ウオジーダイラ面仮 (バリー)
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「スビア:????」 10PE
そこは、無数のビルが建ち並ぶ都会だった。様々な標識や看板があり、複数のルートに繋がっている広い道路には数多の信号機が設置されている。また、壁には数枚の商品広告や選挙ポスターが貼られていた。
一見ごく普通のありふれた都会の景色に見えるが、そこには普通の人間が見たら明らかに「おかしい」と感じせずにはいられない箇所が二つあった。
まず、一つ目に歩行者がいないのだ。今の時間帯は昼間であり、通勤等の目的で歩く人々が大勢いる筈である。しかし、この都会には何処を見渡してもそういった人物達は見つけられないのだ。そう一人も。
そして二つ目。壁に貼られているポスターや標識の文字や記号。それらがまるで
いや、
この世界は地理や文字など、全てが地球とは逆になっている。また人間を含む動物が存在しないし、存在することも出来ない。それらがこのミラーワールドに入った瞬間、一分も経たない内に消滅してしまうのだから。
にも関わらず、その未知なる世界の都会で一人の青年が、眼に獲物を探す獣の様な獰猛さを宿しながら彷徨っていた。
茶色い頭髪に薄ピンクと青で構成されたシャツを着ており、その上から黒い上着を羽織っている。下半身にはベージュのジーンズに赤い靴下、そしてジーンズと同じ色の靴を身に付けていた。
青年――『
「どこだ……どこにいる……?」
しばらく歩き続けていたソウゴだが、視界に入った
それは怪物だった。メインカラーは緑がかった青で、頭部はサメによく似ている。両手には魚の骨を
この怪物の正体――それは未知なる世界『ミラーワールド』に唯一存在する未知なる生き物『ミラーモンスター』。そしてその一種であるサメ型の『アビスラッシャー 』である。
「見つけた。」
ソウゴは笑みを浮かべる。
『ジクウドライバー!』
その声と同時に、白い横長のベルトが腰に巻かれた。
ソウゴは左手に持っているアイテム――『ライドウォッチ』を左に回転させる。
『ジオウ』
低い音声が鳴り響き、ライドウォッチが起動する。ソウゴはそれを右側のスロットにスライドさせて、はめ込んだ。
「変身。」
そしてバックルを一回転させる。
『ライダータイム!仮面ライダージオウ!』
彼の身体が黒と銀の装甲に覆われる。中央には腕時計のベルトの様なパーツがあり、そして頭部には折れ曲がった長針と短針を
『仮面ライダージオウ』に変身したソウゴは、反転したピンク色の『ケン』という文字が入った黒と銀で構成された武器――『ジカンギレード』を取り出し、アビスラッシャーへと襲いかかった。
対するアビスラッシャーも双剣を構え、ジオウへと斬りかかる。
先手を取ることに成功したのは、ジオウだった。何度も何度もジカンギレードを振り、アビスラッシャーに斬激を与える。攻撃が当たる度にモンスターから火花が上がった。
一方のアビスラッシャーも負けていない。自分の身に迫るジカンギレードを片方の剣で防ぎ、もう一方の剣でジオウの身体を斬りつけた。剣から生えた無数のトゲが引っ掻くようにして、ダメージを与えていく。
「ぐああっ!」
吹き飛ばされるジオウ。そこへ更に追い打ちをかけようとアビスラッシャーが迫ってくる。
そして剣を当てようとするが、ジオウは寸前で避けると、別のライドウォッチを取り出した。
『ゴースト!』
そのまま今度はベルトの空いている左のスロットに装填し、一回転させる。
『アーマータイム! カイガン! ゴーストー! 』
ジオウがオレンジと黒の装甲に包まれ、顔面には『ゴースト』という文字が張り付く。
『ゴーストアーマー』にフォームチェンジをしたジオウは両肩の目玉状のパーツ――『眼魂ショルダー』からパーカーを着た幽霊の様な生命体である『パーカーゴースト』を一体召喚した。
召喚されたのは、両腕が刀になった赤いパーカーゴーストの『宮本武蔵』。日本最強と言われた剣豪の魂と力を持っている。
「来い。」
ジオウが命令すると、宮本武蔵がパーカーを着せる様に上へと被さる。すると『ゴーストアーマー』に変化が起こった。
オレンジだった装甲が赤くなり、赤いマスクになった頭部には鉢巻きとちょんまげの様な飾りが追加されている。そして顔面には『ムサシ』という文字が。
ゴーストアーマーを『ムサシ魂』へと更にフォームチェンジさせたジオウは、大振りの剣である『ガンガンセイバー』とジカンギレードを構えると、アビスラッシャーへと駆け出す。
アビスラッシャーは双剣を交差させて防御するが、ジオウはそれを押し切ると両腕に向けて斬撃を与えた。
アビスラッシャーはそのダメージに耐えきれず、剣を二本とも落としてしまう。その隙を見逃さず、ジオウは身体を交互に斬りつけ、最後には同時に剣を振り、アビスラッシャーを吹き飛ばした。
かなりのダメージが入ったのか、アビスラッシャーはふらついている。
イケるな。ジオウがそう思ったその時、
「ぐうっ!?」
突如、背中に火花が起こるのと同時に衝撃が走った。
振り向くとそこには新たなモンスター――『アビスハンマー』が立っていた。
全体的に緑をベースとしており、胸にはシュモクザメの頭の様なパーツが付いている。そしてその正面からは二本のキャノン砲が生えており、そこから硝煙が出ていた。恐らく、背後からジオウを撃った時のものだろう。
「仲間か。」
前門の鮫、後門の鮫。
ジオウの前後を挟み込んでいる様に立っているモンスター達は、二対一と状況が好転したのか、自信満々な様子だった。
だが、そんな中でもジオウは冷静さを崩さない。
「だったら、こちらもそうさせてもらうぞ。」
そう言うとジオウはゴーストライドウォッチを取り外すと、今度はマゼンタ色のライドウォッチ――『ディケイドライドウォッチ』を取り出した。他のライドウォッチと異なり、左にはもう一つライドウォッチをセットできるスロットがある。
ジオウはドライバーの左側にあるスロットにディケイドライドウォッチをセットし、一回転させる。
『アーマータイム!カメンライド。ワーオ!ディケーイ!ディケーイ!ディケーイドー!』
少々
装甲はマゼンタを基調としており、胸から右肩にかけて漢字の『十』を象ったパーツがある。左肩には反転した白い文字で、目にあたる部分には緑の文字で、『ディケイド』と書かれており、全体的にはバーコードの様な意匠が多い。
『ディケイドアーマー』にフォームチェンジしたジオウ。しかし、これで終わりではない。
『エグゼイド!』
ジオウはエグゼイドライドウォッチを起動すると、ディケイドライドウォッチのスロットに装填した。
『エグゼイド!ファイナルフォームタイム!エ、エ、エ、エグゼイド!』
ジオウがオレンジと緑に発光し、二体に分裂する。
片方はオレンジを主とした装甲。顔はオレンジの目があり、頭頂部は緑とオレンジ左右に分かれている。そして左肩には左右反転した『エグゼイド』、胸部から右肩にかけてには『ダブルアクションXXR』の文字が書かれている。
もう片方は緑を主とした装甲で、顔には緑の目にXXRとは左右逆に色が分かれた頭頂部。左肩には『エグゼイド』、胸部から右肩にかけてには『ダブルアクションXXL』の文字が。
『ディケイドアーマー
「「超キョウリョクプレイでクリアしてやるぜ!……なんてな。」」
アビスラッシャーとアビスハンマー二体はジオウが分身したことに一瞬怯むが、気を取り直し襲いかかった。
それに対し、二人のジオウもそれぞれ武器を構えて立ち向かう。
EFRの方のジオウは、手に持っているライドヘイセイバーでアビスラッシャーを何回も斬り続ける。
アビスラッシャーは近距離戦では不利だと学習したのだろう。ジオウから一旦距離を取ると、今度は口と胸から高圧水流を連射し始めた。
そこで、ジオウEFRはライドヘイセイバーの中央に付いている針を回転させる。
『ヘイ!龍騎!』
ライドヘイセイバーの刃に炎が宿る。
一振りすると、灼熱の炎が水流を蒸発させながらアビスラッシャーに到達し、その身体を焦がす。
焼けつく痛みに苦しむアビスラッシャー。
ジオウEFRは、ふと分身であるEFLの方を見る。あちらは苦戦している様子だった。
EFLのジオウが手に持ったジカンギレードを振るうと、当たる寸前にアビスハンマーは地中に潜り込んだ。
次の瞬間、アビスハンマーはEFLの背後に回り込み、二紋の砲塔を撃ち込む。
EFLが振り返り、攻撃を当てようとするが、その度に当たる寸前で潜り込まれ、キャノンで背中を撃たれた。
アビスハンマーのヒットアンドアウェイに苦しむEFL。
「おーい。」
突如EFRが声をかける。
「それっ!」
そう言うと、ライドヘイセイバーをEFLの方へと投げ出した。
それを見たEFLも、手に持っていたジカンギレードを投げる。
両者が互いの武器を受け取った。
EFLはライドヘイセイバーを受け取った後、中央にある針を動かす。
『ヘイ!オーズ!オーズ!デュアルタイムブレーク!』
地面に向かって、剣を突き刺す。直後に地震が発生し、地中のアビスハンマーがダメージを受けて地上へと吹っ飛ばされた。地震はライドヘイセイバーに込められたオーズの『ゾウレッグ』の力で起こしたものである。
地震攻撃がかなり効いたのか、アビスハンマーは立ち上がることが困難な様子だった。
その隙にEFLはエグゼイドライドウォッチをベルトから取り外してライドヘイセイバーにセットすると、針を回転させた。
『ヘイ!エグゼイド!龍騎!ファイズ!スクランブルターイムブレーク!』
そのままライドヘイセイバーを下へと斬り上げた次の瞬間、赤い光波が地面の上を這うように進んでいき、アビスハンマーに到達して拘束する。
すかさずEFLは、ピンクのエネルギー波と赤い炎を宿したライドヘイセイバーを持ち、アビスハンマーに走り寄る。そしてその勢いで横方向にアビスハンマーの身体を切り裂くと、爆散した。
『フィニッシュターイム!』
一方、ジオウEFRはエグゼイドライドウォッチをベルトから外し、ジカンギレードに装填した。
『エグゼイド!ギリギリスラーッシュッ!』
そしてピンクやライトグリーン等のカラフルなエネルギーを宿したジカンギレードを持ち、そのままアビスラッシャーの方へと突進してきた。
水流を発射し、抵抗を試みるアビスラッシャー。だが、ジオウEFRは強化されたジカンギレードでそれを切り払い、勢いを弱めない。
距離が近くなったところでアビスラッシャーは攻撃を防ぐために剣を取り出したが、時既に遅し。
「はぁっ!」
ジオウはすれ違いざまにアビスラッシャーの身体を横一文字に切り裂いた。
爆発するアビスラッシャー。
EFRの下へ分身であるEFLが駆け寄る。
「やったか?」
「いや、まだだ。」
EFLの問いに、EFRは上空を指さして答える。
見上げるとそこには爆散したアビスラッシャーとアビスハンマーの残骸が集まり、一体の巨大なサメ型モンスターとして融合し、復活していた。
青い胴体に黄色い眼が輝く黒い頭部には鋭い歯が並んでいる口があり、胸ビレや背ビレ、そして尾ビレは銀色に光る鋭い刃物で出来ている。
『アビソドン』は目を左右に伸ばし、ホオジロザメからシュモクザメの様な姿に変化した。そして、両目から大型のエネルギー弾をジオウに向けて飛ばす。
地面に着弾した瞬間、爆発が起こった。
「うおおっ!?」
「あぶねっ!」
ジオウの二人とも咄嗟に回避する。そして上を見上げると、アビソドンは未だに空を漂っていた。
「デッケぇなぁ、あれ。」
「どうする?」
「オレ達二人じゃ、勝てそうにないな。」
「ということは?」
「人数を増やせばいい。」
「そういうこと。」
ジオウEFRはオーズライドウォッチを起動し、ディケイドライドウォッチに装填する。
『オーズ!ファイナルフォームタイム!オ、オ、オ、オーズ!』
すると緑の光と共にEFLが消滅し、ジオウEFRのディケイドアーマーのスーツと文字が変化する。
装甲はオレンジから緑をベースにしたものとなり、顔はオレンジの目を持った緑の仮面へと変わる。左肩には反転した『オーズ』。胸部から右肩には『ガタキリバ』の文字。
「うおおおおおおおおおおおっ!!」
ジオウディケイドアーマー
上空にいるアビソドンは猛スピードで地上のジオウの方へと急降下し、突進攻撃を仕掛けてきた。同時に正面にある刃が一直線に展開し、ノコギリザメの様な姿となる。恐らくその長く、鋭い刃でジオウ達を一掃するつもりなのだろう。
『フィニッシュターイムッ!!』
対する二十体のジオウ達は全員ドライバーを回転させると、上空へと跳躍し、アビソドン目がけて足を突き出した。
「「「「セイヤァァァァァァァァァッ!!!」」」」
ジオウ二十体分のキックとアビソドンの刃がぶつかり合う。そして――
ジオウ達の攻撃が、アビソドンの身体を貫いた。
「グギャアアアアアアアアアアアアアッ!!」
断末魔を上げて、アビソドンは爆散した。
爆煙が晴れると同時に、必殺技を決め終えたジオウが地面に着地する。
変身が解除されると、そこから生身のソウゴが露わになった。
「ッ!ハァハァ……!」
膝を付き、息苦しそうにしている。ガタキリバの副作用である分身二十体分の疲労感を一度に受けたのだ。
「やはり……あのフォームは便利だが、これはキツいな……。なるべく、あれは使いたくなかったが……」
ソウゴは自分の手を見る。そこには水色と白の新たなライドウォッチが握られていた。アビソドンを倒した際にその身体から排出されたものであり、そして彼がモンスターを狩る理由でもある。
「その分の価値が、これにあるのか?」
『
「早く試してみたいな……。この力を!」
ライドウォッチから響いた音声を聞いたジオウは、顔に笑みを浮かばせた。
それはまるで新しく買って貰った玩具で遊びたがっている子供の様だった。
仮面ライダージオウ(ミラーワールド)
能力:ミラーモンスターを倒すことで、『そのモンスターと契約し、誕生する
ガタキリバのディケイドアーマーオーズフォームはK/Kさんの作品『仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―』から頂きました。
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