母親の再婚相手の連れ子が学園のアイドルだった件 (ばんちよ)
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プロローグ

見切り発車です。
よろしくお願いいたします。


追記

2019年8月13日 一部訂正しました。


ひらり、はらりと桜の花びらが舞っている。

見渡す限りの桜が咲いている中、一際大きな桜の木が立っている。

周りの桜を見渡すように、大きく広がるように咲いていた。

見るものをすべて引き込むような、とても幻想的な景色だ。

 

 

そんな桜の木の前に俺は立っていた。

 

 

辺りは暗く、時間は夜なのだろうか。

シンと静まっており、何の物音さえも聞こえない。

 

 

目の前には一人の女性が立っている。

その女性は胸の前で手を握り、俺のことをまっすぐと見つめていた。

 

 

記憶にはない人だった。

知り合いではないはず。

でも、いつも一緒にいるような、すごく大切なような。

なぜか、そんな感情が胸を占める。

 

 

その女性が口を開き、何か言葉を発しようとした。

その瞬間、俺の視界はゆっくりとホワイトアウトしていった。

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると自分の部屋のベッドの上だった。

夢の余韻か、少し意識がぼーっとしている。

時計を見ると、時刻は朝の7:00前。もう起きなければならない時間帯だ。

 

「・・・・あー、寝坊してしまった。」

 

普段は6時ぐらいに起きて軽くランニングをしているのだが、時折今朝のように寝過ごしてしまい、その機会を逃してしまう。

朝食は自分が作る為、遅くともこれくらいの時間帯には作り始めないと1日のスタートが遅くなってしまうのだ。

 

「・・・ん~~~っ!」

 

起き上がり、体を伸ばす。

伸びをしながら、先ほどまで見ていた夢について思考をめぐらす。

とてもきれいな風景だった。

あの桜はたしか、『枯れない桜』だったよな。

 

俺が住んでいる場所は初音島と呼ばれる、日本でも有数の桜の名所である。

ただ桜が咲いているだけなら、そこまでめずらしくない。

だが初音島の桜には他にはない唯一の特色がある。

・・・なんと、桜が一年中咲いているのだ。

春はもちろん、暑くてたまらない夏も、食べ物がおいしくなる秋も、雪が降って寒い冬も。

どの季節も初音島の住人は桜と共に生きている。

 

そんな島中のいたるところにある桜の中でも、一つだけ特別視されている桜がある。

それが『枯れない桜』である。

なんでも、その枯れない桜に願いごとをすればその願いが叶うのだとか。

ばかばかしいと思うかもしれないが、一年中桜が咲いている時点で大分不思議である。

なんでも世界中の科学者が桜が咲いているメカニズムを研究しているのだが、いまだにわかっていないらしい。どこのファンタジーだろうか。

ともかく、そんな桜が咲いているのだ。願い事の一つや二つ叶ってもおかしくはないと思えてくる。

まあ、願いを叶えてもらった人なんて会ったことないけど。

 

 

一旦部屋を出て、洗面台で顔を洗ってから部屋に戻り、部屋着に着替える。

 

この家は、二階建ての日本家屋であり、俺の部屋は二階にある。

日本家屋という割には、そのイメージに反してまだ真新しい。

それというのも、俺の母親が、俺がまだ幼い時に建てた家なのだ。

うちの母親は仕事でかなり稼いでいるらしく、かなりのお金を持っている。

ただ、なんの仕事をしているか教えてもらっていない。

昔から何度か気になって聞いてみるのだが、その度にはぐらかされてしまう。

 

階段を下りると、シャワーの音が聞こえてきた。

丁度その母親が使っているのだろう。

この家には俺と母親の二人暮らしな為、母親以外心当たりがない。

今のうちにとりあえず朝食を作ってしまおう、そう考えて台所に向かう。

 

今日は昨晩のうちに炊飯器をセットしていたので、お米に合わせて和食を作ろうと考える。

味噌汁に、焼き鮭と卵焼き、それに冷蔵庫で漬けてる浅漬け。

なんの面白みのない定番メニューだが、王道中の王道。

自分もこのメニューを気に入っており、良く作っている。

 

炊飯器を開けると良く炊けた白米の香りが鼻孔をくすぐる。

しゃもじで軽くお米を混ぜてから再び蓋を閉じ、蒸らす。

 

先に冷凍していた鮭を出しておいてレンジで解凍する。

時間がないので時間短縮だ。

味噌汁用に鍋に水を入れ、お湯を沸かす。

お湯が沸いたら鰹節を入れ、だしをとる。

だしが取れたら鰹節をすくい、カットした豆腐、わかめ、油揚げの順番に入れていく。

最後に味噌を混ぜていく。

 

それと同時に解凍した鮭の下ごしらえをしてからフライパンで鮭を焼いていく。

香ばしいにおいがしてくる。とてもいい匂いだ。

 

鮭を焼いている間に卵を割り、醤油と少量の砂糖をかき混ぜる。

卵焼き用のフライパンに注ぎ、二人分焼いていく。

 

そこで、ふと、あることを思い出した。

そういえば母さん、今日朝早くから仕事じゃなかったっけ?

そう思い、台所にあるカレンダーを見てみる。

 

『母仕事、朝食いらない』

 

今日の日付のところにそう書いてあった。

 

「まじか。すっかり忘れてた。」

 

いつもの調子で二人分作ってしまった。

まあ、冷蔵庫で保存しておけば弁当にできるし、いいか。

しかし、何か引っかかるな。

そう思い、自分の分の食器を用意する。

 

台所と隣接している居間のテーブルに食事を用意し、テレビをつける。

丁度朝のニュースの時間帯だ。

ニュースキャスターが政治のニュースを読み上げている。

 

「さて、いただきます。」

 

手を合わせ、味噌汁に口をつける。

うん、おいしい。

我ながら上出来だ。

一日は朝食から始まる。で、あればそれがお粗末なものであったらその一日は最悪なものになる。

それが自分のポリシーだ。

 

だからこそ、気になる。

なんだろうこの引っ掛かりは。

何かおかしなことがあっただろうか。

朝起きてから、ここまで・・・・。

・・・・・・・そうだ、シャワー!

 

さっき母親がシャワーを使っていたんだ。

なんだ、母さんは今家にいるのか。

まったく、予定が変わったらちゃんとカレンダーに書き込むのがうちのルールだというのに。

とりあえず、母親がここに来てからご飯の用意をしよう。

そう思ってニュースを見ながら、箸を進める。

 

そうこうしてるうちに、廊下を歩いてくる音が聞こえてきた。

丁度居間の前のところで止まる。

俺はそれに合わせて、箸をおいて振り返りながら挨拶をしようとした。

 

「おはよう母さん。仕事はなくなっ・・・・た・・・・の・・・・。」

 

だが、途中で言葉が詰まってしまった。

無理もない、だってそこにいたのは。

 

 

「あはは・・・。おはよ~ございま~す・・・・。」

 

 

母親ではなく、

 

 

「・・・・どちら様?」

 

 

見知らぬ女の子だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母親の再婚相手の連れ子が学園のアイドルだった件

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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第1話 新しい同居人


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それでは、1話目をどうぞ。


「・・・あはは、おはよ~ございま~す・・・・。」

 

「・・・・・・・どちら様?」

 

とっさに俺は目の前の少女にそう返した。

考えてみて欲しい。

朝、自分の家で、母親だと思って振り返ったら、知らない女の子がいるのだ。

ふすまの後ろから恐る恐る除くようにこちらを見てくるが、こっちも慎重に声をかけるしかない。

 

目の前にいる女の子をまじまじと見る。

中学生ぐらいだろうか。

桃色がかったロングの髪を一つ縛りにし、左肩にかかるようなサイドテールにしている。

薄めのカーディガンにジーンズを履いていた。

容姿はぱっと見でもかなりかわいい部類ではないだろうか。

 

「えーと、唐沢・・未来君・・で、あってる?綾子さんに昨晩泊めてもらったんだけど聞いてないかな?」

 

その女の子は俺に確かめるように聞いてきた。

 

「はい、未来っていうのは俺の名前ですけど・・・。母さんが?」

 

確かに俺の名前は唐沢未来だ。

それに、綾子という名は母の名前だ。

その名前を出すということは、母に泊めてもらったっていうのは間違いないんだろう。

ただ、俺は誰かを泊めるなんて話は何も聞いていなかった。

 

「・・・・えーと、すいません。母からは何も聞いてなくt」

 

ジリリリリリリリリリリっと据え置きの電話が鳴り、俺の言葉を遮る。

 

「・・・・・ちょっとすいません。電話出てもいいですか?もしかしたら母かもしれないので。」

 

「うん!どうぞどうぞ!」

 

電話に出る断りを入れる俺ににこやかに目の前の子はにこやかに応じてくれる。

なんとなくいい娘だな~という感じがする。

 

 

お言葉に甘えて電話のところまで移動し、受話器を手に取る。

 

「もしもし。」

 

『あ、未来?おはよう。母さんです。』

 

電話の相手は、予想通り母からだった。

 

「おはよう、母さん。朝から電話したのって・・・。」

 

『あ、その様子だと、あの娘に会ったみたいだね。ごめんね!昨日の夜はあんた早く寝ちゃってたみたいだし、朝は早くから仕事に行かないといけなかったから、あの娘が泊まったこと伝える余裕がなくて。』

 

「まあ、それならしょうがないけど、びっくりするわ。今まで誰かを泊めることなんてなかったでしょうに。なんでまた。」

 

『ごめんごめん!いやね、その娘のことなんだけど・・・。ほら、前に母さん再婚したい相手がいるって相談したじゃない?』

 

「あー、うん。」

 

数週間前だっただろうか。

母から再婚したい相手がいると相談されたことがあった。

母は父が亡くなってから女手一つで俺を育ててくれた。

その分母は自分の時間を過ごすことが少なかっただろうから、

俺が自分一人でもある程度生活できる能力を身につけてからは、再婚とかしないのか聞いてみたことがある。

そんなこともあったので、母から相談されたときは俺も喜んで賛成したのである。

個人的に相手の人とうまくやれるか不安であったが、母が選んだ人なので信頼できるだろうと考えている。

丁度仕事が忙しい時期なので、一段落したら顔合わせしようと話していたところだ。

でも、それが何か関係あるのだろうか?

相手の人に頼まれたとか?

 

『その相手の人の娘さんなんだよね!』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」

 

え、マジで?

 

『つまり、あんたの義理の姉?もしくは妹?になる予定の娘なのよ。』

 

「・・・・・・いや、初耳なんだけど?そういう重要な話はもっと早く教えてよ。」

 

『いやさー、もっと段階踏んでタイミングを考えて、ちゃんと話す予定だったんだけどね。相手の人、貞明さんって言うんだけど、貞明さんが急に仕事で2週間くらい家を空けることになっちゃってね。

年頃の女の子を家に一人でというのも不安だから、親戚か知り合いの家に預けようってことになったんだけどね。他に預けられそうなところが無かったのよ。それで、顔合わせも兼ねて家で預かるってことになったってわけ。

 今春休みでこれから新しい学年に上がるまえでしょ?タイミング的にも丁度いいかなと思って。』

 

うーん。そういうことならしょうがないか・・・・。

しょうがないのか・・・?

まあ、ここで俺が異論唱えることもないし、とりあえずは受け入れるしかないね。

 

「わかった、了解でーす。」

 

『ほんと、ごめんねー、突然。後、あんた今日暇?日用品とかその娘の必要な物買ってあげてほしいんだけど。』

 

「今日?まあ、特に用事はなかったから大丈夫だよー。」

 

『そう?なら頼んだ。その娘、白河ななかちゃんっていうんだけど、あんたと同い年だからちゃんと仲良くするんだよ?わかった?』

 

「あ、そうなんだ。はいはい、それはもちろん。」

 

『今日は夕方くらいには帰れるから、三人で一緒に夕飯食べようね。それじゃ!』

 

「はーい。お仕事頑張って。」

 

そういって受話器を置いた。

・・・・・うん。いきなりすぎて混乱しそう。

思考停止しそうになる頭を必死に回しながら、俺は件の女の子に目を向ける。

 

「綾子さんからだった?」

 

電話が終わるタイミングを見計らっていたのか、白河さんが話かけてきた。

 

「うん。母から一通りの説明が。で、えーと、白河ななかさん、であってるかな?」

 

たった今初めて名前を聞いたばかりなので一応確認する。

 

「うん。今年風見学園付属3年生になる白河ななかです!」

 

名前を聞いた俺に笑みを浮かべて、ピッと敬礼しながら自己紹介してくれる。

うわ、すごいかわいい。まじか、こんなかわいい娘と一緒に暮らすのか。

 

「これはご丁寧に。同じく今年風見学園付属3年生になる唐沢未来です。」

 

「うん、未来君だね!・・・・・ごめんね?いきなり転がり込んで・・・・。」

 

白河さんは、俺の返事に笑顔で返事をしてくれた。

でも、すぐに申し訳なさそうな顔で謝罪の言葉を口にする。

 

「いやいや、全然謝ることはないよ!

そりゃ確かにいきなりでびっくりしたけどさ。母さんの話だといずれ顔を合わせることにはなったんだろうし・・・。

まあ、これも何かの縁さ。仲良くやろう。白河さん。」

 

白河さんに気を使わせないように、笑いながら歓迎の言葉を口にする。

そうはいっても、これは本心からだ。

見た感じいい子そうだし、俺としても仲良くやれそうだ。

 

「・・・・うん。ありがとう!じゃあ、握手しよ?よろしくの握手!」

 

白川さんは俺の言葉を聞いてすぐ笑顔を浮かべると、手を差し伸べてきた。

 

「お、おう。じゃあ、・・・・・。よろしく、白河さん。」

 

俺はその手を取って握手をした。

小さくてかわいらしい手だ。

女の子と握手なんてしたことないからすごい気恥しい。

でも、せめてもの歓迎の気持ちを込めて手を握る。

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・?」

 

すると、白河さんは、空いてる左手の人差し指を自分の頬に当てながら握手してる手をじっと見つめてくる。

どうしたのだろうか、すっごい照れてしまうのだけど。

 

「白河さん?」

 

俺がそう呼びかけると、彼女はむーっと不満げな顔になった。

 

「な・な・か!」

 

「え?」

 

「ななかって呼んで?同じ家に住むのに、苗字だと他人行儀でしょ?私も未来君ってよぶから。」

 

「うーん、それもそうか。じゃあ、ななかさん。」

 

「もう!さんもいらないよ?」

 

「うえっ?・・・・・ななか、・・・・・・さん。・・・ごめん、気恥しくてハードルが高いからこれで勘弁してください。」

 

「え~?もう、しょうがないなあ。」

 

彼女は、私は不満です!って顔をしながら腰に手を当てる。

感情表現が豊かな子だなあ。

ひとまずは許しを得たようでホッとする。

 

「さ、ななかさんは朝ごはんまだでしょ?食べる?」

 

「あ、うん。じゃあ、頂こうかな?未来君が作ったの?」

 

「そうだよ。朝ごはんは一日の始まりだ。モリモリ食べて、エネルギーを充填してくれ。」

 

力こぶを作っておどけるようにして朝ごはんを勧める。

すると、彼女はキョトンしてから、笑いだす。

 

「アハハハ!未来君っておもしろいね。じゃあ、朝ごはん食べてエネルギー充填させてもらうね。」

 

なんと、笑われてしまった。

でも、よかった。初めて過ごす家だろうから緊張するだろうと思ったけど、杞憂だったようだ。

 

「何か食べれないものはある?」

 

「うーん、特にはないかな。」

 

「はいよー、じゃあ座って待っててね。」

 

俺はさっき作った料理をななかさんに出すために、台所に向かう。

うん。いきなりすぎて正直まだ実感がわかないところもあるけど、これから楽しくなりそうだ。

そう思うと、俺はこれからの生活が楽しみになるのだった。

 

さて、完璧な朝食をごちそうしようか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん!?すごいおいしい・・・・。」

 

「そうでしょうそうでしょう。」

 

 

 

 

 

 

 





お読み頂きありがとうございました。


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第2話 買い出し



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第2話をどうぞ。


 

 

 

 

 

ななかさんが家で暮らすことになった日の午前中。

俺はななかさんと二人で近くの商店街に来ていた。

母から頼まれた通り、日用品を買いに来たのだ。

ここには、様々な種類の店がそろっているので大抵のものは揃う。

なので、買い物にかかる時間はそんなに時間はかからなかった。

 

「さて、一応予定のものは全部買ったかな?」

 

「うん、手伝ってくれてありがとね。」

 

「いえいえ、どういたしまして。」

 

ふと時計を見ると、もう12時を過ぎたところだった。

ちょうど腹も空いてきている。

昼ご飯には丁度いい時間だ。

今から帰って料理をすると時間がかかるから、このままどこかで食べるのがいいかもしれない。

そう思い、彼女に昼食の提案をする。

 

「もう12時過ぎてるけどお腹空かない?どこか近いところで食べる?」

 

「あれ、もうそんな時間?・・・・・うん、そうだね。お腹すいちゃった。」

 

丁度商店街の近くに喫茶店があったのでそこに二人で入る。

俺はコーラにパスタのランチセット、

ななかさんはグレープジュースとサンドイッチのランチセットを頼んだ。

 

 

・・・・・・よく考えるとこれはなかなかすごい状況なのではないだろうか。

同い年の女の子と一緒に買い物して、ランチを食べる。

特に意識することなく、『普通だったらこうしてるだろう』というイメージ通りにしてたつもりなんだけどな。

第三者から見たらデートしてる風に見えそう。

そう考えると、なんかすごい緊張してきたな。

 

そんなことを考えていると、先に注文した飲み物が運ばれてきた。

俺とななかさんはほぼ同時に飲み物に口をつける。

 

「・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

お互いに無言になってしまう。

そういや、買い物中も必要な物を探すのに集中しちゃって、あんまり会話らしい会話してなかったな。

朝にはお互いうまく会話できたと思ったけど、やっぱりぎこちなさは抜けない。

・・・・・・いかんいかん。このままだとよろしくない。

何か会話をしなければ・・・・。

 

そう考え、俺は当たり障りのない話をする。

 

「そういや俺ななかさんと全然会ったことなかったけどさ。

ななかさんって、何組だったの?」

 

「私?私は1組だったよ。

 未来君は?」

 

「俺は5組。」

 

「あー。

 合同授業もないし、教室がある階も違うからそりゃ会わないよねー。」

 

そんな感じで、お互いの学校生活の話をしていく。

良かった。ひとまずは嫌な空気を脱却できた。

 

 

 

 

注文した料理に舌鼓を打ち、食事を終えて一息つく。

そこでふとお互いの親の再婚の話になった。

 

「最初お父さんから話を聞いたときはびっくりしたよ。全然そういった話聞いてなかったから。」

 

「あー、そうなんだ。俺は時々再婚とかしないの?とか話してたから、まあそこまで驚かなかったよ。

 まあ、それでも突然再婚したいって相談してきたからね。さすがに少しびっくりした。」

 

ハハハとお互いに笑い合う。

 

「あー、でも今思い出すと、少し前から母さんがいつもより雰囲気が明るくなったかな?」

 

「綾子さんが?」

 

「うん、いつもは『WRYYYYYYYYY!!』って言いながら仕事にいくんだけどさ。」

 

「・・・・・・・えーと。それ既にもう明るいどころじゃなくない・・・・?」

 

「いや、それがさ。最近は『最高にハイ!ってやつだぁぁぁぁぁ!』とか、『ンッン~~~♪実に!スガスガしい気分だ!歌でもひとつ歌いたいようなイイ気分だ~~~フフフフハハハハハ。』とか言いながら玄関出ていくんですよ。」

 

「確かに上機嫌になってる!?・・・・っていうか言動がそのまんまDI〇じゃん。」

 

「お、ジョジ〇知ってるの?」

 

「うん。全部じゃないけど読んだことあるよ。私は割と好きだな~。」

 

「おれも母さんに勧められて読んでるんだ。あれ、おもしろいよね。」

 

「だよね!それにしても綾子さんってテンション高いんだね。

 私は今まで何度か話したことあるけど、ただ優しそうな人ってイメージしかなかったな。」

 

「そうなんだ?

まあ、母さんはアニメとか漫画とか好きだからさ。

よくそういうネタを挟んでくるんだよね。

しかも、学生の時演劇やってたらしくて芝居のクオリティがすごい高くて。

おかげで退屈しないんだけど。」

 

「へー、そうなんだ。」

 

母のことを話すとななかさんは苦笑いしながら相槌を打ってくれる。

うーん。この様子だと冗談だと思われたかな?

・・・・・まあ、そのうち今の話が本当のことだと身をもって知ることになるだろうな。

 

「ところで、ななかさんのお父さん、・・・貞明さんだっけ?

 実は俺まだお会いしたことないんだけど、どんな方なの?」

 

「お父さん?うーん・・・・・物静かな人かな?」

 

「ふむ。」

 

「口数は少ない方かな。読書が好きでよく本読んでるの見るよ。

 ・・・・・うーん。どんな人かって聞かれるとそんな感じとしか言いようがないな・・・。」

 

「なるほど・・・・。」

 

うーん、情報が少なくてあんまりわからないな。

 

「あ、それでね。すごく優しいんだ。どんなに仕事が忙しくても私のことを気にかけてくれるの。

授業参観とか、運動会とか必ず来てくれるし。長期休みの日とかは旅行に連れてってくれるし。

すごく疲れてても、家にいるときは私の学校のこととか笑いながら聞いてくれるんだ。」

 

「・・・・・。」

 

「私のお母さんが亡くなってからも、私に寂しい思いをさせないようにさせてくれたんだよね・・・。お仕事だって忙しいだろうに・・・・。」

 

「・・・・・そっか。」

 

「あ、ごめんね。お父さんがどんな人かって聞かれたの初めてだから上手く言えなくて・・・・。」

 

「いや、貞明さんがどんな人かよくわかったよ。

・・・・ななかさんのお父さんは、いいお父さんだね。」

 

「・・・・うん。私の自慢のお父さん。」

 

俺の言葉にはにかみながら答えるななかさんは、とても嬉しそうだった。

 

 

 

 

時計を見ると、結構時間が経っていた。

そろそろ家に帰るとしよう。

そういえば、冷蔵庫の中身が減ってたから帰る前に買い出ししようかな。

 

「家に帰る前にまた買い物して良い?今日の夕飯の買い出し。

 それで、今日の夕方に母さんも帰ってくるらしいから、三人で家で食べよう。」

 

「うん、わかった!楽しみだな~。

 あ、そうだ。夕飯の準備私もお手伝いしてもいい?」

 

「ん?そりゃありがたい。ななかさんは料理は?」

 

「ふっふーん。これでも自信があります。

 お父さんに仕込まれたので!」

 

「ほうほうそれは楽しみだ。

 じゃあ、献立考えながら商店街を回ろうか。」

 

「了解です!」

 

俺とななかさんは、喫茶店を出て再び商店街に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 





お読み頂き誠にありがとうございました。

中々物語が進行しないので私自身もじれったいですが、
あせらずじっくり書きたいと思います。

作中の時期は、二人が中学3年生になる前の春休みなのですが、
春休みが終わるまではゆっくりと進んでいく予定です。

読者の皆様には、どうかお付き合い頂ければ幸いです。


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第3話 母を交えての夕食



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それでは第3話目です、どうぞ。


 

 

買い出しから帰ってきた後は俺とななかさんは各々の部屋で過ごしていた。

夕方になったので、夕食の準備をするために台所に集合し、

今は夕食の準備にとりかかっている。

ななかさんが思った以上に手慣れていて少しびっくりした。

 

「いやー、ななかさん料理上手いね。助かるよ。」

 

「ありがとー。

未来君も上手だよね。

男の子ってあんまり料理しないイメージだったけど。」

 

「アハハ、まあそうかもね。

 学校で他の男子と話してても皆料理できないらしいし。

 うちでは大体料理当番は俺だからなー。

さすがにもう慣れました。」

 

「おー、家庭的な男子ってポイント高いよー?

 未来君モテるんじゃない~?」

 

「またまたー。口が上手いんだから。

 母さんが仕事で忙しいから、俺がやるべきだからね。

 これくらい普通普通。」

 

でも、今まで母さん以外の人に料理を作るなんてことなかったから、

こうやって料理の腕をほめてもらえるのは新鮮だ。

 

「それにしても・・・・。」

 

「うん?どうしたの?」

 

「いや・・・・。

今思えばうちに来てまだ一日目なのに手伝っちゃってもらって悪いなって思って。

本来なら俺が作って歓迎する料理作るべきだったなー、って。」

 

「あはは。そんなの気にしなくていいのに。

そもそも私が手伝いたいって言ったんだよ?」

 

「あー、そうか・・・・。」

 

「うん、そうそう。

それに、朝ごはん食べさせてもらったからね!

すごくおいしかったよ?」

 

「そっか、ありがとう。」

 

ななかさんいい子や。

逆に気を使わせてしまったかな・・・・。

 

そんな会話をしながら料理を作っていく。

それにしても、ななかさんとは大分打ち解けることができた気がするな。

母さんに仲良くするように言われたけど、まあこれなら大丈夫かな。

 

そんな感じで料理もほぼ完成し、後は盛り付けるだけになった。

 

「それにしても、作ってるときにも思ったけど、結構量多いね。

未来君体大きいからたくさん食べるの?」

 

ななかさんが料理を見ながらそんなことを聞いてくる。

今日の夕食はハンバーグや数種類の揚げ物をメインにサラダ等、種類が豊富だ。

量も一般的な三人前のものより確かに多い。

 

まあ、確かにそう思うかもな。

俺の身長は180センチを超えてる。

我ながら中学生にしてはでかい。

女の子からしたらたくさん食べると思うだろう。

 

「まあ、確かに俺も食べる方なんだけどね・・・・。

 俺よりも母さんが食べるんだ。」

 

「え?そうなんだ。意外だな~。」

 

母さんは身長は160センチぐらいなのに俺よりも食べるのだ。

なので食費が2人分なのに結構かかる。

 

「もちろん、ななかさんも遠慮なく一杯食べていいんやで?」

 

「うん、それじゃ遠慮なく頂きます!」

 

二人で話しながら、皿を棚から取り出す。

すると、玄関の方から扉が開く音がした。

 

「お、噂をすれば・・・。」

 

ドタドタドタと足音が台所に近づいてきた。

そのままの勢いで、扉が開く。

 

「ただいまー!」

 

小柄で髪をポニーテールにした女性が入ってきた。

スーツを着ており、バックを肩にかけている。

俺の母親、唐沢綾子、その人である。

 

「おかえりー。たった今ご飯できたよー。」

 

「あら、ちょうどいいタイミング。

 ななかちゃんもただいまー!」

 

「おかえりなさい、綾子さん。」

 

元気良く話しかける母さんに、ななかさんもにこやかに応える。

 

「今朝はごめんねー?一緒にいれなくて・・・・。

 未来が迷惑かけなかった?」

 

「いやいや、全然!色々手伝ってくれましたし・・・。」

 

「未来ったら女の子とあまり話したことないから失礼なことしてない?」

 

「あはは・・・、そんなことないですよ?未来君とも色々おしゃべりしました。」

 

「そう?」

 

帰ってきてそういうことを目の前で言うのはやめてもらえないだろうか・・・。

すごい恥ずかしくなってくる。

・・・・・・・・・・・女の子とあまり話したことないのも事実だからな・・・・・。

ななかさんが苦笑いでフォローしてくれるけれど余計にいたたまれなくなってくる。

 

「母さーん。ご飯冷めちゃうからとりあえず着替えてきたら?」

 

「もう。ななかちゃんとのおしゃべり邪魔しないでよ。

でも、そうね・・・。

先に着替えてくるか。

 私お腹ペコペコよー。」

 

「今日はななかさんも手伝ってくれたから、かなり豪華だよー。」

 

「あら、そうなの?

 ななかちゃん。」

 

「え?ええ。

 ちょっとお手伝いさせてもらっただけですけど・・・。」

 

「まあー!ありがとう!

 それはますます楽しみね!

 じゃあ、すぐに着替えてくるわねー!!」

 

そういうと、母さんは着替えるために自分の部屋に向かった。

 

「・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・。」

 

嵐が過ぎ去った後のように静かになる。

 

「と、とりあえず盛り付けようか・・・・。」

 

「うん。」

 

二人で料理を皿に盛り付け始める。

 

「・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・女の子とあんまり話したことないの?」

 

「・・・・・・・・・そ、そんなことないし・・・・・・。」

 

ななかさん・・・・・。

そこはスルーしてください(泣)・・・・。

 

 

 

 

 

 

「いやー、ななかちゃんが手伝ってくれたからいつもよりおいしかったわ~。」

 

夕食後、母さんは満足そうにそう零す。

 

「そんなことないですよ~。未来君が料理上手だからですって。」

 

「いやいや、俺一人で作るよりもずっとおいしかったよ。

 これもななかさんが手伝ってくれたからだね。」

 

「もー、未来君まで。」

 

母さんと俺の二人から褒められて、困ったようにななかさんは笑う。

 

「ふふふ。

二人共、もう結構仲良くなったみたいね。」

 

俺とななかさんが話すのを見て、母さんは微笑んだ。

 

「そうですね。

 未来君話上手だから話てて楽しいですし。」

 

「いやいや、話上手なのはななかさんでしょ。」

 

いや、実際ななかさんは話上手だと思う。

人懐っこい性格とでもいうのかな?

コミュニケーション能力が高くて、すぐ仲良くなれた。

・・・・・女の子とあんまり話したことない俺でもね。

 

いやいやそっちが、とテンプレのような掛け合いをする俺達を見て、

母さんは優しく笑った。

 

「うん。何より何より。

 ・・・ななかちゃん。

これからよろしくね?

歓迎するわ。」

 

母さんがそうななかさんに話す。

 

「綾子さん・・・・。

 はい、よろしくお願いします。」

 

「もう、敬語なんてやめてよ。

 一緒に暮らすんだから。」

 

「え!?えーと・・・・。

 うん、ありがとう!綾子さん。」

 

戸惑いながらも嬉しそうにななかさんは笑った。

ここは俺も何か言うべきだな。

 

「俺も歓迎するよ。

 朝も言ったけど、改めてよろしく、ななかさん。」

 

「うん!未来君もよろしくね!」

 

夕食の後は、三人で笑いながら色んな話をした。

突然女の子と暮らすことになって驚いた日だったけど、ななかさんと過ごしてとても充実した一日だった。

このまま何事もなく母さんと貞明さんが再婚することになったら、ここにななかさんのお父さんも一緒に加わるのか。

まだ会ったことないけど、ななかさんの話によればとてもいい人っぽいし、仲良くなれるといいな。

 

 

うん。お会いする日が楽しみだ。

 

 

 

 





お読み頂きありがとうございました。
次の投稿は少し遅くなりそうです。
楽しみにしてくださってる方がいらっしゃったら申し訳ありません。

次回の内容は、春休み中の出来事についての小ネタ集を考えてます。
台本形式になるかもしれません。

それでは、次回もよろしくお願いいたします。


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第3.5話 春休み中の出来事


閲覧、お気に入り登録ありがとうございます。

今回は短編集です。
ななかさんについてちょっと独自設定が入っていますが、
そんなに大きく影響があるものではないはずです。

それでは、どうぞ。




 

その1「最高にハイ」

 

ななかさんが家に来た次の日の朝食後。

 

「「「ご馳走様でした!」」」

 

「じゃあ、私仕事行ってきます。」

 

「はーい。いってらっしゃい。」

 

「お仕事がんばってね、綾子さん。」

 

「ありがとう!

 WRYYYYYYYYYY!

 最高にハイってやつだああああああ!」

 

「!?」

 

ガラガラ、ピシャン。

 

「ほえー、昨日の話ホントだったんだね。」

 

「でしょ?」

 

「しかもアニメの声そのままだし・・・・。

 どうやってあの声出してるんだろう・・・・?」

 

「俺もできるよ?」

 

「え?」

 

「WRYYYYYYYYY!」

 

「!?」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その2 「鳴き声」

 

未来とななかの二人は食材の買い出しの為、商店街に来ていた。

二手に分かれて買い物をし、ななかは待ち合わせ場所に向かっていた。

 

(・・・・・あ、未来君だ。)

 

待ち合わせ場所には先に未来が先に待っていた。

しゃがみこんで何やら手を動かしている。

 

(・・・・何してるんだろう?)

 

猫『にゃあ~。』

 

ななかが遠くから未来の足元を見てみるとそこには野良猫がいた。

 

(あ、猫ちゃんだ。かわいい~。)

 

未来『にゃあ~。(ほれほれ。)』

 

(・・・え、今の未来君?)

 

未来『にゃ、にゃにゃにゃにゃあ~。(ほれほれ、おいで~。)』

 

(すごい鳴き真似上手・・・。)

 

猫『フシャー!!』

 

(ぷふっ、すごい警戒されてる・・・・。

 申し訳ないけどなんかおもしろい・・・。)

 

猫『フシャー!!』タッタッタッ

 

(あー、いっちゃった。残念。)

 

「(´・ω・`)ショボーン」

 

〈あはは、すごいしょんぼりしてる。なんかかわいいな~。〉

 

ななかは気落ちしてる未来に後ろからこっそり近づいていく。

 

「わっ!!」

 

「どぅわ!!」

 

「あははは!すごいびっくりしてるー。」

 

「なんだ、ななかさんかー。

 やめてよ、すごいびっくりしたじゃん。」

 

「ごめんごめん。」

 

「もー。・・・ハッ!?もしかしていまの見てた?」

 

「んー?何のこと?」

 

「(ほっ、良かった見られてない・・・。

 見られるのはかなり恥ずかしいからな・・・。)

 いや、なんでもないよ。

 とりあえず、帰ろう。」

 

「うん!」

 

「さっき連絡来たんだけど、

 今日は母さん帰るの遅くなるらしいから、とりあえず母さんの分は作り置きにしとこう。」

 

「え、そうなの?

 わかった。」

 

「・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・さっきは、猫ちゃん残念だったね?」

 

「バッチリ見てるじゃん!!」

 

 

その3 学生の宿命

 

またまたとある日の朝食時

 

「そういえば二人共。」

 

「「はい?」」

 

「春休みに入ってからしばらくたったけど、宿題は進んでる?」

 

「(ギクッ)実はあんまり・・・。」

 

「(今ななかさんギクッてなった?)

あー、一応やってるけど結構残ってるな・・・。」

 

「(今ななかちゃんギクってなったわね。)

 早めにやっときな~?貯めとくと後で大変だよ~。」

 

「わかったよ。」

 

「はーい・・・・。」

 

 

 

「というわけで始まりました、第1回春休み勉強会―。」

 

「イエ―・・・・・。」

 

「うわあ、ななかさんすごいテンション低い。

 いや、俺もテンション高いわけじゃないけどさ。

 まあ、せっかくなんで一緒に宿題済ませちゃいましょうよ。」

 

「はーい。」

 

「ところで、ななかさんはどれくらい残ってる?

 (これは全然手を付けてないパターンかな?)」

 

「・・・・・・・先生!」

 

「(なぜに先生?)なんですか、白河さん?」

 

「宿題がどこにあるかわかりません・・・・。」

 

「そこから!?」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その4 家の決まり事

 

「綾子さん、何か家での決まり事ってあるの?」

 

「んー。そうねー。

 色々あるけれど・・・・。

 家事は当番制ね。

 あと、ご飯をお家で食べないときはできるだけあらかじめカレンダーに書いとくこと。」

 

「はーい。」

 

「あと、未来のベットの下は見ないであげて?」

 

「はい!わかりました!」

 

(まさかバレてる!?)

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その5 学生の宿命その2

 

「うへー、結構たくさんあったよー。」

 

「まるまる手を付けてない感じですかね?」

 

「お恥ずかしながら・・・・・。

 一応読書感想文だけはやったんだけどね。」

 

「そうなの?

俺はいつも読書感想文は後回しだな。

なんか苦手で。

ななかさんは感想文書くの得意なの?」

 

「まあね。

 お父さんの影響で読書は好きだから。」

 

「へー、そうなんだ。

 ・・・なんかお勧めの本ある?」

 

「おすすめ?

 うーん・・・。未来君て良く本読む?」

 

「いや、あんまり。」

 

「そっかー。

 じゃあ読みやすい方がいいかな?

おすすめの本いくつかあるから、今から紹介してあげよう!」

 

「ちょっと待った。」

 

「うっ。」

 

「お願いしといてなんだけど、後にしようか。

 今は目の前の宿題やろう。」

 

「う~、はーい。」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その6 部屋の案内

 

「ここが俺の部屋です。」

 

「へー、男の子の部屋って初めて入ったなー。」

 

「なんだか恥ずかしいな。」

 

「ちゃんと綺麗にしてるんだねー。

 これはなあに?」

 

「これはバットケース。

 遊びで野球する時用のバットが入ってるよ。」

 

「これは?」

 

「クローゼットだね。」

 

「これは?」

 

「ベットだね。」

 

「ふーん・・・・・。」

 

「・・・・・・あの、ななかさん。」

 

「なあにー?」

 

「どうしてそんなに俺のベットを凝視してるの?」

 

「いやー、そんなことないよー?」

 

「・・・・・・・ななかさん?」

 

「なあにー?」

 

「どうしてそんなに俺のベットの下を方を見つめてるの?」

 

「いやー、そんなことないよー?」

 

「いや、ガン見しすぎ!?」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その7 学生の宿命3

 

「(うーん、わからないな・・・・。)」

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「(数学とかよくわからないよー・・・。

因数分解とか図形の証明問題なんて将来何に使うの・・・?)」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

「(そういえば未来君さっきからずっと集中しててすごいなあ~。)」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

「ん?あれ?・・・・・もしかして。」

 

「・・・・・・・・・・・・ぐう。」

 

「目を開けたまま寝てるー!?」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その8 何もないよ?

 

「まあ、別に見たいなら見てもいいけどね。」

 

「いいの?」(未来の腕に触りながら)

 

「なにもないし。(見られたらまずいのはクローゼットの中だし。)」

 

「じゃあ、遠慮なくー♪」(クローゼットの方に歩いていく)

 

「え、ベットの下は!?」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

学生の宿命 その4

 

「もう、寝ないでちゃんとやらない駄目だよ?」

 

「いやはや、申し訳ない。

 ちゃんとやります・・・・。」

 

「・・・・・・・・・。(わからなくて全然進まない。)」

 

「・・・・・・・・・。(目覚めたばかりで頭が働かない。)」

 

「ねえ、未来君?」

 

「なんでしょう、ななかさん?」

 

「ちょっと休憩しない?」

 

「いいね、ちょっとお茶にしようか。

 そういえば冷蔵庫にケーキがあったっけ。」

 

結局その日はあまり宿題は進みませんでした。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その10 貴様見ているな!?

 

「まあまあ、こっちは見たって面白くないよ?」

 

「えー、でも見ていいって言ったじゃーん。」

 

「いやいやそれはベットの下だって。」

 

「そっちは何もないんでしょ?」

 

「まあ、そうなんだけど・・・・。

(なぜだ、どうしてこっちに近づく?いかん、このままでは・・・・・。)」

 

「・・・なんてね、冗談だよ。

 ごめんね?意地悪して。」

 

「え、ああ、いや・・・。」

 

「案内してくれてありがとう!

 またあとでね!」(パタンっとドアが閉まる。)

 

「(ドアを開けて廊下を確認する)・・・・・・いったな。助かった・・・・・・。」

 

「危ない危ない・・・・。危うくこの俺の秘蔵コレクション・・・・。」

 

「この、『子猫写真集』の存在を知られるところだった・・・・。」

 

「いやあ、いつ見てもかわいいな~。」

 

「未来くーん、綾子さんが呼んで・・・・・・る・・・よ・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「(察し)・・・・・・ご、ごめん。扉開いてたから・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「次からはちゃんとノックするね?

 どうぞ、ごゆっくり~・・・・。」(パタンっとドアが閉まる。)

 

「~~~~~~~~~!!!!!!!!(声にならない悲鳴)」

 

 

 





お読み頂き誠にありがとうございました。

次の投稿は一週間以上かかると思います。
ご了承ください。

それでは、また次回もよろしくお願いいたします。


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