仗助に双子の姉がいたらというもしも パート3 三部へ (蜜柑ブタ)
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お試し短編  ここは、ドコ?

お試し短編。



いきなり空条家に放り出された、仗助とミナミ。


そこで、まだちょっと若いジョセフと、高校生の承太郎に出会う。


 

 ヒュ~~~~ン、ドスン!

 

「なんの音じゃ!?」

 

 ジョセフと、承太郎は、隣の部屋から聞こえた音に驚いてその部屋に入った。

 

 

 

「いった~~~い…。」

「ね、姉ちゃん…、重てぇ…、早く、どいてくれよ…。」

 

 

 

「誰だ…、てめぇら?」

 

「あっ? あれ? 空条さん?」

「あ、承太郎さん?」

 ひっくり返ってメチャクチャな格好で重なっている学ランの女性と青年が、ハッキリと承太郎の名を呼んだ。

 承太郎の眉間がピクリッと動く。

「どういうことだ? なんで、てめぇら、俺の名を知っている?」

「えっ?」

「DIOの手先って…、わけじゃなさそうだな。間抜けな面してるしよ。」

「間抜けって…。酷い…。」

「あれ? でも承太郎さん…、なんで学ラン…ってかなんか若くね?」

「あ、そういえば…、で…隣にいるのは……? あれ? ましゃか……。」

 起き上がった二人は、顔をバッと見合わせた。

 察しの良さと頭の回転が良いのは、父譲りであることを、今ほど恨んだことはないかも…っと思った。

 

「えーっと…、確認して良いですか?」

「なんじゃ?」

「あなたの…、お名前は…?」

「人に物を尋ねるときは、先に名乗るもんじゃぞ?」

「……東方…。」

「!?」

「やっぱり!」

「うおおおおおおお! マジか!?」

「どういうことだ? ジジイ?」

「えっ!? あ、それは…。」

「ジョセフ・ジョースターさんですね! そしてそっちの学生さんは、その孫の空条承太郎さん! 間違いないですよね!?」

「……何もんだ? てめぇら? ジジイの知り合いか?」

「いや…その…、話せば、非常にややこしいんですが…。」

 

 その後、茶の間で、かくしかじかと説明。

 

 その時のジョセフは、完全に針のむしろに座らされてるような状態だった。

 

「なるほど…。ジジイ…てめぇ…。」

「……し、しかしのう…、証拠はあるのかね?」

「えっと…、この痣って、一族相伝なんですよね?」

 ミナミは、仗助の学ランの襟をずらして、星の痣を見せた。

「た、確かに! それは、ジョースターさんと承太郎にもある痣だ!」

「ちなみに、私は、双子だからか知らないですけど、左右対称で、痣がこっちにあります。」

「なるほど…、双子とはほくろの位置などが左右対称になりやすいとは聞くが。」

 この場にちょうど居合わせていた、アヴドゥルが驚いた。

「だが、なぜ未来のお前達がここに来た?」

「それが…。」

「まったく分からなくて…。」

 二人は顔を見合わせ、落ち込んだ。

「気がついたら、ここにか?」

「はい…。」

「ふぅむ…。DIOの影響かのう?」

 復活したジョセフが考え込むように手を組んで呟いた。

「えっと…、今の時間軸は、1988年なんですよね?」

「ああ、そうじゃが?」

「ってことは、私達は、4歳の時か…。」

「ジジイ…。」

「うぅう…。」

 承太郎に睨まれ、再び針のむしろに座らされたような気になるジョセフだった。

「ってことは…、仗助…。」

 ミナミの目がキラーンと輝いた。

「そうだな! あの人に会えるかも!」

「あのひと?」

「あ、私達、この頃にちょっと色々とあって、恩人の人がいるんですよ! でも、15、16年経っても見つからなくって…。」

「俺の髪型は、その人を真似たっすよ。」

「ほーん。そのハンバーグみてぇな髪型がか?」

「あっ。」

「?」

「てめぇ…、俺の髪型がなんだって?」

「じょーーーすけーーー!」

「グゲハッ!」

「ごめんなさい! ごめんなさい! 髪型を貶されると、すぐプッチンしちゃうんです、うちの弟。できたら、髪型のことは絶対に、何も触れないように! でないと、顔面が元通りになる保証がありませんので…!」

「ううむ…そうか。確かに、朋子も、ずいぶんとキレやすい性格しておったのう…。」

「がんめんが? ってことは、てめぇらもスタンド使いか?」

「ぅ…、い、一応…。」

「……はい。」

 横腹を押さえている仗助、ミナミは、非常に言いにくそうにした。

「どうした? まさかてめぇらのスタンドも、人に言えないような能力でもあんのか?」

「いや…その…。」

「あ、あんまり姉ちゃんのスタンドには触れないでやってくださいっす。姉ちゃん、メチャクチャ気にしてるんで。」

「そうか…。」

 承太郎は、あえて触れないことにした。

 それは、直感のなのか、生物的な本能なのか…。

 承太郎は、ミナミに何かヤバいものを感じていた。

 それは、自分が悪霊と見ていたスタンドというものを遙かに超える……ナニか。

 

 

 東方ミナミと。

 東方仗助。

 

 星を巡る、数奇な運命が、星の十字軍にいかなる旅路と結末をもたらすのだろうか…?

 

 

 




承太郎。ミナミのスタンドになんとなくヤバい物を感じる。
実際ヤバいですけども……。


主人公側の味方の生存を目指します。


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救えなかった命達

お試し短編の続き。


花京院達や、虹村の父親を救える可能性に気づく二人。


 

「そうだ…。」

「姉ちゃん?」

「アヴドゥルさんって…、私があの時助けられなかった命の人だ。」

「?」

「仗助は、知らないだろうけど…。」

 ミナミと仗助は、空条家で貸してもらった客室で会話をした。

 仗助には、まだ話していなかった。

 この時代…、ちょうど仗助が病院で入院していた時に、ミナミは、DIOの命を受けた手下により誘拐され、エジプトの地へ連れて行かれていたこと。

 そして、その血の運命か、それともすでに目覚めていたブルー・ブルー・ローズに導かれたのか、DIOを倒すためにエジプトに上陸した承太郎達に保護され、SPW財団によって記憶を封印され、東方家に帰されたことを。

 その時の記憶は、虹村の父親を殺してしまった後に思い出したこと。そして、未来の承太郎から渡されたビデオレターにアヴドゥル達が映っていて、ブルー・ブルー・ローズの青いバラの花で生還できたことを感謝されたことを語った。

「俺が死にかけている間にそんなことが…、お袋もジジイも何も言わなかったぜ…。」

「そりゃ、身内が誘拐されたなんてトラウマほじくり返しちゃいけないでしょ? 私だって、できる限り思い出したくなかったから、今まで喋れなかったんだ。」

「…ごめん。」

「謝らないで。だいじょうぶだから。ん? ってことは…、花京院さんとか、イギーって犬も…。」

「姉ちゃん…、もしかして…。」

「それに、億泰君のお父さんも! もしかして、チャンスかもしれない!」

「そっか…、そうだよな! そう考えることも出来るよな! 姉ちゃん、やろうぜ! 俺も手伝うからよ!」

「ありがとう! 仗助!」

 二人は手を握り合った。

 

「花京院なら、別室にいるぜ。」

 

「うわっ、空条さん!」

「いつからいたんすか!?」

「……おくやすくんのお父さんがどうのって、いった辺りか?」

「あ、そうなんですよ! 肉の芽って知ってます?」

「ああ、よーくな。花京院の奴もそれで操られてやがったぜ。」

「花京院さんが?」

「実はそのことで話があるんっすけど…。」

「なんだ?」

「DIOを倒す前に、どうしても助けたい人がいるんです。その人…、肉の芽が頭にあったせいで…大変なことになっちゃって…。」

「……じじいとアヴドゥルに伝えな。」

「そうします。行こう、仗助!」

「ああ!」

 そうして、二人は承太郎の横を通って、部屋を出た。

 承太郎は、タバコを出し、ライターに火を付けた。

「……助けられなかった命…か。」

 実は、会話のほとんどを聞いていたのだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 その後、ジョセフとアヴドゥルに、二人は肉の芽のことで話をした。

「肉の芽の暴走じゃと?」

「はい…。埋め込まれていた人を不死身の怪物にしてしまいます。」

「DIOが死んだ後でそうなって聞いてるっす。」

「なるほど…。未来でそのようなことが…。」

「私達の後の友人になる人のお父さんなんです。虹村って言うんですけど、心当たりますか?」

「いや、すまない…。」

「その虹村という人物は、スタンド使いなのか?」

「一応…そうだったらしいです。」

「確かに、何の力も無い人間に肉の芽を与えるとは到底思えませんな。」

「ううむ…。SPW財団に調査をさせてみよう。」

「ありがとうございます!」

「礼を言うのはまだ早いわい。それよりも、ミナミ、仗助、君達はこれからどうするんじゃ?」

「……できたら、打倒DIOの旅に同行させてもらえますか?」

「わしらはまだ旅立つとは決めておらんが…。」

「いいえ。旅立つことになると思います。私の記憶が正しければ。この時期は……、仗助の命もヤバいんですよ。」

「! DIOの呪縛か?」

「おそらくは…。そのせいで50日も入院する羽目になったらしいっすよ。俺は、あんまし覚えてないっすけど。」

「では、ミナミの方も危ないのでは?」

「私はだいじょうぶでした。なぜか…。」

「不思議じゃな? スタンドとは、闘争心で操るものじゃ、子供の精神力では制御は…。」

「私の…スタンドは…。」

 

 ガシャーン

 

「ホリィ!?」

「えっ?」

 すぐそこで茶碗などの陶器が割れる音がした。

 駆けつけると、そこには、ぐったりと床に倒れ込んでいる、承太郎の母・ホリィの姿があった。

 その背中には、ヘビイチゴのような茨のスタンドが張り付いていた。

「い、いかん! これは…!」

「ほ、ホリィ…。」

「そんな…、これって、あの時の仗助と同じ…?」

 ホリィの急変。

 それは、打倒DIOを掲げた危険な旅へのきっかけ。

 

 

 双子の星の数奇な運命は、巨悪を討つべく旅立つ彼らと共に行く。

 

 




ミナミと仗助の会話を聞いてた承太郎。
でも彼は寡黙で多くを語らないから、黙っていてくれると思います。


ホリィが倒れ、次回、旅が始まる。


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旅立ち

ホリィが倒れ、旅立つ前に……。


 暴走したスタンドは、やがて本体を殺す。

 

 それは、穏やかな性格のホリィや、まだ子供だった頃の仗助にはあまりにも重たい呪縛だった。

 

 しかし、幸運だったのは、ホリィとこの時代の幼い仗助は、呪縛の原因となっているDIOさえ殺せば助かるということだった。

 

 制限期間は、わずか50日。

 

 暴走したスタンドがもたらす高熱によって、ホリィはすでに意識を失うほどだ。大人の彼女でさえ、この状態なのだ。おそらくすでに幼い仗助の方も倒れていると思われる。

 

「君だけは難を逃れたと聞いているが…?」

 アヴドゥルがミナミに聞いた。

「なにせ、この歳になるまで…存在にすら気づきませんでした。それは、たぶん…、私のスタンドが普段から勝手に動くスタンドだったからだと思います。」

「勝手に動くスタンド?」

「私のスタンドは、自力で制御は出来ません。」

「それは…暴走していると言えないかね?」

「まあ、そうとも言えます…。」

「しかし、本体である君自身に危害を加えないのだね?」

「1回だけありました。でも、この期間ではありません。」

「その1回だけとは、いつ?」

「この歳になって、ちょっと、色恋沙汰でもつれがありまして……。」

「っつても、姉ちゃんは、俺の時と違って高熱はなかったけど、ほとんど意識不明だったっす。なんていうか…、スタンドに意識を乗っ取られていたみたいな状態で…。」

「スタンドに意識を持って行かれるとは…、相当なことがあったのだな?」

「ええ…。」

 ミナミは、でかいため息を吐いた。

 これは、聞いたらいけないと、アヴドゥルは、深くは聞かないことにした。

 

 まさか、殺人鬼の男性とお付き合いしかけたとは、口が裂けても言えなかった……。

 

「あっ、涙が…。」

「姉ちゃん! もう忘れようぜ!」

「す、すまない! 思い出させてしまって!」

「こりゃー! お前達、ミナミを泣かせるとは何事か!」

「あ、ジョースターさん! これは、その…。」

「落ち着け。」

「まあまあ、それどころありませんよ?」

「ううむ…。そうじゃ、再度聞くが、ミナミ、仗助、お前達はどうするんじゃ? できることならこれからの旅の力になって欲しいとは思うが…。」

「行くっすよ。」

「行きます。」

「そうか…。ありがとう!」

 ジョセフが辛そうに顔を歪め、だが感謝の言葉を述べた。

 未来のとはいえ、実の娘と息子を連れて危険な旅へ連れて行くのは気が引けていたのだろう。話だけで、15、16年もほったらかしにしていたという罪悪感もあって。

「ひとつ確かめさせろ。ミナミ。」

「えっ?」

 承太郎が急にミナミを見て言った。

「おまえのスタンドは、どういうスタンドだ?」

「それ…は…。」

「内容によっちゃ、足手纏いになる可能性がある。ただでさえ時間がねぇんだ。さっさとだしな、スタンドを。」

「それは…、できない…。」

「なに?」

「姉ちゃんのスタンドは、自力で制御が出来ないんっす! 勝手に出て勝手に消えちまって…。」

「なるほど…。そいつは、とんだポンコツだな。」

「承太郎!」

 ジョセフとアヴドゥルが咎める。

「けど能力だけは、言っておきます。」

 ミナミは、意を決して語り出した。

「私のスタンド、ブルー・ブルー・ローズは、形は、鮮血の色のような木の根っこのような形をしています。物質同化型で、無機物から無差別に生えてきます。有効範囲は、約町一つ分くらいの範囲。そのためか、普通の人にも見えるし、触れます。能力ですが、根っこは、傷つけた生命の寿命を365日分奪い、青いバラの花に変えるスタンドです。青いバラの花に変えられた寿命は、他人に与えることも、持ち主に返すこともできます。それによって、寿命を減らしたり増やしたり出来ます。もし…、残り寿命が1年以内で花を奪われた場合は、どうあがいても死にます。」

「姉ちゃん…。」

 仗助が心配そうに見ている。

 承太郎達は、ブルー・ブルー・ローズのスタンド能力に言葉を失っていた。

「私を連れて行ってください。私は、私のやるべきことのためにこの時代に来たんだと思ってます!」

「……そうか。なら、勝手にしな。」

「はい!」

 承太郎の言葉に、ミナミは力強く頷いた。

 

 

 双子の星の、片割れ…の娘…。その青いバラの花は、この先に待つ悲劇の運命を真に変えられるのか…。

 

 

 

 

 




ミナミ、花京院達を救うため、そして虹村の父親を救うために同行するため、自分が嫌悪している力のことを明かす。

承太郎は、単にミナミのスタンドを確認したかっただけですが、この時期の彼は口が悪いので責めているような感じに?

次回は、飛行機内でバトル?


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塔の暗示

タワー・オブ・グレー戦。


仗助がいるので、戦闘が一部オリジナル展開。


あと、タワー・オブ・グレーの本体の始末方法は、7人目のスタンド使い(カオスモード)を参照。


 

 エジプト行きの飛行機に乗ったが……。

 

「…っちゃん、姉ちゃん。」

「うぅ…、仗助?」

「うなされてたぞ? だいじょうぶか?」

「今…、アイツが…。」

「アイツ?」

「うん…。見られてた。仗助は気づかなかった?」

「メッチャ熟睡してたから分かんなかった。」

「もう、にぶちんね。」

「なにを~。」

「ん? …っ!!」

 ミナミがふと、気づくと、機内の椅子の至る所に鮮血色の根っこが生えていた。

 乗客達は気づいてないようだ。

「やばい…、やばいやばい…!」

「や、やっぱ、止められねぇの?」

「む、無理…。」

「おい、あれが、お前のスタンドか、ミナミ?」

「は、はひ…。」

 前の席に座ってた承太郎に尋ねられ、ミナミは噛みながら返事をした。

「早く引っ込めろ。」

「む、無理…。っていうか、私の意思に反して動いてるから…、もしかしたらこの機内に…。」

 

 ブ~~ン

 

 その時、羽音が聞こえた。

 かなり大きな羽音なのだが、乗客達は気づいていない。

 すでに何人ものスタンド使いと戦った経験で分かった。

 スタンドだ、と。

「…どこだ?」

「しっ! 静かに。」

「……お前らやけに場慣れしてやがるな?」

「まあ…これでも、かなりの人数のスタンド使いと戦ったことがあるからね。仗助。」

「おう。」

 その時、ミナミの頭の背後に大きなクワガタムシのようなスタンドが移動した。

「!」

「ドラァ!」

 クワガタムシのようなスタンドから出たギザギザの串のような物がミナミを貫こうとした瞬間、ミナミの服の襟首からブルー・ブルー・ローズが生えてきて、ガード。その隙に、ミナミは、バッと下に頭を下げ、仗助のクレイジー・ダイヤモンドの拳がミナミの頭があった場所を打った。

 クレイジー・ダイヤモンドの拳がクワガタムシのようなスタンドの後ろ足の先をちょこっと擦って、クワガタムシのようなスタンドは、とてつもないスピードで逃げていった。

「あ…ぶな…。」

「だいじょうぶか!?」

「はい…。オートでいつも守って貰ってるからなんとか…。あっ。」

 ミナミは、どうやら先ほどブルー・ブルー・ローズがガードしてくれた際にクワガタムシのようなスタンドから奪い取ったと思われる赤い茎の青いバラの花を見つけた。

「……仗助。」

「おう。」

「あ~らら。さっきのクワガタムシの寿命が取れちゃった。これ1本辺り、1年分なんだよね。もし来年死ぬなら、今日死んじゃうかもね。返して欲しかったら出ておいで~。」

 デカい声で歌うように言ってやると、ブーーン!っとクワガタムシのようなスタンドが現れた。

「やれやれ、安い挑発に乗るたぁ、小物だぜ。」

「気をつけろ! 人の舌を好んで食いちぎるスタンド使いがいるという話を聞いたことがある!」

「ミナミ、そのバラをしっかり握ってな。」

「うん。」

 ミナミが握りしめている赤い茎の青いバラの花を狙い、クワガタムシのようなスタンドが動く。それを狙って、立ち上がった承太郎がスタープラチナを繰り出す。

「横ががら空きだぜ!」

 さらにクレイジー・ダイヤモンドの連撃も加わるが、クワガタムシのようなスタンドは、すべての攻撃を避けた。

「し、信じられん! 弾丸を掴むほど素早く正確に動けるスタープラチナの拳と、それに勝るクレイジー・ダイヤモンドの拳を避けるとは!」

「どこだ…、本体はどこにいる!? 攻撃してくるぞ!」

 スタープラチナの口を狙い、クワガタムシのようなスタンドが串を突き出した。スタープラチナの手を貫き、その口の中に突き刺さる。だが寸前で承太郎が歯を食いしばったため、食い止めることが出来た。

「承太郎さん!」

「やはり、奴だ…。タロットでの『塔のカード』、破壊と災害の暗示…。『タワー・オブ・グレー』!」

 アヴドゥルが敵の正体を見破ったようだった。

 タロットカードの暗示を持つスタンド使い、塔のカードのタワー・オブ・グレーは、事故に見せかけて大量殺戮をやってのけるスタンド。

 例えば飛行機事故、列車事故、ビル火災など、最近ではイギリスでの300人死亡の飛行機事故も、コイツの仕業と言われているらしい。

 おそらく、DIOの命令でこちらを狙ってきたのだろうと見ていた。

「オラオラオラオラオラ!!」

 凄まじいラッシュをスタープラチナが放つが、すべて避けられた。

 

『くっそ…、寿命を奪うだとぉ!? そういえばそんな奴がお前達の中にいたことは聞いていたが、しっかり把握しておくんだった…!』

 

「今日に死ぬことになってるなら、あと何時間かな?」

『ち、ちくしょう! このアマ~~!!』

「承太郎さん! そのスタープラチナの口にあるのって、野郎の針の先ですよね?」

「ああ、そうだが?」

「コイツを…。こう! ドラァ!」

 仗助は、缶ジュースのアルミとタワー・オブ・グレーの針の先端を合わせ、鋭い形をした追尾弾を作りだした。

「てめぇの一部は、てめぇに返るんだぜ! この狭っ苦しい機内でどこまで逃げ切れるかな?」

『なんだと~~~!? おおおおおおおおお!?』

 ピュンッと飛んできた追尾弾から、タワー・オブ・グレーは、逃げるが、追尾弾の速度に負け、口から頭部に刺さった。

 

「ぎゃあああああああああ!!」

 

「今のは…本体か。」

 口を押さえ、頭から流血して悶絶する老人の舌には、クワガタムシの入れ墨があった。

「どうします?」

「適当にふん縛って…。ん?」

 その時、飛行機が傾きだした。

「まさか? 傾いておる…!」

 

「お客様、この先は操縦席で立ち入り禁止です!」

「知っておる!」

「お、お客様!」

「どけ、アマ。」

「おっと。失礼。女性を邪険に扱うなんて、許せない奴だが、今は緊急事態なんだ。許してやってください。」

「仗助! 出番かも!」

「おう!」

 ミナミも仗助も操縦席へ急いだ。

 そこで見たのは、舌を抜かれて死んだパイロット達と、破壊された自動操縦装置だった。

「う…。」

「こ、こいつは、ひでぇ…。」

「あのクワガタ野郎、すでにパイロット達を殺していたのか! 自動操縦装置も破壊されている、この機は墜落するぞ…。」

 

『ぶわはははは! ぶわろろろ~! ベロオオオ! わしは事故と旅の中止を暗示する「塔」のカードを持つスタンド! おまえらは、DIOさまの所へは行け…。ゲブバハッ!?』

 

「…念のため縛っておいたが、引きちぎるとはね。私のハイエロファントグリーンは、引きちぎられると悶えるのだ、喜びでな!」

 ハイエロファントグリーンによって縛られていたタワー・オブ・グレーの本体が、ハイエロファントグリーンから自動で放たれたエメラルドスプラッシュで穴だらけになった。

「あ~あ、結局返そうと思ってたのに、結局本当に死んじゃったね。」

「うげぇ…。」

 タワー・オブ・グレーの本体は、最後に聞いたミナミの言葉に、思わず彼女が持つバラの花に手を伸ばそうとして息絶えた。

「自動操縦装置が壊れてるだぁ? なら…ドラァ!」

「おお! ナイスじゃ、仗助! よしこのまま香港に着陸じゃ!」

「えっ? エジプトは?」

「このままでは、罪の無い乗客が巻き込まれてしまう。…それにな、わしゃあのう…、人生で三度目じゃ。飛行機で墜落を体験するのは…。」

「……ああ。」

「二度とてめーとは、一緒に乗らねぇ。」

 

 

 タワー・オブ・グレーという刺客のせいで、飛行機でのエジプト行きは断念せざる終えなかった。

 

 

 

 




飛行機を香港で降ろしたのも、7人目のスタンド使いを参照。
ネタバレですが、仗助モードでやるとそうなるんです。

罪の無い乗客が何人も舌を抜かれて死んでないので、微妙にモブ達が生存しています。


ミナミは、特にDIOからの視線を強く感じていた。それ意味することは……?


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銀の戦車 その1

銀の戦車編。


ジョジョにおける一番のギャグ回は、第五部の、ギアッチョ戦後ミスタの治療をするジョルノを見たナランチャの不幸じゃないかと……思ってる筆者です。


 

 

 香港のとある、飲食店にて。

 

「あの飛行機なら、今頃は、カイロについていたものを…。」

「分かっている。」

「しかし…、50日以内に、DIOに出会わなければ、ホリィさん…そしてこの時代の幼い仗助の命が危険なことは、前にも言いましたな……。」

「案じるのはまだ早い。」

 そこでジョセフが語り出す。

 100年前のジュールベルヌの小説では、80日で世界一周4万キロを旅をする話があり、その時代は飛行機が無く、汽車や蒸気船の時代であること。

 つまり飛行機が無くとも、50日あれば1万キロ先のエジプトまでわけなく行けるということらしい。

 そこで…っと、ジョセフは、海を行くルートを提案すると言った。マレーシア半島から、インド洋を突っ切る、いわば海のシルクロードと。

 これについては、アヴドゥル、そして花京院、承太郎は同意した。

 ミナミは、どうするか悩みチラッと仗助を見た。

「どうしたんじゃ、ミナミ?」

「…あのもしものことがあるので、ひとつ。」

「なんじゃ?」

「私達は、私達の時代に、水に混ざる能力を持ったスタンドと戦ったことがあります。」

「水に?」

「はい、水分…液体なら何でも…。不純物の多い牛乳でも、お湯から湧き上がる水蒸気でも混ざることが出来た恐ろしいスタンドでした。」

「つまり…君が危惧することは、海水に混じってきた敵に襲われる可能性か?」

「……まあ、海水ほどの容量で混ざってでも動けるスタンドなんていないって思いたいですけど、念のため言わせて貰いました。すみません、私は別に陸路を推薦したいわけじゃないですが…。」

「いや、よいよい。用心に超したことはないからのう。」

「…やれやれ、マジに、てめぇら、相当な数の場数を踏んでやがるな。いったい何人ぐらいのスタンド使いと戦った?」

「さあ? あんまし覚えてないっす。色々と命がけでしたっすから。」

「そうだよね…。私が昏睡してる間に、仗助、メッチャ戦ってたらしいし。仲間の手助けもたくさんあったけど。」

「……頼りになるぜ。」

「わー、承太郎さんに、そんなこと言われちまったよー。」

「や~ん、どうしよう。」

「やかましい! 前言撤回するぜ…。」

「じょーだんすよー。」

「あの空条さんも、こんな時期あったんだね。」

「っ……。」

 ニャハニャハ無邪気に笑っている仗助とミナミに、承太郎は、イラっとしつつ、呆れて何も言わなかった。

「承太郎の、未来か…。興味深いが、後に取っておく方が面白そうだね。」

「あれ? 花京院さん何してるんです?」

「フフ、これはお茶のお代わりを欲しいのサインだよ。」

 急須の蓋をずらした花京院を見てミナミが聞くと、花京院が説明してくれた。

「香港では、茶瓶の蓋をずらしておくと、お代わりを持ってきてくれるんだ。また、人にお茶を茶碗にそそいで貰ったときは、人差し指をトントンと2回テーブルを叩く、これが「ありがとう」のサインさ。」

「へえ、詳しいんですね。私なんて、故郷の町から外出すると言っても、海外までは行ったことないから疎くって…。」

「そうだったんだね。別に悪いことじゃないよ。おそらく多くの人は、故郷の国から出ることはあまりないんじゃないかな?」

 

「すみません…。」

 

 そこへ、銀髪を縦長に固めた風変わりな髪型の男性がメニューを持って来た。

「ちょっと、いいですか? 私はフランスから来た旅行者なんですが…、どうも漢字が難しくてメニューが分かりません、助けて欲しいのですが…。」

「やかましい。向こうへ行け。」

「おいおい、承太郎。まあいいじゃないか。」

 イラッとしている承太郎にジョセフがなだめながら言った。

「わしゃ、何度も香港に来とるから、メニューぐらい漢字はだいたい分かる。で…何を注文したい? エビとアヒルとフカのヒレとキノコの料理?」

「さすが、アメリカの不動産王…。」

「グレート…。」

 っと、ミナミと仗助がジョセフに羨望のまなざしを送った。

 

 ところが……。

 

 

 ベイタンヨッピンズォッ(おかゆ)

 

 テイエンチー(カエルの丸焼き)

 

 メイツーミンルーチーユウ(魚の煮た物)

 

 ツータイツ(貝料理)

 

 

「わ…、わはははははははは! ま…、いいじゃあないか、みんな食べよう、わしのおごりだ。」

「ったく、もうボケが来てんじゃねぇの? ジジイ…。」

「さすが人の上に立つ人…、なんでも人任せだったんだね。」

「うぐ…。」

 図星だったのか、ジョセフがクラッとなった。

「ま、まあまあ! 何を注文しても結構美味いものよ! ワハハハハハ!」

「誤魔化してやんの。」

「あーあ…。」

「いや~、手間暇かけてこさせえてありますなぁ。ほら、このニンジンの形…。」

 銀髪の男性が箸で星形のニンジンをつまみ上げた。

「星(スター)の形…。なんか見覚えがあるなあ~~~。」

「!」

 その言葉に全員に緊張が走った。

「そうそう、私の知り合いが……、首筋に、コレと同じ形のアザを、持っていたな……。」

 男性は、星形のニンジンをペタッと左肩の首筋辺りにくっつけた。

 その直後、テーブルの上にあるおかゆの器がボコボコと泡立ちだした。

 そして、針剣を握る手が飛び出してきて、ジョセフを切りつけようとし、ジョセフは咄嗟に義手で防いだ。

「マジシャンズ・レッド!」

 アヴドゥルから飛び出してきた鳥人間のような炎を纏ったスタンドが火を吹く。

 しかし、その炎を針剣を握る手が、剣でクルクルとかき回すように炎を絡み取った。

 そして、おかゆから銀髪の男性の方へ、鎧を纏った銀色の騎士のようなスタンドが出現した。

「俺のスタンドは、戦車のカードを持つ、『シルバー・チャリオッツ(銀の戦車)』!」

 剣に絡み取られていた炎を飛ばし、近くに横にされていたテーブルに時計のように炎が着弾して数字が刻まれた。

「モハメド・アヴドゥル! 始末して欲しいのは貴様からのようだな…。そのテーブルに火時計を作った! 火が12時を燃やすまでに、貴様を殺す!!」

「恐るべき剣さばき、見事なものだが……。テーブルの炎が12を燃やすまでに、この私を倒すだと? 相当うぬぼれが過ぎないか? …ああーと……。」

「ポルナレフ…。名乗らしていただこう。ジャン(J)・ピエール(P)・ポルナレフ!」

「メルシーボークー。自己紹介恐縮いたり……、しかし。」

 次の瞬間、マジシャンズ・レッドから放たれた炎が、先ほど火時計が刻まれたテーブルの下半分を蒸発させた。

「うお! すげぇ! なんて火力だ!」

「広瀬君のと違う…。炎そのものの火力を自由自在に操れるんだ…。」

 (※広瀬康一のエコーズAct2の能力は、文字の擬音を実体化させる能力である。その効果そのものをコントロールするわけではない)

「ふむ…、この世の始まりは、炎に包まれていた。さすが始まりを暗示し、始まりである炎を操る『魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)』。しかし、この俺をうぬぼれというのか? この俺の剣さばきが……。」

 するとポルナレフがコインを数枚出して、中に投げた。

「うぬぼれだと!?」

 そして一瞬で、針剣で全てのコインを真ん中から串刺しにした。

 よく見ると、コインの間に炎が取り込まれていて、燃えていた。

 ポルナレフの説明によると、自分のスタンドなら炎をも切断できるということ。空気を切り裂き、空と空の間に溝を作ることができるのだという。それは、マジシャンズ・レッドの炎が効かないという証だと言った。

 剣から落とされたコインが床に落ちる直前…。

 ブワッ!と鮮血色の根っこが飛び出してきて、ポルナレフに襲いかかろうとした。

「あっ!」

 突然のことに声を上げるのが遅れたが、次の瞬間には、全ての鮮血色の根っこがバラバラに切り刻まれていた。

「…ふん。制御不能のスタンドを抱えた人間がひとりいるとは聞いていたが、脆い…実に脆い!」

「うわぁ…本当に強いよ…。」

「グレート…。」

「先ほどのスタンドは、そちらのお嬢さんの物と見た。理由は知らんが、そのお嬢さんだけは殺すなと言われていてな。」

「なに?」

「ミナミを…?」

「わ…私を?」

「理由は知らん。だがこれだけは宣言する。全員、表へ出ろ! 順番に切り裂いてやる!」

 

「アヴドゥル…。」

「ええ…何が何でも勝ち、理由を聞き出さなければなりませんな。」

「……。」

「姉ちゃん。だいじょうぶ。俺が必ず守るから。」

「仗助…。」

 ミナミは、少し震える手で、仗助の学ランの端を摘まんだ。

 

 




水に混ざる能力のスタンドとは、アンジェロのアクアネックレスですね。
あれ、条件が揃っていれば、マジでヤバいスタンドでしたよね。

DIOの命令で、ミナミだけは殺すなと言われているポルナレフ(洗脳状態)。
詳細は知らされていません。


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銀の戦車 その2

銀の戦車編。その2。



4部辺りから、特殊能力がトリッキーになってきたから、こんな純粋なスタンド能力は、ほとんどいなかったんじゃないかな?


 

 

 場所を、タイガーバームガーデンに移し、シルバー・チャリオッツの本体であるポルナレフとの戦いが始まった。

「ここで、預言してやる。まずアヴドゥル…。貴様は、貴様自身のスタンドの能力で滅びるだろう…。」

「アヴドゥル…。」

「承太郎、手を出さなくていいぞ。これだけ広い場所なら思う存分、スタンドを操れるというもの。」

 アヴドゥルが前に出て、ポルナレフと向き合った。

 ミナミと仗助は、ゴクリッと息をのみ緊張した。

 スタンド使い、それもベテラン。

 そういう人物は、二人にとって未来の空条承太郎とジョセフ・ジョースター以外にいなかった。

 さきほどの飲食店で見ただけだが、アヴドゥルは相当な使い手だと若い二人は感じた。

 だが、相手であるポルナレフも相当に強い。それは、さきほどの飲食店でイヤというほど感じた。

 チラッと話には聞いていたが、こんな強敵を相手にし続けて、DIOという災厄とぶつかったのかと思うと……。

「半端じゃないよ…。」

「……グレート…。」

 そりゃ強制的に強くなるに決まってるわ…っと、二人は、チラッと承太郎を見た。

 そうこうしていると、アヴドゥルとポルナレフの戦いが始まっていた。

 飲食店で披露されたあの剣のさばきが容赦なくアヴドゥルのマジシャンズ・レッドを襲うが、マジシャンズ・レッドは、それを躱す。

 隙を突いてマジシャンズ・レッドが炎を吐くが、その炎を剣で払った瞬間、マジシャンズ・レッドの背後にあった石像が、マジシャンズ・レッドと同じ形に削られた。

「野郎っ! こ、…こけにしている! 突きながらマジシャンズ・レッドにそっくりの像を彫ってやがった!」

「中々、くくく…、この庭園にぴったりマッチしてるぞ、マジシャンズ・レッド。」

 すると、マジシャンズ・レッド、そしてその本体であるアヴドゥルの動きと表情が変わった。

「来るか…。本気で能力を出すか。面白い…。うけて立ってやる!」

「みんな! 何かに隠れろ!」

「えっ?」

「アヴドゥルのアレが出る! ……とばっちりで火傷するといかん!」

「えっ? えっ?」

 困惑していると、ミナミは花京院に、仗助は承太郎に掴まれて近くの石の影に連れて行かれた。

 

『クロスファイヤーーーー! ハリケーーーン!!』

 

 次の瞬間、アンク型の凄まじい火炎が放たれた。

 

「ホラホラホラホラ! これしきの威力しかないのか!? この剣さばきは、空と空の溝を作って…、炎を弾き飛ばすと言ったろうがぁーーーーーー!!」

 凄まじ炎にまったく憶していないポルナレフのシルバー・チャリオッツが、炎を巧みに切り裂き、そして、炎の方向をアヴドゥルへと向けた。

 そしてアンク型を失った火炎がマジシャンズ・レッドに命中した。

「あ、アヴドゥル!」

「炎があまりにも強いので、自分自身が焼かれている!」

「は、早く助けねぇと!」

「ダメ! あの火力に近づいたら、火傷どころじゃすまない!!」

「ふははは。預言通りだな。自分の炎で焼け死ぬのだ、アヴドゥル。」

 ポルナレフが笑う。

 すると炎に包まれたマジシャンズ・レッドが、ポルナレフに襲いかかった。

「やれやれやれやれだ。悪あがきか?」

 にやけた顔をしているポルナレフが、シルバー・チャリオッツの剣でマジシャンズ・レッドを真っ二つにした。

 だが……。

「むっ!? これは…。ぐ、がああああ!?」

 切り裂いた所から炎が生きているように襲いかかり、シルバー・チャリオッツを焼いた。

「あれは…、スタンドではない! 人形だ!」

「ふふふ…。炎で目がくらんだな。貴様が先ほど作ったマジシャンズ・レッドの彫刻の関節をドロドロに溶かして動かしていたのだ。私は、炎を自在に操れると言っただろう?」

「すっげぇ!」

「つまり、炎じゃ、マジシャンズ・レッドには、どうやっても勝てないって事かぁ…。は~。」

「占い師の私に、予言で戦おうなど。10年早いんじゃないかな?」

 そして再び放たれたアンク型炎・クロスファイヤーハリケーンがシルバー・チャリオッツに放たれ、今度こそ焼いた。

 あまりの火力に、シルバー・チャリオッツの鎧が溶解し、本体ごと吹っ飛んでいった。

「うわぁ…。今まで色々とトリッキーなスタンド使いは見てきたけど…、正統派っての? 小細工の無い純粋なスタンド能力がこれほどだなんて…。」

「炎って、こえ~~~。」

「お前ら、よっぽど変なスタンド使いと戦ってきたんだろうな…。」

「変なじゃなくて、厄介なんですよ。」

「ん?」

「どうしたの? あっ。」

「? …!」

 次に見た瞬間、倒れていたシルバー・チャリオッツの溶けた鎧が弾け飛んだ。

 そして、倒れていた本体であるポルナレフが飛ぶ。

「ブラボー! おお、ブラボーー!」

 ピンピンしていた。火傷はほとんどなかった。いや、火傷はしているものの、軽傷…だ。

「フフフ! 感覚の目でよーく見てろ!」

「うっ! これは!?」

「見ろ! シルバー・チャリオッツが!」

「なんかスッキリした骨組み!? みたいになってる!」

「甲冑を外したスタンド、シルバー・チャリオッツ! 呆気にとられているようだが、私の持てる能力を説明せず、これから君を始末するのは、騎士道に恥じる。闇討ちに等しい行為だ。どういうことか、説明する時間をいただけるかな?」

「あんにゃろう…、おちょくりやがって…! 何が騎士道だ!」

「落ち着け、仗助。」

 思わず飛び出そうとした仗助の肩を承太郎が掴んで止めた。

 そこから、本当にしっかりと、ポルナレフは、説明してくれた。

 ようするに、甲冑のおかげで先ほどの火炎から身を守れて、甲冑を脱ぎ捨てたことで身軽になり、自分自身を持ち上げる瞬間を見えないほど素早く動けるようなったのだそうだ。

 それについて、アヴドゥルは、そのことでプロテクターというか、防御が失われ、今度こそ喰らったら命はないということでは?っとツッコんだ。

「ウイ、ごもっとも。だが、無理だね。なぜなら、君にとって、ゾッとすることをお見せするからだ。」

 次の瞬間、甲冑を脱ぎ捨てたシルバー・チャリオッツが6、7体に分裂した。

「ば、馬鹿な…! スタンドは、ひとり、一体のはず!」

「いやぁ、そうでもないっすよ?」

「私達が知っている人で、軍隊型…っていうのかな? ものすごい数の小さなスタンドを操る人もいましたから。」

「そうそう、まさに軍隊だったぜ。俺、死ぬところだったし…。」

「…だとよ。」

「残念。これは、残像だ。フフフ…。視覚ではなく、君の感覚へ訴えるスタンドの残像群だ。君の感覚はこの動きについてこれないのだ。」

 ミナミと仗助は、思った。

 今までそれぞれに特殊な能力を持ったスタンド使いと出会ってきたが、これほどに単純で、すごい使い手は未来の空条承太郎を抜いておそらく出会ったことはないと。

「こんどの剣さばきは! どうだぁああああああああ!?」

「クロスファイヤーハリケーン!!」

「ノンノンノンノンノンノン。無理と言ったろう?」

 そして、あまりの速さにいつの間にかアヴドゥルの顔や体中に穴が空いた。

「な、なんという正確さ…。これは、相当に訓練されたスタンド能力!」

「ふむ…、わけあって10年近く修行をした。さあ、いざまいられい、次なる君の攻撃で君にトドメを刺す。」

「騎士道精神に、とらやで手の内を明かしてからの攻撃。礼を失わぬ奴…。ゆえに私も秘密を明かしてから、次の攻撃に移ろう。」

「ほう?」

「実は、私のC・F・H(クロスファイヤーハリケーン)にはバリエーションがある。十字架の形の炎だが、一体だけではない。分裂させ、数体で飛ばすことが可能だ! C・F・H・S(クロスファイヤーハリケーンスペシャル)!! かわせるかーーーー!?」

「すっっっご! あの炎をあの数で!」

「アヴドゥルさん…、俺あの人と戦って、勝てる気しねぇ…。」

「あんた、近接戦タイプだもんね。」

 

「あまいあまいあまいあまいあまい!! 前と同様にこのパワーをそのまま貴様にぃーーーー!!」

 

 しかし、その直後、ポルナレフの足下に地面から、アンク型の火炎が飛び出してきてシルバー・チャリオッツの分身もろとも吹っ飛ばした。

「な、なんだとぉぉおお!? ぐ…ふ…。」

 すると、アヴドゥルは、ナイフを倒れたポルナレフの方に投げた。

「炎で焼かれて死ぬのは苦しかろう。その短剣で…、自害するといい。」

 そう言ってアヴドゥルは、背中を向けた。

 炎に包まれているポルナレフは、ヨロヨロとナイフを握り、その背中を見る。

 だが。

「フフ…、このまま潔く焼け死ぬとしよう。それが君との戦いに敗れた私の君の能力への礼儀……。自害するのは……無礼…。」

「!」

 そしてポルナレフは、炎に身を任せるように目を閉じた。それを見たアヴドゥルは、指を鳴らし、炎を消した。

「あくまで騎士道とやらの礼を失わぬ奴! しかも、私の背後からの短剣を投げなかった。DIOからの命令を越える誇り高き精神! 殺すには惜しい。承太郎。」

「ああ。抜くぜ。」

「えっ?」

「ちぃとグロイから気をつけ…、うぇぇぇ!」

「うわっ! あれが、肉の芽ぇ!? 気色悪!」

「で…、それ、どうするんですか?」

「こうじゃ、波紋疾走!」

 抜かれた肉の芽を、ジョセフが波紋の一撃で消し去った。

「仗助、出番だ。」

「うーす。クレイジー・ダイヤモンド!」

 仗助は、ポルナレフと、承太郎、そしてアヴドゥルを治療した。

「す、すごいな。あっという間に治ったじゃないか。」

「すごいでしょ。うちの弟。」

「…君のスタンドも相当すごいけどね。制御できないのが難点だが。」

「それは…。」

「いや、すまない。君は相当気にしているんだったね。気を悪くさせてすまない。」

「いいんです。だいじょうぶですから。」

「まっ、これで、肉の芽がなくなって、にくめないやつになったわけじゃ、ジャンジャン。」

「なー、こーゆーダジャレ言う奴ってよー。むしょーに腹が立てこねーか?」

「ぷっ…。」

「ね、姉ちゃん…。」

「ご、ごめん。」

 お爺ちゃんっ子で、古いダジャレ好きな一面があるミナミであった。

 

 

 この後、目を覚ましたポルナレフに一緒に来ないかと誘い、一行はSPW財団にチャーターした船を手配してもらい、港へ向かうのであった。

 




ポルナレフ仲間入り。

トリッキーなタイプばかり相手してただけに、純粋なスタンド能力では勝てるかどうか分からないという風にしました。
単純なスタンドほど強い…って、どこからの言葉でしたっけ?

アヴドゥル対ポルナレフの戦いは、入る余地が無かったため、二人には見物に徹して貰いました。


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ポルナレフの事情と、ミナミの不安

割合は、ミナミ>>ポルナレフかも。


まだ船には乗ってません。


 

 チャーターした船に乗る前に、ポルナレフがジョセフに対してひとつ確認をしてきた。

 曰わく、左手が右手じゃないのかどうか確かめさせて欲しいと。

 なんとも奇妙な質問であった。

 しかし、その後語られたポルナレフの話でその質問の意味が理解できた。

 

 ポルナレフは、10年近く修行をしていたと言っていた。

 その理由は、辱められて殺された妹の敵を討つためだったのだ。

 犯人の情報は、両手が右手だということだ。

 そして、スタンド使いらしき奇妙な力を持つことだった。

 

 ポルナレフは、仇を探すためにDIOの言葉に乗り、肉の芽を受けて、自分達を殺しに来たのだということだった。ミナミ以外を…。

「お嬢さん…いや、ミナミ、君だけをなぜ殺さずにいろと言われた理由は分からない。だが、ただ殺すなとだけ言われたんだ。」

「そうですか…。」

「……ちと思ったんだが、ミナミ、お前心当たりがあるんじゃないのか?」

 承太郎に指摘され、ミナミは、ドキッとした。

「それは…。私も当時4歳のことでほとんど覚えてないんです。」

「嘘つくな。お前、嘘をつくとすぐ鼻の穴広がる癖があるだろ?」

「ぅ…。」

「話せないようなことか?」

「承太郎さん!」

「邪魔するな仗助。これは重要なことだ。」

「姉ちゃんを追い詰めないでやってくださいよ!」

「……返らせる…ことだと…。」

「ん?」

「……ジョナサン・ジョースターを生き返らせることだと…思います。」

「ジョナサン…ジョースターじゃと!?」

「知ってるんすか?」

「知ってるなにも、わしのお爺ちゃんじゃよ! つまり、お前達の先祖じゃ!」

「…ミナミ、お前、能力を隠していたのか?」

「違います! でも…、やったこないから、分からなくって…。実際にやりたくもないし、そもそも出来るかどうかすら謎なんですよ。」

「ジョナサンを…なぜ? DIOは、自ら殺した男をなぜ今更になって生き返らせようと?」

「その理由は…分かりません…。でも、4歳の私が誘拐された理由はそれ以外になかったみたいです。」

「君は、誘拐されたのか?」

「仗助が入院している間にです。」

「それだと、この時代の君は…。」

「いえ…、さっきのポルナレフさんの話だとその可能性は低いんじゃないかなって…思います。」

「なぜ?」

「小さい頃の私を誘拐したなら、なんでわざわざ私だけを殺さず生かしておけって命令するんですか? これから、DIOのところへ行こうとしている私がいるんだし、わざわざ4歳の私を誘拐するメリットってあります?」

「!」

 ミナミの言葉に激震が走った。

「ジョナサンの肉体を持つDIOならば、すでにミナミと仗助の存在には気づいていないはずがない! 覚醒したばかりのスタンド使いよりも、すでに十数年スタンドと共に成長した方が確実と言えるじゃろう! 確実にジョナサン・ジョースターを蘇生させたいのならば!」

「で? どうやって生き返らせるんだ?」

「それが…、なんていうか、確か、1000本の青いバラの花が必要だとかって言ってた気がします。実際に出来るかどうかなんて…。」

「1000本…! 人間一人が人生100年だとしても、少なくとも10人以上の命が必要じゃないか!」

「いや、残り寿命から青いバラの花を生成するのなら、10人どころか、それ以上の人数は必要だろう。」

「ーーー!」

 ポルナレフが、ジッとミナミを見つめた。

 だがやがて何か耐えるように拳を握りしめて、顔をそらした。

「ポルナレフさん…。」

「耐えがたい事じゃろう…。目の前に大切な人を生き返らせられる可能性があると知ってしまっては…。」

「いいや…そんなことは、妹は望まないだろう。他者の命を奪ってまで生き返らせたとて、死よりも恐ろしくおぞましいと恐怖し、嫌悪するに違いない!」

「それに、実際に出来るかどうかすらも定かではないのだからな。DIOのことだ、実行に移させるなら、まず実験台でも用意して、そこから研究するに違いない。」

「そうじゃな。わしらが来ると分かっていても、エジプトから動かん奴じゃからのう。体が馴染んでいないから、慎重に行動しておるはずじゃ。」

 ミナミは、不安そうに俯き、自身の学生服の端を掴んだ。

「姉ちゃん…。」

「仗助…。なんで私なんだろうね? 私だってこんな力、望んでなかったのに…。」

「だいじょ~ぶ。だいじょうぶだから。俺がついてるだろ?」

 仗助は、ミナミを抱きしめ、ヨシヨシっと頭を撫でた。

 仗助の胸に顔を埋め、ミナミは、少し泣いた。

「ミナミ…。だいじょうじゃ。」

「…お父さん?」

 するとジョセフがくしゃりとミナミの頭を撫でた。

「わしらを頼りなさい。遠慮無く。いいな?」

「……でも…。」

「子が親に遠慮するもんじゃない。」

「ジョースターさんの言うとおりだ。私も君を守るよ、ミナミ。」

「僕で良ければ助けになるよ?」

「……ふん。情けない伯母だぜ。」

「こりゃ、承太郎!」

「怖えなら怖えって、素直に言えばいいじゃねぇか。下手にやせ我慢してるから、そんなになるんだ。」

「空条さん…。」

「もうその苗字呼びと、さん付けもやめろ。承太郎でいい。」

「じゃあ、承太郎さん。」

「……チッ。」

 さん付けは、どうしても辞められないので、承太郎の方が妥協した。

「ミナミ…、君の能力は、悪にとっては、何よりも魅力的に見えるだろう。俺の目的は目的であるが、それまでの道中、俺も君も守る。約束するよ。」

「……ありがとうございます!」

「礼には及ばないさ。」

 ニカッとポルナレフは笑った。

「ポ~ルナレフ~?」

「な、なんですか?」

「わしの娘に色目使ったりしないじゃろうなぁ?」

「いえいえ! そんなことは!」

「わしの目を見て言え!」

 

 その後、チャーターした船に乗るまで、数十分ほどかかった。

 

 

 

 

 




ポルナレフの話から、過去の自分が誘拐されている可能性が極端に低いと考えたミナミ。
過去の自分を誘拐したなら、未来の自分を生かしている理由が分からないという理由で。

船の船員達は、まだかな~?って思ってるでしょうね。


ダーク・ブルー・ムーンは、次回ぐらいかな?


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月の暗示

ダーク・ブルー・ムーン戦。


船長が贋物だと分かるシーンは、オリジナル展開(?)。


あんまり承太郎が活躍してないかも……。


 香港の港から、SPW財団にチャーターしてもらった船で、シンガポールを目指す。

 それまで3日はかかるので、のんびり英気を養おうということになった。

「ミ~ナミちゃ~ん。」

「はい?」

「どうせだから、泳ごうぜ。ほれ、せっかく海なんだし。」

「やだ。私に合う水着って中々無いんだもん。」

「その見事なバストのサイズか、まあ、お尻も…。」

「おとうさ~ん。やらしい人がいるよ~。」

「あっ!」

「こりゃ、ポルナレフ! 港で散々説教したのに何を企んでおるんじゃ!」

「うひゃー!」

「ったく、懲りねぇ野郎だぜ。」

「なんというか…、頭と下半身が別々に別れているような男だ…。」

「もう、やだ…。これだから、女好きの人って苦手なんだよな。」

 ブツブツ言いながらミナミが甲板でくつろいでいた承太郎達の方へ来た。

「姉ちゃん、中学生の頃からメチャクチャその手合いにナンパされまくって嫌いになってんだよな。そういうタイプ。」

「ってことは…、その頃から発育が…。」

「小学校時代の変態教師とかは、警官のお爺ちゃんがしばいてくれたからいいけど、成長が早かったせいで職質はされるは、変なスカウトとかもメチャクチャあって…。」

「ミナミ…、どこの教師に何をされたのか、あとどこの事務所じゃ? 教えなさい。」

「未来の話ですから…。」

「名刺はもらっとらんのか? 教えなさい。今のうちに潰しておくから。」

「あの…?」

「やれやれだぜ…。どんだけ娘に甘いじじいだ。」

「俺だって、変なスカウト受けたことあるのによ~。」

「仗助!? お前もか!? どこじゃ、どこのどいつにじゃ!?」

「未来の話だから今も言ってもな~。俺らのことこれから、15、6年ほったらかしなんだしよ。」

「い…いいや! この旅が終わったら、きちんと挨拶に行くわい! それで生活援助ぐらいさせてほしい!」

「別にいいっすよ。ねえ、姉ちゃん。」

「そうそう。まだ正妻の人に私達のことバレてないんでしょ? 私達のことを気にしてくれるのは嬉しいですけど、正妻の方にぶち殺される可能性も危惧しといた方が身のためじゃないですか? 生涯妻しか愛さないって言ってたんでしょ?」

「うっ!」

 想像したのか、ジョセフが青ざめた。

 そんな様子を見て、仗助とミナミは、ため息を吐いた。

 その時。

 

 船の後ろの方から、怒声が聞こえた。

 というか、子供のような若い声が聞こえた。

 騒ぎを聞いて見に行くと、そこには、帽子を被った子供を船員が捕まえて怒っている光景があった。

 何があったのか聞くと、密航だということだった。子供が密航者だった。

 見逃してくれよ~っと泣き言を言う密航者の子供に船員が、警察に突き出すと言っていると、子供が自分を捕まえている腕に噛みついて、その後海に飛び込んだ。

「ま、まずいっすよ! この辺はサメが集まっている海路なんだ!」

「えっ!?」

 っと驚いて海を見ると、先ほど飛び込んだ子供の真下にすでにサメがいた。

「まずいって!」

「待て俺が行く! あっ…。」

 ミナミが飛び込もうとすると仗助が止めて飛び込もうとしたら、それよりも早く承太郎が飛び込み、スタープラチナでサメを殴り飛ばしていた。

「うひょー、かっぴょいー!」

「さすが、承太郎さん! あれ?」

 ミナミは、サメではない何かが接近していることに気づいた。そしてそれは、先ほど承太郎が殴り飛ばして海に浮いていたサメを真っ二つに引き裂いて承太郎と、実は女の子だと判明した子供…いや少女に接近しようとしていた。

「承太郎さん、早く上がって!」

「ダメだ! 早すぎる!」

「この距離なら、僕のハイエロファントグリーンで!」

 そして、ハイエロファントグリーンが承太郎と少女を引っ張り上げた。

「だいじょうぶ?」

「待て、ミナミ。」

「えっ?」

 引っ張り上げた少女に声をかけようとしたミナミを、アヴドゥルが腕を掴んで引き離した。

「先ほどのは、おそらくスタンド…。もしかしたら本体は…。」

「えっ? えっ?」

 アヴドゥルに耳打ちされ、ミナミは、混乱しながらも少女を見比べた。

 そうこうしていると、他の者達も少女を疑っていた。

 ジトッと見られていて、ハッとした少女が我に返って、何見てるんだ!っと怒り、折りたたみ式ナイフを取り出して、回る口で相手になってやるとかけんか腰になっていた。

 しかし、皆迷っていた。本当にこの少女がスタンド使いなのかどうか、もし間違えて攻撃してしまっては大変だからだ。

 スタンド使いかどうか、そしてDIOと繋がっているかどうか。一番はそこだ。

 まずアヴドゥルが、DIOは元気かと聞いた。

 少女は、DIOって誰?っと答えた。

 ポルナレフがとぼけるなっと言うが、少女は本気で分からない様子だった。

「どう思う? 仗助?」

「ま……、仮にスタンド使いかどうか、俺らの敵かどうか確認は必要なのは分かるけどよぉ…。吉良の野郎の時みたいにはできねぇぜ?」

 ヒソヒソと二人は話し合う。

 吉良の時とは、仗助の直せるスタンドで痛めつけてギリギリまで拷問して確かめるという手だ。この際、吉良は自らのスタンドを出して自身の正体を明かした。

 

「この女の子かね、密航者とは。」

 

 そこへ、筋肉質でたくましい船長が現れた。

 そしてナイフを握っている少女の手を強く握りしめて、ナイフを放させ、下の船室に閉じ込めておくと言った。

 そして、ミナミを見ると、ポケットから、赤い茎の青いバラの花を出した。

「船内を見学するのはいいが、落とし物をしてはいかんよ。お嬢さん。」

 そう言ってミナミの左耳の上の髪に、その青いバラの花を髪飾りのように引っかけた。

「…ちょっと待って。」

「ミナミ?」

「どうしてコレ(赤い茎の青いバラの花)が私の物だって分かったの? 私、船内に入らず、港からずっと甲板にいたのに…。」

「なるほど…、分かったぜ。あんたがスタンド使いか。」

「な、なにーーーー!?」

 ジョセフ達が驚愕した。承太郎は、タバコを吸っていて、冷静にしていた。

「すた…ンド? なんだねそれは?」

「おっかしいんだよな~? だってねぇ?」

 ミナミは、仗助と顔を合せた。

「この青いバラは…、あんたのもんだろ?」

「なんの…話しかね? 話がまったく見えないのだが?」

「仗助、ミナミ、勝手な憶測はやめろ! 下手な憶測は混乱を招くだけだぜ!?」

「証拠があるのか!?」

「実はよー…。この青いバラの花…、見てくれよ、この血みたいに赤い茎…、ってことは、出血してるハズなんだよな~?」

「足んとこ、ズボンに…にじんでるよ? 新しい血が…。ねえ?」

「あっ!」

 船長は慌てて、右足のアキレス腱部分を確認した。そこには……。

「なーんつって、そこから生えてるのは、姉ちゃんのスタンドだ。」

「しまっ! あっ!!」

 思わず手を出した結果、ズボンから生えていたブルー・ブルー・ローズの根っこがピシッと動いて船長の指を傷つけ、青いバラの花を咲かせた。

「俺の寿命…!? あぁ!? しま…。」

「ヤレヤレ…、とんだ間抜けだぜ。こんなつまらない誘導に引っかかるとはな。」

「しかも、ミナミのスタンドを知っている…。」

「DIOの刺客で間違いなしか。」

「ブルー・ブルー・ローズはよぉ…。なんでか、オートで姉ちゃんの危険を察知して動くところがあるんだよな。」

「そういう性質があるなら早く言いなさい。」

「騙すんなら、まず味方からって言いますでしょう?」

「そうそう。」

 ミナミと仗助は笑い合った。

「ぐっ…、このガキ共が…! よくも俺の寿命を…、あっ!」

「はい、ありがとう。これで2年分だね、さて、あなたの寿命はあとどれくらい残ってるかな?」

 交番の床を伝って移動したブルー・ブルー・ローズが、偽の船長から奪い取った赤い茎の青いバラの花をミナミに受け渡した。

「ミナミ、お前、スタンドの制御できるんじゃねぇか。」

「いや、これは、勝手に…。」

 直後、少女の悲鳴があがった。

 見ると、海側から上がった半漁人のようなスタンドが、少女を抱えていた。

「水のトラブル! 嘘と裏切り! 未知の世界への恐怖を暗示する『月』のカード! その名の、ダーク・ブルー・ムーン!! 1対7じゃあ、さすがの俺も骨が折れるから正体を隠しし、一人一人、そっちのガキ娘以外を始末しようって思ったが…。」

「その子を放して。じゃないと、このあなたの寿命を海に落とすよ?」

「てめ…!」

 ミナミが2本の青いバラの花を海の方へ向けると、偽の船長が目に見えて焦った顔をした。

「ドラララララララララララララララララ!!」

 その瞬間、仗助がクレイジー・ダイヤモンドの殴打を与え、ダーク・ブルー・ムーンをボコボコにして、海に吹っ飛ばした。

 海に放り出されかけた少女は、承太郎のスタープラチナが掴んだ。

「へ~んだ、隙だらけだったぜ。」

「この手の小物って、結局自分の命が可愛いからね。」

「…ぅ、ぐ…ぉおぉ……。」

「花は、返しておくよ。いらないから。」

 そう言って、ミナミは、海に浮かんでいる船長に、2本の青いバラの花を落とした。

「じゃ、終わりだね。ん? 仗助?」

「う…、うぅう…!」

「どうした仗助!?」

 仗助の体がズリズリと海の方へ引っ張られていった。クレイジー・ダイヤモンドも出しっぱなしだった。

「力が…抜ける…。やべぇ…。ひ、引きずり込まれ…。」

「ああ! 見ろ! 仗助のクレイジー・ダイヤモンドに!!」

 見ると、クレイジー・ダイヤモンドの腕や体に、海の水棲生物であるフジツボが大量に張り付いていた。

「ぐ…グレートだぜ…、あんにゃろう…、まだ戦う気だ!」

「仗助! クレイジー・ダイヤモンドを引っ込めて!」

「それが…できな…、うぅうう!!」

「仗助ーーー!」

 後ろから引っ張っていたが、仗助の体が凄まじい力で海に引っ張り込まれた。

「…っ! 馬鹿野郎!」

「承太郎!」

 海に引っ張り込まれ沈んだ仗助を追って、承太郎が海に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

『ガボボボ…!』

 仗助は、口を手で押さえ、空気が出ないようにしていると、視線の先に、先ほど自分が殴り飛ばした偽の船長と、ダーク・ブルー・ムーンがいた。

『よぉ~~~こそ、よぉ~~~こそ。ククックク…。ダーク・ブルー・ムーンの独断場、海中へ。」

『てめぇ…。』

『今、こう考えてるだろ? こいつ一体どれくらい時間、水中に潜っていられるか。自分の限界は、2分でとこだが、自分より長く潜っていられるのだろうか? ……とねぇ~。答えてやろう、俺の肺活量は、普通の人の三倍よ。そして訓練されている。潜水自己ベストは、6分と12秒! この数字を聞いただけで意識が遠くなるだろう?』

『っ…!』

『そして!』

 するとダーク・ブルー・ムーンがそのヒレのついた鋭い手で、船のスクリューのひとつを破壊して見せた。

 偽の船長のスタンド、ダーク・ブルー・ムーンは船のスクリューの回転よりシャープな水中カッター。

 そのうえ、先ほどクレイジー・ダイヤモンドが殴ったときにつけたフジツボにより覆われてクレイジー・ダイヤモンドは、力を吸い取られている。

 仗助は、ギッと睨みつつも、急いで海底から水面へ急いで泳ごうとした。

『泳いで、水面に逃れるか? 周りをよく見ろ。』

 ダーク・ブルー・ムーンが作りだした水の渦が海中をかき回していた。それに巻き込まれ、仗助はまともに泳ぐことが出来なかった。

 さらに、渦の中に鋭いダーク・ブルー・ムーンの鱗がカッターとして渦の中に紛れ込んでおり、渦に流されていると鱗で体が切られた。

『おおっと…、お前さんを助けに来たのかわざわざ飛び込んできた馬鹿がきたぜ~?』

『承太郎さん!』

 巨大化した水のアリジゴクに、承太郎も巻き込まれる。

 船長の周囲には、先ほどダーク・ブルー・ムーンが破壊したスクリューの破片が舞っていた。

『……馬鹿だぜやっぱ。アンタはさ。』

『んだとぉ?』

『だから小物だって言ってんだつーの。あんたは、とっくに負けてんだ…。』

『この状況でそんな脅しにもならいこと言って…。』

『いいや、てめぇは、負けてるぜ。』

『この…ガキ共が…! このままジワジワと…、っと…っ?』

 次の瞬間、チクッと首の後ろを何かが擦ったのを感じた。

 振り向くと、そこにはスクリューの欠片から発生したらしい、鮮血色の根っこが生えていた。

 気がつけば、周囲にあったすべての無機物…、スクリューの欠片から根っこが生え、偽の船長を包囲していた。

『う、うわああああああああああああ!?』

『そいでよぉ…、俺のスタンド、クレイジー・ダイヤモンドの能力は、あらゆるものを直す能力だ。つまりぃ…、テメーのスタンドが作りだしてる渦と、体の鱗は…。』

 渦がやがてクレイジー・ダイヤモンドの再生させる力により元の海流に直されていく、そして鱗は……、向きを変え、ダーク・ブルー・ムーンへとすべてが追尾弾のように発射された。

『ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガア!?』

 マシンガンのように戻ってくる鱗の衝撃に、偽の船長は息を大量に吐いた。

 息が切れ、ブルー・ブルー・ローズに引っかかるのも構わず大慌てで水面を目指そうとする偽の船長の前に、承太郎が立ちはだかった。

『直す力…、これほどとはな。マジに頼りになるぜ。』

 そして、承太郎のスタープラチナの攻撃が、水中の浮遊感など関係なく打ち込まれ、今度こそ偽の船長のスタンド・ダーク・ブルー・ムーンは、再起不能になった。

『へ、へへへ…、褒められちった…、嬉し…。』

『馬鹿野郎…。』

 血を散らしながら力尽きていく仗助を、承太郎が抱えて水面へ上がった。

 

 

 

 ダーク・ブルー・ムーンとの戦いは、こうして終わった。

 

 

 




前回、銀の戦車編が、ほぼ原作通りだったので、今回は思いっきり原作介入させました。
仗助の怪我は、一応浅いです。
吉良吉影戦までを経て、仗助の能力は、初期よりも格段に上がっていて大きな海の渦を消したり、渦中にある鱗のカッターを反射するなどの芸当が可能に。ということで。


次回、タンカー戦の予定。


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力の暗示

勢いで行きます。


力の暗示編。


また今回も、承太郎があんまり活躍してないかも。


 

 ドカーン ボカーン!

 

「や…やはりあの船長、船に爆弾を仕掛けてやがった!」

「みんな早くボートに飛び移れ! 近くの船に救難信号を出せ!」

「ちくしょう! この爆発じゃ、直す余裕もねぇぜ!」

「まあ、あんたの力もそこまで万能じゃ無いってことだよ。」

「仗助、ミナミ、急がんか!」

 全員が、そして船員達もみな避難用のボートに移動し、船はやがて沈んでいった。

「…落ち着きなさい、ミナミ。」

「水が近くにあると、つい…。」

「救助信号は打ったあるから、もうじき助けは来るだろう。一々気にしてたら身が持たんぞ?」

「は~、太陽があっちいぜ…。」

「ほ~、そうやって髪下ろすと結構ジョースターさんに似てるな? さすが息子?」

「シンガポールついたらワックス買ってくれよ、じじい~。」

「分かった分かった。」

「やっほー!」

「ねえ…、あんた達…、一体何者なの?」

 密航者の少女が、警戒した顔で聞いてきた。

「君と同じに旅を急ぐ者だよ。もっとも、君は父さんに会いに…、わしは娘と息子のためにだがね。」

「へ~…。ブフッ!」

「こらこら! 大切な水じゃぞ! 吐き出す奴があるか。」

「ち、違う…。み、みみみ、みんな! 見て! あれを見て!」

「えっ?」

 少女が指差した先には、大型タンカーが海に浮いていた。

「あれ…?」

「んん?」

「…お前らもか?」

「はい。」

「おかしいっすね…。なんかやな予感するっす。」

「お前達、何を案じておるんじゃ? まさかこの貨物船にもスタンド使いが乗っているかも知れないと考えておるのか?」

「……っていうよりは…。」

「気配がなさ過ぎってか?」

「タラップが降りているのに、なぜ誰も顔を覗かせないのか考えてたのさ。」

「!」

 そして、ジョセフ達は、改めてタンカーを見上げた。海の波の音だけが無情に響く中、その船から何の音も聞こえてこなかった。

「ここまで救助に来てくれたんだ! 誰もいねえわけねえだろーが! 例え全員スタンド使いだとしても、俺はこの船に乗るぜ!」

「ポルナレフさん!」

「…仕方ねぇ。食料も水も足りねぇんだし、罠だと分かってても行くっきゃねぇよ。敵だらけだとしても、食料と水奪って逃げりゃいいだけだしよ。」

「……うん。……ん?」

「どうした?」

「…ブルー・ブルー・ローズが…。」

 見ると乗っていたボートから生えたブルー・ブルー・ローズの根っこが、まるで行くなと言わんばかりにミナミの足に絡みついていた。

「やっぱり、この船…。」

「いいから来な。」

「わっ!」

 承太郎に無理矢理引っ張られ、ブルー・ブルー・ローズの根っこが千切れてミナミは、承太郎に受け止められる形でタラップに乗った。

 

 

 イ ク ナ

 

 

「っ…。分かってる、分かってるよ。」

「ミナミ?」

「……用心して行きましょう、承太郎さん。」

 ミナミは、自身にしか聞こえないブルー・ブルー・ローズからの幻聴に悩まされながら、承太郎、仗助と共にタンカーに上がった。

 

 

 上がってみても、誰もいなかった。

 そして船室にも誰もいなくて、すべての計器や舵が勝手に動いていた。

 だが、一応いた。正確には…船員では無かった。

 檻の中に、オラウータンが一匹。

 そして、檻のある船室から出た時…。

 タンカーの甲板にあった釣り針型のクレーンの先端が、船員の一人の頭を貫いて殺した。

「…っ…、み、見た?」

「あ、ああ…、不自然だ…! 明らかに殺意のある動きだったぜ、今のはよぉ~!」

 ミナミと仗助は、冷や汗をかいた。

 スタンド同士でのテレパシーのような念話で、ジョセフ達は会話した。

 どうやら、この貨物船は、自分達を救出するためじゃなく、皆殺しにするために来たらしいという推測。

 そして、誰も触っていないのに勝手に動いたクレーン。

 スタンドらしきものは見当たらなかった。

 敵の人数は?

 ならば、自分が調べますと、花京院がハイエロファントグリーンを解かせて船の隙間中に入り込ませた。

「な、なにがなんだか分からないけど、やっぱり、あんた達がいるからヤバいことが起こるんだわ…。疫病神なの? 災いを呼ぶ人間がいて巻き込まれるから、そいつには近づくなって…、そうなの?」

「……耳の痛い話だね。」

「ただの人間にゃ、そう見えてしかたねぇか……。」

「……ふん。」

「スタンド使いは、スタンド使いとひかれ合う……。そういう宿命って、誰かが言ってたね。……まさか…ねぇ?」

 ミナミは、ふとオラウータンを見た。

「あっ…。」

 仗助は察して声を漏らした。

「おい、どういうことだ?」

「実はっすね…、俺、スタンド使いの動物と戦ったことあるんすよ。」

「動物が?」

「ドブネズミだったっすけど、手強かったっす。未来の承太郎さんと一緒に退治したっすけど。」

「ドブネズミだ~? そんなのがスタンドを使ってたのかよ?」

「むむ…、そのような事例が…、アイツと同じか…。」

「あいつ?」

「分かった。誰かがここで、このオラウータンの挙動を見張り、他の者は他の船室を調べるというのはどうだ?」

「ああっ!」

「どうした? あっ!」

 少女の悲鳴じみた声を聞いて見ると、オラウータンが檻から消えていた。

「あれ? 姉ちゃん? 姉ちゃん!?」

「ミナミが消えたぞ!?」

「しまった、やられた! 奴だ…、あのオラウータンがスタンド使いだったのだ!!」

「俺、探してくるっす!」

「待て、仗助! 敵のスタンドの性質が分からん状態でひとりになるな!」

「ここは海上っす! 船室のどこかに移動させた可能性がある! 俺は、双子の弟だ! 直感だが探してみせるっす!」

「俺も行くぜ。」

「承太郎!」

「ひとりでダメなら、二人でだ。それでいいだろ?」

「頼みます…!」

 仗助と承太郎は、船内に駆け込んだ。

 仗助が直感で下へ下へと移動する。

 やがて、船室の一室にミナミが倒れているのを発見した。本来なら船長が船員達と会議をするような一室だ。

「姉ちゃん!」

「待て、仗助。」

「なんでっすか!?」

「見ろ。」

「っ!」

 見ると、船長が座る席に、船員服を着たオラウータンがふんぞり返るように座り込んでパイプを吸っていた。

「いつの間に…。」

「どうやら、野郎のスタンドだろうな。だが、スタンド像はどこだ…? すでに見えているのか? だとしたら……。」

 直後、換気扇のプロペラが外れ、生き物のように二人の背中に襲いかかってきた。

「スタンドは、この船そのモノか!!」

 スタープラチナの拳がプロペラを弾き飛ばした。だが向きを変え、今度は、プロペラの平たい部分がビンタをするようにスタープラチナと承太郎もろとも壁に張り飛ばした。

「ぐっ!」

「承太郎さん!」

「俺に構うな! 後ろだ!」

「はっ!」

 いつの間にか船の壁にめり込んで移動していたオラウータンの拳が仗助の背後を捉えようとした。

「ドラァ!!」

「グヒィ!?」

 それよりも早いクレイジー・ダイヤモンドの拳がオラウータンの腕をひん曲がるほど強く殴打した。

「ウキャアアア! ぐげええええええ!!」

 オラウータンが肉も骨も皮膚も分からない形状にさせられた自身の腕を見て、悲鳴を上げた。

「ドラララララララララララ!!」

 オラウータンは、クレイジー・ダイヤモンドの拳から逃れるべく、壁の中に逃げていったが……。

「この船を“元の状態”に、一部だけ戻したぜ。」

「ウギャッ!?」

 ボロッと崩れた壁からオラウータンが転がり出た。

「なるほど。てめーのスタンドは、姉ちゃんのスタンドと同じ、物質同化型って奴だ…。元はなんかのボロ船で、それにスタンド被せて移動してきたってところか。」

「ヤレヤレだぜ。エテ公、つまりテメーのスタンドは、力(ストレングス)の暗示ってところか? これだけのパワーだ。」

「ウギギギギ…。」

 変形した腕を庇いながら、オラウータンがミナミがいる船室へと下がっていく。

「姉ちゃんに近づくな! それ以上下がると、てめーを船の一部と合体融合させて二度と戻れないようにしてやるぜ!?」

「う…ウゥウ…う! ヒーヒヒヒ…!!」

「なんだよ? 急に腹だして、寝っ転がりやって…。」

「動物は、降伏すると、敵に腹を出すらしいな。だが、テメーはもう…、動物としてのルールから外れちまった。」

「あっ!」

 見ると、ミナミがいる船室には、他の船員達の死体があった。

「…承太郎さん、やっちまってくださいよ。」

「言われずともやるぜ。」

「ヒイイイイイイイ!!」

 そして、凄まじいスタープラチナの拳の嵐が、オラウータンを襲い、ボコボコのボロボロにした。

 壁に叩き付けられ、グフッ…っと最期に血を吐くと同時に、船がグニャグニャと蠢き始めた。

「どうやら、本体が死んだことでスタンドが消え始めたらしいな。ミナミを拾って急いで出るぜ。」

「はい!」

 二人は、気絶しているミナミを抱えて船上へ急いだ。

 

 

 ほとんどの船員を失い、ジョセフ達は、最初に乗っていたボートに飛び移って崩れていくタンカーから離れた。

「信じられないわ…。船の形が変わっていく…、あんなボロでちっちゃい船が今まで乗っていた船?」

 密航者の少女が信じられないと、沈んでいく元タンカーだった船を眺めて言った。

「なんということだ…。あの猿は、自分のスタンドで船を渡ってきたのか。恐るべきパワーだ。初めて出会うエネルギーだった。」

 スタンド使いとしては、この面子の中ではもっともベテランと言えるアヴドゥルが冷や汗をかいていた。

「我々は完全に圧倒されておった…! ミナミと仗助がドブネズミのスタンド使いの話をしなければ、あの猿を疑いさえしなかっただろう! しかし…、これ以上に我々の知らぬ強力なスタンド使いがこれからも、出会うのか?」

「……う…ん?」

「姉ちゃん、だいじょうぶか?」

「あれ? 仗助? 私…。」

「ようやくお目覚めか。簡単に攫われてんじゃねぇぜ。」

「えっ?」

「実は…。」

 かくかくしかじかと説明。ミナミは、ギョッとして、承太郎達に謝った。

 

 その後、間もなく、奇跡的に船が通りがかり、救助され、シンガポールに上陸することが出来たのだった。

 

 

 

 

 




力の暗示のスタンド使いのオラウータン、承太郎達の会話を聞いて、危険を感じてすぐに行動に移す。
ミナミを攫ったのは、もちろんDIOの命令です。
けど結局負け。
仗助のスタンドじゃあ、自分と相性が悪いと気づいて降伏するも、先に殺していた船員達の死体を見られて始末された。


次回は、悪魔の暗示かな?


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悪魔の暗示

勢いで行きます。



エボニー・デビル編。



ミナミ、スタンドはほとんど使えないけど、頑張る。(?)


 

 

「ジャンケン…ぽい!」

 

 シンガポールに到着後、ホテルの部屋割りを決めるためジャンケンをした。

 ジョセフは、仗助と共にホテルの外の店にワックスを買いに行き、その間のミナミの守りをポルナレフに頼むことになった。

 ただし。

「手を出したら、どんな事情があろうとも、ぶち殺すからな?」

 ジョセフが、ポンッとポルナレフの方に手を置いて、地獄の底から響くような怖い声で警告していた。

「か…神に誓って…!」

 あまりのジョセフの剣幕にポルナレフは、ビックビクしながら手を上げて誓った。

 そして、ジョセフと仗助が出て行き、ホテルの部屋で落ち着いたところで…。

「ごめんなさい。ポルナレフさん…。お父さん過保護で…。」

「謝んなくていいさ。安心してくれ、俺が必ず守るから。」

「私も…、スタンドが自由に操れたら少しは違っただろうな…。」

 ミナミは、椅子に座りながらそう呟いた。

「ポルナレフさんは、神様を信じてる?」

「いきなりなんだ?」

「私は大嫌い。」

「どうしてだい?」

「……不平等だから。」

「ふびょうどう?」

「青いバラの花の花言葉って知ってます?」

「いいや。」

「夢叶う…、不可能、奇跡……、そして、神の祝福。」

「!」

「青いバラの花って自然にはないから、そういうあり得ないモノの象徴として、そんな花言葉がついたらしいの。今は遺伝子操作で作られたけど、それ以上昔は、本当にあり得なかったモノ…。完成したときは、きっと夢は必ず叶うし、奇跡は起こせるモノだって信じただろうね…。そして、神様が祝福してくれたとも…。」

「ミナミ…。」

「なにが祝福なんだろう…。こんな力…、どうして青いバラの花として奪った寿命がその形になるのかなんて分からないけど…、もし、この力が神様が私に与えた祝福だったんなら…、これ以上無く、神様を恨む。」

 ポルナレフは、ミナミの独り言のような言葉を、黙って聞いていた。

「スタンドって、自分自身なんですよね? だから、私はスタンドを扱いきれないのかも…、だってこんなに…恐ろしいんだもの…。生と死を操る私自身のこの力が…。」

「ミナミ。」

 するとポルナレフが、ミナミに近寄り、ポンッと頭に手を置いた。

「君の気持ちはよ~~く、分かるつもりだ。辛かったな…? 命の生き死にを操れるってのは…。」

「……何より辛いのは、そんな力があるのに、救えなかった命が多いことなんです…。知らず知らずのうちにたくさんの命を奪っていることも!」

 

 

 ガタガタガタ

 

 

「……私だって…。」

 ミナミは、微かに揺れているホテルの部屋の冷蔵庫を見た。

「足手纏いにはなりたくないんだから! 出てきなさいよ!」

「なっ!」

 

 

 すると、冷蔵庫から、傷だらけのひとりの男が出てきた。

「…お…、遅いぞ。」

 男は自分の体を手でさすっていた。

「いつの間に…。」

「だって、テーブルの上に冷蔵庫の中身があるんだもん。」

「あっ。」

 ポルナレフは、今気づいたと声を漏らした。

「俺の名は、デーボ。呪いのデーボと呼ばれている…。スタンドは悪魔の暗示、呪いに振り回され、精神状態の悪化! 不屈なる墜落の道! を意味する。」

「悪魔…。うわっ、なんかヤバいの匂いしかしない。」

「下がってな、ミナミ。」

「エボニーデビル!!」

「シルバー・チャリオッツ!!」

「待って!」

 しかし、ミナミが止めるよりも早く、シルバー・チャリオッツの素早い剣の技がデーボの顔を傷つけた。

 目を潰され、舌にも穴が空いた。

「ああ! ヤバいって!」

「どうしたんだよ?」

「なんだか分かんないけど、ヤバい気がしてならないの!」

「いってぇぇぇぇぇぇよおおおおおおお!! とってもおおおおお、いってぇえええええ! ハハハハハハハハーハハハハハウハハウハハハハハ!!」

「なんだ、こいつ…?」

「よくもよくもやってくれたな~~~! これで思いっきり、てめーを恨めるというものだぁ!! 俺のスタンド、エボニー・デビルは、そいつを恨めば恨むほど強くなるのだ!!」

「やっぱり!」

「そっちの娘は気づいてたみたいだけどよおおおおお、もう手遅れだぜ~~~! ハハハハハハハハーハハハハハウハハハハ!!」

 そしてデーボは、ベランダから飛び降りようと移動しようとして。

「させるかーーー!!」

「ゲブガっ!?」

 一瞬で距離を詰めてきたミナミの真空飛び膝蹴りを食らって倒れた。

 シルバー・チャリオッツの攻撃で血だらけになっているデーボは、そのまま気絶した。

「ポルナレフさん、どうします?」

「えっ? あ…ああ…、とりあえずふん縛っとこうぜ。」

「はい。」

 っというわけで、その場にあったベットのシーツとかを使って、グルグル巻きの簀巻きにしておいた。

「さてと、とりあえず、このまま…。」

「あっ!」

「どうした?」

「ポルナレフさん!? 足!」

「えっ? ああ!? いつの間に!?」

 ポルナレフの左足がすっぱりと表面を切られていた。

「し、失血、失血!」

「落ち着けって。」

「あれ?」

「今度は何だよ?」

「そこにあった人形が…消えてる?」

「へっ? そんなのあったか?」

「あったよ! ちょっと不気味な感じのが。」

「んん? それよりか、部屋の鍵がねぇな。どっか落としたかな?」

「ええー? こんな時に…。」

「お? ベットの下にあった。」

「待って!」

「おいおい、デーボの奴も気絶してんだし、そんな警戒…、っ!? ミナミ伏せろ!」

「えっ? わっ!」

 ポルナレフに庇われ、ミナミは床に倒れた。そしてポルナレフの顔に大きな切り傷が出来た。

「ぐっ!」

「ポルナレフさん!」

『ウケケケケケ!』

 テーブルの上に、刃を持った不気味な人形がピョンピョンと跳ねていた。

「あ…部屋の人形…。」

「まさか、こいつが…、エボニー・デビル!?」

『ケケケケケケケ! よくもよくもやってくれたな~~~!』

「てめーら、ミナミには危害は加えないはずじゃねぇのかよ!」

『確かに殺すなとは言われたけどよ~~~! 手足が無くなっちまっても目を抉ってもダメだなんて言われてねぇもんね!!』

「!」

『つ・ま・り! 命さえ無事ならどれだけいたぶろうといいってわけさ~~~~! ギャハハハハハ!!』

 刃を振り回し、エボニー・デビルは、ケタケタと笑う。

「こんちくしょうが! 本体がそこにいるんなら、本体を…!」

『させると思ってんのかぁ~~~!? 俺様の恨みの力で底上げされたスピードなら、俺の本体を殺すよりは早く!! そこの小娘の耳をそぎ落とせるぜ!? おめーのスタンドは、確かに早えがよぉ! けどよぉ! そこのスタンドもまともに使えねぇ、娘ひとり守りながらこの俺と戦えるってのか~~~?』

 ギャハハハハハっと笑いながら、エボニー・デビルは、器用に武器を二つ振り回す。

「ふーーーん? ずいぶんと舐められたものだわ…。」

「ミナミ…、俺の後ろから動くなよ?」

「ううん。ポルナレフさん。私はね…。」

「お、おい!」

『ケケケケケケケ! 自殺行為か~~? うりゃ~~~!』

 シルバー・チャリオッツでも対応できないような速度で投げられたナイフを、ミナミは、髪の毛スレスレで避け、簀巻きになっているデーボを持ち上げた。

「んな!?」

『まさか…てめ…!?』

「だいじょうぶ。外に落としたりはしないから。その代わり…。」

 

 

 ガチャ

 

 

「頼むわよ! 我が弟!! おらああああああああああ!!」

 

「姉ちゃ…、って、うおおおおおおお!?」

 

 部屋の出入り口から入って来た仗助に向かってぶん投げられた簀巻きのデーボに驚いた仗助が咄嗟にクレイジー・ダイヤモンドを出して触れた。

 その瞬間、デーボが負っていたすべての怪我が元通りに治った。

『うっ! しま…。』

「呪いってぐらいだから、呪い元を絶たれたどうなるのかな?」

『う…ぅううう! 力が…。』

「やっぱり痛くなかったら恨めないよね? 今までそうしてきたんなら尚更。さ、ポルナレフさん、聞き出せることは聞き出そうよ。」

「へっ?」

「もー。例えば、仇のこととか。」

「あっ、そうか。すまねぇな。おい、デーボ。てめー、両手が右手の男を知ってるのか?」

『あ…、あぁ?』

「知ってる臭いな。そいつのスタンド能力を教えな。でないと、テメーのタマ金を切り刻んでやるぜ?」

『……おめぇは、頭がパープリンか? スタンドの正体を見せる殺し屋がいると思ってんのかぁ? 見せるときは、相手か自分が死ぬときだぁ!!』

「そうかよ…。ミナミ…、目ぇつむってな。」

「……。」

 ミナミは、後ろを向いて、目をつむった。

 

 その後のことは…、とてもじゃないが、言葉にならないような状況となった。

 なお、そのあとの始末については、SPW財団とか、そういうのがお金を出して秘密裏に消し去った。(殺人罪を問われたら出国できないからね)

 

 

 




デーボ、ミナミの身体能力を舐めくさって飛び膝蹴りで気絶。
でもエボニー・デビルは、本体の目が無くても単独で動けたから戦えたっと、いうことで。
しかし、ミナミの見かけによらない怪力で簀巻き状態で放り投げられ、投げられた先にいた仗助に治療され(意図せず)、呪いの元を失い、力尽きたところをポルナレフの尋問に答えず、切り刻まれて終わる。

これ、メッチャ難産だったので、もしかしたら書き換えるかも。


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節制の暗示

勢い大事。


イエロー・テンパランス戦。


仗助ばっか活躍します。


 

 ミナミ達は、インドに向かうためのバスor列車の手配のため、ホテルを出ていた。

 ジョセフとアヴドゥルは、いない。

「ミナミー。アイス食おうぜー。」

 密航者だった少女がそう言ってミナミの手を引いた。

「いいね。」

「お嬢さん達~、アイスクリームもいいが、こいつは、美味いヨん。ひんやり冷えたヤシの実の果汁だ。どうだい?」

「4シンガポールもするじゃん、観光客用にぼってる値段かよ。2ドルなら飲んでやるぜ。」

「あのねー、ナチュラル・ピュア・テイスト100%なのよん。さっき木からとってきたばっかりの奴に…、こう! 穴を空けると…。ほ~~ら、こんなに綺麗な果汁がタップタプンなんだよぉ~~~ん。トロピカル! とっても甘むぁ~~くて、しかもさわやか~~~。果肉も美味しいよ、スプーンでどうぞ。」

「ごくりっ…。」

「おお~いかにも南国! 美味そうっすね、承太郎さんも花京院さんもいるっすか?」

「なんだ奢ってくれるのか?」

「も~! 俺ら金無いの知ってるっしょ!」

「冗談だ。」

「じゃあ、5ください。」

「へぃ! 20ドルっす。」

「おい、10ドルにしろ、10ドル!」

「観光地の相場なんて分からないよ~。」

「ミナミぃ、こういう観光地ってのは、観光客の金目当てでぼったくってくんだぜ? 覚えとけよ。」

「生活力あるね~。」

「えっへん。」

「威張る事じゃないぜ。」

 承太郎が呆れてツッコミを入れた。

 その時。

 かっぱらいが花京院の財布を盗んだ。

 すると、花京院は素早くハイエロファントグリーンを出し、かっぱらいを捕えた。

「てめー…、俺のサイフを盗めると思ったのかっ? このビチグソがぁ~~~!」

「えっ?」

 なんか、様子がおかしい花京院が、かっぱらいの顔面に膝蹴り、そのあと、バックブリーカーをかけていた。

「おい、やめろ花京院。死んじまうぞ。血を吐いてる。」

「うわわわ!」

「仗助!」

「お、おう!」

「花京院さん!」

「花京院! やめろって言ってるのが、分からねぇのか!!」

 止めないので承太郎が無理矢理に止めた。落とされた瀕死のかっぱらいを仗助が素早く治療した。

「……痛いなぁ…。なにも僕を突き飛ばすことは無いでしょう? こいつは僕のサイフを盗ろうとした、とっても悪い奴なんですよ。こらしめて当然でしょ。」

「……花京院さん?」

「そう思わないかい? “ミナミちゃん”。」

「えっ?」

「こいつは…、なんか変だぜ?」

 話を振ってきた花京院から、仗助は庇うようにミナミの前に立った。

「おいおいおい、仗助く~ん? なにをそんなに警戒してるんだい? おかしいじゃないか? 僕は仲間だよ?」

「仗助…。」

 ミナミは、仗助とヒソヒソと話し合った。

「姉ちゃん…、どうする?」

「もう少し様子を見よう。」

「ちょっとちょっとぉ? なにヒソヒソしてるのかな~?」

「いえいえ、なんでもないですよ。それより、承太郎さん、早く列車の手配をしに行きましょう。」

「…ああ。」

 承太郎は、二人の様子を見ていて察したのか多くは言わなかった。

 

 そして5人は、ケーブルカーの乗り場に来た。

「よお、承太郎。そのチェリー、食うのかい? 食わないのならくれよ。腹が空いてしょうがねーぜ。」

「ほらよ。」

「おおっと、危ない。」

 次の瞬間、花京院の手が承太郎の背中を押して、ケーブルカーの乗り場から落ちそうになった。

「承太郎さん!」

「危なっ!!」

 間一髪で仗助とミナミが掴んで引っ張り上げた。

「ハハハハ! 冗談だよ。じょーだん。」

 すると、笑っている花京院が、レロレロと、器用に舌の上でチェリーを転がした。

 やがてチェリーが下に落ちたが、それを拾い上げ、今度こそ口に入れた。

 四人は、不気味なモノを見る目で花京院を見ていた。

「また! そんな顔して…、なに馬鹿面してるんだい? 冗談だって、言ってるでしょうが? あんた達、まさか、冗談も通じないコチコチのクソ石頭の持ち主ってこたぁないでしょうね~~~?」

「……もういいよね。」

「ああ、そうだな。いいっすよね? 承太郎さん?」

「…ああ。」

「?? ケーブルカーが来ましたよぉ? 早く乗りましょうよ?」

「テメーだけ乗りな。」

「はっ?」

「オラァ!」

「ドラァ!」

「ブバッ!?」

 二人の拳が花京院にめり込む。すると花京院の顔と胴体の一部が裂けた。

「なっ!?」

「……ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ。な~んだ、気づいてやがったかぁ?」

「何者だ? てめぇ?」

「俺か? おれはなぁ、喰らった肉と同化して、一般の人間に見えるし触れる、スタンド。節制カード! イエロー・テンパランス!」

 そして、花京院のグズグズになっていた顔が弾けるように溶けて、下から知らぬ男の顔が出た。

「そして、これが、俺の本体。ハンサム顔だ!」

「…どこがやねん。」

「おい、何言ってくれちゃってんのかな~? この小娘が! まあいいや、ほーれほれ、承太郎先輩、手を見なさぁい。君の手にも今、殴ったところに一部食らいついているぜ?」

「!」

「げっ! 承太郎さん!」

「仗助もだよ!」

 見ると、承太郎と仗助の手にイエロー・テンパランスの肉片がくっついていた。

「言っておく! それに触ると…、左手の指にも食らいつくぜ? 左手の指は鼻でもほじっていな。ジワジワ食うスタンド! 食えば食うほど大きくなるんだ、絶対にとれん!」

「オラァ!!」

「なにがオラァだ! 消化するとき、その口の中に、テメーのクソを詰め込んでやろうか!」

「承太郎さん!!」

「行って、仗助! あなたならだいじょうぶ!」

「おう!」

 ケーブルカーに引っ張り込まれた承太郎を追って、仗助も飛び乗った。

「ヒヒヒ…、ガキがもうひとり増えたところで…。」

「承太郎さん! 手を! ドラァ!」

「なに!?」

 クレイジー・ダイヤモンドの手が承太郎の手と、仗助の手に食いついていたイエロー・テンパランスの肉片を消し去った。

「コイツが、元々は何か食わないと成長しないスタンドなら、“戻す”だけだぜ!」

「ば、馬鹿な…!」

 イエロー・テンパランスの本体は、大いに焦った。

「存分にやりな、仗助。」

「はい! ドララララララララララララララララララララララララララ!!」

 クレイジー・ダイヤモンドの両手から放たれるラッシュが、イエロー・テンパランスの肉の鎧を殴りまくった。

「う、うう、うわあああああああああああああああ!? 俺のスタンドが、消え…。」

「オラァ!!」

「ぶげぇええ!?」

 肉の鎧が消え、半裸になったイエロー・テンパランスの本体を、承太郎が遠慮無くスタープラチナで殴った。

 顔が変形し、ボタボタと血が垂れ、ヒーヒー泣いていた。

「げはぁ…、やめちくり~、もう戦えねぇよぉおお…、歯も折れた…、鼻が曲がっちまったぁ…、顎も針金入れて貰わねぇとぉ…。数ヶ月入院だよぉ~。」

「教えな、あと何人のスタンド使いが俺達を狙っている?」

「そ、それは…、言えねぇ、誇りが…プライドが…。」

「ほほ~? なら、遠慮無く…。」

「思い出した~! 『死神』、『女帝』、『吊られた男』、『皇帝』の四人が、いるよ~!」

「で? 能力は?」

「し、知らねぇ…、これは本当に知らねぇ! スタンド使いは、自分のスタンドをやすやすとは見せねぇんだ…。スタンドを見せるってことは、弱点を晒すのとおんなじだからよぉ…。た、ただ…。」

「ただ?」

「DIOにスタンドを教えた魔女がいる。その息子が、四人の中にいる…。名前は、J・ガイル! 目印は、両手とも右手の男! カードの暗示は、『吊られた男』……。ポルナレフの妹の仇なんだろ? そいつの能力は少しだけ、噂で聞いたぜ…。鏡だ…。鏡を使うらしい。実際見てねーが、ポルナレフは勝てねーだろう。死ぬぜ…?」

「ポルナレフさんの仇? 教えないといけないっすね。」

「ああ。」

「……いまだ!」

「!」

「ドラァ!」

「あっ!!」

「ったくよ~。さっきの今で頭がいかれちまったか~? 俺の能力の前じゃ、あんたの肉は、無意味なんすよ。」

「ち、ちくしょう! 不意を打ったってのに…。えっ? あ…あの……。」

 すると承太郎が、スタープラチナを背中に浮かせて近づいた。

「仗助がこうは見えても死線をくぐり抜けてきた経験者だったことが不幸だったな。」

「もしかして…、これ以上…殴るですか~? 歯が折れちまってるよ? 鼻も…顎も…病院行かなきゃ…、ハハ…ハハハハハ…。」

「てめーにゃ…呆れて…もう、何も言えねぇぜ。」

 そして、凄まじい連撃がトドメだとばかりに、イエロー・テンパランスの本体を襲い、今度こそ再起不能になったのだった。

 

 

 

 

 そして、イエロー・テンパランスの本体を倒した後、無事に列車の手配が終わり、列車に乗ってインドへと向かった。

 あの後、本物の花京院とも合流できた。

「ところで、あの女の子はどうした?」

「列車の出発間際までシンガポール駅にいたんだがな。」

「きっとお父さんに会えたんだね。」

「あのガキ…、どうも嘘くせーんだよな。ただの浮浪児だぜ、ありゃあ。ま、いないと、ちょいと寂しい気もするが…、なあ、承太郎。」

「しかし、シンガポールでのスタンドだが。まったく、嫌な気分だ。僕そのものに化けるスタンドだなんて……。」

「ホテルを出るときから、もうすでに変身していたらしい。」

「でも、俺らすぐ別人だって分かったもんね~、姉ちゃん。」

「うん。」

「それより、仗助…。」

「なんすか?」

「なんでケーブルカーに乗った? お前の能力があったから切り抜けられたが、下手したらお前まで…。」

「いやぁ…なんていうか、体が勝手にっすよ。へへへ…。」

「あのスタンドは、承太郎さんのスタンドと恐ろしく相性が悪いみたいだったし、仗助を行かせた方がいいと思ったんです。」

「ま、結果良ければすべて良しっすよ!」

「………チッ。」

「あ、承太郎。がっつくようだが、僕、チェリーが大好きでね。もらっていいかい?」

「ん? ああ。」

「ありがとう。」

 そうお礼を言った後、花京院は、器用に舌の上で、チェリーを転がしだした。

 その姿は…。

「あいつ…しっかり観察してたんだね。」

「……グレート…。」

「?」

 知らぬは花京院だけである。

 

 

 




そろそろ、ブルー・ブルー・ローズを出したい……。

仗助の能力でなら、イエロー・テンパランスのような増殖するタイプのスタンドは、最悪の相性でしょうからね、相手にとっては。
7人目のスタンド使いでも、その描写はあって、イエロー・テンパランス戦後に、発揮。

しかし…、花京院…、チェリー好きなのはいいが、ねえ……。


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皇帝と、吊られた男の暗示

皇帝と、吊られた男の暗示編。



展開が、原作とは違いますが、アヴドゥルは……。


 

 

「わしは、インドは初めてなんだ。」

 ジョセフがそう言った。

 ジョセフは、インドという国にあまり良い印象がないらしい。あくまで想像(イメージ)だが、カレーばかり食い、乞食とか泥棒ばかりで、熱病かなにかにすぐにかかりそうだと言う。

「ひっでーイメージだな。」

「けど、私達の時代でもあんまりいい印象ないんじゃない? 人口が多すぎるとか、カースト制度があるとか、牛が神聖だから野放し状態だとか、川に糞便を垂れ流しで生活用水にも使ってるとか…。」

「うぇ…、ぜってー水飲まねぇ。」

「フフフ、それは歪んだ情報だ。心配ないです。みんな、素朴でいい人達ですよ。私が保証します。」

 アヴドゥルがそう言った。

 まあ、アヴドゥルが言うならと、思ってカルカッタへと降り立った。

 ところが……。

 

 カオスだった。

 

 バクシーシバクシーシとお金をねだる乞食達。

 排気ガスを巻き上げる凄まじい渋滞。

 糞便たれがしの、野放しの牛。

 押し売りしてこようとしてする怪しい商人達……。

 

 言ってたらキリが無い。

 

「あの~、アヴドゥルさん?」

「ね? いい国でしょ? これだから、いいんですよ、これが!」

「ええ~~~?」

 

 カルカッタ。

 そこは、19世紀のイギリス人が、『この宇宙で最悪の所』と呼んだ場所である。

 

 

 そうして、やっとの思いでホテルに到着。

 近くのレストランで、インド名物、チャーイを頼んで一息。

「ま、ようは慣れですよ慣れ。」

「なかなか良いところだぜ。」

「マジっすか、承太郎さん! 俺は、無理だなぁ…。」

「仗助って、なんやかんやで潔癖だからね。」

「この国がやべぇんだよ~。ブランドで2万したクツが、牛のクソで汚れちまったし…。」

「汚れるのが嫌なら、履かなきゃ良いでしょそんな良いの。」

「履かなきゃクツの意味ねぇじゃん! 姉ちゃんは、オシャレに興味なさ過ぎ! いい歳なんだから、化粧のひとつでもしろよ!」

「なにを~! このブランドオタク!」

「こりゃこりゃ、姉弟喧嘩はやめなさい!」

 顔を近づけ喧嘩を始める二人の間にジョセフが割り入って止めようとした。

 

 ガシャーーン!

 

 その時、鏡が割れる音がした。

「なに?」

「今のはトイレの方か? ポルナレフ!」

 異変に気づいた一行は、トイレの方に行くと、窓を開けているポルナレフがいた。

「ついに…。」

「ポルナレフさん?」

「ついに、奴が来たぜ! 承太郎、仗助、お前達が聞いたという鏡を使うというスタンド使いが!」

「えっ、ってことは…。」

「ああ! 俺の妹を殺したドブ野郎~~~! ついに会えたぜ!」

 

『ククク…。』

 

「!」

「ミナミ?」

「今…、笑い声が…?」

「ジョースターさん。悪いが俺はココで、あんた達とは別行動をとらせてもらうぜ。」

 ポルナレフは、ついに見つけた妹の仇を討つべく、単独行動をしようとしていた。

 それについて、アヴドゥルが咎めた。

 相手が分からない状態で、行くのは危険だと。

 だがポルナレフは聞かない。両手とも右手だと分かっていれば十分だと。

 そうして、ポルナレフとアヴドゥルの言い合いが始まった。

 そして、ポルナレフは、頭に血が上っているあまりに…。

「以前DIOに出会ったとき、恐ろしくて逃げ出したそうだな! そんな腰抜けに、俺の気持ちは分からねーだろーからなぁ!」

「なんだと?」

 ピシッと空気が凍った。

「俺に触るな! 香港で運良く俺に勝ったってだけで、俺に説教はやめな。」

「貴様…!」

「ほお~~~? プッツン来るかい?」

「こいつ!」

「よせ、アヴドゥル。もういいやめろ。行かせてやろう、こうなっては誰も止めることはできん。」

「……いえ、彼に対して、幻滅しただけです。あんた男だったとは…。」

「そうかな?」

「…ミナミ?」

「……ごめんなさい。」

「ミナミ? おい!」

「ポルナレフさん。見届けさせてください。」

「…ミナミ? 来るんじゃねぇよ。コイツは、俺の戦いだ。邪魔だぜ。」

「まあまあ、私はワタシの導きに従うだけだよ。」

「みちびき~?」

「ほら、アレ。」

 ミナミが指差す先には、地面からピョコッとちょっと出ているブルー・ブルー・ローズの鮮血色の根っこが、こっちだと言わんばかりにフリフリ振るわれていた。

「じゃ、俺も導かれようかな~?」

「おい、仗助! お前まで…。」

「姉ちゃんをひとりで行かせられるかよ。それに、邪魔はしませんよ。誓うっす。」

「本当か? ……もう勝手にしろ。」

 ポルナレフは、呆れたと肩をすくめ、背中を向けた。

「ブルー・ブルー・ローズが導く先に、吊られた男がいるってことだよな、姉ちゃん?」

「そういうことだと思うよ。今までだって、そうやって導かれてきたんだから。」

「…どういうこった?」

「あれ? 私達に勝手にしろって言ったじゃん?」

「そうじゃなくて! ああ、もう! おまえら…! あの赤い根っこ追いかけりゃ、J・ガイルがいるのか!?」

「誰か…それとも、何かがある可能性は高い。今までずっとそうだったもの。ね?」

「おう。」

 ミナミは、仗助と顔を見合わせ笑った。

「ほら、ポルナレフさんを呼んでる…。」

「……信じるぜ。」

 ピョコピョコと、地面を移動する赤い根っこを追い、ポルナレフは移動を始めた。

「ミナミ! お前…。」

「このカルカッタ内にいるなら…、私の射程範囲内だと思います! 逃げ場は…ありませんよ。」

「こっそり追いかけりゃいい。」

「承太郎!」

「あんたも心配だろ? アヴドゥル。」

「っ……、別行動してポルナレフを追おう。」

「決まりだな。」

 そうして、ポルナレフに気づかれないよう、追跡することとなった。

 

 

 

 

 ピョコピョコと移動する根っこは、やがて建物の間の方へ移動した。

「くっそ、まだいねぇのかよ! どこまで行けば…。くそっ、見失った! どこだ!」

 

 

「ーーーーーっかしいなぁ…? 予定じゃ、この辺りでポルナレフの野郎が来るはずだったのによぉ。」

 

「!」

 建物の間に入り込んだところで、そんな男の声が聞こえた。

 振り返ると、そこは市場だったのだが、カウボーイの格好の男が葉巻を吸って、もう一人の男と一緒にいた。

 そして、ポルナレフは、見た。カウボーイの格好の男の横にいる男の左手が、“右手”であることに。

「野郎! ついに! ぐえぇ!」

 飛び出そうとした瞬間、首をブルー・ブルー・ローズに巻き付かれ、引っ張られた。

 まるで行くなっと言っているようだ。

「じゃ、邪魔すんじぇねぇよ! ミナミぃ!」

「私じゃないよ。ブルー・ブルー・ローズがそうした方が良いって動いただけだもの。」

「邪魔すんなって言っただろうが!」

「あっ!」

 シルバー・チャリオッツを出したポルナレフが、ブルー・ブルー・ローズの赤い根っこを切り刻んで逃れた。

 

「J・ガイル!」

 

「なにぃ!?」

 カウボーイの格好の男が突然のポルナレフの登場に驚いていた。

「なーんだ、予定が狂ったかと思ってちっとばかし、心配したぜ。だがまあ、予定調和か?」

「てめぇじゃねぇ! そっちの…、っ! どこだ、どこに行きやがった!?」

「さあね? けど、近くにはいるぜ?」

「なにぃ、どこだ!」

「それこそ必要ないぜ。このホル・ホースがあんさんを始末するからな。」

 ホル・ホースという男が、手から拳銃型のスタンドを出した。

「この皇帝のカードを持つ、エンペラーがな!」

 そして銃口を、ポルナレフに向け、撃った。

「シルバー・チャリオッツ!」

 しかし、弾丸は、シルバー・チャリオッツの剣で弾こうとした瞬間にあり得ない方向に軌道を変え、ポルナレフの真横を狙った。

「ダメ!」

「あっ!」

「なっ!?」

 飛び出してきたミナミがポルナレフを庇い、エンペラーの銃弾がオートで出てきたブルー・ブルー・ローズの根っこをも貫いて、ミナミの右耳を抉った。

「っっ…。」

「ば、馬鹿野郎! なにしてんだ!」

「ああ…なんてこった…。女を傷つけちまった…。しかも、ターゲットの東方ミナミじゃねぇかよ!」

「耳ぐらいでガタガタ言わないで…。スタンドから放たれた銃弾なんだから…、弾だってスタンドでしょ? 頭に血が上りすぎなんだよ。」

「そういうことじゃねぇよ!」

「ポルナレフ! スタンドの銃弾が戻ってくるぞ! マジシャンズ・レッド!!」

「アヴドゥル!?」

 その瞬間だった。

 水たまりに反射するアヴドゥルの背中に映像に映り込む包帯男のようなスタンドが手首の刃を、アヴドゥルの背中に突き刺していた。

「ぅ…。」

「銃弾が…!」

 戻ってきた銃弾が、背中を傷つけられてよろめいたアヴドゥルの額を抉った。

「あっ…。」

 っという間に、アヴドゥルが額から大量の血を流して倒れた。

「へ…ヘヘ、ハハハハ、こいつはラッキーだ。俺のエンペラーとJ・ガイルの鏡は、アヴドゥルの炎が苦手でよぉ。一番の強敵はアヴドゥルと思ってたから…ラッキー!」

 

 

 うぅぅぅぅううううおおおぉぉぉぉおおおぉぉ

 

 

「はへ? なんか、今…?」

「……好きに…。」

「!? 帽子から! うおお!?」

 ホル・ホースの帽子から、ブルー・ブルー・ローズが生えて、顔を傷つけた。傷つけた傷口から青いバラの花が咲いて落ちる。

「姉ちゃん、ダメだ!!」

「ハッ!」

 『好きにしろ』と言いかけた、ミナミを仗助が正気付かせた。

「危ねー、俺の寿命!」

 慌てて自身の寿命である青いバラの花を拾い上げたホル・ホースに、青いバラの花がパッと消えて戻った。

「……アヴドゥルさん…。仗助…。」

「…ごめん。」

 仗助は、アヴドゥルの傍で項垂れた。

「失った命までは、クレイジー・ダイヤモンドじゃ戻せないとは聞いていたが…。」

 合流した花京院が、傷を癒したが目を覚まさないアヴドゥルの首に触れて脈を診て、首を振った。

「まっ、人生の終わりってのは、大抵の場合は、あっけない幕切れだ。さよならの一言もなく、死んでいくのが普通なんだろーねぇー。ヒヒ…。」

「……じゃあ、あなたは、肥やしになって、その命を他の人にあげる?」

「ハッ!? うわわ、ま、ままままま、待てって!」

 ホル・ホースは、気がつくと自分の周りにブルー・ブルー・ローズの根っこに包囲されていたことに気づいて焦った。

「ポルナレフ! 今のうちに下がれ! 相手の挑発に乗るな! まだ分からないのですか? アヴドゥルさんは、言った。ひとりで戦うのは危険だと。しかし、あなたは…。」

「俺に…どうしろって言うのだ…? アヴドゥルは、背中を卑劣にも刺されて…、妹は無抵抗に殺された…! この無念を抑えろと!?」

「だいじょうぶ…。だいじょうぶだよ。ポルナレフさん…。」

「ミナミ?」

「このカルカッタにいる限り…、逃げ場なんて…。」

「た、頼む! このスタンドを引っ込めてくれよーーー! 耳をやっちまったことは謝るからよぉおおお!!」

「謝るなら、地獄で、アヴドゥルさんに懺悔して。……J・ガイルもね。」

 

「ヒィイイ!」

 

「J・ガイルの旦那!?」

 右手の左手に、地面から生えてきたブルー・ブルー・ローズに絡みつかれて、人混みから引っ張り出されたJ・ガイルが、ポイッと放り出された。

「なにやってんだ! 作戦が台無しだぜ!?」

「くっそ…うっとうしい、根っこだ!! 鏡の中まで…。」

「へ? えっ、あっ!? ハングドマンが!」

 見ると、市場に置かれていた鏡に映る、ハングドマン(吊られた男)というスタンドが、ブルー・ブルー・ローズに雁字搦めにされていた。

「ひとつ、教えてあげる。私のスタンド、ブルー・ブルー・ローズは、どんな無機物でも触媒に出来るらしいの。例え…、鏡の中だろうとね。私がこのカルカッタにいる限り、あなた達に、逃げ場なんてなかったんだよ!!」

「こ、この、アマぁ…!! てめぇ、スタンドを制御できないんじゃなかったのかよ!?」

「違う…、私は、“ワタシ”……。ブルー・ブルー・ローズは、ワタシであり、私じゃない。」

「ようは、勝手に動く意志を持ったスタンドってことだ! 今っすよ! ポルナレフさん!」

「おお!!」

「ち、ちくしょう! ホル・ホース、デタラメでも良い、撃て撃て!」

「そ、そうは言っても…、俺の弾丸は、単発式で…。ギャーーー! 俺の腕に根っこが!」

「早くしろーーー!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 次の瞬間、駆け出したポルナレフのために道を開けるように、ホル・ホースとJ・ガイルを包囲していたブルー・ブルー・ローズがどいた。

「我が妹…そして、我が友…、アヴドゥルの無念を晴らすため! 針串刺しの刑だ!!」

「ヒエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」

 あっという間に、全身穴だらけになったJ・ガイルが吹っ飛び、近くの建物の壁に逆さまの状態で引っかかった。

「これがホントの、『吊られた男(ハングドマン)』か。あとは、閻魔様に任せた…ぜ…。」

「ぽ、ポルナレフさん…。」

 そこで、ポルナレフは、仇を討ったことで、すべての緊張の糸が切れたのか、意識を失った。

「……まだ、やる気?」

 倒れていったポルナレフを支えたミナミがホル・ホースをジトッと見ると、ホル・ホースは、ヒッと短く悲鳴を漏らした。

 やがて、ブルー・ブルー・ローズが消えた。

「お、俺は、ナンバー1より、ナンバー2! 俺の哲学だぜ!」

「そう…、じゃあ、さっさとどっか行って…。」

「あ、ああ!」

 ホル・ホースは、背中を向けてすごい逃げ足で逃げていった。

「姉ちゃん! 耳!」

「だいじょうぶ…。それより、今のうちに…。」

「なんだ…気づいてたのか…。」

 花京院が“気絶”しているアヴドゥルを支えながら、立ち上がった。

 やがて、承太郎とジョセフも合流し、ポルナレフの意識がないうちに、素早く打ち合わせをした。

 

 エジプトへの旅路のための乗り物を手配するため、アヴドゥルには死んで貰った状態でいてもらい、別行動してもらうためだ。

 

「すまないな。旅の無事を祈る。」

「そっちこそな。」

 そうして、アヴドゥルは、SPW財団の人間と共に別行動を開始し、意識を取り戻したポルナレフには、簡素ではあるがアヴドゥルを埋葬したと言っておいた。

「……そうか。」

「張り詰めていた糸が切れちゃったんだね?」

「ああ…、そうみたいだ。びっくりするほど、力が入らねぇ…。この日のために…、この日のために全てを費やしてきたんだ…!」

「……お疲れ様。」

「…ありがとよ。」

「仇を討ったわけだが…、ポルナレフ。君はこれからどうする?」

「……旅に連れてってください! 勝手なこと言って抜けたことは謝りますんで。ここまで来たら、最後まで付き合う。」

「そうか。ありがとう!」

「じゃあ、旅の続きの始まりだ! いいか! DIOを倒すにはよ、みんなの心をひとつにするんだぜ? ひとりでも勝手なことをするとよ、奴らはそこにつけ込んでくるからよ!」

「…メッチャ、ブーメラン。」

「うぐ…、言うなよぉ…。」

「締まらないなぁ…。」

 花京院がヤレヤレと、ため息を吐いた。

 

 

 




ホル・ホースのエンペラーの弾が単発式というのは、捏造です。もしかしたらもっと撃てるのかもしれないけど、誘導弾ですからね…?

なお、人混みの往来でバトルしたけど、ブルー・ブルー・ローズを見て、みんな逃げてるので、警察沙汰にはなってません。ブルー・ブルー・ローズの存在を人に言っても信じないでしょうしね。

アヴドゥルを原作ルートに連れて行くのも考えましたが、それだと、潜水艦をどうするかってなって、結局原作通り一時的に抜けてもらいました。
7人目のスタンド使いみたいに、潜水艦ルートっていって、アヴドゥルの代わりを務めるルートも考えました。
けど、原作を抜けると、完全にオリジナル展開しかないので、他のスタンド使いとの戦いも考慮して、アヴドゥルに抜けてもらいました。


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女帝の暗示

女帝のカード編。


オリジナル展開。


ジョセフじゃなく、ポルナレフにつきます。


けど…?


短め。


 

 ミナミと仗助は、ちょっと呆れてた。

 っと、いうのも…。

「あのね、こーーーなっちゃーーーいけねーーぜ! 恋をするとなりやすいんだ。ええーと、名前は?」

「……ネーナ…。」

「ネーナ。君はこれから通る聖地ベナレスの良家の娘なんだろ?」

「………はあ。」

「ホント、頭と下半身が別れてるような人っすね。」

 カルカッタから、バスで移動中に美女をナンパをするポルナレフに、二人は呆れ返っていた。

 まあ、確かに美人ではある。

 しかし…。

「女好きタイプは苦手だな…。」

「何かあったのかい?」

「いや…、ちょくちょく、というか、ねちっこくナンパされたことがあって、ナンパしてくる人は苦手で…。」

「ま、その見た目じゃイヤでも男が寄ってくるだろ?」

「はい…。」

「ミナミ。そういう手合いに出会ったらすぐに言いなさい。お父さんがこらしめてやるからのう。」

 ジョセフの目はマジだ。

 

 やがて、ホテルに着いたのだが、ポルナレフは、ネーナと共に外出。

 しばらくして、家に送ってきたと言って帰ってきた。

「あれ? ポルナレフさん、背中…。」

「ん?」

「なんかでき物ができてますよ? 虫にでも刺されました?」

「マジかよ~。インドにゃ確かに変な虫が多いけどよ~。」

 

 チュミミ~ン

 

「!」

「ん? なんか言ったか。」

「いや。」

 花京院が返事をしたが、ミナミと仗助は顔を見合わせた。

「今の聞いた?」

「ああ…。」

 ヒソヒソと小声で話し合う。

「ポルナレフさんから目を離さないようにしよう。」

「だな。」

「けど、念のため…。」

「おう。クレイジー・ダイヤモンド。」

 ポルナレフの背中のでき物に向かって、仗助がクレイジー・ダイヤモンドの拳を向けた。

 こっそりと、指で摘まもうとしたとき、その瞬間、ガブッと噛まれた。でき物に。

「!」

「あっ? どうした? スタンドなんて出して…。」

「ポルナレフさん! ちょっと、こっちに!」

「えっ? はっ?」

 二人はポルナレフの腕を掴んで、ホテルの部屋に連行した。

「? どうしたんだよ?」

「さっき、背中のでき物に噛まれたっす。」

「はあ?」

「たぶん、スタンドです。そのでき物…、シンガポールで出会った、アイツ…節制のカードの奴と似ているかも。たぶん、物質同化型で、今ポルナレフさんの肉を触媒にして成長してる最中だ。」

「へっ?」

「なんかされた記憶ってあります?」

「い、いや…別に…。まあ、ネーナを送ったときに、背中に抱きつかれたくらいか? …えっ?」

「…あー、そういうことか。」

「スタンドの本体は、ソイツっすね。」

「ま、待てよ! ネーナがスタンド使い!? なんか証拠が…?」

「花京院さんに化けた節制のカードの奴は、肉を食えば食うほど成長する実体のあるスタンドでした。もし似たようなタイプなら……、それに、それしか心当たりがないのなら…。」

「なあ、ポルナレフさん…、そのネーナって人の家って本当にその人の家なんすか?」

「えっと…、門の前で別れたから…。ま、さか…。」

「騙された可能性は十分っすね。」

 

『チュミミ~ン。ケッ、察しの良いガキ共だなぁ!』

 

「! この声…。」

「俺の背中から…!」

「てめぇ!」

『まあまあ、待ちなさいな。あたいは、今ポルナレフの肺の上に張り付いてやってんだよ~ん? このまま肺に穴を空けられたら、どうなる? シューシュー空気が抜けたタイヤみたいにしぼんじゃうよん!』

「さっきより、大きくなってる!」

『さあさ! そっちのジョースターの娘っこ! 今から指定する場所に行きな! DIO様が迎えを用意しているから!』

「誰が従うかよ!」

『お前にゃ言ってないよん。欲しがられてるのは、そっちのお前のお姉ちゃんだけさ。お前は用無しさ、ハンバーグ頭くん!』

「あっ。」

『?』

「ってめぇ…、今、俺の頭がなんだって?」

「ま、待って仗助!」

「ドラアアアアアアアアアアアア!!」

『ゲゲ!? おま…。』

 仗助が次の瞬間、ミナミとポルナレフが止めるよりも早く、クレイジー・ダイヤモンドの拳をスタープラチナ以上のスピードで繰り出し、ポルナレフの胸を貫いて背中のスタンドを殴り飛ばした。

『ゴガアアアアアアア!?』

 ブチブチっとポルナレフの背中に侵食していたスタンドが剥がれ、クレイジー・ダイヤモンドの拳が抜けると、ポルナレフの胸に空いた穴は消え、剥がされたスタンドは、壁に叩き付けられた。

「はあハア! びっくりした!!」

「すみません! ポルナレフさん!」

 

「ゴゲアアアア…!!」

 

「! 今のは…。」

「今の声…ネーナか?」

 慌てて部屋から出ると、ネーナがいて、ネーナの腹から醜い女が飛び出してきてそのまま崩れ落ちるように倒れた。

「はは~ん? こうやって美女の皮を被って近寄ったんだね。キスじゃ無くてよかったですね。」

「うえええええ…。」

 腐ったような体液の匂いと大量の血にまみれたネーナ本体を見て、ポルナレフは吐き気を催した。

 

 

 

 女帝(エンプレス)。名を名乗る暇もなく、仗助の逆鱗に触れ、再起不能……。

 

 

 

 




腹パンで後遺症無く中身を取り除けるようなスタンドですから、胸パンでもいけるんじゃないかなって思って…?
女帝、うっかり仗助の逆鱗に触れ、一撃で負ける。名を名乗る暇も無く。

色々考えたけど、まあ、こういう展開もアリかなって思って。


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運命の暗示

勢い大事。


今回は、ホイール・オブ・フォーチュン戦。


アクション性の高い文を目指してみた。


原作とは展開が違います。一部、7人目のスタンド使いも参照。


 

 インドで、大型のランドクルーザーを買い、少し険しい整備されていない道を進む。

 運転手は、ポルナレフ。

 ガタガタ道に、早くも…。

「ぅ、っ、ぷ…。」

「吐きそう?」

「だ、だいじょうぶです…。」

「軟弱な伯母だぜ。」

「仕方ねぇっすよ、姉ちゃん昔っから車酔い酷いっすから。」

「ほれ、エチケット袋じゃ。吐きたかったらすぐ言いなさい。」

「ごめんなさい…。」

 ミナミは、しょんぼりした。

 車を走らせながら、インドをこれから離れると思い、インドについての感想をつい口にしていた。

 そんな中、ポルナレフは…。

「俺は、もう一度インドへ戻ってくるぜ。……アヴドゥルの墓をきちっと作りにな。」

 

 ホントは……、生きてます。とは、絶対に言えない。

 

 そんな空気だったが、ポルナレフには、アヴドゥルを黙祷する空気だと思ったらしい。

 そんな重たい空気の中、やがて、前方にちょっとボロッとした古い車が走っているところまで来た。

 ここから山道も狭くなるのでっということで、ポルナレフが荒っぽい運転で強引に車の前に出た。その際に、小石が飛び、ボロ車に当たった。

 それについてトラブルを避けろとジョセフが咎めた。

 そうしてさらに道を進んでいくと……。

「うおおおおーーー!」

 急ブレーキ。

「いたたたた…。」

「どうした、ポルナレフ!?」

「事故は困るんじゃぞ!」

「ち、違うぜ…。み、…見ろよ! あそこに立ってやがる! し…信じられねぇ!」

「えっ? あっ…。」

「やれやれだぜ…。」

 外を見ると、そこには、あの密航者だった少女が帽子で髪の毛を隠した状態でヒッチハイクするように親指を立てて立っていた。

 どうやら向こうもこちらに気づいたらしく、笑顔になって帽子を外した。

「よっ! また会っちゃったね! 乗っけってってくれよーーー!」

「あっ…、シンガポールで別れたはずの…。」

「こりゃ、勝手に乗るな! 定員オーバーじゃぞ!」

「ミナミー、膝に乗せてくれよ。うわ、おっぱいデカいから狭っ。」

「狭い狭い狭い!」

「お前! シンガポールでお父さんに会うんじゃなかったのかよぉ!?」

「違うよ~ん。あたしゃただの家出少女よ。」

「ダメじゃ! 降りなさい!」

「しかし、よくひとりで…。なんて生活力のある子だ…。」

「ただのかっぱらいだぜ。きっと。スタンド使いじゃないだろうな? かっぱらいのスタンドかよ?」

「お願いだよぉ~。連れてってくれよぉ~~。」

「ダメじゃ、ダメじゃダメじゃ!」

「だから、狭いって!」

「やかましい! うっとおしいぜ、お前ら!」

 承太郎の怒声に、シーンとなった。

「国境までだ。そこで飛行機代渡して、その子の国まで乗せていけばいいだろう。香港だったか。」

 っというわけで、ただでさえ狭い車の中にこの家出少女を乗せていくことになったのだった。

 

 

 車は、インドの国境に向けて走り続ける。

 その間、女の子はぺちゃくちゃ喋る喋る。

「だって、あたし女の子よ? もう少したてばブラジャーだってするしさ。男の子のために爪だって磨いてるしさ、そんな年頃になって世界を放浪するなんて、みっともないでしょう? 今しか! 家でして世界中を見て回るのは!」

「……狭い。息苦しい…。」

「姉ちゃん、吐きそう?」

「なーんだよ、ミナミぃ、見かけによらず車酔いかよ? おっぱいでかいのによえぇわねぇ。」

「誰のせいで悪化してると思ってんだよ、こら!」

「ほら、袋なんて面倒だから、窓開けてゲーーって吐いちゃいなって。」

「……まだ、だいじょうぶ…。っう…。」

「ミナミ、寝とけばだいぶマシじゃから、寝ときなさい。」

「時差ボケが…、ここで功を奏した…。」

 やがてミナミは、青い顔で眠った。

「寝ゲロしなきゃいいがな…。ん?」

 するとポルナレフがミラーに映った車の存在に気づいた。

 その車は、あのボロ車だった。

 狭い山道で、スピードを上げてくるため、自然とこちらもスピードを上げざる終えなくなる。

「ポルナレフ、急いでおるようじゃから、片側によってやれ。」

「ああ…。」

 そう言ってポルナレフは、窓を開け、前へ行けと指で示した。

 そして、後ろのボロ車が前へ出る。だが……。

 片側を走り抜けたボロ車が、こちらの前へ回ってきて、トロトロとスピードを落としてきた。

「おいおい。どういうつもりだ? またトロトロ走り始めたぜ?」

「ポルナレフ。さっき君が荒っぽい運転やったから、怒ったんじゃないですか?」

「……運転してる奴の顔は見たか?」

「いや、窓が埃まみれで見えなかったぜ。」

 

『ギャヒィ!?』

 

「!」

 すると突如、ランドクルーザーのラジオから男の悲鳴が聞こえ、直後、前をトロトロ走っていた車が横へと逸れていき、山道の岩へぶつかった。

 そして、ランドクルーザーが通り過ぎる直後、窓を突き破って、ブルー・ブルー・ローズの鮮血色の根っこが飛び出してきた。

「うっ! ミナミのスタンドが!」

「さっきの聞いたっすか!? ラジオから男の悲鳴みたいな声が聞こえたっす!」

「ラジオは、オフになってる…。まさか、スタンド使いだった…のか?」

「…う~ん……。」

「…うなされてるな。完全に無意識じゃな。」

「どうする? 一応確認しておくか? 追っ手だったのかどうか。」

「いや…、放っておこうぜ。あの様子じゃ、もう追ってこれ…、っ!?」

 すると、岩壁にめり込んでいた車が高速で抜け、そしてギュルンッと向きを変えて、すごい速度でこちらを追ってきた。

「ば、馬鹿な!? 無傷だと!?」

「やはり、追っ手か。船の次は、車のスタンドか…。」

「お、追って来るよ!」

「うるせぇ! 分かってる!」

 

『よ~くもやってくれたな~!! てめぇら、全員ぶち殺すぜ~~!!』

 

 ラジオから男の声が勝手に流れてきた。

『この…、運命の暗示…、ホイール・オブ・フォーチュンがな!!』

「見ろ! 車が変形するぞ!」

 ボロ車だった車がメチャクチャに変形し、まるで怪物のようになった。

「スピード上げろ! ポルナレフ! もう真後ろだ!」

「ちくしょう! この狭っ苦しい山道でスピード勝負かよ!」

『ギャハハハハ! 喰らえ!!』

 一瞬光ったホイール・オブ・フォーチュンが何かを放ってきたため、後ろの窓ガラスが割れた。

「や、やべぇ! 完全にアイツの独断場っすよ!」

『ほ~らほら、前見ろ、前。』

「っ! が、崖!? まずい!」

 山道の途中がガードレールもない崖に面した曲がり角にさしかかり、ポルナレフは必死のハンドルさばきで曲がろうとしたが、片輪が落ちた。そこへ、ホイール・オブ・フォーチュンが体当たりをかけてきた。

「しまっ…!」

「キャアアアアア!!」

 そしてランドクルーザーが全員を乗せた状態で突き落とされた。

「ハイエロファントグリーン!!」

「待て、花京院! お前のハイエロファントグリーンでは、車の重みには…。」

「いいえ、ジョースターさん。僕はそれぐらい分かってますよ。」

 

 ガチンッ

 

「おお! ワイヤーウィンチか!」

『ゲゲっ!?』

「フン! 花京院、やるな。ところで、お前。相撲は好きか?」

 すると承太郎が、ワイヤーウィンチを掴み、思いっきり引っ張った。踏ん張っているホイール・オブ・フォーチュンのパワーが勝り、そしてスタープラチナのパワーにより、ランドクルーザーが持ち上がる。

 そして。

「特に土俵際の駆け引きは……、手に汗握るよなぁ!!」

 スタープラチナは、ランドクルーザーが上がると同時に、入れ替えるようにホイール・オブ・フォーチュンを殴り飛ばし、逆に崖へと落とした。ついでにワイヤーウィンチも外しておく。でないと一緒に落ちてしまうからだ。

『ギャオオオ!?』

「ええ、相撲、大好きですよ。だけど、承太郎。相撲じゃあ拳で殴るのは反則ですね。」

「ふっ。」

「う~~ん…。」

「……ミナミ、よく寝られるな。こんな状況だってのに…。」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ

 

「なんか? 音がしませんか?」

「地鳴り?」

「ま、まさか…。」

「ぜ、全員…! 車から降りろーーー!!」

「仗助! ミナミを引っ張り出せ!」

「はいっす!」

 他の者達が飛び出て、仗助が寝ているミナミを引っ張りだした直後、全員が乗っていたランドクルーザーが下から地面と岩を掘ってきたホイール・オブ・フォーチュンによって、飛ばされた。

『ば~か~め~! 勝った気でいるんじゃえねぇよ!! な~にが、相撲だ、こらぁ!!』

「やれやれ…、土俵外から這い上がってくるのも反則だぜ。」

『喰らえや!!』

 するとホイール・オブ・フォーチュンが、また光って何かを発射した。

「ガフッ!」

「承太郎さん!」

「な、なんだ、さっきもやられたが、見えねぇ…。何を発射しやがった?」

「また来るぞ!」

 再び光ったホイール・オブ・フォーチュンの攻撃から、ジョセフ達が承太郎を庇い、攻撃を受けた。

「ジョセフさん! 花京院さん! ポルナレフさん!」

 仗助は、寝ている…というより、意識がないミナミを守るので手一杯だった。

「ぐっ…、浅いが、抉れてるぜ…。」

「針とかガラスとかじゃない…。何を飛ばしたんだ?」

「ん……。」

「…姉ちゃん?」

「うぅうう…!」

 ミナミが目をつむった状態で酷くうなされ出す。

 その時。

『ギャアアアア!? ま、またぁ!?』

 ホイール・オブ・フォーチュンの両窓から、ブルー・ブルー・ローズの根っこが突き破って出てきた。おそらく中は、根っこで覆われているだろう。

 窓からポロポロと、青いバラの花がこぼれるように落ちていく。

「てめぇの寿命が全部食い尽くされるか、俺達を潰すか、どっちが早えかな?」

『ち、ちくしょおおおおおおおおおおお!! せ、…せめて、道連れにしてやるぜ!! 電気系統のスパーク!!』

「はっ! まさか…。」

「が、ガソリンか!」

『燃えちまえ!!』

「グレート…。種が分かれば、簡単だぜぇ!! クレイジー・ダイヤモンド!!」

 火がついた直後、仗助がクレイジー・ダイヤモンドを使った。

 その瞬間、承太郎達の体に着火していたガソリンがすべて、ホイール・オブ・フォーチュンに戻っていく。火を付けた状態で……。

「ガソリンってのは、どこに戻るか分かってるよなぁ? 車のスタンドなんだしよぉ?」

『なっ! あぁ!! し、しまっ…、ギャアアアアアアアアアアア!!』

 ガソリンタンクに火のついたガソリンが入り込み、ホイール・オブ・フォーチュンは、爆発した。

 ブスブスと燃えていく、ホイール・オブ・フォーチュンが、徐々に形を変え、火が消える。

 そして、腕ばかりがモリモリに盛り上がったへんてこりんな男が転がり出てきた。そして、車の方は、小さめの車になってしまった。

 スケールこそ違うが、こちらも物質同化型のスタンドで、力の暗示のスタンド使いだったオラウータンと同じタイプだったらしい。

「ひ、ヒィイイ…!! た、助けて…、降参だぁ! 俺は金で雇われただけんだよぉ~~!!」

「どうするんじゃ?」

「決まってるだろ?」

 

 そして……。

 

「ウグググ!?」

 

「えーと、なになに? 『私は修行僧です。神聖なる荒行を邪魔しないでください。』?」

 やっとこさ起きたミナミが岩に仰向けで縛り付けられた、猿ぐつわまでされたホイール・オブ・フォーチュンの本体の前に作られた看板を読む。

「ま、もうコイツが襲ってくることはないだろうが…念のためパスポートをいたいておけば、しばらくはインドから出ることは出来まい。」

「うひゃ~…、容赦ねぇ~…。おっかねぇ~。」

 仗助は、承太郎達の容赦のなさに戦慄した。

「エウフ(HELP)! エウフ(HELP)!!」

「…ごめんなさいね。」

 ミナミは、哀れみの目を、助けを求めているホイール・オブ・フォーチュンの本体に向けた。

「ところで、それと、おめーは、飛行機で香港に帰すからな。」

「ええ! やだやだ! 一緒に行きた~~い!」

 家出少女は、駄々をこねた。

「やかましい! 足手纏いになってるのが分からないのかぁ! 飛行機代めぐんでもらえるだけありがたく思えよ!!」

「まったく…、あんな目に遭ったってのに、しつこいな…。」

「逆にあんな体験したからこそ、子供の冒険心に火がついちゃったんじゃない?」

「じゃあ、ミナミはいいのかよ~!」

「ミナミは、おめーと違って強ぇんだよ。」

「そうそう、俺らの故郷の町じゃ、同年代から喧嘩王って呼ばれてんだぜ! イデッ!?」

「余計なこと言わない。」

「……な、納得…。」

 

 っという、わけで、国境の飛行機場まで元ホイール・オブ・フォーチュンだった車を走らせ、女の子を無理矢理飛行機に乗せて香港に帰しておいた。

 

 

 

 

 




カーアクション的な戦いを書きたかった。

けど難しいですね…。ジョジョのアクションを文章にするのは……。

それにしても原作読み返せば読み返すほど、承太郎達の敵への容赦のなさが分かる……。


なお、ミナミは、起きなかったんじゃなく、起きれなかったんです。ブルー・ブルー・ローズに意識を少し浸食されて。


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正義の暗示 その1

正義のカード編。


嘔吐表現有り。注意。


 

 国境で再びランドクルーザーを買い、舗装されていない道をずっと進む。

「うっぷ…。」

「はい、姉ちゃん、エチケット袋。吐きたかったら言えよ。」

「霧が濃くなってきたな。気をつけて運転してくれよ、ポルナレフ。」

 

 

 イ ク ナ

 

 

「っ…。」

「無理して我慢すんなよ?」

「違う……。」

「なんかやべぇのか?」

「どうしてだい?」

「……姉ちゃん…、時々、ブルー・ブルー・ローズから幻聴みたいな声を聞くって…。」

「げんちょう?」

「たぶん…、警告だと思う。あのオラウータンのタンカーの時だって、イクナ…って言われたし。」

「けどよぉ、敵が待ってるとしても、この先に進むっきゃないんだぜ?」

 

 

 イ ク ナ  イ ク ナ  イ ク ナ  イクナ イクナ イクナ イクナ イクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナイクナ

 

 

「あああああああああああああ!!」

「姉ちゃん!」

「オラァ!」

「うぐっ!」

「承太郎さん!?」

「とりあえず気絶させとく。やかましいからな。」

「だからって!」

「敵が来たらぶっ飛ばせばいい。それだけだ。」

「だが、しかし…、ミナミがあそこまで取り乱すほどの警告を発するほどの敵がいるということは間違いないじゃろう…。用心に超したことはないが…。」

 

 

『イクナ…。』

 

 

「はっ?」

『イクナアアアアアアアア!!』

 気絶していたミナミが突如目を覚まし、運転しているポルナレフに後ろから掴みかかった。

「うわわわ!? ちょっ、離せ!」

「ミナミ!?」

「姉ちゃん…じゃねぇ…、ブルー・ブルー・ローズか!?」

「取り押さえろ!」

「は、はい!」

 ブルー・ブルー・ローズに意識を持って行かれたミナミを、スタープラチナと、クレイジー・ダイヤモンドと、ハイエロファントグリーンが三人がかりで押さえつけた。

「ゲホゲホ! あっぶねぇ…。」

 首を絞められたためポルナレフは、首をさすって必死に息をした。

『……キリ……。』

「あっ? なんだって?」

『霧が……。生キテ…イル…。』

「霧? 生きている?」

『……。』

 そしてミナミを乗っ取っていたブルー・ブルー・ローズは、目を閉じた。

「……霧に注意しろってことか。」

「もしくは…、霧を操るスタンド…って可能性もあるかもっすね?」

「……いずれにしても、用心しましょう。」

 ランドクルーザーは、霧がどんどん深くなる道を進んでいった。

 そして、地図上にない町にたどり着く。

 人の往来はあるが、酷く、不自然に静かで、そして霧が深かった。

「不気味っすね…。」

「うむ…、じゃが、なかなか綺麗な町じゃないか。ミナミのこともあるし、早めにホテルを探そう。」

「なんつーか。霧が不気味っすね。」

「ああ…。」

 仗助と承太郎は、霧を警戒していた。

 ジョセフが、近くのレストランの人間にホテルの場所を聞こうとすると、無表情の相手は突然オープンの看板を、クローズに変えて奥に去ってしまった。

「な、なんじゃ?」

「あんたの発音が悪かったんじゃねぇっすか? あそこにいる人に聞こうぜ。」

 そう言ってポルナレフが、近くの柱に腰掛けている男に話しかけた。

 ところが……。

 

 男は壮絶な顔で死んでいた。

 

 しかも口からゴキブリや、トカゲが這い出てきた。

「うげげ! なんじゃこりゃあ!?」

「見ろ…。拳銃を握っている…。」

 拳銃の銃口からは、わずかに煙が出ていた。つまりつい短時間の間に発砲したという証拠である。

 出血した箇所はないし、直接の死因になりそうな怪我もない。だが、顔はあまりの恐怖で歪みきっている。

 だが…それに負けず不気味なのは、この町であった。

 こんな往来で人が死んでいるというのに、誰も興味を示していないのだ。

 花京院が人が死んでいるから警察を呼んでくれと近くにいる人に頼むも、気味の悪いでき物だらけの女は、顔をポリポリと掻きながら、とぼけたように…(?)仕方なしな様子で警察を呼びに行った。

「どうする? じじい。なぜ、死んでいるのか…、死因をハッキリ知りたいぜ。まさか新手のスタンド使いじゃあねーだろーな。」

「ううむ…、考えられん…。動機がない。追っ手が無関係な男を、わしらが来るよりも早く殺す理由はなんじゃ? 殺したならいったいなぜじゃ?」

「警察が来る前に、なるべく触らないように調べれるだけ調べようぜ。万が一ってこともある。」

「マジっすか?」

「お前は触るな。下手に傷が治っちまうと分からなくなるからよぉ。」

「常時、力を出してるわけじゃないっすよ。それよりか…。」

「なんだ?」

「霧が…、ドクロみたいな形になってないっすか?」

 そう言って仗助は、空を指差した。

 全員が空を見上げる。たしかに、ぼんやりとだが、ドクロのように見えなくもない。

「き…気のせいじゃねぇか? ミナミの警告があったからって、気にしすぎだぜ。」

「う…ぅうう…。」

「ミナミ?」

「…う…、ハッ! う、ゲエエエエ!!」

「姉ちゃん。」

 ハッと目を覚ました、ミナミが盛大にその場で吐いた。

 仗助は慌てて、ミナミの背中を摩った。

「姉ちゃん…、吐くだけ吐いちまおうぜ。その方がスッキリする。」

「……も…、大丈夫…。……酷い夢見た…。」

「どんな?」

「霧が…、みんなを殺す夢……、残酷に…。」

「どう…殺された?」

 承太郎が聞いた。

「……あ…、穴だらけになって。」

「……あんな感じか?」

「!?」

 承太郎が示した先には、先ほど見つけた死んでいた男の服を少しはだけさせた状態だった。その服の下は、まるでチーズのように穴だらけでありながら、出血していなかった。

「あ、ああ…、うっ…!」

「ミナミ、見るな!」

 花京院が視界を覆って隠そうとする。

「…ゆ…、夢の通りだ…、あんな感じでした…。」

 ハアハアっと、もう吐ける物も無く、胃液を吐いたミナミが、弱い声で答えた。

「これはもう、追っ手で間違いないじゃろう! みんな車に乗るんじゃ!」

 するとジョセフが、なぜか車と反対の方向、しかも尖った塀のある方へ飛び移ろうとした。

「あ、危ねぇ!」

 間一髪で刺さらずすんだ。

「どうしたんだよ? こんな時についにボケちまったのか?」

「ち、違っ…、どういうことじゃ?」

 どうやら車の幻を見たらしい。

 すると、そこへ、ダボダボの服を引きずりながら、杖をついた老婆が近づいてきた。

「旅の御方…、この霧ですのじゃ。もう町を出るのは危険ですぞ?」

「おお! やっとまともな人間に出会えたぜ!」

「わたしゃ、民宿をやっておりますが…、今夜はよかったら、わたしの宿にお泊まりなさいませんかのぉ? お安くしておきますよって。」

「ぅぅう…。」

「早いとこ休ませた方が良い。それ以上吐けねぇだろ?」

「違う…。」

「はっ?」

「?」

「……も…、無理…。」

「姉ちゃーん!」

 ガクッとミナミが倒れたので、仗助が支えた。

「おやおや! これは大変ですじゃ。早くベッドに連れてって差し上げなければ。」

「ああ…、案内を頼むぜ。」

「では、“ジョースターさん”、こちらへ。」

「……待ちな。婆さん。今、ジョースターって言ったか? なぜ、その名を知っている?」

「! い、いやですのう…、そちらの方が先ほど呼んでいらっしゃいましたぞ?」

「へ? 俺? 呼んだような…、気はするか?」

「言いましたよ~。長年客商売をしておりますと、他人様の名前はパッと覚えてしまうんですからねぇ。確かですよ~~~。」

「おかみさんよ、ところで、左手はどうしたんだい?」

「ああ、これは、火傷ですかのぉ…。うっかり湯をこぼしてしまって、ヒャヒャヒャ…。」

 

 

 ミギ テ

 

 

「? 今何か言いましたかのう?」

「いや?」

 ポルナレフは、キョトンとした。

 花京院は黙っていて、そしてジョセフは、ハテナっという顔をしていた。

 しかし、仗助と承太郎は……。

「……導きか…。」

「………今まで、外したことはないっす…。」

 そう小声で話す目線の先には、老婆がついている長い杖の先端に生えた、ブルー・ブルー・ローズの赤い根っこだった……。

 

 

 

 




バレバレ。

実は、この時点で勝負を付ける展開も考えましたが、伸ばしました。


続けて投稿します。


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正義の暗示 その2

正義のカード編。その2。


その1で、勝負を付ける展開も考えましたが、やめて伸ばしました。


エンヤは、DIOにミナミの能力のことを占いはしたものの…?


 

 

 ミナミを抱えて、老婆の民宿の部屋のベットに寝かせた。

「さてと…。」

「とりあえず、まずは水をもらいに行ってきます。口をゆすぎたいでしょうし。」

 花京院が気を遣って水を貰ってこようと部屋を出ていった。

「くっそ~、ここもフィンガー・ウォッシュかよ~。」

 フィンガー・ウォッシュトイレ。その言葉通り、トイレの後、手で水で洗う方式のトイレである。トイレットペーパーはない。

「ところで、じょ…。」

「待ちな。みんなに言っておくぜ。これから、俺の名前を呼ぶな。」

「はあ? なんでだよ?」

「いいから。」

「できりゃ、俺の名前も呼ばないでくださいっす。」

「分かりました。…僕の下の名前も呼ばないでください。」

 水を持って戻ってきた花京院がそう言った。

 ポルナレフは、変な奴らだぜ…っとハテナマークを頭に飛ばしていた。ジョセフは……、なんとなく何かを察しているようだが言わなかった。

「さてと…、俺はちっとばっかし、外でも散策してくるか。」

「この霧の中で散策しても意味はないですよ?」

「けど、つまんねーんだもん。あー、仕方ねぇ。民宿の中でも見てくるか。ま、ボロだし、珍しいもんもなさそうだけど、ジッとしてるよかマシか。」

「まったく、落ち着きがない。」

 花京院は、ポルナレフの落ち着きの無さに呆れていた。

 仗助は、窓の外を見ていた。

「どうだ?」

「相変わらず、霧がすごいっすけど……。もう…だいじょうぶだと思いますよ?」

 意味深なことを呟く仗助に、承太郎は、そうか…っと短く返事をした。

 そして窓から離れた仗助が承太郎の横を通り過ぎる際に。

「姉ちゃんの体が心配っす。できる限り早く始末をつけるっす。」

 っと、耳打ちした。

「…ああ。」

「どこへ行くんじゃ?」

「トイレっすよ。」

「俺もだ。」

「そうか。」

「ミナミの様子は見ておくから行っておいで。」

「ありがとうございます。」

 そう行って見送ってくれる花京院に、仗助はペコッと頭を下げた。

 そして二人が出て行った後、ジョセフは、先ほどまで仗助が見ていた窓の外を見た。

「う~む。霧が濃いのう…。」

「うなされてますね…。」

 呟くジョセフに、花京院がミナミの様子を見てそう言った。

「う、ううう…!」

「っ!」

 次の瞬間、ブワッとベッドからブルー・ブルー・ローズの根っこが生えてきた。花京院は咄嗟に離れたことで傷つけられずに済んだ。

「なんじゃ!?」

「どうやら…、事が動き出したようですね。」

「なんじゃと!? はっ!」

 ジョセフは、慌てて外を見おろした。

 そこには、町中がブルー・ブルー・ローズの鮮血色の根っこに覆わせている光景だった。

「ま、町一つを飲み込むとは…! 住民が…!」

「いえ…、住民などいなかったのですよ。初めから。」

「はっ? っ!」

「エメラルド・スプラッシュ!」

 次の瞬間、ドアが蹴破られたため、花京院が素早くハイエロファントグリーンからエメラルド・スプラッシュを放ち、入って来た相手を撃破した。

 穴だらけになったのは、グズグズの体をした、この町の住民だった…モノ、否、死体だった。

「死体じゃと!? まさか…この町は…。」

「どうやら、初めから敵の術中だったようですね。あの二人は早々に気づいていたようですが…。本体について。」

「まさか、あの婆さんか!」

「ええ。おそらく節制のカードのスタンド使いが言っていたという、DIOにスタンドを教えた魔女でしょう。」

「いかん! ならば、承太郎達が危ない!」

「あの三人ならだいじょうぶでしょう。僕は気づかないフリしてましたが、案外敵は間抜けみたいですからね。」

「?」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 花京院とジョセフ、そしてミナミがいる部屋で異変が起こる十数分前。

 

 ホル・ホースが民宿に来ていた。

 

 エンヤ…、DIOに仕える、魔女、J・ガイルの母親でもある両手とも右手の特徴を同じく持つ老婆。

 

 そして、正義(ジャスティス)の暗示を持つ、スタンド使い。

 

 ホル・ホースの姿を見たエンヤは泣く。よくぞ来てくれたと。お前は、息子の友達じゃったなと。

 ホル・ホースは、つい社交辞令で友達だったと答えていた。

 だが、エンヤの感情は違った。

 J・ガイルを見殺しにしたと思い込むエンヤは、コンビを組んでいたホル・ホースを憎んでいたのだ。J・ガイルを殺したポルナレフの次に。

 ホル・ホースの腕をはさみで突き刺し、そして自らのスタンド、ジャスティスでもって傷口に大穴を開けた。これが、ジャスティスの能力であり、穴を空けられてしまうと、そこから操られてしまうのだ。

 こうやってエンヤは、町全体を死体を操り、本来は廃墟であるこの場所に幻影を作りだし、承太郎達を誘い込んだのである。

 だが、怒りのあまりに、エンヤは、気づいていなかった。

 すでに、術中に嵌めていたと思っていた事柄が、すでに逆転させられていたことに……。外の、異変に。

 

「おおーーい! 大変だ!」

「ケェえ!? ぽ、ポルナレフ!」

「な、何やってんだよ、婆さん! それにホル・ホースじゃねーか! どうしてここに!?」

「ポルナレフ! 承太郎達を呼べ! この婆さんは…、グヘッ!」

「てめぇは、自分の手でも食ってな!」

「な、なんだよ? 今の…、ってか、それどころじゃ…、町が…、根っこで…。」

 

 エンヤは、侮っていた。そして油断していた。

 たかが16歳の若い娘と。そしてなぜかDIOが欲しがっている能力者であるミナミのスタンド能力の力と、その脅威を。

 

 エンヤの兵隊として用意されていた死体達は、すでにブルー・ブルー・ローズに飲み込まれて動けなくなっていた。

 

「息子を死に追いやった貴様だけは何が何でもぶっ殺すぅううううう!!」

「婆さん…、息子って…まさか…。」

「そうだよぉおおおん! 我が息子J・ガイルを、てめぇになぶり殺しにされた母親だよーー!!」

「うわわ!?」

 エンヤは、その老いからは想像も出来ない身体能力でもってポルナレフを攻撃しようとするので、シルバー・チャリオッツで対応する。

「じょ、ジョースターさん!」

「むだだよ~ん。もう襲い。他の連中に知らせることはできんわい。なぜなら…。」

 

「なぜならって? なに?」

 

「ゲッ!? じょ、仗助!?」

「俺もいるぜ。」

「なにぃぃいいい!? じょ、承太郎!」

 いつの間にか背後にいた二人に、エンヤは驚愕して、素早く飛び、距離を取った。

「いつの間に~~~!?」

「仗助に壁を殴り抜けさせたのさ。」

「ったく、あんな大音立てたってのに気づきもしないなんてよぉ…。」

「グギギギッギ…! なぜじゃ…、なぜわしの兵隊共がこんのじゃぁ!?」

「ああ、死体どもなら…。」

「外で一歩も動けない状態だぜ。姉ちゃんのスタンドでな。」

「な、なに~~~~!?」

 エンヤは、近くの窓から外を見てさらに驚愕した。

 外は、地面も見えないほど鮮血色の植物の根っこに覆い尽くされ、その隙間に死体の兵隊らしき手足が見えないこともない状態だった。

「姉ちゃんのスタンドを占って、DIOに教えたのって、あんただろ? まさかどれくらい力があるのかも知らなかったなんて言わねぇよな?」

「ウギギギギ…。」

 どうやら人を生き返らせられる能力だけしか占っていなかったらしい。

「それでよぉ、なんでこんな早く気づけたのか…。導かれたからさ。姉ちゃんのスタンド(守護霊)に。」

「?」

「腰が曲がっちまって、視線が低くなっちまって、気づいてなかったみたいだな? それともボケか? 杖の先を見な。」

「ヒっ!?」

 エンヤは、やっと手にしていた杖の先端にブルー・ブルー・ローズが生えていることに気づいた。

 だが、エンヤは……。

「おのれぇぇぇぇ! じゃが、正義(ジャスティス)は、必ずかーーーつ!!」

 その強大な精神力を振り絞り、植物と同じぐらいの強度しかないブルー・ブルー・ローズを引きちぎらせて、死体達を民宿の中へ入れた。

「オラオラオラオラ!!」

「ドラララララ!!」

 襲いかかってきた死体達を、二人はそれぞれスタンドを出し、殴って撃破した。だがすぐに死体達は立ち上がる。

「むだだよ~~ん! 霧のスタンドをハッ倒せるか!? 剣で切れるか!? 銃で撃てるか!? キャ~ケケケケケケケ!! てめぇらにも穴を空けて操ってなぶり殺しにしてやるよ~~~!!」」

「ふ~ん? 穴か…。」

「仗助。」

「あいよ!! ドラァ!」

「!?」

 仗助は、クレイジー・ダイヤモンドの力で死体達、そして、ホル・ホースの腕の穴をすべて消し去った。

「あ…あんがとよぉ!」

「なんじゃと~~~!?」

「敵討ちに燃える余りに、周りが見えなかったと見えるぜ。」

「エンペラー!!」

「シルバー・チャリオッツ!」

「スタープラチナ!」

「クレイジー・ダイヤモンド!!」

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 いくら、強力で強大な霧のスタンド、ジャスティスといえども……、霧ゆえに、直接的な攻撃手段が無かった。

 そして、死体達という駒を失ったエンヤは、いくら身体能力が高いといえども、4人のスタンド使いの前では、あまりにも無力だった……。

 エンヤが、倒され、意識を失った頃には、霧も晴れ、ブルー・ブルー・ローズは、消えていた。

 

 




杜王町を覆い尽くせるほどだから、エンヤが作りだした町ぐらいなら簡単です。

果たして、霧と植物とどっちが強いのか?

本体を直接狙ってくることもあるので、無機物のない場所なんて無いでしょうから、軍配は完全にブルー・ブルー・ローズかな?


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恋人の暗示 その1

恋人のカード編。


ターゲットにされたのは、ジョセフではなく……?


 

 

 意識を失い、怪我だけは治療された状態のエンヤの処遇について……。

「この人…、どうするんです?」

「DIOにスタンドを教えたということは、DIOのスタンドの秘密を間違いなく知っておるじゃろう。じゃから、情報を引き出す。」

「拷問すんのか~?」

「いいや。わしの、このハーミットパープルで読み取るんじゃ。テレビがあれば、記憶を映し出せるわい。」

「でも、ここテレビないっすよ。」

「しかし…、まさか荒野のど真ん中に幻の町を作り出すとは…。とてつもない精神力だ。」

 そう、今承太郎達がいる場所は、廃墟というにはあまりにも風化した墓場。唯一、民宿としていた建物だけが辛うじてあるだけの周囲は骨や棺桶、石ころや砂ばかりの場所だった。

「あれ? ホル・ホースは?」

「あっ!」

 っという間に、ホル・ホースが車に乗って猛スピードで去って行ってしまった。

 去り際に。

「ひとつ忠告しておく! その婆さんはすぐに殺しておいた方が良いぜ! さもないと婆さんを通して、DIOの恐ろしさを改めて思い知るぜきっと! じゃあーなー!!」

 と、言い残していった。

 車を奪われた一行は、歩いて移動し、途中で馬車を借りてカラチについた。もちろんエンヤも運んでいる。

 途中で、腹ごしらえということで、ドネル・ケバブを買うのだが、ここでジョセフが不動産王のくせにみみっちく値切りをしていた。

「金に汚いのって、誰に似たんだろうね~?」

「うぐ…。」

「別にカモのは悪じゃないさ。こういうところでは、カモられる方が悪いんだよ。」

「ふ~ん。」

「おい、金に汚いって、おまえどういうことだ、仗助?」

「いえいえ、ちょっと…色々と…。」

「お~い、買ってきたぞ。」

「いくらになったの?」

「500じゃ。もとの値段は、千円じゃ。」

「へ~、やるじゃん。じじい。どうやって値切ったのか今度教えてくれよ。」

「ダメじゃダメじゃ。お前みたいにケツの青いガキにはまだまだできん。」

「あれ? 後から来たお客さん、1個30で買ってるよ?」

「……。」

「ふっ、カモられたな、じじい。」

「笑うな!」

 ジョセフがぷんすか怒り、他のみんなで笑った。

 その時だった。

 エンヤが目を覚ましていた。

 しかし様子がおかしい。

 ガタガタと震え上がり、ダラダラと汗をかいている。

「なぜじゃ…?」

「?」

「なぜ貴様がわしの前に現れる~!? このエンヤがDIO様の秘密を喋るとでも思ったのか!?」

「!?」

 その時、先ほどケバブを買った店の店主が、バッと衣装を取り、スマートな小洒落た感じの男になった。

 すると…。

「あっ…、あ…、アババババアアアアアア!?」

「うわあ!?」

「なんじゃこれは!?」

 エンヤの顔を内側から突き破った触手のような物体がエンヤの顔をグシャグシャにしていった。

「な…にゃぜ…貴様が…わしを…、殺しに来る……!?」

「DIO様は決して何者にも心を許していないということだ。口封じさせていただきます。そして、そこの6人。……お命ちょうだいいたします。」

「ぎぎぎぎぎっぎ!?」

「婆さん! シルバー・チャリオッツ!!」

 シルバー・チャリオッツの剣が触手を切り刻んだ。すると切り刻まれた触手が太陽に当たって消滅した。

「こ、これは、肉の芽か!」

「そんあ…はずが…、DIO様が…わしに、肉の芽を植える…はずが……。」

「ふふふ、私の恋人の暗示…、ラバーズが肉の芽を育てたのですよ。」

「……あぎ…。」

「婆さん! 話すんじゃーーー!! お前さんはDIOに裏切られたんじゃ! DIOのスタンドの秘密を話せ! 話すんじゃ!」

「今、治す!」

「やらせると思ってるのか? おい、フンっ!」

 するとラバーズの本体が突然自分の腕を建物の壁に肘をぶつけた。

「イデェ!」

「仗助!?」

「な、なんだ? 腕が…?」

「ふふふ、戦いはすでに始まっているのですよ。この鋼入り(ステイーリー)のダンとのね。」

「DI…O…さ、ま…は…、わしを…しんらい…し、て……い、る…言えるか。」

 そして大量の血を流し、エンヤは事切れた。

「オウ…GOD!」

 ジョセフは、エンヤのあまりに凄惨な最後に顔を歪めた。

「仗助…お前…。」

「わ、分かんねぇっす…、勝手に腕が痛んで…。すみません!」

「…あの野郎の術中にハマっちまってるんだ…。せめて、直してやれ。」

「はいっす…。」

 仗助は、痛む腕を推して、クレイジー・ダイヤモンドでグチャグチャになっていたエンヤの体だけでも治して綺麗にした。

「やはり、思った通り、そっちのハンバーグ頭くんが一番の脅威と見た。」

「あっ。」

「ああん? てめぇ、俺の頭がなんだって!?」

「待って仗助!! だめぇ!」

「ホレホレ、怒ったかい? 一発殴ってみな。」

 そう言ってダンが前に出てきた。そして射程圏内に入った瞬間、仗助のクレイジー・ダイヤモンドの拳が胴体にめり込んだ。

 すると。

「グハッ!?」

 ダンが飛ぶと同時に、仗助が反対方向、つまり後ろへ吹っ飛んだ。

「な!? なんだとぉ!?」

「うぐぐぐ…、ど、どうなって…。ゲホッ…。」

「仗助! まさか奴のスタンドか!?」

 倒れた仗助以外の面々が周りを見回しスタンドを探した。

「ば、馬鹿か。探しても私のスタンドは見つけられんよ。おい、そこの小僧。駄賃をやるから、そのホウキで私の足を殴れ。」

「??」

「ハッ! まさか!」

 そして、子供がホウキでダンの足のスネを殴った。

 すると、同じ箇所のダメージが仗助に行き、仗助は声を上げた。

「い、いてぇ…。どうなって…、お、同じとこに、痛みが…?」

「ふふふ…、危うくお前は、自分で自分を殺すところだったのさ。直るからと、体を貫いていたら、体に穴が空いていたぞ? 私のスタンドは、体内に入り込むスタンド。さっきエンヤが死ぬ間際に、お前の耳から脳の中に盛り込んだのさ!」

「なに~~~!?」

「スタンドとは、本体と一心同体! スタンドが傷つけば本体も傷つく。だが逆もしかり。この私を少しでも傷つければ、同時に脳内にいる私のスタンドの痛みや苦しみが、仗助! おまえに全て行くことになる! 同じ場所を数倍にしてな! すなわち、貴様らはこの私に指1本触れることはできぬ!」

 さらにっと、ダンは、付け足す。

「しかもラバーズは、肉の芽をもって入った! 脳内で育てているぞ! エンヤのように内面から食い破られて死ぬのだ! 聞くところによると、死ななければいかなる傷も完治できるが、自分の傷は治せないそうだな? ふふふ、これほど私のスタンドと相性が悪い? いや、相性の良い相手もいないな。ハハハハ!」

「そんな!」

 ミナミ達は、戦慄した。

「えい!」

「ぎゃっ!」

「……いつ、2回殴れと言った?」

 ダンは、子供を殴り飛ばした。

「まっ、ハッキリ言って、私のスタンド、ラバーズは、力が弱い。髪の毛1本も動かす力さえない。史上最弱のスタンドさ。だがね……、人間を殺すのに力なんぞいらないのだよ。分かるかね諸君! もし、この私が交通事故に遭ったり、偶然にも野球のボールがぶつかって来たり…、つまずいて転んだりしても、仗助、お前の身には何倍ものダメージとなって降りかかっていくのだ。」

「…ち、ちくしょう……!」

「そして、10分後には、脳を食い破られ、エンヤのようになって死ぬ。」

「よくも!!」

「落ち着け、ミナミ!」

「よくも、仗助に…!!」

「うぐ…。」

「ググググ!」

「待て! 首を締めるな! 仗助にダメージが!」

「ハッ!」

「…ふん。暴力的な女だ。良いところは、胸だけか?」

「くっ…うう!」

 ミナミは、悔しさに俯き唇を噛んだ。

「よくも首を締めてくれたね~? ほら、お返しだ。」

 ダンは、パンッ!とミナミの頬を叩いた。

「姉ちゃん!」

「っ…。」

「てめぇ…。」

「おっと、先ほども言いましたし、見ましたよね? 私に何かあれば、仗助がどうなるかを。」

「…チッ!」

「あまり…なめた態度を取るなよ?」

「ほ~? じゃあ、どうするのかね?」

「…そ、そうじゃ! ここは首都!」

 すると、ジョセフが花京院とポルナレフに耳打ちした。聞いた二人は頷いて、倒れている仗助を立たせようとした。

「仗助、立てるかい?」

「は、はい…。どうするんですか?」

「ジョースターさんに良い考えがあるらしいぜ。」

「承太郎! ミナミ、すまんが、ソイツを仗助に近づけるな! そいつからできるだけ遠くへ離れろ!」

 ジョセフ達は、仗助を支えながら走って行った。

 それを見ていたダンは、なるほど?っと呟いた。

「遠くへ行けばスタンドへの力が消えてしまうと考えてのことか…。だがな、物事というのは、短所が、すなわち長所となる。」

 ダンは、語る。

 自分のスタンドは、力が弱すぎる分、何キロ先までも遠隔操作ができると。

「おい、ミナミ~? 承太郎~? お前達に話しているんだよ! 何すました顔して視線避けてるんだよ、こっちを見ろ!」

「……品が悪いわね。」

「ああ…。まったくだぜ。」

 ミナミは、叩かれた頬を赤くした状態でジロッとダンを睨んだ。

「貴様ら…、仗助が死ぬまでこの私につきまとうつもりか?」

「ダンとか、言ったな? このツケは、必ず払ってもらう。」

「ククク…。そういうつもりでつきまとうなら、もっと借りとくとするか…。」

 そう言ってダンは、承太郎のポケットからサイフを取り出した。

「これしか持ってないのか? 時計は、生意気にタグホイヤーだがな。借りとくぜ。」

「………ひとつ、忠告しておくね。」

「なんだ? ミナミちゃん。」

「仗助が死んじゃったら……、あなた…、地獄より怖いことになるよ?」

「ほう? どんなだね?」

「せいぜい、死ナサナイ…ヨウニ…スル事、ダネ…。」

「!?」

「なあ、寿命を奪うってのは、スタンドにも影響するのか?」

「さあ?」

「ま、待ちなさい! もしこれで死ねば、仗助も巻き添えで死ぬかも知れないんだぞ!? お前は実の弟をその手で殺すのか?」

「っ…、まあいいや、もう一つ。私の得意技は、プロレス技だから。」

 ミナミは、バキボキっと拳を鳴らした。

「終わったら、覚悟しててね?」

 ニッコリと、それはそれは、“怖い”笑顔で言ったのだった。

 ダンは、思わず、背筋がゾッとしてしまった。

 

 




オリジナル展開。

スターダストクルセイダースでの回復役・仗助が狙われた。
今までのことを踏まえると、一番の脅威は、承太郎以上に、仗助にあると見られても不思議じゃないかな?って思ったのでこの展開。


脳でのバトルは、原作通り花京院とポルナレフがやります。ジョセフは、念写に徹します。


万が一……仗助が死んだら……?


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恋人の暗示 その2

恋人の暗示編。その2。


今回、長め。



ターゲットがジョセフじゃなく、仗助になっているだけで、だいたいは原作通りかな?



 

 

 街中にある電気屋を発見した、ジョセフ達。

 しかも外向きの窓ガラスにテレビが飾られていた。

「どうするんすか?」

「ただ逃げていたわけじゃない。テレビを探しておったのじゃ。ハーミットパープル!」

 そして、ジョセフがガラスに手を当て、ハーミットパープルを使い、テレビの画面を付けた。

「おいおい、何する気だよ?」

「見ておけ!」

「ポルナレフ。君にも協力してもらう。」

「えっ?」

「……いた!」

 そして、ハーミットパープルがテレビ画面に、仗助の脳神経を掴んでいる小さなスタンド、ラバーズを発見して映し出した。

「うわ! マジかよ! こんなちっちぇのかよ!」

「でも、どうやってやっつけるんだ?」

「僕と君のスタンドが仗助の体内に入って、コイツをやっつける! スタンドエネルギーのイメージ、小さくなれるはずだ。」

「なんだって、花京院!?」

「時間がない! 急ぐぞ!」

「あ、ああ!」

「た…頼みます…!」

 そして、花京院とポルナレフは、スタンドを小さくしていき、そして仗助の耳に入れた。

 

『もっと小さくなれ…。途中から血管に入るぞ。』

 

「ジョースターさん! 敵のスタンド、ラバーズは、体内の神経の出発点、脳幹と呼ばれているところにいますね。僕とポルナレフは、耳の奥から静脈へ入って血管を泳いで、脳幹へ向かいます。ポルナレフ、血管に穴を空けてくれ。」

「えっ!? ちょ、ちょっと…、それは…。」

「だいじょうぶだよ。ごく小さいミクロレベルの穴だから、心配ない。今の我々がもし血管や神経を切断するとしても、何分もかかってしまう。じゃなきゃ敵スタンドがとっくに切ってる。もっとも……、もうやり始めてるがね。」

「空けるぜ!」

「うわあ!? き、気分悪くなってきた…。」

 テレビ画面に思いっきり映し出された血管の拡大映像とシルバー・チャリオッツの剣で血管を傷つけられた光景に、仗助は目眩を覚えた。

 その時。

「ん…? んんん? うへ、へへへへ!?」

「どうした、仗助?」

「く、くすぐった…、背中が、くすぐったい! うわわああ!」

「声を上げるな! 人が集まってきてるぜ!」

「だ、出したくて出してるんじゃないっすよぉ、うへああはははは!」

「仕方ない、テレビを買うぞ! 人混みから逃げるぜ!」

「承太郎とミナミ…、何をやってるんだ?」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ジョセフ達が去った後に遡る…。

「掘りか…。この掘り…、飛び越えてもいいが、もしつまずいて、足でもくじいたら危険だな。向こうの橋まで行くのもめんどくせーしよ。おい、承太郎、掘りの間に横たわって、橋になれ、その上を渡るから。」

「承太郎さん…。」

「どうだ? 橋になってくれないか?」

「てめー…、なにふざけてやがるんだ?」

「橋になれと言ってるんだ。このポンチ野郎が。」

「っ…。」

「承太郎さん…、抑えて…ください!」

「……チッ。」

 ミナミに懇願され、承太郎は舌打ちしつつ、掘りに横になり、橋になった。

 ダンは、わざと体の中央に乗り、グリグリと承太郎の背中を靴の底で踏みつける。

「よぉ~し、中々しっかりした橋になったじゃあないか。ホレ、ホレホレ、ホ~~レ。」

 プルプルと震えている承太郎の手を、渡る際にもグリグリと踏みつけた。

「ほれ、ミナミちゃんも渡ってきなよ。」

「……ううん。」

 するとミナミは、掘りをピョンッと軽々飛び移った。

「これくらいの距離なら平気。軟弱ね? 橋もないと渡れないなんて。」

「……おいおい、そんな口利いてていいのかい?」

「あら? こんな小娘に言われて腹が立っているの? ずいぶん懐の小さい男だこと。」

「っ! おい、承太郎、立て。背中を掻け。」

 ダンは、眉間にしわを寄せたが気を取り直して、承太郎に命令した。

 承太郎は、言われるまま背中を掻く。

「ん、もうちょい下だ、もっと、下、よしそこだ。」

 ポリポリポリ…、っと掻いている。これが仗助がくすぐったいと感じていた原因だった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 静脈を泳ぎ、やがて脳幹にたどり着いた花京院(ハイエロファントグリーン)と、ポルナレフ(シルバー・チャリオッツ)を待っていたのは…、成長した肉の芽だった。

 

『この触手は、肉の芽だ!』

『脳幹についてみれば、肉の芽がもうこんなに成長しているぜ! ちくしょう!』

 そして、その奥の方に、脳細胞をグチャグチャといじっているラバーズがいた。

『マギー!』

『み、見ろ! 仗助の脳細胞を、あのハサミのような手で粘土みたいにドロドロにして肉の芽のエサにしている! やつを倒して早いとこあの根を全部引っこ抜かねば、脳を食い破られてしまう!』

『よぉーし、俺に任せろ。切り刻んでやるぜ。いや…、すり削ってやるぜ、大根おろしのよーになー!!』

 シルバー・チャリオッツの剣がラバーズを襲う。

 だが……。

 超小型スタンドなりに動くが、シルバー・チャリオッツの剣の動きには耐えきれず、ラバーズは、頭を切られた。

『いや、浅いか? だが奴の動きは見切ったぜ。』

『おい、ポルナレフ! 誰と話してるんだ!?』

『なっ!?』

 なんとハイエロファントグリーンが二体いた。

『ポルナレフ! そいつは、僕じゃぁない!』

 すると近くにいたハイエロファントグリーンが、ドロドロに溶けた。

『ラバーズは、俺だ。』

 ラバーズのハサミのような手の先端が、シルバー・チャリオッツの胴体に突き刺さった。

 外にいるポルナレフは、血を吐いた。

 ラバーズは、ドロドロに溶かした脳細胞を身のまとって、化けていたのだ。

『まんまと騙されたな~! 馬鹿たれどもがぁーー! マギィーー!!』

 するとラバーズが、分裂を始めた。

『いいか? 世の中自分というものをよく知る奴が勝つんだ。イソップ物語のカメはウサギとの勝負に勝つが、カメは自分の性格と能力をよ~~~く知っていたんだ! フッフッフッ! この私もそうさ! 君らに致命傷を与えるようなパワーや、スピードはないということは、私自身がよ~~く分かっている。すべては……、己の弱さを認めた時に始まる!!』

『エメラルド・スプラッシュ!』

 ハイエロファントグリーンが放ったエネルギーのダメージがラバーズを襲うが、破壊されて散らばったラバーズの欠片から、新たなラバーズが発生した。

『こいつも贋物…。どんどん、増えていくぞ…!』

『す、スタンドは、ひとり一体…。ほ、本物はどれだ!?』

『ここさあーーー!』

 後ろから数体のラバーズが襲ってきたため、対応するが、破壊した端からますます数を増やしていく。

『おしいおしい! ここだよぉ~ん!』

『ここだ、ここだ!』

『わたしだ、わたしだ!』

『違う違う、わたしだぁ!』

『わたしぃいいいいいいいいいいい、だよ~~~~~オン!!』

 

「ポルナレフさん! 花京院さん! このままじゃ…!」

「分からん…、見分けがつかん…。いったい、どいつだ…!?」

 

『フッフッフッ! 史上最弱が……、最も最も最も最も最も最も最も最も最も恐ろしぃいいいいいいいいいいいいいいいい!! マギィーー!!』

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ふはははははははは! ほれっ、なにやってんだ~! しっかりクツ磨きしろよ! 承太郎!」

 椅子に座っているダンが承太郎を蹴り飛ばした。

「ミナミちゃん、君もしっかり肩を揉むんだよ~?」

「ぅう…。」

「ん、ん~、いいマクラだ。暴力的だが、胸だけはいいねぇ。」

 ダンは、ミナミの胸に後頭部を乗せてくつろいでいた。

 すると、蹴り飛ばされた承太郎が、サラサラとメモ帳に何か書いていた。

「こらあ! きさま! 何、書いてやがる!?」

 

 

 ミナミを叩いた

 

 サイフを盗られた

 

 時計を盗られた

 

 ドブ川の橋にされて足で踏まれた

 

 背中をかかされた

 

 靴磨きをさせられた

 

 蹴りを入れられた

 

 ミナミにセクハラをしている

 

 

「お前に貸してる、ツケさ。必ず払ってもらうぜ。忘れっぽいんでな。メモってたんだ。」

「ーーー!」

 ダンは、承太郎の顔を叩いた。

 すると、ダンは何か名案が浮かんだのか、近くの宝石ショップに入って行った。何かされては困るので二人もついていく。

「おい、承太郎。ガラスの隙間があるだろ? そこからお前のスタンドで、この腕輪を盗れ!」

 ミナミは、それを聞いてギョッとした。ダンの意図が分かったからだ。

「気にすんな。ミナミ。」

「でも…。」

「おい、どうした? 早くやれよ。この私がガラスをぶち破って盗ってもいいんだぜ? 私が捕まってぶちのめされれば、仗助は確実に痛みで死ぬぜ?」

「……。」

 そして、承太郎は言われるままスタンドを使って中の腕輪を盗った。

 次の瞬間。

「ああ~~! コイツ万引きしてますよぉ~~!」

「ああ…!」

 そして、承太郎は、店の人間にぶちのめされてしまった。

 

「早く俺達の国から出て行け、このスカタンが!」

「指は切らねぇで、それぐらいで勘弁してやるぜ。ペッ!」

 

 そして、承太郎はボロボロで、店の外に放り出された。

「承太郎さん…。」

「フッハハハ! フハ、フハハハ! フハ。でかしたぜ承太郎。おまえのおかげでドサクサに紛れてもっと良い物を手に入れられたからよ。」

「ふ…ふふふふ…。」

「?」

「くく…、くくく…。」

「承太郎! 貴様何を笑っている!? 何がおかしい!?」

「フッフッフッ! いや…、楽しみの笑いさ。これですごーく、楽しみが倍増したってワクワクした笑いさ。テメーへのお仕置きターイムが、やってくる楽しみがな。」

「やろう! おまえは何か勘違いしている! 仗助はあと数十秒で死ぬ! そんな状況で、なぜ…?」

「花京院のやつのことを知らねぇ。お前は、俺達のことをよく知らねぇ。」

「なぁに~~~!?」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『己を知るということ……。中々いい教訓だ。だが…、お前は、敵を知らなすぎる。勉強不足だ。気がつかなかったのか! 僕のハイエロファントグリーンは! 根を伸ばして、一体一体調べてたのさ!』

『マギィーー!? いつの間に!?』

『本物は、貴様だ!』

 ハイエロファントグリーンから放たれたエメラルド・スプラッシュの一撃が、本物のラバーズの頭に突き刺さった。

 

 そのダメージは、当然だが…本体であるダンにも伝わる……。

 

『ギャアアアアアアアアアア!!』

 頭を抑えながらラバーズは血管の中に逃げていった。

『しまった、逃げやがった!』

 

「えっ? ってことは…、本体の所に帰るって事じゃねぇっすか!? 承太郎さんと姉ちゃんが!」

「それもあるが、まずは肉の芽の除去だ! もう数十秒しかない!」

「けどよぉ! 承太郎とミナミは、そのことを知らねぇぞ!?」

「だいじょうぶだ。心配には及ばないさ。」

「?」

「さ、早く肉の芽を!」

 

 仗助の脳内の肉の芽は除去されたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ハーーーハーーーー!!」

 頭からダラダラと血を流すダン。

「どうした? なにを後ずさっている? 仗助の方では、何があったのか、教えてくれないか?」

 しかしダンは、背中を向けて逃げようとした。逃げようとするダンの髪の毛を承太郎が掴んだ。

「おいおいおい、なにを慌てている? どこへ行く気だ?」

「ねえ、なにがあったのか~? お・し・え・て?」

「ひ、ひいいいいいいいいいい!」

「ねえねえねえねえねえねえねえ! 教えてよ~~~~!」

「ひい! ひいい! 許してください! ミナミ様! 承太郎様ぁ~~~! 私の負けです! 改心します! ひれ伏します! クツも舐めます! 悪いことをしました! いくら殴ってもいいです! ぶっとばしてください! 蹴ってください! でも…、命だけは~~~~!」

 メチャクチャ土下座して、ひれ伏すダン。

 それを二人は黙って見おろしていた。

 しかしそれは、ダンの策略だった。

 仗助から脱出したラバーズが戻ってくるまでの時間稼ぎだった。

 今度は、承太郎の耳に入って死ぬほど苦しめるためだった。

 やがて……、数百メートル先から、ラバーズが戻ってきた。

 そして承太郎の耳、入ろうとした直後。

 スタープラチナの指が、ラバーズを摘まんだ。

 スタープラチナのよく見える目が、指の間のラバーズを観察する。そして、ちょびっとだけ力を入れると…。

「ぎにゃああああああああああ!!」

 バキバキっと、ダンの体の骨が折れていった。

「おいおい、どうした?」

「ホント、どうしたんだろうねぇ?」

「ひぃ…いいいいいい! 骨がぁぁぁぁ!」

「骨が? なんで?」

「ほっほ~? 何か企んでやがったのか? 教えてくれよ?」

「な、何も企んでいませんんん! あなた様の耳に私のスタンドが入ろうだなんてぇぇぇぇ!」

「わたしの? なんだ?」

「聞こえな~い。」

「い、いえ…! あなた様のスタンドの力と正義は何者よりもすぐれています! 耳から入ろうだなんて、考えてるわけないじゃないですかーーー! み、みてください! 今ので腕と足が折れてました! もう再起不能ですぅうう!」

「それだけ喋れるなら、まだまだ再起不能ってわけじゃないね。」

「そうだな。」

「もう無理ですううううううううう! 死んじゃうよおおおおおおおおお!!」

 大泣きするダン。

 ミナミと承太郎は顔を見合わせてから、ダンを見た。

「そうだな。てめーから受けた今までのツケは…、その腕と足とで支払ったことにしてやるか。」

「もう絶対に私達の前に現れない? 誓える?」

「誓います!! 獄門島へでも行きます! 地の果てへ行って、もう二度と戻って来ません!」

「ウソはいわねーな? 今度出会ったら…。」

「仗助に頼んで、死ぬ寸前から治すを繰り返して精神ぶっ壊しの刑かな?」

「け、決して、ウソはいいません!」

「……ふん。」

 承太郎は、スタープラチナの指からラバーズを解放した。

 ミナミと承太郎が、背中を向けた直後…。

 ダンは、離されたラバーズを近くにいた子供の耳に差し向けた。

 そして隠し持っていたナイフを手にして、承太郎の背中を狙う。

 承太郎らが子供を攻撃できるわけがないと踏んでの策だった。

「……ふ~~~、ヤレヤレだぜ。」

「ホントだよ。」

「いいだろう。突いてみな。」

「あっ! おい! 分からねぇのか! 動くなって言って…、いって…?」

「どうしたの? なんで動かないの?」

 ミナミがニコニコ顔で、近寄る。

「どうした? ブッツリと、突くんじゃなかったのか?」

「こーんな感じで。ほら。」

「ぎにゃあああああ!」

 手にしているナイフを手首ごと方向を変えられ、自分の顔に突き立てられた。

「か、体が動かない!? な、なぜ~~~!? ハッ! なにかが…、巻き付いて…。」

「ヤレヤレだぜ。ず~~~~~っと、先から凧の糸のように伸びてきてたってのに気づかないとはな。」

「花京院さんのハイエロファントグリーンって、自分の体をほどけるんでしたっけ?」

「ああ、足に結びつけて、わざと、逃がしたんだろうな。こうなることを見越して。」

「ゆ…、ゆるしてくださーーーーい!!」

「許す? ねえ、承太郎さん? さっき私言いましたよねぇ?」

「ああ。もう一度言ってやりな。俺も言うぜ、今度出会ったら…。」

「はい。仗助に頼んで、死ぬ寸前まで治すを繰り返して精神ぶっ壊しの刑! 安心して、精神は壊れても命だけは助けてあげるから。だって、うちの弟の能力は…。」

「死んでなけりゃ、いくらでも一瞬で直せる能力だからな。」

「ディ…DIOから…、前金を貰っている……、そ、そそそっそ、それをやるよ!!」

「残念だけど…。」

「ヤレヤレ、てめー、正真正銘、史上最低な男だぜ。てめーのツケは…、金では払えねぇぜ!!」

 

 

 

 

 その後のことは……、ご想像にお任せします。

 

 




原作の3ページ、オラオラ具合で、承太郎の怒り具合が分かる。

しかしこのネタでは、仗助がいるので、3ページ、オラオラでは終わらないかも…ね?


次回は、太陽の暗示。


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太陽の暗示

太陽の暗示編。



原作よりさっさと終わります。


 

 イランとイラクは、情勢が不安定なため、ルートを避け、カラチから、船でアラブ首長国連邦へ渡り、アブダビという都市へ。

 

「暑いよ~…。」

「我慢しなさい。」

「なんで姉ちゃんにこんな格好させるんすか?」

 暑い国で、ミナミのみ全身を覆うような格好をさせられていた。

「宗教上の都合じゃよ。中東では、女性はこのように肌を見せてはならんのじゃ。」

「ジョースターさん、車買ってきたぜ。」

「また…車か…。」

「我慢してくれ。辛いじゃろうが…。」

 そして車に乗って、豪邸が並ぶ道筋を進む。

 20年前まではこの辺りも砂漠だったらしいが、オイル(石油)ショックによる莫大な利益により、夢のような都市に成長したらしい、っとジョセフが説明した。

 そんな中、花京院が後ろを気にしていた。

「まだ誰かにつけられている気がするのか?」

「い、いや…、こう見晴らしが良い場所だ…。追っ手がついいれば分かるのだが…、つい……、誰かに見られているような気分がして振り返ってしまう。」

 無理もないことである。

 ほぼ毎日のように敵のスタンド使いと戦い続けていたのだ。警戒するに越したことは無いが、精神がもたない。

 ジョセフが話題を変えた。

 これからルートについてだ。

 

 ここから北西へ、100キロのところにヤプリーンという村に行くのだが、砂漠と岩山があるので、道路がぐるっと回り込んでいるので、車だと3日はかかってしまうらしい。

 そこで、まず村に行き、セスナを買ってサウジアラビアの砂漠を横断しようと言う。

 今まで飛行機を避けていたのは、無関係な人達を巻き込まないためだったが、飛行機そのものを買ってしまえば乗るのは自分達だけだし、セスナの操縦はできるからとジョセフは言う。

 

 しかし……。

 

「人生に3度も飛行機で落ちた男と一緒にセスナに乗りたかねーな。」

 っと、承太郎。

 ミナミと仗助も同意見だったため黙ったまま頷いた。

「…お前達……。……さっ、それでじゃ、その前にこの砂漠をラクダで横断してヤプリーンの村へ入ろうと思う。」

「ラクダ!? おい、セスナはいいが、ちょっと待ってくれ! ラクダなんて乗ったことねーよ!」

「同じく。」

「フッフッフッ。まかせろ、フッフッフッ、わしはよく知っておる。」

 っと、余裕のジョセフ。

「な~んか、やな予感…。」

「同感。」

 ミナミと仗助は、嫌な予感がしてそう呟きあった。

 

 

 そして、嫌な予感は的中する。

 砂漠の手前で、手配したラクダを前にして、ジョセフがお手本を見せようとするが……。

 悪戦苦闘。

「おい、本当に乗ったことあるんだろうな?」

「わしゃあ、あのクソ長い映画『アラビアのロレンス』を3回も観たんじゃぞ! 乗り方はよーく知っとるわい! 2回は半分寝ちまったが。」

「それ、乗ったとは言わない……。」

「じじい…、ボケる前から、こんなキャラだったのかよ…。」

 ミナミと仗助は、あちゃ~っと呆れた。

「けど、時間も無いし…、ねえ、座ってよ。」

 そう言って、ミナミは、自分にあてがわれたラクダの首を撫でた。

 すると、スッとラクダは、座った。

「やった! ありがと!」

「すげえな、姉ちゃん! じゃ、俺も、よーしよし、座ってくれよ。」

 そう言って仗助もラクダを座らせた。

「…ふっ。動物の扱いは、伯父伯母の方が上みたいだな。」

「ウグググ! 悔しー!」

「今更だけどよぉ…。ミナミと仗助って、ジョースターさんの娘と息子ぉ? 承太郎の兄弟じゃなくて?」

「ああ。年の違う俺の母親の異母兄弟だ。」

「異母兄弟? ってことは…。」

「ポルナレフ…。あまり深く聞くんじゃない。こういうのは、その家庭の問題だから。」

 花京院が、ポンッとポルナレフの肩を叩いた。

 そして一行は、ラクダに乗った。ジョセフが一番遅かった。

「はいよー。」

「アハハハ、楽し。」

 うろちょろしてしまうラクダを早々に乗りこなしたのは、東方姉弟だった。

 やっと慣れた後、一行は、砂漠を進んだ。

 灼熱の太陽照りつける中、熱を遮る布などで顔を覆うなどして肌を守る。

 しかしそんな中、花京院はしきりに後ろを気にしていた。

「おかしい…、やはりどうも誰かに見られている気がしてならない。」

 花京院の言葉に、他の者達も後ろを見る。だが何もないし、何もいない。

「花京院、少し考えすぎじゃねぇか? ヤシの葉で足跡も消してるし、数十キロ先まで見渡せるんだぜ?」

「いや…、俺もさっきからその気配を感じてしょうがない。」

「承太郎さん、お願いします。」

 そして承太郎がスタープラチナで双眼鏡を使い、周りを見回した。

 しかし、本当に…何もいない。

「……なんだろう…、おかしくない?」

「ああ…、俺もそう思うぜ。あれ? じ…ジジイ! みんな!」

「どうしたんじゃ?」

「と、時計! 時計の時間!」

 慌てる仗助に、全員がそれぞれが持っている時計を見た。

 

 8時。

 午後……。

 

 だが太陽はいまだ沈んでいない。

 

「しまったぁ! うっかりしておった! 午後8時じゃとぉ!? なぜじゃ、なぜ太陽が沈んでいない!?」

「なんだ、温度計がいきなり60度になったぞ!? 沈むどころか、太陽が…、西からぐんぐん登って来やがる!」

「まさか、あの太陽が…!」

「スタンド!」

「まずい…、気温が、70度を超えちまった…。このまま俺達をゆでだこにでもするつもりか?」

「いや、そんなに時間はいらん。サウナ風呂でも30分入るのは危険とされている。」

「まずいっすよ、ラクダが熱でやられそうっす!」

「手っ取り早いのは、本体をぶちのめすことだが…。」

「本体……本体…、あれ? ブフッ!」

「どうした、ミナミ! ん? ぷっ…、オフフフ!」

「ダハハハ! そういうことかぁ!」

「おいおい! どうしたんじゃ!? 熱でやられたか!?」

「ふっ…ハハハ…、そうか、そうか。ミナミ、お前がいてくれてマジに助かるぜ。」

「オーノー! 正気なのはわしだけか!」

「ち、違うっすよ、じじい! あそこ、あそこ!」

「ん? あれは……、ブルー・ブルー・ローズの根っこ? むむっ! なぜ宙に生えておるんじゃ!?」

 十メートル先くらいのところに、景色の中に不自然にニョロニョロと宙にからブルー・ブルー・ローズの根っこが1本生えていた。

「ナイスだぜ。ブルー・ブルー・ローズ。そのままそこに生えてな。オラァ!!」

 次の瞬間、承太郎が近くにあった石をスタープラチナで投げつけた。

 すると、ガシャーンという音と共に、ブルー・ブルー・ローズが生えていた場所の下辺りにヒビが入った。

 そして、太陽が消え、夜の闇がおとずれた。

「やーれやれだぜ。こんな簡単なトリックでなぁ。」

「けど、そのトリックが、こういう見晴らしの良い場所じゃ有効だったんじゃないかな?」

 そして一行は、穴が空いた場所へ向かった。

 そこには車があり、鏡が前に設置されていた。ブルー・ブルー・ローズは、車の上から生えていたらしい。

 なお、中で、太陽のスタンド使いだったらしい、男が気絶していた。

 エアコンも水もあり、非常に快適な追跡旅をしていたらしい。

「えっ? ということは、こいつ、もうやっつけちまったってことか~~~? もう終わり、コイツの名前も、知らないのに? 太陽の暗示のスタンドは綺麗に片付いたのか~~?」

「まっ、そういうことだね。ふふふ。」

「いや、名前だけは分かったぜ。コイツ、律儀に免許証を持ってやがる。アラビア・ファッツって、いうみたいだぜ。」

「早いとこ砂漠を越えちまおうぜ。寒くってよぉ…、はっはーくしょん!」

 

 夜の砂漠に、一行の笑い声が響いた。

 

 

 




太陽の暗示のスタンドは、これ以外に攻略法が思いつかなった。
7人目のスタンド使いみたいに、太陽自体を破壊するという手も考えたけど、それでも展開は似たような物だし……。
ブルー・ブルー・ローズが無機物から生えてくるという特性から鏡から生えてきて、教えたということにしました。


次回は、死神ではなく、7人目のスタンド使いに登場する……、虹村の父親らしき人物です。


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虹村

7人目のスタンド使いのネタバレ注意!


※これは、死神ルートではなく、飛行機を修理、あるいは赤ん坊(デス13)を治療した場合にのみ登場する、7人目のスタンド使いのオリジナルの敵です。


※原作中では、虹村の父親の名前は出ていないため、想像上の人物名でもあります。


※もしかしたら、虹村兄弟の父親ではないかもしれない。


それらを踏まえた上でお読みください。


 

 

 ヤプリーンという村に到着した一行は、宿で一晩過ごし、前日に手配していたセスナの飛行場へ向かった。

 花京院の顔色が悪く、だいじょうぶかと聞くと、夢見が悪かったと言っていた。

 ところが、ここで問題が。

 なんと買い取ったセスナの代金を返すから、セスナを諦めてくれと言われたのだ。

 これについてジョセフは、猛抗議。

 セスナの管理者は、病気の赤ん坊がいるから、そっちが優先だと言った。

 もう一機あるじゃないかと言うと、そっちは壊れていて使い物にならないという。

「あっ、それなら、俺に任せてくださいっすよ。ドラァ!」

「おー、弟よ、ナーイス。」

 あっという間に壊れた方をクレイジー・ダイヤモンドで直し、そのセスナを買い取って、出発した。

「うう~ん…。」

「どうしたんですか、花京院さん?」

「なにか…忘れているような気がして…。」

「気にしすぎっすよ。」

「…そうだね。」

 花京院はそう言って気を取り直した。

「ふーい、ここならさすがの追っ手も……。」

 

 ザザ… ザザザ…

 

「うん?」

 

『あーあー、テステス。』

「おい、無線機がおかしいぞ?」

「分かっておるわい! ぬうう…、こんなところまで追っ手が来るとはのう!」

 

『こちら、ザ・タイド。ジョースター一行、聞こえますかー?』

 

「ふざけんな! 出てきやがれ!」

「あっ! 外!」

 

 そこには、斜め後ろの方にもう一機のセスナがいた。

 

『自己紹介させていただきます。私は、虹村垓(にじむら がい)。』

 

 その名を聞いて、ミナミと仗助は驚愕した。

「に、虹村…!?」

「まさか…!」

 

『いきなりで申し訳ないが…、私のスタンド、ザ・タイドが、お前達を殺す!』

 

「来るか!?」

「ま…。」

「姉ちゃん、やるっきゃねぇ! それからだ!」

 一行はスタンドを出し、飛行機の外へスタンドを出した。

 直後、ザ・タイドらしき、人型スタンドがセスナから飛んできた。

 その形状は、どこか見覚えがあるものだった。

『間違いねぇ…! あんた、虹村の親父さんか!』

『? 貴様…何を言っている?』

『来るぞ!』

『先手必勝! エメラルド・スプラッシュ!!』

『ぐぇっ!』

 エメラルド・スプラッシュを食らい、ザ・タイドがセスナの方へ逃げていった。

『な~んだ、見かけ倒しじゃねぇか!』

「あーあー、こちらジョースター。虹村君と言ったか、今のうちに逃げるなら逃げなさい。深追いはせんよ?」

『くっくっ…。馬鹿め、お前達はすでに我がザ・タイドの術中だ! 気流は我が味方だ!』

「な…、なっ!? 操縦が!」

「じじい! 操縦桿をしっかり操れ!」

「セスナの軌道が…、まさ、か…! 貴様ぁ!?」

『その通り! 我が、ザ・タイドの力は、気流を自在に描くこと! このまま墜落の気流の流れに沿ってしまえ!』

『や、やられた…! ジョースターさん踏ん張ってください!』

「で、できんから、嫌な汗をかいとるんじゃ…!」

『ついでに、コレも返してやる。』

 すると先ほど発射したエメラルド・スプラッシュがこちらに向かって飛んできた。

『なに~!?』

 たちまち、セスナの翼に命中して、穴が空く。だが墜落するには至らなかった。

『もって、10分というところか。それまで墜落の恐怖を味わうがいい。』

『ど、どうする!? 敵は遠距離型だぜ!? 俺の剣じゃぁ届かねぇ!』

『頼みの綱は、ハイエロファントグリーンのエメラルド・スプラッシュだけか…。』

『だが、気流を描かれ反射されてしまったら、こちらがやられてしまう!』

『いいや、それでもやるしかんねぇんだ。花京院! 仗助は、セスナの修理に集中しろ!』

『はいっす!』

『……分かった。』

 花京院は、意を決し、エメラルド・スプラッシュを発射した。

『ハハハハ! 無駄だ無駄!』

『ようは、気流を描く必要があるんだろ? その際に、テメーは、こっちは接近してくる!』

『ぬっ!』

『そこを突けばいい。』

『馬鹿か…、そんなのことも分からないほどアホだ思ったのか?』

 するとザ・タイドが接近してきた。

『へん! 言いながら接近して来やがったじゃねぇかよ! ホラホラ~~!!』

『ふっ。』

 しかし放たれたシルバー・チャリオッツの剣戟は、すべてあらぬ方向へ流された。

『この飛行機の速度の気流の中で、しかも墜落寸前の不安定な状況で接近戦をする方が無謀だとは思わないか?』

『く、くそ!』

『そして先ほどの切り裂く空気の流れを…。』

『イデェ!』

『仗助!』

 クレイジー・ダイヤモンドに切り裂かれるように鋭くなった空気の層が襲いかかり、クレイジー・ダイヤモンドの表面が切れた。

 飛び散った仗助の血が割れたセスナの窓から、外へ流れ出て、敵のセスナの前の窓に数滴当たった。

『ハハハハハハハハーハハハハハ! 空中においては、私に勝てるモノはいない! あともって、2分か? よく耐えたが、お別れだ。』

『……いいや。』

『?』

『むしろ…幸運だったぜ。俺を狙ったことがな。』

 すると仗助は、セスナ内に散らばったガラスの破片を集め、握りしめた。

 自らの血と共に…。

『食らえ…、自動追尾弾だぜ!! ドラァ!!』

 クレイジー・ダイヤモンドの力で血の塊を埋め込まれたガラスの塊となった弾が、敵のセスナの窓ガラスに付着した仗助の血に向かって飛んでいった。

 そして前の窓が割れ、虹村垓が乗るセスナが大きく揺らいだ。

『今っす!』

『トドメだ! エメラルド・スプラッシュ!!』

 最大出力で放たれたエメラルド・スプラッシュが、敵のセスナを穴だらけにして、エンジンに着弾したのか火を上げた。

『ぐあああああああああああああ!!』

 火を噴きながら敵のセスナは墜落していった。

 同時に、こちらのセスナの軌道が戻った。

「よくやったぞ、仗助!」

「それより…、さっきの奴のところに行ってください!」

「なぜじゃ?」

「いいから! もしかしたらあの人が、私達が探していた虹村さんかもしれないんです!」

「そ、そういえば…そんなことを言っておったな。分かった…。」

 そしてセスナを降ろし、墜落現場に向かった。

 そこには、セスナの残骸しか無かった。死体はない……。

「どうやら脱出したようじゃな…。」

「……くそっ!」

「そんなぁ…。」

「…今、SPW財団が虹村という人物を追っておるはずじゃ、必ず見つけてみせる。」

「……すんません。」

「いいんじゃよ。未来で、肉の芽を植えられた者が、そのような酷い状態になると知らずに、DIOを倒したわしらにも非があるじゃろう。」

「いえ…。」

 ミナミと仗助は、落ち込んだ。

 

 

 結局、自分達は、未来の友人の父を救えなかったのだと…、自分自身を責めた。

 

 

 




実は、肉の芽を抜く展開を最初は書いてました。

でもそれだと、形兆が作り出すスタンド使い達が現れず、また康一もスタンドに目覚めるきっかけがないため、友人にならないという可能性が出てきたため、ボツに。


何かを得ようと思えば、何かを犠牲にしないといけない……、よくできた物語ですよね。


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死神と、ブルー・ブルー・ローズ

アンケートありがとうございます。



死神編ですが……?


マニッシュ・ボーイ、原作じゃ生きてたけど……、このネタでは……。


 

 

 その赤ん坊は、生後11ヶ月だというのに、チッと舌打ちをした。

 

 離乳食を食べ始める頃の赤子だというのに、牙のような犬歯が生えており、見る者を不気味がらせる。

 

 その頭脳は、下手な大人に匹敵するほど発達しており、すでに自分のスタンドを認識し、そしてDIOの刺客としてジョースター一行を倒せば一生働かなくていいだけの報酬金が手に入ることすら理解していた。

 

 マニッシュ・ボーイ。死神の暗示のカード。デス13(サーティーン)というスタンドの使い手。そう呼ばれている。

 

 彼の予定としては、ヤプリーンという村で、熱を出した状態で医者のいる集落までセスナでジョースター一行に連れて行ってもらうときに全員を始末する予定だった。

 

 だが想定外だったのは、故障していたセスナを仗助が修理し、そのセスナを買い取って出発してしまったことだ。結果、自分は残されてしまい、夢を通じてスタンドで暗示をかけた女によってジョースター一行が向かった集落に遅れて到着することになった。

 

 ジョースター一行は、生きているらしいことは理解した。どうやら自分が失敗したときの保険として出撃したもうひとりの男は失敗したのだろう。

 

 つくづく使えないっと、まともにまだ言葉を喋ることはできないが、頭の中で悪態を吐く。

 

 マニッシュ・ボーイは、DIOから、東方ミナミという娘だけは生かしておけと命令されており、一行の始末に失敗してもミナミだけを引き離してDIOのところへ運ぶことに成功すればそれはそれで多額の報酬が受け取れる状態だった。

 

 ザ・タイドのスタンド使いが失敗した今、自分にできることは、東方ミナミという娘に、自身の夢を操るスタンドで夢を通じて暗示をかけ、こっそりと東方ミナミという娘を、奪い取ることだけだった。

 

 暗示をかけた人間にジョースター一行がいるホテル付近まで連れて行かせ、なんと運良く、ひとりで転た寝しているミナミを見つけた。

 

 早速だとばかりに、デス13を使い、ミナミの夢の中に潜り込む。

 

 

『ラリホ~~~。』

 

 

 自分にとってお決まりとなっている言葉を言いながら夢の中に、死神とピエロを会わせたようなスタンドを出現させる。

 

 しかし、そこは、暗闇だった。

 

 自分が作り上げたデス13のスタンドの世界、遊園地とはほど遠い……気持ちの悪い暗闇だった。

 

 しかし、徐々に目が慣れてくると、ただの暗闇ではないことに気づいた。

 

 鮮血色の……根っこ。

 

 それがまるで放流のように渦巻いている異常な世界。

 

 しまった!っとデス13ことマニッシュ・ボーイは、自分の迂闊さを呪った。

 

 デス13のスタンドは、夢のスタンド。つまり、無防備な睡眠状態を包み込みスタンド使いを封じ込めてしまうという力を持っていた。

 

 だが弱点はある。

 

 それは、スタンドを出した状態で眠られてしまうことだ。そうなってしまうと、スタンドの封じはできず、夢の中にスタンドを持ち込まれてしまうのだ。

 

 そういえば、東方ミナミという娘は、自らのスタンドを制御ができないと聞いていた。

 

 制御ができないということは、出せないのでなく……、常時スタンドが出ているような状態であることだったのだ。自分の意識に反して。

 

 しかし、マニッシュ・ボーイとて、夢の世界で限定であるが圧倒的な力があるとは自負していた。

 

 だが、実際はどうだ?

 

 夢を支配するスタンドをも圧倒する、この異常な夢の世界。

 

 大雑把には聞いていたが、東方ミナミという娘のスタンドの名は、ブルー・ブルー・ローズといい、植物の形をしているとは聞いていた。

 

 おそらくだが、この放流のように渦巻く根っこは、ソレだろう。

 

 ジョセフ・ジョースターのようなハーミットパープルみたいに脆弱じゃなく、まるでレベルが違う。

 

 なぜ、こんなスタンドを十代半ばの娘一人が抱え込めるんだ?

 

 夢を支配するスタンドを持つが故に、マニッシュ・ボーイは、滝のような冷や汗をかき、止まらない疑問を持つ。

 

 まさか…、まさか!?

 

 違う、何か大きな見落としをしたのではないか!?

 

 そもそも制御できないのは、単に精神力が足りてないからじゃない…。東方ミナミという娘は……違う。

 

 

 うぅぅぅぅううううおおおぉぉぉぉおおおぉぉ

 

 

『あ…、ああ…。』

 

 

 夢の世界は…、無防備な世界。

 

 それゆえに、せき止める物が…ない。

 

 振り返るんじゃなかった。

 

 だが振り返らなくても結果、同じだっただろう。

 

 なぜ自分は、こんなことに足をツッコんでしまったのだ?

 

 欲に目がくらまなければ……、たった11ヶ月しか生きていないのに…、死よりも恐ろしい目に遭わずにすんだ……はずなのに…。

 

 

『うわああああああああああああああああああああああ!!』

 

 

 町一つ分くらいの巨大な骸骨に鮮血色の植物の根っこが絡みついた怪物が、口をぱっくり開けたのを最後に、マニッシュ・ボーイの意識は、すべて永遠の暗闇に飲まれた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「姉ちゃ~ん、うお!?」

「うわ、なんじゃこりゃ!? 青いバラの花が!」

 夕食を食べに行こうと呼びに来たら、部屋は、青いバラの花で埋め尽くされるようになっていた。

 テーブルと椅子の上で、くうくうっと、ミナミは、寝ていた。

 

 

 そしてジョースター一行の目に映ること無く……、ホテルとホテルの間の隙間に、籠に入った状態の赤子が入っていたと思しき、籠だけが残されていた。その中身は何も入っていなかった……。

 

 

 




自力で制御できないのは、常時スタンド出しっぱなしにしているのと同じ。

しかもブルー・ブルー・ローズは、普段は、ミナミの恐怖心で蓋をしているので、それが無くなる無防備状態となったら……?
なお、夢に侵入してきたデス13に対しての攻撃は、ミナミの意思ではありません。ブルー・ブルー・ローズのオートガードが発動しただけです。


死神編は……、こんな感じなりました。

色々と期待された方がおられたと思いますが、ブルー・ブルー・ローズという制御不能のスタンドを持ったミナミがいる時点で勝負は見えていました。

実は、ジョースター一行も夢の世界で、ミナミのスタンドの全容を一部垣間見るというイベントを考えてましたが、マニッシュ・ボーイが一行を一網打尽にする機会がないので、ミナミだけを狙わせました。


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審判の暗示

審判のカード編。



展開が原作とは違います。


 

 紅海。

 名前こそ、紅い海という意味だが、実際は違う。

 二つの赤い砂漠に挟まれているが、都市らしい都市もない、澄み切った穢れなき海であり、ダイバーにとってこれ以上無いほどの海だ。

 そのう身の上を、ジョースター一行は、船で進んでいる。

 ところが。

「おい、じじい。方向が違うぜ? エジプトに向かうんじゃなかったのか?」

 方角を示す機器を見た承太郎が言った。

 船は、紅海に浮かぶ小島に向かっていた。

「理由(わけ)あって、今まで黙っていたが、エジプトへに入る前に、ある人物に会うためにほんの少し寄り道をする。この旅にとってものすごく、大切な男だ。」

「あっ。」

 っとミナミは、理解し、仗助と顔を見合わせた。

 その島は、ヤシの木や、草むらこそあれど、本当に誰もいないような小島で、本当に人が住んでいるのかどうかすら分からないような場所だった。

 キョロキョロと周りを見回していると、草むらに、人がいた。というか隠れてコチラの様子を伺っているようだ。

「そこにいるのは、誰?」

 ミナミが見つけ、その人物に向けて声をかけると、立ち上がったその人物は、背中を向けて逃げていった。

「あっ、逃げたぞ!」

「はっ! あの後ろ姿は、見たことがある!」

 花京院が見覚えがある面影のある後ろ姿を見てそう言った。

 追いかけていくと、やがて、簡素で古い小屋と敷地を見つけた。

 逃げたその人物は、敷地の中でこちらに背中を向けていた。

「あの後ろ姿は、見覚えがある。まさか…?」

「待て! わしが話をする、みんなここにいてくれ。」

 そう言ってジョセフが敷地の塀とところから、その人物に話しかけた。

「わ、わしに話しかけるのはやめろ!」

 しかし、その人物は拒絶する。

「このわしに誰かが会いに来るのは決まって、悪い話だ! 悪いことが起こったときだ! 聞きたくない! 帰れ!」

 そう叫びながら振り返ったその姿は……。

 

 アヴドゥルによく似ていた……。

 

 アヴドゥルに似た人物は、そのまま怒り顔のまま、小屋の中に逃げ込んでいった。

「……アヴドゥルの父親だ。世を捨てて、孤独にこの島に住んでいる。今までお前達には黙っていたが、もしここへ立ち寄ることがDIOに知られたら、アヴドゥルの父親の平和が乱される可能性がある。そのことを考えての事じゃ…。」

「父親…。」

「だが…、息子のアヴドゥルのことを伝えるのは…、辛いことだ…。」

「……。」

「ミナミ、仗助…、ポルナレフ…。お前達、責任を感じておるのか?」

「…はい。」

「ごめん、ちょっと、近くの浜辺に行ってる…。とても会わせる顔がないから…。」

「うむ、そうか…。」

 ミナミは、ひとり離れて近くの浜辺に向かった。

 

 

 そして、ミナミは、ひとり、ヤシの木の木陰にある岩の上に座って、フウッ…とため息を吐いた。

「隠しとくのって辛いなぁ…。」

 あの人物がアヴドゥルの変装だとは分かっていた。ポルナレフの気持ちを考えると、正直な話、黙っておくのは辛いことではあった。

 だが、アヴドゥルに移動手段を手配してもらうためにも、仕方なかったのだ。それは十分理解しているつもりだ。

「さてと…、そろそろ戻るかな…。あれ?」

 すると浜辺に、古ぼけたランプが落ちていた。

 まるでアラビアンナイトに登場するようなランプだった。

「こんなところに…? まさかねぇ…?」

 っと思いつつ、遊び半分でランプを擦ってみた。

「って、出てくるわけないよね? ランプの魔人が。」

 だが次の瞬間。

 ボワンッ!とランプの先端から圧縮された何かが飛び出してきた。

 

『三つだ! 三つの願い事を言え!』

 

「わっ! うそぉ!」

 しかしランプの魔人とはほど遠いメカメカしい見た目の魔人だった。

「い、いきなり言われても…、あなたランプの魔人?」

『その通りだ! 俺の名は、カメオ! ランプから出してもらったお礼をしたい。さあ、願い事を三つまで叶えてやろう! なんでも言え!』

「じゃあ、私のスタンドを消して。」

『……。』

「どうしたの? できないの?」

『スタンドとは…、自分自身! それを消し去ることとは、自分自身を消し去ることと同意義! 死と同じ! お前は、死を望むのか!?』

「…そっか。」

 ミナミは、腕組みしてう~んっと考え込んだ。

「けど、今一番の願いはソレだよ?」

『死ねば解決することでもなかろう! そうなれば、お前の家族はどうなる?』

「うっ…。分かった分かった。もうそれは止めとく。」

『…ホッ…。』

「なにホッとしてるの?」

『な、なんでもないわぁ! さあ、早く願い事を三つ言え! お前自身の死以外は何でも叶えてやろう!』

「じゃあ……、虹村って人をここに連れてきて。」

『よかろう! その願い叶えた! Hail(ヘイル) 2U(トゥーユー)!!」(※君に幸あれ!!)

 そしてボワンッとカメオが消えた。

 

「東方ミナミさん…。」

 

「あっ…。」

 すると、草むらから、人が出てきた。

 形兆に顔立ちが似た、男性だった。

「私に会いたかったそうだが…?」

「ええ。あなたの肉の芽を取り除いてあげたかったんです。」

「ほう? 私は望んで肉の芽を植えられたというのに?」

「その望みが…、遠くない未来で恐ろしい悲劇に繋がります。承太郎さんを呼んでくるので、ちょっと、待っててくださいね。」

「その心配はいらない。」

「?」

「君は、これから……、DIO様の下へ連れて行かれるのだから…ね!!」

 次の瞬間、背後から先ほどのランプの魔人(?)、カメオが現れ、ミナミの両腕を掴んだ。

『ハハハハハハハハ! ひとりで行動していて助かったよ! こうしてジョースター共に気づかれることなく、お前を確保できたのだからな!』

「……ま、そうだとは思ってたよ。」

『はっ?』

「私が狙われていることなんて、今までのことで分かりきってた。まさか、何も考えずひとりで行動してたと思った?』

『なっ…。アギィ!?』

 次の瞬間、背後から肩や腹に穴を空けられた。

「ミナミ! 無事か!?」

 ポルナレフがシルバー・チャリオッツを構えて立っていた。

 カメオの手からミナミは、逃れ、ポルナレフのもとへ走った。

「ったく、ひとりで勝手に離れるから心配して行ってみれば、何やってんだよ!」

「私は、導きに従っただけ。」

 そう言って指差した先には、浜辺から生えたブルー・ブルー・ローズの根っこがあった。

『小娘ぇ! 最初から俺が刺客だと…!?』

「わかりやすすぎんの。あんた達は。」

『おのれぇ! だが…。我がスタンド、ジャッジメント(審判)を前にたったひとりの護衛で勝てるとでも!? Hail 2U!』

 するとカメオ改め、ジャッジメントが虹村を掴んで放り投げてきた。

 ポルナレフは、剣で投げつけられた虹村を切る、すると、ボロボロの土くれになってしまった。

「こいつは、土人形!?」

「なるほど、土に願いを投射して形にするのがアナタの能力か。」

『フフフフ! ポルナレフ! 願いを3つ言え! 叶えてやろう!』

「けっ! カラクリが分かった状態で言うと思ってんのか!?」

『まあまあ、そう言わずに、言いなさいな! 例えばこの…。』

 すると、浜辺の砂から、美しい少女が作り出された。

『J・ガイルに殺された貴様の妹と…。こっちの…。』

 すると反対側に、アヴドゥルを模した土人形が現れた。

『モハメド・アヴドゥルをぉお! くれてやってもいいだぞぉお?』

「ってめぇぇぇぇ! 土人形とは言え…、俺の妹を、アヴドゥルを!」

「酷い…、ポルナレフさんの心を踏みにじるようなことを…。」

『フフフフ! 贋物とはいえ攻撃できまい! さあ、こいつらになぶり殺しにさせてやろう!』

「けど、土人形だよね? 無機物だよね? 元を辿れば…。」

『? ぬおおっ!?』

「本体は…、この近くだよね?」

 ミナミは、土人形から生えたブルー・ブルー・ローズに妨害され動けないジャッジメントの後ろの方にブルー・ブルー・ローズの根っこが、まるで、ここ、ここ、っと言っているように動いているのを見つけた。

「あの草むらの中だね。お願いしまーす。アヴドゥルさーん!」

「へっ?」

『なにぃ!?』

 

 すると、草むらをかき分けて現れたのは、ポルナレフにとっては、死んだはずだったアヴドゥルだった。

 

「マジシャンズ・レッド!!」

『ぎ、ぎゃああああああああああああ!!』

 マジシャンズ・レッドの凄まじい火炎が、ジャッジメントと、土人形達を燃やした。

『ば、馬鹿な…! インドで、ホル・ホースに撃たれて死んだはずの…、アヴドゥルがなぜ生きているうううううううう!?』

「フッフッフッ。あの時、J・ガイルに刺された際にのけぞって、頭蓋骨の一部を少し削られただけで済んだのだよ。ま、もっとも、その傷も仗助によって消してもらったがね。」

「あ、アヴドゥルーーーー!!」

 ポルナレフは、アヴドゥルが生きていることを知って、泣き出した。

「とどめだ…。クロスファイヤーハリケーン!!」

『ぐぎゃあああああああああああああああ!!』

 そしてダメ押しとばかりに放たれたクロス型の炎によって、ジャッジメントはついに消滅した。

「アヴドゥル! アヴドゥル!」

「シッ、静かに。」

「なんでだよ?」

「まずは、ジャッジメントの本体探しですよ。」

「あ、ああ!」

「ほら、あそこ。あの辺りかな。」

 先ほどブルー・ブルー・ローズがここだと示していた場所を慎重に探すと……。

 なんか、不自然な筒が地面に刺さっていた。

 アヴドゥルが指突っ込むと、ぐぷぷ!っと何かが詰まった音が聞こえ、指を取ると、スースー!っと必死に空気が吸い込まれていった。

 三人は顔を見合わせ、どうする?っと思案。

「よっしゃ、この辺にある、ゴミ屑を…、灰、泥…タバコのカス…、ホレホレ。」

 ポルナレフがにやけながら漂着物のゴミを入れていった。

 ゴミを入れられ、筒の下のジャッジメントの本体がむせていた。

「耐えてるね…。」

「そういえば、ポルナレフ。もようしてこんか?」

「はあ?」

「ミナミ。離れてなさい。」

「はーい。」

「アヴドゥル~?」

「ほれほれ、狙え! ハハハハハ!」

 ちょっと、お下品だが……、まあいらゆる、立ちション…という奴であって…。しかも狙いは筒…。

 ミナミは、背中を向けて耳を塞いでいたが、気配で察して笑っていた。

 やがて。

「ぶはげはあああああああああ!?」

 ジャッジメントの本体である、カメオ本人が土から飛び出してきた。

「よく耐えたな。だが、お別れだ、マジシャンズ・レッド!!」

「シルバー・チャリオッツ!!」

 二人のスタンドが、ジャッジメントの本体であるカメオ本人を倒した。

 

 




ジャッジメントが、カメオというスタンドなのか、ジャッジメントの本体が、カメオというのか……どっちなんでしょうね?


連れションネタは、外せないので、やってもらいました。
アヴドゥル、真面目キャラに見せかけて中々に、えげつないですよね。


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女教皇の暗示

ハイプリエステス戦。



微オリジナル展開。


今回も、仗助大活躍。


 

 浜辺の方に集合していた、ジョセフ達のところへ、ミナミ、ポルナレフ、アヴドゥルが来た。

「おお、お前達、遅いじゃないか。なにをやっていた?」

「……てめぇら…、ちょっと話がある…。」

「ん? ああ、ミナミから聞いたのか。」

「ポルナレフは、口が軽いからな。アヴドゥルさんが生きていることを敵に知られては困る。」

 ここまで道中でミナミとアヴドゥルから聞かされたことが事実だったことを知り、ポルナレフは、ポカーンとしたが、やがて、顔を赤くして、プルプルと震えだした。

「ごめんなさい。ポルナレフさん。正直話さないでいたのは、辛かったんですよ。」

「そうそう。アヴドゥルの話題を出すと辛い顔するから、俺らも大変だったんですからね。」

「……もういいよ。どうせ俺は口がかるいですよ~だ。」

「すねるな。」

「それで? ここまでしてアヴドゥルを隠していた理由ってのは?」

 すねながらポルナレフが聞いた。

「それはじゃな…、これじゃあ!!」

 すると、海から何か巨大な物が浮上してきた。

 

 潜水艦だった。

 

「うおーーー! ここまでやるぅ!? なんて金がかかる旅だよー!」

「アヴドゥル、操縦できるのか?」

「わしもできるよ、わしも。」

「じじいの操縦は信用できないぜ。」

「だね。」

「そうっすね。」

「お前らー!」

 今度はジョセフがすねた。

 あー、めんどくせぇっと、ミナミと仗助、そして承太郎は思ったのだった。

 

 まあ、そんなこんなで、出発。

 

 

 

 

「ふぃ~。」

「姉ちゃん、酔った?」

「違う…。やな予感しかしなくって。」

「みんな、コーヒー飲むかい?」

「あっ、私、砂糖とミルクいっぱいください。」

「姉ちゃん、コーヒー好きだけど、甘~いのしか飲めねぇんだよな。」

「なんだぁ? お子ちゃま味覚だな?」

「悪かったですね…。苦いの嫌いで…。」

「いやいや、可愛い可愛い。」

 

「ん!」

 

 その時、潜水艦の望遠鏡で外を見ていたアヴドゥルが、陸地を見つけた。

 

「アフリカ大陸だ! 到着までもうすぐだぞ!」

「いよいよ、エジプトだな。」

「ああ、いよいよだ。」

「エジプトか…。」

「とうとうだね…。長かった…。ほんと…、長かった…。」

「俺もそう思う。」

 それぞれが、エジプトまでの長い道のりを思い返し、やっとのエジプトの地に思いをはせる。

 道中、ほんと毎日のようにスタンド使いと戦いまくり、飛行機に始まり、船、車、セスナなど色々と乗り換え……、やっとこさのエジプト。

「あっ、涙出そう…。」

「おいおい、まだまだ本番はこれからだぜ?」

「だって…、だってぇ!」

「ここまでの道中で、タロットカードの暗示のスタンドはほとんど倒したはずだ。DIOからの刺客ももうほとんどいな…。」

 

『むぎゃあああああ!』

 

「ミナミ! 危ない!」

 近くにあったコーヒーカップが突如形を変えて襲ってきたため、ジョセフが庇った。

 そして右手の義手が切断された。

「お父さん!」

『ヒャハハハ!』

 その生き物らしきものは、壁に張り付き、溶けるように消えた。

「スタンド!? 馬鹿な、いつの間に!?」

「じじい! しっかりしろ!」

 仗助が気絶したジョセフを治した。

「ハイプリエステスだ…!」

「はいぷり…?」

「ハイプリエステス(女教皇)。確かミドラーという使い手だったはずだ。能力は、あらゆる金属やガラスやプラスチック、ビニールはもちろん、あらゆる無機物に変化できる。叩いても触っても、攻撃してくるまで見分けがつかんらしい。」

「し、しかし、どうやってこの潜水艦に…?」

 すると、ドバーッと近くの壁から水が吹き出てきた。

「あ~、なるほど穴を空けて入ってきたのね…。」

「俺が直すっす!」

「いや、手遅れだ! すでに浮上システムも、酸素もほとんどない! 直したとしても航行はもう不可能だ!」

「掴まれ! 海底に激突するぞ!」

「やっぱりこうなるのね! 俺達の乗る乗り物ってほとんど必ず大破する!」

 そして、潜水艦が海底に衝突した。

「ああああああ!」

「わぶっ!?」

 掴まり損ねて吹っ飛んだミナミが花京院の上に乗った。結果、花京院の顔がミナミの胸の間に埋まる。

「いった~…。」

 ミナミが痛がっていると、パンパン!と花京院がギブギブとタップした。

「おい、ミナミ、早く起きろ、花京院が窒息する。」

「えっ? あっ! ごめんなさい!」

「あ、ああ…。だいじょうぶだ。」

 ミナミがどくとき、彼女の服に引っかかっていた青いバラの花が、スルッと落ちて、花京院の胴体にあたるとパッと光に粒になって消えたのだが、誰も気づかなかった。

「おい、アヴドゥル…、どの計器に奴が化けたか分かるか?」

「確か…、その右から二番目の下か?」

 そして承太郎が、スタープラチナの拳を出し、その計器を狙った時…。

「違う! アヴドゥルさん、後ろ!」

「ぬっ!?」

「ドラララララ!!」

『ムキャナハハハハ!』

 仗助がアヴドゥルに襲いかかろうとしたハイプリエステスを殴るが、それより早く動いたハイプリエステスが天井に張り付き、また溶け込んで消えた。

「は、速い!」

「くっそ、逃げ足の速い奴だぜ!」

「みんな! このままでは、水没して死ぬ! 隣の部屋へ行き、脱出だ!」

 そう言ってポルナレフが潜水艦の扉を開こうとしたとき、ドアの取っ手がスタンド…ハイプリエステスに変形した。

「ば…馬鹿な…! もうこんなところに…!!」

「オラァ!」

 ポルナレフの両腕を切断しようとしたハイプリエステスを、スタープラチナが捕えた。

「やったっすね、承太郎さん!」

「承太郎! 躊躇するな! 速く首を引きちぎるんだ!」

「アイアイサー。」

 そして、スタープラチナの両手が、ハイプリエステスをグチャグチャにしようとして…。

「ぐっ!」

 手の中でカミソリの刃に変身したハイプリエステスにより、スタープラチナの両手が切れた。その結果、ダメージがフィードバックされ承太郎の両手が切れた。

『キャハハハハハ!』

 スタープラチナの両手から逃れたハイプリエステスが、再び壁に溶け込んだ。

「承太郎さん! 手、治します!」

「……てめぇは、この承太郎が、ぶちのめすぜ。」

 ハイプリエステスを睨みながら承太郎はそう言った。

 一行は、隣の部屋に逃れ、扉を閉めた。

「この潜水艦はもうダメだ! とにかく脱出し、エジプトに上陸するしかない!」

「だが、このここは、海底40メートルだぜ!? どうやって海上に!?」

「決まってるじゃろ。泳ぐんじゃよ。」

 

 

 そして一行は、酸素ボンベが置いてある脱出口に到着した。

 

 

「今度は、スキューバダイビングかよ…。俺、経験無いぜ?」

「僕も。」

「俺も。」

「私も。」

「姉ちゃんと同じく。」

「隣の部屋からハイプリエステスが襲ってくる! 早く潜り方を教えてください!」

 そこから、即席でのスキューバダイビングのレッスン。

 とにかく慌てない。

 一気に浮上しない。肺が破裂するので。

 体を慣らしながら浮上する。

 エジプトにはもう近いから、海底にそって上がっていこうということで。

 酸素ボンベのレギュレーターを口にくわえる。涎は、吐いた息と共に出て行く。

 それと当然だが、水中では喋れないので、ハンドシグナルを使うこと。

「スタンドで喋ればいいんじゃないの?」

「敵にも声が伝わったら大変じゃ。」

「あ、そっか。」

 ダーク・ブルー・ムーンの時みたいにスタンドを使っての会話は今の状況では不可だった。

「なーんだハンドシグナルなら…。」

「……パン、ツー、まる、みえ。」

「YEAAAAA!!」

 

 ビシバシグッグッ

 

「襲われて死にそーだっていうのに、くだらんことやっとらんで行くぞ!」

 

 そうして、加圧のため部屋に海水を溜める。

 そして、全員がOKのサインを出した直後…。

「ブゴゴッゴ!?」

 ポルナレフの酸素ボンベのレギュレーターがハイプリエステスだった。

『ポルナレフさん!?』

『まずいっす! 体内に…! こうなりゃ…、ドラァ!!』

「ブゴバアア!?」

 体内に入ったハイプリエステスを、仗助がクレイジー・ダイヤモンドの拳による腹パンで貫いて追い出した。

『ハアハア! ったく、前もそうだけど、お前、治せるからってメチャクチャだぜ、仗助!』

『急げ! 次に変身されるぞ!』

 外へ出されたハイプリエステスが、水中銃に変身し狙ってきた。

 それより早く一行は、空けた扉から逃げだし、扉を閉めた。

『よし! 閉じ込めた! みんな、行くぞ! 慌てず、ゆっくりとだ!』

 そして一行は、ゆっくりと水圧に気をつけながら、海底に沿って泳いでいく。

 紅海の美しい海中は、こんな時でなければずっと泳いでいたいほど美しかった。

 敵が追って来る気配は今のところない。

 

 

 イクナ

 

 

『? 今のは…?』

『……どうやら回り道した方が良さそうです。』

『ブルー・ブルー・ローズか? しかしもう目前だぞ?』

『何かがある…。危険だわ…。』

『だいじょーぶだって。気にしすぎだぜ、ミナミぃ。』

『で、でも! あっ!』

 

 どうやら手遅れだったらしい。

 

 海底が……、巨大化したハイプリエステスの顔だった。

 

 ガバッと口を開けたハイプリエステスに、一行は吸い込まれた。

『馬鹿な…! なぜこんな巨大な…、まさか!?』

『そうだよ~ん! あたしは、7メートル以上上の海岸にいるよ! このまま、ハイプリエステスの歯ですりつぶしてやるわ!』

 そして一行は、口の中の舌の上に放り出された。

『承太郎~! お前は私の好みのタイプだから、心苦しいわ! 私のスタンド、ハイプリエステスで消化しなきゃならないなんて!』

「……おい、承太郎。耳貸せ。」

 すると、ポルナレフが、承太郎にヒソヒソと作戦を伝えた。

「…やれってのか?」

「いいから、ほら。」

『? 何やってんの?』

「あ~あ…、おしいぜ。」

 すると承太郎が帽子の端を摘まんで落ち込んだ。

「1度アンタの素顔を見てみたいもんだ。俺の好みのタイプかもしれねーしよ。恋に、お、ち、る、も。」

『……。』

 どうやら、敵に相当な揺さぶりにはなったらしい。

「すっげー真顔…。」

「シッ!」

『あ~ん、嬉しいわん。でも、そっちのハンバーグ頭くんも捨てがたいのよねぇん。』

「あっ。」

『?』

「あっ? てめぇ…、今、俺の頭がなんだって?」

「じょーすけーーーー!」

「ドララララララララララララララララララララララララララララ!!」

「あんた、馬鹿だよぉ…。」

『なんですってぇ!? ぅ…ゲッ!?』

「仗助の能力は…、破壊した物を治す力。いかなる形にも変形できるし、あんたが飲み込んだ海水って、どこに戻るのかな?」

『うううううううう! うげぇぇえぇ!!』

 舌を伝って喉の奥に行っていた海水が凄まじい勢いで飛び出してきて、ハイプリエステスの口の中を破裂させん勢いで暴れ狂う。

『わああああああああああああ!』

 当然口の中にいる全員が巻き込まれるが、プッツンした仗助の力による戻る力が勝ち、ハイプリエステスは、懸命に耐えていたが、歯茎の方が耐えきれず、歯が何本も抜け、その隙間から、海水と共に全員が放り出された。

『ついでだ、他の歯も抜いておいてやるぜ。』

 そしてダメ押しとばかりに、承太郎がスタープラチナで残った歯をすべて破壊した。

『ヤレヤレ、確かにかてぇ歯だが、ちいとばっかし、カルシウム不足だったみたいだな?』

 

 そして一行は、ついに海上に上がり、エジプトの浜辺に上陸した。

 

 

 そこには、ひとりの女が倒れていた。息はあるものの、ピクピクと痙攣していた。

 

「ハイプリエステスの本体、ミドラーだな。」

「ちょっとだけ顔を見てくるぜ。美人かも知れねーしよ。」

 そしてポルナレフが興味本位でミドラーに近寄ってその顔を見た。

 だがすぐ飛んで戻って来た。

「み、見るな! 歯が全部ぶっ飛んじまってて、とてもじゃないが見れたもんじゃねぇ! あと、ゲロまみれ!」

「ダメージのフィードバックか…。仗助への禁句…、全然敵に伝わってないんだね。」

 あちゃーっと、ミナミは、額を抑えた。

 

 

 そして一行は、ついにエジプトの地に上陸できたのだった。

 

 

 

 




プッツンした仗助なら、これくらいできそうな気がして。


次回から、エジプト編に突入。


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愚者の暗示

イギー登場。


そして、未来で起こった事を少し話すミナミと仗助。


 

 浜辺の近くの集落で、ジープを買い、砂漠を途中まで横断。

 だが途中で止まり、何かを待つ。

 すると、空からヘリコプターが来た。

「うわっ、砂が!」

「ぺっぺっ!」

 舞い上がる砂に、ミナミと仗助は慌てた。

 やがて、ヘリコプターが着陸した。

「SPW財団のマークが入ってるな。」

「これに乗ってくんすか?」

「いや、助っ人を連れて来て貰ったのじゃ。」

「助っ人!?」

「じょ、ジョースターさん! まさか…。」

「アヴドゥル、そのまさかじゃ。」

「アイツに助っ人になどできません!」

「アイツって?」

「愚者のカードの暗示、ザ・フールの使い手じゃ。」

「ざ・ふーるぅ? へへへ、そりゃ別の意味でだいじょうぶかよ?」

「ポルナレフ、おまえじゃ勝てん。」

「んだとぉ!?」

「扉が開くぞ。」

 そしてヘリコプターの扉が開いた。

 すると、二人の男性が出てきた。

「どっちだ? どっちが助っ人だ?」

「いえ…、我々は、助っ人となる方を連れてきたSPW財団の人間です。」

「おいおい? じゃあ、助っ人ってどこだよ?」

「まだヘリコプターに…。」

「ああん? すっげーチビなわけ? どれどれ?」

「ポルナレフ! 迂闊に近づくな!」

「気をつけてください! ヘリコプターが揺れてご機嫌斜めなんです!」

「お? お、おおおおおお? おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン!!」

 

 ヘリコプターの扉から飛び出してきたのは、一匹の黒いボステリアン…つまり犬だった。

「い、犬ぅ!?」

「今度は、犬!? まさかこの犬が…?」

「はい、助っ人として来た方…です。」

「オラウータンに続いて、今度は犬か…。」

「ドブネズミや、ストレイ・キャット(猫草)もいることだし、ネズミに、猫もあれば、犬もありだよな?」

「名前は、イギー。どこで生まれたのかは知らないが、ニューヨークの野良犬狩りにも決して捕まらなかったのを、アヴドゥルが見つけてやっとの思いで捕まえたのだ。そうそう、髪の毛をむしるのが趣味で、あと、人の顔で屁をするのが趣味の下品な奴じゃ。」

 

 プッ モワ~~ン

 

「…どちくしょうが!! こらしめてやる、おんどりゃーーーーー!!」

 髪の毛をむしられ、顔に屁を浴びせられてキレたポルナレフがシルバー・チャリオッツを出し、イギーに斬りかかろうとした。

 しかし、直後、砂からスタンドが出現した。

 ネイティブ・アメリカンの装飾を思わせる羽根飾りに、後ろ足がタイヤになった機械の獣のような姿だった。

 シルバー・チャリオッツがそのスタンドに剣を振り下ろすと、ザクッと砂になって切れ、そして切れた端から剣を挟むように戻り固定した。

「げっ! 砂が固まって…、動かねぇ! うわわ、た、たすけてくれぇえええ!!」

 そして動けなくなったポルナレフに、イギーは遠慮なく襲いかかりまた髪をむしりだした。

「まったく、人の話を聞かないから…、ホレッ、イギー。」

 するとアヴドゥルが何かを出した。

 それは、ガムだった。

 ピクッと耳を立てたイギーが、アヴドゥルに飛びつくようにガムを奪い取って、ムシャムシャとガムを噛んだ。

「イギーは、コーヒー味のガムが大好物でな。」

「く、くっそ~、俺の髪の毛が…。」

「なんて、犬だ…。これが助っ人とは…。」

「砂のスタンドか…。俺でも勝てるかどうか微妙だぜ。」

「お、俺じゃなくてよかった~。」

「だね。」

「ミナミ~、こんな野郎イヤだよな?」

「えっ? 私は犬好きだよ?」

「なに~~!!」

「ほら、おいでおいで。」

 しかし、イギーは、プイッとそっぽを向いた。

「あれ?」

「イギーは、誰にも心を開かんのだ。元々は、血統書付きのペットだったらしいが、逃げだし、野良犬共のボスとして君臨していたのじゃ。」

「む~…。残念。けど…、イギーって…、あっ。」

「姉ちゃん。」

「……なんとかするよ、絶対。」

「?」

 ジョセフ達は不思議そうにミナミを見たが、承太郎だけは、帽子の鍔をつまみ、何も言わなかった。

 

 その後、ヘリコプターに乗せてあった、物資をジープに積み。

 ジョセフは、あることをSPW財団の使い達に聞いた。

 

「ホリィの様態を教えて欲しい。」

 

 っと。

 すると、SPW財団の使い達は、言いにくそうに答える。

「あまり…良いとは言えません。体力の消耗が激しく、命はいぜん危険です。我々、SPW財団の医師の診断では……、もって、あと、2週間…。」

「2週間…。」

「もうそんなに…、ホリィさんも、この時代の仗助も…、このままじゃ…。」

 ミナミは、青ざめる。

「姉ちゃん…。」

「もし…、もし…、4歳の仗助が耐えられなくなったら、ここにいる仗助はどうなるの? まさか未来は…。」

 そう、この時代。仗助は、ホリィと違ってまだ5歳にもならない幼児なのだ。

「……負けねぇよ。」

「仗助…?」

「俺は、あんまし覚えてねぇけど、50日間、ずっと戦ってたんだ。知らねぇ相手とはいえ、そいつの呪いに負けねぇためにな。だから、負けねぇ。必ず勝つ! そいで、胸張って、未来に帰ろうぜ、姉ちゃん!」

「仗助…。」

「…うむ。そうじゃな。ホリィも、幼いお前も絶対に死なせん!」

 ジョセフ達は、仗助の言葉によって決意を新たにした。

 ところが…、SPW財団の使い達は、非常に気になる情報をもたらした。

 

 2日前に、謎の9人の男女が、DIOが潜伏していると思われる屋敷に入っていき、それからそれぞれ旅立っていたという情報だった。

 

「9人!?」

「馬鹿な! タロットカードのスタンドは、ホル・ホースを除いて、残すは、『世界(ワールド)』のDIOだけのはずだ!」

「わ、分からん…。9人だと?」

「待ってください。必ずしもタロットカードなどの暗示だとは限りませんよ?」

「ミナミ?」

「思い出してください。セスナで砂漠を横断するとき、ザ・タイドというタロットカードとは関係ないスタンド使いが襲ってきたじゃないですか。」

「そういえば、そうじゃ!」

「ざ・たいど?」

「ああ、アヴドゥルさんは、知らないんでしたね。敵スタンドですよ。それに、ミナミと仗助のスタンドだってそうだ。カードの暗示を持っていない。つまり、まったく暗示とは関係の無いスタンド使いという可能性が高いですね。」

「だとすると、余計に分からん! どこからそんなスタンド使いを…。」

「あっ。」

「あっ。」

 ミナミと仗助は、思い当たり、同時に声を上げた。

「心当たりがありそうだな?」

「はい…、私達の故郷の町に、多数のスタンド使いを生み出した、弓と矢がありました。」

「そいつに射られると、死ぬか…スタンド使いになるか…。原理は分からないっすけど。たぶん、それでスタンド使いを量産してるんじゃ?」

「そんなもんがあるのかよ!? それじゃあ、スタンド使いを増やしたい放題じゃねぇか!」

「ですが、必ずしもスタンドを使いこなせるかって言われれば…、否、です。それに、どんなスタンドになるかもその人にもよるし……、今までのように殺し屋向けとは限らないし…、こちらの味方になってくれた人もいたし、中には、自分のスタンドに翻弄されて、自分のスタンドに殺されてしまう人もいたようですから。」

「なるほど…、そんな手がDIOにはあるのか…。」

 スタンド使いを量産する手段が、敵側にあるという情報に、ジョセフ達は、嫌な汗をかいた。

 

 ジョセフの分析だと、DIOは、まだ体が馴染んでいないらしく、そしてプライドが高くて、エジプトのカイロから動こうとはしない。

 だからこそ、これまでエジプト入りを阻む刺客を寄越してきたし、エジプトに上陸した今、さらに防御の手を強めたようだと。

 

「それと…、ミナミを奪い取ることも念頭に入れて、今まで以上に激しい交戦になるかもしれん。」

 

 そう、DIOは、ミナミを狙っている。生命から寿命を奪い、青いバラの花にして、他者へ与える力。

 そして、出来るかどうかは分からないが、死んだ者を生き返らせられるとされる力。

 下手な悪党ならば、何が何でも欲しがるだろう、圧倒的な力。

 

 すると、暗くなっているミナミに、イギーがフンフンと鼻を鳴らして、近づいてきた。

「なに?」

「あのイギーが、自ら人に近づくとは…。」

「……あっ!」

 するとポロッとミナミの服の隙間から、青いバラの花が1本落ちた。そしてイギーに当たり、パッと光の粒になって消えた。

「おい、今!」

「…いや、これでいいと思います。」

「そうか…。」

「これで、イギーの寿命は、1年延びたということか。」

 そう言うアヴドゥル。だが、ミナミは、慈しむように足下にいるイギーを見つめていた。

「ブルー・ブルー・ローズは、どこからか、誰からか分からねぇけど、青いバラの花を取ってくる習性があるんっすよね。」

「ああ、あん時も大量にあったよな…。」

「そういうことは、早めに言いなさい。」

「…ごめんなさい。」

 

 その時、ミナミの足下にいたイギーが、耳をピンッと立たせた。

 

 そして一行は、荷物を乗せたジープに乗り、砂漠の横断を始めた。

 

 

 

 




イギー、ミナミに少しだけ心を許す(?)。
動物の本能で、この面子で一番ヤバいことを感じているのか……。

これで、花京院、イギーに、青いバラの花が入り込み、あらゆる死因を1回だけなかったことにする、命のストックができる。
あとは、アヴドゥルだけ。


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ゲブ神

エジプト9栄神編。


戦いは、かなりオリジナルのようで、原作も交えています。


イギーがミナミを……?


 

 仗助は、ムスッとしていた。

 理由は……。

「ジョースターさん! なんでそのクソ犬がミナミの膝の上なんすか~!」

 あと、ポルナレフも不服らしく運転しているジョセフに叫ぶ。

「知らん。ミナミが座ったら勝手に乗ってきたのだ。コイツの気まぐれだろうから、気にするな。」

「まさか…、エロ犬か!?」

 ポルナレフが言うと、ミナミの太ももの上のイギーがガルルル!っと唸った。まるで心外だと言わんばかりだ。

「わ、悪かったよ…。そんな怒るな。」

『フンッ!』

 ポルナレフが降参だと手を上げると、イギーは、鼻息を漏らし、ミナミの太ももの上で丸くなった。

「ミナミ、酔ってはいないか?」

「……うーん、ちょっとマシ。イギーのおかげかマシ。」

「姉ちゃんの太もも、独占しやがって…。」

「なぁに? 仗助。そんなに私の膝に乗りたかった? 昔みたいに。」

「だー! ちげぇよ!」

「ま~、ムチッとしてて、座り心地は良さそうだよな~。」

「ポ~ル~ナ~レ~フ?」

「ち、違いますよ!」

「君が言うとどうも疑わしいんだよな。」

「花京院まで何言ってんの!? アヴドゥルも疑いの目で見んな!」

 そんなこんなで、ジープの上でギャーギャー大騒ぎ。

 

 その時だった。

 

 突然、ジョセフが急ブレーキをかけた。

 

 後輪が浮き上がるほどの勢いで止まる。

 

「な、なに!?」

 ミナミは、イギーが落ちないよう支えながら困惑した。

「み、みろ! あれを!」

 ジョセフが指差す先には、墜落したヘリコプターがあった。

 飛び去ったはずのSPW財団の使い達を乗せたヘリコプターだった。

 何かあったのは間違いない。確認のため、ジープを降りて警戒しつつも、墜落しているヘリコプターに近寄った。

「兵器で落とされた形跡はなし…。まるで、ドスンッとそのまま落とされたみたいだ!」

 ガラスは、割れ、ついさっき墜落したとばかりに煙が出ているが、燃えた形跡もない。

 異様だった。

 敵スタンド…、その言葉が全員の脳裏を過ぎった。

 調べると、ヘリコプターに挟まる形でSPW財団の使いのひとりが死んでいた。

 しかし、おかしい。

 なぜなら、まるで掻き毟ったようにヘリコプターの壁部分に引っ掻いた形跡が残っていた。

 そして…、何よりおかしかったのは、口の中に、大量の水が溜まっていたことだ。

 承太郎が、その死体を横に向けると、水が大量に流れ出る。しかも、生きた小魚が入っていた。

「うぅ、酷い…。」

「異常だぜ…、なんで砂漠のド真ん中で溺れ死んでいんだよぉ!」

「おい、こっちの奴は生きてるぜ!」

 もうひとりのSPW財団の使いは息があった。

 しかし、なにか様子がおかしい。

「み、みず…。」

「水が欲しいのか? ポルナレフ、そこの水筒を取ってくれ。」

 そしてジョセフが水筒を開けた直後。

「ひいいいいいいいいいいい!! 水が襲ってくるぅうううううううううう!!」

 

 そう叫んだ直後、水筒から悪魔の手のような形をした水が飛び出し、SPW財団の使いの顔を掴み、そのまま頭をねじ切って、水筒の中に引きずり込んだ。

 

「ーーーーーーーー!!」

「ミナミ、しっかりしろ!」

 あまりに衝撃的な映像を目の当たりにし、硬直してしまうミナミを掴み、アヴドゥルが身を伏せさせた。他の者達も水筒から離れて砂漠の砂の上に伏せる。

「承太郎さん、本体を探してくださいっす!」

「もうやってる。どうやら、敵本体は、かなり遠くからスタンドを操作しているらしいな。まったく見えねえ。」

「少なくとも、キロ先ってところっすか…。」

「だろうな。太陽の時と違って、間抜けな仕掛けもねぇ。」

「ってことは、恋人のカードの奴みたいに、ちっこいぶん遠距離操作が可能なタイプってとこっすね。」

「だが、パワーは圧倒的にこっちの方が上だ。相当な使い手だろうぜ。」

「飛んでるヘリコプター1機落とすなんて、相当っすよ!」

「仗助、仗助…。」

「なに? 姉ちゃん?」

 少し離れた位置にアヴドゥルと共に伏せているミナミが仗助を呼ぶ。

「染みこんだ水を、戻せない?」

「?」

「水を触媒にしてるなら、水辺にいる可能性もあるし…、元の水を持ってる可能性もある…。」

「なるほど…。」

「どうするつもりだ?」

「水を元に戻してみるっす。そしたら、水は、自然と元あった場所…、もしかしたら本体の居所に戻るかもしれねぇっす。」

「なるほどな。」

「待ってくれ。」

 そこに待ったをかけたのは花京院だった。

「仗助、君のスタンドは、せいぜい1、2メートルの射程距離だ…。まさかあの水筒に接近する気じゃないだろうな?」

「…そうするしかないっす。」

「危険だ。君がやられたら、回復する術も無くなり、手詰まりになる可能性がある。ポルナレフ、水筒を攻撃してくれ。」

「はあ!? お前…、さっき見ただろ! あの小さい水筒に、人間の頭1個入っちまってるんだぜ! お前がやれよ! 遠距離だろ!」

「僕だってイヤだ!」

「自分が嫌がることを人にやらすな!」

「か、花京院さん!」

「?」

 ミナミが青ざめた顔で指差している。

 その先を見た花京院の前に、砂からしみ出してきた悪魔のような手が爪を出した。

 そして、ガリッ!と花京院の顔を引っ掻いた。

「あっ!」

 目が切れて、出血して転がる。

「花京院さん!」

「しまったぁ! 奴はすでに血と共に外へ出ていたのだ! 水だ…、水がスタンドだ!!」

「ポルナレフ! シルバー・チャリオッツを出して身を守れ!」

 しかし、ポルナレフが動くよりも早く、ポルナレフの手の下に水が湧き出て、悪魔のような手が出てきていた。

「しまっ…。」

 

 だが、その時。

 大きなアラーム音が死んでしまったSPW財団の使いの手の時計から鳴った。

 

 すると、悪魔のような手が急に方向転換し、時計のアラームを破壊した。

 

「…あ。そうか…。」

「音だ! 音っす! 敵は音に反応して動いてるっす! ポルナレフさん! 花京院さんを! 血が垂れる音が!!」

 ミナミと仗助が叫ぶ。

「うわあああああああ!!」

 ポルナレフは、気絶した花京院を抱きかかえ、砂の上を走りジープへ急いだ。他の者達はジープに近かったため、すでに避難していた。

 ジープ手前で、敵が追いつき、ポルナレフの足を引っ掻きかけて…。

 

 ガリガリガリガリガリガリ!

 

 ヘリコプターの方から鉄を引っ掻く音が聞こえ、敵はそっちへ向かった。

 見ると、ブルー・ブルー・ローズがヘリコプターから生えて、根っこの先で鉄を引っ掻いていた。

「あ、ぶっねええええええええ!!」

「花京院さん、しっかり!」

「仗助!」

「はいっす!」

 すぐに仗助が治療し、花京院の顔は治った。

「ナイスじゃ! ブルー・ブルー・ローズ! ミナミか?」

「いえ…、また勝手に動いてます。」

 ブルー・ブルー・ローズの意思がうまいこと動いて、ポルナレフと花京院を救ったのだった。

 悪魔のような手が、ブルー・ブルー・ローズの根っこを切り裂いた。そして、ブルー・ブルー・ローズは消えた。

「敵は…?」

「地面に染みこんだぜ。」

「音を探知し…、動くわけだから、我々に姿を見せずとも移動できる! 地面から我々が気づく前に、前からでも後ろかでも攻撃できるんじゃ。しかも、本体は遠く!」

「くっそー、殴る暇もなかった…。」

「…ダメだよ。おそらくクレイジー・ダイヤモンドで水を戻したとしても無意味。水筒からあれだけのパワーで攻撃できる相手だから…、瓶に閉じ込めたとて、すぐに破られちゃう。」

「ちくしょー、アンジェロの時みたいにゃいかないか…。」

 アンジェロのスタンド、アクアネックレスは、水に混ざる強みが強く出ており、今相手にしている敵ほどのパワーはなかった。ヘリコプターを落とすほどなのだ、これだけのパワーでは、閉じ込めても無意味だろう。

「……でも、やな予感がする。…イギー?」

「ワン!」

「キャッ!」

「おい!」

 次の瞬間、イギーがスタンドを出し、ミナミを抱えてジープから飛び降りて、離れた。

「なにやって…。」

 ジョセフ達がその行動を不審がった直後、ジープの真下に大きな水たまりが発生した。そして、ジープが傾く。

「い、イギーの野郎! 敵の接近に気づいてたな!?」

「まずい、片側へ行け!」

 しかし、移動しようとした直後、車輪が切断され、その反動でジープが大きく傾き、乗っていた者達全員を砂の上へ放り出した。

「ああ! みんな…! うぐっ!」

「わふっ。」

 後ろからイギーのスタンド、ザ・フールに口を塞がれ、そして乗っかられてしまい、ミナミは、身動きが取れなくなった。

 

 仗助は、あんにゃろう…!っと怒ったが、敵から身を守るため動けなかった。

 物音を立てれば、即、やれる。そんな緊迫状態の中……。

 アヴドゥルが腕に付けている腕輪を外しだした。そして、砂の上に歩くように投げていく。

 そして、敵の出方を待つと…、腕輪を投げた先に敵のスタンドが出現した。

 即座に、マジシャンズ・レッドを放とうとしたが……。

 炎が水を蒸発させるよりも速く、凄まじい軌道を描きながら、水のスタンドはアヴドゥルの首の横を切り裂いた。

「何者…? つ…強い…。」

 倒れ込むアヴドゥルにトドメを刺そうと、水が動く。

「ムグー、ムググ、ムグー!」

 ミナミは、ザ・フールに押さえつけられた状態で、暴れようとするが、砂と一体化しているザ・フールにより、より強く抑え込まれた。

 

 イギーは、本能で気づいていたのだ。

 敵がミナミを狙っており、唯一生かすことを。

 そして、ブルー・ブルー・ローズなら、数キロ先の敵さえも倒せることを。

 

 その時、承太郎が走り出した。

 その足音に反応して、敵スタンドが方向転換して、アヴドゥルから離れる。

「!?」

 背中を向けていたイギーの後ろから走ってきた承太郎が、イギーを掴み上げた。

「やれやれ…、敵がミナミを攻撃しない。そして、ブルー・ブルー・ローズを追い詰めた状態にすりゃ、なんとかなるって踏んでの行動か? イギー、てめぇ、匂いで分かんだろ? 敵の位置が。さぁて、協力して貰うぜ? どこから襲ってくる? 教えろ。」

「ウッ…ウウ! アウゥウウウン!!」

「ムグー!」

 拘束されているミナミが後ろだと叫びたかった。

 次の瞬間、ブルー・ブルー・ローズがゴワッ!とミナミを中心に、承太郎とイギーをも守るように発生した。

 ヘリコプターから剥がしたのか、ブルー・ブルー・ローズが運んできた鉄板の一部が承太郎を攻撃しようとした敵スタンドから承太郎の背を守り、そして、ヘリコプターの方で、再び、激しいガリガリ音を発する。

 だが、敵も気づいているらしく、そちらには向かわない。

 分厚いブルー・ブルー・ローズの鮮血色の植物の根っこを切り裂きまくり、中にいる承太郎を狙い続ける。染みこまないのは、砂の中までブルー・ブルー・ローズが生えているからだろう。

「うぅう…う…。」

 ミナミは、抑え込まれている苦しさと、精神力を奪われる感覚に目の前が暗くなってきた。

 すると、まるでシルクロードのように、ブルー・ブルー・ローズが根っこで道を作り上げた。

「なるほど? この先かに敵本体がいるってことか?」

「ぁ…う…。」

「少し辛抱してくれ。すぐに終わらせてくる。行くぞ、イギー。」

「アウゥウウン!」

 承太郎は、イギーを掴んだまま、ブルー・ブルー・ローズの根っこの道の上を走った。

 ブルー・ブルー・ローズにより砂が変異しており、足音が伝わらないのか、敵が来ない。

 やがて、イギーのスタンドの射程距離から外れたのか、ミナミの上からザ・フールが消えた。

「姉ちゃん!」

「ぅう…う…。」

「こりゃいかん! まさか精神力はおろか、すべての力を根こそぎ奪っているのか!? 承太郎! 早く行け!」

「僕らも行った方が…。」

「いや…、承太郎に任せよう! 仗助はアヴドゥルを!」

「はいっす!」

 仗助は、倒れているアヴドゥルを治療した。

 

 

 一方、承太郎は、ブルー・ブルー・ローズが作り上げた道をイギーを抱えたまま走り続けていた。

「むっ! 見えてきたぜ…。」

 スタープラチナの目がついに、敵の本体らしき人物を捕捉した。

 その時。

 ボッと、その人物の周囲、数十メートルに砂が舞い上がった。

「ぬぅ!? 砂が…、まさか…、野郎…。」

 それは、ソナーの代わり。イルカやコウモリが超音波で障害物を捕捉するように、砂の反射音を利用した方法だった。

 舞い落ちてくる砂が、承太郎とイギーに当たった。

 そして、道の左右から、悪魔のような手が飛び出してきた。

「スタープラチナ!!」

 だが、敵は、軌道を変則的に変え、承太郎の肩を抉った。

 

『フフフ…。位置さえ分かれば、どこからでも攻撃できるのだ。そうなれば、私の方が早い!』

 

「ギャ、アウゥウウウウン!!」

「て!? …てめ…!!」

 次の瞬間、ザ・フールが出現し、ブルー・ブルー・ローズの道から、承太郎を突き飛ばした。

 承太郎が倒れていく中、その際の衝撃でイギーが承太郎の手から逃れた。

 

『ククク! これは傑作だ。その犬、自分が助かるために、お前を我がスタンドの方へ差し出したか。ならば、それを受け取って…トドメと行こう!』

 

「残念だぜ…。イギー…。このクソ犬が…。俺を見捨てなきゃ、ミナミにも、ブルー・ブルー・ローズにも信頼を寄せられただろうによ…。」

「ウギっ!?」

 砂を触媒にしているザ・フールからブルー・ブルー・ローズが生え、大量の砂を纏ってイギーをペシーンと弾き飛ばした。ブルー・ブルー・ローズに背中を支えられて砂の上に倒れずに済んだ承太郎の方へ。

 そしてイギーを受け止めた承太郎は、メジャーリーガーの投手顔負けの投法で、スタープラチナを操り、イギーを敵の本体に投げつけた。

「ギャイイイイイン!!」

「なっ!?」

 敵は、驚き、大急ぎでスタンドを手元に戻してイギーとイギーのスタンド、ザ・フールを防いだ。

 

「……ど、どこだ! どこへ行った、承太郎…?」

 

「……。」

 承太郎は、すでに敵の真後ろにいた。

「…ふ、フフフ…、そうか、そんなところまで来ていたか。咄嗟に我がスタンドでガードしていなければ、やられていた…。」

 敵本体の周囲には辛うじて、水たまりが出来ていた。

「もはや…、この杖で、音を探知する必要も無い。だが…、帰るために、必要。」

 次の瞬間、接近戦での戦いが始まった。

 だが、接近してしまえば、水の発射方向も分かり、スタープラチナの拳が、敵の本体の胸に突き刺さるようにめり込んだ。そして、敵スタンドは、承太郎の帽子を飛ばした。

「ヤレヤレ。海の中で取れなかった帽子を飛ばしやがって。だが、安心しな。手加減はしている。致命傷じゃない。ま、すぐに仗助に治療してもらえるから安し…。」

 だが次の瞬間、敵は、突如自分のスタンドで自分の頭を貫いた。

「てめ! 何を!?」

「ふ、フフフフ…。承太郎…、貴様、この私から…、あと8人の仲間について…吐かせる予定だっただろ? ジョセフ・ジョースターのハーミットパープルは…、相手の、考えていることすらも…念写…できる…。喋るわけには…いかんよ…。」

「DIO…、てめーら、なんだってそんなにDIOに忠誠を誓える?」

「承太郎…、俺は死ぬこと、なんぞ、これっぽっちも怖くは…ない…。生まれた時から…、スタンド能力のせいで…、なにも…怖くはなかった…。どんな奴にも…勝った…。だが…DIO様…あの方にだけは…、あの方にだけは…心から…初めて…殺されたくないって思えたんだ…。あの人は…あまりにも、強く、深く…そして美しい…。この世ではじめて…俺を認めてくれた…人だった…。俺は、ずっと待ってたんだ…。この人に…出会えるのを…。『死ぬのは怖くない。しかし、あの人に、見捨てられ、殺されるのだけは、イヤだ』…! 悪には…悪の救世主が必要なのだよ…。」

 息も絶え絶えの敵は、語る。

 彼らには彼らなりの生き方と信念があったのだということを。

「ひとつだけ…教えてやろう…。俺の名は、ンドゥール…。スタンドは、タロットカードの…、起源というべき…『エジプト9栄神』のうちのひとつ…、ゲブの神の暗示! 大地の神を…意味する…。」

「エジプト9栄神…!」

「教えるのは…、自分のスタンドだけだ…。お前は……俺を…たお、した…。だから、だ…。フフフ…、さら…ば…だ……。」

 そして、ンドゥールは、息絶えた。

 承太郎は、黙ったまま、息絶えたンドゥールを見つめていた。

「うぅううう!!」

「ん? イギー…、まあ、テメーの立場を考えりゃ、この旅に無理矢理連れてこられたわけなんだしよ、俺とミナミを裏切って俺を敵に差し出したことは怒ってるが…、まあ、大目に見てやる。ほれ、ガム食うか?」

「アオオオオン!!」

 するとイギーはどこかへ走って行った。

「やれやれ、可愛くない犬だぜ。砂漠の真ん中で遊んでな。」

 すると、イギーが戻って来た。飛ばされた承太郎の帽子を咥えて。

「こいつは、たまげた。帽子を取ってきてくれたのか? ありがとよ。」

「シシシシ…。」

「! この野郎…、ガムを付けたな。」

 受け取った帽子を被ったとき、ツバにガムがくっついていた。

 

「承太郎さーーん!」

 

 そこへ、仗助によって修理されたジープに乗ったジョセフ達が駆けつけてきた。

 ミナミも回復したのか、ちょっとぐったりしているものの、意識はあるようだった。

「イギー…、とりあえず、まずは仗助に怒られな。」

「アギ!?」

「こんんんんんの、クソ犬がぁアアアアアアアアアアアア!! よくも姉ちゃんを!!」

「アオオオオン!!」

 イギーは、怒り狂った仗助に追い回されたのだった。

 

 

 

 




イギーぶん投げる展開だけは、入れたかった。

イギーに物理的に追い詰められた結果、ブルー・ブルー・ローズが無理矢理に行動し、ミナミに大きな負担を与える。


次回は、原作とは大きく違う展開にしたい。
ジョースター一行に気づかれず退場した、あの兄弟だから。


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トト神とクヌム神と……?

トト神とクヌム神。


プラス……?



オリジナル展開です。


クヌム神を若干強化。


 一行は、砂漠をジープで横断し、アスワンにたどり着いた。

「だいじょうぶか? ミナミ。」

「……なんとか…。」

「…クソ犬、テメーのせいだぜ? 分かってんのかぁ?」

「ウウウ…。」

 砂漠で、ゲブ神との戦いで消耗してしまったミナミの体調が悪かったのだ。

 そのため、砂漠の横断を中止して、もっとも近かったアスワンで休ませることにしたのだ。

「ごめんなさい…。」

「いいんじゃよ。お前のスタンドのおかげで勝ったようなものじゃからな。」

「しかし、ここまで消耗するなんて…、いったいどういうスタンドなんだい?」

「けど、あれでもまだフルパワーじゃないんっすよ。」

「なんだってぇ!?」

 仗助の言葉に、ミナミ以外の一同が驚愕した。

「姉ちゃんが、精神の全てを明け渡すときっすかね…。けど、消耗が激しすぎて、白髪が増えちまうんす。」

「そこまで…。」

「しかし、それだとホリィさんのように闘争心が足りないからスタンドが勝手をしているとは言いがたいな。強すぎる? ミナミの身には見合わない強すぎる力(スタンド)なのか…。」

「そして、自衛本能が強い。たぶんだが…、4歳の時にとり殺されなかったのは、本体が死ぬと自分が消えちまうからあえて本体を守る方向にした、ブルー・ブルー・ローズの意思だろうな。」

「……ぅう…。」

「だいじょうぶか? ホテルまでもう少しの辛抱じゃ。」

「いえ…、甘いコーヒーでも飲みたいなぁ…。」

「ああ、精神を司る脳の力が足りてないのかい? ジョースターさん、近くの喫茶店でも探して、そこで糖分を補給させましょう。少しはマシになるかもしれません。」

「…いいの?」

「もちろんだ。今は、君の体調の方が優先さ。」

「……もう時間が無いのに…。」

「このまま先を急いで、仲間が倒れる状況になるほうが良くない。だいじょうぶだから、気にするな。」

「そうだぜ、ミナミ。大人に甘えていいんだぜ?」

「……じゃあ、お言葉に甘えます…。」

 

 喫茶店を探しに行くまでジープに乗っていたが、途中で、交通事故現場を見た。

 酷いことに乗っていた客の一人が外に放り出され、近くの電柱に首が刺さって死んでいた。

 

 

 イクナ

 

 

「? ……ブルー・ブルー・ローズか。」

「まさかこの先にも敵が?」

「だがそれでも行くしかない。ブルー・ブルー・ローズ…、お前の本体のためなんじゃぞ?」

 しかし、それ以上ブルー・ブルー・ローズの声は聞こえなかった。

 やがて、喫茶店についた。

「コーヒーと紅茶ください。あと、ミルクと砂糖もたっぷりと。」

「はい、お待ちを。」

 少しして、コーヒーと紅茶が運ばれてきた。

 ミルクと砂糖をたっぷり入れたコーヒーをミナミが、飲む。

「は~~~~…、ちょっと治ってきた。」

「よかったな。」

「あ、トイレ行ってくるっす。」

「おう。」

 仗助が席を立った。

 

 直後……。

 

 道を挟んで隣の家が燃えだした。

 タバコの不始末が原因の火災だった。

 ちょうどまったりとタバコを吸おうとしていた、ポルナレフは、野次馬のその言葉を聞いて固まった。

 すると……。

 ゴオッ!と、炎が突如、喫茶店に向けて移動した。

「なにぃ!?」

「姉ちゃん、危ねぇ!!」

「仗助!」

 窓もない喫茶店の中に炎が入り込むとき、仗助に引っ張られてミナミは、店の外に出た。

「マジシャンズ・レッド!」

 しかし、その炎を炎を操るアヴドゥルが消し去った。

「ふい~、びっくりしたぜ…。なんだったんだ、今のは?」

「おかしい…。」

「ああ、不自然すぎる…。なぜ、炎が突然こちらに?」

「あれ? ミナミは?」

「さっき仗助が…。」

 

「あれ? 姉ちゃんは?」

 

 そこへトイレから戻って来た仗助。

 びっくりする一同の顔に、仗助は、首を傾げた。

「しまったぁ…! やられた!! ミナミを探せ!!」

「えっ? えっ?」

「ぼさっとするな、仗助! お前に化けた敵がミナミを連れ去ったんだよぉ!」

 そして、一行は大急ぎで店の外にでて周りを見回した。

「う…、なんだ、砂? 風が…。」

 

「砂嵐だーーー!」

 

 外にいた人間達が逃げ惑う時叫ぶ声が聞こえた。

 風が吹いてくる方向を見ると、大きな砂嵐の塊が街に迫ってきていた。

「ば、馬鹿な…。この地形に砂嵐だと!?」

「風……、気流…? まさか…。」

「ザ・タイドか!?」

 

『フフフ…、ご名答。』

 

 砂嵐の中に、ザ・タイドの姿があった。

「虹村!」

『砂漠の砂嵐の方向をちょいとばかり弄ったのだ。この砂の嵐の中…、ミナミを探し出せるかな?』

「ち、ちくしょう、視界が!」

 細かい砂粒により、視界は恐ろしく悪くなった。

『アスワンから出てしまえば、お前達といえども、追跡は困難…。ハーミットパープルで、地図を描いたとしてもな。一足先に、ミナミだけは、カイロまで連れて行かせてもらう。』

「く、くそ…たれ…! ……?」

 承太郎は、あることに気づいた。それは、仗助も気づいたらしい。

 二人は、悪くなる視界の中、目を合せて、頷き合った。

 そして走り出す。砂嵐に背を向けて。

『? 闇雲に探しに行く気か?』

 砂嵐の中にいるザ・タイドが不思議がった。

「おい、アヴドゥル! マジシャンズ・レッドであの野郎を燃やせねぇのかよ!」

『無駄だ、無駄。私を倒したとて、この自然の力である砂嵐そのものを消すことはできんよ。私は、ただ、自然界に発生した砂嵐を軌道を描いてここへ導いただけに過ぎない。アスワンの比較的近くで砂嵐が発生していた不幸を嘆くがいい。』

「……承太郎…、仗助…頼むぞ…!」

 ジョセフは、砂嵐の中、二人がミナミを取り返すことを祈るしかなかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ウヘヘヘヘヘ!! 上手くいったぜ!!」

「やったね、兄ちゃん!」

 ミナミを肩に担いだ、仗助…、否、敵が、小柄で、大きな本を抱えた男の子と合流した。

「しっかし、たまげたなぁ! 砂嵐まるまる移動させてくるなんてよぉ…。」

「兄ちゃん、早く早く! トト神の予言だよ!」

「分かってるって。ボインゴ。」

 そう言って、ボインゴという少年に急かされて、偽の仗助が、近くにあった車に気絶しているミナミを乗せた。

「ククク! ジョースター一行もたまげただろうな! この俺、オインゴの、変身するスタンド、クヌム神にはな!」

 クヌム神を解いたことで、素顔と本来の服になったオインゴ。

 トト神。クヌム神。それぞれ、エジプト9栄神の暗示を持つスタンドだった。

「兄ちゃん!」

「分かってるって、そんな急かさなくて…も……、!?」

 

「グレート…。なーるほどなぁ。そんな能力があるとはな。」

「追いついたぜ。」

 

「ば、馬鹿な!? ど、どどどど、どうやってここに!」

「コイツが導いてくれたぜ。」

 そう言って承太郎が自身の左腕の袖を見せた。

 そこには、ブルー・ブルー・ローズが生えており、根っこの先で、承太郎の胴体の服を引っ張っていた。それは、仗助も同様であった。

「覚悟は、できてんだろうなぁ!?」

「ひっ!」

「ま、待ってくれ! 俺達は、戦闘型のスタンドじゃねぇんだ!! ま、負けたよ…。だ、だから…、弟だけは…見逃してくれ!」

「兄ちゃん…。」

 ボインゴは、涙で顔グシャグシャにして、オインゴの足にしがみついた。

「お…お金はいらないから! 兄ちゃんをいじめないで!」

「ボインゴ、離れろ! お前だけは逃げろ!」

「やだよぉ! このままじゃ兄ちゃん殺されちゃうよ!」

「トトの予言か!?」

「ううん、違う…、まだ出てない…。」

「とと? それがそっちのガキの能力か?」

「ぼ、僕の…トト神は…、ち、近い未来しか分からない…。だ、だだ、だだだだ、だから…、ミナミを車に乗せるまでしか…。」

「なーるほど…、未来が分かるスタンドかぁ…。すげーな。」

「悪いが…。オラァ!」

 承太郎が、気絶したミナミが乗せられている車の車輪を破壊した。

「ま、念のためだ。ミナミは、返してもうらぜ。そして、俺達の前に二度と現れるな。いいな?」

「わ、分かった…。誓う! 誓うから!」

「あっ!」

「なんだ?」

 すると、ボインゴが、本を開いた。

「……僕も、誓います。二度と…皆さんの前には…現れません。」

「その本が、トト神か?」

「そうです…。」

「ほんじゃ、約束はしたからな? 二度と来るなよな?」

 仗助は、ミナミに肩を貸しながら、車から出てきた。

 

 

 

『こうして、オインゴとボインゴは、ジョースター一行の前に現れないことと誓って、承太郎と、仗助に見逃してもらいましたとさ。めでたしめでたし。』

 

 

 

 やがて砂嵐は消えていき、それとともに、ザ・タイドも姿を消した。

 

 

 




7人目のスタンド使いじゃ、仗助編だとアスワンには寄りません。病院行きの人がいないので。

オインゴとボインゴ、コンビじゃ、まず勝つ手段がないので、虹村垓にもう一回登場してもらいました。ホル・ホースも考えたけど、誘導弾じゃあ、ジョースター一行を止めようがないので、やめました。

ザ・タイドで砂嵐を持って来たのは、完全に捏造です。ここまで出来るかは分かりません。

とりあえず、オインゴとボインゴは、このネタ中、唯一無傷で…、生還?


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アヌビス神 その1

アヌビス神編。


原作とちょいと展開が違います。


チャカを倒すのは、仗助です。


 アスワンで、休息を取った後、コム・オンボに到着した。

 コム・オンボに到着後、一息ついていると、そのすきにポルナレフがいなくなった。

「ポルナレフさん?」

「アイツのことだ、どうせ、ナンパにでも行ったのだろう。」

「彼のことだ、そう遠くには行かないはずだが、あとで呼びに行けばいいさ。」

「わー、扱い適当。」

 最初の頃の騎士道に熱いキャラどこ行った?って感じだが、今がポルナレフの素なのだろう。

「こんな時でなけりゃ、エジプト観光だってしたかったのによぉ…。残念だぜ。」

「近くに観光地になっている遺跡があるらしい。そこぐらいまでなら、行ってきてもいいぞ。」

「えっ? いいんすか?」

「ついでに、ポルナレフも探してきてくれると嬉しいが。」

「行かせる目的、そこっすか。」

 

 とりあえず、ちょっとだけの観光ついでのポルナレフ探しとなった。

 

 言われたとおり、確かに遺跡があり、ポルナレフらしき人物が入って行くのが遠目に見えた。

「あっ、いたいた。」

「ポルナレフさん捕まえて、それから遺跡を見てこうよ。」

 そう言いながら、二人は遺跡へ向かった。

 しかし、人がほとんどいない遺跡の中には、ポルナレフの姿が無かった。

「あれ?」

「おっかしいな~。さっき入って行くの見えたのに…。」

 

「逃げろ! 二人ともーーー!」

 

「えっ?」

 

「うしゃあああ!!」

 

 そこへ、一人の青年が剣を手にして斬りかかってきた。

「仗助!」

 ミナミが仗助を突き飛ばし、肩を切られた。

「姉ちゃん!」

「チッ、東方ミナミか…。」

「てめ…、DIOの刺客か!?」

 激昂した仗助がクレイジー・ダイヤモンドを出すと、剣を手にしている青年が後ろへ飛び退いた。

 その身のこなしは、常人のソレではない。

「こいつ…ただ者じゃねぇ…。」

「トロい貴様らは、後回しだ…。まずは、ポルナレフから…。」

 青年はそう呟くと、遺跡の柱の陰へ隠れた。

 入れ替わるように別の柱の陰から、胸から出血させているポルナレフが出てきた。

「ポルナレフさん!」

「気をつけろ…。奴は、このぶっとい柱を透過するスタンドだ…。柱に隠れても無駄だ。」

「後ろぉ!」

「ハッ!」

 ポルナレフの後ろにあった遺跡の柱が切断され、倒れてきた。

「ドラララララララララララララララ!!」

 仗助がクレイジー・ダイヤモンドで、柱を殴り、再生させようとした。

「クククク! たかが、直すだけのスタンドでは、俺には勝てないぜ?」

「……そいつは、どうかな?」

「? ハッ!? ウゴォ!?」

 元の位置に戻ろうとした柱がぐにゃっと反対側に曲がり、そこにいた剣を手にしている青年を下敷きにした。柱は再生されたものの、仗助の意思により曲がった形で直されたのだ。

「……ちっとばっかし、やり過ぎちまったかな?」

「いいや、真っ向勝負で相当な手練れだったからな、これくらいの奇策で、思いっきりやらにゃ、こっちが負けてたぜ。ナイスだ、仗助。たいしたもんだよ。」

「へへへ、どういたしまして。」

「お前ってよー、ジョースターさんに似て、褒めるとすぐ調子乗るよな?」

「えー? そうっすかぁ?」

「……。」

「ミナミ? どうした?」

「いや…剣が…、ネズミに持って行かれそうになってますけど…。」

「はっ? あっ、マジだ!」

「こんにゃろう!」

 ポルナレフが、なぜか鞘に収まっている剣をネズミから奪い取った。

「この剣がスタンドだと思ったが…違ったのか? 実体があるぜ。」

「えっ? どういうことですか?」

「てっきり、剣のスタンドの使い手かと思ったけどよぉ…。」

 ポルナレフは、柱の下敷きになっている青年の腕を見た。

 

「おーい!」

 

「あっ、ジョースターさんだ。」

「遅いから来たぜ。何をやっていた?」

「いや、敵が来て…。」

「かなりの手練れだったみたいだったすけど、倒したっす。」

「その剣は?」

「ああ? これ? ……たぶんスタンド使いのもんだからなぁ。」

「凶器は取っておくに超したことはないよね、私が持ちますよ。」

「警察に届けようぜ。高価そうだしよ、誰かが拾ってなんかあっても困るからな。」

 ポルナレフは、そう言ってミナミに、剣を渡した。

「しかし、こんなところまで敵が現れるとなると、単独行動はますます危険じゃ。これからは、必ず少なくても二人で行動しよう。今日中にエドフへ行くから、行くぞみんな。」

「……。」

「姉ちゃん?」

「…ん? なんでも…ない。」

 一瞬ボーッとしていたミナミが、我に返って首を振った。

 

 

『く……! ど、どうなってやがるんだ…、この娘の…精神は…!!』

 

 

「……気のせいじゃないか。」

「?」

「なんでもない。」

 ミナミは、そう言った。

 エドフへへ行くための乗り物に乗るための道中、ミナミが握っている剣の鞘には、ブルー・ブルー・ローズが巻き付いていた。

 

「……眠い…。」

「ああ、寝とけ寝とけ。こん中じゃミナミが一番疲れてるだろうからな。」

「…じゃあ……、そうする…。」

 ミナミは、剣を抱きしめ、そして膝の上にイギーを乗せた状態で眠った。

 

 

『ちくしょう…、このアヌビス神が…、他人を乗っ取る力が…、スタンドの力で完全に押し負けているだとぉ! DIO様が欲しがるこの娘のスタンドは…いったい!?』

 

 

「おーい姉ちゃん、ついたぞ? あれ?」

「どうした、仗助?」

「姉ちゃんが、…起きねぇ…。」

「まさか、またぁ!?」

「仕方ねぇ、背負って行け。」

「へーい。」

 仗助は、ミナミを背負った。

 眠っているミナミは、剣を握りしめていて離さなかった。さらにブルー・ブルー・ローズまで鞘から柄にかけて巻き付いていたため、剣を抜くことすらできない状態だった。

 




アヌビス神、予定外のことに困惑。
ミナミのスタンドに負けてる。

だが、しかし……?



2019/08/14
感想欄にて、仗助のラッシュ、『ドラドラドラドラドラドラドラ!!』について指摘があったので、変更。


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アヌビス神 その2

アヌビス神編。その2。



アヌビス神が、ブルー・ブルー・ローズを……?


 

 

「こりゃぁ…、触れねぇぞ?」

 ブルー・ブルー・ローズが巻き付いてて、剣に触ることすらできない有様。

 ブルー・ブルー・ローズは、相手を傷つけ、寿命を奪い青いバラの花に変える。そのため、下手に触るなんてできない。そしてスタンドで触っても同じだ。

「ブルー・ブルー・ローズがここまで、この剣を封じているんだ。何かあるのか?」

 アヴドゥルが不審がる。

 その様子を見て、剣のスタンド、アヌビス神は、ドキッとする。

 自分自身は、スタンドの持ち主がすでに故人である剣に宿ったスタンドだ。

 それゆえに、剣の刃さえ無事なら力は発揮する。だが、逆に言えば刃がダメになると途端に終わることになる。

 目の前には、鉄をも蒸発させるほどの火炎を操るアヴドゥル。剣を粉々に粉砕するほどの打撃力を誇るスタープラチナのも持ち主である承太郎。そして、チャカという青年を操ったときに、柱を変形させるという奇策を使ってきた、破壊した物をいかなる形にも直せるスタンド、クレイジー・ダイヤモンドの使い手、仗助がいる。

 なんとか…、なんとかこの窮地を脱する方法はないか!?

 剣ゆえに、持ち手がいないとまったく力を発揮できないスタンドであるアヌビス神は、一生懸命考える。

 

 テ…キ……

 

『!?』

 鞘から生えているブルー・ブルー・ローズから声のようなものが聞こえた気がした。

 

 テキ…テキ……ハイジョ…ハイジョ…ハイジョハイジョハイジョハイジョハイジョ

 

『ひ、ひぃいいいいい! お、俺は敵じゃねぇえええ!!』

 

 …敵……チガ、ウ?

 

 そこで、アヌビス神は、疑惑を持った。

 ブルー・ブルー・ローズは、寿命を奪い取るスタンドだとは、聞いていた。

 そして、本体であるミナミを守る意思を宿しているらしいことも。

 アヌビス神は、もしかして…っと思い、賭けに出た。

 

『そうだ…、俺は敵じゃない…。アンタ(ブルー・ブルー・ローズ)の味方だ。』

 

 ミ…カタ…

 

『アンタは、本体を守り抜きたいんだろう? なら、俺が手伝ってやるよ。』

 

 テツダ……?

 

 アヌビス神は、確信する。

 このスタンド、ブルー・ブルー・ローズは、そこまで知恵のあるスタンドではないのだと。オートで本体を守るのも、ロボットや、そういう単純な本能的なもので動いているに過ぎないのだと。

 

『そうだ…そうだぜ? アンタが殺すべき相手…、もっとも本体を危険に追いやっている相手は誰なのか教えてやるよ。そのために、力を貸してくれないか?』

 

 また、ブルー・ブルー・ローズが動けば動くほど、本体にかかる負担も限りなく大きく、今の状態は、ほぼ昏睡に近い状態だ。

 

『本体の精神を休ませる意味で…、俺が変わってやるよ。アンタは、守ることに専念して欲しい。頼めるか?』

 

 このスタンドは、味方であるジョースター達にすらも牙を剥く。今だって剣の鞘に絡みついているため、触ることすらしていない。

 

 コイツ(ブルー・ブルー・ローズ)にとって、本体以外は、すべて敵なのだ。アヌビス神は、そう確信した。

 

 そして返事を待つ。

 

 やがて……。

 

 

 ……イイ…ダ…ロ…ウ……

 

 

 よっしゃーーーー!

 っと、アヌビス神は、無い腕を振り上げてガッツポーズ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「……起きねぇな。」

 ポルナレフが、眠りっぱなしのミナミの頬をツンツンとつついた。

「まだ、剣を握りしめてるしよぉ…、どうする?」

「自然に目が覚めるまでは、どうしようもねぇ。」

 っと承太郎が言った。

 車に寝かせていたが、ジョセフ達は、買い出しのため今いない。

 

 すると、イギーが吠えた。

 

「ああ? イギーなに、吠えて…。っ!?」

 一瞬の光。それは、剣の刃が抜き放たれ、居合い切りが行われた残像だった。

 

『クク…、ククククククク!!』

 

「ミナミ!?」

 先ほどの居合い切りで、車の上部が椅子ごと切れ、壊れる。

 ポルナレフが、飛び退きシルバー・チャリオッツを出す。

 離れた位置にいた承太郎も、警戒した。

『フフフフフ! クククカカカカ! こうも上手くいくとは嬉しい予想外だ!』

「てめぇ…、ミナミでも、ブルー・ブルー・ローズでもないな?」

『その通り! 俺の名は、アヌビス神。この剣に宿るスタンドよ!』

 剣を手にしているミナミが、…否、アヌビス神が高らかに自身の正体を明かした。

 そして、ズカズカと早足で接近してくる。

「来るか! シルバー・チャ…。」

『おいおいおーい? ミナミを殺すのか?』

「!」

『うしゃああああああ!』

 アヌビス神が、剣を振り回し、ポルナレフは、必死にシルバー・チャリオッツの剣で迎え撃つ。だがミナミを攻撃できず、防御に専念するしかなかった。

『ククク! 貴様らは、俺を攻撃はできないが、俺は攻撃できるぞ。』

「ちくしょう! てめーーーー!」

『その程度か? 柔な剣だ。まあ、仕方のないこと。お前の動きは先頃の戦いで覚えたからなぁ!!』

「ぐあ!」

 ギリギリとつん張りあっていたが、やがて、力負けしたポルナレフがシルバー・チャリオッツごと吹っ飛ばされた。

『次は、貴様だ、承太郎!』

「くっ!」

 承太郎は、スタープラチナを体に纏わせ、その場から飛び退く、その瞬間、アヌビス神の剣が先ほどまでいた場所を切った。ついでに剣圧で剣の先にあった結構大きめの石が真っ二つになった。

『どうした? 承太郎? 横ががら空きだというのに、攻撃しないのか? やはり、身内の人間は攻撃できないようだなぁ。』

「教えろ。」

『んん?』

「ブルー・ブルー・ローズが、なぜてめぇの身を守るようにしている?」

「あっ!」

 吹っ飛ばされていたが復帰したポルナレフが言われて見て気づいた。

 アヌビス神に支配されたミナミの胴体の服に、ブルー・ブルー・ローズが巻き付くように生えていたからだ。

 アヌビス神は、フッと笑い。

『簡単なことよ。少しばかり話し合いをしたのだ。』

「ブルー・ブルー・ローズとか?」

『コイツにとって、お前らも我々も敵に過ぎんらしい。すべてが敵ならば…、近場にいる敵をと、ちょいと言ってみただけだ。そしたら、ノッてくれたのだ!』

「ば、馬鹿な…ミナミが俺達を…。」

「違う。ミナミの意思とブルー・ブルー・ローズは完全に分離している。ブルー・ブルー・ローズの防衛本能に、野郎がつけ込んだんだだろう。」

『フフフフ! そうとも言えるな。だが、これで素手じゃ攻撃できまい。傷つけられれば、たちまち寿命を奪われるからな!』

「やれやれ…、ブルー・ブルー・ローズのオートガード付きか…。厄介だぜ。」

「なら…、ジョースターさん達が戻ってくるまで時間を稼ごうぜ! そしたら、剣だけでもアヴドゥルに…。」

『クククク…、それはどうかな?』

「なに?」

 

「おーい、姉ちゃん? 起きたのか?」

「待て仗助。なぜミナミが剣を握っている? しかも抜き身で?」

 

「じじい、マズいことになった。」

「敵だ! あの剣が敵スタンドだったんですよ! ミナミが乗っ取られた!」

「なにーーーーーーー!?」

『クククク…! その通り! もう一度自己紹介と行こうか。俺は、アヌビス神。エジプト9栄神がひとり、アヌビス神だ!』

「ね、姉ちゃん…。」

 仗助は愕然とした。

『さてさて! お前達は、この娘…東方ミナミを攻撃できるのか? できるものならやってみるがいい! だが、俺は攻撃できるぞ?』

「マジシャンズ・レッド!!」

「アヴドゥル!?」

「ようは、剣が本体ならば…、一瞬で蒸発させるまで!」

『どうかな?』

 すると、アヌビス神が、剣で、炎を絡み取った。その剣術は、どこかで見覚えがある技だった。

「その技は…。」

『アヴドゥルの炎…、確かに厄介ではあるが…、その攻略は…、すでにポルナレフ…お前がすでに見出していることだ。それがこの俺にできないと思ってるのか?』

「ハッ!」

 それを聞いてポルナレフは、香港でのアヴドゥルとの戦いを思い出す。

 あの時、自分は剣のスピードによる空気の溝でアヴドゥルの炎を攻略してみせた。

『剣だけでは、俺は何もできない。だが持ち手がいれば、それも可能! クククク…! お前は自分で自分の仲間の攻略法をこちらにももたらしたのだ!』

「く、くそぉ!」

『ほらよ、返すぜ!』

「ぐっ!」

 剣に絡めていた炎を、アヌビス神は、アヴドゥル達の方へ返した。

『クククク…、これでお前の炎も覚えたぜ…。』

「よくも…、姉ちゃんを!」

「仗助! 行くな!」

 仗助が駆け出し、クレイジー・ダイヤモンドを出す。

『馬鹿が! お前さえ殺せば、回復の手段も無くなる、お前の回復能力だけが邪魔だったのだ、死ね! …っっ!?』

「ドラァ!」

 仗助に剣を振り下ろそうとして、直前で止まり、仗助のクレイジー・ダイヤモンドの拳が剣に命中した。

 そして、嫌な音を立てて、剣が半分になる。

『ば、馬鹿な…!』

 アヌビス神は、驚愕する、自身の腕を、ブルー・ブルー・ローズが絡みついて妨害していたのだ。

「なるほど、ミナミの潜在意識が双子の弟の仗助を攻撃させなかったらしいな。ブルー・ブルー・ローズを味方に付けたつもりで、とんだ伏兵がついちまったみたいだな。」

『く…。』

「どうやら、勝った気でいたつもりが、一気に形勢逆転といったところか。」

『承太郎…、まだ俺が負けたと…、と、と、と…?』

「……うっ…。」

『…な、ん、だとぉ…!? 俺が…追い出され…。』

 そして、アヌビス神の意識がミナミから追い出され、ミナミの意識が浮上した。

「……あれ?」

「姉ちゃん?」

「仗助? どうしたの? 私、どれくらい寝てた?」

「姉ちゃーん!」

「うわっ!」

 仗助がミナミに抱きついた。その際に、ミナミの手から抜き身のアヌビス神の剣が手放された。

 

『そんな馬鹿な…。俺が乗っ取っていたからミナミの意識も抑え込んでたってのに! ブルー・ブルー・ローズめ…!』

 

「さーてと…、アヌビスっつーたか?」

『ハッ!?』

 地面に落ちた剣のスタンド、アヌビス神が取り込まれた。

「どーしてくれようか? よくもミナミに取り憑いてくれたな?」

『ま、待って…、お願いします…。待ってください…。俺…剣のままじゃ何もできません…、負けです…はい…。』

「アヴドゥル。」

「蒸発しろ。」

『ぎゃあああああああああああああああああああ!!』

 アヴドゥルが放ったマジシャンズ・レッドの炎が、一瞬にして、剣を焼き払い、蒸発させた。

「ふーい…、もう二度と変な落とし物は拾わないようにしようぜ。」

「まっ、あの場で他の人間の手に渡るよりはマシだったかもしれんな。そしたら、人を変えてアヌビスが攻撃してきた可能性が高い。」

「あの…、私…なんか余計なことしちゃったの?」

「いいや、もう終わったことだ。お前はそこまで気にするな。」

「姉ちゃん…、よかったぁ…。」

「仗助。熱いからそろそろ離れてよ。」

 

 

 

 

 一方その頃。

 仗助によって半分に折られた剣の半分を、通りがかった子供が拾った。

 途端、刃に宿っていたアヌビス神に子供が乗っ取られる。

『馬鹿め! 俺自身が剣だということを忘れたようだな! せめて、ひとりだけでも…、殺す!』

 子供が、ジョースター一行の背中に向けて、折れた剣の刀身を投げようとして振りかぶったとき。

 そこに、イギーがやってきて、イギーでつまずいた。

『犬ーー!? なんで、犬ーーー!? 外したー! この先はナイルのかわーーー!? ひぃいいいいいいいいいい!!』

 大きく目標を逸れて飛んでいった刀身は、そのままナイルの川に落ちたのだった。

 

 そうして、2、3日後…、錆びてしまったアヌビス神は、完全に再起不能となった。

 

 




本当はもっと激しいバトルを展開したかったが、文才が無かった。

それにまず仗助が激昂しそうだし、アヌビス神としても回復手段を奪いたかったから、仗助を攻撃するだろうし、ミナミは、攻撃したくないからその潜在意識に反応したブルー・ブルー・ローズがアヌビス神を妨害、結果剣を折られてしまう。
また、ブルー・ブルー・ローズもその潜在意識くんでアヌビス神をジョースター一行以上の敵と判断し、アヌビス神を追い出してしまう。そしてミナミの意識は浮上。
剣は手放されて、アヴドゥルに蒸発させられ、残っていた刀身も、イギーにより目標を誤り、ナイルの川へ。

ということで、アヌビス神編は、こんな感じになりました。

でも、書き直すかもしれないかも。


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バステト女神

バステト女神編。



色々考えたけど、この展開にしました。


 

 コム・オンボから、ルクソールへ。

 かつて、エジプトの王家、ファラオ(王様の意)達は、墓泥棒達から盗掘から逃れるため、ナイル中流の奥深い険しい谷に死後の安住の地を求めたとされる。

 だが、それでも何十という墓が墓泥棒達に暴かれたという。だがたったひとつだけ盗掘を免れたファラオがいた。

 それが近年発見された有名なツタンカーメンの墓である。

 

「ツタンカーメンって言ったら、呪いの話も有名だよね。」

「ああ、それ? 確か心臓が破裂して死ぬって奴か?」

「細菌説とか、カビ説とか、ガス説とかって色々とあるけど…。やっぱ大切なお墓を荒らすって命と引き換えにしてでもやらないといけないこと?」

「だが、その命知らずのおかげで、歴史の謎が紐解かれたのも事実だ。」

 ミナミと仗助の会話にアヴドゥルが入って来た。

「この岩山の村は、その墓泥棒達の子孫だ。いまだに、家の地下では、金銀財宝を求めて政府に内緒で洞窟を掘っている輩もいると言われている。」

「へ~。アヴドゥルさん詳しいですね。」

「エジプトは、私の故郷だからな。」

「あ、なるほどっすね。」

「あっ、トイレ行きたくなってきた。」

「あっちにあるぞ。誰かと行きなさい。」

「じゃ、俺が行くっす。」

「ワン。」

「なんだ? イギーも来んのか? 変なことするなよ?」

「ガルルル!」

 仗助に睨まれ、心外だとイギーが唸った。

「……まともなトイレならいいながら。」

 ポルナレフの呟き。

 それは、現実となる。

 

 

 公衆トイレとして作られていたトイレに入ったものの……。

 ミナミは、すぐ出てきた。

「どうしたんだ?」

「……ないわー…。」

「えっ?」

「中、中見て。」

「はっ? えっ? うお、これは!?」

「“風”洗式トイレって、ないわー…。」

「サンド(砂)ウォッシュってのも無しだぜ!」

「ごめん。ホテルまで我慢する。んぎゃ!?」

 知覚の岩場に手を置いた瞬間、ミナミは、悲鳴を上げた。

「どうした!?」

「いや、今…ビリッと…。なんで?」

 見れば、先ほど手を置いた場所を見たが何も無かった。

「静電気じゃね? 姉ちゃん、すぐビリっとなるじゃん。」

「湿気も無いこんなカラッとした場所で?」

「どこでもなるだろ、姉ちゃんのは。アダッ!?」

「ほら、仗助まで。」

 木で出来たトイレの壁に触れた仗助が、ビリッときて手を離した。

「あ、違う…。これ、コンセントか?」

「ええ?」

「へー、こんな辺鄙なとこまで電線通ってんのか。すげー。」

「それより、早く行こう。みんなを待たせてるから。」

「分かってるって。」

 二人は、並んで歩いてく。その後をイギーが追いかけた。

 

 

 

「……フフフフ…。」

 

 

 

 少し丘になった場所の岩の影に、褐色の肌が美しい女性がタバコを吸っていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 その後、オープン喫茶店でコーラを開けて飲んでいると。

「おい、仗助、コーラの蓋が制服に引っ付いてるぜ。」

「えっ? あれ?」

「ミナミ、君の足に釘が引っかかっているよ?」

「えっ?」

「ラジオの音が変だぜ? 壊れてんじゃねぇのか?」

「おかしいっすねぇ、新品なんですけど…。」

 っと、店主は、ラジオを弄った。

 アヴドゥルが、あと2日ほどでカイロまでつくから、怪我は仗助に治してもらったものの、疲労はどうにもならないので、今日と明日は、ルクソールに滞在して休息を取るというのはどうかと、提案した。

「うむ、賛成じゃ。ひとまず、ホテルを探そう。」

「ん? んん?」

「どうした、ミナミ?」

「い、椅子から立てない…。なんかお尻が引っ付いて…。」

「おいおい、尻がでかいからってハマったのか?」

「ポルナレフさん!」

「ま、冗談はさておき、どうしたよ? ほれ、手ぇ貸してやるから立ってみろって。」

 ポルナレフが手を貸し、立たせようとするが、他の者達が木の椅子だったにもかかわらず、椅子が足りなかったため、鉄の入った金属製の椅子を持って来てもらって座っていたのだが、ミナミは立てなかった。

 立とうとすると、椅子ごと浮くのだ。

「これは…。」

「うわーん、どうしよう…。」

「承太郎、椅子を押さえて引っ張れ。」

 言われた承太郎は、椅子の背を掴んで引っ張った。そしてやっとミナミは、椅子から解放された。

「おい…、ジジイ…。」

「うむ……、おかしいのう。」

「ハッ! 仗助、危ねぇ!!」

「へっ?」

 次の瞬間、仗助の頭に飛んできたハンマーをポルナレフが止めた。

「おい! 誰だ、投げた奴は!」

「すんません! ハンマーが勝手にそっちに!」

 近くで大工仕事をしていた大工が駆け寄ってきた。

 すると彼のポケットに入っていた釘が飛び、ミナミと仗助に飛んでいった。

「げっ!」

「うわわわ!」

「この!」

 それを花京院がハイエロファントグリーンで防いでくれた。

「な…、こ、これは…。」

「お前達! 何かあったのか!? スタンド攻撃を受けたのか!?」

「えっ? いや…別に…。」

「ただ、岩場でビリッとはなりました。」

「それじゃねぇの?」

「えーーーーー!?」

「先ほどから金属製のものが飛んできて引っ付く…、つまり、体が磁石化しているようですね。」

「どーすんだよー!? 簡単に釘とかハンマーが飛んできちまうなら、下手に出歩けねぇぜ!」

「…仕方ない。安全のため、ホテルでじっとしていてもらおう。そして本体はわしらが倒してくる。」

「途中での金属製品に気をつけていかなければ。」

「すんませーん…。」

「ごめんなさい…。」

「ったく、油断しやがって…。」

「まあ、そう言うな。承太郎。敵は、エジプト道中の敵を遙かに上回るようじゃからのう。わしらも術中にはまれば、どうなるか分からん。」

 そう言いながら、途中の金属製品に気をつけつつホテルを探し、ミナミと仗助には、部屋でじっとしててもらうことになった。

 

 

「はー…、どうする、姉ちゃん?」

 ホテルで、待っていても暇で、仗助が木の椅子に座った状態で言った。

「どうしようもないよ。これ…。」

 ミナミは、自分の手に引っ付いた、コーラの蓋を見て言った。

「それはそうと、お互いに近寄らないようにしようね。」

「なんで?」

「だって、磁石化してるんだよ? 近寄ったら絶対引っ付くじゃん。」

「あ、そうか…。」

 だが、次の瞬間。

 パリーンっと、窓ガラスが割れた。

「なんだ!?」

「仗助!!」

「ドラァ!」

 自分めがけて飛んできた弾丸を、咄嗟に仗助はクレイジー・ダイヤモンドの拳で弾いた。

 だが、弾丸は、軌道を変え、部屋の中を飛び回った。

「これ…、まさか…。ホル・ホースの…!」

「エンペラーか!?」

 どこから狙われているのか分からないが、エンペラーの弾丸は、仗助を狙って動く。

「仗助!」

「うわっ!」

 窓からもう一発来たため、咄嗟にミナミが仗助を伏せさせて防いだ。もう一発のエンペラーの弾丸は、ミナミの髪の毛を擦った。

「しまっ…。」

「馬鹿! 自分で言っといて、近づくなよ!」

「そう言われても!」

 二人は、ほっぺたと上半身をひっつけた状態で言い合った。

 二発の弾丸が、ミナミに引っ付いたことで動けなくなった仗助を狙う。

「ドラララ!」

 動けぬ状態だがなんとかクレイジー・ダイヤモンドの拳で防ぐ。だがすぐに弾かれた弾丸は、軌道を変えてまた狙ってくる。

「1、2、3!」

 二人は、かけ声と共に同時に動いて立ち上がり、息の合ったテンポで部屋の隅に逃れた。

「ここから、見える位置ってどこかな!?」

「たぶん、ホル・ホースの目が必要だからよぉ! ここからだと…、あっ!」

 窓から見えるとこに、ホル・ホースが双眼鏡を手にして離れた建物の上からこちらを見ている光景があった。

「いた!」

「あんにゃろう…! あんときは逃がしちまったけど、今度はぶっ飛ばすぜ!」

「行くよ、仗助!」

「おう!」

 二人は、そろって、凄まじいコンビネーションの二人三脚でホテルから駆け出した。

 窓から見ていてギョッとしたホル・ホースは、すぐにエンペラーの弾丸を消し、移動した。

 そこへ。

「だあああああああああ! 待てえええええええええええ!!」

「なんで、バステト神にかかってんのに、そんな息のあった状態でいられんだよ!?」

 ドドドドドド!っと走ってきた二人を見てホル・ホースは即逃げる。

「双子なめるんじゃないわよーー! これでも二人三脚じゃ負けなしなんだからねーーー!」

「ちくしょーーーー! マライヤの姉さん、早くーーー!」

 全力の鬼ごっこ。(追いかける側、二人三脚)

 すると、不意にミナミと仗助が離れた。

 突然のことに驚いた二人は倒れた。

「バステト神が解けちまったのか!? ってことは…、くそっ!」

「あっ、くそ、逃げ足早えなアイツ!」

 倒れている隙にホル・ホースは、逃げてしまった。

「いたたた…。」

「姉ちゃん、だいじょうぶか?」

「足捻った…。」

「ほら、見せろよ。治すから。」

 ミナミは、足を治してもらった。

 

 なお、この後、帰ってきた承太郎達に、なんでホテルでジッとしてなかったと怒られたのだった。

 

 

 




双子だからと言って、息が合うとは限りませんがね……。親戚に双子がいますが、正反対な性格でした。

虹村にするとか、ホル・ホースにするか考えて、ホル・ホースにマライヤと組んでもらいました。
ホル・ホースの狙いは、仗助でした。ミナミを攻撃する気はなかったです。


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セト神

セト神編。



短い。


これ以外の展開が思い付かなかった……。


 

「大変だーーーー!」

 

「早く! 早く伝えなくては!」

 

「とにかく行かなきゃ!」

 

「伝えなきゃ!」

 

「敵のスタンド攻撃だ!」

 

 

 

『って、誰だーーーー!?』

 

 

 

 っと、全員が顔を合せた途端、同時に叫んだ。

 

 ひとりを抜いて、ダボダボになった大人の服を引きずり、子犬になったイギーを頭に乗せて困惑。

 

「じょ、承太郎…?」

「ポルナレフか?」

「僕、花京院典明。」

「その頭、アヴドゥルさん?」

「そういう君は、仗助か。」

「ってことは…、そっちの若い男の人は、ジョースターさん?」

「いや~、驚いた驚いた。鏡見たら、どこの映画俳優がいるのかと驚いたわい。」

 すると、その場がシーンっとなった。

「ま、まあそれはそうと、可愛いのう! 可愛いのう。ホリィの小さい頃を思い出すわい。ん~、チュッ。」

「気持ち悪いぜ、じじい!!」

「ゲゴフッ!」

 小さい承太郎のコークスクリューパンチが決まる。

「と、ところで、姉ちゃん知らないっすか!? 今朝からいないんすよ!」

「まさか小さくなった隙に、敵スタンド使いに攫われたのか!?」

 

 すると、遠くから、キャーーっという悲鳴が聞こえた。

 

「姉ちゃんだ! 行かなきゃ!」

「待て仗助!」

「行くしかないですよ! 小さくても! 僕はこの状態でもエメラルド・スプラッシュを使えるので、なんとかなるかも!」

「俺だってチャリオッツ使えるもんね!」

「私も、マジシャンズ・レッドで援護しよう!」

「待ってろ、俺の娘ぇ!」

 全員で先に行った仗助を追いかけた。

 

 

 現場に行くと、通路の角に追い詰められ、ダボダボの袖で頭を庇い、ブルー・ブルー・ローズの壁で守られている小さいミナミと、変な髪型にサングラスの男が斧を手にブルー・ブルー・ローズを切り裂きまくっている光景があった。

「ち、ちくしょうめ! こんな小さいうちからスタンドが使えたとはなぁ!」

 

「おい、てめぇ!」

 

「あっ? あ、ハハハハハ! そうだったお前らも若返らせたんだった! けど、俺の勝ちだね! なにせおめーら、特に承太郎とジョセフは、最近になってからスタンドが使えるようなったと聞くし、あとの連中もその小ささじゃまともな攻撃もできやしない! 勝った!」

 

 すると。

 

「あっ? 勝った…だ?」

 

 ジョセフの血管が浮いた。

 

「この野郎が! うちの娘に!」

 

「ウゲゲゲエ!?」

 

「あと、子供の前で!」

 

「オガガガ!?」

 

「銃口出してんじゃねぇよ、危ねぇじゃねぇか、こら!」

 

「ゴゲ、ウゲ!?」

 

「死ね、タコ、はな垂れが!!」

 

 ジョセフのズームパンチが最後のトドメとなり、敵スタンド使いを吹っ飛ばした。

 壁にバーン!と張り付けにされた敵スタンド。

 すると、スタンド能力が解けたのか、徐々に体が戻りだした。

「ま、待て! 今のうちに!」

 っというわけで、記念撮影。

 その後。

「うわあああああああああああん! 大きくなっちゃイヤだ~~~~!」

 っとジョセフが、承太郎と仗助を抱きしめて泣く。

 二人は、特に承太郎は帽子の鍔を掴んで顔を隠し、照れ隠ししていた。

「オホンオホーン。」

「オホンッ、オホンッ。ジョースターさん…、ダメ押し、行きましょうや。」

 

「えっ? あっ、ちょっ、まっ…! ぎゃああああああああああああああああ!!」

 

 

 セト神の使い手アレッシー(独身)。

 

 うっかりジョセフを全盛期にしてしまい、ボコボコにされ、負ける。

 

 

 

 




7人目のスタンド使いでも、ジョセフを若返らせてしまい、戦う隠しイベントがあります。

今回は、全員を若返らせて弱体化を図ったものの、実はジョセフだけは、若い頃の方が強かったというね……。だって2部の主人公だし。


次回は、ダービーだけど、どうしようかな?


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青いバラは賭け事の夢を見る

ダービー編。


ただし、不参加。


イカサマ親子とはいえ、仗助がジョセフほどの腕があるとは思えなかったので。


 

 

 ミナミは、車の中で眠っていた。

 

 酷く疲れていた。

 

 おそらく、若返らせてしまうスタンドから身を守るためブルー・ブルー・ローズが無理をさせた影響だろうと見られた。

 

 仗助が車の外に、そしてイギーがミナミの膝の上に乗っていた。

 

 ミナミは、夢を見ていた。

 

 ダービーという男。

 

 その男と、ギャンブル勝負をする承太郎達。

 

 ダービーは、オシリス神の使い手だった。だが戦闘向けのスタンドではない。あくまでも使い手であるダービーがギャンブルで勝利したときのみ出現し、ギャンブルの対価として相手の魂を奪い取り、それをコインに変える能力。

 

 事前に魂を賭ける宣言していないと使えず、非常に複雑で、使いにくいだろう。なにせ本体のギャンブルの腕次第なのだから。

 

 その能力と、ダービー自身のギャンブルの腕で、すでにポルナレフとジョセフがコインにされた。

 

 ブルー・ブルー・ローズが柱を伝い、スルスルとアヴドゥルに近づいた。

 

 その根の先に、どこからか奪ってきたらしい寿命…、青いバラの花がある。

 

 ソッとアヴドゥルの背中に花を当て、パッと光になって寿命がアヴドゥルに吸い込まれた。そしてブルー・ブルー・ローズは、天井へと移動し、まるで様子を見るように上にいる。

 

 ダービーの狂人ともいえるレベルのギャンブルの強運と、イカサマの腕を前に、残されたメンバーが冷や汗をかいている。

 

 やがて、承太郎がポーカーで勝負しろと言った。

 

 ダービーは、ポーカーは得意だと笑う。

 

 承太郎は、スタープラチナの正確性高い目で、ダービーがシャッフルしたカードを言い当てて見せた。これで容易にイカサマはできなくなったことを言った承太郎の言葉に、さすがにこれには、ダービーも少しばかり汗をかいてる。

 

 そして、まだシールを剥がしていない新しいカードで勝負が始まった。

 

 なのだが……、シャッフルの最中、承太郎がダービーの指を1本折った。

 

 セカンド・ディール。それは、一番上のカードを配るという心理を利用したイカサマの高等テクニックで、実際には、2番目のカードを配っているというものだ。

 

 スタープラチナレベルの正確な目だからこそ見破れたソレ。

 

 そして、もうお前にカードを触らせられんということで、近くでサッカーをしていた少年にディーラー(カードを配る役)をやらせることにした。

 

 しかし、盲点。いや、すでに術中。

 

 このカフェにいる人間全員が、ダービーの仲間だった。つまり、ここにいる人間全員(ジョースター一行以外)に頼んでも、イカサマをされるということ。

 

 しかし、その事実を承太郎達は知らない。

 

 ダービーは、DIOのために勝負をしにきたのではなく、あくまでも自身がギャンブラー(賭事師)だから、戦いに来たのだと言い放ち、ポルナレフとジョセフの魂が封じ込められたコインをそれぞれ6枚ずつに割った。

 

 これについてダービーは、ポーカーとは、自分のカードが相手に負けるかも知れないと判断したら、ゲームを降りてもいい賭け事、つまり1回ごとに参加料を払うからチップ(コイン)が2枚では勝負にならない。そこでチップ(コイン)を6個取り戻して初めて魂をひとつ取り戻すことにすると言った。

 

 そして……、例の宣言…。『自分の魂を賭ける』という宣言の後に勝負が始まった。

 

 参加料として、1回につき1枚のコインを支払う。

 

 そしてここからが、ポーカーというゲームの恐ろしい心理戦となる。

 

 それぞれがカードとコインの出し合いで、相手の表情や様子などでカードのチェンジや出すコインの数を決める。

 

 そして1回目の勝負で……、承太郎は負けた。結果、承太郎は6枚のコインの内、3枚を失う。

 

 そしてもう一度勝負が始まる。

 

 ところが、承太郎は、ここである勝負に出た。

 

 なんと配られたカードを伏せた状態で、チェンジも無しで勝負する気できたのだ。

 

 さすがのダービーも、何を言っているのか分からず聞き返す。なぜなら、承太郎は配られたカードの内容を見ずに、伏せたままでいるのだから。

 

 承太郎は、表情を変えず、だが真剣なまなざしで宣言する。

 

 すべてのコイン、そして…アヴドゥルの魂を賭けると。

 

 それは、アヴドゥル自身が分かっていたことだし、アヴドゥルは、ダービーの腕の前には勝てないという思いと、賭事が苦手なので初めからこうする気だったと答えた。

 

 ダービーは、緊張感から頭がおかしくなったのか?っと、ひとすじの汗をかきつつ、おちょくるように言った。

 

 そしてさらにダービーは、カードをチェンジする。このディーラーやらせている子供も仲間であるため、当然だが良いカードが来る。

 

 初めから…、初めから…ダービーの術中。だがそれでも承太郎は揺るがない。

 

 ならばと、ダービーは、さらにすべてのコインを賭けにだすことにした。これで揺るがぬはずがないと見たのだろう。

 

 だが承太郎は…、そして花京院は…。

 

 僕の魂を遠慮無く使ってくれと承太郎に笑顔で言った。

 

 アヴドゥルが焦るものの、花京院は汗ひとつかかず、いいんですっと答えた。

 

 だがダービーは、この場にいない人間の魂もあるだろう?っと揺さぶる。

 

 それは、ミナミと仗助の魂だ。

 

 ミナミは殺す気はないのだろう!?っとアヴドゥルが聞くと、肉体を新鮮な状態で持ち帰って、ミナミの魂を解放すれば良いと答えた。スタンドさえ使える状態ならば、それ以外がどうなろうと構わないという命令だったっと。

 

 アヴドゥルは、あんまりなことだと、絶句する。DIOの目的は、あくまでもミナミのスタンドによる、ジョナサン・ジョースターの蘇生であり、ミナミ自身はどうでもいいのだということだ。

 

 見ているミナミは、それでも構わないと思った。体が眠っているため、仗助には相談できないが……。やるしかないのだと。

 

 それが承太郎に伝わったのかは分からないが、承太郎は、二人の魂も賭けると宣言。

 

 ついでに、スタープラチナにどこからか、タバコを持ってこさせた。火が点いた状態で。口に。

 

 それが見えなかったダービーは、何をした!?と叫んだ。承太郎は、なんのことだと?っととぼける。

 

 ダービーは、いつどうやって承太郎がタバコを咥えたのか分からず、そのことに焦っていた。

 

 見えなかった……、それはつまり、自分の見えぬところで、見えぬ速さでカードをチェンジした可能性があるということ。だがダービー自身、自分自身でイカサマをやるだけに、他人のイカサマを見破る目にも自信はある。だが、見えなかったのだ。その目をもってしても。

 

 だが、ふと見ると、いつの間にかテーブルの上にジュース。それを何事も無くストローで飲む承太郎。なお、ひとつもこぼれた様子も無し。当然だが移動させた形跡、つまりジョースの表面が揺れた様子も無かった。

 

 それが、ダービーを揺さぶる。そして、ディーラーやらせている子供も動揺して、心配の目をダービーについ向けてしまう。

 

 ダービーは、大汗をかきながら、勝負に打って出ようとして…、承太郎がまだ上乗せが終わっていないと言って止めた。

 

 そして承太郎は、日本にいる自分の母・ホリィの魂を賭けると宣言。

 

 承太郎は、自分の母を救うためにエジプトまで来たのだから自分の母は、文句は言わないと言い、そして…ダービーに、それに見合うだけのものを賭けろと言った。

 

 それは…、DIOのスタンドの秘密を教えろ。っということだった。

 

 するとダービーは、すべての冷静さをかなぐり捨てたように、椅子から転げ落ちた。

 

 アヴドゥルも花京院も確信する。ダービーは、DIOのスタンドを知っていると。

 

 そして、もし負けて喋れば、裏切り者として処刑される。

 

 ダービーは、命の瀬戸際に立たされ、あり得ないほどの汗をかいて、顔を歪める。それほどにDIOが怖いのだ。

 

 

「さあ! 賭けるか(コール!) 賭けないか(ドロップ)! ハッキリ言葉に出してもらおう!」

 

 

 ダービーは、もはや、酸欠状態だった。

 

 あまりの緊張感に、そして自身の背後にいるDIOという存在の影による恐怖で……。

 

 そして、必死に言葉に出そうとする。コールっと。

 

 だが……。

 

 ダービーは、やがて倒れた。

 

 そして、気が狂ってしまい、変な笑い声をあげながら、今まで奪ってきたすべての魂を解放し、完全にイカれてしまった。

 

 承太郎は、伏せていたカードをめくる。そこには、ダービーのカードの内容には絶対に勝てない内容だった。

 

 アヴドゥルも花京院もヘナヘナと腰を落とし、緊張感からの解放で大汗、過呼吸。そして、死んでたポルナレフもジョセフも復活した。

 

 

 

 

「あーあ……。」

「あれ? 姉ちゃん、起きたか? 体、だいじょうぶか?」

「うん…。それより、カフェの方でえらいことになってたみたいだよ。」

「えっ? なになに?」

「グーグーグー。」

 ミナミは、帰ってくる承太郎達の姿を見つけながら、仗助にさっきまで全員の命の危機だったことを話した。イギーは、ミナミの腿の上でグーグー寝ていた。

 

 

 

 

 




ブルー・ブルー・ローズ越しに、賭事の様子だけは見ていたミナミさん。
仗助はあとで聞いて、たぶん、呆気にとられるとと思う。まあ、承太郎のことは誰よりも信頼はしているし、許すとは思うけど。


次回は、ホル・ホース再び。ただ、オリジナル展開になるかも。オインゴがいるので。


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トト神と、皇帝のカード

ホル・ホース、またまた登場。


オインゴが入院してないため、ここに登場しています。


そしてオインゴとボインゴは……?


 カイロにて、カフェでのダービーとの一戦のあと、ジョースター一行は、とにかく聞き込みをしていた。

 写真に写った屋敷を探すこと。それしかないのだ。

 このカイロで、40年も大工をしている大工職人に聞いても、似たような建物が多いとのこと。そして雰囲気からして、100年は経っていると見ていた。そういう建物は、南の方に多いと聞き、一行は南の方角へ向かうことにした。

 ジョセフは、なんとなくだが、何かがいるのを感じていた。それがDIOの気配なのか…、それとも……。

 

 

 一方その頃……。

 

「ほ、本当にやるのかよぉ…?」

「仕方ねぇだろ! お前らも後がねぇんだしよぉ!」

 怯えているオインゴとボインゴに、そう言ったのは、ホル・ホースだった。

 戦闘型でないため、見逃してもらったオインゴとボインゴ。だが、一度はDIOの配下としてミナミを攫おうとしたが、失敗に終わり、処刑されるのを恐れてエジプトを脱しようとしたのだが、そこをホル・ホースに見つかり、脅されたのだ。

 

 逃げようとする自分達をDIOに教えると。

 

 そしてエンペラーを突きつけられ、協力を余儀なくされたオインゴとボインゴ。

「せめてよぉ、ミナミだけでも、奪えりゃ…、お前らの失敗も目をつむってもらえるかもしれねぇしよ。やるだけのことはやれ!」

「うぅ…。」

「兄ちゃん…。」

「だいじょうぶだ…、ボインゴ。お前だけはなんとかなるようするからな…。」

 オインゴがヨシヨシと、ボインゴの頭を撫でた。

「しかし、信じられねぇな…。おめぇのトトの予言は、よぉ。」

 

 

 ボインゴのトト神が宿る漫画には、近い未来が表示される。

 

 そこには、ポルナレフに鼻を指で突っ込むと、ドカーンとトラックにジョースター一行が轢かれて、大ピンチになるという内容だった。

 

「ぼ、ぼ、僕の…。」

「トト神の予言は絶対だろ? 聞いたぜ。それに、さっき実行もして実際にこの目でみたしよぉ…。けどよぉ、内容がざっくりすぎんだよ!」

「し、しししし、仕方ないんです…、で、でも、絶対…です…、逆らえば…大変…。」

「……クソッ!」

 

「おい、ホル・ホース。」

 

「ハッ!?」

 

 そこにポルナレフがやってきてしまった。

 ひとりだった。

 その隙に、オインゴは、ボインゴを抱えて逃げた。

「あっ! お前ら!」

「おい、今度は何を企んでやがんだ?」

「そ、それは…。」

「逆尾行してみれば…、お前かよ…? あのバステト女神ってのを操る女と組んでたかと思えば、今度は、誰と組んでやがった? 教えな。」

「う…うううう!」

「ん? なんだって?」

「うおおおおおおおお!」

 焦りに焦ったホル・ホースは……、次の瞬間、エンペラーを出そう見せかけて、ポルナレフの鼻に指を突っ込んだ。

「!?」

「……。」

「おい…? なんの、真似だ?」

 しかし、そのあとのことは考えてない。というか予言には描かれていない。

 そして完全に手詰まり。

 

「ポルナレフさーん? どうしたんですか?」

「ポルナレフ? どうした、誰かいたのか?」

 

 そこへ、ミナミ達が来ようとしていた。

 ポルナレフがその隙に鼻から指を抜き、シルバー・チャリオッツを出そうとして、一瞬の違いでホル・ホースのエンペラーの銃口が早くポルナレフの顔に突きつけられた。

 そしてホル・ホースは、ポルナレフの後ろに隠れ、頭の後ろに銃口を突きつけて、なんでもないと言わせようとした。

 ポルナレフは言われるまま、尾行者はいなかったとか答えつつ、舌で後ろ、後ろっと示そうと必死だった。

「後ろ……。」

「誰かいるんすか?」

「べ…、ベークション!」

 次の瞬間、ポルナレフが大きくくしゃみをし、そしてポルナレフにゴリゴリとエンペラーを突きつけていたホル・ホースが、よろけて出てきてしまった。

「あっ!」

「ホル・ホース! また、てめぇかよ!」

「シルバー・チャリオッツ!」

「グゲ!」

 素早くポルナレフが、ホル・ホースの後頭部をシルバー・チャリオッツの肘で殴って倒した。

 

 直後。

 

 猛スピードで走ってきたトラックが一行に突っ込んできた。

 

 ミナミは、辛うじて難を逃れたが、他の者達は倒れ、また崩れたブロック塀の下敷きになった。

 

「うごくなーーー!」

 

「えっ?」

 ミナミの首にナイフが突きつけられ、肩を掴まれた。

「…お前は…。」

 承太郎がヨロヨロと立ち上がった。

「う、動くと、コイツの首を切るぞ! 動くな、一歩も!」

 オインゴだった。

 オインゴは、ズリズリとミナミを引っ張ってジョースター達から離れた。

「お前…あん時、見逃してやったのに…、コイツ(ホル・ホース)と組んだのか?」

「…そ、それは…、し、仕方ねぇんだよぉおおおおおおおおお!!」

「……トトの予言か?」

「そうだよおおおおお! トトがそう予言したんだ! 逆らうとこっちが痛い目にあっちまううううう!!」

「ほう? で? その後、どうなるんだ? そのままミナミをDIOの屋敷まで連れて行くのか?」

「そ、そこまでは…。」

「やめときな…。お前が、ミナミの首をかき切るよりも早く、俺のスタープラチナが殴れるぜ?」

「う…ううううう!!」

「……お願い。やめて。」

「ミナミ?」

「何か事情があるみたいだけど…。あなたが死ぬと、とても悲しむ人がいるでしょう?」

「う…、それは…。」

「兄ちゃん…。」

「ボインゴ、下がってろ!」

「ワンワンワンワンワン!!」

「ぎゃあああああああああ!」

「ボインゴーーー!?」

 イギーに襲われたボインゴを助けるべく、オインゴがミナミから離れた。

 その隙に、スタープラチナの手がミナミを引っ張り寄せた。

「ったく…。油断するな。」

「ごめんなさい。あっ。」

「あっ? うおっ。」

 直後、シュルリとブルー・ブルー・ローズが地面から出てきていて、承太郎は後ろによろけた。

 その直後、承太郎の頭上すれすれを、ホル・ホースのエンペラーの弾丸が通った。

 

「な、なにいぃいいいい!?」

 

 ボインゴのトト神の漫画を手にしていたホル・ホースが、愕然とした。

「ば、馬鹿な…正午ぴったりに撃てば、承太郎を殺せるって…!」

 

『ーーーそれでは、正午のお知らせをーーー。』

 

 すると近くにあったラジオ局の放送マイクからそんな声が聞こえた。

「お、おおおお、俺の時計が…! 進んで…!? ど、どうなるんだ!? この漫画の通りにならなきゃ、どうなっちまうんだ!? この漫画の…。」

 そして……。

 メチャクチャに飛んで戻って来たエンペラーの弾丸が、漫画の承太郎の絵を貫き、ホル・ホースの眉間に着弾した。

 

「あ…ああ…。」

 ボインゴは、オインゴに抱きついた状態で、血を撒き散らして倒れたホル・ホースを見つめた。

「トト神の…予言は絶対…、逆らえば……痛い目に遭う…。」

 ボインゴは、ホル・ホースの傍に落ちていたトト神の漫画を拾った。

 ボインゴの表情は、どこか晴れやかだった。

「ボインゴ?」

「兄ちゃん、僕、決めたよ。もう兄ちゃんにばかり頼ってばかりで生きてちゃいけないんだって。」

「お前…。」

「ミナミ…、ごめんね…。僕ら間違ってたよ、最初から…。だから…。」

「いいの?」

 ミナミは、ボインゴがDIOに逆らう決意をしてDIOのいる館を教えようとしていると直感した。

「ううん。いいんだ。ねえ、兄ちゃ…。」

 

 その瞬間、巨大な氷の塊がボインゴを潰した。

 

「……………えっ?」

 建物の壁に突き刺さった尖った氷の塊と建物の壁の間から、ドクドクとドス黒い、ボインゴの血と、その血を浴びて汚れたトト神の漫画が開いた状態で落ちていた。

 

 

『DIO様に逆らった、ボインゴは、氷に潰され、死にましたとさ。めでたしめでたし。』

 

 

 氷に潰されたボインゴの汚い絵が、血によごれた状態で描かれていた。

 

「ぼ…ボインゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 オインゴが泣き叫んだ。

 そして、もう終わっていると分かっていても氷をどかそうとする。

「…んな…そんな…。」

 ミナミは、青ざめ首を振った。

「ミナミ!」

「あっ!」

 承太郎により庇われ、直後オインゴの背後から無数の氷が飛んできてオインゴは貫かれて死んだ。

 

 

『DIO様に、逆らおうなどと馬鹿な真似をするからだ。』

 

 

「その声は…、虹村か!」

『残念だが、そう簡単に来られては困るのだ。』

「どこにいる?」

『姿を見せると思っているのか? まあいい、私はこれより、気流を描いて、氷の嵐をお前達に送るだけだ。』

「なに?」

『ミナミ以外は、全員…、そこの馬鹿な兄弟のようになるがいい。』

「う、うう…。」

「泣くのはあとだ。他の連中を助けるぜ。」

 承太郎は、ミナミを発破し、倒れているジョセフ達を起こした。

 その時、たくさんの尖った氷が飛んできた。

「オラオラオラオラオラオラオラ!!」

「エメラルド・スプラッシュ!!」

「マジシャンズ・レッド!!」

 それぞれスタンドで氷の攻撃を防いだ。

「立てるか!?」

「あ、ああ…なんとか…。」

 立ち上がった一行に、さらに氷の攻撃が降り注ごうとする。

「この氷は、虹村の攻撃じゃない…! 誰か…、別の誰かの攻撃を虹村が援護しているのだ!」

「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン!!」

「どうした、イギー!」

 イギーが天を向いて吠えている。

 すると、1羽のハヤブサが空を飛んでいた。

 だが妙なハヤブサだった。派手な装飾品が施されており、明らかに普通じゃない。

「まさか、アイツか?」

「今度は、鳥かよ!」

 すると、ハヤブサから氷が飛んできた。間違いなく、あのハヤブサこそが、氷のスタンド使いだと分かった。

「撃ち落とす! エメラルド・スプラッシュ!!」

 しかし、氷を撃ち落とそうとすると、氷はあらぬ方向に軌道を変え、自分達の方へ飛んできた。

「これは!」

「マジシャンズ・レッド!!」

 炎の壁が氷を蒸発させる。

 しかし、別軌道から飛んできた氷の塊が建物の壁に跳弾し、アヴドゥルの背中に刺さった。

「ぐあ!」

「アヴドゥル!」

「仗助!」

「はいっす!」

「くそ、このままじゃじり貧だぜ! どっちか…、虹村か、あの鳥のどっちかを倒さねぇと!」

 一行は逃げながら対策を考える。

 

 

 しかし、一行は気づかなかった。

 潰されたボインゴと、その傍で死んだオインゴが消えていたことに。

 

 ブルー・ブルー・ローズが、先ほどまで血がダラダラと流れていた場所を探るように生えていた。

 

 

 

 




原作キャラ死亡に見せかけて……?


ホル・ホースは、トト神の予言にうっかりし、原作通り眉間を自分で撃ってしまう。(一応生きてる)

心を入れ替えようとしたボインゴは…、ペットショップと、虹村のコンビの攻撃を受けてしまう。そしてオインゴも…。
しかし、ブルー・ブルー・ローズの能力により…?


次回は、ホルス神(を援護するザ・タイド)とのバトル?



2019/08/18
鷹じゃなくて、ハヤブサでしたね。すみません。


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ホルス神

ホルス神とザ・タイドのコンビ戦。


完全オリジナル展開です。



前回死んだと思われた、オインゴとボインゴは……?


 

 カイロの街に、灼熱の国にまったく似つかわしくない氷が降り注ぐ。

 実体のあるそれは、外にいた人々をパニックに陥らせる。

 流れ弾があれど、そのほとんどの氷の弾丸は、ある一行を狙っていた。

 

 

 ハヤブサ。

 

 ハヤブサ目ハヤブサ科ハヤブサ属の、鳥類。

 

 平飛行時の速度は100㎞前後、急降下時の速度は、飼育しているハヤブサに疑似餌を捕らえさせるという手法で計測したところ、時速390kmを記録したと言われる。

 

 目を構成する視細胞が150万個。おおよそ、人間の8倍の視力がある。

 

 

「つまり、機動力、獲物の捕捉については、わしら人間じゃ勝ち目無しってことじゃーー!」

「けど、鳥は、鳥だろう!?」

「その鳥に今追われていて、ジリ貧なんじゃないか!」

 虹村のザ・タイドにより、軌道を自在に変えて襲ってくる氷の弾丸に、横から縦から、右から左から、後ろから前から、とにかく休む暇も、気を抜く暇も無い攻撃を仕掛けられている。

「ゼエゼエ! こ…、こんな暑い中…走り回ってたら……。」

「いずれ、やられるぜ…。」

「ちくしょーーー! 鳥なんぞにここまで追い詰められちまうなんて!」

 一行は空き家に逃げ込むが、それを追いかけて氷の弾丸が入ってくる。

 素早く伏せて回避し、氷の弾丸は壁にすべて着弾した。

 すると攻撃が止む。

「い、…いったん…きゅう…け…。」

 ポルナレフがゼーハーゼーハーっと荒い呼吸を繰り返す。

「攻撃が止まりましたね…。」

「何も無ければ良いが…。」

 全員息が上がっていた。

 

 ピシピシ

 

「? なんか、涼しくね?」

「あっ!」

 ミナミが外を指差した。

 そこには、空を飛んでいたはずの派手なハヤブサが、こちらを見つめて地面に立っていた。

「あんにゃろう…! っ!? 足…!?」

「しまった、奴は氷を地面に走らせたのか!」

 地面とほぼ同じ素材の床に氷が張り巡らされており、一同の足を張り付けさせていた。

 

「キュオオオオオオオオオオオン!」

 

 甲高い鳴き声をあげた、ハヤブサが、自身のスタンド、ホルス神を出現させつつ、周囲に氷の弾丸を発生させた。

「は、外れねぇ! やべぇ!」

「マジシャンズ・レッド!!」

 直後発射された氷の弾丸を、アヴドゥルが炎の壁を作って防ぐ。

 だが、何発かの氷の弾丸が炎隙間を縫って部屋の中を飛び回った。

 

『ククク…、馬鹿め…、建物の中は安全だと思ったか?』

 

 天井からフッと姿を見せたザ・タイドの手が撫でるように気流を描き、氷を導き、一同の肩や背中、足に氷を突き刺すようにした。

「いっ…つぅ…。」

「姉ちゃん!」

「私はいいから、みんなを!」

 仗助を庇い、氷の攻撃を受けたミナミがそう叫ぶ。

 マジシャンズ・レッドの炎の熱で、足を拘束していた氷は溶け、一同は仗助に治療をして貰いながら、裏口から飛び出した。

「ハッ!」

「マジシャン…ズ…!」

 裏口から出て最初に見たのは、空中で静止しているとんでもない数の氷の弾丸だった。

 アヴドゥルが出るのが送れ、炎の壁が間に合わず、制止していた氷の弾丸が他の者達めがけて飛んできた。

「オラオラオラオラオラオラオラ!!」

「ドララララララララララララ!!」

 目の前に迫った氷の弾丸を、承太郎、そして仗助がダブルラッシュで防いだ。

 しかし数が多すぎて、数発は、体に刺さった。

 すると、建物を越えて、ハヤブサが飛んできた。

 グイ~っと、動かないはずのクチバシを歪め、笑っているように見えた。

 

「来ると…、思ったぜ。」

 仗助が、ニヤッと笑った。

 

 砕けたはずの氷の弾丸の数発が、向きを変え、直された。

 そして、ハヤブサめがけて飛んでいく。

「!?」

『馬鹿め。私を忘れて…、っ!? 貴様ら! なぜ…、がぁあ!!』

「!」

 ザ・タイドからの声が途絶え、それに驚いたハヤブサの翼に、氷の弾丸が刺さった。

 ハヤブサが地に落ち、だが、ポタポタと血を流しながらも、こちらを睨んで、氷の弾丸を生成する。

「ほう? あの猿と違って、最後まで降伏しないか…。たいしたプライドだぜ。よし、全力で来な。」

「キュオオオオオオオオオオオン!!」

 カイロの灼熱の気温を吹き飛ばすような、凄まじい氷の嵐が発生し、前に出た承太郎に襲いかかろうとする。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 襲いかかる氷を全て砕きつつ、そして最後の一撃がハヤブサの胸に打ち込まれた。

 キュ…オオン…っと、弱々しい鳴き声を最後に漏らし、ハヤブサは、地面に落ちて、ピクピクと痙攣し、やがて動かなくなった。

「て…手強い敵だったな…。」

「しかし、何か様子がおかしかったぜ。虹村が……。」

「えっ?」

「どうした?」

「あ、あれ…!」

 

「おーい!」

「ジョースターさん達ーー!」

 

 そこへ、死んだはずのオインゴとボインゴが走ってきた。

「お、お前ら…、なんで!?」

「まさか…。そんな…!」

「姉ちゃん…。」

 びっくりする一行の中で、ミナミは、青ざめて今にも倒れそうだった。

「お前達…死んだ…はずじゃ…。」

「そ、それが…俺らもよく分かんなくって…。」

「…なんか…、気がついたら生きてました。」

「ああ…ああああ…。」

「姉ちゃん、しっかり!」

「いつの間に…。」

「?」

「どうした?」

「ねえ……、あなた達…青いバラの花を拾わなかった?」

「えっ? あ、ああ…、変な赤い茎の色した青いバラか。確かに拾ったぜ?」

「僕も。」

「……。」

 ミナミは、とうとう、気を失った。

「姉ちゃーーーん!」

「おい、どういうことだ、仗助?」

「それは……、姉ちゃんのブルー・ブルー・ローズっす。」

「ブルー・ブルー・ローズが? あれは、相手の寿命を奪うスタンドじゃなかったのか?」

「確かにそうっすけど…。けど…、1回だけ…1回だけ…、もし青いバラの花を拾って体に取り入れていたら…、死んだことが…なかったことになるんっす。」

 ミナミを支える仗助が語った内容に、一同は驚愕した。

「ただ…、今までの寿命はなくなって…。取り入れたバラの本数分だけしか年数生きられないっす。例えば…、1本しか入ってなかったら、1年しか…。」

「つまり、生き返ったコイツの残り寿命は、1年足らずってことか?」

「えっ!?」

「たぶん…、拾ったのが1本だけなら…。」

「そ、それなら……、50本ぐらいほど、拾ったんですけど…。」

「ん? じゃあ、残り寿命50年といったところか?」

「そうなるっすね。」

「50年か…、うわぁ…、なんだか複雑だぜ。」

「兄ちゃん…、僕十分だよ。」

「1回だけってことは、それ以上死んだら?」

「死ぬっす。完全に。」

「な、なんちゅう能力じゃ…。隠しておったのか?」

「いえ…、この能力は…姉ちゃんが一番嫌ってるんす。だから…言えなかったんです。」

 仗助は、そう言って、気絶したミナミを見つめた。

「ってことは…、ミナミ、僕らの命の恩人…?」

「そうなるな。」

「……じゃあ、恩は返さないと…。」

「ボインゴ…。」

「いいよね? 兄ちゃん。兄ちゃんが嫌なら…。」

「馬鹿野郎。弟を見捨てるなんてことするかよ。俺も付き合うからな。」

「お前ら…。」

「さっきの鳥は、番犬ならぬ、番鳥だったんだ。DIOの館の…。だから、今、守っている相手はいないはずだよ。」

「案内してくれるのか?」

「はい!」

「…ありがとう!」

 

 そうして、オインゴとボインゴは、DIOの館へジョースター一行を案内した。

 

 その道中、気がついたミナミに、オインゴとボインゴには、50年分の寿命入っていると言い、それで十分だからっと聞いて、ミナミは泣いていた。

 

 

「ここです!」

「むっ! こ、この圧迫されるような空気は…!」

「お前らは、逃げな。せっかく助かった命を無駄にすんなよ?」

「へ、へい! 行こう、ボインゴ!」

「うん! 皆さん! がんばって!」

 オインゴとボインゴは、その場から去った。

 

「ついに…。」

「この旅も…。」

「終着ってわけか。」

 

 

 一行は、ついにDIOの目前まで来たのだった。

 

 

 

 




ブルー・ブルー・ローズの、青いバラの花を拾っていたため、1回だけ死んだことがなかったことに。そのため、オインゴとボインゴは、生還。
運良く、大量に拾っていたため、残り寿命も50年とまあまあの長さで。
二人は、生き返らせてもらった恩を返すため、DIOの館に案内。そして、命を無駄にするなと言われ、離脱。

なお、虹村を倒したのは、オインゴとボインゴです。でも虹村は死んでません。


さあ、いよいよDIOの館。どうしようかな?


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テレンスと、ヴァニラ・アイス

DIOの館編。


ケニー・Gとか、テレンス戦は、割愛。


 

 館の外からでも感じ取れる、ドス黒い…邪悪な気のような重たい空気。

 それは、この館の主が発するものであるだろう。

 

「さて…、どうする?」

 

 すると、扉が勝手に開いた。

 まるで入ってこい、いるのは分かっているからと言わんばかりだ。

「……俺ら、なめられてねぇか?」

「いや…、向こうは最初から我々が来ることを知っていた。虎穴に入らずんば虎児を得ず。入るしか、道はない。」

「そうだよな…。俺が先行するぜ。」

「気をつけろ、ポルナレフ。」

「あ? なんだこりゃ!?」

 先に入り口を覗き見たポルナレフが声を上げた。

 

 中に入ると、どこまでも続くおかしな通路が続いていた。

 明らかにおかしい。屋敷の大きさにまったく見合わない。

 

「幻覚か?」

「気をつけろ、すでに敵の術中に入ったかもしれん!」

「おい、誰か来るぞ!」

 すると、通路の遙か先から、浮いた状態で、シュイーンっと、誰かが飛んできた。

 

「ようこそ。ジョースター様。お待ちしておりました、私は、この屋敷の執事です。」

 

「なっ…、執事だ~~?」

「ダービーともうします。」

 すると執事の男は、ペコリッと深く頭を下げた。

「ダービー…だと?」

「はい、あなた方に再起不能にされた、ダニエル・J・ダービーの弟です。私の名は、テレンス・T・ダービーともうします。」

「!」

「さあ、どうぞ。DIO様がお待ちです。」

「ふざけんなよ?」

「兄の弔い合戦か?」

「いいえ。とんでもない。私の兄は、あなた方に言いませんでしたか? 『勝負とは、騙されて負けた方が悪いのだ』と。…その通りだと思います。」

 様子から察するに、別に兄であるダービーが倒されたことについては、これといって恨みは無いらしい。

 テレンス曰わく、10歳以上は歳が離れていたし、それなりに兄のことは尊敬していたが、やり方が違うのだという。

 兄は、古いタイプだと。

 だからこそ、兄ではなく、自分の方がDIOが執事に任命したのだと言った。

「いかがなされました? 私との勝負をお望みならば…、館の中へ。」

「……スタンド!」

 仗助がテレンスの手にスタンドが被さっているのに気づいた。

「失礼ですが、私のスタンド、アトゥム神は、兄のスタンドとタイプが違うのです。」

「めんどくせぇ、承太郎、ぶちのめせ!」

「オラァ!」

「賭けよう。スタープラチナの私への最初の一撃は、左腕から繰り出される。」

「!」

「第一の攻撃は、左腕のパンチ。賭けよう(ビット)。」

「……おかしい。」

「分からねぇ…、けどやな予感するっす! 承太郎さん! 攻撃したら…。」

「……いいや。」

 次の瞬間、スタープラチナの拳が…、右手が放たれた。

 しかし、攻撃は、スイ~っと軽やかに避けられた。

「おかしい…! やっぱり…、まるで最初から…分かってたみたいに!」

「ほう? 中々勘が良いですね。ですが…、東方ミナミ様、アナタだけは、DIO様より生かして連れてこいと言われていますので…。」

「ハッ!」

 アトゥム神は、スタープラチナの右腕を掴んだ。

「ふふふ、賭けは私の負けですね。ですので、お詫びにとっておきの世界に連れて行って差し上げます。」

 すると、アトゥム神、そしてテレンスの足場を中心に穴が広がった。

 アトゥム神に掴まれている承太郎は、スタープラチナと共に引っ張り込まれる。

「承太郎!」

「承太郎さん!」

「ワンワンワンワンワン!」

「い、イギー!? あっ! 仗助!」

 承太郎を引っ張り上げようとしたジョセフ、花京院、そして仗助が穴に引っ張り込まれて、穴がやがて消えていった。

 穴が消えていく中、ジョセフが。

 10分経っても、戻ってこれなかったら、館を燃やせと叫んでいた。

「じょうすけーーーーー!」

 イギーのザ・フールに止められているミナミは、消えた穴に手を伸ばし、叫ぶ。

「ミナミ、気持ちは分かるが、いったん、出るぞ!」

「うぅううう! 仗助…。」

 アヴドゥルとポルナレフに立たされ、入り口から飛び出した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして時は、わずか10分を過ぎていく…。

 しかし、承太郎達が戻ってくる様子は、まったくない。

「どうして…、どうしてなの? どうしてそこまで私が必要なの? どうして、どうして、私なの? どうして、どうして…、私にこんな力が…!」

「落ち着け、ミナミ。今そんなことを考えてる場合じゃないんだ。」

「君の力の在り方…そして、その意味…、それは君が生きて帰ってからゆっくりと考えなさい。まず、これからやらなければならないことを先決にするんだ。」

「ぅ…ううう…。」

「ワフ…。」

 座り込んでいるミナミを、アヴドゥル達が元気づける。

 イギーは、足をピンッと立たせてペロペロとミナミの頬を舐めた。

「全員に…忠告しておく。」

 するとアヴドゥルが言った。

「これから館に突入するが…、例え誰かが行方不明になり、そして負傷しても助けないつもりでいる。」

「!」

「イギー、そしてミナミ…お前達もだ。冷酷な発想だが、我々はDIOを倒すためにこの旅をしてきた。お前達の方も、もし、私がやれたり…お前達とはぐれても、私を助けないと約束しろ。自分の安全を第一に、考えるのだ。ひとりを助けようとして全滅してしまうのは避けねばならない。」

「…………ああ。分かったぜ。」

 するとポルナレフが、アヴドゥルに握手の手を出した。

 その手をアヴドゥルが力強く握った。

「ミナミ。」

「…はい!」

 なんとか立ち直ったミナミもその両手を握った。

「生きて帰ったら…、豪勢な夕飯をおごれよ?」

「もちろんだ。」

「イギーにもね。」

「ワン。」

「よし! 入るぞ! アヴドゥル、イギー、ミナミ!」

 そしてミナミ達は、館へ侵入した。

 床をスタンドで調べ、そして壁も調べ、近くの別の部屋への出入り口から中を覗く。

「ジョースターさんは、館に火を放てと言ったが…、これだけ迷路では、火を放つのはこっちが危険だ。それより…。」

 するとアヴドゥルがマジシャンズ・レッドから、奇妙な火の形を作り出した。

「それは?」

「生物探知器だ。」

 すると、生物探知器として作り出された炎が早くも反応を示した。

 さらに、イギーがクンクン!っと鼻を鳴らす。

 そして、次の瞬間にザ・フールを出し、反応があった箇所を攻撃した。

「ぎゃああああああああ!」

 小柄な男が壁から出てきて、倒れた。

 すると、迷路が消えた。

「どうやら、スタンドを使った幻覚だったらしいな。これで、館を探索できる。」

「はい。……?」

「炎に反応は無い…。イギーの鼻も反応無し。では、行くぞ。」

「あ…。」

「ん? どうし…、危ない!」

 後ろを見て硬直していたミナミを、アヴドゥルが突き飛ばした、その瞬間、アヴドゥルの体が、両腕を残して消えた。

「い……、いやあああああああああああああああああああああ!!」

 ミナミが悲鳴を上げた。

 

『勘はいいが…とんだお人好しもいたものだな。』

 

「て…てめぇは!? アヴドゥルは、アヴドゥルはどこだ!?」

 何もない空間から突如出現したスタンドに、ポルナレフが焦る。

『アヴドゥルは…、このヴァニラ・アイスが殺した。』

「なっ…。」

『このスタンド、クリームの、暗黒空間によって、バラバラに砕いて…。』

「な、ん…だと?」

「そんな…そんなぁ…。」

「ウゥウウウウウ!!」

 泣き崩れるミナミ。あまりに突然のことに頭が着いていけないポルナレフ。ガタガタと震え上がるイギー。

『東方ミナミの…手足をもぐつもりだったが……。とんだお人好しが出てきたのでな。まあいい、どうせ全員…、このクリームの暗黒空間に粉みじんにして消してくれる!』

「うそだああああああああああああああああああああ!!」

「ぬっ!? シルバー・チャリオッツ!」

 シルバー・チャリオッツがポルナレフの激情によって、普通より長い射程距離で発射され、ヴァニラ・アイスという敵の背後をついた。

「うぅうううううううううううううううう! アヴドゥルさん、アヴドゥルさん!!」

「立てええええええええ! ミナミ!! イギーも逃げるぞーーーー!!」

 お互いに涙で顔を塗らした中、二人と一匹はその場から、近くの階段に向かい、登った。

 

 

 

 残されたアヴドゥルの両腕の腕輪から、ブルー・ブルー・ローズが生え、離れた位置にあるもう1本の腕を引っ張り寄せるようにした。

 

 

 

 




ミナミが、ヴァニラ・アイスに気づいたが、アヴドゥルが庇ったため、原作通り粉みじんに……。
だが……?



次回は、ヴァニラ・アイス戦。


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ヴァニラ・アイス その2

ヴァニラ・アイス戦。


途中で、アヴドゥルが……?


そしてイギーは……。


 

「くうううううう! 馬鹿野郎…アヴドゥル! てめぇが言ったんだろうが! 助けないって! 自分の安全を第一にってよぉ! てめぇが死んでどうすんだ!」

「……。」

「ワンワンワンワンワン!」

「イギー? ハッ!」

 廊下を走り抜けようとしたとき、その先の通路に大穴が空いていることに気づいた。

 つまり先ほどの敵が…、ヴァニラ・アイスがすでに先回りしたということだ。

「……ウ、エ。」

「ミナミ? っ!?」

 ポルナレフを、虚ろなミナミが掴んで伏せさせた。直後、ポルナレフの頭上の後ろにあった柱が大きく抉れた。

「テキ…、ク…ル。」

「ミナミ…。生きろって…ことか? 生と死を操るお前…ブルー・ブルー・ローズが、運命が…俺に生きろって言うのか!?」

「……い、ケ…。」

「ふざけんな、お前も…!」

「…勝…テ…。」

 トンッとミナミ(ブルー・ブルー・ローズ)が、ポルナレフを突き飛ばした。直後、ポルナレフが立っていた場所に穴が空いた。

『チィ! 外したか…。』

「……。」

『ヌウッ!?』

 床からブワッと生えてきたブルー・ブルー・ローズが、ヴァニラ・アイスのクリームを絡み取った。

「ミナミぃいいいい!!」

「ワオオオオン!」

「イギー、お前まで…。く、くそぉ!!」

『ふっ、自ら身を差し出すか…。ちょうどいい。』

 クリームからヴァニラ・アイスが出てきて、うつろな目をしたミナミを掴んだ。

 ポルナレフと、イギーは、その隙に、別の場所へと移動した。

「DIO様も…、なぜこの娘に拘るのか…。分からぬ。まったく分からぬ…。だがDIO様のご意志は絶対。このまま連れて行く。」

 虚ろな目をしているミナミの腕を引いて、ヴァニラ・アイスが移動した。ブルー・ブルー・ローズは、クリームによりバラバラに引きちぎられていた。

 ヴァニラ・アイスが、ミナミを連れて歩いていると、別の階段から、コツコツと靴音が聞こえた。

 

「騒々しいな。ヴァニラ・アイス。」

 

「ハッ! DIO様!」

 階段から上がってきた存在の姿を見て、ヴァニラ・アイスは、即座にその場にひれ伏した。

「……連れてきたのか。」

「はい! ご要望の東方ミナミを連れて参りました!」

「そうか…。よくぞやった。」

「ハッ!」

「……カ……。」

「?」

「必ズ……勝…テ…。」

「!?」

 次の瞬間、ボッと、砂で出来たDIOの腹部からシルバー・チャリオッツの剣が突き出てきて、ヴァニラ・アイスの額を貫いた。

「ガッァ…! 貴様…!!」

「かかったなぁ!!」

「ぐっ…クッウウ!!」

「な、なに!?」

 額から後頭部を貫かれているのに、ヴァニラ・アイスは、死ななかった。

「て、てめぇ…まさか…。」

「この…、どちくしょうどもがぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「ぐあ!」

 クリームが出現し、偽のDIOが破壊され、ポルナレフと、イギーが吹っ飛んだ。

「贋物とはいえ、よくもDIO様を! DIO様をぉおおおおおおおおおおお!!」

 そして、ヴァニラ・アイスは、頭に刺さったままの、シルバー・チャリオッツの剣を引っこ抜いた。

「く、くそ…!」

 すると、ヴァニラ・アイスが、イギーに迫った。

「イギー!」

「このクソ犬が…、贋物とはいえ、よくも、よくも、このヴァニラ・アイスに、DIO様を破壊させたなぁああぁあああああ!!」

 ヴァニラ・アイスは、クリームではなく、自分自身の拳と足でイギーを殴り、蹴った。

「蹴り殺してやる! 暗黒空間に撒き散らすのは一瞬だ! それでは、私の怒りが収まらない! 貴様が悪いんだ! 貴様がぁ!! 私を怒らせた貴様が悪いのだ! 貴様が悪いのだ!!」

「や、やめろおおおおおおおおお!!」

 

 

「マジシャンズ・レッド!!」

 

 

 次の瞬間、爆炎がヴァニラ・アイスを包み込み吹っ飛ばした。

「なっ!?」

 火炎に包まれながら、ヴァニラ・アイスは、見た。

 

 無傷のアヴドゥルの姿を。自分が確かに殺したはずのアヴドゥルという存在を。

 

「あ…、アヴドゥル…?」

 ポルナレフは、目の前のことが信じられなかった。

「すまない。遅くなってしまった。」

「あああ…、アヴドゥル、アヴドゥルぅうううううう!!」

「馬鹿。喜んでる暇があったら敵に集中しろ。」

「お、おう!」

「ば、馬鹿な…、確かに殺したはず! 私のクリームの暗黒空間に粉みじんにしたはずだ! なぜ、なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ、生きているぅうううウウウウウウウウウウウウウ!?」

 火炎に包まれたヴァニラ・アイスが、信じられないと叫ぶ。

「どうやら、貴様…すでに人間ではないらしいな。この火力で燃え尽きんということは、おそらくは吸血鬼か?」

「おおおおおおおおおおお!!」

「同じ手は食わん。そして、貴様が吸血鬼と分かれば…。」

 パチンッと指を鳴らしたアヴドゥルが、マジシャンズ・レッドの爆炎で壁に穴を空けた。すると日光がたくさん入り込み、火炎に焼かれているヴァニラ・アイスに浴びせられた。

「容易い。」

「貴様アアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「そのまま…、灰となれ。」

 クリームがアヴドゥルに迫るが、眼前でグズグズに崩れ落ち、そしてヴァニラ・アイスは、灰になって消えた。

「イギー!」

 ポルナレフが、イギーに駆け寄った。

 イギーは、ゲホッと血を吐いた。

「息はあるようだが……。仗助さえいれば…。」

「アヴドゥル…、本当に、アヴドゥル…なんだよなぁ?」

「ああ。そうだが?」

「もしかして…、お前…。」

「ああ、そのようだ。」

 心当たりがあるとしたら、それしかない。

 二人は、うつろな目をしているミナミを見た。

 

「ポルナレフさん! アヴドゥルさん!!」

 

「仗助! お前、ジョースターさん達は!?」

 そこへ仗助だけが駆けつけた。

「嫌な予感がして…、ひとりで来ちゃいました…。それより、イギー…。」

「あ、ああ、頼むぜ!」

 すぐにクレイジー・ダイヤモンドがイギーを治療した。

 イギーは、やがて目を開けた。

「イギー…! よ、よがっだああああああああああああああ!!」

「ギャウウウウウン!」

「イデデデデ! 噛むなよ!」

 ギューっと抱きしめたイギーが、怒ってポルナレフの鼻に噛みついた。

「……じょーすけ…?」

「姉ちゃん?」

「アヴ…ドゥル…さんは…。」

「私は、ここにいるよ、ミナミ。」

「アヴドゥル…さん…、アヴドゥルさん!!」

「君のおかげだ…。君が私を連れ戻してくれたのだ、ミナミ…。」

「…あ……。」

「気にするな。今は。」

 アヴドゥルに抱きついたミナミを受け止め、アヴドゥルは、慈しみの目を向けながら、その頭を撫でた。

 ミナミは、ポロポロと涙を流した。

 

 

 

 

 




アヴドゥル、1回きりのコンテニューにより生還。ただし寿命1年。

イギーは、まだ消費せず、仗助に治された。

ヴァニラ・アイスが、イギーが作った偽のDIOに騙されたのは、太陽が入ってこない通路だったことと、DIOが部下がミナミを連れてくるのをずっと心待ちしていたのを知っているからでした。


次回、DIO登場かな?


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DIO

DIO登場。


原作通りっぽく見せて、オリジナル展開もあり。


口の回るDIOを言い負かすの難しかった……。



2019/08/18
DIOの台詞をちょっとだけ追加した部分有り。(DIO→ジョナ要素)


 

「この上か?」

「そこしかないっすよね。親玉がいるとしたら。」

「しかし、ジョースターさん達から勝手に離れてだいじょうぶなのか?」

「だいじょうぶっすよ。相手はテレビゲームで対決だったっすから。あんにゃろう、イカサマが不得意とか言って、実は人の心が見えるってことが分かって…。」

「それは、大変だったな。」

「……。」

「姉ちゃん…。しっかり。」

「あっ…、ごめん。だいじょうぶ。」

「顔色が最悪だぜ?」

「ワン……。」

「……怖いです。」

「姉ちゃん…、メチャクチャ怖がりなのやせ我慢してたもんな…。」

「そうなのか? 度胸据わってるように見えてたけど。」

「いや、全然。ちゃちいホラーゲームで、ギャーギャーピーピー、すぐに泣くんすよ。アイデッ!」

「余計なこと言わない。」

 仗助の頭をどつき、ミナミは、プイッとそっぽを向いた。

「ワオオオオオンン!」

「どうした、イギー? …!」

 イギーが異変を察知して吠えたため、階段の上を見ると……。

 

 

 そこには、黄色い衣装を纏った、美しい男がいた。

 

 

 一目見て、すぐに全員が直感した。

 

 DIO。だと。

 

 

「ふん…。久しぶりか、アヴドゥルに、ポルナレフ。」

「ディ、DIO!」

「ついにお出ましってわけか。」

「アイツが…。」

「DIO…。うっ。」

「姉ちゃん!」

 脳裏を過ぎった過去の記憶に、ミナミは、ふらついた。

「おめでとう。ポルナレフ。そしてお帰り、アヴドゥル。妹の仇を討ち、そして極東からの旅も。また無事にここまでたどり着けたというわけだ。」

 DIOは、階段の上でパチパチと拍手した。

「そして、東方の子。そして、ジョースターの隠し子達。」

「っ!」

「ーーー!」

「初めましてというところか。しかし、ジョセフ・ジョースターも抜け目の無い奴よ。まさか、極東の島国に、自らの血筋を別に残していたとはな。だが、そのおかげで、私の叶えられなかった悲願が叶うというもの。東方ミナミ…。」

「!」

「君のスタンドの力がどうしても必要だ。どうか、このDIOにその力を貸してはくれないかい?」

「ケッ! どうせロクなことに使わないんだろうが!」

 ポルナレフが、ミナミを庇うように立つ。

「フッ…、それはお前の勘違いだ。ポルナレフ。私は、ただ…。」

 すると、DIOは、どこからともなく、誰かの頭蓋骨を出した。

 それは、ミナミの記憶にある…頭蓋骨。

 

「この頭蓋骨の人物を…、蘇らせて欲しいと、願っているだけなのだよ。」

 

「ソレ…、てめぇが殺した奴のだろうが!」

「ほう? 知っているのか? 未来から来たそこのジョースターの隠し子達にどこまで聞いている?」

「ジョナサン・ジョースター…。お前が本来ならば、4歳の東方ミナミを連れ攫い、その人物を蘇らせようとしたことをだ。」

「……フフフ…、なるほど、やはり未来から来たというのは本当のようだな。」

「あっ!」

「だがしかし…、そんなことはどうでもよいのだ。幼い子の方が躾ければ使い勝手はいいだろうが、精神力で確実性が無い。まだ未成熟とはいえ、それなりに成長しているならば、その強大な力に少しは耐えられよう。」

「だから…、4歳のミナミを攫わず、16歳のミナミを狙っていたのか!」

「その通り。」

 DIOは、あっさりと今までミナミを狙い続けたことを肯定した。

「誰から…、ミナミのその力を教わった?」

「エンヤ…っといったな。あの老婆は。」

「口封じに殺しておいて、てめぇ!!」

「用済みだったのだ。ただそれだけのこと。それに、少々口うるさすぎたのでな。我が魂の片割れたる、ジョナサンを貶したのもいかんかった。」

「くっ…!」

 あっさりと、すでに使い捨ててエンヤを殺したのだと答えられ、アヴドゥルもポルナレフも拳を握り、怒りに震えた。

「ひとつチャンスをやろう。」

「なにぃ?」

「その階段を二段降りろ。そうすれば、私の仲間にしてやろう。逆に、死にたければ…、足を上げて、階段を登れ。」

「……へっ! 決まってるだろうが! なあ、アヴドゥル!」

「ああ!」

 ポルナレフから話を振られ、アヴドゥルは力強く頷いた。

「だ…ダメ…。」

「姉ちゃん?」

 そして、ポルナレフとアヴドゥルが階段を登ったが……。

 

 

「そうかそうか。アヴドゥル、ポルナレフ。私の仲間になりたいと、いうわけだな?」

 

 

「!」

 登ったはずのアヴドゥルとポルナレフは、いつの間にか、階段を下がっていた。

「な…!?」

「!?」

 二人は、再び階段を登る。だが、登っていなかった。

 それを何度か繰り返し、二人は動揺による大汗をかいた。

「どうした? 動揺しているぞ? アヴドゥル、ポルナレフ。動揺するということは、それは、恐怖しているということではないのかね?」

「ば、馬鹿な…!」

「俺達は、階段を登ったはずなのに!?」

「あまりに恐ろしいので、無意識に階段を降りたのかもしれないぞ?」

「くっ、うううぅ!」

 アヴドゥルは、あまりの恐怖心に大汗をかく。ポルナレフも動揺していた。

 

 そしてDIOは、階段の上から語り出す。まるで子供に読み聞かせるおとぎ話のように。

 

 人間とは、何のために生きているのか。

 それは、不安や恐怖を克服して、安心を得るために生きるのだと。

 名声を手に入れ。

 人を支配したり。

 金儲けをするのも、その安心を得るためだと。

 結婚したり、友人を作ったりするのもすべては、安心、のためだと。

 人の為に役に立つだとか、愛と平和のためだとか、すべて自分を安心させるためであり、安心を求めることこそが、人間の目的だと。

 そこで、自分に仕えることになんの不満があると聞いた。

 自分に仕えるだけで、他の全ての安心が簡単に手に入るのにと。

 今のお前達のように死を覚悟してまで、自分に挑戦する事の方が不安ではないかと。

 お前達は、優れたスタンド使いだ。殺すには惜しい。ジョースターの仲間をやめて自分に永遠に仕えないかと。

 そして…、永遠の安心感を与えてやろうと。

 

「どっかの殺人鬼が…、植物のような平穏な暮らしとか言ってたが…、俺は、納得しないね。」

 DIOの強烈な誘惑の声に仗助が言った。

「ほう? 納得しないとは?」

「花は…、何のために咲く?」

「…? 種を残すためだ。」

「そうだな…。けどアンタは、花どころか、徒花(あだばな)ってやつだぜ。意味の無い花だ。綺麗に咲くこともないし、かといって、種も残さねぇ。なんの意味も無い花だ!」

「……。」

「あんたが極東の島国って言った国じゃ…、パッと咲いて、パッと散るって事が美徳にもなってるんだぜ? 儚いからこそ…美しいんだ。輝くんだ! 不老不死の吸血鬼のてめぇにゃ永遠に分かるわけがない、価値ってのがあるんだよ!! 姉ちゃんのスタンドの青いバラにもその意味が込められてるって、俺は思うぜ!!」

「仗助…。」

「……そうだ、そうだぜ! 仗助、よく言ったな!」

「その通りだ、仗助! よく言ったな! 聞いたかDIO! 貴様には分かるまい! 不老不死として、吸血鬼として生きるために、人間を食い荒らし、支配してきた貴様には!!」

「……ふん! ならば、しょうがない。」

 立ち上がったDIOの背に、スタンドが出現した。

 その姿は……。

「えっ?」

「クレイジー・ダイヤモンド…、に、似てる!」

 

 ザ・ワールド。それは、仗助のクレイジー・ダイヤモンドに、形状が少し似ていた。

 

「ほう? ならば、見せてみるがいい。どれだけ我がスタンドに似ているのかを。」

 

 その時。

 階段の途中の壁が突き破られた。

「!」

「承太郎!」

「承太郎さん!」

 空いた壁から差し込む太陽の光から、逃れるため、DIOは、フッと笑いながら、上階の暗闇に姿を消した。

「だいじょうぶか?」

「こりゃ、仗助! 勝手にひとりで動くんじゃない!」

「ご、ごめんなさいっす。」

 ジョセフに怒られ、仗助は謝った。

「ウゥウウ…。」

「イギー…。」

「イギー…、お前はもう付き合わなくても良いぞ?」

「!」

「そもそも、お前を無理矢理連れてきたのはこちらだ。そもそもDIOに何の因縁も無いのに…。だから、今のうちならば敵の部下もいない、逃げるならば今だ。」

「………フンっ!」

「イギー…、お前…。は、ハハハハ…、そうか、ありがとよ、クソ犬。」

 ピョンピョンと階段を登っていくイギーの姿に、ポルナレフは、一瞬呆気にとられたが、すぐに笑った。イギーは、もうここまで来たら、最後まで付き合うつもりなのだ。

「……なあ、姉ちゃん…。」

「…分かってる……、あの感じ……。」

「どうした?」

「もしかしたら…、でも確信がなくって。私達も分からないんです。」

「どういうことだ?」

「……もしかしたら…、時を止める能力じゃないっすか?」

「なにーーーーー!?」

「俺ら…、同じ能力を持った人を知ってます。その人が時を止めた感じに似てるような…。すんません。曖昧で…。」

「いや…、そんなこたぁねぇよ…。何をされたのか俺もアヴドゥルも分からねぇ…、もし、もし本当に時を止める力なら…、超スピードとか、催眠術とか、そんなチャチなもんじゃないってのが分かるぜ!」

「でも…、たぶん、ちょびっとだけじゃないかな? たぶん、数秒間だけ…。5秒もないかも。私が知っている人も、1、2秒ぐらいだし。」

「短っ!」

「けど、その短時間で、行動できるスピードとかがあるから、成り立つんだと思います。」

「あと、連続して時も止められないらしいし…。」

「なるほど…。良い情報だ。」

「で? 誰が、同じ能力を使える?」

「……それは…。」

「いや…、言わねぇ方がいいな。なあ、DIO。」

「!」

 

「チッ!」

 

 見ると、階段の上の壁に隠れているDIOがいた。

「聞いたか? どうやら、てめぇと同じ能力者がいるらしいぜ?」

 しかし、DIOは何も言わず、今度こそ闇の中に消えた。

「いつから…。」

「たぶん、隠れてこっちの会話を全部聞いてやがったんだろうな。」

「あの反応からするに…、たぶん大方合っていると見られますな。」

「時を止める…。数秒間…。連続じゃできない。」

「……ちょい待て、そんなトンデモ能力、どうやって攻略するよ?」

 話がまとまりそうになった時、ポルナレフが待ったをかけた。

「それでも…。」

「やるしかねぇんだ。ポルナレフ。」

「もう時間が無い! 奴の時間が来る!」

「行くぞ!」

「…姉ちゃん。行こう。」

「うん!」

 

 一行は、上階へ上がった。

 

 しかし、そこには、もう誰もいなかった。

 

「あの野郎! 逃げやがったのか!?」

「いいや、DIOの性格のことじゃ…、こちらが追って来ることを見越してわざと館から出たんじゃろうな。」

「姉ちゃん!」

「えっ?」

 ハッとして見ると、部屋の隅に、DIOに口を塞がれ、首を羽交い締めにされているミナミがいた。

「ンンーー!!」

「DIOぉおおおお!!」

「追って来るがいい。仗助。」

 次の瞬間、ミナミと共に、DIOが消えた。

「しまったぁ!」

「や、やっぱり、時を止める力なのか!? そうなのか!?」

「……。」

「承太郎?」

「いや。急ごうぜ。」

 

 一行は、館を飛び出し、外へ出た。

 

「実にマズい! 奴の時間が来る!」

「ジョースターさん! まさか、このまま明日の朝までオメオメと逃げるわけじゃないよな?」

「そんなわけあるか! ミナミは、必ず取り返す!」

「……しかし妙だった。」

「ああ…。なぜ仗助を指名した?」

「知らないっすよ! そんなこと! よくも姉ちゃんを!」

「熱くなりすぎるな、仗助!」

「く…うぅ…。」

「ワンワンワンワンワン!」

「追うっきゃなさそうだな…。」

「奴のことだ…、逃げも隠れもせず、絶妙な距離で我々を迎撃するだろう。ここは二手に分かれぬか?」

「えっ!?」

「追撃を二段階にする。一度に行って、一網打尽にされては、お終いじゃ。上手くいけば、挟み撃ちできる。」

「分かったぜ!」

「では、私はポルナレフと共に。」

「俺も行くぜ。」

「イギー、お前はお前の鼻で、ミナミを追ってくれ。」

「ワン!」

「僕と、ジョースターさんと仗助は、イギーと一緒に先に行きます!」

「よし、決まりじゃな! 行くぞ、みんな!」

 

 全員が拳を合わせ、それぞれ1段階目、2段階目の攻撃班に分かれた。

 

 




ブルー・ブルー・ローズの青いバラの花にかけて、花を例え話に出して言い負かす仗助の図?

ミナミ、攫われる。よく攫われる子です。

なぜ、仗助を指定したのか……。
それは、後々。

活動報告でも書いたが、仗助に青いバラの花が入っていないのが伏線に。


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ザ・ワールド

vsDIO。


DIOがなぜジョナサンを生き返らせたかったのか…、若干の腐向けかも。


注意!


完全オリジナル展開です。


あと、仗助が……。


 

「う…。」

 ミナミは、目を覚ました。

「ようやくお目覚めか?」

「…っ!?」

「そう怯えるな。」

 車の後部で、DIOと隣り合わせになっていたことに、ミナミは、怯み、隅に逃れると、DIOがクスクスと笑った。

 前を見ると、血だらけの身分のよさげな中年男性が、必死に車を操っていた。

「……そんなに…。」

「?」

「そんなに…、生き返らせたいのに…、どうして…殺したの?」

「ああ…。」

 言われてDIOは、ジョナサンの頭蓋骨を取り出し、手の上で弄ぶ。

「あの時は…、どうしてもこの肉体…、ジョジョの肉体が必要だったのだ。二人がひとつになるために。」

「それなのに…。」

「だが、この肉体には、ジョジョの魂が失われてしまっていた。」

「…えっ?」

「だからこそ、呼び戻す必要があったのだ。このDIOと絢爛たる永遠を共に生きるために。だからこそ、ミナミ。」

「ひっ…!」

「お前の力で…、我が魂の片割れたる、ジョジョ…、ジョナサン・ジョースターを呼び戻して欲しい。お前の力はそのためにあるのだ。」

「違う…!」

「何が違う? お前は、この旅でどれだけの命を奪っていたと思っている?」

「っ!」

「なぜ、たった1回だ? トトとクヌムのスタンド使いと、ヴァニラ・アイスに殺されたアヴドゥルを再起させたその力…、なぜたった1回だけなのだ? 私の見解が正しければ……、お前は…、すでに死んだ者を蘇らせると、死ぬだろう。」

「!」

「そのたった1回を、私に捧げてはくれないか?」

 ミナミは、車の隅で、ガタガタと震えた。

「仗助…。」

 無意味だと分かっていても体を庇い、涙を浮かべて、ここにいない弟の名を小さく呼ぶ。

 

 

 姉ちゃーーーーーん!

 

 

 どこからか、仗助の声が聞こえ、ハッとミナミは顔を上げた。

「どうやら、追ってきたようだな。」

「仗助…?」

 後ろを見ると、猛スピードで追って来る車があった。

 そして、ブワッ!とハイエロファントグリーンが飛び出し、車の横に来ると、エメラルド・スプラッシュを放った。

「フンッ。」

 放たれたエメラルド・スプラッシュを、指ひとつで弾き、まるでビリヤードのようにすべてのエメラルド・スプラッシュを弾いた。だが車の破損は止められない。

「姉ちゃん!」

「仗助!」

「ドラァ!」

「ワオオオン!」

 車が追い越す際に、クレイジー・ダイヤモンドと、ザ・フールが、ミナミが乗っている車の扉を破壊し、ミナミを仗助達が乗る車に移動させた。

 エメラルド・スプラッシュの破壊に怯んでいた中年男性のせいで、車は失速し、仗助達を乗せている車がずっと先へ追い越した。

「追え。」

「へ、へへへへ、うへへへへ! む、無理ですぅ!」

「近道があるではないか。そこを通れ。」

「えっ、ほ、歩道を…?」

「行け。」

「う、うは、ウハハハハハ!」

 DIOの殺意に当てられ、気が狂った中年の男は、歩道を近道にし、たくさんの人々を轢きながら進んだ。

 やがて、仗助達を乗せた車を捕捉できるところまで追いついた。

 すると、ハイエロファントグリーンが再び出現し、エメラルド・スプラッシュを放とうとすると、DIOは、ザ・ワールドを出した。

『無駄無駄無駄無駄!』

『グアッ!』

「チッ…、ちと距離が…。」

 ザ・ワールドの拳がハイエロファントグリーンの頭部を一部破壊したが、僅かであり、すぐにハイエロファントグリーンは、引っ込んだ。

「フッ…、フフフ…。このDIOを徒花だと? ならば、仗助…、お前は……。」

 DIOは、運転している中年の男を掴んだ。

 そして……、前を走る仗助達を乗せた車に向けて全力投球した。

 男を投げつけられたことで、大きく方向が逸れ、建物の壁に激突する車。

 DIOは、軽やかに飛び降り、車は運転手を失ってあらぬ方向にそれて別の建物へぶつかった。

 そしてDIOは、仗助達が乗っていた車を調べに行く。

 誰も乗っていなかった。

「むっ…、あそこか…。」

 

 

「ゲッ! 気づかれた!」

 建物の上にいることに気づかれ仗助が焦った。

「だいじょうぶか! ミナミ!」

「……今気づいた…。足…、腱を切られてる。」

「なにぃ!?」

 恐怖心で痛みが無くなっていたが、救助されて安心したのか痛みが戻り、足の異変に気づいた。

「姉ちゃん! 今治すからな!」

「! 仗助、後ろぉ!」

「ハッ!」

「ほう…? 早いな。」

 振り返った仗助の後ろに迫っていたDIOの存在に気づいたミナミが叫び、仗助は咄嗟にクレイジー・ダイヤモンドでDIOに拳を向けた。その拳をザ・ワールドが受け止めた。

「ドラララララララララララララララララララララ!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」

 互いのスタンドによる拳のラッシュが発生する。

「なるほど…、確かに我がザ・ワールドに少々形は似ているな。だが、それだけ。無駄ぁ!」

「う…! がぁ!?」

 弾き飛ばされたクレイジー・ダイヤモンドの拳の隙をついて、ザ・ワールドの蹴りが仗助の胴体にめり込んだ。

 ボキボキッと肋骨が折れていき、仗助は、ガハッと血を吐いた。

「エメラルド・スプラッシュ!」

「フッ、安直だな、花京院。」

 エメラルド・スプラッシュを軽やかに回避し仗助から離れる。

「ハーミットパープル! アンド、波紋!」

「フン! 100年前は手を焼いた波紋だが、貴様のスタンドが一番生ぬるい!」

 DIOは、屋根の一部を破壊してそれをジョセフにぶつけた。

「グガ!」

「お父さん!」

「ほら、ミナミ。早くしないと、お前の父親も弟も仲間も死ぬぞ?」

「っ…。」

「し、従うな…、ミナミ!」

 ジョセフがボタボタと血を頭から流しながら言った。

「ジョセフ…、なぜそこまでミナミにスタンドを使わせようとしない?」

「き、決まっておる…。貴様の企みのために、ミナミの命を奪わせてなるものか!」

「それが、未来から来たこの時代の娘じゃなくともか?」

「未来だとか過去だとか関係ない! 娘は娘じゃ!」

「しかし、その娘がお前の命の危機だというのに、スタンドを使おうとはしないぞ? それは、その程度の存在と思われているのではないか?」

「違う! ミナミは、自らのスタンドを制御できないのだ! 独自の意思を持ち、勝手に動く! 下手に暴走させれば…。」

「その暴走こそが必要なのだ。」

「なっ!?」

「どうやら、この程度では、ブルー・ブルー・ローズは、動かんようだな。やはり…。」

 DIOが、肋骨を抑えてへたり込んでいる仗助を見た。

「させると、思っているのかDIO? お前はもう、我がハイエロファントグリーンの術中! くらえ!」

「また、エメラルド・スプラッシュか…?」

「フッ。」

「!」

 DIOが少し動いた瞬間、ピンッとハイエロファントグリーンのほぐれている体の一部が触れた。

 その瞬間、エメラルド・スプラッシュが飛んでくる。

「ちぃ!」

 それを避けると、またピンッとハイエロファントグリーンに触れる。そしてまたエメラルド・スプラッシュが飛んでくる。

 それを繰り返し、DIOは、仗助から離れざる終えなくなった。

 その瞬間。

 

 

「マジシャンズ・レッド!!」

 

 

 宙を跳んだDIOに向け、マジシャンズ・レッドの爆炎が放たれた。

「くっ!」

 ハイエロファントグリーンの結界に阻まれ、網にかかった状態のようになったDIOは、炎に包まれた。

「DIOぉぉぉおおおおおおおおお!!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 爆炎に包まれたDIOを、ポルナレフと、承太郎のスタンドが襲う。

 だが炎だけが切られ、そして殴られ、そこにDIOはいなかった。

「アオオオオオオオオオン!!」

 イギーがザ・フールから、砂の衝撃波吐き出し、仗助に接近しようとしたDIOをいぶり出した。

「この…畜生が…!」

「くらえ!」

 砂に捕われたDIOに、近距離からの最大出力エメラルド・スプラッシュを花京院が放つ。

「ザ…、ワールド!」

 時が止まる。

 砂の壁から脱出したDIOは、無防備になった花京院の腹部と胸を貫き、そしてイギーの胴体を踏み潰した。

「…1…ゼロ!」

 花京院は、胸と腹から大量の血を吹き出しながら吹っ飛んでいった。イギーは大量の血を吐き、息絶えた。

「あ…ぁあ…。」

 動けないミナミは、ガタガタと震えた。

 彼女の周りから、その恐怖心と絶望に反応してか、ブルー・ブルー・ローズがニョロニョロと生えだし始めていた。

「まったく…、強情だな? いや、薄情か? 酷いな、ミナミ。これだけ仲間達がお前を守ろうと苦戦し、死に絶えているのに、それでも何もしないのか?」

「っーーー!」

「DIOーーーー!」

「ポルナレフか…。貴様など…時を止める必要もないわ!」

 ザ・ワールドの凄まじい速さで放たれた拳が、シルバー・チャリオッツにめり込み、ポルナレフは、吹っ飛ばされた。

 落下していくポルナレフを、砂が受け止めた。

「?」

「グルルルル!」

「…ほう? 犬…お前にも命のストックが入っていたか。」

 スッと手を上げようとした直後、またもハイエロファントグリーンの結界に触れたDIOの手をエメラルド・スプラッシュが撃ち抜き、グチャグチャにした。

「むっ! 花京院もか…。」

「オラァ!」

「承太郎。」

 至近距離に接近した承太郎が、スタープラチナを繰り出し、拳のラッシュを決めようとする。

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 凄まじいラッシュのぶつかり合いは、建物を飛び越え、そしてアチコチを破壊しながら続けられた。

「確かに凄まじいな。その力…だがもう十分だ。死ね。承太郎。…いや? お前にも命のストックが入っているか?」

「さあな?」

「まあいい、どうせ1回しか使えぬストック…。もう一度殺せばいいだけのことだ。ザ・ワールド!」

 時が止まる。

「お前が死ねば、さすがのミナミのスタンドも…。」

 その時。

 

 ブルー・ブルー・ローズが、モゾリッと動いた。

 

 それにギョッとしたDIOが攻撃を躊躇した直後、承太郎の服から生えてきたブルー・ブルー・ローズが、DIOの胴体を引っ掻いた。

「なにぃいいいい!?」

 そして時が動き出す。

「ば、馬鹿な…! ブルー・ブルー・ローズは…、止まったときの中で動けるのか!?」

 DIOの体から咲いた青いバラの花が、パラパラと落ちた。

「生と死を司るスタンド…。そんなもんが、てめぇごときの支配を受けるとは思えねぇな。」

「…グッ…。」

「利用しようとしたつもりが、とんだ伏兵がいたもんだな。」

 ブルー・ブルー・ローズが、ショルシュルと承太郎を守るように動く。

「てめぇ…、どれだけの人間を食ってきた?」

「?」

「てめぇの命ひとつで…、十分すぎるほど、寿命のストックとなる青いバラの花を取れそうじゃねぇか。それをアヴドゥル、花京院、イギーに使う。やれ、ブルー・ブルー・ローズ。トドメはお前に任せるぜ。」

「……フッ…フフフフ…。」

「どうした? 目の前の死に、気でも狂ったか?」

「寿命を奪うが…ただそれだけのなまっちょろいスタンドで、このDIOを殺せると思っていたか?」

「そうは、思わねぇよ。だからこそ、俺がてめぇを動けなくさせる。」

「馬鹿が…、ブルー・ブルー・ローズは、我が支配を受けずとも、貴様は…。」

「試してみろ。」

「? ……まさか、貴様…?」

「ほら、どうした。やってみろ。ザ・ワールドの時を止める力をな。」

「……ザ…ワールド!!」

 ダクッと汗をかいたDIOだが、ザ・ワールドを発動させた。

 時が止まる。その中をブルー・ブルー・ローズが動き、DIOに迫るが、ザ・ワールドの鋭い蹴りが根っこを蹴散らす。

「ククク…、思わせぶりを…!」

「どうかな?」

「なっ!?」

「オラァ!!」

 時が止まった中で喋った承太郎の声に固まったDIOの頭に、スタープラチナの拳がめり込んだ。

 時が動き出し、DIOの体が大きくバウンドして倒れた。

「ま、まさか…、お、お、同じタイプのスタンド…! き、貴様か! 貴様か承太郎! ミナミと仗助が言っていた…、時を止めるスタンドの使い手とは!!」

「どうやらそうらしいな。どうにも腑に落ちなかったんだ。アイツら…、なんでか、俺だけにはずっと承太郎さんって、まるで年上を慕うみたいにしてきやがる。」

「ぐ…ククク…!」

 DIOは、まさかの自分のスタンドと同じタイプの出現と、脳を攻撃されたことへのダメージで、立ち上がろうとしてガクンッと足を崩した。

「感じるぜ……。ブルー・ブルー・ローズが、俺に力を貸してくれているのを。」

「そ、そんな…植物の根っこごときが…。」

「だが、強大な力があるってことは、てめぇも知ってるはずだぜ? その力が俺のスタンドの覚醒を早めたのかもな。」

「お…のれ! このどちくしょうがぁああああああ!!」

「ふん、それがお前の本性か? ケッ、吐き気を催す邪悪とはよく言ったものだぜ。」

「ザ・ワールド!!」

「スタープラチナ!!」

 ザ・ワールドの方が早かった。だがそれ以上に早く、スタープラチナの拳がめり込み、DIOが頭から大量の血を撒き散らしながら遙か先に吹っ飛んでいった。

「100年間も生き延びてきた吸血鬼…、これで終わったはずがないな。確実にトドメ…。」

 

 

「仗助えええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 

 

「!?」

 

 

「愚かな…、馬鹿はお前だ。承太郎。これだ、コレを狙っていたのだ。」

 承太郎が見たのは、目から光を失い倒れている仗助と、その姿を見て、涙すら忘れ愕然としているミナミの姿だった。

 

「花京院でも、アヴドゥルでも、犬でもダメだった……。ならば、双子の弟…ならば…。」

 

 仗助の胸から心臓をズボッと引き抜いた引き抜いたDIOがその血を舐め取った。

「く、ハハハハハハハハーハハハハハ!! 馴染む! 実に馴染むぞおおおおおおおおおおおおお!!」

 負っていた怪我が全て癒え、首の縫い跡が消えたDIOが高笑う。

「……。」

 ミナミの背後で、ザワザワとブルー・ブルー・ローズが蠢く。

 空気が一気に冷えていく。

 

「ミナミ。お前に足りない物…それは、憎しみ…怒り…そういった負の激情だ! スタンドとは、精神の強さによって操作するもの! 力に怯え、恐怖で本来の力に蓋をしたお前では、本来の力である蘇生の力など扱えるはずがなかったのだ。だから、私が少しばかり後押しをさせて貰ったよ。そして、仗助……、私のことを、徒花だと言ったな? すでに死んでいるが、私からお前に言わせてもらうと、仗助…、お前は言わば、“肥料”だ。花を咲かせるための。双子として生まれたのは、最初からお前が花の肥やしになるためだったのだろう! 喜ぶがいい! あの世で……な…?」

 

 

 月明かりに照らされた風景が、不意に巨大な影によって覆われた。

「あ…、ああ…」

「う……!」

「うわあ、うわあああああああああああ!!」

 ジョセフ達は、それを見上げてしまい、恐怖に言葉を失うか、あるいは叫んでいた。

 

 

 うぅぅぅぅううううおおおぉぉぉぉおおおぉぉ

 

 

 そこには、怪獣のごとく巨大な、骸骨に赤い鮮血色の根っこが絡まった、異形が叫び声をあげていた。

 

「…ば…か…な……。」

 

 この状況を生み出した当の本人であるDIOですら、これは、あまりにも規格外だった。

 

 

 




ブルー・ブルー・ローズ、フルパワー状態に。

だが、そのデカさと威圧感とか纏っている空気とかがあり得ないレベルで、喚びだしてしまったDIO本人もビックリ。

しかも、ただデカいだけじゃないんですよね……。


ところで……、DIOが今まで食い散らかした人間分の寿命で、蘇生…いけるかな?


仗助がDIOに殺されてしまうのは、最初のネーム段階から決めていました。
でも迷ってました。色々考えに考えて、死なせる展開にしちゃいました……。
ごめん! 仗助、ジョジョじゃ一番好きなのに!


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蘇生の白い花

フルパワー状態のブルー・ブルー・ローズ対DIO。


なお、このフルパワー状態は、4部の時と違います。あの時は、幻想という形でしか、全容が出てなかったので。


 

 うぅぅぅぅううううおおおぉぉぉぉおおおぉぉ!!

 

 

「あ…あぁ…。」

「なんだ…こ、これは…。」

「ひ…ひぃ…。」

「……!」

 あまりの規格外さ。威圧感。そしてまとう空気の異常な冷たさのようなモノ。

 

 それは、DIOが放っていた相手を魅惑するカリスマ性でも、尻にツララでも刺されたような冷たい巨大な殺意をも越える。

 

 人智を越えた……、ナニか。

 

 

 骨であるため空洞の両目に、ポッと光が灯る。

 それを合図に、ギシギシとゆっくりと、ゆっくりと、動き出すソレ。

 

「これが………、ミナミの…ブルー・ブルー・ローズ…なのか?」

 

 あまりの規格外さに、人間ではないDIOですら滝みたいに汗をかき、酷い有様だった。

「なぜだ…? なぜ、こんな強大すぎるモノ(スタンド)が、たかがひとりの小娘に……。」

 DIOは、ミナミの身には見合わない巨大すぎるスタンド体に、驚いていた。

 

 

  ユルサナイ

 

 

「!」

 

 

  ワタシは、オマエを

 

 

 ミナミが、スッと片手をあげた。すると、ブルー・ブルー・ローズ(フルパワー状態)が、同じように片手を上げた。

 

 

  コロス

 

 

 次の瞬間、スタープラチナの拳や、ザ・ワールドの拳に匹敵するスピードで、上がっていたブルー・ブルー・ローズ(フルパワー状態)の手がDIOに向かって振られた。

「!?」

 間一髪でザ・ワールドでガードしつつ、本体であるDIOスレスレにブルー・ブルー・ローズ(フルパワー状態)の手が髪の毛をかすめた。

 それだけで、髪の毛から青いバラの花が咲き、バラバラと落ちた。

「馬鹿な!? これほど巨大で、スピードが我がザ・ワールドと同じぐらいだとぉ!?」

 隣の建物にブルー・ブルー・ローズ(フルパワー状態)の手が接触して壊れ、それでいて、実体のあるスタンドであるブルー・ブルー・ローズの突然の出現により、カイロはパニックになっていた。

 

「うぅううう! こ、これは、このままでは、ブルー・ブルー・ローズに、カイロが飲まれてしまうぞ!!」

 

 ジョセフが上から見える光景に思わずそう叫んでいた。

 それを聞いたDIOは、ニヤリッと笑った。

「ククク…、フハハハハ!」

「おい、とうとう、気でも狂ったか?」

「このカイロには、どれだけの人間がいると思っている?」

「!」

「蘇生には十分すぎるほどの命があふれているではないか! この巨大さは予定外だが、ブルー・ブルー・ローズの青バラをかき集めるにはちょうどいい頃合い! この状態では、もはや敵も味方も区別がついていまい、貴様らが肥やしになれ!」

「あっ、上。」

「ハッ? っ!?」

 振られた腕が今度は振り下ろされてきて、承太郎はスタープラチナと自身を重ね合わせて全力で動かし、座り込んでいるミナミと、死んでいる仗助を回収して逃げた。直後、彼らがいた建物を、ブルー・ブルー・ローズ(フルパワー状態)が潰した。

「はあ、ハア!!」

 DIOは、辛うじて潰されずにすんだ。

 だが、ブルー・ブルー・ローズ(フルパワー状態)が触れている瓦礫の隙間から、凄まじい数の鮮血色の植物の根っこが飛び出してきて、尻もちをついていたDIOを捕まえるように絡みついてきた。

「この…!」

 根っこを引きちぎるのは容易い。

 持ち上げられたブルー・ブルー・ローズ(フルパワー状態)の手が、DIOを捕えようとするように動く。

 DIOは、ふと考えた。

 絡みついている根っこの強度は弱い。ならば…っと。

「無駄無駄無駄無駄!!」

 迫ってきたブルー・ブルー・ローズ(フルパワー状態)の手を、殴りに殴る。

 すると、ボロボロと、もろく崩れていく。

「ハハハハハハハ! やはりそうか! 見かけ倒しも、いいところ……、…?」

 しかしふと、DIOは、自分の両手に違和感を覚えて見た。

「あ……。」

 そこには、ホロホロとシュレッダーにもかけられた紙くずのように崩れていく、ザ・ワールドの両手と、自分の手があった。崩れたモノから、青いバラの花が咲き、大量に地面に落ちていく。

 

 相手から、寿命を奪い取る。

 

 それが、ブルー・ブルー・ローズの基本的な能力だ。

 

 落ちた青いバラの花を、鮮血色の根っこが拾っていく。

 

 その本数は、やがて1000本へ。

 

 かき集められた、青いバラの花をまるでひとつにするように、根っこが蠢く。

 

 やがて……、すべての青いバラの花が消え、代わりに、一輪の、見たこともない美しい白い花が出現した。

 

 DIOは、直感する。

 

 あの白い花こそが、死んだ者を蘇生させる力そのモノだと。

 

 あれさえ、あれば…っと、DIOが動いた直後、その花をかすめ取った存在がいた。

 

 承太郎だった。

 

「承太郎!」

「わりぃな…、コレは……ミナミが仗助のために用意したもんだ。お前のじゃない。」

「貴様ぁあああああああ!! っっ!?」

 直後DIOは、倒れた。

 足に感覚が無い。

 見ると、足がボロボロに崩れていた。

 まさか!っという考えが過ぎる。

 

 すべての寿命を奪いつくされたのだという、最悪の考えが。

 

「馬鹿な…、そんな、こんな、ところで…、このDIOが!! このDIOがぁあああああああああああ!!」

 

 足から順に崩れていきながら、DIOは、最後の叫び声を上げて……、完全に崩れて死んだ。

 崩れた端から、青いバラの花が咲き、おおよそ、160本ほどの青いバラの花になった。

 

 

 DIOが死んだと同時に、ブルー・ブルー・ローズが、消えていく。

 まるですべての力を使い果たし、そして役目を終えたように。

 

 承太郎は、すっかり白髪だらけで、俯いたまま動かないミナミと、その前に寝かされている仗助の死体に近づいた。

 

 そして、ソッと白い花を仗助の上に乗せる。

 すると、白い花がパッと光となって消え、散った光は、仗助を包むように広がった。

 みるみるうちに心臓をくりぬかれて空いていた穴が閉じ、血に汚れていた体が綺麗になる。

「……うっ…?」

 そして、仗助がゆっくりと目を開けた。

「よお。お目覚めか?」

「承太郎さん? 俺…。」

「仗助!」

 離れた場所にいたジョセフ達が駆け寄ってきた。

「姉ちゃん? 姉ちゃん…?」

 仗助が起き上がり、俯いたまま動かないミナミの肩を掴んだ。

 すると、フラリッとミナミが倒れ込んできた。

「姉ちゃん!」

「白髪が…。」

「まさか、命を……!?」

「そんな!」

「いや、まだ息はあるぜ。」

 承太郎の言葉に、仗助は慌てて、ミナミの心臓に耳を当てた。すると、弱々しいが心臓は動いていた。

「脈が弱い! 体温も平熱以下じゃ! このままでは…。」

 ジョセフが、ミナミの体の状態を調べた。

「すぐにSPW財団の医療班を手配しなければ!」

「……ミナミ…。お前は、なんという子じゃ…。あれほどの力(スタンド)を背負った状態で…、今までたった一人で戦っておったのか? すまんかった…、すまんかった! 怖かったじゃろう? 自分自身(スタンド)を何より恐ろしがっていた理由が分かった…! わしゃあ、父親失格だ。だが、せめて、お前を生かしたい! 生きてくれ、ミナミ!」

「ジョースターさん!? なにを!」

「深仙脈疾走(ディーパスオーバードライブ)!!」

 握りしめたミナミの右手に、ジョセフは、波紋と共に自身の生命エネルギーを送り込み始めた。

「急げ! SPW財団の医療班を呼べ! じじいがもたせてるうちに!」

「あ、ああ!」

「オオオオ! ミナミ、頼む! 目を覚ましてくれ! 神よ…!!」

 自身の命を全て捨てて、相手を救う究極にして最後の波紋の技を使うジョセフは、神に祈る。

 長らく波紋に触れず、妻と共に老化していたジョセフのソレは、不完全であったが、確実に生命エネルギーは、送られていた。

 どれくらい経っただろう。時間にしてみればわずかだっただろうが、永遠にも思える時間が経過し、やがてSPW財団の医療班が到着した。

 すると。

「……ん…。」

 ミナミのまぶたがピクリッと反応した。

「姉ちゃん!」

 仗助が呼ぶと、ミナミがうっすらと目を開けた。

 やがてジョセフの方が限界が来て、息を切らした。

「ミ、ナミ…。だいじょ、ぶか…?」

 息も絶え絶えなジョセフが聞く。

 すると。

 

「……だれ…?」

 

 弱々しい声が、そう聞いた。

 

 

 




仗助の蘇生に成功。

しかし、その代償は……。


あと、160本ほどDIOから青いバラの花が取れたので、これをアヴドゥル、花京院、イギーに分配予定。


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呪いは、花へと昇華する

旅の終わり。


仗助の蘇生をしたミナミ。


そして、ある人物が登場。


『魔法使いの嫁』を一部参考。


DIO(ディオ)→ジョナ要素があります。


2019/08/20
ジョナサンの台詞、ちょっと書き加え。


注意!


 朝日が昇る。

 ブルー・ブルー・ローズによる破壊と、その姿を見た者達の騒動もあったが、カイロは、やがてもとの姿を取り戻すだろう。

 

 SPW財団が管理する病院では……。

 

「ミナミの様子は?」

「……。」

 心配するポルナレフ達に、承太郎は首を横に振った。

「……精神の…後退か…。」

 アヴドゥルがそう呟く。

 

 ミナミに起こった異変…、いや、後遺症と言えるだろうか?

 ミナミの精神は、わずか4歳ぐらいまで後退していた。

 精神の後退と共に、記憶まで逆行しており、承太郎達がだれなのか分からなくなっていた。

 しかし、仗助だけは、なんとなく自分の弟だとは認識したらしく、仗助越しにジョセフが父親で、承太郎が歳の離れた甥っ子であることなどを伝えられた。

 体力も酷く消耗しており、まともに歩くことさえできなくなっていた。

 今は、病室で仗助の付き添いのもと、ベッドで寝ている。

 すでに、十数時間経過しているが、回復する様子は無い。それどころか、眠っている時間が長くなっているように思えるほどだ。

 病院に運ぶ時、そして、安心させようとジョセフが頭を撫でたとき。

 ゴッソリと髪の毛が抜けたときは、ジョセフは、焦りに焦ってパニックになっていた。ゴッソリ抜けた部分を隠すため、ニット帽を被せた。

 

「こんな例は、聞いたことがない…。」

「仗助を生き返らせたことが影響しているのでしょうか?」

「なあ…、助かるんだよな? ミナミは、死なないよな!?」

「分からん…。」

 そこへ医者と共にジョセフが、病室から出てきた。

「ジョースターさん、ミナミの様子は?」

「……ダメじゃ…。衰弱が酷い。」

「なあ…、あの技で…。」

「あれは、もとより、すべての命を相手に捧げるような捨て身の技だ。長らく波紋から離れておったわしには扱い切れんかった…。」

「ミナミがそれで生き返っても、ジョースターさんが死んでは意味がありません。」

「10時間ほど前に、日本にいるお袋が回復したとは聞いたが…。」

「申し上げ難いのですが……、今の状態では、あと24時間ももたないと思われます。」

 ジョセフの隣にいる医師がそう告げた。

 場の空気が一気に重たくなった。

「…助ける方法は…ねえのかよ?」

「手は…尽くしました。ですが、我々はスタンド使いではありません。スタンドによる後遺症の治療方法は…。」

「……仗助は?」

「病室におる。ずっと手を握ってやっているよ。」

「……ん?」

「承太郎?」

 承太郎が何かを感じた。

 病室の扉から、ニョロッと、ちびっとだけ、黒っぽい赤になったブルー・ブルー・ローズの根っこが出ていたのだ。

「まさか…。」

「おい、承太郎!」

 承太郎が、病室に入った。

 そこで見たのは、ベッドの上で眠るミナミの上に、見覚えがある頭蓋骨がひとつと、そして、その頭蓋骨から生えたらしい、黒っぽい赤に染まってしまったブルー・ブルー・ローズに支えられるように病室の中に出現している、ひとりの青年の姿だった。その青年の周りには、黒い泥のようなモノが舞っていた。

 仗助は、何が起こったのか分からず椅子に座ったままぼう然とソレを見上げていた。

 その顔立ちは…。

「あんたは…。まさか…。」

 

 

『……その通りだよ。僕は、ジョナサン・ジョースター。ジョセフ、承太郎…、仗助、ミナミ、君達の先祖の…魂の一部だ。』

 

 

「お…お爺ちゃんなのか!?」

 ジョセフが驚愕した。

「し、しかし、魂の一部だと…。」

『僕は…、ディオに奪われた肉体に少しだけ残っていた生命のエネルギーにこびりついていた、ジョナサン・ジョースターの魂の一部なんだ。』

「なぜ、あなたが、ここに?」

 花京院が聞くと、切なそうにジョナサンは、微笑む。

『僕を……消して貰いたくて…、ブルー・ブルー・ローズに頼んだんだ。』

「なっ!」

 承太郎達は驚愕した。

『見えるかい…? 僕の周りに浮かんでいるこの黒いモノ…、これは、僕に…、ジョナサン・ジョースターに執着し続けたDIOの魂であり未練なんだよ。いわば、呪いのようなもの…。彼女を…、ミナミの命を蝕む元凶だよ。』

「呪い!」

『このままでは、ミナミは、呪いに殺されてしまう。だから、僕はその前に僕を消してもらおうと思っている。』

「なぜ、あんたが消えることになる? 呪いの元凶は、その泥だろう?」

『……僕自身がこの呪いの中心にいるんだ。僕を芯にして、呪いは成り立っている。だから、僕を消さない限り、呪いは消えない。』

「……消えると…どうなる?」

『…僕という魂は消えるだろう。その先のことは分からない。』

「あなたは、自分がジョナサン・ジョースターの魂の一部だと言いましたな? もしあなたが消えた場合、すでに天国にいるあなた自身の本体ともいえる魂は?」

 アヴドゥルが聞くと、ジョナサン・ジョースターの魂の一部は、首を横に振った。

『おそらく…、僕が消えた影響を受けて、…消えるだろう。』

「そ…!」

 そんな…っと、ジョセフも承太郎達も絶句した。

『でも、仕方が無いんだ。DIOは、僕を求めて、僕を離すまいとした。それは死んでも変わらなかった。だから呪いとして残り、やがてミナミを殺して、この世に残ってさまよい、無差別に人を呪い殺すだろう。僕を捜し求めて……。そんなことになるぐらいならば、僕はディオと共に消えるよ。それは、これから先のため…、未来につなげるために必要なことなんだ。』

「だからって…!」

 ポルナレフがあんまりなことだと言おうとした。

『分かっているさ。それがどれだけ、悲しいことかも…。天国でせっかく再会できたエリナや、スピードワゴンにも申し訳ないけれど…、仕方がないんだ。さあ、早く。今こうしている間にも、ミナミは…、僕らを天へ導こうとして、呪いに殺される前に自ら死のうとしている。』

「なにーーーーー!?」

『僕らは、もう天へ行く方法を忘れてしまった…。だからミナミは、そのことを知って、僕らをブルー・ブルー・ローズで捕まえて、自分から呪いごと僕らを取り込んだんだよ。自分の魂が天へ昇ると同時に、導くために……。でも、そんなことはさせない。させたくないんだ。だから、ミナミの意識が無いうちに、早く。』

「……どうしたらいい?」

「承太郎!?」

「承太郎さん!」

『簡単だよ。僕の血を引く、この場にいる誰かが、僕に触れて、ただ…『消滅』を願えばいい。そうすれば、僕らは、跡形も無く消えられる。さあ、お願いだ。僕らを…消してくれ。』

「……違うな。」

『?』

「ヒントは、とっくの前に、導き出しているぜ。」

『えっ?』

「なあ、仗助。」

「……そうっすね。」

「? どういうことじゃ?」

 ジョセフだけは、話が見えなかった。

「花ってのは…、種を残すために咲くんだ。」

『ううん?』

「そうっすね。とくにタンポポの花なんて、ずっと遠くに種を飛ばすために綿帽子を作るんすよ。」

 すると、仗助がジョナサンの魂に触れた。

「想像してください。花が…咲いて…、綿帽子が飛ぶように、綿帽子が導く先を!」

『!』

 

 そして、病室の中が、光に包まれ、花畑のような幻想が広がった。

 

 ジョナサン・ジョースターの魂の周りにあった泥が消え、代わりに、花畑の中で体育座りしているディオの姿があった。

 

『ディオ!』

『……ジョジョ…、ジョナサン…なのか?』

『ああ! やっと会えた! 僕が分かるんだね!』

『……何処へ行っていた…。この馬鹿が…。』

 ディオは、ジョナサンの腕の中で身を委ねるように目を閉じた。

 ディオを抱きしめたジョナサンは、仗助達の方を見た。

 その目には涙が浮かんでいた。

 

『ありがとう……。ミナミにも…、僕らを助けようとしてくれたことについて…お礼を言っておいてくれるかい?』

 

 

 さよなら

 

 

 最後に、そう言い残し、花畑と、ジョナサンは、ディオと共に、花吹雪の中に消えた。

 もとの病室に戻った一行は、ミナミのベッドの上にあった頭蓋骨を見つめた。

「これは…、エリナ婆ちゃんの墓に一緒に埋葬する。」

 ジョセフが、大事にその頭蓋骨を持ちあげた。

「うぅ…ん……。」

「姉ちゃん!」

「…じょーすけ? あれ、承太郎さんも? どうしたの? あれ? ジョナサンさんは?」

「この…、馬鹿伯母が…!」

「イタタタタ! なに? なに?」

「ほんと、馬鹿だよ、姉ちゃん…。」

「えっ? な、泣くことないでしょ? なに? 何があったの? ねえ、教えてよ…。」

 しかし、全員が涙ぐんでおり、中々教えてもらえなかった。

 落ち着いてから教え、そしてジョナサンからの言葉も伝えた。

「そっか…。あっ! そうだ、花京院さん達の寿命が!」

「ああ、それなら、回収したDIOから咲いた青バラを分配して、それぞれ70本、花京院とアヴドゥルに、イギーには、20本やった。」

「まあ、これから、70年間生きられるなら、十分すぎると思うが。」

「僕も十分だよ。でも、イギーはちょっと取りすぎ。人間年齢で、100超える気かい?」

「ワン。」

「そうだったんだ…。あれ…?」

 すると、ミナミの手が透けてきた。

 それは仗助も同様で、手どころか、体も透けてきた。

「あっ、もしかして!」

「帰れるのか!?」

「おいおい、早急だな!? 土産もなしでいいのかよ!」

「いいんすよ! 未来で…、元気な姿見せてくれたらいいっすから!」

「そうそう!」

「じじいも、正妻の人に殺されないよう気をつけろよ?」

「お、思い出したじゃないか! 馬鹿もんが!」

 ひいいいっと、スージーQからの怒りがあるということに怯えるジョセフであった。

「じゃあ、さよな…。」

 ら…っと言いかけて、二人は消えた。

 

「やれやれ…、嵐のように消えちまったな。」

「ジョースターさん? どうするんですか、これから?」

「ま、まずは……、妻に言い訳を…。」

「それより、この時代の仗助の無事を確認したらどうです?」

「それもそうじゃ! あと、挨拶も! あ、ああと、あと、生活費の援助も…。」

 ジョセフは、これからアレコレしなければならさそうだ。

 きっと地獄のような目にもあうだろうが、自業自得だ。

 承太郎達は、ジョセフのそんな様子を見て、笑った。

 

 

 未来から来た、二つの星の旅は、こうして終わったのだった。

 

 

 




奪った肉体にジョナサンの魂の一部があったことを、DIO(ディオ)は、全然気づかず……。
自分を残して天へ行ってしまったと思い込んで、連れ戻すためにミナミのスタンドを狙っていたが…、最後には魂の再会という形で念願は叶う。

当初の設定では、ジョセフがハーミットパープルで昏睡してしまったミナミに潜行して、ジョナサンとDIO(ディオ)の未練という呪いの泥を見つける設定でした。
けど、設定を膨らませて、全員にジョナサンと未練の呪いの泥を見せる形にしました。

DIO(ディオ)がなんでジョナサンの頭蓋骨を持ってたのか…。
あれだけ最後にはジョナサンに拘ってた男が、首から上を海に捨てたとは思えなかったんですよね。ただそれだけ。


なお……、虹村に関しては……、こればかりは運命を変えられなかったという悲劇となります。
ペットショップとのコンビ戦後、日本へ逃げ帰りました。そして……。
彼を救済処置すると、4部に響く響く……。形兆がスタンド使いを量産した動機が無くなる。



あとは、後日談かな…?
未来に帰ったミナミと仗助は……。



2019/08/21
綿胞子じゃなく…、綿帽子でしたね。すみませんでした!


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未来は豊かに

後日談。


4部時代へ帰った、ミナミと仗助。


そこで、二人は……?


 ミナミと仗助は、目を開けた。

「やったーーーーー! 成功ですね!」

「だけど、ミナミ、おま…、髪の毛!」

「おおおおおおおおおおおお! 白髪が!?」

「ジョースターさん落ち着いて!」

 現場がパニック。

 そこまできて、やっと、ミナミと仗助はすべてを思い出す。

 

 虹村の家の倉庫に収められていた、謎の古い羅針盤のようなものを見つけたのをきっかけに、二人は羅針盤に宿っていた力で過去へと飛ばされたのだ。

 かつて虹村の父親が弓と矢と共に、エンヤから贈られた品である、それは、羅針盤の針が指定した過去へと飛ぶ力を宿していたらしい。

 ただ、元の時代へ帰る方法は同封されてなかったため、康一達が消えた二人を連れ戻すためにジョセフや承太郎、そしてSPW財団も協力して解析を急いだらしい。

 

 羅針盤は、割れて壊れていた。どうやら役目を終えて、壊れたのだそうだ。

 

「まったく…、アヌビス神の時もそうだが、妙な拾いものをするな。」

「えっ?」

 呆れる承太郎の言葉に、二人はびっくりした。

 

「まったくだよ。心配かけるのもたいがいにしたないとね。ミナミ、仗助。」

 

「えっ!?」

 

 なんか聞き覚えはあるが、知っている声より落ち着いて、大人の響きを持ったその声の主は…。

 

「花京院さん?」

 

「ふふ、久しぶりだね。」

 

 独特の前髪も、スラッとした体格はそのままに、身長は少し伸びたのか緑の長いコートがよく似合っている。

 っということは…、っとミナミと仗助は顔を見合わせた。

 

「あ、アヴドゥルさんや、ポルナレフさん、イギーは!?」

「ああ、彼らも元気だよ。今頃、イタリアで弓と矢を追いかけてマフィア相手に戦ってるって聞くよ。」

「ほ~~~~~~。」

 まさか死んだなんて…っと思ったら、元気にしているそうだ。

 

 それは…、本来の正史において、孤立するはずだったポルナレフの運命を大きく変えたのだが、二人は知る由もない。

 

「でよぉ、過去の世界ってどんなとこだった? 土産ぐらいねぇのかよ?」

「あっ…。」

「どしたよ?」

 億泰の存在に気づいた二人は、青ざめた。

 その様子に、億泰は不思議がる。

「…ごめん。」

「なんで、謝んだ?」

「助けられたなかった…。」

「なんだよ?」

「……お前んとこの、親父さんだよ。」

「!」

「やっぱり……。」

「……いいんだ。お前らのせいじゃねぇよ。」

 そう言って、億泰は、肩を落とす二人の肩に手を添えた。

「いやぁ、虹村って強かったよ…。何度もやられかけた。」

「そうなのかよぉ? 俺も兄貴も、親父のスタンド知らなかったから。」

「1回目は、セスナごと堕とされそうになったし、それ以降も砂嵐は移動させてくるわ、別の敵スタンド使いと組んで、すごい攻撃を仕掛けてきたよ。」

「ほへ~。親父強かったんだな~。」

 切り替えが早い億泰が、花京院からの話でポカンとした。

「ところで、ミナミ。お前に会いたがってた連中がいるぜ。」

「えっ?」

「入っていいぞ。」

 

「ミナミさん。お久しぶりです。」

「久しぶりです。」

 

 少し老けた男と、見覚えのある髪型に、漫画を抱えた小柄な青年が入って来た。

「えっ…、もしかして…?」

「ハハ、、10年以上ぶりですもんね。」

「こっちは、オインゴ兄ちゃん。僕、ボインゴ。」

「あーーーー!」

 仗助も思い出して声を上げた。

「こっちのボインゴの、トト神のおかげで、羅針盤の調べもなんとかなったんだ。礼をしとけよ。」

「そうだったんだ…。ありがとう。」

「えへへへ。」

 ボインゴは、照れくさそうに頬を染めて漫画で顔を隠した。

「いや~、あれから、SPW財団に拾ってもらって、働かせてもらってるんですわ。それもこれも全部、ミナミさん達のおかげっすわ。」

「DIOに従ってたときより、お給料いいもんね。兄ちゃん。」

「ああ、それに良いことにスタンドを使うって気持ちいいもんなぁ、ボインゴ。」

 どうやらすっかり、心を入れ替えて真面目に仕事をしているらしい。

 

 自分達のあの旅に……意味はあった。

 

 花京院達の命の生存だけじゃなく、それ以外の運命にも影響したと知った、ミナミの目から思わず涙がこぼれた。

 

「おいおい、姉ちゃん、泣くことないだろ?」

「だってぇ!」

 

 自分がこれまで嫌悪してきた、生と死を操るスタンド、ブルー・ブルー・ローズ。

 その青いバラの花が、大いに役立った旅。

 果たして、それが正解だったのか……、不正解だったのかは分からない。

 

 けれど、今は……。

 

「少しだけ……、“ワタシ”のこと好きになれそう。」

「姉ちゃん?」

「あ、なんでもない。」

「おい、ミナミ、イタリアから電話だ。」

「えっ!?」

「ポルナレフ達だ。あの後で消えたんだ。アイツらお前のこと気にしてたんだぜ?」

「は、はい!」

 

『ミナミ~~~! 元気か~~~! 髪の毛ちゃんと生えたか~~~!?』

 

 電話口から聞こえたのは、あんまり変わってないポルナレフのベソをかいた声。

「あ、髪の毛は、まだです…。」

『ちゃんと、美容院いけよ~~!』

「分かってますよ。」

『ほら、困らせるな。ポルナレフ。』

『ワン!』

 少し遠いが、アヴドゥルの声とイギーの声も聞こえた。

 

 

 

 

 

 あの旅により、本来の正史を変えたが、未来は、豊かになりそうだ。

 そんな予感をしながら、ミナミと仗助は、元の時代へ帰ってこれたという実感に浸った。

 

 

 




過去へ飛ぶ羅針盤の設定は、捏造です。原作にも7人目のスタンド使いにも出てません。


感想欄で、オインゴとボインゴの話があったので、ちゃっかり出してみた。
あれから、SPW財団に拾われて、財団所属のスタンド使いになったということにしました。
近い未来しか分からないし、逆らえば酷い目に遭うけど、トト神の予言は、大いに役立つと思う。オインゴのクヌム神も使い方次第じゃ…ねえ。
ホル・ホースもとちょっと考えたけど、やってきたことがねえ……。

虹村の父親だけは、どうしようもなかったけど……。活動報告に書きましたが…。(悲)


以上で、双子の姉設定パート3である、3部ネタは終わりです。

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