信長アンコール (ヤッサイモッサイ)
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劇場裏のアンコール・序
連載中の方の信長とは一切の関係がない至って普通の魔王信長です。
「フハッ、これが此度の聖杯戦争か。“月の”とはよく言ったものよなぁ。確かに、ひとつの街にあれが出現すれば一溜りもあるまい」
「いざや略奪だ、それや侵略さ!海賊ってのはそういうもんだろう?アタシはただ自身の手が伸びるその場所まで、そうして進んで行っただけの女だ。その手が月まで伸びるのなら、今度は月すら踏破する、ただそれだけの事じゃぁないか!」
─────1回戦─────
溢れる黄金。滴る流星。
そのような何かが飛来する。輝く船から、金色の大瀑布が空めがけて落ちてくる。
「■■■■■■■ッ!」
「これしきで騒ぐでない、仮初とはいえ我のマスターであれば、ドンっと構えておけ」
そんな絶望的な光景すら、紅が一閃きするだけでどこかへと隠れるように消えてしまう。男の自分ですら見上げるその背中。厳しくその身を覆うは漆黒の鎧───男と見間違うようなその存在感の中で、しかし嫋やかに伸ばされた緋色の髪と隠しきれぬ女性的な線が、彼女の存在を靄の奥へと仕舞い込む。
「
そう傾く彼女の前では、どのような黄金すら霞んでしまう。如何なる流星とて露と消えた。
右手に構えた異物がドンドンと快音を撒き回転数を上げる度に、深紅の銃弾が黄金の砲弾を食い散らかす。
「───なんなんだい、そのサーヴァントは。尋常の出力じゃあ無いだろう?アタシの船団が、
「笑えんな、我に道理を説くな。道理とは、我の元に付き従うものだ。生憎とこの身は若き頃とは違い好き嫌いをせんでな───」
─────『ライダー』フランシス・ドレイク─────
「古きも新しきも平等に焼いてやる」
「───この距離を、一足にィッ!?」
弾丸の食らい合いが落ち着く頃には、彼女は1歩で遥か上空のガリオン船へと乗り込んでいた。
続けざまに向けられた銃をその長大な脚を鞭のように振るい蹴り飛ばす。
「チッ、だけどお生憎だねぇ、大砲だの銃だのの一芸だけで、海賊はやってけないのさ!」
されど敵方はサーヴァント、負けじと抜かれたカトラスが空間に銀を残し、深紅に迫る。
本領でなくとも、紛れも無く決死の一撃───捌くにしろ防ぐにしろ、対処しなければそれは容易く敵対者の命を奪うだろう一撃だ。
─────撃破─────
然しその一撃の行く末を、フランシス・ドレイクは見届ける事無く煉獄へと飲まれた。
彼女の反応は銃が弾かれたと
「.......そなたに太陽は落とせても、端から落ちている煉獄までは落とせまい」
ただ、それだけの事である。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「不意打ちは失敗、罠は空振り、毒は当たらない.......それで、次は?」
「イヤだねぇ。不意打ちを先読みする戦術も、罠諸共周囲を焼き尽くすその業火も、矢諸共毒を吹き飛ばすその銃も.......いいぜ、そこまで言うなら見せてやりやしょう。狩人の手練手管、たんと味わいな」
─────2回戦─────
燃ゆる樹海、それは本来狩人にとっての狩場となっていただろうシャーウッドの森。
しかし如何なる大自然であろうと、炎を支配する術はなく、炎を狩れる狩人は居ない。
隠れても燻り出され、謀は焼き潰され、毒は上昇気流に攫われる。
「ったく、たまったもんじゃないぜ。ちったァ油断してくれてもいいんだぜ、可愛げねぇ」
「可憐さと美麗さは同居するものだ。それがわからんのであれば貴様の目が節穴なのだろうよ。まぁ、矢一つ撃って来れぬ弓兵であれば、道理だろうが」
「美人なのは認めるがオタクに弓兵を語られるのはなんか納得いかねぇな」
しかし───しかし決着がつかない。
いくら彼女が森を焼こうとも、動きを計算しようとも、はたまた銃で辺りを凪払おうとも、そこに敵の姿は無い。
「フン、それはこっちの台詞だわ。暗殺者の真似事なんぞしよって」
また一ダース、木が燃ゆる。大気が揺れる。
陽炎が如く、現実が溶けては消えていく。
─────『アーチャー』ロビンフッド─────
“
声にすらならぬ、大気のゆらめきがその宝具の事を伝えて来る。
草木は無い、隠れられない
影は無い、潜むことは出来ない
死角はない、這い寄ることも出来ない
しかし、皐月の王はただ息を潜めて待つ。魔力切れのその瞬間か、あるいは業を煮やして自身の視界すら遮る一撃を放つその瞬間を。
何故ならば、彼は狩人。ただ一矢放つ隙さえあれば.......それでマスターを仕留める事は叶うのだから。
故に標的を視界に、ただじっと───待つ。
─────撃破─────
────目が、合った。
「ハ───ッ?」
胸に風穴が空く。
ひとつ、ふたつ、みっつ。次々と、己が身体を貪るかの様に。
「名も無き誰か、その様な物が今更“
縋る様に放った一矢すら、気だるげに振るわれた黒刃に両断された。
打つ手無し、騎士道が報われることは、あの老騎士が殉じる事は───もう無い。
「最期にブレたな、己が」
寂しそうに、しかし満足そうに。
そんな顔すら誰かに見せることなく、不可視の狩人は散っていく。
その後ろに、
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「これはまた、なんとも数奇な組み合わせと言うべきか。忘却の森、虚ろなる世界とは」
「あら、おかしなことを言うのね。ここは名無しの森、あたしの世界.......今に忘れちゃうのだけれどね」
─────3回戦─────
豪炎が蜷局を巻く。
“ぼうぼうともえるのだわ!”
───巻きもどる。
火線が大地を区切る。
“おやまがなくなっちゃった!”
───巻きもどる。
化け物が地に伏せる。
“わるものはたいじされました!”
───時間が、巻きもどる。
─────《キャスター》ナーサリー・ライム─────
忘却の森、トランプの兵隊、不死身の化け物、飛び交う氷の塊、風の刃.......ありとあらゆる全てを壊しても、時は巻きもどる。
「うふふ、みじめなウサギさん。だめよ、だめだめ。まだまだまだまだ遊びは終わらないの!だって───」
───“
「頁はまだまだ残ってるもの、物語はまだまだ続くのだもの!」
魔術が、兵隊が、悪夢が、なによりも忘却が。万物に、万人に等しく降りかかる。
ここは名無しの森、楽しい楽しいお茶会が待っているのだわ。だから
負けないのだから───
─────撃破─────
「喧しいわ」
.......。
..............。
........................................................。
「───ぇ?」
森が燃え盛る。
兵隊が燃え盛る
怪物が燃え盛る。
───
「嘘なのだわ嘘なのだわ嘘なのだわ───こんなの嘘なのだわっ!」
巻きもどる───巻きもどる巻きもどる巻きもどる巻きもどる巻きもどるッ!!!
「なんで、なんでっ!?」
「───マスターからの魔力供給、我に向けられた負の感情。幾ら朧気になろうとも、我は我を決して忘れぬ。森も兵士も怪物すらも、我ごと燃やす。魔王が燃える、それはつまり物語ももう終わりという事だ」
拡散するはこの灼熱地獄がその中心、自身すら薪となって火に焚べて、魔王が笑う。
「巻きもどるよりも早く、疾く失せよ」
世界が歪む、あれ程響いていた子守唄も止まってしまった。お茶会は中止だ。あぁ、ダメそんなのダメ───準備をしないと。
甘いお菓子をたーくさん、取り合いになっては行けないものね。
紅茶はどうしましょう、とってもいい香りの物がいいわ。
えーっと、だからティーカップは.......あれ、えっと.......あれ?
「だれか───ひとりぼっちは、嫌.......ァ」
─────前半戦、終了─────
魔王信長成分薄めなのは後半のためです。
一応敵鯖の設定は無視しないようにしてますが、魔王信長のカタログスペックから判断すると「え、これ勝てんの?」というパターンがほとんどです。ゲームの性能はまぁいいとしても魔王信長のストーリー上の性能もそんなに強いとは思えない.......なのでイベントでほぼ触れられなかったのをいいことに結構拡大解釈してこれ書いてます。
一応それぞれこれが決め手になってとか、敵のこれはこうやってーとか理屈付けはありますが、一通り終わったあとに補足の形で各戦闘を実況する感じにするつもりなので、モヤっとしたままあと3話分くらいお待ちください
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