気まぐれな蛇が兎を見守るのは間違っているだろうか (オワタ\(^⚪︎^)/)
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蛇は転生し兎と出会うようです
後悔も反省もない筈……
ここはどこだ?
俺は何をしていた?ここに来るまでの過程が分からない
「…その質問に答える前に貴方に言わなければならない事があります」
⁈誰だ!
「そうですね…貴方がたがよく使われる神様というものですかね」
…神が何の用だよ
「はて、信じるのですか?」
訳わかんねぇ所にいて挙げ句の果てにいつの間にか目の前に出てこられたら信じるしかねぇんだわ
「ふむここに来る人間は大体信じないのですが、まぁ貴方が特殊なのでしょう。それでは率直に言わせて頂くと貴方は死にました」
そうかい そりゃ大変残念だ
「…動揺もなし、貴方はまるで自分が死んだ事を知っていたみたいですが?」
そうかも知れねぇって頭の片隅にあるだけだ 本当はめちゃくちゃ驚いてるぜぇ?
「まぁいいでしょう。貴方には他の世界に転生して欲しいのです」
流行りの異世界転生って奴か?俺は興味ねぇな
「まぁそう仰らずに、貴方の好きなものを一つ上げましょう」
一つ…一つねぇ…なら俺は『ブレイブルーのスサノオユニットとハクメン&テルミの装備』って所か
「好きなんですか?アニメ」
いや、馬鹿な知り合いがやっていたのを隣で見てこいつら面白れぇなぁって思っただけだ
「まぁそのくらいなら良いですがスサノオには少し制限を掛けさせてもらいます。強力すぎるので」
あぁ問題はねぇぜ 俺のメインはテルミの方だからな
「そうですか、では貴方が転生する世界は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っている』です」
名前だけだが聞いた事あるな まぁいいかさっさと送ってくれよ
「貴方のような人間は初めてですね。これ程サクサクッと進んだのは貴方が最初ですよ」
知るかよ こんなくだらねぇ事に時間がかかるよりも早く転生した方が楽しいだろうからなぁ
「そうですか、それともう一つ。貴方が入った事によって色々なイレギュラーが発生するかも知れませんのでご注意を」
元々原作もあんま知らねぇんだ関係ねぇだろ
「そうですね。では貴方の人生に祝福を」
さてと…ちょっくら暴れますか
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「あ?んだここはよぉ」
俺が目を覚ましたのは家と家に挟まれた路地裏だった。近くに鏡を見つけたので覗き込んでみるとそこには俺の顔があった前世と同じ顔だ。そして服装はテルミの黄色のパーカーを赤くした事以外何も変わりはない。ポケットには手紙とバタフライナイフが入っていた。
「なんて書いてあんだこれ?」
『この手紙を見ているということは貴方は既に転生しているという事ですね。貴方の転生特典についてですが、基本ユウキ=テルミの格好になっています。貴方が望めばスサノオユニットつけハクメンにもなれますがハクメンの状態でユウキ=テルミの事象兵器や装備は使えません。その逆もまた然り…そしてスサノオですが発動から30分という時間制限と使うと1日のクールタイムが必要になります。そして力を大幅に下げさせてもらいましたが、まぁその世界ではそれでも強い方なので文句は言わないように、そしてハクメン、ユウキ=テルミ、スサノオの技や動きは貴方の脳内にインプットしてあるので自然と真似や応用が出来るでしょう。身体能力も上げてありますので感謝してくださいね。あと碧の魔導書と蒼の魔導書は2つとも入れてるので、それでは』
「あぁかなり良いわ。めちゃくちゃ良いわこれぇ」
俺は手を握り開きを繰り返し、バタフライナイフを手の上で遊ぶ。魔導書が2つあるとはなぁ。ククッ良いぜぇ
「さてと…ってさっきから表がギャーギャーギャーギャー五月蝿えんだが…なんかあんのか?」
少し高くなった身長に違和感を感じながら俺は表の道に出てみる。するとそこには大きな蛇がいた。緑色の蛇みたいな生き物だ…ウロボロスと被ってんな…と思いつつ周りを見ると褐色肌の顔が似ている女2人と耳が尖った変なオレンジ髪の女が蛇もどき相手に戦っていた。
「なんだアイツら…いや、あのオレンジ髪見覚えがある…確かあの馬鹿に見せられた時に…ダメだ名前が思い出せねぇ…エルフの嬢ちゃんでいいか」
すると褐色肌の女2人が蛇もどきに突っ込んでいった。かなり速かったが目で追えない速度ではない。そしてエルフの嬢ちゃんは手に持っていた杖で何かを言い始めた。確かエルフの嬢ちゃんは魔術師…ってこったぁ魔法を使う気か…
「っ!…あの蛇もどき狙いを変えやがった。魔術に反応してやがる!」
俺は蛇もどきがエルフの嬢ちゃんに狙いを変えたのを気づいた俺はすぐにエルフの嬢ちゃんの元へと走る。別に女が襲われそうだから助けようって訳じゃねぇモブなら他っておくが一応重要キャラクターだからな助けといて損はねぇだろ。後で礼でも貰っておいてやるか
そして俺は脚に力を溜めた。
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「やばい!狙いを変えた!」
「レフィーヤ!逃げてぇ!」
終わった…お2人の声が遠く聞こえる。そしてあのモンスターの姿が遅く見える。これが走馬灯って言うのかな…まだ死にたくなかったな…アイズさんともっとお喋りしたかったな。
私はギュと目を瞑り来るであろう衝撃に備えた。けど来たのは衝撃でも私を貫く痛みでも無かった。
「奴の動きを止めな!ウロボロス!」
そんな声が、荒々しい男の人の声が聞こえてきた。
「おいおい嬢ちゃん。まだ死ぬのは早くねぇかぁ?お前まだ若いんだからよぉ?美味え食べもんも綺麗な洋服も運命の相手だった居ねえだろうが」
目を開けると赤黒いパーカーに身を包み不敵な笑みで私を見ていた。黒い髪にまるで蛇のような黄色い目そして何より目に付いたのは男の人の手から出ていた鎖がモンスターの動きを止めていたのだ。
「まるで死を悟ったかのように目を瞑って受け入れやがって、たく最近の餓鬼は抵抗するって言葉を知らないのかねぇ。それよりも」
彼は抜け出そうと暴れているモンスターを見て目を細めた。
「テメェは鬱陶しいんだよ!」
鎖を引っ張り近づいたモンスターを彼はまるでボールを蹴るかのように軽々と蹴り飛ばした。
「たくよぉ。雑魚は雑魚らしく地べた這いつくばって死んでろや」
「レフィーヤ大丈夫⁈」
「…あ、はい。怪我はありません」
「それよりもあの男…誰なの」
「私にもわかりません…でも恐ろしく強いです」
「うん私にもわかる」
「本来の武器ではないとは言え私達の攻撃を通さなかったあのモンスターを蹴り一つで倒したと言うの?」
「いえ、まだです!」
モンスターはその胴体を天高く伸ばし先の方が開いた。その姿はまるで花のような形をしていた。しかもいつの間にか数が三匹に増えており計6本の触手が彼に向かっていった。
「危ない!」
「その小ぇ目ん玉を目ぇいっぱい開きながら見てな」
彼は軽々と触手を全て躱し、その胴体に蹴りを叩き込んだ。しかし対してダメージは無かったのか構わずに触手と花の部分の口が彼を襲う。しかし彼はパーカーのフードを抑えながら笑っていた。
「ヒャハハハ!テメェら最高かよ!案外タフじゃねぇか、これなら殺し合いがあるぜぇ!」
「ギャアァァァァァァァ!」
「そんなに叫ぶなよぉ…殺したくなっちまうじゃねぇか!」
彼は咆哮を上げたモンスターの頭部を地面に蹴り落として手から鎖を出す。違う、私が鎖だと思っていたものは蛇だ。蛇の頭に鎖の身体…それはまるで意思を持つようにもう一匹のモンスターに纏わりつき彼へと引き寄せる。
「行くぜ、轟牙双天刃!」
緑色の魔力のような物を纏った彼の二度蹴りは容易くモンスターの頭部を消し去った。そんな一方的な虐殺に私は何も声が出なかった。level 5のお2人が苦戦していたモンスターを三匹も一人で相手してあの余裕あの力…普通じゃない。あんな冒険者なんて居ないはず。
それに…あんなの魔法じゃ無い…無詠唱のエンチャント魔法にしては効果が一瞬で終わるし、普通の魔法にしては威力がおかし過ぎる。あれは私の魔法の何倍も強い…
「…なんだぁ?もう二匹死んじまったのかよ」
彼は最後のモンスターを見てニヤリと笑った。その顔を見た私は向けられていないはずなのにまるで蛇に睨まれた蛙のように身体が動かなくなり自分の下半身から生暖かい液体が流れている事に気付いた。失禁したのだ私はあの人の得体の知れない恐怖に。
「調整は出来たし大体分かった…もう良いぜ?死ねや」
彼はまるで紙細工を握り潰すかのように容易くモンスターを倒してこちらへと向かってきた。
「エルフの嬢ちゃん怪我はねぇか………っククッアヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
彼は私を見た途端にお腹を抱えて大声で笑い始めた。そして彼の笑い声を聞くたびに私の顔が熱くなっていくのがわかった。
「お前…ククッ…その年で失禁かぁ⁈ククッ…アヒャヒャヒャヒャ!俺を笑い死にさせる気かよ!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
「ちょっとそんなに笑わなくてもいいんじゃない⁈」
「だけどよ…ククッあ〜面白えもん見せて貰ったわ」
彼はまだ顔を抑えながら肩を震わせていた。命を救ってもらった身だけど杖で殴り飛ばしたいかも知れない。
「悪いな。テメェらの獲物取っちまってよ。少し運動したい気分だった所でな、丁度良いところに運動相手が居たわけだ」
「あのモンスターを三匹一人で相手して少しの運動ね」
彼はまるで次の獲物を探すかのようにふらっとその場を去ろうとする。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「…あぁ?んだよエルフの嬢ちゃん」
「お名前を…教えていただけませんか?」
「名乗るほど大層な名前なんてねぇよ。テメェがこいつを倒せるようになったら教えてやるよ」
それは何ヶ月何年後になるのだろう。そう思い彼に言い返そうとするが彼は蛇の鎖で何処かへと飛んで行ってしまった。
「…あ」
「行っちゃったね〜、でもあんな人冒険者に居たかなぁ?」
「分からないわ、帰ったら団長にでも聞きましょう。レフィーヤ立てる?」
「は、はい!大丈夫です!」
私はお2人の後をついて行きながら時々彼が行ってしまった方向を無意識に振り返っていた。
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「危ねぇ!名前聞かれて焦ったぜ!確か冒険者ってのじゃねぇとああいうモンスターは倒せないんだったな。名前なんて教えたらバレちまう」
俺は焦りながら路地裏で捨てられた鏡の前で身なりを正していた。パーカーを脱ぎ、ウロボロスが咥えていた帽子を被る。声のトーンも低く威圧した感じではなく軽い感じへと変える。俺が前世で実際的に本性を隠すためにやってた術だ。
「これで良しっと、アニメ本編のテルミさんもこんな感覚だったんですかねぇ」
「さてと…私でもこの世界の主人公は分かります。確か名前はベル・クラネル…彼を探してコンタクトを取れば…かなり動きやすいですし他の人の情報も自然と入ってくるでしょう。しかし問題点が1つ…私は彼の行方を知りません。どうしたものか」
すると大勢の人の声が俺の耳の鼓膜を刺激した。耳を塞ぎ何かとそちらを見ると真ん中に血だらけの白い髪の女の子が大猿なような物に殴られようとしてる瞬間だった。
「…今日は何かと縁がありますねぇ」
先ほどのように脚に力を溜め猿を蹴り飛ばす。
「相手との力量も測れないようなら最初から戦わないでくださいね?」
後ろに倒れそうな彼女の腰に手を回して寄せる。その瞳は赤い…綺麗なルビーのような輝きを持っていた。その彼女はすぐに俺の手の中で気絶した。
「ベル君!」
黒髪のツインテールの女の子が彼女を抱きしめる。…ん?ベル君?てことはこいつがベル・クラネルか…?アニメは少ししか見ては居ないから全然気づかなかったぞ。
「貴方が彼の主神でしょうか?」
「あぁ僕のファミリアの子さ!」
「ならば、少し彼を抱えて下がっていてください」
俺が蹴り飛ばした猿が起き上がりこちらに走ってくる。ベル・クラネルを考慮した結果殺すまでには至らなかったか。
「さてと戦闘は専門外なんですがねぇ」
「え⁈それなのに大丈夫なのかい⁈」
「まぁ」
「猿ごときには負けませんよ」
俺は猿の懐に滑るように入りあの技を俺が初めて見た技を放つ。
「蛇翼崩天刃!」
ウロボロスの魔力を纏った蹴り上げは的確に猿の胸を貫く。それと同時に何かを砕くような感触があり猿は灰へと消えた。
「ふぅ〜こんなものですかね」
「す、凄いよ!君!」
「すげぇぜ兄ちゃん!」
「あんな化け物を一撃で!」
「お兄ちゃん凄い凄い!」
「強くてクールな男…嫌いじゃないわ!」
「…おっとこれ以上目立つのは御免ですね。神様失礼します」
俺は神とベル・クラネルを担いで神に聞きながら神の家へと向かう。
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「君凄いね。戦闘だけじゃなく医療の心得もあるんだ」
「少しかじった程度ですがね。覚えておいて損は無いですよ」
俺はベル・クラネルの治療をし、神『ヘスティア』と話していた。
「お陰でベル君と僕も助かったよ。一体目はベル君本人が倒したのだけどいきなり二体目が現れてね。ベル君のスタミナはもう無くて限界だったのさ」
「それは大変でしたね。冒険者にもなってまだ早いでしょうに」
「なんでベル君が冒険者になって早いと思ったのさ?」
「あの猿と対峙するときの姿勢や担いだ時の筋肉の発達の仕方ですかね。確かに様にはなってましたが…まだまだ荒いご様子が見受けられたので」
実際的にあんな雑魚に負けるようならまだ初心者なんだろ。あれだモンハンだったか?の下位ハンターってやつだ。
「そういえば君の名前は?」
「私の名前は幽鬼狭間です」
嘘を付き、カズマ=クヴァルやテルミの名前を語っても良かったが後でバレると厄介なので実名を語っておく。
「ユウキ=ハザマ?東洋出身なのかい?」
「えぇまぁそんな所ですかね」
日本も東洋の国だ何も嘘は言ってない。神様に嘘が通じるかは知らないがベル・クラネルと関わっておくためにはこの神との関係性は良くして置かないとダメだ。
「まぁハザマ君と呼ばしてもらうよ」
「呼び方はお好きに、所で他のファミリアの方はいらっしゃらないのですか?」
「…うーんここのファミリアは僕とベル君だけさ」
「苦労なさっているのですね」
「そうなんだよねぇ…ねぇねぇ!もし良かったら僕達のファミリアに入らない⁈」
まさか向こうから提案してくれるとは、俺にとっては願っても無い話だ。原作に遅かれ速かれ関わるなら早い方がイレギュラーにも対応しやすいし、何より原作主人公の近くにいれば動きやすい。
「あ、でもハザマ君は他のファミリアに入ってるから無理かな」
「…実は私、ファミリア入って無いんですよねぇ」
「……え、えぇぇぇ⁈ファミリアに入って無い⁈てことは恩志無しでシルバーバックを倒したのかい⁈あのモンスターはlevel2でも手を妬く個体がいるのに!」
「大きな声ではいえませんが私には生まれつき特殊な能力がありましてねぇ。それで倒したと言いますか」
「あぁ…そう言うことか、だから君はあんなに強いんだね。なら話は別だ!服を脱いでそこに寝転がって!」
俺はヘスティアの言う通りにソファーの上に寝転がる。ヘスティアは俺の背中に跨り所々を触ったり撫でたりしてくる。
「あのー?何を?」
「ハザマ君って意外と筋肉質なんだね。君自身は戦闘は専門外だったり能力任せた言うけど、かなりの筋肉のつき方だね。ちゃんと身体は鍛えているんだ」
「まぁ、私は前の仕事上の関連でゴロツキなどに絡まれることが多々ありましたからねぇ。身体も鍛えていたのですよ」
「仕事?」
「えぇ…少し情報屋をやっていまして」
これも本当の事だ。俺はそれ相応の金を貰えればそれに見合った情報を売った。頭の政治家のスキャンダルネタから浮気調査と色々な幅の情報を売ったものだ。学校もロクに行かずに情報を集めていた頃が懐かしい。
「…え?何…このステータス」
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幽鬼狭間
Level 6
『 力 』A840
『耐久』B723
『器用』S976
『敏捷』S991
『魔力』SS1052
[魔法]
・------------
・------------
・------------
[スキル]
・秩序ノ力
自身が思うことでステータス・魔法・スキル変化
・破壊ノ力
自身が思うことでステータス・魔法・スキル変化
・負ノ連鎖
憎しみを受ければ受けるほどステータス高補正
・双蛇ノ加護
全ての状態異常無効
嘘を付いても見抜かれない
・事象兵器(ウロボロス)
使用者にステータス高補正
魔力を流すことで猛毒付与
・------------
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「こんなの…普通じゃない」
写してもらった俺のステータスを見てヘスティアはそう呟く。そりゃそうだ…なんだよ初めっからLevel6ってよ…俺TUEEEEEはめんどくせえからしたくねぇんだが…まぁ仕方ねぇ。
「神様…提案が」
「なんだい?」
「私はこのスキルの通り嘘が見破れません。そこで昔違うファミリアに居た事にして神様の所に移り変わった事にしましょう。そうすればLevel6でも案外大丈夫でしょう」
「…でも」
「大丈夫です。私は嘘が得意なので」
俺はヘスティアを頷かせる。ヘスティアはおそらく駆け引きなどが向かなく感情が先走って失敗して後で凹むタイプだ。そして原作のベル・クラネルも嘘がつけなかったタイプの筈だ。ならばどうするか…答えは1つ…俺が嘘を吐き続けることだ。生憎神だろうと口では負けるつもりは毛頭無いしな。
「分かった…でももしバレた場合はその時は僕も覚悟を決める」
「……良いんですか?知らぬ存ぜぬで通せば貴方達は関係なくなりますよ?」
「一度家族になった子を見捨てるほど腐った親のつもりはないよ」
「…全く…人が…いえ、神が良いとでも言うのですかねぇ」
ヘスティアの甘さに俺が苦笑をしていると隣の部屋の扉が開き、ベル・クラネルが姿を現した。
「神様!大丈夫でしたか!」
「おやおや、もうお目覚めですか?しかし病み上がりの貴方はもう少し安静にしていてください」
「貴方は?」
「紹介するよベル君。この子はハザマ君、昔僕の知り合いのファミリアに居たんだけど、ある事情があってこのファミリアに移り変わる事になったのさ」
「幽鬼狭間です…以後お見知り置きを」
「あ、ベル・クラネルです!よろしくおねがいします!」
ベル・クラネルは俺を見て律儀に頭を下げた。
「私、堅苦しいのは苦手なのでフランクに行きましょう」
「あ、ありがとうございます!ところでハザマさんのLevelは」
「私のLevelは6ですね」
「6⁈そんな強いんですか⁈」
何だこいつ滅茶苦茶リアクションが面白えじゃねぇか。あれだな弄りたくなる後輩って感じだ。しかし表面ではそんな事出来ねぇしなぁ。
「いえいえ、長年やっていればいつかは辿り着く道ですよ。ベル君もいつか…いえもしかしたら直ぐにでも…追いつかれるかも知れないですね」
「僕には…」
「そんな急がなくて良いですよ。急いで小さな小石にでも躓いて転んだら大変ですからね」
さてと…俺がやる事は原作通りにベル・クラネルを育てる事だが…ククッどんな風に育つかは分からねえからなぁ?楽しみだぜ。
取り敢えずは…さっきから鬱陶しいこの目線の元に行ってみるかぁ。
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蛇は兎の保護者…過保護すぎない?
☆9評価 太刀花さん
☆8評価 J.Dさん、えくよんよんさん
ありがとうございます!
それからもし良かったら感想を書いていってくださいね
「…あの子…面白いわね」
とある部屋の一室。そこにいるのは10人いれば10人全員が美女と答えるほどの美しい女性と雰囲気だけで歴戦の猛者と分かる武人。
「フレイア様…それはあの少年でしょうか?」
「いえ、違うわ。あの子とは違う…ドス黒くて何色を入れても黒く犯してしまう……そうね…貴方を例えるなら武人…あの子を例えるなら蛇って所かしら」
「蛇…もしやあの男でしょうか?」
「あらオッタル…あの子に興味が湧いたのかしら?貴方にしては珍しいのね」
「…名の知れない冒険者ですが…実力は…オラリオでは私の次かと」
女性はそれを聴き、僅かだが驚いた。最強と呼ばれる武人の眷属、それが自分の次に強いと認めたのだから。
「そうね。面白い事になりそうね」
女性は笑みを深めその手に持ったワイングラスを傾けようとした時だ。
「…随分な評価だなぁ?えぇ?女神『フレイア』さんよぉ」
「あら、随分早いじゃない」
「てめぇが必要以上にこっちに視線送るもんでよぉ。鬱陶しいもんで出向いてやったんだ…感謝しな」
女性はワイングラスをそっと起き、声をした方向…自室の窓側を見る。そこには先程、女性が『あの子』と称した男が窓縁に腰を掛けて座っていた、
「フレイア様…」
「良いわ…客人として迎え入れなさい」
「は…」
「女神フレイア…もうちょい見んのやめてくんねぇかなぁ?ベルは気付いてねぇけど俺は気持ち悪くて仕方ねぇ」
男は遠慮なく女性に物を言う。女性は笑いながら
「仕方ないじゃない…貴方達の魂…とても良い色してるもの」
「ちっ…なら余計な事すんじゃねぇぞ。てめぇのやってる事は今の所はプラスもマイナスもねぇけどな…少しでもマイナス方面に向かうなら…殺すぞ」
男は巫山戯ていた雰囲気を消し、ドスの効いた低い声で女性を脅す。常人なら気絶ものだろうが目の前の女性は何ともないように笑っている。それが気に食わないのか男は舌打ちをし窓から飛び降りて消えていった。
「フレイア様…あの男は…」
「良いわ…あの子もプラスになると判断すれば此方を手助けしてくれそうだもの…それに貴方の良い好敵手に成りそうじゃない?」
「……そうでしょうか」
「えぇ…だってあの子は蛇でありながら武を極めているもの」
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「ちっ…あのクソ尼…ああいう奴ってのは面倒くせぇのばかりかよ」
俺はあの女の部屋から飛び降りた後近くの路地裏で木箱を蹴り飛ばす。あのタイプの奴と話してると無性に腹が立つ!
「あー…冒険者登録ってのも行かなきゃ行けねぇなぁ」
一応、俺が別のファミリアって感じに筋書きしてあるからそれの通りに動けば良いし、ベルには俺の詳細は伝えてないから漏れる心配もねぇ。
「っとこの格好でいるとヤベェな」
俺は帽子をかぶりついでに猫もかぶる。動物は嫌いだがな。
「さてと…ギルドに行って冒険者登録をして…適当に済ませますか残りの時間は」
俺は帽子を深く被りギルドへと歩いていく。
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「これで良しっと…少し怪しまれましたが…まぁ無事に冒険者になれましたね」
色々質問はされたものの俺のポーカーフェイスを見破れる筈もなく、普通にヘスティア・ファミリアとして冒険者登録が出来た訳だ。
「…さて、本当にどうしましょう…あぁそうでした、ベル君はロキ・ファミリアの人に助けられていたと言っていましたね。私がファミリアに入る前ですが、一団員として団長が助けられたからにはお礼を言いに言わなければ…まぁ名目は顔を知ってもらう事ですがね」
「何を持っていけば良いでしょう…確か…助けて貰ったのはアイズ・ヴァレンシュタインと言う方でした筈…好きな食べ物とかあるのでしょうか…まぁ適当に買ってきますか」
俺は適当に目が入ったジャガ丸くんと神なら酒だろ…と言う考えのもとある程度良い酒を買っていった。あ?金はどうしたのかって?んなもん路地裏ごろごろしてれば勝手に鴨が釣れるっつうの。マジで弱かったわ。
てか自分用に買ってみたがこのジャガ丸くんって美味えな。
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「あのーすいません」
「何か用か?」
「あ、私…ヘスティア・ファミリアのハザマというものです。つい最近、うちの団長がロキ・ファミリアのアイズ・ヴァレンシュタインさんに助けて貰ったという話を聞いたので、お詫びと安いものですがお礼を持ってきたのです」
門番は硬そうな顔をしていたが、「待ってろ」と一言だけ言いもう1人の門番に声をかけて中に入って行った。暫くすると赤い髪の女と金髪の女の子が出てきたってあのエルフの嬢ちゃんも居るじゃねぇか。バレねぇよな?
「ふーん。うちに用があるってのはあんたかいな」
「これはどうも神『ロキ』…私はヘスティア・ファミリアのハザマと言うものです」
「あのドチビの所の子が何の用や?」
んだ?仲悪いのか?ヘスティアとロキって…あぁそう言うことか…
「つい最近、団長がそちらのアイズ・ヴァレンシュタインさんに命を救って貰ったと聞いたので、団員として御礼をと」
「…その団長って白い髪の赤い目?」
「おや、容姿まで覚えていてくれているのですか。そうです貴方に命を救って貰ったベル・クラネルです。彼はどうも女性慣れをしていなくて貴方のような可憐で美しい女性を見てしまい恥ずかしさで逃げてしまったようなのです。ですから…命を救って貰った御礼と逃げてしまったお詫びをと…」
てかベルって露出の多い女を見るだけで顔赤くなるからな…マジで初心。
「んで?本人がいないやんけ」
「…すいません。本人は自分の情け無さからダンジョンで無茶に潜り、怪我をしてしまったので部屋で安静にして貰っています。ですから本人からは後日と言うことにしてもらえませんでしょうか?」
「…そうかいな」
話だけ聞いてるとテメェの所の犬が悪りぃんだろうが…教育がなってねぇんじゃねぇのか。
「こちらですが、お詫びと御礼の気持ちを込めて」
「ジャガ丸くん…」
「おや、好物でしたか?それならばよかったです。神ロキにもとお酒も入っているのでもしよければ…では」
俺はアイズ・ヴァレンシュタインに紙袋を握らせて、さっさと帰ろうとする。
「まちぃや」
「……何でしょう。神ロキ?」
後ろを見ると俺と同じように閉じてるように見える目が薄く開いていた。まるでなにかを見定めるような目だ…気に食わねえ。
「あんさん…あのドチビのファミリアの前に何処かファミリアに入っとったんかいな」
「えぇ…あるファミリア…と言ってもオラリオ外で私しかいないファミリアでしたが」
「その主神の名前は?」
「…さぁ?あの方自身も偽名を使っておられたので…私自身…分からないのです」
どんなけ見定めようとしても、嘘を見抜こうとしても無駄だ。俺のスキルでテメェら神の力は通用しねぇよ。
「そうみたいやな。すまんな!変な事聞いたわ!」
「…でしたら私はこれで」
「あ、あの!」
「……何です?」
やっと帰れると思ったらなに引き止めたんだこのエルフは…早く帰りてぇんだよ。
「貴方は…あのモンスターから私を助けてくれた人ですか?」
「そもそも、私と貴方は今が初対面ですよ?誰かと見間違えたんじゃないですかね?」
「…すいません」
俺がバレるのは今じゃ早すぎわ。まぁいつかはバラしてやるよエルフの嬢ちゃん。
「では私はこれで」
「…あの子に…よろしくって…伝えておいて」
「分かりました。伝えておきますね」
俺はしばらく歩き姿が見えなくなった所で溜息を吐く。
「あぁー息が詰まったぜ。慣れねぇ事はやるもんじゃねぇな…あーさっきのあのクソ神の顔を思い出しらムカついてきたわ…ちってめぇごときが俺を見定めてんじゃねぇよ。……ちっマジで苛つくんだよ…クソが」
俺は下に見られるのが嫌いだ。たとえ相手が貴族だろうが王だろうが神だろうが…探った視線や見下す視線ってのが1番気に触る。
「…さて、ベル君は今日アドバイザーの人と防具を買いに行っていますからね…なにもする事がありません」
ふと顔を上げて見ると目の前の店の名前が目に止まった。
「『豊穣の女主人』ですか…確かベル君がオススメしていましたね…残金は…大丈夫そうですね。しかし、明日にでもダンジョンに入って稼がなければ…お金は大事ですからね」
と思いつつ俺は店の扉を開ける。
「いらっしゃいませ〜!こちらの席へどうぞ!」
……何でだ?この女からあのクソ女神みたいな雰囲気が…気のせいか?…しかし店の雰囲気はかなり良いな。色んな情報も此処なら入りそうだ。
「……しかしメニューを見ても分からないですねぇ。この気持ちを例えるなら、外国のお店で文字は読めるのですがメニューの名前が読めても料理が想像できない…こんな気持ちですかね」
しかし、この店の店員ってのは看板で見た通り女主人で女しかいないのは分かるんだが…そこそこ修羅場をくぐってねぇとダメなのか?さっきの女以外…Level4…5…あたりしかいねぇな…これだと店の中で暴れられても問題ないな。防犯機能がいらない店か…怖っ。
「ご注文はお決まりですか?」
「すいません。まだ私此処らへんの料理には詳しくなくて…オススメの魚料理と度数の低いお酒をお願いできますか?」
「かしこまりました」
しかし改めて見て見るとアマゾネスにエルフにドワーフ、猫人もいるのか。動物嫌いな俺からしたら猫人や狼人の獣人は無理だし、性格問題ならエルフも俺と馬が合わねえ…合うとしたら戦闘狂のアマゾネスぐらいか?…いやねぇな。
「…はぁ…先が思いやられますねぇ」
「お待ちどうさまです」
「あぁどうも…んーベル君の言う通りですねぇ。匂いからでも相当な食欲をそそられます」
「…クラネルさんのお知り合いですか?」
「えぇ、私はハザマ。昨日ですがヘスティア・ファミリアの団員となった者です。此処はベル君にオススメされましてねぇ…以後お見知り置きを」
俺は手を出してすぐに引っ込める。俺はこの世界に来てまだ1日程度だが一応ギルドにあった書物をあらかた読んだし、頭の中にこの世界の大体が入っていた…確か
「すいません。エルフの方は多種族との特に女性の方は異性との肌の触れ合いに敏感でしたねぇ。無遠慮に手を差し出してしまい申し訳ございませんでした」
「いえ、そこまで謝ってもらう必要はないです」
「そうですか。では頂きます」
俺は目の前の料理が冷める前にスプーンで米を掬う。見た目的には魚を入れた炒飯みたいな物だ。それを口に入れ数回噛み、口の中で味わった後に食道を通し胃へと運ぶ。ほんのそれだけの動作でこの店のランクがかなり高いと分かるほどの美味さだった。俺が食べて来た中で確実に1位を取る店だろう。
「…米全体に程よく染み渡る塩加減。場所によって塩辛さが変わってしまうのは仕方がない事なのに何処をどう取っても塩辛さは程よいいい感じのまま…更にはこの魚の切り身…米全体に塩を振り、そこに塩分の塊といっても良いほどの魚を入れているのにも関わらずに米と一緒に食べても、塩加減のバランスが崩れることがない。決め手はこのパラパラなお米…炒飯には不可欠ですが所々に焦げ目をつけ食欲をそそる…完璧です。私が窯で作った茹で卵に匹敵する程の…」
茹で卵好きの俺の舌を唸らせるこの料理…おそらく他の料理もこれに匹敵する程の美味さ…前世では茹で卵馬鹿と呼ばれるほどの茹で卵好きだったが…此処の店の料理も…
「さてと…こちらのお酒は…この喉越しの優しさ…私はお酒を飲んだことがありませんがこのお酒は飲みやすいですね。これを機に少しお酒を飲んでみましょうか…おや、どうしました?」
「おみゃーさんもうちょっと静かに食べる事は出来ないのかにゃ?」
「仕方ないでしょう。こんなに美味しい料理は久しいのですから…こんなに美味しい料理ならこの値段も頷ける訳です」
「当たり前にゃ!ミア母ちゃんの料理はオラリオ一にゃ!」
「それはなんと…良い所に来たものですねぇ」
てかこの猫…働かなくて良いのか?あのデカイドワーフが睨んでんぞ?あ、顔青くして仕事に戻った…ウケるw
「…さてと…しばらくダンジョンに潜ってからベル君をアイズさんの所に連れて行きますか……」
俺は代金を猫に渡して店を出る。すると向こうにベルの姿が見えたので俺は近寄って声をかける。近くに犬人もいたが知らん。
「おやおや奇遇ですねベルさん」
「あ!ハザマさん!」
「…あの…ベル様?こちらは」
「あ!紹介するよ。団員のユウキ=ハザマさんだよ」
「どうも、今紹介されたハザマです。気軽にハザマとでも呼んでください」
「あ、はい。私はリリです。ベル様のサポーターをやらさせていただく事になりました。よろしくおねがいします」
一見は普通の女の子だな。ベルもそう思ってるだろう…しかしこの目は裏切る目だ…そもそもだサポーターをやるならもっと良い人間でも探せば良い…大方ベルのナイフ狙いか…確かあれヘファイストス産だろ?高えんだろうな。
「ベル君。近々アイズ・ヴァレンシュタインさんにお礼を言いに行きますからね。後先に帰ってヘスティア様の様子を見に行ってください」
「えぇ⁈ちょ⁈人使いが荒いですぅぅぅ!」
「っと言いながらも聞いてくれるのは人が良いのか…良すぎますね。あれは」
「あはは…ともかくよろしくお願いします!ハザマ様!」
ベルが居なくなり、俺に手を差し伸ばしてきた犬人の手を払った。犬人は何をしたか理解できないような呆けたような顔をしていた。
「こちらに近づかないでくださいよ。獣臭さが移ってしまいます。私はこれでも動物が嫌いでしてねぇ…特に貴方のような鼠みたいな餓鬼はね」
「っ⁈」
「別に貴方が何をしようが勝手ですが、ベルに危害を加えたり迷惑かけたら…」
俺は犬人の耳元に腰を曲げて顔を近づける。そしてただ一言を本性で
「……テメェをぶっ殺す…からなぁ?子犬ちゃんよぉ?」
「ひっ⁈」
「おやおやそんなに震えて…どうしました?さて夜も遅い…気を付けて帰ってくださいね。ではまた」
俺は犬人…いや子犬ちゃんに手を振り拠点へと帰る。あー遅くなったなぁ…ジャガ丸くんが売ってたら買って帰ってやるか。
「…あーあー面白くなって来やがったなぁ」
あ、あの子犬ちゃんのファミリア聞いとくべきだったなぁ。
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「な、何なんですか…あの男」
私はあの男が…ハザマという『人』が分からなくなっていた。いやあれは『人』じゃない…私は色んな冒険者を見てきた…その中で悪魔みたいな人もいたけどまだそれは『人』だ。でもあのハザマという男は…『人』じゃない『人』なんかの枠じゃ収まらない…あれは『悪魔』…『悪魔』と言う言葉が合いすぎる。
「…リリ…腰が抜けちゃいました」
しばらくはこの脚は動かないだろう。震えも止まらない…もうすぐ暗くなるから周りに人がいなくて良かった。…でもあの男の声が脳裏にこびり付いて離れない…思い出すだけで震えが増す。
「これは…当分動けませんね」
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「…ほ、本当に行くんですか?」
僕は目の前で服を正しているハザマさんに聞く。この問いはおそらく一昨日から何回もやっている。
「そう言っていたから昨日は辞めてあげたんですよ。良いですか?そうやって後に回せば回すほどお礼などは出難くなるんですよ!こう言うのは早めに言わないと!大人になって困るのはベル君ですよ!」
「は、はい!」
「全く…まぁ気持ちは分からないでもありませんよ。好きな人を前にすると舞い上がっちゃいますもんね」
「いや、あの!」
バレてる。数日しか会話してないけどハザマさんは人の感情を見抜くのが得意だ。僕は分かり易いらしいけど人の微妙な表情の変化で分かってしまうらしい。本当に尊敬できる人だ。
「さて…行きますよ。途中でジャガ丸くんを買って行きましょう彼女の好物らしいですから」
「は、はい!」
ハザマさんの後について行きロキ・ファミリアの本拠『黄昏の館』に来ていた。
「少し待っていてください。門番の人と話してくるので」
「あ、はい!」
ハザマさんはまるで友人に話を持ちかけるように、軽く門番の人に話しかけていた。門番の人も別に警戒とかそんな物はなくまるで友人のようにハザマさんと話をしていた。
「ちょうど良かったようです。後少し遅れていたらダンジョンに行ってしまったでしょう」
「すいません。僕が我儘をいって」
「いえいえ、先ほども申したようにベル君の気持ちはよく分かります。それに私はベル君よりも年上のお兄さんですよ?迷惑なんてかけられて当たり前なんです。普通ならベル君の年頃はまだ親に甘えていたいはず…ですからもっと我儘や甘えても良いんですよ?」
「ありがとうございます!」
ハザマさんと話しているとまるで僕に兄が出来たみたいで嬉しかった。優しくて親身になってくれて間違っていたら注意をしてくれる。決して甘やかしてばかりじゃない…こんな兄が本当にいたら良かったな。
「ほら…来ましたよ。貴方が苦手な人もいますけど…頑張ってください」
「…はい!」
ハザマさんが苦手という人は『凶狼』ベート・ローガさんという人だ。名前と2つ名はハザマさんに教えてもらいました。
「あ…あの時の」
「助けて頂いたのにお礼も言わずに逃げてすいませんでした!」
「ううん…別に気にしてないよ…ただ…ちょっと怖がらせちゃったかな…って思っただけ」
「いえ、怖いだなん「んで?今更来たわけか。あぁ?トマト野郎」…っ!」
アイズさんと喋っているとベートさんが横から僕を睨みつけてきた。怖いけど…怖いけど…大丈夫だ。僕は…強くなる。
「なんか言ったらどうだ?トマト野郎。テメェみたいな雑魚が冒険者をやってたら冒険者の質が下がるんだよ。さっさと冒険者やめて故郷へ帰ったらどうだ?」
「ベート!やめろ。前も言ったがミノタウルスを逃したのは我々の責任だ!それに彼はLevel1。いきなり来たミノタウルスに気が動転するのも無理はない」
「それで腰抜かして逃げて追い詰められた挙句に無様に血の雨被ってんだぜ?ダセェにも程があるだろ!ギャハハハハ!」
そうだ。僕はダサい。アイズさんみたいな強さも…ハザマさんみたいな強さも…僕は持ってない。でも…僕にも信念はある!
僕は目の前のベートさんにアイズさん、他のロキ・ファミリアの人達に口を開こうとしたその時だった。
帽子を深く被り直したハザマさんがベートさんと僕の間に割り込んだのだ。
「あぁ?なんだテ「さっきから聞いてればきゃんきゃんと…五月蝿い駄犬ですねぇ」……今なんつった」
今…ハザマさん…なんて?
「聞こえませんでしたか?いやぁ貴方達獣人は獣と同じなので耳がいいと思いましたが…駄犬ってのは耳が悪いようですねぇ?」
「テメェ…」
「全く、あれですか?オラリオ最高のファミリアのロキ・ファミリアと言うのは新参者の初心者の冒険者を虐めて楽しんでるファミリアなんですかねぇ」
「あぁ⁈テメェ馬鹿にしてんのか!」
「貴方の言動を聞けばそんな感想しか湧きませんよ。一に口を開けば雑魚、二に口を開けば雑魚と何ですか?貴方の脳みそはミノタウルス並みですか?良かったですねぇ。同じ獣ですよ?」
ベートさんの額に血管が浮き出てくるのにも関わらず、ハザマさんは口を止めない。
「だいたい、何故ベル君や新参者が入っただけで質が下がるのでしょうか…冒険者というのは誰しも最初はLevel1から始まる。貴方で言うところの雑魚ですね。ならば貴方が冒険者になった時もそれは質をお下げになられたのでしょうねぇ」
「もう一つ言わせてもらうならば、Levelというものは一つの強さの基準です。そこにいるフィン・ディムナさんはLevel6です。貴方、ベート・ローガはLevelが5です。さぁどちらが強いでしょう?」
「んなの「フィンさんですよねぇ?」…テメェ」
「いくら貴方がLevel5といえどLevel6のフィンさんには向かっては行かない。まぁ同じファミリアなのもありますが…それは置いて置いて。ならば、Level1…しかも装備が碌に揃ってないベル君がLevel2のミノタウルスから逃げるのは臆病なのではなく一種の戦略と言えるでしょう。勝てないのに逃げるのがカッコ悪いからという理由で向かっていくのは…まさしく馬鹿のやる事です。そういう人の事を雑魚と言うのですよ」
逃げるのは…一種の戦略。勝てなければ…逃げるのも手。
「つまりは貴方が言ってる事を貴方に当てはめると…貴方はまさしく雑魚と言うことになりますねぇ?良かったじゃないですか!貴方が馬鹿にしていた人達とおんなじですよ!ヒャハハハハハ!」
「ぶっ殺す!」
ベートさんはそう叫びハザマさんに襲いかかった。僕は勿論ながら、アイズさんもロキ・ファミリアの人達も反応が出来なかった。しかし、僕の目に映ったハザマさんは笑っていた。
「ハハハ…はぁ…脳の容量が少ないんですかねぇ…すぐ暴力…まぁ嫌いじゃありませんよ。動物は嫌いですがねぇ!」
目の前からハザマさんの姿が消え、僕が探して見つけた頃には、ハザマさんの脚には緑色のオーラが纏わり付いていた。
「これは正当防衛ですよ!蛇翼崩天刃!」
一直線のハザマさんの蹴り上げはベートさんの顔を直撃し、ベートさんを打ち上げた。地面に倒れこんだベートさんを見てみたが見事に気を失っているみたいだ。
「手加減はしておいたのでエリクサーは要らない筈ですよ。まぁエリクサーを使う羽目になっても私は悪くありませんよ…ねぇ?フィン・ディムナさん」
「そうだね。今回もうちのベートが悪かったよ」
「それは私に言わないでください」
「ベル・クラネル君だっけ?今回、そして前回の酒場でのベートの失言…本当に済まなかった。これは団長である僕の責任だ」
「えぇ⁈いや、顔をあげてください。ベートさんの言い分も…正しくないわけではない訳で」
そうだ。ベートさんに言われた言葉…あれはおそらく必要だったんだ。少し浮かれてた僕に対する戒めみたいなものなんだ。
「ハザマの言う通りだね。超がつくほどのお人好しだ」
「そうでしょう?そこがまた可愛いんですよ」
「と言うか君、さっきベートを煽るとき生き生きとしてなかったかい?」
「私…こう見えて人を煽るの得意なので」
分からなくも無いと思った僕は悪く無い。たしかに紳士的な行動を振る舞うハザマさんだけど何か…いじめっ子オーラが出てるし…ほらロキ・ファミリアの人達も多分同じこと考える。
「おや、こんな時間にベル君。リリさんが待っていますよ」
「あ!早く行かないと!ア、アイズさん!本当にありがとうございました!」
「うん……ジャガ丸くんありがとうね」
僕はアイズさんとロキ・ファミリアの皆さんに手を振ってリリの元へ走っていく。ヤバい!遅刻気味だ!
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「さてと私もダンジョンに向かいますかねぇ」
「丁度いい。僕たちも一緒に行くよ」
「はい?」
「君のレベルも事情も聞いたけどね。君の力量に興味が湧いた」
「うむ、儂もじゃ」
「私もだな」
「団長に同じ」
「私も私も!」
「……私は…特に?」
「私は気になります!」
「……ベル君について行けば良かったですねぇ」
マジ面倒くせえ事になりやがったなぁ!畜生がぁ!
この後、ひたすら蛇翼崩天刃だけで頑張り、ウロボロスの存在だけは隠し通した…マジ俺様ナイスだわ
一応書いておきますがベートさんはアンチではありません。ちゃんと良い人です…多分ね。
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蛇はそれでも兎を導く
☆10[青眼鏡さん、影斗羅さん、優希@頑張らないさん]
☆9[sleiさん、たなかさんちの昼さん、影政さん、就職希望者さん、紅頚黄鼓光慧航行さん、抹茶マスクさん、爆滅アポカリプスさん]
☆8[鬼哭王さん、疾風の雪さん]
☆7[かねてすさん]
☆5[ぼるてるさん]
☆4[輪ゴムの兵隊さん]
☆3[ケチャップの伝道師さん、ヨ=グルトソースさん]
☆2[春菊さん]
☆1[ナハヤさん、ハーフシャフトさん]
評価ありがとうございました!
感想を書いてくれた方々もありがとうございます!
これからも観測ていってください!
「…あれから数日…子犬ちゃんに動きはありませんねぇ。……というかベル君はあの魔道書…いやまぁ悪いのはベル君じゃ無いのでノーカンですね」
あれから数日と言っても1週間も経ってはいない。俺もこちらの世界にようやく肩慣らし出来るほどは慣れてきた。この数日で俺がした事と言ったら多少ダンジョンに潜り、数名の神とコネクションを作ったのだが…ミアハとガネーシャ、タケミカヅチは良い神だったな。ヘファイストスの所の椿という冒険者はなかなか利用価値があるだろうな。
「…反対にディオニュソス神は少し警戒…いや私の敵ではありませんねぇ」
ディアンケヒトとゴブニュは仲良く…というよりはビジネス的な関係性が結べそうだったが、あのアミッドとかいう冒険者…近づくだけで身体の中が消えてくような。てかマジで気分が悪くなって頭が痛くなって…聖女とか呼ばれてるらしいが…悪魔じゃねぇのか?
※お前が言うな
「…あの聖女の前では魔導書も使えそうにはありませんでしたし、逃げるので手一杯でしょうねぇ…敵には回したくありません」
ダンジョンを歩きながら向かってくるゴブリンを蹴り飛ばす。
まぁそんな事はどうでも良いか…今はどうやってベルを強くするかだ…一応、ナイフを投げて回避の練習はさせているが…そろそろウロボロスの存在を…バレても問題はねぇが…エルフの嬢ちゃんが鬱陶しそうだしな。いやエルフなら大丈夫か?
「そういえば…こちらに来てまだ魔道書を使っていませんねぇ。少し使ってみますか」
目の前にはミノタウルスが二体、丁度良いかは知らんがまぁ良いだろう……多分な。
「第666拘束機関解放 次元干渉虚数方陣展開 コードS.O.L!碧の魔導書起動!さぁ!終わらせますよ!」
おぉ…何だろうなぁ。力が湧き出てくるっつうのか…例えるなら枯れ果てる一歩手前の井戸からまた水が湧き出て満たされる感じみたいに、俺の身体の中で力が充満している。
「さてと、どのくらいでしょうねぇ」
ミノタウルスに向かってウロボロスを投擲してみると、まるで豆腐をスプーンで掬うかのようにすんなりと頭に風穴を開けてしまった。
もう一回試してみたが結果はおんなじ、魔導書無しでも試してみたが少し引っかかりを覚えた。やはり魔導書があるのと無いのとでは雲泥の差…対人でも試してみてぇがベルに迷惑かけるにはいけねぇ…俺はあくまで団員だからな。
「おや、あれは?」
今後をどうするか考えていると倒れているベルとそれを膝に乗せて微笑んでいるアイズ・ヴァレンシュタインがいた。何かの見間違いかと思い眼を擦り、もう一度見てみるがやはり膝にベルの頭を乗せているアイズ・ヴァレンシュタインがいた。
確か今日は子犬ちゃんも都合が悪いとかで魔法の練習をするって事でダンジョンに行ったベルだったが…どうしたらこうなるんだ?
「……誰?」
「私ですよ、ハザマです。怖いので剣は置いてもらえると助かりますね」
「どうしてここに?」
「私とて冒険者ですよ?ダンジョンにいるのは普通かと」
「……そう」
興味なさげに呟くとアイズ・ヴァレンシュタインはベルの頭を撫で始めた。あれ起きたらまた逃げられんじゃねぇの?まぁ良いか…てかコイツの保護者は何処だ。……あそこか
「…良いんですか?あれ」
「別に何かやましい事をしてるわけでもない。何も言う事はないな」
「そうですか」
「君はその取って付けたような仮面を外してみたらどうだ?私は本心も気になるが」
「いえいえ、エルフの王族に無礼を働けば闇討ちされてしまうかもしれませんからねぇ…ま、我慢してください」
いたのはエルフの女だ。リヴェリア・リヨス・アールヴだったか?長えから合ってるか知らんが…コイツ、俺のこっちに気づいてやがる節があるんだよなぁ。今俺のこっちを知ってるのはあのクソ女神と猛者…エルフの嬢ちゃんとアマゾネス姉妹…これ以上増えられると困るんだよ。
「お前がそう言うならこれ以上の深入りは辞めておこう」
「懸命ですね。私としてもそちらの方が助かります」
「いつか、見せてくれることを願ってるぞ?」
「さぁ?どうでしょう」
ん?ベルが起きたか…ぶふっwお前!転がりながら逃げるとか器用かよ!アヒャヒャヒャヒャ!マジで面白いわお前!
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「あれ…恥ずかしかったなぁ」
僕はアイズさんに膝枕をしてもらっているのに気付き、恥ずかしさのあまり逃げて来てしまった。しかも昨日の夜ベットで悶絶していたらハザマさんに追い打ちかけられるし…散々だよ。
「あれって…」
僕が昨日の事で恥ずかしがっているとリリを見つけた。僕は声をかけようとしたが誰かと話しているみたいだ。……あれ?あの様子だと喋っていると言うよりは言い合っているみたいな。
何をしているのか聞こうとした時、後ろに気配を感じたのですぐに飛び退く。後ろを見るとハザマさんよりは背の低い男の人が立っていた。というかハザマさんは背が高すぎる!190はあるでしょ!僕も身長欲しいのに…グスン。
「てめぇ、あのチビの仲間だな?どっかで見た事あると思ったぜ」
「……貴方は?」
「関係ねぇだろ?それよりもよ。てめぇはあのチビをサポーターとして雇ったんだよな?」
「……えぇそうですけど」
「なら、俺と手を組まねぇか。あのチビを嵌めるんだよ」
それを聞いた途端、僕はすぐに剣を抜こうとした。けど、一呼吸付き感づかれる前に剣から手を離す。
ハザマさんの言葉を思い出したのだ
『良いですか?貴方は優しすぎます。冒険者の中でも指折りのといっても良いほどの甘ちゃんです。貴方は仲間が馬鹿にされれば怒り、弱いものイジメを見れば助けてしまいます。まぁ悪く言えば偽善者です』
『ちょっとハザマ君』
『少し黙っていてください。…さて話を戻しますが私はその事について別に悪いとは思っていません。ただし、感情に身を任せてはいけません。勝てる勝負も勝てなくなりますし、もしかしたら貴方が守ろうとしたものに危害が加わってしまう恐れもあります。ですからその誰かを何かを守りたいと思う心を持ちながら、常に冷静…クールであってください』
そうだ。ここでこの人を叩き伏せるのは簡単だ。でも、僕だけじゃない…神様にもハザマさんにもリリにも迷惑がかかる。それだけは嫌だ。
「どうすんだ?」
だから、此処でどんな方法を取れば良いかなんて僕には分からない。分からないなら真似すれば良い…ハザマさんを
「話をまず聞きましょう。人1人を消すんです…それ相応の計画があるのでしょう?」
「まず、てめぇが普段通りにガキをダンジョンに連れて来て孤立させろ。後はこっちで処理してやる」
「分け前は?」
「あのガキは金を貯めているらしい。そこから分配してやるよ」
案外、喋ってくれている。おそらくリリから鍵や何かを奪い取り、モンスターに見せかけて殺す…もしくはモンスターに殺させる…そして真相を知った僕も殺すのかな。
「どうだ?悪い話じゃねぇだ「悪いですが、その話には乗れません」あぁ?」
「僕は金で仲間を売るような人じゃないので」
「てめぇ…ならしょうがねぇ。痛い目に遭ってもらうぜ!」
男は剣を引き抜き切り掛かってくる。周りを見るがあまり人が居ないので少し派手にやってもバレないだろう。この人はおそらくLevel2だけどハザマさんの攻撃に比べたら遅すぎる。
「はぁ!」
「うぐっ⁈」
剣を紙一重で避けてがら空きの胴体に一撃、拳を入れる。男はその場で崩れ落ち、すぐに何処かへと走り去って行った。どうしようかと考えているとリリが先程の奴らと会話を終わらせたのか僕に話しかけてくる。
「ベル様、今そこで誰かと話していました?」
「リリと同じソーマ・ファミリアの人だったよ。かなり良い人で冒険者の色んな事を教えてもらったんだ」
「ぇ⁈そ、そうなんですか。………ソーマ・ファミリアにそんな人いたかなぁ(ボソッ」
多分、あの人たちがリリを狙うなら明日辺りかな。少し神様とハザマさんに相談してみよう。
「明日決行ですかね……」
「ん?リリなんか行った?」
「いえ!何でもありません!さぁ、ダンジョンに行きましょう!」
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同時刻 ミアハ・ファミリア
「ふむ」
「ねぇ。何でうちのファミリアの待合室で本なんて読んでいるの?」
「そうですねぇ。私書物が好きですし、うちのファミリア今誰も居ないので寂しいのですよ。ご安心を、ミアハ様には許可を得ています」
目の前にいる細め目の男に疑問を投げかけるも、それらしい理由で回避されてしまう。ていうか貴方がいたら不審がって誰も来ないんだけど。
「ご心配なく、私はあくまで此処で悩んでいる客を演じますので」
「…そういう事じゃなくて」
「そう怒らないでくださいよ。婚期が遠のきまぎょへぇ⁈」
近くにあった本を投げた私は悪くないと思う。まぁ変な声を出して避けられたけど。
「危ないですねぇ。それが客に対する態度ですか?」
「ベルはお客。貴方はお邪魔虫」
「酷いですねぇ」
「お客と思われたかったら何か買って行って」
「…別にまだ下へ潜る必要もないのでポーション要らないんですよねぇ」
「Level6なのに?」
「私って戦闘は専門外ですから」
いつもこうだ。いつもこうやってのらりくらりと躱され何も買って行かず出て行く、そしてまた邪魔しに来る。まだ物を買っていけば対応は変えるのに。それに戦闘は専門外とか言ってるけど多分嘘、かなり動きが熟練者。
「…というか何でこっちに来たの?聖女の方へ行けば」
「いやいや、ミアハ様には色々とお世話になりますでしょうし…主にうちの神で…あの聖女さんは少し苦手で…主に俺の魔力的に…」
「?…そう」
あの聖女が苦手って…不思議な人。ベルだったら…多分。
「ベル君は見捨てる事はしませんよ?」
「…ベルの事なんて考えてない」
「ナァーザさんはベル君が好きですかうぎゃぁぁ!」
「……五月蝿い」
私は反射的に矢を射る。それは命中し目の前の彼は悲鳴をあげた。
「酷いですよ⁈私のお尻に矢を射るなんて…あぁ痛い…」
「大丈夫…鏃が小さい矢だから」
「それでも痛いものは痛いんです!」
「……自業自得」
彼は白々しく何もしてない被害者のような顔をした後、急に帽子を深く被り目を隠した。これだ、この動作をした時、彼は決まってすぐいなくなる。
「…へぇ…ソー………が……やっ……なぁ……ころ……だいな……な」
小声でぶつぶつ何かを呟く彼は白々しい彼ではなく、本来のLevel6である彼が見えた気がした。
「何してるの?」
「…いつも通り…観測ているだけですよ。では私は用事を思い出したので」
「…はい。これ」
「何ですかそれ」
「ポーション…一応お試し一本持っておいて」
「わざわざすいませんね。今度ベル君を連れてきますので…これはほんのお礼です」
彼は私の耳元にある言葉を囁き、去っていった。私は…その一言だけで何が何だかわからなくなった…あのハザマという男を…
「ん?ナァーザ…どうしたのだ?」
「あ、帰っていたの」
「今しがたな。それよりもハザマはいつでも来てくれるな。これで商品も買って貰えれば良いが」
私はミアハ様の言葉さえ頭に全てが入ってこなかった。
あの一言
『こんな俺でも心配してくれてありがとなぁ?ナァーザちゃん』
彼は俺なんて使わない。でももし…私が思ってるハザマが…違うとしたら?お礼というのは本心を見せるという事?
その答えはいつまで経っても出なかった。
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「…さてと…ベルは囚われの子犬ちゃんを助けれるかねぇ?ククッ…これだから観測るのはやめられねぇ。アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!さぁ!ベル・クラネル!英雄への道の第一歩だ!その程度なら救ってみせろよぉ!ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「…貴様の正体がバレたらどうする」
「良いじゃねぇかよ。少しは俺も叫びてぇし、狂ったように笑いてぇんだよ。ここに来てからまだ人の悲鳴さぇ殆ど聞いちゃいねぇ」
「…しかし、今我慢せねば貴様が気に入ってるベル・クラネルも強くはならんぞ」
俺は目の前の男に指を突き出し横に降る。こいつは甘え、マッカンよりも甘え。
「テメェはベル・クラネルという男をまだ知らねえな。まぁ知ってみろとか言う気はねぇけどよ。テメェの主神が気に入った冒険者だぜ?なら信じてみるのも一興だと思わねぇか?」
「貴様はフレイア様が気に食わなかったのではないのか?」
「アイツの見る目は間違いなく本物だからなぁ。そこは評価してんだよ。他は最底辺評価だがな…そうだ…飯食いに行かねぇか?腹減ってよ」
「…良いだろう。フレイア様にはお前と少し話して来いと言われた」
「あの女…こうなる事見越してやがったな。まぁいいか」
俺は裏面のまま 男 オッタル に早く来いと手招きをする。てかこいつ笑った事あんのか?表情筋死んでねぇか?
『フレイア様の為に!クハハハハハハハハハ!』
『フレイア様の為に!ヒャハハハハハハハハハハ!』
※どちらもCV小柳良寛で楽しみましょう(無茶振り)
「…ないわー」
「早く行くぞ」
「テメェの所為だからな」
「……?」
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「おいジジイ!くたばってねぇか?くたばってねぇなら席空いてるか教えろ!」
「おー!黒髪の坊主!今日は連れ有りかい?てか余計なお世話じゃ!まだまだ現役じゃ!」
「まぁ少なくとも後十数年は生きてもらわねぇとな。今日は色々話し込みてぇからな。貸切できるか?」
「あー今日は予約客がいるが、その人達と一緒ならいいが?」
「チッ……まぁ別に知り合いも来ねえだろ」
俺は1番奥の畳席を取り、オッタルを向かい側に座らせ俺も座る。畳が珍しいのかオッタルは少し興味深そうに触っている。てか注文しておくか
「ジジイ!天玉うどん2つだ!俺の卵は味付けすんじゃねぇぞ!ちゃんとしたゆで卵作れよ!」
「何回も来られたら覚えるわ!この戯けめが!」
「…天玉うどん…聞いたことないな」
「あぁ、作ってんのはおそらくジジイだけだろうよ。結構美味いんだぜ?しかも中々知られてない奥の店だから客もあまり来ねえから俺もこっちで居られるのよ。んで?そっちは何企んでんだ?」
「…貴様が終わってから俺は仕込みを始める。単純にダンジョンのモンスターをぶつける」
あぁ?普通のモンスターをぶつけたって意味がねぇだろ。それこそ10階層あたりのモンスターでもLevelが上がるのに足りるかどうか……待てよ?
「テメェ…強化種を意図的に作るつもりか」
「その通りだ。ミノタウルスにしようとフレイア様は仰った」
「最初の因縁の敵ねぇ…良いんじゃねぇか?なら俺は近くの冒険者を梅雨払いしてやるよ」
「それはプラスになると考えてのだな?」
「まぁな。まぁ途中の乱入は状況を見て追々だが…まぁ俺も甘やかしてばかりじゃねぇよ」
ジジイが持ってきた天玉うどんを2人で啜りながら、今後の事についてどうかどうかと考え合う。
「貴様がそっちを出すのはどの辺りだ」
「…少なくともベルがLevel2…3かねぇ。俺もLevelは上げといて損はねぇしな。それにやってみてぇ事もあるし」
「それはフレイア様が仰っていた武を見れるのか」
「…ちっそこまで見えたのか?感か?…見せてやるよ。ただ先にこっちだな。それはテメェ相手に使ってやるよ」
俺はゆで卵を頬張り、オッタルを睨みつける。オッタルもチャーシューを頬張り、俺を睨みつける。その目はやってみろと語っていた。ので、俺は上等だと目で語ってやった。
俺は何気なく扉を方を見ていると、その扉がガラガラと開き見覚えがある顔が5人入って来た。それを見た瞬間俺はオッタルを使って隠れるように身を縮こませる。
「どうしたのだ」
「…ロキの所の奴らだ。しかもよりによってエルフ組にアマゾネス姉妹もいるじゃねぇか」
「ふむ。アイズ・ヴァレンシュタインも混じっている」
「だからテメェ少し俺を隠すように座ってろ。俺はすぐに着替える」
着替えるといってもパーカー脱いで帽子被って声整えるだけの簡単作業だが、とりあえずパーカーはウロボロスに任せる。
「…さて、窮地は脱したと思いきや…私ですと貴方といる理由を考えなければなりませんね」
「どうするのだ」
「適当に旧友とでも言っておきましょう。下手なことをしたら感づかれる事もありませんよ」
「そうか」
「あー!」
ちっ…気付かずに出て行ってくれるのが1番良かったが…オッタルの所為だな。この巨体の所為だ。その所為でバレた…そう考えるか。
「ハザマ君だー!」
「おやおや、ロキ・ファミリアのご一行ではありませんか…こんな所で何かご用で?」
「私ここのご飯食べた時皆んなに食べて欲しいと思ったから連れてきたんだー!」
「それは何とも仲間思いで…あ、こちら皆様ご存知ですがフレイア・ファミリアのオッタルさんでして、私の旧友でございます」
しーんと当たりが静かになる。俺は何か悪い事言ったか?とはてなマークで頭を埋め尽くしていると妹の方が詰め寄ってきた。
「えぇ⁈ハザマ君って猛者と友達⁈てか猛者に友達いたの⁈」
「失礼ですよ。そりゃオッタルさんでも友達の1人や2人ぐらいいるものですよ。人は見かけによらないものです」
「…失礼だな」
俺はロキ・ファミリアの横をそそくさと退散するように通り過ぎる。ジジイに金を支払って早く店から出る。
「………ゔぁぁマジでなんで来るんだか」
「…話を聞かれてなければいいだろう。俺はフレイア様の所へと戻る」
「…ちっ、あのクソ女をちゃんと見張っとけよ」
「俺はフレイア様のお言葉に従うだけだ」
そう言い猛者はクソ女神の所に帰っていく。さてと俺は俺で動きますか…ククッ早く見てえなぁ…ベルの命の輝きを…
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「今帰りましたよ」
「あ、ハザマ君!遅かったね」
「まぁ少し色々とやりたい事がありまして」
ベルが居ないところを見ると寝てるか。俺の眼が正しければ明日子犬ちゃんが動く…あのクソ野郎どももな…さて俺はどうするか。
「ハザマ君…良いかな」
「ベル君の事でしょうか?」
「…サポーターの事なんだけれどね」
「えぇ…私もきな臭いと思い色々と調べて来ました。ソーマ・ファミリアのリリルカ・アーデ…小人族です」
「やっぱり姿を変える魔法を持っているのかな」
この神…感が良いのか何なのか…案外この神も要注意かもな。
「えぇ…持っていますでしょう。ちなみに私はベル君に任せようと思ってます」
「…あのサポーターの子の事かい?」
「私は団員…団長の命令なら聞かないことはありませんよ。大丈夫です…私も跡をつけてみます。ですから神様は心配せずに笑顔で此処でお待ちください」
これは俺の本心に近い。この神がいつも通り笑っていなかったらベルにも影響を及ぼす。それに一応俺を置いてくれているからな。
「…もう寝てください。私は此処で良いですから」
「うん…」
俺はソファーに横になりウロボロスを一匹出す。それに『ベル・クラネルを明日一日中追跡せよ』と命令を出し目を瞑り眠る…。
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『貴方と会えて本当に良かった…私は…幸せでした』
やめろ
『おい…喋んじゃねえよ。今すぐに病院に行きゃ治るからよ!』
『無理よ…もう自分で…わかってる…もの』
やめろ
『おい!今テメェが死んだら、俺はアイツらは!どうなるんだよ!』
『ごめんね…私のせいで…貴方を傷つけてしまう』
やめろ
『さようなら…狭間…ありがとう』
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「やめろォォォォォォォォ!」
「うわ!ビックリした!」
僕がベル君を見送った後、ハザマ君の寝顔を観察しようとすると彼はいきなり叫びながら飛び起きた。僕も跳びのいちゃったよ!
「はぁ…はぁ…」
「だ、大丈夫かい⁈凄い汗だよ!」
「…大丈夫です…少し…嫌な夢を見ただけです」
彼は落ち着くように水を飲むといつものように振る舞い始めた。でも僕にはどうしても無理をしようとしている様にしか見えなかった。
「…さて、ベル君はもう行ってしまわれましたか…私も行きますかねぇ」
「ねぇ……ハザマ君」
「どうし」
僕はハザマ君を引き寄せ抱きしめる。これでも一応神様だからね…子が苦しんでいるなら慰めてあげないと。
「苦しいなら…無理しなくて良いよ」
「…大丈夫ですよ。しかし…ありがとうございます」
「うん!さて、無理しない程度に行っておいで!ベル君は任せたよ!」
「えぇ…任せてください」
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本当にお人好しの神様だなぁ…なんか死んだ母親を思い出したわ…マジでお人好しで馬鹿で天然でドジで…優しい母親…
俺は頭を振り全ての考えをリセットする。今からする事を考えればこんな事を考えてはいけないと。
「さて…そろそろ動きますかね。お、ビンゴ!ウロボロスから反応がありました。どうやら彼女はベル君を置き去りにした様で…おそらく彼らと鉢合わせするでしょう」
俺はダンジョンの4階層の隅っこで壁に身体を預けてある奴らを待つ。ウロボロスから反応があり2時間ぐらいだったあたりでこちらに来る男どもを見つけた。
「おやおや、随分と遅かったですねぇ」
「少し予定と狂ったんだよ。ほら!あのガキを襲ったんだ!約束の金を寄越せ!」
そう。今日ベルと子犬ちゃんがダンジョンに入る事をソーマ・ファミリアにリークしたのは俺だ。そうすれば子犬ちゃんはこいつらに襲われそこにベルが助けに入る…立派な英雄だな…まぁ子犬ちゃんにとっては…だがな。コイツらはキラーアントで殺そうとしてたが…俺が鍛えたベルならキラーアント如きに殺されるはずがない。
「えぇ、ちゃんと用意していますよ?報酬はね…しかし…報酬がお金とは一言も言ってませんけどね」
「あぁ?どういう事だ!」
俺は返答の代わりに一番端の男の脚をウロボロスで噛みちぎらせる。相手はLevel2と1の集まりウロボロスを避けられる訳がねぇ。
「痛え!痛えよぉ!」
「テメェ⁈」
「どういう事だぁ!」
ゴミ3匹がなんか言ってるが…ゴミに耳を傾ける奴が居るのかねぇ。
「貴方達に必要なのはお金ではありませんよ?だって…死んじまったら金なんて必要ねぇからよぉ?ヒャハハハハハハハハハ!」
俺の変化に目の前のゴミは追いつけてない様子だなぁ。別に理解なんてしなくて良いぜ?テメェらはゴミ屑今から俺が片付けてやるよ。
「テメェらがこの後生きてるとメンドくせえからよ。此処で片付ける事にしたわ。大丈夫だぜ?他の団員も後を追わせてやるよ」
「巫山戯んなぁ!」
遅え遅え、マジでナメクジみてぇな遅さだ。これが恩志の効力か?いや恩志無くてもコイツらには負ける気がしねぇ。
「ウロボロス!奴らを喰いちぎりな!」
「うぎゃあ!腕が!俺の腕が!」
「大蛇武錬殲!雑魚がぁ!」
「グギャ⁈」
1人はウロボロスでもう1人は脚で頭を踏み潰し心臓を蹴り抜く。1人は殺しちまったが…まぁ2人で楽しめば良いよなぁ。
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!」
「なんなんだよお前はよぉ!」
「あぁ?Level6の冒険者だ…良いね良いねその顔!格下だと思ってた雑魚が自分達よりも上のレベルで絶望してる顔!たまらねぇ!凄く気持ちいいぜぇ?ベルと一緒にいると忘れかけちまう…この高揚感!ヒャハハハハハハハハハハハハ!」
「逃げ、逃げなきゃ…こ、殺さ」
「どこ行くんだぁ?テメェは此処で俺の玩具になんだよ」
腕を吹き飛ばした男は逃げようとするが恐怖で上手く脚が動かせない。だからこそこの悪魔に捕まってしまったのだ。
「この、悪魔がぁァ!」
「あぁ?玩具の癖に歯向かってんじゃねぇよ」
彼は最後の力を振り絞り剣を悪魔へと振りかぶるが彼はもう動いていた。手に鎖を持ちそれを振り回している。剣を振り下ろし悪魔に当たる瞬間に悪魔の姿は消え…彼の周りには鎖が回っていた。
「皇蛇…懴牢牙。そろそろベルが来ちまうかぁ?…楽しみてぇが悪りぃな…死ねや雑魚が」
鎖は肉を引き裂き彼はバラバラの肉塊へと姿を変える。脚がない男は必死に貼って逃げようとしたが悪魔が逃がすわけでもなく…背を踏まれ捕まえられた。
「…さて…テメェは…毒で溶かしてやるよ」
「ひ、命だけは…ゆ、許して」
「良い顔だぁ…惚れ惚れするなぁ…最後に1番の悲鳴を…聴かせてくれや」
彼の袖から一匹の蛇が高速で男の喉仏へと牙を立て毒を流す。男は目を見開き…絶叫する。悪魔はそれを聞きまるで美味い飯を食ったグルメみたいに女好きが見た美女みたいに、惚れ惚れと清々しいほどの笑顔を浮かべ、男を見下ろした。脚から腕から溶けていく男の姿を見て悪魔はこの街に来て初めて狂ったように笑いだした。それはいつもの笑いでは無く、心の底から笑ったのだ。心の底から残虐を楽しんだ笑いを出した。
「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!絶望しろぉ!これが現実だ!テメェの糞みたいな人生は俺の娯楽の1つに過ぎなかったのさ!さぁもっと絶叫しろ!もっと苦しめ!そして死ねぇ!」
悪魔は男を踏みつける。と、同時に男は完全に溶けてしまう。辺りには人が溶けた匂いや、血肉の匂いが充満するが…悪魔は気にすらしてなかった。
「ウロボロス…処理しな。魂も食っていいぜ?」
悪魔の指示通りに蛇は男達の死体を片っ端から引きちぎり喰らい尽くした。そこで何があったかなんて分からない。ただ分かるのは血肉の匂いだけが…その辺りに充満している事だけだった。
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「ベル君…はいこれ」
「何ですか?この紙」
僕はリリを助け、本拠へと戻った後。ハザマさんに数枚の紙を渡された。ちなみにリリと神様は奥で何かを言い合っている。
「リリルカさんのファミリアである。ソーマ・ファミリアの悪事です。これを明日、ベル君のアドバイザーである人の所へと持っていきます」
「えぇ⁈何でそんな物をハザマさんが⁈」
「私の本職は情報屋ですから…この程度の情報なら…簡単ですよ。まぁ話は戻しますが…ベル君。リリルカさんを助けたいですか?」
「……!…僕はリリを助けたい!」
「結構!いやぁ…貴方は優しい子だ。その心を忘れないでくださいね…明日はアドバイザーさんの所へ連れて行ってくれるだけでいいです。あとは私が話を付けますので」
「…リリをお願いします」
僕はハザマさんに頭を下げる。この人にはお世話になったばかりだ…本当に良い人だから。
「…任してください……ベル君」
ハザマさんは本当に…良い人だ。
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これで後は…ギルドの所のウラノスに話をつければソーマは終わりだ。テメェはベルには必要ねぇ神だ…今すぐにオラリオから消してやるよ…ククッ
はい、主人公はテルミの性格よりの常識人です。
これから物語が進むにつれて主人公の過去も明かされていくでしょう
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蛇は願い・秩序は目覚め・破壊は生まれる
遅くなってしまい申し訳ございませんでした
「すいません。エイナさんという方を探しているのですが」
俺はウラノスに会う為にギルドに来ている。いきなり合わせろってのも無理なものだからある程度は親交がある奴がいるが、ベルの年上キラーは凄えな…ギルドにもコネが作れる。これから女関係はアイツに任せようそうしよう。
「エイナは私ですが…貴方は?」
「これは初対面なのに名乗りもせずすいません。私はヘスティア・ファミリア団員の幽鬼狭間です。以後お見知り置きを」
「あ、貴方がベル君が言ってたお兄さんみたいな人ね」
「おやおや、私を兄みたいと言ってくれてるのですか…いやぁ嬉しいですねぇ」
「ところで今日はどんなご用事があったのでしょう?」
「あぁ…実はですねぇ」
俺は懐からソーマ・ファミリアの殺人、強盗と色々な悪事の証拠が書かれた紙をアドバイザーの目の前に放り投げる。それに目を通していくアドバイザーは徐々に顔を青くして…この顔は俺がみてぇ顔じゃねぇんだよな……嫌なもん見たぜ。
「これを何処で⁈」
「私は情報屋でしてねぇ…少し深くまで探してみたら大量に出てきただけですよ。さて、私がここに来た理由はギルドの上の人に合わせて欲しいのですよ。要は直談判ですね…ギルドに対処してもらうのが一番面倒ごとが無いので」
「…すいませんが…これ私に預けてもらえませんか?私が上に伝えておくので」
「………信用してますよ」
まぁ何も事が起こらなかったらその時はその時。プランBってやつだ…しかし、あのアドバイザーと喋っている時に感じたあの視線。なんなんだ?人間じゃねぇなにかが…ま、考えても分からねえな。さてとベルを観測てますか♪カカッ今日はどんな事が起こるかねぇ
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「はぁ…」
「どうしたんですか?ベル様」
「こう…なんて言うのかな。気分がイマイチ上がらないというか…なんというか」
朝からハザマさんも神様もいないし、ヴェルフも忙しいみたいだし…んーなんかなぁ…
「まぁまぁベル様!リリと一緒にダンジョンで稼いじゃいましょ!」
「…そうだね!よし!行こう!」
と言ってもそこまで深い階層は潜れない。ハザマさんにまだ駄目だと言われているからだ…でも、もうこの階層は飽きたんだけどなぁ。ハザマさんは何処か怯えているような…気がする?…んーでもハザマさんってもの凄く強いから怯えるものなんてあるのかな?
「そういえばあのハザマって人。ベルさんとはどんな風に出会ったんですか?」
「シルバーファングに襲われているところを助けてくれたんだよ。僕は気絶していて見てなかったけど、神様の話によると蹴り一発で倒したらしいよ」
「……もうハザマさん連れてきましょうよ」
「僕も一緒にダンジョンに潜りたいけど、色々言われてはぐらかされるんだよね」
ハザマさんは何故か僕とだけはダンジョンに入らない。理由を聞いても都合が悪いと言われる事が多い……まぁ其れ相応の理由があると思うけど…少し悲しい気もする。
「とにかく!今日もダンジョンでいっぱい魔石集めますよ!」
「そうだね」
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俺はダンジョンに向かうベルを観測ながらヘファイストス・ファミリアの武具店に来ているが…マジで今会いたくねぇ奴に出会っちまった。
「これはこれは、ロキ・ファミリアの『大切断』に『怒蛇』ではないですか…『剣姫』も一緒のようで」
「……その名前…やめて」
「おや?気に入ってないのですか?私としては大変貴方という人物を表せている2つ名だと思いますが」
「…やめて」
「分かりました。これ以上追求すると私の首が飛びそうなので」
別にこの女に負ける訳がねぇが仮にもLevel5の冒険者だ。マジでやらねぇと本気で命がやべぇ…まぁ殺し合う必要性もねぇし考えなくても良いだろ。
「ハザマ君はなんでここに居るの?」
「…私だって冒険者ですから武具を見に来ては駄目なのでしょうか?」
「だってハザマ君って防具着けてるとこ見た事ないし、それに武器だって身につけてる所見た事ないよ?」
「私は非力ですからね。投げナイフなどの軽い武器を此処で調達しているのですよ」
事実だ。別に非力じゃねぇが投げナイフってのは便利だ…逃げようとする雑魚どもの脚に投げるだけで逃げれなく出来るからな…それに牽制用にも数本持っておくと戦闘の幅が広がる…下手に剣を振ってもウロボロスと相性良くねぇしな。いや待てウロボロスに剣を噛ませれば攻撃の幅が…いや、その為だけに帯刀するのもなぁ。
「…それに武器を買う余裕もなくてですねぇ。うちのファミリアは貧乏ですから」
「それで死んでしまったら元も子もないでしょ?」
「ご冗談を…私はこれでも自身の力ってのを理解していますから退き際を見誤る事もありませんし…それに危険な事にも首を突っ込まない主義ですしねぇ…団長命令じゃない限り」
「私は無謀にも強大な力に向かって行く馬鹿丸出しの英雄みたいな事はしませんよ…そういうのは本当の善人に任せておけば良いんですよ」
おっと…口調は崩れなかったが感情が前に出過ぎだな。いけねぇマジで今日調子が悪りぃ…ボロをこれ以上出したらマジでやべぇ。
俺は呆然としているアマゾネス妹の横を通り、依頼していた投げナイフを数本受け取りすぐに武具店を出た。
「……それで何故ついて来るんです?ティオナ・ヒリュテさん?」
「んー?ハザマ君が気になったから?」
うぜえ…コイツが側にいるとクソほど苛々すんだよ。マジで俺の目の前から消えてくれねぇかな。
「お姉さんやアイズさんを置いてきて良かったのですか?」
「んー私って基本気分屋だからあまり気にしてないんじゃないかな?」
「…だからって付いてこなくても」
マジで苛つく、コイツの仕草1つ1つが…行動全てが言動全てが…アイツに似過ぎてんだよ。
「----------」
つかなんでコイツは俺に纏わりつくんだ?俺がいきなり現れた高レベルの冒険者だからか?レアスキルを持ってるからか?苛つくんだよ。
「-------ね」
だからって人が嫌がってんのをコイツは分かんねえのか?鬱陶しがってんのを分からねえのか?マジでこういう所までアイツにそっくりだ…まじでウゼェ
「ねー------」
うぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇ
頭に残るアイツの声が俺の罪が目の前で突き付けられている感じがして不愉快だ。
頭に血が上り正常な判断が出来ねぇ…あーマジでイライラすんなぁ。
「ねーってば!」
「鬱陶しんだよ!クソアマゾネス!アイツと同じ顔で同じ声で俺の目の前でピーチクパーチク喋んじゃねぇ!ぶっ殺すぞ!」
俺はとうとう目の前のクソアマゾネスの口を押さえつけ路地裏の壁に叩きつけた。ステータスでの筋力は俺はそこそこあるらしくクソアマゾネスは俺の手を解けないようだ。
「さっきから黙ってればずっと喋りやがって!テメェの頭には黙るって単語はねぇのか⁈まだそこら辺の餓鬼の方が聞き分けがいいぜ?一回その喉にある声帯引っこ抜いてやろうか!あぁ⁈」
少し叫んで上っていた血が下に降りてきたのでクソアマゾネスから手を離し解放してやる。自分が掴まれた事よりも目の前の俺の豹変ぶりに頭が追いついてないらしい。
「やっと黙りやがった。テメェは少し落ち着くって事を覚えな。さっきから相手していれば鬱陶しい事この上ない…あー煙草欲しい…此処にあるはずもねぇし……マジでウゼェ」
「……」
「んだよその間抜けな面は、俺は元々こっちが本性だっつうの。テメェのせいで取り繕えなくなっただけだ」
「何で?何であんな風に装うの?」
「そっちの方が都合が良いだよ。テメェみたいに何も考えずに能天気にフラフラしてるほど馬鹿じゃねぇんだよ」
「…なんか可哀想」
「同情してんのか?はっ、冗談じゃねぇ。俺は俺の為に猫被って生きてんだ。それを可哀想だとか生き辛そうだとかテメェの価値観だけで測って口にするんじゃねぇ不愉快だ」
「…そっか」
そうだ。同情なんてものはクソ喰らえだ。俺と少し喋ったぐらいで俺の事知った気でいてそれで同情されるなんてまっぴらごめんだ。俺は俺の快楽と目的の為だけに生きている、それ以外の事はゴミ、ゴミ屑以下だ。俺はクソアマゾネスにこっちを言いふらさないように釘を刺しておき、ベルの元に向かう為にダンジョンへと向かう。
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私は彼がいなくなった後の路地裏で木箱に座りさっきの事を考えていた。いきなり彼が豹変してびっくりしたけどそれよりも印象に残ったのがあの表情だった。
(苦しそう…悲しそうだった。それにアイツと同じ声と顔って…私と同じ顔と声の人と親しかったのかな)
彼は自己紹介の時に故郷は消えたと言っていた。もしかしたらその時に私と同じ顔と声の人がいたのかもしれない。だったらあの怒りようもなんとなくだけど分かる。でもそれにしても悲しそうだった…何だろう…分からないけどすごく気になる。
(アマゾネスの本能で男として気になるって事じゃない。私自身が彼を気になっている)
ティオナ・ヒリュテのこの感情は単なる探究心に近いものだった。ベル・クラネルに惹かれたのはベル・クラネルの潜在能力をティオナ・ヒリュテのアマゾネスの本能が嗅ぎつけたからだろう。しかし、ハザマを気にするティオナ・ヒリュテは気に入った男の子を産みたいというアマゾネスの本能ではなく、彼女自身の本能がハザマの何かを嗅ぎつけたのだろう。それが何かは分からない…今の彼女には、そしてもしかしたらハザマ自身にも…
「まぁ考えていても仕方ないや!アイズとご飯食べに行こっと!」
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しかし彼女は知らない。彼の抱えている過去がどれ程悲惨な物なのかを
彼らは知らない。彼がこの世界に異物として来てしまったせいでダンジョンに厄災が現れた事を
「……兄様ぁ…何処ですかぁ?」
彼は向き合わなければならない自身の罪の重さに、自身の弱さに
「…嫌な予感がすんだよなぁ」
「あ!ハザマさーん!」
「おやおや…ベル君じゃないですか…ダンジョンの帰りでしょうか」
彼は知っている自身は殺されるべき悪なのだと…
彼は時を待っている英雄となる兎に悪である蛇を殺してもらう時を
彼は分かっている。兎の優しさを
だからこそ彼は…自身を許せないのだろう。
優しき兎を血に濡らしてしまうのだから…
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オラリオのある裏路地
「…ってぇ…んだぁ?ここは」
俺は痛む頭を抑えながら立ち上がる。俺は木箱に身体を預けて寝ていたみてぇだ。周りを確認するが普通の裏路地らしい。
「そうか…俺はアイツを追って来たんだったな。いやまぁ死のうとも思ってなかったが…まぁ結果的にそうなったって感じか」
腰にぶら下がる大剣を撫でこれからどうするかを考える。彼奴を探すのも良いが見つかるまでの手金がねぇ。それに此処での手っ取り早い稼ぎ方は冒険者だが、いきなり出て来たぽっと出を入れたがるファミリアなんてなぁ。
「あーめんどくせぇ。適当に歩いてりゃどうにかなるだろ」
「ちょっとやめてください!」
「あ?」
声がした方向を見ると銀髪エプロン姿の女が柄の悪い男数人に囲まれていた。ん?てか彼奴って豊穣の女主人の…あのエルフどうした…原作では一緒に買い物してただろうが…
「良いじゃねえかよ。俺たちにもお酌してくれよ」
「そういうのは、そういう店で金払ってやりやがれ」
見過ごすのも後味が悪いので男の1人の背中を蹴り飛ばす。相当身体が強化されているのか冒険者らしい男達でも軽々と蹴り飛ばせた。これはありがてえ
「んだ⁈テメェは」
「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーやかましいんだよ。発情期の猿かテメェらは」
「んだとぉ⁈ぶっ殺してやる!」
「やってみろ猿ども」
結果だけを言えば軽く叩きのめした。俺は気絶している男達の財布の中身を抜いていると後ろから女に話しかけられる。
「助けて頂きありがとうございます!」
「見過ごすってのも後味が悪いしな。それに金も手に入ったし別に気にしてねぇよ」
「せっかく助けていただいたのに何も出来ないなんて嫌です!せめて何かご馳走させてください!」
「…願ってもねぇ話だが良いのか?」
「はい!」
「ならよろしく頼むぜ。俺の名は血刄 羅愚那だ。羅愚那でいい」
「チバ=ラグナ?東洋の方ですか。私の名前はシル・フローヴァです!」
まさかこんな所で原作キャラとの繋がりができるとは思わなかったぜ。取り敢えずは拠点を探してから、彼奴を探すか…魔導者もらわねぇと…上手く能力が機能しないらしいからな。
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「…また…1人増えた」
彼女は呟く、無表情なその顔で
彼女は感じる。この世界に入ってきた異物を
彼女は思う。消す人間が1人増えたと
「此処にいたのか…」
「シャクティ……」
「ガネーシャ様が探していたぞ。……ラムダ」
「うん…分かった」
歯車は歪ながらも動き出す
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『スサノオユニット起動』
『スサノオユニット起動』
『マスター権限変更』
『マスター権限変更』
『秩序の力を感知』
『秩序の力を感知』
『新たなマスターを認識しました』
『新たなマスターを認識しました』
『早く目覚めてくださいね?ベル=クラネル』
『全ては悪を殺すため』
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「近くない未来、秩序は目覚める。君の願いが叶うよ…狭間君」
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