幻想の記憶使い (魚介(改)貧弱卿)
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1話

諸君、仮面ライダーって、、いいよね?

かっこいいし、無駄に増え……ることもないわけではないけど、結構少ないし

ウルトラマンとかと違って長時間戦えるし、

 

何が言いたいかって?俺は仮面ライダーが大好きなんだよ、いやウルトラマンもスーパー戦隊も、なんならプリキュアやカードキャプターさくらも、要はそういったバトルものが好きなのだ

 

つくづく救いようがないな俺

 

「まぁ、高校生にもなって、と言われてもおかしくはないし自覚しているけども」

 

セーラームーンネタでクラスの女子と語り合ってたり、今日のプリキュアについてLI○Eで激論を交わしたり

仮面ライダーの掲示板を漁ったりする程度の残念な俺だが、さすがに分別はついている

 

まぁ、それらが踏みにじられる時ってのがたまーにあるわけで

 

「それで!今こんな状況になってるんですからね?!」「うっせぇんだよ!心の声に口出してくんな!」

 

「きゃん!やめて下さいよ急に怒ったりなんて」「お前が原因だろうがゴラアっ!」

 

「怖いです怖いですっ!ほらスマイルスマイル!ラブアンドピースですよ!」

「今は魔王の時代なんだよ!」

その時代ももうじき終わるけど!

 

「もうっ!あんまり言うこと聞かないと私も怒りますからねっ!」

金髪の少女がぴょんと跳ねて

 

「むえむえーぃでわかどか!」

 

超早口で謎の言葉を発声、スカートを風で捲り上げられながら俺に指先を向けて……白!

 

パン!

 

破裂音が鳴った、その瞬間

「ふんす!これでよしです!」

 

俺は取り敢えず今までいた部屋じゃない何処かに突っ立っていた

 

「強制転生術、外法輪廻大天道です!」

「いやそんな大仰な名前の技であの詠唱なの!?」

「良いんですそんなこと!細かいことは気にしません、良いですか?ふんわりやわやわ、これが生きる為の最低限のマナーです!」

 

「そんなマナー聞いた事ないわ!」

「ふんわりやわやわ!これがあれば大概のことはごまかせます、さて、貴方には転生してもらいました!」

 

「なんか術名からそんな感じはしてたよ!」

 

オラァッ!と金髪の少女の頭を叩きに行くが、

 

「ふふっ、良いんですか?この私にそんな事して」

 

「良いんだよ!オラァッ!」

「甘いっ!」

 

俺の右手の大振りが躱されて

「んちゅく、ちゅ」

 

唇を奪われた

 

「っ!!」その瞬間、頭が真っ白になる

 

「んふふ、体が動きませんか?頭が働きませんか?そうでしょうね、()()()()()()()()()

 

金髪の少女は自らの指先で自分の唇をなぞりながら、微笑う

 

「この術は魂を捕まえて無理やりに繋げてしまいます、だから

体の相性がすごく良くなる副作用を持ってるんですよ」

 

「っ、、はぁ、、はぁ」

 

「だから貴方は私に一生逆らえません、

うふふっ、それじゃあ転生アフターライフを満喫してください」

 

ぱしゅっ、とそんな間抜けな音を残して

金髪少女の姿が消えた

 

「………いや待て!」

 

数秒だった後に全く転生先の世界について知識がないことに気が付いたものの、後の祭り

 

虚しく座り込んだところで、

 

「ん?、、」

 

手に触れたのは、

スマホ、どう見てもスマホ

 

「俺のじゃねぇし、、誰の?まさかさっきの少女の?」

 

困惑しているところに、突然サウンドが流れる、電話だ

 

「えっ、と、、出るか」

 

取り敢えずマークをスライドして、電話に出る」

「あっ、出てくれました!

ありがとうございます、それでは

転生特典の説明に入らせていただきます」

 

え??

 

「黙ってないで反応くださいよ!

一方的に解説しますよ?」

「なんかいやな気配がするんだけど?」

 

電話から聞こえたのは、さっきの金髪少女の声そのものだった

 

「ええっと、まずですね

転生特典はガイアメモリの所持、および精錬です…が、」

 

「おい、がってなんだよがって」

「世界を無理に渡ったせいでちょーっと広範囲にメモリがばらまかれてしまった、とだけ」

 

 

「大問題じゃないか!」

 

「はい!というわけで、貴方にはガイアメモリ(自分の特典)の回収を行ってもらいます!」

「てっめコラァ!一高校生にどんだけの迷惑押し付けて突然押しかけた挙句に転生なんぞさせてくれやがってんだよ!」

 

思わず電話越しに詰め寄るが

「ですから、対ガイアメモリ毒素完全耐性とメモリ作製を追加特典として付加してあげますって言ってるんです!受け取ってメモリ回収してくださいっ!」

 

その一言とともに、電話が切れた……

 

履歴から掛け直そうにも着拒されている

 

くそっ!本気でやるしかねぇのか…

メモリは適合者と引き合う性質がある

だから、最終的には完全適性の俺の元へ来るはずだが、過剰適性とかに捕まっちゃったらダメだ

 

その前に回収するしかない!

 

「最初に持ってるメモリはなんなんだ?

取り敢えずメモリを回収するなら最低限中級の戦闘用メモリがないと話にならないぞ」

 

jokerがあれば良いんだが、

あれば全てのメモリに対するメタメモリだからなぁ、エターナルやナスカのように純粋に出力で勝るメモリじゃなきゃ勝てない

 

だが、アレは手元にはない……

[dictionary](ディキショナリー)

突如、『辞書』の意味を持つ英語が頭に響く

 

直後に、頭の中に文字の羅列が入ってきた

 

[所持メモリ、slush(スラッシュ) mirror(ミラー) dash(ダッシュ)

 

え?3本だけ?

 

「詰んだ、、」

 

しかも原作にないメモリばっかじゃんかよぉ

 

俺が絶望しまくっていると、悲鳴が聞こえた

 

幸いにも、森の中でありながら比較的方角が分かりやすかったため、そちらに足を向けて

 

「早速使うことになるなんて…」

『dash』

 

「変身!」

 

とりあえず首にメモリを刺して直挿し変身

もちろんドーパントだ、チーターの灰色のタイヤの意匠を持った怪人へと変化した俺は

その姿に怯むことなく走り出す

 

どうせ醜い怪物になるのはわかりきっている、テラーやタブーのような動きづらい姿にならなくてよかったと思おう

 

「フッ!」

 

キュアイィン!と音を立てながら

走る、悲鳴の聞こえた位置に! 速く!



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2話

slushよりdashの方が早いと判断した俺は取り敢えず走りながら索敵して

 

「みっけた!」

少女が、狼のような姿の怪物に襲われているのを見て取った

 

「ウォォン!」

その怪物は少女(エモノ)を前に叫びをあげて…

俺に蹴り飛ばされた

 

「返せ、それは俺のだ」「ぅゔヴォォオ!」

少女の前に立ち、怪物から庇うが

 

(どうせ彼女にとっては怪物が二体になったと言った程度だろう…ダッシュもトライセラトップスやアノマロカリスほどではないが外観は歪んだ怪物バケモノそのものなのだから)

 

「ヴォォ!」

(俺から先に排除と、なかなか頭が回るな

だが悪手だし、何より遅い、)

 

dash(疾走)のメモリは適合者に対して

陸上最速のスピードを提供する

 

つまり、短距離ではリニアモーターの最高時速並みの速度を叩き出すのだ

 

「セァッ!」「ゥゥォオ!」

 

行動に割り込んで攻撃なんぞ

造作もないことだ、、だが

 

(相手がwer wolf(ワーウルフ)即ち人狼のメモリではなくbeast(野獣)メモリとするなら

相手も高速移動能力を持っている

 

その力を出すか否か、、)

「お前、ひとっ走りつき合えよ」

「ウオォオン!」

 

高速で移動し、相手の背後を取る

その瞬間、相手もまたそれに反応し得る速度で俺の方へ向き直る、

(やはり単なる狼でも、人狼でもない

こいつはbeast(野獣)のメモリを使っている)

 

(俺には星の本棚のような技能は無いからな)

だからこういう方法で相手の能力を見取るしかないのだ、そして

 

「ウォアァ!」

 

牙を剥き出しにしたビーストドーパントが襲ってきた、が

「知能は低いのか?」

 

それはあまりにも直線的で

交わしやすい突撃だった、

(dashの速度には追いつけないからと最短距離で追いかけに来たのか?

少女から離れられたのは褒めてやるが)

 

「…まぁ良い、メモリは回収する!」

『dash、マキシマムドライブ!』

 

両足に灰色に濁った光が宿り、

 

「ソニックダッシュストライク!」

 

オリジナルの名前でマキシマムドライブを発動し、走る、通常よりはるかに速く加速して、ジャンプ

真横に向けてドロップキックをぶつける

 

「ヌウォォオン!」

相手もそれに反応したか、マキシマムドライブらしき光を爪に宿して大振りの二連撃を放つ

 

だが、、遅い

マキシマムドライブを始動した俺にはそんな物は遅すぎる!

 

鍔迫り合いにすらならずに

圧倒的な速度で、

伸ばされた足はビーストドーパントを貫いた

 

「ウォォオン!」

 

爆発とともにメモリが排出され、

 

「やはり、 beastメモリだったな」

 

自身もドーパント体を解除してメモリを拾う、ダッシュドーパントは関節構造が単純なため、指先などの細かい動きの調整はできないのだ

 

(ええッとこれで既存のメモリは

4本で、B.D.M.Sか)

 

「止まりなさい!」

 

「ん?」

 

振り向いた瞬間、首を矢が掠める

 

「次は当てるわ」

そこには、

先程襲われかけていた少女が弓を構えている姿があった

 

(無理しなくて良いのに…俺はroadメモリの副作用でもなきゃ人を食いはしないんだけど?)

 

「両手を挙げなさい!」

(ほう、それなりの考えを持っているようだ、弓矢なんて前時代的な武器を脅しに使えるレベルで習熟している時点で、ここがいわゆる現代的な世界ではないとはわかっていたが、ここでもその要求は一般的なのか)

 

「だが、、弓矢対策なら」俺は上げた手ではなく、足でさりげなく落としたメモリを起動する

 

『 beast!』

 

起動したメモリが浮遊し、

俺の首へ挿さる

 

直後に矢が飛んできたが、マスカレイドやパペティアのような下級メモリや非直接戦闘型メモリでもない限りは

 

カン!

 

まぁ、当然のごとく弾かれる

 

「……ウォォオン!」

わざとらしく大声を上げると、少女はわずかに怯んだ

 

(当然だろ、ついさっき自分を殺しかけた化け物の姿なんだから)

 

むしろ矢が弾かれても逃げようとしない辺り、精神力はかなりの物だ

 

「ウォォ!ン!」

足元で倒れているビーストの元変身者(恐らくメモリの登録外のユーザーだが)の怪物を蹴り飛ばし

 

走る、 beastは野獣だけあって

桁外れのスタミナと爪による攻撃力

そしてある程度の速度を与えるメモリ

 

その代わりに防御力は比較的低いメモリだが総合的に見て中級の上位だ

 

数百メートルほど走って視界から外れた時点でメモリを排出した

(メモリの生体コネクタがなくても使えるのは便利だな、、アレは無いと使えないんじゃなく毒の影響をモロに受ける部分故の緩衝具だから無しでも使えるのは分かるが)

 

たしかバードの使い回ししてた奴は毒の影響で付けた部分が焼けてたな

 

ガイアメモリをポケットに入れて

(あれ?デカくて上手く入らないか?)

メモリの上部が半分ほど出ている状態だ

 

(T2メモリは色が目立つからなぁ)

 

「待ちなさい!」

「おっと」

 

(弓矢が効かないだろうに、追いかけて来たのか?)

なんという精神力か、全く無意味であり

むしろ見逃されている側であるはずの彼女が俺を追いかけてくる理由などないのに

 

「貴方はなんなの?!」

「……答える必要はない」

流石にメモリがどうこうを説いても納得しないだろう

 

「答えなさい!」

「…………」

 

(もう矢が底をついているのは見て取れる、この状況で遠距離武器なしでは流石に対抗し得ないだろう)

 

と考えたのはフラグだったようで

 

「私が霊力を使えないとでも?」

キュイィンという音と共に、少女の手の内に光の矢が出現し

慌ててメモリを起動しようとする俺を嘲笑うかの様に

普通の矢とは比べ物にならないスピードで俺に突き刺さり、貫通した

 

「ぐぁあっ…、いってぇ…」

「都市の害悪…死ね!」

 

攻撃が通じて調子に乗ったのか

少女が更に矢を生成、射出してくる

その瞬間

 

「クソッ!」

わざと乱暴にジャンプして足音を立て、シャウトと共に足を地面に叩きつける

 

同時に激しい振動が傷口を刺激するが

狙った通り、ポケットからメモリが飛び出す

 

俺は空中でキャッチしたメモリを確認する暇もなく起動した

『mirror!』

「変身!」

 

 

それは鏡、反射のメモリ

高速で浮き上がって俺の首に挿さり

 

俺は銀の体に透明な装甲パーツを持ったドーパントへ変身した



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3話

ちなみに、ディキショナリー(辞書)のメモリのおかげでメモリに関する知識(性能など)は調べることができます、これのおかげで主人公は戦い方を把握しています


ミラー、すなわち鏡とは銀を塗布したガラス板である、銀を使うゆえ高価だが、光の反射率が極めて高い

 

ミラードーパントはその性質を継いで

光に対する誘導、反射性能を持つ

 

また、物理攻撃にも高い耐性を持ち

テラーフィールドでも溶けないという侵食耐性も兼ね備える

 

銀は痛み難いし、ガラスは腐らないから耐薬品、耐腐食性を表現しているのだろう

(今必要なのは)

 

「フッ!」

 

(物理特性ではなくドーパントとしての異能、鏡を出現させる力!)

 

最低でもひとつくらいは存在する

メモリから供給される過剰なエフェクト

バイアスといっても良い誇大化だ

 

例えば古代系メモリであるナスカは

飛翔や高速化など、様々な力を操るが

それは結局、地上絵の

『こうあればよい』というイメージに過ぎない

 

もちろんこのミラーメモリも空中に鏡を出現させる能力は明らかに物理を無視しているため、その『メモリによる異能』に分類される

 

そして、この鏡は()()()()

すなわち、光反射率100%の完全平滑面

 

それは、少女が放った光の矢を完全に反射して、少女自身の持つ弓を貫いた

 

「っ!!」

愕然とした顔で切られた弦を見遣る少女

正直言って絶望的だよなぁこれ、

少女の身からすれば自分がどれだけ苦労したか、なんてのが頭を巡っているのだろう

 

(対テラー極めてるメモリだなこれ)

作中能力から見るにケツァルコアトルスとかよりテラー戦に向いてる

 

直接接触さえされなければあの溶けるやつは喰らわないし、ビーム弾は反射で無効化する、テラーフィールドの恐慌効果を受けない

 

テラーメタの究極と言えるだろう

 

「くぅっ!」

考えている内に、迷いを振り切ったらしく、少女が涙を浮かべながら突撃してきたんだが、どうしようかな?

 

(コンシャスメモリとかあれば良いんだが

環境とか言葉とか思考とかのフィルターを無視して直接心で分かり合えるからなぁ、?ニュー▪️イプ?)

 

まぁ、意識メモリなんてのは戦闘力皆無のメモリだろうけど、、

 

「セヤッ!」

ミラーメモリで鏡を作り出し

少女にぶつける

が、その瞬間、尋常ではない速度で

少女が横にズレた

 

「なにっ!」

「甘いわ!」

 

(クソっ、この外装硬くて動き辛い!)

 

そう、ミラーは関節が球体状であり

あまり細かく、素早く動かせない

 

格闘戦には向かない…しかし

 

「鏡像よ、、写し取れ!」

 

全身が輝く、そして、その光が収まった後に

少女とそっくりの姿になっていた

 

「完全鏡面のミラー、それは鏡面作成のみならず、鏡像すら完全だ」

 

(能力多彩すぎやしませんか?)

 

とりあえず格闘戦のできる肉体は手に入れた、ミラーの能力も消えていないので、実質弱点を克服して有利になっただけだ

 

「私の、姿…」

 

呆然とつぶやいた少女に一言、

 

「君、服の趣味、悪くない?」

中心から十字線の、左右と上下で互い違いの組み合わせ、

ちょうど折り紙の手裏剣を赤と青で折った様な色合いだ、

 

(目立つなこれ

流れる銀髪とそれに埋もれない顔立ちが優れているだけに無駄に気になるのだが…)

 

「余計なお世話よ!」

「マジか心読まれたわ」

 

初めて扱う体だが、結構動く

あとなんかフワフワする感じがある

 

(女体化ってちょっとやってみたいとは思ったけど、やっぱ興味本位でやるものじゃないや、動き辛い)

 

関節がどうとかの問題ではなく

重心がどうとか、目線がどうとかのもっと繊細な問題だが、それ故に解決法はない

 

少女が俺の前に駆け寄り、左裏拳薙ぎ

地面を踏みしめ、回し蹴り!

(カメラ!カメラ低位置から回して!ちゃんと撮ってサービスシーン!)

魅せてるような動きでナチュラルに晒してくる少女の動きに目を凝らし

 

「掛かった!」

 

少女の投擲したスタングレネードが閃光を撒き散らす!

 

「え?ぐかっ!」

直撃した光が視神経を…焼かない

きつく目を閉じていたらしい少女に向けて

フラッシュを反射してやる

 

(忘れたのか?この身はミラードーパント

鏡だぞ?光攻撃など効くものか

いやインフィニティとかは別よ?

アレは次元が違うから)

 

「きゃあああっ!」

目を開いた直後に反射された光を浴びてショックを食らったのか、少女は気絶してしまった…

 

(おやおやかわいそうに、、まぁ

せっかく死なずに済んだんだ

目が覚めるまで待って見るか)

 

折角可愛いんだから、ここで死なせるのももったいない、、え?可愛い女の子こそ爆殺するのが良い?

それどこのザンボット3?

 

(ガンツ展開には飽き飽きしたんだよ)

 

二時間ほど後

 

「……、ぅん、あっ、、う…」

(正直その声狙ってるようにしか聴こえないんだけど?誘ってんの?)

 

どうも目が覚めたようだ

 

「おはよう、気分は?」「…最悪よ」

 

「そりゃよかった、君の名前は?」「貴方に語る理由はないわ」「君の名前は?」「だから貴方に」「君の名前は?」「なんど言わせ」「君の名前は?」

 

このループは一時間ほど続き、結局少女が折れて八意永琳という名前を答えてくれた

 

八意永琳、やごころ?

ヤゴコロと言われると、ヤゴコロオモイカネを思い出すなぁ、知恵の神とされるが、同時に迷いの神とも呼ばれる

思い兼ねる、即ち思索がうまくいかないとディスられてる神である、ちなみにこれは誤解

 

正解は思いを兼ねる、つまり複数の事を考えるという意味

 

「今、貴方がなぜ私を殺そうとしないのか、それがわからない」

「簡単だ、殺す気がない」

 

「では、その殺す気があれば殺すのね?」「殺意があればな?そうそうないと思うが」

 

事実、メモリを起動しないと遠距離では負ける可能性もあるが、近距離ではそもそも推し勝てる相手に殺意を抱く必要はない、

 

「そう、それと 貴方は人間?それとも妖怪?」

 

「人間だけど?」

(少なくとも種族は人間なはずだが)

 

「そう、なら良いわ

貴方、私の護衛になりなさい」

 

「………は?」

「だから、私の護衛として雇ってあげるって言ってるのよ」

 

異世界少女言葉ってこんなにエキセントリックなの?なに?この世界の風習なの?

 

「貴方、私より強いでしょ?それに私を襲っていた妖怪を倒してくれたし」

 

「アレか、、」

(ビーストドーパント、アイツさえ居なければ!

りせーっと!とか出来ない?)

 

流石に無理だった

 

「貴方が私の護衛になってくれるなら任務達成報酬に100万円出すわ、更に戦闘一件につき20万の追加よ」

 

平和に生きてきた高校生は護衛任務の報酬相場なんて知らないんだが…

百二十万か、大きいわ

 

「うけて、くれないの?」

 

涙目になった永琳、保存案件!メモリにスクショ機能実装はよ!

 

「はぁ、、受けるよ、んでどこ行くの?」

 

「行き先自体は判ってるわ、向こうにある都市なんだけど…問題は都市で流行ってる病気の特効薬になる薬草を見つけないといけないの」

 

聞けば少女、永琳は薬師であるらしい

なぜ医師ではなく薬師かと問えば

彼女は外科的手段ではなく、投薬で治療を行うらしい、故に薬師なのだとか

 

「薬草を探すんだな?、だから森の方にいたのか…、あぁ、良い、独り言だ….さて、永琳薬草の匂いはわかるか?」

 

「え?匂い?」「そうだ、フィトンチッドがどう、アレロパシーがどうというアレ」

 

永琳は一瞬表情を強張らせたが、その後、服のどこかから薬品用の瓶?を取り出し

 

「これ、私が都市から出るときに持ってきた採集ビンよ、コレにならまだ匂いが残ってると思うわ」

 

と俺に渡してくれた

ガラス瓶を開け、

 

「すまん永琳、ちょっと怖いだろうけど我慢してくれ」

『beast』

「変身」

 

ビーストドーパントへ変身する

 

そのまま強化された嗅覚で薬草の匂いを確認して覚える、

 

「ウォォオン!、、」

遠吠えを行うと、周りに大量の狼が出現した

 

「リージョンウルフズ!この匂いを探せ!」

 

ちなみに、コレは単なる威嚇で()()()()()だけの狼であり、唐突な覚醒とかではない

 

(山だからある程度は予測してたけど、こんな数いたんだね?)

 

そのまましばらく探し回り、

やがて匂いの強い場所を見つけた

 

「コレか、その薬草は」

ビーストドーパントの姿のままだが、

永琳にゆっくりと話しかける

 

「ええ、コレよ、、ありがとう」

 

流石に薬草摘みには手を出せないので、狼を散らす作業に入る、流石にもう用済みだ!と殺せる程外道ではないので、送り返して、、その後ビーストを解除した

 

「ふぅ、、五十人分はできるかしら

栽培品を全部使い切ってしまっていてね、ちょっと困ったのよ、お陰で天然モノを取りに来るハメになったわ」

 

「それで足りるのか?」

「ええ、細胞培養なら間に合うわ」

 

(は??弓矢持って格闘戦する女が?妖怪がどうとか言ってんのに?細胞培養?)

 

突然すぎる科学にショックを受けた俺に視線が突き刺さる

 

「どこか不思議な点でもあった?」

「いや、培養品なら一株で充分なんじゃないかと思ってな」

 

「え、、あぁ、単に培養するだけじゃないからよ、薬効成分を濃縮しないと使えないから、母数が必要なの」

 

「なるほどな、単なる止血や咳止めとは違うってことか」

「そんなところね」

 

それ以降はさしたる脅威もなく

彼女の言うところの『都市』に着くことができた



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4話

「都市に入りましょ?」

 

「ん、、わかった」

 

彼女に先導されて都市に入り、

「動くな!!」

包囲された、おまけにめっちゃカッコいい銃?みたいなものを突きつけられている

 

ミラー案件ですねわかります、、

 

さて、

「止まりなさい、この人は恩人よ」

永琳が片手で制止してしまった…

 

マジ?メモリ能力より永琳の片手の権力の方が強いの?

永琳どんな立場なんだよ

 

「しかし!その男には住民登録がありません!それは妖怪です!」

「彼は人間よ、妖力がないから」

 

「………おい、装置もってこい」

「はっ!」

 

謎の鎧?スーツ?の男らしき人物が部下と思しき似たような装備の男を下がらせた、

多分妖怪と人間を識別する機会でも用意しに行ったのだろう、、ってかめっちゃ早いな

動き早い、人間のできる動きじゃないぞ……いやエクサスケルトンか?外角側から強化するんだったら可能だな

 

ビームとか撃つ?だとしたらマジでミラー反射は避けられない運命だが

 

「一応だが検査を行う!」

「あぁ、はいよ、待ってればいいかな?」

「はぁ……この頭の固さには困ったものね」

 

「しかし!これで妖怪の擬態であれば被害が出ます!」「私が保証するわ」

「八意様!どうかご理解下さい!」

(なんか言い合っちゃってるなぁ)

 

個体識別とかはわからないが

ひときわ近くにいた男?に声をかけようとしたが、銃が派手に鳴っているのでやめた

 

多分そういう牽制対策

メモリを起動する間もないかもしれないけど、T2のメモリは運命の影響が強い

落としたり起動したらするだけでも多分オレに刺さりに来る

映画でのヒート、トリガー、エターナル以外はみんな投げてたし、そもそもT2は浮く以上

起動すれば挿さるのである

中途半端な攻撃じゃメモリブレイク出来ないし

外装を直接切られたりすれば別だとは思うが

 

「持って来ました!」

「よし、俺が出る」

 

赤いヘルメットの隊長らしき人物が出てくる

「これは妖怪検査機、こいつに従って検査してくれ」

「…了解」

(多分音声ガイドか何かあるんだろう)

 

「ピロリン!」

まさかの永琳の声だった…

自分の声を使って音声ガイドを作ってたのか、しかし永琳は薬師なんじゃ無かったのか?

 

「まずは、指紋登録、と、声紋鑑定、を、行います」

(この機械ならではの割れた音がいいね

実にいい、ディモールトベネ)

 

指紋の登録完了、声紋登録完了し、

「続いて、霊力検査を、行います

登録スタンバイ………」

とりあえずパネルらしき場所に触れてみる

指紋検査の時と同じパネルである

 

「必要量/現在値、100/5…」

 

なげえなあ…

 

と思うのもつかの間、10秒程度で終わった

すげえな、高性能だ

 

「霊力波紋登録完了、重複・類似例無し

妖力判定、ネガティブ

 

塩基反応、霊長類 ヒト科ヒト目

あなたを人類の一員として認めます

ようこそ、人類の都、インテーディルへ」

 

「登録完了っぽいな」

「本当に人間、だと……」

(逆にアンタは俺のことを妖怪だと思ってたのかよ…)

 

「これでわかったでしょ、さぁ行きましょう」

俺の手を取った永琳が俺を引っ張り

どこかへと引っ張っていこうとする

 

「と、ちょっと待って」

「なに?」

 

俺は軽く手を振り、尚こちらに視線を向けている男達の内一人に向けて

 

「君、ゾーンメモリを持ってるね?」

鋭い視線を向け返す

 

「俺のメモリ…返してもらう」

「なんだ?これか?」

 

取り出されたのは、やはりゾーンメモリ

特殊タイプのメモリで、直接戦闘には向かないが 強力な干渉能力を持つ、他のメモリを呼び寄せる効果を発揮したこともあるし、ビーストメモリとのコンボはダブルすら追い詰めたこともある

 

とはいえエクストリームでのやられ役であった

 

まぁ最上位のメモリ且つライブモード持ちのエクストリームは同じクラスのゴールドメモリ、ズーやファングのライブモード持ちやゼロ、エターナル型のメモリ干渉能力でもなければ勝てない

 

彼女が速攻でやられるのもわかる話だ

 

「これは押収品だ!渡すわけにはいかない!」

「ダメだ、それは危険なんだ…特にZのメモリは強力だ、君が適合しても食われる可能性が高い」

 

「黙れ!警察機構の執行する公権に口を出すな!」

「そうかい…なら見届けるとするさ」

 

永琳の元へ歩きながら呟く

 

「ゾーンの暴走をな」

 

「ねぇ、貴方はいつもあんな事をしているの?」

「メモリかい?」

 

「ええ」

「アレは俺が紛失したアイテム、それを無断使用した挙句に害をなすのは止めて貰いたいというだけさ」

 

「そういえば、回収するって言ってたわね」

 

ガイアメモリを見せる

「俺が持っているのは現在4本、いずれも中級メモリだ、下級メモリならまだしも、バイラス、アームズ、バイオレンス、デス、他恐竜系、サン、グラビティ、テラー、タブー、ナスカ これくらいは回収しないといけない」

 

ウェザーは適合者がおかしいだけだからな

メモリ本体は上級のうち一つに過ぎない

クレイドールは最強の可能性を持つだけのメモリ、若菜のように覚醒しなければ良いという話、、覚醒したらしたで生贄になる事を恐れるだろうし

 

「ねぇ、貴方……家あるの?」

「都市に初めて来た奴が家なんて持ってると思う?」

「わからないわね、貴方妙に博識だったし」

 

「あぁ……」

(こりゃマズったか?)

「まぁ別に良いのよ、もしかしたらほかにも都市があるのかも知れないって思っただけよ」

「そうか、、ってここ以外都市無いの?」

 

「えぇ、人類生存圏はここだけよ、

いえ、そもそも人類が存在するのがここなの」

 

「なるほど…….じゃあつまりは」

 

ここは……過去の世界……

 

「つまり、何よ?」

「いや、なんでもない」

俺は目を瞑ってなんでもないとアピールしつつ永琳について歩く

 

「さぁ、着いたわよ

ここが私の家、今日から貴方の家でもあるわ」

 

「…………は?」

 

「返さないでね?一等地に別荘がいくつもあって困っているの、有効活用でしょ?」

「なるほど分からん」

 

(え?永琳は都市の中心部である一等地に別荘がいくつもあるほどセレブなの?じゃあなんで薬師?いや薬師がめっちゃ貴重なのか?それとも永琳は貴族か何かなのか?)

 

「私が貴族というかは分からないけど、セレブといえばそうね、名家ではあるわ」

「心を読むな!」「簡単すぎるのよ」

 

(罠だ!計略だ!)

「私は罠師じゃないわよ?、まぁいいわ

これ鍵よ、新型カードキーだから曲げても折っても大丈夫、耐水性もあるわ」

 

(便利だなぁ)

 

カードキーとはなんなのか……

 

(まぁいいや、さっさともらってしまおう)

取り敢えず最近寝てなかったので

屋根のある場所で寝たい俺はカードキーを受け取る

 

「ありがたくもらっていくよ」

 

こうして、後々にまで俺の拠点となる場所に巡り合うのだった

 



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5話

「で、家をもらったはいいものの……」

 

どうするか、正直寝たいが

 

だが、唯一の都市、と言われていた以上

より危険性の高まったメモリもある

 

バイラスだ、virusメモリはウイルスのメモリ、すなわち感染症を操るメモリ

 

人類唯一の都市、であるこの街が

バイラスの殺傷半径(キルレンジ)にすっぽり入っている以上、バイラスは早期に発見、回収しなくてはならないだろう、さらにユートピアやエターナル

危険なメモリは数多い、

 

動物系メモリはzooがあれば一網打尽であるが

T-rex、すなわちティラノのメモリなどの覚醒すると巨大化する能力持ちは現状撃破手段がないといえる

 

急がなくては……

 

みんな死ぬ可能性だってあるんだ

バイラスは原作では事故的に精神体ドーパントだったが、こちらでもそうなる、なんてのは期待できないからな

 

もしかしたらミュータミットみたいな怪物が変身して超強化モードみたいなことになるかもしれない、ありえないと思いたいが

 

「さて、人民として貴方が登録された位階は平民(ノルマーレ)よ、これ以外の位階は冠位(グランディオーソ) 文官(レガルデ)武官(ベルセーレ)工匠(マエストーソ)があるわ、それ以外だと犯罪者(エルクライム)とかの下位ね、あと、霊力使いは例外なく特殊位階の魂師(スピットーソ)を持ってるわ」

 

なんかかっこいなそれ

「貴方が文官になるか武官になるか

はたまた工匠になるか はちょっとわからないけどね」

(あっやっぱり冠位は特別なんですね」

「ええ、特別な位階なの、神の血を持つものでなくてはならないわ」

 

(黄金の血って奴か?

あれは輸血が誰にでもできるってだけなんだから違うか)

 

「貴方がどの道を選ぶか分からないけど、近々適性試験を行うわ、覚悟していてね」

 

「りょーかいだ、それより速く回収する」

 

「時折言ってるわね、それ」

「だから、メモリは元来俺のなんだよ」

 

「信じられないわ、個人認証くらい付けときなさいよね」

「付いてるんだけどなぁ…」

 

(T2は適合者と勝手に惹かれ合うから認証とか意味ないし……コネクタなくても使えちゃうから)

 

「ふぅ〜ん、良いわそう言うことにしてあげる、それじゃあ、また明日」

 

「おう、またな」

 

瓏朧亭、と書かれた屋敷に入る

(一応今日から俺が屋敷主なのでな)

 

タイムジャッカーとはなんの関係もない

「それなり以上には整えられてるなあ」

「このサイズのお屋敷ともなると流石に難しいです」

「そうだろうな」

 

「……え?違和感は?」

「別に」

 

最初からいるのはわかっていた

俺はさっさとわずかばかりの携行品を置いて、少女に問う

 

「君の耳は趣味なのか?」

「いえ!これはその、玉兎はみんなこうなので」

 

どうも耳の四つある種族なようだ

てっきり兎耳コスなのかと思っていたが

この世界にはそんな奇特なものまであるらしい

 

ミニスカメイド服も含めて

まったくもって趣味的だ

 

(某ナイトメアフレーム使いもバニーになってたなぁ…)

 

「俺はもう寝るけど、君はどうする?」

床に座り込みながら、彼女に話しかけてみる

 

「あれ?寝ちゃうんですか?」

「あぁ」

「そうですか、、わかりました

では子守唄でも」

「いらん」

 

(子守唄っておい、俺はもう歳だぜ)

 

「いりませんか……じゃあ屋敷の掃除と夕食の支度に」「なぜ最初からそっちを出さなかった」

 

「面白そうだったので!」

「ふざけてんなよ」

笑いを取りに来る必要なかっただろ

 

「まぁまぁ、ご主人様、おやすみなさいです」

 

「あっおう、おやすみ」

 

壁に背を預けて眠る、、和の屋敷でよかった

(木板のある部分で寝れば背中に壁の材質張り付いたりしないからな)

 

 

「ご主人様、起きてください」

「ん?、、もう時間かな?」

 

「はいっ!今19時です」

「そうか」

 

ウサミミメイドの少女に起こされた俺は

背をつけていた壁から離れて、立ち上がる

 

「さて、夕食はもう?」

「もちろんですよ、冷めないうちにどうぞ」

 

「そうか、ありがとう……そういえば君、名前は?」

 

俺が目をこすりながら聞いてみると

少女は驚愕の表情になる

 

「えっ?今更ですか?」

「いやそうだけどね」

 

どうもそれだけだったらしく、さらっと教えてくれた

 

「私は華沙院(かしょういん)ハヤテです、先日まではヤゴコロ様の元で働かせて頂いておりました、玉兎のペット兼メイドです」

 

「華沙院って明らかに良いとこのお名前なんだが」

「えっと、玉兎は仕える家で名前を授かるので、ヤゴコロ様に頂きましたから」

 

満更でもなさそうな表情で照れるハヤテ

(ちょっとかわいい)

 

「あの、、恥ずかしいです……」

(ん!!心を読んだとかじゃないよね?)

 

俺がそんなことを考えるのと同時に

答えられた

 

「私は感情を認識する程度の能力を持っているのです、今は、、その、ご主人様から、かわいいって感情が…」

 

「ずいぶん難儀な能力だな」

「疑念と、心配、優しい方ですね…」

 

(何故だ、何故優しいのか…)

「この能力を知ったお方は大体、私を怖がるんです、その恐怖と嫌悪が伝わってこないのは今までヤゴコロ様だけでしたから」

 

「そうか、、俺はお前を怖いとは思わない、生物には他者の感情を読み取る機能がついてるんだ、それが少し高性能で、鋭敏だったというだけの話だろう」

 

俺はそれだけ言って、ハヤテに夕食を要求する

具体的には空腹を感情にして発しまくった

 

(そもそも隠し事をしているとしても具体的な事はわからんだろうに、隠し方をしている事を漠然と察されることすら嫌なのかバカどもめ)

 

「クスッ、お腹すきましたか?

ごめんなさい、すぐにお出ししますね♪」

 

(嬉しそうだな、さて、俺も食堂の方に行くか)

腹が減ったのは事実だし

 

「なんか和洋折衷なデザインだなぁ」

「和洋…ですか?」

 

ハンバーグと付け合わせのマッシュポテト、人参のグラッセと何故か味噌汁、白米

 

「まぁいっか、いただきます」

 

(もしかしてこの世界には和とか中とか洋とかないのか?)

 

という俺の思考は形になる前に霧散した

理由は、

 

「メッチャうまい…」

この一言である

 

 

味?契約の引き継ぎとか考えていなかったが、リストラするのが惜しくなった、とは言っておこう




好きだろテメェら、バニーメイドだぞオラ


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6話

「さて、適性検査するわよ?」

 

「急だな永琳」

 

この言葉が全てを物語っている

「だって、この試験そのものが急なんだもの、今日予定ないんでしょ?」

 

「まぁそうだけどさぁ」

急に来た俺が悪いと言われればそれまでだが

 

「さぁ行くわよ?、準備……は要らないわね」

「たしかに」

 

永琳の導きに従って立ち上がり、移動する

程なくして大通りに出て

半透明になっているクルマ?のようなものに乗り、クルマ?で移動を開始、

 

(随分と高いビルだこと)

 

「金をかけてるのよ、資金源がどこかなんて関係ないわ、」

 

「ってことは…」

「御察しの通り、オーナーが貴族階級の人間なのよ」

 

どうも胸糞の悪い話だ…

 

「…ついたわよ、降りる準備…しなくて良いわね」

「何回やるつもりだよ、それ」

 

「何回でも出来るように明言は避けておくわ」

 

サラッと言うなぁ、まぁいいか

荷物がないのは事実だ

 

「ここ、合同庁舎の26階小会議室eを試験会場として確保してるわ、、とはいえ常時空いているようなものだから

あんまり意味はないけど」

 

「そもそもそんな数の会議室必要なのか?」

「一応確保してるってだけよ、大災害とかは予見できるから対策がどうとかも最近やっていないけど」

 

「正直進歩しすぎてるなぁ…なぜ主武装が弓なのか」

 

「それは音の防止よ、弓は静かだもの」

「サプレッサーっていう便利なアイテムはないのか?」

「なにそれ?」

 

「銃の先端部に取り付けて音を抑制する装置だ、これがついてると本当に音が抑えられる」

 

「発砲音を、、抑える…構造の模式図とか書けない?」

実用化に乗り出しおった、

 

「まぁいいよ?別に書いても」

 

軽く頷いてから、、会議室に入る

 

「失礼する」

 

「どーぞ、試験管の天鈿女と申します、

よろしくお願いしますね」

 

ウズメ、ねぇ、

 

ヤゴコロだのウズメだのと古風だこと

日本式に統一してんの?そういう方針なの?

 

「では、筆記試験を行います、

試験時間は50分間、算術、霊術、戦略、工術の四つの学問が対象です、では着席を」

 

「はいよ、、」

 

「試験……開始☆です!」

 

なぜ星!!

 

計算は簡単なものからやたら難解な証明まで組まれており、一部嫌がらせのような問題まで存在したが、、頑張って解いた

 

三時間後

 

 

「試験全科終了となります!ありがとうございました、、」

 

「ありがとう」

 

試験を終えて疲れた頭でビルから出て…

やっべ、道忘れた

 

しばらく彷徨っていたら永琳が拾ってくれた

「まぁそんな事だと思ってね、早く帰りなさい、送ってあげるから」

 

「助かった、頼む」

 

正直情けない話だが、

永琳に連れられて屋敷に帰り着いた

 

「おかえりなさいませ、ご主人様、お嬢様」

「やめてよ、私はもう雇用主じゃないのよ」

 

「かしこまりました、ヤゴコロ様」

 

二人が掛け合いを続けていると、、家の電話(?)が鳴った

 

「もしもし、、軍部?はい」

 

「ヤゴコロ様の元に転がり込んだという輩だな?翌12:00より軍試験を行う、よいな」

 

「承知した、翌1200より軍試験、場所は」

「場所は都東部外縁、第300地区だ、必要装備は特にない」

ガチャ、と電話が切られた

 

嫌われてるなぁ俺

 

「もう、、いいわよ永琳で、

 

そろそろご飯にしましょ?」

「かしこまりました!永琳様!

旦那様、今日の趣旨は如何致しますか?」

 

「おや、俺に聞くのか?

ちなみに、永琳の予定は?」

「無いわね、普段夜は食べないの

でも、せっかくだから、頂こうかしら」

 

全く参考にならなかった

 

「オススメのはあるかい?」

「オススメのですね、それではご用意致しますのでしばしお待ちを」

 

ハヤテの手際が良すぎる…

 

夕食は超ウマだった、

 

 

ウサギってみんな料理上手いの?

 

翌朝、ゾーンメモリを持っていた男と、スカルメモリを持っている男に迎えられて家を出て

 

指定された場所まで移動した

 

「スカルメモリ、上位戦闘用メモリじゃないか、返せよ早く」

「これは押収品だ、我々に所有権がある」

 

「scullは対毒、対精神干渉の完全耐性持ち、それにデスとイエスタデイに対する完全メタのメモリ

スペック低下にも耐性持ちの超強力な逸品なんだよ!」

 

「ほう、で?お前がコレについて所有権を主張する理由を聞こうか」

「それは俺に与えられたアイテム、としか言いようがないな」

 

「ふっ、、お前はそれで主張が通るとでも思っていたのか」

 

(いや思ってないけど)

俺は突っ立ったまま

車のホイールの半分が書かれたメモリをとりだして見せる

 

「dashメモリ、お前のと同じような形をしているだろう?これと更に()()同じものを持っている、これでいいかな?」

 

「それで?」

 

「マジかよ…」

(まだ信じないのか、一旦諦めて奪うしかないか?)

 

結局、そのまま指定されたエリアに着き

俺はオジサンと対面した

 

「都市防衛軍、第1部隊長

相楽師(サガラスイ)だ、試験官を担当する、試験のルールは簡単、、わたしから、如何なる方法を用いても、

一時間生き延びろ、では試験開始だ」

 

完全に説明不足な状態で打ちかかられた

(武装無しで刀持ち相手にかよ!)

 

『slush』

「変身!」

 

青地に、白く刀とその刃の軌跡、そして柄の房飾りの軌跡でSの絵が書かれたメモリで

スラッシュドーパントへ変身し

 

相手のオジサンの刀と左手の刀をぶつけた



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7話

『slush!』「変身!」

 

首に挿されたメモリが俺をスラッシュドーパントに変身させて、同時に世界がスローになる

 

スラッシュドーパント固有能力

斬撃の耐性、理解、予測

 

その発露であった

 

予測線が視界に描かれ、

それに沿って俺は左手の剣を立て

 

『ガキィィイン!』

 

衝撃音と共に手刀が弾かれる

「なんてパワーなんだ…」

 

「わたしの一撃を防いだか、ぬん!」

 

続けて振るわれた一撃は

俺の首を断ち切るコース、そして

たしかに()()()()()()()()だった

 

(生身でドーパント殺せるとか何なんだよ!)

 

「ハアッ!」

 

右手の刀に光を宿らせ、、

 

『slush マキシマムドライブ!』

「ディスコネクト!」

 

切断の意味を持つ単語を短く叫びながら

右手を全力で振り

 

『ズシャァン!』

 

相手の刀を()()()()

「俺の勝ちだ」

 

「いや、まだだ」

 

相楽のオッさんが、拳で俺を撃ち抜き

左手の刀を破壊する

 

「バカな!ドーパントの身体だぞ!」

「慢心が命取りだ!」

 

拳がもう一度振るわれて、右手刀が撃ち抜かれる

 

その瞬間に、俺は砕かれた両の刀を五本の指を備えた手に変形させる

スラッシュドーパントだからと切る事しかできない訳ではない、ちゃんと普通の刀を持てるのだ

 

変身をあえて解除せず、

 

右手をオッさんに向けて

格闘の構えを取る

 

「格闘か、しかし剣士が喧嘩の真似事など!」

俺はオッさんの声に応えず、ただ右手を引く

 

オッさんが拳を振り抜くその瞬間に

俺も拳を合わせる

斬撃ではなく、打撃ゆえに予測できないが、スラッシュドーパントの身体能力で強引に合わせて

 

「ぬぐぁっ!」

 

手指の先端、即ち指刃を深く刺して

拳を切り裂く

「バカめ!」

『slushマキシマムドライブ』

「ストリームリッパー!」

 

走り、加速して、切り抜ける

先ほどのディスコネクトとは異なる技だ

 

マキシマムドライブが1メモリ一種類

なんて誰が言った?

 

オッさんの右手を上下に切り分けて

「オッさん、もう終わりだよ」

 

変身解除、メモリを排出する

 

「それがどうした!都市のために、貴様を排除する!」

切られた片腕から大量の血を零しながら

それでもオッさんは立ち上がる

 

「この一撃に魂を込めて…輝け!王の御旗!

穿ち貫く、閃きの槍(シャゲーティス)!」

 

オッさんが左手を輝かせて、

 

『penetrate』

 

貫通の意味を持つ単語が鳴り

空から金色端子のメモリが落下してくる

 

それは飛来と同時に起動して

今まさに貫手を放とうとしていたオッさんに刺さり

 

「なっ!なんだこれ!ぬぉぉつ!」

 

フルフェイスの兜と銀色の鎧を纏い

大きな槍を右手に、同じ銀色のレイピアを左手に握った突き系の騎士の姿に変えた

 

「これは、、」

 

「オッさん、喜びなよ、オッさんはペネトレイト、貫通のメモリに選ばれたんだ」

ペネトレイト 貫通の記憶

どう見ても最上位メモリ、

おそらく固有能力は貫通完全耐性と突き攻撃威力、速度、射程、精度に対する上昇補正

もしかしたら防御や時空を貫通してくる可能性もある

 

最強かな?

 

「それは重畳、説明はいらん、、お前を排除する力が手に入った!」

 

「ぬわあっ!」

 

槍を突き出し、俺の体を狙ってくるオッさん

「あぶねぇ!」

「死ねえいっ!」

 

あっあっあっ、 連続攻撃隙無さ過ぎ

早い!

 

「ぬぅぅん!」

 

ゆっくりと引きしぼられたその槍は

銀色の輝きを帯びて…

 

「あれ、マキシマムじゃんやっべ!」

 

俺はslushでのこれ以上の対抗を諦め

もう1本のメモリを起動する

『dash』「変身!」

高速移動のダッシュドーパントへ変身し

「…逃げる!」

 

走って逃げ、

オッさん、いやペネトレイトドーパントの放った銀色の閃光を回避した

 

(あんなのまともに食らったら死んでるって)

「俺はまだ死にたくないんでな」

 

ダッシュでそのまま走り抜け

近くにいた、俺を送りってくれた軍人の側を通り、手を閃かせる

 

そして、足を止めて変身解除し

手に握った灰色と白のメモリを軽く振り

 

「もーらいっ!」『zone』

「変身!」

 

ゾーンドーパントに変身しした

 

「ハアッ!」

空間制御能力を発動、

 

自分の周囲四メートルの場所に、別の空間と隔てる壁を作り、その壁を理論平滑面にして、別の空間に接続する、

 

これで完全に分断されたわけだ

 

そのあと、ゾーンドーパントの姿

だけが映されたキューブ状の空間から離脱して、上空でペネトレイトドーパントが異空間の壁相手に 格闘してるシーンを静観し

 

一時間を待った…

 

「約束の一時間たったよ〜」

 

「しねえっ!」

 

ゾーンでゆっくり降りてきた俺に槍が迫り、歪曲した空間に巻き込まれて逸れた

 

「オッさん落ち着きなって、あぶねぇから」

「ぬおぉっ!!」

 

「だからゾーンの前に物理攻撃は無意味っ!大人しく諦めろよ」

 

空間制御でペネトレイトドーパントの攻撃を逸らしながら、話しかける

 

(メモリの毒素強くない?

さすがゴールドメモリ)

 

そろそろメモリを回収しないと毒素が危険と判断した俺は

『zone マキシマムドライブ』

 

ペネトレイトドーパントを撃破にかかった

 

「アンバランスゾーン!」

周囲の空間が湾曲し、拡大し、断裂し、収縮する

 

そして、次の瞬間、メモリの能力が解除され、そのタイミングで変化していた空間が、戻されないままに干渉を解かれる

 

当然、圧搾されていた空間は弾け、引き伸ばされていた空間は縮み、ねじれていた空間が裂ける

 

膨大な空間的エネルギーが物理現象に転化され、ペネトレイトドーパントの周囲が崩壊する

 

「ぬぉおあああっ!」

 

当然、オッさんごと

 

吹き飛ばされたオッさんから

メモリが出て、、

 

「貰ってくよ、コレ」

 

penetrate(貫通)メモリを回収した

『zone』

 

ゾーンメモリの能力である亜空間を展開して

その中に、ペネトレイト、スカル、のメモリを放り込む

(ついでにビーストも入れとくか)

 

「取り敢えず一時間生き残ったし、試験官倒したから俺の勝ちじゃね?」

 

ちなみに、翌日

本当に合格通知が届いてメッチャ驚いた

 



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8話

「ねぇ、これ断れないかな?」

「無理よ、貴方は晴れて平民(ノルマーレ)から武官(ベルセーレ)になりました、おめでとう」

 

「全然祝えてないよそれ」

 

「じゃあそうね、、祝え!全ての」「それ違う人」

 

永琳を断ろうとしたが

ついに翌朝に軍の制服やら何やらが届いてしまった…

 

はぁ………………

 

「諦めなさいな、実力試験は十分だし

筆記試験の点数も……まぁまぁ高いわ」

 

チラッと点数表を見ながらいう永琳

 

合計400点中280、数学はともかく歴史わからん、永琳にざっくり教えてもらったけど

 

工業は結構わかった、

 

 

「商人とかじゃ駄目なのか」

「ダメなのよ、貴方が試験官を倒しちゃったから」

 

実際には暴走みたいなものです

理性ない怪物程度なら空間破断のゾーンマキシマムドライブで世界から切り離して捨てる事で、『単独で完結した世界を保有する』独界の能力者でもなければ消してしまえるのだ

 

しかもゾーンメモリは波動の力を使えるからもっと頑張れば

『余剰次元から抽出した波動エネルギーを次元間に循環させる事で過剰出力した三次元空間上の座標軸を偏移させて…』な謎理論で無限のエネルギーを取り出すことができるし、波動砲だって出せる

 

空間法則の違う異空間に接続して

隣接する空間同士のエネルギー法則の矛盾により、相互にエネルギーを増加させ

 

例えば『熱は負のエネルギーであり、一極に収束蓄積する』と『熱は正のエネルギーであり、均一に拡散する』

 

この法則の異なる二つの空間を隣接すれば

多分世界一有名な謎理論

『正と負の熱エネルギーをスパークさせて全てを消滅するエネルギーに変える』

を実現できる

 

つまり全てを消滅させる某光の矢を撃てる

まぁこんなの使ったら間違いなくガイアさん激おこ案件であるし、最悪メモリの自壊すらありえる

 

ゾーンメモリが空間なんてファジーな表現を持ったメモリだから悪いのだ

area(地域)メモリのように環境操作能力程度に抑えればよかったものを

考えられる人物か使えばウェザーに対抗できるぞ?

 

 

「まぁゾーンべた褒めは置いといて

正直他のメモリは使い勝手が悪いからなぁ…」

 

並べたメモリを眺める

slush、zone、beast、scull、dash、mirror

そしてpenetrate

はやくもドライバーが欲しくなる本数を突破したな…の割には主人公勢のメモリ無くね?

しかも聞いたことあるメモリから知らないメモリまで多岐に渡ってるし

 

「これは軍で使えないなぁ

怪物の姿とかあっちで晒したら討伐対象にしかならないし、かといって俺の能力はメモリ依存……」

 

「あら、お困りかしら?」

 

「永琳…どしたらいい?

俺完全に凡人なんだけど」

メモリが使えない俺なんか、挙げられてないフライドポテト、しんなりしたあまい棒と変わらない

それじゃポテトスティックとうまかった棒だ

 

「なら、貴方のメモリの力を

貴方以外から出力すればいいじゃない」

「別の人に挿してもドーパント化して危険です〜」

 

「そうじゃなくて、メモリを利用する、貴方の専用武器を作ればいいのよ」

 

「専用武器?メモリで?」

となると、、本編に出てくるメタルシャフト、アクセルブレード、トリガーマグナムか?

 

「銃、剣、槍、盾、斧、戟、鎌、鎖、錘どれがいいかしら?」

 

「とりあえず盾と銃かな?あとあと剣が欲しくなるかもしれないけど、今はその二つで」

 

「はいはい、まぁ良いわ

既存の素材でどこまで出来るか分からないけど、理論の推察くらいは出来る、メモリ貸してもらうわね」

 

「あぁ、、どうぞ」

ミラーとスカルを渡した

ミラーを盾に、スカルを銃に当ててもらおう

 

鏡の盾とか正直脆い気がするが

ビーム攻撃耐性高そうだ

 

「お借りするわね〜」

 

永琳は何処ぞヘと出て行った

 

下手に人体実験とかするとメチャクチャ危険な為、ペネトレイトとダッシュは渡さない

ダッシュはケツァルコアトルスやゾーンのような圧倒的空間支配力がなきゃ捕まえられないし

 

突然発狂したドーパントが登場したらそのまま逃げられてしまう

 

いやそんな可能性ないに等しいけど

もし永琳の適合メモリだったら

永琳がドーパント化してしまうし

 

一時間ほど後………

「出来たわー!これ!理論平面鏡盾(セレクティカルミラーシールド)死者の銃(スカルマグナム)

 

マジかよ……

 

「あざあぁっす!」

 

ミラーはともかく

スカルマグナムは本当にありがたい

遠距離武器にして弾切れなしという最強武装であり、スカルの特性から

『エターナル』によるメモリ出力阻害

かそれこそゴールドメモリなどの圧倒的高出力がなければ突破できない上に

『死体は恐怖しない』が故に精神攻撃耐性を持ち、『死体は昨日も明日も死体』故にオールド、ヤングやイエスタデイの効果を受けないという規格外武装だ

 

これで勝った!

 

「じゃあ、明日から軍生活頑張ってね!」

 

「……………は?」



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9話

「軍…?」

 

「当然でしょ?貴方、武官の意味わかってる?」

「いや官って宮仕えの官だったの!?」

 

「それ以外何があるのよ」

 

「……官……特にないか?」

 

ダメだ自分で言っていてよくわからなくなって来た

 

「境遇は私が説明するから、家通いはok、あとは試験の成績ね、微妙だけど歴史が30ってことを考えると

300中250、かなり高いわ」

 

「結局全体評価だから低いんだけどね」

「そこっ!気遣いを無駄にしない!」

「へーい」

 

「明日の庁舎前集合は送ってあげる

 

また迷わないでよね?」

 

悪戯っぽく笑いながら、視線を外す永琳

不覚にも可愛い

 

「わかったよ…土地勘がねえから苦労する」

 

「本当にそれだけかしら?」

「それだけだっ!」

 

俺は、明日のことを考えるのをやめた

 

翌日

 

「ヤゴコロ様、いらっしゃいますか」

軍人の方が来ちゃったよ

 

仕方ないか、、

 

「御同行願います、よろしいですね」

「拒否権はないんだろ?わかってる」

 

大人しく車?に乗って

「それでは、庁舎まで移動を開始する、庁舎に到着した時点で、君は一人の軍人となる、当然ながら二等兵だ、移動中のうちに質疑応答を済ませるぞ」

 

制服を来たオジサンの視線に向き合う

 

「了解…、じゃあまず

なんで俺が軍属に?」

「それは愚問だな、君が試験を受けた結果、実戦適正4-を出したからだ」

 

「実戦適正?」

「社会的適正の1つだ、基礎的な研究適正、工業適正、事務適正、実戦適正の4つに分類される

適正ランクがどれも低いものは農民に、ランク2+以上を持っていたものはその職業に分類される」

 

職業は外部決定なのか

ますますディストピア感出て来たな

 

さて、

 

「到着だ、すまんがこれ以上は時間がないから自己紹介だけは済ませるぞ

俺は甲、鎧砥甲(ヨロイド キノエ)少尉、よろしく」

 

「よろしくおねがいします」

 

「さぁ、出ろ、新兵!」

 

「はい」

 

もう逆らっても無駄と割り切る

仕方ないさ、公権だもの、、

 

いや俺所属違うけど

 

そういえば家で見てた仮面ライダージオウまでだな

しかも最終話見てない

 

オーマジオウに覚醒めんのはわかるけどそれ以外だよ、それ以外分かんねえよ

 

「並べ、整列だ」

 

「……」

 

取り敢えずそこに居た人の列の一番後ろに入り、待機する

 

「いいか!貴様らは今日をもって人権を失う!貴様らはゴミだ!何一つとして用途のないゴミだ!」

最初の演説からぶっ飛んだなぁ

 

何考えてんだコイツら?

 

その後も演説は続き、

その間ニ時間棒立ちだった足が辛くなってきた頃にようやく終わった、

何考えてんだ?(二度目)

 

「軍学校の授業は厳しいが、成績さえ出ていれば何も言わん、サボってもいい、眠ってもいい、ただし成績が出ていればだ」

 

それが先生の言うことか

 

「それじゃあ三年間がんばろー」

しーん

 

 

「はっはっはっ!…何ボサッとしてやがる!笑え!」

 

《ははは…》

「ボリューム足んねぇぞ!もっと上げろや!それともお前らそれが限界なのか!?おもしれぇこと言ってんだから全力で笑えや!」

 

今こそパワハラ極まれり……

 

ゲームのラスボスの変身のような音を脳内で付け足しながら笑う

 

「黙れテメェら!いつまでも騒がしいんだよ!」

 

お前が笑えって言ったんだろうがと

誰かがつぶやいた

その瞬間、周囲の空気が一致した

 

『あっ、コイツ死んだな』

 

一色である

 

ちなみにそいつは秒で特定されて教師直々にボコボコに殴り潰して捨てられていた

 

が、窓から放り捨てられた(一階)

彼は懐から転がり落ちたメモリを起動

 

『Repair』

左の縦線をベッドに見立て

枕と人でRを描くそのメモリが、ボロ雑巾と化した彼の体を回復させる、

 

周囲には気づかれていないようだが

 

マジか、メモリ適合、しかもハイドープ

これは回収案件だ

 

「いいかテメェら!俺たち教師は絶対だ!

クズは捨てる!当然の話だろ、じゃあ改めて…旅行 行くぞオラァ!」

 

おそらくこの環境では旅行とは

施設めぐりの事を指しているのだろう

少なくとも、楽しそうな雰囲気はない

 

 

「さぁいいか!説明を初めてやる」

 

ちなみに、今日の一日はそれで終わった

 

「あぁ〜面倒臭い!テメェら実力考査だ!終わったものから帰ってよし!今すぐそこらの奴と一対一で戦えいっ!」

 

「えっマジで?終わってないの!?」

 

俺が突っ込んでいるうちにも

どんどん二人組を組んでいく生徒

 

不味い流れに取り残される!

 

「周囲の流れには勝てなかったよ…」

「…貴方、一人ですか?」

 

「えっ?」

 

「ですから、一人ですか?」

「あっ、、あぁ」

 

紫色の髪の少女から声をかけられた

「でしたら、私と組んでください

私もあぶれてしまったので」

 

「わかった、ありがとう」

 

少女は、綿月依姫と名乗った、玉依毘売のオマージュだろうか?日本神話好きだな

 

「さぁ、いざ」

「えっ、えぇ?」

 

彼女が抜いたのは、真剣

おそらく名刀○○丸とかのレベルのスゲェ刀

よくわからないけど鋭そうだ

 

「構えなさい、貴方の得物を」

「……………やるしかないのか」

 

俺はUSBメモリを構えて…

しまった、使えないんだった

 

「来ないならこちらからだ!」

 

少女、依姫が突撃してくる

その刀から繰り出された鋭い一撃は

俺の腹を掻き切り

 

「…?」

なんの抵抗もなく切り裂いた

 

腹をざっくりと開いて血と体液をこぼす俺に、疑問を抱いたのか、依姫が問う

 

「弱すぎます、小学校でももう少し反応しますよ?」

「そりゃ、どうも」

 

『mirror!』

「来い、ミラーシールド」

 

空中に出現する鏡の手盾

俺はそれに手を伸ばし、掴み取った

 

しかし、その隙を逃す依媛ではなく

俺の腕が空を飛ぶ

 

「ミラーっ!贖罪の反照鏡(カルマリーバウミラー)!」

メモリを盾に装填、マキシマムドライブを発動

 

()()()()()()()()()

 

左腕に欠損を生じさせ、腹を裂かれた俺のダメージを綺麗さっぱり反射する盾

 

それは依姫を写…さなかった

彼女は素早い動きで跳び、その後ろにいた金髪のヤカラが対象にロックされ、一瞬で戦闘不能に陥る

 

「チッ!」

「呪返し系の術を仕込んだ武器ですか」

「なにそれ?」

 

「…知らぬふりはいらない」

首にめがけて振るわれる一刀

こういうのを嫌で一撃必殺を狙ったんたが、まぁ仕方ない!

 

正面から盾で受け…流す

理論平面の盾は摩擦ゼロ、つまり滑る

 

あらゆる攻撃を滑らせる盾なのだ、

 

「お前の攻撃は刀依存、全てを無効化してやる」

「ぬかせっ!」

攻撃が早まる、しかし俺はそれに対応して

 

「バカな…」

「受け流しなら十分だな」

 

ニヤリと笑った



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01、違った10話

ガツンガツンと音を立てることもなく、鏡の盾が攻撃を受け流す

 

別に?痛くなんて無い

摩擦ゼロの盾ってマジぬるぬるしてんね?

 

『scull』

俺はスカルマグナムを召喚して

マキシマムドライブを発動、

 

撃ち砕く銃弾(スカルパニッシャー)っ!」

 

一度も言われた事の無い技名を宣告しながら

スカルマグナムを連射する

 

『mirror』

スカルマグナムを放り出して、ミラーシールドにメモリを再装填し

マキシマムドライブを再発動

 

「リフレクト・リフレイン!」

 

周囲に鏡を大量に召喚

それに、スカルマグナムの銃弾が命中

威力を完全に保ったまま反射した

 

盛大なメモリの無駄遣いだな

メモリの能力とて無限では無い

いつか出力限界で停止してしまうが

ドーパントになれない以上はこうするしか無い

 

鏡に反射された銃弾は乱跳弾し

砕けた鏡の破片と共に依姫を襲う

 

しかし

 

「ふっ!」

 

依姫は地面に刀を突き立て

その周囲から彼女の身長を超える長さの刀が大量に生えて、鏡の破片をブロックし、銃弾は彼女自身が刀で弾いていく

 

ベルト挿しや変身体では無い

武器で使用した低威力の技とはいえ

マキシマムドライブの攻撃を無効化するとは…規格外かこいつ

 

「随分珍奇な技ですが…その技が貴方の能力ですか?」

「……?能力?」

 

いや、俺のというよりメモリの能力なんだが

「知らないという訳では無いでしょう、私は[神霊の依り代となる程度の能力]を保有する能力者ですが、貴方は如何なる能力を持つのですか」

 

 

鏡の破片が消滅しきると同時に

再び動き出した彼女はスカルメモリの影響で骨格強化の入った俺の体を一刀で切り裂けなくなった事に気づき

驚きの表情になり

 

「俺は……そうだな、そちら風に言うなら[記憶を扱う程度の能力]かな?」

 

まず程度って何だ程度って

 

俺はマグナムを空中で取り

一回転しながら連射、すでにマキシマムは切れているが、それを悟る手段の無い依姫への威圧としては十分だ

 

見せ札は見せるだけでいい

有ると言うだけでそこに選択肢を増やせる

 

「銃使いが近接戦で剣に勝てると!?」

「ソードスキルに銃を使っちゃいけないと誰が言った!」

 

スカルマグナムをマキシマムモードに変形

格闘の動きに入る

通常モードより重心が前に出て

銃身が伸びるため、

取り回しはやや劣るが威力と精度は高い

それに、銃床で殴るときに使える

 

連射を優先した通常形態は殴りづらいからな

 

「仮面ライダースカル…武装限定だが、やはり使い勝手がいい」

 

「何をごちゃごちゃと!」

 

至近距離だからか、呟きも聞こえたようだ

剣の間合いよりも深く入ったお陰か

さっくり腹を裂かれることは無いが

格闘もそれなりにできるようで、ゲームで磨いた反射神経を超えるスピードで襲ってくる

 

が、ヘロヘロの拳でも顎や心臓、ダメージになりやすい場所を当てることが出来れば十分!

 

「すっ!せい!」メモリ起動

『dash!』

 

スカルマグナムに装填、同時に

骨格強化が解除されるが、加速の恩恵を得て依媛を銃床で殴りつけ

跳躍、空中から

 

「ソニックバレット!」

マキシマムモード故に貫通力に優れた弾丸が発射され

それが依姫に当たったかを確認せず

 

『slush!』

メモリを交換、

 

「スカルマグナム、銃剣モード…」

 

スカルマグナムを通常モードに変形、

メモリ装填スロットの辺りから銃身に沿って薄青いブレードが伸びる

 

「ぜぇぇえい!」

落下速を活かして思いっきり突き込む!

 

「そこまで!」

 

空中に突如展開したバリアが

スカルマグナムを弾き、

反動でどちゃ、と着地というか転倒する

 

「やり過ぎです!貴方はパートナーを殺す気ですか!」

鋭い声がかかった

そこにいたのは茶髪ストレートロングの長身の…なんというか、図書館とかに居そうな格好の、オレンジのロングスカートの美女だった

 

「結界、医術科の碓氷 結愛(ウスイ ユア)です!教師権限で訓練中止します!」

 

 

メモリを抜き、武装を置いて

倒れていた依姫を起こし、あっやべ血出てる

これ俺の血?

 

「はぁ、バカは置いておきます!

治療しますから、こっち来て下さい」

すごい剣幕だ…大丈夫かな、この人

 

「依姫さんの方先に頼みます」

とりあえず実験してもらうか、本当に先生なら預けても問題ないし、問題があるなら俺は回避出来る

 

「…………はい、」

 

すっ、と倒れている依姫さんの元へ移動したユア先生は

手元に繊細な光の筋を作り出し

(おそらく回復魔法的ななにか?)それを依姫に当てる

 

「…………数は多くない

弾は貫通してる、問題ありません」

 

依姫の銃創が薄れて、消えていく

 

「よし、安定した…あとは医務室へ移送するわ、貴方も早く」

「俺?」

「おなか、早く見せて」

 

「……あっ、斬られたんだった」

スカルメモリは痛覚を鈍化させる副作用を持つ、アドレナリンと痛覚鈍化の副作用で痛みに気づかなかったのだ

 

そこまで頭が回ると同時に

現金な身体から痛みが伝わり

 

「ぬぉぉあ……いっでぇぇえ」

 

「はぁ…ほら、早く見せる!今傷を塞ぎ直すから、痛かったら言って」「痛いっす」「まだ治療してないわよ」

 

その頃、クラス分けを考えていた

学年主任は悪魔的発想を浮かべていた

 

「そうだよ、実力順にならべて上からクラスに切り分ければ実力の高い順のクラスになる、それのメンバーを定期的に試験で入れ替えれば常に上位の奴が上に来る

名付けて『バカテス式実力主義』だ!」

 

こうして、試験中止の結果になった彼らは実力再測定が決定するのだった

 

 



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11話

さて、一応だが、言っておこう

 

「どうしてこうなった」

 

「…貴方が言いますか」

 

俺と依姫は巨大なドームで向き合っていた

 

のだが

 

「レギュレーションを説明するゼェ!

オマイらは実力テストにおいて

試験中止という結果となった!

ゆえにぃ!再試験ダァっ!

 

フィールドはドーム全体!

殺しあり、銃、剣含むあらゆる武器無制限、全能力使用可のなんでもあり(オールオッケー)30分間のデスマッチ!

 

終了条件は降伏か意識喪失

あるいは戦闘不能と認識できる状態になった時!

 

お前の今回のお相手はぁっ!

実力テスト!最上位の部!

クラスunknown(未知数)綿月依姫!」

 

 

「よろしくお願いします」

「あっ、よろしくお願いします」

 

様になった動きでスッと頭を下げて

礼の姿勢になる依姫、それに慌てて頭を下げる俺

 

「おいテメェら何してんだオラッ!実戦にカウントなんてねぇぞ!」

 

怒鳴りつけるようなアナウンスが聞こえた瞬間

ひんやりとした刃物が首に当たる

 

「失礼します」

「無理だ!」

 

首に当てられた刀が引き切られるより前に左に飛び、

「来い!スカルマグナム!」

スカルマグナムを召喚

 

スカルマグナムをマキシマムモードで使用して、

『dash』

 

メモリを装填、加速の恩恵で走り

同時にミラーシールドを召喚

 

『beast』野獣のメモリを装填して、同時に加速

「甘いっ!」

 

依姫は刀を大きく払い

俺の体を横薙ぎに切り裂きに来る

 

その軌道は殺意に満ちた一撃であり

それを見た瞬間、俺は覚悟を決めた

 

「いくぞ………」

『penetrate』

スカルマグナムに装填したペネトレイトメモリでマキシマムドライブ、同時にミラーシールドのビーストメモリでマキシマムドライブ

 

ツインマキシマム…

「ビーストオーラペネトレイター!」

 

シールドバッシュ

 

ゴールドは危険ゆえに使っていなかったが、殺されかけた相手だ、殺してやってもかまうまい

 

スカルマグナムマキシマムモードから

金色の弾丸が放たれ

それがシールドに直撃すると同時に

 

「「「「ウォーゥン!」」」」

四体の透き通った狼のオーラが出現

そこら中を駆け巡り、依姫に飛びかかった

 

『scull』

スカルにスカルを装填、

スカルパニッシャー(撃ち砕く銃弾)!」

マキシマムモードで発射

 

同時に、依姫の防御を掻い潜って噛み付いた狼たちが、依姫の四肢を封じ

 

弾丸が依姫に直撃した

 

「game set!!

 

あっ、違った試験終了!」

 

試験の終了コールが入ったのと同時に

狼のオーラが消滅した

 

「ふぅ…………ガハッ…チッ」

 

吐血だと、スカルの痛覚鈍化が切れたら絶叫不可避か…永琳に頼むか

 

「よし!もう帰って良いぞ!」

 

…………放り出された

 

「………………………」

 

「オラ帰れ早くオラッ!」

 

「ちょっと怒鳴るのらやめてくださいよ怒鳴るのは」

 

「うるせえ早く帰れってんだよ!

この第三大隊長のお言葉がきけねえってのか!」

「アッハイ帰ります」

 

誰だよそれ、

俺しらねぇんだが

 

ちなみに、そのあと永琳に聞いたところ

軍内のトップ10くらいに入ってるんじゃないか?という答えが返ってきて超焦った

 

「それにしても、あの性格で偉いのかぁ」

ちょっと心配だなぁ

大丈夫か?

 

まぁ、大丈夫じゃないんだろうけど

 

「さぁて、寝るか」

 

俺はもう疲れた、内服薬も飲んだし

スカルメモリ解除はした、もちろん激痛も耐えた、なら少しくらいご褒美が欲しいところだが

 

「あげません、怪我して帰ってきて!どれだけ心配したと思ってるんですか!」

 

現在形でハヤテに抱きつかれているからいいか

 

「もう離しません!ずっとです!」

 

駄々をこね始めたウサギに、永琳が喝を入れた

「家事はどうするの?」

 

「…………そこまで考えてませんでした」

「はぁ、これだからこの子は…」

 

残念だがそれは俺も同じ意見だ

 

さて、ハヤテを振り切って立ち上がり、ちょっと傷を直した後にはやることがある、と催促

 

そう、食事だ

 

ハヤテの飯はうまい、正直俺が食ったことのある最高位の飯よりもよほどうまい

 

ここだけはこいつをべた褒めできる

…いや、容姿も十分優れているが

 

「…あっ、ありがとうございます」

 

「そういえば感情が読めんだったか?」「はいっ♪」

嬉しそうだな、、

 

「いちゃついてるところ悪いけど

そのメモリと武器はメンテよ、少し貸しなさい」

「……はい」

 

なんと、俺の適合率が上がっていると言われて驚いた

なぜ適合率が変化するのかも知らないが

とりあえず適合率が上がると

メモリの力を強く引き出せるのはわかるが、どうも武器がそれに追いついていないらしい

 

このままではいずれ壊れるとの事なので、武器のアップグレードと別の武器の作製を行うとの事だ

 

「ちゃちゃっとメンテしちゃうから

貴方はその間にご飯でも食べてなさい」

 

「了解した、早めに飯にしよう」

「かしこまりました!お任せ下さい!」

 

単なる栄養食なはずなのに

レバニラ炒め(に似た味の何か)とか

ステーキ(に似た味の何か)とか

割と好物が出てきた

 

ちなみに、この世界では生物の生、死を穢れと捉えるらしい、一切の生食をしない

まぁ腹壊す可能性もあるし

養殖とかもしてないんだろう

 

つまり、完全に合成品の食事らしいが

これを上手いこと改造した代物が目の前のコース料理じみたもの、な訳だ

 

あぁ、旨い……

 

「うふふぅ♪喜んでくれて何よりです!」

 

かわええなぁ、

それはそれとして飯旨え

 

「ご馳走さまでした!」

 

「お粗末様でした、」

飯も食ったし、相変わらず元の世界に戻れないし、あの駄神に繋がるスマホも沈黙している

充電のアテがない以上

あれは迂闊には使えないのだが

 

「はーい!出来たわよっ!」

 

永琳が丁度いいタイミングでメモリとスカルマグナム、ミラーシールドを持ってきてくれた

 

「ありがとう!」

「いいえ、メモリの方は相変わらずだけど、スカルマグナムは28%ほどの威力向上、24%の射程向上が出来たわ、

シールドはエネルギーフィールド展開効率が5%、展開サイズが12%向上、他のメモリ使用時の防御率も向上したわ!」

 

まくし立てられて耳がいたい…

 

その日の夜は、ずっと試験とドーパント化せずにマキシマムドライブを行使する訓練で過ごした

 

翌朝

 

「まぁたここだよ、まったく」

 

「うるせえってんだよ!今解説してやっから待ってろ!

ええっと〜、お前の入試順位は15位!実力区分はunknown(測定不能)級!文句なしにAクラスだ!」

 

Aと書かれたタグが試験官のおっさん

 

えっと、第三大隊長だったか?

から渡された

 

「エリートクラスのAはその分自由がきくが訓練は厳しい!気を付けろよ!」

「…はい」

 

そのまま兵学校の1- A教室に転移させられた

「のうわっ!」

 

転びかけるが、慌てて耐える

「…今日は朝の……あら?」

そこにいたのは、担任の先生?かな?

 

緑色の髪をボブカットに揃えた

メガネの美少女だった

 

「生物学科の、幸御魂 造酒(サキミタマ・ミキ)です、編入の方ですよね?」

「アッハイ」

 

「席は左奥の、一番後ろです

よろしくです」

 

「ありがとうございます」

取り敢えず示された席に移動した

俺にさっそく一つ前の席の奴が絡んできた

 

「よう!俺は荒川馨(アラカワ・キョウ)せっかく席が近いんだ、仲良くしようぜ!」

「あぁ、仲良く、な」

 

坊主頭、といっても剃っているわけではなく、ベリーショートの野郎だった、筋骨隆々、というには少し頼りないが、十分な筋力もありそうだ

 

【キーンコーンカーンコーン】

っと!鐘の音?

 

「おっと予鈴だ、次の授業はたしか…」

カバンを漁り始めた馨

 

そこへ

 

「結界術ですよ」

 

涼やかな声が聞こえた

 

「私もこのクラスですので、皆さんどうぞよろしく」

 

そこにいたのは…依姫

「お前死んだんじゃ」「バカですか?あの程度では死にません、首が飛んだ心臓が爆ぜた程度で一々死んでいては人類など発展していない」

 

いやそれはおかしい

というツッコミが全員から入った

 

結界術の担当、碓氷先生が教えてくれた正解は

 

心臓を貫いた銃弾の開けた穴が小さかったこと、

事前に狼が噛み破った四肢からの出血で血圧が低下していたこと、

訓練所に展開されていた無菌フィールド

などの要因が重なった結果、そうそうに心臓が炸裂せず、なんとか回復が間に合ったらしい

 

「悪運というかなんというか…」

「生存していればそれで勝ちです」

 

「確かにな」

 

俺の隣の席となった依姫と掛け合いしながら時間を過ごして、配布された教科書をパラ見する

落丁、乱丁はない

印刷技術あったのかこの世界は

 

「さぁ、皆さん、本誌五ページを開いてください」

授業が始まった

 

 



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12話

今回ちょっと話が飛びます


「結界の理論は分かりましたか?

つまり、反比例のグラフのように展開範囲、防御能力が移動するのではなく、展開範囲が広がることで世界からの抵抗が増して脆くなっているので、防御能力が下がる訳です

 

この対策としては〜」

 

結局、この授業はほとんど聞き流した

 

次の授業、体育

 

と言っても軍式である

着替えてグラウンド集合と言われた際に女子も迷わず脱いでいた辺り驚愕だったが

 

あまり見ないことにした

 

あまりであって、全く見ないわけではないのが実に男子高校生だが

何か悪いか?

 

グラウンドに全員で到着したあと、

無茶苦茶走らされた、間違いなくイジメだ

これ間違いない

 

さぁて、走り終わった息も絶え絶えの俺たちにくだされたのは……

「あら何勝手に休んでんだオラ!」

 

飴は?

 

鞭ばっかりじゃ馬は懐かんぞ?

なんて茶化す間も無く動けなくなるまで走らされたのだった………もう帰りたい

 

「………で、体力テストを終えた、と」

 

「づがれだぁ〜」

 

「はいはい、そんな声出さない、

はいこれ、強制活性剤よ」

 

「……体力削らない?」

「大丈夫よ、別に体力を消費して潜在能力を解放する錠剤じゃないわ」

「…ならいいや」

 

薬をもらい、飲んで、

 

「よし、なんかと引き換えに活力を絞り出してる感じしかしないけどまだ頑張れる!」

 

そのあとはいつも通り食事、睡眠

翌朝登校を繰り返して

昨日と変わらない明日、を繰り返し

 

 

二年……軍に仮配属される日だ

 

一応だけど、俺はもう

元の世界に帰るのを諦めた

 

永琳に異世界から来たと明かしたところ

単一時間軸上なら、いずれ俺のいた場所に戻る可能性もあるらしいが、そこに至ったところで

最早俺とは関係のなくなっている他人でしかない友人と、以前のような関係を築き直せるとは思えない

 

それに、ドーパントのメモリは強大すぎる、これは日常側の世界に存在してはならない物だ

 

「だから、俺はこのメモリを全部回収する」

 

二年間の生活も無駄にはなっていない

肉体はひ弱な高校生から、鍛え上げられ…ているとは思えないけど、絞り込みも出来ている

 

素の身体能力でもバク宙くらいはできる

メモリもいくつか発見された

 

「現在の所持メモリは

A『anti matter』B『beast』C『crystal』 D『dark』F『fusion』H『heat』j『joker』N『Nacca』M『mirror』P『penetrate』S『scull』『slush』U『Utopia』Y『YUNKEL』Z『zone』」

 

内、反物質(アンチマター)貫通(ペネトレイト)融合(フュージョン)遺跡(ナスカ)

理想郷(ユートピア)の五本がゴールドメモリだ

 

………正直、カラスがユートピアを咥えているのを見たときはぞっとした

 

そう、適合条件の厳しいゴールドメモリは圧倒的な力を持つ代わりに限られた適合者しか使えない

普通なら起動、ドーパント化くらいは適合率が低くても出来るが、ゴールドは適合者以外はメモリの側に弾かれてしまう

 

まあ、適合者が見つからなくてもおかしくはない

 

とはいえ、ユートピアドーパントは絶望的な相手だ、精神攻撃耐性がないと勝てない

サイクロンとアクセルのメモリの代替として、一応スカルメモリで戦うことも可能かもしれないが、中級に過ぎないスカルメモリは単体では押し負ける可能性が高いのだ

 

ジョーカーは出力上限値が上がるシステムを用いて翔太郎の適合率の高さを活かし、限界以上の力を引き出していた

サイクロンは精神干渉無効のフィリップが発見した風吸収能力を用いて消費したエネルギーをリチャージできた

 

アクセルもエンジンメモリを使えば

いくらでも闘志を加速できたし、変身者の照井自身も精神攻撃耐性を有していた

 

スカルとて、本来ならユートピアの精神攻撃など意にも介さぬ精神的強靭性を持つだろう鳴海荘吉が変身していたが、今の変身者は俺、メモリを使えば精神耐性は付くかもしれないが、身体、精神共に心許ない

 

最低限、ドーパントでメモリ二本使用かつ開幕マキシマムで奇襲、これくらいできないと死ぬ

 

欲を言えば複数のドーパントで袋叩きにしたいところだ

 

ベルトがないからライダーと言えないあたりがちょっと問題だけどな

 

「そろそろ時間じゃない?」

「あぁ、行ってくるよ、永琳」

 

「私はどうなんですかっ?」

「ハヤテもな、」

 

ぴょんぴょんしていたハヤテが頭をこっちに向けて擦り寄ってきた、撫でろの合図だ

「……よしよし、またな」

 

「…兎は寂しいと死んじゃいます」

「それ、最近否定された説だぞ」

 

「………私は寂しいと死んじゃいます!」

「それ堂々というかよ…おっと、行ってくるよ」

 

「「行ってらっしゃい」」

 

美女二人からの見送りとは気分がいいものだ

「んじゃ行こうか……馨!」

「……えっ………」

 

すぐ近くを歩いていた大男、

荒川馨を捕まえる

 

「なんだよテンションひっくいなぁ」「逆にお前テンション高過ぎか?配属だぞ少しは緊張くらいしろよ…」

 

「今更緊張なんてしてられねぇよ、

お前こそ落ち着け」

 

軽い掛け合いだが、二年来の友人ということもあってすぐに調子を取り戻したようだ

「オッシ!いける!」

「よし!…って、どうせ同じ小隊は決まってんだろ」

 

「たしかに………俺、お前、矢柄(ゆがら)美埜理(ミノリ)

それに隊長で終わりか」

成績上から順なんていう制度のせいだけど、同じメンバーで固まりやすいんだよなぁ

 

「ほら、残りの二人も来たぞ」

行ってるうちに合流した小隊の残り二人

矢柄咏薇(ユガラ・エイラ)吟詞美埜理(ウタハ・ミノリ)どちらも霊力使いだ

 

つまるところ、このパーティは

俺と馨で前衛を塞ぎ、

後詰め二人が射撃、というフォーメーションを得意とする

 

「ねぇねえっ!聞いて聞いてっ!

ミノリってば今日部屋にいた虫にビビって寝起きダッシュしてそのままここ来てんだよ〜!」

「いわないでぇっ!」

 

こっちにむけて、囁くというにはあまりに大きい声で話しかけてくる咏薇、それにすがりついて黙らせようとする美埜理

 

「…逆にそれを平然と野郎にバラせるお前の性格が怖い」「同意」

 

「あぅぅあぅあぅ〜」

 

赤面しっぱなしの美埜理を

馨が庇って咏薇から引き離す

 

「咏薇は俺が話し相手になってやる」

取り敢えず俺が間に入って

その隙に馨が落ち着かせにかかる

「…大丈夫か?落ち着けるか?」

 

「………はぃいっ…」

涙目じゃないか

 

「じゃあマル秘情報!おっぱいおっきい美埜理ちゃん!実は最近また成長して今やFです!」

「「ぶっっ!」」

 

「もうやだよぉ〜」

「今日のブラはっむぐむぐむぐ〜っ!」

「お前はもう黙れ…」

 

これ以上美埜理の尊厳を破壊する前に口をふさぐ

 

「急ぐぞ」

「おう!」「はいっ!」「むぐ!」

三人を率いて、走る

霊力を使えば飛べるらしいが、俺達はまだ飛べないので、脚力強化と慣性制御で地上を走る

 

そして、

 

「08:26…ずいぶんギリギリな到着だな」

 

ギリギリ間に合ったのだった

 

「すんませんしたー!」

「すみませんでしたー!」

「さっせったー!」

「むぐむぐむー!」

 

一瞬ギョッとした第1小隊、

鎧砥甲隊長は、それでも、うむ!

と大仰に頷いた

 

「早く来るのはいいが、ベストコンディションのためには十分な睡眠が不可欠だ!諸君はよくわかっていると見える」

 

そして、俺の方を見て

 

「少年か!よく来た、改めて自己紹介しよう

第1小隊隊長の、鎧砥甲だ

諸君のデータは把握している

早速編成と陣形の確認に当たるぞ」

 

「「「「了解!」」」」



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13話

「陣形は確認した、よぉし!訓練生にしては良く出来ている!だがまだまだ甘い!」

 

隊長の叫び声とともに

全力の(メモリを使わない)

防御が弾かれ

 

「喝!」

 

拳が俺に迫る

 

それをあえて受けて、

 

「もらったぁっ!」

 

馨が加速、空中から隊長を殴りに行き

 

「甘いっ!」

隊長は霊力を噴射する推進法で背中から高密度な霊力を放出、物理的衝撃を発生させて

拳を弾いた

 

「行くよ…」

 

霊力を空間に拡散させ、周囲一帯を支配する

これが吟薇の能力

『時と場所を弁える程度の能力』

 

詳細としては、自分の霊力が拡散している空間の存在や挙動を感知し、空間に拡散している霊力を操作する能力!

 

枝分岐帚木(ブランチネイル)!」

 

霊力を結晶化した針が枝分かれしながら張り出し、隊長へ襲いかかる

が、

 

「無駄だあっ!」

 

隊長の体に刺さることはなかった

鎧砥甲隊長の能力、

『研鑽する程度の能力』

 

固め、叩き、研ぎ澄ます力

と称される能力だ

 

自身の体表面を硬化させたのだろう

 

「いまっ!」

 

二年間で検証を経て実用化、

量産まで至ったサプレッサーを標準装備した

軽量低反動銃『黒揚羽』が引き金を弾かれ

 

美埜理の元から銃弾が飛び立つ

それは寸分たがわずに針と同じ場所を貫き

 

パリィン!

 

甲高い音と共に()()()砕いた

「良い狙いだ!だが甘い!

格闘タイプだから結界を使わないとでも思ったか!」

 

練度が違う、と笑いながら

一瞬で後続二人を戦闘不能に落とし

 

「ガジェットオン」

 

俺は全力を使うことを決定した

『stage』「スタッグフォン」

『spider』「スパイダーショック」

『bat』「バットショット」

三種のメモリガジェットがライブモードに入り

「来い、スカルマグナム、ミラーシールド」

 

銃と盾を装備、装填するメモリは

武器と同じ

 

『scull』『mirror』

「行くよ…撃ち砕く銃弾(スカルパニッシャー)+リフレクトリフレイン!」

 

「むぅぅん!」

 

体表を硬化した体調の、装甲を揺さぶる弾丸は

何度弾いても帰ってくる

それは終わりなき戦いの始まりを意味していた

 

「おおおおおおおっ!」

 

「マキシマムドライブ!!」

さらに出力を上げて攻撃し、

しかし、次第に軌道が読まれ始める

 

「そこだあっ!」

 

加速した隊長が包囲を抜け

 

「待ってました!」

振り抜かれた馨の鉄拳に背筋を打ち砕かれた

 

「グボァッ!…よぉし!二人ともいい気概だった!

訓練は終了!」

 

「「オス!」」

「後衛二人は咄嗟の対処を磨く必要があるな、それについては明日別メニューを用意しておく、軍に入る以上、体力が無い力が無いでは話にもならない!心しておけ!」

 

「「了解」」

 

「それとお前は…なぜ最初からアレ等を使わなかった?」

 

「メモリガジェットは俺の強さとは関係ないですし、それに、後衛がいるときにアレを使うと援護が通らなくなるので」

 

「なるほど、まぁお前なりの援護用武装、という事で考えておこう、それと!明日から体力トレーニングがあるから、心しておけよ」

 

「了解です」

 

そこまで話したあと、体調は声を張り上げ

「今日は哨戒も非番だ!故に解散!」

《了解!》

 

「と言われたはいいが…」

小隊員同士で顔を見合わせる

 

「帰る?」

「…だいぶ、というかかなり早いよねぇ」

「俺は早く帰って寝たいんだが」

「寝る子は育つ理論は流石に適用できる歳ではないと思います」

 

どうしようどうしよう

と議論を交わした結果

 

「チッ!早くコイツの訓練してぇんだが」

 

馨が取り出したスティック状のそれに目が集まる、というかそれRのガイアメモリだろオイ

 

『revive』

 

自動的にメモリが起動して

俺の首に刺さる

 

「のわっっ!」

「何何何なにっ?」

「はひゃあっ!」

 

「リバイブメモリの力…これは」

 

右半身に白い包帯、焼け焦げたような黒い左腕

鋼鉄のような装甲をもつ左足

 

「死者の蘇生、リバイブ、

なるほどな」

 

俺はドーパント化を解除して

メモリを取りだす

 

「回復、蘇生を司るメモリ

死の淵からの復活と強化、それがお前に適合したメモリだ」

 

はい、と馨にメモリを渡す

「お前になら、完全に性能を引き出すことができる筈だ」

 

とはいえ、メモリの毒素の影響も心配だし…今度純化してもらおう

 

「だから何なんだそれえっ!」

 

総ツッコミであった

「わかったわかった、説明しよう

ちょっと家に来い」

 

「ちゃんと説明しろよ?!」

「…へっ?」

「お、お家、に…お呼ばれ…」

 

後半なんか反応がしょっぱくないか?

 

「まぁ、いいや

お前らにはちゃんと、一部説明しよう」

「全部説明しろよっ!」

 

「…………ぜんぶぅ?…

ここ数年のなっがぁい話になるぜ?」

 

「長いのはこの際いいから早くしろ」

「コレは面白いネタになりそうですねぇ!」

「聞かせて、知りたいです、全部!」

 

みんな全部聞くらしい、めんどくせぇ

 

「…あく来い、時間たりねぇぞ」

 

「おうっ!」

「はいよっ!」

「えぇ、」

 

みんなで移動して、家に帰る

「…んで、謎の少女に突然キスされて、なんかビビってるとこの世界に来ていた、ここまでOK?」

 

「何だそれっ!突然すぎんだろ!」

「ファーストは…女神ねぇ?ちょぅと刺激的?」

「唇…で、、そんなぁ……」

 

なんで美埜理は残念そうなんだ?

「まぁ、いい

そこは超常現象という事で許してやる」

 

「そこから先は二年間、戦い続けて頑張った」

 

「依姫様に勝ったのか…」

「そりゃ当時の話、今は無理だろ」

メモリガジェット使ってもドーパントの力には及ばないし、流石に攻撃も通るさ

 

「んで、コレが今持ってるメモリな」

アンチマターを初めとするメモリたちを並べてみせると

「ん、何かの文字?が書いてあるっぽいけど」

 

「…お前らアルファベット読めないの?」

 

そうだった、この世界

ちょっとアレなんだった…

 

「アルファベット?」

「まずそこから始めようか」

 

突然英語の講義が始まった

といっても中学レベルのであり、

簡単な文法と英単語、接続詞程度である

 

受動態条件法や過去完了、進行の使い分けなどは俺もよくわかっていないため教えられていない

 

「丸一日で理解しちまうお前らってやっぱすげぇよなぁ」

 

「逆に俺らにとっては全く知らない言語を使えるお前の世界の方がすげえよ」

「そもそも言語っていうのが複数種存在してなかったからねぇ」

 

「…なんのために生まれたのでしょうね」

いやお前らも英語使ってたし

 

「そこについてはまぁわかっていない

多分方言みたいな環境依存の経過変化で○語系と×語系みたいに変化したんだろう」

 

まぁ、起源はともかく

コレでメモリの意味はとりあえずわかるよな

 

「俺の集めているメモリのうち一つ

『R』の『revive』メモリがそれだ」

 

「なるほどなぁ…って、俺が持ってていいのかよ!」

「いいんだよ、お前なら使える

お前になら信頼に値するさ」

 

「…いっよっしゃ!」

メモリを受け取った馨と他のメモリについて相談しながら

新たなメモリのための武器を作る方向で考え始める

 

リバイブメモリだからやっぱり爪か?

 

「そっと仲間はずれにされてますが!」

「私じゃ、ダメなの…」

 

二人の声をBGMに、ゆったりと議論が続くのだった



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14話

「いつものことだけど、永琳」

 

「はぁ〜、、これでも私お仕事忙しいのよ?」

 

「疲れが顔に出ていない、疲れていると[疲れた]とはっきりいうタイプの永琳がその系統の発言をしていない、つまりまだいける」

 

「…それがものを頼む立場かしら?」

「頼む」

 

「うふふっ、まぁいいわ

次のメモリはなに?」

 

「リバイブメモリだ、ドーパント化した時に辞書に登録済み」

 

「はーい、じゃあメモリのコードお願い」

いつものように渡されたキーボードでリバイブメモリの[封じられた記憶]を書き写し、記していく

擬似的な複製品メモリを仮想モデルに形成して、永琳へ渡す

 

「これでいいかな」

「度合いはあなたにしか分からないでしょう?」

 

そりゃ確かにそうだ

 

『メモリの所有者+完全なる毒素耐性』

これが俺のチート、

つまりガイアメモリの支配者(ドミネーター)としての能力だ

 

だというのにメモリがT2仕様なせいか既にほとんどが適合者と出会ってしまっているようで、ほとんど俺の元にやってこない

 

ケツァル、テラー、アビス、デス、ヘル、クレイドール、スミロドンなどのゴールドも失われていると考えると悲観してしまう

 

インビジブル、フォートレス、インパクト、ゼロ、まだまだ危険度の高いメモリは多いのだから

早く回収オア破壊しないと

 

「いや、この世界寿命ないから問題ないのか?」

ここ二年、永琳の容姿が全く変わっていないからと疑問に思って、何か特別なアンチエイジングでもしているのかと聞いてみたことがあるが、その時に

この世界の人間に老化が存在しないことがわかったのだ

 

いや便利ですわ

 

「はいできた、取り敢えず要望通りに

速度型のクローと威力型のカッターに変形できるようにしておいたわよ?」

 

「おっしゃありがとう!

コレでメモリの性能を活かせる!」

 

笑いながら新武装

[リバイブレイカー]を受け取り

「お礼はなにが貰えるのかしら?」

 

硬直した

 

「………考えて…なかった…」

 

「あら、ダメじゃない

ちゃんと考えてないと」

 

ニコニコ笑いながら言うかそれ…!

 

甘やかな声とともに俺に擦り寄る永琳

 

「ねぇ、私どうしても欲しいものがあってね」

「…何だ?」

 

「好きだよ、って言って?」

「それがどう」「あなたの言葉が欲しいの」

 

耳元でゆっくりと、甘やかな声で囁かれる

 

「はいはい、どうせなんかに使うんだろ?」

 

俺は努めて色香を無視して

「好きだよ…これで満足?」

「もっとカッコよく、愛が足りないわ」

「…欲張るなぁ、『好きだよ』」

 

「もう一回、録音忘れてたわ」

「ダメじゃねぇか!

はぁ、『好きだよ』」

 

いそいそと取り出された小型のボイスレコーダーに向かって事務的に声を吹き込み

 

「ん、ありがとう…今夜は快眠出来そう」

「そう、そりゃよかった」

 

実験に使う金銭の供与とかいわれたらどうしようかと思ったが、

俺自身も特に何かあるわけでも

無い条件でよかった

 

金銭が苦しいならハヤテはどうなんだ

って、おもっただろ?

残念だけどアイツは[奴隷兼ペット]が職業なので基本無給

 

いや俺は折を見てある程度の金銭を渡してはいる、労働基準法に則る訳では無いが

ここの世界での普通の生活はできる程度の額だ

 

なのに全然使わないんだが

 

「じゃあ俺は行くよ」

「あら?日課のお散歩かしら?」

 

「あぁ、そうだよ」

 

メモリを探すためのな

メモリと所有者は惹かれ合う

俺は定期的に外出してそこらじゅうを歩き回り、落ちているメモリがないかを確認したりしている

 

「最初はたまには拾えたんだが

そろそろメモリも所有者を見つけちゃったのかなぁ」

 

都市の外に撒かれたメモリを回収しないと終わらなそうだし、ガイアメモリを偶発的に使用して事故が起こる可能性だってあり得るのだから

俺も頑張らないとなあ

 

「…そこのあなた」

 

「ん?」

 

背後から突然声をかけられた俺は

振り向いて応える

 

「すこし、匿ってくださらないかしら?」

「…そりゃ穏やかならぬ雰囲気だね

了解、家に来なさい」

 

「助かるわ」

 

うつむきがちだった少女が

ようやく顔をあげて

 

「私は蓬莱山輝夜、カグヤと呼びなさい」

 

「了解、カグヤちゃんねOK」

日本一番有名かもしれない名前の姫きたぞ、富士山の名前の由来やぞおい

やっぱり日本古代系リスペクトな世界なのかね

 

 

「それじゃあこっちだ

移動するぞ…飛べる?」

「大丈夫よ、私も魂師(スピットーソ)だもの」

 

「じゃあ行こう-おおっ!」

 

ジャンプしたカグヤちゃんはそのまま滞空して

地上50センチ辺りで水平移動

俺は霊力推進で走る

 

数分と経たずに家の近くまで辿り付き

「ただいま、この子匿ってあげよう」

二言目が突飛すぎるかな?

 

「失礼します」

 

上品に廊下へ上がるカグヤ

「おかえりなさいませ、ご主人様

いらっしゃいませお客様」

 

ハヤテの方も動じていない…だと

 

「場所によりますけれど、

どこから匿うのでしょうか」

 

微笑みながら首をかしげるハヤテに

少女はぼそりと呟く

 

「…わたしの家、蓬莱山よ」

 

「あら、蓬莱山…それはまた

随分な名家ですこと、隠し通せるかしら」

 

のらりくらりとした韜晦で匿うかどうかの明言を避けるハヤテ

「…俺は匿うよ、蓬莱山ってのが

どんな家かは知らないけど、無名の俺なら『突然匿ってと言われて流された』で説明もつくだろう」

 

さぁて、軍の連中にも隠さなきゃなぁ

 

「良い返事をくれたのは貴方が初めてだわ、みんな家柄を怖がってしまうから

お礼に、これあげる」

 

少女から手渡されたのは…Eのメモリ

『eternal』

 

「私は永遠と須臾を操る程度の能力の持ち主、危なくなったら私だけなら逃れることも出来るの

貴方達は悪くない、って証言くらいはしてあげる」

 

おそらくは、幾度も脱走を試みて

失敗し続けてきたのだろう少女は

 

もうすっかりおなじみになってしまった

責任逃れを口にして

 

「そうか、了解…とでもいうとでも思ったか?」

 

始めて、この段階で裏切られた

「そもそも俺はやったことの責任くらい自分で取る、自分の裁量でできないことはしない、その判断がつくのが自立した大人だ」

 

カグヤへとを手を差し伸べて

「俺がお前を匿う、良いね?」

「…アッハイ」

 

「暑いラブロマンスしてる所悪いですが、ご主人様は[私の]ご主人様なので横から出てきた童女にはあげません

 

…あれ?」

 

急に空気が崩壊した

 

感情の読めるハヤテはその違和感に気づいてセリフが中途終了し、

「ご主人様!もう近くに追手が来ております、姫さまは御避難を、こちらです」

 

「えぇ」

「り!」

 

簡潔な返事とともに

誘導に従って奥へと隠れるカグヤと

表側で待機して、さも食事と睡眠の間の休憩時間とでも言わんばかりに座敷に座る俺

 

そこに

 

「たのもう!」

どんどんと扉を叩く音、

この家の扉ノッカー付きなのに

 

「おうとも!」

 

取り敢えず返事をしてから出る

「私は蓬莱山の家に仕える者だ、

蓬莱山家の至宝、輝夜姫がこちらに」

「…来たかどうか、か?」

 

「話が早くて助かる」

「単刀直入に言おう、来ていない

そもそも家庭内の問題では?」

 

「それで話がすまないから言っているのだ、蓬莱山の家は時間を司る『永遠』の能力、『須臾』の能力を持って生まれる宗家の御子を当主とするしきたりがあるが

そのどちらも併せ持つ姫は次期当主としての御役目をお嫌いになっておられる」

 

「それが家庭内の問題ではないか

それを解決するのにはまた長い時間が掛かりそうだ」

 

「その通りではあるが…あぁ、失礼する!」

 

男は隣の家に走っていった

あれはしらみつぶしに当たっているのか?

 

お疲れ様だな全く



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15話

部屋に戻って

ハヤテにもう出てきていいよ、と伝えてもらう

 

「…もう大丈夫…なの?」

 

「また来なければ、な…

エターナルメモリの適合者としてこのメモリの管理はやってもらいたかったが、本人側が危ないんじゃ仕方ない、俺がもらっていくよ」

 

「いいわよ、別にそこまで必要なわけじゃ無いし、持っているだけで能力の制御が少し楽になるってだけのものでしょ?」

 

「…そんな風な機能まであったのか」

 

どうも認識に食い違いがあるようだ

これは正さなくては

 

「コイツの本来の使い方は…」

『eternal』

 

「変身!」

 

起動したメモリを首に刺して

ドーパント体に変身する

 

「こうやって使うんだ」

燃え尽きた灰のような白い体

黄金色の目、頭に冠された

Eを倒したような形

 

手足は赤く燃えている

 

この姿はエターナルドーパント通常形態

別名レッドフレア

 

不完全体ではなく、あくまでこれが普通の状態、これに対して

大道克巳が驚異的な適合率を発揮して完全な状態のメモリを行使し、メモリの最奥の力を発現した形態が

 

エターナル極限形態、ブルーフレアである

 

まぁ、単体出力高すぎな感は否めないが

 

「これでわかったかな?」

変身を解除してメモリを取り出し

エターナルエッジを作ってもらうことを考えるのだが、リバイブクローを作ってもらった直後にそれは無いか、と思い直す

 

いずれ作ってもらうつもりだが

 

「…やっぱり持っているのが怖くなったわ」

 

「俺よりお前の方が力を引き出せるはずだけどね、まぁ使わずに済むなら、そちらの方がよほど良い」

 

そもそも、運命的に使わざるを得なくなるのがT2ガイアメモリなんだけど、な

 

「…もう良い時間だ、子供は就寝だよ」

 

「子供じゃないわ、もう13よ」

「十分子供だ、俺は22」

「なによ、そのくらい誤差じゃない!」

 

「…そっか、この都市って寿命無限なんだっけ?」

それじゃあ加算的な意味での年齢に意味はないか

 

「年上なんて100年生きてから言えって言われてるのよ!」

 

「…はいはい、よござんしょ

夕食にして、さっさと寝ようぜ

俺だって明日の予定があるんだから」

 

「…はぁ〜い」

 

俺はAクラスだからといって軍給がそこまで高いわけではない、せいぜい普通に生活して奥さんを養って子供を養育するのに節約すればいける程度だ

今は永琳+ハヤテと俺で結構一杯状態である

 

この少女、輝夜もそこそこの金がかかるだろうし…どうするかぁ

 

良いとこのお嬢だというし

良いものしかもらってないだろう

一等地の大屋敷とはいえ、

そこまで金があるわけではないのだ

わがままを言いだすのであれば即あの男に突き出すくらいせねばならない…まぁしばらくは俺が頑張ればいいか

 

俺はさっさと寝て、翌日に備えた

その後、なにやら姦しい声が聞こえたが

なにを言い合っていたのだろうか

 

「…いってくるよ」

「「いってらっしゃい」ませ」

 

二人してお見送りか…両手に花かね?

 

「馨、矢柄、美埜理」

「よっ!」「待ってました!」

「おはよう…です」

 

ある程度進んだ先で全員集合し、

庁舎へと向かった

 

「今日からは3日間!特訓コースだ!

4日目は哨戒任務!5日目から4日間特訓!これを繰り返す!」

 

《了解!》

みんなで反射的に返す

 

その後、地獄の特訓が始まった…

 

 

そして一月が経過し

 

「…任務もそろそろ慣れてきたか?」

「はい、隊長」

 

俺と隊長は軽く話しをしていた

「ん、このコーヒーうまいな…何処のだ?」

「普通の合成ですよ、温度調整管理を自分でやって自前で焙煎するだけです、あとは普通のコーヒーミルで挽いて淹れてるんですが」

 

「…一手間かけて、というやつか

確かにうまい、俺もやってみようか」

 

「なかなか慣れるのに時間がかかりますよ?」

「そこを理解してこそだろ?」

「その通りです」

 

ハハハハ!と笑い合いながら

突然拳が飛んでくる

「っ!」

 

ミラーメモリをコートの上から叩いて起動、瞬時に腰のスカルマグナムに装填、発動する

 

ミラーの物理抵抗が拳を弾き飛ばし

噴炎砲哮(エグゾーストブレイズ)!」

 

吟薇が操る炎が俺を煽り

『scull』

火葬(インシレネート)

ミラーシールドに防がれる

 

「うん、初動は完璧だな!」

 

「…常在戦場って言ったところで

24時間いつでも攻撃を受けられるようにするってさぁ…この訓練なんかおかしくない?」

 

「…おかしいとは思うけど、まぁ

合理的な感じはする」

 

「なかなか上手く対応できるようになったじゃないか」

 

「そのお褒めの言葉はあんまり嬉しくないですよ….全く」

 

自分でも完璧な対応だとは思うが

「……っ!レーダーに感あり!

第53地区(エリア)開発途上区(フロンティア)です!」

 

美埜理の叫び声とともに

全員が戦闘態勢に戻り

 

「隊長!先行許可を!」

「許可する!荒川行けっ!」

 

一声と共に、馨は空を飛んで空を踏み

加速して行く

 

「行くわよ…フッ!」

続いて美埜理と吟薇も加速

こちらは跳躍と疾走で現場へ向かう

 

「加速法…縮地!」

「神仙歩、瞬空!」

 

全く異なる歩法、しかし起きる現象は同じ

共に加速して移動する

 

そして、わずか90秒後、

第一小隊は現場に到着した



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16話

「第一小隊現着した!」

 

「第七小隊現着」

「第三小隊も現着しました!」

 

三つの小隊が集合したことを確認し

臨時で協力して戦線を展開する

 

「隊長三人で前に出る、ほかは援護と連携、防衛線を展開しろ」

《了解!》

 

 

見たところ低級の異形型妖怪の集まりのようだが、警戒は重要だ

一応周囲警戒、後方防衛のために

出来ることをする

 

というわけで、

「馨、一応メモリを出しておけ

俺も…使う」

 

強く息をつき、スカルマグナムを召喚

スカルメモリをマキシマム待機状態にして

「………」

 

飛び出してきた獣型妖怪に、

リバイヴクローのマキシマムドライブ

インシレネートクローが叩き込まれ

 

「「「グギャァァア!」」」

消滅、消滅、消滅!

 

数体纏めて飛びかかってきた妖怪を

炎を帯びた爪が消しとばした

「おおぉっ!すげぇな!」

 

リバイブクローを撫でながら感想を述懐している馨に、伏兵が襲い掛かり

 

撃ち砕く銃弾(スカルパニッシャー)

連射された銃弾が一発一殺、

的確にコアを撃ち砕き、消滅に追い込む

 

妖怪は実体が希薄な分、

形象の固定化のために核を持ち、それを破壊できれば一瞬で撃破できる

 

「……終わったな、案外あっさりと」

「終わりましたね」

 

三人が集まって来る…

そして

 

「ぐあっ!」

突然第七小隊の一人が倒れた

 

「奇襲警戒!特殊型の異能力持ちだ!」

《了解!》

 

叫ぶような声とともに

全員が即座に警戒態勢に入る

 

しかし

「がぁぁあっ!」

 

「ぐぁあっ!」

 

次々に味方は倒れて行く

 

だが、布石はある

「…………っ!」

 

吟薇に向かった攻撃が躱された

「感知完了!3時方向!40メートル!」

「了解!」

 

広域霊力散布を用いて隠れていた対象をあぶり出したのだ

「突撃するぞ!」

馨が加速して…第三戦闘速度で突撃

瞬時に飛び蹴りをカマす

 

「首飛ばし晒せ!」

「ガバァッ!」

 

すっ飛んだ馨が木の陰にいたらしい妖怪の首を飛ばし

すかさず周囲に結界が展開される

 

「…守護するもの、癒し手の声は此処に届く、弓と剣を捨てて清めよ、暗く、穢らわしき死を遠ざけよ」

 

朗々と声が響く

治癒術を得意とする美埜理の結界術

広範囲治療術式(code:area heal)

 

展開時間が致命的に長く、発動中は集中力を治療に割くために無防備になるが

回復効果も範囲も極めて高い優秀な術だ

 

「………これで、術式完了です」

 

倒されてはいたが、さすがAクラスの精鋭、致命傷になったものはいなかったらしい

「……体調が帰ってきたら説教されるぞ…」

 

俺たちが軽く話しながら暗い未来を想像していると

 

「なんでだよ!」

 

怒鳴り声が響く

 

「なんで俺たちの躱せなかった攻撃に!美埜理が反応できんだよ!おかしいだろ!」

「よ、妖怪を買収して、襲わせたんだろ!」

 

第三小隊の土岡と菱魚だ

卑屈なバカとして有名だったが…ついに実力差さえ把握できなくなったか

 

「俺たちを襲わせて!こ、殺す気だったんだ!この卑怯者!」

 

 

その不快な声に、

第一、第七小隊から殺意が湧き上がる

「…お前ら……」

 

「もうダメだろコレ…」

 

「よせよ、同じ小隊員として恥ずかしい」

「うぅるさい!平民風情が!僕たちと同じ班にいられるだけありがたいと思え!」

 

第三小隊唯一の良心

珪木(カツラギ)が止めにかかるが

耳に入っていない

 

ダメだこりゃ…第三小隊はボンボン二人に良心一人の構成だが、聞く話によると

その良心も妹の病のために土岡と菱魚の親から金を借りているのだという

 

詳しくは知らないし当人同士の問題には介入しないのがマナーだから

俺は首を突っ込みはしない

 

「隊長と合流しよう、馨、美埜理、矢柄」

《了解》

 

俺たちは第三、第七小隊に警戒を任せ

隊長達の元へと急いだ



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17話

隊長と合流するために走った俺達は

 

衝撃的な光景を前に絶句した

隊員全員で束になっても敵わない隊長が

 

隊長格三人が既に倒されているのだ

 

「あなたは食べてもいい人間?」

 

戦場に不釣り合いなほどに優しい声で

ゆっくりと言葉を紡ぎながら

こちらへ向かって微笑む女性…

 

いや、人型妖怪(シェイプ:ヒューマノイド)…そして、この容姿、この口調、間違いない

 

宵闇の妖怪、EX:ルーミアだ

 

「貴様!どうやって隊長を!」

「ダメだ下がれっ!」

 

詰め寄ろうとした馨を、強引に掴んで引っ張る

 

その瞬間、閃光が走った

「っつ!」

「あっっぶねぇえ!」

指先一つ、あと僅かにでも踏み込んでいれば首を刈られて死んでいた

 

『scull』「変身!」

『dash』

『mirror』

マキシマムドライブを起動、

スカルマグナムにダッシュメモリ

ミラーシールドにミラーメモリ

 

メモリ三本使用の全力全開

今現在最強の威力の攻撃である

 

「アーマーピアース+リフレクト リフレイン」

加速する弾丸が無限反射でルーミアを襲い

 

『revive』

リバイブクローにリバイブメモリが装填される

 

同時に発生する赤いエフェクト

丸ノコ型に変形したリバイブクローを握った馨が雄叫びをあげ

 

「パワードスタッバー!」

 

全力で丸ノコを振り切る

その瞬間、空間が切断され、

連鎖的に避けた空間は切れ目を広げて行く

 

しかし

 

「ふっ!」

 

黒い球体が急速に展開され

空間のひび割れを捕食し、弾丸は消滅した

 

「クソッ!」

「全員!隊長担いで逃げろおおっ!」

 

俺はスカルメモリの痛覚鈍化と骨格強化を活かした格闘を挑み、ルーミアはそれを受ける

「死になさいな」 「残念ながら」

死ぬわけにはいかない

 

メモリを交換

『penetrate』メモリを

スカルマグナムに装填して、マキシマム

技名宣告より早く撃ち抜いて

 

「ぐ……」

 

動きの止まったルーミアを尻目に

全力で逃げ出した

 

 

「…都市の大結界まで逃げ込めた…」

あのあと、全員で逃げて来たのだが

第三、第七小隊の隊員も、なんとか

全員引っ張り込むことに成功していた

 

「あれほどの力を持った妖怪、しかも人型で、高い知能がある…しかも、隊長三人を撃破?なんて報告すりゃいいんだ?」

「妖怪相手におめおめと逃げ帰って来た愚か者扱いされるのは避けられないだろうね、

 

命あっての物種だけど」

 

「みんな大丈夫?生きてるー?」

「なんとかな…」

「隊長も大丈夫です!」

 

「なら…よし!」

 

全員生存という奇跡をかみしめつつ

報告に走る

 

「行かなきゃならない!みんな走って!

この情報を伝えるんだ!隊長格を三人まとめて下す大妖怪が現れたって!」

 

絶望的な事態を、早く伝えなくては

残りのメモリの使用も解禁する必要がある

 

ゴールド二本の同時使用はまだ体が追いつかないが、それでもやる必要があるかもしれない

 

「…やらなくては…」

 

俺達は体調を医院に運ぶ事を七班に任せ、三班に周囲の警戒を依頼して

報告のために軍本部へと向かった

 

 

 

翌日

 

「永琳、マズイことになった」

 

俺は、報告を終え、警備隊(全員が隊長格、先代の防衛軍)に都市防衛を委任して解散した後

 

永琳に相談しに来ていた

 

「把握してるわ…こっちにも情報が流れて来たもの…ただ、最近の情勢を鑑みて

軍上層部はエクソダスプロジェクトを立ち上げたわ、これが成功すれば

妖怪とは無縁の世界に行くことができる」

 

大脱出計画(エクソダスプロジェクト)?なんだそれ?」

 

耳慣れない計画名だが…

新規立ち上げなら当然か

 

「貴方は知らないでしょうけど、最近、地上の穢れの密度が上がって来ているの

もともと寿命や老化の概念のなかった私たちに、それが生まれるほどにね」

 

 

「…老化の概念…ねぇ」

 

「別に、すぐに死ぬわけじゃないけどね…それでも、『寿命』というのは厄介でね

徐々に能力が劣化していき

そして、ついに回避し得ない永遠の眠りを叩きつけて来るのよ」

 

実際に俺にとっては既知のものだが

数年間ここにいた俺としては

老化のない世界というのは違和感が強い

 

なにせ、成長もしないのだから

死を否定するということは

その対側面である生をもまた、否定するということ

 

どちらも切り捨てた先にあるのは閉塞だけだ、故にこの都市は閉塞した

…しかし状況は変わった

 

生が溢れ、死は湧き出した

時間の止まった閉塞から、でなければならない時が来たのだ

 

「それから逃れる移動か、わかった…で、そのプロジェクトはどのくらいかかるんだ?」

 

「…まだ、計画自体打ち合わせ状態だから、何とも言えないけれど

上層部も危機感があるらしいから

10年はかからないんじゃないかしら?」

「遅すぎるんだよなぁ…」

 

「いつもながらせっかちね」

部屋の奥から顔を覗かせたのは

 

輝夜だ

 

「だれでも遅いとは感じるだろう

ただでさえ老化という枷があるというのに、それを考えていないのか

それとも10年くらいなら問題ないと侮っているのか?」

 

「きっと、そんなことはどうだっていいのよ、大義名分があるから逃げようという

計画を練っているのよ?逃げる責任をだれに押し付けようか、という話し合いでもしてるんじゃないかしら?」

 

いつもの澄まし顔でとんでもないことを言い出す輝夜と、

 

「輝夜さん!ダメですよ?

仮にもお偉いがたなのですから!」

 

慌ててそれを抑えるハヤテ

「…いや、どうせ誰にも聞かれやしないんだ、問題ない…それより、警備隊の

皆さんにも、一応情報をより詳しく伝える必要があるな…」

 

さすがにあの妖怪(ルーミア)の情報を集めるというのは無理があるが、近しいメモリ

『dark』からそれを取り出すことは可能だろう

 

となると…ゴールドメモリを

集める必要があるな

 

「ペネトレイト、アンチマター、フュージョン、ユートピア、ナスカの5本しかないメモリ達、ダークが使えたとしても有能な対抗策とは言い難い

……最悪、俺がダークを使うか」

 

相手と同じメモリなら

100%の力を引き出せる俺の方が有利

……俺の方が強い

 

「よし、まずはメモリの能力を把握するか…」

 

俺はダークメモリをゾーンの異空間から取り出し、いそいそと起動するのだった



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