ダンまち世界に迷い込むのは間違っているだろうか (レイジー)
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プロローグ
第一話 卑屈な少年


 あ~ね、なんでこんなにサブタイって考えるの面倒なんだろ?
 でもサブタイ書かないと読者の気を惹けないし…ネーミングセンスぇ

 あ、ちなみに作者はクール系好きです。(聞いてないし誰も興味ない)
 だからリヴェリアやアミッド、レヴィスも好きですが、元気系や豪快系、残念系なんかも大好きです。キャラ的にはティオナに椿、ミィシャやアーニャにクロエね(だから聞いてねえって!)
 え?フリュネ?……カエル好きになる奴なんていないでしょ(そらそうよ)
 そもそも両生類に欲情する変態ではないし(変態以前の問題だろ常考)
 ま、それ以外の変態って点は否定しないけどさ(キャーオマワリサーン!コイツよ!早く捕まえてぇ!)
 イッケネ
 ではこれにて…ドロン!(ネタが古いよ!)
 



「あの~、こちらのファミリアに入団したいんですけど~」

 

 冒険者になろうとしている割には妙に腰の低い少年が門番の男に声を掛ける。

 

「そんななりで【ロキ・ファミリア】に入ろうなどとは片腹痛い。冒険者は諦めるんだな」

 

 オラリオ最大規模を誇るファミリアに入団しようとした少年はその土地に足を踏み入れることなく門前払いを受けてしまい、明らかに気を落とした。

 むろん、門番の男の言う通り少年はぱっと見でも冒険者になれる素質は持ち合わせていなさそうな風貌をしている。

 肩に掛かった男にしては長い灰色の髪、修羅場を経験していなさそうで人の好さそうな目付き、幼さの見て取れる童顔に鍛えているとは言い難い細い体つき。

 

「そ、そんなぁ…」

 

 それは自分自身分かっている事で、事実である以上受け入れる他ないため少年も反論できずに情けのない声を出した。

 

「冒険者になるのが夢だったんです、お願いします!」

「少なくともお前のような心身ともに軟弱そうな子どもがココでやって行けるほど甘くはない、他を当たれ」

 

 諦めずに懇願する少年を男は冷たい口調で突き放す。

 

「それ…他のファミリアさんにも言われました。彼是ロキ・ファミリアさんで記念すべき十回目です……」

 

 その事実に気落ちする少年は特に意味もなく呟いたが、門番の男はどう触れたらいいのか分からず「そ、そうか」と戸惑った表情を取った。

 自嘲的な笑いを振りまき帰ろうと脚に力を入れた。そんな時――

 

「どうした、入団希望者か?なぜ入れない?」

 

 最強の一角を担うLv.6の冒険者

九魔姫(ナイン・ヘル)】リヴェリア・リヨス・アールヴが現れた。

 

「え、あ、はい!お帰りなさいませリヴェリア様!…たった今入れようとしていたところです!」

 

 先ほどの態度とは打って変わって軟化した様子で男は門を開く。

 

「……では少年、行こうか」

「…うえッ!?は、はい!」

 

 深緑色の髪を持つ美人に見惚れていた少年は明らかに動揺するが何とか心を取り戻してリヴェリアの後について行く。

 二人が門をくぐると、男は一瞬少年に視線を向けたがすぐに前へと引き戻して他に来ている団員がいないことを確認するとすぐに門を閉めた。 

 

 

「すまないな」

「え?」

 

 話しかけられると思っておらず、気を抜いていた少年は思わず聞き返す。

 

「希望者は全員通すように言ってあるのだが…君は帰ってしまうところだっただろう?」

「い、いえ、僕の見た目が弱そうなのは事前に今日だけで九回ほど突き付けられたので自覚しています…」

 

 少年がそう呟き返すとリヴェリアはフフッ、と微笑した。

 

「すまない、入団する時からそんな事を言う奴は初めてだったのでな…特にうちには血気盛んな連中が多いから思わず笑ってしまった、あまり気を悪くしないでくれ」

 

 そんなリヴェリアの表情に心奪われる少年はしどろもどろに返事をする。

 

「い、いえ、事実ですので、そういう事は、ありません」

「そうか、ならいいのだが…ところで君はどうしてうちに入ろうと思ったんだ?」

 

 本当に申し訳なさそうにするリヴェリアは話題を切り替えるべく入団理由を問う。

 

「今も言いましたが僕は既に9回挑戦して全敗でした。なのでキリのいい記念すべき10回目はダメもとでロキ・ファミリアを志願させていただきました」

 

 深い意味がなくてすいません、とペコペコと謝る少年にリヴェリアはやり辛そうにため息を吐いた。

 

「す、すいません…僕みたいなのが一緒で……」

 

 とことん腰の低い少年はなにかがある度に反射的に謝ってしまう。

 その事にリヴェリアは再びため息を吐き、立ち止まる。

 

「?」

「礼儀はあることに越したことはないが、お前のそれは……少々鬱陶しい」

 

 そんな事、言われるとは思っていなかった少年は申し訳なさそうに俯きがちに下唇を噛み締めた。

 

「す、すい「んんッ」…ありがとうございます」

 

 再び反射的に謝罪しかけた少年だったが、リヴェリアの小さな咳払いで言わんとしていることを理解する。

 

「そうだ、欠点を指摘された時には謝るのではなく先に礼を言っておけ」

 

 リヴェリアの言葉に少年は再び礼を述べ、頭を下げた。

 それに満足したリヴェリアは再び歩き出し、少年はそれについて行く。

 

「粗野で乱暴になれとは言わんが、冒険者になるのならば異常なまでのその腰の低さはどうにかしないとな」

 

 軽く少年に視線を向けると、リヴェリアは少年の冒険者としてのあまりの適性の無さに少年の今後を憂いた。

 当の本人はそんなことは露知らず、指摘だと考え「分かりました、気を付けます」と返し、リヴェリアは深く肩を落とした。




 また会ったな!(ほんとコイツのテンションおかしい)
 いつもの事いつもの事(だめだコイツ早く何とかしないと)
 まあ、本音を言うと疲れたのよ、結構小説書くのって大変だし(のワリに受験生のくせしてココにいるけどな…)
 いや、うん…そうだけどそれ以外にもね?データが吹き飛んだのよ(は?)
 普通こう言うイベントってある程度連載してからだろ!なんで一話目投稿前にパソコンフリーズでデータ消えんだよ!(おっふ…)
 だから君とのコントは実質二回目!(コント言うなコント)
(…ただでさえ文章力ないってのに余計出来を酷くしちゃって……)
 い、いいもん、内容で勝負するもん!(肝心の内容がクソじゃねえか)
 ヤーメーテー、イジメないでぇぇぇ!(事実だからしゃーない)

 ……(´Д⊂グスン 結構連載するつもりだったのに…あ~あ~やる気なくした!(嘘乙!)

 嘘じゃないもん!トトrゲフンゲフン…連載するき満々だったもん!(はいはい)
(…ん?今連載する気満々って言ったけど、具体的には?)

 …?♪~( ̄ε ̄;)

(やっぱやる気ねえじゃねえか!)
 ソンナコトナイヨー(読者の皆さん…特に意味のない後書きのため帰って、どうぞ)
 ヲイ!そんなこと言ったら皆帰っちゃうだろ!(いや、そもそもこの程度じゃ大して読者は来ないだろ…文章クソ、内容クソだろ?)
 ブーブーブー!
(あ~あ、拗ねちゃった…。あ、ここまでお付き合いいただいた皆さん、続きは一時間後に投稿いたしますね)
 それでは…サラダバー!


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第二話 物語の開始

 既に第一話で開始してるけどサブタイはここで開始と言っている…(まあ、冒険って入団しないと始まらないしね?)
 てかやる気湧かなさすぎで辛い(それは…通常運行では?)
 そうとも言えるね(なら問題ないな)
 ん~クオリティはクソいしね(それもいつも通り)
 ま、はよ始めましょ(そうね)
 


「なんやリヴェリア、その子は入団希望者か?」

 

 案内された部屋に入るとそこには朱色の髪の女神が座っていた。

 

「ああ、さっき門のところで会ってな、門前払いされかけていたから私が連れてきた」

「ま、理由は何となく分かるから言わんでええで」

 

 ファミリアの主神、ロキは少年を見定めるように上から下まで視線を流す。

 思わず身じろぐ少年だが、下手をすると本当に10連敗になりかねないためそれをグッとこらえた。

 

「エライ弱そうなのが来たなぁ、まあ拒む理由もあらへんからええけどな」

 

 ケラケラと愉快そうに笑うロキは少年を手招きする。

 

「えっと…リヴェリア様、この人は?」

 

 状況が理解できずに唯一名前を知っているリヴェリアに助けを求めた。

 

「ひどいわ……ウチ、神やからそれっぽいオーラむっちゃ出してる思てたのに。気づかれんとは思わんかった……」

 

 気づいていなかったとは思っていなかったリヴェリアは驚いたように僅かに目を見開き、女神だと思わなかった少年は思わず頭を下げる。

 

「て、てっきり団長さんかと思って……」

 

 いきなりやらかしたとションボリする少年とは裏腹に誤解されたロキは喜色満面でウヒョーと叫んだ。

 

「え?オラリオの頂点の一角に位置するファミリアの団長に見えた?マジで?そんな威厳ある?」

「威厳、かは分かりませんが…リヴェリア様の名前はお聞きしたことがありましたのでその方が案内する相手は限られますし、僕の事を観察していらっしたので団長かと。間違えてすいません……」

 

 嬉しそうにニヤニヤとするロキにリヴェリアから早くしろと声がかかる。

 

「す、すまんな。…それで本題やけど――」

 

 その言葉で姿勢を正す少年にロキはソファーに座るように促してから話を始めた。

 

 

「――という事で、すでに知ってた所も含めてこれで説明は終いや」

 

 話された一般人でも知ることが出来るファミリアの規模や大雑把な上級冒険者の構成や、一度入ったら容易には退団できないことや入団から三か月後から始まる上納金や暮らすことになるホームの事。

 初めはファミリアからの支援があるがそれ以降は自分でしなければならないことを聞いて気を引き締める少年。

 

「まだ損になることは話してへんから、やめるなら今のうちやで?」

「いえ、僕を…貴女の眷属(こども)にしてください!」

 

 考え直すことを進めるロキだったが、少年は迷うことなく入団を志望した。

 固い決意に明らかに素質のないことを知りながら二人は新たな家族を迎え入れた。

 

 

「ほんなら、『神の恩恵(ファルナ)』刻むから服脱ぎ」

「あ、はい」

 

 さっきの部屋から移動してベッドに案内された少年は言われるまま上半身裸になる。

 

「うわぁ……」

 

 曝け出された少年の裸は、あまりにも弱そうなモノだった。

 運動どころか外出すらしていなさそうな白磁のような白い肌、ほとんど筋肉はなく無駄な脂肪がない代わりに浮き出た腹筋すらも頼りないモノで上に存在するはずの胸筋は全く存在せずにその横から覗く肋骨が少年のか弱さを増長する。

 

「よ、横になり」

「分かりました」

 

 可哀そうなモノを見る目になっていることに気付かないまま少年はベッドの上で俯せになった。

 

「よっしゃ、刻むで?」

「はい」

 

 ロキはそう呟くと指先を針で刺し、少年の背中に神血(イコル)を一滴だけ滴り落とす。

 すると皮膚に落下した血は文字通り波紋を広げて少年の背に染み込んでいく。

 瞬間少年の背は血の落下地点を中心に狭い範囲で鈍い光を放ち始めた。

 光を気にしないロキはそのまま背を指先でなぞり、順に刻印を施し道化を刻むとステイタスを創った。

 

「鍵も掛けたし、これで終わりや。もち、初めてやからステイタス用紙はなしや」

 

 後はリヴェリアに案内してもらい、と言いながらロキは少年の背から離れる。

 

「これからよろしくな、『ミスト・グリージョ』くん」

「ミストで良いですよ、神ロキ」

 

 指し伸ばされた手を服を着終えたミストは掴み、互いに初めての挨拶を交わした。

 




 お前、入団してから冒険始まるって言ったのに冒険してねえじゃん!(今回冒険するとは言ってね~よ?)
 …クソが(自己紹介?)
 そぉね~作者はクソですよ~(自覚症状ありでそれは酷い、どれくらい酷いかって言うと…太ってること自覚してて痩せたい言ってるくせにダイエットしない奴くらい酷い)
 多くのデブを敵に回すのはヤメイ!(…お前も中々にひどいこと言ってるけどな)
 そう?事実だからしゃーない(…そうですね~)
 …これ以上墓穴らないように終わりましょ(そうしましょ)
 それじゃあ、さいなら~(ならー)


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第三話 無垢な少年

 うん、昨日23:00くらいに…昨日ってのはこの投稿日の前ってことね?で投稿したの確認したらさ…UAが400以上でビックリしたなぁ(ホントそれな)
 作者としてはね?処女作だし「50くらい行けばいいかな~」的なノリだったの(原作のブランドは偉大だな~)
 したらさ、UAは想像の8倍で既に評価も入ってて、感想もお気に入りもしおりもあったのよ!?(魅力のないタグばっかりなのにな?)
 それはセンスの無さだからアキラメロン(ネタネタっ)
 んで話戻るけどさ、第一話投稿して四時間なわけよ、投稿予約してる今現在(はよ投稿しろよ)
 シャラップ!…なのに既にたくさんのUAがあってさ、UAって一日でIP一つにつき1だからさ、単純に考えると400人が読んでるわけ(こりゃおどれぇた!)
 何キャラ?…PVの確認方法は分かんないから何とも言えないけど、まあ…皆さんありがとう!(珍しく素直に感謝してやがる)
 ゑ?作者はかなり素直な子よ?(はいはい、嘘つくなよ)
 …まあ、そんなわけで本編をどうぞ(どんなわけですか?)



「終わったのか?」

 

 部屋を出てすぐの所にはリヴェリアが待っていた。

 案内したのが自分ということもありミストの案内は自分がやろうと考えていたのだ。

 

「ええ、それと僕の名前ですが『ミスト・グリージョ』と言います。気軽にミストと呼んでください、リヴェリア様」

 

 そう言われたリヴェリアは少し困ったような表情を取る。

 

「ミスト、その様付けはやめてくれ。同族の皆にも言われているのだが少し拒否感があってな…エルフには強く言えないからせめてお前は普通に呼んでくれ」

 

 リヴェリアの事を聞いたことがある、とは言っても名前と所属とレベル程度のものだったミストはいまいち理解できなかったが嫌だということは理解できたため呼び方を改める事にした。

 

「え〜っと…じゃあ、家族だから…リ、リヴェリアお姉ちゃん……」

「グッ」

 

 様付け拒否=敬称拒否と勘違いしたミスト。

 だからといって呼び捨ては恩人のため気が引けたため咄嗟に出てきたのが『お姉ちゃん』だった。

 無論それを言われた経験はリヴェリアには無かったため、未知の感覚にリヴェリアは咽てしまい、それを聞いたロキは扉の向こうで笑いを殺しながら腹を抑えて転がる。

 

「な、なぜそうなったのだ……」

「呼び捨ては恩人相手に失礼ですし…ハッ!『リヴェリアお姉さま』ですか!?『リヴェリアねぇ』!?それとも『姉上』!!?ど、どれが良いですか?!」

『グハアッ!』

 

 未知が一度に襲いかかってきたことでリヴェリアは処理落ちして口から空気を一気に吐き出すとともに思考を停止させた。

 

「ま、待ちぃミスト。それ以上はヤバい、とりあえず落ち着こ。な?」

 

 耐えかねて現れたロキに抑えられてミストは一時的に口を噤む。

 

「ハッ!?少し意識が飛んでいた…」

「そ、それって大丈夫なんですか!リヴェリアお姉「待てぃ!」フムグググ」

「うっ、大丈夫だ」

 

 再び暴走しかけたミストの口をすんでのところでロキが抑えると、リヴェリアは一瞬だけ頭を抑えたがすぐに大丈夫だと手で制止する。

 

「…心配やからやっぱウチもついて行くわ」

 

 これ以上リヴェリアにダメージを与えないようにと心配するロキは思い出したようにミストの口から手を離した。

 

「ロキ様、結局なんと呼べば良いんでしょうか……」

「……好きに呼べばいいと思うけど、今は抑えとき」

「分かりました」

 

 冷静さを取り戻さんと頭を振るリヴェリアを横にミストはロキに小声で相談し、対応に困ったロキは諦めた様子で今は待てとミストを抑える。

 

「リヴェリアたん、ミストは思った以上の強敵(てんねん)や。…ところでどうしてそこまで取り乱したんや?」

 

 リヴェリアを落ち着かせようと今度はロキが小声で話しかける。

 

「ロキ…普段私は年増扱いされるなど若い女として扱われたことが無い」

「そやな、ベートなんかがその代表やな」

「だからと言って良いのかは分からないが……年増や母親呼びが多くなった最近ではミストの、その…『お姉ちゃん』という言葉がヒドく刺さってしまった」

 

 顔を赤くするワケではなく、本当に心のそこから理由が分からないと困惑した表情のリヴェリアにロキはため息を吐いた。

 

「とりあえず、受け入れとこ…ミストは見た目以上に精神が幼い思う。やからこれに関してはど〜しようもないわ」

「ひ、他人事だと思って!」

 

 ほんの少しの怒り混じりに放たれたリヴェリアの言葉に、ロキは他人事やも〜んと笑ってミストの横に移動する。

 

 

「……ここが今日からお前の部屋になる。新しい部屋だから同居者はいないが入団したり他の部屋から来る可能性もあるから私物化はするなよ」

 

「ここは書庫。大抵のことなら調べることが出来る、そのうちお前にもダンジョンの知識を詰め込んでやろう」

 

「ここは中庭。そこそこ広いから朝の軽い運動に使っている奴もいる」

 

「ここは食堂。今日はお前の入団を祝ってやろう」

 

「ここは――」

 

 

 ホームの中を歩き回り僅かに体力を消耗して疲労が溜まった頃。

 途中で小柄なドワーフの男――ガレスと遭遇した。

 

「なんじゃリヴェリア、その若僧は」

「さっき新たに入団したミストだ、少々変わったやつだが悪いやつではない」

「ほう…」

 

 そう呟くとガレスはマジマジとミストの事を見つめ始める。

 

「こやつはなんとも弱っちい身体をしとるのう、動きも素人じゃないか…先行きが不安じゃのう」

 

 ガハハと豪快に笑うガレスはそのまま立ち去って行った。

 

「すまないなミスト、あいつは――ガレスはああいう性格なだけだ」

 

 リヴェリアの紹介でようやくさっきのドワーフがリヴェリアと同じLv.6の冒険者

重傑(エルガルム)】ガレス・ランドロックだと気付く。

 

「あの人が…」

 

 呆気にとられるミストは内心で「結構な歳っぽかったけどリヴェリアお姉ちゃんもそうなのかな」と思い、チラリとリヴェリアを見る。

 

「ミスト…失礼な事を考えていないか?」

 

 ミストが見たのはほんの一瞬だけ。

 にも関わらず、数多くの修羅場をくぐり抜けてきたリヴェリアはその視線を捉えてミストに問い詰める。

 

「え?あ、はい。ガレスさんは歳を重ねているみたいだったけどリヴェリアお姉ちゃんもそうなのかな〜って」

 

 そのままド直球に投げ返してくるとは思っていなかった二人はあまりのことに呆気にとられ、ついでに言えばリヴェリアは『お姉ちゃん呼び』のせいでより放心していた。

 

「ミスト…怖いもん知らずやな……」

「?」

 

 どういう事?と首を傾げるミストにリヴェリアが問いかける。

 

「お前はそれを知ってどうするんだ?」

「いえ…ただ単純に気になっただけですし答えは特に求めてないですよ?」

 

 想定解と違うことへの驚愕で二人は思わず頭を抑え、再び小声で話し合う。

 

「これは…重症やな」

「あまりにも知らなさ過ぎると言うか…男と女の違いを意識していない可能性がある。もちろん本能では少しは分かっているかもしれないが恐らく知識が皆無だな」

 




 ……話が進まんなぁ(逸るなDTボーイ)
 どっどど、童貞ちゃうわ!?(せっかちなのはDTとホモって聞いたことがあってだな…)
 ホモでもねえわ!童貞=せっかちって言ったやつは出てこいや!(お前先月で18のくせにネタが古いんだよ、だから同世代の奴と話が合わないんだよ……)
 自覚してらぁ!いいもん、ネットがあるし、二次元あるから(典型的な引きこもりの特徴…乙!)
 黙れ小僧!(このネタは問題なし…)
 検品作業してんじゃねえよ(バイトしようとした結果コンビニバイトの面接5件全部落ちた陰キャが知ったかしてんじゃねえよ)
 黒歴史にキャロライナリーパーぶち込むのヤメテ!(キャロライナの死神て、分かる人にしか分からんから…世界一に認定されたのって2013だからクソ辛い唐辛子の名前を知ってる人って居ねえよ)
 長文、乙!(人の台詞を取るな)
 だから感想で「よくわからない」って書かれんだよ(一部抜粋するな!その続きにちゃんと「先が気になる」って言ってたろ!)
 …感想、アリガトンクス(トンクス)
 では、バイバイ・ω・)ノシ (現実じゃ顔文字みたいなかわいい顔してねえくせに…)


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第四話 才なき者の努力

 ……(いつになったら進むんですか?)
 ま、まあ、まだ序盤ですし!ジョバンニジョバンニ(お前迷走してるだろ?)
 な、なんのことでせう?(そもそも作品を他の人のと比較するのは間違ってるけどさ…他の作品だと一話当たりの文字数数倍だぞ?)
 比較すんなし、序盤で飛ばしたら読者が置いてけぼりかな~?って(…その心は?)
 序盤で飛ばしたら設定構築不足で作者も置いてけぼり☆\(゜ロ\)ココハドコ?(だろうな…現状ロクに設定練ってねえもんな)
 ちょっ!?言わなかったらバレねえって!(いや~読者はすぐ気づくと思うぞ?)
 あ~いそがし( ̄□ ̄||)))(すっとぼけやがった…)

 …あ、今やってる部分をプロローグ的なものと認識してプロローグ全7話は一日二本ペースで決まった時間に投稿いたします(時間を分ける理由は特にありません、気まぐれです)
 最後はどうしよ?七話目を投稿して…書き溜めてあったら一時間後に第一章的な立ち位置の第一話を投稿します(ようやく『さっき8/2朝現在』に超短文の七話目を書き終えたもんな)
 …うん、なに書けばいいかわかんねー(さっきも言ったけどロクに設定練ってないもんな)
 そう!イグザクトリー!だからどのくらい続けようかすら決まってないもん(行き当たりばったり人生め)
 なんとでも言うがよい(あ、前書きが長くなってきてるからそろそろ終わりましょ)
 そうしましょ


「はじめまして、僕がこのファミリアの団長、フィン・ディムナだ」

 

 よろしく、と差し伸べられた手を握るとロキがちょい待ち、と言ってフィンを引っ張って耳打ちする。

 

「あの子、ミスト言うねんけど……ドが付く天然やねん」

「どういう事だい?それならうちにもアイズがいるじゃないか」

「そうやねんけど……ミストな、リヴェリアに『リヴェリアお姉ちゃん』言いよってん!」

 

 ロキから打ち明けられた事実にフィンは思わず息を呑み、共に来たリヴェリアの顔を凝視した。

 それに気付き、二人が何を話していたのかを理解したリヴェリアはばつが悪そうに顔を背け、ミストはその様子を理解できないまま三人を何度も見まわす。

 

「…ゴホン、歓迎するよミストくん。僕のことはフィンと呼んでくれ」

「…分かりました。これからよろしくお願いします、フィン」

 

 まさか本当にそのままフィンと呼ばれるとは思っておらず、呼ぶとも思っていなかった三人は残念で可哀そうなものを見るようにミストを見る。

 

「ロキ、これは恐らく…呼ばれる前に先にこちらで呼び方を指定しないとリヴェリアのようになり、呼び方もそのまま固定される可能性がある」

「ウチは普通に呼ばれたで?」

「それは名称が決まる前に神と認識したからだろう」

 

 二人はチラリとミストを見る。

 

「?お二人はどうしたんですか?」

「…気にするなミスト。二人は大事な話をしているだけだ」

 

 ランクアップを繰り返し、聴力も強化されているリヴェリアには二人の会話が聞こえていた。

 

「分かりました、リヴェリアお姉ちゃん」

 

 納得したようにそう引き下がると、三人が同時に奇妙な呻き声を上げる。

 ほんの一瞬の事のためミストは気づかないが、三人は確かに呻き声を――二人は耐え切れずに噴き出したような声を発した。

 

「まあ、どう呼ばれたいかは本人の自由だからあまり僕たちが口を出すことでは無いよね」

 

 僕には無理だと首を振るフィン。

 

「とりあえず私含め、主神と主力三名への挨拶は済んだな」

「そうですね。…これからどうすればいいですか?」

「訓練をするも良し、知識を蓄えるも良し、お前のしたいようにすればいい」

 

 多くのファミリアを回って疲れているだろうと考えるリヴェリアは無理に連れまわすこともないとミストに判断を委ねる。

 委ねられたミストは少し考えたあと、窓の外に視線を少し向けてからリヴェリアに頭を下げた。

 

「僕にダンジョンの事を教えてください!」

「構わないが、休まなくていいのか?」

「はい、大丈夫です」

 

 一刻も早く冒険者になりたいミストはダンジョンに潜る許可をすぐにでも貰うべくその知識を欲し、リヴェリアは珍しく自分から頼み込んでくるその意欲に感心しつつ他の者たちと同じようにすぐ音を上げると踏む。

 

 

 書庫へと戻ってきたミストは言われるまま席に座る。

 期待するようにソワソワするミストの後ろでリヴェリアは本棚から数冊の本を引き出し、教材として適していそうな本を見繕うとミストの隣に腰を下ろした。

 

「うっ」

「?……どうした?」 

 

 リヴェリアが隣に立った瞬間ミストの体が硬直した。

 それを不審に思ったリヴェリアが横顔をジッと見つめる。

 

「い、いえ…リヴェリアお姉ちゃんの匂いが初めて嗅ぐ類のモノだったので。思わず固まってしまいました」

 

 感想をそのまま口に出すミストは申し訳なさそうにアハハと苦笑した。

 

「む?そんな変な匂いがするのか、私は」

 

 少しショックそうにするリヴェリアは自分の手の甲を鼻に近づけて自身の匂いの確認をする。

 だが感じるのは慣れ親しんでいるゆえの無臭。

 首を傾げるリヴェリアにミストはすぐさま訂正を入れる。

 

「変な意味ではなく…花のようないい香りを漂わせる人に会ったことがなかったので驚いただけです」

「そうなのか?女ならば皆なにかしらの匂いを漂わせていると思うのだが……」

 

 よほどの田舎からやってきたのだろうな、と微笑むリヴェリアの言葉をミストは否定する。

 

「物心ついたころから一人で女の人と接した記憶がなかったので、常識がズレてるんでしょうね」

「一人とは…それでも母親と接したことはあるだろう?」

「?いえ、普通に親の顔は知りませんし育ての親もいません。気が付いたら少しのお金を持って草原で倒れていましたし」

 

 マズいことを聞いたと後悔するリヴェリア。

 だがミストはなんてことないように続ける。

 

「元々認識していないので何も思いませんけど、ここで初めて家族が出来たのでそれで満足です」

「ミスト……」

 

 ミストの優しさに救われたとホッとするリヴェリアは優しくミストの頭をなでた。

 わずかに肩を跳ね上げたミストだったが優しく触れるその手の温もりを受け入れて目を細める。

 

「これから私のことは姉だと思うがいい。呼び方も口調も好きにしろ」

「…リヴェリアお姉ちゃん。ありがとう」

 

 少しの間の触れ合いを終えた二人は互いに少し恥ずかしそうにしながら勉強に取り掛かる。

 勉強と言ってもまずは基礎から復習だ。

 一般人でも知っているような知識から確認し直す、常識的なズレが他人に迷惑をかける可能性は大いにあるし基礎工事の不完全な建築物はすぐに壊れてしまうからだ。

 

「モンスターは生物と似た弱点を有するがモンスターである以上共通する『魔石』という弱点がある。どんなモンスターでもここを壊されたら絶対に死に、全身を灰へと変貌させる」

「その時はたまにドロップアイテムを落とすんだっけ?」

「ああ、落とす部位はモンスターによって異なるが落とす部位はそれぞれの特徴で決まる」

 

 はじめに共通するモンスターの知識、それに次いで上層に現れるモンスターの知識。

 ダンジョンに潜るときに注意することや潜るときの必需品。

 冒険者としての心構えや仲間と潜るときのソロとの勝手の違いなどを短時間で叩き込まれる。

 

「これがああで、あれがこうで――」

 

 教えられたことをほんの僅かな空き時間でも反復する。

 休憩時間や本の交換時間、果ては頁を捲る一瞬にまでブツブツと呟いて忘れないようにと脳に定着させる。

 

「まだ1日目なんだ、そんなに一度に覚えなくてもいいんだぞ」

「い、いや…僕は弱いから知識だけでもすぐに覚えないと。……それに歳を重ねて冒険から離れていても言えるくらいじゃないと『覚えた』ことにはならないからね」

 

 まだ覚えてないよ、と苦笑するミストにリヴェリアは静かに微笑みながらそっと本を閉じる。

 

「いきなり詰め込んでも記憶が混ざって意味がなくなるからな、今日はここまでだ」

「少し残念だけど、分かったよ」

 

 リヴェリアの言うことを大人しく聞き入れてノートを閉じるミスト。

 

「もう夕方だ、そろそろみんな食堂に集まるだろうから一緒に行こうか」

「うん、歓迎会だっけ?楽しみだな〜」

 

 扉を閉めてリヴェリアの後ろについていくミストは幼い笑顔で足取りを踊らせた。




 進まねえ!(てかお前お姉ショタ好きなん?)
 いや?クーデレ萌えですが?(じゃあ何でリヴェリアの事をお姉ちゃん設定で通した?)
 それは…クールな人の紅潮した顔を想像して楽しくなったから(ふ~ん)
 普段言われ慣れていない言葉を言ったら相手は恥ずかしくなるって二次元限定だよな(そもそもお前家族以外の異性と会話したことないじゃん)
 おん、トラウマと感覚の相違があって基本逃げてる(逃げ陰キャか)
 いいんだよ、現実の女なんてどれも一緒に見えるから(みっちゃん?)
 おいバカ、そこの部分アニメ化されてないから知ってる人が限られるだろうが!(そもそもオタ友に『ケンイチ』知ってるやつ一人もいないな)
 高校生レベルの奴ってオタク言えねえだろ…ほとんどが(まあ、極めてねえしな)
 …話逸れまくってるからお開きね(そうね)


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第五話 団員

 もうすでに進まないことは触れたからノータッチね(YESロリータね)
 ロリコンちゃう…違わねえな(二次元オンリーだけどな)
 しゃーない、現実の女って子どもでもませてるから子どもの魅力であるあどけなさがロストしてんもん(あ~お前性根が歪んでるくせに性格の悪い奴男女問わず嫌いだもんな)
 お~ん、トラウマがあるからね(その点トッポって良いよな、最後までチョコたっぷりだもん)
 どったの?急に?(言いたくなっただけ、発作みたいなもん)
 その点作者がロリコンになったキッカケの『グタタン』って良いよな!(天使だったな)
 出来ればあんな無邪気な子どもがそのまま成長できる現実となってほしい(…)
 てことで本編(だからどんなわけ?)


「彼が今日から入団した『ミスト・グリージョ』くんだ、仲良くしてやってくれ」

「えっと、ミストです。これからよろしくお願いします」

 

 リヴェリアに小声で立つように促されてオドオドしながら挨拶をする。

 その弱そうな態度に大丈夫か、と心配する声が上がるなかで狼人(ウェアウルフ)の青年が叫んだ。

 

「おいおいそんな弱っちいガキが冒険者としてやっていけるわけ無ぇだろうが。雑魚が来るところじゃねぇんだからさっさと追い出しちまえよ」

 

 心底つまらなさそうな態度でミストを追い返そうとする青年――ベート。

 

「ミ、ミスト、ベートは口の悪い奴やから気に「ありがとうございます!」…はい?」

「あん?」

 

 宥めようとしていたロキはもちろん、言った本人のベートは理解できないといった表情でミストを睨み、他の団員たちもえ?という顔で全員の視線がミストに集まる。

 

「確かに気が緩んでいたかもしれません。基礎がなっていないのにも関わらずダンジョンの知識を覚えたらすぐにでもダンジョンに入ろうなんて考えていました……」

「お、おう」

 

 普段の周囲の反応とは全く異なる態度に思わず毒気を抜かれるベート。

 想定していなかった新しいパターンに呆気にとられる他の団員たちを無視してミストが続ける。

 

「しばらくの間ご迷惑をお掛けするかもしれませんがその間に体づくりをしようと思います。リヴェリアお姉ちゃんも想定してた長さから延びるかもしれないけどもっと僕に勉強を教えてね?……ありがとうございます、ベートお兄ちゃん!」

 

 これっぽちも言い淀むことなくごく自然に放たれた不自然にリヴェリアとフィンとロキを除いたほとんどの団員が無言になったあとで絶叫した。

 

 

「な、なななッ!」

 

「あの子…」

 

「どういう事?どういう事~?」

 

 

 エルフの団員たちが主にリヴェリアの事で絶句し、他の団員たちは全体的なことに絶句する。

 

「待てゴラァ!どういう事だその呼び方は!?」

 

 少なくともロキ・ファミリアに入ってから兄と見られた経験のないベートは突然のことに怒りを露にする。

 

「え?同じ家族(ファミリア)だからロキが親という事で関係的には兄弟かと……嫌でしたか?」

「そうじゃねえが…兄呼ばわりされるほど立派な奴じゃねえだろ。それに今さっき俺はお前に帰れって言ったんだぞ?敵視される方が自然だろうが」

 

 それには他の者も同意なのか多くの団員が一様に首を縦に振る。

 そんな中ミストだけは、はて?と首を傾けた。

 

「ベートお兄ちゃんは間違った事は言ってませんよね?『弱いから強くなれ』つまりはそういう事でしょう?」

「そうだ」

 

 認識違いをしていないか確認を取ったミストは、なら自然なことです、と頭を下げて椅子に腰を下ろす。

 

「ま、まあ、落ち着いたことだし。ミスト君の入団を祝して……乾杯!」

「「「「か、乾杯」」」」

 

 明らかに調子の乗っていないといったテンションでポツポツとだけ乾杯の声が聞こえてきた。

 ミストは正しいノリと言うモノを知らないためにそう言うモノだと認識して隣にいるリヴェリアや近くにいる面識のある三人と乾杯をする。

 

「まだ名乗っておらんかったな。既に言われて知ってるかもしれんが儂は『ガレス・ランドロック』じゃ、よろしくな」

「はい、よろしくお願いします」

 

 こうして上位幹部三人との挨拶を終えたミストはリヴェリアの見よう見まねで静かに食事を進める。

 チラチラと確認しながら食べているためリヴェリアに比べると拙く遅い食事、それを見た四人は微笑ましそうに小さく笑った。

 そうしているとミストの下を二人の褐色少女が訪れる。

 

「ねえねえ、ミスト君だっけ?あたしは『ティオナ・ヒリュテ』!好きに呼んでね!あと敬語もいらないよ!」

「私は『ティオネ・ヒリュテ』。この馬鹿妹の付き添いだから気にしなくていいわよ…私も敬語はいらない」

 

 元気にミストに絡みに行く妹を尻目に、姉は団長~!とフィンに近づいて行く。

 

「う、うん。よろしく、ティオナお姉ちゃんティオネお姉ちゃん!」

 

 満面の笑みでそう言うと、ティオナは嬉しそうにもう一回!もう一回!とせがんだ。

 少し戸惑いながらもティオナの言うままに繰り返す。

 

「いや~、お姉ちゃんはいてもお姉ちゃんと呼ばれたことがなかったから嬉しくってさー」

「僕はこれからティオナお姉ちゃんの弟だよっ」

 

 ニヘぇと少し恥ずかしそうに言うミストに、歓喜したティオナが入団したての子どもには厳しい力で抱きつく。

 横から思い切り圧迫されたミストは苦しそうに白い顔を赤く染めると、慌てたリヴェリアの手で引き剥がされて命を取り留めた。

 

「ダ、ダンジョンに潜る前に死ぬかと思った……」

 

 僅かに咳込む姿に慌てたティオナが申し訳なさそうにごめんね、と謝りながらミストの背中を優しい力加減でさする。

 その甲斐あってすぐに回復したミストは咳込んで少し乾燥した喉を水で喉を潤すと食事を再開した。

 

「…そうだ!お詫びにあたしが特訓に付き合ってあげるよ!いいでしょ?リヴェリア」

 

 妙案だと誇らしげに無い胸を張るティオナ。

 それは願ってもないことだとミストも確認のためにリヴェリアを見つめる。

 

「ならばティオナにも予定があるだろうから朝食までの時間だな」

「分かった!なら明日から特訓だ~、場所は中庭だけど朝見に行っていなかったら起こしに行くね~」

 

 そんなことを話しながら食事を終えると、同じように食事を終えていた団員たちがミストに話しかけるタイミングを窺っていることに気づく。

 

「えっと…なにか用ですか?」

「よ、用と言うほどの事じゃないっスけど、挨拶に来たっス」

 

 向こうから話しかけてくるとは思っていなかったラウルは少し驚きながら要件を述べた。

 

「自分は『ラウル・ノールド』っス。ラウルで良いっスよ」

「私は『アナキティ・オータム』。皆からはアキって呼ばれてるわ」

 

 にこやかに自己紹介をする特徴のないラウルに続き、ラウルと共に来たアナキティが優しい笑みを浮かべる。

 

「よろしくお願いします。ラウル、アキお姉ちゃん」

「ちょッ!?なんで自分だけ呼び捨て!?」

 

 他の者と違って呼び捨てにされている事に驚愕を隠せないラウル。

 

「今、ラウルって呼べって……」

「え?あ…」

「安心しろ、ラウル。同じ失敗をして僕も呼び捨てだ、彼は呼び名が指定されたらそのまま呼んでしまうんだよ」

 

 フィンのその言葉に何も言えなくなったラウルに、アナキティはただひたすら苦笑する。

 やはり状況を理解できていないミストは他に話しかけようとしている者がいないことを確認すると自分の部屋に向かい、明日以降への固めて早朝訓練のために早めに就寝した。

 

 

 




 引き続き、ロリ談義!(まだ引っ張んの?)
 作者は見た目相応の無邪気な幼女が好きですが、その特性上年齢を重ねて精神的な落ち着きを持ったロリババアと言われる類のも好きです(…精神幼女の見た目ババアは?)
 それただの認知症ババアって誰かが言ってた(さいで)
 個人の見解としてはロリババアに豊かな感情は不要という事だな(オメェ無表情系大好きだもんな)
 むしろあの蔑んだ目で…グッヘッヘ(ドM)
 失礼ね、基本的には純愛派よ?相手によって変わるだけで(相手が某残念ドM女騎士なら?)
 Sになる!…と言いたいところだがイジメは嫌いだから無理ね、痛いのもヤダからMも言葉攻めまでだし(この変態野郎!)
 罵られて嬉しいのは好きな人からの罵倒だけです…(…)
 終いだ終い!(そ、そうね!)


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第六話 特訓

 内容が~思い~浮かば~ない(……そういえば君ってベート好きなん?)
 急にどした?まあ大好きですが?(いや、前回ベートが悪役になってなかったから)
 アニメ見た時に第一話で良い奴だと確信したから(そういえば君って一方通行さん好きだもんね)
 うむ、それ以外にも前回の主人公同様、間違ってるとは思ってなかったから(あ~君って人間が怒るときはそれが事実であるときだ、って考えよね)
 そらそうよ、見当違いなこと言われても怒んないだろ?(のワリに君って事実言っても怒んないじゃん?)
 だって、事実言われてんのに怒んのっておかしいだろ(そこで起こるのが普通なのよ)
 さいで…(さいで)


 ティオナが訪れるよりも早く目を覚ましたミストは眠気覚ましに貯めた水に顔を突っ込んだ。

 

「つべばい(冷たい)…」

 

 気温の低い早朝の水はミストに残っていた眠気を一気にすべて吹き飛ばす。

 タオルを持っていないミストは水から顔を引き上げると犬のように首を振って水を撒き散らした。

 

「…先に軽く運動でもしておくかな」

 

 中庭にティオナの姿が無いことを確認すると動きやすいように服脱いでインナー姿になり、壁を伝って中庭内を走り回る。

 膝に負担がかからないように少し遅めに十分ほど走っていると、欠伸交じりにティオナが歩いてきた。

 

「ごめーん、寝ぼけてて二度寝にかけちゃった」

 

 えへへ、と笑うティオナが手に持った二本の短剣のうち一本を差し出した。

 それを鞘から抜き出してみると、短剣には刃が付いておらず訓練用の物だと分かる。

 

「大剣とか扱うには『力』が足りないだろうからとりあえず今は短剣で我慢してね?」

「分かった…特に武器に希望はないんだけど大剣とかはロマンだなぁ」

 

 力がないと言われて少し落ち込みながらそう呟くとティオナがだよね~、と嬉しそうに顔を向ける。

 大剣って敵をぶった切れて気持ち良いんだよね~、と楽しそうにするティオナはミストから距離を取って短剣を構え、ミストはそれに釣られるように短剣を構えた。

 

「あたし教えるのは苦手だけど戦うのは得意だからさ、あたしの動きを覚えながら自分に合った動きを身に着けてね?」

 

 はい、そう言おうとした瞬間、ティオナの体がブレてミストの目の前にその姿が現れ短剣がミストの首に近づいていく。

 

「おっと、力加減が難しいな~」

 

 首筋に迫った短剣はすんでの所で静止した。

 

(み、見えなかった)

 

 恐るべきその速度に圧倒されたミストだったが、見えていないゆえの無謀の勇気で短剣を振るう。

 さっきの速度を目の当たりにし、安心して短剣を振るえると確信したミストは全力で振り、ほとんど手応えのないままティオナの短剣に受け流された。

 

「力だけで振っちゃダメ、ちゃんと相手の動きを見た上で全身を使いながら相手の嫌がる角度で振って」

「い、嫌がる角度?」

「そう、相手の対応出来ない所から攻撃するの」

 

 言っていることを理解したミストはティオナの体勢から判断して嫌がる角度から攻撃を仕掛ける。

 

「まだ力だけで振ってるよ、そんな攻撃ばっかりしてると絶対に体を壊すから…腕から力を抜いて、動きやすい動きで短剣を振ってみて」

 

 指示通り腕から握る僅かな力以外をすべて抜いて腕を振るう。

 すると今度は短剣を跳ね上げられ、首に短剣を突き付けられた。

 

「動きは良いけど角度も気を付けて」

 

 そうして何度もダメ出しをされながら短剣を振るい続ける。

 時に力を抜きすぎて短剣を振った瞬間に手から抜けたが、握る手の形から予測できていたらしくティオナから離れた軌道で飛んで行った短剣を腕を伸ばし指に挟んで受け止めていた。

 

「こういう対人戦に限らずモンスター相手でも体の動きから次の動きが予測できるから覚えといてねー」

「う、うんッ」

 

 技術だけでなくモンスターとの戦闘に関する知識も教えられながら訓練していたが、動いていない子どもが突然多く運動したせいで戦闘中に足腰が立たなくなりティオナに足を払われて芝生と衝突してしまう。

 

「結構疲れたでしょ~、少し休憩してそのあとは筋トレでもしようかなー」

 

 疲労の蓄積がバレていたようでふぅ、と息を吐くと仰向けに転がったミストの隣に腰を下ろした。

 

「ミスト君頑張るね~」

「い、いや…まだティオナお姉ちゃんやベートお兄ちゃんみたいに強くなれないよ…これじゃあまた雑魚って言われちゃうなぁ」

 

 悔しそうに苦笑するミストの頭をティオナが無言で撫でまわす。

 

「よ~し、お姉ちゃん張り切っちゃうよー」

「も、もう!?」

 

 満面の笑みで立ち上がったティオナに引き上げられてフラフラしながらミストも立ち上がった。

 それには気づいていたティオナだったが、強くなりたいんだったら我慢我慢、と強引にミストに動かせる。

 

 

「ううっ……」

 

 ティオナの無茶ぶりに歯を食いしばって必死について行くミストは何十回も短剣を振るい疲労の蓄積した両腕に鞭を打ち、力が入らず何度も腕がカクリと折れながらも百回の腕立てを達成した。

 そんなミストにティオナはこれでもかと今度はスクワットをまたしても百回させる。

 連続のスクワットに下半身がほとんど動かなくなりながら時間をかけて地獄のようなスクワットを終える。

 

「お~予想よりも少しだけ早く終わったね~えらいえらい」

「脚が…腕が……」

 

 全身プルプル震わせ地に伏すミストの背にティオナがゆっくりと腰を下ろした。

 

「な、にを……?」

「マッサージ~」

 

 腰を下ろしたティオナは優しくミストの全身を揉みほぐしてゆく。

 

「動いた後はちゃんと体をほぐさないとね~」

「そ、そうなんだ……」

 

 マッサージを受け終えたミストは朝食の時間になったことを知り、二人で食堂へ向かった。

 

 

「おはよう、リヴェリアお姉ちゃん」

「ああ、おはようっ!?」

 

 隣に腰を下ろしたミストから僅かに離れるリヴェリア。

 

「ミスト、お前風呂に入っていないだろう?」

「え、うん……着替えもってないから」

「朝食を済ませたら勉強の前に風呂に入ってこいッ、着替えはこちらで用意しておくから……」

 

 あからさまな引かれように衝撃を受けたミストはションボリと項垂れて食事法の真似を忘れてすぐに食事を終わらせて風呂場へと向かい前日の汚れと朝の汗を洗い流した。

 

「ああ…疲れがマシになった」

 

 マッサージと血行の促進で疲れの取れたミストは脱衣所に置かれた着替えに着替えて風呂場を後にする。 




 次で終わりでんな?(そうでがんす)
 ふんが~?っておいといて、続きは未定!(あくしろよ)
 いや、流石に一日二本ペースはブラックだからね?(毎秒投稿しろよ)
 無理だって!?(頑張れ頑張れ!君なら出来る!どうしてそこで諦めるんだ!)
 太陽神ヤメイ、ただでさえ引きこもってるのにエアコンないから暑いってのに(Never Give Up)
 うるさいよ(フヒヒ、サーセン)
 まあ、今後は一日一本か二日に一本か三日に一本か…(結局やる気ないな)
 一日寝たからと言ってやる気は回復せん、てかまたデータ吹き飛んだし(またぁ?!)
 これってどれだけ書いても新規作成の時は一度保存しないとオートセーブされないらしくてさ、休憩がてら他の小説読んで帰ってきたらページの更新されちゃって…(おのれ更新)
 二千くらい書いてたのが一気に消えた~、あまりの出来事に内容全部忘れたw(ちくせう)
 だからね、極力頑張るけど…期待しないで(某キノコの2Dゲーの運営か?)
 利用規約で頑張らないことを暗に伝えた某ゲームね(サービス初期から今なおちょくちょくやってるよな)
 おん(暇人め)


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第七話 才なき者

 この文字数制限のために無理やり内容を増やした感よ(君ホントまとめるの下手よね?)
 うるさいなぁ、良いじゃないか(いや、小説書く者として良くはないだろ)
 そうですね!


「…来たか」

 

 タオルで拭き取れず僅かに濡れた頭で書庫へと踏み入ると、リヴェリアはあからさまに溜め息を漏らす。

 

「本に水気は厳禁だ」

 

 そういうとリヴェリアはミストを押し出すように書庫から出て別の部屋へと入り、そこでミストを椅子に座らせるとその後ろへと回った。

 

「な、なにを?」

「散髪だ。お前も冒険者になろうというのなら問題となる可能性は少しでも減らすべきだ、その体つきと中性的な顔付きにヒューマンという事と長い髪のままだと女と間違われる可能性がある。冒険者は冒険するのであって問題を生み出すものではない」

 

 ミストの首から下げられたタオルを取ると残った水気を除去するとともに一定方向に髪の向きを正すリヴェリア。

 全体的にその作業を終えると、今度は懐から護身用のナイフを取り出してミストの髪に当てる。

 

「そうしなければお前はすぐに死んでしまうだろうからな……」

 

 慣れた手つきのリヴェリアは初めは大雑把に切り、次いで少しずつ毛先を丁寧に整えてゆく。

 その作業はすぐに終わり、ミストの散髪はものの数分で終了した。

 ミストが終わったのかと伺おうとした瞬間、頭にタオルの濡れていない部分が当たり少し乱雑にかき回される。

 

「お前は自分の髪など気にしないのだろう……ならそうした方がすぐに乾いて良いだろう」

 

 小さく呟きながら切った髪の処理を終えるとナイフに付着した水気を布で拭き取り鞘に戻した。

 

「はあ…」

 

 自分の髪など全く気にしない少女(アイズ)を思い浮かべ息を吐くリヴェリアの後ろについて書庫に戻ったミストは膨大な量の冒険に関する知識を詰め込まれる。

 

 

「第一階層の構造は――」

 

「そこに出現するモンスターとその基本行動は――」

 

「この状況に陥った時の対処法――」

 

 

 そんな歳ではないにもかかわらず思わず知恵熱が出そうになるほど長時間休むことなく教えられたことを愚直に何度も何度も脳内で復唱する。

 身体的に恵まれておらず、生き延びる術を何一つに見つけていないことを自覚しているがゆえに生き延びるために、兄たちに雑魚と罵られないように必死について行くために。

 その日は分かっていても次の日には分からなくなっているような情けない自分に負けないように冒険者になるという思いだけで決して折れることなく、努力が穴から漏れ抜けるなかでほんの数滴分であっても努力を満足することなく貯めて行く。

 一見素直で真っすぐなその姿にリヴェリアたちは兄姉としてミストをそっと見守り、そのことに感謝しながらミストは気づかないふりで日々を過ごした。

 




 あ、そうそう(どした?)
 これ書いてるときにちょうどオリオンの矢の特装版BDが届いたのよ(一か月以上に予約したやつな)
 それの特典小説がさ結構良かったんよ(へ~)
 だから…読者の皆さんもぜひ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか オリオンの矢 BD』をご購入ください!(宣伝 乙!!!)

 追記ですが…これからは一日一本ペースで投稿します(一話当たりの文字数少し増やしたからね)


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幼き心の緩やかな歩み
第八話 初陣


 う~ん…自分よりも後に投稿された作品にお気に入り登録数で負けてるのちょっとショック~(そりゃ文字数少ないし)
 でも今回は少し増やしたよ?(少しな?他と比べりゃ微々たるものだ)
 自分でまとめた原作設定見に行くたびにページ更新でデータ吹き飛ぶからモチベ上がらん(お前ついさっきまで自動保存の使い方分かってなかったもんな)
 説明読まずに進めたから(…見た感じ平均文字数とお気に入り登録にはある程度関係性があるからこれからはもっと励め)
 うぃ~っす、頑張りまーす(うむ、苦しゅうない)


 僕がロキ・ファミリアに入団してから1か月が経過した。

 毎日、ティオナお姉ちゃんと特訓しては朝食を食べたらすぐにリヴェリアお姉ちゃんと冒険の勉強。

 確かに同じようなことをほとんど休むことなく繰り返しているけど、そうでもしないと心の弱い僕はきっとすぐに積み重ねたことがなくなるだろうから休んでいられるほど今はまだ余裕がないから。

 それにお昼になるとティオナお姉ちゃんかリヴェリアお姉ちゃん、たまにベートお兄ちゃんがオラリオの中を案内してくれたりおいしい食べ物を食べさせてくれるからそこまで苦しくはない。

 まあ、毎朝の特訓の時にティオナお姉ちゃんやたまに来るベートお兄ちゃんの攻撃がすごく強烈で意識が飛びそうになることはある。むしろ意識が飛びそうで飛ばないギリギリの攻撃をしてくるからわざと苦痛を味わわせてきているのかも……

 

「えっと、じゃあ……『遠征』で無茶しないでね?」

「遠征に無茶は付き物だが…必ず戻ってきて、またお前に知識を叩き込んでやろう」

「うん!気を付けて行ってくるねー」

 

 今日から『深層』に遠征に行く皆の姿が見えなくなるまで手を振り続ける。

 さっきベートお兄ちゃんにも声を掛けたんだけど僕の方を見ただけで何も言わなかったな、ベートお兄ちゃんならティオナお姉ちゃんと違ってあまり無茶はしないだろうから気が楽だけど…誤解されやすいらしいから心配だな

 

「……さて、僕も冒険者登録に行きますか!」

 

 気合を注入するとあまりの楽しみさに思わず足取りが軽くなるのがハッキリとわかる。

 抑えようとは思ってるんだけど思わずなっちゃうんだよな、少し恥ずかしい。

 

「あの~冒険者登録しに来たんですけど…あ、これファミリアの証明証です」

「あ、は~い…ロキ・ファミリア?!」

 

 やっぱり僕はロキ・ファミリアの団員には見えないらしく、桜色の髪をした受付の女の人に疑いの眼差しで見られたけど証明証が本物だと分かると渋々といった言葉が似合う様子で登録申請書の羊皮紙を差し出す。

 

「え~っと…」

 

 渡された羊皮紙に目を通す。

 書くことは名前や年齢、所属ファミリアなどの基本的なことらしい。

 止まることなく少し汚い字を綴っていると、一つの項目で手がぴたりと止まる。

 

「あの…」

「あ、終わりました?」

「いえ、そうじゃなくて…貴女のお名前を……」

 

 彼女からすればなんの前触れも無く唐突なことなのだろうけど少し頭上に疑問符を浮かべた後に『ミィシャ・フロット』という名前を教えてくれた。

 それを聞いて満足した僕は残っていたその項目を記入するとミィシャさんに渡す。

 

「はい、今確認を……ん?どうしてアドバイザーの希望の欄に私の名前が?」

 

 記入ミスではないかと登録申請書を見せてくるミィシャさん。

 

「その…僕知らない人と話すのが苦手なので、アドバイザーさんは受付の時の人にするって決めてたんです」

 

 少しでも話したことのある人ならばある程度は気が楽だと説明すると、ミィシャさんの隣にいたエメラルド色の瞳のハーフエルフさんが「よかったじゃないミィシャ、ご指名よ?」とからかうように微笑した。

 それに反応したミィシャさんは「えぇ~お仕事増えちゃう~」と小声で言っているにもかかわらず僕に聞こえるというあまり意味のない小声でハーフエルフさんに文句を言う。

 

「私なんかじゃなく…ほ、ほら、隣の彼女なんかはどうです?」

 

 よほど仕事が増えるのが嫌なのか隣のハーフエルフさんに仕事を押し付けようと躍起になり隣から「ちょっ!?ミィシャ!」と少し怒ったような声が聞こえてきた。

 だけど働いているくせに仕事から逃げようとしている悪いミィシャさんの仕事をあえて増やすべくこちらも譲らずにミィシャさんが良いと懇願する。

 

「もぅ…仕方ないなぁ~」

 

 アドバイザーになるのが決定したのとゴリ押しをされたからかミィシャさんのかしこまった業務用の口調から砕けた口調になる。

 ならもうこちらもかしこまる必要はないと判断し、僕も肩の力を抜いた。

 

「これからよろしくね、ミィシャさん」

「仕事は増やさないでよ?」

 

 可愛らしく睨みながらそう文句を言ってきたミィシャさんに僕は満面の笑みでこう言い放つ。

 

「それは保証しかねるッ」

 

 その返しは予想していなかったのか溜め息をついたかと思うと肩を震わせて「フフッ」と笑った。

 思わず釣られた僕も小さく笑いお互いに「よろしく」と言って手を組み交わす。

 

「それで探索なんだけど…ロキ・ファミリアだし事前情報は「バッチリです」だろうから、その恰好を見るに潜る気満々だね~」

「うん、基本的にはソロでやるつもりだけどパーティを組みたいって人がいたらその人の事を教えてね。その情報で判断するから」

「早速私の仕事を増やす気満々だね?」

 

 面倒くさそうな口調でニヤリと笑うミィシャさんに向かって「おうともよ」と少し格好をつけたポーズを向けて去って行く。

 ギルドから出た僕はプロテクターと腕の間に挟んだ短剣が抜剣出来るかを確認するとダンジョンに潜って行く。

 

 

『『『グルオァッッ!!』』』

 

 卑怯にも同時に襲い掛かってきた『コボルト』から距離を取って襲い掛かってくる方向を一方向に絞った僕は一体目防御が手薄な首の三割ほどを切り裂くと、続いて襲い掛かってきた二体目のコボルトの魔石を一突きして最後のコボルトも同様に魔石を一突きする。

 

『ギャ、ギャウッ!』

 

 初めに倒し切れていなかったコボルトが襲い掛かろうとしているところで首を再び切り裂いて首全体の六割以上を切り離した。

 するとそのコボルトたちの魔石を一突きした二体はそれが原因で全身を灰へと変貌させて風にさらわれるように跡形もなく消えていく。

 そして残った紫紺の欠片――『魔石』を手に握ると残ったコボルトの死体から魔石を摘出して腰巾着に三つの魔石を入れ、探索を再開した。

 

『『『『『シャアッ!』』』』』

 

 さっきよりも数の増えたコボルト。

 前後から同時に産み落ちたため逃げ道はなく、前3後2という危機に僕は前に並んだ三体のうち左のコボルトに攻撃を仕掛けると見せて後ろのコボルト二体を左側に引き寄せるとすぐに体を反転させ、作った隙間から抜け出て二体のコボルトを背中から一突きして魔石に変える。

 

『『『グ、グアッ!!』』』

 

 その様子を見た残ったコボルト三体は僕から逃げていく。

 

「ちょっ!?お前らモンスターだろ!」

 

 予想外の行動に声を荒げ、二つの魔石を回収すると逃げ去ったコボルトにすぐに追いつき首の後ろを三体同時に切り裂いた。

 痛みに動きが鈍ったコボルトの隙を見逃さず僕は、先にコボルトたちの脚をイヤになるほど食らった足払いで転倒させてその間に短剣を突き立てる。

 だが間に合わずに立ち上がったコボルトの攻撃を受けて少し吹き飛ばされながらもそれ以上の攻撃を何度も食らったことのある僕はモノともせずにコボルトの首前半分を切り離す。

 

「結構辛い……ティオナお姉ちゃんたちは手加減してくれてたから僕にも余裕があったけど、ふぅ、こいつら相手だと常に全力ださなきゃ行けないから、思ったよりも、早く体力が減るな」

 

 一気に消耗した体力を壁にもたれかかって回復させる。

 

「それに、特訓の時は受け流されてたけど…モンスター相手だと攻撃したときの負荷が比べ物にならないから…ふぅ、結構腕にくるな」

 

 疲労とダメージで僅かに痺れの生まれた腕を振って痺れを軽減させながら三つの魔石を回収した。

 その場で短剣を素振りしてまだ体がついてこれるかを確認するとそのままゆっくり歩きながらモンスターを探し回る。

 

「お、良い感じの発見」

 

 ちょうどよく相手にできそうな二体という数で固まっていたコボルトを壁に隠れて発見した。

 今コボルトは前を見ながらゆっくり歩いている、この距離ならば忍び寄ってから攻撃を仕掛けたほうがいいと判断するとそのまま音をたてないように忍び寄る。

 

『『グアッ!』』

 

 忍び寄る、そう決めて壁から体を出した途端にコボルト両方に気取られてしまった。

 

「そういえばティオナお姉ちゃんにも『気配を消すのが下手すぎ、むしろちゃんとやってる?』ってな感じの事言われたっけ、ハハハ……クソッタレェ!!!」

 

 自棄になった僕は短剣を握りしめて攻撃を仕掛け二体のコボルトを倒した。

 だけど今の事が少しショックになった僕はリヴェリアお姉ちゃんの言う通り潜りたての時期は早めに引き上げるという言いつけを守って帰る。

 結局今日狩ったのは帰路含めて一五体。

 そのうち二体は運よくドロップアイテムである『コボルトの爪』を落としたため換金額には期待が出来そうだ。

 

 

「一一〇〇ヴァリス…駄目だコリャ」

「そんなことないよ?今日が潜るの初めてでしょ、だったらソロの初めてでこの金額は結構すごいんだよ~」

 

 そう言ってミィシャさんが慰めてくれるけども僕としては教えてくれたティオナお姉ちゃんとベートお兄ちゃんに合わせる顔がないです……

 

「明日以降も頑張って潜ったらすぐに強くなれるよ!」

「本当ですか?」

「……多分?」

 

 そんな頼りにならない言葉に僕は情けない言葉を出しながら屋台で売っている『ジャガ丸くん』を三種類ほど買って本拠(ホーム)、『黄昏の館』に戻る。

 

「ただいまです…」

「おかえり、その顔見るとよほど散々な結果と見える」

「ええ…戦果はたったのコボルト一五体の一一〇〇ヴァリスでした」

 

 項垂れながらそう告げると門番の人は無言で愛想笑いを浮かべた。

 その事により衝撃を受けながら僕は自室に装備一式を置くとロキの神室(しんしつ)に入りステイタスの更新をお願いする。

 

「てかなにげにミストのステイタス更新て初めてやな。これまでずっと特訓と勉強で疲れてすぐ寝てたもんな」

「そうですね…【経験値(エクセリア)】が消失してたりしませんよね?!一か月も更新してないからとかで」

「そんなことないて」

 

 上半身裸になるとその上にロキが馬乗りになって僕の背に血を落とした。

 変な感覚に襲われながら更新されたステイタスを楽しみにしているとロキが僕の上でなんだかよくわからない類の呻き声を上げている。

 

「ステイタスの伸びは微妙なのに探索一度目で魔法が発現するなんてな…変わったこともあるもんや」

 

 どの分野を取っても他種族に劣っていると言われるヒューマンにも関わらず突然魔法が発現したことに少し驚いた様子のロキが背中の【神聖文字(ヒエログリフ)】を共通語(コイネー)に書き換えた用紙を手渡してくる。

 

 ミスト・グリージョ

 Lv.1

 力:I0→H105 耐久:I0→G235 器用:I0→G238 敏捷:I0→H184 魔力:I0

《魔法》

【ファンタム・リアリティ】

 ・霧幻(むげん)魔法

 ・対象に幻覚を引き起こす。対象の数に応じて精神力《マインド》を消費。

 ・抽象的であれば合致する効果をランダムに引き起こす。具体的であれば効果を増す。

 ・詠唱式【望みし影、望みし姿。我の望む形へ至れ】

 ・解呪式【それは全て叶わぬ幻想であった】

《スキル》

【】

 

「~~~ッ!」

 

 夢見た魔法を手に入れた僕は歓喜のあまり声にならない声で喜びを表した。

 

「毎日ティオナにボコボコにされとったらもっとステイタスが上がっても言い思ったねんけどなぁ」

「アハハ、ボコボコにはされてませんよ…ところでこの魔法ってどんな効果何ですかね?」

 

 ステイタスの伸びなどよりも魔法の方が僕には重要だ。

 この心をくすぐる魔法という甘美な響きはその他の事をすべて話を忘れさせてしまいそう。

 

「初めて聞く魔法やからなぁ…火魔法とかやったら字面からすぐわかんねんけど、霧と幻いわれてもよく分からんわぁ、魔法は本人の心を映すゆーし心当たりでも探ってみたらどや?」

 

 心当たりと言われてもよくわからない。

 特訓と勉強の一か月はずっとそれの事を考えていたし…あるとすれば今日の探索。

 記憶を探っても戦っている光景(シーン)ばかりが脳をよぎって手がかりになりそう記憶が思い出せそうにない。

 

「うぅむ」

 

 雑念を減らしたら思い出せないかとお風呂に入ったり中庭をウロウロ徘徊してみたりしたけれど霧というのも幻というのも身に覚えがなかった。

 ならば幻覚の部分かと記憶を探ってみたが幻覚を見た覚えはないし第一階層にそんな事をするモンスターがいるとは聞いたことがない。

 

「考えててもキリない!」

「【望みし影、望みし姿。我の望む形へ至れ】」

「【ファンタム・リアリティ】」

 

 一か八かと詠唱を唱えてみた。

 

「…ん?なにも起きない?」

 

 自分の周りを見渡してみたが幻覚など一切感じず、そこには今までと一切変わらない光景が広がっているだけ。

 失敗したかと頭を掻きむしった瞬間、その違和感に気が付いた。

 

「腕が…薄くね?」




 う~ん、流石に一か月は飛ばしすぎ?(でも延々と続く訓練回って余計読者減るぞ)
 だよな…永久八月みたいなのはいかんよな?(お前は訓練回を約六十話も書く気か?)
 むり!(ならよし)


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第九話 魔法

 前回のサブタイの方をこれにするべきかなぁ(サブタイネタバレはいかんでしょう)
 だよねぇ、OPでネタバレする某アニメみたいなのはや~ね~(敵が増えそうだ)



「なんで?」

 

 そう思いつつ自分の確認可能な胸部から下の体を確認すると、体どころか着ていた服すらも少し透明になっている事に気が付いた。

 自分の存在が薄れている、そう考えた瞬間今日の探索中の出来事を思い出した。

 

「まさか…気配が薄いってのを深層心理で考えてたからそれが反映されて謎の体が透けるって状況になったのか?」

 

 深層心理での気配の薄さの意味に疑問を抱きながら再びロキの神室へと戻る。

 

「ロキ!今僕の体ってどうなってる!?」

「どうなってるって……どうもなっとらんよ」

 

 ロキのその回答に状況を理解した僕は解呪式を唱えるとすぐに詠唱を行った。

 

「な、なんや!ミストがいきなり消えたで!?」

 

 やはりと言うべきか想像通りいまロキには僕のいない光景が幻覚として見えているらしい。

 その事を確認できた僕は再び解呪式を唱え、ロキの目の前に現れた。

 

「うわッ!出たぁ!!」

「これが僕の魔法らしい、相手に特定の幻覚を見せる。今やったのはロキに僕の存在を認識させなくしただけ」

「…なんやエライ暗殺者(アサシン)向けの魔法やな」

「まあ、始めみたいに対象外の者には見えないみたいだけどね」

 

 だからこそ神室に入った時には僕の姿がロキには認識できていたのだろう。

 一度に多くの相手にかけるとどうなるかは分からないけど一対一の時は確実に有用な魔法だ。

 そして恐らくこれは違うこともできる。

 

「【望みし影、望みし姿。我の望む形へ至れ】」

「【ファンタム・リアリティ】」

 

 またしても詠唱したが今度は僕とロキ、どちらにも変化はない。

 ロキもそれに気が付いたようで何をやったと見つめてくるが、そこで僕は右手の親指と人差し指でモノを挟む形を作り力を入れた。

 

「イタタタタァ!?」

「あ、ごめん、ステイタスが上がったの忘れてた…」

「…てことは、今のミストの仕業かいな?!」

 

 頬を痛そうに撫でるロキが恨めしそうに僕の事をにらむ。

 

「うん、入れた力に応じてロキの頬につままれた時の痛みを感じるようにイメージした」

「やめてえな…せめてアイズたんのおっぱいの感触を味わわせてぇ!」

「味わったことないから無理、というかそれを味わって何が嬉しいの?」

 

 そう問いかけるとロキは唐突に「あ、そういやこの子そういう子やった」と無表情を極めたような無の顔で項垂れる。

 とりあえずよく分からないけれど自分の感覚で嬉しいと感じた感覚をロキにも体験させてあげることにした。

 

「これは?」

「リヴェリアお姉ちゃんが頭を撫でてくれた時の感触」

「……まあ、これもこれでええな」

 

 どことなく表情が穏やかになったのを確認すると解呪式を唱え、撫でられている感覚をなくす。

 確認したいことを終えた僕は夕食の時間までずっと中庭でティオナお姉ちゃんに教わった筋トレを繰り返し続けて夕食の前に汗を流してから夕食を済ませてそのまま就寝した。

 

 

「さて、今日もやりますか!」

 

 昨日に引き続きダンジョンに潜る。

 と言ってもまだ初心者の僕は今のステイタスでは1~4階層で我慢するしかない。

 その階層なら出てくるモンスターはゴブリン、コボルト、ダンジョン・リザードくらいのものでまだ現状の知識でも十分に暗記している範囲だからある程度安心して探索が出来る。

 もちろん慢心をしてはいけないが。

 

「ふッ!せやあッ!!」

 

 明らかに冒険者のものではない足音を聞いた僕は通路の角を曲がるとすぐに背後から短剣を突き刺して三体のゴブリンを倒した。

 一か月の特訓の経験をステイタスという形に変換したおかげで昨日に比べると段違いに動きやすくなっている。

 振り向かれる前に倒すことが出来たのは近かったこともあるのだろうが、ステイタスの恩恵が確実だ。

 

「またか!」

 

 魔石を回収していると前後からゴブリンとコボルトが集団で襲い掛かってくる。

 まだ腰巾着に魔石を収納していなかった僕は手に持った三つの魔石を前方にいたゴブリンたちの顔面目掛けて投擲し、怯んでいるところをすれ違いざまに一撃入れてひとまずの背後の安全を確保した。

 

「数が多いな…」

 

 合計で8体。探索二度目の初心者が一度に相手取るには少々手厳しい数だ。

 じりじりと詰められる距離、まだ実験していなかったがやるしかないと詠唱を唱える。

 

「――【ファンタム・リアリティ】」

 

 一気に体から力が抜ける感覚に襲われながらも魔法は正しく発動した。

 イメージしたのは8体のモンスターの五感には今なお動かない僕の姿が認識されているという事だけ。

 そして正しく発動したおかげで気取られることなく敵全ての背後に回ることに成功し、背後から一体ずつ素早く倒すことで無事勝利を収めた。

 最後の一体が魔石を残し消えたことで魔法の対象がいなくなり魔法は自動的に解呪された感覚が伝わってきた。

 

「さっきの合わせてちゃんと11個ある」

 

 数を確認して腰巾着に魔石を収納して探索を再開する。

 ステイタスの耐久アビリティ評価がGになっているおかげで昨日のように腕が痺れるという事もなく思う存分探索を続けることが出来、少し下の階層に降りてダンジョン・リザードとの初戦闘も繰り広げた。

 1~4階層のアビリティ評価はI~Hあれば事足りるため1~4階層のモンスターと多くの戦闘を繰り広げるうちに苦戦することは少なくなっていた。

 

「とは言っても少し攻撃受けちゃったなぁ……これで昨日の稼ぎの半分が吹き飛んだ」

 

 戦闘のダメージを回復するために試験管に入ったダンジョンの壁よりも濃い青色の液体を飲み干す。

 下級の体力回復薬(ポーション)だが初心者には十分なもの、みるみるうちに疲れは吹き飛んで再び戦えるように回復していた。

 体力回復薬に濡れた口元を拭うと来た道を引き返して帰るときの安全を確保して戦う。

 そうしてさらに戦闘を繰り広げた僕は遅くなるといけないと引き返し、『始まりの道』とも呼ばれる1階層の大通路を進み地上に伸びる大穴を側面に設けられた螺旋階段を上がっていく。

 

 

「いや~、バベルにシャワー室があるのってかなり助かるよねぇ」

「うん、そうだけどさ…?なんで昨日の今日でこんなに稼いでるの!?」

 

 風に吹かれて完全に乾燥した短髪を撫でながら嬉しそうにそう話すと、ミィシャさんが窓口に拳を叩きつけて声を荒げた。

 そんなミィシャさんの睨んだ先には山吹色のぎっしり詰まった袋が載っている。

 その額、実に昨日の約10倍。

 もちろん稼ぎの低かった昨日と比較するのは間違っているが、それでも初心者のソロ冒険者の稼ぎとしては十分すぎるほどだ。

 

「頑張った」

「そういう話じゃないよ!?こんな額実際にソロで稼いでる人なんてベテランでも限られてくるんだよ!」

「じゃ、超頑張った」

「頑張りの度合いじゃなぁい!」

 

 ミィシャさんは絶対おかしい、と文句を言いながらチラチラと何度もヴァリスのたっぷり入った袋を確認して溜め息を吐く。

 それを見て思わずケラケラと笑ってしまいキッと睨まれた。

 

「はぁ……そうそう、昨日言ってた話だけど」

「?」

「パーティの話で、同じように昨日登録した人と今日登録した人がパーティを求めててね?」

 

 そういわれて思い出した僕は手渡された用紙を二枚受け取って見比べる。

 一方は十も上の男性冒険者24歳。

 戦闘スタイルは長剣を操る完全に身体(フィジカル)寄りの虎人(ワ―タイガー)の人。無名の派閥(ファミリア)に所属しながらオラリオに来た初日に登録してその日に探索しに行っている。登録日は今日。

 もう一方は二つ年上の女性冒険者16歳。

 戦闘スタイルは大剣を振り回しつつ超短文詠唱の魔法で戦う魔法戦士系の狼人(ウェアウルフ)の人。【ガネーシャ・ファミリア】に所属し同じように一か月間そこで訓練して昨日登録した人らしい。

 この特徴を読んで迷う人はあまりいないだろう。

 

「じゃあ、この『オリヴィア・ロペス』って女の人でお願いします」

「分かった、今日もダンジョンに潜るって言って帰って来てないからギルドに来たら声かけとくね」

「パーティを組むんだったら明日バベルの――」

 

 パーティ結成するときの集合場所と集合時間、こちら側の特徴を伝えるようにお願いしてずっしりと気持ちのいい重みの袋を背嚢(バックパック)に入れて体力回復薬の補充などの準備を終わらせて本拠に戻る。

 夕暮れに本拠に到着すると昨日のように寝室でロキにステイタス更新を頼んだ。

 

「今日は少し遅かったな、ムチャはあかんで?」

「はは、無茶はしてませんよ。ステイタスが上がって少し感覚がズレただけです」

 

 雑談をしながらの更新を終えるといらない部分を省いた用紙を渡される。

 

 ミスト・グリージョ

 Lv.1

 力:H105→H132 耐久:G235→G252 器用:G238→G250 敏捷:H184→G203 魔力:I0→I86

《魔法》

【ファンタム・リアリティ】

《スキル》

【】

 

「あまり変わらないなぁ」

「そか?新人にしては伸びてる方やと思うけどなぁ」

「なるほど、基準が分からないので変わってないのかと…」

 

 一般的な数値変動の情報もなしに基準は分からないのは当然だがこれでも伸びている方らしく少し安心できた。

 ただこのままではすぐに伸びも頭打ちになるだろうから、より深く潜るためにもパーティ結成を向こうが了承してくれるのを祈っていよう。

 少し相手との相性が気になるが今悩んでも仕方のないことだ。

 

「それじゃあ夕食まで自室で読書してますね」

「あいよ」

 

 ロキのよく分からない返事をおいて自室に戻るとリヴェリアお姉ちゃんに選んでもらった本を読み進めて行く。

 少し難易度を上げたと言っていたからその通り書いてある内容が分かりにくくなっているけど、そこの情報は他の本で読んだことのある内容で理解できたから特に問題は無かった。

 本はどれも基本的に同じ事が言えるけど、続きだったり難しくなった本にはそれ以前の知識を覚えていることが前提になるから覚えていないうちはそれより簡単な内容の本が必要かもしれない。

 

「…おっと、もうそろそろ時間か」

 

 日の沈み具合から判断して食堂へ向かっているとその途中で夕食を知らせる鐘が鳴り響く。

 

「既に皆いるなぁ」

 

 遅れてやってきた僕が一人で食べようとすると遠くから声がかかる。

 

「おぉ~い、ミスト君!一緒に食べないか?」

「いいんですか?」

 

 聞こえてきた男の人の声に一応社交辞令という可能性を考えて聞き返したけれど問題ないと男の人が僕を手招きして隣に座らせた。

 

「えっと…?」

「ああ、俺は『バルトロメ・ロイヤー』だ。バルト兄ぃと呼んでも良いぞ?」

「ふざけるバカはほっといて…私は『レニー・オール』、レ二姉さんで大丈夫よ」

 

 名前を聞いたことはなかったけれど見るときは思い返してみれば二人一緒だった気がする。

 ひょっとしたら二人は付き合っているという奴なのかもしれない。

 

「分かった、バルト兄ぃ、レ二姉さん」

「ほんとにそのままだな」

「ええ」

 

 何か引っかかったの耳打ちしている二人、聞かれたくないからの行動と理解しているからあえて聞き耳を立てずに無心で食事を摂る。

 

「最近はどうだ?昨日からだろ?」

「え?うん、昨日は勝手が分からなくて一一〇〇ヴァリスで今日はステイタス更新したから一一八〇〇ヴァリスだったはず」

 

 少しステイタスが上がっただけで稼ぐことが出来たからきっと明日はもっと稼げるだろう。

 ひょっとしたら明日は様子見で稼げないかもしれないけれど最終的な稼ぎはかなりの額のはず。

 

「へぇ…す、すごいね」

「すぐにそこまで稼げるのはすごいわよ」

 

 そう言ってくれる二人だけど平均値がどれくらいかが分かっていないから喜ぶことが出来ない、精々愛想笑いくらいなものだ。

 

「二人は普段二人でダンジョンに?」

 

 一応何かの参考にと二人の事を聞いてみる。

 

「いや、他のファミリアを入れて四人でやってる」

「向こうのファミリアも二人、稼ぎも二等分してからそれぞれで分けれて楽ね」

 

 どうやらパーティ内の貢献度は皆同じくらいらしく、稼ぎは二等分で良いみたいだ。

 

「そっか」

 

 それを聞いた僕は食事を済ませると二人にお礼を言って自室に戻る。

 ランクも違うだろうからあまり参考には出来そうにないだろうけれど、聞いておくに越したことはない。

 

 

「あなたがミスト・グリージョですか?」

 

 ベンチに座って待っていると頭上から女の人の声が聞こえて、顔を上げるとそこには狼人の女の人がいた。

 

「はい…てことはあなたがオリヴィア・ロペスさんですか?」

「ええ、てことでパーティ結成ね。じゃあ早速…と言いたいんだけど面倒だからお互いに敬語なしね?」

「いいけど…だったらはじめからなしでも良かったんじゃ?」

 

 すぐに口調を素に戻すのなら意味がないだろうとツッコむ。

 オリヴィアはまあ、と頭をガシガシと掻きながら言い淀んだ。

 

「ぶっちゃけ第一印象の操作ね、はじめから乱暴な口調だったら今後の印象にマイナスの傾向が付くだろうから」

「だから中立の印象?」

「そういう事」

 

 変にあからさまな媚を売られていたら確かにそういう傾向もあったかもしれない。

 だからその点で助かったのだろう。

 

「ギルドの人から聞いてるかもしれないけど一応…現段階では短剣を主武器(メイン)として探索していて、魔法も使えるけど攻撃系ではない」

「短剣以外も使おうと思えば使えるという事ね…これからよろしく、ミスト」

 

 にッ、と笑みを向けて手を差し伸べられる。

 

「おう、よろしくな」

 

 ちょっと似合わない少し格好つけた口調で手を取った。

 

 




 オリキャラ登場!(流石に原作サブヒロインだけじゃ皆つまんないだろうしね)
 ただ性格が迷走している(だろうな)
 作者の思い描いているのは『男らしいけれど女の子らしい一面も僅かにある』とか『芯の通ったキャラ』だったりする(簡単に言えばあまり男性受けはしないタイプね)
 でも作者的には結構好き。現代人の性格が嫌いでね?お淑やかさを強要する気はないんだけど中途半端なのがイヤ(ど~ゆ~ミーン?)
 お淑やかにするなら『大和撫子』でいて欲しいし、そうじゃないなら『原作椿・コルブランド』みたいな感じで堂々と豪快にいてほしい本音(白黒つけたい性格よね、君)
 だからイメージとしては『F〇te』の『フ〇ンシス・ドレ〇ク』みたいなのをオリキャラに重ねて補完してくれたら幸いです。(読者の想像力に丸投げする小説家の屑である)


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第一〇話 パーティ

 今後サブタイは序盤内容で決めようと思ふ(それが楽でいいな)
 ネタバレって嫌な人はとことん嫌うから(お前みたいにな)
 だってつまらんじゃん?だから考察とかも嫌い(当たってたら読むときに楽しみが減るもんな)
 ダンメモ《ダンまち・メモリアフレーゼ》のデアラコラボの時は展開が分かりやすすぎてガッカリだった(コラボすると個人の特徴が失われて中途半端になるもんな)
 どっちの好さも生かせず終わった雰囲気(…この話は終わろう)
 了解(ノシ)


「そっちに二体行った!」

「ちょッ!?ちゃんとしろって!」

「こんな大量のキラーアントを相手にしなきゃいけないのは元を正せばオリヴィアの所為だろ!?」

「ちょっとした好奇心だったんだ!」

 

 二人は7階層で大量のモンスター、主にキラーアントと交戦している。

 その数はキラーアントだけで30におよび、二人は通路で挟み撃ちにあっていた。

 その原因はミストが言ったようにオリヴィアの行動によるもので、原因はキラーアントを半殺し状態にして少し放置したこと。

 キラーアントは死にかけると仲間を呼び寄せる性質を持っている。

 オリヴィアの行動に気が付いたミストはすぐにキラーアントを殺したが既に遅く、その場から立ち去ろうとする前に二人はキラーアントに取り囲まれついでに他のパープル・モスやニードルラビットも襲い掛かってきた。

 

「そもそも昨日まで1~4階層で戦ってたやつがこの数とこの強さをまともに相手できるわけないだろ!」

「私も同じだ!」

「だったらせめて5階層で満足しろよ!」

「それは、無理な相談だ!!」

 

 ハッキリと言い切るオリヴィアに罵声を飛ばしながら左手に予備用の短剣を握って前面のモンスターを倒す。

 

「私の方に来いッ」

「!?わかった」

 

 キラーアントの甲殻に苦戦しているとオリヴィアが詠唱を開始した。

 

「【尽きし星の冷たき断片】」

 

 キラーアントの顎を蹴り飛ばして前線から離脱するとオリヴィアが魔法を発動させる。

 

「【オスクロ・エンハンブレ】」

 

 オリヴィアの腕から靄のような闇が流れ出て握っていた大剣を包み込んだ。

 刀身の完全に隠れた大剣を力の限り振るうと、大剣の切っ先から闇が線のように放出されて離れた位置にいたモンスターを残さずすべて切り裂いて魔石とドロップアイテムに変える。

 

「いっちょあがり!」

 

 肩に大剣を担ぐと呆然とするミストから離れて魔石を回収する。

 

「今のは?」

 

 気を取り直したミストも同じように魔石を回収しながらオリヴィアの魔法について尋ねる。

 説明しづらそうに言葉を考えるオリヴィアは二人が回収し終えてから説明を始めた。

 

「モノとしては攻撃魔法。ただ汎用性はそこそこあって、そのまま放出することもできるしさっきみたいに武器に纏わせて全体攻撃にすることも出来て、武器に纏わせたまま攻撃したら攻撃力も上がる」

 

 ただ燃費はワリィがな、と豪快に笑いながら大剣を素振りするオリヴィア。

 逆にミストの魔法についても尋ねられ、ミストは現状分かっていることを説明する。

 

「なんだよ、お互いに燃費ワリィな」

「互いに基本は武器攻撃だな」

 

 ハハハと二人笑いながら探索していると、蝶のようなモンスターと遭遇する。

 

「ブルー・パピリオ!?」

「なにそれ?」

「オリヴィア知らないの?簡単に言うと稀少種」

 

 簡単に説明すると金になる事だけは理解できたオリヴィアが一気に二体のブルー・パピリオを倒した。

 仲間が殺されて慌てた残りの一体が逃げようとしたが、ミストがそこをすかさず一突きにする。

 

「よっし!ドロップアイテムだ!」

 

 『ブルー・パピリオの翅』を確認したミストは嬉々として傷つけないように慎重に回収し、背嚢(バックパック)に収納した。

 

「どれくらいすんだ?」

「ん~これだけで大体八〇〇〇ヴァリス」

 

 その予想外の金額に圧倒されたオリヴィアがまた同じモンスターを探しに行こうとするが、稀少種という事を再び説明するとガッカリしたように引き下がる。

 

「もっと探索しようぜ」

「いや、探索を開始してから結構時間が経っている。そろそろ帰ろうか」

 

 戦い足りない様子のオリヴィアを制止してミストは来た道を引き返す。

 オリヴィアもファミリアには迷惑を掛けられないのか渋々ミストについて行く。

 

 

「「三五四〇〇ヴァリス…」」

 

 地上に戻ってきた僕はオリヴィアと二人で目の前のヴァリスに釘付けになっている。

 幸運にも稀少種のドロップアイテムがあったから収入が大きく跳ね上がったのもあるが、それを除いても稼ぎは昨日の二倍以上だ。

 

「オリヴィアすげぇ」

「ミストすげぇ」

 

 思わずオリヴィアを称えると、同時にオリヴィアも僕の事を褒めていた。

 

「ぼ、僕なんて…トータルの稼ぎで言えば昨日の3倍だし!」

「それを言ったら私も昨日の稼ぎの三倍以上だ!」

 

 二人してパーティを組んだ恩恵に圧倒させられる。

 パーティを組んで連携することで足し算以上の効果が表れて圧倒的に効率が良くなった。

 

「でも今日は大変だったな」

「主にオリヴィアの所為だけどな」

 

 結局オリヴィアのせいでキラーアント事件は二回も起きた。

 

「こっちはキラーアントの性質を説明したってのに…」

「仕方ねぇだろ!?死んでると思って放置してたんだよ!」

「ちゃんと魔石を落としたのを確認しろよ…アイツの性質は厄介なんだから」

 

 文句を言っていると僕たちの間に静寂が生まれ、気づけば僕たちは同時に笑っていた。

 

「まあ、ステイタスに余裕が生まれたらその性質利用して稼ぐのも手だな」

「引き際が重要だけどな」

「大丈夫大丈夫!私とお前が組んだら問題ねぇって」

 

 根拠のない自信を堂々と見せつけてくるオリヴィアに圧倒されるも同時にこちらにも自信が生まれてくる。

 

「ああ、だけど慢心するなよ?」

「それは先輩にも言われたから安心しろ」

「キラーアントは慢心なんですが、それは」

 

 ついさっきも話していたことを掘り返すとオリヴィアがあからさまなとぼけ顔を見せた。

 

「不安だなぁ」

「アハハハハ……」

 

 こうして今後もパーティを組むことになった僕たちはそれからほぼ毎日ダンジョン探索に精を出し、二か月後には十分な上納金をロキ・ファミリアに収めることが出来、ステイタスも全体的に平均値を上回るようになっていた。

 さらに入団から八か月後にはステイタスの伸びは著しく下がってきていたが魔力以外は上位に入る評価を得た。

 

 

 ミスト・グリージョ

 Lv.1

 力:H132→S921 耐久:G252→B758 器用:G250→B711 敏捷:G203→S932 魔力:I86→C688

《魔法》

【ファンタム・リアリティ】

《スキル》

誘導殺戮(ジェノサイド)

 ・意図的な劣勢時にステイタス補正

 ・能力補正は劣勢状況に依存する

 ・発動時間に比例して体力と精神力(マインド)の減少。

 

 これが今のステイタス。

 オリヴィアと一緒にキラーアントばかりと戦っているうちにスキルが発現した。

 このスキルは意識的に発動を切り替えることが出来るため常に体力と精神力(マインド)が削られることはないのだけど、発動時は回復が出来ない副作用があるから戦闘中の発動切り替えが出来ないこのスキルは長時間の戦闘には向いていないのだ。

 ロキはこのステイタスならランクアップには十分なはずなんやけど、と言っていたけれど『冒険』をしない限りは上位の『経験値(エクセリア)』を得ることが出来ないからランクアップは困難。

 ステイタス的にはLv.1の冒険者の平均値はG~Cだからステイタス的にはかなり上。

 けれど13階層以下の『中層』はLv.1には不可能だからそもそも冒険は難しい。

 ステイタスを下手に上げすぎるのは危険だと気付いたのは二人のステイタスが手遅れになってからだった。

 

 

「ランクアップがしたい」

「それは俺もだ」

 

 オリヴィアが待ち合わせ場所で顔合わせをしたとたんにそんなことを言い始めた。

 ちなみに『俺』と言ったのは俺だ。オリヴィアがその砕けた口調でその一人称は変な感じがする、と文句を言ってきたため探索中の一人称は『俺』にしているのだがこれはこれで以前よりも他の冒険者に馬鹿にされることも減ったので気にはしていないのだが、一日の中で『僕』よりも『俺』の方が圧倒的に頻度が増えたせいで最近は本拠(ホーム)にいる時もつい癖で『俺』と言ってしまって驚かれることがあった。

 

「だけど俺たちには冒険は無理だろ?」

「フッフッフ」

 

 事実を言った途端、オリヴィアが不気味な笑いを出し始めた。

 そしてバッ、と手を突き出してくる。

 

「焦るな少年。手はある」

 

 以前から変わらない根拠のない自信とは違って、根拠があると言わんばかりの表情で両手を突き出してそれぞれ人差し指を一本ずつ立てた。

 

「11階層。そこでインファント・ドラゴンを討伐する!」

「…アイツ稀少種だぞ?」

 

 インファント・ドラゴン自体の強さもさることながら、難易度はその稀少種という事にある。

 下の階層に行けば行くほどその広さを増すダンジョン、11階層ともなればかなり広大でありただの平地と違って入り組んでいるという事もあるから稀少種であるインファント・ドラゴンに意図して遭遇することはキラーアントと一時間ぶっ通しで戦うのとは難易度が違うのだ。

 

「問題ない、昨日目撃情報があった」

「ダメじゃん、討伐されてるだろ」

「だ・が!目撃者は愚かにも11階層の適性評価であるB~Sに少し届かない者たちであったためそのまま逃亡、他の者が討伐したという話もないのだ!」

 

 確かにそれなら可能性はある。

 幸い目撃情報があったところは上下階層に通じる階段から離れた場所だったらしいから探せば遭遇することも出来るだろう。

 

「今日に備えて二本の大剣を新調した、アイテムも十分だ」

 

 そうドヤ顔を晒すオリヴィアの背には白い大剣が二本交差していた。

 

「『ゴブニュ・ファミリア』のを買ってきた」

「おいくらで?」

「一本一〇〇〇〇ヴァリス」

 

 結構いい値段の大剣をわざわざ買ったのかと思ったが、ランクアップには安いのかもしれない。

 その点俺の武器はそれぞれだいたい一二〇〇〇ヴァリスだ。

 前にミィシャに教えてもらってバベルに行ったときに思わず衝動的に買った逸品で、『(アギト)』という銘の灰白色の刀身70(セルチ)ほどの太刀と『幽寂(ゆうじゃく)』という銘の鉄紺色の刀身50Cほどの小太刀だ。

 ちなみにこの二本はどっちも同じ作者で、確か名前が『カミーリア』って人。気に入っているか武器を新調する時はこの人の武器を探す予定。

 

「で、どうする?」

「どうするもなにも……お前一度言い始めたら止めないじゃん、言っても駄々こねるじゃん?」

「分かってるんじゃぁん」

 

 男勝りな性格を少し羨みながらオリヴィアに手を引かれるままダンジョンに潜って行く。

 もはやこのステイタスでは上層に敵はいない、以前オリヴィアに囮になってもらって一対多数でシルバーバックやハード・アーマードたちと戦ったが一撃も食らうことなく勝利を収めた。もちろんオリヴィアも同じことが余裕で可能だった。

 俺たちの魔力ステイタスが他よりも低いのはその為だ。

 ステイタスは本気で打ち込まなければ伸びないから遊びで魔法を使っても伸びない、だからステイタスが伸びない。

 

「昨日目撃証言があったのがここ」

 

 11階層に降りて数十分ほど移動した地点には僅かに戦闘痕が残っていた。

 その他にも逃げるために置いていったとされる荷物が壊れた状態で残っている。

 恐らくはインファント・ドラゴンが踏みつぶしたのだろう。

 

「荷物に残った足跡は向こう側を向いているな、向こう側に行くか」

「お、おい、一人で行くなよ」

 

 勝手に一人で進もうとするオリヴィアの後を追う。

 インファント・ドラゴンと戦おうとする者には思えないほど短慮だ。

 

「出ておいで~インファント・ドラゴンちゃ~ん」

 

 現れるモンスターを全て一閃して倒す。

 威力を抑えることを知らないから残った魔石が一部砕けていてもったいない。

 これに関してはもうどうしようもないと考えている。なぜなら何度言っても聞き入れてくれないからだ。

 

「落ち着いてほしい……ん?」

 

 残った魔石を拾おうと手を伸ばすと魔石が小さく跳ね上がった。

 一瞬魔石の下からモンスターが生まれたのかと後ろへ下がったが、それはすぐに別の原因だと理解できた。

 

「お!これは当たりか!?」

 

 魔石が跳ねたのはインファント・ドラゴンの巨体が生み出す地響きから。

 一面に広がる霧の向こうに目を凝らすと目的のモンスターが姿を現す。

 

「行くぞ!」

「おう!」

 

 まだ俺たちの姿を認識していなかったインファント・ドラゴンの首筋にそれぞれ一撃を入れると、俺は尻尾に、オリヴィアは後ろ脚に攻撃した。

 

「硬ッ!」

 

 一応全力で攻撃をしたのだけど想像以上に防御力があるらしく表面に浅く傷をつけるだけで終わってしまう。

 それはオリヴィアの方も同じらしく、落下を使って大剣を突き立てたらしいが少しだけ刺さっただけで阻まれてしまい俺たちは急いで離脱した。

 するとさっきまで俺たちがいたところを恐ろしく太い尻尾が通りすぎた。

 

「辛くねぇか?」

「今ので移動と攻撃を封じておきたかったんだが…流石に『冒険』だ。そこまで甘くねぇな」

 

 だけど今の一撃で魔石を狙った一撃必殺はしない方がいいと分かった。

 その可能性がないと分かれば無謀な行動を取らなくてもいい。

 

「インファント・ドラゴンはフレイムブレスと咆哮、あとは噛みつきが主な攻撃だ!」

 

 なにも考えずに突っ込んでいくのを防ぐためにオリヴィアに今ここでインファント・ドラゴンの行動を伝える。なぜ事前に伝えなかったというと、さっきまでのオリヴィアには言っても覚えていられないからだ。

 

「分かった!」

 

 行動を理解できたオリヴィアはインファント・ドラゴンの前面から移動して後ろへ回る。

 あとは尻尾と踏みつけ攻撃しか残っていない。

 

「にしても硬ぇな!」

 

 大剣二本ともに闇を纏わせて攻撃しているが鱗に弾かれて有効打にはなってくれない。

 俺も必死に連撃を入れては回避するがほとんど効果はなく、これでは先に二四〇〇〇ヴァリスが駄目になってしまいかねない。

 

「オリヴィア!闇を収縮して放出しろ!」

「分かった!」

 

 まだ並行詠唱が出来ないオリヴィアはインファント・ドラゴンから距離を取って詠唱を始めた。

 その魔力に反応して攻撃しようとするが俺がその隙に左目に顎を突き刺す。

 

『―――――――ッッッ!!』

 

 はじめて味わった激痛にインファント・ドラゴンは叫び、目から赤い液体を流し、琥珀色の鱗片を落とした。

 

「【オスクロ・エンハンブレェッ!!】」

 

 詠唱を終えたオリヴィアが魔法名を叫ぶ。

 収縮された闇は靄ではなく線のように直進し、インファント・ドラゴンの体に小さな穴を穿ちダンジョンの壁を削った。

 

「ヤベェ…調子に乗っていつものノリで魔法使い過ぎた」

 

 俺と同じように他のステイタスは上がっているのに魔力は上がっていないことを考慮していなかったオリヴィアは精神疲弊(マインドダウン)寸前だ。

 それを逃すまいとインファント・ドラゴンがオリヴィアに向かって直進する。

 

「させるか!」

 

 反対側にいるオリヴィアを守るために全力で跳躍してインファント・ドラゴンの残った右目を潰すべく幽寂を逆手に持って引き付ける。

 だが同じ攻撃は聞かないとばかりにインファント・ドラゴンは首を捻り、俺は壁に叩きつけられた。

 

「にげ、ろ……逃げろオリヴィア!!!」

 

 意識の曖昧なオリヴィアに向かって全力で叫ぶ。

 俺の声が届いたのかオリヴィアはインファント・ドラゴンの姿を認識すると急いで離脱しようとする、が、脚に力を入れた瞬間膝が折れてまともに立てなくなっていた。

 

『ガァッ!!』

 

 首を低くして噛みつこうとするインファント・ドラゴン。

 ここから走っていたのでは間に合わない、ダメージを負っていて瞬発力を俺は失っている。

 

「間に合えぇぇええッ!!!」

 

 考えるよりも早く俺の体は動いていた。

 荷物の入った背嚢(バックパック)を全力でオリヴィアに向かって投げつける。

 Lv.1の中でも上位に入るステイタスで投擲されたその砲弾は凄まじい速度でオリヴィアと衝突し、オリヴィアを弾き飛ばした。

 

「【望みし影、望みし姿。我の望む形へ至れッ!】」

「【ファンタム・リアリティ!】」

 

 オリヴィアが地面に着くよりも早く俺は詠唱を終えてインファント・ドラゴンの五感からオリヴィアの存在を完全に消し去った。

 これで目も耳も鼻もなにを持ってしてもオリヴィアを捉えることが出来ない。

 

「このクソドラゴンが!」

 

 頭に血が上った俺は危険だの作戦だのを全て無視してインファント・ドラゴンが振り向く前にその右目を奪った。

 

『ゴアァァァッ!』

 

 視覚を完全に失ったことで無秩序に暴れだす。

 出来ればこのまま自分にも魔法を掛けて決着を着けたいのだがそれでは俺が先に精神疲弊(マインドダウン)で気絶するのが目に見えている。

 

「ふッ!」

 

 幽寂をしまって(アギト)を両手で持つと俺たちの気配を探って止まっているその頭に全力で振り下ろした。

 

「バキィッ」

 

 インファント・ドラゴンの頭に当たった(アギト)はそのまま滑り落ちて鼻先を切り裂くと根元から折れて砕け散ってしまう。

 

「くそっ!」

 

 暴れる頭を足場にして離脱した俺は(アギト)を鞘にしまうと幽寂を構えなおすが何も打つ手が思い浮かばず固まってしまった。

 このままでは幽寂も砕け散る。

 だが俺には決め手となるものが何もない。

 オリヴィアは気絶しているのか壁から一切動けない。

 

「ミス…ト……これで決めろッ!」

 

 辛うじて意識を保っていたオリヴィアから闇が渡され、幽寂に纏わりつく。

 

「私は意識を保っているのが限界だ…気絶する前に倒せッ」

 

 掠れた声が耳に入ってくる。

 いつもの気迫など感じない弱弱しい声だが意地でも気絶しないという思いが伝わってきた。

 

「ああ!」

 

 もはや狙うのは一点だけ。

 そこに残った力を全て注ぐと精神を統一して脚に力を入れる。

 失敗したら間違いなく死ぬ状況に、体はもはやなりふり構わず体力を絞り出して体の加速に向けた。

 

「死ねクソドラゴン!!」

 

 インファント・ドラゴンに向かって直進した俺はその頭の下で飛び上がり、一撃必殺に全てを掛ける。

 途轍もない抵抗を感じる中で助走のエネルギーを、体の捻りを、持てる全てを費やして魔石を砕いた。

 

『……ガッ、ァ』

 

 インファント・ドラゴンの体が灰になって消えて行く。

 俺の体は言う事を聞かずに地面に落ちた。

 

「や、やったぞ!オリヴィア!!」

「ああ、やったな……」

 

 お互いに体が動かないなか情けなく地面に転がりながら空笑いをするがこのままでは他のモンスターの手で殺されてしまうだろう。

 だが動こうにも脚が全く動かない。

 幸い腕は動くから体勢を変えてオリヴィアの方を見るがオリヴィアも動けないでいた。

 

「早くしないと……」

 

 何とか回復するために腕に力を入れて吹き飛ぶようにオリヴィアの下にある背嚢(バックパック)に向かう。

 

「お互いにボロボロだね……」

「オリヴィアがボロボロなのは俺のせいもあるけどな……」

 

 ゴロゴロと転がってオリヴィアの下にたどり着いた俺は体力回復薬(ポーション)を取り出して一気に飲み干した。

 体力がある程度回復して楽になった俺は精神力回復薬(マジック・ポーション)とともに体力回復薬(ポーション)を取り出してオリヴィアに飲ませる。

 とは言っても動けないから俺がオリヴィアを支えて飲ませる必要があるのだが。

 

「悪いな、ミスト」

 

 体力が回復して自分で飲めるようになったオリヴィアは精神力(マインド)を回復させる。

 俺もある程度回復し終えると、砕けた魔石と折れた(アギト)の刀身を回収してオリヴィアとともに地上に戻った。

 インファント・ドラゴンに勝ったとはいえ今回はかなりの損失だ。

 必死だったからあまり冒険をしたという感覚はないからランクアップ出来るかは微妙なライン。

 単純な損失で言えば武器は両方使い物にならない。

 

「…てか今気づいたけど、防具もないな」

 

 恐らくは壁に叩きつけられたときだろう、使っていた軽装が全てなくなっている。

 

「気づいてなかったのか…」

 

 フラフラしたオリヴィアに呆れられてしまった。

 既に言い返すほどの元気もない。

 一刻も早く帰って寝たい気持ちでいっぱいなのだ、何せ早朝に潜ったのに今は既に夜なのだから。

 

「じゃあ、一週間後にいつもの所で待ち合わせだ」

 

 流石にこれだけのダメージを負って明日も潜れるほど人外ではない。

 

「おう、私もしばらくは無理だ」

 

 人通りの少ない大通りを通ってロキ・ファミリアに向かう。

 これは確実に骨折している。

 少なくとも肋骨は折れているし腕と足にも罅が入っているかもしれない。

 

「…皆怒るかなぁ?」

 

 今回無茶をした自覚はある。

 だから怒られるのは覚悟しているけど普段怒らない人が怒ると怖いというからできれば怒られたくないものだ。

 

 

「…ただ、いま戻りましたぁ」

「ミスト!?」

 

 門番の人が誰だかよく見えないけれど驚いているのは分かるなぁ。

 とりあえず門を開けてくれたけどなんでか門番の一人が中に入って行った。

 

「…今は、早く、部屋に戻ろう……」

 

 足がフラフラするけど部屋に入るまでの我慢だ…

 こんなところで寝たらリヴェリアお姉ちゃんに怒られちゃうから……

 

「ミスト!?」

「ちょっと!ミスト君!?」

「おいミスト!」

 

 なんでかは分からないけど…皆がいるや

 

「アハハ…『冒険』はまだ早かったみたいだね」

「お前はずっとダンジョンにいたのか!」

「ちょっとリヴェリア!?ボロボロなんだから…」

「ミスト…お前何やってた」

 

 やっぱりリヴェリアお姉ちゃんは僕を心配して怒ってるや…ティオナお姉ちゃんは止めてくれてるけど……

 

「ベートお兄ちゃん……?やっぱ僕は雑魚でいいや。インファント・ドラゴンと戦うだけでこの有様だから」

 

 以前帰れって言われたけど…その通りだったかもなぁ

 もう目もほとんど見えないし、意識もハッキリしないから……

 

「折角勝ったのに体力無くて死ぬところだった…よ……」

 

 意識、が……

 

「…スト!……ト」

「…よく……ったな」

 

 もう、む、り―――

 

 




 あぁの~?(色々と流石に8か月はやりすぎだバカ)
 だって色々仕方ねぇじゃん?原作みたいな異常速度のランクアップは才能ないというか器用貧乏な主人公には合わないし(そうだが!主人公の性格が!?)
 あ、それは安心して。主人公も表面上の性格を模索中だから(根幹は変わってないと?)
 そそ、ベルくんも冒険する時は少し性格が変わるけど終わったら戻るでしょ(主人公は私生活でも性格が変わってるけど?)
 いやいや、んなことないよ。最後の気絶する直前は性格が戻ってたでしょ?普段は必死に自分を偽って、自分すら騙して強気な性格してるけれど根っこは弱い子だから(確かにそういう描写はあるな)
 主人公には自分の使っている性格が自分でわかってないから、とりあえず使ってるけど行動の意味は分かってないのよ。簡単に言うと周囲から吸収して形成した『性格キメラ』って感じ(こういうシチュエーションで使っているのを見たから使うけどそれの意味は分かってない感じ?数式に当てはめて問題を解いてるけど、どうしてそうなるのかが説明できない感じ?)
 そういう事だね、現代人の意味不明言語と同じ(ああ…現代人に『マジ卍』の意味聞いても理解してないのと同じか)
 あ、話戻るけど主人公の冒険が8か月なのはパワーレベリングね(ティオナとベートに戦い方を叩き込まれたからな)
 だからある程度序盤は割と早くランクアップできるけど後半は成長遅くなる感じ(あ~器用貧乏の典型例ね、はじめは周囲よりもなんでもそつなくこなすけど後半で置いて行かれるっていう) 


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第一一話 ランクアップ

 う~ん、正直言ってどれくらい続けようか悩む(何故に?)
 設定は原作順守を名乗っている以上ずっと続けると原作の設定が不明なところにぶち当たって設定がガバガバになるし(あ~一応原作の設定を確認してから書いてるもんな)
 で、とりあえずキリのいいところで終わろうと思ってるんだけど、どのくらいの話数で終わればいいのか分からんのよ(一番多いのは話数だと現在330話平均1,662文字、総文字数だと1,267,208 字平均13,481 字だな)
 だから進行で言えば最下層のはずなのよ(ちんたらしやがって)
 いや、毎日投稿とか常人には無理だから。ましてやこちとら受験生ぞ?(ここにきてる分際でロクな大学受けんだろ)
 進路悩んでるだけだもん…(で?設定が分からんから途中で完結させると?私の予測ではLv.3になって終わるというと思うんだが)
 ま~、そう考えてるわね。(1~10巻で言うと20階層くらいまでいかないしね、難易度で言えば23~24階層がLv.2の冒険者のそれなりの人数のパーティが連携を取って~っていうのが適正だからね……)
 そう!だから現状ではどうあがいてもLv.3ランクアップが限界なの……(大森藤ノ神!!ダンまちの設定資料集を発売してくれ!頼む!!!)
 ただね?ゴライアスはこのままだと絶対倒せないのよ…彼の強さはLv.4相当。どう足掻いても二人で倒せるわけがないし、強さがかけ離れてて二人の魔法は聞かないし(やーねー)
 だから少ししたらしばらく連載休止かそのまま完結って事になりそう(設定の不明確な部分を想像で補ったら設定順守じゃないし)


「おめでと、ランクアップや」

 

 ミスト・グリージョ

 Lv.2

 力:I0 耐久:I0 器用:I0 敏捷:I0 魔力:I0

 狩人:I

《魔法》

【ファンタム・リアリティ】

《スキル》

誘導殺戮(ジェノサイド)

 

 

 ランクアップはしたけれど、その実感はあまり抱いてなかった。

 インファント・ドラゴンと戦ってから三日、その間ベッドでその時の戦闘の事を思い出していたけれど思い返してみればヒドい戦いだったからだ。

 準備をしたのにもかかわらず俺たちはその準備を生かすことなく戦った。

 あんな危険を犯さなくてもアイテムを使えば容易に敵の視界を奪うことが出来る。

 アイテムを使えば戦闘終了後の事を憂う必要もなく相手の嗅覚を奪える。

 準備を生かせばオリヴィアをケガさせずに済んだのだ。

 普段はあんな性格をしているが、あれでも女の子だ。女の子は守るものだと一人の少年が言っていた、女の子を守るのが男ならば守れなかった俺は男ではないのかもしれない。

 ベートお兄ちゃんに一人の(おとこ)と認めてもらえない。

 オリヴィアにも一般的な『女の子らしい』一面はあった、時折その姿は垣間見ることが出来た。あれが少年の言っていた守るべき『女の子』なのだろう。

 

「…もっと強くならないとな」

 

 半身として今まで俺たちを支えてくれた二本の剣に感謝し、それを布に包んで外に出る。

 行き先はバベル。これを作ったという『カミーリア』なる人物の新作を入手するためだ。

 

「金は…四〇〇〇〇〇ヴァリスあれば足りるだろ」

 

 今まで貯蓄して余りに余っていたヴァリスを持ってバベル八階にあるヘファイストス・ファミリアの武器・防具店の以前この二本を見つけた店に顔を出す。

 

「カミーリアという人物の作った装備はあるか?」

 

 人が来なくて退屈そうにしていた店員に声をかける。

 自分で探すのは構わないのだがこのケガが完治していない体では少々面倒なため時短のために店員に直接訪ねた。

 

「そんな人いたかな?」

 

 聞き覚えがないのかその店員は首筋をポリポリと掻きながら頭を傾げる。

 

「ああ、以前この店でこの剣を買ったんだが」

 

 そう告げると俺は布に包んだ二本の剣を店員に見せた。

 はじめは面倒くさそうにしていた店員だが、その作者の名前を再度訪ね武器を凝視すると納得がいったように折れてほとんどなくなった刀身を鞘に戻す。

 

「この人の武具はここにはねぇ、だけどその人の場所はその人の希望だから教えてやる……北東メインストリート都市第二区画の中心にある工房に行け、その人に会える」

 

 そう言って返された二本の剣とともになぜか前もって用意されていたその工房の場所を示した地図を渡された。

 そしてオラリオの中央から北東に真っすぐ歩き、メインストリートから第二区画――工業区の中心に位置する工房に訪れた。

 

「ごめんください」

 

 鎚の音響かせる工房の扉を開くと、中からはより威力を増した金属を叩く音が鼓膜を震わせる。

 耳を軽く塞ぎながら工房の奥へと足を踏み入れると、そこには一人の女性がいた。

 ただひたすらに、純粋に精製金属(インゴット)を叩く彼女の後ろ姿は思わず見惚れてしまうほどに美しく、声をかける事をはばかられるほどに高貴なモノだった。

 もちろん今の彼女に声をかけたとて認識されることはないのだろうが、それでもそう言い表さなければ満足できないような光景を目の当たりにする。

 

「……」

 

 素人目でも無駄がないと分かるその作業を少し離れた場所から静かに見つめる。

 熱しては叩いて、熱しては叩いてを繰り返すうちに瞬く間に精製金属(インゴット)はその姿を変え、手が止まったかと思えば焼き入れで白い煙が立った。

 恐らく最後の工程に入ったのだろう、剣の形を取っていた精製金属(インゴット)に刃が生み出されそれは美しい剣へと成った。

 

「スゲェ……」

「ん?」

 

 思わず感嘆の声を漏らすとその女性が声に気づいて振り向く。

 

「あ…えっと、紹介されて来たんですけど『カミーリア』さんですか?」

 

 む?と声を漏らした女性は俺の事を頭の頂点から足の先までまじまじと観察すると背負っている布に気が付いたのか無言で近づいてくるとそれを奪おうとしてきた。

 正面から来たせいで露出の多い彼女のさらしを巻かれた豊満な胸が眼前に押し付けられる。

 確かこういう時にするべき反応があるはずだ。

 

「ちょッ!?近いですって!む、胸が当たるから少し離れてください!」

 

 完璧に近い反応で俺は急いで彼女から距離を取って布を渡す。

 演技に関しては胸が近づいた時に不思議な感覚に襲われたからそれが恥ずかしいという感覚なのだろうから全部が嘘と言うワケではない。

 

「なんだ初心なやつめ…にしてもそうか……一つ聞くが、お主はなぜこの武器を手に取り再び手前(てまえ)の武器を欲する?」

 

 それが自分の作った武器であることを確認した彼女は真っすぐな目で俺を見つめる。

 

「…なんとなく、ですかね?強くなるため、守るための力を欲して店を見ていたら目について。完全な感覚(フィーリング)で選びました。また欲しくなった理由も同じです」

 

 欲した理由は本心だ。

 ハッキリ言ってしまえば俺は器用貧乏で得意武器も苦手武器もないから強い武器なら何でもいいし誰が作った武器でも構わない。

 だけど感覚の合う武器なら、感覚の合う作者なら信頼できる。

 

「そうか!『なんとなく』か!」

 

 けらけらと心底愉快そうに笑い声をあげる彼女は俺の頭をポンポンと撫でた。

 

「いや、手前(てまえ)に武器を作れと言ってくる奴は多いが理由を訊ねても皆同じように上っ面ばかりの答えしか言わんが…お主のような理由は初めてだ」

 

 その感覚は大事にしろと言って離れて行く彼女は鎚を握って俺に向けた。

 

「カミーリアという名は偽名でな、手前(てまえ)は【ヘファイストス・ファミリア】団長で『椿(ツバキ「)・コルブランド』というのが本名だ。気に入ったからお主に武器を作ってやろう」

「あ、俺はミスト・グリージョって言います」

 

 カミーリア改め椿(ツバキ)は豪快に笑うと曰く格好をつけるために持ったという鎚を置いて手を伸ばす。

 変わった人だという印象を抱きつつも俺は嬉しさに頬を綻ばせながらその手を取った。

 

「今後も多分お世話になるのでよろしく頼みます」

「……なあ?お主よ。いい加減その半端な口調は止めんか?」

 

 気づいていなかったがさっきからずっと中途半端な丁寧調だったらしく、気持ち悪いと否定された口調を止めて普段の『俺』口調で話すことにする。

 

「いやぁ、冒険者になってから口調変えてたんだけど普段もこれだから抜けなかったみたいだ」

 

 アッハッハと笑い飛ばしながら椿(ツバキ)と武器の話を始める。

 

「依頼なんだけど、ランクアップしたしインファント・ドラゴンとの戦闘で武器防具が使いモンにならないから新しいの作って欲しいなって。出来れば三日後までに出来上がると俺は喜びます」

「ふむ、武器・防具の希望は?」

「武器はブロードソードを予備含めて三本、防具はそれなりの防御力があって動きを阻害しないもので」

「あい分かった。お主の要望通り三日後に取りに来るがいい」

 

 剣を一本打つのに一体どれくらいの時間がかかるのかは分からないが、三日後には受け取れるらしく椿(ツバキ)が今から打とうと材料を見繕っていた。

 その姿を見てみたいと思うも邪魔してはいけないと俺は小さく挨拶を告げると鍛冶場を後にする。

 にしても折れていても持って行ってよかった、これで俺がちゃんと購入者だと証明できたのだから。

 とはいえこの二本にもう出番はない、だが半身だったものを捨てるのも気が引けるから部屋に残すとしよう。

 

 

「ただいま」

 

 部屋に戻った俺は部屋の隅に武器を置くと安静にという言いつけを守ってベッドに転がる。

 もちろんリヴェリアお姉ちゃんの治療のおかげで骨折なども全て直っているのだが、完治した保証がないとかで少なくとも今日までは運動禁止と命じられているのだ。

 ただ運動禁止なだけで勉強は禁じられていないのだが、何せ俺には半年以上の時間があった。

 はじめの一月ほど勉強時間があったわけではないけれど毎日帰って来て勉強するくらいの時間は十分にあったため少なくとも十八階層までの地形はおおよそ把握している。

 端の細部に至るまで完全に記憶しているわけではないにしても思い出そうとすればそこまでの地形はほぼほぼ完璧と言っても過言ではない。

 現れるモンスターも地形に比べると覚えることは断然少ないため容易に覚えることが出来た。

 だから無理して勉強するよりも休むべき時に休む方が重要だ。

 そんなことを考えていると、無造作に放り出した手が枕元に置かれた一枚の紙に当たった。

 

「ランクアップか……」

 

 今朝ランクアップしたことを思い出し、他人に言外ではあるが伝えたことも相まって遅まきながらにその実感が沸々と湧いて出てくる。

 自覚すると止まらない、塞き止められていた喜びという感情が洪水のように一度に襲い掛かる。感情が顔をだらしなく緩ませる。

 ニヤニヤと笑みを浮かべる俺は皆のおかげで成長できたことを改めて実感した。

 




 原作から設定を抜粋して分かる設定の細かさ(階層によって壁の色変わるし、名前に感じつけてるし『戦影(ウォーシャドウ)』『狙撃蜻蛉(ガン・リルベラ)』みたいなのね)
 細かすぎて辛いわ~(設定まとめるのも大変よ)
 誰か設定まとめて送ってくれないかな?(所々階層の情報が少ないもんね)
 まあ、逆に要望があれば現状まとめてる情報を提示するけどさ(14~17階層の情報と20階層以降の情報求む!)
 あ、アニメの作画からの情報はNGで(なんで?)
 一期見てて思ったけど、ベルがミノタウロスと遭遇したのは5階層。原作だと5階層からの壁は1~4階層の薄青色から変わって薄緑色の壁になるんだけど、アニメだと背景の色茶色っぽかったのよ。防具なしで6階層まで下りた時はちゃんと緑系統の色だったのに……(なるほどね)
 だからくれるならちゃんと大森藤ノ神が提示している情報で頼む!(原作大好きかよ)
 モチのロン(古いって)
 ちなみに余談ですが大森藤ノ神は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』というタイトルよりも『ファミリア・ミィス』の浸透を希望しているそうです(大多数が興味ない話だろ、それ……)


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第一二話 中層突入

 ア゛ァ゛~やる気が尽きてきたぁ(元々ないが…なぜ?)
 何故って…最新話になればなるほどUAが圧倒的に減ってるのよ(そりゃあ当たり前な気がするが)
 でもね?投稿開始から今日『20190807』まで一週間なの!これは…自分の能力が圧倒的に弱いってことを表していてさ…ね?(なにが、ね?なのかは知らないが…初めて小説書く人間がここまで持ちこたえてるのは良い方なんじゃないの?)
 そそそ、そうね?!いまだに投票数1だけど!お気に入り32の感想7の激弱作家ですけどぉ!!(はぁ、やれやれ)
 いっそのこと14話で打ち切りエンドにしてやろうかしら(……ノーコメントで)


「今日から中層に突入だが…言っておくが様子見だからな!?」

「分かってる分かってる」

 

 大剣を担ぎ13階層への階段を凝視しているオリヴィアは今にも飛び出しそうな雰囲気を纏っている。

 それに対して溜め息を吐くミストはその場で数回素振りをするとその階段に足を下ろした。

 

 

 灰色の岩石と岩盤の広がるまるで天然洞窟のような空間の名は『中層』。

 ランクアップを果たした二人はランクアップから三度目のダンジョン探索で中層へと突入した。

 いまだアビリティ評価は全て最低評価のIであり、かついまだにパーティは二人という少ない人数で無謀にも挑戦した二人の冒険者の前に『放火魔(バルカヴィル)』の異名を持つモンスター、ヘルハウンドが現れた。

 距離は約30(メドル)ながら加速した両者は一瞬でその間隔を詰める。

 

「オラオラオラぁ!」

「はッ!」

 

 文字にしてみると男にしか思えない叫びでヘルハウンドの首を撥ね続けるオリヴィア。

 それに対してミストはほぼ無言でヘルハウンドがその異名の片鱗を見せた瞬間に脳天に剣を一突きして絶命させ、空いたもう一方の手に持つ剣で別の首を刈り取る。

 伊達に半年以上パーティを組んでいない二人は一切の言葉を交わすことなくお互いの足音と戦闘音だけで自分の取るべき行動を瞬時に判断して、その真価を発揮させる前に戦闘を終わらせた。

 

「お疲れさん」

「お疲れってほど私は動いてないけどな」

 

 戦い足りないのか、オリヴィアは不服そうにしながら辺りに散乱した魔石を回収する。

 

「にしてもやっぱ上層と比べると動きが変わったな」

 

 中層は上層に比べると圧倒的に攻略難易度が高い。

 それはモンスター自身の強さもさることながら、本当に厄介なのはその数と出現頻度。

 強いから苦戦する、多いから苦戦する、そしてそれが立て続けに引き起こるからLv.2になったばかりの多くの冒険者がそうしてすぐに死ぬ。

 中層、今二人がいる13階層にいるモンスターは厄介なモンスターが多い。

 例えば今戦っていたヘルハウンドはその異名の通り離れた位置から炎を吐いて攻撃することが出来る。

 また別のモンスターで言えばアルミラージは単体の能力で言えばLv.1でも倒せるが、その小ささや素早さ、数の多さが厄介だ。

 ハード・アーマードやバッドバットは12階層でも遭遇するが、ハード・アーマードは恐ろしく装甲が硬いしバッドバットはその怪音波で平衡感覚を破壊してくる。

 何も知らずに単身で遭遇して、それらのモンスターに勝てる冒険者は少ない。

 だがそこからその少ない冒険者は悪意あるダンジョンの数の暴力になす術なく惨敗を喫するだろう。

 だからこそ中層以下はパーティを組まないとロクにやって行けないし、準備を怠れば負けはなくとも勝ちもない。

 

「お、また来たなぁ」

 

 満面の笑みへと変貌して大剣を構えなおしたオリヴィアが真っ黒になった大剣を振った。

 すると以前とは明らかに密度の違う黒の線が切っ先から放出される。

 振ってすぐにその線はモンスターたちと衝突し、迫りくるモンスターの大半を一瞬で上下に両断した。

 

「なんだよ、もっと来いよ!」

 

 勝って理不尽に怒りため息を吐くオリヴィアに迫る石斧を剣で跳ね上げると今度はミストが魔法を発動させる。

 とは言っても目に見えた効果はない。

 今なお変わることなく残った半分のモンスターは二人目掛けて疾走している。

 

「必殺?霧現!」

 

 思い付きの居合切りのように腰を落として剣を構えていたミストが一瞬で横に剣を空振りしながら薙ぎ払うと残りのモンスターたちが一匹残らず首だけを落として灰に変貌した。

 

「相変わらずミストの魔法はおっかねぇな」

「そうか?基本的に格上の相手には通用せんぞ?これの効力って相手単体の強さに依存するからさ、同じ事を例えばゴライアスにやったとしてまともに効果があるのはLv.4になってからだな。Lv.3で一応ある程度って感じ」

 

 中層の階層主、正確には『迷宮の孤王(モンスターレックス)』というダンジョンのボス的存在である内の一体、17階層に出現するゴライアスというモンスターは冒険者で言うところの推定Lv.4らしい。

 余談だが、二人のランクアップの礎は個体差があり強い奴はLv.2に及ぶという話だ。

 

「ふーん、同じ強さの奴にはかなり面倒な魔法だけどな」

 

 こうして会話している間にもモンスターは襲い掛かってくる。

 だが回数を重ねるうちにある程度知識と経験が合致して倒してから別のモンスターを倒すまでの一連の工程に無駄が省けて時間に余裕が生まれ始めた。

 もちろん戦闘の状況が常に同じとは限らないため自分の有利な形勢に運び敵を倒す。

 そして空いた時間に魔石を回収しながら再び魔物を倒す。

 

「なあミスト」

「なんだ?」

 

 戦っている場所が12階層から来てすぐの所にある広間(ルーム)のためダンジョンは牙を剥かず、比較的安全に戦っているとオリヴィアが退屈そうな声音で声をかけた。

 戦闘中に声をかけられたことに驚きながらもミストはオリヴィアに背中を預けた状態で広間(ルーム)左半分側から来るモンスターを一体たりとも逃さずに倒す。

 

「暇だからさ…トラップアイテム使うわ」

「…………は?」

 

 戦闘音しか存在しない静寂の中でようやくミストは疑問符を打った。

 トラップアイテム、オリヴィアが手に持っていたのはモンスターを誘き寄せるための道具(アイテム)でありその用法は狩りの効率を上げるための物であるため使い方を間違っているわけではない。

 ただしそれは用法の話であって、間違っているのは使い時の方であった。

 

「馬鹿!?」

 

 オリヴィアの手にはすでにそのトラップアイテムが握られているのだ。

 生々しい血肉が、一般人の感覚では決して美味そうなどとトチ狂った考えは抱かないような気持ちの悪い見た目をした肉塊が。

 ハッキリと分かる臭いに手遅れだと理解し、ポケットに入れていたハンカチ越しに肉塊を分捕るとミストはそれを離れた位置に投げつける。

 

「もう逃げらんねぇ!やるならせめて自分の方に来る数を少しでも減らすぞッ」

 

 悪態を吐くミストはレッグホルスターから精神力回復薬(マジック・ポーション)を無造作に数本取り出すと、一本を一気飲みしてから片手で剣を持ち居合切りの構えを取った。

 すぐに姿を現した大量のモンスターに、ミストは精神力(マインド)の七割ほどを費やして通路から溢れ出てきたモンスターに魔法を掛けて首を撥ね飛ばす。

 そしてすかさず左手に持っていた精神力回復薬(マジック・ポーション)をまとめて一気に飲むと再び取り出してはモンスターに魔法を掛けて倒して、飲んで倒してを繰り返すこと五回。

 足元には大量の小瓶が転がっていて、通路の入り口付近には地面を埋め尽くさんばかりの魔石が敷かれている。

 一度に三十余の魔石を散乱させ、それをはじめのを含めると六回行ったのだから魔石の数は半端ではない。

 

「そっちはどうだ?!」

「ん~?面倒ではあるけど楽しいぞ~」

「そうじゃねぇ!」

 

 この惨状の元凶が呑気に戦っていることに憤りを覚えながら残ったモンスターを自分の手で直接処理するミスト。

 いっそ面倒になってきたミストは、空いたままになっていた左手で襲い掛かってきたアルミラージを掴むとそれを通路の奥の闇に向かって全力で投げつけた。

 パァンと子気味の良い音を響かせて倒れたモンスターたちに快感を覚えたミストは現実逃避気味に両手でアルミラージを砲弾に変える作業に転じ、一時的に話を聞かない相棒に心を閉ざす。

 

「なんかアイツ、スゲェ戦い方してる……」

 

 師であるティオナの性格を無意識に模倣するミストの姿に感嘆を漏らすオリヴィアだったが、すでに心を閉ざしているため返事はなかった。   

 

 

「はぁ…はぁ…」

「クソッタレめ」

 

 ようやく戦闘が終わって平静に戻ったミストは返り血に濡れたグローブを外して魔石を回収する。

 戦闘に巻き込まれて砕けた魔石も多数あるためそう言ったものは放置して綺麗な状態の物だけ回収して容量を小さくする。

 

「ワッハッ…ハッハ……」

 

 戦闘狂(バトルジャンキー)なオリヴィアも流石に疲労が溜まっていて笑いながらも肩で息をしていた。

 ミストもミストでスキルの【誘導殺戮(ジェノサイド)】が自分で引き起こした状況じゃなかったため発動せず、同じことをするにしてもどうせなら自分の意思でやった方が楽だったという状況に余計な心的疲労が溜まっていた。

 

「オリヴィア…お前地上(うえ)に帰ったら一発殴らせろ」

「お、お前…容赦なくから遠慮するわ」

 

 高等回復薬(ハイポーション)で体力を回復した二人は魔石とドロップアイテムを回収し終えると地上に引き返す。

 北西メインストリートにあるギルド本部で換金すると前のインファント・ドラゴンの魔石分のヴァリスをオリヴィアに多く分配し、収入の分配を完了する。

 

「ミィシャさん、元気~?」

「ミスト君!?」

 

 最近顔を出していなかった影響でミストに声をかけられたミィシャは驚愕の声を上げる。

 

「生きてたの!?」

「はっはっは、殺すな殺すな」

 

 勝手に彼女の中で死んだ人判定にされていたことを茶化しながらほんの軽い手刀を頭に叩き込んだ。

 

「だって最近姿を見なかったし」

「いやぁ、昨日一昨日はミィシャ奥にいたしそれ以前の一週間は本拠(ホーム)で安静にしてたし」

 

 そう説明しながらミストがヴァリスの大量に入った亜麻色の袋を見せつける。

 怒っていて少し膨れっ面になっていたミィシャだったが、その袋を目にするとどんどん驚愕の表情に染まっていく。

 

「今日から中層に突入したんだけどさ~オリヴィアが無茶苦茶な奴だから今日だけで半端じゃない数と戦ったんだけどさ、その原因がトラップアイテムの使用っていうな」

「…え?はい?ちょっと聞き取れなかったんだけどさーはじめの方なんて言ったの?」

 

 聞き違いかな~、と苦笑しながら目を逸らしかけるミィシャは覚悟したようにミストを睨み殺すかのように見つめる。

 

「今日、中層、突入。分かった?」

「……なぁにをやってるの!キミィ!!まだ君Lv.1でしょうが!」

「あ、顔出してない間にランクアップしたよ」

「うそ…ちょっと待って?登録が大体8~9か月前でしょ?エイナの弟君ほどじゃないけど…それでも異常だよ!?しかも神会(デナトゥス)まであと少しじゃん!仕事が増えるよぉ……」

 

 そう言って項垂れるミィシャの頭を撫でて「大変だけど頑張って」と言うとミィシャは少し頬を赤くしながら「ありがと…でも君が原因だからね?」と怒り切れない様子でミストの手を掴むとお返しの嫌がらせだと言わんばかりに指を小刻みに動かしてくすぐる。

 

「くすぐったいからね?…まあ、ランクアップの時にはなんか書類作るんでしょ?それ作って今日は仕事終わっちまいな」

 

 少しふざけた態度でポーズを取る。

 そんな担当冒険者の姿に諦めたように溜め息を吐くと問題のミストを引き連れて防音機能のある面談ボックスでミストの活動記録を記録する。

 だがミストは自分とその相棒の異常さをよく理解していない。

 ミィシャに活動記録を聞かれて一か月間の特訓の後にダンジョンに潜りすぐにパーティ結成、その後は破天荒な相棒に振り回されるまま常人ならば絶対にやらない『瀕死のキラーアントを使った超高効率のキラーアント狩り』という頭のねじがまとめて十本くらい吹き飛んでいるかのような戦闘記録をさも当然のように淡々と述べ、そこから3か月ほど11、12階層で大型モンスターとの集団戦闘を繰り広げたのちにたったの二人で小竜(インファント・ドラゴン)と戦闘を繰り広げて、無事とはいかずとも勝利を収め、それでランクアップ。

 ほとんど使われることのなかった貯金とランクアップ直前のステイタスはハッキリ言って異常だ。

 

「これ、ほんと?」

「え、うん」

「…はぁぁぁぁ」

 

 一応その多くはLv.1に含まれる上層における事実上の階層主だが、それと少人数で交戦して勝ったという事実に思わず頭を抱えるミィシャ。

 その桜色の髪をかき回し「うあぁぁ」と小さく叫びながらその異常な戦闘歴を書き殴る。

 そして最後に大雑把な討伐数を書いてからテーブルをドンと叩いた。

 

「ミスト君、悩みの種の君には今度なにか奢って貰うよ……」

「それくらいならいつでも連れていくけど?金は使い道なくて余ってるし」

「ほんと?私はこんなに大変なのに金欠ですよ」

「…なんかごめんね?貯める以外に出来ることないし仕送りする人もいないから今度奢るときは好きなモノ言ってくれたらなんでも買ってあげるから……」

「ミィシャお姉さんは複雑な気持ちだなー、奢って貰えるのは嬉しいけど年下の子にされると少し……」

 

 そう言って項垂れるミィシャの声音からは疲労と情けなさの複雑な感情が感じ取れる。

 自分が原因なだけに何も言えないミストはミィシャが気を取り直すまで見守った。

 

 

「久しぶりだな、ミスト」

「ベートお兄ちゃん?どうしたの?」

「いや、特に用はねぇが見かけたから声かけただけだ」

 

 声をかけたベートの額にはさっきまで運動をしていたのか僅かに汗が滲んでいる。

 

「…ベートお兄ちゃんってランクアップした後ってどうやって強くなったの?」

「あぁ?Lv.2になった後の事を言ってんなら特別なことはしてねぇよ。ひたすら強さを求めて一人でダンジョン潜ってずっと戦ってたからな」

「そっか…僕も今日から中層に突入したけどこのまま戦ってたら強くなれるのかなぁ」

 

 ミストはこのままで大丈夫なのかと、今の緩んだような状態で『強く』なれるのかと少し遠い目になる。

 

「…お前がどの意味での『強さ』を求めてるのかは知らねぇし興味もねぇが、ランクアップするための『強さ』を求めてるんだったら迷わず突き進め、自分(てめぇ)で勝手に限界決めてねぇで自分(てめぇ)の殻を破れ」

 

 そんな抽象的なアドバイスを言い残して再び鍛錬に戻るベート。

 その姿に自分の能力が遠く及ばないことを改めて実感するミストは明日以降の予定を考えながら自室へ向かう。

 

「ミストか……」

 

 廊下を歩いているとなにやら考えごとをしながら歩いていたリヴェリアと出会った。

 ミストの存在に気が付いたリヴェリアは顔を上げると難しそうな表情から一転して普段の優しい雰囲気で微笑みながらミストの頭に触れる。

 

「あれから無茶はしてないか?」

「あそこまでの無茶はそうそうないよ」

 

 ランクアップするに至ったあの日の戦いほどの無謀が立て続けにあるわけがないと軽く笑い飛ばすミストだったが、それを聞いてリヴェリアの表情が少し険しいものになった。

 

「つまりある程度の無茶はしたという事だな?」

 

 冷たく硬い口調になったリヴェリアに藪蛇だったと後悔しながら少し怯えるミストにリヴェリアがさらに口調を荒げて頭に乗せた手に力を入れる。

 

「お前は私にどれだけ心配をかければ気が済むんだ」

 

 魔導士とはいえLv.は6のリヴェリアの握力は全力でなくともミストの『耐久』を貫通する程度には強かった。

 

「ご、ごめん…実は中層初日なのにトラップアイテムで長時間戦闘を……」

「なにをやっているんだお前は!!」

「いだだだだッ」

 

 より力の強まる手にミストの頭部がミシミシと悲鳴を上げる。

 軽い涙目で悲鳴を上げてると、不意に背後から声がかかった。

 

「あれ~?なにやってんの?二人とも」

 

 退屈で本拠(ホーム)の中を歩いていたティオナが二人に声をかけ、それに気が付いたリヴェリアはミストの頭から手を放す。

 

「ああ、ミストがランクアップしてすぐに中層に行ったばかりかそこでトラップアイテムを使ったと言うのでな…軽い罰を与えていたのだ」

「ほんとー?すごいじゃん!」

「そんな呑気な話ではない、下手をすれば死んでいたのだぞ?」

 

 呆れたように溜め息を吐きミストを睨みながらティオナに説明をする。

 その説明で理解したのかティオナがミストに話しかける。

 

「ミスト君。死んじゃやだよ?せっかくランクアップしたんだからさ~楽しまなくっちゃ!」

「う、うん、分かった。ごめんね?リヴェリアお姉ちゃんティオナお姉ちゃん」

 

 ティオナの言葉に反省したミストは素直に謝罪した。

 

「ミスト、死んでは何も残らないし死んでは何もできない。お前はまだ若いのだ、狭い世界で死ぬんじゃない。お前自身の目でまだ見ぬ新しい世界を見て、強くなって、生き続けろ。いいな?」

「ん~よく分からないけど…もっともっと強くなって自分の目でもっと深い階層に、まずは18階層の『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』を見る!そしていつか皆と同じくらいに強くなって、今度はリヴェリアお姉ちゃんも見たことのない世界を見せる!」

 

 ミストの言葉に二人はそれはいつの事だろうと苦笑しながらも期待するようにリヴェリアは微笑み、ティオナはミストを抱きしめた。

 

「お前がここまでたどり着く日を楽しみにしているぞ」

「頑張ってね~」

 

 そう言って二人は立ち去って行った。

 

 

「【鉄砲玉(ローラー)】?」

「【振回者(レギュレーター)?】」

 

 神会(デナトゥス)が終わり、二人の二つ名が命名された。

 ミストの二つ名は【振回者(レギュレーター)】、オリヴィアの二つ名が【鉄砲玉(ローラー)】だ。

 

「この二つ名は絶対お前のせいだ!オリヴィア!」

「な、なんでだよ!?」

「だって…『振り回される者』じゃん!しかも『レギュレーター』だから俺は完全にお前の『制御装置』って事だろ!?お前は無謀だから『鉄砲玉』で、いっつも俺の事振り回してるから『ローラー』で『転がす者』って事で俺は転がされてるってことだろ!」

 

 自分が振り回されていると思い知らされるあまりにもな二つ名に悲しくなるミスト。

 反論できないのか無言の後に謝るオリヴィアの態度に余計に心にダメージを受ける。

 

「まあなんだ、次のランクアップの時にカッコいい二つ名が貰えるといいな……」

 

 そんなオリヴィアの慰めの言葉にミストは苦笑することしかできなかった。 

 




 ふっ、ミストはアホよのう(それ書いてんのオメェだけどな)
 いいじゃん、ちんたらしてたら話進まないんだもん!(それで魔法を持たせた結果強すぎん?とか闇過ぎん?てな感じの感想来てるんだが?)
 え~いいじゃん!そもそも他人の感覚を操ることがどれだけミストに負担掛かるか分かるだろ?俺たちだって自分一人の感覚を十分に処理できてないのに単純に考えたらその負担が倍になるんだからさぁ(だったらそれを描写しろよ。不自然だって文句来てるぞ?)
 いやぁ、分かるっしょ?全体に幻覚を施すような実的な幻と違って対象を絞った虚的な幻って言ってるんだぞ?難易度的には複数枚のレイヤーの中の一枚をガッツリ修正するのと一枚のレイヤーを修正するの位違うから!(その例え分かんねえよ)
 えっと……普通ね、デジタルイラストを描くときは複数のレイヤー《紙みたいな認識でおk》にそれぞれ髪の毛とか目とか口とか服とか背景とか、それぞれ分けて書くのよ。それでもって一部一部の――例えば目の角度とかを変えたりするのよ(うん、これに関してはゲーム作ってるやつでも分かるね)
 それに対して一枚のレイヤーっていうのは、そのまんまでキャンバスに絵を描く感覚っていうか…目を修正しようと思っても簡単には修正できないのよ。目の部分を全体的に書き換える必要があるからね(なるほど?)

 閑話休題(それはさておき)、あ~このまま終わったら好きなヒロインを全然出せずに終わるぅ(じゃあ、続ければ?)
 だ~か~ら~!モチベが上がんないの!読まれない作品書いても意味ないでしょ?文章とストーリーがクソだってことなんだからさぁ(辞めたら?この仕事)
 仕事?…止めていいなら止めるよ?俺(そ、それは止めるんだ)
 どっちだよ……現実から目を背けるほど弱くはないが流石に辛い(へぇ?ガラスのハートはガラスのハートでも防弾ガラス製のハートを持つ君がねぇ?)
 熱疲労ってやつさぁ。面白いと思って投稿した作品が思ったよりも評価が低くて…高温と化した俺の心が急激に冷却されて破壊されたの(面白いと思ってたんだ)
 思ってたよ!むしろ小説書いてて自分で面白いと思わずに、自分の小説に一ミリも自信がないで出す奴はいないから!(ほ~ん、そういうもん?)
 そう!(はいはい)
 やめた~い(失踪する可能性は?)
 ……三万円のカーペットに、ジャムを塗ったパンがジャムを塗った面を下にして落ちる確率くらい?(つまり微妙なラインってことね…ていうかそれってバターだろ?)
 細けぇこたぁいいんだよ!バターよりもジャムの方がベタベタしててイヤじゃん(そうね)


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第一三話 デート?

 気にしたらキリがないことは分かってるけど……やっぱりほぼ同時期に投稿しているのに自分よりも圧倒的に評価が上の作品を見ると、実力の差が思い知らされるなぁ(お前は批評がすごい!アドバイスをくれたり確認してくてる人もいるけどさぁ)
 理解しちゃいけない感情なのに、『才能』という言葉に逃げる人間の気持ちが少し分かる(…そっちの世界に行くのはやめとけ)
 分かってる、これが「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ」っていう状況なのは分かるがそれでもやっぱり違いが歴然でさ、辛いよぉ(このところ前書き後書きがこんな内容ばっかだもんな)
 もはや18階層にたどり着きました、まる。でいいんじゃね?(やめたきゃやめれば?どうせ読んでる人いないし、むしろいたとしても全員ストレス感じてるだけだろうし……)
 あ~あ~、もうそ~してやろうかな~(続ける気力も止める根性もない奴だ)


「改めてランクアップおめでとー、ミスト君」

「ああ、ミィシャも色々頑張ってくれてありがとうな」

 

 高級住宅街から少し離れた位置にある酒場でミストとミィシャは二人で麦酒(エール)を飲んでいた。

 少し前に交わした約束を違わずにオリヴィアの同意を得て探索を早めに切り上げたミストは珍しく仕事を定時で終わらせたミィシャとともに街を巡ったのち、この酒場へと最終的にたどり着いた。

 …まあ、珍しくと言ったもののその前日にミストから今日の予定を聞かされていたため普段の何倍ものやる気で仕事を素早く終わらせ、定時になったことを確認すると「フロット、少しいいか?」という上司の言葉の半ばで強引に「今日は定時で帰りまーす」と割り込んでギルドを飛び出しただけなのだが。

 

「私ってなにかしたっけ?」

「ほら、パーティ申請者の情報をまとめたりさ、色々やってくれただろ」

「ああ!でも結局全部断ってたよねー」

 

 オリヴィアとパーティを組んでからも引き続きミィシャに新メンバーを見繕ってもらっていたのだが、中々ミストの御眼鏡に叶う者はいなかったため今もなお二人でパーティを組んでいる。

 少なくとも今は後衛やサポーターを欲しているのだが、申請の大多数が純前衛の者たちばかりのためそれは仕方のないことだった。

 

「欲しい人材が来ないんだから仕方ないだろ……なんであんな見事なまでに前衛しか来ないんだ?」

「あ~そもそも後衛の人やサポーターの人が一人でランクアップするのはほぼ不可能だからね」

 

 既にほろ酔い状態なのか顔色がその髪に近づいていた。

 

「ハッキリ言ってミスト君は何も知らなさすぎじゃない?なんで後衛の人はどんな好条件でも断るのかなぁって思ってたら…知らなかっただけなのね~」

「言われてみればそうだな……」

 

 その様子に気が付かないミストはミィシャの言葉に納得し、頭を抱える。

 申請の大多数に属さない、つまり純前衛以外の後衛とサポーターをいままで全て弾いていたのは相手のLv.が2に達していなかったからだ。

 だがランクアップを果たした者がそれまで属していたパーティから簡単に脱退するとは考えにくい、むしろそれ以上の『冒険』を望むのならばそのまま属している方が効率的でサポーターとて長い付き合いがあり収入を見込めるパーティから進んで抜けるとは考えられない。

 むしろそれがランクアップしたサポーターであるのならばそのパーティの冒険者たちも先を見据えるのならば離すまいとするだろう。

 

「ミスト君はぁ、勉強して教えることがほとんどないくせにそういう常識面がダメだよぉ」

「あはは、面目ない」

 

 考えたらすぐ分かる単純なことに気づけなかったあまりミストは恥ずかしさで思わず顔を俯かせながら酒をちみちみと飲む。

 そんなミストの頬に、ほろ酔いどころか完全に酔ったミィシャの手が伸びて餅のように引っ張った。

 

「アハハぁ、面白い顔~」

「あんたがやったんでしょうに」

「そうだねぇ……でも、その反省を生かして今後はもっと励みなさぁぁぁい」

 

 脈絡の断続さを不審に思ったミストが顔を上げた時には既にミィシャの顔色は桜色を通り越して真っ赤になっていた。

 あまりの顔の赤さにミストが熱でもあるのではないかと心配をしてミィシャの前髪を上げると頬をくっつけた。

 

「ふにゅぅぅぅぅう」

 

 はじめはきょとんとしていたミィシャだったが、状況を理解するとさらに顔を赤く染め上げて奇妙な声を発しながら後ろへ倒れていったが超至近距離にいたミストが抱き寄せるようにミィシャの体を引き寄せて床との衝突を未然に防いだ。

 

「み、ミィシャさん!?ど、どうしたの!?」

「やばい!フロットが気絶した!」

「フロット…情けないッ」

「え?!な、なんであなたたちが!?」

 

 倒れたミィシャを心配そうに覗き込むと背後から見知った犬人(シアンスロープ)の男性が叫び、オリヴィアの髪色とは正反対の赤い長髪のこれまた見知った狼人(ウェアウルフ)の女性がやれやれといった様子でため息を吐き、ミストはそれに驚愕の声を上げた。

 何を隠そう彼らはミィシャの同僚、つまりはギルド職員なのであった。

 

「あ、あなたたち付き合ってたんですね!…って、そうじゃなくて!ミィシャさんが急に倒れて!!」

「「それはない」」

「ここはギルドが推奨している酒場だから職員がよく訪れるのだ…それにしても確かになぜフロットは突然倒れたのだ?酒に弱いことは知っていたがそれにしては不自然だ…」

「あ~はいはい、男は黙ってましょうね~」

 

 赤髪の狼人(ウェアウルフ)の女性――ローズに言われ、思わず反射的に口を噤みながら周囲を見回すと確かに見知った無表情のエルフの女性や薄い紫色の長髪を持ったエルフの女性の姿が目に入る。

 

「ギルド推奨の酒場とはいえ、デートするなら私たちの目の届かないところに行きなさいよ……あら、鼓動がかなり早いわね」

 

 なぜかミィシャの脈を計ったローズはニヤニヤしながらそう呟いた。

 

「えッ!?今日のこれって……デートだったのぉ?!」

 

 ローズの言葉にミストは再び驚愕し、口を噤むことも忘れて叫び声を解き放つ。

 そしてそんなミストの驚愕の声に周囲の視線、主に女性の視線が一気に集中した上でミストに向けた溜め息が合唱された。

 

「春が来たかと思えば……フロット、あんたの春はこんなんで良いの?」

 

 状況を理解できないミストは情けなくオロオロと首を左右に振りながら周囲の視線が自分に向いていることを理解して逃げるように視線をミィシャに戻す。

 

「あ~グリージョ君、だっけ?フロットの面倒は私たちが見るからさ、今日は帰っていいよ」

「え?で、でも…」

「いいから!君がいると起きた時が面倒だから!」

「ええ~……分かりました、ではこれを」

 

 そう言ってミィシャの体をローズに任せると、所持金を全て机の上に乗せた。

 

「これ、僕らの飲んだ代金と皆さんへの迷惑料です。では……」

「ちょッ!?多いわよ!」

 

 そんなローズの驚愕の声も耳に入らないままミストはトボトボと夜道を帰った。

 

 

「ギルドの仕事、そんなに大変なのかなぁ。今日のために無理させちゃったな……」




 はいは~い。ミストは意図していないデートのお時間が終了しましたよ~(そま?)
 ま!作者もデートの概念が分かってないけどね(あれだ、血のつながりのない男女が二人で出かけたらデートだ)
 ふ~ん。つまりは初期一か月の時に描写外でリヴェリアと出かけてたのもデートか?(それは街の相場を教えるためだろ?)
 いや、それもあるけど普通に昼食を食べたり(それは…ロキを介して血のつながりが……いやそれは関係ないか。じゃあデートかな?)
 この主人公…すけこましか?(てめぇの書いたキャラだろ)
 やーねー。こんな面倒なキャラ。作者とは違ったベクトルで一般的な人間味がないじゃん(今更感)
 ほんと面倒だわ(ね~?)


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第一四話 野蛮少女オリヴィア

 とりあえず書きたいものを書くことにするわ(お?方針決まったのね)
 いや、うん、まあ…その時のテンションで書くよ(あ~絶対ロクな内容にならんな)
 それは出来てからのお楽しみ(精々高みの見物させてもらうよ)
 お前俺と同じ底辺ランクだろうが(自分より下のお前を見て笑ってやる)


 俺たちは今、15階層で戦っている。

 マップの把握は知識として済んでいるからそこまで詳細に階層を巡る必要もなく、大雑把に探索するだけで済むからすぐに次の階層へ降りることが出来て移動距離を短縮して次の階層に早く進めて楽だ。

 だが、中層はその地形の特性上広間(ルーム)以外で遭遇した場合の戦闘は非情にやり辛くもある。

 何せ中層は何も知らずに連れて来られたら天然の洞窟かと勘違いするほどに洞窟感にあふれている。

 

「硬ぇよこんちくしょう!」

「大剣が使い辛いからって素手で真正面から挑む馬鹿がどこにいる!魔法を使え魔法を!」

「ミスト!目の前の奴を見ろ!その馬鹿がいるじゃないか!つまりは私だ!!」

 

 そんなこんなで通路でミノタウロスと遭遇した俺たちは武器を振り回しづらい状況で戦う羽目となり、オリヴィアは動きが縦方向に制限されて窮屈だという理由で大剣を戻して肉弾戦を挑んでいた。

 簡単に説明するならば、『拳、もしくは天然武器(ネイチャーウェポン)である石大剣を避ける』『懐に潜る』『軽く跳躍して角を握る』『その状態で全力膝蹴りをして両角を折る』『その角を使って魔石を砕く』の五工程で全てのミノタウロスを倒している。

 俺は剣を貸すからそれで戦えと言っているのだが、オリヴィアは言う事を聞かずに狂戦士(バーサーカー)のような満面の恐ろしい笑顔で戦っていた。

 

「この馬鹿野郎め!……いや、女だから馬鹿女郎か?」

「知るか!言葉なぞ伝わりゃいいだろ!」

 

 ギャアギャアと喧しく戦いながら俺は戦闘にしか興味のない馬鹿を誘導して上階へ向かう階段へと誘導する。

 

「おいミスト、この階段上に向かってるぞ?」

「ああ、安全第一だからな。」

「え~、私はまだ戦い足りないぞ~」

「中層を侮って死にたくなけりゃ黙ってついてこい」

 

 そう言い聞かせるが、未だに不満そうなオリヴィアは何度もワザとらしい溜め息を吐いて気を惹こうとしてくる。

 はじめは俺も無視をしていたが、流石に十数回も聞かされると堪ったもんじゃないから階段を上りながらオリヴィアに尋ねた。

 

「…お前は今下の階層に行ってゴライアスに勝てると思ってるのか?」

「さぁ?勝てるんじゃねえの?」

「言っとくがゴライアスはLv.4相当の実力だ。Lv.を1つ分引っ繰り返せる冒険者は二人ほど知っているが2つ分は上級冒険者でも無理だ」

 

 一人は同派閥(うち)の【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。

 もう一人は俺たちと同時期にランクアップしながら俺たちよりも異常な速度でランクアップを果たしたという少年だ。

 一人は階層主と、もう一人は冒険差の大剣を使うミノタウロスと戦って勝利した。

 どちらも冒険者の実力で換算するとLv.が一つ上のモンスターと戦ったと言うが、どちらもそれで『冒険』をした、つまりは途方もない鍛錬を重ねてようやく勝てたのだ。

 決して俺たちのような気の緩んだ冒険者が出来るような『偉業』ではない。

 

「……分かった」

 

 そう説明すると自分の実力をちゃんと把握できているのかオリヴィアは不満な雰囲気を放つのを止めておとなしく着いて来るようになった。

 

「ちなみに俺たちが倒したインファント・ドラゴン。アイツはLv.1の奴らしい」

「へぇ~、どういうことだ?」

「つまり!Lv.1の冒険者が倒せる分類のモンスター相手に二人係で挑んで、瀕死になってってこと!ステイタスがあっても実力不足だったって事なの!」

 

 上級冒険者に教えて貰っておいて情けのない話だが、あれは俺たちの『強さ』でランクアップをしたんじゃない。

 あれは、俺たちの『弱さ』でランクアップをしたのだ。

 実力が足りないところを気合だの根性だのでゴリ押しした結果ようやく勝てただけ。

 それは強さではない。いつでも引き出すことの出来る実力を『強さ』と言うのだから、決して強さとは違う。

 瀕死になってリミッターが外れて引き出せる力に頼っているうちは恐らく三流だと罵られるだろう。

 

「そっか……私もお前も、まだまだ弱いな」

「ああ、だから弱いうちは無茶してんじゃねえ。ウチの先輩も似たようなこと言ってたからな」

「まじかぁ、頑張んねえとな……」

 

 ランクアップしてからのステイタスの上昇値はLv.1の時に比べると圧倒的に悪くなっている。

 10や20の上昇を果たすにも数回の探索が、アビリティによっては十回ほどの探索をしなければ上がらないほどに成長率が悪くなっているのだ。

 初日のように意図的にモンスターを呼び寄せて長時間の戦闘を繰り返せば多少マシにはなるが、勝てる相手を選んで戦闘を仕掛けてもステイタスの上がりは良くないだろう。

 やるならもっと深い層に行くしかないが下の層にはライガーファングなんかの凶悪なモンスターが出現するから深入りは出来ない。

 だから今後は下の階層に行きつつこれまでよりも気を引き締めて慎重に進むことになるだろう。

 

 

「やっぱり上層と違って中層まで来ると他の冒険者の姿がかなり少ないから楽でいいな」

「その分上層と違ってモンスターを押し付けられることがあるって話だがな……」

 

 ランクアップしても上層と同じように探索を進められると思っていた俺たちだったが、しばらく探索するうちにそれも思い上がりだったと思い知らされた。

 俺たちのステイタスの評価は大体がG~Fだったからひょっとしたらすぐに行けるかもしれないと調子に乗ってガンガン進んでたら、物量に押し負けて体力が尽きて危ない所を助けて貰った記憶は割と新しい。

 その人には「お前たちは猪か」と呆れられた。

 引き際を知らなかった俺たちを揶揄しただろうその言葉だったが所見時は説得力がなかった。

 なぜならそう言った彼女は何も荷物を持たずにダンジョンを歩いていたから、武器もなにも持たず防具もロクに着ずにただの服のみその身一つでいた。

 まあ、そんな俺たちの突っ込みと心配の混ざった感情は彼女の桁外れの強さに、文字通り目にも止まらぬ強さに吹き飛んだのだが。

 

「このまま戦っててもキリ無いから逃げるぞ!」

「了解!っと」

 

 オリヴィアの指示に従って空いた通路に逃げ込みながら天井に向けて通路の大き目の石を投げつけて軽い崩落を起こして追っ手を振り切りながら別の広間(ルーム)に逃げ込む。

 逃げ込んだ先で強臭袋(モルブル)を使ってモンスターが近づいてくるのを抑えながら鼻を抑えつつの休憩を取る。

 

「いい加減下の階層に行きてぇな」

「ステイタス的には行けるんだろうけど……数日戻らないくらいだったら事前にそうなる可能性を言ってるから大丈夫だけど」

「私も大丈夫だ。ゴライアスも倒されてるから走り抜けたら18階層には行けるな」

 

 それじゃあ行くかと正規ルートを最短で駆け抜けて、モンスターには目もくれずに嘆きの大壁を通り抜けた。

 

「まっぶしいな……」

「目がよく見えねぇ」

 

 到着した時間だと18階層は朝だったようで空から降り注ぐ水晶の光が暗所に慣れた俺たちの視界を真っ白に染め上げる。

 だけど周囲の匂いや音などは感じられるからそれだけでここが規格外の場所だという事が分かる。

 

「目が慣れてきた……」

「知識では知っていたけど…実際目にするとスゲェな」

 

 まるで地上のような、陽光を彷彿とさせるはるか遠くの天井からの光に感銘を受けながらこれまでの階層では想像が出来ないダンジョンに植物が生えている光景を目にしながらその既知外に足を踏み入れた。

 夢ではない、足に伝わってくる確かな草の感触に驚愕しながら森の中を歩き回る。

 

「ここって確か食える植物生えてんだっけ?」

「ああ、色々あるらしいな」

「ちょっと食ってくるわ!二時間後にさっきの入り口で!」

「あ、おい!」

 

 止める間もなく木々に隠れるように走り抜けていったオリヴィアに取り残された俺はなで肩になりながら森を抜けた先の湖で顔に付いた血糊を洗い落とす。

 

「結構攻撃受けてたんだな……」

 

 戦闘の興奮で顔に攻撃を受けていたことに気づいていなかった俺だが、湖の冷たい水が傷口を看過させずに刺すような痛みを伴って教えてきた。

 ひょっとしたらさっき洗い落とした血はモンスターの返り血ではなく自分の血だったのかもしれないと思い出しながら荷物の中から無地の真っ白なハンカチを取り出して顔の水分を拭き取る。

 

「思った以上にキツイな、中層ってのは」

 

 体力回復薬(ポーション)を呷って傷を塞ぎながらそんなことを呟いていると湖を回った先に人影を見つける。

 

「不用心だな…」

 

 その人影がいったい誰なのかはよく見えないが、その人物が横になって寝ていることは分かった。

 呆れて思わず近づいてみるとその人影の正体を理解して余計俺は呆れた。

 

「この人は一体何をしているんだ……」

 

 人影の正体は見知った赤い短髪のヒューマンだった。

 これまで数回ダンジョン内で遭遇して、名前は知らないが途轍もなく強い冒険者だという事だけは知っている荷物を一切持たない女性冒険者。

 初めて会ったときは危ない所を助けられてお礼を言ったところで「礼をするというのなら魔石を寄越せ」と言ってきたから印象としては割と強い人物だ。

 

「この人が強いのは知ってるしここらの魔物じゃこの人を傷つけられないのは知ってるけど……女の人が無用人過ぎるだろうに」

 

 俺もこの一年弱で『一般的な人間の感覚』と言うモノが分かってきた。

 だから分かる。この人は美人と呼ばれる部類で、一般的な男の人がこの人の大きな胸に惹かれるという事が。

 

「この人は…襲われたらどうすんだか」

「なんだ?お前は私を襲うのか?」

 

 呆れてそう呟いたところで五月蠅くしていたのかこの人が起きてしまった。

 

「あなたは美人なんですから、少しは用心してください」

「私のような化物に欲情する男がいるとはあまり思えんがな…それに私を襲うとしたら別の意味だろう」

「…あまり自分の事を悪く言うもんじゃありませんよ。あなたは化物じゃありません、化物だったら俺たちを助けてくれなかったでしょう?」

「……お前の感覚はおかしいな」

 

 話の全容はよく分からないから俺は理解できた内容から俺が思ったことを正直に言った。

 するとその人は馬鹿にしたようにそう言ったが少し楽しそうにも見えた。

 

「えぇ、えぇ、おかしくて結構です。自分が慕っている人の事を化物だ何だと馬鹿にされて笑えるほど情けない人間じゃないんでね」

「くくッ、そうか…お前は私の事が好きなのか」

「もちろんです。俺はあなたの事が大好きです。じゃなかったら話しかけませんよ」

「……少し揶揄ったつもりだったが、お前は少し素直すぎるな。そのセリフは私以外の人間、特に女には言うなよ?絶対に誤解を生むだろうからな」

 

 好きかと聞かれたから素直に好きだと言ったらなぜか怒られた。

 そういえば一般的には思った事はそのままは伝えずに少し変化球気味に伝えると聞いたことがある。

 

「…べ、別にアンタの事なんか好きでも何でもないんだからねッ。か、勘違いしないでよね!」

「……頭でも打ったのか?」

「いえ、一般的にはこうするのが正解と聞いたことがあったので」

「私も一般常識には疎いが…それだけは違う。断言してやる」

 

 どうやら正解ではなかったらしい。

 以前街中で誰かが言っていた言葉を引用してみたのだが…なぜか呆れられてしまった。

 

「感情の表現方法がよく分からないので、好きだという感情を表現する方法を試してみてもいいですか?」

「……オチが読めた。お前は絶対私に抱き着くつもりだろう?」

 

 ば、バレてしまった。

 どうやら好意の感情表現に抱き着く行動は不適切らしい。

 参考にした対象が街にいた親子だったのがダメなのだろうか?では街中の恋人たちを参考にしてみよう。

 

「…なにをしている?」

「何って。抱き着くのがダメだと言われたので街中で見た恋人同士を参考に手を握ってみました」

「まあ、それならいいのか?……いいのか?」

 

 何度も悩んで首を傾げるその人に俺はとりあえず落ち着くようにと頭を撫でてみた。

 

「今度は一体なんだ?」

「ファミリアの先輩によくやられることをしています。これをされるとなぜか落ち着くので」

「お前は本当に何も知らない人間だな」

 

 またしても呆れられてしまった。

 おかしい…はじめは俺の方が呆れていたはずなのに、今は立場が逆転して俺が呆れられているではないか。

 どうしてこうなったのだろう?

 

「……はぁ。どう育ったらお前のような人間が生まれるんだか」

「それは…内緒です」

「なぜ今仕草を女のようにしたのか理由も分からん」

 

 やはり行動の参考対象を女の人にするのはダメだったようだ。

 戦闘に関してもティオナお姉ちゃんを参考にしていたからついそのまま女の人を参考にする傾向があったらしいな。

 

「俺って常識面では多分オラリオ内で一番疎いんですよ~。だから皆を参考にして頑張ってるんですけど…やっぱりダメみたいですね」

「確かにお前は常識面がかなり弱いな。そもそも得体の知れない私のような奴に進んで声をかけている時点で分かってはいたことだが」

「だって初めて出会った時に名前を聞いても教えてくれなかったじゃないですか」

「それは暗に『関わるな』と言っていたに過ぎん。なのにお前と来たら……」

「そんな言外に言われても分かりませんよーだ。言いたいことがあるならハッキリ言ってくれないと伝わりませんのでね」

 

 人と接した経験が圧倒的に少ない俺は察しろと言われたところでそんな高度な技術は持ち合わせていないのだ。

 だからそもそも前提が間違っている。

 察する能力のない人間に察しろと言うのは蟻を落下死させろと言うくらいに無理難題である。

 

「はぁ……それで?私に何の用だ」

「いえ、不用心だったので気になって近づいただけです」

「お前はいつか大きなトラブルに首を突っ込みそうだな?」

「そんなことないですよ。俺は平和主義者です」

 

 俺が正直にヘラヘラとしながら答えると、その人ははぁ?と耳を疑ったように漏らすと気を紛らわせるように首筋を掻いた。

 

「あのな……迫りくるモンスターの大軍を嬉々とした表情で、しかも二人だけで、倒す奴は平和主義者とは言わん。それは一種の異常者、戦闘狂(バトルジャンキー)だ」

「なん…だと……!」

「出会う度にお前たちは楽しそうに戦ってやがる…どう考えても狂ってるだろ」

 

 俺もオリヴィアに毒されて来ているのか?それとも元々俺にはそういう素質があったのか?

 どちらにしても俺は一般から逸脱した感じになっているのかもしれない。

 

「ま、いっか!」

「開き直るのか……と言うか少し前まで15階層で危なくなってた奴にしてはここにたどり着くのが早いな」

「ん?ああ、ひたすら走り抜けてきた」

 

 戦闘の大半を回避してたどり着くためだけに階層を降りてきたことを伝えると、その人は納得したような眼差しになると一瞬俺たちの降りてきた通路のほうに視線を向けた。

 

「お前たちは今日中に帰るのか?」

 

 静寂の中で湖を眺めて呆けていると突然思い出したように声が掛かる。

 

「どうでしょう?もう一人の方がひょっとしたら街を見たいと言うかもしれませんし……でもどうして?」

「明日になればちょうど二週間、次産間隔(インターバル)はそれ前後だから早くしないとゴライアスが再出現する。そうなれば討伐されるまでは帰れなくなるぞ?」

「そっか!行きの事しか考えてなかったけど早くいかないとそうなるのか!」

 

 思わずそう叫ぶと計画性の無さに呆れられてしまった。

 そうなると早めに戻りたいのが本音なのだけどもオリヴィアの体内時計は当てにならない。特に何かに熱中した後の感覚はかなりズレている。

 

「どうする?お前もゴライアスと戦うか?」

「え!?そんな俺が戦えるわけないですよ?」

 

 突然飛んできた予想外の言葉に反応が一瞬遅れながら当然のことを告げる。

 俺たちがランクアップしてからそこまでの時間は流れていない。

 ステイタスで言えば少しは成長しているのだがLv.2として身につけるべき技術を一切と言っても過言ではないほど身につけていないのだ。

 これはある意味短期間でLv.2になった弊害ともいえるだろう。

 序盤での成長が早かった分その頃に経験しておくべき苦労や困難を負っていないから冒険者としての経験がかなり浅いのだ。そんな俺たちが階層主に勝てるわけがない。

 

「勝てずとも戦うくらいはしてみたらどうだ?お前も冒険者だろう、自分の居場所を勝手に決める前に出来ることは全てやっておくべきだ」

「そ、そうですけど…死んだら意味ないでしょうが」

 

 俺たちは基礎工事の時点で失敗をしてしまったのだ。

 基礎工事の時点で失敗してしまった以上、その地盤の上に小さい家を建てることは出来ても上級冒険者と言う巨大な城を建てることはできない。

 俺たちは結局そこ止まりの冒険者で終わる可能性が高いだろう。

 

「それで?お前は勝手に限界を決めて、それで満足なのか?」

 

 命の恩人ではあるが彼女の言葉は――酷く腹が立った。

 俺たちの失敗など一つも知らない癖に上から目線でモノを言って…俺からしてみれば非常に不愉快だ。

 

「……いいワケないでしょ!俺だって出来るなら冒険者として…いつかあの人たちの隣に立てるくらいに強く!あの人たちと冒険がしたい!だけど俺じゃ無理なんだよ!…いくらでも罵れよ!分かってたことだ、俺には才能がないんだよ!根性も何もなくて、こうして自分を偽らなくちゃ満足にやって行けないんだよ!」

「答えは出ているはずだ…」

 

 だけど彼女のその言葉は、酷く俺の胸に突き刺さった。

 だから俺は子どものように叫んで、喚き散らして、正論を突き付けられた幼い子どものように駄々をこねるように現実から目を背ける。だけど彼女はそんな俺を見放すことなくより突き刺さる正論を突き付ける。

 

「『強くなりたい』?なら強くなればいい。『根性がない』?お前の根性は私自身のこの目で幾度となく見てきたぞ。私はお前の事を知らんし聞く気もないがお前の望みを叶えたいのなら意地でも食らいつけ。みっともなくてもそれで結果を出せばお前の勝ちだろうが」

 

 淡々と刃を突き立てられる。

 心がボロボロに切り刻まれる。

 

「お前が望むのならば……使えるものは全て使え、お前が望めば私は力を貸してやろう」

 

 止めてくれ…そんな希望を僕に見せないでくれ……

 縋りたくなる。手を掴みたくなる。希望を目指して突き放されるのは嫌なんだ。

 だからそんな言葉(やさしさ)を俺に向けないでくれ。

 

「…本当に手を取っても良いのか?」

 

 そんな思い(うわべ)とは裏腹に(こころ)がその手に縋りつこうとしている。

 本心が認めたというのだろうか。

 この人なら僕を引っ張り上げてくれると。希望を現実のものとしてくれると。

 

「ああ、私の手を取れ。今日中にその根性を圧し折って強くして帰してやる」

「こんな僕だけど…よろしく頼むよ」

「当然だ、私が責任もって育ててやる。たとえ死にかけても私が地獄の底まで迎えに行ってお前の理想にたどり着けるまでキッチリ育て上げることを約束しよう」

 

 こうして理想を選んだ。

 一般からするとこんな理想論は唾棄されるだろう。だけども僕は理想とともに強くなる。

 元々一般とは程遠い人間だったんだ、だったらいっそのこと思いっきり逸脱した存在で突き進んで行こう。

 

「これからよろしく、師匠。僕はミスト・グリージョです」

「レヴィスだ、敬称は要らん」

 

 驚くほどに強くて、僕以上に正直なレヴィスはただ一言「死ぬなよ」と言って拳を構えた。




 あ~うん、とりあえず原作ルートからは外れたな(そうね、君悪役だろうと好きよね)
 おうとも!作者的には「どんな性格だろうとそれに至った理由がある」っていうのと「善悪は一方的な感覚に過ぎない」というのがあるから悪役でも好きになる時はすきになる(悪役にも感情移入できるタイプよね)
 悪役だから嫌いと言うのはおかしい、それに気付いたのはいつだったかは忘れたけれども今でも印象的な悪役は「ゾルフ・J・キンブリー」だよね(彼は悪の美学を持ってたもの)
 そそ、ネタ枠では通じるかは分からんが「新島春男」が割と好き(あの宇宙人は悪役と言うかただの悪友だけどね)
 …話を戻すが、ここからは引き返せませんなぁ(頑張りたまへ)


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第一五話 迷宮訓練

 レヴィスさん良いよね~?(お主好きよのう)
 あの冷たい目で見下されたい!(へ、変態…あ!周知の事実だった)
 まあ、本音は五月蠅くないからだけどね~(キミって基本ボッチだから周囲の音量がデカすぎると胃にダメージ来るもんね)
 場合によっては腹も下す(うわ、汚い)
 出してねぇよ、腸が唸るだけだもん(さいですか)


「ぐあッ!」

 

 反射的に拳を構えると同時に左脇腹に強い衝撃が走った。

 痛みを感じる前に木と衝突し、そのまま顎が砕かれたんじゃないかと錯覚するほどの蹴りが放たれる。

 

「死にたくなければ本能を呼び起こせ。感覚で敵を対処しろ」

 

 顔面を殴られる直前にそんな指示が下された。

 だから僕は全力で防御に徹した。

 このままでは攻めるなど到底不可能だから、ステイタスも直感も動員して動きを見ることに集中する。

 

「そうだ、目に頼るな。自分の領域を決めてそこに入ってきた外敵を打ち払え」

 

 視覚に頼っていたら不意打ちを防げない。

 今こうして攻撃を受けている間にも正面にいたはずなのに突然背後から攻撃が飛んでくる。

 たとえ木で背後を埋めてもレヴィスは平然とその守りごと貫通して攻撃してくるのだ。

 

「音を聞け、気配を感じろ」

 

 目つぶしで一時的に視覚を奪われる。

 これではレヴィスの姿どころか地形すらわかったものではない。

 

「風の音、草の音、水の音、土を踏みしめる音すべての音から状況を判断しろ」

 

 そうは言われても一朝一夕で習得できるほど簡単な技術ではない。

 だけどこの人は僕が出来ると信じて戦っている、むしろ信じているのではなく出来なかったら死ぬ状況に陥らせるのかもしれない。

 

「でき…る…かよッ」

「ほう?喋るだけの無駄な元気はありそうだな」

 

 顎に掌底がモロに入った。

 そのまま肘が左首筋に入って思わず腰を落とす。

 だけどそんなことは許されずに膝が落ちかけたところで膝が鳩尾に入れられて思わず腰を浮かせながら後退。

 さらに下半身に連続して蹴りを入れられる。

 

「はじめに言った事を思い出せ。死にたくなければ本能を使う事だ」

 

 連続して攻撃が入れられる中で防御のための右腕にレヴィスの左脚が当たった。

 もちろん当たって防げるほど甘くはなく、当たったことを承知で右腕への圧力が強まる。

 このまま受け続けると骨折しかねないから上半身を倒しながら右腕の角度を変えてそのままレヴィスの体勢を崩して左腕で宙に浮いたレヴィスの脚を掴んで攻撃を封じながら右手刀をレヴィスの首に向かって振り下ろした。

 

「甘い」

 

 左脚を抑えて攻撃を封じたにもかかわらず、レヴィスは残った右脚で跳躍するとともにその足で頬に回し蹴りを入れることで僕を倒した。

 

「ま、マジか…勝ったと思ったのに」

「ふん、あの程度抑えた内には入らんわ。やるなら徹底的にやれ」

「りょ、了解です」

 

 そう返事をするとレヴィスは再び立ち上がってやるぞとばかりに催促してくる。

 倒れている状態で襲われては堪ったもんじゃないから急いで立ち上がってレヴィスに流れを作れれる前に自分から動いて自分の有利な地形と状態で攻撃を待つ。

 

「そうだ。自分が相手よりも劣っているときは少しでも自分の有利な状況を作れ」

 

 平たい地形を選んだからさっきの根ばかりの場所よりも断然戦いやすい。

 

「だがそういう状況に持ち込ませて貰えると思うな。そうはいかないのが普通だ」

 

 撃たれた腕を迎えてそのままレヴィスを湖に落とそうとするも逆に反対の腕で後頭部を殴られて落とされる。

 こけるように前に倒れかけたところを前に回りがら体を反転させることで隙を減らしつつ速攻で攻撃を仕掛けて有利な状況への回復を試みた。

 

「攻撃しろ。相手にダメージを与えるのみが攻撃の意味ではない、形成の操作も攻撃によって可能だ」

 

 辛うじてでレヴィスの攻撃を捌きながら時折攻撃を仕掛けてみるも一向に状況は良くならない。

 拳を打ち込もうと踏み込んだところで脚を掛けられて体勢を崩すがそのまま地面に両手をついて体を回転することで回し蹴りでの牽制をした。

 だがその回し蹴りを受け止められ、足を掴んだ状態で振り回される。

 遠心力で体を起こすことが出来ずに体を固める事で精一杯になっていると思い切り木に叩きつけられた。

 

「どんな状況でも死なないために身を守れ」

 

 その言いつけ通りに落下してくる巨大な木を蹴り飛ばして落下軌道を変えて回避する。

 そして蹴った勢いのまま立ち上がり、通常ならば倒れてしまうような低体勢でレヴィスに向かって突撃した。

 

「格上の相手にそれは悪手だ。モンスターならば問題ないかもしれんがLv.を上げるとそう言ったことも必然的に付きまとおう。今のうちに対人の技術を学んでおいても損はない」

 

 全力で突撃した僕を交わすのではなく両腕を上下に差し込み回転させて地面に叩きつけたレヴィスはそのまま僕の腹を踏みつぶさんばかりの勢いで脚を落とす。

 横に転がって地面が陥没するほどの威力の踏み抜きを回避した僕はそのまま腕で体を支えて足払いをした。

 だが巨大な岩を蹴っているかのような錯覚に陥るほどの圧倒的な抵抗力でその企みは阻まれ、逆に脛に攻撃を受ける。

 

「重ッ!?」

「ほほう?随分酷いことを言ってくれる」

「あ、やば」

 

 あまりの抵抗力に思わずそう叫ぶと怒ったような雰囲気のレヴィスがさっきまでよりも全体的に強い能力でありとあらゆる攻撃を仕掛けてきた。

 もちろんレヴィスはオリヴィアよりも一般で想像する女的な性格はしていないしそう言ったことも気にしないからそれが別の意図を持ったものだという事は分かっている。

 

「私は重くないぞ?」

「分かっております!」

 

 念のために返事をしながら腕を構えると防御しそこなってしまった。

 その理由を考え、さっきの言葉の意味を理解する。

 今防御し損ねたのはこれまでに比べて攻撃が単純になったから、恐らくは何かしらのシチュエーションで動きが単調になった相手との戦闘をイメージしているのだろう。

 

「どうした?防御が下手になったな」

 

 突然動きのリズムが変わったせいで動きへの対応が遅れてしまいさっきから直撃までとは行かずとも攻撃を受けることが増えてしまった。

 むしろさっきまでのような身体の芯を捉えたような攻撃とは違って身体を掠めるだけの攻撃になった影響で逆にその力が僕の重心を崩すようになって戦いづらくなる。

 

「戦闘では複数と戦うのはよくあることだ。モンスターならばリズムは同じだが冒険者相手だとそうは行かない」

 

 単調な攻撃やそれ以前の攻撃リズムに加え、また別のリズムで攻撃をしてくるから単調じゃなくなった分ダメージを伴った攻撃を受けることが増えた。

 

「ほら、戦闘中でもちゃんと教えたことを復習しろ。目に頼るな」

 

 背後に回って仕掛けられた回し蹴りを足で抑えて防ぎつつレヴィスの腕を掴んで背負い投げで地面に叩きつける。

 だがレヴィスは背中が付く前に足で踏ん張り、投げられた勢いを利用して逆に僕を投げた。

 

「とりあえず休憩だ。お前の仲間の視線が鬱陶しいからな…」

「え?」

 

 レヴィスのその言葉に驚きながら視線をたどるとそこには見慣れた姿があった。

 

「よ、よう…さっきからエグイことやってたが何してんだ?」

 

 それは、と説明しようとしたところでレヴィスに声をかき消されてしまう。

 

「コイツに稽古をつけてやっていたんだ。明日くらいにはゴライアスが出るだろうからそいつと戦わせようとしてる最中でな」

「ミスト…面白そうなことやってんなぁ」

 

 遅かれ早かれ言う事にはなっていたことは理解しているのだが、面倒な奴に聞かれたという感覚には変わりはなかった。

 

「なあなあ、私にも稽古つけてくんねえか?」

「構わないが…今は待て」

 

 レヴィスが待つようにと言うとオリヴィアは大人しく待つ気のようで荷物を下ろすと僕の隣に腰を下ろす。

 

「お前…よく生きてるな?」

「あの人手加減が上手くてさ…僕が言われたことを一つ使う度にそれに合わせた実力で迎え撃ってくるからね」

 

 するとオリヴィアの目が一瞬だけ気の毒なものを見る目付きに変わったが、すぐに自分もそうなることを理解して珍しく遠い目になった。

 

 

「よし、それじゃあやるか」

「本音を言うならもうちょっと休みたいけどね」

「安心しろ。私も手加減に慣れてきたから休ませないし自殺まがいの事をしようとも気絶できないギリギリのダメージで悶絶させてやる」

 

 さらりと告げられた恐ろしい言葉に二人で身震いしながらレヴィスを挟み込むような状態で体を構える。

 誰が合図をしたでもなく、僕とオリヴィアはほぼ同時に攻撃を仕掛けた。

 オリヴィアは右ストレートを、僕は反時計回りの回し蹴りを。それぞれ上下からの攻撃を試みるもレヴィスは一切僕の方を見ることなくオリヴィアの拳を受け止めつつ僕の回し蹴りを踏みつけて抑える。

 そして受け止めた拳から手を滑らせて腕を掴んで投げ、踏みつけた足を退けて僕を蹴り飛ばした。

 

「なんだ?変な感じだな?一瞬だけ受け止められたけどすぐに自分から飛んだみたいに投げられた…」

「受け流すのが上手いとそう感じるんだよ!……こなくそ、水も滴るいい男だぞ?こんちくしょう」

 

 蹴り飛ばされたせいで湖に着水した僕は水を全力で蹴り飛ばす。

 弱いとはいえLv.2のステイタスで蹴りだされた水は想像以上の勢いで交戦中の二人に向かって突き進む。

 そんな行動お見通しだと言わんばかりに一切顔を動かすことなく水の柱を避けたレヴィス。

 取り残されたオリヴィアは当然一人でその水柱を直撃し、全身をビショビショに濡らした。

 

「あとで覚えてろよ?ミスト!」

「ご、ごめん」

 

 明らかに激昂したオリヴィアは鬱憤晴らしと言わんばかりにレヴィスに向かって突撃し、攻撃を受け流されて全身を土塗れにする。

 一瞬惚けていた僕に小石が飛んできて眉間に直撃し、正気を取り戻した。

 むやみやたらに攻撃を仕掛けるオリヴィアに割って入ってオリヴィアの頭を冷やさせるとともにレヴィスに手刀を振り下ろす。

 

「冷静になれ、オリヴィア」

「す、すまん…って、お前のせいだけどな?」

 

 攻撃の手を止めて感覚が戻ってきたオリヴィアは軽口を叩きながら跳躍し、踵落としを加えた。

 だが真っすぐ横に交差した腕で衝撃を吸収すると、そのまま腕を伸ばしてオリヴィアの脚を腕の交点で跳ね上げて背後に向かって飛ばす。

 そしてオリヴィアの背後に隠れていた僕はレヴィスの死角から殴りかかる。

 

「お前は視覚に頼るなと言う私の言葉を忘れたのか?」

「…それ言った本人が出来ないわけないですよね~」

 

 突き出した腕は当然のように掴まれ、後ろに誘導されたことでオリヴィアと衝突して倒れてしまった。

 

「ダメだぁ…勝てん!」

「言われたことは理解できるけど同時にそれを出来るかって言われたら教えられたばかりの事だから頭が混乱するなぁ」

 

 さっきからずっと戦っていたせいで思ったように体に力が入らず、そもそもそれ以前もずっと戦っていたのだから動かないのは当然と言えば当然だ。

 

「はじめからお前たちが言ったことを全て身につけることが出来るとは思っていない」

「ははは、酷い言われようだ」

「そうだ…な……」

 

 戦い疲れたせいか急に眠気が襲って来た。

 こんなんじゃあ下の階層には行けないな、と内心苦笑しつつ抗いきれない眠気で意識を手放した。




 言葉攻めは良いけども暴力はダメなタイプのMです(ソフトさん)
 そうです、好きな人にやられるのは嬉しい。もちろんされたことないけどさ(異性と接したことほぼないもんね)
 ね~。基本的に正論を突き付けすぎるから最低と罵られる(実は嬉しかったり?)
 しねえよ!あんな同調しかしないアフォ共を誰が好きになるか!ヴァカメ!(この話題はイカン…読者がドン引きだ)
 今更感(それもそうね~)


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第一六話 意地と教え

 う~ん、ホントLv.3へどうやって上げようかな?(ゴライアスは倒せるわけないし、討伐隊に入っても雑兵狩りにしか使われないだろうしね)
 主人公ってうっすい人生送ってるからさ…自分を打ち壊す的なこともできないし(面倒な主人公作りやがって)
 そもそもステイタスも届いてないしね(何か月かかるかしら?)
 知らな~い、現段階ではランクアップから大体2~3か月ほど経過している設定(3か月だと本編ではベル君がLv.4になっておりますぜ)
 ちょっとだけ接触があったけど完全に置いてけぼりだもんな(接触って…『女の子は守るもの』のところ?置いてけぼりってそれ言ったら大体の冒険者そうだろ)
 そうね、そうね。ルアンとかは小人だから仕方がないとしても普通の奴らも放置だもんな(才能はないが元々何も持っていなかったから初期の吸収力は良いはずなんだけどな~主人公)
 初期は既に終わりましてね。なにせ小説だと一瞬だけど実際の時間で考えるとそりゃあ性格も多少は変わるし吸収力も衰えるさ(持っていないことが今は裏目になってるけど)


「モンスターの影もない。もうじきだろう」

 

 17階層に上がった三人は巨大な空間で揃って嘆きの大壁を見上げていた。

 周囲の植物に多大な被害をもたらすという異常な稽古を思い出しながら待っていると、不意に何かが聞こえた。

 バキリ、そんな音を鳴らしたかと思うと見上げた先の大壁に巨大な亀裂が走る。

 音は次第に大きさを増し、感覚を狭めて亀裂が広がった。

 階層が揺れる、壁の破片が撒き散らされ、巨大な影が壁の中から現れた。

 

「ま、まあまあデケェじゃねぇか……」

 

 明らかに虚勢を張っていると分かるオリヴィアのその声。

 産まれ落ちたそれはまあまあどころの騒ぎではないほどに巨大なモンスターだった。

 

「自身がなくなってきた……」

 

 約7(メドル)の灰褐色の巨人。

 隔絶した、人間とは違う生物としての圧倒的存在感を初めて目の当たりにしてそう思うのも無理はないだろう。

 だが逃げることは師が許さない。なにより絶対に自分が許さない。

 

「足の一本や二本は貰ってやる!」

「お、おう!教わったことを出し切ってレヴィスに胸張って倒して貰うぞ!」

 

 始めから倒すつもりは毛頭なく、むしろそれが緊張を解して二人は一切気負うことなくゴライアスとの戦いの火蓋を切って落とした。

 

「魔法は使うなよ!」

「分かってる!私たちはこの戦闘においては技だけで戦いたいからな!」

 

 それは一種のプライドだ。

 もちろん自分の成長を実感したいと言う思いはあるもののそれだけではなかった。

 教えを受けたものとして、師にその成果を見て貰いたいという弟子としての思いがそこにはある。

 

「ハアァッ!!」

 

 それぞれが両足へ攻撃を仕掛けては離脱する。

 その巨体、容易にダメージを与えさせてはくれないのだ。

 

「ふッ」

 

 全力で、時間の許す限り技を持って効率化された連撃を加える。

 だがまるで金属に向かって剣を振っているかのような圧倒的な防御力で攻撃を阻まれてしまう。

 正確には椿(ツバキ)が打ってくれた武器のおかげで多少のダメージを与えることは出来ているが、武器の扱いがどれも得意ではないミストはその武器を扱いきれずに持て余している状態だ。

 

「流石Lv.4!格が違うねぇ」

 

 相当と言うだけでLv.4ではないが、ミストはそのかけ離れた実力に嘆くのではなく笑った。

 レヴィスと戦った時にも感じていた圧倒的強者と対峙しているときの恐怖が転じた高揚感はミストの顔に少し歪な笑みを張り付ける。

 片方だけ口角が上がるミストはゴライアスの剛腕をギリギリで飛び越えて避けながら足の表面を削り取った。

 そうしていると同じように攻めあぐねているオリヴィアと視線が交差する。

 一瞬のアイコンタクトでお互いの考えを読み取った二人はゴライアスを見据えるとオリヴィアがゴライアスから距離を取り、ミストはオリヴィアの方にゴライアスが行かないようにと手数を捨てて一撃一撃に力を込めた。

 

「早くしろよ。じゃないとそろそろモンスターが来るぞ」

 

 レヴィスの注意を聞きながらミストは最後の切り付けを終えると一瞬で体を反転させて大剣を横に構えるオリヴィアの下へ駆けつけ、その手前で跳躍するとともに再びゴライアスと向かい合う体制を取る。

 跳躍したミストはそのままオリヴィアの構えた大剣を踏みつけ、それと同時にオリヴィアは大剣を薙ぐように振ってミストを球のように打ち出した。

 オリヴィアの振る力と自身の跳躍力を合わせた速度で打ち出されたミストは重力を無視するように一直線にゴライアスの頭部へとたどり着き、ミストはその勢いを利用してゴライアスの眼球を一つ破壊する。

 

「うしッ!」

「作戦成功!」

 

 目論見通りゴライアスの視覚を不完全なものとしたことでゴライアスの狙いが不完全なものに成り下がった。

 遠近感が崩壊し、数(メドル)ほど狙いからズレたその攻撃は回避する必要がなくなり攻撃の手数が増やせるようになる。

 さっきまでなら剛腕で壁に叩きつけられていたであろう跳躍による攻撃も今ならば可能性は上がっている。

 依然として決定的な一撃を入れるには至っていないが、今から手数を増やして戦おうとしたその時――

 

「時間切れだ」

 

 レヴィスからそう告げられ、戦っていた二人は軽く蹴り飛ばされて壁近くまで飛ばされた。

 

「無駄が多すぎる。次は戦闘の技術を叩き込んでやるから覚悟しておけ」

 

 突然の出来事に呆然とし、防御の腰を落とした体勢で固まっていた二人。

 そんな二人は一瞬のうちにゴライアスの頭部へとたどり着いてからのただ一度の回し蹴りで横に倒れたゴライアスとそれをやった本人のレヴィスの変わらぬ姿を目の当たりにして愕然とした。

 

「この程度の敵に苦戦していては強くなれんぞ」

 

 着地したレヴィスがすぐに移動してゴライアスの魔石ごと体を貫く。

 すると瞬く間にゴライアスの体は灰へと変貌し、レヴィスの攻撃の威力によって灰を纏った暴風が二人に向かって吹き付けた。

 

「元々自信はなかったが…勝てる自信が一ミリたりとも湧かねぇ」

「僕たちが勝てるわけないでしょ、技も能力も全部が足元にも及んでないんだから。仕掛けた攻撃死角だろうと全部受け流されてんだから……」

 

 風圧で尻もちを突いた二人は灰を振り落としながらおかしそうに笑い合う。

 

「それじゃあ……頑張れよ」

 

 少し気恥しそうに視線を泳がしていたレヴィスが覚悟を決めたように二人と向き合うと、それだけ言って巨大な魔石を引きずりながら一瞬で18階層に戻って行った。

 そんな姿にまたしても笑い合いながら二人は疲れも恐れも吹き飛んだような清々しい表情で地上を目指す。

 

「あの人の教えを忘れないうちにモンスターで復習しながら帰ろうぜ」

「レヴィスの教えは忘れようと思って忘れられるものじゃないけどね」

 

 それもそうだ、と豪快に笑い飛ばすオリヴィアと思い出して身震いをするミストはモンスターと逃げることなく教えを守りながら戦った。




 レヴィスさんマジ強いわ(そりゃあLv.6と余裕で戦えるほどの能力はあるわけですし)
 ただ書いていてさ、描写としてゴライアスがでかい図体で倒れるのを想像したらすごいよな~(現実だと建物が崩れる感じかね?)
 さぁ?それはものによるし……少なくとも現実だとホラーだわ(そりゃね)

 あ…今回で一旦休止ね?(期間にして二週間弱、処女作にしてはもった方だしね?)
 原作読み直しと休憩を兼ねて休止(そしてそのまま放置プレイ、と)
 それはない…と、信じたい……(言い切れないあたり自分の性格を分かってるね)
 そりゃ自分だし(てなわけでまたいつの日か、皆さんが忘れたころに戻ってくるかもしれません)
 それじゃ、サラダバー!(サラダバー!)


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