え?こんなクエストでこんなに貰えるの!? (脇役のまま終わりたい)
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転生/成長/魔法

 

私は転生した。

 

おぎゃー、おぎゃーと可愛い赤ん坊の産声が幸せそうに笑う女性の胸の中で元気にあげている。

 

その赤ん坊は考えていた。

前世の記憶が存在し現在の自分の状況を。

特に泣きたくもないが涙が出てしまうし声を上げてしまう。周りの光景は目が上手く開かず全く見えないが体の大きさが小さいのは抱っこされている状況でなんとなく分かる。

 

話は変わってしまうが私の前世は英雄だった。

それも魔法職最強と謳われた存在だ。目が見えない所で魔法を行使すれば大体の位置の把握なんて簡単に出来てしまう。

 

うん、美人だ。

 

なんというか凄い美人な人だった。着ている衣服こそ粗末なものだけど衣服のマイナスをものともしない美人ぷりだ。同じ女の私でも少し照れてしまう。

 

「うちは貧しい家だけれど元気に育ってね綾人」

 

ん?ん〜〜〜!?えと今なんと?

 

「あらあらこんなに元気に泣いて。ふふ、綾人お父さんのように強くなるのよ?」

 

あ、綾人?いやいや...まさかですよね?え?私男の子なの!?女の子じゃないの?いや落ち着こう。まだ男の子だと決まってはいない。まだそんな時間じゃない!

 

「ただいま。今帰ったよ」

 

「あら、おかえりなさい。ほら綾人もお父さんですよー」

 

いかにもガテン系なゴツい人だ。見た目凄い強そう..。手に持ってるのはキジかな?

 

「綾人も俺と同じ男の子だからな!沢山肉を食うんだぞ!!」

 

おふ...どうやら私は男の子に転生してしまったようだ。なんでだし!!

 

「ふふ、あなたったら。まだお肉を食べさせるのは早いですよ」

 

「おやそうだったか?ははは、まあお前が食べれば栄養もいくだろう!今日は豪勢にいくぞ!」

 

「ふふ。でもキジ狩りなんて危ないわ。」

 

え?キジ狩りが危ない?魔法が使えない猟師が鉄砲で食料として確保するキジが?...流石に冗談...の顔してない。え?見た目的にもそのキジ小さめだよね?

 

「ははは!愛しの娘の為なら命くらいはるよ。なんてな、知り合いの冒険者に頼んだんだよ。俺がキジ狩りなんて出来るわけないだろ?」

 

いやいやそんなドヤ顔で言われましても...。ちょっとそんな私強そうですみたいなガタイで何言ってるんですか。というかお母さん?で良いよね。お母さんもホッとしない!キジってあれだよね?駆け出し冒険者の魔法の練習にされて乱獲された...うん哀れだ。そのキジだよね?

 

「でも高いんじゃない?うちにそんなお金ないわよ?」

 

「だから頼んだと言ったろ?勿論無料(タダ)さ!」

 

いやいや親指立てながらキラーンて歯出さなくて良いから、あれ?もしかしてこの世界のキジってそんなに強いの?コカトリスみたいに相手石化させちゃうの?

 

「さあ夕飯にしようか。調理の仕方分かるか?」

 

「分からないけれどきっとなんとかなるわ」

 

キジという生き物が気になったまま私の1日は過ぎていった。

 

 

 

 

私が転生してから5年という歳月が流れた。

 

そんな私は今右手に猪を左手にキジを引きずりながら森を歩いている。母親譲りの銀髪にパッチリとした目。さぞ女の子だったら美人になっていた事だろう。

 

かれこれ森に入って二時間。そろそろ帰らないと両親が心配してしまうので帰りに向いている。

 

「あ、お母さん。ただいま」

 

「綾人!一体どこに...えーーー!?」

五歳児の子供が猪とキジを引きずっていたらそりゃ焦るか。普通に考えたらカオスかもしれない。

 

勿論五歳児の体にそんな身体能力は無いので魔法で補っている。現在発動している魔法は付与魔法が3つ。

 

力を飛躍的に向上させる、フィジカルエンチャントパワー。

 

防御を飛躍的に向上させる、フィジカルエンチャントシールド。

 

そしてMPの自動継続回復、アディショナルフィジカルエンチャントアップ。

 

力と防御を上げつつ魔法の行使による魔力切れを起こさないようにしている。魔力切れになる恐怖はなってからじゃ無いと分からないからMP自動継続治癒は魔法師にとって必須にもなっている。この世界じゃ分からないけど。

 

何はともあれ。

 

めっさ怒られた。両親ともに涙を流しながら怒られるのはこれが初めてかもしれない。危険な行為はやめてくれ。まだ5歳なのよ?耳にタコが出来るほど聞かされた。素直に謝ると豪華なご飯を食べさせてあげられるってお礼言われたけど。うちの主食は菓子パンだからね。

 

 

 

そして十年という月日が流れた。

 

綾人。

15歳になり成人になる。

そして現在森の奥底にて魔物と遭遇していた。

 

「グギャァアアア」

 

赤い目をした形容し難い存在。紫色の靄みたいなものが体を包んでおり村では禁忌の存在とされていた。そんな存在と出くわしているのは理由がある。この魔物の気配を村にいたら感じたからである。憎しみと憎悪の忌々しい権化のような感情に始めて鳥肌を覚えた。村の言い伝えでは魔物は普通の生物の物理限界を軽く突破するらしい。理性を失う代わりに力が桁外れに上がるらしい。更に魔物の中にもランクが存在しており下から最下位級、下位級、中位級、上位級、最上位級、厄災級となっている。紫色の靄が晴れてきて姿を表すのは5メートルはあるだろう骨のドラゴン。カオスドラゴンだった。このまま放置すれば村の被害は甚大なものになる。特に、カオスドラゴンは疫病の塊のようなもので腐臭から菌が増殖し魔法も満足に扱えない者なら簡単に疫病にかかってしまう。

 

ランク的には上位級、もしくは最上位級に入るのだろうか?

 

「フィジカルエンチャントエレメント、フィジカルエンチャントシールド、フィジカルエンチャントパワー、アディショナルフィジカルエンチャントアップ、フィジカルエンチャントミラー、フィジカルエンチャントマジック、フィジカルエンチャントキラー。こんなものかな」

 

付与魔法を付与し終わりカオスドラゴンと向き合う。正直この世界に来てからキジやら猪やら熊やら虎やらしか相手にしていないから魔法を試す事も出来なかった。低位の魔法で直ぐに死んでしまう相手に高位の魔法を使っても意味がない。だからなのかな少しだけ、そうほんの少しだけ楽しみだった。

 

「とりあえず牽制でアイスニードル!」

 

氷の柱が三つ空中に現れてカオスドラゴンに向けて飛んでいく。簡位の魔法ではあるけど少し応用してるから中位くらいの威力にはなっている。カオスドラゴンは氷の柱が当たると体が少し浮き倒れてしまう。あれ?牽制のつもりの攻撃で終わっちゃった?落胆しつつもカオスドラゴンは雄叫びを上げながら起き上がる。そして尻尾で此方を攻撃してくる。

 

「イージス」

 

防御魔法。3枚ほど念の為に貼っておいたけど一枚すらヒビ割れすらしていない。予想以上に攻撃力は低いみたいだ。

 

「はあ..こんなんじゃ練習にもなんない」

 

未だ一枚も割れていない相手にため息をつきながらもカオスドラゴンに向けて掌を向ける。

 

「火炎地獄(インフェルノ)」

 

火の上位魔法で焼き尽くす。その技の後にはカオスドラゴンの骨すら残さずに全てを焼き尽くした。森の一部が燃えてしまったが仕方がない。どうせカオスドラゴンが歩くだけで草木は枯れてしまうのだから同じだろう。

 

「さてと。あ、あったあった」

 

骨すら残らない威力を出しても魔石だけは残っていた。漬物石くらいの大きさの魔石。これがどれ程の値打ちになるのか分からないけどキジすら高いなら相当な値打ちが付くはずだ。魔石に関して重さは殆どないけどかさばってしまうので空間魔法を使って魔石を異空間にしまっておく。

 

「さ、帰ろっかな」

 

用事も済んだので家に戻るために地面に六芒星の魔法陣を書いていく。

 

「うん、バッチリだね」

 

書いた魔法陣の上に立って詠唱を始める。

 

「時の女神ノルン、貴女の力を私の体に!?これは魔力暴走?」

 

体の端から夥しい量の魔素が溢れ凝縮されていく。転移魔法は物凄い量の魔力を使うので魔法陣で補っていたけどこの魔素量なら。

 

詠唱を辞めて魔法陣も足で消していく。

 

「さて。転移魔法、テレポーテーション!」

 

一瞬にして景色は家の前に変わっていた。魔力切れを起こした様子もない。前の体よりも魔力量は断然多いようで少しわくわくしてしまう。魔力量が足りなくて諦めていた魔法は多い。魔法陣を用いて使用できた魔法もあるけれどこれなら...。届くかもしれない、天体魔法にも!

 

人類では不可能と言われていた天体魔法。その使用方法は単純なものだった。重力魔法と転移魔法の同時使用の重ね掛け。理論は分かっていても成せるものは居ない。それが可能になるかもしれない。こんなにも嬉しいことはなかった。

 

そんなテンションをおかしな方向に上げている時家の中から両親ではない人の気配がした。というか見たこともない馬車が置いてある。誰?まさかお父さんの知り合いの冒険者のササキさんかな?私が出生した際にキジをくれたお父さんの知り合いの冒険者。気さくでとても良いおじいちゃんみたいな人だった。6歳の時にキジをあげに行ったら驚いてたっけ。

 

うちよりお金はあると思うけどあんな馬車買えるほどでは無いはずだし。

 

「よし、覗いちゃおっと。インビジブル」

 

私が呪文を唱えると体が透明になる。服まで見えなくなる優れものだ。ただ魔眼持ちや魔法解除の結界内だと直ぐに効果が無くなってしまうという難点があった。それと匂いも残るらしいから動物相手だとバレてしまう為滅多に使わない魔法だったりする。

 

家の中に入ると少し肥えたちょび髭のおじさんがいた。着ている服も高そうなナルシストみたいなおじさんだ。というかこの村の領主を任されてる人だった。一度だけ見たことあるけど何の用なのかな?

 

「おほん。では話を戻すぞ?御宅の息子を私の養子にしたい。勿論金なら好きな額をくれてやるし、もっといい家に住まわせてやる。それに勤続的に金も支払おう」

 

え?私を養子に?なしてそんな話に?

 

「で、ですから息子だけは渡すわけにはいきません!しがない私達の家庭に産まれてくれた大切な家族なんです!」

 

やばい、状況がいまいち分からないけど泣きそうだ。

本当に良い両親のもとに産まれたみたいだ。

 

「だが私も断られて、はいそうですかと引き下がるわけにはいかないのだよ。おいここにあれを持ってこい」

 

「は!」

 

ん?あれとは?付き人の人が一度馬車に戻り見覚えのある猪を持ってくる。というか見覚えしかなかった。

 

「こちらに」

 

「これがなんだか分かるかね?」

 

「猪...ですが」

 

父さんは分かっていないみたいだけど母さんは薄々分かってきたみたいだった。

 

「これは偶然森で見つけたものだ。私が隣町に移動している際に目の前に雷が迸った。そこに急いで向かわせると、君達の子供が去っていく姿と森が一部焼け落ちている場所に遭遇した。その場には猪が5頭倒れていた。これがどういう意味か分かるね?」

 

あーそう言えば一週間程前に猪の群れに出くわして面倒いからサンダーボルト落としていったんだっけ...まさか誰かに見られていたなんて。

 

「でも!その子がうちの子という確証は!」

 

「御宅の子の髪は銀髪だね?奥さんのように綺麗な。そんな銀髪の子供なんて王都にも、勿論この村にも一人しかいないのだよ」

 

原因が全て私にあり冷や汗が先程から止まらない。なんていうか二人ともごめんなさい。

 

「それでも...」

 

「領主様。私達夫婦にとって綾人はかけがえのない存在です。綾人に何をさせる気ですか?」

 

「魔法学校に通わせようと思っている。あれ程の魔法の才だ、学ばせねば勿体無であろう。それにあの年だコントロールだって出来ていないだろう」

 

今更魔法学校に行って教わることは何もないと思うが、その感情を抜きにしても通ってみたいという気持ちもあった。この世界の人がどの程度の実力を知るのにも学校という機関はうってつけだ。ただそれとこれとは話が違う。私は両親のもとにいたいし離れたくない。

 

「それは...そうかもしれませんが」

 

「綾人の為に、か」

 

何処か二人の中で養子に渡すという選択肢が出てきたみたいだ。私のせいで本当にすいません。というか養子にさせられても困るからそろそろ。

 

「ただいま。お母さん、お父さん」

 

「!?あ、綾人!?いつから?」

 

私が急に現れたからだろうか領主の前に護衛の男が立ち杖をこちらに向けている。

 

「君、何を」

 

「領主様。すいませんがこの子供は危険です。王都の魔法騎士団元副団長の私ですら気配すら気付けませんでした。先程の話も聞いていたことになります。この状況で姿を現すと言うことは返事は否なのでしょう。ですから、業火の炎を以って敵を焼き尽くせ焔!」

 

炎に身を包んだ狐が現れて突進してくる。話を聞く限り危険な存在だと思われたらしい。なんでだし!

 

「綾人!」

 

「綾人!」

 

両親の叫び声を聞きながら私は掌を狐に向けた。

 

「氷牢獄《アイスプリズム》」

 

「ほ、焔!?」

 

一瞬で氷漬けになった狐。可哀想だから殺してはいないけど仮死状態にしてあるから解かない限り動くことも出来ないはず。

 

「ふう。火とか家が燃えちゃうので止めてもらえますか?」

 

「わ、私の相棒が一撃だと!?それになんなんだその魔法は!!業火の炎により敵を焼き尽くせ!!ファイヤーボール!!」

 

ちっさ!!なんの冗談なのか掌サイズくらいの火球が真っ直ぐこちらに迫ってくる。領主は止めろと先程から言ってるからいいとしてこれで二度目である。一度目なら許しても二度目は許しちゃいけないって前世で親友に教えてもらっていた。

 

「グラビティー」

 

その一言で護衛の人は立っていられなくなり膝を折る。かなり抑えた状態での重力魔法である。話せなくなる程度にかけたから魔法も発動できないしこれで話をきりだせる。

 

「これほど、とは」

 

領主の言葉に返す人は誰もいない。私の魔法は両親にすら見せたことは無かったから驚きで固まってしまっている。

 

「さて領主様。こんなことをしたのです。当然対価は頂けるのですよね?」

 

領主は黙ったままうなづいていた。

 




主人公
名前 綾人
年 15歳
魔法
簡位魔法
●心眼(目で見えなくても360度見えるようになる)
●アイスニードル
中位魔法
●サンダーボルト(雷を操る魔法。威力もスピードも微妙だが燃費が良く多人数戦では威嚇射撃として好まれていた)
上位魔法
●火炎地獄《インフェルノ》(火よりも威力の高い火炎系の魔法。範囲が広くカオスドラゴンの骨すら残らない)
●氷牢獄《アイスプリズム》(視認した敵を氷の中に閉じ込める魔法。一旦仮死状態になるが時間が経過すると意識が戻る。ただし対抗できる魔法が無ければ出ることは出来ない)
超位魔法

最上位魔法

防御魔法
●イージス(防御魔法の中でも高い防御力を誇る盾。最大で10枚まで重ねて発動出来、使い勝手の良さから重宝されている)
付与魔法
●フィジカルエンチャントパワー(力を飛躍的に向上)
●フィジカルエンチャントシールド(防御を飛躍的に向上)
●アディショナルフィジカルエンチャントアップ(MPの自動継続回復)
●フィジカルエンチャントエレメント(属性値を飛躍的に向上)
●フィジカルエンチャントミラー(オート反撃)
●フィジカルエンチャントマジック(魔力を飛躍的に向上)
●フィジカルエンチャントキラー(攻撃にキラーを付与)
天体魔法

重力魔法
●グラビティー(視認している相手の重力を操作する魔法。最大で5トンの重力をかけることが可能。重ねて使用することで重力を増やすことができる)
転移魔法
●テレポーテーション(一度行ったことのある場所じゃないと転移出来ない。かなりの魔力を消費する)

結界魔法

視認魔法
●インビジブル(体が透明になり着ている服まで見えなくなるが匂いまでは隠せない。他にも対応策が多く前の世界では使う機会が少なかった魔法)

になります。主人公が使っていく毎に増えていきます。


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学校/冒険者/Sランク

「わあ、ここが王都」

 

私が何故王都の有名な魔法学校の前にいるのか、その理由は一週間程前にまで遡る。私は領主様に二つの条件を出していた。一つ目は両親に二度と手出しをしないこと。もう一つは私を王都の魔法学校に推薦してもらうことだった。勿論学費は領主様もちだ。1年間は。そう、なんでも二年目からは自分で働いて学費を支払うか特待生になり無料で通えるようになれと言うことらしい。その程度の実力はあると思われているようだ。まあ実技に関しては問題ないだろう、たぶん。問題は雑学である。勉強なんて嫌い過ぎて算数すらまともにやってこなかった私である馬鹿な特待生とか絶対無理である。

 

なので今日私は魔法学校の入学試験を受けた後に就職場所も決めなければいけなかった。両親も綾人なら心配いらないな!とか言ってたけど貴方達の娘、いや息子は馬鹿ですからね!?そんな幸せそうな表情で送り出されたら文句も言えずに笑顔で任せて!と答えていたあの頃の私を殴ってやりたい。

 

取り敢えず手持ちは領主様がくれた金貨10枚に銀貨5枚。毎月同じ額くれるようだ。調べてみたけどこの世界では銅貨、銀貨、金貨、白金貨の順に貨幣の値段も高くなっているようだった。銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨1000枚で金貨一枚。金貨10000枚で白金貨一枚というようだ。白金貨すごって思ったけど私じゃいつまで経っても見る機会すらない貨幣だと思うからそこは気にしないことにした。

 

王都の宿が平均的に一泊銅貨500枚で、高くても銀貨100枚のようだ。ということは高い宿に100日泊まってようやく金貨10枚を使い切れるという計算になる。領主様が過剰にくれたというのは分かるがこの月に一度のお金も一年だけである。もしかしたら特待生になれなかったら余ったお金で通いなさいということなのかもしれない。意外に良い人なのかな?

 

「さて、行きますか」

 

魔法学校の門を潜るとすぐに案内人のローブを着た如何にも魔法使いの人に呼ばれ奥に連れて行かれる。奥まで来ると試験を受けに来た人だろうか?数百人くらいの同い年くらいの子が沢山いる。緊張して震えている者。自信があるのか寝てる者。友達と話している者。魔法の練習をしている者。様々だ。

だが皆共通していることがあった。

 

それは貴族の証であるイヤリングを耳に付けていることだった。

 

勿論私は貴族ではないのでイヤリングを付けていない。そのせいなのか周りから視線を感じるけど特に関係ないと時間になるまで眠ることにした。

 

どこの世界にもいるものだ。目を閉じてから数分過ぎたところで呪文の詠唱が聞こえ敵意も向けられている。何人か分からないけど数人である。ただ魔力もいまいちなので特に避ける必要もないとシールドの魔法だけ念の為に使っておき眠りについた。

 

30分程経過して目を開けると講師の先生が数字を呼んでいた。どうやら待っていた生徒に自動で数字の書かれた紙がなんらかの方法で届いているようだ。腕や頬に刻まれている者が多くおり、部屋に特殊な魔法が施されているのだろう。シールドの魔法を解くと腕に57という数字が浮かび上がってきた。そこで講師の人に57番が呼ばれたのでついていくとコロシアムの様な広々とした場所についた。真ん中には氷牢獄により動けなくなった状態の狐が1匹。あれ?どこかで見覚えがあるような?

 

「この狐の名は焔!かの魔法騎士団元副団長殿の相棒である。その焔が魔法により閉じ込められてしまったという報告を我々学園は受けちょうどい、ごほん。焔を助ける為にこうして試験に取り組むことにした。それではNo.57あの氷を壊して見せなさい。勿論壊せなくても合否には響きません」

 

その氷、私が作ったので指パッチン一つで壊れるんですよ?とは言いにくい。この講師の人、ちょうどいいとか言いそうになってたし。

 

さて壊す方法は簡単である。指パッチンすれば良い。だがそれじゃ納得してくれないだろうし、私が凍らした犯人だとバレれば最悪どうなるか分かったもんじゃない。ここは壊れなかった事にしておこうか。本気でそんな事を考えていると氷の中から狐の思念が直接送り込まれてくる。なんとも言葉では形容しづらい程哀れなその言葉に出してあげる事にする。

 

「ファイヤーボール」

 

「え、詠唱破棄!?それにこの威力は!?」

 

1メートル程の火球を氷牢獄に向かって打ち出す。勿論この程度の魔法では氷牢獄が溶けるなんてあり得ないので火球が当たった瞬間蒸気が起こり何も見えなくなるその間に指パッチンである。これで狐も無事に出れる筈だけど何か忘れてる気がする。

 

「キュユユユ」

 

蒸気が晴れて狐が見えてくる。目が合った瞬間に狐は逃げ出した。そりゃもう潔く最高速で逃げていった。講師の先生も口を開けて途方に暮れている。まあ氷は溶けて生きてたし良いよね?

 

「えーと、次の試験に行っても良いですか?」

 

「あ、どうぞ」

 

お礼をすませて次の試験会場に向かう。向かうと言っても階段を登ってすぐの場所にあるからもう着いたんだけどね。教室の扉を開けると数人の生徒がおり此方を見てくる。

 

試験ぽい試験はやっていないけど自分の番号は57番だ。でも教室には10名くらいしかいなかった。恐らくだけど人数が多い為教室を分けたのかな?そんな事を思ってると教室にいたthe貴族です。みたいな男の子に声をかけられる。

 

「やあ、僕はアグルスト=アルビン。アグルスト家の長男だ。主に水魔法を得意としている。君は見たところ貴族じゃ無いみたいだけど魔法を使えるのかい?」

 

この国には貴族以外が魔法を使うのはおかしいのだろうか?確かに皆貴族みたいだけど。

 

「えーと。はい、わた、僕の名前は綾人。得意魔法は特に無いですけど使いますね」

 

前の世界の魔法は威力により分けられていた。

 

ファイヤーボールやアイスボール等威力が低く扱いやすい魔法が簡位魔法。氷に変化をさせて威力を高める魔法アイスニードル等は中位魔法。獄炎の炎を操る上位魔法。火炎地獄〔インフェルノ〕。他にも超位魔法に最上位魔法に天体魔法。それに付与魔法と回復魔法、防御魔法、時魔法、重力魔法等。あるがこの世界ではどうなってるのか分からない。

 

「得意魔法が無いのかい?それなのに何故魔法学校に?」

 

「ちょっと気になったので」

 

「...そうかい」

 

それだけ言葉を残して離れていく。気のせいか周りの目が痛い。何かおかしなことを言っただろうか?

 

 

それから一時間ほど経過して先生が入ってくる。緑色のローブを着ており小枝のような杖を持っており見た目が優しいおばあさんなので魔女ぽい。いや魔法使うから魔女なのだが。

 

「はい、それでは皆さんには試験会場に移動してもらいます」

 

案内された場所は闘技場のような広い空間だった。ただし全て白い壁で囲まれていた。

 

「ここは魔法実技練習場です。好きに魔法の練習をするように何重にも壁に防御魔法が付与されています。なので安心して魔法を使ってください。今から呼ぶ番号の者は前に出なさい。No.1とNo.57」

 

返事をして前に出る。今から何をするのだろうか?No.1の人は不敵に笑いながら杖を出す。ローブの中に入れておいたのか結構小さいサイズの杖だった。私は杖なんて使わないのでフリーだが。

 

「貴方も杖を出していいのですよ?」

 

先生が言ってくるがそもそも杖なんて持っていない。そんな物を買うお金が無いし必要もないし。だから正直に答えることにした。というか元副団長も杖使ってなかったような?

 

「杖は持ってません」

 

周囲からどよめきが生まれる。目の前の男からは微笑が先生からは呆れが見て取れるけど私また変なこと言いました?

 

「はあ、貴方はこの試験で何をするのか分かっていますか?」

 

知りませんが?いや聞かされてないですしテストの内容なんて。

 

「まあ、だいたいは」

 

でも知らないと答えたら不合格になりそうだったので成り行きに任せることにした。

 

「そうですか...では始めますがお互い準備はよろしいですか?」

 

No.1の男の子が少し下がって距離を取るので私もそれに習って距離を取る。ここまでくればなんとなく分かった。要するにこれは。

 

「はじめっ!」

 

魔法力のテストか。

 

「我が問いに答えよ!神聖な森の女神よ!美しく!その気高き色香に我を誘え!!」

 

詠唱長っ!え?何これ、待ってればいいの?それを防げばいいんだよね?魔力テストだから交代ずつでやるんだろうし。うん待ってるか。

 

「敵を切り刻め!大いなる力!全てを無き者にせよ!!ブレードカッター!!」

 

ようやく完成した魔法は鎌鼬の弱いバージョンだった。というか何もしなくても擦り傷くらいしかつかなそう。でも防がないとだしなぁ。

 

「えーと。シールド」

 

適当な防御魔法で防いでおく。ファサという音とともに相手の魔法はシールドのまえに消えていく。男の子は何故か驚愕してるけどこっちの番だよね?氷牢獄は使った場合にバレそうだし、なんなら氷系はやめといたほうがいいかもしれない。それなら、と。

 

「ライトニング」

 

雷魔法を使ってみる。男の子は直撃し痙攣している。周りの様子も変だし、先生も開いた口が塞がらないのかぼーっとしている。あれ?もしかしてやり過ぎた?

 

「あのー先生?」

 

「はっ!今の魔法は!?それよりも急いで保険室に!!」

 

私の相手が保健室に連れていかれ先生がいなくなってしまい一旦テストが中止になってしまった。いやなんでだし!!ライトニングなんて中位の魔法だよ?それも威力を結構落としたからね!?というか防御魔法も発動してなかったし、あれ?私がおかしいの?

 

その後に急遽他の先生がきてテストが再開になった。何故か周りから怖がられているみたいだけど、そういうテストじゃ無かったの?他の人のをみるとファイヤーボールとかアイスボールとか先程のブレードカッターとかしか使っていない。それも物凄く長い詠唱と弱い威力。もしかして簡易魔法しか使ってはいけなかったの?しかも詠唱ありでどこまで威力を落とせるとか?

 

そんな思考の渦の中一人だけ違う魔法を使った者がいた。教室に入った時に話しかけてきた貴族の人だった。全員貴族なんだけど。彼だけは中位魔法のウォーターアースという地面に水を侵食させてそのまま地面の中に引きずり込むというエグい魔法を使っていた。通常土に使うので威力が落ちたのか砂地獄みたいにゆっくりと首まで相手が落ちたところで先生から止められていた。

 

中位魔法も使って良かった事に安堵しているとテスト会場が教室に移動になった。そこからの記憶はない。真っ白の紙を渡されて真っ白のまま出したとしか覚えていない。

 

ため息交じりに王都を歩く。

 

ごめんなさいお父さん、お母さん。落ちたかもしれません。

 

合格すら出来なかった。そんな事が知られればお金も送られてこなくなる。そうすると困るのは自分だ。ここまでしてくれた両親にこれ以上迷惑はかけられない。今更家に帰る事だって恥ずかしくて出来ない。

 

なので。

 

やってきましたギルドホール。

 

落ちてしまった場合の事を考えてここでお金を稼ぐ。私はこれでも前の世界では魔法職最強と言われた英雄だ。この世界でもやっていけるはずである。たぶん。

 

ギルドの中は意外と綺麗だった。荒くれ冒険者が酒を飲んでいるイメージだが一切飲んでいない。真面目に作戦を考えている者やパーティーメンバーを確認している者。なんというか綺麗過ぎて逆に怖かったりもする。冒険者といえば自由の象徴ではないのか?そんな気もするが迷っていても仕方がないので受付に向かう。

 

ギルドの受付には綺麗なハーフエルフが担当していた。凄い男受けしそうな顔である。エルフ特有の金髪に綺麗なまつ毛、高い鼻に小さな口。胸は小さいけどすらっとした体躯は女なら嫉妬してしてしまう程に整っていた。

 

「こんにちは。初めての方ですね?本日はどのような要件でしょうか?」

 

「冒険者登録をしにきたんですが」

 

その言葉に先程まで少し聞こえてきた雑談の声も無くなり静かになる。なして?変な緊張感にかられながらも受付嬢の話は続いていく。

 

「冒険者登録ですね、承りました。冒険者になる為には試験がありますが御存知ですか?」

 

「いえ、その初めて来たもので」

 

冒険者になるには試験があるらしい。お父さん、お母さん...私早々に村に帰らなくてはいけないかもしれません。

 

「では御説明しますね。まず最初に冒険者になる為の試験を受ける為に1銀貨必要になります。試験が終わりますと面接がありそこを通過すると1銀貨と簡易的な装備が貰えます。一度の試験で受かればお金は戻ってくると思ってください。ただし落ちてしまいますと次回も同じだけお金がかかります。それに一度落ちてしまいますと一週間は受けられないのでお気をつけください。最後に能力値を測定して冒険者カードを発行してお渡しします。これで説明は以上になりますが不明な点はございますか?」

 

「試験というのは...やっぱり学的なですか?」

 

「いえ、冒険者になる試験なので戦闘面のみの試験となります」

 

お父さん、お母さん。どうやら冒険者にはなれそうです。

 

「分かりました。ありがとうごさいます、これからでも試験は受けられますか?」

 

「はい、問題ありません。それでは此方の紙に名前と歳をご記入下さい」

 

「書き終わりました」

 

「では先払いになりますが銀貨1枚になります」

 

袋から銀貨1枚を出してお姉さんに渡す。試験会場はギルドの中にあるのか此方です、と奥に行くお姉さんに着いて行く。

 

何故かギルドの中にも学園と同じような魔法実技練習場が。にしても何もなさ過ぎて長い時間いたら発狂する人が出てきそうな作りだ。

 

「では今から試験を始めます。今から出てくる敵を倒していってください。倒す方法はお任せします。魔法でも剣でも何でもいいです。ただし、倒せないと思ったら言ってくださいね。普通に死にますから」

 

遠慮の無い言葉をもらい奥から狸が歩いてきた。可愛い。じゃないな、馬鹿にしてるのかな?いや、めっちゃ真面目な顔してるわ。

 

狸を殺す趣味は無いのだが...心の中で謝りながら狸にファイヤーボールを放ち一撃で命を刈り取る。

 

「詠唱破棄!..それにこの威力は..次に進みます」

 

次に出てきたのは狐だった。

この世界に動物愛護法は無いようだ。

狸と同じように一撃で命を刈り取る。

 

その次に出てきたのは鹿だった。倒し方は同じなので省略。その次はキジ、その次は鷹、その次は猪。その次は熊ときてようやくゴブリンが出てきた。

 

ようやく敵っぽいのが出てきた。

 

「ゴブリンは棍棒を持っているので気をつけてください」

 

受付のお姉さんからの注意をよそにファイヤーボールで沈める。

 

「ここまで倒したのは私が担当をしてから初めてです。何者ですか?」

 

未だにファイヤーボールしか使って無いんですが?むしろ皆さんは何していたのかと気になる。

 

「別にちょっと腕に覚えがある魔法使いですよ」

 

「そうですか...次で最後になります」

 

最後に出てきたのはハイグレウルフというモンスターだった。見た目は狼だがれっきとした魔物の類である。足が普通の狼よりかなり早くて力も強いが雑魚である。だがこのハイグレウルフの毛は炎耐性を持っている。流石にファイヤーボールでは仕留めきれないだろう。たぶん。行けそうな気もするけど。足の速さだけは速いので遅い魔法なら避けられてしまうかもしれない。

 

「天雷」

 

右手を上げて振り下ろす。雷が垂直にハイグレウルフの頭上に落ちて胴体を貫通する。胴体には穴が空いており少しだけ焦げた匂いがただよっている。因みに天雷は雷の上位魔法だったりする。人の目では終えない速度で落ちた落雷は足に自信があるハイグレウルフでも気付くことさえ出来ずに即死するだろう。前の世界では得意でよく使っていた魔法でもある。前の世界では威力不足で雷を発生させてから落としていたけどこの程度なら発生させる必要も無いだろう。

 

受付のお姉さんは口をパクパクさせながら固まってるけど、これで不合格なんてことにはならないだろう。最後って言ってたし。後は面接だけ!

 

気合いを入れ直していざ面接!だがいざ面接が始まると雰囲気にのまれてしまったのか少し固くなる。一般的な部屋に連れてこられた私を待っていたのはギルド長と不夜城の女神と言われている二つ名持ちの冒険者だった。

 

「...ハイグレウルフ。倒したってほんと?」

 

のんびりした声がそれでもはっきりと部屋に響く。受付のお姉さんが無言のまま首を縦にふる。

 

「そう...」

 

「にわかには信じがたいな。だがアスフィが言うのなら嘘では無いだろう」

 

ギルド長は人ではなく耳が尖っていることからエルフであることが分かる。それにしてもあの狼ってそんなに強いのかな?中位魔法でも充分だと思うけど。下手に上位魔法使ったのがダメだったのかな?でも外れたらめんどくさいし確実に当てるなら天雷が一番良かったと思う。

 

「はい。それに魔法を詠唱破棄で発動していました。それに威力も桁違いです」

 

その言葉に二人とも驚いている。詠唱破棄は魔力の足りない分を補うだけであり足りているなら少し燃費が悪くなるけど誰でも出来る技術の筈だ。詠唱をどれだけ長くしようが最終的な威力はさほど変わらない。魔力量が増え過ぎれば暴走してしまうし。だから魔力の濃度を上げるしか魔法の威力を上げる方法は無い。分かりやすく言えば魔法の練度である。これを上げなければ例え相手が中位の魔法でも簡易魔法で破ることが出来る。それを補うために魔法の重ね掛けや工夫等あるのだが一般的には練度が大切である。勿論魔力量が少なければ発動できる魔法も限られてしまうため魔力量が多いに越したことはない。魔法を連発する為には、いかに練度が高くても魔力量が少なければ発動出来ずに枯渇してしまう。

 

「詠唱破棄だと!?エルフでもない人族が?そんな事が出来るのはごく一部な筈。それに威力も落とさないでとなると...」

 

不夜城の女神が何を思ったのか少し考えるそぶりを見せてから此方に掌を向けてきた。

 

「アイスボール」

 

簡易魔法を放ってきた。威力も中々の威力だ。少なくともゴブリンくらいなら倒せるだろう。スピードは40キロくらいか?少し物足りないけどこの世界に来てから一番早い魔法だ。

 

「シールド」

 

簡易魔法のシールドを発動させて防ぐ。シールドにアイスボールが当たると当たった場所が少し氷っていた。すぐに溶けたけど威力はそれなりである。

 

「なっ!アリス殿何を!それにアリス殿の魔法を防いだ!?あーもう!どちらを言えばいいのだ!」

 

いや知らないけど。というか不夜城の女神の名前はアリスというらしい。

 

「突然の魔法ごめんなさい」

 

素直に謝られたので問題ありませんと返しておく。簡易魔法だったし。

 

「貴方の力が知りたくて...わたしのパーティーに入って欲しい」

 

突然の勧誘に困惑する私。パーティーに入るにしても

まだ冒険者に合格すらしてないんですけど。

 

「ほ、本気ですか!?アリス殿なら一流冒険者から引く手数多ですのに、それに貴方はあれ程パーティーメンバーを集めなかったではありませんか」

 

「わたしはひとりが好き。...でもカオスドラゴン倒せなかったから...仲間必要」

 

「カオスドラゴンなら我々も討伐するべく動いております。Aランク以上の冒険者のみを集めてます。その中に彼も入れると言うのですか?」

 

「違う。彼とわたし二人で行く。他は...邪魔」

 

顔に似合わずエグい。そもそも話の中に出てきているカオスドラゴンだがおそらくあいつだ。そう、私の村に来る前に燃やし尽くした。討伐隊が組まれているなんて知らなかった。

 

「お、お待ちください!!いくら世界に10人しかいないSランク冒険者であろうとそんな勝手は許されません!貴女の力はそれほど貴重なのです」

 

「だからこそ。雑魚はいらない」

 

ギルド長の額に汗が浮かぶ。受付のお姉さんなんて先程からあわあわしてるし、あれ?これって私の冒険者になる為の試験だよね?合格か不合格か決める為のものだよね?あれ?なしてこんな殺伐とした雰囲気に?

 

「取り消していただきたい。我が冒険者ギルドのAランクを雑魚と呼ぶ事を私は看過出来ません」

 

「事実」

 

「そうですか...綾人さん」

 

ここで私にフりますか?嫌な予感しかしないのですが?

 

「貴方にやっていただきたいことがあります。申し訳ありませんが拒否権はありません」

 

そう言って部屋を出て行くギルド長。

 

「ごめんなさい」

 

頭を下げる元凶の女の子。反省しているのだろうか?黒髪ロングで一見大人しそうな小柄な女の子。見た目は13歳くらいに見える。歳下なのだし歳上の私が大人になり許してあげよう。そう思うことにした。

 

「でも貴方もAランクの冒険者を見れば同じことを思う」

 

反省してるのかな?ぺしっと軽く頭にチョップする。うう、と涙を流しながら何かを訴えている目で此方を見てくるが無視することにした。

 

「うう...お姉さんをぶった。わたしの方が歳上なのに」

 

「は?」

 

「アリス様は今年で18歳になられます。よく歳を間違えられますが綾人様より歳上です」

 

今まで慌てていた受付のお姉さんが復活したのかアリスの説明をしてくれた。というか18?全然見えない。

 

歳上ということなのでもう一発チョップを入れておくことにした。歳上なら駄目なことも理解してる筈だもんね。

 

「ううっ、またぶたれた...アイスニードル」

 

「イージス」

 

涙目のまま魔法を詠唱破棄して放ってくるのでイージスで防いでおいた。その場面を受付のお姉さんが見ながら、またあわあわしてるけどほんと前途多難なのかもしれない。



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