アイカツで恋愛モノ (亜戸 健一@沼太郎)
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ローラ√
”君をロックオン”


主人公は司くん、って書いているのに今回のお話の視点はローラ視点です。

このお話のように、視点が変わることもあると思います。

それでは、本編をどうぞ。


最近彼のことを目で追いかけるようになった。

その彼の名前は飯島(いいじま)(つかさ)。男子部の中学3年生。

 

心当たりはある。

ドラマの撮影の時だ。

 

ドラマの撮影のとき、ちょっとした事故があってセットがアタシに向かって倒れてきた。その時に彼がアタシをかばって助けてくれたことがきっかけだった。

ありきたりなのかも知れないが、こういったことに不慣れなアタシには初めてのことで、とても意識せざるを得ない事態だった。

 

△▼△

 

「はぁ……」

「どうしたの、ローラ。そんなにため息ばかりついて。」

「あぁ、真昼。ちょっとね」

「悩み事?私でよければ相談にのるよ」

 

悩んではいるものの、これは話してしまっていいのだろうか。

そんなことを思っている時、ゆめと話しながら歩いている彼を見つけた。

 

「それでさー、小春ちゃんったら……」

 

彼はゆめの話にきちんと相槌をうっている。

聞き上手なのだろう。ゆめが楽しそうに彼に話しかけている。

 

「ふーん。なるほどなるほど……」

 

真昼が一人でなにか納得している。

 

「ねえ、ローラ」

「何?」

「まさか悩みって、ゆめが彼に取られちゃうってこと?」

「え?!どうしてそうなるのよ?!」

「だって、あの二人の方をじーっと見つめてたじゃん」

「いや、確かにそうだけどさ……。そういうことじゃなくて……」

「じゃあいったいどうしたのよ」

「それはー……」

 

また言い淀んでしまう。

だって、言えるはずがないじゃない。

『彼のことが気になる』なんて。

 

 

アタシたちはまだ中学生。みんな恋バナには興味がある。

ただし、ここは四ツ星学園。みんなアイドルを目指しているのだ。

だからそんな中での恋愛なんて考えられない。アイドルにスキャンダルは厳禁だもの。

ごくまれに交際をしている人たちがいるが、ちょっとした奇異の目で見られやすい。

この学校は古くからアイドルを輩出していて、昔からの「アイドルは恋愛をしてはいけない」という風潮がいまだに少し残っているからだろう。

 

………………

…………

……

 

というのは建前で、本音を言えば恥ずかしいのだ。

いままで恋をしたこともなかったアタシは、初めての感情に手が付けられないでいる。

でも、そんな情けない姿を見せるのが恥ずかしいのだ。

これが恋なのだろうか。

 

 

「あ、ローラ!真昼ちゃん」

 

ゆめが手を振りながらこっちに近づいてくる。彼も一緒だ。

 

「ゆめ。おかえり。今日のお仕事はどうだったの?」

「実はちょっとミスしちゃって。そのせいで撮影長引かせて○○さんに迷惑かけちゃった。あははは……」

「大丈夫、気にしてないから」

「……」

「どうしたの、ローラ?」

「うぇっ?!べ、別になにもないわよ……」

 

真昼とゆめと司の話が耳に入らない。

どうしてだろう。それに顔が熱い。心臓の鼓動も速い。

 

誰かの手が私の額に触れた。

 

「うーん。ちょっと熱いな。もし体調が悪かったら――」

 

“彼”だった。

 

「――ッ?!」

 

突然のことに、初心なアタシの頭の中はパニックになる。

 

「だ、大丈夫!ちょ、ちょっと用事を思い出したからアタシ席外すね!」

 

思わずアタシは逃げるようにその場を立ち去ってしまった。

そういえば、助けてもらった時のお礼、してなかったな……。

 

△▼△

 

寮の自分の部屋に戻り、少し冷静になった頭で何をしでかしたのか考えていた。

 

(はあ……。アタシ、どうしちゃったんだろ)

(彼のことを考えると顔が熱くなって心臓がバクバクいっちゃうし)

(あぁ……、絶対変な子だって思われてるよ……)

 

そんなことを考えていると、真昼が部屋に入ってきていた。

 

「これは相当重症みたいね」

「真昼……。アタシ、どうしちゃったのかな。あんなの、いつものアタシじゃないみたい」

「……ローラ、真面目に聞いてね」

「う、うん。」

「おそらく、ローラは恋してるの」

「こ、恋って、ええぇぇぇ!?うそ、アタシが?」

「そ。さっきの行動を一通り見てたらそう思っちゃうよ」

「そ、そうなんだ……」

「ま、とりあえずわたしはローラを応援してるよ」

「あ、ありがと」

 

この時、アタシは恋を自覚した。

 

(恋、かぁ……。考えたこともなかったなぁ)

(だってアタシはアイドルだし……)

 

「真昼。アイドルだけど、恋愛って許されるのかな?」

「人によるとは思うけど、ちゃんと節度を守っていたら大丈夫よ。だから、ローラたちが歌ってた“キミをロックオン”じゃないけどさ。ちゃんと捕まえないとね」

「そう、だね。うん、アタシがんばってみる」

 

△▼△

 

それから、吹っ切れたアタシは彼にアタックをし続けた。

彼と一緒にでかけたり(これってデート……よね)、彼にお弁当を作ってきて一緒に食べたり、レッスンに付き合ってもらったり、いろんなことをした。

 

そして……

 

「司さん、アタシ、あなたのことが好きです。アタシとお付き合いしてください!」

「はい!こちらこそ。よろしくお願いします、ローラさん」

 

彼とお付き合いすることができた。

 




いかがでしたでしょうか。

感想を書いていただけると非常に励みになります。

誤字等あればぜひ報告お願いします。


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秋の心と書いて『愁う』

これを書いている中で少しづつ義務感のようなものを感じ始めてきました。
おそらく、自分の中のエタらせてはいけない、という気持ちの表れなのでしょうが。

とりあえず、アイカツオンパレードで蘭と香澄姉妹が出てくるのを楽しみに待つばかりです。


彼が私の恋人になった。

 

それだけで毎日が楽しい。

他愛のない会話ですら楽しく感じる。

 

「お昼ごはん、一緒に食べようか」

「はい!」

 

お昼の時間に余裕があるときはたいてい一緒に食べるようにもなった。

お昼ご飯の時に手作りのお弁当を渡せるようになりたくて、お料理の練習もはじめた。

彼が喜んでくれるなら、これぐらいなんてことない。

今はまだ作ってはいないけど、これから頑張っていくよ!

 

「うわっ、今日のサラダにトマト入ってる。申し訳ないけど、食べてくれないかな?」

「いいですよ」

 

あと、一緒に過ごす時間が増えて彼の今まで知らなかった面が見えてきた。

そういった発見も楽しくて、さらに好きになっていっている。

今のも最近知ったことで、彼は生のトマトが食べられない。

いずれ私が食べられるようにしてあげたい。

そのためにもお料理のお勉強はしっかり頑張らないと。

 

「そういえば、今度けっこう大きなオーディションがあるんだってね」

「はい。だから全力でレッスンしてます」

「そうか。それならこっちも全力で応援しないとな」

「ありがとうございます。それにむけて、今度アタシのレッスンに付き合ってほしいんですけど……。一週間後って空いてますか?」

「あー、ごめん。その日は先約が入ってて……」

「そう、ですか」

「ほんとにごめんね」

 

先約ね……。

まあ、たまにはそんなときもあるでしょ。

 

△▼△

 

一週間後、アタシは一人でレッスンしていた。

普段通りにレッスンしているつもりだけど、少し集中できていない気がする。

時々彼のことが頭をよぎる。

別に彼を信用していないわけじゃない。

なのに。

なのに……。

心配でたまらない。

彼が誠実な人であることはアタシが一番わかってる。

それでも、なぜか不安になってしまう。

大きなオーディションが近いから気が立っているんだろう。

そうだそうだ。きっとそうだ。

そうやってまた自分の気持ちにふたをして、レッスンを再開する。

 

本番まであと少しだ。

合格して彼にいいところを見せるんだ!

 

△▼△

 

そして、本番のオーディションの日になった。

いつになく緊張している。

でも、このオーディションのために全力でレッスンしたから大丈夫なはず。

 

「ローラ、大丈夫?」

「え?アタシは大丈夫に決まってるじゃない。それよりも、ゆめは自分の心配したらどうなの」

「う、うん。でも、本当に大丈夫?少し顔色が悪いよ」

「へーき、へーき」

 

こんなものなんでもないさ。

 

「それより、次アタシたちの順番みたいよ。ほら、ぼさっとしてないで行くわよ!」

「ちょ、ちょっと待ってよ~」

 

△▼△

 

結論から言うと、アタシは不合格だった。

オーバーワークによる疲労がたまっていたんだろう。

そのせいで今はもう歩いているので精いっぱい。

 

どうして、どうしてこんなことに。

 

ひとまず、明日は休日だから彼を誘って出掛けよう。

そうすればこの気持ちも落ち着くはずだ。

よし、そうと決まれば彼に連絡だ。

 

『明日の予定は空いてますか?』

『ごめん、明日は大事な予定がはいってて……』

 

……だめだった。

大事な予定なら仕方ない。明日は一人で散策しよう。

 

△▼△

 

明くる日、町に出て一人でショッピングをした。

結局彼との連絡の後、ゆめ達にも誘いの連絡をしたけどみんな予定が入っていたみたいだ。

ゆめに至っては

 

『明日だけは無理!』

 

なんて言われた。

よっぽど大事なことがあるのだろう。

でも、たまには一人も悪くないな、なんて思い始めてきた。

 

そんなことを思いながら店を見て回っていると、見覚えのある顔を見つけた。

なんだ、ゆめも町に出てたんじゃない。

そして声をかけようとしたとき、アタシは言葉を失った。

 

「司さん、こっちですよー」

「ごめんごめん。待たせちゃったかな」

「いえいえ、わたしも今きたばっかりですから」

 

えっ……。なんで……?

なんで彼とゆめが二人っきりでお買い物してるの?

二人とも大事な予定があるって言ってたのに。

まさか、これが大事な予定なの?

……ちょっと監視してもかまわないわよね。

 

△▼△

 

何よこれ。

まるでデートじゃない。

 

 

……さいってー。

信じてたアタシがバカみたい。

 

「ん?あれってローラさん」

「あれ、ローラだ。ってどうしましょう、コレのこと

「とりあえずゆめちゃんが持ってて」

わかりました。奇遇だね、ローラ」

 

小声で何か話してる。

アタシには言えないことでもあるのかしら。

 

「ロ、ローラ?なんか怖いよ……?」

「どうしたんだい。そんな顔して」

 

どうしたもこうしたもないわよ……!

 

バッシイィィィン!!!

 

アタシは彼の頬を叩いた。

それもこっちの手が痛くなるぐらい強く。

それにゆめはひどく困惑しているみたいだ。

 

「えっ……?えっ、えっえっ?」

「なんで。なんでアタシじゃなくてゆめと一緒なの!?」

「そ、それにはちゃんとした理由があるんだ」

「じゃあその理由ってなによ」

「それは……」

「……もういい。もう聞きたくない」

「ちょっと、ローラそんな言い方は――」

「ゆめは黙ってて!」

「……」

 

そして、アタシは彼と顔を合わせることに耐えられなくなって駆け出した。

 

 

……信じてたのに。

 




後半が少し雑な気がするけど、こんなものなのかなぁ。
なんて頭を抱えながら投稿です。
ローラのお話はあと1話でとりあえず完結のつもりです。


......初代のソレイユのお話もそろそろ考えないと。


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女心は秋の天気

お待たせしました。
ローラ√の一応の終話です。


逃げたアタシは、休暇を取って実家に帰ることにした。

幸い、家に両親がいなかったから心配されることもなかった。

家に帰ってからは無気力な生活が続いた。

歌ったり踊ったりする気分にならなかったけど、基礎トレーニングだけは欠かさなかった。

何もしていないより何かしている方が気が紛れるから。

それに、アイドルをやめようなんて思ってもいないし。

 

△▼△

 

家に戻ってきて1週間がたったころ、真昼から連絡が届いた。

 

『大丈夫?できればちょっと会ってお茶でもしない?』

 

ある程度気持ちも落ち着いていたから、今の気持ちを吐き出すにはちょうどいいかもしれない。

なんだかんだで真昼には手伝ってもらったんだし、これくらいは許してくれるだろう。

気持ちが落ち着けば、学校へ戻る気持ちになれるはずだ。

そうと決まればさっそく街のカフェで真昼と落ち合おう。

 

△▼△

 

「ローラ、体調はどう?」

「快調とは言えないけど、悪くはないよ」

「そっか。それならよかった。でも、気分はあまり良くはないのかな?」

「そう、ね。アイツのことが頭に浮かんでくると少しイライラしちゃって」

「せっかくだから私にそのイライラを吐き出してよ。そうすれば気分もだいぶ良くなると思うから」

「ありがとう、そうさせてもらうね」

 

それから真昼は、アイツに対する不満だったりアタシの不安だったり、なんでも話を聞いてくれた。

話していくうちに次第に気分も落ち着いてきて、しばらくするとすでにとりとめもない話をしていた。

思っていた通り、学校に戻ろうと思えてきた。

 

「そういえば、学校に戻るとしたらいつになりそう?」

「えーっと、11月4日かな?」

「4日ね。わかったわ」

 

そういえば、4日ってアタシの誕生日だったけど、何か用意してくれてるのかしら。

でも、もし用意されてるとしても聞くのは無粋よね。

気になるけど黙っておいた方が良さそう。

 

「それと、せっかく休暇を取ったんだったらしっかりと休んでね。この前のステージの疲れと、オーバーワークもあるだろうし」

「ステージでのこと、知ってたんだ……」

「うん。ただ、私が気づいたわけじゃないんだけどね」

「どういうこと?」

「私は、それに気づいた人から聞いただけ。もしお礼を言うんだったら、学校に戻ってきてからその人に言ってあげて」

「わかった。でも、その人っていったい誰のこと?」

「それは今は教えられないけど、決して悪い人じゃないから安心して」

「真昼がそう言うなら信用するけど、なんだか気になるわね」

「あはは……」

 

でも、真昼の言う通り今のうちに羽を思いっきり伸ばそうかな。

 

「よし。ローラの気分も落ち着いたみたいだし、私はそろそろ戻るわね」

「うん。話を聞いてくれてありがとう。それじゃあ、また学校でね」

 

△▼△

 

11月4日。アタシは学校に戻ってきた。

 

(学校よ、私は帰ってきた!!)

 

……何か渋い声が聞こえたけど気のせいね。

 

正門をくぐると真昼の姿が見えた。

 

「真昼!ただいま!」

「おかえり、ローラ。さっそくだけどローラを連れていきたいところがあるの」

 

と、真昼に手をひかれるがまま学内のホールへ向かった。

 

「ここ?」

「そう。さあ、入って入って」

 

おそらくここが会場なのだろう。

意を決して扉を開けると、アタシはクラッカーの音に包まれた。

 

「「「誕生日おめでとう!」」」

 

そしてたくさんの人がアタシを祝ってくれた。

いつも顔を合わせるあこや、ツバサ先輩のような先輩方、クラスメイトの人たちなど、本当にたくさんの人が来てくれた。

こんなにたくさんの人に祝われるのは初めてだ。

 

「みんな、ありがとう!」

 

本当にうれしかった。

でも、何だろう。

どこか心から喜べていない自分がいる。

どうしてなんだろう。

こんなにもうれしいのに。

……そうか。やっぱりアタシは司先輩のことが気になるみたい。

もう一度だけ先輩と話がしたい。

 

「ローラ、司先輩のことを探してるんでしょ」

「真昼……」

 

真昼にはお見通しだったみたいだ。

 

△▼△

 

真昼に連れられ、アタシは展望台へ向かった。

そして夕陽に照らされた展望台には彼がいた。

気づけば真昼はいなくなっていた。

気遣ってくれたのだろうか。

 

「あの、ローラさん」

 

アタシの考えに割り込むように彼は話しかけてきた。

 

「何?」

 

アタシはついぶっきらぼうに返事をしてしまった。

 

「実は、この前のことを弁解しようと思って」

 

彼はそういうとおもむろに箱を取り出した。

きれいに装飾されていた。

おそらくプレゼントだろう。

 

「まさか、ゆめにそれを渡せっていうの?この前の時に渡しそびれたから…「そんなわけないだろう!」…っ!?」

 

突然の大声に驚いてしまった。

そして彼がこんな大声を出すということに驚いてしまった。

 

「これは他でもないローラさん、いやローラのためのプレゼントだ!」

「あ、アタシの?」

 

え?ってことは……。

 

「ローラ、誕生日おめでとう」

 

彼はアタシにプレゼントを渡してくれた。

……でも、今のアタシには受け取る権利はないかな。

 

「な、何か気に食わなかった?」

「ううん。そんなことない」

「じゃあ、どうして?」

「誤解をしていたのが、申し訳なくて……」

「なんだ、そんなことか」

「そんなことって……」

「だって、それを言ったら僕も隠していたんだし。おあいこだよ」

「司先輩……」

「だから、これを受け取ってくれないかな」

「はいっ!」

 

受け取った箱を開けてみると、ブレスレットが入っていた。

きれいで、SPICE CHORDのブランドのようなロックさを感じる。

 

「どう、かな。気に入ってくれた?」

「もちろんです!」

「そっか、それはよかった」

 

これで心から喜ぶことができた。

本当に最高の誕生日だ!

 

「あれ、そういえばさっきアタシのことローラって」

「つい呼び捨てで言っちゃったけど、嫌?」

「いえ、むしろ前より距離が近づいたと思うのでむしろうれしいです」

 

そして、しばらく静かな時間が続いた。

それはとても心地が良かった。

 

「ローラ」

 

名前を呼ばれて振り向くと、彼の顔が目の前にあった。

そして唇に触れるだけのキスをした。

 

「っ!!!」

 

突然のキスに驚いたけど、同時に心が満たされる感覚があった。

それからしばらく、お互い恥ずかしくなって顔を合わせられなかった。

 

「えーっと、お二人さん。いい雰囲気のところ悪いのだけど、そろそろ会場に戻らないと」

「「!!!」」

 

そうだ、パーティーの途中だった。

 

「司先輩、急いで戻りましょう」

 

そしてアタシは彼の手を引いて会場へと戻っていく。

 

この先もこういった誤解や間違いがあるかもしれない。

けれど、彼や仲間たちがまた助けてくれるはずだ。

そしてまた一段と仲が深まっていくのだろう。

 




実はプロットは一番最初に書き終わっていたのですが、修正を続けた結果当初の予定よりもだいぶ遅くなりました。
今後、またローラのお話を書く機会はあると思います。
しかし、他のルートを進めることも大事だと考えていますので恐らく単発モノになるかと思います。

......そろそろゆめちゃんのお話の続きを書かなきゃ。


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”特別篇” ローラの誕生日

一週間も遅れました。
今回は書きだめができず、時間が取れなかったこともあり、遅くなってしまいました。
本編も書けていません(白目)
ともかく、アンケートについてもありますので、詳しくは後程。


今日はローラの誕生日。

去年とは打って変わって、サプライズなんてものは用意していない。

前回はそれで失敗しちゃったし。

それに、今年はS4になった人が忙しくなって、みんなの予定を合わせることが少し難しくなったから、二人で静かに過ごそうと思った。

 

「ねぇローラ」

「何?」

「今日は何をしようか」

「そうね……」

 

そういってローラは腕を組んで考える。

僕はそれを横目に見て、付け加える。

 

「僕にできることだったら、何でも言って。とは言ってもすぐには出てこないか」

 

と言ったものの、答えはすぐに帰ってきた。

 

「じゃあ、司の家に行きたい!」

 

予想してない答えだったけど。

 

「えぇっ!?ウチに!?」

 

当然のごとく、僕は驚いた。

ローラからその答えが出たという事実と、実家に連れ帰ったときの母さんのことを考えると、驚きと恥ずかしさでやられてしまった。

それを見て、ローラは少し申し訳なさそうな表情をした。

 

「えっと。ダメ、かな?」

「あー、ちょっと家に確認してみる」

 

流石に直球で断るのも気が引けるし、もし家に誰もいないのであれば、それはそれで好都合だと思い、母さんに連絡を入れることにした。

電話を掛けると、2コールも経たずに電話に出た。

それから、ローラのことをぼかしながら、家に帰るという話をすると、今は家にいないという返事が返ってきた。

僕はそれならそれで構わない、という返事をして電話を切った。

 

「おまたせ、ローラ」

「どうだった?」

「OKだったよ」

「やった!」

 

ローラは笑顔で喜んでいる。

そこまで期待するほどのものはないと思うけど、恋人同士になって1年も経ったのに、未だに家に連れて行ったことがないことを思い出し、一人納得する。

 

「よし、じゃあ行こうか」

「うん!」

 

手をつないで家へと向かう。

こうやって恋人といるだけで、実家までの道のりが少し違ったものに見えてくる。

時折、通っていた小学校や遊んでいた公園なんかを通っては、思い出話に花を咲かせていた。

すると、あっという間に家につく。

一般的、かどうかはわからないが、車を一台止めるスペースがあるくらいの広さがある二階建ての家。

僕は持っていた鍵を使い、玄関のドアを開けて中に入る。

ローラも僕に続いて家に入る。

 

「ただいまー」

「お邪魔します」

 

ローラは若干緊張しているようだけど、こればかりはどうしようもない。

ローラを二階の僕の部屋に案内して、僕は飲み物を用意しに居間に行った。

そして、僕がコップに麦茶を入れようとした時、玄関のドアの開く音が聞こえた。

 

……玄関のドアが開いた!?

うっそだろ!?

母さんの奴、帰ってきやがったのか!?

 

僕は飲み物の用意を後回しにして、玄関へと向かう。

しかし、すでにその時には母さんは玄関におらず、二階へと向かったようだ。

玄関でローラの靴に気づいたんだろうな。

それに、僕が自室に連れていくのも読まれてたのか。

……積んだな。

 

僕はあきらめて自室に向かう。

母さんに問い詰められるんだろうな。

 

その後、なんやかんやあったが母さんはローラとの付き合いを認めてくれた。

ローラを今まで紹介しなかったことをねちっこく言われたけど。

母さんは、ローラが誕生日だと知ると今日は泊まっていって、だなんてことを言い出した。

しかも、ローラがそれに賛成するという事態。

……僕だけのけものにされてる気がする。

加えて、母さんは何を思ったのか、僕の部屋にローラを寝かせてくれとまで言い出した。

もちろん僕に反論する余地はなかった。

流石に一緒の布団で寝るわけにはいかなかったから、ローラに僕のベッドを使わせ、僕は予備の布団を引っ張り出して寝ることにした。

 

△▼△

 

「ねえ、司」

「なんだ?」

 

月明りだけが差し込む部屋で、ローラは僕に言った。

 

「おばさん、いい人だね」

「そう思ってくれるなら、よかった。むしろ迷惑じゃないかと思ってたくらいだし」

 

いつもに比べてうるさかった気もするし。

それでも、母さんとローラがいい関係を築けたのなら、良しとしよう。

 

「私、いずれおばさんをお義母さんってよぶのよね?」

「まあ、結婚することになったらね」

 

結婚。

いずれはすることになるのだろう。

 

「結婚、ね」

 

今まで考えてこなかったこと。

もちろん、まだ年齢的にも早いということもあるし、アイドル活動もあるから考えもしなかった。

 

「司はさ、これからも私のことを幸せにしてくれるんでしょ?」

「もちろん、そのつもりだよ」

「じゃあ、それだけで十分」

 

そういって、ローラは僕の布団へと潜り込んでくる。

 

「ちょっ、ちょっと、ローラ!」

「いいじゃんいいじゃん」

 

雲一つない夜空は、僕らの明るい未来を示しているようだった。




実は、もともと軽い気持ちでこのお話を書いたつもりだったんですが、なんだかんだいつもと同じくらいになったという顛末です。
ですので、どうかご勘弁を。
本編に関しては、この頃時間が取れませんでしたので、これから書かせていただくつもりです。
ですので少々お待ちください。

さてアンケートですが、本日いっぱいで締め切ります。
ご協力をお願いします。


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ゆめ√
”ゆめの始まり”①


プロットを考えるのに結構かかってしまいました。
思っていたよりもゆめちゃんのお話は長くなりそうです。
少し長編っぽい流れになると思います。


春はいい。

寒い冬が終わり、あたたかな日差しに包まれる。

このあたたかな日差しが心地よい。

 

「昼寝にうってつけの天気だなぁ」

 

そこで程よい木陰を見つけた。

ここでひと眠りするとしよう。

今日は珍しく仕事もレッスンもないしな。

 

「関係はないけど『春眠暁を覚えず』というぐらい春は心地よい季節だし」

 

なんて独り言をいいながらまどろみに落ちていく……はずだった。

 

「うわああああああああ!?」

 

女の子が落ちてきたのだ。

余裕の一つでもあれば『親方、空から女の子が!』なんて言いながら助けることができるのだが、あいにく寝そべった状態でいるうえに、眠りに落ちようとしていたところである。

残念ながら助けるどころか自分を守ることすらできない。

 

「ぐお“っ……!」

「ひゃっ!?」

 

お腹の上に落ちてきた。

けっこう痛い。腹筋を鍛えてなかったら気絶してたところだった……。

女の子のほうは大丈夫だろうか。

 

「だ、大丈夫……?」

「は、はい!わたしはだいじょうぶです。ってご、ごめんなさい!」

 

女の子はお腹から降りてくれた。

結構痛みは残るもんだな……。

 

「うぅ……。い、痛ぇ……。」

「ごめんなさい。わたしが心配しないといけなかったのに」

「いやいや、いいよ気にしなくて。タイミングが悪かっただけだし」

「そんな訳には――」

「それじゃあ、こうしよう。お詫びとして僕の体を起こしてくれないかな。腹筋に力が入らなくて起きられなくてさ」

「わ、わかりました!」

 

彼女が起きるのを手伝ってくれた。

これで落ち着いて会話もできそうだ。

 

「僕の名前は飯島司。君、名前はなんていうの?」

「わたしは虹野ゆめです。さっきはごめんなさい」

「だから気にしなくていいって。それで、なんで男子部のところに?」

「……男子部?何ですかそれ?」

「あれ?男子部って知らない?男子部は名前のとおり男のアイドルを育成するためのところなんだけど」

「知らなかった……」

「学校の案内資料にも書いてあったはずなんだけどなあ。ところで、きみはどうしてここの木の上なんかに?」

「えーと、正門から出ていくひめさまに手を振ろうと思って木に登ってたんです。そしたらすべって落っこちちゃいました。あはははは……」

 

なんか、おもしろい娘だなぁ。

 

「どうしてそこまでしようと思ったんだい?」

「えーっと……。実は、わたしがアイドルになりたいと思ったきっかけがひめさまで――」

 

それからしばらく話をしていた。

男子部の話もしてみると、意外と興味をもってくれたようだ。

女子部のS4のような存在のM4がいることとか。

にしてもひめ“さま”か。

 

「あ、今更なんだけどここが男子部の場所だって知ってた?」

「えっ……?本当ですか?」

「さすがにそんな嘘はつかないよ」

「じゃ、じゃあわたし怒られたりしちゃうんですか?」

「さすがに怒られることはないと思うけど、なるべく入らない方がいいかな」

「どうしてですか?」

「ごくわずかではあるけれども、男子部には邪な考えを持つ人がいるらしくてね。ほら、ウチの女子って色々とレベルが高いじゃん?だから、そういった人が狙って来ないとは限らないし。ましてや、ゆめちゃんだって可愛いんだから気を付けとかないとね。これから立派なアイドルになってほしいし」

「は、はい!」

 

ちょっとゆめちゃんの顔が赤い。

不用意にかわいいなんて言うんじゃなかっただろうか。

 

「ま、一応頭の隅っこにでもおいててもらえればいいよ。っとそろそろいいじかんだね。お話もこれでお開きにしようか」

「そ、そうですね。……あの、連絡先を聴いてもいいですか?」

「ん?ああ、構わないよ」

 

連絡先の交換をした。

そのときに男子用のアイカツモバイルにもちょっと驚かれた。

……男子部のことを知らなさすぎではないだろうか。今度教えておくべきだろう。

 

「何かあったら僕に連絡しておいでよ。先輩として相談相手にならなってあげられるからさ」

「はい、ありがとうございます」

「それじゃあ、またね」

 

これから、彼女はどんなアイドルになっていくのだろうか。

 

△▼△

 

それから少しして、新入生のお披露目ステージが開催されることになった。

その中にゆめちゃんもいるはずだ。

知り合ったのも何かの縁。しっかりと応援させてもらおう。

 

そして、ゆめちゃんのステージが始まった。

はっきりいって初めてだとは思えないレベルだ。

なんだろう。胸が熱くなってくる。

彼女から目が離せない。

この娘がトップアイドルになるための手助けをしてみたい、なんて思い始めた。

それくらい魅力的だった。

 

ステージが終わり興奮冷めやらぬ中、これは将来有望だなんて思っていた矢先……。

 

「ゆめちゃん!?」

 

彼女は倒れた。

すぐに保健室へと運ばれていったが、心配で仕方がない。

体力には自信があると言っていた彼女が、気を失って倒れるなんて考えられないからだ。

 

「いったい、どうしたっていうんだ……」

 

次の人のステージが始まったが、全く身に入らない。

女子部の保健室に駆け込むわけにもいかないしなぁ。

相手が気を失っているとあればなおさらだ。

仕方ない、外で風を浴びて落ち着こう。

 

「一応、連絡だけでもしておこうかな」

 

△▼△

 

日が傾いたころ、ゆめちゃんから返事が来た。

 

『わたしは全然元気です。心配かけてごめんなさい』

 

……本当か?

あんなにひどい倒れ方をしたのに?

 

『本当に大丈夫なの?心配だから今からそっちに向かってもいいかな?』

『いいですよ』

 

了解を得たことだし、向かうとしよう。

 




頭の中でパッと浮かぶキャラクターはやっぱりスターズの方が多いですね。
そういった描写が他のシリーズよりも多いからだと思いますが。
一方でフレンズのキャラクターたちで書くのは難しそうですね。

とりあえず、ゆめちゃんのお話は長編(もどき)のスタイルで書いていこうと思います。
一応この作品は自分のスキルアップも兼ねていますので。


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”ゆめの始まり”②

台風19号がひどかったみたいですが、皆さん大丈夫だったでしょうか。
自分は国外にいていまいち状況がつかめていませんが被害が少なくあることを祈っています。

さて、ついにアイカツオンパレードが始まりゆめちゃんが出てきたわけなのですが、はっきり言って歓喜の悲鳴が止まりません。
あと、二話は今いる場所では見れない(公式の動画も)ので恐らく見れないまま今週が終わります。
サムネのあこちゃんかわいかったのになぁ......。


保健室に駆け込むと、ベッドに寝ているゆめちゃんと白鳥ひめ、それに髪をショートカットにしている女の子の姿が見えた。

白鳥は僕の姿を見るや否や、席を立ち部屋から出ていった。

っとと、まずはゆめちゃんの心配が優先だ。

 

「ゆめちゃん、大丈夫?」

「はい、体は全然問題ないです。ただ、ステージの記憶がなくて……」

「それは……なんだかおかしな話だね」

 

いったい彼女の身に何が起こったのだろうか。

ん?ショートカットの女の子から視線を感じると思えば自己紹介をしていないじゃないか。

 

「こんちには、僕は飯島司。少し前からゆめちゃんとは仲良くさせてもらってます。一応男子部に通ってます」

「え、えっと私は七倉小春です。ゆめちゃんとは小学校の時からの親友です」

「そっか。ってことは小春ちゃんもゆめちゃんが心配になってここに来たわけだ」

「は、はい」

 

その後、小春ちゃんにも受け入れてもらえてたようで、ゆめちゃんの体調を聞きながらも他愛のない話を交えながら過ごし、この日は解散となった。

しかし、なんとも奇妙だな。

まるで自分の何かを犠牲にして輝いているような......。

気のせいか。こんな厨二チックなことが起こるなんてな。

 

でも、何かしら手伝えることはないのかな。

……そうだ、疲れの上手な取り方くらいなら教えられそうだ。

 

△▼△

 

それから、ゆめちゃんの相談に乗ることが日に日に多くなった。

頼ってくれているのは素直にうれしいのだが、彼女が無理をしてまた倒れるようなことがあったら心配だ。

……なんか過保護な親みたいだな。

ただ、心配とは裏腹に彼女が倒れるというようなことは聞かなかった。

あと、それ加えて思ったことがある。

お披露目ステージでできていたことが練習ではできていなかったのだ。

あれほどのステージができたのならこれくらいはできるだろう、といったつもりで出したはずの課題ができていないのだ。

最初はやっぱり調子が悪いのかと思っていたのだが、明らかにそういった素振りは見えなかった。

 

「うーん……」

「どうしたんですか?」

「いや、大したことじゃないんだけど、ステージの様子を見るだけだと練習メニューが考えづらいなーって」

 

事実、数回ほどあの後ステージをする機会があったが、お披露目ステージの時ほどはいかずとも、素晴らしいステージをしている。

 

「えーっと、苦労を掛けているのならすいません」

「いやいや、そんなことはないよ。ゆめちゃんの力になりたいって思ったからね」

「ありがとうございます!」

 

確実にゆめちゃんのスキルを上げようとするならば、基礎トレーニングをこなしてもらうことが一番ではないだろうか。

まだ入学したばかりで、なおかつダンスや歌の経験もないのだ。

 

「うーん、やっぱり基礎トレーニングを重点的にやっていくことがいいかもね」

「わかりました。やっぱり基礎が大事ですね」

 

ひとまずこれでゆめちゃんの成長を見ていこう。

運動経験があるから体力には自信があるって言ってたし。

ただ、無理だけはさせないようにしよう。

自分の目の前で人が倒れるなんてもうこりごりだ。

 

△▼△

 

……何かがおかしい。

ゆめちゃんはしっかりと基礎トレして成長しているというのに、なぜかステージの上でそれが発揮されない。

もちろんステージで調子が悪いとかそういうことではない。

変化がないのだ。

いったいどうしてなのだろう。

そう思っている自分の視界に学園長の姿が見えた。

 

(どうしてここに学園長がいるんだろう……)

 

疑問を抱いたが、すぐにその答えは判明した。

学園長の視線の先にはゆめちゃんがいた。

 

ゆめちゃんにいったい何が……。

 

ゆめちゃんのステージが終わり、戻ってゆく学園長に疑問をぶつけた。

 

「学園長、どうしてゆめちゃんのステージのためだけにわざわざ足を運んだのですか?」

「ん?きみは確か……飯島くんだったかね?なぜそんなことを聞きたがる」

「もしかしたら、学園長が何かゆめちゃんの状態について知っているのではないかと」

「ほう……。虹野の違和感に気づいていたのか」

「ええ。一応先輩として面倒を見ているもので」

 

それから学園長は少し考えた後、僕の方を向いて言った。

 

「よかろう。君に虹野がどういう状態なのかを説明しよう。だが、少し場所を変えよう」

「わかりました」

 

そういって学園長は僕を連れて学園長室へと向かった。

 

△▼△

 

「まず君に尋ねたい。入学当初の白鳥ひめのことを知っているか?」

「ええ、一応同学年ですので。確か入学当初から類いまれな才能を持っていたと」

「ああ。だがそれは今の虹野と同じ状況だったのだ」

「あの白鳥ひめがですか!?」

 

まったくそんな素振りを見せていなかったのに?

 

「まあ驚くのも仕方ない。今まで隠し通していたからな」

「そうですか……。しかし、どうして彼女は克服できたのでしょうか」

「話すと長くなるが構わないかね?」

「もちろんです」

 

これでゆめちゃんが成長できるのなら構わないさ。

 

「よかろう。だが、まずは私の姉の話から始めるとしよう」

 

それから、学園長のお姉さん『雪乃ほたる』の話を聞き、あの不思議な力の末路を知った。

歌やダンスができなくなるという残酷な結末だ。

すなわち、アイドルとして生きていけなくなるというものだった。

それを間近で見ていた学園長はこれを避けるべく、白鳥ひめへ新たなトレーニングメニューを提案したそうだ。

 

「結論としては実力を上げることに尽きるのだが、完全に克服するにはあの力に頼らないという強い意志が必要となる」

「強い意志……ですか」

「ああ。言うなればそれが起こるようなきっかけがあれば良いのだ。そのきっかけを私が与えようとしていたのだが、虹野には君がいる。だから君に託そうと思う」

「僕がきっかけを……」

「もちろん君はトレーニングを優先してくれて構わない。きっかけとなりえるようなオーディションはこちらから受けさせるつもりだ。ただ一つだけ、彼女には私や姉のことについて言わないでおいてほしい」

「どうしてですか?知っておいた方がいいんじゃないですか?」

「まだ私は虹野とって敵である必要があるのだ。それに、彼女はすでに君という仲間を持っているではないか。だから、君が彼女の力になってやってくれ」

 

そう……だな。

ゆめちゃんの味方になってあげなくては。

 

「わかりました。全力で引き受けさせてもらいます」

「うむ。わたしもしっかりサポートさせてもらう」

 

ゆめちゃんが笑顔でステージができる日まで頑張らなきゃ。

 




学園長が少しいい人になっております。
このままマイルドに行くのかシリアスを入れるのか迷っております。

期を見て活動報告で誰のお話が読みたいのかアンケートを取れればと思っております。


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"ステージは誰のために"①

遅くなってしまいました。
駄文になってしまったような気がしますので、読みづらいかもしれません。
もしよければ「こういったところを直すといいよ」とかアドバイス等くれると助かります。
ただ書くだけじゃなくて、少しは上達したいので。
それでは前置きが長くなりましたがゆめルートの本編どうぞ。


それから、ゆめちゃんに体のことを伝えた。

多少困惑している様子ではあったがあらかた理解してくれたようだ。

あと、練習メニューの変更にも応じてくれた。

今までよりもきついメニューであるのも関わらず、嫌がる素振りも見せなかった。

ただ、気持ちが変わるようなきっかけについては何もヒントを得ることができなかった。

 

「きっかけねぇ……」

「どうかしたんですか?」

「あぁ、いや。なんでもないよ。ただの考え事」

 

本人があまり意識してもいけないと思い、ゆめちゃんには隠している。

 

「よし、今日のところはこれで終了。だいぶ基礎はしっかりしてきたね」

「そうですか!?ありがとうございます!」

「でも、これからレベルを上げていくから覚悟しておいたほうがいいぞ~」

「はーい」

 

その後、ゆめちゃんと別れるときに彼女の友達と遭遇した。

名前を桜庭ローラさんといっていた。

ローラさんも近々開催されるオーディションに向けて別の場所でレッスンしていたそうだ。

そして、ふと一つの考えが思い浮かんだ。

 

「桜庭さん、よかったら僕たちと一緒にレッスンしないかい?」

「アタシがですか?」

「そ。せっかくならみんなでやった方がいい刺激になるんじゃないかな、って思って」

「ゆめがいいのならぜひ!」

「うん。全然いいよ!」

「それじゃあ決まりだね。あ、他にも来たがっている友達がいたら連れてきても大丈夫だよ。数人くらいなら増えても問題ないし」

 

環境を変えることで何か変化を与えることができればいいのだけれど。

 

△▼△

 

それから数日後、ゆめちゃんとローラさんに加え、以前話した小春ちゃん、香澄姉妹の妹の真昼さん、あとは劇組で一際実力を感じさせている早乙女さんが参加した。

この5人は仲がいいようで、彼女たち同士で教えあったりもしていた。

僕の助けがいらないように見えたが、まだ彼女たちは入学してそれほど経っていないためか、質問がけっこう飛んできた。

歌の基礎から演技まで、教えられる範囲であれば何でも対応した。

他の人の質問に対応している時、少しゆめちゃんが訝し気な目で見てきていたけど何だったんだろうか。

 

「調子はどう?ゆめちゃん」

「はい、今までと違ってちょっと新鮮です」

「そっか、それならよかった」

 

ともかく、これで何か変わってくれるといいんだけどなぁ。

 

 

~sideゆめ~

 

……なんだか変な気分だ。

司さんが私以外の人に教えているのを見ると、なんだか胸の奥がざわざわしてくる。

それに、ほんの少し腹が立つ。

どうしてなんだろう。

決して怒りたくなるようなことはしていないのに。

 

~side out~

 

 

それから数回のレッスンを終えたころ、ゆめちゃんとローラさんの二人が同じオーディションに参加していた。

これもおそらく学園長の考えだろう。

結果から言うと、ゆめちゃんが合格してローラさんは落選した。

力を抑えようとしていたのだろうが、ゆめちゃんはあの力を発動した。

その反動で、今は声を枯らしてしまっている。

 

「ゆめちゃん、大丈夫?」

「はい、何とか」

 

気を失わずに済んだのはレッスンのおかげだと思いたい。

ただ、このステージでゆめちゃんにはきっかけが必要なのだと再確認した。

 

「ゆめちゃん、ちょっと辛いことを言うかもしれないけどいいかな」

「はい……」

「ゆめちゃんは何を思ってあのステージに立っているのかな」

「それは、S4になるためです」

「それじゃあ、誰のためにステージをやってるんだい?」

「それは……」

「ゆめちゃん、そこをもう一度考えてみてくれないかな。君にはそこが足りていない」

「……はい」

 

それからゆめちゃんは黙り込んでしまった。

少しきつい言葉だったかもしれないが、これからアイドルをやるうえで大切なことだ。

 

「……それじゃあまた今度のレッスンで」

「……」

 

△▼△

 

次の練習の日までゆめちゃんと会うことはなかった。

レッスンにはきちんと参加してはいたものの、どこか上の空だった。

ステージの後に言ったことを考えてくれているのだろうか。

だが、このままではケガをしかねない。

……仕方ない、学園長から口止めをされていたけど言ってしまってもいいだろう。

 

「ゆめちゃん、ここに行って少し気分を変えてくるといいよ」

「え?ここ、ですか?」

「そう。ここに行けば何かヒントが得られるはずだと思うしね」

「ヒント、って、私が悩んでいたのわかってました?」

「そりゃあもうね」

 

僕が笑って、それにつられてゆめちゃんも少し笑っていた。

そして少し笑顔を取り戻したゆめちゃんはホタルさんの所へ行った。

学園長の姉であるホタルさんとは一度会ったことがあるが、大丈夫だろう。

あの人ならこの力の辛さについて一番わかっているはずだ。

それに、ゆめちゃんを笑顔にしてくれるだろう。

……ただ、なんだか嫌な予感がぬぐいきれないのはどうしてだろう。

 




にじみ出てくるこの駄文感。
これは一応習作でもあるのでぜひぜひ改善点等挙げてくれると助かります。
あと、アンケートも取っていきたいと思っていますのでその時は投票等お願いします。


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"ステージは誰のために"②

お待たせしました(迫真)

最近はコロナだなんだと忙しないですねぇ。
私も急用以外の外出は控えております。
みなさんも手洗いうがいなどのできることをして、自分の身を守りましょう。

さて、説教臭いことは置いといて久しぶりのゆめちゃんのお話です。


今回の訪問はうまくいったのだろう。

結果的に、ゆめちゃんはホタルさんの所に赴いて何か得られたようだ。

その証拠に、ゆめちゃんの目つきが変わった。

不安げで力んでいた表情が、だいぶ和らいでいる。

レッスンでも、今まで以上に力が入っているのがわかる。

 

「よし。今日はこれで終わりにしよう」

「「「はい。ありがとうございました」」」

 

そのレッスンもいつも通り無事に終わり、解散となった。

僕も帰ろうと思ったところで、ふと声をかけられた。

 

「あの、飯島先輩……」

「ん?どうした、七倉」

「伝えておかなきゃいけないことがあるんです……」

「なんか重要な話みたいだな。場所変えるか?」

「いえ。ここでいいです」

「わかった。それで、話って?」

「実は。私、海外に移り住むことになったんです」

 

(なんてことだ。ただでさえゆめちゃんが困っているっていうのに)

 

「そ、それは唐突だな。ちなみにみんなには話しているのか?」

「いえ、それが言い出せなくて……」

 

(重要度が増した―!)

 

「それなら、むしろ言わないと後悔すると思う。だって、友達が何の連絡もなしにいなくなったら心配するだろう?」

「そう、ですね……。わかりました。私、今から伝えてきます!」

 

伝える決心がついたようだ。

心配そうな表情も吹き飛んでいる。

 

「ああ、気を付けて。それとお疲れ様」

「はい、ありがとうございました!」

 

七倉の抱えている心配事はなくなったようだが、この影響でゆめちゃんがどうなるか心配だ。

このことが吉と出るか凶と出るか。

 

△▼△

 

七倉はゆめちゃん達にきちんと伝えられたらしい。

そのおかげか、送別のパーティーの計画まで挙がっている。

そして、ゆめちゃんは最後にステージをすることになった。

未だに不安があるのだろう。

いつになくうつむきがちなゆめちゃんが相談にやってきた。

 

「司先輩。私、小春ちゃんのためにステージをすることになったんです。でも、少し不安になってしまうんです」

「やっぱり、あの力が怖い?」

 

その言葉に、ゆめちゃんは少しうつむいてしまう。

 

「はい……。それに、小春ちゃんを悲しませたくないんです」

「……ゆめちゃんならだいじょうぶだよ」

「どうしてそんなにはっきり言えるんですか……?」

「どうしてって、以前に比べて厳しいレッスンにも耐えられるようになったし、それに対する気持ちも変わっただろう?」

「はい……」

「それなら大丈夫だ。絶対に成功する。僕が保証する」

 

笑いながらゆめちゃんに答える。

 

「だからさ、自信をもっていいんだよ」

「……はい!」

 

ゆめちゃんはいつもの笑顔に戻ってくれた。

 

「よし。それじゃあさっそくレッスンといきますか」

「えぇ、ちょっとそれは……」

 

△▼△

 

そしてとうとうパーティーの日となった。

ゆめちゃんはやはりというか、緊張している。

それでも、以前に比べたらかなりマシになっている。

……作戦決行だな。

 

「ゆめちゃん、ちょっとこっち向いてよ」

「はい?どうしたんで......ふふふっ」

「作戦大成功。どう?ちょっと落ち着いた?」

「ちょっとそれはずるいですよ。あははは」

 

ゆめちゃんが笑ってくれた。

この笑顔があれば大丈夫だろう。

 

「ゆめちゃん。ステージ頑張ってね」

「はい。ありがとうございます」

 

そしてちょうどよくゆめちゃんがステージにあがる番が回ってきた。

 

「いってらっしゃい」

「いってきます」

 

ゆめちゃんの背中を見送る。

なんだか少し立派になった気がするなぁ。

さて、ステージの応援に行かなきゃ。

……さすがに着替えてから応援しよう。

ステージ中に噴き出すなんて台無しだし。

あ、何の格好をしていたかは秘密ですよ。

 

△▼△

 

アイカツシステムが起動し、ゆめちゃんがステージにあがってくる。

音楽が鳴り始め、いよいよステージが始まる。

 

「ページを――」

 

歌いだしは順調だ。

レッスン通り、落ち着いて歌えている。

 

ふと周りを見渡すと、白鳥と学園長がいた。

ゆめちゃんのあの力が心配で見に来てくれたんだろう。

 

「世界で――」

 

サビに入り、ゆめちゃんの纏うオーラに変化が現れた。

マズい――!!

今までのことは無意味だったとでもいうのか!

僕も学園長達もステージに向かっていく。

 

「ゆめちゃん!!」

 

僕の声に気づいたゆめちゃんは、周りを見渡す。

そして、ふと我に返りオーラも最初の時のものに戻っている。

 

「……あの力を克服できたのか」

 

やったな、ゆめちゃん。

 

△▼△

 

無事にパーティーが終わり、みんなで七倉を見送ることになった。

 

「みんな、今日は本当にありがとう」

「小春ちゃん、向こうでもアイカツ頑張ってね」

 

各々別れの挨拶を済ませたり、プレゼントを送ったりしている。

そして出発の時間が近づくと、七倉の方から僕に向かってきた。

 

「司先輩。先輩が背中を押してくれたおかげでこんなにもたくさんの人が見送ってくれました。ありがとうございます」

「いやいや、それは七倉がみんなに好かれてるからだよ」

「それでもです。それから、レッスンにも付き合ってくださってありがとうございました。これからも頑張っていきます」

「ああ、イタリアでも頑張れよ」

「それと、私から司先輩にお願いがあります」

「お願い?」

 

はて、いったい何を言われるのか。

 

「ゆめちゃんのこと、お願いします。私がいなくなったら、ゆめちゃんが寂しがるだろうから」

「どうして僕にそれを?」

「今のゆめちゃんにとって、先輩は心の支えになっているんです。それに……」

「それに?」

「いえ、なんでもないです。本当にありがとうございました」

 

そう言い残して七倉は家族の方へ向かっていった。

ゆめちゃんは笑顔で別れることは……できなかったみたいだな。

あとで励ましてあげないと。

 




作者は鬱展開が好きではありませんので、円満にお別れができます。
(プロット段階では原作通りに倒れていた模様)
そして、次回から本格的に二人がくっつくまでのお話になります。
司くんの格好についてはそれぞれのご想像に任せます。

次の投稿はまた一か月後かな(遠い目)。
あとエルザ様のお話書いてみたい。


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”酸いも甘いも”

宣告どおりひと月空いてしまいました。
誕生日企画は例外です。

遅くなった理由の一端が、当初の予定のプロットから逸れたことが原因です。
言い訳がましいかもしれませんが何卒ご勘弁を。


七倉を送り出して数日。

僕はゆめちゃんに誘われて外出している。

なんでも、送別パーティーの時のお礼だとか。

 

「今日は先輩においしいケーキをごちそうします。楽しみにしててくださいね」

「ケーキか。楽しみだなぁ。あ、でも最近甘いものの食べ過ぎな気がするなぁ。でもまあ何とかなるでしょ」

「先輩はそんなに気にする必要あります……?」

「男だってある程度は気にするものだよ。特に僕たちはアイドルをやっているんだし」

「そういえばそうですね……」

 

ちょっと苦笑ぎみなゆめちゃん。

というか、その言い方だと僕がアイドルらしくないみたいに聞こえるんだけど。

 

「ところで、今日連れて行ってくれるお店はどんなところなんだ?」

「なないろ洋菓子店っていうところです」

 

△▼△

 

「つきました。ここです」

「ここがなないろ洋菓子店か」

 

少し洋風なかわいらしい見た目をしているお店だった。

 

「じゃあ先輩、行きましょうか」

「ああ」

 

ゆめちゃんがお店の扉を開ける。

そして、

 

「ただいまー!」

 

と言ったのだった。

 

「???いま、ただいまって、え?どういうこと?言い間違えだよね?」

「言い間違えじゃないですよ。ここは私の実家なんですから」

「えええええっ!」

 

実家だとぉ?!

……これは何か盛大な勘違いをされそうな予が。

 

「ゆめちゃん!おかえりなさい。ところでその方は?」

「この人は私の先輩の飯島司さんです」

 

ゆめちゃんがショウウインドウ越しの女性に僕を説明している。

恐らくゆめちゃんのお母さんで間違いないだろう。

 

「ど、どうも初めまして。飯島司です。四ツ星の男子部でアイドルをやってます」

「……」

 

あれ、なんかゆめちゃんのお母さんがフリーズしたぞ。

これはなんだかマズそうだ。

 

「実はゆめちゃんとは――」

「あなた!ゆめちゃんが男を連れてきたわ!」

 

やっぱりこうなるかー。

まあ、年頃の女の子が男を連れてたらこうなるのは仕方ないのかもしれないけど。

 

「なんだってー!」

 

そう言って奥の厨房から一人の男性が出てくる。

十中八九ゆめちゃんのお父さんだろう。

 

「こんにちは、飯島司と申しま――」

「ゆめとはいったいどんな関係なんだ?!」

 

ゆめちゃんのお父さんがものすごく食い気味で聞いてくる。

 

「学校での先輩後輩の関係です。時々レッスンに付き合ったりする程度ですが」

「そ、そうなのか……?」

 

すこし不安になったのか、お父さんはゆめちゃんの方を見る。

 

「そうだよ。お父さんったら気が早いんだから。そういう関係じゃないんだよ……」

 

ゆめちゃんが弁解をしてくれた。

おかげで僕にかかった嫌疑が晴れたようで、ゆめちゃんのお父さんが、すまなかったという表情をしていた。

 

その後、改めて自己紹介をするとゆめちゃんのお父さんが僕の出演した作品を見てくれていたらしく、話が弾んだのはまた別の話。

 

△▼△

 

ケーキはどこで食べるのか、とゆめちゃんに聞くと、

 

「せっかくだから私の部屋で食べましょうよ」

 

と言われ、僕は部屋へと連れられた。

 

「ここが私の部屋です。ケーキを持ってくるので掛けて待っててください」

「わかった」

 

僕が返事をすると、ゆめちゃんはケーキを取りに戻っていった。

わかったとは言ったものの、内心すごく緊張している。

だって女の子の部屋だぞ。

信頼されている証拠なのだろうけど、なにぶん初めて入るものだから緊張するに決まっている。

 

「掛けて待ってろと言われたものの、どこに座るのが正解なんだ?」

 

おまけに難題にぶち当たる始末。

ゲームだったら絶対に「つかさ は こんらん している」って出てくる状態だ。

ぴよぴよっていう効果音も付属で。

 

迷った挙句、床に座ることにした。

ベッドに腰掛けるのはちょっとアレだし、一脚しかない椅子に座るのも申し訳ないし。

そして、ようやく腰を落ち着けた頃にゆめちゃんが戻ってきた。

 

「先輩、お待たせしました!」

 

ゆめちゃんが持ってきたケーキとお茶を机に並べる。

手伝おうとしたが、やんわりと断られたのであきらめて待つことにした。

 

ケーキはいちごのショートケーキ。

シンプルだけど奥が深いものだ。

見た目は特段いうことはない。

強いて言うなら、間に挟まれているフルーツはいちごだ、ということぐらいだ。

さて、食べるとしよう。

 

「いただきます」

「どうぞ召し上がってください」

 

柔らかな先端部分をフォークで切り出し、口に含む。

すると甘味が比較的強いクリームの味が口の中に広がった。

そして、追って間に挟まれていたいちごの酸味が来る。

おかげで口の中が引き締まり、クリームの甘さが後を引かない。

きちんと考え抜かれているものだったのだろう。

甘さが残らないから紅茶にも合う。

 

「おいしい……」

「やった!」

 

この味が気に入った僕は、いつの間にかケーキを平らげてしまった。

もちろん上のいちごは最後に残して食べた。

上のいちごは中とは打って変わって甘味が強いものだったのには驚いた。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」

「ゆめちゃんのお父さんってすごいんだね。もうすっかりこの味が気に入っちゃったよ」

「それはよかったです。連れてきた甲斐があります」

 

ゆめちゃんも僕がなないろ洋菓子店を気に入ったことがうれしいようで、感想を言ってからは笑顔が絶えない。

ただ、少しすると何か感慨にふけるような表情の後、僕に向かってお礼を言ってきた。

 

「本当に、ありがとうございます。こうして笑顔でいられるのも先輩のおかげです」

「僕なんて横から口出ししたぐらいだよ?」

「それでもです。おかげで小春ちゃんを無事に送り出すことができました」

 

七倉のことを思い出しているのだろう。

ゆめちゃんは少し遠くを見るような表情を見せる。

 

「何のためにステージをするのか、という先輩の言葉のおかげで気づけたんです。私は小春ちゃんや先輩やみんなに笑顔になってほしいんだって」

 

ゆめちゃんはいつになく真面目な表情で僕を見据える。

 

「だから、本当に感謝しているんです。本当に、ありがとうございました!」

 

その言葉とともにゆめちゃんは頭を下げる。

 

「そこまでしないでよ。ほら顔をあげて」

 

そう何度か言って、やっと顔をあげてくれた。

こんなに感謝されるとは思ってもみなかった。

ただ、僕はそれを甘んじて受けられないんだ。

 

「僕はゆめちゃんに隠してたことがあるんだ。だからまず、謝らせてくれないかな」

 

ゆめちゃんが僕を手で制するけど、頭を下げた。

そして、ゆめちゃんの力について僕の知っている限りの話をした。

学園長の話ももちろんした。

 

「そう、だったんですか……」

「いままで隠しててごめん。でも、ゆめちゃんがあの力に頼らなくなれた事は本当にうれしいと思ってる。ゆめちゃんのファンとしても、一人の先輩としても」

「先輩は何も悪くないです。だって、先輩の本心からの行動だってことは変わってないじゃないですか」

「でも――」

「そんなに先輩が自分のことを悪く思うんだったら、私のいうことを聞いてくれませんか?」

「それは構わないけど」

「じゃあ、それでこの事については手を打ちましょう!これだったら問題ないですよね?」

 

これは一本取られたみたいだ。

こわばっていた顔も自然とほころんでしまう。

 

「僕の負けだよ。気に病むのはやめにする。それで僕は何をすればいいんだ?」

 

僕の問いに、ゆめちゃんは何かためらうような、悩むような素振りを見せた。

でも、次の瞬間には何かを決意したような表情になった。

そして、ゆっくりと口を開け、僕への望みを言い出した。

 

「私と、デートしてください!」

 




ゆめちゃんがチョロインですって?
だって、顔がよくて優しい先輩が付きっ切りでレッスンしてくれてたんですよ。
惚れるにきまってるじゃないですか。
え?ケーキの描写いらないって?
筆者の練習として書いたものです。
スルーしてくださって構わないです。
ただ、司くんは結構甘いものが好きです。
......司くんの設定とかいる?

それはともかく、アイカツのWEBアニメの更新が一か月止まることに戦慄を覚えました。
アイカツのない生活の到来に恐怖を抱いております。
ですので、何とか二次創作だけでも盛り上がると良いなと思い、創作を頑張ってまいります。




あおいちゃんのお話のこと、忘れてませんよ。


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”デートの戦略”

以前からだいぶ期間が開いてしまいましたね。
ようやくゆめちゃんとのデート回です。
いろいろ言いたいことはありますが、とりあえずあとがきに回します。
お待ちかねの本編をどうぞ。


「へ……?」

 

まさかの望みに、つい変な声が漏れた。

……なぜにホワイ?

 

「えっと、デートっていうと男女が二人でお出かけすることでいいんだよね?」

「はい」

 

ゆめちゃんはいたって真面目な表情だ。

一方僕はこうなった理由がわからず困惑気味な表情だ。

 

「その、悪いけどその理由を聞かせてもらえる?」

「私が、司先輩へのお礼もしたいからなんです。デートって言いましたけど、実は司先輩にも楽しんでもらいたいからなんです」

 

ゆめちゃんはほほえみながらそう言った。

気遣いのできるいい子だ、なんて思いながらさっきの変な疑いを晴らした。

 

「わかった。それなら受けよう」

「やった!」

 

ゆめちゃんの喜び方が少し大げさに感じなくもないが、気にするほどのことでもないだろう。

それから日程を話し合い、今日は解散となったのだった。

 

△▼△

 

~ゆめ side~

 

先輩をデートに誘っちゃった~!

いや、そもそも今日もおうちデートじゃん!

 

先輩はなんだか狼狽えているようだったけど、こうなっちゃったのも全部先輩のせいだ。

先輩は私があの力を制御しようと頑張っていた時に、一緒になって力を尽くしてくれた。

誰かのためにステージをするっていうことを教えてくれたのもそう。

学園長とも相談してくれていたって聞いた。

先輩は本当に私のことを思ってくれていたんですね。

……それに、小春ちゃんを見送った後胸を貸してくれて。

その時に、私は司先輩のことが好きなんだって思った。

小春ちゃんが別れ際に『司先輩とのこと、応援してるよ』なんて言われて意識したのもあるけど、それはそれ。

その前から意識はしていたんだし。

 

だから、私は今度のデートで司先輩を惚れさせてやるんだ!

私をこうした責任取らせなきゃね!

 

~side out~

 

△▼△

 

今回のデートは水族館。

水族館が比較的近場なのもあり、校門で待ち合わせして行くことになった。

もちろん予定の時間よりも30分ほど早く着いている。

……水族館に行く機会があまりなかったんだけど、エスコートできるかな。

そう僕が少し思慮にふけっていると、ゆめちゃんがやってきた。

 

「待ちましたか?」

「いや、今来たとこだよ」

 

ありきたりだけど、もちろんこう返す。

 

「本当ですか~?」

「……実は少し待ってた」

「やっぱりそうですよねー。司先輩のことですし」

 

バレたか。

でも、ゆめちゃんは喜んでくれているみたいだし、問題なし。

 

「先輩、今日のお昼ご飯は楽しみにしてくださいね」

「何を作ってきてくれたのかな?」

「それはお昼までのお楽しみです」

 

いつもより荷物が多いから、作ってきてくれているのはわかったけど、何を作ってきてくれたんだろうか。

まあ、ゆめちゃんの言う通りお楽しみにしておこう。

 

△▼△

 

他愛もない話をしていると、目的地の水族館に着いたみたいだ。

水族館特有の潮のにおいが微かに漂ってくる。

 

「着いたね」

「そうですね」

「チケットは僕が買ってくるよ」

 

こういう時は男が出すもんだと聞いていたけど、違うかな?

 

「いえ、私も出しますよ」

 

そう言ってゆめちゃんもついてくる。

止めても聞かないだろうし、一緒にチケットを買いに行くことにした。

 

料金表を見ると、意外とチケットが高いことに驚いた。

まあ、考えると納得はできるんだけどね。

諦めて素直にチケットを買おうとしたところ、ゆめちゃんから待ったがかかった。

 

「どうしたの、ゆめちゃん?」

「あの、ここってカップル割があるみたいなんですよ」

 

カップル割、だと?

 

「だから、そうしませんか?」

「そ、そうだね」

 

ここで引くのもどうかと思い、ゆめちゃんの提案をうけることにした。

ゆめちゃんのことを少し意識してしまった自分が恥ずかしい。

もちろん、ゆめちゃんはかわいいんだけどさ。

ここでカップル割を受け入れた結果、後から考え直したくなる羽目になることを、この時の僕は知らない。

 

カップル割の証として、手をつないで入場した。

まあ、これくらいは想定内だ。

ただ、心なしかゆめちゃんの気分が上がったような気がした。

 

中に入ると、広いエントランスがあった。

そろそろ手を離してもいいだろうと考え、ゆめちゃんと手を離そうとしてもゆめちゃんは手を離さなかった。

 

「ゆめちゃん、さすがにもう手は離していいんじゃないかな」

 

すると、ゆめちゃんは上目遣いで僕に聞いてきた。

 

「つないだままじゃだめ、ですか?」

 

完敗だ。

こんな顔をされたら許すしかないだろう。

 

「ああ、別に構わないけど。歩きにくくはないよね?」

「はい。問題なく歩けます」

 

そう言って、手をつないだまま館内を見学することになったのだ。

 

△▼△

 

様々な水槽を見た後、目玉でもある大水槽へとやってきた。

 

「うわぁ、すごい……」

「すごいな……」

 

目の前には大きな水槽。

そしてその中を泳ぐたくさんの魚たち。

自然と声が漏れた。

 

この壮大な光景に浸っていると、突然声を掛けられた。

 

「あのー、カップル割を利用された方ですよね」

「えぇ、そうですけど」

「でしたら、カップル割利用者サービスの写真撮影をさせていただきますね」

「へ?」

 

そんなサービス聞いていないぞ。

真偽が気になり調べてみると、きちんと書いてあった。

他にもいろいろサービスがあるらしい。

……ゆめちゃんはこれをわかっていたのか?

 

「先輩、ボーっとしてないで早くいきましょう!」

「あっ、ちょっと」

 

ゆめちゃんに手を引かれ、写真を撮られに行く。

ゆめちゃんの様子を見るに、おそらく知っていたのだろう。

 

それからも、いろいろと特典を受けた。

イルカショーに参加したり、ペンギンの行進をしたり、餌やり体験をしたりと様々だった。

もちろん、ツーショットの写真付きで。

楽しめはしたのだが、ゆめちゃんとの距離が近く、普段と違って意識してしまった。

 

そしてなんだかんだと時間は過ぎ、お昼ご飯をとることにした。

園内に設けられた庭園のベンチに座って、ゆめちゃんが鞄の中からランチボックスを取り出す。

 

「お待たせしましたー。じゃーん」

「おおっ!」

 

開けてみると、色とりどりのサンドイッチが入っていた。

ハムとレタスを挟んだものから、果物と生クリームを挟んだものまで。

 

「食べていいかな」

「もちろんです」

「それじゃあ、いただきます!」

 

あまりにもおいしそうで、つい前のめりに食べる。

味の結論としては、おいしいの一言に尽きる。

特に、フルーツサンドが抜群だった。

流石は洋菓子店の娘だ。

 

「ごちそうさまでした!あ~おいしかったぁ~」

「お粗末様です。喜んでいただけて何よりです」

 

気づけば食べ終わっていた。

 

「フルーツサンドが格別だったよ。実家で作ったの?」

「そうなんです。先輩がこの前ケーキを気に入ってくれましたから、そういったものが作れればと思って」

「わざわざありがとう」

「いいえ、どういたしまして」

 

その後、会話を楽しんでお腹を休ませてから、再び館内に繰り出した。

もちろん、例のサービスがあったのはご愛敬だ。




いかがだったでしょうか。
中途半端な感じが否めませんが、これ以上書くと収拾がつかなくなりそうだったのでここで切らせていただきました。
次回はいよいよ、といった感じになりそうです。

さて、最近投稿できておりませんでしたが、その間にアイカツスターズでNLモノを書いてくださる方が増えており、非常にうれしい限りです。
この調子でもっと増えろ……(小声)
いや、小声じゃダメじゃん。

それと、一つご報告があります。
今月末の27日をもって、この小説が投稿されて一年が経ちます。
長いような短いような、いろいろと思うことはありますが、ここまで続けられたのも読んでくださるみなさんのおかげです。
当日に何かしら投稿しようと思いますが、ひとまずこの場でお礼をさせていただきます。
本当にありがとうございます。
これからも頑張ってまいりますので、どうぞ応援よろしくお願いします。


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”告白と保留”

読者の皆様、長らくお待たせしてしまい申し訳ございません。
前回の投稿からほぼひと月も空いてしまいました。
時間はたくさんあったはずなのにねぇ(遠い目)

謝罪はここまでにして、今回はとうとうゆめちゃんのお話が終わります。
投稿を始めてから一年も経ってしまったと思うと、とてつもない申し訳なさが湧いてきます。
加えて話数もそれほどないという(小声)

ともかく、本編の方をどうぞ。
今後とか雑記はあとがきで。


水族館見物を終え、僕らは帰路につく。

まだそれほど日が落ちている訳でもないけど、冬場の冷たい風から逃げるように、学校への道を戻る。

 

「ゆめちゃん」

「どうしました?」

「きょうは楽しかった?」

「もちろんです」

 

言葉だけでなく、表情からも楽しんでくれたことがうかがえた。

 

「先輩は楽しかったですか?」

「楽しかったよ。ただ、ちょっと疲れたかも」

 

予想外のサービスに驚かされる場面があって、少し気疲れしたみたいだ。

 

「あはは……」

 

これにはゆめちゃんも苦笑いしてしまうようだ。

選んだ本人が軽く引くなんて、と思わなくもないが。

ただ、一つ確認しておかないと

 

「ねえ、ゆめちゃん」

「はい?」

「ゆめちゃんは、あのカップル割のことはあらかじめ知ってたの?」

 

少し問いただすようにゆめちゃんに尋ねる。

すると、ゆめちゃんは少し焦ったように取り乱し始めた。

 

「あの、えと、あの」

「図星か」

「はう~~……」

 

バレたことを悟ると、ゆめちゃんの顔はみるみるうちに赤くなっていた。

 

「ど、どうしてそうだと思ったんですか?」

「水族館に入るとき、あんなに必死だっただろう?それに、写真を撮られるのもとても喜んでいたみたいだし」

「あ、あはは……」

 

反論はないみたいだ。

 

「でも、ちゃんと楽しめたよ」

「そう、ですか。だったら良かったです」

 

ゆめちゃんに笑顔が戻ったことを確認して、歩を進めようとした。

すると、ゆめちゃんは僕の腕をつかみ、それを止めた。

 

「ここまでわかっていて、先輩はスルーする気なんですか?」

 

真剣な表情でゆめちゃんが言う。

もちろん、ここまでされてわからない僕ではない。

ゆめちゃんが僕のことを好きになってくれていることを。

 

「そう、だね。ここで返事をしないのはいただけないよね」

 

僕はゆめちゃんに向き直り、呼吸を整える。

ゆめちゃんをなるべく驚かせないように、そして悲しませないような言葉を選ぶ。

そして、僕の想いを告げた。

 

「ゆめちゃん。僕は、今はゆめちゃんと付き合うことはできない――」

 

まさかの言葉に、ゆめちゃんは呆然としていた。

 

「――でも、あくまでも今はっていう話だ。僕は、まだゆめちゃんのことをまだ知らないって思ってるから、これからゆめちゃんのことをもっと教えてほしい。その後、改めて僕からゆめちゃんに想いを伝えるから。だから、少しの間待ってくれないかな?」

 

僕はゆめちゃんのことをまだ知らない。

あくまで、今までは教える相手として考えていたから。

ゆめちゃんをそう言った目で見たことはないか、と聞かれると嘘になるけれども。

それでも、僕はもう少しゆめちゃんを知らなければいけないんだと思う。

例えば、好きなものだ。

意外と、今までそう言った話はしてこなかった。

だから、まずはそこから始めないと。

 

僕が思いの丈を吐き出した後、しばらくの静寂が過ぎていった。

 

「私、今日告白するつもりだったんです」

 

ゆめちゃんが語りだす。

 

「でも、先輩がそんなこと言っちゃうなんて思っていなくて」

 

荒ぶった気持ちを落ち着かせるように、訥々と言葉を吐き出す。

 

「先輩の一言で、私、泣きそうになったんですよ」

 

少し声が震えていた。

 

「一瞬、先輩にフラれたって思っちゃいましたし」

 

目じりにわずかな涙をたたえて僕を見据える。

 

「だから、先輩にはイヤっていうくらい私のことを知ってもらいます。そして、絶対に私に告白させてみせますから!」

 

強い決意のこもった目だった。

 

△▼△

 

それからというものの、必然というべきか、レッスン以外の時間にも合う機会が増え、頻繁にお昼ご飯を一緒に取るようになった。

その時には、レッスンのことは頭から外して、なんてことのないありきたりな話をする。

もちろん、二人で出かける機会も増えた。

そう言った時間のおかげで、ゆめちゃんの好きなものだったり、特技だったりと、今まで知らなかった身近なことを知ることができた。

 

そして、時は移ろいS4決定戦。

ゆめちゃんは僅差で白鳥に敗れたものの、見事S4の座を手に入れることができた。

本人は少し悔しそうではあったものの、たった1年であの白鳥に追いつくことができているんだから、やっぱりゆめちゃんはすごいポテンシャルを持っているんだと改めて思った。

 

S4決定戦のあと、僕とゆめちゃんは二人で会場近くの浜辺にいた。

 

「とりあえず、お疲れ様。そして、おめでとう」

「ありがとうございます」

 

まだ、あまり実感がないのだろう。

ゆめちゃんは少し惚けたように遠くを見ている。

 

「あの白鳥に僅差だなんてなぁ。やっぱりすごいや」

「先輩のおかげですよ」

「いやいや、ゆめちゃんのポテンシャルがすごかったんだよ」

「でも、先輩がたくさん手伝ってくれたからここまで来れたんですよ」

「そう言ってくれると、こっちも鼻が高いや」

 

そこで、話が途切れる。

今こそ、想いを伝える時だ。

 

「あのさ」

「はい?」

 

僕の少し上ずった声に、ゆめちゃんがこちらを向く。

 

「今まで保留してた返事に、今日答えようと思う」

 

僕は居住まいを正し、ゆめちゃんに向き直る。

ゆめちゃんも僕の方を向く。

ゆめちゃんは、どこかうれしそうだけど、少し不安そうな笑みを浮かべていた。

 

「僕は、ゆめちゃんのことが好きです。どうか僕と付き合ってくれませんか?」

 

ついに想いを伝えた。

以前、ゆめちゃんの想いを聞いてはいるものの、やはり返事を聞くまでは緊張してしまう。

どんな返事が来るか待っていると、僕はゆめちゃんに抱き着かれた。

 

「遅いですよ。ちょっと心配したんですからね」

「ごめん。でも、途中からゆめちゃんのS4になるっていう自分の夢をかなえて欲しいっていう思いが強くなったから」

「じゃあ、先輩はもし私がS4になれなかったらどうするつもりだったんですか?」

「来年まで待つよ。もちろん、そんなことはさせないけどね」

「もう……」

 

呆れたような声を出すゆめちゃん。

弄ばれたような気がしてならないんだろう。

 

「でも、ゆめちゃんはS4になれたんだから結果オーライでしょ」

「そうですけど……。なんだか気に入らないです」

「そいつは困ったなぁ」

 

その時、ゆめちゃんが『いいこと思いついた』とでも言うように、ニヤニヤとした表情を浮かべていた。

 

「決めました。先輩がこれからも私のことを応援して、私を愛してくれるなら許してあげます」

 

悪い顔をしたと思えば、とても可愛らしい命令だった。

もちろん、従わないなんてことはなく。

 

「その(めい)、謹んで受けさせていただきますとも」

 

 

出会いは一期一会。

二人の出会いは偶然だったかもしれない。

けれど、その出会いから愛が生まれたのは必然だったのだろう。

 




いかがでしたでしょうか。
プロットが複雑骨折してしまい、着地点を失う前に終わらせようと思ったがため、こうなってしまいました。
とりあえず及第点かな、とは思っていますがどうでしょうか。

アイカツの新シリーズであるプラネットがいまだに物議をかもしていますが、皆さんはどう思ったのでしょうか。
私は、ストーリー次第ではありますが比較的容認派ですね。
ただ、二次創作のやり辛さが半端ないですね。
実写ですしお寿司。
ともかく、放送が待ち遠しいです。

さて、今後のことですが、実は未だにあおいちゃんのお話のプロットができていません。
書き始めはなんとかなりそうなのですが、そこから先の展開が全くという感じです。
とにかく何とか頑張ってみます。
ただ、書くことが嫌にならないようにしたいと思っているので、他のお話が思いついたら、そちらから書くと思います。
去年アンケートを取っておいて何なんだ、と思っていらっしゃるかもしれませんが、そこはどうか暖かい目で見ていただけると幸いです。

毎度のことではありますが、感想評価等をしていただけると非常に励みになります。
ちなみに、こんなシチュ読みたい、とかあれば参考にしてみたいと思っております。
活動報告のコメントにぜひお寄せください。
どの活動報告にコメントしてくれても構いませんので。
Twitterのリプとかでも構いません。

長くなりましたが、よろしくお願いいたします。



あ、来月真昼ちゃんの誕生日じゃん。


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"特別篇" ゆめの誕生日①

去年は忙しくて書けなかったゆめちゃんの誕生日のお話のリベンジです。
ただ、正直やっつけなところがあるかもしれませんが、どうか暖かい目で見守ってください。

ゆめちゃん、お誕生日おめでとう!!


ゆめちゃんの誕生日が翌日に迫った今日。

昨日一日中プレゼントを考えてみたけど、いまいちピンとくるものは見つからなかった。

今朝から何がいいかと街を見て回っていると、ふと『見つからないなら作ってしまえばいいんじゃないか?』という考えに至った。

ないなら作ってしまえばいいとはよく言ったもんだ。

それからは話が早く、何を作ろうかはあっという間に決まった。

そしてそれを実現するために、ゆめちゃんの実家である七色洋菓子店に来ることにした。

 

「おはようございます」

「ああ、おはよう。さっき電話してくれたけど、ゆめのためにケーキを作りたいんだって?」

「はい。ただ初めてなので、教えてもらいながらという形にはなりますが」

 

お義父さんに、改めてゆめちゃんの誕生日ケーキを作りたいということを伝える。

 

「わかった。ゆめのためなら一肌脱ごう。でも、まだ認めたわけじゃないからな」

「ありがとうございます!」

 

お義父さんはこういっているが、なんだかんだ以前よりも認めてはくれているみたい。

もちろん、もっと自分を磨いてゆめちゃんにふさわしい人間になって、お義父さんに認めさせるつもりだ

 

「ただ、悪いけどこっちもお店があるからお客さんが落ち着いた夕方ごろにまた来てくれ」

「わかりました。その間にどんなものを作るか考えておきます」

「ああ、それじゃ」

 

そして僕は店を後にし、アイデアを固めながら一度学園に戻ることにした。

 

△▼△

 

時は移って翌日。

ついにゆめちゃんの誕生日だ。

場所はもちろん虹野家。

さすがのご両親も、今日は休みにするみたいだ。

まあ、年に一度しかない一人娘の誕生日なんだから許されてしかるべきだろう。

 

「司さんはゆめにどんなプレゼントをするんですか?」

「あっ、私も気になる!」

「わたくしも気になりますわね」

 

そして、僕とローラちゃん、真昼ちゃん、あこちゃん、小春ちゃんは一緒に虹野家に向かっている最中だ。

 

「それはちょっと内緒だ」

「「「え~」」」

 

秘密にすると、案の定非難が飛んでくる。

わかってはいたけど、その方が楽しんでくれると思うから仕方がない。

 

その後なんだかんだと聞かれてもはぐらかしていると、とうとうゆめちゃんの家についた。

 

「こんにちは、おじゃまします」

「「「「おじゃまします」」」」

「みんないらっしゃい!早く上がって!」

 

玄関をくぐると、ゆめちゃんがお出迎えをしてくれた。

誕生日だからか、普段よりも少し派手なおめかしをしている。

 

「あっ、忘れるとこだった。ゆめちゃん、誕生日おめでとう」

「ありがとう!」

 

そして僕たちはリビングに通され、ゆめちゃんの誕生日パーティーがスタートする。

 

「それでは改めまして、ゆめちゃん誕生日おめでとう!」

「「「おめでとう!」」」

 

△▼△

 

パーティーゲームと、ゆめちゃんのご両親が作ったクッキーを楽しんでいると、ついにプレゼントを渡すことになった。

 

「はい、ゆめ。これプレゼント」

「ありがとうローラ!」

 

そして、僕が渡す番になった。

 

「さて僕が渡す番だけど、ゆめちゃん、なにか気づかない?」

「なにか、ですか?」

 

ゆめちゃんは首をかしげる。

 

「ほら、誕生日って言ったら必ず食べるアレがまだでしょ?」

「えーっと……。あっ、ケーキ!」

 

ゆめちゃんは、はっとしたように答える。

それにつられて、みんなも気づく。

 

「ってことは、司さんが作ったんですか?」

「そう。今から持ってくるから、ちょっと待ってて」

 

そう言って、僕はお店の方からケーキを持ってくる。

 

「はい、これがゆめちゃんの誕生日ケーキ。どう?」

 

そう言って、僕は作ったケーキを渡す。

 

「おいしそうなロールケーキ……」

 

僕が作ったのはロールケーキ。

奇をてらうのはあまり良くないと感じて、生クリームといろんなフルーツのシンプルなロールケーキを作った。

 

「ありがとうございます!大切にします!」

「いやいや、大切にしちゃダメでしょ」

「あはは、そうでしたね」

 

その後は、もちろんケーキを切ってみんなでおいしく食べた。

ゆめちゃんが、断面のフルーツを虹色に見立てていたことに気づいてくれたのは少し嬉しかった。

そして、楽しい時間はあっという間に過ぎ、夕暮れの時間になった。

 

「司さん、今日はありがとうございました」

「こちらこそ。今日は楽しい一日だったね」

 

僕はゆめちゃんと、僕の見送りと称したデートをしている。

お義父さんは少し不満げだったけど、お義母さんが行っておいでと言ってくれた。

お義母さんには心の中で頭を下げ、今に至っている。

 

「ケーキ、おいしかったですよ」

「それは良かった。初めてだったけど、ゆめちゃんのお父さんが丁寧に教えてくれたんだ」

「お父さんが?」

 

ゆめちゃんは意外だったというような顔をする。

それも仕方ないだろう。

普段の僕に対する当たりが強いからね。

 

「そうだよ。ゆめちゃんのためだったら妥協はしたくない、って言ってたから」

「そうだったんだ……」

 

実際、ケーキを作っている時のお義父さんは真剣な表情をしていたし、教え方もすごく丁寧だった。

親バカというのもちょっとアレだけど、ゆめちゃんが喜ぶことと、お菓子作りについては妥協したくないっていう信念を感じた。

 

「だから、改めてゆめちゃんのお父さんを尊敬したな。同時に、ゆめちゃんのことはたとえお義父さんでも譲れないなって思った」

「司さん……」

「だから、これからも頑張ってお義父さんに認められるように頑張るぞ!」

 

そう言い切ったところで、ちょっとゆめちゃんは不満そうな目で見てくる。

 

「それはいいんですけど、ちゃんと私のことを愛してくれますよね?」

「もちろん」

 

返事はしたものの、ゆめちゃんはまだ何か物足りないようで、『ん、ん』と顔を上げてくる。

言葉だけでなく、態度で示せということだろう。

だから僕は迷うことなくゆめちゃんを抱きしめ、口づけをした。

これからも愛することを誓うように。




またほんへじゃなくて誕生日かよ、と思っていらっしゃるかもしれませんが、そろそろ投稿できそうですので、気長にお待ちください。
たぶん、次の投稿は本編になると思います。
いや、します。(自分で自分を追い込んでいくスタイル)

とりあえず、間に合ってよかった~。

それではまた。


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"特別篇" ゆめの誕生日②

珍しく投稿間隔が短いです。
やっぱりアイカツはいいコンテンツだと思いながら筆を執りました。

あ、言い忘れてた。
ゆめちゃん、誕生日おめでとう!


ゆめちゃんの誕生日の前日、僕は前回と同じようにケーキを作っていた。

場所も同じく七色洋菓子店。

一つ違うのは、隣にゆめちゃんがいて、一緒にケーキを作っているということだ。

 

「ふんふんふーん♪」

「楽しそうだね」

「司さんと一緒にケーキを作るからですよ!」

「そりゃあ良かった」

 

今回も一人でケーキを作るつもりだったが、行動を読まれていて、待ち構えていたゆめちゃんにお願いされたのだ。

 

「去年のお返しも込めてケーキを作るなんて律儀だね」

「大切な友達にあれだけ盛大に祝ってもらったんですから当然ですよ。それに、今回はエルザさんも来てくれるみたいですから」

 

僕はまさかの名前に驚きつつも、エルザさんとも友達と呼べるような関係になっていることに心の中で喜ぶ。

 

「だったらちゃんともてなさないとね」

「うん。エルザさんは普段からいいものを食べていそうだもんね」

 

手を動かしながらも会話は止まらない。

 

「そう言えば、今年のプレゼントはこんなことでいいの?」

「こんなことっていうのはひどいよー」

「ごめんごめん」

 

つい『こんなもの』といってしまったが、ゆめちゃんには御法度らしい。

 

「こうやって司さんと一緒に何かをした思いでが私にとってのプレゼントなんですから」

「そうだったね」

「思い出は絶対になくならないですからね」

 

まだ中学生なのに成熟した価値観だと思う。

一度小春ちゃんと離れていた時期がゆめちゃんをここまで成長させたんだろうと思うけど。

 

そう話しているうちに、ケーキもほぼ完成した。

 

「さ、あとはイチゴをのせるだけだ」

「おー。たくさんのせちゃおうよ」

「待って待って、せめてろうそくを指す場所は残して―!」

 

パーティーの前日ともあって少し浮かれるゆめちゃん。

用意していたイチゴをほぼほぼ使い切るまでのせていった。

なんとかイチゴを数個死守し、ケーキを完成させた。

 

「イチゴがたくさん!おいしそー!」

「食べるのは明日だぞ」

「あ、そうでした……」

 

おいしそうなケーキの見た目につられて手が出そうになるゆめちゃんを止める。

 

「その代わりに、さっき残しておいたイチゴとジェラートでちょっとしたデザートを作るから、ちょっと待ってて」

「はーい!」

 

こういうところは年相応のはしゃぎ方だなぁと思う。

この笑顔はもちろん、さっきのまじめさも愛おしい。

 

「よし、できた。さあ召し上がれ」

「わーい。いっただきまーす」

 

暖かくなってきたとはいえ、ジェラートで体を冷やすといけないので、お茶を淹れるためのお湯を沸かす。

 

「本当においしそうに食べるねー」

「本当においしいからですよ」

 

見ている人もつられて笑顔になっちゃうような笑顔だ。

 

「えいっ」

 

ぷにっ。

 

つい頬を指で押してみたくなった。

やわらかい。

 

ぷにぷに。

 

「ちょ、ちょっと急に何するんですか」

「いやぁ、ほんの出来心ってやつ。でもやわらかくてずっと触っていたい」

 

ぷにぷにぷに。

 

ゆめちゃんのほっぺたを押す手は止まらない。

 

「こうなったらお返しです!」

 

はむっ。

 

ゆめちゃんのほっぺたのやわらかさを味わっていると、ふとその感触が消え、代わりに指先が暖かい感触に包まれた。

 

「?」

 

やわらかさが心地よくて閉じていた目を開ける。

 

「?……?!!?!?!」

 

まさかの姿に目を疑う。

なんで僕の指が咥えられているんだ?

 

「え、ちょ、ゆめちゃん?!」

 

ゆめちゃんは若干頬を赤らめながら上目でこちらを見てくる。

これはちょっと僕の情緒が耐えられる気がしない。

 

すると僕の思いをあざ笑うように、指から口を離す。

ゆめちゃんの口元から伝うものに目を引かれ、つい僕も唾を飲み込む。

 

「司さんが悪いんだよ。私をこんな風にさせちゃって」

 

ゆめちゃんから目が離せない。

 

「責任、とってくださいよ」

 

ゆめちゃんに詰め寄られる。

僕も腹をくくる。

 

ゆめちゃんを抱きしめ、顔を寄せ――。

 

「今年のケーキはどんな出来かな」

 

ばっ!!

そう音が聞こえるくらいの勢いで僕とゆめちゃんは距離を取り、調理場にやってきたお義父さんから顔をそむける。

 

「イチゴ、多すぎないか?」

「そ、それはゆめちゃんがたくさんのせちゃったんです」

「そ、そうなの。ほら、イチゴは今が旬だから」

「確かに、旬のものをたくさん使うのはいいアイデアだ」

 

ごまかせていることにホッとしつつ、ゆめちゃんの方を見ると、ちょっと熱っぽい目で僕を見つめ返してくる。

これはゆめちゃんのご機嫌取りが大変だと思いつつも、甘えてくるゆめちゃんの姿を想像すると、心のどこかで喜んでいる自分がいる。

 

ゆめちゃんの誕生日の前日だというのに、当日を待たずして浮かれ切っているのであった。




※二人は未成年なので、清いお付き合いをしています。
ゆめちゃんがそういった色気を潜在的に持っていると想像して書いております。

さて、ライブから二週間たつのですが、皆さんはそろそろライブのロスも薄れてきたんじゃないでしょうか。
自分はまだまだロスは抜けていませんが、こうやって創作してごまかしてます。
後は歌唱担当の方々を応援していますね。
みなさん魅力的な方なので、見とれちゃいますよね。

これからもアイカツを応援していきます!

ではまた。


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香澄姉妹√
夜空さんと真昼ちゃんとの出会い


今回は香澄姉妹のお話です。
すこしネタに走ってしまったのではないと思ってはいるものの、思いついたらとりあえず書くことを優先した結果です。

今回は夜空さんが少し変態になってしまっています。
夜空さんが好きな人には申し訳ないです。


僕の名前は飯島司。

四ツ星学園男子部に所属している中等部3年生だ。

 

「ねぇ司君。これ着てみない?」

 

この綺麗な髪の女の子は香澄夜空さん。

S4に選ばれる実力と、美しさを兼ね備えている。

 

「いーや、司先輩にはこっちのほうが似合うって!」

 

こっちのメッシュが入った髪の女の子は香澄真昼ちゃん。

姉の夜空さんに劣らない美しさがある。

 

さて、現実逃避はここまでにして現状を確認しよう。

今、二人に服を薦められているように見えるが、実際は着せ替え人形のごとく扱われている。

あれを着てはこれを着て、の繰り返しだ。

それに加え、もう一つの問題がある。

薦められる服が『女性向け』であるということだ。

そのきっかけは少し前にさかのぼることになる。

 

―△▼△―

 

ある日、ドラマの撮影で夜空さんと共演することになった。

姫を守る騎士(ナイト)の役らしいのだが……。

 

「これ、どう見ても女性が着るようなメイド服だよな......」

 

そう、女装騎士なのである。

僕を見た監督が一言、

 

「この子なら女装でイケる!」

 

なんて言い出したことが発端らしい。

正直恥ずかしい。

こっちは思春期真っ盛りだぞ。性癖がひん曲がったらどうしてくれるっていうんだ。

 

そんな愚痴はさておき、衣装に袖を通して簡単なメイクをすればあら不思議、かわいらしい女の子が現れたではありませんか。

……正直なところ、ここまで自分に女装が似合うとは思わなかった。

 

△▼△

 

セットに移動し、お姫様役の夜空さんと対面することになったのだが。

……なんか夜空さんの目つきがおかしい。

そしてすごく嫌な予感がする。

 

しかし、撮影が始まってしまえばそんなことはなく、つつがなく撮影は行われた。

夜空さんも美組(うつくしぐみ)とはいえ、さすがS4だ。ミスがない。

 

(やっぱりさっき視線は僕の気のせいだったんだろうか。とりあえず撮影もあと少しで終わるし、最後まで頑張るか)

 

△▼△

 

撮影は無事終わり、僕は楽屋に戻った。

メイクさんを呼んで衣装を脱ごうかな、と思っていたところに

 

「おつかれさま、司君」

 

彼女(夜空さん)はやってきた。

 

「お、お疲れ様です。夜空さん」

 

まさか楽屋にやってくるとは思わなかった。

何だろう、すごく嫌な予感がする。

 

「ねぇ、司君。本当に男の子なのよね?」

「え、ええ。ちゃんと男です。今こんな格好をしてはいますが」

男の子か……。それもそれでなかなか面白いわね。私、あなたに興味が出てきたの。よかったら連絡先を教えてくれないかしら」

「僕に興味ですか……。まあ、連絡先でしたら全然かまわないですけど」

「ほんと!?よかった。それと、あと一つお願いしたいことがあるのだけれど、いいかしら」

「お願いですか……。いったい何でしょう」

「写真を撮らせてくれる?」

 

ん?写真?

 

「えーっと、この格好のままですか?」

「もちろん!」

 

満面の笑みで返された。

 

「聞いておきたいのですが、いったいどうしてでしょうか?」

「かわいいからに決まってるじゃない!」

 

思春期の男の子にかわいいなんて言わないでほしい。

正直言ってうれしくない。ただ、夜空さんに褒められるのはうれしい。

しっかし、夜空さんは綺麗だなぁ。すてきな笑顔だ。

 

「僕なんかでよければ好きに撮っちゃってください」

「ありがとう!」

 

男の尊厳を捨てよう。

夜空さんのこんな笑顔を見られるのならそれくらいどうってことない。

 

この後満足した夜空さんが去り際に一言、

 

「今度は私が似合うものを探してあげる」

 

という言葉を残していった。

あれ?これって僕は夜空さんの着せ替え人形になってしまったのか?

そして後日、一緒に街に出かけることになったのであった。

 

―△▼△―

 

夜空さんに気に入られる一件の少しあと、ゆめちゃんの友達の一人である真昼ちゃんの相談に乗ることになった。

彼女曰く、演技の練習がしたいのだとか。

どうして僕なのだろうか。

早乙女さんとかの方が適任だと思うのだが。

 

「どうして僕に演技の相談をしたんだ?早乙女さんの方が適任だと思うんだけど」

「えっと、わたしの特技が空手だって知ってますよね?」

「うん。この前瓦割りしてたしね」

「それでその特技を知った業界の人たちが、ぜひアクションシーンのある演技を、って」

「なるほど。でもどうしてそれが僕にたどり着くことになったの?」

「朝の番組に出てるって知ったので。あの番組はアクションシーンが多いですよね?」

「あぁ、なるほど。でもあの大半はスーツアクターさんたちがやってるんだけど……」

「それでも、身近な人で頼れるのが司先輩しかいなくて」

 

かわいい子にそんなことを言われて断れるわけがない。

よし、腹をくくるか。

 

「わかった。引き受けよう」

「本当ですか!?」

「ああ。ただ君の求めてるレベルじゃないかもしれないけど、それでもいいかな?」

「はい!よろしくおねがいします!」

 

△▼△

 

これをきっかけに距離を縮めることができた。

御礼も兼ねて一緒に買い物に行こうと誘われるほどだ。

そして、その買い物で一波乱起きることとなる。

 

△▼△

 

約束の日、僕たち二人は町でショッピングをしていた。

 

「ねえ、司先輩。ここのお店にはいりましょう」

「うん、いいよ」

 

真昼ちゃんに連れられて店に入ると、見覚えのある顔を見かけた。

変装をしてはいるが、あれは夜空さんだろう。

気づかれて変なことをされないうちに距離を取ろうとしたのだが……。

 

「あれ?お姉ちゃん?」

「ん?真昼……と司君じゃない」

 

真昼ちゃんが話しかけていた。

 

……ってええええ!???!?

この2人姉妹だったのか!?

と、僕が混乱している間、姉妹の間では

 

「どうしてお姉ちゃんが司先輩を知ってるの?」

「最近お仕事で一緒になったのよ。ところで、真昼はどうして彼と二人っきりでお買い物なのかしら?」

「そ、それは……お礼よ。演技の練習に付き合ってくれたことの」

 

なにやら僕について話しているようだが、聞き取り辛い。

俗にいう難聴系ってやつ?

まあさすがにそんなことはないと思うが、聞き取ろうと思ってもいまいちはっきり聞き取れない。

さすがに女の子の話に聞き耳を立てるのも野暮だろうと思い、服を見て回ろうと思った。

すると突然夜空さんに腕をつかまれた。

 

「私たちが司君の服のコーディネートをしてあげる」

 

嫌な気しかしなかった。

だってもうすっごい笑顔なんだもん。

 

そして僕は着せ替え人形と化した。

振り返って考えてみてもどうしてこうなったかなんて僕にはわからない。

やっぱり女の子はわからない。

 




良い意見でも悪い意見でも感想を受け付けています。
特に今回は性格改変かどうか怪しい点が見られるので。

いちゃいちゃが見られるのはまだ少し先です。


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司くん、アイドルになる......?

ローラのお話を書こうとしたけど全く筆が乗らなかったので今回は姉妹(というか姉)のお話です。
香澄姉妹はスターズの中で非常に好きなアイドルなので自然と筆が進みますね。
実はサブタイを決めるのに結構頭を抱えていたりします。


「うわあああぁぁ!!」

 

悪夢を見て咄嗟に跳ね起きた。

なんという夢を見てしまったんだろう。

2人の女の子に着せ替え人形にされ、挙句の果てに街を歩き回る夢だなんて。

……疲れてるんだろうな、きっと。

 

「とりあえず今日は学校だし、切り替えていこう。うん、そうと決まればさっさと着替えるぞ」

 

制服を取り出すためにクローゼットを開けると、僕は驚愕した。

あれ?なんで女性向けの服が入ってるんだ……?

ロングスカートやそれに合わせた長袖のTシャツがかかっていた。

おまけにご丁寧にセミロングのウィッグまでおいてある。

……あ、夢じゃなかったんだ。

昨日、結局買ってもらったんだっけ。おそらく夜空さんからだろうけど。

そしてこれを着たまま町を回ったんだよな。さすがに寮に戻る前に着替えたけどさ。

そりゃ、忘れたくもなるよなぁ。

まっとうな思春期の男子には恥ずかしすぎるよ。この前のドラマの撮影然り。

 

しっかし、ルームメイトがいなくてよかったぁ~。

ルームメイトがいたら絶対揶揄われるやつじゃん。

っと、記憶の捜索をしているうちに時間が経ってしまった。

制服に着替えないと。

 

△▼△

 

「授業をまともに受けるのも久しぶりだなぁ。なんだかんだで仕事が入ってたし」

 

教室に入って教科書を取り出すことがひどく懐かしく感じる。

ただ、これも人気になっている証拠だと実感できることなのではあるが。

学生の本分は勉強だ、とか一部の人がうるさそうではあるが忙しい人たちは課題という形で義務教育の内容は学習している。

それはさておき、お昼休みに入るとクラスメイトと久しぶりに机を囲んで昼食をとることとなった。

 

「しかし、司とこうして昼飯を食べるのも久しぶりだな」

「そういわれるとそうだな。なんだかんだでお昼はロケ弁か外食だったし」

「人気者だっていう証みたいなもんだろ?」

 

と、親友の海東が野次ってくる。

 

「海東も似たようなもんだろう。同じ作品で共演してるわけだし」

「主役と脇役じゃ話が違ってくるさ」

 

そんな風に他愛のない話をしていたのだが、司の前に急に爆弾が降ってくることとなった。

 

「そういえばさ、今人気がある女子部の香澄姉妹が昨日可愛い女の子を連れてたらしいんだって。しかもアイドルじゃないらしい。ほら、この写真」

「ブフォォォッ!」

 

思わず飲んでいたお茶を噴き出してしまった。

 

「おいおい、何してくれんだよ……」

「すまんすまん。ちょっとお茶が変なところに入っちゃって」

「ったく……。気をつけろよな」

「本当にすまん」

 

怪しまれるかと思ったが、何とかなりそうだ。

しかし、写真がすっぱ抜かれてたとは。

有名人になるって怖いね(他人事)。

でも、そのあとを追跡されないみたいで本当によかったよ。

もし正体が僕だってバレたなら、これからのアイカツに支障を来してしまうかもしれないからね。

と、自分の世界に入り浸っていると肩を叩かれて現実に意識を戻した。

 

「司、電話かかってるぞ」

「あぁ、さんきゅ」

 

いったい誰からなんだろうかと画面を確認すると、そこには「香澄夜空」の名前が記されていた。

 

「悪い、ちょっと席外すよ」

 

さすがにここでは通話はしたくないため、席を外し食堂の外で電話に出ることにした。

 

「もしもし、司です」

『司くん、ごめんね~。写真撮られちゃったみたいで……』

「いえ、自分も多少油断していたのでそれに関して夜空さんは悪くないですよ」

『そう言ってくれると助かるわぁ。ただ、ちょっとまずいことになっちゃったの』

「まずいこと、といいますと?」

『実は、あなたをアイドルとして勧誘しようとしている方がいて、その人に紹介してくれって頼まれちゃったの』

「はい?僕はすでにアイドルですが」

『そうじゃなくて、()()()としてアイドルにしたいって言ってきているの』

 

……え?

エエエエェェェェッッッ!!!

 

 

「う、嘘……ですよね?」

『私も嘘だと思ったんだけどねぇ……』

 

嘘だと言ってよ○ーニィ!(現実逃避)

 

『それでね、一度会って話がしたいそうなの。もちろん責任を取って私も同席するわ。そしてその時にきちんと断りましょう?』

「そう、ですね」

 

仕方ない、腹をくくるしかないか。

相手方には申し訳ないがきっぱりと断らせていただこう。

 

「わかりました。夜空さんがいてくださるなら心強いです」

『ほんとにごめんね~。それでね、その時に着て行くお洋服のことなのだけれど』

 

あ。こうなることを考えていなかった。

 

「昨日着ていたものは……」

『それじゃあだめよ。もう少ししっかりしたものを用意しないと』

 

また着せ替えされちゃうのか。

ただ、心なしか夜空さんの気分もよくなっている。

本当に申し訳なく思ってくれていたのだろう。

 

「わかりました、観念します。それでまたショッピングですか?」

 

夜空さんの笑顔が見られるなら相応の対価……かどうかは分からないが、それでも笑顔になってくれるというのはけっこううれしかったりする。

出会ってまだそれほど日が経った訳ではないが、夜空さんの笑顔に惚れてしまったみたいだ。

これも惚れた弱み、ですかねぇ。

 




いずれ書いてほしいアイドルを募集しようかとか考えてはいます。
いつになるかわからないのが申し訳ないですが。


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夜空さんと僕

もっと楽に書けるかと思ったら少し悩みました。
終わり方が少し変かもしれません。




......時間が欲しい。


関係者の人とのお話をする日の午前中、夜空さんと街でショッピングをしていた。

もちろん僕は女装している。

服装は前回買ってもらったロングスカートとTシャツ。

今度はいったい何を着せられるんだろう。

 

「じゃあこれを着てみて?」

「はい、わかりました……」

 

渡されたのは、あまり体の線が出ないゆったりとしたニットのトップスと、同じくゆったりとしたハイウエストのジーンズ。

体の線が比較的細いとはいえ、ある程度筋肉がついていることを気にしてくれているのだろうか。

実際に試着室で着てみると、体の線が丸くなり女性らしさが表れてくる。

さすが美組のトップだ。

 

「着替えました。どう、ですか……?」

「……!!」

 

アレ?

夜空さんがフリーズした……?

と混乱しかけたところ、夜空さんに抱き着かれた。

 

「!!???!?!?!」

「やっぱり私の見込んだとおりね!すっごく似合ってる!」

 

目を輝かせながら夜空さんが言った。

でも、僕はそれどころではない。

今鏡を見たら顔が赤くなってそうだ。

だって、夜空さん、すごくいい香りがするんだもん。

そんでもって女性らしい柔らかさを感じる……。

ちょっと理性がヤバいですね!

 

「その、夜空さん……。急に抱き着かれると……」

「あら、ごめんなさい。あまりにもかわいかったからつい、ね」

 

その時の夜空さんは、なぜだかすごく魅力的に見えた。

……胸の高まりが止まらない。

これって、もしかして……。

いや、今このことを考えるのは止そう。

今は面倒ごとの処理が先だ。

そうやって僕は心を落ち着けた。

その間に夜空さんが会計を終えていた。

僕は新たな服を得て街へと繰り出した。

 

△▼△

 

「ところで、今日お会いする方ってどこかの芸能事務所の方なんですよね?」

「そうよ。私たちはセルフプロデュースでアイカツしてたからあまり関わりはないけれど、芸能事務所にスカウトされてアイドルになる人もいるからね。今回はたまたま顔見知りの人だったからやむなくこの場を設けることになったの」

「そうだったんですね。でも、どうして芸能事務所とつながりが?」

 

単純に考えて四ツ星学園の生徒である以上、関わることはほぼないはずだろうが……。

 

「ほら、私の両親って芸能関係者でしょう?だからその関係でたくさんの人と会う機会があってね」

「なるほど。それなら納得できます」

 

夜空さんの両親ってすごいんだなぁ。

僕の両親はそれに比べたら全然平凡だし。

 

「さあ。着いたわ。相手方は連絡ではもうすでに到着しているそうなの」

「ここ、ですか」

 

着いたのは、街の有名な喫茶店だった。

店の前も人通りが多いし、店内もほとんどの席がうまっている。

それだけ周りも当然騒がしくなり、話をするにはうってつけだろう。

 

「あ、夜空さん。一つ聞きたいことがあるんですけど」

「何かしら?」

「……一人称はどうしましょう」

「そうね……。話しやすい方で構わないわよ、って言ってもあなたは演技が上手だったわね」

「はい。どちらでも演じられますが」

「だったら、せっかくだから『わたし』でいいんじゃないかしら。その方が私も説明しやすいし」

「わかりました。頑張ります」

 

そうして、僕は気持ちを固めて夜空さんについていった。

 

△▼△

 

店の中に入ると、スーツを着た男性が比較的離れたスペースに座っているのが確認できた。

恐らくあの人がそうなのだろう。

 

「お待たせしました武内さん」

「どうも、この度は無茶に応えてくれてありがとうございます。お連れの方が、あの」

「そうです。ほら、自己紹介して」

「え、えと。門谷(かどたに)司っていいます……。よろしくお願いします」

「どうも、こちらこそよろしくお願いします」

 

そして、僕たち二人は武内さんに促され席に着いた。

 

「長い話は必要ないと思いますので単刀直入に言います。司さん、私の事務所に所属してアイドルになりませんか?」

「申し訳ありませんが辞退させていただきます」

「……どうしてなのか聞かせていただけますか?」

「わたしにとってアイドルとは応援するものであって、なるものではないからです。それに、わたしはアイドルに向いていないので」

 

実は男だからだなんて言えない……。

でももっともらしい理由を言わなければ。

 

「私からも一つ言わせてもらえるかしら」

「ええ、どうぞ」

「私にとって、彼女は仕事のスイッチを切ってくれる存在なの。だから彼女がアイドルになるなんてことがあれば、私の心が休まらなくなっちゃうの。だから、私からもこの件はなかったことにしていただけないかしら」

 

困っていると夜空さんが助け舟を出してくれた。

でも、これって本当に思ってくれているのだろうか。

本当だったらうれしいけども。

 

「そうですか。そこまで言われたら仕方ありませんね。香澄夜空というアイドルの心の支えとなっているともあれば、何かあった際に責任が取れませんからね」

 

武内さんは苦笑しながら言った。

そして、この話はなかったことになった。

 

△▼△

 

「本当に今日はごめんね」

「いえいえ。気にしてませんよ」

 

こうは言ったものの、これから夜空さんに会う機会も減るんだろうなと少し寂しさが募る。

 

「それでね。今日のお詫びと言ったらなんだけど、司くんの言うことをなんでも一つ聞こうかなって思ってるの。なにかある?」

 

へ?

今なんでもって、ゲフンゲフン。

 

「夜空さん。男に対してなんでも言うことを聞くなんて言っちゃだめですよ。何しでかすかわからないんですから」

「でも、司くんはそんなことしないでしょう?」

「それはそうですが!」

「じゃあ何も問題はないじゃない。で、何がしたいの?」

 

信頼されていると取るべきなのか、揶揄われているだけなのか。

……なんか調子狂うなぁ。

でもまあ、やりたいことはとっくに決まってるんだ。

それを言うだけだ。

 

「夜空さん」

「はい」

「こんな格好の僕とではなく、男としての僕と今度一緒にお出かけしてくれませんか」

 

僕の言葉に対して、夜空さんは少し驚いたような顔をしたかと思えば、すぐ納得のいったような表情へと変わった。

 

「思えば司くんがかわいい姿しか見たことがなかったわね。いいわ。その願い、叶えて進ぜよう~」

「ははっ、ありがたき幸せー。って何ですかコレ?」

「特に深い意味はないわ」

 

 

それから、冗談を言い合ったりして学園が近くなるまで二人で話を続けた。

お互いに笑い合い、自然と距離が縮まったような気がした。

 




実はユニパレ福岡に参戦しておりました。
やっぱりライブって最高ですね。
りささんが2曲とも歌ってくれたのはもう感謝しかないですね。
その影響か、エルザ様のお話が読みたい衝動に駆られる始末。
だが、供給はない模様。
誰か。誰かアイカツのノンケ二次小説をお恵みください(血涙)

書く人もっと増えないかなー。
需要はここにありますので。
そう思いません?


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真昼ちゃんと僕

遅くなりました(毎度のご挨拶)
普段から家にいるはずなのに書けないという悪循環に陥っていました。

言い訳はそこまでにして、香澄姉妹編は前回が夜空さんのターンだったので、今回は真昼ちゃんのターンです。
毎度のことながら、後半の雑さが目立ちますね......。


~side真昼~

 

……見てしまった。

お姉ちゃんと司先輩が手をつないで歩いているところを。

 

(やっぱり、お姉ちゃんと司先輩ってそういう関係なのかな……)

 

もしそうなら、私にチャンスはないのだろうか。

……またお姉ちゃんは私を置いて行ってしまうのかな。

 

(うぅ~。なんだか気が晴れない。こんな時は!)

 

密かに持っていた瓦を取り出し、心を無にして、割る!

 

「たぁーーっ!!」

 

パリン、と気持ちよく瓦は割れ、気持ちも幾分かマシになった。

そして、決心もついた。

 

「たとえお姉ちゃんでも、これだけは絶対に負けられないから!」

 

そうと決まれば行動開始だ。

 

△▼△

 

意思を固めた次の日、私は早速行動に出ることにした。

 

「司先輩、今日一日レッスンしてくれませんか?」

「今日一日?うーん、お昼過ぎまでなら構わないよ」

「本当ですか?!ありがとうございます!」

 

(よし。まずは第一段階が成功)

 

単発ドラマに出演が決まっていたこと利用して、二人きりの時間を作ることができた。

そして、レッスンの最中もなるべく近づいて意識させる。

 

お昼の時もアピールすることを欠かさない。

 

「先輩。今日、実はお昼ご飯を作ってきたんです。よかったら食べてください」

「いいの?」

「はい。レッスンのお礼には足りないかもしれないですけど」

「いやいや、そんなことはないよ」

 

司先輩がお弁当を受け取ってくれた。

 

「じゃあ、いただきます」

 

少し緊張しながらも先輩の様子を窺う。

栄養と見た目にはきちんと気を遣ったし、味もいいはず……。

 

「おいしい!」

「お口に合ってよかったです」

 

おいしいと言ってくれたことがすごくうれしかった。

その感情を表に出すのを必死に堪え、心の中でガッツポーズを決めていた。

 

△▼△

 

レッスンの時間もとうとう終わりとなった。

今日はとてもいい日にできた気がする。

演技の上達もさることながら、司先輩との距離をぐっと縮められた気がする。

 

「先輩、今日はありがとうございました」

「ドラマ、頑張ってね。うまくいくよう応援してるから」

 

そう言って先輩はお仕事に向かっていった。

 

(……これで私のことを意識してくれるようになるかな。いや、なってもらわなきゃだめだ)

 

これからもしばらくアピールは続きそうだ。

 

~side out~

 

△▼△

~side司~

 

真昼ちゃんのレッスンを終えて撮影に向かう途中、レッスンの最中のことを考えていた。

いつもより距離が近かったこと。

ボディタッチが時々あったこと。

そして真昼ちゃんのお手製のお弁当がおいしかったこと。

 

距離が近い分、姉に似て綺麗な顔も必然的に近くなり内心ドキドキしていた。

ボディタッチも心なしか多い気がして気が気でなかったし。

よくよく思い出せば、台本に書いていないことまでやらされたような気がする。

 

(いや、真昼ちゃんがそんなことをするわけないよなぁ。)

 

「にしても、お弁当を食べたときの笑顔はかわいかったなぁ」

 

栄養から何からいろいろと考えて作ってくれたんだろう。

でも、わざわざこんなことをしてくれるなんて……。

 

「まさか……ね」

 

僕はオーバーヒート仕掛けた頭を覚ますために、考えるのをやめた。

 

△▼△

 

次の日、仕事がなく友達と昼食を取ろうと食堂に移動していた。

その途中、珍しい人だかりに出くわした。

 

「なあ海東。人だかりができてるけど、今日何かあったっけ?」

「いや、何もないはずだけど。ちょっと見てみるか」

 

野次馬根性で覗いてみると、そこにいたのはお弁当を持つ真昼ちゃんだった。

 

「なあ司。お前あの子のこと知ってるか?確か女子部の1年生に知り合いがいるんだって聞いたぞ」

「いや、その……」

 

(知っているというか、むしろその知り合いの部類に入るのですが……)

 

もし素直に答えるとしつこくなりそうだと感じ答えあぐねていると、真昼ちゃんと目と目が合った。

 

(メトメガアウー)

 

何か脳内で聞こえた気がするが、無視だ。

僕に気づいた真昼ちゃんは、ぱあっと顔を輝かせてこちらに駆け寄ってきた。

どうやら僕を待っていたらしい。

 

真昼ちゃんが動くと同時に、周りの人だかりの目線も同時に動く。

つまり何が言いたいかというと、自然と僕に視線が集まってきたのだ。

 

「司先輩、お疲れ様です」

「あ、ああ。お疲れ様」

 

周りからの視線が気になって仕方がない。

恨みがましい視線から、ニヤニヤと面白いものを見るものまで様々だ。

舞台にあがったときの視線とはまるっきり違って心臓に悪い。

 

「と、ところで今日はどうしたのかな。わざわざ男子部の所まで来るなんて。まさか朝陽に用があるのかな」

「違いますよ。先輩に会いに来たんです」

 

(やっぱりかー)

 

薄々感じてはいたが、改めて言われると驚くものだ。

 

「そ、そうだったのか。心当たりがないからついつい、ね。それで、何の用だったの?」

「お弁当を持ってきました。昨日、先輩がおいしいって言ってくれたからうれしくって」

 

一層視線が刺さる。

 

「わざわざ作ってくれたの?!」

「はい!それで、よかったら一緒に食べませんか……?」

 

上目遣いは反則でしょう。

拒否できるわけないじゃん。

 

「う、うん。いいよ!」

 

そして、二人で昼食をとることにになった。

昼食の後、海東に問い詰められたのはまた別の話。

 

この件以降、真昼ちゃんと僕は恋人関係だという噂が男子部の一部に広まった。

朝陽には伝わっていないようで、良かったのだが。

そして僕自身はというと、真昼ちゃんに対して好きだという気持ちが芽生えていることに気づいた。

姉である夜空さんのことが気になっているのに妹の真昼ちゃんにまで惹かれているなんて。

僕はとんだクズ野郎だったみたいだ。

 

そして、夜空さんとのお出かけの日が近づいてくる。

僕はいったいどうなってしまうのだろう。




いかがだったでしょうか。
次回は再び夜空さんのターンになると思います。

そして投稿ペースですが、来月からは少しづつ加速できたらいいなと考えております。

いつになったらあおい姐さんのお話を掛けるのだろうか。
え?自分次第?
ですよねー(白目)。


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夜空さんとデート

投稿が遅くなり、誠に申し訳ございません。
特段言い訳はいたしません。
DEATH STRANDINGにはまり込んだ私が悪いのです。
サムは何も悪くないのです。

今回は夜空さんの番です。
なんだかんだ言いつつ、香澄姉妹のお話を書くのが個人的には好きです。

司くんのアンケートについての話はあとがきでやります。
まずは本編をお楽しみください。


真昼ちゃんが男子部に突入してくるという事件から数日。

夜空さんとのお出かけの日となった。

 

内心浮足立った僕は、待ち合わせの場所にした公園へと向かう。

学校の前じゃないのは、待ち合わせると何かと不都合だからだ。

お互いがアイドルである以上、余計な波風は立てたくないからね。

 

△▼△

 

「予定より早く着きすぎた……」

 

緊張の所為か速足気味の移動になってしまい、予定の時間よりも1時間早く着いてしまった。

もともとは30分前に着いて心を落ち着けるつもりだったのだ。

だが、時間が延びて考える時間ができてしまい、先日の真昼ちゃんのことを思い出すに至った。

 

(中途半端は、良くないよな)

 

以前よりは落ち着いてはいるものの、未だに心は両者に揺れている。

もちろん、相手からの好意には気づけている。

夜空さんからは、特別な男の子として。

真昼ちゃんからは、明確な好意が。

真昼ちゃんに告白すれば、まず間違いなくOKされるだろう。

でも、僕の中の夜空さんへの想いが真昼ちゃんからの好意を遮ってしまい、結果としてつらい目に合わせてしまうかもしれない。

だからこそ、今日のデートで夜空さんの想いをはっきりと聞き出さないと。

 

自分の中で結論を出し、頭を切り替える。

周りを見渡そうと頭をあげると、甘い香りとともに視界がふさがれた。

 

「だーれだ?」

 

いたずらっぽい声が耳に響く。

 

「夜空さん。ですよね」

 

答えを告げると、目の覆いが解かれ、視界が広がる。

そして、振り返って答えを確認するまでもなく、彼女が目の前へ飛び込んできた。

 

「せいかーい」

 

僕の明るくなったばかりの視界に、眩しい笑顔が写る。

その笑顔を見て、改めて確信する。

僕はこの人が好きなのだと。

 

「今わかった決め手は?」

「いつもの香水、です」

「やっぱり?それじゃあクイズにならなかったなぁ」

 

楽しそうに笑う夜空さん。

今日はこの笑顔をたくさん作っていこう。

 

△▼△

 

まずやってきたのはゲームセンター。

僕は時々来ているのだが、夜空はおそらく初めてなはずだ。

 

「ここがゲームセンターだよ。夜空は来たことある?」

「ゲームセンターって実はほとんど来る機会がなかったの。だからこれはいい体験になりそうだわ」

「それは良かった。夜空でも楽しめそうなもの紹介するよ」

 

そう言って、僕は夜空をエスコートしてゲームセンターの中へと入っていく。

ちなみに話し方とか変わっちゃってるけど、これは夜空から『同い年だからもっと砕けた話し方で喋ってよ』と言われたからなのだ。

決して彼氏面してるわけではない。

 

それから、夜空を連れていろんなもので遊んだ。

まずはダンスゲーム。

やはりというか、さすがS4に選ばれるだけのことはある。

初見ながらもきちんと踊れていた。

終わってから感想を聞いてみると『こういったものも時にはいいわね』と気に入ってくれた様子だった。

次に定番のクレーンゲーム。

これが鬼門で、2人掛かりでも景品を取れなかった。

もともとあまり得意じゃないのに挑んだのが間違いだったかなぁ。

ただそれでも、夜空は楽しんでくれたようだ。

他にも太鼓をしたり、お腹がすくまで遊び尽くした。

 

「そろそろお腹も空いたし、お昼ご飯にしようか」

「そうね。さて、次はどんなところに案内してくれるのかしら?」

「次も夜空のお眼鏡にかなうところだと思うよ」

 

△▼△

 

やってきたのは街の中のひっそりとした喫茶店。

喫茶店は意外とランチの穴場だったりする。

それに、人が多くないから静かに過ごせる。

 

「へぇ~、こんなところに喫茶店があったなんて。ここはランチをやっているの?」

「うん。ここのランチはおいしいし、風情があるよ。それに食後のコーヒーもおいしい。さあ、中に入ろうか」

「ええ、そうしましょう」

 

中に入るとカウンター席が7つほど、テーブルも2つほどでこぢんまりした感じを覚える。

ただ、今日はかなり空いていて、僕たち以外のお客さんがいない。

僕は夜空を連れてあえてカウンターの方へ行く。

 

「ご注文は何になさいますか?」

 

店主が聞いてくる。

 

「ランチを二つお願いします」

「かしこまりました」

 

僕に返事を返すと、店主は奥の厨房へと下がっていった。

 

「本当におしゃれなところね」

「実際に年季を重ねた結果だろうね。いい味が出てる」

 

そうやって僕たちが話しているうちに、食事が来た。

喫茶店と言っても、出てくる料理は店によって違う。

ここはスープとバゲット、サラダ、そしてメインのハンバーグがある。

 

「喫茶店ってこんなにすごいランチが出るのね……」

「そうなんだよ。だから、案外喫茶店で昼食をとるっていうのも悪くないでしょ?」

「そうね、気に入ったわ。さあ、冷めないうちに食べましょう」

 

夜空の言葉に従い、僕も食べ始める。

食べ始めて横を見ると、味も気に入ってくれたのか、料理を口にするたび驚いたり、ほころんだり、表情がコロコロと変わっていた。

その表情に僕は再度魅了されてしまった。

僕は食べることさえ忘れようとしていたほどだ。

 

やっぱり、僕は夜空さんのことが好きみたいだ。

 

改めて自覚したのはいいものの、よそ見のし過ぎで食べないわけにもいかないため、少し急ぎ気味に食べる。

 

どちらとも食べ終えた頃、最後のデザートとコーヒーを片手に、これからの予定を決める。

 

「実はこれからのことを決めていないんだ。何かやりたいことはある?」

「そうね……。ショッピングはどうかしら。司くんに似合うものを探してみたいの」

 

ん?

また女装フラグか?

 

「今回は違うわよ。司くんに男として似合うものを見てみたいの」

「そうか。それは楽しみにしておかないとな」

 

△▼△

 

それから街のショッピングモールへ行き。ウインドウショッピングを楽しんだ。

ブランドのミューズとしてモデルをしているだけあって、やはりファッションセンスは素晴らしいものだった。

ただ、やはり女装させられそうになったのはご愛敬。

本人曰く、無意識に探していたとのこと。

 

前回のことだが、夜空のセンスがいいものだから自分の女装した姿に見とれてしまうことがあった。

だから憎もうにも憎めない。

まさか、僕は新たな扉を開いてしまったのだろうか。

 

閑話休題(それはともかく)

日も暮れ始めた頃になり、ウインドウショッピングを終えて夕陽を望むことができる展望台へとやってきた。

 

「やっぱりここの夕陽は綺麗ね」

「そうだね」

 

二人並んで夕陽を眺める。

結局、今まで夜空から聞き出すことができなかった。

だから、今からここで夜空さんに想いを告げようと思った。

 

心臓が高鳴る。

緊張で視界が安定しない。

今にも倒れてしまいそうだ。

それでも、今日を逃してしまったら言えなくなってしまうかも、という恐れが僕を奮い立たせる。

 

「あのっ!夜空さんっ!」

 

僕の強張った声に驚きながらもこちらを向いてくれる。

 

「改まってどうしたの?」

 

頭がくらくらする。

言わなきゃ。

言わなきゃ。

「僕は、」

 

一言だけで肺の空気が抜けてしまったかのように、声が出ない。

 

「僕は、」

 

言え。

言え。

 

「僕は――」

 

言うんだ。

言うんだ。

 

「――あなたのことが好きです!僕と付き合ってくれませんか!」

 

言えた。

でも、これで終わりじゃない。

彼女は、僕をどう思ってくれているんだろう。

 

波の音だけが聞こえる。

僕にはその時間があまりにも長く感じた。

実際の時間は5分もないかもしれない。

それでも、僕にはそう感じられた。

 

彼女がゆっくりと口を開く。

 

「私も、司くんのことが好き――」

 

僕は素直に喜ぼうとした。

 

「でも、条件があるの」

 

今、何て……。

 

「条件って……?」

「司くんは悩んでいるんでしょう?真昼か、私か」

 

どうしてそれを知っているのだろう。

 

「だって、男子部の一部で噂になっているのでしょう?恋バナが好きな女子部ではもっと噂が広まるにきまってるじゃない。それに、真昼の様子を見ていたらわかるもの」

「それは、そうだろうけど。どうして悩んでいることまで?」

「今朝、公園のベンチで頭を抱えているところが見えたの」

「見られていたのか」

 

まさかとは思うが、条件って……。

 

「それで、条件とは……」

 

真昼ちゃんを悲しませてしまうのか?

僕に、真昼ちゃんをフれとでも言うのか?

 

「条件は一つ」

 

僕はたまらず息をのむ。

こんなことになって姉妹が仲たがいを起こしてほしくなんかない。

そんなことはあってはいけない。

そんなことなら身を引くと言おうとした瞬間。

 

「私と真昼のどちらも幸せにしてもらうからね!」

 

想定外の答えが投げつけられた。

 




夜空さんと真昼ちゃんのことを考えると当然の結果ですね。
というか司くんも真面目ですよねー。
まあ、そういうところが彼の美点なのですが。
夜空さんが司くんに惚れた理由とかは追い追いやっていきます。
真昼ちゃんのはもう書いていますが。

さて、司くんのアンケートの結果についてです。
想定よりも求めてる人がいて驚きました。
というか、本編書けよっていう人の少なさにも驚きました。
司くん愛されてるなぁ。
設定については、ある程度まとめたうえで投稿します。
ただし、あくまでもおまけレベルのものになると思われますので過度な期待はしないでくださると助かります。
加えて、本編を読みたいと言ってくださる方もいるので、本編優先でやってまいります。

評価や感想等をしてくださると、私のモチベーションが上がります。
おこがましいですが、どうぞよろしくお願いいたします。
それではまた。


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真昼ちゃんへの告白

思っていたよりも司くんの設定がガバだったため、設定集にてこずっています。
手間取るくらいなら他のことを進めないと、というわけでこの話を投稿しました。

タイトルからも分かる通りです。
香澄姉妹編はほぼ簡潔です。
今後どうするのかなどは後程。

それでは本編をどうぞ。


~side 夜空~

 

最初は、ただ女装の似合う男子、という印象だった。

でも、初めて共演することになった相手が、女装男子というのはあまりにも強烈だった。

しかも、かわいかったから、ついつい目を向けてしまったのも仕方ないと思うの。

撮影が終わった後の無茶ぶりにも応えてくれた時には、少し感動してしまった。

だから、彼の印象は強く残った。

 

惹かれ始めたのは、司くんのアイドルの勧誘を断ったときのこと。

お詫びに要求してきたものが、男としての司くんとお出かけをすることだった。

このお願いをしてくる時に、司くんの男らしさを垣間見たの。

このギャップに惹かれちゃった。

女装している時はあんなにおとなしくて可愛らしいのに、ふと一人の男性であることに気づかされる。

 

そして、約束のお出かけの日。

早めについていた司くんを見つけ、声を掛けようとしたけれど思いとどまった。

何か悩んでいるような素振りを見せていたから。

あまり喜ばれることじゃないけど、気になってたまらずにこっそりと後ろに回り込んで聞き耳を立ててみた。

すると私と真昼について思い詰めていたみたい。

この時に、彼の真摯さに気づくことができた。

そして、この真摯さに私は惚れたんだ。

 

~side out~

 

△▼△

 

うーん……。

いつから夜空は僕と真昼ちゃんのことを知ってたんだ?

聞いても「乙女の秘密♡」って教えてくれないし。

ただ、本人が言わない以上どれだけ考えたって無駄だろう。

それに、僕はもっと考えなければならないことがある。

真昼ちゃんへの告白についてだ。

僕は夜空から与えられた条件だし、真昼ちゃんのことも好きだから受け入れたものの、真昼ちゃんは了承してくれるのだろうか。

 

「うーん……」

「司。どうしたんだ?」

 

海東が心配してくれる。

 

「ちょっと考え事をね」

「何か悩んでるなら相談に乗るぞ」

「あー、個人的なことだから気にしなくていいよ」

 

さすがに親友でも二股掛けるための相談とかできるわけがない。

というかそんなことしたら僕の人生終わっちゃうよ……。

 

「そっか。何かあったら言ってくれよー」

「わかった。その時はよろしく」

 

ほーい、と気の抜けた返事をしながら海東は離れていく。

 

いつまでも悩んでいてはダメだな。

僕は気持ちを入れ替え、重い腰を上げた。

 

△▼△

 

夜空に告白した展望台にやってきた。

奇しくも時間もほぼ同じくらいの時間だった。

来た理由は、もちろん真昼ちゃんへの告白だ。

 

僕が気持ちを落ち着かせて待っていると、遅れて真昼ちゃんがやってきた。

 

「先輩、お待たせしました」

 

夕陽の影響もあるのだろうが、真昼ちゃんの顔が少し赤い。

僕が告白することを期待してくれているのだろう。

僕はその期待を裏切ってしまうことに少し心が痛む。

 

「話、って何ですか?」

 

気持ちを落ち着かせたはずなのに、またおかしくなってしまった。

 

「僕と、付き合ってくれませんか?」

 

言葉はすっと出てきた。

でも、気持ちは落ち着かない。

本当の問題はここからなのだから。

 

僕の言葉に、真昼ちゃんは瞳に少し涙を蓄え、大きくうなずく。

 

「はい!」

 

とてもいい笑顔だった。

でも、これからこの顔を歪ませることになることを想像すると、胸が痛くなるばかりだった。

 

真昼ちゃんが僕に抱き着いてくる。

僕はそれを受け止めた。

でも、真昼ちゃんの背に手を回すことができなかった。

 

「真昼ちゃん」

「どうしたんですか?」

「僕は、今、ここで君に謝らないといけない」

 

その言葉に、真昼ちゃんは僕から離れる。

 

「え?」

 

あっけにとられたような表情になる真昼ちゃん。

 

「僕は、自分でも気づかないくらい欲張りだったらしい」

「?」

 

真昼ちゃんは何を言っているの?とでも言いたげに、僕を見据えている。

胸が痛い。

それでも、僕は心を鬼にして真実を告げる。

 

「ごめんなさい。僕は、真昼ちゃんに二股をかけようとしています」

 

2人の間の時が止まった。

 

波の音や木々のざわめきすら聞こえなくなってしまうほど、その言葉が響いた。

真昼ちゃんは驚きのあまり動けなくなっている。

 

お互い、動けないでいるまま時間が過ぎていく。

本当に時間が過ぎたわけではないが、それだけ時間が重くのしかかってきた。

 

「真昼~」

 

間延びした声にふと緊張が解ける。

 

「おねえ、ちゃん……?」

「そうでーす。お姉ちゃんでーす」

「どうしてお姉ちゃんが。まさか――」

「そう。そのまさかなの」

 

夜空は、驚く真昼ちゃんと、真剣な表情のまま固まっている僕の手を引いて、間を取り持つ。

 

「こうなった理由は、私から説明させてもらうわ」

 

夜空が、僕たちに自身の想いと、こうなった経緯を語りだした。

 

「司くんが、自分は欲張りだ、って言ってたけど、私の方が欲張りなのかも。妹が想いを寄せている人に惚れて、受け入れて。でも、真昼が大事だから、二人で共有する考えが出てきたの」

 

一息置いて、また語りだす。

 

「だから、司くんの思いを受け入れるときに、二人とも幸せにすることを条件にしたの。それで、こうして司くんがあなたに想いを告げたの」

「でも、それって先輩はお姉ちゃんを選んでたってことだよね……」

「そう聞こえてもしょうがない。でもね、僕の告白は嘘なんかじゃないから」

「……本当に?」

「本当さ」

「ほんとの本当に?」

「ああ」

 

真実を知り、改めて僕の想いを受け取った真昼ちゃんは、また僕に向かって抱き着いてくる。

今度は僕もそれを抱きしめ返す。

そして、やっぱりつらかったのか、しゃくりあげる声が聞こえる。

 

「妬けちゃうなー」

「そんなこと言うなよ」

 

夕陽がとても眩しかった。




書いていて少し雑かと思いましたがどうでしょうか。
気になるのであれば、どうぞ悪いところのご指摘をしてくださると今後の私の成長につながります。
もちろん面白かったという感想もお待ちしております。

香澄姉妹のお話は、あとエピローグを残すのみです。

これからのことですが、まずはゆめちゃんのお話を書きながらあおいちゃんのお話のプロットを書き上げてまいります。
プロットがある程度完成し次第、投稿するという形になりそうです。

司くんの設定については、文字数の関係もあるので他の設定も盛り込む方針です。


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二人とのこれから

想定よりも投稿が少し遅れました。
エピローグとして書こうとしていたことだけでは文字数が足りない、というアクシデントに見舞われてしまいました。
こんなことなら前のお話に入れ込めば良かったのかなぁ。
文字数を増やすために余計なことまで書きましたので、少々お見苦しいかもしれませんが、香澄姉妹の最終話をどうぞ。


真昼への告白から数日。

僕たちは少しおかしな形の恋人関係になっていた。

男を二人で共有する、という形。

はたから見れば女を侍らせる男に見えるのかもしれない。

当たり前ではあるが、今の日本では受け入れられないため、少し関係性を変える必要があった。

 

公には、真昼と交際しているということになった。

まあ、公と言っても周りの人間に僕が『真昼は僕の彼女だ』と言っただけなんだけど。

こうしたのは男子部にお弁当を持ってきたときのことを考え、そうするのが妥当だと3人で考えたからだ。

お弁当を作ってくるような関係の女性がいたのに、他の女性と付き合いましたーっていうのは違和感があるし。

それに夜空と付き合っていると言った場合、一部の男子にすごく不評を買いそうだから。

一部の人にだけはこの関係を知らせている。

朝陽にはもちろんのこと、S4のメンバー、ゆめちゃんをはじめとした真昼の同級生達だ。

 

そして、未だに真昼に余裕があるときには、未だにお弁当を作って持ってきてくれる。

もちろん、ある程度関係を公にした以上堂々と受け取り、二人で食べる。

ただ、最初の頃はどちらも少し恥ずかしさがあり、恐る恐るといった感じではあったのだが。

恋人宣言をして最初の昼食の後、またクラスの仲間たちに問い詰められたのは秘密だ。

 

日が暮れ、夜になるころ。

男子部と女子部の境界あたりで夜空と落ち合う。

始めは『今日の真昼はどうだった?』と真昼の話題から始まる。

しばらくするとどちらともなく手をつなぎ、肩を寄せて空を見上げる。

それだけで十分満たされていた。

 

3人とも予定が合う日には、町へ出てショッピングに繰り出したり、またそこで女装されられるハメになったこともある。

どちらかとオフがあった日にはデートをしたり。

公言した手前、夜空とのデートの時には少し気を遣うことになってしまっていることが少し申し訳ない。

 

夜空が四ツ星の中等部を卒業してフランスに留学するまで、この関係を続けた。

パパラッチに抜かれることもなく、穏やかに暮らしていた。

夜空を送り出すのは少し寂しかったが、夜にはビデオ通話をして少しでも触れ合いを欠かすことはなかった。

時々日本に戻ってきたときは3人で食事に行ったりしていたが、真昼が気を遣ってくれて二人きりの時間も作ってくれた。

 

今はまだこの関係を続けていられる。

でも、いつかそうできなくなる時が来るかもしれない。

たとえ非難されることがあっても、僕は彼女たちを決して離さないだろう。

 

「司さん、何を考えているんですか?」

「僕たちのこれからのことをね」

「あら、もしかして結婚のことかしら?」

「えっ?!お姉ちゃんと司さんで?!」

「違う違う。どうやったらこれからも3人でいられるかなって。まあ、夜空のいうこともあながち間違いではないんだけど」

「じゃあ、どこか海外に住みましょう。多重婚ができるようなところとか」

「それいいじゃない!私は賛成!」

 

三人寄ればなんとやら、とはよく言ったものだ。

おかげで、僕はこれからも二人と楽しい時間を過ごせそうだ。

 

△▼△

 

真昼の太陽と夜空の月。

僕らの道はこの二つに照らされている。

 




これにて香澄姉妹のお話は一旦終了となります。
完結までに時間がかかってしまって申し訳ない限りです。

少しここで裏話的な話を一つ。
実はこのお話はほぼプロットを書かずに進行しておりました。
それにもかかわらず、意外とお話の内容が決まったあたり、やっぱり筆者は香澄姉妹が好きなんだなぁ、と確信しました。

それでは、次はゆめちゃんのお話を書かなきゃですね。
例のごとく、感想等くれると非常に励みになります。
ここ最近毎度のように感想をくれるのはとてもうれしかったです。
それではまた。


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”特別編” 真昼の誕生日①

遅刻しましたが、真昼ちゃんのお誕生日記念のお話です。
勢いで書いたら、普段と同じくらいの分量になってしまいました。
時系列的にはかなりすっ飛んで、このルートのエンディング後です。
そのため、司くんからの呼び方が変わっていたりします。
あんまり書くのもアレなので、残りはあとがきの方に......。


今日は真昼の誕生日。

夜空と一緒に真昼へのプレゼントを買いに来た。

 

「真昼は何を上げたら喜んでくれるかな」

「たぶん、司くんがプレゼントした物なら何でも喜ぶと思うわよ」

「さすがにそれは言い過ぎでは?」

「いえ、あながち間違いでもないはずよ。あの子、あなたにベタ惚れしてるから」

「そ、そうだったのか。でも変なものは渡したくないなぁ」

「それだったら、アレとかどうかしら」

「あぁ、アレか。それだったら喜んでくれそうだ」

 

夜空が指したのはシュシュだ。

真昼に似合いそうな赤紫と青紫色のシュシュ。

 

「これで決まり、だな」

 

迷うことなく購入を決めた。

会計を済ませて店を出ると、夜空の姿が見当たらなかった。

 

「あれ?どこに行っちゃったんだろう」

 

迷子になるような人ではないはずなのだが。

 

それから少し歩き回っていると、夜空から電話がかかってきた。

 

「もしもし?いったいどこに行ったんだ?」

『ごめーん。ちょっとイイものをみつけちゃってね』

「はぁ……。それでいったいどこなんです?」

『えーっとねぇ――』

 

電話を終え、夜空が待つ店へ向かった。

 

△▼△

 

どうやら、女性向けの服を主に扱っている店のようだ。

なかに入ると、僕に気づいた夜空が手を振っていた。

おまけにものすごくいい笑顔も合わせて。

……嫌な予感しかしない。

 

「司くーん、早く早く~」

 

……ええい!なるがままよ!

腹をくくって夜空の方へ歩き出した。

 

△▼△

 

買い物を終え、香澄家での誕生日パーティーに御呼ばれすることになった。

残念ながらお義父さんとお義母さんは仕事の都合で来られないようだが、ゆめちゃんをはじめとした友達が集まってパーティーを開いてくれたみたいだ。

 

「そろそろ真昼が帰ってくるみたいよ。みんなクラッカーの準備は大丈夫かしら」

 

その声とともに、玄関に近いリビングのドアの前にみんなで陣取った。

少しの間待った後、玄関のドアが開く音が聞こえた。

そしてリビングのドアが開いたと同時にクラッカーを鳴らした。

 

「「「誕生日おめでとう、真昼(ちゃん)!!!」」」

 

真昼は、思いもよらない歓迎に思わずポカンとした表情を浮かべていたが、理解が追いつくと途端に笑顔になった。

 

「みんな!ありがとう!」

 

それから、誕生日のケーキを出してろうそくの火を消したり、少し豪勢なディナーを楽しんだ。

パーティーも終わりに近づいたころ、みんなでプレゼントを渡した。

ただ、この時僕と夜空だけプレゼントを渡さなかった。

他のみんなはプレゼントを渡した後、空気を読んで先に帰ってくれた。

恋人同士の時間を作ってくれたのだ。

 

「それじゃあ、私と司君のプレゼントの用意をするから少し待っててね」

「なに?用意が必要なプレゼントなの?」

「そうなの、だから少し待っていてちょうだい」

 

それから、僕は別室に移り着替えを始めた。

 

△▼△

 

20分後。

 

「おまたせ~」

「本当に待ったよ」

「ごめんごめん。さ、プレゼントの用意ができたわ。司くん入って~」

 

その合図で、僕は扉を開けてリビングへ入った。

 

「……!!!」

 

真昼は声も出せないくらいに驚いている。

 

「どう?驚いたでしょ。私のプレゼントは、このクールな司ちゃんで~す!」

 

驚くのも無理はない。

だって僕がプレゼントで、なおかつ女装しているのだ。

 

「えーっと……どう、かな。キレイに見えるかな?」

「?!っ!!!」

 

少しポーズをとると、真昼が少し表情を赤らめ興奮している様子が見て取れた。

 

「そこまで喜ばれるとなんかこっちが恥ずかしくなってくるな……」

 

その後、収拾がつかなくなりそうになったため女装をやめた。

夜空さんは少し惜しそうにしていたが。

 

「司先輩。あんなの、刺激が強すぎます。それに、似合いすぎです」

「あはは、まさか自分もあそこまで似合うとはおもってなかったなぁ」

「もう……。あ、先輩からまだプレゼントをもらってないです!プレゼントを要求します!」

「そういえばそうだったな。はい、これが僕からのプレゼント」

 

用意していたプレゼントを渡した。

受け取るや否やすぐに開けてくれた。

 

「これ、シュシュ……」

「そ。真昼に似合うと思って」

「うれしい……」

 

気づけば、夜空はどこかにいなくなっていた。

気を遣ってくれたのだろう。

 

「司先輩。私からお礼をさせてください」

「お礼だなんて、真昼が喜んでくれたのが一番だよ」

「それでもしたいんです。だから、少し目をつぶっていてくれませんか」

「わかった。目をつむるよ」

 

言われたとおりに目をつむることにした。

なんとなく察してはいるけど、言わぬが華よ。

それから唇と唇が触れ合った。

途中で目を開けたけど、そんなことは気にしない。

30秒ほどして、二人は離れた。

 

「司先輩。大好きです」

「僕もだ、って言いたいけど、夜空がすねちゃう」

「今はいませんよ」

「確かに。それじゃあ言い直して。真昼、大好きだ。それと、誕生日おめでとう」

「はい!ありがとうございます!」

 




なんか後半筆が乗って(暴れて)甘くなりました。
強引に甘くした感もありますが、付き合ってるんだしこれくらいはね。
ちなみに察しているとは思いますが、どちらともくっつきます。
倫理的にはちょっとアレですが、当人たちが良ければ何も問題はないのです。
あと、司くんが着ていた服装ですが、シャニマスの白瀬さんの最初期のPSRの恰好をイメージしていただけるとよろしいかと。

それはともかく、真昼ちゃんお誕生日おめでとう!!


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”特別篇” 真昼の誕生日②

なんと二回目の誕生日企画です。
前回の誕生日のちょうど1年後のお話です。
今回はちゃんと間に合いました。
アンケートについてはあとがきで。


今日は真昼の誕生日だ。

真昼と付き合いたてだった去年は、ゆめちゃん達がパーティーを主催した。

今年もそうだろうと思い、気軽な気持ちで香澄家へ向かっていた僕は到着早々白目をむくことになった。

何故かって?

簡単な話さ。

去年が例外だったんだ。

つまり、何が言いたいかというと。

お義父さんとお義母さん(ご両親)がいるんだ。

 

二人と付き合ってから、未だに顔を合わせる機会を作ってこなかった自分を殴りたい。

他にも言いたいことはあるけど、とりあえず考えちゃだめだ。

これ以上考えると後悔しか浮かばないから。

でもまあ仕方ない。

こうなった以上、まずは挨拶だ。

 

「初めまして。僕は飯島司です。娘さんとお付き合いさせていただいています」

 

緊張もあって、なんだか変なあいさつになった気がするんだけど。

恥ずかしい!

 

試行を切り替え、下げていた頭を少し上げてご両親の顔を窺う。

お義父さんの方は目を閉じてじっとしていて、なんだか威圧感を感じる

お義母さんの方は驚いたように目を見開き、口を手で覆っている。

……お義母さんめちゃくちゃ綺麗じゃないか?

本当にこの親にしてこの子ありって感じだな。

 

「あらあら、そうだったんですね。今真昼を呼んできますから掛けて待っていてください」

 

そう言って、お義母さんにソファへと促される。

それもお義父さんの目の前のやつに。

お義母さんの表情を見るあたり、意識していたわけではないだろうけど、すごく心臓に悪い。

部屋に二人きりになることに加え、お義父さんが何も言わずにじっとしていることが、余計にそう感じさせた。

意を決して、僕から話を振ろうとしたその時、お義父さんがゆっくりと口を開いた。

 

「司くん、といったかね?」

「はい!」

 

緊張で声が上擦る。

 

「夜空と真昼の二人と付き合ってると聞いたが、本当なのか?」

「……はい。そうです」

 

少しぼかしていたところを突っ込まれる。

恐らく聞いたんだろう。

僕の返しに、お義父さんはまた黙り込む。

また僕は、何を言われるのかわからないという緊張から心臓が高鳴る。

……でも、この思いは本物だ。

だから……、それを認めてもらわなきゃいけないんだ。

 

「僕は、二人の女性を好きになってしまいました。それも、二人の大切な娘さんです」

 

お義父さんは僕をじっと見据える。

 

「世間的にもあまり良くないことだというのはしっかりと理解しています。ましてや僕や娘さん方はアイドルだということもです。」

 

しっかりと、熱意を込めて想いを吐き出す。

 

「それでも、僕は二人のことが好きです。そして、幸運にも二人からも愛されています。だから、僕は二人の想いに応えるためにも、二人を愛そうと思っています。幸せにしたいと、いや、絶対に幸せにします。たとえどんなことがあっても僕が二人を守ります」

 

そして、頭を下げ、最後に自分の全身全霊を持って誠意を示す。

 

「娘さん二人を、僕にください!」

「……」

 

お義父さんは黙ったまま、少しうつむいている。

そして、再び静寂が訪れる。

体感には5分にも感じられた。

実際は5秒にも満たなかったかもしれない。

でも、それほど重厚な空気で満ちていた。

 

「司くん」

 

耐えきれず、僕は息をのむ。

 

「二人をよろしく頼むよ」

「はいっ!」

 

僕が返事をすると、その時を待っていたかのように夜空と真昼が僕に寄ってくる。

 

「「司(さん)~!」」

「うおっ、いつの間に」

 

そして飛び込むようにして抱きしめられる。

二人とも満面の笑みだ。

それに対してお義父さんは、苦笑しながら言う。

 

「二人がこうなっている以上、もともと君に二人を任せるつもりではあったんだけど、君を試したくなったんだ。緊張させてすまなかったね」

「いえ、ご両親にとって大切な娘さんなんです。心配されるのは当然だと思います」

 

とまあ、ドッキリのような試練というひと騒動があったものの、結果的には香澄家のご両親から気に入られたのだった。

 

△▼△

 

そのあと、真昼の誕生日パーティーとなったのだが、お義父さんが僕を大層気に入ってくれたらしく「息子が一人増えたようなものだ」とか言っていた。

お義父さんは僕と朝陽を連れて男同士の話をしようとしていたのだが、今日の主役である真昼は意地でも僕を離すまいと抵抗を見せ、お義父さんは泣く泣く諦めたのだった。

 

「お父さんったら、今日は私の誕生日だっていうのにどうして司さんとの時間を奪うのよ」

「その、ごめんよ」

 

お義父さんに悪気はなかったのだろうが、さすがにタイミングが悪いと思う。

朝陽もちょっと苦笑してるし。

でも、どこか未来の自分を見たような気がしてならない。

そこで僕はそんな真昼の機嫌を取るために、少し提案をする。

 

「真昼、ちょっと外で風でも浴びようか。もちろん二人で」

「……!うんっ!」

 

ちょっと不機嫌だった表情も、ぱあっと笑顔に変わった。

お義父さんは微妙な表情をしているけど、僕が真昼の機嫌を取ったことには感心せざるを得ない、とでも言いたげな雰囲気を醸し出していた。

 

ベランダで風を浴びる。

秋の涼しい風が顔に当たる。

でも、マンションの高層だと時折少し寒く感じてしまう。

 

「ちょっと寒いですね」

「そうだね」

 

そう言って僕は真昼ちゃんの手を掴む。

 

「それだけ、ですか?」

 

上目遣いで更なる要求をしてくる。

やっぱり、恋人の上目遣いには抗いがたいものがある。

僕はそっと後ろから抱きしめる。

 

「あったかい……」

 

二人で暖を取りながら、沈みゆく日を眺める。

 

「今日は司さんに苦労を掛けちゃったなぁ」

「気にしてないよ。それに、いずれご両親にはあいさつに行かなきゃいけなかったし」

「でも、緊張したでしょ」

「そりゃあそうだけど、逆に相手の両親に会って緊張せずにいられるか?」

 

そこで、ふと顔を上げる感じで真昼がこちらを見て尋ねる。

 

「そういえば、私たちってまだ司さんのご両親に会ったことないと思うんだけど」

「あ、いっけね。完全に紹介するの忘れてた」

「司さんのご両親がかわいそうだなぁ」

「うぐっ。今度紹介するから追い打ちはやめてくれ……」

 

完全に失念していたとはいえ、学校では寮生活が待っているから頭からすっぽ抜けるのも是非もないと思うの。

なんて思っていたら、なぜか真昼につねられた。

まさか心を読まれた?

 

「司さんがわかりやすいだけだよ」

「うーん。これでも演技には自信があるんだけどなぁ」

 

日が沈んでしばらくのマジックアワーと呼ばれる明るい時間。

その時に思い出した。

 

「そういえば、まだ直接言ってなかったね。誕生日おめでとう、真昼」

「ありがとう、司さん」

 

それから夜のとばりが降りきると、耐えきれなくなった夜空が突撃してきてひと悶着あったけど、真昼の喜んでくれる誕生日にできたんじゃないかと思う。

 

さて、親父たちにはなんて説明しようかな。




いかがでしたでしょうか。
まだ書いていなかった香澄夫妻との絡みです。
普通、父親に娘さん(二人)をください!っていうのはヤバいですけど、その二人がゾッコンだと是非もないね、という感じになると思うんです。え?なりませんか。

真昼の誕生日にはいつもご両親が来てくれる、ということを思い出して今回はこんなお話になりました。
真昼ちゃんとの絡みはなんだかおまけみたいになっちゃいましたが、真昼ちゃんを祝う気持ちに偽りはありませんのでご安心を。

アンケートですが、本日いっぱいとなっております。
なるべく協力していただけると嬉しいです。
そして、明日から次の投稿までの間に新しくアンケートをするつもりですので、そちらにもご協力をお願いします。

真昼ちゃん。誕生日おめでとう!


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”特別篇” 夜空の誕生日①

間に合いました(白目)
実は今朝夜空さんの誕生日のことに気づきました。
いい加減学べよって話です。

夜空さん、誕生日おめでとう。
それではどうぞ。


連休も明け、本格的に夏の到来を感じるころ。

僕が毎朝欠かさずにやっているランニングの最中だった。

少し慌ただしそうにしている真昼を見つけたのが事の発端だった。

 

「え?今日が夜空の誕生日……?」

 

休みボケを盛大にかましてしまったのだった。

 

△▼△

 

「で、司先輩はプレゼントとかどうするの?今から買いに行ったとしてもパーティーに間に合うのかな」

「そう、だよな……」

 

これは腹をくくるしかないか。

 

「いや、いい考えがある」

 

自分で言ったはいいものの、これってフラグだよな。

 

「何をするの?」

「なんでもいうことを聞くというのはアリかな?」

 

△▼△

 

今日は午前中から集まってパーティーをするらしい。

というか、そうじゃなきゃ真昼も慌ただしくしていないはずだ。

この時間になったのはS4の他のメンバーの都合らしい。

 

ちなみに、プレゼントの件は真昼的にはアリとのこと。

ちょっと羨ましいな、とか言ってたのでお礼も兼ねて今度何かいうことを聞いてあげる、と言ったらすごく目を輝かせていた。

兄弟姉妹は似るものがあるし、恐らく夜空へのプレゼントとしては間違いないんだろうな、と確信した。

 

「うーむ。やっぱり緊張してしまうな」

「どうして?うちに来るだけなのに」

「いや、だってもしお義父さんとかお義母さんに出くわしたらどんなこと言われるんだろうなって」

「大丈夫よ。お父さんもお母さんも心が広いから。それに今日はもう家を出たみたいなの」

「そ、そうか。でも、夜空の誕生日なのに残念だろうな」

 

僕が緊張から解放されたところで、香澄家の玄関にたどり着いた。

チャイムを押そうとすると突然玄関のドアが開いた。

 

「遅いぞ、二人とも。夜空が待ちわびてるぞー」

「ゆず先輩。急にドアを開けられたらびっくりしますよ」

 

犯人は二階堂ゆずだった。

なんで玄関にきたことがわかったんだろう。

 

「とにかく、夜空が大切にしている二人が行かなくてどうするの」

 

ゆずが僕たちの腕をとり、半ば強引に部屋へと連れられた。

部屋にはS4が全員集合していた。

ゆずの言わんとしていることはごもっともだった。

そして、夜空は僕たちを見るなり駆け寄ってきて抱きしめてくれた。

 

「真昼!司!来てくれてありがとう!」

「お姉ちゃんの誕生日を祝うのは当然だよ」

「恋人の誕生日パーティーに行かない人がいるもんか」

 

忘れていた人が何を言うか。

夜空が抱きしめるのをやめ、席に座る様に促そうとした時、真昼が爆弾を投下した。

まあ、当然のことではあるのだが。

 

「おねえちゃん。実はね、司先輩って今日がお姉ちゃんの誕生日だってこと忘れちゃってたみたい」

「ちょ、それを言っちゃおしまいじゃん」

「えー、私傷ついたなー。彼氏に誕生日も覚えてもらえないなんてー」

 

案の定、夜空からからかい気味な非難を浴び、周りの女性陣からも「ないわー」とでも言うような表情で見つめられた。

 

「えっと。まず、すいませんでした。だから、お詫びじゃないけど、今日のプレゼントは僕ってことで勘弁してもらえないでしょうか」

 

頭を下げながら夜空に向かって言う。

 

「それって、つまり――」

「今日の僕は、夜空のしもべです。何なりとお申し付けください」

 

夜空の表情を窺うと、やはりというか目を輝かせていた。

何をされるかは、だいたいわかった。

 

△▼△

 

「司の女装が似合うとは聞いていたのだが」

「まさかここまで似合うとは思わなかったわ」

「というか、女の子って言われても全く違和感がないぞー」

 

はい。

司ちゃんの爆誕です。

こ う な る の は わ か っ て た。

 

「なあ、司。私から女優としてのレッスンを受けないか?」

「いや、遠慮しとく」

「即決?!それはひどいぞ!」

 

ツバサが妙に食いついてくる。

なぜだ……。

 

「あらあら、司ったら人気者じゃない。妬けちゃうわ」

「好きで人気者になった訳じゃないんだけど……」

 

妬くとか言っているが、夜空は終始笑顔だった。

僕がかわいらしくなっているところを共有できたことと、「司は私が育てたのよ」と言わんばかりの誇らしさがあるのだろう。

注目されて気にはなるが、夜空の笑顔が見られたんだ、良しとしよう。

 

そして、お昼が過ぎ、ティータイムが終わったころ、ツバサたちが帰ることになった。

 

「じゃあゆずたちは帰るぞー。あ、司っちの女装また見せてねー」

「それじゃあ、あとは3人でごゆっくり~」

「司、帰ったらさっそく確認するからな!」

「しなくていいよ!というかしないで!」

 

ツバサは僕が女装した作品を確認するらしい。

頼むからやめてほしい。

 

△▼△

 

3人が帰り、僕、夜空、真昼だけになった。

しかし、真昼も「今日はお姉ちゃんの誕生日だから」といって学校へともどっていった。

そして、女装の時に僕の肌荒れに気づいていた夜空が、食生活に難があるのではと言い、一緒に料理をすることになった。

 

「なんだか気が早いかもしれないけれど、こうしてると夫婦みたいだと思わないかしら?」

「言われてみるとそう感じてくるなぁ」

 

料理の上手な妻が、夫を気遣って健康的な料理を作ってくれる。

そして、夫がそれを手伝う。

 

「私たちって普通の恋人じゃないから、こんなことは少ないかもしれないわね」

「そうだね。でも、ここに真昼がいても楽しいんだろうね」

「そうね。でも、今日くらいは真昼のことを忘れてもいいんじゃないかしら」

「夜空にしてはめずらしいことを言うね」

「だって、あなたのことが好きだからに決まってるじゃない。時には独り占めだってしたくなるわよ」

「そういうものか」

「そういうものよ」

 

つかの間の夫婦気分のあと、食事を共にし、日も暮れて夜になった。

 

夜空が僕の手を引いて僕をベランダへと連れていく。

 

「ねえ、司は夜の空って好き?」

「好きだよ。綺麗で、美しくて。そしてなぜか飲み込まれてしまいそうな怪しさもあって」

 

僕は夜空に後ろから抱き着く。

夜空もそれを受け入れてくれる。

 

「僕は、夜空の美しさに呑まれてしまったみたいだ」

「あら、私は月みたいなあなたに照らされてしまったみたい」

 

星と月の輝く夜。

まだまだ夜は更けていく。

2人の愛もまだまだこれから更けていくはずだ。




なんか最後の方がクサイ気もしなくはないですが、恋愛小説とかってこんなもんですかね?(今までいろいろ書いておいて何をいまさら)

もし気に入ってくださったら感想や評価をくれるとうれしいです。
感想とか評価が入るだけでニヤニヤしてしまうほどうれしいです。

早く新型コロナウイルスが落ち着くといいですねぇ。
おかげでアイカツすらしに行けないんですからねぇ。

あ、ちなみにそろそろ投稿ペースが上がりそうです。
今回の投稿もその影響を受けてます。


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”特別篇” 夜空の誕生日②

また間隔が空いてしまったことに後悔しつつ、夜空さんの誕生日に間に合ったことに喜びつつの投稿です。
今年度から新生活をスタートし、まだまだ自分のコントロールが上手くいっておりません。
投稿間隔については目を瞑っていただけると幸いです。


今日は夜空の誕生日。

夜空の要望でデートをしている……のだが。

 

「なんで今日は女装なんです?」

「いいじゃない。今までのデートと違って新鮮でしょ?」

「そりゃあそうだけどさ」

「それじゃあ問題ないわね。さ、次に行くわよ」

 

そう言って笑う夜空の顔を見ると、否定する気もなくなってきた。

ただ、周りの視線がちょっと暖かい目なのが気になってしまう。

なぜかって?

よく考えてみて欲しい。

デートである以上、僕たちはそれなりにイチャイチャしている。

普通ならばリア充爆発しろ的な視線が見受けられるはずだ。

ただし、今回は僕が女装をしているのだ。

ここまで言えばもうお分かりだろう。

僕たちは周りから見ると百合ップルに見えるのだ。

時折飛んでくる暖かい視線の原因がこれだ。

さすがに役者をしている身分でも、この視線はちょっときつい。

 

「あら?あそこにもよさげなお店が見えるわね。行ってみましょう」

「あの少し路地に入ったところ?」

「そう。ほら、少し見えるショウウインドウのワンピースがいいと思わない?」

「確かに、夜空の好みだね。行ってみよう」

 

夜空に手を引かれ、路地へと進んでいく。

 

△▼△

 

「あれ、おかしいぞ。僕は夜空に似合う服を探していたのに、いつの間にか着せ替え人形になっていたなんて」

「だって司に似合いそうなものがたくさんあったんだもの」

「それでも30分近く更衣室に入り浸りなのはやりすぎだろ……」

「てへ☆」

 

かわいい。

じゃなくて、さすがにやりすぎだと思う。

なぜか夜空は気持ちツヤツヤしてるし。

 

「でも、結局買わなかったんだね」

「だって今日はショッピングが目的じゃないでしょう?私はあくまでも司とのデートを楽しみたいの」

「なるほど。じゃあキッチリとエスコートしないとね」

 

僕は夜空の手を引いて路地を歩く。

さっきのお店に長居しすぎたのか、来たときよりもかなり暗くなっている。

嫌な予感を感じながら歩いていると、奇しくも的中してしまったらしい。

少しガラの悪そうな男たちがやってくる。

数は4人。

 

「お姉ちゃんたち、オレたちといいことしない?」

 

俗にいうDQN(どきゅん)ってやつか。

 

面倒を避けようと僕たちは黙って通り抜けようとする。

 

「おいおい、無視なんてひどいぜ」

 

そう言って男たちは道をふさいできた。

しつこいなあ。

少しイライラして頭に血が上る感覚がわかる。

男の一人が夜空の肩に手を伸ばして触れようとしていたのが目に入る。

すると、ほぼ無意識にその腕をつかみ、男を投げた。

思っていたよりも僕は独占欲が強いらしい。

投げられた男はコンクリートの地面に背中を強く打ち、気絶。

これで3対1。

 

「ッ!てめぇ!」

 

女装をしている僕が女だと油断していたんだろう。

血相を変えて僕に向かって殴りかかってくる。

撮影のアクションとは違うが、真昼から護身術として叩き込まれた空手を思い出し、拳をいなす。

男たちが隙を見せたところで一人を掴み、残りの二人へ向かって投げる。

もちろん男たちはしばらく動けないようだ。

 

「行くぞ、夜空!」

「う、うん」

 

夜空の手を取って走り去る。

 

△▼△

 

「はあ、うまく逃げれた……」

「ひやひやしたぁ~」

 

上手く逃げおおせた僕たちは、告白をした海辺の展望台にやってきた。

すでに日は暮れ、空には星が輝いている。

 

「司、今度からあんな無茶はしないでよね!」

「ごめん。でも、夜空が他の男に触れられるっていうのことが耐えられなくてつい手が出ちゃったんだ」

「でも司がケガなんてしたら、私泣くわよ」

「それは困るな。せっかくの綺麗な顔が台無しになっちゃう」

 

ベンチに腰掛け、話しながら空を見上げる。

 

「じゃあ、泣かせないように努めてくれる?」

「もちろん。でもちょっとくらい無理するかも」

 

えぇ~、と夜空は少し不満そうだけども、僕だって男なんだから少しくらい見栄を張りたい。

その結果悲しませてしまったのなら、笑顔になる様に全力を注ごう。

 

「って、女装した状態で言ってもカッコつかないか」

「なになに?」

「いや、独り言だよ」

 

その後しばらく二人並んで星を眺めていたが、どちらともなく聞こえてきた腹の虫に笑い合い、二人手を取って帰路につく。

その2人を見守る様に、満月が煌々と照らしていた。

 




結局いつも通りの内容です。
読んでいて薄々予想はついたことでしょう。
っていうか私、女装ネタ使いすぎじゃないですかね。
鉄板すぎて飽きられていそうですが、なんだかんだとこれに落ち着いてしまうんですよね。

さて本編の方ですが、一応取りかかってはいます。
今年の夏が終わるまでに書き終えたいなーと思ってはいますが、筆を執ると急にプロットから脱線しそうになるんですよねぇ。
あと、語彙力の無さが遅筆に拍車をかけている気がしてならないです。
ちまちまと頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願いします。
リメイク?そういえばそんなものがあったような(目逸らし)。

あとは個人的に言いたいことを一つ。
ウマ娘にハマっています。
キングヘイローとダイワスカーレットかわいいよね。
という思いから、何か書きたい欲が湧きつつも形にできない今日この頃です。

ではまた。


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セイラ√
"特別編” セイラの誕生日


誕生日からは大大遅刻ですが、書いたのでせっかくならば投稿をと思いました。
今回はアンケートは無関係で、個人的に好きなキャラクターであったので書こうと思いました。

今回はかなり短いです。


「いらっしゃいませ~」

「よっ。今日は店の手伝いか?」

「あ、司だ。実は以前よりも人気になって人手が欲しいってことになっちゃって」

 

見渡すと、以前よりも明らかに人が増えたことがうかがえる。

理由はなんとなく察せられるが。

 

「あ、そういえばノエルちゃんは?いつもはノエルちゃんが店番してたけど」

「むーっ……。ノエルはちょっと買い出しにね」

「あぁ、ごめんごめん。ここに来た理由はセイラに用があってね」

「わ、私に!?」

「うん。ただ、人が多いからもう少し人が落ち着いてからでいいよ」

「うん、わかった」

 

それからコーヒーを片手にセイラを待った。

 

△▼△

 

「お待たせ。用事って何?」

「今日はセイラの誕生日だろう?だからどこか一緒にデートでも、って思ってね。わざわざ休みまで取ってたんだぞー」

「デ、デートか……。って急にそんなこと言わないでよ!女の子にはいろいろと準備がいるんだから」

「そういう割には準備できてるように見えるけどね」

「そ、それは……」

「まあ、ともかく出発だ」

 

一応の補足ではあるが、僕とセイラは付き合っている。

といってもほんの少し前からだけど。

それはともかく、僕はセイラを連れて店を出た。

 

「で、どこに行くの?」

「音が聞こえる場所、かな?」

「何それ。ちゃんと私を満足させられる?」

「たぶんね」

 

△▼△

 

店を出た時間が遅かったのもあり、最初の目的地に着く時点で空は夕暮れへと傾き始めていた。

場所は海沿いの展望台。

高台というのもあり風が少し強いが、その風の音と波の音が聞こえてくる。

都合がよく、僕たちのほかには人はいなかった。

 

「風と波の音……。壮大な自然がひしひしと感じられるね」

「そうだね。でも音だけじゃなく景色も楽しんでよ」

「うん。もちろん」

 

しばらく僕たちは展望台に設置されているベンチに腰掛け、自然を感じていた。

 

「綺麗だね」

「ああ」

 

△▼△

 

僕たちは次の場所へと向かっていた。

場所はさっきとはまるで変わり、ススキがあたり一面に広がっていた。

 

「さっきとはまた違った風が聞こえる」

「うん。風でススキが揺れる優しい音」

 

夕陽を反射し、ススキが黄金に輝いて見える。

まるでライブの時に振られるサイリウムの光みたいに。

 

「ステージにあがってる時みたいだな」

「うん」

 

そして徐々に日が落ち、月が昇ってきた。

すると、そこで小さな演奏会が開かれた。

 

「鈴虫の声が聞こえてきたね」

「コオロギもいるみたい」

 

それから、また虫たちの演奏に耳を傾けた。

 

「セイラ」

「なに?」

「誕生日おめでとう」

「うん、ありがとう」

 

次第に自然と二人の距離は縮まっていき、二つの影は一つになった。




ラブコメのコメディ要素が書けないという絶望的状況にいます。
どこからか学んでこなきゃ......。

アンケートはみくるちゃんとあおいちゃんの方向で考えていこうと思います。


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みくる√
再会


皆様、体調は大丈夫でしょうか。
私は気温差やら気圧差やらで鼻づまりがひどいです。
執筆中もティッシュが手放せませんでした。
皆様も体調にはお気を付けください。

さて、肝心のお話の方ですが、想定していたよりもかなり長くなりそうです。
単話で書くとか言っていましたが、無理です。勘弁してください。
さすがに全部出来上がるまで待つとだいぶお待たせすることになってしまうので、断念して連載形式に変更しました。
そのため、あおいちゃんのお話は先の話になりそうです。

それでは本編どうぞ。


ある日、僕は一時期まで同級生だった神崎美月のステージにゲストで出てほしいと連絡があった。

卒業と同時に芸能界から姿を消していた神崎から連絡が着たことに驚きと困惑がありつつも、その申し出を受けることにした。

承諾の連絡をしてしばらくした後、神崎のマネージャーである月影さんから詳細な内容の連絡が来た。

内容を簡潔にまとめるならば、今回のイベントは神崎がアイドル活動を再開するとともに新たにユニットを組むということのお披露目なのだという。

その前座のステージに僕が選ばれたのだそうだ。

 

(……なんで僕なんだ?知名度的には僕よりももっと適役がいるんじゃないのか?)

 

考えてみても神崎の意図などわかるはずもなく、ただただ当日に向けてレッスンを重ねていくのだった。

 

△▼△

 

イベント当日となった。

今回のイベントは神崎の復帰ステージとなるためか、非常に多くの人が期待しているようだ。

物販の待機列に非常に多くの人が並んでいたことからも窺える。

 

(やはり神崎は人気があるんだな。でも、今回はユニットとして相方を連れて復帰という噂らしいけど……)

 

あの神崎美月がユニットのパートナーとして選ぶくらいだ。

よほどの実力を持ち合わせているのだろう。

 

(パートナーはいったい誰なんだろうなぁ……。いちごちゃん達じゃないみたいだし、全く知らないアイドルとかだったりするのだろうか)

 

いろいろと考えてみようと思ったが、リハーサルの時間になり一時中断することとなった。

 

△▼△

 

リハーサルは無事に終わって自分のステージもすでに終わったが、いまだに神崎のユニットの詳細がわからない。

恐らく月影さんが上手く情報管理をしているのだろうか。

リハーサルでも姿を見せなかったし、徹底してやっていたのだろう。

 

(しかたない、僕も一人の観客として楽しませてもらおうかな)

 

それから、関係者席の空いていた席に座って神崎達のステージを見ることにした。

 

「それではみなさん、お待ちかねの神崎美月さんのステージです!!!そして今回はなんと!ユニットとして新たなパートナーを連れてやってきました!それではお二方、お願いします!」

 

MCによる前口上も終わり、いよいよステージが始まろうとしている。

 

(さあ、いったいどんな人なんだろうか)

 

アイカツシステムが起動し、舞台の景色が変わった。

そしてそれに続けて、二人が現れた。

一方は言うまでもなく神崎だ。

もう一方は今まで見たことのないアイドルだ。

 

(でも、どこかで見たような……。)

 

だが、考える間もなく2人のステージが始まった。

 

(すごいな……。神崎についていっている。でもこんなアイドル知らないぞ……。まさか新人なのか……?)

 

僕は2人のステージに圧倒されていた。

特に、新人であろう神崎のパートナーにだ。

もしも霧矢がいたら、いつものあのセリフが聞こえてきそうだ。

 

「「ありがとー!!」」

 

気づけばあっという間にステージは終了していたようだ。

音楽は鳴りやみ、観客から歓声が聞こえる。

 

「今日はお披露目ステージに足を運んでくださり、ありがとうございます。それでは、ここにいる全員が気になっているわたしのパートナーとユニット名を発表します!」

 

その声に会場が再び歓声に見舞われる。

僕を含め、皆が期待している。

 

「それでは、まず私のパートナーから」

「はいは~い。私の名前は夏樹みくる。好きなブランドはViVid Kiss。みんな、これからよろしくー!」

 

(夏樹、みくる……?!まさか、みくるなのか?!)

 

真実を確かめるべく、急いで神崎の楽屋まで向かった。

小学校の頃の記憶を思い出しながら。

 

△▼△

 

神崎達の楽屋についたころ、二人も楽屋に戻ってきている最中だった。

向こうもこちらに気づいたらしく、みくるの方は僕に駆け寄ってきた。

 

「司~!!」

 

そして思いっきりハグされた。

 

「うぉっと。急に飛び込まないでよ。危ないだろ」

「でも、司なら受け止めてくれるでしょ」

「そりゃ、まあね。やっぱり僕の知ってるみくるだ」

「うん、そうだよ。久しぶり、司」

「ああ、久しぶり。小学校のころ以来だね」

 

みくるとは小学校卒業まで長い縁だ。

簡単に言ってしまえば幼なじみというものなのだろう。

 

「司、ステージお疲れ様」

「こちらこそ。お疲れ様、神崎」

 

遅れて神崎もこちらへやってきた。

 

「そうだ。神崎に訊かないといけないことがあったんだ」

「何かしら?」

「ゲストステージのことだよ。なんで僕だったんだ?」

「あぁ、そのことだったのね。実はみくるの要望だったのよ」

「そうでーす。わたしが司のステージを見たいって言いましたー」

「まあ、もともと誰かに依頼するつもりだったのと、私の知っている人物だ、っていう理由もあったんだけどね」

「なるほど。だいたいわかった」

 

それから少しの雑談をしてそろそろお暇しようとしたところ、みくるからお茶に誘われた。

なんでも、いいお茶が手に入ったとかなんとか。

神崎も僕もこの後の予定はなかったため、3人でみくるの家である『なつきグリーニングガーデン』に向かうこととなった。




分量はいつも通りでやっていこうと思います。

ちなみに、作者は最近アイカツとコラボしているバトルスピリッツというTCGを購入いたしまして、そちらで遊びたいという欲望と必死に戦って書きました。
なお、作者のリアルの知人には対戦相手がいないため、まともに遊べていません。
対戦したいよぉぉぉぉ。


あ、一番くじは一つも買えませんでしたよ(白目)


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関係

遅くなってごめんなさぁぁい!!
二週間ほど前に今更ながらPS4を買ってしまいまして、配達人やら狩人やらタイタンを操る兵士だったりをやってたせいで遅れてしまいました。
情状酌量の余地なしでございます。

それと、お気に入り20件に到達いたしました!
本当にありがとうございます!


ライブ後、みくるの家である『なつきグリーニングガーデン』へ向かった。

 

「ここに来るのも久しぶりだなぁ……」

「中学校にあがる前に引っ越しちゃったもんねー」

「そういえば二人は小学校のころまでお隣さんだったそうね」

「そうなんだよ。だから司がアイドルになったときは驚いたなー」

「僕も、まさかみくるがアイドルになるなんてね」

 

他愛ない話をしていると、気づけば目的地へと到着していた。

 

「懐かしいな。前とほとんど変わってないだろう」

「そうなの。お父さんもお母さんもこのままがちょうどいいって言ってたし」

「そういえば、私はみくるの家に来るのが初めてになるのよね?」

「あ、言われてみれば今まで美月を呼んだことなかったかも。てっきり一度来たことがあるものだと思ってた」

「そうだったんだ。僕も神崎はみくるの家に一度くらいは行ったことがあると思ってたよ」

「まあ、それはともかくとして。ここっていいところね」

「うん。一時期通っていた僕もそう思うよ」

 

僕は花について詳しくはないが、とても多くの種類の花があることがわかる。

そして、丁寧に手入れされているであろう庭園も見える。

 

「用意してくるから庭で待ってて~」

 

と、みくるがお茶の用意をしに行ってくれた。

その間、僕たちは庭のテーブルに行きがけに買ってきたお茶請けのお菓子を並べることにした。

 

「それにしても、神崎とみくるがユニットを組むなんてなー。決め手は一体何だったんだ?」

「そうね……。彼女に光るものが見えたっていう曖昧な理由かしらね」

「光るもの、ねぇ……」

「誰かさんが下地を作ってくれたおかげかしら」

「誰かって……。まさか僕かい?」

「それ以外に誰が考えられるのかしら?」

 

心当たりがあるにはある。

一応、小学生ながらアイドルのための練習は欠かさずにやっていたから。

でも、そこまでした覚えは―――ある。

 

「あー。確かに教えてました。いろいろと」

 

そこでお茶を持ってきたみくるが戻ってくる。

 

「お待たせ―。何話してたの?」

「みくるが司にいろいろとアイドルの基礎を教わってたって話よ」

「そして、それを僕が忘れちゃってた。って話」

「えー。ひっどーい、忘れるなんて」

 

口調は不機嫌ではあるものの、口元が緩んでいた。

それほど気にしてはいないようだ。

 

「でもそれはそれとして、あの時教わったこと、とっても感謝してるんだ」

「僕の練習にただ付き合わせてたようなものだったのに?」

「それでもだよ。おかげでこうやってアイドル活動ができてるんだし」

「そうそう。それにね、みくるはなかなか高いレベルにまで仕上がってるのよ」

「確かに。ステージもかなり完成度が高かった」

「だからね。ありがとう、司」

 

そう言ってみくるは頭を下げる。

だが、僕にも感謝しなければいけないことがある。

 

「いや、こちらこそ礼を言わないと」

「ん?どうして?」

「小学生のころ、練習に何度も付き合ってくれただろう?あの時のお礼をまだ言ってなかったから」

「じゃあ、お互いさまってことだね」

「ああ、そうだね」

 

△▼△

 

お茶もお菓子もそこそこに、みくるが少し不機嫌そうに唐突な質問をぶつけてきた。

 

「ねえ、美月と司ってどういう関係なの?」

「「うーん。同級生かな(かしら)」」

「それにしてはなんだか距離が近いような気がするんだけど」

 

そう言って僕たちをいぶかしげな眼で見つめてきた。

特に言うほどの関係でもないと思っている僕は、少なくとも僕はただの同級生だと思っている旨を伝えた。

だが、神崎は急に爆弾を投下してきた。

 

「でもそうねぇ、私は好きでもない男性を下の名前で呼んだりなんてしないわ」

「なっ……!」

「ええっ!?」

 

その場に戦慄が走った。

神崎だけが笑みを絶やさぬまま、僕のことを見つめている。

 

「ねぇ美月……。それって本気?」

 

加えて、みくるから神崎に対して怪しげなオーラが向けられているようだ。

笑っているようではあるが、なんだか目が笑っていない。

 

(ユニットメンバー同士のけんかですかー?!誰か助けて―!)

 

などと助けなぞが来るはずもなく膠着状態が続くかと思われたが、神崎が口を開くと状況は一変した。

 

「なーんてね。冗談よ冗談。みくると司の仲がいいからちょっと妬いちゃっただけ」

「なーんだ。心配して損しちゃった……

「ふふふ。下の名前で呼ぶのも、同学年の人気アイドル同士だったから、話をする機会が多くて自然とね。司は呼んでくれないけど」

「あははは……」

 

冗談だと知って安堵したからか、みくるが言っていたことがいまいちわからなかったが、どうだってかまわないと思ってしまった。

あの不穏な雰囲気は二度とごめんだ。

心臓に悪すぎる。

 

「みくるって、もしかして司のことが好き、なの?」

「えーっと、うん。私は司のことが好き。だから、今日司を呼んでって言ったんだよ」

 

そして当の二人は僕が上の空の間、ひそひそと何か会話しているようだ。

当然この二人の話し声が聞こえるわけもない。

そして、僕が正気に戻ったころにはお茶会はお開きとなるのであった。

 




モチベーションの維持が困難になってきてしまいました。
ただ、個人的にエタりたくはないので投稿が遅れる程度ではあります。
現金な奴だとは思いますが、感想や評価等をしてくれるとモチベーションが上がるので、どうかよろしくお願いします。


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責務

皆様、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

さて、本編についてですが今回は難産しました。
一応アニメの補完のような形で書いたせいなのか、少し読みづらいかもしれません。
それではどうぞ。



WMのお披露目とお茶会の後、僕はみくるのレッスンに付き合ったり家の手伝いをしたりと、かつての小学生のころのように会うようになった。

そして今日は僕がオフだったこともあり、みくるの家の手伝いをすることになった。

 

「みくる、これはここに置いておいていい?」

「うん。お願い。あ、ついでにこれもいい?」

「オッケー」

 

かつての小学生のころのようなやり取りに、未だ少しのなつかしさを覚えつつも心の中にとどめ、作業をこなしていく。

 

(しかし、前に比べてお客さんも増えたなあ。これもみくるがアイカツを始めたことがきっかけなのだろうか)

 

みくる曰く、常連のお客さんを伝手にみくるが店を手伝っているという情報が少し広まっているようで、近場のファンの間では話題となっているらしい。

もちろんそれだけではなく、お店の評判も良いためである。

 

「さて、もうひと踏ん張りだ」

 

△▼△

 

「お疲れ、司。はい麦茶」

「ああ、サンキュー」

 

もらって麦茶を飲みほしながら、みくるのソロステージが近いことを思い出した。

 

「そうだ、みくる。ソロステージの準備は大丈夫?」

「あぁ……えと。ダンスとか歌は司にレッスンで見てもらってるからなんとかなりそうなんだけど、まだドレスがね……」

 

そう言うと、みくるはちょっとだけ不安そうな表情になってしまった。

 

「あれっ?この前ViVid Kissのデザイナーさんと会ったんじゃなかったっけ?」

「そうなんだけど、実はちょっと面倒なことになっちゃって」

「まさか、断られちゃった?」

「断られたわけじゃないんだけど……その、ちょっとした課題を出されちゃって」

「課題か……。ちなみに、どんな?」

「ミラクルフラワーを金色に咲かせるっていう課題。今のところなんとかなるとは思うんだけど」

「ミラクルフラワーか。確か、あれって金色にするには毎日決まった時間に水をあげないといけない花だったっけ?」

「そうそう。それで、デザイナーのKAYOKOさんの新商品の発表の時に合わせて持ってきてくれないかって言われたから、もう育ててるんだ」

 

そう言って、みくるはミラクルフラワーの植えてある鉢を見せた。

 

「これがミラクルフラワーなのか」

「そうそう。わたしマジで頑張るからね!」

 

△▼△

 

それから一週間、みくるはアイドルとしての仕事とガーデニングショップの仕事、それにレッスンも加え忙しい日々を送りながらも、日々決められた時間に水をあげていた。

神崎との仕事のときも、間を縫って水をあげに家に戻っていたそうだ。

今日もレッスンの休憩の間に水をあげに一度戻っていた。

 

「ただいまー」

 

噂をすれば戻ってきたようだ。

 

「おかえり。ミラクルフラワーの様子はどう?」

「順調、順調。一度だけひやひやしたことはあるけどね」

「そりゃよかった。その一回って神崎との仕事の時だろう?」

「そうそう。なんでわかったの?」

「神崎の1日の仕事量ってけっこう多いから、時間をとるのに苦労しただろうなって。僕も一度苦労したし」

「あははは……」

 

神崎の仕事量ははっきり言ってかなり多い部類に入る。

圧倒的な人気を持っている以上、仕事が舞い込むのは必然ではあるのだろうが、それをほとんど蹴ることなく可能な限りの仕事を受け続けているのだ。

最近デビューし始めたみくるにとってはかなりの忙しさだろう。

それでも弱音を吐かないあたり、神崎が認めただけのことはある。

 

「まあそれはともかく、レッスン再開しようか」

「みくるのミラクル見せちゃおっかな!」

 

△▼△

 

~side みくる~

 

「はっ、はぁっ。急がないと金色に咲かせられなくなっちゃう」

 

仕事の時間が思っていたよりもかなり押してしまっていた。

それに加えて道路も渋滞、と遅れの二段コンボ。

 

(ついてないなぁ。でも急がないと。まだあきらめちゃだめだ!)

 

「間に合え!わたし!」

 

しかし、息を切らしながら店に駆け込むも時計の針は予定の時刻を過ぎた後。

 

「はあっ、はぁ、はぁ。間に合わなかった……」

 

そこで緊張が途切れてしまったのだろう。

涙とともに仕事の疲れが現れ、店のカウンターに伏して眠ってしまった。

 

△▼△

 

窓から朝陽が差し込み、店内が明るくなっていくと、みくるは自然と目を覚ました。

 

「いけない、寝ちゃってた……」

 

寝ぼけ眼をこすり、意識を覚醒させていく。

 

「あっ!ミラクルフラワーは?!」

 

ミラクルフラワーの鉢に目を向けると、そこには金色に輝くミラクルフラワーの姿があった。

 

「えっ、どうして……?」

 

みくるはあり得ない姿に驚き、素直に喜ぶことができず呆然としていた。

 

(昨日は決まった時間にお水をあげられなかったはずなのに……。)

 

「まさか……」

「そのまさかだよ、みくる」

 

背後から突然声が聞こえてきた。

振り向くと、そこには大切な思い人が立っていた。

 

「司……」

 

~side out~

 

「司……」

「おはよう、みくる」

 

寝起きで頭の整理ができていないのだろう。

でも、あまりぼーっとしている暇はないはずだ。

 

「とりあえず説明はあとから。顔を洗ったらミラクルフラワーを持ってすぐ出るぞ。KAYOKOさんに渡さないといけないんだろう」

「う、うん。わかった!」

 

みくるは跳ぶように洗面所に向かい、それからほんの間もなくして戻ってきた。

 

「お待たせ!」

「よし、じゃあ行こうか」

「あ、待って。今から出たら道路が混んで間に合わないかも」

 

せっかくの幼なじみの大舞台なんだ。

恥なんてかかせられないよ。

 

「大丈夫だよ。そう言うと思って、水上バイクを用意してる」

「マジで?!ありがとう、司!」

 

僕にできることはここまでだけど、やれることは全力でやってやろう。

さあ、最後の大仕事だ。

 

 




このお話を書いた後、なんだかんだ言って一から書いた方がむしろ楽なのではと思い始めた次第でございます。
前話を投稿した時にしれっと新たなアンケートを行っていたと思いますが、結果を見て意外にも香澄姉妹のお話が人気だということに驚きました。
ローラのお話も好きな方がいてくださってうれしい限りです。
アンケートの結果を踏まえまして、一度みくるちゃんのお話がひと段落ついた後、あおいちゃんのお話と香澄姉妹のお話を交互に投稿できたらな、と考えております。

最後に、これから4月あたりまで作者は多忙であると思われますので、更なる投稿ペースの遅延が起きると考えられます。
しかし、私はエタるつもりは全くございませんので気長にお待ちいただけると幸いです。
今年も1年間よろしくお願いします。。


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自覚そして告白

遅くなるとは言っておりましたが前回から1か月ほど空いてしまいました。
遅くなって申し訳ありません。
次回もこれくらい空いてしまうかもしれません。
ご容赦ください。

いちおう、今回でみくる編の完結となっております。
それでは本編をどうぞ。


みくるを水上バイクに乗せ、ViVid KissのデザイナーであるKAYOKOさんの所へ向かう。

話によれば、今日はブランドの新作のお披露目会だそうだ。

そしてその会場が海沿いにあるから、こうして水上バイクを使っている。

 

「ねぇ、司」

「なに?」

「どうして水上バイクなの?」

「こっちのほうが早いだろう?それでいて、僕が運転できるからね」

 

みくるの役に立つなら、ドラマの撮影のためにわざわざ免許を取った甲斐があるってもんだ。

 

「あっ、見えてきた」

「あれか……」

 

明らかにデザイナーズハウスとも呼ぶべき建物が見えてきた。

間違いなくそれがそうであろう。

 

「海沿いとは聞いていたけど、船着き用の桟橋まで用意していたとは……」

「さすがにびっくりしちゃうね」

「まあせっかく用意されているんだし、そこにつけるとするか」

 

桟橋へと水上バイクをつけ、みくるをおろす。

 

「じゃあ、行ってくるね!」

「うん、いってらっしゃい」

 

(みくるの努力がきちんと報われますように)

 

△▼△

 

それから、水上バイクを係留して、お披露目会の会場に入る許可を取ってから会場の中に入ることができた。

 

(けっこう手間取っちゃったな……。さて、みくるはどこだ)

 

と、探し始めると案外簡単に見つかった。

もうすでにKAYOKOさんと打ち解けたのか、お互い笑いながら会話をしていた。

 

「あ、司。こっちこっち~」

 

みくるもこちらに気づき、僕を呼んでいる。

みくるの方へ向かうと、なぜかKAYOKOさんが僕のことをじーっと見てうなずいている。

 

「あの、どうされました?」

「ん?あぁ、キミがみくるちゃんを連れてきてくれたっていう男の子なんだねぇ」

 

へぇ~、なんて言いながらさらに僕のことをしげしげと観察し、時にはうんうんとうなずいていた。

 

「なぁ、みくる。僕はいったい何をされているんだ?」

「さ、さぁ?」

 

KAYOKOさんは、一通り僕のことを観察したところでみくるに何か耳打ちをし、去って行った。

 

「……何だったんだろうな」

「う、うん」

 

心なしかみくるの顔が赤いような気もするが、気のせいだろう。

それはさておき、肝心なことを聞き忘れていた。

 

「あ、そうだ。ドレスの件、どうなった?」

「あぁ、ドレスね。ほら。じゃじゃーん」

 

みくるの手に握られているのは、ViVid Kissの新作プレミアムドレスのアイカツカード。

 

「おぉ……やったじゃん」

「うん。これも司のおかげだよ。ありがとう!」

 

心なしか、いつもよりもみくるの笑顔が輝いて見えた。

 

△▼△

 

プレミアムドレスを手に入れてから、みくるはさらにレッスンに力を入れるようになった。

完成度もさらに上がったという。

あやふやな言い方をしているけども、僕自身が見て思った感想じゃないから仕方がない。

僕の予定がつかないこともあったり、なぜかみくるから『本番まで楽しみにしててね!』なんて言われてレッスンに参加できなかったし。

そして、今日がその本番だ。

心なしか自分まで緊張してしまう。

 

証明が消え、アイカツシステムが作動する。

ステージの始まりだ!

 

みくるがステージに現れ、音楽が流れ始める。

ポップなアップテンポの曲が流れてくるかと思えば、ムーディーな曲が流れ始め驚きを隠せなかった。

ちなみに言っておくが、僕もこの曲を聞いたのは今日が初めてだ。

 

「街のイルミキラリキラリ――」

 

WMの時のステージとは全く異なるみくるの姿がここにはある。

ステージに中てられたのか、胸の高鳴りが止まらない。

そしてステージが始まってからずっと、みくるから目が離せないでいる。

 

「もっとあたしを見て――」

 

……そうか。

みくるの大人びた色気に惹かれたのか。

普段はあんなに活発で、子供のころと何ら変わらなかったのに。

……もう子供の頃とは違う。

幼なじみのみくるではなく、一人の女性の夏樹みくるとして見ているのだ。

 

ふいにステージ上のみくると目が合い、僕に向けて投げキッスのしぐさをした。

違和感なくやっていたことから、おそらくもともとから振り付けとして入っていたのだろう。

だけど、今の僕にそんなことは関係なかった。

僕はもう、みくるのことが好きになってしまっていたのだ。

 

△▼△

 

今となって思えば、どうしてこんなにもみくるのことを気遣っていたのだろうか。

幼なじみだから?

それもあるだろう。

でも、幼なじみだからといってここまでするだろうか。

思えば、水上バイクで送るなんて変な話だ。

わざわざ調べてミラクルフラワーに水をあげたりしたのもそうだ。

でも、もう結論は出た。

僕はみくるのことが好きだったというだけの話だ。

 

ただ、自分が思いを意識したら相手の気持ちが知りたくなるのは世の常。

当然ながら今までのみくるの振る舞いが気になって仕方がない。

自惚れてもいいのだろうか。

 

△▼△

 

「みくる、お疲れ様。いいステージだったよ」

「司!見に来てくれてたんだ」

「そりゃあ幼なじみの晴れ舞台だしね。僕のレッスンの成果も気になるし」

 

控室には僕とみくるの二人だけ。

好きな人に思いを告げることが、こんなに緊張するものだとは思わなかった。

 

「ふふっ。ありがと」

 

それから、しばらくの静寂の後。

 

「「ねえ、みくる(司)」」

 

同時に話を切り出した。

 

「あはは、奇遇だね……」

 

みくるが笑い、それにつられそうになるのを必死で抑える。

 

「みくる」

「何、かな」

 

僕の真面目なトーンにみくるも笑うのをやめ、僕を見る。

緊張で少しくらくらするが言わなくちゃならない。

 

「僕は、みくるのことが好き……なんだ」

 

言った。

つい顔をそらしてしまったが。

そしておそるおそるみくるの顔を見ながら言う。

 

「だから、みくるが僕のことをどう思っているのか、教えてくれないかな」

 

みくるをじっと見つめ、返事を待つ。

 

「……ずるい。ずるいよ、司。私だって司のことが好きに決まってんじゃん!」

 

そう言い切り、喜びでぐしゃぐしゃになった顔を隠すように僕に抱き着いてきた。

咄嗟のことに驚きはしたものの、腕を広げてみくるを受け止めた。

 

「ごめん、みくる。今まで気づかなくて」

「けっこうあからさまにしてたつもりだったんだけどなー」

「それは本当に悪かった」

 

自分の気持ちに気づけなかったんじゃ、他人の気持ちに気づけるわけないよな。

それに、身近すぎたのもあるのかな。

まあ、とりあえず今は考えるのはやめだ。

 

「みくる。これからもよろしくな」

「うん!」

 




正直なところ、エピローグを書くかどうかすごく迷いました。
もし書く余裕があれば書こうとは思いますが、あまり期待しないで下さい。

それと、少し前から活動報告に書いているのですが。誕生日企画で書いてほしいアイドルのアンケートをしています。
このアイドルのお話が読みたいなぁ、とか思ったらコメントしてください。
書けたら書きます(逃げ)。
ちなみに、作者が好きなアイドルの場合は必死になって書くと思います。


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”特別篇” みくるの誕生日①

九州地方では大雨が続いていますが、皆さま大丈夫でしょうか。
このお話で少しでもリラックスできると幸いです。

さて、今回はみくるちゃんのお誕生日回です。
対策しておこうとか考えておきながら、当日に気づくという有様ですよ。
ホントに書き貯め癖をつけないといけないなぁ。

それでは本編をどうぞ。


今日はみくるのお店の手伝いだ。

 

「これはどこに置けばいい?」

「えーっと、それは裏の倉庫に置いて」

 

再会して久しぶりにお店を手伝っているけど、意外と覚えていないもんだなぁ。

その分重いものは持てるようになったけど。

だから今日はもっぱら力仕事がメインだ。

 

ガチャと扉が開きお客さんがやってくる。

 

「「いらっしゃいませ」」

「あら、どうも」

 

みくるがお客さんの応対に向かう。

その間に僕は裏に荷物を持っていく。

 

倉庫に向かう途中、カレンダーがちらりと見えた。

7月7日に印がつけられている。

みくるの誕生日だ。

せっかく恋人同士になったんだし、何か気の利いたことの一つくらいしたいものだけど。

 

「思いつかないなら、直接聞くしかないかな」

 

△▼△

 

仕事もお客さんもひと段落し、小休憩を取っていた。

 

「なあ、みくる。誕生日は何がいい?」

「そういえばもうすぐだったね。なんでもいいよ」

「なんでもいいって……。それは逆に困っちゃうんだけど」

「だって、司と一緒にいられるだけでも十分うれしいし」

「っ!」

 

そんなことを言われるなんて思ってもみなかった。

でも、それはそれ、これはこれだ。

何とか聞き出さなくては。

 

「それでね、今日お客さんに夫婦みたいって言われたことがすっごくうれしかったの」

「夫婦ねぇ。いつかそうなれるといいな」

「私はそうなってくれないと困るの」

「それもそうだな」

 

みくるのいうことも全くだ。

でも、夫婦か。

……いいこと思いついた。

 

△▼△

 

みくるの誕生日当日。

早朝からみくるの家へむかった。

 

みくるには今日朝から行くことは伝えていない。

もちろんお義父さんとお義母さんには伝えている。

その時にあたたかい目で見られたのはご愛敬。

お義父さんに至っては『みくるをよろしく頼む』とまで言われた。

まあ、将来的にはそう考えているからきちんと返事を返した。

 

みくるの家へとついた。

みくるのご両親は僕に気を遣ってくれたらしく、夜中から車で小旅行に出かけたらしい。

事前にご両親から預かっていた鍵で玄関を開ける。

部屋はまだかすかに朝陽がさす程度。

みくるが起きてくるまで、まだ時間はある。

 

まずは朝食の準備から。

食パンをトースターにセットし、フライパンではベーコンエッグを作る。

どちらもできかけた頃、においにつられたのか寝ぼけ眼でみくるがやってきた。

 

「ぉはよぉ~」

「おはよう」

 

僕の声に気づいたのか、表情が驚きに変わっていた。

そしてキョロキョロと周りを見渡し、僕と目が合った。

 

「え?!なんで司が?」

「誕生日のサプライズってやつ。ほら、朝食ができたぞ」

 

僕は朝食が乗ったお皿をテーブルへと並べていく。

 

「いや、何で?何で家で朝ごはん作ってるのよ」

 

未だに困惑しているみくる。

 

「みくるがこの前夫婦みたいって言われて喜んでたから、今日は一日みくるの夫として頑張ろうかなって」

「ええええっ!?!?!?!」

 

今日は楽しい一日になりそうだ。

 

△▼△

 

朝食を終え、開店の準備をする。

僕は簡単な掃除や片付けをする。

その間、みくるには身支度をしてもらっている。

 

「お待たせ。それじゃあパパッと片づけて開店しよう」

「ああ」

 

それから間もなくして店を開け、お昼休憩をお互いずらして取りながら、夕方まで店を開けた。

その最中、また『まるで夫婦ね』といったことを言われ、僕が『いずれはそうなろうと思っています』と答えると、みくるは少し照れながらも喜んでいるようだった。

 

「今日はこれで終わりかな」

「そうだねー。あ、晩ごはんはどうするつもりなの?」

「今度も僕が作ろうか?」

「ありがとう。でも、一緒に作らない?」

「そりゃあいいね」

 

二人でキッチンに向かい、晩御飯を作る。

お互い黙々と手元の作業に集中していて、あまり声は出さなかったが、それでも楽しかった。

そして、幸せだった。

心地よくてつい、いずれは二人の間に子供が、なんて考えだしてしまい、まだ僕らには早いと考えを頭から追いやった。

 

△▼△

 

夕食を終え、ソファに座って一息つく。

 

「今日は楽しかった?」

「うん。いい誕生日プレゼントだったよ」

 

自然と手をつなぐ。

 

「そういえば七夕だったね」

「そうだね」

 

僕の言葉にみくるが答える。

 

「まだ誕生日は終わってないし、天の川でも見に行こうか」

「うん」

 

僕が先に立ち上がり、みくるの手を引く。

 

「行きましょう、お姫様」

「うん」

 

バイクに乗って目的の場所に向かう。

夜の風は少しひんやりしていたけど、後ろにいるみくるの暖かさを感じられて心地いいくらいだった。

ちいさな峠道を越え、竹林ある展望台にやってきた。

 

「到着。寒くなかった?」

「ううん。司が暖かかったから」

 

バイクを降り、また手をつないで星の見えるところまで歩く。

 

「そういえば、前もこんなことしてたっけ」

「その時は僕が自転車に乗せてたな」

「途中でこけそうになったの未だに覚えてるよ」

「恥ずかしいから忘れてくれよ……」

「やーだ。これもいい思い出だもん」

 

思い出話をしていると、すぐに目的の場所に着いた。

 

「ここからがよく見えるんだ」

 

僕が見上げ、つられてみくるも空を見上げる。

 

「わぁ……」

 

見上げると、一面の星空が広がっていた。

月もなく、きれいな星空だった。

 

「ねえ、あれが天の川だよね」

 

そう指さす先には、宝石をまぶしたように煌めく天の川が広がっていた。

 

「司」

「なに?」

「連れてきてくれてありがとう」

「どういたしまして」

 

僕は、こっそりと持ってきていた短冊をみくるに渡した。

 

「これ、持ってきてたの?」

「まあね。ペンもあるよ」

「フフッ。準備がよろしいこと」

 

二人で短冊に願いを書く。

 

「何を書くの?」

「これからもみくると一緒にやっていけますようにって。みくるは?」

「私も司と同じ」

「ハハッ。なんだそれ」

「司だって人のこと言えないじゃん」

「確かに」

 

雑談を交わしながらも、お互い真面目に願いを書く。

 

「それで、どこにこれを掛けるの?」

「そこの竹林にね」

「いいのかな」

「大丈夫だよ」

 

そして、同じところに短冊を吊るす。

 

「さ、帰りましょうか」

「うんっ!」

 

 

バイクが風を切りながら峠を下っていく。

将来を約束している二人。

この峠のようにまっすぐにはいかないだろう。

でも、この2人ならそれさえ乗り越えていけるだろう。

 

風が吹く。

ふたつ並んだ短冊が優しく揺れている。




いかがだったでしょうか。
誕生日が七夕ということなので無理やりねじ込んだ感じではありますが、個人的には気に入っております。
ちなみに、司くんがバイクに乗っておりますが、これは125cc以下の原付二種というくくりのものです。
これは16歳以上であれば免許が取得できます。
原付二種であれば二人乗りが可能ですし、なんの問題もありません。
ですので、司くんは法律違反などしていませんのでご安心を。

さて、七夕といいますと皆さんは何か願いがありますでしょうか?
私はあります。
新型コロナウイルスの終息です。
いや、だってそのせいでいろんなイベントが無くなっちゃったじゃん!(独善的)
もちろん、お亡くなりになってしまった方たちのことも考えてはいますよ。
でも、個人的に欲望が沸々とわいてきてしまって仕方ないんです。

暗い話は置いといて(お前がしたんだろ)、私もバトスピのアイカツコラボのパックを購入しました。
XXレアのいちごちゃんは当たりませんでしたが、そらちゃんとマリアちゃんのシークレットが当たりました。
もちろんうれしかったのですが、欲を言うとゆめちゃんと真昼ちゃんのシークレットが欲しかったです。

次こそはゆめちゃんのお話を書かないと。
あ、設定も忘れないようにしなきゃ。


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”特別篇” みくるの誕生日②

突貫で書きました。
現場からは以上です!


今日はみくるの誕生日。

誕生日プレゼントを用意しようと思ったがなかなか決められず、結局当日まで用意できなかった。

だって何を渡しても喜んでくれそうだし……。

 

「なあ、みくる」

「なに?司」

「誕生日プレゼントは何がいい?」

「うーん、司がいるならなんでもいいかな」

 

そして今、みくるの家でゴロゴロしながら聞き出そうとしている。

 

「そう言われてもなー。結局普段と変わらないし」

「でも、この天気でどこに行くっていうのさ」

「確かに」

 

窓から外を眺めると、暗い雲に覆われた空が見え、雨が降っている。

 

「来たときはあんなに晴れてたのになぁ」

「でも、今日の夜には止むみたいだよ」

「それならいいんだけど」

 

しかし、何をしようか。

せっかく二人でいるんだし、何かやれることはないかと考えを巡らせていると、みくるは仰向けになっていた僕のおなかを枕にしてきた。

 

「たまにはこういった感じでだらだらするのもいいんじゃない?」

「お店の方もお休みだしね」

 

と、だらだらすることを決め込んだが、僕のおなかが空腹に耐えられなくなったみたいで、ぐ~っと主張を始めてきた。

 

「あはは、司がおなかすいちゃったみたいだし、少し早いけどお昼ごはんにしよっか」

「賛成」

 

とはいったものの、せっかくだらだらすると決めたこともあり、比較的楽に済むそうめんを食べることにした。

作るのはもちろん二人で。

 

「こういう時のためのそうめんだな」

「だね。時期的にも少し暑くなってくるからおいしく食べられるし」

 

しばらく二人のそうめんをすする音だけが聞こえる。

途中、みくるが「こういう夫婦もありだね」と言い出したのを聞いて少しむせてしまった。

でも、こんな平和な家庭が築けたらいいなと思うのも事実だ。

 

食べ終わった食器は当たり前のように二人で片づける。

傍からみたら、もう夫婦だろ、なんて言われそうだが、今の恋人という関係もいいものだと思う。

 

「ねえ司、しりとりしようよ」

「へえ、しりとりか。いいね。その勝負受けて立つ」

「よし、それじゃあありきたりだけど、リンゴから」

「ら……らっこ」

「こ、コアラ」

 

△▼△

 

「ん……」

 

僕は眠っていたみたいだ。

しりとりの最中に眠るとは思ってもいなかった。

 

「あれ?」

 

一緒にいたはずのみくるの姿が見えない。

あたりを見回すと、台所にいるみくると目があった。

 

「お。司、おはよう」

「おはよう、って言っていいのかわからないけど、おはよう」

 

起き上がってみくるの方へ行くと、もうあらかた完成していた。

 

「起こしてくれてよかったのに」

「いいのいいの。だって、最近忙しかったでしょ?」

「まあ、そりゃあそうだけどさ。せっかくの誕生日なのに」

「もう。それ以上気にするなら司には帰ってもらうよ」

「え!?それはつらいよ」

 

冗談だとわかっていても、そう言われるのはつらい。

僕だってみくるのことが好きなんだから。

だから、素直にみくるに従うことにした。

 

「うむ。わかればよろしい」

 

それから、夕飯を食べて日も暮れたころ。

 

「司、今日泊まっていかない?」

「明日、は午後からだし、いいよ」

「やった」

 

誕生日にみくるがわがままを言ったんだ。

叶えてあげないわけにはいかないさ。

 

特に代わり映えのない日常の一つではあるけども、ほんの少し特別な日。

それぐらいがちょうどいいのかもしれない。




とりあえずお祝いの気持ちを当日中に形にしたかっただけ。
内容がないのはいつものことではありますが、ご容赦ください。
本編も一応書き進めていますので、それに関してはご安心を。

それではまたなるべく早いうちに。


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あおい√
二人の編入生


長らくお待たせしました。
ようやくあおいちゃんのお話です。
アンケートからもう1年ぐらい経ったような気がしますね(遠い目)。
それでもって、また連載が再開になります。
今度もエタらずに頑張っていきます。

こんどのお話は、お待たせした分そこそこのボリュームにできればなぁ、と考えております。
それでは本編をどうぞ。


ある時、僕が散歩をしていると半ば腐れ縁と化してきた蘭を見つけた。

どうせ一人でほっつきまわっているんだろうから、揶揄ってやろうと思って近づくと、驚くことに、いつも一人で孤高な蘭が二人の女の子を連れていた。

 

「ん?司じゃないか。どうしたんだ、鳩が豆鉄砲を食らったような顔して」

「いや、お前が人を連れてるなんて珍しいなって」

 

話し始めた僕らを、蘭の連れている二人が興味深げに見る。

頭に大きなリボンを付けた方は、僕のことを『この人誰なんだろう』という感じで見つめてくる。

名前は星宮いちごだ、って蘭が言ってた。

一方、髪をシュシュでサイドにまとめた女の子の方は、目を輝かせてこちらを見ている。

まるで、子供のような無邪気な目だった。

こっちは霧矢あおいだと聞いた。

 

「まさか、あの美しき刃と呼ばれる紫吹蘭と国民的ヒーローの飯島司が知り合いだったなんて!しかも下の名前で呼び合うほどの関係だなんて。これは穏やかじゃない!」

 

誤解されているような言葉だ。

流石に訂正しないと。

 

「えっと、霧矢さん。僕と蘭はただの友達だ。下の名前で呼んでるのは、入学してからの付き合いだから自然と、っていう感じなんだ」

 

素直に訂正すると、霧矢さんはなぜだか面白くなさそうにこっちを見てきた。

 

「これはスクープだと思ったのに……」

「スクープって、どうするつもりだったんだよ」

 

蘭が呆れたように言う。

蘭の言い方からすると冗談のようなものだったのだろう。

それにしても、蘭にこんな友達ができていたなんてなぁ……。

親心が少しわかるような――。

 

スパーン!!

 

――痛い。

 

「いきなり人をしばくなんてひどいじゃないか」

「お前が余計なことを考えているからだろう」

「ひどい……」

 

僕は蘭に友達ができたことを喜んでるだけなのに……。

まあ、いつまでもこんな風にしているのも蘭の友達の二人に申し訳ないな。

とにかく自己紹介しないと。

 

「霧矢さんはたぶん僕のことを知っているんだろうけど、改めて自己紹介させてもらうよ。僕の名前は飯島司。ここスターライト学園の男子部に所属しています。学年は蘭と同じ1年です。二人も同じなのかな?」

「二人は最近編入してきたんだ。だから司も顔を知らないんだろう」

 

蘭は、二人は入学オーディションがあったんだけどな、と嫌味のように付け加えた。

知らなくてすいませんでしたね。

 

「私は星宮いちごです。蘭ちゃんと同じクラスで友達です」

「ちゃんをつけるな!」

 

ちゃんをつけるとダメなのか。

今度揶揄ってやろう。

 

「私は霧矢あおいです。蘭とは同じクラスで友達です。ちなみに、いちごとは小学校からの付き合いなんです」

「なるほど、どうりで3人ともとても仲がいいわけだ」

 

たぶん、蘭は二人に懐かれたっていう感じなんだろうなぁ。

 

「で、3人は何をしていたんだ?」

「していた、っていうよりはこれから行こうとしていたところだな」

「そうそう。これからちょっといちごの家に行こうって言ってたの」

「せっかくだから司くんもおいでよ!」

 

といった星宮の一言により、僕も星宮邸へ伺うことになった。

それに対して蘭は、司ならいいだろう、と一言。

霧矢さんは、僕からいろいろと話を聞きたいらしく、目を輝かせて歓迎していた。

 

星宮邸へ向かう道中、霧矢さん(本人はあおいでいいと言っていた)から、いろいろと質問を受けた。

なんでも、彼女はアイドル博士と呼ばれるほどアイドルについて詳しく、それでいて知識に貪欲だから、本人を目の前にするとにいろいろと聞きたいことが思いつくそうだ。

 

そんなこともあり、道中はとても賑やかだった。

時折、蘭についての質問が僕にぶつけられ、余計なことを言うな、とシバかれることもあった。

 

ただ、質問は道中だけに終わらず、家についてからも、ちょうど居合わせた星宮の弟のらいちくんと合わせて、とてつもない数の質問をぶつけられて驚いたのは別の話だ。

 

△▼△

 

以前は蘭と僕の二人で話をしていたけど、この時を機会にあおいちゃんといちごちゃんが加わって4人で会って話すことが多くなった。

というのも、蘭が大抵あおいちゃんといちごちゃんと一緒に行動することが多かったからでもあるんだけど。

 

「ねえねえ、司」

「なんだよ、大樹」

 

お昼休みに教室で日向ぼっこをしていると、すこしニヤニヤした大樹がやってきた。

 

「最近、司が女の子を侍らせているって聞いたんだけど、本当?」

「そんなわけないだろう。ただの友達だよ。だいたい、どう見たらそういう風にみえるのかなぁ」

 

聞いてみれば、いつものごとく噂話の真偽を確かめに来ただけだった。

ただ、大樹はなんだか不満そうな表情だった。

 

「おもしろくないなぁ」

「おもしろくなくてすいませんねぇ」

 

大樹は不満そうな顔のまま、背を向けて立ち去ろうとするが、その時何かを思いだしたように再びこちらに向き直る。

 

「そういえばさあ、なぜか司は女子部のクリスマスイベントに参加してたんだってね」

「誘われたから参加してたんだよ」

 

大樹は再びニヤニヤとした表情で、詰め寄ってくる。

 

「へぇ、いったい誰に誘われたのかな?」

「しつこいなぁ。別に誰だっていいだろうに」

「よくないから聞いてるんだよ。で、誰なんだい?」

 

あしらってもこのまま下がる気はないみたいだ。

こうなった大樹は梃子でも動かないからなぁ。

 

はぁ、仕方ないか。

変な噂にならないように釘だけは刺しておこう。

誘ってくれたあおいちゃんに迷惑はかけたくないし。

 

「蘭と同じクラスのあおいちゃんだよ。言っておくけど、変な尾ひれはつけるんじゃないぞ」

「わかってるって。にしても、最近知り合ったばかりらしいのにもう下の名前で呼んでるのか」

「向こうがそう呼んでくれって」

「へえ、へぇ」

 

僕の答えに満足したのか、大樹はスッと自分の席へ戻っていった。

嵐が去ったことに安堵を覚えつつ、クリスマスパーティーのことを思い出し、少し笑みがこぼれた。

 

まさか、大木を切って滑り降りるなんてなぁ。

なぜか、『男手が必要なんだ』という感じでいちごちゃんから手助けを乞われたのには驚いたけど、あれほど大きな木を切るなんてなぁ。

蘭と一緒に呆れてしまったっけ。

学校に戻ってから、用務員の涼川さんは僕を憐みの目で見てくるし。

もちろんねぎらってはくれたんだが。

 

大樹はこんな話をしても真に受けなかっただろうな、とひとりごちった。




いかがだったでしょうか。
司くんの設定にも書いてある通り、蘭がいると司がボケに回ります。
私はこういうのが好きで、蘭ちゃんと司くんの絡みが書きたいのかもなー、と思った次第です。(チャンヲツケルナー!

ひとまず、多忙な時期がいったん過ぎましたので、去年のようになるべく多く投稿できるように頑張っていきます。


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演技という接点

前回、あれだけ言っておきながらこのざまです。
遅れて申し訳ありません。
先週はミラボレアスに焼きつくされてしまいました。
次は来週に、とか言おうと思いましたけど、歴戦王イヴェルカーナとか(長いので以下略)

とまあ、投稿スケジュールが乱れております。
許してくださると幸いです。
他にも言いたいことはありますが、それはあとがきで。



年が明け、少しした頃。

僕は学校の体育館を借り、今の大きな仕事である特撮ドラマの撮影の練習をしていた。

 

「ここをこうして、こう」

 

作品の監督が主演の人たちにもアクションを求めている人で、今はそのなかの殺陣を一通り頭に入れていた。

 

「ふぅ……。よし、とりあえずはこんな感じだな。あとは現場で相手の役者さんとすり合わせかな」

 

そしてちょうど休憩に入ろうとした時、体育館の戸が開いて誰かが入ってきた。

 

「お邪魔しまーす。おおっ!司くんのレッスン風景を見られるとは!」

「残念ながら、今は休憩だよ」

「不覚ッ!」

 

入ってきて早々目を輝かせたあおいちゃんだったが、僕の返事にがっくりとうなだれる。

本当にわかりやすい子だなぁ。

 

「それで、何か用でもあるのかな?」

 

僕の言葉に、あおいちゃんはハッとして居住まいを正した。

 

「実は、お芝居の相談に来たんです」

「え、僕に?」

「はい」

 

先ほどとは打って変わって真剣な表情で答えるあおいちゃん。

おふざけじゃあないみたいだけど。

 

「えっと、どうして僕のところに?」

「身近な人で、演技について一番詳しいのは司くんかなって思ったの。だって、今絶賛活躍中でしょ?」

「それはそうなんだけど、まだまだデビューして1年経ってないんだよ?演技も現場で叩き上げたようなものだし」

 

実際、入学して間もなくのオーディションでは、監督の意向から演技よりも身のこなしが求められたから合格できたわけで、演技は本当に現場での叩き上げなのだ。

共演する先輩方にいろいろと教えてもらったものもあるけども。

それを聞いてもなお、あおいちゃんは食い下がらなかった。

 

「それでも、やっぱり司くんがいいの。お願い、何でもするから!」

 

ものすごい熱意だ。

いったい何がそこまでさせているんだろう。

 

「あー、わかった。とりあえず話は聞こう。話はそれからだ」

「本当?!」

「うん。でも、女の子が『何でもする』っていうのは感心しないよ」

 

熱意を伝えるには十分だけど、あおいちゃんだって可愛い女の子なんだ。

その辺りは気を付けておくに越したことはないし。

 

「はい!これから気を付けます、先生!」

「先生って……」

 

大袈裟だと思ったけど、あおいちゃんが楽しそうに言うものだから否定するのはやめた。

まずは理由を聞かないと始まらない。

 

「とりあえず、どうして演技の指導が必要なのか教えてほしい」

「気になるドラマのオーディションがあるから、だね」

「なるほど。ちなみに、そのドラマってどんなものなんだ?」

 

あおいはこれですと言ってアイカツフォンの画面を見せてくる。

その画面には、イケナイ刑事3と書かれていた。

 

「これって、二人の刑事が派手なアクションで犯人を追い詰めて捕まえるっていうやつだよね?」

「うん。その認識で間違いないよ」

 

アクションか……。

つまりはそういうことか。

 

「だいたいわかったよ。つまりはアクションも込みで教えて欲しかった、ってことなんだね」

「そういうこと!だから司くんが適任だと思ったの」

 

蘭も太鼓判を押してたし、と続けて言った。

ここまで言われて受けないなんて言えないなぁ。

まあ、あの熱意と本気さを見て、指導をするつもりにもなったんだけどね。

 

「本当に叩き上げになるけど構わないよね?」

「うん、もちろん!」

 

そして、これからオーディションに向けて演技やアクションの基礎を教えることになった。

 

△▼△

 

演技のレッスンは翌日から始めた。

あおいちゃんは決めた日から早速レッスンしたいと言っていたけど、残念ながら僕は予定があって断らざるをえなかった。

だから、その分当日は気合が入っていた。

 

演技に関しての基本的なメニューには、僕のお古の台本を使うことにした。

実際に叩き上げと言った通り、最初から本番に近い形で演技をさせた。

途中から、感情の表し方だったり、台本を覚えるコツだったりと、小さなアドバイスを加えていった。

 

アクションは、とにかく怪我をしないことを重点に置いて練習をした。

着地の時の受け身の取り方だったり、一見派手に見えつつも相手にけがをさせない取り押さえ方だったりと、これもいろいろとアドバイスをした。

 

一週間もすれば、ある程度形になった。

もともと理解が早くて、運動も得意だったということもあり、コツをつかむとそこからぐんぐん成長していった。

流石にここまで飲み込みが早いとは思わなかったけど。

あれ、僕って必要だった……?

 

「よし、今日はここまでにしようか。あおいちゃんもだいぶお芝居が板についてきたみたいだし」

「私なんて司くんに比べたらまだまだだよ」

「そんなことはないと思うよ。あくまでも僕は今までの経験がある分、何とか教えることができているだけだから」

 

実際、あおいちゃんは場数こそ踏めば、僕よりもすごい存在になってしまうんじゃないかと思っているし。

そう称えた僕に対して、あおいちゃんはそんなことないとでも言うように言った。

 

「でも、司くんのレッスンのおかげでここまでこれたんだ。それはちょっと誇っていいと思うけど?」

「そう言ってくれると僕も鼻が高いや」

 

そう言ってくれるだけでも、僕は手伝った甲斐があったなぁと心に思いながら、翌日のメニューを相談して、解散となった。




いかがでしたでしょうか。
ある程度皆さんは原作をご覧になっているかと思いますが、二人は演技、特にドラマという同じ舞台が共通点ですので、そこを中心に絡めていきたいと思います。

さて、先日アイカツが8周年を迎えました。
これからも素晴らしいコンテンツとして残って行ってほしいと思います。
実は私はアイカツにはまったのが2年前と、比較的最近のフレンズの放送真っただ中の時期でした。
当初は友人から勧められ、女児アニメか...なんて思っていましたが、気がつけばdアニメの1か月無料期間のうちにスターズにまで突入していました。
125話のエンディングには泣きそうになりましたね。
あれはずるいですよ...。
皆さんはいつ頃アイカツを知ったのでしょうか。
放送当時からリアルタイムで見ていた方もいれば、最近知ったという方もいるかもしれませんね。
もし、この小説をきっかけにアイカツを見てみたんだ、という方がいてくださると、私としてはとても嬉しいです。
これからもよいアイカツライフを!

毎度のことですが、感想をいただけると励みになります。
書くペースに影響があるかどうかはわかりませんが、モチベーションは上がります。
次もなるべく早く頑張ります。


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唐突な出演依頼

お待たせしました。
前回と同じくらい時間が空いてしまいましたが、それよりも大切なことがあります。
なんと、ついにUAが10000を越えました!
皆さんのおかげです。ありがとうございます。
一応企んでいることはあるのですが、それはあとがきで。

それでは本編をどうぞ。


結果としては、あおいちゃんのオーディションは合格だった。

しかも、監督や主役の人たちからの評価も高かった。

一緒にレッスンしたからだろうけど、このことが自分のことのようにうれしかった。

それに、あおいちゃんは神谷しおんちゃんという新たな演技仲間を得たようだ。

いいライバルであり、友達でもある関係っていうのはいいものだと思う。

僕と大樹の関係もそんな感じだし。

 

それから少し経ち、僕は女子部が主となって制作している『オシャレ怪盗スワロウテイル』にゲスト出演の依頼が来た。

それも同じくゲスト出演のあおいちゃんから。

 

「どう?一緒に出てくれない?」

「うーん、スケジュール次第だなぁ。撮影日はいつになるの?」

「えーっと、司くんに出て欲しいところの撮影はこのあたりだったよ」

 

そう言って、あおいちゃんは自身のスケジュール張を開いて予定日を指す。

僕もスケジュール張を開いて、その日がフリーであることを確認した。

 

「ちょうど空いてるよ。それで、僕はどんな役でオファーされたんだ?」

 

すると、あおいちゃんは胸を張って答えた。

 

「私の直属の部下役だよ」

「直属の部下?」

 

はて、もともとそんな存在はあのドラマにあっただろうか。

 

「そんなのあったっけ?」

「今回のドラマだけだよ」

「えっ、そんなこと許されるの?」

 

そして再びあおいちゃんは胸を張って答えた。

 

「なんと、私が監督さんたちにお願いしたのです!」

「えぇ~!?」

 

まさかの発言に僕は驚きを隠すことができず、声を上げた。

 

「よくそんなことが許されたもんだ……。それで、なんで僕を呼びたいのか聞かれた?」

「もちろん。私もさすがに理由もなしに司くんを呼ぼうなんて思わないよ」

「へぇ。それで、何でなんだ?」

 

それに、あおいちゃんは待ってましたとばかりに喋り出した。

 

「私がイケナイ刑事3に出られたのは司くんのおかげだから、そのお礼って感じかな。撮影の時に私がアクションしているところもしっかりと見てもらいたいし。あと、一度くらい司くんと共演してみたいと思ったし」

「そ、それでOKが出たの?!」

 

まさかの理由と、それで許可が下りたことに驚きを隠せない。

本当に言ったの?

 

「そうだよ。でも、ちょっと恥ずかしくて最後のは言ってないけど」

 

一瞬、少し照れたような表情になりながら話すあおいちゃん。

頬を桃色に染めて、目を逸らしていた。

そのちょっとした隙に見せた表情が可愛くて、少しドキッとした。

それに、言ってくれたこともうれしかった。

 

「そっか……。ちょっと嬉しいや。あおいちゃんにそんなこと言ってもらえて」

「だって、司くんは私のお師匠様みたいなものだからちょっと特別なの」

「師匠だなんて……。そんな大層なものでもないと思うけど」

 

その後、あおいちゃんの後押しで僕は撮影に参加することを監督さんへ連絡し、真面目な話に移るのだった。

 

△▼△

 

時は過ぎて撮影当日。

スタジオにつくとあおいちゃんと監督が僕を待っていた。

 

「君が司くんだね?」

「はい。今日はよろしくお願いします」

 

僕は監督に連れられ、控室で改めて自分の役の説明と作品の説明を受けた。

でも、何でわざわざ監督が直々に来たんだろう。

そんな思いが頭をよぎったが、口に出すのも不躾だと思ってやめた。

役柄や作品についてはあらかじめあおいちゃんから聞いていた通りで、話もスムーズに進んだ。

 

「それじゃあ、今回の撮影の内容はこんな感じだけど、何か質問はあるかな?」

「それじゃあ、一つだけいいですか?」

「いいとも」

「今まで、霧矢さんが出ている作品では部下なんていなかったと思うんですけど、どうして今回はそんな役を作ってまで僕を呼んでくれたのですか?」

 

僕は、この話を受けたときから気になっていたことを聞いた。

すると、想像もしていなかった答えが返ってきた。

 

「実はね、君をいずれ霧矢君の作品に登場させようかと思っていたんだ。それに、そろそろ君も今の作品が終わってしまうだろう?そこでタイミングのいいところに、霧矢君が話を持ってきてくれたもんだから是非とも君を出してみたい、と思ったのさ!」

 

監督さんが言っている横で、あおいちゃんもうんうんとうなずいている。

ん?ちょっと待てよ?

あおいちゃんの作品に僕を出す?

まさかとは思うけど……。

 

「あの、監督って実はイケナイ刑事の監督さんだったり――」

「正解!いやー、君の噂はかねがね聞いていたんだよ。今君が出演している作品の監督は僕の知り合いでね。君の演技はなかなか素晴らしいと聞いてね。特にアクションが光ると」

 

当たりでした。

まあ、それぐらいじゃないと気軽に作品に出すとか言えないよな。

 

そして、監督がまだ話そうとしていたが、撮影開始の時間が近づいたこともあり、スタジオへと戻っていった。

 

「なんだか、すごく熱意を感じる人だったなぁ」

「そうだよねー。でも、あの監督さんって撮影のときも結構すごいんだよ」

「もっと熱くなるの?」

 

こう、熱くなれよ!って感じで。

あ、違う?

 

「あの人はね、演者さんの個性を活かしながら役を引き出すのが上手いんだよ」

 

もちろん熱意もすごいけど、とあおいちゃんは付け加えた。

 

「そっか」

 

あおいちゃんがいい監督と巡り合えたことが少し嬉しい。

そして、気が緩んだことでふと質問し忘れていたことを思い出した。

 

「そういえば、どうして監督さんはわざわざ僕を出迎えてくれたんだろう。何か監督さんは言ってた?」

「うーん、どうだったかなぁ……。あっ!監督は司くんにかなり期待していたみたいだから、たぶん実際に会ってどんな人物かその目で確かめたかったんじゃないかな」

「なるほど……。言われてみれば、監督さんは僕を見るなり目の色を変えてたっけ」

 

それだと、あの時の熱意も納得がいく。

 

「おっと、それじゃあ私はそろそろ出番だから行ってくるね。司くんの出番の時はまた呼びに来るから」

「わかった。それじゃあいってらっしゃい」

「うん、いってきます!」

 

そう言って、あおいちゃんは部屋を出ていこうとしたが、急に踏みとどまった。

何か忘れものでもしたんだろうか。

 

「撮影しているところ、見に来てもいいんだよ♪」

 

と去り際にウインクをしながら部屋を出ていった。

 

……撮影、見に行くか。




というわけで、UA10000突破記念でやりたいことについてです。
それは、ローラ√のリメイクです。
「なんでそれなの?」という方に理由を説明しますと、少々内容がやっつけだったり、クオリティがいまいちな感触だからです。
リメイクですので、物語の大筋にはあまり手を加えずに書き直し、加筆をするという感じです。

ただ、自分の視点だけでは本当にクオリティが変化しているのか怪しい部分があります。
そこで、少し参考程度にアンケートを取らせていただきます。
一応、前回やっていたアンケートはローラ√を書き直す必要性の確認の意味もありました。
今回のアンケートは私の文章力といいますか、お話のクオリティが上がっているのかの確認です。
今回は、珍しく期限を設けます。
期限は10月28日いっぱいです。
また、期限を決めた理由ですが、その後にまた別のアンケートを実施しようと考えているからです。
アンケートの内容は「リメイクをするにあたっての以前のお話の処遇」です。
皆さんは注意書きさえなければ、基本的に1話のところから読み始めますよね?
その時、もし自分の求めているクオリティのものでなければ、後から読みやすくなったりしても、それに気づくことなく手が止まってしまうことになりかねないです。まあ、現に私がそうだからなのですが。
そこで、そうなってしまうことを減らせるようにすることが目的です
ちなみに今回のアンケート次第では、新たなアンケートはしません。
クオリティが下がったのに消すとか悲しくなるだけなので。

長くなりましたが、アンケートのご協力をお願いします。
そして、改めてUA10000達成ありがとうございます。

感想はいつでもお待ちしております。
ちなみに私は感想を読むのも好きですが、返事を返すことも大好きです。
いや、むしろ返事を書くことが好きなのかもしれない...。


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オシャレ怪盗スワロウテイル

前回からだいぶ空きました。
待ってくださった方には申し訳ありませんが、今回はお話が全く進みません。
おまけ回だと思ってくださって構いません。
アクションの練習も兼ねて書いたのですが、アクションってなかなか難しいんですね。

アンケートを受けてのお話はあとがきにて。

それでは本編(?)をどうぞ。
なお、原作とは話の進み方が異なっておりますのでご注意を(イマサラタウン)。


ついに撮影が始まった。

とは言っても、僕はちょい役に近い立場なんだけれど……。

場面は、お宝を盗んだスワロウテイル達を捕まえようとするところ。

 

「来ると思っていたわ、スワロウテイル!」

 

あおいちゃんと、しおんちゃんと共に気球の前に立つ。

リハーサルの時にも思ったけど、ちょい役のくせに前に出すぎだと思う。

監督からは何も言われず、むしろそれで良いと言わんばかりの笑顔だったのにはちょっと驚いたけど。

 

「おとなしくお縄についてもらうぞ!」

「悪いけど、そんなわけにはいかないんだ!」

 

僕の言葉に蘭が応える。

そして、その言葉を合図に警察側はスワロウテイルの捕縛に動く。

僕は蘭を抑えに向かう。

 

「私の相手はお前ってことか」

「そういうことになるね。悪いけど、手加減はできないよ!」

 

そう言って、僕は蘭に向かって駆けていく。

蘭は僕に対してファイティングポーズを取って、僕を待ち構える。

僕が手始めに飛んで殴りかかる。

それを蘭は華麗に躱し、流れるように裏拳を放つ。

躱されることを呼んでいた僕はその裏拳を手で受け止め、その手を掴んで投げる。

投げられても、蘭は綺麗に着地をこなす。

 

「なかなかやるな」

「まだまだこんなもんじゃないぞ」

 

そう言って今度は蘭から攻撃してくる。

僕は足払いをかけられ、転倒しそうになるも側転の要領で受け身を取り、蘭に正対する。

すると復帰した僕に対して、蘭はすかさず顔に右ストレートをきめてこようとする。

僕は裏拳を止めたように、腕をつかんで拳を止めるが、それを読まれて膝蹴りを食らう羽目になった。

 

「ぐっ……」

「同じ手は二度も通用しないぞ」

 

つい無意識に拳を掴んでしまったことを恥じる。

そしてすぐさま体勢を整え、確保に向けて動く。

まずは軽いジャブを顔から胸元に向けて放つ。

蘭はそれをバックステップで器用に躱す。

それを数回繰り返して蘭が着地するタイミングを見計らい、足払いを掛ける。

蘭はバランスを崩すも、持ち前のバランス感覚と柔軟さで逆立ちになって持ちこたえる。

そして蘭は逆立ちのまま足での攻撃に切り替えてきた。

僕は一発目を咄嗟に防いだが、そのまま攻撃のペースを蘭に握られてしまう。

回転しながらの攻撃に隙を見いだせなくなった僕は、一旦距離を開けた。

 

「どうした。そんなものか?」

「くっ……」

 

蘭の予想以上の動きに翻弄されてしまう。

それから、僕は幾度も攻撃を繰り出すも上手くいなされてしまう。

 

「釘付けにできてるからまだいいが、これじゃあジリ貧だな」

 

もちろん捕らえるなんて無理だ。

そう思いながらも、足止めをしようとすると後ろから手錠が飛んでくる。

蘭は危なげなく避けられたみたいだ。

 

「だいぶ押されてるみたいね」

「あおいちゃん……」

 

あおいちゃんが救援に駆けつけてくれた。

後ろを見てみると、いちごちゃんとおとめちゃんが捕らえられていた。

しおんちゃんが二人を監視しながら周りをキョロキョロと見ている。

ユリカちゃんがいないあたり、見つけようとしているんだろう。

 

「さあ、今度こそ確保してやる!」

「二人に増えたところで!」

 

まずは僕が先行して蘭の相手をする。

攻撃は読まれているが、それでもかまわない。

とにかく、僕は隙を作ることに力を注いだ。

お互いに攻撃を放ち、躱し続けて集中力の落ちたところで、あおいが蘭の後ろに回り込む。

そして、タイミングを合わせて蘭へアクションを起こす。

僕は蘭のバランスを崩すため、あえて少し距離を取って中途半端な距離での交戦をする。

もちろん相手に悟られないようにゆっくりと下がる。

程よく下がったところで、蘭へタックルを仕掛ける。

もちろん蘭は回避をする。

距離が詰まっていれば、横や上に跳んでの回避だったのだろうが、距離が空いていたこともあって後ろにバックステップで下がる。

そこで後ろでそのタイミングを待っていたあおいちゃんが確保に移る。

 

「まずいッ!」

「もう逃がさないわよ!」

 

蘭は着地をずらそうと試みるが、空中では人は無力になる以上、捕まるのは目に見えていた。

正直賭けに近かったが、なんとかうまくいったみたいだ。

だが、そう思って気を緩めたのが悪かった。

瞬間、閃光が視界を埋め尽くした。

しばらく視界は失われ、目が慣れ始めた頃にはスワロウテイルの姿はなかった。

そして、見上げると気球が飛んでいた。

恐らく犯人はユリカちゃんだろう。

 

「逃げられた、か……」

「みたいね……」

「まさか気球が奪われるなんてな」

「まったくね」

 

二人並んで奪われた気球を見上げ、呆然と立ちすくむ。

 

ここでカットがかかり、撮影は終了となった。




原作とは違い、気球でちゃんと脱出できます。
警察側がガバやらかしたわけではないので、そこだけは大目に見てください。

さてリメイクの件ですが、思っていた以上にそのまま追加という選択肢が多くて驚きました。
消さなくていいと思ってくださるのはありがたい限りです。
追加するだけですので、そのまま最新話として下から追加するつもりでした。
ですが、それだとさすがにリメイク元との関わりがわかりづらいと思いましたので、リメイク元の次に入れようかと思います。
ちなみに、目立つように再編した場合はお話をトップに持ってくる予定でした。

ツイッターでぼやいたのですが、本投稿日に筐体とのお別れをしに最後のプレイをしに近場のお店に行きました。
意気揚々と筐体の所に向かったのですが、残念ながらもう稼働終了となっていて悲しみに明け暮れましたね……。
どうして……(現場猫)
後で見てみる限り、どうやらお店によってまちまちだったようですね。
いや~、悲しいですね。
まあ、プラネットの筐体が見られたので良しとすべきですかね。

二週間後には新しいアイカツライフが始まります。
皆様もよいアイカツライフを!

あ、来月から忙しくなるので大目に見てください(土下座)
それでは、また。


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SASUKE?いいえ、Tristarのオーディションです。

あおいちゃんのお話が一番長くなるんじゃねえかと思うこの頃です。
サブタイは、私の感想でもあります。
皆さんもそう思いませんか?
あ、思いませんかそうですか。
いつものごとく別にサブタイに深い意味はありません。
ついでにそこまで笑えるところもないかと。

ともかく、本編をどうぞ。


僕の出番が終わり、それ以降の撮影がなかった僕はクランクアップとなった。

撮影が終わった以上、暇になった僕は他のみんなの撮影を観察しようと思っていたが、あおいちゃんもあわせてクランクアップだったらしく、二人で帰ろうということになった。

ちなみにしおんちゃんは別のお仕事があるらしい。

 

「あおいちゃんの演技がすっごく上達してたからびっくりしたよ」

「司くんに比べたらまだまだだよ」

 

口ではそう言うものの、成長したことが認められてうれしいのか、少し頬が赤くなって照れたように見える。

そんなに謙遜しなくていいのに、と思いながらもあおいちゃんの気持ちを考えて口にするのをやめた。

僕も演技を始めた当初がそうだったからわかる。

 

「でも、この成長スピードだったらすぐにでも追い抜かれちゃいそうだけどね」

「その時は司くんが抜かれないように頑張るんでしょう?」

「それはそうだけど、逃げ切れる自信が……」

 

果たして、僕はあおいちゃんに追い抜かれる事無く演技の腕を磨くことができるのか。

次回、司、地に堕つ。

……と茶番は置いといて、そろそろあおいちゃんに教えられることが無くなってきたのも事実だ。

 

「いろいろ言ったけどさ、もし追いついた時には一緒に走ろうよ。そしたら、司くんも走りやすいんじゃないかな?」

「……そうだな」

 

想いもしなかった答えに僕は一瞬呆けるが、それと同時にあおいちゃんらしさを感じて自然と笑みがこぼれる。

 

「でも、追いついてもずっと走ったままか……。これは疲れそうだな」

「あ、それもそうだったね……。じゃあ、もし疲れたら私が司くんを引いて進むから、司くんは私を引っ張って行ってくれるかな?」

「それくらいならお安い御用だ。でも、二人とも休みたくなったら、その時は一緒に休むのもいいんじゃないかな?」

「あ、それ賛成!」

 

同じ演技の道に進む仲間でありライバル、っていうマンガみたいな関係に少しワクワクしながら、これからもアイカツを頑張っていくことを誓った。

 

△▼△

 

そして時は少し進み、夏も近づいてきた頃。

2年生に進級して昨年の春からのドラマが終わり、お祭り作品である夏映画の撮影も終えた僕は久しぶりの大きな休みにゆっくり羽を伸ばしていた。

 

「今日はゆっくり昼寝でもしようかな……」

 

そうひとりごちて目を瞑っていると、少し離れたところから女子生徒たちの喧騒が聞こえてきた。

中には悲鳴のような声も混じっていたけど、いったい何をやっているんだ……?

校内を見て回ると、今まで見たこともなかったアスレチックのような設備が置かれているのに気づいた。

某SASUKEほど厳しいものではないけど、明らかに難易度が高そうだった。

 

「え、なにこれ?アイドル大運動会的な奴ですか?」

 

頭の中が『?』で埋まる。

学校の敷地にいつの間にかこんなものができていたことに僕は驚きと困惑を隠せなかった。

また、それに追い打ちをかけるかのような参加人数の多さだ。

スターライトの女子部の全員が参加しているのでは、と思えるような参加者の数だ。

 

「ん?司じゃん。お前もこれを見に来てたのか」

 

大毅が僕に気づき、せっかくなら一緒に見ようぜと話しかけてくる。

この言い方からすると、はこの正体を知っているみたいだ。

 

「ちょっと待ってくれ。まずこれが何なのか説明してくれ」

「は?お前これが何をやっているのか知らずに見に来てたのか?」

 

大毅は呆れたように肩を落とし、首を振る。

 

「これだからお前ってやつは……。まあ、いいや。これはな、神崎美月が組むユニットのメンバーを決めるための競技なんだ」

「なるほど。それで、みんなは美月さんの隣に立つべく必死になっているってわけか」

 

しっかし、参加者が多いなぁ。

大毅曰く、スターライトの女子部のほぼ全員が参加しているらしい。

さっきもそう考えていたけど、まさか本当にそうだとは思わなかった。

だからこれだけいたら知り合いの一人や二人ぐらいは見つけられるだろうな、と思ってアスレチックの方を見やる。

すると、一生懸命頑張っているあおいちゃんの姿が目に映った。

 

とても真剣な目で、ゴールを見据えて全力で向かっている。

演技の練習をしていた時のように真っすぐな目で、次なる大きな目標に向かって進んでいる。

……そういえば、あおいちゃんといちごちゃんがアイドルを目指したきっかけが美月さんのステージなんだっけ。

その時の漠然とした夢が、今目の前に迫ろうとしているんだ。

頑張らないわけがない。

でも、実力を考えるとこの先あおいちゃんは親友の二人と直接競うことになるはずだ。

その時、あおいちゃんは夢に向かって進むのかな。

それとも、親友の夢を思って二人に譲ってしまうのかな。

 

まだこの競技は始まったばかりだ。

この競技がどんな結末になるかはわからないけど、僕は最後まで応援しよう。

ユニットのメンバーに決まれば僕も一緒になって喜ぶし、夢かなわなかったなら一緒に泣いてやろう。

よし、そうと決まれば、全力で応援だ。

 

「頑張れー!あおいちゃーん!」




海東くんは自然にフェードアウトしました。
だってそういう立ち回りの役だから是非もないよね!
気が乗ったら海東くんでなにか書いても、と思ったけどそんなことしてたら今のあおいちゃんのお話が書けなくなるのでNGっすね。

毎度文字数が少ないのはご愛敬。
これくらいの文字数が私のエタらないラインです。
これ以上の文字数を毎回求められると確実に死が見えますね(物語の)。

アイプラ(アイカツプラネット)の件で一つ。
皆さんはもう新筐体で遊ばれたでしょうか?
私はまだ10回ほどですが、かなり楽しめています。
それと、スイングがかわいいですね。
デザインがすごくいいです。
スイングを入れられるキーホルダーみたいなの、出ないかなぁ。
みんなもアイプラ、やろう!

アイカツの二次創作もやってもええんやで(暗黒微笑)。


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マネー……ジャー……?

前回、すぐに投稿できるだろうと言っていた自分を殴りたい筆者です。
楽しみに待ってくれた方々を裏切ってしまって申し訳ありません!
やっぱりこの時期って忙しいんやな……。


あおいちゃんが参加していたオーディションは、急きょ空から参戦したかえでちゃんという帰国子女と蘭に決まった。

最終的にはいちごちゃんとあおいちゃんと蘭で直接争う形になって、蘭が勝ったという形だ。

何故かかえでちゃんは一足先に決まっていたけども。

 

それはともかく、今日はいちごちゃん達のお疲れさま会と蘭のお祝い会を兼ねた簡単なパーティーだ。

蘭はもちろんのこと、いちごちゃんとあおいちゃんだけでなく、おとめちゃんやユリカちゃんといったメンバーもそろっている。

お疲れさま会とは言っても、みんなの表情はすがすがしい。

それも、みんな全力を出し切ったからだと思うけど。

 

「今日はみなさんお疲れ様でした。僕はそばから見ていただけですが、今回は物凄いオーディションだったと思います。それでも蘭は見事に勝ち抜いたわけですが、みなさんの必死なアイカツを見ていて僕もこれからのアイカツを頑張ろうと思いました」

 

ちなみに僕がこのパーティーを開催した。

せっかくみんなが頑張ってたんだし、労ってあげたいって思ったんだ。

 

「それでは、乾杯!」

「「「乾杯!」」」

 

そして、蘭に一言。

 

「おめでとう、蘭」

「あぁ、ありがとう」

 

腐れ縁みたいな仲だったけど、今では良き友達として接せている。

あおいちゃんたちのおかげなんだろうな。

噂をすればなんとやら、と言うようにあおいちゃんといちごちゃんもやってきて蘭にお祝いの言葉を改めて告げている。

 

「おめでとう、蘭!」

「ありがとう、いちご。っておい、飛びついてくるな!」

 

いちごちゃんはいつものように蘭へ抱き着いている。

いつも思うが、なんだか微笑ましいな。

そして、僕が二人を見ているとあおいちゃんが僕の隣へやってくる。

 

「司くん、今日はありがとうね」

「僕はそんな大層なことはしてないよ。ただ、みんなが頑張っていたからこれくらいはしてもいいかなって思っただけ」

「それでもだよ。嬉しいことには変わりないんだし」

 

そういってあおいちゃんは僕に笑いかけてくる。

その表情にちょっとドキッとしてしまった。

 

「そ、そう言ってくれるとこっちも嬉しいよ」

 

顔が熱い。

視線も自然と逸らしてしまう。

でも、同時にずっと見ていたいという気持ちも押し寄せてくる。

それに加え、この笑顔を誰にも見せたくないなんていうおこがましい独占欲がふつふつと湧いてきた。

そういった感情が頭の中でぐるぐると巡り、やがて一つの結論にたどり着いた。

 

「あおい、司。ちょっと助けてくれ~」

 

蘭の方を見ると、いちごちゃんが蘭に抱き着いて離れないようだ。

ただ、蘭も本気で嫌がっているというわけでもないみたいだが、ちょっと苦しそうだ。

 

「仕方ない、助けに行くか」

「そうだね。こらー、いちごー!」

 

あおいちゃんと一緒にいちごちゃんと蘭の所へ向かう。

向かいながらちらりとあおいちゃんを盗み見ると、やっぱり笑っていた。

そして改めて思う。

僕はあおいちゃんのことが好きなのかもしれない、と。

 

△▼△

 

その翌日、蘭は美月さんとかえでちゃんと共にTristarとして活動するため、しばらく校外の施設に泊まり込むことになった。

なんでも、正式なメンバーでステージに立つための追い込みをするそうだ。

そして、今はちょうどその見送りに行ってきたばっかりだ。

あおいちゃんといちごちゃんも一緒に見送りをした。

3人ともつい感極まって泣いちゃってたし、やっぱり仲がいいんだなぁ。

 

そんなことを考えていると、ジョニー先生が僕ら3人に向かってやってきた。

 

「おお、スター宮たち!学園マザーがお呼びだぜ!」

「私たちを?」

「何かあるんですか?」

 

理由を聞かれたジョニー先生は焦りながら返事をする。

 

「何だったか忘れちまったんだが、とにかくお前たち3人(傍点)を呼んでいる。早く行ってやってくれ」

 

案の定、理由は忘れてしまっているようだ。

悪気はないんだろうけどなぁ……。

って3人?

 

「3人って、僕もですか?」

「そうだ。スター宮と霧矢ハニーと飯島の3人だ」

 

僕が呼ばれるだけとか、いちごちゃんとあおいちゃんだけ、とかなら理解できる。

でも、僕もひっくるめて3人っていうのはちょっと想像できない。

学園長はいったい何を考えているんだろう。

 

「よし、それじゃあ3人でゴー!」

 

そして僕はわずかな疑問を抱きつつ、いちごちゃんに連れられて織姫学園長の所へむかう。

 

△▼△

 

「「「失礼します」」」

「いらっしゃい、3人とも。待ってたわよ」

 

学園長に促され、横一列に並んで立つ。

そして、学園長は僕らを見渡して一言。

 

「その表情からして、ジョニー先生は内容を伝えていないようね」

 

やっぱりか、とでも言うような表情になる。

釣られて僕たちも苦笑いをする。

 

「それなら、改めて私が用件を伝えるわ。まず、星宮と霧矢にはユニットを組んでもらいたいの。そして、飯島にはそのマネージャーを任せたいと思っているの」

「マネージャー……?」

「ええ。でもそんなに大袈裟に受け取る必要はないわよ。マネージャーといってもユニット活動が初めてな二人をサポートする程度でいいの」

「でも、それくらいなら僕はいなくても構わないんじゃないでしょうか?この2人は非常に優秀ですし」

「そうね。でも、マネージャー業と併せてあなたに音楽業界とのつながり、要はコネを作ってほしいと思っているの」

「コネ、ですか」

「ええ。なぜだかわかる?」

「申し訳ないですが、全く」

 

学園長の思惑が全く分からない。

 

「あなたを、このまま演技一筋にさせるのがもったいないと思ったの。普段のレッスンの様子から、あなたは歌もダンスも披露できるレベルにあると聞いているわ。だから、星宮達のユニットを機に考えてみたの。学園としては前代未聞かもしれないけれどね」

「確かに前代未聞ですね。でも、改めて考えると学園長の申し出は非常にありがたいです」

 

確かに、これからのことを見据えると学園長の提案は物凄くありがたい。

でも、どうしてマネージャーなのか……。

 

「ですが、どうしてマネージャーなのでしょうか……」

「うちの学校は今までセルフマネージメントをさせていたけど、これからのことを見据えてのお試しがしたかったの。それであなたに任せようかと」

「なるほど、確かにそういう学園も見られだしましたからね」

 

理由に納得した僕は、腹をくくって挑むことにした。

 

「わかりました。マネージャーの件、承りました」

「ありがとう。それじゃあさっそく明日からのよろしくね」

 

それから学園長とこれからの方針をまとめ、二人とともに帰りながら内容を伝えたのだった。




投稿ペースが遅れているのに、お話も遅々として進まない。
だめみたいですね。
しかし、どんなに遅れようとエタりはしないのでそこだけは安心を。
中途半端に残したくはありませんので。

そう言えば、自分のところにもマイキャラのアクスタとムービーが届きました。
ムービーには泣きました。
自分の分身がみんなに囲まれていたり、最後のand youとかもう涙腺緩みまくりでした。
これからもアイカツを応援していきたいですね。

さて次回についてですが、予定は未定となっております。
なるべく早く書きたいのですが、如何せん新生活で回線の用意がいまだできていませんので、安定しての投稿はまだ先になるかと。

うまぴょいは悪くないよ……(小声)
悪いのは誘惑に負けた自分だよ。

それではまた。


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Soleil始動!

とりあえず月1更新だけは守れていることに安心している筆者です。
最近、気が付くと1日が終わっているという生活が続いています。
それでもってお酒は変わらずおいしいです。


マネージャーもどきを始めて数日。

マネージャー業って思っていたよりも難しい。

学外で練習の場所を押さえる時はもちろん、ユニット結成時のメディアの方々への広報までと、なかなか仕事の幅が広かった。

本業の人たちはすごいな、なんて思いながらレッスン室の端で一息ついていると、ドリンクを片手にあおいちゃんがやってきた。

 

「お疲れ、司くん」

「そっちこそレッスンお疲れさま」

 

あおいちゃんからボトルを受け取り、中身をあおる。

その横で、あおいちゃんも腰掛ける。

 

「にしても、会見の時はすごかったよねー」

「そうだったな。なぜか二人じゃなくて僕に対しての質問が多かったけど」

 

取材に来たメディアの方々はどこから聞いたのか、僕がマネージャーをするという話をすでに耳にしていて、それについての言及がすさまじかったのだ。

会見が終わったころにはなぜか僕だけがヘトヘトという訳の分からない状態になっていた。

 

「まあ、普通はアイドルがマネージャー業をするって聞いたらみんな驚くからね」

「それでももう少し手加減してほしかったな……」

「あははは……」

 

僕が遠い目をしているのを見ると、あおいちゃんもそれには苦笑いだった。

そうやって少し緩い時間を過ごしていると、言わなければならないことを思い出した。

 

「そうだった、二人に言わなきゃいけないことがあったんだ!」

「何か大事なこと?」

 

少し離れていたところでクールダウンをしていたいちごちゃんが言った。

 

「とても大事なことだ」

「まさか、ファーストライブが決まったの?!」

「そう!ユニットとしての初めてのライブだ」

「わーい!」

 

ユニットとしての初めてのライブだ。

内容はまだこれから詰めていく必要があるけれども、こうして二人に伝えられたのはすごくうれしい。

これもマネージャー冥利に尽きる、ってものかな。

 

それから、今の段階で決まっているライブの内容を二人に伝えながらレッスン室を後にし、各々の寮へ戻って行った。

 

△▼△

 

「ちょっと今日のあおいちゃん、距離が近くなかったか?」

 

レッスンの時のことを思い出し、自室でひとりごちる。

あおいちゃんが好きだと自覚して時々そういう考えに陥ることがある。

 

「僕があおいちゃんのことを意識しすぎているのかなぁ」

 

でも、あおいちゃんのことが好きなのは事実。

それに、好きな人のことが気になるのは当然のこと。

 

「あおいちゃんは僕のことをどう思ってくれているんだろう」

 

どこか悶々としながら、眠りについた。

 

△▼△

 

日は巡ってファーストライブの日。

 

「なんで僕が緊張してるんだろう……」

「本当に緊張してるね」

 

いちごちゃんは僕の肩をつついてそう言う。

朝から胸騒ぎがするのが原因だろう。

 

「とにかく、二人が緊張してないようで良かった」

「まあ、わかりやすく緊張している人がいるとかえってこっちは緊張しないね」

 

あははと苦笑しながらもリラックスしたあおいちゃんが言う。

外をふと眺めると多くの人が集まりだしていることが確認できた。

時計を見ると開始の時間になりかけていた。

 

「そろそろ時間みたいだね」

「じゃあ、私たちはステージに行ってくるね」

「うん、いってらっしゃい」

 

僕は二人をステージに見送る。

それと同時にアイカツフォンに連絡が入った。

 

「やっぱりか……」

 

蘭からの連絡だった。

 

「なんだかんだ、二人と一緒にいることが良かったんだな」

 

2人が編入してきてからのことを思い出し、少し笑みがこぼれる。

僕は通りへ向かい、蘭を迎えに行った。

 

「蘭のおかげであおいちゃんと出会えたんだ。そのお礼みたいなものさ」

 

△▼△

 

蘭の突然の登場にみんなが驚く。

もちろんあおいちゃんといちごちゃんも。

後から、何で僕だけ驚かなかったのか問い詰められたのは別の話。

とはいえ、みんなが驚こうが今日はステージをしないといけない。

 

「で、ステージはどうするの?」

「私たちは蘭のドレスは用意してないよ」

 

僕はあおいちゃんといちごちゃんの問いに答える。

 

「最悪の事態を考えて、用意はしていたよ」

 

蘭にアイカツカードを渡す。

 

「貸し一つね」

「はいはい。とりあえず感謝はしとく」

 

カードを受け取ると、蘭はいつも通りの強気な表情に戻った。

 

「とりあえず、ドレスの話はあとからするから今はステージだ。3人で楽しくステージをやってきて」

 

笑顔で3人を送り出し、僕は観客席に紛れ込む。

そこで見たステージはとても記念すべきステージになった。

 

△▼△

 

「で、話ってなんだ?」

「その、相談というかお願いしたいことがあってね」

 

ファーストライブの数日後、僕はさっそく借りを返してもらいたく蘭のもとを訪ねた。

 

「お願い、ねぇ。司にしては珍しいじゃん。で、その内容は?」

「えーっとだな……」

 

内容を口に出そうとするが、つかえたように言葉が出ない。

 

「おいおい、いったい何を頼むつもりなんだよ……」

 

何を依頼されるかたまったものではない蘭は、軽くうつむく。

さすがに僕もこのままというわけにもいかず、ようやく口にすることができた。

 

「あおいちゃんにさ、僕のことをどう思っているのか聞いてほしくて……」

「は?あおいに?」

 

想像の斜め上の質問が飛んできた蘭は、拍子抜けしたような顔で尋ね返してきた。

 

「この際だから全部吐くけど、僕、あおいちゃんが好きなんだ」

「……うっすらと感じてはいたけど、本当にそうだったのか」

「そんなにわかりやすかった?」

「いや、お前と付き合いがそれなりにあったから、なんとなくそんな気がするなって」

 

その言葉に少し安心する。

 

「そっか。で、話を戻すよ。最近、あおいちゃんとの距離が近く感じてさ。もし、これが僕の勘違いとかだったらいいんだけど。いや、よくはないな」

「確かに、この前の司とあおいの距離はだいぶ近かったな」

「やっぱりか。とりあえず、頼めるか?」

「ああ。さりげなく聞いとくよ」

 

こうやって人に聞き出してもらうのもいいものではないけど、今のこの関係を壊したくない。

せめて、ユニット活動の間、この思いを抑え込めればいいのだ。




唐突ですが皆さんにお礼をさせてください。
本当にみなさんが気長に待っていただいていることに感謝しかありません。
これだけ期間が空いても読んでくださるみなさんがいるおかげで、書いている甲斐があるというものです。
投稿ペースは怪しいかもしれませんが、地道にコツコツとお話を書いていきたいと思います。

アイカツプラネットがそろそろ終わりそうですね。
これからどうなっていくのか、不安とワクワクでいっぱいです。


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束の間のお休み

誕生日のやつを書くとか2周年で何かやるかも、とか言いながら何もしなかったのは私です。
恐らく月1更新がデフォになるのではないかと思うこの頃。
それでも続けている自分は偉い、といいながら執筆をつづけております。


~side 蘭~

 

司にはああ言ったものの、あおいから聞き出す気はない。

こういうものは二人でどうにかするものだと思う。

……とは言うものの、個人的な思いとしては気になる。

今まで浮ついた話題の無かったあの司が恋バナだなんて未だに信じられない。

人の恋路をじゃますると馬に蹴られるとか言うけど、これはむしろ伝えた方が馬に蹴られそうだし。

ただ、司がむやみに人の気持ちを聞き出そうとしないのに、今回こうなった理由が気になる。

 

(とりあえずあおいに聞くだけ聞いて、司に伝えるかどうかは後回しにするかなぁ)

 

思っていたよりも難しい問題かもしれない。

 

△▼△

 

おかげさまでソレイユの人気はどんどん上がっていき、ライブの数もそれなりに多くなってきた。

夏の暑さが本格的になってきたこともあり、3人とも疲れが出てきていた。

そんな中、司が

 

「明日から2日、完全に予定を空けておいた。どこか温泉でも行ってリフレッシュして来い」

 

と唐突に休暇をくれた。

あおいといちごの二人は目を輝かせていた。

私ももちろんうれしかったが、なんとなく司から頼まれていたことを思い出して少し苦笑気味になってしまう。

 

そして急きょ1泊2日の温泉旅行に出発することになった。

思えば、トライスターの選抜試験の前に取った休暇では行けてなかったんだっけ。

寄り道をしつつも目的の旅館に着き、ゆっくりと入浴と食事を済ましてあとは寝るだけとなった。

ただ、こういうところでは寝る前にいろいろと話し込んでしまうもので、おしゃべりに花が咲いた。

 

「そういえばみんなって好きな人っているの?」

 

あおいが唐突に話題を恋バナへと変えた。

図らずも聞きたかったことが聞き出せるみたいだ。

 

「私はまだかんがえたことなかったなー」

 

いちごはそういえばそんなものあったな、とでもいうような表情で答える。

 

「私は……まだいないな」

 

私も改めて考えてみると、そんな人はいなかった。

そもそも一番接する男子が司だ。

ただ、司に感じているのは恋心なんかではないのは確実だ。

 

「そういうあおいはどうなんだ?」

「私はね。その……」

 

あおいは顔を赤らめ、ややうつむく。

それにいちごは食い気味に尋ねる。

 

「あおいに好きな人がいるの?!」

 

恥ずかしそうに眼を逸らしながらも、首を縦にふる。

 

「それで、ね。少し相談があったの」

 

相談か……。

おかしいな。

既視感しか感じないんだけど。

 

「あおいの相談ならなんでも聞くよ」

「さすがに私もここまで来て話に乗らないわけにはいかないからな」

「二人とも、ありがとう!」

 

感情が爆発したのか、あおいは私たちに抱き着いてくる。

まあ、いつものことだから受け入れるけど。

 

そして、居住まいを正したあおいは真剣な面持ちで話し始めた。

 

「まず、私が好きな人を言うね。たぶんそうしないと始まらないし……」

 

やっぱり恥ずかしいのか、あおいは「えっと」とか「あの」と繰り返し呟く。

そこで私が聞き出して手助けをしようと思った矢先、あおいは口を開いた。

 

「私は司くんが好き」

 

……薄々感じてはいたけど、やっぱりか。

もうこいつら付き合えばいいのに。

 

「ちょっと、蘭聞いてる?!」

「聞いてた聞いてた。予想通り過ぎて驚かなかったけどな」

 

いちごの方を見ると、うっすらと苦笑いを浮かべていた。

たぶんいちごも薄々感じてたんだろうな。

 

「もう、私がせっかく好きな人を言ったっていうのに!」

 

さすがのあおいも少しお怒り気味だ。

揶揄うのもこれくらいにしておかないと。

 

「ごめんごめん。悪かった。お詫びといってはなんだけど、司のことならどんどん聞いてよ」

 

あおいにそう言うと、さっきのお怒りの表情はどこへやら、また少し顔を赤らめた。

 

「じゃ、じゃあさ。いま司くんって好きな人っているの……?」

 

あ、これって言っていいものなのか?

でも、今更引き返すのもあおいに申し訳ない。

 

少し考えた挙句、私は言った。

 

「司には、今好きな人がいるみたいだ」

「えっ……?」

 

もちろんその言葉にあおいは軽くショックを受ける。

 

「ただ、その相手には自分の思いを知られていないみたいなんだ。加えて、私たちがユニット活動している間はマネージャー業に専念したいらしいとも言ってた」

「ってことは?」

「あおいにもまだチャンスはあるってことだ」

 

嘘は言っていないが、本当のことでもないことに少し心が痛む。

でも、司と互いにこのSoleilを優先したいということを考えた結果、こうすることが大切だと感じた。

お互いが思いを伝えあって納得がいくなら話は変わるが、今回は直接話すわけではないからこういう結論を選択した。

 

だから、司にもぼかして伝えるつもりではある。

 

「じゃあ、私が素直に思いを伝えれば」

「司にも思いが伝わるかもな」

 

あおいの表情が一転して笑顔になる。

 

「よかったね、あおい!」

「うん!」

 

喜びのあまり、あおいはいちごに抱き着く。

 

「ねえねえ、あおいって司くんのどこが好きになったの?」

「えーっとね、まずは――」

 

さっきまでの動揺が嘘かのようにしゃべりだすあおい。

 

「ってちょっと待て。それ長くなるやつだろ!」

 

……さっさとくっつけよ、二人とも。




今回は全部蘭の視点になってしまいました。
間を取り持つのに程よいから仕方ないね。
あおいちゃんの本心とかはまた追々。

新たなお話を書こうかなーとか思っていたら3か月も過ぎていて、ちょっと内心焦りつつも、書けるときにはちゃんと書いていきます。
でも最近PCの挙動が不安定すぎてそれどころではなくなってきている始末。
恐らく更新が長期で止まっていたら、PCが死んでます。
PCが死んだら、一応活動報告を上げる予定ですので、「なんか遅いな」とか思ったら一度確認してみてください。

......アイカツ成分が足りません。


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STAR☆ANIS結成

お待たせしました。
ひとまず言いたいことはあとがきで。


3人が休暇を取っているころ、司は美月さんのマネージャーである月影さんに呼ばれ、とあるカフェに呼ばれていた。

 

「単刀直入に言うわ。ソレイユとトライスターで今年の夏のみの限定ユニットを組みたいの」

 

そしてとてつもなく大きな話が時速160キロでど真ん中に投げ込まれた。

 

「それに加えてのツアー、ですか」

「そう。学園長と美月の提案でね」

 

こんな大きな話を振るのはやっぱり美月さんかー。

月影さんが出てくる時点で察してはいたけど、とんでもない話を振ってきたなぁ。

 

「ただ、ソレイユのマネージャーである君の意見を聞いてから、ということにはなっているけれども」

「つまり、僕の意見次第で決まると」

「そういうことになるわね」

 

……僕の責任重すぎやしないか?

でも今は僕がマネージャーである以上、僕が決めるしかない。

 

数秒の沈黙の後、

 

「わかりました。まずユニットの件ですが、承りました」

「話が早くて助かるわ」

「ええ。こちらも3人が美月さんとともに行動することで、成長していくと思いましたので」

 

美月さんと一緒にレッスンをしたりすることで、3人のスキルアップにつながるはずだ。

そう考えると断る理由はない。

 

「ただ、一つ伺いたいことがあるのですが」

「何かしら?」

「ユニットのマネージメントは誰が担当するのですか?」

「今のところ、私が主となってマネージメントを行うことにしているわ」

 

それもそうだ。

美月さんが主となっている以上、マネージメントに求められるレベルもそれに応じたものが必要だろう。

そもそも僕なんかでは足元にも及ばないし。

 

「わかりました。つまりはソレイユの3人をそちらにお預けするという形でしょうか」

「簡単に言えばそうなるわ」

 

納得はしているが、3人のマネージメントが月影さんの手に渡ることに少し寂しさを感じる。

でも、3人のこれからを思えば仕方のないことだろう。

 

「わかりました。それでは3人のことをよろしくお願いします」

「ええ、こちらこそよろしく頼むわ」

 

それから、しばらく今後の引継ぎについて話してお開きとなった。

 

帰り道、頭の中に浮かぶのはあおいちゃんのことだった。

あおいちゃんと会える時間が減ってしまうなぁ……。

マネージャーとしての意思を優先している以上これが最良の選択なはずだけれど、寂しいものは寂しい。

 

「でも、この夏の間は想いを我慢するって決めたんだ」

 

今生の別れというわけではないんだし。

 

△▼△

 

休暇明けの3人に、新たなユニット「STAR☆ANIS」の結成とツアーについて伝えた。

 

「トライスターとの合同ユニット!つまりは美月さんと同じステージに立てるっていうことだよね?!」

「落ち着け、あおい」

「今のあおいちゃんに落ち着けっていうのは無理な話だろうよ」

 

なんたって、あこがれの美月さんから直々に指名されたのだ。

あおいちゃんが喜ばないはずがない。

 

「これからの大まかな予定を伝えるから、よく聞いておいてくれよ」

「「はーい!」」

 

あおいちゃんといちごちゃんが元気な声で返事をする。

蘭はそれを少し呆れた表情で見ているが。

 

「まず、さっそくだけど明日はメディアの方々にスターアニス結成の報告の会見だ」

「明日、って早すぎないか!?」

「話が急だったからな。それに、この予定を立てたのは月影さんだから、文句があればそっちに言ってくれ」

「月影さんかぁ。それは文句が言えないな」

「だろう?あとちなみに、トライスターは別件で同席しないみたいだから3人でがんばってね」

「な、なんと……」

 

あまりの情報量に口調が変わるあおいちゃん。

僕ですら最初に聞いた時に驚いたからしょうがない。

 

「すでに決まったことだから、すまないけど頑張ってくれ」

 

でも、この3人ならこなせると思っている。

ソレイユとして活動して、着実に実力はつけてきているんだ。

 

「それじゃあ、明日からよろしく頼むよ」

 

△▼△

 

~side あおい~

 

会見の会場に着いたけど、司くんの姿が見えない。

どうしたんだろう。

司くんに何かあったのかな?

 

「よし、3人ともそろったな。これから会見だ。頼むぞ」

 

月影さんが私たちに向けて言う。

司くんは……?

 

「あの、月影さん!」

「どうした、霧矢。もう会見の時間だぞ」

「司くんはどうしたんですか?」

「聞いていなかったのか?あいつはしばらくマネージャー業を停止することになっているはずだぞ」

 

司くんがマネージャーじゃない……?

つまり司くんに会えないの……?

 

「この様子だと、あいつは伝えていなかったみたいだな。霧矢、後で説明してやるから会見して来い」

「わかり、ました」

 

頭が追いついていないけど、会見はやらなきゃ。

私はアイドルだから。

 

△▼△

 

会見は無事に終えた。

その時に、マネージメントはすべて月影さんが行うと聞いた。

 

どうして司くんは私たちに伝えなかったんだろう。

 

「飯島が3人に伝えなかった理由は知らんが、マネージャーを降りるのはこれからツアーで移動した先の宿でのトラブルを防ぐのが主な理由だ」

「司くんはそんな人じゃない!」

「それはわかっている。だがお前たちはまだ学生で、アイドルという体面もあるんだ。その辺りをわかってくれ」

 

頭ではわかっている。

でも、会えないのは寂しい。

司くんにアタックして意識してもらおうと思ってもいたんだ。

 

「会いたいなぁ」

 

このツアーの間、私は耐えられるのだろうか。




先月は社畜してワクチンでダウンしてました。
執筆時間取れると思ってたんだけどなぁ。
ちなみにPCはまだ生きております。
...いつ動作しなくなるのかはわかりませんが。

今月中にもう一話かけたらな、と思っていますが、あくまでもまだ願望ですのであしからず。
次はそらちゃんのお話かな?(未定)


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ツアーのあとに、そして

長らくお待たせいたしました。
アイカツの映画と感想のおかげでモチベ回復ができました。
まさかの年を越して新作があるということにも驚きですが。


~side あおい~

 

ツアー前の合同トレーニングを終え、とうとうツアーが始まった。

あの美月さんと同じステージ立てるなんて、穏やかじゃない!んだけど……。

 

「あおい。なんかずーっと外見てるけど、どうしたの?」

「あ、いちご。なんでもないよ」

「ほんとにー?」

「ほんとほんと」

 

嘘だ。

本当は司くんがいなくて寂しい。

まるで生殺しだ。

私が司くんのことが好きなんだとわかったかと思ったら、その好きな人と会えなくなるなんて。

今すぐ司くんと話したい。

電話でもいい。

いや、やっぱり直接会って話したい!

 

「あおいー。そろそろスタンバイするぞー」

「わかったー」

 

蘭に呼ばれ、私は控室へと戻って行く。

だって私はアイドルだもん。

まずはみんなに笑顔を届けることが大事だから。

 

~side out~

 

忙しい。

アイカツを始めてからここまで忙しかったことはない、とまではいかないが忙しい。

学園長がコネづくりになるとは言っていたが、ここまでか??

ただ実際に来た仕事は、歌を歌ってみないかというものが多かった。

持ち歌がないわけではないのだが、如何せんメインが演技だったのもあって多くない。

せいぜいがドラマのタイアップ曲だぞ?

いったいどうしてここまで仕事が来るようになったのか。

 

「これはキッツいなぁ……」

 

でも、あおいちゃんたちもツアー頑張ってるんだ。

ボイトレももう少し頑張ろう。

こんなことで弱音を吐くようじゃ、あおいちゃんに笑われちゃうよ。

 

自然とあおいちゃんとのトーク画面を開こうとする手を止める。

あおいちゃんと話したいけど、今は我慢だ。

 

「よしっ、休憩終わり!」

 

あおいちゃんと会って話したいという思いを振り切るように、足早にレッスンルームへ向かった。

 

△▼△

 

あおいちゃんたちのユニットSTAR☆ANISのツアーも最終日となった。

だが、忙しさのあまりいまだにライブに行けていない。

いくつかの会場でのチケットをもらってはいるのだが、都合が合わずに今の今まですべて使う機会もないまま、引き出しの中にしまわれている。

そろそろ罰が当たるのではないだろうか。

 

「あおいちゃんがチケットを送ってくれるけど、ここまで無駄にすると申し訳ないなぁ」

「じゃあ俺が行ってやろうか?」

「なんだ海東。聞いてたのか」

 

撮影の合間にベンチで一休みしている僕の背中から、唐突に海東が現れる。

 

「いらないならもらってやるよ」

「そんなことは誰も言ってないだろ」

「じゃあ行かないのか?」

「それは……」

 

行きたいのはやまやまだが、仕事を放りだすわけにもいかないし……。

 

「どうせここから先のシーンでお前はほとんど出ないんだろ?」

「ん?それはそうだけど、ワンカットあったはずだよな」

「ワンカットっていっても、お前はほとんど後ろ向きで映るだけじゃないか」

 

ん?

 

「……遠回しに行って来いって言ってる?」

「……はぁ。せっかくカッコつけてぼかして言ったのに」

 

ちょっとバカにはしたけれども、やっぱり海東は僕の親友だ。

 

「わかった。今のは聞かなかったことにしとく」

「うっせぇ、さっさと行け」

「はいはい」

 

お言葉に甘えて、ここはライブに行かせてもらおう。

 

△▼△

 

会場は人で溢れていた。

ツアーの最終日ともなれば、これだけの人が集まるのもうなずける。

 

あおいちゃんからもらったチケットで中に入る。

あおいちゃんのはからいで、関係者席で見られるようだ。

関係者席に行くと、学園長とジョニー先生、それにいちごちゃんの家族も来ているのが見えた。

 

関係者だから控室にも行けるのだが、まだ行っていない。

だって、行ってしまったらここまで我慢してきた意味がなくなっちゃうから。

あおいちゃんからも連絡がなかったということは、相当ツアーに向けて意識を合わせていたはずだ。

その邪魔をしようものなら、今日ここにいるすべてのファンに失礼だし、あおいちゃん自身にも失礼だ。

 

……時間だ。

ステージが始まる。

 

△▼△

 

ステージは圧巻としか言えなかった。

センターなんてものはなく、みんなが一様に輝いていた。

でもみんなが輝いている中で、ぼくにはあおいちゃんが一際輝いているように見えた。

もちろん意識しすぎているだけかも知れないけど。

 

公演も終わり、僕は足早に控室に向かう。

一刻も早くあおいちゃんに会うためだ。

ずっと抑えていたこの思いを、今日こそあおいちゃんに伝えるんだ。

 

息が上がる。

走ったせいなのか、緊張からなのかわからない。

 

あぁ、じれったい。

控室がこれほどまで遠く感じたことはない。

 

最後の曲がり角を過ぎると、ステージを終えて談笑しながら8人がやってくる。

その中にあおいちゃんを見つけた。

あおいちゃんもこちらに気づき、やってくる。

まるで、映画のワンシーンかのような感覚だ。

一歩一歩近づくたびに鼓動が高鳴る。

あおいちゃんの瞳に光るものを見つける。

って、あおいちゃんが泣いて……?

 

胸に飛び込んでくるあおいちゃんを抱きしめる。

 

「司くんっ……!」

「あおい、ちゃん……」

 

あおいちゃんが落ち着くまで、抱きしめる。

……なんか周りからの目が異様に暖かいけど、今は構っていられない。

 

「……落ち着いた?」

「うん。ごめんね、急に」

「いいや、大丈夫だよ」

 

あおいちゃんが落ち着くと、お互い何も言わずに離れて向きなおる。

 

「あおいちゃん」

「何?司くん」

「僕はあおいちゃんが好きだ」

「うん。さっきのでだいぶわかっちゃった」

「だよね」

「ってことは、私の気持ちもわかってるよね?」

「もちろん。でも、あおいちゃんの口からききたいな」

「そうだよね……」

 

あおいちゃんは気持ちを整えるように、深呼吸する。

 

「私も司くんが好き」

「さっきのでわかってた」

「あー、いじわるー。わかってたならいいじゃーん」

「それとこれとは話が別だよ」

 

それから、学園長がやってきて咳ばらいをするまでずっと抱き合っていた。




二人が思いを伝えあったので一見終わりかと思いますが、あと一話だけ続きます。
といっても蛇足感は否めないですが。

思えば、我ながらよくプロットなしでここまで書けたと思います。
その間に文章の書き方も若干変わってしまいましたし。

次回の更新はいつになるかわかりませんが、気長にお待ちください。
誕生日企画もやりたいなぁ。(遅筆で間に合うか怪しいが)

それでは、また。


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悲しみは一時のもの

アイカツの10th Thanks Partyに行った時の衝動に任せて書きました。
これが後3回もあると考えるとワクワクが止まらない。


僕とあおいちゃんは交際を始めることになった。

ただし、学園長からの条件付きで。

なぜかって?

学園長に抱き合っているところを見られちゃったからね……。

条件としては二つ。

一つは、僕とあおいちゃんが成人になるまで公表しないこと。

もう一つが、スキャンダルとして記事に取り上げられることがないよう、外での振る舞いに気を付けること。

当たり前といえば当たり前だが、僕たちはまだ学生だ。

だからこそ、気を付けなければいけないことだと思う。

 

それはそれとして、スターライトクイーンカップが開催された。

その最中、いちごちゃんがアメリカに行くことが決定した。

 

「司くん。私ね、いちごがアメリカに行くって知ったとき、応援してるとは言ったけど、やっぱり寂しいよ……」

「いちごちゃんはあおいちゃんにここまで思ってもらえるなんて、幸せものだね」

「だって、親友でファン1号だもん」

 

僕はいちごちゃんの代わりになれるわけでもない。

だから、僕はこうやってあおいちゃんの寂しさを紛らわせてあげることしかできない。

 

「いちごちゃんはアイカツをやめるわけじゃないんだ。だから、必ずまたここに戻ってくるよ」

「それはそうだけど……」

 

言うのは簡単だけど、やっぱり本人にはつらいものがあるか……。

でも、僕としてはあおいちゃんが悲しんでいるのはつらい。

 

「そうだ。じゃあ、こうしよう」

「?」

 

あおいちゃんは首をかしげる。

 

「寂しいときはいつでも僕に連絡してよ。僕じゃいちごちゃんの穴を埋められるとは思わないけど、多少紛らわせることができるはずだからさ」

「司くん……」

「まあ、これでもあおいちゃんの彼氏なんだから、見栄を張らせてほしいなって」

 

僕の言葉に、あおいちゃんは少し呆けたような表情をしたあと、ほほえみながら僕の胸に飛び込んできた。

 

「いつでもいいんだよね」

「うん。そうだよ」

「ねてるときも?」

「頑張って起きるよ」

「お仕事のときも?」

「うまいことやるさ」

 

何度かやり取りしたあと、緊張の糸が緩んだのか、胸の中からすすり泣く声が聞こえてきた。

僕は何も言わず、背中をさすって上げることしかできなかった。

 

△▼△

 

来るスターライトクイーンカップの日。

いちごちゃんと美月さんは最高のパフォーマンスを見せ、僅差で美月さんがスターライトクイーンの座を維持した。

いちごちゃんは美月さんからもらったスペシャルステージも終え、空港へと移動した。

それにあおいちゃんと蘭も付き添い、僕もついていくこととなった。

学校から空港に向かうまで、ずっといちごちゃんとあおいちゃんは手をつないだまま。

僕と蘭はそれを黙って見ていることしかできなかった。

 

そして気づけば、出発ゲートの前に来ていた。

 

「もういいんじゃないか、我慢しなくて?」

 

蘭のその一言に、あおいちゃんの目には涙が浮かび、いちごちゃんを抱きしめる。

 

「そう言う蘭だってどうなんだ」

「なっ!」

 

蘭の目にも涙が浮かんでいる。

 

「そういう司くんも人のことは言えないみたいだね」

「え?」

 

あおいちゃんに言われ、知らずに涙を流していたことに気づく。

 

「全く、みんなして泣いてるじゃない」

「そりゃあ、だって……」

 

後ろから聞こえた声に振り返ると、ユリカちゃんとかえでちゃん、おとめちゃんとさくらちゃんも見送りに来てくれていた。

いちごちゃんも驚いた様子だ。

 

「みんな、忙しいのに来てくれたんだ」

「だって、私たちは友達でしょう?」

「大事な大事な友達です~!」

 

友達として見送りに来たみんなに応えるように、そして名残惜しむかのように、いちごちゃんはみんなと別れのハグをした。

 

「みんな大好きなアイドルで、大好きな友達だよ」

 

別れ際に、あおいちゃんはいちごちゃんに封筒を手渡す。

 

「困ったときじゃないと開けちゃだめだからね」

「うん。ありがとう、あおい」

 

ついにいちごちゃんはアメリカへと旅立っていった。

 

あおいちゃんは、どこか吹っ切れたような晴れやかな顔でいちごちゃんの乗った飛行機を見つめていた。

泣くだけ泣いて、気持ちの切り替えができたのだろうか。

 

「ねぇ、司くん。いや、司」

「お、おう?」

 

急な呼び捨てへの変化に戸惑う僕。

 

「これを機に、あおいって呼んでよ」

「……うん。わかったよ、あおい」

 

どうして急に、という思いがめぐりながらも、あおいに応える。

後から聞けば、蘭への嫉妬心が唐突に湧いたそうだ。

名前の呼び方一つで、と思わなくもなかったが、今のあおいにとってはとても大切なものだろう。

 

失ったぬくもりを埋めるように、僕とあおいは手をつなぎ、学園へと戻るのであった。




これにてあおいちゃんのお話は終わりです。
蛇足感ハンパないですが、個人的にここまで書きたかったというやつです。

そらちゃんのお話のプロットは実はまだ書けていません。
その癖に書きたいネタが降ってきたという。
うーん、このジレンマ。

話は変わって冒頭でも触れましたが、10th Thanks Partyに参戦してきました。
ツイッターでは言いましたが、現地で全通予定です。
死なないように楽しんできます。

感想語る相手がいなくてちょっと寂しいのは内緒。

ではまた。

よくよく思えばこれが50話目か。
自分、おめでとう。


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”特別編” あおいの誕生日①

遅れて申し訳ありませんでした!!
言い訳はしません。
そしてちょっと投げやりなのも否定しません。
あおいちゃんのお話のほんへを書く前ではありますが、どうぞお楽しみください。


明日はあおいの誕生日だ。

それも付き合い始めてから最初の。

……正直言って何をしたらいいのかわからない。

 

「そんなわけであおいの親友であり、Soleilのユニットを組んでいる蘭さんといちごさんに来ていただきました」

 

ドンドンパフパフ~

 

「なにが『そんなわけで』だよ。唐突すぎるぞ」

「唐突なのは申し訳ない。でも緊急事態だから許して」

 

少し上目遣いで蘭に返答すると、頭をシバかれた。

 

「いたい……」

「あのなぁ、こっちは真面目に相談に乗るつもりだったんだぞ」

 

蘭がそんなことを言ってくるが、本気でシバくことはないだろうに。

 

「よしよーし、痛いの痛いの飛んでいけー」

 

いちごがシバかれたところをさすってくれる。

はっ!?天使か!?

 

「まあ、とりあえず本題に戻ろう」

「逸らしたのはお前だろうが……」

「今まではいちごと蘭の2人で祝うことが多かったんだよね?」

スルーか……。まあ、基本的にはそうだな」

「それでどんなことやってた?」

「ちょっとした誕生日パーティーぐらい、だったよね」

「そうだったな。だからあまり大したことはしてないんだ」

 

意外な気もしたが、今の人気を考えると妥当な気がした。

それだけに、今回休暇を取ったということは期待がかかる。

 

「そうか……。うーん、何をしてあげたら喜んでくれるかなぁ」

 

悩ましい……。

 

「はあ。しょうがないから相談に乗ってやるか。このままだと心配で仕方ない」

「司くんって意外と抜けてるしねー」

 

それから、あおいが仕事から戻るまで相談に乗ってもらうのであった。

 

△▼△

 

誕生日当日。

司とあおいは街の公園で待ち合わせをすることになっていた。

 

「おまたせ、待った?」

「いや、今来たとこだよ」

「そっか。フフフ」

 

ふと見えたあおいの笑顔に、思わず見とれてしまう。

 

「ほら、行くよ。今日のわたしはやりたいことがたくさんあるんだから」

「ああ、わかった」

 

そして街へとくりだしていく。

 

△▼△

 

まず、あおいとウインドウショッピングをすることにした。

気に入った店があれば立ち寄り、試着をしたりして店を冷やかして回っていた。

 

「なあ、ちょっとここ見ていかないか?」

「ここ?」

 

僕が指したのはアクセサリーショップ。

 

「うん。ちょっと見たいものがあってね」

 

店に入り、目当てのものを探しにいく。

ただ、あおいには申し訳ないけども見せられないものであるため、見られないように他の店員さんに気をそらしてもらっている。

 

「こちらでよろしかったでしょうか」

「はい、お願いします」

 

目的のものを受け取り、バッグの中にしまう。

あおいの相手をしてもらっていた店員さんもこちらに気づき、あおいを解放(?)した。

 

「なんか、あの店員さんの押しがすごかったんだけど……」

「あはは、それは大変だ」

「笑いごとじゃなーいー」

 

△▼△

 

ウインドウショッピングをある程度すまし、映画を見にいくことになった。

なんでも、あおいが今注目しているアイドルが主演をやっているものらしい。

 

「これは穏やかじゃない!」

「落ち着け。まだ始まってすらないんだぞ」

 

おかげであおいのテンションが爆上り中だ。

手をつないで歩いてはいるものの、あおいが先を急ぐせいで、まるで元気な犬とリードに見えて仕方がない。

おまけに、目を輝かせてあちこちを見ているため、サイドテールがしっぽに見えてくる始末。

 

「……」

 

あきれつつも、そのかわいらしさに胸を打たれるのであった。

 

「ほら、もう入場開始だよ」

「はいはい。それじゃあ行こうか」

 

△▼△

 

「やっぱり、穏やかじゃなかった」

「そうだな。あの子いい演技してた。あおいが気にするのも分かるよ」

「でしょでしょ」

 

映画を見終え、感想を語り合いながら帰路につく。

相変わらず、あおいは興奮しているみたいだけど。

 

「そういえば、僕たちが一緒になれたのも演技がきっかけだったよね」

「そうだったね」

 

ふと思い出したようにつぶやいた一言をきっかけに、思い出話にも花が咲くことになった。

 

△▼△

 

学園に帰り着いたはいいものの、お互い寮には戻らず庭園の方へ向かった。

 

「……渡すもの、あるんでしょ」

「よく気づいてたな」

 

ばれないようにしていたはずなんだけどなぁ。

 

「わたしの目をごまかすなんて百年早いですよ」

「そりゃあまいったなあ。隠し事の一つもできやしない」

「なに?隠したいものでもあるの?」

「いや、そんなことないよ。でも、ちょっとだけ目を瞑っていてほしいかな」

「お安い御用ですよ」

 

あおいが目を瞑ったのを確認して、誕生日プレゼントとして用意していたネックレスを首にかけてあげた。

 

「目を開けてください」

 

あおいは目を開け、首にかかるネックレスを確認する。

 

「......なぁ、あおい」

「うん?」

「そのネックレスの意味、分かってくれるか?」

「……うん。もちろん」

 

あおいの首に下がっているのは、赤と青のバラ。

一方は自身の想いを。

もう一方にはあおいの色を添えた。

 

「誕生日、おめでとう」

「うん、ありがとう」

「それと。これからもよろしくな」

「うん。こちらこそ」

 

そしてどちらともなく近づいていき、月に照らされた影は一つになった。

 




これが誕生日企画の3つめになりますけども、お気に入りのアイドルたちのお話は本編の有無にかかわらず書いていく所存でございます。
ですので、活動報告等でアンケート等をとる場合に何か一言飛ばしてくれると、誕生日の特別編が本編を待たずしておそらく読めるでしょう。
確実に書く保証はありませんので悪しからず。

最後に、あおい姐さん誕生日おめでとうございます!


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”特別編” あおいの誕生日②

とりあえず、あおいちゃんお誕生日おめでとう!


1月31日。

あおいの誕生日だったが、今年は僕もあおいもお仕事が急きょ舞い込んできた。

お仕事が入るのは嬉しいんだけど、こういうときぐらいはなんとかならないものか、なんて数日前は二人して思っていた。

今年は大したことができないな、なんて諦めていたが、あおいは何か思いついたようで、目をキラキラさせながら僕へ言ったんだ。

 

「ねえ!温泉に行こうよ!」

「へ?温泉?」

 

あまりにも突拍子もない内容に、僕は変な声が出てしまった。

いや、だって温泉って答えは予想できないもん。

 

「そう。今回私たちの撮影の場所が結構近いじゃない?」

「そうだね。それで?」

「なんと程よい場所に温泉旅館があったのですよ」

「おおっ!」

 

なるほど、だから温泉に行こうって言ったのか。

 

「でも、お互い終わるのがそこそこの時間になるけど……。まさか、泊まり?」

「イエス!せっかくだし、こういったのもアリかなーって」

 

まるでかえでちゃんのようにノリノリのイエスだった。

でも、せっかくの誕生日なんだし、こういうのも悪くないか。

 

「いいね、それ!」

「じゃあ決まり!宿の予約は私からしておくから!」

 

そう言ってあおいは足早に教室から去って行った。

あ、部屋はどうするんだろう。

完全に聞きそびれちゃったなぁ。

まあ、しっかり者のあおいのことだ。

流石に二部屋取るだろう。

僕たちはまだアイドルなわけだし。

一応、公認カップルみたいに言われているけどもさ。

……まさかあおいちゃんに限ってそんなことはないはずだ。

……ないよなぁ。

 

△▼△

 

そしてあっという間にあおいの誕生日。

僕たちは撮影を終えて、少し山際にある温泉旅館へと到着した。

けっこうひっそりとたたずんでいて、芸能人がお忍びでやってくるそうだ(あおい談)。

それに、芸能人が安心して泊まれるくらい従業員さんの口が堅いらしい。

 

「どう?いい場所でしょ」

「ほんとにいい場所だね。静かで、ゆっくりできそうだ」

「でしょ?」

 

僕は雰囲気が気に入り、少し散策してみようと思ったけどあおいに止められた。

 

「日も落ちてきているから早く入ろうよ」

「そうだね」

 

1月末になって日の入りが遅くなったとはいえ、日が落ちると十分冷えるのもあって散策を断念した。

流石に寒いのはこたえるもんなぁ。

 

あおいに連れられて館中のロビーに入る。

少し古風な感じがありつつも高級感の感じられる作りだ。

明かりも電球色でホッとする。

 

「それじゃあ私はチェックインしてくるから、ここで荷物番してもらってもいいかな?」

「うん、いいよ」

 

僕はあおいの荷物を受け取ってロビーに設けられたソファーに腰掛ける。

あおいはカウンターにチェックインしに行った。

その間に、持ってきていた台本に軽く目を通す。

あおいからは、せっかく休みに来たのにって言われそうだけど、こういう時こそ台本が頭に入ってくるっていうもんだ。

だからこれだけは止められないね。

そんなことを思って台本に目を通していると、あおいが部屋の鍵を持ってやってきた。

 

「お待たせ。ってせっかくのオフに台本を読むなんて」

「いいじゃないか。とは言うけど、今日はこれ以上読まないよ」

「せっかくのオフなんだもん。お仕事のことなんて忘れてゆっくりしようよ」

「そうだな」

 

僕は立ち上がって荷物を持ち、あおいについて部屋に行く。

 

部屋は畳張りの12畳程ある比較的こぢんまりとした部屋だ。

もっと広い部屋が多いらしいけど、あまり広すぎても落ち着かないからこれぐらいがちょうどいいもんだ。

その部屋に荷物を置いて早々、あおいが言った。

 

「それじゃあ、まずは温泉に入ろう!」

「いきなりすぎやしませんかねぇ、あおいさんや」

「うーん、そんなことは無いと思うけど。だって、温泉に浸かって少しゆっくりしてたらもう夕飯だよ?」

「そういうことか。温泉旅館初心者にそんな考えはなかったなぁ」

「ってなわけで、さっそく温泉にGOだよ!」

 

そう言ってハイテンションで浴場へ向かうあおいに遅れまいと僕もついて行った。

 

△▼△

 

入浴と食事を終えた僕らは正座で向かい合うことになった。

その発端になったのは布団だ。

 

一般的に部屋で食事を済ますと、仲居さんが食事を下げてくれ、そのまま布団の準備をしてくれる。

僕らが泊まったところも、例に漏れずそうだった。

仲居さんが布団を敷き始めて、そろそろどちらかが部屋を移るのかな、なんて思っていた。

そして気づけば仲居さんは布団を敷き終え、すでに退室していたみたいだ。

あっという間の作業の速さに驚いていると、どうしようもない違和感が襲ってきた。

 

「布団が、二つ……?」

 

目の前には丁寧に敷かれたであろう布団が、二組並んで鎮座していたのである。

 

「あ、あおい。布団が二つあるんだけど、これって」

「そ、そうだよ。司が考えているので間違いないよ」

 

つまり、二人が同室(フラグ回収)なのである。

そして僕は迷わずあおいを正座させた。

 

「あおいさんや。もとからこうするつもりだったんで?」

「うん。だって、私ももう今日で18だよ」

 

あおいの言わんとしていることはわかるけど。

 

「でも、僕たちはアイドルだぞ」

「わかってるよ。でも、それ以上に私は司のことが好きだから」

「……そっか」

 

あおいは、本当に僕のことを好きでいてくれているんだ。

だからこそ、もっと深くつながりたいって思ってくれているんだ。

そう思うと、急にとてもあおいのことが愛おしく感じてきた。

だから、思わず抱きしめた。

 

「ちょ、ちょっと司!」

「悪い、あおい。あおいが僕を求めてくれるってことが嬉しくなって」

 

あおいは急に僕が抱きしめたことに驚きつつも、満更ではなさそうだ。

しばらく二人で抱き合って、自然と口づけをした。

今までで一番長く深いキスだった。

息が切れそうになりながらも、夢中でお互いを求めあう。

そして、ついに僕は耐えきれなくなってあおいを布団に押し倒した。

 

「あおい、いいか?」

「うん、来て」

 

僕らは、アイドルである前に将来を見据えた恋人同士。

だから今夜くらいはアイドルの仮面を脱いだっていいだろう。

この思いだけはごまかすことなんてできないんだから。




明けましておめでとうございます(遅)。
思っていた以上に投稿間隔が開いて驚愕している筆者です。
本年もよろしくお願いいたします。

間が空きましたがいっつも謝罪続きなんでもう謝りません(開き直り)。
この時期ってなんでこんなに忙しいんやろなあ(遠い目)。
不要不急の外出自粛?知らんなぁ、をやるしかないつらみ。
自宅じゃ何もできないのが辛いところ。
自宅で作業できるなら、多少執筆もはかどろうというものですが、そうそううまいこといきませんね。
年が明けて活動報告を書こうとも思いましたが、それよりもお話を書いた方がいいかなと思って書いてませんでした。
その時はまさかここまで投稿できないとは思ってませんでしたけども。
とりあえず、私は無事に生きておりますのでご安心ください。
流石に連載が残っているのに逃げたりもしませんので。

さて今回のお話ですが、ついに保険でつけていたR15タグが活きました。
とはいってもほんの少しですが。
あおいちゃんって、結構常識人かと思ったら意外と大胆なことまでやりますよね。
そんなイメージをもとにこんなお話を書いてみました。
唐突なのはご愛敬。
ちなみにあおいちゃんの本編の方ですが、絶賛難産中です。
お話の転機なので、いろいろとない頭で考えながら書いています。
ですので申し訳ありませんが気長にお待ちください。

最後に、アイカツプラネットについて語らせてください。
ついに放送が始まった訳ですがこれを読んでいる皆さんはどう思っていらっしゃるでしょうか。
私はなんだかんだ言いつつ楽しく見れています。
実写になろうが、ちゃんとアイカツですね。
ハナというトップアイドルの仮面をかぶりながらも、舞桜が成長して真のトップアイドルに向かっているのがいいですね。
あ、個人的に好きなキャラはるりちゃんです。

次の投稿がいつになるかわかりませんが、次回の本編までどうぞお待ちください。
それでは。


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ツバサ√
”特別篇” ツバサの誕生日


初期のアンケートに選ぶくらいには好きなアイドルなので、とりあえず誕生日だけでも、と思い書きました。
今回は珍しく投稿日以前に書き上げ、誕生日当日に間に合わせております。
それと、今回は珍しくR-15タグが生きておりますので、後半に少し匂わせな描写があります。
快く思われない方はブラウザバックをおすすめします。


「なあ司。今日が何の日だ?」

 

ツバサが笑顔で詰め寄ってくる。

ただし、目が笑っていないのだが。

 

「申し訳ございません」

「そうじゃない。今日は何の日だと言っているんだ」

「……ツバサの誕生日です」

 

その通り、今日はツバサの誕生日だ。

しかし、なぜこんなにもピリピリしているかというと。

 

「そうだ。で、忘れた言い訳は?」

 

僕が誕生日を忘れていました。

恋人の誕生日を忘れるとかいうポカをやらかし、今に至る。

 

「今更弁明などいたしません……」

「よし、わかった。それではおしおきタイムだ!」

 

今回のお仕置きはいったい何をさせられるんだろう。

 

「おしおきの内容は何でしょう」

「そうだな……。まずは私の肩を揉んでくれ」

「肩もみ……ですか」

 

疑問に思わなくはないが、やらかした以上文句は言えない。

 

「ほら、早くしろ」

「はいっ!」

 

急いで肩もみを始める。

揉んでみると、以外にも凝っているみたいだ。

まあ、S4としての仕事がなくなって少し仕事が減ったと思っていたからな。

 

「んっ、なかなかいいぞ」

「それはどうも。意外とお客さんも肩が凝っていらっしゃるみたいで」

「仕事が思っていたよりも減らなかったからな。それに、海外に行くことも考えているし」

「え?それは初耳なんだけど」

「今まで隠してたからな」

 

突然のカミングアウトに驚くが、ツバサの行動力を考えるとどこか納得する自分がいた。

 

「しばらく会えない日が続くだろう?だからお前に祝ってもらいたいと思っていたのにこれだよ」

「それは申し訳ありませんでした」

 

ツバサがここまで言ってくる理由がわかった。

それならば、精一杯奉仕をしなくては。

 

「お次は何をいたしましょう」

「次は膝枕だ」

「……これはお仕置きなのか?」

「私がお仕置きと言えばお仕置きだ」

 

疑問が残るが、この際関係ないだろう。

ツバサに満足してもらうことの方が大切だ。

 

「司になでられていると、やっぱり心が落ち着くな」

「それは結構なことで」

 

いつものツバサからは考えられないほど、柔く甘えたような声を出す。

 

「聞いたぞ。ヴィーナスアークに講師役で呼ばれるらしいな」

「もう知ってたのか」

「彼氏のことなんだ。知りたいに決まっているだろう?」

「そりゃそうだ」

 

僕もツバサのことは何だって知りたい。

でも、海外に行くことを知らせてなかったのはずるいと思った。

 

「あっちは女子校だと聞いたぞ。頼むから変な気は起こさないでくれよ」

「当たり前だろう。こんなにかわいい彼女がいるんだ」

 

その言葉に、ツバサが少しうつむいて頬を赤くしていた。

 

「あまりかわいいって言わないでくれ……」

「どうして?」

「言われ慣れてないから恥ずかしいんだよ……」

 

いつもクールに振る舞っているツバサとは思えない、かわいらしい理由だった。

 

「そういうところがかわいいんだよ」

「~~ッ!?」

 

さらに顔を赤くして悶えだした。

流石に僕も揶揄いすぎたと思い、ツバサが落ち着くまで頭をなでていた。

 

「なんでお仕置きをしている私がこんな目に」

「そりゃあ、ツバサがかわ――」

「わー!!それ以上言うなー!」

 

これ以上言わせまいとするツバサが、僕の口を封じに来た。

 

「うおぉっ!」

 

そして、勢い余って僕がツバサに押し倒される形になった。

 

「……」

「……」

 

お互い、無言になり、じっと見つめ合う。

 

「もうお仕置きは終わりだ。だから、次はご褒美タイムだ」

 

高等部の寮は、一人に対して一部屋が割り振られる。

つまり、この部屋には僕とツバサしかいない。

 

「ツバサ」

「なんだ?」

「愛してる」

「私もだ」

 

ツバサが僕の上にうつぶせになる。

どちらのものかわからない心臓の高鳴りが聞こえる。

今の二人は、真夏の太陽よりも熱く燃えている。




匂わせで済んでいるのは、作者の描写力の限界です。
それに、どのラインまで許されるのかがいまいちわかっておりませんので、こういう結果になりました。

とりあえず、ツバサ先輩はデレるとかわいいと思うんです。


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エルザ√
”特別篇” エルザの誕生日


いつになく猛烈な投稿です。
前回の投稿の後、UAが8000を越えまして大変感慨深く思っております。
本編をほったらかしての誕生日企画ですが、何卒お付き合いください。

さて、今回はエルザ様の誕生日です。
エルザ様が結構デレており、キャラ崩壊の可能性がありますのでご注意ください。
エルザ様って、甘えられる人を見つけたらとことん甘えそう、というのが筆者の考えですので。


今日はエルザの誕生日。

仕事があったこともあり、疲れをとるために少し早くパーティーから抜け、ネオヴィーナスアーク上の自室に戻ったのだった。

 

「なあエルザ、パーティーの方はいいのか?」

「パーティーよりも、あなたと一緒の方がいいわ」

「だって、今日はエルザの誕生日パーティーなんだぞ。主役がいなくてどうするんだ」

 

だが、主役であるエルザが部屋にやってきたのだ。

加えて、膝枕を要求している。

 

「主役がいなくたってパーティーは楽しいものよ。この部屋に来るときも、皆全く気にしていなかったもの」

「そうだったのか……」

 

恐らくみんなはエルザがここにいることをわかっているだろう。

エルザ自身は気にしないだろうが、僕が気にしてしまう。

 

「というか、男の部屋にそう簡単に入ってもいいのか?」

「大丈夫よ、あなただもの。お母さまも分かってくれるはずよ」

「え?ユキエさんは僕とエルザの関係を知っているのか?」

 

まさか事態に驚く。

 

「言ってなかったかしら?」

「聞いてないよ……」

 

エルザはまるで一度言ったかのような言い方だ。

まったく初耳なのだが。

 

「まあいいじゃない。これも私のお見合いを防ぐためよ」

「お見合い?どうして急に」

「私が太陽のドレスを手に入れてからというもの、いろんなところからお見合いの話がやってきたのよ」

 

これもまた初耳。

お見合いか……。

 

「それは困るなぁ」

「でしょう?だからお母さまに伝えて、もうお見合いの話が来ないようにしてもらったの」

「それなら納得。だけど、僕の命が心配だなぁ。変な人に狙われたりしそうなんだけど」

 

変なスキャンダルになっても困るし。

 

「大丈夫よ。このネオヴィーナスアークなら」

「確かに」

 

船の上なんだ。

ここほど安全なところはないだろう。

 

「それなら、今度ユキエさんにご挨拶をしに行かないと。娘さんを僕にください、ってね」

「そうね。それくらい言ってくれないと、このエルザ・フォルテが認めるに値しないわ」

「こりゃあ手厳しい」

 

まだ未成年の僕らに『結婚』といってもイメージはわかない。

でも、いずれそうなるのだろう。

 

「きっと、エルザはいい母親になれるんじゃないかな」

「母親ね……。いずれはそうなるのでしょう。でも、いい母親になんてなれるのかしら」

 

母親という言葉に、少し顔を暗くするエルザ。

いろいろと思うところがあるのだろう。

 

「なれるさ。なんたってエルザはパーフェクトだからね」

 

もうエルザは人に甘えることができるんだ。

あの時のエルザとは違うのだ。

 

「司……」

 

それに、もしわからなければ僕も一緒になって考える。

 

「エルザは、もう一人じゃないから」

「……そうね」

 

膝枕に横になっていたエルザが身を起こす。

 

「私はすでにパーフェクト」

 

そして僕を見据える。

 

「でも、あなたがいるともっとパーフェクトになれるの。だから、私についてきてくれるかしら?」

 

エルザが僕に手を伸ばす。

僕はその手をつかみながら答える。

 

「もちろん。どんなところでも」

 

僕がエルザの手を掴むと、エルザは強引に手を引いて僕を抱きとめる。

 

「それと、何か忘れていないかしら?」

 

そう言えばそうだ。

 

「誕生日おめでとう、エルザ」

 

それを聞くとエルザは不敵に笑う。

 

「結構なことね!」

 

 

~おまけ~

 

ドアの隙間からこっそりと覗く3人の影。

 

「なんだかぽかぽかしますね~」

 

アリアが二人の様子を見て言った。

 

「エルザがあんなに安心しているのを久々に見た気がする」

 

そう述べるのはレイだ。

ちょっと不満げなのは言ってはいけない。

 

「エルザ様、かわいい~」

 

普段見ないエルザの態度に惹かれるきらら。

 

今はエルザに気づかれていないが、気づかれたらただでは済まないだろう。

それでも皆、エルザが安心して身を任せられる相手がいることに喜んでいるのだった。




普段はキリっとしているエルザ様が、デレている姿って萌えますよね、っていう話です。
最後のおまけは、ヴィーナスアークってほぼ女の子だからこういうの大好きだよね、っていう先入観から書きました。
でも、実際あってもおかしくないよね?
ちなみに、書いておりませんが他にも見ている生徒はいます。

さて、次は蘭の誕生日です。
絶対に間に合わせます。

おかげさまで、評価バーに色がつく一歩手前となっております。
色がつくとうれしいなー(チラッチラッ
え?そんなことよりほんへ書けって?
はい。その通りでございます(真顔)。
ただ、蘭の誕生日まではご勘弁を。
蘭はアイカツで一番初めに好きになったアイドルですので、絶対書かせてください。

くだらないことでも結構ですので、感想もお待ちしております。
皆さんとのキャッチボールも楽しいので。
それではまた。


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蘭√
”特別篇” 蘭の誕生日


ツバサさんから続いた今までにない更新も今回で一区切りです。
そのトリを飾るのは蘭の誕生日企画です。
蘭、誕生日おめでとう!

評価の件とかいろいろと話したいことはございますが、あとがきに回させていただきます。


~蘭 side~

 

今日は私の誕生日だ。

いつもは両親に祝ってもらってた。

去年は学園で寮生活だから一人で過ごした。

だから、少し寂しかった。

でも、今年は違う。

今年は、いちごにあおいに――、恋人になった司もいるんだ。

 

その司が、今夜は珍しく私を呼び出している。

司なりに祝ってくれるんだろう。

今日は楽しい日になりそうだ。

 

~side out~

 

今日は蘭の誕生日だ。

いつも蘭に対してふざけた態度を取っているけど、今日は真面目にやらないと。

じゃないと後で何をされるかたまったもんじゃない。(小文字)

何はともあれ、今日は盛大に祝わないとな。

 

「もしもし、いちご?準備はどう?」

『準備万端だよ~』

 

それじゃあ蘭を迎えに行くとしよう。

 

△▼△

 

「司、待ったか?」

「いや、今来たとこ」

 

待ち合わせ場所の噴水に蘭がやってきた。

服装はあらかじめ言っておいたとおり制服だ。

そして蘭は僕の返事に対して少し顔をニヤつかせながら返す。

 

「とか言って。実は10分ぐらい前についてたんだろう?」

「それは言わないお約束だろう?」

「だって司だぞ?」

「失礼だな。今日は真面目にやってんの」

 

普段と違う僕がおもしろいのか、クスクスと笑っている。

 

「さあ、時間だし行かないとな」

「どこに行くんだ?」

「それはまだ内緒」

「んー、司に言われるとなんか腹が立ってくるな」

「いやなんでだよ!」

 

真面目にキメたはずが、結局普段の会話と同じようになってしまった。

まあ、これが僕たちの距離感だから仕方ないのかも。

 

「まったく、キメて損した気分だ」

「だって司らしくないんだもん」

 

失礼な。

僕だって真面目にやるときは真面目なんだよ。

それに、蘭といると素の自分でいられるから。

 

「じゃあ、もう変に気取るのはやめにしようかな。笑われるだけだし」

「悪かったって」

 

そうやって、いつものごとく会話をしていると、目的の場所へと到着した。

 

「着いたぞ。ここだ」

「ここって……」

 

ここはクリスマスパーティーに使った広いホールだ。

蘭の様子を盗み見ると、なんとなく察しているようだった。

 

「さあ、中へどうぞ」

「エスコート頼むぞ」

 

蘭の手を取り、扉を開く。

すると、たくさんのクラッカーが鳴り響いた。

 

「「「蘭。誕生日おめでとう!!」」」

 

皆で蘭を迎え入れた。

 

「みんな……。ありがとう!」

 

その後は、バースデーケーキを出したり、それぞれプレゼントを渡したり、食事をしたりして楽しんだ。

ジョニー先生もノリノリでダンスを踊ってくれたりした。

 

僕は、あおいと即興劇をやった。

僕が怪盗役で、あおいが警察役だ。

僕が蘭を盗みだそうとするが、あおいに阻止されて撤退するという簡単なものだったけど、イイ感じのアクションで盛り上がってくれた。

蘭に「お前を盗みに来た」って言ってお姫様抱っこをした時は、女性陣から黄色い声が飛んできた。

それに、蘭も頬を朱く染めながら満更でもなさそうにしていた。

蘭を置いて逃げる時、少し寂しそうな顔をしていたのにはちょっと応えるものがあったなぁ。

 

ともかく、結果的にはサプライズパーティーは成功だった。

蘭も少し照れくさそうにしているものの、とても楽しめているようだった。

 

△▼△

 

パーティーが終わり解散となった。

僕は片付けをしようとしたけども、いちごとあおいにやんわりと止められ、蘭と夜の散歩に繰り出した。

 

「お前が散歩に行こうっていうなんて珍しいな」

「自分でもそう思う」

「どうせいちごかあおいに言われたんだろうけどな」

「ご名答。さすが親友とあってよくわかってらっしゃる」

 

揶揄い交じりに返事をする。

 

「3人とも仲がいいよな」

「そうだな」

「あの蘭に友達ができたって聞いた時は驚いたもんだ」

「私も、あの二人と親友になれるなんて、あの時は思ってもみなかった。それに……」

「それに?」

 

ふと蘭の足が止まる。

そして蘭は少し顔を赤らめながら言う。

 

「お前と恋人同士になれたこともな」

「違いないや」

 

~side 蘭~

 

「なあ、司」

「なんだ?」

 

自然と、胸の内を明らかにしていく。

 

「私な。職業柄、今までほとんど友達に祝われたことがなかったんだ」

 

司は黙って聞いてくれている。

 

「家族に祝ってもらうことはあったんだけどな。だけど、この学校に入ってほとんど家に帰れないだろう?」

「ってことは去年は――」

「そう、一人で過ごしたんだ」

 

それを聞いて、司は表情を少し暗くする。

 

「別に司は気にする必要はないんだって。そもそも私が司に誕生日を教えてなかったんだから」

「でも、祝うくらいできたじゃん」

 

司が食って掛かるが、私はそれを抑える。

 

「いいんだ。だって今日こんなにも盛大に祝ってくれたじゃないか」

「それはそうだけど」

「じゃあそれで手打ちだ」

 

これだけ言ってもまだ司は納得しそうにない。

 

「ただ、それでも司がまだ申し訳なく思うなら、来年も、そのまた先も、私の誕生日を祝ってくれよ。もちろん恋人としてな」

 

私が全く退かないことに呆れたように、笑いながら司は言った。

 

「わかりました、お姫様」

 

言われてふっと顔が熱くなる。

 

「お姫様とか言うんじゃない!」

 

それでお互い緊張が解け、笑い出す。

これでいいんだ。

いや、私たちはこうじゃないと。

 

普通のカップルなら、もっとイチャイチャとするものかもしれない。

でも、私たちにはこの距離感がとても心地よかった。

 

「あ、そうだ」

 

司が私の前に出てくる。

そして、満面の笑みで言った。

 

「誕生日おめでとう、蘭」

 

さっきのは取り消しだ。

もう少し司に甘えてしまおう。




蘭は私がアイカツシリーズで一番初めに好きになったアイドルですので、力を入れて書いたつもりですが、読み直すとどこか物足りなさを感じてしまいますね(汗)。

さて、前回評価に色がつく手前と言いました。
すると何ということでしょう。
バーに色がついているではありませんか。
おかげさまで評価に色がつきましたー!(ドンドンパフパフ)
もちろん、これに慢心することなく頑張ってまいります。
応援よろしくお願いします!

つぎはゆめちゃんのお話かなー。
あっ、あおいちゃんのお話のプロット書けてないんだった。
これはヤバいですね☆(殴
はい。ふざけてないで頑張ります。


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そら√
スランプ


大っっっ変お待たせしました。
去年の12月に、メッセージでたかとさんからいただいていたアイデアをついに形にすることができました!
そらちゃんと新たなオリ主の作品です。
性懲りもなく新しく連載に手を出したのは反省しております。
許してとは言いません。
読んでいただけるだけでうれしいです。

主人公は司くんじゃありませんのでご注意を。


スランプ。

 

誰しも聞いたことがあるだろう。

不振や不調が続いたりする状態だ。

人によってその状態がどれだけ続くか違ったり、その抜け出し方も様々だ。

 

なぜこの話をしているか。

それは単純に俺が絶賛スランプ真っ只中だからだ。

 

「これも違う、これも違う……。何かが、何かが足りない」

 

ドレスのデザインを前に、俺は頭を抱える。

 

このスランプの始まりは、あの瀬名翼のデザインしたドレスを見てからだ。

ひとたびステージに出れば周りの目を集めるあのドレス。

恐らく軽い嫉妬も含まれているのかもしれない。

だが、あのドレスを見てからは自分のドレスに何かが足りないように思えて仕方がなかった。

それからは、デザインを書いては没にしている日々を繰り返していた。

そんな中、ドリームアカデミーから一日講師として来てくれないかという依頼を受けた。

なぜ俺が呼ばれたのかさっぱりわからずじまいではあったが、良い気分転換になると考え、僕はそれを受けることにした。

学生の若い考えは非常に刺激を受けるんだ。

逆に俺が得られるものもあるはずだ。

気持ちを切り替え、授業の準備へと移った。

 

△▼△

 

ドリームアカデミーの教壇に立って授業を行った。

思っていたよりも俺は有名人だったようで、歓待されていた。

講座に参加してくれた生徒の数も多かった。

ただ、俺のドレスのファンだという生徒が多かったこともあって、俺のドレスの模倣で始まったような作品が多く、刺激を得るには物足りないものになった。

もちろん、講師としての仕事を全うして生徒へのアドバイスと教育をすることはできた。

でもやっぱり物足りず、ドリームアカデミーの学園長へ学内の見学を依頼した。

 

「いいわよ。むしろウチの学校をしっかり見て驚いていらっしゃい!」

「は、はい」

 

なぜか目を輝かせて言われたが、許可を取ることができたので特に不満に思うことなく学内の見学へと移った。

 

△▼△

 

ドリアカにはデザインコース以外にも、アイドルコースとプロデューサーコースがある。

せっかくだから他のコースを見学しようと思っていたが、自分がデザインを生業としていることもあって自然と足がデザインコースの校舎へと向かっていた。

 

「いっけねぇ、つい足が向いてしまった。ただ来てしまったものは仕方ない。じっくりと見学させてもらおう」

 

教室内では、デザインの組み合わせについての授業からデザインの歴史まで様々な授業が行われていた。

独学で勉強していた俺はつい見入ってしまったが、さすがに廊下で見続けるわけにはいかない。

他の教室の見学に移ると、実際にドレスデザインからドレスを作っている教室もあった。

その教室の中で一際異彩を放っている生徒を見つけた。

 

「クルクルキャワワ」

「わあ、すごくかわいくなった」

「でしょう?」

 

その生徒はほかの生徒たちからアドバイスを求められると、的確に修正点を挙げ、ドレスのレベルを一段階上げていた。

 

「今度はわたしのもいいかな?」

「ええ、いいわよ。クルクルキャワワ」

 

その様子につい魅入られてしまった。

彼女がドレスに魔法をかけているような姿に。

 

「わあっ、綺麗!」

 

彼女はドレスに必要なものを的確に足している。

俺には彼女のような人のアドバイスが必要なのだろうか。

 

「あの、ひとついいかな」

「はい?」

 

その思いが強まって、つい話しかけてしまった。

 

「俺のドレスに必要なものって何かな」

 

常に持ち歩いていたデザイン張を彼女に見せ、尋ねる。

すると彼女は俺のデザイン張を取り、迷うことなく描き足しだす。

 

「クルクルキャワワ」

「これは……!」

 

自分の考えの中にないアイデアが描かれる様に、思わず俺は声を漏らす。

 

「どうやってこんな考えが思い付くんだ!教えてくれ!」

「……では、その前にこのドレスたちをどうやって描いたのか教えてくれませんか?」

 

言われたことがいまいち理解できていない。

 

「それは必要なのか?」

「ええ、ドレスを理解するうえでとても重要なことです」

 

さすがにそう言われて答えないなんてことはなく、ドレスのデザインを考えたときのことを話した。

この生地とフリルは似合う、とかリボンの位置はここがいいとか、ドレス自体に関わることを熱心に。

 

「なるほど。では、このドレスを着てくれるアイドルについては考えましたか?」

「いや、そんなことを考えたことはない」

 

俺の答えが気に食わなかったのか、彼女は呆れたように肩をすくめた。

 

「それでよく講師が務まったものですね、影山勉さん」

「なっ!?」

 

あって間もない学生から罵倒されるとは思ってもいなかった。

 

「まずあなたに足りないものは『ドレスを着てくれるアイドルについて知ること』です。アイドルについて学んでから出直してきてください」

 

否定できない俺は、半ば逃げ出すように教室をあとにする。

 

△▼△

 

~side そら~

 

「……でも、あなたのドレスへの熱い情熱には感服しました」

 

教室を出ていく影山の背中を見つめながら、小さく口に出す。

認められないと思っていた彼を少し認められたような気がした。




※注 彼らは初対面です。
そらちゃんが一方的に、デザイナーである勉くんを知っているだけです。

来月の更新でどのお話を書くかわかりませんが、どちらであっても気長に、でも楽しみに待って頂けると幸いです。

最近、ハーメルン内のアイカツ作品が全く更新されないのが悲しくてなりません。
もっとアイカツの作品増えてくれー!


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アイドル

約束を破ってしまい、申し訳ありません。
ですが、絶対に逃げることはしません!


イライラした気持ちのまま、アトリエに戻ってきた。

 

あの女生徒は何だったんだ。

アイドルについて学べ、だなんて。

何様のつもりだ。

 

見たところ、学内のデザイン科の生徒の中ではかなりの実力のようだった。

制作したドレスの一つや二つくらいはあるはずだと思い、すぐさまネット上でドリアカの生徒の作品を探し始めた。

その後思っていた通り彼女の作品を探すことをできたのだが、想定よりも数が多い。

完成度も高く、素直に感服するしかなかった。

加えて、彼女「風沢そら」はアイドルも兼業しているときた。

 

「アイドル、か……」

 

彼女について調べ、冷静になった頭で考える。

今までアイドルについて考えることはなかった。

アイドルはただ俺のドレスを着てくれる人だと思っていた。

 

「アイドルっていったい何なんだ」

 

俺はアイドルについて何も知らない。

ふと改めて画面を見ると、ライブの告知がされていることに気づいた。

 

「……見てみる価値はある、な」

 

いままでアイドルのライブを見たことがなかったが、アイドルを知るためだ。

アイドルのライブというものを見させてもらおう。

 

△▼△

 

ライブ会場はそれなりの広さがあるが、ほぼ満席。

ライブの詳細について調べてみると、新たなプレミアムドレスの発表会も兼ねているらしい。

 

「どうりで同業者が多いのか」

時間になり、ステージの幕が上がった。

 

 

東洋風の妖艶なドレスをまとった風沢そらがステージに上がる。

 

「ララララライ――」

 

――思わず見とれてしまった。

……これはドレスだけの美しさではない。

彼女とドレスのお互いが高め合い、これほども美しくなるとは。

彼女のダンスはドレスをさらに美しく見えるように、彼女のドレスは彼女自身をより美しく見せるように。

 

「これが、アイドル……」

 

アイドルはドレスのおかげでステージに立てると思っていた自分が情けなく思える。

アイドル達のパフォーマンスがあってこそ、ステージで輝けるのではないか?

アイドルという存在について次々に考えることが湧いてくる。

この答えを見つけることができれば、俺は確実に成長できるはずだ。

 

――そしてアイドルへの探求心も冷めやらぬ間にステージは終了した。

この心の赴くまま、彼女のところへ向かうことを決めた。

 

△▼△

 

「失礼します」

「あら、影山さんじゃないですか。こんなところまでどうなさったんです?」

 

そらは突然の来訪にも関わらず、なぜか落ち着いて応対する。

 

「この前、君に言われてアイドルのことについて調べたんだ。手始めにドリアカ所属のアイドルを調べてみると、なんと君を見つけた。さらに見てみると、なんと近々ライブをするときた。そこで君の実力を測るという言い方は良くないが、最初はそのつもりでこのライブに来たんだ」

 

ついデザイナーとしての説明口調でまくりたてる。

 

「でも、俺が間違っていた。君の言う通り、俺はアイドルについて知らなかった」

「つまり……」

 

学生に頼むということに気がひけるが、腹をくくる。

 

「俺にアイドルというものを教えてくれ!」

「……」

 

沈黙が痛い。

 

「わかりました。あなたにアイドルというものがどんなものか教えましょう。加えて、アイドルにとってドレスがどういったものなのかも知っていただきます」

 

彼女とは長い付き合いになりそうだ。

 

~side そら~

 

影山さんが私のステージを見に来るだろうことはわかっていた。

ドレスを見ると、彼が自分に正直な人であることがわかるくらいだ。

アイドルを知るという自分の疑問を解消しに来ることは簡単に予想できた。

予想はできていたのだけれど、ここまでまっすぐな人だとは思ってもいなかった。

 

ステージから彼を見つけることはできなかったが、いつになくいいパフォーマンスができたと思う。

なぜだか彼がステージを見ていると考えると、いつもより集中してステージに上がることができたのだ。

この理由はよくわからない。

私もまだまだ学ばなければならない。

アイドルとして、より輝くために。

 

ステージを終え、控室で待機していると影山さんはやってきた。

デザイナーの権力を使ってステージを見に来るくらいだ。

ここまで来ることも予想はできていた。

でも、頭まで下げて教えを乞うとは思わなかった。

彼もデザイナーである以上プライドはあるはずだが、ここまでドレスに対して真摯になれるとは思ってもいなかった。

ドリアカであったとき以上に、ドレスに対する思いを感じられた。

 

私は、彼を誤解していたのかもしれない。




車いじりという新たな趣味を持ってしまったがゆえに、読者の皆様を放置することになってしまい申し訳ありません。
冒頭に書いた通り、最後まで書きあげることだけは絶対にあきらめません。

でも、さすがにプロットを書かないとお話が滅茶苦茶になりますね(白目)
なんとかして、まずはプロットを仕上げなきゃいけないですね。

遅れましたが、2022年も頑張りますので応援よろしくお願いします。


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アイドルとデザイナー

皆さんはアイカツの映画見ましたか?
アイカツの映画を見た勢いでこれを書きました。
見たのは先週だけどね。


風沢のもとでアイドルとは何なのかを学ぶため、またドリアカへ足を運んだ。

 

芸能関係者を育成する学校である以上、一般的な学校に比べてセキュリティは厳しい。

そのため、校内に入るときに守衛で身分証明ができるものや、招待状のようなものが必要になってくる。

前回はドリアカ側から許可証を事前に受け取っていて、それを使って入門したのだが、今回は何も持っていない。

さて、どう入門すればいいのやら、となるが、今回は風沢が話を通しているとのこと。

若干いぶかしみながらも風沢の名前を出し自分の身分証を提示すると、問題なく入門することができた。

彼女はまだ学生とはいえアイドルでありデザイナーだ。

根回しという年齢以上の社会スキルを垣間見ることができた。

 

校舎内に入り風沢の指定した部屋の戸を開くと、三人以上グループになっている生徒が多く見受けられた。

彼女たちは会話に熱中しているのか、俺が部屋に入ってきたことに気づいていないようだった。

それほどまでに熱中する会話の内容が気になり、近くにいた一つのグループの方に耳を傾けた。

「今回のステージのイメージはこれだから、この曲でこのドレスを着るのがいいと思う」

「その曲だったら、私はこのドレスをお勧めするよ。最近作った傑作なんだ」

 

プロデューサーコースとデザイナーコースに在籍していると思われる生徒が、アイドルコースの生徒を挟んで会話をしている。

 

「こんなにすごいドレスを着てステージに立てるの!?じゃあ、曲をもっと表現できるようにレッスンを頑張らなきゃ!」

「いいね!じゃあこのレッスンがおすすめだよ」

「気に行ってくれてよかった。君のために作って正解だったみたいだね」

 

アイドルコースの生徒は、デザイナーコースの生徒が作ったドレスがお気に召したようで、見るからに興奮しているようだ。

ただ、デザイナーコースの生徒の放った言葉が耳に残る。

 

「誰かのために作ったドレス、か」

 

今まで何着ものドレスを作ってきたが、そう言ったことを考えたことがなかった。

いや、考える余裕がなかったという方が正しいか。

 

最初のうちは、自分の内にわいてきたものを形にすることで精いっぱいだったし、近頃は瀬名翼のつくったドレスのことばかり考えていた。

まあ、根本ではいいドレスができれば誰かが着てくれる、という傲慢な考えがあったかもしれない。

そう自責していると、誰かが近づいているのが感じられた。

十中八九アイツだろうが。

 

「今のでなんとなくわかったんじゃないでしょうか?」

「まあな」

 

横に並ぶ風沢の方を見ずに答える。

 

「言われなけりゃ気づかなかった。もっと冷静になれる人間ならこうもならなかっただろうがな」

「それでいいじゃないですか。スランプになったときは、どうしても周りが見えなくなってしまうものです」

 

諭すように風沢は言う。

 

「誰かの手助けでも、一歩前に踏み出すことができれば成長だと思います」

「教わることは悪じゃないと?」

「そういうことです」

 

そう言って風沢は部屋の扉の方へ向かう。

俺に背を向けながら一言。

 

「ついてきてください」

 

そのまま戸を開けて部屋を出ていく風沢。

その一言に従わないわけもなく、俺も後を追うように部屋を出た。

 

△▼△

 

連れてこられたのはアトリエ。

誰のかは言わずともわかる。

 

「ここは風沢のアトリエか」

「そう。ここが私のアトリエ」

 

所狭しと資料やデザイン案が並ぶも、整然としている部屋だ。

 

「私が高等部に移るタイミングでティアラ学園長が用意してくれたの」

「学生でブランドを立ち上げたんだ。しかも一躍有名になったブランドだし、学園としては当然だろうな」

 

それほど風沢のデザイナーとしての能力を買われているのだろう。

才能のある生徒に助力は惜しまないはずだ。

 

「で、俺をここに呼んだ理由は何だ?」

 

気になっていた本題をぶつける。

風沢は少し言いよどむようなそぶりを見せたが、俺に相対して言った。

 

「あなたに、私だけのドレスを作ってほしいの」

 

まさかの依頼に、俺は一瞬思考が停止した。

 

「……ちょっとまて。どういう風の吹き回しだ?」

「あなたが成長するためには、実際に誰かを思ってドレスを作ることが必要だと思うの」

「まあ、そうだな」

「けれど、あなたは誰か特定のアイドルを知ってるかしら」

「知らないな……」

 

確かに俺はアイドルのことを知らない。

どんなアイドルがいるのか知らない以上、アイドルのことを思って作るのは無理だったのかもしれない。

 

「あとは簡単。あなたが知っているアイドルは私だけ。そして採点するのも私」

「無理やりでは……?」

「嫌なら断ってもいいのよ。あくまでも効率的に成長が見込める方法として提示しただけだから」

 

若干上から目線なのがいただけないが、自分の殻を破るためだ。

この際、やってやるしかない。

 

「わかった。作ろう」

「決まりね。じゃあ、さっそく私のアイドルとしての方向性を改めて説明しておくわね」

 

まるで学生に弟子入りしたような感覚だが、現状これが最善策だ。

開き直った俺は、アイドル「風沢そら」についての知識を本人から学ぶのであった。

 

~side そら~

 

断られると思っていた提案に、彼が乗ってくれた。

彼の返事を聞いたとき、なぜか肩の力が抜けたように感じた。

まるで安堵したかのように。

 

デザイナーを目指したきっかけや、そのボヘミアンのミミさんとのことまで。

それ以上のことも、なぜだか自然と話していた。

彼はドレスのアイデアを得るために、必死で私を理解しようとしている。

それに応えるように、私も伝えられることは何でも伝えよう。

 

「これくらいかしら。これ以上はさすがに言葉にするのも難しいから」

「そうだな。でも、助かった。お前、いや風沢が何のためにデザイナーとアイドルを両立しているのかも理解できたと思う」

 

つい、彼の目を見る。

とてもまっすぐで、ぶれない瞳。

 

どうして私は彼にここまでのことをしてあげたいと思ったのだろう。

今はまだ、わからない。




そらちゃんがデザイナーになるきっかけは劇中にありましたが、アイドルもやるようになったきっかけの描写はなかったですよね?
その辺りが独自設定に効いてきそうな感じです。

ドリアカの高等部の設定も独自設定です。
悪しからず。

ここで少し映画の感想語りをば。
見てない方は、跳ばすかブラウザバックを推奨します。

いちごちゃんの同期組が大人になったところが描かれるとか普通思わないじゃん?
正直困惑して理解が追い付かなかったよね。
二回目見て何とか理解したけど、二回目は二回目でボロ泣きした。
一回目は衝撃が大きくて若干呆けた感じだけど、二回目はそれがない分ダイレクトに感情が出た。
とにかく一言で言うなら、やっぱりアイカツは最高ですね。
これからもアイカツを推していきたい所存です。

2月のライブも両日現地参戦しますので、対戦よろしくお願いします。

ではまた。(ライブ後に感情を整理するために書くかも...)


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デザイナー2人

アイカツMFF最高でした!!
これからもアイカツは終わらない!
ひとまず感想やら個人的なものはあとがきにて。


新たなドレスを考え始めてはや一週間。

アイデアは出てくるものの、どれもしっくりこない。

 

「うーん、何かが違うんだよなぁ」

「深く考えすぎているんじゃないかしら」

「そうかなぁ」

 

デザイン画を前に俺とそらはああでもない、こうでもないといい合う。

 

「私が言うものなんだけれど、まず私に似合うものを考えたらどうかしら?そのうえで、相手が喜ぶものを考えるのがいいと思うわ」

「そうだよなぁ……」

 

いままで機械的にドレスを作っていたこともあり、その時の癖が抜けなくなっているみたいだ。

ビジネスとしてやっていく以上必要なことだとは思うが、そればかりになってしまっていた自分に嫌気が刺す。

 

「これはもう根元から叩き直すしかないだろうなぁ」

「思っていたよりも根は深いみたいね」

「ちょっと自分が嫌いになりそうだ」

 

冗談めかして言うが、そらはけっこう重大に考えているようだ。

 

「私について教えられることは教えたつもりなのだけれど……」

 

腕を組みながら悩んでいるそら。

しかし、急に何かをひらめいたようでいい笑顔をこちらに向ける。

 

「影山さん、お出かけしましょう?」

「おでかけ……?」

「そう、お出かけ。外でいろいろ見て回って刺激を受けられるはず」

 

いろいろと聞きたいことはあったが、言葉ではなく行動で返されるのが目に見えるから、質問するのをやめた。

 

△▼△

 

ドリアカを出て向かったのは植物園。

動植物が好きだと聞いていたのもあって、特に驚きはしなかった。

 

「クルクルキャワワ……」

 

ただ、何かスイッチが入ってしまってずっとこんな感じだ。

たぶんピンとくるものがあって、つい自分の世界でアイデアを練っているのだろう。

そらの作るドレスはボヘミアンを意識しているといっていたが、その中でも花や植物が描かれているものが多い。

花に詳しくない俺は何の花なのかわからないが、何か思いが込められているはずだ。

 

「っ、危ない!」

「ひゃっ!」

 

植物を見ることに気を割きすぎていたのか、段差で足を踏み外しそうになったそらの腕をつかむ。

 

「大丈夫か」

「え、ええ」

 

スランプ脱出のためにいろいろと教えてもらい始めて気づいたことがある。

彼女は時折、無意識で動くことがあるようだ。

手癖で簡単なアクセサリーを作ってしまうくらいだ。

そのおかげもあって、比較的少ないレッスンの中でもダンスを習得することができるのだろう。

 

「足、ひねったりとかしてないよな?」

「ええ。平気よ」

 

本当に大丈夫そうな姿を見て、掴んでいた腕を離す。

若干頬が赤いような気がするが、踏み外しかけたことが理由だろう。

あまり女性の顔をじろじろ見ることもはばかられるし。

 

「おや?」

 

そらの方から目を逸らしたところで、ふと気になる花があった。

 

「なあ、そら。この花が何かわかるか?」

「このお花のこと?」

「そう、それそれ」

「これはナデシコね。色もいくつかあって、その色ごとに違う花言葉があるわ」

「花言葉か……」

 

今まであまり気にしたことがないものだった。

 

「意外とそういうものがヒントになるかもな」

「そうね。花言葉辞典があるから、アトリエに戻ったら渡すわね」

「ついでに写真付きの図鑑もあるか?」

「ええ、あるわよ」

 

もともとの目的から若干ずれているような気がするが、得るものがあったのは確かだ。

この後もしばらく植物園を見て回り、見たことのない花の知見を増やしていった。

 

△▼△

 

「今日はなんだか楽しかったな」

「そうね。私も一人で見て回るより楽しく感じたわ」

 

結局何かを得たような感覚はなかったが、まあこういうのもたまにはアリだろう。

 

「さて、帰ってどうしようか」

「今日知った花について調べて、何か描いてみましょう」

「そうだな。とにかく一度描いてみるのが大事だしな」

 

そらとの距離が若干近くなったような気がするが、まだ相手を理解するというレベルには程遠い。

何を考えてるかわかるレベルまで行かなくとも、せめて相手を思いやれるくらいにはならないといけないだろう。

まだまだ道のりは遠い。

 

△▼△

 

~side そら~

 

私の不注意が原因ではあるが、勉さんに助けてもらった。

彼は何でもないようなそぶりだったが、私の胸はなぜか早鐘を打っていた。

 

「大丈夫か」

「え、ええ」

 

体は問題ない。

ただ、この胸の高鳴りはいつもと違う。

 

「足、ひねったりしてないか?」

「ええ。大丈夫よ」

 

この気遣いが余計に鼓動を高鳴らせる。

 

勉さんが私を気にしていて、私の気づかない何かがあったのかと思った。

だが、勉さんは何事もなかったかのようにほかの場所を見ていた。

 

これはいったい何なのだろう。

もしかして勉さんに惹かれているのかしら。

 

中途半端に冷静になりつつ。

一度考えを放棄することにした。




アイカツMFFに両日参加してきたわけですが、声出しできるっていいですね。
STARRY PLANET☆のみんなを声で応援できたのは実にうれしいです。
アイカツ10周年の重みを体感してきました。

ライブが終わった当日は何もアナウンスがなかったので喪失感がすごかったですが、後日のコメンタリー上映でいろいろ情報が出されたみたいで少し安心しました。
そのためにもどんどん投資するんで、みんなも財布が許す限り金銭的に応援しましょう(ダイマ)。

ちなみに、執筆中にライブのアーカイブを作業BGMにしてましたが、捗りませんね...。

ひとまず、アイカツ大好き!ってことでまた次回。


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気づき

まだまだ私のアイカツは終わっておりません。
ちゃんと今週も投稿できました!!


デザインを考え始めてすでにひと月が経過した。

その間にいくつかデザインを形にしたが、どうも合わない。

 

「デザイン画ではいいんだけど、どうしても形にして着てもらうと何かごたっとしてしまうな」

「そうね。少し情報が多いかしら」

「となると、何かを減らすべきなんだが……」

 

花・アラビア模様・鳥の羽など彼女を構成する要素でドレスを作ってみたが、どうしても情報過多に感じてしまう。

彼女はこれを上手くまとめられていたのだろう。

 

「引き算というものも難しいなぁ」

「足すことは簡単だものね。きれいなものときれいなものを合わせて配置を考える延長線なのだけれど、一度型にはまってしまうと抜け出せなくなってしまうし」

 

本当にそらに必要なものは何なのだろう。

考えるもアイデアが出てこない。

一度頭を休ませることにしよう。

 

「一旦お茶にしようか」

「そういうと思って準備していたわ」

「助かるよ」

 

そう言いつつ、俺は持ってきていたお茶菓子を取り出す。

 

「用意がいいこと」

「そらが淹れてくれるお茶がおいしいから、お菓子もそれに合うものを、ってね」

 

最近はこうしてお茶を飲みながら会話することが多い。

もともとは、俺が偶然もらったお茶をそらに渡したとき、せっかくならここで飲もうということから始まったのだが、今はわざわざそらが茶葉を用意してくれている。

 

「なんとなくつかめてきたから、あと一押しってとこだな」

「そうね。パズルのピースだったらあと二つ三つってところかしら」

「歯がゆいなぁ」

 

そうは言うものの、こうやってそらと話して過ごすことが心地よい。

この時間が無くなることが惜しいと思えるくらいに。

 

「その……もし俺が納得のいくドレスを仕立てた後のことなんだけどさ」

「ええ」

 

なぜだかスムーズに言葉が出てこない。

 

「その後もここに来て、こうして何気ない話をしに来てもいいかな……?」

 

静寂が訪れる。

 

余計なことを言ってしまったか。

くっ……気恥ずかしくなってきた。

 

ちらりとそらの顔をうかがう。

呆気にとられたかのような顔だ。

だが、間もなく表情が変わり、満面の笑みに変わる。

 

「ええ、ええ!もちろんいいわ」

「そうか!ありがとう」

 

そらの答えにホッとする自分がいる。

 

「でも、そんなことわざわざ聞かなくたっていいのに」

「デザイナーにとってアトリエって秘密が多いところだろう?そんなところに用もなく踏み入るのは良くないと思っててな」

 

俺の言葉に、そらは首をかしげる。

 

「秘密が多いのは本当だけれども、見ず知らずの人でもない限り立ち入らせないなんてことはないわ」

「それはそうだけど、俺らはデザイナー同士だろう?」

「そんなことは関係ないわ。第一、私たちはもう仲間、友達のようなものでしょう?」

 

仲間、友達。

デザイナーではない友はいても、デザイナーで友と呼べるような人はいない。

それに、仲間なんて思ったこともなかった。

 

「仲間、か」

「嫌、だったかしら」

「そんなことはない。ただ、デザイナーの友達、仲間を持つのは初めてでさ」

「あら、そうだったの」

 

今思えば、相談ができるようなデザイナーの友達がいたら、これほどひどいスランプにはならなかったかもしれない。

 

「デザイナーを志始めてから、自分以外のすべてのデザイナーが敵だと思っていたんだ。身近にライバルになるような人もいなくてさ。だから若干天狗になっていたところもあると思う」

 

安心して気が緩んだのか、ふと思い出語りをしてしまう。

 

「だから、今だから言えるけど、本当はそらに教えを乞うことも屈辱だと思ってたんだ」

 

俺が愚痴のようにこぼす言葉を、そらは黙って聞いてくれる。

 

「今となっては、こうしてそらから俺の足りないものを教えてもらってよかったと思ってる。ありがとう」

「!!」

 

……そうか、なんとなくわかった気がする。

 

~side そら~

 

私はデザイナーとして本格的に活動を始めてからの影山勉しか知らなかった。

初めて知ったときの周りを敵視する姿や、一部のデザイナーに対しての見下すような態度が気に食わなかった。

でも、ドリアカに来た彼の姿を見ると、そんな態度のことよりも彼の空虚さが印象的だった。

どうしてこうも彼はこれほどまで足りないものが多いのだろうと。

そんな中彼と直接話す機会を得た。

だから、私は彼に構うことにした。

彼のドレスへの熱意を感じたことも大きい。

けれど今の彼は素直に応じないだろうと予測し、わざと挑発した。

それが上手くはまり、結果として今に至る。

 

虚ろだった彼はいつしか色を得て、見違えるような人間になった。

自らの足りないものを自覚し、それを得るために人を、仲間を頼るということを知った。

もう彼はスランプを抜け出し、素晴らしいドレスが作れるはずだ。

方向性を固めればブランドも成立させられるだろう。

 

……それに関しては良かった。

誤算だったのは、私が彼に惹かれ、恋に落ちてしまっていることだった。

彼のドレスへの真摯な態度、ふとした時のやさしさなど、はっきりとわかるところだけでなく、意識しないとわからないようなところでも惹かれてしまっている。

 

だから、彼がここに遊びに来てくれることがわかってうれしかった。

極めつけは彼の笑顔だった。

『ありがとう』と優しく微笑む姿に、つい胸が高鳴った。

 

この思いを彼にどう伝えよう。




そろそろそらちゃんのお話が終わりそうな予感。
次は何を書こうかしら。
今まで書く書く詐欺していたローラのお話のリメイクか、誕生日だけ書いていたアイドルたちのお話か、はたまた全く始めからなのか未定です。
でも、恐らく何か書くとは思いますのでご安心ください。

あ、あとアンケートの回答ありがとうございます。
単純な興味だったのですが、結構割れていますね(なお母数)。
いちご世代が多いのは納得です。
プラネットが好きな方がいたのもうれしい!
これからもプラネットを推していきましょう。
え?ブルーレイBoxですか?
調子こいていたら予約しそびれて手に入りませんでしたよ(白目)。

ではまた。


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おまけ他
司くんの設定+α


お待ちかねの司くんの設定です。
それでもって連投です。
こんなに投稿間隔が短いのは初めてですね。
褒めて褒めてー(乞食)

ちなみに、これからのお話次第では設定の追加や変更等もあります。


氏名:飯島 司(いいじま つかさ)

性別:男

所属:スターライト学園男子部(架空)、もしくは四ツ星学園男子部の劇組(架空)

年齢(学年):作品によってまちまち(それぞれがパラレル時空だからね)

・四ツ星学園に在籍している場合は、基本的に15歳→16歳

・スターライト学園に在籍している場合は、ヒロインによって変動

・スターライト学園所属のアイドルがヒロインの場合(美月さんは除く):いちごちゃんと同学年になる年齢

・ドリアカ所属のアイドルがヒロインの場合:上に同じく

・WMの場合:WMの二人と同学年

主なアイカツ:特撮ヒーロードラマに出演。それ以外にも演劇やダンスに力を入れている。

身長:166cm(年齢によって前後)

体重:56kg(同上)

好きなもの:甘いもの。おいしいご飯。元気な子供たち(園児のこと)。

苦手なもの:辛いもの。

特技:体を動かすこと。

誕生日:7月27日

特徴:中性的な顔立ち。それでいてやや童顔。どちらもコンプレックスを感じてはいるものの、一応受け入れてはいる。どちらかというと身長の低さが気に入らない。これから成長していくのか少し不安になっている。

基本的には真面目な性格。常識人なためツッコミ側ではあるが、自分の他に常識人がいるとその役割を放棄してボケに回る。少し天然。

人にやさしく、めったに怒らない。

人の世話を焼くことが好き。加えて子供たちが好きなので、子供の世話も好き。

自分でもおいしい料理が作れるようになりたくて、絶賛料理のお勉強中。

水上バイクと原付二種の免許持ち(16歳の設定時)。

 

裏話

名前は仮面ライダーに関するところから取りました。

苗字の飯島は、エグゼイド/宝生永夢役の飯島寛騎さんから取らせていただきました。

名前の司は、言わずもがな世界の破壊者さんこと門矢士から取りました。

漢字が違うのはわざとです。名前の全体の雰囲気からこちらが合うと思い、司の字に変えました。

士をイメージしたのは、ディケイドのようにルートの数だけ様々な世界がある、ということが背景としてあるからです。

誕生日は、この小説の初投稿日より決定しました。

 

おまけ(というか文字数稼ぎ)

 

氏名:海東大毅(かいとう だいき)

性別:男

所属:司の所属と同じ

年齢:司と同じ

主なアイカツ;司と同じヒーロードラマに出演。

身長:170cm(年齢により前後)

体重:58kg(同上)

好きなもの:噂話、流行りもの(言ってしまえばミーハー)、司(もちろん友として)

嫌いなもの:他人を蔑む人、

特技:体を動かすこと

誕生日:1月10日

特徴:実は小学校の頃から司のことを知っている。といっても、名前を知っているというくらい。(クラスが一度も同じにならなかったから。ストーカーじゃないよ)中学で同じクラスになり、同じ作品に出演したことで親友と呼べる関係まで発展。(言ってしまえば、接点がなかっただけ)

司よりも身長が高く、顔もすらっとしたイケメン顔。

司の相談役的立場。

 

裏話

モチーフは司の裏話からも察せられるように、怪盗ことディエンドの海東大樹から。

士と来れば海東かな、というその場のノリで決めました。

誕生日はテキトー。

一応、かい(1)とう(10)と読めるからでもある。




海東の内容が薄いのは仕様です。
悪く言ってしまえば名前のあるモブですので......。

ヒロインがたくさんいて、そもそも学校が違うということもあり得るのでめちゃくちゃ複雑です。
うまくまとめられると良かったのですが、なかなかそうもいかないですね。
ただ、司くんいい子ですねー。


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一周年記念のおまけ ”司くん女の子になる”

とうとうこの作品を投稿して一年が経ちました!
読んでくださる皆さま、本当にありがとうございます。

さて、今回は普段書かないようなおふざけをしております。
ぜひ頭のねじを緩めてお読みください。


目が覚めると、女の子になっていました。

 

「は?」

 

よくあるTSモノみたいに、洗顔をしようとしたところで気づきました。

 

「どうしたらいいんだ……」

 

これは司くんが女の子になってしまった場合の各ヒロインたちの行動をまとめたものである。

 

~ローラの場合~

 

(司先輩に呼び出されたのは嬉しいんだけど、なんだか切羽詰まってたなぁ。声も普段より高かったし)

 

校内のベンチで司を待つローラ。

そこに、綺麗な黒髪の少女が現れる。

 

「ローラっ!」

「?」

 

自身を呼ぶ声に振り向くと、見覚えのない少女がいた。

綺麗な黒髪を背中の中ほどまで伸ばし、何にも留められることなく風に揺られている。

どこかあどけなさを感じる顔に、知った顔を思い浮かべるが、結局のところ誰かはわからない。

 

「どちら様ですか?」

「僕だよ。司だよ」

 

司は自分だということをアピールするものの、学生証を見せるまでは納得していなかった。

学生証を見せてもあまり納得はしなかったけれども。

 

結果:そもそも司だとわからない。

 

~ゆめの場合~

 

(司先輩から呼び出されたけど、どうしたんだろう。声色も焦っている感じだったし)

 

「ゆめちゃん!」

 

呼ばれた声に振り向くと、どこか司に似た少女を見つける。

 

「あれ?司先輩……の妹さん?」

「僕に妹なんていません!」

「え?!じゃあ、司先輩なんですか?!」

 

まさかの事態に少し困惑する。

でも、もしやこれって……。

 

「先輩、男子寮だといろいろ不都合じゃないですか?」

「いや、それはそうなんだけど、それより元に戻る方法を――」

「それじゃあ、私の部屋に行きましょう!」

 

そう言いだしたゆめちゃんに、司は腕を引かれて部屋へと連れられる。

 

結果:消去法的に気づき、ここぞとばかりに部屋へ連れ込む。

 

~香澄姉妹の場合~

 

(頼れる相手がこの2人しか思いつかない……。でも、何をされるかもうすでに予想できてしまう自分が怖い)

 

「ねぇお姉ちゃん。あれって司先輩じゃない?」

「あら、そうね」

「あ。お、おはようございま――」

 

僕があいさつを返し終わる前に、二人に捕まった。

 

「女の子になっちゃったのねぇ」

「こんなこともあるのね」

 

二人の目が怖い。

まるで野獣の眼光みたいに光る。

 

このあとどうなるかは、わかりきったことだった。

 

結果:パッと見だけで気づき、その後目を輝かせながら司を着せ替え人形に。

 

~セイラの場合~

 

(司から通話がかかってきたけど、声の高さがいつもと全然ちがったな。いったいどうしたんだろう)

 

「おーい、セイラー」

 

声がした方を見ると、見たこともない女の子の姿があった。

でも、聞き覚えのある声だ。

 

「まさか、司なのか……?」

「そうだよ!」

 

気づいてくれたことが余程うれしかったのか、司は目にすこし涙を浮かべる。

 

「気づいてくれてよかったぁ~」

「私は耳がいいからね。それで、これからどうするの?」

「実は、全く考えられなくて。こうなってしまったことで頭いっぱいになっちゃってさ」

 

司は少し恥ずかしそうに頭を掻きながら言う。

 

「じゃあ、とりあえず私の家においでよ。パフェでも食べながらじっくり考えよう」

「うん。そうする」

 

その後、セイラは司を落ち着かせるためにいろいろと気を利かせるのだった。

 

結果:声で気づき、真面目に面倒を見る。

 

~みくるの場合~

 

(司から緊急の連絡だなんて珍しいな。声が変に裏返るくらいのことなんだろう)

 

「みくるー!」

 

みくるを呼ぶ声がする。

無意識的に、おそらく司だろうと判断したが、見た先には別人がいた。

 

「……誰?」

「僕だよ。司だよ!」

 

別人だけど、どこか司らしさも感じられる。

 

「本当に司なの?」

「そうだよぉー」

「じゃあ、学生証見せてよ」

 

みくるの言葉に応じ、司は学生証を見せる。

その学生証でようやくみくるは納得したみたいだ。

 

「これはまた災難だねぇ」

「災難というか、僕の人生がまるっきり変わってしまうほどの大事件なんだけど」

 

他人事のように笑うみくる。

 

「まあ死んだわけじゃないし、なんとかなるでしょ」

「それはそうだけど……」

「じゃあ問題ないじゃん。さ、どうせ今日は暇だろうからお店の手伝いしていってよ」

 

普段と変わらないみくる手を引かれ、いつものガーデニングショップへと向かうのだった。

 

結果:直感的に司に気づき、普段と変わらない態度で接してくれる。

 

~あおいの場合~

 

(司くんが一大事って言ってたけどどうしたんだろう。とりあえず言われたまま来たんだけど……)

 

「おーい、あおいー!」

 

聞きなれない声に振り向くと、あおいからして初めて見る女の子の姿があった。

 

「えぇっと、どちら様?」

「僕だよ。司だよ」

 

まさかの答えに頭が一瞬フリーズするも、所々の特徴が司と同じだったため納得がいく。

 

「えっと、本当に司くんなんだよね?」

「うん。なんなら学生証もあるよ」

 

そこで、ふとあおいの頭の中に欲望が目覚める。

 

「ねえ、司くん」

「なに?」

「もっとかわいくなってみない?」

 

結果:類いまれなる観察眼によって気づき、女の子としてかわいがろうとする。

 

~ツバサの場合~

 

「えーっと、君が司だっていうのか?」

「うん」

「えぇ……」

 

突然の連絡に飛び出してみると、かわいらしい女の子がいた。

そしてその子は、自分自身をツバサの彼氏である司だというのだ。

 

「何か証拠はないのか?」

「えーっと、学生証とか?」

「他にはないか?例えば私と司しか知らないようなこととか」

「……人がいないとき、ツバサは甘えん坊」

「ッ!」

 

自分で訊いておきながら、恥ずかしさに悶えてしまう。

 

「と、とりあえず司だというのはわかった。だから、これからどうするのか考えよう」

 

自分で話を変え、これからを考える。

まともに考えるといろいろと問題が山積みだ。

 

結果:確信を得るための質問で自爆するも、司だとわかる。その後真面目に解決策を練る。

 




いかがだったでしょうか。
まあ、香澄姉妹とあおいちゃんはある程度予想できたとは思いますが。
今回は、今までルートを作った人たちを登場させました。
来年まで続けば、新たなルート版も書けるかもしれません(なお需要)。

これからも書き続けてまいりますので、応援よろしくお願いいたします。
相変わらず、評価と感想の乞食ですので、よければよろしくお願いします。

ここ最近の更新頻度の高さ、褒めて(直球)
ちなみに、もうすぐエルザ様と蘭の誕生日です!
頑張るよ(自分で逃げ道を無くすスタイル)。


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