約束は明日を生きる道標 (甘党ゴンザレス)
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プロローグ


どうも甘党ゴンザレスです!!

新しく執筆始めました!!今回はプロローグを更新したいと思います!

同時並行での執筆になりますが、読んで頂ければ幸いです。

それではどうぞ!!


俺は仏壇の前で手を合わせる。

 

優馬「行ってきます。兄貴。」

 

兄貴の写真を見て俺は静かに告げる。

 

すると、俺の心臓が強く鼓動する。

 

学校に行く前に兄貴の仏壇に挨拶を交わすことが今では俺の日課になっている。

 

兄貴は本当にかっこよくて、俺の憧れ。

 

でも、そんな兄貴との突然の別れが中学校の時に訪れた。

 

※※※※

 

悠雅「おい、優馬!あんまりヤンチャするんじゃないぞ!」

 

俺は兄貴である、神崎悠雅に怒られた。

 

優馬「うるさいな、しょうがないだろ??向こうから喧嘩売ってきたんだから。それに俺は絡まれてた奴を助けただけだ!」

 

悠雅「それにしても、もっと上手いやり方があったろ?」

 

優馬「まぁ…。そうかもしれないけど…。」

 

俺の兄貴は優しくて頼りになる、俺より一歳上の生徒会長。俺の目標で、憧れの存在。

 

悠雅「男ってのはな。喧嘩すればカッコいいってわけじゃないんだ。誰かの為に優しくなれる。誰かの為に涙を流せる。お前はそれができる奴なんだ?だから、お前がやったことを間違いとは言わないがこれからは気をつけろよ?」

 

優馬「わかったよ…兄貴。」

 

帰り道そんな他愛のない話をして帰っていた。

 

すると後ろから、

 

??「ゆうくーん、ゆーにい!!」

 

2人の女の子がこちらに呼びかけながら走ってきた。

 

悠雅「おう!千歌、曜、どうしたんだ?」

 

この2人は俺たちの幼馴染で高海千歌と渡辺曜だ。

 

2人とも優しくていい子だ。

 

曜「帰ろうとしてたら、2人が見えたから走ってきちゃった!!」

 

悠雅「そうだったのか、じゃあ一緒に帰るか?」

 

曜・千歌「「うん!!」」

 

2人は笑顔で頷いた。

 

そして千歌が俺の方を振り向くと俺の喧嘩で出来た傷に気がついた。

 

千歌「あれ、ゆうくんまた喧嘩したの?ダメだよ喧嘩しちゃ!!」

 

優馬「しょうがないだろ?絡まれてた奴を助けたんだから!」

 

曜「でも、心配するんだからもうあんまりしないでよ?」

 

曜が俺の傷の部分に触れながら言ってくる。

 

優馬「ちょ、いてーよ!!」

 

悠雅「ハハッ!!優馬はモテモテだな♪」

 

兄貴は豪快に笑いながら俺に言ってきた。

 

優馬「兄貴、助けてくれよ…。」

 

悠雅「自業自得だな。さぁ帰るぞ!」

 

兄貴は先に歩を進め帰路に着いた。

 

そこからは他愛のない話をしているとあっという間に家の近くまで来ていた。

 

悠雅「さてそろそろ着くな。」

 

千歌「えー、もっとお話ししたい!!」

 

千歌が駄々をこね始める。

 

悠雅「はぁ…。ちょっとだけだぞ?」

 

千歌「ありがとう!!ゆーにい!!」

 

道の端に寄り俺たちはもう少しだけ話すことにした。

 

俺たちが話していると軽トラックがこっちに向かって走ってきていた。

 

優馬「ん?あの軽トラなんかおかしくねぇ?」

 

俺は違和感を覚えみんなに伝えた。

 

曜「確かに…なんだかこっちに来てるみたい…。」

 

まさかな…。

 

俺は悪い予感はしたもののきっと大丈夫だろうと思い、視線を戻そうとする。

 

その瞬間

 

悠雅「っ!?」

 

兄貴が異変に気がついた。

 

悠雅「おい、あの運転手気を失ってねぇか!?」

 

兄貴は運転手を指差す。

 

兄貴は目が凄くいい。だから気づいたのだろう。俺には全然わからなかった。

 

優馬「本当に!?それが本当なら大変だ、助けないと。」

 

千歌「でも、どうやって…。」

 

話している間にもトラックはドンドン迫ってきている。しかも、スピードが徐々に上がっている。

 

悠雅「とりあえず、近くの家の人に警察に連絡してもらおう!!」

 

優馬「そうだな、そうしよう!!」

 

しかし

 

俺たちが動こうとした時にはもう遅かった。

 

軽トラは俺たちの方に突っ込んできていて、このままでは全員死んでしまう。

 

それなら…。

 

俺は兄貴とアイコンタクトを取る。

 

すると兄貴も同じ事を考えていたらしい。

 

さすが、兄貴だぜ…。

 

母さん、父さんごめんな…。多分俺と兄貴は死ぬかもしれない。兄貴よりも手をかけてもらって、ここまで育ててくれたのに。出来の悪い息子で本当にごめん。

 

俺と兄貴は千歌と曜の壁になった。

 

ドンッ

 

鈍い音と共に軽トラックは俺たちを跳ね飛ばした。

 

痛い…痛い…。

 

何とか千歌たちのことは庇うことが出来た。兄貴の方を見ると兄貴はピクリとも動かない。

 

兄貴?

 

俺も動こうとするが、急に意識が朦朧としてきた。

 

千歌「ゆう…くん…嘘…。」

 

千歌の声が聞こえる。

 

その言葉で俺はやっと理解した。

 

どおりで動けないわけだ。

 

俺の胸に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄パイプが刺さっているのだから。

 

千歌「ゆうくん!!ゆうくん!!しっかりして死んじゃやだよ!!」

 

千歌はポロポロ涙を零しながら叫んでいる。

 

折角の可愛い顔が台無しだ…。

 

俺はそんな千歌に声をかけようとするが、声が出ない。

 

優馬「ガハッ!!」

 

俺は口から沢山血を吐いた。

 

千歌「ゆうくーん!!!!」

 

もう、ダメみたいだな…。

 

俺…死ぬのか…。なんだか呆気なかったな。でも幼馴染を守ることが出来たんだ、後悔はない。

 

兄貴、ごめんな…。

 

いつも悪態ついちゃって…。でも、俺は本当に兄貴の事を尊敬してるんだ。誰よりも強くて、誰よりも仲間思いで、誰よりも家族思いで、人の為に笑い、人の為に泣ける。そして誰よりもカッコいい。そんな兄貴のことが大好きだった。

 

俺は死ぬけど神さま、どうか兄貴の事を助けて下さい…。

 

薄れ行く意識の中俺は兄貴の方を見て笑うと静かに目を閉じた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺は死んだのかな。

 

まぁ間違いなく死んだだろうな。

 

なんてったって今俺はよくわからない空間を彷徨っているのだから。

 

優馬「はぁ…。俺死んだんだな…。」

 

 

 

??「いや、お前は死んでないぞ。」

 

優馬「誰だ!!」

 

俺は勢いよく振り返った。

 

優馬「っ!!」

 

そこには1番いて欲しくない人物がいた。

 

優馬「兄貴…。」

 

悠雅「わりぃな…。俺は死んじまったんだ。脳死だってよ。安心しろ?千歌たちは無事だ。」

 

優馬「よかった…。俺は心臓に鉄パイプが刺さったんだ。俺も流石にダメだよ。」

 

俺は兄貴に苦笑いを浮かべる。

 

悠雅「でも、お前は今生きてる。」

 

真剣な表情で兄貴は俺に言ってくる。

 

優馬「どういう…ことだよ…。」

 

俺は恐る恐る尋ねる。

 

悠雅「俺はな、脳死状態で病院に運ばれたんだ。心臓は動いてる。でもお前は心臓が動いていない…。それで、病院の先生が俺の心臓を優馬に移植すれば助かる可能性があると提案したんだ。」

 

悠雅「俺はもう植物状態にしかならない。それなら可能性がある方をとった。今、先生たちが手術してくれてると思う。おそらく優馬は生き延びれるだろう。俺もその方が嬉しい。」

 

優馬「なん…で。」

 

俺は言葉を失った。

 

悠雅「当たり前だろ?」

 

 

 

 

 

 

悠雅「お前は俺の…大切な弟だ。」

 

 

 

 

 

俺は涙が溢れ出した。

 

優馬「アニ…キ…。ごめん…。ごめんな…。」

 

泣きじゃくる俺を兄貴は優しく抱きしめてくれた。

 

悠雅「泣くなよ…。お前が泣いてると安心して逝けねーだろ?」

 

悠雅「だから、優馬!!俺の代わりにみんなのこと守ってやってくれ。母さんと父さんを頼むぞ?お前にはその力があるんだ。」

 

優馬「俺が兄貴の代わりに…。無理だよ、そんなの!!」

 

俺は自分の胸の内をさらけ出す様に叫ぶ。

 

優馬「俺なんかじゃ兄貴の代わりなんて務まらない!!こうなるんだったら俺が死んで…。」

 

パチンッ

 

優馬「っ…!?」

 

俺は頬に痛みを感じた。前を向くと兄貴が普段では見せない様な表情をしていた。

 

悠雅「ふざけんな!!」

 

悠雅「俺はお前に生きて欲しいんだよ!!お前は本当は俺なんか比べ物にならないくらい強くて、誰よりも優しいんだ…。そんなお前だから俺は安心して任せられるんだ。」

 

優馬「兄貴…。」

 

悠雅「お前は俺の誇りなんだ…。」

 

兄貴の言葉で俺は決心した。

 

優馬「わかった…。」

 

優馬「兄貴の弟はこんなに凄いんだってところをみんなに見せてくる!!だから…後は任せてくれ。」

 

俺は兄貴の目をしっかり見て強い意志を示した。

 

兄貴はそんな俺を見て笑顔を見せた。

 

悠雅「それでこそ、俺の自慢の弟だ!!」

 

俺はその言葉が何よりも嬉しかった。

 

悠雅「さて…そろそろ、お別れだな…。」

 

兄貴は俺の事を見てそう呟いた。

 

俺は自分の体を見ると、だんだん体が薄くなっていることに気がついた。

 

優馬「そうみたいだな…。あ、兄貴!?」

 

俺は目の前の光景に絶句した。

 

あの、兄貴が涙を流している。

 

悠雅「わりぃな。お前と別れるのがこんな辛いと思わなかった…。情けない兄貴でごめんな?俺、立派にお前の兄貴でいられたか?」

 

優馬「当たり前だろ!!兄貴は誰よりもカッコよくて、俺の憧れだったんだ!!俺は兄貴が俺の兄貴で本当によかった…。」

 

悠雅「そうか…。それならよかった。これで思い残すことはないな…。」

 

悠雅「頑張れよ、優馬。みんなのこと頼むな。約束だ。」

 

優馬「ありがとう…兄貴。その約束絶対守るよ。」

 

俺の体がほとんど消える直前に最期の別れを告げてきた。

 

悠雅「元気でやれよ。俺はこれからも優馬をいつまでも見守ってるからな。」

 

優馬「ありがとう…兄貴。これからも、俺を見守っててな。」

 

その言葉を最期に俺の体は完全に消え去った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

優馬「ん…あぁ…ここ…は…?」

 

俺は白い天井を見上げ呟いた。

 

母さん「優馬!!」

 

母さんが俺を抱きしめてくれる。

 

あったかいなぁ…。

 

母さん「よかった…本当に…よかった…。」

 

優馬「母さん…俺…兄貴の分まで…精一杯生きるよ。」

 

母さん「えっ…優馬…アンタ…。」

 

優馬「兄貴が全部教えてくれたんだ。それに兄貴はここにいるんでしょ?」

 

俺は自分の左胸を触る。

 

優馬「兄貴は俺の中で生きている。これからも兄貴と一緒に精一杯生きて、みんなのことを守るから。それが兄貴との約束。」

 

俺は兄貴と約束したんだ。

 

これからは俺が兄貴みたいに強くて優しい人間になってみんなを守っていくんだ。

 

優馬「見ていてくれよ。兄貴…。」

 

※※※※

 

俺は靴を履き学校へ向かおうとすると。

 

??・??「「ゆうーくーん!!学校行こー!!」」

 

外から元気な声が聞こえてくる。

 

優馬「全く…。朝から元気な奴らだな。」

 

優馬「なっ。兄貴…。?」

 

俺は自分の左胸に問いかける

 

優馬「これからは俺があいつらの事を守っていくからな…。」

 

優馬「これからも俺たちのことを見守っててくれよ…?」

 

俺は兄貴が命を懸けて守ってくれた幼馴染と一緒にこれからも頑張っていくよ。

 

 





ご愛読ありがとうございます!!

次回から本編に入っていこうと思います!!

同時並行での執筆になると思いますので、更新頻度は遅いかもしれませんが読んで頂ければ幸いです!!
次回で今作のヒロインであるダイヤさんを出したいと思います!!

では次回!!


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出会いは最悪


どうも甘党ゴンザレスです!!

投稿が遅くなりましたが新しく更新させていただきました!

設定など諸々がガバガバですが、よろしければご覧ください!!

それでは本編どうぞ!!


俺が玄関を開けるとそこには二人の大切な幼馴染が立っていた。

 

千歌「おはよ〜、ゆうくん!!」

 

曜「優、おはヨーソロー!!」

 

兄貴が命を懸けて守ってくれた俺の…いや、俺たちの大切な幼馴染。

 

優馬「おはよう、千歌、曜。」

 

優馬「そう言えば、今日はやけに早いけどどうしたんだ?」

 

俺は腕時計を見ながら千歌たちに疑問をぶつけた。なぜなら俺はいつも早くに学校に登校しているのだが、千歌たちはいつも遅刻ギリギリで登校してくるからだ。

 

千歌「そ・れ・はバスの中で話すよ♪」

 

優馬「そっか、わかった。じゃあ行くか?」

 

千歌・曜「「はーい!!」」

 

元気に返事した二人と一緒に俺はバス停へと向かった。

 

バスに乗り込み一番後ろの空いている席に腰掛ける。

 

曜「優、最近体の調子はどう?辛かったりしない?」

 

曜が心配そうに俺のことを見つめてくる。

 

優馬「心配すんな!俺は元気だし、兄貴も元気に俺の中で生きてるよ。」

 

曜「そっか…。何かあったら言ってね?私、力になるから。」

 

優馬「ああ…。ありがとな、曜。」

 

俺は曜の頭を優しく撫でる。気持ちよさそうにしている曜の姿がとても印象的だった。

 

本当に曜は優しい子だな…。俺はしみじみ思った。

 

すると、

 

千歌「あっ!!曜ちゃんずるい!!ゆうくん、チカの事も撫でて!!

 

本当にこのミカン娘は…。

 

優馬「はいはい…。」

 

曜に触発された千歌が迫ってきたので仕方なく千歌の頭も撫でた。

 

千歌「えへへ♪」

 

千歌も曜と同じで気持ちよさそうにしている。

 

千歌はこういう所が素直で魅力でもあるんだよな。人懐っこくて誰からでも愛される。曜にだって言える事だけど…。そんな二人だったからこそ俺たちは守りたかったのかもしれないな…。

 

まぁこれからも大切にすることに変わりないんだけどな。

 

優馬「そう言えばさっき聞いた今日早い理由ってなんだ?」

 

千歌「あっ!?忘れてた!!」

 

優馬「おいおい…。」

 

曜「あはは…。」

 

俺は半ば呆れながらも聞くことにした。

 

千歌「聞いて驚かないでよ!!実はチカ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「スクールアイドルを始めようと思うの!!」

 

 

 

 

 

優馬「へっ??」

 

俺は突然の幼馴染の発言に言葉を失った。

 

千歌「奇跡なんだよ。普通だった私にあの人たちの輝きは眩しく見えた…。だから私も普通な私から輝ける私になりたい…。そう思ったの。」

 

いつになく真剣でいて真っ直ぐな千歌の目に俺は正直驚いた。

 

でも直ぐに納得することができた。

 

優馬「そっか…。なれるといいな。スクールアイドル。」

 

千歌は自分から何かを始めるってことが今まで無く、どちらかと言えば遠慮する事が多々あった。それ故に千歌が目標を持って何かをやりたいと思ってくれた事が俺は嬉しかった。

 

千歌「それで、ゆうくんにお願いがあるんだけど?」

 

千歌は上目遣いで俺を見てきた。

 

優馬「なんだ?俺にできる事があれば手伝うぞ。」

 

千歌「ホント!!」

 

優馬「ああ。でも、流石に踊ったりはしないぞ?俺がやったら犯罪っぽいからな…。」

 

俺は自分が踊ってる姿を想像してしまいめまいがした。

 

千歌「大丈夫!!部員集めを手伝って欲しいんだけど…?」

 

優馬「なるほどな。わかった、手伝うよ!」

 

優馬「曜はスクールアイドルやるのか?」

 

曜「うん!千歌ちゃんと一緒に何かやりたかったから…。」

 

優馬「そっか…。頑張れよ。」

 

そんな話をしている間に学校前のバス停に着いた。

 

優馬「今日は入学式だから、きっと新入生を集められるよ。頑張ろうな。」

 

千歌・曜「「うん!!」」

 

俺たちは手分けして新入生にチラシを配るため新入生が来るまで待つことにした。

 

ある程度時間が経ち新入生がチラホラ見かけられるようになった頃俺たちもようやく重い腰を上げた。

 

優馬「スクールアイドル部です。良ければ受け取ってください。」

 

女の子「は、はい、ありがとうございます///」

 

優馬「よかったら入部してね?」

 

女の子「か、考えておきます///」

 

俺は女の子に声をかけてチラシを渡す。受け取ってくれたので一安心。

 

優馬「これからの高校生活楽しんでね。」

 

女の子「はい!!///」

 

女の子は顔を赤く染めながら友達の元へ走っていった。

 

優馬「ふぅ…。結構緊張すんな…。後はあの子たちに声をかけて終わりにするか…。」

 

俺は二人の女の子の元へ行き声をかけた。

 

優馬「スクールアイドル部です。よかったらチラシ受け取ってください。」

 

??「ずらっ!?」

 

??「ぴぎぃ!?」

 

優馬「あっ、ごめんね。驚かせるつもりはなかったんだけど…。」

 

俺は突然声をかけて驚かせてしまった事を謝罪した。

 

??「大丈夫ズラ!あっ、マルまたズラって言っちゃったズラ…。」

 

天然かな?

 

栗色の髪をしたとても可愛らしい少女はなんだかひどく落ち込んでいる。それに隣にいるピンク髪の子は後ろに隠れちゃってとても怯えていた。

 

優馬「ありがとう。方言だよね?無理に直さなくてもいいと思うよ?俺は可愛いと思う。」

 

??「あ、ありがとズラ///マルは国木田花丸って言うズラ。」

 

優馬「ご丁寧にどうも。俺は神崎優馬って言うよ。みんな名前で呼んでるから名前で呼んでくれると嬉しいかな。よろしくね、国木田さん。」

 

花丸「よろしくズラ!!優馬先輩!それなら、マルのことも名前で呼んでほしいズラ!」

 

優馬「わかったよ、マルちゃんでいいかな?」

 

花丸「はいズラ!!」

 

マルちゃんはニパァと名前に恥じぬ花丸笑顔で笑いかけてきた。

 

優馬「お友達もよろしくね。ごめんね、いきなり声かけちゃって怖かったよね?」

 

花丸「あっ、ルビィちゃんは極度の人見知りで特に男の人には慣れてないから許してほしいズラ。」

 

そう聞いて俺は申し訳ないと心の底から思った。

 

優馬「それは申し訳ない事しちゃったな。ごめんね。」

 

??「うゆぅ…。」

 

優馬「えっと…ルビィ?ちゃんであってるかな?さっきは突然ごめんね、アメ持ってるんだけど食べる?」

 

するとルビィちゃんは先程の怖がっていた表情とは打って変わって笑顔で俺に近づいてきた。

 

ルビィ「うゅ、あっ、ありがとうございましゅ!!」

 

俺はこの瞬間稲妻が走った。

 

何、この小動物は?ちと可愛すぎやしませんか?

 

優馬「どういたしまして。よかったらチラシも受け取ってくれるかな?」

 

俺がルビィちゃんとコミュニケーションを取っていると、

 

 

千歌「あっ!!ゆうくんがナンパしてる!?」

 

このミカン娘は何を言ってくれとんじゃ。

 

優馬「何言ってんだ、千歌が勧誘しろって言うから手伝ってるんだろ?」

 

千歌「今、鼻の下伸ばしてたくせに…。」

 

優馬「そ、そんなこと……ねぇし。」

 

千歌「なに…今の間は…。」

 

俺にジト目を向けた千歌だったけど、マルちゃんとルビィちゃんを見た瞬間、千歌は目をキラキラさせながらルビィちゃんの手を握った。

 

千歌「スクールアイドルに興味ない!?」

 

千歌がルビィちゃんの顔の近くまで近寄った瞬間、

 

ルビィ「ぴぎゃああああああああああああ!!!!!!」

 

まるで超音波の様なハイパーボイスが響き渡った。

 

優馬「のわっ!?」

 

俺は思わず変な声を出してしまった。それ程までに強力なものだった…。

 

すると、なぜだか知らないが木から誰かが降ってきた。

 

??「きゃーーーー!!!」

 

俺は瞬時に反応してその人を受け止めた。

 

優馬「っと…。大丈夫ですか?」

 

??「あっ、ありがとう…ございます///」

 

俺が受け止めた子は頭にお団子を付けていて顔立ちが整ったとても綺麗な女の子だった。

 

優馬「どういたしまして。新入生かな?危ないから気をつけてね?」

 

??「はい…。すみません…。」

 

優馬「大丈夫、怒ってないから。俺の名前は神崎優馬。君の名前は?」

 

俺がその子の名前を聞くと耳を疑ってしまった。

 

??「フフッ!よくぞ聞いてくれました。私の名前は堕天使ヨハネ!!あなた、私のリトルデーモンになってみない?」

 

ええっと…。厨二病ってやつかな?

 

俺が反応に困ってるとマルちゃんが口を開いた。

 

花丸「もしかして、善子ちゃん?花丸だよー。覚えてない?幼稚園の時以来だね!」

 

善子?「は・な・ま・るぅ!?に、人間風情が…。」

花丸「ジャンケン、ポン!!」

 

その掛け声で善子?ちゃんは凄い独特なチョキを出した。

 

花丸「そのチョキ…やっぱり善子ちゃんズラ!!」

 

善子「善子ゆーな!!私はヨハネ!ヨハネなんだからねー!!」

 

そう言って自称堕天使の善子ちゃんは走り去ってしまった。

 

花丸「あっ、待ってよ善子ちゃーん!!優馬先輩失礼しますズラ!」

 

ペコリと頭を下げて追いかけるマルちゃん。

 

ルビィ「まっ、待ってよー!花丸ちゃーん!!」

 

それに続いて後を追いかけるルビィちゃん。

 

優馬「おっ、おお…。」

 

なんだか置いてけぼり感がすごい…。

 

俺たちがマルちゃんたちを見送っていると曜が来て、それからもう一人女子生徒が来た。

 

曜「千歌ちゃん、優…。」

 

優馬「どうしたんだ、よ…う…!?」

 

俺は曜と一緒に来た女子生徒を見て固まった。

 

千歌「どうしたの、曜ちゃん?あっ、あなたも新入生?スクールアイドルやりませんか?」

 

なに、呑気に勧誘してんだ、バカ千歌!!

 

優馬「おい、千歌…。その人は生徒会長だぞ…。」

 

千歌「うそっ…。」

 

??「皆さん、放課後生徒会室までお越しくださいね?」

 

不敵に笑った生徒会長に俺は冷や汗が止まらなかった。

 

※※※※

 

放課後になって俺たちは言われた通り、生徒会室に来た。

 

??「申し遅れました。私、浦の星女学院生徒会長の黒澤ダイヤと申します。」

 

はぁ…最悪だ。よりにもよって生徒会長に呼び出されるなんて不幸だ…。

 

ダイヤ「聞いた話によると設立の許可どころか申請もしていないうちに勝手に部員集めをしていたとお聞きしましたが?」

 

千歌「悪気は無かったんですけど…。みんな勧誘してたのでついでというか焦った

というか…。」

千歌は反省の色を見せていなかった。

 

ダイヤ「部の申請には最低五人は必要ということは知っていますわよね?」

 

千歌「だから勧誘してたんじゃ無いですか!!」

 

ダイヤ「ですが、五人集めたところで部の承認は致しかねますわね。」

 

千歌「なんでですか!?」

 

ダイヤ「少なくても、私が生徒会長のうちは認めませんわ。」

 

千歌「そんな…。」

 

生徒会長の言葉に落ち込みを隠せない千歌。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優馬「おい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「何ですの?」

 

優馬「今のは流石にひどいんじゃ無いのか?」

 

俺は半ばキレながら生徒会長に食ってかかった。

 

優馬「千歌の肩を持つわけじゃ無いけど、生徒がやりたい事をさせない生徒会長がどこにいんだ。アンタにそんな権限は無いはずだぜ?」

 

ダイヤ「誰かと思えば貴方はテスト生の神崎優馬さんですわね。聞いた話によると中学生の頃は酷く荒れていたとお聞きしましたが?」

 

優馬「俺の話はどうでもいいんだよ。」

 

俺は威圧を込めて強めに言う。

 

ダイヤ「まぁそれは置いておいても貴方がいるのでしたら尚の事承認するわけにはいきませんわね。」

 

優馬「なんだと?」

 

ダイヤ「貴方のような人が居るとはっきり言って迷惑ですわ。浦の星の評判も落ちますし、なんで貴方みたいな人がテスト生なんですの…。」

 

この時の生徒会長の顔を俺は忘れることはないだろう。

 

その表情は冷酷で、まるで俺が居るから浦の星に入学希望者が集まらないとでも言いたげだった。

 

それに、

 

『居ると迷惑』

 

その言葉が俺の胸を深く抉った。

 

優馬「めい…わく…。俺は…やっぱり…いらない…存在なのか…。」

俺は無意識にそう呟いていた。

優馬「やっぱり…俺じゃなくて…兄貴が…。」

 

俺の心臓が激しく脈打つ。呼吸が荒くなり俺は心臓を押さえてその場に蹲った。

 

優馬「ハァハァ…!!」

 

千歌「ゆうくん!?」

 

慌てて千歌がそばに寄って来た。

 

千歌の声に反応してか、外にいた曜も俺の側まで駆けつけて来た。

 

曜「優、大丈夫!?」

 

優馬「やっぱ…俺なんて…俺なんて…!!!!」

 

俺は大声で叫んでいた。

 

ダイヤ「なっ、何事ですの!?」

生徒会長はその場で狼狽えている。

 

未だ落ち着きを取り戻せない中、俺は温もりを感じた。俺は顔を上げるとそこには俺の事を抱きしめてくれている千歌と曜がいた。

 

千歌「ゆうくん…。ゆうくんはいらない存在なんかじゃないよ…?ゆうくんはいつも私たちを大切にしてくれて誰よりも優しいの…。ゆうくんはゆーにいの代わりなんかじゃない。ゆうくんはゆうくんだよ。」

 

優馬「千歌…。」

 

曜「そうだよ、優!!優は私が辛い時いつも側で支えてくれた。だから今度は私が優の事を支える番だよ…。優の代わりなんていないんだから…。」

 

優馬「曜…。」

 

俺は二人の言葉に胸の奥が暖かくなっていくのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

『ゆうくんはゆうくんだよ。』

『優の代わりなんていないんだから…。』

 

 

 

 

 

その言葉が何よりも嬉しかった。

まだ心臓が少し痛くて言葉に出来ないけど…。

 

 

‘‘ありがとう’’

 

 

俺は心の中で呟いた。

 

千歌「っ!!」 曜「っ!!」

千歌と曜はほぼ同時に生徒会長を睨みつける。

 

 

千歌「何でそんな事言うんですか?ゆうくんは今回の件に関係ないですよね?」

 

曜「そうです。今回は私たちが優に頼んだ事です。それで優が責められるのはおかしいと思います。優に謝ってください!!」

 

二人は生徒会長に向かって俺への謝罪を求めた。

 

ダイヤ「本当の事を言ったまでですわ。喧嘩ばかりして他校の人を傷つけていたのでしょう。周りにどれだけ迷惑をかけているのかわかっているんですの?」

 

それでも尚、頑なに頭を下げない生徒会長に、

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「あなたに……あなたにゆうくんの何がわかるって言うの!!!!」

 

千歌が迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優馬「もういい…千歌。」

 

俺は千歌を止めた。

 

千歌「ゆうくん…大丈夫なの!?」

 

優馬「ああ…。二人のお陰で落ち着いたよ。ありがとう。」

 

俺は千歌と曜を抱きしめた。

 

優馬「俺は俺の事を理解してくれてる人がいるってわかっただけで十分だ…。」

 

千歌「ゆうくん…。」 曜「優…。」

 

俺は二人から離れ生徒会長に頭を下げる。

 

優馬「数々の非礼申し訳ありませんでした。これからは自分はこの件に関わらないのでどうか人数が集まったら部の設立を認めていただけませんか?自分のせいで、大切な幼馴染のやりたい事を邪魔したくありません。お願いします。」

 

ダイヤ「…。」

 

生徒会長は沈黙を貫く。

 

優馬「…。では、また日を改めて来ます。自分は了承してくれるまで、何回でも頭を下げに来るつもりです。」

 

それでも沈黙を貫き通す生徒会長。

 

優馬「今日のところは失礼します。行こうか、千歌、曜。」

 

千歌「うん…。」 曜「わかった…。」

 

俺は二人の手を繋ぎ生徒会室から出た。

 

これが生徒会長と俺の最低最悪な初めての出会いとなった。

 





ご愛読ありがとうございました!!

一応主人公はテスト生と言う立ち位置です。
原作通りのようでだいぶ違うと思いますが、お許しください…。
疑問に思うところなどありましたら、感想お待ちしておりますm(_ _)m

ではまた次回!


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笑う門には福来る


駄文ではありますが、温かい目で読んで頂ければ嬉しいです。


俺たちは足取り重く下駄箱へやってきた。

 

この空気は何だか嫌だな。

 

優馬「千歌、曜。」

 

二人は俺の方を振り向く。

 

優馬「二人ともそんな顔すんなよ。俺はもう大丈夫だから。なっ?」

 

千歌「でも…。」

 

優馬「いいんだよ。俺のために怒ってくれてありがとな…。さぁ、笑って帰ろうぜ?」

 

俺は千歌と曜に笑いかける。やっぱり二人には笑ってて欲しい。

 

千歌「ゆうくん…。」

千歌は俺の言葉に耳を傾けてくれた。

 

だが、

 

曜「私はっ…!!」

 

曜は違った。

 

曜「私は…悔しい…。悔しいよ…。」

 

優馬「曜…。」

 

曜は涙を零しながら胸の内を曝け出した。

 

曜「優は…誰よりも友達思いで…誰よりも優しい…。私はそれを知ってる…。優が…いつも喧嘩するのは…誰かのため…なのに…。何も知らないのに…優のこと…悪く言われて…私…悔しかった…。」

 

曜「それに優は…私が飛び込みの大会で負けちゃった時いつも側に居てくれた…。何回も辞めたいって思ったけど…優が居てくれると不思議と頑張れる…。その時、優は私に…いつも言ってくれた言葉があるよね?覚えてる…?」

 

もちろん、俺は覚えてる。

俺は無言で頷いた。

 

曜「『曜は一人じゃない、みんなが側にいる、俺が側にいる。だから、辛い時、悲しい時こそ笑え。』って、いつも私の事を励ましてくれた…。」

 

曜「私…その言葉が本当に嬉しかった。辛くてもみんなが…優がいてくれる…。だから…私は辛い時こそ笑うようになったんだよ?でも…今回は…我慢…出来なかった…。」

 

俺の言葉でそんなに…。俺は幸せ者だな…。こんなに優しくて、俺のことを大切に想ってくれる幼馴染と出会えたのだから。

 

俺は曜の事を優しく抱きしめた。

 

優馬「曜…ごめんな…。俺のためにこんな辛い思いさせて…。」

 

曜「なんで…優が…謝るんだよ…。」

 

優馬「俺バカだからさ、感情的になって二人の邪魔しちゃったし、悲しい思いもさせたからな…。」

 

曜「優が怒るのは…いつも誰かの為じゃん!!今回だって千歌ちゃんと私のために…。」

 

優馬「そりゃな…。大切な幼馴染のやりたい事を応援しないで何が幼馴染だよ。俺はお前らが大切だから、お前らの為なら何だってやってやる。」

 

優馬「だから…。これからも側で支えさせてくれ…。」

 

俺は曜に笑いかけながらそう伝えた。

 

曜「うぅっ…うわぁぁぁぁん!!!」

俺の言葉で溜めていた涙が曜の綺麗な瞳から零れ出した。

 

優馬「よしよし…。ありがとな、曜…。千歌もだぞ。ありがとう…。」

千歌にも俺は感謝を伝えた。

 

千歌「ゆう…くん…。」

千歌も涙を零している。

 

全く…この幼馴染たちは…。本当に良い子達だよ。

 

優馬「おいで…。千歌。」

 

千歌「ゆうくん…ごめんね…チカのせいで……。うわぁぁん!!」

 

優馬「よしよし。全く…どうして俺の幼馴染はこんなに優しいんだ…。」

 

そこからしばらくして千歌と曜が泣き止んだので帰ろうとした。

 

そうしたら下駄箱にマルちゃんとルビィちゃんがやってきた。

 

花丸「あっ、優馬先輩どうもズラ!!」

 

ルビィ「こ、こんにちは!!」

 

優馬「こんにちは。二人とも今帰りかい?」

 

花丸「そうズラ!!そう言えば生徒会室から大きな声が聞こえたけど何かあったズラか?」

 

俺は花丸ちゃんの言葉に少し動揺した。

 

優馬「もしかして聞こえてた?」

 

花丸「いえ、内容までは聞こえなかったズラ。でも何だか嫌な感じがしたズラ。」

 

鋭いな、この子は…。

 

優馬「全然そんなことないよ!!今朝の勧誘のことでちゃんと申請してねって生徒会長に言われただけだから心配はいらないよ。」

 

俺がそう答えるとルビィちゃんがおもむろに口を開いた。

 

ルビィ「あの…。もしかしてお姉ちゃんに何か言われましたか?」

 

俺はルビィちゃんの発言に耳を疑った。

 

優馬「えっ…。お姉ちゃん?てことは…ルビィちゃんは生徒会長の…。」

 

花丸「妹ズラ。」

 

ようちか「「ええぇぇぇぇっ!!!!!」」

 

マジか…。とてもあの生徒会長とは似ても似つかない。真逆といっても過言じゃないし、何よりこんなに可愛らしい妹がいるのにあんな硬いなんて信じ難い。

 

千歌「ルビィちゃんこんなに可愛いのに…。あの生徒会長とは全然違うんだね。」

 

ルビィ「やっぱり、お姉ちゃんが何か言ったんですか…。」

 

優馬「いや…そんなことは…。」

 

曜「言ったよ。優に向かって酷いことをね。」

 

優馬「おい、曜!!」

 

ルビィちゃんに詰め寄る曜を止めに入る。

 

曜「生徒会長は優のことを何も知らないのに散々言って優を苦しめた…。いつだって優は誰かの為に傷ついて、誰かを守ろうとしてる。それなのに周りの人は全部優が悪いみたいに言って離れて行く…。それが私は許せない。今回だって…優は!!」

 

ルビィ「ごめん…なさい…。」

 

ルビィちゃんは涙目になりながら謝る。

 

優馬「曜、もうやめ…。」

 

曜が言い過ぎているので俺は曜のことを止めようとした時、

 

 

パァン

 

 

千歌が曜の頬を叩いた。

 

千歌「曜ちゃん言い過ぎだよ。気持ちも分かるけどルビィちゃんは関係ない。謝って。」

 

曜「でも…!!」

 

千歌「謝って!!」

 

あまりの千歌の勢いに俺まで驚いてしまった。でも千歌の言ってることは正しい。今回のことにルビィちゃんは関係ないし、何より折角高校に入学したのにこんな嫌なことがあったんじゃ楽しい高校生活は送れない。それは絶対にあっちゃいけない事だ。

 

優馬「そうだぞ、曜。俺の事は今はどうでもいい。ルビィちゃんに謝りな。」

 

曜「…。ごめんね…ルビィちゃん…。」

 

ルビィ「いえ…。ルビィの方こそ…お姉ちゃんが…ごめんなさい。」

 

千歌「本当にごめんね、ルビィちゃん。じゃあ私達先に行くからまたね二人とも!」

 

ルビィ「はい、また…。」

 

花丸「さようならズラ。」

 

千歌と曜は先に下駄箱から出て行った。

 

優馬「本当にごめんね。ルビィちゃん、マルちゃん…。」

 

花丸「マルは大丈夫ズラ!でも…。」

 

マルちゃんはルビィちゃんの方を心配そうに見る。俺が見てもすごい落ち込んでいるのがよくわかる。

 

ルビィ「優馬先輩…。ごめんなさい…ごめんなさい…。」

 

ルビィちゃんは涙を流しながら俺に謝罪してくる。俺のせいでこんな辛い思いをして…。

 

優馬「ルビィちゃんは悪くないよ。こっちこそ曜が嫌な思いさせてごめんね。」

 

ルビィ「ううん…。ルビィの方こそお姉ちゃんが…。」

 

優馬「気にしないで。悪いのは俺なんだから悪く言われてもしょうがないよ。でも、曜のことは悪く思わないであげてね。大切な幼馴染だから…。」

 

ルビィ「はい…。ルビィも…お姉ちゃんのこと悪く思わないであげて下さい…。」

 

優馬「わかったよ。それじゃあ遅くなっちゃったし帰ろうか。近くまで送って行くよ。マルちゃんも一緒に帰ろっか?」

 

花丸「はいズラ!」

 

ルビィ「お、お願いします…。」

 

こうして俺たちは一緒に帰ることにした。

 

――――――――――――――――――――

Said 曜

 

私、最低だな…。自分の勝手な感情で関係のないルビィちゃんに八つ当たりして酷いこと言っちゃって…。

 

曜「千歌ちゃんごめんね…。迷惑かけちゃって…。」

 

千歌「ううん…。いいの、チカだって曜ちゃんと同じ気持ちだったよ。ゆうくんを傷つけられて悔しかった悲しかった。大好きなゆうくんが苦しんでる姿はもう見たくなかった…。」

 

そうだよね…だって千歌ちゃんも優のこと…。

 

千歌「ごめんね…叩いちゃって。痛かったよね。」

 

千歌ちゃんが赤くなった私の頬を優しく撫でてくれた。

 

曜「大丈夫だよ。むしろありがとう、千歌ちゃんのお陰で冷静になれたしルビィちゃんにも謝れた。」

 

曜「私だって大好きな優が傷つくのは嫌だし苦しんでる姿を見ると私も苦しくなる…。」

 

 

 

 

曜「だから…。少しでも優の支えになりたい。こんな私だけど優の力になってちゃんと自分の気持ちを伝えたい!」

 

千歌「チカだって…曜ちゃんに負けないくらいゆうくんの事が大好き。だから…負けないよ!!」

 

私たちはお互いに強く見つめあって

 

千歌・曜「「あははっ!!」」

 

そして笑い合った。

 

曜「明日改めてルビィちゃんに謝らないと!」

 

千歌「そうだね!千歌も一緒に行くよ!」

 

最高の友達でライバル。見ててね、優。私絶対に優のこと夢中にしてみせるから!!

 

固く決心した思いを胸に私たちは先に帰路に着くことにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

side優馬

 

俺たちは今下駄箱を出て帰路についている。

 

優馬「そう言えば二人は部活何に入るか決めた?」

 

はなルビ「「まだ、決めてないです…。」」

 

優馬「それならスクールアイドル部はどうかな?て言ってもまだ設立してないんだけどね…あはは…。」

 

俺は設立に困難を要するが、設立を夢見る幼馴染達の為に二人を勧誘する。

誰が見てもだと思うけど二人はかなり可愛いと思うし絶対人気になると思う。

 

花丸「折角のお誘い嬉しいズラ。でも、マルは運動できないから…。」

 

ルビィ「ルビィもお姉ちゃんが…。」

 

まぁルビィちゃんはそうだよな…。でもマルちゃんはできないと言うよりは自信がない感じがするな。

 

優馬「そうか…。まぁ無理に誘っちゃってごめんね?」

 

ルビィ「いえ…。」

 

花丸「あの、優馬先輩。」

 

優馬「何かな?」

 

花丸「優馬先輩はなんでそんなに一生懸命千歌先輩や曜先輩に協力するズラ?」

 

マルちゃんは俺に疑問に思ってることをぶつけてきた。

 

優馬「何でか…か。さっきも言ったと思うけど二人共大切な幼馴染って理由もあるんだけど、もう一つ理由はあるんだ。」

 

花丸「それは…?」

 

 

 

 

 

 

 

優馬「兄貴と約束したんだ。みんなを守るって。」

 

花丸「お兄さんと?」

 

ルビィ「優馬先輩はお兄さんがいるんですか?」

 

優馬「正確にはいた…かな?」

 

はなルビ「「えっ…?」」

 

驚く二人を尻目に俺は話を続ける。

 

優馬「実は俺は本当はもう死んでるはずだったんだ…。でも兄貴のお陰で今こうして生きてる。」

 

花丸「どういう…ことズラ?」

 

優馬「今から4年前に事故にあってね。その時に俺と兄貴と千歌、曜が一緒にいたんだけど、トラックが突っ込んで来て俺と兄貴は千歌と曜を庇って兄貴は脳死状態、俺は心臓に鉄パイプが刺さってほぼ瀕死の状態になったんだよ。これが、その時の傷だよ。」

 

俺は周りを確認してワイシャツのボタンを開けて自分の心臓の部分を見せた。

 

まるルビ「「!?」」

 

当たり前だが二人は言葉を失っていた。

 

優馬「俺の心臓には兄貴の心臓が入ってるんだ。俺が意識を失ってる時兄貴と夢?なのかな?そんな場所で会って約束したんだ。これからは俺がみんなを守るって…。俺は兄貴に助けてられて今生きてる。それが俺が必死に二人を支える理由でもあり生きてる理由かな?」

 

優馬「だから、俺は二人のやりたい事を全力で応援するし、手助けもする。どんな辛い事でもやってみせる。」

 

俺は二人に優しく微笑みながら伝えた。

 

優馬「ごめんな…気持ち悪いもの見せて…。」

 

俺が申し訳ない気持ちでいっぱいになり二人に謝罪すると、

 

ルビィ「気持ち悪くなんてない!!」

 

優馬まる「「!?」」

 

ルビィちゃんの大きな声に体がビクッとなり俺とマルちゃんは驚いた。

 

ルビィ「そんな、理由があったなんて知らなかった…。それなのにお姉ちゃんは…。ごめんなさい…ごめんなさい…。」

 

優馬「ルビィちゃん…。」

 

涙を流して俺に謝ってくるルビィちゃんに俺は思わず心を揺さぶられた。

 

ルビィ「こんな事で許して貰えない事も分かってます…。でも…謝らせて下さい…。ごめんなさい…。」

 

この子はなんて優しい子なんだろうか…。一見弱々しく見えるけど内に秘めてる思いはかなり強い。今こうして自分の姉の為に頭を下げている。それは当たり前に見えるけど全員ができる事じゃない。

 

 

 

それだけこの子が生徒会長の事を慕っている事がよく見受けられる。

 

優馬「頭を上げてルビィちゃん。俺はもう気にしてないし、ルビィちゃんが責任を感じる事じゃないから。」

 

ルビィ「でも…!!」

 

優馬「その気持ちだけで嬉しいよ。1つだけ俺からのお願い聞いてもらえるかな?

 

ルビィ「なん…ですか?」

 

優馬「これからもお姉さんと仲良く、そして今を大切にしてね。」

 

俺の言葉にルビィちゃんは涙を流しながら力強く頷いてくれた。

 

優馬「よし!じゃあ俺との約束だよ?」

 

俺は自分の小指をルビィちゃんの前に出す。

 

俺の考えている事を察したルビィちゃんは自分の小指を俺の小指に絡めてきた。

 

優馬「嘘ついたら針千本飲ます。指切った。これでオッケー。ちょっと古典的だけど約束って言ったらこれだよね!」

 

俺は笑いながらルビィちゃんに言う。

 

ルビィ「ふふっ♪」

 

ルビィちゃんも笑った。

 

優馬「やっと笑ってくれた。」

 

ルビィ「あっ…。ごめんなさい…。」

 

優馬「謝らないで?俺はみんなに笑顔でいて欲しい。やっぱり笑顔って幸せを呼び込む気がするんだよね。だから面白い時や楽しい時は笑って、辛い時、悲しい時は泣いて弱音を吐けばいい。」

 

優馬「そんでもって辛い時、悲しい時こそ笑って欲しい。」

 

俺の発言にルビィちゃんとマルちゃんは首を傾げた。

 

優馬「悲しい表情をしてるとそれだけで幸福が逃げてくと思うんだよ。だから自分が辛い時、悲しい時こそ笑って欲しい。それで、その後に来るだろう幸せを掴み取って欲しい。」

 

優馬「そこに笑顔が溢れてたらまた前を向ける。そうやって人って成長するんだと俺は思う。」

 

俺の言葉を聞いて二人共理解してくれたらしい。

 

ルビィ「わかりました!ルビィも優馬先輩みたいに強くて、優しい人になりたい…。だから、優馬先輩に負けないくらい笑顔が似合う女の子になりたいです!」

 

花丸「マルも…マルもいっぱい笑うズラ!それで大切な友達と成長していきたいズラ!!」

 

そう言ってルビィちゃんとマルちゃんは俺に向かって最高の笑顔を見せてくれた。

 

優馬「そうそう。二人ともとっても素敵な笑顔だよ!何か困ったことがあったら遠慮なくいいな?俺でよければいつでも相談に乗るよ。嬉しい事があったら一緒に笑うし、悲しい事があれば一緒に悲しんだ後に笑って明日の話をしよう。」

 

まるルビ「「はい(ズラ)!!」」

 

二人の笑顔はとても純粋で一点の曇りのない真っ白なキャンバスの様な笑顔だった。これからこの子達は自分色にそのキャンバスに色をつけていく。

 

本当に素直で良い子達だ…。この子達の高校生活がどうか、素敵な色で染まります様に…。

 

優馬「さてそれじゃあ帰りますか!」

 

まるルビ「「はい!!」」

 

優馬「それからスクールアイドルの事もよかったら考えておいて欲しいな?」

 

ルビィ「わかりました。でも、もう少しだけ時間を下さい!」

 

花丸「マルも少しだけ考えたいズラ。」

 

優馬「うん、俺たちはいつでも歓迎するからね!」

 

こうして俺たちは帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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仲直りと少しの進歩

翌日俺の家に千歌と曜が昨日とは打って変わってかなり高いテンションでやってきた。

 

千歌「ゆうくん聞いて聞いて!!」

 

曜「おっはヨーソロー!!!」

 

優馬「グハッ!!」

 

いきなり二人に突撃されて倒れそうになるが何とか止まった。

 

優馬「いきなりなんだよ!?あぶねえな、怪我したらどうするんだ。」

 

千歌「ゆうくんなら受け止めてくれるって信じてるもん!そんなことより聞いて聞いて!!」

 

優馬「そんなことって…。まぁいいや、どうしたんだ?」

 

嬉々として語らんとする千歌に俺は聞いた。

 

千歌「実はね。カクカクシカジカ。」

 

優馬「なるほどな…。大体わかった。」

 

曜「今のでわかったの!?」

 

優馬「便利だろ?」

 

優馬「で、その女の子に頼むのか?」

 

千歌「うん!!チカ絶対にやりたいから必死に頼んでやってもらいたい…。なんか運命感じたんだよね!」

 

優馬「そっか。それならちゃんとその子に誠意を持って頼まないとな!」

 

千歌「うん!!」

 

ニパッと効果音が付きそうなほど天真爛漫な笑顔を見せてくる千歌に思わず笑みが溢れた。

 

優馬「それじゃ学校行くか。」

 

俺たちは学校へ向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

学校に着き自分のクラスの席に腰を下ろすと。

 

ヨシミ「おっはよー!優馬くん!」

 

イツキ「おはよー!優馬!」

 

ムツ「おはよー!優馬っち!」

 

挨拶してきたのはよいつむトリオだ。もちろんこの子達も俺の数少ない友人だ。

 

優馬「おはよ。ヨシミ、イツキ、むっちゃん。」

 

俺も挨拶を交わした。

 

ムツ「そう言えば千歌達は何やろうとしてるの?」

 

むっちゃんの質問にヨシミとイツキも首を縦に振る。

 

よいつむトリオは千歌達が何をしようとしてるのか気になり俺に聞いてきた様だ。

 

優馬「何でもスクールアイドルになりたいらしいんだ。まだ部活として承認されてないんだけどな…ははっ。」

 

ヨシミ「へぇー。千歌達がね…。何かあれば言ってね!私達いっぱい手伝うから!」

 

同じくしてイツキとむっちゃんも首を振る。

 

なんていい子達なんだぁ…。いい子達過ぎて涙が…。おおっと、今は感傷に浸ってる場合じゃない。

 

優馬「ありがと。頼りにしてるよ、3人とも!」

 

俺は優しく3人に笑いかけた。

 

その後よいつむトリオと話し終えてゆっくりしようとしていると…

 

曜「ムムム…。」

 

千歌「ヌヌヌ…。」

 

千歌達が俺の座っている机から顔だけを出してジト目で見てきた。

 

優馬「どうした二人とも?」

 

俺には何故二人がジト目をしているのか意味がわからなかったので聞いてみた。

 

千歌「ゆうくん、むっちゃん達と楽しそうに話してたね。渡辺の奥さん。」

 

曜「そうでありますね。高海の奥さん。」

 

優馬「いや…どゆこと?」

 

千歌「ふぅーんだ!ゆうくんなんて知らない!!」

 

曜「そうであります!!優なんて知らないであります!!」

 

優馬「えぇー…。」

 

俺には何が何だか分からなくて戸惑っていると。

 

先生「ほら、席つけー。出席とるぞー。」

 

担任の先生が来た。

 

ナイス先生!もう、大好き!!

 

優馬「ほら千歌、曜、先生来たから席戻れ?」

 

二人は仏頂面をしながらも自分の席に戻っていった。

 

先生「それじゃあ、今日は新しく転入してきた生徒を紹介するぞぉ。それじゃ、入れー。」

 

転校生か…。2年のこの時期に転校なんて大変だなぁ。もしかして男か!!やっと俺にもこの学院で初の男友達が!!

 

 

入ってきたのは綺麗な髪をした少女であった。

 

 

俺の希望が絶望へと変わった瞬間だった。

 

先生「それじゃあ自己紹介よろしくー。」

 

先生…いくらなんでも雑過ぎやしませんかね?

 

??「くしゅん!失礼…。東京から来ました。桜内梨子と申します。よろしくお願いします。」

 

優馬「すごい綺麗な子だなぁ。なぁ千歌…。」

 

千歌「奇跡だよーー!!!!」

 

はい?

 

梨子「あっ、あなたは!?」

 

あれもしかして知り合い?俺の記憶が正しければ千歌に東京の友達はいなかったはず…。

 

千歌「一緒にスクールアイドルやりません?」

 

千歌は桜内さんの目の前へ行き手を伸ばす。

 

千歌が笑い、桜内さんも笑う。

 

まさか、ここで新しく部員が増えるのか!?

 

俺も期待に胸を膨らませ桜内さんの返事を待った。

 

結果は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子「ごめんなさい!!」

 

 

あっ、ダメなんだ…。

 

千歌「えええェェェッ!!!!!!」

 

千歌も驚いてる。そりゃそうだろ、流石に俺でもあんな鬼畜なことはしないぞ?

 

先生「コラッ、高海席に戻れ。自己紹介も終わったし休み時間に話せ。桜内は神崎の隣の席な。それじゃ、ホームルーム始めるぞー。返事しない奴は欠席な。」

 

その後出席が取られ元気よくみんな返事をした。なのに何故か知らないが、俺だけ何回も返事をさせられて先生に弄ばれた。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

優馬「はぁ…。何で俺だけあんな返事させられてるんだ?」

 

千歌「そんなことより!ゆうくん今朝話した女の子は桜内さんなんだよ!!」

 

優馬「そんなことって…。だから、いきなり大声上げて立ち上がったんだな。」

 

俺は隣の席の桜内さんを見る。

 

クラスのみんなから質問攻めされている桜内さん。何だか、困っているようなので少し助け船を出そう。

 

優馬「みんな、桜内さん困ってるぞー。一人づつゆっくり質問してあげないと。」

 

女子生徒A「それもそうだね!ごめんね、桜内さん。」

 

梨子「い、いえ…。」

 

優馬「ごめんね?みんな桜内さんがクラスの仲間になって嬉しいんだよ。だから少しテンション上がっちゃってるけど許してあげて?」

 

梨子「そんなとんでもない!?むしろ話しかけてくれてすごい嬉しいです。改めて皆さんよろしくお願いします!」

 

女子生徒B「そんなにかしこまらないで!同じクラスの仲間なんだから!」

 

梨子「うん!!」

 

よかった、どうやら桜内さんは馴染めた様だ。せっかくの高校生活だ楽しまなきゃ損だよな。

 

優馬「改めて桜内さんよろしくね。俺の名前は神崎優馬!この学院唯一の男子生徒です。」

 

梨子「こちらこそよろしくね、神崎君!そう言えばこの学校女子校だよね?なんで、神崎君は入学できたの?」

 

優馬「元々生徒数が少なくてね。それで、共学にしてみようって事でテスト生として俺はこの学院に通ってるんだ!」

 

梨子「そうだったんだ!納得したよ!改めてこれからよろしくね!」

 

俺と桜内さんが握手を交わそうとした瞬間

 

千歌「桜内さんスクールアイドルやらない!!」

 

優馬「どわっ!?」

 

俺を押し退けて千歌は桜内さんを勧誘した。

 

梨子「ちょっ、大丈夫神崎君?」

 

優馬「平気へっちゃら。おーい、千歌ちゃーん。」

 

千歌「うぁ!?ゆうくん、ごめん…つい…ね…。あはは…。」

 

千歌は渇いた笑いで俺の方を見て可愛くウインクした。

 

俺は無性にムカついたので千歌のほっぺたをつまんだ。

 

千歌「ゆうくん、にゃにしゅんの!?いひゃい、いひゃい!?」

 

優馬「お仕置きだ。」

 

千歌「ごえん、ごえん!ゆるひてよー!?」

 

流石にこれ以上やると可哀想なので俺はとりあえず許す事にした。

 

梨子「仲がいいのね…とっても…。あはは…。」

 

優馬「まぁ幼馴染だからね。それよりそろそろ授業始まるし準備しようか?ほら千歌も早く戻れ。」

 

千歌「でも、まだ…。」

 

優馬「今度はもっと強くやろうかな?」

 

そう言った瞬間千歌は授業の準備を急いで始めた。

 

優馬「ったく。ごめんね、無理矢理勧誘しちゃって。」

 

梨子「ううん…。いいの…。」

 

そう言った桜内さんの表情は何かに悩んでいる様に感じた。

 

優馬「桜内さん?」

 

梨子「えっ、あっ、さぁ、授業の準備しましょう!!」

 

優馬「お、おぅ…。」

 

何事もなかったかのような表情をして笑って見せてくれた。その笑顔は俺に違和感を感じさせた。

 

それを尻目に千歌は何度も何度も桜内さんを勧誘しては断られの繰り返し。正直これでは桜内さんが迷惑なんじゃないかと思い昼休みの前に少し千歌を諌めた。

 

しょんぼりする千歌だったが、桜内さんに「もう大丈夫だから気にしないで」と言われたのでその場は一旦注意だけで終わった。

 

そして俺達が昼食を取ろうとした時、一つの放送が入った。

 

『神崎優馬さん至急生徒会室までお越し下さい。繰り返します、神崎優馬さん至急生徒会室までお越し下さい。』

 

それはなんと生徒会長からの呼び出しだった。

 

優馬「何だろ?ちょっと言ってくるから先にご飯食べてな。」

 

梨子「うん。神崎くん何かやったの?」

 

優馬「いや?身に覚えが無いけどな?」

 

俺は桜内さんにそう伝える。

 

千歌「……。」曜「……。」

 

生徒会長の呼び出しだったので千歌と曜は心配そうに俺の方を見る。

 

優馬「心配すんなって。話があるだけだろ?すぐ帰って来るから先に飯食っとけよ。」

 

千歌「でも…。」

 

千歌が今にも泣きそうな表情で俺を見つめてくる。昨日のことが頭をよぎったのだろう。

 

優馬「俺は大丈夫だし、俺には千歌と曜がいるんだ。それは昨日二人が教えてくれたことだろ?」

 

曜「何かあったら…。絶対!!言ってね?私達は優の味方だから。」

 

曜は俺に励ましの言葉をくれた。千歌も表情が元に戻りいつもの元気な笑顔を見せてくれた。

 

俺は少しだけ微笑み生徒会室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

俺は生徒会室の前に着き深呼吸をする。

 

優馬「スゥー…ハァー…。」

 

そしてドアをノックした。

 

『どうぞ。』

 

返事が返ってきたので俺は扉を開け中に入る。

 

優馬「失礼します。」

 

中には生徒会長とその妹のルビィちゃんがいた。俺はルビィちゃんに軽く笑いかけると、ルビィちゃんも笑顔を見せてくれた。

 

優馬「それで、自分が呼ばれた理由は何ですか?生徒会室に呼ばれる様な悪い事はしていないと思いますが?」

 

皮肉交じりに生徒会長に向けて言葉を発した。我ながら昨日の事を根に持っている様で情けない…。

 

 

ダイヤ「そ、それは…。その…。」

 

なんだか生徒会長の様子がおかしい。なんだか落ち着きがないし、目も合わせてくれない。そんなに俺のこと嫌いなのか…。

 

優馬「はぁ…用が無いのであれば生徒会長も自分とはいるのが嫌でしょうし、失礼します。」

 

 

俺は頭を下げ生徒会室を後にしようとしたら

 

 

ルビィ「待ってください!!」

 

ルビィちゃんの振り絞った声が聞こえたので俺は足を止め振り返る。

 

ルビィ「どうしても優馬先輩とお姉ちゃんに仲直りして欲しくて…。」

ルビィちゃんは瞳いっぱいに涙を溜めていた。

 

優馬「ルビィちゃん…。」

 

そうか。昨日の事を気にしてたのか…。

 

俺はルビィちゃんに近づきお礼を伝える。

 

優馬「ありがとう、ルビィちゃん。生徒会長は優しくて素敵な妹さんをお持ちですね。」

 

俺はルビィちゃんの頭を撫でながら生徒会長に笑いかける。涙を流しそうだったルビィちゃんも気持ちよさそうに表情を綻ばせている。

 

ダイヤ「ル、ルビィが男性と!?」

 

生徒会長は驚きの表情を浮かべている。

 

ルビィ「お姉ちゃん、優馬先輩は悪い人じゃ無いよ。ルビィにも花丸ちゃんにも優しくしてくれた。それで昨日お姉ちゃんとのこと聞いて…ルビィ悲しかった…。」

 

 

 

ダイヤ「ち、違いますわ…。私はただ…。」

 

生徒会長もルビィちゃんもお互い沈んだ表情をしている。

 

ルビィ「お姉ちゃんは優馬先輩が嫌いなの?」

 

 

ダイヤ「それは…。」

 

 

ルビィ「優馬先輩、昨日の聞いたお兄さんとの約束の話をお姉ちゃんに話してもいいですか?」

 

俺を見据えるルビィちゃんの力強い瞳に俺は頷く事しか出来なかった。

 

 

ルビィちゃんが生徒会長に俺と兄貴のことを話した。

 

 

話が進んでいくにつれて生徒会長の表情がみるみる悪くなっていくのがわかる。正直腑に落ちない。俺の話は信じないで妹の話は信じる。当たり前だが少し腹立たしい。

 

 

ダイヤ「嘘…。それなら私はなんて事を…。」

 

生徒会長の瞳に涙が溜まっていく。

 

ルビィ「今言った事が昨日ルビィが聞いた話だよ。それでもまだお姉ちゃんは優馬先輩を悪い人だと思う…。」

 

ダイヤ「私は…。」

 

重い空気の中俺は口を開いた。

 

優馬「確かに今の話は本当の事です。でもだからって同情なんていりません。俺は…兄貴と交わした約束を守る為に精一杯これから生きていくつもりです。この話をして生徒会長から同情を買ってつけこもうなんて思ってません。」

 

ダイヤ「でも、私は…。」

 

優馬「それでしたら一つ提案があります。」

 

ダイヤ「提案…ですか?」

 

 

 

優馬「生徒会長自身まだ俺という人間をあまり知らないと思うので俺のことを知って欲しい。だから俺を生徒会に入れて欲しいです。」

 

 

ダイ・ルビ「「!?」」

 

 

俺の言葉に驚愕の表情を浮かべる二人。そりゃ当然だ。

 

優馬「もちろん、嫌なら断って頂いて構いません。断られたら俺はまた頭を下げに生徒会室に伺います。」

 

優馬「雑用だって何だってやります。それに俺が近くに居れば生徒会長も俺を監視できますし、必要なら俺のことを悪く言って退学させることもできるはずです。もしそれで少しでも俺のことを信頼できると思ってくれたらスクールアイドル部の設立を許可して頂きたいと思います。」

 

優馬「身勝手な頼みだと思いますが、何卒ご検討をお願いします。」

 

俺は深く頭を下げる。

 

ダイヤ「…。わかりました。頭をあげて下さい。」

 

ダイヤ「生徒会にご協力をお願いします。それから…。昨日の非礼はお許しください。」

 

生徒会長も深々と頭を下げ謝罪の言葉を口にしてくれた。

 

優馬「ありがとうございます。よろしくお願いします。黒澤生徒会長。」

 

ダイヤ「こちらこそよろしくお願い致します。神崎さん。」

 

俺達は握手を交わし少しだが距離が縮まった気がする。

 

優馬「それでは俺は失礼しますね。放課後にまた伺えばよろしいですか?」

 

ダイヤ「はい。また放課後に生徒会室までお越し下さい。」

 

優馬「わかりました。それでは失礼します。じゃあね、ルビィちゃん。」

 

俺はルビィちゃんに笑いかけ、黒澤会長には頭を下げて生徒会室を後にした。

 

 

 

 

教室に戻ってきて扉を開けると千歌と曜が俺めがけて突撃してきた。

 

優馬「デジャブ!?」

 

俺はそんな掛け声と共に幼馴染達を抱きかかえた。

 

 

千歌「ゆうくん!?生徒会長に何もされなかった!?」

曜「絶対何かされたよね!?私今から生徒会室行って…!!」

 

優馬「お、落ち着け!?何もされてないし何も無かったから!昨日のことで仲直りしてきただけだから。」

 

ようちか「「嘘!?」」

 

まさに驚愕と言うべき表情を浮かべフリーズする千歌と曜。

 

 

そこへ

 

 

梨子「昨日のことって?」

 

桜内さんが俺たちに近づいて疑問をぶつけてきた。

 

千歌「実はね、カクカク。」

曜「シカジカで。」

 

梨子「そんなことが…。」

 

梨子ちゃんが口を両手で覆って昨日の内容を聞いていた。

 

 

優馬「まぁ、そんな訳なんだけどもう和解したからこの事に関しては終わり。さぁ腹減ったし昼飯でも食おうかな。」

 

俺は弁当を取り出して遅めの昼食をとった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

放課後

 

 

優馬「失礼します。」

 

俺は宣言通り放課後に生徒会室に立ち寄り生徒会の業務を習いに来た。

 

ダイヤ「はい、どうぞ。ようこそ生徒会へ。改めてではありますが、昨日は本当に申し訳ありませんでした。」

 

改めて黒澤会長は頭を下げて謝罪してくれた。

 

優馬「もう結構ですから頭をあげてください。それよりもこれからよろしくお願いします!黒澤会長。」

 

俺が黒澤会長に伝えると少し黒澤会長は顔を歪めた。

 

ダイヤ「あの…。」

 

優馬「何ですか、黒澤会長?」

 

ダイヤ「その、黒澤会長と言うのはやめていただけないでしょうか…?」

 

優馬「もしかして嫌でしたか?」

 

ダイヤ「いえ…そう言うわけでは無いのですが…。」

 

俺はわけがわからないので首を傾げる事しか出来なかった。

 

ダイヤ「嫌でなければ、な、名前で呼んでいただけないでしょうか…。ルビィもいますし黒澤ではややこしいかもしれませんので。」

 

なるほどな。確かにややこしいかもしれない。

 

優馬「分かりました。そう言う事でしたら…。ダイヤさん…。でいいですか?」

 

ダイヤ「は、はい!!私も優馬さんとお呼びしてもよろしいですか…?」

 

優馬「はい。呼びやすい呼び方でいいですよ。」

 

ダイヤ「では、優馬さんこれからよろしくお願い致します。」

 

優馬「こちらこそ改めてよろしくお願いします。ダイヤさん。」

 

 

こうして俺たちはお互い名前で呼び合うことに決め、少しだけ距離が縮まった気がした。

 

 

 

 



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条件と真実

 

生徒会に入り一週間が経過しようとしていた。あれから変わったことと言えば桜内さんが千歌説得されスクールアイドル部(仮)に入部することになった。桜内さんはピアノをやっているらしく作曲ができるみたいだ。とても心強い。あれから練習も始めて今日は理事長に呼ばれてるため早く出てきた。何故か俺も一緒に。

 

今現在桜内さん、千歌、曜とバスに乗り学校へ向かっている。

 

優馬「それにしても桜内さんありがとね。桜内さんが入部を決めてくれてすごい嬉しいよ。これから千歌と曜が迷惑かけるかもしれないけどよろしくね?」

 

梨子「ううん。そんなことないよ。千歌ちゃんの真剣な気持ちに私も勇気を貰えた。だから私も自分を変えたい。感謝してるのむしろ私の方だよ。ありがとう。」

 

 

 

千歌「梨子ちゃーん!!」

 

梨子「きゃっ!?」

 

千歌が桜内さんに抱きついてスリスリしている。まるで子犬だ。

 

曜「よっぽど梨子ちゃんが入ってくれて嬉しいんだね!私も梨子ちゃんが入ってくれてすごい嬉しいよ!」

 

千歌「これから頑張ろうね!二人とも!」

 

梨子「アレ?神崎くんはスクールアイドル部じゃないの?」

 

桜内さんは俺に向かって聞いてきた。

 

優馬「俺は違うよ?俺はただのお手伝いさんだ。みんながちゃんと活動できる様に手助けは出来る限りして行く。でもそれ以上のことは俺には出来ない。俺は近くで見守ってあげることしかできない。」

 

梨子「じゃあ、なんで理事長は神崎くんも呼んだんだろう?」

 

優馬「それが俺にもわからないんだよね…。まぁ行けばわかることだしそれでいいと思う。」

 

梨子「それもそうね。」

 

そこからはこれからの活動をどの様にして行くか話し合いを進めた。すると、あっという間に学校に着いたので俺たちは理事長室へ向かった。

 

 

今更なのだが、理事長とはどんな人なのだろうか?

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

理事長室の前に着いた俺達はノックをして部屋に入った。

 

優馬「失礼します。」

 

俺は中に入るとダイヤさんがいたので挨拶をした。

 

優馬「おはようございます。ダイヤさんも来ていたんですね。」

 

ダイヤ「おはようございます、優馬さん。私も昨日連絡を頂いて参りましたの。」

 

優馬「それで、理事長はどこにいらっしゃるんですか?」

 

俺はダイヤさんに聞くとダイヤさんは軽く溜め息を溢しながら視線を移した。その視線の先には俺達と同じく制服に身を包んだ綺麗なブロンド髪の女の子がイスに座っていた。

 

優馬「まさかとは思いますけど…この方が…。」

 

ダイヤ「はい…。浦の星女学院理事長。小原鞠莉さんですわ。」

 

鞠莉「チャオ♪アナタが優馬ね♪とてもクールな少年ね!私がこの浦の星女学院生徒にして新理事長の小原鞠莉よ♪マリーって呼んでね♪」

 

優馬「っ!?よろしくお願いします。ところで自分達が呼ばれた理由は何ですか?」

 

俺は理事長の名前を聞いて少しだけ動揺した。だが、すぐに落ち着いて小原理事長に質問した。

 

鞠莉「そうそう、この浦の星にスクールアイドルが誕生したと知ったんだけどダイヤの事だからスクールアイドル部は認めませんとか言ってるんじゃないかと思って今回来てもらったの。」

 

鞠莉「それじゃあ、可哀想だから私が出す条件を満たしたらスクールアイドル部設立を認めようと思って今回呼ばせてもらったの。」

 

優馬「なるほど…。その条件を満たせば無条件で部の設立を認めてくれると?」

 

鞠莉「そうよ♪」

 

理事長がウインクをしながらこちらに笑いかけてきた。

 

正直こちらとしては好都合だ。ダイヤさんとは少しは打ち解けて来たけどまだスクールアイドル部の設立は認めてもらってない。でも理事長の許可があれば設立できる。この好機を逃すわけには行かない。

 

 

優馬「どうする三人とも?」

 

 

千歌「私は…やりたい!!こんなチャンスもう無いかもしれないし!」

 

曜「私も…やる!!」

 

梨子「もちろん、私もやるわ!」

 

三人は真剣な表情で俺を見据えてきた。俺は三人を順番に見て理事長に向き直る。

 

優馬「みんなやりたいみたいなので条件を教えて貰っていいですか?」

 

理事長は不敵に笑みを浮かべ言葉を発した。

 

鞠莉「オーケー!じゃあ説明するわね。そんな難しい事じゃ無いわ。これから二週間後にライブをしてもらいます。そこで今から行く会場を満員に出来たら部の設立を認めるわ!でも、出来なかったら今後何があってもスクールアイドル部の設立は認めません。」

 

 

優馬「なるほど…。どうする千歌、やめるか?」

 

千歌「ううん。やめない!折角のチャンスを無駄にしたく無い!梨子ちゃんと曜ちゃんは?」

 

曜「もちろん!やるよ、私も諦めたく無い!」

 

梨子「私ももちろんやるわ!」

 

俺は三人を見て笑みが溢れた。三人の真剣な気持ちが嬉しかった。

 

優馬「わかった!理事長その提案、是非受けさせて頂きます。」

 

鞠莉「いい覚悟ね!それじゃあ説明するわね。会場はこの学院の体育館。そこを満員に出来たら部の設立を認めるわ!」

 

この時俺は理事長の出した条件に冷や汗をかいた。

 

千歌「わかりました!」

 

鞠莉「それからもう一つ…。優馬、アナタもしっかり彼女達をサポートしなさい!」

 

優馬「えっ、俺もですか…?」

 

鞠莉「もちろんデース!その為にアナタをここに呼んだのよ♪」

 

優馬「わかりました…。出来る限り務めさせて頂きます。」

 

こうして俺達の部の設立をかけた二週間が始まった。

 

 

 

理事長室を出て教室に向かってる最中桜内さんが不安そうに口を開いた。

 

 

梨子「さっきの理事長の条件なんだけどさ…。」

 

優馬「桜内さんも気がついた?」

 

梨子「うん…。」

 

曜「どう言うこと?」

 

優馬「全校集会は結構やってるからわかるよな?」

 

千歌「もちろん!体育館以外に広いから…あっ。」

 

どうやら千歌と曜も気づいたみたいだ。

 

優馬「そう…。この体育館は全校生徒が集まっても全然埋まらない。つまりは外部の人達にも来てもらうことが、必須事項って事だ。」

 

千歌「そんな…。」

 

梨子「私も今考えて気づいたの…。」

 

曜「どうすれば…。」

 

真実に気づいた三人は落ち込んでいた。

 

 

 

優馬「でも、やるんだろ。スクールアイドル。」

 

 

 

俺の言葉に三人は俺の方を見る。

 

優馬「確かに理事長が出した条件はかなり厳しいと思う。だからと言って諦めるには早いぞ。諦めるのは簡単だ。でも、俺は三人なら出来るって信じてる。」

 

千歌「ゆうくん…。」

 

優馬「千歌、それでも諦めるか?」

 

千歌「ううん…。私諦めない!!絶対満員にしてスクールアイドルやる!!」

 

優馬「曜と桜内さんも諦めるのか?」

 

曜「諦めない!!優がいるんだもん!何だって出来る!」

 

優馬「おいおい、俺がいたってやるのはお前らだ。」

 

梨子「そんな事ないよ?」

 

優馬「桜内さん?」

 

梨子「私も不安だけど、神崎くんがいると不思議と出来る気がする。だから、私も頑張る!」

 

どうやら俺の思ってる事は杞憂だったらしい。みんなこんなにも強いんだ。きっと乗り越えられる。

 

優馬「わかった。俺も出来る事は全力で助ける。何だってやってやる!頑張ろうな!」

 

俺は一人ひとりの顔を見て笑いかける。

 

ちか、よう、りこ「「「うん!!!」」」

 

こうして俺たちは二週間後のライブに向けて動き出した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

放課後、千歌達は早速曲作りをしに千歌の家へと向かった。俺はダイヤさんに色々聞きたい事がある為、生徒会室へ向かった。

 

優馬「失礼します。ダイヤさんいますか?」

 

ダイヤ「はい、いますよ。どうされました?」

 

優馬「ちょっと聞きたいことがありまして…。今朝の事何ですけど、ダイヤさんはどう思いますか?」

 

俺は直球に聞いてみた。

 

ダイヤ「正直このままでは厳しいと思います。スクールアイドルは自らが作詞作曲を手掛け披露する必要があります。ましてや全くの未経験でしたら尚更作詞作曲が課題になると思いますわ。」

 

優馬「なるほど…。それにしても、ダイヤさんはスクールアイドルに詳しいんですね?もしかしてやっていたんですか?」

 

ダイヤ「なっ!?そ、そんなことありませんわ!一般教養ですわ!」

 

優馬「そうですか。でも、小原理事長と話してる時ずっと悲しそうな顔をしていたのは何でですか?」

 

ダイヤ「な、何の事でしょうか?」

 

とぼけた顔をするダイヤさん、その表情はやはり少しだけ悲しそうな顔をしていた。

 

優馬「わかりました。今は聞きません。でも、いつか話して下さいね。頼りないかもしれませんが、相談にも乗りますよ。」

 

ダイヤ「ありがとうございます。話す時が来れば必ずお話します。」

 

優馬「お願いします。あと一つだけ聞きたいことがあるんですけどいいですか。」

 

ダイヤ「私で答えられることでしたら。」

 

優馬「実は俺ダイヤさんの事結構前から知ってたんですよね。」

 

優馬「かなちゃん。松浦果南って言えばわかりますか?」

 

ダイヤ「っ!?優馬さん…果南さんを知っていますの…?」

 

ダイヤさんは驚きの表情を浮かべ俺に尋ねてくる。

 

優馬「はい、俺と兄貴はかなちゃんと小さい頃から仲が良くて一緒に遊んでたんですよ。千歌と曜ももちろんいたんですけど、たまにかなちゃんは俺達と違う友達と遊んでた。それが、ダイヤさんと小原理事長。ですよね?」

 

コクっと小さくダイヤさんはうなずいた。

 

優馬「その時にかなちゃんからよくお二人の話を聞いてたんですよ。嬉しそうにかなちゃんは話してくれるんでお二人の事とても大切に思っていたんでしょうね…。」

 

優馬「でも…。」

 

優馬「かなちゃんが高校生になって少し経って、俺もようやく普通の生活を送れるようになってきた頃からですかね…。かなちゃんの様子が変わってきたんですよ。何だか辛そうで…。俺自身余裕が無くてかなちゃんに理由を聞けなかったんですけど、もしかしてダイヤさんは何か知ってるんじゃ無いですか?」

 

声を出さないダイヤさん。

 

優馬「沈黙は肯定と受け取っていいですか?」

 

尚も沈黙をダイヤさんは貫く。

 

優馬「今は何も聞きません。でも、俺はかなちゃんが本当の笑顔で笑ってくれる日を待っています。だから、俺に出来ることがあったら何でも言ってください。俺と兄貴の様に悲しい結末にならない為に…。」

 

ダイヤ「わかりました…。少なからずこの一週間で優馬さんがお優しい方だと言う事は分かりました。貴方を信じてお話致します。」

 

ダイヤさんは俺の目を真剣に見据えて語ってくれた。

 

 

※※※※

 

 

優馬「そうだったんですか…。かなちゃんは小原理事長の為に…。」

 

ダイヤ「この事は鞠莉さんも知りません。どうか内密にお願いします。」

 

優馬「分かりました。約束します。」

 

ダイヤ「本当は私もまたスクールアイドルをしたい…。あの頃の様に三人揃って…。」

 

俺はダイヤさんの悲痛な言葉に胸を締め付けられた。

 

ダイヤさんはこの二年間辛い思いをし続けて誰よりも心を痛めている事を知った。この人が固く見えてしまうのは不器用が故だ。本当は誰よりも友人思いで優しい。ただそれを表に出せないだけなのだ。

 

俺はダイヤさんに近づき抱き寄せた。

 

ダイヤ「なっ///破廉恥ですわ!?///」

 

優馬「破廉恥で構いません。ダイヤさん…辛かったですよね。悔しかったですよね。」

 

ダイヤ「な…何を言って…。」

 

優馬「俺はダイヤさんの味方です。俺の前では強がる必要はありません。今は全部吐き出して俺にもその辛さを分けてください。俺も一緒にその辛さを背負います。」

 

ダイヤ「う…うっ…。また果南さんと…鞠莉さんと…スクールアイドルがしたい…!辛い…辛いよ…。私は…どうしたらいいの…。助けて…。」

 

優馬「辛かったですね…。大丈夫…俺もこれから支えます。きっと三人が笑ってスクールアイドルが出来る日が来ます。俺の大切な幼馴染達がきっと離れてしまったダイヤさん達を繋いでくれます。だから…俺を…俺達を頼ってください。」

 

ダイヤ「うっ…うわぁぁん!!」

 

ダイヤさんは俺の胸でたくさん泣いた。泣いて泣いて泣きまくった。この人が背負っていた辛さは到底俺には想像できない。だからこそこんなにも辛そうに、悔しそうに、苦しそうに泣いている。そんなダイヤさんを抱きしめながら俺は涙をグッと堪えて強く抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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不安を乗り越えて

あれから数日経ち俺は理事長の言う通り千歌たちの手伝いをした。もちろん生徒会の仕事もしっかりとこなし忙しい毎日を過ごしている。ダイヤさんから聞いた真実も頭の中で整理してどうすればいいのか考えながら、俺は千歌達と沼津駅周辺でチラシ配りをしているとルビィちゃん達に遭遇してチラシを渡すとルビィちゃんから一つの疑問をぶつけられた。

 

ルビィ「グループ名は何ですか?」

 

この一言で俺も頭を抱えた。

 

それもそのはず。ライブの事で頭がいっぱいで一番大事なグループ名を完全に忘れていたのだ。

 

その一言を頭の片隅に残してチラシを配っているがイマイチ集中できていなかった。その日はチラシを配り終えて解散になったが、俺に出来ることは少ない。

 

家に帰り自分のベッドに寝転がり考える。

 

グループ名は俺が考えるよりも実際に活動する千歌達が考える方がいい。

 

だから、俺は練習メニューや体調管理などしか手伝うことができない。それ故に千歌達に作詞、作曲、グループ名を考えて貰わなくてはいけないのでかなりの負担になってしまう。

 

優馬「俺に出来ることって何も無いんだな…。」

 

そう呟き俺は意識を手放した。

 

――――――――――――――――――――――

 

翌日

 

千歌達は嬉しそうな表情をして俺を迎えに来た。

 

千歌「ゆうくん!!聞いて聞いて!!」

 

優馬「わかった、聞くから落ち着け。曜と桜内さんもおはよう。」

 

曜「おっはヨーソロー!!」

 

梨子「おはよう!」

 

千歌もそうだが、二人も嬉しそうな表情をしていたので俺は聞いてみた。

 

優馬「何かいい事でもあったか?」

 

俺が聞くと千歌は大きく胸を張って答えた。

 

千歌「ふっふっふ。聞いて驚かないでよ?実は…グループ名が決まりました!!」

 

優馬「そうか、よかったな。」

 

千歌「アレ?なんか反応薄くない?」

 

優馬「そんな事ないぞ?すごい嬉しい。それでなんていう名前なんだ?」

 

 

千歌「Aqoursって名前だよ!えへへ、いい名前でしょ!!」

 

千歌が踏ん反り返りそうなほど胸を張りドヤ顔で答える。

 

 

 

優馬「Aqours…か。」

 

 

俺は千歌からその名前を聞き少し驚いた。

 

 

まさかな…。

 

 

千歌「どうしたのゆうくん?もしかして、おかしかった…?」

 

優馬「ん?いや、そんな事ないよ。いい名前だ。俺は好きだぞ?」

 

梨子「千歌ちゃん…まるで自分が考えたみたいに言ってるけど違うからね?」

 

優馬「どういうこと桜内さん?」

 

俺はそのまま桜内さんに聞き返した。

 

千歌「わわっ!?梨子ちゃん言わないでよ!」

 

千歌が慌てて桜内さんに近づき口を封じる。

 

曜「実は朝練でトレーニングしながらグループ名を考えてたんだけど、たまたま浜辺にAqoursって名前が書かれてて千歌ちゃんがこれにしよう!って言って決まったんだ!」

 

優馬「へぇ…。偶然か…?」

 

俺は小さく呟く。

 

曜「優?どうしたの?」

 

優馬「あっ、いや、何でもない。とにかくグループ名は決まって良かった!これからは曲作りとダンスがしっかりできるから頑張って行こうな。」

 

3人「「「うん!!(ええ!!)」」」

 

3人は元気よく返事をして頷いた。

 

優馬「よし!じゃあ、今日も今日とて頑張りますか。」

 

俺たちは足並み揃えて学校へ向かった。

 

 

 

学校を終えて千歌達は町内放送をするため役所へ向かい俺は同伴する事にした。俺は何もしないがあくまで同伴のつもりだ。

 

千歌達が放送を開始して俺は頭を抱えた。

 

グダグダ過ぎ…。

 

そんなこんなで浦の星女学院非公認スクールアイドル『Aqours』が誕生した瞬間を目の当たりにした。

 

 

役所から帰っている最中俺は半ば呆れた声で聞く。

 

優馬「アレは流石に酷いと思うぞ…?」

 

千歌「だって梨子ちゃんが!!」

 

梨子「千歌ちゃんが突拍子も無い事言うからでしょ!?」

 

曜「アハハ…まぁまぁ。」

 

言い争う二人を宥める曜に加勢して俺は千歌の頭にチョップをかます。

 

優馬「てい!」

 

千歌「あいた!もうゆうくん何すんの!?」

 

優馬「無性に千歌の頭にチョップしたかったから?」

 

千歌「何で疑問形!?酷いよ…。」

 

優馬「まぁ、何にせよ明日はライブだ。今日はゆっくり休んで明日に備えよう。当日体調が悪かったなんて言ったらシャレにならないからな。」

 

ようちかりこ「「「はーい。」」」

 

こうして俺たちは家に帰りゆっくりした。明日で運命は決まる。不安なせいか夜はいつになく心臓が鼓動が早く眠る事が出来なかった。三人に偉そうに言ったのにこれじゃあ俺の方がよっぽどガキだな。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

ライブ当日

 

 

俺はいつも通り早起きをして身支度を整える。ゆっくりは眠れなかったが寝覚めはいい。

 

俺は兄貴の仏壇の前で線香に火を灯し供える。

 

優馬「兄貴。今日は千歌と曜がスクールアイドルとして初めてライブするんだ。あんなに熱中してる千歌と曜が見れて俺は嬉しい…。兄貴もそう思うだろ?新しく桜内さんって言う女の子も入ってこれからって時なんだ。だから兄貴も応援しててな。よかったら見に来てくれよ。」

 

遺影の兄貴に向かって俺は今の気持ちを伝える。もちろん兄貴からの返事は無いけど応援してるって言っている気がした。

 

優馬「じゃあ、行ってきます。」

 

俺は立ち上がり玄関へ向かい外に出る。天候は生憎の雨。なんだか嫌な感じだ。

 

 

どうか成功しますように…。

 

 

俺は心の中でそう呟き学校へ向かった。

 

 

学校へ到着するとよいつむトリオが準備を進めててくれた。

 

優馬「みんなおはよう。今日はありがとな。」

 

いつき「気にしないで!!」

 

よしみ「千歌達の晴れ舞台!!」

 

むつ「絶対成功させようね!!」

 

優馬「おう!最高の舞台にしてやろう。今日はよろしくお願いします。」

 

三人ともそんなかしこまらないでよと笑い準備に取りかかってくれた。俺も千歌達の様子を見に行く事にする。

 

優馬「千歌、曜、桜内さん準備は出来た…か…。」

 

俺は舞台袖のカーテンを開けて確認を取ると三人ともまだ着替え中で下着姿であり、俺は自分自身焦ると思っていたが意外と落ち着いていた。

 

曜「あっ…。」

千歌「やっ…。」

 

優馬「すまん、悪いとは思ってる。」

 

俺は一応謝った。そして後ろを振り返ろうとしたタイミングで桜内さんがプルプルしていたのが目に入る。

 

梨子「い、いやーー!!!」

 

叫び声と共に平手打ちが繰り出されバチンと子気味のいい音を立てた。

 

そして俺は意識を手放した。

 

 

※※※※

 

 

優馬「う、ううん…。」

 

俺は意識を取り戻して起き上がろうとすると頭に柔らかい感触があった。俺はそれを確かめるため頭の後ろに手を回す。

 

曜「ひゃっ!?///」

 

優馬「ひゃっ?」

 

可愛らしい悲鳴が聞こえてその正体が曜である事は直ぐにわかった。

 

曜「優!!いきなり変なところ触らないでよ!?///」

 

優馬「曜か。どうりでいい匂いがしたし肌がスベスベだと思った。」

 

曜「なっ///なっ!?///何言ってんの!!///」

 

優馬「素直に感じた事だけど?嫌だったか…?」

 

曜「そ、そんな事、むしろ嬉しい…。な、何言ってんだろ私…///」

 

恥じらいを見せている曜を見つつ俺は上体を起こす。

 

優馬「とりあえず曜、ありがとう。それからごめんな。」

 

曜「もういいよ!私たちも悪かったし。」

 

優馬「桜内さんもごめんね。わざとじゃ無いんだ。本当にごめん。」

俺は頭を下げて桜内さんに謝罪する。

 

梨子「わ、私の方こそいきなり叩いちゃってごめんなさい…。」

 

桜内さんはシュンとした表情を浮かべ俯いている。

 

俺はそんな彼女の頭の上に手を置いて優しく撫でる。

 

優馬「俺が気を使わなかったのが悪いんだ。君のせいじゃ無いよ?ホラ顔上げて?」

 

桜内さんがゆっくりと顔を上げる。その顔は少しだけ赤く染まっているように感じた。

 

優馬「千歌も悪かったな。」

 

千歌「ふん!!千歌の頭も撫でてくれないと許してあげない!!」

 

プンプンと腕を組み怒っていた。

 

優馬「そうか…残念だな…。これで千歌との関係も終わりか…。」

 

俺は神妙な面持ちで千歌に向かって冗談を言った。

 

千歌「えっ…。やだ。やだよ!!ごめんねゆうくん…だからそんなこと言わないで…。」

 

千歌は涙目になり俺に謝ってくる。

 

やべ、やりすぎた。

 

俺は千歌の方へ歩み寄り頭の上に手をポンと置く。

 

優馬「嘘だよ。意地悪してごめんな。許してくれ。今更俺らの関係を断ち切るなんて出来ないだろ?ホラ、涙拭いて。なっ?」

 

俺は頭を撫でている手とは逆の手で千歌の涙を拭う。

 

千歌「うん…グスッ…。ギュってして…。そしたら許してあげる。」

 

千歌はハグを要求してきて俺に向かって両手を広げ待っている。

 

優馬「はいよ。」

 

俺は千歌にそっとハグをする。ハグして千歌の体が震えていることに俺は気づいた。でも、すぐにその震えは無くなった。

 

千歌「ゆうくんに抱きしめられるとすごく安心する…。さっきまで緊張してて震えが止まらなかったけどその緊張が嘘みたいに消えてくよ…。」

 

優馬「そうか。そりゃ良かった。今日の為に頑張ってきたんだ。絶対うまく行く、俺が保証する。」

 

しばらくして千歌が俺から離れていき元通りの千歌になった。

 

すると今度は曜が何だか顔を赤くしながら俺の方をチラチラと見ている。

 

優馬「どうしたんだ?」

 

俺は曜に声をかけてみる。曜はしどろもどろしながら何かを伝えようとするのだが、うまく言葉に出来ていなかった。

 

でも、俺は曜が何をしたいのか直ぐにわかり、手を広げて笑顔を見せる。

 

すると、オドオドした表情の曜だったけどパァーッとした表情に変わり嬉しそうに俺の方へ、トトトッと近づいてきてハグしてきた。

 

曜俺の胸に顔を埋めグリグリしてくる。俺はそんな曜の頭を撫でながら笑みをこぼす。

 

優馬「曜も不安だったよな。でも今まで頑張ってきたんだから大丈夫。」

 

曜「うん!!優がいるんだもん!!不安もどっか飛んでっちゃったよ!!」

 

ニパァと笑い笑顔を見せてくれる曜に俺も笑顔で返す。

 

そんなこんなで下着を見た件については許してもらえた。だが、桜内さんは相変わらず緊張しているようで体が少し震えていた。

 

優馬「桜内さん大丈夫?」

 

梨子「やっぱり緊張しちゃって…。ごめんね…。」

 

優馬「何で謝るの。緊張するのは当たり前だしまだ時間はあるからゆっくり落ち着こうね?」

 

梨子「うん…。」

 

不安な表情を浮かべる桜内さんに千歌と曜が近づく。

 

千歌「梨子ちゃんもゆうくんにギュってしてもらおうよ?」

 

梨子「えっ!?///」

 

曜「そうだよ!!優にギュってしてもらったら緊張も和らぐかもしれないよ?」

 

優馬「おいおい。人に強要するのは辞めなさい。」

 

俺は二人の頭にチョップをかまし黙らせる。

 

千歌「イタ!?うぅ…ゆうくんにギュってしてもらうと安心するから言ったのに…。」

 

優馬「それはお前だけだろ?」

 

曜「そんなことないもん…。優はお日様みたいにあったかくて優しい匂いがするの…だから梨子ちゃんも落ち着くかなって…。」

 

優馬「まぁ…千歌と曜がそう言ってくれるのは嬉しいけど。桜内さんにその感情を押し付けるのはよくないからこれからは気をつけような?」

 

ようちか「「うん…。」」

 

優馬「ごめんね桜内さん。二人も悪気があるわけじゃないし許してあげて?」

 

俺がそう伝えると桜内さんは何か決心した様な表情をしていた。

 

優馬「桜内さん?」

 

梨子「神崎くん…いや、優馬くん!!その…私も…あの…その…ギュってして…欲しい…な?///」

 

優馬「えっ?別に無理しなくてもいいんだよ?」

明かに無理をしている様に見える為、俺は念のため確認を取る。

 

梨子「ううん…。無理なんてしてないよ?私も、優馬くんにギュってしてもらいたいの。ダメ…かな?///」

上目遣いで俺の顔を覗き込み、桜内さんは俺に自分の意思だという事を伝えてくる。

 

優馬「わかった。桜内さんがいいなら、喜んで。」

俺が桜内さんの事をギュッとすると桜内さんも俺に身を委ねてくれた。

 

梨子「梨子…って、呼んで?」

桜内さん。いや、梨子が望む事なら俺は喜んでその要求を飲む。

 

優馬「梨子、大丈夫。梨子が作った曲はとっても素敵で心に響く曲だよ。俺も千歌も曜もついてる。だから、自分に自信持って。梨子は1人じゃない。」

 

俺は梨子の事を優しく抱きしめながら伝える。梨子も徐々に落ち着きを取り戻し体の震えも止まっていた。

 

梨子「ありがとう、優馬くん…///二人の言った通り、優馬くんにギュってしてもらうと不思議と安心する…。何だか元気を貰えて、胸が暖かくなる。」

 

優馬「そっか…。梨子の事、勇気付けられたんだったら嬉しいよ。」

俺は梨子に優しく笑いかけ頭を撫でながら言う。頭を撫でられている梨子は恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑ってた。

 

まぁ何にせよ、三人を元気付ける事はできた。後は、三人が全部出し切るだけ。

 

優馬「さぁ、もうそろそろ時間だ。みんなで円陣でもしなよ!」

俺は最後に提案した。それにみんなも同意してくれて、円陣を組むことになった。

 

千歌「いいね!実は私、考えてたんだ!!」

 

曜「私もやりたいであります!!」

 

梨子「そうね!やりましょうか!」

そう言って三人は肩を組む。しかし、何故か三人が円陣を組み始めない。

 

優馬「おいおい、どうしたんだ?」

俺は疑問に思い聞いてみた。

 

千歌「ゆうくんも!!」

 

優馬「えっ?」

千歌の言葉に俺は驚いた。

 

曜「当たり前じゃん!!優がいなきゃ始まんないよ!」

 

梨子「そうよ!!優馬くんも大切な仲間なんだから!!」

 

三人は笑顔で俺に向かって手を伸ばしてくる。俺は一瞬戸惑ったけど、少しだけ笑いながら三人の手を取り円陣に参加する。その手は暖かくて優しさに満ち溢れていた。

 

兄貴…。

 

俺たちの幼馴染たちは本当に優しい子だよ。それにまだ知り合って日は浅いけど、梨子も本当に優しい子だ。そんな三人がこれから晴れ舞台に立つ。どうか、近くで見守っててくれ。

 

 

“頑張れよ”

 

 

俺の頭の中にそんな声が聞こえた。

 

俺は思わず笑みを溢して心臓を抑える。千歌たちは心配そうに見つめてくるけど、俺は兄貴が頑張れって言ってると千歌たちに伝えた。

 

三人もその言葉に嬉しそうに笑った。

 

優馬「それじゃあ、千歌。掛け声頼むぞ。」

 

千歌「うん!!いっくよー!!Aqours!!」

 

「「「「サンシャイン!!」」」」

 

こうして俺と…いや、俺たちとAqoursの奇跡の物語が始まった。

 



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