ヒロアカの世界で、某ブラック上司になった件 (くつしたダサいもこ〜)
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ブラック上司爆誕
「無惨様!」
そう言いながら私の前で跪く6鬼。そう、人ではなく鬼なのだ、人とはかけ離れた怪力に只の刃物などでは幾ら斬ろうとも、首を刎ねようとも死ぬ事はない主食が人間の化け物、「鬼」。
鬼の中でも最強の力を持つ「十二鬼月」と呼ばれる12の鬼たち、その中でも残りの6鬼とは隔絶した強さを持つ「上弦の鬼」と呼ばれる最強の6鬼が、そろって私に跪いて頭を垂れている。
そんな光景を見ながら私は何故こうなってしまったのかと、昔に思いを馳せていた。
私は、元々只の漫画が好きなだけの一般人だった。
好きな漫画は数多あれど、その中でも特に好きになった「鬼滅の刃」の最新話を読み終わり、他の漫画にも手をだそうと思い「僕のヒーローアカデミア」を友達に勧められ、はまってしまい、本屋で続きを買って帰る途中、気になってしまい道を歩きながら9巻を読んでいた。
手元の漫画に気を取られていた私は、歩道に向かって突っ込んでくる車に気付くのが遅れてしまい、避けることも出来ず私は轢かれた。
気がつくと、真っ白な空間の中でポツンと立っていた。目の前には老人がおり、その人の話を聞くと、どうやら私は「僕のヒーローアカデミア」の世界に、幾つか個性を持って転生させられるそうだ。
私の、元の世界に戻してくれという願いも聞きいれてもらえず。視界が暗転し、気がついたら5歳の子供になっていた。
「僕のヒーローアカデミア」の世界に転生させると言われたが、にわかには信じられなかった。何故なら周りの街並みが、明らかに現代よりも遥か昔の時代だったからだ。街を歩く人々は着物を着ており、家は木造で、時代劇などに出てきそうなものばかりだ。「鬼滅の刃」の世界だと言われた方がまだ納得できる。
取り敢えず只突っ立っていても、しょうがないと思い、あの老人が言っていた転生特典の個性が何か調べるために森に行くことにした。
森で色々試した結果、私はどうやら2つの個性を持っているようだ。
1つ目の個性は「倍化」文字通り物を2倍にする個性。
2つ目は「吸収と放出」手から風などを吸収し、それを手から放出する個性。
この2つの個性で何か出来ないかと考えた結果、ある事を思いついた。それは「倍化」の個性で個性を倍にして強化出来ないかということだ。
結論から言うと成功し、倍率が2倍と4倍が選べるようになった。
そこで、「個性」という括りで4倍にすると、「倍化」は16倍に、「吸収と放出」は吸収出来る量と、放出の出力が4倍になる事を確認し私は調子に乗って、「倍化」をかけ続けた。
そう、彼はかけ続けてしまったのだ、自分が持つ3つ目の個性に気付かずに。
「倍化」をかけ続けて数十回の時、私の体に異変が起こった。体が変化し始めたのだ、変化が終わると、大人になっていてた。顔を確認するために近くの池を覗き込むと、そこには前世で見たことのある顔が映り込んでいた。
「鬼滅の刃」において、全ての元凶で最強にして最恐の、鬼の原種
「鬼舞辻 無惨」
に私はなっていた。
その後色々あって、鬼を増やしたり仲間を作ったりして、彼此数千年たって今に至る……どうしてこうなった。
あとみんなに、めちゃくちゃ怖がられてる気がするんだけど、なんでだろう?
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恐怖は忍び寄る物 1
事の始まりは中国 軽慶市、"発光する赤子"が生まれたというニュースだった。
その報道以来世界各地で超常現象が報告され、世界総人口の約8割が超常能力「個性」を持つに至った超人社会。
それに伴い「個性」を悪用する犯罪者たち「敵」の出現により、爆発的に増加した犯罪件数。
そんな時、勇気ある人々が正義の味方として、敵から人々を守り始めた。
正義の味方のことを人々は「ヒーロー」と呼んだ。
僕、「緑谷 出久」は、ある1人のヒーローのデビュー動画に魅せられた。
そのヒーローの名は「オールマイト」。名実共に "平和の象徴" となったヒーローだ。
そんなヒーローに憧れた僕は、事あるごとにお母さんに
「超かっこいいなああ!! 僕も個性出たら、こんな風になりたいなああ!!」
などといって、自分にも個性が出てヒーローになれる事を信じて疑わなかった。
個性を検査しに病院に行った時、医者から告げられた言葉は
「諦めた方が良いね」
だった。
検査の結果は「無個性」。僕は目の前が暗くなったような気がした。
家に帰った後、例の動画を見ながらお母さんに僕は話しかけた。
「・・・お母さん、どんなに困ってる人でも笑顔で助けちゃうんだよ・・・」
「超かっこいいヒーローさ、僕も、なれるかなあ」
そう泣きながら問いかける僕にお母さんは
「ごめんねえ出久ごめんね・・・!!」
と、泣きがなら抱きしめてくれた。
でも、違うんだ、違うんだお母さん
あの時僕が言って欲しかったのは・・・・・
僕が彼に出会ったのは、それから4年後の出来事だった。
その日は、お母さんに買ってもらったばかりの服を学校に着て行ったのだけれど、かっちゃんに個性の実験台にされて、服がボロボロになってしまった。
お母さんにそれを見せるのは何となく気まずくて、普段は通らない帰り道を遠回りしながら家に帰っていた。
しばらく歩いていると何度か遊んだ事のある公園が見えてきた。
(ちょっと疲れたし、公園のベンチに座ろうかな)
と思いベンチに座って休憩することにした。
(服のことお母さんになんて説明しよう)
「はあ〜・・・」
そんなことばかり考えていると、自然と口からため息が出てしまった。
「そんなため息ついて、どうしたんだい?」
不意に話しかけられ横を見ると、気が付かない内に男の人が隣に座っていた。
「うわ!?」
びっくりした僕は、情けない声を上げてしまった。
「い、いつからそこに!?」
「ん? 君が来る前からずっと座っていたよ」
(えっ? 悩みすぎて隣に人が座っているのに気づかなかった?)
と思い直すが、そんなはずは無い。人が座っていない事を確認してベンチに座ったはずだ・・・
「それで、どうしたんだい?」
隣の人が話しかけてきた。
「実は・・・」
僕は事の経緯を語った。
話ながら僕はある事を疑問に思った。
(あれっ? 僕何で今日初めて会った人にこんな事を話しているのだろう?)
そんな事を考えている間も、僕の口は話し続けている。
彼と話していて分かったことは、彼はとても聞き上手だということだ。
「ふむふむ」
「成る程」
「それで?」
と、相槌を打ちながら、まるで僕との会話を心の底から楽しんでいるかの様な雰囲気を出していた。
そのせいで、聞かれてもいない夢の話までしてしまった。
「僕には夢があったんです。僕にも強い個性が出て、憧れのあの人の様にヒーローになるんだっていう夢が」
「良い夢じゃないか」
「でも、ダメだったんです」
僕は自嘲気味に話し続ける。
「検査の結果は結局無個性で、それでもヒーローの夢は捨てきれなくて・・・無駄な努力ばかりして」
僕は怖くて彼の顔を見る事が出来なかった。今までも何人かは僕の夢を褒めてくれた人はいた。でも、僕が無個性だと分かると彼らは哀れみや、侮蔑の視線を僕に向けてきた。
(どうせ、さっきまで楽しそうに話を聞いていた彼も他の人の様に・・・)
「なれるよ、君なら」
「え?」
驚いて彼の顔を見ると、そこには哀れみや、侮蔑の様な負の感情は無く、それらとは真逆の称賛や何か眩しいものを見るかのような正の感情が浮かんでいた。
「君は自分が無個性だと分かっても、努力を続けて来たんだろう?」
「うん・・・」
その時僕は何故か母の言葉を思い出していた
「他人に何と言われようが、嘲られようが君は努力をやめないんだろう?」
「・・・うん・・・」
(ごめんねえ出久ごめんね・・・!!)
「君が諦める事なく努力を続けるなら、きっと」
違うんだお母さん、あの時僕が言ってほしかったのは・・・
「君はヒーローになれる」
色々な感情が溢れてきて僕は涙を止める事が出来なかった。
それが僕と彼、「鬼舞辻 無惨」さんとの出会いだった。
それからは、学校の帰りに公園に行くのが日課になった。
不思議な事に無惨さんは僕が公園にいつ行っても、僕より先に公園のベンチに座って待っていた。
試しに学校がない日の朝6時に行ってみても無惨さんはいたし、明日は用事があって来れないと言って、翌日行ってみても無惨さんはベンチで座っていた。
監視されているのか、はたまた無惨さんの個性なのか、気になった僕は彼に聞きに行くことにした。
「何で毎回、僕が公園に行く日と時間が分かるんですか?」
と聞いてみたところ
「偶々だよ」
と微笑みながら誤魔化された。
無惨さんは自分の事を話したがらない。何度か質問してみたが、必ず誤魔化された。
そんな、謎の多い無惨さんだけど変わらず僕の話を楽しそうに聞いてくれる。僕の事を褒めてくれたり、慰めてくれたり、アドバイスもしてもらった。
そんな無惨さんの事を、彼には言っていないが少し年の離れた兄の様に感じていた。
誤字脱字があれば教えて頂ければ嬉しいです。
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