お色気の術を極めたら都市伝説扱いされるって誰が予想出来る? (榊 樹)
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男は何歳になっても男

パッと思い付いた妄想を書き殴った感じです。


忍びの世界には名を残し、二つ名で呼ばれ他里に恐れられる忍びが存在する。それは未だ健在な者を初め、既に死んだ者まで。

 

その中に『女狐』と呼ばれる二つ名はあるもののどの里にも本名が全く知られておらず、どちらかと言えばその現実離れした内容に疑う者の方が多いという、とある忍びのようなナニかが居る。

 

 

かの者は誰にでも化ける事が出来、故に誰にもその正体を知られず、気付いた時には隣の者がソレかもしれない。神出鬼没。誰にも気付かれず現れ、気付いた時には既に消えている。見破ろうと考えるな。暴こうと思うな。もう二度と誰も信じられなくなるぞ。仮に見破れたとしてもその先は底の見えぬ闇。地獄の一丁目。朝日が出る頃には血の海に沈んでいるだろう。

 

 

それは言ってしまえば恐怖体験のような、一種の娯楽の謳い文句としてよくありそうな内容だ。故にこそ、誰かが面白半分で広めたか、はたまた何かが大分脚色されて広まったのか。

 

真相は謎のままだが、特に気にする者はどの里にも居なかった。強いて言えば、子供が面白半分でその噂に乗っかった遊びをするくらい。

 

 

しかし、ある日の事だ。道端で大慌ての男とそんな男の事情を把握していない店開きの準備をしている男が会話をしていた。

 

 

「はぁ、はぁ・・・」

 

「どうかしたのか?そんなに息を荒らげて」

 

「で、出たんだよ!狐が!」

 

「・・・九尾?」

 

 

その男の慌てっぷりに野生の獣の狐などではまず無いと判断して過去に起こったあの大災害を連想してそう答えたが、どうやら違うみたいだった。

 

 

「ちげぇーよ!『女狐』だよ!」

 

「『女狐』・・・って確か、あの都市伝説とか言われてる・・・あの?」

 

「そうだよ!その『女狐』だ!」

 

 

男が話すには今朝方、日課の里の周辺を散歩していたらしい。すると、何やら騒がしい音がすると思い、そちらへ行くと忍びの人集りが出来ており、隙間から見えた地面は真っ赤な液体に染まっていた。何事かと呆然としながら立ち竦んでいると誰かが担架に運ばれて行った。一瞬だけ見えた運ばれて行った男はその顔を赤くべっとりとした液体に塗れ、身体の中心軸にも同じく赤い液体が付着していた。

 

 

男は理解した。ここからでも臭うあの臭い。職業柄、食材を捌く際にも嗅ぐあの血の臭い。赤い液体は全てが血であると、嫌でも分かってしまった。

 

そして、思い起こされるのは先程の運ばれて行った忍びの男。その者が繰り返すように発していたある単語が何故か鮮明に聞こえた。

 

 

『女狐・・・』

 

 

頭を過ぎるあの噂。所詮は噂話と思っていた事が突如、現実となってその猛威を奮って来た。

 

 

「あ、そう」

 

 

訳を聞いた店開き中の男の反応がこれだった。

それもそうだ。その血だらけの男とやらを見せられたのなら少しは信じたかもしれないが、突然なんの脈絡も無しに都市伝説が本物でしたー、なんて言われて信じる者の方がどうかしている。

 

これならまだ九尾の封印が解けたと言われた方が現実味がある。

 

 

その後も必死に本当だと言い張る男だったが、今から開店するからとの事でこの話はそこで終わった。

 

 

そう、これで終わりの筈だったが、数日後に別の所で再びその被害者が現れた。それから日にちを跨いでまた被害者が。

 

現実味を帯びさせて来たのは、被害を受けたのが全て上忍の忍びばかりであるという事と被害者は誰一人として傷を負っていないのにも関わらず、全身血だらけ(倒れた際の傷などはある)である事。おまけにその正体は被害に遭ったどの忍びも分からないと言う。情報戦に関してはエキスパートである筈の忍びの中の忍びである上忍が、だ。それは都市伝説として相応しい程の事実。

 

 

『女狐』という単語から九尾に何か関係しているのでは、と考える者も現れ始める程に都市伝説でしか無かった筈の噂が瞬く間に里中に広まって行き、噂は現実となった。

 

 

木の葉の里にとっては恐怖の権化である九尾。そこから連想して女狐も未だに正体が分からないとして、里からは恐怖の対象として見られるようになった。

 

 

 

 

木の葉の里の極秘施設。そこに横たわる一人の男と側で座る金髪の男。それを囲むようにして真剣な表情で金髪の男を見る忍びの男達。

 

皆が固唾を呑んで見守る中、金髪の男『山中いのいち』は横たわる男に己が最も得意とする術を掛けた。

 

 

「『心転身の術』」

 

 

それは簡単に言ってしまえば、他者の中に自身の精神を入り込ませる山中一族の秘術だ。それを利用して横たわる男の記憶を覗く。

 

何故覗くのかと問われれば、それは横たわる彼がここ最近になって起こり始めた女狐の被害者の一人だからだ。全員がいのいちを見守る中、突如ダランとしていた筈のいのいちがピクリと動き出し、次の瞬間には鼻から大量の血を吹き出してぶっ倒れた。

 

 

「大丈夫か!?」

 

 

慌てて駆け寄る忍び達。自身の鼻血で作った血の池に沈むいのいちから何があったのかを聞く為に抱き起こす。よく見てみれば、いのいちの顔はまるで人生の答えを見つけたかのような、仏様もビックリの悟り顔となっていた。

 

 

「何が見えた!女狐はどんなだった!」

 

「ぁ・・・ぁぁ・・・」

 

 

片手を宙に彷徨わせながら、か細い声で何かを呟こうとするいのいち。一言一句聞き逃すまいと耳を寄せる周囲の男達。

 

 

「・・・ッ・・・ふっ・・・」

 

 

しかし、何を言うでも無く掲げた片手を力強くグッドの形にすると、全身から力が抜け、力尽きた。

 

 

「いのいちー!!」

 

「何か言えよ!お前だけ楽しんで狡いぞ!!」

 

「そうだそうだ!」

 

「その反応だけで凄いんだろうって事はよく分かるけどさー!あークッソー!!余計に気になるぜー!!」

 

「そうだそうだ!」

 

(みな)の者、静まれー!!

 

「「「ッ!!?」」」

 

 

大混乱に陥った忍び達をたった一喝で抑え込んだ(しわが)れた声。その主は火影を示す『火』と書かれた火影帽子を被った一人の老人だった。還暦を迎えていても可笑しくない程の外見とは裏腹に覇気のある声。

 

 

流石は長年火影を務めているだけの事はある。

 

 

「火影様・・・」

 

「ふむ・・・シカク」

 

「は、はい」

 

 

顎を片手で摩りながら血の池に沈んだいのいちを一瞥する三代目火影の『猿飛ヒルゼン』。その瞳は正しく数多の戦場を生き延びた猛者の目付きであり、怒り狂った熊であろうと逃げ出すレベル。

 

振り返り、背を向け皆からゆっくりと離れるようにしながら側近のような役割を担ってもらっている『奈良シカク』へと声を掛ける。

 

 

「少し、久方ぶりの修行に行ってくる。後は任せたぞ」

 

「行かせるかエロ猿が!『影縫いの術』」

 

「なッ・・・!?」

 

 

そそくさと立ち去ろうとするおじいちゃんを見計らっていたかのように既に影を使って捕縛していたシカク。あまりの手際の良さにヒルゼンは一瞬驚愕の表情を浮かべるが、すぐに身体ごと煙となって消えた。

 

 

「ちっ!身代わりか・・・」

 

「ふんっ!甘いわ小僧!」

 

 

離れた位置にいつもの全身黒一色の戦闘服で外へ唯一繋がる入り口兼出口へと向かうヒルゼン。しかし、そこには既にスタンバイしていた忍びが居た。

 

 

「『土遁・土流壁』」

 

 

瞬く間に入り口を土の壁が覆い隠す。その仕立て人は右眼の普通の目を瞑り、左目の写輪眼を開眼して油断無くヒルゼンを睨み付けるコピー忍者『はたけカカシ』だった。

 

 

「その程度で儂を止められるとでも?」

 

「思ってませんよ」

 

 

それはカカシからではなく、後ろから聞こえた。ヒルゼンが振り向くとそこには蠢く黒い塊が襲い掛かって来ており、辺りを見渡した時には既にその蠢く黒い塊に囲まれていた。

 

 

「シビか」

 

 

ソレは虫の大群であり、操者は『油女シビ』。このまま虫に覆い尽くされるかと思ったが、瞬時に印を結んだヒルゼン。傍に背中合わせでもう二人のヒルゼンが現れ、三人同時に口元に手を当てる。

 

 

「『火遁・豪炎の術』」

 

 

猿飛一族の秘伝忍術の炎がシビの虫を襲う。流石に耐えるなんて事は出来ずに次々と燃え尽きる虫達。炎を吹き終わった頃には全ての虫が撃ち落とされていた。

 

 

「ん?ふっ、だから甘いと言っておろう!」

 

 

下を見てみればシカクの影が迫って来ていた。出していた分身と連携して地上に降りずに入口まで飛んで回避するヒルゼン。そのまま一直線に印を結んでいるカカシの下まで行くかと思われたが、真横からの強烈な右ストレートを横腹にぶち込まれて吹き飛んだ。

 

それは全身緑タイツのナイスガイな木ノ葉の気高き碧い猛獣『マイト・ガイ』。ご老体の火影に対してマジかと言いたくなる程に遠慮の無い一撃を叩き込んで尚もドヤ顔をするガイだったが、その背後をヒルゼンが通り過ぎた。

 

 

「なッ!?分身!?」

 

 

誰かがそう叫び、ガイは自身が吹き飛ばした砂埃に包まれていたヒルゼンを見るとそこにはグッタリとしたヒルゼンが次の瞬間には煙となって消えた。

 

完全に嵌められたとショックを受けるガイを他所に戦局は目まぐるしく変わって行く。

 

 

「『水遁・水龍弾の術』」 「『水遁・水龍弾の術』」

 

 

土流壁を崩す為の水遁を全く同じタイミングで同じ術を返すカカシ。しかし、流石に老いていても火影相手には分が悪く、少しの拮抗を経て押し返され飲み込まれてしまう。そのまま大量の水に曝された土流壁は泥と化し、ヒルゼンにとって壁では無くなった。

 

 

「『部分倍加の術』」

 

 

しかし、自身が作り出した水を秋道一族の現当主である『秋道チョウザ』の両手を大きくする部分倍加の術で掬い上げられ、思いっ切り叩き付けて来た。

 

 

「『雷遁・感激波』」

 

 

対応する前に完全に不意を付かれた形で他方から無傷のカカシによる雷を纏った水遁が打ち出され、チョウザが投げた水と混ざり合い、全方位からの感電という名の形の無い攻撃にヒルゼンは歳もあり、為す術もなくヤラれてしまった。

 

 

 

 

「全く、火影の癖に一人だけ抜け駆けとか卑怯ですよ」

 

「むぅ・・・」

 

 

ヤマトの木遁とシカクの影縫いによる入念な捕縛により、座して説教を受ける三代目火影。まさかのここに居る部下全員からの裏切りに何も言えない様子だった。しかし、不満はあるので苦し紛れに言い返してみる。

 

 

「それを言うならいのいちはどうなんじゃ」

 

「アイツは後でシバキ倒します」

 

 

被害者が増えただけだった。

 

 

「大体、ナルトのお色気の術でさえあのザマなんですから、その比にならない程の女狐を見た時は失血死しますよ」

 

 

以前、詳細は省くがナルトにお色気の術を仕掛けられ、割と笑えない状態になっていたヒルゼン。幸い、すぐ暗部の者に見つかり事なきを得たが、若い者すらもかなり危険な状態まで追い込まれる程の絶世の美女である女狐を見た際にはどうなるか分かったものでは無い。

 

 

「なら、命欲しさにお主らは諦めるというのか?」

 

「「「そんな訳ないでしょ」」」

 

 

真面目な顔でマジトーンで返す馬鹿な親父達。それを見てこの里は大丈夫だろうか、と結構本気で心配するヒルゼン。尚、その長が自分である事は棚に上げている。

 

 

「て言うか、火影様が見たとして、それで血だらけの重体にでもなってみてくださいよ。里は大混乱ですし、その時の火影代理はどうするんです?大蛇丸を除いた伝説の三忍の誰かを推すにしても今は居ない状態ですし、どちらも嫌がってます。そんな奴らを説得出来るだけの理由を聞かれて、何て答えるつもりです?」

 

「自来也には女狐の話を出せば釣れると思うんじゃが・・・」

 

「「「・・・・・・」」」

 

 

あぁ、確かに、と思ってしまった一同。現在、行方不明である伝説の三忍が一人の自来也はそういった類の大人気作品を出版しているオープンスケベ。故に本人は火影になるのを心底嫌がっているのだが、彼の本性を知っている者達からしたらこの策でいけば、案外簡単に行けるかもしれないと思ってしまう。

 

 

「いや、あの人なら女狐を探すばかりでどの道、仕事なんてしないと思いますよ。見つけた後もそれを基に新しい作品を書きそうな気がしますし」(それはそれで見てみたい)

 

(((それはそれで見てみたい)))

 

 

冷静に分析してそう答えたカカシだったが、本人も含め火影どうこう関係無しにあの人にこの事を話すべきではなかろうか、と思い出した。煩悩に塗れた忍び共を止める者はこの場には居ない。

 

 

「・・・あれ?そう言えば、ダンゾウ様どこ行った?」

 

「・・・・・・居ねぇな」

 

「逃げやがったなあの根暗陰キャジジィ!!」

 

「さっきから思っておったんじゃが、お主ら口悪過ぎじゃないか?」

 

「ミイラ猿は少し眠っておいて下さい」

 

「誰が枯れ果てた骨野郎じゃ。まだまだ現役じゃ」

 

 

今の今まで居た筈の隻眼で封印されし右腕を持つ厨二おじいちゃんが居ない。慌てて探そうと飛び出そうとした者達が居るが、ヒルゼンが止めに入る。

 

 

「まぁ待て、お主ら」

 

「なんです?同じご老体として手助けでもしようと?」

 

「ちゃうわ阿呆。アイツはな凄まじく慎重でいつも裏に隠れて事を進める。そんな奴じゃ」

 

「・・・それが何か?」

 

「要はヘタレのチキン野郎という事じゃ。恐らく、いざ決行しようとしてもオドオドして結局見る事すらも叶わんわい。未だに独身なのがその証拠よ」

 

「「「・・・・・・」」」

 

 

曲がりなりにも幼馴染みに対してのこのあまりにもボロクソな言い様。言っている事はあながち間違いでは無いが、そういう意味でも無いというのがタチの悪い所。本人が居れば声を大にして抗議していた事だろう。

 

 

「それに儂等がここ数週間、時間をあまり掛けていないとは言え全力で探し出して被害者が出たばかりでまともな情報も無い。意識を戻した者達に話を聞いても『美しい美しい』と幼児のような語彙力の無さでまるで手掛かりにならん。それに大まかではあるが容姿が人によって変わっておる。彼奴(あやつ)の組織程度では為す術もなかろう」

 

「女性、居ませんでしたっけ?」

 

「居ましたね。何人かは今は分かりませんが、最低でも一人は居ました」

 

 

嘗て根に所属していたカカシとヤマトが目を見合わせ、アイコンタクトで居たよな?居ました、という意思疎通をしている中でヒルゼンは続ける。

 

 

「いや、じゃから大丈夫じゃって。捉えた所で女以外は余っ程おかしな性的嗜好じゃない限りは見ただけで終わりじゃろうから。ダンゾウなんて、ヘタレな上に滅茶苦茶初心じゃから・・・まぁ、それはそれで面白いものが見れそうじゃの」

 

 

なんか、妙な説得力があると感じてしまう上忍達。仮に今から追い掛けた所でダンゾウを見つけるのは至難の業であるし、見つけて捉えた所でどうこうしようがない。それにこれ以上は留まっておく訳にもいかない。

 

取り敢えず今日は叩き起したいのいちをシバキ倒してお開きとなった。

 

 

 

 

(や、やべぇ・・・!)

 

 

男共の秘密の集会に参加していた一人の男が何やら内心途轍も無く焦っていた。

 

 

(まさか『根』まで動き出したとか・・・マジかよ!)

 

 

この男、何を隠そう今話題の『女狐』本人である。何がどうなっているのか、ここで一旦整理しよう。

 

 

この男、別に何か特殊な過去がある訳でも特別な忍術を使える訳でも無い。何処にでも居るような普通の中忍が精々の忍びである。しかし、この男には子供の頃に抱いた夢があった。

 

 

それは『自身の理想の女体を作り上げる』という曇り無き夢だ。

 

 

別に何か才能がある訳でも無い。強いて言えば、男なら誰もが持つであろうスケベ心を自覚するのが早過ぎて、尚且つ女体に魅入られ過ぎただけだ。

 

しかし、女性に話し掛けて恋仲の関係になったり、ましてや貴女の裸を堪能させて下さい、などと堂々と言える程の馬鹿でもない。故に出した答えが自分の身体を使って忍法で女体を作り上げる、だった。

 

その日を境にこの男は毎日のように変化の術を利用・応用して女体を研究していった。子供の頃は勿論上手くいかなかった。何よりも資料がまるで足りない。そこで女湯を覗いて死にかけたり、本屋に行ってそういう本を借りようとしたりとありとあらゆる手段を持って女体を研究し尽くしてきた。

 

そしてある日、拙いながらもそこそこ様になっている裸の女になる事が出来た。しかし、最初は喜んだもののすぐにこう思った。

 

 

『どうせなら、もっと凄いモノを作りたい。例えば、誰も見た事の無い絶世の美女とか』

 

 

そうして日々、女体化のみの鍛錬を続け今に至る。

 

 

因みに都市伝説に関しては、偶々女体化の修行中だった所を上忍の者に見られ、その上忍が搬送。訳を聞いた火影とその他お供していた上忍達が広めた物だ。

 

要はカモフラージュのようなものだ。

 

 

大袈裟に広めて自分達がその女狐を見付ける理由を誤魔化す為のカモフラージュ。妻や子供に何の任務をしているのかと聞かれた時のカモフラージュ。これは必要な事だったのだ。実際、一般人の男が見ても生死に関わる出血量となるので割と正解だったりする。

 

しかし、これまではそれ以来、全く手掛かりが見付からずに諦めかけていた。そんな時だ。ここ最近になって何故か至る所で発見されだした。そこで急遽、久しぶりの招集を掛けて今日の火影vs上忍の流れとなった。

 

 

女狐が忍び込んでいたのは少し気になっていた事があったからだ。ここ最近は術の研究具合が途轍も無く進んでいる。だから調子に乗って周囲の警戒を怠り何度も変化の場面を見られてしまった。見られると何がマズイのかと言えば、普通に恥ずかしい。

 

 

これでも割と普通の感性を持っているつもりの女狐。それに子供の時ならまだしも、今はいい大人だ。そんな大人が女体になろうと人生を懸けているなど知られれば、もうこの里には居られない。絶対に陰口を叩かれまくる。

 

それに今はそれだけではなくなった。上忍を間接的とは言え、二桁程病院送りにしてしまったのだ。自分の正体がバレてしまえば裏切り者として命を狙われても可笑しくない。

 

そうしてコソコソと副産物である得意となった変化で別の男に成りすまし、あの集会をそれっぽい相槌を打ちながら見守っていた。

 

 

結果、分かった事は木の葉の里の上層部が自分が思った以上に本気で探し出そうとしている事だった。それ以外にもかなり残念な会話をしていたが、女狐はそれどころではなかった。

 

 

(しかも実は男でしたー、なんてバレたら・・・か、考えたくない)

 

 

長年、同胞が病院送りにされても探し続け、やっと見付けた物が偽物だった。はて、その怒りはどれ程の物だろうか。まずまともには死ねない。

 

 

(暫く、ほとぼりが冷めるまでは大人しくしていよう)

 

 

そう誓い、女狐は人混みの中へと紛れて行った。




いのいちの記憶を探る云々に関しては思い出せず、取り敢えず心転身の術にしました。違ってたら書き直しますのでご報告下さい。


女狐(名前は考えて無い)

・純粋な実力は中忍の中でも下の上くらいの万年中忍レベルであり、初期のナルトと一緒に中忍試験を受けた殆どに負ける(要はモブみたいなもの)
・男性に対してお色気の術は超特攻であり、芸術としての美もかなりのものなのである程度は女性にも有効
・ナルトよりも早くお色気の術を会得するが、別に今の所ナルトとの関わりは無い
・伸び悩んでいた頃に二人でやれば幅が広がるんじゃね?と思って分身を色々と改造・研究所していったら何故か影分身以上無(むう)の分裂未満のなんか凄い分身?が出来た。しかし、同時に出せるのは一体までで連続使用不可能であるし、そもそも本人の実力が低いので戦闘ではあまり使い物にならない(偵察とか潜入とかには持って来い)
・間近で見た上忍の戦いを見て軽くトラウマになっており、より修行の隠蔽には精を出し始めた




続かない


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エロスは種族を超える

ナルトと言うよりも九喇嘛が書きたかった。


『うずまきナルト』

 

木の葉の里に於いて、この名を知らぬ者は殆ど居ない。いや、正確には九尾の人柱力として知られており、覚えられているのは容姿だけで名前は覚えられていないのだがそれはそれ。

 

そんな彼は物心着く前から両親を亡くし、幼くして天涯孤独の身となり、人柱力故に酷い迫害を受けて来た。外に出れば罵声罵倒は当たり前。何かを投げ付けられるし、酷い時には暴力だって振るわれる。家に居ても石を投げられて窓を叩き割って来るし、部屋中を荒らされる。しかも、その仕立て人の殆どが大の大人達だ。

 

 

いつも一人だった。皆が敵で味方なんて、中立の者すら誰一人として居ない。

 

 

そんな陰鬱な日々を過ごしていた彼はある日、夢の中で檻に住まう巨大な紅い狐と出会う。しかし、出会い頭に少年には重過ぎる程の殺意を受けたし、あと一歩で殺されかけた。

 

その狐の瞳に身が竦みそうになるがめげずに話し掛けてみた。だけど、まともに取り合ってくれないし、根気強く話し掛けたら空気が震える程に怒鳴られて目が覚めた。

 

その日から毎日のように同じ夢?を見るようになった。しかし、いつも話し掛けては怒鳴られたので流石に話し掛けるなんて事はせずに、ただ檻の前でジッと座ってるだけ。そうして居れば怒鳴られる事は無く、いつの間にか目が覚める。

 

目が覚めれば、また陰鬱な日々の始まりだ。友達が欲しくて無駄だと分かっていても公園に行ってみたり、その辺をフラフラしてみたり。

 

 

そして、突き刺さる悪意や恐怖の籠った視線の数々。あぁ、また今日も酷い目に遭わされるんだろうなぁ、とそう思っていたが、気付けば特に何かをされるでもなく、家に帰っていた。

 

 

「・・・?」

 

 

部屋を荒らされているようには見えない。寧ろ、かなり乱雑になっていた部屋が何故か綺麗にされていた。それから次の日もまた次の日も外に出てみたが、特に何かをされるでもなく、ただ視線を向けられるだけ。

 

普段なら聞こえて来るのは嫌なものばかりだから敢えて無視していたが、訝しんだナルトは周囲の人間が何かをコソコソと話していたので耳を済ませてみた。

 

すると所々から聞こえて来るのは『女狐』という単語。『狐』という所からあの夢の中の大きな狐を連想させるが、何か違うような気がした。一応、夢の中で大きな狐に女狐と何か関係があるのか、と聞いてみると今までに無い程に激怒されたので違う事は確定だろう。

 

公園に行って子供達に聞いてみたが、あまり要領の得ない事ばかり。どうしても気になったナルトはとうとう初めて火影邸へと赴いた。

 

がしかし、途中で片目を隠した白髪の忍びに止められた。訳を聞かれたナルトは何がどうなっているのか気になった、と正直に話すとその忍びは暫し考えた後に場所を移すように促して来た。

 

 

言われた通りに着いて行くとそこは路地裏だった。騙されて今から酷い事をされる、と反射的に思ってしまうナルトだがそんな事は無く、普通に何があったのかを懇切丁寧に教えてくれた。

 

 

簡単に纏めるとこうだ。

都市伝説とやらの『女狐』が突然、その猛威を奮いだし、里中は今恐怖に包まれている。『狐』という部分からナルトの中に居る『九尾』を連想させ、何か関係があるのでは無いか、という噂が新たに流れ始めた。ナルトに対して何かをして来なくなったのは何らかの報復を恐れての事ではないか。

 

まさか、と言いたくなる程に都合が良過ぎる内容だった。しかし、現実はその『女狐』のお陰でいつもよりは平穏な日々を過ごせている。

 

 

一言でいいからお礼が言いたい。気付けばナルトはその忍びにこう言っていた。だが、その忍びは困り顔になり、事情を話してくれた。

 

と言うのも、自分達もその正体を探っているが、未だに何の手掛かりも無い事や機密であり不確かな情報ではあるが、万人が見惚れる程の美しさを持つ美女である事ぐらいしか分からない等のあまり良いモノでは無かった。

 

だが唯一、里の周辺に時々現れる、と教えてもらい、ナルトは早速その日に里の周辺を散策しだした。しかし、外に居た忍びの者に里の外へは出るなと忠告され、外へは行けなくなってしまった。

 

それでも諦められなかったナルトは足掻くように里の中を毎日根気強く探し続けた。

 

 

そうやって何の成果も上がらない無意味な日々を過ごしたが、無意味なのは今更だ。かなりの月日が経ちそれでも諦めず、されど心が折れかけていたある日の事だ。

 

 

 

 

「やっぱり・・・何処にも・・・」

 

 

それは今まで虐げていた者達が心配になる程にフラフラとする幽鬼のようだった。

 

ナルトが既に女狐を探し始めて一月が経とうとしており、それでも当たり前と言えば当たり前だが成果は無し。今では家に居る時間よりも長く探索を続けているがだからこそ、限界が近かった。

 

 

(今日はもう・・・帰ろうかな・・・)

 

 

目尻に涙を溜め、夕焼けの里を歩く。その姿は人柱力として周囲から虐げられていた時よりも痛々しかった。

 

お礼が言いたいのは本当だ。だが、ナルトだって子供。生まれてこの方、味方が居た事が無い彼にとって間接的にとは言え、庇ってくれた女狐の存在は気付かぬ内に日に日に大きくなっていった。

 

だからこそ、会えないこの状況がナルトを苦しめる。里の者達が迫害するよりも酷く辛く。

 

 

「・・・ぐす・・・・・・ん?」

 

 

それは偶然だった。殆ど諦めていたのに然れど残っていたほんの一欠片の希望に縋って、見える範囲で探そうとした。

 

そして見付けた。

 

一戸建ての民家の一階の窓から見える綺麗な人。夕陽に照らされ、黄金に輝く黄金色の長髪に人の物では無い獣の耳と尻尾。

 

 

「綺麗・・・だってばよ・・・」

 

 

それは人が息をするように自然と無意識に出た言葉。呆然とした。あれだけ望んでいた存在に出会えたというのに、身体が動かない。

本能的にあの人が女狐だと分かったが、身体が脳がその存在に見惚れている。

 

 

「・・・・・・?」

 

 

どれ程の時間が経ったのか。ナルト自身、もうずっとここに居た気がするが、まだ夕陽が沈んでいない所を見るにそこまで経過していないのかもしれない。

 

そんな時、女狐が今気付いたとばかりに呆けた顔をこちらに向けた。目が合う。眠った時に見る九尾の瞳と同じ、猫のような瞳。

 

だが九尾とは違って恐怖は感じられず、不思議と引き寄せられた。女狐も眼を逸らさず凝視している。互いに幻術に掛かったように静止し、暫くして先に動いたのは女狐だった。

 

シャッとカーテンを閉め、それと同時にナルトは駆け出す。その家の玄関へと。

 

 

「ねーちゃん!ねーちゃん!女狐のねーちゃん!」

 

 

はっきり言って近所迷惑と言いたくなるくらいに歓喜の余り、連続でノックして大声を張り上げる。そんなナルトに慌てたように家主は扉を開くが、そこに絶世の美女が居る事は無く、出て来たのはまだ成人したてくらいの青年だった。

 

 

「・・・・・・?」

 

「しょ、少年、どうかしたのかな?」

 

 

思った現実と違った事にポカーンとするナルトとバレないか冷や汗を流す女狐(ver.男)。しかし、ある事に気が付いたナルトは再び顔を喜色に染め出した。

 

 

「あ、あの!」

 

「な、何んだい?」

 

「女狐・・・だよな!?」

 

「んん゛ッ」

 

 

一気に核心を突いて来たナルトに変な声が出る。頬を引き攣らせ、なんとか誤魔化そうと言葉を重ねるが最早手遅れな事に彼は気付いていない。

 

 

「お、落ち着こうか少年。君は何か勘違いをしているよ」

 

「え・・・あ、なんだってばよ?」

 

「女狐って、あれだよね?噂になってる、あの」

 

「そう、それってばよ!」

 

 

独特の語尾だな、なんて現実逃避をしつつも何故ここまで確信を持っているのか分からない女狐はしゃがんで目線を合わせる。

 

恐らく、色々と錯乱しているのだろう、と希望を抱きながら。

 

 

「あのね、兄ちゃんの何処をどう見たら女狐に見えるのかな?そもそも性別も違うし・・・」

 

「耳と尻尾」

 

「・・・・・・」

 

 

するとその問い掛けにナルトはスッと頭に指を差し、そう答えた。表情の抜け落ちた女狐は頭と腰辺りをペタペタと触り、確かにその存在を確認すると瞬身の術もかくやと言わんばかりの速度でバタンッと扉を閉めて中に閉じ篭った。

 

 

「うぇ!?ちょ、ちょっと!ねーちゃん!女狐のねーちゃんってば!!どうしたんだってばよ!!」

 

 

再び喧しくなるナルト。そうなるとご近所に要らぬ噂を立てられる訳で。結局、観念した女狐が耳と尻尾を消し、扉を少し開いて顔をひょっこり出した。

 

そして、相変わらず満面の笑みを浮かべているナルトに遠い目をしながらも中に入るよう促した。

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 

どうしてこうなってしまったのか、先程から女狐はそればかり考えている。招いたはいいものの、さてどうしようかと悩んでいるとナルトからもう一度あの姿を見せてくれとせがまれた。

 

正確には変化し続けるのは大変ではないか?という内容だったがここで女狐はある事に気が付いた。

 

 

(・・・もしかして、アッチ(狐っ娘)が本当の姿だと思われてる?)

 

 

遠回しに尋ねてみるとやはりそうだった。

 

ナルトがこの馬鹿(女狐)をどういう経緯でそのような勘違いをしたのかは以下の通り。

 

まず男から女狐に変化する所を見ておらず、女の方が本当の姿なのでは?という考えが浮かぶ。次に玄関で姿を見た時は耳と尻尾が残った男の状態という歪な変化。

 

ここでナルト視点だと『男が変化した狐っ娘が再び男になった』では無く『狐っ娘が男になった』と言う事になる。そして最後に耳と尻尾を指摘すると慌てて隠れてその二つを消して再び取り繕うかのように出て来た。

 

 

ここまで怪しい行動をされて『自身が人間では無い事を隠したい狐っ娘』と思わない訳が無いし、妙な秘密主義を発揮して名前を教えなかったのがそれを助長させた。

 

『大の大人の男が部屋で自身をモデルにして作った美女を鏡の前で堪能している』なんてまず子供には無理な発想だ。エロの最先端を行く自来也だって思い付かなかったのだ。性に目覚めていない子どもに考えつく筈もなく、言われた所で『何でそんな事をするの?』と更に疑問を抱くだけだろう。

 

 

そんな訳で女狐は一旦退出して、狐っ娘になって入室した。するとその美しさに純粋に目をキラッキラさせてナルトが褒めまくる。

 

女狐自身、美女への変化(へんげ)は画家が己の作品に抱くような気持ちだ。自身の最高傑作の一つをここまで褒め千切られて満更でもなくなった女狐はそりゃもう調子に乗りまくった。

 

なんせ、今まで誰にも明かさずに隠し通して来たから褒められたどころか、なんらかの評価を得た試しが無い。強いて言えば、都市伝説なんて言う不名誉極まりない物があるがあれはカウントしない。

 

別に見せびらかしたい訳では無いがそれでも誰かと共有したいという想いはある。で、その結果が爆睡したナルトを膝枕している今の現状である。勿論、狐っ娘で。

 

 

(どうしてこうなった・・・)

 

 

やはり何度思い返してもここまでの経緯が思い出せない。何かエキサイトしていた記憶はあるがその間の記憶が曖昧で気付いた時にはこの状態。

 

抜け出そうにもナルトの目元に凄い隈が出来ていたので、起こすのも可哀想だと思い、結局朝までこの状態だった。

 

 

故に色々と疲労困憊状態だった女狐は━━━━

 

 

「あ!忘れる所だったってばよ!」

 

「どうかした?」

 

「ねーちゃん!ありがとうな!ねーちゃんの噂のお陰でもう大丈夫だってばよ!」

 

「?・・・そうか?それは良かった」

 

 

━━━━━朝起きて帰ろうとしたナルトに全く心当たりの無いお礼を言われて、特に考える事も無く肯定してしまった。

 

基本的に下手に聞くと聞かなければ良かったという内容が殆どだと学んでいたというのもあるが━━━もう『噂のお陰』って部分から嫌な予感しかしない━━━疲労で思考する能力が低下していたのもある。

 

しかし、未だ幼子であり、人付き合いをまともに行えなかったナルトにその辺の感情の機微を気付ける筈も無く、言葉通りに受け取ってしまい『やっぱり、ねーちゃんが助けてくれた』という勘違いが起こってしまった。

 

勿論、女狐にはマジで全然心当たりが無いし、そもそもナルトが人柱力である事にすら気付いていない。幼少期から女体に盲信していた彼は他の事に殆ど興味が無い。

 

無関心という訳では無いが趣味という名の修行の方が他よりも優先順位が高過ぎるのだ。故に例え里内の事であっても基本的に疎い事が多い。

 

 

(ふぁ〜・・・眠い・・・)

 

 

そんな女狐が自分の周囲が色々と大惨事になっていると気付くのはまだ後のお話。

 

 

 

 

ナルトの中に封印された九尾こと『九喇嘛』は困惑していた。その原因は目の前で楽しそうに『女狐』なる存在を語る忌々しい小僧だ。

 

以前、九喇嘛はこの小僧に「お前は女狐か?」という旨の質問をされた事がある。

 

その時はいつものように無視しようとしたが、こればっかりはハッキリと言わなければならないと感じた九喇嘛は━━━━

 

 

「誰が『女』だ!ワシは『男』だ!!」

 

 

こんな風に怒鳴った。

 

それ以来、話し掛けて来る事はせずにいつものようにただ目の前でジッとするようになった。そもそも九喇嘛は会おうとしていないのに何故、ここにナルトがやって来るのかが不思議で仕方無かったが、精々したので鬱陶しくはあるものの干渉して来ないからと放置していた。

 

 

「それでな!そのねーちゃんは━━━━━」

 

 

その結果がこれだ。

 

幾ら怒鳴っても次の日には同じようにその『女狐』とやらの話をして来る。無意味だと諦めた九喇嘛はそんな喧しい小僧の話をBGMに眠る事にしたがどうしても頭の中に『女狐』が残ってしまう。

 

そこで九喇嘛は誰がこの忌々しい小僧をこんなクソ面倒臭くしてくれたのか、と一目でも見てみようと久しぶりにナルト越しに外を覗いて見た。

 

するとまず飛び込んで来たのは里の者に冷えた視線を向けられるナルト。しかし、特に害される事は無くただ見られてるだけ。

 

ちょっと物足りない気がしたが、それでもこの小僧が酷い扱いを受けている事に変わりはなく、ザマァ見ろという気分だった。

 

しかし、当のナルトはそんな事は知らぬとばかりに上機嫌で里の中を移動している。本人が意に介していなければ何の意味も無いので面白く無さそうに唸る九喇嘛。

 

恐らく、ナルトが今向かっているのがこんなつまらない事態にしてくれた張本人の所だろうとチャクラが外に溢れ出そうになる程に怒りが湧いて来る。

 

 

そうして今か今かと待っていると目的地に到着したらしく、その家のインターホンをナルトが押し、中から女の返事が聞こえて来た。するとナルトは開いていた扉を開き、中に入って行く。

 

この小僧から出られたら真っ先に殺すのはお前にしてやる、とその姿を脳に刻み込もうと眼球に血管が浮き出る程に睨み付けているとリビングに繋がる扉をナルトがゆっくりと開いた。

 

 

そして、文字通り血眼になった九喇嘛の目に飛び込んで来たのは、尾獣の中でも人間に対して最も怒りを抱いているであろう九喇嘛ですら我を忘れてしまう程に美しい、自身と同じ耳と一本の尻尾を持った美女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでそれで!今日はな━━━━━━」

 

 

次に九喇嘛が我に返った時には目の前でいつものように忌々しい小僧が女狐談義をしていた。下手に脳裏に焼き付けようとしただけに、あの時の光景が頭から離れない。

 

不思議といつものような負の感情は湧かないし、俄然ナルトの話に興味が湧いて来た。九喇嘛自身が言った通り、尾獣であろうとカレも男だったと言う訳だ。

 

 

「しかもな!」

 

「おい、小僧」

 

「ッ!?な、なんだってばよ・・・?」

 

 

初めて真面な反応を返して来た九喇嘛に警戒するナルト。しかし、次の九喇嘛の言葉に彼は途端に嬉しそうにし出した。

 

 

「その話、もっと聞かせろ」

 

「ッ〜〜!勿論だってばよ!!」

 

 

楽しそうにあれやこれやと話し始めるナルトに今までの態度は何だったのかと言いたくなる程に真剣にその話を聞く九喇嘛。

 

それが嬉しくてナルトは更にヒートアップし、九喇嘛も女狐の事がよく知れて上機嫌。正に負の連鎖ならぬ正の連鎖だった。性の連鎖()ってね。

 

時々、九喇嘛も質問したり自分の見解を述べたりとこの日以来、二人(一人と一体)の仲はそれなりに近くなっていく事になる。

 

 

「ねーちゃん、本当に凄くてな!」

 

「それはよく知っておる。なんせ、九尾のワシが十尾になっちまったくらいだからな」

 

「・・・?どう言う事だってばよ?」

 

「ふっ、お前にはまだ早い」

 

 

しかし、九喇嘛の話をナルトが理解出来るかは別の話である。

 

 

 

 

「━━━━━━で━━━━━となり」

 

 

ナルトと出会い、彼を度々家に招き、何処からか獣のような視線を向けられているような気がしつつ、それなりの月日が経ったある日の事。

 

女狐は任務完了の知らせを火影様に報告している訳だが彼にはどうしても気になった事がある。

 

 

(なんか、毛量増えてるような・・・)

 

 

そう、室内な為に火影の嵩を脱いでいるヒルゼンだが、どうにもその生え際が壁に掘られている顔岩と同じくらい迄に復活しているように見えるのだ。

 

女狐自身、最初は見間違いかと思ったが何度思い返して本人にバレないように見ても毛量が増えている。

 

気付いたのがそこだけなら良かったのだが、人間の細部に至る迄に研究し尽くした女狐はアッサリとそれを見抜いてしまった。

 

増えた部分が()()()である、と。

 

 

「以上が今回の任務の報告です」

 

「うむ、ご苦労じゃった」

 

(ツッコムべき・・・では無いのだろうなぁ)

 

 

そのカツラは女狐がそういった部分に詳しくなければ見抜けなかった程に精巧に出来ている。火影様であろうとも、そういった事は気にしているのだろう。火影もまた、同じ人間という訳だ。

 

まぁ、それはそれとして。気付いてしまったが故に物凄く気まずい女狐はサッサとここから離れる為に少し報告を短縮して火影様に退出の許可を貰おうとした。

 

 

「それでは自分はこれで」

 

「あぁ、ちょっと待て」

 

「はい?」

 

 

そしたらまさかの火影本人から呼び止められ、どうしたのだろうか、と思っていると不意に火影室のドアがノックされた。

 

ヒルゼンが入室を促すと入って来たのは白髪で左目を額当てで隠した女狐の直接では無いにしろ、階級的に上司に当たる上忍の『はたけカカシ』だった。

 

突如として登場とした、いつの日かの秘密の集会のトラウマの中心に居た二人に挟まれて冷や汗が止まらない女狐。そんな彼の心情を知ってか知らずか、カカシはヒルゼンの前に立ち、ヒルゼンに背を向けるようにして女狐の方を向いた。

 

 

「さて、お主を呼び止めたのは他でも無い。そこのはたけカカシから少し興味深い事を聞いての」

 

 

何やらいつもの里に慕われる優しそうな三代目とは違った威圧を放つヒルゼンにカツラの件は頭から吹っ飛び、尋問を掛けられているような気分に陥る女狐。正直な所、心当たりが多過ぎて検討が付かなかった。

 

 

「実は最近、お主の所に出入りしている少年についてカカシから報告があった」

 

 

少年とは十中八九、ナルトの事だろう。それを見ていたと言う事は中は見られないように心掛けていたが、狐っ娘モードを見られていても可笑しくはない。

 

下手に嘘を言うのは度胸的な意味で無理だし、何かを言えば墓穴を掘り兼ねない。ここは黙って死刑宣告を受ける罪人のように諦めの境地へと至り、事の成り行きを見守った。

 

 

「ナルトにお主が害を成そうという気持ちが無いのはここ最近のあの子を見ていれば分かる。出来る事ならこれからもあの子をよろしく頼む」

 

「・・・はい・・・・・・はい?」

 

「そうか、それはよかった。本当にありがとう」

 

「え、ちょ・・・え?」

 

 

思った内容と違って勢いで返事をしてしまった女狐。訂正しようと声を掛ける前にパサり、と執務机に落ちる謎の毛の束。何処からどう見てもヒルゼンが先程までに付けていたカツラだった。

 

 

「俺からも礼を言おう。ありがとう」

 

「あ、いえ・・・」(・・・駄目だ・・・今笑ったら殺されるッ)

 

 

恐らくこちらを向いているので気付いていないであろうカカシが感謝の籠った真剣なお礼を言ってくる。しかし、だからこそ事態が悪化した。

 

 

唯でさえ勢いで返事をしてしまい、まさかの火影様がこんな忍びの下っ端に頭を下げるという事態に陥っているというのにその上、上司からも茶化す隙が無いくらいに真面目なお礼を言われている。

 

笑ったら、まず間違いなく身体的だろうと精神的だろうと多大なるダメージを受ける事になる。

 

故に電球の灯りをテカテカと照らすヒルゼンの広い額をマジマジと見詰めては、流石は忍の闇の代名詞を持つダンゾウと相反する存在。その闇が支える光は並のモノでは無いらしい、などと現実逃避を始めた。

 

 

「何かあれば何でも言ってくれ。出来る限り、力になろう」

 

「はぁ・・・ありがとうございます」

 

 

寧ろ、頭の事で相談に乗りますよ、という失礼極まりない言葉を飲み込んで何とか生返事を返す。ここで話は終わり、漸く女狐は退出する事が出来た。

 

疲れ切った頭が何故、ナルトと遊んだだけで火影様が礼を言うのだろうか?という疑問を抱いたが、バレていないという安心感と虚脱感、序にカツラの件でそれどころでは無くなり、その疑問は彼方へと飛ばされてしまった。

 

 

 

 

女狐が出て行った扉から目を離し、執務机の上に落ちたカツラをマジマジと見詰めるヒルゼン。そんな彼をカカシは冷え切った眼差しで見ている。

 

 

「・・・ふむ、まさかのスルーか」

 

「当然でしょ。貴方、自分の立場分かってます?しかも滅茶苦茶大事な話をしてたんですよ?」

 

「いや、場を和ませようと・・・」

 

「凍り付きましたけど?」

 

「おかしいのぉ。滑った時の為に『ズラが滑り落ちるギャグが滑った』という二段構えじゃったんだが、失敗か」

 

「分かるか、そんなもん」

 

 

笑顔ではあるがカカシがガチでキレていると察したヒルゼンは平静を保ちつつカツラを仕舞い、真面目な雰囲気を醸し出して先の話を持ち掛ける。

 

 

「・・・にしても本当に良かった。ナルトへの被害が少しでも抑えられて」

 

「まさか体裁の為にバラ撒いた噂話がこんな事になるなんて思いもしませんでしたよ。何はどうあれ、これでナルトも良い方向に向かってくればいいんですけどね・・・」

 

 

傍迷惑な火影とカカシによる手を出せない者同士によるこんな会話がされたが、女狐に届く事は無かった。




ナルトは自分のお色気の術に対する男性陣の反応の意味にすら気付かないので問題無いという設定に。大人になった時に初見であれば、無条件で身体が反応した。


今作の九喇嘛について

・女狐を見て、鼻血を大量に出しながら目を見開いたまま気絶(尾獣の空間の床の水が真っ赤になってたり)
・女狐関連に限り、ナルトとフレンドリー
・仮に封印が解かれてもあんまり暴れる気は無く、先に女狐を攫う(振られたら大暴れ)
・肌蹴てなければ、女狐を見ても鼻血は出さなくなった(肌蹴るとアウト)
・九喇嘛にアレが着いているどうこうに関しては完全に捏造(多分、原作は着いてない)

最後の三代目の話は女狐(ver.女)が全く関わってないので取って付けたような感じが凄くなってしまった気がする。なんか、すみませんでした。


予定では次回はイタチさん辺りをしようかな、と。


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全てを見破る眼と見通す眼・・・その先に見たモノは

九喇嘛の尾獣玉々が人気過ぎて笑った。

うちは一族と日向一族が好きな方は見ない事をおすすめします。


俺にとって、それは家族以外に対して初めて抱く感情だった。いや、家族にすら抱いた事は無いし、これからも決して抱かないような、そんな特別な感情。

 

その時の光景を思い出すだけで胸の奥が焼き尽くされる程に燃え上がり、一瞬だけだがそれ以外がどうでも良くなった。母なんて足元にも及ばない。この世のあらゆる存在を超越し、完成され尽した美がそこには有った。

 

目が離せなかった。未だ幼い身であったにも関わらず、心の中にはドス黒い感情が渦巻く程にソレに魅了された。

 

あれが欲しい。

俺だけのモノだ。

誰にも渡したくない。

 

 

その感情に従い、手に入れる為に無意識に手を伸ばし━━━━━気付けば、布団の中に居た。

 

傍らには目が腫れている弟が俺に身を預けて眠っている。何が起こったのかがよく思い出せない。

 

部屋に入って来た母さんが目を覚ました俺に気付いて、慌てて駆け寄って来た。その音を聞いてサスケも目を覚まし、泣きながら抱き着かれた。

 

 

未だに状況は分からないが取り敢えず、心配を掛けた事は分かったので大丈夫と二人を慰める。落ち着いてから何があったのかを聞けば、森の中で血塗(ちまみ)れになって倒れていたらしい。

 

それを聞いて俺は驚いた。恐らく、記憶にあるあの人を見ている時にヤラれたのだろうがまるでそんな気配はしなかったからだ。

 

 

他のモノが眼中に無い程に集中していた?

だが外傷は倒れた時に負ったと思われる痣しか見当たらない。

ならば、何らかの術か?

だが血塗れになる程の術を掛けられて、その時だけでなくこうして思い返してもまるで分からないのもおかしい。

 

 

そうして悩んでいると心配そうに覗き込むサスケと驚いたように口許に手を当てている母さんに気が付いた。どうしたのか、と聞けばサスケに目が変だと言われ、母さんから鏡を渡された。

 

 

そこには瞳孔の周りの輪に勾玉模様が3つ浮かんだ真紅の瞳、写輪眼が映っていた。

 

 

 

 

その日の夜に父さんに呼び出された。写輪眼の開眼による賛辞を受け、何があったのかを聞かれた。俺はそれに対し、本当の事を言わなかった。

 

覚えていない、心当たりが無いとそう嘘を吐いた。実際、あの後に何があって血塗れになったかなんて分からないし、どうして写輪眼が開眼したのかもよく分からない。

 

だけど、幾ら尊敬している実の父親でもこれだけは言えない。サスケにも心配させてしまうがアレの存在が他者に知られるよりはマシだ。例え弟だろうと、いや弟だからこそ教えてなるものか。

 

 

「イタチ」

 

「ん?母さん、どうかした?」

 

「何か、あったんでしょ?」

 

「ッ!?」

 

 

ただ数日後に何故か、母さんだけには隠しているとバレた。母さん曰く、女の勘だから父さんもサスケも気付いていないと言われ、ホッとしたのだが言わなければ、バラすと脅されてしまった。

 

でも、母さんにバレた事は別にショックでもなんでもなかった。寧ろ、ちょっと嬉しいような、よく分からないが負の感情では無かったと思う。

 

だが父さんにだけは知られたくない。それだけはどうしても嫌だったので嘘を吐くのではなく、観念して少し(ぼか)して本当の事を話した。

 

 

「ある人に・・・出会ったんだ」

 

「人?」

 

「今でも鮮明に思い出せる程に綺麗な人だった。思い出すだけで胸が締め付けられて、もう何度も夢に見ている。でも、すぐそこに居るのに幾ら手を伸ばしても届かない。無駄だと諦めようとしても時間が経つ程にその気持ちは強くなる。・・・母さん、俺は自分が分からないんだ。この気持ちがなんなのか。よくないモノだと分かっていても・・・抗う事が出来ない。抗いたくない」

 

 

そう言う俺に母さんは微笑ましそうな眼差しで「あらあら」と言うばかり。無性に腹が立って柄にも無くムッとしてしまうと、しゃがんだ母さんにソッと抱き締められ頭を撫でられる。

 

何をしているのかは分かるが、何の為にしているのか分からない。だが先程から嬉しそうに笑う母さんから、この気持ちの正体を明かされた。

 

 

「イタチ。それはね、恋っていうのよ。決して『よくないモノ』なんかじゃないわ。確かにソレは時に美しかったり、醜かったりするけどね、その気持ちだけは『悪いモノ』と決め付けて捨ててはいけないわ。必ず、大切にするのよ」

 

 

その言葉に全てを理解出来たとは言えない。だけど、この気持ちに名前を与えられ、雷に撃たれたような、そんな感覚がした。

 

家族を思うのも悪くないが、それ以上に向き合ってみればこの感情もそんなに悪くない。寧ろ、心地良いとすら感じる。写輪眼のお陰か、あの時の光景はいつまで経っても色褪せる事すら無い。

 

逢いたい、とそんな想いが日々強くなっていく。暗部に入り、部隊長となった頃に上層部が血眼になって探している『女狐』という存在を知った。

 

それが俺の探し求めている存在と同じだと気付いたのは、カカシさんに『女狐』の真実を教えて貰った時だ。そして、その日から俺も女狐捜索に関わるようになった。と言っても三代目率いる里の上層部ではなく、同じく探していたダンゾウ様の下でだがな。

 

情報提供が無ければ、あのエロジジイ共に月読で永遠に拷問を与えてやる所だった。

 

 

女狐捜索を始めても父さんに気付かれた様子は無い。約束を守ってくれた母さんに安堵するが、外から帰って来る度に「どうだった?」とニヤニヤしながら聞いて来るのは止めて欲しい。

 

サスケにも教えたくないから、せめてアイツの居ない所で聞いてくればいいのに・・・全く、嫉妬した弟も可愛いがなんとも複雑な気持ちだ。

 

任務と嘘を吐き、サスケと遊ぶ時間が殆ど無くなったのは少し反省している。すまないな、サスケ。お前にも教える訳にはいかないし、どうしても見付け出さないといけないんだ。将来はお前の義姉になる存在なのだから。

 

 

だが彼女とはそれっきり二度と会う事は無く、あの日を迎える事となった。

 

 

 

 

眼下に両親が背を向けて座っている。覚悟したその背にやはり、敵わないなと思ってしまう。刀を握り直し、俺も覚悟を決める。

 

 

「父さん・・・母さん・・・・・・俺はッ・・・」

 

「・・・分かってるわ、イタチ」

 

「・・・イタチ・・・最後に約束しろ」

 

「!」

 

 

後悔に耐え切れず、懺悔の言葉を口にしようとして、それを言わせないかのように言葉を被せられた。それどころか、こんな俺を理解してくれて約束する程に信頼までしてくれる。

 

 

「サスケの事は頼んだぞ」

 

「・・・・・・分かってる」

 

 

握り直した刀が震える。決めたつもりの覚悟が揺らぎそうになる。まだやり直せるのではないか?まだどうにかなるのではないか?と未練が頭を駆け巡る。

 

サスケを辛く苦しい道に歩ませてしまうのが・・・何よりも恐ろしい。

 

 

「恐れるな・・・それがお前の決めた道だろ。お前に比べれば、我らの痛みなど一瞬で終わる」

 

 

━━━━考え方は違ってもお前を誇りに思う

 

 

「・・・・・・ッ」

 

 

涙が溢れ出す。止めようとすればする程に流れ出てくる。こんな親不孝者を誇りに思うなんて。例え嘘だろうと救われた気がするから。

 

 

「あ、じゃあ折角だから私とも約束しなさい」

 

「え・・・あ、はい」

 

 

序のように最後の約束を取り付けてくる母さんに困惑するが、すぐ我に返る。あ、涙引っ込んだ。

 

 

「イタチ。あの日に言った事、覚えてる?」

 

「・・・はい」

 

「・・・?」(何の話だ?)

 

 

『あの日』、恐らく俺が自身の気持ちを母さんに打ち明けた日だろう。未だに理解出来たとは言えないが、よく覚えている。

 

 

「ならいいわ。イタチ、これは母さんの教訓よ。初恋は実らない、なんて言うけど、そんなのは負け犬の遠吠え。私の子なら、万華鏡写輪眼を使ってでも堕としなさい。恋は惚れたら負けなんて事は無い。惚れなかったら、そもそも恋なんて始まらないわ。惚れて負けなら、相手をもっと惚れさせればいい。貴方にはそれだけの魅力がある。・・・母さんとの約束よ。絶対に堕としなさい。出来なかったら、あの世で月詠説教するわよ」

 

「・・・・・・それは・・・嫌だな・・・」

 

 

諦めたつもりは無かった。だけど、未だに何一つとして近付けていない現状に焦り、何処か傍観していたのかもしれない。

 

力強い母さんの助言に、もうそんな生温い気持ちは無くなった。

 

 

「・・・さぁ、もう言い残す事は無いわ。一思いにやって頂戴」

 

「・・・はい」

 

「・・・・・・」

 

 

もう、手に震えは無い。一太刀で終わらす為に目を逸らさず、刀をその背に殺意を持って振り下ろ━━━━

 

 

「ちょっと待て」

 

「!・・・父さん?」

 

 

あと数cmの所で父さんから待ったの声が掛かった。ここまで来て何を言うのか想像が付かず、ジッと見詰めてしまう。横で母さんも怪訝そうに睨んでる。

 

二人の視線を受け、父さんは重々しく口を開いた。

 

 

「イタチ・・・お前、好きな子が出来たのか?」

 

「え・・・・・・え?・・・あ、はい」

 

 

え、今聞く?死に際にそれを聞くの?

 

 

「そうか・・・・・・いつからだ?」

 

「『いつ』って・・・」

 

「いつから、その子を好きなんだ?」

 

「・・・写輪眼を開眼した時です」

 

「え、そんな前から?」

 

「アナタ、素が出てるわよ」

 

 

・・・早く殺してもいいだろうか?

 

 

「どんな子だ?綺麗系か?可愛い系か?俺の子だから、やはり綺麗系な気がするな。・・・もしや、最近写輪眼を開眼したあの茶髪の子か?なぁ、どうなんだイタチ」

 

 

・・・シリアスな顔で言う事じゃないと思うのは俺だけか?今、息子に殺されようとしてるのに、なんでこの人はこんなにもウキウキしてるんだろうか?

 

 

「・・・・・・言いたくありません」

 

「む、何故だ?恥ずかしがる事は無いぞ。どんな子でも父さんは歓迎する。お前の選んだ子だ。きっと立派な人に違いない」

 

「・・・嫌です」

 

「アナタ、早く殺されないとサスケが戻って来るわよ」

 

「分かってはいるが、やはり父親として息子の恋路は気になるものだ。特にイタチは何かと成長が早かったし、そう言った類の話も聞いた事が無かったからな・・・で、そこの所はどうなんだ?」

 

「言いません」

 

「どうしてだ!?」

 

 

言わない。死に際の願いだろうと絶対に言わない。早く斬ってしまおう。それがいい、そうしよう。

 

 

「ふんッ!」

 

「甘い!」

 

 

いや、『甘い!』じゃねぇよ!なに土壇場で白刃取りしてくれてんだ!何気に万華鏡写輪眼になってるし・・・さっきの格好良かった父さんは何処に行った!?

 

 

「父として、息子の将来は不安なものだ。たとえ、お前であってもな。あと、『息子さんを私に下さい』というのも体験してみたいんだ」

 

「アナタ、私の眼を見て」

 

「ん?すまないが、今は大事な男の話をしているんだ。幾らお前とて邪魔は━━━━━━」

 

 

『万華鏡写輪眼 幻術 "月読"』

 

 

バタリとその場に倒れる父さん。

ふぅ、と息を吐く母さんの右眼には勾玉模様が3つ浮かんだ写輪眼、左眼には中心に穴が空いた十字の手裏剣を軸に四方向に黒い丸が一つずつ浮かんだ万華鏡写輪眼と思われる眼が現れていた。

 

 

「本当に世話の焼ける人。助言はしても親が割って入ったらダメでしょうに。・・・イタチ、この人は私が抑えたわ。サスケももう戻って来るだろうから、早くしなさい」

 

「はい」

 

 

ザクッと倒れている父さんの急所に突き刺す。一瞬、痙攣した後に完全に力が抜けて動かなくなった。そして、父さんの傍で座った母さんも斬り殺す。

 

 

「ふふっ・・・これで・・・ずっと一緒よ・・・・・・アナタ・・・」

 

 

父さんに寄り添うように倒れた母さんが最後に万華鏡写輪眼で何かをして事切れた。母さんの瞳にはもう光すらも映っていなかったが、その顔は何処までも幸せそうだった。

 

・・・・・・父さんの顔は何故か俺が刺した時よりも酷く苦しそうで、まるで腹を包丁で何度も突き刺されたような顔をしていたが・・・・・・おかしいな。一発で決めた筈なのに。

 

 

◇◇◇

 

 

それはまだ二歳の誕生日を迎えて間も無い日の事だった。

 

父上が倒れた。

 

発見された時、血の海に沈んでいたらしい。外傷は無く、何者かに襲われた形跡も術の影響を受けた痕跡も無い。

 

原因は何一つとして分からないがその後も床に伏せる父上は度々、血の海に沈んだ。

 

消去法から原因不明の病であると判断された。俺も納得はいかなかったが白眼を持っている我ら一族ですら、何の証拠も手掛かりすらも得られない現状ではその判断に従うしか無かった。

 

原因不明の不治の病に父上は日々窶やつれていき、日向の天才と言われていた自分が何一つとして力になれない無力さが歯痒かった。

 

しかし、毎日血の海に沈む訳ではなく、調子がいい日に日向宗家である父上の兄上とそのご息女との面会を行った。

 

それは俺に呪印を刻む日でもあった。

 

最初はこの呪印が何なのか分からなかった。だが、あの日。ヒナタ様の修行を父上と共に見守っていたあの日に俺は悟った。この呪印の意味と父上の身に本当は何が起こったのかを。

 

父上の不知の病は病などではなく、この呪印の所為だった。確かに何かをされた形跡は無かった。しかし、同時に病に侵されている形跡も一つとして無かったのだ。

 

脳をかち割り、実際に殺す事すら出来る日向の呪印。その影響で一時的に何らかの損傷をし、あれだけの血を吐き出したのであれば、『原因不明の病』と宗家が決断を下した理由も誤魔化す為だと納得がいく。

 

それでも父上本人は飽く迄も自分は病なのだと言い張るから。きっと、それは俺に日向家への憎しみを抱かせない為なのだろう。だから、俺は父上の顔に泥を塗らないよう表向きは知らないフリをした。

 

しかし、雷の国の忍頭がヒナタ様を拐う事件が起こった事により、そんな父上の気持ちを踏み躙るかのように宗家はある決断を下した。

 

雷の国が突き付けて来た条件、日向ヒアシの死体を寄越せ、という理不尽な要求に対して、木の葉はそれを承諾し、父上をヒアシ様の影武者として差し出した。

 

腸が煮えくり返る思いだった。呪印により人生を縛られ、その身を文字通り削りながらも宗家の為に尽くしたにも関わらず、己の死に方すら決めさせてはくれないのか。

 

ほんの少し産まれるのが遅かったというだけで、こうまで差が出るものなのか。

 

 

己の宿命に絶望し諦めながらも、それでも強い怒りが、復讐心が自身を突き動かした。歴代でも最高峰の才能を持つと言われる自分の能力と宗家への怒りを原動力に俺は強くなった。

 

強くなって強くなって・・・・・・そうして負けた。(みな)が嘲笑い、実力の無かった落ち零れに俺は負けた。

 

もう何の為に生きていけばいいのか、分からなかった。実現出来ると微塵も思っていない日向宗家へのハリボテの復讐心で鍛え上げた己の力も所詮は落ち零れにすら劣る程度の物。

 

もういっそ、死んでしまった方が楽なのでは無いか。このまま日向の為に尽くす人生を歩んだとしてもその先に待っているのは脳裏に焼き付いた父上のような末路。

 

せめて、自身の死ぐらい自分で決めたい。

 

 

そう思った時、日向の現当主であり、父上をあのような末路へと導いた元凶であるヒアシ様が訪ねて来た。もしや、俺が死のうとしたのを勘付いて、都合が悪いから止めにでも来たのだろうか。

 

そんな何の根拠も無い邪推が頭を過ぎるがヒアシ様の用件は全く違った。

 

あの日、父上が死んだ前の日に何があったのか。その真実を知らされたのだ。何を今更、と思ったが渡された巻物に書かれた字は懐かしき父上の物だった。

 

少し疑念が残りつつも巻物を開いて読み解いていく。

 

 

『ネジよ。私に残された時間はもう僅かしか無い。その限られた時間を使い、伝えておきたいことがある』

 

(伝えておきたいこと?)

 

 

心当たりが無い。生前、父上からはそういった旨の話は全く聞かされていなかったから。何なのか、好奇心に従って続きを読み進める。

 

 

『ヒナタ様を拐おうとした雷の国の忍頭は逆にヒアシ様に殺された。だが、雷の国はヒナタ様誘拐を認めようとはせず、ヒアシ様が忍頭を殺した事のみを問題とし、木の葉にヒアシ様の死体を寄越せと理不尽な要求を突き付けて来たのだ』

 

 

それはあの日に起きた出来事であり、それからの顛末も俺が知っている物と相違無かった。だが、結果が同じなだけでそれまでの過程は真逆の物だった。

 

父上は己の意思で死んだ。最後の最後で自らの死に場所を見付ける事が出来たのだ。分家として怨んでも、兄弟として愛した兄の為に。そして、木ノ葉の里の為に自身の人生に終止符を打ったのだ。

 

 

「・・・父上」

 

 

土下座をするヒアシ様を見て和解したのだが、少し疑問が残る。父上の病について、全く明かされていなかったのだ。いや、恐らく呪印なのだろうが・・・病についても呪印についても一切の説明が無いのはおかしい。

 

もう一度読み返し、何かしらのヒントになり得る物が無いかを確認した。確認して確認して・・・そうして、終わりかと思っていた巻物にまだ続きがある事に気が付いた。

 

それは締め括られたと思っていた最後の言葉から、巻物数回転分程の空白が続き、その一文が綴られていた。

 

 

『ここから先はお前が、もう大人だ、立派な男だと自分自身に胸を張って言えるようになってから読むんだ』

 

(・・・?)

 

 

言葉通りに受け取るなら、大人は成人してから・・・男とはどういう事だ?俺は立派かどうかは兎も角、正真正銘の男だ。髪を伸ばしているが実は女とか、そういった趣味がある訳でも無い。単純に父上の真似だ。

 

この先を見れば意味が分かると思い、紐解いていくがまたかなりの白紙を空けて一言。

 

 

『本当に大人になったか?』

 

 

無視して捲ると再び。

 

 

『本当に本当に男になったんだな?』

 

 

はよ話せや。

 

 

『そこまで知りたいなら仕方が無い。これから話すのは私とヒアシ様しか知らぬ、私の病の秘密だ』

 

 

 

 

私の身をヒアシ様の身代わりとして差し出す事が決定した日の夜。私はヒアシ様と二人きりで最後の会話を交えていた。

 

 

「・・・なんの用だ?」

 

「なに、未だに決心が付いていない駄目な兄に話をしに来ただけだ」

 

「・・・・・・下がれ」

 

「ですが・・・」

 

「構わん。下がれ」

 

「・・・はっ」

 

 

ヒアシ様がお付に退出を促し、私は白眼で誰も居ないかを見渡す。確認が取れてヒアシ様の前に座れば、何事かと眉をひそめていた。

 

 

「そこまで重要な話なのな?」

 

「それは貴方が決めればいい・・・私の病の話だ」

 

「!・・・何か知っていたのか?」

 

 

日向一族が総力を結集して調べたのに何一つとして分からなかった病。何れは日向一族全体がその危機に脅かされるのではと危惧していたヒアシ様は目の色を変えた。

 

その勘違いに思わず、フッと笑みが溢れてしまう。

 

 

「これは病などでは無い」

 

「・・・なんだと?」

 

 

私の一言に怪訝な顔をするヒアシ様に懐かしむ様に一つ一つ説明していく。

 

 

「私は日向一族が、そして貴方が憎かった。たった数秒産まれるのが遅かっただけで私は分家として、貴方は本家の日向一族当主として、決して縮まる事の無い差が開いた」

 

「・・・・・・」

 

「分家という理由だけでこの呪印を刻み込まれ、私は日向の傀儡と化した。自由など無い。まるで鳥籠の鳥のように餌を与えられ、縛られ続けて。飛び立てぬと分かり切った空を夢見て・・・そうして今まで生きて来た」

 

「・・・・・・すまぬ」

 

 

耐え切れなくなったのか、ヒアシ様は弱々しく謝罪を口にした。私の境遇に心を痛めていると知れて、今の私にはそれだけで嬉しく思う。

 

 

「せめて、少しでも誰かの役に立っているのだと、私という存在に何かしらの価値があったのだと思える様に自身の一族が守っている里を度々白眼で見渡していた。そんな時だ。ある人を見付けた」

 

「・・・人?」

 

 

虚空を見詰めて思わず、恍惚とした表情になってしまう。思い出しただけで胸が高鳴る。

 

 

「美しかった。誰もが寝静まった、月明かりが照らされる森の中でその方はただ静かに佇んでいた。たったそれだけで私は目が離せなくなった。気付いた時には朝になり、身体中が血だらけになっていた程に夢中になっていたのだ」

 

「・・・・・・その者が原因と言う事はなんとなく分かったが・・・一体、お前の病とどのように関係しているのだ?」

 

 

未だに要領を得ないヒアシ様に、目を瞑り瞼の裏に焼き付いたあの姿を鮮明に思い出してハッキリと告げる。

 

 

「エロかった」

 

「は?」

 

「エロかったのだ。まるでエロの権化の如く、エロエロだった。着物、恐るべし。着物を着ていたから完全に油断していた。肌蹴るとあそこまでのボインが出てくるなんて・・・この白眼を持ってしても見抜けなかった」

 

「は?」

 

「あちらからは見える筈が無いのに、その妖しく光る紅い瞳で流し目に見られた時は・・・・・・股間の点穴を突かれてしまい、もう色々とエラい事になってしまった。具体的には股間の柔拳が剛拳になったりと・・・日向なのに」

 

「は?」

 

「そう言えば、木ノ葉の上忍であるマイト・ガイも相当な剛拳の使い手だとか。・・・いえ、別に変な事は考えてないですよ?」

 

「は?」

 

「話を戻しますが、私は彼女を見た時に悟ったのです。自身が産まれて来た本当の理由を。私は彼女の美しく、そしてエロい身体を覗きmゴホン・・・見守る為に産まれて来たのです」

 

「は?」

 

「彼女のお陰で日向に産まれて、そして当主よりは何かと融通の利く分家となってよかったと初めて思いました。日向という鳥籠に囚われていたと、わたしは思い込んでいただけ。本当の自由はすぐそこにあったのです。・・・だから兄上、私は分家の宿命として死ぬのではありません。彼女の素晴らしさを後世に残す為に己の意思で死ぬのです」

 

 

言いたい事も言い終えてスッキリしたので一礼をして退出する。これで少しは踏ん切りが付いてくれた事だろう。

 

私が退出し、一人残されたヒアシ様。

 

 

「・・・・・・・・・は?」

 

 

虚空に消える兄の声が私の耳に届く事は無かった。

 

 

 

 

「「は?」」

 

 

二人揃って意味不明とばかりに声を上げる。

 

ネジは何がなんなのか理解出来ず、ヒアシはなんでこんなの書いてんだアイツ、と神経を疑ったが故に。だが、何度読み返してもあの時の事が割と鮮明に書かれている。

 

揃って白眼を使用しても結果は同じ。何を言うでもなく、ネジから距離を取るヒアシ。それを見越して二人の間に巻き物を中に投げるネジ。

 

 

「「『八卦掌・回天』!!」」

 

 

なんとなーく、これは残したらマズイ物だと察した二人は見事に日向の秘術により、巻き物は粉々に擦り切れて隠蔽工作が完了した。

 

回転を終えた二人は向き合う。和解したと言ってもネジの方はほんの数分前には殺意を抱いていたのだ。やはり、少し気マズい所もあるのだろう。

 

ヒラヒラと舞い落ちる紙屑を見詰め、重々しくネジは口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「所で股間の点k」

 

「知らん」




あれ?木ノ葉の二大瞳力のお兄さん達を書こうとしたのに、はっちゃけたお父さん達になってしまった気がする。

・・・ま、いいか。

副題、ちょっと誇張し過ぎとは思いますがあんまり気にせんといて下さい。


今作のキャラについて(捏造)

【うちは ミコト】(イタチとサスケの実母)
・うちはフガクを巡って、本人の預かり知らぬ所で起こった正妻戦争の勝者
・正妻戦争の最中に写輪眼の過程をすっ飛ばして万華鏡写輪眼を開眼
・開眼理由→(愛している人を力尽くで手に入れられない程に)弱い自分自身の失意にもがき苦しんだ結果、開眼した
・上記の理由や他の者の開眼理由を全く知らない事により、写輪眼または万華鏡写輪眼の開眼条件を『己の愛が成就しないと分かっても尚、望み、渇望すると開眼する』と考えている。イタチが写輪眼の開眼理由について隠し事をしていたと気付いたのは殆どこれが原因。イタチに対してのみ、割と当たっていたのでタチが悪い。
・左右の瞳力は以下の通り
右眼:別天神
→正妻戦争で死んだ者達を『任務などで死んだ』という幻術をうちは一族全体に掛けた。内容として、『一度は悲しんだが既にその悲しみは乗り越えた』というのも付け加えられており、更にその時のうちは一族は里内でも孤立気味だったので気付く者は誰一人として居なかった。因みに同じく別天神を使用する『うちはシスイ』にこの能力の事を教えたが、自身が使える事は黙っていたのでイタチしか母親の万華鏡写輪眼を知る者は居ない。(イタチはどんな能力かは知らないが、シスイから誰に教えられたのかを聞いたので大方の検討は着いている)
ミコトが万華鏡写輪眼の事を黙っていたのは別天神がバレる可能性を極力排除するため。写輪眼はついでに黙ってただけ。能力的にはシスイの万華鏡写輪眼と変わらないが、ミコト自身のチャクラがシスイよりも少なかったので再発動に二十年を要した(死ぬ間際には充電が間に合わなかったので普通の写輪眼となっている)
左眼:月読
→イタチと全く同じ。死に際に使用し、最愛の夫と『一瞬で永久の時』を過ごす為に使用した。・・・・・・でも多分、ミコトが死ぬと開放される・・・と思う、きっと。・・・・・・・・・フガクさん、強く生きて。あ、もう死んでたわ。
・死を選んだのはクーデターが成功しようが失敗しようがフガクと共に過ごせる時間が極端に減ると判断したから。それなら月読空間に閉じ込めた方がいいだろう、と結論を出した。
・(ノリと勢いで)須佐能乎(を考えてみた)
チャクラの色は橙で、第二形態はイタチと同じく女神像の姿。 武器はノコギリ一本であり、『あらゆるチャクラを切断出来る』能力を有している。チャクラの鎧である須佐能乎に対しては絶大な効力を発揮するがその反面、人体や木遁、土遁などのチャクラを有していようと実体を持ったモノは斬れない。しかし、切断能力が機能しないだけで刃が凹凸になっているので普通のノコギリや鈍器のように使用する事は可能。
実は正妻戦争中に戯言を吐いていた一人の腹を掻っ捌いていたりいなかったり・・・。

「ほぉら、やっぱり嘘だったんじゃないですか」


【うちは フガク】(イタチとサスケの実父)
・他キャラに巻き込まれただけで特に変更点は無し
・死ぬ間際なので開き直って親バカを発揮しまくった
・近しい年代の女性が何故かミコト以外に居なかった為に立場的に独身という訳にもいかず結婚した。
・不意打ちで月読空間に入れられ、脱出しようと試みたが妻からの狂気的な愛情を滝のように受け、精神的に折れて失敗。


【うちは イタチ】
・サスケへの愛情は原作通り。だけど、それ以上が現れてしまい、サスケとの交流が更に激減。サスケの病み度が原作よりも上がったり・・・。
・本来、イタチの最初の班のメンバーが殺されて完全に写輪眼が開眼するが今作ではその前に開眼したので・・・うん、(班の皆さん)ドンマイ。
・万華鏡写輪眼は原作通りにシスイの死によって開眼しました。シスイさん、流石です。
・実は母さんも開眼していて内心物凄く慌てそうになったが、「まぁ、母さんだし・・・」という謎理論で納得した。
・親子揃って病んでる気がするけど、この一族はこれがデフォルトだからへーきへーき。


【日向 ヒザシ】(ネジの実父)
・白眼といふは覗く事と見付けたり
・股間シリーズに味を占めた作者の被害者
・原作よりも早く救われて(?)、色々と吹っ切れた人
・診察として何度も白眼で己の身体を見られたので、いつ他の白眼に(警護などで)見られているのかが分かるようになった。結果、ヒザシが女狐を覗き見してる所を目撃した者は誰も居なかった。
・女狐の中身を見ない理由
→人の断面図を見て何が楽しい?
・女狐を割と高頻度で見付けられた理由
→白眼で見ている為に女狐に見られていると気が付かれていなかったから(見失うと次の場所を探し当てるまで見る事は出来ない)
・その美しさとエロさを後世に伝えようとしたが自身の語彙力では表現し切れなかったので、自分は救われたという結果だけを残す事で凄さを伝えようとした。尚、色々とガバガバな模様

【日向ヒアシ】(ヒナタとハナビの実父)
・フガクと同じく、特に変更点は無し
・回想では途中から完全に脳がショートした木ノ葉最強の日向家当主
・弟の遺言を最後まで見ておらず、真面目な部分しか見てなかったので凄いテンパってた
・度々、三代目様と秘密の会議をしているのだとか。内容はネジすらも知らされていない

【日向 ネジ】
・修行ばかりしてたから、割とピュア
・父親がああなったが、こっちも変更点は特に無し
・股間の点穴が気になり過ぎて、自分で突こうとしたらヒアシ様に全力で止められた。そういう意味じゃない


【女狐を写輪眼、白眼で見た場合】
〘写輪眼〙
チャクラを色で見分けているだけなので何かしらの術を発動している事は分かる。しかし、常に全身を静かにチャクラが覆っているので経験の浅い者であれば、気付かない場合もある。また、白眼のように見通せないので普通に女狐を視界に入れてしまう為、見分ける以前に鼻や意識が保つかが問題となる。

〘白眼〙
この世界では色も見える設定。普通に見通せるが女狐が妙な拘りを発揮し、中身や点穴に至るまで見掛け状は作り変えれるので初見だと殆ど見抜けない。日向の中でも良い眼を持ったネジなら、初見で違和感を感じれるかも。しかし、中身を見る前に必然的に外側・・・つまりは容姿を見てしまうので基本的に男は中身まで辿り着けず、鼻血を出してぶっ倒れる場合が多い。


因みにこの二つの能力を持つ一族の中で女狐を見たのはヒザシとイタチだけ。

ネジは見てはいないので女狐の凄さ(エロ)がよく分からず、強いて言えば父上を形はどうあれ救ってくれたから、会って感謝を述べたいと思っている程度。サスケはそもそもイタチと女狐が関係している事をまだ知らないし、女狐の存在も都市伝説程度にしか思っていない。


[ちょっとしたお巫山戯コーナー]
仮に万華鏡写輪眼の開眼時に抱いた思いで能力が決まるとしたら。(鬼滅の刃の血鬼術を見てて思い付いた)

【うちは ミコト】
別天神:全てが偽りでも貴方の隣に寄り添いたい
月読:貴方と私だけの世界でずっと一緒に・・・

【うちは イタチ】
天照:永遠に燃え尽きぬ恋心
月読:いつまでも貴女を閉じ込めていたい

こんな感じですかね。


流石にこれ以上、股間シリーズは無いと思います。と言うか、思い付かない。ナルトのお色気の術を見て股間が反応してしまい、邪魔だと感じたカブトが
「股間の経絡系を切った。これで僕の大蛇んぽ丸はもう勃たない」
とかそんな下らないのばっか考えてしまうので、もうキッパリとやめた方がいいと感じました。多方面から怒られそうな気がしてならない。


次回はちょっと迷ってます。大蛇ん・・・大蛇丸様の木ノ葉崩しの予定。ペイン辺りをちょっとやりたいけど、そうすると時系列がワケワカメに・・・。イタチをもう少し掘り下げたかったけど、ネタが思い付かなかったので急遽、ネジを投入しました。なのでもしかしたら、またイタチの話になるかも・・・。と言うか、暁の話の可能性もある。

ちょっと作者自身、自分で書いたのに情報量が多くて処理し切れていないです。なので書き直しが結構あったりしますがご了承下さい。


-追記-

多分、本編に関わらないくらい割とどうでもいい事なのですが、女狐はイルカと同期です。


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目覚め

今作初の女性キャラが一気に登場。


女狐は女じゃないのかって?

・・・・・・貴方はそれでいいのか?


テンテンは伝説の三忍の一人である綱手姫に憧れた木ノ葉の下忍だ。今は下っ端だが、いつの日か彼女のような素晴らしい忍びになりたいと、常日頃任務に励んでいる。

 

例え、濃ゆ過ぎる上司とそれに感化された濃い同僚、そして比較的常識人で優秀だが偶に天然を発揮するもう一人の同僚に囲まれていようともテンテンはめげずに頑張って来た。

 

最近、なんか自分がツッコミ役として定着しつつある現状に不安が過ぎるが、腐る事無く頑張って来たのだ。

 

あの惨劇を目の当たりにするまでは。

 

 

 

 

今日はチームとしての修行の為に修練場に集合だった。中忍試験が終わり、自分は中忍になれず、濃い方の同僚は再起不能の大怪我を負ってしまった。

 

悔しさから、結構早くに出たのだが修練場からは既に戦闘音が響き渡っていた。

 

とは言っても集合時間までまだかなりの余裕がある。やる気に満ちているのは自分だけではないと駆け足で近寄ると叫び声が聞こえて来た。

 

 

「ネジィィィィィ!!」

 

 

それは聞き覚えのある暑苦しい上司の声。

そしてもう一つは━━━━━━━

 

 

「ガイ先生ェェェェ!!」

 

 

まさか、と思って急いで向かう。濃い同僚の声では無い。そもそも彼は真面に動く事すら出来ないのだ。そうなれば、消去法から一人しかない

 

嘘であってくれ、と願いながらもテンテンは走る。未だに響く戦闘音のする方へ。

 

そして、そこで見た物は━━━━━

 

 

「ヌゥェズゥィィィィィィィ!!」

 

 

拳を振るう顔面が濃ゆ過ぎる全身タイツの変態こと、木ノ葉の気高き碧い猛獣と自称するガイ先生と━━━

 

 

「グゥアィスゥエンスェェェェェ!!」

 

 

同じく全身タイツで拳を振るう天才で常識人だった筈の同僚・・・木ノ葉の名門、日向家の天才と謳われた『日向ネジ』の変わり果てた姿だった。

 

 

「・・・は?・・・・・・は?」

 

 

ボケが強過ぎるこの班でツッコミ役として(不本意ながら)鍛えられたテンテンですらも何も言えなかった。理解すら出来なかった。

 

雄叫びを聞いた時点でなんとなく予想はしていた。

 

あぁ、きっと落ち零れのナルトに負けたショックであのネジがおかしくなってしまったのだ、と。冷静で貴重だったツッコミ役(偶にボケる)はもう居ないのだ、と。

 

熱血漢が増えて、更に暑苦しい班になると・・・そう思っていた。まさか、緑の変態がもう一人増えるなんて思いもしなかった。

 

やはり、天才か。

 

凡人の考えなど軽々と飛び越えて行った。回転のし過ぎでネジの頭の螺子(ねじ)が全て抜けてしまったのだろうか。なんか、髪も肩までバッサリと斬ってるし。

 

それでも似合ってるのが無性に腹立つ。

 

テンテンが我に返ったのは二人が一切防御も回避もせずの殴り合いが一段落ついてからだ。最後はネジが後方の木に吹き飛ばされる結果で終わった。

 

 

「ネジよ、悲しき男の(さが)を知らぬお前に・・・勝利は無いのだ」

 

「ガイ先生」

 

「ん?・・・おぉ!テンテンか!よく来たな!」

 

「そう言うのはいいんで説明してもらってもいいですか?」

 

「お、おう・・・分かった」

 

 

テンテンはキレていた。よくも貴重なツッコミ役をボケに染めてくれやがったなテメェ、と怒りの点はズレていたがキレていた。

 

そんなテンテンにビビりながらも何故ネジがああなったのかを説明してくれた。

 

なんでも中忍試験が終わり、大蛇丸の木ノ葉崩しの後始末が終わって落ち着いた頃にネジがガイ先生の所に訪ねて来たらしい。

 

 

『ガイ先生、俺を弟子にしてくれ』

 

 

開口一番にそう言われ、ガイは困惑したものの数秒後にはそのネジの白眼に宿る熱く燃える想いに感化されたのか、ガイの手にはいつの間にか緑のタイツが握られていた。

 

 

「それでネジはあんな風に・・・おーい!大丈夫ー?」

 

「・・・くっ・・・・・・殺せ・・・」

 

 

四つん這いで落ち込むネジにあれは暫く触れない方がいいと判断したテンテンは自身の修行内容を仰ぐ為にガイに向き直り、そして目にする。

 

キラリと白い歯を光らせ、緑タイツを差し出す猛獣の姿を。

 

 

「・・・・・・」

 

「ふっふっふっ」

 

「・・・今日ちょっと用事を思い出したので帰ります!!」

 

「テンテン、天才からは逃れられんぞ?」

 

「なっ!?ネジ!?」

 

 

しかし、回り込まれてしまった!

 

 

「ちょ!そこを退きなさいよ!」

 

「断る。お前もあれを着るんだ」

 

「さてはアンタ、道連れが欲しいだけでしょ!」

 

「ふっ、よく分かったな。・・・その通りだ!幾ら機能がいいからってなんで俺がこれを着ないといけないんだ!?弟子入りの為、父上が何を見たのか知る為に甘んじてこの仕打ちを受けているがッ・・・・・・限度があるだろ!?」

 

「知らないわよぉ!!アンタが勝手に始めた事でしょうが!!私関係無いわよぉ!!」

 

「・・・テンテン、俺は・・・俺達は同じ苦楽を共にした班の仲間だろ?」

 

「・・・そ、それがどうしたっていうのよ・・・」

 

「リーもガイ先生も・・・そして俺もこれを着ている・・・・・・後は・・・分かるな?」

 

「嫌よ!絶対に着ないから!何を言われようとも絶対に・・・・・・」

 

「着てくれたら新しい忍具を好きなだけ買うぞ。・・・ガイ先生が」

 

「ネジ貸しなさい。くノ一の真髄を見せてあげるわ」

 

 

ツッコミ役、堕ちる。

 

 

 

 

忍びという人生を送り、鍛えられた少女の美しき肉体。幼くも滲み出す色気を含んだ少女の扇情的なボディライン。それらを覆い隠すのは一枚の全身タイツ。

 

それが身体にピッタリと張り付き、余す事無く、いや寧ろ裸以上に魅力を際立たせる。露出は無いがそれがより想像を掻き立たせる。

 

恥ずかしいのか、顔を赤らめ、モジモジと内股を擦り合わせ、両手で抱えるように胸を抱き締めるテンテン。それを世紀末のような画風となったガイとネジがガン見する。

 

微動だにせず、腕を組む二人は唐突に向き合った。

 

 

「ガイ先生、今なら父上が言っていた事が分かった気がします。今一度、お手合せを」

 

「ネジよ、どこからでも掛かって来るがいい。気高き猛獣は退かぬ!媚びぬ!!省みぬ!!!」

 

「ぬおぉおおお!!」

 

 

ネジの全身から、チャクラがユラユラと立ち上って来る。本来、可視化出来ない筈のソレがそういう才能の無いテンテンやガイにも鮮明に目視出来る程に。

 

対してガイは先程とは別人のようになったネジを警戒し、八門遁甲を六門まで一気に開いた。

 

 

「行きます、ガイ先生!」

 

「来い、ネジ!!」

 

「『柔拳法 八卦百二十八掌』!」

 

「『朝孔雀』!」

 

 

互いの拳がぶつかり合う。真正面からの単純な衝突で柔拳が剛拳に勝つ事は出来ない。技術で劣っていれば尚のこと。

 

「二掌!四掌!八掌!十六掌!三十二掌!六十四掌!百二十八掌!!」

 

「あーちちちちちちちち!!」

 

 

しかし、空気の摩擦で発生したガイの飛び出す灼熱の剛拳はそのどれもがネジの拳の前に打ち破られる。

 

 

「何ィ!?」

 

 

これには流石のガイも驚いたがそこは上忍。だが即座に冷静に分析してその正体が分かったものの、より驚くだけだった。

 

よく見てみると濃密なチャクラを手に纏い、衝突のほんの一瞬だけ放出し、相殺していた。それも正面ではなく、脆い側面から。

 

量は少ないが密度が大きい分、面積が大きくただの熱であるガイの朝孔雀よりも強固だった。

 

ガイはこれ以上は無駄だと判断し、技を中断する。

 

 

「ふっ、流石だなネジ。一体、お前の心に何があったというのだ?」

 

「簡単な事です。俺には白眼がある。人よりも一度に多くの視点から見る事が出来るこの眼が。・・・テンテンのお陰で気付く事が出来ました」

 

 

そこで言葉を区切り、相変わらずの画風でテンテンの方を見るネジ。突然、そんな影が差した濃い顔で見られると勿論テンテンは驚く。

 

 

「ふぇ!?え、ちょ、な・・・なによ?」

 

「テンテンのあの溢れんばかりの素晴らしさ。それを一方向からしか見ないなんて勿体無い!」

 

「その通りだ、ネジ!女体とはどの角度から見ても素晴らしき物!熱き青春を送るに不可欠な存在なのだ!」

 

「そしてこれが、俺の導き出した答えです!テンテン!もっと滾るポーズを頼む!!

 

「はぁ!?滾る何がよ!」

 

「ナニがだ!」

 

「だからどういう事よ!!」

 

「いいから、兎に角くノ一らしいポーズをするんだ!!」

 

「え、えっと・・・」

 

 

ネジの気迫と元々混乱したのもあって、流される感じでポーズを取り始めるテンテン。前屈みになって襟を少し伸ばして、谷間が見えそうで見えないようにする辺り、なんやかんや言って彼女もノリノリである。

 

同時にガイの方に向き直るネジ。無論、テンテンの事はバッチリと見ている。白眼で。白眼に死角は無いのだ。

 

 

「ほぉあぁぁあ!」

 

「むっ!何だとぉ!?」

 

今一度、ネジのチャクラが膨れ上がり、かと思えば次の瞬間には消えていた。否、それは消えたのではない。更に高密度となって、ネジの両手の間に収束されたのだ。

 

 

「これが柔拳と剛拳を合わせた、新たなる力!喰らえ、『日向 剛掌波』!!」

 

「マズイ!?『八門遁甲 第七驚門 開』!!『昼虎』!!」

 

 

まるでビームの如く、突き出した手の平から放つチャクラの奔流を前にし、強烈な危機感を覚えたガイは七門まで躊躇無く解放した。すると己の青くなった汗が蒸気となって青いオーラを生み出し、ガイが更に構えを取るとそのオーラは白い虎へと姿を変えた。

 

 

「吠えろ、青春!!」

 

「無駄だ!この技は全てをすり抜ける!そう・・・服以外全てな!!」

 

「なっ、なにぃぃぃぃ!!?」

 

 

ガイが感じた危機感、それは身体的な恐怖ではなく・・・もっと別の・・・悍ましいナニか。その正体はすぐに分かる事だろう。

 

そう、何故か大事な部分だけ残して、宙を舞うガイを見れば。

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

自分で加勢し、自分でやっておきながら、見るに堪えないというような顔をする二人。色々なショックで心が耐え切れなかったのか、ピクピクと痙攣するガイ。

 

上と下は計三枚の葉っぱでなんとか隠されていた。

 

 

「・・・どうすんの、あれ」

 

「流石にあのままにしておく訳にもいくまい。最悪、二次被害が起きてしまう」

 

「凄いわねー。ガイ先生は遂に天災の域までいったのねー」

 

「努力って・・・凄いな」

 

「こんな事態にした張本人の貴方が言ってんじゃないわよ・・・って、ネジ。鼻から血が出てるわよ?」

 

「む・・・本当・・・・・・ブハァッ!!」

 

「ちょ、ネジ!?急にどうしたのよ!?」

 

 

突然、鼻から大量の血を吹き出して倒れたネジ。端的に言って、もう限界だった。ネジが得た力(?)は要は性欲が原動力なのだ。それも解放せずに貯め続けた性欲。

 

見えそうで見えない、その先を見てみたい、だけど見たくもない。そんな葛藤が産んだ貪欲な探究心の力。この渇きを癒す為の力。

 

代償として、元々そういう耐性が一切無かったので許容限界を迎えるとこうして倒れる。そうとは知らず、結構真面目に慌てたテンテンだが幸せそうなネジの顔を見て、一度シバいて冷静になる。

 

冷静になったからこそ、気が付く。

 

 

「・・・・・・え、どうすんのこれ」

 

 

因みに七門を発動した代償で服を着せる事も布を被せる事も出来なかったガイを止むを得なく、放置したテンテン。

 

木ノ葉の気高き蒼き猛獣、ここに散る。

 

・・・・・・実はテンテンがそっち方面(お色気の術)に目覚めたのはまた別のお話。彼女の明日はどっちだ!?

 

 

 

 

一方その頃、『砂漠の我愛羅』との対決で左腕と左脚を粉砕骨折という洒落にならない重症を負ったリーは憂鬱な入院生活を送っていた。

 

ただ骨折しただけなら、ここまで彼は落ち込まなかった。と言うのも骨折自体は修行中によくやっていたからだ。

 

ならば、何故こうもこけしみたいな顔で彼が虚空を眺めているのかと言うと最悪の場合、忍び人生が終わり兼ねないからだ。それも高確率で。

 

これまでは努力をし続ける事でなんとか乗り越えて来られた。だが今回のこれは・・・もうどうしようも無いと思わせる程に絶望的な状況だった。

 

多くの忍び、下忍にすらなっていない見習いにも笑われ続け、それでも己を曲げずに努力して来た。だがそのどれもが天才の前には塵芥のように破れ、今その努力すらも失おうとしていた。

 

半生を賭して己を鍛え続けた物が一瞬に消え去るというのは幾ら、根性を鍛え抜かれたリーでも耐え難い物だった。

 

そんなリーだったが視界の端に靡くカーテンに気が付いた。窓を開いた記憶が無く、なんと無く気になって窓の方を向くとそこには一冊の本が置いてあった。

 

手に取ると栞のように一枚の紙が挟まれていた。それは達筆と見せ掛けて普通に汚い文字が書かれた手紙だった。

 

 

『リーよ。何事もまずは気力、即ち元気である事だ。

 

病や怪我を治すのもまずは精神的に元気である事が復活への足掛けとなる。表面上、元気でいろと言う意味では無い。偽りの無く、心から元気にならねばならん。しかし、現状挫折したお前に元気で居ろ、なんて言うのは酷な話だ。

 

そこで!この俺からこんな物をお前にプレゼントしようと思う。俺達上忍やあの火影様も愛読している凄い本だ!これを見たら、お前もすぐに元気になる事だろう。寧ろ、元気になり過ぎて暴発してしまわないか心配なくらいだ。

 

この本を読むに当たって注意事項がある。いいか、リーよ。これは言わば、秘伝書のようなものだ。誰にも見られていない所でこっそりと読むんだ。そして誰にも内容を他言してはならん。以上の点を踏まえた上でじっくりと楽しむといいぞ。

 

マイト・ゲイより

 

P.S.

 

好きな子を妄想しながら見ると、より盛り上がるぞ』

 

 

「ひ、秘伝書・・・・・・!?」

 

 

リーは感激した。まさか、ガイ先生がこんな才能の欠片も、将来の希望すらも無くなった自分に未だ期待し、秘伝書までも授けてくれるなんて、と。

 

なんか題名が『イチャイチャパラダイス』とか言う、ちょっとやそっとレベルじゃ無いくらいに気になる物だが、恐らくそれはカモフラージュだろう。

 

キョロキョロと忙しなく周りを見渡し、誰も居ない事を確認してから震える手で本を開く。果たして、そこに書いてあったのは━━━━━━━

 

 

「ぬおっ!?こ、これはぁ!!?」

 

 

━━━━━━━普通に題名通りの内容だった。

 

 

「い、いけません!こんな!こんなハレンチな・・・・・・ふぉぉおおお!!!」

 

 

目を片手で覆い隠しつつもチラチラと隙間から見て、しっかりともう片方の手で捲るリー。確かにこれは誰にも見せられない。主に読み手の有り様を。

 

 

「しっ、しかし!これはガイ先生から態々頂いた物!実は背表紙の方に何が重要な情報が・・・・・・ぬっふぉおお!!」

 

 

ある意味重要な情報があり、更に赤面するリー。そこに数秒前のこけしはもう居なかった。秘伝書恐るべし。

 

 

「はっ!?そう言えば、ガイ先生は好きな人を想像した方がより、効果があると・・・いえいえ!それはいけません!サクラさんをこんな!こんな・・・淫らな・・・・・・・・・ブハッァ!!」

 

 

リー(むっつり)、ダウン。

 

病室を血塗れにし、より入院生活が長引いたがなんやかんやで彼は入院生活を満喫した。

 

因みに戻って来た綱手姫の治療ではなく、胸を一目見たお陰で完治し、盛大に感謝された綱手姫が困惑するのはまた別のお話。

 

存在するだけで周囲を癒す女神とか言われ出した姫は泣いていい。主に男性陣から。

 

 

 

 

日向ヒナタは疲れていた。

 

彼女は『日向家』の次期当主であり、幼い身でありながら毎日過酷な訓練に身を費やしている。しかし、幾ら血の才能があろうとも齢十にも満たない幼子には無理があった。性格が争い事に向いていないのであれば尚の事。

 

今日もボロボロになり、疲労困憊でその日の修行を終える。他の同年代の子達のようにあまり自由が利かず、かなり気が張られた生活を送っていた。

 

そんなヒナタの密かな楽しみ兼息抜きは想い人との逢引。

 

この日も連日の修行で疲れ切った身体と精神を癒す為に彼の元へと向かう。しかし、ヒナタには少し気掛かりな事があった。

 

ここ最近、想い人の様子が何やらおかしい。

 

修行の息抜きに想い人の後ろを隠れながら追い掛けるヒナタはそう感じた。いや、別にストーカーではない。日向家として、立派な忍になる為の訓練の一環として自主的に彼の後をバレないように追跡しているだけだ。

 

白眼を使わない理由?

 

どうせなら想い人を生で見たいからですが何か?

あわよくば自身の存在に気付いて欲しいからですが何か?

 

つまり、列記とした逢引である。

 

閑話休題

 

ここ最近の彼は何処か元気と言うか、活き活きしている。常日頃から彼を監s・・・見守っていたヒナタだからこそ、その変化は火を見るより明らかだった。 

 

これまでは暗く悲しそうだったから、この変化は本来はヒナタにとっては好ましい事だ。

 

しかし、ヒナタも年頃の女の子。想い人がいい方向に成長した事に自身が関わっていないのは、心にモワモワとした感情を湧き出させる。

 

日向ヒナタは・・・疲れていた。

 

 

 

 

女狐は疲れていた。 

 

その原因はナルトにある。味を占めたのか、彼がココ最近女狐の家で膝枕をして貰って睡眠を取っている。

 

最初の方は疲れ過ぎて深い眠りに就いていたからなのかまだ良かったが、数日後から驚く程に喧しい(いびき)を搔くようになった。おまけに何処からか感じる肉食動物のように獰猛な視線。

 

身体と精神のダブルパンチで全く寝れていなかった。 

 

そんなある日、珍しくナルトが静かに眠った。しかも、膝枕から抜け出しても起きる様子は無い。数日ぶりに訪れる穏やかな睡眠のチャンスだった。

 

この日を夢見て、ふかふかにお日様干ししていた布団に潜り込み、いざ寝ようとした時・・・インターフォンが鳴った。

 

出たくなかった。真冬の炬燵のように出たくなかった。だがインターフォンは怖いくらい正確に一定の感覚で鳴り続け、止む気配は無い。するとナルトが身動ぎし、今にも起き出しそうになった。

 

慌てた女狐は急いで布団から抜け出し、玄関に出る。こんな傍迷惑な事をしてくれたのは何処の誰だ、と確認する為に。

 

 

「・・・・・・」「・・・・・・」

 

 

そこに居たのは黒子のような衣装に身を包み、所々に治療の後があるナルトと同じくらいの大人しそうな少女。インターフォンに指を掛けて固まる少女とそれを見て「誰だこの子?」と全く心当たりが無く呆然とする女狐。 

 

静寂を破ったのは少女の方だった。

 

 

「あ、あの!・・・夜分遅くに・・・申し訳ありません」

 

 

正確にはまだそこまで遅くないが、今の女狐には最悪のタイミングである事に違いは無い。怒鳴りたいがオドオドしている少女を見るにそうすると怯えて長引く、と疲れ果てた頭で結論を出す。

 

早く済ませたい女狐は完璧な仮面を付けて、人の良さそうな笑みを浮かべて少女と視線を合わすべくしゃがみ込んだ。

 

 

「そんな事は無い。・・・所で(うち)に何か用かな?」

 

 

万人が見惚れる程の笑顔を目の前にしても少女が動揺する様子は無い。何やら恥ずかしそうにモジモジしているがどうやら別の案件みたいだ。

 

 

「え、えっと・・・お尋ねしたい・・・事がありまして・・・」

 

 

中々切り出さない少女に必死に己を抑える女狐。もう本当に早くして欲しかった。ニコニコと笑って目を細めているがその勢いで寝てしまいそうな程に眠いのだ。

 

そんな願いが叶ったのか、少女は決意を固めた表情で顔を上げる。心做しか、瞳に光が無い気がしたがそんな事を気にする余裕は今の女狐には無い。

 

 

「な、ナルト君のッ・・・お、お義母様ですよね?!」

 

「・・・・・・」

 

 

女狐の思考は停止した。

 

そもそもの大前提として女狐は男だ。まかり間違っても母にはならない。変化すれば・・・・・・と、そこまで考えて凄まじい悪寒がしたので女狐は思考を打ち切った。

 

因みに今の女狐には、変化していて他者からしたら何処からどう見ても女にしか見えないので父の方が有り得ない、という考えは抜け落ちている。

 

もう意味が分からなさ過ぎて理解が及ばない。疲れ果てた頭では処理し切れず、だからと言ってこのまま黙っておくと話が進まないので適当に肯定しておいた。馬鹿である。

 

 

「えぇ、そうですが・・・それが何か?」

 

「わ、私・・・ナルト君と将来を誓い合った仲でして・・・」

 

「と言うと・・・許嫁という奴かな?」

 

「許嫁・・・・・・はい!そうです!」

 

 

女狐は、少女(ヒナタ)は・・・・・・疲れていた。

 

例え、女狐が少女の事を見てボロボロであるものの『なんか良い所のお嬢様っぽいなぁ』などという浅はかな考えから出た言葉を少女が『許嫁・・・凄く良い響き!』という浅はかな感情からの肯定をしようとも、残念ながら訂正する者はこの場に一人として居ない。

 

先の会話に何一つとして真実が無かろうとも、互いが互いの言葉を本当だと信じてしまい、取り返しのつかない事態へと陥ってしまう。

 

何故なら、二人は・・・・・・疲れ果てているのだから。

 

 

「態々、訪ねてくれたのにすまない。今、ナルトが寝たばかりなんだ」

 

「はい、知ってます」

 

「?・・・それに私も少し疲れてて・・・悪いけど、また明日に出直してくれないかい?どうせなら、きちんとおもてなしがしたいんだ」

 

「あ、明日も!?き、来ても・・・いいんですか?」

 

「うん、ナルトが居るかは分からないけどね」

 

「いえ!大丈夫です!」

 

「そっか、それじゃあね。帰り道は気を付けるんだよ」

 

「はい!それでは失礼します、お義母様!」

 

 

満面の笑みで帰って行く少女にニコニコと手を振る女狐。見えなくなった瞬間、大きな溜め息を吐いて部屋の中に入り、布団に潜る。

 

ぐっすり眠れたものの、次の日に頭を抱えたのは言うまでも無い。




オリ技紹介

『変異』

使用者:女狐

流石に変化の凄い版とか言い続けるのは面倒だと感じたので適当に名前を付けました。何かいいのあったら普通に感想とかで書いて・・・・・・いいんでしたっけ?
能力は一話で大雑把に書きましたので少し詳しく書きます。
違いとして、原作に存在する術で比較すると普通の実体が無い分身と木遁・木分身くらいの差があります。常に一定のチャクラを全体に覆っているのでチャクラを使っていない状態を知らなければ、写輪眼でも見抜くのは難しい・・・と思う。普通の変化と違い、どれだけ攻撃を受けても、例え意識が無かろうともチャクラが切れないか、自分で解かない限りは変化が解ける事は無い。細胞を作り替えるとまではいかないが、その気になれば特定の姿で固定出来るがそれはまだしない。未だに最高の女体を探究中だから。
難点として、今回のヒナタのお義母様事件のように疲れている時はつい変異した状態で出てしまう事があるくらい。チャクラ消費量は慣れもあるが割と少ない方。習得難易度は兎も角、チャクラ量で言えばアカデミーの者でも半日は持続出来る。


『日向 剛掌波』

使用者:日向ネジ

後に日向家史上最低最悪最凶の禁術と言われる程の恐ろしい技。原理としては放出したチャクラを超極小の風の刃のような形にさせて回天の要領で手の平で回転させながら圧縮。解き放つ事でそちらの方向に爆発的な速度で飛び出す。細胞レベルの隙間を埋めなければ、必ず通ってしまう防御不可能な技。しかし、殺傷能力は無く、何故か服だけにしか効かない。まぁ、女体を更に美しく(ネジ視点)させる為の技だからねー。
初の使用相手がガイ先生ってお前・・・。
内容は巫山戯ているが何気に螺旋丸より上の難易度だったりする。


ほい、キャラ紹介


『女狐』

・今回、出番はあんまり無し
・なのにこの影響力・・・流石は都市伝説
・気付いたら、母親になってた狐
・九喇嘛の妄想が捗る
・実は狐と口寄せ契約を結んでいる
(出すタイミングが無かったのでここで少し紹介)


『マイト・ガイ』

・字が汚過ぎてリーにゲイと誤読された可哀想な眉毛
・昼虎を使った後、様子を見に来たカカシに雷を流されてまさかの放置。アイツ何しに来たんだ。
・朝孔雀百裂拳が真正面(細かく言うと側面)から突破されて、割とショック受けてた
・裸よりも恥ずかしい格好をされて許容限界を超えた
・いつものタイツは恥ずかしくないらしい

『ロック・リー』

・師匠により、あちら側に引きずり込まれた哀れな弟子
・またの名をムッツ・リー
・最近、想い人が綱手姫に変わりつつある
・助けられたからね、仕方無いね


『日向ネジ』

・まさかの二度目の出演
・この後、どっかのネジと似たような行動を取り始めるがこっちはバレないように出来る才能があるのでタチが悪い
・組手中になんか最近、色気が増して来たヒナタ様が目に入り、誤って組手相手のヒアシ様に剛掌波を打ち込んで技の存在が発覚
・幼くして白眼の本当の使い道(父上視点)を体得しつつある
・エロい女体を見ると戦闘力がアップするが直後に鼻血を出して倒れる諸刃の剣。リーの酔拳みたいな感じ


『日向ヒナタ』

・一途ないい子
・なんやかんやで女狐はナルトの実母でなく、養母という所まで落ち着かせる事は出来た。本人は近所の仲の良いお姉さんで通そうと思ったのにどうしてこうなった?・・・と首を傾げている
・ナルトを自分の虜にするべく、女狐に師事を受けているが、そもそも女狐を見慣れているナルトにお色気の術は・・・・・・
・好きなものはナルト、好きな人はナルト、好きな食べ物はナルト


『テンテン』

・くノ一の真髄、見付けたり
・下手すれば、二代目女狐になったりならなかったり
・今後、忍び服がズボン無しのチャイナドレスっぽくなる(fgoの楊貴妃みたいな感じ)
・ツッコミ役が悪堕ちしたので第三班が完全に魔境と化した
・一応、ツッコミはするがボケにも手を貸す(無自覚)


本編では書いてませんけど、ネジのガイ先生との修行は大体一週間弱くらい。剛拳に関してはサスケも体得出来たし、ネジも余裕でしょ、という事で許して。

本来は前回の次回予告通りにしようと思ってたんですけど・・・NARUTOを見直してたら、テンテンめっちゃ可愛くね?と思って、気が付いたらこんな事に。


『没ネタ』
ネジ「八門遁甲 第零肛門 開!!」
ブリリリリブリュブリュリッ!

『没理由』
これは汚い


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貧しくても豊かでも争いが起きるモノってなーんだ?

時間をすっ飛ばしてペイン戦最終局面。

弥彦vsヒナタの所からです。


木ノ葉の里を壊滅させたペイン六道。それもナルトの活躍により、今は残す所一人しか居ない。しかし、最後の一人の戦闘力は桁違いであり、ナルト自身も策が無くなってしまう。

 

そうして地面に磔にされてしまい、絶体絶命のナルトの前に一人の女神が舞い降りた。舞い降りた女神・・・ヒナタは戦った。

 

里を守る為に。

想い人を助ける為に。

 

 

「ナルト君にはもう手を出させない!」

 

「なんで出て来たんだってばよ!速く逃げろ!お前じゃソイツには・・・」

 

「うん・・・これは私の一人善がり」

 

「何言ってんだ!?そんなんで・・・こんな危ねぇ所に出て来るんじゃ無ぇ!」

 

「ここに立っているのは私の意思。今度は・・・私がナルト君を助けるの!」

 

「!?」

 

「泣いてばかりで最初から諦めて、何度も間違った所に行こうとして・・・そんな私をナルト君が正しい所に連れて来てくれた。いつもナルト君を追い掛けて、ナルト君に追い付きたくて・・・」

 

 

ヒナタには今、忘れられないナルトとの思い出の日々が過ぎっていた。『日向』から逃げ出し、道を踏み外そうとした自分を、何もかも投げ出そうとした自分を、いつもナルトが助けてくれて踏ん張れた。

 

 

「いつだって、ナルト君と一緒に歩きたくて、いつもナルト君の所へ・・・・・・」

 

 

ネジと戦う時、一人だけ味方をしてくれた。

一人だけ、信じてくれた。

 

 

「ナルト君が私を変えてくれた」

 

 

どんなに辛い事があっても、その輝く様な笑顔が元気をくれた。

 

 

「ナルト君の笑顔が私を救ってくれた」

 

「だから、ナルト君を守る為なら・・・死ぬ事だって怖くない!!」

 

 

そこには嘗ての弱くて泣き虫で殻に閉じ篭っていた護られるだけの少女はもう居ない。愛した人の為に戦う・・・一人の女だった。

 

 

「私は・・・ナルト君が・・・・・・大好きだから」

 

 

 

 

これまで培った日向の技術が何一つとして通用しない。まず体術との相性が最悪だった。ペインどころか、ナルトにすら近付けない。

 

 

(このまま終われない・・・ほんの少しでも可能性があるならッ!)

 

 

「な、ナルト君のお義母様直伝『お色気の術』!」

 

 

ヒナタをボフンッと煙が包み込む。今の内に攻撃をすればいいものの、術の名を聞いて動きを止めたペインと聞き覚えのある術に「ん?」と内心首を傾げるナルト。

 

次第に煙が晴れ、その姿が徐々に露わになって来た。別に何か姿が変わった訳ではなく、強いて言えば着ていたパーカーを肌蹴けさせ、ズボンを僅かに降ろしただけ。

 

しかし、下に着ていた網状のシャツに食い込むたわわに実った果実、はち切れんばかりのソレを恥ずかしそうに腕で抱き込み、ムギュウと押し潰される様はなんとも素晴らしいものだった。

 

女座りでやや突き出されたお尻も僅かにズボンを降ろす事で見えそうで見えない下着に無意識に目がいってしまいそうになる。

 

きっとここに天才の従兄が居れば、剛掌波待った無しの光景であろうその姿にナルトは目が点になり、ペインに至っては微動だにしない。

 

 

「ぇ・・・ぁ・・・・・・ぁぅ・・・」

 

 

唯でさえ恥ずかしいのにそれが滑ったとなれば、内気なヒナタには地獄そのものであった。しかも想い人の目の前で。

 

顔どころか全身に至るまで真っ赤にし、涙目で羞恥に耐えるヒナタを相も変わらずペインは無表情で見下ろす。

 

ナルトは磔にされて物理的に動けず、どういう訳かペインも動かない。誰かこの状況をなんとかして、と内心で懇願するヒナタであったが特に何も起こらず、時間だけが過ぎて行く。

 

 

一方その頃、ペインの本体である長門はと言うと。

 

 

「ぐっ!」

 

「な、長門!?鼻血が・・・それにどうして舌を」

 

「小南、大丈夫だ」

 

「で、でも・・・これ以上は」

 

「大丈夫だ。今いい所なんだ」

 

「え?」

 

 

気絶しないように舌を噛み切って色々と頑張っていた。

 

 

所変わって、任務から帰還中だったガイ班。嫌な予感がして大急ぎで帰っている途中、突然ネジが立ち止まった。どうしたのか、と他の者も足を止めてネジの方を振り返る。

 

因みに覗きに夢中だったリーはテンテンが足場にした木の枝にぶつかって落ちて行ったが誰も気にも止めなかった。

 

 

「ネジ、どうした?」

 

「・・・呼ばれた気がした」

 

「は?」

 

「『白眼』!」

 

 

ここから相当距離があるであろう木ノ葉の里まで見通すネジ。何を見ているのかと疑問を抱くガイ達を他所に唐突にネジは一人納得して構えた。

 

 

「!・・・そうか、そういう事か。分かりました、このネジも加勢致しましょう」

 

「ね、ネジ?急にどうしたのよ?」

 

「はぁぁぁ!!」

 

「そ、それは!?ネジ、お前には今何が見えているんだ!?」

 

 

何を見ているかは分からないがネジの取った構えがあの忌まわしくも羨ましい術だと分かり、どういう類のモノを見ているのかを理解したガイが物凄く羨ましそうに詰め寄るが、それを無視してネジは続ける。

 

目前に広がる桃源郷を完成させる為に。

 

 

「『日向 剛掌波』!!」

 

 

突き出した両手から、チャクラによる蒼い光線のような極太のビームが打ち出され、森の中を突っ切る。暫く、何も変化が起こらなかったので堪らずテンテンが問い掛けた。

 

 

「ネジ、結局なんだったのよ?」

 

「なに、木ノ葉の里で俺が必要だと感じたのでな」

 

「?・・・でも、里までまだまだ距離があるわよ?」

 

「ふっ、俺のエロビームの射程を知らんのか?」

 

「・・・そう言えば、あれどのくらい伸びるのよ」

 

 

 

 

 

 

「十三キロメートルだ」

 

 

瞬間、ネジの見詰める先で女神の服が弾け飛ぶ。

長門の意識も鼻血と共に弾け飛ぶ。

甘いな、と言いつつもチラチラ見ていた九喇嘛の理性も弾け飛ぶ。

ペインが手を差し出していたが故に、ペインにヒナタが辱められたと勘違いしたナルトが怒り狂う。

 

一人と一匹の感情が昂り、呼応して尾獣化したので里が大惨事。

 

 

「ふっ、いい仕事をした」

 

 

そして元凶は安全地帯でドヤ顔。

汚い、流石日向汚い。

 

 

 

 

更地となった木ノ葉の里で一人の男と一匹の化け物は向かい合う。周囲は戦闘の激しさを示すかのように多くのクレーターが出来上がっていた。

 

 

「俺が憎いか?・・・これでも人は本当の意味で理解し合えると言えるか?」

 

 

男・・・ペインの傀儡となった弥彦の死体は問い掛ける。それに対して、化け物・・・ナルトは答えを返さず、内に燃え盛る憎しみの炎をただただ表に圧倒的な力として放出した。

 

 

「それでいい。・・・・・・だがな」

 

 

これまで無表情を貫いていた筈の弥彦の死体が唐突に憤怒に染め上がる。そして、拳を振り上げ、雄叫びのように吼えた。

 

 

「俺の痛みは・・・・・・お前以上だぁぁあ!!!」

 

 

地面を砕き割り、そこから間欠泉のように水が湧き上がる。一瞬にして辺りを水が埋め尽くし、里の中心で一つの湖が出来上がった。ナルトもその濁流に巻き込まれ、静止する。

 

そんな中、水飛沫の上がる水上で弥彦はゆっくりと立ち上がった。

 

 

「巫山戯るな・・・・・・巫山戯るよぉ・・・!」

 

 

顔を俯かせ肩を震わせ、徐々に声音を上げる。そして、バッと顔を上げナルトにぶつけるかのように指を指し、溜まりに溜まった怒りが爆発した。

 

 

「巫山戯んじゃねぇぞテメェ!ちょっとくらい揉ませてくれたっていいだろぉ!?こちとらまだ一度足りとも経験したどころか、触った事すら無ぇんだぞ!?それなのにお前はどうだ?なんッッだよ!あのバインバインの美少女は!?それも話を聞く限り、昔馴染みらしいじゃねぇか!?それにぃ?あの子はぁ?お前にデレデレェ?・・・ッッ〜〜〜!!馬鹿にすんのも大概にしろよぉ!!?」

 

 

 

爆発した。もう色々と爆発した。

 

弥彦は男だった。いや・・・弥彦も男だった。

 

生前、彼は大望を抱いた。男なら誰しも一度は抱くであろうソレを彼は抱き続けた。しかし、ソレは果たされる事無く、弥彦はこの世を去った。

 

死後、彼は長門の傀儡として忍びの世を渡り歩いた。だがこの時、長門自身も気付かない誤算があった。

 

それは弥彦の強過ぎる想い。ソレが死後も思念として身体に残留し続け、今こうして想いが増大して表に現れた。これには離れた地で弥彦を操っていた長門も目が点になった。

 

何が驚いたって・・・それは全く操っていないのに弥彦がキレ散らかしながら暴れ回る意味不明な現実にだ。

 

 

「こちとら確かに美人な幼馴染みが居るがよォ!残念過ぎる程にぺったんこなんだよ!もう幼い頃からなんとなく察していたさ!!それが成長した今はどうだ!?案の定だよぉぉ!!全身紙にするのはいいけど、胸までペラッペラにしろなんて誰が言ったぁぁ!俺も小南も誰も幸せになんねぇよぉぉぉ!!!」

 

 

長門は思った。

 

あぁ、小南に聞かれなくて・・・本当に良かった。

 

弥彦の言葉にうんうん、と無意識に頷きながらも視界の端に写る、小首を傾げる小南を見ながら、切実にそう思った。

 

それから実は小南に隠れるようにして、弥彦の死体を操って神羅天征と万象天引を応用し、長門も触れた事の無いパフパフを再現しようとした事をひっそりと胸の奥で弥彦に謝罪した。

 

 

「あれ程までに虚しい技を身に付けさせられた俺の気持ちをッ・・・考えた事があるかぁぁぁ!!?」

 

 

(本当・・・・・・ごめん・・・)

 

 

深く深く・・・謝罪をした。

 

 

 

 

一方でそんな弥彦にブチ切れた者が居る。

 

 

『黙って聞いてりゃあ・・・好き勝手言ってくれるじゃねぇか・・・』

 

 

九喇嘛である。

 

暴走のような形で出て来たのでナルトに意識は無いが中の九喇嘛にはハッキリと意識があるし、会話(?)もしっかりと聞こえる。

 

結果、逆鱗に触れた。

 

 

『こちとら手が出したくても出せねぇんだぞ!?それを何年も何年もだ!!もう色々と我慢の限界だクソッタレが!!毎度毎度お預けされるこっちの気持ちをテメェに理解出来るか!?はっ!出来る訳無ぇよな!なんせ番に出会えなかったから、そんな滑稽な存在になっちまったんだ!哀れ極まりない望みを抱いて未だ叶えられねぇ!そんなピーチボーイに分かって堪るか!・・・お前に・・・お前なんかにッ・・・・・・このクソガキと生意気な小僧の熱烈な接吻をゼロ距離で見せ付けられた儂の気持ちなんぞ、理解されて堪るか!!』

 

 

九喇嘛、魂の叫びであった。

 

しかし、どれだけ叫んでも暴走状態なので言葉には成らず、咆哮として繰り出されるのみ。それでも弥彦は感じ取った。

 

あ、コイツとは絶対に相容れない、と。

 

 

「お前だけはぁ・・・!」

 

『テメェだけはぁ・・・!』

 

 

「『絶対にぶっ殺す!!!』」

 

 

ブチ切れた理由が互いに仕様も無い大喧嘩が始まった。

 

 

 

 

「え・・・何あれ・・・」

 

 

里の惨事など知らず、任務から帰還していた女狐。すると突然の爆発音や咆哮が聞こえ、只事では無いと察知し、こうして里が見渡せる且つ安全そうな高い所へとやって来た。

 

そこで見たモノはまるで月のような巨大な石の塊とそこから這い出るようにして暴れる巨大な狐のようなナニか。呆然としていると・・・ふと、荒れ狂っていた狐の動きが止まる。

 

距離もあり、割と楽観的だった女狐。しかし、それも次の瞬間には霧散した。

 

 

「ッ!?」

 

 

目が合った。確かにハッキリと目が合った。否定しようも無い。何故なら、今もこうして空からこちらを凝視しているのだから。

 

恐怖で身体が動かないどころでは無かった。理解したから。今まで女狐が感じていた視線の正体を。こんな・・・こんな理不尽の権化のような存在に日々、監視されていたのか、と。

 

想像しただけで身体が完全に恐怖に支配された。目を逸らす事も気絶する事も出来ない。ただ目を合わし、捕食されるのを待つ餌のように女狐はその場を動けない。

 

 

『あ、無理』

 

 

そんな声がした。誰の声か分からない、胸の奥に響く低く重圧な声。それが誰のモノか考える前に空に浮かぶ化け物は巨大な血の華を咲かせ、跡形も無く消え去った。

 

 

「・・・え?・・・・・・助・・・かっ・・・た?」

 

 

よく分からないがこうして生きているのだから、助かったのだろう。我に返った女狐は大量の汗で湿って下が透けて見える自身のあられもない格好に気が付き、何故か羞恥心が湧いた。

 

すぐ様、忍法でどうにかしたかったがソレを許さぬ者が居た。

 

 

「動くな」

 

「ひょお!?」

 

 

静かに首元に添えられたクナイに驚き、間抜けな声で驚く女狐。しかし、それでも構わず、クナイの持ち主は淡々と要件だけを伝える。

 

 

「不穏な素振りをしたら殺す。術を使っても殺す。声を出しても殺す。・・・分かったなら、大人しく着いて来い。長門が呼んでいる」

 

 

クナイの持ち主・・・小南はしっかりと縄で女狐を拘束して潜伏地へと女狐を誘導した。何故か、女狐は顔を真っ赤にしていたが、小南に心当たりは無かったので不審に思うだけで特に気にはしなかった。

 

 

 

 

長門は確信にも近いモノを抱いていた。気配だけではあるが今、小南に捕らえてもらった者は女狐であると。

 

根拠は二つある。

 

まず一つ目は今は居ない『枇杷十蔵』による情報提供により、女狐は九尾を支配下に置いている、またはなんらかの方法で操る事が出来ると知っている。

 

最初は『マダラ』を名乗るあの男の様に写輪眼の持ち主かと思ったが、流石にそのレベルが未だ生き残っているとは考え難いし、これには『マダラ』を名乗る男も賛同を示した。

 

よって、暁のメンバー全員に保険として女狐を捕らえる任が与えられていた。(命令した時に何やら薄ら寒いモノを感じたが・・・あれはなんだったのだろうか・・・)

 

しかし、どういう訳か全く捕まらなかった。情報はすぐに得られたがメンバーを向かわせ、到着した頃には既に全く痕跡が無い。『イタチ』によると姿形を自在に変えられ、それは写輪眼でも見破るのは難しいとのこと。

 

チャクラを見破る事に長けた写輪眼、それを十全に扱い切れるイタチですら困難など、そんな出鱈目な『変化の術』があって堪るか、と思ったがこうした結果が出たからには認めざるを得なかった。

 

戦闘力はまだしも、忍びとしてはあちらの方が完全に格が上だ、と。

 

少し話が逸れてしまったが、一つ目を裏付ける証拠が今目の前で行われた。

 

捕らえ切れなかった九尾が暴れていると、ふとこちらを見て動きが止まった。この場所がバレたか、と思ったがいつの間に居たのか、そこに誰かの気配を感じた。

 

恐らく、その何者かと目を合わせていたのだろう。すると、数秒後に九尾は血を吹き出し、姿を消した。ここまでされて九尾とはなんの関係も無いと結論を出す方が馬鹿だ。

 

操れるかどうかは定かではないが何かしらの九尾に対抗する術を持っているのは確かだ。九尾はペインを六人で相手しても適いそうに無い相手だ。有効な手段なら幾らでも欲しい。

 

そして、二つ目は・・・・・・男の(股)()だ。

 

見なくとも分かる程に凄まじいまでの破壊力。小南の紙を隔てた向こうに感じる、湯水の如く溢れ出すエロス。期待と緊張で心臓の鼓動がおかしくなりそうだ。

 

九尾の事など忘れ、小南の手で掻き分けられ光が差す隙間を凝視する。今か今かと待ち望み、小南の姿が見えた。

 

 

(遂にこの時がッ・・・!)

 

 

そして現れる。小南が持つ縄の先に・・・・・・何故か、上半身を亀甲縛りにされた汗だくの美女が居た。

 

 

「グゥゥブオォォファッッ!!!?!!?」

 

 

長門、ここに散る。

 

 

 

 

夢を見た。今はもう・・・二度と見る事の無いあの日の夜を。

 

 

「長門・・・お前、夢はあるか?」

 

「・・・夢?」

 

「僕はこんな所で終わるつもりは無ぇんだ。・・・世界征服だ!」

 

「・・・世界・・・征服?」

 

 

古き友が語る夢。果たしてそれは何だったろうか。別に忘れた訳では無い。ただ・・・この時は只管に眠くて寝落ちして聞いてなかっただけで。

 

 

「そうだ!世界のテッペンを取ったら、もうこんな思いをしなくて済むんだろ?酒池肉林っていう言葉もあるくらい、なんだって手に入る」

 

「・・・そう・・・・・・かなぁ・・・?」

 

「・・・ってのは・・・うん。建前でな」

 

「ぅん・・・」

 

「そ、その・・・小南には内緒だぞ?絶対だぞ?」

 

「うん・・・」

 

「あ、あれだ・・・僕もお、男だ!だから・・・だな。・・・いつか、ボインでナイスバディなレディとうはうはな日々を過ごしたいんだ。・・・な、長門も男なら、分かってくれるよな?な?」

 

「んー・・・」

 

「そうか!そうだよな!うんうん!流石は長門だ!あ、でも小南は駄目だな。なんかアイツは駄目な気がする。まだ成長過程だけど、なんとなく分かる。あれは駄目だ。もういっそ同情したくなるくらいに駄目だ」

 

「・・・・・・・・・すぅ・・・」

 

「ーー!〜〜!」

 

 

古き友が語った叶えたい夢。爆睡して全く聞いていなかったが今なら、なんとなく分かる。

 

俺も紛れも無く、一人の・・・・・・雄だから。

 

 

 

 

「長門!?・・・おのれ貴様!何をした!」

 

「へ?いや、何も・・・ンヒィィ♡」

 

 

信じられない程の血を吐き出した長門を心配するも先に元凶をどうにかしようと小南は動く。脅し文句で色々と言ったが女狐を殺す訳にはいかない。それくらいの冷静さはあった。

 

そこで小南が取った行動は足も縛り、素早く天井に引っ掛け、宙吊りにする事だった。お手本の様な亀甲縛りの出来上がりである。

 

 

「小南・・・もういい」

 

「長門!?大丈夫なの!?」

 

「あぁ・・・いや、色々と大変な事になってはいるが・・・・・・問題無い。具体的には俺の輪廻眼(タマタマ)が神羅天征したくらいだ。問題無い」

 

「そ、そう・・・?良かった・・・」

 

 

言っている事は理解出来なかったが無事であると知り、小南はホッとしたかのように息を吐く。因みにその横で女狐が相変わらずの亀甲縛り状態で悶えている。

 

 

「少し・・・その女と二人っきりで話がしたい。外してくれ」

 

「え、でも・・・」

 

「大丈夫だ。問題無い」

 

 

血を大量に放出したが何処か生き生きとしている長門を見て、小南は渋々部屋を出て行った。一応、念の為に女狐の背中に起爆札を貼って。

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

沈黙が流れる。少なくとも女狐からは何かを話すつもりは無い。何故なら、未だに状況を何一つとして理解出来ていないのだから。だから、待つしか無い。

 

長門が口を開く、その時を。

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

え、いつまで続くの?と不安を抱き始めた頃、漸く長門が口を開いた。

 

 

「お、お茶でも・・・どうだ?」

 

「・・・・・・は?」

 

「あ、いや・・・うん。今のは忘れてくれ・・・うん」

 

「はぁ・・・そうですか・・・」

 

 

よく分からない事を言われ、女狐は気の抜けた返事をしてしまう。今度は「あー・・・うー・・・」と唸り出した長門であるが、女狐は何故かナルトと接する時のヒナタを連想させ、生暖かい眼差しを送ってしまう。

 

 

「そ、その・・・だな・・・・・・単刀直入に言う!」

 

「は、はい・・・・・・なんでしょう?」

 

「おっぱいを揉ませてくれ!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

空気が・・・凍った。

 

 

「え?・・・え、は?・・・あの、今何と?」

 

「そ、その見事な程に・・・た、たゆんたゆんで張りのあるおっぱい!・・・を揉ませてくれ!!頼む!」

 

「あ、はい」

 

「ほ、ほほほ本当か!?」

 

「え・・・あ、いや・・・・・・えっと・・・」

 

 

勢いに押され、つい返事をしてしまった女狐だが別に嫌という訳では無い。そもそもこんな姿だが女狐は男なので胸を揉まれる程度で羞恥心も嫌悪も湧かないし、なんかこの姿を褒められてるみたいでちょっと嬉しい。

 

そして何よりもこの身体の凄さを知って欲しい。全身余す事無く、現状可能な最高傑作の女体。中でも長門が要求して来たおっぱいは一番力を注いだ所であり、自信作である。

 

寧ろ、揉んで貰ってどのような感じか感想を聞きたいまである。

 

 

「で、では・・・どうぞ・・・・・・ん♡」

 

 

そう言って、軽く胸を張る女狐。すると服が張り付いて殆ど透けて見えるおっぱいがゆさッと軽く揺れ、先端には僅かな突起物がある。

 

 

「あ・・・すまない。お、俺は足が・・・不自由でな。で、出来れば、こ、こここちらに・・・来て・・・欲しい」

 

「え?」

 

「あ、いや!ほんの少しの間だけでいいから!そんなずっと隣に居てとか言わない!ただ揉ませてくれる間だけ、こっちに来て欲しくて・・・そのぉ・・・」

 

「あの・・・・・・縛られて動けないんですけど」

 

「え・・・・・・あ、ブハッアァ!!」

 

「ひぇ!?」

 

 

突然、鼻血を吹き出す長門に女狐は怯える。

 

さて、ここで疑問に答えよう。何故、今の今まで長門は平静(?)を保っていられたのか。それは単純に見ていなかったからだ。

 

実は女狐と話す時、ずぅーーッと目を瞑っていた。ほんの少しでも見てしまったらヤバいと直感で分かったから。

 

そうして今まで耐えていたが、そんな極上の美女が縛られていると聞いて、欲に負けてしまったのだ。

 

 

「やはり何かしたな!二度目は無い!死ねぇ!!」

 

 

全く状況に付いて行けない女狐を他所に、ずっと聞き耳を立てていた小南がやって来て、即座に起爆札を起動させる。

 

勿論、それは女狐に直撃し、全身を包む程の爆発に巻き込まれた。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・・なっ!?居ない!?」

 

 

しかし、爆煙が晴れた頃には女狐の姿は跡形も無く消え去っていた。出て行った痕跡も無く、ただ爆風に巻き込まれてボロボロになった縄だけがそこにはあった。

 

 

「分身・・・では無かった。ならば幻術?しかし、一体いつから・・・・・・はっ!?長門!」

 

 

考察するよりも先にやる事がある、と思い出し、長門の方へと駆け寄る小南。

 

その後、長門はなんとか一命を取り留め、後にやって来たナルトを出迎えるが匂いで女狐に気付いた九喇嘛がまーたキレた。

 

しかし、今度はナルトの感情が昂らなかったので目に顕れる程度で済んだ。これが後の対十尾人柱力の仙人モードと九尾チャクラモードを合わせた切り札になる事をナルトはまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「所で小南・・・どうして、あんな縛り方を?」

 

「?・・・自来也様に教えて貰ったわ。何かおかしかったかしら?」

 

「いや、何もおかしな所は無い(建前)」

 

 

自来也先生、ナイッスゥー!(本音)




ほい、人物紹介


『女狐』
・今回、最初から最後まで登場したのは分身の方
・本体はどっかの木の根元の穴にひっそりと潜んでいる
・そしたら目の前の木に弥彦が来て超ビビッた(弥彦、痛恨のスルー)

『日向ヒナタ』
・シレッと女狐に弟子入りをしている
・実は本来は嫁入り修行の為に話し合い(眼力)をして日向家では学ばせてもらえない家事などを習っていたが魔が差した女狐に悪い事を教え込まれた
・ナルトをメロメロに出来る、と騙されていたのでお色気の術かと勘違いし、つまりは男であるペインの隙を作れるのではと考えて使用した。
・ナルトが暴走後、羞恥心で気絶した
・因みに覗き見してたサクラの隣に居たヒナタファンの日向家の者は流れ弾を食らって鼻血シャワー

『うずまきナルト』
・女狐の所で頻繁に寝泊まりしたのと従来の鈍感さが合わさった結果、ヒナタ程度のお色気の術は全く通用しなくなった
・最後は静かに怒っていたが、中の九喇嘛が五月蝿過ぎて大喧嘩しそうになった

『長門』
・陰キャ童貞感を丸出ししてしまった人
・超ムッツリスケベ
・六道に巨乳が居ないのは死体とは言え、緊張してしまうから
・死の間際で緊縛プレイに目覚めた

『弥彦』
・死後、性欲が大暴走しちゃった人
・目の前でイチャイチャされてブチ切れた
・女性の胸の将来が分かる能力を習得している
・因みに自来也の弟子になった時、綱手姫じゃないのかと落胆したがすぐに自来也と意気投合した
・実はヒナタに手を伸ばしたのは弥彦の意思

『湖南』
・ピュアッピュアな湖南ちゃん
・無自覚ドS
・意味も分からず、自来也に色んな事を仕込まれている(主にS寄り)
・因みに処女
・亀甲縛りについては忍びから情報を引き出す時に使用するとすぐに吐くので割と気に入っている(羞恥心に耐えられないだけ)
・原作は巨乳だけど、作者の都合で貧乳にされちゃった子(new)


『九喇嘛』
・獣耳尻尾独占依存排除型ヤンデレ系ワイルドイケメン
・ただし、エロに弱い


おまけ

『大急ぎで帰っていたヤマト隊長』

ヤマト「九!?そんな・・・どうしてこんな事に・・・・・・・・・ん?え、十?・・・・・・あ、封印された・・・・・・・・・・・・何があったんだ???」

『長門と女狐』

長門「(。>﹏<。)」

女狐(なんで目を瞑ってんだこの人)

『苦労するお父さん』

ミナト「一応言っておくと・・・いいかい、ナルト?僕は浮気なんてしてないよ。君のお母さんは髪が紅くて凶暴でおっかないクシナだ。確かに髪の色は似ているけど決して、あんなお淑やかで美しくてエロい狐っ娘ではない。もう一度言う。僕は浮気なんてしていないし、クシナ一筋だ。クシナ一筋なんだ」

九喇嘛(・・・いい復讐の手段を思い付いた)


良ければこっちもどうぞー。
あんまり面白くないので今回出て来た女狐云々に関しては活動報告の方に乗せました。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=236341&uid=224369

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=236342&uid=224369


最後に投稿方法についてのアンケートを取りたいと思います。今回、一気にペイン戦までいきましたが、今後はもしかしたら前の時系列の出来事をやるかもしれません。と言うか、多分やります。シズネさん出したい。

その場合の投稿方法はどのような形を取った方がいいのか、と思ったのでこの様にアンケートを取る事にしました。


-追記-

作者の確認不足と読者様からのご感想にて、実は湖南は巨乳だった事が判明しましたが、この世界線の湖南は貧乳です。


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