紅蓮の紫炎 (ユキユキさん)
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第1話 ~立迫紅蓮

俺はたぶん転生者なんだと思う、身に覚えのない記憶があるのだから。その記憶には特典という知識があった、その知識通りに身体を鍛えれば特典が身に付く。…俺が生きる世は戦国、死が直ぐ近くにある。だから俺は鍛える、死にたくないから。力ある者だけ生き残る弱肉強食な戦国の世、弱い者は生き残れない。だから俺は鍛える、そして身に付けた力。『オロチ』という名の武力を更に高める、生き残る為に。

 

 

 

 

 

 

俺が住まう地は忍の里、火影一族が治める隠れ里。僅か一〇歳ながら里で五本指に入る程の強者が俺、身に付けた『オロチ』という名の武力がこの地位を築いた。しかし里の者達から嫌われている、…呪い子と。『オロチ』の力で里を守り尽くしてきたのに俺は嫌われる、住む家も里の端に追いやられ一人で生活せざるを得ない。…強さこそがこの里の全てだろう? 俺は里の者に嫌われるようなことをしたか? …分からない。親のいない俺には分からない、分からないんだ。

 

そんな俺に友好的なのは三人のみ。この里の長である桜火様とその側室の麗奈様、そしてその息子の紅麗のみ。二人の息子である紅麗も俺と同じで虐げられている、…呪い子として。彼からしてみれば同じ境遇故の同情か? まぁそれでも俺にとっては嬉しいことである。…ただ俺には親がいない、故に虐げられているとはしても両親のいる紅麗が羨ましい。…少なくとも二人が健在の内は守って貰えるのだから、…しかし俺には無い。…俺だけがこの里で一人、…独りなんだ。

 

 

 

 

 

 

………様々な任務を幼い身でやり遂げる。里の者は任務で俺の死を望むが残念、俺は強者故に生き残り続けている。…がそんな日々も終わりらしい、遂に火影の里が攻められる時。…滅びの日、里の者が死んでも今更どうでもいいが麗奈様と紅麗だけは救いたい。そう思い敵だらけの里中を駆けて二人を探す、邪魔な者は『オロチ』で焼き払いながら走り抜ける。途中、麗奈様の亡骸を発見した時は涙が出た。手厚く葬りたいがその暇がない、しかしこのままでは亡骸が晒され麗奈様の尊厳が…。そう思った俺は『オロチ』の力で彼女の身を焼き払う、祈りを乗せて………。

 

麗奈様を葬った後、怒りのままに敵を蹂躙。俺の身も既にボロボロであるが止まらない、…紅麗は何処だ!? ………そんな時に見付けた紅麗の姿、彼は変な空間へと吸い込まれて。それを見た俺は痛む身体を無視して…、

 

「………紅麗!!」

 

俺は彼の名を叫び手を伸ばす。

 

「ぐ…紅蓮!!」

 

彼もまた俺の名を叫んで手を伸ばす。そんな俺達に、

 

「紅麗! …紅蓮!?」

 

と俺達の名を叫ぶ女の声が聞こえたがどうでもいい。

 

俺は紅麗へ手を伸ばすも及ばず、それどころか視界が黒に染まっていき………。無理しすぎたか、今頃になってガタがきてしまったようだ。紅麗、…すまない。………俺は。

 

 

 

────────────────────

 

 

 

…またいつもの夢を見た、ここ最近同じ夢ばかり。妙にリアルな夢、…俺が忍びか。………まぁ実際この夢を否定出来ない、現に夢の中の俺が使っていた『オロチ』とかいう力を認識しているし。それに身体能力も夢と同じで人外、…炎使いの忍びが俺。…がしかし、記憶が無い故に何とも言えない。確かに俺の名は紅蓮、夢の中の俺もまた紅蓮。同一人物の可能性はある、記憶に無いが妙にしっくりくるし。しかし今の俺は立迫紅蓮、両親がいる。血だらけの俺を助けてくれ、他人の俺を家族として迎え入れてくれた大恩人。夢の中の俺と今の俺は違うんだ、違うが何故にこうも気になるんだ………。

 

…気になる理由は分かっているんだ、俺が…父さんが火影を調べているからだって。俺達親子は『火影忍軍』を調べている、そう…俺の夢に出てきた者達のことだ。父さんを中心に、俺は日雇いの仕事を転々としながら密かに『火影忍軍』を調べている。故にここ数年、家には戻っていない。連絡すらしていない、…『火影忍軍』関連は山奥が多いからな。そのお陰で『火影忍軍』が使っていたとされる『魔導具』を数点入手出来たのだから、…父さん喜ぶだろうな。

 

まぁ『魔導具』を入手してからあの夢を見るようになった、そして…俺の力が発現したんだ。思い出すように目覚めた力、夢で見た『オロチ』っていう名が俺の心を乱す。忘れてしまったナニカを、大切なナニカを思い出そうとしている。それが夢で見た光景と言うなら、…早く全てを思い出したい。夢が俺の失った記憶だと言うなら、それを記憶であると受け止めたい。…このモヤモヤを何とかしたい、紅麗なる人物と会いたい。ただただ俺は、切にそう願う。

 

 

 

────────────────────

 

 

 

今日は数年ぶりに我が家へ帰る。ある程度の成果、『魔導具』を入手したしね。それに夢のお陰か、俺の炎…『オロチ』も手足の如く行使出来るようになった。父さん驚くぞ、チョロっとしか出せなかった炎が自在に行使出来ると知ったら。…やはりというか何というか、俺は『火影忍軍』に関連する男みたいだ。やはり夢の中の紅蓮は俺なのかね? 『オロチ』を行使すればする程、『火影忍軍』を知れば知る程そう思うようになった。『火影忍軍』の炎術士、俺はそれに間違いない。

 

…まぁとにかく、我が家へ急がねばならない。妙な胸騒ぎがするんだよ、急がねば取り返しの付かないことになるような。…父さんと母さんは健在だよな? 何事も起きてないよな? それだけが気になって仕方がない、…仕方がないんだ。

 

 

 

 

 

 

………雨の降る中、家路を急ぐ。俺の『オロチ』が騒ぎ立てる、故に急ぐのだ。…そして辿り着いた先で見た光景、母さんが見知らぬ男に傷付けられていた。

 

………貴様、…誰に何をしていやがる!!

 

俺は『オロチ』の力を行使、雨をも蒸発させる紫炎を出す。その紫炎を全身に纏い、母さんを襲った暴漢へと突貫する。身体から木の根のようなモノを出して母さんを傷付けた悪漢、…一撃を喰らわしてやる!!

 

突如乱入した俺に驚き停止したのは好都合、…ぶっ飛べ!!

 

「…鬼焼き!!」

 

悪漢の懐へ潜り込んだ俺は、紫炎を纏ったまま一回転して舞い上がる。夢の中の俺が使っていた技、『オロチ』が目覚めた時から鍛練してこの身に馴染ませた技。怒りにより紫炎の出力が安定しないが、…ただじゃすまない。案の定、

 

「ぐぎゃあああああっ!!?」

 

身体から生えていた木の根は紫炎に燃やされ、自身も炎に焼かれながらぶっ飛ぶ悪漢。…悪漢の仲間がいるけれど、そんなことよりも!

 

「………母さん!!」

 

全身を貫かれた母さんを抱き締めるも反応がない、………が心臓は動いている! 俺は直ぐ様救急車を呼ぶ、自分で運べば早いだろうが下手なことをして死んでしまったら…! 騒がしかった周囲が沈黙し、雨の音だけがこの場を支配した。

 

 

 

 

 

 

救急車が到着し母さんは搬送された、近くに倒れていた男子高校生も共に病院へ。俺も一緒に行きたかったが姿の見えない父さんが気になった、母さんがあんな目に遭ってしまったのだから父さんも………!

 

家の中がメチャクチャになっていた、当然…父さんの姿はない。母さんがあんな目に遭ったのだから父さんも襲われたのでは? …嫌な予想が当たってしまった。…この状況下で考えられることは一つ、あの悪漢とその仲間達に襲われて拐われた。…普通に教師をしている父さん、それを支える母さん。普通過ぎる程の家庭、そんな両親が襲われる理由。…『火影忍軍』のことを調べていたからか? だったら俺の所にも来る筈だが…、俺の存在には行き着かなかった? いや、襲うぐらいだから知っている筈だが…。まぁ数年姿を消していたからってことなんだろうが、…許せんよなぁ。この借りを返さねばなるんだろ、…絶対に。

 

…何はともあれ先ずは母さんだ、母さんの下へと行き安否を確認しなくては!



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第2話 ~花菱烈火

ー烈火ー

 

俺の名は花菱烈火、忍者に憧れる高校一年だ。仕えるべき君主を探している時、姫こと佐古下柳と出会った。彼女はとても優しくて尊敬出来る、だから彼女を君主とし俺は忍者として仕えることにした。

 

俺には不思議な力がある、炎を出すことが出来る不思議な力。そして彼女、…姫にも不思議な力がある。傷付いたモノを癒す力、…彼女の性格に合ったスゲー力。不思議な力がある者同士、この縁を大事にして仕えたいと思う。

 

 

 

 

 

 

…その後は変な女、影法師と名乗る女に襲われた。そこからが大変だった、喧嘩友達? である石島土門が学校を辞めたり、幼馴染の霧沢風子に絡まれたり。んで後日、変な道具を持った風子に再び襲われた。それには影法師が関わっており、助ける為に炎の力を使った。その炎の力のせいで風子が裸になったり、影法師が不死身だったり…色々あった。

 

水鏡凍季也とかいう色男にも襲われた、…やはり背後に影法師がいたっぽい。…で俺と趣味を同じとする立迫先生にも出会えた! 立迫先生はスゲー物知りだった、俺以上の忍者マニアなんて初めてだぜ! そしてそこで知った『火影忍軍』の存在、俺と同じ炎を自在に操る者達の存在。…そしてそれを知った直後に再び襲われた、謎の道具を使うガキとその仲間の男に! 立迫先生が拐われる前に、

 

「花菱! …息子に、息子の紅蓮を頼れ! 紅蓮なら…ぐはっ!!?」

 

息子の紅蓮を頼れと言った後に気絶させられた。…そして立迫先生の奥さんがガキの仲間に傷付けられて、直後…炎を纏った男の乱入でソイツがぶちのめされて。それをこの目で見た時、…目の前が真っ暗になっちまって。…立迫先生は? …奥さんは無事なのか? ………姫!!

 

 

 

────────────────────

 

 

 

俺は目を覚ました、目覚めた場所は病院。何故かいた風子に話を聞けば、俺と立迫先生の奥さんは救急車でここへ運ばれたらしい。奥さんは重傷だが無事らしい、…良かった! …で姫は? と聞けば知らないの一言。こうしちゃいられねぇ! …ってなことで俺は自宅を目指して病院を飛び出す。…後ろで風子が叫んでいるがそんな暇はねぇんだ!

 

 

 

 

 

 

自宅へ戻り姫と立迫先生救出の準備をしていると、風子が現れて聞いてきた。

 

「あんた、柳がいる場所知ってんの?」

 

…それを聞いて固まる俺、…二人のいる場所が分からねぇ!

 

…二人のいる場所が分からねぇけど心当たりはある。そんなわけでいつかの廃墟へ、その途中…風子の奴が誰かに連絡をしていたがどうでもいい!

 

廃墟へ着いた俺はあの女を呼ぶ。

 

「影法師! ツラ出せコラ!!」

 

それに対して風子が呆れるが、…例の影法師が現れて驚く。どうだ見ろ! 出てきただろコノヤロー!! …っとそんなんどうでもいい、姫と先生はお前が拐ったのか! そう問えば奴は否定、証拠を見せると懐から謎の道具を取り出し………。

 

その時、この廃墟の中に誰かの足音が響いた。その足音に驚く俺と影法師、風子の奴はビクッ! と身体を震わせたが視線を向けて安心したようだ。…ここへ来る前に風子が連絡をしていた相手、そうに違いない。まぁそれはいい、…どんな奴なんだ? そう思い足音の主へと視線を向ける。そこにいたのは黒の長髪を一本に纏めたツーブロック、目付きの鋭い長身の男。姿を見た瞬間に圧を感じた、…ただ者じゃねぇ!

 

それに何処かで…ってあの時の! …あの襲撃ん時に乱入してきた男! 炎を纏う…俺と同じ炎を操る男! 俺がソイツに驚いていると、影法師の方が俺以上に驚いていて…、

 

「…紅蓮!? …まさか、…烈火と同じ街にいたなんて!!」

 

影法師はあの男を知っているのか? …いや、そこじゃねぇ! あの男のことを紅蓮と言ったか? …紅蓮といえば拐われる直前に立迫先生が言ってきた、…あの男は立迫先生の息子!? 全然似てねぇし!!

 

 

 

────────────────────

 

 

 

ー紅蓮ー

 

あの後病院へと駆け込み、母さんは重傷であるが無事と知り安心した。一緒に倒れていた高校生は軽傷、これもまた良かった。…良かったが、あの場所に倒れていたからには何かしらの事情を知っているかもしれん。…が寝ている所を起こす程俺は鬼じゃない、よって傍にいる女の子に此方のことを話す。女の子…風子と名乗った少女は俺の頼みを快く了承、何か分かったら教えてくれると言うので携帯の番号を交換した。

 

風子と別れた俺は母さんの眠る病室へ、…眠る母さんを見ていると怒りが湧いてくる。血の繋がりは無いけれど、俺を引き取り育ててくれた人だ。血塗れで記憶が無くて、気味の悪い俺のような男をここまで…。そんな恩義ある人をこのような…、しかも父さんを拐った。…もし父さんの身に何かあったら、…生きていることを後悔させてやる!

 

 

 

 

 

 

………母さんの様子を見ながら静かに闘志を燃やしていると、先程の少女…風子から連絡が。…今回の件に関わっていそうな人物と接触をするかも、その連絡を受けた俺は指定された場所へと向かう。…さて、どんな人物がいるのか。



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第3話 ~俺も行かせて貰う。

ー紅蓮ー

 

指定された場所、廃墟へと来てみれば三人の人物がいた。此方へ向けて手を振っている風子という名の少女、母さんと共に病院へと運ばれた少年。そしてどうにも何処かで…見覚えがあるような女性、…少年と女性が俺を見て驚いているようだ。…まぁ驚かれても俺は気にしない、気にしないが名乗らねばならない。

 

「…風子さんは先程ぶり。そしてそこのお二方は初めまして、俺は立迫紅蓮という。」

 

俺は微笑を浮かべて名乗る、…が二人は固まったまま。特に女性の方は俺を見て震えている、恐怖とは違う感情を乗せて…。

 

…とにかくだ、固まっていようが此方も暇がない。故に俺は簡潔に要件を言う、母さんを傷付け父さんを拐った者達は何者だ…と。俺の言葉を聞いた二人は動き出す、先ず最初に女性が導具を宙に投げ………。

 

 

 

────────────────────

 

 

 

ー烈火ー

 

やはりこの男、いや…この人は立迫先生の息子さん! 立迫先生と奥さんの件でかなり怒っているようだ。…両親に害を為した者達のことを問い掛けてくる息子さん、それに対し若干…複雑な顔をした影法師が手に持っていた道具を宙に投げた。俺は首を捻る、…何で影法師の奴は複雑な、…悲しそうな顔で息子さんを見ているんだ? 関係があるようには見えねぇけど。

 

…っと、今はそんなんどうでもいいか! それよりも姫と立迫先生だ! 影法師の投げた道具がある光景を映し出す。豪華な部屋の中に姫の姿、…と仮面の男。姫が無事であることに安心はしたが、…この仮面の男は一体何者なんだ? 対面していないのに感じるこの悪寒は…。

 

影法師は言う、仮面の男の名は紅麗。姫と立迫先生は奴の配下によって拐われたと、…そして紅麗という男は危険すぎるから諦めなさい…と。………諦めろと言われて諦めるかよ、姫が君主で俺は忍なんだからよ! 例えこの命が…そう言う前に影法師が折れて、紅麗とかいう奴のいる場所を教えてくれた。…ありがとう影法師! 俺はアンタのことを誤解していたかもしれねぇ!

 

姫と立迫先生が囚われている場所が分かった、後は救出へ向かうだけだ! …と思った時、

 

「…俺も共に行かせて貰う。母さんに対する行為へのお礼参り、そして父さんの救出は絶対に成し遂げなければならない。」

 

立迫先生の息子さんが救出へ名乗りを上げた。続けて息子さんは影法師を見て、

 

「…あの仮面の男、俺は知っているかもしれない。…紅麗という名に覚えがある、閉ざされた記憶に繋がる名だ。それに貴女の声、…どうにも耳に残っている声と同じ。」

 

息子さん曰く、最近見る夢に紅麗という名の子供が出てくるのだとか。同じく夢に出てくる声だけの存在、その声が影法師に酷似している。失くした幼き日の記憶に関係があるのでは? …と考えているようだ。息子さんは子供の頃の記憶を失くしているらしい、そして立迫先生とは血の繋がりが無いんだと。…血の繋がりがない、…か。

 

まぁとにかく…だ、まだよく分からねぇけど息子さんも共に行くことへ。息子さんの記憶に繋がるかもしれない紅麗という男、そして立迫先生を救う。…俺は姫と立迫先生を救う、目的は一緒だからな! ………後は全てが終わったら、影法師に色々と聞かなきゃならねぇ。どうにもモヤモヤするからな!

 

 

 

────────────────────

 

 

 

ー紅蓮ー

 

映し出された光景を静かに見る。…少女のことは知らないが、…仮面の男を見た時に頭の奥がピキリと軋んだ。そして聞いた名は紅麗、…夢の中で俺なりに大切な存在であると思っていた少年と同じ名。どうにも気になる、…これは偶然ではない。それに影法師という名の女性の声、夢の最後に聞いた声と酷似している。………頭の奥がピキリピキリと軋む。

 

何というか…気持ち悪い、悪いが俺は紅麗という男がいる場所へ行かねばならない。母さんへの行為に対する報復、そして父さんを救出しなければならないから。余程のことが無ければ危険な場所へは行かないようにする俺だが、今の俺は危険を少なからず求めている。夢を見てから俺は変わった、炎を纏い母さんを襲った男をぶっ飛ばした時は満たされた。…俺は普通じゃない、…改めて自覚する。

 

少年と風子に俺は話した。紅麗という名が出てくる夢のことを、幼き頃の記憶が無いということを。それらを解決することが出来るかもしれない、勿論母さんと父さんの件も重要。よって共に行かせて貰うと、…そう言えば簡単に了承されたよ。目的は一緒であるから、…まぁそうだな。

 

…行動を共にすることとなった少年、…名を烈火。彼にも何かを感じる、…何というか歯車の一つが噛み合った…とでも言おうか。そして影法師、彼女とも何かしらの因縁めいたモノを感じる。…全てが終わったら問い掛けてみようか? 頭の奥がやはり軋む。

 

 

 

 

 

 

…目的地である場所へ着いた時、烈火が打ち上げ花火を上げた。…挑戦状代わり? ………最悪じゃんか、人の命が懸かっているんだぞ? …不安だ。




因みに主人公の『オロチ』はKOFの八神庵の戦闘スタイルです。


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第4話 ~侵入。

モチベーションを挙げる為に適当です。


ー紅蓮ー

 

姫と呼ばれる少女と父さんが囚われているであろう場所、紅麗の館へと来た俺達。侵入前に花火を打ち上げるという暴挙をやらかした烈火、俺は呆れ風子は慌てたがこうなっては仕方がない。正面から堂々と侵入するか、…とのことで警備員を倒して館の中へ。

 

…館の中へと入れば閉じ込められ、先へ進むしかない俺達。進んでみれば石像が行く手を阻み、レーザーのようなモノで攻撃をしてきた。その直後、何処からともなく聞こえてくる男の声。少し違うが聞き覚えのある声に俺は安堵する、…敵である筈なのにな。やはり俺は紅麗を知っている、夢の中の紅麗がそう言っているような気がする。

 

夢の中の紅麗を思い浮かべている中で、烈火と風子が石像に悪戦苦闘している。その二人が俺にも何かやれ! と言ってきた、…まぁそうだわな。何もせずにいたら流石に怒るか、…了解。

 

「…闇払い。」

 

俺は右手に炎を纏い、下から送り出すように放つ。地を這うように走る炎と同時に石像からのレーザー攻撃、俺はそれを予測していたから炎を放った後には既に回避動作済み。レーザーは(かす)りもせずに俺をすり抜け、俺の炎は石像を砕いた。石像の瞬殺に烈火と風子は口を大きく開けて驚愕中。俺は自身の技に頷く、夢の中の俺と同じように放てて安心したぜ。これも夢の中の俺を目指して練習した甲斐があったというもの、…身体も何か覚えていたっぽいし。

 

 

 

────────────────────

 

 

 

ー風子ー

 

立迫紅蓮、この人に初めて会ったのは病院の中。立迫先生の奥さんと共に烈火が運ばれた、その連絡を受けて来てみれば肝心の烈火はイビキをかいて寝ていた。イラッときたものの安心した、…そして紅蓮さんと会ったんだ。

 

聞くところによると、謎の集団に立迫先生の奥さんが襲われて烈火もその対象だった。そして立迫先生がその集団に拐われたっぽい、…確証がないようだけど。何かしらを知っているのは襲われた烈火、彼が目覚めたら連絡して欲しいと携帯番号を交換。…この人は目付きが悪いけど理性的っぽい、ちょっとだけドキドキしたのは内緒だ。

 

 

 

 

 

 

紅蓮さんが立ち去ってから暫くした後、烈火が目覚めて色々と聞いてきたから私の知っていることを教えてあげた。一緒に運ばれた立迫先生の奥さんは重傷だけど無事、…柳? いないけどどうしたの? と言えば、柳と立迫先生が拐われたと騒ぎ出した。…かと思えば、突然病院を飛び出すし。…とりあえず後を追わないと! …烈火の奴、絶対に何かしらの行動をする筈。

 

…烈火の家へ行けば何か準備しているし、救出がどうのって言っているけど何処へ行くのかは知らないの一言。…本当に考えなしの馬鹿だわ、…え? 心当たりがある? …影法師? 危なくない? …ちょっと烈火! …って紅蓮さんに連絡しなくちゃ!!

 

 

 

 

 

 

烈火の後を付いていけば廃墟、そこで烈火は影法師を呼ぶ。…そんなんで出てくる筈が無いって…出てきた! 驚く私を余所に烈火は影法師を問い詰める。彼女は知らないと言い、証拠を見せると何かを出してきた。…その時にあの人が現れた、暗闇から立迫先生の息子さんである紅蓮さんが。私達を見て微笑? …やだ、…カッコいい!!

 

紅蓮さんが自己紹介をした後、自分の用件を烈火と影法師に言った。その用件に対し影法師は道具? を宙に投げて応えた、…映し出された場所が二人の囚われている場所。柳がいたのには安心したけど、対面する仮面の男は…ヤバい。影法師も危険な男と言っている、…だから諦めなさいと。

 

それに対して烈火は拒否、絶対に二人を救出すると言って土下座までする始末。…影法師はそれを見て了承、そこへ行く為の地図をくれた。烈火は今すぐにでも飛び出して行こうとするも、紅蓮さんが共に行くと言って更に自分のことを話してきた。紅麗と影法師を知っているかもしれない、特に紅麗は失くした記憶に関係があるかも…と。立迫先生の救出を第一に、記憶の手掛かりとして仮面の男…紅麗と会う。それに対し烈火は歓迎、目的は同じだからと笑っていた。

 

…因みに私も一緒に行くぜぃ、…知り合いが囚われているのに他人事とは考えられないじゃん? 影法師が言ったように危険な場所だと思う、…それでもね。まぁ…何とかなるんじゃない? 烈火がいるし、紅蓮さんの実力は分からないけど弱くはないと思うし。…うん、きっと大丈夫!

 

 

 

 

 

 

地図に記された場所、館へ入る前に烈火がやらかしたけど無事に侵入成功。レーザーを出す石像に烈火と二人で挑むも避けることで精一杯、道を塞ぐ石像を何とかしないと先へは進めない。紅蓮さんは何もせずに立っているだけ、烈火と二人で戦えよ! って叫んだんだ。そうしたら紫の炎を出して瞬殺、…紅蓮さんてばめちゃくちゃ強いんですね? 風子ちゃん、…ビックリ!!



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第5話 ~囚われの身。

モチベーション徐々に上がり気味。

只今、悶々とファイアーエムブレムの方を考えとります。


ー風子ー

 

石像を瞬殺した紅蓮さんの実力に驚いた、…さっきまでの烈火との共闘は何だったのかなぁ~って。まぁとにかく、気を取り直して先へと進めば奇っ怪な部屋。部屋中至る所にマネキン、マネキンが立ち並ぶ部屋へと入った私達。そしてそこで待っていたのは一人の女、この部屋の主と名乗る女が現れた。

 

女の名は形代零蘭と言うらしい、…女の私から見てもかなりの美人だ。烈火は少しだけ赤くなり、紅蓮さんは変わらずに微笑。いや…邪笑? 烈火はまだまだガキんちょだから仕方がないにしても、大人の紅蓮さんに…美人は通用しないと。動じていないなんてカッコいいわ、…マジで! なんて思っていると、零蘭の腕に抱かれている人形が声を出した。

 

驚く私と烈火をスルーし、プリメラという人形が口を閉じたのと同時に周囲のマネキンが動いた。…まぁ動いたから何なの? って感じ、私の風神で切り裂いてくれたわ! この風子ちゃんを舐めるなよっ!!

 

 

 

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ー柳ー

 

烈火君と出会い…姫と呼ばれ、風子ちゃんと一悶着があったけど知り合いぐらいには仲良くなれた。水鏡先輩とも色々あった、…出来れば烈火君と仲良くして欲しい。烈火君と出会ったことで影法師さんに狙われることに、…風子ちゃんと水鏡先輩の背後にいたようだし。

 

…そして立迫先生夫婦とも仲良くなれたのに、変な人達にお姉さん…先生の奥さんが傷付けられた。立迫先生は捕まって烈火君が…! その直後に私は気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

目が覚めた時には見知らぬ部屋、現れた仮面の人に逃げられないと言われた時は恐かった。紅麗と名乗った仮面の人にお姉さん…先生の奥さんが無事であると伝えられた時、…とても安心した。安心した直後に教えられた私を拐った理由、私の癒す力に永遠の命のヒントがある。そんなこと、…私は知らない! 家に帰りたいと思った時、紅麗の手から炎が出て…。烈火君と同じ、…私はそれにより再び意識を閉ざしてしまった。

 

 

 

 

 

 

そして気付いた時には暗い部屋の中に一人、寒さと恐さで震えていた時に音がした。窓の外を覗いて見れば夜空に大きな花火、それを見たら勇気が湧いてきた。…烈火君が助けに来てくれたんだ! …って。

 

心機一転、纏う布を直そうと思った。その直後に入ってきた男の子に裸を見られてしまった、…烈火君にも見せたことが無かったのに! 怒る私に男の子は謝りながらおにぎりを差し出してきた。…小金井薫という名の男の子にお礼を言う、…私を襲って拐った子だけど悪い子じゃないのかな?

 

…少し話をしたけど、薫君は紅麗を信頼しているみたい。優しいと言うけど、…私にはそう感じなかった。薫君は侵入者撃退の為に出て行った、…侵入者はきっと烈火君に違いない! やっぱり烈火君は私のナイト様だよ!

 

 

 

 

 

 

暫くして、私は紅麗に呼び出された。呼び出された部屋には大きなモニターがあり、映し出されたのは烈火君! …それに風子ちゃんだった。私の為に来てくれたんだ、その姿を見て感動する私に紅麗は問い掛けてくる。彼等は何者だ? …と、火影忍軍魔導具を使うからには普通の人間ではないと問い掛けてきたのだ。だから答えた、友達だと。…一人だけ知らない人がいるけど、烈火君と風子ちゃんは私の友達。凄く強いんだから!

 

私の答えに何を思ったのかは分からない、分からないけど次に案内された場所は…。一緒に拐われていた立迫先生がいて少し安心したけど、…血を流していてボロボロだ。………これから私はどうなるの? …烈火君!!

 

 

 

────────────────────

 

 

 

ー風子ー

 

零蘭との激しい戦い、お互い息が上がっている。…さて、お次はどうする? そう考えた時、零蘭は手に持つ武器を投げ捨てた。勝負を捨てた!? …そう思ったんだけどそれは違って、…知らぬ間に身体を糸で絡め取られていた。烈火と紅蓮さんも同じように、いや…紅蓮さんは涼しい顔をしている。烈火はもがいているのに紅蓮さんは変わらない、…ということは効いていない!? だったら助けてよ! …と思ったんだけどそれを振り払う、これくらい何とかしなきゃこの先へ進めないと思ったから。それに紅蓮さんの目、…お前ならはね除けられるだろ? と言っているような、私を信じてくれている…ような気がする!

 

…で何とかしようと思っているんだけど、身体は動かないしプリメラとかいう人形が襲ってくるしで大ピンチ! もう身体中傷だらけよ、倒れたくても倒れることが出来ないし。…にしても零蘭の奴、傷付いている筈なのに血の一滴も出ないのは何で? 考えても分からない、そんな時に気が付いた。プリメラとかいう人形、…瞬きをしなかった? それによく観察してみれば…。

 

気付いた点から導かれたことが正しいと信じ、私は風神を自分自身に放った。めっちゃ痛かったけど、…これで動ける! 痛みに堪えて飛び出し、零蘭の腕に付いている『形』と記されている珠を切り外した。………どうよ!



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第6話 ~粉砕。

明日辺りに

~俺の謎~

更新予定です。


ー風子ー

 

自爆と見れるような風神の使い方で自由の身となり、零蘭へと襲い掛かる私こと風子ちゃん! 狙い通り彼女の腕に付いた珠、風神と同じ魔導具と思われる物を切り外した。するとどうだろう、私の予想通りのことが起きる。零蘭が動きを止めマネキンに戻り、プリメラとかいう人形が本体であることをこの目で見た。それに対し烈火が目を剥いて驚き、紅蓮さんはやるなって私を褒めてくれた。

 

…でプリメラという人形になり切っていたチビッ子、ワケありみたいだから話を聞いてあげた。母親を亡くしてそれをネタに虐められて、…友達は人形だけでいいと思い至って。…そしてある日母親に似たマネキンを見付け、毎日見に行っていた時に紅麗と出会った。そして『形傀儡』という魔導具を貰い、母親を手に入れた代償として紅麗の配下となった…。こんな小さな子まで利用するなんて、紅麗っていう男…許せない!!

 

 

 

────────────────────

 

 

 

ー紅蓮ー

 

石像を瞬殺した後の部屋で対峙した女、形代零蘭。見た瞬間に違和感、あの女…人間ではないと見る。逆に腕の中の人形、あれが本体だな。零蘭は呼吸をしていないから人形、プリメラとかいう人形は呼吸をしているから人間。素人には分からんだろうが俺には分かる、…がしかしこの俺自身も素人の筈なんだがな。…まぁ今更か、『オロチ』の力が使える時点で素人じゃない。

 

…で誰が零蘭と戦うのかと思ったら、風子が前へと出て相手の先手を潰した。『風神』とかいう魔導具を使えているな、…やるじゃないか。…うん、零蘭との戦いは風子に任せるのがいいだろう。俺と烈火は様子見だな、下手に助力して彼女のペースを乱してしまうのもあれだし。…さぁ、君の戦いを見せてくれ…風子。

 

激しい戦いの後、まんまと糸に絡め取られた風子。ついでに烈火と俺も絡め取られたが、…俺には効果が無いぞ? 炎で燃やせば脱出することが出来る、…がそれはしない方がいいか。風子に経験を積ませる為にもな、…ここでヤられたらこの先を生き残ることは出来ん。

 

…少しだけ心配をしたが無用だったようだ、見事零蘭の正体を見破り倒した。本体であるチビッ子のワケあり事情を聞いて二人は憤っている、しかし俺は憤ることが無い。ギブアンドテイクは当たり前、貴重なモノを与えられているんだからな。チビッ子だろうがそれは関係無いかと、…そんなことを思う俺は冷たい男だろうか?

 

 

 

 

 

 

チビッ子の名前が願子と判明、烈火がめっちゃ笑ってからかっている。それを見て風子は呆れながらも笑っていて、…俺はそれを他人事のように見ていた。どうにも俺は父さんと母さん以外の者に冷たいようで、…心の何処かで他人を信用していないのだろうか?

 

モヤモヤしながら先へ進む俺と烈火達、…何故に俺が願子を肩車せにゃならん。チビッ子だから重くはないけれど、何というか…解せん。とか思いつつ落ちないようにする俺って一体…、自分自身がよく分からない。自問自答している間に次の部屋へと辿り着いたが、また…変な部屋だな。

 

 

 

 

 

 

石だらけで不気味な部屋だと風子はビビり、烈火は願子に館のことを聞いている。…俺は奥を凝視する、奥から何者かがこちらへ向かって来ている。そう思った時に地響きを感じるように、それが徐々に近付いてきて…。そして現れたのが大男、無駄にデカイ奴だな。

 

願子曰く、この大男の名は石王。懲役二〇〇年の殺人囚で用心棒らしい、…なるほど。願子のことといい石王のことといい、紅麗は利用出来る者は利用するタイプとみた。…俺は嫌いじゃないな、そういうの…っと。

 

ドゴォォォォォンッ!!

 

石柱を投げてくるとは怪力野郎め。…烈火はパワータイプじゃないし風子は論外、コイツの相手は俺しかいないな。

 

そうと決まれば肩車をしている願子を烈火に渡し、首を鳴らしながら前に立つ俺。烈火達は無謀だと言うが、俺はそう思わない。デカくて怪力だけの男に俺は負けんよ、怪力はお前だけじゃないんだぜ? 俺には元々の怪力にプラスして、『土星の輪』という魔導具を身に付けている。各地を旅している傍らで入手した物、そのお陰で俺は更なる力を…! 一気に相手の懐へと飛び出し顔へ一撃、石王はぶっ飛んでいく。…俺はお前以上の怪力なんだ、覚えておけ。

 

…あの一撃で奴は怒り狂い、魔導具の力と思われる石の鎧を纏いやがった。そして俺へ向かって一直線、強烈なラッシュを俺に叩き込んでくる。烈火達の悲鳴が部屋へ響くも俺は健在さ、ちょろっと傷を負ったが問題なし。…ということでお返しだ! 俺は前方へ踏み込みつつ全身を使い、奴の胸にある魔導具目掛けて拳を振り抜いた。

 

ガゴォォォォォンッ!!!

 

石の鎧ごと魔導具は砕け散り、石王を逆にノックダウンさせる。その光景に烈火達はマヌケ顔を晒す、…そこまで驚くことか?



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第7話 ~紅麗の歓喜。

モチ上げの為。


ー烈火ー

 

石像の時の瞬殺といい、今回のことといい息子さんがハンパねぇ! 立迫先生が頼れと言っていたけど、頼りがいがありすぎるぜ! この人が味方で協力してくれたことに感謝だな、もしいなかったらって考えると寒気がする。それに何の因果か同じ炎使い、運命めいたモノを感じる。今回初めて会った筈なのに、血が騒ぐのは何でだ!?

 

次は三階、最初の部屋で待っていたのは…あの時のクソガキ! 姫と先生を拐った…! 怒りに任せて飛び掛かったんだが、…軽く避けられて反撃を受けた。このクソガキ、戦い慣れていやがる! しかも調子に乗っていやがる! …何て思っていると、クソガキが何かのスイッチを押した。

 

ズズズズズ…ッ!!

 

するとどうだ、天井の一部が降りてきやがった! 足止めとかってふざけやがって! …焦る俺と風子、そして願子だが一人だけ冷静だった。…息子さんだ、何でそんなに冷静なんだ? …と思っていたら、

 

「…豺華(さいか)。」

 

凄まじい火柱が上がり、降りてきた天井を吹き飛ばした。…火柱が消えた時には天井と床に大きな穴、俺達は勿論クソガキも目を剥いて驚く。…息子さん、アンタは化物か!?

 

 

 

 

 

 

クソガキの足止めを粉砕、後はクソガキをシバくだけ。そう思った時に現れた奴、スカした色男水鏡凍季也! 何で奴がここに! …と思ったら動物愛護の精神だぁ~!? 風子がサルで俺がシーモンキー、息子さんがスルー…って流石のコイツも言えるわけがない。悪口を言ったら燃やされるもんな! さっきの技と威力、見ていたと思うし。

 

風子が暴れるのを息子さんが抑え、とりあえず願子を守るように立ち位置を変える。直後、クソガキと水鏡の戦いが始まる。…水鏡はやり合いながらも先へ行けと言う、…邪魔にならねぇように行った方がいいな。そう判断した俺達はこの場を水鏡に任せて先へ行く、息子さんだったら瞬殺なんだろうけどな。空気を呼んで任せるんだろう、せっかく助太刀に来たんだし。

 

…さて、次はどんな奴が出てくるんだ? 楽しみではあるが恐くもある、だが…姫と立迫先生は必ず救う!!

 

 

 

────────────────────

 

 

 

ー紅麗ー

 

癒しの少女を入手したのはいいのですが、気になることが一つあります。少女と立迫氏を拐う際に現れたという男、炎で木蓮を破った男。立迫氏に息子がいるとは知っていましたが、…まさかあの人(・・・)だとは思わなかった。…この目でその姿を見たい、…見たいがあの人(・・・)はきっと。…きっと私を叱るでしょう、それでも私は………。

 

 

 

 

 

 

侵入者が三人現れた、その内の一人があの人(・・・)。石像を瞬殺する様を見て思い出します、…昔のことを。それと同時に思い出す憎き者、ソイツ(・・・)にも私は会いたい。…そう思っていた時、侵入者の少女が魔導具『風神』を使用しました。…あの人(・・・)が与えたのでしょうか? …でも零蘭には勝てない。彼女もまた導具使い、少女よりも長けた…ね。

 

そう思っていたのですが、まさか零蘭が破れるとは。続けて石王までも倒されましたが仕方ありません、相手はあの人(・・・)なのだから。…しかし解せませんね? あの人(・・・)ならば情け容赦なく殺す筈なのですがどうしたのでしょう? …あの時に何かあったのか、…とても心配です。

 

次は小金井ですか、良い仕事をしてくれました。あの人(・・・)の炎の型の一つ、…豺華(さいか)を久々に見ることが出来たのですから。…で次は剣士の乱入、侵入者が増えましたが問題ないかと。写真を見てもただの子供、風神使いの娘も剣士の男も。…そしてあの人(・・・)、…やはりこの炎使いは紅蓮! 年齢を重ねていますがこの顔付きは間違いない! …会いたかった! …会いたかった!! 共に飛ばされはぐれてしまった友、…兄とも呼べる紅蓮がこの館に!! …今日は気分がいい、侵入者と立迫氏は殺さぬように計らいましょう!

 

…おっと、忘れていました。もう一人いましたね、囚われの姫を救わんとする男が。

 

…………………………。

 

…………………………………!!

 

…この男は!! …女!! コイツは…、コイツの名は何ですかっ!?

 

 

 

 

 

 

くはは…ははっ…、はははは…!! ひゃははははははははあぁっ!! これも運命か!? ひゃははははははは!!! 何という日なのだ今日は!! 二度と会えぬと思っていたもう一人の男にまた会えたぞ!! …そうか、…そうか!! ここで繋がるのか!! 紅蓮もそうですが烈火とも再会、これを運命と言わず何と言えば!?

 

…紅蓮が烈火と共にいる理由は立迫氏救出の為、…それとその妻に対する行為への報復。それについては私も覚悟をしなくてはなりません、癒しの少女を拐うよう指示を出したのは私なのですから。それがまさかこのようなことになるとは、…ね。

 

…そして烈火、まさか癒しの少女と繋がりがあるとは思いもよりませんでしたよ! 目的が同じであるのだから仕方がない、…であるにしても紅蓮と共にいることが許せない!! 覚悟するといい烈火! 私の憎しみをその身に刻み込んでやる!!



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第8話 ~烈火と紅麗、そして紅蓮。

ー烈火ー

 

もうすぐ姫に会える、…助けることが出来る! (はや)る気持ちを抑えることが出来ず、我先にと廊下を走り抜け辿り着いた部屋。その扉を開けた時に解き放たれた殺気、それを放つ主は仮面の男…紅麗! …遂に奴をこの目で捉えた、コイツを倒せば姫を!!

 

紅麗の放つ殺気に怯まず対峙していると、

 

「…四〇〇年ぶりですね、烈火!」

 

といきなりワケの分からねぇことを言ってきた。テメーと俺は初対面だコラ! それよりも姫、姫は何処だ! …と凄んでみても何処吹く風、奴は俺の言葉を聞き流してあるモノを投げてきた。

 

俺達の目の前にゴロリと転がったモノは、…息子さんが倒した石王の…首! それが転がって…、風子は青褪め願子は悲鳴をあげた。息子さんは無表情、そして俺は…、

 

「…テメェ、何様のつもりだこの野郎!!」

 

何も殺さなくてもいいだろ! …許せねぇ!! 激昂した俺は昂るままに炎を出して紅麗に飛び掛かったんだが、奴は余裕の笑みを浮かべてそれを受け止めた。そして為す術もなく弾き飛ばされる、…見た目通りにツエー!!

 

 

 

 

 

 

紅麗の野郎は余裕の笑みで語る。姫を拐ったのは治癒の力が欲しいから、奴の親父が永遠の命を求めているんだとよ! …で立迫先生を拐ったわけは火影忍軍を調べていたから、…ここで息子さんの顔が険しくなった。火影忍軍の宝である魔導具、それを暴かれない為に。…何が導具だ、何が火影忍軍だ! …俺達には関係のねぇことじゃんかよ!!

 

そう叫んだ時、…間を空けて紅麗が言った。

 

「私と君、そしてもう一人いますが我々は火影一族の人間だ。時を流れて来た忍なんですよ…。」

 

それを聞いた時、悔しいけど少しだけ納得しちまった。火影は炎を操ると聞いていたからな、実際…俺は炎を操るし。

 

炎を操る…か、…ということは息子さんも!? そう思い視線を向けるも息子さんは紅麗を見ている、何かを見透かすような目で。…その目を見た時、俺の中のナニカ(・・・)が蠢いた…ような気がした。

 

 

 

 

 

 

俺に繋がる情報を得て、ちょいと考える俺に紅麗は問い掛けてきた。導具は何処で入手したのかと、…まぁ素直に言わせて貰ったよ。風子の導具は影法師に貰ったってな! 他は知らねぇ!! …何? 口元にホクロが二つあるかって? あったらどうした!! って言い返したら奴からの圧が上がった。

 

…コイツ、影法師のことを知っているのか!? そう思った直後に抜ける床、落ちる俺達に見下ろす紅麗。落とし穴とかってセコすぎるんだよ、…チクショー!!

 

 

 

────────────────────

 

 

 

ー紅蓮ー

 

走り抜ける烈火の後を追い、そして辿り着いた先で邂逅した仮面の男。対峙して分かったが…紅麗、俺はお前を知っている。やはり夢は俺の過去なのではなかろうか? そう思った矢先に響く願子の悲鳴、意識を戻せば石王の首。怒って先制攻撃を仕掛ける烈火を余所に、俺には怒る理由が分からない。殺された石王は懲役二〇〇年の男、大きな罪を犯してきたと思われる。そんな男が死んだのは当然のこと、それに対して何故怒る?

 

…永遠の命を求めるか、紅麗の父は欲望に忠実なクズか。…そして父さんを襲った理由は火影忍軍を調べていたから…か、それ故に母さんがあのような目にあったと。これは俺と父さんの失態ではあるが、…許せないな。

 

それと同時に紅麗と烈火が火影一族、我々(・・)の中に俺も含まれているだろう。彼の口から発せられた言葉、それが俺の中を駆け巡る。…俺は火影一族が炎術士、紅蓮であると。

 

 

 

 

 

 

頭の中の軋み、それが頻発している。烈火達は落とし穴によって下階へ、この場に残るは紅麗と俺。静かに見詰め合い、先に口を開いたのは紅麗の方だった。

 

「…久しぶりですね紅蓮、私を覚えていますか?」

 

烈火と対峙していた時とは違い、その声には優しさが含まれていた。俺はその問いに対し首を振り、

 

「…見覚えがある、聞き覚えがある。それは間違いない、間違いないのだがね。」

 

そう答えれば、

 

「…そうですか、少し残念ですが仕方ありませんね。あれほどの怪我を負っていたのですから、生きていてくれただけで………。」

 

悲しみの籠った言葉で返してきた。

 

…沈黙後、次にそれを破ったのは俺。

 

「…とりあえず交えようか。両親を傷付けたことに対しての報復、それに交えればきっと思い出す。」

 

俺は右手に紫色の炎を纏い、ギロリと紅麗を見据える。対する紅麗は、

 

「…ですね。報復を歓迎しますよ、貴方に今の私の力を…見せたい!!」

 

そう言って同じく右手に炎を纏った。



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