エルメロイ教室の神器使いとサーヴァント (小狗丸)
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サーヴァント、召喚しました。

 この世界には神器(セイクリッドギア)と呼ばれる存在がある。

 

 神器とは遥か昔、「聖書の神」と呼ばれる神が現在、過去、そして未来から取り寄せた「聖遺物」と呼ばれる過去の英雄に縁のある品物や、魔獣等の力のある獣の魂を材料にした強大で特別な力を秘めたもので、聖書の神はこれらの神器を一部の人間に宿らせた。

 

 そして時に神器は、人間だけではなく天使や悪魔、堕天使といった者達ですら無視できない二つの奇跡を起こした。

 

 一つは神器と神器所有者、両方の「格」を高めることで世界の流れにすらも抗える力を得る「禁手化(バランスブレイク)」。

 

 もう一つは神器と神器所有者が持つ魔術を使用するための擬似神経「魔術回路」の融和性が高まることで行える、神器と縁がある過去の英雄を使い魔として現界させる「英雄召喚」。この英雄召喚で現界した英雄は「サーヴァント」、英雄を召喚した神器所有者は「マスター」と呼ばれている。

 

 過去に名前を残した英雄や偉人をサーヴァントという使い魔にする神器所有者、マスターは人間の魔術師から見れば様々な点で非常に魅力的な存在であった。その為、魔術師協会の総本山「時計塔」は、神器を所有している魔術師ならばそれがどれだけ実力が低くても、特待生としてスカウトしていた。

 

 俺、千車(ちぐるま)蒼十朗(そうじゅうろう)も、神器を所有している魔術師という理由で時計塔に入学できた人間である。

 

 俺の家、千車家は宿曜道……古代インドにルーツを持つ占星術を研究している家系なのだが、家の歴史は百年程で魔術師の世界から見ればまだまだ駆け出しもいいところだ。普通に考えれば魔術師の世界で最高峰である時計塔になんてとても入学出来ないのだが、俺に神器が宿っていると知った魔術協会は時計塔の入学を許可したのだ。

 

 魔術の師である父親はこれに喜ぶとすぐに時計塔に入学するように言い、俺は十四の時に表向きは転校ということで時計塔に入学をした。

 

 時計塔に入学したばかりの時は大変だった。何せ時計塔があるのはイギリスのロンドン。英会話が出来ない俺は授業についていくどころか日常会話すらままならず、いつもフードを被っている特徴的な女学生が色々と手を貸してくれなければ今頃どうなっていたか分からない。

 

 そして時計塔から一年が経ち、とりあえず英会話をマスターして基礎理論学科を修了した俺は「現代魔術科」へと進学した。そこへ進学したのは、右も左も分からない俺に手を貸してくれたフードを被った女学生が現代魔術科で、彼女と話をしている時に現代魔術科の話を聞いて興味を持ったからだ。

 

 現代魔術科とは、昔に比べて環境や魔術的因果が複雑化している現代に対応出来るよう、様々な分野の魔術を組み合わせた新しい概念の魔術を研究している学科で、一部の魔術師達からは「イロモノ学科」と「ゲテモノ学科」と言われていた。しかしいざ現代魔術科に進学してみると、そこでの授業は非常に革新的でしかも分かりやすく、俺はそこで実家魔術についての理解を深めるだけでなく新しい魔術も習得できた。

 

 現代魔術科に進学してからは時計塔での生活が今まで以上に楽しくなり、友人も何人かできた。だから俺はこのままここで尊敬できる先生と友人達と一緒に魔術の研鑽ができればいいなと思っていたのだが……残念ながらその願いは叶う事はなかった。

 

 ☆

 

「先生が日本に行くのですか?」

 

「ああ、そうだ」

 

 時計塔に入学してから二年後。十六歳になった俺が、現代魔術科の執務室で今聞いた話を口にすると、現代魔術科の君主……いわゆる総責任者であり俺の先生であるロード・エルメロイ二世がため息混じりに答えた。

 

「『四大魔王』のお一人からの直々のオーダーだ。しかもご丁寧に他の君主全てに根回し済みで断ることもできん……。全く、プライベートではあんなに頭が残念なのに、仕事は恐ろしいくらい速くて優秀だ」

 

 先生は額に手を当てながら心から忌々しそうに言う。

 

 この世界には人間の他にも様々な種族が存在していて、悪魔もその一つだ。そして悪魔は四大魔王という四人のトップの元で統率されていて、その四人のトップのお一人が今回先生に依頼を出したというわけだ。

 

 何故四大魔王の一人が先生を名指しで依頼したのかと言うと、何年か前に人間と悪魔の両方が関わったとある事件を先生がどこぞの名探偵の推理ショー並みに華麗に解決したことがあったらしく、それを見てからその魔王様は先生の事を気にいって色々とコンタクトを取っているのだそうだ。

 

 先生が魔王様から受けた依頼というのは、現在魔王様の妹が留学している日本の地方都市で今までにない奇妙な出来事が多発しているので、その妹の相談役として日本に行ってほしいというものだ。ちなみに依頼の期間は二年か三年程、しかもその間は妹が通っている高校の教師をやらなければならないらしい。

 

 先生は最初……というか今でもこの依頼を断りたかったのだが、先生には断れない理由が二つあるのだ。

 

 まず一つは、先生には過去のとある事件からハリウッド映画でも作れそうな莫大な借金を抱えていて、今回の依頼で支払われる報酬はその借金を返してもお釣りがくる程の金額ということ。

 

 もう一つは、さっきも先生が言っていたように、すでに依頼を出してきた魔王が先生がこの時計塔を出ている間の穴を埋めるように時計塔に根回しを済ませていること。ここまで話を進めておいて断ると、魔王様と時計塔との関係が悪くなる可能性があるので、先生の立場からすればこれは避けたいだろう。

 

 これらの理由から先生は、魔王様からの依頼を受けることにしたのだった。

 

「それで先生は何で俺をここに呼んだのですか?」

 

「……この依頼を受けた時、護衛代わりに弟子を数名、留学生という名目で連れて行く許可をもらった。そしてそれをグレイと君に頼みたい」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 俺がここに呼ばれた理由を聞くと、先生が苦虫を噛み砕いたような顔となって言い、先程から無言で話を聞いていたフードを被っていた女学生グレイが頭を下げてきた。

 

「俺も日本に?」

 

「そうだ。もしついて来てくれるなら住む場所や最低限の生活費は依頼主が出してくれるし、魔術の授業も私がみよう。……どうだろうか?」

 

 どうも何も、それって先生がつきっきりで魔術を教えてくれるってことだろ? 時計塔の名物教師である先生がつきっきりで教えくれるなんてこちらからお願いしたいくらいだ。……でも。

 

「……グレイは分かりますけど何で俺なんですか? 護衛の代わりだったら、俺よりも戦闘が得意で頼りになる人は沢山いますよね?」

 

 グレイは死霊退治に特化した神器のような武装を持っていて、これまでにも何回も先生の護衛をしたことがあるから理解できる。

 

 でも俺は違う。先生から魔術を教わっている生徒は俺以外にも大勢いて、そのほとんどは俺以上の実力者だ。先生とつきっきりで教えを受けられると聞けば、護衛役を志願する生徒が多数出るだろう。そんな中で先生が俺を指名してきた理由が分からなかった。

 

「千車、君の神器は非常に使い勝手がよく、機動力に優れている。それはいざという時に非常に役に立つ。だから君に頼んでいるんだ」

 

 俺が疑問を口にすると先生は、一度軽く顔を横に振って、俺を選んだ理由を教えてくれた。

 

 先生が言う通り、俺に宿っている神器は直接的な戦闘力こそはないが、その分機動力に優れて空も飛べる移動用神器だ。つまり俺は護衛役というより、いざという時に先生やグレイを運ぶ運搬役という事か。

 

 そこまで聞いて納得した俺は首を縦に振った。

 

「分かりました。そういう事だったら喜んで引き受けます」

 

 先生には色々お世話になっているし、グレイには入学したばかりで右も左も分からない頃に散々助けられたのだ。ここは一つ恩を返すべきだろう。

 

 そう思って魔王様からの依頼を受けた先生とグレイと一緒に俺は日本に帰国したのだが、これが俺の波乱万丈な人生の幕開けだった事に俺はまだ気づいていなかった。

 

 ☆

 

「あれは堕天使!? イッセー、お前、一体どこで堕天使の恨みを買ったんだ!?」

 

「だ、堕天使? 何だよ、それ?」

 

 先生とグレイと一緒に日本に帰国してから一年以上経った頃。俺は夜の公園で夜空に浮かぶ背中に黒い翼を生やした男、堕天使を見上げながら、隣にいる友人の兵藤一誠ことイッセーに問いかける。しかしイッセーは堕天使の事を知らないようで困惑した表情を浮かべている。

 

「ほう……。野良の悪魔を狩るだけのつもりだったのだが、人間まで現れるとは……。まぁ、運が悪かったと諦めるのだな」

 

 夜空に浮かぶ堕天使の男は薄い笑みを浮かべてそう言うと、手に光の槍を作り出した。

 

 ヤバいな。あの堕天使、俺とイッセーの両方を殺すつもりみたいだ。こうなったら……。

 

「出てこい! 『白狐が引く空飛ぶ戦車(ダーキニー・ヴィマーナ)』!」

 

 俺が叫ぶのと同時に、俺とイッセーの近くに一台の乗り物が虚空より現れた。それは、前脚と後脚がバイクの前輪と後輪となっている機械仕掛けの二匹の白い狐と繋がっている、所々SFみたいなデザインの戦車だった。

 

 これが俺に宿っている神器「白狐が引く空飛ぶ戦車(ダーキニー・ヴィマーナ)」。

 

 大地だけでなく空も高速で移動できる上に、光学迷彩機能もある優れ物だ。これに乗ればあの堕天使からも逃げ切れるはず。

 

「な、何だコリャ?」

 

「話は後だ! 早くこれに乗れ! 逃げるぞ!」

 

「あ、ああ……。分かっ……!?」

 

 突然現れた俺の神器に驚くイッセーに俺が声をかけた瞬間、イッセーの腹を堕天使が投げた光の槍が貫いた。

 

「イッセー!?」

 

「逃すものか。しかしお前も神器持ちだったとはな……。ここは確実に殺しておくか」

 

 光の槍で腹を貫かれ、地面に倒れたイッセーに駆け寄った俺を堕天使の男が先程以上に殺気を込めた目で見てくる。クソッ! ここまでなのか……よ……?

 

 もはや自分の神器の戦車に乗って逃げれる隙など無く、俺が思わず諦めそうになった時、頭の中で誰かの声が聞こえてきた。

 

 

 素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。

 告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

 汝三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!

 

 

 頭の中で呪文が聞こえてきたかと思うと、右手の甲と「白狐が引く空飛ぶ戦車(ダーキニー・ヴィマーナ)」が強い光を放った。

 

 な、何だ!? 今度は一体何が起こったんだ!?

 

 俺の右手の甲と「白狐が引く空飛ぶ戦車(ダーキニー・ヴィマーナ)」が放った光はすぐに収まったが、光が収まると俺の目の前に今までいなかった女性が立っていた。その女性は狐の耳と尻尾を生やして、奇妙な着物を着た変わった格好をしていた。

 

「我こそはタマモナインの一角、野生の狐、タマモキャット! ご主人、よろしくな!」

 

「……………………………………………………………………………………………ハイ?」

 

 俺は予想外の出来事の連続で、やたら高いテンションでそう挨拶をしてきたタマモキャットと名乗るその女性に見ながら、呆けた声を出す事しかできなかった。



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英雄派VS……

※久しぶりに「ハイスクールD×D HERO」のDVDを観て思いつき、書きたくなりました。

※もしこの短編を連載にする場合は、また主人公の設定を変えると思います。

 

 

 

 俺、千車蒼十朗がエルメロイ二世先生とグレイと一緒に日本の駒王学園に転入して一年と半年程の時間が経った。

 

 そして俺と、二年の春頃に召喚したタマモキャットは、駒王学園の修学旅行で京都へとやって来たのだが、その京都では「禍の団(カオス・ブリゲード)」というテロリスト集団が事件を起こしていた。禍の団は日本の妖怪達をまとめる総大将、九尾の狐を浚い、その力を利用して何らかの大規模な実験をするらしい。

 

 総大将を奪われた日本の妖怪達は、九尾の狐の救出を悪魔陣営に依頼するのだが、今すぐに動けて禍の団に対抗できる戦力はイッセーを始めとするグレモリー眷属とシトリー眷属の二年生組だけ。……あとついでに俺とタマモキャット。

 

 禍の団が実験を行うのは今夜。増援を待つ余裕はなく、辛い戦いになる事を覚悟して俺達が戦場に向かおうととしたその時、エルメロイ二世先生が俺達を呼び止めた。

 

「ちょっと待て、お前達。今回の件だが、こいつらも協力してくれるそうだ。決して足手まといにはならないから連れて行くといい」

 

「……え? 貴方達は……」

 

 エルメロイ二世先生が指差した先には二十歳から二十代前半くらいの男女が五人いて、彼らの姿に見覚えがある俺は思わず呟くと、それを聞いた

 

「どうした? 知り合いなのか?」

 

「ああ。学年が違うから話したことはないんだけど、全員時計塔で俺と同じ現代魔術科に所属している先輩達だよ」

 

 そう、エルメロイ二世先生が連れていけと言った五人の男女は現代魔術科、つまりエルメロイ二世先生の教えを受けたエルメロイ教室の生徒だった。しかも彼らはその中でも特に有名で実力のある魔術師ばかりなのである。

 

『不死身の双子』の異名を持つマリー・スターガッツとマリリン・スターガッツのスターガッツ姉妹。

 

『剣闘士』と呼ばれて恐れられている強化魔術の達人、バスター・ジン。

 

『偽景・百鬼夜行』という陰陽道、投影魔術、降霊術等の様々な魔術を取り込んだ自分だけのオリジナル魔術を開発した深山龍悟郎。

 

『革命者』、『現代魔術科の貴公子』の呼び声が高いラインハルト・ジークド・ゴルドホルン。

 

 彼らは学生の身でありながらすでに一流の腕前を持つ魔術師で、その上「ある共通点」を持つことから現代魔術科だけでなく、時計塔全体から注目されている人物達であった。

 

 確かにこの先輩方が一緒ならば、例え禍の団が相手でも余裕……と言うか、俺達の出番なんか無いかもしれないな。

 

 俺は、同じエルメロイ教室の先輩方を見ながら思わずそんな事を考えていた。

 

 ☆

 

 数時間後。グレモリー眷属、シトリー眷属からの助っ人である匙、そして俺とタマモキャットと先輩方を含めたエルメロイ教室の面々が、禍の団が実験を行うと宣言した場所向かうと、そこには今回の事件の首謀者達がすでに待ち構えていた。

 

 今回の事件の首謀者は禍の団に複数ある派閥の一つ、過去の英雄の子孫、あるいはその魂を受け継いだとされる者達が率いる神器(セイクリッド・ギア)を所有する人間達の集まり「英雄派」。そして俺達を待ち構えていたのは英雄派のリーダーと、リーダーを補佐する幹部の五人の男女で、彼らは俺達が来たのに気付くとご丁寧にも自己紹介をしてくれた。

 

「やあやあ。グレモリー眷属の皆さん、彼らに協力する魔術師の方々、こんばんわ。俺の名は曹操。禍の団、英雄派のリーダーで、三国志に出てくるあの曹操の子孫だ」

 

「俺はジークフリート。元は教会のエクソシストだったが、今ではご覧の通り禍の団に所属している」

 

「俺様はヘラクレス。いくらこんな辺境の島国でも大英雄ヘラクレスの名前ぐらい知っているよな?」

 

「私はジャンヌ・ダルク。よろしくね」

 

「……ゲオルグだ」

 

 英雄派のリーダーとその幹部達が名乗った名前は、誰でも一度は聞いたことがある大英雄、偉人の名前だった。それをああも堂々と名乗るってことは、それに恥じないだけの実力や強力な神器を持っているということ。これは油断ができな……い……?

 

『『……………』』

 

 俺達が曹操達の名前を聞いて全員少なからず驚いていた時、エルメロイ教室の先輩方が一瞬だけ驚いた顔をしていたが、すぐに五人とも苦笑か微笑の笑みを浮かべ始めた。

 

 この時の俺は、先輩方の笑みの意味が分からなかったが、すぐにそれを思い知らされることになった。

 

 イッセーと曹操達が互いの意見を言い合い、当然ながら戦い合う結果にしかならず、いよいよ戦いが始まろうとした時、マリー先輩とマリリン先輩が最初に進み出た。

 

「やっと戦いが始まるのね。それじゃあ、マリーはあのジークフリート君と戦うね?」

 

「マリリンはヘラクレス君と戦うね?」

 

 マリー先輩とマリリン先輩がそう言うと、他の三人の先輩達も前に進み出る。

 

「じゃあ俺はあの女と戦わせてもらう」

 

 バスター先輩はジャンヌ・ダルク睨みつけ、

 

「小生はあのゲオルグの相手をさせていただく」

 

 深山先輩はゲオルグを興味深そうな目で見て、

 

「やれやれ……。となると私の相手はあの曹操君か……」

 

 ラインハルト先輩はため息をついて、まるで残り物を見るかのような目を曹操に向ける。

 

『『……………!』』

 

 そんな五人の先輩方は、上級悪魔どころか下手な神をも滅ぼす実力を持つテロリスト集団を前にしても全く緊張しておらず、その姿は曹操達のプライドを大きく傷つけたのが分かった。

 

「おい! あんたら、勝手に前に出たら「待て、イッセー」……千車?」

 

 イッセーが五人の先輩達に慌てて声をかけようとするが、俺はイッセーの肩を掴んでそれを止める。

 

 確かに、普通に考えたら先輩達の行動は無謀を通り越して自殺行為だろう。だけど以前俺が時計塔にいた頃に聞いたあの「噂」が本当だとしたら……!?

 

「ご指名とあらば応えましょうか。ただし! 俺は女性でも手加減はしないぞ!」

 

「調子に乗るんじゃねぇぞ、このクソアマ!」

 

「少しは楽しませてよね!」

 

 先輩達の言葉を挑発と受け取った禍の団のジークフリートとヘラクレス、ジャンヌ・ダルクがそれぞれの相手に向かって飛びかかった。その次の瞬間……。

 

 

 

「出番よ! 『ジークフリート』!」

 

「任せてもらおう、マスター!」

 

 

「やっちゃえ! 『ヘラクレス』!」

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

「行くぞ『ジャンヌ・ダルク』!」

 

「言われなくても!」

 

 

 

『『……………!?』』

 

 マリー先輩とマリリン先輩、バスター先輩の言葉を合図にしたように、彼らの側に突然武器を持った男女が現れて、攻撃を仕掛けようとした三人の英雄派の幹部を一瞬で叩きのめし、それを見た俺達は思わず言葉を失った。

 

「やっぱり、あの噂は本当だったのか……!」

 

「う、噂? 噂って何だよ!」

 

 思わず呟いた俺の言葉が聞こえたイッセーが聞いてくる。

 

「俺が聞いた噂……あの五人の先輩達は全員、俺と同じように神器を持つ魔術師で、サーヴァントを召喚しているという噂だ」

 

『『……………!?』』

 

 俺が聞いた噂を知り、そしてそれが本当の事だと理解したイッセー達は驚愕の表情を浮かべて固まってしまう。そして俺の言葉を聞いて驚いているのはイッセー達だけではなく、曹操達も同様であった。

 

「ば、馬鹿な!? 禁手(バランスブレイク)よりも更に希少とされるサーヴァント召喚を行なった者が同じ場所に六名だと!? そんなの奇跡みたいな確率「そんなに驚くことかい?」………!?」

 

 俺の言葉に狼狽えていたゲオルグに言葉を遮って声をかけたのは、いつの間にか彼の側に立っていた深山先輩の横に立つ少女だった。

 

「魔術師っていうのは世間で『奇跡』と呼ばれる事象を呼び出し、それを制御する者だよ? それが分からないなんて君もまだまだだね? しょうがない、ここはこの大魔女『キルケー』が君に魔術の何たるかを教えてあげようじゃないか?」

 

「………!?」

 

 深山先輩が召喚したと思われるサーヴァントの真名を聞き、ゲオルグはアゴが外れんばかりに口を開く。……うん。そりゃあ、いきなり神話の時代の大魔女が現れたら、驚かない魔術師はいないよな。

 

 先輩達が呼び出したサーヴァント達の存在によって、最早この場は完全なカオスとなっていた。流石の曹操もこの急展開には暫く呆然としていたが、すぐに気を取り直して自らの神滅具の槍を呼び出した。

 

「ま、まさか伝説の英霊が現れるとは思わなかったが、俺にはまだこの槍がある! この槍で彼らを倒し、俺は真の英雄に……!?」

 

 

「ほう? 神をも殺せる可能性がある槍とは、中々珍しい物を持っているな?」

 

 

 神滅具の槍を持って先輩達のサーヴァントに戦いを挑もうとした曹操の前に立ちふさがったのは、ラインハルト先輩と幽鬼のように白い肌で黒い刃の槍を持つ武人であった。まず間違いなくあの武人がラインハルト先輩のサーヴァントだろう。

 

「彼が持っているのは全ての神器の頂点である神すらも殺しうる槍だ。勝てるか『カルナ』?」

 

「無論だ。……さあ、神殺しの槍を持つクシャトリアよ。いきなりだと思うが、俺の槍と貴様の槍、どちらが鋭いか試させてもらうぞ」

 

「…………!」

 

 カルナと呼ばれたサーヴァントはラインハルト先輩の言葉に頷くと槍の穂先を曹操に向け、カルナに槍を向けられた曹操はここからでも分かるくらいに顔を青くさせていた。

 

 こうしてこの京都の地で、禍の団の英雄達と我らがエルメロイ教室の英雄達との戦いが始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え? 勝負の結果?

 

 ………………………聞きたい?



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