたら貴様の腕をへし折る…」

「ヒェッ」

 

『諦めろ。こいつは重度の動物愛好家(ケモナー)だ。逆らったら最後、奥の手として取っておいた"カタパルトタートル戦法"を使う事になるからな』

 

「要は自爆特攻しろって事!?」

 

 なんで?動物の命を犠牲にするなら自身の命を差し出さない普通?(偏見)

 

『まぁ、発想を変たらどうだ?たしかにオレ達は身動き取れないが、外の奴等だってオレ達の姿が見えない筈だ。闇雲に攻撃してくるとは思えないな』

 

「あー、たしかに」

 

『それにだ。何処かの誰だとは言わないが、みみっちい器の持ち主じゃ全国が報道してる前で堂々と小動物の命を奪う真似なんてできないだろうがな。何処かの誰だとは言わないが』

 

「た、確かに。かっちゃんなら手を出せない!」

 

 君達にとって爆豪は一体なんなんだよ(真顔)

いや、確かに器は小さいかもしれないけどさ。本人が居ない所で言いたい放題だな君達!

 

とにかくどうするかだけど………ん?

 

「ねぇ、なんかこっちに来t「1000万貰うよーーー!」なぁッ!?」

 

 すると鳩の大群を突き抜けて葉隠さんのチームがやって来たのだ。別に、それくらいは想定していたし対処法も練る事も出来るだろう。

 

………けどさ。

なんで葉隠さん、全裸になってるの(真顔)

 

「葉隠さん!女の子が公の場で全裸になってはいけません!と言うかその必要性は!?」

 

「ふっふっふ〜〜!よくぞ聴いてくれました!鳩の大群に混ざる事によって私はどこにいるかは分からない!」

 

成る程、確かによく考えたな葉隠さん!

 

「そして、不可視である私からハチマキを守り切るのは難しい!透明人間を相手に接近戦は不利だよ─────って、前に来正君が言ってた」

 

 成る程。つまりは全裸になったのは来正ってヤツの仕業だったと言うわけか。

おのれ来正め、ぜってぇ許さねぇ!

 

 

…………………。

 

………………………。

 

……………………………。

 

 

いや、犯人僕だーーーッ!?

 

 

 

「ふぅん、成る程ね。ヤオモモの時もそうだったけどさ……あんたアレだわ。ウチを含めた女の敵だわ………」

 

「え、いや。ストリップ紛いの時もそうだけどアレはシンビオートが吹き込んだ事で僕は全く関係無いんだk『そんな事を一々覚えているのか。洗濯板の上に干しぶどう乗っけたような身体をしてる癖して記憶力は良いな』

 

 

あっ(察し)

 

 

「もはや問答無用ッッ!あの世で詫び続けろォォーーーーッ!!

 

だから違うぅ!!シンビオートが勝手にィ!

 







〜〜人物紹介〜〜

『発目明』
予選はセンチネル擬きのビームを喰らって敗退かと思いきや、底力を見せ見事に騎馬戦へ出場。来正恭成の注目度を利用したアピールを画策する。
シンビオートとは……なんかデスノートのライトとLの関係っぽい(小並感)


『耳郎響香』
何気無い一言が彼女を傷つけた。
半ば狂戦士化してますが、もしかしたら次回活躍する可能性が……。


『葉隠透』
公の場で全裸になる倫理感のやべー娘。
だがしかし、実際に全裸になった理由は閑話の時にアドバイスした来正が原因だったりする。





〜〜シンビオート解説〜〜


 シンビオートは主にフェネチルアミンを餌としています。
その化学物質は主にチョコと人の脳に含まれ、アドレナリンからも供給されます。
ちなみにいつもは主人公のアドレナリンから、またはチョコをそのまま食べて摂取しています。


なので前回、緑谷君の頭に噛み付いたのは口や耳、鼻。または目、毛穴などの凡ゆる場所から体内へ侵入し、フェネチルアミンを摂取していました。

……えっ、エグいだって?
生きてりゃ儲けもんでしょ(白目)





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15話 違う!シンビオートか勝手にポイントを!


投稿遅れてすみませんでした(土下座)
今回の出来は多分微妙。




 

 やぁ、皆。主人公だよ。

ところで皆って胸の大きさについてどう思う?

おっといきなり品のない話になって失礼。……でもさよく考えて欲しい。

そもそも人はどうして胸の大きさで良し悪しを判断するのだろうか?地域によって美しさの基準は違ってくるし好みも人それぞれだ。

 

結局、何が言いたいかと言うとさ。胸も美容と同じく大きさじゃなくて大きさで好まれるんじゃなくて美乳だからこそ好まれるんだと思う。大き過ぎる胸だって形が崩れれば下品になる。

 

まぁ、つまりはだ耳郎さん。

 

 

「おばあちゃんが言っていた。貧乳はステータスだ。希少価値だ……と」

 

「よし、私に対する宣戦布告でいいんだな

 

「なんで!?」

 

そんな⁉︎僕ができる精一杯のフォローなのに、どうして耳郎さんは青筋を立てまま僕に殺意を向けてるんだ!?

 

「いいか、人にはコンプレックスと言うものがある。お前のそれは見苦しいフォローで相手を傷つけている。それが分からないお前はやっぱり女の、いや!私の敵だァ!!!」

 

「ヒェッ」

『おお怖い怖い』

 

ちょっとシンビオート?他人事言ってるようで悪いけど君にも責任があると言うかほぼ君の責任だからね!?

と言うか葉隠さん達はなんで黙って………あ、自分達は巻き込まれないように黙ってやがる!?

 

「この包囲網(鳩)から逃げられると思うなッ!」

 

 そう耳郎さんは叫びながら左右のプラグを連続でコチラに突き出して来る。

イヤホンジャックのラッシュだとぉ!?

 

『ハッ、こんな小さなものでオレを倒そうとしているお前の姿はお笑いだったぜ』

 

 それに対して両腕を交差させ防御の構えを取る。回復したシンビオートの引き締まった筋肉の壁!突破出来るものなら突破してみr

 

「爆音注入ッッ!」

 

──パァン!!

 

GYOOOOOOOOOOOッッ

 

………えっ、なんかプラグが突き刺さた部分からシンビオートの腕が弾け飛んだんだけど?

なに、どう言う事?

 

「来正君!耳郎さんの個性は自分の心音を相手に送り込むんだ!流動体のシンビオート君の腕は一点集中の音波によって破裂したんだよ!」

 

「成る程、人体にやっちゃダメな個性だって事は分かった(確信)」

『クソクソクソクソクソ!』

 

 隣でクソクソうるさいけど、とにかくこの場はどうするべきか……と言うか、周囲が鳩の群れに囲まれて移動も制限されてるから本当にやり辛い……っ!

そう思っていると麗日さんの声が飛んで来る事に気づく。

 

「来てる!来てるよ来正君!」

 

「覚悟しろォ!無事にいられると思うなよォ!」

 

『おいどうする。這い蹲ってでも謝るか?』

「逆に聴くけどアレを見て言い訳が通用すると思う?」

 

……よし、言い訳しても無駄だね(諦め)

負けた!体育祭編 完!!

そんでもって優しく殺して(懇願)

 

 

その時である。

周囲の鳩達が空へ羽ばたいた直後、僕等の騎馬と耳郎さんの騎馬との間に氷壁が現れたのだ。

 

「この氷壁は……まさか!」

 

 麗日さんがそう呟き、僕等が振り向いた先には轟君を騎手としたチームがそこには居た。

 

「そろそろ()るぞ」

 

「轟君か……!」

 

 助けてくれたのは轟君だったが……どうやら、一難去ってまた一難と言ったところだろうか。こちらのポイントを奪う気満々だ。

 

『速いメガネにビリビリのアホ面。そして何でも作り出すFカップと来た。なんだこの厨パ』

「ごもっとも。強豪で固めて来たみたいだね……」

 

 彼等と真正面からぶつかるのは得策じゃない。とにかく今は逃げるしか……。

 

 

───パァン!!

 

 

………えっ。

 

「動くと……当たりますわよ」

 

 八百万さんは()()()()()()()をこちらに向けながらそう呟いた。

………あ、うん。八百万さん。

 

(チャカ)だソレーーーーーー!?

 

 やべぇよ、やべぇよ……!アレ本気通り越してるよ!?と言うか未成年なのに銃使って良いのか……!?

 

「お前には何もさせねぇ。ワンモーションでも何かしたなら、容赦無く攻撃する」

 

「は?何言って───危なッ!!」

 

また撃って来た!?

 

「言っただろ、お前には何もさせないってよ!」

 

 上鳴君まで⁉︎どうしてこうなった!僕はただ生徒全員で体育祭を楽しみたいだけだったのに!僕が何かしたって言うのか!?

 

『……そうだな。アホ面を言葉巧みに騙し打ちしたり、手のマスクをした敵にレンガ投げたり、その敵を前にしてダンスを披露したりしたな』

 

 うん。よく考えてみたら自業自得だったわ

そりゃ警戒されても仕方なかったわチクショウ!

と言うかレンガ投げたのはシンビオートお前の所為だからな?

 

「いやぁ流石ですよ来正さん!この注目度!やはり貴方なら私のベイビー達を最大限にアピールできますね!」

 

「発目さん⁉︎今、来正君がピンチなのに凄いポジティブだね⁉︎」

 

「サポート科の人達って、こんなのばかりなの……?」

 

 発目さんの発言に緑谷君、麗日さんの二人がリアクションを取る。うん、まさか本当に利用する気満々だとは……せめて僕の身を案じたりはしないの?……え、ベイビー達を宣伝できればどうでも良い?アッハイ。

 

「とにかく、ここは話s───また撃って来た⁉︎」

 

 撃たれた瞬間、シンビオートで盾を形成しつつ距離を離そうと後方へ移動するが飯田君の機動力に加え他二人がローラースケートを履いている為すぐに追いつかれてしまう。

 

「まずい……!分かっていたけどあっちの騎馬は強すぎる!」

 

「どうするのデク君!」

 

「今はとにかく逃げて……って、沢山来た!?」

 

 気がつくと周囲から騎馬が迫って来ていた。轟君達を相手に精一杯だって言うのに!これ以上は勘弁してくれない!?

 

「八百万!上鳴!」

 

「任せてください!」

 

「いくぜ、無差別放電130万ボルトォォ!!」

 

 瞬間、轟君のチームが布のようなものを纏ったと思うと直後に上鳴君が広範囲に及ぶ電撃を放って来た!?

 

「まずい、シンビオート!ドーム状に盾を!」

『分かってる!』

 

 ドーム状にシンビオートを形成する事により外部からの電撃をシャットアウト。これで一時凌ぎにはなるけど……。

 

「ねぇ、この後どうするの?轟君のチーム強いよ?」

 

「うん本当に困った。あっちの殺意が凄まじいし、僕に至っては喋らせてくれない……どうすればいいかな?」

『そりゃ、お前が考える事だ。俺は身体を動かすだけでだからな』

 

クソ、シンビオート役に立たねぇ……いや、現在進行形で役に立ってもらってるけどさ!

……と言うかさっきから緑谷君黙りっぱなしだけど どうしたんだろう。

 

「緑谷君、どうかしたの。何かあるなら聞くよ?」

 

「……轟君達だけど、来正君に警戒し過ぎている気がするんだ」

 

「警戒"し過ぎている"?」

 

「うん、八百万さんとかそうだけど。来正君が口を開くと必ずと言って良いほど攻めに移る」

 

「成る程!つまりはソレを利用して相手の意表を突くと言う訳ですね!」

 

 成る程……うん。なんか色々と心に来るものがあるけど納得がいく。どおりで全く喋らせてくれない訳だよ(白目) これも日頃の行いと言う奴なんだろうなぁ……。

 

「……と、言うわけで来正君。何か良い作戦ある?」

 

「いきなりだね麗日さん。……それじゃ、少しやってみたい事があるんだけどさ。発目さん、ちょっと良いかな?」

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

『さぁ!!黒いドームを張ったまま沈黙状態の緑谷チーム!それが今、解き放たれたァァ!!』

 

 僕がシンビオートを解除すると共にプレゼントマイク先生の声が響き渡る。目の前には轟君のチーム。そして彼等の後方に足元を凍らされた騎馬が沢山。どうやら轟君は彼等のチームからポイントを奪っていたようだ。

 

「逃げられると思うな」

 

「今度は逃がしませんわよ来正さん」

 

 と、轟君の後にライフルを構えた八百万さん。

……うん、何故か手持ち武器がグレードアップしてる事については突っ込まないでおこう。

 

「とにかく作戦通りに───ッ!」

 

 やっぱり、撃って来たか!

一応聞いておくけど八百万さん、銃の扱い云々大丈夫なの?暴発とかして指吹っ飛ばないよね?そこら辺色々怖いんだけど。

 

「ご心配無く!銃の扱いならハワイでお父様に教えてもらいましたの!」

 

「ハワイって万能だね(小並感)」

 

 頭脳が大人で外見子供の探偵が連想させる八百万さんに言葉を返しながら形成して盾でガードし続ける。

確かに銃自体は強力だが弾数の制限と言う隙が存在する!

そして八百万さんの場合はリロードするよりかはまた新しい武器を創造するのが一番なんだと思う。

 

そうなると武器はたった数秒で創られるだろう。されど数秒!その数秒が命取りになると思え!

……別に命は取らないけどさ「待てやテメェ等ァ!」ヴェッ!?

 

『おおっーーーと!!ここで現時点で3位の爆豪チームが乱入ゥーー!ここぞとばかりに爆豪が先行して行ってるぞ!』

 

「か、かっちゃん!?」

 

『こんな時にお邪魔虫が……!おい、どうする?』

「このまま続行しよう!緑谷君、爆豪君に向かって投げつけて!」

 

「えっ、いいの⁉︎……でも」

 

「大丈夫。爆豪君の性格を考えれば受け止めるなんて真似しないから!」

 

 僕の言葉に意を決したのか、緑谷君は爆豪君に向かって丸められた"何か"を投げつける。それに対して爆豪君は………

 

「喧嘩売ってんのか!!あ゛?」

 

 当然払い除けてコチラに向かって突進してくる。ヒェッ、怖い。

 

「───ッ!クソ、馬鹿にしやがって!」

 

「とにかく……って、なんだ?何投げたんだアレ」

 

 上鳴君達が戸惑いを覚えながらソレに注目する。丸まった白い帯状のものは次第に広がっていき、そして────

 

 

「なっ……!?い、"1000万ポイントのハチマキ"だとぉお!!」

 

「「「「「「「ッ!?」」」」」」」

 

 轟君、爆豪君以外にもその声に反応したこの会場内全員が投げられたハチマキへ一斉に注目し始めた。

 

「嘘だろ!?何考えてんだよ来正のヤツ!」

 

「だ、騙されてはいけません!きっとこれも来正さんの作戦!アレは恐らく本物そっくりダミーですわ。その証拠に緑谷さん達のチームのポイントが────

 

 

 瞬間、スクリーンに映し出されていた1000万もあった僕等のポイントは一気に0(ゼロ)となり最下位へ転落した。

 

 

「本物だと!?本気で何を考えているんだ!」

 

 困惑の表情を浮かべる飯田君。そんな彼の疑問に答えるかのように爆破のスピードを高めながら爆豪君はコチラに向かって飛んで来る。

 

「ンな事関係ねぇ!それを考えた野郎をシメれば万事解決だわ!」

 

「お、おい爆豪!!」

 

「死ねやコラァ!!」

 

 

 

 

 

「どうぞ。爆豪君、遠慮無くやっちゃって」

 

「───ッ!!」

 

瞬間、爆豪君は器用に爆破の勢いを殺さずに自身の騎馬へ戻って行く。

 

『……チッ、惜しいな。少しは冷静みたいだな』

 

「テメェ……やっぱり抜け目がねぇな。ハナから()り合うつもりは無いって事か」

 

……やっぱり、爆豪君気付いちゃうか。頭に血が上ってるから多分行けると思ったんだけどなぁ。

 

「危ねぇな爆豪!」

 

「気を付けろよ!悪質な騎馬への攻撃は即失格ってミッドナイト先生言ってたからな!」

 

「そうそう!ましてやハチマキつけてない騎馬への攻撃は完全アウトだからね!」

 

「分かってるわクソが!!さっさとハチマキ拾えや醤油顔!」

 

「だーかーら!俺は瀬呂だっての!!」

 

 爆豪君の呼び名に対し瀬呂君が訂正を求めながらテープを伸ばす。もちろん伸ばした先には僕等が持っていたハチマキだ。

このままだと爆豪君のチームが1000万ポイントを手にする───と、思うじゃん?

 

 

 

スカッ

 

 

 

「ありゃ?」

 

「ちょ、外してるじゃん瀬呂〜!ちゃんと狙ってよ!」

 

「いやいや、ちゃんと狙っt「悪りぃが俺達が頂く!」やべっ!」

 

 瀬呂君達が揉めている隙に轟君達の騎馬がハチマキの元に駆け付ける。

 

「緑谷君、麗日君そして来正君。どうやら悪手だったようだな!1位は俺達の────しまった!?」

 

 エンジンにより凄まじいスピードを見せる飯田君がポイントに手を伸ばすが掴み損ねたのだろう。通り過ぎてしまった上に別の騎馬へ衝突してしまう。

 

「げぇえ〜〜〜〜ッ!轟のチームかよ!……い、いや!今がチャンスだ障子!ポイントを奪う絶好の機会だ!」

 

「クソ!邪魔だお前等!」

 

 それが開始の合図となったのだろうか。他の騎馬も1000万を狙い、別の騎馬を潰そうと次第に会場内は混戦へ変わりつつあった。

 

『オイオイオイ!面白くなって来たじゃねぇか!誰が1000万手にするんだろうな!お前、どのチームだと思う?』

 

『何言ってんだ。そもそも最初からアイツ等の手の内にあるよ』

 

『はぁ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハハハ。いいぞ殺し合え…これだからキョウセイと一緒に居るのがやめられないなぁ……』

「正直ここまで酷い光景になるとは思わなかった」

 

 目の前で広がるのはある意味で地獄。1000万ポイントを奪う為に他を蹴落とす人として醜い部分が現れている。

こ れ は ひ ど い 。

 

「おや、よく言いますね。緑谷さんが投げたハチマキに私が開発したベイビーの低空移動型ドローンを取り付けて欲しいと言ったのは貴方じゃないですか」

 

「……で、結局さ。来正君の作戦って何なの?私、よう分かってないんだけど」

 

 麗日さんが今も理解できてないようなので説明に入る。

ドーム状の盾内側で僕は発目さんに小型移動用ドローンを1000万ポイントに取り付け、それを餌に他のチームを潰し合わせると言う策である。

よくもまぁ、こんな穴だらけの作戦を成功できたなと自分でも思ってるけど……ま、いいか。

 

「とりあえず【戦わなければ生き残れない作戦】成功。いいぞ、その調子だ……戦え…戦え……」

 

 

 

「ねぇ、来正君ってたまに闇が深くなるよね。過去に壮絶な出来事でもあったの?」

 

「ダメだよ麗日さん。それは口に出しちゃダメなヤツだよ…!」

 

「私はベイビーを効果的に使ってくれれば何でもいいです」

 

『……と、言われてるが?』

「聴こえない。何も聴こえない(真顔)」

 

 そんな小言を聞き流しながら僕は小型のコントローラーでドローンを呼び戻し1000万ポイントを緑谷君に返す。これで再び一位に返り咲いたと言う訳だ。

 

「よし、最終フェーズだ!皆ここから本番だよ!」

 

「うん!……ここから?」

 

「何を言ってるんですか?もう作戦は終了してるでしょう?それに制限時間は終わりに近づいています、私達は勝ったも同然じゃあないですか」

 

まぁ、確かに発目さんの言う事もごもっともだね。

 

野郎、俺達を弄びやがって……」「アイツ等ぜってぇ許さねぇ…」「調子に乗りやがって…」「ねぇどうする?処す?処す?

 

あれ見て同じ事言えるならの話だけどね(吐血)

 

「ものすごく殺意向けられてるんだけど……?」

 

「と言うか僕まで巻き込まれている⁉︎やったのは来正君なのに!」

 

 ハハハ、馬鹿だなぁ緑谷君は。この程度は笑って流せるレベルだよ。それに君等だってノリノリで僕の作戦に乗ってくれたじゃないかハハハ。

……何笑っとんねん(ブーメラン)

 

「来正さん、ちなみに策はあるんですか?あれだとすぐに捕まりそうなのですが……」

 

「あるよ」

 

「あるの⁉︎」

 

「うん、とっておきのヤツがね!皆の足を見るんだ。皆さっきまでの撹乱で疲労が足に来ている。そこがつけ目だ!」

 

「それでその策って……?」

 

「こっちも足を使うんだ!」

 

「足だって!?どうやって───!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げるんだよォォーーーーーッ!」

 

((ええーーーッ!?))

 

「成る程、そう来ましたか!」

 

 とにかく僕達は他の騎馬達から逃げるように足を動かす。と言うか本当に逃げるんだけどね。

えっ、真っ向から戦わないかだって?多勢に無勢。たった1組で10以上もある騎馬に立ち向かうなんて無理に決まってるだろ(半ギレ)

 

「逃すな!醤油顔はテープ張れ!ピンクは粘液で地面滑りやすくしろ!」

 

「瀬呂範太だっての!」

 

「あ、し、ど、み、な!」

 

「轟君!皆掴まっていろ!一瞬で追い付く!トルクオーバー!『レシプロバーストォ』!」

 

 あ、やばい。爆豪君と轟君の2組がものすごい勢いでこっち来る!ちょっと待って、やめて、2組同時に来られたら確実に危n────

 

BOOOOOOOOOOM!!

 

うわらば

 

「き、来正君ーーーーーッ!?」

 

……あれ?爆豪。気の所為か僕を重点的に爆破しなかった?

 

『轟チームと爆豪チームの同時攻撃ィーーー!!1000万を手にしたのは………!』

 

 

 

 

 

「俺達だ……ッ!!」

 

『轟チームだぁぁぁ!!1000万を手にしたのは轟チーム!遂にトップへ踊り出たァーーーーッ!……いや!?』

 

「まだだッ!!」

 

BOOOOOOOOOOOOM!!!

 

『何と、爆豪の奇襲ゥーーー!1000万ポイントを手放してしまったァァ!そして轟チームを押し退け1位は爆豪チームへ!!』

 

「何処見てやがる。俺達が居るだろうが……!」

 

「この………ッ!」

 

 

 

『これは激しいぶつかり合いだーーーっ!勝つのは轟か爆豪か!』

 

 

 

「シンビオオオトォーーーーーッ!!」

『WRYYYYYYYYYYYYYッ!!』

 

『いや、まだだ!!!緑谷チーム!来正恭成1人が黒の巨躯へ変貌を遂げ騎馬となった───!ここで2組に接戦を仕掛けるつもりだーー!だがタイムアップまで残り僅か!間に合うのかーーーーッ⁉︎』

 

 プレゼントマイク先生の声に僕は冷汗を掻いてしまう。焦りこそ感じるものの、今はとにかくポイントを取り返す事だけを考えよう。

僕は右腕を突き出した緑谷君に目をやる。

 

「緑谷君!本当に良いんだね?今も納得は出来てないけど、信じているからね!」

 

「もちろん、分かっている………ッ!」

 

 そう応えた緑谷君は中指に力を込めるような状態に入る。

そして緑谷君の強力なデコピン(必殺技)が発動する直前、対衝撃用にシンビオートが身体中から触手を張り巡らせる。

 

「麗日さん 発目さん。対ショック用意!凄いの来るよッ!」

 

「(卵が爆発しないイメージ…!)SMASH!

 

 瞬間、僕等にズドンと凄まじい衝撃が襲い掛かると同時に前方へ巨大な空気の塊が射出される。

 

「──ッ!?」

 

「がっ⁉︎」

 

「ちょっと、なになになに〜〜〜〜ッッ!?」

 

「凄い…ッ、風……ッ!?」

 

 2組の騎馬に命中すると緑谷君の目論み通り。爆豪君の手に収められていた1000万のハチマキが宙へ吹き飛ばされた。

 

「〜〜〜〜ッ!!今だ…ッ!早くッ!」

 

「駆けろシンビオートォ!!」

『任せておけ!!』

 

 そう応えるシンビオートはスリングショットの要領で僕達は前方へ飛び出させる事に成功した。怯んでいる彼等を出し抜き1000万を手に───

 

「させ───るかぁッ!!」

 

 刹那、僕等に向かって膨大な熱量が押し寄せて来た。咄嗟にシンビオートが盾を形成しその攻撃を防ごうとするが……

 

ぐぁぁぁあああああああああッッ!

「シンビオート!?」

 

 黒い盾ごと轟君の左から発せられた炎に包み込まれた。形成していた盾は崩れ体の至る部分もドロドロと溶け出して行く。

……そんなシンビオートが一層の苛立ちを溶けかけた顔に浮かべ、叫ぶ。

 

『───ッFUCK!GODDAMN HOT(クソッ‼︎熱いぞチクショウが)ッッ!!!サッサと手を伸ばせデクゥ!!!』

「ッ!!届けェ!!」

 

 左手を伸ばし宙に舞うポイントを手にするまで残り数センチ。指が触れようとしたその瞬間。白い糸のようなモノが横から伸び、ハチマキはあらぬ方向へ……いや、別の騎馬の方向へ引き寄せられて行った⁉︎

 

「漁夫の利だよ。悪いけどコレ奪い合いなんだよね」

 

『何とーーーッ!ここで息を潜めていたB組 物間筆頭とした赤糸虫、鉄哲、心操チーム!1位へのし上がったぁぁぁ!!そして、残り時間10秒を切ったぁぁぁ!!』

 

「なっ!?」

 

「嘘でしょ……⁉︎」

 

そんな1000万のポイントが、僕達の勝利への鍵が…。

僕の所為だ、僕があんな欠陥だらけの作戦を行った所為で皆を巻き込んで 僕は────

 

『───ウジウジしてれば勝てるのか?

 

────ッ!!

 

「ポイントだ!一点でも良いからポイントを奪い取るッ!僕達はまだここで終わっていない!」

 

「─ッ!轟君とかっちゃん達からポイントを奪う!麗日さんは僕達全員を個性で浮かして!ジェットの勢いで飛ばすよ!」

 

「分かりました!」

 

「やるのか緑谷君!」

 

「もちろん!もう一度行くよ皆!」

 

 おそらく、これが最後のチャンス。この機を逃せば次の最終ステージに進む事は絶対に出来ないだろう。

「〜〜〜ッ、SMASH!!

 

『これはーーッ!先程の緑谷が出した技の応用!反動を活かしてジェットのように轟、爆豪の騎馬に突っ込んで行くゥーーーー!果たしてどうなる!そしてカウントダウン開始行くぜぇ!5!』

 

「クソデクが!俺から奪えると思ってんのか!」

 

『4!』

 

「悪ィが…、そう簡単に奪わせてたまるかよ」

 

『3!』

 

「行け……!」

 

『2!』

 

「行けぇぇえええええッッ!」

 

緑谷君が手を伸ばし、それを掴んだ直後。

 

『1……終了〜〜〜〜ッッ!』

 

タイムアップの合図が鳴り響いた。

僕等の騎馬は凄まじい勢いで飛んだ所為かバランスを崩し、騎手である緑谷君が落ちてしまう。そんな彼の手元には1つのハチマキが収められていた。

 

「〜〜っ!ポ、ポイントは⁉︎僕等の結果は……!」

 

そんな彼が握りしめるポイントを見て僕等は────

 

 

 

 

「…緑谷君、心苦しいけどさ。……()()()()

 

「ッ!」

 

 例年の最終のトーナメントには上位4組、つまり最高でも16人出れる事となっている。けど、今僕等が持っているこのハチマキ(ポイント)だけじゃ次に進む事が出来ない…。皆頑張ったのに僕はこのザマだ。僕は────

 

「………楽しかったね!」

 

───麗日さん?

 

「いや〜、悔しいけど楽しかったよ!来正の作戦、中々良いと思ったんだけどな〜〜〜〜〜ッ!」

 

「え、いや……」

 

「そうですね!私のベイビーを上手く有効に活用してくれましたし!感謝していますよ?」

 

「……うん、そうだよ!僕の我儘に付き合ってくれたし、ありがとう来正君!」

 

 皆が僕に賞賛の言葉を送ってくれている。僕は大した事をしていない。ただ提案して、それを実行してくれた皆が居たからここまで来れたんだ。

それに、悔しいのは君達"も"なのだろうに………。

 

だからこそ、僕は皆にこう言わくちゃならない。

 

「僕の方こそ、皆が組んでくれたからここまで活躍できたんだよ……皆、本当にあr『か────っ

 

………。

 

「ごめん、言い直すね?本当にありg『が───っ!』…あr『べっ、おげぇっ!』ありがt『か──────ッ』…………」

 

 

 うん、ごめんシンビオート。焼かれて苦しいと思うけどさちょっと黙ろうか(真顔)

今、ちょっと良い場面だからね?汚い高音を発して台無しにしないでくれる?

 

「ごめんねシンビオート君、今は来正君が皆にありがとうって感謝の言葉を呟く感動な場面だから少し静かに……ね?」

 

麗日さん、裏表無い言葉でそう言うのは僕自身物凄く恥ずかしいからやめて(懇願)

……て言うかどうしたのシンビオート。痰でも絡まった?

いや、シンビオートに痰が存在するか分からないけど。

 

『かーーーーーーーッ!?』

「……え、何?口の中に手を突っ込め?」

 

 言われるがまま途中で口を閉じたりしないか不安になりつつも僕はシンビオートの喉の奥へ手を差し込む。

……あ、なんか変なのが引っかかってる。

 

「───よっ……と。うえ、体液でぬっちゃりしてる……何度も言ってるけどさ、拾い食いするのやめなよシンビオート」

 

「……き、来正君?」

 

「ん、あぁ。ごめんね汚いの見せちゃって。これでも拾い食いの癖は良くなった方なんだよ?最初の方なんか猫を丸呑みしようとしt「そうじゃなくて!手に持ってるヤツ!」……ん?」

 

手に持ってるヤツと言われても、赤い数字が書かれてる白い……布?しかも複数あるし。

なんだコレ?どこかで見た事あるような───あれ、ちょっと待って?

 

これ…これ……ハチマキ(ポイント)だこれーーーーーーッ⁉︎

 

 

『なんとーーーーッ!最後の最後に来正恭成!ポイント追加ーーー!いつの間に手にしてたんだ?分かるかミイラマン?』

 

『おそらくラスト10秒のジェットで吹っ飛んだ時に奪ったんだろうな。やっとこれで選手は決まったと言う訳だな。んじゃ、俺寝るから

 

 そんな解説実況を担当する先生達の声が響く中、スクリーンには僕等のチームが4位と言う結果が映し出されていた。

皆は僕の事を評価するがこれはシンビオートの手柄だろう。

 

良かったぁぁ゛ぁああ゛あ゛あ

 

「緑谷君凄い涙⁉︎……や、やったね来正君!」

 

「えぇ、そうですね!これも作戦のうちなのでしょうか?」

 

「……いや────」

 

僕流で言うならば最後のお約束(いつものオチ)のアレだ。

まぁ何を伝えたいかと言うと──

 

 

「───違う、シンビオートが勝手に」

『そうだ、俺に感謝s───ごぶっ

 

「「「「あっ」」」」

 

そう言えば、シンビオート燃やされてたの忘れてたわ。

 

………って、シンビオートォ!?

 

 

 




最終トーナメント出場選手一覧

1位
物間、赤糸虫、鉄哲、心操

2位
轟、飯田、八百万、上鳴

3位
爆豪、切島、瀬呂、芦戸

4位
緑谷、来正、麗日、発目




〜〜用語紹介〜〜

『戦わなければ生き残れない』
仮面ライダー龍騎にて登場した仮面ライダーオーディン(神崎士郎)が発した言葉。こう言ったバトルロワイヤルで願いを叶えるなんて、ロクな結果が待ってないんだよなぁ……。
タタカエ…タタカエ……。


『逃げるんだよォーーー!』
ジョジョの奇妙な冒険 第2部 戦闘潮流 の主人公ジョセフ・ジョースターが発した台詞。「お前の次の台詞は〜」に並ぶジョセフの十八番でありジョースター家代々に受け継がれる戦法(多分)
第3部スターダストクルセイダーズにて承太郎も使った。



 今回のオチはいつもと違った感じ。来正君の代わりにシンビオートがやばい状態ですが……まぁ、チョコを上げればすぐに回復するから騒ぐ程でもないか。


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16話 違う!シンビオートが勝手に決勝トーナメントを!

 リアルの方が落ち着いたので投稿。
ところでポケモン剣買ったんですが時間が瞬く間に過ぎ去っていくんですが どう言う事なの(困惑)


 やぁ皆、主人公だよ。前回シンビオートがこんがり焼かれたけどすぐに回復しました。やっぱりト◯ポは凄いよね、最後までチョコたっぷりだもん。

………今更だけど、チョコで回復するってシンビオートはどう言った存在なのだろうか。

 

「おまたせ、待った?」

 

「いや、ちょうど来た所だ」

 

「あれ?緑谷君も来ていたんだね」

 

「うん、……で話って何かな?」

 

 騎馬戦が終り昼休憩に入った直後、轟君が裏に来いと言う半ば脅迫じみた発言にビビりながらやって来たけど、どうやら僕の考え過ぎだったようだ。

 

『よぉ、さっきは良くもこんがりと焼いてくれたな。だけどまぁ、あんな程度の火力でオレ様を倒そうだなんて到底無駄な話だけどな』

「うん、そう言う話は僕を盾にしないでしっかりと正面から堂々と言った方がいいよシンビオート」

『やだ』

 

こいつ……ッ!

……まぁ、いいか。どうせいつもの事なんだろうから(悟り)

 

「そうだな、お前達に気圧された。自分の誓約を破るくらいにな」

 

「誓約って……使わなかった左側の個性の事だよね?」

 

 確かに宣誓する前にシンビオートとの言い争いでそんな事口走ってたね。……うーん、これって触れていいのだろうか。彼のプライバシーに関する事だからあまりなぁ……。

 

『で、なんでそこまでして左を使わないんだ?縛りプレイRTAでもしたいならゲームの中だけにしておけ』

「シンビオート!?」

 

 うん、知ってた。

 

「……飯田も上鳴も麗日も…感じてなかった。最後の場面あの場で俺と八百万が気圧された。……来正、お前も分かってるんじゃないのか?」

 

「えっ、何が?」

 

「惚けなくてもいい。オールマイトを身近に感じた俺達だからこそ分かる。緑谷からオールマイトと"同じ何か"を感じ取った」

 

なんかいきなり話題が変わったんだけどどう言う事なの?僕がバカなのだろうか、話の主軸が未だ理解できてないんですが。

 

ねぇ、どう言う事だか分かるかい緑谷君?

 

「………」

 

……あれ?緑谷君。どうして黙ってるの?どうして汗だくなの?どうして視線を合わせてくれないの?

 

「……ナ、ナンデモゴザイマセン」

 

うわ、すっげぇ怪しい!!

 

「緑谷、お前まさかだと思うがオールマイトの………」

 

えっ、緑谷君ってオールマイトと何か関係ある?

確かに緑谷君はオールマイトに色々似てるようなヒーロー性だったり個性だったりするけど………あっ(察し)

 

「隠しk「それ以上駄目だ轟君!」……?」

 

「それ以上いけない。オールマイトの、その黒い部分に迂闊に触れるのは危険だと思うんだ」

 

「来正君!?」

 

 分かってる。分かってるんだ緑谷君、君が一体どんな境遇なのかをさ。さぞ辛かっただろうに……。

 

「緑谷君。例え君が()()()()()()()()()()()だとしても僕はずっとソウルメイトだからね」

 

「えっ?」

 

「えっ?」

 

『えっ?』

 

「……は?」

 

 

 

……………………。

 

 あれ、何この空気?違うの?緑谷君ってBIGBOSSみたくオールマイトのクローンじゃないの?恐るべき子供達計画みたいなので作り出されたりしてないの?

 

「……いや、俺はオールマイトの隠し子だと」

 

「えっ、マジで?」

 

「ちっ、違うよッ!どれも違うから!血の繋がりは一切無いからね!?」

 

デジマ!?

 

『揃いもそろって馬鹿な奴等だな』

 

 すると先程から黙っていたシンビオートはぬるりと僕の首辺りから現れると口を開いた。

 

『常識的に考えてみろ少なからず実の子供ならオールマイトに似た特徴くらいは出て来るだろ。それに本気で子供ならそれこそ大ニュースになる。そんな簡単な事を考えられないなら一度、頭の中をプディングと交換したらマシになるんじゃないのか?』

 

シ、シンビオートに常識を説かれた……不覚ッ!

 

『それにだ、デクはオールマイトの隠し子でもクローンでも無ければ肉体関係にあるわけでもない。コイツは平和の象徴の弟子なのさ』

「そ、そそそうなんだよ!シンビオート君の言う通りd……待って。肉体関係ってどう言う事?」

 

 あー、弟子なんだ。緑谷君の性格を考えると言えないか。と言うよりも、そもそもの話 師弟関係を信じてもらう事すら出来ないだろうね。

 

「……話は逸れたが本題に戻すぞ。俺はそんなNo.1ヒーローの下である万年No.2の息子だ」

 

「えっ、No.2の息子って……君の親はまさか、『エンデヴァー』なの⁉︎」

 

「……知らなかったのか」

 

 エンデヴァー。オールマイトに次ぐNo.2ヒーローの事だ。オールマイトに比べアンチも多数いるヒーローだが事件解決数史上最多記録を保持しているとんでもない人だ。

まさか轟君がそんなヒーローの息子だとは……主人公属性盛り過ぎじゃない?

 

「ウチの親父は極めて向上心が強い奴でな。ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたがそれだけに生ける伝説オールマイトが目障りだったらしい。そして自分じゃオールマイトに超えられないと次の策に出た」

 

「次の策って?」

 

「…個性婚って知ってるか?」

 

「第二~第三世代間で問題になったやつだよね?自身の個性をより強化して子供に継がせる為だけに配偶者を選び結婚を強いる。倫理観の欠落した前時代的発想の」

 

 流石は緑谷君よく知ってるね。まるで個性博士だ。

………あれ?でも何で急に個性婚の話が出て……あっ(察し)

 

「実績と金だけはある男だ。親父は母の親族を丸め込み母の個性を手に入れた」

 

 いや、ちょっと待って?

 

「記憶の中の母はいつも泣いてる。「お前の左側が醜い」と母は俺に煮え湯を浴びせた」

 

 ねぇ、待って?(懇願)

 

「ざっと話したが俺がお前達につっかかんのは見返す為だ。クソ親父の個性なんざなくたって…いや、使わず一番になることで奴を完全否定する」

 

……や、やばい。

予想以上にブラックな過去でどんな顔をすれば良いか分からないんだけど。この時、僕はどんな顔をすれば良いんだ?答えてくれシンビオート。

 

『(笑えば良いと思うよ)』

 

笑えねぇよ

 

 分かった。とにかくもう、いいッ!もう休め轟君……ッ!君の不幸話は理解したから!心が苦しいから!もう休めッ!アマゾンズseason2並に重い話で精神的なダメージががががが。

 

「……流石にヘラヘラ笑う事は出来ねぇか」

 

「……そりゃ、まぁ。当たり前だよね」

 

 こんな不幸な話を聴いて笑うヤツなんかジョーカーとか頭がイカレているヤツくらいしか居ないと思うんだけど。

 

『なんだ。もう終わりか?これからもう少し盛り上がると期待したんだがなぁ』

「シンビオート。ちょっと空気読んで(懇願)」

 

「……なんだと」

 

 ほらぁ!こう言う展開になるだろうから空気読んで欲しいんだよ!

 

『自分が不幸だから誓約つけてても問題無いって言いたいならお前の笑いのセンスは皆無だな』

 

「……馬鹿にしてるのか」

 

『馬鹿にしてる……?馬鹿なヤツを馬鹿にした所で無意味だ。何で馬鹿にする必要がある?』

 

「挑発のつもりか?その程度で俺を釣れると思ってるなら一度、頭の中身を変えてもらったらどうだ?」

 

『……面白いヤツだ。殺すのは最後にしておいてやる』

 

 ギスギスが止まらねぇ……その先には誰も居ないからギスギスは止まってくれ(懇願)あ、団長は止まらなくていいです。

 

「とりあえずさ喧嘩はやめておこうか二人共。うん、ケンカ ヨクナイ、僕等トモダチ」

 

「友達ごっこしてる訳じゃねぇんだよ」

 

『引っ込んでろ』

 

「僕のクラスメイトと同居人が辛辣過ぎる件について。緑谷君はどう思う?」

 

「全クラスメイトから仲間外れにされるよりはマシだと思う」

 

 僕のソウルメイトの闇も深過ぎる件について。え、何?ウチのクラスメイトって必ず心の何処かに一物抱えてるの?

 

「とりあえずさ、轟君の言いたい事は分かったよ。君がどんな気持ちで今までを暮らして来たのかさ」

 

「同情しなくていい……相手の顔見て取り繕ってるお前に全部分かる訳ねぇだろ」

 

「まぁね。そりゃ僕に両親が居ないから君の気持ちは分からない。……けど()()()()()()()()()()()

 

「は?」

 

『……ハァ 馬鹿が』

 

「別にいいんじゃないかな。左側だけで戦ったってさ、トラウマなんて簡単に乗り越えられる訳ないんだから。……そう考えると君は強いよ」

 

「強い…?お前、何言って」

 

「言葉のままだよ。君は立ち向かえる…あー、いや向き合う力を持ってる」

 

 何もせずに逃げて現実と向き合わない臆病者とは違う。轟君は悲惨な過去と向き合って未来を勝ち取ろうとしているんだ。

……なんか我が魔王と似てるね、いや別に轟君は変身とかしないけどさ。

 

「とにかく気に障ったら謝るけど君は間違っちゃいない。……僕が言える立場じゃないかもしれないけどさ。それが君が選び抜いた未来なら僕は応援するよ」

 

「………」

 

「それじゃ、僕はそろそろお昼に行くから!緑谷君、轟君、先に行くからね!」

 

「来正君!?……轟君、僕だって負けられない。僕を救けてくれた人たちに応える為にも、僕も君に勝つ!」

 

「……あぁ」

 

 轟君は僕等の言葉に目を伏せながら応える。

……何か声を掛けてあげたいけど、これ以上刺激したらまた地雷を踏み抜く可能性があるのでしばらく距離を置く事にしよう。

 

『……おい』

「どうしたの」

 

『どうして言い返してやらなかった。あぁ言った天狗スカした奴は今の内に折っておく方がアイツ自身の為だ』

「折っておくって…ズカズカと相手のプライバシーに踏み込むのはアレだし。僕等が言っても意味無いと思うよ」

 

 轟君には説得じゃなくて行動。言葉じゃなくて本気でぶつかり合わないと心に響かないと思うんだ。

 

「轟君はいい人だからさ。もしかしたら分かり合える時が来るかもしれない。その時になるまで気長に待つよ」

『……クク、今の内に借りを作らせておく算段だな嫌いじゃあない』

「そう言うとこやぞシンビオート」

 

 

 

 

 

 

 

「ステーキ丼にすべきか…、或いはラーメンにしようか……」

『チョコ…?どこ?ここ?』

「チョコはさっき食べたでしょ」

『(´・ω・`)そんなー』

 

 食堂にて何を食べるか迷う僕。シンビオート、そんな顔してもチョコはあげないからね?最近、糖尿病にならないかヒヤヒヤものだから少しは低糖質のものを摂取しないと。

 

「あの、よろしければコチラのチョコをどうですか?」

 

そんな僕等の元に高級そうな箱を持った八百万さんがやって来た。

……え、こんな高そうな物貰っていいの?

 

『よかったのか?ホイホイ渡しちまって。オレは高級品でもホイホイ食っちまうんだぜ?』

 

「えぇ、たった数万円のチョコなので構いませんわ。それに来正さんにはUSJの時に助けて貰いました。その時のお礼ですわ」

 

「そう言うことならお言葉に甘え……待って、数万円?」

 

 チョコ?数万円?………あぁ、成る程。1ダース辺り数万か。そう言うことね完全に理解したわー(理解してない)

ま、まぁ別にそこまで高くはないか(震え声)

 

「えぇ、一個たったの数万円程度の安物ですが来正さん達のお口に合えばよろしいのですが……それでは来正さん。そろそろこの辺で失礼しますわね」

 

「うん、それじゃあね八百万さん………一 個 数 万 円?」

 

 安物の 法則が 乱れる !

安物の概念とは?うごごごご……?

 

『はっ、数万だ?無駄に金を掛けたチョコが果たして口に合うか────』

「……シンビオート?」

 

 なんかいきなり固まって動かなくなったんだけど?

え、どうしたの?大丈夫?ココア飲む?

 

『……カカオの宝石箱(ビックバン)や』

「は?」

 

パァン

 

 直後シンビオートは膨張を始め弾け飛んだ────

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

「何が?」

 

「いや、なんか凄く汚いと言うか身体中のあちこちに黒いモノがベッタリ付着してる」

 

「これ?シンビオート(だったもの)だよ」

 

「いや、何が起きた!?」

 

「その容貌、見て察するに余程の事態が起こったのだろう」

 

「いや大した事無いよ。なんかシンビオートが爆発した程度で被害は全く無いし」

 

「それなら……待った、今何て言っt『さぁ昼休憩も終わっていよいよ最終種目発表!とその前に予選落ちのみんなに朗報だ!』

 

 砂藤君の発言がプレゼントマイク先生の声により掻き消されてしまう。うん、突っ込みたい気持ちは分からなくも無いけどね。

 

『あくまで体育祭、ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ…ん?』

 

 おお、チアガールだ!本物のチアガール生で見たよ。なんだろう不思議と感動するなぁ。左から順に金髪、白人、一つ飛ばしてAクラスの皆が揃ってダンスして………あれ?

 

『どうしたA組!?どんなサービスだそりゃ!』

 

 そこにはチアガールの衣装を纏ったクラスメイトである女子達の姿。そっと僕が後方へ視線を向けると上鳴君と峰田君がしてやったりの表情を浮かべていた。

……あー、うん。そう言う事ね理解したわ この二人が原因ね(超速理解)

 

『なんだ、お遊戯会の時間か?』

「違うよシンビオート。青春の1ページだよ」

 

「アンタ等、呑気に解説して……!」

 

「まぁまぁ耳郎ちゃん。本戦まで時間空くし張りつめててもしんどいしさ。いいじゃんやったろ!そうだ!来正君、どうかなこの格好、似合ってる?」

 

『正直シコリティは高い』

「おいシンビオート、今すぐ口を閉じろ」

 

 やばいな。シンビオートを放っておくと放送禁止ワードが出てくる可能性があるから油断できねぇ……まぁ確かに似合ってるけどね。

 

「そして更に〜!ヤオモモちゃんが創った付け耳を装着する事によって……じゃーん!ネコミミチアガール!」

 

「ちょっと⁉︎やめてよ葉隠!」

 

「うぉお!ネコミミ!スゲェ!」

 

「くそっ!透明じゃなければなぁ!あと胸が…!」

 

「お前等、後で殺す」

 

『煩悩塗れが何を言う。……で?キョウセイ、感想はどうだ?』

 

「付け耳は邪道 地獄に堕ちろ(うん、いいんじゃないかな)」

 

「「「!?」」」

 

あ、やべ。言い間違えちゃった。

 

「いいんじゃないかな。フツーに似合ってるし、それに耳郎さんも可愛らしいよ」

 

「……え、あ?う、うん。……アリガト」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか変に良い感じでまとめてるけど殺意に塗れた発言を放ってたよな」

「馬鹿、殺されるぞ!」

 

 そこ、うるさいよ。せっかく耳郎さんの機嫌が良くなったって言うのにさ。

……ちなみに皆は付け耳好きかな。僕?ハハハ、ケモミミと付け耳は一生分かり合えないと思う(真顔)

 

 先生達の話は進んで、僕を含め進出した16名はレクリエーションを挟んだ後、決勝トーナメントを行うと言うのだ。今年は一対一のガチンコ対決。去年はチャンバラ対決で比較的安全だったけど……今回は血みどろの戦いにならなければいいんだけどね。

 

「ど、どうしたの?」

 ↑

緑谷(いつも重傷を負う人)

 

「何見てやがる、死ね」

 ↑

爆豪(爆発物を具現化したような危険な人)

 

「………」

 ↑

轟(強力な個性を使う要注意人物)

 

『ハッ』(中指を立てる)

 ↑

シンビオート(論外)

 

………ち、血みどろの戦いにならなければいいんだけどね(震え声)

 

「それじゃあ、決勝トーナメントの組み合わせの結果を発表します!スクリーンにご注目!」

 

【第一回戦】

『第一試合』

心操vs緑谷

 

『第二試合』

轟vs八百万

 

『第三試合』

来正vs物間

 

『第四試合』

赤糸虫vs芦戸

 

『第五試合』

瀬呂vs切島

 

『第六試合』

鉄哲vs上鳴

 

『第七試合』

飯田vs発目

 

『第八試合』

麗日vs爆豪

 

 

 ミッドナイト先生の声と共にトーナメント表が映し出された直後、あらゆる生徒達にリアクションが起こる。

 

「あんただよな緑谷出久って。一回戦よろしく」

「あ、こ、こちらこそ!(この人ってあの時の……)」

 

「女だからって手加減はしねぇぞ」

「こちらも手加減はしませんわ」

 

「せ、き、し、むって……あ!最後にハチマキ奪った!」

「うん、あの時はごめんね。でもよろしくお願いね」

 

「負けねぇからな!」

「おうよ!恨みっこ無しだぜ!」

 

「覚悟しろよA組ィ!」

「いや俺はあまり関係無いと言うか……くそ!やってやるよ!」

 

「君が発目君か!よろしく頼むぞ」

「飯田ってアナタですか!実はですね……」

 

「麗日って誰だ?」

「ヒィーーーッ!」

 

えーっと、僕は第三試合か!それで相手は……物間?

 

「僕の事を呼んだかいA組?」

 

「おっ、君が物間君?よろしくね」

 

「へぇ、僕達より優ってるA組がわざわざ握手なんて…嬉しい事してくれるね」

 

「え、あ、うん?」

 

 なんだろう。もしかして怒ってる?僕、何か悪い事しちゃいました?とでも言っておこうかな。……あ、いやダメだ。この発言は火に油を注ぐと思うし。

 

『なんだ、お前。どうやら死にたいようだな』

「シンビオート!」

 

「シンビオート……あぁ、君の事ならしってるよ。宣誓の時に一位になると宣言した癖して現在一位になってないヤツだろう?」

 

『……は?』

 

 あ、煽り返しただとッ!?この物間君と言う男、中々やる奴だ!

 

『……そう言えばオレも見た事があるな。獲物を横取りしないと勝てなかったハイエナ…いや、ゴミに群がるハエの事だろう?お前の事だよお前』

 

「あれれ〜、おかしいぞ?そんなハエにすら劣っている君は果たしてなんなのかなぁ?もしかして図星だったから怒ってるのかなぁ」

 

『怒ってる?オレが?ハハハ面白い事を言うなお前は!ハハハハハハ!!』

 

「まさか、事実を述べたまでだよ僕はね。ハハハハハハ!!」

 

『「ハハハハハハハハハハハハ!!」』

 

 

「………ポンポン痛い」

 

「大丈夫?ハーブティー飲むかい☆チーズもあるよ☆」

 

「うん、後で貰う」

 

 ティーカップを片手に持った青山君にお礼を言いつつも僕達は観客席に戻る事にした。レクリエーション?胃がストレスでマッハな状態で僕に追い打ちをかけるつもりかな?

 

「でも、楽しみにしてるよ☆君が一位になるところ」

 

「違うぅ…シンビオートが勝手にぃ……」

 

 青山君からのプレッシャーを感じながら僕は束の間の休息を楽しむのだった。

 

 

 

『おいキョウセイ!レクリエーションに出るぞオレ達の力を見せつけてやれ!』

「クソァ!!結局こうなるんだろうと思ってたよォォ!」

 

「僕のハーブティー!?」

 

この後、無茶苦茶ティーカップを叩き割ってしまった事について青山君に謝った。

 




主人公「付け耳は邪道。異論は認めん」
付け耳派「は?キレそう」

付け耳派の方々、申し訳ありませんでした。


〜〜キャラクター解説〜〜


『轟焦凍』
主人公属性盛り盛りのキャラ。実は現時点での主人公への好感度は最悪だったりする。このままだと地獄兄弟の仲間入りしてしまう可能性が微レ存…。

『物間寧斗』
第三試合にて主人公と戦う事となった心がアレな人。シンビオートと煽り合戦にて接戦を繰り広げるが引き分けとなる。


〜〜用語解説〜〜

『ト◯ポ』
やっぱ◯ッポはすごいよね。その点最後までチョコたっぷりだもん。

『BIG BOSS』
いいセンスだ(CV:大塚◯夫)

『アマゾンズseason2』
さっきまで命だったものが辺り一面に転がるオーイェーを具現化した作品。チヒロォ逃げルォ!生きてる事が罪といったように東映が本気を出した結果がコレだよ。

『我が魔王』
「祝え」「は?」「祝えと言っている……!」
もしかして→仮面ライダージオウ



次回の投稿は早めに出来ればいいなぁ。


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17話 違う!シンビオートが勝手に第一回戦を!(前)


グリッドマン続編『SSSS.DYNAZENON(ダイナゼノン)』発表されました。 
や っ た ぜ 

レクリエーション?
奴は置いて来た。この戦いについて行けそうにない。



 やぁ、良い子とそれ以外の皆。いよいよ始まるトーナメント戦。第一試合が始まるのを内心バクバクさせながら観客席で待機してる主人公だよ。

……え、レクリエーション?ちょっと何言ってるか分からない。

 

Hey(ヘイ) guy's(ガイズ) Are You Ready(アーユーレディ)⁉︎色々やってきましたが、結局これだぜガチンコ勝負!頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ!わかるよな?心・技・体に知恵知識!総動員して駆け上がれ!!』

 

 会場内に響くプレゼントマイク先生の言葉に僕等生徒を含めた観客達の声援が湧き上がる。それと同時に会場中央に設置されたステージの隅である四方から炎が噴き上がり場内の気温が更に上昇していく(気がする)。

 

『第1回戦!成績の割には何だその顔 ヒーロー科 緑谷出久!』

『VS!ごめん、まだ目立つ活躍無し!普通科 心操人使!』

 

紹介がひでぇ。

 

『ルールは簡単! 相手を場外に落とすか行動不能にする!あとは「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ!ケガ上等!こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから道徳倫理は一旦捨ておけ!』

 

 道徳倫理一旦捨てておけと言われてもなぁ……。そう簡単に割り切れるものじゃないと思うんだけど。

 

『…成る程なぁ』ニチャァ

 

 それに加えて今ここに道徳倫理を捨てちゃダメなのが居るんですけどそれは。いや、そもそもシンビオートに道徳倫理と言う概念があるかどうかも怪しい所なんだけどね。

 

Ready(レディ) Start(スタート)!』

 

 そんな事はさておき、緑谷君大丈夫かなぁ。あの心操君の個性は対処さえ出来ていれば大丈夫なんだろうけど厄介極まりないものだ。

事前に攻略方法は教えてあるから大丈夫だと思うけど────

 

『オイオイどうした⁉︎大事な初戦だ盛り上げてくれよ!緑谷 開始早々、完全停止⁉︎』

 

即落ちーーーー!?

 

 

 

〜〜〜〜回想〜〜〜〜

 

 

 

「えっ、洗脳!?」

 

「おそらくだけどね。洗脳が入る仕組みはまだ分からないけど心操君の問い掛けに対して何らかのリアクションを取る事……だと思う」

 

「それは……強いね。正に無敵の個性だ」

 

「いや、一見すると無敵に見えるけどそれは違う。シンビオートに掛かった洗脳だけどある程度の衝撃で解けるみたいなんだ。シンビオート殴ったら正気に戻ったし」

 

『まぁ、つまりはだ……有無を言わさずに一方的に叩きのめせ!オレ等に歯向かったらどんな目に遭うか現実を見せつけてやれよデク!』

 

「「シンビオートェ……」」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 あの時の忠告は一体なんだったのか……ステージ上の緑谷君はそのまま場外に向けて歩みを進めて行く。このままだと緑谷君の敗退は確実となってしまうだろう。

 

「せっかく対策していたのに無意味か〜〜ッ」

 

「対策って、何の事だよ」

 

「何って個性だよ。洗脳の個性の」

 

「洗脳ってマジかよ!エロいな!」

 

 峰田君そう言うとこやぞ。それに緑谷君の洗脳って需要あるの?

……あ、耳郎さんのイヤホンジャックで峰田君がやられた。

 

「洗脳ってそんな個性初めて見たかも」

 

「精神に作用する個性か……なんか強いイメージ湧かないな」

 

「そう?僕としてはかなり強い部類だと思うよ、テレパス能力は対人戦にてかなり強い部類だし」

 

「強いの!?」

 

 耳郎さんが驚いたように声を上げた。基本初見殺し、どんな問い掛けにも応じればアウト。洗脳は余程の事がなければ無敵の能力だと言える。なんか勿体無いなぁ、もし心操君がヒーロー科だったらかなり心強いんだけどね。

 

『普通科心操人使、ヒーロー科緑谷出久を攻略ゥ!こりゃまさかの事態だ成るか下克上⁉︎』

 

『だからあの入試は合理的じゃねえって言ったんだ。対人向きじゃ、そりゃポイント稼げねぇよ』

 

 相澤先生もあぁ言ってる。確かにあんなあたかも戦闘向けの実技じゃあなぁ……。

 

「洗脳を打ち破る方法はねぇのかよ来正よぉ!」

 

「お、落ち着いて切島君。あの洗脳を解くには外部からの刺激。又は例外的な精神的作用ぐらいだよ!」

 

「外部?例外的?」

 

「うん。前者は外部の、人とぶつかったりとかで解けるけどこれはまず期待できない。後者の特異的と言うのはテレパス能力無効化とかマグニートーの特注ヘルメットでもしてない限り……」

 

「そんな!」

 

 僕の答えに麗日さんはショックを受けたように声を漏らす。精神的に作用する個性は強力無比だ。それこそプロフェッサーXなんかが良い例かもしれない。人を操る、操った人の視界を通じて覗くなんて事も可能だし。

 

「緑谷君しっかり!こういう時こそ自己暗示だ!頭の中の声に耳を傾けろ!さぁ! ほら…こんな風に…ウフ、ハハ!照れるじゃないか!」

 

「うん、落ち着こうか飯田君。それじゃ元に戻すどころか君が一種の洗脳に掛かってるように見えるかr…何やってるのシンビオート?」

 

『デクの目を覚ましてやるだけだ。気にするな』

「よし、それじゃあレンガを投げつける以外の方法を思いつく努力をしようか!今すぐその手に持ったレンガを捨てなさい!」

 

 こいつは一体どこでレンガを拾って来たんだろうか。そもそもどこに隠し持っていたんだ?

 

「……でも、心配は要らないよ☆」

 

「オイオイ青山よぉ、あの洗脳からどうやって抜け出すって言うんだよ。どうやっても解除できねぇみたいだしよ」

 

「そうだね☆でも、既に手は打ってある……そうだろう?来正君☆」

 

…………。

 

………………。

 

「え、無いよそんなもの」

 

「……んん?☆」

「「「「えっ」」」」

 

 いや、事前に口の中に気付けの為に鋭利な物を仕込んでおくとか考えたけど口内炎とかその他諸々の理由があるからやりたくない。

 

「それにさ、こう言うのは自分で何とかするべきじゃないの?」

『そうだな、オレ達に作戦を丸投げして勝とうと思ってるなどとその気になってたお前等の姿はお笑いだったぜ?』

 

 こらシンビオート、そんな皆が分かり切ってる事をわざわざ挑発するような形で言うんじゃありません。

 

「かーーーっ、言うじゃねぇかよ来正!男なら正々堂々だよな!」

 

「「「お、おう………」」」

 

……あれ?切島君は良い感じに返事してくれたけど上鳴君、瀬呂君、芦戸さんの三人が何故か項垂れているけど、どうかしたの?

 

 いや今はそんな事より緑谷君だ。彼はどうやってこの逆境を乗り越えるんだろう?個人的には緑谷君を応援してるので逆転勝ちして欲しいけど……流石にこの状況で勝つのは困難極まr────

 

 

ゴォッッ!!!

 

 

 突如として凄まじい突風が発生。ステージに注目するとライン手前ギリギリでボロボロになった指を押さえている緑谷君の姿があった。

 

………また怪我してるよ(白目)

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

(………ッ! 危なかった!)

 

「なんだよ、クソ!お前の友人の来正って阿呆に触れたら速攻で反応した癖に…何をした!」

 

 来正恭成は無能、黒いアレ(シンビオート)に頼らなければただの雑魚、頭だけは冴える卑怯者。

 

そのような挑発に反応し洗脳されてしまった緑谷は迂闊に口を開けないようにする為、口元を手で覆う。

 

(指の暴発は僕だ、でも動かせたのは違う。知らない人たちが浮かんで一瞬頭が晴れた。あれはこの力を紡いできた人の気配…⁉︎)

 

 個性である超パワー(ワン・フォー・オール)を暴発させ指を自傷させる事により無理矢理正気に戻った緑谷は心操の問い掛けを無視するように迫って行く。

 

「何とか言えよ指動かすだけでそんな威力か。うらやましいよ」

(僕もそれ昔思ってた)

 

 心操の問い掛け。相手を挑発し口を開かせるだけの言葉。

 

「俺はこんな個性のおかげでスタートから遅れちまったよ。恵まれた人間にはわからないだろ」

(わかるよ。でもそうだ……僕は恵まれた)

 

 しかし、その一つ一つは緑谷出久の根本を的確に突き刺していると同時に───

 

「誂えむきの個性に生まれて望む場所へ行ける奴らにはよぉ!」

(人に恵まれた。だからこそ僕だって!負けられない‼︎)

 

 心操人使自身、腹の奥底から発した本音でもあった。

 

「このッ!どうせあの来正って奴から俺の対策なんかを聞いてるんだろ!この卑怯者が!」

 

えっ

 

 それでも緑谷は答えずこちらへ歩み寄って来る。観客席の方で「なんかdisられた…」とショックを受けている生徒一名については気にしないでおこう。

 

「変な髪型しやがって!このオタク野郎ッ!クラスの女子がキモイって言ってたぞッ!」

「〜〜〜ッ!?」

 

「言ってない言ってない!」

「戦いに集中して!」

 

『けど麗日。かなり前にデクの事を【美少女ゲームとか好きそうでアイドル馬鹿にされると急にマジギレしてくる感じの漫画も保存用に二冊買ってそうなオタク】って言ってたよな』

 

「〜〜〜〜〜ッッ!??!!?!?」

 

「空気読んでシンビオートォ!!」

 

 聞き慣れた「シンビオートォ!」と言う台詞が耳に残りながらも緑谷はあらゆる葛藤、雑念を振り抜けて心操に掴みかかる。多少のダメージ(心的ダメージも含む)も負っている彼は場外へ押し出そうと体中の力を振り絞る。

 

「ふざけた事を!お前が出ろよ!」

 

掴みかかった緑谷に向け拳を振り抜く心操。

……が、それを見越していたのか拳を避けた緑谷は伸ばしてきた腕を逆に掴んだのだ。

 

(負けられないんだぁぁぁあああ!)

 

 カウンターの要領での背負い投げ。コンクリートに打ち付けられた心操が"ラインの外側"でそのままダウンすると審判であるミッドナイトが高らかに宣言した。

 

「心操くん場外!緑谷くん二回戦進出!」

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 ぎ、ギリギリの戦いだった。時間はそこまで経ってない筈なのにドッと疲れたよ。なんかシンビオートはレンガ投げ込もうとするわ、心操君にはdisられるわと色々と大変だった。

 

「ぎゃぁぁああ嘘です すいませんでしたぁ!!」

 

「ちがうの」

「体が勝手に」

 

 なんか女子達が洗脳されたフリして峰田君に襲いかかってる。

……いつもの事か(感覚麻痺)

 

「助けてくれ来正ィ!」

 

「うん、洗脳されたフリして女子にセクハラしようとした峰田君の自業自得だよね。……あれ、八百万さん?」

 

 気付くと先程まで席を外していた八百万さんが戻って来た。

……あれ、八百万さんって次の試合に出場するよね?多少の時間はあるけどさ こんな所に居ないで早くステージに行かないと。

 

「あの、先程の方に頼んで『自分は出来る人間だ』と洗脳させてもらおうとしたのですが無理と言われ……」

「なんで真っ先に僕に相談するの?(困惑)」

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

『第二試合!推薦入学者の実力は伊達じゃない!ヒーロー科 轟焦凍!』

『VS!万能創造!同じく推薦入学とあってその才能は折り紙つき!ヒーロー科八百万百!』

 

 マイク先生の紹介と同時に会場はより一層盛り上がる。何と言ってもこの戦いは推薦入学者同士の対決。僕としてもかなりワクワクする組み合わせだ。

 

「これはどっちが勝つかな?」

 

「八百万さんはその知識による道具の創造による幅広い戦法を繰り出せる。ただしそれは思考の早さも比例してくる事から戦闘と並行して行う事は至難の技になる筈だ。それに対して轟君は凍結、炎二つを繰り出す単純ながらも強力な個性を扱う。炎も強力だけど氷結は相手の拘束、質量を持つ氷を出現させる事で押し出しも可能だ だけどそうなると……」ブツブツ

 

「来正、翻訳頼む」

 

「万能型の八百万さんVS火力特化型の轟君。さぁ戦いだ!」

 

「「あ、分かりやすい」」

 

 切島君と麗日さんが納得したように頷く。分からない時は分かるように解釈すればいいんだよ(偏見)

でもこの試合どうなるんだろう、轟君の戦いに対して八百万さんがどんな風に対処するかによるけど……。

 

「でも、こう言うのって先にどっちがより早く個性を使うかが重要だと思うわ」

 

「どういう事梅雨ちゃん?」

 

「そうね葉隠ちゃん。轟ちゃんが先に氷結を出せば勝てるけど八百万ちゃんが先に壁なんかを創りだせばその後巻き返す事も出来るわ」

 

「確かに!抜きな、どっちが早撃ち勝負だっ!って事だね」

 

「抜く……ッ!?」

「そこまでにしときなよ峰田君」

 

 流石に発言がアウトのラインギリギリを攻めて来たので峰田君を抑える……でも蛙吹さんの言う通りだ。もしもこれで轟君の方が一瞬でも早かったらすぐに決着がつくだろう。そう考えていると時間が試合開始直前にまで迫った。

 

 

「八百万、俺はこんな所で燻ってられねえ」

「……ッ!」

 

『第二試合スタート!!』

 

「一瞬で決着をつける」

 

 

 直後、僕らの眼前に聳える青白く輝くソレはステージを飲み込む勢いで姿を現した。

………なぁにこれぇ。

 

「な、何これ⁉︎大きな盾?」

(つるぎ)だ!……じゃなかった轟の氷結⁉︎」

 

あれ?さっき耳郎さんの口からSAKIMORI語が出たような……。

 

『オイ、さっき剣と言っt「忘れろォ!」

 

 いだぁああああッ⁉︎違う!シンビオートが勝手にィ!だから僕にプラグを刺すのはやめてェ!!

 

……と、言うよりも!(即復活) 轟君の氷結!?はぇ〜すっごいおっきい。まさかここまでの火力を出せるとは思わなんだ。

シンビオート。もし轟君と戦って勝てるイメージ湧く?

 

『個性使う前に近づいて殴る』

「相変わらずの脳筋戦法……あれ、八百万さんは?」

 

 ステージ上を見渡しても八百万さんの姿が見えない。

……あれ?もしかして決着付いちゃった(彼女の出番終わり)⁉︎

 

『な、なんと言う事だァーーーッ!巨大氷河により八百万飲み込まれた〜〜〜〜ッ!オイオイ、お前ン所の生徒化け物揃いだな!』

 

「悪いな、今ムシャクシャしてんだ」

 

 露骨に不快な表情を浮かべながらそう呟く轟君は氷壁に手を当て溶かしていく。……うわぁ、とどろきくん つおい(小並感)

これ脳筋戦法も近づこうとした瞬間飲み込まれてお終いだと思うんだけど(超推理)

 

「八百万さん……」

 

「麗日、戦場(いくさば)は常に非情を伴う。勝者には栄光を、敗者にはただ屈辱を与える。軽度の同情は傷口を抉るだけになるぞ」

 

 常闇君、遠回しに(厨二翻訳で)言ってるけど要は八百万さんが傷つくだけだからそっとしておいてやれって事だね。流石のイケメン度。男の僕でも惚れそうになる、後でその頭撫でさせて欲しい(欲望)

 

「……なんか、見覚えある」

 

『どうしたアホ面。無理にかっこつけても無駄な物は無駄だぞ』

「シンビオート!……見覚えあるって何が?」

 

「いや、この状況に既視感あると言うかさ。前にこんな事あったろ」

 

 前にって、これに似た状況なんてあったかなぁ?上鳴君には悪いけど僕は覚えてないな。すると耳郎さんが「あ」と声を漏らした。

 

「もしかして屋内訓練?」

 

「あー!そう、それだ!それだよ!勝ったと思って油断したら来正に不意打ち喰らった!」

 

 不意打ち……あー、思い出した!第一回目のヒーロー基礎学ね。そうそう あの時は上鳴君が充分に近づいて来た所を……あっ(察し)

 

 

ズガァン!!

 

 

『なんだぁぁ⁉︎急に轟が吹き飛んだ〜〜ッ⁉︎先程まで手を置いていた氷壁の向こう側から人影が現れた!いや待て、この孤独なsilhouette(シルエット)は……!』

 

『コブラか?』

「絶対に違うから」

 

「轟さん。こんな所で燻っていられないと言いましたわね」

「断熱性の布を纏って防いだのか……ッ!」

 

「それはこちらとしても同じ事ですわ!」

 

そう叫びながらパイルバンカーを得物とした八百屋さんは轟君に向かって駆け出した。

 

 

 

………………。

 

……………………。

 

…………………………。

 

 

 

 いや、それ(パイルバンカー)って人に向けて使うものじゃないから!!!

 






【悲報】ノルマ非達成
でも最近になって締めくくりで「違う!シンビオー(ry」と無理矢理言わせなくてもいいんじゃないかなと思う日頃です(言い訳)


〜〜キャラクター解説〜〜


『来正恭成』
付け耳よりもケモ耳派のケモナーでアニオタ。正直言うとオタク属性としては緑谷君よりこっちの方が上。最近はクラスメイト達の駆け込み寺的な扱いになって来た事を気にしている。
……自分自身が気づかない所で心操が本人をdisっていた事は知るよしもない。

そんな奴よりも先生とかに相談した方がよっぽど良いと思うよ。


『緑谷出久』
 近距離パワー型個性の持ち主。「美少女ゲームとか好きそうでアイドル馬鹿にされると急にマジギレしてくる感じの漫画も保存用に二冊買ってそうなオタク」と言う発言に凄まじい精神的ダメージを負うが仮面ライダーBLACK RXで見られる【そのとき不思議なことが起こった現象】により逆転劇を見せた。
しかし指は毎度の事ぶっ壊れる。

指「勝った代償がコレだよ……ぐふっ(血反吐)」


『心操人使』
 トーナメント戦唯一の普通科。一回戦敗退こそしたもののクラスメイト達や観戦して来たプロヒーロー達の評価もあって一目置かれる立場となる。しかし洗脳されたフリ、洗脳させて欲しいと言うヒーロー科の生徒達の姿を見て憧れていたクラスが思ったよりアレだった事にショックを受ける。


『八百万百』
 第二試合、轟とぶつかる事となった八百万。いきなりやられたかと思いきや主人公が屋内訓練で見せた騙し討ちにより一撃を叩き込む。
……え、パイルバンカー?非殺傷用なのでへーきへーき(震え声)



〜〜用語解説〜〜


『マグニートー』
X-menにて登場する磁力を操作する能力を持つスーパーヴィラン。ミュータントによる世界の支配を企む。鉄が含まれたものなら何でも操る事が可能な為、大量のミサイル、小惑星自体を動かす事も可能。
なんだこのチートォ!


『プロフェッサーX』
テレパシー、記憶を読み取る、メンタルブラスト、他人を操る事も可能な地上最強のテレパス。かつてマグニートー(エリック)とは親友だったが思想の違いにより袂を分かち今は敵同士となっている。ミュータントの為の学校「恵まれし子らの学園」を設立した。


『剣だッ!』
やっさいもっさいの人に対しSAKIMORIが発した言葉。

真面目に解説すると戦姫絶唱シンフォギアにて風鳴翼が発した台詞である。雪音クリスの攻撃を防ぎ「盾…?」「剣だッ!」と言う流れとなっており続編となるAXZ(4期)でもこの台詞が使われた。


『いや待て、この孤独なsilhouetteは…?』
それは紛れもなくコブラの事である。
元ネタはスペースコブラopにて流れる「ヤツ…?」「コブラじゃねーか」等の訓練されたコメント。
そう言えば漫画コブラの最新エピソードが公開されましたね。




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18話 違う!シンビオートが勝手に第一試合を!(中)

 
劇場版 僕のヒーローアカデミア:ヒーローズライジング観に行きました。やばたん。凄かった(小並感)
クラスメイト達のヒーローらしい活躍に「へぇ、やるやん。認めたるわ」と謎の上から目線で感心したり、映画オリジナルキャラでショタに目覚めかけたり、「オイオイオイ死んだわ皆」と絶望感に打ちひしがれたり、最後の方は感動と興奮で訳が分からなくなりました。

まぁ何が言いたいかと言うと……。

好きを分かち合いたいので読者の皆さんも劇場へGO!』(ステマ)


『追伸』
先着限定の漫画は劇場版を観終わった後に読もう!
(いきなりとんでもないネタバレ喰らったのでマジでそうして下さい(懇願))




 

『なんと八百万百、反撃に出たぁ〜〜〜ッ!つーか、アレ大丈夫か?死んでねぇよな?』

 

 会場内に響く声によりますます熱が高まるステージ。硝煙を漂わせる大型の浪漫武器を構える八百万の視線の先には膝をつく轟の姿。誰もが勝負がついたかと試合がどのような結果になるか予測不可能な展開となっていた。

 

「氷層を張って防御を……!」

 

「氷の操作は子供の頃からやってるからな。これくらいの事は出来る」

 

 地を這うように迫る氷柱を躱しながら轟に向けて創造した投擲武器で攻撃を行うが難無く防御、回避をされてしまう。

 

「八百万、お前の個性は自分の脂肪を消費して創造してるんだよな。人は寒さから身を守る為に脂肪で体温を維持しようとする……が、どっちにしろ長くは保たないだろうな」

 

「お前と相性は最悪。それを分かっても尚……やるか?」

 

「無論ですわッ!」

 

 その言葉と当時に八百万の羽織るマントの下から大砲が現れ、轟音と共に砲弾が放たれる。そんな八百万の攻撃だが轟が作り出した氷壁により防がれてしまう。

 

『マントの利点としては首から下を覆い低気温に対処する以外にも、敵との戦闘において道具を仕込む事が可能だ』

『成る程な!ファッション目的以外にも用途はあんだな!』

 

「その程度か?」

「まだッ!」

 

 弧を描くように何かが投げ込まれる。自身の氷壁により視界が遮られた轟は反応し切れず、それが足元に落ちると中から多量のガスが噴出される。

 

「(催涙弾⁉︎)くっ……」

 

 目元を腕で覆う轟。それを見越していたガスマスクを装着した八百万は一気に駆け出す。

 

(この状態で私を捉え攻撃するのは不可能。一気に決める!)

 

 マントの下から取り出したのは柄の長いハンマー。腕力が低い自身でも効果的にダメージを与えられる上に脂肪の消費が然程少なくない単純な構造である武器だ。

 

(例えハンマーが掴まれて私ごと凍結させられようとしても、このリーチの長さなら私に氷結が届く前に捨てる事で体勢を整えられる。……ですが、それ以前に負ける気はしませんわ!)

 

 彼女の持つ鉄槌は遠心力によりスピードを乗せて、そのまま轟に向かって振りかぶられた。

 

「貰った─────!」

 

 

──ガキン‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰もが八百万の勝利を確信した。あの状態からどのように逆転できるのだろうか。確実に鈍い音が響き大ダメージは免れない筈だ。

それなのに轟焦凍は悠々と立っていた。

 

「そ…ん、……な……⁉︎」

 

「悪いが氷をただぶつけるのじゃ長引きそうなんでな。()()()()()()()()()()()()()気分はどうだ?」

 

 真っ白な息が吐き出される。寒気がして堪らない。呼吸がままならない。腕が、脚が、体が、筋肉そのものが動かない。得物がカタンと地に落ちるが拾う事すら出来ない。

肌に霜が現れ、目蓋と唇が引っ付き開かなくなる。

 

「低体温症になれば身体も頭も働かなくなるし下手すりゃ内臓にもダメージがいく……最初から攻め過ぎたな。早く決着をつける事だけ考えて創造の配分を間違えたようだな」

 

(そんな……、取るべき選択肢を、選んだ戦法を…間違えた……?)

 

「八百万さん戦闘不能!轟君の勝利!」

 

 

 

 

 

(野郎、搦め手で来やがったか)

 

爆豪が静かに分析している隣でクラスメイト達の話声が響く。

 

「どうしたんだよ八百万。なんか急に動かなくなったぞ?」

 

「…多分だけど轟君は直接体温を奪ったんだと思う」

 

「つまり……どういう事だ緑谷⁉︎」

 

「教えて来正センセー!」

 

「物理が効かないから状態異常で攻めた」

 

「成る程な!ポケモンみてー」

 

「つまりは切島で例えると身体固いから火炙りで倒すって感じだな」

 

「なんだよそれ⁉︎でも分かる気がするわ!」

 

 納得するA組生徒達だったが緑谷の中で腑に落ちない点があった。

何故わざわざそのような戦法を使ったのだろうか?

 

(単純な火力ならかっちゃん並……いやそれ以上かもしれない)

 

 クラスの中で一二を争う火力を持つ個性、それならばゴリ押しで行けばもっと楽に勝てていた。それに加えて最も謎のなのは彼自身に目立った外傷が見当たらない事だ。確実に音がここまで響く程の衝撃だった筈なのに何故?

緑谷は次の試合で戦う事になるであろう轟を視界に収めるが左側()を使い八百万の身体を温めていく彼の背中は、何故か悲しく見えた。

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 やぁ皆、序盤から影が薄かった主人公だよ。第三試合目前で選手控え室で精神統一しているけど中々緊張が解けない。全国中継される上にシンビオートが何かやらかさないかのサンドイッチ状態で胃がダメージが入っております。

けど青山君に貰ったハーブティーのおかげで多少は回復しました。すごいね。ここまで即効性があるなんて知らなかった(プラシーボ効果)

 

「さて、そろそろだけどシンビオートの方は準備いいかな?」

『あぁ勿論。オレ様はこれから毒を仕込みに行くからな、失礼する』

「おい待てぇ、失礼すんじゃねェ。そう言う意味での準備をしようとするんじゃねェ」

 

 目を離すと高確率で問題起こすのやめようや。それにバレたら確実に失格になるからね?

…え、バレなきゃ犯罪じゃない?あ、そう(無関心)

 

 それにしても轟君と八百万さんの試合凄かった(小並感)なんかこう第一試合の落差もあってかインフレの激しい天下一武道会を見せられている気分だったね。

……お、そろそろ第三試合が始まる時間か。クラスの皆だけじゃなく、おじさんも見ているだろうし情け無い姿を見せないようにしないとね。

よし、イクゾー!

 

『デッデッデデデデ! デデデデ! 』

 

カーンが入ってない-114514点

 

 

 

 

『それじゃあ行くぜ3試合目!話題筆頭のA組屈指のヒール(悪役)!世界に向けて届くかファックサイン⁉︎ヒーロー科 来正恭成!』

 

「届かなくていいから(良心)」

 

『現状、戦闘能力未知数!B組のイイ所見せてくれよォ!ヒーロー科 物間(ものま)寧人(ねいと)!』

 

 会場内に観客達の声援が響き渡る。緊張すると同時に僕の中で何か満たされるものを感じる。あぁ、まるで自分がヒーローになった気分に包まれているようだ。

はー、辛いわー。人気者って辛いわー(天狗状態)

 

<BOOOOOOO!!

<引っ込めー!

<悪役ーーー!

<キャー!ステキー!

 

あ、前言撤回。全くそんな事なかった。普通に罵声雑言を浴びせられたわ つらい(つらい)

 

「凄い人気だね。さすがはA組だよ」

 

「人気?不人気の間違いでは……?」

 

「そんな事無いさ、全観客が君に期待してる。それについて君はどう思う?」

 

え、何それ怖い。どちらかと言うと期待の目と言うか奇異を見るような目なんだけど?

 

「いやいや、そんな謙遜しなくていいさ。僕よりも凄い活躍を期待してるよA組の来正恭成クン」

 

 そう言いながら物間君は左手を差し出し握手を求めて来た。

なーんだ。思ったより良い人っぽくて安心した。

 

「こちらこそ よろs『Fuck you!Go To Hell! I'll Kill You!!』「シンビオート⁉︎」

 

 いきなり威嚇行動しやがった!しかもサラッと手を叩いた直後に中指を立ててやがる!

 

「……なんて酷い人なんだ君は!スポーツマンシップに則って戦おうと言うのにさ!」

 

「え、あ、いや違うんです。これはシンビオートが勝手に!」

 

 そう弁明しようとするが周囲の観客達のブーイングがますます酷くなるのを感じる。あー、もうめちゃくちゃだよ(白目)

 

「……これ全部シンビオートの所為だからね?」

『オレは悪くない』

「それじゃ誰が悪いって言うのさ」

『目の前のアイツが悪い』

「勝手に相手の所為にするんじゃありません」

『それじゃあシャミ子が悪いんだよ』

「シャミ子は悪くないよ」

『シャミ子がいやらしいのがいけないんだよ』

 

 そもそもシャミ子って誰だよ(困惑) なんか僕も口に出してだけど誰なんだよそいつはよ……。

 

 

 

 

「あの物間と言う人……嫌らしい攻め方をしますわね」

 

「嫌らしい?どうしたんだよヤオモモ」

 

「握手は互いの利き手で行うもので互いの好意を示すものとされています」

 

「へー、博識だな……あれ?つーことはアイツ左利きなのか?」

 

「それもあるかもけどよ。フツーは右手でやるもんだろ?左手だとどうなるんだ?」

 

「はい、印度(インド)などの左手を不浄とする地域では基本的に【相手を嫌う・嫌っている】と言う意味で使われております。仮にそれを拒否してもエチケットに反する好意として敵意を持っていると捉えられます。……もし相手が意図的にそうしたなら」

 

「最初から印象下げるのかよ!男らしくねぇ!」

 

「それじゃ、もしかしてシンビオート君が怒っている理由って……」

 

「「「「「いや、それは無いだろ」」」」」

 

「あ、うん」

 

 なんか後ろの方でA組の皆が喋ってるけど観客の声援に掻き消されてよく聴き取れない。まぁどうせシンビオートがまたやらかしたなと言ってるんだろうね(白目)

 

『ブチ殺してやる……』

「それはやめて」

『それじゃ半殺しだ』

 

 せめて殺しから離れてくれない?

 

『第三試合開始ィ!』

 

 開始の合図と同時、身体が前方に引っ張られる感覚が襲いかかって来た。うん、知ってた。大体こうなるんだろうなとは思ってた!

 

『ハハハハ!さっきまでの言葉が遺言にならないのを期待しておくんだなァ!』

「シンビオート⁉︎せめて体を操る前に予め僕に伝えておいて欲しかったんだけど!作戦はあるの⁉︎」

『勿論、臨機応変だ!』

 

つまりは行き当たりばったりって事じゃないですかやだー‼︎

 

「見せてもらうよ、君達の個性をさァ!」

 

 そう物間君が叫んだ直後、僕等を囲うように地中から黄色い触手のようなものが生えて来た!?うっわ、なんだコレ⁉︎植物みたいなのがこっちに迫って来たんだけど!

……いや、こう言う時こそ冷静に対処するんだ!

 

「よし、行くぞシンビオート」

『言われなくても分かってる』

 

伸縮式回転鋸!("Λ式・雙刃クロス"擬き)

『シャアッッ!』

 

 体を回転させると同時に腕に形成されたヨーヨーの如く伸びる巨大な黒い丸鋸が地中から伸びて来た植物らしきものを刈り取って行く。

これが物間君の"個性"か‼︎彼の個性は植物を……いや、自身の髪の毛を自由自在に伸ばす能力ッ!

確かに強力だけど、本体は無防備ッ!卑怯かもしれないけど狙わせてもらうよ!

 

「攻撃行くぞ怪我はするかもだけど許してよ!」

『刃は引っ込めとく。当たれば痛いがなァ!』

 

 そのまま回転する円盤は物間君に向かっていく。さぁ、これをどう攻略する……って、あれ?いやなんで防御の体勢?君、見た感じ格闘系の個性じゃないけどそれって悪手じゃ────

 

 

ガリリリリリリリッッ!!

 

 

「なにッ⁉︎」

『受け止めただと⁉︎』

 

 どう言う事なんだ⁉︎もしかして骨格にアダマンチウム仕込んでるとでも言うの⁉︎と言うか君、髪の毛伸ばしてたけどそれ個性じゃないの⁉︎

 

『いや違う!よく見ろ。野郎の身体そのものが鉄になってやがる!』

 

 鉄…⁉︎まさか物間君の個性は轟君と同じ複合型か⁉︎身体の性質を変化させる個性……かなり厄介だな!

 

『確かに厄介だが……その程度の個性でオレ様に勝てると思うなよ!』

 

「へぇ、なら君達の実力を見せてよ」

 

 周囲から物間君の髪の毛が襲い掛かかって来る。彼の個性は中々厄介……だけど、まだこの程度は対応できる!

 

「四方八方からの攻撃!来るぞシンビオート!」

『伐採の時間だ!頭が剥げるまで狩り尽くしてやるかァ!』

 

 すると僕は黒の巨軀へ変貌し身体中の至る所から鎌が付いた触手が生える。そのまま幾つもの触手が乱暴に振り回され周囲の髪の毛は斬り落とされて行く。

 

「よし、いいぞシンビオート!」

『なんだこんな縮れ毛でオレ達に挑もうとするなんてな……あ?』

 

 あれ?どうしたのシンビオート。なんか急に動きが鈍く……うわっ、なんだコレ?全身に髪の毛が巻き付いて来た⁉︎気持ち悪ッ! まさか物間君の髪の毛って切り離しても操作が効くのか⁉︎

 

「どうしたんだい、動きが鈍いよ?そんな君にプレゼントだ」

 

 すると物間君がピンと僕等に向かって何かを弾き飛ばして来た。

アレは爪楊枝(つまようじ)?なんで爪楊枝なんかをプレゼントに……あれ?なんだろう。疲れてるのかな?楊枝が大きく見えるんだけど。

 

「───って、うおおおおおおおおお!?」

 

 爪楊枝と言うか大きい細長の木材が飛んで来た⁉︎いや、こっちに向かって伸びて来た!?って、あ、やばい。髪の毛が絡まって動けない⁉︎

う、ぐぉおおおおおおッ人間の底力舐めるなよォ!よく分からんが緊急回避ィ!!

 

『なんと来正、突如として出現した巨大な木材をマトリックス顔負けの回避を披露!つーか関節の可動範囲がおかしいだろアレ!中国の歌劇団みたいで気持ち悪い動きだな⁉︎』

 

 気持ち悪いって言わないでくれません?いや、それよりもどう言う事⁉︎

髪を植物のように変化させて身体を鉄に変えるなら"身体の性質を変える個性"で納得行くけど、アントマンみたく物を巨大化させるなんて関連性の無い個性を宿してる事なんて有り得るのか?

……まさかピム粒子を持ってる可能性が微レ存?(混乱)

 

「さぁ、どうしたのさ!僕程度の奴なんかブッ殺すんじゃなかったのかい⁉︎防いでばっかりでイキリ散らかしている癖して大した事ないみたいだね!」

 

……なんか物間君すっごくイキイキしてない?凄まじい練度の煽りの呼吸だ。階級は柱かな?

 

『……ハッ、面白い事を言うな?一度も攻撃を当てられていないのにもう勝った気でいるのか?』

 

 するとシンビオートはクイクイと挑発するように手招きを行った直後にすぐさま中指を立て、口端を吊り上げる。

 

『Hey COME ON!お前のチンケなパクリ個性を使ってみな。』

 

「なんだいそれは。挑発のつもりかな?」

 

『知らないのか?これはハンデと言って、お前が弱いから手を抜いているって意味なんだよ。どうした、お前の自慢の攻撃とやらを見せてみろよ』

 

 立てた中指の先から「come on」と言う文字を作り出し煽る。無駄に器用な事するね?もしかしてFAIRYTAILにハマってるの?

 

「そうか……それじゃあ要望に応えようか!」

 

 全身が鈍い銀に包まれた物間君がこちらに駆け出して来るのが分かる。話は逸れたけど大見得切ってシンビオートは何か考えでもあるのかな?真正面からノーガードで受け止める以外の方法なら喜んで協力するよ。

 

『フ、抜かりは無い』

 

お、それなら良かっ……ねぇシンビオート。なんか尻からつっかえ棒的なサムシングが伸びているんだけど?

 

『これがオレの秘策!決して倒れる事の無い動かざること山の如き作戦!』

「それ逆にダメージ強くなる奴ゥゥ!」

 

 と言うかこの秘策ってアレだよね⁉︎スカイライダーのキックを破ったサイダンプのアレじゃん!特撮だから許されるけどリアルにったら腹部と尻に多大なダメージが────

 

「ふんっ!!」

 

「ヒギィ!?」

 

 尻と腹がァァ!!腹部に蹴りの衝撃の逃げ場が無いから内部(自分)にダメージがががが。

 

「……効いてないか」

 

 何を見ていたの君は!いや効いてるからね!確実に大ダメージ入ってるからコレ!シンビオートが覆ってて僕の表情は見えないけど今さっき「ヒギィ」って男が発しても嬉しくない声出てたからね⁉︎

 

『どうした その程度か?』

 

待って?

 

「まだ余裕みたいだね。それじゃあもう少しやらせてもらうよ!」

 

ねぇ、待って?

 

僕を無視して進めないでくれる?ちょっと、聞こえてる?

あ、まって!やめて、ラッシュはやめて!尻と腹に甚大な被害が出るから!

下手したら下痢より酷い事になるからやめtアーーーーーーーーーッ!!!!!(汚い高音)

 

『なんとーーッ!来正恭正。これを耐えるーーー!』

 

 (耐えて)ないです。シンビオートが無理矢理立たせて回復させるゾンビ戦法を取らせているだけです。

 

『チッ、いい加減ウザくなって来た。おいキョウセイ。そろそろ決めるぞ』

「決めるなら早くして。こっちはそろそろ腹が限界に近づいているから」

 

 そう伝えるとシンビオートが大きく跳躍し、物間君に向かって腕を叩きつける。ここはハルクみたいで感心するところなんだろうけど ごめん、さっきから腹がギュルギュル言ってて頭に入って来ない。

 

『どうした、さっきまでの威勢はァ!』

 

「ッ!」

 

 シンビオートが全身から生える触手により攻撃を仕掛け、物間君は防御の体勢を崩さない。

……でもどうして、さっきから防御をばかりしているんだ?

 

もし僕が全身を鉄にする力を持っているなら、コロッサスのように固い体を活かしたノーガード戦法で良い気がするけど……。

 

『さぁて!そろそろ終わりにしてやるか!』

「待て、シンビオート!何かおかしい───」

 

僕がそう言いかけた瞬間、目の前の彼がニヤリと笑みを浮かべた。

 

「ハハ、本当に笑えるねぇ……!」

 

 

Clang!!!Clang!!!Clang!!!Clang!!!Clang!!!

 

 

 刹那、甲高い音が会場内に数回響いた。

その謎の音源の正体は目の前に居る物間君が左右の腕を打ち付ける事により発した金属音だった。

 

『Gu……a…aa……ッ⁉︎』

「シンビオート⁉︎しっかりするんだ!」

 

 それによりシンビオートは頭を抱え、苦しみだし形も崩れ始めていく。

 

「本当に笑えるよ。まさか弱点を狙って来ないなんて甘い考えは持っていなかったよね?君の個性をコピーさせて貰おうと思ったんだけど何回やっても"スカ"だったし、もういいかなって。それに君の……シンビオートだっけ?それ無敵じゃないよね?」

 

 コピー……⁉︎そうか、そう言う事か!物間君の個性は他人の個性をコピーする能力!関連性の無い個性を複数持っていたのはこう言う仕組みだったのか!それにシンビオートの弱点も既に知られているだと⁉︎

 

「まぁ音や火に弱い事は今までを観察してすぐに分かったよ。そして一箇所に衝撃を与えるのも有効らしい。中までに届くダメージを与えれば一気に防御が崩れていく。今の君みたいにね」

 

「っ!」

 

 まずい、この物間君は頭がキレる奴だ。それに加えてコピーを行う個性!戦術の幅が広がるのは中々厄介だ…!

 

「………まぁ、でもさ。実のところ僕は君の事を特別に思っているんだよね」

 

「え、特別……?」

『……ッ、まさかお前。キョウセイの事をそう言う目で見て───』

 

「「おい、やめろ」」

 

 そう言うとこやぞシンビオート!尻が今痛いからそう言った話は控えて(真顔)

 

「だって、そうだろう?君は一人じゃ何もできないんだから」

 

『……は?』

 

「一人じゃ何も出来ない卑怯者。他に頼らないと何も出来ない。僕と君等は同類なのさ」

 

『なんだァ、テメェ……、喧嘩を売ってるのか?』

 

「あれ?あれれ〜?何で怒るのかなぁ……あ、分かったよ!それは君等が図星だからだろう?シンビオート!君が一番知ってるんじゃないのかい?自分と来正クン、互いに寄生し合わないと何も出来ない役立たず予備軍だってさぁ!どうなんだい?答えてみなよ!」

 

 物間君の挑発。確実に罠を張っている、それは僕のみならず、シンビオートだって理解している。

……その筈なんだけど、

 

『───コロス

 

((((((((((野郎……タブー中のタブーに触れやがった……!))))))))))

 

 崩れかかった黒い身体を無理矢理動かし、シンビオートは腕を振り上げる。駄目だ、今のお前じゃダメージを与える事は出来ない!

 

『オレ達を馬鹿にされて黙ってられると思うかッッ!お前にキョウセイの何が分かる────ッッ』

 

「さぁね、分からないな」

 

 そう呟きながら鋼鉄の右ストレートがシンビオートの腕を破壊しつつ、僕の腹部に吸い込まれていった。腹部へのダメージの限界により僕はその場で蹲り、シンビオートは体内へ戻っていく。

 

「───ぐ、あ……!」

 

「良い眺めだ。大見得を切った割にはこの程度なんてね、笑わせてくれるよ」

「え、いや違う。それシンビオートが勝手n」

 

 直後、物間君の腕が振り下ろされガツンと頭から体の隅々へと衝撃が伝わって行く。

 

「僕達を踏み台にすると言ったけど残念。君等が踏み台になるのさ」

 

 朦朧とする意識の中、笑みを浮かべる物間君が視界に映る。倒れ行く僕は最後の力を振り絞り一言。彼に向けて呟いた。

 

 

いや……だから…違う………シンビオートが勝手に──────

 

 





ノルマ達成
前回できなかった分も言えたぜ やったー。


〜〜キャラクター紹介〜〜


『轟焦凍』
とっつきで喰らっても意外とチャラヘッチャラだった。ハンマー喰らって無傷だったのは個性の応用。ちなみにヒントは
「葉掘りってどう言う事だッ!」(CV:かっちゃん)


『八百万百』
前半はやや優勢だったが一気に巻き返されてしまう。氷をぶつけるのでは無く、直接体温を奪われる事により体が動かなくなり戦闘不能に陥ってしまう

断熱布<あぁ、今回も駄目だったよ


『来正恭成』
シンビオートを宿した主人公(前半は影が薄かった)。物間と戦うがどうやら負けるらしい。
ざんねん!! かれの ぼうけんは ここで おわってしまった!!


『物間寧人』
頭がアレなB組生徒。どうやら主人公から同類の気配を感じ取ったらしい。実は心操に来正の悪口を言ったらどうかな?と唆したのは彼だったりする。



〜〜用語紹介〜〜


『Λ式・雙刃クロス』
戦姫絶唱シンフォギアXDより。
月読調の技の一つ、両腕の巨大な丸鋸で切り裂く技。
あくまで主人公が使ったのは"擬き"である。

『アダマンチウム』
marvel界隈では最強の金属の一つとされている。特別な性質こ無いが、その強度はヴィヴラニウムをも凌ぐと言われている。

『ピム粒子』
物体の大きさを変化させる粒子。映画アントマンではこの性質を利用した戦いが凄かった(小並感)

『サイダンプのアレ』
真面目に考えるけど、アレって絶対にダメージが強くなってると思うんですがそれは。

『シャミ子が悪いんだよ』
アニメと原作では言ってない台詞。
ネット流行語niconico賞おめでとうございます。
これも全てシャミ子が悪いんだよ。


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19話 違う!シンビオートが勝手に第一試合を!(後)

令和ファーストジェネレーション観てきました。仮面ライダー1型カッコ良かったです。父親ライダーっていいよね…(一部を除く)

恐らく今年最後の投稿になります。お楽しみください。



『来正恭成ノックダウン〜〜〜〜!物間寧人の一撃が決まったァ〜〜〜〜〜ッ!』

 

 物間寧人。彼の振り下ろした一撃は確実に来正恭成の意識を奪い、勝利という名の栄光を与えた。直後、物間に向けて周囲の観客席から声援が贈られる。

それもその筈、来正恭成はこの雄英体育祭で色々な意味で喧嘩を売り悪役(ヒール)として悪名を一気に轟かせてしまった。その悪役を倒したヒーローが今、この場に居る。

 

(笑えるねぇ、悪役としてイキリ散らかしたA組の主力は負け、それに対し勧善懲悪として僕は善玉の選手としてB組の勝利。随分と差がついた。悔しいだろうねぇ…!)

 

 勿論、口に出して言わない。心の中でまだだ…まだ笑うな……と自身に言い聞かせ指を指して大声を上げて笑うのをグッと堪える。

 

(悪いね、来正君。僕はどうしても君の事が好きになれないんだ)

 

 悪びれも無く心の中でそう呟いた物間はチラリと来正に視線を向けた。彼がここまでするのは何故か?確かに悪役ロールで調子に乗っていた生徒の鼻をへし折ってやろうと意気込んではいたが、物間寧人は来正恭成個人に対し罵倒雑言をぶつけていた。

 

(……何か、僕自身を見てるみたいでさ。苛々するんだよ)

 

 八つ当たりだと言うのは分かっている。行き場の無い鬱憤を彼にぶつけていたと言うのは否定しない。

ただ……、彼等を見ているとまるで一人で何も出来ない(コピーしなければ役に立たない)自分を鏡越しで眺めているかのような気分になってしまう。

 

(……あーあ、やめよう。最終的に僕が勝ったんだからそれで良いや。頭を打ったんだ。もう立ち上がる事は出来ないだろうさ)

 

 物間が静かに勝利を確信したと同時に審判であるミッドナイトが口を開き、目の前の光景に判断を下した。

 

「来正君、戦闘不能!勝者、物間k「アタマがいったぁい…」えっ?」

 

 その場に居た観客、生徒、教師陣は目を見開いた。確実に頭を打ち付け戦闘不能状態に陥った筈だ。それにも関わらず無数の視線の先によろめきながらも頭を押さえながら立ち上がる来正恭成の姿があった。

 

『おいおい!マジかよ!楽しませてくれんじゃねぇか!来正恭成復活ゥ〜〜〜〜ッ!!』

 

どうやら試合はまだ続くらしい。

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 ドーモ、読者の皆サン。主人公デス。

……あー、くそ。頭が凄いグワングワンしてしょうがない。頭の打ち所が悪かったのかなぁ、意識もハッキリしないんだけど……。

 

「ッ!……まさか立ち上がって来るなんてね。執念深いったらありゃしないよ」

 

「あー……うん……そだね、ごめん。ちょっと失礼」

 

 プッと口から赤黒い血と共に鋭利な破片が吐き出される。あー、口の中がヒリヒリする。ばい菌入って来ない内に水で濯いでおきたいなぁ。

 

「気付けの為として口内にコンクリを……!」

 

「まさか掛けておいた保険が役に立つとは思わなんだ……あー、ミッドナイト先生?もしかして僕、負けですか?」

 

「いえ、判定するギリギリの所で起き上がったから負けじゃないけれど……大丈夫かしら?正直言って戦えるような見えないのだけれど」

 

「はい、大丈夫ですよ。この通r───あ、すみません。ちょっと待って貰って良いですか?頭かグラグラします」

 

 うーん、目眩が鬱陶しいな。でも不思議と頭がスッキリしてる気が……あ、気の所為だった。どっちが言うとモヤモヤするなコレ。

 

「…やめておきなよ。負けたって言うのにまだ戦うつもr「ぬ゛ん゛っ゛

 

ごっ!!!

 

あー、スッキリした……。

さっきと比べて視界良好、治療成功、気分最高。軽く血が滲んでるけど…まぁ、良しとしよう。

 

「…バカじゃないのか?無理矢理頭を打ち付けて治すなんてさァ⁉︎」

 

 物間君が何か言ってるけど、ごめん。よく聴こえなかったわ。(難聴系主人公感) まぁそんな事より試合だ試合。

 

「っしゃ…!ミッドナイト先生。無理を承知で言いますが再開の合図をお願いしていいですか?」

 

「…本来なら止める所なんだけどね、こう言う熱い展開は嫌いじゃ無いわッッ!!なので再開を許可しますッ!」

 

 えぇ……、自由にも程がありませんかねウチの学校。いやでも正直嬉しい。このまま負けるのは嫌だし。何より、僕にだって人並みに負けたくないって意地があるんだ。おじさんやクラスの皆にみっともない所は見せられないしね。

 

 

※ヒロアカの住人は特殊な訓練を受けています。読者の皆様は頭を打って目眩、気分が悪い等の症状が見られた場合は安静にする、または病院で検査を受けて下さい。

 

 

 そんなわけで、試合が途中から再開される事になりました。やったぜ(ガッツポ)

……え、頭の血を拭いとけって?あ、そうですね指摘ありがとうございますミッドナイト先生。

 

血を拭い、お互いに距離を開ける。

直後、声を上げたミッドナイト先生により戦いの火蓋が切って落とされた。

 

「それでは試合再開ッ!」

 

「よし、やるか……!」

「全く、そこまでして倒れないなんて見事な執念だよ。余程君は他人を蹴落としたいみたいだね。そこまでして僕等を蹴落としt」

 

 

ごしゃ

 

 

 直後、僕が放つ飛び膝蹴りが物間君の顔面に命中。鈍い音を立てながら後方へ吹き飛ばされた……あれ?避けられるか防がれるの想定していたけどあっさり喰らった?

 

『what's⁉︎来正、いきなり不意打ちィ⁉︎ヒーローつーかヒールらしい面を全開で来たなオイ!』

 

「〜〜〜〜ッ⁉︎話してる最中に……!」

 

 悪いけどな。今の僕は脳内麻薬がドバドバ出てる所為か軽く頭がハイになってるんだ。隙を見つけ次第それを狙うから。

 

「蹴落とすとか何とか言いかけていたけどさ。それは君だって同じだ。蹴落としに来てると言う事は逆に蹴落とされるかもしれないと言うリスクを常に覚悟して来てるって訳だよね……?」

 

残念ながら、こっちはもう蹴落とされる覚悟は完了している。

けど、僕としては蹴落とされるつもりなんか全然無い。

 

「─────ッ⁉︎」

 

「あと、確かさっき……僕達と君は同類って言ってたよね」

 

 一人じゃ何も出来ない卑怯者。他に頼らないと何も出来ない。成る程、言い分は大体理解したよ。

 

「一つだけ言っておこう。君の居る場所は僕等が既に三年以上前に通過している」

 

役立たず? それはもう聞き飽きている

シンビオートに頼らないと弱い? うん、その通りだろうね

卑怯者? 否定はしないよ。実際そうなのかもしれないから

 

憧れたヒーロー達(架空の存在)のようになる為、シンビオートと一緒に胸を張れるようになる為に技術を積み上げ鍛錬を重ねたッッ!」

 

 悪いけど僕は弱点を放置しておく程、甘く無い!何年も耳にタコが出来るくらい散々言われてきた僕自身と言う名の欠点を補う為に、数年も

費やした!

 

「何を言ってるッ!無個性と同様の君(シンビオートの居ない君)に何が出来る!」

 

無個性(シンビオートがいない僕)を舐めないほうが良いよ。弓が上手いだけのおじさんに美人エージェント、コウモリスーツの億万長者だってヒーローになれるんだ。それに……」

 

 僕はファイティングポーズの体勢を取り、彼との間合いを図りつつ口を開く。

 

「ヒーローは一芸だけじゃ務まらないって授業で教わったッッ!」

 

『来正、反撃開始ィ!膝蹴りを打ち込み、そのまま接近して攻撃に移る〜〜〜〜ッッ!』

 

 駆け出す僕の姿を見て物間君は全身をコロッサスのように鉄の身体へ変化させ防御の体勢を取る。あぁ、そうだ物間君。君がその個性を使う時は殆ど、カウンターをして来るのはもう分かっている!

 

「何を───がァッ⁉︎」

 

『お、おお!?来正、物間の頭を両脚で挟んで……一回転するように地面へ叩きつけ‼︎フランケンシュタイナーが物間に炸裂したァ〜〜〜ッ!』

 

 確かに切島君と同じ防御力を上げられるとこちらの攻撃はあまり通らない。……けど、つけ入る隙はある!

 

「ぐ、この……ッ!」

 

 大振りの蹴りを屈んで回避すると同時に足払いで体勢を崩す。やっぱり思った通りだ。物間君は個性のコピーこそするがまだ扱い切れてない!全身鉄になる個性は切島君みたく動きが鈍くなるんだ!そこに付け込めば攻略法は自然と見つかる!

 

「チェストォ!!」

「ぐッ………!」

 

 体勢を崩した物間君の頭に向かって殴り付けるとそのまま地に向かって顔面が叩きつけられる。ダメージを喰らっているのは試し割りの原理と同じであり、この場合は彼の頭にアスファルトをぶつけている事になる。痛そうだけど、さっきまで僕の頭に鉄の拳で殴っていたからお互い様だ。

 

「もういっぱt「この……いい加減にしろよ!」ぐっ……⁉︎」

 

 すると僕が殴ろうとした側の腕と首元に物間君の髪が巻き付き、急激なスピードで締め付け始めた。しまった!落とされるッ⁉︎

 

 

「ぐ、あ……ッ!」

 

 

 

『首に巻き付いたぁ〜〜ッ!勝負あったか〜〜⁉︎』

『いや、まだだ。首に巻き付く直前に自分の腕を差し込んで圧迫される所をギリギリのところで防いでいる』

 

 

「来正君!」

「あのままじゃ落とされるぞ!」

 

「尾白、お前柔道とか経験あるだろ?あれって抜け出せられないのかよ!」

「いや、完璧に決まった締め技は易々と解く事はできない…それに加えて植物のように伸縮する髪から抜け出すなんて意識が無くならない限り無理だ」

「そんな!」

 

 

「う……あ────」

 

 この、無理矢理でも抜け出して……あ、無理だコレ(手の平返し)シンビオートじゃないと抜け出せねぇわ。そのま僕の視界はぼやけて行く。するとガクリと身体全体の力が抜け僕はそのまま意識を手放した。

 

『き、決まったぁ〜〜〜ッ!来正恭成惜しくも物間の攻撃に成す術も無く意識を刈り取られてしまった〜〜〜ッッ!』

 

「全く、個性が使えない状態で戦おうとするからだよ。まぁ時間内で勝負をつけられたから問題は無いけどね」

 

 そのまま首のツルが緩んだ瞬間、僕は髪から抜け出すと彼の顔面に向かって己の頭をぶつけた。

 

意識を手放したと言ったな。すまん、ありゃ嘘だ。

 

「がっ、〜〜〜っ⁉︎」

 

『復活からの頭突き⁉︎泥臭い戦いじゃねーか!』

『わざと気絶したフリをする事により拘束から抜け出したか。やり方はアレだが効率的だな』

「泥臭いのいいじゃない!私大好きよ!」

 

 あっはい。ぐっちょぐちょの泥臭い戦い(意味深)ですね分かります。それにしても危なかった。あと数秒緩むのが遅かったら演技じゃなくて本当に気絶するところだった。

 

「しつこいんだよ!一人じゃ何もできない癖して!」

 

 鉄の拳が迫る中、僕はダメージを最小限に抑える為に体を回旋させながら防御を行う。

 

「必死にしがみ付いてもお前は評価される訳じゃないんだぞ!」

 

 そこから来る貫手をギリギリの所で躱すが、耳元をガリッと抉れるような痛みが襲い掛かった。避け切れなかった───ッ⁉︎

 

「もう諦めろよ!」

 

 僕は物間君の正面から来る正拳突きに対応できず、痛みと衝撃が胸部から体全体へ伝達するように襲い掛かった。

 

「〜〜ッ!」

 

「終わりだ。そして僕達の勝利だA組!」

 

 顔面に向かって突き出される拳。ダメージの蓄積により回避するのは不可能だ。このまま当たれば確実に負ける。

 

……けど出来る限り時間は稼いだ。物間君には悪いけど、やっぱり一人じゃなくて、()()で戦う方が性に合っている。

 

ほら、君の出番だ。

 

 

 

 

 

あぁ、やっとオレの出番だ

 

 鉄の拳が顔面を捉えた。そう誰もが思った瞬間、僕の口の中から生えた黒い腕が物間君の拳を受け止めていた。驚愕する彼を黒の腕は投げ飛ばした。

そのまま僕を包み込むかのようにそれは出現した。

 

『待たせたな!真の主役の登場だぁ!!』

 

 やっと来たかシンビオート……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ごめん、出来れば今後からは別の場所から出て来てくれない?口の中からは絵面的にアレだし呼吸し難いんだけど(半ギレ)

 

『ハッ、オレ様の登場シーンに嫉妬する気持ちは分かるが……その話はコイツを負かしてからだ』

 

 そんなシンビオートは悪びれもせずに投げ飛ばした物間君に視線を向ると口端を吊り上げた。無視しないでくれない?

 

『よぉ、さっきぶりだな。よくもまぁ散々やってくれたなぁ』

 

「ん?君はどこかで見た事あるな……あー、思い出した!大見得切って僕に負けたシンビオート君‼︎イキリ散らかした癖して無残に僕に負けたシンビオート君じゃぁないか‼︎今頃出て来てどしたんだい⁉︎僕だったら恥ずかしくて外に出歩く事すらできないよ!アハハハハ!凄いね君の個性!アハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

『……で、言いたい事は終わったか?』

 

 あれ?流した……えっ⁉︎あの畜生寄生生物のシンビオートが挑発をスルーした⁉︎ シンビオート頭大丈夫?ちょっと保健室で休んでくる?

 

『それはお前の方だろ。まぁいい……で、だ。"つまらないな"お前。何もできない、卑怯、頼らないと役立たずと。さっきから口に出してるが……そりゃぁ、お前も同じなんだろ』

 

 図星を突かれたのか物間君がピクリと眉を動かした。そんな反応を見てニヤリとシンビオートが指を突きつける。

 

『クク、違うと言いたい顔をしてるな……まぁ、そんな事はどうでもいいんだ。要はお互い勝てばいいんだ。勝った方が正しい。勝った方が正義と言う事だ。どうだ?簡単な話だろう』

 

「なんだい?勝った方と言ってるけど、君は負ける事を想定してないじゃないか。まさか、もう勝った気でいるのかな」

 

『無論だな。お前のような屑で罵倒雑言を好き放題に口に出す阿呆がオレ達に勝てる道理があると思っているのか?』

 

 オーゥ、思いっきりブーメラン。星を一周して背中に突き刺さってるよ。屑で罵倒雑言言い放題の阿呆のシンビオートに思い切り刺さってるからね?

 

…まぁ、そんな話は置いておこう。

 

「それじゃ物間君 第二ラウンドだ。臭い事を言わせてもらうけど……()()()()()()()()()()()

『さぁて、倍返しと行こうか!』

 

その直後、黒い腕を伸ばし物間君に向かって拳が迫る。

 

「無駄なのが分からないのかい?僕の防御を崩してから言いなよ!」

 

 知ってる。だから馬鹿正直に真正面からじゃなく、不意に攻めさせてもらうよ。

そのまま伸びた腕は直撃する寸前にクンッと方向転換する。そのまま彼の首に巻き付くとシンビオートが笑みを浮かべた。

 

『人間ハンマーのショーだ!』

 

巻き付けたまま地に何回も叩きつける。

 

「ぐ、く……そ……ッ⁉︎」

 

 巻き付いたシンビオートが解かれると、物間君の額から鉄の体から赤い液体が流れていた。その事に彼自身酷く驚いているのが分かる。

 

「やっと金属疲労が来たか…!鉄は確かに硬いけど決して折れないなんて事は無い」

『まぁ、もっとも……お前の身体よりも先に心の方をボギリと折ってやるがなぁ!!』

 

「そうかい!」

 

 そう叫びながら物間君は側に落ちていたコンクリートの破片をこちらに投げて来る。その破片は数秒も経たない内に大きくなり、こちらへ飛んで来る。

 

「やべぇ!かなりの量の岩石いや、コンクリート!」

「避けられるか…⁉︎」

「いや、今の来正達は避ける必要も無い」

 

 後方で(A組)の声が響く中、僕は武器を形成するとその場で大きくのけ反った。アレをやるぞシンビオート!!

 

TOMAHAAAAWK(トマホ───ク)ッッ!!』

「ブーーーーメランッッ!!五連だ(グォレンダァ)!」

 

『来正と物間の投擲が互いの攻撃を打ち消す〜〜〜!いや、違う!一本だけ斧が物間に向かって飛んで行ったァ!』

 

 一本だけ飛んで行ったトマホークだが、物間君はギリギリの所で身を翻した。くそ当たらなかったか。

 

『Hey!どうした焦りが見え見えだぜパクリ人間!……それとも、時間が近づいて来ているのかな?』

 

「ッ!?」

 

「図星みたいだシンビオート!彼のコピーする個性は恐らく制限時間付き!このまま行けば勝てるぞ!」

「ああ最悪だね!何も出来ない相手に一方的に暴力を振るうなんてヒーローらしくないね君!」

 

 ごめんね物間君。そう言われてもさコレ(試合)って蹴落とさないといけないから仕方ないし、既に僕等って悪役のイメージが付いてるから今更言われてなぁ…って感じ。

あ、もう一言付け足すけどさ。お前が言うな

 

「代わりに答えてあげてシンビオート」

『ああ、楽しいね!逆にお前は鍛え上げて身につけた強大な力で相手を思うようにあしらう時気持ちよくはないのか?優越感を感じないのか?つまりはそう言う事だ!』

「ごめん物間君。僕等ってもしかしたらヒーローは愚か悪役どころか大魔王かもしれない」

 

 今度から代わりにシンビオートに答えてもらうのはやめておこう。まぁ、もう手遅れだけどね(自虐)

 

「それじゃ…これで終わりだッ!」

 

 なんだ、一体何をしているんだ?ステージの地面に手を付けて何を……ッ⁉︎

 

「まずいッッ!シンビオート!!急いで走るんだッ!」

『どう言う事だキョウセイ説明しろ!どうしてオレ達やアイツは一切動いていないのに()()()()()()()()()()()()()⁉︎』

「いいから物間君に向かって走るんだッ!でないと、場外判定となるッ!」

 

『これは……ッ⁉︎特製のステージがどんどん大きくなっていく〜〜〜ッ!?』

『恐らく物質を大きくする個性。それによりステージその物を大きくしているんだろうな』

 

 まずい。このステージは中央部に居る物間を基点にして大きくなっている!もし最大限まで大きくされた後、元の大きさに戻ればテーブルクロスを引き抜くように僕等は場外判定とされてしまう!

 

(こんなやり方はしたくなかったけど、制限時間がせまってるんだ。悪いね、勝つのは僕だ!)

 

「シンビオート、これは罠だ。確実にアリジコグに向かって突っ込めと言ってるのと同じだ」

『だろうな』

 

「でもどうせ言っても聞きやしないんでしょ?」

『ああ、その通りだ』

 

ですよね。……でも、それしか方法が無いんだから仕方ないね!そんな事を思いながら中心である物間君に向かって駆け出した。

 

(そう来ると思ったよ。無駄だ!至近距離に持ち込んだ瞬間にもう一度金属音を打ち込めば…!)

 

「はい目潰し」

 

 そのまま僕は指先からシンビオートの一部を彼の顔面に向かって飛ばした。罠が張ってあるならその罠自体を潰せばいいよね。えっ、卑怯?うん、今更だね(白目)

 

まぁ、これで……技のタメを作る時間は稼げた!

 

「この……ッ⁉︎なんだよその構えは!」

 

「うん。ちょっと、やってみたい事があってね(シンビオートが破裂した瞬間、凄まじい勢いで飛び散る破片は強固な弾丸と化す……!)」

 

 僕は両手の中でブクブクと膨れ上がる黒い液体を必死に抑え付ける。

 

(なんだアレは?ここは回避…を……!)

 

『まぁ、別に逃げたければ逃げればイイぜ。ほら右回ってさっさと背を向けろよ。そうした方が攻撃しやすいからなぁ…!』

 

「(いや……迎え撃つ!)へぇ、それじゃあ撃って来なよ!その自信溢れる攻撃って奴をさぁッッ!」

 

 

 そのまま物間君は全身を鉄に変え、こちらに向かって来る。かかった!彼なら確実にシンビオートの挑発に乗って来るものだと信じていた!ありがとう。シンビオート、そして物間君。この技は()()()()()()()

 

 

……それにしてもさぁ、あの時のさぁ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

『……カカオの宝石箱ビックバンや』

 

「は?」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「(まさか16話(昼辺り)に出たくだらないワンシーンが必殺技習得の伏線になるとは思わないだろッッ!!)捉えた!半径5m(メートル)!全弾喰らえッ!」

 

 両手に溜めたエネルギーを破裂させ、飛び散るシンビオートを弾丸に変えて放つッ!これぞ僕の必殺技(仮)!!

 

SYMBIOTE(シンビオート) SPLASH(スプラッシュ)ゥゥッ!

 

 

『なんとーーっ!黒い弾丸の雨霰が放たれ、今、物間に襲い掛かるゥーーー!』

 

「なんつー威力!まるでショットガンじゃねぇか!」

「いける!いけるぞ来正ィーー!」

「やっちまえぇぇえええ!」

 

(フン、この程度、スティールの前じゃ霧雨も当然。全然痛くも痒くも───ッ⁉︎)

 

 そうだ、ただの勘だけどさ。そろそろ時間切れなんじゃないのか?もう個性の制限時間限界を迎えるんじゃないのか?

 

「(まさか、時間切れ⁉︎)う、おおおおおおおおッ!」

 

 ガガガガガガと黒の弾丸が物間君に襲い掛かる。恐らくかなりのダメージが入っている筈だ。

 

(ここまで来て負けられるか!ここまで来て───ッ!)

 

 身体中に直撃し、あと一歩で倒せる。……筈なんだけどね、もう弾切れだ。

 

「は、……はは!オイオイオイ!どうしたんだい君ィ!何が必殺だよ!何がシンビオートスプラッシュだよ!まさかさっきのが必殺技だと言うのk『残念だったな』…ひょ?」

『まだオレ達のバトルフェイズは終了してないぜ?』

 

 まぁ、必殺技(仮)だからね。普通に考えたら編み出したばかりの技で倒せるとは限らないから。確実に倒せるやり方を取らせて貰ったよ。

 

「脚が動かない……ッ⁉︎」

 

 さっきのシンビオートスプラッシュは目眩しを兼ねた拘束技だよ。威力とか見ると改善点多有りだね。

 

『さて、どう料理してやろうか?人間シェイクの刑か?高い高いの刑か?それともタイムショック時間切れの刑か?』

「全部高確率で吐くヤツじゃん」

 

 そう呟きながら僕はシンビオートによって拘束された物間君の前に立つ。うん、もしも相手が女性だったら確実に全国に報道できないヤツだコレ。

さて……どうすべきか。

 

「まさかだけど…怒ってる?」

「はははそんなまさか……でも散々罵倒雑言をぶつけられて苛立たない人が居ると思う?」

 

 少なくとも爆豪君ならすぐさま爆破させに来るよ?轟君の場合は速攻で凍らせて来るね。

 

『……そう言えば、こいつの名前は何文字だ?』

「6文字だった筈だけど」

 

『も、の、ま、ね、い、と……天国、地獄、大地獄、天国、地獄、大地獄……ギャハハハハーーーッ!コイツ大地獄行きだぜぇーーーーーッッ!』

 

 大地獄行きね……や っ た ぜ

 

「うん、完璧に怒ってるよね」

「怒ってないよ(半ギレ)」

「嘘つけ!フットワークがボクシングのヤツになって呼吸も鋭くなってるじゃな─────」

 

 瞬間、僕は拳を叩き込んだ。胸に、顎に、肩に、腹部に。とにかく殴って殴って……殴り続けるッッ!!

 

「オラオオラオラオララオラオラオラオラオラオラオラオオラァァーーーッ‼︎」

 

「ぐ、ぎゃ…ぁあーーーーーーッッ!!」

 

 最後の締めであるアッパーカット。それによりシンビオートの拘束が解ける。同時に物間君が後方へ綺麗に吹き飛ばされた。

 

 

(これが君達の強さ……か……、僕と同じだと思ったけど、来正君。君は僕よりも先に居たんだね。……この勝負、君の勝ちだ………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……なーんて、言うかと思ったら大間違いだよボケがッッ!やられたフリをして隙を見計らって場外に叩き出してやる!その隙だらけの身体に一撃叩き込んで───『速攻魔法バーサーカーソウルッ!』……ん?)

 

『全てドロー!モンスターカードッ!』

 

 直後、宙に舞う物間君に向かって黒い触手が伸びて行く。そのまま繭のように包まれた物間君をシンビオートがこちらへ引き寄せたのだ。

 

『この辺りか?』

「そう、そこだ」

 

「「「「「「「えっ」」」」」」」

『えっ』

「……え?」

 

生徒や先生方含めた観客席から聞こえる声を他所に狙いを定めた。

 

『「ここが一番、拳を叩き込みやすい角度ッ!」』

 

 僕等は両腕に目一杯の力を殴り易い体勢を取り、拳を突き出す。

だってシンビオート言ってたよね?倍返しにしてやるって。

 

ただし倍返しは倍返しでも()()()()()だがなぁ!!

 

 

『「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァッ!!」』

 

「ぐ、ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!??」

 

 

 

「物間君、戦闘不能!勝者、来正君!」

『け、決着ゥ〜〜〜〜〜〜〜ッ、波乱の第三試合!勝利を収めたのは来正恭成だぁ〜〜〜〜〜〜〜ッッ!」

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 観客達の声が会場内に響き渡る中、物間寧人が感じていたものは虚無感だった。

 

「あぁ、……結局、こうなるのか」

 

 B組全体と連携し打倒A組と意気込んだ結果がこれだ。自身の個性は結局他人に頼らなければ使えない。負ければ他人の力に頼ってるからだと言われ、勝てたとしてもそれは他人のお陰だと言われる始末。

 

こうなるんだと薄々分かっていたのかもしれない。頑張れたとしてもそれは他人がいるから。自然と一人で戦う事となるトーナメントでは負けてしまうんだと彼は思ってしまう。

 

「……で、僕に何かようかい?勝ち誇りに来たならさっさと自分の観客席に戻って勝利の美酒に酔いしれた方が良いと思うよ」

 

そんな強がりを言う彼に来正は告げた。

 

「大丈夫?結構強めに殴っちゃっけど……」

 

「は?」

 

 不意に声が出た。彼は物間に向かって手を差し出した。殴ろうとした訳でも指をさして笑いものにしようとした訳でもない。ただ、純粋に心配しに来たのだ。

 

「は…はは!そう言う事か!皆の前でカッコいいヒーローアピールか!さすがはこの場の主人公様が言う事が違うn「はよ立てや」んがっ⁉︎」

 

 無理矢理首根っこ掴まれ立たされた物間。そのまま来正に肩を貸される形で連れられて歩き始める事となる。

 

「……ッ⁉︎おい、これは何の冗談だい……?と言うかそこまでして善人面しないと気が済まないのかな君はぁ!」

「えっ……何言ってるの物間君?既にイメージが最底辺に落ちた僕が今更善人アピールしても遅いと思うんですけど(超推理)」

 

「それじゃあ強者アピールかい⁉︎自分の強さに酔いしれたいのかなぁ⁉︎一人じゃ何もできない僕と違ってさぁ!!」

「何言ってるの?君の"個性"は集団戦向き。一人じゃ何も出来ないんじゃなくて、皆が居て真価を発揮できる強い個性だと思うんだけど」 

 

 なんだコイツは……?物間の頭の中には疑問符で一杯になっていた。何故ここまでして他人の心配なんかをする?メリットを得られる訳でも無いと言うのに。どうして拒もうとしない?そんな考えが過ぎる中、物間は更に口を開く。

 

「口では何とでも言えるよ。結局の所、君にとって僕はただのやられ役に過ぎないんだからさ」

「えぇ、コピー個性持ちがやられ役って……制限ありとは言えクロロ団長やカカシ先生みたいな強い個性を持ってる人なんて嫌でも印象に残るよ?どっちが言うとそれ強敵ポジションでしょ」

 

 彼の言葉に対し呆れながらも来正がそう答えると無理矢理引き連れるように再び歩き始めると、観客席のあちこちから声が上がった。

 

「やるじゃねぇかB組!」「凄かったわ!見直した!」「オイオイオイ、A組と同じくらい将来有望な生徒いるじゃん」「こりゃ要チェックだな…性格アレだけど」「黒い方引っ込めー!」「がんばったなぁ!お疲れ様ーー!」「来年期待してるぞーーー!」

 

 

『見ろよ来正!オレ達を崇め奉ってるぞ!ハハハハ!』

「ごめんシンビオート。よく聞いて?これ殆どが物間君に向けての声援だから。僕等に向けてのほぼ無いからね?」

『マジかよ』

 

 呆然とする物間だが、突如として聴き覚えのある声が耳に入った。

 

「おーい物間!ドンマイ !」

「惜しかったけどナイスファイト!」

「さっさと上がってこいよ!」

「仇は俺たちが取ってやるからな!」

 

「ハハハハ!流石だな物間!」

 

 B組の生徒達が物間に向けて言葉を投げ掛けてきた。彼を信じたクラスメイト達に続きいつの間にかB組の観客席に移動して来たブラドキングが声を荒げる。

 

「周りを見ろ、そして耳を傾けろ!確かにお前は試合では負けたかもしれんが、俺はそうは思わない!この圧倒的な声援!お前は勝ったも同然だ。今に見ていろA組!次に勝つのは我々B組だ!」

 

「あのブラドキング先生。A組の僕がいる前でガッツリ贔屓するのやめてもらえません?」

 

「フ、物間に勝ったからといって調子に乗らない方が良い。次の対戦相手である赤糸虫はお前を負かす!」

 

「サラッと負けた事にされてる芦戸さんェ……」

 

 そんな来正の脇腹に向けて肘で小突くと同時に物間は口を開く。

 

「君さ、本当に空気読めないね。負けた相手に同情するのは屈辱以外何でも無いよ?ほら、さっさと僕を連れてってよ」

「えっ、あ うん、ごめん(勝ったのにこの仕打ち。解せぬ)」

 

 

『それでは会場のリスナー諸君!!拍手で二人をお送りください!!……なぁ、もうこれで体育祭終わりでよくね?』

『そうしたいものは山々だが、まだ3試合目だからな?』

『それマ?』

 

 会場内に響き渡る拍手。それを受ける物間はチラリと先程まで戦っていた彼に視線を移す。 

全く持って屈辱だ、コイツに情けをかけられるなんて。その筈なのに……。

 

(君の事は好きになれないけど……悪いヤツじゃないみたいだ)

 

 そのまま二人はステージを後にする────直前、物間は地面とキスする事となった。

 

「「あ」」

「あっ」

「……は?」

 

 恐る恐る視線を向ける先は来正のすぐ横。来正自身もそこに顔を向けると手を突き出したシンビオート(黒塗りイキリ畜生寄生生物)がそこに居た。要はステージから突き落とした犯人コイツです。

 

「………シンビオート?」

『悪い手が滑った』

シンビオートォ⁉︎

 

「フフ、ハハハハ!……やっぱり君の事嫌いだァ!」

 

違うぅ!シンビオートが勝手にぃ!

 

 




【おまけ】


ミッドナイト「正直興奮した。ヒャアたまんねぇ!全く…中学生上がりたての生徒は最高ね!これだから教師はやめられないのよ!」
主人公「………」


A組クラスメイト達『シンビオートのヤツいつも通りやりやがった!』
爆豪「パクリ野郎ザマァァアアーーッ!!(歓喜)」
主人公「( ゚д゚)」


爆豪「おい。もっとバレないようにやれや」
シンビオート『そうだな。今度はもっと気をつけてるか』
主人公「君等、本当は仲良いだろ」



〜〜キャラクター紹介〜〜


『来正恭成』
この作品の主人公。
僕は主人公だ。誰が何を言おうと主人公だ
幼少期からシンビオート頼りでオメェ弱いだろと言われ続けて早数年。キャップのシールド投げや棒術等の架空のヒーロー達の技術を模倣、鍛錬を繰り返す事により肉体は鍛えられていった。
頭を打つと覚悟ガンギマリスイッチが入るらしい。

SYMBIOTE(シンビオート) SPLASH(スプラッシュ)
16話、八百万から貰った高級チョコを摂取した事によりシンビオートが新たに習得した過剰膨張破裂を利用し、弾丸と化したシンビオートをぶつける技。
元ネタはジョジョの奇妙な冒険より花京院典明のスタンド能力ハイエロファント・グリーンの必殺技『エメラルドスプラッシュ』
しかし一度もエメラルドスプラッシュで倒せた敵が一人も居ないと言うのに必殺技とは……。


『物間寧人』
幼少期の頃から他人に頼らないと使えない個性により人格が歪んだ雄英の負の面。光堕ちすると思いきや、シンビオートの妨害によりそんな事はならなかったぜ。おのれシンビオート…



〜〜用語紹介〜〜

『コロッサス』
X-MENメンバーの一人。肉体を生体金属で覆う能力を持ち、その防御力は全マーベルヒーロー中トップクラス。

『トマホークブーメラン』
ゲッターロボ(ゲッター1)が使用する格闘武器。叩き斬る、投げる、突き刺す等を行い、その後のゲッター系統のロボットもトマホークを使用している。

『速攻魔法バーサーカー・ソウル』
手札を全て捨て、効果発動。このカードはモンスターカード以外のカードが出るまで何枚でもドローし、墓地に捨てるカード。そしてその数だけ、攻撃力1500以下のモンスターは追加攻撃ができる
「覚悟しろよこの虫野郎!」



 読者の皆様方、自分の小説を読んでくださり誠に感謝します。新年、幸多き年になりますよう祈るばかりです。新年を明けてからの投稿は恐らく番外編になるかと思いますがご了承をお願い申し上げます。


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20話 違う!シンビオートが勝手に後の試合を!


近日投稿(すぐに投稿できるとは言ってない)



 

 やぁ皆。頭に包帯をグルグルと巻かれた主人公だよ。リカバリーガールに治癒して貰った上にシンビオートによる治療も兼ねて比較的早く観客席に戻る事が出来たよ。

でもリカバリーガールが言うには「普通は安静にしてる方が良い」らしいけどそれじゃ僕が普通じゃ無いと言う事になるんですがそれは(白目)

 

『敵の前でダンスを披露した時点で何を言っても意味は無い』

「そう言えばそうだった」

 

 そんな他愛も無い談笑をしつつ観客席に戻るとクラスメイトに奇異な物を見るような目を向けられるけど、もう今更なんだよなぁ。

自身にそう呼びかけていると、修復されたステージの上に見覚えのある二人の姿に気付いた。

 

『さぁさぁ!どんどん盛り上がって行こうぜ第四試合!あのツノから何か出るの?ヒーロー科A組 芦戸三奈!』

「悪いけどB組の進撃もここまでだよー!」

 

『VS! まさかの担任からの勝利宣言!ヒーロー科B組 赤糸虫知朱!』

「プレッシャー掛けられるの苦手なんだけどなぁ」

 

 芦戸さんに赤糸虫君か。ここは芦戸さんを応援すべきなんだと思うけど個人的に赤糸虫君にも応援したい所が……っ!

 

『どっちも応援すれば良いんじゃないか』

「それだ」

 

「お前どっちの味方だよ……」

『オレ達は強い方の味方だ。だがオレ個人はクモの方を応援する』

 

 呆れたように声を掛けてくる瀬呂君に対してシンビオートが答える。それにしても以外だ。鉢巻きを奪った赤糸虫君の事を恨んで、負けるように藁人形でも持ち込んで来ると思ったけど。どう言う風の吹き回し?

 

『アイツが勝ち上がれば直接倒せる機会が出来るからな』

「「あぁ、そう言う……(納得)」」

 

 いつも通りのシンビオートで安心した…と。それにしても二人が戦うとして、果たしてどっちが勝つのかな。

 

『第四試合スタートォ!!』

 

「先手必勝!」

 

 開始の合図と同時に芦戸さんの手の平から牽制と言わんばかりに溶解液が飛び出る。

 

 

パシュッ

 

 

 すると易々と溶解液を躱された直後、彼女の両手が包み込まれるように糸が絡まった。

 

「へっ?…んぐっ⁉︎」

 

 声が漏れた瞬間、口元、両脚、そして体全体に糸が撃ち込まれあっという間に芦戸さんは芋虫のように身動きが取れなくなってしまった。

……あれっ、早くない⁉︎

 

『しゅ、瞬殺ぅ〜〜〜っ⁉︎開始僅か十数秒で芦戸戦闘不能!』

 

「オイオイ瞬殺だよ」

「マジかよ。芦戸って身体能力高めだけど反応できなかったのか?」

 

 それ以上に赤糸虫君の体幹バランスがやばい。飛んで来た酸を体を仰け反らして避けた姿勢のまま糸を射出した。

 

「緑谷君」

「分かってる、あの赤糸虫って人。凄いセンスだよ」

 

 

 

「芋虫の気持ちってどう?青物食べたくなって来た?」

「んん〜〜〜ッ!こ───のぉッ!」

 

 すると手の平と特製の穴空きブーツから酸性の粘液を出し糸を溶かす事により全身にへばり付いた糸を剥がす事に成功した。

……が、しかし。

 

「寝起きだけど失礼!」

「えっ?」

 

 足元に付いた糸を思い切り引っ張ると転倒してしまう。速い!次から次へ移る行動の速さが段違いだ!

 

「世界一周旅行の旅へのプレゼントは無理だけど、代わりにこれならどうかなっ!」

 

 そのまま芦戸さんの足元に糸を付着させたまま大きく振り回し始め、扇風機の羽のように遠心力が強まって行く。

 

「このっ!」

 

 最大限まで遠心力が強まる前に糸を酸で溶かし拘束から逃れる。さらに指先とブーツから出した溶解液によりステージを抉りながら着地に成功する。

 

「いいぞ!!そのまま畳み掛けろーー!!」

「A組なんてやっつけちまぇええ!」

「頼むぜB組代表!!」

 

「やべぇ、あっち(B組)の土気もかなり上がって来てるぞ!」

「こっちも負けられねぇ!気張れよ芦戸ーーー!」

「こっちも応援してるわ!」

 

 そうそう、これだよ。僕が望んでいた体育祭は!こうやって互いのクラスが切磋琢磨し合うのが体育祭本来の姿だと僕は思うんだよ。

 

「お前どっちに賭ける?俺、芦戸」

「それじゃB組の方」

「芦戸だな」

『オレはクモの方に花京院の魂を賭ける』

 

 だから決して賭事に行じるような催しじゃ無いと僕は思うんだ。あと勝手に他人の魂を賭けるのも良くないから。

 

 そうこうしている内に赤糸虫君の素早い攻撃に翻弄され、体力もどんどん削られていく芦戸さん。このままじゃ何も出来ずに終わってしまう……が、不意に芦戸さんの口元がニッと吊り上がる。

 

「こうなったら奥の手を使うしかないかぁ…!」

 

 そう呟きながら両手に酸を溜め込みつつ、腰を落とし眼前を見据える芦戸さん。アレが奥の手……!まるでDBのかめは◯はの如き構えだ。

 

……あれ?でも何故だろうか。芦戸さんのあの構え何処か見覚えがあると言うか既視感があると言うか、がっつり身に覚えがあると言うか。

いや待って。アレって完全に僕が編み出したばかりの技なんじy

 

「喰らえ必殺!ACID(アシッド) SPLASH(スプラッシュ)!」

 

 直後、芦戸さんの手の内から一気に放たれた酸の雨が赤糸虫君に襲い掛かる。

…いやパクリだアレーーーーーー!?

 

「いいやリスペクトだから!」

 

「リスペクト……それならいいか」

『結局パクリと大差無いけどな』

 

 大差あるから(鋼鉄の意志) そんな事を話している内に無数の酸性弾丸が赤糸虫君に向かって放射線を描きながら迫って行く。

……あ、これ僕のより凶悪だ(確信)

 

「コレ危険な技じゃねーか!当たったら即アウトだろ!」

「いや待て!場外に出ればギリギリ当たらない範囲だ」

「上手く考えてたね芦戸さん!」

「なんかの弾みで女の衣服に当たれば……っ!」

 

 よし峰田君、君は少し黙っていようか話が脱線するから。

けど確かに上手く考えた必殺技だ。放射状に放つ事で広範囲かつ高威力の技を出す事が出来ている。

コレを防ぐには防御に特化した個性を使うか、自ら場外に出て避けるしか無い!このままなら芦戸さんの勝利する可能性は高い……えっ⁉︎

 

『おいおいおい!赤糸虫、何を血迷ったんだ⁉︎()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ァ〜〜〜〜ッ!!』

 

「アイツ自殺志願者か⁉︎芦戸の酸はやべぇって!」

「ちょっと!ウチこの後の見たくないんだけど!」

「逃げて超逃げて〜〜〜ッ!」

 

 A組の皆を中心に会場はドッと騒がしくなる。それもその筈、今の状況は自ら死にに行っているのと同義だ。

 

「駄目駄目だって!避けて〜〜〜!」

 

 技を放った芦戸さん自身もまさか突っ込んで来るとは思わず悲痛な声を上げている。無茶だ赤糸虫君!例え君のクモ糸で盾を張ったとしても芦戸さんの酸は防げないぞ!……え、マジで突っ込む気なの君⁉︎

 

「いやぁぁーーーッ!スプラッタシーン報道!R-18Gタグ付けられるぅぅううう!『……待て、何かするつもりだ』え?」

 

 シンビオートがそう言った直後、赤糸虫君は糸を会場の壁に向かって放ち、一気に飛び上がった。そして体勢に変化を加えながらどんどん芦戸さんに向かって突き進んでいる。

 

「これは……()()()()()()()()()()()⁉︎」

 

「「「「「「⁉︎」」」」」」

 

 僕等が驚愕する中、側転、宙返りと様々な技を見せ付けていく。そのままあっという間に……!

 

「ゴールイン!」

「え?え?え、えぇッ⁉︎」

 

 芦戸さんは再びクモ糸によって全身を拘束されてしまった。まるで陸に打ち上げられた魚のようにジタバタと動くが念入りにクモ糸を重ねられているらしい。

 

「中学じゃ水泳は習ったけど宙を泳ぐのはコレが初めてかな?」

 

「ぐうぅう〜〜ッ!こんなものすぐに溶かして───あっ…」

 

……あっ?え、「あっ」てどうしたの?何かやっては行けない事をやってしまったように芦戸さんのピンク顔が真っ青に変化して行ってるけど一体……あっ(察し)

 

「ん?どうした来正。なんか気づいてはいけない事を察したような表情してるけど」

「トイレか?腹痛いならさっさと行って来た方がいいぞ」

「同感☆」

 

「いや、別になんでm『糸の下は酸で溶けてほぼ裸だ。これ以上動くと醜体どころか痴態まで晒しちまうな』シンビオートォ!!」

 

 それ言っちゃ駄目なヤツゥゥ!女子はデリケートなんだからやめたげてよぉ!

 

「……何やってんだ芦戸ォ!まだ行けるだろ!さぁ糸を引き千切れ!ハリーハリィィイイ「当身」──くぴっ」

 

 これ以上峰田君の醜態を見ていられなかったので首筋に強めにチョップしました。人間って本当にトンッ!とするとコミックみたく気絶するんだね。

 

「えーっと……降参する?」

「………します」

 

「芦戸さん降参!二回戦進出 赤糸虫君!」

 

 流石にこれ以上戦うのは無理だってはっきりと分かんだね。全国に裸体を曝け出すのは女子も男子も嫌だし。

と、そんな事を考えていると隣から何やら笑い声のようなものが耳に入って来る。あれ?この相手を小馬鹿にするような聞き覚えのある高笑いは……?

 

「あれれーー⁉︎A組負けてるよーーーあれれれれぇえええ!?僕達よりも優れているのに負けてるのおかしいねぇえええええッッ!」

「あ、物間君」

『なんだ、慰めて欲しくてこっちに来たいならチケットでも買っておくんだな』

 

 はいどうどう、落ち着いてシンビオート。ここで言い争ったら周りの迷惑になるでしょ。と言うかさっき負けたばかりなのに凄い精神してるね?ある意味尊敬に値する。

 

「あれれ?宿主におんぶして貰ってる君に言われたく無いなぁ」

『なら今からもう一度やるか?また苦汁を飲ましてやr「八百万さーん、急で悪いけどライター作って」と思ったが、命拾いしたな。この辺で勘弁してやる』

 

「あれれれ?もしかして尻尾巻いて逃げる気なのか──「当て身」─けひっ」

 

 ゴウランガ。引っ込んだシンビオートに追撃しようとした物間君だったが突如として飛んできた手刀によりノックアウト。

あの人、中々のやり手だ……!

しばらく彼女と視線を交えると互いに一礼し、愛想笑いを見せる。

 

「「失礼しました……お互い、大変だね(だな)」」

 

 あっちもあっちで苦労してる人っているんだね、それにしても僕の次の相手は赤糸君って事になるのか。またシンビオートが暴れる事になりそう(小並感)

 

『………』

「あれ?思ったよりも大人しいけど どうしたの?」

『別に。次戦うヤツが無駄に身なりが綺麗なのが癪なだけ』

 

 そう呟くとズブズブと体の中へ引っ込んで行く。えぇ…、因縁の付け方が雑過ぎやしない?身なりが綺麗なのは普通なんじゃ────あれ?()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それじゃあ赤糸虫君はあの溶解液の雨どころか酸の一滴すら衣服に掠りもしなかったと言うなのか⁉︎それが本当なら彼の戦闘センスは爆豪君と同等……いや、もしかするとそれ以上の可能性だってある。

 

 待ち受ける第二回戦に僕は…いや、僕達は一抹の懸念を抱いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「悔しぃぃぃいいいい!あれ、勝ったと思ったのにぃぃ!」

 

「うん分かった その前に八百万さん。芦戸さんを更衣室に連れて着替えさせて上げて」

 

 ねぇ、なんで真っ先に僕に向かって来るの?その前に更衣室に行って着替えて来てくれない?思春期の男子生徒にとって身体つきの良い女子は目に毒だから。

あと、少し格好付けて場面転換させたのに台無しにしないで(懇願)

 

「おい来正お前ぇぇえええ!なんでオイラだけ目隠しなんだよ!早く目元のシンビオートを解いてくれよ!目の前に楽園(エデン)が在るって言うのによォーーーーーッ!」

『だがコッチの方が興奮するだろ』

「確かに!」

 

 そこは了承するんだね峰田君。色々な意味で君がNo.1だよ色々な意味でね(重要な事なので二回目)

 

「くぅッ!生徒への指示。これは委員長の仕事なのに……ッ!」

 

 いや別にそこまで気にしなくても良いんだけどなぁ、それに飯田君は常に周りの人達に気を配っているからさ。委員長としても人間としても立派だと僕は思うよ?

……あ、なんか感銘受けたのか急に頭の中へトリップし始めた。

 

 

『さぁ行くぜ第五試合!男気一筋ド根性硬化!ヒーロー科 切島鋭児郎!』

「恨みっこは無しだぜ瀬呂!」

 

『VS!優秀だが拭い切れないその地味さ!安心しな、相手も結構地味だ!ヒーロー科 瀬呂範太!』

「あぁ、勿論だぜ!てか解説ひでぇ」

 

 

 気がつけば第五試合開始直前。切島君と瀬呂君が互いに睨み合う状況となっている。

 

「デク君、これってどっちが有利k「瀬呂君のテープは応用の幅も広く中、遠距離の攻撃を得意としソレを応用して罠を貼る事が出来る。切島君は対照的に正面から堂々と防御を固めて接近戦を行うスタイルだ。一見すると瀬呂君が有利そうに見えるけど遮蔽物が一切無いステージで行うから小細工無しで勝負。切島君が断然有利になるから最終的にはどう工夫するかが問題で───え?何か言った」あ、イエナニモ」

 

「うん緑谷君。今は分析してノートにまとめるのはやめておいた方が良いよ。周りの皆からガッツリ引かれてるから」

「あ、ご、ごめん!つい癖で……」

「気にしなくて良いよデク君」

 

 慌てふためく緑谷君を麗日さんが落ち着かせようとする。そう言えばいつも緑谷君が持ってるそのノートは一体…?

 

『その汚い冊子に何を纏めてる?』

「汚い言うな」

 

「あ、これ?これは僕の趣味と言うかさ。皆の個性をまとめてるんだ。ほら、麗日さんの無重力(ゼログラビティ)や来正君のシンビオートも」

 

 そう言って見せてきた頁にはヒーロースーツと共に個性、その運用方法等が記載されていた。おお、ここに描かれてるのは懐かしきキャップコスチューム!敵に壊されたキャップコスチュームじゃないか!アレって未だに修復されてないけどどうしたんだろう……。

 

「めちゃくちゃ書かれてる…」

『汚くて読めたものじゃないけどな。……シンビオート。伸縮自在の動き、宿主に纏う事により凄まじい力を発揮する。純粋なパワーはトップクラスと考えられる…か、中々良く書けてるじゃないか。花丸百点くれてやる』

 

 おっと、この掌返しの速さよ。と言うか本当にめちゃくちゃ書かれてるね。まるでヒーロー博士だ……。

 

『第五試合スタート!!』

 

 閑話休題。プレゼントマイク先生の開始の合図により僕等は試合に注意を戻された。つい話し込んでしまったけどクラスメイトの試合なんだ。ちゃんと見届けてあげないと無作法と言うもの。

 

「悪いけど、負ける気はしねーなッ!」

 

 直後、瀬呂君よ両肘からテープが勢い良く伸ばされ切島君を拘束する。更にステージ外に向けて一気に投げ飛ばす作戦に出たのだ。

シンプルで無難!不意打ちっぽいけど有効な戦法だ!

 

「ッ〜〜〜おらぁ‼︎いきなり不意打ちたァ男じゃねぇぞ!」

「げっ、マジかよ」

 

「テープ切れた!」

「硬化で鋭利になった腕を使ったんだ!」

 

 流石は攻防どちらにも長けた"個性"!このくらいじゃなんとも無いか!すると左右の拳を打ち付けた後、切島君は高らかに声を上げる。

 

「さぁて【鉄拳制裁タイムだ】!」

 

 あ、前に教えてあげた決め台詞を使った。……あれ?でも教えたのって別のヤツじゃなかったかな?

 

「確かムッシュムラムラじゃ「鉄拳制裁タイムだ!(鋼鉄の意志)」アッハイ」

 

 そこまで嫌なのかムッシュムラムラ……ガンロック(日本版シング)も良い所あると思うんだけどなぁ。

決め台詞を言えたのか満足そうな表情を浮かべつつも切島君はズンズンと瀬呂君のテープを弾きながら突き進んで行く。

 

「止まれっての切島お前!」

「硬いから効かねぇな!」

 

『どんどん追い込まれてるぞ瀬呂!もはや打つ手無しかぁ⁉︎』

 

 ステージの端まで追い込まれた瀬呂君。彼は成す術無く切島くんの拳をまともに喰らい────

 

「打つ手……?

 

 

 

 

 

そりゃあ、あるに決まってるんだよなぁ!」

 

 終わったと思われた直後。駆け出した瀬呂君は切島君にすれ違う瞬間に彼のテープが切島君の目元を捉えた。

 

「がっ、顔面にテープが……ッ!」

 

 目元のテープを剥がそうとする切島君だが、背後から瀬呂君のテープが両腕を縛り上げられてしまい、仰反るような形で拘束されてしまう。

 

「腕もッ⁉︎」

「真正面から無理なら工夫して戦うのが定石だろーーがっ!」

 

『視界を潰し拘束!まさかの逆転ーーーーッ!地味だがかなり有効な戦術じゃねこれ?』

 

「地味言うな!」

 

 プレゼントマイク先生の言葉に反応しながらも瀬呂君は縛り上げる力を更に強めて行く。このまま瀬呂君が場外に切島君を投げ飛ばせば勝ちだろう。

直後、瀬呂君は背負い投げの要領で己のテープを引き寄せる。

 

「これで……終わりだ!」

 

 そう叫んだ瀬呂君はそのまま────あれ?動いてない?

 

「この……ッ程度で…やられるかぁ!」

「力強…っ⁉︎全くびくともしねぇ⁉︎」

 

 これは一体どうなっているんだ?切島君が力強いとは言え、微動もしないなんて……?

 

『いや、よく見ろ。赤い方の足元だ』

「足元……あっ!」

 

 シンビオートに言われて注目すると、硬化した切島君の足部がステージに突き刺さっていたのだ。

 

「そうか、釘を打ち付けるように足を地面に減り込ませて自身を固定したんだ」

「戦法つーかゴリ押しだけど」

「作戦もクソもねぇな」

 

 いや、切島君なら堂々と真正面から戦った方が僕みたいに小細工をするよりかは有利だ。防御に伴い攻撃も可能な個性持ちの切島君だからこそ良いんじゃないか。

 

 そう考えていると切島君は手繰り寄せるように己に巻き付いたテープを切島君は掴み、思い切り振り回し始めたのだ。

 

「お、おおおおおおおお⁉︎」

「うおりゃぁぁぁあああああああああッッ!」

 

 そのままジャイアントスイングを行うかのようにステージ上瀬呂君は赤髪の彼を軸に大回転、遠心力によりテープがブチリと音を立て千切れる。

 

 勢いのまま瀬呂君はステージの外へ投げ出され、硬い材質で出来た地面に背中を打ち付けられる。痛みで悶絶してる彼を見てミッドナイト先生はジャッジを下した。

 

「そこまで!瀬呂君場外!勝者 切島君!」

 

「おっしゃぁぉぁぁああ!見たか俺の男気をよォ!」

 

『ステージで勝利の雄叫びが木霊する!中々やんじゃねぇか!』

『最後まで力任せな面が見られるが、そのおかげで逆転出来たと言うべきか……』

 

 観客席から大音量の声援が上がる。スピーカーの音量を高くした上に間近で聴いてるんじゃないかと錯覚するくらいだ。

あ、でもシンビオートは大丈夫だよ。あくまで一部の音に弱いのであって音全般が弱点って訳じゃないからね?

 

「おーい!何ブツブツ独り言言ってんだよ!」

 

 不意に下から切島君に呼び掛けられる。え、何故にそこから声を?凄い目立つから話すならコッチに戻って来てからにして欲しいですがそれは。

 

「どうよ、決まってたろ俺の台詞!」

 

 うん、俺のって言うか考えたの僕なんだけどね。いやまぁそもそも僕が一から考えた訳でも無いけどさ。

…と言うか鉄拳制裁してないし投げ飛ばしで決めてたけど?

 

「やっぱりムッシュムラムラの方が「やめろ」あっ、うん」

 

 





来正「えっ、赤糸虫君って強くない?こわっ」

次の試合で戦うんやで(ニッコリ)

オチが無いどころかノルマすら達成出来て無い事実。
(書くの)やめたらこの小説ぅ?

もういっそのことノルマ関係無しに好きに書いても良い気がして来た(小並感)


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21話 違う!シンビオートが勝手に身の上話(偽)を!

小説を書くモチベーションが上がって来たので投稿します。



 

 やぁ皆。肩を掴まれ前後にシェイク。その後便器に向かってキラキラをブチ撒けた主人公だよ。とりあえず切島君を一発殴ったけど硬化されて逆に返り討ちに遭いました() 手が痛ィ。

 

「手の骨が折れた……」

「普通折れないけどな」

 

 次の試合が始まるまでシンビオートに骨を治してもらう。いや実際に骨が折れるとは思わなかった。今の僕って殴ったら勝手に自滅する噛ませ役みたいになってるんだけどダサくない?

 

『その上、手がTレックスみたい』

「あ、本当だウケる。ウケねーよ」

 

 いや確かに手がプラプラしてジュラシックパークに出て来そうな感じだけどさぁ。

 

『第六試合!男気一筋ド根性鋼鉄!ヒーロー科 鉄哲徹鐵!』

「前のヤツとほぼ一緒じゃねーか!」

 

『VS、スパーキングキリングボーイ ヒーロー科 上鳴電気!』

「女子共にいい所見せてやらぁ」

 

 マイク先生の声と共に鉄哲君と上鳴君の二人がステージに上がる。ボッキリ折れた手首にシンビオートを巻き付ける形で治していると、横から瀬呂君達の声が響いて来る。

 

「お前どっちが勝つと思う?俺、上鳴な」

「俺は鉄哲だな!男らしくて親近感湧くぜ!」

 

『被ってるの間違いだろ』

「それを言うな!」

 

 そのまま生徒一部が先程の試合のように賭事を行い始めた。ちなみに最大金額は1500円、ちなみに殆どが鉄哲君が勝つと予想されてる。あんまり期待されてない上鳴君ェ……。

 

「ほら来正もどっちかに賭けろよ」

「いやお金無い」

『チョコ買う金があるだろ。増やすチャンスだありったけ注ぎ込め』

 

 いや、それならシンビオート自身がお金出せば良いんじゃないの?

……え、今月分全額出すの?マジで?これでハズレだったら目も当てられない惨状になるけど……。

 

「で?来正はどっちだ」

「で?って……それじゃ上鳴君にヨーグルトランドのダダ券を賭ける」

「「「「……」」」」

 

「中学上がりに加えてバイト未経験の僕にどうしろっての?……分かったよ。それじゃ花京院の魂も賭ける!」

『それはもうオレが賭けている』

「それならアブドゥルの魂を賭ける!ほらこれで文句無いでしょ!」

 

「アンタ等馬鹿じゃないの」

 

 耳郎さんに馬鹿と言われた……反論の余地がねぇ!でもここは是非とも友人の上鳴君に勝って欲しい所だ。

 

 

「悪いがヘナヘナした野郎に負ける気はしねぇなぁ…A組よォ」

「へっ、そりゃこっちの台詞だ。それに……この勝負、一瞬で終わるぜ」

 

 あ、なんだろう。今、上鳴君が負けるフラグを投下した気がする。勝利を確信して宣言すると何故こうも敗北する未来が見えるんだろうか。

 

「……まぁ、でもよっぽどの事が無ければ上鳴君が勝てるだろうしなぁ」

「勝てるって……何か勝算でもあんのか来正」

 

 勝算と言うか、相性と言うか…。上鳴君の個性は多分、鉄哲君に効果的だと思うんだ。多分、彼の個性は物間君が使って来た個性の内一つ。体を鋼鉄のように変化させる能力!

そうじゃなきゃ切島君と被ってるなんて言わないからね。

 

「けど、鉄は電気に強いって相場が決まってるもんじゃ……」

 

「確かにでんきタイプははがねタイプに効果は今ひとつ。だけど現実じゃ鉄は電気を通しやすいからね」

 

 まぁポ◯モンで例えると勘違いしやすいけど鉄は電気通すからなぁ。そう告げると飯田君が同意するように頷く。

 

「確かに、鉄は電気を通しやすい性質を持つ。体の内側にもダメージが入り、一切敵を寄せ付ける事なく発する電撃を扱う。相性はまさしく最高だな」

「え、つまり……上鳴って有利?」

 

「そうだね。もし髪の毛を植物みたく超スピードで生やす個性だったら不利だったと思う……そう考えると物間君強かったなぁ…」

「それならたんまり金を注ぎ込んでおけばよかっただろ」

 

「ごめん、僕は高校生の出せる金額は大した事ない上にそう言うのは手を出さないタイプだから」

『ついでにアホ面は頼り無いからな』

「ハイ、シンビオートお口チャック」

 

 横から首を物理的に伸ばして来る寄生生物の顎をグイッと閉じる。時折垂れて来る涎をやや鬱陶しく思いながらもステージに目を向けると同時に試合開始の合図が出された。

 

「行くぜ速攻!放電100万ボルトォォ!!」

 

BZZZZZZZZZ!!!!

 

「ぐ、おああああああああああああああ⁉︎」

 

 ステージが眩い光で包まれ、凄まじい電撃が鉄哲君に襲いかかる。咄嗟に体を鉄に変化させてガードするが逆に大ダメージを食らってしまう。よし、勝ったな(確信)

 

「っしゃァ!勝った!第三部完「まだだッ!」ウェっ⁉︎」

「まだ……終わってねぇぞ……!」

 

『なんと鉄哲、ガッツで耐え切ったァ〜〜〜〜!』

 

 マジで!?あの電撃を食らって立ってるなんて……!しかも体を鉄にしていたから内側にもダメージを食らってる筈なのに?

 

「も、もう一発!!」

 

BZZZZZZZZZ!!!

 

「ぐっ、ぐぐぐぐ……!き、効かねェ……!ぜんっぜんっ…効かねェぞ……ッ!」

 

 いや、嘘だぞ。絶対ダメージ食らってるよアレ。と言うか個性使って無い方がダメージを抑えられるんじゃ無いの?……いや、詳しく無いから抑えるかどうかは分からないけどさ。

 

「分かってねぇな来正」

「え?」

 

 困惑する僕に切島君が笑みを浮かべ呟く。

 

「相手の攻撃を受け切って、耐えて、そんでもって倒す!それが男らしい戦いだろ?なら、わざわざ小細工する必要はねぇ!」

「……成る程」

 

 不思議と納得できた。要は彼等の信念(プライド)と根性が力の動力源となっているんだ。僕が頭を打ち付けて無理矢理、試合続行に持っていたのと同じだ……と思いたい。

 

「嘘だろ⁉︎どんどんこっち来て……⁉︎」

「歯ァ食いしばれやァ!!」

 

 電撃の中を突き進んでいった鉄哲君はそのまま上鳴君の顔面に文字通り鉄拳を叩き込む。衝撃により上鳴君は床に体を打ち付けられ倒れてしまった。

おいおい瞬殺だよ……。

 

『き、決まったぁ〜〜〜〜!鉄哲、電気の中をものともせずに一発の拳で決めた〜〜〜〜!』

 

「すげぇ!男らしいじゃねぇかアイツ!」

「マジかー……上鳴ドンマイ 」

 

 負けちゃったか……勝って欲しかったけど、負けちゃったなら仕方無い。せめて僕にできるのは上鳴君に向けてナイスファイトって言うぐらいしか────⁉︎

 

「なっ⁉︎」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

「まだ……負けてねぇよッ!ゼロ距離放電ッ!130万ボルトォォ!」

 

BZZZZZZZZZZZZ!!!!!

 

「がぁぁああああああああああああッ⁉︎て、てめぇ……⁉︎」

 

 僕を含めた観客の殆どが声を漏らす。なんと突如として立ち上がった上鳴君が鉄哲君に抱きついて放電をお見舞いしたのだ。

 

『か、上鳴電気復活ーーーッ!しがみ付いた状態で超至近距離の電撃だ!!』

『最もダメージを与えられる戦法。だが、あの勢いのままだといつショートを起こしてもおかしく無い』

 

「しょ、性に合わねーけど!根比べだッ!俺の電撃でお前がやられるか!逆に俺が先に倒れるか!勝負と行こうじゃねーか!」

「軟派な男だと思ってたが……見直したぜ!」

 

 これは流石に驚きを隠せなかった。まさか、上鳴君がここまでのガッツを見せるなんて思いもよらなかった。

……いや、もしかしたら心の中じゃ期待半分不安も混ざっていたのかもしれない。上鳴君じゃ負けても仕方無いって言う見下した感情が入っていた……。

 

 ごめん上鳴君。僕は君の事を誤解していた。

……そして、今こそハッキリと言える。

 

「……やっちまえ上鳴君ンンンンッ!!」

 

 僕は君が勝利するのに賭ける!!

 

「こんくら……いッ!屁でもねぇ……っ!」

「130万ボルトじゃ……なら、150万ボルトだぁぁあ!」

 

BZZZZZZZZZZZZZZZ!!!!!

 

「〜〜〜〜ッッ!き゛か゛ね゛ぇ゛え゛え゛え゛!」

「ウェ……ぐ……ご……の゛……!」

 

 徐々に上鳴君の顔のパーツが崩れていく。まずい、早く勝負を決めないと上鳴君の限界に到達する!

 

「まだそんなもんじゃねぇだろォォ!」

「無差別放電……ッ!200万ボルトォォ!!」

 

BZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ!!

 

「うぉっ⁉︎目がッ」

「眩しい……!」

「これが今上鳴が出せる最大出力か!」

「爆豪の超爆破、そして轟の大氷壁にも匹敵する程の威力が出てる!」

 

 あまりの勢いにクラスの皆は驚愕の声を上げる。それもその筈、普段チャラけた彼の個性がここまで強力とは思わないだろう。普段から口数が少ない爆豪君、轟君の二人もこれには冷汗を流している。

 

 強大な電撃の奔流がステージを覆い尽くし、どれくらいの時間は経ったか正確には計る事はできないがおそらく十秒前後。強力無比な電撃が静まり中心には鉄哲君と上鳴君の二人が立っていた。

そして、ポツリと片方の口から言葉が聞こえて来る。

 

「お……れ…の勝ち………」

 

 そう呟いたのは電撃の発生源である上鳴君だった。会場内の観客席から声援が上がった瞬間、彼はその場に崩れ落ちる。

 

 しかし、それを支えるかのように全身が煤けた鉄哲君が受け止めた。

 

「最後まで男らしかったぜお前……」

 

「上鳴君戦闘不能!鉄哲君、第二回戦進出!」

 

 

 

 

 

 

 

「どうだった、俺かっこよかったろ!」

 

 と、口元や耳の穴など全身の至るところに充電器らしきものが突き刺さった上鳴君がそう言いながら戻って来た。

うん、ごめんね上鳴君。今の君すげぇかっこ悪い。何も言わずに席に座って哀愁のオーラを漂わせていたら100点中62点くらいはカッコ良かった。ちなみにその内の減点された38は容姿について。

身体に充電器だらけが許されるのは(アイアン)(マン)なのに金とチタン合金で出来たスーツを纏った社長ぐらいだと思う。

 

「ダサい」

『一回鏡見て来い。オレなら死にたくなるほどのダサさだ』

「耳郎さんシンビオート⁉︎」

 

 二人共容赦なさ過ぎるよ⁉︎オブラートに包んでそこと無く伝えたりする努力はしようよ!ほら、上鳴君がショックで白っぽくなってるし!

 

「ほら元気だして。負けちゃったけど今世紀一番最もかっこよかったと思うよ僕は」

「…ホントに?」

「ホント」

「…ホントにかっこよかった?」

「(最後の以外)格好よかった」

「……女子にモテるかな?」

「僕に聞かないでくれる?」

 

 よし、調子が戻って来た。さっきまで真っ白だったけど徐々に色が戻って来るのが目に見えて分かる。

……実際に人間は衣服を含めて真っ白になったりするのかな。

 

 と言うか上鳴君のメンタル強いな。負けたって言うのに女子の事考えて、数秒もしない内に復活しているんだけど。ある意味で尊敬に値する鉄のハートだ……。

 

「なぁほら。俺かっこいいってよ耳郎」

「ハイハイ、かっこいいかっこいい」

 

……鉄のハートだ(大事な事なので二回言った)

もしかしたら女子への人気が彼を動かす源なのかもしれない。僕もそこを見習った方が良いのだろうか。あ、いや やっぱりやめておこう。

クイルもといスターロードもといアホみたいな女にだらしない性格に変貌しそう(震え声)

 

『第一回戦も大詰め!第七試合だ!』

 

 お、そろそろ飯田君と発目さんの試合が始まる時間だ。でも発目さんトーナメントに進出したのは良いけれど、どうやって戦うんだろう。

彼女自身、個性は戦闘向きじゃないって言ってた気がするからバリバリの機動力、格闘能力持ちの飯田君相手じゃ分が悪いけど……。

 

『ザ中堅って感じ⁉︎ヒーロー科 飯田天哉! VS、サポートアイテムでフル装備!サポート科 発目明!』

 

「あれ?発目さんごちゃついたの装備してるけど……アリなの?」

「アリだよ☆サポート科は自作のアイテムの持ち込み許可。でもヒーロー科は個性に支障をきたす場合、事前に申請しなきゃ駄目☆」

 

 へぇー、知らなかった。確か青山君ってベルトしてないとレーザーを制御出来ないんだっけ?ますますサイクロプスっぽい(小並感)

……あれ、それじゃあ対峙してるフルアーマー飯田君は!?

 

「ヒーロー科の人間は原則そういうの禁止よ。ないと支障をきたす場合は事前に申請を」

「忘れておりました!青山くんもベルトを装着していたので良いものと…!だがしかし、彼女のスポーツマンシップに心打たれたのです!彼女はサポート科でありながらここまで来た以上対等だと対等に戦いたいと俺にアイテムを渡してきたのです!」

 

 えっ、それマジ?発目さんの性格上そんな正々堂々を好む人柄じゃないと思うんですがそれは。

 

『騙されるなよアイツの言葉を。あの女はオレ達を利用するものとしか考えてない屑だからな』

「おおっと、特大のブーメランが突き刺さってるよ」

 

 それにだよ?発目さんがそんな飯田君を実験体(モルモット)扱いする訳ないじゃないか。もし本当にそうだとしたらびっくりするほどユートピアって叫んでもいいよハハハ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「発目さん場外。飯田くん2回戦進出!」

「騙したなァァァアアア!!」

 

びっくりするほどユートピアアアアアッッ‼︎(半ギレ)」

 

 結果的に発目さんは負けた。いや正確には散々、飯田君を試合と称してサポートアイテムの宣伝広告扱いにした上で満足して自ら場外となった。 こ れ は ひ ど い 。

 

「これが人間のやる事か……!」

「いや、来正。お前も大概だからな」

 

 切島君!?一体、僕のどこが大概だって言うんだ⁉︎体育祭も正々堂々と宣誓した僕にどんな落ち度が……!

 

「騎馬戦で潰し合いさせたよな」

「屋内訓練で騙し打ちしたし」

「あと、敵達を水中でミンチ(未遂)にしたり」

「急にダンス踊って騙したりしたよね」

「それと────」

 

「うん、分かった。身の程を知ったからそれ以上やめて。あと一部のヤツは違うから。シンビオートが勝手にやった事だから」

 

 くぅ、味方はどこにも居ないのか…⁉︎ いや、希望を捨ててはいけない。僕にはソウルフレンドの緑谷君と赤糸虫君(予定)に飯田君、麗日さんが───あれ?そういえば麗日さんの姿が見えないけどどこに行ったんだろう。あと緑谷君と爆豪君も居ないし。

 

「忘れたの来正ちゃん?次は爆豪ちゃんと麗日ちゃんの試合よ」

「あ、そう言えばそうだった!」

 

 びっくりするほどユートピアって叫んでる場合じゃねぇ!緑谷君に出し抜かれたけど僕も早速応援しに行く、後に続けシンビオート!

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

「お邪魔しま────って、麗日さん目怖っ⁉︎」

「あ、来正君達も来たんだ。ちょっと緊張しててね」

 

 控え室で待っていたのは先程試合が終わったばかりの飯田君に緑谷君。そして顔がピキッとなっている麗日さんだった。

……いや、緊張もするよね。なんと言っても相手は男女問わずドロップキックをブチこむ事が出来る爆豪君だ(偏見)

 

 僕だって爆豪と対面して会話するのは怖いよ?たまに声を掛けたりするけどアレは周りに生徒がいるからだけど麗日さんの場合は一対一のマンツーマン。恐怖で体が震えてしまうのは仕方の無いと思う。

 

「緑谷君、爆豪君が手加減する確率って───」

「0に限りなく近いよ」

「だよね」

 

 そりゃそうだよねー……あの爆豪君だもんね、手加減する訳が無い。入学初日のイキってた頃ならまだあり得るけど今の爆豪君はなぁ。

 

『……ヨシ』

「駄目だよシンビオート」

『まだ何もしてないんだが』

「"まだ"って事はこれから何かするつもりだったんだよね?やめて(懇願)」

 

 いや、確かに友達の為に何とかしてあげたいのは山々だけどさぁ。相手が相手だからなぁ……。

 

「……ありがとうねシンビオート君。でも大丈夫だよ」

 

……麗日さん?

 

「デク君の試合の時にさ。言ってたでしょ?…"それにさ、こう言うのは自分で何とかするべきじゃないの?"…って。だから私、自分の力で何とかしてみたい」

「麗日さん……」

「麗日君……」

 

………………。

そうか、それなら手を貸すのは無作法と言う事になっちゃうか。

 

「…麗日さん君は正しいとおm『なら下準備なら問題無いな』えっ?」

 

 シンビオート?……えっ、シンビオート?急に何を言い出すのシンビオーtむぐっ!?コイツ、口を押さえつけて……!

 

「何を言っt『シーッ、麗日。お前には特別サービスだ。心意気に免じて手を貸してやる』ッ⁉︎」

 

 するとシンビオートはシュルシュルと彼女の身体の中へ潜り込んで行き……あっ!麗日さんに乗り移りやがった!?

 

「えっ!?何?何?何が起こったの!?」

「シンビオートが麗日君の体に……⁉︎」

 

『早く行くぞ、時間が無い』

「ちょっと⁉︎え、何するん⁉︎」

 

 そのまま麗日さんはシンビオートに連れられ無理矢理控え室を出て行ってしまい、部屋に残った僕らはただ唖然とするしかなかった……。

 

「……えっーと……来正君?」

「違うからね?シンビオートが勝手に」

「いや それは分かってるが、何が始まるんだ?」

「何がって決まってる……大惨事大戦だ

 

 嫌な予感しかしねぇ

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、もう何処でもお行き」

 

 彼女の掌から小鳥が飛び立つ。しばらく宙を舞い、翼をはためかせていると麗日の肩を止まり木に降り立つように止まった。

 

「もうっ、こんな所にいたら危ないよ。ははっ、くすぐったいってば!」

 

 小鳥と戯れる彼女の笑顔はまさしく心の底から溢れた光が如く。そんな彼女の背後からグッと背丈の低い子供が駆け寄って来る。

 

「行かないでお茶子お姉ちゃん……!」

「……大丈夫だよ たかし君。お姉ちゃん絶対に負けないから。それにお姉ちゃんが負けちゃったらお父ちゃんの会社潰れちゃうもん。それに私には皆が居る」

 

 今まで自分と関わって来た人達の事を思い浮かべているのだろう。麗日さんのその表情は眼前に爆豪君が居るにも関わらず不思議と優しい雰囲気だった。

 

……うん 成る程、大体話が読めて来たぞ。

何で鳥とか子供とかがこの場に居るかは敢えてツッコミを入れないと言う事にするとして…麗日さんめ、情に訴えてきやがったッ……!!

 

 並の人間なら確実に罪悪感で降参するような身の上話を爆豪君に語っていやがる……!!もし僕が爆豪の立ち位置なら速攻で先生達に辞退を告げに行くレベルだぞ!

シンビオートめ……呆れるほど効果的な策を思い付きやがったな!

 

「お世話になったまさお先生、地元の友達のえっちゃん まりも よっしー。魚屋のまささん八百屋の大将も町の皆で応援してくれるって言ってた。公民館にパイプ椅子並べて横断幕まで作っちゃってさ……今も皆で この中継見てるんだ。絶対に負けられないよ!!」

 

 そう自分に言い聞かせ彼女は勇気を振り絞った(ような気がする)

そしてその勢いを維持したまま麗日さんは爆豪君に向かって口を開く。

 

「さて……試合を楽しみにしてるよ爆豪君」

「分かった。俺も手加減しねぇ」

話聞いてた!?

 

 が……駄目っ……!麗日の策っ……!裏目に出るっ……!うん、でも何でだろうか。こうなる事が予測出来ていた気がする。と言うか謎の力が働いて予測可能回避不可能って感じだ。

※尚、今までの麗日の語りはフィクションです。

 

「つーか、誰の差し金だ。丸顔女、オメーがこんな事を考えられるとは思えねぇ……まさかとは思うがデクじゃねぇだろうなぁ?」

 

「………いや、違うんですシンビオート君が勝手に」

「そんな事俺が知るか!」

 

 結局、シンビオートの入れ知恵は無意味に終わった。と言うか麗日さん、その台詞 僕の十八番(おはこ)ォォ!!

 

 





ちなみに爆豪を本気にさせたのはシンビオートの目論見通りだった模様。

『少しでも手加減されて負けるのは麗日にとって屈辱な行為だからな』
「そう言うとこやぞシンビオート」

善意ある悪意って性悪だと思うの。



【お詫び】
前回のキャラ紹介をまともに出来ていませんでした。申し訳ありません。

そんな み な さ ま の た め に ぃ 〜
2話分の紹介をしていきます。ほら紹介あくしろよ。


〜〜キャラクター紹介〜〜


『芦戸三奈』
頭部の角は触覚としての役割なのか、酸を放出する器官なのか。それとも性感帯なのか気になるキャラクター。
試合中に編み出した新技アシッドスプラッシュはオリジナルである。例えそれがパクリだとしてもあくまでリスペクトなので悪しからず。

『赤糸虫知朱』
爆豪以上のセンスを持つ隠れた才能マン。主人公にとって第二のソウルメイト(になる予定)
もしもクモ糸の強度が少しでも低ければ芦戸のあられもない姿を見る事ができただろうに……おのれ赤糸虫!

『瀬呂範太』
醤油顔で別次元の御堂筋君。戦闘スタイルは工夫次第で強くなり多人数と組めば戦術の幅が広がると思うの。
劇場版では麗日と組みトンデモ必殺技を仕掛けていた。

……気のせいかそこらのヒーローより強いと思うんですがそれは。

『切島鋭児郎』
主人公が提案した『鉄拳制裁タイム』を気に入ったのかそれを高らかに叫ぶ。しかし最終的に鉄拳制裁もしていないので『ムッシュムラムラ』にその内変わる可能性が……。

『鉄哲徹鐵』
名前の読み方が特殊過ぎるB組キャラクター。上記の切島と個性や性格がダダ被りである。戦った上鳴に対して試合前は軟派で自分とは相容れない相手だと認識していたが、試合中に見せたガッツを認め奇妙な友情が芽生える事となった……。すげぇ、まるで少年漫画だ。

『上鳴電気』
作者の贔屓により (たぶん)原作以上の見せ場が作られたキャラ。
瞬間火力はクラス1、しかしオーバーヒートする。
リスクのある強力な技ってロマンあるよね……。

『麗日お茶子』
悪魔と相乗りした結果が本文の終盤である。勝ち進む為には色々な手を使わないといけないから仕方ないね。
結果的にシンビオートの策は己の首を締める事となった。


ちなみに麗日の語りは僕のヒーローアカデミアすまっしゅ!の作者根田啓史さんがTwitterで公開したネタです。しかし現在削除されてしまい単行本にも載ってない幻のネタとなっています。

他にも色々ありますが印象に残っていたのがこれだったのでやってみようと思いました。



〜〜用語紹介〜〜


『手がTレックス』
元ネタはMCUデッドプールより。
コロッサスを殴ったデッドプールの手首がポッキリ折れてしまったシーン。治るとは言え滅茶苦茶痛いだろうに……。

『花京院の魂を賭ける』
元ネタはジョジョの奇妙な冒険第三部。
ダービー戦にて承太郎がその場に居なかった花京院の魂を賭けたシーン。ギャグ系のMADでたまに使われる事がある。
何度も魂を賭けられる花京院は泣いていい。

「うわぁぁああああーーーーーーッッ!!」
「花京院が暴れ出した!!」




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22話 違う!シンビオートが勝手に第二試合を!(前)


 MHWIで狩猟笛をグルグルする事に夢中で投稿遅れました。申し訳ありません。
だけど狩猟笛はいいぞジョージィ……。

諸事情により麗日VS爆豪はカット。
第八試合は犠牲となったの(ry



 

 第八試合が終わりを迎え、戦いを勝ち抜いた八名が第二回戦へ進んだ。ちなみに先程の試合で勝ち進んだのは爆豪君だった。麗日さんも最後まで粘ったけど個性の容量超過(キャパシティオーバー)によりリタイアする事になってしまった。

 

「……気が重い」

 

 ウチのシンビオートが爆豪君を挑発したから麗日さんが負けてしまったのではないか?と言う罪悪感とプレッシャーが僕にのしかかって来る。

その原因であるシンビオートは俺は悪くねぇの一点張り。クソォ、レプリカ親善大使でも少しは反応見せると言うのにコイツは……!

 

『戻って来たぞ』

「え?……あ、麗日さん」

 

「あ、来正君。隣座るね」

 

「ううん、気にしてないよ? ほら大丈夫!」

 

 涙の跡がガッツリ残ってるんだよなぁ!せめて悪口の一つや二つ言って⁉︎僕の中よ良心がストレス的な精神的ダメージでマッハでうごごごごご……!

 

『慣れない嘘をつくもんじゃないぞ……まぁ、お前なら負けて当たり前だったがな』

 

 シンビオートお前ーーーッ!お前お前お前お前お前ーーーーッ!言っていい事と悪い事があるだろお前ーーーッ!

今の麗日さんはナーバスだから!悪いタイミングで傷口に塩と唐辛子を混ぜ合わせてワサビをトッピングしたものを塗り付けるなお前ェ!!

 

「………」

『けど、たった一回負けただけで諦めるのか? まだ、這い上がるチャンスはあるだろ?』

 

……あ、あれ?シンビオート?

 

『お前がやるべき事はこれからずっと先、何もない地面を眺めてるだけか?それとも、前を向いてリベンジの為に鍛える事か?……どっちだ?』

「……私は……!」

 

 

 

「次は勝ちたい。爆豪君に勝ちたい!」

『良く言った。それでこそ麗日だ。泣いてるお前を見ているとムシャクシャして首から上を切り取る所だったからな』

「あははは、もうシンビオート君は冗談が上手いなぁ」

『どういたしまして』

 

 凄い……!何が凄いって麗日さんがシンビオートを好意で冗談を言ってると勘違いしている事だ……!

え?交友関係でシンビオートの親友はほぼ皆無だからなぁ。だってあのシンビオートだよ?絶対に好意で励ましてるなんて事あり得ないって!

 

『さて、そろそろ愛しのデクの試合が始まるぞ』

「いとし?」

『……馬に噛まれて死ね』

「シンビオート⁉︎」

 

 たまによく分からない事を言い出す黒塗り寄生生物であった。いや本当、急に何言ってんだコイツ。

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 唐突だが緑谷出久は困惑していた。

 

「エンデヴァ────ッ⁉︎」

 

「君の活躍見せてもらった。素晴らしい個性だね。指を弾くだけであれ程の風圧。パワーだけで見ればオールマイトに匹敵する」

 

 第二回戦 第一試合、轟焦凍と戦う為に通路を歩いていると突如としてオールマイトに次ぐNo.2の実力を持つフレイムヒーロー【エンデヴァー】が姿を現したのだ。

しかし、緑谷が困惑している原因はそれ以外にもある。

 

「っ! な、何を…何を言いたいんですか。僕はもう行かないと」

 

 オールマイトとの約束。継承した個性(ワン・フォー・オール)は一部の者にしか知られていない事実。

それに加えてエンデヴァーは向上心が極めて強く、オールマイトの強さの秘密を知る為に近づいて来たのではないか?

 

そう考えた緑谷はこの場から離れようとする……が、脚がピタリと止まってしまう。

 

「そうだな、それは悪かった……む、なんだ。こんな時に」

 

 ヒーローオタクである緑谷にとって、古めの折りたたみ式携帯電話を扱うNo.2ヒーローの姿はレアな光景だろう。しかし、その姿に見惚れ足を止めたのでは無くもっと別の場所にナードである彼は注目し あまりの事態に足を止めてしまったのだ。

 

(ま、待ち受けェーーーーッ⁉︎)

 

 待ち受け画面が息子である轟焦凍(入浴中)に設定されてあるのだ。現実は時として残酷だ。憧れを抱いていたヒーローが実は変態だったりする事だってあり得なくは無い。

アンチこそ多いものの、オールマイトの次に強いと言われるNo.2ヒーローが親バカ(ただし歪んでいる) とは緑谷自身、想像する事が出来ただろうか?

 

「…話を戻そう。ウチの焦凍にはオールマイトを超える義務がある。君との試合はテストベッドとしてとても有益なものとなる」

 

 くれぐれもみっともない試合はしないでくれたまえ。そう告げられた緑谷を後にするエンデヴァー。

……が、先程から黙っていた緑谷が唐突に口を開く。

 

「僕はオールマイトじゃありません」

「そんなものは当たり…「当たり前のことですよね」

 

「轟くんもあなたじゃない」

 

 そう告げると再び歩き出し、その後ろ姿をエンデヴァーは黙って眺める………が、しばらくして、緑谷は踵を返して戻って来る。

何事かと炎と眉を顰めるエンデヴァーにヒーローの卵である彼は口を開く。

 

「あと、サイン貰っていいですか……!!」

 

 その後、根負けしたフレイムヒーローは動揺しながらも色紙に筆を走らせた。緑谷出久の(オタクパワーによる)威圧感

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 なんか場面が飛んだ気がするけど、それはどうでも良い。いよいよ緑谷君と轟君の試合が始まる時間だ。体育祭直前に宣戦布告したり重たい過去を暴露したりと一悶着どころか二悶着、シンビオートの所業を考えるとそれ以上に数になるけど……うん、これ以上ネガティブな方向に話を持っていくのはやめておこう。

死人が出るぞ。主に精神的な方面で僕が(吐血)

 

『さぁ、始まった第二回戦第一試合!今回の体育祭両者トップクラスの成績!緑谷VS轟‼︎』

 

 そんなくだらない事をしている内に二人がステージ上にて睨み合いが続いている。お互いに一言も発さず、ただ策を講じている。

そんないつもと違いピリピリとした空気を壊すように飯田君が口を開く。

 

「来正君、彼等の最初の一手だが……」

「うん、多分だけど開幕から飛ばしていくと思う。だから……」

 

『まさしく両雄並び立ち…今!スタァーートォッ!』

 

「総員、警戒態勢!()()()()()ぞッッ!」

 

 

────ゴォッッ!

 

 

 瞬間、衝撃波と氷河が衝突し弾ける。

一歩も譲らない高出力の個性が拮抗し、その圧と勢いが十m以上も離れているこちら(観客席)に伝わって来る程だ。

と言うか、危なっ⁉︎ 氷飛んで来たんだけど!下手したら怪我人出るんじゃないのこれ⁉︎

 

「おいおい来正、気を付けろよ……って、だぁぁあッ⁉︎痛ッぁああああ!?

『お前が気を付けろよ』

 

 あ、たった今一人怪我人が出た。切島君の目に氷の破片がパーンと命中したけど大丈夫?正直洒落にならないと思うからシンビオートで治しておくけど……え、寸前の所で硬化して防いだから大丈夫?

それならいいけど……。

 

「それにしても、やっぱり自損前提で行くか…、いくら轟君が強いからと言っても長期戦になったら不利だぞ……?」

「そうだよね、このままだとデク君の指が……!」

 

 麗日さんの発言に対し僕は頷く。……いや、緑谷君の性格を考慮すると果たして"指だけで"済むのか?ってところだけど。あぁ、クソ。こんな事なら前々からサクリファイス戦法を取らせないように言っておくべきだった。

……いや、緑谷君に言い聞かせても多分言いつけ破るだろうなぁ(諦め)

 

『いっその事、四肢切り落とせば解決するんじゃないのか』

「おいバカやめろ」

「シンビオート君、それ解決になっとらんよ?」

 

 直後、再び氷片が混じる突風が会場内に吹き荒れる。うん、やばい。

あの二人加減無しにやりまくってる所為か、いつ僕に皺寄せが来るか分からない。戦いが見えないけどここは身を屈めていた方が得策なのでは……?

 

「来正君、見て!デク君が!」

「いだだだ‼︎無理矢理首を引っ張らないでくれる?」

 

 僕の頭を引っこ抜く勢いで麗日さんがステージに視線を固定させる。そこには足元に氷柱を作り、緑谷君に向かって飛び込む轟君の姿があった。

戦法を変えて来た事に驚いた緑谷君は咄嗟に後方へ飛び退くと、先程まで居た場所に氷を纏った拳がバキンと音を立てながら叩きつけられた。

 

「当たりきらなかったか…」

「この程度……ッ!?」

 

 寸前の所を避けた緑谷君。しかし、さっきの攻撃を掠ってしまったのだろうか。左腕が凍ってしまっている。

……まずい、残りの指を潰しに行った!

 

「右手の指は全部使い果たし左手は凍って使えねぇ。もうそれじゃ戦えねぇだろ」

 

 そう轟君は呟きながら大きな白い息が吐かれる。正直、これ以上緑谷君は戦えないと思う。右手の指は使い果たし、左腕は氷付き辛そうに見える。身体が凍り付くって物凄く寒そう(小並感) と言うか現在進行形で会場内が寒いんだけど(半ギレ)

 

「つーか寒ッ、風邪引くわこんなの‼︎」

「同感。……まさか風邪を引かせて不戦勝を狙う轟君の高度な作戦?」

「マジかよ轟サイテーだな。……うう、ほらこれ羽織れよ」

 

 すると峰田君が自身の体育着を身震いさせる耳郎さんに渡して……うん?峰田君が女性に気を遣っただと⁉︎

 

「小っさ! 羽織れるかこんなもん!」

「んだとぉ⁉︎人の親切を!」

「とりあえず峰田君、保健室に行こうか。寒さで頭をやられた可能性が……」

「お前も大概失礼だな⁉︎」

 

 いや、だって峰田君だし…。と言うか峰田君の体のサイズってどうなってるの?体育着がマフラーみたいに首に巻くくらいしか出来て無いけど………。

 

「…はい、これ使って。峰田君のよりは布地は広いだろうし」

「あ、ありがとう…」

 

 寒っ、あー寒いなぁ!でも緑谷君はこれ以上にとんでもない痛み抱えているんだよなぁ。……色々な意味で頭大丈夫なの?

 

 そう考えながら視線をステージに戻すと、轟君の攻撃頻度は更に増していた。

緑谷君は攻撃に移るどころか攻撃すら出来ない状態。地面から生える氷の槍や壁を躱すのがやっとだ。

 

「まずい…このままでは」

「で、でもこのまま逃げ続けていればチャンスが…!」

 

麗日さんがそう言うが飯田君が「いや」と否定の言葉を口にする。

 

「轟君は着実に行動範囲を狭めていくように氷壁を設置しているんだ……確実に緑谷君を倒す為に」

「そんな!」

 

 麗日さんがショックを受けたように声を上げる。判断、応用、機動すべてのスペックが高い轟君を相手だから厳しいと分かっていたけどまさかここまでとは……。そんな僕に常闇君が横から声をかけて来る。

 

「お前ならどうする」

「この状況を覆すとなると、アニメや漫画みたく覚醒とか遂げない限り難しいと思う」

「次の一手を潰し、己の有利な場面に相手を誘導していき、王手を取りに行く……まるで将棋だな」

 

『……まさか、それを言いたかっただけじゃないのか?』

「……緑谷に残された切り札。それが鍵となるかもしれん」

『無視か?』

 

 シンビオートから目を逸らす常闇君ェ……それにしても切り札か、緑谷君が持ってる切り札と言えば……。

 

 

「ッあああああああ!!」

 

 突如として声を上げた緑谷君は左腕を地面に叩きつけると血を滲ませながらも纏わり付いた氷にヒビを入れる。

 

……あー、そうだよね!君ってば自傷覚悟の行動が切り札みたいなもんだよね。と言うか常にそんな事してるから切り札でも何でもないけどさ!

 

「ッ──SMASH!!」

 

 すると 少しだけ自由になった左手の指を使い、衝撃派を放つ。

しかしその風の弾丸は今までと違い、凍傷によりパワーは格段に落ちたものの腕に纏わり付いていた氷を巻き添えに放ったのだ。

 

「効くかよ!」

 

 轟君はそれを氷壁で難無く防ぐ。やっぱりダメか……いや、待てこれは⁉︎ いつの間に緑谷君が轟君の後方に!

 

「上手い!壁を作らせて視界を遮った!」

『まぁオレ達が鍛えてやったんだ。これくらいは出来て当然だ』

 

 そう言つつも嬉しい気持ちがガンガン伝わって来てる事に対し僕は何も言わない事にした。そんな事をしてる間に緑谷君は轟君に向かって脚を鞭のように振り払った。

 

「SMASH!!」

 

そのまま轟君の後頭部に蹴りが炸裂する────

 

 

ガキン‼︎

 

 

───が、見えない何かに遮られた。

 

「なっ⁉︎」

「そう来ると思った」

 

 これは……八百万さんの時と同じだ。見えない何かに防がれてる!

 

「俺は学んだ。中にはやられたと見せかけて不意打ちを喰らわせるような姑息な手段を平気で使う奴がいるってな」

 

『マジかよ最低だな』

「君の事だよシンビオート」

 

「いや、来正君の事も言ってるぞ」

えっ

 

「それに対応する為に編み出した。俺を守る壁を」

 

 すると日光に照らされたのか彼の周りに透明な"何か"が光を反射し、姿を現した。氷の粒……いや、結晶か⁉︎幾つもの氷の結晶体が彼を守っているのか⁉︎

 

「アレが攻撃を防いでいたんだ……でもどうして今まで見えなかったの?」

「氷は純度が高ければ、その分透明度も高くなる。今まで見えなかったのはその為だろう」

 

 流石は飯田君、博識だ。そう感心していると上鳴君が横から口を挟んで来た。

 

「いやでもよ轟の氷結って、触れて凍らすんだろ?何もないところから氷っておかしくねぇか?」

「それは違うぞ、奴は常に"空気中に漂う水分"に触れている。それならば氷結、凝縮させ純度の高い結晶を作り出すなら造作も無い事」

 

上鳴君の言葉にそう答える常闇君だが「しかし…」と付け加える。

 

「あそこまでの数を作り出した上に全てを操作をする芸当はそう易々と出来るものではない、一体どれ程の鍛錬を重ねれば出来ると言うんだ…⁉︎」

 

 確かにその通りだよ、僕だってシンビオートの一部を切り離したとしてもそっちに集中しないと操作はできない。ましてや轟君みたいに戦闘中に複数も今の僕等じゃ無理だ。

あのファンネル…いやジェントリーウィープス(もど)きの結晶、一つ一つの高度は凄まじい。それが幾つもあると来た。

 

……友達として応援したい気持ちはあるけどごめん緑谷君、正直に言って奇跡でも起きない限りコレは"詰み"だ。

 

 

「そんな……!」

「悪いな緑谷。けど感謝はしている、おかげで奴の目が曇った」

 

 そのまま轟君は一歩踏み出すとトドメの氷結を発動した。

 

……この勝負は轟君のものになるだろう。僕を含めた誰もがそう確信した。

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 緑谷に向かって氷が迫る中、彼の脳回路が凄まじい勢いで働く。

走馬燈に近いものだろうか。彼の脳裏には彼自身の青春の日々が過ぎった。

 

 

「えっ?電子レンジに卵を入れてギリギリ爆発しないレベルをイメージで個性を使用する?」

 

 これはごく最近の出来事だ。

 

 

「いや、いやいや気にしないで!ただ単にそうイメージしているだけであって………」

「うーん、緑谷君。よく分からないけどさ、それならW(ワット)数を下げれば卵って爆発しないよ?」

 

「えっ、そうなの?」

「そうだよ(便乗) そうするとキチンと全体的に熱が行き渡って茹で卵が出来上がるんだ」

「へぇ〜」

 

 

 

 何故 今になって この思い出 ?

 

 緑谷は困惑した。他愛も無い雑談的な思い出が何故このタイミングで?いや確かに彼は数少ないヒーローオタク仲間だが、そこはせめてオールマイトとの特訓の日々では?

そんな彼だったが、先程の回想に引っかかるものがあった。

 

(出力を下げて全体に熱が行き渡る……⁉︎)

 

 何かの因果か、それとも何らかの意思が関わっているのかは定かでは無い。ただ確信も無い友人のその言葉に緑谷は意味を見出した。

 

 そんな彼は失敗する可能性を恐れず、頭の中に舞い降りたヒントを元にそれを形にする。

 

(形にしろ!どうせこのままだと確実に負ける、だから未完成でもいい!この局面を覆す力を!)

 

 

 直後、彼の身体に翡翠色の閃光が迸り────

 

 

 

ドガァァアア!!

 

 

 迫る大氷河が彼を飲み込んだ。今、自身が出せる全力の氷結をぶつけた轟は冷える体をさすりながらも緑谷を包み込んだ氷壁を捉え続ける。

 

(今度こそやったんだろうな)

 

 そう自身に言い聞かせる轟。確実な勝利を我がものとする為に自分はこんな所に居る訳には行かない。この戦いも通過点にすぎない。

あの男を否定する為にこの程度で苦戦している場合ではないのだ。

 

……それなのに何故、自分は焦っている?

 

 轟焦凍は氷壁に映る自身の表情を覗き、ハッと我に返る。

 

(クソ、こんなんじゃ駄目だ。こんなのじゃアイツを見返すどころか復讐する事すら……!)

 

─── 君は間違ってないと思う

 

 チラリとアイツ(来正)の言葉が脳裏を過ぎる。そもそもの話、アイツの所為で調子を狂わされる。

八百万や緑谷の戦法の一部は来正を参考にし、身体に住み着いている寄生生物は人の逆鱗に喜んで触れると来た。

 

 それに加えて轟は来正恭成の態度が気に食わなかった。宣戦布告をする自分に応援している奴のヘラヘラとした顔がチラつく度に癪に触る。

八つ当たりなのは自分自身で理解している。

……が それでも尚、

 

(アイツに…俺の気持ちが分かってたまるか……ッ!)

 

彼の中の焔が来正恭成と言う存在により燻られる。

 

───焦凍は何になりたい?

 

 

……本当にそうなのだろうか?

 

(なんだ今の?)

 

 意識が逸れたその一瞬、目の前へ向けていた注意が別の場所へ移ってしまう刹那。

()()()()()()()()()()

 

「ッ⁉︎────がっ‼︎」

 

 ステージの氷河の僅かな隙間から駆け出した"何か"に反応が轟は遅れてしまった。痛みに耐えつつも目の前に居るソレに轟は睨み付ける。

 

「緑谷……!」

 

「どこを見ている! まだ、終わってないぞ!」

 

 奇跡を起こした緑谷が新たな力を得て今、第二ラウンドが始まろうとしていた。

 





OFA「せや、今代の継承者に少しだけ力貸したろ」
歴代継承者「「「「「「「「賛成」」」」」」」」

その結果少し早く覚醒したよ、やったね緑谷君。




〜〜キャラクター紹介〜〜


『麗日お茶子』
 原作通り爆豪に負けてしまうが、シンビオートの激励(?)によって改めて爆豪へのリベンジを誓う。

『緑谷出久』
 第二回戦にて原作より少し早めにフルカウルを取得。主人公達との特訓や歴代の継承者達によって不思議な事が起こった結果がコレだよ。
No.2ヒーローの知りたくない事実(待ち受け画面)見てしまいショックを受けるがサインは貰った。

『轟焦凍』
 最近、主人公の事を考えると苛々するので複数の結晶体による障壁を開発。それにより"ホワイトアルバム・ジェントリーウィープス"、"ビット"や"ファンネル"。最近ではゼロワンの"シャインシステム"のように外部からの攻撃を防ぐ事が可能。
しかし主人公と同時に母親の姿が脳裏を過ぎる事に違和感を抱き始めた。

『エンデヴァー』
オールマイトに次ぐプロヒーロー。本人の絶え間ない努力によってオールマイトを目指すが挫折。その結果捻れ捻くれ歪んだ親バカに変貌を遂げる。



〜〜用語紹介〜〜

『ジェントリー・ウィープス』
正式名称はホワイトアルバムジェントリー・ウィープス。
ジョジョの奇妙な冒険第5部より、暗殺チームの一人ギアッチョが使用する。空中の水分を氷にする事によってミスタの弾丸を反射、撃ち返した。

しかし轟君はどちらかと言うと攻撃を弾くのではなく、防いでいるので外見は似ているが用途は全くの別物である。




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23話 違う!シンビオートが勝手に第二回戦を! (後)

 
 スクライドとシンフォギアとプロメア見たら精神的に炎上しそうになったので投稿します。
スクライドはいいぞジョージィ…
シンフォギアをもっとすこれジョージィ…
プロメアをレンタルして心を燃やせジョージィ…



 

『なんと緑谷、動きが変化⁉︎ どう言う事だよオイ!でも盛り上がって来たなぁ!』

 

「震えてるよ轟くん。個性だって身体機能のひとつだ 君自身冷気に耐えられる限度があるんだろう?それって左側の熱を使えば解決出来るもんなんじゃないのか?」

「………」

 

「みんな本気でやってる。勝って目標に近付くために…1番になるために……僕に勝ちたいなら、全力でかかって来い!」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 やぁ皆。ソウルメイツが本当に覚醒して驚きを隠せない主人公だよ。……いや、と言うか本当に覚醒出来たんだね。この土壇場で本当に形勢を覆せるようなパワーアップしたの凄いよ本当に。

 

『デクのヤツめ……サイヤ人だったか』

「絶対に違う」

 

 まさか最終的に髪毛が逆立ったりとかしないでしょ、相澤先生じゃあるまいし。

と、そんな事を話している間に轟君が走り出した。

 

「全力?クソ親父に金でも握らされたか?イラつくな!」

「……まぁ、サインは貰った!」

「⁉︎」

 

 おい、緑谷君おい!いつの間にエンデヴァーからサインを……⁉︎あの人ってファンに塩対応だから握手してもらう事自体が困難だって言うのに……! 実に情けない(羨ましい)!後でサイン腐るほど眺めるからな!

 

 いや、今はそんな事はどうでもいい。確かに緑谷君はパワーアップしたかもしれないけど高純度の結晶壁をどうにかして崩さないと轟君に勝つのは難しいぞ。

 

「───5% フルカウル!」

「ッ⁉︎」

 

 緑谷君が一瞬だけ光ったと思ったらいつの間にか、轟君の背後に回り裏拳を繰り出す。

速い、さっきと比べてまるで別人……!

 

『単にアッチが遅いだけなんじゃないか』

「いや、遅いってそんな……?」

 

 シンビオートにそう言われ僕はようやく気づく。ここからでは遠くて最初は分からなかったが、轟君の身体が震えている。

これは轟君自身の個性によって体温が著しく低下している事によるものだ。

 

「……つまり、轟君の弱点は個性による副作用か!」

『ビンゴ。やっと脳天気なお前でも飲み込めたようだな』

 

 誰が脳天気だ。彼の個性は強力だけどその分 身体機能に影響を及ぼすことは分かった。それに緑谷君が言った通り炎を使えば体温調節できるけど……

 

「使えるかは本人次第だよなぁ……」

 

 自身のトラウマに向き合うって、そう簡単にできるものじゃない。人の精神は繊細でナイーブだ。下手をすれば轟君は更に拗れるかもしれない………。

 

「だから、絶対に揶揄うのは駄目だよシンビオート」

『あぁ、分かった(満面の笑み)』

 

 あ、これ絶対分かってないヤツだ。

僕知ってるよ。これ後で轟君に指差して笑うパターンだよ知ってる(経験談)

 

 人の不幸を嘲笑うのが好きなシンビオートを他所にステージ上では先程まで追い詰められていた緑谷君が有利となっていた。

先程まで轟君が攻撃として作り出した氷壁を足場としてステージを縦横無尽に飛び回り翻弄する。

 

「ちょこまかと……ッ!」

「そこだッ!」

 

 轟君が構え、再び結晶群の障壁を作り出す瞬間に緑谷君は彼のすぐ上を飛び越える。

背後に回った相手を迎撃するために右手(氷結)を向けようとするが それを見越していたのか、緑谷君は彼の右手を蹴りによって弾き

 

「SMASH‼︎」

 

 至近距離からアッパーカットを打ち込んだ。

 

 

WOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!

 

 

「緑谷君の攻撃が効いたぞ!」

「どうなってるかよく分からないけど凄いな!」

 

 番狂わせの試合に会場内のクラスを含めた観客達が一層の盛り上がりを見せる。勿論その観客の中に僕も含まれている訳なので声を上げて応援を────

 

ぎががあ゛ihbf殺wqがデぐぁぎぎノぎぎgiギギギギ

 

 

───する勇気が無いので僕は黙っている事にした。

 

と言うか何あれ超怖いんだけど!?

爆豪君、人体から発しちゃ駄目な声っていうか音を出してるんだけど どうなってるの⁉︎なに?これから黒い翼でも出すつもり⁉︎緑谷君か!狙いは緑谷君なのか⁉︎

 

「おいおい どうしたんだよ爆豪オメェ。目尻すげぇぞ」

「顔のパーツから はみ出てるぞ?大丈夫かそれ」

 

BOOM‼︎×2

 

 上鳴君と瀬呂君が逝ったーーーーッ⁉︎

なんで地雷をタップダンスで踏みに行くの?オイオイオイ、アイツ等死んだわ(合掌)

 

デクの野郎がどうして あんなに動けるんだよお゛おッッ

『そいつは「ほらチョコ食べなシンビオート」mgmg…で、なんだっけか』

 

 ははは、いつもと同じと思ったら大間違いだぞシンビオートォ!

ここで緑谷君と特訓したとカミングアウトすれば確実に怒りの矛先がコチラに向く!

ここは知らぬ存ぜぬで通し(ほとぼ)りが冷めるまで黙っているのが得策だ。

 

「そういえば来正君は緑谷君と特訓してた筈だが……」

 

 メガネ(飯田君)貴様ァーーーーッ!!

 

「どういう事だテメェ……ッ!」

『なんだ、仲間外れにされて悲しかったか?』

「あ゛ぁ゛? 仲良しごっこして楽しんでるテメェ等と馴れ合うつもりはねぇよカスが!」

 

 

 

「まーた始まったよ」

「しゃーね、なぁ来正 いつものように仲介よろしく頼んだ……あれ、来正?」

 

 耳郎さんと切島君の言葉が聞こえた気がしたけど関係無い。何故なら僕はシンビオートと爆豪君の争いを止める事は不可能だと悟ったからだ。それにこう言う場合は止めるんじゃない。

 

激流に逆らえば飲み込まれる むしろ激流に身をまかせ同化する 激流を制するは静水。其れ即ち────

 

「(思考放棄(バカのフリ)こそ真理なり!)くうき おいしい

 

「「!?」」

 

『デクに嫉妬するなんて見苦しい真似を晒して楽しいか?』

「はっ、嫉妬だァ? デクのやってる事なんか妬ましく思った事なんざ一度もねーわボケ!」

『今、嫉妬してるんだろ自覚すら出来ないスカスカの脳してるのかお前は』

「んだとスカスカなのはテメェの方だろ!俺は隅々まで詰まってるわ!」

『それじゃ、その証拠を見せてもらえるかい?考えられる脳味噌が詰まってる話ならなァ!』

「たりめーだわ! 例えばさっきのデクの戦法は至極単純!半分野郎の障壁(バリア)を打ち破ったんじゃねぇ!あくまで障壁の内側から攻撃仕掛けた!あんなもん俺でも簡単に出来る!だから嫉妬なんざみっともねぇ真似はしねぇ‼︎ QED証明!そんでもって論破ァ!」

 

 

 なんか隣がヒートアップしてるけど気にしない。激流に身を任せればばばばばばばばば⁉︎

 

「正気に戻れ来正ーーーッ!」

「耳郎、アレだ!多分寒さで頭がどうかしてるんだ!」

「ウチに上着貸したばかりに……!」

「ヤオモモ!懐炉(かいろ)!懐炉沢山出して!」

 

 成る程、馬鹿のフリって最終的にこうなるのかー。うん!一つ賢くなった気がする(白目)

と言うか、身体中に大量の懐炉付けるのやめてくれない?物凄く熱くなって来たんだけど。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「SMASH!!」

 

KABOOOOM!!

 

 気が付けば緑谷君の凄まじいラッシュ+強力な衝撃波により轟君は追い込まれて行く。試合開始直後と比べて氷結の酷使により機動力が落ちている轟君もなんとか迎撃しようとするが、彼のスピードを目で追うのがやっとのようだ。

 

 と言うかまだそれ(デコピン(強))使うの? 指が骨折どころか壊死するレベルにまで酷い事になってるしさぁ……!

 

「ぐっ、なんでそこまで……!」

「期待に応えたいんだ……!」

 

「憧れた人に、大切な友達に、名前に意味を込めてくれた人に、戦いを教えてくれた人に……僕をヒーローとして育ててくれた皆の期待に応えたいんだッ!」

 

 一段と輝きを放つと、緑谷君の蹴りが轟君の腹部を捉える。

 

「そんな皆に笑って応えられるような…カッコいいヒーローになりたいんだ!!」

 

 ボロボロの拳で追撃を行い轟君が後方へ吹き飛ばされる。よろめきながら彼は立ち上がり、対して緑谷君は腕のダメージが厳しいのか立っているのも辛そうだ。

……互いに満身創痍 決着は刻々と迫って来ている。

 

 

「親父の…力を「君の!力じゃないか!!」ッ!!」

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

──いいのよお前は。血に囚われることなんかないなりたい自分になっていいんだよ。

 

 

 脳裏に過ぎる思い出。懐かしく、心温まるソレが凍て付いた心を溶かしていく。

 

(……あぁ、そう言う事かよ)

 

──それが君が選び抜いた未来なら僕は応援するよ。

 

 

 クラスメイトの声が頭の中に響く。耳に入る度に苛つき、怒りの炎を滾らせたその声色は聴き覚えがあった。

 

(……そうか。アイツ、母さんに似ていたんだ)

 

 

 刹那、彼の左側から凄まじい熱量の焔が上がった。天にまで届くその炎は心に纏わり付いた氷から解放され、会場内へ一気に熱を伝えて広がって行く。

 

「勝ちてえくせに ちくしょう…敵に塩を送るなんてどっちがフザけてるって話だ……俺だってヒーローに……!」

 

 過去の柵から解き放たれた彼は不敵な笑みを浮かべる。

最早、此処に因縁在らず。語るべき言葉在らず。話すべき相手此処に居らず。男 ただ前を向き ただ上を目指す。

 

「どうなっても知らねぇぞ!!」

「真っ向からッ!!」

 

 緑の閃光が駆け、陽の光を反射する結晶が互いに迫る。緑谷は何層にも重ねられた氷を打ち砕き、氷と焔が舞う中心部に向かって右腕に100%の力を込める。

それに対抗するように轟は左側にありったけの熱量を込め、構える。

 

 

「緑谷…ありがとな……」

 

 

直後、ステージの中心部にて爆発が起きた。

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 えぇ……(困惑) 待って?どう言う事?

……えぇ……(二回目) 

 おかしいよね? なんであの二人だけ別次元のバトル展開してるの?

かめは○波とギャリ○ク砲、月○天衝をプラスしてアバンスト○ッシュをごった煮させた物に尾獣玉を潜影蛇手した光景が目の前に広がってるんだけど。全部フルカウンターで跳ね返さなきゃ(使命感)

 

 いや、そんな事よりも どっちだ?どっちが勝ったんだ……⁉︎

そう考えつつ目を凝らすと、辛うじて形を保っているステージを覆う爆風が晴れて行き人影が浮かび上がって来る。

 

 

「み、緑谷君場外! 轟君三回戦進出!」

 

 

WOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!

 

 

 

 そこには己の炎によって半焼した上着を羽織る轟君が立って居た。観客達の熱量溢れる声が響く中、場外で力無く倒れている緑谷君の姿が視界の隅に映る。

 

「ハッ、ザマねぇな!デクの野郎!」

『……? 轟が勝って嬉しいのかお前』

「あぁ⁉︎ 嬉しさなんぞ一割一分一厘もねーわボケ!」

 

 あー はいはい、いつものいつもの。試合終わった後くらい喧嘩を止める事出来ないのかな君達さぁ。

それにしても緑谷君、大丈夫なの?

あ、いや右腕に左手、加えて脚も駄目にしてる時点で大丈夫じゃなかった。

 

………あれ、待って? 緑谷君が全く動いてないけど……あれ?

 

『死んでるんじゃないの?』

「生きてるよ……生きてるよね?(震え声)」

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 気が付くと僕は見知らぬ場所で寝ていた。何事かと辺りを見渡すと 其処はさっきまで居た会場ではなく底が見えない川だった。

どうやら小さな舟に乗っていたらしく、低い波によって小刻みに揺らされバランスが取りにくい。

それにしてもこんな昔話に出てきそうな舟に乗るのって初めてかもしれないなぁ………あれ?

 

「と言うか ここって何処?」

「気が付いたようだな」

 

 声の聴こえてきた方向に目を向けると其処には白装束を羽織り舟を漕いでいる老けた人が居た……なんかサングラス付けている所為か、物凄く違和感が……。

と言うか来正君のおじさんに似てる気がするのは気のせいかな?

 

 いや、そんな事よりもさっきまで僕は轟君と戦っていた筈だけど、どうしてこんな所で僕は舟に揺られているんだ?

そんな疑問に答えるように目の前のスタンさん(仮名称)は口を開く。

 

「お主は死んでしまった」

「はぁ……はぁっ!?

 

 えっ死んだって誰が?……え、僕なの⁉︎僕、死んだの!?

いやいや、僕は轟君と戦ってトンデモパワーが炸裂して後に光が逆流して………あ、これ死んだかも(震え声)

つまりここは俗に言うあの世で目の前にいるスタンさん似の人は神様って事に⁉︎

 

「儂はあくまで死者を河岸まで運ぶだけの舟頭。別に神でもなんでもない……あ、いや死神か」

 

 神は神でも命刈り取る方の神⁉︎ いや確かに"死んだら異世界でヒーローになってた件"とか"二度目の人生は異世界でダークヒーローを"みたいな一時期流行った異世界転生系は大概、神様に殺されますけど……え、まさか現在進行形で僕その立ち位置にいるの?

 

「最近の若者は輪廻転生の思想を知らないのか? 良く書籍で間違った知識を得るが……そんな都合良く異界に生き返られる訳ないだろう」

「確かに……え、という事は……!」

 

「死んだ死んだ。今回は流石にアウトじゃな」

「そんな⁉︎」

「腕と脚は壊すし、敵達には襲われる。今までよく死んでなかったと感心するところだな」

 

 ぐっ、反論の余地が見つからない。いつも来正君に個性を使って体壊すなと言われてるけどまさか此処に来て後悔する事になるなんて……いや、そもそも後悔する前に死んじゃったけど!

 

……僕は最高のヒーローになりたかったのに、こんな所で死んで、オールマイトとの約束も守れずに……まさかあの世で後悔するなんて思わなかった。

こうなるなら一言、何か言い残しておくべきだった……。

 

「……未練はあるのか?」

 

 未練?それなら腐る程ある。最高のヒーローになる以外にもまだヒーローのサインも貰ってないし予告されていたオールマイト限定グッズもまだ買ってないし、あと今年のコミコンにもまだ行ってないし!

 

「未練タラタラだな。そんなに生き返りたいと言うのなら────」

 

 そう白装束の人がそう呟くとサングラスをクイッと上げる。

 

「もう二度とこんな事が起こらない様に強くなる事だな。……ほら、迎えが来たぞ」

 

 えっ、迎えってなんの事だろう?なんか背後を指差してるけど後ろに何か居るのかな………ん⁉︎

 

デグゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウ!!!

 

「うわぁあああああああああああああああああああああ⁉︎」

 

 川から這い出るようにタタリ神みたいなカオナシみたいなアトモスフィアのサムシングがこっちに迫って来た!?驚く僕を他所に襲って来た何かは触手を伸ばし、僕の身体を雁字搦めにする。

え、待って⁉︎引っ張る力強んだけど!?

 

「ちょっ、川に引き摺り込まれ、助け、あああああああああああああああああああああああっっ!!??」

 

直後、僕の意識は反転した─────

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「───ぁぁあああああああああっっ!!?? って、あれ?此処は?」

「デク君⁉︎」

 

 気が付けば目の前に麗日さんが居た。それに此処は保健室だろうか、目を覚ました僕にリカバリーガールが声を掛けてくる。

 

「処置は完璧みたいだ。友人に感謝するんだね」

「リカバリーガール!僕は一体……?」

 

「回復して何よりだな緑谷君!」

 

 僕が疑問に思っていると、保健室に飯田君がやって来た。あれ?もしかしてさっきまでのは夢?

……だ、だよね!まさか三途の川を渡っているなんて、そんなファンタジーやメルヘンじゃあるまいし……。

あれ?三途の川とかってファンタジーやメルヘンに該当するっけ?

 

「しかし、よく無事だったな。話によると心肺停止状態だったらしいぞ」

「本当に死んでたの僕ゥ!?」

 

 え、まって?それじゃ、あの来正君のおじさん似の舟頭や最後の方で襲って来た怪物的なアトモスフィアを醸し出すサムシングは⁉︎

 

僕が混乱している中、ふと両手が包み込まれる感覚を覚える。

 

「良かった〜〜!デク君、ホントに死んじゃったと思ったよ!……もう、心配かけちゃ駄目だよ?」

「ヴッ‼︎(結婚しよ……)」

 

 あ、やばい。麗日さんがものすごく可愛い。女の子の手ものすごく柔らかくていい匂いする。可愛い、ものすっっごく可愛い。

でもしかし落ち着け緑谷出久!ここで変な顔を見せればマイナスな感情を抱かれる可能性が高い!あくまでいつも通り!そして天使の微笑みを脳裏に刻み付けろ!

 

「二人共ありがとう。おかげで助かっtおぼろろろろろろろろろろろろろろろ!?

 

「「緑谷君/デク君⁉︎」」

 

 ビチャビチャと口や鼻の内側から押し広げられるかのように液体がががががが!!?

え、なに?死ぬの?もしかして本格的に死ぬ一歩手前なの?

 

 そう思っていると吐き出された黒い液体は徐々に形を作って行く。

これはまさか……⁉︎黒い液体だったものはニィと鋭い牙を見せ付けるように笑う。

 

『ハァイ、デク。お目覚めは如何かな』

「シンビオート君⁉︎ どうして僕の中から⁉︎」

 

 と言うか、なんでさっきの登場の仕方を選んだの⁉︎飯田君と麗日さんドン引きしていたんだけど!あと僕としても物凄く苦しかったんだけど!

そう思っていると麗日さんが「それはね」と僕に説明をする。

 

「来正君がぶっとい針状のシンビオートを胸にこう…ぶすっと」

「ぶすっと⁉︎」

 

「肺と心臓を圧迫させて無理矢理動かしたんだよ。やり方こそ荒いが来正の処置は完璧だったね」

 

 無理矢理動かしたの⁉︎……そうか、だからシンビオート君が僕の身体の中から出て来たのか。……それなら出る時の事も考えて欲しかったけど命の恩人である友達にそんな事は言えない。

……あれ?でも来正君って僕の試合が終わった後、すぐに始まるんじゃ?

 

「お前と轟が派手にぶっ壊したからステージが修復されるまで時間が出来たんだよ!……アンタの為に友人達は時間を割いたんだ。ちゃんと感謝しときなよ」

 

 僕の為に皆が……そうだ、そうだよね。僕は恵まれた。だけど、その期待に応えられなかった。……それでも皆は僕に割いてくれた。

だから、

 

「飯田君、麗日さん。シンビオート君もありがとう」

 

「委員長として当然の事だからな。それに俺達は友人だ」

「そうだよ、困った時はお互い様だからね」

『情けなく負けたが、アイツの悔しがる顔を見れたから結果オーライだ。よくやったと褒めてやる』

 

「皆……!」

 

「失礼します、タオル持って来ました……あ!緑谷君が起きたんだ」

 

 すると扉の向こうから来正君が現れる。もしかしたらシンビオートが吐き出されるのを予想していたのかタオルも持っている。

……来正君、戦闘中ってかなりアグレッシブだけど、こう見ると医療系のヒーローに向いてる気がして来たと言うか、こっちが性に合ってるんじゃないかと思えて来る。

 

「来正君、ありがとう。僕の為にわざわざ」

「ヘーキヘーキ気にする事ないよ。……心臓が止まった時は流石に肝が冷えるどころかストレスで血を吐くかと思ったけどね()」

 

あ、あれ?もしかして来正君怒ってる?

 

「怒ってないよ(半ギレ)」

 

 確実に怒ってるね。申し訳ありませんでした(平謝り)。

うん、でも僕自身これ以上皆に迷惑掛ける事は出来ない。それに……ヒントも掴めた。

 

「来正君、今までありがとう」

「え? いや、別に大丈夫だよ。ヒーローとして当たり前だから」

「うん ヒーローとして当たり前。だからこそなんだ」

 

 ヒーローは誰かを助けるのが仕事だ。それなのに来正君には散々迷惑を掛けてしまった。だからこそ僕は……。

 

「今度は僕か君を助けられるように強くなるよ」

 

 夢かどうか分からない時に言い放たれた言葉。僕はオールマイトのように笑って期待に応えられるようなカッコいいヒーローになりたい。

これは意思表明だ。

なろうとするんじゃない。絶対になるんだ!最高のヒーローとして 絶対に……!

 

「……うん、期待してるよ!」

 

 そう言って来正君は笑顔で応えてくれた。

……ありがとう来正君。

 

あ、そういえば僕に時間を割いてくれたのはいいけど試合は何時頃始まるんだろうか?

僕がそう尋ねると来正君は「あっ」と呟いた。

 

「そう言えばそろそろ始まる頃か……ヨシ!気を引き締めて行かないとだね! 飯田君、頑張ろうか!」

 

「あぁ、俺と麗日君は観客席に戻るが緑谷君は許可を得てからだな」

「そっかぁ……緑谷君、抜け出しちゃ駄目だよ」

 

「う、うん。……それじゃあ来正君。楽しみにしていrおぼろ

 

べちゃ

 

「「あっ」」

 

 やばい。食道から喉辺りにまだ残ってたのかシンビオート君の一部が盛大に口から噴き出てしまった。 あれ?どうしたの飯田君、麗日さん。二人して固まってるけど一体どうしたの……あっ。

 

「………」

 

 そこには顔面に黒い吐瀉物が見事にブチまけられた来正君の姿が……。

 

「………」

「………」

 

『怒った?』

怒ってないよ…とでも言うと思ったか(マジギレ)」

 

 あー、うん。完全にキレてるねコレ。

……よし、此処は────

 

「いや違うんですシンビオート君が勝手n「お前の罪を数えろ

 

 この後、僕がリカバリーガールから本日何度目か分からない治癒を受ける羽目になったのは言うまでもない。

 

 




 


〜〜キャラクター紹介〜〜

『来正恭成』
 次回活躍予定。
緑谷出久の心肺が停止した為、無理矢理心臓と肺を圧迫させ蘇生する。吐瀉物をブチまかれた事に対してキレる。
これも全部シンビオートって奴の仕業なんだ。

『爆豪勝己』
緑谷のパワーアップに思わず人体から発してはいけない音を出す技を身に付ける。シンビオートと喧嘩するのはいつもの事である。

『緑谷出久』
 三途の川を渡り掛けたが主人公の蘇生術(物理)により復活を遂げる。ただしシンビオートは口から出る。

復ッ活ッ 緑谷出久復活ッッ 緑谷出久復活ッッ
緑谷出久ッッ!

直後キレた主人公により保健室送りにされる。

『麗日お茶子』
あれは 天使だ(マクギリス感)


『三途の川の舟頭』(カメオ出演)
 来正君のおじさん。服装は状況によって変わるがサングラスは絶対に外さない。正体は謎に包まれている。


〜〜用語紹介〜〜


『蘇生術(物理)』
 元ネタはガーディアンオブギャラクシー(MCU)にてグルートが髄液に落ちたドラックスに行った蘇生術(?)胸に伸ばした枝を突き刺し水を吐き出させると言う見るからに痛いヤツ。

主人公はそれを参考に、シンビオートを胸や心臓に纏わせ強制的に動かす荒技。流動体であるシンビオートだからこそ出来るのかもしれない。



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24話 違う!シンビオートが勝手に卑劣な手を!

 矢吹先生にヒロアカキャラ描いて貰いたい(煩悩)
僕も趣味でイラスト描いたりしますがあの人の絵柄、個人的に憧れるんですよね……邪な思いは一切ないよホントダヨ。
もちろんBLACK CATもすこ。
推しは王道を征く…トレインですかね。

この話には鬼滅の刃のネタバレ要素を含みますので注意してください。


『さぁ、お待ちかねの第二試合だ!俺的にも注目の試合だぜ! 驚天動地のスパイダー! ヒーロー科B組 赤糸虫知朱!VS ヒールさMAX!これでもヒーロー(候補生) ヒーロー科A組 来正恭成!』

 

 ステージの片側に赤糸虫知朱。そして対向側には来正恭成……が、普段とは異なりシンビオートを纏った状態で現れる。

 

『それでは両者とも位置について……って、おや?来正恭成(シンビオート)が何やら身振り手振りしてるぞ〜?』

『なんだ、次は何をやらかすつもりだ(心労)』

 

 黒を纏った来正(正確にはシンビオート)。彼は観客席に向かって声を上げ、コールを求めるような仕草、ファ○クサイン等の煽りを見せる。そんなシンビオートの挑発に乗るが如く観客達はそれにより更なる熱気に包まれる。

 

『WRYYYYYYYYYYYYYYY!!』

 

『オイオイオイ粋な計らいしてくれんじゃねぇか!来正恭成!まさかのアピールタイムだ〜〜〜〜ッ!』

『するのは良いがサッサと済ましてくれ』

 

 そんな観客達の声援と野次が入り混じるステージにてシンビオートがガッと己の身体に腕を突き刺したではないか。

不安の声が至る所から流れて来る中、一体何処に隠していたのだろうかシンビオートはズルリ…と己の体内から"パイプ椅子を引き抜いた"のだ。

 

『おぉ〜〜〜っと!? 凶器だ!凶器を隠し持っていたぞ!なんと卑劣!卑怯!……いや、コレは⁉︎』

 

 引き抜いたパイプ椅子を見せびらかした後にシンビオートは両端を握る。そのまま両側から力を込めボギリと椅子を真っ二つに折ってしまった。

 

『なんとパイプ椅子が真っ二つに〜〜〜〜ッ!これはお前の脊椎もコイツのようにヘシ折ってやると言う意味なのかぁ〜〜〜ッ⁉︎』

『公共物を壊すな』

 

「おのれ小生意気な戦法を…! 赤糸虫、A組に対抗すべくコチラもアピールだッッ!」

「えぇ……(困惑)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ぷっはぁ⁉︎

え、あ、どうも。いきなりシンビオートに身体乗っ取られた挙句、猿轡で喋れなかった主人公です。

と言うか僕が喋れない間にシンビオート何やってんの!?それに加えてそのパイプ椅子どこに収納してたの⁉︎

 

「……来正君」

 

「いや違うんですミッドナイト先生 シンビオートが勝手に!すみません弁償しますから許してください何でもしますのd「好きなだけやって構わないわ!」先生!?

 

 いいの⁉︎やってしまった自分が言うのもなんだけどいいの⁉︎

 

「面白そうな上に盛り上がるので許可します!」

「あっはい」

 

 そう言えばこう言う人だったよミッドナイト先生。これで雄英高校の倫理担当教師ってマ?

他にマトモな人選は無かったのだろうか……(呆れ)

 

『Fooo!!いいじゃねぇか場が温まって来たぜぇ!』

『いい加減止めなくていいのか?アイツ報道陣に向かってサムズダウンしてるぞ』

『WHAT'S! Oh No!? そろそろ試合の時間だからそれ以上はやめてェェ!』

 

 うん、さすがに生中継だからね。よしシンビオートそろそろやめようか、もうヒール役でもなんでもいいからそれ以上は下手すれば退場くらうからやめろくださいお願いします(懇願)

 

「大丈夫?これから先、結構アンチが増える……と言うかアンチ出来ていると思うんだけど」

「(大丈夫じゃ)ないです。……いや、どっちにしろシンビオートの事を考慮すれば言わずも一定数は出て来るから仕方ないね(諦め)」

 

 別クラスにも関わらず心配してくれる赤糸虫君。やはり彼は僕のソウルメイツになる運命なのでは?(暴論)

それに加えて殴り合えば友達になれるしね 古事記にもそう書かれている。

 

 それでも勝ちに行く気ではあるけども……結局やる事はあまり変わらない気がする。とにかく相手がどう動くか予測する事だ。想像力を出来る限り膨らませ相手の一歩先を行け。僕が赤糸虫君の立場ならどう動く?どのように勝ちに行く?

…でも赤糸虫君の手の内が糸で捕縛・凄まじい身体能力くらいしか分からないからどう戦略の立てようがなぁ……。

 

『……おい、耳を貸せ』

「え?急にどうし……えっ、何それ凄くやりたくn…でも良く考えたら効果的かも……」

 

 

さぁ、いくぜ!第二試合START!!

 

 

「それじゃお手柔らかn「あ、赤糸虫君ちょっと提案があるんだけどいいかな?」ん、提案?」

 

 マイク先生の開始の合図が響き渡った直後、僕は赤糸虫君に声を掛ける。あー、すっごく気が進まないけど腹括るしかないかぁ(白目)

 

「そ、よくあるガンマン勝負あるでしょ?10数えてどちらが先に早く攻撃出来るか……どう?乗ってみる気はあるかな?」

「なるほど……うん、別にいいよ」

『言ったな後悔するなよ』

 

 ヨシ!(現場猫) 言質は取ったな。あとは行動に移すのみ!

 

「カウントダウンはどうする?」

「そちらの自由にどうぞ」

 

お、僕がカウントダウンね。よし、それじゃ……

 

「10・9・8…ヒャア我慢出来ねぇゼロだ!

「ちょっ⁉︎」

 

 最速で最短で真っ直ぐ一直線にぃいいいッ!!ゴムゴムの銃弾(ブレット)擬きィ!

 

──ゴォッ!!

 

「最初から不意打ちっt────おごぉっッ⁉︎」

 

「「「「「ええええええええええええっっ!!?」」」」」

 

『ひ、卑劣ゥ〜〜〜〜〜ッッ!?オイオイオイ!オタクの生徒ホントにヒーロー志望なのかよ!』

1()0()()()()()()()()()()なんて一言も言って無いからな。合理的かつ効率的な戦法だ』

『俺も人の事言えないかもだけど教師としてソレいいの?主に倫理的に』

 

 力isパワー、力こそ正義、暴力はいいぞ、今は悪魔が微笑む時代なんだ!(世紀末思考) 赤糸虫君には悪いけど最初から決めさせて貰った!マジでごめん いやホント。

 

シンビオートの腕を伸ばした反動によって放たれる凄まじいパンチは赤糸虫君を吹き飛ばし、場外へ………⁉︎

 

「──ごほっ、かはっ、…び、ビックリしたなぁ…っ!」

 

 場外ギリギリのところで止まった⁉︎

……いや何か、()()()()()()が彼を止めたのか⁉︎

 

「止まっただとォ!見えない壁でもあんのかよアレ!」

「いや違う!糸だ!細い糸がリング(試合場)のロープのように場外を防いだんだ!」

 

「あのさ、騙し討ちってそれヒーローとしてどうなの?」

「……言わないで。自分でもアレだと思ってるから」

 

 それに卑劣な手を使うヒーローだってこの世に居るから(震え声)

ほらスター・ロードとかデップーとか……あれ?ロクなヒーローが居ない?

 

『サッサと落ちてれば痛い目に遭わずに済んだのになァ…!』

「あーあ…結局いつもの脳筋戦法(悪役気味)になるんだな…って危なッ!」

 

 そんな下らない事を考えていると、白い粘液らしきものが顔を掠める。赤糸虫君の不意を突いた攻撃に我に返った僕はすぐさま戦闘体勢に入った。

 

「お喋りするのは構わないけど目の前見てなきゃ駄目でしょ」

 

「そうだった…御忠告ありがとう」

『敵に情けをかけるとは泣けて来るな。気に入った、死に方は選ばせてやる』

 

 うーん、この悪役ロール。素でコレなんだから嫌になりますよ……。

せめて言動がもう少し柔らかければ…あ、ごめん今のなし。言動が優しいシンビオート普通に気持ち悪い。

 

「死に方ね、候補に何があるか教えてもらっていいかな?」

『お好みは安楽死?腹上死?それとも……』

 

 徐々に全身から鋭く尖った荊棘の如き触手を生やし、牙の間から涎がビチャビチャと垂れ流すシンビオートはメキメキと腕の形を変えていく。

 

滅多刺死(めったざし)かぁ〜〜〜ッッ!?』

 

 腕を逆刺の付いた殺意剥き出しの槍へ変貌させ、赤糸虫君に向かって伸ばした。黒い液体を飛び散らしながら蛇のように動くソレは見ていて少し気持ちが悪い。……と言うか凄く気持ち悪い(断言)

 

「危ないなっ!」

 

 それに対して赤糸虫君は大きく跳躍し回避。それを見越してなのかシンビオートは生やした触手で迎撃しようとする……が、って⁉︎なんだあの変態起動⁉︎(驚愕)

どうやって避けてるのソレ⁉︎……あれ?なんか肩に白い糸のような物が……

 

「そこッ!」

『グブッ』

 

 が、顔面に蹴りを入れて来た⁉︎糸を伸ばし引っ張る形で威力を高めて来てる時点で完全に倒す気満々だコレ⁉︎いや、試合だから当たり前なんだけどさ。

と言うか顔面潰されて前が見えねぇ‼︎シンビオートの視覚情報は僕とリンクしてるから目潰しされると真っ暗で何も見えなくなるんだよ!

 

「シンビオート、捕まえるんだ!」

『分かってる!』

 

「そう簡単に、捕まらないよッ!」

 

 何かが空を切る音が耳に入って来る。何も見えないけど察するにシンビオートは赤糸虫君を捕まえ損なったようだ。

とにかく視界の確保を優先しよう、まずは頭部のみシンビオートを解除して───

 

 

──パシュッ

 

 

 だぁぁああッ!!目がぁ、目がぁああああ!?

赤糸虫君、直に糸をぶち込んで来た⁉︎と言うか眼球に糸はアカン!粘着性のある物をブチ込んで来るのはアカンから!

 

『チッ、姑息な奴が!そんなに殺されたいようだな!』

「ごめん。それ人の事言えないから。がっつり特大ブーメランだからね?」

 

 あぁ、目元が塞がれて何が起きてるか分からない!早くコレを外すさないと何をされるか───

 

「うおッ⁉︎足が動かない⁉︎」

『クソ!もうやられたか!』

 

 直後、膝裏に衝撃が襲い掛かりガクンと地に膝をついてしまう。更にパシュッと軽い音がしたと思うと両腕も同じく地に張り付けられるように動かなくなり、四つん這いの状態で身動きが取れなくなってしまった。

一体何がどうなってるんだ…⁉︎

 

──バリッ

 

「痛゛ァ゛ッ゛⁉︎目がっ!目がぁ⁉︎」

「あ、ごめん。大丈夫? もう少し優しく剥がせばよかった…」

 

「あー、うん大丈夫……」

 

 目元の痛みに悶えながらも周囲の確認をすると両手両脚が糸によって地面に縫い付けられるように拘束されている事が分かった。どうやら顔面に引っ付いた糸は彼自身が取り除いてくれたみたいだ

けど……。

そう考えているとシンビオートが首元から器用に顔を形成し口を開く。

 

『Shit! マウント取ってイキってるつもりか!ならすぐに足を切り落として逆に見下して「はい。お口チャックね」〜〜〜ッ!』

 

 あ、途端に静かになった。凄い粘着性の糸だ。取ろうとしても中々外れないのかシンビオートは僕のすぐ横で悶えている。

 

 

FOOOOOOOOOOOOOOOOO!!

 

『なんと来正恭正withシンビオート手も足も出ない〜〜〜ッ!これはどうした事か!体調不良か!それとも赤糸虫が強いだけなのかァ〜〜〜〜〜ッッ!』

 

 そんな様子に観客席の熱量は高まり、実況のテンションも上がって来ている事が分かる まぁ、ヒーロー物で敵役を追い詰めるの興奮するよね。僕だってヒーローが活躍するの好きだし。いやホントに赤糸虫君、こう見ると まんまスパイダーマンじゃん。糸出したり攻撃を察知してなのか易々と回避したりするし……。

 

……そう考えるとなると、やってみる価値はありそうだな。

 

「…あっ、ごめん赤糸虫君。ちょっと気分悪くなって来たからこの糸外してくれない?」

「ん?別にいいよ……と、言いたい所だけど そうやって騙し打ちするつもりかな」

「そう言うわけじゃないよ。ただ少し胃の中のモノが逆流しそうで…あ、ごめんもう限界」

「え゛」

 

 ハイ、お茶の間の皆様ごめんなさい。少し気分の悪くなる映像が流れますよー……ッと!!

 

「ゔ゛……げッ!」

「ッ!」

 

 赤糸虫君は驚愕の表情を浮かべながらも僕の口内から飛び出した黒い刃に頬を掠めつつも躱した。……避けられたか!

 

「ちょっと、危ないよ!ついでに言っておくけどヒーローがやって良い技じゃないよソレ!」

「はぁ…、はぁ……う、うん僕もそう思う」

 

「いや息絶え絶えだけど大丈夫⁉︎」

「こ、これ意外と体力使うんだよね…おえ」

『使い所が限られた役立たずの技だけどな』

「別に使わなくても良くない⁉︎」

 

 

──ヒュンヒュンヒュンヒュン

 

 

「び、びっくりした…流石に来正がこの場で吐くかと思ってヒヤヒヤしたぜ」

「確かにな、まさか麗日みてーな事になると一瞬思ったけど大丈夫みたいだな」

「うん。瀬呂君 切島君。その話やめて(懇願)」

 

 

──ヒュンヒュンヒュンヒュン

 

 

「……つーかさ、なんかさっきから変な音聞こえてこない?」

「言われてみれば確かに……一体なんの……⁉︎」

 

 そう、僕が先程吐き出したシンビオートの一部。アレは切り離した状態でもある程度は自由に形状を変えられる事が可能。それを利用して僕はブーメランのようにコチラへ戻って来るように変化させておいたのだ。

 

「(さぁ、君はこの後どうする?)この状況のままって言うのはどうも試合としてはどうかと思うんだけど……糸解いてくれないなら、せめてトドメとかさしてくれない?」

「いや、そう言われると何か企んでいるようにしか聞こえないんだけどなぁ」

 

 そんな他愛も無い話で時間を稼ぎ、ブーメラン状の刃が彼の背後に迫る。残り3、2、1m……!

 

「──ふっ!」

 

 直撃する!そう思った直前、赤糸虫君はその場で宙返りをする事によって戻って来た刃を易々と回避して見せた。しかも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

そのま躱された黒い刃は僕の側を横切り、地面に突き刺さってしまった。

 

『なんと、来正恭成が放ったブーメラン不発に終わった〜〜〜〜ッ!最後の足掻きも虚しく終わりこのまま負けてしまうのだろうか!』

『……そうだな。ただし、これが"最後の足掻きだった場合"の話だかな』

 

 

──ブチ…ブチブチィッ……!

 

『ハハハハハハハ‼︎隙を見せたなァッ!』

 

 相澤先生の言う通り。確かに先程の攻撃は失敗終わったけど、コレは別の目的としての攻撃でもあった。

 

赤糸虫君の背後からの攻撃はあくまでブラフ。本当の目的の一つとしては"僕に絡まった糸を裂く"と言うモノだ。

この至近距離からの攻撃!避けられる物なら避けてみせ───

 

 

「まぁ、来るのは分かっていた」

 

──パシュッ!パシュパシュッッ!!

 

「んぐッ!」

『がッッ⁉︎』

 

『ふ、封殺ーーーーーッ!強い、強いぞ!赤糸虫知朱ゥーーー!あの猛威を払った来正恭成を赤子の手を捻るが如く!最後の最後の策までも打ち破ったァーー!』

 

 全身に満遍なく蜘蛛の糸が……!側から見ると芋虫みたく簀巻きにされていると思う。と言うかヤバイ コレ脱出できなくない?

 

「勝負有り。って状況だね」

『コイツ……!』

 

「そうそう。さっきの答えだけどさ……試合終()って事でどうかな?」

 

 上手い!座布団一枚!

いや、上手くねぇよ。なんで座布団上げることになってるんだよ。

 

 

「よく言ったぞ赤糸虫!!お前はB組の誇りだ!そのままトーナメントを勝ち進んで行けぇ!」

 

 

 ブラッドキング先生の声が響き渡る。わーお、赤糸虫君が凄い絶賛されてる。相澤先生だと絶対褒めてくれないからなぁ。良くても「さっきの良かったな」と言われる位だからなぁ。

あー……僕もB組入りたかったなぁ(小並感)

 

『残念ながらお前の解答は求めていない』

「それじゃあ質問の意味が無いね……で、来正君。そろそろ降参した方が良いと思うよ」

 

 降参か……。チラリとミッドナイト先生、セメントス先生の表情を窺うと同感の意を示すような顔をしているのが分かる。

 

「……確かに、僕達じゃ赤糸虫君に勝てないみたいだ」

「そうだね」

 

「それに君の個性は蜘蛛っぽい事が出来る。それだけじゃ一体どんな戦法を使い、どのような手の内があるのか不明瞭。正直勝てる気がしない」

「その通り、だから────」

 

 

 

 

 

「そうそう、君の個性だけど……()()()()()()()()()()()する事が出来るんでしょ」

「──⁉︎ な、何を言って……っ!?」

 

 直後、赤糸虫君が辺りを見渡しつつ その場から飛び退くと先程まで彼が居た場所から黒い根のような物が飛び出して来た。

 

──ボゴォッッ!!

 

『な、なんとぉ!根のような物がステージに生えて来たァ!ビオランテの襲撃かぁ⁉︎』

『な訳ないだろ。フツーに考えれば まぁシンビオートだろうな』

 

 あー、うん。やっぱり相澤先生褒めてくれないよね。知ってた(白目)

まぁそんな事はさて置き。地中からの攻撃を回避した事によって距離が開いた。

そのおかげで隙が出来た…!

 

「シンビオート交代だ」

『気は乗らないが…しょうがないな』

 

「何をするつもりか知らないけど…!」

 

 直後、僕等に向かって凄まじい量の糸が襲い掛かる。全身に夥しい粘着性の物質が纏わり付き、一歩も動かない状態になってしまう。

……けど、もう遅い!

 

──ブク、ブク……ブクブク…!

 

「こ、これは…⁉︎」

 

『なんとシンビオートの身体が膨張していくゥ〜〜〜!赤糸虫も糸で懸命に膨らむのを抑えようとするが隙間から徐々に膨れ上がり、これ以上止める事が出来ない!』

 

 これぞ、シンビオートが高級チョコを捕食した際に習得した破裂の応用技!

名付けて必殺(?)…【鬼舞辻無惨式逃走自爆(エターナル・ラメント)

 

「任務…了解…」

『自爆するしかねぇ!』

 

「は?」

 

 

──BAAAAAAAAAAAAAM!!

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 黒い雨が降り注ぎ、白かったステージは次第に黒へ塗り潰されていく。危なかった……!もし接近した状態でさっきのを喰らえば無事じゃ済まなかったよ!

 

『じ、自爆ゥ〜〜〜〜〜ッッ!?此処に来てまさかの自爆だーーーッ!おいおいコレどう判断すりゃいいんだ!とりあえず後は審判に任せたぜ!』

「そんな無茶苦茶な⁉︎」

 

 プレゼント・マイクの実況にセメントスが困ったような表情を浮かべる。確かに 勝てないと分かって死なば諸共、相打ち覚悟で特攻を仕掛けて来たと思うけど。

それにしても酷い光景。来正君の姿すら見当たらない……?

 

……えっ?姿が見当たらない⁉︎

 

 

『『『…ハハハハ どうしたオレ達は此処だぞ』』』

 

「っ! 声が四方八方から……⁉︎」

 

 どうなっているのコレ! なんで周りから声が響いて……っ!

そうか、さっき破裂した時に飛び散った破片だ! 敢えて撒き散らす事でボクを撹乱させる寸法か!

 

「と、なると……」

 

 その場で目を閉じる。来正君ならボクを撹乱させた後に襲い掛かって来る筈。なら、下手に動かずにカウンターを狙えば…!

 

 

『コッチだ』『何処を見ている』『そっちじゃない』『オイデ、オイデ』『諦めなよ』『Fuck』『モウ楽ニナロウ』『キャハハハ』『負ケロ、負ケロ』『オイデ、コッチニオイデ…』『ファミチキください…』

 

 

 うぅ……、下手なホラーゲームよりも怖い演出なんだけど。こうやって集中力を削ぐって嫌らしいなぁ……なんか最後の方だけおかしくなかった?

……いや、声に気に取られたら駄目。

 

センサーをフル稼働させて……居場所を特定する……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ガラッ……

 

 

「っ! そこだッッ」

 

 センサーが反応した所に糸を撃つ!これで試合は終わりだッ!

糸が放たれた方向には黒い人型の者が現れた。弾丸のように放たれた糸はそのまま頭を撃ち抜いて……えっ、うちぬいて?

 

『う゛あ゛…』

「ひっ⁉︎ あ、頭が抉れて……⁉︎」

 

 頭が⁉︎頭がボトって落ちて……⁉︎え、いやそれどころか身体が崩れてる⁉︎

……まさか偽物!?

 

『なんと!赤糸虫が攻撃したのは偽物だーーッ!本物は何処(いづこ)へ!?』

 

 

 

「───はっはっはっはっ!」

 

「笑い声⁉︎ それにさっきまでの濁声と違う!」

 

 声の発生源は……ッ⁉︎背後に!?

振り向きつつ、その場から飛び退くボクの目の前に彼は姿を現した。

 

すり替えておいたのさ!

 

「き、来正君⁉︎」

 

 そう、そこには先程の筋骨隆々な姿と比べて全体的に細く、スタイリッシュな容姿をした黒い何かを纏った来正君だ。

 

「その姿は……?」

 

「ん、ちょっと作戦の第二段階にね」

『お前は掌の上で転がしてると思ってるが、その逆だ。お前は今まで転がされていたんだよ』

 

 転がされていた……何を言っているの?

 

「君の個性のセンサー、とある条件下で発動するものだって分かったからね。悪いけど試させて貰ったよ」

「試した……!?」

 

 そうか、試合中 変な技ばかりを使って来ると思ったらボクのセンサーの秘密を暴く為に……!

 

「それじゃあ、あの自爆も!」

「その通り」

 

「ブーメランで背後から攻撃したのも!」

「もちろん」

 

「最初から公衆の面前に加えて公衆の面前で騙し打ちしたのも作戦の一つだったの⁉︎」

「……え、ぁ、ぅ、うん。…そう…だね… いや、アレはシンビオートが勝手に……

 

 あれ、なんだか急に歯切れが悪くなったような……?

 

「とにかく(唐突な話題転換) 陳腐で臭い台詞を言わせて貰うけど───」

 

 

『「本当の戦いはここからだッッ!!」』

 




 スパイダーマンvsヴェノム的な試合。
いやぁ赤糸虫君がどのように戦うか見ものですね。

……えっ、赤糸虫君が主人公じゃないんですか?


〜〜キャラクター紹介〜〜

『来正恭成』
【お前のようなヒーローがいるか】の言葉が似合いそうな戦法を得意とする。真面目に戦えばいいのに何故そのような真似を…。


『赤糸虫知朱』
一人称が主人公と被って少し扱いにくいキャラ。個性はスパイディとほぼ同じ。
危機察知能力が飛び抜けて凄まじく自身の認識外からの攻撃をほぼ未来予知のように感じ取る事が出来る……見聞色の覇気かな?



〜〜用語紹介〜〜

『ビオランテ』
ゴジラシリーズより。白神博士によって作られた植物怪獣。植物ながらも禍々しいその姿はまさに圧巻の一言。

『鬼舞辻無惨式逃走自爆』
鬼滅の刃より。無惨が鬼滅隊最強の人物から逃げる為に使った技?的なヤツ。ポップコーンみたいに弾ける。

『エターナル・ラメント』
Fate/Grand Orderより虞美人ことぐっちゃん先輩の宝具より。
自らの限界を超えた魔力を暴走させ自爆する技。ただしすぐに元に戻る。最近ポンコツ化が激しくなり登場するだけで面白いキャラになっているのは気の所為だろうか……いいぞもっとやれ公式。

正確には呪血尸解嘆歌と書いてエターナルラメントと読む。

『任務…了解…』
機動戦士ガンダムW 第10話「ヒイロ閃光に散る」より。
ヒイロが生身のまま機体を自爆させたシーン。なんで君、生きてるの?なんで「死ぬほど強いぞ」で済んでるの?

『すり替えておいたのさ!』
東映版スパイダーマンより。ニコニコ動画ではかなり有名な台詞。
本来は犯罪シンジゲートのブラックリストをすり替えた時に使った言葉らしい。
スパイダーバース2での登場を心待ちにしております。

『本当の戦いはここからだ』
ウルトラマンダイナより。主人公のアスカ・シンが使う代名詞と言っても過言ではない台詞。



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25話 違う!シンビオートが……おや?個性の様子が

 リアルの方が色々あったので投稿が遅れました。
本当に申し訳ない。



 

『波乱の第二試合!自爆したかと思いきや、なんかスタイリッシュになって来正恭成が帰って来たァ〜〜〜〜〜ッ!』

 

 やぁ皆、全国中継のカメラに向かってスパイダーマッ!ポーズを決めてる主人公だよ。一度やってみたかったんだよねコレ。

ほら、東映版スパイダーマン主題歌のイントロが聞こえて来るよ。

……え、聞こえない?そんなー(´・ω・`)

 

そんな僕等に相対する赤糸虫君は冷や汗を掻きつつもこちらに言葉を投げかけて来る。

 

「……それにしても細っそりしたね。ダイエットのコツがあるなら是非教えて貰いたいな」

『そんなに知りたいなら教えてやるさ、やり方は至極単純』

 

 シンビオートを纏った指先から鋭い爪がジャキッと音を立てながら伸びる。

 

『肉を削げばすぐに細くなれるさ!』

「悪いけど、痛いのはお断りだねッ!」

 

 パシュッと糸の弾丸が数発コチラに放たれる。

先程までの僕等では対応出来なかったらだろう。しかし今の状態でなら糸を爪で切り裂けるッッ!

 

「ハッ!」

「ッ! 糸を切り裂いたッ⁉︎」

「驚くのはまだ早いッ!シンビオート戦闘体勢ッ!」

『全く…やってやるよ』

 

 直後、僕等の身体に変化が訪れる。先程までの黒光が目立つシンビオートとは異なりプラモデルにツヤ消しを行ったように光沢が控えめ。身体の所々にラインが走ったような模様が浮かび上がり、極めつけに頭部から二つ鋭く尖ったモノが生える。

それは猫耳である。もう一度言おう猫耳である(二回目)

 

『なんと、さらにシンビオートの姿が変わったぁぁああ!これは黒い虎をイメージしてるのか⁉︎』

『どっちか言うとクロジャガーじゃないのか?』

 

 黒豹(ブラック・パンサー)やぞ。虎でもジャガーでもないからね先生達。しかし最高、シンビオートの良い所って架空のヒーローと同じ姿になれる事なんだよね。

……まぁ、色が黒に限定されるケド。

 

「姿を変えた……一体何を……?」

 

 どうやら赤糸虫君は僕のブラックパンサーコスにどんな思惑があるか読み取れないようだ。ふふん、気分が良いから特別に教えてあげるとしよう(上から目線)

 

「猫耳っていいよね」

「えっ、あ……うん?」

 

「そんでもってヒーロー。最高じゃない?」

「え、そ、そうなの?」

 

 そうだよ(念押し) 動物系で尚且つスタイリッシュなヒーロー。こんなに素晴らしいヒーローはそうお目にかかれないからね。うーん二次元最高!

 

『けど、その耳は所詮作り物だよな。それで良いのk「それ以上いけない

 

それを言ったらシンビオート……戦争だぞお前…ッッ!

 

「……ねぇ、落ち込んでる所悪いんだけど始めないの?」

「あ、うん。そうだね とりあえず第二ラウンド開始と行くぞ赤糸虫君!」

 

 直後、僕は相手に向かって肉薄し接近戦を仕掛けていく。右、左、右、右からの上。そんでもって下から。鋭い爪を振るう。

 

「のっ!、危なッ!」

 

 それに対して赤糸虫君は回避、防御等で爪に当たらないようにしている。この程度じゃ"まだ"当たらないか……それならこう言うのはどうだろうかッ!

 

「はい、プレゼントッ!」

「ッ⁉︎」

 

 僕は地面にあった"モノ"を投げつける。

すると、それは鳥のような姿へ変化し彼の()()()()()

 

『おおーーーっと!クナイ⁉︎ だが紙一重の所で赤糸虫が躱したーーーッ!』

 

「まだだッ!」

 

 そのまま僕は、複数落ちているモノを拾い上げると同時にソレを変化させつつ投擲を行う。

 

「バートランッ!」

 

 鳥形の刃は彼の着る体育着の一片を切り裂くが命中する事なくそのまま通り過ぎてしまう。

 

「そんなのモノ効か─────」

 

 効かない。赤糸虫君がそう言おうとした瞬間、驚愕の表情に染まる。

この段階で気がつくとは……!赤糸虫君がその場で跳躍すると四方八方から先程のバードランが飛来し地に突き刺さった。

 

やっぱり死角からの攻撃じゃあまり意味は無いか……まぁ、いいか。既に仕込みは終わっているからね。

 

「さっきからクナイを……一体何処から?」

「知りたい?…それじゃ種明かしと行こうか」

 

 そう僕が呟くと同時に地面にへばり付いたモノに手を添えると呼応するように長刀が形成・出現したのだ。

 

「飛び散ったシンビオートの欠片⁉︎」

 

『Exactly!! 正解だ花丸をつけてやる』

「君を倒すにはトコトン手数が必要になるだろうからね。場の仕込みをさせてもらった」

 

「君のスパイダーセンス……とどのつまり第六感的なセンサーは死角・認識外からの攻撃を感知する事が可能だ」

 

 その結果、君に効率良くダメージを与える為には不意打ちは相性が悪い事が分かった。

……いや、僕自身もヒーローが不意打ちするのはどうかと思うけどね?

 

まぁ、とどのつまり何が言いたいかと言うと───

 

「正面から君を叩くッ!」

「⁉︎」

 

 長刀による横薙ぎを相手は跳躍する事により回避する。そのまま追撃の斬撃を幾度も彼に加えていく。

十文字・横一閃・突き・斬り上げ・etc…!

次々と繰り出される剣術に対して慣れてない為か、赤糸虫君は避けるのに手一杯のようだ。なら、とことん攻めさせてもらう!ガトチュエロスタイル!

 

「こっ…のッ……いい加減にしろッ!」

 

──バキンッ!

 

 直後、赤糸虫君は刀の真上に跳んだかと思うと踏みつける形で黒刀が真っ二つに……って⁉︎

 

「あっ、折れたァ⁉︎」

「そこっ!」

 

 そのまま顔面に蹴りを入れられた僕は後方へ吹き飛ばされる。すると体勢を崩した僕の視界に糸を発射する準備に取り掛かるのを彼の姿が映る。

また視界を潰す気なのか?それならシンビオート!弓と矢尻の用意!

 

『よーく狙え。外すなよ』

「分かってる!」

 

 糸が射出されたと同時に身体の一部を弓に変化させ、全てをはたき落とす。さらに地面にへばり付いたシンビオートの一部を矢に変化させ弦を引き絞り……放つ!

 

『SET』

「三発同時に持って行けッ!」

 

 パァンッ!と三本の矢尻に見立てた黒いモノが勢い良く赤糸虫君に向かって射出される。

それに対して彼は空中で身体を捻りながら一本目と二本目は難無く躱し最後の矢は糸を付着させると遠心力を利用しながらコチラに向かって投げ飛ばして来た。

 

「コレ返すよッ!」

「ありがとう」

 

その飛ばし返した矢を掴むと、一本の長柄武器に変化させて接近戦を仕掛ける。

 

「ちょっと君、武器使い過ぎだよ!丸腰相手に恥ずかしくないの⁉︎」

「それスナイプ先生の前でも同じ事言える?」

『HAHAHA!結局は強い方が勝つ!この世は弱肉強食、今は悪魔が微笑む時代なんだ!』

 

 そんなモヒカンが生えたような台詞を言い放つシンビオートを他所に手に収めた棒を振るう。

 

『千変万化にして自由自在ィ!オイオイオイオイ!すげーな、どんだけ武術習ってんだよアイツ!』

『いいや、アイツの武器の扱いだが恐らく全て我流だ。武術なんて一切習ってないだろうな』

『まじで?でもスッゲー扱い上手いけどな!』

 

 解説どうも相澤先生。

先生の言う通り僕は武器に関する教養なんて一切無い。全て独学によるモノだ。だからこそ、自分なりのシンビオートの特性に見合った我流武器術。編み出す事に成功したんだ。

 

「でも、相当な鍛錬を積み重ねないとそんな扱い方は……!」

「今の時代は動画サイトと言うモノがあってだね!弓が上手いおじさんに忍者タートルズとかに画面の向こうからたっぷり教えてもらったよ!」

「弓…忍者……えっ?」

 

 まぁ、困惑するのも仕方ないよね。うん、あと今更だけど相手に手の内をバラしちゃうのも如何なものかと思うぞ相澤先生ィ‼︎

 

「──ッ隙を「見せた訳無いんだよねコレが!」

 

 隙を突き懐に潜り込んで来た赤糸虫君に対し長柄武器を二つのスティックに分離、変化させ攻撃を防ぐ。

 

「一体、いくつ武器を扱えるのさ君……」

「そうだね…刀に盾、棒に弓矢。二刀流とカリスティックやトンファーに槌とか斧。あとはその他諸々!」

 

 驚愕の表情を浮かべる赤糸虫君には悪いけど今のうちに攻めさせて貰うッ!君のセンサー(スパイダーセンス)は厄介だ。ある意味で君は全身の至る箇所に目を持ってるのと同じだからね。

でも、これまで攻撃して来てそのセンサーを攻略するのは困難だと理解した。

……なので、君の"センサーを封じさせてもらう"ッ!

 

「行くぞッ!まずは()()()()()!」

「⁉︎」

 

 正面から迫る二つの棒を両手で防ぐ赤糸虫君。よし、狙い通り次だ!

 

「爪だッ!」

「右から……ッ⁉︎」

 

「そして蹴りィ!」

「ぐっ!(どうして…自分から……⁉︎)」

 

 困惑の顔を浮かべながら戦う相手に僕は内心、確信付いた事があった。彼のセンサーは自身の認識した攻撃に対しては一切反応しない!

 

つまりは、これからどんな攻撃をするのか事前に伝えれば良い訳だ!

 

「なんと(イガリマ)ァ!」

『見ろ、魂を()()る形をしてるだろ』

 

「いや、"魂を刈り取る"と言うか"肉を抉り削る'形ィ⁉︎(駄目だ…!相手の雰囲気にかき乱されて対応し切れない……ッ、良く見ろ、良く見るんだ赤糸虫知朱…!次に相手はどんな武器を使う?それを見れば突破口は見えて来るッ!)」

 

 

 

 

「いいぞ、その調子だ!」

『次はトンファーで行くぞ!』

 

(トンファー…!それならある程度、どんな攻撃が来るか予想出来る!まずは一旦距離を置いて………

 

 

 

トンファーキックゥッ!

「!?!!?!??(いや、トンファー関係無くないそれェ⁉︎)」

 

『形成逆転!来正がどんどん追い込んで行くゥーーー!』

『アイツのペースに呑まれているのか上手く実力が発揮出来てないみたいだな』

 

 よし、トンファーキックがまともに入った!例えどんな攻撃が掠ったとしても諦めるな!百発の攻撃で倒せぬ相手だからといって、一発の力に頼ってはならぬ。一千発の攻撃を加えるのだ! 古事記にも書かれている(偏見)

このまま追い詰めれば勝てる!

 

『補助は全てオレがやる!決めろキョウセイ!』

「勿論ッ!」

 

「いや……これなら──どうだッ!」

 

 直後、今までと比べて太い糸が僕の腕に巻き付く。爪で刈り取ろうとするがあまりの糸の密度に小さな傷が入った程度だ。

 

「ついでにこれをッ!」

「首にッ⁉︎ この程度で僕達を倒せ───」

 

「うん。だけど、こうしたらダメージが通るんじゃないのッ!?」

 

───BZZZZZZZ!!

 

「何を言っ─でばばばばばばッ⁉︎」

『な……にぃ……ッ⁉︎ で、()()だとぉ!?』

 

 アバババババババッ⁉︎せ、赤糸虫君、スパイダーマンはスパイダーマンでもマイルスの方だったののののののの⁉︎

 

 

「で、電気⁉︎俺みたいに電気流してるぞアイツ!」

「でも蜘蛛って電撃なんて流せるか?」

「いや、多分だけど轟君みたいに赤糸虫と言う人の個性は複合型だ!」

 

 観客席の方で緑谷君達が話してるけど そうか、それなら合点が行く。……いや、だとしてもこっちはかなりピンチなんだよよよよよよよよ⁉︎

 

『おぉーっと!来正恭成が膝を付いたーーーーッ!上鳴電気の放電すらも耐えた筈なのにこれはどう言う事だ⁉︎』

『今の来正は電撃を防いでいた防御膜(シンビオート)が手薄になった状態だ。直接身体に電撃流されればひとたまりも無いだろう』

 

「こんな隠し技をををを⁉︎」

「さぁ、これで形成逆転だッ!」

 

 電撃が全身を伝わり上手く力が入らない。その所為か意識も徐々に混濁していく。

ま、ずい……目の前が…まっ、し ろ になっ て………このま…ま 負 けte────たまるかァッッ!!!

 

 

「お゛……お゛おおおお゛おお゛ッ゛ッ!」

「なっ⁉︎」

 

『なんと、来正!自ら糸を身体に巻き付けながら赤糸虫に接近していく〜〜〜〜〜!!』

 

 あ゛あ゛くそッ!全身が痺れて筋肉が上手く働かないぞチクショウ!

ウィップラッシュを相手にしたアイアンマンの戦いを参考にしたけど実際にやるとシンドくて堪らないなぁッ!………でも、それ以上に負けられないッッ!

 

「おおおおおおおおおおおッ!」

「ッ!うおおおおおお!」

 

『おおーーーっと!これは、殴り合いだァーーーー!一方は電撃を纏った拳、もう一方は黒を纏った拳!テレビの前のリスナー達注目ゥ!お前ら好みの展開だ!』

 

「どりゃぁッ!」

「ッ!」

 

 至近距離から殴り、蹴り、一本背負いの要領で投げ飛ばす。

……が投げ飛ばされた彼は上手く受け身を取り、コチラに飛び掛かり拳を打ち込んで来る。

 

その程度でがっ!? 僕とシンビオートならぐっ!負ける道理がnぶぼっ!?ちょっと待っt ぐえっ!一方的にはやめtおごぉッ!?

 

『……いや、一方的だぁーーーーっ⁉︎赤糸虫に一方的に殴られてるぞ来正!』

『赤糸虫は蜘蛛のように視力が半端じゃない、アイツと殴り合うのは非効率的だ……選択を誤ったか?』

 

 選択を誤ると言うか……現在進行形で電撃流されてる所為で考えが上手く纏まらない以前に身体が言う事を聞かないんだけど⁉︎

あ、不味い!赤糸虫君が迫って───

 

「はあッッ!」

 

──SPANG!!

 

「がっ……⁉︎」

 

『赤糸虫のムーンサルトが来正の顎を捉えたーーーー!勝負あったか⁉︎』

 

 あ、くそ……。もう少し……あと、一発…あと一発殴る気力が有れば……!

脳震盪によるものか、電気を流され続けて限界に達したのか。僕はそのまま後方へ倒れ込んで─────

 

 

 

 

力を貸そう

 

 

「ッ!?」

 

 

 頭の中に声が……⁉︎

 

 

受け継がれた力を 君も扱える 腰に力を まだ君は立てる さぁ、前を見据えろ お前はまだやれるよ

 

 

 いや、一つだけじゃない。複数人もの不明瞭な声が響いて来ている⁉︎

なんだ、これは……さっきの衝撃や電撃で頭がおかしくなったのか⁉︎それとも幻術か⁉︎また幻術なのか⁉︎

 

 

 少年、更に向こうへ……

 君ならまだ、戦える!

 

 

 この声は………⁉︎

 

 

「うぉおおおおおらぁあああッッ!」

「ッ⁉︎」

 

『おおーーーっと!来正恭成、なんと身体に巻き付いた糸を無理矢理引き千切りながら復活!』

 

「はぁ…、はぁ…、シンビオート。変な声を頭に響かせるのやめて。本気でイカレたかと思ったんだけど(半ギレ)」

『……? 現在進行形で頭がイカレてるの間違いじゃないのか?』

 

 おい、それはどう言う事か説明して貰おうじゃないかシンビオートこの野郎。

……いや、今はそんな事してる場合じゃない。よく分からないけど今は不思議と頭の中がスッキリしているし、考えも上手く纏まる!

 

「さっきので立てるなんて……!一体何が…⁉︎」

「分からないだろ……僕も分かんない」

『……頭がイカレたか』

 

 あー聞こえない聞こえない。ともかくやるぞシンビオート!長柄武器である棍を欠片から形成し赤糸虫君に向かって振るう。

 

「はっ!」

「それはもう効かない!」

 

 手元を蹴られてしまい武器を落とす。その瞬間に放たれた糸によって使い物にならなくなってしまった。

それなら……ッ!

 

「ハンマーで……どうだッ!」

『ブッ潰れろォ!』

 

 一回、二回と力任せに振り回したそれはズガンと!音を立てながらコンクリ製の地を砕く。

 

──パシュッ

 

 しかし三回目の攻撃直後。ステージとハンマーがぶつかる瞬間を見計らってか、糸によって再び使い物にならなくなってしまう。

 

「もうボク相手に武器は通用しないよ!」

 

『チッ無駄に学習しやがって…!』

「やっぱり最後は素手か」

 

 形成した爪でガリガリと床を削りつつ接近戦を再び仕掛ける。初撃を回避されカウンターをされつつも僕はそれを防ぐ。

 

「ッ!ならこれで!」

 

 僕を蹴る反動で宙返りしつつ、赤糸虫君は糸を飛ばすが

 

「全て打ち消すッ!」

『無駄ァ!』

 

 爪を巧みに扱い、糸を裂いて行く。武器による戦闘はこちらが上。しかし素手の場合ではあちらの方が有利なのは先の戦いで理解してるつもりだ。

……けど、

 

「もう、僕相手にその戦法は通用しないッ!」

『同じ台詞を返される気分はどんな気持ちだ?なぁ!』

 

「この……!」

 

『凄まじい接戦〜〜〜ッ! さっきまでとは打って変わって互角の勝負を繰り広げる!』

『互いに体力は限界に近い。どちらかが決め手を加えれば終わりだ』

 

 解説の通りカウンターを防ぐ、糸を全て撃ち落とすなんてずっと出来るものじゃない、ソレはあちらだって同じだ。

……恐らく、次の攻撃でこの試合は終わる。

 

「……シンビオート、僕を信じて欲しい」

『……良いだろう』

 

 直後、僕は両手を突き出し容量の少ないシンビオートを溜めて放つ!

 

『全弾持って行け!』

「必殺!SYMBIOTE(シンビオート)SPLASH(スプラッシュ)!!」

 

──ドドドドドドッッ!!

 

 黒の弾丸がショットガンの如く一斉に撃ち出される。弾丸の雨霰に対して赤糸虫君は……!

 

「来ると思った!」

 

 頭上に存在する観客席に向けて糸を放ち、身体を上空へ持ち上げる事によってコチラの技を回避したのだ。

 

「君が決め手に使うのはソレだと思った!」

 

 これまで以上に密度の高い糸が僕の全身を縛る。隙の大きな必殺技の直後を狙って拘束して来たか……!

 

「これで終わりだッ!」

 

 電撃を伴う掌底。彼がコチラに来るまで残りわずか、それに対して僕達は────

 

 

 

『馬鹿が。そんなのが来るのは既に想定済なんだよ』

「う゛おおおおおおおおおおッッ!!」

 

──ブチ、ブチブチブチッ!

 

「なっ⁉︎い、糸を引き千切った⁉︎どうやって⁉︎」

 

 そんな事、僕が知るかッ!けど……君が必殺技の直後を狙って来るだろうとは予測していた!君がカウンターで決めて来るならこっちもカウンターで決めさせてもらう!

 

『空中じゃ身動き取れないなぁ!』

「ッ、それでも…!」

 

 尚もコチラに向かって来る彼に対し、僕の腕に自然と力が湧き上がる。何故先程も高密度の糸を解けたのか?何故僕の頭の中に声が響いたのか?

そんな疑問を吹き飛ばすかのように凄まじいエネルギーが全身を迸る。

 

「それは⁉︎(腕が輝いて……⁉︎)」

「これは自慢の拳だぁぁあああああッッ!(技を借りるぞ緑谷君!)」

 

 直後 大砲の弾が放たれるように、パイルバンガーの杭が放たれるように。

腕のエネルギーが爆発する───!

 

 

「SMAAAAAAASH!!」

 

 

刹那、景色が逆流する。

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

『起きろ!』

「────はッ⁉︎」

 

 来正恭成はいつの間にか意識を失っていたらしい。彼が我に返り前方へ注意を向けると………。

 

「……えっ、何これ(畏怖)」

 

 眼前にはステージを抉られ壁にクレーターが出来た光景が広がっていた。直後、審判のミッドナイトの声が響き渡る。

 

「せっ、赤糸虫さん場外 来正君第三回戦進出!担架急いで!」

 

 そのままステージ外にて倒れ伏した赤糸虫は救護班に運ばれて行ってしまった。呆然とする彼の元にミッドナイトが駆け寄って来る。

 

「来正君も早く保健室に行きなさい」

「えっ、急に何を言ってるんです?」

 

 状況が理解出来てない様子の来正。そんな彼にシンビオートが肩を叩くと、とある箇所に注目させられる。

 

『自分の腕を見ろ』

「はぁ?腕を見ろって何言って───」

 

 突如として来正の声が途切れる。これまで気が付かなかったのは痛みすらも感知出来ない程までのものだった為か、それが何を意味するかと言うと……腕がとんでもない有様だったのである。端的に言えばミンチよりも酷ぇ状態。

 

「」

 

 言葉を失い、暫しのフレーメン反応が発生。そしてようやく状況を理解したのだろうか。

 

腕ぇええええええええええええッ⁉︎…ウ-ン(気絶)」

「来正君⁉︎第二救護班急いで!」

 

 金切り声を上げ、そのまま気絶してしまった。そんな彼の元に医療チームが駆け寄って行く光景が広がり観客達はざわざわと騒がしくなっていく。

 

 

「ハッ、最後で気絶するなんざザマァねぇな!」

「爆豪おまえ……」

 

「二人ともダウンって来正平気なのか?」

「自分で治せるから大丈夫じゃね」

「リカバリーガールの治療もあるから心配無いだろう」

 

 そんな様子を目の当たりにするクラスメイト達の反応は様々である。

 

「いやぁ、凄い試合だったねデク君!……デク君?どうしたの、汗凄いよ」

「えっ、あ、うん。なんでも無いよ麗日さん(そんな……嘘だ。どうして……?)」

 

 そんなクラスメイトの中、緑谷出久は先程の光景に動揺していた。

……いや、動揺していたのは彼だけでは無い。

 

「Jesus……!どうなっているんだ……⁉︎」

 

 教員達の観客席に座るNo.1ヒーローであるオールマイトもまた信じられないようなモノを見たかのように唖然としていた。

 

(どうして?嘘だ、そんな!)

(有り得ない、ならばどう説明がつく?)

 

 

 

何で来正君/来正少年が────

 

 

 

 

 

 

───OFA(ワン・フォー・オール)を使えるんだ!?

 

 

 彼等の来正恭成に対する疑問は尽きる事が無かった。

何故継承してない筈のソレを扱えるのか。そんな疑問を彼等を縛り付け、時間は経過して行く………。

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

『ハァイ、キョウセイ。お目覚めは如何かな?』

「あー……最悪。なんかものすっっごく疲れた」

 

 目が覚めるとそこは見知らぬ天井……と言うわけでは無く保健室(出張)の天井だったと。最後に見た光景が確かお茶の間に流せないくらい酷い事になった腕だったと思うんだけど。

 

……成る程、さっきまでの光景は夢か!(現実逃避)

ベッドで寝てた感じだし夢に違いないな!(念入り)

 

『ところがどっこい夢じゃありません…!全て現実…!』

「嘘だ…!僕を騙そうとしている……!」

 

「あんたら煩いね、もう少し静かに出来ないのかい!」

 

 カーテンが開かれ、そこには椅子に腰掛けたリカバリーガールが居た。あっ、本当に現実なんだ。

 

「あんたのその腕、もう大丈夫なのかい?」

「えっ、あー……ハイ。多少痺れますが動かせるんで大丈夫です」

 

 

 腕を包帯でグルグル巻かれてるとは言えシンビオートの治療を頼ればすぐに戻るだろうからへーきへーき。後遺症は……まぁ、特になさそうだから問題ないだろ(投げやり)

 

「あんたね……どうやったら緑谷みたいに腕を壊せるんだい。内側から爆発したような怪我だよ」

「ヒェッ 何それ怖い」

「そんな力を出せたあんたの方が怖いと思うけどね」

 

 うーん、僕は超人じゃないけどコレがいわゆる火事場のクソ力的なヤツなのかな。キン肉マンこんなのいつも使ってんのかスゲーな。

 

「とにかく、まだ怪我人も居るんだ。暫くは大人しくしているんだね」

 

 そう告げるとリカバリーガールは部屋から出て行ってしまった。

……トイレだろうか?それにしても僕って、あんなスーパーマンじみたパワー出せたっけ?

 

あっ、そう言えば(唐突)

 

「本当にシンビオートって、あの時に変な声で語り掛けて来なかったの?」

『何度も言ってるがオレは知らない。そんなに心配なら脳検査でも受ければいいんじゃないのか?』

「それは遠回しに頭がおかしいって言いたいのかな、ん?」

 

 シンビオートも知らないかぁ……でも、なんだろうなぁ。最後の方で聞こえた二つの声。何処となく緑谷君とオールマイトの声に似てた気が……。

 

 

 

「んむ………」

 

 

 ふと隣のベッドから声が聴こえる。何だろう?と疑問に思い視線を声の方に向けるそこにはスヤスヤと眠っている赤糸虫君が居た。

………あっ、やべぇ。赤糸虫君(をトンデモ威力で殴り飛ばした事)をすっかり忘れていた。

 

 様子を見る限りリカバリーガールの処置は済んでいるだろうけど、どうしよう。これじゃあ好感度駄々下がりだ…!このままでは彼とソウルメイトになるどころか、これから先ずっと敵意を向けられる可能性ががががが

 

こうなったら、起きたタイミングを見計らって治療→ありがとナス!(好感度うなぎ上り)→ユウジョウ!→僕らフレンズだもんげ!

 

ヨシ!(現場猫感) これで好感度上昇間違いなしやろ!

そうと決まれば早速……ところで赤糸虫君いつ起きるんです?(ガバ)

 

『……しょうがねぇなぁ』

 

 ん?どうしたのシンビオート、なんか急にCV:野○雅子めいた口調になって。それに赤糸虫君の顔に近づいて───

 

 

がちゅ

 

「あっ」

「すぅ…すぅ…ん、む?……んんんんんんん゛ん゛んんんん゛!?

 

 シンビオートが赤糸虫君の首から上に齧り付いて濃厚的搾取(意味深では無い)してる光景。それを見せられる僕の心情は「あぁ、またこれか壊れるなぁ」と冷静なものだった。

 

「〜〜〜〜ぶはっっっ⁉︎なになになになに⁉︎何が起きたの⁉︎」

 

「……あ、どうも」

『ハァイ ジョージィ…』

 

 辺りを見渡しつつ、こちらの顔を数回確認。そしてようやく状況を理解出来たのかクソデカ溜息を吐いた後に口を開く。

 

「あぁ、そうか。負けたんだねボク」

「うん。そうだけど……」

 

 あれ、思っていたより落ち込んでないと言うかやけに冷静と言うか……でも何はともあれ元気そうで良かった。それに好感度が下がっているようにも見えないs

 

『ねぇ どんな気持ち?どんな気持ち?勝つと言っておきながら呆気なく負けたのってどんな気持t「シンビオートォ!

 

 いつものうに爆弾投下をするのをヤメロォ!あれか、お前の中身は(爆弾)を撒き散らさないと気が済まないバゼルギウスだったりするのかこの野郎!

 

「大丈夫だよ別に気にしt───っ!」

「!? 赤糸虫君大丈夫?」

 

 僕はベッドから出ると苦痛で顔を歪ませた彼の元に駆け寄る。不味い、やっぱりあの威力の技(?)を至近距離から受けていれば傷も残ってる筈だよ。

 

と言うかリカバリーガールの治癒でも治しきれないって……臓器辺りにダメージが残ってる感じかな。

 

「動かないで、とりあえず傷を治そう。シンビオート頼んだからね」

『終わったらチョコ』

「はいはい」

『ゴデバでな』※高級ブランドのチョコ

 

 足元見やがって……!まぁいい。とりあえず早速治す為に衣服を……衣服を……って。

 

「あの赤糸虫君?ちょっと服から手を離して貰っていいかな?」

「……無理」

「いや無理じゃなくて、離して貰わないと傷治せないんだけど」

「あ、うん。大丈夫だから…」

 

 なんで顔赤くしてるの君。別にラブコメ的な展開でも無い訳だから心配する必要は────はっ、そう言う事か!(唐突な閃き)

 

「大丈夫だよ赤糸虫君。僕は普通に女性が好みだ

「いやそう言う問題じゃないんだけど⁉︎」

 

 なんで?僕って別に男色家でも無ければホモでも無いノンケだからね?純粋に女性好きだからね?

……えっ、動物はどうなんだって?

けものは性別関係無く愛するものだルルォ!

 

「大丈夫。僕別に肌を見ても気にしないから」

「いやボクが気にするから!ホント勘弁してッ!?」

 

 ええい、拉致が開かない!もし肋骨が折れてたら内臓に突き刺さる可能性だってあるのに……!

 

「あぁもうッ!行けシンビオート!くすぐる攻撃!」

『チョッギップルリィィイイイイイ』

 

「あっ⁉︎あははははハハははは!?ちょっと⁉︎や、やめッ、ヤメロー!!脇腹はちょっと待って!アハハ!やめっ、やめっ!あははははははははははははは!?」

 

 よし、隙あり!

 

「あっ!?」

「あちゃー、痣になってる。下手すれば内蔵までに傷が残ってる可能性も……」

「あっ……、あっ……あ……ッ⁉︎」

 

 全く顔を赤くしちゃって、女子じゃあるまいし。……いやでも、体を見られたくない人もいるよね。うん流石に無理矢理は良くないな後でちゃんと謝らないと。

 

『キョウセイ、それ以上視線を上に向けるなよ』

「は?何言っt───────

 

視線を上に動かすとそこには男性が付ける必要の無いものが……うん?

 

 

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【主人公s脳内】

 

  いや、       どう言う事?

 なんで?    これは?

WHY?      

    幻術か?     また幻術なのか?

           すっごーい!

オレはお前のオモチャのチャチャチャ?

  磯野サッカーしようぜ!  

          ウンチ-コングって知ってる?        

ニゴリエ-スハオレノモノダ!パンツハワタサン!  ウェッ!?タチバナサン!?

 ひ ろ が る プ ラ ズ マ

 

 

……ヨシ、落ち着いたな。とりあえず冷静に状況を分析してみようか。目の前には赤糸虫君。そして僕は上着を無理矢理脱がそうとした。

 

うん、そこまでは良いよ?

 

 ただ問題なのは赤糸虫君が"胸部に布地のモノを纏っていた"事なんだよね。これってアレだよね?女性特有の上着に似てる……と言うかそれそのもの(ブラジャー)だよね?

え、という事は何?赤糸虫君って……赤糸虫さん?

 

……ハイハイ成る程。そういう事ね大体分かった()

 

「赤糸虫く…じゃなくて赤糸虫さん」

「ひゃ、ひゃい⁉︎」

 

「罰は受けます(肝の据わった目)…heyシンビオート」

『Are You Ready?』

 

 出来てるよ……と、言うわけで強姦未遂の主人公を裁くRTAはっじまーるよー。ルール説明は省きます時間の無駄なんでね(白目)

それではハイ、よーいスタート(棒読み)

 

戒めーーーーーっ!

「うわぁぁあああああッッ!!??来正君ーーッ!?」

 

「わーたーしーが!来正少年と話しに来たああああああああああああああああああああッ!?」

「オールマイトどうしmうわぁぁあああっ!殺人現場ああああああああああああああああ!?!?」

 

「えっ、いや違うから!ボクじゃないからね!これシンビオートが勝手に!!」

『同意によるものだぞ』

 

 鮮血がぴゅーっと舞う中、室内に入って来たオールマイト、緑谷君。そして実は女の子だった赤糸虫君…じゃなくて赤糸虫さんの声で騒がしくなる中、僕の意識は暗転していく……あとついでに一言。

 

切腹って思った以上に痛いんだなって……。

 






男装女子にハプニング(ラッキースケベ)はベストマッチな組み合わせだと思います(煩悩)



〜〜キャラクター紹介〜〜

『来正恭成』
主人公(性犯罪者予備軍)。一線を危うく超えそうになった人。試合に勝ったが色々な意味(主に社会的な意味)で負けそうになったので自害した。うーん、字面が意味不明。

『シンビオート』
細くなった状態で戦った寄生生物。本来は肉体側をシンビオートが、作戦・指示を来正が行うが、その担当を交代する事によって来正の狡猾な戦法が前面に押し出された形態として戦った。
しかし、この形態でのシンビオートはあくまで来正の補助に回るのであまり好んで使うものでは無いらしい。

『赤糸虫知朱』
性別:♀
マルチバースの中でヒロアカ世界におけるスパイディ枠。
個性は蜘蛛っぽい事なら何でも出来る上に、電撃を発生させる事も可能。その内透明になったりするかもしれない。
腹パン(超強)を喰らうが何ともなかったぜ(震え声)



〜〜用語紹介〜〜

『我流武器術』
主人公が編み出した独自の武器術。シンビオートを武器に見立てる事により爪から剣へ、剣から槌へ、槌から弓へと凡ゆる状況に対応可能。しかし決して武器の扱いに長けている訳では無く、あくまで凡ゆる武器の扱いに慣れているだけ。
仮に正々堂々と武器の達人相手と戦う事になれば主人公は不利になる。

『ブラックパンサー』
アフリカの先進国ワカンダの王 ティチャラが黒豹のスーツを身に纏ったヒーロー。MCU版では全身がヴィヴラニウムと言うトンデモチートなスーツを纏っていた。
ちなみに吹き替え版の台詞「ワカンダフォーエバー」は今でもダサいと思う。けど個人的には好き。

『バードラン』
ガッチャマンより。G1号こと大鷲の健が扱う鳥形ブーメラン。だが別にグルグル回転しながら飛ぶ訳では無いので、ブーメランと言うよりは鳥の形をした投擲武器。

『弓の上手いおじさん』
アベンジャーズ中の一般人()のホークアイ。天才、超人等が揃うアベンジャーズの中で人間を卒業してないキャラクター。しかし弓矢のみで宇宙人達と戦ってるの凄い(小並感)

『忍者タートルズ』
ミュータント・タートルズの呼名の一つ。下水道に住む4匹の亀達(人型)の事を呼ぶ。今までアニメ化、実写化を何度もされている海外で人気の作品。ちなみにリアルタイムで新亀を観ていました。

『ウィップラッシュ』
アイアンマンに登場する敵の一人。本名はコミック版ではマーク・スカーロッティだがMCU版ではイワン・バンコになっている。
MCU版アイアンマン2にて素肌の上からギアを装着したイワンvsアイアンマンマーク5が印象に残っている。





試合最後に使ったワン・フォー・オール。
アレに関してはシンビオートが乗り移った事のある宿主の力をコピーすると言う能力が関係しています。コミック(原作)でもヴェノムはスパイダーマンに寄生した後、糸やスパイダーセンスを獲得しております。

ちなみに今まで(治療によって)乗り移った事があるのは緑谷君ばかり。つまりはそう言う事です。



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26話 違う!シンビオートが勝手に母呼ばわりを!

 投稿遅れて申し訳ありません。今回はネタ少なめでお送りします。



 

「………と、言うと。自分自身でも理解出来ない謎の現象が起こったと言う訳だね」

「はい。まさか腕がぐちゃぐちゃになるとは思いませんでしたけど」

 

 Hiya、Georgie(やぁ、みんな)。Aren't you gonna say、hello(挨拶はしてくれないの)?

………うん、なんか排水溝でオススメしてる変なピエロが憑依したような気がする主人公だよ。何故かオールマイトと面談的な事をしてるけど、僕自身何が起きたかさっぱり分からない。

 

「君の個性、シンビオートだったかな?多分これからも成長していくと思う」

「えっ、これ以上も成長するんですか?」

 

正直言って、もう十分な程の強さだと思うんですがそれは。

 

「いや、私が懸念してるのは個性のコントロールについてだ。何らかの要因で緑谷少年に似た力を宿した君はもしかしたらこの先、更なる力を獲得する可能性もある。君は個性の扱いは上手いがさっきみたいに身体を壊すかもしれないからね」

「……暴走ですか」

「YES、もしこの先また新しい力を手にする事となれば課題は増え続けるばかりだ。気をつけてくれよ来正少年!」

 

僕は「はい」と頷く。

 

「よし!……それと赤糸虫()()についてだが」

「いや違うんです誤解ですからホント勘弁してください」

「お、おう」

 

 本当いや、マジで本気に誤解なんです。いやだって赤糸虫君…じゃなかった。赤糸虫さんが女性だなんて誰が分かるんだよ!と言うか本人も何故にズボン履いていたの⁉︎普通女子生徒はスカート履くもんでしょ!

 

「いや、赤糸虫少女は入学時にスラックス(女性用ズボン)着用の許可を得ていたから……」

「あっ、そっすか」

 

 うん、コレ完全にこっちの落ち度だね。勝手に男と勘違いしてラッキースケベ(死)をかましたコッチが悪いね。

ハハハハハハハハハハハハ、よし謝礼金を用意しよう。

 

「示談で許して貰うには高校生の小遣いで足りるんですかね?」

「え、いや私に聞かれても……」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 結局オールマイトからしばらく様子を見る為、体育祭が終わった後に謝りに行きなさいとありがたいアドバイスを頂き僕は急いで観客席に向かって駆けていた。

何故かと言うともう既に次の試合である切島君と鉄哲君の試合が終わり、爆豪君と飯田君の試合が始まってるからだ。

 

「到着っと!」

「お、やっと来たか。随分遅かったな」

 

 すると僕等に気付いた砂藤君が「見てみろよ」と言わんばかりにステージへ指をさす。

そこには猛スピードで爆豪君に迫る飯田君の姿があった。

 

「であぁっ!」

「っ!甘えんだよッ!」

 

 エンジンのスピードを生かした蹴り。それに対して爆豪君は爆破の反動で空中を自在に駆け巡り、容易く躱してしまう。

 

『小回りの効く爆豪に対し飯田ダメージを与えられずーーーッ!さて、お次はどうする⁉︎』

 

「ンなもん効かねぇわ!サッサとアレ使えや!」

「ッ!……それがお望みなら!」

 

 すると飯田君は爆豪から距離を離すとクラウチングスタートの構えを取った。

……コレは!

 

『アレを使って来るか!』

「飯田君の全力疾走!」

 

「レシプロ・バーストォォ!!」

 

 直後、青い炎を脚部のマフラーから噴出させながら飯田君は爆豪君に接近を行う。

やっぱり速い!アレじゃ流石の爆豪君だって追いつけない⁉︎

 

「うおおおおッ!」

「チッ───!」

 

───SPANG!

 

 一気に懐に潜り込むとその場でバク転するように縦回転蹴り(ムーンサルト)が爆豪君の顎を捉えた!

 

『ヒャア!最高ギアによる蹴り!コレでヤツの顎と肉は砕けた!』

「そんな生々しい実況は(求めて)ないです……ん?」

 

──……ぐるん

 

 爆豪君が蹴り飛ばされて……そのまま綺麗に着地した⁉︎そんなまともに蹴りが入った筈なのにどうして……⁉︎

 

「いや違う!かっちゃんは蹴りが当たる直前にバク転することで威力を殺したんだ!」

「あの速さの蹴りをか⁉︎」

「あーやだやだこれだから才能マンは……!」

 

 緑谷君の分析によって僕を含めた周りの皆が騒がしくなっていく。いやいやマジでどうやったら蹴りの威力を軽減させられるのさ……!

 

「何っ!?」

「甘えんだよメガネがよォ!」

 

BOOOOOOM!!

 

 そんな驚愕に満ちた飯田君に対し隙を見逃す筈もない爆豪君はすかさず接近からの爆破をお見舞いする。

 

「飯田君!」

「飯田が場外にィィ!?」

 

 そんな光景に皆が声を上げていく。

……あ、うん。確かに場外へ飛び出しちゃったね?でもさ、

 

「それ飯田君の飯田君んんんんん!!」

 

 ステージ外に出たの眼鏡だから!眼鏡が本体じゃないからね⁉︎飯田君はメガネ掛けてるけどメガネ掛け機じゃないんだよ!

 

「ハッ、眼鏡ぶっ壊したら少しは周りが見えるようになったんじゃねぇのか ええ?坊ちゃんよォ!」

「……確かにそうかもしれないな」

「あ?」

 

 ん?飯田君、何故か自信満々だけどもしかして何か秘策が……!

 

「先程外れたのは重りだ」

「は?」

 

……はい?

 

「あの眼鏡は通常と比べて10倍の質量を持つ眼鏡だ」

「……は?(二回目)」

 

………んん?ちょっと何言ってるか分からないです(サンドイッチマン)

と言うか何故に重りなんて……あっ、やべ「重り付けて走ったら?」って言ったの僕だったわ。えっ?飯田君確かに真面目だけど僕が言った冗談を本気にしていたの?

 

………うん!よく分からんがヨシ!

とりあえず飯田君がそう思ってるならそう言う事にしておこう。

 

「真正面から……!」

「何しようが真正面から叩き殺してやるよ!」

 

「最速で……!」

「生意気言ってんじゃねぇぞッ!」

 

「全て…振り切る……ッ!」

 

 瞬間、ロケットの如く飯田君の脚から爆破のように炎が噴き上がり…消え失せた。

 

「は……?」

 

 直後、唖然とする爆豪君の背後に蹴りが迫る。

 

「ッ⁉︎」

 

 気配を察知したのか、後方に手の平を向け爆破による攻撃を行う。

……が、背後に居た飯田君の姿がブレる。

 

「残像───がっ!」

 

 すると全く別の方向から蹴りが入った。負けじと応戦しようとするが飯田君の攻撃の手は止まらず、爆豪君は防戦一方だ。

これは…爆豪君が追い付けない!?……いや、違う。飯田君が速過ぎるんだ!

 

「リアルのヤムチャ視点じゃねぇかよ……」

「すげぇ飯田の姿が全く見えねぇ…!」

「あのかっちゃんが……!」

 

「どうなってるんだよありゃぁ……!」

「解説役、詳細頼む」

「馬鹿でも分かるようにな!」

 

………なんで一部がこっち見て言ってるの?全部僕に任せれば分かると思ったら大間違いだからね?僕にだって分かる事と分からない事があるからね?

………オイ、デカい溜息吐いて「はー、つっかえな」と言ったヤツ誰だ。

 

『オレだ』

「お前だったのか……」

 

 とにかく…僕の推測では飯田君自身がエンジンになってるんじゃないかと思う。

よく分からないけど現在の飯田君はレシプロバースト以上の速度を出す為に身体に掛かる負担を無視して走っている状態だ。

 

とどのつまり『火事場の馬鹿力』によって無理矢理力を引き出していると言う訳だ。

 

 

「Puls Ultra!! レシプロ……エクステンドォォオ!!」

 

「ぐっ…おおおおッ!?」

 

 飯田君のトップスビートを乗せた全力の飛び蹴りが爆豪君の腹部を捉えた!

 

『全速力での臓物ブチ抜くキック。それに加えあの距離では一溜りも無い……』

「そうだね。……ん?シンビオート、それってフラグじゃ───」

 

ガシィッ!

 

 すると、どうした事だろうか。先程の蹴りをまともに喰らった筈の爆豪君が己の両手で突き刺さった飯田君の脚を掴んでいたのだ。

 

「何っ⁉︎」

「──がっ、……クソが…!少しはやるじゃねぇか……!けどな、()()()()()()()!」

 

 掴んだ脚をそのま振り回し投げ飛ばす。飯田君が再びクラウチングスタートの体勢に入ろうとするが、彼のエンジン部分からボンッ!と言う破裂音と黒煙が上がった。

 

「なっ⁉︎」

 

……飯田君も驚いているけど、まさか限界時間に到達した⁉︎

 

「ッ───死ねェ!」

 

 その隙を見逃さず爆豪君は爆発による加速で接近を行う。直後、飯田君の衣服を掴むとグルンと体を回転させつつ両手から爆発を起こす。

 

エクスカタパルト!!

 

BOOM!!

 

「がッ⁉︎」

 

 うわぁ。場外に投げ飛ばすんじゃなくてわざわざコンクリート製の地面に叩きつけるって爆豪君……。飯田君、背中痛めるどころか骨にヒビ入ってるんじゃないの?

 

「はっ、短時間速くなっても倒せなきゃ意味ねーんだよボケ!」

「くそ…たった10秒間だけか……!」

 

 いや、たった10秒でリアルなクロックアップでアクセルフォームなトライアル再現したの凄いと思うんですが。

これ下手したら将来フラッシュ並のスピードに到達して いつか時空超えるんじゃないの?

 

「さぁ、次はどうする?」

「くっ………降参だ!」

 

「飯田君降参!爆豪君第三回戦進出!」

 

 

 

 

 

 

 結果として爆豪君は第三回戦に出場する事が決定した。仮に僕と彼が勝ち進めば必然的に決勝で当たる事になる。

……当たるのかぁ(不服) 絶対に爆豪君とシンビオートのイザコザに巻き込まれてとばっちり受ける羽目になるよ。今までの流れからもそうなるって僕知ってるよ?

 

「おい」

 

 えっ、なんか下にいる爆豪君が呼び掛けて来たんだけど……えっ、僕?緑谷君とかじゃなくて僕なの?

何?まさか石でも投げ飛ばして来ないよね?流血沙汰はやめて……ってアレ?

なんか"サムズアップ"して来たんだけど?

 

………なーんだ。爆豪君って実は切島君みたく少年漫画的な男と男の闘いに燃えるタイプなのか!

それならそうと早く言ってくれれば────

 

「死ね」

 

 あ、違った。爆豪君サムズアップからサムズダウンに変えて来たんですかど。

完全に殺す宣言してるんだけど ツライです……。

 

『宣戦布告かぁ……いいだろう。キョウセイ、塩持ってこい』

「塩撒いても爆豪君は祓えないよ」

 

『いや、塩で直接殴って来る』

「それ岩塩だよね⁉︎使ってるの岩塩だよね⁉︎」

 

 やばい、流血沙汰の恐れがあるのって僕じゃなくて爆豪君の方だったわ。USJ事件のように頭に固形物をぶつけられる第二の被害者ががががが

 

「……取り込み中の所悪いが行かないのか?」

「行かないのかって……何が?」

 

「次、お前の番だぞ」

「えっ」

 

 障子君の口(複製腕によって作られた器官)から思いもよらない言葉が発せられる。……えっ、次僕の番なの?あれ、でも切島君の試合は?

 

「切島の試合はお前が居ない間に終わってたからな」

「勿論、俺が勝ったけどな!鉄哲、アイツも漢だったぜ……!」

 

……あ、うん。どうしよう、切島君の試合見てなかった以前に試合の存在すら忘れかけていた事に罪悪感が。

 

「そ、それじゃあ僕達行くから…」

『はー辛いわー。どこかの印象の薄いヤツとは違って注目されるオレ達辛いわー』

 

 

 

 

 

 

「切島ーーーーッ!!」

「傷は浅いぞしっかりしろ!」

『大丈夫だ!お前の試合はその…うん、よかったと思うぞ!』

 

「苦し紛れのフォローは……やめてくれ…ぐふっ

 

「「「「切島ァ⁉︎」」」」

 

 何気ないシンビオートの一言が切島君を傷つけた。

体は硬化出来ても心は硝子だったか……。

 と言うか(自分の試合が来るのが)早過ぎィ!そうなると次に僕が戦う相手になるのは………⁉︎

 

「よう」

「…轟君」

 

 まさか轟君と鉢合わせるなんて……シンビオートと言い争いになったからなのか少し気不味い所があるけど、今の僕はそれ以上に気不味い雰囲気の人が居るから問題無い!(投げやり)

 

……と言うかなんで"おにぎり"と"お茶"持ってんの?

 

「なんか控え室の前に置いてあってな……」

 

「へぇ、もしかして轟君のファンからの差し入れとか?」

『そりゃ良かったな。ところで腹減ったからソレ寄越せ』

 

 おい、差し出がましい上に嫉妬心が丸見えで見苦しいぞシンビオート。程度が知られるからやめてマジで。

 

「別にいいぞ……それとだな」

「ん?」

『ムシャァ…?』

 

「……悪かった」

「えっ」

 

 なに?いきなり謝られても困るんだけども僕何かした?……じゃなかった。僕何かされたっけ?

 

「それじゃあな」

 

そのま轟君は行ってしまう。

 

 ????? えっ、マジでなんだったの?

超圧縮言語で言われても何も伝わらないんだけど。

 

『mgmg…何がしたかったんだアイツ』

「さぁ……あ、おにぎり一つ貰うね」

 

 ちょうど二つあるので分け合うのは自明の理だって事は分かんだね。

……お、昆布だ。

 

『昆布か……何故チョコじゃないんだ』

「うん。なんでそこでチョコだと思ったんだ」

 

 チョコ入りおにぎりて。バレンタインデーでもそんな商品出されないでしょ……。

 

「お、梅干か……海老マヨが良かったn「梅は疲労回復にいいんだぞ貴様ァッ!(0M0)ウワァァァァァァァァァァ!!??

 

 その後、プロヒーローのエンデヴァーが角から飛び出して危うく心臓が止まりかけた。

ちなみにサインは保存用・観賞用・布教用に三枚書いてもらったので後で緑谷君に見せびらかそうと思った。やったぜ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

『さぁ!エヴリバディ!今回注目の対戦だ!』

 

 試合開始時刻と差し掛かり遂に始まる準決勝試合。相対するはトップクラスの実力の持ち主である轟君。緑谷君や八百万さんとの戦いを見て凄まじい個性とセンスを兼ね備えた彼に勝てる確率は……うん、考えるのは止しておこう。

 

あ、でも一応さっきの事について聞いておこう。流石に圧縮言語の部分でモヤモヤして負けたなんて嫌だし。

 

「あのさ」

「ん」

 

「さっき轟君が言った事。あれさ、何に謝ってるか分からなかったから、もしよかったら……もう一度説明してくれないかな? あ、いやならイイけど」

 

 僕がそう訊ねるとしばし考えた素振りを見せた轟君が口を開く。

 

「別に構わねぇよ……それにお前のおかげd『炎と氷のハイブリッド!氷のようなクールな顔に炎のように熱いヒーロー科!轟焦凍ォ!』…だ。悪かった」

 

……うん?えっ、何?今 なんと言ったの?

 

「…俺はお前の事を『対するはァ!傍若無人!俺を止めたきゃ止めてみなァ!ヒーロー科!来正恭成withシンビオートォォ!』って感じだ、笑えるだろ」

 

……うん、いや笑えないよ?内容が全く聞き取れてないから笑える箇所が理解出来て無いんだけど?

 

「いやごめん。僕としては笑う事は出来ないかな」

「……そうか、お前はいい奴だな」

 

 何がどうしてそう言う結論に!?紆余曲折あって和解した雰囲気なんだろうけど僕等1ミリも通じ合ってないからね⁉︎

一方的な勘違いだからねこれ!

 

「どうかしたか?」

「あ、なんでもないです」

 

 言える訳ないよ……っ!こんな澄み切った瞳になった綺麗な轟君相手にそんな残酷な事言える訳……っ!

 

『それじゃあ試合行くぜ!Ready START!!』

 

 そんな僕の思いを他所に遂に始まってしまった試合のゴング。僕等は互いに距離を取る為に、対する敵に見えないようにこっそりとクナイを形成しつつも引き下がる。それは相手も同じのようで轟君もその場から退いた。

 

よし、気合いを入れていくぞシンビオート!

 

『無論、さぁ覚悟はいいか!』

「いざ尋常にッ!勝b 「焦凍ォォオオオ!!負けるんじゃないぞ焦凍ォ!お前は俺にとって新たな光だ焦凍ォ!!」………」

 

 気合いを入れると同時にクナイを投げようとした手が止まる。轟君の個性がまだ使われてないにも関わらず僕等の周囲がまるで凍てついたかの如く時間が止まった(気がする)。

 

「………」

「………」

『………』

 

 

…………。

 

………………。

 

……………………。

 

 

「なぁ、もう一度言ってm「隙有りィィ!!」うぉおおおお⁉︎」

『チッ、避けたか…!』

 

「お前、さっき尋常にって言ったばかりだろ!堂々と不意打ちするかよ普通!」

 

 うるせぇ、天丼ネタは飽きられるんだよ!なんで毎度声デカイ人が台詞を遮って来るんだよ!

 

「轟君には悪いけど半ば八つ当たりで行かせてもらう!シンビオート!」

『そう来なくちゃなァ!!』

 

 腕から樹木のように伸びる触手に対して轟君は氷の壁を作り防ぐ。

……残念だけどソレを使わせて貰うッ!

 

「持ち上げろ……ッ!」

『こうか!』

 

 直後、バキリと音を立てながら氷壁が触手のパワーによって無理矢理地面から剥ぎ取られる。

 

『キャッチボールしようぜ!お前キャッチャーなッ!』

 

「なっ⁉︎」

 

 そのままシンビオートの触手によって防御に転用した氷塊が投げられるとは思ってもいなかったのか。轟君はその場から飛び退くように回避した。よし、このまま畳み掛ける!

僕は両腕にシンビオートを纏わせた上にヨーヨーの如く彼に向かって伸ばす。

 

円盤(えんばん)だと!?」

「なんとノコギリ!」

 

 氷壁を作り出すが、回転鋸はガリガリと壁を削っていき。砕き壊していく。

別に轟君としてはシンビオートに直接触れて凍結させる事も可能だろうけど、その時は手が無残な事になるだろうから出来ないよね!

 

「ッ!」

 

『お、土下座して降参か?いいぞ(こうべ)を垂れて跪け「違うッ!シンビオートジャンプだ!」⁉︎』

 

 僕が飛んだ直後に足元、いやステージ一面が氷に覆われる。一瞬、身を屈めた轟君は僕等の攻撃を止める為にステージごと凍らせようとしていたのか…!

そんな大胆な攻撃方法に轟君の個性が改めて強力なものだと再認識させられる。

 

……けど、

 

「シンビオート、気がついた?」

『あぁ、奴はまだ出し切れてない』

 

 シンビオートの言う通り。まだ轟君は炎を使ってない。

……いや使うのを躊躇っている。

左側の個性は最終手段、彼が本気になった瞬間になってやっと発動される。謂わばボスキャラが第二形態的になった的なヤツだ。

 

結局何が言いたいかと言うと……。

 

「本気を出させる前に倒すッ!」

『いいですともッ!』

 

「必殺!シンビオート・スプラッシュゥウウ!」

 

 

 ショットガンの如く放たれるシンビオート製の弾丸。轟君に向かって放たれたソレは見えない何か……いや、不可視の氷障壁によって防がれてしまった。

 

「ソレは効かねぇ……よッ!」

 

 直後、彼の周囲に散らばった弾丸の成れの果ては全て氷で覆われてしまう。あぁっ、くそ!赤糸虫君の戦い見て警戒してくるか!

氷の床に着地したと同時に全身にシンビオートを纏わせ、咆哮によって威嚇を行う。

 

『WOOOOOOOOOOOOOOッッ!!』

「来るか!」

 

 巨大な氷結攻撃に対し僕等は轟君を中心に円を描くよう回避を行いつつ距離を一定に保つ。

 

「いいぞシンビオート、常に轟君の左側(死角)へ回り込め」

『付け入る隙が見え見えってのはイイもんだなァ!』

 

(コイツ等、炎側に……ッ!)

 

『おおーーっと?どうした轟、あまり攻め切れてないぞーーッ!』

『理由は分からんが轟は来正の動きにあまり追い付けていないように見えるな』

 

 よし、読み通り上手く攻撃に移れないみたいだ。ここから接近戦に持ち込みたい所だけど無闇に近づくと氷漬けにされるから……!

 

「アレをやるぞシンビオート」

『よし来た』

 

「……?(アイツ等、こっちに手を向けて何を)」

 

 さっきのシンビオートスプラッシュは一切同時発射による大ダメージを狙う技。原理としては一箇所に溜めたシンビオートを火薬に見立て破裂させ射出した。

 

それなら 必殺技としてではなく通常の技の一つとして応用も可能じゃないかと考えていた!(拳銃)を構え、指先(弾丸)を目標に捉えて、シンビオート(火薬)によって発射する!

 

『SET…』

「これぞ名付けて、黒指弾(こくしだん)ッ!」

 

BANG!!

 

「ぐッ⁉︎」

 

 よし、命中!……だけどそこまで大したダメージになってないみたいだ。うーん、出来立ての新技はやっぱり練度が低いからなのか怯ませる程度か………けど

 

『隙が出来たなァ!!』

「うおッ⁉︎」

 

 シンビオートが伸ばした触手は轟君の足に絡みつき、こちらに引き寄せられて来る。

そのまま一撃、二撃と地面に叩きつけると頭をガッチリと掴みトドメと言わんばかりに地面へ思い切りキスさせた。うわ、痛そう…こりゃロキもハルクの事トラウマになりますわ……。

 

「ぐ……あ……っ」

『hey、どうしたヒーロー起き上がってサッサと俺の足にキスしな』

 

 そのままシンビオートは轟君の頭から手を離すと、その場で思い切り跳躍。

会場外に飛び出してしまうまでには行かないが凄まじいジャンプ力を観客達に見せつける。

 

『その綺麗な顔が潰れていなければの話だけどなぁ!!』

 

 脚から殺意のある(スパイク)を生やしたシンビオートはそのまま轟君に向かって踏み付けを行おうと急行落下していく。

 

 

刹那、目の前が炎に包まれる。

 

あつい(小並感)

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

『た、立ったぁぁあああ!!巨大な火柱が目の前に立ったぁああああああッッ!!』

 

 ステージ中央部。そこには左手から燃え盛る炎を放つ轟焦凍が立っていた。

あの瞬間、シンビオートによって潰されると思われた直前に轟は咄嗟に左側を使ってしまった。

 

(……ッ!)

 

 現状、轟は父親への執念は無くなっていた……が、彼自身 過去と言う名の(しがらみ)に縛られていた。

 

人は常に心の中に弱さを持ち、誰しも簡単に壁を乗り越えられない。

 

(クソッ、なんで……っ!違う。俺は……ッ!)

 

 緑谷との戦いで吹っ切れた筈の轟焦凍は脳裏に過ぎる母親の姿に震えてしまう。

左側を使う度にヤツと同じ存在になってしまう。そんな思いが彼の中で駆け巡る。

 

要するに轟焦凍は怯えていた。

別に父親と同じ存在になってしまう事に恐れているのでは無く、そんな自分に煮湯を浴びせてしまった過去の母親に恐れを抱いているのだ。

 

轟は未だに壁を乗り越えられずにいた。ふと耳元に彼を縛り付ける楔を打ち壊すような声が響く……。

 

 

 

 

 

GODDAMN HOTッ!!

 

 

 

 ただし凡ゆる物をぶち壊す濁声であるが……。

 

 

『GYOOOOOOOOOッッ!こんな所にいられるかッ!オレ様は(体内に)帰らせて貰うッ!』

「ちょ、ちょっと待って⁉︎炎がついた状態で無理矢理入るのやめ──熱ッッ!??!」

 

「………何やってんだお前等」

 

 先程までシリアスな雰囲気を醸し出していた轟がそう呟くのも無理はなかった。

火から逃れようと来正の体内に逃げ込もうとするシンビオートとその宿主。ちなみにその宿主である来正の頭に火が付いている事を彼自身は未だに気付いていない。

 

『「お前/君が火をつけたからこうなったんだよッッ!』」

「お、おう」

 

 そんな二人(一人と一体)は轟君の言葉に対し半分キレながら答える。来正恭成は激怒した、かの邪智暴虐かつ放火魔の轟焦凍を取り除かなければと決意した。

 

そんな勢いでキレ散らかす来正とシンビオートに対し轟焦凍は……

 

「……フ」

 

 笑みを浮かべた。このコンビを見ているとさっきまで怯えていた自分が嘘のように消え去っていた。轟焦凍は「なんだ、こんなものか」と心の中で自嘲したのだ。

 

今までヘラヘラして場所を選ばず騒ぎ立てる目の前の奴等が気に入らなかった筈の自分がこうして笑えている。

来正恭成の姿、それは人々に笑いを届ける姿に等しいのではないか?と轟は心の中でどこか確信めいたものがあった。

 

「やっぱり、面白いな」

 

「……人が焼かれている光景を見て笑ってやがる…⁉︎」

『本性現したな……まさかクレイジーなサイコ野郎だったとは』

 

 しかし、悲しいかな。轟の言葉は来正恭成に届くどころか別の意味で届いてしまったようだ。

悲しい…主人公は人の心が分からない……。

 

「……やっぱり似ているよ」

「何が?」

 

「俺は今までお前の事が気に入らなかった」

「えっ、……結構ショック受けたんだけど」

 

 そんな来正の言葉を他所に轟は言葉を続ける。

 

「俺はお前の言葉に忌避感を覚えていた……が、実際は俺自身ちゃんとその言葉に見向きしようとしなかった。それで漸く気付かされたよ」

 

 

お前は俺の母さんだ

 

唐突に何を言い出すんだ君は

 

 主人公が面食らったのも無理はない。いきなりクラスメイトに赤い彗星の如く母性を求められれば困惑するどころか一周回って困惑してしまう。

……いや結局のところ困惑するしかないだろう。

 

『つまり……キョウセイはママだった?』

「おいやめろ」

 

 ちなみに先程の轟の言葉は「お前からは俺の母さんと同じ優しさを感じる。俺はお前と出会えて良かったと思う」と言う意味での発言である為、本人にとってはそう言う意味で言い放った訳ではない。

もう一度言おう、そう言う意味では無い(二回目)

 

 

『今日からコイツ(恭成)がママだよ!』

ヤメロォ!!

 

 勘違いは加速する───。雑念を払うかのように相手を睨みつける来正恭成は激怒した、かの邪智暴虐かつ放火魔の轟焦凍を取り除かなければと改めて決意した。

 

「やっちまえシンビオートォォ!!」

 

 もはや問答無用。ここからがオレ達のステージだと言わんばかりの勢いでシンビオートに指示を出した。

 

『掛かって来なァ!マザコン野郎ッッ!』

俺はマザコンじゃねぇ!

 

「えっ、いやシンビオートが勝手n────

 

 

 直後、開始のゴング代わりとして爆炎がステージを包み込んだ。

 

 





【オチを分かりやすくしてみた】

「これ、よさぬかベイマックス・オルタ。わらわは轟の母になりとうない」
『うるせぇお前がママになるんだよッ!』

大体こんな感じ。


〜〜キャラクター紹介〜〜


『来正恭成』
犯罪者予備軍であると同時に轟君のママにされた主人公。
お前がママになるんだよォ!

『シンビオート』
大体コイツが悪い。

『轟焦凍』
愛など要らぬ!と言ってたら母性に飢えたキャラにされそうになっているが、圧縮言語を司る。冨岡さんにキャラが似てる気がする……。

『爆豪勝己』
着実と主人公との決勝フラグを立てているキャラ。
……やはりかっちゃんはヒロインだった……?

『飯田天哉』
眼鏡が本体、または眼鏡かけ機と呼ばれている真面目キャラ。主人公の冗談を真に受けた結果、新技を習得してしまった。

『飯田君の飯田君』
眼鏡であり本体。



〜〜用語紹介〜〜


『なんとノコギリ』
シュルシャガナ。調チャン可愛いヤッター。

『ロックバスター』
ロックマンシリーズに登場する主要武器。基本はチャージショットで連射はあまり使われてないイメージ。




今回は(比較的)他作品のネタ少なめ。
赤糸虫くんちゃんの絵を載せるので許してください


【挿絵表示】


主人公の姿が描かれてないのに別のオリキャラが描かれるとは、これはいかに。



コロナウイルスによって外出できない皆様の為にも娯楽の一環として楽しんでいただけるように小説を投稿し続けられればと思います。

小説で笑顔を……(浮かび上がるユート顔)






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27話 違う!シンビオートが勝手に準決勝を!


 ヒロアカ5期決定したり、デジモン放送したり、ULTRAMANが放送されたりと嬉しいので投稿します。



 

 アチチチチチ!?

やぁ、皆。炎を浴びてる主人公だよって、アツゥ!!

 

『なんとギリギリのところで畳返しの如く!ステージの床を引っ剥がし、炎をガードだ!面白れー防ぎ方すんじゃねぇか!!』  

 

 面白いって、こっちは必死なんですけどそれは(半ギレ)それはともかくシンビオート!こちらも攻めるよ!

 

『任せな、教育の時間だオラァ!』

 

 捲ったコンクリート製の床を轟君に向かって蹴飛ばし、それの陰に隠れるように轟君に向かって接近を行う。

 

バキバキと氷塊が発生する音が耳に入った瞬間、スライディングを行う。僕が地面とコンクリートの間を縫って通り過ぎた直後、宙に浮かぶステージの一部は氷漬けにされる。

 

そのまま下から出てきた僕に驚き固まっている轟君の股下も潜り抜けると腕にハンマーを形成し思い切り振りかぶる。

 

「らぁっ!」

「ッ!」

 

 咄嗟に出現させた轟君の氷盾とシンビオートのハンマーがぶつかり合う……が、空いた片手を使って轟君はこちらに向けて炎を放とうとして来た!

 

「おおおおおおおッッ!」

「シンビオートッ!」

 

 ベリベリと再びコンクリートの地面を剥がすとそれを盾のように扱い、至近距離から放たれる炎を弾く。

アチチチチチ!さすがキャップ!アイアンマンのリパルサーを真正面から耐えるなんて、やっぱりしゅごい……(現実逃避)

 

あ、やっぱり熱ッッ!現実逃避しても熱いものは熱いわ!

 

「防がれる……ならッ!」

「う……おおおおお⁉︎」

『何ィッ!』

 

 地面から氷柱が生えて僕等を空へ突き飛ばした⁉︎やばい、空中じゃ身動きが!

 

「これで終わりだ!」

 

 そのまま僕等に向かって轟君は燃え盛る炎を噴射させて来る。

アッアッアッ、やばいやばいやばい!死ぬぅ!燃え死ぬぅう!

 

「シンビオートシンビオート!地面、地面に伸ばして!」

『わかってる!』

 

 触手を地面に突き立てると僕等の身体が地上へ引き寄せられ、先程まで居た所に炎が通り過ぎる光景に思わずゾッとしてしまう。こんがり上手に焼けましたどころの騒ぎじゃないと思うんだけど。

 

『コラァ!少しは手加減しろォ!(悟空)』

「手加減ってなんだ……ッ!」

 

 伝説の超野菜人と化した轟君によって再び放たれる火炎。って、危なっ!ちょっと靴焦げたんだけど!後で八百万さんに新しい靴作れるか聞いてみないと……。

いや、そんなどうでもいい事は後にして。

 

やばい、轟君の本気強過ぎる!体温調節が可能となった今、長期戦で相手のスタミナ消耗は持ち込め無いしシンビオートでガードしたいけど弱点である炎を出し惜しみなく使って来る!

 

……一か八かアレを使うしかないか……ッ!

 

「シンビオート!腕の一本は壊すだろうけどカバーお願い!」

『アレか…、しょうがない。好きにやれ!』

 

「やらせるかッ!」

 

 地面に沿って剣山の如く形成される氷が襲いかかって来る。それを飛び退くと同時に指先の照準を轟君に合わせる。

 

「黒指弾・五連打ァ!」

 

BANG BANG BANG BANG BANGッ!

 

「ッ⁉︎」

 

 よし命中!隙が出来た今なら二回戦で出した"すごいパンチ(仮)"を出せるかもしれない!

 

『どうだオレ様特製の目潰しはっ!勝った死ねぃ!」

「これで終わりだ!」

 

腕を大きく振りかぶって………ッ!

 

「SMAAAAASH!!」

 

 

 

……………。

 

…………………。

 

………………………。

 

 

 

……あれ?

 

 

『おい!どう言う事だキョウセイ!出てないぞ!』

「そんなっ⁉︎まさか発動条件が存在するのk「どこ見てやがる」っ、しまっ───」

 

 

パキン

 

 

 しまった、脚に氷が⁉︎このまま伝っていけば全身が凍って……いやそれよりも早く氷だけを引き剥がすッ!

 

「脚を切り離せシンビオート!」

『分かってる!』

 

 ばつん! と手を斧に変形させたシンビオートは己の凍りかけた片脚を切り落とす事で全身に氷結が広がらずに済んだ。

ちなみに僕の足だけど靴先が少し掠った程度だったので大丈夫……結局八百万さんに作って貰うのは確定かぁ。

 

「っ…!よし、このまま「逃げの一手なんだろ。させねぇよ!」

 

 そんな声と同時に迫り来る焔。回避する為に飛び退いたが……一瞬遅れてしまった。

 

ぐああああああっっ!!

  

 両脚に熱と共に激痛が襲いかかって来る。炎に囲まれて絶体絶命な状況に追い込まれた事はあったが、両脚を焼かれる経験は初めてだ。

いや冷静に分析してるけど足がああああああああっっ!?

 

『命中ぅぅうう!巨大な炎を回避しきれず足にダメージ!来正立てないーーーーっ!』

 

「ぐ、……立て…ない…!」

『クソ!機動力を潰しに来たか!』

 

「やっぱ炎が弱点みてーだな」

 

気がつけば目の前に轟君が立っている。まずい、なんとかして───

 

「時間稼ぎをしなきゃか?」

「っ!」

 

「お前の両脚を治すのには時間が掛かる。早くても精々 十数秒、治った瞬間と同時に炎を叩き込む」

 

 読まれている。僕が次に何をするのか読まれている……ッ!

……いや、落ち着くんだ。読まれているなら、読まれているでそれで良い!

 

「……それじゃあ、その治る間に少し話をしようか。……轟君は夢はある?」

「………」

 

「君は言った。体育祭で一位を取るのは父親を見返す為だって 父の力を使わず勝つ。それが今までの君の目標だった」

「そうだ」

 

 何か憑物が抜け落ちたように落ち着いた轟君は淡々と答える。今までの彼なら逆上していたかもしれない。

……恐らく、今の彼にも何らかの負けられない理由が存在している。

 

 体育祭は最初は切磋琢磨し合ったり、楽しんだりと考えていた……けど、皆は夢に近づく為に戦っていた。

 

()()()()()()()()()()()()()

僕にだって、勝たなければならない理由がある!

 

「この来正恭成には夢がある…ッ!」

「ッ!」

 

 腕を天に向かって挙げた僕に反応したのだろう。轟君は炎を溜めた左手をコチラに向けようとする。

 

…あぁ、それでいい。

そのお陰で足から注意が逸れた!

 

『無駄ァ!!』

「っ、血だと!」

 

 彼の言う通り、シンビオートが僕の片脚を裂いた。それによって血が勢い良く噴出し轟君の目に直撃したのだ。

 

悶えている間にステージ端に向かって触手を伸ばし、距離を取ると改めて両脚への治癒を集中させる。

 

 

『ハッハハハハ!どうだ血の目潰しはァ!目薬代わりに丁度いいだろう!』

「おっ、おおおおお……ッッ!、シ、シンビオート…膝から血を飛ばすんなら量を抑えて…傷口開くの物凄く痛いから……!」

 

 

「そうか……両脚じゃなく"片脚"を治すのに集中して時間を短縮したかッ!」

「その通り…おかげで立つのもやっとだよ クソッタレ(半ギレ)」

 

 多分、膝がガクガク笑うどころか生まれたての小鹿のように足はボロボロなのだろう。

と言うか片脚死んでないコレ?とんでもない出血量だった気がするんだけど。

 

「………っ、緑谷みてーな真似しやがる」

 

『結局は如何にして上手く戦うかが肝だ。とどのつまり勝てば良いんだよ勝てばなァ!』

「分かった。分かったから中指立てないでくれる⁉︎」

 

 全国報道してるからね?このままだと本格的に色んな方面から敵を回す事に……あっぶな!?炎が顔面スレスレに⁉︎

 

「外したか…?」

 

「あっ──ッ……!」

 

 声が出そうになるが咄嗟に口を手で塞ぐ。そうだった、目を潰したのはいいけど耳がまだ残ってる!チェンソー地面突き立て高速移動(ロマン式移動術)で躱したのはいいけど、まずは轟君の攻略法を見つけないと……!

 

 

「何も見えねぇなら、全て凍らす……!」

『「ッ!?」』

 

 地面に手を当てた瞬間、空気が冷たくなった…!八百万さんや緑谷君の時の比じゃない程の冷気!まずい!よく分からないが、嫌な予感がする!シンビオート早く逃げ───

 

 

 滅 界 凍 原 

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

「……なぁ、轟って体温調節が出来るようになったから心置きなく最大威力ブッパ出来んだよな」

「そうだな」

 

「んで、だ。地面に手を付けて氷結使った結果が……これか」

「これだなー」

 

『氷山ンンンンンンンンッ!ステージ上に氷山が出現したーーーーーーッ!』

 

 観客達は圧倒されていた。轟が第一回戦で見せた本気の一撃、それを上回る全力全開の氷結攻撃。己の周囲は銀世界と化し、氷河期が訪れたのでないかと錯覚してしまう程の寒気がステージを包み込む。

 

「自分を中心点に剣山のように鋭い氷河を無数に作り出すなんて」

「うん。炎を使う事で体温調節が可能となった今、最大限の攻撃範囲を誇る轟君の必殺技だ……」

 

 麗日の呟きに戦ったからこそ分かる緑谷は肯定する。自身の指へのダメージと引き換えに撃つ弾丸では破壊出来ない程の物量を誇るその大氷河を前に思わず緑谷は青ざめてしまう。

 

「す、すげぇな!お前はそう思うだろ爆豪よ、オメェ勝つ自身あっか?」

「……チッ(半分ヤロー、まだ奥の手隠してやがったか)」

 

 爆豪勝己はテンションの上がった切島の問いに舌打ちで返す。普段の彼ならば即座に反論からの罵倒のコンボを行うだろう。しかし今の彼にそれをする程の"確信"が無かった。

 

(クソ程気に入らねぇがさっき出した半分野郎の技は俺の爆破を遥かに上回るパワーだ……!)

 

 圧倒的なまでの実力の持ち主であり、雄英高校推薦入学者であるとと同時にNo.2ヒーローの息子、それを観客の人々は再認識させられる。

 

「来正さ、これ躱せたって言うか逃げられた?」

「脚潰されてんのにか⁉︎ 流石に無茶じゃねぇのかそれ!」

 

 

「いや、まだだよ☆」

 

 騒ぐAクラスの中、一人。青山優雅を開いた。

 

「そうなのか?俺の複製腕からでは氷河に阻まれて来正の姿が目視できないが……何故、そう言い切れる?」

「何故って?もちろん簡単な理由さ☆」

 

 

 そう訊ねる障子に対して青山はステージを睨んだままだ。探知に優れた個性を持っている訳ではない彼だが、その声と目に宿る炎に障子は『スゴ味』を感じた。

 

クラスメイトである来正の勝利を信じて疑わない。

そんな青山の『スゴ味』に

 

「彼の心はまだキラキラ輝いているから…ね☆」

 

 ちなみに嘘である。

この男、信じる以前に根拠すらない言葉をつらつらと口に出してしまった。

しかし、一度口にした言葉を訂正すれば物凄く恥ずかしいのでそれっぽい雰囲気で座っている事にした。

 

 

「然り、奴の狂宴は未だ健在だ。待て、しかして希望せよ これよりは地獄の淵よりから蘇りし悪魔の逆襲だ」

 

 そこに常闇が便乗するように口を出した。彼もまた来正の勝利を願う者の一人。決して青山を倣ってカッコいい台詞を口にしたかった訳ではない。

そんな常闇にチラリと爆豪は視線を向ける。

 

(……何を口にしてるか分からねぇ鳥頭だが、野郎の言う通りだ。ヤツがこのままくたばるとは思えねぇ。それにさっきの半分野郎の必殺技 俺の見立てじゃあ、"後からクる"ヤツだ。それをアイツが狙わねぇ理由は無いからな)

 

 

「───っ、はぁ…はぁ……」

 

 視界が良好となりつつある轟。彼の口から白い息がブワリと吐き出される。

……いや、それ以外にも身体の凡ゆる箇所から白く輝く冷気が立ち昇る。

 

「くっ(凍傷覚悟の広範囲用攻撃。炎で体温調節出来るとはいえ 俺自身がここまでダメージを負うとは…)」

 

 霜で覆われた身体をすぐさま暖める為に轟は炎によって体温を上昇させる。氷結によって麻痺していた感覚も徐々に取り戻していく。

 

 しかし、だからと言って油断は決してしない。もしかすると先の技を避けているかもしれない。氷の中で攻撃の機会を窺っているかもしれない。抜け目が無い相手がどのように来るか、予測して対応する。

 

「どこだ…、ヤツは一体どこから……」

 

そう自分自身に言い聞かせながら轟は四方八方に意識を向ける。

 

 

 

ぼこり

 

 

 

「下かッ!」

 

 自身の足元に炎を放出。決して油断する事無く攻撃を行った。

 

「地面に穴を掘って避けるとはな、だが察知さられれば避ける暇は────⁉︎」

 

 言葉が途切れる。彼はミスを犯してしまった。目の前で灼いた筈の黒い物質。それがシンビオートである事は間違い無いだろう、しかし問題なのはその大きさである。

足元にある黒い物質ら手の平程の大きさしかないそれは『黒指弾』によって射出され、そのまま放置された弾丸であった。

 

 彼が犯したミスと言うのは集中し過ぎた事である。集中し過ぎた事により瓦礫に等しいソレを対戦相手だと決めつけてしまったのだ。

 

ならば本物は何処に居るか、そんな疑問を浮かべる轟の上空から突如として耳を(つんざ)くような雄叫びが響いた。

 

 

WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!

「なっ⁉︎」

 

 馬鹿な、そう轟の頭の中にそんな言葉が浮かび上がって来た。絶叫と共に空襲を仕掛けて来たソレの正体に彼は面食らってしまう。

 

『キシャァァアアアアアッッ!!』

 

意外ッ、ソレは恐竜ッ!

顎を大きく開いた体長2m程の肉食恐竜が牙を剥いて轟に襲い掛かって来たのだ!

 

「炎を…!」

『グルルシャァアアアアアア!!!』

 

 左手を前に突き出そうとした轟だが、それよりも早く恐竜が彼の腕に喰らいつくのが先であった。

深々と牙が腕に食い込み、まるで獲物を仕留めるかのように氷面と化したステージに擦り叩きつけをダメージを加える。

 

「ぐっ、あッ!やってくれたな……ッ!」

 

 右手に氷の刃を形成。そのまま恐竜の眼球に向かって突き立てようと轟は腕を振り下ろす。

しかし刃が刺さる直前に肉食竜の頭は泥のように溶け、首から上を失った竜は後方へ飛び退き距離を開けた。

 

 そして次第に首から上を形成していき、鋭い牙に謎の粘液を滴らせた舌。そして瞳が存在しない巨大な白眼が姿を現した。

 

「やっぱり、そう簡単にはいかねぇか……」

『Of Course…』

 

 直後、焼き尽くす灼熱と喉奥から黒の弾丸が同時に放たれた。

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 敢えて言おう。死ぬかと思った

ステージごと凍らされる直前に赤糸虫君…じゃなかった、赤糸虫さんがやったように会場上方に存在する開閉式屋根に向けて触手を伸ばしたのだ。

正直言って作戦や戦法、賭けにも至らない成行き任せの御座なりに等しい行為。

 

確かにシンビオートの触手を伸ばせる範囲は長い方だろう。しかし、あくまで客観的に見ての話だ。触手の射程距離は過去最高記録では120m程……そう、()()()1()2()0()m()なんだ。

その程度の長さの触手で遥か上方に位置する開閉式の天井に触手を伸ばせる筈も無い。

僕はその事を失念して赤糸虫さんのように触手を伸ばした。

 

……そしたら信じられない事に、触手が粘着性の黒い繊維状のモノへ変化した上に射程距離が大幅に伸びたんだ。

まるで赤糸虫さんの糸のように。

 

おかげであの必殺技を回避出来たからいいけど。

 

 

 何が起きたか分からない。でも、チャンスが巡って来た。神様か閻魔様かはたまた第四の壁を乗り越えてコミックの神様が力を貸してくれたのか。

 

 僕はこの好機を逃しはしない。シンビオートは不定の体を持つ生命体。

ならば それ即ち、シンビオートは千変万化の凡ゆる形に変わる自由自在の姿への裏返しだ!

 

「今までのシンビオートだと思うなよッ!」

『スケアリィィイイモンスタァァアアアッッ!!』

 

 口内から発せられた黒い弾丸と炎がぶつかり合う。けど打ち勝つのはアッチ側の攻撃だと知っていた為、別の氷山へ小型恐竜の如き跳躍力ですぐさま移動する。

 

『おい、ヤツを倒す方法は思いついたか?』

「……それについてだけど。まだ確信は出来ていない」

 

『そうか、つまり残りのピースを埋めればイイって事になるなァ!』

 

 雄叫びを上げながら鋭利な強靭な爪を轟君の背後に向かって振るう。しかし察知していたのか氷壁が出現し攻撃は阻まれてしまう。

 

すると、氷壁の向こう側から何か来るのを察知したシンビオートは咄嗟にその場から離れる。直後、先程まで居た所に火柱が立ち上がる。

 

『厄介だ』

「そうだね、だけどもう少しだけ粘って欲しい」

『All right』

 

 現状、両脚が使い物にならずシンビオートに身体の主導権を譲っている僕は指示するくらいしか出来ない。

 

今はとにかく炎を受けず、轟君に攻撃を命中させる事が肝心だ!

 

『GURUUUAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

 威嚇行動でもある咆哮を行いつつも肉食竜特有の動きで(図鑑、マスメディアより)相手を翻弄、攻撃を回避しながら接近を行う。

 

「氷結…いや、ここは炎をッ!」

『出させると思ったか!』

 

 例えステージが滑りやすい氷面だとしても強靭な鉤爪によってスピードは落ちる事はない。俊敏を意味するラプトル形状のシンビオートによる体当たりを轟君はマトモに受ける。

 

「このッ!」

『V、VOOOOOOOOOOOOOOOOOッッ⁉︎』

 

 しかし負けじと轟君はシンビオートの頭部にしがみ付きつつも身体から炎を発生させる。

炎が発動する瞬間、頭部を分離させたお陰で致命的なダメージは回避出来たもののシンビオートはその熱量に悶えている。

 

『クソッ、クソ クソクソッッ!やってくれたなッ!』

「ハァ…ハァ…、それはお互い様だ……!」

 

 毒を吐くシンビオートと肩で息を行う轟君。お互いほぼ満身創痍に近い……いや、実際の所こちらが不利に近い。

轟君の炎は申し訳ないくらいに相性が悪過ぎる。もし後一発でもマトモに食らってしまえばコチラの負けは確定だ。

それに加えて……!

 

「…待ってくれ、ちょっと止まってくれないか」

Don't stop me(俺は止まらねぇからよ)

 

 腰がぁ…ッ!これ無理な体勢でシンビオート纏ってるから腰への負担が尋常じゃないレベルで襲いかかって来るぅ……せめてゴ、ゴジラやグレイモン系統の骨格にしておくべきだった……!!

シンビオートを纏ってる僕自身にも負担がかかるんだよ。人間はディノニクス系統の小型肉食恐竜の体勢を保つような構造じゃないからそろそろ限界に近い。

 

……でも、やっとだ。やっと見えた。

 

「シンビオート」

『なんだ』

 

 勝利の筋道が見えた。そう伝えるとシンビオートは勝を確信したかのように喉を鳴らした。

轟君、君は本当に強かったよ。お世辞じゃ無く本気と書いてマジで強かったよ。

 

 ハッキリ言って氷結のみでも冷汗モノだったのにそこに炎の力なんてチートめいた力を持ってる君に最初は勝てるイメージが湧かなかった。

これから行う戦法は決して正々堂々と言えたモノじゃない……いや大体最初から正々堂々とはしてないけど。

 

それでも、僕には。

この来正恭成には誰にも譲れない夢があるッ!

 

「陳腐で臭い台詞を言わせて貰うけど───勝利の法則は決まった!」

『Ready Go!』

 

 刹那、口内から無数の弾丸を射出する。当然それを轟君は氷を盾代わりにして防ぐ。

まだだ、まだ終わらない!

 

「シンビオート、轟君を軸に旋回しながら撃ち続けろ!」

 

「ッ、反撃させない気か!」

 

 マシンガンのように放たれる黒の弾丸に対し轟君はドーム状の氷を張る事で防ぐ。

もっとだ、もっともっとぉぉおおおおお!

 

「黒指弾ありったけをッ!!」

 

 恐竜の短い前足を無理矢理標的に向けて弾丸を放つ。今はとにかく攻撃をし続けろ。次第にシンビオートの身体が小さくなっていき機動力も削がれていく。構うものか、もっと轟君に()()()使()()()()

 

「……それ以上撃っても無駄だ。お前の身体が無くなるぞ」

『なに、無くなる? ハハハそう言うならお前がトドメを刺してみろよNo.2の七光り』

「……っ」

 

ピクリと轟君は反応する。これは本気でやりたくなかった。

 

『親の七光りで生きてて恥ずかしくないのー⁉︎オレなら恥ずかしくて喉を掻き毟って死ぬね!』

「……違う」

 

ポツリと轟君は呟く。何度も言うけど現状思いついたのがコレなだけで決して彼を貶めようとは思っていない。いや本当に。

 

『Hey、どうした。怖がってるのかい七光りのお兄ちゃーん。オレ達をブッ飛ばしたいんだろ。オレ様をその炎で炙って痛め付けたいんだろう!』

「…そうだ」

 

『両脚をやられた、お前でも勝てる……氷結なんか捨てて かかってこい』

「やってやる…!」

 

『楽に殺しちゃつまらんだろう。ありったけの炎を放って、オレが苦しみもがいて、やられてく様を見るのが望みだったんだろう……さぁ来いよ!半分七光り坊ちゃん。それとも怖いのかい?』

 

 瞬間、ステージの氷山が溶け始める。それは彼の、轟君の炎を放つ準備段階を意味する。

そして、あまりの熱により蒸気の影に隠れた彼の口が開かれる。

 

野郎、ブッコロしてやる…!

 

 当然の結果である。逆鱗に触れ地雷原をタップダンス。火に油とガソリン、ヤバい燃料を混ぜ合わせたモノをブチまけるシンビオートの煽りスキルは凄まじいモノだと改めて認識させられる。

 

「一応言っておくけど違う、シンビオートが勝手に──いや、後は腹を括るしかないか…シンビオート!覚悟を決めろ!」

『あぁ、コレで失敗したら末代まで呪ってやるからな』

 

 うわ、恨みのレベルが半端じゃない。そう考えながら恐竜の姿を解いたシンビオートと僕はとてつもない熱量を帯びた轟君の()()()()()()()()()()()

 

『な、何ぃーーーーッ⁉︎ 来正&シンビオートまさかの正面突破ァアア!?盛り上げてくれるじゃねぇか!!』

『果たして無謀か、それとも考え有りきの策か…』

 

 マイク先生達の実況を他所に僕は彼に向かって走る。正直熱過ぎる。まだ距離があるのにここまで熱が届くとは……!

けど、子供の頃の炎と比べれば耐えられる!!

 

「真っ直ぐ向かって来るかよ……なら望み通りやってやる!」

 

「いいぞ焦凍ォォォオオオ!!お前の底力見せてやれぇええええええッッ!!」

 

 

 残り数メートル。炎が放たれれば確実に避けられない距離まで来た。それでも尚、轟君が焔を放たないのは確実に僕等を倒す為だと察せられる。

 

「それならこっちも真っ直ぐ、向かって、殴り倒すッッ!」

 

 接触する距離まで残り5m、4m、3m…!!

 

「燃え尽きろッッ!」

 

 その言葉と共に至近距離から凄まじい熱量を誇る轟君の爆炎が放たれた────

 

 

 

 

 

 

────"空中に向かって"

 

 

 

 

 

 

『な、何とぉぉおおおお!外したぁぁああッッ!轟焦凍 会心の一撃が明後日の方向に逸れてしまったぁぁあああ!!』

『……そうか、そう言う事か』

 

 

(っ、目の前が揺れて上手く立てない?…いや、体に力が入らないのか⁉︎)

 

「そう来ると思った。正面から来れば弱点である炎を使って来ると思っていた」

 

 轟君は驚愕が混じった表情でこちらを向く。彼ははこれまで炎と氷結を切り替えて使用していた。炎を攻撃に、氷結を防御や補助に君は断続的に使い続けて来た。

 

 けど、君はこれまで氷結と炎を交互に使って来た事があるのか?これまで炎を封印して来て、体温が急激に変化する事に耐性を持っているのか?

 

そこで僕は一つの疑問が浮かんだ。もしも彼の体温が激的に変化してしまうとすればどうなるのか?それも一度でなく、何度も何度も体温の上昇と低下を繰り返せばどうなるのか?

 

『そう言う事って、どゆこと?』

『轟の使う個性は身体にも少なからず影響を及ぼす。来正はそれを見越してわざと身体へ負担が大きい技を使わせるように誘導したんだよ」

 

先生達の言う通りだ。結果はご覧の通り、読みが当たった!

 

 

「寒暖差による疲労蓄積だとォ!これを狙っていたのかッッ!」

 

 

 エンデヴァーの大声が響く中、僕の片腕にシンビオートが纏わせ肥大化、硬化させていく。

あとついでに二人の仇も取らせてもらうッ!

 

「即興必殺……!」

黒曜剛拳(こくようごうけん)……!』

 

『「DESTROY(デストロイ)REVOLVER(リボルバァアア)!!」』

 

 

ゴォッ!!

 

 一撃目、黒の巨拳は轟君の腹部を捉え

 

「がっ────」

「撃ち…抜くッッ!!」

 

バゴォンッッ!!

 

 二撃目、パイルバンガーの如く拳が再び撃ち出され彼はステージの外へと吹き飛ばされた。

 

 

「そこまで!轟君場外、来正君 決勝戦進出!!」

 

 

WOOOOOOOOOOOOOOO!!

 

 

 拍手喝采、声援、僕の勝利を讃美する嵐が会場内に駆け巡る。

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

「負けたようだな」

「……あぁ」

 

 舞台と会場内を繋ぐ通路。そこに二人の男が居た。一人は来正恭成に負けも敗退となってしまった轟焦凍。もう一人はその父親でありヒーローでもあるエンデヴァーだ。

 

「気にする事は無い。今のお前より奴等の狡猾さが一枚上手(うわて)なだけだ、鍛えればすぐにでも奴等を超す事が───」

 

 そんな父親の言葉が耳に入っていないのか、轟焦凍はそのまま通路を進む。

 

「ガン無視はやめろ焦凍ォ!!」

「俺は……」

 

 ポツリと轟は呟く。

 

「俺は俺の行きたい道へ進む それだけだ」

「………」

 

 そんな言葉を残しそのまま観客席へ向かって歩いて行く。憑物が落ちた我が子を見てエンデヴァーはフンと鼻を鳴らす。

 

「成る程、『来正恭成』と言ったか……」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「YEAAAAAAAH!!サインだサインだエンデヴァーのサインだぁぁああッ!」

「フン、そんな色紙など幾らでもくれてやる」

 

「マジですか!?それなら観賞用と布教用にもう二枚サイン貰う事できますか?」

「欲張りだぞ貴様ァ!それよりもさっきの事は内密にしておけよ!」

 

「えっ、差し入れ(おにぎりとお茶)の事ですか?そもそも轟君信じないと思いますけど……まぁ、でもいいや。なんたってNo.2ヒーローのサインなんてオールマイト以上の価値がある国宝を貰っちゃったんですから!内密にしますよそりゃあ!ヒャア、流石エンデヴァーのサイン力みすぎィ!」

「むぅ……」

 ↑

(真正面から褒められる事に耐性の無いヒーロー)

 

「あ、それじゃそろそろ試合なので失礼します!あとヒーロー活動応援してますからー!」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「全く……調子が狂う奴だ」

 

 思い起こされる数分も満たない出来事。エンデヴァーはくだらんと一蹴すると身体の炎を燻らせながら観客席へと足を運んだ。

 

 

 




〜〜キャラクター紹介〜〜

『来正恭成』
相手のトラウマ(逆鱗)をわざと突きやがって…それが人間のやることかよォ!と卑劣な策を講じた主人公。ケモナーだがそれ以前にヒーローのファンである。

『シンビオート』
いつもの黒塗り畜生寄生生物。今回はいつもよりイキイキしてる気がした(小並感)

「小型肉食恐竜形態」
ラプトル(例としてディノニクスなど)をモデルに俊敏さ、流動体による筋肉から生み出されるパワーが特徴的な形態。しかし中の人が体勢的にキツイため持続性が低い。

「DESTROY・REVOLVER」
己の腕をパイルバンガーに見立て殴るシンプルな技。緑谷のSMASHと八百万の杭撃機を参考にしている。


『轟焦凍』
付け加えた圧縮言語キャラは何処へ行ったのか。負けこそしたものの、どこかスッキリしたような顔で観客席へ戻って行った。

「来正は…俺のお母さんだ」
Aクラスの皆『ッ⁉︎』

修羅場予測可能回避不可能。大体エンデヴァーが悪い。

「滅界凍原」
オリジナル必殺技。強力な冷気で周囲をツンドラ地帯に変える技。しかし後から炎で体温を戻す事を前提とした技である為、使った後は機動力や身体が凍傷になる等のデメリットが存在する。


『エンデヴァー』
ファンに対して塩対応をしていた所為か、真正面から凄く褒められる事に耐性が無い設定が生えてきた。

主人公「エンデヴァーいいよね……」
羽が生えた人(CV:中村○一)「いい……」

職場体験でこんな会話があったらいいなぁ。



〜〜用語紹介〜〜


『伝説の超野菜人』
一人用のPODや親父ィなどニコニコで人気なお方。ちなみに作者は旧と新どっちも好き。

『すごいパンチ』
元ネタはとあるシリーズより。削板軍覇の謎パンチ。大体これとおんなじくらいの威力出てると作者は思い込んでる。ちなみに原因は不明だが不発に終わった。

『ゴジラ、グレイモン系骨格』
ティラノサウルスの初期復元図のように尻尾を引き摺った垂直姿勢。恐竜よりは怪獣のイメージが強い。
ちなみに最近のティラノサウルス復元図が羽毛でフワフワしてる事にビックリした。
今での恐竜イメージががががが。




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28話 違う!シンビオートが勝手に決勝戦を!


ニコニコで無料配信されてる剣見てるけど不思議と笑いが込み上げて来るのは何故でしょうか?
今回は展開がやや早め。



 

「死ねぇええッ!」

「死ぬかぁあッ!」

 

 硬化した拳が爆煙を突き抜けて来る。それを紙一重で躱す爆豪は距離を一旦置くと両手を後方に向け、駆け出した。

 

「爆速ターボッ!」

「おおおッ!」

 

 爆破の反動によるスピードを乗せた飛び蹴りが硬化した切島の顔面を捉える。ビクともしない相手に爆豪は舌打ちをしつつ戦法を変えた。

 

「ゼロ距離、スタングレネード!」

 

 凄まじい光量の爆破が眼前を真っ白に染める。そんな目潰しに切島は思わず"その場に蹲ってしまう"。

 

「らぁぁああああああああああッッッ!!!」

 

BOM! BOM! BOM!BOM!BOM!BOM!BOM!BOM!BOM!BOM!BOM!BOM!BOM!BOM!BOOOOOOM!!!

 

 間髪入れずの爆破のラッシュ。全身を硬化させ対応するが、それも長続きせず次第にダメージは積み重なっていく。

 

「死ねぇえええッッ!!」

 

BOOOOOOM!!

 

 しばらくの時間が経過し、アッパーと共に放たれた爆破は切島の意識を奪うのに十分な威力だった。

 

「そこまで!切島君戦闘不能!爆豪君決勝戦進出!」

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

『はぐっ、がっ、ングングッ!がッ!がぶっ!』

「ハイハイ、落ち着いて。ほらココアお飲み」

『サンキュー』ゴキュゴキュ

 

 やぁ、皆。チョコを頬張ってるシンビオート横目に若干引いている主人公だよ。うわ、見てるコッチの口の中が甘ったるくなりそう。

 

「うぇえ…チョコレート食べるねぇ」

「賞味期限ギリギリの徳用チョコレート。消費したシンビオートを回復させるならこれが一番だからね……その分、僕にも栄養が行くから嫌なんだけド」

「ウチ胸焼けして来た…」

「チョコレートの山に囲まれるのは乙女の夢だけど……ううん

これ以上考えるのやめておこう」

 

 乙女の夢(高カロリー)。多額の金と高カロリーをリリースして浪漫をアドバンス召喚するヤツね。

そんな事考えていると脇腹に衝撃が走る。何かと思い視線を向けてみると峰田君と上鳴君が肘で突いて来た事が分かった。

 

「オイオイオイ、来正よォ女受け狙ってんじゃねぇぞコラ」

「隅に置けねぇな、テメェこの野郎」

「いやそんな殺気向けられても困るんだけど」

 

「さすがだな。とてもじゃないが俺はそんな物食えねぇ」

「轟君⁉︎」

『は?喧嘩売ってるのか いいだろう、お前は最後に殺してやる』

「シンビオート⁉︎」

 

 やばい、ただでさえ峰田君と上鳴君で色々と混沌としてるのに轟君と言う着火剤を導入された影響で火薬庫が炎上起こしそうになってるんだけど。

 

「轟ちゃん、口数が少ないから誤解されやすいのよ」

「轟ってあんなキャラしてたっけか?」

 

「そうそう(便乗) 轟君さ。あんまり誤解されるように言い回しすると嫌われちゃうから極力注意したほうがいいよ?」

「俺は嫌われてねぇ」

「あっ、うん」

 

 オブラートに包んでアトバイスしたけど……うん、何と言うか轟君って、こう言うキャラだったんだね。主人公キャラかと思いきや根は天然キャラだったのか……。

 

「でも、そんなにチョコ食っちゃ血糖値ヤバいだろ。よかったらナッツのクッキー食べるか?体育祭の合間に食べようと思って作ったんだが」

「え、砂藤君いいの?それじゃ頂くね」

 

 あー、五臓六腑に染み渡る(気がする)……。チョコで汚染された身体がミネラルで浄化されていく(気がする)……。

見た目キ○肉マンなのにAクラス屈指の女子力持ちって訳分かんないなこれ。

 

『おい、後ろ』

「えっ」

 

 突如シンビオートに後方をして振り返ると、そこには試合を終えた爆豪君が……うわ出た。やばい、ジッとこっち見てるんだけど。凄い見てるんだけど怖いんだけど、え、なに?不安を煽って精神と胃にダメージを与える高度な作戦だったりするの⁉︎

 

『やるって言うなら受けてたつぜ?』

「あのシンビオート、いきなり手を形成して何しt」

『アメリカ方式』

 

 急に両手で中指を立てる(いつものヤツを行う)シンビオート。そのまま片手を僕の首筋に当てる。

 

『フランス方式』

 

 あの首に刺さってる、思い切り手が刺さってるから。

 

『日本方式』

 

 痛い、目にグッサリ入って痛いから。目蓋じゃなくて指が目にダイレクトだから。

 

『イタリアナポリ方式。世界のフィンガーくたばれだ』

 

 いつもと比べて一段と気合の入った挑発。罵倒すら間髪入れずに行う挑発はシンビオートにとって宣戦布告。最初から本気の全力全開で戦うと言う証拠だ。

それに対して、爆豪君はと言うと……。

 

「言ってろ、俺が上だ」

 

 それだけを呟く。それ以上何も言わず、ただ僕等に対する宣戦布告を行ったのだ。

 

「かっちゃん…」

「……」

 

 緑谷君が爆豪君に声をかけた⁉︎ やめるんだ緑谷君、相手は触れれば誰にも構わず爆破するような傍若無人かつ悪鬼羅刹の爆豪君だぞ!確実に殴られるか爆破されるかの二択だぞ!(超失礼)

 

「…試合、頑張って」

「るせぇッ!俺が勝つに決まってんだろ!応援すんなやボケ!」

 

……えっ、応援?

ソウルメイトの僕じゃなくて幼馴染の方を応…援……?

なんか…うん、何故か分からないけど無性に凄まじい敗北感が…。

 

『デクを寝取られたのがそんなに悔しいか?』

「言い方ァ!」

「あ、あんた緑谷の事をそんな目で……」(一歩後退)

 

 いや違う、シンビオートが勝手に言ったからね?誤解だからね耳郎さん。だから僕から距離を置くのはやめて(懇願)

 

「(どんな噂が流れてもお前はお前だ。お前がいい奴である事、お前がクラスの皆にして来たと言う事実は揺らぐことはないから)俺は一向に構わねえ」

轟君!?

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 あの後、多少の(主に胃に対する) 修羅場になりはしたが致命傷で済んで良かった。死ななきゃ儲けモンって言うしね、仕方ないね。

決勝のステージに続く廊下の時点で精神的に瀕死だが大丈夫。これが終われば自宅には撮り溜めしておいたBNAと作り置きのパインサラダが待ってるんだ。

 

『そんな事言ってフラグを立てても知らないからな』

「ハハッ(鼻で笑う) もしもフラグ建設と言う事象が存在したら、それはあくまで確率論でしかないよ」

 

 メルヘンやファンタジーじゃあるまいし、いいかいシンビオート決勝へ続く廊下でトラブルなんか起きやしないよ。敵だって乱入出来ないし、皆とのトラブルは(誤解は多少残ってるけど)既に解決済みだよ。

 

 仮に未解決のトラブルがあったとするなら、フラグを建設したばかりの僕に今降りかかって来るだろうしね(慢心)さて、そこの角を曲がれば決勝ステージへの一本道────

 

「あっ」

「あっ」

 

あ、オッスオッス。赤糸虫さんこんな所で、何しtン゛ン゛ン゛ッ゛(胃への致命的なダメージ)

 

 駄目だったッ!今の僕に何もなかったように平静を装うのは無理だッッ!気不味い上に胃へのダメージが積もりに積もっている現状で通り過ぎるのは無理があるッ!て言うか何しに来たの赤糸虫さん⁉︎

……はっ、まさか息の根を止めに…⁉︎

 

「い、いやそんな事しないよ⁉︎考え過ぎだから!」

「あ、そうなの良かった〜……」

 

 なーんだ、ビックリして損した。流石に気負い過ぎていたのか、赤糸虫さんの言う通り僕の考え過ぎか〜。でも、何しに此処に来たんだろうか?

 

「ボクの…その……見たこと」

ミ゜」(胃に穴が空く)

 

 はい、お疲れ様でした。先生達には爆豪君の不戦勝って事で処理して貰おう。

それじゃあ、死んで貰おうかな。(草加スマイル+頸動脈に刃突き立て)

 

「ちっ、違う!違うからッ!!こ、これ」

 

 えっ……抹茶ラテ?自販機で売ってる抹茶ラテ渡されたんだけどコレで頭打って死ねと?

 

「糖の吸収を抑えるみたいだから」

『気が利くな。貰っておこう』

「…あと口止め料として」

 

 はい、全力を持って口外致しません。もし口外しようものなら全身に柵を刺してナランチャーーッ!します。はい、絶対口外しません(念押し)

 

「あと……決勝戦がんばって」

 

その一言を残して彼女は去って行った。

 

…………。

 

………………。

 

「シンビオート」

『ん』

「とりあえず胃に出来た穴塞いでおいて」

 

 どうしよう今まで男だと思って来た赤糸虫さんに不覚にもドキッと来てしまった。シンビオート、これってどんな症状なんだろう。

 

『動悸だな。さっさとソレ飲んで落ち着いておけこのクソ雑魚童貞』

「あっ、はい」

 

ウチの寄生生物が辛辣でツライ……。

 

 

 

 

 

 

『雄英高体育祭もいよいよラストバトル!1年の頂点がこの一戦で決まる!いわゆる決勝戦!ヒーロー科 来正恭成VSヒーロー科 爆豪勝己!』

 

 遂にこの時が来た クラスの皆もスタンおじさんも……日本中の人々が僕等を見てくれている。無様な姿は見せられない。

例え相手があの爆豪だとしても僕は決して屈する事は───

 

「おい」

「ハイッ(裏声)」

 

 すみません嘘です。爆豪君相手にはどうしても体が反応するんです。切れたナイフ改めピンの抜けた手榴弾である彼を前にすると、どうしてもビビるんですハイ。

 

「二回戦ン時、最後に使ったアレ出せや」

「アレって……」

 

「最後に使ったオールマイトやデクみてーな奴だわボケ!ソレ使わせた上でブッ殺すッ!」

「……使わなかったら?」

ブッ殺すッ!

「ちょっと理不尽過ぎやしません?(正論)」

 

 そもそもあの技は僕自身何をどうやったのか未だに理解不能だから出したくて出せるものじゃないんだけど……いや、今弁明しても多分 無意味に怒らせるだけなんだろうなぁ。

 

『そんなに顔真っ赤にさせてどうした?……あぁ、そうか。それで自分はデク以上だとマウント取りたいのか!HAHAHA、こりゃ傑作だ。自分じゃ勝てないからってオレ達を倒して満足したいって言うのかい?』

「あ゛あ゛?」

 

 んぐぅッッ!(胃へのダメージ三倍)

あぁ、予想していた!二人(正確には片方は一体)を引き合わせたらこうなる事ぐらい覚悟はしていた!

けどこんなにもギスギスするなんて予想外だ……ッ!

 

……それでも。

 

それでも、()()は前に進まなきゃ行けない。

 

「爆豪君」

「あ?」

 

 

「僕等は負けるつもりはない」

「……俺に勝つって言いてーのか」

 

 

そうだ

 

 僕はハッキリと彼に向かってそう告げる。それは僕が生涯初めて行った宣戦布告。『爆豪君に勝つ』その一言は純粋に重かった。

 

僕自身の覚悟の現れ、この先に待ち構える地獄へ足を踏み入れる為の暗号(パスワード)

その一言を聞き、爆豪君は────

 

「やってみろよ」

 

──戦闘体勢に入った。

 

『Ready Start!!』

 

 

「ブッ殺すッッ!」

「全弾射出ッッ!」

 

 

BOOOOOOOOOOOM !!!

 

 

 試合開始と同時に大爆発と黒の弾丸が放たれる。ステージの中心で爆煙が発生するが、その黒煙の中から爆豪君が突き進んで来た。

 

「ンな屑弾で俺倒せると思ってんのかテメェ!!」

「いいや!」

 

 弓の弦を引き絞り三本の矢を放つ。しかし既に見切られていたのかアッサリと掴まれ爆破で消炭と化してしまった。ミンチより酷えや…。

 

「シンビオート、棍で行くよ!」

『任せな』

 

 長柄武器を形成し、突き進んで来る彼に向かって振るうが爆破の反動で躱されてしまう。

空中を飛び回られるのは不利……ならッ!

 

「伸びろッ!」

 

 数倍の長さにも伸びた棒をバットの如く振るう。遠心力を乗せたソレは真っ直ぐ爆豪君に向かっていく……が、易々と回避されてしまった。

 

「当たらねぇんだよ、ンな棒切れが!」

『どうかな?』

 

 瞬間、長柄武器が30cm間隔でバラけると鎖のようなもので連結されていき長身の多節棍に変形した。

 

「何っ⁉︎」

「落ちろッ!」

 

 多節棍を驚愕した爆豪君の足に絡ませると、一気に地面へと叩きつけた。肺から一気に空気を吐きだした所為か隙が生じた!

 

「一気に決めるッ!相手に反撃の隙を与えるな!」

『いいね、気に入ったぜ その案』

 

 全身が黒に包まれると同時に大きく跳躍。そのまま爆豪君に向かって落下して行く。

 

『トマトのように潰れてなァ!』

「言ってろ寄生虫野郎がッ!」

 

 直後、身を翻してシンビオートの踏みつけを回避した爆豪君はシンビオートの胸に両手を密着させた。

まず───ッ!

 

「爆ぜろッ!!」

『殴るッ!!』

 

BOOOOOOOOM!!!

 

 腕に纏わり付いた黒の籠手は爆豪の顔面を捉える。直後、身体の中心に熱と衝撃がズガンと走る。

 

「がッ⁉︎」

「うっ⁉︎」

『〜〜〜〜ッ!』

 

「相打ち……いや、来正のパンチが先だ!」

「でも爆破もモロに入ったぞ!」

 

 お互いの攻撃によって距離が開かれる。振り出しに戻ったか……相手の爆破は轟君の炎までとは言わないけどかなりダメージが入る。

けど爆破の射程距離は轟君よりも短い!なら……!

 

「近づけずに倒す 喰らえ!シンビオート・スプラッシュ!!」

『シャァァアアッ!!』

 

 両手に溜まった弾丸を一斉に放射すると、相手はそれに対して爆破のラッシュで応戦し始めた。

 

「ンな豆鉄砲で倒せると───!?」

 

 突如として爆豪君の動きが止まり 弾丸の雨霰をその身に受ける。

よし成功。紛れ込ませていた瓦礫が目元に命中して隙が生まれた!

今の内に畳み掛ける!

 

「(破片だとォ……!野郎、コンクリートの破片を弾丸の中に紛れ込ませていやがった!)クソがぁあッッ!」

『無闇な爆破でオレを倒せるとでも?』

 

 音を頼りに打ち込んだ爆破は不発。直後力任せによるラリアットにより爆豪君は地面に叩きつけられた。

 

「目潰し⁉︎」

「男らしくねぇ⁉︎」

 

『卑怯だって怒るかい?』

「いいや、だが底が知れたな」

 

 ッ!シンビオート、今すぐ離れて────

 

「遅えわ!」

 

 するとシンビオートの背中にしがみ付き、そのまま力任せに体の中へ腕を突っ込んだ⁉︎

 

「最大威力だ、持って行けッ!!」

 

BOOOOOOOOOOOOOOM!!!

 

 

GAAAAAAAAAAAAAAAッッ!!

「がっ────⁉︎」

 

 

『超至近距離からの大爆発ーーーーッッ!!これは痛い!来正共にシンビオート、大ダメージ!この距離からの攻撃マトモに喰らって立つのも難しいか⁉︎』

『だが、それはコッチも同じみたいだな』

 

 

「ハァ…、ハァ…、クソが…ッ!テメェ。俺を巻き添えにする為に掴んで離さなかったな……ッ!」

「っ──ごほっ、がはっ……そうしないと君に勝てないと思ったからね…!そのボロボロの腕でまだやるつもり?」

「たりめーだ…!テメーこそ寄生虫野郎を使えるんだろーな……!」

 

 爆豪君の言葉の後、シンビオートが僕の顔半分を覆い出現する。

 

『オレを心配してくれるのかい? 泣かせてくれるなぁ、悪寒と嫌悪感でゾクゾクして来る』

「ハッ、テメーは何度も殺したって死にそうにないからな。都合の良いサンドバックが壊れなくて安心したぜコッチはよォ……!」

 

 お互いにニタリと不適な笑みを浮かべる。ちなみに僕はと言うと爆豪君とシンビオートと何回も見比べている。

……なんか似た者同士だなぁ。

 

「あのさ、仲良いでしょ君等」

『「よくねぇッ!!」』

 

 いや、やっぱり仲良いよ君達。

 

 

「うるせぇッ!俺はお前等を超える!求めるのは完膚なきまでの勝利ッッ!!さぁ撃ってみろや!特大の必殺技ってヤツをよォ!!」

 

 爆破による高速移動でこちらに向かって来る。いや、だから使えないんだって!そんな簡単に……。

 

『いいや、できるさ』

「……シンビオート?」

 

『お前なら出来る……オレを信じろ』

「……分かった」

 

 そう返すと僕は利き手にグッと力を込める。イメージだ…イメージしろ。あの時に出た力、姿勢、何でもいいから同じように……ッ!!

 

爆豪君が迫って来る中、頭の中でイメージを繰り返す……。

……ッ これでどうだぁああああッッ!!

 

 

「SMAAAASH !!!」

 

 

 

………………。

 

 

 

「…あの、シンビオート。出ないんだけど」

『スマン、どうやら気の所為だったらしい』

「シンビオート⁉︎」

 

BOOOOOOOOOOOOOM!!!

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

『大爆破が直撃ィーーーーーッッ!!来正withシンビオートマトモに受けてしまうーーーーーッッ!!』

『熱が弱点であるシンビオートに対してこの威力の爆発……流石に耐えられないか?』

 

 爆煙がステージから上がり、観客達の声援が響き渡る会場。その爆破を引き起こした張本人である爆豪勝己は

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!

 

 物凄く怒っていた。富士山に核燃料を投下した挙句、ニトロに対しブラストバーンで着火したが如く爆豪は怒り狂っていた。

 

「あの野郎……ッ! 使()()()()()()ッッ!!」

 

 彼の怒りの原因は対戦相手である来正恭成によるものである。来正に対して爆豪は特大パワーによる自滅覚悟の鉄拳を使わせる事を前提に勝利すると決めていた。

 

しかし相手はそれを使わずに爆破を受けた。

爆豪にとって舐めプレイ(手加減)される事は最大の屈辱だ。これでは因縁の相手である緑谷出久や轟焦凍、そして先程、爆破を受けた来正恭成に"完全勝利"すると言う目標が台無しである。

 

「ざっけんな……ッ!!」

 

「来正君、戦闘h「まだだッッ!!」えっ⁉︎」

 

 戦闘不能。そうミッドナイトが言うのを遮るように叫び、駆け出した。

 

「ふざんけんじゃねぇぞテメェ!これでもう終わりかッ!」

 

『えーと…?試合終わってる?それとも続行?』

『分からん』

 

「こんな一位なんざ認めねぇッ!舐めプのクソカスに勝っても意味がねぇんだよ!テメェを…テメェ等を超えなきゃトップの価値はクソ以下すらねぇんだッ!!」

 

 叫ぶ。喉奥から血が飛び出るかの勢いで彼は爆煙の向こう側へ叫ぶ。

彼が願うのは唯一つ。

 

「立てッッ!!」

 

そして、彼等もまた爆豪と同じ願いを持つ。

 

 

「立て!」「立てよ!」「根性見せろ!」「その程度じゃねぇだろ!」「もっと魅せてくれ!」「立てーっ!」「立て!」「まだイケる!」「ヒールの力見せてみろーーッ!」

 

 

 入り乱れる観客達の声。ヒーローを求めるその声援を鍵として、彼は再起動を果たす。

 

「───なッ!!」

「………!!」

 

 爆煙から猛スピードで突き抜けて来たその人物は爆豪の背後を取る。衝撃と熱により半ば満身創痍に近いボロボロの体を叩き動かす彼は爆豪の首にグルリと腕を回すと、一気に力を込め締め上げた。

 

 

『チョークスリーパーホールドッッ!!復活の来正恭成、攻めに行ったーーーッ!』

(がっ……!やっぱり、くたばっていなかったか……ッ!)

 

 

 ミシミシと締め上げれていく頸動脈。完全に決まった裸締めは絶対に逃げられない。己が撒いた種により形成逆転。優勢から一気に不利な状況へ追い込まれてしまった。

そんな失態犯してしまった爆豪は─────

 

(そう、こなくちゃなぁ……ッ!!)

 

心の底から歓喜していた。

 

「ぐ…がぁーーーーーーーッ!!」

 

BOOOOOOM!!!

 

『と、飛んだーーーーッ!裸締めの状態で二人とも上空へ飛んで行ったーーーーーーッッ!!』

 

 両手からの爆破により絞め技を掛けられた状態でも尚、爆豪は止まる事を知らない。否、この程度では止められないのだ。

 

「おおおおおおおおおッッ!!」

 

爆豪勝己は更に加速する────!

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

……ん、風を感じる…。

前から凄まじい風が吹いて───んん?

 

なんで僕、爆豪君に背負われてるの?なんで上に向かって真っ直ぐ飛んでるの?

 

「っらぁッッ!!」

「お、おおおおおお!?こ、ここは何処ッ⁉︎ さっきまで手元にあったヒーローコミックは⁉︎」

『判断が遅い!』

 

 バチンと頬に衝撃が走る。痛っ!ビンタされたんだけど痛っ⁉︎周りを見ると何故か空に放り投げられていた事に気付く。

えっ、何がどうなってこうなってるの?確かすごいパンチ(仮)が不発に終わって爆破された所までは覚えているんだけど。

 

……あっ、さてはシンビオートの仕業だな。

 

『ご名答。オレ様がキョウセイを動かしてなきゃ負けてたからな』

「そうなんだ、ありが「コッチ見ろやァ!!」うおっ⁉︎」

 

「意識戻ったんならサッサとぶっ潰してやらァ!」

 

『アッチは相も変わらずだな』

「やってやる……!シンビオート、行くぞッ!」

 

 現在進行形でステージに向かって落ちる僕等を追跡する形の爆豪君。それに対し握り拳を弓の弦を引き絞るように構えた。

 

「やっと、その気になったかッ!!いいぜ真っ向からねじ伏せてやるよォォ!」

 

 爆破のスピードに回転を加えた人間砲弾がコチラに接近して来る。

真っ向からやって来るならコチラも迎え撃たなければ無作法と言うもの……!

 

「死ねやぁあああッッ!!」

「必殺、黒曜剛拳……!」

 

 

 

榴弾砲着弾(ハウザー・インパクト)

DESTROY・REVOLVER

 

 

KABOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!

 

 

 次の瞬間、目の前の景色が流転。そして空気が爆ぜる。凄まじい風圧に飛ばされた僕はステージに強く叩きつけられた。

 

 

「〜〜〜っ、背中が…!」

「まだ温存する気かテメェ……!」

 

 

「サッサと使えつってんだろうが!いい加減にしやがれ!」

「多分、言っても怒るんだろうけど言わせてもらうけど……そんなもの使えれば最初から使っていたわ!!

「あ゛ぁ゛?」

 

 ほらキレた、うん知ってた。本当に理不尽極まりないよこの人。

 

『顔真っ赤にして無い物ねだりしてる姿は無様過ぎて滑稽だな。あははははははは

「なんだァ…てめェ等…!」

 

 えっ、テメェ等?いや、違うからシンビオートが勝(ry と言うか不味い。多分だけど爆豪君極限近くまで怒りのメーターが達している。ええいシンビオートの煽りは化物か!

 

『悔しいならサッサと続きを始めようか!細切れ、ミキサー、ミンチ、言い表せないエグいヤツ。好きなのを選ばせてやるぜ!』

「テメェに選択肢出す権限なんてねえんだよ!爆ぜて死ねェ!」

 

 

 僕と彼との試合が今一度再開されようとする。瀕死に近い僕とシンビオートの体を無理矢理動かし、戦闘態勢を取る。そして────

 

 

「来正君場外! 爆豪君の勝ち!」

 

『「「…は?」」』

 

───突如告げられる判定。僕等はその言葉に唖然とする他無かった。

……え、場外?いきなり場外ってミッドナイト先生何言って────あ、今気付いたけど僕ステージの白線外側に立ってたわ。

 

 

『以上で全ての競技が終了!今年度雄英体育祭一年優勝は A組爆豪勝己!!』

 

「「………」」

FUUUUUUUUCK⁉︎ 場外だとふざけるなァ!クソクソクソクソクソクソクソッ!』

 

 えぇ…何と言うか えぇ……(呆れ) 不完全燃焼どころの話じゃないんだけど。

なんか満足出来てないと言うか こう、決勝なのに何か納得出来ないと言うか……うん、取り敢えず。

 

「優勝おめでとう爆豪君」

 

 今は盛大に祝おう。悔しくないと言ったら嘘になる。と言うか物凄く悔しい。目から血涙溢れて来そうなくらい滅茶苦茶悔しいんだけどクソが。

……おっと、爆豪君の口調が移ってしまった。

 

「とても悔しいけど…うん!ナイスファイt「死ねェ!」緊急回避⁉︎」

 

 危なっ!あぶっ、あ、危な〜〜ッ⁉︎急にドロップキック仕掛けて来たんだけど⁉︎何やってんの爆豪君⁉︎

 

「認めねェ!俺はこんな一位認めねぇ!もう一度だッ!もう一度戦えや!」

 

『おいおいおい暴動か〜〜?お前のクラスやっぱり凄えな!』

『勘弁してくれ……』

 

「落ち着きなさい爆豪君、確かにそれはそれでオイシイけど時と場所を弁えて…」

「俺はこんなの絶対に認めねぇえッ!」

「あー、もう、セメントス!ちょっと力貸して!」

 

「ふざけんなぁあ!俺の側に近寄るなぁああああッッ!!」

 

 

………………。

 

……………………。

 

 あー、もう滅茶苦茶だよ(白目) 爆豪君は珍獣みたく先生達に向けて爆破放とうとしてるし、先生は先生達で生徒相手に個性で対処しようとしてるし……。

 

あー、もうしょうがねぇなぁ(悟空)

 

「分かったよ爆豪君それじゃあ続きをやろうか」

「ハッ、話が分かってんじゃねぇか」

 

 ミッドナイト先生が何か言いたげな顔をしてるけど、そこは考えがあるのでお任せ下さい。

 

「それじゃ爆豪君。仕切り直しの為に そこ立ってね」

「ンなこたァ分かっt───」

 

「当て身」

 

 背後から凄まじい威力の手刀を爆豪の首筋に当てると彼は糸の切れた人形の如くパタリと倒れた。ヨシ!(現場猫) これでOK。

…え、卑怯じゃないのかだって?一言も試合の続きをやるとは言ってないから大丈夫。

 

『ねぇどんな気持ち?ねぇどんな気持ち?オレ達に舐めプされて手にした勝利したのってどんな気持ち?』

 

 ほらシンビオートそこまでだよ。もしも爆豪君が意識取り戻してこの言葉聞いたらどうするつもr

 

「んだと、てm「当て身!!(腹パン)」ぐぼあ⁉︎」

 

 二発目、次は鳩尾へ向けての腹パンである。違うからね⁉︎シンビオートが勝手に言ったから僕関係ないからね⁉︎

で、でも。流石の爆豪君と言えど この威力の拳をマトモに食らって立つ事は……

 

「ぐ、…が……てめいい加減に……!」

当て身ィ!(サブミッション) 」

 

 すかさず背後に回りチョークスリーパー。もう君の勝ちだからさっさと堕ちろクルァ!

 

「堕ちろ!」

「う………が────」

『堕ちたな(確信)』

 

 ハァ…ハァ……、やっと気絶した……!

ヨシ!このまま爆豪君の体支えて腕上げてから せーの。

 

「WINNER 爆豪勝己ッッ!!」

「…あっ、うん そうね」

 

 こうして、グダグタした決勝戦は爆豪君の勝利の形で幕を閉じたのだった。

 





 こんな試合結果になってしまったのは私の責任だ。だが私は謝らない
その屈辱を克服して必ず戦いに戻ってくれると信じているからな(爆豪に向けて)

<ナニイテンダ! フザケルナ!


〜〜キャラクター紹介〜〜

『来正恭生』
惜しくも場外負け判定となった主人公。自分自身納得出来ない部分はあるが騒がしいAクラスへの対処法(現実逃避)によって比較的落ち着いている。
ちなみに爆豪への称賛が嫌味になっていたと知るのは体育祭が終わってから1週間後の事である。

『爆豪勝己』
色々とカットした部分こそあるが原作通りに体育祭優勝を果たした。主人公を全力で倒す目標が叶わず、発狂してしまうが主人公の当身によって事なきを得た。

『赤糸虫知朱』
急にヒロイン面を押し出して来たキャラ。|抹茶ラテ(賄賂)で口止めと意外にも腹黒い部分があるのかもしれない。



〜〜用語紹介〜〜

『世界のフィンガーくたばれ』
ジョジョの奇妙な冒険第6部より。空条徐倫が行った世界各国の「くたばれ」ポーズ。
ストーンオーシャンのアニメ化期待してます。

『BNA』
トリガー製作のケモナー特攻アニメーション。
来正には効果が抜群だ。
これがR-18作品ならば来正は気持ち悪い程に語っていたであろう…。

『パインサラダ』
超時空要塞マクロスの代表的な死亡フラグ。
食べた事ないけどパインサラダって美味しいんですかね?



【前回の投稿に載せる事を断念した次回予告(没ネタ)】

リスナーの皆!いよいよお別れだ!
来正恭成の前に天才的な戦闘センスを持つ爆豪勝己が立ちはだかる!しかも試合前に一悶着あった赤糸虫が現れたじゃねぇか!

果たして来正の運命や如何に!
次回「爆豪勝己大勝利!唸れ、サブミッション!滅殺チョークスリーパーホールド」にReady Go!!

CVプレゼント・マイク(本名:山田ひざし)


ネタバレしまくってるので没になりました。
全ては私の責任だ(所長)


次回は体育祭編のエピローグになる予定です。



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29話 違う!シンビオートが勝手に表彰式を!


体育祭編のエピローグ。これで多少の区切りが付いた気がするぞ!



 

「今年度雄英体育祭一年の全日程が終了!それではこれより表彰式に移ります!」

 

 人々の頭上。観客達の声によって会場が覆い尽くされ晴天の青空に緑、桃、黄と言った煌びやかな花火が上がっていく。これより勝ち上がった優秀なヒーローの卵達が全国から讃えられるのだ。

 

舞台が迫り上がって行き、表彰台に立つ四名が生徒と観客達の前に姿を現した。

……いや、現れてしまったのだ。

 

「うわぁ」

「こりゃ酷い」

「凄いなあれ」

「起きてからずっと暴れてんだと。しっかしまぁ締まんねえ一位だな…」

 

「〜〜〜ッッ!」

くうき おいしい

「さすが来正と爆豪、成績上位なだけであって面構えが違う」

「いや、お前が思ってるような感じじゃないぞアレ」

 

 それはまさに混沌を体現した上位陣であった。三位の表彰台には切島と轟が並んで立っており精々、面食いの女性陣とそっちのケがある男性に受けが良い眼福な並びだ……しかし問題はここからである。

 

二位は良くも悪くも体育祭を盛り上げて来れた来正恭成。そんな彼だが瓶に詰められたシンビオートを抱えて虚を視ているのだ。

何も無い空間 何もない場所をただ、ただ視ているのだ。時折掠れた声で「こきゅう たのしー」と呟くが相変わらず虚な目である。

 

「〜〜っ!〜〜〜〜〜っ!!」

『べー』(瓶の中で挑発)

んんんん゛っっっ!!!!

 

 そして最もヤバいのが一位を取ったにも関わらず、来正と瓶詰めのシンビオートに突っかかろうとする爆豪勝己である。

マッドマックスめいた拘束具を取り付けられたその姿はもはやヒーローでは無く今にも暴れ出しそうな凶悪な(ヴィラン)そのものである。

こんなヤバい奴等が報道陣の写真、映像により収められる姿はもはや衝撃映像ものだ。

 

そのような光景に対してミッドナイトは"敢えて何も言わず"メダル授与に移る。教師にだって触れたくないものもあるのだ。

 

「そ、それではメダル授与よ!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!」

 

「ハーハッハッハッハ!!」

 

 会場上空から表彰台に向かって一気に飛んでくる人影が現れる。笑い声と共に登場したその人物は観客達を騒がせるのに十分なファクターであった。

その人物こそ現No.1ヒーローにして平和の象徴。

 

「私がメダルをm「我らがヒーロー オールマイト!」って来たぁーーーッ!」

 

 

…………………。

 

 

 スーパーヒーロー着地の直後に訪れる暫しの静寂。被った。お約束の決め台詞が思い切り被ったのだ。

そこら辺は事前に打ち合わせしておけと言う話だが、オールマイトファンからは「少し抜けている部分がお茶目だから良いんじゃないか」という話である。

 

「さて、おめでとう。強かったな〜切島少年は!」

「あ、ありがとうございます!」

「肉弾戦で攻めて攻めまくる!シンプルながら良い戦法だ。しかしもう少し格闘技術を磨いたりすると選択の幅が広がるぞ」

「ウッス!参考になります!」

 

 三位のメダル授与。まずは切島に銅メダルを首に掛けるとオールマイトは隣にいる轟に向き合った。

 

「轟少年おめでとう。しかし惜しかったなぁ、もう少しで勝てたと思ったんだが」

「…緑谷との戦いでキッカケを貰って 来正戦で俺の未熟さを知りました。あなたのようなヒーローになる為にはこれから鍛え直すよりも先にまずは俺自身の事を清算しなきゃいけません」

「うん…顔が以前と全然ちがう。深くは聞くまいよ。今の君ならきっと清算できる」

「はい…」

 

 

 

「来正少年おめでとう。宣誓通りにはならなかったが最後まで健闘したよ」

「恐縮です。僕自身があそこまでいけたのはクラスメイト達の激励、シンビオートがあってこそのものだと思います」

「うん、謙虚だな君は!(変わり身はやっ⁉︎)」

 

「あと、良ければシンビオートにも一言お願いします。トラブルメーカーですけど僕と一緒に戦ってくれた相棒ですから」

「そうだな。良くやったよ来正少年、シンビオート。ただ相手の逆鱗に触れるのは程々にな!」

「いや、シンビオートが勝手n『ハハッ、褒め言葉』お前は黙っとれ(半ギレ)」

 

 これ以上は何も言うまいと続いて一位のメダル授与を行う事にしてオールマイトは爆豪の口元に取り付けられた拘束具を外す。

口元が自由となった爆豪勝己はマグマの如く煮え滾る怒りを露わにする。

 

「おめでとう爆豪少年!君が掴み取った栄光は「オールマイトォ…、こんな一位意味がねぇんだよ!世間が認めても自分が認めてなきゃゴミなんだよ!」

 

 ビキビキと怒髪天を突く勢いに押されてながらもオールマイトは愛想笑いを見せる。

 

「相対評価に晒され続けるこの世界で不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない。己が戒めとしてこのメダルを持ち続けるといい!(シンビオートみたいな表情で怖ぇ……)」

「要らな───んがッ⁉︎」

 

頑に受け取りを拒否する爆豪に対して口元へ金メダルへ引っかける。

 

「今回の勝者は彼らだった!しかし皆さん!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!競い、高め合い、さらに先へと登っていくその姿!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!」

 

 ヒーローの卵である雄英生一年達に、人々に、敵達にオールマイトの言葉が放たれる。

それは次世代に向けた期待か、人々を安堵させる為のメッセージか、それとも敵に対する警告なのか…その真意は知る由も無い。

 

「てな感じで最後に一言!皆さんご唱和下さい!せーのっ!」

 

『Puls Ultra!!!』

「お疲れ様でしたぁあーーーーッ!!」

 

 

 グダグダした終わりに会場内でブーイングが響く中、生徒達の心にヒーローとしての意識が芽生え、スタートラインを踏み始めた。

次世代のヒーロー達の戦いはこれから始まるのだ。

 

 

『イェーイ、お茶の間の奴等観てるー?オレ様がすぐに負けると思ってたヤツどんな気持ち?ねぇねぇ、どんな気持ち?』

「シンビオートォォ!!」

 

尚、テレビカメラに向かって挑発行為をしてる輩についてはノーコメントとする。

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 やぁ皆、主人公だよ!休みの日は何をするかな?ちなみに僕は振替休日では休養を取りチョコポテト片手にヒーローアニメを一気見してたよ。厳しい学校生活だからこそ自堕落な休養が必要だと思うんだ。

あーあ、連休だったら何処か買い物に行けたんだけどなぁ。

 

『……で?ストリートギャング的な奴等に囲まれてどうするつもりだお前』

 

 うん、そうだね。現実逃避してる場合じゃなかったね。

ハハハ助けて

 

何故に?なんで僕 囲まれてるの?僕、変な事した?

なんで世紀末で怒りのデスロード的なファッションの方々がどうして僕を囲んでいるの?

 

「雄英生の来正恭成で間違いないな」

「ヘイ、間違いないですぜ」

「ほ〜〜う、コイツがか?」

 

 やばい怖い。もうアレだ、隙が出来たら一気に逃げよう うん、そうしよう。こんな時の為に無意味に鍛えて来たセクシーコマンドーを披露する日が来るとは思わなか─────

 

「泣いて喜べ!貴様のサインを貰おうか!いや、無理矢理でも貰う!いや、サインくださいお願いします!」

 

………ゑ?

 

 

 

 

「ハハハ、俺のサインを見ろォ!特製イラスト付きだぁ!」

「へへへですがこっちは手判付きですぜ!」

「おっと残念ながらこっちは妹用にも書いて貰ったヤツだ!負けるつもりはない!」

「こっちはシンビオート直筆のレアもんだぜ!」

 

 

なんだこれは…?幻術か……イヤ、幻術じゃない!

……いや、幻術か?また幻術なのか?

 

『ハハハ!泣いて喜べ!オレとキョウセイにな!』

 

「「「「アザーーッス!シンビオートサンにキョウセイサンッ!!」」」」

 

また幻術なのか!?

やばい、あまりの事態に頭が痛くなって来た……!雨降ってるけど一緒に僕のモヤモヤした気分も早く流れ落ちてくれないかなぁ!

 

てか、本当にどうなってんのコレ!?

 

「おい、あれ…雄英の……!」「あぁ 二位を取った…!」「おい話かけて来いよ」「い、いやお前が言って来いよ…!」「オイオイオイ、本物だわアイツ」「抱きしめたいなぁシンビオート!」

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ(脳内処理限界突破)」

 

おおっ、オち、おおちっち落ちつけぇ!こういう時こそ素数を数えて……あっ、やばい素数ってなんだっけ(ド忘れ)

クソ、こうなったら…助けて!僕の脳内に棲まうヒーロー達!

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

※ここからは全て主人公の脳内における妄想です。

 

 

 

「おや、どうしたんだい真っ黒ボーイ」

 

ヘイ!アイアンマン改めてトニー・スタークさん!こう言う事態はどう対処すれば良いでしょうか!

数あるヒーローの中でも妻所帯であり、モテモテであり、ファンも一定数以上、浮気なんかしょっちゅうで娘に愛想を尽かされるんじゃないかと色々と心配な貴方ならばきっと良いアイデアをくれるに違いない!

 

「おい、それ以上は戦争だぞ……そうだな。こう言う時だからこそパフォーマンスは欠かさない。僕だったら何処かの堅物真面目ダサいピチピチの人と違って市民の期待に応えてるだろう」

 

成る程、それは名案ですね!

よしそれじゃぁそっちの案で────

 

「待ってもらおうか、トニーの言う事も一理あるが君の本分を忘れるな!」

「おや、噂をすればだな」

 

あ、貴方は僕の最も推したヒーロー!キャプテンアメリカ!キャプテンアメリカのスティーブ・ロジャースさんじゃぁないかッ!

 

「確かに市民の期待に応えるのはヒーローとして大切だ。だが君の本分は学業だ。このままでは遅刻してしまうぞ」

 

 た、確かにッッ!!キャップの言う通り!僕はあくまで学生。そんな僕がこのままファンサービスをしていれば遅刻……いや、相澤先生にドヤされる可能性だってある!

道を正してくださってありがとうございます!やっぱキャプテンは最高やな!

 

「オイオイオイオイそれは本気か 君はもうヒーローなんだぞ。何故ファンの期待に応えない?見てみろそこの幼気(いたいけ)な少年を。君のサインが欲しくて堪らない。今すぐに近寄ってペンを片手にサインしてあげるだけなんだぞ時間ならまだある」

「トニー、彼はまだ学生だ。時間をクラスメイト達と共有しヒーローとして成長する必要がある」

「違うなキャプテン、彼は既にヒーローだ。クラスメイト?そんなもの授業の合間に話したり、昼休みチーズバーガー片手に会話するので事足りる」

「ふざけてるのか」

「やろうって言うのかアメリカのケツ」

 

 やばい。喧嘩し始めたよ相変わらず二人は言い争ってるな……。喧嘩するほど仲が良い殴り愛宇宙、ただし片方スーツ纏ってもう片方が超人と言う事実。

……コレどうしようか…あ、キャプテンのボディブローが入った。

 

「どうした、何があった また喧嘩か?」

 

 あ、貴方は…ッ!アスガルドの戦士マイティ・ソー!やった!メイン神来た!これで勝つる!

無敵のムジョルニアとストームブレイカーでなんとかしてくださいよーーーッ!!

 

「成る程な、よし任せておけ」

 

よーし!これで二人の喧嘩は何とか納められそうに……あれ、ちょっと?いきなり崩れ落ちてどうしたんです?

 

「うぅっ、すまん。急にナーバスになって来た……」

 

 やっべ!エンドゲーム仕様(デブの方)だったこの雷神!

ちょっと⁉︎貴方ぐらいしかあの二人止められないんだからしっかりしてくださいよ!

 

「無理だ…、止められそうにない……」

 

 駄目だこのクソ雑魚メンタル神、何とかしないと……!

このまま僕はどうすればいいんだ、教えてくれ五飛。僕はあと何回現実逃避すればいい……。

 

『キョウセイ…キョウセイ…』

 

 あ、シンビオートの声!悪いけど今回ばかりはいつも問題起こしてばかりの君の話は聞かないからね!どうせ蹴散らして進めとか片っ端から殴りかかれって言うんだろ騙されんぞ!

 

『いや、フツーに握手や写真程度に済ませてさっさと学校行けばいいだろ』

 

…………。

 

…………………。

 

………………………。

 

確かに!!

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 と言う訳ですれ違う人達に握手や写真求められてながらも学校に到着。しかしあまりの事態に困惑、胃がキリキリしてる主人公です。いや、本当にどう言う事だってばよ……。

 

「お前知らねーのかよ」

「何が?」

「結構お前のファン居るんだぜ。あの悪役ぶりがネットで賑わってるんだってよ」

 

 マジで?……マジで⁉︎(二回目)

何回目か分からない驚愕する僕と上鳴君の元に耳郎さんが耳のイヤホンジャックを弄りながらやって来る。

 

「あんたさ掲示板見てないの?」

「そうそう、騒がしいぜあそこ」

『アンチヘイトの巣窟だろオレ知ってる』

「いや、スレッドとかはあまり見ないからなぁ」

 

 あれ未だに仕組みすら理解できてないからなぁ。と言うかどう調べれば掲示板見れるの?(真顔)

……え、私のスマホ見ろだって?ありがとう耳郎さん。

どれどれ……?

 

 

276:名無し

録画再生したけど草生えるわw

 

277:名無し

やりたい放題で怒られねぇのこれ?

 

278:名無し

怒られる覚悟でやりたい放題してるんやで

 

279:名無しの電気使い

ちなみに俺、コイツをあと一歩のところまで追い詰めたから

 

280:名無し

>>279

思い上がるな

 

281:名無し

>>279

お前如きがシンビオートに勝てると思うな

 

282:名無し

シンビオートが榊遊矢に勝てると思うな

 

283:名無し

それ以上は言うなー!

 

284:名無し

ヤメロー!

 

285:名無し

ホウジョウエムゥ!

 

286:名無し

軌道修正ナイスゥ!

 

287:名無し

訓練されたコメントww

 

288:名無し

お前等好きだわw

 

289:名無し

何この一体感……!

 

290:名無し

俺達は一つだ

 

291:名無し

ところでシンビオートってなに?

 

292:名無しの解説役

>>291

おっ、さては初心者だな。シンビオートは雄英体育祭一年のステージのトーナメント戦で二位を取った来正恭成の個性だゾ。

見た限り独立行動可能な個性だけど身に纏えるし意思も持っているしかなり特殊なものだと推測できるゾ

 

293:名無し

解説サンクス

 

294:名無し

ほえー、ますます不思議っすね

 

295:名無し

融合するタイプの個性……シェルブリットかな?

 

296:名無し

自慢の拳って本人も叫んでたね……

 

297:名無し

シェルブリットってなんぞ?

 

298:名無し

スクライドやぞ

 

299:名無し

スクライドってなんだよ

 

300:名無し

恐竜にもなれるし弾丸も放てる…もう訳わからねぇなコレ

 

301:名無し

シンフォギア語録も使ってて嬉しい…嬉しくない?

 

302:名無し

シンフォギアって何?教えてエロい人!

 

303:名無しの解説役

>>299

熱い!とにかく熱くなるアニメ。男なら必修のアニメやゾ

>>302

おにゃのこ達が裸になってキャッキャッフフフするアニメやゾ

 

304:名無し

ガタッ

 

305:名無し

ガタッ

 

306:名無し

ガタッ

 

307:名無し

お前等座れww

 

308:名無し

落ち着けお前等w 気持ちは分からんでもない

 

309:名無し

早速視聴しに出かける!後に続け!

 

310:名無し

やはり百合か…いつ出掛ける?私も同行する

 

311:名無し

>>310

百合アニメ視聴院

 

312:名無し

ネットに上がってる?

 

313:名無し

この後亡くなったんだよね…

 

314:名無し

死人が出るぞ…画面の中的な意味で

 

315:名無し

つーか、どんな内容なの?

 

316:名無し

開始から大虐殺、萌を装った燃アニ、ちなみに5期までやってるゾ

 

317:名無し

ちょっと、何言ってるか分からないです。

 

318:名無し

一体…どう言う事だってばよ……!

 

319:名無し

分からん、全然分からん

 

320:名無し

誰でもいいからスクライドにも触れてクレメンス。熱くて熱くて仕方ないから一見の価値大いにアリやぞ

 

321:名無し

それで?最終的にシンビオートって?

 

322:名無し

マスコットやぞ

 

323:名無し

癒し枠やぞ

 

324:名無し

嫌死枠ですね分かります

 

325:名無し

そんな癒し系ヤダわww

 

326:名無し

伝説上の生き物さ

 

327:名無し

伝説って?

 

328:名無し

ああ!

 

329:名無し

ああ!

 

330:名無し

ああ!

 

331:名無し

ああ!

 

332:名無し

それってハネクリボー?

 

333:名無し

つまりシンビオートとは遊戯王だった…?

 

334:名無し

全く意味が分からんぞ!

 

 

 

 

 スマホを耳郎さんに返した僕は思わず頭を抱えてしまった。

なんぞコレ。色々ツッコミたいけどなんぞコレ。

 

「これ、もしかしなくとも僕ネタ枠だよね。完全にネットの笑いモノとして扱われてるよね⁉︎」

「お、落ち着けって!たまたま開いた掲示板がそっち方面だっただけだ!」

 

「つーか、別にいいんじゃないネタって事は愛されてるって意味でしょ?」

 

 いや確かに耳郎さんの言う事にと一理あるよ?でも、うーん…なんか違うんだよ。なんか、こうホラ違うんだよ。僕の扱いが赤い彗星だと思ったらチョコの人だった的な…?

んんんんんんんんんんッ、なんか腑に落ちないな!

 

 と言うかなんだろう?

気の所為か、掲示板に僕の知り合いが書き込んで居たような……。

いやガッツリ知り合いだコレ。名無しの電気使いって完全に上鳴君だよね?

 

……まぁ、いいか(脳内リセット)

つまりネットが賑わってたから色んな人からサイン求められたって事ね。うん僕理解した(白目)

 

「やっぱりテレビ中継を見ると有名になるもんだね」

「なんかジロジロ見られるのって恥ずかしいなぁ〜〜」

 

 芦戸さんと葉隠さんが疲れたように呟く。うーん、葉隠さんの場合は全身が透明だから見たところで……ってなるけど。と言うか葉隠さんって羞恥心残ってたんだね(失礼)

 

「ねーねーシンビオートォォ。どうやったら有名になれるのさぁぁ」

『そりゃ簡単だ。まずはガソリンとハンマーを用意してだな』

「おっと、放火と暴動で有名か?ホントやめて(懇願)」

 

「さすがシンビオート、ツッタカターにトレンド入りは伊達じゃねぇな」

「シンビオートのイケイケアイスも話題になってたからな」

 

「へー、それは知らn えっ?イケイケアイスって…え?」

 

 何そのハルク的なコラボ作品。でもスパイディの不出来なアイスみたいになりそう(小並感) 着色とかどうなるんだろ。味は……黒胡麻(くろごま)かな?

 

「おはよう。今日のヒーロー情報学ちょっと特別だぞ」

 

 直後、僕等は一瞬の内に着席し口を閉じる。

こうなったのも相澤先生の教育の賜物によるものですね。ははは(乾いた笑み)

と言うか特別かぁ……休み明け早々からテストとかなんだろうなぁ。満点取れなかったら除籍するって言うんでしょ、僕知ってる。

 

はー、つっかえ。こう言う時に限って教師はクソだわー。

もう少し心が踊るような内容にして欲しいわー。

 

「コードネーム。ヒーロー名の考案だ」

「「「「「「胸膨らむヤツ来たぁああ!!」」」」」」

 

やっぱり相澤先生サイコーです!よっ、教師の鏡!

……え、手の平返しだって?うっせぇレンガブロック投げ付けんぞ。

 

 まぁそんな話はさておき。

ここから僕達のヒーロー活動が本格的に始まる。やっとだ、やっとここまで来た。恐らくこの先も長く険しい地獄のような道が待ち受けているに違い無い。

これまでの敵連合や生徒同士の戦いではなく、本気で命のやり取りをする日が来ると、来てしまうんだと僕は感じている……。

 

……停滞していた平和が崩れ、当たり前だった日常が壊される。そんな不気味さを僕は心の奥底に追いやるのだった。

 





掲示板形式は初めて書いたんですけど、こんなもんでいいんですかね?

〜〜キャラクター紹介〜〜

『来正恭生』
体育祭を引っ掻き回した挙句、お茶の間に向かって挑発行為を繰り返し一生ネットの笑いモノとしてネタを提供し、視聴者に笑いを届けるある意味でのヒーローらしい姿を披露する。
最近では『来正恭生の絶叫集』と言う動画の再生数が1万回を越え、BB素材としても出回り動画素材として愛される事であろう。


『シンビオート』
大体コイツの所為。宣誓通りにいかず爆豪を弄る事でストレスを発散してる性根が腐った黒塗り畜生寄生生物。掲示板では大量の考察班がシンビオートの正体について模索しているらしい、


『主人公達のファン達(荒くれ)』
世紀末ファッションをその身に纏った一般市民()
彼等に居場所は無く、爪弾きとして周りの人々から敬遠されて来た。
……だが、そんな彼等の目に傍若無人の悪役に徹するヒーローの姿が飛び込んで来た。

…嗚呼、そうか。俺達は周りを気にする必要なんて無い。あるがままの自分自身で良いんだ。
ファンである彼等はそんな主人公の活躍に胸を打たれたと言う……。



〜〜用語紹介〜〜

『脳内に棲まうヒーロー達』
主人公がシンビオートが度々起こす問題によって来正が己の精神を落ち着かせる為に作り上げた虚構にしか存在せぬ友人(イマジナリーフレンド)
彼の妄想力次第でヒーローの数は増えるぞ(白目)


『赤い彗星』
「機動戦士ガンダム」よりシャア・アズナブルの通り名。MSを真っ赤に染め3倍の速さで動く人。ロリコンだったり母性を求めたりとヤバい性癖を付けられている。


『チョコの人』
「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」よりマクギリス・ファリドを主人公の三日月オーガスが付けた名前。
二期ではバエルになったりバエルになったりバエルになったりする。
つまり……全てバエルだ(???)


『シンビオートのイケイケアイス』
元ネタは「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」よりウォンが「俺はハルクのイケイケアイスが好きだ」と言う台詞から。
感想コメントを見て面白そうなのでやってみたネタ。


『スパイディの不出来なアイス』
元ネタは「スパイダーマン・スパイダーバース」より、映画序盤のピーター・パーカーの自己紹介で出て来た色合いが凄いアイス。
シンビオートは色合いが簡単なので本格的に販売されるとオレオみたいになりそう(小並感)


ヒーローネームを決定するのは次回に持ち越しです。
……主人公とシンビオート(マスコット枠)の挿絵を貼っておくので許してください(懇願)


【挿絵表示】


いい…笑顔です(武内P)


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30話 違う!シンビオートがヒーローネームを!

主人公の挿絵が意外と好評で嬉しい……。
けど信じられるか、あの顔でケモナーなんだぜ?

動物系の個性を前にするとハム仮面みたく気持ち悪い言動をします。
度し難い、度し難いぞこの主人公……!



やぁ皆、主人公だy────

 

「静寂に」(凄まじい眼光)

 

ヒェッ、すみません黙ってます。

……現在、ヒーローネーム決めと言う内容にクラスがエブリバディシャッフルしよう世代!というテンションMAXなゲーミング鳥状態になってたけど一気に鎮まり返りました。流石は相澤先生Aクラスの扱いに長けてますね。

 

「ヒーローネーム決めだが、先日話したプロヒーローからのドラフト指名に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み即戦力として判断される2~3年から、つまり今回1年のお前らに来た指名は将来性に対する興味に近い」

 

 相澤先生の言う事を簡単に言うと将来有望なヒーローの卵に唾を付けとくって事だね。興味が無くなったらポイ捨てもあり得ると言われた時は世の中クソだなと思いました。

ヒーロー業は世知辛い……。

 

「で、収集結果についてだが…例年はもっとバラけるんだが色々と偏った」

 

黒板(スクリーン)に指名件数が示され、上から順に……ファッ⁉︎

 

爆豪勝己 3842

轟焦凍 3211

来正恭成 1145

切島 231

飯田天哉 121

etc、etc……

 

 

「流石一位の貫禄……」

「轟、やっぱり人気だなぁ」

 

 収集結果が表示され、クラスの皆はそれぞれ反応を示す。ちなみに僕の場合は驚愕ですね。と言うか千件も来てるってマジ?めちゃくちゃ嬉しいんだけど。

 

ちなみに一番多い爆豪君はコッチに向かって勝ち誇ったような顔を向け、二番目に多い轟君も無表情で顔をコッチに向けている。え、何その顔 轟君何考えてるの?怖いんだけど。

 

「それにしても千件かぁ…素直に嬉しいねシンビオート」

『活躍すれば将来更に指名が増えるぞ、やったなキョウセイ』

 

おいやめろ。

 

まぁそんな訳で、実際のプロの現場へ行くとしても仮ではあるけどヒーロー名は必要不可欠。適当なものを付けてしまうと後で地獄を見る事になる。

 

「学生時代に付けたヒーロー名が世に認知されそのままプロ名になってる人多いからね!」

 

……と、倫理担当のミッドナイト先生が今さっき言った。マジか、ミッドナイト先生がヒーロー名担当するのか……不安だ。

 

「その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのできん……まぁそこら辺は安心していいから露骨に嫌そうな顔をするのはやめろ来正」

 

あっ、顔に出てました?すみません相澤先生失礼しました。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 相澤先生はヒーロー名によって将来自分がどうなるのか名を付けることでイメージが固まりそこに近づいていく。そう言った。

 

 ネーム決定は今後の方針を確立、目標の設定に近いものなんだろうね。オールマイトの場合はオール(全て)マイト()と言ったように平和の象徴に相応しいヒーローネームだけど、実際に決める時はかなりの勇気が要ると思う。

 

己のヒーローネームに負けないような実力を伴わないと「名前負け」「クソダサネーミング」とネットで言われ放題になってしまう。

 

 胸膨らむヤツが来たと皆言ってたけど……決めるの結構難しいなこれ〜〜〜ッ!!

 

「……おい、おい なぁ恭成」

「ん?どうしたの上鳴君」

「参考までにどれが良いかアドバイス貰えるか?」

 

 前から話しかけて来た上鳴君は己のヒーローネームが箇条書きにされたボードをこちらに見せて来た。

 

「どーよ、このラインナップ。ちなみに俺としては"スパーKING"を推すぜ!」

「へー、結構イカすじゃん」

「だろ!耳郎もこう言ってるし良いと思うんだ」

 

「確かに僕もそう思う」

『スパーキングの意味が電気じゃなくて"火花"、"炸裂"だって点を除けばの話だけどな』

「え゛っ゛」

 

 あ、耳郎さん凄く笑いを堪えてる。単語に込められた意味を読み取らずに決定してたらミッドナイト先生の言う通り地獄を見るところだったね。

 

『おい、どうしたスパーKING(笑)、なんで苦虫を噛み潰したような顔をしてるんだ。しっかりしろスパーKING(笑)なぁオイ』

「やめて差し上げろ、それ以上はやめて差し上げろ」

 

 上鳴君の心はボドボドダァ!!ほら、恐怖に怯えたタチバナサン一歩手前の表情になってるからね? 少し涙目になってるからね?

 

「ちなみに青山のネーミングについてはどうなの?」

「ごめん、ノーコメントで」

 

 ツッコミ所しかないヒーロー名でどんな顔すれば良いか分からなかった。I can not stop twinkling(キラキラが止められない)って…何故、英短文にした。

もう…ね、青山君はブレーキの存在しない人物だって悟ったから放っておく事にしたよ。それに、あんないい表情をした状態でダメ出しするのはどうかと思って……。

 

「ふーん、でもアンタって意外とネーミングセンスあんのかもね。試合中に技名叫んでたし……と言うか今更だけど戦ってる時に何で技名叫ぶの?」

「そりゃ耳郎さん、かっこいいからでしょ

「えぇ…」

 

 どうして呆れた声を出すんですか?(電話猫)

ハキハキと答えた僕が馬鹿みたいで悲しくなるからやめてくださいお願いします。

 

「…まぁいいや。もし来正が上鳴に名前付けるなら?どんなのにすんの?」

 

 え、上鳴君のヒーロー名の事でいいんだよね?

うーんと、彼の個性の特徴をから考えて……。

 

「えーと…チャージ(充電)+イナズマでチャージズマ?」

「採用」

 

 早ッ!?それでいいの上鳴君。

 

「適材適所って知ってるか?」

「ネーミングは全部僕任せって言うのはどうかと思うぞ上鳴君」

『これだからアホ面は……』

 

 まぁ気に入ってるんならいいけどね?さて、僕のヒーロー名どうするかなー。出来るだけ後になって後悔しないようなヤツがいいな。

……ん?どうしたの耳郎さん。

 

「ちなみに、ウチに付けるならどんなの?」

「え、ウチって…耳郎さんのヒーロー名?」

 

 えぇ、急に言われても困r……うわ、周りの何人かが聞き耳立ててる。そんなに気になるものかな?

えーと、それじゃぁ……。

 

「デスメタル・キョーカ」

「は?」

 

デスメタル・キョーカ

 

「「「「「 …… 」」」」」

 

 あれ?急に周りの空気が冷たくなったような……。それに耳郎さん固まってるしどうしたの?

 

「イヤイヤイヤイヤ、来正流石にそれは「ふーん…ロックじゃん」嘘だろ耳郎!?」

 

「いや、なんかこう…ズシンと来ると言うか、ハートがビリビリするというかね……イッツア パンクッ!!

「お、おう」

『落ち着け、キョウセイ自身リアクションに困ってる』

 

 予想以上に気に入ってるのかテンションがおかしくなってる。あー、成る程?耳郎さんってこう言うベヴィメタ的なの好きなタイプだったかー。

……あ、ミッドナイト先生がこっち来た。

 

「やめときな」

「えっ?いやでも「やめなさい(威圧)」アッハイ」

 

 却下された……耳郎さんが気に入ったとしても後になって黒歴史になる可能性が高かったのだろう。ミッドナイト先生の査定基準って意外とマトモなんだなって思いました。

 

「来正君も、女の子にそう言うの付けるのやめときなさい」

「すみませんでした(土下座)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 土下座をかました後、ヒーロー名が決定したクラスメイトの数は徐々に増えていった。ちなみに僕は未だに決まってない。

いや正確には候補は既に決まってるけど、どれを選べばいいか迷ってる。

数百とある内の中から数十と絞り込む事は出来たんだけど、中々決断出来なくて……。

 

お、爆豪君の番が来た。彼は中々オサレな技名をした必殺技を使ってたからね、どんなヒーロー名になるのか楽しm───

 

「爆殺王」

 

うわ。

 

「んだその顔は文句あるか来正テメェ!」

「いや来正君の顔にも書いてる通りそういうのはやめた方がいいわね」

「なんでだよ!」

 

いや、だって……ねぇ。ネーミングセンスが小学生のそれで……ねぇ?

 

「だったらテメェが候補言ってみろや!」

「エクスプロージョンを弄って『X・プロジオル』とか死+噴火(ドイツ語)で『デスヴァルカン』とか」

「ッ────!」(一瞬ときめいてしまった)

 

「お前ッ……⁉︎洒落た名前付けられんのか⁉︎」

「失礼な。ちなみにドイツ語はカッコいい名前付けるのに必要不可欠」

「正に叡智の結晶、黙示の約書…!」

 

 爆豪君が押し黙る中、瀬呂君と常闇君が反応する。特に常闇君が歓喜極まって身震いさせている。

やっぱり中二病の標準装備はドイツ語辞典……。

 

『おい爆殺王(笑)、サッサとイカした名前決めとけよ爆殺王(失笑)。イカした名前が思い付いたらの話だがなァーーーーッ!!』

「うっせぇ!準優勝の募集上から三番目の野郎が偉そーに言える立場じゃねぇだろうが!」

『ならイカしたネーミングセンス見せてみろよこの野郎!』

「やってやろうじゃねぇかこの野郎!【爆殺皇】どうだこの野郎が!」

『oh……』

 

 シンビオートがコメントに困るレベルか……仕方ない、ここは僕が助け舟を出すとしよう。

 

「爆豪君。電車斬りよりかはマシな方だから気に病む事ないよ」

「テメェは無意識に煽る才能でもあんのかよクソが。さっさと自分のヒーロー名決めとけや!」

 

 あ、確かに。流石に僕一人だけ決められないのは気不味いし爆豪君の言う通りにしよう……でもなぁ、数多く候補を選んだのは良いものの僕等のイメージに合う名前なんて簡単に思いつく訳じゃない。

 

それに加えて僕等は良い意味でも悪い意味でも注目されている。だからこそヒーローネームはしっかりと誇れるモノとして慎重に選び抜く必要があるのだと思う。

 

 

「……やっぱり、これがいいのかなぁ」

 

 教壇へ向かった僕はクラスメイト達に向き直るとボードに書かれたヒーロー名を彼等に見せる。

 

「目指すのはAGENT(エージェント)ヒーロー。そして…」

 

 架空のヒーロー達の思い、そのヒーロー達を残したメッセージを伝える代理人(エージェント)であり敵にとっての毒となる。行くよシンビオート、せーの…!

 

『「僕/オレ達はVENOM(ヴェノム)だ」』

 

 ミッドナイト先生はあぁ言ってたけど、勢い任せで適当に名乗ったこの名前を僕等は気に入っていたらしい。

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 ヒーロー名が決まった所で続いて職場体験先を決定する事となった。

一週間以内に体験先をどこにするか書類に記入して提出するんだけど、千件も来てる上にどんな活動を行うか方針を立てる必要性もあるのでヒーロー名以上に選ぶのが難しくなって来る。

……と、言っても。

 

「リューキュウにギャングオルカ、ミルコ……!おやおやシシドですかこれは素晴らしい……!」

 

 どれも素晴らしい要素を持ったヒーロー達揃い……!方針立てると堅物めいた事を言ったが、どれも魅力的で選ぶのが難しいと言うのが本音です。

ッアー、困るわー。第一志望から第三希望を決めると言う事は残った997のヒーロー達の意見を切り捨てる事になるから困るわー。

 

「来正ちゃん顔気持ち悪くなってるわ」

「しかし羨ましいものだな。千を超える指名とは想像もつかない」

 

 蛙吹さんと障子君がそんな事を言って来る。まぁ確かに、最初は最高でも十件は超えるといいなーと思ってたらその百倍が来たからね。びっくりしたどころの騒ぎじゃないね。

 

「来正君どこにするか決めたの?」

 

「そうだね、ん〜〜〜〜ギャングオルカかな」

「「「「ええっ!?」」」」

 

 は?(ドスの効いた声) ギャングオルカに文句あるならハッキリ言ってもらおうじゃないか(半ギレ)

 

「オイオイオイ、テメェ!マジで考えてるのかよ!」

「リューキュウとかミルコとか…あ!クラストからも指名来てんじゃねぇか!何故わざわざそれ選んだんだよ⁉︎」

『ぎゃあぎゃあ騒ぐな。鬱陶しい』

 

 えー、いいじゃんギャングオルカ。どこが駄目なんだろうねシンビオート……あ、周りの騒がしさが嫌になったのか引っ込んだ。

いつもそれくらい大人しかったらなぁ。

 

「ちなみに聞くけど…選んだ理由は存在するんだよね?」

「失礼だな緑谷君は。確かにミルコの戦闘能力及び近接格闘能力はオールマイトに次いで凄まじいと思う。エンデヴァー以上の格闘センスを遥かに上回るだろうね、あの健脚と耳も素晴らしい。そしてリューキュウ、彼女の巨大な敵を相手にする時の制圧能力は学ぶべきモノが大きい。あとドラゴン化した後の身体にダイブしたい

『欲望滲み出てるぞ』

「あ、ごめん……仮にミルコの所に行くとする。だけど僕とシンビオートは近接格闘では無くあくまで臨機応変の柔軟な戦法、彼女の電光石火の戦闘に付いて行けるイメージが湧かないんだ。そしてリューキュウの場合、現状シンビオートはこれ以上の体積を増やすのは僕の未熟さもあるけどコントロールが難しい。Mt.レディがいい例だけど余計に市街地への被害を増やす可能性だってある。それを踏まえて現時点で僕等に必要なのは協調性。如何にして周囲と共に連携して戦えるかを基軸とする。そして僕等の戦闘スタイルの可能性の幅をもう少し模索してみたいと言う理由でギャングオルカにしたよ……ってどうしたの皆?」

 

なんか頭抱えてるけど……大丈夫?保健室行く?

 

「そう言えばコイツ真面目なヤツだった……!」

「シンビオートとかケモナーとかオタクとかで引っ張られてたけど本来のこいつって真面目なんだよな……!」

 

「皆の中の僕は一体どんな奴なの……?」

「峰田と緑谷と爆豪の悪い部分の集合体」

 

 失敬な!なんだその寄せ集めの気持ち悪いヤツは反論出来ないぞチクショウ!

 

「と言うか、協調性って言うなら王道なクラストで良かったんじゃないの?」

「確かにシンプルながらも無骨なヒーロー、社交辞令を弁えつつも盾を扱う個性を持っているから来正君としてはソッチでも良かったんじゃ…キャップ好きだし」

 

うん、確かに。確かに麗日さんと緑谷君の言う通りだ。キャップ好きだよ、推しのヒーローだよ?

……でもね?

 

「たまには己が欲望に身を任せてもいいじゃない(訳:ケモナー属性の方が重要だ)」

「あっ、うん(いつも通りの来正君だ……)」

「そだね…(いつもの来正君や……)」

 

『で、そう言うお前等は決めたのか?』

 

 シンビオートの言う通りそう言えば聞いてなかった気がする。二人は何処へ行くんだろうか。

 

「私はガンヘッド!爆豪君のリベンジに加えて視野を広げる為にそこ選んだ!」

「ゴリゴリの武闘派系⁉︎」

「確かに、戦闘経験を積んでおくと暴徒や敵に対処しやすくなるから良い選択かもしれないね。緑谷君は?」

「僕はまだ決まってなくて……」

 

 そりゃ簡単に決まる訳ないか……だとして、緑谷君としては何処がいいんだろう?無難に戦闘系のヒーロー事務所にするんだろうけど。

あ、でも無茶して腕壊さないといいけど大丈夫?ヒーロー側の責任問題になったりしない?

 

……ヨシ!(現場猫)

考えるのはやめておこう!適当に飯田君と話してみようかな!(話題転換)

 

…あれ?飯田君の姿が見えないけど一体何処へ……?

 

「飯田ならもう職員室行って体験先の書類提出しに行ったぞ」

「速っ⁉︎ 速過ぎじゃないウチの委員長⁉︎」

 

 轟君が教えてくれた事実に僕は驚愕する。まじか、昼休み始まったばかりだって言うのにもう提出しに行くって……。

 

「流石は飯田だ。簡単な事を早急に決められる簡単な頭で羨ましいな」

「んん? 轟君それは煽ってんの?それとも純粋に褒めてるの?」

 

 試合が終わってから轟君が圧縮言語の扱いに長けて来た事にも驚きを隠せないんだけど。なんで?本当に君って轟君だよね?鮭大根好きの人が乗り移ってないよね?

 

「俺が好きなのは鮭大根じゃない。蕎麦だ」

「アッ ハイ……よければ一緒に昼食べに行く?」

『オレ達に負けた記念だ、キョウセイ奢りのチョコレートパフェを見せつけながら食ってやる』

 

 相変わらず性根が腐ってるねシンビオート。あと、今日はパフェは無しだからね?小遣いと糖質共に限界ギリギリだからね?

 

……おいシンビオート。駄々を捏ねて僕の首から上を齧るのはやめてくれない?顔中が謎の唾液らしきサムシングだらけで気持ち悪いからマジでやめて。

 

「相変わらず仲が良いな……まぁそれはそれとして早く蕎麦を食べに行くぞ。いつ出発する?俺も同行する」

 

あれ?頭食われてる僕の事はどうでもい(いん)……?

と言うか前が見えないから歩く事すら難し───

 

 

「おい、来正恭生はいるか?」

「呼んでいるぞ来正」

 

 えっ、誰?今ちょっと寄生生物にマミられてるんでとてもじゃないですけど話せる状態じゃ……あ、待って急に引っ張るのはビビるからやめて。

 

「連れて来ました」

「おう、ありがとうな……って、何してるんだお前」

『MGMG』

「いやすみません。シンビオートが勝手に」

 

 うーん、これじゃ一体誰と話してるか分からな…いや待てよ?確かこの聞き覚えのある特徴的な癖を持ったボイスは確か……あ、思い出した!

 

「サポート科担当の……パワーローダー先生で合ってますか?」

「お前、良く分かったな。体育祭の時から変人だと思ってたが発目と同じくらいの大変人だな」

 

 発目?発目って確か、あのサポート科で騎馬戦に協力してくれたあの娘か!今何やってるんだろ。

 

『知ってる。あれだろ、オレ様を寄生虫扱いしやがった絡繰のビームに直撃した阿呆だろ』

「いつまで根に持ってるのさ……」

「まぁいいや、変な頭してるのはさておきお前のコスチュームが修復出来ない程に酷い状態でな それについての話するから後で職員室来いよ」

 

「いやだからシンビオートが勝手に……ってコスチューム修復不可能ォ!?

 

 




来正恭成's ヒーローネーム
エージェントヒーロー『VENOM(ヴェノム)



〜〜キャラクター紹介〜〜

『来正恭成』
主人公と書いてネットの笑い者と読む。実力に対し評価がアレなので大半のヒーロー事務所は指名をするか否か頭を悩ませたらしい。


『シンビオート』
悪辣な言動とは裏腹にネットや世間ではかなり人気。その徹底した畜生ぶりやキモカワデザインが好評を呼んでるとか……。


『爆豪勝己』
ネーミングセンスが小学生レベル。主人公にネーミングセンスで負けた上に一瞬いいなと思ってしまった自分に対して怒り狂う羽目になった。


『耳郎響香』
主人公の考えたネームに一瞬ときめくが、速やかに却下された。
やめとけやめとけ、あいつのネーミングセンスは色々な意味でやばいんだ。


『上鳴電気』
最近、頭を使う作業は主人公に任せておけば良いのでは?と考えるようになって来た。


〜〜用語紹介〜〜


『ドイツ語辞典』
かっこいい単語ばかり存在する中二病必須アイテム。


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31話 違う!シンビオートが勝手に新コスチュームを!

ニコニコでドゲンジャーズ観てるけど結構面白い。
けど一部しか放送してない事実に絶望しました那珂ちゃんのファンやめます。



「えーと……あった、此処だ」

 

 やぁ皆主人公だよ…と、ちょっとコスチュームの入ったケース片手に目的の場所へ来たんだけど……。

 

「ここで合ってる…よね?」

『パワーローダーが嘘吐いてなければな』

 

 目の前にあるのは圧倒的なまでの威圧感を漂わせる鋼鉄製の巨大な扉。なに、この…カサンドラの門なのこれ?それじゃ石像に扮した大男二人組は何処に?……と、冗談はさておきここがサポート科御用達と名高い開発場(DevelopmentStudio)だ。

 

 昼休みの時に職員室で聞いたんだけど、此処にいる発目明と言う生徒に頼めばコスチュームの新造・改修を行えるとパワーローダー先生から聞き、足を運んだ。

 

何故こうなってしまったかと言うと先のUSJ事件、脳無との戦闘により僕のキャプテンコスチューム(仮)は修復不可能までに破壊されてしまった。

このままだと職場体験は体育着を纏って行く事になってしまう。

……そこで、直せないのならいっその事新しく造ってしまえばいいんじゃないか?とサポート科に新造・改修を頼みに来たのだ。

 

 ちみなに本来は申請書作成とかデザイン事務所に通す必要があるけど、そこら辺については先生が何とかしてくれると言うのでお言葉に甘える(面倒は全て任せる)事にしたよ。

 

「とりあえず……失礼しまーす!入りますよ!」

『動け!このポンコツが!』

 

 開いてくれ、頼む…!(コマンドー)

と、腕にシンビオートを纏わせると鈍重な扉を力任せに横へ引くとギギギギと音を立てながら開かれる。

 

『やはりこの手に限る』

「この手しか知らないんでしょ……って あれ、誰も居ないの?」

 

 だーれも居ない、人の姿が影も形も見当たらない。おかしいな…この時間帯なら誰か居るとパワーローダー先生言ってたんだけど………ん?

 

「────!」

「……─!───あ──で」

 

『誰か居るな、ガラクタが邪魔で見えないが奥の方に二人だ』

「……よし、ちょっと見てこよう」

 

 リッカースタイルでガラクタの山を避けながら開発室の壁、天井を這い回りつつ奥へと進む。進むにつれて音や声が鮮明に聴こえる。

 

そんな僕等が機械類の山を乗り越えた先に見たものは───

 

 

「さて、いよいよクライマックス」

「さぁベイビー…そのまま…いいですよ…」

 

 

 あれは、発目さんに…赤糸虫さん⁉︎発目さんはサポート科だから分かるけど何故に赤糸虫さんまで?

 

と言うか二人して何してるんだろう……アームみたいなモノで玩具を積み上げてるのか?大きな球状のモノを組み立てるけど。

 

『小型のユニクロンを製造してるのか?』

「…いや違うよデス・スターのREGOだアレ 完成度たけーなオイ」

 

 はぇー、凄い(小並感) REGOなんて久しく触ってないけどデス・スターのも出ていたんだ。

ミレニアム・ファルコン号のヤツとか出てないのかな?銀河系最速のガラクタのデザイン好きなんだよね。

 

「よーし、次はC-3POを……あ、待って。違うそこじゃないスーパーレーザーの部分に乗せちゃ駄目だから」

「ふむ、どうやらまだ改造の余地が………」

 

……もしかしてあのデス・スター(REGO)はあのアーム一本のみで組み立てたのか?もしそうだとしたら凄い精密さだ。Dr.オクトパスのアームくらい高性能なんじゃないのかな?

 

「失礼、知朱さん。そこにあるレンチ取ってもらえません?」

「レンチね、えーと……何処だっけ?」

『…これでいいか?』

 

「あ、あったあった。ありが───」

 

『「………」』

「「………」」

 

 

 僕等と彼女達の視線が交わり、互いに沈黙が訪れる。シンビオートの親切が呼び寄せてしまったこの空気……なんだろう、正直言って気不味い。

ここはどうにかして現状の流れを変えなければ(使命感)!

鍛えに鍛えたヒーローにとって必要不可欠なユーモアのセンス、今ここで発揮する時!

 

「やぁ、僕 通りすがりのネズミだよ。ハハッ(裏声)」

 

SPRAY!(アームからガス噴射)

 

 刹那、アームの先端から白いガス(無害)が僕に向かって放たれる。思った以上の出力だったのか、その近辺にあった工具等も吹き飛ばされてしまう。

無論、その吹き飛ばされたモノの中には先程まで組み立てていたものも含まれていると言う訳であって──

 

結論を言うとデス・スターが撃墜されました。

 

 

ガシャン!

 

『あ』

「「ああああああああああああああッッ!?」」

「EP4の激闘がたった一つのアームにぃいいーーーーッ⁉︎」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『こりゃ酷い、ユニクロンが見るも無残な姿に……』

「いや、だからデススターだって」

 

 粉砕された惑星破壊兵器の残骸(REGO)を片付けながらここに来た目的を発目さんに話した。すると二つ返事でOKを出した彼女は早速作業に取り掛かるために工具等や機材を準備している。

 

「はい、集めておいたよDUMMY。これ片付けておいてね」

 

 自立稼働アームにそう呼びかけ、REGOを詰めた袋を手渡す。それを器用に掴むとDUMMY(勝手に命名)はそのまま倉庫の方へ姿を消して行った。うん、トニーは悪態ついてたけど意外と愛嬌があっていいもんだね。

 

……まぁ、それは置いておいてさ。

 

「発目さんはサポート科だから分かるけど、なんで赤糸虫さんまで此処に?」

「え、あ、いや……お話!ただの雑談だから!」

 

『何で此処にいるかの回答を求めているんだが』

「あ、いや?……何が?」

 

 んん?なんか歯切れが悪いと言うか……今までの陽キャぶりが嘘のように狼狽えているけど、どうなってるんだコレ?

 

「ちょ、ちょっと待って!」

「あ はいどうぞ」

 

 

 

 

 

「ちょっと⁉︎彼が来るなんて聞いてないんだけど!」

「そりゃ言ってませんからね。私はパワーローダー先生から事前に伝えられていたので知ってましたが」

「なんで先に言ってくれないの!」

 

「その引っ込み思案を治す機会だと思いまして」

「余計なお世話だよッ!!」

 

んん〜〜〜、どうしよう。さっきから僕等に会話を悟られないようにコソコソ話しているみたいだけど全部聞こえてるんだよなぁ。

 

『教えるか?』

「いや、もう少し様子を見よう」

 

「そもそも来正君は(めい)に用があって来たんでしょ、邪魔しちゃ悪いから失礼するよ」

「おっと失礼するんじゃあ、ありません折角出来た初の高校友人相手に何を臆してるんですがアナタは」

 

「い、いやそんな 何言ってるの!それじゃまるでボクがぼっちみたいに聞こえ……」

「ハハハ、何を馬鹿な事を。ぼっちも何も私以外に友人が出来ず人見知りを治そうと高校生デビューでマンシンガントークキャラを演じた割にウケが悪く、気鬱してた所に来正さんと友人らしい会話が出来たと和気藹々と話してくれたのを私は知っていm「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛」暴力反対!?」

 

 あ、やばい!赤糸虫さんが的確かつ強力なデンプシーロールを腹部に撃ち込み始めた⁉︎

それ以上いけない!赤糸虫さん、それ以上いけないから!

 

「フーーッ、フーーーッ……ご、ごめん興奮し過ぎた」

「OK、とりあえず落ち着いてね……発目さんの方は大丈夫?」

 

「フ、フフフ…問題ありませんとも 頼まれている作業には支障は出ませんので大丈夫ですとも」

『チッ、まだ息の根が残ってるか……』

「シンビオート!」

 

 大丈夫⁉︎と呼びかけながら僕は彼女に近づく。

直後、何事も無かったように起き上がった発目さんはグッとサムズアップを見せて来る。

 

「フフフ、さすがマイフレンド。いいパンチでした。わが新作ベイビーである衝撃緩和素材を用いた防護チョッキが無ければ即死していました」

「あ、無事だったんだね発目さ……と思ったけど足ガクガクじゃんダメージ緩和し切れてないじゃん」

 

 そう言えば発目さんって体育祭での第一種目(障害物競走と言う名のマラソン)では最下位ギリギリで息絶え絶えだったような気がする。

サポート科って基本的に発明してばっかりだから戦う発明家のトニーやバナー博士のようにはいかないんだなぁ。

 

「と、ところで…例のモノは持って来ましたか?」

「例のモノ……ああ、コスチュームの事ね」

 

 持って来たケースの中身を彼女に渡すと、間髪入れず発目さんはボロボロになった僕のコスチュームを手に取る。一通り眺め、材質を確認するかのように手触りを確認しているようだ。

 

…しばらくジッと見つめているけど、どうしたんだろう。あっ、もしかして発目さんもキャプテンの魅力に気付いたとか?

いやぁ 発目さん虜になっちゃったかー、流石はキャプテン!よっ、ファーストアンベンジャー!アメリカのケツ!

 

 

「…うわぁ、私史上こんなに酷いコスチュームを見たのは初めてですよ」

「発目さん⁉︎ キャップに落ち度でも⁉︎」

「落ち度と言うか……コメントに困るレベルなのですが」

 

 真顔で言うのは傷付くからやめて貰えません?と言うかコメントに困るって……そんな笑顔の消えた彼女は言葉を続ける。

 

「いや、だって……本来ヒーローをサポートする為のコスチュームですが、これ機能性が皆無ですよ?何の為のコスチュームなんですかこれ」

「いやだってなぁ……」

『オレ達にとってコスチュームはただの飾りだ』

 

 うん、シンビオートの言う通り。僕の個性上シンビオートを纏って戦う事になるからヒーローの身に付けるスーツは有っても無くてもと言った扱いなんだよね。それを彼女に伝えると何か考え込むように唸り始めた。

 

うーん、何を思っているのか分からないけどコスチュームってそこまで重要なものかな?

アイアンマンやアントマンみたくスーツに機能を全振りしてるならまだしも"個性"を前面に使って戦うヒーローにとってはそこまで大切なものじゃ───

 

「あ、すみません。少しこちらに顔を近づけてください」

「ん?どうしたの発目さんいきなり」

「いいから、早く」

 

はぁ…、えっと近づけたけどこれでいいか───

 

「フンッ!」

 

パンッ!!

 

「ッ!?」

 

 え…平手打ち……⁉︎なんで発目さん急にビンタして来…あれ?何で腕を振り上げてるn

 

「ヌ゛ンッ!!」

 

ゴシャッ!!!

 

(ひ、肘だとぉぉ……っ!?)

 

 先程までガクブルと膝を震わせていた彼女からは想像もつかない攻撃法に驚愕する。

特に理由も無さそうな隙を生じぬ暴力二連撃が僕を襲った───。

 

うわらば

「き、来正君⁉︎ 明、いきなり何を…⁉︎」

 

「何をもどうも!あなたはコスチュームの重要性を分かっておりません!」

 

 眼前で仁王立ちする彼女に僕は思わず「ヒェッ」と声を漏らす。普段怒らなそうな人がカッとなると凄く怖いと言うけど……アレって本当なんだね。

 

『何をするこのアマァ!』

「シャラップ!いいですか来正さん&シンビオート!貴方達は実に分かっていない!全くもって分かっていないッ!」

「え……な、何が?」

 

 赤糸虫さんに肩を貸してもらい立ち上がる僕に発目さんはバン!とボロボロになったコスチュームを地面に叩きつける……って、キャップのスーツがああああああああ!?

 

「例えば!シンビオートの動力源は何でしょうかッ!」

「え…あ、アドレナリンだけど……それが何か?」

 

「そう、それですよッ!スーツの内側にアドレナリンが行き渡るように特殊素材を用いる事により通常と比べてよりスムーズに!より繊細に個性を扱う事が可能なんです!」

 

 え、マジで!そんな事できるのサポート科⁉︎すごい(小並感)

 

「他にも、シンビオートの弱点は音と炎ッ!それを克服するのはとても難しい事でしょう!しかし、逆に考えればコスチュームで弱点を補う事だって出来る筈でしょう!」

「た、確かに……!」

『その発想は無かった』

 

 僕とシンビオートが関心したように頷いている横で赤糸虫さんが「えぇ…」と呆れたような表情を見せる。

 

「来正君ならすぐに思い付くモノだと思っていたんだけど」

「いやぁ…ごもっともだね!(ヤケクソ)」

 

「あぁっ…あぁっ…苛々するッ!!それと同時に職人魂に火をつけられてワクワクしてしまう自分が存在します…ッ!!」

「め、明?大丈夫…?」

 

 ワナワナと震える発目さんとそれを心配するように声を掛ける赤糸虫さん。思った以上に仲が良いらしい、友達が少ない分のリソースが友情の方に注ぎ込まれているのかな?

 

と、そんな事を考えていると唐突に職人魂が燃焼中の彼女が僕の手を握って来た。

 

「来正さんッ! 貴方に感謝を!ここまで私を燃え上がらせるとは流石ですよ!」

「え、それって褒めてるの?貶してるの?」

「貴方のコスチュームを遥かに上回る最ッ高ッの!作品を仕上げてみせましょう!」

 

 脳細胞がトップギア状態の発目さんはそう言い放つと、ガラクタの山に己の手を突っ込む。

ガサゴソと何かを漁るように、宝を探し出すように目を輝かせる彼女を他所に僕は隣の赤糸虫さんに声を掛けた。

 

「ところで…赤糸虫さんは発目さんと知り合いなの?」

「う、うん。小学校からの幼馴染み」

 

 へー、通りで仲が良いと思ったら幼馴染みだったのか。だからヒーロー科にも関わらず此処に居たのか。

……まぁ、人見知りって心休まる場所に入り浸ってるのは基本だからね(偏見の眼差し)

 

「あ、そう言えば赤糸虫さんって職場体験は「見つけましたよベイビー!来正さんにピッタリのベイビーを!」…お?」

 

 振り返れば黒のインナースーツを手にした発目さんが制作に取り掛かっている。なんだ、このショッカー戦闘員が着るような感じの全身黒タイツは?

 

「これぞ伸縮性、防御性能バッチリ。ヒーター機能も内蔵してある私特製のベイビーです!これを基軸に内側に特殊素材を組み込んで行きます……あ、人手が足りないので知朱さんも手伝ってください」

「えっ?べ、別にいいけど……」

 

「あれ、赤糸虫さんもやるの?でも、彼女はヒーロー科で……」

「おおっと、知朱さんを舐めてもらっては困ります。一体何年私と共に居ると思っているんですか」

 

 ますますピーターっぽいなぁ。それにしてもなんかこう…ワクワクするね、僕のコスチュームが一から造られるって言うのは。

MCUで最も好きな場面ははヒーローのスーツ作成シーンだったりする。

 

そんな事を思っているとシンビオートがヌッと顔を出して来る。どうかした?

 

『お前のじゃない、オレ達のスーツだ』

「そうだね、ごめん訂正するよ……って、ちょっと二人共?なんで僕の背中を押してくるの?ねぇ、聞いてる?」

 

 彼女達によって無理矢理ピチピチ黒スーツの前に立たされる。え、何?これから僕なにされるの?

 

「何とは…来正さんがどんなコスチュームを要望するか分かりませんからね。それに加えて一週間以内で制作するのは厳しいですから凡ゆる工程を平行して行う必要があります」

「ん、来正君はどんなスーツに仕上げたいか、どんな動きを望んでいるか。そして実験を幾度も繰り返す必要があるからね……さ、ボク達は何をすればいい?」

 

 そうか、たった一週間しか時間が無いんだよね?それじゃ僕もコスチューム制作に携わらないと間に合わないか……。 

 

………よし!

 

「善は急げだ、自分で言うのもなんだけど僕の要望の中には()()()()()()()()()()()()だってある」

「え、それはちょっt「ほほう、それは楽しみですね!俄然ワクワクして来ましたよ!」

 

 なんか赤糸虫さんが言いたげな顔をしてるけど、気にしないでおこう。早速『コスチュームver.II』の作成に取り掛かる!

 

……あ、そうだ(唐突)

シンビオート曲を流して、ミュージックをバックにスーツを作るのは基本だからね(鋼鉄の意志)

 

『選曲は任せろ』

 

 

〜♪AC/DC『Back in Black』

 

 

 お、この曲は……!刻み良いリズムがスマートフォンのスピーカーから流れる。こちらの心が躍り、陽気な気分にさせてくれるようなメロディが心地良い。いいセンスだシンビオート。

 

「流石だよ、ツェッペリンは僕も好きだ」

 

「は?何を言ってるんです。AC/DCではないですか」

「え、いや…ツェッp「どう聞いてもAC/DCですよ。音楽流すのは結構ですが作業に戻ってください」

 

……あ、うん。そうだね…うん、知ってるよ?うん。

 

「……シンビオート、やっぱり曲変えておいて」

『はいよ』

 

 このネタが伝わらないとは私は悲しい…(ポロロン)

そんな哀しみに打ち拉がれている僕の肩に赤糸虫さんが手を置いて来た。

……あ、そうだよ!赤糸虫さんスパイダーマン知ってるから僕の伝えたいネタも理解してくれる筈だ!そうでしょ?そうだと言ってくれ!

 

「間違いは誰にでもあるから気にしないで」

「アッハイ」

 

……時代の流れってやっぱり残酷だ。

 

 

 

 

 

 

 

〜♪Queen『Don't stop me now』

 

 

「まずは基礎となるこのスーツ。私の考えとしては来正さんのシンビオートを外側だけでなくコスチュームの内側に纏わせると言うのは如何でしょうか」

「内側…!鎖帷子のように着込む感じだね、そうすればコスチュームはアンダースーツと更に上から耐熱性、防音性の装甲に分ける形で行こう」

 

 申請用紙に出された案を書き留めて、発目さんはコスチュームを弄りサポートアイテムを組み込む。

そこに工具箱を両手一杯に抱えて来た赤糸虫さんが口を開く。

 

「デザインはどうする?」

「外見は大きく変えずに……色はシンビオートを基調とした黒にしよう、キャップの面影は残しておきたいし……」

「分かった、外から羽織る装甲は軍隊式のチョッキを参考にする感じでいいかな?」

「うん…あ、いや待って。えーと……そう、こんな感じのアーマーにしてもらっていいかな」

 

 メモ用紙に僕が要望するモノを描き写す。自衛隊が使うような防弾チョッキではなく、吸血鬼ハンターであるブレイドが纏うボディアーマー、僕としてはコッチの方がいい。

メモ用紙を彼女に渡すと後方から発目さんの声が響く。

 

「来正さん 私オススメのベイビーで、この足音吸収式ブーツを採用したいのですが!」

「ブラックパンサーの"スニーカー"と同じ原理か…!よしOK、採用!足の大きさ測っておこうか?」

「お願いします!高さ、横幅、爪先から踵までの三つで大丈夫ですよ」

 

 対犯罪者を想定して隠密性も兼ねた方が良いと判断した僕は靴のサイズ調整をする為、メジャーを手に寸法取りをシンビオートと共に行う。

…あ、そうだ。

 

「あのさ発目さん、手袋(グローブ)の先からシンビオートを出せるよう穴を開ける事出来るかな?武器を咄嗟に形成する為に必要だと思うけど」

「それならグローブの通気性を良くしましょう。そうすれば繊維の隙間から容易に出入りが可能です!」

 

 流石は専門分野だ。そう言った細かい所をパッと解決策を提示出来るなんて……天才と馬鹿は紙一重と言うけど成る程こう言う。

 

「明、この箇所だけど……」

「あぁ、そこですね。奥の方に炭素性繊維(カーボンファイバー)があるのでそれを使いましょう」

「うん、来正君の戦闘スタイルから見ると比較的軽量なモノに仕上げるといいかも」

 

…………。

 

『おい、何ボーッとしているんだ』

「ん、あぁいや……ね」

 

 赤糸虫さん、楽しそうだなって。こうやって腹の底から楽しそうにコスチュームを制作してる所を見てると……こっちまで笑顔になるって言うか。

 

『……"ホ"の字か(惚れたのか)?』

「いや、純粋に見惚(みと)れてただけ」

 

「あ、来正さん脚部と手の計測できましたか?それが出来たらアンダースーツの耐久性確認の為に実際に着て貰っていいでしょうか」

「OK、更衣室借りるよ」

 

 本格的になって来たな…!よし、今日も一日頑張るゾイ!(残り数時間)

ヘイ、赤糸虫さん!悪いけど更衣室って何処にあるか知らな───あれ?どしたのさ顔背けて。なんか耳真っ赤になってるけど熱でもあるの?大丈夫?シンビオート揉む??

スライムみたいな感触で病みつきになるよ。

 

「…あの…その……来正くん…さっき…その……」

「ん?さっきt『オラァ!さっさと更衣室行くぞオラ!』あだだだだッ!痛い!千切れる!耳千切れるからやめて!」

 

 んじゃ、場面カットさせてもらうね……男のサービスシーンなんて美青年か美少年に限るからね?

 

あ、二人とも更衣室借りるよーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ゛ああああ゛あああっ゛!!」(羞恥に染まる)

「おお、よしよし。羞恥に悶えてる所悪いですが作業の続きを……あ、無理そうですねこれは……それにしても、来正さん堂々と"惚れた"とか"見惚れた"と大きめの声で呟くのは知朱さんが耐えらn」

 

あ゛ああ゛ああ゛あ゛あああっ゛!!

 

 

 

 

 後ろの方で赤糸虫さんの絶叫が聴こえたような気がしたけどシンビオートに耳を千切られそうになっているので大部分を聞き取る事は不可能だった。

 

いや待って、シンビオートなんでそんなに機嫌が悪いか分からないけどそれ以上力を込めると本格的にヤバいので本気でやめて欲しい。

 

……えっ、難聴系主人公の耳に価値は無いに等しいから無くなっても問題ないだって?

ははは冗談上手いなシンビオート 人の耳は周囲の音を集めるのに必要な器官であって爪とか髪のように生えてくる訳じゃないんだよ?それを理解したなら早く手を離してくれると嬉s

 

『断罪のエクセキューションッッ!!』

 

お゛ああ゛ああ゛あああああああ゛あ゛あ゛あああ゛ッ゛ッ゛!!?

 

 

 

 

 

「ほほう、中々良く似合ってるじゃないですか!……ところで、なんで来正さんEカード戦カイジみたいになってるんですか?」

 

「いや…シンビオートが勝手に……」

 

 この後シンビオートに平謝りしたら普通に治して貰った。うちの寄生生物の心は未だ謎が多い……あと、耳って簡単にくっ付くもんなんだね。

 

 




 主人公君の新コスチュームのお披露目は次回に持ち越し。あと、作者の趣味が全面に出された武装が追加される予定です。


〜〜キャラクター紹介〜〜

『主人公』
今までコスチュームの重要性を全く理解しておらず、シンビオートの実力を十二分に発揮出来るようにスーツの改良、修復を行う。あと耳って普通は(くっつか)ないです。

『発目明』
やっぱりヒーローにはスーツ作成シーンだよね、そんな貴方にオススメな人物。だいたいこの人に頼めばスーツは作ってくれる。
……しかし、流石に全身ヴィブラニウムスーツを作製するのは難しいと思われ───あ、いやでもヒロアカ世界の技術凄そうだから意外と作れるのかもしれない。

『赤糸虫』
高校デビューを失敗した恋愛クソ雑魚属性持ちキャラ。DT臭のするピーターをTSしたらこんな感じなのかなぁ?と作者が想像しながら設定したのだが、キャラがブレてる…ブレてない?


〜〜用語紹介〜〜

『カサンドラ』
北斗の拳より主人公ケンシロウの兄トキが幽閉されていた監獄。石像と見間違える程の巨大な門番・衛士であるライガ、フウガが入口を守っている。

『コマンドー』
アーノルド・シュワルツェネッガー主演のアクションB級映画。ニコニコでも人気の吹き替え版による台詞の数々は今でも名(迷)言として残っている。

『リッカー』
バイオハザードシリーズより登場するクリーチャー。Tウイルスにより突然変異を起こし視力を失った代わりに聴覚が異様に優れている。
初代実写映画では大きなサイズのリッカーがボスとして登場したり、ダマネーション(CG映画)の終盤では味方になったり色々と優遇されている(気がする)

『デス・スター(REGO)』
スター・ウォーズEP4に登場した宇宙要塞…の玩具。元ネタは『スパイダーマン・ホームカミング』より登場した。
ネッドとピーターの仲の良さを形として表していると考えられる。

『DUMMY』
MCU版アイアンマンより、アイアンマンmark2製作に携わったり、トニーの命を救ったりしたロボットアーム。多分癒し枠。

『ショッカー戦闘員』
文字通り悪の秘密結社ショッカーの戦闘員。「イーッ」と鳴く。

『Back in Black』
AC/DC 6枚目のアルバム曲。MCU版アイアンマンの冒頭から流れて来た。さらにスパイダーマンファーフロムホームでは新スーツ製作時にハッピーがこの曲を流す。鉄の意志を継ぐものとして所々にアイアンマンのオマージュが詰まっていたこのシーンはファン必見。
しかしピーターはレッド・ツェッペリンと間違えていた。

『Don't stop me now』
ロックバンドQueenによる人気曲。映画 シャザム!の劇中では能力確認テストの挿入歌として流れていた。

『ブレイド』
本名はエリック・ブルックス。人と吸血鬼のハーフとして生まれ日の下を歩ける事からDayWalker(ディウォーカー)と呼ばれている。ヴァンパイアハンターとして凡ゆる武器の扱いに長けており、吸血鬼特有の身体能力も兼ね備えている。
リメイク決定しているので楽しみ。でもファンタスティック4の二の舞だけは勘弁して(懇願)

『スニーカー』
元ネタはブラック・パンサーより、化学者のシュリが設計した音吸収靴。ネーミングについてはスニーキングとスニーカーをかけていると思われる。
なので例えその靴の種類がスニーカーでなくとも名称は"スニーカー"なのである。



 原作で明言されてるのですが本来、大きな改修を行う場合は申請書の作成→デザイン事務所に依頼→国の審査及び許可と言った手続きが必要になります。

ただの学生がそんな一からスーツを作製しても許可貰えないんじゃ意味がないのでは?と思いました。
今回、主人公達はあくまでコスチュームのサンプル製作を行い、試作品のデータや書類等をサポート会社に提出。不備が無いかチェックされた後、会社の方から製品版が届くと言った流れにしています。

描写しなくて良いシーンなのですが、MARVELヒーローのスーツ製作シーンはお約束なのです。ロマンの詰まった場面なのです。
作者の一番書きたかったシーンなのです。

粗はあると思いますが許してクレメンス……。



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職場体験編
32話 違う!シンビオートが勝手に職場体験を!



白き鋼鉄のXをやっていたら遅れました。スピーディーで面白過ぎるのがいけないんや。ガンヴォルトシリーズの中で一番心に来るものがあひました。
終盤の展開は正に悪魔(デーモン)の所業……!



 

《最終チェック開始。いつでも大丈夫ですよ》

 

「分かった、起動開始と行こうかシンビオート」

『OK』

 

 彼の顔は徐々に黒の寄生生物に呑まれていく。肌色が黒に塗り潰された直後、トンと顔の側面を叩くとその上から無機質な黒のフェイスカバーが出現し瞳のような光がブワリと出現する。

 

「まず腕部から」

 

 片腕に力を込めるとメコリと力瘤が出現、続けて鎌のようなヒレが腕が飛び出る。

更にもう片方の腕に力を入れると手の甲から三本の爪のように伸びる黒の刃が形成される。

 

「耐久及び武器形成に問題無し」

「それでは続いてフットパーツのチェックを行います、適当に走ってみてください」

「走法に要望は?」

「全て一任します」

 

 足をほぐすように軽いステップを行うと、体勢を低くしながら駆け出した。ぐんぐんとスピードを上げて行き、そのまま大きく跳躍を行う。

直後、足裏にローラーが出現する。丸鋸のようにギュィインと甲高い音を立てながらビルが建ち並ぶ街道をスイスイと氷面を滑るスケート選手のように進んでいく。

 

「少し遊んでみよう」

 

 そう呟くと彼はビルの横スレスレを走行し始め、勢いを殺さずに建物の側面を地に見立て走り、駆け上がって行く。

 

「蜘蛛のように駆け上がり」

『羽虫のように飛ぶッ!』

 

 指先から伸ばした触手が別の建物に付着。ジャングルに棲まうターザンの如く黒のロープ(触手)を両手にビルの合間をスイングで突き抜けて行く。

 

「Foooooooooo!!!」

 

 直後触手を解除。そのまま片膝を地に付けズシンと音を立てながら着地を行った。

 

「ヒーロー着地!さぁ審査員の結果はいかに」

『審議の結果オール百点満点、パーフェクトだ』

 

 頭部を丸々覆うバイザーが後方へスライド。その下から来正恭生成とシンビオートが外へ解き放たれる。

 

「移動・着地時の音量減少共に脚部への衝撃緩和確認。シンビオートの崩壊も見られず……うん、上出来!」

『少し窮屈だが…いいねぇコイツは』

 

《お、上機嫌ですね。如何でしょうか!私のベイビー達は!》

「そりゃもう!とっても!最高だよ!」

 

 ヘッドギアから響く発目明の声に来正は興奮気味に返事を行う。今までの自分達が見た事のない景色が広がり、このような力を存分に発揮出来た事に彼等はテンションが上がっていた。

 

 コスチュームの力を侮っていた来正は縁の下の力持ちであるサポート科の人々の認識を改める。頭の中が実験や発明品ばかりの阿呆の集まりだと思うなかれ、彼等の力があってこそヒーローは輝けるのだ。

 

 

《それでは次は耐熱性のテストを行います。……と言うわけでちょっと溶解炉へ突っ込んで来てもらってよろしいでしょうか?》

「ぶっとばすよ?(即答)」

 

……やはりただの阿呆の集まりなのでは?

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

「いやぁ、実に有意義でした。特に最後で来正さんが親指を立てながら溶鉱炉に沈んでいくシーンは涙無しには見られませんでしたよ」

「ははは、何言ってんの。四方八方から火炎放射器で火達磨にして来たの間違いでしょ?」

『密閉空間で炎浴びせて来た事はまだ根に持ってるからな』

「ふ、二人とも落ち着いて」

 

 やぁ皆、主人公だよ。早々ですまないけど赤糸虫さんそこどいて。発目さんを殴れない。

 

『キョウセイの言う通りだ。今すぐにコマ切れにして一生子供が作れないような身体にしてやらないと気が済まないッ!』

「えっ、来正君流石にそれは……」

 

「違うよ?シンビオートが勝手に言った事であって僕はそんな事しようとは一切考えてないからね?」

 

 それに、発目さんだと己の手で人工的にベイビー(意味深)を作り出しそうな勢いだからなぁ……。

これが私の子供ですと言ってウルトロンを連れて来そうで怖い。

 

「……よし!申請書の方を提出完了しましたよ来正さん!」

「あ、そうなんだ。結構早いね」

「早いも何も、ネットの方で提出を済ませました。今の時代アナログでは無くデジタルの方が何かと便利ですからね」

 

 成る程。電子メールでやっておいた訳ね、流石サポート科なだけあって手慣れてるなぁ。

 

『それじゃあ打ち上げと行こう、夕食はチョコファウンテンにする?ポテト尽くし?ちなみにカラオケは駄目だ。鬱陶しくて堪らないッ!』「毛並みッ!もふもふッ!可愛いは正義ッ!なので猫カフェッ!!」

 

 猫カフェは外せない。それにスタンプカードもそろそろ溜まる頃合いだから打ち上げは絶対に猫ッ!これは決定事項だ(ドスの効いた声)

 

おや?赤糸虫さんが仲間になりたそうな目で見ている。

……よし!

 

「一緒に行く?」

「………?」

 

 いや何で赤糸虫さん周囲を見渡してるの?え、なに?もしかして見えない何かでも居るの⁉︎ 怖ッ、周り怪奇だらけなの⁉︎

 

「……も、もしかして僕に言ってる?」

「そうだよ?」

 

「───め、明ちょっと助k「あ、すみません今ちょっと立て込んでるので」明ィイイイッ!?」

 

『一々叫んで面倒臭い奴だな』

「で、どうする?土曜暇だったらだけど猫カフェ行く?」

 

「え、あ、う…うん、つ、都合が良かったら…あ!行く!行くよ勿論!」

「うん、分かったとりあえず落ち着こうか」

 

 何故そこまで取り乱すのかな?

……ッ!?まさか、赤糸虫さん猫が好きなのかッ!?かーっ、そうかそうか!好きで堪らないのか〜〜ッ!

いやー、でも仕方ないよね猫だから!猫好きは万国共通だからな〜〜〜ッ!

 

「おや、何やら楽しそうな様子!それはそうと朗報ですよ来正さん!」

「朗報?」

 

 朗報と言われてもピンと来ないけど……一体どうしたんだろう?

……あ、HUNTER×HUNTER再開したとか?

 

「実は向こう(サポート会社)から早くも返信が来まして、来正さんの武装関係について勝手ながら追加させて欲しいとのことですよ?」

「サ、サポート会社から?」

 

 つまり、どう言う事だってばよ…まるで意味が分からんぞ!説明しろ遊作…じゃなかった発目さん!

 

「意外にもサポート会社に来正さんのファンが一定数居たらしく、進んで作らせて欲しいと言う声が上がっているそうなんですよ」

「……あ〜〜、成る程ね」

 

 ネットで結構人気って耳郎さん達言ってたし……あ、やばい。にやけ顔が止まらない。口端が釣り上がって仕方ない。あー、すごい嬉しいなぁ!かーっ、辛いわー人気者って辛いわー(天狗鼻)

 

「そこで、来正さん直々に武装関係で何か欲しいモノとかはないでしょうか?」

 

「ん〜〜〜?そうだなぁ〜〜、盾があれば僕としては問題無いから()()()()()()()()()よ」

『おい、それでいいのか?』

 

 いいのいいの、サポート会社だしなんとかしてくれるでしょ(投げやり)専門的分野に長けている方に任せていれば全て上手く収まるんだよ。

 

「それでは、そう返しておきますね!」

「よし、ありがとうね発目さん。……ところで発目さんは打ち上げに参加する?」

「あ、すみません。私猫よりベイビー達弄っている方が好きなんで」

「は?」

「は?」

 

 この後、無茶苦茶殴り合いになった。でも仲良くなれた気がする。殴り合いの果てに友情って本当にあるもんなんだね。

……でもステゴロに対してパワードスーツ持ち出して来るの卑怯だと思うの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用禁止の身だ。落としたりするなよ」

 

 翌日、何事も無く僕等は駅に集合。各々コスチュームが内蔵されたケースと一週間分の着替えや生活用品の詰まった鞄を背負った皆の姿が目の前に広がっている。

あー、なんかワクワクするなぁ今から旅行する感じで。

 

「くれぐれも体験先のヒーローに失礼のないように。じゃあ行け」

「「「「「「はい!」」」」」」

 

 相澤先生に皆が返事をすると各々は行くべき列車に乗る為に改札口へと向かう。

さーて、それじゃ僕もそろそろ行こうかなっと。

 

「それじゃ緑谷君、麗日さん。僕こっちだから」 

『体験先であったら商売敵だ。その時に殺し合いになっても容赦しないからな』

「シンビオート!」

 

「相変わらずやね……」

「う、うん。気をつけてね」

 

 なんか若干引かれている気がするけど……まぁいいや。とにかくこれから一週間職場体験がんばるぞい!

 

「それじゃあね来正く……あ、ごめん。やっぱり言わせてもらっていい?」

「ん、どうしたの?麗日さん」

 

 

「いや、さっきから気になっていたんだけど……その巨大な荷物は何なの……?」

 

 と、緑谷君は僕が背負ったドでかいサムシングに指を差す。

…あ〜〜、これ指摘しちゃうかぁ。うん傍から見れば完璧に聖衣箱(クロスボックス)を背負ってるようにしか見えないから仕方ないよね……。

 

「うん、分からん。全然分からん」

「「えぇ……(呆れ)」」

 

 クソォ…!何が盾だよ!説明書を見させてもらったけど、これ(がわ)は辛うじて盾として残ってるけど機能的には鈍器に分類されると思うんだけど……しかも重いし!

 

「ま、まぁ…盾らしいし?別に危険物じゃないだろうから平気でしょ」

「それなら、いいんだけど……捕まったりしないように気をつけてね?」

 

 ん?それってどう言うk…あ、二人とも行っちゃったよ。

なんか捕まらないで〜とか言ってたけどハハハそんな馬鹿な。健康優良児であるこの僕がそんなヘマをする筈が……あ、ごめん。なんかシンビオート見たら自身無くなって来た。

 

とりあえず、そんな不安を抱えつつも列車に乗り込みに行きますよ〜イクイク。

 

『電車か…最近は汽笛が鳴らないのが増えたから喜ばしいぞ。嬉しみ』

「あー、始めて乗った時は電車内がシンビオート塗れになって大惨事だったからね……」

 

 ほんと、あの時は大変だった。それからシンビオート電車内では僕の体の中で籠っているようになってるから結果的に静かでいいんだけどね……と、結構席が空いてるなぁ。目的の場所には意外と時間掛かるみたいだから窓際を確保したいけど。

 

『……おい、見ろ。八百万がいるぞ』

「あ、本当だ…って、何やってるんだろアレ」

 

 八百万さんが席に座って……なんかあちこち探しているように見えるけど。よく分からないけど、高級チョコを貰った恩があるし友達だから助けるのは当たり前なんだよなぁ。

 

「やぁ、八百万さん。同じ電車とは奇遇だね」

「来正さん!」

『困ってるようだな。手を貸してやる……キョウセイがな』

 

 はいはい、シンビオートが手を貸さないのは薄々予想してたから。で、何をそんなキョロキョロと?……まさか、忘れ物をしちゃったとか⁉︎

 

「い、いえ。私このような列車の一般席に座るのは初めてで…いささか勝手が分からずにいまして……」

「あー……そういう」

 

 確か八百万さんってセレブなんだっけか。やっぱり移動手段って長い黒のリムジンなのかな?

 

「…よかったら教えようか?電車乗るの慣れてるし」

「そ、そうですか!事前に勉強していたのですがやはり実物は異なっておりまして……えーと肘掛は何処に?」

「ないです」

 

「そ、それでしたらレッグリストは…」

「ないです」

 

「リ、リクライニンg「ないです(無慈悲)」

『勉強したのが全く無意味だったな』

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり、(わたくし)は…駄目な人……」

「シンビオートォ!謝れ!今すぐに弁明と謝罪を!」

 

 あぁ、もう!周りの人達が比較的少ないからいいものを、もしこの場面をクラスメイトに見られたら面倒臭い事に───

 

「あれれれーー?A組が女子を泣かせてるよォ〜?僕達より上位成績なのにおかしいなぁーーー⁉︎」

 

「もっと拗れそうなのが来ちゃった!!?」

『うわ でた』

 

 何故ここでB組ッ!?しかもそのB組屈指の面倒臭さと雄英で(もっぱ)ら評判の物間君がエントリー⁉︎

 

「酷いなぁ。泣かせてるのはそっちの方じゃないか、こんなのが僕に勝ったなんて未だ信じられないよ!あぁ全く、ヒーローとして情け無く思うy「お前の方が情け無いぞ物間」ピャッ」

 

 あ、背後から首筋に強めの手刀で崩れた。堕ちたな(確信)

そんな手刀をかましたB組の女子は物間君を……あ、隣の席に放り投げた。

 

「悪いな、ちょっとアイツお前に負けてから色々とライバル心?みたいなのが芽生えて更に扱い辛くなってな」

 

「ライバル心…」

『別にライバルでもないから困るぞ』

 

 う〜〜ん、何というか。コミックやアニメなら普通は終盤辺りでぶつかる強敵ポジションなんだけどなぁ、コピーする能力ってかなり厄介だし。

 

「あ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。僕は来正恭成、こっちはシンビオート」

『Nice to meet you』

 

「別にそんな畏まらなくてもいいよ。私は拳藤一佳、そっちは八百万だろ?体育祭で活躍してたから知ってるよ……ほら、泣くなよ八百万」

「うぅ…情け無い所を……申し訳ありませんでした」

 

 おお、何というか姐さんキャラだ。皆を率先して引っ張る器の広い委員長タイプ。ウチには居ない感じで新鮮だなぁ……。

 

「何というかさ。気軽に話してくれて大丈夫だよ」

 

「あ、それ言っちゃうと……」

『そうかい、それなら機内飲料を駆け足で買ってきてもらおうか。オラあくしろよ』

 

「……なぁ、こいつ」

「拳藤さん、この世には別ベクトルで物間君以上に面倒臭い存在が居るんだよ(遠い目)」

 

 あ、拳藤さんが頭抱えた。大丈夫?秘蔵の動物アルバム見る?

……え、見ない?あっはい、そうですか(´・ω・`)

 

「ノコノコ、とても面白い子ノコ」

「ハハハそう見える?……えっ、誰?」

 

 ナチュラルに隣座ってるけど誰なのこの子!?前髪で目元が見えないからなのか少し不気味だ……!

 

「あぁ、B組(ウチん所)の小森希乃子だよ。シンビオートに興味津々らしくてね」

「へー、シンビオートに?変わってるなぁ……」

 

 拳藤さんが紹介してくれた小森さんに視線を向ける。A組とはまた違ったベクトルの人物に僕は感心を覚える。MARVELとかDCとかではこう言うキャラは見かけなかったからなぁ。

 

「シンビオート、キノコ好きノコ?」

『うん、大好きSA』(チャー研風)

「あ、僕も好きだよ(便乗)」

 

「じゃあ、"きのこの山脈(さんみゃく)"と"たけのこの(さと)"はどっちが好きノコ?」

『きのこだな』

「僕もきのこの山脈かな。あのクラッカーとチョコの組み合わせが癖になっt「今日から来正は盟友ノコ!」早ッ!?」

 

 両手を掴んでブンブンと振って来る小森さんに僕はただ、圧倒される。なんか色々と凄いねこの娘。

 

「八百万はキノコ山脈好き?」

「えっとすみません、実は食べた事が無くて」

「それならこれから好きになれば良いノコ!ほらほら、きのこチョコ沢山お食べ!」

 

 八百万さんの口内へチョコが押し込まれるそりゃ、ん〜新手の拷問方法か何かかな?

 

「と、ところで小森さんは何処のヒーロー事務所に?(話題転換)」

「私はメディア系の所を選んだの。目指すはアイドルヒーローだノコ!」

 

 アイドルヒーロー……Tiger&Bunnyのブルーローズみたいなのを目指しているのかな。

それにしても、キノコ系アイドル……歌って踊ってる最中に豹変したりしないよね?危ないキノコをキメたりしないよね?

 

『アイドル……オレもアイドルになれるか?』

「シンビオートがアイドル…?ハッ」(鼻で笑う)

『は?』

 

 いや、こんな這い寄る神話系アイドルのショゴス擬きがお茶の間に出れる訳ないって分かり切ってるんだよなぁ……。

全国報道されてる場でやらかした事今でも根に持ってるからなシンビオートこの野郎(半ギレ)

 

「メディア系ですか、実は私はウワバミの元で職場体験を」

「お、奇遇だね。私もだよ」

「拳藤さんもですか‼︎」

 

「へー、こんな事あるんだね…と、言っても同じ事務所に行くんだから同じ電車に乗っててもおかしくないかー」

「そのとーり。ちなみに来正は何処?」

「僕はギャングオルカ事務所だよ小森さん。対犯罪敵を想定した所を希望したんだ」

 

 僕がそう告げると「おー」と小森さんは口を開いた。え、なにそのリアクション?

 

「これはとっても驚いた。こっちも同じ職場先だとは思わなかったノコ」

 

 え……もしかして小森さん僕と同じくギャングオルカ事務所なの!?

 

「え?違うけど」

「あ、そうなんだ……でも同じ職場って」

 

「私じゃなくて、そっちの方に居る」

 

 と、指をさした方向には未だ気絶している物間君が────え?彼なの?

 

『は? おい今すぐにこの物真似クソ野郎を窓の外へ放り投げるぞ』

「シンビオート⁉︎まずいですよ!」

 

「いやいや、そっちじゃなくてさらに奥の方の席に座って居る」

「え?奥の方にって言われても………あっ」

 

 僕が小森さんの指差した方向。倒れた物間君よりも先に向けられた箇所には……座席からひょっこりと顔を出してコチラを見つめる赤糸虫さんの姿があった。

 

………えっ、マジで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか赤糸虫さんが僕と同じ事務所先だとは思わなかったよ」

『こりゃたまげたな』

「う、うん……偶々指名が来ていて…」

 

 あの後、拳藤さん達と別れ最寄り駅に降りた僕達は街道を歩いていた……そう言えば物間君あの後ずっと気絶してたけど大丈夫なのかな?目的の駅に降り過ごしてないといいんだけど。

 

……と言うか

 

「なんで赤糸虫さん僕の後方3mを常にキープし続けてるの?」

「いっ、いや!?べ別に、そう言う……ちょっと相手の後ろを歩くのが好きだから!」

「あ、うん」

『なんだコイツ』

 

 シンビオートがそう言うのも仕方のない事だ。初対面時と比べてものすごくビクビクしている印象だ。何でそんな態度を取っているのか僕には全く分からな────あ、待てよ?

もしかして体育祭の時に超パワーで殴ったからそれがトラウマになっているんじゃ(震え声)

 

「ごめんなさい…ほんとごめんなさい……」ブツブツ

「い、いやよく分からないけど気にしなくていいからね?」

『面倒臭いなコイツ等』

 

 うーん、よく分からないけど どうやら赤糸虫さんが僕を避けてる理由は別にあるようだ。

……と、そんな事をしているウチに目的地に到着した。

 

「ここが……」

「うん。敵っぽい見た目ランキング3位にしてヒーロービルボードチャートJP10位のギャングオルカヒーロー事務所!」

 

 ゴゴゴゴゴゴと今にも威圧感を表す擬音が出てきそうな程の迫力だ。これがプレッシャーと言うものか……くっ!

 

「……来正君、何してるの?」

『たまに頭悪くなるだけだ。気にするな』

 

 ねぇ知ってる?乗ってくれないと精神的ダメージが凄まじいんだよ?スルーされるのが一番辛いんだよ?

 

「と、とにかく……これからシンビオートは余計な事は喋らないでね?」

『……OK(不服)』

 

 ヨシ!(現場猫) これで不穏分子は排除完了ッ!待ってろギャング・オルカ!そのシャチ肌を撫でてやるからなぁ!

と言うわけでイクゾー! デッデッデデデデ!! カーン!(扉が開く音)

 

 

 

「「「「「「「「ようこそ おいでくださいました!」」」」」」」」

 

 

 そんな意気揚々と扉を開けた僕達を迎えたのは、腕に取り付けられた銃砲をこちらに向けた数十人もの黒尽くめ達だった。

 

…………?????(宇宙猫状態

 

「ん、……ん゛!?え、何?どう言う状況なのこれ?」

「」←(放心)

 

 あ、駄目だ。赤糸虫さんに至っては魂が何処かへ飛んでいってしまってる。

……おや?一人が僕達の元に寄って来たけど一体何の用かn

 

「申し上げます、死ね!」

「え?」

 

BANG!!

 

 直後、真正面にいた全身黒スーツの戦闘員らしき人物の銃砲から何かが放たれ────って⁉︎

 

「危な────ッ!」

「うきゃあ⁉︎」

 

 彼女を押し倒し、迫り来る弾丸を回避!そのまま受付カウンターを盾にし身体を滑り込ませるように隠れるッ!!

 

「撃て撃てェーーー!蜂の巣にしてやれーーーーっ!!」

「うおおおおおお!?」

 

BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!BRAKA!

 

 やばい!やばいやばいやばい⁉︎何なのこのアメリカンギャングの抗争に巻き込まれたような状況!と言うか顔真っ赤にしてないで戻って来て赤糸虫さん!

 

「───はっ!?ど、どうなってるの⁉︎ここヒーロー事務所じゃ…」

「分からないッ!分からないけど、なんとか打開しないと……ってあれ?シンビオートは?」

 

 さっきから静かだけど、どうした?まさか敵の攻撃を受けたのか⁉︎

 

『……いや、余計な事は喋るなと言われたから』

「あ、うん。ごめん余計な事喋っていいよ」

『OK(喰い気味)!さぁ、あいつ等をどう調理してジュースにしてやろうか!』

 

 そんな辺り一面鉄の匂いがするトマトジュース(ピューレ状)は遠慮願いたいよ。いや、そんな冗談はともかくこの窮地を脱さないといけない。それに加えて隣の赤糸虫さんはヒーローだけど女の子だ。優先的に守る必要がある。

 

この窮地を乗り切る、赤糸虫さんも守る。両方やらなくちゃいけないのが『ヒーロー』のツライところだなぁ……。

 

「フハハハ!人間共よ!恐れ慄くが良い!フハh『うっせぇ!』ぐぼぁ⁉︎」

『ハッ、大した事ないな!キョウセイ、オレ様が何か投げて迎撃する。その間に何か考えろ』

 

 無論、任せてシンビオート。

……と言ってもやる事は外部連絡(通報)一択だけどね!免許も無ければ戦闘許可を得てないし。

 

「よしスマホを……あれ?無い⁉︎無いよォ!スマホ無いよォ⁉︎」

「えっ……あ、ボクのも無い⁉︎」

 

 嘘でしょ!?此処に来るまでちゃんと持ってた筈だよ?なのにどうして────ん、待てよ?

 

「あのさ、シンビオート。さっき敵の一体倒した時に何を投げた?」

『何ってそりゃスマホだ。最近のは頑丈に出来てるお陰でそれぞれので二人倒せたぞ。ほら褒め称えろ』

 

「ハハッ!面白い奴め、何してんだこの阿保ッ!?

 

 馬鹿じゃねぇの!?馬鹿じゃねぇの!?(二回目) 何で大事な連絡手段を武器に応用してるの⁉︎ あぁ、クソ!こうなったらプラン変更だ!

 

「よし赤糸虫さん!"助けてー"だ!」

「た、助けて?」

『どう言う事か説明しろキョウセイ』

 

「うん、まずは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「撃ち方やめェ!」

「ハッ!話題のヒーロー候補も大した事ないな!シャチョーに連絡しろ!ヤツ等はビビって手も足も出な───「助けてぇぇええ!」……ん?」

 

 銃弾の雨霰が止み、受付カウンターの影から頭から血を流した患者を背負う赤糸虫が現れる。

 

「助けてぇーー!来正君がッ…!来正君が大怪我をッ!!」

『クソッ、出血多量だ!オイお前等、キョウセイを助けろ!』

 

 そんな必死の形相に戦闘員達はざわざわと騒ぎ始める。

 

「何ーーーッ!?頭から血を流してるぞ⁉︎」

「なんで非殺傷のセメント弾でダメージ食らってるんだアイツ!くそっ、おい!誰か個性で傷を塞いで…」

「……あれ?それじゃ何でアイツは頭から血を流して……?」

 

 騒めく戦闘員達だったが、その中で一部疑問に思う者が現れる。

何故、あのような怪我を負ったのか? そして何故、頭から血を流しているにも関わらず応急処置を行わずに堂々と前に出て来たのか?

 

……その答えは

 

「助けてェ!助けてぇえ!助け……てぇぇぇええいッ!!」

 

「なっ───投げ飛ばしただとォ!?」

 

 演技だったからだ───って、背中痛ァ!?赤糸虫さん強く投げ飛ばし過ぎィ!数名巻き込んだけどもう少し着地の事考えて!

……って、そう言ってる暇はないか!

 

「くそっ、演技か!騙しやがって!」

 

「シンビオート、マスクッ!!」

『騙される方が悪いのさ!まんまと出し抜かれた過去の自分を恨むんだな!』

 

 直後、近くの戦闘員を全身に纏わり付いたシンビオートが掴むとヌンチャンクの如く振り回し他の戦闘員達を薙ぎ倒して行く。

よしそのまま……お、足元に僕等のスマホ落ちてんじゃーん。

 

「赤糸虫さん!外部へ連絡を!」

「うん、分かっ────後ろ!」

 

 赤糸虫さんへスマホを投げ渡した瞬間、そう告げられる。

後ろ?後ろに何か───って、うおおおおおお!?またセメント弾を撃って来た!?

 

『fuck、クソ面倒臭いな。いくらオレが強くても当たれば動けなくなるぞ』

「せめて盾があれば楽なんだけど───って、そう言えばあったよ盾が!赤糸虫さん!君のとこにあるデカイ箱を!」

 

「こ、これ?分かった!受け……取ってぇえ!」

 

 僕が赤糸虫さんに声をかけた直後、彼女は箱を投げ渡して来た。って、投げれるの!?それかなりの重量だけど!?

まぁ、それはともかく でかした!

 

チュートリアルさえしてないってのに実戦で初使用なんて…あぁ、あとで怒られないといいなぁっ!(投げやり)

 

「新武装のお披露目だッ!そっちが攻撃仕掛けて来たから正当防衛って事で痛いのは許してよね!」

 

 と、誰に向けて言い放ってるか自分でも分からない言い訳を

口にしながらケースのロック解除を行う。

すると、勢い良くケースの中から直径1m程の"盾らしき物体"が飛び出して来る。

 

「なんだありゃ!鈍器か⁉︎」

「いや、墓石!?」

 

「盾だよッ!!」

『盾って言う割にはかなりの重量だがな』

 

 十字架を模したような形状をした盾。それを手にした僕はそれに取り付けられている特殊挿入口にシンビオートの触手を押し込んだ。

 

「アイツ、謎の武器で何をして……!」

「撃て!何をするか分からないぞ!」

「その前に無力化するんだ!いや此処荒らされたらシャチョーにシメられるから勘弁して!(切実)」

「止めろォ!ヤツを止めろォ!!(必死)」

 

 飛んでくるセメント弾を手にした盾を前に出し、防ぐ。だからこれは盾と言っているだろうに……!いや、僕自身も盾かどうか分からなくなって来たけどさぁ!

 

まぁいいや、もう既にチャージは完了したしね。

 

『接続完了、全弾丸装填』

GUNGRAVE(ガングレイブ)UNIT起動開始」

 

 直後、僕が手にした巨大な盾はガシャガシャと形状を変えて行く。

これこそサポート会社に武装を一任してしまった結果、送られてきた頭がおかしくなりそうな盾(と言うなの何か)!

 

その名も『過剰武装多目的巨盾型特殊機構兵器』

Desperado(デスペラード)

 

 色々言いたい事があるけど、今は取り込み中ので一つだけに絞ってして言わせてもらう。

 

「武装にも限度があるでしょうがぁぁああああッッ!!(マジギレ)」

 

BRRRRRRRRRTTTTTTTTTTTTTTTTTT!!

 

 直後、盾に仕込まれた機関銃(ミニガン)から放たれる弾丸状のシンビオートが次々と戦闘員達に向けて放たれる。

 

……うん、やっぱりコレ盾じゃねぇわ。トライガンのパニッシャーだよね?形状が十字架になってる辺りから嫌な予感してたけどトンデモ兵器だよねコレ。下手したら銃刀法とかに引っかかりそうだなぁ(震え声)

 

「なんだコイツ⁉︎銃を持ってるぞ!」

「盾です(震え声)」

「学生なのにそんなの持っていいのか⁉︎」

「盾だからへーきへーき(震え声)」

 

 それに分類としてはこの武装は弾丸では無くあくまでシンビオートを撃ち出す為の射出機(カタパルト)となっているので犯罪にもならないし、ヒーローが持っていても何ら問題は無いのである。

 

……と、説明書に書いてあった。

うん、まぁそれはそれとして。

 

「もう既に警察とヒーローへの連絡は済んでいる、大人しく投降しろ」

『投降しないならボーナスゲーム再開だ 一人10点で骨をへし折ったらプラスでもう10点。眼球潰せば30点で皮を剥いだら50点だ』

「もう一度言う!お願いだから大人しく投降しろォ!(懇願)」

 

 いやホント、そっちの生命に関わる事だから大人しくヒーローに捕まって⁉︎お願いだから!これ以上罪を重ねたくないの!

 

「おい、どうする?」

「いやでもシャチョーがそんな事を許s「そこまでだ」ッ!シャチョー!」

 

 僕と赤糸虫さんは咄嗟に声が聴こえてきた方向に視線を移す。そこには荒々しい海を征し、食物連鎖の連鎖の頂点に立つ捕食者の姿が在った。

そしてその捕食者であり僕等が求めていた人物であるヒーロー『ギャング・オルカ』は凶悪な牙が並ぶ口を開いた。

 

 

「来たな、便所のカスにも劣る薄鈍共ッッ!!」

 

「「ッ!!」」

 

 ビリビリと放たれるプレッシャー、僕等はただその強者の放つ圧に身体の自由を奪われてしまう。

 

「来正恭成ーーーーッ!!貴様が此処に来た理由はなんだッ!」

「サーッ!此処に来たのは心身共々徹底的にシゴキ上げ、より強いヒーローとなる為ですッ!」

「来正君!?」

 

 赤糸虫さんが隣で驚愕しているけど……ごめん!今、フォローできる余裕が無いんだ許して欲しい!

 

「あのような危険物を扱うような敵予備軍がヒーローになれると思ってるのかァ!!」

「ノーサー!全く持ってオルカの言う通りでありますッ!」

「それを知った上での判断が屋内での乱射か!気に入った!お前は徹底的にシゴキ、性根を叩き直してやろう!拒否権は無い、いいなッ!」

「サーッ!イェッサー!むしろご褒美でありますサーッ!」

 

「来正君!?「赤糸虫知朱ッ!貴様は何をしに此処に来たッ!」

「えっ?あっ、その、職場体験に……」

「指導ーーーッ!!」

 

 赤糸虫さんが投げ飛ばされたーーと、思ったら戦闘員達にキャッチされた。マスクを外しているけど、あの人達何処かで見たかと思ったらオルカのサイドキックの面々だ……。

 

『おい、なんであのシャチ相手にかしこまってるんだ』

「くれぐれも言っておくけど喧嘩売るのはやめなよシンビオート。オルカは音波攻撃得意だから相性最悪だ」

 

 そう告げると不服そうな表情を見せ、渋々と体の中へ引き篭もってしまった。この職場体験を通して性根が改善してくれればなと思っているとギャングオルカから号令が掛かる。

 

「職場体験だからと言って俺は容赦はせん!早速コスチュームに着替えて来い!いいなッ!」

 

 そう言うとギャングオルカは外へ出て行く。口は悪いけどあの人は僕等をヒーローの一人として見てくれているのだと言う意思を感じる。

期待に応えられるように、そしてより上へ目指す為に僕は改めて気合を入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様、さっきは何も言わずにセメント弾撃ってごめんよ」

「あっ、お疲れ様ですッ!先程の戦闘員の方ですよね!こちらも乱射してすみませんでした」

 

「いいよ、気にしないで。それにしてもサイドキック相手に目玉とか皮剥とかを堂々と言えるとは……さすが噂に違わぬヒーロー生だね!」

 

「違うんです!あれはシンビオートが勝手に!!」

 

 

 




 

次回より職場体験編に突入。でも番外編を投稿したり、新しいネタ思いついたから色々試し書きしたりと更新が遅れるかもしれません。


『赤糸虫知朱』
ギャングオルカ事務所を選んだ理由は発目にオススメ(故意100%有)され流れるままに。
実は職場体験編は来正では無く赤糸虫くんちゃん中心になるかも。

『物間寧人』
B組の雄英の負の面とも呼ばれるキャラ。来正&シンビオートをライバル視。ちなみにそのまま気絶したまま目的地への最寄り駅を逃したのは言うまでもない。

『拳藤一佳』
個性はミズ・マーベルっぽいB組の姉御キャラ。サイドテールで照れ隠しですぐに手が出るようなキャラクターいいよね……。

『小森希乃子』
キノコを愛するB組女子生徒。前髪で目が見えないキャラって大体可愛いと相場が決まってるけどこの娘は大当たり中の大当たり。
隠キャかと思いきや陽キャでアイドル目指してるなんてファンになるしかないじゃないか……(サイリウム購入)

『ギャングオルカ』
主人公達の実力を測る為にわざわざサイドキック達をスタンバらせておきました。ヒーローになるのならばそれ相応の経験を積ませる必要があると考えた結果がこれである。



〜〜用語紹介〜〜

『助けて』
元ネタは『マイティ・ソー バトルロイヤル』。
ソーとロキが協力して敵に近づく作戦であり、その内容はソーがロキを背負いながら助けを懇願。相手に情に訴えながら接近しそのままロキをブン投げると言うほぼ勢いだけの策。
ちなみに撮影当日に思いついたアドリブらしい。


要らないと思いますが挿絵描きました。
 ↓


【挿絵表示】


描いてみた結果アーカムナイトっぽい?




『過剰武装多目的巨盾型特殊機構兵器』
Desperado(デスペラード)

基礎の巨盾形態に加え、搭載されたGUNGRAVE UNITにより武装形態へ変形。各所に埋め込められた

・アサルトライフル
・機関銃(ミニガン)
・単発式狙撃銃
・グレネードランチャー
・射出型アンカーボルト
・シザーグラップル(ハサミ)

と言った武装が状況に応じ展開される事で低威力として懸念されていた黒指弾の強化を図っている。
ちなみに銃刀法に引っかかりそうだがあくまでシンビオートを組み込み、撃ち出す装置であるので銃刀法に引っかからない(と願いたい)
アウト寄りのセーフである(震え声)

モチーフはトライガンより『パニッシャー』さらにガングレイブから『デス・ホーラー』。デカくて武器をこれでもかと積み込んだロマンの塊。


作者は法律面はダメダメなので粗があるのは許して(懇願)



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33話 摩天楼を駆ける


間に合ったな。
……えっ、投稿が遅れてるだって? 投稿が遅れたかどうかは俺が決める事にするよ(サム8語録)

今までと比べてサブタイが変わるよ。


 

 世界総人口の殆どが個性と言う特異体質を有する現代。己が象徴でもあるその力(個性)を使う事を法に縛られる事によって表面上の平和を保つこの社会。

今の今まで抑圧され続け奥底に秘めていた衝動を爆発させた者を(ヴィラン)と呼ぶ。

 

 

……それならば、虐げられた者達から産み落とされた人は?

敵への憎しみで動く者は?

 

 

今宵もまた摩天楼の影で黒猫が鳴く─────

 

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

CLANG!! CLANG!! CLANG!!

 

 

 

「おおおおおおおおおおおお!!」

 

 グシャア!とすぐ側にあった自動車が破壊される。圧倒的なパワーで目に映る物全てを破壊するその巨体はまさしく化け物。

そこに燻銀の頑丈なアーマーを纏っている姿は鬼に金棒、獅子にヒレと言い表すのが妥当であろう。

そんな敵を相手警察官等は銃撃で応戦する。

 

「パワー型個性相手に銃弾は効きにくい!足止めで程度でも構わん、とにかく発砲でヤツの動きを止めるんだ!」

「なんとしても奴を食い止めろォォ!」

 

「ハッ、効かないなァ!」

 

 しかし銃弾はアーマーはおろか生身の部分に直撃しても、頑丈な皮膚によって大したダメージにならない。

 

「くそっ、こんなの相手にどうやって…「皆、そこを退け!」ッ!?」

 

 警察等の後方より()()()が超スピードで接近して来た。飛んできた火球が敵の顔面に直撃すると、その中から人型の炎が……いや、炎を纏った人が現れた。

 

燃義(ねんぎ)・必殺」

 

 その人物が己の両手に集約させた炎を撹拌(かくはん)。指向性を持たせ、一気に放出する!

 

焼爆砲(しょうばくほう)ッ!!」

「うおおおおおおおおおお!?」

 

 放たれた火炎が灰色の巨体を飲み込む。

近くの者達はその光景に圧倒され、避難していた住人の一部はおおっ!も声を上げる。

 

「火球ヒーロー『イグニッション』!その最高火力はエンデヴァーに匹敵すると言われてる!」

「正確には最高火力程度で()()()エンデヴァーに匹敵だけどな!ここは俺"達'に任せてくれ!」

 

 炎を止め、現場に駆け付けたヒーローであるイグニッションは目の前で煙を上げている敵の側に近寄る。

 

「ハァァ……、効かないなァ!」

「嘘だろオイ、全身全霊の技を真正面からだぞ⁉︎」

 

 が、しかし先程の必殺技の効果が無かったのかピンピンとした敵の様子に驚愕。それをみた敵はニタリと不適な笑みを浮かべ挑発を込めた言葉を発する。

 

「お前の事は知ってるぞ、エンデヴァーの下位互換だろ。逃げ足だけが取り柄の火達磨(だるま)野郎」

「ハッ、そっくりそのまま言葉を返してやるぜ。頑丈でパワーもあるがそりゃお前オールマイトの下位互換だろ……あ、いや取り消すぜ。御頭(オツム)の悪さだけはオールマイトよりも遥かに上だったな!」

 

 瞬間、ブチッと何かが切れるような音が響くと同時に灰色の敵が雄叫びを上げる。

 

「テメェ、テメェ、テメェッッ!!このライノ様を馬鹿にしやがったなッ!ミンチにしてやる!」

「なら捕まえてみるんだな……鬼ごっこ開始FIRE・ON!」

 

 炎に包まれたイグニッションは宙を舞い、ビルの合間を駆け抜ける。それに釣られるように燻銀に輝くアーマーを纏うライノは挑発に乗せられ追いかける。

 

「逃げる気かテメェ!」

「見りゃ分からないのか?テメェをおちょくってるんだよ!」

「ふざけやがって……ぶっ殺してやる!」

 

 次の瞬間、ライノのアーマーの一部が剥がれるとそこから鉄の管のようなモノがイグニッションに向かって放たれる。小型ではあるものの、それはまさしくミサイルだ。

 

ZOOOOOOOOM!!

 

「ミサイルだと⁉︎街中で何てモノを!」

 

 その場に留まると戦闘機に搭載されたフレアのように小型サイズの火炎弾をばら撒き複数のミサイルを撃墜する。

 

「素晴らしい。バエル…爆発こそアグニカ…!」

「おい馬鹿!インスタ目的で前に出るんじゃ───ッ!?」

 

 避難していない住民の存在に気を取られたイグニッションは幾つかのミサイルを墜し漏らしてしまう。

その空飛ぶ爆弾は逃げ遅れてしまった一般市民に向かって突き進んで行き

 

「あぶ───

 

ガガン!!

 

 現れた何者かによってミサイルは人の居ない方向へ吹き飛ばされ、爆発した。

 

「意外と使えるもんだねマンホール。……で、悪いけどさ動物園に帰るならヒーローに保護してもらったほうがいいよ」

「誰だッ!俺様を畜生扱いしやがるヤツは!!」

 

 その者がマンホールを指先でクルクルと回すと、まるで円盤投げのようにライノに向かって投擲。

そのまま顔面にマンホールを打ち付け、敵はその場で悶え苦しむ。

 

「ぐ、おおおおお!?」

 

「名乗りが遅れたけど、うーん……貴方の親愛なる隣人『V(ヴァミリオン)スパイダー』ってところかな?」

《決め台詞頂きました、SNSにアップしますか?》

「いや、遠慮しとくよ」

 

 スーツから響く声に少し呆れた様子でVスパイダーと名乗る"赤糸虫知朱"は拒否の意を見せた。

 

「ここは危険なので早く避難を」

「先の活躍見事だったよ、君に3000アグニカポイントを移譲しよう」

「悪いけどそれクーリングオフ出来る?そんな事よりも早く避難して貰えるとボクは嬉しいよ」

 

 何故か偉そうにしている男性は「フ…」と笑みを浮かべる。

 

「見事だよ少年。健闘を祈る」

「へ?いやボク───」

 

「中々やるじゃねぇかスパイダー坊主。このまま頼むぜ!FIREッ!!」

「いやだからボクは───」

 

「このクモ野郎!このライノ様をコケにしやがって、ぜってぇ許さねぇからな!」

「………」

 

 何度も遮られる己の台詞と訂正する事が出来なかった事実。そんな男と認識されている彼女はポツリと呟く。

 

「ボク……女なのに……」

知朱(チズ)、このコスチュームにはバスト調節機能がありますが……胸盛りますか?》

「そっ、それはいいよMJ!」

 

 ヒーローネーム "ヴァミリオンスパイダー"。彼女の友人が作ったスーツはAI(人工知能)が搭載された稀に見るモノだった。製作者の発目明が搭載したシステム、名前をMessage(メッセージ)Jester(ジェスター)。縮めてMJと赤糸虫は呼んでいる。

 

「〜〜〜クソがッ!……チッ、相手なんかしていられるか!」

「何処に行きやがる!?追いかけるぞ!」

「わ、分かりました!MJ、敵の位置登録(マーカーポイント)を固定!」

《了解しました。追跡モードを起動しますか?》

「それもお願い!」

 

 突如として別の方角へと走り始めるライノとそれを追いかけるイグニッション、Vスパイダー。

イグニッションが炎で、Vスパイダーは糸によって進路妨害を行うが、パワー共に耐久力もある相手には相性が悪いのか全て無理矢理突破されてしまう。

 

どうするか、と赤糸虫が考えていると突如としてMJの音声が響く。

 

《追加報告、シルバーから連絡が入ってます》

「繋げて」

『こちらCode:シルバー。Vスパイダー、そちらはどうなっている?』

「すみませんシルバー。現在逃走中のライノをイグニッションと共に追ってる所です!」

『よし分かった、引き続きそちらは追跡を頼む。あとイグニッションにポイントはD-26に誘い込めと伝えておけ、健闘祈る』

「分かりました……イグニッション!誘導ポイントD-26に誘い込むと言ってました!」

「よし、着いて来な坊主!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 所は変わってライノ到着予定ポイント。そこに銀髪の女性と共に黒の巨体を持つ2人の姿があった。プロヒーロー『ギャング・オルカ』とそのサイドキックの1人である『シルバー・マルテース』だ。

 

「シャチョー、どうやら相手はこちらに向かって来てるようです」

「報告ご苦労。指定ポイントで待機していろ」

「了解しました」

 

 そう一言言うとシルバーはワイヤーガンを巧みに使いビルの屋上へと飛んで行く。直後、街道の角から目的のヴィランであるライノの姿が現れる。

 

(ヴィラン)が…牢に入らなければ分からないようだなッ!」

 

「うおおおおおっ!?ギャング・オルカだ!」

「生っべぇ!迫力まじっべぇ!」

「写メッ!写メ取らないきゃ…ッ!すみませーん、ちょっとこっち向いてください!」

 

 咆哮する冥界からの魔物。その姿に見惚れた一部の住民達はサイドキック達による避難勧告を無視するとスマートフォンを取り出し、撮影を始めてしまう。

アニメやコミックのような入り乱れる戦闘が半ば当たり前となっているこの社会に於いてこう言った輩が現れてしまうのは仕方の無い事だ。

故に─────

 

「あのっ!オルカこっち向いt『悪いな、今は仕事中だ。代わりと言ってはなんだがオレが一緒に写ってやるぜ?』きゃああああああああああああっ!?」

 

 それを排する者が現れるのも仕方の無い事なのである。撮影を願う人物の背後から這い寄るその名をシンビオート。知る人ぞ知る…いや、巷で話題のヤバい寄生生命体である。

 

「体育祭のヤベー奴だッ!」

「シンビオートが出たぞー!」

「すっげぇ!かっこいい!」

「ねぇママー!握手して来てm「駄目よ齧られますッ!」

 

『覚えておきな、オレ達はヴェノムだッッ!!ハーッハッハッハ!見ろよキョウセイ!人が逃げ惑う蟻みてーだ!ハハハハハハハハ!』

「分かったから手は出さないでねシンビオート?…シャチョー、避難誘導はどうしますか!」

 

「そのまま戦闘区域から離れるように施せ。皮肉にも住民達が勝手に逃げてくれるお陰でやりやすい」

「……悲しいですね」

「……口にするな。更に惨めになる」

 

 何処か通じ合うモノがあったのか、互いに同情し合う雰囲気を醸し出す。例えプロヒーローでも外見が怖いと揶揄されるのは心が辛いのである。

 

閑話休題。

視線を敵の方へ向けるとギャングオルカはギラリと眼を尖らせた。

 

「器物損害及び暴行、傷害、殺人の容疑で逮捕された。奴の犯罪者名(ヴィランネーム)をライノ!サイの確き凄まじいパワーの持ち主で、建物の崩壊を次々と招いた脳筋野郎だ」

「ネーミングそのままですね、外見もコミック通りだし…」

 

 見覚えがあるのかライノを遠目から見る来正恭成は訝しむような視線を向けている。

…まぁ、でも数億居る内の人間が架空の人物(キャラ)と似てる個性を持っているなんて稀ではないか。と無理矢理納得するように己自身に言い聞かせていると、後方よりサイドキックの一人がオルカ目掛けて走って来た。

 

「申し上げます!各員配置完了しましたァ!」

「ご苦労、あとは私がやる」

「シャチョーミズカラガ!?」

「これ以上住民や周辺地域に被害が出ては困るのでな」

 

 そうギャングオルカが呟くと来正に視線を向ける。

 

「では来正。早々貴様はこの場から離れ───」

「…………?」

 

 ほんの数秒、止まったかと思うとオルカは目尻を吊り上げ、牙を剥いた顎を大きく開け怒鳴り散らす。

 

「───勘違いするな糞砂利がッ!貴様ごときが戦闘に参加するのは時期尚早だと判断したッ!」

「サー!イェッサー!」

「そうと分かればボサッとせずに住民の護衛、避難誘導の手伝いをしろ!誘導に従わぬ奴は無理矢理従わせろいいなッ!」

「イェス!サー!シャチョー!サー!」

「サー!(素直に避難誘導任せたと言えばいいのに…)」

 

 ギャングオルカの一喝によりその場から離れる来正とサイドキック。直後、ライノとオルカが接触する残り数メートルでお互いに威嚇を始めた。

 

「シャチ野郎が!そこを退けェ!」

「退かせてみろサイ擬きがッ!!」

 

 ズガァン!!と力と力がぶつかり合う。

 

「ヒューッ!見ろよライノのボディを…鋼みてぇだ…!コイツはやるかもしれねぇ!」

「まさかよ、しかしシャチョーには勝てねぇぜ」

「サスガダァ…シャチョーに敵うヤツなど居るはずが…」

 

「───ッ!?」

「オイオイ、どうした?もう終わりかぁ?」

 

 オルカが驚きの表情を露わにすると、ズルズルとライノのパワーによって後退りしてしまう。その様子に避難中の人々、サイドキックの面々も同じように驚愕する。

 

「そんな!シャチョーが押し負けてる⁉︎」

「馬鹿な、いくら海中生物とは言えシャチのシャチョーがサイに押し負けるのか⁉︎」

 

「どぉおおおおッせい!」

「ぐうッ!」

 

 体を掴まれ投げ飛ばされたヒーローはそのまま駐車していたバスに突っ込む。同じパワータイプとは言え、負けてしまった。その一部始終は見てしまった住民を更なる混乱に陥れる。

 

「ハハハハ!何がシャチだッ!お前は指を咥えて俺様のパワーを見ているんだなッ!」

「まさか…住民を狙う気かッ⁉︎」

「ご名答ッ!さぁ、特大の花火を特等席で見せてや────

 

 

ごしゃ

 

 

───ぐあああああああああああっっ!?」

 

 ミサイルを放とうとしたライノが急に苦しみ始めた。それもその筈、彼の顔面には十字架らしきモノが直撃し、それによるショックで悶えているのだから。

 

ちなみに、それを投げた正体はご存知シンビオートである。

 

『NICE SHOT!』

「シンビオート⁉︎ そう言う武器じゃねぇから!……あ、いや待てよ?キャップも盾投げてるからあながち間違いでもないか」

「申し上げます、そもそも盾自体投げるものではない!」

 

 投げ飛ばした盾(と言う名の鈍器)をシンビオートによって形成したフックロープで回収していると、復活したギャングオルカが駆け寄って来た。

 

来正恭成ッ!何故手を出したッッ!!

「サー!申し訳ありません!勝手ながら このままでは避難が完了していない住民に被害が出たと予想し防衛手段として迎撃を行いました!」

その防衛手段がアレか!

「サー!アレでありますッ!処罰なら謹んでお受けします!」

 

 瞳をギラつかせ、牙を剥く海のギャング。それを前にして一歩も退かず人を守る為にやった行動に悔いがないと感じさせる覚悟。それを見たプロヒーローは……

 

「そうか、それは良い心掛けだ!ならば"罰"として貴様も敵退治に出動させてもらおうか!」

「サー!……サァッ!? いいんですかシャチョー⁉︎」

「私がそう判断したからだ。それとも文句でもあるのか?」

 

 ジャバジャバと水を被りながら言うオルカに来正恭成は戸惑いこそしたものの、すぐに「イェスサーッ!」と答え前に出る。

 

「テメェ…よくもやりやがったなッ!」

『ハッ、それなら次から仮面付けて出直すんだな!その前に、テメェの首を掻っ切るッ!』

 

 ジャキンと手の甲から突き出た三本の爪を形成させ、ライノの首元目掛けて振るう。そして……三本の爪はボディに触れた瞬間、音を立てながら"溶けた"。

 

『アッッッッッツ!?何だアイツの身体!ステーキの鉄板か⁉︎』

「いや違うッ!ライノの体じゃなくて、ライノが纏うスーツから熱が発生してる⁉︎……そうか、熱に弱いシャチョーの真っ向から打ち勝ったのはコレのおかげかッ!」

「馬鹿がッ!勝手に前に飛び出すなッ!」

 

 トリックを見破る来正だったが、勝手に攻撃した事に一喝される。

 

「餓鬼の教育がなってないなぁ…!」

「ああ、手のかかる生徒で本当に困る…が、他所見していていいのか?」

 

DIIIIIING

 

 直後、ギャングオルカはライノの懐へ突進を仕掛けると同時に超音波による攻撃を行う。

 

「……で、何かやったか?」

「チッ、邪魔だな。そのスーツ」

 

 ライノがお返しと言わんばかりの拳を受け止めるが、ジュウウと焼ける音と共にオルカは苦痛により顔が歪む。

 

「シャチョーッ!!」

 

BRRRRRRRRRTTTTTTTTTTTTTTTTTT!!

 

 デスペラードから放たれる無数の黒の弾丸がライノに直撃する。するも、「ぐっ」と声を漏らしながら敵がその場から離れる。

 

「大丈夫ですか!」

「問題無い、それよりもお前はアイツの頭部を狙え。あそこの部分破壊されれば何とかなる」

 

「それなら」と呟くと同時に手に持ったデスペラードをグルリと90°回転。銃口とは反対側の部分をライノに向ける。

 

「オイオイ、馬鹿なのかお前。銃はそんな風に使うもんじゃ───」

「ギターケースじゃないけど、デスペラード撃ちィ!」

 

 ズドンッ!と盾の銃口とは反対側の装甲がズレると、そこからミサイルの形をした黒の弾丸…いや、黒の爆弾が放たれる。

そのままライノに向かって着弾すると、バチュンと音を立てながら爆散すると共に全身に纏わり付いた。

 

「な、何ぃ!?」

「シンビオートは微量の熱を加えると拒絶反応を起こして飛び散るんだよね!流石はサポート会社、良い仕事をする!」

 

 原理としてはデスペラードによって無数の弾丸を放った銃口に篭った熱をグレネード弾の着火剤として応用、最初から使用する事が出来ない点に目を瞑れば応用が効く攻撃手段となり得る。

 

 話は逸れたが、来正はデスペラードを両手で持ち その場で跳躍する。

 

「いくぞシンビオートォ!」

『分かってる!コレを使う機会は滅多にないだろうからなぁ!』

 

 そのまま力一杯にライノの頭部目掛けて盾をガツンと打ち付ける。悶え苦しむ敵は目の前の相手を振り解こうとするが、先程から全身に纏わり付くシンビオートの一部によって身動きが取れない。

 

『オレ様の拘束が溶ける前に…!』

「ぶっ壊すッ!!」

 

 更に頭部へ打ち付ける。一回、二回、三回と何度も何度も壊れるまで打ち続ける。

……そして

 

『オラァ!!』

 

バギィン!!

 

「お、俺自慢のツノがぁあっ!?」

 

『お前の御立派様が根元からへし折れちまったなぁ!コレでもうツノでfuckできなくなったぜ』

「おいやめろ」

「…だが、ようやくコレで」

 

DIIIIIIIIIIIIIIING

 

 瞬間、ギャングオルカが接近。至近距離からの超音波攻撃を行うとライノの巨体がグラリと揺れる。

 

「終わりだ」

「ふ、ふざけ……ま…だ終わって……」

 

「いいや、もう終わりだよ」

 

 パシュッとライノの全身に粘着性のある糸が絡みつく。それを放ったのは現場に颯爽と駆け付けて来たVスパイダーである。

 

「全員、特製セメント弾を放て!」

「「「「「サーッ!」」」」」

 

 更に追い討ちと言わんばかりに雨霰の如く降り注ぐセメントの弾丸。それによって(ヴィラン)の動きは完全に止まった。

 

 

「フォローありがとう、赤糸虫さ…じゃなかったVスパイダー!」

「いいやヴィランの足止めをしていたヴェノムの方が凄いと僕は思うよ」

 

《お疲れ様です、見事なサポートでしたよチズ》

『決めたのはオレだけどなッ!』

《……チズのフォローがなければ失敗に終わってた可能性がありましたが》

『あ゛?面白いジョークを言うな。バグでも起こしてるのかこのポンコツは』

《……失礼、I,ROBOT(アイ,ロボット)をご存知ですか?あと関係ない話ですが私仮面ライダーゼロワンの滅のファンでして》

 

「ヘーーーイ!落ち着いてスーツのお姉さん!多分だけどそれ人類が大変な目に遭うヤツでしょ⁉︎」

「ストップ!ストップシンビオートッ!ここで僕等がデイブレイクの原因になるのは御免だからマジでやめて!」

 

「喧しいッ!!手綱を握る事も出来ないのか便カス共がッ!」

「「すみませんサーッ!」」

 

 寄生生物とAIの口論の末に来正と赤糸虫はギャングオルカからの怒号に怯える事となった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 何故、彼等はプロヒーローギャングオルカの元でこのような事をしているのか。それを一言で言い表すなら職場体験だ。

ヒーロー育成機関である雄英高校はこの時期になるとプロヒーローの元で現場をその身で体験する事となる。

 

「やぁ画面の前の皆、ヴェノムだよ!今日はプロヒーローギャングオルカの所で職場体験する事になってるんだ。やったね!……これでいいですかイグニッション」

「おう、文句無しだ。こうやって注目度の高いヤツをSNSにアップするのもヒーローの仕事で……痛っ!?」

「雄英の生徒を変な事に巻き込むな……Vスパイダーよくやった。お前の活躍は凄まじいものだったぞ」

「そ、そうですか?えへへ…」

 

 そんな彼等だが、イグニッションの動画撮影に付き合わされたり、褒められたりと意外と上機嫌だった。

 

「ヴェノム、お前の場合はもう少し自制する事を覚えろ」

「すみません…ですけどアレはシンビオートが勝手n「言い訳か?殺すぞ」ヒェッ…」

 

「いいか?坊主。シルバー・マルテースは軍人仕込みのスパルタだ。下手に逆らえばドタマに風穴が空くことなるぞ」

「そ、そうなんですか……それとボク、女です」

「へー……ってマジかよ!?」

 

…訂正、然程上機嫌ではなかった。

敵退治の現場を直接体感した彼等はプロヒーローと自身らの実力に明らかな"差"を感じていた。

先程までの戦闘はヴェノムが中心に行われているように見えたが違う。周囲の住民への避難呼びかけや、ヴィランに対するアプローチの仕方。凡ゆる要素の練度が桁違いだと分かる。

 

(……やっぱりボクには無理だ)

 

 だからこそ、心が折れてしまう。自分よりも相応しいプロヒーローならばもっと良い結果を出せたと赤糸虫は密かに想う。

 

『ドナドナドーナードーナーサイが移動牢(メイデン)で運ばれていくよ〜』

「指さすのはやめなさいシンビオート」

 

(あんなに余裕そうな顔を見せて…やっぱり来正君は凄いや)

 

 彼は強い。体育祭で戦ってから話す機会が多くなったが、彼は表情豊かで、常にシンビオートと共に笑いを提供してくれる。

 

……ヒーローとしての素質が十二分だと分かる彼等にとって自分はどう写っているのだろうか。そんな不安が頭の中で過ぎる。

 

(……おじさん)

 

 自身はヒーローに相応しくない。これは確定事項だと常々思う、それなのに雄英高校に通っているのは贖罪か、未練か。

 

「……スーツ」

「えっ?」

「あ、いや。あのスーツって何処から仕入れてるんだろうなと思って」

 

 来正が呟いた言葉に面を食らったが、"いつも通り"自分をマスクで隠すように彼女は口を開く。

 

「そうだね…見た限り少し粗はあるものの中々の性能だと思う。熱波発動装置や小型ミサイルの射出。音波を阻害する為の特殊素材も使われているし……」

「はえー…赤糸虫さん見ただけでそんな事まで分かるんだ」

 

「へぇ、ガラクタ弄りが得意なのか?それならジックリ見とけ」

 

 するとイグニッションが回収途中のスーツの破片をやや乱暴に投げ渡してくる。咄嗟の事に困惑する赤糸虫の代わりに来正が上手くキャッチする事に成功した。

 

「何をしてるイグニッション」

「まーまー、職場体験なんだろ?だったらここでしか見れないのをちゃんと見せてやらないとだろ」

「お前は…ハァ、もういい分かった。Vスパイダー、ヴェノム。見るのは構わないが、丁重に扱え。くれぐれも壊すなよ?」

 

「いやいや、壊しませんよ。それに乱暴に扱う気にもなりませんs"ピッ"…ん?なにか音がしたような」

 

BOOOM!!

 

オ゛ァ゛ーーーーーーッ!

「き、来正くーーーーーん⁉︎」

 

 突如としてスーツの破片が爆散。非フェイスオン(マスクしてない)状態で至近距離の爆発を受けた来正はそのままバタリと倒れ込んでしまう。

 

「おそらく闇市から仕入れたサポートアイテムの粗悪品だろう。戦闘による影響か爆発したのだろうな」

「あの…それ、先に言ってくれません…?」

 

 顔面に負った傷をシンビオートの力で回復させながら来正は立ち上がる。周りを良く見ると他のスーツも駄目になってるモノが殆どらしい。

 

「えぇ…粗悪品でもこうも簡単に壊れるのかなぁ?」

「うーん、素人の僕には分からないけど…あ、ほら無事なのが此処に───」

 

パスッ

 

「───あれ?」

 

 来正が破損せずに無事だったスーツの破片を拾おうとした瞬間、何かが通り過ぎると同時に破片の姿は影も形も無くなっていた。

 

「ない…何も無い!?」

「どうした、何があった!」

 

「すみません、シャチョー!いつの間にか無事だったアイテムの一部が紛失しました!」

「何だと!……そうか、また『黒猫』の仕業かっ!」

 

 聴き慣れない単語に首を傾げる二人。そこに助け舟を出すようにシルバーが呟く。

 

「最近、ここ一帯で出没するコソ泥の事だ。ヴィランの使用したアイテムを横から掠め取って行く さっきのようにな」

「それじゃ早く追わないと───!」

 

 瞬間、二人の背後から火の玉と化したイグニッションが駆け抜ける。

 

「対処可能範囲、二人もイグニッションに続けッ!」

「は、はい!」

「分かりました!」

 

「シャチョーと呼べッ!」

「「サー!シャチョー!」」

 

 遅れつつもビル街を駆け抜ける二人。本格的なヒーローとしての活動が始まりと同時にヒーローとして超人社会の"闇"の一端に触れる瞬間でもあった。

 





ポケモンやってて遅れました(土下座)
イワンコとの戯れに夢中で小説の事すっかり忘れてました。

今回、職場体験編では来正恭成ではなく一部に人気がある(?)赤糸虫くんちゃんに焦点を当てて行きます。ヴェノムと言ったらスパイディですからね、少し彼女の掘り下げをして行く感じになります。

なのでサブタイがいつもと違うのは許して。



〜〜キャラクター紹介〜〜


『イグニッション』
小説オリジナルのヒーロー。ギャングオルカ事務所に入って来た期待の新人。個性は炎を纏う程度であり火力自体は低め。必殺技の『焼爆砲』もエンデヴァーの通常火力にやっと届く程度のもの。
特筆すべき点は現場にいち早く駆け付ける事が可能な飛行スピード。それによりワンマンプレーよりチームアップで輝くタイプ。

元となったキャラクターは『ファンタスティック・フォー』より【ヒューマン・トーチ】


『シルバー・マルテース』
ギャングオルカ事務所にて秘書的存在を放つ。父親が軍人であり彼仕込みの技術が詰め込まれたヒーロー。前線で戦うよりはサポート、事務処理、機械類の操作等の後方支援が得意。
ちなみに彼女がギャングオルカファンクラブの一員であるのは秘密である。

元となったキャラクターは『スパイダーマン』より【シルバー・セーブル】


〜〜用語紹介〜〜

『M・J』
発目明が開発と同時に赤糸虫知朱のスーツに組み込んだ人工知能。詳しい情報を小粋なジョークと共にVスパイダーに伝える。何故かシンビオートとは口論が絶えない。


次はなるべく早く投稿出来たらいいなぁ(願望)


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34話 不幸を招く黒猫

間に合ったな(間に合ってない)
と言う訳で今回はシンビオートの再開で優勝していくわね(大蛇丸)

それではデュエル開始(小説再開)ィィイイイイイイイイイ!!!



「ねぇッ! ちょっと! 待って───!」

 

 速い、速すぎるッ!来正君と共に黒猫と言う名前の敵を追い掛けるけど、少しでも気を抜けば見失う!シンビオートと来正君はパワーを活かした瞬間的な加速によってギリギリ追い付いているけど……!

 

「MJ、次のルートは!?」

『路地裏を抜けた先の左です。そこから2つ目の交差点をまた左に───』

 

 スーツに搭載された人工知能に頼って最短ルートを通っているのにも関わらず一向に追い付く事が出来ない。いや、それ以前にどんどん引き離されている!

 

「……おーい!赤糸虫さん、大丈夫!?」

「えっ、あ! うん!大丈夫、大丈──《チズ。ウェブの射出量が想定以上になっています。下に注意してください》

 

え?いや下にって何を言っ───アババババ!?

 

「赤糸虫さんが地面に擦れて!?」

 

 痛だだだだッ!だ、大丈夫!これくらい大丈───あ、嘘ごめん。マスク越しでもガリガリと地面にキスするのって地味に痛い!

 

『アビャビャビャビャ!!見ろよ、あいつ自分のペースを掴めないと一気にポンコツになるぞッ!』

「分かった。分かったからよそ見しないで───」

 

ゴシャ

 

「───フグゥ」

「来正君の顔面にドローンが!?」

《"パシャ" 二重の意味でのナイスショットですね。SNS上にアップしておきます》

「やめたげてよぉ!」

 

 顔を片手で押さえながらも、ワイヤーアクションを決めながら街道をピョンピョンと跳ね飛び移動する。

思ったよりも平気そうだ。流石は来正君、彼の不屈の精神力はこの程度で狼狽えたりはしな────

 

おごごごごごごごごごご……ッ、顔がぁ…!鼻にモロにいったぁ……ッ!?

 

───あー、うん。多分平気だと…思う。そう言う事にしておこう。

 

「おい、後ろの2人聞いてるか!」

「あ、はい!聞こえてますイグニッション!」

 

「よし、猫を次の路地に誘い込む!俺は先回りするからお前等は追跡は任せる!」

 

 そう告げると、脚部から放出する炎を一層強くさせたイグニッションは離脱する。いや追跡は任せると言われても…ッ!

 

「相手が速すぎる!」

「それは同感!いやでも速いと言うよりは、地の利で負けてるのが正しいかも!」

 

 地の利……そうか!ボク等が追いつけないのは単純なスピード問題じゃなくて、相手がこの地域一帯を知り尽くしているからか!

 

「それに加えて、アッチの装備に何かカラクリがあると見てもいいね!」

「カラクリ…?」

 

 装備(カラクリ)……もしかして、反重力エネルギーを応用したブーツ!?いやそれにしては着地点に生じる筈だのインパクトハイクの形跡が見当たらない。超軽量のスプリング?それともエアフロートによる浮力を応用したもの?

 

「とにかく、このままじゃイグニッションとの合流ポイントに追い込むのは難しい!」

「どうするの!?」

「…時間があれば他にもやり方は思いつくだろうけど、今のところ超加速で一気に距離を詰める作戦がある…念の為に聞くけど───」

 

「それ、採用!」

 

 そう答えたボクに来正君が驚いた表情を露わにする。その直後、首元に変な感触を覚える。

 

『よく言った。お前を超加速で投げる作戦を決行だ』

「えっ」

 

 シンビオートの言葉に思わず来正君の方を向く。

 

「いや違う、シンビオートが勝手n」

 

 そう言い終える直前、シンビオートがボクを投げ飛ばしたああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!?

 

「え、何か背後かrきゃああああああああ!?」

 

 

 

『…ヨシ、ストライクッ!』

「シンビオートォ!」

 

 後方よりそんな声が響く中、敵を巻き添えに路地裏へ投げ飛ばされたボクは咄嗟に受け身を取る。

 

「っ、無茶苦茶…でも追い付いたッ!」

《───チズ、戦闘準備を》

 

「……全く、ビックリさせるじゃない」

 

 MJの警告の通り、先程まで逃げに徹していた筈の敵はこの場から去る事もせずにコチラに向き合う。初めてのヴィランとの戦闘に身体が竦んでしまうが、そんなボクに喝を入れるようにMJが呼び掛けて来る。

 

《相手はフードを深く被り、全身を黒で塗り潰した不審者ルックス。対してコチラは恐れる事はありません》

「……っ、は…そうだ。ボクならイケる、ボクならイケる、ボクならイケる……よしッ!」

 

 自身を鼓舞するようにそう呟きながら、ウェブシューターから糸を射出する。

 

「っと、危ないわね」

「まだッ!」

 

 相手の後方にウェブのジップラインを張り、糸の伸縮性を利用してキックを行う…が、しかしソレすらも見透かされていたように避けられてしまう。

 

「どこを狙っているの?」

「もちろん足元!」

 

 けどソレは予想済み。油断し切った所に足元に向けて糸を発射する事で相手の動きを封じる!

 

「しまッ…!?」

「ねぇ、人のモノ盗るの駄目って言われなかった?せめて盗るなら盗るで、サイの装備品なんかよりヒーローの方がよっぽど価値があるよ……あ、ごめん今の無し」

 

 危ない危ない…流石に敵にヒーローコスチュームの窃盗を勧めるなんてのはアウトだよね、うん。とにかく、予定のポイントに合流するよりも捕まえる事が出来て良かった。

スーツの通信機能を起動させてそのまま報告を行う為に口を開く。

 

「イグニッション、こちらの方で黒猫を捕まえる事が出来ました」

『ヘィ、エヴィバディ!今日も始まる俺様のライヴ!!!』

「は?」

 

 思わずそんな声が出た。え、え、え?イグニッションってそんなテンション高かった?なんだかうちの学校の先生に酷似した声をしているんだけど…どう言う事?

 

《チズ、先程地面と接触した影響によってスーツの通信機能に障害が発生。関係の無い周波数を拾った結果、先程のような事態になりました》

「だからって、ウチの先生のラジオ流れる!?と言うか今の時間帯ってマイク先生、学校だけど何やってるの!?」

 

 今、昼前だからね!?それなのに本当に何やってるのプレゼント・マイク先生!もしかして授業の合間を縫ってラジオ放送してるの!?例え趣味だとしてもスケジュール詰め込み過ぎじゃない!?

 

 

「おーい、赤糸虫さん。そっちは大丈夫…ってもう捕まえてる」

『流石はオレ様だ』

「…まぁ一応はシンビオートのおかげでもあるかな。一応は」

 

 そんなボクの元に来正君達がやって来t……あの、来正君?来正君だよね?

 

「そうだけど…どうかした?」

「いや……来正君さ、ボクの見ない内に随分と…その、無機質かつ無骨なフォルムチェンジを果たしたな…って」

 

 目の前には彼の声がするゴミバケツ形状のロボット的なサムシングが居た……え、来正君?これ来正君なの?どう言う事?明の関わったコスチュームってこんな変形機能ついていたっけ?

 

「あー…いや、違う。違うんだって赤糸虫さん。これは決して悪ふざけでやってる訳じゃ無いんだ。これにはマナリア海峡よりも深い訳があって、好きでこんな出来損ないのセブンガーになっている訳じゃないんだ」

『嘘つけ絶対ふざけてるゾ』

「うっせぇブッ殺すぞ(悟空)」

 

 見慣れてしまったコントに思わず苦笑いが浮かぶ。個性とその所有者の身なのに悪口を言い合ってるのって中々見ない光景だよね……あれ?でもシンビオートと来正君って、ある意味では同じ身体を共有し合ってるから結局その悪口はブーメランになって帰ってくるんじゃ……?(赤糸虫知朱は訝しんだ)

 

『コイツがさっきまで尻尾巻いて逃げてた窃盗敵(ヴィラン)か?よしキョウセイ。逃げられないように両脚を捥いでも問題無いよな?』

「問題あるから。ガッツリと倫理的・モラル的に関わる問題があるから」

 

「あら失礼ね。レディには優しくしてあげるのがヒーローじゃないの?」

「いやでもアナタってヴィランだし…えっ、女性?」

 

 こちらに目配せしてくる来正君。うん、ボクも分からなかった。

 

「……貴方達、人としての礼儀がなって無いわよ」

「あ、はいすみません」

 

「赤糸虫さん!?」

『オイ、何で謝るんだ?』

 

 あ、思わず頭を下げちゃった。そんなボクに来正君が半ば呆れた様子て口を開く。

 

「赤糸虫さん、彼女のした事に対して僕等が謝る必要性は無い上に相手は(ヴィラン)だ…厳しい事を言うけれど、その行為を肯定するような発言は控えた方が良いよ」

「う、……ごめん」

「いや、いいよ。こっちこそごめん。それに君の気持ちは分からなくも無いけかr────ん?」

 

 ふと言葉が止まる。その視線が(ヴィラン)の方向に注がれているのに気づいたボクも彼に釣られて顔を向ける。

 

「……なに?」

「あ、いえ、何も……」

 

 ()()()()()()()

深く被ったフードから何かフサフサしたようなモノがはみ出ていた。そんなヴィランにスゥーーッと音も無く近づく来正君。

いや何その動き気持ち悪っ!?

 

「フード失礼」

「「あっ」」

 

 来正君が目の前に居た敵が被っていたフードを外すとピョコンとソレが露わとなって出て来る。

……これって…まさか……!?

 

「ね……ッ、NEKOMIMI(ヌゥエコォミィミィ)ッ!?

 

 謎のネイティブ発音で来正君が声を上げた通り、彼女の頭頂部には二つの猫耳が存在していた。

ミルコとか兎の耳を生やした人なら見た事あるけど、こうやって猫耳を生やしてる人は初めて見たかも……。

 

「ほッッッ、本物ッッッ、低俗な付け耳とは違うッッッ、ナチュラルボーン・ケモ(イアー)ッッッ!」

「来正君?」

「答えは得た…我が一生に悔い無し───」

「来正君!?」

 

 なんか安らかな表情で昇天し始めたんだけど!?え、どう言う事なのコレ!?

 

『キョウセイはどうなったんだ?』

《逝ってしまいました。円環の理に導かれて…》

『は?何言ってんだオメー。遂に思考回路が腐ったか?』

《キレそう》

 

 こっちはこっちで何言ってるの!?

 

「来正君!しっかりして来正君!よく分からないけど、そんな事してる場合じゃ無いからね!?」

 

 とにかく彼を正気に戻す為、少しだけ生体電気を流す。すると我に返ったのか来正君がハッ!?と声を上げると、何を思ったのか?その場で片膝を付く。

 

「先程の無礼、お詫び申し上げます」

「来正君!?」

 

 いやどうしたの!?さっきまで彼女に謝る必要性は無いとか、行為を肯定するような発言は控えろとかって言ってなかった!?

 

「あれはガキの戯言だよ、そしてソイツに出逢いがあった。相手はとても強くて妖艶でミステリアスな女性で。彼はもう…大人になった」

 

 何言ってるの? ねぇ、何言ってるの!?(2回目)

 

とりあえずイグニッションに連絡…はさっき出来なかったからギャング・オルカの方に連絡を……と。

 

「オルk…じゃなかった。シャチョー聞こえますk『(音割れポッター)』耳がァーーーーッ!?」

 

 なんでハリポタのテーマ!?と言うかこんな時間帯に大音量で流してるの誰!?

 

「……ねぇ、知っているかしら?」

 

 未だに耳が痛むボクに向かって彼女は呟く。

 

「黒猫って、昔から不幸を招くって言われてるの。特に欧米とかではね」

「え?何を言って……ッ!?

 

 直後、全身の毛が逆立つような。頭の中に直接警告が送られるような感覚が襲い掛かる。

スパイダーセンス(来正君命名)が反応する時は必ずと言って良い程、ボクの身に危険が迫る。

 

何処?何処だ?一体何処から……?

 

 

VROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!

 

 

「なッ!?」

 

 路地に荷を積んだトラックが突っ込んで来た!?このままじゃ不味い、避けて───いや駄目だッ!避けたら後ろで糸で絡まった彼女が轢かれるッ!

そんな絶体絶命の状況に陥るボク達…だが

 

「シンビオートッ!即興の必殺技で止めるぞッ!」

『いいねぇ、お試しでやるとするか』

 

 来正君が前に出て握り拳を振り上げると、腕に黒い流動体が集中して行く。

 

「咬合束縛…ッ!」

『「BITING(バイティング)BINDING(バインディング)」』

 

 彼の拳が地面に打ち付けられた瞬間、地面よりあたかも巨大生物の顎のようなトラバサミが出現しバギバギと音を立てながら鋸歯がその車体に喰らい付く。

 

SCREEEEEEEEEEEEEECH……‼︎

 

 タイヤと地面とが擦れ合う音が響く中、前方のトラックが巨大なトラバサミに固定される事で動きが静止。その光景に少し唖然とするボクに向かって来正君が声を掛けて来た。

 

「赤糸虫さん!ちょっと、トラックのエンジン止めて来てくれない!?」

「えっ…?あ、分かった!」

 

 彼の言う通りに、そのままトラックの横へ周りドアを開け身を捩じ込む。中の様子を伺うと運転手は誰も()らず、アクセルペダルに飲料ペットボトルが挟まっているのに気付く。

それを糸で付着させ取り除いた後、エンジンを切る事によってトラックを止める事に成功した。

 

(ヴィラン)は捕まえる。誰であろうと助ける。両方やらなくちゃならないってのがヒーローの辛い所だな…と、赤糸虫さん。助かったよ」

「そんな、来正君が居なきゃボクなんて……」

 

 何も出来なかった。もし彼が居なければボクは何も出来なかっただろうと考える。

…やっぱり"あの時"と何も変わらない。叔父さんを失ったあの時から何も────

 

「…赤糸虫さん?」

「っ! いや、何でも無いよ何でも!」

「そう?それなら良いんだけどさ。とにかく、そっちの通信機能はバグってるなら僕の方で通信して───あっ」

「ん?……あっ」

 

 彼の視線の先を見ると、そこには先程まで居た筈のヴィランである黒猫の姿…が忽然と消えていたのである。

 

「この糸って強度こそあるけど爪程度の鋭利さで切断されるのね」

 

 咄嗟に声の聞こえた方向。上に顔を向けると屋上より黒猫が碧色の瞳を輝かせながら見下ろしていた。

 

「助けてくれてありがと。そーゆー、紳士的な部分は好きよ」

「俺も好き(いつの間に逃げ出したッ!?)」

「来正君!?」

『オイ、本音と建前が入れ替わってるぞ』

 

 そんなボク等のやり取りにクスクスと笑う彼女。

 

「ニュービーだけど貴方最高よ。エンターテイナーとしても、ヒーローとしてもね」

 

 笑えて強い人は素敵だ。と付け足した後ボクの方に視線をやりながら相手は告げて来た。

 

「でもそっちは駄目ね、全部彼におんぶに抱っこして貰っている。ヒーローとして情けないと思わないわけ?」

「そんな事────っ」

 

 それ以上の言葉は出なかった。黒猫の彼女が言う事は全て事実。先程までの赤糸虫知朱と言う人間は来正恭成の腰巾着に過ぎない。

これがヒーローの姿なのだろうか?いいや違う。こんなものがヒーローであるものか。

 

「…言いたい事はそれだけ?色々口にしても窃盗犯の君に対する待遇は改善されないよ。黒猫(ブラックキャット)

『最後まで抵抗するなら それ相応に痛めつけてやる。覚悟するんだな』

 

 ジャギリと三本の黒い鉤爪が来正君の手から伸びる。臨戦態勢を取る彼に対して黒猫は「へぇ」と呟いた。

 

「パワフルな上に優しいなんてね、ますます惚れ込んじゃいそう」

「それ以上褒めるなよ…好きになるぞ(迫真)」

『 う わ 』

「やめたまえシンビオート。そんな本気で引くような言動はやめたまえシンビオート……違うからね?決して僕はふざけてる訳じゃないから。そうでしょ赤糸虫さん?」

「えっ? ボクはその「ほら、赤糸虫さんもこう言ってる」…あ、うん」

 

……ごめん来正君。君が一体何処から何処まで本気なのかさっぱりなんだけど。

そう思っていると上方の敵が何かを落として…って、盗んだライノのアーマーパーツ!?

 

「貴方達の事は気に入ったからそれ"は"返してあげる。それじゃあね、新人のヒーローさん(がた)

『逃がすと思ったかッ!』

「ああ、言いそびれたけど…後ろ気を付けてね」

「後ろって何を言っt……っ゛!?

 

 またセンサーが反応して…今度は一体何が!?

 

SNAP(ブチ)SNAP SNAP(ブチ ブチ)……

 

「あー、赤糸虫さん?そう言えばさ。さっき止めたトラックって何を積んでたんだっけ?」

「え?それなら確か…」

 

 その直後、背後のトラックに積まれていた大量の鉄骨を括り付けていたワイヤーが甲高い音を立てながら千切れていった。って、鉄骨!?

 

「わ、ちょ──シンビオート!」

『個性使いが荒いなッ!』

 

《チズ、指定ポイントにウェブを》

「うん!」

 

 ボク達に向かって崩れてくる大量の鉄骨に対し、ボクの蜘蛛糸を放つ事でバラバラだったものが一束に纏められる。

 

「お、も───ッ!?」

「ぐうッ!?」

 

 ズシンと全身に掛かる重量にボク等は声を漏らす。

これは思ったより、結構、かなり、やばい…かもッ!このトラック積載制限超えてるよ絶対!

 

「それじゃお二人さん、バーイ」

 

 逃げたッ!?あぁもう、どうして今日はこんなにツイてないのかなぁ!通信機能は故障するし、トラックは突っ込んで来るし、積荷は崩れて来るし!

 

「う、ぐおおおお…!とにかく、イグニッションに連絡を……ッ!あークソクソ!変なバケツ形態になってるお陰で思うように力入らないな!」

 

 そう呟きながらヘッドギアの通信機を弄る来正君。

 

「あ、イグニッション?実はさっきブラックキャットと接触して…え?違いますよ黒猫の事です。それでパーツは取り戻せたんですが肝心の本人を逃して…すみませんが追跡の方を……はぁ!?」

「ど、どうしたの?いきなり大声張り上げて?」

 

「捕まえたライノが脱走したって!」

「……はぁ!?」

 

WOBBLE(ぐらっ)…!

 

「「あっ」」

 

 直後、ボク等は鉄骨の下敷きになった。幸いにも大した怪我も無く数分後ギャング・オルカのサイドキック達が助けに来てくれるまでボク等は圧迫されながらもしりとりで暇を潰す事となったのだ。

黒猫は不幸を招くと言う言い伝えがあるが、MJや明はそんなものを根っから否定してる。

 

ボクも同様に信じるタチではないのだけれど…うん、しばらくは黒いモノは見たくないなぁ。

 

『ほー?黒いモノを見たくないと?そうかそうか、つまりお前はそう言う奴なんだな。サイテーな奴だなぁ、お前はよォ!そうだろキョウセイ!』

「え、なんで僕n『ほらなコイツもそう言ってるぞ(仕返し)』

 

「え……そうなの来正君?」

違う!シンビオートが勝手にィッ!

 

こうして初動の職場体験は失敗と言う形で幕を閉じ行った。

 




〜〜キャラクター紹介〜〜


『来正恭成』
主人公 兼 変態ケモナーオタク野郎。しかし今回の章では赤糸虫くんちゃんが中心になるので若干影が薄いぞ。
好きなモノはヒーロー系のアニメ、コミック。
個人的に性癖にどストライクなキャラはナナチ。
個人的に嫌いなキャラはボ卿。
"個性"であるシンビオートの宿主だが、基本的に振り回されがち。

雄英体育祭では準優勝を収めたが、不承不承ながらも優勝を果たした爆豪(暴走状態)を落ち着かせる為に全国放送真っ定中でチョークスリーパーホールド決める事に。
ネット上で雄英一年生最強はどちらか論議されているらしい……。

『赤糸虫知朱』
読者の何人かと作者の性癖に突き刺さったキャラ。ボクっ娘。ヒロアカ世界(バース)におけるスパイディ的ポジション。発目明製作の高性能AIであるMJと共に摩天楼を駆け抜ける。

『黒猫』
本作オリジナル(ヴィラン)?気紛れな性格で相手を翻弄する敵…敵?多分敵的なポジションのキャラ。
彼女の動向は未だ謎に満ちている。


…はい、マーベルスパイダーマンマイルスモラレスをプレイしながら小説の投稿を再開しました。
待ち望んでいた読者の方々、長らくお待たせしました。
いやホント4ヶ月くらい久しぶりです。

取り敢えずお詫びと賄賂的な意味を込めて挿絵を載せさせて頂きますねほら、見ろよ見ろよ〜。


【挿絵表示】


我ながら良い仕上がりになりました。今度はGIFに挑戦したいなぁ……あれ?そう言えばどっちが主人公でしたっけ。



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35話 強襲

感想欄を完走した感想。
みんな赤糸虫ちゃんの事好きってハッキリ分かんだね。読者の性癖に突き刺さるキャラクター性しやがって…かーっ、卑しか女ばい!

追記、更新遅れてすみませんでした。



 

 蒼い空に覆い被さるように広がる黄金の帳。時刻は日没直前、彼女の紅い瞳に映る夕焼け空は鈍く輝いていた。

 

「…………」

 

 陽が沈むに比例して己の心緒が、感情までもが沈んで行く。高層建築の摩天楼(スカイスクレイパー)にて彼女は溜息を吐き、告げられた言葉を反芻する。

 

『ヒーローとして情けないと思わないわけ?』

「……情けない」

 

 あの時、彼が助け舟を出した事によって有耶無耶になったが確かにあの瞬間。己はヒーローとして情けない姿を晒していた。

 

「…やっぱり、凄いな来正君は」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

移動式牢(メイデン)に不備があったのか、それともライノ自身に奥の手があったのか…または第三者の仕業によるものかは未だ判断し難い事だ」

 

 そう呟くプロヒーローの言葉に対して職場体験でこの事務所へ来た来正恭成と赤糸虫知朱の顔色は暗い。未だに黒猫を取り逃がした事を引きずっているのだろうと理解できる。

しかし彼等には何の落ち度も無く、我々プロの対応が遅れたしまった事によるモノ。加えて当初の目的は果たしてある。

 

「確かに黒猫は逃した。しかし当初の目的の一つである証拠品のアーマーパーツは取り返せた。未だヒーローで無い身にも関わらず貴様等は良くやった方だ────」

 

 と、口にするギャング・オルカだったがハッと周りから自身に注がれる社員達の視線に気付く。

 

思わず口に出してしまったオルカ。シャチと言えば海のギャング、キラー・ホエールと言ったように海洋系食物連鎖の頂点として相応しい呼び方が多々存在する程の海獣……しかし実際は人懐っこく好奇心旺盛に加えて豊かな社会性を兼ね備えている。

端的に言えば優しいのだ。

 

そんな生態が反映されたかのような性格を慌てて隠すようにオルカは怒号を響かせた。

 

「───しかし貴様等が敵をみすみす逃したと言う失態覆せぬ事実だッ!それを理解しているんだろうな便カス共ッッ!」

「「サー・イエスサーッ!」」

 

「それならば問い質そう、赤糸虫知朱!貴様は何故ヤツ(黒猫)を逃したッ!答えろッ!」

「そ、それは……」

「判断が遅い。指導ーーーッ!」

 

 投げ飛ばされた後、そのままサイドキック達によってキャッチされる赤糸虫。次いで冥界の魔物が標的に定めたのは来正恭成 牙が並んだ顎を開きギャング・オルカは問い掛ける。

 

「お前はどうだ来正恭成ッ!何故ヤツを逃してしまったか、そのドス黒いバクテリア以下の脳細胞で答えを導き出せるかッ!?」

「サー!イエス、シャチョー・サー!自身の油断によって黒猫(フェリシア)逃してしまいました!サーッ!なので赤糸虫さんに非はありません!サー!」

「…来正君」

 

 彼の言葉が赤糸虫に突き刺さる。

まただ。また助けて貰った……。

 

「そうか!ならばお前はどうケジメを取るつもりだ!」

「腹を切ります」

「そうかそうか!腹を切るかッ!……なんだって?(素)」

「腹を切ってお詫び致します」

 

 その場の勢いに身を任せ、(しゃち)では無く猫耳を選んだ自分が不甲斐ない。そのような念が彼を蝕む。

情けない、許せない、あんな泥棒猫に夢中になり浮気してしまった自分が許せない。来正恭成は黒いダガーを形成した後に腹部を曝け出す。

 

「自分は…事務所のお荷物ですッ、ブヒィ!」

「おい誰かコイツを止めろォ!」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「……はぁ…」

 

 これで何度目か分からない溜息が吐かれる。段々と何の為にヒーローになったのか少し分からなくなって来た。

きっと今の姿を委員長である拳藤が見れば、適切な角度から放たれるチョップとセットで「気にすんな」と言葉をプレゼントされるだろう。

 

……然れども、然れどもだ。

 

「…嫌いだ。こんなボクは嫌いだ」

 

 器用に足底を壁に張り付かせながら蹲る。どれだけ見栄を張っても常に壁は立ちはだかる。そんな壁を隣の(来正)は易々と乗り越えて行く。

彼に対する嫉妬は無い。寧ろその逆で彼女は来正恭成と言う人物を称賛している。だからこそ彼との差を感じてしまい劣等感が募るのだ。

 

 

 

「あ、見つけた。こんな所に居たんだ」

「っ!?」

 

 突如として聴こえて来た声に赤糸虫はビクリと身体を震わせる。

来正恭成、彼が現れた。

まさか見つかるとは思わなかった。普通はこんな高所に居るとは思わないだろうから此処で1人黄昏ていたと言うのに……。

 

「赤糸虫さん、連絡付かないから焦ったよ?大丈夫?」

『パトロール名義でサボりって言うのはヨク無い、そうだろ?そう思うよなぁ…?そこのポンコツ、お前に言ってるんだよ』

 

 シンビオートが『ヒェッヒェッ』と古臭い魔女的な笑みを漏らす。そんな彼等に赤糸虫は何事も無かったように言葉を口にした。

 

「あ、あははは…その、さ。うん、こう見えて特訓してたんだよ。ほら、高所ってまだ慣れないから」

「………」

「はは、…はぁ……」

 

 来正恭成に愛想笑いしても無駄だと悟ったのか彼女は再び溜息を吐く。そんな彼女を見兼ねたのか、来正は沈黙を破り口を切る。

 

黒猫(ブラックキャット)から言われた事、まだ気にしてるの?」

『いつまでもズルズル引き摺ってるつもりだ?お前も何とか言ったらどうだ。オイ、シカトするな』

 

 彼に続く形でシンビオートも呟く。しかし彼…彼(?)は知らない。赤糸虫知朱のスーツに搭載されているサポートAIのMJは充電期間に入っており幾度も問い掛けても返事は返って来ない事を。

 

そんな黒塗り寄生生物はさて置き。何処から取り出したのか来正は魔法瓶からホットココアを紙コップに注ぎ彼女に手渡す。

 

「はいココア。こんな場所(高い所)じゃ身体冷やすよ?」

「うん、ありがとう」

 

 ズズズと口に含んだホットチョコレートが喉を通り、冷たい風に晒されていた身体を温めて行く。

 

「……ねぇ来正君」

「ん?」

 

「何で君はヒーローになろうと思ったの?」

 

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 職場体験2日目を迎えたボク達。と言ってもサイドキックの皆さんの話によると今回は昨日のようなヒーローらしい活動はやらないみたい。

理由の一つとしては昨日の来正君とギャング・オルカの活躍がSNSによって拡散。それが敵の活動抑制に繋がったらしい。

 

「〜♪ お、うまそーなランチがアップされてるじゃねーか。俺も後で上げとくか?」

 

 今もやっているが、イグニッションはスマホを片手に色々やってる事が多い。常にネットをチェックする事もまたヒーロー活動の一環なのだろうか?

 

「騙されるなVスパイダー。ヤツ(イグニッション)のアレはただのサボりだ」

「あー!あー!分かった!分かったからそのゴツいテーザー銃下ろしてくれ!」

 

……どうやら違ったらしい。シルバーがイグニッションの額に銃口をグリグリ押し付けている光景が広がっているが別に気にする必要性は無いとMJは言っている。

うん、そうだね。そうだよね。一般雄英生徒であるボクが横から口出しても迷惑だもんね(口実)

 

「いや、ちょっと?せめて何かフォロー出してくれると嬉しいんdあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛」

 

《これがヒーロー社会の厳しさと言うモノですか…切ないですね》

「あ、うん」

 

 視界の端で感電するプロヒーローが映った気がするけど、どうかボクの勘違いであって欲しい。

 

閑話休題。話が逸れたけど職場体験2日目、ボク達がやる事それは─────

 

「やめなされ、子供達やめなされ。俺はそんな悪の大魔王的なキャラじゃないんだよ。だから的確に脛を狙ってローキックかましてくるのはやめなされ」

「うっせぇ!とっちめろぉぉ!」

「「「「「おおおおおお!」」」」」

「ははは、痛い。痛いからやめ…いや、ホントに痛いからやめて。ねぇ、聞いてる?脛を的確に打撃するのやめてと言ってんの?ねぇ聞こえてる?ちょっと!?」

 

 子供達との触れ合いだ。

 

…………。

 

………………。

 

……………………。

 

「……ねぇ、MJ。ボク等何してるんだっけ?」

《ヒーロー活動です》

「アレが?」

 

 餌に群がる蟻の如く。執拗に子供達に脛を攻撃される来正君。途中から声色が本気になっているのはボクの勘違いなのかな?

 

「いや…ちょ、痛いから、マジでやめ…あ゛ァ゛ーーーッ!」

 

 うわ、来正君の(もも)に強烈なのが入った。子供なのに凄いなアレ…もしかして個性の影響?

 

何故(なにゆえ)ヒーロー活動においてコレが必要か。何故(なにゆえ)にこんな事をする必要があるのか」

「ギャ──シャチョー!」

 

 来正君が隣でいつもやっていた所為か、背後から現れたギャング・オルカに思わず敬礼してしまうボク。彼が言うには「キャップの魂に火が着いたから」らしい…どう言う意味だろうか?

 

「我々の仕事、それは必ずしも(ヴィラン)の鎮圧に限らない、そもそもの話。何故ヒーローはヒーローたらしめるのか?」

「えっと……?」

 

 言ってる意味は…何となく分かる気がする。ヒーローとは敵と対峙する事だけが仕事じゃ無い。今目の前で子供達と戯れてる来正君のように、一般市民を笑顔にする。そんな事だってヒーローの役割の一つだ。

 

「先日の件。赤糸虫は敵を逃した事を気にしているようだな、それに関して言える事は一つ…『笑わせるな』」

「っ!」

「お前如きのミスで敵が逃げたと増長するな。お前1人欠けた程度で我々の活動に支障が出ると思ったか?」

「それは……」

「未だヒーローのレベルに達していないお前の実力で何かを為せると思うな。それでも自身のミスだと称するのならば、己の本質を見誤る事だ」

 

 そう告げるとシャチョーはその場を後にして去って行く。

 

「…赤糸虫さん、そんなに気にする事は無いよ。相手が一枚上手(うわて)だった。それだけだよ」

「うん。そうだね来正く────」

 

 そう応えながら振り返った直後、前に広がる光景に固まってしまった。そこには首から上を大型の地球外生命体(エイリアン的なナニカ)に齧られている来正君の姿が……って。

 

「捕食されてる!?」

「いやー、ははは。参ったね…あ。気にしないで、コレ個性で子供が変身した姿だから」

「そうなの!?」

『そうだよ(便乗)』

 

 シンビオートがそんな事言ってるけど大丈夫なのソレ!?どう見ても喰われている感じのヤバいシーンなんだけど!

子供よりかはエイリアンの幼体の方が説得力あるよ!?

 

「うん、だから決してマブラヴのトラウマ的な場面じゃないから……あ、待って。牙立てないで。ちょっと血が流れて来た」

「いや本当にに大丈夫なのソレ!?」

「ははは問題無い問題無い。シンビオートが本気で噛み付いて来た時と比べれば問題n…オイちょっと いい加減、脛にローキックはやめろ。シンビオート嗾けるぞ(半ギレ)」

「いいぞー!もっとやっちまえ!黒スライム星人やっつけろー!」

『誰が黒スライムだッ!ブチ殺すぞッ!』

「シンビオート!?」

 

 直後、ヘドロ的な怪物と化した来正君が子供達を追い回す……うわ、どう見ても事案的な光景が広がってる……。

 

《通報しますか?》

「やめてあげて。流石に来正君が可哀想だから」

 

 服の下からそう告げて来るMJを諌めるボクの隣に1人、荷物を持った誰かがやって来る。

 

「混ざらないんですか?」

「え?…えっと……」

 

 そう言って来たのはキャスケット被った女性。ボクの側に立ち、彼女は続けて言葉を発する。

 

「急にごめんなさい。私、此処の養護施設でボランティアしてる已嶺(こみね) 玄恵(くろえ)って言うの。はいコレ」

 

 と、渡して来たのは…キッ○カット?

 

「あ、もしかして嫌いだった?」

「いや……えと、なんでボクにこれを?」

 

 そう言うと「あー」と少しバツの悪そうな顔を見せた後に口を開く。

 

「さっきまでの見ていたのよね私。ギャング・オルカに色々言われてたでしょ?」

「それは……」

 

 オルカに告げられた事を思い出したボクは"彼"に視線を送る。

 

「……恋の予感!?」

「ちがっ、違いますよ!…ただ、敵わないだけなんです」

 

 ボクから見た来正恭成は期待に応えられる人物だ。子供達にも好かれて、強く在り続けている彼はヒーローとして相応しい存在。

…そんな彼の隣に立っていると、ボクは見劣りしてしまう。

 

要は劣等感。彼に対して自身は劣っていると強く感じてしまうのだ。

 

「……そう考えてると、ボクは何の為にヒーローになったんだろう…って」

「それじゃ───()()()()()()()?」

「えっ?」

 

 その人から言われた言葉にボクは思わず声を漏らしてしまった。

 

「なんて、うそうそ。冗談に決まってるでしょ?面白いなぁ(きみ)。シャチの人に言われた事についてはあまり気にしなくて良いと思うよ?」

「え、でも」

「あーゆータイプって言うのは外側を見繕ってるモノよ?外面はアレでも中身は違う、現にホラ。見て」

 

指をさした方向に目を向ける。そこには……ん?何か黒いモノが蠢いて────

 

 

 

「ヒーローをイジメてんなコラ!」

「この黒坊主!魚介類!」

「サイテー!魚もどきサイテー!」

「………」

 

 シャ、シャチョーーー!?え、何で!?ギャングオルカが子供達に囲まれて石投げられてるんだけど!?

 

「こらーーーっ!海洋生物をイジメちゃダメでしょうがーーッ!シンビオートを嗾けるぞコラァッ!(マジギレ)」

 

 そしてそのまま来正君が子供達を追い払った!?立場逆転してないそれ!?

 

「シャチョー、僕はそう思ってませんからね?寧ろシャチって可愛い方ですからね?」

「分かる(分かる)」

 

 シルバー・マルテース!?

便乗して来たサイドキックの人と来正君に助けられたシャチのシャチョー……え、何でそんな浦島太郎的な場面に遭遇していたんですがシャチョー?

 

「……パトロールに行って来る。お前達は此処で待機だ…」

「了解しましたシャチョー(心に来てるなコレ…)」

 

 そのまま施設の外へ出て行くシャチョー。その際に子供達がサムズダウンとかブーイングをする光景をボクはグッと心の奥底にしまう事にした。お労しやシャチョー……。

 

「此処の子供達って度胸のある子達ばかりなのよ?君がイジメられたように見えたから、その仕返しって感じなのかもね」

「そ、それだけで…?」

《心身個性共に実にアグレッシブな子共ですね》

「それだけの為よ、この子達にとってはね」

 

「養護施設【恩寵受けし花園(はなぞの)】名前だけ見れば幸せそうだけどね、此処に入って来る子達は誰もが()()()()()()()

「曰く付き?」

 

 已嶺さんは無言で頷いた後、己自身に言い聞かせるように言葉を並べて行く。

 

「あそこの子は親が犯罪者(ヴィラン)になった。あっちの子は異形系個性の見た目から捨てられた。今走ってるあの娘なんかは母親のお腹を突き破って捨てられた」

 

 淡々と、あたかも当たり前のように……否、この人にとって当然の事が口から出される。それを前にボクは何も言えず、ただ───黙って聞いているしかなかった。

 

「超人社会の反落により溢れ落ちた者の駆け込み寺…悪く言えば廃棄物の寄せ集めが此処よ。私も含めてね」

 

 そこでようやく理解した。此処の子供達にとってヒーローとは、手の届かない空で輝く星のような存在。

……でも、こんなボクまで子供達はヒーローと言ってくれた事にもどかしい気持ちが生まれる。

 

「……私も此処で育ったの。ヒーロー…に興味が無いと言ったら嘘になるけど、今は私のやりたい事をやっているから少し満足かな」

「やりたい事?」

「うん、此処の子供達の支援。ボランティア以外にも働いて稼いだお金を寄付してるの───ねぇ赤糸虫ちゃん」

 

 こちらを覗き込む宝石の如く輝きを放つ瞳。謎のデジャヴと全身の血が巡るような感覚が全身を駆け抜ける最中、彼女は問い掛けて来る。

 

「君がヒーローになろうとしたキッカケ(オリジン)は何なの?」

 

 彼女の問いを反芻するように心中で呟く。

ボクのキッカケ、それは─────

 

「…ボクがヒーローになろうとしたのh「あー!クロエのねーちゃんだ!」えっ?」

 

 答えようとした瞬間、横から子供が割って入って来る。それに連なるように他の子供達も已嶺さんの存在に気付く。

 

「あら、残念。時間切れね…ハァイ皆。ヒーロー達に混ざって遊びに来たわよ、今日は何するのかしら?」

「怪獣退治ごっこー!」

「聞いてくれよクロエねーちゃん!コイツ全くゴジラになってくれねーんだよ!」

「ゴジラはもっと立ってる姿勢なのに、コイツ恐竜みたいな姿に変身するんだよ」

 

「失敬な、これもれっきとしたゴジラだぞ!」

『マグロ食ってる方だけどな』

 

 いや…ボクはそれの内容知らないけど、外見上全くの別物じゃない?

そんな事を思っていると不意に誰かに服を引っ張られる。視線を下の方に向けると、女の子が1人居た。

 

「ねーねー、一緒に遊ぼ?」

「え?いやボクは…」

「やー!遊びたいーー!」

「私も私も!」

「顔の良い王子様シャルウィーダンス!」

 

「急にそんな事言われてm…いや待って?何で王子様?」

《男性と認識されている確率、94%》

 

 何で!?どうして初対面の相手にこうも男性と間違われるのボク!?

…一応聞いとくけど残りの6%誰なの?

 

《来正恭成を筆頭にその他(ヒーロー達)です…バスト調節機能を使用しますか?》

「やめておく!」

 

 あーもう!とにかく子供達と戯れる事なんて慣れてないんだよ!助けて来正君!ホント、もう…助けて!?

それを心の中で叫び、SOS信号的な眼差しを彼に送ると来正君はこちらの存在に気付きサムズアップをして来た。

 

え、通じた!?すごい(小並感) 実際にやってみるもんだね。そう思っていると彼は口を開きボクに向けて告げる。

 

「グハハハハハ(悪役特有の高笑い) ノコノコ死にに来たかVスパイダーッ! いくら貴様と言えども餓鬼の手を借りて戦おうとは愚かなモノだなぁ!」

 

 アドリブで返して来た!?しかもデーモン閣下的な高笑いを含めて!ちょっと、ボクにアドリブなんて無茶言わないでよ!無理、無理だから!そんな即興で台詞とか無理だから!

 

《録音ボイス機能再生します。───"やぁどうも黒塗り恐竜さん。長い眠りから覚めた所悪いけど、此処にはコーヒーメーカーは無いよ?"(赤糸虫ボイス)》

 

 え…MJ!?なに、そんな機能搭載してたの!?凄いよ明!そしてありがとう明!流石マイフレンド!

…もうこの先ずっとMJに喋らせてようかな?

 

そんな事を思っていると来正君が子供達に向けて言葉を投げ掛けた。

 

「はい皆〜、ヒーロー側やりたい人はアッチね」

『敵側で全て蹂躙したいヤツはこっちだ。this way…』

「その言葉で敵側やりたいと思う人出るの?…ほら、殆どの子が赤糸虫さん(あっち)側に行っちゃってるから」

 

 彼の言う通り、気付けばボクの周りに子供達が…え、何この惨状(誇張表現)は!?

 

F○CK(ファック)!!!! どう言う事だ餓鬼共ッ!どこにオレ達の落ち度があると言うんだッ!どこに不満があるんだッ!』

「そういうとこだぞシンビオート」

 

《"はーやれやれ可哀想に。チビッ子の皆ー、可哀想な黒塗りヴィランに言葉をプレゼントとしてあげてー"》

「子供に舐められて悔しくないんですかー?」

「やーい、汚いまっクロクロすけやーい!」

「お兄さんクソダサ〜敗北者w」

 

「え、何これ新手のイジメ?(引き気味)」

「違う。違うんです、ウチのAIが勝手に…!」

 

 ホントすみません已嶺さん!決してボクの意思じゃ無いんです!MJが勝手にボクの声でやってるだけなんです!だからシルバーもイグニッションもそんな訝しんだ視線を向けないでください!

 

『ハァ…ハァ…敗北者じゃないが!?』

「ヨシ(現場猫) いいぞシンビオート。そのまま落ち着くんだ。落ち着いてそのまま僕の身体の中に戻っt」

 

「ざーこ ざーこ 黒塗り敗北者ざーこ ヒーローの面汚しで恥ずかしくないのぉ〜〜?」

 

何だとこのメスガキ!理解(わから)せるぞッ!この雑魚ォォッ!!!

「シンビオートォォォォォ!」

 

 一種の地獄かな?

 

「おい大丈夫か、目が死んでるぞ?」

「あっちの方で横になっているか?」

 

 そんな奇妙不可思議な光景に数秒唖然してしまうボク。

世も末だなと思ってしまったがイグニッション達の声によって現実に引き戻される。

 

「あ、大丈夫…はい。大丈夫です」

 

……んん〜〜、結局の所ギャング・オルカはボク等に子供の世話を任せたいのか。それとも何か高度で深い訳があったりするのか。

雄英高校よりも濃密度な空間に少し眩暈が────!?

 

 

 

「……赤糸虫さん?」

う、あ……

 

 脳が直接揺さぶられ、串刺しにされるような感覚。

スパイダーセンスが身に迫る危険を察知した!?しかも、この感じ……昨日のモノとは比にならない!

それに加えて 此処には子供達が居る!

 

「来正君!子供達を連れて此処から逃げ────

 

 

CLAAAAAAAAAAAAAAAAAASH!!

 

 

 直後、施設に重厚な装甲車が突っ込んで来た。

 

 

 

▼▼▼

 

 

「──イグニッションッ!」

「任せとけッ!」

 

 シルバー・マルテースの声が響くと同時に子供達を抱えて火花が縦横無尽に施設内を駆け巡る。赤糸虫、シルバーは共に側に居た子供達を抱えると装甲車の直進上から飛び退く。

 

そんな最中。バキバキと養護施設の壁を破壊しながら突入してくる鉄の塊に対して真っ先に前へ出たのは来正恭成だ。

 

「止めるぞシンビオートッ!」

『憂さ晴らしのサンドバック代わりにピッタリだなッ!』

 

 筋骨隆々の黒き姿へ変貌を遂げると来正は腕を大きく広げ、ドッシリと構える。

 

「お、お兄さ───」

「大丈夫だ。止める」

『下がってろ巻き込まれるぞ』

 

 後方に逃げ遅れた子供達が数人。ヒーローを志した彼に止める以外の選択肢は無い。

 

「………おおおおおおおおッ!」

 

 掛け声と共に黒の巨体が装甲車とが互いに拮抗する。ギャリギャリとタイヤの焼ける匂いが施設内に漂わせながらシンビオートは地に足を食い込ませ、その場で押し留める。

 

『中々のパワーだな!』

「そのままひっくり返せ!」

『こうかッ!』

 

 来正の言う通りに車体の下に手を差し込むと、上方に向けて一気に力を込めると装甲車が浮かび上がる。

地面に接してないこの瞬間、待っていましたと言わんばかりにシンビオートの脚部がバネのように変化しギチギチと音を立てながら縮まる。

 

SHOOT(シュート)ッッッ!』

 

 そして、収縮された脚部は一気に解き放たれサッカーボールのように装甲車は養護施設の外に向かって吹き飛ばされた。

そんな事態を終え、スッキリしたのかシンビオートは後方の子供達に向けてニヤリと笑みを浮かべる。

 

『崇め立ててもいいんだぞ?』

「せめて…せめて外へ蹴り出すなら被害は最小限に……ッ!(シンビオートォ!)」

 

「可哀想に…本音と建前が逆転してる……」

 

 血反吐をブチ撒けそうな表情を浮かべる来正に赤糸虫は哀れみの視線が送られる。

 

「にしても、いきなりたぁ危ねぇな!事故か!」

「…それにしては随分と準備が出来ているな。見ろ」

 

 イグニッションの呟きにシルバーは正面に出来上がった大穴に注意を施す。そこから見知らない人物達が鉄製のバットやナイフ等を手に持ち、堂々と入って来る光景が広がっていた。

 

「来正君、これって一体…!?」

「何故か既視感あると思ったら…USJ事件(ヴィラン連合)の時と同じだこれ!」

 

 赤糸虫は戦闘に備え学生服を脱ぎ捨てると、内側に羽織っていた赤いコスチュームが露わになる。

 

「来正君、コスチュームは?」

「ごめん。それ施設の入口の所に置いてきちゃった!」

「なんで着てこなかったの!?」

「あんな重装備(コスチューム)で子供達と遊んだら危ないでしょ!」

「いや確かに理にかなってるけどさぁ!」

 

 そんな他愛も無い会話を繰り広げているとヒーローであるシルバーがテーザー銃を侵入して来た者達に向け、口を開く。

 

「どう言うつもりか分からんが…貴様等の先程の行為は市民に害を及ぼすものだ」

「一応聞いとくが…弁明は?」

 

 と、問い掛けるイグニッションの言葉に1人。様子のおかしい男が叫び応える。

 

「ヒャハ、ヒャハハハハハハハ!無理!無理だから!もうやっちゃったから弁明しないから!」

「……そうか、それなら質問を変えよう。お前達の目的は?」

 

「目的ィ……?」「目的か」「決まってるよな」「目的、目的」「ああ、そうだ決まってる」

 

 一層と騒がしくなる侵入者達の声。そこにリーダー格らしき男が前へ出て答えた。

 

「そんなモノ、特に無い。あ、いや違うなこれは"宣伝"だ」

「……そうか、そう言う事か。貴様等、感化されたカラーギャングか!」

「感化された…?」

 

 赤糸虫が疑問に思っていると、ピピと音を鳴らしながらスーツからMJの音声が響く。

 

《恐らくこれは今年度の雄英高校入学早々に発生した敵連合の事件によるものだと考えられます》

「それ、USJの…!?」

「僕達を襲って来たあの集団か!」

 

 現時点に於いて平和の象徴であるオールマイト。そのNo.1ヒーローの殺害を目的とされた敵連合の存在は国内に影響を与えた。

ヒーロー恐るるに足らずと雄英を襲撃したと言う彼等の足跡を目の当たりにした者達は感銘を受けると同時に、個性を持て余す者達の心に火を付けられる事となった。

 

「まぁ、と言う訳でだ」

 

 故に、こう言った行動を起こす輩は現れる。敵連合のように己が個性を発散する機会を求め、弱き者達に牙を剥く者達は現れるのだ。

 

「残念だが俺達に犠牲になってくれよォォォォォ!!」「ちょっとだけだから!ちょっと腕が捥げるだけだかラッ!」「コドモォ!柔らかそうなコドモォ!!」「1人くらい貰ってイイよなッ!イイよなッ!?」「ギャハハハハハハハハハハ!!」

 

『ひっ!』

 

 今にも襲い掛ろうとする敵達の圧に恐怖の色に染まる児童達。そんな子供の表情に1人の女性が涎を垂らす。

 

「あ、あぁ。もう駄目。駄目駄目駄目ぇ…!その面皮を今すぐに剥がしましょう!そうしましょうッ!!」

 

 そう呟きながら、女性の姿は見る見る内に異業のモノへと変貌を遂げると、子供達に向かって一直線に飛び出す。

 

「面の皮ァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

「なっ、コイツ 素早……ッ!」

 

 スピード自慢のイグニッションでさえ捉えられない初動の素早さに驚愕する中、蛇のような姿へ変貌を遂げた女の(ヴィラン)は口をグパリと開き、子供達に向かって襲い掛か────

 

「面のk「失礼します。お客様」…え?」

 

 次の瞬間、頭部が巨大な手らしきモノによって掴まれる。何が起こったか理解が追い付いていない女性。

巨大な指と指の隙間から見えた光景、それは少年の背中から生えた黒い腕と迫って来る拳────

 

「当店でのお触りは…禁止されておりますッ!」

『出禁だオラァァ!!』

 

BAAAM!!!

 

「ぎゃ──────」

 

 "個性"蛇の敵は来正恭成がシンビオートを纏った右ストレートをまともに喰らい、その場で伸びる事となった。

 

「き、来正く…「ああああああああああ!!やっちゃったぁぁあああああああああ!」!?」

 

 赤糸虫が声を掛けようとした瞬間、彼は絶叫する。先程の行為を悔いるように、彼は悲痛な叫びを子供達の前で惜しげも無く上げる。

 

「来正君…まさか、人を殴った事を悔やんで…」

「いや、純粋にケモナーとして動物系統の個性持ちを殴ってしまった事を後悔してるだけです…クソァァ!」

「いやそっち!?そっち方面で後悔してるの!?」

『人を殴ってる事に関しては今更だしな』

 

 そんなケモナーとして堕ちた行為を晒した彼はハッとすると、シルバー・マルテースに声を掛けた。

 

「ところでシルバー。さっきの大丈夫なんですかね?子供に危害及そうだったんで…つい手を出しちゃいましたが大丈夫なんですかね(震え声)」

「ああ、問題無い。これに関しては正当防衛として処理される」

「えっマジですか?過剰防衛じゃなく?」

「か、過剰じゃ無いと思うよボクは!」

「ホントに?動物愛護団体に殺されない!?」

「いや何をそこまで心配する必要が!?」

 

 そんな口論を繰り広げていると敵達からチラホラと声が上がって来るのに気付く。

 

「やっちゃったな」「やったな」「俺見た」「やっちゃったね」「クヒヒ、やった やった」

「ヒーロー様が市民に手を出したッ! なら、俺等が暴れても正当防衛だよなァァ!」

 

 リーダー格の敵がそう叫ぶと同時に各々が個性を展開。こちらに対する敵愾心を露わにした。始まってしまった…否、こうなる事を待ち望んでいた敵達に対してシンビオートは呟く。

 

『面白い。数ヶ月ぶりの戦闘シーンと行くか』

「何言ってんのシンビオート?…シルバー!」

「無論、分かっているッ!」

 

 プロヒーローでありギャング・オルカのサイドキックでもある彼女は来正恭成と赤糸虫知朱に向けて告げる。

 

「プロヒーロー シルバー・マルテースの名に於いて!『VENOM(ヴェノム)』『V(ヴァミリオン)・スパイダー』2名の()()使()()()()()()()()()()()ッ!」

 

「「了解ッ!!」」

 






〜〜キャラクター紹介〜〜

『来正恭成』
ケモナーにして影の薄い主人公。
子供達に人気があるように見えるが、それはあくまでシンビオートのオマケとしてであるので、本人自身が子供達に人気と言う訳では無い。切なみ。
個性であるシンビオートが人気である事に関して、子供達の将来を危惧している。


『赤糸虫知朱』
何故か読者に人気なスパイディ♀的存在のキャラ。なんか闇落ちしそうな雰囲気を醸し出しているが、特に問題は無い。
最近の悩みはAIとシンビオートが喧嘩すること。


『已嶺《こみね》 玄恵《くろえ》』
年齢19歳
個性:???
養護施設である恩寵受けし花園で育ち、その養護施設でボランティア活動をしながらバイトの日々を送る女性。
赤糸虫ちゃんを揶揄うのがクセになって来たらしい。


〜〜用語紹介〜〜
『恩寵受けし花園』
モデルはX-MENより恵まれし子らの学園。
予期せぬ事故によって両親を殺してしまったり、個性による影響で発達機能に支障を来たしたりと個性による弊害で厄介払いされた子供が集う養護施設。
ぶっ壊れるのは元ネタの所為。

此処に居る子供達の個性はどれも奇異的なモノばかり。常時エイリアンや姿だったり、核エネルギーを体内に宿したりと色々問題ありそうだがとりあえずは平和である(白目)


(石集め目的で)fgoの2部ストーリーを進めてガチャ引いたらリンボが出たでゴザル……ンンンンンンン!ちがう、違うんだ…自分が欲しかったのは金時と綱であって、お前じゃないんだ……ッ!


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36話 重なり交差する思惑


読者の皆様、ハッピーホリデー(クリスマスおめでとうございます)
最近になってバイクの免許を取得した作者よりプレゼント代わりの最新話をどうぞ。



 

此処(施設内)じゃ子供も巻き込む!相手全員を外へぶっ飛ばせッ!」

STAGE(ステージ) SELECT(セレクト)ッ!(物理)』

 

 その一言と共に鞭のように蹴りが放たれ、ガシャァァッ!と施設を破壊しながら敵達は吹き飛んで行く。

その光景に一同は呆然。それを指示した来正本人に至っては大量の脂汗をダラダラと流す羽目になっている。

 

「…ヨシ!(現場猫) 良いぞシンビオートッ!(施設の損害に目を背けながら)」

「何処がなの来正君!?」

「まぁいい!今は児童の避難を最優先だ。最悪、全部敵の仕業にする!」

「「シルバー!?」」

 

 ヒーローの職権乱用を垣間見た彼等。しかし外へ出ると、そのような事を気にしている事態では無い事に気付く。

養護施設の外。街の大通りで大量の敵達とギャング・オルカ事務所のサイドキック達との争いが勃発していた。

 

「敵がこんなに沢山…!?」

「USJ襲撃事件の再現でもする気なのか…?」

「何が再現だ。こんなのただのタチ悪い暴動だッ!」

 

 好き勝手に闊歩する敵達。そんな抑圧された暴力飛び交う渦中に一身で飛び掛かろうとするイグニッション。しかしそれを待てとシルバーが制止をかける。

 

「イグニッション!お前は逃げ遅れた一般市民の避難誘導だ!お前の機動力なら早く済む!」

「よし任せとけ。すぐに終わらせて援護に回る!FIRE・ONッ!」

 

 ロケット噴射の如くその場を勢い良く去って行くイグニッションを見送ると児童達を安全な所へ避難させようと移動を行う。

 

其折、人が飛んで来た。

 

「な!? シンビオート受け止めろッ!」

『キャッチ&リリース!!』

 

 巨大な黒腕を形成し飛んで来た人物を掴むとそのまま地面へ投げ捨てる。先程外へ吹き飛ばした敵が白目を剥きながらこちらに向かって空を駆けて来た事に驚きつつも来正は視線をそちらへと向ける。

 

「小僧…やってくれたじゃねぇか…ッ!」

 

『おやおや可哀想に。そんなボロボロになっちまって』

「無駄に刺激するのはやめろ…と、言っても聞いてくれないんだろうなぁ」

 

 シンビオートの心にも無い発言に半ば諦めたような表情を浮かべる来正。それに対しリーダー格らしき敵は己の上着を脱ぎ捨てると威嚇行動なのか、雄叫びを上げ始めた。

 

「俺を馬鹿にして……後悔するなよ餓鬼共がぁぁあああああああああああああっ!!」

 

 直後、ボコボコと男の皮膚の下で筋肉が活発な脈動を始めた。次第に敵の身体は人型からかけ離れた容姿へと変形していく。

 

首は伸長して行くと同時に尾骨から突き出るように細いしなやかな筋肉の塊が発現。両手両脚は肥大化する身体全体を支える為に二脚から四脚へと移行。

 

「あの個性は…キリン!?」

「いや違う、あの姿形、あの頸椎の長さッ!サイズ自体は控えめだが間違い無いッ!」

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

 圧倒的なスケールを持つその姿は現代では決して見る事の出来ない存在。古代に絶滅されたとされる生物が咆哮を響かせながら今この時代蘇った。

 

「中生代ジュラ紀に生息されていたとされる巨大竜脚類 腕竜(ワンロン)ッ!」

「それってまさか!?」

「ご存知…『ブラキオザウルス』だッ!」

 

 

【個性:ブラキオサウルス(通称:腕竜(ワンロン))】

ブラキオサウルスへと変身可能。変身後は身長867cm(8.67m)、体重は数t(トン)にも及ぶ。

 

 

「矮小なチビ共がッ!この巨体に勝てると思うなッ!」

 

 怒号と共に前脚が勢い良く踏み込まれる。

瞬間、地面の震えと共に道路の一部が陥没を起こす。圧倒的な重量より繰り出される純粋なパワーは市民達に恐怖を与えるのには十分過ぎる。

 

「こんなのありかッ!?此処は比較的広い敷地だから良かったものの、住宅街で暴れられたら犠牲者が出るぞッ!」

「あ、足が……ッ!」

「…クソ、なんて厄介な個性を」

 

 来正恭成、彼自身も恐怖心が無いと言えば嘘になる。敵連合、体育祭と言った修羅場を潜り抜けて来た彼としてはプロヒーローと共に力を合わせれば勝てない相手では無いだろう。

 

しかし相手の規模(スケール)が今までとは違う。脳無に立ち向かった来正恭成とて恐怖心が無い訳ではない。いざ、己より巨大な相手と対面すると脚と地が溶接されたようの動かなくなってしまう。

 

(こんな相手に勝てるのか? 駄目だ。コイツを倒す為にはギャング・オルカと合流して───)

 

「おにーさん」

「え?」

 

 

「もしかして…怖がってるのぉ〜〜〜w 精神クソ雑魚すぎウケる〜〜ッw」

んんん゛んんんん゛ッ!(精神的ダメージ)」

 

 まさかの援護射撃(フレンドリーファイア)。加えてこの歳頃の子供に告げられると最も心に来る。ツラみ。

来正の性癖は度し難いアレだがどちらかと言えばノーマル寄り。マゾヒスト(訓練された変態紳士)では無いので当然心にグサリと来るものがある。

怖いなー。今時の子供怖いなぁー…。

 

「ざこ ざぁこ 震えちゃって可哀想ォ〜〜〜w」

「僕に恨みでもあるのか君は(震え声)」

 

 しまいにゃ泣くぞお前と付け加えた所で気付く。()()()()()()()()()()()()()()()()()。少女は内心、目の前の恐怖に怯えながらも強く在ろうと立っている。

 

ヒーローの姿か?これが…。何もせず子供を怯えさせ守る事を視野に入れてない。 生 き 恥 。

 

「───あぁ、分かってる」

「?」

 

 項垂れていた彼は立ち上がると、シルバー・マルテースに向けて口を開いた。

 

「シルバー、此処は任せて貰って良いですか?」

「来正君!?」

「……来正、それは認可出来ない。私の任務は市民の安全確保であり、それは貴様達(生徒2人)も含まれている」

「はい。ですが、それは僕も同じです」

 

 彼は此処に来たのは決して遊び感覚の為では無い。いずれ来る将来、己がヒーローとなる為に。これ以上敵達に放埒な真似をさせない為に。

自身の中に在る信念に従う為に。

 

「それに、ホラ。正直な話、今この場であれを相手に出来るのって僕達ぐらいですよね?」

「………条件がある」

 

 来正の言葉に対しシルバーは銃口を向け返答する。

 

()()()。もし死んだら貴様を殺す」

「あの、それ矛盾しt「お前に拒否権は無い」あっはい」

 

 彼女の無理強いに掠れた返事をする来正。その後、児童等の側に居る2人に向けて言葉を告げる。

 

「赤糸虫さん。已嶺さん、この子達の事よろしくお願いします…あ、それと」

 

 先程、発破を掛けて来た少女に目線を合わせる形で屈むと来正は声を柔らかな声で語りかけた。

 

「君、名前は?」

「…明須賀(めすが) 姫了子(きりこ)

『やっぱりメスガキじゃねーか』

「うん黙っていようかシンビオート…さっきはありがとう、君のおかげで戦う気力が湧いたよ」

 

 敵を前に折れかけていた自身を立ち直らせた彼女に敬意を示すように来正恭成は感謝を述べた。

 

「ヒーローにとって…僕にとって大切で必要な事。それを君は気付せてくれたんだ。やっぱヒーローには子供の声援が必要不可欠だね」

「………」

 

「来正…いや、VENOM。無理するなよ」

「分かっています」

『任せとけ。まぁなんだ…別に倒してしまっても構わないんだろう?』

「おい、フラグ乱立させるのやめろ」

 

 そう言葉を終わらせると巨体を揺らしながら近づいて来る敵の前へと赴くと、シンビオートの一部をメガホンのように円錐形状へと変形させる。

 

「なんだ小僧。俺と戦おうってのか?」

「あー、そこのミニチュア爆竜ブラキオサウルス!全恐竜と養護施設育ちの子供達に代わって告ぐ! その土まみれの両前脚を上げろ!

『ただし、その四つん這い体勢を変えられたらの話だけどなぁ!』

「テメェ…ッ!」

 

 怒髪天を突いた様子を見せる敵に対して来正は「あーあ」とやや悲観的な態度を取る。

 

『感動的だな、良い台詞だったぞキョウセイ』

「…ブラキオサウルスとはもっと健全な戯れをしたかったんだけどなぁ」

『ブレないなお前』

 

 冷ややかな視線を送る己の個性。そんなモノを気にする様子も無く来正恭成が軽い柔軟運動を行うとカッと目を見開く。

 

「よし、とッッ…身体構造形態変化(チェンジ・モーフィング) 大型肉食竜(ディノ・レックス)ッ!」

『シャァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!』

 

 強靭な脚部が地面を踏み抜く。鋭く、強く、勇ましい顎がグパリと開かれ特大の咆哮が放たれる。

 

「だからどうした小僧ッ!姿を変えた位で勝ったと思うなァ!」

 

『首長の草食竜如きがッ!肉食竜に叶うと思ったかこのマヌケがぁーーーーーッ!』

「陳腐な台詞だけど言わせてもらう…此処は僕等に任せろッ!」

 

 

 

 二匹の竜が相対し激突する最中にシルバーの先導の元、子供達を避難させるべく移動を開始した。

 

「聞こえますかシャチョー、こちらシルバー・マルテース。現在V・スパイダーと共に養護施設の児童等の安全確保の為に避難先導をしています。そしてVENOMが連中のリーダーと思われし(ヴィラン)と交戦中。こちらに応援をお願いします」

 

 周囲の安全確認しつつ端末でギャング・オルカと連絡を行いながら街道を行くヒーロー達。

 

《…pp、指定された危険区域から脱出までの距離。あと僅かです》

「本当!? 皆、もう安心して。大丈b──「下がれッ!」えっ?」

 

CLANG!!!

 

 刹那、シルバーの掛声と共に甲高い音がその場に響く。空から飛来して来た謎の物体を銃で受け止める形でシルバーが"それ"を防いだのだ。

 

「何が…!?」

「ギャハハ!何処ッ!何処行くのかなぁ!!」

 

 嗤い落ちて来たそれの正体は人、それも顔面と両手両脚が二股に別れた刃となった常時発動型(異形系統)の個性だとハッキリ分かる。

鋼質化した骨の剪刃をジャギリと云わせながらその者は大きく開いた口で言葉を発した。

 

「そ、そいつ等!ギャハハハハ!その、こ、子供等を置いてッ!置いて行けェッ!」

 

【個性:剪定鋏(せんていばさみ)

鋏のような骨刃を顔面、両手・両足に生やす。

 

 シャブをキメたかのような言動を行うそれに子供達は一層の怯えを見せるが、赤糸虫は「大丈夫」と励ましの言葉を送った。

 

「お、お兄ちゃん……!」

「シルバーに任せれば大丈夫だよ……あとボクは男じゃなくt「う、後ろ」ッ!?」

 

 振り返った先。彼女の視界にもう1人の人物の姿が映ったのだ。

鍬形の飾りが備えられた仮面を被り、先程の敵と同様に腕から刃が伸びている。

 

「2人!?」

「否、二振り!」

 

【個性:剪定鋏(せんていばさみ)

鋏のような骨刃を両肘に生やす。分離させて武器のように扱う事も可能。

 

「何をしてる弟。我々剪定兄弟が真なる力を発するのは双刃一鋏(そうじんいっきょう)瞬間(とき)。勝手な行動は慎め」

「ギャハハ!分かってるッ!分かってるよ兄ちゃんッ!」

 

 挟み打ちの形となった状況にチッとシルバーは舌打ちをしながらポーチより銃カスタムパーツを取り出す。

 

「貴様等、何故我々を狙う」

「ギャハッ!それっ、それはぁッ!」

「口を閉じろ弟よ。この者達に我々の思索を伝え云う必要は皆無!……さりとて、何も宣しないとは無作法というもの」

 

 兄の敵がそう言うと刃を向けながら告げる。

 

「"我々"が求めるは純粋なる力、そして我等兄弟が欲するは人すらも断つ事を可能とする斬れ味ッ!」

「ギャハッ!ギャハハハハ!俺はただ切りたいッ!切りたいだけだけどなぁッ!」

 

「いざ尋常に…己が()()の錆となるが良いッ!」

「構えろVスパイダーッ!この敵達は…本気で我々を殺す気だッ!」

「っ、はい!」

 

 

 職場体験2日目。敵との戦闘(実戦)が開始された。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

「ウォォォオオオオオオオオオオオオオオ!!」

『GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』

 

 二匹の竜が激突する。一方は全長8m程の巨体を鞭のように撓らせ周囲を破壊する竜脚類。もう一方はその5m程の身体を持ち鋭い牙や爪で襲い掛かる黒き獣脚類。

古代にタイムスリップしたかのような、その光景は見る者を圧倒させる。

 

「この小僧がッ!潰してやるッ!」

 

 ブラキオザウルスの個性を持った男はその巨体を支える強靭な前脚で相手を潰そうとする。しかし相手は変幻自在の身体を持つシンビオート。踏み潰そうとした瞬間、身体を変形させその場から離脱。その後に攻撃を仕掛けると行ったヒット&アウェイ戦法を取って来るのだ。

 

『何処を狙っているコッチだッ!』

「黒指弾ッ!」

 

BANG BANG BANG BANG!!

 

「ちょこまかと…ッ!」

 

 更には顔を狙った遠距離からの狙撃により一層の苛立ちを見せる。威力こそ低いものの、鼠の如く動き回るその姿が煩わしく思える。

 

「ならば、これでどうだッッ!」

 

 直後、身体を軸にその長く伸びた尻尾と頸を振るい竜巻のように回転する。ブォンと空気を切りながら発せられたその攻撃は周囲の街灯や建物を容易に抉る威力だ。

流石にこの攻撃をマトモに受ければ来正恭成とシンビオートとも言えどタダでは済まない。

 

それを裏付けるかのように"ぐちゃり"と音を響かせながら黒い物体が飛んで行き壁に打ち付けられる。

 

「ハハハハ!俺を甘く見た結果だ小僧ッ!」

 

 潰れた様を見て昂る頸長恐竜。この一撃によって来正恭成と共にシンビオートも絶命して事だろうと高笑いを上げた。

 

 

 

 

 

「…いや本当に」

『ああ、本当に甘く見られたモンだな』

 

「なっ、声だとッ!?一体何処から……!」

 

……しかしあくまでマトモに受ければの話。

ダミーである切り離したシンビオートの一部を攻撃させ注意を逸らし、上空へ退避した来正は首長竜の頭上に狙いを定める。そのままシンビオートを凝縮させた拳を握りしめて放つ。

 

『オレ達の拳骨(奢り)だ。遠慮するなよ』

「黒曜剛拳…ッ!」

 

『「DESTROY(デストロイ)REVOLVER(リボルバー)」』

 

CRAAAAAAAAAAAAAAAAAASH!!!

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

 四足歩行故にガード不可能な頭部を揺らされ、崩れ落ちて行く腕竜。その光景にシンビオートは『ハッ』と鼻で笑う。

 

新装備(新しい玩具)を扱うまでも無い。期待外れの雑魚だったな』

「やめなってシンビオート…」

 

「なん…だ…とぉ……ッ!」

 

『まぁいい、今のオレ達は紳士的だ。一思いにトドメを刺してやる』

「だから言いかt…ちょっと待った。オレ達って何? 何で僕を巻き込んだ感じの言い方にしたの?」

 

 近くに転がっている装甲車を持ち上げるシンビオート。それをブラキオサウルスの顔面に叩き付けようと、一歩ずつ進んで行く。

 

……が、しかし来正とシンビオートは気付く。

青く妖しく輝いた焔が迫って来ている事に。当たれば確実に「ヤバイ」と直感した両者は車を踏台にその場から飛び退く。

 

『HOT!!? GODDAMN HOT!!!!』

「ほ、炎ッ!?何処から───!」

 

 突如として襲いかかって来た蒼く燃ゆる炎に来正達は驚きを隠せない。それに加えその炎は彼等が避けた先にはヒーロー達と戦闘を繰り広げる敵達を呑み込んだのである。

 

「あ、ああああああああああ!?」「熱い、熱いいいいいい!」「何だ何だこれぇ!?」「ぐあああ喉がッ!や、焼け───!」「おおおおおお!」

 

「ッ! 仲間を巻き込んで…!?」

『…フン、お前が気に病む事じゃないだろ。敵が減ってくれて楽になった』

 

 遠回しに気にするなと告げているシンビオートは眉間にシワ(らしき模様)を寄せながら炎の発生源を目視で探る。炎から逃れる為に電柱の上へ避難したのが幸いしたのか。その犯人はすぐに見つかる事となった。

 

「よぉリーダー。情け無い格好を晒してんなぁ」

「黙れ!新人の癖して……まぁ、良い。この坊主を殺すぞ」

「殺す…殺すねぇ……」

 

 新たに現れたのは身体の至る皮膚が継ぎ接ぎとなった男。腕から煙を発しながら口端を吊り上げる人物はリーダー格の敵の側に立っていたのである。

 

『オイオイ、恐竜の次はツギハギのフランケンとはな。ハロウィーンの仮装パーティにしては気が早いんじゃないか?』

「そんな事言ってる場合か!?不味いぞシンビオート。あの(ヴィラン)の個性…僕達との相性は最悪だッ!」

 

 炎系統の個性と言えばクラスメイトの轟焦凍とその父親のNo.2ヒーローのエンデヴァーが頭に思い浮かぶだろう。

半冷半熱を操る轟は左右それぞれの個性を使い分ける事により幅広く強力な攻撃を行う事が可能。エンデヴァーの場合は史上最強とも言える炎系統個性(ヘルフレイム)。炎を自由自在に扱いオールマイトに次ぐ実力を備えている。

 

それ等と比べれば相手は大した事は無い……否、そんな簡単に行く訳が無い。

 

「オイオイ泣言を言わないでくれよ。曲がりなりにもヒーローだろ?…まぁ、いいさ。ところでお前…雄英のヤツだろ。ホラ、テレビに出てた黒いヤツ」

『だからどうした。サインでも欲しいのか?残念だが予約制でな、ムショに入り直してからまた来るんだな』

 

「おう、考えとくよ」

 

 直後、間隙無く放たれる蒼炎。それに対し轟との戦いを得た経験を生かし地面を畳返しのように剥がし盾のように扱い防ぐ。

だが、これは盾としてでは無く時間を数秒でも長く保たせその場から離脱する為のモノだ。

 

色温度と言う現象が在る。それは一般的な約1500℃の赤い炎から黄→白へと温度が上昇する度に色が変化していくモノだ。

そして青い炎はそれ等よりも高い『摂氏10000度以上』なのだ。

 

(轟君の炎の約10倍はある完全燃焼の燐火ッ!当たればただじゃ済まないッ!)

 

 体勢を立て直そうとする来正はその場から飛び退き炎から逃れる。しかし背中に衝撃が走ると共に突如として己の体が地面に叩き付けられる。

 

(が…ッ、な、何が起こって…!?)

 

 纏まらない思考回路を無理矢理動かし状況を理解しようとするが、ふとその場が暗くなった事に気付く。

 

(いや、これは!?)

 

 失念していた、敵は一人では無い。目の前には今にも前脚を振り下ろそうとする恐竜の姿があった。

先程まで戦っていた巨大な敵が頭から抜けていた事に悔やみながらも来正はシンビオートの腕を側方へ伸ばす。そのまま遠くにある街灯を掴み一気に腕を縮小させその場から離脱し踏み付けから逃れる事に成功した。

 

『大丈夫か?』

「多分大丈夫…。成る程、さっきのはブラキオサウルスの尾に叩きつけられたのか…ッ!」

 

 未だビリビリと来る身体を起こし目の前に立ち並ぶ敵を見据える。どちらか一方に集中すればもう一方に攻撃を加えられる。

()してや、どちらの個性も強力無比なモノ。同時に相手をするのは骨が折れる。

 

「せめてコスチュームがあれば…ッ!」

『嘆いても意味は無い。来るぞッ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そらそらそらそらっ!そらぁっ!」

「う、わッ!」

 

 鋏の片刃からフェンシングの如く連続突きが放たれる。避けながらも糸の射出を行うがどれも腕から伸びる刃によって弾かれる。

 

「華奢なその肢体より繰り出される技法…なんと美しき事かッ」

「お褒めどうもッ!そんなに好感触なら子供達を逃してくれないかな!」

「否、その可能性に満ちた少年少女達はこの鋏の如き刃の煌めきを秘めているッ!」

 

「はぁ?」

《言語理解不可能。敵の戯言と捉えてくださいチズ》

 

 攻撃を躱しながらも赤糸虫は鋏を個性とする敵の発言によって頭を悩まされる。一々台詞回しか意味不明。これならば同じクラスの黒色支配の方がまだ理解出来ると彼女は考える。

 

「言ってる意味が分からないよッ!そんなにハサミハサミ言うなら他の皆(敵達)誘って理髪店を開業したら!?そっちの方が儲かるって!絶対に!」

「儲かる? 笑止ッ!金銭に目が眩むような私では無いわッ!そして、あの程度の低い連中と一緒にしてくれるなッ!」

 

「うわぁ!何故か怒られた!?」

《実に面倒臭い性格をしていますね》

 

 激昂する敵に面喰らう赤糸虫。そんな彼女の後方で銃弾を敵目掛けてばら撒きながら戦っているシルバーが叫ぶ。

 

「そんな者、相手にするなV・スパイダー!」

「酷ッ、酷い事を兄ちゃんに言うなぁぁああああッ!」

 

 弾丸を手先の刃で防ぎながら突進を仕掛けて来る弟敵。しかしそんな肉親を気にする素振りを見せずに兄側は剣を携えながら云う。

 

「あの者達は所詮大した野望も信念も持たぬ愚かしき烏合の衆。だが我々兄弟はこの異能を天より授けられた時より真なる世界を求め、闘う命運となっているッ!」

「すみません何言ってるか分からないです」

「元より理解を得ようと言う考えは持ち合わせて無いッ!」

「駄目だこの人会話通じない!」

 

 ガンガン飛ばす一方通行の言葉に思わずたじろいてしまう赤糸虫、そんな彼女の背後から弟が迫る。

 

「お前ェ! 渡ッ!渡せェッ!」

「っ!?」

「やらせるか」

 

 そこに銃からトンファーへと持ち替えたシルバーが割り込んだ事によって赤糸虫は事無きを得た。

 

「あ、ありがとうございます!」

「当然の事をしたまでだ。集中しろ…しかし」

 

 互いの背を預ける形で構えるヒーロー二人は目の前の敵と対峙するが、シルバー・マルテースは戦いの中に存在して違和感について引っかかっていた。

 

(先程から、私では無く赤糸虫(V・スパイダー)に攻撃が向いているのは何故だ?)

 

 敵二人が赤糸虫を重点に狙う理由。初めは相性や戦闘慣れしていない為かと考えていたが此処に来てその違和感は浮き彫りにされた。

 

「(殺意こそあるものの首や心臓等への急所攻撃されてない。彼女に対して何かあるのか…?)思った以上に煩わしい口だな」

「貴様…我々の信念を侮辱しているのかッ!」

「フン、だから何か問題があるのか?私達ヒーローから見れば貴様も個性を持て余し暴れる敵に過ぎない。そう言われても違うと証明したいのならば()()()()()()()()()()()

 

 それを明らかにすべく見え透いた挑発で少しでも情報を引き出そうと画策したシルバーに弟の敵は汚い笑い声を上げる。

 

「ギャハハッ!兄ちゃんッ!兄ちゃんはそんな挑発には乗らn「そこまで聴きたいのならば良いだろうッ!」兄ちゃん!?」

(んん!? いやいや待て待て。流石に挑発に乗るの早いだろう!?罠か!まさかこれは罠なのか!?)

 

 まさかの煽り耐性が0に等しかった敵の兄の方。こんなにアッサリと教えて来るので逆に偽りの情報を与えて来るのではないか?と疑問に思ってしまう程だ。

 

「兄ちゃん落ち、落ち着いt「我等が目的は二つッ!一つ目は養護施設にその身を預けられし子供等ッ!」兄ちゃんんんんんんッッ!」

 

「かの子達は恵まれし異能をその身に宿したにも関わらず社会より見捨てられたッ!そのような横暴を見過ごして良いのか?否ッ!断じて無いッ!」

 

 頭を抱える弟を尻目に彼は切先を向け口にする。

 

「故に、我等は改革を起こすッ!そしてその子等は未来に訪れし新時代の精鋭へと育て上げるのだッ!」

 

「……えーと、つまり?」

《要約すると児童の集団誘拐です》

「成る程…結局の所、犯罪に変わり無いんだね」

 

 少しでもボリュームを大きくして喋れば噛み付いて来ると学習したのかヒソヒソと小声でMJに返事する赤糸虫。そんな事している彼女だったが突如として敵はこちらに向けて言葉を投げ掛けて来た。

 

「そして二つ目の目的は貴殿だV(ヴァミリオン)・スパイダーッ!」

 

「えっ」

《事案ですね。分かります》

「いや、それに関しては児童を狙ってる時点で今更なんじゃ…と言うかボク!?」

「然り!さぁ渡して貰おうか、貴殿の持つ()()()をッ!」

「チ、チップ!?」

 

 敵の言う事に混乱する赤糸虫。言い回しが独特な上に回りくどい言い方をして来る所為で意図が伝わらない。

…そんな困窮した事態に頭を悩まされている最中、遠方から轟音が響く。そちらに視線をやるとボウボウと天に伸び青く燃える焔が視界に映った。

 

「あれは…青い炎!?」

「ぬぅ、愚者め!()()()()()()()を灰塵に化すつもりかッ!」

「もう一人の標的…まさかッ!」

 

 赤糸虫は気付く。先程炎が上がった方向そこには子供達の逃げる時間を稼ぐ為に一人残った来正恭成が居た場所だと言う事に。

 

「まぁ良い…VENOMとV・スパイダーのどちらが持っているだろうチップが無事ならば問題無い。それが終わった後は───「させないッ!」む?」

「そんな事絶対にさせないッ!」

 

 臆病で意気地が無い彼女から発せられた台詞。これは強がりでも演技でも無い真に腹の底から湧き上がった言葉。

 

「来正君も!子供達も!絶対に死なせるもんかッ!」

 

 脳裏にチカチカと映る鬱陶しい過去。頭の中にこびり付く忌まわしい映像を振り払うかのように、燃え上がる衝動のまま赤糸虫知朱は飛び出した。

 

 

 





〜〜キャラクター紹介〜〜

竜崎(りゅうざき) 頸長(けいちょう)
個性:ブラキオサウルス(8m級)
養護施設を襲撃して来た敵達のリーダー格。個性によって変化した巨大から繰り出す圧倒的重量で押し潰す戦法を得意とする。

『継ぎ接ぎの男(仮名称)』
個性:青い炎(仮名称)
全身の至る皮膚が爛れ移植したような跡が目立つ不気味で掴み所の無い男。上記の竜崎と共に来正とシンビオートを追い込む。来正達に興味があるらしい。
分かる人には分かるかもしれないキャラ。

鋏実(はさみ) 圭壱(けいいち)』(兄)
個性:剪定鋏
両肘に生やした刃で戦う敵。ナルシストかつ偽善的な性格を持ち独特な台詞を使うキャラ。養護施設の子供達とチップと言う謎の物品を狙い赤糸虫と交戦する。

鋏実(はさみ) 真弍(しんじ)』(弟)
個性:剪定鋏
兄とは違い顔面と両手両足に生やした刃を使って戦う。チェンソーマンの悪魔ルックス。言動はヤクキメのアレだが実は暴走気味の兄のストッパー的役割をしている。彼もまた子供達とチップを狙いシルバー・マルテースと交戦する。

明須賀(めすが) 姫了子(きりこ)
メスガキ。個性もそのままメスガキのJS(女子小学生)
常時発動型の個性であり自分の意思とは関係無しに相手を傷付け苛つかせてしまう為、親に捨てられ親戚にたらい回しにされた経歴持ち。
うーん、(過去が)重いなぁ。


本格的な戦闘は次回へ持ち越しです。年内には投稿出来るといいなぁ……。
ところでジャンプ(プラス)のデッドプール:SAMURAIが面白いです(露骨なステマ)
デップーのメタでふざけた台詞が良き。
と言うかサクラスパイダーってなんだテメェ赤糸虫くんちゃんとキャラ被りやがって可愛いじゃねぇかテメェこの野郎!



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37話 起死回生だよ全員集合!


いよいよ今年最後の日が来ました。明日は令和3年目、悔いの残らない2020年にしましょう。
と、言うわけで……読者の皆ァーーーッ! 作者の今年最後の小説投稿だぜ!
受け取ってくれぇぇーーーーーーーッ!



 

 ボクの中で駆け抜ける焦燥感と脳梁にこびり付く記憶。それ等が身体を突き動かす原動力となったのか不思議と頭が冴える。

 

「真正面からとは…愚直ッ!」

 

 相手が繰り出して来る片刃の剣による突きが眼前に迫る……けど、この程度の速さなら見える。

そのまま顔を横にズラす事で刃が頬に掠りつつ、拳を撃ち込み攻撃を行う。

 

「がッ…⁉︎(顔面への突きを紙一重で躱すと同時にカウンター…!? 人は誰しも顔を捉えられれば咄嗟に防ごうとすると言うのに…ッ)」

 

 驚愕する敵。だけどこれだけでは終わらない。シューターから蜘蛛糸を射出しこちら側へ引き寄せて再び攻撃を行う。

相手側に攻撃のチャンスを与えるな!こちらのペースに引き込め!

 

「ぐ、人が変わったかが如き。中々の逸材だと見た……ならば。この速さを躱せるかッ!」

「っ!?」

 

 嫌な予感と悪寒が全身に襲い掛かる。正拳突きに限り無く近い構えを行う敵を前にボクは咄嗟にソレを前に出した。

 

CLANG!!!

 

「がッ───!?」

 

…にも関わらずボクは後方へ大きく吹き飛ばされてしまう。

何が起こった?何も見えなかった…いや、正確には見えていたけど何も出来なかった…!?

 

「ほう、マンホール蓋を引き寄せ盾として防いだか…しかし。我が"刺突穿刃"にそのような薄弱な円盤如きで対抗したのが貴殿の落ち度」

 

《…チズ、先程の攻撃ですが破壊力の程は───》

「教えなくても大丈夫だよMJ…マンホールの蓋に穴が空いてる」

 

 盾として使った円状のソレは中央に無理矢理こじ開けられたような穿孔が作られていた。もしも、先程の攻撃をマトモに受けて居ればと考えると全身からブワリと嫌な汗が噴き出て来る。

 

「しかし、中々の逸材…捨て置くには勿体無いな」

「何を言っt「我等の仲間とならないか?」…!?」

 

 相手の言葉に頭の中が真っ白になる。何のつもりだ?何でそんな事をボクに…!?

 

「解せない様子だな、まぁ無理もない。我々は先程まで果たし合いをしていたのだからな───だからこそ私は果たし合いの中で貴殿の輝ける才能を見たッ!」

 

手を差し伸べるように敵は言葉を続ける。

 

「我々と共に来い!そうすれば、いずれ訪れし力を自由に振える世界をその目で見る事が出来る!」

「……その為に子供達や来正君を狙ったのか!? 間違っている!自分達の目的の為に命を脅かすなんて間違っている!」

 

「理解は示してくれないようだ…が、本当にそう思うのか? 本当にそれが正しい事なのか?」

「何をッ!」

 

 先程と変わり攻めへと転じるボク。しかし拳や蹴り、凡ゆる攻撃が強固な鋏によって防がれてしまう。

 

「焦れているな。ならば問おう、あの子達をお前達(ヒーロー)は救えるのか?」

「………」

 

 救えるのか?の意味。恐らく施設の子供達の境遇の事を言っているのに違いない。已嶺さんから聴いた超常社会より零れ落ち集った子供等。

相手の的確な言葉にボクは答える事が出来なかった。

 

…敵の言っている事は一理あるかもしれない。この人なら子供達を幸せに出来るかもしれない……けど。

 

「───それでもボクは貴方のやり方に納得出来ない」

「…そうか」

 

 溜息。ふぅと酸素が外に吐かれ数秒が経った瞬間、相手の目が見開かれる。

 

「貴殿の覚悟を見届けたッ!そして認めようV・スパイダー、貴殿は強い!なればこそ、こちらも本気で挑まねば無作法と言うものッ!」

 

 ジャギン!と敵が己の肘から形成された刃を手にするとそれぞれの手に収められた獲物を文字通り(ハサミ)の如く交差させ構える。

 

「我が真骨頂は双刃一鋏…即ち二刀流ッ!先程の"刺突穿刃"の二本分ッ!そして命中すれば即座に貴殿の肢体は両断される事だろうッ!」

 

 

「故に再び聞く…… 我等、()()()の仲間になれ」

「…断る」

「フ、よくぞ言ったッッ!」

 

 (ヴィラン)は何故か口端を吊り上げると刃を振り上げ、低姿勢の構えを取る。

 

「行くぞッ!我が奥義、止められるモノなら止めてみろッ!」

 

 恐らく次で最後の攻撃となるだろう。必殺の一撃がボクの身体目掛けて放たれる。

 

 

「奥義──"双牙式・刺突穿刃"」

 

 

 刹那、空間を飛び越すかのような動き。見る人には瞬間移動にも捉えられるかもしれない一閃。ボクを確実に仕留める為にソレはマンホールの蓋を穿ち貫いた時以上の疾さを出していた。

 

STING(ざくっ)!!

 

「〜〜〜〜っ!」

「獲ったァッ!」

 

 肩と脇腹に刃が突き刺さった。焼けるような痛みが身体中を掻き乱すように走る。肉を抉れ刃は骨にも達していると激痛と気持ちの悪い感触で理解出来る。

 

「名残惜しいが 終わりだV・スパイダーッ!己が半身に別れの為の辞世の句を告げるが良いッ!」

 

 ボクの肉体を捉える剪定鋏に両側から力が込められる。トドメを刺す為に鎖骨、胸骨、肋骨、脊椎それ等が全て断ち切られる程の膂力で鋏が引き絞られ身体が両断される───

 

「……む!?」

 

───事にはならなかった。

設置した罠が狙い通りに発動した事にボクはほくそ笑んだ。

 

「なんだ…身体が動かん!何が起きている、何が……ッ!? これは糸か!? 高視力の者でも視認が難しい程の極細の糸が身体中に絡まっているだとッ!?」

縛糸・幻霊黎明(げんれいあけぼの)…ッ」

 

 先程までの戦い。単に攻撃するだけでは無駄だと悟ったボクは相手の身体の至る箇所に極細の糸を絡ませておいた。

後は相手が大きく動くだけで糸は勝手に強く縛られ動けなくなる。

 

まさか、こんな賭けに出るとはボク自身思いもしなかった。これも来正君の影響なのかな?

……いいや、違う。

 

「大いなる力には大いなる責任が伴う…」

「…?」

 

 スパイダーマンと言うヒーローが度々口にする言葉。その受け入りを口にする。個性と共に産まれ生きる。けど手にした力を、こんな形で使っていい筈が無い。

 

「それでもボクは間違っているかもしれない…こうやって言い訳をしないと前へ進めないボクは臆病者だ」

「何を…?」

「それでも…ッ、目の前の命を蔑ろにするような卑怯者にだけはなりたく無いッ!」

《エレクトリックモード起動》

 

BZZZZZZZ!!!

 

 MJの機械音声が響くと同時にボクの両手に生体電流が増幅、光が弾け迸る。

 

 

 

 

『何で君はヒーローになろうと思ったの?』

 

 脳裏に来正君に向けて言い放った場面が駆け巡る。

 

『小さい頃。僕の目の前から一度に多くの命が失われた。父も母も、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 あの時の来正君の酷く哀しげな瞳の奥。そこに輝き揺らめく炎を感じた。命の価値を知っている人の目にボクは少しだけ惹かれた。

 

『僕は護りたい。人を、命を、皆を、フィクション(コミックやアニメ)のヒーロー達のように全てを……赤糸虫さんはどうなのかな』

 

 

 

 

 

 

 ボクは……ボクは側に居る親愛な人達が死んでいくのが怖い。その命と言う灯火がふとした拍子に消されるのが怖い。

ボクがヒーローになりたいと思ったのは、そんな隣人達を護りたいと思ったから……だからッ!

 

「皆に…手を出すなぁぁああああああああッ!」

 

 

CLASH!!!!

 

 

「我が刃を叩き折っただとッ!何という膂力ッ!?」

 

 身体に突き刺さり、固定された刃を破壊する事で防御する術を失わせ、一気に畳み掛けるッ!

これを使った後の疲労は激しい…けど、次で決めるッ!

 

「おおおおおおおおおおおッ!」

「舐めるなぁッ!」

 

 苦し紛れに放ってくる拳、それに対しボクも真っ向から拳を撃つ。そんな拳と拳とが接触した瞬間、生体電流が激しく火花を散った。

 

「ッ!?」

「まだまだぁ!」

 

 続け様に空いた片方の手を握り締めブローを放つと手に宿る電気が更に増幅する。これこそ個性の関係上拘束を得意とするボクが編み出した唯一の攻撃技。

攻撃を行う度に生体電流が増加。それと比例されるように段階的に攻撃自体も強化されていく。

 

一撃、ニ撃、三撃、四撃…まだ殴り続ける!

五撃目(ストレート)六撃目(ブロー)七撃目(アッパー)…ッ!

 

 両腕の電気がはち切れんばかり迸る頃に差し掛かった、その瞬間スーツから音声メッセージが流れる。

 

《──限界許容点到達──》

 

「殴り…抜けるッ!」

 

 八撃目こそ電流を帯びた攻撃の連打を受けた相手へのトドメの一撃。両腕…否、増幅され身体の隅々にまで行き渡った生体電流を"全て"相手へと撃ち込むッ!

これが、ボクの……!

 

雷閃(らいせん)八握拳(ヤツカノケン)

 

KABOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!

 

「ッ!?!!?」

 

 巨大な剣と見間違う程の莫大な電撃が撃ち出され相手を貫き、後方へ大きく吹き飛ばした。

 

「────っはぁッ…はぁ…はぁ……ッ」

 

 両腕が激しく痛む。許容量以上の電撃量へと増幅させ一気に放出させた為の反動が来たのだろう。

うう、本当に痛い……。

 

そう思っている最中、コスチュームから電子音が鳴る。

 

《チズ前方に注意を。相手が起き上がって来ます》

「そんな!? 流石にこれ以上はもう…!」

 

「……否、既に是非は決した」

 

 そう呟きながら満身創痍の状態で立ち上がる(ヴィラン)。しかし、先程までとは打って変わって敵意やそう言った類を一切感じ無い…寧ろ、その逆の敬意のようなモノが伝わって来る。

 

「我が刃は全てを断つ力、そう自負していたのだが……逆に我が意思を断たれる事になろうとはな」

「………」

 

 ボロボロの状態でも尚、その口を止める気配は無い。

そんな敵だったが、とある一言によってボクの心臓はビクリと飛び跳ねる感覚がした。

 

「貴殿、覚悟をする傍らで自らの迷いを押し込めたな」

「っ───!?」

 

 見透かされている!?

相手の言う通りボクは敵の言い分に一理あると思ってしまった。"相手は正しい事を こちらは間違った事をしているのではないか?"そんな思いを引き摺る形でボクは戦っていたのだ。

そんな事実を告げられてしまったボクは相手に対し警戒を強める。

 

「もう是非は決したと告げた筈だ……が、無理もないだろう。敵の言葉を鵜呑みにする事は無いだろうが言っておく……間違ってない。貴殿は己が"正義"を用いて我が"正義"を貫いた。その結果、子供を守るに至ったのだ」

「何を言って……!」

 

「実の所、己の中に確かな迷いは有った…子供等を導く事が本当に我等が本当に望む世界に繋がるのか?と」

 

相手は憂い気な様子で言葉を続ける。

 

「個性に於いて秀でる者が上に立てる世界…しかし、それはあくまで我々が望む世界。施設の子等は本当にその世界を望むのか?…そのような疑問から目を背け刃を振るっていた」

「………」

 

 ボクは何も言わなかった…いや、何も言えなかった。批判も賛称も全てを出し切ったこの人にとってはどうでも良いのだろう。

大いなる力には大いなる責任が伴う。己が力をこのような形で終わる事も想像出来ていた筈だ。

 

「───我が好敵手よ。よくぞ己が意志()を貫き通した」

 

 この人の言う事は難しくて理解が追いつかない。

…けどこれだけは解る。もしも、この人が敵と言う道に堕ちなければ───

 

「……最後に一言良いですか?」

「ああ、聞こう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴殿貴殿と言ってますけど、ボク女ですよ」

「えっ、マジ?……グフッ(気絶)」

《気絶しました》

「締まらないなぁ…」

 

 痛む腕にドッと押し寄せる疲労感。それによってボクはその場で大の字で倒れ込む。

……あーー、疲れたーーーッ!そして、傷が痛む!肩と脇腹が痛い!と言うか、刺さっているんだからそりゃ痛いよ!

 

《チズ》

「MJ、ほっといて。ボク疲れたから……」

《チズ》

「おっと、今のボクは満身創痍。何を言われても動かないからね!なんならテコを使ってでもボクはこの場から動かないからねーーー!」

《いえ…そうでは無く》

 

 

 

 

 

「ほう?(ドスの効いた声)」

《先程からシルバー・マルテースが居る事を知らせているのですが…》

「んんんん゛んんんッ!?」

 

 なんで!?なんでシルバー・マルテースが此処に!?え、いや戦っていたヴィランは!?

 

「生捕りにしている」

 

 催促するように顎で指した方向。そこにはグルグルに縛られた状態でサイドキック達に運ばれていた。

えっ、大丈夫なんですかあれ?なんか顔面が両手両足のハサミがバキバキに折れてるんですけど。顔面に至っては陥没してる(ように見える)し…。

 

「安心しろ。ヤツに関しては背後関係について色々と吐いてもらう必要があるからな、ちゃんと生かしている」

 

 あ、良かった。危うくこの人が警察のお世話になるかと……。

 

「で?テコを使ってでも動かないと?」(テーザー銃構え)

「動きます(即答)」

 

 あはは身体中痛むと思ったけど気の所為だったね!うん、普通に動けるよこれハハハハ!(ヤケクソ)

 

「…しかし、よく頑張ったな赤糸虫」

「シルバー…」

「だが、まだ我々のやるべき事は残っている。来正は私とサイドキック達で救援に向かう。お前は……」

 

「あ、あの。ちょっと良いですか?」

 

 ボク達か話している所に、1人の女性の声が聞こえる。

この声は……已嶺さん!? 子供達と一緒に逃した筈なのにどうしてこんな所に?

 

「赤糸虫ちゃん!? どうしたの、その怪我!」

「ボクの事は大丈夫です。どうして貴女が此処に?早く安全な所に行かないと……」

「そうしたいのは山々なんだけど姫了子ちゃんが……」

 

 姫了子? 姫了子ちゃんって確か来正君と会話していた語彙がアレな娘の事だよね。どうしてその子の名前が……?

 

「逃して貰った後、姫了子ちゃんだけ姿が見えなくて!」

「あの子が!? まさか何処かではぐれ───

 

 

 その刹那、遠方にある建造物が鈍い音を響かせながら倒壊した。

それと同時に気付く。倒壊した建物の近くに指定避難地域があった事に。

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 

「ぐ、ああ…ッ!」

「こんなもんかよ?思ったより脆弱だなぁ。ええ、おい」

 

『fuck…ッ!』

「こ、の…ッ!(くそ、(あばら)がやられた…!)」

 

 来正恭成とシンビオートは現状劣勢に追い込まれていた。

炎と巨大。ジワジワと追い込まれ今も尚ブラキオサウルスの全体重を乗せた前脚に踏み潰されまいとシンビオートの馬鹿力で支えているのが関の山。

傷への治療に専念したいが、気を抜けば一気に潰されてしまうだろう。

 

『…っ、は! 随分とラクなベンチプレスだなッ!』

「悪態付く余裕が…、随分とあるもんだねシンビオート……ッ」

 

「そうか、それならもう少し重くしてやろう」

 

 直後更なる重圧が彼等に襲い掛かる。支えとなっているシンビオートでさえも顔を歪める。本来ならば無理矢理でも押し退ける事が出来るが、継ぎ接ぎの男が扱う高温の青炎により弱体化している今では成す術が無い。

彼等に出来る事と言えば長い時間を掛けて押し潰されるの待つか、その間に来るかどうかも定かではない助けを待つの2つだ。

 

「う、おおおおおおおおおお!」

『クソ、クソクソクソクソクソッ!』

 

「ははははッもっとやる気出してくれよ、悲しくなるじゃねぇか。アイツに勝ったお前ならもっと上手くやれるだろうホラ!」

 

 必死な声を響かせる一人と一体。絶命と言う名の最期が迫り来る中、予想だにしない声が横から割り込むように飛んで来た。

 

「もう、やめてよッ!」

 

「…ん?」

「なんだお前…」

 

「君……明須賀ちゃん!?」

『メスガキィ…!何しに来たッ!』

 

 この場に不穏当な存在。血が流れる此処では不釣り合いな年齢凡そ10歳に届くかどうかも怪しい少女が立っていた。

彼女の名は明須賀 姫了子。

 

『何しに来た死にたいのかッ!』

「早く…早く逃げるんだ…ッ!」」

 

「迷子のおチビちゃん。ここに何しに来た?此処は遊び場じゃないぞ?」

 

 そんな彼女の前に立つのは古代を生きた巨竜。巨体とその眇々たる少女の体格を比べる事で体格の大きさは勿論の事、個性による規模の凄まじさも伝わって来る。

 

「おいリーダー、相手は子供だ。そう虐めてやるなよ…オイ」

 

 継ぎ接ぎの男はその場から一歩踏み出すと片手を前に突き出す。

 

「一度は見逃してやる。それでも逃げねぇって言うなら…殺すぞ

 

 ボボボと漏れ出す焔に焼ける肉の臭い。そして確かな殺意が乗った言葉。この男の前に立つ者、それが女子供であろうと己が炎で消炭にする事に躊躇いはしない。

 

……しかし少女は屈しない。

怯えの感情をぐっと押し込め、口端をワザとらしく吊り上げる。

 

「あれれ〜? もしかして怒ってる?…プッ 子供相手に顔を真っ赤にして情けな〜〜〜い あはははははははは!」

(神経が図太すぎる!?)

 

 驚愕する来正。本来ならば子供が取る選択肢として逃げる。もしくは勇気を振り絞り立ち向かうのが定石だろう(偏見) だが彼女は一味違った。

意外ッ、それは挑発ッ!

 

そんな敵を前に惜しげもなく靦然(てんぜん)たる態度を見せる少女に一種の尊敬の念すら覚えてしまう来正だったが、とある事に気付く。

 

「…は?

「…あ?

 

(キ、キレた…ッ!?)

 

 怒髪天を付く勢いで青筋を立てるヴィラン2人。

この程度の挑発で激怒するのは奇妙じゃないか?……そう思う来正はとある憶測を頭の中で組み立て結論に行き着く。

 

(まさか意識の誘引と逆上を強制的に行わせる個性ッ!?)

 

 一種の洗脳、または言霊に近いソレ(個性)は相手の脳に作用し標的を固定させるものだ。しかしソレを使っているのは弱齢にも程がある子供だ。

 

「───殺してやる」

 

ズズ…

 

 明確な死への誘い。巨躯を持つ腕竜が少女に意識を注いだ瞬間、来正とシンビオートに掛かっていた負荷が和らいだ。

 

「(重圧が…!?) シンビオート、合図したら槍を形成しろ…ッ!」

『馬鹿かッ!下手すれば人肉ピューレが穴と言う穴から噴き出るぞ!』

「どのみちこのままじゃミンチだ!それに…!」

 

 度を越した恐怖を前にしているにも関わらず彼女が此処に来た理由。

きっと恐らく自分を助けにくれた。たった1人敵達が暴動を引き起こしている最中でだ。

そんな小さな勇気を振り絞った子を前に……ッ!

 

「格好悪い所を見せられないだろう…がぁぁあああああッ!」

 

 直後、黒い流動体が収束。次第にソレは船舶に備え付けられた(いかり)のように象られた槍が来正の手に収められる。

 

「ゼットランス…アロォォォオオオオオオオッ!」

 

 ざくり、と音を立て形成した弓と槍を合わせたような武器がブラキオサウルスの脚部に突き刺す。脚に痛みが走った所為か腕竜の眉間部分に皺が寄る。

 

「ッ! 悪足掻きを…潰れてろッッ!」

 

Squash(ぐじゃり)

 

「────っっ!!」

 

 竜の逆鱗に触れ肋骨の砕ける音が響く。このまま怒りを買った者の末路は無慈悲にも踏み潰され道路の赤いシミとなる事だろう。

しかしそんな理不尽を逆境を彼等は乗り越える。ヒーローであるが故に力を振り絞る。

 

「シンビオートッ!引き絞れぇぇぇえええええッ!」

『肋折られたからなッ!今度はそっちが骨を折る番だ』

 

 直後、コルクスクリューの如くギャリギャリと音を鳴らしながら螺旋状に回転し始める錨形状の槍。一見するおドリルの勢いで動くソレは脚の肉を削る為に廻っているように思えるだろう。

 

「馬鹿がッ!小僧が潰れる方が先───ッ!?」

 

 突如、ブラキオサウルスの動きが制止する。そんな異変に気付いた継ぎ接ぎの男は「どうした」と声を掛けようとした次の瞬間。

 

「ぐ、おおおおおおおおおお!?」

「なッ!」

 

 巨竜が崩れた。その巨体を持つ竜がガクリと地へと倒れたのである。

その傍で脇腹を抑えながら蹌踉し、立ち上がる来正。

 

「げぇっ…がっ、ぁ…っ、はぁ゛…ぁ゛……はぁ…はぁ……」

『骨は繋げてやったぞ。ちゃんと病院で診てもらえよな』

「わが……ッて る…ッ!」

 

 数トンもある質量をその身に受けた彼はシンビオートの回復能力によって折れた骨を繋ぎ合わせ応急処置を行う。

 

 予想外な事態に冷や汗を搔く事となった青炎使い。もう少しで図体のデカい首長竜の下敷きになる所だった。

だが何故急に崩れた?あの小僧(来正恭成)が何かしたのか……?

 

「…そうか、骨に直接干渉して締め砕き(へし折り)やがったか…!」

 

 男の視線の先にあるブラキオサウルスの脚部。黒い槍で突き刺された箇所は不自然に腫れ上がっていた。

彼の想像通り来正は槍状に変形させたシンビオートを突き刺した後下腿の骨格(脛骨と腓骨)に植物の根の如く絡ませる。そのまま縛り上げ強く締め、骨を砕く事により体勢を崩す事に成功したのだ。

 

……だが、彼等はそれだけには留まらない。

 

「う…おおおおおおおおおッ!」

「次は何を……ッ!?」

 

 地に伏したブラキオサウルス。その巨体をシンビオートを纏った来正が持ち上げ始めたのだ。痛む肋を紛らわすように声を荒げながら、継ぎ接ぎの男に視線を向ける。

 

「おおおおおオおおおおおおおおッらァァ!!」

「ぶん投げやがっ───!?」

 

 直後、ズゥン!と言う轟音と軽い地鳴りが起こる。

数トンに及ぶ恐竜を投げ飛ばしたシンビオートと来正はそれを見届けると、疲れからなのかその場で膝を付く。

 

『オイ、大丈夫か?』

「はぁ…はぁ……無理して格好付けるもんじゃないねこれ」

 

 身体中が痛む。流石にコスチューム無しで強力な個性を持った敵達と戦うのは骨が折れる…いや、物理的に骨は折れたが。

 

「お、お兄さん大丈…「何で来たんだッ!」っ!」

「何で来たんだ…っ、こんな危ない所で…君1人で……ッ!」

 

 気怠い身体を無理矢理動かし明須賀に寄り添う来正恭成。もし一歩でも間違えていたら死んでいた。

少女の個性によって窮地を脱したので、こんな事を言える立場じゃない事は理解しているつもりだ。しかし自身はヒーロー(助ける側)で君は市民(助けられる側)だ。

 

「君が死んだら皆が悲しむ。その事を分かって…」

「…そんな事ない」

「え?」

 

 彼は気付く。ポロポロと少女の頬に水滴が伝って落ちていくのを。彼女の双眼から涙が溢れていくのを。

 

「お兄さん。知っているんだよ…私、要らない子だったんでしょ?鬱陶しくて…皆を怒らせてばかりだから施設に居たんでしょ?」

「…っ」

「お兄さんは強いし、皆を助けてくれようとした……でも私は、死んじゃっても大丈夫だったから……だから」

 

 来正恭成の心にチクリと痛むものがあった。およそ10才前後の少女が己の境遇を理解してしまっている。己の個性による呪縛が彼女の心を歪め生への執着を絶ってしまっている。

 

こんな残酷な話があって良いのだろうか?来正は彼女を救ったが、彼女の心そのものを救えてない事を悔やむ。

 

パァン!

 

「えっ」

 

 そんな最中乾いた音に声が漏れる。

彼の視線の先にはシンビオートが少女の頬を叩いている光景が広がっていたのだ。

 

「あの…シンビオート?」

『ふざけるなよ。死んで良いだと?言った筈だオレはお前をわからせてやるってな…青臭いメスガキがッ!悟ったような口ぶりをするんじゃあないッ!』

「シンビオート……」

『そしてッ!死ぬならオレにわからされてから死ねッ!!』

「シンビオートォ!」

 

 途中までは確かに良い事を口にしていたシンビオート。しかし流石の黒塗り畜生寄生生物。爆豪的な発言で全てを消し炭にする勢いで台無しにした。

 

「え、えと……」

「あーうん。違うんだ、違うんだって。決して悪気があって言ったわけじゃ────ッ!」

 

 突如としてその場から少女を抱え飛び退く寄生。その瞬間、先程まで居た場所に青き炎が走った。

転がりながら火が出現した場所に視線を送ると、そこにはコチラに手を突き出した継ぎ接ぎ男が立っていた。

 

『チッ、やっぱり潰れてなかったか』

「こりゃ不味い。とにかく今は逃げる事を優先して……」

 

「ま、待って!お兄さんコレ!」

 

 逃走を視野に入れその場からどうにか離脱を図る為の策を練ろうとした時、姫了子は抱えた"ある物"を来正に手渡した。

 

「えっ……これは!? まさか明須賀ちゃん。()()()()()()()()僕達の元に…ッ!?」

『……ほう』

 

 思わぬ所で逆転の一手となるピースが手元に収まる。

その瞬間、来正恭成の頭の中に勝利へ繋がる図式が組み上がって行った。

 

『どうやら切り札はオレ達の所に来るようだな』

「そうみたいだ……明須賀ちゃん。初めに言っておくけど僕等は君を死なせはしない」

 

 少女の頭に手を置き、痛む己の身体を鼓舞させながら彼は敵を見据える。

 

「見捨てないし軽蔑もしない。絶対に皆の所に送り届ける…ヒーローとして、VENOMとして…ッ!」

「…お兄さん────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────もしかして格好付けてるの? 恥ずかしいと思わないの〜〜〜ッ♡」

『無理に格好付けようと臭く見えるぞ?』

 

此処にはマトモな奴が居ないのかッ!(迫真)」

 

 いつもの調子に戻った寄生生物とメスガキ。こんなマーマイトめいたキャラの濃さが蔓延しているんだから、せめてヒーローらしい事ぐらいはさせて欲しい。いや本当マジで。

 

「おい、仲良しこよしのお遊戯は終わったか?萎えるんだよそう言うの見てると」

「仲良しこよしの要素どこ…ここ…?」

 

 お前は目が見えぬのか?と言いたげな表情を浮かべる来正だったが、すぐさま気を取り直し両手に神経を集中させる。

 

「ええい、とにかく喰らえ!半径25mッ!シンビオート・スプラッシュゥゥウウウウ!」

 

 両手から散弾のように放たれた黒い弾丸の群。

一斉に放たれた黒い雨霰に対して男は腕を軽く振り払うと同時に炎の壁を展開。器用に自分に命中する弾丸のみを燃やしたのである。

 

「はっ、残念。攻撃は見事に外したな」

『あぁん?は・ず・し・た?外しただとォ〜〜〜ッ? 今お前外したって言ったのか?』

「そう言ってんだよ。耳でも腐ってんのか?その証拠に弾丸は俺に一切当たってな───」

 

DRIP(ぽた)DRIP(ぽた)……

 

 後方より何かが滴る音が男の耳に入る。それの正体に気付いた瞬間、先程の攻撃の真意とシンビオートの言っている事をようやく理解した。

 

「そうだ。最初からアンタは狙っていない。僕達の狙いは……ッ!」

 

SPLAAAAAAAAAASH!!!!

 

「消火栓だとォーーーッ!?」

 

 男の後方に存在する消火栓にシンビオートの一部から作り出した弾丸が命中、破損する事によって勢い良く水が飛び出した。そこを中心とした一帯に恵みの雨となり降り注ぎ始めたのである。

 

「そしてッ!この場は貴方の炎によって十分に熱せられたッ!」

『唐突だがそこで問題だ。そんな熱い所で大量の水をブッかけたら何が起きると思う?』

 

 そんなシンビオートの問いを解答するかのように大量の水蒸気が出現する。真っ白な空間に包まれ視界が制限された濃霧の如き舞台へと変貌を遂げた。

 

「──っ、これを狙っていやがったか」

 

 一面が真っ白なキャンバスに塗りつぶされたように何も見えない。だが男の扱う個性は炎。加えて相手は熱に対し極端に弱い。

 

カツン……

 

「そこだ」

 

 音が響く方向へ炎を撃ちだす。例え視界を制限した所でそれ以外の感覚を頼り攻撃すれば問題無い。

青い炎は背後から寄って来た人影を捉え、燐火の中に閉じ込めた。

 

「は、なんだよ意外と呆気ないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なんだよ意外と熱くないな』

「は?」

 

 直後、己の頬に衝撃が走る。炎をその身に受け燃された筈のヒーロー志望はその握り拳で作り継ぎ接ぎの男の顔面を捉えたのだ。

 

「が───!?」

『テメーはオレ達を怒らせた。それがお前の敗因だ』

「っ、舐めるなぁ!」

 

 顔面の痛みに耐えながら男は再び炎を放出しようと前方に手のひらを向ける。が、焔を放つ直前に手首を掴まれ照準を前方から真上へと無理矢理変えられる事となる。

 

「そしてもう1人、お前が怒らせた奴が居る」

 

 その炎の勢いによるモノなのか、水蒸気がブワリと蹴散らされる。

男の前に先程までの有機的なフォルムから一変。無機質なスーツの上から装甲を身体中に装着させた"コスチューム姿"のVENOMがその言葉と共に姿を露わにする。

 

「明須賀姫了子と言う少女だ」

 

 至近距離より黒の剛拳が放たれる。それをマトモに喰らい大きく仰け反りながら炎を扱う男は吹き飛ばされた。

明須賀姫了子の届け物である来正恭成のコスチュームの入ったケース。避難の最中に見つけたであろうそれをここまで持ってきた彼女に感謝しつつ、VENOMは敵を見下ろす形で呟き始める。

 

「立て」

『その瞬間に拳を叩き込む。テメーのハロウィン仕様特殊メイクを更に酷くしてやるよ』

 

「…ハァ、やめだやめだ。降参するよ」

「えっ」

『はぁ?』

 

 突然の白旗。降伏の意を示すかのように両手をその場で上げる男の姿を見て来正とシンビオートは唖然とする……しかし

 

「駄目お兄さん!それは───ッ!」

「その餓鬼の言う通りだ」

 

 瞬間、至近距離からの業火がシンビオート達に襲いかかる。少女の言葉も虚しく彼等は青い炎に包まれてしまう事となる。

 

「馬鹿だなァ、ヒーローが敵の言葉を間に受けちゃ駄目だr「無駄ァ!!」───は?」

 

 その掛け声と共に視界がぐらりと揺れる。恐らく顎を蹴られたのだろう脳を揺らされた影響により足取りが覚束ない中、眼前に注意を向ける。そこには煤によって汚れているものの無傷で立っているVENOMが健在していた。

 

「貴方を詐欺罪と放火罪及び脅迫罪で訴えます。理由は勿論お分かりですね」

 

 一歩前に踏み出し、己の手に一尺四寸(42cm)程の剣を形成。言葉を口に出しながら彼は構える。

 

「貴方がこんな暴動を起こした上、まだ幼いこの娘を『手に掛けようとしたから』です! 覚悟の準備をしておいてくださいッ!」

『デスシウムクロォォォオッ!』

 

 荒れ狂う剣山が地より伸び襲う。

 

「近い内に訴えます、裁判も起こします。裁判所に問答無用で来て貰います!慰謝料の準備もしておいて下さいッ!」

『デスシウムファァァァングッ!!』

 

 獰猛な狗骨が黒顎を開け身体に喰らいつく。

 

「貴方は犯罪者です!刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいてください!いいですねッ!」

『デスシウムスラァァァッシュッ!!!』

 

 大きく鋭く伸びた刀身が男の身体を捉えると左薙ぎ、袈裟斬り、最後に横一閃と相手の身体に黒き斬撃を刻み込んだ。

 

「ぐ、お…ッ!」

 

 怒涛の連撃に堪らず継ぎ接ぎの男は血を垂らしながらその場に膝を付く事となる。

 

『安心しろ子供でも安心して読めるように全年齢向けに峰打ちで済ましておいた』

「峰打ちと言うか、うん。傷付けた瞬間にシンビオートが傷を無理矢理塞いだのが正しいけど…まぁいいか」

 

 変な事を口走るシンビオートを他所に来正は剣の切先を敵に向け、言葉を投げ掛ける。

 

「悪いけど、このコスチュームは特別性で炎対策はバッチリだ。いや、まぁ炎に包まれた時は焦ってワザップジョルノになったけど…とにかく、大人しくしてもらう」

「…オイオイ、玩具(スーツ)纏ったくらいで勝ったつもりか?」

『もう勝負付いてるから。それともなんだ…トドメを刺して欲しいなら今すぐにでもそれに応えてやるぞ?』

 

 そんなシンビオートの言葉にニヤリと不気味な笑みを浮かべる敵。

何か不自然だ、何か企んでいるのか?と疑問に思っていると"ぶおん"と風を切る音が耳に入って来た。

 

「シンビオートッ!」

『っ!?』

 

 異変に気付いた来正は咄嗟に姫了子の前へ移動。巨盾を形成すると同時に地面に杭を打ち込む。その直後、大木と見間違う程の筋肉の塊がズドンと音を立て襲い掛かって来た。

 

その正体はブラキオサウルスの尻尾。倒れていた筈のリーダー格敵が攻撃をして来たのである。

 

「はぁ…はぁ…クソッ!あんなチビ共に俺様が追い詰められるなんて……ッ!」

 

「大丈夫かい明須賀ちゃん?」

「だ、大丈夫…」

『ハッ、見ろよキョウセイ。あのデカい木偶の坊はもう息絶え絶えだ』

 

 目の前にいる巨竜は誰から見てもグロッキー状態。ハッキリ言ってしまえば此処で来正達に攻撃しなければ簡単に逃げる事ができただろう。だが、そんな事は己のプライドが許さないとリーダー格の敵は炎の男に向かって叫ぶ。

 

「オォイ!早く、その小僧共を殺せッ!今すぐにだッ!」

「無茶言うなよ。つーかアンタそればっかりだよなぁ…潰す潰す言っておきながら返り討ち。結局何がしたいんだか……」

 

「な、仲間割れをしているのか…?」

「うーわ、ダッサ。大人の癖して喧嘩するとかダッサー」

『グギャギャギャギャギャギャ!いいぞー、もっと争えー』

「んんんんん、こっちはこっちでぇぇぇぇ…ッ!」

 

 前方の仲間割れと隣の少女と己が個性による野次に挟まれる来正は頭を悩ます羽目となる。その最中、ブラキオサウルスの敵が継ぎ接ぎの男の疑問に逆上し言葉を吐いた。

 

「黙れッ!俺は目障りなチビ共をブッ殺せればそれで良いッ!苛つくんだよッ!俺よりもちっせぇ図体しやがってチョロチョロと目の前歩き回ってよォ!ムカつくッ!ムカついて仕方がねぇッ!だからぶっ潰してやるんだよッッッ!」

 

「……へぇ、成る程」

 

 腕竜の言葉に男は酷く、嘲笑うかのように、冷徹に言葉を呟いた。

 

「分かったならさっさとあの小僧共を殺して俺の前へ並べろォッ!馬鹿にしやがってこれが終わったらテメェも潰してや……」

 

プスッ

 

「………あ?」

「アンタさぁ図体はデカイ癖して器は小っせぇよな。リーダーならもう少し根性見せてくれよ」

「ぐ、ぎ ぃ あ、ああ?」

 

 直後、ボコボコと身体中の筋肉が肥大と収縮を繰り返す。まるで粘土を捏ねるかのように変形していく様子に「ひっ」と姫了子は声を上げ来正の後ろに隠れる。

 

「なに…なにが起きてるの…あれ……?」

『どう言う事だキョウセイ!まるで意味が分からんぞッ!』

「そんな事、僕に言われても……いや、待てよ?」

 

 継ぎ接ぎの男が手にする筒状の容器を見た来正はハッとすると同時に先日のヒーロー基礎学で習った事を想起した。

 

人々の身体には個性に起因する細胞である個性因子。それに刺激を与える事で個性そのものに影響を与え、戦闘能力の強化を図る事が可能な国内での流通が禁止されている薬品!

 

「基準値を大きく超えた容量を摂取する事で個性を極端化(ブースト)させ理性を弱める薬…名を個性因子誘発物質(イディオ・トリガー)ッ!」

 

「グ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!」

 

 竜が吼え、地が割れ、圧倒的な巨体が更なる力を得る。8mもの恐竜が更に大きく……否、本来の大きさへと戻って行く。古代に生きた竜と同じ力を持つモノは原始へ回帰する。

 

「少しは期待していたんだぜ?俺みたいのを上手く扱ってくれるような奴等をさ……けど、蓋を開けてみりゃどうだ。餓鬼相手にしかイキがる事しか出来ない奴とはなぁ…」

 

 継ぎ接ぎの男は目の前にいる頸長の竜に哀れな者を見るような視線を送った後、来正達にはニヤリと口端を釣り上げた表情を送る。

 

「その点、お前達はスゲェよ。流石はアイツの最高傑作を真っ向から打ち負かしただけの事はあるッ!」

「そんな事はどうでもいい。この似非フランケン!被害を拡大させてよくも…!」

『オレ達の前で好き勝手とは良い度胸しているなぁ!ミキサーでグシャグシャになる覚悟は出来てるかッ!?似非フランケン!』

 

 そんなヒーローの反応にやれやれとした仕草を見せる。

 

「オイオイそんな呼び名はよしてくれ。俺にはちゃんと『荼毘(だび)』って言う名前があるんだからさぁ…ま、偽名だがな」

「結局 偽名かよ!?」

『気取った自己紹介してるんじゃあ無いぞッ!ダービー君ッ!』

「ダービーじゃねぇ、荼毘だ」

 

 

「俺様を無視しているなァ!この矮小な雑魚共ォォォオオオオオオオッ!」

「「っ!」」

 

 瞬間、来正達はその場から飛び退くと巨大化したブラキオサウルスの脚が地を揺らし踏み抜いた。折った筈の骨は増幅して筋肉によって補強されてしまい姿勢を崩す事はなかった。

 

「おいおい、俺も巻き添え喰らうとこだったぞ」

「黙れッ!テメェも纏めてぶっ潰してやるッッ!ガキも!俺に着いて来た間抜けな雑魚共も全てッ!俺が潰してやるぅぅぅぅぅううううううううううううううッ!」

 

『fuck!!! ヤクの所為でヤツの頭がパッパラパーになってやがるッ!』

「せっかく倒したと思ったのに…誰かーッ!Mt.レディ呼んでーーッ!え?今、ニッチなファンの為に踏み付け会やってるから無理?世も末だなオイ!」

「お兄さん!前、前見て!」

「え…?うぉぉぉおおおッ!」

 

 咄嗟に飛んで来た大型バスを回避する来正。恐らくゴルフの要領で尻尾を利用し打ち飛ばしたのだろう。

飛んで来た鉄の塊が大きく弧を描きながら遠ざかって行くソレはズドン!と音を立てながら高層のビルに直撃してしまう。

 

「おい、オイオイオイオイ!あそこって確か指定避難区域の側じゃ──『よそ見しているなッ!』っ、やば!?」

 

 眼前に迫るのは口をグパリと開けた恐竜の頭部。抱えていた姫了子に「ごめん!」と言いながら放り投げた直後、来正は頸長竜の顎の餌食となってしまった。

 

「……ッ、お、おおおおおおおおおおおおおッ!」

 

 だが来正は尚も健在。己の身体に力を込めシンビオートを支柱のように変形させる事により噛み砕かれないよう奮闘している。

 

だが先程までと比べパワーが桁違いとなっており、ミシミシと音を立てながら万力で締められるように上下から掛かる力が押し潰そうとして来る。

 

『クソッ! これでもし食われたらウ○コになってでもぶっ殺してやるッ!』

「ねぇ!もしかしてそれクソッ!とウン○のシャレだったりしない?……あ、ウソウソ!嘘だからッ!ぐ〜〜〜ッ、こんなのが最期なんて嫌だーーーッ!死ぬならせめてケモケモした人達に囲まれての腹上死が良かったァーーーーッ!」

『ホントお前ブレないな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《チズ、急ぎ過ぎです》

「そんな事言ってる場合じゃないよMJ!状況報告お願いッ!」

《現在 飛来した大型バスが直撃した事によって高層ビル以外に隣接したマンション、工事に使われていた起重機(クレーン)が倒壊。このままでは避難区域に被害が及びます》

 

 一方、シルバー達と共に居た赤糸虫は持ち前の機動力を活かし避難区域へと向かって居た。目の前には損傷こそしているものの、建造物自体は完全には倒れていない。

何とかして建造物を補強しなければあそこに居る人達が……!

 

そんな焦燥感を胸に急いでウェブでスイングしながら移動するが、彼女の思いは虚しく打ち砕かれるように建造物の倒壊が始まってしまった。

 

「うわあああああ!落ちてくるぞぉぉぉおおおッ!」

「早く逃げて!早くぅぅうううう!」

「僕の事はいいから先に!ほら!」

「嫌だぁ!潰されたくないいいいいいい!」

 

 下から悲鳴の交響曲が流れて来る中、赤糸虫ことV・スパイダーは倒れていく建物へとターゲットを定める。

 

「MJ!一緒に倒れて来るクレーンをビルの支えにする事って出来る!?」

《情報処理開始……倒れるクレーンと崩壊寸前の建造物をウェブで固定。打ち込むポイントを指定します》

 

 AIによるサポートを受けながらウェブの射出量を増加。倒れ行くクレーンのブーム(クレーン棒状部分)と倒壊途中の建物が接触した瞬間に蜘蛛糸を放つ事で接着及び干渉。倒壊する建物が互いに支え合う構造となり、その場凌ぎでの補強に成功した。

 

「やった、やったよMJ! シルバー、こちら赤糸虫…じゃなくてV・スパイダー!避難区域に発生した建物の倒壊は食い止め───」

 

 

BOOOM!!!

 

 

「───え?」

 

 唐突に響いて来た轟音に彼女は呆気に取られた。倒壊を食い止めた建造物、その一部分から爆発が起きたのである。

倒壊の際に配電盤がなんらかのショートを起こし火が発生したのか、それとも引火性の危険物が建物内にあったのか原因は定かでは無いが……一難去ってまた一難。不幸のダブルパンチを食らった赤糸虫は「だめ…だめだめだめだめ!」と呟きながら崩れ掛けの建造物に向かう。

 

バキバキと前後に分断され掛けている建物。その真っ二つに裂け生まれた隙間を駆け抜け、縫合するようにシューターから糸を大量に飛ばし行く。

……しかし、それでも建物の重量が凄まじい所為なのか。倒壊は未だ止まる気配を見せる事は無い。

 

「…やるしか無い…!」

 

 すると何を思ったのか赤糸虫は裂けた建物の間に出来た狭間に飛び込むと左右両方にウェブを大量かつ広範囲に射出する。

それ等の蜘蛛糸を束ね掴むと己が全身の力を総動員して割れた建物を元に戻そうと引き寄せ始めたのである。

 

「……ッ、うぁぁああああああああああああああああああああああああッ!!!!

 

 赤糸虫の絶叫が響く。彼女の持てる力の全てを使い拮抗こそしていたものの一部の糸が重量を支えられずにブチブチと音を立て切れ始める。

 

RIP(ビリ)RIP(ビリ)…!

 

「〜〜〜〜〜〜ッ!」

WARNING(危険です)...WARNING(危険です)...スーツ繊維の一部が許容範囲外の過伸展により裂開。これ以上は身体が左右に引き千切れる可能性があります》

「でも…ッ!下に居る(避難所)の皆が……ッ!」

 

 コスチュームが裂ける音を鳴らしながら力をグッと込める赤糸虫。

そんな時だ、こちらに向かって飛来する何かが目に入る。

 

「お、丁度いいくらいのヒーローがいるじゃねぇか。こんなガキのヒーローなら俺でも殺れるぜ」

「誰だっ!?」

 

 目の前に現れたのは蚊のような姿をした敵。嫌悪感を覚えさせる羽音を鳴らしながら口元の針を左右の建物が崩れないように踏ん張るヒーローに向ける。

 

「お前は黙ってろ。俺は安全に有名になりたいんだよ。有名になりゃあ上から渡される金も多くなるからな。チームは殆ど全滅状態だが、とりあえず俺はそこそこのヒーロー1人を倒して逃げさせて貰うぜ」

 

 そんな事をツラツラと口にしながら、より一層羽ばきの音を速さを強めながら赤糸虫に向かって突進を仕掛けた来る。

 

「まずッ!?」

 

 先程戦った敵よりも目で追えぬ程の速さ。避けられない…いや、仮にここで避けようと言うものならば避難区域に被害が及ぶ。自身が選べる選択肢は此処で"死ぬ"事 それだけだ。

 

(ごめん来正君。ボクはヒーローとして相応しかったのかな…?)

 

 最期に彼を想い目を瞑る。後は死を受け入れ避難区域の人達が出来るだけ多く助かる事を祈るだけ。せめて彼に感謝の言葉は伝えたかったと悔やむ彼女だったが、ふと疑問に思う。

 

……痛みが来ない?

恐る恐る目を開くと、そこには空中にて凄い体勢で関節技を掛ける謎のヒーローと痛みに悶える敵が居た。

 

G(ガンヘッド)M(マーシャル)A(アーツ) 外伝奥義マッスルスパーク‼︎」

「ぐあああーーーーッ!?」

「何事ッ!?」

 

 赤糸虫がそんな反応をするのも無理はない事だろう。急に出て来た見知らぬ敵が急に出てきたヒーローになんか凄い技を掛けられている光景を目の当たりにすれば誰だってそんな反応になる。

 

「今なら軽い筈だよ早く!」

「えっ?……あ、あれ?本当に軽くなった!?」

 

 助けてくれたヒーローの言う通り糸に掛かっていた重量が先程と比べて軽い。まるで羽毛のように質量がゼロに等しくなった事にチャンスと思ったの彼女は力一杯に糸を手繰り寄せパズルのように戻す事に成功。

挟まれる前に外壁へ飛び出ると亀裂に向かって糸を飛ばし補強していく。

 

《倒壊阻止完了。お疲れ様です》

「う、うん…でも何で急に軽く…「無事みたいで良かった!」…え?」

 

 疑問に思う赤糸虫。そんな彼女の元に新しく全体的に桃色のコスチュームを纏ったヒーローらしき人物が1人やって来る。

 

「もう大丈夫だよ、私達が来た!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ZAAAAAAAAAAAAAAAAAAAP!!!

 

『What's!?なんだ!何事だッ!』

「な、何かビーム的なものが……って、あれは!?」

 

 ブラキオサウルスに食われる一歩手前の来正達にも変化が訪れる。突如と響く爆裂音、彼等の眼前に広がる空を大型ドローンに乗り翔ける集団が姿を現した。

来正は彼等の事を知っている!即時現着ッ!速攻鎮圧ッ!高火力のヒーローで固められたその彼等名は……!

 

「【バスターユニオン】ッ!遠距離超威力の個性を持つヒーロー達が集ったチームだッ!」

 

「総員"個性"解放出力全開ッ!目標、前方の恐竜型大型敵ッ!第二射撃照準用意ッ!」

 

 大型のブラキオサウルス敵に狙いを定めるバスターユニオン。それを見て来正は目をキラキラと輝かせ、大いに(はしゃ)ぐ様子を見せる。

 

「っしゃ、オラーーーーーーーッ!ブチまかしたれぇーーーーーッ!」

『キョウセイ』

「ハーーハッハッハッ!やっぱり戦いは数だよ兄貴!」

『キョウセイ』

「勝ったな(確信) 風呂入って来r『キョウセイ』うるせぇ!さっきから僕の名前連呼してどうせくだらない事を口にするんだろ(あたしゃ)知ってんだよ!」

 

『いや────

 

 

 

 

 

 

 

 

─────このまま攻撃されるとオレ達確実に巻き添え喰らう事になるんだが。それで良いのか?』

「…………」

 

 

 

 

 

ZAAAAAAAAAAAAAAAAAAAP!!!

(一斉射撃の音)

 

 

「た、退避ィィイイイイイイイイイッ!!」

 

 刹那、来正は一斉に放たれるビーム群とブラキオサウルスの牙から逃れる為に空に向かって飛び出した。それと同時に着地に関して何も考えて無かった事に気付く。

 

「ああああああああああああああああああああああッ!やっぱり死ぬならケモケモした人達に囲まれての腹上死が───」

 

 そんなくだらない事を口走る恭成。そんな落下中の彼だったが突如として謎の浮遊感を覚えると同時に声が聞こえて来た。

 

「どうやら間に合ったみたいだね☆」

「ッ!? そ、その特徴的な口調と眩しいコスチュームは…ッ!?」

「ノンノン☆ ま・ば・ゆ・い」

 

 驚愕する来正と、そんな彼を助けた人物を乗せたドローンはゆっくりと避難区域近くに着陸を行う。疲労が残る身体を動かし、飛行する物体から降りると彼等の元に赤糸虫と見覚えのある人物が駆け付けて来た。

 

「来正君!無事だったんだね!」

「せ、赤糸虫さん!?…それとそっちは……ッ!」

 

 彼等の元に姿を現したヒーロー。追い詰められていた来正恭成にとってその者達は馴染み深く、そしてとても心強い仲間(クラスメイト)達だった。

 

「お待たせ! ガンヘッド事務所【ウラビティ】ただ今現着ッ!」

「チームバスターユニオン【Can't stop twinkling.】華麗に参上さ☆」

 

「う、麗日さんに…青山君ッ!」

『まさかお前達が来るとはな……汚れ役コンビ!』

 

「「汚れ役……!?」」

違うぅッ!シンビオートが勝手にぃッ!

 

 





すまない…今年最後だから気合入れてネタを詰め込んだ結果、二万字近くになってしまって本当にすまない……。
と言うわけで悔いを残さないようにユクゾッ キャラ紹介の時間だオラァ!

〜〜キャラクター紹介〜〜

『来正恭成』
やっとそれっぽい所を見せて来た主人公。恐竜&炎を相手に頑張った。今回、何故最初からコスチュームを纏ってなかったと言うと弱点を如何に克服するのか?スーツが無くても主人公らしさを魅せたいと言う作者の勝手な願望です。

『赤糸虫知朱』
みんな大好き赤糸虫くんちゃん。新技を引っ提げて敵を1人撃破。我ながら必殺技名は凝っているなと思った。スパイダーマンらしい場面を色々と描写出来て満足…。

【縛糸・幻霊黎明(げんれいあけぼの)
目に見えないレベルの極細の糸で相手を拘束する技。技名の元となったのはアケボノユウレイクモ。

【雷閃・八握拳(ヤツカノケン)
元ネタは十種神宝より八握剣…え、何故スパイディなのに八握剣だって?蜘蛛って"八"本足だよね。そこから無理矢理関連付けて八握剣ですハイ。

『明須賀姫了子』
何を考えたのか出してしまったメスガキ小学生。避難所近くまでに吹っ飛ばされていたコスチュームの入ったケースを来正恭成に届けるべく単独行動した少女。
作中で赤糸虫くんちゃん以上のヒロインムーブかましてた気がする……。

『継ぎ接ぎの男→荼毘』
継ぎ接ぎで青い炎を使ってる時点で多分皆知ってたであろう原作キャラクター。体育祭で轟君を打ち負かした来正君に興味深々なのか少しばかり突っかかっている様子。
ちなみにダービーではない荼毘だ。

『蚊のヴィラン』
かませ。サイコロステーキ先輩ネタをやりたかっただけ。

『麗日お茶子』
ヒーローネーム【ウラビティ】原作ヒロインの汚れ役1号。
この小説で久しぶりに出てきたクラスメイト。ガンヘッドと共に現場に駆け付けて赤糸虫を窮地から救う事となる。

『青山優雅』
とにかく長いヒーローネームを持つクラスメイト【Can't stop twinkling.】(※ヒーローネームです)
汚れ役2号。この小説オリジナル設定として高火力ヒーローで固められたバスターユニオンの元で職場体験を行なっている。

ちなみにバスターユニオンが来正が居るにも関わらず攻撃して来た理由としては青山君が「彼は僕の友達☆ アレくらいの窮地なら簡単に乗り越えてくれるよ」と言ったのが原因だったりする。
尚、その事を来正に言ったらシンビオートに殴られたのは言うまでも無い。


〜〜用語解説〜〜

『ゼットランスアロー』
ウルトラマンZより登場した槍型の武器。どう見てもオーブスラッガーランスのリデコと言ってはいけない。
登場回数は少なかったが個人的に好きな武器。

『デスシウムクロー』
『デスシウムファング』
『デスシウムスラッシュ』
元ネタはウルトラマンZの幻界魔剣ベリアロクより。ベリアル閣下の生首が付いた武器と言うトンデモ装備から放たれる必殺技。
ジードとグリーザから生まれたり、敵に寝返ったり、セブンガーに使われたりと色々とブッ飛んでる。

『個性因子誘発物質(イディオ・トリガー)』
ヒロアカの作中やヴィジランテでも登場して来た個性を強化する薬。リーダー格の敵である竜崎は大量の薬を打ち込まれる事でブラキオサウルス本来の大きさへと変化した。


読者の皆さん応援ありがとうございました。2021年からは少し忙しくなり投稿頻度が遅くなると思いますが行ける所まで執筆活動を頑張って行こうと思います。
それではまた新年にお会いしましょう。


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38話 ヒーローの面汚し共


 新年明けましておめでとうございま……えっ、もう遅い?
そんな事はどうでも良いんだ重要な事じゃない。単にバック・アロウにハマって投稿が遅れたしまったんだ。俺は悪くねぇ!




 

 やぁ皆、久しぶりの主人公だよ…ってそんな事よりも!

 

「麗日さんに青山君!?どうして此処に!」

「いやね。ガンヘッドと一緒にパトロールしてた所にデカいのが見えてね」

「僕の所も☆同じさ」

『久しぶりだな。元気してたかい? 職場先に粗相はしてないだろうな?』

「それはこっちの台詞だなー…来正君大丈夫?粗相してない?」

「あー、うん……多分」

「………そっか(憐みの視線)」

 

 やめろよォ!そんな優しい眼差しを向けるのはやめてくれよォ!

……いや、青山君も「大丈夫分かってるから」的な感じで頷くのもやめろォ!

 

「えっと……」

「あ、そうそう ほんまにお疲れ様だったね赤糸虫君!1人で建物を支えるなんて無茶苦茶やるね〜」

「い、いやそんな……」

 

 麗日さんの言葉が赤糸虫さんの心をくすぐったのか、満更でも無さそうな表情を浮かべている。

 

「いやぁやっぱり?デク君もそうだけど男の子ってやっぱり無茶するんだなーって思うよ」

「えっ」

「えっ?」

「あっ……麗日さん。ちょっとこっち…」

「ん、なに?」

 

 麗日さんに赤糸虫さんの性別について耳打ちをすると「えっ」とか「マジ?」等の言葉が漏れ出した。

うん分かるよ?僕もそうだったからね。それが終わると麗日さんは赤糸虫さんに駆け寄ると

 

「同じ女の子ヒーロー同士仲良くしようね赤糸虫ちゃん!」

「え、あ、うん?」

 

 先程とは転じて態度を一変させた。今明かされる衝撃の事実に対して物怖じもせず彼女との距離を一気に詰めて行く所、流石は超ポジティブハートの持ち主の麗日さんだと感心する。

 

「…ねぇ☆」

「ん?なに青山君」

「僕は最初から知ってたよ☆」

「あっ、うん凄いね」

『嘘だゾ絶対知らなかったゾ』

 

 はいシンビオートそこで口閉じてなさい。僕知ってるんだ、こう言うのは何も言わずにに肯定してあげるのが吉なんだって。

はー、それにしても第1から第12の肋骨が痛むわぁ…まだズキズキするんだけど。

 

「でも赤糸虫ちゃんって少し呼びにくいなー……じゃ、赤糸虫知朱の知朱(ちず)から取って…『ちーちゃん』で!」

「ち、ちーちゃん!?」

 

 そんなこんなでアッチは更なるコミュを築いているし。と言うかイキナリあだ名って仲を深めるの早過ぎると思うんだけど?

 

「よろしくね ちーちゃん!」

「そ、その………うん、うん!うん!」

 

 赤糸虫さんは嬉しさのあまり赤べこみたく首を激しく上下に振るい、麗日さんは陽のように眩しい笑みをニカッと浮かべる。ああ^〜、日照りのようなほのぼのとした空間が痛んだ身体に染み渡るんじゃ〜……。

 

「日照りを御所望かい☆」(身体中を光らせる)

「光らせなくていいから(良心)」

 

「え、えっと…その、うららかさ…ちゃん!」

「あはは、私の事は好きに呼んで良い…けぷっ

「「「けぷっ?」」」

 

 直後、異変が起こる。喋っている途中に謎の単語を発したかと思うと口元を両手で抑え始めたのだ。

 

ん、ぐぷ ぉげ 

「「「んぐぷぉげ?」」」

 

 え、いや…どうしたの麗日さん。何か顔色が悪いと言うかそんな出産直前のピッコロ大魔王的なアスモトフィアを醸し出して一体なにが……あっ(察し)

 

麗日さん!ちょっと待っ──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……その、ごめん」

「いや…うん。大丈夫だよ麗日さ…ちゃん」

 

 その場はどんよりとした空気に何処となく酸っぱい感じの匂いに包まれた。

取り敢えず麗日さんについては赤糸虫さんに任せ、僕と青山君の男2人でキラキラの処理をする事となった。

 

『あ、トウモロコシ』

「昼食の解説はマジでやめて(切実)」

「いやごめんね?さっき崩れかけのビルを丸ごと軽くしてたから負担がやb…あ、ごめん。ちょっとブリ返して来た」

 

 分かった。分かったからトイレに行って来なよ?これ以上地面が汚水によって穢されていく光景を目の当たりにするのは色々とツライからさ。

青山君だってそう思うだr……あれ、どうしたの?なんか顔面が真っ青なんだけど。内股になって一体どうしたの?大丈夫?ホットチョコレート飲む?

 

「…かい」

「えっ、なんだって?」

そろそろ…こっちも☆限界…ッ…

「お前もかブルータス!?」

 

 いや確かに大型のドローンに乗りながら個性による副作用と冷たい風に晒された影響が組み合わさってヤバい事になっているんだろうけどね?

と言うか、もしかしなくともこれって麗日さんの吐瀉物による誘発だよね?

完全に二次被害受けた影響だよねこれ!?

 

「青山君!?だ、大丈夫なのら゛け゛ばぼっ

「麗日ちゃん⁉︎」

「麗日さんはまず先に自分の心配をしようか!」

『まずは口元の汚いのを拭え。あとオレ達に寄るなよ?フリじゃないからな』

 

 口元からビチャビチャとモザイク処理されたものを垂れ流しながら青山君の元へ駆け寄る彼女に向かって僕はそう告げる。

ヒロインがして良い姿じゃないと思うんだけど(ドン引き)

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけた」

 

 

 

「「「「っ!?」」」」

 

 突如として声が聞こえた方向。そこに目をやると身体中に爛れた皮膚と生身の皮が継ぎ接ぎとなった不気味な男が立っていた…って、アイツこんな所にまでッ!?

 

『ダービーッ!』

「ダービーじゃねぇつってんだろ。荼毘だッ!」

 

「ねぇ来正君。あの人って…?」

「…(ヴィラン)だ。加えてとびきりヤバい奴」

 

 その言葉を聞いた赤糸虫さんはいつでもウェブを放てるように臨戦体勢に入る。まさかここまで追って来るとは思わなかった。けど何の為に?どうして?

 

「理解不能って顔してるな…言っただろ?お前に興味があるってさ」

「僕に興味が…ッ⁉︎」

 

 

 

 

 

「きょ、興味って!?」

《聴いてはいけませんチズ。腐ってしまいます》

『誰かーーーッ!男の人呼んでーーーーッ‼︎ 此処に炎熱系ファッキンホモヴィランが居ますッ!』

 

「そう言う意味じゃねぇ!」

 

 え………いや、その…すみません。金輪際、僕に関わるのはやめてくれます?僕そっち方面はNGなので。どちらかと言うと獣系方面にオープンスタイルなので。

 

「お前も間に受けるな!つーか獣系ってどう言う意味だおm…えっ?お前マジ?そう言う趣味なのか?」

「マジです」

 

 おう、僕の性癖について言いたげな顔をしているな。言いたい事があるなら言ってみろオラ(過激)

 

「……まぁ良い、取り敢えず続きだ。俺とお前の戦いはまだ決着はついてない。と、言う訳でだ───断る理由は無いよなぁ?」

 

 燐火が揺らめき、不敵な笑みは更に不気味なモノへと変わる。目の前の相手は人の死を厭わない人間。先程の巨大ブラキオサウルスでの戦闘で消耗した状態で1人闘うのは辛いだろう……だが、今は違う。

 

こちらには頼りになる仲間は3人居る。赤糸虫さん、麗日さん、青山君のヒーローの卵が3人居るのだ。負ける気がしない…!

 

「上等。こっちには頼りになる仲間が………」

 

 ふと側でグロッキー状態で佇む頼りになる仲間達(吐瀉物排泄物爆破テロ臨界点到達寸前)に目を向ける。

………あ、ダメだわ これどうしようも無いわ(確信)

 

「さぁ、戦いの続きを始めようじゃねぇかァ!来正恭成ィイーーー‼︎」

 

お前は後!!!!

 

「えっ」

「えっ」

『は?』

 

 取り敢えず僕は目の前の敵よりも仲間の事を優先した。主に衛生的な悪臭公害防止的なヒーローらしい使命を全うする為に青山君を担いで仮設トイレへと走る。

ヨシ!赤糸虫さんは麗日さんを頼んだ!早く胃の中にあるものを全て吐き出させれば体調は楽になる(筈だ)!

 

「えっ…いや」

 

「来正君!?…えと、麗日ちゃん運ぶよ?」

「うぷ…優しくお願い…します……」

 

「…おい」

 

『オイ、もし此処で脱糞してみろ。二度と排泄出来ないようにお前のアナに焼きごて突っ込むぞ』

「勘弁☆」

 

「……えぇ」

 

 後方から響く荼毘の呆れた声を流しながら僕と赤糸虫さんは爆発寸前の2人を抱えながらトイレへと駆け込むのだった。

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

「どうしてだアアアアアアアアアッ!この俺様がどうして小せぇヒーロー共に押されてるんだァァアアアアアアアッ!!」

 

 ブラキオサウルスの個性が大幅に強化された竜崎。一歩進む毎に災害に近しい力を発揮する力を手に入れた。その筈なのに、何故自分は烏合の衆に苦戦しているのか疑心で頭中が溢れてしまう。

 

「死ねぇッ!潰れろッ!俺の前をウロチョロするんじゃァねぇッ!!」

 

 強靭な筋肉によって集め固められた尻尾を振り上空から攻撃を仕掛けて来るヒーローチームのバスターユニオンを落とそうとする竜崎。

思考が纏まらない中で彼が唯一理解している事。それは目の前で漂う鬱陶しい虫けら共を潰さなければならないと言う焦燥感。

 

「堕ちろッ!消えろッ!力の無ぇ阿呆共が俺に道を譲るッ!忠実に動くッ!言う通りに従うッ!それが定石だろうがアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 唯我独尊、極まった我儘によって突き動かされる巨大なブラキオサウルスは下で生意気に足掻くヒーロー達を蹂躙する為、一方を踏み出す……その瞬間、()()()()()()()()()()()

 

「っ!? 足元がぬかるんで……ッ!?」

 

「虎!ガンヘッド! 今の内にもう一方の脚をッ!」

「任せよ」

「こんな巨体は初めてだけど…ッ!」

 

 片脚が沈んでいく。まるで底なし沼に落ちたように抜け出せない恐竜のもう片方の脚に向かって走るのは【ワイルドワイルドプッシーキャッツ】のメンバーである『虎』と同様に武闘派ヒーローの『ガンヘッド』だ。

 

G・M・A(ガンヘッド マーシャル アーツ)!」

C・C・A(キャット コンバット アーツ)!」

 

 虎と同じプッシーキャッツのメンバー『ピクシーボブ』。彼女が扱う個性『土流』によって作られた大規模な落とし穴に嵌っている隙に2人のヒーローが傷付いた脚に向けて怒涛の攻撃を仕掛けて行く。

 

「そう!そこッ!あちきの眼にはそこが弱点だって映ってるよ!」

「ねぇラグドール。ほんとのあの脚で大丈夫なの?」

「うん、あの脚だけど骨折しているよ!多分トリガーを使う前の傷が治ってないんだよ!」

 

 ピクシーボブの声に応答するのはコレもまた同メンバーである『ラグドール』だ。彼女の個性『サーチ』によって露呈されたブラキオサウルスの弱点。来正恭生によって傷付けられ、未だに癒えてない脚骨を見抜いたのである。

 

「く、そがァァァァッ!潰すッ!!」

 

そんな彼女の個性によって弱点を突かれた巨体を持つ竜崎は青筋を立て激情に駆られると己が首をしならせ、頭を鉄槌の如く振り下ろした。

 

『頭突きが来る!対処お願いシンリンカムイッ!』

「了解!巨木聳槍(きょぼくしょうそう)『クスノキ噴泉』‼︎」

 

 そこへ樹木を模したコスチュームを纏うヒーローのシンリンカムイが()()()()()()()直後に飛び出し手を前に突き出すと無数の木の枝が伸び成長し絡み合う。

そのまま方尖柱のように高く形成されていく木々は振り下ろされた腕竜の頭を受け止め、成長して行く枝によってガッシリと捕まえられる。

 

「ッ!? 動かな───!」

『コッチは捕縛したわ。お願いイグニッション!』

「任せなぁ!」

 

 他者の頭中に(テレパス)を届ける個性を持つ『マンダレイ』に応え、上空から火の玉が飛来する。

 

「景気良く燃やしてやらァッ!着火(フレイム)ッ!」

「ぐおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

 次の瞬間、火球の中から姿を現したイグニッションの両手から放たられる焔がシンリンカムイが形成した木々に引火。それと同時にブラキオサウルスの顔面に熱によるダメージを効果的に与えて行ったのである。

 

「ぐ、何なんだ…ッ!何なんだお前等ァ……ッ⁉︎」

 

 顔面にダメージを喰らい身悶える竜。そんな敵の言葉に応えるかのように、とある4人のヒーローは集うと高らかに叫び始めた。

 

「煌めく眼でロックオン!」

「猫の手 手助けやって来る!」

「どこからともなくやって来る…!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

ワイルドワイルドプッシーキャッツ!(決め台詞ver)』

 

「…………」

 

 直後 顔面の熱が引くほどに空気が冷めた感覚が襲い掛かった。

そんな最中後ろの方で新米ヒーロー2人はコソコソと小声で何かを呟いていた。

 

イグニッション、あれは…

言うんじゃねぇよカムイ。ただでさえ婚期逃してるんだ年甲斐にもはしゃいでるのは目を瞑っとこうぜ…

……そうだな

 

そこの2人聴こえてるからな(ブチギレ)」

「「ヒェッ」」

 

 ピクシーボブによるドスの効いた声にヒーロー2人が悲鳴を上げる中、身動きの取れない竜に向かって極太の繊維が迫る。

 

ビィイイイイイイイインッ!

 

「ッ!?身体が動かな───!」

「力が絶大とは言え、それはあくまで薬で強化されたモノ」

 

 繊維によって四肢が縛られた竜崎の前に立つのは全身をジーンズで固めた格好をしたベストジーニスト。

そんなNo.4のプロヒーローは淡々と敵に言葉を送る。

 

「クソッ!オイ、クズ共ッ!さっさとコイツ等を殺せぇッ!……聞こえないのかオイ!」

「敗因の一つは…己を過信した故に周囲を蔑ろにした事だ。見ろ、既に此処に居るのはお前1人だ」

 

 ブラキオサウルスの周りには多数のヒーローやそのサイドキック達によって囲まれていた。他の場所で暴れていた敵達も捕縛済み。

憤りを見せる竜崎に対し、2m近くの黒い身体を持ったヒーローが前へと出る。

 

「そしてもう一つ」

 

 そのヒーロー『ギャング・オルカ』は超硬度ファイバーによって雁字搦めにされた恐竜の頭部に向かって跳び、告げる。

 

「貴様はこちらのヒーロー候補生を舐めた」

 

 

DIIIIIIIIIIIIING!!!!

 

 

「───が、ふ…⁉︎」

 

 至近距離からの超音波攻撃が炸裂しブラキオサウルスの大顎からブクブクと泡が溢れ零れる。そしてズゥンと地を鳴らしながら頸長竜は倒れ元の大きさへと戻って行った。

 

「フン…最後まで我儘の過ぎたヴィランだったな」

「そして、そのような凶暴な者達を矯正するのが我々の活動だ」

 

 そう言いながらオルカの隣に立つベストジーニスト。大勢の警察とヒーロー達が竜崎に群がって行く様を見つめながら口を開く。

 

「ヴィランに付けられた傷の数々はどれも洗練されず荒々しい箇所が有る。未熟な生徒…とは言え、我々の勝利への活路を生み出した事に関しては目を見張るものがある」

「ほう? ベストジーニストがVENOMをそう評価するとはな」

 

 彼の性格上、来正恭成とシンビオートは苦手な部類に入るだろう。ギャングオルカはアイパッチを吊り上げながら関心の声を漏らす。

 

「無論、矯正し甲斐が有るからな……そちらが羨ましい限りだ」

「まさか指名した筈なのに誰も来なかったのか? No.4ヒーローの事務所ならば入りたがる者も居ると思ったのだが……物好きな生徒だな」

「その内の1人がそちら側(ギャングオルカ事務所)に取られた(威圧)」

「えっ」

 

 海洋生物とデニム生地の間にゴゴゴゴと謎オーラが漂う(気がする)。

そんな様子に困惑を隠し切れないオルカに対しベストジーニストは柔らかな表情を浮かべ口を開く。

 

「安心して欲しい。もう気にしては居ないからな」

「そうか、それなら良かっt」

「ところで生徒の職場体験引き継ぎに興味はないか?」

「ベストジーニスト???」

「そちらのイメージがダウンしやすいだろうから、こちらで引き取ろうか?」

「人の話を聞いているのか?(疑問)」

「ヨシ、分かった髪だ。せめて(来正)の髪だけは弄らせて欲しい!」

「何をそこまでしてお前を掻き立てる⁉︎」

 

 別のアプローチ仕掛けて来たNo.4ヒーローに押され気味の海のギャング。

国内のランキング上位に位置している事はベストジーニスト自身、自負しているつもりだ。生徒2名(※問題児)が来る事を期待していた。

 

しかし来なかった。と言うか取られた。それならばこちら側へ引き抜いてしまえば良いのでは?とヒーローらしからぬ策を思い付いたのである。

これがヒーローの姿か……?

 

「大丈夫だ。VENOMはこちらがしっかり指導させて貰う!ギャング・オルカは安心してヒーロー活動に集中していろ!」

「欲望に忠実過ぎるぞ貴様ァ!」

 

「あ、あの……」

「「なんだッ! 今とても大事な話を───」」

 

 突如としてこちらに尋ねて来た声に過剰反応を示したプロヒーロー2人。そんな彼等の前には小さな女の子。明須賀姫了子が2人の威圧にカタカタと怯えながら立っていたのである。

 

「「………」」

「………グスッ」

 

おい、アンタ等

 

 そこへ現れるプッシーキャッツの虎。虎は涙目となっている女児の前に立つと鯱とデニムに向かって告げる。

 

正座しな

「「ハイ…」」

 

ケッ、ヒーローの面汚し共が

「大丈夫? 怪我は無い?1人なの?」

「うん……うん……」

 

 瓦礫の上で正座するヒーロー達を他所に子供との接し方に慣れているマンダレイが姫了子に優しい言葉を掛け慰める。

子供を泣かせる者はギルティ。例え相手が誰でもそれは変わる事の無い暗黙のルールなのだ。

 

「あの……お兄さん…きょーせーのお兄さんが…」

「きょーせー?」

「なんだよ、どっかで見たなと思ったけど施設ん所の子供じゃねぇか」

「イグニッション、知ってるの?」

 

 マンダレイの問いに歩み寄りながら「ああ」と答える。

 

「何で此処に居るのかって疑問はともかくだ。早いとこ避難所の方へ連れて行くからな。そこなら来正達も居るだろ」

「…うん!」

 

 その言葉を聞いた途端に先程までの泣き顔が嘘だったかのように明るくなる少女。

 

「(面白そうだ。来正の奴を後で揶揄ってやろ)シャチョー、足の方は平気か?」

「無論だ。誰に聞いてると思っている?…瓦礫が食い込んで痛い」

 

 正座状態で痛みに悶える有名なヒーローと言う異例(シュール)な光景に思わず吹き出しそうになるイグニッションだったが、次の瞬間。

此処から離れた場所より蒼炎が空へ登った。

 

「──ッ⁉︎(青い炎だと! 加えてあそこは避難所近くだった筈…!)」

 

 イグニッションの頬に一粒の汗が伝う。この付近の所々に付けられた焼け焦げた痕。高火力の炎を扱う個性。そして先程見た燐火。未だ健在の敵が存在していると言う一抹の不安が頭の中を過ぎる。

 

VENOM(来正)V・スパイダー(赤糸虫)…無事で居てくれよ」

 

 そう呟くと彼は火の玉と化し、現場に向かって空を駆けるのであった。

 





〜今回の流れ〜

「多人数に勝てる訳ないだろ!」
「馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!」

数分後……

「多人数のヒーローには勝てなかったよ……」

大体こんな感じ。



〜〜キャラクター紹介〜〜

『ギャング・オルカ』
主人公、赤糸虫の職場体験先のヒーローでありシャチのシャチョーでもある。ブラキオサウルスの竜崎に超音波アタックでトドメを刺す(拡張表現)
子供を泣かせた為、虎によって正座させられた。

『ベストジーニスト』
No.4ヒーローであり救援に駆け付けたヒーロー。雄英生徒2人を指名したのに誰も来なかったから少しだけ拗ねてる。
上記と同じく虎によって正座させられた。

【ワイルド・ワイルドプッシー・キャッツより】
『マンダレイ』
山岳救助を得意とする4人1組のヒーローの司令塔を務める。個性ブラキオサウルスによる甚大な被害が予想された為、増援として駆け付けた。

『ピクシーボブ』
上記と同じくプッシーキャッツの一員。心は18を胸に掲げヒーロー活動を行う。ちなみにイグニッションとシンリンカムイは後でシバいた。

『虎』
1人だけ異風な存在を発しているプッシーキャッツの一員。武闘家で元女性と言う属性過多なヒーロー。

『ラグドール』
プッシーキャッツの一員で個性サーチによる分析を得意とする。原作の方ではOLキャッツとしても頑張っているのでガッツは人一倍あると考えられる。

『ガンヘッド』
麗日お茶子の職場先のヒーロー。格闘技をメインに個性のガトリングをサブとして戦うヒーロー。口調が可愛いらしい。

『シンリンカムイ』
イグニッションと同年代のヒーロー。新技を引っ提げて救援に駆け付けて来た。


〜〜用語紹介〜〜

『お前は後!!!』
NARUTOにて初代火影がマダラに告げた台詞。最終決戦らしからぬギャグシーンに思わず笑いが込み上げてしまった。



新年明けましておめでとうございます。
令和も3年目に突入しました。令和4年目を迎える為にも読者の皆様もコロナウイルスに罹らないよう十分にお気を付けてください。


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39話 合体必殺技


お金が貯まったのでpcx125(バイク)購入を決意したので投稿します。
やっぱりシリアスよりギャグ寄りの作風の方が気楽に書けてイイゾ〜コレ



 

 命の危機がヤバイわよ!(キャルチャン風)

…あ、やぁ皆主人公だよぉぉぉッ⁉︎ ごめん、ちょっと挨拶してる余裕が無いぞコレ!

 

「逃げてんじゃねぇよ!立ち向かって来いよヒーロー!」

 

 うっせぇバーカバーカ!まともに相手なんかしてられるか!青山君をトイレに押し込んだ直後を狙うとは卑怯だぞッ!

 

「敵に卑怯もクソもねぇだろ!」

『確かになッ!キョウセイならトイレで用を済ませている最中を狙うしなッ!』

「やめたまえ。人を外道みたいに扱うのはやめたまえ」

『事実だろ』

 

 うん、いやまぁ確かにね? 敵を捕らえるのに多少は汚い手を使うのも(やぶさ)かでもないけど……オイ、シンビオート。その訝しんだ目はなんだ。

 

そうこう言いながら靴裏に黒い車輪を形成。その後建物にフックロープのように伸ばしたシンビオートを引っ掛けビルの壁面を駆け抜ける。

 

「どこまで逃げるんだ?」

「アンタが諦めてくれるまで」

「何だよソレ。俺とはやりたくないのか、それとも……」

 

 そんな僕に呆れたような素振りを見せている荼毘の後方より桃色の装甲を纏った麗日さんが飛び出して来る。

 

「今っ──「ま、囮戦法が妥当だろうな」

「っ⁉︎」

 

 しかしそれに気付いていた荼毘は振り返りつつ彼女に向けて青い炎を放出する……その瞬間、麗日さんの身体に白い糸が付着。そのまま引っ張られ火に包まれる前に離脱に成功する。

 

危なっ!ナイスだ赤糸虫さん!

 

「麗日ちゃん!」

「あ、ありがとう!」

 

 ビルの壁面から飛び降り、2人に向かって駆け寄る僕は無事を確認した後にヴィランに視線を向ける。

流石に一筋縄じゃ行かないか……!

 

「ねぇ来正君。あの人、かなり強いよ」

「うん。USJ事件の時の敵とは格段に違う…正直の所、今回の集団の中で一番の強さだ」

 

 ハッキリ言おう、かなりピンチです。俺は身体中がバッキバキに痛むし赤糸虫さんは肩と横腹に大きな刺傷。麗日さんは個性の過負荷によって不調。青山君は便座で奮闘中……うん。ヤバイわよ!(2回目)

 

『fuck!! 役に立たない糞製造機が!』

「やめたまえ。元より人間は糞製造機だから青山君を貶めるような発言はやめたまえ」

 

『雑談はさておきだ。どうやって勝つつもりだ?言っておくがまた炎の中に突っ込むのは嫌だからな』

「……うーん」

『おい何だその間は。嫌だからな?フリじゃないからなッ!』

 

 いや分かってるよ?このコスチューム(発目さん作)だって炎に対する耐性こそあるけど荼毘の使う超火力の蒼炎を喰らい続けていれば自分ごと焼け溶ける。

僕だってニダベリアの心臓エネルギーに灼かれるソーの再現なんて真っ平御免だからね?

 

「来正君、何か作戦は⁉︎」

「…いやまぁ?あるにはあるよ」

「あるの⁉︎」

「それなら今すぐ実行して……!」

 

 それが出来れば苦労はしない。問題は囮になる(注意を引く)側のリスクが高過ぎるのと決定打に欠けている事だ。

せめて青山君が復帰してくれると助かるんだけど………ッ!?

 

そう考えている間に荼毘は地に炎を走らせ、こちら側が逃げ回る範囲を狭め退路を断っていく。

 

「鬼ごっこはもうやめようぜ来正恭成。それとも何だ?今更白旗上げて降参とは言わねぇよな?」

「……白旗上げれば許してくれる?」

「「来正君⁉︎」」

 

「フツーに考えて許す訳ねぇだろ」

「ですよね…」

『…チッ、オイどうする考えはあるのか?』

 

……あー、もう!やるしかないのか⁉︎ 歯を食いしばれシンビオート!全治数ヶ月以上の全身大火傷を覚悟で殴りに行くッ!

 

『FUCK!!!』

「やる気になったか?そうこなくちゃぁなッ‼︎」

 

 炎揺らめく壁に囲まれ、僕と相手が同時に駆け出す。恐らく相手は渾身・最大火力の技を打って来る筈だ。これを防がない限りは僕自身は愚か後方の2人だって危険だ。

 

だからこそ…ヒーローとして決めに行くッ!

 

「黒曜剛拳…ッ!」

 

 より強くより速く撃ち抜く為、右腕にシンビオートを集中させる僕に対し相手も同じように片腕に炎を集中させて────

 

 

 

()()()()

 

「ッ!?」

『馬鹿野郎ッ! 何をボーッとしてる‼︎』

 

 しまったッ⁉︎

その言葉を聞いた僕は驚愕と言う名前の鋏で集中の糸がプツンと途切れてしまう。荼毘が使うその技。エンデヴァーが使う赫灼熱拳に似たソレをが僕とシンビオートに迫り────

 

ZARKKKKKKKKKKKKKKK!!!

 

「「っ⁉︎」」

 

 その瞬間、炎の壁の向こうより僕と相手との間に一条の白みがかった蒼色の光が駆け抜ける。

火炎を突き抜けた輝きを放った方向。そこに視線を向けると全身を甲冑で固めたようなコスチュームを羽織る青山君の姿があった。

 

「やぁ☆ 待たせたね」

「「「あ、青山君!」」」

 

「良いトコに水を差してんじゃ「させないッ!」なにッ⁉︎」

 

 青山君に向けて炎を放とうする荼毘に赤糸虫さんが糸でグルグル巻きにしたッ!よし、ナイスだ!今の内に集合だッ!

 

「青山君!お腹は平気なの⁉︎」

「もう心配ないよ☆ スッキリさ!」

『ウ○コ如きでそんな堂々と言うか?』

 

 こら、水を差さないのシンビオート。

……ん?ちょっと待って?あのさ青山君。君が持ってる"大きなソレ"って…。

 

「これかい?トイレ(仮設)の側で転がっていたのさ☆何かに使えると思って持って来たのさ」

「いやそれ…僕の追加装備(トンデモ兵器)ィィィィィ!」

 

 デスペラード!盾の皮を被ったトンデモ兵器のデスペラードじゃないか!と言うか仮設トイレの側で転がってたって!再登場が雑過ぎる!でも今度からは失くさないようにちゃんと持っている事にするよ!

 

「…あ、それ駅でみたデカイバックに入ってたヤツ⁉︎」

「そうだよ…想定してたよりも何段階もスッ飛ばした装備だったけどネ」

 

 青山君から受け取った巨盾を手にする僕に麗日さんが声を掛けて来た。

 

「それで来正君、勝つ方法はあるの?」

「ああ、それについてだけど僕にいい考えがある

 

「えっと…大丈夫?それ失敗しない?司令官的に」

「大丈夫じゃないかな……多分」

 

 いやコンボイ司令って言動がネタに近いアレだけども問題無いからね?あと誤用で勘違いされてるけど台詞的には作戦成功確率は高い方だからね麗日さんと赤糸虫さん。だからそんな訝しんだような視線を向けて来るのはやめたまえ。

 

 

「まぁ、それはさておき作戦だけど─────

 

 

 僕はその内容について簡潔に伝える。すると反応は様々。麗日さんが意気揚々な顔をすれば、赤糸虫さんは心配そうな表情も浮かべる。青山君は……うん、いつも通りどんな表情か分からん全然分からん。

 

 

「…話は終わったか?」

 

 するとタイミング良く、こちら側の作戦会議が終了したと同時に相手を拘束していたクモ糸が炎によって解かれる。

 

「…皆、さっき話した通りの作戦で行くよ。一応聞いておくけど質問は?」

「それじゃ、作戦が失敗した時は?」

「各自臨機応変(行き当たりばったり)で対処!」

 

……えっ、それは何も考えてないのと同じじゃないのかだって?

うっせぇぶっ殺すぞ(悟空)

 

「燃えろ」

「散開ッ!」

 

 炎が走ると同時にそれぞれ男と女の2組分かれ目の前から迫る青の波を躱す。行くぞ青山君。男チームとして女子2人にみっともない所は見せられないからね!

 

そう考えながら手元に戻って来たデスペラードにシンビオートを連結。銃口を相手に向けて放つッ!

 

「黒指弾・速射‼︎」

「ネビルレーザー‼︎」

 

 黒の銃弾と白の光線が真っ直ぐ放たれる。しかし、それに対して目の前に高熱の壁を貼る事によって難無く僕と青山君の攻撃は防がれてしまう。

まぁ、こんな見え見えの攻撃は防がれるか……!

 

「シンビオート巨盾を繋ぐ鎖になれッ!」

『こうだな』

 

 ジャララと音を立てながら変化するシンビオート。連結した盾を鉄球に見立て大きく振り回し……投げるッ!

 

「っと、危ねぇ…!」

 

 しかし真っ直ぐ投擲された墓標めいた物体(盾)を喰らって来れる筈も無く身体を逸らされ攻撃は当たらない…けど、その程度で終わるかッ!

 

「おおおおおおおおおおッ!」

 

 グン…!と手にする黒い鎖を力の限り引き寄せる。すると飛んで行く盾は大きく弧を描くように軌道を変えて行った。

ぐ、やっぱりデスペラード自体の質量が重いのか鎖分銅としての操作は難しいな……え?もうこれ盾じゃないだろって?うん。僕もそう思う(白目)

 

「焼けて……っ⁉︎」

 

 直後こちらに手を翳して来る敵だったが、迫り来る青山君のネビルレーザーを避ける為に攻撃を中断しその場から飛び退く。

 

「避けられた…!☆」

「いいや青山君。そこだ その位置だから良いんじゃぁないかッ!」

 

 そう告げながら僕は手に鎖を収めたまま体全体を回し、捻りを加えて……振り下ろす‼︎

 

「ちぇすとぉぉおおおおおッ!」

 

 バガァン!と甲高い音を鳴らしながら振り下ろされた棺桶に見間違う程の重量を誇る(鉄塊)。地面を割り砕く程の威力を持つソレだったが僅か数十cmズレてしまい攻撃は()()()()()()()

 

「オイオイどうした、攻撃が外れちまってるぞ」

「……いいや、これから当てる所だ」

『一体いつからコレが本命だって錯覚した?』

 

「……なに?」

 

 直後、ハッとした表情を浮かべる敵だがもう遅い。既に2人は攻撃態勢に入っている‼︎

 

「麗日さん!赤糸虫さん!」

「問題無しッ!」

「いつでも行けるよ‼︎」

 

(アレは…巨大パチンコ(スリングショット)だと…こっちが本命か!)

 

 僕の呼び掛けに応じる2人。そこには地面に刺さる二つの鉄柱と赤糸虫さんのクモ糸によって作られた簡易的なカタパルトが作られていた。

方向良し、角度良し、距離も十分良しだ!

 

「麗日ちゃん行ける?」

「もち!即興合体必殺!『流星群パンツァー砲』‼︎」

 

 直径50cm程の特大スリンガー弾を抱え、糸を引き絞る麗日さん。眼前に佇む敵に狙いを定めた弾丸がズドン!と勢い良く放たれる。

 

「ハッ、何処を狙ってやがる…つーか流星群要素どこだよ」

 

 しかし麗日さんが放った布に包まれた弾丸は真っ直ぐには飛ばず、放射線を描くように空に向かって放たのである。その光景に嘲笑う荼毘に対して麗日さんは……不適な笑みを浮かべていた。

 

「個性、解除」

 

 その瞬間、布によって包まれた弾丸が解かれその中から大量の岩石が姿を現したのである。

 

「なに⁉︎」

「流星群要素ならちゃんとある!」

 

 炎で迎撃しようとするが時既に遅し。

重力に沿って降り注ぐ岩石群と言う名の物量の暴力が荼毘に向かって牙を剥き、襲い掛かる。

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!

 

「ぐ、あ──────ァッ」

 

 麗日さんと赤糸虫さんの合体技をマトモに受け、糸の切れた人形のように倒れ行くヴィランの荼毘。

その光景を前に青山君がポツリと言葉を漏らした。

 

「……倒したのかい?☆」

「だと良いんだけどね」

 

 そう言いながら僕はデスペラードの銃口を荼毘の眼前に突き付けながら言葉を投げかける。

 

「両手を挙げろ。起きてるのは分かっている」

「……なんだよ、怪我人相手に随分な歓迎じゃないか」

 

 この状況にも関わらず笑みを崩さない荼毘。まるでバットマンの宿敵であるジョーカーの如く不気味な印象を受けるが相手から目を離さないように神経を研ぎ澄ます。

こう言う輩は少しでも油断すればニトログリセリンみたく容易に周囲への被害を及ぼすってハッキリ分かんだね。

 

「赤糸虫さん、僕等じゃ対処出来ない事態に備えてプロに至急連絡を」

「ん、分かった。MJメッセージの送信お願い」

《了解しました》

 

 

「今回の件。何が目的か答えてもらう……さもないと」

『お前の身体で千切り絵のアートを作ってやる。バンクシーも驚くような赤黒い絵画だ、ゾクゾクするだろ?』

「そう言う訳だ。今すぐ答えるか、それともこの場でCARRIONに出て来そうな黒塗りの寄生生物に潰されるか」

 

 グリグリと眉間に銃口を押し付けながら脅しを掛ける。複数の敵による大規模な犯行。加えて赤糸虫さんからの軽く聞いた内容だけど、僕と彼女を目的とした人物。

この事件の裏には複雑に絡み合った"何か"があると僕は考えている。

 

その為にもこの(ヴィラン)から少しでも情報を得ようと画策する…がしかし、それに反するように荼毘は嘲笑を浮かべながら口を開いた。

 

「出来るのか?ヒーローであるお前が?…それならやってみろよ。お前が俺を殺す所はちゃんと見てやるからさ」

 

 相手は死ぬ事に一切の恐怖を見せない姿勢を見せる。互いに視線を交えて数秒が経過した後、僕は溜息を吐きながら瞼を閉じた。

……駄目だ。こう言うのは脅迫めいた事をしても効果が無い。寧ろ、こちら側の動揺を誘い隙を作り出そうとしている所から察するに情報を引き出すのは厳しいな。

 

「流石、来正君らしいやり方☆」

「ねぇ青山君。それって褒めてるの?貶してるの?どうなの、ねぇ?」

 

「来正君、一応こっちの方で連絡のメッセージを送ってお……ん?」

「…ところで来正君☆何やってるんだい?」

 

「? 何をって一体なんのこt……ちょっと待って?身体勝手に動いてるんだけど、これシンビオートだよね?何するつもりなの?」

 

 なんかいきなり荼毘を抱え始めてるけど、え、待って。本当に何するつもりなのシンビオート?

 

『答えは二つに一つ。コイツは口を閉じる事を選んだ、それならオレ達は敬意を表する必要があるのさキョウセイ』

「………つまり?」

『望み通り潰させて貰う…行くぞ麗日ァ!』

「応ッ!!」

 

 いや何が!?と言うかそっち(麗日さん)が返事するの?それ以前に僕の意見は無視ですかそうですか。いつもの事だね分かるとも(半ば諦め)

 

「えっと…来正君大丈夫なのアレ?」

「いつもの事さ☆」

「へー…」

 

「静観してないで助けろくださいお願いします。このままだと確実に死人が出るぞ。主に荼毘(コイツ)が」

「えっ」

 

 いや何意外そうな顔してんの?当たり前だからね?この畜生個性が妥協する訳ないから。徹底的に尊厳ブチ壊しに行くからね。

 

『行くぞウララカ!ツープラトン・アーツだッ!』

「おっしゃぁぁぁあ!!」

 

 なんでノリ気なの?そして何で打ち合わせもしてないのにそんな息の合った動きを見せるの?

…あ、ちょっと待って麗日さん。僕の盾(と言う名の兵装)に個性使って何してるの?

 

「鉄柱ヨシッ!」

 

 ヨシ!じゃないが?いや待ってホント僕の身体を勝手に動かすのやめてくれない?……あ、ダメだわ疲労の所為で制御出来ないわ。

 

「お、おい!何を───」

「明日から痔を覚悟しておく事だなッ!」

 

「痔…えっ、何を」

「あっ☆(察し)」

「は?ちょっと待ってシンビオート。目の前でそんな事される僕の気持ちを考慮しt─────」

 

 そんな事を言って止まる筈も無く。シンビオートは脚をバネのように変形した後高く飛び上がり、そのまま原爆落とし(アトミックドロップ)の要領で麗日さんの支える鉄柱(盾)に向かって荼毘を落としに…え、いやいやいやいや待って⁉︎ 流石にそれはヤバ……。

 

『「痔獄鉄柱落とし(インフェルノ・ゼロヴィティ・バスター)ッッ!!」』

がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ(断末魔)」

 

「「や、やったぁーーーーッ!?」」

 

 マジかよやりやがったぞあの2人ッ!(正確には1人と1匹)。おしげも無くデスペラードの銃口部分に菊門を打ち付けやがったッッ⁉︎外道通り越して鬼だあの2人ッ!

 

「イェーーイ!(タマ)取ったりッッ!!」

『FOOOOOOOOOOOOOO!!! これで一生ウンコ出来ないねぇ!!』

 

「何という事を…!(畏怖)」

「だ、大丈夫さ☆ 前のタマの方じゃなかったから大丈夫、無問題さ」

 

「ぐぉぉおおおおおおおおおおおおお」

「何処をどう見ても大惨事に他ならないよ!大問題だよッ!」

 

 青山君は上手いこと言ったつもりだろうけど性別問わず人間としての尊厳がブチ壊されてるんやぞ。

 

『さぁ、改めて聞くぞ?キョウセイを狙った訳を教えろ。でないとこれ以上に悲惨な事になるぞ?』

「ぐおおおおおおお……」

『思った以上に口が固いな、気に入った。次は前の方のタマを破壊してやる』

「ヤメロォ!」

 

 それは流石にダメだからッ!あと、口が固いんじゃなくてそれしか喋れない状態だからッ!と言うか麗日さんも黙々と次の攻撃準備(鉄柱支え)を行うなッ!

 

「…はッ⁉︎ …いや違うんよ来正君。ウチの中にある魂に思わず火が灯って……」

 

 麗日さんたまに変な部分で火が付く事あるけどこんな場面で火が付く事ある?ノリノリで尻ぶっ壊した所しっかり見てたからな。逃れられんぞ。

…いやまぁ、いつもシンビオートが勝手を常用句にしてる僕が言える立場じゃないって事は分かってるけど!

 

「ねぇ、来正君。麗日ちゃんに青山君……ちょっといいかな?」

 

 赤糸虫さんの言葉が僕等に向かって投げ掛けられた直後、()()()()()()()()()

何も無い所から現れる黒く渦巻く霧。それは血に染まる荼毘を包み込むように展開されて行く。

 

「"アレ"って、なんなの?」

「「「っ⁉︎」」」

 

 それを僕等は知っている。正確には赤糸虫さん以外の僕等A組の皆が知っている。最高峰のヒーロー育成機関へ入学早々、その存在を世に知らしめた集団。

その名は─────ッ!

 

「申し訳ありませんが…彼はこちら側で引き取らせて貰います」

「「「敵連合(ヴィランれんごう)ッ!」」」

 

 闇の中で輝く鮮黄(せんおう)の双眼がこちらを射抜く。忘れもしない敵連合リーダーの死柄木弔の側近!確か名前は黒霧だったか…ッ!

何故このタイミングでコイツが⁉︎ いや、それよりもッ!

 

「逃しちゃ駄目だ青山君ッ!」

「分かってるッ!☆」

「させるとお思いで?」

 

 レーザーを発射する直前、黒いモヤが辺りの瓦礫を包むと同時に上空からガラガラとした音が鳴り響いた。

 

「しまった────ッ!」

 

 範囲が広い上に落ちて来る瓦礫の量が多過ぎる為、シンビオートをフルに動かしても捌き切れない。万事休すか……⁉︎そう僕等全員が思った次の瞬間、空から飛来して来た火の矢が駆けた。

 

FIRE!!!!!!

 

 ごう、と燃え盛る炎に包まれたイグニッションがその場に居た僕等を抱え瓦礫の雨の範囲外へと逃がしてくれたのだ。

 

「イグニッション!」

「全員見た感じは無事みてーだな!」

 

 安堵も束の間。登場したイグニッションに続く形で僕を含めた全員が攻撃モーションに移ろうとするけど…駄目だ間に合わない。

そんな僕等を前に荼毘はモヤに包まれながら口を開く。

 

「あばよ。また会えたら今度こそ殺し合いの続きをしようぜ」

「っ!」

『逃げるなこのクソ痔野郎ッ!』

「シンビオート‼︎」

 

 せめてちゃんとした名前で呼んであげて!

 

「クソ痔じゃねぇ!ダービーだッ!」

「えっ」

「あ、やべ違った。ダービーじゃねぇ荼b」

 

 相手が訂正の言葉を吐き出そうとした瞬間、黒いモヤに覆われ姿を消してしまった。

 

…………。

 

………………。

 

……………………い、

 

(((((言い終わる前に消えたーーーーッ‼︎)))))

 

 その場に切なさと虚しさと(おびただ)しい血痕(ただし尻から出た奴)を残し敵連合の黒霧と荼毘は去ったのであった。

 

 

 





本来と比べて接触時期が早まった荼毘。ついでに尻に深刻なダメージを受けてしまった荼毘。

ヒーロー様の戦い方じゃない…(ゴーストオブツシマ感)

次回辺りでヒーロー殺し編に突入出来たらなと思います。


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40話 鳥と猫とヒーローと

モンハンとウマ娘にハマってたので投稿遅れました(土下座)
ところでウマ娘の小説が流行ってるなぁ…書いてみてもバレへんか?(反省の色無し)


事の顛末を話そう。

敵連合との関与が見られ危険性を考慮し竜崎やその他諸々の敵達は揃ってタルタロスに搬送されるらしい。

ボクと交戦した鋏の敵も同様にそこへ送られるそうだ…けど、気になる点が幾つか存在する。

 

集団で襲って来たにも関わらず彼等のみボクと来正君を狙って来た事や"チップ"や"異能"等の謎のワード。

正直言って謎が多過ぎて訳が分からない。現実からかけ離れたような、平和な日常を送って来たからこそ分かる。

 

ボク等は確かな超常社会の負の面を垣間見たのだ。

 

「嫌な…事件だったね」

「目の前で人のお尻が破壊される☆…僕としては同情してしまう程に哀しい出来事だったよ」

いや違う そうじゃない

 

 確かにある意味での負の面を目の当たりにしたよ⁉︎ あんなエグい必殺技さぁ!見たら分かる絶対にボラギノールを必需品とする人生歩む事になるよアレ!

 

「でもちーちゃん こう考えられないかな?尻を破壊したお陰で敵連合を引っ張り出せた…って」

「酷い引っ張り出し方だね☆」

《まるで血便のようにズルズルと…》

「やめてMJ! 例えが生々しくて汚いから‼︎」

 

『品が無い機械だな。改めて精密検査して貰った方が良いんじゃないのか?』

シンビオート(ファッキンクソ寄生生物)‼︎》

 

 MJが独自の多重言語音声メッセージを扱えるようになった⁉︎凄いよメイ!そして何をしたら今にも倫理違反を犯しそうな性格になるのかなメイ!

 

「やっぱり映画の定番よろしくメカとエイリアンは古来より相容れない仲なのかなぁ?」

 

 そんな言い争いを背景に来正君が仮設医療テントから出て来る。来正君は個性によって回復こそ可能だけど、それはあくまでシンビオートの治癒力促進による応急処置。

後々になって後遺症・重症化予防の為にも専門家に見て貰う必要性がある…らしい。

 

「それにしても第1肋骨から12肋骨(※要するに肋骨全部)がグシャグシャって洒落になって無いなぁ…動物に踏まれるって夢は所詮夢物語って事かぁ……」

「どんな高度な夢物語!?」

 

 マゾヒストの領域に足を踏み入れつつあるけどそれでいいの来正君!?

 

「けど凄いよね来正君、そんな傷を負った状態でデク君並のガンギマリパワーで連続して敵と交戦してたんだから」

「まぁ……うん。シンビオートを身に宿しているとね、生傷が絶えないんだよホント……」

「……あぁ(憐憫の眼差し)」

 

 ガンギマリパワーとは??? そして、そんなパワーを扱うとされるデク君とは一体…(畏怖)

 

近い内にいずれ出会う事になるであろう、ヒーローを志す者に一種の恐怖を抱いていると、ギャングオルカ事務所の社員の人達(と言う設定のサイドキック達)と共にボランティアスタッフの巴嶺さんがこちらに歩んで来た。

 

「ハーイ、お疲れ様ヒーロー達。差し入れの飲み物沢山買って来たから好きなの選んでね」

 

「ありがとうございます。一本貰いますね」

「それじゃボクも」

 

 そう言いながらキンキンに冷えたペットボトルを手に取ると、サイドキックの方々が麗日ちゃん達に向き直る。

 

「良ければそっちの2人もどうぞ」

「いいんですか!ありがたくいただきます!」

 

 そう言いながら麗日ちゃんは沢山あるペットボトルを両手一杯に抱えて……えっ、麗日ちゃん?

 

「あれ、君ってそんなに飲むの?」

「まぁハイ。外付けの胃袋的なので沢山摂取する必要があるんですハイ」

『見苦しい言い訳を繰り広げてるぞ』

「図々しいにも程があるぞ麗日さん…‼︎」

 

 なんか「チャウネン チャウネン」と抱えた大量の飲料を我が子を庇うようにしてるんだけど。麗日ちゃん何してるの?

…いやチャウネンと言われても一向に理解できないんだけど?

 

そんな彼女に来正君が温かい目を向けながら近付いていく。

 

「とりあえずさ、そんなに飲みきれないでしょ。何本か貰っとくね」

「あげない」

「えっ」

「これは全部私のものだ!一本たりともやるものかァ‼︎」

「図々しいにも程があるよ麗日ちゃん‼︎」

 

 そんな麗日ちゃんに「埒があかないなぁ」と呟きながら来正君の背中からヌルリとシンビオートが姿を現す。

 

「それなら強硬手段だッ!これ以上一般市民に撮られてネットに拡散させらてネットの玩具にされる前に飲み物を全て奪い取るッ!行けシンビオート、『よこどり』ついでに『どろぼう』だ!」

ン゛オ゛オ゛オ゛エ゛オ゛!(ガブリアス風)』

「あ゛ーーーーッ! よりによって絢鷹(あやたか)日茶(にほんちゃ)取られたァ!」

『ハハハハ!低レベル手持ちを600族の暴力で叩き潰すのは最高だなァ!』

「やってる事は最低だけどね。それと、どの技もガブリアス覚えないよ」

 

 そんな高笑いをするマッハポケモンめいたフォルムのシンビオート。周りの皆が呆れ サイドキックの人達も瓦礫撤去の作業へ戻っていく最中、黒い何かが伸びた。

 

「ダークシャドウ『さしおさえ』」

『アイヨ』

 

「「あっ⁉︎」」

『What's⁉︎』

「全く、何をしているんだお前達は…」

 

 そこに居たのは黒い鳥のような頭をした人物。だけど見た事のある顔だった。確か彼って……?

 

「常闇君!なんで今更こんな所に?」

「常闇君じゃないか☆なんで戦闘シーン(輝ける場面)に遅れて出て来たんだい?」

『よう、カラス頭。もうお前の出番ねーから』

「シンビオート!?」

 

 名前は確か常闇踏影、隣のAクラスの生徒だった筈…。

そんな彼は呆れたように額を押さえながら呟く。

 

「これでもこの事件で暴れていた敵達の対処を任されていた……いや、正確には事後対処と言うべきか」

「? どう言う事」

 

 話によると途中から彼も参加していたらしく、潜伏し散らばっていた敵達を片っ端から捕縛していたと言うのだ。

 

「終わった後に()()()が知り合いなら挨拶して来いと言ってな。こうして足を運んだ次第だ」

「あの人? そう言えば常闇君の職場体験先って……」

「ああ、『ホークス』だ」

 

 その言葉にボクらはギョッと驚きの表情を露わにする。ホークスって…⁉︎

 

「ホークスってチャートNo.3ヒーローのッ⁉︎」

 

 No.3ヒーローのホークス…!

こんなボクでも聞いた事のあるヒーローネームだ。

18歳でヒーローデビューした後に10代でランキング10位内にランクインしたヒーロー…!又の名を速すぎる男!

 

『気に入らねぇ……、トーナメント不出場の烏頭が鯱以上のランキングヒーローに……!』

『ナンデダロウネ』

 

 黒いモノ同士が話し合う中、来正君が何処から取り出したのかサイン色紙を手に口を開く。

 

「常闇君、ホークスは何処に? ちょっと握手した後にサイン貰いたいんだけど」

「すまない。あの人は今何をしてるか分からない。行動が速すぎるからな」

ハーーー、つっかえ(そっか、それは残念)

「心の声が隠し切れてないよ来正君!」

 

「あの人は速過ぎるからな。今一体何をしているのか…」

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

 てんやわんやと騒がしくなる彼等のやり取りを他所に已嶺は笑みを浮かべながらその場を後にする。

ふと、そんな彼女の前に一枚の羽がパラリと落ちて来た。

 

「………ふぅ…」

 

 徐にそれを拾い上げると、彼女は人目が届かないであろう路地に入る。そのまま已嶺は板に付いた様子で壁面を蹴り、爪を立てる。

その姿はさながら猫の如く。一気に建物の屋上へと駆け上がって行く。

 

「や、待ってたよ」

 

 彼女の視界に入ったのは赤い翼を携えた男。No.3ヒーローのホークスだ。

 

「私に会いにわざわざ九州(アッチ)から来てくれたの?」

「いやまさか、ちょっと野暮用で全国飛び回ってたら偶然ね」

 

「誰も聞いてないからさっさと本題に入って頂戴」

「さすが黒猫。その耳って伊達じゃないんだね」

 

 キャスケット帽子を取り外した頭頂部よりツンと跳ねた双耳が姿を現す。

ホークスの言葉にはぁ…と溜息を吐きながら已嶺、もとい黒猫(ブラックキャット)は口を開く。

 

「あのヒーロー達を前に演技するのはスリリングだったわね…と、ほら。コレが欲しかったんでしょ」

「お」

 

 外した帽子の内側にテープで貼り付けられたチップを無造作に投げる。

その瞬間 先程彼女が拾った羽が空気を切り裂くように翔び、投げられたチップを優しく包むとヒーローの手中に収まった。

 

「悪いね。これは公安部が血眼になって欲しがってたモノで無碍に扱うのは勘弁して欲しい…壊してないよね?」

「そこは知らないわよ。私の個性って貴方みたく繊細にコントロール出来ないもの」

 

 手渡されたソレを懐に仕舞うホークスに黒猫は問い掛ける。

 

「それにしてもこんな私に大金握らせて極秘裏に回収て欲しい物と聞いたけど、ソレにどんな価値があるのかしら」

「公安だけじゃない、今回の事件を起こす程に奴等にとって大事なモノって訳さ。まさか君も敵がここまでの事態を引き起こすとは思ってもなかっただろ?」

 

 痛い所を突かれたのか不快な表情を露わにした後、口を開く。

 

「そうね、正直迂闊だったわ。あのヒーローの学生君達が居なければどうなっていた事か…最近巷で噂の敵連合が手を引いてるのかしら?」

「いいや、()()()()()()()()()()()。今は鳴りを潜めてるが最近になって目立ち始めてね」

 

「けど疑わしきは罰せずと言うだろ?」

「……そこで私に依頼した訳ね。随分と重要な事を私のような敵予備軍(ヴィジランテ)にこんな事を頼んだわね、知ってるでしょ?不幸を招くって黒猫の噂を」

 

 曰く、黒猫は不幸を呼び寄せるとされている。特に抽象的なのは欧米での魔女狩りであろう。

不吉の象徴とされている黒い毛並みの猫に横切られると不幸が、跨ぐと不運が、十三日の金曜に見ると災いが、etc(エトセトラ)、etc…。

 

超常社会黎明期以前の迷信は今でも語り継がれ、それと同じような(個性)を持つ已嶺黒恵はそれを表向きは秘匿し摩天楼を駆ける黒猫(クライムファイター業)として使い続けて行く内に不幸を招く黒猫としてヒーロー側から厄介者として扱われる事となった。

 

そんなヒーロー側であるホークスは惜しげもなく言葉を紡ぐ。

 

「そんな君だからさ、単独行動が専門で不運を招き人を寄せ付けないその力なら今回の件に役立つと思ってね。そのお陰かライノの装備(違法パーツ)の証拠隠滅用に備えられていた爆発だって起きなかったし」

「……貴方って女心分かってないわね。少しは慰めの言葉を贈ろうとは思わない訳? あーあ、やっぱりこんな鳥より初心な蜘蛛の方がよっぽど良いわね」

 

 ヒーロー社会の裏と表で駆ける2人。

そんな猫と鳥の眼下にはヒーローとして働く学生達の姿が在った。自分達とは違う、光の下で楽しそうに伸び伸びと生きる子供達を見て彼等は笑みが浮かべるのだった。

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

「来正君、この子が姫了子ちゃんって娘?」

「そうだよ。ほら姫了子ちゃんヒーローのお姉ちゃんに挨拶してね」

「…き、姫了…子。……です」

 

「かわいいねぇ〜〜、私ウラビティ。よろしくね」

 

「いい感じに打ち解けているようで安心。良かったね姫了子ちゃん」

 

 頭を撫でる来正。そんな彼に対して幼子は口を開く。

 

「勝手に頭を撫でるって非常識〜〜(笑 )お兄さん少しはデリカシーを覚えた方が良いんじゃないの?」

 

 

 

 

 

 

 

「来正君。元気出して。ね?」

『うん、まぁ、気にすんな』

「やめてよぉ!そんなフォローはこっちが傷付くからやめてよォ!」

 

 罵声やブーイングに耐性のある来正恭成。しかしこの年頃の女の子から言いたい放題にされても尚ハートが耐えられる程のバリアコーティングがされてない。

 

「クソァ!已嶺さんや他の子供達から『姫了子ちゃんの口調が丸くなった』って言われてるのになんで僕に対してはそのままなの⁉︎」

 

 うおおおおおお、と高校生の慟哭が響く中、ヨシヨシと慰める2人(正確には片方は一体)。

側から見ればウラビティとシンビオートは友人思いの人物に見えるだろう。

 

『(でもあのメスガキ、キョウセイに懐いてるだろうけど面白いから黙っておこうぜ)』

「(せやね)」

 

 そんな彼等が己の欲望に忠実な事を来正は知る由も無かった。

Q.これがヒーローの姿か…?

A.これでもまだマシな方です。

 

「にいちゃん元気出せよ」

「オレらが遊んでやるから」

「ありがとう…ありがとう…お礼と言ってはなんだけど君らの好きな遊びに付き合うよ」

 

「マジか!んじゃヤーナムの狩人ごっこしようぜ!」

「俺ルドウイークやるわ!」

「にいちゃんは人喰い豚な!」

「よーしお兄ちゃん頑張っちゃうぞ…待って、子供のやる遊びじゃないんだけど⁉︎」

 

 この後無茶苦茶内臓攻撃(ズゥゥゥン)されまくった(肛門は死守した)。

 

「子供って怖いね☆僕?全然」

「然り。」

(どうしよう、隣二人が何言ってるのか不可解で怖い…)

 

 一方、赤糸虫は隣人に恐怖を抱いていた。無駄にキラキラした人と無駄に黒く染まってる人に挟まれている上に謎の言語体系を築き上げている2人にSAN値が直葬されかけているのである。

た す け て (心の叫び)

 

 

「ヴェノム、Vスパイダー。こんな所で(かま)けている暇は無いぞ」

 

 そんな心の中で助けを求める赤糸虫の元にギャング・オルカがやって来る。何事だろうか?と思う彼女にオルカは顎を開けた。

 

「何をぼうっとしているッ!貴様等は返事も出来ない木偶の棒以下のウジ虫かッッ!」

「サー・イェッサー!シャチョー!」

 

((((変わり身早っ!?))))

 

 そんなオルカの言葉にいち早く返事したのは先まで子供の言葉に打ちのめされていた来正だった。

 

「返事だけは威勢が良いなッ!」

「サーイェッサーッ!」

「それでは貴様等には早速次の現場へ向かって貰うッ!」

 

「次!?」

 

 麗日の驚愕の表情を浮かべる。それとは裏腹に来正は真剣な眼差しでオルカに向き合う。力が飽和する時代、ヒーローを必要とするのはどの場所でも同じだ。

 

「次に行く所は─────」

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

「で?俺を此処に呼んだ訳を聞こうじゃないか。噂の敵連合とやら」

 

 名も無き寂れたバーにて。継ぎ接ぎの男である『荼毘』は敵連合の黒霧と死柄木と対峙していた。

 

「ほう、こちら側の事を知っているとは」

「まぁアンタ達は有名だからな。知ってるぜ…雄英からおめおめ逃げ(おお)せたんだろ」

「なんだ、喧嘩売ってるのか殺すぞ」

 

 手の形をしたマスクの下から覗く視線が荼毘を射抜く。殺意を向けて来る相手に飄々とした様子で継ぎ接ぎの男は言う。

 

「いやいや、褒めてるんだよ俺は。あのNo.1ヒーローの所にカチコミしたってのに逃げ切れたんだからな。これでも俺は評価してるんだぜ?」

「チッ、何で先生はこんな奴を引き入れようとしたんだ」

「敵連合のメンバーとして良いと"あの人"が仰っていました。口調はともかく、戦闘面では頼りになるかと…」

 

 黒霧の言葉に舌打ちしながら死柄木弔は不承不承な雰囲気を隠す事なく口を開いた。

 

「取り敢えずはだ、お前は候補だ。敵連合の一員(メンバー)の候補としてお前には目を付けておいてやる」

「オイ、本人放っておいて勝手に話を進めてんな」

「黙れ。俺はリーダー、お前は部下。簡単な話だろ」

「人に対する礼儀が成ってねぇなぁ……殺すぞ」

「あ?」

 

 一触即発の雰囲気が室内に漂う。互いが互いに殺し合う隙を伺い、黒霧が仲裁しようとしたその瞬間、声が響いて来た。

 

『そこまでだよ弔。彼は新しい仲間だ、仲良くしてあげなくちゃ駄目じゃないか』

「……先生か」

(へぇ、画面のコイツが…先生って奴か)

 

 モニターに映る人影に荼毘は視線を向ける。そこに映る人物からは得体の知れない、形容し難い何かドス黒いモノを感じる。

 

『いやすまない、最近新しいオモチャ作りに専念していて顔を出していなかったよ』

「新しいオモチャ?」

『そう、君の新しい兵隊(センチネル)さ。脳無とは違う面白いヤツでね』

 

 愉快そうに、嘲笑うように、男の声が響く。そして直感する。ああ、コイツ等だ。コイツ等(敵連合)の所に居ればきっと"ヤツ"と巡り会う事が出来る。相対する事が出来る。そしてきっと見て貰える……。

 

『君もどうだい?力を貸してくれるならば君にそれ相応の対価をあげようじゃないか』

「………」

 

 その魅惑的な誘いにクックと喉を鳴らし荼毘は口を開く。

 

「良いぜ、アンタ等の勧誘に乗ってやるよ」

「ほう、それはそれは…」

 

 好意的な返答に黒霧は感心したような声を上げる。雄英襲撃の際、戦力の大半は削がれた。

だからこその連合のメンバー集め。チンピラ程度には収まらない強い力と執念を持つ(ヴィラン)。何を企んでいるかは未だ理解に及ばないがこれならば死柄木の力になれる……

 

「は?ふざけるなよ。俺はまだお前をメンバーとして認めた訳じゃねぇ。つーか本名を名乗れ」

「喧嘩はやめてください弔」

 

「その時になったら名乗るさ」

「黙れ。格好付けてんな殺すぞ」

「荼毘も落ち着いてください」

 

「ハッ、お前のソレ(死柄木弔)も本名じゃねぇだろ。殺すぞ」

「馬鹿が。これは先生が付けた名前だ所謂コードネームって奴だ少しは頭を使え殺すぞ」

「あの、2人とも」

 

「うっせぇ、つーか色々とダサいんだよ。なんだよその体中に手を付けたコスチューム。格好良いと思ってるならお前の勘違いだからな」

「は?上半身裸にボロボロのコート羽織ってる変質者ルックスに言われたくねぇな」

「………(うわあ、同族嫌悪)」

 

 バチバチと火花を散らす光景にモニター越しの男は愉快そうな声を漏らす。

 

『フフフ、中々に良い関係を築けそうじゃないか』

「いや何処をどう見たらそんな結論になるんですか?』

『いやはや済まないね。ジョークだよジョーク。それに僕ってほら、オールマイトに視覚がやられてるから正直の所、どんな状況か全く見えなくてね。これが本当の目が節穴と言う奴さハハハハ』

「………」

 

 黒霧はまだ季節は春頃だと言うのにその場が冷えていくのを感じた。そして裏の帝王は言葉だけでその場の気温を操作する力を持っている事に半ば呆れの感情が芽生えたのは言うまでも無い。

 

「まぁ弔。今は選り好みは出来ない状況です。加えてこの後、彼も来る予定ですから」

「彼?……ああ、アイツか。そういやそうだったな」

「アイツ?」

 

「最近巷で噂になってるヒーローをぶっ殺してるイカレ殺人者さ。同じ殺人者同士挨拶でもするか?」

「……いや そうしたいのは山々だがその前に行かなきゃなんねぇ所がある」

「行かなければならない所。それは一体……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと薬局に…」

『「「あぁ…(察し)」」』

 

 ズボンより滴る血に目を向け、2人とモニター越しの男は納得の声を上げた。

 




〜〜キャラクター紹介〜〜

・主人公(来正恭成)
ブラキオサウルスに踏まれて肋骨が全部折れた人。人間には215本も骨があるのよ1本(誤差)くらい何よ!

・シンビオート
600族(ガブリアス)に変身した 鳴き声はゲーム基準。ちなみに本人はあく/フェアリータイプと自称してる。

・赤糸虫知朱
女版スパイディ的なキャラ。麗日とは友達になったらしい。友人が増えたよやったねチズちゃん!

・ホークス
No.3ヒーロー常闇と共に全国を飛び回ってる最中に参戦。事後処理や市民救出、敵達の捕縛等色々やってた。本来の目的は黒猫から目的の品を受け取る為。

・黒猫/已嶺玄恵
実はこの人があの人だったと言うキャラ。
実はブラックキャットの本名フェリシアは"恵み"と言う意味なのでそこから取った名前だったりする。
『個性』は不運(バットラック)。能力のON/OFFこそ可能だが、発動したら周囲の運勢を無差別に不運に変えてしまう。対象は無機物も含まれており爆弾の場合は不運が起きた事により爆発しなかった、不運によって爆弾の配線にミスがあり起爆しなかった。等の芸当が可能(しかし故意に行う事は不可能)



色々とグダった感じがしますが次回からヒーロー殺し編に突入します。



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41話 違う!シンビオートが保須市に!

リアルがめちゃくちゃ忙しい…、投稿頻度がクソ遅くなって申し訳ありません。
というわけで此処からヒーロー殺し編に突入します。


beep!beep!beep!

 

 晴天が広がる空に甲高い音が鳴り響く。アラームが轟く直後、銀行からそれ以上の爆音が広がる。

 

「よし!今の内だズラかれッ!」

「ちょっと待て 金を積み込むのが先だ!」

 

 ワケも分からずに逃げ惑う人々の中に一際目立つ集団がトラックに大量の金を詰め込んでいる。約6人の(ヴィラン)がトラックへと乗り込むと荒い運転で発進した。

 

「大した事なかったな!」

「所詮ヒーロー殺しが現れても、俺達に敵う奴等なんか居ねーよ!」

「ハハハ……あ、何だアレ?」

 

 運転席にて軽口を叩く敵。そんな彼等だったが前方に何かが見えた直後、目の前が白一色へと塗り潰され音が消え失せる。

 

「「はぁぁあ!?」」

 

 一瞬の出来事に対応出来ず、運転手はハンドル操作を誤りトラックは横転する事となった。

 

「ッ、なんだ!何が起きた!?」

「わからねぇよ…!いきなり前が見えなくなって…!」

 

 困惑する彼等に追い討ちをかけるかの如く、トラックのボディがバキバキと音を立てながら引き剥がされる。

敵達の目に映ったのは車体をスクラップにして行く歩行戦車、そしてソレの上に立つ1人の女性ヒーローだった。

 

「敵グループの2名確保。抵抗すれば全体の10%の骨を折る事になるぞ」

 

 脅し文句と共に手に収められた銃火器を突き付けられた2人は即座に降参の意を込めた挙手を行う。約200ある骨の内、20本へし折ると言われれば仕方の無い事かもしれない。

 

「非致死性とは言えどヴィラン相手に砲弾撃ち込むとは…」

「相変わらず鬼だなシルバー・マルテース」

「馬鹿野郎。そこがイイんじゃないか」

「えっ」

 

 そんな彼女が保有する四足歩行戦車の陰から現れる複数の戦闘員(サイドキック)。見てくれは悪の女幹部とその部下達だがちゃんとしたヒーローである。

 

「お前達は車体内に潜んでいる敵達を……っ!」

 

 その瞬間、後方の箱型の荷台から巨大な腕が出現し戦車を殴り飛ばした。

 

「やりやがったなテメェ等ッ!」

 

 複数の腕を持つ巨体な異形系個性の敵が怒号と共にトラックより降りて来る。

シルバー・マルテースの自己負担(ポケットマネー)による歩行戦車と巨大ヴィランが戦闘を行う傍らで何人かの敵が逃走を始めた。

 

「今だ、行け行け!アイツ等に気を取られてる内に───」

「何処へ行く気だ?」

 

 敵達の背後から響く声。冥界の怪物が頭を掴み地に叩き付けた。双眸から放たれる威圧に怯えながらも敵は声を振り絞る。

 

「ギャ…ギャング・オルカ……ッ⁉︎」

「まさかとは思うが我々から逃げられると思ったのか?」

 

 組み伏せられる敵達。パワーが上である異形系相手に力で勝てる道理は無く、捕まった敵達には諦めの選択肢しか残されていなかった。

 

「残って居る敵は…!」

 

 そう言いかけたオルカの横から素早い何かが飛び出した。己が視界に映ったのは猛スピードで自転車を駆ける敵の1人であった。

 

「速っ⁉︎」

「自転車ってあんなスピード出たか⁉︎」

 

 サイドキック達が驚愕する中、二輪に跨る敵が嘲笑う。

 

「俺の個性は『サイクリング』ッ!一度(ひとたび)自転車に乗れば俺は無敵のロードバイカーと化すッ!」

「逃すかッ!」

 

 シルバーマルテースが放つ銃弾か自転車に跨る敵に向かって伸びるが、軽い身のこなしによって避けられてしまう。

 

「避けた⁉︎」

「なんだあの変態立体起動⁉︎」

「速度制限に縛られず、己が手脚の一部のように動かせる高い自転車こそ至高ッ!ヒーロー共のなまっちょろい攻撃なんぞ屁でもないわッ!」

 

 ギュイイ!とタイヤを鳴らし敵は更に自転車の速度を上げる。誰も追い付く事の出来ないスピードで全てを置いてけぼりにして行く。

※猛スピードによる自転車運転は違反の対象になるので悪しからず。

 

「ハハハ!抜いた!抜いたッ!俺は全てを抜き去ったッ!仲間達には悪いが金は全て俺の物だッ!」

「でも今時現金なんて古過ぎない?今は電子マネーの時代だよ」

「は?」

 

 横を向く。そこにはターザンの如き単振り子運動で自身と同程度のスピードで移動する赤いマスクのヒーローが居た。

 

「やぁこんにちは」

「え?」

「これ持ってて」

 

 そのヒーロー、Vスパイダーが一気前へ飛び出たかと思うと前方正面の位置に降り立つ。急な出来事に敵はその場に急停車。彼女(Vスパイダー)の手に収められた糸が胸元に張り付けられる。

 

「え、あ?ハァーーーーーーーッ!?」

 

 粘着性を持つ蜘蛛糸によって上方へ向かって引き上げられる敵。Vスパイダーは敵が持っていた頭陀袋を「よっ」と呟きながら受け止める。

 

「こっちもOK。MJ、シャチョー達の方は?」

《既に制圧済のようです》

「ん、了解。それじゃボク達も早く行こう…と思ったけど、この自転車どうしよう?」

 

 目の前にある敵が使っていたロードバイクを持ち上げ、Vスパイダーこと赤糸虫知朱は対処に困っていた。

 

「とりあえずウェブで壁に張り付けておくのでいいかな?」

《……検索完了。これと一致する自転車に盗難届が提出されています》

「え゛ あー、えーと……ねぇー!すみません誰かー!ペン持ってる人居るー?」

 

 周囲の人々に声を掛けを行う彼女。そんな彼女の元に連絡を知らせる為の通知が鳴る。

 

《チズ、ギャング・オルカより通信が入っています》

「え、シャチョーが?とりあえず繋げてMJ」

『スパイダー、そちらの敵が持っている袋に現金は入っていたか?』

「あー、それならハイ……ちょっと待ってください」

 

 ギャング・オルカの指示通り敵が持っていた袋の中身を確認する。そこには乱雑となっていながらも大量の貨幣が詰め込まれていた。

 

「シャチョー、現金ならちゃんと入って…」

《スキャン開始───鑑査の結果、この袋に入ってる紙幣は全て巧妙に造られた偽物です》

「偽物!?」

「オイ、偽物ってどう言う事だ!……いや待て、アイツかクソッ!」

 

 宙吊りとなった敵が苦言を吐き捨てる様子に赤糸虫は勿論の事、通話越しにオルカが苛立ちの声を上げる。

 

『どうやら相手側は一枚上手だったようだな』

「え、えっと……ボクはどうすれば良いんですかシャチョー」

『捕獲した敵については警察へ引き渡せ。後は自分の頭で考えろ』

 

 逃したであろう本命の敵はどうするのか?そのような赤糸虫の疑問に鼻を鳴らす。

 

『そちらについては既に手配済みだ…ただ、奴等がヘマをしなければ良いんだがな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な奴等だ。あんな堂々と街中を逃げるからヒーロー共に捕まるんだよ」

 

 ガシャン、と音を立てながら男はビルの屋上へ足を踏み入れる。敵グループの1人だった男は自分以外の者を囮に使い、本物の現金が入った袋を手に逃亡を試みていた。

 

最近になってこの区域、保須市はヒーロー殺しによる影響で個性犯罪が減少しており、そこに目をつけた敵達は徒党を組み銀行を襲撃した。

だからといってヒーロー達がそれを許す筈も無く自分以外は全員確保されると言った結果に終わる。

 

「ラッキーだな」

 

 男は喜んだ。本来は盗んだ金は山分けと決めていたのだが、数が減ってくれたお陰で現金は全て自分のモノとなった。嬉しい誤算だ。

 

「ありがとう、そしてじゃあなマヌケなヒーロー共……⁉︎」

 

 ヒーローに感謝の言葉を述べながらその場を後にしようとしたその時、言葉が途切れる。

 

「………」

 

 敵の前方に黒い人型のナニカが壁に張り付き、こちらを凝視していた。ジッとコチラを何も言わずに視ていたのだ。

 

まるで獲物を見定める獣の如く不気味な静けさを醸し出していたヒーローを前に敵は袋から手を放し、降参の意を示すかのように両手を挙げる。

 

「ハイハイ降参──するわきゃねぇだろがッ!

 

 服の下から拳銃を取り出すと同時に発砲を行う。

だが黒のコスチュームに身を包んだヒーローは飛び退き、視界から消える。

敵は物陰に身を潜めながら己の個性『偽物複製(レプリカコピー)*1を発動させ、作り出した弾丸を銃に装填する。

 

「何処だ!何処へ行きやがった…ッ!」

 

 周囲を見渡す敵。確かにそこに居る筈なのに誰も居ない、が音が聴こえる。

 

「クソ‼︎」

 

 縦横無尽に飛び回る相手に対し弾丸を撃ち込むが、どれも外れてしまう。急かす気持ちが勝ってしまったのか、相手が貯水タンクの裏側に隠れて居るのにも関わらず敵は尚も発砲を続けてしまう。

 

FLUSH(パシャァァッ!)!!

 

「う、おっ⁉︎」

 

 タンクの水を浴び、頭が冷えたのか本物の現金が詰まった袋を放り出す。金と己の身を天秤に掛けて保身を選んだヴィランは急足でヒーローから逃れようとするが、頭上から襲い掛かるヒーローは蝙蝠のように翼を模したマント(皮膜もどき)を広げ、敵の視界を遮る。

 

「おあ!?」

「フッ!」

 

 手に持った拳銃を弾き落とし、膝、腹と的確にダメージを与えた後に懐へ潜り込み投げ技を仕掛ける。

地面に叩きつけられる敵。

 

しかしその身を転がす先には壊れた柵。破砕音を鳴らしながらヴィランが屋上から飛び出てしまうその瞬間、グイッと指先から伸びる黒い紐状の物体が伸び、敵を拘束する。

 

「……」

「た、助けてくれ……!」

 

 絶妙なバランスで敵を捕縛したヒーロー、VENOM(ヴェノム)。そんな彼の手によって命が握られているヴィランは固い地面が広がる下へと落ちないよう身体を強張らせる。

 

「ま、待ってくれ…!頼む!」

 

 ガクンと身体の角度が傾き、眼前にアスファルト製の道路が近付いた。もはや自分の力で何とかなるものでは無い。

 

「俺に何をしろってんだ⁉︎」

恐れろ、恐怖を撒き散らせ

 

 その一言共に敵の身体がブワリと重力に沿って落ちる。

 

「う、うわああああああああああああああああッ!?」

 

 悲鳴が街の一角で轟く。絶叫を残しながら落下しているヴィランだったが身体が地面に触れる直前、グイッと上へ引っ張られる感覚が襲い掛かる。

 

「…ッ⁉︎ …!?」

 

 混乱する敵の眼前には先程、自分をビルの屋上から落としたヒーローであるヴェノムの姿が在った。

 

「はい、もう満足でしょ。バットマンムーブはカッコいいと思うけどリアルにやるのはNGだから」

『まだやり足りない。今度はロールシャッハって奴と同じ事をしてみたい』

「おいやめろ馬鹿」

「……?」

 

 コスチュームを身に纏った来正恭成とシンビオートの会話は第三者視点からでは独り言を呟いているようにしか見えない。

巻上機(ウインチ)のように敵を引き上げた彼等だったが、その敵を他所に口論を激しくする。

 

「本当はこんな事したくなかったんだよ!でも我儘言うから仕方なく譲歩してあげたんだよ⁉︎」

『そっちの都合中心の行動が気に入らない。こっち都合中心に変えろキョウセイ』

「いつも人の身体を乗っ取ってる癖して偉そうに言える立場じゃないでしょ君!」

 

「…おい!」

 

SNAP(ブチッ)

 

 そんなギスギスした空気に思わずヴィランが声を上げた瞬間、横から響く声により集中力が途切れてしまったのか。敵を掴んでいた箇所の部分が千切れた。

 

「は?」

『「あ」』

 

「え?……う、あああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ───」

『「………」』

 

 

 

 

『…勝手に足を滑らせたって事にしとくか?』

「それ良いアイデアかも」

 

 この後、ゴミ袋の山で気絶していた敵を無事に確保した。

 

 

 

 

 

 

「……で?申し開きはあるかヴェノム」

「違うんですシンビオートが勝手n「補導ォーーーーーーーッ!」

 

 やぁ皆、主人公だy…背中痛ァ!?…やぁ皆、巴投げされて背中が痛んでいる主人公だよ(震え声)

現在、僕は保須市にてヒーロー活動の職場体験をさせて貰ってます。今?今はギャングオルカに折檻されてます。まぁ事故とは言え敵を落としちゃったし仕方ないよね。

 

「来正君、大丈夫?」

「ヘーキヘーキ大丈夫…あ、ごめん待って。結構痛むから手貸して貰っていい?」

「うん」

 

 赤糸虫さんに手を貸して貰いながら立ち上がる。コンクリートの上で背負い投げは流石にアレだと思いますシャチョー。咄嗟にシンビオートを展開して衝撃を和らげてなかったら背骨にヒビが入ってたと思いますよシャチョー。

 

《相変わらず苦労なされている様子ですね。キョウセイ》

『結果的にオレ達が捕まえたからな。名誉の負傷って事で誇れ』

《その救い難いポジティブ精神、反面教師として見習わせてもらいます》

『ファッキュー』

《控えめに言ってタヒ()ね》

 

「ねぇ来正君。最近MJの言語学習プログラムについて色々と言いたい事があるんだけど」

「いや違うから、シンビオートが勝手に…」

「ちゃんとボクの目を見ながら言って欲しいんだけどな」

 

 これ絶対に僕の所為じゃないからね?百歩譲ったとしてもシンビオートの方に責任があるから(震え声)

だからそんなギラギラした目で見つめないでくださいお願いします。

 

「お前等の相棒達、相変わらず面白い漫才してるじゃねぇか。どうだ?これを機にチームアップを視野に入れてみたらどうだ?」

「チームアップ…ですか?」

 

 僕らに向かって放たれるイグニッションの言葉に赤糸虫さんは首を傾げた。チームアップと言うのは、簡単に言えば個人のヒーローが他のヒーロー複数人達と組み、X-menやAvengersのように団体(チーム)として活動する事…うん、まぁ文字通りそのままの意味だね。

 

でもそっかぁ、チームアップかぁ……。

 

「チームアップかぁ…えへへ…」

「えーと、とりあえず保留ですかね」

「えっ」

 

 驚愕する赤糸虫さんを他所に僕は言葉を続ける。

 

「チームアップと言ってもそれぞれ特性の違う個性を持ったヒーローと協力するのは難しいですし、パッと決めるのは良くないと思うので」

「成る程ねぇ…」

「まぁ1番の理由はシンビオートと息が合いそうな人と組めるか?って所なんですけど」

「「…あぁ(納得)」」

 

 うーん、イグニッションと赤糸虫さんが腑に落ちたような表情を浮かべてるけど、せめて否定して欲しかったなぁ(願望)

まぁでも、そもそもの話ギャング・オルカの元に来たのは確実に不足しているであろう協調性を学ぶ為だし仕方ないよネ、うん。仕方ない。

 

ppppp……!

 

『オイ、電話鳴ってるぞ』

「あ ホントだ。すみませんシャチョー、イグニッション。ちょっと失礼します!」

「手短かに済ませろ。あと今後ヒーロー活動中はマナーモードにしとけッ!」

「サーイエッサーッ!……あ、もしもし?」

 

『はぁい、どーも来正さん!私との共同開発で誕生したベイビーの調子は如何ですか⁉︎』

 

 この声、発目さんか!え、何で急に電話掛けて来たの?てっきり発明品(ベイビー)の制作に没頭してると思ってたんだけど。

 

『いやいや、私のベイビーが活躍していると思うと居ても立っても居られなくてですね!ちなみにコスチュームの方はどうでしょうか?』

「うん、バッチリだよ。寧ろ良好過ぎるくらい。正直言って今の僕等は誰にも負ける気がしない…ってのは言い過ぎだね」

『おお!それは手によりを掛けた甲斐があると言うものですね!』

「いやホント助かったよ。超高温の蒼炎に包まれたり、ブラキオサウルスに踏み潰されたり、盾(と言う名前のトンデモ兵器)でブン殴ったりと色々あったけど、めちゃくちゃ使えるねベイビー」

『来正さん…とりあえず帰ったら一発殴ります』

「えっ」

 

 直後、ブツリと無理矢理通話が切られてしまった……えっ、なんで?

 

「来正君、どうしたの?」

「発目さんから電話が来た」

「メイから?何の用だったのかな?」

「帰ったら殴ると言われたんだけど」

「え、なんで?」

「僕も知りたい」

 

SLAM!!

 

 そんな事を話している傍ら、音が響いて来た方向に僕等は注目する。そこには手錠を付けたままメイデンをこじ開けるヴィランの姿があった。

 

「こんな所に居られるかッ!」

 

 そう吐き捨て、敵は大きな跳躍を見せその場から逃げ去ろうとしてしまう。シャチョーのサイドキックの皆さんが撃ち落とそうとセメント弾を放つが一向に当たる気配が無い!

 

「…っ、シャチョー!」

「先の失態を挽回しろ。でなければヒーローとして恥を晒すまでだ」

 

 僕の言葉にギャング・オルカがそう応える。流石シャチョーっす!イケメン!素敵!抱いてください、その肉体で抱擁してください(真顔)

 

うん、取りあえず行くぞシンビオート!

 

『興奮して来たな…第二ラウンドの開始だ!』

 

 シンビオートの力によって脚にスプリングを形成し一気に跳ぶッ!

 

「あ、待って来正君!ボクも行くよ!」

「赤糸虫さん!」

『精々オレ達の足を引っ張ってくれるなよ?』

《コチラの台詞です》

 

「な!?着いて来んなッ!」

『やだね』

 

 驚愕の表情を浮かべる敵に向かって真っ直ぐ腕を伸ばす…が、その直後ヴィランが横方向へと軌道を変えた!?

 

『What's⁉︎ なんだ?アイツ何をした?』

「空中なのに、いきなり横へ飛んだ!?」

「ただ空を飛ぶ個性…って訳じゃなさそうだね!」

 

 こちらは追い掛ける形で建物の壁面を蹴りながら移動、糸によるスイングでの移動に対し相手側は空中を飛ぶ形で逃走を行なっている。

赤糸虫さんの言う通り、ただ空を飛行する個性としてなら先程の行動はあまりにも不自然だ。

 

先の違和感に訝しみながらも、僕は背中マウントしてあるデスペラードに手を伸ばす。

 

「個性を見極める為に色々やってみよう。赤糸虫さん、糸を沢山飛ばす事できる?」

「大丈夫!MJ、連射ウェブモード起動!」

《ウェブシューター、連射モードに変更します》

「空中だと踏ん張る地面が無い…最初から当たらない定で行くぞッ!」

『OK』

 

 照準を相手の背に合わせ、引き金に指を掛ける。

 

『SET』

「デスペラード式『黒指弾・乱射』ァ!」

 

BRRRRTTTTTTTTTTTTT!!!

 

「うおおおおおおおっ!?」

「うわ なんだあの動き、気持ち悪ッ!」

 

 僕と赤糸虫さんの攻撃は悉く避けられる。しかし、相手側の動きがなんか色々と凄い。変態的な立体起動で縦横無尽に宙を駆け回ってる感じだ。

アレ大丈夫なの?胃袋の内容物がシェイクされて色々とヤバそうに見えるんだけd…う゛、ヤバい。見ているこっちが酔ってしまいそうだ。

 

「ごめん赤糸虫さん」

「来正君?」

「マスクの中がビチャビチャでゲロで目前に差し掛かってる」

「来正君!?」

『オイやめろ、そんな汚いモノ オレにぶっ掛けるな』

 

 と、とにかく…!一刻も早く敵を捕まえた後にどっかの物陰で吐き出すとしよう。

 

「赤糸虫さん!先回りして(蜘蛛の巣)張っておいて!」

「分かった!」

「シンビオート、遠距離攻撃は難しい。なるべく近距離で勝負仕掛けるぞ!」

『空中戦は新鮮だ。興奮して仕方ないなァ!!』

 

 片腕が金砕棒に変化させ振るう。が、しかしそれを容易に躱す相手。今度は鎌を形成し切り裂こうとするがそれも回避される。ならばとシンビオートが牙を剥き出しにした顎を開き、噛み付きに行く。

だが、グン!と相手の飛行スピードが急激に上昇しガチン!と牙と牙が噛み合わさる音を残す結果となる。

 

『……がァァァァァアッ!!もう良いもう沢山だ!アイツは殺す!』

「落ち着け!まだ3発攻撃を躱されただけだぞ!」

『3発"も"だッ!』

 

 直後、シンビオートが2本の触手を左右のビル壁面へと伸ばし付着。グッと反動を付け、パチンコの要領で……あ、待って。それ今やるとやばああああああああああああああああああああああああああああああああああ゛ああああ゛あああああああっ!!!

 

「うお、危ねっ」

 

 しかも捨て身の特攻、簡単に避けられたし!いやちょっと待てよ?確かこの先って赤糸虫さんが糸を張り巡らせて待機してたような────

 

「よし!来正君、こっちは罠張り終え…「ぐばあっ⁉︎」…たんだけど、なんで蜘蛛の巣に突っ込んで来たの?」

「チギャウ…チギャウ。シンビオートが勝手に……」

 

 ヤバい、糸が発目さんお手製のスーツにへばり付いて中々剥がれないんだけど!あと赤糸虫さん、マスクしてるけどそんな冷たい視線を送るのはやめてくれマジで(被害妄想)

 

「なんだコイツ等…(呆れ) まぁ良い。さっさと逃げさせて貰う!」

「ああ、クソ!赤糸虫さん追跡を───」

 

 そう言おうとした瞬間、側方面より猛烈な勢いで飛んで来た何かが敵を蹴り飛ばした。アレは…!?

 

「ちょっと立ち寄ってみりゃぁ、肩慣らし相手には丁度良いじゃねぇか」

 

 白を基調としたスーツに黄色のアーマーとマフラーを羽織った小柄の老人。だがその俊敏さはとても老いているようには見えない。

そんな光景に僕等は驚愕の表情を浮かべていると、その高齢のヒーローはコチラに気付く。

 

「おい、そこの。これ()はお前等の獲物か?」

「えっ、あ、うん。はい」

「そうか、んじゃ悪いがコイツは俺達が貰って行く」

「ええ!?」

 

 そのヒーローの言葉に赤糸虫さんが声を上げる。いやすみません勘弁してください。ソイツ僕が捕まえないとシャチョーに折檻喰らうんです……いや、待てよ?今さっき俺"達"って……。

 

「く…そ、何なんだよテメェ等!よってたかって俺を囲みやがって……ッ!」

 

「───すみません、でも貴方は捕まえさせて貰います!」

 

 その声と共に飛び出して来たのは見覚えのある姿。彼は腕に力を込めて、一気にエネルギーを解き放つ。

 

SMAAAAASH!!

 

 エネルギーを纏った拳を振るうのは緑谷出久ことヒーロー『デク』。彼は力一杯のパンチをヴィランに向けて放ったのである。

緑谷君!緑谷君じゃないか!

 

『ようデク、オレ達の獲物を横取りとは良い度胸だな』

「え、シンビオート君?…って、もしかしてそこに居るのは来正君⁉︎」

「やぁ緑谷君、此処で会うとは奇遇だね。それとなんで蜘蛛の巣に引っかかってるのかは聞かないでマジで(懇願)」

「あ、うん」

 

 緑谷君は何か察したような表情を浮かべる。そう言えばお互いに新しいコスチュームを見るのは初めてだっけか。

うーん、僕のって瀬呂君や飯田君みたいに素顔が見えないタイプのスーツだからなぁ。そりゃパッと見は誰だか分からないよね。

 

「クソ、寄ってたかって俺を囲みやがって!」

「あ、逃げた!?」

 

 え、緑谷君の打撃をモロに受けてたのに まだ動けるのか⁉︎

ええい。今はそんな事どうでも良い!とにかくこっちが先に捕まえるチャンスだッ!

 

「うおおおおおッ!っし、剥がせたッ!シンビオート追いかけるぞ!」

『倍返しにしてやる!』

「倍返しって言うか自業自得だけどね」

 

 僕と並ぶように緑谷君も同じく飛び出す。ヒーロー志望同士、やっぱり考える事は同じだね!

そう考えていると緑谷君がコチラに声を掛けて来る。

 

「来正君、相手の個性は!?」

「ごめん分かんない!まだデータベースとの照合が済んでない上に情報が少ない!」

 

 警察側から敵の個性情報を送られる筈なんだけど、どうやら手間取ってるらしい。

 

「とりあえず、情報を引き出しながら戦うって事で!」

「勿論!」

『今は協力してやる。だがお前を蹴落としてやるからな!』

「シンビオート?」

『背後には気を付けるんだな。いつ刺されても大丈夫なように防刃チョッキでも買っておくんだな!』

「……来正君」

「違うから!シンビオートが勝手に!」

 

保須市にて、哀しそうなモノを見るような視線を送る緑谷君を前に僕は大きな声を上げる事となった。

*1
本物そっくりのコピーを作り出す個性。ただしオリジナルと比較しすると廉価版となってしまうぞ




この緑谷君は原作と比べて体育祭でフルカウルを習得してるので、肩慣らし目的でグラントリノと共に保須市に来ています。


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42話 違う!シンビオートが常備用レンガを!


ヴェノム・レットゼアビーカーネイジにスパイダーマンノーウェイホーム公開決定
や っ た ぜ



 縦横無尽に駆け巡る立体機動。三半規管が揺れに慣れて来た今も尚追跡していた。

……まぁどうせこの後吐き気がぶり返すんだろうけど。

 

「SMASH!」

「ひぃっ!」

「また外した⁉︎」

 

 緑谷君の蹴りが外れた。今までのタイプとは違った個性による動きに緑谷君と僕苦戦を強いられる。

爆豪君なら簡単に捕らえられるんだろうけどなぁ!

……しかしなんだろう、この既視感は。あの敵の動き何処かで見覚え…と言うか身に覚えがある気がするんだけど。

 

 

『クソ、上に落ちる変態が。落ちるならムッムッホァイと言いながら落ちろ』

「やめろ……ちょっと待って今何て言った?」

『ムッムッホァイ』

「違うそこじゃない」

 

 落ちる…?上に……()()()!?

そうか、入学初日に経験した個性テスト50m走(前へ落ちる変態事変)の時の!

だとすると相手の個性の正体は……!

 

「重力操作かッ!」

「重力?…あ、そうか!自分を対象に指向性引力!?」

 

 マジかよ僕の一言で全てを理解したんだけど緑谷君凄いなオイ。

まぁそれは置いといて……相手が空中を自由に動いている訳じゃないと分かったなら話は早い!

 

「緑谷君、僕等が誘導する!その隙に」

「分かった!決めるッ!」

「よし……シンビオート!最大加速で敵の頭上を捉えるぞッ!」

了解(ラージャ)

 

 次の瞬間、脚をバネのように見立て地面を蹴り付ける事で街ビルを大きく越す高さへ飛び跳ねた。

 

「シンビオート接続、標的固定(ターゲットロック)

 

 デスペラードに備え付けられたガングレイブユニットが展開。銃口が直下に居る敵へと向けられた。

 

『今日の天気は晴れ時々EASYなアイシクルフォール』

「3、2、1……SHOT!」

 

BRTTTTTTTTTTTTTT!

 

「うおおおおおおおおお!?」

 

 敵の頭上より降り注ぐ弾丸。当たれば一溜りも無い攻撃を避けるべく敵は弾幕の薄い所へと移動を開始する。

まぁそうだよね、面を活かした攻撃なら安地(安全地帯)へ逃げるのが普通だよね。誰だってそうする僕もそうする。

 

……まぁ、つまりはだ。

 

『まんまと誘き出されたなバーカ』

 

「──SMASH!!

「ぐぽ!?」

 

 最初からそこへ来る事を知っていた。故に空中戦闘が不慣れな緑谷君でも攻撃を与えるのは簡単な事だった。

よし作戦成功!後は確保するだけ……

 

『オイ、あの敵そのまま落ちてるぞ』

 

…………。

 

『ワァイ、トマトピューレの出来上がr「急いで助けるぞシンビオート!」チッ』

 

 この際なんで舌打ちしたかはさておき。今度こそヘマはしない、汚名返上の時だッ!

距離的には緑谷君の方が近い…本来なら緑谷君に任せたい所だけど、ごめんね。

 

「フィンガーネットォ!!」

「わ!?」

 

 緑谷君の横を無数の触手が伸び、そのまま絡み合い網へと形成。落下中の敵を見事キャッチする。よっしゃセーフ!

 

ゴシャ

 

ぐえっ

「あっ………ヨシ(現場猫) セーフ!」

「いやアウトだよ!!」

 

 勢いを殺したものの、地面のコンクリに背中をぶつけ網の中で悶える敵を前に緑谷君を声を荒げる

……ははは大丈夫大丈夫。シンビオートの治癒能力で治るんだしノーカンノーカン。実質ヘマはしてないから!

 

そう己に言い聞かせながら捕縛した敵を緑谷君と共に警察達と待機中のシャチョー等の元へと戻って行く。

…道中ずっと緑谷君から訝しんだ目を向けられていたのは気の所為だと思いたい。

 

 

 

 

 

「及第点。この程度で苦戦してるような蛆虫が本当にヒーローになれると思うかッッ!!」

「ぴえん」

 

 結局の所怒られた。シャチョー的には褒めてるつもりなんだろうけど心がツライです…でも敵を捕らえたのが緑谷君だった場合はもっと酷い事言われてたんだろうと容易に予想が付く。

 

「この無精卵!」

「すみません!」

 

 横でお爺さんヒーローに蹴られてる緑谷君を横目に僕は一種の安堵を覚える。ごめんよ緑谷君、職場体験が終わったら配布用に予備で書いてもらったギャング・オルカ事務所に所属してるヒーロー全員分の直筆サイン上げるから…!

 

『置き場所に困るだろ』

「緑谷君ならヘーキ大丈b「ところで誰だ君は」うわぁ!ビックリした!」

『そっちこそ誰だお前は』

 

 僕の側にいつの間にか峰田君サイズのお爺ちゃんヒーローが立っていた。え、知らない内にとか何この人?ヨーダ的な凄い人だったりするの?

そう思っていると横から赤糸虫さんことVスパイダーが小声で話しかけて来た。

 

「きせ…ヴェノム、挨拶を欠かすとシャチョーにドツかれちゃうよ…!」

「(そうだった、赤糸虫さんありがと!)ゆ、雄英高校出身の来正恭成です!ヒーロー名『VENOM』!! 好きなタイプは毛がフサめ(ケモ属性マシマシ)な人です!」

「来正君!?自分の性癖を暴露する意味は無いと思うよ来正君!」

『ヒーロー名乗ってるのに一気に犯罪者みたいな印象に変わったな』

 

 そんな、飯田君を習って全身全霊を込めて己を包み隠ずに自己紹介したのに!

 

「習う所間違ってるから!」

「お前の性癖に関しちゃどうでも良い、と言うかそれ以上触れたくないな」

「えっ(グラントリノが引いてる…⁉︎)」

 

「オイ、ちょっと聞きたい事あるんだが良いか?」

「えっ……えーと…」

「構わん、そのグラントリノと言うヒーローは高齢だが中々の才腕だ。今の内に色々と話しておくと良い」

「悪いな、コイツはちょっと借りたくてな…まぁ着いて来い」

 

 いや、着いて来いて。我、学生の身ぞ?職場体験させて貰ってるヒーロー未満が勝手な行動するのはどうかと思うんですが。そこら辺どうなんですシャチョー。

 

「許可する」

「アッハイ」

 

 良いんですかシャチョー。そこら辺はちょっと厳しくても…あ、いや何でもないです。何でもないので肩車投げの準備体勢に入るのはやめてください。

 

『オレは賛成。このガラクタを見ずに済む』

《右に同じく。反吐路外来種のエイリアンを視覚に映すのはバッテリーの無駄なので》

『消えろポンコツ』

《死ね有機生命体》

『FUCK』

《ドグサレ》

『お前がドグサレだ』

 

「…赤糸虫さん提案なんだけどさ、これ(職場体験)が終わったら両方発目さんに預けない?」

「ボクもそう考えてたところ」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

しばらく建物の屋根を伝うように跳び、移動すること数分。老年のヒーローは廃棄されたであろうビルの屋上で立ち止まると僕の方へと向き直る。

 

 

 

「こんな所に呼び出して悪いな小僧」

「いえ、気にしてませんので大丈夫ですよ。で、僕達は何故にこんなところに呼び出されたんでしょうか?」

 

この人とは面識が無い筈。だとすると考えられるのは…体育祭に関してかな?おまえのようなひよっこをヒーローと認める訳にはいかん!と言いながら変身しそう…あ、うん分かってる。変な事言ってる自覚はあるからそんな冷ややかな視線を向けるのはやめるんだシンビオート。

 

 

「まぁいい。俺ァまどろっこしいのは嫌いでな、直球で聞くぞ」

「はい?」

 

 

「お前、OFA(ワン・フォー・オール)って知ってるか?」

「ッ⁉︎ グラントリノ!」

「黙ってろ。で、知ってるのか?知らないのか?」

 

「いやそんな事言われても…それって『三銃士』の名言的な奴ですよね?アレクサンドル・デュマの小説の」

 

 大デュマ執筆の長編小説ダルタニャン(ダルタニアン)物語、その第一部に当たる大人気エピソードが三銃士。

ダルタニャンと三銃士であるアトス、ポルトス、アラミスが織りなすストーリー…で合っている筈だけど…うん、この何とも言えない微妙な反応は間違いないうちの個性の仕業だな(超速理解)

 

「成る程分かりました、いつものやつ(シンビオート案件)ですね」

『オイ』

「分かってますコイツが何かやらかしたんですよね」

『ふざけるな、俺の所為にするな』

 

 分かってる、分かってるから。シンビオートの下衆な性格は今更変えようの無い事実なんだからさ?こんなお年寄りに迷惑掛けて僕はスタンおじさんに顔向け出来ないよ…。

まぁ、とにかく何が言いたいかと言うとだね。

 

「頼むから僕を巻き込まないで、シンビオート責任取るんだよあくしろよ」

『喧嘩か?ヨシ、喧嘩だな。ブッ殺す』

「わー!わー!ちょっと物騒なのやめて!」

「……ふむ、その様子だとオメェ等。ホントに知らないんか?」

 

 そんなやり取りを見せている傍でグラントリノが怪訝そうな面向きを浮かべる。

 

「まぁ、にしてもだ。小僧の知り合いと聞いてみたものの思った以上に奇天烈な奴だった訳だな」

「奇天烈…」

『褒めてるのかソレ?』

 

 多分褒められてない。と言うか一向に話が見えて来ないんだけど。これもしかしなくとも長くなるヤツ?帰っていいかな(真顔)

 

「えっと、ほら前に来正君が僕の技をそっくりそのまま出したでしょ?ソレをグラントリノが気になって……」

「……あー、もしかして腕ぶっ壊したヤツ?」

『腕ぶっ壊したヤツだな』

 

 アレかー…、なんか知らない内に出て来た凄いヤツ……うん、ごめんよ。

 

「緑谷君、コイツ(シンビオート)に関しては半ば理解を諦めてるんだ。悪いけど力になれそうに無い…」

「諦めてるの!?」

 

 だってシンビオートの事調べれば調べる程なんか色々と分からなくなってくるんだよ。発現したての頃はタンパク質を貪り食うし、主食がチョコレートだったり、宿主の意思に反して勝手に身体を操るし。

人間が捕食対象内って知った時はもう考える事を放棄したからね僕。もはや個性と言うよりは個性の皮を被った爆弾なのでは…?

 

まぁ、それはさておき。あの時半分無意識でやってたから分からないけど、シンビオートは何か知ってたりする?

 

『真似た』

「は?」

『キョウセイがデクみたいなパワーを望んだ。だから真似してみた』

「……馬鹿にしてんの?」

『馬鹿にしてる』

「キレそう」

 

「……あー、ったく。こりゃ演技って線は無さそうだな」

「はい?演技?」

「あ、えっと!何でもない!何でもないから!」

『なんか怪しいなァ…おい。何を隠してる?』

 

 緑谷君のクソ大根芝居演技にシンビオートが御立腹の様子を見せる。まぁ確かに先程からの質問の意図が気掛かりなのは確か。

僕が放った捨て身の一撃と緑谷君が放つ必殺技の関係性は僕も分からない。けど何をそこまで慌てる必要があるのだろうか?別にやましい事をしてるわけでもあるまいし。

 

「一体僕達に何の用だったんですか?」

「あ、なんだって?」

「いや、僕らに対して何の意図があったんですか?」

「なに?誰だ君は」

「来正恭生です。いやだから…」

「なに?最近耳が遠くてな!」

「くぅ、最近の年寄りは…ッ!」

 

 おのれ、緑谷君とグラントリノはグルかッ!そこまでして僕に何を隠したいって言うんだ……!

 

『オラ、ジャンプしろジャンプ』

「ヒィ、勘弁してください。僕お金持ってません!」

『嘘を吐くなよ、お前の懐が暖かいのは既に分かりきってる。そら出すものを全部出してもらおうか』

「いやそっちは何をしてるの???」

 

 何でカツアゲしてんの?緑谷君達の隠し事って銭の事じゃないからね?と言うかヒーローがやっちゃダメな行為だからね?

と言うか緑谷君もシンビオートの言動に乗らなくていいから(良心) 甘やかすとトコトンつけ上がるからねこの寄生軟体生物。

 

「…ハッ⁉︎ごめん来正君、昔かっちゃん達にカツアゲされた記憶がフラッシュバックして来て……」

「すみませんでした(土下座)」

 

 いやホント、トラウマほじくり返すような真似してすみませんでした(五体投地)

やべぇよやべぇよ…緑谷君の闇の深い所(デリケートな部分)に触れちゃったよ…と言うか何してんだよ爆豪君!無駄に高スペックなのに何でそんなクソな性格してんだよ爆豪君!

ほら、謝って爆豪君!こう言う拗れた関係は早期に治さないと後々面倒臭くなるって知ってるんだからな!MARVELの鉄の男とか、慈善家社長とか、金持ちで天才なプレイボーイとかさ!

 

 

BOOOOM!!

 

 

「……えっ」

 

 側方より熱と光と轟音が広がる。一瞬ブチ切れた爆豪君がこちらの心の声を感じ取り大噴火を起こしたのかと思ったが違う。

あの炎の勢いと方向。交通事故等で起こるには不自然なモノ。

 

「これ、どう考えても…ッ⁉︎」

「人為的な爆発だなこりゃ。お前等は此処で待ってろ!」

「グラントリノ!?」

 

 ぎゅん!と音を鳴らしながら空を飛ぶ…いや、あの動きからすると足元から空気を噴出させて空中を移動しているようだ。そして僕等が困惑している間にその人は爆炎の向こう側へと消えてしまった。

 

『オイ、年寄りに任せてられないぞ。オレ達もすぐ行くぞ』

「でも此処で待ってろと言われたし、どうしようか緑谷く…!?」

 

視界を横へ移すが、先程までそこに居た筈の緑谷君の姿はなくなっていた。

み、緑谷君のヤツ…ソウルフレンドである僕に何も言わずに飛び出しやがった…!

何故だ!僕が手柄を横取りしたからなのか!当てつけのつもりなのかチクショーーッ!

 

「クソァ!こうなったらとっておきの賄賂(ヒーローのサイン色紙)で機嫌をとるしか…」

『…オイ』

「なに?言っとくけど緑谷君はチョコ如きで尻尾振るような真似はしないかr『何か来る』え?」

 

 直後傍にあった給水タンクの上に黒い靄が発生。直後渦のような形を作りヌッと見覚えのある人物が二人、その姿を現したのだ。間違いない…でも何で?何故このタイミングで⁉

 

どうして此処に”敵連合”が現れるんだッ⁉

 

「おーおー、派手にやってるなぁ」

「手配された脳無は合計3体。どれも雄英襲撃に使われたモノと比べ性能は劣りますが十分な被害を出せるかと」

「まぁいいさ、好きなだけ暴れさせろ。ついでにに"アレ"も試しておきたい」

 

 相手側の死界で息を潜める僕等。ヘルムに搭載されているマイク機能を作動させ、相手会話の録音・収集を行う。

こんな機能要る?と思ってた時での使い所さんだ、サンキュー発目(ハッメ)さん。

 

「しかしこんな所(保須市)でやる事が草の根運動とはなぁ、加えてヒーローブリーダー気取りとはヒーロー殺しも健気で泣けて来るねぇ…」

 

「…ッ!?」

 

 ヒーロー殺し…⁉︎まさか、あの『ヒーロー殺し』なのかッ!?

敵連合と繋がりがあるなんて聞いてないんだけど!

 

「しかしいいのですが弔? 彼を引き込めばかなりの戦力に…」

「気に入らないんだよ、世間は矜持やら信念やらと三文芝居が好きなヒーロー殺しに注目。なら、ぶっ壊すしかないだろ…見ろよこの街を。奴がここ一帯に一体どれ程の影響を与えたと思う? それが今じゃ悲鳴飛び交う

 

『なんか気持ちよく語ってるな。いい歳して恥ずかしくないのか?』(小声)

「シッ、見ちゃいけません」(小声)

 

 ああ言うのは一種の定式(お約束)みたいのだから!変身シーン中に攻撃するのが御法度みたいなのと同じヤツだから!

 

「ヒーロー、誇り、信念、矜持、正義…どれもこれも気に入らないんだよ。正しき社会やら真の平和やら俺にとっちゃ全部がくだらない戯言だ。俺達(敵連合)とヒーロー殺しとの大暴れ競争。面子と矜持をぶっ壊してやるぜ大先輩」

 

 こちらがその会話内容を録音しているとは知らず絶賛悦に浸かっている死柄木弔。なんだろう、物凄くイケない事をしてる気がして来た…え?相手は敵だから気にする必要は無いだって?

いや、何と言うかヒーロー以前に人として相手の恥部を盗み聞きしてるのが申し訳なくなって来るんだけど……まぁいいでしょう(マスターロゴス)

 

「はよ撤収しよ…」

 

ゴッ(クソデカ盾が支柱にぶつかる音)

 

「あっ」

『あ』

「あ?」

「…あ」

 

 直後、互いの視線が交わる事数秒経過。僕の全身からドッと冷や汗が噴き出る。

やべ、バレた!? い、いやまだだッ!幸いにも僕のコスチュームは全身を覆うタイプ。まだ正体がバレた訳じゃないのでセーフ!ここは馬鹿のフリ馬鹿のフリ…!赤の他人のフリ…!

 

「ハハッ やぁ僕キッセーマウス! こっちは愛犬のプルートゥさ!」(高音)

『イヌヌワン!』

 

「貴様 来正恭生ッ⁉︎ 先程までの会話を聞いたなコイツ!」

「あーーーーッ!」(正体バレて絶望する声)

「あーーーーッ!」(先程までの会話を聞かれて羞恥心が爆発する死柄木)

『あーーーーッ‼』(レンガブロックを投擲)

 

ゴシャ

 

「「あ゛あ゛あああ゛っっ!!」」(断末魔)

「あーーーーっ⁉」(シンビオートォ⁉)

 

 勢いのまま叫び、屋上から飛び降りる。やりやがった!マジかよこの野郎!やりやがったッ‼︎ あの場面でレンガ投げつけるか普通⁉︎

と言うか何でレンガブロック常備してるんだよコイツ、どっから出した‼︎

 

そんな悲痛の叫びを胸に僕等は炎によって照られされる保須に向かって飛び込んで行った。

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

 彼等が逃げ去った後、流血を顔から垂らしながら地に伏す敵連合のリーダーである死柄木弔はよろめきながら立ち上がる。

 

「クソ、またやりやがった…!オイ、黒霧。アレを使うぞ」

「死柄木ッ⁉︎ ですがアレはまだ未完成で…」

 

 血走った目を黒い靄に向け、有無を言わせない様子で彼は声を荒げた。

 

「いいやそれでもだ。先生に繋げろ 『ライオット』を解き放て…ッ!」

 

 





投稿遅れてすみませんでした。いやホントリアルが忙しくて…
MCU作品の再活動化やスパイディ、ヴェノムの新作映画によりモチベーションが上がったので執筆活動の方を再開させていただきます。


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43話 違う!僕の知ってるシンビオートじゃない!


2022年あけましておめでとうございます。
スパイダーマン ノー・ウェイ・ホームを観に行きましたが、皆さんは観に行かれましたか?
自分ですか?観終わった後の楽しさと喪失感とテンションで頭がおかしくなりそうでした。まぁつまり面白いから観に行け!あとネタバレは見ない方が100倍は面白くなるぞ!(当社比)



 炎に包まれる街道、瓦礫と化す建築物。とても平和とはかけ離れた保須市は怪人の手によって地獄の門が開かれた。

 

「消化活動と避難を優先しろ!まずは市民の安全からだ!」

「誰か!水系の個性持ちはいるか!」

「クソ、なんなんだコイツ!人としての強さから逸脱してるぞ!」

 

 重要器官である大脳を剥き出しにした異形の怪物。並のパワー増強型個性では太刀打ち出来ないパワーに、その体格から繰り出されるとは思えないスピード。加えてその個性等とはとても噛み合うとは思えない再生能力により保須市のヒーロー達は苦戦を強いられている。

 

「コイツ等、まさか…USJに居た…ッ⁉︎」

 

 その場面を目撃したヒーロー『デク』こと緑谷出久はその時の光景と眼前の現場を重ねた。あの時はオールマイトに加えて来正恭成の機転により何とか乗り換える事が出来た。

だが、そんな怪物が再び目の前に現れてしまった。

 

直後、側のガードレールにガシャンと音を立てながらヒーローが激突した。目の前の脳無によって投げ飛ばされたのだろうと容易に想像できる。

 

「大丈夫ですか…「逃げろ!」ッ!」

 

 瞬間、こちらを捕捉した脳無がその巨体を動かし迫って来る。緑谷は咄嗟にOFAフルカウルを発動させ手負いのヒーローと共に退避する。

 

「危な……ッ⁉︎」

 

 回避したのも束の間、停止させてあった乗用車が脳無の怪力によって持ち上げられそのままこちらに向かって投げ飛ばされる。

地に足が着いてない現状では避ける術が無い。フルカウルによって跳躍回避したのが仇となりせめて手負いのヒーローは守ろうと緑谷自身が盾になろうとした、その瞬間。

 

『GUOOOOOOOOOOOO!!!! 』

「えっ!?」

 

 自身の目の前に脳無とは違う黒い怪物が空より降り立ち、車を受け止めたのだ。

 

『いい車だが傷がついてる。返品だ』

 

 そのまま力任せに車を投げ返し、脳無は鉄の塊に挟まれる形で建物の壁面に叩き付けられる。

脳無を捻じ伏せたパワーを前に立ち尽くす緑谷。そんな彼に向き直る形でその黒い怪物は顎を大きく開き、唾液を垂らしながら言葉を放つ。

 

『よう、デク。さっきはよくも置いて行ってくれたな』

「シンビオート君!」

 

 歓喜の声を上げる緑谷。雄英高校一年の中で屈指の実力とヤバい性格を兼ね備え、雄英体育祭のやべーヤツともっぱら評判の人物(?)である。尚、宿主(主人公)の方がおまけ扱いされてるのは言うまでも無い。

 

「ありがとう、助かったよ」

『ご機嫌取りのつもりか?その程度でオレが素直になるとは思わない事だな』

「いやいや、本心だよ!シンビオート君のフィジカルなら脳無に対抗出来るし、いざとなれば内側から無力化する事もできる!今この場に於いてとても頼りになるんだよ……って、あのシンビオート君?何でそんなに口を大きく開いてるの?」

『オレは根に持つタイプだ。さっきはよくも置いていってくれたな』

「えっ」

『まぁいい今回は食事で勘弁してやる、ありがたく思えよ』

「いや、あの、何を言っt───」

 

ガチュッ

 

 直後、緑谷出久の上半身が丸ごと齧られる事となった。数秒経過した後、ペッと液体塗れとなった緑谷が雑に吐き出される。

 

「お、おい!なんかヤバいのがもう一体増えたぞ⁉︎」

「アレは敵か⁉︎敵なのか⁉︎」

「…い、いや相対的にギリ敵じゃないっぽい!」

「大丈夫だ!アレは敵っぽいがちゃんとしたヒーロー(候補生)だ!」

「ヒーロー…ヒーローの姿か?アレが?」

 

『いい感じにギャラリーが増えてきたな』

「…解せぬ」

「げ、元気出して来正君……」

「慰めはよしてくれよ…(絶望)」

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

 やぁ皆、大分この扱いに慣れてきた主人公だよ。もう、ね。キャップのように高潔な戦士側にはもう戻れないんだなぁって思うようになってきたよ。

…え?元から高潔な戦士からほど遠いだって?うっせえシンビオート嗾けるぞ(脅し)

 

「緑谷君、状況は?」

「脳無だ。USJの時にでた怪人が現れた」

「やっぱり敵連合の仕業か」

「あとシンビオート君に齧られた」

「うん、それについてはごめん。一種の愛情表現として捉えてもらえると…」

「無理がある!」

 

 情報っを耳に入れながらも負傷したヒーローの治癒を行っていく。あ、ビックリしてるようですがこう見えてヒーラーも兼任できるんですよ。

さて投げ返した車で攻撃を与えたところでそう簡単にくたばる筈もなく怪人は乗用車を破壊しながら負ったダメージを再生させて行く。

 

「やっぱ再生か…USJのヤツと比べてショック吸収は無さそうだけど」

「簡単には倒せないね。となると捕縛による無力化!」

「…なら!」

『アレで行くか!』

 

 両腕に黒い流体を纏い腕を地に突き刺す。直後、脳無の足元から無数の触手が伸び雁字搦めにする。そして……

 

『「Biting Binding‼︎」』

 

 虎鋏となって身体中へ喰らい付く。最初に使った頃と比べて技の精度も上がったお陰か虎鋏自体の数も増えており脳無をガッチリと固定させる事が出来た。

よし、あとはこれで……。

これで………。

 

「凄い!いつの間にこんな必殺技を」

「緑谷君」

「なに来正君?」

「いやこの後どうしよう」

「来正君!?」

 

 いやごめん、無力化する事は出来たんだけどさ。これ僕自身が動けないヤツだ。

やべぇよ、やべぇよ。結構格好つけた割に凄いカッコ悪い状況に陥ってるんだけど。此処以外にも敵が居るのに、僕だけこの状態って結構キツイ。

 

「────!!!」

「待って来正君!アイツまだ!」

「…⁉︎ 動けるのか、その状態で!」

 

 流石は脳無と言うべきか、それともまだまだBitingBindingの練度が低い為なのか。拘束されてる筈の黒の怪人は未だ健在。その巨体を動かし始める。

 

『クソ!熱い!力が入らない!力が抜ける!』

「…! 火事のせいでシンビオート君が弱体化してるのか!」

「こう言う時に限って……ッ!」

 

 不味い、此処一帯は火の回りが早いからか避難が済んで無い!それに負傷したヒーロー達も居る!

 

耐熱性のコスチュームを纏っているとは言え、拘束技を使用すると自ずとシンビオートを体外に出す事になるので熱に晒されるのは当然なのだろう。ブチブチと音を鳴らしながらシンビオートの拘束を引きちぎりこちらに向かってにじり寄って来る脳無。咄嗟に戦闘体勢に入る緑谷君が僕の前へ出た…その時だ。

 

「背中ちょっと失礼!」

 

 突如として空から落ちて来た赤糸虫さんが脳無の顔面、両腕に向かって糸を放出。加えてその白い手綱を巧みに操り怪人を無理矢理従わそうとする姿が僕等の視界に映る。

 

「赤糸虫さん‼︎」

「ごめん、見つけるのに手間取った!…って、ホラ大人しくお牛さん。ロデオの時間だよ!」

「────!!」

 

 ズガン!と音を立て建物に衝突して行く脳無。視界が良好じゃない今が好機と考えたのか緑谷君が駆け出す。

それに対し僕は手に持った大盾を放り投げる。

 

『叩いても蹴っても無駄だ』

「これを!」

「!」

 

 宙を舞うデスペラード。それに向かって緑谷君はオーバーヘッドの体勢に入って…あっあっ、待って緑谷君それ足蹴にするのやめてせめて投げるとかそう言う形にしてくれると嬉しいんだけどいやちょっと待っt

 

「SMASH‼︎」

「僕の盾ェェエエエ!!」

 

 ゴシャァ!と言うか音と共に脳無に向かって放たれる鉄の塊。デスペラードの機能の一つであるハサミ(シザーグラップル)が展開する。

…って、それよりも!

 

「赤糸虫さん避けて避けて避けてェェーーーー!」

「え、あ、うおあッ⁉︎」

 

 飛んで来たハサミ付き大盾に驚きながらもソレを巧みに躱す彼女。そのままシザーグラップルは脳無の喉元を捉え、壁に固定される結果となった。

 

んー…蹴られたのはアレだけどまぁ結果オーライだね、ヨシ!(現場猫)

 

「あー、ビックリした。せめて一声掛けてくれてもいいんじゃない?」

「う、ごめん…」

「まぁまぁ…その、ありがとう赤糸虫さん!お陰で助かったよ」

「どういたしまして。Aクラスの…あー、腕を良く壊してた〜…そのー…あー…」

「緑谷です」

「そうそう緑谷君。勿論知ってたよ うん勿論」

《別クラスとの交流も殆どない状態で顔と名前を一致させる記憶を持つ確率は26%。恥じる必要はありません》

「んん゛っ そうだねMJ。42%うん、まぁ半々だねうん。勿論ボクは覚えてたけどね?」

 

 余裕そうに見えるけどマスクの下は思い切り引き攣った顔になってるんだろうなぁ。そう思っていると身体が勝手に操られる感覚が襲い掛かってきた。ってアレ?脳無の方に歩み寄ってるんだけどシンビオート、どうしたシンビオート?

 

『それじゃあお楽しみの時間だ。今からのスケジュールはアイツの首から上を刎ねた後、楽しいセパタクローの開始だ。Here we go』

「ノー!ノーゴー!」

 

 アカンて!流石に首チョンパはアカンてシンビオート!せめて周囲の目は気に掛けて???

 

『………』

 

 俺がそう言うとシンビオートが顔を出し、左右をゆっくり眺める。

 

『…少しならバレへんか』

「オイこのたわけを囲め!」

 

 僕の合図と共にすぐさま駆け付けてくれる2人。やっぱり持つべきものは(共にトラブルを解決してくれる)友達だよね!

特に緑谷君、君は友人の中で最も常識に近い枠組なんだ。逃さんぞ(鉄の意志)

 

『オイ、まだ何もしていない!これがヒーローのやる事か?』

「まず首を刎ねようとする時点でヒーローのやる事じゃないんだよ!」

 

「…あ、あの来正…君?」

「何⁉︎今取り込み中なんだけど赤糸虫さん!」

「そ、その足元のって……」

 

 足元?赤糸虫さんの言葉通りに下の方へ視線を向けるとサッカーボールみたいな黒い何かが転がっていた。

え、なにこれ?黒焦げになった塊かなにか?僕とシンビオートが頭を傾げていると緑谷君が惜しげもなく拾う。

 

「えっと…一体なんだろ」

『誰かの排泄物かもな、こんなにデカいんだ。怪人のモノかもしれない。捨てておけ』

「いや流石に脳無のウ○コな訳が……」

「はは、ちょっと。流石にここで下品な話はやめて…ほ…し…」

 

 ふと空気が凍る。よくよく見るとそのボールのように見えた何かはピンク色のブヨブヨしたモノと立派に目立つ歯と下顎によって構成されていた。

とどのつまり今、緑谷君が持っているのは───

 

《診断完了。脳無の頭部と見受けられm》

「うわあああああああああッ!」(生首を投げる緑谷)

『NICE CATCH』(口で受け止めるシンビオート)

「ヤメロォ‼︎」(蹴りを入れる来正)

 

 危なッ‼︎危ね、危ないなッ⁉︎ 下手をすればあのままシンビオートが脳無(生首)を飲み込んで俺の栄養素になる所だった‼︎

 

「と言うかシンビオートお前!やったな‼︎遂にやったのかッ⁉︎ アレ程やめろと言ったのにやったのかお前‼︎」

『何がだ』

「サッカーやるが為に首切り落とすってお前!ボールは友達だろうが!友達の首を切り落としちゃ駄目だろうがッ!」

『よし分かった。落ち着け』

 

 直後、僕に急接近するシンビオー…とごッ⁉︎ こ、こいつ…頭突きしてきやがった…⁉︎

 

『悪かった。だが頭が冷えただろ?』

「ん、あ〜…まぁ一応」

『それじゃ治してやる…と、その前にもう1発』

「え、何を言っtグボァ⁉︎」

 

 こ、こいつ…治せるからってグーで殴るのは無いだろグーは…ッ!

 

「き、来正君!」

「ごめん待って。今顔面が痛くて仕方ないの」

「違うよ!脳無が…!」

 

 そう言って注がれた視線の先には首から上を無くした脳無。だが、ブクブクと肉を形成していき頭部が復活していく様子を見せる。

そうか、そう言う事か!この脳無、自分で()()()()()()()()()()()()()ッ!

 

拘束から逃れる為とは言え、ここまでやるのか⁉︎…いや、USJの時みたいに脳無ならやりかねないか。

 

「ゴオオオオオッ!」

 

 直後、脳無が近くに設置してあった大きいヒューム管を持ち上げて…って、マジか⁉︎もしかしてそれ等全部投げてくるつもりか⁉︎

 

「2人共避け…『おい後ろ!』ッ⁉︎」

 

 そう言われて気づく。僕等の後方にはまだ避難出来てない市民の姿があったのだ。不味い!このまま避ければ後ろの人達に被害が!

 

「シンビオート大盾だッ!」

『この火の中でか!』

「来正君!」

 

 緑谷君の合図と共に、飛ばされて来た土管に対し盾と蹴りで軌道をズラす。

そうする事で避難中の市民達に当たらずに済んだ…と思ったその時。

 

グワン!!

 

 飛ばされたヒューム管がタワークレーンに激突し、そのバランスを崩して行く。

 

「おい、おいおいおい!嘘でしょ⁉︎ 何で軌道を逸らした方向に丁度良くクレーンがあるんだ⁉︎」

「不味いよ!このままじゃ下の人達に被害が!」

「ボクが行く!」

 

 糸を伸ばしながらクレーンに向かって行く赤糸虫さん。建ち並ぶビルと繋げるようにウェブを飛ばして行くけどブチブチと嫌な音を立てながらクレーンの落下は止まらない。ああ、クソ!シンビオート、全力全開だ!

 

「おおおおおおおおおおおッ!」

 

Clash(ガシャアン)

 

eek!eek!(ワー!ワー!)

 

 逃げ惑う市民達が潰されないように咄嗟にクレーンの下に行って、シンビオート全開で支えてるけど…ッ!これ、辛い…ッ!

 

「あ、あんた…」

『黙れ!俺達に話しかけるならサッサとここから消えろ!そうでもしなければその程度の低い脳を貪り食うぞッ‼︎』

「ひぃッ⁉︎」

 

 シンビオートォ!色々言いたい事あるけど今はナイス!でも不味い…!このままじゃ……ッ!

 

「フルカウル…5%‼︎」

「MJ、スーツの機能出力増加!」

《筋力増強モードに移行。活動限界時間は30秒》

 

 すると2人が僕と同じようにクレーンを支え、グググと持ち上がる。これで何とか避難が済めば……⁉︎

 

『オイ、あいつこっちに向かって来てる!』

「嘘でしょ⁉︎今見ての通り手一杯なのに!」

「う〜〜〜ッ!MJ、避難完了までどれくらい⁉︎」

《避難まで推定2分。脳無の攻撃開始まで20秒。そして最後に筋力増強モード限界まで残り10秒を切りました》

「それ…っ、今日で1番…っ、サイコーな…っ、報告だね…ッ!」

 

 直後、ガクンと重みが増すクレーン。そしてどこからかブチリと響く音。ヤバい…!赤糸虫さんのスーツが限界に達してるのに加えて、ここからじゃ見えないけどウェブが切れ始めてる⁉︎

 

「ゴアアアアアアアアア!!」

「き、来たッ!」

「やばいやばいやばいやばいやばい!」

「あああクソッ!せめて最期は毛深いメス獣人に抱かれた後に腹上死で一生を遂げたかったぁあああああああッ!」

「「…⁉︎」」

 

 襲い掛かる脳無。ただでさえ絶体絶命の危機的状況下なのに追い討ちをかけるかのようにクレーンに押し潰されるか敵に迫られる。

そんな最中だ。脳無の横から何かが割り込んでくるのを目撃する。あの姿を僕等は知っている!

 

おの猛々しくも雄々しい黒き冥界の刺客。純白のスーツを纏ったそのヒーローを!

 

「勝手な戦闘!勝手な判断!だがよく持ち堪えたッ!」

「シャ、シャチョー‼︎」

「ギャング・オルカッ!…って、来正君!やばいやばいやばい!クレーン崩れて来てる⁉︎」

「ああクソ、マジか!」

 

 ミシミシと響くクレーン。重量に加え僕等が受け止めた瞬間の衝撃により機械そのものが壊れ、崩れて来ているのだろう。いや分析してる場合じゃない!これ本当にヤバいって!

 

「シルバー!下から支えろ! イグニッションは他のサイドキック達と共にクレーンそのものの補修!」

『了解ッ!』

 

 一斉に応える声が響くと同時にドッと人が押し寄せる。その1人1人がギャング・オルカ事務所の部下(サイドキック)達だ。

その十を超すヒーロー達の登場と共にふと、僕等に掛かっていた筈の重量が軽くなる…と言うか重さが無くなった?

 

『違う、上だ見ろ。鉄性のゲテモノが手を貸してくれている』

「上…って、うおっ何これ⁉︎」

「ロボット⁉︎」

 

 上にはシルバーが所有している歩行戦車よりも更に大きく、更にゴツく、レッドカラーを主体としたマシンがクレーンを持ち上げていた。

何これカッコいいんだけど‼︎

 

「ヴェノム 、スパイダー。どうやら無事のようだな」

「あ、シルバー!はい何とか」

 

 僕等の前に巨大なマシンから降り立つシルバー。

うおっ⁉︎なんかデカいの投げて来た…ってこれ、僕のデスペラード!

 

「忘れ物だヴェノム 、よくもまぁそんな目立つ物を落とすな。前も無くしかけたと聞いたが?」

「いや、その…投擲武器としての応用が効きすぎる弊害と言いますか…いやそんな事よりも!この赤くてカッコいいゴツゴツしたヤツなんですか⁉︎」

「多目的対応多脚蜘蛛型戦車『SP//dr(スパイダー)』ウチの知り合いが製作したモノだが火力武装がほぼ無いのが気に入らないがな…全くアイツめ」

「それでもこんな取っておきがあるなんて凄いですよ!いいなぁ!将来的にアレみたいなヤツ、僕も所有出来ますかね⁉︎」

「ヒーロー専用特殊サポートマシン免許を取得すればな」

「よし!それじゃ僕絶対受けます!そして免許絶対に取ります!」

「来正君、ウチ(雄英)ん所のロボットみたいの欲しいの⁉︎」

『専用の武器がある癖に貪欲なヤツ』

「…専用の武器…そうか…」

 

 ん?シルバーマルテースがなんかこっち見てるけど一体どうしたんだろうか。そう考えてると赤糸虫さんが呟く。

 

「……うーん?あのデザイン何故かメイのと似てるような…と言うか大元的なデザイン風味が…」

「赤糸虫さん?」

「いやでもどうなんだろう、メイの性格を考えると…あ、いやでも」

「おーい、赤糸虫さん一体どうsムグッ⁉︎」

Shut up(黙ってて)

 

 いや、あの…ハイすみませんでした。口元にウェブを射出され黙る僕。情けねぇ…よりにもよってAIに(なじ)られるとは…なんか目の奥が熱くなって来た。

 

『おい、この歳で泣くなみっともない…慰めてやるから機嫌直せ。ヨシヨシ心無い機械に罵られて可哀想でちゅねぇ〜』

「キレそう」

「まぁまぁ」

 

 ロケット・ラクーンばりの毒舌をかまして来るシンビオート。これはもしかするとコイツなりの励ましかもしれない。

…いや前言撤回、コイツわざとやってるわ。

 

シンビオートに訝しんだ目を向けていると、ドゴン!と大きな音が轟く。音の発生源に顔を向けるとそこにはSP//drの側面に打ち付けられたギャングオルカが居た。

 

「ギャングオルカが!」

「ボク等も加勢しないと…!」

 

 そう言いながら緑谷君と赤糸虫さんと共に前へ出ようとするが、シルバーマルテースが制止して来る。すると炎の噴射で空を飛ぶイグニッションがギャングオルカに向かって告げる。

 

「手を貸そうかシャチョー?何なら俺が代わって戦うのもアリだと思うぜ?」

「いいや必要ない」

 

 一言そう返すとシャチョーは携帯していたペットボトルの中身()を浴びた後、脳無を見据える。

 

「パワー、スタミナ、タフネスどれもが高水準に加えて再生能力が厄介だ───」

 

そのまま獣のように四足歩行で迫る怪人。それに対してギャングオルカは半歩横にズレ腕を突き出す。

 

「が、その程度でヒーローを下せると思っているのか?」

 

 直後、脳無の頭を掴むとそのまま地面に打ち付けた!すると有無を言わさない連撃が頭部に集中して襲い掛かる。

 

「痛みは受けない。傷は回復する。ならば動きそのものを司る脳そのものにショックを与え続ければどうなると思う?」

「────ッ!」

「遅い」

 

 オルカの言葉を理解したのか定かではないが抵抗を試みようとした脳無は腕を振りかぶるがそれを押し退けるかの如く、トドメの超音波が直撃する。

 

嘘でしょ…(ススガ感) USJの個体に比べて弱いとは言え脳無を圧倒した…⁉︎

 

「驚いている様だが、コレはあくまで事前より警察から脳無の情報を伝えられていた為対処出来たに過ぎん」

「あー、なる…ほど?」

 

 そうか、USJで出現した脳無。その情報が伝達されていた訳ね、異形系特有のパワーに加えて+された再生能力の事を事前に知ってたからシャチョーは頭に攻撃を集中させていたのか。

そうでなければ気絶させて倒すなんてやらないだろうしね。

 

「まぁ何にせよだ。一般的にUSJでの出来事は伏せられているがお前達が貢献してくれていた事に関しても知っている…よくやったな」

 

 と、僕の頭にシャチョーの手が乗る。

 

…………………………。

 

「……だがッ!こちらに報告も無しに勝手に行動を起こした事に関しては許されると思うなッ!赤糸虫を先行させていなければどうなっていたか最悪のケースを考えろ!分かったかゴミムシ以下のプランクトン!」

「……」

「おい聞いてるのかプランクトン!」

「……ハッ⁉︎ すみませんサー!頭に乗ったハリとツヤと弾力のある感触の余韻に浸ってましたシャチョー」

「!?」

「分かる。軽くシットリしてると尚良い」

「いい…」

「!?」

 

 僕とシルバー、同じギャングオルカファンクラブの会員同士。長くは語らない。シャチョーの肌触りいいよね……(玄人感)

 

「相変わらずだね来正君」

『そう言うお前こそ相変わらず独断専行が過ぎるな、空飛ぶ年寄りはどうした?』

「あっ」

『…デクお前マジか』

 

 半ば呆れたような声を上げるシンビオート。すると緑谷君は全身に汗を流しながらスマホを慌ただしく取り出す。

 

「やばい、やばいやばいやばいよ!れれれ連絡しとかないと!ああクソこの足めッ震えるのやめろッ!」

「どうした緑谷君⁉︎」

 

 なんか尋常じゃないレベルで震えてるんだけど、え、なに?生まれたての小鹿か何か?その新しいコスチュームにバイブレーション機能でも搭載されてたりするの?

 

「待て。これに関しては敵出現による弊害だ。事故により分断された為にこちらで保護しておいたと我々が連絡を入れよう」

「シャチョ-ミズカラガ!?」

「サスガダァ」

 

 そうすると徐にスマホを取り出すシャチョー。あ、そうだ。グラントリノさんに色々伝えておかないと。

 

「失礼しますシャチョー、ちょっとしか話してないだけの間柄ですけど言伝をお願いしたいのですが」

「む?なんだ言ってみろ」

「はい。保須市に敵連合の出現と同時にヒーロー殺しと協力関係にある事が分かったので注意してくださいと伝えてもらっていいですか?…あれ?皆、どうかしました?」

 

 シャチョーどうしたんですかスマホ落としましたよ?と言うか皆もどうしたの?急に固まって。なに?全員してパントマイム?もしくは時間停止ごっこ?

 

「……で、伝達ゥゥッ!保須市周域のヒーロー達に呼びかけろ!」

「シャチョー⁉︎」

「お前なァ!そう言うのは早く言えよ!つーか重大な事をサラッと口にしてんじゃねぇ!」

「いやこの状況では早い報告とも判断できる!」

 

 一気に慌ただしくなるヒーロー達。あれ?もしかしてヒーロー殺しに関して僕言うの忘れてた?

 

『完全に言ってなかったな』

「マジかー…言うの忘れてたかー……ちょっと待って?もしかするとシンビオート覚えてた?」

『ああ、もちろん。いつ言うのか側で楽しみに待っていた』

覚えてるなら言えよお前ェェッ‼︎

 

 コイツ確実に分かってて言わなかっただろ!はー、クソクソ。この黒塗り畜生寄生生命体がよ…!

 

『完全に忘れてるお前が悪い。甘やかさないよう逆に敢えて言わなかったオレに感謝しろ……ッ⁉︎』

「キレそう(真顔) お前帰ったら瓶に詰め込んで電子レンジの中に突っ込んで……ッ⁉︎」

 

「…来正君?」

 

 ふと僕の身体の奥底から引っ張られるような感覚が襲いかかる。まるで磁石のS極とN極が引き寄せ合うように、はたまた強く伸ばされたゴムが元の形に戻るような感覚が髄の奥から響く。

 

「――誰だ」

Who(誰だ)

 

誰だ/Who

 

『「Who are You(お前は誰だ)」』

 

 視線を向けたそこにあるのは無惨にひしゃげた自動車、建物の残骸そして移動牢(メイデン)に収容された脳無───!?

 

「ギャング・オルカ‼︎脳無だッ!脳無の中に何かがいるッ‼︎」

「何ッ!?」

 

CLAAAAAAAAASH!!!

 

「うおッ⁉︎」

「くっ」

 

 なんだ⁉︎急にメイデンが爆散したぞ!まるで内側からとんでもない圧を掛けられたように…!アマゾンズか⁉︎チヒロォ!がオリジナルに覚醒したのか⁉︎

 

 シャチョーは大きな体格を利用する事で自身を盾に緑谷君を、僕はシンビオートをドーム状に形成する事で赤糸虫さんを飛んで来たメイデンの残骸から守る。

傷付いた白黒の皮膚のギャングオルカは僕等に向かって声を上げる。

 

「くっ、全員無事かッ!」

「はい!大丈夫、大丈夫です…けど…!」

「なんだ…アレ……⁉︎」

 

 メイデンから出て来る脳無だがゴポゴポと音を立て、白い流動体が口、皮膚、脳溝と様々な箇所から溢れ出る。

やがてその白濁色のソレは脳無全体を包み込むように広がり頭部全体を覆い尽くすとギラリと大きく開いた双眼に拷問器具の如く鋭く並んだ牙を形成する。

 

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!

 

「な、なんで…⁉︎」

 

 たった1つの雄叫びが街を喧騒たる様へ変える。

ギャングオルカ達と対峙する白い怪人の凶相、それは彼等を困惑させる事となる。

 

『Aa…ァ……あ……a ア im……』

 

 何故なら恭成達の前に立つそれはシンビオートと瓜二つな姿をしていたからだ。

 

I'm…Riot(ライオット)……ッ!!

 





〜〜キャラクター紹介〜〜

『来正恭成』
ご存じの通りの主人公。死の間際に毛深いメス獣人に抱かれた後に腹上死で一生を遂げると言う欲望に満ちた言葉を上げた。業が深いぞ(確信)

『シンビオート』
最近、MCU入りしたとされる黒の寄生生物。SONYとMCUでどのような道筋を辿るかとても楽しみ。

『赤糸虫知朱』
来正と同じ職場体験先のスパイダーガール学生。火力こそ低いものの、汎用性や機動力、頭脳と他ヒーローと比べて頭一つ抜けている。来正の性癖のカミングアウトについて酷く驚いた。

『緑谷出久』
誰もが知る原作主人公。最近闇堕ちしかけた姿がめちゃくちゃ格好良かった(小並感)
来正の性癖に関して、友人として敢えて何も言わない事にした。

『ライオット』
現状、詳細不明の白いシンビオート。


〜〜『単語紹介』〜〜

『SP//dr(スパイダー)』
シルバー・マルテースが保有する多目的対応多脚蜘蛛型戦車。
元ネタは【スパイダー・バース】【エッジ・オブ・スパイダーバース】の『ペニー・パーカー』が搭乗し精神感応による操作可能なメカ・スーツであるSP//dr。コミック版でのデザインはエヴァっぽい。

シルバー・マルテースの知り合いが製作したとされ、彼女が好んで使う銃火器は最小限に搭載。主に対災害、市民救助用のサポートマシンとなっている。


MARVEL熱が再燃焼し始めたのでしばらくはヒロアカの小説を投稿して行きたいと思います。


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44話 違う!シンビオートがヒーロー殺しを!

時期や環境のせいじゃなくて…俺が悪いんだよ。
投稿が遅れたのは俺のせいだ!もう…嫌なんだ自分が…!俺を…殺してくれ…、もう…消えたい…。

と言うわけで投稿です。


『ほう?脳無の他にコレをご指名とはね』

「いいから早く出してくれ先生。あのクソ野郎共を殺さないと気が済まないんだ…!」

 

 死柄木弔は荒れていた。それもその筈 己に従わないヒーロー殺しと言う社会貢献に狂う殺人者に傷付けられたと言うのに、今度は黒いスライム状のヒーロー未満によってレンガブロックをぶつけられたのだから。しかも自身と黒霧の顔面を的確にだ。これで3回目、つまり3回もアイツ等に舐められ馬鹿にされたのと同義だ。

 

不快の意を示すようにガリガリと首筋を掻き毟る。通信越しから伝わるその不機嫌さに男はニィと笑う。

 

『良いよ弔。君が望むままにしようじゃないか』

 

 そう言うと男は死柄木に伝える。

 

『君専用のセンチネルを一体貸し与えよう。なぁに、ハイエンド用の試作品みたいなモノだからね どう扱おうが君の勝手だ。…あぁ、だけどちゃんと使った後は回収してくれ。次の機会に備えて再利用しておきたいからね』

 

 直後、何もない空間に現れる黒い粘液。そこから無造作にカプセルが放り出される。死柄木弔が先生と慕う者による個性によって排出されたそのカプセルを手にすると、()()()()()()()()()()

 

 

───Who are you(お前は誰だ)

 

「ご主人様だよ、お前のな」

 

───My master(ご主人様だと)

 

「そうだ壱式型寄生体(パラサイト・ファースト)、早速だがお前にはある事をしてもらう」

 

───My job is(オレの仕事は)……

 

「ああ、お前の仕事はぶち壊す事だ。何もかも…な」

 

 その言葉に呼応するかのように脈打つ白濁色の粘液生物。カプセルによって閉じ込められているがその凶暴性を傍に立つ黒霧は感じ取った。

 

 

 

 その一方で男は上機嫌な様子を見せていた。

感謝しよう、少年(来正恭成)よ。偶然にも手にしたコレ(シンビオート)は可能性の塊だ。これで楽しみがまた一つ増える。

 

「さて、次は何をしようかなぁ…?」

 

 マスクをした男の前に並べられたのは四つのカプセル。

その中には先程のモノと同じように端から緑、紫、黄、赤と言った粘液状の何かが蠢いていた。

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

「シンビオート」

『なんだ、アイツ。どうしてだ?』

「シンビオート!」

『うるさい!分かってる!だけど何でだ!どうして、オレがもう1人居るッ!?』

 

「…なぁ、生き別れの兄弟か何かか?」

「そんな後付け設定なんて存在しませんよ…しないよね?」

 

 イグニッションの言葉に思わず言葉を濁す。

MARVEL系に限らず、アメコミ作品…特に原作(コミック版)なんかじゃ後付けは当たり前だからね(偏見)

スパイダーマンのクローンサーガなんかは特に…あ、これ以上はよそう。ハイ!この話題やめ。

 

『…ああ、そう言う事か!そうか!そう言う事かァ!』

『何がだ!勝手に納得するな!オレに黙って勝手に理解するな!』

 

 何という理不尽の塊だろうか。コレが僕の中に居ると考えると凄い複雑な気持ちになるんだけど。

 

『ムシャクシャする!貴様が目の前に居る事がムシャクシャして堪らない!』

『"俺"はお前から生まれた!産み落とされたァ!分かるか!俺はお前の何かをなァ!』

『まさか……!嘘だ、お前は……!』

 

 

『俺がお前の仔だ』

NOOOOOOOOOOOOOOOOO(嘘だァァァアアアアアアアアアアアアアア)!!!』

 

…えぇ、奇跡的にもEP5の名シーンが再現されたシュールな絵面に僕は思わず呆れてしまう。何なのだこれは…いったいどうすれば良いのだ?

生き別れた親子の再会を祝した言葉でも贈れば良いのだろうか?

 

「認知しろよシンビオート」

『黙れ!オレは絶対に認知もしないし療育費も出さない!』

「うわクズ」

 

 自分の個性ながら本当に良い反面教師だと思う。将来的にはこんな大人には絶対にならないよう気を付けよう(確信)

僕がそう思ってると隣に立つ赤糸虫さんが口を開く。

 

「でもさ…それって来正君にも同じ事言えるんじゃない?」

「え?」

「あー…そうかも。仮に来正君の個性から生まれた子供なら実質、来正君の子供と言えるよね?」

「…は?えっ……え?」

 

いや、ちょっと待って?いや…待て待て待て待て待て待て!?

 

「うん、とりあえずさ。パパとパパの名前言える?

『「やめろォォォオ!!」』

 

 赤糸虫さん‼︎それ言うのやめて!なんかこう、シンビオートと僕の間から産まれたオメガバース的な存在になっちゃうから!

 

「なぁどう思う?」

「それ聞くか?♂同士じゃ無理だろ」

「うわ想像しちゃった」

「逆に興奮して来ない?」

「そもそもシンビオートって性別あるのか?」

「つまりシンビオートが女の子と言う可能性がワンチャン…⁉︎」

「興奮してきた」

「は?男だからいいんでしょうが」

 

「あー!あー!あーーっ!聞きたくない聞きたくないーーッ!」

 

 大人の階段登ると性癖幅が広がるとは聞いた事あるけど、シャチョーサイドキックズ達は本人の前での猥談はやめてください!

と言うか学生の前でいかがわしい話を繰り広げるの、ヒーローのやる事じゃないでしょうが!

 

…え?辞世の句で性癖を声に出すのもヒーローのやる事じゃない?うっせぇ、シンビオート嗾けるぞ(真顔)

 

『随分と楽しそうだな。全く、お前等を見ていると…!』

 

 声がしたその直後。白いシンビオートは両手を棘付き鉄球(モーニングスター)のように変形させ僕等に向かって…⁉︎

 

「全員回避しろォォッ!」

『っ‼︎』

 

 ギャングオルカの一声によってその場に居た全員は飛び退いた直後、グシャア‼︎と地面を割る音が響く。コイツが何かは分からない…けど、やる事は1つ!

 

「シンビオート、ブッ潰せ!」

『惨たらしくも加えておけ』

 

 こちらもシンビオートの出力全開に行く。周囲の炎もある程度鎮火してくれたお陰で弱体化する事もない。

コスチュームすらを呑み込むように大型サイズの身体へ変貌を遂げると両手を斧に変形。そのまま相手の背中に向かって振り下ろす。

 

『死ね!』

 

黒い戦斧が直撃する…と思った瞬間。相手はゴキャリと音を立てながら上体を無理矢理こちらに向けメイスを打ち付けて来た⁉︎

 

『死ぬのはお前の方だFarther』

 

 拮抗するかに思えた斧と鈍器の打ち付け合い。それを制したのは相手側の白いシンビオートだった。そのままこちらの頭を掴むと、地面に叩き付けて来る。

ぐっ、コイツ…⁉︎ 僕等以上のパワーか!

 

『オイ、ヤバいぞキョウセイ。コイツ強い!』

「同じ姿なのに…いや、中身の性能差か⁉︎」

 

 実のところ、シンビオートの特性として取り憑いた者の影響を受けパワーが増減する。仮にコイツがシンビオート(本物)と同じ特性を有してるなら、脳無の怪力の影響を受けている事になる。

 

何が言いたいかと言うと白い方が強いって事ね‼︎

 

『このまま握りつぶしてやる…!』

「させると思ったか!」

 

 その瞬間、後方からギャングオルカが突進を仕掛けて来た。音波攻撃で無力化と言う手もあったのだろうが、そうした場合は位置的に僕等も巻き込まれてしまうのだろう。そう考えたのかシャチョーは接近戦を…えーと、ライオット?に突撃を起こった…が。

 

「!?」

『邪魔だ、失せろ』

 

 体当たりを仕掛けた筈のギャングオルカ。だがライオットは空いた方の片手のみでシャチョーの攻撃を防いだ。それに飽き足らず背中から生やした触手でシャチョーの首を絞め始める。

 

「ぐッ…⁉︎」

『お前達もだ』

 

 白いシンビオートがそう言うとメキメキと頭に力が籠るのが分かる。不味い…!このままじゃ頭の…骨が割れて……!

 

THWIP!

 

『ぐっ、なんだ⁉︎』

「勝手に人の首から上を潰そうとするのやめてくれる?代わりにポテト潰した方が有意義だと思うねッ!」

 

 白いシンビオートの頭に糸を飛ばした赤糸虫さんはそう言いながら糸を引っ張る。ナイスだ赤糸虫さん!

 

「シンビオート、ギロチン!」

『いい事を教えてやる。チョキ(ハサミ)はパーに強い』

 

 両腕をブレードに変形させ、頭を掴んでいた腕を斬り落とす。頭に付いた腕を取り払い、脳無…いやシンビオート?あぁ紛らわしい。シンビオートモドキから距離を置く。

 

全社員(サイドキック)集中砲火ッ!」

『了解っ!』

 

 イグニッションやシルバー達を筆頭にサイドキックのヒーロー達が己が個性を脳無シンビオートに向かって放つ。

 

命中するかと思われたが、シンビオートモドキは脅威の跳躍力で僕等の前から頭上にある鉄塔の頂へと移動、攻撃を回避した。

 

『煩わせやがって…!』

 

 切断された腕を再生させながらこちらを睨む様は正直言って不気味だった。いつも見慣れている筈の顔が2つもあると言う事態に今も尚、頭が追い付いていない。

 

「本当に何なんだアレは…!」

来正(ヴェノム )、本当にお前は知らないのか?」

「いや知りませんって、仮にあんな2Pカラーのシンビオートが居たなら、喧嘩騒動に挟まれたストレスで敵化してると思いますよ?」

「えっ」

「えっ?」

『えっ』

 

 え?…あの、皆さん?何でそんな驚いたような表情を?僕だってストレス溜まりますからね? そんなサイコ一歩手前のモンスターじゃないですからね⁉︎シンビオートと言う個性を除けば僕はオタク属性持ちの一般男子学生ですからね!

 

「…一般の男子学生?」

「え、なに緑谷君。僕に何か落ち度でも?」

「あ、いや何でも…って、上!」

 

 そう言われて上を見上げると白いシンビオートが鉄塔の一部をへし折っていた。そのまま支えの一部を無くした建造物はこちらに向かって…倒れて来てる⁉︎

 

「sp//dr起動!」

 

 シルバーの音声認識と共に重厚なボディを持つ多脚戦車が起動。ガシャン!と音を立てながらも鉄塔の支えとなる事で倒壊は免れた。するとシルバーがこちらに向かって声を上げる。

 

「ヴェノム !仮にヤツがお前と同じならば倒す方法も熟知してる筈だ!弱点は無いのか⁉︎」

「アッハイ、ありますあります!火と音です!…と言っても音に関しては高音域のヤツに限られますけど」

 

「火と音…。ならばイグニッションと私が攻撃を軸に行えば───」

「そう言うがシャチョーよぉ。アイツにそんな隙があるとは思えないぜ⁉︎」

 

 建物を足場に縦横無尽に移動を行う白いシンビオート…あ、いやそう言えば最初の方でライオットって名乗っていたっけ?

イグニッションの言う通り1箇所に留まらず、ヒットアンドアウェイの戦法を行ってくる相手に炎と音波攻撃を当てるのは至難だ。遮蔽物を使って炎や音を防ぐ手も使って来るのは容易に想像出来る。

 

至近距離から狙えば確実にダメージを与えられるだろうけど、ハッキリ言ってあのライオットのパワーはオールマイトにも引けを取らないと言っても過言ではない。

 

と言うか完全に僕らの上位互換じゃん、理不尽じゃん、クソやんけ、那珂ちゃんのファンやめます。

 

『落ち着け』

「シンビオート!」

『何を喚いてる?やる事はいつもと変わらない。寧ろオレの事を知ってるなら尚更簡単だ』

「簡単…」

 

 そう言われて僕は思考を切り替える。そうだ、シンビオートをよく知ってるのは僕自身だ。それならばライオットに対してやれる事や対策は容易に思い付く。

 

「策は練られたか?」

「はい…と言いたいですけど。シャチョー達がいる事を前提とした作戦なので簡単には行きそうにないですけど」

「…成る程。それならば話は早い」

「と言いますと?」

「お前が我々を上手く扱え」

「⁉︎」

 

 エッ、それってつまり僕がシャチョーや事務所の先輩方に指示を投げ掛けるってコト!? ワ、ア…アッ(プレッシャーによるストレス)

 

「シルバーマルテース、ヴェノムのサポートを行え。Vスパイダー並びにデク(緑谷出久)は他のサイドキック達と共に周辺被害の低下に専念!…さて、見せてもらうぞ貴様(ミジンコ)の大脳皮質の働きで我々をどれだけ使えるのかを」

 

 ヒュー、ヒュー…ッ(過呼吸) やめてくださいシャチョー。それって俗に言うパワハラに属するアレです。学生に過度なプレッシャーを掛けるのはやめてください本当にマジで、あっヤバい涙が溢れて来た。

 

「ワ…ァ…ッ」

「泣いちゃった…で、でも来正君なら大丈夫だよ!」

「赤糸虫さん…」

「大丈夫だよ来正君!これまで君はその知力で壁を乗り越えて来たじゃないか!」

「緑谷君…!」

 

「ボク達、来正君の狡猾さを信じてるから!」

「そうだよ!(便乗) その海千山千は君の武器じゃないか!今こそその力を発揮する時だよ!」

 

 ごめん2人共。心なしかもっと涙が溢れて来たんだけど。何でだろう?こう…讃えられてるのに釈然としないと言うか、どう考えても良い方面の賞賛に聴こえない。なんで?

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

 日が沈み、より一層の闇に染まる路地裏。敵の出現、火災と言ったアクシデントに見舞わられる街の一角。誰もが目を向ける事のないその場所に3人の男が居た。

 

「ハァ…この程度か」

「〜〜ッ‼︎」

 

【ヒーロー殺し】ステインと、その標的となってしまったヒーロー2名。否、ヒーロー1名とヒーロー候補1人が正確なのだろう。その場に倒れ伏した少年『飯田天哉』は痛みと怒りが入り混じった鬼の如き形相を浮かべ、ステインを睨み付ける。

 

「お、おおおおおおおっ!」

「む」

 

 腕に突き刺さった刃を無理矢理引き抜くと飯田は雄叫びと共に回し蹴りをステインに向かって放つ。

 

「ぬるい」

「がっ⁉︎」

「愚直過ぎる蹴りだ」

 

 だがその蹴りは難なく躱され、逆にカウンターの蹴りを喰らってしまう。加えてステインのブーツに装着された棘によってダメージは増大。床に鮮血を撒く結果となる。

 

「弱いな。お前もお前の兄(インゲニウム)も…何故だか分かるか?」

「黙れ悪党…ッ!兄さんは弱くなんか…」

贋物(にせもの)だからだ」

「弱くなんかないッ!兄さんは本物のヒーローだッ!僕に夢を抱かせてくれた立派なヒーローだったんだッ!」

 

 ヒーロー殺しステインの手により飯田天晴、インゲニウムは脊髄損傷と診断され下半身麻痺による影響でヒーロー活動の復帰は困難となってしまった。

多くの人々を助け導いて来た飯田にとって兄こそ正しく憧れのヒーローそのもの。自分の働きが数多の人々の為になると信じる彼の姿に飯田は敬意を、羨望を向けていた。

 

そんなインゲニウムを、兄を。目の前の男は贋物と称した。己の家族の仇である敵を前に地に這いつくばりながらも彼は叫ぶ。

 

「殺してやる!」

「あいつをまず(たす)けろよ」

 

 ステインの指差す方向。そこにはヒーロー殺しの手により傷を負ったヒーローが倒れていた。

飯田がステインを見つけた際に襲われていたヒーロー。幸い彼が割り込んだ事により絶命は防がれたが、その場からマトモに動く事が出来ない様子と分かる。

 

皮肉な事に敵であり兄の仇であるヒーロー殺しの言葉は正しかった。飯田の心を抉るようにステインは吐き捨てる。

 

「目先の憎しみに捉われ私欲を満たそうなど…ヒーローから最も遠い行為だ…ハァ……だから死ぬんだ」

 

 そう言いながらステインが刃に付着した血を舐めた直後。飯田の身体の自由が効かなくなる。まるで全身の筋肉がコンクリートで固められたように動かなくなってしまった。

恐らくヒーロー殺しの個性であると推測される力により敵の前で無防備な状態となってしまう。

 

「動かな…ッ!」

「じゃあな。正しき社会への供物」

「黙れ…ッ!何を言ったってお前は俺の兄を傷付けた犯罪者だッ!」

 

 怒り、悔やみが入り混じった慟哭が響く。死が迫る最中に自分に出来るのは目の前の男に向けて罵声を浴びせるだけだ。

血が滴るヒーロー殺しの凶刃は無情にも少年に向かって振り下ろされ───

 

「違う」

「…うん?」

「そうじゃないだろう…!最期の言葉は…ハァ…!」

「いや何が?」

 

 何故か寸前で止まる刃。不可解な行動に困惑しているとスイテンが口を開く。

 

「先程、お前は何と言った?」

「は?」

「何を言ったか問い掛けている…!」

「は、はぁ…えーと、"殺してやる"?」

「違う、その後」

「えっと…"いや何が?"」

「そのすぐ前だ」

「……お前は俺の兄を傷付けた犯罪者だ?」

 

 そう呟くとステインは目を大きく開き、飯田に詰め寄る。

 

「なんだその台詞はッ!ヒーローであるならば辞世の句くらいヒーローらしくあるべきだろう‼︎」

「えっ、あ、いやそうなのか?…いや、そうかもしれない…⁉︎」

 

 思いもよらぬ言葉に飯田はそう返してしまった。敵であるヒーロー殺しは根が真面目である飯田にアッハイとしか答えさせないまでのプレッシャーを放っていた。まるでそれはヒーローについて語らせた緑谷(三次元オタク)と来正(二次元オタク)と同等。あるいはそれ以上のモノだろう、端的に言って恐ろしい。

 

「もう一度だ…言え」

「お、お前を許さない…?」

「駄目だ星1つ。もっとドラマティックにやれ」

「わ、我が生涯に一変の悔い無ーーーーしッ!?」

「まだ恥じらいが残ってる。星2つ」

「くっ…(何なんだコレは⁉︎)」

 

 裏路地で行われるヒーローの台詞審査に困惑の意を見せる飯田。委員長を務めている彼でもこの事態が可笑しいのは流石に理解出来た。なんなのだこれは(真顔)

 

「気を…付けろ…っ!」

「あ、貴方は…!一体何を…⁉︎」

 

 ヒーロー殺しにより傷を負ったヒーローであるネィティブは飯田に向かって忠告を行う。

 

「ハァ…ハァ…!そいつは謎の拘りを持っている…!満足の行く返答をしない限り永遠と捨て台詞を吐かされる事になるんだ…その結果がこの有様…さ……ゴフッ」

「なんと惨たらしい…ッ!」

 

 肉体・精神共に徹底的に傷付けられたヒーローの姿を見た飯田は戦慄する。これがステインがヒーロー殺しと称されたる所以。その証拠に眼前のネィティブが白く燃え尽きている。

恐らくステインに徹底的に駄目出しされまくった者だ、面構えが違う。本当に何なのだこれは(真顔)

 

「さて──続きだ贋物。貴様の遺言を口にしろ…ハァ…殺すのはそれからだ…」

 

 刃毀れの起こした刃が飯田の首筋に当てられる。頸動脈を狙ったステインの意思は贋物と断定したヒーローの殺害。例えそれが僅か15歳の少年であったとしても信念は揺らぐ事は無いだろう。

飯田の胸に宿るは仇を打てなかった後悔。そしてヒーローを目指す友との約束を守れなかった事への無念。

 

兄と同じ末路──否、刻々と近づく死に覚悟した彼はステインに向かって告げる。

 

「殺すなら殺せッ!!僕は地獄に行ったとしてもお前を忘れる事はッッ!」

「言いたい事はそれだけか…ハア゛ッッ⁉︎

「!?」

 

その瞬間、ステインが何か黒いモノに轢かれた。面を喰らう飯田だったが自分の横を2つの人影が通り過ぎて行く。

 

『やば、何か踏んだ』

「シンビオート⁉︎」

「思い切り顔面踏みつけちゃったね…」

「そ、その…ごめんなさい!」

 

「その声…来正君に緑谷君達かッ⁉︎」

 

 声を上げた直後、それに反応した先頭の黒い小型恐竜が声を上げた飯田に向かってバックして来る。そのまま黒い恐竜に続いて他の2人が倒れ伏す彼の顔を覗く。

 

「あれ…?飯田君に似ているね?」

『もしかすると飯田かもしれないな』

「あ、眼鏡落ちてる」

「うん、間違いない。飯田君だな」

『確認ヨシ!』

「ちょっと待ってくれ。一体何で僕と断定したんだ?」

 

 その言葉に対して緑谷達は無言を貫く。眼鏡を掛けてなかったので誰だか分からなかったと答えてしまえば気不味い雰囲気になる事は明白だ。眼鏡の所為で友情が崩壊するなど笑い事ではない。

 

「そっ、そんな事より。ここの皆、怪我をしている!」

「飯田君だけじゃない!ヒーローのネィティブまで⁉︎この創傷…多分、敵はかなりのやり手だ…!」

 

 飯田とネィティブに駆け寄る緑谷と赤糸虫。それに対してシンビオートがもう一方の倒れている者に向けて口を開く。

 

『ああ、それにこっちもだ…酷いな。顔に一撃、しかも鼻が削がれている。やった相手は誰だか分からないが相当なやり手と見た』

「責任の放棄は良くないと思うんだシンビオート…と言うか待って?何でこの人、身体の至る所に刃物仕込んでるの⁉︎ えぇ…怖…」

「い、いや来正君。そいつは───」

 

 銃刀法違反をバリバリに破ってる事に恐れ慄く来正。そんな全身に凶器を隠し持った相手がヒーロー殺しだと飯田が伝えようとしたその時。後方から轟音が響く。

 

CLAAAAAAASH!!

 

「なんだッ⁉︎」

「しまった、今作戦中だった!全員行け行け逃げろ!GO GO GO!」

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 

 轟音が響く方向より白濁色の怪物が現れる。雄叫びを上げながら狭い路地を無理矢理通るシンビオートに似た不定形の何かは身体を変形させ、来正達迫って来る。

 

「な、なんだアレは「それは後で説明するから!」うおッ⁉︎」

 

 緑谷が傷だらけの飯田を、赤糸虫が負傷したネイティブをそれぞれ背負うとそのまま走り出す。

 

「ま、待ってくれ!僕はあいつをッ!」

「何を言ってるかは知らないけどごめん!今は逃げる事を優先しよう!」

「だが……!」

『動けてない癖して大事を口にするな。黙ってろ!』

「…ッ!」

 

 シンビオートの言葉を受け、激しい悔恨が飯田を襲う。ヒーロー殺しが目の前に居たと言うのに体の自由が効かない。

 

これがヒーローの姿か?何と言う不甲斐無い姿だろうか。

兄からヒーローの道を奪った者に何も出来ず逆に友人に助けられてしまった。そして何よりも、あのヒーロー殺しからヒーローのあるべき姿を諭されてしまう始末。

 

激情に駆られる飯田がステインが倒れている箇所に視線を向けたその時である。

 

ゴシャッ(轢かれる音)

 

「あっ」

 

 飯田は見た。ヒーロー殺しが白濁色のシンビオート(に酷似したモノ)により轢かれ、偶然にもゴミ収集ボックスに向かって跳ね飛ばされたのだ。

 

ベチャ

 

「……」

 

 直後、路地に響く生々しい音。

よりによって今日は生ゴミの日だったらしい。親族の教育の賜物か、そもそも根が真面目だからこそなのか。兄の仇であるのにも関わらず、ゴミ山にブチ込まれたステインに対して心中で合掌を行うのであった。

 

「あっ、ヤバっ!!銃刀法違反オーバーの人忘れてた!」

『放っておけ、そもそも最初から居なかったと認識しておけば問題ない』

「それ別方面の問題が発生するヤツ!」

「あぁ、轢かれたアイツに関しては問題無い。放っておこう」

「「「え゛っ⁉︎」」」

 

緑谷達は思った『飯田君って、こんなドライな性格だったか…?』と。

 




知らない内にゴミ箱にぶち込まれるステイン。全国のヒーロー殺しファンの皆様に謝罪を。

皆様お久しぶりです。多忙の合間を縫って投稿を行いました。
ですが投稿日数が空いた影響か前回の話と比べて、文章の稚劣さが増えた気がします。

何とかコツを取り戻す為にもなるべく早く投稿が出来たらいいなと思います。


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