灼熱炎吐ける至高の存在に転生しちゃいました (こまるん)
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1話

スライムに産まれたい人生だった。

反響があれば続くかも知れません


 

 やあみんな、初めまして。

 突然だけど、ドラクエ5を知っているかな?

 親子三代にわたる壮絶な冒険劇を描いた、不朽の名作。発売から二十年以上経つ今に至ってもその人気は衰えず、近いうちに映画化までされるらしい。

 

 かくいう私も、この作品にはどハマりしたもので、プレイ時間は1000時間オーバー。仲間に出来るありとあらゆるモンスターを仲間にした。

 息子娘だけによるラスボス撃破や、ライオネックっていうモンスターの初期レベル2体だけでの裏ボス撃破。スライム3匹旅など、縛りプレイの数も枚挙にいとまがない。

 

 そんな中でも特に思い出深いのが、スライム3匹による地獄の帝王戦かな。

 たかがスライムと侮るなかれ。彼らは確に初期能力こそ最弱で耐性も皆無だけれど、育てると輝く子なのだ。スクルトルカナンといった補助呪文に始まり、ザオラルも覚える。更に鍛えあげれば、瞑想や灼熱炎といった第一線級の特技まで習得してみせる。

 

 レベル99にしてスライムの服ととんがり帽子を身につけ、(どう持っているのかわからないけど)メタルキングの剣を装備したスライム。瞑想で自らの傷を癒し、灼熱炎とドラムの乗ったメタキン剣で敵を蹴散らす…………これこそ下克上、ロマンというものだろう。

 

 おっと、話が逸れてしまったね。

 とにかくドラクエ5を愛していた私だが……いや、愛していたからこそ、どうしてもなっとくできなかったこともあった。

 

 ──父パパスの死。

 

 これは、幼年期における最後にして最も重要なイベントで、これらが主人公達の精神に大きな影響を及ぼしたのは言うまでもない。

 ゲーム上でもこの時期では有り得ない強さになっていて、どう足掻いてもたおせないようになっていた。

 しかし、当時の私は、現実を受け入れられなかった。絶望的な程に効率の悪いレベリングをこなし、圧倒的なステータスでなんとか例のボスを倒して見せた私。

 そこに待っていたのは、『あくまでストーリー上は負けた扱いになっている』という現実だった。

 

 私は泣いた。こんなに理不尽なことがあって良いのかと、幼いながらに三日は泣いた。

 今にして思えば当然のこととはいえ、当時の私には到底納得出来なかったのだ。そしてその名残は、今も燻っている。

 

 もし万が一、なんでも好きな世界に転生できるといわれれば、私はまず間違いなくドラクエ5を選ぶ。

 主人公のあまりに不憫な体験を少しでもなんとかしてあげたい。パパスに対して一言でも諌めたい。生き延びさせてやりたい。

 エゴに過ぎないそんな感情があるのは否定出来ないが、とにかく、私はあのゲーム、あの世界を愛しているんだ。

 もし本当にそこに行けるなら、なんだって受け入れるしやってやる。

 

 

 そんな私の願いは、ある日、唐突に叶えられることになる。

 

 

 

 それは、苦しかった受験生活も終え、無事春からの大学進学が決まった頃のことだった。

 

 夜遅く。バイトで疲れきった身体を引きずるようにして歩いていた私。

 そこへ、なんの前触れもなく、猛スピードで突っ込んでくるものがあった。

 居眠り運転の、暴走トラック。

 

 私の人生は、あまりにも呆気なく。幕を下ろされた。

 

 

 ──そう、人生は。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 ゆっくりと意識が浮上する。

 あれ、私は確かバイトを終わって…………

 

 ずきりとした痛みと共に、一気に意識が覚醒し、記憶が呼び起こされていくのを感じる。

 そうだ、あの時、轟音をあげて向かってくるトラックに気づいた時にはもう手遅れで。

『あーこんなにあっさり終わっちゃうんだ』ってどこか達観した気持ちで死を感じてしまったんだ。

 両親に申し訳ないと思いながらも、私は成すすべもなく宙を舞った…………

 

 ……はず、だったんだけど。

 意識があるってことは、奇跡的にも生き延びたのだろうか?

 

 周囲を確認してみる。

 見渡す限りのゴツゴツした岩壁。目線の何倍もの高さに茂った草。そして、視界の端に映る大きな湖。

 ……うん、間違いなく病室じゃない。

 いや、そもそも、日本全土見てもこんな光景ある?

 

 一旦理解出来ないものは置いておこう。

 ここはやっぱり……身体の確認、かな。

 実はさっき軽く起き上がってみようとして出来なかったから、怖くなってそれっきりだったんだけど……そうもいかないか。

 

 まずは手足を一本一本…………うーん、無い。動かないとかいうより、そもそも存在を感じられない。

 そもそも、これ顔以外ほとんど残っていないような……

 ……これ、想像をはるかに超えて不味い?

 

 いやいや、まさか。そんな状態だとそもそも生きていられるはずもない。何か、種があるはず。

 そう言い聞かせて、自身の状態に集中する。

 

 うーん…………わからん。どうも流線的というか、全体的に丸っこいような気がするんだよな…………

 

 そうだ、こういう時こそ湖を見れば!

 湖なら、鏡のようにして自分の姿を投影できる。それなら、客観的な事実がハッキリするだろう。

 

 でも、どうやってあそこまで行こう?。視界の端とは言ったものの、わりと結構な距離がある気がする。

 どうにかして……前に…………湖に…………

 

 ずりっ

 

 おっ?動いた?

 

 ずりずりっ

 

 おー!!動いた!

 よかった。とりあえず一生動けないっていうわけでは無いみたい。

 

 ずりずりっ、ずりずりっ……

 

 うーん……もうちょっと早く出来ないかな。思った以上に遠い……

 えっと、こう……意識をもっと前に、ぐいーっと……おおっ、浮いた!!

 

 ぽよん、という軽快な音ともに、地面で弾んだ感触がある。

 これは浮いたというより、跳ねた……かな。目線の高さが急に二倍以上になったから浮いたと錯覚しちゃったみたい。

 と、とにかく、これで結構速くなった。

 

 ずりずりっ、ぽよんっ。ずりずりっ、ぽよんっ……

 

 ……ふう。なんとか着いた。

 すすっと湖に体をすり寄せ、移り込む姿を…………

 

 ──は?

 

 湖に投影させた自身の姿を見た瞬間、思わず思考が停止するのを感じた。

 

 つるんと纏まった流線型ボディ。くりくりっとした大きなおめめ。口は顔の大きさの割にはかなり大きい。そして極めつけに、全身は透き通った青色に彩られている。

 

 ……いやいやいや!

 

 思わず、意識して体を跳ねさせる。湖に映るイキモノも、同じ動き。

 ゆらゆらと体をなびかせてみる。もちろん結果は同じ。

 

 ……残念ながら、映っているのは紛れもなく私だ。

 どうやら、とんでもないことが起こったらしい。

 

 お父さんお母さん、ごめんなさい。私、なんかスライムになっちゃったみたいです──

 

 

 

(つづく?)

 

 



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2話

感想、高評価本当にありがとうございます。励みになります。

お陰様でちょっとだけ続いちゃいました。スライムの冒険をお楽しみください。


 

 

 

 

 やっほーみんな元気?スライムのスラリんだよー!!

 

 いやまぁスライムといえばスラリんってだけで私自身がそうである保証なんて一つもないんだけどね。

 やっぱりなんというかこう、イメージするのは常に最強の存在ってやつ?ちょっと違うか。まーちょっと夢見るくらいなら良いでしょう。

 

 すらきちさんとかでも良いなぁ。くしゃみしたらこう……ぶわって炎が出てきちゃったり、勇者のメダルでモードチェンジしてみたり!

 

 ……うん。現実逃避はこの辺にして状況を確認しようか。

 

 取り敢えず私の状況。

 気づいたらスライムになっていました。終わり。

 

 え、雑いって?しゃーないでしょう!それしか分からないんだから!

 

 周囲の状況は……初手でも確認したけど、一面の岩肌。ところどころに巨大な植物が茂っていると感じたのは、これ多分ただの雑草だ。

 私の目線が低すぎるから、ジャングルのように感じたんだと思う。

 

 んー取りあえずは、ここがどういう場所なのかを確認しなきゃいけないか。そもそもどういう世界なのか。ドラクエの世界に来ちゃったのか、それとも全然違う世界にスライムとしてきてしまったのか……

 

 さしあたって、私のこの体色は大きなヒントになるかもしれない。少なくとも、私の知る限り、ここまで純粋な濃い青色なのは……もしかして、もしかするのか!?

 

 ちょっとだけテンションが上がるのを感じる。動かない事にははじまらないし、色々と探ってみようか。

 

 ずりずりっ、ぽよーん。ずりずりー

 

 なんとも気の抜ける音を響かせながら、洞窟内を散策してみる。

 どうやらそれなりに入り組んでいるようで、ちょっとやそっとじゃ進展がある気がしない。

 なんというか、この洞窟が広すぎる……ってよりは、私の身体が小さすぎるのが悪いと思う。

 

 泣き言ばっかり言ってられない。幸いこの身体にも少しづつ慣れてきたのか、ぽよんぽよんとリズム良く跳ねられるようになってきた。

 目線が激しく動くので酔いそうにはなるけど、これ案外楽しいんだよね。

 

 ぽよん。ぽよーん。ぽよん。

 

 時々長めの跳躍を混ぜながら移動していると、不意に、ガサガサと茂みがなった。

 草をかき分けるようにして、のっそりと何かがこちらに近づいてくる。

 音から判断するに、小型の生き物っぽい。

 さてさて、この世界でのファーストコンタクト。一体全体…………

 

 ──固唾を呑んで見守っていた私の目の前に現れたのは。

 ──やたらどでかい杵を抱えた、栗みたいな形に紫色の頭巾を被った…………

 

 ってこれ、おおきづちじゃん!

 ということはなるほど。ここはドラクエの世界ってことはまず間違いないとみて良いのかな。

 

 いやーそれにしても、身体よりも大きい木槌を振り回すモンスター。ちっちゃいけれど超力持ち。みたいな設定だったはずだけども。

 正直今の私からすれば体躯の時点で既にでっかいんだよな!

 なにこれおおきづちってこんなに大きいの!?スライムになったことにこんな弊害があるなんて…………

 

 ま、まあいい。折角のファーストコンタクト。ここは友好的に……

 

「ピ、ピィ?」

 

 そーっと声をかけてみたつもり。想像以上に高く可愛い声が聞こえた気がしたけど、今はキニシナイ。

 寧ろ良いかも。スライムの愛らしさも相まって、このきづっち君(勝手に命名)もきっと…………

 

 ダンッと力強い音とともに、きづっち君が飛び上がる。

 大きな木槌を高々と振り上げ、渾身の力を込めて振り下ろす地点は──

 

 ──私ですかそーですか!!!

 

 咄嗟に後ろにぽよんと跳ねて、なんとか回避。

 先程まで私がいた地点にハンマーが叩き付けられ、轟音を鳴らす。

 きづっち君がゆっくりと木槌を振りあげた後の地面にはひび割れが出来ていた。

 

 こ、こいつ、パワーが尋常じゃない。伊達に主人公の体力半分以上削る攻撃力じゃないってことか。

 これ駄目だ。スライムにすぎない私が食らったら1発でお陀仏。間違いない。

 

 外したのを理解した彼はまた大きく飛び上がり、私を見据える。

 流石に不味いぞ。いきなり死ぬなんてごめんだ。ここはいったん逃げ…………あっ

 

 すっぽ抜けたのか、振りあげようとした木槌がきづっち君の手から離れて浮かび上がる。

 バランスを崩した彼はそのまま地面に落下し……その上に、綺麗に木槌が落下した。

 

 え、えっと……空振り?

 なんとも言えない空気が流れる。

 

 はっ!惚けている場合じゃない!今だ、今こそチャンスなんだ。

 咄嗟に体を動かし、憐れにもひっくり返っているきづっち君に体当たりをする。

 

 ぽよんっという間の抜けた音になんとも不安になるが、大丈夫……と信じよう。

 えいっ、えいっ、と体当たりを繰り返す。

 これで倒せるのか不安しかなかったが……何度目かの体当たりを決めたところで、きづっち君は力を失ったように消滅した。

 その場には小さな金貨のようなものがいくつか落ちている。

 

 倒せた…………のかな。まあ、消えちゃったしゴールドみたいなものも落としたし、間違いないだろう。

 ……でも、そっか。この世界だと……死んだ魔物は消えちゃうのか。

 

 私自身がスライムになったからなのか、何とも言えない寂しさを感じる。もしやられちゃったら……私もああなるってこと。

 でも、主人公の仲間になった魔物はどうなんだろう。消えるのかな。

 ゲームだった頃は気にも止めなかった事だけど……いざこうして直面してみると、色々と気になることはあるね。

 まあ、うじうじ気にしても仕方ないか。今は出来ることをやらないと……

 

 ぽよんっと跳ねて更に先に進む。

 まずはこの洞窟の地形を把握して、どこに出口があるのか。そしてそれはどこに繋がっているのか。それを把握できるように頑張ろう。

 

 そして……あれだな。出来るならレベルアップしないと。

 仮に設定そのままのスライムだとすれば、初期ステータスじゃあまりにも軟弱すぎるからね。

 

 

 さーて、色々大変だけど、頑張っていこうか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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3話

遅くなってしまいました。

思わぬ高評価とお気に入りの数、大きなモチベになっております。お陰様でこの作品はもうちょっと続きそうです。




 

 探索を初めてどれ位たったかな。ここまで遭遇したモンスターは、おおきづち2匹に、ドラキー3匹。

 おおきづちは一撃必殺級だし、ドラキーは飛んでるしで中々大変だったけど、なんとか倒すことが出来ている。

 

 おいもちゃんは一撃がとにかく重いんだけど、まぁその分超大振りで……あと3回に2回くらいは勝手にすっ転んでくれるので、落ち着けば案外簡単に勝ててしまう。

 

 蝙蝠くんはなんだろう。確かに空を飛んでいるのはひっじょーに厄介なんだけども……なんというか、気まぐれなのよ。

 てきとーに飛んでいるだけだし、たまに噛みつきに来るんだけど……逆にそれが隙と言うかなんというか。

 

 まあともかく、この2種は何とかなりそうってわけ。そろそろ別の魔物とエンカウントしても良いころ…………おっと。噂をすれば、かな?

 

 地面がボコッと盛り上がり、そこから何かが出てくる。

 巨大なセミの幼虫のような姿のそいつは、極端に大きなハサミのようになっている前足を振りかざすと真っ直ぐにこちらに襲いかかってきた。

 

 おっと。当たらないよ、そんなもの。

 ぽよんっと避けて、着地。避けられたと見るや、魔物は地面を掘り進めながら近寄ってくる。

 このちょっと気持ち悪いような、それでいてほんの僅かに愛嬌もあるような、よく分からないフォルム。こいつは確か、せみもぐらだ。

 

 おおきづち、ドラキー。そしてせみもぐらが同じ地点に出てくる作品で、スライムである私がこの色……うん。そろそろ期待しても良いんじゃないだろうか。

 もちろん、似ているだけでナンバリングとは関係ない世界である可能性もあるが……そろそろ、言っちゃっても良いだろう。

 

「ピキー!ピキキー!」

(もしかして、ドラクエ5の世界に来ちゃった!?)

 

 ……コホン。ま、まぁともかく、この世界について大きな手がかりが得られたのはとても大きい。

 そして、この世界がドラクエ5と仮定するなら…………うわっ!?危なっ!

 

 考えに耽っているうちに動きが単調になっていたのか、身体のすぐ横を掠めるようにしてハサミが振り下ろされた。

 危ない危ない。今の私はスライムに過ぎないんだから、もっと気をつけなきゃ。

 

 考えるのは後にして、まずはこいつをやっつけてしまおうか。

 こいつの動きは早くない。それに、ハサミで攻撃する時は必ず──

 

 そこっ!

 両手を振り上げたことによりがら空きになっていた懐へと、渾身の体当たりをぶちかます。

 お腹の部分はそこまできっちり守られているわけではないらしく、悪くない手応えを感じた。

 

 大きくよろめいたせみもぐらは、反撃に出てくるかと思いきや、地面に伏せる。

 そして、大きな前脚で頭を覆うようにして閉じこもってしまった。

 

 厄介だな。パッと見ただけでも全身がガッチガチに固められちゃってる。

 試しに体当たりをしてみたけども、あっさりと弾かれた。

 

 参った。

 これはゲームでいうところの【ぼうぎょ】なんだろう。何時もなら鈍い音がなるところを、謎にカキン!という音が鳴るやつ。

 ……ごめん。伝わりにくいかな。要するに、攻撃が通りにくいモードってわけ。

 

 こうなれば、私にできることはただ一つ。

 

 そう、待つ。

 

 え?打開策を探すんじゃないのかって?だから言ってんじゃん。待つって。

 仕方ないでしょう。元々低火力なんだから、硬い鱗で護られちゃったらもう突破できないよ。

 幸い、近くの敵はこいつだけだから……大人しく待つ。

 

 そうして時間が経った。

 1分、2分……初めはじっと構えていたせみもぐらも、いつまでも攻撃が来ないことを訝しんだのか、徐々に緩んできているのがわかる。

 それでも私は根気強く待ち続け…………

 

 いまっ!!

 痺れを切らしたアイツが防御を解き、腕を上げた瞬間──突っ込んだ。

 会心の手応えが伝わってくる。手じゃないけど。

 反動で少し跳ね飛ばされながらもなんとか前を見ると、せみもぐらがくるくると回りながら跳ね飛ばされていくのが見えた。

 

 ……え、いや……そこまで飛ぶ……?

 呆然としているうちに地面に叩きつけられたあいつはそのまま動かなくなり、その場から消える。

 

 無事、勝利というわけだ。

 ちょっと釈然としないけれど、探索を再開しよう。私は強くならないといけないからね。

 

 そう思って振り返ろうとした時、不意に身体が軽くなったのを感じた。

 なんだろう。身体に力が湧いてくるような感じ……そうか、これがレベルアップ。

 

 ゲームと違って明確にステータスを確認できるわけじゃないけども、たしかに今、わたしはレベルが上がったんだ。

 いいね、なんというか、高揚感がある。

 

 この時点で、(たぶん)野生の魔物である私でも、経験値を貯めてレベルを上げるということが可能であることが実証された。

 

 いやー正直不安だったんだよね。だってほら、ドラクエだとモンスターズシリーズ抜けば皆仲間になる時レベル1じゃん?出てくる魔物の強さは均一だし……いや、ステータスに乱数入る作品もあったか?

 逆に言えば、ここが本当にドラクエ5とするならば、キメラ35とかオーク20みたいな露骨なレベル表記の敵も出てくるわけで……私はどういう扱いなんだろうって思ってたんだよね。

 

 そもそも、魔物って仲間になった瞬間から経験値が溜まり始めるわけだけど……そこからして謎なんだ。野生の時に戦闘しないわけでもあるまいに、何故レベル1固定なんだろう。

 やっぱりあれかな。魔王の魔力みたいなもので操られているから経験値は入らない……みたいな感じなんだろうか。

 ……待てよ?野生として人間に襲いかかってくる魔物が同士討ちをしているというのは今作ではまず無い……もしかして、本当に魔王に操られている、もしくはそもそも魔王の魔力で生成されている……とか?

 そうなれば、倒した魔物が消えるのもちょっとわかりやすい。でも、その場合は仲間になる魔物はどうだとか、仲間になった魔物は死んでも棺桶とか色々謎が生えてくるわけだけど……

 

 そもそも私はなんやねんってね。

 

 

 まあ、それは今はいいや。今考察を深めることは出来るけど、どうせ正解かどうかは分からない。

 何だかんだで未知のところにいきなり放り出されたせいか、色々と考えこんじゃってるけど……結局、私自身が動かないと始まらない。そもそも、強くならないと生き残ることすらできなさそうだしね。

 

 さーて。ここらの魔物は私でもなんとかなる。それに、レベルアップもできるとわかったんだ。

 今は私に出来ること……魔物とたたかってレベリングして行こうか。

 

 いつか、主人公達に会える日を祈って!!

 

 

 

 

 

 

 







最初に必要なものはたぶん撒き終えたので、次くらいから物語にはいれたらなとおもってる。





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4話

気づけばお気に入りがもう100……本当にありがとうございます。評価共々大きな励みになりまする。

さて、ようやくと言うべきか原作突入。最も愛していると言っても過言ではないこの世界を。持てる全力で今後も書いていきたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願い致します!





 

 

 この世界に紛れ込んでから、結構な時間が経った。

 この洞窟で出会った魔物はおおきづち、せみもぐら、ドラキーに、とげぼうず。そして、スライム。

 色々と探索してみたところ地上への道を発見した。大きな階段を登ると洞窟内を流れる川のところに出る。そこから川辺を下っていけば、外に出られるようになっているみたい。

 ただ……赤っぽい鎧に身を固めたおっちゃんがずっと見張っているんだよね。お陰で脱出は叶わなかった。

 

 けど、逆にその事が、私が今いる世界がドラクエVの世界であることの根拠の一つになる。それも、だいぶ前の時代……いわゆる原作開始前という奴か、始まって間もないという頃だろう。

 

 見覚えあるからね。幼年時代、ずっっと洞窟の前で見張り続けている鎧のおっちゃん。彼は確か、お父さんの仕事の邪魔をしてはいけないとか言って最後まで退いてくれなくて、青年時代に悲しくも村が滅んでから、ようやく居なくなる…………あれ?でも、物語開始直後に薬草屋さんのおじちゃん探しに洞窟入るよね。その時ってどうやって入ったんだっけ。

 

 駄目だ。記憶もだいぶ前の話。思い出せないや。

 それにしても、あの兵士のおっちゃん。じっと観察していたら、ずーーっと村の方に向きながら立って見張り番してるんだよね。

 見張るべきは洞窟なんじゃないかなっていつも思うんだけど……ま、まあ、魔物の鳴き声とか足音とかが聞こえたらちゃんと向き直るんだろう。きっとそうだ。

 

 

 話がそれたね。洞窟から出られなかった私は、暇を持て余しながら内部をひたすら跳ね回り、現れる魔物を倒していった。

 残念な事に、いくら私がスライムであっても、コミュニケーションを取れる存在はいなかった。倒したら消え、またいつの間にかどこかに新しく現れる魔物。

 やはり、魔王の魔力説が有力なのかもしれない。

 

 それにしても、結構お金……この世界ではゴールドか。溜まってきたんだよね。スライムの私じゃ手に余るので、1階の宝箱の陰に隠すようにして置いてある。いつか主人公くんと仲良くなれたなら、持って行ってもらいたいなって。まあ、すぐ退治されちゃう可能性もあるわけだけど……そこは、『魔物使い』の彼に賭けよう。

 

 さて、結局のところ、今やれるのは魔物を倒して強くなることくらいしかないね。洞窟を適当に徘徊する生活を続けよう。なるようになるさ!

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 原作が始まった。

 随分前のこと、ポピット?ドワーフ?どっちだったか忘れたけれど、例の小さなおっちゃんが急いだ様子で洞窟に飛び込んできて、そのまま駆け下りていったんだ。

 私の記憶が確かならば、これから間もなく主人公君がこの洞窟にやってくる。

 今走っていったおっちゃんは薬の材料を取りに行っているんだけど、その帰りが遅いから……ってことで、様子を見に来るんだ。

 それにしても、凄いよね。まだ幼い身であるのに魔物の出る洞窟に単身乗り込むんだから……

 

 さて。これは主人公君にとっては初めての冒険になるわけで、非常に大事な機会。

 彼に会ってなんとかコミュニケーションをとれないか試すってのは必須事項ではあるのだけれど、初冒険に割り込むという無粋な真似もしたくない。

 

 んーそうだな。一先ずは物陰から万一に備えて様子を伺っていて、帰り際にすがたを現すことにしようか。

 そうと決まれば、待機だ。一階の大岩の裏辺りで、来るべき時にそなえよう。

 

 ぽよんぽよんと身体を弾ませて、配置につく。

 いよいよ、ドラゴンクエストVが始まるわけだ。夢にまで見たこの展開。浮かれている部分があるとは否定出来ないが……まぁいいだろう。楽しんだ者勝ちって言葉もあるくらいだしね!

 

 

 それから待つことしばらく。ついに、外の方から小さな足音が聞こえてきた。

 逸る気持ちを抑えて、そっと岩陰から顔を覗かせる。

 小さな、けれど力強さを感じさせる足の音は少しずつ近くなっていき、ついにその姿が捉えられた。

 

 紫色のターバンを頭に巻き、若草色の服を包むように大きな紫のマントを羽織っている。

 その手には少々大きく見える樫の杖がしっかりと握られていて、一歩一歩、慎重に洞窟を進んでいるさまが見てとれた。

 

 これだけ特徴的な姿……間違いない。主人公だ。

 ここまで来れば、もう確信で良いだろう。

 国民的RPGにして不朽の名作、ドラゴンクエストV。どうやら、わたしはその世界にスライムとして紛れ込んだしまったらしい──

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 物陰からこっそりスライムが見守る中、主人公君の冒険はスタートした。

 前世でいえばまだ小学校にすら行っていないんじゃないかと思うような、幼い外見。けれど、伊達に主人公を張っているわけでは無いようで。見かけによらず結構な力を備えているらしい。

 今も……ほら。襲いかかってきたおおきづちを杖の一振りで打ち払って見せた。

 初戦こそおっかなびっくりだったものの、次からは余裕さえ滲ませて魔物を蹴散らしていく。

 いくらここが初期ダンジョンで魔物も大したことはないとはいえ、弱冠六歳(私の記憶が確かならだが)の少年が杖を振り回し単身洞窟をくぐり抜けていることに、私は戦慄せざるをえなかった。

 道中の宝箱を幾つか回収しつつ、深部へ。ゆっくりと慎重に進んでいく。

 気付けば、なんら問題なく目的地まで辿り着いていた。

 岩の下敷きになっているおじちゃんを発見し、慌てて駆け寄っていく。

 

 いやー凄い。物語として知ってはいたけど、改めて目の当たりにすると本当にすごい。

 あんなちびっ子が、自分と同じくらいの体躯のモンスター相手に怯まず立ち向かい、それを退けていくなんて。スライム感動しちゃった。

 これがこの世界の子供として一般的なのか、はたまた彼が特別なのか。

 まあ、大人しいとはいえ地獄の殺し屋とも言われる魔物の幼体を虐める子供もいるくらいだ。少なからず、前世とは人類全般としての体の強さも違うのかもしれない。

 主人公君だって、これからお化け退治もひかえているくらいだもんね。この程度楽勝で当然ってわけか。

 

 それにしても……あれだな。道中何体もの魔物を屠っていた彼だけれど、起き上がってきた魔物は全くいなかった。

 どれも、私が倒してきた魔物と同じ。ただ敵意を持って襲いかかってくるだけの、まさに魔の者って感じ。

 まぁ、ゲームでも魔物を仲間に出来るのは馬車を入手して、お爺さんと話して以降だけだったからね。けど、仲間にできないってわけでもないとは思うんだ。事情があったとはいえ、ベビーパンサーを引き連れていたくらいだし。

 

 じゃあ、私はどうなのか……ってなる訳だけれど。

 何となく、大丈夫に思えるんだ。根拠はないけどね。

 主人公くんの澄んだ瞳を見ていたら、そんな気がする。彼なら、スライムとして産まれてしまった私でも受け入れてくれるって。

 

 さて、そうこうしているうちに、薬屋のおじちゃんは猛スピードで地上に駆け上がって行った。

 ってあの人、ほんとにこんなちびっ子を洞窟に置いて行っちゃったよ!?

 プレイ中も驚いたけど、実際目の当たりにすると唖然とする。そりゃあたしかに、一人でここまで潜ってきて見せた訳だけどさ……!

 

 ちょっとポカンとしている様子の彼が、少しだけ面白い。

 姿を現すなら、今だろう。

 駆除される立場でしかない身としては正直不安な気持ちも強いけれど……大丈夫。きっと上手くいく。

 それに……最悪今が上手くいかなくて攻撃されたとしても、逃げれば良いんだ。幸い、私だって強くなっている。逃げ切るくらい訳ないさ。

 

 さあ行こう。物語は既に始まっている。

 歴代でも稀に見る熾烈な人生を送ることが確定されている、主人公くん。

 そんな彼が少しでもより良い未来を歩めるように支えること。

 それこそが、こんな場所にこんな存在として生まれ落ちた、私の使命だと思うから。

 

 

 

 

 無事任務を終えた少年の前に、ぽよんと一匹のスライムが躍り出る。

 すぐさま武器を構えた彼は、あれ?と首を傾げた。

 邪気が、無い。これまでどの魔物にも感じてきた、人間を害そうという気持ち。もれなく向けられるはずの、悪意。そういったものが、全く感じられない。

 

 不思議に思いながらも、目の前の存在を改めて見やる。

 青く透きとおった流線型の魔物。最もくみしやすい存在であり、何ら障害にもなり得ない、最弱の存在。

 けれど、まんまるの大きな瞳から感じられる力は普通じゃない。それは、幼い彼の身にもはっきりと感じ取れた。

 

 どうしたものかと考える。邪気を感じない魔物。いや、それどころか、意思疎通さえ出来てしまいそうな、そんな不思議な感覚。

 思わず彼は口を開いていた。

 

「……えっと、スライムさん……一緒に来る?」

 

 ピキー!と、元気よく答えたスライムが、その場で飛び跳ねる。

 言葉は分からないはずだが……何故か、その了承の意思ははっきりと伝わってきた。

 

 

 後に世界を救うことになる、伝説の魔物使い。そしてその最初の仲間にして最高の相棒、スライム。

 そんな二人が紡ぐ冒険譚が今、始まった──

 

 

 

 

 

 

 






主人公はリュカで行くつもりです。
スライムちゃん……どうしようか。初期案だと定番のスラリんになりますけど、もっとしっくりくるものが浮かべば変えるかも知れません。


(どうでも良い小話)
スライムちゃんはちょーっと記憶違いをしています。『お仕事の邪魔をしては行けない』と言って通してくれない人。たしかに存在するんですけど、赤い鎧のおっちゃんではないんですよね。


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5話

おっそろしいほど伸びて戦慄しておりました。お気に入り500越えすら全く知らない世界なのに……
皆様本当にありがとうございます。励みになります。

基本月一で更新できればと思っております。スローペースですが、過去を懐かしみながら楽しんで頂ければ幸いにございます。




……といいながらお気に入り1000突破に感謝の土下座投稿です。



 

 

 

 思いの外あっさりと主人公君に受けいれられてしまった。身構えていた分、若干拍子抜けではあるけれど……拒絶されないに越したことは無い。

 これから村に入った時に大丈夫なのかという件については、まぁ問題ないだろう。

 なにせ、将来的にはキラーマシンやグレイトドラゴンを連れて街を出歩いても何も言われないほどの人物なわけで。スライム一匹どうってことない……と思う。

 迷惑かけたいわけじゃあないし、一応大人しくはするつもりだけどね!

 

 さて、これから彼と行動を共にしつつ、地上に戻ることになる。

 そうだ、1階の宝箱に隠しておいたゴールドも渡さなきゃ。ああ、でもどうする?このピキピキしか言えない口でどうやって伝えようか。

 ん?いやちょっと待てよ。歴代の作品……というかV自体にも、人間の言葉を話すスライムって結構な数が登場してきたはず。

 その点わたしはどうなの?一応、人間の言葉についてはよく理解できるわけだけども。案外できると思えば話せるかもしれない!

 

「ピキキー」

 

 駄目だったわ。

 いやまあ、知ってたけどね!できるなら最初の時点で喋れてるよ。うん、わかってる。だからそんな目で見るな。

 

「うん?どうしたの?」

 

 急に鳴いた(この言い方が既にちょっと虚しい)私のことが気になったのか、主人公くんが声をかけてくる。

 うーん。無視するのもあれだし、伝わるとは思えないけど返すか。

 いやね?そういえば、まだ名前聞いてなかったなって。

 

「あー、確かにそうだったね。ボクはリュカだよ」

 

 おーそっかそっか!名前はリュカなのか。小説版準拠ってのもあって最もポピュラーとも言える名前だよね。

 ってあれ?今なんて言ったのか伝わったの?

 

「うん。はっきりとじゃないけど、なんとなく言いたいことは伝わるよ」

 

 へぇー。大したもんだね。流石"伝説の魔物使い"と言ったところか。

 ああ、それじゃあ、これまで遭遇してきた魔物はどうだったの?道中いっぱい居たでしょ。襲ってくる奴ら。

 

「うーん。スライムさんだけかな。ほかは何も感じなかったから」

 

 ふーむなるほど。実際『おきあがった』魔物は何もいなかったわけだし、やっぱりそういうことなのかなぁ。

 ああ、そうそう。話が通じるなら一つ案内したいところがあるんだよね。先導するから付いてきてもらえる?

 

「付いてこいって……?うん。わかった」

 

 思いのほかトントン拍子に進んでいることに気を良くしながら、リュカを導くようにして洞窟内を進んでいく。

 道中たまに襲いかかってくる魔物は、共闘するまでもなく私がすべて弾き飛ばした。

 最弱の存在たるスライムが魔物を蹴散らしていることに対して驚いている様子ではあったけれど、正直私からすれば、前世で言えば幼稚園レベルの君がでっかい杖振り回して襲い来るモンスターをなぎ倒していることの方がよっぽど凄いと思うのよ。

 

 

 さて、そんなこんなで1階の宝箱の影に隠しておいたゴールドも押し付け、無事地上に戻ってきた。

 ゴールドに関してはちょっと遠慮されたけど、スライムがどうやって使うんだって感じだし御主人が金銭管理するのは自然でしょって押し切った。というか6歳児なんだから貰えるもんは素直にもらっときなさいよ。

 他人様の家のたんすやツボの中身は平気でm……(この文章は検閲されました)

 

 

 スライムが村に入ることに関しては、驚くほどにスムーズだった。流石おおらかなサンタローズの人々と言うべきか、最初こそはリュカの頭に乗る見慣れないスライムに驚いてみせるのだけども、直ぐに人懐っこい笑みを浮かべて受け入れてくれる。

 武器屋のおっちゃんにはがっしがしと撫でられた。びっくりしたけど……温かいなって。いい所だよね、ここ。

 

 薬屋のおじちゃんのところへ行くと、置いて帰ってしまったことを詫びてもらった後で、ちょっとした礼を引き出しに入れてあるから持っていってくれと言われる。

 現実になっても杜撰すぎるそれは変わらないのねと思いつつも素直に手織りのケープを回収。

 私らどっちも装備できねーよ!!……と思っていたけれど、どうも現実となったこの世界では違うらしい。

 私の頭からすっぽりと覆うように被せてくれたリュカが、『うん!似合ってる!これならスライムさんってわかりやすいしね』と笑う。その純粋すぎる笑顔がとても眩しい。

 

 でもねリュカ。これはケープって言ってね、本来首元から胸くらいまでをすっぽり覆うものなんだよ。決して帽子みたいにしてかぶるものではないと思うんだ。

 もちろんそんな指摘を出来るわけもなく。何だかんだで温かくて悪くないしで、こうして私が手織りの帽子(?)を装備することになった。

 

 これでサンタローズでのイベントは終わり。あとは翌朝になればビアンカ達を送り届けるのみ……と思っていたのだけど。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「ただいまー」

 

 元気よく言い放ちながら、リュカが家の扉をくぐる。もちろん、私も一緒だ。

 家に入ってすぐのところにある長机には男性が二人。豪快な髭を生やした半裸のおじさんと、恰幅の良い穏やかそうなおじさん。

 うん。これだけ聞くとどこの不審者やねんって感じなんだけど、これこそが平常なのだ。それにしても、やっぱり現実となってもパパスおじさんは半裸なのね。だから片乳首露出男とか言われるんだよ。

 

「おやおやリュカ坊ちゃん。お帰りなさいませ。ビアンカちゃんがお待ちですよ」

 

「リュカ。どうやら洞窟へ行っていたらしいな。人助けをしたのは感心だが、あまり1人で無茶をしてはいけないぞ」

 

 大人二人が声をかけてくる。言葉は違えど、両者ともにリュカのことを想っているというのがよく伝わってきた。というかもう話届いているのね。早い。

 ……ん?ビアンカ?

 

「リュカ!」

 

 思わぬ単語に疑問を覚えると同時に、2階から幼子特有の高い声が聞こえてきた。

 とたとたと軽やかな音を立てながら、少女が階段を駆け下りてくる。

 

「ビアンカ!来てたの?」

 

「ええ。たいくつだったから、リュカと遊んであげようと思って。それなのに、あなたったら居ないんだもん……あら?」

 

 金色の三つ編みが特徴的な少女──ビアンカは不満をあらわにしていたが、ふとなにかに気づき声を上げる。その目線の先は……ああ、私か。

 

「かわいいじゃない!何処で見つけたの?」

 

 その言葉で、大人二人もはっきりと私を認識したらしい。驚いた様子を……うん?どうも驚き方が村の人たちと違うような。

 

「スライムじゃないか。リュカ。それはどうしたんだ?」

 

「うん!洞窟でお友達になったんだよ!」

 

 何処か硬い様子のパパスおじさんの問いに、満面の笑みで答えるリュカ。

 あらやだ、友達だなんて嬉しいこと言ってくれるじゃないの。

 

 同意するように、頭の上で体をぷるぷると震わせてみせる。気分はそう。『ぷるぷる。ボクは悪いスライムじゃないよ!』ってね。

 

「そうか……リュカ。父さんは魔物を連れ歩くことを悪くいうつもりは無い。だが、一緒に過ごすのならば、大事にしてあげなさい。わかったね?」

 

 諭すようにして息子に言い聞かせる姿は、まさに父親といったものだった。半裸の不審者とか思ってごめん。やっぱあんた立派なお父さんだよ。

 私としてはさっきから謎に涙ぐんでいるサンチョさんの方が気になるのだけど……どうやらそこに触れてはくれないらしい。

 

「こうしてみるとスライムって可愛いのね……そうだ、名前はなんていうの?」

 

 ふと気づいたかのようにビアンカが問う。それを聞いて、2人共にあ、という顔をした。

 そっか名前……前世の名前は違うし……

 

「まだ聞いてなかったね。スライムさん。名前はあるの?」

 

 いやーそれがね、ぱっと思いつく名前が無いというか、所詮スライムっていう種族に過ぎないっていうか。まぁスライムで良いんじゃない?

 

「うーん。名前無いみたい。スライムで良いって言ってるけど」

 

 リュカが通訳してくれた訳だが、それを受けて顔をしかめたのはビアンカだった。

 

「えー!駄目よ!この子はただのスライムじゃないわ。私たちのお友達なんだから。そうだわ!私たちで名前をつけてあげましょうよ!」

 

 いつの間にかビアンカにもお友達認定してもらっていたらしい。嬉しいけどね!

 そんなこんなで急遽始まった名付け大会。それはもう、酷いものだった。

 

「そうね……スラッシュっていうのはどうかしら」

 

 初っ端がそれ!?もっと他になかったのかよ!

 

「ダメ?じゃあ……スラきちって言うのはどうかしら」

 

 さっきよりは良いけども!くしゃみと一緒に灼熱炎吐きそうな名前だな!

 

「じゃあ……スラお」

 

 その名前はクリオくんと冒険するスライムにこそ相応しい!

 てか何でこう全部バリバリの男っぽい名前なんですかね!

 

「よし、浮かんだぞ!サスケというのはどうだ?」

 

 パパスおじさんや!そんなあたかも超名案みたいなノリで変な名前を挙げないで!

 いやトンヌラサトチーの時点で、貴方に期待は最初からしてませんけど。

 ついていけずに困った様子の息子がなんとも哀愁を誘っている。

 

 それからも、摩訶不思議な名付け大会は続いた。スラッシュスラおスラきちサスケに始まり、スラひこ、ブルッピ、アキーラにスライバ。

 色々と突っ込みどころはあるけど、スライバはあかん。私あんなクール(笑)になれない。好きだけどね?

 それにしても、ここまで程度の差はあれ馴染みある名前ばかりが列挙されているのに、どうしてアレが出てこないのか。

 そう。アレだよ。スライムと言えばな名前。公式が激推しのアレが!!

 

「うーん…………スラりんってどうかな?」

 

 本人なりにかなり悩み抜いた末だったのだろう。リュカが初めて発した案。ようやく出てきた、定番の名前。

 ここまでの寸劇を観ていた私が一も二もなく飛びついたのは、言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 




名付け大喜利はベビーパンサーだけの特権じゃないんだよ!!



名前、色々悩みましたが安定と伝統をとることに致しました。オリジナルでつけてもよかったんだけど、まぁ5のお供スライムならこれがしっくりくるかなって。


また、スライムちゃんの会話の扱いについても悩みました。喋る事にピキピキ言わせても(書いても)よかったんですけど、こっちの方がテンポも良いかなって。
基本、スライムちゃんの一人称ではこんな感じで進めていこうと思います。




(あくまで暫定だけど)スライムちゃんとの意思疎通について

(将来の)伝説の魔物使いことリュカは、スライムちゃんの言葉に乗せられた意思をなんとなく読み取れます。(あーこいつ多分こんなこと言ってるな)ってレベルです。

あとはもう1人、随分と先にはなりそうですが、リュカよりさらに魔物の言葉を理解できる子が出てくる予定です。いやーだれなんでしょうねまったくよそうつきませんよね!!!



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6話

今月分です。
感想、高評価、お気に入り。励みになります。本当にありがとう。

今回は短めです。ここがとてもキリが良かったので……頻度遅くて申し訳ありませぬ!


 

 

 はろー わたしスラリん いま いしのなかに いる

 

 

 え、何言ってるかわからない? 奇遇だね。私もそう思う。

 いやでもほんと、これくらいしか表せる言葉がないんだよね。

 

 正直今出来ることなんて何一つ無いので、ここまでの経緯でも語ってみようか。

 

 

 話せば長くなるんだけども。

 サンタローズでスラリんという名前を貰ってからというもの、事態はすぐに動いていった。

 

 翌日になり、リュカと共に一階に降りた先で待っていたのは、既に出かける支度を済ませたパパスおじさん。

 薬が手に入ったので帰ってしまうというビアンカ達を、隣町であるアルカパまで送るつもりらしい。それに同行するかという問いだった。

 もちろんと二つ返事で頷いたリュカが準備のために二階にかけ戻って行き、私は1人……1匹その場に取り残される。

 

 さーて適当に時間でも潰しますかと思った矢先、思いもよらぬ声がかけられた。

 

「あースラリん。ちょっと来てもらえないか?」

 

 先程までの温和な雰囲気とはうって変わり、どこかピリピリとしたものまで感じさせるパパスさん。

 

 え、まさか魔物はやっぱり退治とか、そういう感じの流れ?

 そういえば、対面の時もこの人たちの反応はどこか普通じゃなかったっけ。これはマズいかもしれない。

 いやでも、まだ確実にそうと決まったわけじゃない。万が一の時は流石に逃げる試みはするけど、取り敢えず従ってみようか。

 

 ぷるっと身体を震わせ、パパスさんに近づく。行くよっていう意思表示のつもり。

 伝わったかは分からないけれど、彼は小さく頷くと家の奥の方へと向かって行った。

 

 先導された階段を降り、地下室に入る。これ、ゲームだと妖精の村に向かう入口が造られるところか。

 思っていた以上に広い。こりゃ逃げるのは厳しいかなぁ。どうでも良いけど、地面は砂なんだね。

 

 内心冷や汗を流しながら、パパスさんの前へ。

 彼は私が目の前まで来たのを確認すると、不意にその場にあぐらをかいた。

 思わずびくっとしてしまう。急に動くのは勘弁して欲しい。こっちはただでさえ緊張感マックスなんだから。

 

「む? はっはっは。驚かせてしまったか。すまんな。

 魔物と話する時はなるべく目線を合わせろと、きつく躾られていてな」

 

 高らかに笑うパパスさん。少しだけ空気は軽くなったけど、まだまだ彼は真剣だ。

 

「単刀直入に聞こう。マーサ……もしくは、グランバニアという言葉に心当たりはないか?」

 

 はい? なんでまた、急に。

 知識としては当然どっちも持っているけれど……どうも求めているのはそういうことじゃなさそう。

 

 私はふるふると体を震わせて……これじゃちょっと分かりにくいなと思い直し、そこらに落ちていた木の棒を咥える。

 訝しげに見守っていたパパスさん。私が地面に大きく丸とバツを書き、それからピョンとバツの上に乗ったのを見ると、納得がいったのか大きく頷いた。

 

「なるほど。確かにわかりやすい。しかしそうか……心当たりはない、か」

 

 どこか寂しそうにするおじさん。私は地面にハテナマークを描いてみる。

 

「そうだな……出会ったばかりの魔物に話すことではないのだろうが、他でもないあの子が連れてきたスライムだ。少しだけ、付き合ってもらおうか」

 

 そう言うと、パパスさんはしみじみと語り始めた。軽く内容をまとめると、こうだ。

 

 

 彼にはマーサという名の奥さんがいる。

 彼女は不思議な人で、会う人全ての心をほぐし、惹き付けるような人だった。

 凶暴であるはずの魔物でさえも時には手懐けてみせるマーサ。

 彼女が言うには、魔物の中には偶然か必然か魔王の魔力から逃れることが出来たものがおり、そうした存在とは意思疎通ができる可能性がある。そして、そういった魔物は総じて目が透き通っているのだと。

 マーサが初めて連れてきた魔物が、スライム。その子は今も大切にグランバニアで保護されている。

 

 

 ……なるほどね。彼らにとってスライムってのは少なからず特別な存在で。それをこともあろうに息子が連れてきた訳だから、そこにマーサさんの面影を見てあんな感じになってたわけだ。

 

「……さて、どうやらお前さんは随分と聡いらしい。だからきっと、こう思っているのだろう。”では、何故いまマーサが居ないのか”と」

 

 一応、丸を踏む。

 ここから旅立つにあたっての経緯を話してくれるのかと思いきや……急にパパスさんが立ち上がった。

 

「すまない。どうやらリュカが準備を終えたようだ。この続きはまた今度とさせて欲しい。まだあの子に聴かせたい話ではないのでな」

 

 いやいやおじさん、流石にそれはないのでは。

 私は薄々というか、原作知識としてはなんとなく状況を知ってるから良いけども。何も知らない人だったらこのお預けは発狂ものだよ?

 

 しかし、彼の言葉というのはそのとおりで。とてとてと階段を駆け下りる音が響き渡る。

 

「あー、お父さん、こんなところにいた! スラリんも!」

 

 私達に気付いたリュカが駆け寄ってくる。

 その無邪気な様子をみていると、確かに、まだ聞かせる時ではないだろうなと、そう思った。

 

 だけどねパパスさん。去り際に『なるべく傍に居てやってくれ。万が一の時は息子を頼む』なんて言わないでほしい。

 ただのスライムに過ぎない私に何をって言いたいし、それになにより、私は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




何も進んでいないように見えて、実は色々な意味で大切なお話でした。
次回はテンポよく一気にアルカパを進め…………られたら良いなぁ!

個人的には、夜の探検中にサンタローズに入った所での『寝てても守る門番ある意味偉いね』『なんでこっちに来ちゃったの!?方向音痴!!』って会話大好きなんですけども流石にストーリーに盛り込むのは難しい……



Twitter@komaru0412 では、アリス・マーガトロイドを中心としてちょくちょく短編投げてます。近々大きな告知も出来ると思うので、気が向いた方はそちらも。



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