刀使ノ短編 (まさ(GPB))
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花笑む貴女は

浴衣夜見の笑顔にやられて書き始めた親衛隊の面々で夏祭りに行くお話。でも当の夜見は当たりませんでした(結芽と岩倉さんは来た)
タイトルにある「花笑む」は百合の花が咲く事を意味する大和言葉で、夏の季語だそうです。


 ある夏の日。

 今日は折神家の近くで夏祭りが行われている。

 

 折神紫親衛隊の執務室。

 ここに、その夏祭りを楽しみにしていた者が一人。

「えっ!? 今日の夏祭り行っていいの!?」

 驚きと嬉しさが混じった声を上げる結芽。だがその表情は喜びが勝っているのか、とても輝いているようだった。

「ああ、紫様からボク達全員に許可が出ているよ」

 真希はそんな結芽の様子に微笑みながら答える。

「やったぁー!」

「ふふ、結芽ったら。そんなに楽しみでしたのね」

 話を聞いていた寿々花も真希と同じように笑みを浮かべた。

「だってここのところ何もなくて退屈だったもん! それ抜きにしても、おねーさん達と一緒にお祭りに行けるのって嬉しいよっ!」

 結芽の心からの言葉に真希と寿々花は胸を打たれ、思わず二人で彼女を抱きしめそうになるが、ここはグッと堪えた。

 

「私は待機していますので、三人で楽しんで来てください」

 しかしそこへ夜見が静かに言い放つ。

「……夜見おねーさん、本気で言ってるの?」

「はい」

 淡々と返す彼女に、真希と寿々花も溜息を漏らす。

「夜見さんは相変わらずですわね」

「全く……夜見、今日はボクのところの和美と――」

「わたくしのところの和歌子さんに、既に留守を頼んでありますわ」

「ですが……」

 ――書類仕事も残っているのでは……。

「仕事の方も心配いりませんわ」

「え?」

 まさに考えていた事を言い当てられ、思わず夜見は驚く。

「ある程度までは事前に進めてある。後はお祭りから帰って来てからでも十分間に合うよ」

「今日は量自体も然程(さほど)ありませんから、別で緊急の物が入っても全く問題ありませんわね」

 二人の言葉にさらに驚く夜見。

 ――獅童さんも此花さんもそれ程までに夏祭りを楽しみに……いえ、それもあるでしょうが、このお二人は何よりも燕さんに……。

 そう考えながら当の結芽に目を向けると、彼女は頬を膨らませていた。

「燕さん?」

「……夜見おねーさんが行かないなら、私も行かない」

 そんな事まで言い出した。

 ――これは……困りました。

「夜見おねーさんだけ置いてお祭りに行ったら最後まで楽しめない!」

「……分かりました」

 真希と寿々花の想いもあり、結芽にまでこう言われてしまった。こうなっては、夜見は折れるしかない。

「ホントに夜見おねーさんも一緒にお祭り来てくれるの?」

「はい」

「よし、決まりだね」

「こうなった結芽には、こちらが折れるしかありませんものね」

 これで結芽が()ねてしまった時の後が怖い、と言うのも少なからずあるが。

 

「そう言えば、夜見と結芽は浴衣を持ってるのか?」

 夜見も行く事が決まったところで、ふと真希がそう口にする。

「いえ、そのような物は」

「あっ、私も持ってないよ~!」

 結芽も言われて思い出したのか「当日なのにー!」と慌てた様子を見せる。

「去年は残念ながら任務で夏祭りどころではありませんでしたし、仕方ありませんわね」

「今年も行けるかどうか怪しかったからね。でも、心配はいらないよ」

「あら、どうしてですの?」

 寿々花に問われた真希は大きめのケースを取り出す。

「紫様がボク達にと浴衣を用意してくれたんだ。全員分ね」

 そう言いながら真希がケースを開けて中を見せると結芽と寿々花は表情を緩める。

「じゃあ、これ着てお祭り行けるんだねっ!」

「ああ。今からなら着替えてちょうどいい時間だろうね」

「そう言う事でしたら、早速着替えてきます」

 夜見は真希が持っているケースから浴衣を手に取ると、そのまま執務室を出て行く。

「あっ! 待ってよ夜見おねーさん!」

 それを追って、結芽も浴衣を持って出て行った。

「あら、二人とも行ってしまいましたわね」

「ボク達も行こうか」

「そうですわね」

 残された真希と寿々花はそんな二人を見て互いに笑みをこぼすと、彼女達も着替えの為に自室へと向かうのだった。

 

 × × ×

 

 着替えを終えた親衛隊の面々は揃って夏祭りの会場へとやって来た。

「わぁー! 出店がいっぱい!」

 祭りを一番楽しみにしていた結芽は、既に沢山の出店に目移りしている。

「結芽、一人で勝手に行って(はぐ)れたらどうする」

「大丈夫だよっ!」

 真希が先に一人で行きそうな結芽を注意すると、彼女は不服そうに頬を膨らませた。

「流石に人が多いですね」

「ちょうど人が大勢来る時間帯ですものね」

 夜見と寿々花も周囲を見渡している。

「燕さん、逸れないように手を」

「だ、だから大丈夫だってば!」

「……そうですか」

 伸ばしかけていた手を引く夜見。少しだけ残念そうな彼女の表情――(はた)から見ればあまり変わっていないようにも見えるが――を見た結芽は、思わずそんな夜見の手を掴む。

「燕さん?」

「わ、私は逸れないから大丈夫だけど、夜見おねーさんが逸れちゃったら困るからねっ!」

「私は逸れたりしませんが」

「いいからっ!」

 ――全く、結芽も素直じゃありませんわね。

 二人のやり取りを見て微笑む寿々花に、真希が近付く。

「寿々花はどうする?」

「え?」

 そう言われて真希に目をやると、自分に向かって手を差し伸べられている事に気付いた。

「まっ、真希さんはわたくしが逸れるとでも……!?」

「あぁいや、すまない。そう言う訳じゃないけど、流石にこの人の多さで心配になってね」

 真希がそのまま「行こうか」と言って歩き始めようとしたところを、寿々花は咄嗟(とっさ)に真希の浴衣の袖を掴んだ。

「そ、そういう事でしたら、その、これで……」

 頬を赤く染め、俯きながら寿々花は弱々しくもそう口にするが、きゅっと袖を掴む指先に自然と力が入る。

「分かった。じゃあしばらくの間はこれで行くとしようか」

 そう言ってゆっくりと歩き始める真希をチラリと寿々花は覗く。真希から少し後ろの方を付いて行っている為に、その横顔は見る事は出来ない。

 ――あぁ、こんな事では真希さんとの関係を進展させるなんて夢のまた夢ですわね……。ですが、もう少しの間このままで……。

 結芽に対して素直ではないなと感じていたはずが、自分も似たようなものであると思ってしまった事に歯痒さを感じながらも、このシチュエーションに密かな憧れを持っていた寿々花はどこか浮かれていた。

 

 そんな真希と寿々花の前を行く結芽と夜見は、主に結芽が次々と目に映る出店に興味を示し、夜見を引っ張って行く形になっていた。

「燕さん、気持ちは分かりますが危ないのでもう少しゆっくり進みましょう」

「えー? でもゆっくりしてたら全部の屋台回れないよ?」

「全部ですか」

「うんっ、全部!」

 ――幾つか同じような屋台もあると思いますが。

 思わず口を()いて出そうになるが、結芽の楽しそうな笑顔の前に飲み込む。

「だから早く行こ、夜見おねーさんっ!」

「あっ」

 結芽は夜見を連れて、綿あめを売っている屋台に向かう。

「おじさん、綿あめ一つちょーだいっ!」

「一つでいいのかい?」

「うんっ! おねーさんと二人で分けるから!」

 ――私も食べるのですか。

 店主は二人を見るなり「あいよ!」と返事をする。

「燕さん、自分の分は自分で買うので私と分けなくても構いませんが」

「もう、夜見おねーさんは分かってないなぁ。屋台の食べ物を全部一人で食べきれる訳ないじゃん! だから二人で半分ずつ食べて、屋台を全部制覇するの!」

 ワクワクが抑えられない、といった表情で野望を語る結芽。

 そんな彼女と手を繋いでいるこの状況で、さらに真希と寿々花は僅かだが後方に離れている。これは結芽の野望を叶えるか、時間切れになるまで付き合わされるだろうと夜見は悟った。

 ――獅童さんと此花さんにも協力して頂きたいところですが……。

「……分かりました。ですが、無理はしないように。いいですか?」

「はぁーい!」

 結芽は返事をすると、店主から渡された綿あめを受け取る。

「それじゃあ夜見おねーさん、半分こ!」

 ずい、と差し出された綿あめに夜見はどうしたものかと考えて、結果そのまま口を付けた。

「どう?」

 彼女が作った訳でもないのだが、にっと笑いながら問いかけてくる結芽に、

「そうですね――」

 夜見もほんの僅かに笑みを浮かべて返す。

「――甘くて、おいしいです」

 




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岩倉早苗は天使である。

岩倉さん恒常化おめでとう記念。
タイトルと内容は特に関係ありません。でも岩倉さんは天使だと思うから付けました(


十条姫和「これより定例会議を始める」

 

六角清香「よろしくお願いします!」

 

安桜美炎「おー!」

 

姫和「今日は特別ゲストとして、岩倉さんに来てもらっている」

 

岩倉早苗「え、えっと、これから一体何を……?」

 

清香「私達三人は持たざる者として、一緒に育んでいかなくてはならないんです……!」

 

姫和「そしてこの定例会議では、その為の情報交換をしているんです」

 

美炎「なんかそう言う事みたいです!」

 

早苗「そ、そうなんだ……」

 

姫和「早速だがこれを見て欲しい」

 

とじとも、岩倉早苗のエピソード「地元群馬でグルメ巡り!」参照

 

早苗「あ、これって前に益子さんと任務で群馬に行った時の……」

 

姫和「ええ。それでこの部分を見て欲しい」

 

エピソード内の早苗「きゃ……もうねねちゃん、じゃれ付きすぎだよ――」

 

清香「こっ、これは……!」

 

美炎「……?」

 

早苗「ええっと、何か変なところあったかな……?」

 

姫和「……ねねに懐かれています」

 

早苗「え……?」

 

姫和「岩倉さんは、ねねに懐かれているんです!」バン!

 

早苗「十条さん!?」

 

清香「私達は懐かれないんです……」

 

早苗「そ、そうだったの……?」

 

美炎「そうなんですよね。他のみんなのところには行くのに……」

 

早苗「理由とかあるのかな?」

 

清香「……胸です」

 

早苗「えっ」

 

清香「胸です」

 

姫和「ねねは胸の大きい者、そして将来胸が大きくなる者に懐くんです……」

 

早苗「そ、そうだったんだ……」

 

姫和「今日、岩倉さんに来てもらったのは、秘訣を教えてもらうためです」

 

早苗「秘訣って……」

 

清香「当然、胸を大きくする方法ですっ!」

 

??「私も知りたいなーっ!」ガチャ

 

姫和「お前は!」

 

清香「親衛隊の……」

 

美炎「燕さん!?」

 

早苗「ええっと……燕さんもねねちゃんに懐かれてない、とか……?」

 

燕結芽「別にそういうのじゃないよ? ほら、親衛隊のおねーさん達ってみんなおっきいじゃんっ! 結芽だけ小さいのが嫌なの!」

 

姫和「そう言う事か……」

 

清香「だったら、燕さんも同じ“ほらいずんどうめい”です!」

 

結芽「いや、そんな同盟に入る気はないけど」

 

ろっかくちゃん「あ、はい」

 

姫和「そんな事より」

 

ろっかくちゃん「(そんな事……)」

 

姫和「岩倉さん、何かないか!?」

 

早苗「秘訣……そ、それじゃあ、スペンス乳腺ってところを刺激するのはどうかな?」

 

美炎「すぺんすにゅうせん……?」

 

早苗「天溪(てんけい)って言うツボがある辺りなんだけど、そこを刺激する事でバストアップが期待出来るみたいだよ!」

 

結芽「へー」

 

姫和「なるほど……しかしその天溪って言うのは一体どこなんだ……?」

 

早苗「それはね――」

 

姫和「岩倉さん?」

 

早苗「ここだよっ!」

 

姫和「ひゃぁっ!?」

 

清香「!?」

 

美炎「えぇっ!?」

 

結芽「わぁお」

 

姫和「い、岩倉さん、一体何を……!?」

 

早苗「ここが天溪って言うツボがあるところだよ」

 

姫和「んんっ!」

 

清香「あわわわわ……」

 

美炎「わー……」

 

結芽「ふーん、この辺かぁ」

 

姫和「も、もう分かったから……あぁっ!」

 

早苗「十条さんって感度いいんだね」

 

姫和「そういう話は――」

 

清香「……ほのちゃん」

 

美炎「え、どうしたの清香……?」

 

清香「私達も二人みたいにしよう!」

 

美炎「うぇっ!?」

 

清香「あとで私もほのちゃんにするから!」

 

美炎「そ、そう言う事じゃないとおも――」

 

清香「じゃあ私から先にしてあげるね!」

 

美炎「ま、待って――ひゃぁ!?」

 

結芽「何この状況……。まぁいっか! 自分でするのもいいし、夜見おねーさんにしてもらうのもいいかもなぁ……にっひひ♪」

 

 

 

 

??「おぉ~、そんなツボが……そこをマッサージすればバストアップ出来ると言えば……」

 

木寅ミルヤ「山城由依、こんなところで何をしているのですか?」

 

由依「み、ミルヤさん!?」

 

ミルヤ「何やら怪しい企みをしていたようですね。一緒に来てもらいます」

 

由依「そんなー!!」

 

 




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特別なプレゼント

夜見、誕生日おめでとう。
最後は心の荒魂が暴れてしまった結果なんです許してください(


 12月24日。世間はクリスマス・イヴ。

 大きなクリスマスツリーの下では待ち合わせをする恋人達の姿がある。元よりここは人通りの多い場所だ。しかしこの時期、イルミネーションで彩られた夜の街にはより多くの人で溢れている。

「……」

 その中に一人、皐月夜見は周りと同じようにツリーの下で待ち合わせをしていた。

 ――無事に辿り着けるでしょうか……。

 彼女が思い浮かべるのは待ち合わせの相手――今日のこの予定(デート)を誘ってきた張本人だ。

 ほう、と一つ息を吐いた夜見がふと周囲に目を向けると、人々の隙間を縫って見知った少女――燕結芽が走ってくるのが見えた。彼女の方も夜見の姿を見つけたようで、目が合った瞬間に結芽の表情が明るくなる。

「ごめん、夜見おねーさん! 遅くなっちゃった!」

「いえ、問題ありません。私としては、燕さんがちゃんとここに着けるかどうかの方が心配でした」

「ひどーい! 子供扱いしないでよっ!」

 結芽とのやり取りに、思わず表情が柔らかくなる夜見。

「それより、行かないのですか?」

「それよりって……まぁいいけど。うん、行こっか!」

 歩き出そうとした結芽は「あ!」と声を上げる。

「何か忘れ物ですか」

「えへへ、そんなとこっ!」

 結芽はニッと笑いながら振り向く。

「改めて誕生日おめでとう、夜見おねーさんっ!」

「……ありがとうございます」

 それに夜見も微笑みながら答える。

 12月24日。この日は彼女――皐月夜見の誕生日でもあった。

 

 × × ×

 

「美味しかったね!」

「そうですね」

 結芽が最初に夜見を連れて行ったのは、お洒落なレストランであった。

 店の前に到着した時には、夜見は驚いて思わず隣でニコニコしている彼女に目を向けてしまった程だ。その視線気付いた結芽が、してやったりと言うような表情で「にひひっ」と笑ったのは夜見にとって印象的だった。

「燕さんがああいったお店を予約していたのは驚きでした」

「お店自体は寿々花おねーさんに教えてもらったけどね」

 ――あぁ、此花さんの紹介でしたか。

 夜見は彼女がこうした大人の雰囲気がある場所を知っているとは思っていなかった為、此花寿々花の名を聞いて納得する。

 

 と、夜見はふと結芽の手に視線を向けた。

「そう言えば」

「どうしたの?」

「燕さん、手袋はどうしたのですか?」

 すっかり寒くなってから結芽はいつも出かける時に手袋をしていたはずだが、今日はそれがない事が気になった。

「あー、ちょっと遅れちゃったでしょ? それで急げーって思ったら忘れちゃった」

 彼女はそう言って(わず)かに舌を出す。

「寒くはありませんか?」

「ん、ちょっとだけだから大丈夫!」

「そうですか……」

 そうは言いながらも、結芽が手を擦り合わせているのを夜見は見逃さない。自身の手袋を片方外して、それを彼女に差し出す。

「これを付けてください」

「え、いいの?」

「はい」

 受け取った結芽は戸惑いながらも言われた通りに手袋を片手に着ける。

「でもなんで片っぽだけ? 片手はどうするの?」

「もう片方はこうします」

 夜見は手袋を付けていない方の手で、同じく手袋を付けていない方の結芽の手を握った。

「わわっ」

「では、行きましょう」

「う、うん……私の手、冷たくない?」

「すっかり冷えてますね」

 平然とした表情で言う夜見。

「ですが、こうしていれば温かくなります」

 夜見の言葉に、結芽は少しだけ手を握る力を強めた。

「……ちょっとだけ恥ずかしいけど、このまま行こっか!」

「ええ」

 

 普段よりも光輝く街を歩く二人。

 初めは手を繋いでいただけだったが、いつの間にか結芽は夜見の腕を抱いてニコニコと楽しげであった。

「寒くありませんか?」

「うん! 夜見おねーさんで温かいよっ!」

 その様子に夜見も優しい表情を見せている。

「それで、次はどこに連れて行ってくれるのですか?」

 夜見の問いに結芽は考える仕草を見せた。

「うーん……そろそろいい時間だし……」

「燕さん?」

「……よしっ! じゃあ夜見おねーさん、今から行く所は真希おねーさんや寿々花おねーさんには内緒だからね!」

 ――まさか……。

 そう言って腕を引いて歩く結芽の言葉に、夜見は言い知れぬ不安を覚える。

 

 × × ×

 

 結芽に連れられ着いた場所を見た夜見は思わず言葉を失った。

 彼女達がいる通りは先程までとは違い(ひと)()が少ない。と言っても、普段よりはあるが。

「燕さん……その、ここは……そういう……」

 珍しく彼女が動揺を見せる。

 それもそのはずで、二人の目の前にある建物はホテル――所謂(いわゆる)ラブホテルであった。

「いやー……その、ね?」

 頬を赤く染めながら結芽は言葉を続ける。

「私も今年で()()()()()()()()()()()()()()()()から……」

「っ……!」

 彼女の言葉に夜見は息を飲む。

「夜見おねーさんへの誕生日プレゼントは今日のデート。そして――」

 二つの時計の針が頂点を指す。

「――クリスマスプレゼントは……結芽()、だよ」

 ぎゅっと夜見の腕を強く抱く結芽。

「受け取って、くれるよね?」

「――はい」

 




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