ワーク田村 (Monster ohige)
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1話

202X年

徳島市市街地のとあるタワーマンションの一室

欧州製高級キングサイズベッドが微かに軋んでいる。

レシプロエンジンのシリンダーとピストンの如く男と女が交わっているからだ。

男の方が若い。

物凄いほどの筋肉を持つ男の歳は二十四、五。

女の下になっている。

名は田村ユウ。

四肢や胴の凄まじい筋肉には所々銃弾や破片による傷跡が残っている。

その田村にまたがり約100rpmという人間が生み出すレシプロケーションとしては高速な往復運動をしている女は湯口幸子。

歳は四十過ぎといったところか。

この徳島において最大の銀行、徳波銀行頭取の妻だ。

シワが出来だした顔を歪め、髪を振り乱しかすれた声をあげ続け、欲望のままに田村を味わっている。

田村は枕の下に手を突っ込み目をつぶっている。

田村の凶器は人類のモノとしてはかなりのビッグボアかつロングストローク。

戦闘時の全長は250mmを優に越える。

敬遠される事もあるが、好き者かつ平凡なモノしか知らない女は瞬く間に田村の美貌と肉体そして凶器に夢中になる。

「ユ、ユウ…こ…交代…」

田村は目を開け、枕に突っ込んでいた手を抜き、片腕を幸子の背中に回しながら上体を起こした。

凶器を抜かぬまま軽々と幸子の身体を扱い、上になった。

目を開き、幸子を見つめながら今度は田村がレシプロケーションを行う。

先程とは打って変わり強烈なストロークが花芯を刺激し10ストロークもしない内に幸子は絶頂を迎えた。

田村は腰を脚で挟まれ、幸子がおびただしく放つものを腹で感じた。

悲鳴の様な声を上げ、田村の名を呼び、突っ伏して果てたのを確認後、田村もセーフティーを解除、引き金を引き絞る。

低発射レートな3バースト射撃後少しずつ硬度が失われていく凶器をゆっくりと抜く。

元より冷静ではあったが、化粧が崩れ、シワが目立ってきた幸子の顔をみて更に現実に戻る。

幸子は軽く痙攣しながらそのまま眠ってしまった。

田村はシャワールームへ向かい全身を洗った。

脱いでいた衣類を着け、軽くイビキをかく幸子を横目にベッドサイドテーブルに置かれている封筒を手に取る。

厚みで分かる。50はあると。

「愛してる、ありがとう」と思いもしていないメモを残し部屋を出た。

田村には恥ずかしさも屈辱感も全く無い。

目的の為には手段など選んでいられないからだ。

このマンションの部屋は幸子が田村と楽しむ為だけに買った部屋だ。

エレヴェーターに乗り最上階から地下1階の駐車場に降りる。

駐車場には田村の愛車、トヨタスプリンタートレノが鎮座していた。

型式はAE86、最後のFRモデルだ。

田村はこのAE86を3台持っている。

その内1台の街乗り仕様だ。

見た目は大人しいがエンジンは86用オリジナルブロックながら低回転域をあまり犠牲にしない程度のハイカムシャフト、軽量鍛造ピストン、軽量鍛造コンロッド等で武装。

スロットルは実用性重視で加工シングルスロットル。

街乗りユースの為、純正ECUでも使用可能なリフト量、度数の控え目なカムにしているもののフルエンジンマネージメントシステム、所謂フルコンできっちりとセッティングを取っている。

係数1,0実馬力で130馬力を7200rpmで叩き出す。

走行ステージを限定していない為トランミッションはノーマル。

デフは1.5wayのLSD入りだ。

その他、脚まわり等一通り手が入っている。

街乗りメインの為、そこまではハードではないが。

田村はロックを解除、セミバケットシートに身を埋める。

メインスウィッチをON、ギアポジションがニュートラルなのと燃料ポンプの駆動を確認しセルスターターを回しエンジン始動する。

幸子と戯れていた時間は1時間弱、水温は40℃を切ってないのをダッシュボード上の追加ゲージで確認する。

少しの暖機後、田村はゆっくりとAE86を発車させる。

「この瞬間が好きだ」

そう思いながら明るくなり始めた空の下で田村はスロットルを開けていくのだった。



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2話

極東アジアでの大戦で軍人だった田村の父は戦死した。

美しくもそこまで精神的に気丈ではなかった田村の母はそれがショックで酒に溺れて酔ったまま車を運転、峠道のヘアピンコーナーでオーヴァースピードで進入、曲がり切れず朽ちかけたガードレールを突き破り転落、ルーフから岩に激突。

即死だった。

幼くして両親を一気に失った田村は母方の祖父母に育てられた。

父の軍からの恩給、母の死亡保険金、二人の貯金により金には不自由してなかったが、豊かではなかった祖父母を想い、中学卒業後は学費のかからない防衛校へ通った。

入学してから分かったのだが田村は身体に恵まれておりみるみるうちに誰もが羨むボディへとなった。

また、戦闘技術に対しても凄まじい才能を秘めており格闘、銃撃の成績はトップだった。

防衛校卒業後、自衛軍に身を移した田村は治安維持部隊に入隊、治安が安定しない極東アジアを渡り歩き、武力行使による強制的な治安維持にあたった。

そこで田村は女を覚えた。

19の時だ。

とある過激派組織のアジトに部隊と共に突入した田村は人体対して撃つにはオーヴァーキルな00B弾が装填されたAA-12オートマティックショットガンで次々と敵兵を粉砕した。

練度の高い田村の部隊が行ったのは最早戦闘ではなく一方的な蹂躙であった。

最後の敵兵の頭部を挽き肉ミンチにした田村はその部屋の隅で固まり丸くなって怯えていた少女を見つけた。

まだ20にもなってなさそうな無垢な少女だった。

言葉が通じないので通訳できる隊員を連れてきたところ性奴隷としてここに連れて来られ、もう少しで初めてを奪われ、コイツらの玩具になるところだった。救ってくれた貴男に最初を捧げたい。

と言ってるぞと田村に言いその隊員は遅れて部屋に来た隊長に耳打った。

普段笑みを浮かべない隊長はニヤリとしながら60分以内だ、とだけ言い通訳の隊員と共にその部屋を出た。

田村は貫いた。

少女は初め痛みに顔を歪めていたが次第に田村の凶器を呑み込み、初めての快感に身を震わした。

なんと田村は女を悦ばす才能も突出したモノを持っていたのだ。

普通の男と比べ、大きいかな?と自分でも思っていた凶器を田村自身も初めてながら、初めての女に対し使いこなしたのだった。

治安維持活動を終え帰国した田村は更なる刺激を求め、自衛軍を退役し民間軍事企業に入社した。

活躍の舞台こそ極東アジアと変わらないが、仕事の質は田村の求める過激なものであった。

軍では行えない非公式な戦闘を数多く経験し、田村は更に殺しの腕を磨き、稼いだ。

しかし、それも長くは続かず田村は大きな負傷を負うこととなる。

敵が拠点としている集落を襲撃、先制攻撃と装備、練度の差により一方的に戦闘は終わった、が非戦闘員だと思い込んでいた集落の少女、それも15にもならないような少女が不意打ちで米軍から鹵獲しただろうM320グレネードランチャーで多目的榴弾を発射。

構えて発射する瞬間が見えた田村は反射的に持っていたHK416アサルトライフルで無防備な顔をカバーした。

M320から発射される40x46mm榴弾の銃口初速は約80m/sとエアソフトガン程度なのが幸いし、田村の右前方に居た同僚の隊員に着弾するまでに最低限の防御姿勢をとれた。

田村の同僚が着けていたボディアーマの上のマガジンポウチに着弾した榴弾は生まれ持った使命を果たし炸裂、胴体を完全に粉砕、四肢は四方に飛び散った。

炸裂した弾頭の破片や飛散したマガジン等の装備、そして粉砕された同僚の骨が田村を襲った。

HK416ライフルで覆った顔とボディーアーマで覆っていた部位は無事だったが、腕や脇腹、脚に多数の破片、飛散物を食らった。

後方に吹き飛ばされた田村はアドレナリンにより痛みを感じず、また体感時間も遅くなっていた。

吹っ飛ばされて仰向けに倒れたままHK416を確認、機関部に破片が刺さっていたのですぐ投げ捨て、M320を持つ少女を睨む。

慣れない手つきで砲身をスウィングアウト、次弾を装填しようとしていた。

田村は右太腿に着けているカイデックス製ホルスターからUSP45タクティカルを抜く。

パッと見では損傷は見当たらないので仰向けの状態から軽く上体を起こし構える。

左肘を地面に押し付け、左手をUSP45タクティカルを握る右手に添える。

左手をバイポッド代わりにしたのだ。

強固に保持されたUSP45タクティカルから0,4秒で3発の45ACPジャケッテッド・ホローポイント弾が発射された。

ホローポイントは人体の様な水分量の多い物体に命中すると弾の先端が避けるように展開、対象物の内部を大きく傷つける様に設計されている。

田村が放った45ACPホローポイントは3発共少女の頭部に命中。

少女の命と下顎から上をこの世から奪い去っていった。

文字にすると長いがこの一連の動きは4秒弱で行われた。

残された下顎とそこから下の身体は噴水の様に血を吹き出しながらドサッと倒れた。

それを見届けた田村もアドレナリンが切れあまりにもの痛みに気を失った。



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3話

田村は現地のメディカルでの処置で意識を取り戻し容態が安定、幸いな事に負傷箇所は多かったものの致命傷は無かった。

しかし戦闘行動にすぐ復帰する事は出来ず日本へ帰国、田村の地元の徳島の病院へ転院した。

先の大戦での首都、東京へ行われた核ミサイルの飽和攻撃の結果、撃墜しきれなかったTNT換算3桁キロトン級の威力のミサイルの着弾により東京は首都機能を喪失した。

報復攻撃はすぐさま行われた。

かってより極秘裏に高度約1000kmに打ち上げられていた対地攻撃用衛星砲から、大気圏突入しても融解しない特殊合金製の弾頭が発射された。

全長7メートル、径35センチ、重量10トンに及ぶ金属棒状の弾頭で非核であり炸薬も使用されてない。

強力なロケット・モーターと地球の引力を推進力にする運動エネルギー弾なのだ。

着弾寸前の時の弾速はマッハ12を超え、着弾時の衝撃、破壊力は核弾頭に匹敵する。

まず検知が困難であり、もし発射された事がわかっても迎撃できる手段も無い。

十数基の誘導用衛星の誘導により精度は±1メートル単位のその弾頭は核ミサイル発射基地、その国のトップが居る場所に着弾しあたり一面諸共吹き飛ばした。

そんなこんなで日本の脳は大阪となった訳だが今も東京復興の目処がつかず、大阪が首都として機能している。

近県の徳島は一気に人口が増え、都会化した。

病院も増え、医療レベルの高い病院もできた。

田村は最新の設備が整った徳島中央医療センターに入院した。

かつて映画の題名にもなった徳島のシンボル的な山が眺められる上等な部屋が田村にはあてがわれた。

田村はそこで自分の魅力を自覚することとなる。

致命傷は無いとはいえ、負傷箇所が多い為、幾分身体は思う様に動かなかった。

そこで身に周りの世話は看護婦がしてくれる事が多かった。

防衛校卒業後から戦い詰めだった田村はちょっと甘えるのもいいかと緩い気持ちで過ごしていたのだが。

やたらと看護婦達の対応が良いのだ。

何をするのにも声を掛ける事や介助(スキンシップ)してくれる事が多い。

当然、風呂や着替えでは裸になるのだが田村の見事な身体と凶器に息を呑む看護婦が多かった。

榴弾の弾頭や着弾した田村の同僚の装備品の破片による無数の傷痕も凄まじい筋肉と併せると彼女等にとってはセクシーに見えていたのだった。

入院から数日で田村は自分が魅力的な男なのか?と思わざるを得ないほど彼女等からの目線やスキンシップは熱かった。

田村は20代前半の男だ、当然元気になる時もある。

全長250mmを超える凶器を目にした看護婦は顔を真っ赤にしながらも目を離すことができなかった時もあった。

その当時女性経験はあまり無かった田村だがコミュニケーション力は有り、彼女達と仲良くなるのにはそう時間はかからなかった。

入院から1週間が経とうするある日。

入院病棟の風呂で入浴後「大丈夫だよ」と口では遠慮しながら身体を浴室横の脱衣室で看護婦に拭いてもらっていた田村。

下腹部から凶器と拭かれた際、凶器がつい反応した。

スロットルを一気に開けたターヴォ・チャージドエンジンの過給圧計の針の如く田村の凶器は振り上がった。

この時介助してくれていた看護婦は田村と一番仲が良く、一番熱い視線を送っていた同年代の若い看護婦だった。

幼さがまだ僅かに残る小顔の美女だ。この病棟の看護婦では一二を争う綺麗さだ。

真っ赤にした顔の田村に向けながら

「田村さん、もう限界そうなので処置しますね」

とか細い声で言い浴場出入り口ドアのロックを確認した。

そもそもこの日は彼女からお風呂入らないかと言われ、こうなったのだ。

恐らく、確信犯なのだろう。

彼女もまた、限界なのだろう。

嬉しいながらも「マジか」と田村は思う。

いきなり田村の凶器を彼女は含んだ。

更に田村の過給圧は上昇する。

含んだまま彼女は口の中に居る蛇を駆使した。

久しぶりの快感に田村は仰け反る。

最快調になった田村の凶器を見て彼女は下の白衣と下着を一度に降ろした。

蜜壺からは既にラヴジュースが溢れ、下着との間で高粘度のトランスミッション・オイルの注ぎ終わりの時の如く糸を引いていた。

「できる限り早く処置しますので座って下さい」

と田村を介助入浴用の椅子に座らせた。

田村の対面に座る様に田村の膝に乗り、田村の凶器を右手で握り自らの蜜壺に当てがった。

「私のでは完全に対応できないかもしれませんが最善を尽くします」

そう言い、少しずつ田村の凶器を蜜壺へ飲み込ませていく。

久しぶりの生肉の感触に田村はクラクラする。

やはり、彼女のではフル・ストロークする事なく底付きした。

声を押し殺し何とか蜜壺の天井まで凶器を飲み込んだ彼女はレシプロケーションをゆっくりと始める。

弱ったバッテリーのクルマのクランキングの様に弱々しいストロークからの始まりではあったが、久しぶりの田村に快感を与えるのは容易かった。

やっとアイドリングが安定してきた、というところで彼女が持つ端末から着信音が、、、

「あぁ、ごめんなさい必ず続きをしますので」

田村は頼んでないのにそう言われ彼女は名残惜しそうながら急いで田村から離れ、ラブジュースが糸を引くのを強引に清浄綿で拭き取り、白衣を着け脱衣室を去った。

絶頂を迎える事無く去られた田村は残念だったが、彼女は仕事中だということを思い出し、仕方ないかと思った。

しかし、彼女が去ってから60秒も経たない内に再び出入り口のドアが開いた。

脱衣室に入ってきたのはこの病棟の看護婦達をまとめるリーダーナースであった。

田村は慌てて立ち上がろうとしたが

「大丈夫ですよ、すいませんね田村さん、田村さんには入浴介助の指示が無いのにあの子お風呂について行くから、ちょっと気になって」

リーダーはドアを閉じて続けた。

「ちょっと意地悪してやろうと思ってあの子が担当してる他の患者さんのバイタルのテレメトリーシステムにちょっとイタズラしてエラーを出したら、すぐすっ飛んで行って欲には忠実みたいだけどもそれ以上に仕事真面目で安心したわ」

田村は口が堅いと見たのかまぁまぁとんでもない事を言う。

という事で悪い方向に話が進まなかったので田村の凶器の勢いはそのままだ。

「私が思ってるより手当ては進んでないみたいだから仕上げは私に任せてくださるかしら」

リーダーは先程の彼女より7~8歳上だろうか美しさのピークはやや過ぎたかと思われるが、やや先程の彼女より肉付きが良いぐらいでまだまだ最前線で戦えるプロポーションを保っていた。

顔はキツさも有るが典型的な美形だ。

彼女は出入り口のロックは掛けず田村に迫ってきた。

「確かにあの子より私はおばさんだけど田村さんが居た世界でも新しいだけが必ずしも最善ではなかったでしょ?カラシニコフ47は古臭いけど世界中で愛されてるじゃない?」

リーダーは田村の顔に左手を添え右手は凶器の方へ。

「私にはH&KやFNの様な魅力は無いかもしれないけど、きっとカラシニコフの様に裏切らない女だと思うの、と言ったら伝わるかしら」

原型が旧ソヴィエト連邦軍に制式採用されたのが70年以上も前の1949年のそれを好んで愛用し、それなりの戦績を挙げていた軍事企業の田村の倍近い歳のヴェテランの社員を思い出した。

リーダーは田村の唇を唇で軽く摘まみながら右手で凶器を扱いだした。

田村の凶器は先程の彼女のラヴジュースでびちゃびちゃであったが気にする様子はなかった。

「これが医療の最前線で戦うナースか」

田村は間違いであり間違いでもない感想を抱いた。

「ホント、噂には聞いてたけどマグナムどころか対物弾だわね」

リーダーの凶器の扱いは先程より柔らかく、刺激は少なかったがモロに田村メンタル効いた。

「気持ちいい」

素直にそう思ったのは初めてかもしれない。

リーダーは凶器を軽く含んだ。

軽く波打った。

「あら、ホントにもう暖気は充分みたいね」

実務が少なく、事務やマネジメント業務が多いからかリーダーはスカートだった。

自ら左手で捲り上げ、スカートの中が露わになる。

リーダーも勿論確信犯だろう、何も着けていなかった。

先程と同じように田村の膝の上にリーダーが乗った。

だが先程と違いリーダーは田村の首に両手を掛け、ノー・ハンドで凶器は蜜壺へ誘導された。

リーダーは腰使いだけで蜜壺の入り口に凶器を当てがったのだ。

スルヌルッと田村の凶器を9割方飲み込む。

流石のリーダーも顔をすこし赤らめ熱い息を吐いた。

先程とは違いストロークでは無くグラインドで田村を刺激する。

作動範囲は少ないものの、奥がタイトなリーダーの蜜壺は大きく動かさずとも、田村の銃口を激しく刺激した。

見てくれは激しく無いが田村への刺激は強く、10分もしない内に田村は撃鉄を落とした。

数ヶ月ぶりのモノをリーダーの蜜壺に吐き出した。

そして冷静になった田村は気づいた。

出入り口のドアが5mm程開いているのを。

そのすぐ後良く見ないと分からない程のスピードで5mmの隙間は閉まった。

田村から離れたリーダーは

「田村さん、順調に回復してるみたいで何よりだわ、あらあらまだまだ撃てちゃいそうね」

強烈な一撃を放った後なのにまだ7割程度の硬度保つ田村の凶器を撫でながら言った。

調子づいた田村は

「もう一発イけますよ」

と言うが

「そうこなくっちゃと言いたいところだけど田村さんの一撃は強烈だったから私もう今日ダメよ、それと私ばっかりじゃ可愛い部下達に嫌われちゃうわ、田村さん感じているでしょ?彼女達の視線を」

スカートをストンと定位置に下ろしたリーダーは何事も無かったかの様に浴室を出た。

「あ、リーダー!807号室のバイタルチェッカーのハーネスが接触不良みたいでエラー出てたのでハーネス発注したいです」

浴室の外には先程途中までだった彼女が居た。

ドアの隙間からリーダーとの戦闘を見ていたのだろう、顔が赤いままで目も少し血走っている。

「そうなの?分かったわ購入伝票書くわね」

顔色以外には顔に出さない様に努めていたみたいだが少しばかり不満そうだった。

「田村さんだいぶお元気よ、遅番への引き継ぎまでまだ時間あるし貴女の今日のタスクはもう大丈夫だから田村さんの着衣ゆっくり手伝ってあげなさい」

まだこの日の彼女の業務は有るのだが、リーダーの配慮なのだろう。

「あ、は、はいすいません」

と彼女は言い、再び田村と対面した。

リーダーは笑顔で去って行った。

「あ、あのすいませんウチのリーダーこうやって嫌らしい手段で私の悪戯相手を摘まみ食いする時があるんですけど上には黙っててくれてて、何というかごめんなさい」

また、一気に白衣と下着を下ろした。

短時間で同じ女なのに全くスタイルが違うという事を目の当たりにして何か滑稽で田村はニヤついてしまった。

先程より更にラヴジュースは溢れて雌の香りが強烈になっていた。

「もう、途中までしててあんなの見せつけられちゃったら収まりつかなくて」

またしても椅子に座る田村の対面に乗り、凶器を蜜壺へねじ込んだ。

田村の凶器の硬度はまたフルスロットルだ。

「リーダーの良かったですか?」

溶けそうに熱い息を田村の耳に掛けながら聞く。

「うん、でも比べられないかなぁ」

彼女は先程とは打って変わり激しいレシプロケーションを始めた。

「意地悪」

怒りに任せてアクセル・ペダルを底まで踏みつける若者の様だ。

次はたっぷりと1時間弱田村は粘り、第二弾のファイヤリングピンをハンマーで引っ張たいた。

その翌日からというものの、リーダーがお触れを回したのか何かのかは分からないが看護婦達からのアプローチが激しくなり退院までの1カ月半、田村は彼女達とのリハビリを楽しんだのだった。



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4話

田村は3台所有している内1台の街乗り仕様の方のAE86スプリンタートレノで川沿いの土手を駆ける。

10月も半ば、窓から入ってくる風が気持ちいい。

川に架かる橋のアンダーパスをくぐり抜け、合流部へ。

5速から2速まで丁寧にヒール&トゥを駆使し、シフトダウンし速度を一度落とす。

一時停止看板を無視し前方と後方を確認2000rpm、スピードは25km/hから一気にアクセルペダルを踏み込む。

ライトチューン仕様の為、強烈ではないが気持ち良くレヴリミットの8200rpmまで回る。

米国製の最新式ECUで完璧に制御されていてどこから踏んでもボコついたりせずに加速できる。

レヴリミットがノーマルより引き上げられているのでノーマルのタコメーターではスケールが少し足りなくなっているので、ステアリングコラムの上にはステッピングモーター駆動の11000スケールの後付けのタコメーターが追加されている。

大径のレヴ・インジゲータ付きだ。

そのインジゲータが赤く光り、8000rpmを超えた事を田村に知らせる。

クラッチペダルを一気に底まで踏み込み、3速へシフトアップ。間髪入れずにクラッチペダルを離し、アクセルペダルを再び踏み込む。

年々クルマ高性能化が進む中、決して速くは無い加速だが、田村はこの瞬間が好きであった。

サーキットでは最速を目指しているが、アジのあるクルマも愛している。

しばらく走り、土手沿いにある1件のクルマ屋に入る。

浅田自動車、田村が通うチューニング・ショップだ。

親子2代でやってる古くから有るショップだ。

特に親父の方はAE86が得意で田村は世話になっている。

息子は最新の制御システムやそれらのセッティングを得意としている。

今乗ってきたAE86もこの親子に仕上げてもらったクルマだ。

工場入り口のシャッターは開いており、中には田村のサーキット走行、レース用のAE86が2柱リフトに載せられている。

その下では浅田のオヤジがエンジンオイルを抜いている。

「よう、コレいいオイルだなもう一回交換しないで練習行けたな」

最近浅田自動車はメインに使うオイルメーカーを変えたところだ。

「お疲れ、そりゃ良いや、ところで親父っさん来週の定休日に練習行こうと思ってるんやけど付き合ってくれるかい?」

来月の最初の日曜にレースを控えているのだ。

「もちろんだ、行くよ」

田村は岡山の美作国際サーキットや三重の無限国際サーキットで行われるバトルレヴォリューションというレースシリーズのAE86ワンメイクに参加している。

その中にもクラス分けがあり一番改造範囲の広いアンリミテッドクラスにエントリーしている。

車両の大まかなレギュレーションは

・4点式以上のハーネスが装着されていること

・6点式以上のロールケージが装着されていること

・消火器の搭載

と安全面にはある程度の縛りがあるが、

・エアロパーツ含め車両の全幅は2100mm以下とする

・駆動方式はFRとする

・エンジンは自然吸気であること。スワップはOKだが排気量は3800cc以下、シリンダー数は6以下

・変速機の段数、方式は自由だが後退ギアを備えていること

・A~Bピラー、フロアはオリジナルのモノコック使用すること

・最低車両重量は700kg

・タイヤは指定する3メーカーのセミスリックタイヤ、雨天時はレインタイヤ、サイズについては幅は300mm以下、外径640mm以下なら自由とする

というかなり改造範囲が広い。

そのレギュレーションに対し田村のマシンは。

 

フロントバルクヘッドから前は完全パイプフレーム。

フロントサスペンションはマクファーソン・ストラット方式からダヴル・ウィッシュボーン方式に。

高剛性化、サスペンションの高性能化がされている。

ブレーキ・システムはフロントが対向6ポッドキャリパー、リアで対向4ポッドキャリパーが装備され、フロント、リア共に2ピースフローティングディスクが組み合わされる。

キャビン内はフル溶接留めの21点式のロールケージが張り巡らされ、ドライバーを強固に保護し、剛性も大幅に向上させている。

勿論フロントと後述のリアのパイプフレームとも繋がっている。

リアもフロントと同様、レギュレーションで決まっている所までオリジナルのモノコックを残し、パイプフレーム化、サスペンションも車軸式からダヴル・ウィッシュボーン方式に。

外から見えるピラー以外の外装は全てドライ・カーボン製だ。

幅広のタイヤをカヴァーする為、レーシング・ワイドボデーカウルを装着している。

フロントはレギューレーション一杯一杯の幅2100mmのアンダーパネルから始まり、フルフラットボトム、リアディフューザと空力も抜かり無い。

リアウイングも幅2000mmの大型ダブルフラップタイプだ。

2段目のフラップはサーボモーターにより可変し、ステアリングに付いているスウィッチで操作し、コーナリングやブレーキングでダウンフォースが欲しい時は立て、ロングストレートでドラッグ(空気抵抗)を少なくしたい時には寝かせる事ができる。

強大なダウンフォースを発生する為、パイプフレームにリジットマウントされる。

エンジンは3800cc、6気筒まで許されているが、田村はパワーは欲しいがフロントヘヴィーになるのを嫌いオリジナルと同じく直列4気筒を選んだ。

基礎体力のあるホンダのK24Aをベースにチューニングした。

高回転化の為ヘッド動弁系は同型スペックRの物を流用。

米国製ボア&ストロークアップキットを使用し、標準のボア×ストローク 87×99mmから90×106mmにアップされ、排気量は2400ccから2700ccまで引き上げられている。

クロスレシオなミッションによりパワーバンドをほとんど外さない為、元々付いているワイドなトルク、パワーバンドが売りの可変バルブリフト&タイミング機構はキャンセルされている。

動弁系のフリクション低減にもつながっている。

バルブとコンロッドは超軽量チタン製で高回転に対応させている。

圧縮比は15に迫り、レース用超ハイオクタンガソリン仕様になっている。

このハードチューンドエンジンは街乗り仕様に付けてるのと同じメーカーのECU、フルマネジメントシステムで制御され実馬力で410馬力を9100rpmで発生し、レヴリミットは1万rpmに設定されている。

スロットルは4連独立電子スロットル。

排気はフルチタン。

4-1集合のエキゾースト・マニホールドから出口までフルストレートパイプ。

出口にはエンジン破損時の破片飛散防止の厚さ10mmの触媒が付けられている。

出口はリアディフューザーの上のセンターだ。

ドライサンプ化され、エンジンはギリギリまで低く、そして後ろにマウントされている。

組み合わされるトランス・ミッションは7速シーケンシャルギアボックス。

ギアレシオは

1速3,1

2速2,47

3速2,0

4速1,7

5速1,44

6速1,22

7速1,08

と多段を生かしたワイドレンジかつクロスレシオだ。

全開アタック時に7500rpmを割る事は無い。

ギアチェンジはステアリングに付いているパドルで行う。

高出力サーボモーターがIパターンのレヴァーを前後させる。

Iパターン・レヴァーでもシフト操作は可能だ。

ECUと連動しておりアクセル全開のままクラッチ操作も無しにシフトアップが出来る。

シフトダウンもまたクラッチ操作、ヒール&トゥの必要はない。

ECUが電子スロットルをコントロール、ブリッピングをオートマティックに行うのでかなり少ないショックでシフトダウンができる。

超ハイレスポンスな電子スロットルと高い能力を持つECUによる死角の無いエンジンコントロールとシフトコントロールだ。

実質クラッチペダルを操作するのは発進、停止時のみだ。

その為、ブレーキペダルはやや横長のペダルになっており、このマシンでは田村は左足でブレーキを踏む。

街乗り仕様とは打って変わり、アナログ式の追加ゲージが並ぶのでは無く、液晶ディジタルマルチディスプレイに情報は集約されている。

エンジン回転数、ギアポジション、水温、油温、油圧は勿論、排気温度と空燃比、負荷の大きいミッションオイル油温、デフオイル油温も表示できる様にしている。

ECUは主に空燃比と排気温度の情報から燃調マップの変更を行い目標空燃比になるように制御している。

タイヤはこのレースでは圧倒的なシェアのメーカーの物を使う。

最大幅300mmまで許されているので前後共300サイズを選ぶ者も多いが田村は最小限の太さのタイヤで性能を引き出して走る事に美学を感じている。

その為の直列4気筒でもある。

リアこそ上限近い290/620R17だがフロントは250/610R16だ。

それぞれ17インチ、16インチサイズの最大である。

田村のライヴァルとなるトップ勢の6気筒のマシン達は前後共300/640R18を履く。

田村のサイズは4本合計になるとそれよりかなり軽く、500馬力オーバーを誇る6気筒勢に対抗するべく、少しでもドラッグを減らそうという意図がある。

それでも6気筒勢にはストレートで劣るがコーナーワークで詰め寄る田村は観客からの注目も高くファンも多い。



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5話

発売開始から約40年経つAE86、日本国内での台数は年々減り、貴重なクルマとなってきた。

走行距離関係無く相場は発売していた頃の新車価格の6倍を超える様になってきた。

そのAE86をベースに大改造を施した田村のマシンは余裕で伊国製スーパーカーが買えてしまう程の金額が掛かっている。

バトルレヴォリューションAE86アンリミテッドクラスは資金力、マシンスペック、そしてハイスペックなマシンを操るテクニックが問われるクラスだ。

田村はそのやった者勝ち、持った者勝ちのこのレースに惹かれている。

参戦しだして約1年、年間5戦あり田村の優勝はまだ無い。

やはりパワーのある排気量上限一杯の6気筒エンジンのマシンが有利であり田村の最高順位は2位だ。

それでもインフィールド・セクションでのセクション・タイムでは田村の4気筒マシンが上回る事が多々あり、上手く立ち回れば勝てると田村は思っている。

やはり田村にとって肝なのは、なんと言ってもコーナーワークと劣るパワーで如何にストレートスピードを稼ぐかだ。

理想のコーナリングのイメージをしながら田村は自宅のベッドの上で起き上がった。

キングサイズのそれには田村以外にまだ眠りから覚めていない寝息を発てている女がいた。

田村の自宅は市街地からは北の位置する山岳地の始まりにある。

緩い斜面に建てられている田村の家は玄関が2階にある。

洋風モダンスタイルのその家は2階が丸々リビング・ルームとなっている。

日本風に云うと広さ約100畳のそのリビングは半面ガラス張りで徳島を北から南まで貫通しているバイパスが一望できる。

ガラスは電動ブラインド・カーテンで完全遮光もできる様になっている。

玄関から入って手前側がリビングスペースになっており、詰めれば20人は座れるソファーとそれにコの字に囲まれたテーブルがある。

そのコの字が口の字になるような位置に壁があり、その壁には110インチの大画面LEDハイヴィジョンテレビが掛けられている。

ちょうど部屋の真ん中辺りには1階に降りる階段があり、その奥は主に食事に使うスペースだ。

食卓とは別にこちらにも90インチ大画面テレビやテーブル、チェア等が並ぶ。

巨大なアイランド・キッチンには一通りに調理器具が備えられている。

一番奥には1000Lクラスの大型冷蔵庫、収納庫が備えられている。

一階に降り外に繋がるドアを開けると直径7メートルに及ぶ円形のジャグジーが埋め込まれている。

ジャグジー浴槽内には数種類のバブルやジェットが備えられていたり、場所によって深さが違っている。

浴槽横にはシャワースペースもある。

周りはマジック・ミラーで目隠しされている。

電動格納式の屋根も有り、少々の雨天にも対応可だ。

1階は2階程の面積は無く、殆どがベッドルームとなっている。

ベッドルームにも40インチのテレビ、100Lクラスの冷蔵庫が有る。

またシャワールームも有る。

ベッドルームの横はドレッサールームが有り、衣類が収められている。

そしてドレッサールームの照明スイッチを、あるパターンで押すとドレッサールームの床が電動で開き、地下の隠し部屋へと繋がる階段が現れる。

ここまでの豪邸、田村の金で建てられた物では無い。

田村の負傷後すぐ後、国連軍の一斉武力介入により、強制的に武力による極東アジアの治安維持は進んだ。

それにより、民間軍事企業の出る幕は無くなり、仕事は激減した。

田村はそれを受け、「そろそろ普通に働くか」と思い今勤めているアイランド工機(株)に就職した。

しかし政府は田村に自衛軍時代から目を付けていた。

身体能力、戦闘能力が非常に高く、口が堅い。

先の大戦後、日本は色々な機関を民営化した。

警察も漏れなくである。

公営時代より形骸化、汚職がかなり問題となっており様々な犯罪や問題が手付かずになってきていた。

それを良しとしなかった政府は国連軍による極東アジアへの武力での治安維持に習い、その筋に優秀な人間を直接雇い、問題解決に当たらせた。

全国にまだ50人そこそこだが、その内1人が田村だ。

勿論世間的には極秘だ。

警察的な役割以外にも政治的に不都合な不具合が発生した場合にも声がかかる。

近頃では警察にすら手を出す事も増えてきた。

非公式で汚く、危険な仕事の見返りとしてこの豪邸と多額の報酬を田村は受け取っている。

ドレッサールームから繋がる地下の隠し部屋はその仕事道具となる銃器、弾薬や装備品の収納庫となっている。

武器庫の横は100メートルのシューティング・レンジになっており銃の試射、照準器の規正が出来る。

地下にある為、グレネード等の榴弾等を使わない限り外に音が漏れる事は無い。

この様な事情で建った家だ、セキュリティーは完備でセキュリティーAIが侵入者を危険と判断したり襲撃者が訪れた場合はアクティブ・ディフェンスシステムを起動、家の周りに設置されている8つの7,62mm口径の自動機銃で障害の排除を始める。

全ての窓は防弾シャッターが装備され、起動すれば1秒以内に閉じることができるのだ。

田村は上体を起こし明日の行く美作国際サーキットのコースでの走行をイメージトレーニングしていた。

凶器が突然、水気を帯びた暖かみに襲われる。

目覚めた女が田村の凶器を含んだのだ。

女の名は大蔵春子、政府から派遣されている田村の世話役、補佐役だ。

もっともこの名が本名なのかどうかも分からんが、この家での家事や食事、そして「仕事」の準備や作戦行動中の無線等による支援、クルマの手配、運転等が役割でこの家に住み込んでいて田村と共同生活している。

田村と同じく防衛校卒業、自衛軍従軍の経歴を持ち、実戦経験も有るそうだ。

平均的な自衛軍の兵士以上の能力は有るはずだと説明を受けている。

確かに有能だ、つい先程までソのつもりが無かった田村だが、巧みな蛇使いにより凶器は瞬く間に臨戦態勢になった。

春子は無口だとまではいかないが口数は多くない。

特に田村との戦闘時は。

何も言わず上体を起こしていた田村を再び押して寝かし、跨がる。

気は短い様でもう田村の凶器は彼女の密壺に収まった。

田村とは同年代だが、どうやら田村より欲は強いみたく、時間に余裕がある時は強襲されるのが常だ。

田村からは殆どアクションする事なく春子が一方的に攻めまくり、この朝の戦闘は終わった。

「何か軽く作るわ」

部屋着を着けた春子はキッチンに向かった。



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6話

一台のトラクタ(トレーラーヘッド)がトランスポーター仕様のトレーラーを牽引し、山道を駆けている。

トラクタはスウェーデンのスカニア製、R730だ。

16リッターV型8気筒ターヴォチャージドディーゼルエンジンは名の通り最大出力730馬力、最大トルクは356kg/mを発生させる。

その強大なエンジンは14速のトランスミッションと組み合わされ、坂道であろうと重量のある車体と牽引するトレーラーをグイグイ引っ張る。

「TAM(タム)そろそろ着くぞ」

スカニアR730を運転する浅田自動車の社長はスリーパーキャブならではの大きな寝台で仮眠していた田村を愛称で呼び、起こす。

「あぁ、すまんね」

フロントガラス越しに美作国際サーキットまであと数キロだという看板が見えた。

ナビ・シートでウトウトしていた浅田の息子も顔を上げる。

今日は練習走行だ。

時刻は6時、ゲートオープン直後に着くのを狙って出発したが今回も思惑通りに到着しそうだ。

田村は車内備え付けの小型冷蔵庫から米国産のエナジー・ドリンクのモンスター・エネルギーを取り出し、カラフルなプルタブを一気に引き起こす。

薬事法により内容がスポイルされている日本国内版の物では無く、本国モノだ。

内容量500ccのそれを飲み干す頃に美作国際サーキットの入口ゲートに到着した。

ライセンスをゲートの係員に見せて入場、パドック・エリアへ向かう。

既に数台のトランスポーターがマシンやタイヤ等の荷下ろしをしていた。

田村もトラクタのキャブから降り、準備をはじめる。

浅田自動車のトランスポーターのリアゲートは垂直リフトになっているのでマシンや荷物、工具等の荷下ろしが楽だ。

暖気前のフルチューンドエンジンと強化クラッチでの低速移動はかなりギクシャクするので3人で田村のマシン、AE86レースマシンを押してピットに入れる。

4セットのセミスリックタイヤ、雨の天気予報ではなかったが念のために持って来た1セットのレインタイヤがキャスター付きのタイヤラックに乗せられピットの壁際に鎮座する。

浅田親子が田村のマシンを3基のジャッキでジャッキ・アップする。

マシンの下に潜り込む訳では無いのでリジットラックは使わない。

軽く足周りをチェックした後、タイヤを外し冷間空気圧をチェック、タイヤ・ウォーマーを巻く。

その後エンジンを始動、トランスミッションも各ギアに入れ、ジャッキ・アップした状態で暖気する。

その間に田村は広いサーキット内を移動するパドック・カーとして持ってきたホンダのミニバイク、エイプ100に跨がり、事務局へと向かう。

これも浅田の親父の作でエンジンは125ccボアアップキット、幾ら高回転まで回してもバルブ・サージングが起こらない強制バルブ開閉式機構のデスモドロミックツインカム4バルブヘッド、インジェクション化+フルマネジメントシステムで武装、ワイドなレシオのミッションはクロス化、前後社外サス、対向ポッドキャリパー等で無駄にフルカスタムされている。

事務局で予約していた走行券を購入、自ピットへとエイプで戻る。

「パドック内移動用にしてはオーヴァースペックだ」と思いながらキルスウィッチでエンジンストップ、邪魔にならない所に停める。

田村のマシンのシートには浅田の息子がノートPCを抱えて座っている。

PCとECUを接続、エンジンの状況を確認しながら暖気している。

エンジン冷却水温、油温、トランスミッションとデファレンシャルの油温を理想値目指し温める。

流石に無負荷のミッション、デフの温まりは悪い。

アウトラップで仕上げるしかない。

暖気の様子を眺めた後、田村はスカニアのキャブに入る。

レーシングスーツに着替えるのだ。

スリーパーキャブの中でもハイエンドのトップラインキャブの為、窮屈な思いをする事無く着替えれる。

有名メーカーのフラッグシップモデルで身を固めた田村は再びピットに戻り、マシンの後ろに立つ。

浅田の息子が小気味良くエンジンをブリッピングさせている。

その乾いたサウンドを肌で感じ、田村は体中の血が沸く様な感覚に陥る。

至福の瞬間だ。

出撃前の戦闘機の如く、リアウイングの可変フラップの動作チェックも行われる。

暖気が完了、一旦エンジンはストップ。

浅田親子がタイヤ・ウォーマーが巻かれたままのタイヤをマシンに装着する。

今回田村はサスペンションの不等ピッチコイルスプリングを変更した。

スプリングレートこそ大きく変わらないものの、ピッチが異なる。

中速域以下での初期ストロークが柔らかく、ダウンフォースが効く高速域では粘りのあるセッティングになっているはずだ。

走行枠開始10分前。

田村はヘルメットと、セットになっている頭部保護システムのHANSデバイスを着ける。

マシンのフルバケット・シートに座り、6点式ハーネスで身体を固定する。

「TAMさん、エンジンかけて!」

と浅田の息子が。

メイン・スウィッチをON、セルスターターボタンを押す。

暖気できているのですんなりエンジン始動。

ナビ・シート側のドアを開け、浅田の息子がフロアに置いていたノートPCを操作し、ECUのログモードを起動、各パラメーターの記録を始める。

田村はフルカラーのディジタルマルチディスプレイを睨む。

横長の画面上半分にバー・グラフが2本並んでいる。

上側のバー・グラフがタコ・メーターだ。

スケールは3000rpmから始まり5000rpmまでは圧縮表示、6000rpmから11000rpmまでが拡大表示、レヴリミットの10000rpmからはレッドゾーンになっており、9600rpmからイエローゾーン、エンジン回転が9500rpmをオーヴァーするとディスプレイ枠に並んだLEDが外から順に点灯、9800rpmで全LEDと中央の大型LEDがフラッシュ、レヴリミットが間近なのをアッピールする。

下側のバー・グラフは油圧計だ。

画面下半分はエンジン水温、油温、ミッション・デフ油温、バーで表示されない3000rpm以下の回転を把握する為の数値で回転数の表示がされる。

走行枠開始2分前。

タイヤからタイヤ・ウォーマーが外され、ジャッキダウン。

浅田のオヤジがピットロードに誘導、同時に「ゼッケン86の分だ」と言いスタッフに走行券を渡す。

やはりレース前だ、平日ながらレースで同クラスのライヴァルのマシンも数台練習に来ていてピットロードに並んでいる。

ピットロード出口に居るコース・マーシャルがstopボードの掲示を辞め、シグナルがグリーンになった。

先頭に並んでいたライヴァルのマシンが勢い良く飛び出していく。 

田村も4000rpmでクラッチをミート、飛び出す。

せっかくタイヤ・ウォーマーでタイヤを暖めているのだ、ダラダラとアウトラップを走る訳にいかない。

美作国際サーキットコースは600mのメインストレートと700mのバックストレートをバリエーションに富んだ13のコーナーで繋ぐテクニカルサーキットだ。

そこそこの長さのストレートとテクニカルなコーナーが混在し、マシン、ドライバー共にポテンシャルが求められるコースだ。

田村の実力的に8割のペースでアウトラップを回り、計測1周目。

最終コーナーを立ち上がり、ホームストレート。

 

田村はアクセスペダルを底まで踏み抜いた。



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7話

4速で最終コーナー出口を立ち上がった田村のマシンのエンジン回転は瞬く間に1万rpmのレヴリミットに到達、右側パドルを人差し指と中指でパンと弾く。

ECUがシフト操作を検知、ミリ秒単位でセッティングされた点火カットを行う。

ミスファイヤによりエンジン出力が途切れ、駆動力が抜けた瞬間にサーボモーターがシフトレヴァーを押す。

マフラー出口から火柱を上げ、一瞬で4→5速へのシフトアップが完了、メインストレート上での加速が続く。

再びレヴリミットが接近、マルチディスプレイメーターのLEDランプが激しくフラッシュ、レヴリミット間近なのをアッピールする。

6速へシフトアップ。

200km/hを超えたところで右の第1コーナーが迫る。

ステアリングのボタンを操作、リアウイングの可変フラップを起こす。

ダウンフォースが増加、僅かにリア車高が下がる

計測1周目、新サスペンションセッティングなのもあり少し余裕を持ったブレーキング。

4速までシフトダウン、ステアリング舵角を入れていく。

新しいセッティングはストローク初期の僅かなストローク量だけが以前より柔らか感じた。

いつもの走行時より少し早くインに付いた。

「これはいい」

田村のキリっとした口元が緩む。

すぐに迫ってくる左、2コーナーも同じ印象で通過した。

続いてフル・スロットルで通過できる超高速S時、そして急な登り勾配の右コーナー。

後でログを確認すれば分かるがコーナリングスピードは上がっている。

バックストレッチ、可変フラップを寝かし、最高速を狙う。

ここでこのサーキットで唯一7速まで使う下り勾配のストレート。

続いて右ヘアピンだ。

可部フラップを起こし、220km/hオーヴァーからのフル・ブレーキング、2速までシフトダウン。

ヘアピンに進入。

やはり回頭性が良い。

次の2連続90°左コーナーも調子良く駆け抜ける。

短いストレートの後、左→右の連続ヘアピン。

新セッティングの勝手が分かってきたところで少しずつ攻めていく。

回頭性がいいので少し速いスピードで進入でき、早いタイミングでスロットル・オープンできる。

中高速の、く、の字の右コーナー、僅かにスロットルを戻してクリア、ストレートと言えない様な僅かなストレートの後最終コーナー。

コース幅を最大に使い通過する。

再びメインストレート。

可変フラップを寝かしフル・アクセレーション。

タイムは、、、自己ベストに僅かに劣る。

が、計測1周目の調子を伺いながらにしては上出来だ。

以前までの悩みだったダウンフォースの少ない低速コーナーでのアンダーステアが改善されていて、なおかつ中~高速のハンドリングも良い。

計測2周目、1周目より攻める。

一段踏み込んだ新入、加速。

ダウンフォースのバランスからなのか低速ではオーバーステア気味、高速ではアンダーステア気味の挙動なのは以前と変わらないがほんの少し限界が高い。

タイムはベストを僅かに更新、ややブレーキとエンジンを労りながら3周目を走りピットイン。

「TAMさんやったね!更新だ!」

浅田の息子がタイヤのエア・チェックをしながら叫ぶ。

以前のセッティング時より少しリアタイヤの内圧が上がってる。

ベストな圧に合わせ、ピットアウト。2コーナー立ち上がりからはフル・スロットル。

リアの挙動が先程より安定した印象で更にアグレッシヴにスロット・オープンできそうだ。

裏ストレート前右コーナー入り口で同クラスの86、ライヴァルのマシンに張り付かれた。

アウトラップだった田村は最小限のライン変更でインを開け譲る。

ここ3年連続でシリーズチャンピオンのドライバーのスマイリー・メイだ。

本名は不明、このクラスでの紅一点でマシン、ドライバー共に非常に能力が高く、ハイレヴェルなこのクラスで3年連続のタイトルを手にしている。

エンジンはレギュレーション上限のV型6気筒3800ccだ。

日産のVQ37VHRがベースでビックボア、ショートストローク化、一通りのフル・チューニングにより軽く500馬力を超えてるとの噂だ。

車体側も田村のマシン同様、レギュレーションの許す限り、手が入っている。

レース前の練習、調整で走行しているのだろう。

「これは良い実戦テストになる」

そう思った田村は立ち上がり重視のラインでバックストレッチ前コーナーを立ち上がり、今度は逆に田村が張り付く。

上手くスリップに入れた。

可変フラップを寝かし、フル・スロットル。

しかしエンジンパワーの差によりジリジリと離される。

しかし田村は慌てずに加速し、ブレーキング・ポイントを睨む。

そしてブレーキング・ポイント到達、減速に入る。

重量バランスに優れる田村のマシンがブレーキングでは僅かに詰め寄る。

その後の右ヘアピンでもコーナリング性能の上がった田村のマシンに軍配が上がった。

続く2連続左コーナーでもベタベタに張り付く。

しかし相手はチャンピオン、抜くには至らず、短いストレートだが高度なアクセルワークと強力な加速力でまた離される。

連続ヘアピンで少し詰め寄る。

そのまま差は変わらず最終コーナー立ち上がり。

メインストレート、再び離される。

ダウンフォースの良く効く速度域の1コーナー、2コーナーでは重量バランスの差が大きくは出ず、少し詰めよるだけに留まる。

高速S字はつかず離れず。

バックストレッチ前右コーナーでは詰め寄る。

立ち上がり、前周より早いタイミングで可変フラップを寝かし、接触寸前まで接近してスリップの恩恵を前周の時より更に受けようとする。

バックストレッチ、前周より離されない。

そのままスマイリーに張り付いたままコントロールライン通過、ベストタイムを更に更新。

田村はこの楽しいドッグファイトを続けたかったが、まだレース前だ。

お互いここで力んでつまらないトラブルが起きても良い事は無いし練習走行での勝敗はリザルトに残らない。

「勝負はレース当日だ」と思いを込めながら、ヘッドライトスイッチを押す。

パッパッとパッシング、少しペースを落とす。

スマイリーもそれが見えたのか、1コーナーのブレーキングでブレーキランプを3回点灯させ1コーナーに進入した。

ピットイン、浅田の息子が

「TAMさんやっつけれそうじゃん!何でヤメたの?」と走行してる他のマシンの排気音に負けじと叫ぶ。

「今日なんかあってハデにメゲたらウチはオレとお前しか居ねぇのにレースまでに直せねぇだろ、楽しみは取っとけ!」

と親父が怒鳴る。

田村はその後、練習走行枠を2枠走行した。

ピットイン・アウトのタイミングからか、この日再びスマイリーとランデブーする事はなかった。

セッティングを繰り返し、僅かだが更にベストタイムを更新した。

タイヤも3セット使用。

走行枠は全て午前中で11時過ぎには全走行が終わった。

3人でサーキットクラブハウスのレストランへ行く。

様々な料理揃うビュッフェ・スタイルのレストランで食事する。

1コーナー~2コーナーが眺めれる席でガラス張りの席で皿にてんこ盛りにしたミートソースパスタを頬張りながら、2輪走行枠で走行している2輪レーサーを眺める。

「アレも楽しそうだ、チャレンジしてみたいな」

と思いながらパスタを平らげる。

ビュッフェ・スタイルなのをいいことに、次々と料理を喰らう。

満腹になった所でレストランを出る。

「汗だくになったろう?風呂入ってこいよ撤収の準備しとくよ」

と浅田の親父に言われる。

「ありがとう、行ってくる」

と会員のみが立ち入れるVIPエリアへと行く。

広大とまでは言えないがまぁまぁ豪華な個室浴場が多数あるのだ。

脱衣場で着けてる物を脱ぎ浴室へ。

頭から身体と順に洗い、湯船に浸かる。

2輪レーサーの1万4千rpmを超える心地よいエグゾースト・ノートを聞きながらの風呂は格別だ。

浴室のガラス張りの天井を眺めていたが気配を感じ、振り向く。

1枠目でランデブーしたスマイリー・メイが入ってきていた。

風呂だから当然だが何も着けてない。

同じ日にサーキットに居て浴室を使ってる時は、どうやってるのか脱衣場入り口の鍵を開けて入ってくる。

「後輩くん、めっちゃ速くなってるじゃん~先輩がヒントあげすぎたかな?」

メイは湯船に入ってくる。

半回り程年上のメイはサーキットにおいても田村の先輩だ。

そして今となってはライヴァルでもある。

初戦において4位入賞して大型ルーキーとして界隈を賑やわせた田村はメイの目に留まった。

それからはコース上ではテクニックとマシンの性能をぶつけ合い、VIPエリアの浴場では身体をぶつけ合う仲となった。

田村に向かい合う向きで湯船の中の田村に跨がる。

「バックストレッチのスリップ、見事だったわ、それとあのコーナリング、セット変えた?」

「うーん、まぁチョイと、、、」

メイは唇で田村の唇を挟み、軽く引っ張る。

開いた田村の口の中に舌をねじ込み、中の舌を突っつき回す。

田村も応戦開始、メイの舌をえぐり取るように自分の舌ですくい上げ、絡める。

メイは田村の凶器に花芯を擦り付ける。

瞬く間に田村の凶器は戦闘モードに。

メイの身体は引き締まっているが、メリハリがあり有るモノは充分に有る。

田村は並列ツインで装備されるそれの片方を揉み上げる。

湯船の中でも分かる程にメイの蜜壺からはラヴジュースが溢れ、潤滑準備が出来てきている。

「でも、まだ負けないわよ」

メイは田村の凶器を蜜壺にあてがい、飲み込む。

田村の顔面に熱い吐息を掛けながらアイドリング・スタート。

お互いに、ストロークを楽しむ。

アイドリングから始まり、レッドゾーン寸前まで様々な回転域を、様々なドライヴィング・スタイルで楽しむ。

メイはレヴリミットが作動したかの如く震え、田村は盛大にアフター・ファイヤーしそうになる。

メイは密壺から田村の凶器をリリース、湯船に潜り込み、凶器を含みストロークする。

田村は盛大にアフター・ファイヤー。

メイは田村の放ったモノをそのままインテークする。

「TAM、貴男と競走するのも、こうするのも好き」

「当日は真剣勝負楽しもうね」

「ええ勿論、大先輩」

メイは少し湯船に浸かった後、立ち上がる。

「勝っても負けても、またこうシてね」

メイは浴室を去った。

田村はもう少し湯船を楽しんでから脱衣場に向かった。

メイは既に居なく、入り口の鍵は掛かっていた。

合い鍵でも持ってるのだろうか、、、



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第8話

「タイミングが悪いな…」と

バトルレヴォリューションAE86ワンメイクレースまで1週間を切った日の夜、外見からは全く判別不能なCNE規格EN-B7相当の防弾仕様(銃口-標的間距離15m±1mで発射された7,62mmNATO弾クラスのフルサイズ・ライフル弾を防げる)のワイド・ロング・ハイルーフボデーのトヨタ・ハイエースの左後部座席で揺られながら田村は思う。

今夜は久し振りの田村が最も得意とする「お仕事」なのだ。

今回のミッションの内容は至極単純、目標を皆殺しだ。

徳島に本拠を置き、警察の民営化と同時に急激に勢力拡大、成長したジャパニーズ・マフィア、石川田興業と癒着している県警のマル暴の人間だ。

今夜、石川田が持つ屋敷でマル暴への接待パーティーが行われる。

そこを田村が強襲、皆殺しにするのだ。

報酬は軽く豪邸が建てる事ができる程らしい。

また現地で金品が入手できればそれらも報酬になる。

今、大蔵春子が運転する特殊仕様のハイエース、窓はフルスモークで外から内部は見えないが戦闘用機材でてんこ盛りになっている。

まずは前から、フロントバンパー内には高性能カメラ・ユニットと一体になった米国GE社のM134ミニガンが装着されている。7,62mmNATO弾を使用、6本の銃身を持つ電動式ガトリングガンだ。

射撃速度は毎分2000~4000発で調整でき弾薬は3000発搭載されている。

ステアリングに付いたボタンにより操作、照準は高性能カメラ・ユニットによりフロントガラスにHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)で投影される。

銃身向きは常時は車体同軸だが運転者が装着するヘッドセットが眼球の動きや脳波の読取り、水平方向には左右各20°垂直方向にも上下各20°電動ターレットにより動く様になっている。

平常時はバンパーに隠れているが使用時はバンパーを撃ち破る。

このミニガンと弾薬により本来のエンジンルームは圧迫され、エンジンは車体中央にミッドシップマウントされる。

4トンを軽く超える車体に可能な限り機動性を持たせる為にオリジナルの直列4気筒ディーゼル・ターボ・エンジンの1GDのヘッドを2基使用し、クランクケース、シャフトをワンオフで製作した水平対向8気筒ツインターボが搭載されている。

最大出力は450馬力、トルクは100kg/mにも達する。

政府の極秘設計局が設計~製作した物だ。

ミッションはこれも政府の設計局の作で7速ATギアボックスで電子制御センター・デファレンシャルを内蔵、全輪を駆動する。

前後デファレンシャルも電子制御で状況により効かせ方を調整できる。

最大の駆動力が必要な時は全デファレンシャルを完全にロックする事も可能だ。

搭乗人数は運転者含め3名、運転席、助手席と今田村が座る左後部座席のみだ。

後のスペースは全て戦闘用機材だ。

後部座席の真ん中と右側はフロントバンパー内の物と同じM134ミニガンと同軸搭載されるの40mm口径の米国サコー社Mk19オートマチック・グレネードランチャーの複合ターレットだ。

使用時はルーフが開き電動ターレットがせり上がり360°攻撃可能なリモート銃座になる。

ミニガンの弾薬は6000発、グレネードランチャーの弾薬は100発搭載される。

これも運転者が操作できるが、運転しながらの射撃は難しいので基本的に後部座席に座った者が操作する。

後部座席の後ろの荷室部分にはこれもルーフからターレットが飛び出すリモート・ミサイルランチャーが装備されている。

FGM-148 ジャベリン歩兵携行式多目的ミサイルのシステムを流用した物だ。

基本的には対地攻撃用のミサイルだが低空、低速飛行時のヘリコプター等なら限定的に攻撃可能性だ。

既にランチャーに装填されている1発とリボルバー式自動装填装置に搭載される8発の計9発の多目的ミサイルを搭載している。

この車体後部のミサイルランチャーも車体中央の銃火器同様運転席か後部座席で操作する。

車両が停車状態ならば支援型AIのサポートも有るので、全ての兵装を一人で運用する事も出来る。

銃火器以外にも偵察、戦闘支援用のリコン・ドローンも多数搭載、テールウィンドウや車体底から飛び立てる様になっている。

春子はこの最新鋭の兵装を満載したハイエースの扱いに長けていていつもこの車内から田村をサポートする。

今回のミッションは警察、マフィア共に見せしめの意味も込めて行うので田村を潜入させ目標をすべて殺害、そのままにしておく予定だ。

出来るだけ残虐に殺害せよとの事なので今回はそれを考慮した装備選択を田村はした。

メインアームにはベルギーのFNハースタル社製の7,62mm口径のアサルトライフル、SCAR-Hだ。

本来なら室内での使用なので取り回しも良く射程的にもじゅうぶんな5,56mmNATO弾使用のSCAR-Lやそれ以下のサブマシンガンで良いのだが前述の通り残虐、オーバーキルする為にフルサイズのライフルを用意した。

なので弾薬も通常のフルメタル・ジャケットでは無くソフトポイントだ。

人体に命中すれば弾頭先端はマッシュルーミング…変形、破砕し、目標内部で運動エネルギーを効率的に伝えることにより、致命的なダメージを与える。

その上、只でさえ有効射程300Mを超える7,62mmNATO弾だ。近接戦闘、CQBの距離でヒットすればひとたまりもないだろう。

少しでも取り回しを良くする為に330mmのショート・ヴァレル仕様を選んだ。

強襲時は屋敷の電源を落とし暗闇になるので位置を悟られない様にフラッシュ・サプレッサー(消炎器)を銃口に装置している。

マガジンは標準の20連仕様からサードパーティー製の30連ロング仕様に変更、後部が透明のポリマー製で残弾数の確認が容易に出来る。

振り回し易くする為に各種オプション取り付け可能な20mmピカティーニ・レールには非可視赤外線レーザーサイトとホログラフィック・サイトのみを装着した。

田村はまだ米軍や自衛軍の一部のエリート部隊にしか支給されていないヘルメット兼戦闘支援デバイス搭載のヘッドセットが支給されている。

無線機機能は勿論、360°全周モニタリング可能な通常カメラ/暗視機能(ナイト・ヴィジョン)、振り向く事無く背後の確認が可能だ。非可視レーザーサイトはナイト・ヴィジョンで可視化できる、それをヴァイザーに投影する事によりナイト・ヴィジョンはもちろん、非可視レーザーを普通のレーザーサイトと同じ様に使える。

またリコン・ドローンとのデータ・リンクにより遮蔽物等で自分からは見えない敵の位置を補足したり、外見で分かる範囲に限られるが敵の装備品の把握。

3機以上のドローンが必要となるが自分の姿をサードパーソン・シューティング・ゲームの3人称視点の様に後ろから見る事も出来る。

そしてレーザーサイトを使用する事により、照準位置をドローンに確認させ、着弾点をヴァイザーに表示する事が出来る。

室内戦闘ではこれが一番有り難い機能かもしれない、銃だけ遮蔽物から突き出し、照準~射撃できる。

これらのデバイスを持たない者に対して特に暗闇では一方的に照準、射撃できる。

サイドアームには米国Z-Mウェポンズ社製のストライク・ガンを選んだ。ベストセラーの1911を基に近代化された2011プラットフォームがベースのカスタムガンだ。

弾薬は1911と同じ45ACP、弾頭はホローポイントだ。

これも人体に命中時、弾頭先端は変形、破砕する。

このストライク・ガンは近接戦闘に特化されており、銃口を押し付けたり押しのけられたりしてもスライドが後退せず作動するスパイク付きの銃口になっており、グリップ底部にも格闘用のスパイクが付いている。

オリジナルの1911の弱点であるマガジン装填弾数をダブル・カラム化により克服、1911の7発から12発に増えている。

俗に言うハイキャパシティ・ガバメントだ。

SCAR-H同様フレーム前部にある20mmピカティーニ・レイルには非可視レーザーサイトが装着されている。

これを右腰のカイデックス・ホルスターに納める。

そして最後の砦のバックアップ・ガンはサイドアームと同じ2011プラットフォームのSTI社のタクティカル3,0だ。

弾薬、マガジンはストライク・ガンと共通する。

銃身長95,2mmのショート・ヴァレルのそれはサブ・コンパクト・カテゴリーに分類される。

コンパクトなそれを田村は左右どちらかの手でも抜けるようにほぼ腰の位置の背中側左右のバックサイド・ホルスターに1丁ずつ持つ。

田村には利き手は無く基本的には銃は右手で持つが、どちらの手でも同じパフォーマンスを発揮できる。

計4丁を携行と大袈裟かと思われるが、油断してる敵を闇討ちするとは言え室内での1対多数の戦いになる、あらゆる可能性を想定した結果だ。

今回のミッションは夜なので夜間迷彩服に身を包み、上半身には防弾プレートキャリアを着ける。

今回の敵はライフル等は使用してこないと思われるのでクラス3A、44マグナム程度までの拳銃弾に対し防弾効果がある物にした。

プレートキャリアには各種装備を状況に応じて装着できるモジュラー・システム付きなのでSCAR-Hのスペアマグを携行するポーチを付けている。

身体の正面、腹の前にSCAR-Lのスペア・マガジンをファスト・マグポウチで携行する。

従来型の布やナイロン製のマグポウチとは異なり、樹脂製のオープントップ型のマグポウチなのでフラップ(抜け止め)を捲り上げる手間が要らない。

マガジンはゴムバンドのテンションで保持されているので、引っこ抜くだけでいい。

更にファスト・マグポウチ同士は重ねる事が出来るので限られた面積のモジュラーでも重ねる事により重ねた倍数のマガジンを携行できる。

これを腹の前のモジュラーに3列×2層に装着、6本のスペアマグを携行。

左腰にもSCAR-Hのマガジンを1本、サイドアームのストライク・ガン、バックアップのタクティカル3,0用のマガジンを3本、これら腰に付ける物も全てファストマグポウチで携行する。

ファスト・マグポウチはライフル用からハンドガン用まで各種マガジンに合うマグポウチがライン・ナップされている。

右腰のストライク・ガンを納めているカイデックス・ホルスターにも1スロットだけモジュラー・システムが有るのでそこにファスト・マグポウチを装着、サイドアーム兼バックアップのマガジンを1本。

銃器、弾薬は以上だ。

プッシュ・タガーナイフを2本、バックアップ・ガンと同様にどちらの手でも使える様にSCAR-Hのスペアマグの上のモジュールにカイデックス製のシースをマウントしそれに納める。

今回のミッションは短期決戦な戦闘を想定しているので機動性を重視し足首等にコンシールド・キャリー(隠し持つ)装備は全く無しだ。

市内郊外の安っぽい住宅街に1件だけ威圧感のある豪華な屋敷が建てられている。

監視カメラやセキュリティーシステムの類は既に政府の工作により正常に作動していると見えるが無効化されている。

その屋敷まであと200M程度の所で特装ハイエースは停車した。

春子は複数のリコン・ドローンを射出し侵入する予定の勝手口周辺を偵察する。

リコン・ドローンは良くイメージされるローターが4つ4端にあるクアッド・ローター機では無く、テニスボール程の大きさ、丸さの胴体内にローターはある2重反転ローター機だ。

丸い外核の上下に貫通する穴が開いており、その中に2重反転ローターがある。

下側の穴には十字にフラップが付いており、それの向きと2つのローターの回転差で姿勢制御をする。

ローターは穴の中で回転するダグデット・ファン状の配置の為、効率に優れておりローター先端で発生する衝撃波の発生を抑え静音化にも貢献している。

また障害物と接触してしまった時にローター破損のリスクもクアッド・ローター機より少ない。

外核部に各種カメラ、センサー類が装着されていて情報収集をする。

勝手口付近はクリアだ。

換気扇排気口からもリコン・ドローンが侵入しパーティー会場の様子をファン越しにだが確認する。

全員私服なので石川田興行の人間とマル暴の人間の見分けはつかない…皆殺し予定なので関係ないが。

しかし両陣営の重要目標は確認できた。

石川田興行の社長の息子の石川田陽介とマル暴の部長、瀬川龍太だ。

石川田の父親はこのような宴会事が苦手なのか、用心しているのか顔を出す事はない。

石川田はガリガリでひょろ長い細身長身の男だ。

瀬川は中肉中背といった具合だ。

石川田と瀬川の席は隣同士だ、ニヤニヤしながら談笑している。

更に隣には石川田の女が一人、自分に無い物に惹かれたのか整った顔だが太い女だ。

この女は民間人なので殺害許可は出ていない。

確認できただけで20人程居た。

盗聴を警戒しているのか派手なBGMを大音量で流しているが、逆に好都合だ。

一応は警戒しているのかバックアップ電源設備も有るのに完全に電気を切られても完全に真っ暗闇にはならない様に各テーブルにロウソクに火を灯している。

田村が降車、勝手口に接近。

同時に爆薬を抱えた自爆型のドローンが特装ハイエースから飛び立つ。

こいつが電線を吹き飛ばす。

非常時用バックアップ電源設備は特装ハイエースのジャベリン・ミサイルで破壊する。

直接照準が不可能な位置なのでリコン・ドローンからの誘導となる。

田村が勝手口のドアノブに手をかけた…鍵はかかってない。

トラップを警戒し、ドアの全周にプッシュ・タガーナイフを注意しながら通したがどうやらかけ忘れの様だ。

少し開き、リコン・ドローンを1機侵入させる。

パーティー会場までの廊下はクリアだ。

換気ダクトから侵入したリコン・ドローンからも田村の装着するヘッドセットに情報が送られてくる。

SCAR-Hを構え、パーティー会場のドアの前まで行く。

セレクター・レバーがセミ・オート(半自動)になっているのを確認、

「電源、カット(破壊)してくれ」

春子に指示する。

「OK」

特装ハイエースのルーフ後部からせり出したミサイル・ランチャーから現行主力戦車の上面装甲すらも貫く成形炸薬弾頭が発射される。

着弾と同時に電線に張り付いた自爆型ドローンも自爆、爆発の轟音と共に電源が落ちる。

その瞬間から0,2秒足らずのタイミングで田村はパーティー会場入り口のドアを蹴破った。

爆発音と照明が消えた事に気が取られた中の人間達は誰一人と僅か0,2秒足らずのタイミングでドアを蹴破った田村に気づけなかった。

蹴った足が接地するまでに照準は田村に一番近かった男の頭部に合っていた。

僅か4m…

引き金が引かれる。

ハンマー・スプリングの張力がシアによって開放され、ハンマーは勢い良くファイアリング・ピンをブッ叩く。ファイアリング・ピンはプライマーをド突きパウダー(火薬)に点火、燃焼開始。ケース(薬莢)内の圧力が一気に上昇、弾頭が押し出されてヴァレル(銃身)内で加速、マズル(銃口)から飛び出した時には音速の2倍以上、710m/sまで加速していた。

田村から見て真横に向いていたその男の頭部にソフトポイント弾頭は0,006秒足らずで到達、この至近距離において7,62mmNATOの前では頭蓋骨など紙同然、容易く頭蓋骨を貫通、脳ミソに到達。弾頭はマッシュルーミング(変形)を開始し加害面積を増やす。衝撃で眼球は破裂しながら飛び出し、鼻の穴と口からも色々と飛び出す。脳ミソはグッチャグチャに掻き回され、着弾時よりずいぶん前投影面積が増えた弾頭は反対側の頭蓋骨の大部分を吹き飛ばす。そして中身を盛大にブチ撒く。

文字にすると非常に長いが屋敷の電源落としてからこの時点で0,215秒程、呆気なく1人はあの世へ逝ってしまったが生きてる人間はまだ誰一人として状況把握ができていなかった。

その流れと平行してリコン・ドローンが7機、田村が蹴破った入り口から侵入、換気扇に侵入していたリコン・ドローンも換気扇の羽をブチ割りパーティー会場に侵入、全8機が瞬時に目標を捕捉し田村のヘッドセットに位置等の情報を送る。

一人目が逝ってから約0,8秒、何割かの人間が襲われてると認識した時には更に4人が田村に近い順に頭部の一部を吹き飛ばされ中身をブチ撒いていた。

強烈な反動のショートヴァレル7,62mmライフルのSCAR-Hを田村は見事に操る。そもそもこの用途に使うには誤った銃なのにも拘わらず。

更に次の目標へ照準を合わせる頃には全員がパニックに、6人目が脳ミソをブチ撒ける頃には皆パニックになりながらも腰や脇に携帯している拳銃に手を伸ばしたりテーブルに隠れたりしだした。が、ロクな実戦経験も訓練も積んでいない連中みたいで拳銃に手を伸ばした奴らにはホルスターの留め具を外さないまま必死にグリップを引っ張っていたり、無事抜けたもののマガジン・キャッチ・ボタンに触れてしまいマガジンを脱落させてしまったり、セーフティー(安全装置)の解除をすっかり忘れている奴が半数近く居た。

そうしている間にも田村は姿勢を低くし、一番近くのテーブルからSCAR-Hだけを出しドローンとヘッドセットのデータ・リンクをフル活用して次々と仕留めては別のテーブルへと移動していった。

マトモに拳銃を握れた者もロウソクの明かりのみが頼りな上に田村はフラッシュ・サプレッサーを使ってる為、どこから撃ってるか正確に分からず、つい先程までは明るかったので目が暗闇に追いつかないという最悪の状況なので見当違いな所に乱射するだけだった。

既にリコン・ドローンで捕捉されている上にマズル・フラッシュにより目立つので良く撃つ者から田村に撃たれた。流石に動きながら動く相手に撃つので確実にヘッドショットを決めれない時は数発使い胴に撃ち込んだ。それも悲惨なモノで血と内臓を派手にブチ撒けた。

残弾マガジンに3発、チャンバーに1発、手首のスナップを利かせSCAR-Hを捻る様に回転させながらマガジンキャッチボタンを押し、遠心力を使って勢いよくマガジンをリリース、そのマガジンが床に落ちるまでにフレッシュ・マグ(フル装填の予備マガジン)をSCAR-Hに叩き込む、射撃再開。映画で良くある撃ち切ってからのリロード(再装填)など以ての外だ。

いくら相手が素人だからといっても銃を使う戦闘だ、少しの油断、1発の弾丸が状況を逆転させる事がある。

故に田村はどんな相手であろうとも全力で戦う。

会場に居た2/3以上が逝った頃、田村から一番遠い位置に居た石川田とその女、瀬川の3人は暗がりの中、何とか田村が侵入したドアと反対側のドアから会場を脱出した。

「糞がーぁ」

呻く様に吐き捨てながら石川田はスマートフォンのLED照明を頼りに女の手を引っ張り2階の自室に向かう。

こんな事になるなど予想もしていなかった為、石川田は何も武器を携帯していなかったので拳銃が有る自室に急ぐ。

「あんなのナイって」

瀬川は伊国ベレッタ社製の拳銃、M92Fを抜き後方を警戒しながら石川田に続く。

また一人、また一人と石川田と瀬川の部下が死んでいく中、8機も必要なくなったリコン・ドローンの内2機が石川田と瀬川を追う。

石川田と女と瀬川が2階への階段を上がり終えた頃にはパーティー会場に居たパーティー参加者は全員、田村があの世へ送り終えていた。

2度目のマグ・チェンジを行い、リコン・ドローンからの情報で石川田と瀬川を追う。

まだ石川田も瀬川も暗闇に加えローター音が小さいリコン・ドローンに追われている事を把握してない。

田村も階段を登る。

銃声が止んだのに気がついた瀬川は階段を登りきった所から10m程の石川田の自室前の廊下で左手にLED照明を点灯したスマートフォンを持ち、右手でM92Fを構えて階段の方を警戒する。

しかしスマートフォンのLED照明では10m程離れた階段を満足に照らす事はできていない。

石川田は何とか机の中からゴールドのメッキの施された、イスラエルIMI社製のデザートイーグル・オートマチック・44マグナム・ハンドガンを引きずり出した。

その状況を田村は全て把握していた。

一気に階段を駆け上り、廊下の端まで飛ぶ。

勿論SCAR-Hは瀬川の方へ構えながらだ。

黒い何かが飛び出したのが見えた瀬川はM92Fの引き金を引く。

しかし田村は階段を登った所から一気にその反対側の廊下の端まで飛んだ為、弾は階段側の方に着弾した。

素人が片手で撃った為、反動で跳ね上がったマズルが戻るまで0,4秒程…田村にはじゅうぶん過ぎる時間だ。

瀬川が2発目を撃つまでに田村が撃った。

瀬川の右腕の肘から先が吹き飛び、M92Fと共に床に転がる。

「糞おぉぉ」

瀬川は左手に持ったスマートフォンを放り出し、左手を背中に伸ばす。バックアップ・ガンを持っている様だ。

アドレナリンでまだ痛みは無いのだろう。

田村は冷静に狙い続ける。

瀬川は何とかバックアップ・ガンを抜いたが次は左手首から先が吹き飛んだ。

言葉にならない絶叫が響く。

田村は何故即死させないか…ここに現金が有るならそのまま頂戴できるから在処を聞く為だ。

ワンオフ高級パーツのオンパレード、かつランニング・コストも非常にかかる田村のAE86、金はいくら有っても困らないのだ。

ようやくデザートイーグルを構えれた石川田、目の前で瀬川が使い物にならなくなったのが分かったのか完全なパニック状態で可能な限り早く引き金を引きまくる。

田村は廊下の途中にあるトイレに一旦身を滑り込ます。

石川田も片手でスマートフォンを持ちながらの射撃な上、完全に見栄っ張りで選んだ44マグナム拳銃、反動制御が全く出来ておらず2発目から天井や壁に着弾する。

隠れなくてもいい程の命中精度だ。

しかも細身のヒョロい身体だ。6発目で肘がグネっとなり、7発目であろうことか目の前でのたうち回る瀬川の頭を撃ち抜いてしまった。

44マグナム弾を至近距離で食らった瀬川の頭は上半分程フッ飛び中味をブチ撒いた。

「あー、ヘタクソが」

現金の在処を知ってるかもしれない人間が一人減り残念がる田村。

デザートイーグルの44マグナムの装填弾数は8発、ついに撃ち切った。

「おいよぉ!」

慌てて銃だけ出してきたので予備マガジンを持ってない石川田はワンテンポ遅れて予備マガジンが有るのだろう、机の所に戻ろうとする。

が、リコン・ドローンからの情報により全て把握していた田村はスリングでSCAR-Hを背負い、右腰のホスルターからストライク・ガンを抜き、トイレから飛び出して全力で走り、もう石川田の背後に迫っていた。

田村の渾身のタックルで石川田は机を飛び越えてフッ飛ぶ。

持っていたデザートイーグルもスマートフォントも吹っ飛ぶ。

田村は机の上に立ち、ストライク・ガンを床に転がっている石川田に向けて構える。

女は更に奥の寝室に逃げた様だ、リコン・ドローンが捕捉している。

落ちたスマートフォンのLED照明が田村を照らし、石川田は初めてはっきりと田村の姿を見る。

「そこまでだ」

いつもより低い声で田村は言う。

「はぁああああ」

ヤケクソなのか先程乱暴に引き抜いた引き出しが床に落ちていて、それにもう一丁、シルバーのメッキのデザートイーグルが入っている。悪趣味だ…

それに石川田は手を伸ばす。

田村は拾い上げたところを肩でも撃とう思っていたが田村すら予想外の事が起こった。

石川田はあまりにも力んでグリップを握ったせいか、親指が滑り、しかし人差し指はしっかりトリガー・ガード内に入っていたのでデザートイーグルは西部劇ばりのガン・スピンを開始、マズルが石川田の顔に向いた瞬間、引き金に人差し指指が触れ発射。

44マグナム弾の弾頭は石川田の前歯をブチ割り、後頭部を吹き飛ばし即死させた。

「なんだよソレ」

全く狙いとは別だが石川田は最期まで田村の企みの邪魔をした。

残るは石川田の女だ。

春子からの情報によると一応一般人の為、殺害は許可されていない。

この後政府の後処理部隊が連行予定らしい。

作戦終了目標時間も迫っているので追加報酬が欲しい田村は急ぐ必要がある。

田村は石川田のスマートフォンを寝室に蹴り込む。

ストライク・ガンを構え、寝室に向かった。

女は壁際でガクガク震えていた。

武器は持っていない。

女の足元だけびっしょりと濡れている、死の恐怖を目の当たりにして全て出てしまったのだろう。

スマートフォンのLED照明で田村の姿が女にも見える。

「金はどこだ」

「絶対に教えない、私にはあの金が全て!あの金が無くなるなら生きている意味なんか無い」

あー、面倒いパターンのヤツだ…

「殺すなり犯すなりしなさいよ、金庫の番号は教えない」

まだ良かった…この女も知っているな。

女の横には頑丈そうな金庫があった。

今持っている弾薬は全て軟弾頭だ。人体にはダメージを与えれるが金属には弱い、この金庫に全弾叩き込んでも破壊できないだろう。

ならば…

「じゃお望み通り犯してから殺してやる」

「ふん、男って皆そうなのね」

田村は右手のストライク・ガンを女の首に突きつけ、左手で女のスカートを引きちぎり続いてショーツも引きちぎる。

女の秘部が丸裸となった。

そして田村は自分自身の凶器を取り出した。

すぐさま戦闘状態となる。

ソレが女の腹に触れる。

ほぼ真っ暗なので良く見えないが、その感触のみで女は理解した…バケモノだと。

本能がそうさせたのか急速に女の蜜壺は潤う。

田村は女の片足を左手で抱え上げる。

ストライク・ガンは突きつけたままだ。

ノーハンド、腰遣いのみで当てがい一気に侵入。

女の身体中に今までの人生にない衝撃が走る。

特装ハイエースの運転席…「クソ」

晴子も田村のヘッドセット、リコン・ドローンからの情報で全てを把握している。

右手がズボンの中に伸びる。

田村に仕事仲間以上の何かを抱きはじめている春子には不快ながらも興奮する状況になってきた。

一気に侵入した田村は一度引き、再度侵入、今度はもっと奥にだ。

女の身体は電気ショックを食らったかの様に跳ね、更に床を濡らす。

そこで一気に田村は凶器を抜き去る。

「さて、じゃあ死ぬか?」

わざとらしく、セーフティーを瞬時にオン~オフしカチっと金属音を響かす。

「待って、もう一度挿れて!もっと!お願い!殺さないで」

最早特殊能力と言っても過言では無い、田村のスキルだ。

「じゃ金庫を開けろ」

「わかった」

金庫のボタンを操作し、金庫はすぐに開いた。

そこそこ有るな。

左手で女の首を掴み、再び挿れてやる。

今度は後方からだ。

僅か5~6往復で女は絶頂に、それに合わせて軽く首を締める。

いとも簡単に女は気絶した。

女を床に捨てる。

前からも後ろからもそれぞれから出る物全てを吐き出し痙攣している。

ひどい臭いだ。

凶器を仕舞った田村は石川田の自室から適当なカバンを数個持ち出し、入るだけ金庫から現金を押し込む。

そしてカバンを持ち、石川田の屋敷から脱出、春子が運転する特装ハイエースに拾ってもらう。

すれ違う様に後処理部隊が到着した。

帰宅した。

リコン・ドローン、ヘッドセットで録画した全てを政府に送信する。近い内に報酬が振り込まれる筈だ。

田村は武器弾薬を今日のところはって程度にザッと片付け、部屋着に着替えた。

お気に入りエナジー・ドリンク、モンスター・エネルギーを飲みながらリビングのソファーに座る。

警察やマスゴミも騒いでるかな?

とテレビのリモコンを右手に持った瞬間、音も無く接近していた春子の鋭いチョップによりリモコンはフッ飛び壁に当たりバラバラに。

左手に持ったモンスター・エネルギーの缶もまだふた口しか飲んでないのに弾き飛ばされ床にブチ撒ける。

反射的に立とうとしたが、肘で体重の乗った一撃を胸部に食らいソファーに沈む。

次の瞬間にはスウェットごとパンツを引き破られ、田村の凶器が露わに。

そのまま春子は田村に馬乗りなる。

春子はTシャツは来ていたが下には何も着けていなかった。

先程の何とも形容し難い感情を田村の上に乗り貪る様に発散させる。

田村も戦闘後の高揚した気分なのもあり、快感に身を委ねた。



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