外道、フォドラに立つ〜召喚士と英雄の日常外伝〜 ((TADA))
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序章

この作品はFE風花雪月を原作にした二次創作です。以下注意事項

キャラ崩壊・様々なネタ・唐突なシリアス(予定)・キャラの口調間違い


上記が大丈夫な方のみスクロールをお願いします。


エーデルガルトは不覚の気持ちで一杯であった。

入学した士官学校の初めての課外実習で賊の襲撃にあい、エーデルガルトは他の生徒に被害が出ないようにディミトリとクロードと一緒に別行動をとって自分達に被害が来るようにした。

想定外だったのは思いの外賊達が手練れだったことだ。そのために村に駐屯している傭兵団に援護の依頼をすることになった。

民家にいた傭兵団の団長であるジェラルトとその娘であるベレスと言う傭兵に援護を頼むことになった。

 「しっかし、賊ねぇ。あいつが黙って包囲されるとは思わないが……」

 「先生だったらすでに出撃しているのではないか」

賊に村が包囲されていると言うのにジェラルトとベレスはそんな呑気な会話をしている。

 「すみません。早く迎撃に出なければ村に被害が……」

エーデルガルトの言葉にジェラルトは面倒そうな表情になる。

 「村に被害が出る前に……」

 「おい!! ジェラルト!! シェイカーのやつを止めてくれ!!」

ジェラルトがエーデルガルトの質問に答える前に傭兵の一人が駆け込んできた。それを見てジェラルトは掌で目を多い、何故かベレスは「流石は先生」と言っていた。

 「あのバカ、今度は何をやりやがった?」

 「あいつを早く止めてくれ!! このままじゃこの辺りの地形が変わっちまう!?」

その言葉の瞬間に村の外から轟音と悲鳴が響きわたっている。

 『おい!? あんな化け物がいるなんて聞いてねぇぞ!?』

 『ふはははは!! 逃げる山賊は訓練された山賊だ!! 立ち向かってくる山賊はよく訓練された山賊だ!! まぁいい!! 金目の物は置いて死ぬがいい!!』

そしてどっちが山賊だがわからない声も聞こえてくる。その声を聞いてジェラルトは頭を押さえて蹲る。

 「あれは……?」

 「あれは先生が使うサンダーだ」

 「あれがサンダー!? どう見ても威力がサンダーってレベルじゃねぇぜ!?」

 「先生だからな」

ディミトリの言葉にベレスが答えると、クロードが驚愕の声を挙げる。それにエーデルガルトも同意である。あの威力はサンダーなんて優しいものじゃない。

 『ヒャッハー!! 我慢できねぇ!! 皆殺しだ!!』

 『おいマジでふざけんギャァァァァァ!!!!!』

さらに大きく響き渡る轟音。心なしか地面も揺れている気もする。

疲れ切った表情で村の外に向かっていくジェラルト。エーデルガルト達も困惑しながらもベレスに促されて一緒に向かう。

そして村の外を見て絶句した。

周囲に散らばっている元々は人であったであろう物。逃げ惑う山賊達。それに対して高笑いしながら巨大な炎の弾を当てている黒フード。

 「おい!! シェイカー!! 自重しろ!!」

 「おいおいジェラルト!! 面白いこと言うな!! こんなに自重しているじゃないか!! それの証明にまだ生きている蛆虫があんなにいる!!」

 「周囲の被害を考えろ!!」

 「やれやれ。俺はただ害虫駆除をしているだけだと言うのに……いつだって正義は理解されないのか」

どう見ても正義ではない。そう考えたエーデルガルトだったが口には出さない。出したらあの魔法の矛先が自分になる気がしたからだ。

そして何か思いついたような雰囲気になる黒フード。

 「よしベレス。残りはお前がその三人連れて掃討しろ」

 「「「は?」」」

疑問の声が出たのはエーデルガルト、ディミトリ、クロードだ。ベレスは「わかった」と言ってさっさと剣の用意をしている。

 「『は?』じゃねぇよ若造共。あれを連れて来たのはお前らだろうか。責任はとれよ」

それを言われてしまうとエーデルガルト達は反論できない。

 「おい、シェイカー。せめて援護くらいしてやれ」

 「仕方ねぇなぁ。ほれ、魔法をかけてやろう」

その言葉と共にエーデルガルト達に光が包み込み、傷は癒え、体が軽くなった。

 「これは……?」

 「軽い補助魔法だ。バフをかけてやったんだから感謝しろよ」

 「「「バフ……?」」」

 「気にするな」

よくわからないが目の前の黒フードが何かやってくれたらしい。

エーデルガルトは体を確認するが、普段より遥かに調子がいい。

 「ディミトリ、クロード。行ける?」

 「あ、ああ」

 「これなら問題ないぜ」

ディミトリもクロードも同じらしい。それにエーデルガルトは疑問に思う。普通とは違う魔法の威力を誇り、見たこともない魔法を扱う目の前の黒フードは何者だろうか。

 「あなたはいったい……?」

その言葉に黒フードは被っていたフードを外す。フードの下から出て来たのは片眼鏡をかけた平凡な顔立ちの青年。

 「俺は天才イケメン軍師、シェイカー・エナヴェールだ!!」

そう名乗りを挙げるのであった。

 

 

 

 「イケメンではないよな」

 「お、ジェラルト貴様喧嘩を売っているな?」

 「君達、準備はいいか?」

 「え? 止めなくていいんですか? 殴り合いを始めてますけど」

 「ああ。父さんと先生のあれはいつものことだ」

 「「「ええ……」」」

 




シェイカー・エナヴェール
元烈火世界の軍師。異世界召喚体質で風花雪月世界にやって来た。主なキャラ設定は『召喚士と英雄の日常』を読んでネ!!

エーデルガルト・フォン・フレスベルグ
今回の視点主。すでにシェイカーにドン引きしている未来の皇帝

ベレス
風花雪月の主人公でシェイカーの生徒。口癖は「流石は先生」。主に教師のせいで常識を知らない

ジェラルト
シェイカーを拾ってしまった苦労人。ベレスから見たら仲良しにしか見えない。




作者の他の作品を読んでいる方はお久しぶりです。初めての方は初めまして。ちなみにこの作品の主人公であるシェイカーくんは作者のFEH小説である『召喚士と英雄の日常』の召喚士くんですので、この作品を読む前にそちらでキャラ把握をお願いしたいと思います。

とりあえず第一話を書いてみましたが、作者が未だに第一部なので更新がどうなるかわかりません。とりあえず確定事項は以下の通り。
担当学級は黒鷲。爆破される引きこもりの部屋。眠れなくなる睡眠信者。魔改造されるペトラちゃん。
以上です。

とりあえず完結まではやりたいので気長にお待ちくださいませ。


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学園編
ガルグ=マク大修道院へ


ギリギリ日曜日更新!!


これも全てポケモンGOでなかなかギラティナが捕まらなかったのが悪い


ベレス達は助けた三人の子供達と一緒にガルグ=マク大修道院へと向かっている。

それと言うのも、ベレスが山賊相手にシェイカー直伝の戦闘技術でヒャッハーをしていたところ、ジェラルトの自称右腕であるアロイスという男性がやってきて、ジェラルトがセイロス騎士団の元団長だったり、三人の子供達がガルグ=マク大修道院に併設されている士官学校の生徒達だったからだ。

ベレス的には全く興味がなかった(むしろ突然脳内に現れた幼女の方が気になる)が、ジェラルトが連れていかれるので仕方なしについてきたのだ。

 「ガルグ=マク大修道院か……先生の授業では何回か聞いたことがあったが、実際に行ったことはなかったな」

 「先生? 貴女には先生がいるの?」

ベレスの独り言を隣にいたエーデルガルトが尋ねてくる。それにベレスは力強く頷く。

 「ああ、シェイカー先生が私の先生だ」

 「ゑ!? シェイカーってあのキチガッ!!」

クロードは最後まで言い切れることはなく、頭に小石が直撃させられる。

 「少年、陰口は本人がいないところで叩くのが長生きするコツだ」

 「グォぉぉっ、だったら口で言ってくれ。頭が割れるみたいに痛い……」

シェイカーの所業にエーデルガルトとディミトリは引いているが、ベレスは気にしない。割れていないだけ恩情なのだ。

 「さて、それじゃあベレス。授業の復習だ。ガルグ=マク大修道院とはなんだ?」

シェイカーの言葉にベレスは考えこむ。ここで間違ったりしたらまた地獄の授業が待っている。

 「確かフォドラ全土に敬虔な信徒を持つセイロス教の総本山。聖者セイロスを導いたとされる預言者グラーフが設計、建設した要塞としての側面も持つ大修道院」

 「まぁ、いいだろう。それではセイロス教とは?」

立て続けの問題にベレスは少し意外な気持ちになる。いつもだったら答えた後はもっと内容を掘り下げて説明されるからだ。

 「1000年以上前の聖人セイロスを教祖とする宗教で、現在の紋章至上主義、貴族制度を作り上げた宗教。信徒はフォドラ全域におり、軍備も持っている。そして意外だけれども異教徒には温和な態度で接するが、異端者には容赦がない……でしたか?」

 「その通り。宗教が軍事力を持つとか控えめに言ってクソとしか言いようがないんだけどな」

シェイカーの言葉にエーデルガルト、ディミトリ、クロードは意外な表情になる。彼らにとってセイロス教が軍事力を持つことは当然のことだったからだ。

 「なぜ宗教が軍事力を持ってはいけないのですか?」

そしてディミトリがシェイカーに尋ねる。その質問にシェイカーは片眼鏡を軽くあげて笑った。

 「連中は神の名の下になんでもしていいと考えるからさ。軍事力を持った宗教が野心を持ったら最悪だ。特にセイロス教なんて言うフォドラ全域に信徒を持つ宗教だったら民の反発を食らったら国が傾くぞ」

シェイカーの言葉に三人は今度こそ絶句する。だが、シェイカーはそんな三人の反応など無視するように指を先に向ける。

 「そらベレス、ガルグ=マク大修道院が見えてきたぞ」

ベレスがシェイカーの指先を見ると、巨大な城塞都市が見えてくる。ベレスはその城塞を見て絶句した。

ベレスはシェイカーに攻城戦の方法も教え込まれた。その教えを生かして傭兵として城を落としたこともある。

そのベレスが見てもガルグ=マク大修道院は難攻不落という言葉に相応しい威容であった。

シェイカーはニヤニヤしながらベレスに問いかける。

 「さてベレス。お前さんならガルグ=マク大修道院をどう落とす?」

 「不穏な授業をしてんじゃねぇぞ、シェイカー」

シェイカーの言葉を止めてきたのは呆れた表情をしているジェラルトだ。

 「おいおい、ジェラルト。必要になるかもしれないだろ?」

 「不穏なこと言うんじゃねぇよ。ここには俺たちだけじゃなくてアロイスだっているんだ」

ジェラルトの言葉にシェイカーは軽く肩をすくめる。

 「先生」

 「なんだ?」

ベレスが小声でシェイカーに声をかけると、シェイカーはいつも通りのなにを考えているかわからない表情で見てくる。

 「攻城側の条件と籠城側の条件は?」

ベレスの言葉に一瞬だけ意外そうな表情をするが、すぐにいつも通りの表情になる。

 「攻城側は本隊1万、援軍として2万が三日以内に来援する。籠城側はセイロス騎士団のみでの防衛だ」

シェイカーの言葉にベレスは歩きながら考える。おそらくは攻城側は援軍を合わせたら籠城側の3倍になるだろう。だが、ガルグ=マク大修道院は少数で大軍を迎え撃つようにできている。

 「……宿題でいいだろうか」

 「いいだろう。色々みてまわって落とせそうなところを探せ。期間はそうだな……1年以内に答えろ」

 「わかった」

シェイカーの言葉を真剣に聞いていたベレスは見られていた大司教の視線に気づくことはなかったのだった。

 

 

 

 

ジェラルト達は大司教レアと面談すると、ジェラルトはセイロス騎士団の騎士団長として、ベレスは教師として働くことになった。

 「教師だったら先生の方がいいのではないですか?」

それに異を唱えたのがベレスであった。ベレスにとって教師とはシェイカーだ。自分がシェイカーのように人に教えることなどできない。だからこそ言ったのであったが、レアは聖母のように微笑みながら首を振る。

 「先生とは大魔導師シェイカー・エナヴェール殿でしょう? シェイカー殿には別に仕事をご用意してあります」

 「……シェイカーのことまで知ってんのかよ」

ジェラルトは舌打ちするように呟く。レアの調査能力が想像以上に高かったからだろう。

だが、言われた本人は涼しげな表情だ。いつも通りに何を考えているかわからない笑みを見せている。

それからレアはシェイカーを大司教室執務室に案内する。ジェラルトは騎士団へ、ベレスは先任のハンネマンとマヌエラから生徒達について教えられている。

 「セテス、貴方も席を外していただけますか?」

 「な!? 大司教!? 相手は高名な魔道士とは言え、一介の傭兵です!! 二人きりなど危険です!!」

セテスの言葉もレアは微笑みながら口を開く。

 「安心してください。シェイカーとは古い友人です」

その言葉にセテスは絶句する。大司教に友人と言われる男。だが、シェイカー本人は涼しげな表情を崩していない。

セテスは何かを言いかけたのを辞め、一礼してから部屋を出て行く。

そしてレアとシェイカーの二人だけになり、シェイカーはようやく口を開く。

 「久しぶりだな、クレイジーサイコマザコン」

そして飛び出たのは酷い挨拶だった。

しかし、そんな超絶無礼発言もレアは聖母スマイルで受け流すように口を開く。

 「ええ、久しぶりですねグランドろくでなし」

レアも十分に失礼だった。

 「ガルグ=マク大修道院を建設したらナギ様と一緒に異世界にトンズラ……私に残ったこと全部丸投げとか人としてどうかと思いませんか?」

 「あ、ごめん。俺に人の道を説いても無駄だから。人道って言葉を理解しながら無視するのが俺だから」

 「こいつ死ねばいいのに」

口調が崩れるレア様。そしてレアはやれやれと言った様子で席を立つ。

 「いいテフがあるのです。今淹れますね」

 「俺は紅茶の方が好きなんだけど」

 「ええ、知ってます。だからテフにしました」

 「セイロスもイイ性格してるよな」

 「グラーフという人の皮を被った鬼畜クソ外道と友人になってしまいましたからね」

 「悪い奴だな、グラーフって男は」

 「貴方のことでしょう」

 「俺は今シェイカーなんで」

 「貴方も食事感覚で名前変えるのやめませんか? 歴史書見ると貴方の名前がみんな別々に出てきて超笑えるんですけど」

 「おいおい、後世の歴史家はちゃんと仕事してないな。俺をそれぞれ別人で書くなんて」

 「こいつマジで死ねばいいのに」

教徒が聞いたら卒倒しそうなことを平然と言い放つレア。テフの用意ができたのか二つのカップを持って(勝手に)ソファーに座っているシェイカーの前に置く。

 「いつこちらの世界に帰ってきたんですか?」

テフの香りを楽しみながら口に含むレア。

それを見てからシェイカーも口を開く。

 「30年くらい前かな……そっから色々放浪しながらジェラルトに拾われてベレスの教師をやっていた」

そう言いながらシェイカーはテフを口に運び、口の中に含む。

そして霧のように吹き出した。

 「ザマァ!! テフだと思いました? ざ〜んねん!! テメェに飲ませるテフねぇから!!」

 「てんめ……なんだこれ!! クッソ不味いぞ!!」

 「お湯にインクを溶かしたものですよ!! はっはぁ!! ようやく1000年前のペガサスの小便を飲まされた仕返しができましたよ!!」

そっからギャアギャアと二人で騒ぐ。そこにいたのは大司教レアとか聖者セイロスとか預言者グラーフとか大魔導師シェイカーの姿はなく、ただのバカ二人であった。

 「ああ、クッソ。無駄に喉消費した。そんで、俺に頼みたい仕事ってなんだよ」

 「ああ、そう言えばそっちが本題でしたね」

 「更年期か?」

 「ぶっ殺すぞ」

シェイカーのジャブに殺意マシマシの視線を送るレア。女性に年齢の話題はタブーなのだ。

 「いえね、貴方に言われた通りに宗教を運営してみたらかれこれ1000年運営できちゃいまして」

 「さすがは俺」

 「言った張本人が異世界に高飛びした件について」

 「最低限の仕事はしていっただろ?」

 「ガルグ=マクの建設はあんたの趣味だろうが」

 「否定はしない」

 「否定しろよ」

完全にキャラ崩壊しているレア様。こんなレア様に誰がした。

 「私の目的はお母様の復活なのに、教団の運営がクソ忙しくて研究が進んでいないのが現状なんですよね」

 「人体実験してるくせに?」

 「失敗した娘もきちんと修道院で育てているからセーフ」

 「倫理観ガバガバ女」

 「それブーメランってこと知ってます?」

会話が全く進まない二人。一歩進むと三歩脱線する。

 「まぁ、単刀直入に言いましょう」

そしてレアは真剣な表情でシェイカーを見る。

 「今のフォドラをぶっ壊してもらえますか?」

レアの言葉にシェイカーは楽しそうな笑みを崩さない。

 「せっかく上手くいっているのに壊すのか?」

 「本当にムカつきますね。紋章主義の台頭。そして紋章に連なる貴族主義。この二つは貴方の計画していたことではなかったでしょう。そしてこんな結果になったから貴方は帰ってきても私のところには来なかった。違いますか?」

 「違わない」

 「素直に認めるところが本当にムカつきますね」

 「素直に答えたらこの対応。俺にどうしろと言うんだ」

 「死んでください」

 「俺は生きる!!」

シェイカーの返答に米神に青筋が浮かぶレアだが、テフを一気飲みして気分を落ち着ける。

 「セイロス教も大きくなりすぎました。そろそろ小さくしなくてはいけないでしょう」

 「なぁ、セイロス」

 「なんですかグラーフ」

シェイカーの言葉にレアはシェイカーを見る。そこには普段見せない真面目な表情をしたシェイカーがいた。

 「俺に任せると言うことはどう言うことか理解しているな?」

シェイカーの言葉にレアはなんでもないかのように頷く。

 「『時代が変革する時、多くの血が流れる』……確か貴方の言葉でしたね?」

レアの返答にシェイカーはニヤリと笑って頷く。

 「理解しているならいい。だが、肝心の駒がない」

 「今年の士官学校にはいい生徒がたくさん集まっています。その中から使える子を見つけて貴方が育ててください」

レアの言葉にシェイカーは口笛を吹く。

 「いいだろう。ただし人選は任せてもらう」

 「こと人の育成に関して私から貴方に言えることなどありませんよ。悔しいですが貴方は教育者として一流です。中身はクソを煮詰めたような存在ですが」

 「いやぁ、そんなに褒められると照れるな」

 「後半もちゃんと聞け」

 「断る」

流れるように胸ぐらを掴みあうレアとシェイカー。そこにノックの音が響き、レアとシェイカーはさも穏便に会談をしていましたと言う雰囲気を見せながら、レアは入室を許可する。

 「レア様、セテス様がおよびです」

 「わかりました。ご苦労様です、ツィリル」

やってきたのはレアの身の回りの世話をしているパルミラの少年、ツィリルであった。

そんなツィリルを見て驚愕の表情を浮かべているシェイカー。レアはツィリルに聞こえないように小声で問いかける。

 「どうかしましたか?」

 「ババショタだと……」

 「誰がババアだ。本当にぶち殺すぞ貴様」

 「?」

 




シェイカー
1000年前のレア様の戦いに協力していた模様。その時に名前はグラーフだが、同時期に色々な偽名を使っていたためにそれぞれ別人扱いされている。

レア様
速攻でネタバレかますけど聖者セイロス本人。お母様奪還のためにシェイカーの協力をもらってネメシスを討った。その後にゆっくりお母様復活のための研究をしようと思ったらセイロス教が忙しくてそれどころではなくなった。





一週目帝国ルートを無事にクリアしたために更新開始です。そして出てきて速攻でキャラ崩壊したレア様。大昔にシェイカーと関わったばかりにこれである。そしてシェイカーのせいで城塞都市になるガルグ=マク大修道院。

とりあえず導入はこんなものにして、次回から学園編が始まる(予定)です


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はじめてのあどらーくらっせ

ベレス先生と黒鷲学級の初顔合わせです。


ちなみに短めです


ベレスは担当学級を黒鷲の学級(アドラークラッセ)にした。特に理由があったわけではないが、強いて理由を挙げるとすればシェイカーに見せてもらったことがある鷲が好きだったからだろうか。

そして教室に教師として向かうと、生徒達が大騒ぎとなった。級長がエーデルガルトだったので静かで真面目な学級だと思っていたのだが予想が外れてしまった。

騒ぎ続ける生徒達相手にベレスがとった行動は簡単で単純であった。

そう、武力行使である。

ジェラルトがうるさくて授業が開始できなかった時はシェイカーも物理的にジェラルトを静かにさせていたから間違っていないだろう。

その結果が死屍累々の教室である。カスパルは扉を突き破って外に飛んでいき、フェルディナントは壁に叩きつけられている。エーデルガルトを庇おうとしたヒューベルトは床で痙攣しており、そして逃げようとしたリンハルトは延髄斬りの一撃で昏倒していた。ペトラもいいのをもらったせいか床に大の字で倒れている。

無事だったのは教室の隅でガタガタ震えていたベルナデッタ、巻き添いを食わないように退避したドロテア、ヒューベルトに庇われたエーデルガルトである。

 「せ、師? 一体何の真似かしら」

師と書いて先生と呼ぶ独特な言い方をするエーデルガルトに問われてベレスは不思議そうに首を傾げる。

 「授業のために静かにさせたんだけど、間違ったかな?」

 「間違っているでしょう!? なんで静かにさせるのに言葉じゃなくて拳が飛んでくるの!?」

 「私の『ナギ流格闘術』は先生に比べたら児戯みたいなものだから大丈夫だと思ったんだけど……みんな貧弱だな」

 「私達が貧弱なわけじゃなくて、師がおかしいのよ!?」

ベレスの言葉にエーデルガルトのツッコミが輝く。その言葉にベレスは首を傾げる。

 「やはり先生のゴーレムの方が良かったか。あっちだと強さの設定が先生の一存でできるから」

 「待って。あの魔道士は一体何者なの」

シェイカーをフォドラでも名高い大魔導師だと気づかないエーデルガルト。仕方ない。普段だけを見るとただのキチガイだから。

 「すごい、です」

 「ペトラ! 大丈夫!!」

声を上げ始めたペトラに気がついてエーデルガルトは助け起こす。

 「私、何かする、できません。先生、すごいです!!」

そして完全に間違った感想を持ってしまうペトラ。その目は憧れの眼差しになっていた。

 「先生! 私! 先生みたいに、強くなる、したいです!!」

 「ペトラ!?」

そしてペトラちゃん驚愕の発表。まさかのベレスに対する弟子入り宣言である。焦るエーデルガルト、困るベレス。

弟子入りさせてもベレスはその生徒にあった個人指導なんかできない。なにせ教師業もシェイカーの指導を受けながらやろうと思っていたのだ。

シェイカーは頭はおかしいが教師としては一流だ。特に個人の長所を伸ばし、短所を叩き潰すのには定評がある。

 「お〜っす。ベレス、早速やらかしたみたいだな」

 「先生」

そこにやってきたのは全ての元凶であるシェイカーであった。いつもの感情の読めない笑みを浮かべながら黒鷲の教室に入ってくる。一応、シェイカーの隣には外に飛んで行ったカスパルがフヨフヨ浮いている。どうやら魔力で浮かべているようだ。

それを見てベレスは力強く頷く。

 「さすがは先生。そんな精密な魔力操作もできるなんて」

 「こんなもん基礎中の基礎だ」

 「いえ!? どう考えても一流の魔道士でもなかなかできないことよ!?」

ズレた師弟の会話にツッコミを入れるエーデルガルト。このまま師弟の会話を聞いていると自分の常識がクラッシュされると思ったのだろう。

間違っていない。

 「ああ、そうだ先生」

 「うん? どうした?」

気絶している黒鷲男子生徒組でテトリスを始めているシェイカーにベレスは声をかける。そのテトリスを必死に止めようとしているエーデルガルトがいるがそれは無視する。ベレスとしてはさっさと諦めた方がいいと思うだけだ。

 「この子……え〜と」

 「私、ペトラ、言います」

 「ペトラを先生が直接鍛えてもらえませんか?」

 「師!?」

まさかのペトラをシェイカーに丸投げにエーデルガルトの驚き声が響く。ベレスの言葉にシェイカーはテトリスをやめてペトラの前でしゃがむ。

そして片手をふるとペトラが光のヴェールで覆われた。

 「せ、師、あれは?」

 「うん? ああ、あれは先生の能力精査魔法だ。私もよくわからないがあれで色々調べるらしい」

エーデルガルトの言葉にベレスは答える。

しばらく光のヴェールを眺めていたシェイカーであったが、しばらくすると面白そうに笑う。

 「うん、最初から当たりだな」

 「? 当たり、ですか?」

 「気にするな。少女、名前は?」

 「はい! ペトラ、言います!!」

 「よしペトラ! お前はこの瞬間から俺の弟子だ!! 明日は夜明け前から特訓を始める!! 日が昇る刻限に寮の前に集合だ!!」

 「はい!! 師匠!!」

そして流れるようにペトラの弟子入りが決定した。

 「うん、これでいい。あとは先生の教育方法を私も学べばみんなを教育することはできるだろう。うん? どうしたエーデルガルト。お腹痛いのか?」

 「いえ、これから起こる騒ぎを考えて胃が痛くなっただけです……」

 




エーデルガルト
しょっぱなからシェイカーの悪影響を受けたベレスを見て胃が痛くなり始めた様子

ベレス
言葉で言うことを聞かせるなんてナンセンス。うるさければ黙らせればいいじゃない(物理)

ペトラちゃん
弟子入りしたら強くなれるけど、常識を捨てることになる人物に弟子入りしてしまった。これから彼女の修行が始まる。

黒鷲学級の皆様
ベレス先生によって強制的に状態異常:サイレス(物理)をかけられた模様




そんな感じでベレス先生は黒鷲学級の担当です。え? 担当なのに生徒と会話していない? やだなぁ、拳の語り合いは少年漫画の王道でしょう。

そしてシェイカーに弟子入りしてしまうペトラちゃん。フォドラの知識が薄いペトラちゃんはシェイカーのやることを素直に信じてしまうのでしょう。

次回はペトラちゃん特訓編です。


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ペトラちゃんの特訓

ペトラちゃんがついに人外への第一歩を踏み出します。


みなさん拍手でお迎えください。


夜明け前、シェイカーに指定された集合場所(寮の前)にエーデルガルトとヒューベルトが行くとすでにペトラとベレスは来ていて準備体操をしていた。

 「師、早いのね」

 「どうせだったら私も一緒に訓練をつけてもらおうと思ってね」

 「……師、その格好は?」

エーデルガルトの問いにベレスは不思議そうに首をかしげる。

 「先生が用意してくれた運動着だけど?」

 「エーデルガルト様!! この服、凄く、動く、しやすいです!!」

ベレスの言葉にペトラが嬉しそうに報告してくれる。一日の間にどれだけ準備がいいんだあのキチガイとエーデルガルトは思ったが口には出さない。出したら頭がおかしくなりそうだ。

 「運動着もそうですが……なんですかな、この大きな木の人形は?」

そう言ってヒューベルトが近寄ったのは人のサイズはあるであろう大きな木の人形であった。

 「あ、ヒューベルト」

 「? なんですグホッ!!」

 「ヒューベルト!?」

油断したヒューベルトの脇腹に木人から強烈な一撃!! たった一撃でヒューベルトは戦闘不能になった。

 「愚か者!! 貴様のような者に木人はまだ早い!! 修練し基礎を学ぶのだ!!」

そこにやってきたのはフクロウが入った鳥かごを持ったシェイカーであった。何故か付け髭をつけていて帽子まで被っている。

 「……シェイカー先生、これはなんですか?」

 「おっとエーデルガルトはもうスルー技能を身につけたか。なかなか保身に走っているじゃないか。『これはなんですか?』と聞かれても『これは木人です』としか答えようがないが」

 「なんで勝手に動くんですか?」

 「え? 動かないとトレーニングに使えないだろ?」

 「なんで木の人形を自動で動かせるんですか!?」

 「そりゃあ魔力を使ってちょっとな。まぁ、ゴーレムの一種だと思えばいいさ」

それじゃあヒューベルトくんも回復しとくなぁ、と言って回復魔法をかけるシェイカー。せっかくの高難易度の魔法も便利グッズとして使われているとありがたみが薄れると思うエーデルガルト。

 「先生、そのフクロウは?」

 「ああ、これか。これはガルグ=マクを飛び回っていたフクロウを捕まえてな。とりあえず羽を毟らなきゃいけない使命に駆られて羽をむしってみた」

ベレスの質問にあっけらかんと答えるシェイカー。羽を毟られたフクロウは心なしかションボリしている。

 「まぁ、毟った羽は使い道ないからベレスにやるわ」

 「本当か? ありがとう」(好感度↑↑↑)

 「ちょっと待って」

 「今度はどうしたエーデルガルト」

頭痛を抑えるようにしながらエーデルガルトは口を開く。

 「今、一瞬師の好感度が上がったマークみたいなのがでた気がするんだけど……」

エーデルガルトの言葉に顔を見合わせた後に笑い声をあげるシェイカー。

 「おいおい、ゲームじゃないんだからそんなマークとか出るわけないだろう」

 「何故かしら……『それは言ってはいけない』という感情が出てくるわ」

 「血迷い始めたエーデルガルトは無視して特訓を始めるぞペトラ」

 「はい、師匠!!」

シェイカーの言葉に元気よく返事をするペトラ。エーデルガルトは内心でこの野郎と思ったが、ペトラが楽しそうにしているからまぁいいかとも思った。

 「まずは鍛錬の基本だ。体力をつけるために走ってもらう」

 「はい!!」

 「早い早い。まだ説明終わってない」

シェイカーの言葉を聞いた瞬間に走り出そうとしたペトラをシェイカーは魔力で作った縄で拘束した。

 「いいかペトラ。俺の特訓は『人間の限界に挑戦させて限界突破させる』のをモットーにしている。したがって走るのもただ走るだけじゃない。これを使う」

そう言ってシェイカーが取り出したのはTETUGETAだった。

 「特訓の基本と言えばTETUGETAを履いてのランニング!! さぁペトラ!! これを履くのだ!! あ、ベレスも当然履くように」

 「はい!!」

 「わかった」

笑顔でTETUGETAを履くペトラと手慣れた様子で履くベレス。この時点ですでにエーデルガルトの常識がおかしくなっている。だってペトラのTETUGETAはそうでもないが、ベレスのTETUGETAは明らかに地面にめり込んでいる。しかし、ベレスはそんなの気にせずに当然のように履いている。

 「ペトラは初めてなのでまだ軽いTETUGETAだが、日を増すごとに重さは重くなっていく。そしてさらにこれを背負ういい!!」

そう言ってシェイカーが魔法で取り出したのは巨大な大岩!! どう考えても背負うレベルではない。

 「こっちの大きいのがベレス。一回り小さいのがペトラだ。これも日をおうごとに大きくなっていき、一ヶ月以内にベレスと同サイズを背負ってもらう」

 「はい!!」

ペトラは元気よく返事をして小さいほうの大岩をプルプルしながら持ち上げた。その隣でベレスは余裕の表情で持ち上げている。

そしてシェイカーは流れるようにベレスの大岩の方に腰をかけた。

 「さぁ!! まずはガルグ=マクの外壁をひたすら走るのだ!!」

 「「はい!!」」

 「ちょ、ちょっと待って!!」

慌てて止めるエーデルガルト。ベレスからの今度はなんだという視線がとてつもなく辛いが、大事なことを確認していない。

 「何周するのかしら?」

エーデルガルトの言葉にシェイカーは笑顔で答える。

 「そんなものは決まっていない!! 俺が良いというまでだ!! さぁ、走れペトラ!! これが最強への第一歩なのだ!!」

 「は、はい!!」

TETUGETAと重石で辛そうに走り出すペトラ。『ママとパパはベッドでゴロゴロ。ママが転がりこう言った「お願い欲しいの」「しごいて」おまえよし俺によし うん よし』という謎の歌を歌いながら走り始めるベレスをエーデルガルトは見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

 「ペトラ!! 食事もまた特訓である!!」

 「はい!! 師匠!!」

朝食時、食堂にてシェイカーとペトラ師弟の声が響く。

 「体を作るにはとにかく食え!! そしてそれを筋肉に変えるのだ!! 幸いなことに他のクラスにも料理上手な生徒がいたから(強制的に)巻き込んだ!! ドゥドゥー、メルセデス、アネットだ!! 三人に礼!!」

 「ありがとうございます!!」

ペトラの元気の良い返事に名指しされた三人は恐縮しながら引き下がる。なにせシェイカーとドゥドゥー、メルセデス、アネットの作った量はやばい。食堂の長机がいっぱいになっている。

 「食え!! とにかく食え!! それが筋肉の元になる!!」

 「おぉ!! 食べ物が筋肉の元になるのか!! だったらオデも食べてぇぞ」

 「む、ラファエルだったな。よかろう、おまえも食べるが良い!! さぁ、食え!!」

シェイカーの合図に長机の食料を食べ始めるペトラとラファエル。それを遠目からエーデルガルトは眺めている。

 「止めなくてよろしいのですか?」

 「わかっているでしょ、ヒューベルト。止めても無駄よ」

 「ですな。先生も一緒になって食べていますしな」

 「師!?」

エーデエルガルトが驚いた先にはペトラとラファエル以上のスピードで食い荒らすベレスがいた。

 「おーっす、シェイカー。俺も食うから追加頼むわ」

 「テメェは霞でも食ってろ、ジェラルト」

 「さっさと準備しやがれクソ鬼畜」

流れるように乱闘を始めたベレスの先生と父親を見ながらエーデルガルトはなんとも言えない気持ちになるのであった。

 

 

 

 

授業中、これは唯一シェイカーの奇行から解放される時間である。教師業に自信がないと言っていたベレスも授業はとてもうまい。

持っている教科書が『サルでもなれる名教師』という教科書でなければ素直にエーデルガルトも感心できただろう。

だが、まぁ授業は普通に進んでいるし、内容もわかりやすいから良いのだろう。というか良いということにしないとエーデルガルトの心労がマッハになる。

エーデルガルトは授業を聞きながら級友達の様子を見る。基本的にみんな真面目に受けているが、リンハルトだけは眠っている。

エーデルガルトが後でリンハルトを叱らないとと考えている時に事件が起きた。

 『デデーン!! リンハルト、アウトー!!』

 「「「「「「「は?」」」」」」」

その言葉に呆気にとられる黒鷲の学級。しかし、ベレスの動きは素早かった。

 「え? 先生、なんで僕を拘束する……え? きちんと踏ん張らないと痛い? どういうこと」

リンハルトが最後まで言い切れることはなく、黒鷲の教室に入ってきた木人に視線が集中する。

そして木人はベレスが拘束しているリンハルトのケツに向かって強烈な蹴り!!

 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

悶絶するリンハルト。

 『はっははぁ!! 授業中の居眠りは感心しないぞ!! 他の生徒も授業をサボったりした場合容赦無くこの罰を下すからな。男女貴族平民関係ねぇから!!』

 『あなたはもうちょっと手心を加えるということを学んだらどうですか?』

 『おいおいレア!! こんなに手心加えているじゃないか!! 現にリンハルトが爆散してない』

なんというか放送もひどいが会話内容も酷い。本気出したら爆散できるのかとか仕事しろ大司教とかツッコミどころが多すぎる。

 「じゃあ次のところに行くよ」

そして平然と授業を続けるベレスに黒鷲の学級は戦慄した。

 

 

 

 

放課後、ペトラはシェイカーに呼ばれて訓練場に来ていた。

 「師匠、今度の訓練する、なんですか?」

 「うむ、次の訓練は俺の弟子には必須科目の『ナギ流格闘術』だ」

シェイカーの言葉にペトラは首をかしげる。

 「格闘術、ですか? でも、私は剣使う、します」

 「愚かぁぁぁぁ!!!」

どこか劇画タッチになりながら宣言するシェイカー。

 「いいか、ペトラ。もし戦っている時に武器が壊れたらどうする? 素手では戦えないから見逃してくださいとでも言うのか?」

その時ペトラに電流走る……!!

 「た、確かに、それはする。駄目です!!」

 「だろう!! だからこそ格闘術は必須なのだ。今回は月末の学級対抗戦に間に合わせるために俺の魔術空間で行う」

 「魔術空間、ですか?」

 「俺の友人であるイケメン天才魔道軍将が作った魔術空間でな。まぁ、精神と時の部屋みたいなものだ」

 「せいしんとときのへや、ですか?」

 「簡単に言うと特別な修行空間だ」

 「おぉ!!」

修行空間という言葉に期待のこもった表情になるペトラ。

 「では行くぞペトラ!!」

 「はい!! 師匠!!」

 

 

 

 

 「ペ、ペトラちゃん!? 大丈夫!?」

 「ド、ドロテアですか……」

 「ちょ、ちょっと何があったの!? 体に傷は全くないけど!?」

 「体の傷、師匠、治す、しました。あと、部屋で休む、しろと……」

 「ちょ!? ペトラちゃんここで寝ちゃ駄目!! 誰か手伝って!!」

 




ペトラちゃん
人間を辞める第一歩を踏み出した未来の剣豪。

ベレス
シェイカーの特訓を幼少期から受けているんだから既に人間をやめている。

エーデルガルト
シェイカーの奇行に今日も胃を痛める。

木人
シェイカーの操るゴーレムの一種。戦闘から組手までなんでもこなせる。

リンハルト
授業中の居眠りによって罰ゲームを受けた被害者。

ベレスが訓練の時に歌っている歌
洋画とかにあるアメリカ兵が訓練の時に歌っている汚らしい歌詞の歌。

羽を毟られたフクロウ
フェーちゃんと間違われた模様





そんな感じでペトラちゃん特訓編でした。こんな特訓を毎日続けられます。ちなみにそれは書くことしません。物語の背後で進行しているってことで。

そして最後に巻き込まれるドロテア。でもなんだかんだ言いながら面倒見の良いドロテアだと面倒見てくれる気がします。

次回は三学級対抗戦の予定。


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その名はナギ流格闘術! セイロス仮面見参!!

ベレスの前に現れた謎の二人組。

奴らは一体何者なのか……!!


交流戦は黒鷲の圧勝に終わった。青獅子をベレスが叩き潰し、金鹿はペトラが叩き潰した結果だ。エーデルガルト達は動いてすらいない。

戦闘不能になったのも「私はフェルディナント・フォン・エェェェギル!!」と高らかに名乗った結果、ベレスに「うるさい」と腹パンされて戦闘不能になったフェルディナントだけだ。

 「ペトラ、なかなかいい動きするな」

 「先生も、動く、すごい、です!!」

ベレスとペトラの会話はどこか遠くで聞くエーデルガルト。

おかしい、交流戦の前は黒鷲の力を見せつけるつもりが、シェイカー塾の塾生の強さを見せつけられただけになっている。

カスパルは純粋に「すげぇ!」と言っているし、ドロテアは苦笑。ベルナデッタは怯えており、リンハルトは寝ている。そしてフェルディナントの痙攣は止まった。

 「……ヒューベルト。私が見ているのは幻覚かしら」

 「エーデルガルト様。お気を確かに。現実です」

ヒューベルトの言葉にエーデルガルトの胃痛が加速する。

 『調子にノるのはそこまでだ!! アドラークラッセ!!』

 「!? 誰!?」

そして突如戦場に響き渡る声。その声に反応してしまうエーデルガルト。

 『誰と聞かれては答えねばなるまい……行くぞ!!』

そしてその言葉と共に大きな爆発が起き、二人の人影が現れる。

一人は黒いフードに黒い仮面のつけた男。

もう一人はセイロス教の大司教の格好をした白い仮面の女。

 「俺の名前はセイロス仮面ブラック!!」

 「私の名前はセイロス仮面ホワイト!!」

そして高らかに名乗りをあげるバカ二人。

 「「二人はセイキュア!!」」

そして決めポーズをしている二人の背後で爆発が起こる。

それを見てエーデルガルトの頭痛が酷くなる。

ツッコミどころが多すぎる。目元を隠す仮面だけで服装はいつも通りとか、声も全く変える気ないとか、その決めポーズはなんだとか、何故爆発が起きるとか……

エーデルガルトのツッコミレベルでは追いつけない。

 「……一体何者だ?」

 「!?」

ベレスの言葉に驚愕するエーデルガルト。

 「エーデルガルト様。ひょっとすればアランデル公の手の者の可能性が……」

 「!?!?」

 「……なにか?」

信じられない者をみるような目でヒューベルトを見た結果、逆にヒューベルトに訝しげに見られてしまう。

 「ヒューベルト、気づいていないの?」

 「まさかエーデルガルト様はあの二人が何者かわかっておいでですか? 流石は我が主」

その褒め言葉は煽りにしか聞こえないエーデルガルト。しかし他の黒鷲の学級も気づいた様子がない。いや、ベルナデッタは怯えてばかりなので判断が難しいところであるが。

 「……ドロテア、あれが誰かわかるわよね?」

 「いいえ、私にあんな悪趣味な仮面をつける知り合いはいないけど……エーデルちゃんは知ってるの?」

最後の頼みの綱のドロテアにも裏切られた。ここにエーデルガルトの味方はいない。

 (逆に考えましょう。あれでバレないんだったら私の炎帝は絶対にバレないと思いましょう)

 「ガルグ=マクの交流戦に不審者とはな……俺達も手伝おう」

 「俺は面倒だけど……ま、先生がいるなら負けはないだろう」

必死にプラス思考に考えていたら青獅子と金鹿の級長がやってきた。

 「ねぇ、ディミトリ、クロード。あの二人を知ってるわよね?」

 「「いや、知らないが」」

そしてエーデルガルトを絶望に叩き落とした。

 「ふふふ、たかだかその人数で俺達に勝つつもりなのか」

 「甘い、としか言いようがないわね」

仮面をつけながら不敵に笑うバカ二人。

 「それじゃあ私から行きましょうか」

セイロス仮面ホワイトはその言葉と同時に姿が搔き消える。それと同時に凄まじい轟音が響き渡る。

エーデルガルトが驚いてその轟音の方を見ると、ペトラがセイロス仮面ホワイトの攻撃を受け止めていた。

 「あら、なかなかいい動きですね」

 「その動き、ナギ流格闘術、あなた、何者?」

動きじゃなくて見た目でわかるとツッコミたいエーデルガルト。

そしてバトル漫画のような動きを始めるペトラとセイロス仮面ホワイト。そこだけゲームの世界も違う。

 「エーデルガルト!!」

 「師!?」

ベレスの言葉にエーデルガルトが振り向くと巨大なゴーレムがエーデルガルトに向けて腕を振り上げている。

(避ける……ダメ!! 間に合わない!!)

回避も防御も間に合わないと思うエーデルガルト。しかし、エーデルガルトの前にベレスが剣を持って立ちふさがる。

 「師ぇ!!」

 「斬」

 「……え?」

ベレスが呟くと同時に巨大なゴーレムが真っ二つになる。剣の動きが全く見えなかった。その剣筋を見て目を輝かせている青獅子の剣士がいるがそれは無視する。きっと戦いを挑んでベレスにコテンパンにされるのだろう。

ゴーレムが破壊されたにも関わらず、セイロス仮面ブラックは不敵な笑みを止めない。

 「戦いとは数である!! これだけのゴーレムを止められると思うなら止めてみるがいい!!」

 『なぁ!?』

その言葉と同時に大量のゴーレムが現れる。これだけのゴーレムを同時に操る時点で大分人物が限られてくるかもしれない。

希望を持ってエーデルガルトはベレスを見る。

 「前衛はゴーレムの攻撃を受け止めるだけに集中して、魔道士組はとにかくでかいのを撃ち込んで!! 弓兵組はゴーレムの動きを阻害させることを考えて!!」

 「違う!! そうじゃない!!」

 「エーデルガルト!! 遊ばないで!!」

 「私が悪いの!?」

ベレスの言葉に驚愕するエーデルガルト。しかし、エーデルガルト以外はベレスの指示に従って戦っている。

 「エーデルガルト様。今は奴らを倒すことだけを……奴らの背後関係は後で調査します……」

 「……ええ、そうね」

ヒューベルトの言葉に遠い目をしながら答えるエーデルガルト。背後関係を調査しても何も出てくることはないだろう。なにせ相手はベレスの教師とセイロス教の大司教だ。調査する必要もなく誰だかわかりきっている。

 「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 唸れ!!! オデの筋肉!!」

そして真正面からゴーレムと力比べをしているラファエル。ふた回りも大きいゴーレム相手に互角に力比べできるラファエル。

 「ラファエル!! そのまま止めていてください!!」

 「おう!! 任せとけ……ウォ!?」

そして動きを止めているゴーレムに高火力の魔法を叩き込む若干15歳の天才児リシテア。ラファエルの顔ギリギリに容赦無く叩き込むことにエーデルガルトは軽くドン引きする。

 「シェイカー先生直伝槍術・竜槍」

そして死んでいるフェルディナントの槍を拾ってゴーレムに6連同時に槍を叩き込むベレス。

自分では前衛は動きを止めるだけに尽力しろと言っときながら、自分は平然とゴーレムを叩き潰すベレス。

 「先生は槍も扱えるのですか?」

 「うん? あぁ、先生に鍛えられてな。一通りの武器は使える」

近くにいたイングリットに答えながらゴーレムの頭を槍で吹き飛ばすベレス。

 「師、魔法も!! 使えるの!?」

エーデルガルトはゴーレムに斧を叩きつけながらベレスに問いかける。しかしエーデルガルトの一撃はゴーレムを傷つけることもできない。

 「いや、魔法の才能は全くないと先生のお墨付きだ」

そしてエーデルガルトの一撃ではどうにもならなかったゴーレムを相手に拳で消しとばすベレス。その所業にエーデルガルトは軽く引いた。

 「ふむふむ、使えそうな奴のピックアップは済んだな」

そしてかなり不穏なことを呟いているセイロス仮面ブラック。

 「セイロス仮面ホワイト!! 遊びは終わりだ!!」

 「これから面白いというのに……仕方ありませんね」

セイロス仮面ブラックの言葉にセイロス仮面ホワイトはペトラを蹴り飛ばした勢いで伸身宙返りをしてセイロス仮面ブラックのところまで戻る。身のこなしが一宗教の大司教の動きじゃない。

そしてセイロス仮面ブラックはズビシとベレスに指を突きつける。

 「新任教師ベレスよ!! ナギ流格闘術には究極奥義がある!! 貴様はそれを使って我らの合体攻撃を相殺してみるがいい!!」

 「……ナギ流格闘術にも詳しい。一体何者なんだ」

貴女の先生でしょう、とツッコミたいエーデルガルト。しかし突っ込めない。

だってセイロス仮面ブラックとセイロス仮面ホワイトが金色になっている。

 「あれは……ハイパーモード!! あれを使いこなせるのか!!」

ベレスは驚愕した声を出しているがエーデルガルトはもう疲れた。

 「流派!! ナギ流格闘術は!!」

 「王者の風よ!!」

 「全身系列!!」

 「天破狂乱!!」

 「「見よ!! 東方は紅く燃えている!!」」

そして決めポーズを取っているバカ二人。しかしその決めポーズに比例するかのように二人の体が黄金に輝いている。

 「「究極!! 超級覇王雷影弾!!」」

 『うわ!!! キモ!!!!』

思わず生徒達の声がハモる。それもそうだろう。超級覇王雷影弾という技はセイロス仮面ブラックが高エネルギー体を身にまとったセイロス仮面ホワイトを打ち出す技だが、なぜか打ち出されたセイロス仮面ホワイトの顔だけはそのまま残っている。

見た目はギャグだが、威力はガチらしく地面を抉りながらベレスに向かってくる。

 「師ぇ!!」

エーデルガルトの言葉に振り向くことなくベレスは迫り来るセイロス仮面ホワイトの前に立ちふさがる。

 「ナギ流格闘術が最終奥義!! 石破天驚拳!!」

そして今度はベレスが極太のエネルギー体を打ち出した。そのエネルギー体の先端には驚の字が浮かんでいる。

 (私はもう突っ込まないわよ!!)

そしてエーデルガルトはツッコミを放棄した。

そしてぶつかり合う高エネルギー体同士。しかし、決着はすぐについた。

 『せ、せんせい!!』

そう!! ベレスの石破天驚拳がセイロス仮面達の超級覇王雷影弾に打ち負けたのだ!! 打ち負けたベレスは超級覇王雷影弾に轢かれて天高く打ち上げられる。

 「未熟!! 貴様が石破天驚拳を使うには明鏡止水の心が足りていない!!」

そしてセイロス仮面ブラックが何か言い始めた。

 「よいかベレス!! ナギ流格闘術とはただの格闘術にあらず!! 天然自然の力を借りて戦うべき武術!! 貴様は小手先だけの技術に頼っていて、肝心の天然自然の力を借りれておらん!!」

 「貴方に……貴方にナギ流格闘術の何がわかる!!」

血まみれになりながら(メルセデスが必死にライブをかけている)叫ぶベレス。

 「愚かぁ!!」

そして今度は元の位置に戻ったセイロス仮面ホワイトが何か叫び始めた。

 「力に飲み込まれた者のナギ流格闘術など恐るるに足らず!! 天然自然の力を借りてこそ真のナギ流格闘術となるのだ!!」

もう意味がわからない。エーデルガルトの近くで「天然自然、力、借りる……は!? 師匠、言う、そう言うことでした!!」と何か開眼しているペトラをエーデルガルトは見なかったことにした。

 「ふん、貴様がそれでは生徒達も強くなれまい」

 「一生そこで這いつくばっているがいい」

 「「ふはははははははは!!!!!」」

そして高笑いで消えていくセイロス仮面達。取り残された生徒達とort状態になっているベレス。

 「……師?」

とりあえず心配になってエーデルガルトはベレスに声をかける。

 「私は……弱い……!!」

いえ、十分に人外です。とつっこめる勇気ある生徒はいなかった。

 




ベレス
私が……負けた……?

エーデルガルト
あの二人がバレないんだったら私は絶対に大丈夫ね!!

ペトラ
天然自然、力……

ナギ流格闘術
参考流派:流派東方不敗

セイロス仮面ブラック セイロス仮面ホワイト
一体何者なんだ……




そんな感じで交流戦編でした。え? 交流戦やってない? ナギ流格闘術を収めたベレスとペトラちゃんがいる時点で青獅子と金鹿に勝ち目ないですよ。

そして書いているうちに好き勝手やり始めたバカ二人。最初はこんなに暴れさせる予定なかったのに好き勝手し始めおった。そしてベレスに強化フラグが立ちました。これ以上ベレスを強化してどうする。

次回から更新の間隔は空くと思います。ゲームで内容確認しながらだと時間かかりますね。


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ベレスとシェイカーと時々ジェラルト

新しい節の開始です。

短めですよぉ。


ベレスはセテスに今節の課題である盗賊の討伐の説明を受けた後、騎士団長室にやってきた。

 「おお、来たかベレス」

 「父さん、先生もいたのか」

そこにはソファーで呑んだくれているジェラルト、そしてなにやら怪しげな文書を書いているシェイカーがいた。

 「父さん、仕事中じゃないのか?」

 「セテスみたいに硬いこと言うなよ、ベレス。こんくらいじゃ呑んだ内にも入らにゃしねぇよ」

 「修道院だったら昔みたいに一緒に呑んでた女に薬盛られて有り金全部奪われる心配もないしな」

 「それは秘密だと言っただろうがシェイカァァァァァ!!!!」

愉悦の表情を浮かべながらジェラルトの隠しておきたかった秘密をあっさりと暴露するシェイカー。ベレスはベレスでジェラルトの酒の席での失敗なんか慣れているので「あぁ、そんなこともあったのか」程度の認識だ。

ジェラルトの威厳なんてなかった。

 「あ〜、そういやベレス。ここでの生活には慣れたか?」

 「いや、まだ慣れない。今朝も下着姿で部屋の外に出たらドロテアに叱られてしまった」

女性としての羞恥心が完全に欠如した発言にジェラルトは顔を覆う。

 「? どうした、父さん」

 「いや……なんと言うか男所帯で育ったから仕方ねぇんだが、もうちょっと自分の下着姿を見られることに何かないのか?」

 「? 先生からは『女の下着は相手の隙を作る道具にもなる』と習ったけど、それが何か?」

 「テメェのせいかぁぁぁぁぁ!!!!!」

 「はぁぁぁぁぁぁ!? ベレスの教育を俺に丸投げして夜の歓楽街に行くような奴に反論する権利ねぇから!!」

 「あ!? テメ!! それは秘密だって協定結んだだろうが!!」

 「それは書面を交わしましたかぁぁぁぁ!!! 口約束は約束には入りませんよぉぉぉぉぉぉ!!!!」

そしていつも通りの殴り合いが始まる。ベレスも慣れているので部屋に用意されている紅茶を勝手に入れてソファーに座りながら香りを楽しむ。

ベレスにとってはジェラルトもシェイカーも気心が知れた仲だ。だから隣で大乱闘が二人によって行われていてもいつものことだと流すことができる。

ジェラルト渾身のレバーブローがシェイカーに突き刺さり、シェイカーが床をのたうちまわることで4198回ジェラルトVSシェイカーの乱闘が終わる。

 「そろそろ勝率が追いつくんじゃないか、父さん」

 「まだだな。まだ18勝くらいこいつが勝ち越してる」

シェイカーに死体蹴りしながらジェラルトはベレスに答える。

そしてシェイカーの痙攣が止まったところでジェラルトはため息を吐きながらソファーに座った。

 「あ〜、ベレス。学校はどうだ?」

 「なんだその思春期の子供に何を話していいかわからずとりあえず学校のことを聞いてみた父親ムーヴ」

 「テメェは死んでろ!!」

間髪入れずに突っ込みを入れてきたシェイカーにジェラルトは即座に突っ込み(物理)を入れるが、シェイカーによって振り落とした足を取られ、関節を極められる。

 「うぉぉぉぉぉ!! シェイカー!! 足はそっちには曲がらねぇ!!」

 「父さんの、ちょっといいとこ見てみたい」

 「ベレスも乗るんじゃねぇ!! うぉ!?」

ジェラルトの断末魔の悲鳴と一緒に骨が『ポキリ』と折れる音がした。『ヤッベ、やっちまった』表情になるシェイカー、叫びをあげながらモップになるジェラルト。「父さんが骨を折られるのか……はて、何回めだったか?」と考えに耽るベレス。

一言で言って魔境であった。

とりあえずシェイカーの回復魔法でジェラルトの足が回復され、全員でソファーについて一息つく。

 「それで? ベレスは何か困ったことないか? 生徒に虐められてねぇか? 虐められたらすぐに言えよ、生まれてきたことを後悔させるくらいの苦痛を与えてやるから」

 「お前のそのベレスに対する過保護っぷりはなんなの?」

ジェラルトの言葉にシェイカーが突っ込みを入れると、ジェラルトは呆れたようにため息を吐いた。

 「娘を持った父親の気持ちは童貞のお前には理解できないだろうな」

 「はぁぁぁぁ!? 童貞ちゃうし!! 美少女に逆レされたから童貞ちゃうし!!」

シェイカーの発言にマジ驚愕顔を浮かべるジェラルト。珍しく自爆したことに気づいたのかやっちまった表情になっているシェイカー。

 「え? お前の初めて逆レなの? マジで言ってんの?」

 「うるさい黙れ」

 「うっわ、引くわぁ。童貞喪失が逆レとかドン引きですわぁ」

 「黙れぇぇぇぇ!!」

指をさして嘲笑うジェラルトにマジギレしているシェイカー。

 「父さん、先生、ちょっといいだろうか?」

 「おう、なんだ」

 「逆レとはなんだろうか?」

ベレスの言葉にスクラムを組んで小声で会議を始めるジェラルトとシェイカー。

 「おい教育係、保健体育の授業はどうした」

 「バッカ。保健体育の授業は親の役割だろ」

 「バカはテメェだ。娘に子供の作り方を教えるとか犯罪の匂いがやばいだろ」

小声で会話しているためにベレスには二人の会話が届かない。するとシェイカーがベレスの方を向いて質問をしてきた。

 「ちなみにベレス。赤ちゃんはどこから来るか知っているか?」

その質問にムッとするベレス。シェイカーはいつまでもベレスのことを子供扱いするが、ベレスだってもう結婚しててもいい年だ。それくらい知っている。

 「男女がキスをするとコウノトリさんが運んでくるんだろう。私は詳しいんだ」

 「おいおいおい」

 「純粋すぎて目が潰れそう」

二人して目を覆うジェラルトとシェイカー。戦闘力は高いがそれ以外はゴミなベレスちゃん爆誕である。

 「そういえば先生に相談があるんだ」

 「おう、なんだ」

 「ベレス、お父さんには?」

 「ない」

ベレスの容赦のない一言によってジェラルトが崩れ落ちたが、二人は無視する。

 「実は今節の課題で盗賊の討伐を命じられたんだ」

 「らしいな。クレイジーサイコマザコンから聞いてる」

 「クレイジー……なんだって?」

 「気にするな」

シェイカーが気にするなというからベレスは気にしない。

 「訓練を積んでいると言っても生徒達は人を殺したこともない子供ばかりだ。どうやったら味方の被害をゼロにできるだろうか」

ベレスの言葉にシェイカーは何やら頷いている。

 「なるほどなるほど。心優しいベレスは生徒達に傷ついて欲しくないわけだ」

 「その通りだ」

ベレスの言葉にシェイカーは指をピッと立てる。

 「それだったら簡単だ。ベレスが先乗りして盗賊を皆殺しにすればいい」

 「なるほど。流石は先生」

 「いや、ダメだからな」

 「「なぜ!?」」

ジェラルトの言葉に驚愕の声(ベレスは無表情だが)をあげるシェイカーとベレス。

ため息を吐きながらジェラルトは説明をする。

 「それだと生徒達の課題にならないだろうが。士官学校に通う生徒の多くは将来国を背負う立場になる人物が多い。そういう子供に色々な経験をさせるのも士官学校の役割だ」

 「レアがそこまで考えているとは思えないけどな」

 「シェイカーとレア様の関係ってなんなの? 言っとくが以前の学級別対抗戦みたいなことしたら超叱るからな」

 「? 先生とレア様は学級別対抗戦で何かしていたか?」

ベレスの言葉にマジ驚愕顔を浮かべるジェラルト。それに対して首を傾げるベレス。

ベレスの記憶が確かならば学級別対抗戦は『セイキュア』という正体不明の二人組が出てきた以外は何もなかったはずだ。

 「おい鬼畜クソ外道。どういうことだ?」

 「知らないのか? 仮面で顔を隠すと正体はバレない……!!」

 「そんなバカな……!? いや、ベレスが気づいていないってことはマジなのか……!!」

何故か驚愕の表情を浮かべているジェラルトが印象的なベレスであった。

 




ベレス
戦闘力は高いがそれ以外の能力が軒並み低い処女先生。

ジェラルト
一回だけベレスをシェイカーに預けて風俗に行ったことがある。

シェイカー
童貞は逆レで奪われた。

シェイカーを逆レした犯人
とあるサカの民の少女。




そんな感じで新しい月の開始です。

そういえば最初の課題は盗賊の討伐でしたね。作者は普通に忘れていてプレイしていて『あ』って声が出ました。

そして月末まではフリータイム……つまり何を書いてもありってことだな……!!


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奇行

注意:このお話でレア様は手遅れになりました。原作レア様大好きな方。敬虔なセイロス教徒の方は読まないのをお勧めします。


エーデルガルトは何故か胃痛がしていた。これも昨日になって突如発表された『シェイカー先生のトキメキ特別授業』と言うもののせいだった。

あの頭のおかしさだったらすぐにセテス辺りに追い出されると踏んでいたのだが、エーデルガルトの予想は当然のように裏切られ、むしろ思いの外よかった面倒見の良さからシェイカーはガルグ=マクで居場所を構築しつつあった。

 「エーデルガルト様、お顔を険しいようですが?」

 「ヒューベルト、わかって言っているでしょう」

エーデルガルトの言葉に陰険従者は愉悦そうに笑う。エーデルガルトの予想通りにヒューベルトはシェイカーと気が合っていた。なにせ怪しげな薬の調合方法を習いに行っているくらいだ。薬の実験台になるであろうフェルディナントには黙祷を捧げておく。

 「しかし、シェイカー先生の教えの巧みさは見事なものです」

 「わかっているのよ? あの人がとてつもなく優秀な人だと言うことはわかっているの……!! それでもあの人を認めてしまったら私の中の常識が木っ端微塵にされてしまうような気がするのよ……!!」

 「我が主も難儀な性格をしていますな」

エーデルガルトは内心で『やかましい』と思いながらシェイカー塾門下生の二人をチラリと見る。

ベレス。ミスパーフェクト。武芸から軍略、果ては政治まで教えられる是非とも帝国に欲しい逸材。

ペトラ。シェイカー塾新進気鋭の新人。武芸に関してはすでにエーデルガルトとディミトリを同時に相手どれる。戦いたがりのフェリクスくんが挑んで10秒後には医務室送りにされたのは記憶に新しい。

二人とも優秀だ。特にペトラは教えられ始めて半月にもなっていないのにも関わらずの大躍進である。もし、これから先、戦闘系の課題が与えられた場合、戦場に二人を投げ込んでおけば終了すると言う確信がエーデルガルトにはある。

エーデルガルトは頭を振ってベレスとペトラが戦場でヒャッハーしている姿を追い出すと、軽く食堂を見渡す。

せっかく大魔導士シェイカー・エナヴェールの授業が受けられると言う理由で、レアが三学級合同で特別授業をすることになった。そのために仕官学校全ての生徒が食堂に集まっている。

 「それにしてもシェイカー先生遅いわね」

エーデルガルトの言葉が引き金ではないだろうが、突如食堂の明かりが消え、不思議な音楽が流れ始める。

それは別世界で『コミックサイクル』と言う曲をアレンジしたものである。

この時点でエーデルガルトの嫌な予感が恐ろしく高まっている。

そして食堂の左右の扉が突如開かれた。

左の扉には黒の燕尾服で付け髭をつけたシェイカー。

左の扉には黒の燕尾服で付け髭をつけたレアがいた。

全員がレアの姿を見た時点で絶句した。それはそうだろう。セイロス教の大司教がやっていい服装ではない。

しかし事故は続く。

二人は腕をまっすぐにおろし手首を外側に向けると言うペンギンに似た姿勢をとり、軽快な音楽に乗せて無言で膝を大きく曲げながら食堂のカウンターの方向に向かう。

そしてカウンターの側で二人は剣を抜くと、(何故か)置いてあった丸太にゆっくりと剣を降ろす。

なんと言うことでしょう。力を入れていないのに切れてしまったではありませんか。

怒涛のようにツッコミどころを量産しつつ、二人は気にした風もなく、今度はレアがリンゴを取り出し、シェイカーに向かって投げる。

シェイカーはそれを突き刺して取ろうとするが、失敗して真っ二つになってしまった。

悔しそうにするシェイカー。今度は私にやってみろと言う挑発をするレア。

リンゴを投げるシェイカー。

 『おぉ!!』

思わず食堂にいた全員から歓声が出る。レアにの剣には真っ二つになることなく、リンゴが突き刺さっていた。

そして二人で謎の踊り(ヒゲダンス)をするシェイカーとレア。

しかし、二人のフリーダムタイムも長くは続かない……!!

 「何をしているんですか大司教ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

そう!! 我らの胃痛担当(セテス)がいるからだ!!

 「なんですかセテス、騒々しいですよ」

黒い燕尾服に付け髭をつけたまま喋るレア。

 「いや!? 騒がしくもなるでしょう!? 何をやっていたのですか!?」

 「シェイカーと一緒に大道芸ですが」

 「大司教が大道芸!?」

全く悪びれた様子のないレアに、マジ驚愕顔のセテス。

 「おいおい子安。お前の声でこの程度のこと驚くなよ」

 「? 待て、子安とは私のことか?」

 「貴方以外に子安はいないでしょう」

 「私はセテスですが!?」

そして謎の名前でシェイカーとレアに呼ばれるセテス。

 「と言うか何の真似ですかこれは!! 大司教の執務室に行ったら『シェイカーと一緒に遊びに行ってきます』と言う書き置き!! そしてこの威厳を投げ捨てるような真似!!」

 「落ち着きなさい子テス」

 「レア、混ざってる混ざってる」

 「あら、いけない」

テヘペロポーズをするレア。即座にシェイカーにレバーブローを打ち込まれ悶絶するレア。

 「何をしているかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 「バッカ!! お前、BBAのテヘペロとか誰得だよ!!」

 「確かに殴りたくなったが、本当に殴ってはならんだろう!!」

 「セ、セテス、来月の給料カットですね」

なんとか起き上がったレアの無慈悲な言葉にセテスは崩れ落ちる。『そんな、フレンにあげるお小遣いが』と言っている時点でまだ余裕そうだ。

 「いや、そんなことよりこれは何の真似ですか!! 納得のできる説明をいただきたい!!」

その言葉は食堂全員の総意でもある。授業だと思っていたらシェイカーとレアの奇行を見せられた。

文字にしても酷い状況だ。

そんなセテスにレアは指を立てて説明を開始する。

 「いいですか、セテス。私は重大な間違いに気づいたのです」

 「自分の年齢のことか?」

見事に地雷を踏み抜いたシェイカーにレアはローリングソバットを叩き込む。

モップになっているシェイカーを無視してレアは言葉を続ける。

 「セテス、私は確かに大司教です。そして敬われる存在になっています。ですが、それは正しいことですか? 本来敬われるのはセイロス様だけであった、私は大司教なのですから、そこまで敬われることはないはずです」

 「いや、お前セイ」

重大なネタバレをかまそうとしたシェイカーはレアのかかと落としが突き刺さった。それを見ていたシルヴァンが「美女からの蹴りとかご褒美かよ」と呟き、周囲にドン引きされているのをエーデルガルトは見なかったことにした。

頭痛を抑えるセテスは絞り出すように口を開く。

 「つまり、今回の騒動は……?」

 「私の威厳とか吹き飛ばすためにやりましああ、ちょっと待って!! グーはダメ!! グーはダメ!!」

怒りのこもったボディーブローをレアに叩き込み、動けなくしてから引きずって食堂から退場するセテス。それを見送る生徒達。

無言の食堂。

 「よ〜し、それじゃあ授業開始するぞぉ」

そこに一切空気を読まないシェイカーの宣言。生徒達はある意味でこれに救われた。きっと大司教も普段の仕事で疲れているんだ。今度から優しく接してあげよう、と言う気持ちになったからだ。

そして始まるシェイカーの授業。

しばらく受けてみてエーデルガルトは思った。

 (ムカつくほど分かりやすい!?)

中身はあれなのに授業の分かりやすさは何なのだ。なにせ完全脳筋のカスパルやラファエルも理解している。

そして深いことを質問するリシテアのような生徒にもパーフェクトな回答をしている。

 (これで……これで性格がマトモだったら……!!)

他のマイナス要素が大きすぎた。

そこでシェイカーは何かに気づいた。

 「おいベレス」

 「何だろうか」

 「お前のクラスの奴が一人いないな、なんて言ったっけ。俺みた途端『ヒィ!? キチガイ!!』って超絶失礼なこと言いやがったネズミみたいな雰囲気の奴」

ベレスは少し考えていたようだが、すぐに思い至ったのか口を開いた。

 「ベルナデッタのことか。ベルナデッタだったら心の風邪を引いたと言う理由で部屋に閉じこもっているよ。ところで先生、心の風邪とは何だろうか」

 「うむ、サボりだな」

 「なん……だと……!?」

シェイカーの言葉に驚愕顔を浮かべるベレス。普段、無表情なくせにネタの時だけ表情豊かである。

 「ベレス!!」

 「はい!!」

シェイカーに呼ばれて席から起立して直立不動になるベレス。

 「サボりは?」

 「許しはいけない」

シェイカーはニヤリと笑った。

 「ならば行くぞベレス」

 「はい」

 「ちょ、ちょっと待って!!」

二人で出て行こうとしたのをエーデルガルトは呼び止める。

 「どうしたエガちゃん」

 「やめて、これ以上ツッコミどころを増やさないで」

そしてシェイカーに謎の呼ばれ方をするエーデルガルト。

 「え〜と、どこに行くつもり?」

その言葉にシェイカーは200%胡散臭い笑顔を浮かべた。

 「ベルナデッタを引きずり出しに」

 (あ、これはダメな奴だわ。ごめんなさい、ベルナデッタ)

そしてエーデルガルトは速攻でベルナデッタを見捨てた。誰だって我が身が一番可愛いのだ。

そして他の学級の生徒達も引き連れて寮へとやってくる。

 「あ〜、あ〜、ベルナデッタくん。君は完全に包囲されている。大人しく出て来なさい」

その言葉にベルナデッタは少しだけ顔を出し、マジ驚愕顔を浮かべて中に引っ込んだ。

 『コホンコホン。あ〜、ベルはあれですね!! 風邪ですね!!』

 「魔術で君が健康なのは確認できている。大人しく出て来なさい」

 『ベルのは身体的な風邪ではなく!! 心の風邪なので!!』

 「ふぅむ、残念ながら俺は頭の病気なので普通ではないぞ? いいか、最終通告だ。大人しく出て来なさい」

 『絶対に嫌です!!』

ベルナデッタの拒絶に愉悦の表情を浮かべるシェイカー。どうみても悪いことしかしそうにない。

 「ベレス」

 「はい」

 「やれ」

シェイカーの言葉に轟音を響かせてベルナデッタの部屋の扉を破壊するベレス。中ではベルナデッタが唖然とした表情を浮かべていた。

 「ペトラ」

 「はい!!」

 「連れてこい」

 「はい!!」

元気よく返事して部屋へと突入し、ベルナデッタを縛り上げて外に引きずり出すペトラ。

そしてベルナデッタが外に出て来たことを確認してから突然叫ぶシェイカー。

 「部屋があるから引きこもりができるんだ!!」

響き渡る爆音。舞う炎。何故かベルナデッタの部屋だけ消し飛ぶ寮。

 「ベ、ベルの部屋がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 「ふはははははは!!! ベルナデッタくん!! 君がサボるからいけないのだよ!!」

 「そ、そう言う問題じゃないんですけど!? ベルの部屋が消し飛んだんですけど!? どうやったんですか!?」

 「あ? そんなもん結界魔法と攻撃魔法を同時に使えば一発だぞ」

 「並列魔法ですか!!」

シェイカーの言葉に興奮しながら食いついたのは天才魔法少女リシテアだった。

 「シェイカー先生は魔導の極みと言われる並列魔法を扱えるのですか!?」

 「まぁ、使えるぞ」

そこで何か思いついた表情になるシェイカー。

 「よし、リシテア。君も俺の生徒になるか? そうしたら並列魔法だけじゃなく、軍略や政治についても叩き込んでやる」

 「!? 是非!!」

嬉しそうにしているリシテア。新たな獲物を見つけた表情になっているシェイカー。

 「私の部屋をどうしてくれるんですかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

そして部屋の残骸を見て泣き叫ぶベルナデッタ。

 「……」

 「エーデルガルト様、どうにかしませんと」

 「私がどうにかするの!?」

 「級長ですので」

ヒューベルトの言葉に、エーデルガルトは肩を落としながらシェイカーに詰め寄っているベルナデッタのところに行くのであった。

 




エーデルガルト
今日も胃痛が酷い

ヒューベルト
当然のようにシェイカーと仲良くなった様子。薬の実験台は主にフェルディナント。

シェイカー&レア
まさかのヒゲダンス

セテス
声帯子安な胃痛枠

リシテア
シェイカー塾に入塾した天才少女

ベルナデッタ
引きこもっていたら部屋を爆破された

ベルナデッタの部屋
シェイカーが魔法でどうにかしました




久しぶりの更新です。そして止まることを知らないレアさまのキャラ崩壊。誰だレア様にヒゲダンスを教えたのは。

そして作者はポケモン盾を買ってしまったせいで風花雪月のやる時間が消滅しました。このままではこっちの更新に被害が出てしまう。
そこで作者は気づきました。
そうだ、プレイ動画を見よう。
ぶっちゃけ話の確認をしているだけなのでプレイ動画でいいことに気づきました。だからゲームの方は金鹿だけ進めるよ


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支援会話:マリアンヌ

今回はマリアンヌちゃんメインのほのぼのですよ!!

(たぶん)ほのぼのですよ!!


マリアンヌは憂鬱な士官学校生活の中で、数少ない仲良くなれた動物である馬のドルテのところへと向かう。

内向的で自罰的なマリアンヌと仲良くする珍しい人物など同じ学級でもヒルダくらいしかおらず、そのヒルダも頻繁に周囲の人物と遊んでいるためにマリアンヌは必然的に孤独なことが多かった。

自分が持っている紋章もあって孤独を苦とするマリアンヌではなかったが、それでも人並みの寂しさは持ち合わせている。

そんな彼女の孤独を埋めたのも彼女が忌み嫌っている紋章の力であった。

紋章の力で動物と会話ができる彼女は、人気のいないところで動物達と話をしていた。それが彼女の数少ない癒しであった。

 「……あ」

そんな彼女がガルグ=マク大修道院にいる馬のドルテのところに来ると、予想外の人物がドルテを撫でていた。

その人物が気がついたようにマリアンヌを見る。

 「うん? ああ、マリアンヌだったか」

 「は、はい。こんにちわ、シェイカー先生」

我らが黒フード(キチガイ)である。

キチガイであるシェイカーが動物を愛でる事なんかあるのか? 読者諸兄にはそれが気になる人物がいるだろう。当然のようにマリアンヌちゃんも気になった。しかし、マリアンヌちゃんはどこに出しても恥ずかしくないコミュ障である。レア様のように「え? 貴方みたいな鬼畜クソ外道が動物愛でるとか槍が降るんじゃないですか? はは、ワロス」なんて言えるわけがない。

当然のようにマリアンヌちゃんは立ちすくんでしまった。大切な友馬であるドルテを助けたい気持ちはあるが、それ以上にマリアンヌちゃんを縛り付けたのは何をやらかすかわからないシェイカーの言動だ。気分次第で次の瞬間にはドルテが馬刺しになっているかもしれない。そんな事をされたらマリアンヌちゃんは士官学校を辞めかねない。というか辞める。元々、通学には否定的だったのだ。

しかし、次に再びマリアンヌは驚く事になる。

なんとドルテが甘えるようにシェイカーに顔を擦りつけたのだ。それはドルテの甘える時に仕草であった。

驚いているマリアンヌを見てシェイカーは苦笑する。

 「俺が動物を可愛がるのがそんなに意外か?」

 「は、はい……」

マリアンヌは自分の失言に気づいて慌てて口を抑えるが、シェイカーは気にしたふうはなく、優しくドルテを撫でた。

 「俺を変えてくれた人が遊牧民族の出身でな。馬は友人みたいなものだ」

 「シェイカー先生を変えた人……?」

マリアンヌの問いにシェイカーは優しい表情でドルテを撫で続ける。

 「俺が若い頃……旅に出てしばらくしてからか、人という存在に絶望をしたことがあった」

シェイカーの言葉をマリアンヌは黙って聞いている。なんとなく聞かなければならないと思ったからだ。

 「自分の利益しか考えない人。他人を妬み、嫉み、どうでもいい逆恨みをする人。そこにいたのは人の皮を被った薄汚い生物ばかりだった。俺はそのような連中と同じ生物という事だけで絶望した。そしてそいつらを破滅させていた」

シェイカーの口から出たのは謎が多いと言われるシェイカーの過去。

 「そして自殺するように修羅が集まると言われる平原に俺は足を踏み入れた。食料も持たず、水も持たず……ただ死ぬためにそこに行った。そして死ぬのだと思って倒れたのを助けてくれたのが彼女だった」

 「……その人の言葉でシェイカー先生は変わられたのですか?」

マリアンヌの問いにシェイカーは苦笑する。

 「言葉ではなかったな。腹パンされた後に顔面に膝を入れられた」

シェイカーの言葉にマリアンヌは絶句する。

 「それをした理由が『あなたの笑顔が胡散臭かったから』だぞ? 信じられるか?」

 「それは……その……」

マリアンヌは返答に困る。話を聞いているだけならその女性もシェイカーに負けず劣らずのキチガイだ。

 「だが、それからだな。自分の気持ちを素直に出すようになったのは。彼女のおかげで友人もできた」

シェイカーは優しい表情でドルテを撫で続けている。

 「その彼女が遊牧民族だったからかな。馬や動物は友人だと考えてしまう」

 「……良い方だったんですね」

 「……ふむ、少し喋りすぎたな」

マリアンヌの言葉にシェイカーは何も返さず、いつもの胡散臭い微笑みを浮かべた。

 「先生! 質問が!!」

そして大広間の方からリシテアがやってくる。それにシェイカーはそこで待つようにジェスチャーをしてからドルテを撫で、その場から歩き去ろうとする。

そしてマリアンヌとすれ違いざまに小さく伝えてくる。

 「今、話した事は内密にな」

マリアンヌが驚いたようにシェイカーをみると、シェイカーは微笑してから歩き去った。

シェイカーとリシテアが歩き去ってから、マリアンヌはドルテに近づく。ドルテは甘えるようにマリアンヌに顔を擦りつけてきた。

それを撫でながらマリアンヌは小さく呟く。

 「……どちらが本当のシェイカー先生なのでしょうか……」

キチガイの言動をするシェイカー。今、マリアンヌだけが見た優しい微笑みを浮かべるシェイカー。

その翌日、マリアンヌはスカウトされる形でシェイカー塾に入塾する事になるのであった。

 




マリアンヌ
シェイカーの意外な一面を目撃してしまった少女。

シェイカー
動物には優しい。

シェイカーを助けて腹パン、顔面膝蹴りをした少女
いったい何者なんだ……


そんな感じで支援会話:マリアンヌ編でした。え? マリアンヌちゃんが贔屓されているって? 作者のお気に入りだから仕方ないね!! 自分の好きなキャラに幸せになって欲しかったら自分で書こうぜ!!

いつもと違ってほのぼの風味。ところどころにキチが入り込んでいますが、誤差の範疇でしょう。
次回からはいつものノリに戻ります。


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セテスの受難

おい、誰だ。セテスさんが子安声で教会ナンバー2だから絶対に裏切るって言ってた奴は


セテスさんは苦労人枠に決まっているだろ……!!


 「ジェラルド殿でもあの男は止められないのか……」

 「あいつを止められる存在を俺は見たことがねぇよ」

ガルグ=マク大修道院の入り口、そこでセテスとジェラルドは世間話をしていた。

 「しかし、あの男と関わってから大司教が壊れ始めている気がしてならない。このままでは信者達から不信感を持たれてしまう」

会話の内容はガルグ=マク大修道院にやってきて常に話題を提供する男、シェイカーのことであった。

セテスの言葉にジェラルドは困ったように頭をかく。

 「レア様を見た感じだと壊れ始めると言うより素が出てきてるって感じだけどな」

 「それを言わないでくれ……!!」

ジェラルドの言葉にセテスは苦々しげにつぶやく。

 「あいつらは昔からそうだ……!! ナギ様と一緒にこっちを一方的に振り回しといて後は丸投げ……!! ガルグ=マク大修道院の建設もどれだけ大変だったと思ってるんだ……!! レアの奴はさも『自分が苦労してました』面しているが、実務的なことをやったのは全て私だぞ……!! くそ、レアもグラーフもナギ様もみんな死ねばいいのに……!!」

そして割と盛大なネタバレをかましてしまうセテス。だが、大人であるジェラルドは「あ、こいつもシェイカーに振り回されている人間なんだな」と思って突っ込むような野暮な真似はしなかった。

 「お父さんとセテス。ちょうどいい」

 「おお、ベレスか。どうし……」

話しかけてきたベレスに笑顔で対応しようとしたジェラルドの表情が固まる。セテスもベレスの格好を見て驚愕していた。

そんな二人を見てベレスは不思議そうに首を傾げた。

 「どうかした?」

 「いやお前がどうした!? その格好はなんだ!?」

ジェラルド渾身の叫びである。その叫びに他にいた人々もベレスの格好に注目する。そして男性陣の鼻息は荒くなった。

不思議そうにしながらベレスは着ている服のスカートを摘まみ上げる。

 「ああ、この格好は普段着ている服が全部洗濯中でね」

 「「だからって何故メイド服!?」」

そう、ベレスは何故かメイド服を着ていた。そして頭には猫耳カチューシャをつけ、猫尻尾までつけている。

 「何故と言われても大司教からもらった服がこれだったからとしか言いようがないんだけど」

 「「大司教……!!」」

苦々しい二人の呟き。何故か空に映るレアが満面の笑みを浮かべてサムズアップをしている映像を幻視した。

 「あ〜、うん。ベレス、あまりその格好でうろつくな」

 「? 何故?」

羞恥心というものがないベレスは不思議そうに首を傾げる。その可愛らしさに男性陣だけでなく女性陣も顔を赤くする。

ジェラルドは頭痛を抑えながら口を開く。

 「その格好は若い連中には毒だ。だからだよ」

 「ふむ、そんなものなのか。わかった」

お父さんのいうことを素直に聞くいい子なベレスちゃん。ジェラルドパパにはこのまま娘の情操教育をちゃんとして欲しいものである。

 「そうだ、二人に聞きたいことがあるんだ」

 「コホン。ふむ、何かね?」

先ほどまでの狼狽はなかったことにして厳しい表情をしてベレスを見るセテス。そこにはベレスを怪しんでいる教会のナンバー2の姿があった。

だが、そんなことに無頓着なベレスちゃんはとあるものを取り出す。

 「私はみんなに落し物を届けているんだけど、これの持ち主がわからなくて」

そう言ってベレスは二冊の冊子を取り出す。二人は差し出された冊子の覗き込み

そして絶句した

 『ジェラルド×セテス 俺の剣をお前の鞘で鎮めてくれ R-18』

 『レア×ベレス セイロス様が見てる R-18』

とてもおぞましいものであった。

 「あ〜、ちょっと待て。おい、セテス殿。これはなんだ?」

 「いや、私も知らない」

二人の会話を聞いてベレスは不思議そうに首を傾げた。

 「二人が出てきている本だったから二人のものかとも思ったんだが、違うんだね」

 「「当たり前だ!!」」

恐怖に満ちた顔で叫ぶセテスとジェラルド。だが、これで二人の会話をどこかうっとりとしながら見ていた女性信者の正体がわかった。

これの読者だろう。

 「ベレス、まさかこの中身は見たか?」

 「うん? ああ、中に名前が書いてあるかもしれないから確認したよ。それよりお父さん、尻の穴は出すところであって入れるところじゃないぞ」

 「説明はやめてくれ!! それだけでどんな内容が想像できちまう!!」

ジェラルドの精神に多大なダメージ。純粋とは時に残酷である。

 「お、なんだなんだ。珍しいメンツだな」

そこにやってきたのは(おそらくは)元凶であろう黒フード。

セテスとジェラルドは血走った目でシェイカーを締め上げる。

 「おいおい、何の真似だよ」

 「「黙れクソ野郎。あれは何だ?」」

二人の言葉にシェイカーは不思議そうにしていたが、ベレスが持っていたものに気づいたのか納得したように頷いた。

 「ああ、よくできているだろ?」

 「「やはり貴様が元凶かぁぁぁぁぁ!!!!!!」」

 「まぁ、落ち着け。俺の言い分を聞け」

怒りのあまりボルテージを振り切った二人をベレスが物理的に沈静化し、とりあえず話し合いになる。

 「それでシェイカー殿、あれは何だ?」

 「なんだなんだセテス!! 真面目ぶりやがって!! 昔にお前が奥さんに送ったあっまあまな手紙の内容を発表してもいいんだぞ!!」

 「貴様が何故それを知っているぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」

シェイカーの軽い煽りにすぐさまブチギレる胃痛担当。

それをジェラルドが宥めてから本題に入る。

 「そう、あれは俺がパルミラ人だった時のことだ」

 「「ボケはもういらん」

 「つまらん奴らだな」

シェイカーは本気でつまらなそうにしながらも二冊のおぞましい存在の説明を始める。

 「それな、レアと話をしていたら最近寄付金が少なくなって困っているって話になってな」

 「……まあ、そうだな」

シェイカーの言葉にセテスは頷く。そしてシェイカーは自信満々に頷きながら口を開く。

 「そこでそれですよ」

 「「説明になっていないが!?」」

本当に一切説明になっていなかった。だが、シェイカーは逆に呆れるような表情になる。

 「おいおい、二人共俺と付き合い長いんだから理解しろよ。レアなんか一発だったぞ」

 「貴様らキチガイと一緒にするな」

マジ切れ表情をしながらシェイカーの胸ぐらを掴むセテス。さりげなくキチガイ扱いされた大司教がいた気がするが、ジェラルドは聞かなかったことにした。

 「つまり寄付金の代わりにそいつを売って金にしようって寸法よ!!」

 「そんなことで金が集まるわけがないだろう!!」

 「いや、すでに10年分近い寄付金が集まったが?」

 「なん……だと……!?」

長年頭を痛めてきた財政問題がウルトラCの解決をされていて驚愕顔を浮かべるセテス。

 「最初は女性向けでセテスとジェラルドだけのつもりだったんだけどな、レアの奴が男性向けも必要だと言い始めてな。急遽、レア×ベレス本も作った。レアの相手役はレアの強い希望でベレスになった」

 「待て待て待て、これは一般販売されているのか?」

セテスの言葉にシェイカーは笑顔でサムズアップする。

 「帝国王国同盟貴族平民とわず大人気だぞ!!」

その言葉にセテスはついに吐血した。胃が壊れたらしい。ジェラルドも疲れ切った表情を見せながら口を開く。

 「お前、これ熱心な信者から怒られなかったか?」

 「熱心な信者と言うか、女神をすごい尊敬しているメルセデスには怒られたな。しまいには『シェイカー先生に女神様は本当にいるって教えてあげますねぇ』って言って俺の塾に来た。スカウト予定だったけど想定外の来られ方をしたなぁ」

どこか遠い目をしながら呟くシェイカー。その姿に少しだけ溜飲を下げるジェラルドとセテス。

主にこいつでも想定外のことが起きるんだな、って意味で。

 「ところで先生。これの持ち主はわからないか?」

 「ああ、何だと思ったら落し物だったのか」

 「いや大陸中に販売されている代物だったらいくらシェイカーでも持ち主なんかわからねぇだろ」

 「わかるぞ」

 「わかるのかよ!?」

まさかの宣言に驚愕するジェラルド。それに対して何でもないかのように説明するシェイカー。

 「一冊ずつに特別な術式を入れてあってな。購入した人には新刊が出たら通知がいくようになっているんだ」

 「何で貴様は昔からそう言う高度な魔術をくだらないことに使うんだ」

 「趣味だ」

セテスの本気で呆れた言葉に即答するシェイカー。そしてシェイカーは本を受け取ると魔術を起動する。

 「あなたの持ち主は誰だろな、と。お、出た」

 「誰だ」

セテスはこれの持ち主に一言言ってやろうと思っていた。こんな本は即座に白金処分である。教会の財政問題はシェイカーに別の方法を考えさせればいい。そう考えていた。

そしてシェイカーはイイ笑顔で口を開く。

 「フレンのだな」

今度こそセテスは致死量の血を吐くのであった。

 




セテス
付き合いの長いレアとシェイカーに今日も胃痛ダメージを与えられていたらまさかの身内の裏切りにあった。

ジェラルド
完全に巻き添えを食らった騎士団長。

ベレス
落し物センター

メルセデス
シェイカーはきちんと面倒みてあげなきゃ!! という間違った使命感を燃やしてしまいシェイカー塾に入塾した生徒。

同人誌
原作:レア
漫画:シェイカーのゴーレム

フレン
腐ってやがる……!!




この話を書くにあたってセテスとフレンのことを調べたら重大なネタバレを食らった作者です。そのためにセテスとフレンとも旧知ということを無理やりねじ込む。書き始める前に調べておけばよかった。

ちなみにフレンが腐った理由は作者のファーストプレイ時に「なんかこの娘腐女子っぽい」という印象を受けたため。ある意味でフレンが一番の被害者。

そしてスカウトしたかったメルセデスを無理矢理スカウト。前回のマリアンヌ以外はスカウトしたいキャラはこういうネタ回でスカウトしていく予定です。


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リシテアちゃん、きみ将来糖尿病になるんじゃないかい?


 「お前は好き嫌いが多すぎる」

 「……はい?」

リシテアがいつもの通り食事をとっていると、自分が教えを請うているシェイカーがやってきて突然そんなことを言われた。

リシテアが不思議そうにしているのを気にすることなく、シェイカーはリシテアの向かい側に座る。

 「リシテアは好き嫌いが多すぎる。そんな食生活を送っていたら成人病一直線だぞ」

 「成人病がなんなのかわかりませんが、大丈夫です。子供扱いしないでください」

リシテアの言葉にシェイカーは机を力強く叩く。

 「甘い!! リシテアがお茶会で飲む甘ったるい紅茶より甘い!! いいか!! 糖尿病はとても辛い病気なんだぞ!! しかも若いうちからかかったら最悪だ!!」

 「いえ、糖尿病という病気を聞いたころすらないんですが」

 「第一なんだその食事は。野菜がないじゃないか」

 「失礼ですね。今日は野菜をとりました」

 「まさかお茶会の時にメルセデスが持ってきたスイートポテトを野菜と言う気じゃないだろうな」

図星であった。

 「それに魚嫌い、野菜嫌い、肉はちょっと好き、すごい甘党とか早死に一直線だぞ」

 「別にいいんです。どうせ私は長生きできないですし」

リシテアの言葉にシェイカーはなんでもないように口を開く。

 「ああ、あの不完全な呪いのことか? あれならもう解呪したぞ?」

 「………え?」

リシテアは呆然と呟く。それはそうだろう。幼い頃に受けた人体実験のために長生きすることを諦めていたのに、目の前の教師はそれをあっさりと治したと言うのだ。

リシテアは思わず立ち上がってしまう。

 「あれを治したんですか!?」

 「え? そりゃあ治すだろ。あんな不完全な呪いなんか見ている方が不満になるぞ」

そこでシェイカーは何かに気づいたのかサムズアップする。

 「安心しろ!! きちんと呪詛返しで完璧な呪いを相手にプレゼントしておいた!! リシテアにあの呪いを刻みつけた奴は生きるのが辛いくらいの苦痛を味わっているぞ!!」

イイ笑顔での発言にリシテアはちょっと引いた。

気分を落ち着けながらリシテアは席に座る。リシテアは長生きできないから必死になって勉強し、心配をかけた両親に報いるためにしてきた。

しかし、目の前の教師の言葉を信じるならば自分の体はもう健康体なのだ。

 「……本当に私は長く生きれるんですか?」

リシテアの言葉にシェイカーは不満そうにする。

 「あの程度の呪いも解呪できないようじゃ、俺は友人とやっていた呪い遊びでとっくにくたばっているよ」

再びリシテアはシェイカーの言葉にドン引きした。シェイカーの言葉が確かならリシテアを苦しめてきたことは、シェイカーとその友人にとっては遊び以下なのだ。こう言ってはなんだがリシテアはシェイカーとその友人に軽くドン引きした。

 「なんだ、あの呪いのせいでヤケになってたのか」

 「ええ、まあ。でも先生はいつの間に解呪したんですか? そんな時間なかったですけど」

 「この前の健康診断の時にちょっとな」

悲報:リシテアを長く苦しめた呪い、健康診断で治される。

その事実にちょっとリシテアは頭痛がするが、シェイカーと関わって図太くなった神経でなんとかそれを抑える。

 「まぁ……それだったら少し健康に気を使ってもいいですけど」

 「そういいながら紅茶にドン引きするくらい砂糖を入れるんじゃない」

 「あ、これはうっかり」

リシテアの言葉にシェイカーは砂糖が入った入れ物を没収する。それを不満に思いながら紅茶を飲むリシテア。

それを見てシェイカーはおそるおそる口を開く。

 「……それ甘すぎないか?」

 「なに言ってるんですか。この頭に突き抜ける甘さがたまらないんじゃないですか」

 「えぇ……」

シェイカーをドン引きさせると言う地味にすごいことをするリシテアちゃん。天才魔法少女は格が違った。

一度咳払いをしてから口を開くシェイカー。

 「それじゃあリシテアはこれから健康に気を遣うってことでいいな」

 「まぁ、長生きできるならそれに越したことはないですし」

リシテアの言葉にシェイカーは立ち上がって指を鳴らす

 「Hey、レア!! お客様に特別料理を出して差し上げて!!」

 「ヨロコンデェ!!!」

 『大司教!?』

食堂にいる全員の声がハモった。それはそうだろう。厨房から料理人の格好で出てきたのは大司教レア様だったからだ。

しかし、シェイカーの授業で度々レアの奇行を見ているリシテアは慣れている。半目になってレアを見ている。

 「またサボりですか、レア様」

 「あら、失礼ですね。サボりではありませんよ。息抜きです!!」

リシテアの言葉に自信満々に胸を張るレア。それを見てリシテアは食堂の入り口を見ながら口を開く。

 「だ、そうですよセテス様」

 「さらばです!!」

 「待てい!!」

リシテアの言葉にレアは速攻で逃げ出し、それを追うようにセテスが走り去っていく。

最近ガルグ=マク大修道院で見られるようになった光景だ。

逃げ出したレアの代わりにシェイカーが巨大な鍋を持ってくる。そして机の上に置いた。どう考えても一人分じゃない。

 「……先生、これは?」

 「うむ、これは寄せ鍋と言って肉や魚だけじゃなく、野菜もとれる優れものだ」

シェイカーはそう言いながら取り分ける。

 「あれ? 私と先生の分じゃないんですか?」

 「ああ、これな。鍋をやると必ず来るのが二人ほど」

 「「鍋の匂いはここか!!」」

 「やっぱりきたな鍋好き親子」

食堂の入り口をズバーンと開いてやってきたのはベレスとジェラルド親子。

 「先生、鍋をやるんだったら声をかけてくれ」

 「そうだぜ、鍋は大人数で囲った方が楽しいだろ」

 「お前らは食いたいだけだろ」

シェイカーはそう言いながらも二人分もよそっている。

 「なんかいい匂いがするなぁ」

 「おお、確かラファエルだったな。お前も食うか?」

 「オデも食べていいのかぁ?」

 「レアのやつが張り切ったみたいでかなりの量があるからな、食ってけ食ってけ」

シェイカーの言葉にラファエルも嬉しそうに鍋を囲むように座る。

 「おかわりはたくさんあるからな!! 目一杯食え!!」

 「「「いただきま〜す!!」」」

シェイカーの言葉に元気よく返事をするベレス、ジェラルド、ラファエル。そして勢いよく食べ始めた。

リシテアもおそるおそる一口食べてみる。

 「あ、美味しい」

その日からリシテアの好物に鍋が追加されるのであった。

 

 

そして餌付けされたラファエルくんがシェイカー塾に入塾したのもこの日からだった。

 




リシテア
天才魔法少女。長生きできなかったはずがシェイカーの介入で長生きできるようになった。

リシテアにかかっていた魔術
シェイカーの呪詛返しによって闇に蠢くものに行った模様

ベレス&ジェラルド
鍋大好き

ラファエル
聖人ラファエル。シェイカーの指導によって筋肉が増量した




そんな感じでリシテアちゃんの魔術はシェイカーの介入によって雑に解決!!! 原作でも特に語られることなく解決されていましたし、問題ないですよね。そして厨房で料理をしている大司教という爆弾。仕事しろ。

今回でラファエルくんをスカウトしたので、現在のシェイカー塾はペトラ、リシテア、マリアンヌ、メルセデス、ラファエルになりました。生徒でスカウトするのは後一人です。最後の一人は誰かな!!


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焼き芋

季節が合わない? 気にすんなぁ!!


 「困りました……」

イングリッドは大量のお見合い写真を持ってガルグ=マク大修道院内を歩く。

イングリッドは今は亡き婚約者のように騎士になりたいと願っていたが、父は紋章を受け継いだイングリッドは結婚し、家を安泰にして欲しいと考えていた。そのために士官学校に入学してからも実家から大量のお見合い写真が送られていた。

いつもだったら人に見つからないように処分しているのだが、今日に限っていたるところに人がいて処分できずにいた。

 「どこで処理しましょうか」

考えているイングリッドは気がつかなかった。

 「きゃ」

 「おっと」

イングリッドとぶつかったのはセテスの胃痛の半分くらいの原因であるシェイカーであった。

イングリッドは持っていたお見合い写真を慌てて隠す。

 「こ、こんにちは!! シェイカー先生!!」

 「おう、イングリッドだったな。何を隠した」

真正面から図星を刺されてイングリッドは慌てる。

 「な、何も隠していませんよ!?」

 「う〜ん、この全く嘘をつけない感じ。懐かしいな、俺にもこんな時代があった」

それはない。

イングリッドは内心でそう考えるが、口には出さない。出したらきっと外道行為が自分に来ることを知っているからだ。

 「それで、何を隠した」

 「な、何も隠して……!? 魔法は卑怯です!!」

必死に隠そうとするイングリッドちゃんの努力はシェイカーの魔法によって呆気なく崩された。

シェイカーはお見合い写真を見て首を傾げる。

 「なんだこれ? 呪いの依頼か?」

 「なんでそんな物騒な話になるんですか!?」

きっと育った環境のせいだろう。

諦めたイングリッドはシェイカーに写真の説明をする。素直にしないと写真の相手が普通に呪われそうだと思ったからだ。

 「ふ〜む、つまりイングリッドはお見合いに困っている、と」

 「ええまぁ」

そしていつの間にかシェイカーに愚痴をこぼしていた。意外と聞き上手なシェイカーくんである。

 「どうにかする方法はあるぞ?」

 「そうです……え?」

シェイカーの言葉に一瞬だけ呆気にとられたイングリッドだったが、すぐにシェイカーの言葉の意味に気づいて慌てる。

 「ど、どうやってですか!?」

 「まぁ、それを説明してやるからちょっとついてこい」

それだけ言ってシェイカーはお見合い写真を魔法で浮かせながら歩き始める。イングリッドも慌てて後を追いかける。

そしてやってきたのは墓場であった。

 「師匠!! ししょ〜!!」

そしてシェイカーの姿に気づいて嬉しそうな表情でシェイカーを呼ぶペトラ。ペトラだけじゃない。リシテア、マリアンヌ、メルセデス、ラファエルと言ったシェイカー塾の面々が集まっていた。

 「師匠!! 言った、葉っぱ、集める、しました!!」

 「おう、ご苦労さんペトラ」

シェイカーの言葉にむっふーと嬉しそうにするペトラ。イングリッドはその姿に犬耳と犬尻尾を幻視した。

 「先生、言われた通りイモも持ってきましたが、何をやるんですか?」

リシテアの言葉にシェイカーはなんでもないように口を開く。

 「焼き芋だ」

 「……え?」

思わずと言った感じで声を出したマリアンヌをシェイカーは半目でみる。

 「どういう意味だマリアンヌ」

 「い、いえ……てっきり呪術の類かと……」

 「この信用のなさはなんだろうな」

 「普段の行いのせいじゃないかしらぁ」

おっとりした言葉遣いで無駄に辛辣なことを言うメルセデス。着実に染まっているようだ。

マリアンヌとメルセデスの反応に驚いたのはイングリッドだ。マリアンヌは普段から寡黙で自分の意見を言うことはない。メルセデスも年長なだけあって他人と話すときは落ち着いた雰囲気で優しく接する。

それがこんなにも普通に話すことに驚いたのだ。

 「せんせぇ、せんせぇが美味いもん食わしてくれるって言うから、オデ、いつも以上に筋肉苛めてきたから腹ペコペコだよ」

 「う〜ん、ラファエルはいつもどおりで安心したわ。とりあえずイモをこれで巻いてくれ」

シェイカーが取り出した銀紙で持ってきたイモを巻くシェイカー塾の面々。

 「……あ」

そしてイングリッドはその隙にお見合い写真を葉っぱの山に隠すシェイカーを見た。シェイカーはイングリッドの言葉に気づくとニヤリと笑う。

内心でシェイカーに感謝しながら、イングリッドはリシテアに言われてイモを巻く手伝いをする。

そして全部巻き終わると一つの問題が浮上した。

 「多すぎだな」

そう、イモ多すぎ問題である。大食いのラファエルがいるからと言って用意したイモの量は集めた葉っぱの山を優に超えている。

 「どうするんですか?」

リシテアの言葉にシェイカーは不敵に笑う。

 「大丈夫だ、そろそろ奴が来る」

 「やはり焼き芋か。いつ始める? 私も同行しよう」

 「大司教院」

そしてシェイカーの言葉タイミングバッチリでレアが大量の紙束を乗せたリヤカーを引っ張りながらやってきた。

 「レア様!?」

 「はい、私です。シェイカー、とりあえず燃やしていいものを持ってきましたよ」

 「おう、ご苦労さん」

突然の大司教の登場に驚くイングリッド。授業中に9割の確率で遊びにくるためにレアの登場に慣れているシェイカー塾の面々。

 「それでレア様は何を持ってきたのかしらぁ」

 「セテスに書かされた反省文です」

メルセデスの言葉にレアが素直に答えると、メルセデスはレアを正座させて説教を始めた。

一介の生徒にお説教される大司教。カトリーヌあたりが見たら五月蝿そうな光景が広がるが、シェイカー塾の面々は慣れた手つきで葉っぱの山に反省文を重ねていく。そしてその中にイモも入れていく。

 「よし、火を起こせラファエル」

 「ウォォォォォォ!! 唸れオデの筋肉!!」

そしてラファエルがサバイバル術で火を起こし始めた。その光景を見てリシテアは首を傾げる。

 「魔法で起こせばいいんじゃないですか?」

 「なんでもかんでも魔法に頼っていたら人間は進歩しない。最後に頼りになるのは魔法という怪しげな技術じゃなくて、己自身の力だ」

リシテアの言葉にそう返しながらラファエルが作った火元を山に放り込むシェイカー。

そしてしばらくは世間話をしながら時間を潰す。

そしていい具合にできたころにシェイカーは剣でイモを取り出す。そしてそれを生徒達に配り始めた。

 「ほれ、メルセデスもお説教はそこまでにしてこれでも食え」

 「あら〜、もうそんな時間になってたのねぇ」

涙目になっているレアと聖母スマイルを浮かべるメルセデス。美味しいイモを食べながらイングリッドはメルセデスがちょっと怖くなった。

 「あ、そういえばシェイカー先生。先ほどの件ですけど……」

 「うん? ああ、あれか」

イモが美味しくて忘れそうになったイングリッドだったが、要件を思い出してシェイカーに問いかける。シェイカーもなんでもないようにレアに声をかける。

 「おい、レア。イングリッドの実家に『イングリッドは騎士の才能があるから騎士にしろ』って伝えとけ」

 「オケ」

 「ちょ!?」

まさかの大司教を利用するという言葉にイングリッドが驚愕する。そしてそんな頼みをあっさりと了承するレアにも驚いた。

イングリッドは慌てて両手にイモを持っているレアに近づく。

 「あの、レア様。本当にいいのですか?」

 「はい? あぁ、大丈夫ですよ。あのキチガイが『才能がある』と言うでしたら本当にあるのでしょう。キチガイですけど、人を見る目は確かですから。キチガイですけど」

 「レア!! キチガイはお前もだから!!」

レアとシェイカーはお互いに中指を立て合うと再びイモを食べ始める。

 「しかし、私に騎士の才能が本当にあるのでしょうか……」

思わず呟いたイングリッドに聖母スマイルを向けるレア。

 「でしたらシェイカーに直接教えを請うのがいいでしょう。あんなのですが教師としては本当に優秀です。きっと貴女をフォドラ一の騎士にしてくれるでしょう」

レアの言葉にイングリッドは自然と頷くのであった。

 




イングリッド
お見合い写真の処理に困っていたらシェイカー塾に入塾することになった。

シェイカー塾の生徒達
みんな仲良し。そしてシェイカーとレアに対して遠慮はない。

シェイカー
たまにやるいい人ムーヴ。

レア
最近はセテスよりもメルセデスにお説教される回数の方が多い。



そんなわけでシェイカー塾最後の一人であるイングリッドちゃんでした!! みなさんの予想は当たったでしょうか。一応、シェイカー塾の塾生はマリアンヌ以外はセイロス仮面の時に名前だけが出てきています。この面々も第二部で必要な人選だったからというのがお題目で、本当は作者の趣味です。

とりあえず次回は山賊討伐課題の話になります。どんな話にするかなぁ。


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レアとシェイカー

シリアス注意報発令。レア様とシェイカーくんがシリアスしてますのでお覚悟のほどをお願いします。


 「意外ですね」

シェイカーとレアは大司教室でチェスをやっていた。その途中にレアが盤面を見ながらシェイカーに話しかけたのである。

シェイカーは駒を動かしながら口を開く。

 「何がだ?」

 「今回の課題にあなたがついて行かなかったことですよ」

レアはそう言いながらも盤面から目は逸らさない。シェイカーもまた盤面を見ながら会話を続けた。

 「そんなに意外か?」

 「貴方は他人に対しては死ぬほど冷酷ですが、身内になるとゲロ甘ですからね。お母さ……ベレスとペトラを心配してついていくのかと思ったのですが」

レアの言葉をシェイカーは鼻で笑う。

 「盗賊の討伐、しかもセイロス騎士団がお膳立てをするんだ。失敗はないだろうさ」

 「失敗はなくても怪我はするかもしれませんよ?」

 「そんな柔な教え方はしてない。唯一の不安材料はペトラが人を殺したことがないことだが……まぁ、それくらいは乗り越えてもらわなきゃいけないだろう」

 「冷たいのですね」

 「そうかね」

 「そうですよ」

レアが駒を動かすと、即座にシェイカーも駒を動かす。それを見てレアはさらに顔を顰めた。

 「生徒達はどうですか?」

 「スカウトした連中は計画通りに育てている」

 「上に立たせる人間は選びましたか?」

 「一応な」

 「それでしたら貴方をそのクラスの教師にしますか」

レアの言葉にシェイカーは冷たい笑みを浮かべながら首を振る。

 「残念ながら級長じゃない」

シェイカーの言葉にレアは驚いたようにシェイカーの顔を見る。

 「級長達じゃ駄目ですか」

 「エーデルガルトは政治的センスに欠ける。ディミトリは公私が使い分けられない。クロードはギリギリ及第点を出せるが、フォドラで上に立つ気概が欠ける」

一ヶ月観察した結果を告げるシェイカー。遊んでいるようにしか見えなかったが、その実生徒達を見極めていたのだ。

レアはソファーに座り直して口を開く。

 「どうするつもりですか?」

 「新しく国を建てる」

なんでもないかのように言ったシェイカーの発言に、レアは一瞬だけ考えこみ、そして驚いた表情を浮かべた。

 「国を建てるというのですか!?」

 「流石に土地を奪うところからやっていたら時間がかかるから、土地持ちの貴族を独立させる形だがな」

シェイカーの言葉にレアがようやく理解した表情になった。

 「マリアンヌとリシテアを引き抜いたのはそのためですか」

 「その通りだ。ペトラがブリギットの姫様だったのは想定外だったが、同盟国としては悪くない」

シェイカーもレアに合わせる形でソファーに深く座り直す。

 「レア、フォドラ中にいる怪しい連中に気づいているか?」

 「西方教会の連中のことですか?」

レアに浮かんだのは中央教会に反発している西方教会の司祭達。

だがレアの言葉にシェイカーは首を振る。

 「それを裏から操っている連中だ」

 「……そんな連中がいるのですか?」

 「王国にいる俺の弟子に接触してきた。弟子からの報告だから間違いないだろう」

 「その弟子はなんと言われたのですか?」

 「王国の実権を奪わないか、だとさ」

国を傾けるような話を軽く話すシェイカー。

 「返答はどうしたんですか?」

 「連中の動きを掴むために弟子には同意させておいた。王国での連中の動きは逐一こっちに情報が入ることになる」

 「相変わらず貴方は怖いですね」

レアの言葉にシェイカーは冷たい笑みを浮かべる。シェイカーにとっては裏から全てを操ろうとしている連中も利用価値のある駒程度なのだろう。

そこでレアは腕を組んで考え込む。レアは3級長のうち誰かをトップに立ててフォドラを潰させるつもりであった。だが、シェイカーは全員落第を言い渡し、1から王を育てようとしている。

レアは条件にあった学級の教師にシェイカーをつけようとしていたが、計画が狂った。

 (まぁ、こいつがこっちの計画通りに動いてくれることなんてないですしね)

昔から想像の斜め上か斜め下を突っ切るシェイカー。そのせいでレアやセテス達はよく振り回されたものだ。

 (だが、それが面白い)

レアは見てみたくなった。このキチガイが歴史の中心になって巻き起こる戦乱の嵐を。

一度始まれば大量の血が流れることになるだろう。

だが、それが変革するということだ。

そこまで考えてレアは嗤う。心底面白いと嗤う。

 (帝国も王国も同盟も踊ればいい。誰が最後までこの踊りについていけるか。私は特等席で見させていただきましょう)

どこの連中もセイロス教会を疎ましく思っている連中ばかりだ。そんな連中を守ってやる義理などレアにはない。

だからシェイカーの引き起こす戦乱がどうなるか、それだけが楽しみなのである。

 「グラーフ」

 「なんだセイロス」

 「面白い祭りになりますか?」

戦乱を祭りと称したレア。それに気づいたシェイカーもまた凄惨な笑みを浮かべた。

 「実力があれば生き残れる。そういう戦乱さ」

シェイカーの言葉を聞いたレアは心底愉快そうに嗤うのであった。

 




レア
色々ぶっ壊れているレア様。こいつも全てシェイカーってやつの仕業なんだ!

シェイカー
遊んでいながら生徒達を見極めていた鬼畜クソ外道。

3級長の評価
あくまでシェイカーくんの評価です

裏で暗躍している連中
闇うごさん、バレてますよ



そんな感じで課題には同行させず、完全オリジナル回。今回のお話でわかる通り、第二部は完全オリジナルで進みます。一応作者の頭の中では完全に話が出来上がっております。何やら書いているうちに不穏なことをレア様とシェイカーが言っていますが、作者はハッピーエンドが好きなので生徒達を不幸にするつもりはありません。
つまりみんな生存させる。

あと王国内にいるシェイカーの弟子ですが、原作キャラです。多分気づく読者もいると思いますが、第二部までお楽しみにしてお待ちください。


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結成!! 白虎の学級(ティーガー・クラッセ)!!

完全オリジナルルートですよ!! プロデューサーさん!!


 「本当にいいんだな」

シェイカーの真剣な言葉にレアは力強く頷く。

 「必要なことなら設置すべきでしょう。幸いなことに部屋も余っています」

レアの言葉にシェイカーは眉をしかめる。

 「しかし、前例がないだろう」

 「グラーフらしくありませんね。前例がないなら作ればいい。それだけのことです」

 「お前が悪く言われる可能性もあるぞ?」

シェイカーの言葉をレアは鼻で笑う。

 「知ったことではありませんね」

レアの言葉にシェイカーはニヤリと笑った。

 「いいだろう。レアの提案。受け入れよう」

 「………なんの話をしている?」

シェイカーとレアの密談現場に踏み込んでしまったのは、いつものように仕事をサボったレアを探しにきたセテス。

そんなセテスに二人は笑顔で言い放つ。

 「「新学級結成ですよ!! プロデューサーさん!!」」

 「待て!! ツッコミ所はせめて一つに絞れ!!」

 

 

 

 

花冠の節3日。ガルグ=マク大修道院は大きな騒ぎとなった。

大司教レアが発表したのは士官学校に新しい学級を創設するという発表であった。

担任には大魔導士としてその名を知られ、ガルグ=マク大修道院ではブッチギリで『関わり合いになりたくない教師』として知られるシェイカー・エナヴェールであった。

生徒はシェイカーの下で学びたいという生徒のみ。

 「これだけ大々的に発表しといて誰もこなかったら流石の俺もショック受けるぞ」

 「貴方がショック受けるとか……ハハ、ワロス」

シェイカーの言葉にレアがいつものように煽りを入れると二人は胸ぐらを掴みあう。

二人がいるのは新学級のために用意された空き教室。そこで二人は机に座りながら希望生徒を待っている。

学級を移動希望を出せるのはこの日だけ。そして希望を出しにやってくる生徒を二人は待っているのである。

 「でもいるのは俺だけでいいよな? レアはなんでいるの?」

 「仕事をサボりたいからです!!」

セテスが聞いたら黙って豪腕ラリアットを叩き込むことを胸を張ってほざくレア。

 「レアさん、仕事をサボるのは別にいいのだが、何故、私まで連れてこられたんだ?」

そしてそんな二人のやりとりをどこか困惑しながら見ていたセイロス騎士団に所属するシャミア。

そんなシャミアを見て思い出したように手を叩くレア。

 「そうでした。シャミアに説明をしてませんでしたね」

 「更年期か?」

 (ガンのくれあい)

 「二人が仲が良いのはわかったから話を進めてくれ」

シェイカーがやってきてからキャラが崩壊したレア。その姿を見たレアに忠誠を誓っているカトリーヌは酒の席で泣いていたのをシャミアは思い出しながらも、話の先を進める。

 「シャミアにはシェイカーの下についてもらいます」

 「……なんででしょう?」

どこか警戒した表情を浮かべるシャミアに対してシェイカーが笑いながら口を挟む。

 「そんなに警戒するなよシャミアちゃん。俺がレアに頼んだんだよ」

 「何と?」

 「『戦闘・諜報もこなせる者が欲しい』。私の部下で戦闘と諜報を両立できるのはシャミアだけです」

 「レアさんだけの話だけで、シェイカー先生は信用するのかな?」

シャミアの言葉にシェイカーは楽しそうに笑った。

 「シャミア・ネーヴラント。ダグザ出身の元傭兵。帝国に攻めこんだダグザの兵士として従軍。敗北し祖国に見捨てられる形でフォドラに置き去りにされるも『とある人物』に助けられる形で潜伏し、最終的にレアに助けられる。それからは助けてくれたレアに恩を返しながら『とある人物』を探している」

シェイカーの言葉にシャミアは警戒する。助けてくれた『とある人物』の教えで自分の情報をよく知っている相手には警戒しろと教えられているからだ。

そしてそんなシャミアを見て逆にシェイカーは唖然とした。

 「え? めっちゃ警戒されてるんだけど」

 「シェイカーの胡散臭さのせいですね。間違いない」

 「ぶち殺すぞBBA」

 「殺されてぇのか、このキチガイ」

そしてシャミアを無視して始まるバカ二人による喧嘩。

その隙をシャミアは見逃さない。

 「な!?」

シャミアが必殺で投げたナイフはシェイカーの魔力障壁によって弾かれる。シャミアは驚いた声を出すが、シェイカーは逆によくできましたと言わんばかりに頷いた。

 「『怪しい相手は殺せ。ただし、一撃で』。実践できているようで安心したぞ」

 「……何故お前がその言葉を知っている」

その言葉はシャミアが祖国に見捨てられ、助けるついでと言わんばかりに色々なことを教えてくれた『とある人物』の言葉だ。それは自分以外知らない言葉のはずであった。

それに驚愕した表情を浮かべたのはシェイカーであった。

 「嘘? マジで気づかない?」

 「シェイカー。貴方疲れているのよ」

 「いやいやいや。マジだって。俺だって。よく見てこのプリティフェイス。見覚えない?」

 「プリティ? 誰が?」

テンポよく突っ込んだレアと額のぶつけ合いをしているシェイカーとレア。そしてその横顔を見てシャミアは何かに気づく。

 「………え? もしかして師父?」

 「今初めて気づいたのか!?」

何と、シェイカーの正体はシャミアを助け、様々な技術を教え込んでくれた師父であった。

 「待ってくれ。ちょっと待ってくれ師父。私が師父と別れたのは大体5年くらい前のはずだ」

 「お〜、もうそんなに経つかぁ」

呑気なシェイカーの言葉にシャミアは真剣な表情になる。

 「師父、全然老けてないぞ?」

 「それこいつにも同じこと言えるってわかってる?」

シェイカーの言葉にAAコロンビアのポーズを決めるレア。そしてシャミアは気づく。シェイカーが妙にシャミアに馴れ馴れしかったのは昔教えた生徒だったからだ。

シャミアはがっくりと肩を落とす。

 「師父、そういうことは先に言ってくれ。ダグザからの者かと思って無駄に警戒してしまった」

 「あ〜、お前さんが妙に俺に警戒していたのはそういうことだったのね」

 「シェイカーは胡散臭いから仕方ありませんね」

綺麗なクロスカウンターを決めるレアとシェイカー。レアを敬愛しているツィリルやカトリーヌが見たら卒倒しそうなこともシャミアは平然と見ている。

仕方ない。シャミアの中で恩義レベルはシェイカー>>>>レアだからだ。

 「それで師父。私は何をすればいい」

 「こいつを調べて欲しい」

シャミアの言葉に一枚の資料を取り出すシェイカー。シャミアはその資料に目を通す。

 「アランデル公、ね」

 「調べて欲しいのはそいつの周辺人物や金の巡りとかだ。できるか?」

シェイカーの言葉にシャミアは資料をしまいながら小さく笑う。

 「任せてくれ」

 「ならば任せた」

シェイカーの言葉にシャミアは楽しそうに笑うと教室から出て行く。それを見送りながらレアは口を開いた。

 「何故アランデル公を?」

 「ちょいと気になることがあってな」

 「まぁ、貴方のやることですから無駄はないでしょうけどね。金が必要になったらいつでも言ってください」

 「おう。頼むわ」

そんな不穏な会話をしていると教室の扉がババーンと開く。

 「ししょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 「おう、よく来たなペトラ」

教室にやってきたのはシェイカー塾所属のペトラであった。

 「私、師匠、学級、入る、します!!」

 「歓迎しよう、盛大にな!!」

シェイカーの言葉にむっふーとため息をつくペトラ。レアはそのペトラの姿に大型犬を幻視した。

 「失礼します」

 「「あ、超絶甘党魔法少女」」

 「先生もレア様も失礼ですね。最近は鍋だってよく食べます!!」

そして次にやってきたのは天才魔法少女リシテアちゃん。

 「あ、私だけじゃないですよ。早く入ってきたらどうですかマリアンヌ」

 「は、はい……失礼します……」

そしてリシテアに促される形で入室してくるマリアンヌ。

 「先生、失礼するわねぇ」

 「失礼いたします」

そして続いて入室してきたのはメルセデスとイングリットであった。

シェイカーは全員を席に座らせながらやってきた生徒を見渡す。

ペトラ、リシテア、マリアンヌ、メルセデス、イングリット。

 「あれ? ラファエルはどうした?」

 「遅れちまったぞぉ!!」

その言葉と同時にラファエルが扉を破壊しながら入ってくる。それを見てリシテアは呆れた表情を見せる。

 「ラファエル、貴方はまた扉を破壊して」

 「あぁ、ごめんよぉ。でもよぉ。学校の扉は簡単に壊れすぎじゃないかぁ。オデだけじゃなくて、ディミトリくんもよく壊してるぞぉ」

 「貴方達がバカ力なだけです」

 「とりあえず座れ、ラファエル」

シェイカーの言葉に席につくラファエル。それと同時に鐘がなる。新学級の受付終了を告げる鐘の音だ。

 「まぁ、予想していた通りのメンツですね」

 「それよりレア様は何故ここにいるのかしらぁ」

 「あ、私仕事を思いだしたから行きますね!! グッバイ!!」

メルセデスの笑顔での発言に説教を察知したのか笑顔で逃亡するレア。そしてすぐに外からレアを追いかけるセテスの怒声が聞こえてきた。どうやら踏み込んで確保しようとしていたらしい。

一般人が見たら即座に信仰をやめるであろう姿を見ても、シェイカー塾の生徒達は『あ、またか』で済んでしまう。

慣れとは恐ろしいものである。

 「よし、諸君。よく集まってくれた!! 俺は君たちを歓迎しよう!!」

 「先生に歓迎されると何か怖いですね」

 「イングリットの超絶失礼発言はスルーするな!!」

容赦無く突っ込むイングリット。だが、塾生全員がイングリットの言葉に頷いている。

生徒達からの先生に対する信頼は厚い。

 「ところで先生。私達の学級に名前はあるのかしらぁ?」

 「いいこと言ったメルセデス!! 俺達の学級の名前はこれ!!」

そういってシェイカーは垂れ幕をとる。

そこには『白虎の学級(ティーガー・クラッセ)』と書かれ、白い虎が描かれていた。

 「俺たちの学級の名前は『白虎の学級(ティーガー・クラッセ)』だ!! これから頑張っていこう!!」

 『はい!!』

シェイカーの言葉に元気よく返事をする生徒達。その反応に笑顔で頷きながらシェイカーは口を開く。

 「それじゃあ級長を決めてくれ」

その言葉に白虎の学級に緊張走る!!

この学級の級長!! 即ちシェイカーの暴走に胃を痛める役割!!

 「やっぱり土地持ちの貴族がやるべきじゃないかしら」

そして即座に他人を売った平民のメルセデス!!

 「あ、私は騎士希望なので上に立つ役割というのはちょっと」

そして自分の夢を語りつつ他者に辛い仕事を擦りつけたイングリット!!

二人ともシェイカーと関わって強かになったようだ。

 「オデは平民だし、ペトラさんも遠い国の姫だから無理だなぁ」

 「残念です」

本気で残念そうなラファエルとペトラ。

そして視線がリシテアとマリアンヌに集中する。あわあわとするマリアンヌを他所にリシテアは閉じていた瞳をカッと開く。

 「私は勉強に集中したいのでマリアンヌがお願いします」

 「リシテアさん!?」

そして平然とマリアンヌを売った。

 「それじゃあマリアンヌでいいという人は拍手をお願いします」

 「みなさん!?」

シェイカーの言葉に全員が拍手をすると、愕然とした表情を浮かべるマリアンヌ。

 「し、しかし……私はそんな器では……」

 「安心しろマリアンヌ」

そんなマリアンヌの肩に手を置きながらシェイカーは優しい笑顔で口を開く。

 「お前は俺が上に立つ者の教育を施してやる」

 「そこまでやる必要はないと思いますよ?」

リシテアのツッコミは当然のようにスルーされるのであった。

 




シャミア
過去にシェイカーに助けられた経験がある模様。その時に様々なことを習ったためにシェイカーのことを師父と呼ぶ。

シェイカー塾
改め白虎の学級(ティーガー・クラッセ)。級長はマリアンヌ

ベレス
シェイカーの学級に行こうとしたらエーデルガルトに止められた

アランデル公
おじさん。バレてますよ




もうこうなったら完全に独自路線を行ったらぁ!!
そんなわけで新学級結成です。前のお話で新しい国を建てるお話はしましたが、だったら学生時代からそのメンバーでお話作っちゃえ。そんな軽いノリで完全にオリジナルルート突入です。そして滑らかに仲間になるシャミアさん。

ちなみにこのメンバーは国を建国する上で必要最小限なメンバーなので、場合によっては別の生徒のスカウトの可能性もあります。


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初授業

初授業という名前の生徒達の役割分担説明回


 「よ〜し、それじゃあ授業やるぞぉ」

着席しているティーガークラッセの生徒達を見渡してシェイカーは口を開く。すると最前列に座っていた勤勉家なリシテアちゃんが手を挙げた。

 「シェイカー先生はどのように授業するんですか?」

 「うむ、いい質問だ。俺は個人個人に適した課題を出し、それを解かせると言う授業方式で行う」

 「なぜでしょう」

 「時間がないからだ」

リシテアの質問を一刀両断に答えるシェイカー。その歯に衣着せぬ言い方にシェイカーの失礼千万な態度に慣れた流石の生徒達も苦笑い。シェイカーの言葉ではガルグ=マク士官学校の授業は意味がないとも取れるからだ。

 「他のクラスの授業は意味がないのかぁ?」

そして聞きづらい質問も平然としてしまう脳筋(ラファエル)。

 「意味がない、とは言わん。だが、人はそれぞれ適正がある。例えばラファエル。魔法の授業を行ったとしてお前は理解できるか?」

 「おぉ!! オデには無理だ!!」

 「だろう。限られた一年という時間。それを最大限に利用するためには個人にあった授業が最適だ」

 「ですが、それだと先生の負担が大きいのでは?」

イングリットの質問にシェイカーが指パッチンをすると空間が裂けて大量の書物が出てきた。

それを唖然としてみる生徒達。それを見渡してシェイカーは力強く頷く。

 「大丈夫だ。すでに用意してある」

 「いえ、魔術の極みである空間魔法を倉庫見たいな扱いで見せられてこっちはどんな反応をとればいいんですか」

 「いやぁ、人生勝組クソイケメンの友人が開発したこの魔法が超便利でな。嵩張る荷物も全部しまえるから超便利」

 「空間魔法が収納扱い……!!」

リシテアがシェイカーの魔法の扱いにドン引きしているが仕方ない。シェイカーがいた烈火という世界はそういう世界だ。

 「それじゃあ一人づつ教材渡すなぁ、まずリシテア」

 「はい!!」

元気よく席を立って教材をとりにいくリシテア。そしてシェイカーはリシテアが学ぶことの説明を始める。

 「リシテアには政治と経済を中心に学んでもらう」

 「魔法は!?」

そして希望と全く違う授業内容にマジ驚愕顔を浮かべるリシテア。

 「ふむ、リシテア。お前が魔法を熱心に学んでいたのは何故だ?」

 「それは私の体を治すために……あ」

リシテアが何かに気づいた声にシェイカーは頷く。

 「うん、お前はもう健康体なんだよ。だったら今後必要になってくるのは領地経営に必要な政治と経済だ。ちょうどよくお前さんは色々な方向に才能が飛び抜けているからな。内政を学べ」

 「はい!!」

思ったよりきちんと生徒のことを考えた教材選びにリシテアは元気よく返事をし、生徒達からは『なんだ、真面目にもなれるんだ』といった視線がシェイカーに向けられる。

 「次、メルセデス」

 「はぁい。私は何かしらぁ」

 「メルセデスにはセイロス教団の運営と上に立つものの心構えを学んでもらう。セイロス教団の運営についてはレアとセテスのところに行っての実技も予定している」

 「ちょっと待ってくれるかしらぁ」

頭が痛いポーズをとるメルセデス。

 「私は孤児院の経営を学べればいいと思っていたのだけれど……それが何故セイロス教団の運営になるのかしらぁ」

 「ああ、それな」

そしてシェイカーは言葉の爆弾を落とす。

 「メルセデスには次期セイロス教団の大司教になってもらう」

 『ブッフォウ!!』

そして全員が吹き出した。いくらレアと仲が良いと言ってもまさかの大司教乗っ取り宣言である。

 「そ、それはレア様が許さないんじゃないかしらぁ」

 「大丈夫。レアの奴なら『え? 次期大司教をあんたが育ててくれるの? ヒャッッホー!! あとちょっとで自由の身だぁ!!』って喜んでたぞ」

 「レア様……!!」

 「セテスの奴は『いいか。真面目な生徒を育てるんだぞ。決してレアのような奴にするなよ』と釘を刺された」

 「セテス様……!!」

メルセデスは気づいた。これは完全に逃げられない流れだということに。だからため息を吐きながらも教材を受け取る。

 「次、ペトラ」

 「はい!!」

シェイカーの言葉に元気よく答えてシェイカーのところにやってくるペトラ。クラスメイト達は頭に犬の耳が、そしてお尻に犬の尻尾がブンブンと振られている姿を幻視した。

 「ペトラには戦争での戦術を学んでもらう」

 「はい!!」

 「あとは個人の武勇を鍛えろ」

 「はい!!」

教材を受け取ったペトラは驚いた表情になる。

 「師匠、これ、書く、ブリギットの言葉!!」

 「ああ、時間がないと言っただろう。効率よく学ぶためにペトラの教材はブリギットの言葉にしてある。それでも同時並行でフォドラの言葉も学ぶように」

 「はい!! 頑張る!! します!!」

生徒達のこいつ何者なんだ視線を無視して教材配りを続けるシェイカー。

 「次、ラファエル」

 「おぉ」

やってきたラファエルにシェイカーは教材ではなく何かの道具を渡す。それを受け取ってラファエルは首を傾げる。

 「せんせぇ、これなんだぁ?」

 「筋トレ道具」

 『何故!?』

生徒達の声がハモる。それはそうだろう。個人に適した授業を行うと言っても筋トレだけでは士官学校の授業にならない。

シェイカーも頭をかく。

 「いや、俺も悩んだんだよ。ラファエルに内政は無理、かと言って戦争での部隊指揮も期待できない。そこで完全に戦闘に特化させることにした。お前は身体鍛えながら徹底的に戦闘訓練を行う」

 「おぉ!! 机に座っているよりそっちの方がわかりやすくていいぞぉ!!」

目を輝かせて喜ぶラファエル。他の生徒も『まぁ、本人が納得しているならいいか』と言った感じで流した。

 「次、イングリット」

 「はい」

教材を受け取るイングリット。それに目を通して首を傾げた。

 「戦略概論?」

 「そう、お前さんに戦争の絵図である戦略を学んでもらう。イングリットの適正は騎士じゃない」

 「な!?」

文句を言おうとしたイングリットを止め、シェイカーはニヤリと笑う。

 「イングリットの適正は騎士の上、将軍。それも普通の将軍じゃない。将軍達を束ねて率いる大将軍の器だ」

その言葉にイングリットは衝撃を受ける。

 「私が……将軍の器……?」

 「間違えるな。さらにその上の大将軍だ。国によっては軍務卿だな」

シェイカーのどうするという問いにイングリットは力強く頷いた。

 「よぉし、最後。マリアンヌ」

 「は、はい……」

どこかオドオドとしながら出てくるマリアンヌ。そのマリアンヌにシェイカーは笑顔を見せた。

 「マリアンヌが学ぶのは君主論や各種帝王学。上に立つ者に必要な技能も全部覚えてもらうぞ」

シェイカーの言葉にマリアンヌは目眩がする。目立つことが不得意な自分に何をやらせる気だこの外道的な意味で。

 「わ、私は……そんな器では……」

 「大丈夫、大丈夫。俺が徹底的に鍛えてやる。一年後には他の級長達より君主としての適正高くしてやるから」

 「いえ……それを望んでは……」

 「よし!! これで全員は課題がわかったな!! それじゃあ各自取り組め!! そしてわからないこと、疑問に思ったことはすぐに聞きにこい!!」

 『はい!!』

 「あの……いえ……もういいです……」

マリアンヌの背中には哀愁が漂っていた。

 




リシテア
宰相

メルセデス
大司教

ペトラ
将軍

ラファエル
前線指揮官

イングリット
大将軍or軍務卿

マリアンヌ
(強制的に)君主




そんな感じで初授業と国を興した時のそれぞれのお仕事紹介でした。ラファエルとペトラの違いは一部隊の指揮官と一軍の指揮官の違い。イングリットはその上の方面軍の指揮官って感じです。
そしてさらりとレア様にクビ宣告をするシェイカーくん。テメェの仕事ねぇから!!(尚、本人は喜んでいる
きっとセテスさんはレア様よりメーチェの方がいいと考えると思う。


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ベレス初めてのデート

おいおい、ベレスちゃんデートするってさ


 「お前なんでこんなにガルグ=マクにいねぇの?」

 「レア様に色々押し付けられてるんだよ。お前からレア様に言ってくれねぇ? 俺の仕事減らしてくれって。これじゃあベレスと話をする余裕もないんだ」

シェイカーとジェラルトは食堂で食事をしながら会話をする。昼食時なので食堂には士官学校の学生だけでなく、セイロス騎士団の騎士の姿もある。

 「俺は自分が得になることは大好きだが、お前の得になることは大嫌いだ」

 「お前はそういう奴だよなぁ……!!」

シェイカーの言葉にジェラルトがブチギレながら言うと、シェイカーは愉悦の笑みを浮かべる。

 「あ、先生。ちょうどいいところに」

そこにやってきたのはシェイカーの弟子でジェラルトの娘であるベレスであった。

 「おお、ベレス。俺の隣空いてるぞ」

 「そうか」

ジェラルトにそう返しながらもシェイカーの隣に座るベレス。その行動に慟哭をあげるジェラルトだったが、ジェラルトがベレスに塩対応されて嘆きをあげるのは珍しいことではないので、周囲も少しだけ視線をやり「あ、またか」と言った表情で元に戻る。

ベレスは大盛りの食事をとりながら無表情に口を開く。

 「先生に頼みたいことがあるんだ」

 「ベレス、お父さんには?」

 「ない」

ベレスの言葉に椅子から落ちて食堂の床を転げ回るジェラルトが出来上がった。

 「先生は食事のマナーは教えることはできるか?」

 「ああ、可能だぞ」

 「そうか。だったら私に教えて欲しい」

 「別に構わないが……なんでだ?」

シェイカーの言葉に、乱雑に食事を口に放り込みながらベレスは口を開く。

 「週末にマナーが必要な食事に誘われてな」

ベレスの言葉にジェラルトが速攻で席に着く。そしてゲンドウポーズをとりながら口を開いた。

 「ベレス、相手は誰だ? 自分の学級の級長か?」

ベレスは驚きながら(しかし、無表情である)も返答する。

 「いや、セイロス騎士団の男性だ」

その言葉にジェラルトのコメカミに怒りマークがつく。

 「うん、そうか。男かぁ、男かぁ……」

 「? まぁ、いいや。先生、それじゃあ今日の放課後にお願いするよ」

 「ああ、わかった」

男性ばりの速度で食事を終えて席を立っていくベレス。

そして無言の空間が広がるジェラルトとシェイカー。

 「それじゃあ、俺も午後から授業があるから」

 「まぁまぁ、少しくらいいいじゃないですか」

 「貴様はレア!?」

席を立とうとしたシェイカーを押しとどめたのはいつの間にかやってきたレアであった。

 「なぁ、シェイカー。俺達付き合い長いよな」

 「週末は仕事を片付けたい」

 「まぁまぁまぁまぁ」

 「そしてベレスが誰と付き合おうと興味ない」

 「「俺/私には関係ある!!」」

そして叫び声をあげるジェラルトとレア。瞬間的に消音結界を張って声を外に出さないようにするシェイカー。

 「いいかシェイカー!! ベレスがもしタチの悪い男に引っかかったらどうするつもりだ!?」

 「そうですよシェイカー!! もしベレスがクズ見たいな男に引っかかったらどうするつもりですか!?」

 「ジェラルトはわかるけど、なんでレアまでそこまでベレスのこと心配するんだよ」

シェイカーの言葉を無視してかたく握手を交わすジェラルトとレア。

 「じゃあ週末に尾行するぞ!!」

 「えぇ……」

 「しなかったら給料払いませんからね!!」

 「この大司教死なないかなぁ」

 

 

 

 

週末、ベレスがガルグ=マク外縁部にある街で待ち合わせをしている。それを物陰から見ている人影が3つ。

 「男の野郎……ベレスを待たせるとか万死に値するぞ……!!」

 「全くですね……!! 私だったら5時間くらい前から待ち合わせ場所で待っていますよ」

 「お前らのその過保護っぷりはなんとかなんねぇの?」

当然のようにドタコン(ジェラルト)マザコン(レア)巻き込まれたシェイカーである。シェイカーの魔法で姿を変えているために見つかる心配もない。なのでシェイカーは屋台で売っていたタピオカドリンクを飲んでいた。

 「あ! 相手が来ましたよ、レア様!! 誰だあの野郎……!!」

 「見覚えがありますね……ああ、思い出しました。カトリーヌ直轄の第三分隊の奴ですね!!」

 「カトリーヌの部下か……クソ、アロイスの部下だったら手出しできたのによ……!!」

 「私に任せなさいジェラルト。あいつにはベレスに手を出そうとした報いを受けてもらいます」

 「さっすがレア様!!」

 「お前ら本当になんなの?」

歯ぎしりしながら男を睨みつけているジェラルトとレア。シェイカーはずぞぞとタピオカドリンクを飲みきり、ゴミ箱にシュートしている。

 「あ、移動しますよ!!」

 「あの野郎!! 自然の流れでベレスと手をつなごうとしやがったな!!」

 「ベレスが反応して相手の顎に拳を叩き込んだがな」

男の方は脳が揺さぶられたのは座り込んでしまっている。そしてベレスは「この程度でぐらつくとは鍛えが足りないな」と完全にずれたツッコミを入れている。

男は必死に笑顔を見せながら立ち上がっている。だが完全に足が震えていた。

その後は特に何もなかった。必死に話題を広げようとする男に対して完全にずれた返答をしているベレスがいただけだ。

 「教育を丸投げしてた俺が言えることじゃねぇけどよ、お前はもうちょっと普通の女の子の教育施せねぇの?」

 「ダメですよジェラルト。シェイカーに普通を求めては」

 「それもそうですね」

 「テメェら喧嘩を売ってるな」

食事の場所に入り、ベレス達が見張れる位置で食事をとっているシェイカー達一行。

ちなみにベレスはシェイカーに叩き込まれたマナーで食事をとっている。

 「しかし、よくあのベレスに礼儀作法を教え込めたな」

 「やろうと思えばできる子だよ、ベレスは」

 「ああ、いけませんよベレス……その男は野獣なのです……決して心を許してはいけませんよ……!!」

 「いや、あの顔は飯を食うことしか考えていないな」

 「うちのベレスが食い意地張っているって言いたいのか……!!」

 「本当に親バカの相手はめんどくせぇなぁ!!」

何故かブチギレるジェラルトに面倒そうに答えるシェイカー。

そして食事を終えてお店を出るベレス達。シェイカー達もお店から出て後をついていく。

 「あ、あの野郎!! ベレスの頬に手を添えやがった!!」

 「ベレスの手が反射的に出て男の方が天高く飛んだな」

 「ベレスに殴られるなんて……羨ましい!!」

 「「えぇ……」」

レアの言葉にドン引きするジェラルトとシェイカー。

そしてベレスは最後に倒れている男に声をかけて帰っていく。

 「それじゃあ俺達は用事あるから」

 「シェイカーは先に帰っていいですよ」

 「はいはい」

ジェラルトとレアの言葉に呆れながら答えるベレス。そして釘を刺すようにシェイカーは口を開く。

 「やりすぎるなよ?」

シェイカーの言葉に対する二人の返答は眩しい笑顔であった。

 




ベレス
まずデートだということすら理解していない恋愛レベル幼稚園児

ジェラルト
娘のことが心配なパッパ

レア
ベレスのことが大事な大司教

シェイカー
完全に巻き込まれ事故

3級長
彼女達も尾行していた模様

ベレスをデートに誘った男
その後行方不明になった



そんな感じでベレスちゃんはじめてのデート(しかし本人は気づいていない)編でした。
師匠譲りで恋愛音痴なベレスちゃんにはデートとか理解できません。そしてジェラルトとレアに成敗される男。実に哀れ……


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降伏勧告

シリアス警報の上に独自設定の嵐ですぞぉ!


街道を行く馬車に乗っているのは三人。シェイカー、マリアンヌ、リシテアである。

彼らの向かう目的地は教会に対し反乱を起こしたロナート卿の居城である。

 「先生、なんのためにロナート卿の居城へ向かうのですか?」

当然の質問をしたのはリシテアである。彼女の疑問は最もだ。いつも通りに授業を受けるためにリシテア達は教室に入ると、突然シェイカーが「あ、今節の課題をこなしに行くぞ。随員はマリアンヌとリシテアな」とだけ告げてさっさと出発してしまったのだ。

 「それじゃあ確認だ。現在のロナート卿の立場は? マリアンヌ」

シェイカーの言葉にマリアンヌは慌てながらも、頭の中でロナート卿の立場を思い出す。

 「きょ、教会に対して反乱を起こし、王国と教会の双方から討伐軍を組まれています。確かアドラークラッセが課題として討伐に赴いていたかと」

 「その通り」

シェイカーの言葉にマリアンヌは安堵する。これで間違えればいつもの殺人級授業の課題の量が致死量になってしまう。

 「さて、そんなロナート卿の防衛状況は? リシテア」

 「はい。まず全軍を持って戦意の低い王国軍に対しこれを撃退、教会の討伐軍に対しても濃霧を利用したゲリラ戦を行っております」

 「勝てると思うか?」

 「不可能です」

 「何故?」

 「理由は二つ。まず圧倒的な兵力不足。民兵が加わることで少し増えていますが、焼け石に水の状態。次に教会は力攻めと同時に兵站を切っています。今節の頭から始まった兵站を切る作戦によってすでに城には兵糧は残っていないでしょう」

リシテアの言葉にシェイカーは満足そうに頷く。

 「その通りだ」

 「しかし、それだと何故私達が行くんですか? アドラークラッセや他の教会の軍から戦功の横取りだと思われませんか?」

リシテアの言葉にシェイカーは面倒そうに手を振る。

 「問題ない。この戦いの絵図を描いたのは俺だ。まぁ、ロナートが無能であったならもう終わっていたんだけどな。どうやら意外と有能な人間であったらしい」

 「それならば私達の課題とは?」

リシテアの問いにマリアンヌも頷く。ロナートを討つだけならば時間はかかるが教会軍やアドラークラッセが行うだろう。

リシテアの問いにシェイカーはニヤリと笑う。

 「ロナート卿を降伏させる」

その言葉にリシテアとマリアンヌは絶句する。

ロナートは嫡子クリストフを教会によって処刑され、それを恨んでの今回の決起だというのがティーガークラッセの総意だ(シェイカーの授業で『ロナート卿は何故反乱を起こしたのか』という課題が出た)。恨みが深い教会に対してロナート卿が降伏するとは思えない。

 「無理では?」

だからリシテアは簡潔に自分の教師に聞く。隣のマリアンヌも小さく頷いている。

それに対してシェイカーは講義を行うように軽く手を振る。すると空中にロナートの顔が浮かび上がった。

 「さて、世間で言われるロナート卿の評価は? マリアンヌ」

 「は、はい」

突然の指名でマリアンヌは少し慌てるが、すぐに調べた情報を脳内で開く。

 「王国でも屈指の有力貴族とされている人物で、それを証明するように彼の領内では賊は少なく、民も彼を慕っていると聞きます。それを証明するように彼は民を今回の戦に巻き込まないために避難させましたが、民の方が彼を守るべく武器を取って民兵として参加しています。これもこちらの軍の苦戦の要因になっています」

 「その通りだ」

マリアンヌの言葉にシェイカーは満足そうに頷いて空中に浮かんでいるロナートに有能という言葉を付け足す。

 「さて、今回のロナート卿の反乱は教会に殺された嫡子の恨みとされる」

シェイカーの言葉にリシテアとマリアンヌは頷く。ディーガークラッセでも内政担当の二人は各国の政治、経済、貴族や貴族同士の結びつきなどをシェイカーに叩き込まれている。だからロナートが教会を恨んでいる理由もわかる。教会によって『ダスカーの悲劇』に加担したとして嫡子が処刑されたからだ。

 「だがまぁ、実際のところは違う」

 「「?」」

 「ロナート卿の嫡子クリストフがしようとしたのは大司教レアの暗殺だ」

 「なぁ!?」

思わずリシテアは立ち上がり、マリアンヌも信じられないと言った面持ちで手を口に当てている。

その言葉が真実であるならば、ロナート卿は嫡子どころか自分や自分の縁者も処刑されていてもおかしくない。それほどまでに大司教の暗殺未遂は重罪だ。

 「だがレアはロナートを潰しての王国の混乱を考え、嫡子の処断だけで手を打った。だがまぁ間違ったのはせめてロナート卿だけには真実を伝えておくべきだったな。それをしなかったからロナート卿は教会を恨んだ」

 「しかし、それだけでは説得には弱いと思いますが……」

マリアンヌの呟きにシェイカーはジロリとマリアンヌを見る。それを見てマリアンヌは小さくなろうとする。だが、シェイカーは笑みを見せた。

 「いい判断だ、マリアンヌ。確かにこれだけじゃあロナート卿の説得はできない」

 「先生がそう言うってことは何か他にも真実があるってことなですね」

リシテアの言葉にシェイカーは上機嫌に笑う。

 「いい読みだ、リシテア。さて、俺が持つ説得材料とは何だと思う?」

シェイカーの言葉にリシテアは考えこむ。

教会に恨みが深いロナート卿を説得できる材料。ロナート卿は死ぬ覚悟を持って教会に対して反乱を起こした。それが無駄死にだと気づかせる……?

 「……何故ロナート卿が無駄死にになるのか……」

リシテアの呟きにマリアンヌが何かに気づいたのか口を開いた。

 「ロナート卿の嫡子の暗殺未遂には黒幕がいて、その黒幕はまだ生きていると言うことですか?」

マリアンヌの言葉にリシテアは驚いたようにシェイカーを見る。二人の視線にシェイカーは楽しそうに口を開く。

 「その通りだ」

 「しかし! それはおかしいです! それを知っているなら教会が黒幕を放っておくわけがない!!」

リシテアの言葉にシェイカーは楽しそうにする。

 「さて、教会が手を出せない黒幕とは誰だろうな」

その言葉にマリアンヌとリシテアの思考が一致する。

教会が手を出せないのは国。同盟は力が弱いからありえない。だとしたら王国か帝国だ。

 「せ、先生はどちらだと思うんですか?」

マリアンヌの問いにシェイカーはなんでもないように答える。

 「さて、俺はすでに黒幕の証拠も抑えているから答えを知っている」

その言葉にリシテアとマリアンヌは今度こそ絶句する。シェイカーは何でもないように言っているが、今まで教会が調べていなかったとは思えない。教会が調べられなかったことをシェイカーはあっさりと調べてみせたのだ。

 「情報は全てにおいての命だ。それを手にいれる方法はいくつも持っていて損はない。お前達も情報をどうやって手にいれるかよく考えておけ」

その言葉と同時に馬車が止まる。目的地に着いたのだ。シェイカーが最初に降り、マリアンヌとリシテアが続く。

 「ひどい濃霧ですね」

リシテアの呟きの通り、あたりは濃霧に覆われていた。

 「その声、リシテアか」

 「ベレス先生」

そこに濃霧をかき分けてやってきたのはアドラークラッセ担任のベレスであった。ベレスの後ろからはエーデルガルトが目つきを険しくしてついてきている。

 「先生、先生に言われた通りにロナート卿を城に追い返しておいた」

 「よくやった。追撃軍なんか出していないな?」

 「この霧じゃ出したくても出せないわよ」

エーデルガルトの言葉にシェイカーは軽く片方の手を振る。

それだけで覆われていた霧が晴れていく。

それに唖然としたのは教会の軍だけじゃない。濃霧に紛れて奇襲をかけようとしていたロナート軍も唖然としていた。

それを見てシェイカーは胡散臭い笑顔を浮かべる。

 「さて、ロナート卿に従う諸君。私を主人のところに連れて行ってくれるかな? ああ、安心したまえ。君たちの主人を害そうと考えているわけではない。むしろ君達の主人を助けに来たんだ」

 

 

 

 

応接間のソファーに座っているのは二人。片や反乱の主導者であるロナート。もう一人は降伏を勧める使者としてやってきたシェイカーだ。

リシテアとマリアンヌは随員という立場のためにシェイカーの後方に立っている。

ロナートは不機嫌な表情を隠すこともなく口を開く。

 「貴様は降伏勧告の使者であったな」

 「ええ」

シェイカーの笑みを浮かべながらの言葉にロナートは乱暴に席を立つ。

 「ならば私の答えは決まっている。拒否だ。クリストフを殺した教会に降伏などせん」

 「さてさて、このままロナート卿が死ねばそれこそクリストフ殿の汚名をそそげる方がいなくなりますが?」

シェイカーの言葉にロナートは激昂する。

 「クリストフの汚名を被せたのは他でもない教会であろうが!」

ロナートの激昂もシェイカーは気にした風もなく笑みを浮かべ続ける。

 「ロナート卿、こちらをご覧になってください」

シェイカーが手渡した書類をロナートは胡乱げに受け取る。だが、その書類に目を通す内に顔が青褪めていく。

 「く、クリストフが大司教を暗殺しようとしただと……!?」

 「ええ、その通りです」

 「ありえぬ!! 私から見てクリストフはそこまで大それたことをする器ではない!!」

 「私はクリストフ殿の人となりを知りませぬ。しかし、父であるロナート卿が仰るのならそうなのでしょう」

 「……まさか利用されたのか!?」

ロナートの言葉にシェイカーは笑みを深くする。それにロナートは顔を覆って「あのバカ息子が……」と呟いた。

それを見ていたシェイカーはゆっくりと言葉を続ける。

 「ロナート卿。真実を知る覚悟はおありですか?」

 「真実とは?」

 「クリストフ殿を利用し、大司教を殺そうとした者達のことです」

シェイカーの言葉にロナートは冷や汗を流す。

 「これを聞いたらロナート卿には私達に協力をしていただきます。もちろん断っていただいても結構です」

 「断ればどうなる」

 「別になんてことはありません。王国の貴族が一つ地図から消えるだけのこと」

シェイカーの言葉にロナートは苦々しげな表情になる。

 「それでは私に拒否権などないだろう」

 「いえいえ、私達に協力していただければ全てが終わったあと、再びこの地にロナート卿のお家を再興させていただきましょう」

シェイカーの言葉にロナートは少し瞑目するが、少ししてため息を吐いた。

 「貴殿達に協力する」

 「ありがたい。それでは最初の取引と言っては何ですが、こちらが黒幕の者達になっております」

そしてシェイカーはロナートに一枚の書類を渡す。ロナートは刻み込むようにそれを見つめた後、書類をシェイカーに返してくる。

 「これは返しておいたほうがいいだろうな」

 「お話が速くて助かります」

シェイカーは笑顔でそれを受け取ると自分の懐にしまう。

 「それで? 私はどうなる?」

 「ロナート卿は同盟にありますエドマンド辺境伯預かりとなります」

突然出てきた養父の名前にマリアンヌは驚くが、それをなんとか表には出さないようにする。

 「エドマンド辺境伯も貴殿の協力者ということか」

 「エドマンド辺境伯だけでなく、大司教も私の協力者です」

その言葉にロナートは驚いた表情になるが、リシテアとマリアンヌは当然だと思う。

 「そこで私にどうしろと?」

 「エドマンド辺境伯は辣腕家でありますが、優秀な家臣や協力者がおりません」

シェイカーの言葉にロナートは納得した表情を見せる。

 「私にエドマンド辺境伯領の発展をさせる、か」

 「ロナート卿には客将としての立場をご用意しております」

シェイカーの言葉にロナートは少し考えるが、力なく頷いた。

 「承知した。貴殿の降伏勧告を受け入れる」

 「ありがたく」

ロナート卿の言葉にシェイカーは文官としての礼を返す。

 「しかし、貴殿達に協力するのはクリストフを利用した者達を倒すためだ」

ロナートの言葉にシェイカーはにこやかな笑みを浮かべる。

 「ご安心を。奴らは生かしておく価値のないゴミでございます」

シェイカーの言葉にリシテアとマリアンヌは背筋が凍る思いをしたのであった。

 




シェイカー
今日も元気に暗躍暗躍ぅ!

リシテア&マリアンヌ
ティーガークラッセの内政担当のために連れて来られた。

エドマンド辺境伯
すでにシェイカーが味方につけていた模様。

ロナート卿
やったね! 生存したよ!

クリストフを使用した方々
闇を蠢く何ちゃらって奴ら



そんな感じでシリアス政治パートですよ!! ぶっちゃけ書いていて楽しかったです。
クリストフくんが闇に蠢く者に利用されていたっていうのは独自設定。どっかで明言されていたかもしれませんが、この作品で悪いことは大体あいつらのせいになります。
そして個人的に有能だと思ったのでロナート卿はスカウト。これにはアッシュくんもにっこり。でも普通に考えて民にあれだけ慕われているって名領主だと思うんですよね。
そしてさらっとエドマンド辺境伯を味方につけているシェイカーくん。こいつ本当に有能だな。


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お風呂

Doki Doki お風呂回ですよ!


ティーガー・クラッセには定期的に『放課後青空教室』が開かれる。その理由もシェイカーが「覚えることは多い。でも時間と場所はない。だから青空教室な」という理由でだ。

この日も訓練場にシェイカーが魔術で編み出した机と椅子に座るリシテア、マリアンヌ、イングリット、メルセデスの『勉強必要組』が勉学に励んでいる。

その隣で上半身裸で筋トレ器具を駆使して爽やかな汗を流しているラファエルやシェイカーの作り出したゴーレムを相手に限界バトルを繰り広げているペトラがいたりするが、ティーガー・クラッセでは概ねいつも通りである。

 「先生、少しいいだろうか」

 「ベレスか」

そこにやってきたのは今日の分の授業を終わらせたベレスであった。ベレスがティーガー・クラッセに顔を出すのは珍しくない。なにせティーガー・クラッセに移動したいとレアに直談判してエーデルガルトにマジ説教を食らったからだ。

 「何かようか?」

 「うん。先生、久しぶりに一緒にお風呂に入ろう」

 「待て待てお前達、距離をとるな」

ベレスの発言で速攻でシェイカーから距離をとるリシテア、マリアンヌ、イングリット、メルセデス。ラファエルは「うぉぉぉぉ!! 唸れオデの筋肉!!」と叫んでおり、ペトラは混ざってきた青獅子のフェリクスを一撃でお星様にしていた。

 「ベレス、誤解を生みそうな言い方はよせ」

シェイカーの言葉にベレスは無表情に少し考え込むがすぐに口を開いた。

 「先生、私が幼かった時のように一緒にお風呂に入ろう」

 「待て待て待て、誤解だ!!」

ベレスの発言にリシテアを隠すように立ちふさがるマリアンヌ、イングリット、メルセデスの三人。そしてリシテアの視線は絶対零度の視線であった。そのリシテアが口を開く。

 「大丈夫です、先生。私達は先生のことを先生として尊敬しています。ええ、人柄としては生ゴミだと思いますが」

 「誤解だ!! ベレスは小さい頃にお風呂嫌いで放っておくと一ヶ月とか余裕で入らない子供だったんだ!! ジェラルトは力にならないから俺が入れてあげていただけなんだ!!」

 「先生は私が激しく抵抗しても無理矢理入れてきてな」

 「ベレス! 言い方ぁ!!」

生徒達からの視線が絶対零度を通り越して『こいつ死ねばいいのに』視線になって焦るシェイカーくん。なにせここで生徒達に総スカンを喰らえば将来の野望が途切れることになってしまう。シェイカーくんの野望を(天然で)阻止しようとするとは流石はベレスちゃん。主人公としての格が違った。

とりあえず第一回ティーガー・クラッセ裁判は被告人の必死の弁明により裁判長(マリアンヌ)が無罪を言い渡した。これに被告人の去勢を訴えていた検察側(リシテア)は不満である。

 「それで? 風呂嫌いのお前が急に風呂に入ろうとはどういう了見だ?」

裁判の最中にラファエルとペトラを同時に相手どって爽やかな汗を流していたベレスにシェイカーは問いかける。それにベレスは要件を思い出した表情になって口を開いた。

 「エーデルガルトが『仲が良い人は一緒にお風呂に入るの。だから師、一緒にお風呂に入りましょう』と言っていてな。私が一番仲が良い人は先生だから一緒に入ろうと思った」

そう自信満々に胸を張るベレス。胸を張った瞬間に大きく揺れたベレスのお山を見て悔しそうな表情を浮かべたリシテアとイングリットをシェイカーは見なかったことにした。

 「あ〜、ベレス。男女が一緒にお風呂に入るわけにはいかないんだ」

 「私も、師匠、お風呂、入る、したいです!!」

 「よぉし、ペトラはもうちょっと訓練していような」

 「はい!!」

カットインしてきた忠犬ペトラを即座に訓練に放り出すシェイカー。問題は男女がお風呂に入ることに何の抵抗もない純粋培養ベレスちゃんである。

とりあえずシェイカー、リシテア、マリアンヌ、イングリット、メルセデスでスクラムを組む。

 「どうすればいい?」

 「というか何でベレス先生はこんなに羞恥心ないのかしらぁ」

メルセデスの言葉にシェイカーは重々しく口を開く。

 「俺が小さい頃から面倒を見ていたせいだな」

 「あ、納得です」

シェイカーの言葉に速攻で納得するイングリット。

 「あの……でしたら男女は一緒のお風呂に入るものではないと説得したらどうでしょうか……?」

 「その案採用。早速やってみろマリアンヌ」

そしてスクラムから離れてベレスの説得に入るマリアンヌ。しかし5分ほどでスクラムに戻ってきた。

 「駄目です。『理解できない』の一点張りです」

 「先生、あなたはもうちょっと男女の違いとか羞恥心について授業するべきだったんじゃないですか?」

 「すまない……!! ろくに子育てをしたことがなくて本当にすまない……!!」

なにせシェイカーの子育て経験=弟子育成経験である。普通の感性を持っている子供だったら教える必要がないのもあり、羞恥心など教えたことがなかった。

え? 養子兼弟子はどうだって? ベレスちゃんと大きな違いがないよ。

 「困っているようだな、手を貸そう」

 「「「「「大司教院」」」」」

そしてそこにやってくる(仕事から逃亡中の)レア。

 「何かいいアイディアがあるのかレア」

 「ふふふ、私に任せておきなさいシェイカー」

そして自信満々にベレスに近寄っていくレア。そしてベレスの肩を掴んで口を開いた。

 「いいですか、ベレス。男女が一緒に入るお風呂はお風呂ではなくサウナというのです。幸いなことにガルグ=マクにはサウナ施設があるのでティーガー・クラッセのみんなとも一緒に入りましょう」

 「お前がベレスと一緒にサウナに入りたいだけじゃねぇか!!」

 

 

 

 

そんなわけでレアの説得を受け入れたベレスと愉快なティーガー・クラッセの面々はサウナに入っている。しかし暑い。シェイカーも何度かジェラルトと一緒に入ったことがあるが、それより明らかに暑い。

シェイカーは半目でレアを見る。それに対してレアは悪びれる様子もなく口を開いた。

 「ベレスの首筋から鎖骨に流れ落ちる汗を見たいからいつもより暑くしていますが何か?」

 「お前最悪だな」

レアの最悪発言はベレスの耳はマリアンヌが塞ぎ、ペトラの耳はメルセデスが塞いだことで純粋枠が汚されることはなかった。

しかし、黙って座っていられない人物が一人。

 「うぉぉぉ!! オデ、黙って座っていることなんてできねぇよ!!」

そう言ってラファエルくんはサウナ内で筋トレを始めて速攻で脱水症状でぶっ倒れた。

無言の空間が広がるサウナ内。

 「イングリット、お前もう限界だろ。ラファエル連れて先に出てろ」

 「は、はい」

シェイカーの言葉に座りながらフラフラしていたイングリットは倒れているラファエルを引きずってサウナから出ていく。

そしてみんなのお姉さんメルセデスは気づく。リシテアがすでに限界を超えていることに。しかし、ここでリシテアに出るように進めても『子供扱いしないでください』と言って居残ろうとするだろう。

だからメルセデスはこうする。

 「リシテアちゃん、さっきの授業で聞きたいことがあるのだけど、一緒にサウナを出て教えてもらっていいかしらぁ」

 「! ええ、いいですよ!!」

メルセデスと一緒に出ていくリシテア。それを見送ってシェイカーがポツリ

 「子供……」

 「あの……先生、それをリシテアさんの前で言わないでくださいね」

マリアンヌの言葉にわかってるとばかりに手を振るシェイカー。

 「しかし、サウナってこんなに暑いものだったか?」

シェイカーの言葉にレアの煽りセンサーが反応する。

 「はい? まさか天下の大魔導士シェイカー・エナヴェールさんはこの程度の暑さでギブアップですか?」

 「は? 全然ですけど? え? まさか天下のセイロス教団の大司教様は今の俺の言葉がギブアップに聞こえたんですか? 耳に天馬の恵みでも詰まってんじゃないですか?」

そしてベレスを挟んでメンチを切り合うシェイカーとレア。それを見たマリアンヌは『あぁ、また煽り合いを始めてしまった』と悲嘆にくれる。なにせ純粋枠のベレスとペトラは「やはり先生とレア様は仲が良いな」「師匠、レア様、仲良しです」とアルティメット勘違いをしている。

そして煽り合いがヒートアップした結果シェイカーとレアはお互いに防寒具を着込んでいる。どうやら我慢対決になったようだ。

 「うん? どうしたレア。顔が赤いぞ?」

 「そういうシェイカーも汗がすごい量になっていますが大丈夫ですか? そろそろ出た方がいいのでは?」

お互いに尋常じゃない量の汗をかいているシェイカーとレア。多分放っておいたらそのまま死ぬだろう。

その証明のようにレアが白目を向いてぶっ倒れた。それを見て勝利のポーズを決めるシェイカー。

 「はっはぁ!! 俺の大勝利!! ペトラ!! その負け犬を外に連れて行って水風呂に放りこんでこい!!」

 「はい!!」

師匠の言うことは絶対実行のペトラちゃんはレアを引きずって外に連れていく。

 「先生は大丈夫なのか?」

 「おん? おう、余裕余裕!!」

そう言って勢いよく椅子に座った途端に限界を超えたのか白目を向いて倒れこむシェイカー。

しかし、その倒れ方が問題だった。

 「む?」

 「あ」

ベレスに膝枕される状態になったのだ。少し驚いた表情になるベレス。羨ましそうにベレスを見るマリアンヌ。

そしてベレスは不思議そうに首を傾げている。

 「ベレス先生、どうかしたんですか?」

 「いや、この状態の先生を見ていたらこう……胸が締め付けられるようにドキドキしてきてな」

 「え!?」

新たな爆弾が生まれようとしていた。

 




ベレス
恋心の芽生え(しかし相手が酷い

マリアンヌ
割とシェイカーくんに懐いている

ペトラ
忠犬2号(1号はベレス

リシテア
サウナ上がりにテフミルクを飲んで満足

メルセデス
みんなのお姉さん

イングリット
サウナは苦手

ラファエル
サウナ内で筋トレをしようとする自殺志願者

シェイカー&レア
煽る隙があれば煽り合う



そんな感じで肌色多めのお風呂回です。え? どこに肌色があったって? 一番最初に半裸で筋トレやってるラファエルくんがいるじゃないですか。

割と皆さんが気になっているこの作品での第四の学級の扱いですが、設定を入れたら面倒なのでこの作品ではないことにします。シェイカーくん達が第四の学級作っちゃいましたからね

それとは関係ないですけどハピちゃん可愛いですよね。いえ、全く関係ないですよ? ハピちゃんが実はシェイカー塾出身者だったって設定入れて出そうだなんて思ってないですよ?


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ベレスちゃんの初恋

公募用小説を書かなきゃいけないのにこれを書いていた。

みんな!新型コロナに負けずに頑張ろうぜ!


 「先生、少しいいだろうか」

 「ベレスか。どうした」

シェイカーが食堂で食事をしながらティーガークラッセの勉強中心組(リシテア、マリアンヌ)を相手に講義をしながら食事をしていると、最近はガルグ=マク大修道院で大人気になり、肖像画が高額で取引されているベレスがやってきた。

 「先生は医術もできたよね?」

 「専門ではないけどな。それがどうかしたか?」

ベレスは促されるままにリシテアとマリアンヌの間でシェイカーの正面に座る。

 「実は先生に問診をして欲しくて」

 「まぁ、できなくはないが、俺より専門家の方がいいと思うぞ?」

 「専門家に相談すべき病気かもわからなくてね」

 「なるほどねぇ」

シェイカーはそう言いながら魔法でしまってあった問診票を取り出す。そしてベレスに話すように促す。リシテアとマリアンヌにも後学のためにも聞いていくように指示を出していた。

そしてベレスは口を開く。

 「最近、先生のことを考えると胸がドキドキしたり、先生に会いたくなったりするんだ。これって病気だろうか?」

 『ゴボッフォウ!』

近くで聞いていたリシテアとマリアンヌだけでなく、さりげなく聞き耳を立てていたオーディエンスも思わず吹き出した。

それはそうだろう。ベレスのその症状はどう考えても恋だからだ。その事実に絶望の表情を浮かべている師大好きゾッコンLOVEの次期皇帝さんがいるがリシテアとマリアンヌは見なかったことにした。

周囲の面々が『どう答える!』と言った表情でシェイカーを見るが、シェイカーは怪しげな術式を展開しながら難しい表情を浮かべている。

 「ベレス」

 「はい」

 「結論から言おう」

そしてゲンドウポーズをとるシェイカー。真面目な表情で背筋を伸ばすベレス。どうなると固唾を飲んで見守る周囲。発狂しそうになり陰険腹黒部下に連れていかれる次期皇帝。

 「体にスキャン魔法をかけてみたがなんの問題もない。俺は不整脈かと思ったが違うらしい」

 『!?』

野次馬の視線が『こいつマジか』と言った雰囲気でシェイカーに突き刺さる。そんな視線を無視して言葉を続けるシェイカー。

 「それを考えると心の病気だと思った方がいいだろう。そっちは俺の専門外だからな。マヌエラ先生のところに行ってこい」

 「ふむ、先生でもわからないことがあるのだな。わかった。マヌエラ先生のところに行ってくる」

シェイカーに礼を言ってから立ち去るベレス。それを見送った後、シェイカーは空中に浮かんだ怪しげな術式を首を傾げながら見ている。

 「う〜む、やっぱりどこも問題ないんだよなぁ」

 「え? 先生。それ本気で言ってますか?」

 「なんだ? リシテアはあの病状に思い当たる節があるのか?」

その言葉にリシテアとマリアンヌは顔を見合わせる。二人だけじゃなくてこの場にいた全員がそれはわかる。

リシテアとマアリアンヌの視線での戦いの結果、マリアンヌがそれを告げる役割となった。

 「あの……たぶんベレス先生は恋だと思います……」

 「恋!? あぁ、なるほど恋か。それは俺にはわからなくて当然だな」

『ダメだこいつ』と思ったのはその場にいた全員であった。

 

 

 

 

ベレスはシェイカーの勧め通りにマヌエラのいる医務室へと向かった。マヌエラは片付けができなくて有名だが、この部屋は定期的にベレスが訪れて掃除をしているために綺麗なものだ。

 「マヌエラ先生、いるだろうか」

 「あら、先生じゃない。どうかしたのかしら?」

ベレスが部屋に入るとマヌエラが笑顔で迎え入れた。ベレスは患者として来たと告げると、マヌエラは患者用の席にベレスを座らせた。

 「それにしても先生が来るなんて珍しいじゃない。怪我や病気だったらシェイカー先生が治してくれるのでしょう?」

 「うむ、その先生が心の病気の可能性があるからマヌエラ先生にかかるように言っていた」

 「あら、おじさんにも治せない病気があったんですね」

その言葉にベレスが向くと、棚の整理整頓をしているドロテアがいた。ドロテアは帝都アンヴァルでミッテルフランク歌劇団に所属しており、同じ歌劇団に所属していたマヌエラを先輩と慕っている。

ベレスはそんなドロテアをみてそういえばと思って口を開いた。

 「ドロテアは先生のことをおじさんと呼ぶな。なんでだい?」

 「あら、先生は知らないのかしら?」

ベレスの言葉に答えたのはマヌエラだった。

 「孤児だったドロテアに音楽とかを教えてミッテルフランク歌劇団に合格させたのはシェイカー先生よ」

 「なんと」

ベレスは驚いた(しかし無表情である)様子でドロテアを見ると、苦笑しながら口を開いた。

 「私が孤児だった時に拾ってくれたのがおじさんなんです。それで突然『ティンときた。ドロテア、お前音楽をやれ』と言われて音楽のことを色々教え込まれました。そのおかげで歌劇団でも歌姫になれたんですけど」

 「音楽も教えれるだなんて流石は先生」

 「確かに意外よねぇ、シェイカー先生は音楽とか興味なさそうなのに」

 「本人は興味ないみたいですけど、昔一緒に旅した踊り子達に教えてもらったって言ってましたね」

 「それよ。シェイカー先生って何歳なのかしら? 見た目通りの年齢じゃないのは確かでしょうけど?」

マヌエラの言葉にドロテアとベレスは首を傾げる。

 「私を拾ってくれた時にはもうあの見た目でしたけど」

 「そういえば小さい頃から先生の見た目は変わっていない気がするな」

 「えぇ……シェイカー先生って本当に人間かしら……ハンネマン先生に調べてもらった方がいいんじゃないかしら……」

軽く引いているマヌエラ。

 「おじさんのことより先生のことじゃないですか、先輩」

 「あ、そうだったわ。私としたことが……それじゃあ先生、どんな症状が出るのかしら?」

ドロテアの言葉に本題に戻ったマヌエラにベレスも正直に答える。

 「先生のことを考えると胸がドキドキしたり、会いたくなったりするんだ。これは病気だろうか」

 「うん、先生。ちょっと待ってね。ドロテア、集合」

ベレスちゃんの発言にドロテアに集合をかけるマヌエラ。そして小声で会議である。

 (これってどう考えても恋よね?)

 (絶対そうでしょう)

 (え? これってどうするべきかしら? まさか先生がここまで初心だと思っていなかったのだけれど)

 (……そういえば先日、先生がデートに行ったらしくてそのことをからかったら首を傾げながら『デートとはなんだ? 新しい魔法か?』って言われました)

 (そこまで重症なの!?)

ドロテアの言葉にマジ驚愕顔を浮かべるマヌエラ。二人の視線がベレスに集まる。美人な顔が不思議(しかし無表情である)そうに首を傾げられた。

頭痛を抑える表情になるマヌエラ。

 (シェイカー先生ってこっち方面からっきしなのかしら?)

 (そうだと思いますよ。私もおじさんから他人の利用の仕方は教わりましたけど、そっち方面はノータッチでしたから)

 (子供になんてこと教えてるんだという説教は後でするとして……先生どうしようかしら)

 (先輩、私に任せてください)

 (ド、ドロテア!!)

自信満々に頷くドロテア。そこに確かな自信が見えたマヌエラはドロテアに任せることにした。

 「先生、その病気は私でもわかります」

 「む、そうなのか。だったらドロテア、是非教えて欲しい」

 「はい、それは恋です」

 「……恋? なんだそれは?」

ベレスちゃんのまさかの発言にドロテアとマヌエラは気が遠くなりそうになるが、すぐに持ち直す。

 「その人に自分を見て欲しい、自分のことを大事にして欲しい、自分のことを考えて欲しい。そういうことよ」

 「ふ〜む、難しいな……」

マヌエラの説明に難しい表情(しかし無表情である)を浮かべるベレス。そしてドロテアが口を開いた。

 「先生」

 「なんだ?」

 「おじさんの子供が欲しいと思いますか?」

 「思う」

 「それが恋です」

 「おぉ、なるほど。これが恋か」

ドロテアのど直球な発言にマヌエラが驚愕の表情を浮かべるが、ベレスは納得した様子であった。

 「そうか恋か……これが恋か……うむ、ありがとうマヌエラ先生、ドロテア」

それだけ言ってベレスは医務室から出ていく。それを見送るマヌエラとドロテア。そしてマヌエラが口を開く。

 「あの説明はまずくないかしら?」

その言葉にドロテアはとてもイイ笑顔を浮かべる。

 「きっと面白くなるからいいんですよ」

 

 

 

 

 「先生、ちょっといいだろうか」

 「ベレス、お前は俺が大丈夫に見えるか?」

 「? 先生がお父さんとレア様に締め上げられるのはいつものことだろう」

食堂でのことを聞いた娘大好きパパと仕事をしない大司教がシェイカーを締め上げているのだ。

締め上げられているシェイカーを気にせずにベレスはシェイカーの顔を掴む。そして……

 「「なにぃ!?」」

ジェラルトとレアが驚愕の声をあげる。当然であろう。あろうことかベレスは突然シェイカーにキスをしたのだ。

沈黙する空間。口をパクパクさせるジェラルトとレア。じっくり10秒くらいシェイカーにキスをして離れるベレス。そして満足そうに口を開いた。

 「これで私と先生の赤ちゃんをコウノトリさんが運んできてくれるな」

この後団長と大司教と師大好き次期皇帝とシェイカーの間で追いかけっこが発生したのは完全に余談である。

 




ベレス
ついに恋心を自覚して子作り(ベレスちゃん主観)を行なった主人公

マヌエラ
この後ベレスちゃんに保険体育の授業を行うことになった

ドロテア
想像以上に面白いことになって大爆笑

ベレスちゃん大好きクラブ
シェイカー殺す

シェイカー
珍しく何もしてないのに酷い目にあった。




そんな感じでベレスちゃんがついに恋心を自覚するお話でした。いやぁ、子作りシーンまで書いちゃうとかR-18タグが必要ですかね(すっとぼけ

そして孤児だったドロテアも拾って育てていたシェイカーくん。この設定も初期段階からありました。そのせいでドロテアが愉悦部に。どうしてこうなった。


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女神再誕の儀襲撃戦(には参加しない白虎の学級)

待たせたな! ヒヨッコども!!(カスペン大佐風に)


 「……なるほどねぇ」

シェイカーは学級の部屋の中でシャミアから報告を聞いていた。部屋の中には他の白虎の学級の生徒もいるが、シェイカーが張った消音結界のおかげで、二人の会話は聞こえていない。

 「アランデル公は何かをやっている。それは間違いないだろう」

シャミアの報告をシェイカーは指先でこめかみを叩きながら考えている。それを見ながらシャミアは報告を続ける。

 「私が調べた限りでは最低でも人体実験。これは確実だろう」

そのシャミアの言葉にシェイカーの指が止まる。

 「ふむ、人体実験ね」

 「おや、師父は否定派かい? てっきり『必要なことならやる』と言うと思ったんだがね」

シャミアの言葉にシェイカーはニヤリと笑う。

 「やるさ。しかし、実験台にするのは使っても問題のない人間を使うがね」

 「例えば」

 「犯罪者」

その言葉にシャミアは軽く肩をすくめる。

 「やれやれ、師父は怖いね」

 「去るというなら止めないぞ?」

 「まさか。せっかく師父のおかげで面白いことになりそうなんだ。特等席で見学させてもらうよ」

 「残念ながら特別席はない。シャミアには参加してもらうぞ」

シェイカーの言葉にシャミアは楽しそうに笑った。シェイカーも笑い返しながら張っていた消音結界をとく。

 「あ、先生終わりましたか?」

そしてシェイカーに声をかけてきたのはメーチェが作ってきたお菓子をぱくついているリシテアだ。

 「お前何をやってんの?」

 「? お菓子を食べていますが?」

 「……一応、今日は女神再誕の儀に襲撃があるってタレコミがあったから戦闘準備しとけって言ったよな?」

シェイカーの言葉にリシテアは心外そうな表情になる。

 「どうせ内政担当の私やマリアンヌ、メルセデスには出番ないでしょう。うちのクラスの武闘派が張り切ってますよ」

その言葉に必然的に視線が白虎の学級の武闘派に向かう。

イングリッドはガルグ=マクの地図を見ながら襲撃者の侵入ルートや逃亡ルートを考えており、ペトラは張り切って剣を振っている。そしてラファエルは一心不乱に筋トレをしていた。

満場一致で見なかったことにして白虎の学級の面々の視線が今度はシャミアに向かう。

 「……あのシャミアさんは……?」

 「うちのクラスの特別教員です。仲良くしてあげてね!」

 「師父!? いや!! 聞いていないが!!」

マリアンヌの言葉にシェイカーが即答すると、シャミアが焦った様子で言う。その言葉に白虎の学級の内政担当達からシェイカーは半目を向けられる。

シェイカーは落ち着けというジェスチャーを出しながらシャミアに話しかける。

 「シャミア、引き受けてくれたら特別給与をやろう」

 「やろうじゃないか」

 『結局金か!!』

硬い握手をしているシェイカーとシャミアに向かって突っ込みが飛ぶ。

 「おいすー、なんだ随分とヒマそうですね」

そしてそこにやって来たのは白虎の学級では株価大暴落が止まらない大司教レアであった。

 「レア様、お仕事は?」

 「侵入者があったということで逃げて来ました!!」

メーチェの言葉にレアがいい顔で即答すると、メーチェは即座にレアを正座させて説教を始めた。

 「師父、いいのか?」

 「いつものこと、いつものこと」

 「え〜」

シャミアの言葉にシェイカーが軽く答えると、シャミアは軽く引いていた。

シェイカーはレアが投げてきた紙片を見ながらイングリッドに声をかける。

 「イングリッド」

 「はい!!」

 「連中の侵入経路だ」

そう言いながら紙片をイングリッドに渡す。白虎の生徒もレアからシェイカーに何故その情報を渡されたか考えない。

どうせ二人でバッチリ暗躍しているんだろうと思っているからだ。

シェイカーはニヤニヤしながらイングリッドに声をかける。

 「どうだ? 予想とあっていたか?」

 「……まさか、一番簡単な方法で侵入してくるとは思っていませんでした。大修道院に侵入を企てるのですからもっと計画的に来るかと……これでは思いつきと変わりません」

どこか不満そうなイングリットをシェイカーは笑い飛ばす。

 「全ての相手を自分と同じ基準で考えるな。相手には相手の思考がある」

 「それを見抜くためにはどうすればいいのですか?」

 「情報を集めろ。戦略や戦術、政略、謀略、果ては個人の行動にその人物の全てが入っている」

シェイカーの言葉にイングリッドは不思議そうに首を傾げる。

 「先生はどうやって今回の相手の情報を集めたんですか?」

 「は〜い!! 私!! 私が頑張って集めました!! お仕事したから許してメーチェちゃん!!」

 「あらぁ、どうせそれを集めてまとめたのはセテス様じゃないかしら」

メーチェの言葉に冷や汗を垂らしながら視線を逸らすレア。説教が追加された瞬間だった。

 「師父」

 「慣れろ」

 「……これはカトリーヌには見せられないな」

シャミアの心配は無意味である。なにせ白虎の学級に頻繁にレアが顔をだすと聞いて意気揚々とカトリーヌが顔を見せた時に見たのはシェイカーとレアによるダブル腹踊りであった。

それを大爆笑しながら見ている白虎の学級の生徒を見たことも含めてカトリーヌは卒倒したのであった。

 「さて、イングリット。相手の侵入経路、そして外の連中の陽動。そこから導かれる相手さんの逃走経路はどこだ?」

その言葉にイングリットは地図の一箇所を指差す。それに満足そうに頷くシェイカー。

 「捕縛しますか?」

 「降伏して来た奴は捕縛してやれ」

 「反抗した場合は?」

イングリットの言葉にシェイカーは笑みを浮かべる。

 「殉教者にしてやれ」

イングリットがそれに頷くと、ペトラとラファエルに声をかける。

 「ペトラ!! ラファエル!! 行きますよ!!」

 「はい!! 師匠!! 行って、きます!!」

 「おぉぉ!! ようやくオデの出番かぁ!!」

イングリットの言葉にペトラとラファエルが笑顔で部屋から出ていく。

 「……師父の教えが行き届いているね。子供にも関わらず死に対する忌避感がない」

 「死ぬ時は誰だって簡単に死ぬものでしょう」

シャミアのつぶやきに答えたのは相変わらずお菓子をぱくついているリシテアだった。

 「王も貴族も平民も死ぬ時は死ぬ。戦場だろうが戦場外だろうがそれは変わらない。死ぬ時に満足して死ねればそいつは幸せ者だ」

 「誰の言葉だ?」

リシテアの言葉にシャミアが尋ねると、リシテアは顎でシェイカーを示す。

リシテア、シャミア、マリアンヌの視線がシェイカーに集中する。

メーチェから見えない位置でレアをクソ煽りしているシェイカーがいた。

三人とも見なかったことにして会話に戻る。

 「あの……私達は先生に常日頃からそう教えられています……ですので……あの……」

 「次の瞬間に死んだとしても満足して死んでいけるような生活を常にしているんです」

マリアンヌの言葉にリシテアが補足すると、マリアンヌはコクコクを頷いている。

 (ほう)

シャミアは『上に立つならもっと毅然とした態度を』とマリアンヌに説教を始めたリシテアを尻目に一人ゴチる。

シャミアにとってシェイカーは色々な意味でお世話になった人物だ。命の恩人と言ってもいい。そして『最悪はレア……あぁ、大司教に頼め。俺の名前を出せばあいつも受け入れるから』と言われ、その通りにしたら本当に教会に匿われた。

 (恐らくはレア様と師父には何かある……いや、恐らくはセテス様とフレンにも関することだな)

 「それを見つけるのも一興か」

メーチェに見つかって正座が増えた光景を見ながらシャミアはそう呟くのであった。

 




リシテア、マリアンヌ、メルセデス
白虎の学級内政担当

イングリット、ペトラ、ラファエル
白虎の学級戦争担当。今回は黒鷲からにげきった連中をデストロイした。

シャミア
白虎の学級特別教諭

ベレス率いる黒鷲の学級
教会地下で侵入者と戦った。

侵入して来た過激派
すべてシェイカーとレアの掌の上



そんな感じで青海の節の課題戦闘『女神再誕の儀襲撃戦』でした。白虎の学級は基本的にバックアップ。こいつら投入すると死神騎士が本当に死神のお迎えにあっちゃうんで。
ちなみに死神騎士さんはベレス先生にぶっ飛ばされた模様。さすがはベレスてんて〜。

というか作者は今回『さ〜、ゴーティエ家のイザコザだよなぁ。どうすんべぇ』と思って攻略本を見たらまさかの女神再誕の儀襲撃戦が先だったことに愕然としました。ゴーティエのイザコザが先だと思っていましたよ。延命したなマイクランくん

あ、それとシャミアさんを特別教諭という枠で正式に白虎の学級にスカウト。流石に生徒は無理があるぞ公式。


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合コン

お久しぶりの更新でございます

軽くジェラルトのネタバレかますのでお気をつけください


 「若い女の子と仲良くお話してぇなぁ」

シェイカーとセテスが二人で昼食をとっているところにやってきたジェラルトのセリフである。シェイカーとセテスが「こいつ何言っているんだ」と言う冷たい視線を受けて、ジェラルトは「まぁ、聞け」と言うジェスチャーを出す。

 「いいか? 俺はレア様から普段から嫌がらせのようにクソみたいな量の仕事を押し付けられている」

 「そうなのか?」

 「まぁ、確かにレア様は軽い仕事も『あ、これはジェラルトでいいですね』と言ってジェラルト殿に仕事を任せているが……」

シェイカーの問いにセテスが頷く。それを聞いてからジェラルトは言葉を続ける。

 「さらにレア様は俺の部下にガチムチマッチョしか配置しない。全方位どこを向いても筋肉祭りだ」

 「お前も男臭いからちょうどいいだろ」

シェイカーとジェラルトの胸ぐらのつかみ合いが発生したがガルグ=マク大修道院では珍しくもない。

とりあえずセテスが双方に水をぶっかけて落ち着かせてから会話を続ける。

 「さらにその部下も問題だ」

 「能力がないのか?」

 「そっちの方がマシだ!!」

シェイカーの言葉にジェラルトは机を力強く叩き、絞り出すように言葉を続ける。

 「全員が俺のケツを狙ってやがる……!!」

ジェラルトの嘆きにシェイカーとセテスは同時に顔を背ける。その表情は笑いをこらえていた。

 「お前らにわかるか? 遠征中に水浴びをしていたら部下が『団長、いいケツしてますね。掘らせてもらえませんか?』と言われる苦痛が。別の奴には『団長、俺ってなかなかいいケツしていると思うんですけど、どうです?』って聞かれる苦痛が……!!」

シェイカーは耐えられないとばかりに机をバシバシと叩き、セテスも肩が震えている。

 「ようやくガルグ=マクに帰ってきて可愛いベレスとお茶でも楽しむかと思ったらレア様が『あ、ジェラルト。次はこれお願いしますね』と言って次の仕事を押し付けられる日々……!! ああ、クッソ!! マジでレア様死んでくれないかなぁ……!!」

割とセイロス騎士団長として最悪なことを言っているが咎める者はここにいない。

なにせ一人はレアと同類。もう一人はジェラルト以上にレアに迷惑をかけられているからだ。

 「それだったらレオニーに稽古をつけたらどうだ? ジェラルトの弟子なんだろ?」

 「それはダメだ」

 「何故だ? ジェラルト殿を慕っているし付き合ってくれるのではないか?」

シェイカーの提案にジェラルトが即答すると、セテスが不思議そうにする。

それを受けてジェラルトは言いづらそうに口を開く。

 「小さい頃に教えたせいか女じゃなくて娘としてみちまう」

 「めんどくせぇなぁ」

 「はぁぁぁぁぁ!? 生徒として可愛いや綺麗な女の子を侍らせている奴が何を言いやがる!!」

 「グラーフ?」

 「よせセテス、そんな目で見るな。俺は生徒のことを生徒としてしかみていない。この万年発情期と一緒にするな」

ジェラルトの言葉にセテスが疑惑の視線をシェイカーに向けるが、シェイカーは即座に否定する。セテスも古い付き合いなのですぐにその疑惑の視線は消した。

 「と言うかジェラルト殿は亡くなったとは言え奥方がいた身だろう」

 「わかっちゃいない、わかっちゃいないなセテス殿」

セテスの最もな言葉にジェラルトは力強く口を開く。

 「俺は今でもシトリーのことを愛しているし、シェイカーと一緒に飲んだ時はシトリーの魅力を語り続けて睡眠薬を盛られることは指の数じゃ足りないくらいだ。だが、それでもなぁ……!!」

ジェラルトは右腕で机を叩き、力強く言い放つ。

 「それはそれで、今を生きる男のリビドーは止まらねぇんだ……!!」

 「シェイカー、ジェラルト殿の頭は大丈夫なのか?」

 「百年以上生きているくせに性欲を捨てきれていないのが逆にすげぇよな」

シェイカーがジェラルトの割と重大なネタバレをかましたが、特にセテスは気にしない。なにせ「あ、グラーフとレアのどちらかが何かやったのか」程度にしか思わないからだ。

セテスのシェイカーとレアに対する信頼は厚い。

 「なぁ、シェイカー。お前のところの生徒と合コン組んでくれよ。俺、若い女の子と楽しくおしゃべりしたいんだよ」

 「別に構わないが、いいのか? 俺の生徒だぞ?」

 「あ、やっぱりなしで」

シェイカーの言葉に即座に前言撤回するジェラルト。ジェラルトの中で『シェイカーに教えを受ける=頭がおかしくなる』と言う方程式があるからだ。

大きく間違ってはいない。

 「うふふ、楽しそうなお話を聞いちゃいました」

 「ドロテアか」

シェイカーに背後から寄り添いながら会話に入ってきたのはその美貌で男を手玉にとって大量に貢がせている悪女・ドロテアであった。

 「ジェラルトさん、なんだったら私が合コン組んであげましょうか?」

 「本当か!?」

ドロテアの言葉に嬉しそうに言うジェラルト。それにドロテアは妖艶に笑う。

 「ええ。ジェラルトさんとおじさん、それにセテスさんにピッタリの合コンを組んであげます」

 「シェイカー、何故か私達まで巻き込まれていないか?」

 「諦めた方がいいだろうな」

純粋に喜ぶジェラルトと愉悦の表情を浮かべるドロテアを見ながらセテスとシェイカーは会話をするのであった。

 

 

 

 

合コン当日。ガルグ=マク大修道院にある酒場にシェイカー、ジェラルト、セテスの三人がやってきていた。

 「しかし、ドロテアちゃんもやるな。俺たちのために酒場を貸し切ってくれるとは」

 「なんでもここのマスターの弱みは握っているらしくてな。融通がきくそうだ」

 「前から思うが何故シェイカーが教えると道を踏み外すんだ?」

ジェラルトの言葉にシェイカーが説明するとセテスが冷たい視線でシェイカーを射抜く。それにシェイカーは平然と答えた。

 「そんなこと言っていいのか? なんだったらメーチェに俺にとって楽しくなることを教え込んでもいいんだぞ?」

 「教団の未来を人質にとるな鬼畜クソ外道がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

現在の大司教がクソであるためにメーチェの存在はセテスにとって希望である。その希望を平然と人質にとるためにシェイカーはどこまでもクソであった。

 「まぁまぁ。時間も迫っているから行こうぜ」

セテスに首を絞められながらも煽ることをやめないシェイカー達を宥めてからジェラルトは酒場の扉を開く。

店内にいたのは三人の女性。

 「あ、遅かったですね!! 先に始めてますよ!!」

上機嫌で酒を煽っているレア。

 「うん? ああ、先生や父さん達もようやく来たのか」

すごい勢いで料理を食べ漁っているベレス。

 「あら!! お兄様達遅いですわ!!」

レアとベレスに料理を取り分けていたフレン。

 「何故だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」

 「い、いや!! これは違うんだフレン!! これはジェラルト殿に無理やり誘われてな!!」

三人を見た瞬間に崩れ落ちて魂の慟哭をあげるジェラルト。フレンに必死に弁解するセテス。シェイカーはドロテアの愉悦の笑いが聞こえた気がした。

 「お父さ……じゃなかったお兄様。ダメですのよ」

 「ああ、いや、すまない」

フレンの前に座って素直に頭を下げるセテス。

 「せっかくお兄様にはジェラルトさんって素敵な相手がいるのに女の子に目移りしちゃいけませんわ」

 「セイロス!! グラーフ!!」

セテスの言葉をサッと顔を逸らすレアとシェイカー。そしてセテスはフレンに必死に弁解を始めたが、腐女子フレンはそれを華麗に聞き流している。

 「ほれ、ジェラルト。せっかくの合コンなんだからちゃんと女子の接待しろよ」

 「そう言ってベレスの前に座らせるのはどう言うことだこの鬼畜クソ外道ぅぅぅぅぅ!!」

ジェラルトの言葉にシェイカーとレアはハイタッチ。一人でも最悪なのに二人揃ってさらに最悪である。

 「なぁ、父さん」

 「な、なんだベレス」

真剣な表情でジェラルトに問いかけるベレス。顔が引きつって冷や汗を流しているジェラルト。そんなジェラルトを見て祝杯をあげるシェイカーとレア。

そしてベレスは重々しく口を開く。

 「合コンってなんだろうか?」

合コンの場で娘に合コンについて教えなくてはいけなくなったジェラルトは頭を抱えるのであった。

 




ジェラルト
ガチムチホモにケツを狙われる日々

セテス
妹の性癖に頭を抱える

ベレス
説明を受けても合コンのことは理解できなかった

フレン
ジェラルト×セテスが至高

シェイカー&レア
ジェラルトとセテスが困っているのを見て酒が美味い

ドロテア
当然のように合コンの場を隠れて見ていて大爆笑




お待たせしております。久しぶりに更新でございます

ガチムチマッチョホモにケツを狙われて精神がスリ切っているジェラルト。癒しを求めて合コンを組んでもらったらさらなる地獄が待っていたの巻。

勘違いしないでいただきたいのはこの作品のジェラルトは今でもシトリーを愛しています。でもそれはそれとして女の子とお話はしたいってこと。結婚している人がキャバクラに行く心理ですかね。

次回もいつ更新が未定ですが気長にお待ちください。


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始原の宝杯顛末記

今更ながら灰狼の学級をクリアしたので


 「何故だ……」

 とある日の夜中、セイロス教会の枢機卿であるアルファルドは自室で頭を抱えていた。

その理由は部下の多くがいなくなったことである。雇っていた私兵の多くは何かに怯えるようにアルファルドの下を去り、数合わせで雇った野盗の多くは行方不明となっていた。

 「しかし……しかし今しか機会はないのだ……!! 偶然とは言え四使徒の末裔を集めることに成功し、彼らを利用して始原の宝杯の儀式を執り行うには今しか……!!」

アルファルドの願いは幼馴染であり、初恋の相手であるシトリーの復活。それを果たすために私財を投じ、私兵も投入した。

しかし、それもどこかで狂ってしまう。

灰狼の学級(ヴォルフ・クラッセ)に始原の宝杯を取りに行かせることには成功した。しかし、計画を次の段階に移る前に始原の宝杯が忽然と姿を消してしまったのだ。

心底申し訳なさそうにするコンスタンツェを宥めつつアルファルドは困惑していた。

自分以外にも始原の宝杯の儀式をしようとしている者がいる?

可能性は否定できない。少なくとも自分と同じ枢機卿クラスであれば、資料を読むことは可能であり、自分と同じく四使徒の末裔の血を全て使えば儀式は成功できると思う可能性は高い。

だが、その肝心の四使徒の末裔であるユーリス、バルタザール、コンスタンツェ、ハピの四人は自分の手元にいる。

怪しいのは度々行方をくらませるハピだが、それでも必ずアビスに戻ってきている。

 「あるいはハピが何者かとつながっている……?」

ありえなくはない。第一、ハピがアビスにいるのも「あ〜、ここだったら師匠と大師匠に見つからずにすむかも〜」というちょっと何を言っているかわからない理由だからだ。ため息を吐くと魔物が集まってくるという厄介な体質をしているハピであるが、「大師匠に仕込まれたんだよね〜」と言って魔物を殴り殺したり魔法で消し炭にするという残虐ファイトを平然と行える強メンタルだ。

 「それとなくハピから聞き出してみましょうか」

アルファルドはそう思うがあまり自信はない。ハピにはいつものらくらりとかわされ、どこか警戒されていることを知っているからだ。

その時、アルファルドの部屋の扉がノックされる。

アルファルドはどきりとしながらも表面上はいつも通りに問いかける。

 「おや、こんな夜更けにどなたでしょうか?」

 「アルファルド、私です。レアです」

まさかの大司教襲来にアルファルドは卒倒しそうになる。アルファルドが行おうとしているのは教団で禁忌となっている儀式だ。それが露見すればアルファルドの命はないだろう。

アルファルドは一度深呼吸して気分を落ち着けると表面上は穏やかに扉を開く。

 「失礼いたしました猊下。こんな夜更けになんの……」

アルファルドは最後まで言い切ることができなかった。なにせ大司教であるレアと、最近レアと一緒に問題行動をしてセテスの胃を虐めているシェイカーが二人揃っていて、なおかつ扉を開いた瞬間にアルファルドの部屋の中に入ってくる。

瞬間的にアルファルドは魔法を放ちそうになるが、シェイカーが自分とは比べ物にならないくらい凄腕の魔術師なのを思い出して自制する。

 (儀式に関する資料はこの部屋には置いていない……!! 証拠を抑えるつもりであったなら浅はかだったなレア……!!)

とても真面目なことを考えているアルファルドくんであったが、残念ながらレアとシェイカーはキチガイである。普通のはずがない。

シェイカーは部屋の明かりを消すと部屋の中を真っ暗にする。闇討ちを警戒したアルファルドであったが、レアに手を掴まれて床に座らされる。

そしてシェイカーが再び部屋の明かりとつけた。

 「腹を割って話そう!!」

 「……は?」

アルファルドは状態異常・混乱になった。

シェイカーが明かりを消す→レアに座らされる→明かりがつく→目の前のレアが酒瓶片手に「腹を割って話そう!!」と言ってきた←今ここ

端的に言って意味不明であった。

 「だ、大司教猊下、失礼ながら一体何のことでしょうか?」

アルファルドくんの本音である。だってどう考えても理解できない。

するとアルファルドを見つめるレアは悲痛な表情を浮かべる。

 「アルファルド、貴方が始原の宝杯を使ってシトリーを蘇らせようとしていることはわかっています」

刹那の瞬間にアルファルドは立ち上がろうとするが、いつの間にか背後に回っていたシェイカーに肩を押さえつけられ立ち上がれない。

逃げられないことを悟ったのか、アルファルドは覚悟を決めてレアの前に座る。

 「大司教猊下……否、レア!! 貴女の言葉があろうとも私は止まらない!! 止まれるはずがないのだ!!」

 「あ、シェイカー、防音結界は?」

 「バッチリ張ってあるから安心しろ」

覚悟を決めて宣言したのにあっさりとスルーされたことに人格者として定評のあるアルファルドくんもちょっとイラっとした。

レアは酒瓶から直接酒を呑みながら口を開く。

 「始原の宝杯で人を蘇らせることはできません。不完全な魔物になるだけです」

 「それは四使徒の血液が足らなかったからだ!! 完全に宝杯を起動できれば彼女を蘇らすことはできるはずだ!!」

 「グラーフ、製作者としての意見は?」

 「魔物にさせるシステムしか組んでいないのに死んだ奴が蘇ったらとある魔術師の関与を疑う」

 「昔から思いますけど貴方の知り合いの魔術師って何者ですか? 普通に神々の権能クラスのことやっていますよね?」

 「パントについてはマジメに考えるだけ無駄だゾ!!」

レアとシェイカーが普通に話の脱線を始めているが、アルファルドは思考が停止している。

 「始原の宝杯を……作った……?」

 「うん? ああ、セイロスの奴に『お母様復活用の神器を作れ』って罰ゲームで命令されてなぁ。ムカついたから儀式を行ったら魔物化するように作ってやった」

 「グラーフのその悪戯心で四使徒がガチで死にかけたことに罪悪感とかないんですか?」

 「レアが苦労したなら勝ちだと思っている」

シェイカーの言葉にレアとシェイカーが胸ぐらを掴みあうが、アルファルドはそれを止めることはできない。

 「あ! ありえない!! いくらシェイカー先生が優れた魔術師であろうとも、あれは魔術の業が極まった神器!! 人の身で作れるはずがない!!」

アルファルドくんの叫びもシェイカーとレアはあっさりと言った。

 「「だから神だったら可能でしょ?」」

 「………………………………は?」

アルファルドくんの惚けた言葉にまずレアが自分を指差す。

 「ドーモ、アルファルドサン、神々ノ一柱聖者セイロスデス」

そして今度はシェイカーが自分を指差す。

 「俺は色々呼び名がいっぱいあるけど、一番通っている名前は大賢者グラーフだな」

 「……………………………はぁ!?」

アルファルドくん渾身の叫びである。もしシェイカーが結界を張っていなかったらアルファルドの叫びがガルグ=マク中に響いたであろう。

 「え!? ちょ!? ちょっとお待ちを!! た、確かに私が幼少の頃からレア様は姿が変わっていないので『すごい若作りだな』とか思っていましたが聖者セイロス様本人ですって!?」

 「あれ? 遠回しに私ディスられました?」

レアが実の子のように可愛がっていた相手からのまさかの言葉に地味にショックを受けているが、アルファルドは気にすることはできない。

 「ちなみにシトリーはグラーフの残した技術を使って私の遺伝子を使って生み出した子供なので正真正銘私の子供ですよ!!」

レアの言葉でアルファルドは考えることをやめた

 

 

 

 

そしてレアの『腹を割って話そう!!』宣言から二時間後、アルファルドの部屋では完全に出来上がっているレアとアルファルドがいた。

アルファルドは酒がなみなみと注がれているグラスを一気に飲み干すとそれを床に力強く叩きつけながら叫ぶ。

 「私はただシトリーの子供であるベレスちゃんの成長を親戚のおじさん的な立ち位置から見守りたかっただけなんです!! たま〜にシトリーやジェラルト殿と喧嘩したベレスちゃんが私のところにやってきてお菓子やジュースをあげながらプリプリ怒っているベレスちゃんを温かい目で見守りつつ、シトリーとジェラルト殿が迎えに来るのを待っていたかったんです!! それでシトリーから家族の愚痴を聞いたりジェラルト殿から年頃になった娘との接し方の相談をされたかっただけなんです!!」

 「わかります!! わかりますよアルファルド!! 私もベレスの孫のように可愛がって可愛がって可愛がりまくってシトリーからちょっと叱られたりしたかったんです!!」

 「それ!! それもいいですねレア様!!」

 「いやいや!! アルファルドの親戚のおじさん的立ち位置もいいですよ!!」

そして二人はいつの間にか『もしシトリーが生き残ってベレスがガルグ=マクで生活していたらどう可愛がっていたか』に話がシフトしていた。

それに呆れながらシェイカーは口を開く。

 「あ〜、一応、アルファルドには始原の宝杯がどうなったか伝えとくな」

 「何を言っているんですかシェイカー先生!! そんなことよりベレスちゃんですよ!! なんですかあの娘!! シトリーそっくりに育ってくれて初めて見たときアルファルドおじちゃん泣きそうになりましたよ!!」

 「アルファルド!!」

 「レア様!!」

アルファルドと全く同意見だったのかレアはアルファルドに抱きつく。それにアルファルドも抱き返した。

シェイカーは呆れながも口を開く。

 「始原の宝杯は解体した」

 「あ、それがいいでしょう。シトリーを蘇らせることができないならあんなガラクタに興味ないんで」

 「淡白すぎるだろ」

説得、説得か? うん説得説得。説得したシェイカーの言葉ではないが、シトリーを蘇らせることができないと知った後のアルファルドの始原の宝杯に対する塩対応が酷かった。

 「まぁ宝杯についてはいいや。後はヴォルフ・クラッセだが」

その言葉にアルファルドは土下座する。

 「どうか四人には寛大な処置を!! 全ては私の責任ですので!!」

 「わかってるわかってる。ユーリスは最初からレアについていたし」

 「え?」

マジで? って表情でレアを見るアルファルド。その視線を受けてレアは力強く頷いた。

 「アルファルド、貴方には昔から悪事ができないと言っていたでしょう。たかだか人質をとったくらいで全部言うことを聞かせることなど無理だと思いなさい」

レアのどこかズレた説教をアルファルドは正座しながら受ける。

 「で、次にバルタザールはホルスト卿が引き取ってくれるそうだ」

 「バルタザールとホルスト卿は友人だそうなので安心なさい」

 「で、コンスタンツェは俺が推薦書を書いて魔導学院に行くことになった」

 「魔導学院の学長はこいつなんで安心していいですよ」

次々と出てくる事実にアルファルドは背筋が凍る。主にこんなバケモノを敵にしようとしていた意味で。

 「ハピは俺の孫弟子にあたるんでな、俺が直接引き取ることにした」

そしてアルファルドは心の中でハピに祈りを捧げたのであった。

 

 

 「いやぁ、なんだかんだあったけど大師匠を頼って正解だった。ユーリスもバルタザールもコニーもちゃんとしたところに行けたし。ハピもこれからはアビスでゆっくりしよう」

 「お、いたなハピ」

 「さよなら大師匠。ハピは旅に出ます」

 「はっはっはっ!! 残念ながらお前が出るのはティーガー・クラッセの教室だ!! 俺の後継者として色々みっちり仕込んでやるからな!!」

 「うボワぁ」

 




アルファルド
原作では頑張って悪党になろうとした属性・善。この作品では残念ながら全てレアとシェイカーの手のひらの上だった模様。ちなみに始原の宝杯事件自体がなかったことにされたため、今後も枢機卿としてアビスの改善を目指している。

レア&シェイカー
証拠を集め終わったので詰問タイム

ヴォルフ・クラッセの皆さん
ユーリスはレアの部下に、バルタザールは友人であるホルスト卿のところへ、コンスタンツェはシェイカーが学長を務める魔導学院へ。そしてハピはシェイカーの孫弟子だったためにティーガー・クラッセへ

メトジェイ
レア&シェイカーの証拠集めの途中で地味に拷問されて死んだ




そんな感じで第四の学級始末です。

自分で検索して結果は知っていたんですが、自分でクリアしたら「アルファルドさんを救わなきゃ」と言う使命感に襲われたのでアルファルドさん生存ルート解放。今後も枢機卿の一人としてアビスをよくしていってくれるでしょう。

そして好きなキャラであるハピをスカウト。彼女はシェイカーくんの孫弟子にあたり、シェイカーくんの後継者に(強制的に)されます。

え? メトジェイ? あとがき死でも十分な扱いでしょ?


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黒風の塔

みんな大好きマイクランくんの登場です

拍手でお迎えください


 「ここね……」

エーデルガルトは馬車から降りながら呟く。

今節、黒鷲の学級に課された課題は反乱を起こした廃嫡されたゴーティエ家の子息・マイクランの討伐であった。

 「ふむ、なかなかいい立地だね」

 「師」

エーデルガルトの後から降りてきたのは黒鷲の学級の担任であるベレス。ベレスは冷静にマイクランが本拠地にしている塔を分析していた。

 「入り口や通路を少なくしうて数で攻められても守りやすくしている、か」

 (流石は私の師)

ベレスの冷静な分析をもはや陶酔した表情で見つめるエガちゃん。その姿は級長云々関係なく、最近教団で増えているただのベレスファンであった。

黒鷲の学級の面々が戦いの準備をしているともう一台の馬車が止まる。

 「うぉぉぉぉぉぉ!!!!! 唸れオデの筋肉!! ……あれ?」

 「ラファエル、すぐに戦闘にはならないって先生も言っていたでしょう」

そして勢いよく飛び出し、不思議そうに首を傾げいたラファエルの後からイングリットが降りてくる。

そのイングリットに申し訳なさそうにラファエルは頭を下げた。

 「お~、ごめんよイングリットさん。オデ、馬車の中でも筋トレしていたから、知らなかったんだよぉ」

 「大丈夫です、ラファエルにそのあたりは期待していないので」

 「じゃあ安心だな!!」

イングリットの言葉ににっこり笑顔のラファエル。黒鷲の学級の面々は二人の会話を聞きながら「それは大丈夫ではないのでは?」と思ったが、ラファエルの聖人スマイルに黙ることにした。

 「よぉし、全員そろっているなぁ」

そしてペトラとハピと一緒に降りてきたシェイカー。

 「おや? 先生、マリアンヌとメルセデスとリシテアはどうしたんだい?」

 「ああ、あの三人は政治組だからな。学院に残って俺特性課題だ」

その発言にエーデルガルトは内心で三人の冥福を祈る。シェイカーの出す課題は難しいと評判だ。その難易度は普通に帝国の重臣クラスでないと解けないレベルである。そんな課題を生徒に課すシェイカーに対して「やはりキチガイ……」と認識を強くするエーデルガルト。隣でベレスが呟いた「いいなぁ……」という言葉は聞かなかったことにした。

私の師がキチガイなわけがない!!

 「よぉし!! それじゃあ黒鷲の学級及び白虎の学級集合!!」

シェイカーの言葉に集まってくる二つの学級。相変わらずベルナデッタはシェイカーを見てガタガタ震えている。

 「なるほど。やっぱり大師匠は恐れられて!?」

 「ハピ、本人の前で陰口をたたく気概は買うが相手を選べよぉ」

額に魔法の矢(威力:弱小)を叩き込まれたハピは地面をのたうち回っているが、シェイカーはそれを無視して生徒たちに話しかける。

 「今回の戦いは反乱を起こした元ゴーティエ家嫡子・マイクランの討伐だ。さて、どうやる?」

 「はい!!」

 「うむ、あまり答えは期待できないが、一応答えてみようか、ペトラ」

 「はい!! 私、ラファエル、乗り込む、します!! 皆殺し!! します!!」

 「おお!! それはオデにもわかりやすくていいぞ!!」

白虎の学級(戦闘班)の蛮族思考に黒鷲の学級はドン引きした。

 「うん、ペトラとラファエルとベレスがいるからそれができるだろうが、却下な」

 「残念です」

シェイカーの言葉にショボーンとした表情を浮かべるペトラ。エーデルガルトはその姿に飼い主に怒られた大型犬の姿を幻視した。

 「イングリットならどうする?」

 「まず反乱を起こしたマイクランの情報を調べます」

イングリットの言葉に満足そうに頷くシェイカー。

 「戦争で重要なのは情報。しかも鮮度のいい情報だ。それを集めるのが一番だ」

 「先生、私もわかっていた」

 「わかってるからイングリットに張り合うな、ベレス」

何故かイングリットに張り合っている黒鷲の学級の担任がいたが、シェイカーはそれを華麗に流した。

 「さて、本来なら情報を集めるところからやらせるところだが、今回は時間もないので俺が調べさせておいた。ハピ」

 「はいはい」

寝そべった状態で空を見ていたハピがシェイカーの言葉に起き上がる。

 「まず兵力規模はおよそ110人で頭目は元ゴーティエ家の嫡子・マイクラン。マイクランは家の宝である破裂の槍を持ち出してる。集まったのは現状に不満を持つ騎士や盗賊崩れ、中には貴族の次男、三男もいるっぽいね。兵站に関しては出どころは不明。シャミアさんに頼んで調べてもらったら帝国のアランデル侯が絡んでいるっぽい」

 「ハピ、お前の私見は?」

 「ハピの考えでは、これは単なる貴族崩れの反乱じゃない。少なくともマイクランを裏で操っている奴……まぁ、十中八九アランデル侯の狙いは教団だろうね」

ハピの言葉に色々な意味で背筋が凍るエーデルガルト。そしてそのエーデルガルトをハピは気怠そうに、しかし冷徹な視線をエーデルガルトに向ける。

 「さて、エーデルガルトは親戚のやっていることに心当たりは?」

ハピの言葉にエーデルガルトは何も答えられない。隠れて教団に反攻しているのは叔父だけでなくエーデルガルト本人もだからだ。

するとヒューベルトがエーデルガルトの前に出た。

 「ハピ殿は我が主がこの反乱に加担していると?」

 「断定はしないよ? でもエーデルガルトとアランデル侯が共謀していて、マイクランが邪魔になった。そういう流れだと今回ハピ達が討伐に向かわせられた説明がつくんだよね」

 「我が主に変わって言いましょう。今回の反乱に我が主は無関係です」

 「なるほど、『我が主』はね」

 「ええ、『我が主』はです」

無表情でハピを見つめるヒューベルト、気怠そうな表情の中に冷徹な瞳で鋭く見つめるハピ。

ものすごく気まずい空間が広がる中で、ラファエルが不思議そうに首を傾げた。

 「つまり敵はマイクランとかいう人でいいのかぁ? なんか難しい話になってオデに理解できないぞ。ペトラさんはわかるかぁ?」

 「さっぱり、です!!」

ラファエルの問いに自信満々に答えるペトラ。その言葉に緊張していた空気が弛緩した。それに苦笑しながらシェイカーは手を叩く。

 「さて、この反乱には色々と大人の考えが入っているが、お前らの課題はマイクランの討伐だ。どんな戦い方を選ぶ、イングリット」

シェイカーに刺されたイングリットは少し考えこむが、すぐに考えをまとめたのか口を開いた。

 「まず教団に対して増援の依頼を。最低でも相手の兵力の三倍。できれば五倍。その後は完全に兵站を断ち切れば所詮は烏合の衆。すぐにでも降伏してくるでしょう」

 「悪くない。だが、上の指示では『現状の兵力』で『短期』に討伐するように指示が出ている」

シェイカーの言葉にまたイングリットは考えるが、再び口を開いた。

 「塔を燃やしましょう」

 『……は?』

イングリットの爆弾発言に思わず声が零れる黒鷲の学級(ドロテアは笑っている)。それに気にせずにイングリットは言葉を続ける。

 「幸いなことに塔の出入りが可能なのはあの入り口だけのようです。ならば私達はあそこを塞ぎ、塔を燃やします。逃げて出てきた敵は弓で射殺するなり魔法で殺すなりをすればこちらの損害は少なくすみます」

 「こちらの損害を少なくして相手を殲滅する、及第点だ。問題はマイクランを確実に殺せるかという点だな」

 「先生、いいだろうか」

 「はい、ベレス」

いつのまにか始まっていたシェイカー教室with黒鷲の学級にベレスは手を挙げている。さされてからベレスは口を開いた。

 「ドロテアがメティオという相手に小粒の隕石を落として殺す魔法が使えていた。その魔法をドロテアは先生から習ったと言っていた。ということは先生はもっと大規模な隕石を落とすことができるんじゃないのかい?」

ベレスの言葉にシェイカーはニヤリと笑う。

 「いい着目点だ。確かに俺はもっと大規模なメティオを使える。だったらどうする、ベレス?」

 「簡単だ。大きな隕石を塔に落としてマイクランごと消し飛ばしてしまおう。それだったら味方に被害が出ない」

 「いや、師。一応、破裂の槍の回収も命じられているんだけど……」

エーデルガルトの言葉にベレスははっきりと答える。

 「レア様は『できれば破裂の槍も回収してくれ』と言っていた。残念ながら回収できなかった。それでいいだろう」

 「いや!? ダメでしょう!?」

当然のように破裂の槍を消滅させる思考に驚愕するエーデルガルト。そして気づいた。

 「あ、あれ? 師、天帝の剣は?」

 「ああ、あれ使いづらいから置いてきた。やっぱり慣れた剣が一番だからね」

 「師!?」

英雄の遺産を『使いづらいから』という理由で放置してくるベレスにエーデルガルトはマジ驚愕顔を浮かべる。それにベレスは不思議そうに首を傾げる。

 「英雄の遺産と言ってもただの武器だ。使いづらかったら使わない。当然でしょう?」

ベレスのあんまりは発言にエーデルガルトの意識は一瞬飛んだ。教団嫌いなエーデルガルトでも英雄の遺産の力強さは知っているし、なんだったら自分でも使うことは検討している。

しかし、ベレスはあっさりと『ああ、あれ? 使いづらいから使わない』宣言である。この英雄の遺産をありがたがらない思想はどこから生まれたのか。

 「あんな中途半端な武器使わないのが一番だ。なんだったら俺がもっといいのを作ってやる」

そして原因はやっぱりシェイカーであった。そのうえこのキチガイはもっといいのを作ってやる宣言である。

 「あ、あれは英雄の遺産なのよ? すごい力を持った武器なの」

 「はは、あの程度ですごい力とか笑わせおる」

その言葉にエーデルガルトは色々諦めた。こいつに常識は通用しない。

 「それで先生。どうするんだい?」

ベレスの言葉にシェイカーは頷く。

 「ベレスの案を採用。だが、魔法は俺が使うと世界が滅びるのでハピにやらせる」

ポンと出た世界が滅びるという言葉もシェイカーが言うと信憑性が高くなる不思議。だが指名されたハピは不満そうだ。

 「え~、メテオ超疲れるからハピちゃん的に反対なんだけど」

 「ハピが最後におねしょをした年齢は」

 「わぁ!! ハピ、急にやる気がみなぎってきた!! 大師匠死ねばいいのに!!」

ハピの言葉に満足そうに頷くシェイカー。

 「うんうん、孫弟子がやる気になってくれて大師匠は嬉しい」

 「こいつマジで死ねばいいのに」

気怠い目で罵倒を飛ばすハピ。気にしないシェイカー。

 「ところで大師匠。メテオ使うのいいけど私達も巻き添え食らうよ?」

 「なに? お前まだ並列魔法使えないのか? 課題追加な」

 「うぼわぁ」

何気ない疑問に課題が増えたことに絶望するハピ。

とりあえず結界はシェイカーが張り、ハピは詠唱を開始する。

 「それじゃあみんな耳塞いだほうがいいよ。はい、メテオ~」

ハピの詠唱終了と同時に空から家の大きさくらいの隕石が降ってくる。

そして塔に着弾。

隕石によって押しつぶされる塔。塔を中心に大地が裂け、巨大な爆発が起こる。生徒たちから悲鳴があがるがその悲鳴も爆音によってかき消されてしまう。

そしてすべてが終わったあと、解かれた結界周辺は何もなくなっていた。

 「よぉし!! じゃあ今節の課題はこれで終了な!!」

あまりの出来事にエーデルガルトは意識を飛ばすのであった。




エーデルガルト
今日もシェイカー塾に振り回される。

ヒューベルト
主をナイスフォロー

ハピ
エーデルガルトをばっちり疑っている

イングリット
「なるほど、攻城魔法として使えそうですね」

ペトラ&ラファエル
出番がなくてショボーン

黒鷲の学級
ドロテア以外は基本的にドン引き

マイクランくん
やったね!! 魔物化しなかったよ!!(なお、それよりひどい目に

破裂の槍
「あんなゴミいらん」(シェイカー談)





この作品の大人気キャラマイクランくんの退場です。皆様拍手でお送りください。

相変わらずの独自設定の嵐です。

原作でメティオを見ている時から『なんであの規模の隕石が降ってきてその程度?』という疑問があったので、原作のメティオは対人魔法。本気のメテオはやばいよ! という設定にしました。当然のようにグリットちゃんは軍事転用を考えます。
王国と帝国がピンチ

そしてこの作品で色々暗躍しているアランデルおじさん。そして筒抜け。これはアランデルおじさんの能力が低いわけでなく、シェイカーくんの能力が高すぎるせい。
そのためにアランデルおじさんのやっていることは教団にはばれていません。報告しろシェイカー。

ですがハピの考察シーンは書いていて楽しかったです。

そして人間のまま逝ったマイクランくん。あいつはいい奴だったよ。


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セイロス神話

久しぶりの更新!! そして独自設定の嵐!!

ある意味で鬼畜クソ外道の本領発揮ですよ!!(過去話

あ、モーリスくん(獣の紋章の持ち主)の設定が大変なことになります。


 「お~っす」

シェイカーがレアの執務室に入ると半泣きになりながら仕事をしているレアと、鬼の形相で仕事をさせているセテスの姿が目に入った。

シェイカーはレアからのヘルプ視線を無視しながら部屋にいたフレンに話しかける。

 「なに? レアのやつまた何かやったの?」

 「ま!! 逆ですわ!! レア様が何もしていないからお兄様がお怒りになられましたの!!」

 「流石に草」

シェイカーの指さし嘲笑いの即座に返そうとしたレアだったが、セテスからアッサルの槍でぶん殴られて大人しく仕事に戻ろうとする。

 「お兄様」

 「別に俺らしかいないから普通に呼べば?」

 「でしたらお父様!! そろそろレア様を休ませてあげないと可哀想ですわ!!」

 「フレン……!!」

フレンの言葉に感動の表情を浮かべるレア。

 「だって少しは休ませないと効率が悪いですわ!! 奴隷とはいかに効率よく仕事をさせるかですわ!!」

 「グラァァァァフ!! 貴様の悪影響がフレンに出ているではないか!!」

 「はぁぁぁぁぁぁぁ!? そんなの大昔に俺のことを『教育者として優秀だから』と言って預けた親の責任じゃないですかねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

明らかに悪影響を与えた本人を締め上げるセテス。締め上げられながらも平然と煽るシェイカー。「何かまずいことを言ったかしら?」と首を傾げるフレン。そしてレアは仕事地獄から勝手に脱出した。

 「おや? グラーフ、貴方にしては珍しいものを持っていますね」

レアの言葉の通り、シェイカーが持っていたのは『セイロス神話』の本であった。

 「ああ、これな。ちょっと興味を持って読んでみたんだけどさ」

そこで真剣な表情になるシェイカー。

 「セイロス、お前自分のこと美化しすぎてないか? 当時のこと知ってる人間からしてみたら誰だよこいつ状態なんだけど」

 「神話の中でくらい完全善性でもいいじゃないですか!!」

 「どっちかっていうと邪神だもんな、お前」

 「グラーフがそれを言うのか……?」

シェイカーくんの完全ブーメラン発言に首を傾げるセテス。

 「いや、まぁ百歩譲ってセイロスが完全善性になるのはいいんだ。教団としても必要だからな」

 「流石はグラーフ!! 話が早い!!」

 「だがお前のやらかしたエピソードが全部俺がやったことになっているのはどういうことだ?」

シェイカーの言葉に高速で視線を逸らすレア。半眼になってレアを見るシェイカー。そしてため息を吐きながらセテスは説明を続ける。

 「神話を作る上でやらかした出来事を誰に当てはめるか議論になってな。そこでレアが『異世界に高跳びかましたバカにしましょう』と宣言してな」

 「うん、まぁ、それも理解しよう。お姉ちゃんと一緒に異世界に高跳びかました俺が悪かったと思ってな」

 「流石はグラーフ!! 話が早い!!」

レアの言葉にシェイカーは真剣な表情で頷く。

 「でも俺が美しい雌馬に欲情してドッキングしたって話は納得のできる説明をくれ」

シェイカーの言葉にレアだけでなくセテスとフレンも視線を逸らした。シェイカーはレアの顔をがっちりつかんで説明を続ける。

 「うん? どうしたレア? 俺は全然気にしてないぞ? 変化の魔術を使えることを知っているお前らが何故あえて人間の姿で馬とドッキングさせたか理由があるんだろ?」

 「痛い痛い痛い!! 私の美しい顔が潰れちゃいます!!」

 「ははは、魔術型の俺が人間の顔を潰せるわけがないだろう」

 「いやいやいや!! どう考えても人間の力じゃないですよこれ!!! いたたたたたたた!! あ!? マジでちょっと潰れちゃう!?」

 「たぶんこの風評被害の元凶は潰しても許されると思うんだよなぁ」

 「まぁ、落ち着けシェイカー」

 「セテス……!!」

 「顔を潰すのはまだ早い。メルセデスが後継者として育ち切ってからだ」

 「セテス……!!」

セテスの説得にシェイカーは仕方なしに顔を離す。

 「う~、なんて酷いことを……完全究極美女である私になんてひどいことを……」

 「「自分で自分のことを美女って言っちゃう奴はちょっと」」

 「ま!! シェイカー様もお父様もダメですわ!! レア様は頭が残念なんだから手加減してあげてくださらないと!!」

フォローに見せかけた死体蹴りにレアは吐血した。

 「そういえば何故シェイカーは今更になって神話を読んだのだ?」

 「ああ、それな。うちの級長……マリアンヌが『私の本当の家の血筋を辿ると大賢者グラーフにつながるんです』って相談されてな。思いっきり身に覚えがなかったから神話で確認したら俺と馬がドッキングして生まれた子供がモーリスっていうアルティメットな話があってな」

 「ちょっと待て」

シェイカーの発言に今度はセテスが目頭を押さえながら口を開く。

 「マリアンヌがモーリスの血筋なのか?」

 「紋章も確認したから間違いないぞ」

 「……途絶えたって聞いていたのだが?」

シェイカーとセテスの視線がレアに集中する。その視線にレアは焦る。

 「いえ、私も知らなかったんですよ!? エドモンド辺境伯からは莫大な献金と一緒に『紋章について調べないでくれ』って言われたから『あ、おきまりの紋章ない奴ですねぇ』と思って調べなかっただけで!!」

 「そしたら特大の爆弾だった、と」

 「今後はきちんと調べるようにしよう」

セテスの言葉はもうレアを信用しない宣言と同義であった。

そして今度はフレンが不思議そうな表情になる。

 「モーリスさんの血統が残っていると問題ですの?」

フレンの言葉に三人は顔を見合わせる。

 「これって言っても大丈夫か?」

 「特に問題ないと思いますけど」

シェイカーとレアの視線が自然とセテス(親ばか)に集まる。

それに合わせてセテスは説明をするために口を開いた。

 「フレン、モーリスとはどんな人物だったか覚えているか?」

セテスの言葉にフレンは首を傾げる。

 「確か魔物に変化できる人で、グラーフさんが内偵のためにネメシス側に送り込んだ方……だったかしら?」

 「まぁ、おおまかでは間違っていない。では、何故我々が神話を作った時にモーリスをグラーフの子供にしたか覚えているか?」

セテスの言葉にフレンは満面の笑みを浮かべる。

 「忘れましたわ!!」

 「おいおい見てくれこの可愛い娘。私の娘なんだぞ?」

 「その前に勉強不足を指摘しろよ」

 「それをセテスに期待するだけ無駄ですよ、グラーフ」

セテスの速攻の言葉にシェイカーとレアが突っ込むが、セテスはどこふく風だ。

 「それでは、何故モーリスさんはグラーフさんのお子様になってのですの?」

 「まぁ、結論から言うと、モーリスは俺が生み出した魔術人型決戦兵器だからだ」

まさかの大暴露!! モーリスは人間ではなかった!!

ある意味でとてつもない発言であったが、ここにいるのは常識から半歩ほどずれた人ばかりなので突っ込まれることはない。

 「ま!! 思い出しましたわ!! 確かグラーフさんがネメシス側の捕らえた兵士を使って人体実験を繰り返した末にできた方、それがモーリスさんでしたわね!!」

 「改めて言われるとあなた本当に外道ですね」

 「おいおい褒めるなよセイロス。照れるじゃないか」

レアの言葉に本当に照れた表情を見せる鬼畜クソ外道。人体実験に対する倫理観とかこの男には存在しない。

 「懐かしいな、捕らえた人間を片っ端から人体実験の素材にしてしまうから捕虜など存在しなかった」

 「あの頃は血の匂いの記憶しかありませんわ」

セテスとフレンも懐かしそうに会話する。戦場で出会ったネメシス側から「この外道どもがぁぁぁぁ!!!!」と叫ばれたのも遠い記憶だ。

 「ですが、あれの発端はネメシス側が悪かったですからね。なにせお母さまの亡骸から武器を作るだけでもぶっ殺し案件なのに、ほかの同胞の亡骸からも武器を作るのですから。そりゃあこっちも人型外道兵器の導入しますよね」

 「ははは、懐かしいな。セイロスから『できるかぎり苦しみぬいて殺すように』って依頼を受けて張りきった記憶がある」

アメリカンにHAHAHAと笑いながら会話をするレアとシェイカーだったが、会話の内容は最悪である。

 「まぁ、それで戦後にモーリスが捕虜に孕ませてできた子供がマリアンヌの血統だろう」

 「うん? でも少し調べてみたら俺の子孫を名乗る家が結構あるよな」

セテスの言葉にシェイカーが尋ねると、答えたのはレアであった。

 「あれらの家はシェイカーが作った『量産型モーリス』の末裔ですね」

 「? 『量産型モーリス』の末裔だったら少なくないか? 『量産型モーリス』は千体近く作ったはずだが」

もはや会話が倫理観ゆるすぎである。量産型モーリスというパワーワード。

 「同じ『量産型モーリス』でも生殖能力の有無があったからな。生殖能力があった個体が子孫を残し、それが今につながっているのだ」

 「なるほどなぁ」

セテスの説明にシェイカーは納得するが、ふと何かに気づく。

 「そういやモーリスはどうした? あれは俺が作り上げた最高傑作だからまだ稼働しているはずなんだが?」

 「ああ、モーリスでしたらあなたがいなくなった後に『大地が俺を呼んでいる……welcom to フォドラ!!』と叫んで魔物になってどっかいきました」

 「マジかぁ、そしたら回収しに行く必要あるなぁ。メンテナンスもしたいし」

モーリスを完全に人として扱っていないシェイカー。こいつに倫理観を求めるのが間違っている。

 「じゃあ、近いうちに白虎の学級の課題を『モーリスの回収』にしましょうか」

 「それだと助かる」

レアとシェイカーはそこで一息。そしてシェイカーは真剣な表情で口を開く。

 「ところで神話での俺がかなり女癖が悪くてそこらじゅうに子供を作っているだけならまだしも、獣とまでドッキングしている件についてだが」

シェイカーの言葉にレアも真剣な表情を浮かべる。

 「いままでの恨みも込めて最低な存在にしてみました」

 「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 「あはははははははは!!!!! ざまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

シェイカーの怒りに指さし嘲笑いをするレア。そんな二人を見ながらフレンは首を傾げながらセテスに話しかける。

 「でもグラーフ様は民間では慕われていらっしゃいますわよね? なんでも『すごく親しみやすい』って理由で」

 「それが人間のわからんところだなぁ」

フレンの問いにセテスは遠い目をして答えるのであった。




シェイカー
神話上でまさか動物とドッキングさせられているのを読んで驚愕

レア
とりあえず自分のやらかした出来事はグラーフ(シェイカー)のやったことにした

セテス
神話時代からの苦労人

フレン
神話時代はあまり表には出ていなかった

モーリス
シェイカーくんの作り出した魔術人型決戦兵器。最終決戦において多くのフォドラ十傑を殺した。戦後に捕虜を孕ませた後に暴走、魔物の姿になってどっかいった。

量産型モーリス
シェイカーくんの作り出した魔術人型兵器群。いっぱいいる。生殖機能を持った個体が生殖活動をして子孫を残した。

グラーフ神話
兵器を作り出したり女性拉致って孕ませたり動物とドッキングしたりとやりたい放題な神様




そんな感じで更新です。動物とドッキングとか魔術人型決戦兵器とか量産型モーリスとかパワーワード祭りになりました。

最初はレア様が捏造した『シェイカーくん、動物とドッキング神話』だけの予定だったんですが、そこから話が膨らんでまさかのモーリス(獣の紋章の持ち主)がシェイカーくんによって生み出された魔術人型決戦兵器という設定が出てきました。

つまりマリアンヌもその血を引いている。

神話時代の話も作りたいんですが、なんか発表されている情報が曖昧だけど微妙にあるせいですごく作りづらいです。

まぁ、この作品ではこういうふわっとして設定でいきましょう。


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いつだって恋は突然に

襲われそうになっているヒロインを助けて『素敵(ポ』ってなるのは王道ですよね


白虎の学級教室。ここには白虎の学級の生徒達が集まっていた。

そして教壇にはもちろんこの男。

 「よぉ~し、それじゃあ今節の課題やるぞぉ」

ガルグ・マク大修道院をレアと一緒に混沌に叩き込んでいる男・シェイカー・エナヴェールである。

 「はい、先生」

 「なんだ、リシテア」

そして律儀に手を挙げて質問をするリシテア。シェイカーに対する遠慮は一切なくなっているが、一応教師に対する敬意は残っているようである。

 「今節の課題は他の学級も含めて行方不明になっているフレンの探索と聞いていますが」

リシテアの言葉にシェイカーはその通りと頷く。

 「その通り。あのドタコン……じゃなかった、シスコンの強い要望で行方不明になっているフレンの探索になった」

 「先生」

 「なんだ、イングリット」

今度はイングリットが手を挙げておずおずと口を開く。

 「フレンでしたら……その……特殊性癖な方々が集まる会に参加していて、セテス様に連絡を忘れている可能性もあるのでは?」

フレンがホモ好きというのはガルグ・マク大修道院では周知の事実だ。特にセテスが攻められるのを好むというのも含めて広く知られている。

 「イングリットの考えは最もだが、今回は違う」

 「あの……今回は違うというのは……?」

シェイカーの言葉に質問したのはマリアンヌ。それにシェイカーは軽く答える。

 「この間のフレンの外泊騒動はそれだった」

その言葉に白虎の学級生徒全員の顔が味わい深い表情になる。

 「はい! 師匠!!」

 「はい、ペトラ」

 「私達、探す、します。でも、探す、する、範囲、広いです!!」

ペトラの言葉も最もである。ガルグ・マク大修道院だけでもかなりの広範囲になる上に、下手したら外まで探索することになる。

それは非効率的だ。

 「うむ、安心しろ。すでに俺がフレンの居場所は確認してある」

 「……あれぇ? それじゃあ課題は終わりじゃねぇかぁ?」

 「それじゃあお前たちの課題にならないからな。お前たちは自力で探せ。俺が居場所を教えるのはフレンが危険になった時だけだ」

ラファエルの問いにシェイカーが軽く答える。そして教室の隅に置いてある椅子に腕を組んで座ってしまった。もう関与する気はないらしい。

それを見ながらメルセデスが口を開く。

 「それじゃぁ、マリアンヌに方向性を決めてもらおうかしらぁ」

 「わ、私ですか!?」

 「貴女が級長だものぉ、当然よぉ」

突然のメルセデスの振りに少しわたついたマリアンヌであったが、すぐに顎に手を置いて考え始める。

 「あの……ハピさん……」

 「…………zzz」

マリアンヌの言葉をしかとして爆睡を続けるハピ。

マリアンヌは起こそうか迷うが、級友達は容赦がなかった。

どこから取り出したのかフライパンとお玉を構えるリシテア。他の級友達は耳を塞ぐ。

 「秘技!! 死者の目覚め!!」

 『ガンガンガンガンガンガン!!!!』

 「あぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁxっぁぁあっぁ!!!!!!!!!!!!」

耳元で轟音を聞かされたハピは机から転げ落ちて床を掃除する。

 「耳がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!」

 「ほら、マリアンヌの指名ですよ。さっさと起きてください」

 「本当にこの学級が大師匠に染まりつつあってハピちゃんには地獄すぎる……」

しぶしぶ起き上がってマリアンヌを見るハピ。

 「で、なんです級長」

 「あの……ハピさん……眼が死んでいます……」

マリアンヌの言葉にハピは乾いた笑いを浮かべる。

 「そりゃ眼も死ぬよ。起きている時は大師匠の地獄の授業。やっと眠れたと思ったら大師匠が夢まで出張してきて補習。ハピちゃんに安息の地はない」

 「ハピ、課題追加な」

 「うぼわぁ」

容赦のないシェイカーの言葉に吐血するハピ。だが、シェイカーの後継者になるとはそういうことである。

 「で、どうかした?」

 「ハピさんの探索魔法で……フレンさんの居所を特定できませんか……?」

 「ああ、なるほど」

マリアンヌの言葉にリシテアが納得したような声を出す。

 「確かにガルグ・マク大修道院中を探すのは時間の浪費です。大まかにでも場所が把握できれば速く見つけることができますね」

リシテアの言葉に納得する白虎の学級の面々。

 「それで……どうでしょうか……?」

 「一応ハピもできるけど、本当に大まかな方向くらいだよ?」

 「ハピの課題追加、と」

 「うぼわぁ」

正直にハピが答えるとさらに地獄がプラスされた。

哀れ、ハピ。

 「大まかでも探索の方向性にはなりますので……お願いします……」

 「はいは~い、と」

マリアンヌの言葉にハピは魔法陣を展開。それは一つだけでなくいくつもの魔法陣が浮かび上がっては消えていく。

それを見てリシテアは感嘆の声を出す。

 「多重展開魔法ですか……」

 「難しい技術なのですか?」

 「フォドラに魔導士数多いと言えどもこれができるのは片手で足りるほどです」

リシテアの言葉にこれを教え込んだ張本人であるシェイカーに視線が集中する。

 「魔法陣に無駄が目立つな。課題追加、と」

白虎の学級の生徒達は平然と行われたハピへの死刑宣言を満場一致で聞かなかったことにした。

 「はい、でたよ~。これはガルグ・マク大修道院の地下だね」

その言葉に再び視線がマリアンヌに集中する。

 「地下……ですか……」

 「そういえばアルファルド様が最近のアビスは治安が悪くなったって言っていたわねぇ」

マリアンヌの呟きにメルセデスが思い出したように付け加える。

それを聞いてマリアンヌは頷いた。

 「それでは白虎の学級はアビスを探索しましょう」

 

 

ガルグ・マク大修道院地下街アビス。地上から様々な理由で追い出された連中が集まる場所である。

 「怪しい連中が最近出入りしている……ですか……」

ここに住んでいたことのあるハピの聞き込み調査によって怪しい連中が多く入り込んでいる情報を白虎の学級の面々は手に入れていた。

 「マリアンヌ、どうしますか?」

リシテアの問いにマリアンヌは少し考える。

 「出入りしている怪しい連中というのはどれほどの強さでしょうか?」

 「私達にしてみれば雑魚当然って感じかなぁ」

マリアンヌの問いに魔法陣を浮かべながらハピが答える。

 「それでは各自バラバラで探索しましょう」

 「マリアンヌ!! 不審者!! どうする!! しますか!!」

マリアンヌの言葉にペトラが張りきって手をあげる。それに苦笑しながらマリアンヌは答える。

 「攻撃してくるようであれば容赦はいりません」

 「よっしゃぁ!! 暴れてくるぞぉ!!」

マリアンヌの言葉にラファエルは元気よく答えるのであった。

 

 

ヒルダは涙目になりながらも自分を攫ってきた連中を睨む。

ヒルダもフレンを探していたのだが、運悪く人さらいの連中と遭遇し、無力化の魔法をかけられて捕まってしまったのだ。

 「へっへっへっ、ガキの割にはいい体しているじゃねぇか」

人さらいの一人の言葉にヒルダは体を強張らせる。

それに別の男が呆れたように声をかけてきた。

 「おい、せっかくの上者なんだから傷はつけるなよ」

 「へへ、わかってるって。うっぱらう前に愉しませてもらうだけだ」

 「ん~!! ん~!!」

猿轡と紋章無効化の鎖をつけられて身動きがとれないヒルダであったが、必死に逃げようとする。

男はヒルダの反応を愉しんでいるかのようにゆっくりとヒルダに近づいてくる。そして舐めまわすようにヒルダの体を見る。

 「ひひ、うっぱらうには勿体ないくらいのいい体だ」

そして男はゆっくりとヒルダにのしかかる。ヒルダは必死に逃げようとするが、少女の力しか持たないヒルダには反攻する術がない。

男の仲間達も下卑た笑いを浮かべながらヒルダと男を見ている。

ヒルダに覆いかぶさった男はヒルダの耳元でねっとりと呟く。

 「安心しろって、お前さんもすぐに気持ちよくなる」

その言葉にヒルダはどうすることもできずに眼を瞑るしかない。

まさしくヒルダの花が散ろうとしたその瞬間、ヒルダに救いの手が現れる。

 「ナギ流格闘術『駿牙』」

 「げっぼほぅっ!!」

ヒルダには聞き覚えのないナギ流格闘術という言葉。だが、それと同時にヒルダに覆いかぶさっていた男の上半身が消し飛ぶ。

スプラッターな映像がなくなったちょうどよいタイミングでヒルダは眼を開く。

そこには武術の構えをしているマリアンヌがいた。

 「ま、マリアンヌちゃん……?」

ヒルダの言葉にマリアンヌは不器用に笑う。

 「大丈夫ですか? ヒルダさん」

マリアンヌの優しい言葉にヒルダは思わずときめくが、男達が色めき立っているのを見て慌てて叫ぶ。

 「マリアンヌちゃん!! ダメ!! こいつら紋章無効化の魔法具持ってる!!」

 「もうおせぇ!!」

ヒルダの叫びと同時に男の一人が魔法具を起動する。

その事実にヒルダの絶望が深くなる。自分のせいで友人であるマリアンヌも巻き込んでしまったと思ったからだ。

男の一人がにやにやと笑いながら縄を持ってマリアンヌに近づいてくる。

 「お友達か? せっかくだから一緒にうっぱらってやるから安心しろよ」

そう言って男はマリアンヌの肩に手を置く。

 「ナギ流格闘術『獅子砲』」

 「ごぼっはぁ!!」

そしてその男の腹に大きな穴が空いた。

唖然とした表情を浮かべる男達に、マリアンヌは力強い言葉を放つ。

 「私の友達に手を出した落とし前はつけてもらいます」

 (キュン!!)

その言葉にヒルダの乙女心が強く反応するのであった。




マリアンヌ
アビスを探索していたらヒルダが誘拐されているのを見て救出。

ヒルダ
助けてくれたマリアンヌちゃんに胸がトゥンク

ナギ流格闘術駿牙
離れた距離を一瞬で詰めて一撃を放つ。相手は死ぬ

ナギ流格闘術獅子砲
零距離から掌底。相手は死ぬ

ヒルダを誘拐しようとした方々
マリアンヌによって皆殺しにされた

シェイカー
必要になったらヒルダを助けようとしていたが、マリアンヌが皆殺しにしたのをみて満足した



更新おくれて申し訳ありません!!(開幕土下座

そんな感じで本編も話を進めてフレンが誘拐されました。犯人もフレンの居場所もわかっているけど手出ししないシェイカーくんがほんとクソ。
でも生徒の成長のためだからね!!
尚、本当に危なくなったら助けるつもりもある模様。

そして入れたかったマリアンヌのヒルダ救出編。この出来事からヒルダちゃんはマリアンヌガチ勢になります。
性的暴行どころか誘拐から助けてもらったら惚れても仕方ないね。

ちなみに今回書いていて一番難しかったのはヒルダが性的に襲われそうになっているシーン。
公募用小説でも書いたことないので難易度高かったです。


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戦場へ急げ!!

超久しぶりの更新です


 「よぉし、全員戻ってきたなぁ」

シェイカーのところにはフレン探しのためにアビスの探索をしていた白虎の学級の生徒達が戻ってきていた。

全員を見渡しながらシェイカーは言葉を続ける。

 「俺は魔法でみてたから成り行き知ってるけど、他の連中は知らないから一応聞いとくな」

そう言ってシェイカーは判目になりながらマリアンヌをみる。

 「マリアンヌ、その腕にくっついてるのはどうした」

シェイカーの言葉通り、マリアンヌの腕にはこれ以上密着はできないよ! ってレベルでマリアンヌにくっついているヒルダがいた。

あわあわしているマリアンヌより先にヒルダが口を開いた。

 「シェイカー先生!!」

 「なんだ」

 「私、白虎の学級に移る」

 「却下」

 「どうして!?」

ヒルダの言葉をシェイカーは即座に切り捨てた。その言葉にマジで信じられないという表情を浮かべるヒルダ。

するとイングリットがおずおずと提案してくる。

 「あの、シェイカー先生。ヒルダさんにも白虎の学級に移りたい理由があるかもしれませんし」

その言葉にシェイカーは顎に手をあてて少し考え、ヒルダに尋ねる。

 「弊学級への志望理由は?」

 「マリアンヌちゃんと一緒にいたいから!!」

 「聞いたかイングリット。こんなクソみたいな理由で移動を受け入れられると思うか」

ヒルダの元気のいい即答にイングリットはさっと視線を逸らした。

すると今度はラファエルが不思議そうにいう。

 「でもヒルダさんはなんでマリアンヌさんと一緒にいたいんだぁ?」

 「私も、それ、不思議です!!」

ラファエルとペトラの言葉にイングリット、リシテア、メルセデスは驚愕顔を浮かべる。何せヒルダのマリアンヌを見る眼は完全に恋する乙女のそれだ。誰がみたってわかる。

わかっている側のハピも呆れながら口を開く。

 「あ~、あれだよ。級長とヒルダはお友達だから」

 「おぉ!! なるほどなぁ!! 友達は大事にしないとなぁ!!」

 「私も、ドロテア、色々、教える、してくれる、いい友達です!!」

ラファエルとペトラの言葉に全員の視線がマリアンヌに集まる。その視線にわたわたしながらもマリアンヌは答える。

 「は、はい。ヒルダさんは(数少ない)大事な友達です」

マリアンヌの言葉にヒルダは勢いよく致死量の鼻血を吹いた。

慌てるマリアンヌに「治療するわね~」と言ってヒルダの治療をするメルセデス。

そしてヒルダは顔を真っ赤にして鼻を抑えながら興奮気味に口を開く。

 「そうなんだから!! 私とマリアンヌちゃんは(将来を誓いあった)大事な友達なんだから!!」

 「……何故でしょう。マリアンヌとヒルダの間に致命的なズレがある気がします」

 「シっ」

リシテアの言葉に深く突っ込むなという合図を送るハピ。

そしてシェイカーは面倒そうに口を開く。

 「とりあえずお前がいると話が進みそうにないから魔法で地上に強制送還な」

 「は!? 許されませんけど!? 私はマリアンヌちゃんと一緒にいるの!! 私とマリアンヌちゃんを離れ離れにするなんて神様が許してもこのヒルダちゃんが許さないんだから!!」

 「別に許してもらおうと思わないから強制送還な。はい、発動」

 「あぁぁぁ!!! マリアン!!」

叫びの途中で魔法陣と一緒にかき消えるヒルダ。その魔法をみてリシテアは感嘆の声をあげる。

 「すごいですね。あれだけ密着していればマリアンヌが巻き込まれてもおかしくないはずなのに、ピンポイントでヒルダだけ送還してます。ハピはできますか?」

 「無理無理。あんな変態技術ハピちゃんはないよ」

 「ハピは課題追加、と」

 「うぼわぁ」

ハピから乙女から漏れてはいけない系の悲鳴がでたが、白虎の学級では珍しくもないのでスルーされる。

 「それじゃあ、各自、フレンの探索結果報告」

 「あ、はい。私からですか? あ、級長だからですか。はい。え、と。不審者がヒルダさんを誘拐しようとしていたので助けました。フレンさんはいなかったです」

 「はい!! ペトラも、不審者、見つける、しました!! 殲滅、する、した、です!!」

 「お~、マリアンヌとペトラは不審者発見、殲滅、と。他」

 「じゃあ、私がいいかしら~」

そう言って手を挙げたのはメルセデス。シェイカーが頷くのを確認してからメルセデスは口を開く。

 「私は不審者をみつけたから後をつけたのよ~。そしたら同じく不審者をつけてたリシテアと合流してね~」

 「相手の人数が多く、深追いは危険だと思って戻ってきました。不審者がいったのはたぶん方角的には寮のほうだと思います」

 「メルセデスとリシテアはいい判断だ。ラファエルは何かあったか?」

シェイカーの言葉にラファエルは自信満々に胸を張る。

 「オデは道に迷って大変だったぞ!!」

 「アビスの最深部のほうに行きそうだったからハピちゃんが回収しときました」

 「ハピさん、ありがとぅなぁ」

ラファエルの言葉に驚愕顔を浮かべるハピ。

 「え!? 嘘でしょ!? ハピちゃん、お礼言われたんだけど!!」

 「ハピがこんな可哀想な人に誰がした」

シェイカーの言葉にペトラとラファエル以外の全員がシェイカーを指差したが、シェイカーはそれを無視した。

 「というわけで報告を纏めると大量の不審者がガルグ=マクの地下に集まってるわけだ。マリアンヌ、これをどうみる」

 「は、はい。どこかの勢力が教会に対して何かをやろうとしていて、フレンさんはそれに巻き込まれた可能性が高いです」

シェイカーの質問にすらすらと答えるマリアンヌ。その答えにシェイカーは満足そうに頷く。

 「勢力に対しての心当たりは?」

 「私が倒した不審者の言葉に帝国訛りがあったのでおそらくは帝国かと」

 「うむ、合格」

シェイカーの言葉に安堵のため息をつくマリアンヌ。何せここでミスするとハピと同程度の地獄をみることになる。

すると今度はリシテアが手を挙げる。

 「先生、何故帝国が教会に介入してくるのですか?」

 「教会を邪魔だと思っている勢力が帝国には大規模にある。そういうことだ」

シェイカーの言葉に全員が考える姿勢(ハピは眼が死んでいる)になるのをシェイカーは手を叩いて止める。

 「まぁ、今回はやみうご……げふんげふん、その勢力は気にしなくていい。何せ今回の課題はフレンの探索だ」

 「はい!! その途中、不審者、邪魔する、したら、どうしますか!!」

ペトラの言葉にシェイカーは爽やかな笑顔で答える。

 「殺せ」

 「表情と言葉の内容があってない件について」

 「別に珍しくもないでしょう」

速攻で突っ込むハピとリシテア。

それを無視してシェイカーはマリアンヌに視線を向ける。

 「さて、この後はどうする?」

その言葉にマリアンヌは少し考えるが、すぐに口を開く。

 「メルセデスさんとリシテアさんが発見した不審者を追いかけます」

 「ちょい待って級長。アビスの地下は製作者の性格の悪さが全面にでてるくらいの迷宮だから下手したら遭難するよ」

 「では何故不審者達は道がわかっているのでしょうか」

マリアンヌの言葉をハピが止めるとマリアンヌが不思議そうに首を傾げた。

 「あ!!」

 「どうしましたか、ペトラさん」

ペトラの言葉にマリアンヌが尋ねると、ペトラががさがさと道具袋を漁って一枚の紙を取り出す。

 「私、斬る、した、不審者、これ、持つ、してました!!」

ペトラから紙を受け取ってマリアンヌがそれを確認する。

『製作者監修!! アビス地下迷宮完全攻略ガイド!! 大丈夫!! ファミ通の攻略本だよ!!』

無言になる白虎の学級。そしてシェイカーはやれやれと首を振った。

 「全く。教会の最高機密を売り払うなんて悪い奴がいたもんだな」

 「大師匠、最近妙にお金持ってたよね」

 「ははは、臨時収入が入ってな」

 「と、とりあえず不審者達はこの地図をもとに動き回っているということですね」

 「そういうことに……お」

 「先生、どうかしましたか?」

マリアンヌの言葉にシェイカーは一度魔法陣を展開して確認するように頷く。

 「その不審者集団と黒鷲の学級が戦闘状態に入ったみたいだな」

 「「戦闘!!」」

戦闘という単語に白虎の学級の脳筋二人組がいきり立つが、即座にイングリットにステイさせられていた。

シェイカーと同じようにハピも魔法陣を展開して何かを確認する。

 「あ~、確かに戦闘状態になってる場所があるね。不審者と黒鷲の学級かはハピちゃんにはわからないけど」

 「それだけの広域探査魔法が使えるだけでもすごいことなんですけどね」

 「いや、ハピちゃんの場合は比較対象が変態だから」

 「ハピは課題追加、と」

 「うぼわぁ」

リシテアの言葉にうかつな返答をしたハピが地面に倒れこむ。

 「あの、ハピさん。戦闘状態になっている場所はどのあたりでしょうか?」

 「ハピちゃんには方向しかわからないけど、あっちのほう」

マリアンヌの言葉に倒れこみながらも腕だけで方向をさす。

壁であった。

 「……地図を頼りに向かうしかないでしょうか」

 「マリアンヌさん!! オデにいい考えがあるぞ!!」

マリアンヌの呟きにラファエルが満面の笑みを浮かべて手を挙げる。

そしてマリアンヌに促されると、ラファエルはそこらに転がっていた巨大な岩の塊を持ち上げる。

 「どぅぅぅぅぅぅぅぅりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

そして思いっきりそれを壁に投げつける。

投げつけられた巨大な岩の塊は壁にぶつかって、壁を砕く。

唖然としている白虎の学級の面々にラファエルは真っ白な歯をみせて笑う。

 「壁を全部壊せば一直線だぁ!!」

 「流石の俺もその発想はなかった」

ラファエルの言葉に思わずシェイカーが呟くのであった。




マリアンヌ
最近は級長の立場にも慣れてきている

ハピ
凄腕の魔法使いなのに褒められたりお礼を言われることが少ない

ラファエル
道がないなら作ればいいじゃない(壁破壊

シェイカー
脳筋の発想にドン引き

ヒルダ
地上に戻って「マリアンヌちゃぁぁぁぁん!!」と叫びながらアビスにいこうとしたのをクロードに止められた




更新しなくてすいませんでしたぁ!!(伸身土下座

そして話の内容が進んでなぁい!! 今回で謎の存在炎帝とあわせるつもりが無駄に長くなったのでここで一回切ります。次回こそみんな大好き炎帝登場です!!

いやぁ!! 仮面被ってるからこの作品的に炎帝の正体はバレないかもなぁ!!(フラグ

次回もいつになるか未定ですが気長にお待ちいただければ幸いです


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