カンピオーネ 本能の王 (ノムリ)
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プロローグ

「粘るな七人目の王よ」

 姿は人ではなく、人狼。

 人の頭を丸かじりしそうな大きな口に、人を簡単に引き裂ける大きな手。

 対するのは利き手の右腕全体が黒と赤に染まり大きくなっている怪物の腕。

 周りには生贄とされた世界中の巫女や魔女の血統となる少女たち。

 

「にしても、いいのかよ」

「何がかな」

「俺に構ってるとまつろわぬジークフリートをドニの野郎に取られるぜ」

 狼の顔を歪めて遠くから山に響いて聞こえてくる剣戟の音と激突音の方向に顔を向けた。

 それもそうだろう、苦労して集めた触媒と生贄を使った召喚したまつろわぬ神をぽっとでの王に奪われたのだから。しかも自分の半分も生きていない若造に。

 

 

「クソ!貴様の目的はまつろわぬ神ではなかったのか!」

「誰が神を殺すのが目的だって言ったよ、俺の目的は此処にいる生贄さ。最近、カンピオーネになった俺にも魔術やらに詳しい部下が欲しくてね。アンタが選ぶ位なんだ能力も才能も申し分ないだろ」

 なにせ俺がカンピオーネになったのは二週間ほど前の話だ。ドニとの戦いでようやく権能もある程度使えるようになったところだ。圧倒的に情報が足りてない、そんな時にドニからある島でまつろわぬ神を召喚しようとしている爺様がいるんだけど獲物を横取りに行かないかい、と誘われた。最初こそ断るつもりだったが、生贄がいるとなれば話は別だ。俺にとってもメリットがある。

 

「俺はアンタに勝つ必要もない。ドニが勝ってこっちにくるのを待っていればいんだからな、どうせアイツならあっちの戦いが終わればこっちにすっ飛んでくるしな」

 怪物の腕を構える。

「オオォォゥウウオオオオ!!」

 怒り狂う最古のカンピオーネ”サーシャ・デヤンスタール・ヴォバン”を無意識に笑ってしまう。

 戦士として戦場に立つことを戦うことを本能で望んでしまう、カンピオーネは全員がそうだろう。戦いを楽しむ者。

 

「ここからが本番だな」

 

 この戦いが七人目のカンピオーネ―――神無月(りょう)の名を魔術関係の者に知らしめることとなると同時に一か月足らずのカンピオーネの元に秘密結社『獣群師団』が結成された。

 

 

 

 

 

@ @ @

 

「ある、あるじ、んあ、これ以上は…」

 ダブルベッドの上で銀髪のポニーテールを振り乱すリリアナ・クラニチャール。

 彼女はヴォバン侯爵の一件で生贄としてあの場におり、正式に俺の騎士として使えることになった。いつもなら気丈で何処か抜けている少女なのだが、今は違う。

 横になる俺に跨り、恥じらいながらも自ら腰を上下させ俺のモノを出し入れしている。

「ほら、もうちょっと頑張れよ」

「もう、限界です。主のが子宮にコツコツ当たって」

「しゃーないか、よっと」

「ひゃあ!」

 上半身を起こしリリアナの腰をがっしり掴み、動いているリリアナの腰を一段と深く入る様にすると、さっきとは段違いにリリアナは喘ぐ。

「やっぱり、リリアナはこの体勢が好きだな、締め付けが強くなった」

「そんな、こと言わないで、ください!」

 口ではそう言うものの、膣は精液を欲しそうに俺のモノをキュウキュウと締め付けてくる。

 喘いでいる鎖骨に唇をくっつけて強めに吸うと赤い跡キスマークがリリアナの白い肌に刻まれる。きっと恥ずかしがるだろうが、その顔も好きだし、きっと口では文句を言いつつも喜ぶ。なにせ、リリアナは乙女チックなのだから。

「こっちもそろそろ限界だ……出すぞ」

「は、はい、中に、だしてください。いっぱいリリアナの中に」

 リリアナ事ベッドに倒れこみ、ガンガンと腰を前後させる。

 快楽の為ではなく雄が雌を孕ませる正真正銘、子孫を残す為の種としての行為。

 

 

 ―――ビュル、ビュルっと子宮口にピッタリとくっつけて出した。ものが全て子宮に収まる様に。

 

 

 体を起こすと肩で息をしているリリアナの下腹部、子宮のある場所にピンク色でハートのタトゥーが浮かび上がり、中が空っぽだったハートが少しだけ塗りつぶされた。

 やっていた行為はセックスだが、出したのは精液であってただの精液ではない。

 まつろわぬデメテルから簒奪した権能『愛する者に愛を(ファミリア・ラブ)』はキスや性行為によって心が繋がっている恋人や仲間にカンピオーネである俺の魔力を分け与えることと女神の加護を与える。

 魔女であるリリアナは強い術を使うには大量の魔力が必要になる。そんな時のこの権能は役に立ち、加えて、魔力は一定の時間ストックが出来る。加護に関してはいまだに詳細が分かっていないが、問題になるものじゃないだろう。

 今回は数日前にリリアナが自身の強さを再確認するために神獣と戦った際にストックしてあった魔力をすべて使ってしまったから、新しく貯める為に日が高い時間からセックスしていたわけだ。

 

「旦那様」

 リリアナの侍女カレン・ヤンクロフスキは俺とリリアナの行為が終わるのを見計らって部屋に入ってくると、ベッドに座る俺の股の間に膝をついた。

「失礼します。あむ、じゅるるる!リリアナ様と旦那様の味がします、んあ❤」

 慣れた様子でチンポを根元まで飲み込み。出した精液とリリアナの愛液が混ざったチンコを美味しそうにしゃぶる。

 前後する度に狭い喉奥にカリが引っかかり得も言われぬ刺激がチンポを駆け巡る。

 カレンも流石に苦しいのか目が少し涙目になっているが舐める事をやめようとはしない、寧ろ最初よりも前後する速度は速くなっている。

「ラストだ、我慢してくれよ」

「んッ!んぐぅ!ぐぷっ」

 頭を掴みオナホールを使うみたいにカレンの口と喉を犯す。カレンも頭を掴まれた時点でそうされることが分かったらしく

 俺の脚に手を絡め体がぶれてしまわないように固定して、嘔吐反射のせいで遂には涙が頬を伝っているがそれでも嬉しそうに喉奥をチンコでしごかれている。

 頭を前後させる度にぐぽ、どぴゃとカレンの口元から卑猥な音が漏れ、それがまた俺の興奮させる。なにせ女の子一人を自分の好きなようにしているのだから本来なら考えられないことだ。

「出すぞ!しっかり飲めよ!」

 チンコを根元まで加えこませカレンの口内に射精した。勿論、権能によって魔力を多量に含んだ精液だ。体に吸収されれば魔力としてきちんとストックされる。本来ならリリアナに所謂お掃除フェラをさせたいところなのだが、リリアナは横で半分気絶している状態なので代わりにカレンにしてもらう。それにしてもらうのは初めてじゃない。リリアナが居なかったり、単に性欲が溜まったり、リリアナに渡す魔力の一時的なストックをしてもらったりとセックスは一回だけだがフェラならリリアナより回数をこなしている。それに俺はカンピオーネだ、誰かに文句を言われることもない。

 

 

 ドピュ、ドピュ、とカレンの喉奥に射精。二度目だとしても権能とカンピオーネの回復力も相まって一回目と変わらない量を喉奥へと吐き出した。

 間隔を空けて吐き出される精液をカレンは喉をゴク、ゴクと鳴らして胃へと流し込んでいく。精液を出し切ってカレンの口からチンコを抜くとにちゃ、と音が聞こえそうなほどにカレンの唾液と精液でベトベトになっていた。

「…ゴク、これで本当にお掃除しますね」

 もう一度チンコを根元まで飲み込むとじゅるじゅると音を立てて尿道に残っている精液を吸い出し。自分の唾液と出した精液の残りを舌で綺麗に舐めとっていき、二分ほどで綺麗なった。

「ありがと、ストックはどれくらい溜まってる?」

 聞くとメイド服のスカートをたくし上げお腹が見えるようにしてくれた。

 ピンク色のタトゥーはリリアナの同じだがそのサイズが違う。子宮の部分だけに留まらずへその高さまでタトゥーは広がっている。それだけ多くの魔力がカレンの中にはストックされているということだ。

「これだけあれば何かあっても困らないだろ」

「はい、リリアナ様にも受け渡しできますからね」

 スカート降ろし満足そうに口元を舌で舐めとる仕草はリリアナとは違う意味で興奮してしまう。

 元々強かった性欲がカンピオーネになってから強化され、権能の効果で俺に好意を寄せてくれている異性をすぐに発情させてしまう。ある程度はコントロールできるようになったがやっぱり使いづらいな。

 どっかの昼ドラみたいに後ろから刺されないように注意しないと。

 

 



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猪の神獣

 シャワーを浴びて服を着替えてリリアナと共にローマの古い町並みを腕を組んでデートしていたまでは良かった。

 

 ヴォオオオオオオオオ!という咆哮が辺りに轟くと町のど真ん中に出現したのは巨大な猪。

「神獣!なぜ」

 横でリリアナは神獣が突如出現した事に驚いているが俺は違う。まつろわぬ神に比べれば神獣を倒すのはお遊戯みたいなものだ。

 神獣を片付けるために権能を発動するべく聖句を唱えようとした時、猪の目の前に金髪の少女が立った。

「リリアナ、あの金髪ってお前の友達のエリカじゃないか」

 彼女はリリアナが生まれて時から所属していた組織”青銅黒十字”とライバル関係にある赤銅黒十字に所属するエリカ・ブランデッリ。

どちらの組織もローマに拠点を置く。俺たちと同じく偶然、この場にいたのだろう。

「確かにエリカです、神獣を止めるつもりなのでしょう」

 手を出すのも悪くないけど折角だ『紅き悪魔(ディアヴォロ・ロッソ)』の称号を持つ彼女の実力を見るのに丁度いいか。

「リリアナ、俺はエリカの実力が見たいから今回は手を出さない。お前は避難が遅れている市民を魔術を使って避難させろ。今朝たっぷりと魔力はストックしただろ」

「///…はい!アルテミスよ、我に飛翔の特権を授けた!」

 魔術を使って建物を飛び越えていったリリアナの後ろ姿を見送り。いまも神獣の猪を細いレイピア一本で抑え込んでいるエリカ。

 リリアナは技術をメインとし、エリカは力がメイン。それでも神獣を倒すには力不足だな。

 カンピオーネにとって神獣を倒すのは楽なことでも、魔女やただの魔術師では神獣を倒すのは相当な実力と準備があってやっと倒せるレベルだ。いきなり出現した神獣を倒せないことを誰も攻めることはしないが側に置くとなればせめて神獣に一太刀入れられるくらいの実力は欲しい。

 

 

「それであの猪はお前の眷属か」

「いや、アレは我の一部、我、自身だ」

 後ろにいつの間にか立っていた古めかしい服を身に纏った少年。

 いや、そもそも人ですらないか。

 カンピオーネの直感が叫んでいる、目の前にいるのは神。まつろわぬ神であると。

「見た感じ出したっていよりは欠けたって感じだな」

「おうさ、敗北を求めて古き王たちと戦った時に反撃を食らってな。我の一部は散らばりその一つがアレだ」

 猪と関連する神ね。

 日本だと猪は神と結びつかないイメージだが、北欧などの地域では猪は神話に結構登場する。寒い地域だからこそ毛皮を持つ動物が多く、それらに神話を見出すのは必然。

「そんな中で神殺しに巡り合うとは」

「悪いけど俺は戦わないぞ、いまのアンタと戦っても権能も獲得できる確率は低そうだ」

 権能はカンピオーネにとって手札であり切り札。

 まつろわぬ神を殺したからと言って必ずしも手に入るわけではない、なにより欠けた状態のこの神を殺しても権能が手に入る確率はゼロだ。それに面白くない。

「ならお主と戦うのは後に取っておくとしよう」

 そう言って少年はその身を風に変えて猪の元へ向かっていった。

 風と猪に関する神ね。ちょっと調べておかないとな。

 

 神獣の猪は出現した竜巻に巻き込まれ姿を消し。

 エリカと日本人旅行客が電車の駅のある方向に歩いていくのを見送りリリアナの居る場所へと向かった。

 

 

「主よ、やはりあの神獣は……」

「神の眷属じゃない、一部だ。猪と風に関する神について調べておく必要がある。急ぎでな。あいつは完全になれば戦うことになる」

「……エリカたちの動向も心配です、カレンに連絡すればすぐにでも貴方の為に部下は動きます」

「仕方ないけど任せるか、こっちはエリカたちの後でも追うとしよう」

 魔術で移動するも悪くないけど、折角だデートの続きと行こうか。

 

「リリアナ、透明にある術があったろあれをお前と俺に掛けてくれ」

「えっと、何をなさるおつもりで?」

「車で行くのも悪くないけど、折角だデートの続きとして空から行こう。飛んでエリカたちの後を追うんだよ」

 わかりました、と言ってリリアナが俺の頬に手を添えて目を閉じ、ゆっくりと顔を近づける。

 人からカンピオーネになった時に魔術、呪いに対する強力な耐性が付く。つまりカンピオーネに魔術を掛けるには体内、キスや飲食に混ぜることでしか作用しない。

 

「術がかかりましたよ」

「それじゃ行くか、あと飛んでる最中にカレンに連絡頼む」

 一番最初に倒した”黙示録の獣”から手に入れた権能『混沌獣《ケイオス・ビースト》』。効果は触れた神獣を含めた獣をデータとして記録、自分の体を媒体に再現する力。所謂、キメラを生み出したりするものだ。

 最近だと応用も効くようになって便利だ。 

 背中から黒と赤の混じった鳥の翼を生やす。

「さて、行くか」

「きゃ!」

 リリアナをお姫様抱っこして翼を動し大空へと飛び上がった。

 首に手を回して頬にリリアナの頭がくっついている。いつもそば居るのにやっぱりくっつかれる緊張する。

「主!飛ぶなら飛ぶと言ってください!」

「いつも飛んでるだろお前」

「それは自分のタイミングでです!」

「分かったよ、今度から言うよ。それよりカレンに連絡を頼む、エリカたち向かう先と神について」

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 サルデーニャの魔女ルクレチア・ゾラ。

 イタリアでは有名な魔女の一人だ。そんな場所に日本人の観光客が用事があるとは思えない。

「そんじゃ、失礼します」

「そんな勝手に!」

後ろでツッコミを入れてくるリリアナを無視してズカズカ中を進んでいく。

 

  

「アンタがルクレチア・ゾラか。てっきりもっと年寄りかと思った」

 扉を開けると中ではソファに座ったままのルクレチアとエリカその隣には観光客と思っていたがまさかの知り合いだとは。

「え、涼!?」

「よう、護堂」

「なんでお前がここに居るんだよ!」

 流石に幼馴染とイタリアで再開するとは思っていなかったみたいだな。

「護堂、この方はカンピオーネよ」

「カンピオーネ?」

「カンピオーネは神殺しだ。エリカにまつろわぬ神の説明を受けただろ、そのまつろわぬ神を殺した人間をカンピオーネとか魔王って呼ぶんだよ。俺その七人目」

「リリィ、王の手綱くらいしっかりと持ちなさいよ」

「五月蠅いぞエリカ。王に意見など出来るわけないだろ。それに主はもうまつろわぬ神に会っている」

 ルクレチアは面白いと俺たちの会話を眺め。

 リリアナとエリカがいつもの口喧嘩。

 俺は護堂の持っている石板を渡してもらった。

 これにも猪と同様に神獣の力が封印されているわけだ。

「護堂。この石板は俺がもらうぞ。構わないなルクレチア。嫌だと言っても力尽くで奪うがな、入っている神獣の種類というか神について知っているなら教えてもらおうか」

「やはりお主もカンピオーネか。ああ知っている、石板に封印されているのは白馬。神の名は”ウルスラグナ”だ」

 不適に笑っているルクレチア。

 カンピオーネを相手にここまで言えるなんて肝が据わっているというか、なんというか。

 

「護堂お前は戦いが終わるまで此処で世話になれ。エリカ、王として命令する、護堂が日本に帰るまではお前が護衛しろ。俺が戦っている最中はリリアナも此処に置いていくから逃げる程度なら問題ないだろ」

 御意、と堅苦しい返しをしてくるがまあいいや。

「待てどういうことだ!」

「俺はウルスラグナと戦う。必要だったらウルスラグナが戦う予定だったまつろわぬ神とも戦うから運が悪いと連戦になる。その状態で全員を守る余裕はないからな」

「戦うって神とか!」

「まつろわぬ神とな。別に初めてってわけじゃない、今までもやってきたし今回生き残ればずっと同じことをして生きていく」

 カンピオーネになった時点で普通の人生なんて諦めた。

 なによりカンピオーネなる人間は本能的に戦いを求め、楽しむ。

「先に言っておくと俺はカンピオーネになったことを後悔してないぞ。カンピオーネにならなかったらリリアナと出会いもしなかったし」

 エリカといまだに口喧嘩しているリリアナを抱き寄せる。 

 主!?と顔を真っ赤にしているがそんな事は関係ない。だって俺がしたいのだから。

 



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これから始まる戦に備えて

 ルクレチアの家の客室でリリアナと二人っきりの時間を過ごしていた。

 シングルベッドでリリアナを股の間に座らせて抱きしめる。

 護堂とエリカは二人で酒盛り中、俺とリリアナは明日に備えなくてはならない。

 

「リリアナ、魔力のストックを見せてくれ」

 そう告げるとリリアナは恥ずかしそうに白いシャツを捲りスカートをずらすと子宮のある部分にピンク色のタトゥーが浮かび上がった。今朝溜まっていたはずのハートはまた空っぽになっている。

「申し訳ありません、市民を避難させるのに予想以上に魔力を消費してしまい」

「いいよ、分かっていたことだから。それに今から使った分も補充すれば問題ないだろ」

 顔を赤くして恥ずかしがっているリリアナのシャツの中に手を入れて肌を撫でる。

 すべすべの肌の感触が心地よく、いつまでも撫でていなくなる。

「んぅ…くぅう…」

 くすぐったいのか小さく声を漏らしているリリアナ。

 そんな事にもお構いなしに肌を撫で。ゆっくりと手を進めていけば胸へと到達。ブラの中に指をいれて直接、胸を撫でる。先端には撫でられて感じたのか乳首は固くなりコリコリ指に当たる。

「先に言っておくぞリリアナ。使った分と今回必要な分の魔力のストックをしないといけないから今日は激しいぞ」

「…はい」

 リリアナのシャツとスカートを脱がせるとシンプルな柄の青色のブラとショーツ姿。『剣の妖精』の異名で呼ばれるリリアナのこんなあられもない姿を見る事ができるのは世界でも少数だろう。

「主は胸が大きい方が好きですか…」

「急にどうしたの?」

 ブラの上から自分の胸を撫でてその大きさに気にしている様子だ。

「エリカの方が私より胸が大きいからですから、その……」

「もしかしてエリカと自分の胸の大きさを比べて気にしてるのか?」

「……はい、昔、雑誌で男性は胸が好きだって書いてありました。カレンや獣群師団の一員はあまり気になりませんがエリカとは昔からのライバル。どうしても気にしてしまいます」

「そっか、なら今日は俺がリリアナをどれだけ好きで大事にしているか教えるってことで」

 

 

 

 

 

 下着を奪い取ったリリアナの体のあらゆる場所を優しく撫でた。

 ぷっくりと固くなった乳首を人差し指と親指で摘みこねくり回し、皮の下で大きくなったクリトリスを親指で押し、愛液が溢れてくる膣に指を入れると今まで何度もチンコを飲み込んできたとは思えないくらいにキツイ。

 それも徐々にほぐしていくうちに指一本から二本が入るようになった。

「あ、あるじ…もう、いれ、入れてください…」

「何を入れて欲しいか言わないと分からないだろ」

 涙を流しながら懇願してくるリリアナを無視して、意地悪な事を言いながら指でイジり続ける。

 膣内に入っている指を曲げてクリトリスの裏側部分を擦るように動かす。

「ぃひ、いぎぃ!あるじ、んぃひひひひぃいいい!指、どめで!くだざい!」

 指が中を擦る度にリリアナの腰がガクガクと震え、中が痙攣しているのが指に伝わってくる。

 俺の手を何とか止めようとリリアナは腕を伸ばしてくるが、その前に指の動きで絶頂して動けなくなっている。

 いくらイっても俺は指を止めない。

 腕の中で絶頂を繰り返して陸に上げられた魚みたいにビクビクしているリリアナを逃がさないようにしているとまるでリリアナの自由を俺が奪っているみたいだ。

 他人を支配する優越感と支配欲。

 黒いものが胸を支配し、それを叶えられる権能が俺にはある。

「俺は生まれて初めて好きなったのがお前なんだ。だからお前を手放すつもりは絶対にないからな」

 カンピオーネにならなければきっとリリアナには出会うことはなかった。

 この腕の中に感じる鼓動も、温もりも永遠に感じることはなかった。

「……はい、私もずっと貴方の騎士として使えます」

 さっきの絶頂して流した涙とは違う、嬉し涙を流しているリリアナの頬を優しい手付きで撫でて。目元に溜まっている涙を拭きとる。

 

「本番は此処からだ。この屋敷を囲える分だけの結界やら他にもやってもらうことは沢山ある。それとウルスラグナについても教授の術を頼む」

「はい、リリアナが貴方の傍で貴方を支えます。んちゅ、じゅる、れる❤んっ、じゅるり❤」

 舌を絡め合い、くっつけた唇の間から俺とリリアナの混ざった涎が口元を汚すけどそんなことは気にならんない。それよりも今はリリアナとキスがしたい、貪っていたい。

「あるじ、教授の術は深く繋がらなくてはいけません…もっと、もっと強く、抱きしめて」

 一旦、唇が離れると赤くなった顔で、俺の目を見つめて子供が親に抱っことせがむ様に両手を伸ばしてきた。

 俺はその腕を抵抗することなく受け入れる。

 両手は俺の首に回され、より深くキスをする。

 教授の術なんてもののついで、俺はただリリアナとキスがしたいからしているだけ。

 重ねた唇は女性特有の柔らかさと鼻に呼吸する度に感じるのは女性特有の甘さ。

 リリアナから感じるのは雌の匂い、発情した雌の匂いだ。

「あるじ、入れてください…私のおまんこに、主のを」

「ああ、キスしたまましてやるよ、魔力のストックのこともあるんだ覚悟しろよ」

 唇を離し、俺も服を全て脱ぎ去った。

 あれだけの前戯があったんだ流石に限界だ。

「入れるぞリリアナ」

「はい、一番奥まで入れてください」

 自分から自分のものを広げて丸見えになっているのに気にしていないようすだ。興奮しすぎて緊張とか無くなったのか。

 固く勃ったチンコをリリアナのおまんこに当てると、入れてくれるのを期待しているのかヒクヒクしているのが伝わってくる。

 いつもならゆっくりと挿入して味わうところだけど正直、我慢ならん。

 勢いよく腰を前に突き出すと一番奥の子宮にぶつかって腰は止まった。

「んひぃぃいいいい!」

 流石にリリアナも限界だったのか全身を震わせて絶頂、中に入っているチンコから精液を絞り取ろうと中はビクッ、ビクッと痙攣して締め付けてくる。

 締め付けて射精しそうになるのを我慢して腰を動かす。

 中で擦れる度にリリアナの体は軽い絶頂を繰り返し、んひ!といつもの毅然とした姿からは想像できない声を上げている。その声がもっと聴きたくて一層、腰を激しく動かすと比例して声も大きくなっていく。

「あるじ、気持ちいいですか、私の中は」

「気持ちいいぞ、いまも出そうなくらい」

 出そうだ、と聞くと嬉しそうにリリアナ、俺の腰に脚を絡ませてきた。

 脚が絡まったせいで腰の動きが制限されてコツコツ、と腰を動かすたびにチンコの先端が子宮口に当たる感触がある。

 亀頭に当たる独特の固さと柔らかさ、何より突く度にリリアナが分かりやすく喘ぐ。

「出すぞ、精液の量を多くするからしっかりと受け止めろよ!」

「はい、出してくださいリリアナの子宮の中にいっぱい出してくだひゃいッ❤」

 『混沌獣』は己の体を媒体に獣を宿す。それは外見だけではなく、内面も該当する。治癒力、再生力、抗体そして精力と精液の量。

 『愛するのものに愛を』と『混沌獣』の合わせ技。

 『混沌獣』によって精液の量を多くして『あいするものに愛を』によって精液を魔力に変換して対象にストックさせる。ズルにも思えるようにも思えるけどこれから始まるのは命を賭けた殺し合いだ。なにより、妊娠したリリアナも見てみたいし。

 リリアナの腰をガッシリと掴み、根本までしっかりとリリアナの中に入れる。リリアナも俺が射精することを理解して脚をガッチリと固定し直す。

 

 

 ―――ビュルルッ❤ビュッ❤

 

 

 いつもの出す精液とは勢いも粘り気も量も違う。

 子宮に精液が射精される度にリリアナは腰をガグッ❤ガグッ❤を震わせて嬉しそうに反応している。

 ある程度出したところで俺はこれから出す精液が漏れてしまわないようにリリアナに覆いかぶさり体を固定した。

「あ、主!」

「言ったろ、一杯出すって」

 いまだにリリアナに中にあるチンコからは精液が止まることなく射精され続けている。それも子宮の中に余すことなく。

 ドビュッ❤ドビュッ❤と出続けている精液のせいでリリアナの子宮は外からでも分かるくらいに大きくなってきた。

 精液を出し切りリリアナのお腹を見ると妊娠していると思えるくらいに大きく膨らみ、膣内からチンコを抜いても『愛するものに愛を』の効果なのか精液は零れてくることなく最後の一滴までリリアナの子宮に収められた。

「主の精液がたっぷりと私の(子宮)に…」

 リリアナは精液で膨らんだお腹を愛しそうに撫でている。

 それも数秒立てば精液は魔力として体に吸収されて妊娠することなく綺麗サッパリ無くなる。

「満足しているところ悪いけどリリアナ、まだ足りない。俺は満足してないし、ストックもな」

「はい、もっとリリアナの中に出してください。主が満足するまで」

 

 

 

 

 日付が変わることまで続いたセックス。

 リリアナは流石にイキすぎたのか、ベッドの上で虚ろな目であ、あひ、と言いながらビクッ❤ビクッ❤と痙攣してイキ続けている。

 結局あれから五回連続でヤリ続けた。

 リリアナのイった回数は二桁はいっただろう。

 精液で膨らんでいたお腹は、魔力として吸収されて元に戻り。また出して大きくなってを繰り返し、最後にはいつものスリムなお腹に戻っていた。

「リリアナ、俺はちゃんと帰ってくるからな」

「…あるじ……お慕い申し上げております…んぅ」

 いつの間にか疲れて眠ってしまったリリアナに布団を掛けて、俺もリリアナを抱きしめて瞼を閉じた。

 

 




予想していたよりもアンケートの回答数とやって欲しいという回答が多かったです。気が向いたら単体で読めるウルスラグナ戦の話だけを書こうと思います。

それとリクエストというわけではありませんが、やって欲しいシチュとかプレイとか活動報告の方で募集しておきますのでご自由に書いてください。


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日本への帰国

 ウルスラグナとの戦いで何とか勝利を収め、リリアナとエリカに戦いの事後処理を頼み俺は春休みが明ける学校へ行くために日本へと戻ってきていた。

 イタリアに残っても良かったのだが、修理や復元に関する権能を持たない俺が現場に残ってもやれることはなく、獣群師団の構成員にも、リリアナにも学校で学生生活を送る様にと追い出されるように飛行機に乗せられて昨日、日本に帰ってきた。

 

 俺の通っている私立城楠学院はこの辺りではそれなりな進学校だ。中等部から大学部が存在している。其の為、中学からのエスカレーター式に高校に入学する人も多い。俺は別の中学からの入学になる。護堂も俺と同じだ。それ以外にも高校から学院に入学する人も多くいるそうだ。

 

「将来がカンピオーネ一択なのに学校に真面目に通うってどうなんだろ」

 現在、生きているカンピオーネが真面目に仕事をしているという話は聞いたことがない。

 前に戦った”サルバトーレ・ドニ”は自由人、山に籠っている”羅濠教主”、研究に明け暮れている”アレクサンドル・ガスコイン”、島から滅多に出てこない”ヴォバン侯爵”、ロサンゼルスを守護していてその地を離れることのない”ジョン・プルートー・スミス”そもそも何処に居るか詳しく知らない”アイーシャ夫人”。働いている奴なんて一人もいない、誰もが好き勝手に生きている。

 俺も真面目に将来を考えないとマジでリリアナに養われそうになる。

 アイツ、世話を焼くのが結構好きだからな、それに獣群師団の構成員の大半は俺があちこちから拾ってきた奴ばっかりだ、良かれと思ってあちこちから金やら神具やら神の情報やらを集めてくる。マジでニートになりかねないぞこのままじゃ。

 

「あの、顔色が優れませんが大丈夫ですか?涼さん」

 後ろから聞こえた、聞きなれた声に反応して振り返ると立っていたのはリリアナと同じ場所で出会った少女”万里谷(まりや) 祐理(ゆり)”だ。

 彼女はリリアナと同じくヴォバン侯爵の儀式の生贄として参加させられていた。その時に俺は彼女は助け一応は獣群師団の庇護下にあり、獣王の名のもとに守られている。

 

「祐理か、久しぶり」

「お久しぶりです。聞きました、イタリアでウルスラグナと戦ったそうですね」

「耳が早いこって、正直、死ぬ一歩手前まで行ったよ」

 神格を切り裂く黄金の剣。

 ウルスラグナの代名詞にして切り札。

 二つしかない、しかも攻撃可能な権能が切り裂かれた時は本気で死ぬことを覚悟した。ま、現場には居なかったリリアナのお陰で命拾いしたけど。まさか『愛するものに愛を』が俺からリリアナだけじゃなくて、リリアナから俺にも魔力やらが流れていたなんてな。それともあの瞬間そう変化したのか。

 権能は使い手に合った形に効果も条件も変化する。もしかしたらあの瞬間、カンピオーネとしての本能が望み、権能が反応したのかもしれない。

「よくご無事で、まさかただの旅行がまつろわぬ神との戦いになるなんて」

「あ~、その辺は諦めてる、カンピオーネになった時点でな。まあ、悪いことばっかじゃないさ、リリアナにも、祐理にもそれで会えたわけだし」

 そう言うと横を並んで歩いている祐理は顔を赤くして俯いてしまった。

 祐理はリリアナと同じくらい照れるからやっぱり面白いな。ちょっと世間知らずで天然のところもあるし。

 ぽふ、と祐理の頭の上に手を置いて撫でていると一層、顔を赤くする。さらさらとして艶のある髪の感触と祐理の体温が手に帰ってくる、と同時に周りからの刺すような視線も増えた。

「それと涼さん、今日も夕食をご馳走になりに来てくださいね」

「ああ、ご馳走になりに行くよ」

 両親が既にいない俺は一戸建ての家で一人暮らししている。

 祐理とはヴォバン侯爵の儀式で知り合い、家が近いこともあって度々顔を合わせる機会があった。その時に祐理の家族と面識を持ち、祐理を助けてくれたこと、庇護を与えてくれていることに感謝して料理をふるまってくれた。今でもそれが続いていて偶に夕食をご馳走になりに行っているというわけだ。

 朝から祐理と通学中の会話を楽しんでいるとあっというまに学校に到着。

 そして、護堂に説明しないといけないかもな。めんどくせ~。

 

 

 

 

「よぉ~、護堂。おはよ~さん」

「!涼、大丈夫だったのか!?」

 教室に入って席に座るなり前に座っている護堂は焦った表情で詰め寄ってきた。

「大丈夫じゃなかったら学校に来ねえよ。カンピオーネは回復力も化物地味てんだ」

「そうか、よかった。そういえばリリアナさんは居ないんだな」

「アイツはイタリアでエリカと一緒に俺とウルスラグナとの戦いの事後処理をしてるよ。正直、残りたかったけどリリアナにも、部下にも学生は勉強が本文だって言われてさ」

 部下?と頭を傾げている護堂にヴォバン侯爵と儀式の事を上手く隠して説明すると俺に部下がいることに驚いていた。

「おい、護堂、涼、聞いたかよ転校生の話!」

「「転校生?」」

 中学からの友人が楽しそうに近くにやってくると転校生が来るという話を楽しそうに話し始めた。

 春休み明けに転校生なんて珍しいな。

「イタリア人ですげー美人で噂だと貴族の出とか、しかも二人も」

「……なあ、転校生の外見分かるか」

「え~っと、片方は銀髪で、片方は金髪って話だぞ。それもどこまで信用できるか分からないけど」

 そう言って、自分の席へ戻っていってしまった。

「なあ、涼」

「言うな、護堂。俺はイタリアからの転校生って時点で少し予感してた。でもほら、もしかしたら違うかもしれないしさ」

 いや、嬉しくないわけじゃないよけどさ、まさかそんな都合のいいことなんてないわけで。

 

「は~い、皆さん。注目して、転校生を紹介します」

 護堂と共に視線を前に向けるともはや見事なフラグ回収と言いたくなる展開だ。

 前に学校に制服を着て立っているのはイタリアいるはずの二人。リリアナ・クラニチャールとエリカ・ブランデッリだった。

「エリカ・ブランデッリです」

「リリアナ・クラニチャールです」

「今日から二人は一緒の教室で過ごします。慣れないこともあるでしょうが皆さん助け合っていきましょう」

 リリアナが来るのは予想してたけど、エリカまで来るなんてな。何かヤバイことでも起きるかな。

 挨拶を済ませた二人は俺と護堂の隣に座っていた女子を魔術を使って暗示を掛けて、外見的には平和的に席を譲ってもらい、何食わぬ顔で隣の席を手に入れた。

 

「昨日ぶりです、主」

「あちゃ~!」

「「「主!?」」」

 リリアナが席に座る前に俺を見て主と言いながら頭を下げたせいで見事に教室中の視線が俺の集まってきた。

「おい、涼!主ってどういうことだよ」

「もしかて、恋人!」

「神無月くんには草薙くんがいるでしょ!」

 誰もかれもが言いたい放題。

 リリアナは慌てふためき、前に座っているエリカは面白いとばかりに笑っている。それと俺と護堂をカップルとか言った奴誰だ!

「リリアナ、俺の事は普通に名前で呼んでくれ。男子陣、リリアナは俺の物だからな手を出したら承知しないぞ!」

 立っていたリリアナを抱き寄せて宣言すると、男子陣からは罵詈雑言。女子はキャー!と楽しそう叫び。リリアナは胸の中で顔を真っ赤にしていた。

 昼休みに色々と説明してもらうしかないな。

 

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 リリアナとエリカを連れて昼食ついでに人が少ない屋上にやってきた。勿論、人の姿もあるがそこま魔術師。術を使ってご退場願ったわけだ。

  

「やっと解放された!」

 空の元、存分に羽を伸ばす。

「申し訳ありませんでした、主!」

 結局、主呼びはいまだ抜けず、度々、ある、涼、と変な呼び方になっている。その度に教室の数名をこっちを見てくる。

「もう、過ぎたことでしょ諦めなさいリリィ」

「だ、だがエリカ。私のせいで主が友人と不仲になったら」

「気にするなよ、その程度で仲が悪くなる友達ならいらねえよ。それよりさ二人はなんでまた日本に」

 リリアナが日本に来たのは理解できる。俺の騎士として仕えるとか、リリアナの親が所属する青銅黒十字からの伝達係とかあるんだろうが、エリカは違う。俺との関りも少ないし、赤銅黒十字と青銅黒十字はライバル関係。エリカが日本に来る理由は特に無いきがする。

「私は主の傍に居るために来ましたがエリカは……」

「私は貴方の戦う姿をルクレチア・ゾラの遠視の術で拝見し、貴方様に騎士として仕える為にやってまいりました」

 胸に手を置いて、いつもの小悪魔みたいな性格とは違う畏まった言葉と態度。違和感にも感じるがどこか美しくも見える。

「……その辺は勝手にすればいいよ。仕えるも、傍にいるも、どっかに行くもね。でも、俺がお前を気に入ったら手放す気はないよ」

「はい、承知しました。あらリリィ、不満そうね」

「……別にそういうわけではない」

「フフフ、もしかしたら貴方と一緒のベッドに寝ることもあるかもしれないわね」

「っな!?」

 不機嫌になったリリアナをエリカがからかい、分かりやすく挑発されるリリアナ。それをまたからかうエリカ。確かに仲のいい友達って感じだ。

 祐理とリリアナは顔見知りだけど、エリカまで紹介したら怒られそうだな。

 購買で買ってきたパンを齧りながら夕食の席が戦争にならないことを願うばかりだ。

 

 

 



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プリンセスの予言

 リリアナとエリカは用事があると先に帰り、俺は隣のクラスの祐理と共に祐理の家へと向かって歩いていた。

「隣のクラスに二人も転校生が来たと聞きましたがやっぱり……」

「一人はリリアナ、もう一人は赤銅黒十字のエリカ・ブランデッリだ。騎士として仕えるって言ってる。何もないから大丈夫だよ」

「私が心配しているのは、また涼さんの傍に女性が居るということが気になるんです!」 

 珍しく強気で大声で訴えてくる祐理。

 祐理でもヤキモチやいたりするもんだな。

「貴方はやっぱり女性にモテますね、神無月さん」

「ああ、甘粕さんか」

 どこか痩せたサラリーマンのような風貌の彼は”甘粕冬馬”。

 日本の魔術結社『正史編纂委員会』の一員で俺とその魔術結社の橋渡し役を担っている。

「甘粕さんからかわないでください!」

「いいだろ、俺が祐理の事を好いているのは事実だろ」

「…それは…その」

 こう好きだとストレートに伝えると照れる反応がリリアナそっくりだ。

 

 

 場所を移動し、祐理の実家でもある神社の階段に座って祐理が巫女服に着替えてくるのを待つ間にウルスラグナとの戦いを甘粕さんに軽く説明していた。

「へぇー、デメテルの権能がですか」

「はい、助けられましたよ。もしかしたら祐理の姫巫女としての技も使えるようになるかもしれません」

「あの、お待たせしました」

 祐理の声に反応して後ろを振り返ると制服姿とは違う白と緑の二色と独特な配色の巫女の姿。

「やっぱり似合うな!」

「あ、ありがとうございます」

 横で甘粕さんが愛想笑いしているが、これは俺と祐理のイチャイチャっぷりに呆れているのかは知らないし知りたくもない。

 

「それで甘粕さんはウルスラグナとの戦いについて聞きに来ただけなのか」

「いえ、お伝えしておきたいことがございまして」

「伝えておくこと?」

「プリンセスアリスが新しい予言をしました」

「そりゃー、一大事だ」

 プリンセスアリス。

 本名は”アリス・ルイーズ・オブ・ナヴァール”。『グリニッジ賢人議会』の元議長を務め、いまでも強力な発言権を持ち、世界最高峰の精神感応者でもある。加えて念力・霊視・予知といった特殊な異能と高い霊力を有しているが反面、体が非常に弱く黒服王子こと”アレクサンドル・ガスコイン”と共闘してあるまつろわぬ神を封印した際に体を壊し、今は寝たきりだと聞いている。

 その魔術界に名高いプリンセスアリスの予言だ、どうでもいい予言なわけがない。

 

「星なき夜…ね」

 甘粕さんから説明されたプリンセスアリスの予言について甘粕さんが帰ったあとも考え続けた。それと甘粕さんの話を聞いた後に獣群師団の構成員からメールでプリンセスアリスの予言について詳しい情報が送られてきた。

 星がそのまま空に輝く星なのかそれとも地球や月、太陽を指しているのか。そもそもどうやって星を無くす。中国には太陽を撃ち落としたなんて話もあるが、星を破壊するあんて神話を持つ神なんて滅多に居ないそれこそ破壊神くらいだ。それに星なきが必ず星を破壊するってわけじゃない。隠したり、存在を無かったことにしたり、やりようはいくらでもある。

 ん~、分からん。

 こういうのは頭を悩ませても無駄なのは分かっているがしちゃったからには予想してみたい。

「お~兄ちゃ~ん!」

「うお!」

 背中にずっしりと襲い掛かってくる重みの正体…それは祐理の妹の”ひかり”だ。祐理経由と知り合いどういうわけか気に入られ、いまではお兄ちゃんと呼ばれるくらいには仲良くなった。

「また背が伸びたんじゃないのか」

「ええ~、背より胸が欲しいよ、お姉ちゃんみたいにバインバインに私はなるの!」

 うむ、確かに祐理の胸は大きい、それこそ触ると指が沈むくらいにな。

 背中に当たるのは慎ましやかな成長途中の胸の感触。

「そうですか、頑張って大きくなってくれ」

「そしたら、お兄ちゃんも私のこと愛人にしてくれる?」

「……お前、意味わかって言ってるのか?」

「分かってるよ、ひかりだって中学生だもん。保健体育で子作りも、生理とかも習ったし。それにひかりだってお姉ちゃんに負けないくらいにお兄ちゃんのこと好きだもん」

 いつの間にかひかりの顔を横にあり、ほっぺにチュッと軽いキスをされた。

 台所では祐理が夕食の準備をしている、魔王と妹が良からぬことをしているとも知らずに。

「そうだな、お前が本気で俺の事を好きだっているのなら、他の奴からも、神からも守って俺だけも物にするさ」

 首にくっついていたひかりを前に移動してきた前から抱き着いてきた。

「ひかりの事を好きって言わせるから覚悟していてね!」

「ご飯できましたよ……どうかしましたか?」

「お姉ちゃん、ひかりもお兄ちゃんの愛人になるんだよ」

「へぇ!?」

 エプロン姿の祐理はひかりの発言に驚きながらも何処か、納得した顔している辺り予想してたのか。

 

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 祐理の家で夕食をご馳走になって帰ってきて部屋着に着替えてお風呂の準備をしているとリリアナとエリカがやってきた。

「どうした?」

「主に至急お耳に入れたいことが」

 リリアナは何処か焦っているような感じだが、エリカは焦っている様子はない。

「プリンセスアリスの予言の事か」

「主!どこでそれを」

「ほら、言ったでしょリリィ。どうせ日本の魔術結社か獣群師団から連絡があるわよって」

 ほらね、とリリィの肩を叩いているエリカ。

 リリアナとエリカを中に入れて。冷蔵庫で冷えたお茶を渡すと、リリアナは一気で飲み干した。それだけ急いでいたってことか。

 

「じゃあ、私は帰るわ。家にアリアンナが待ってるし」

「アリアンナ?」

「私の従者よ、リリアナでいうところのカレンかしら」

 ああ、そいうことね。

 エリカの従者も一緒に日本に来てるのか。そういえばカレンは日本に来たのかな、でもリリアナ料理も出来るし一人でも大丈夫か。

 

「リリィはどうするの?」

「私は……」

「泊まりたければ泊まればいいさ、服なら俺のを着ればいいし」

「いえ、そいうことではなく…その…えっとですね」

 俺と目を合わせないようにあらぬ方向を向きながらモジモジしだすリリアナ。

 なんだ、家を買ってないとか、そんなパターンなのか。

「私は騎士として主を守る為に一緒に此処に住みます!」

 は?一緒に住む!

 ……あれ、でもイタリアと対して変わらなくね。朝から晩まで一緒の部屋に居たし、一緒のベッドで寝てたし、お風呂も入ったし、性行為もしたし。何を恥ずかしがる必要があるんだ。

「部屋も空いているし別にいいけど、リリアナ荷物は?」

 手ぶらで来たし、着替えを持ってる様子もないし。

「はい、一時的にエリカの家に置かせてもらっています」

「それじゃ今のうちに取りに行って来なよ、部屋の用意をしておくからさ。帰ってくる頃にはお湯も沸いてお風呂に入れるだろ」

 どうせ両親が使っていた部屋や物置代わりになっている部屋もあるから一人増えたところで関係ないしな。

「はい!今すぐ取ってきます」

「ちょっと、リリィ!もう、私を置いていくなんて失礼しちゃうわ。にしてもいいのかしらリリィを家に置いて」

 一人で先に家を出ていったリリアナを追うのかと思えば、なんだかんだていまだにエリカは立ち上がることもせずにお茶を飲んでいる。

「問題ないさ、どうせこの家に一人だ。偶に祐理も来るけど、あいつは家の事もある」

「なら、私が此処に住みたいって言っても住まわせてくれるのかしら」

 四つん這いになりながらジリジリと胸を強調して近寄ってくるエリカ。

「拒否はしないさ、俺は別にお前の事を嫌ってない。好きかって言われるとまだわかんないけどな」

「フフ、そういう素直な所は私、好きよ。だからリリィも、貴方の傍に居たいと思えるのかもしれないわ」

 一人で納得した顔をしているエリカだが、一つ勘違いをしている。

 そもそもリリアナを騎士として仕えさせるつもりは最初は無かった。

 あくまでも魔術について詳しい部下が一人か二人入ればよかったのだ、ヴォバン侯爵の一件でいきなり数十人ほど俺の庇護下に入って。名前だけでも作れば襲われないだろ、と獣群師団が生まれた。そこからは一人歩きならぬ、一結社歩きだ。 

 いうなれば、獣群師団は元は生贄とされた彼女たちを保護する為だけの名前だけの結社だった。それが構成員があれや、これやと俺の知らないところでやっていくうちに大きく育ったわけだ。

 俺が手を出したのなんて数えるほどしかない。恩人である俺に尽くし、俺の為にと気を利かせて色々やってくれてるだけだ。

 確かに儀式が原因で魔術を使えなくなった者、元所属していた結社に戻れなかった者もいた、それでも他の結社に行きたければ行けばいいと最初に伝え。束縛はしてこなかった。それはリリアナも、祐理も一緒だ。

 彼女たちが自分で俺の元に居ることを選び、俺はそれを受け入れ。今は俺が彼女たちを離さないだけだ。

 

「そうだな。なら、お前が俺の傍に居たいと思えるように、俺は頑張って神殺しをしようかな」

「そうね、頑張って欲しいわ、私の魔王様」

 誰にも知られない二人っきりの会話を俺とエリカはリリアナが帰ってくるまで楽しむこととなった。




次回はリリアナとRの予定です。
それか、アテナ戦まで行っていっちゃった方がいいかな。
 
アテナ戦はウルスラグナ戦と違ってちゃんと書くつもりです……多分。一応アンケートだしておきますね


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誓った主従と服従

 リリアナと入れ替わりでエリカは家へと帰り。

 空いている部屋へとリリアナを案内して、リリアナが荷物の整理をしている間に俺はお風呂に入ることにした。

「まさかリリアナが家に住むことになるなんて」

 長期の休みは向こうで過ごしたから別に珍しく違和感もないけど、その時はカレンや獣群師団の構成員も居たから二人っきりという状況はあまりなかった。

「親が使ってたダブルベッドがあるけど、布団は押入れに入れっぱなしで使える状態じゃない。今度の休みにリリアナの茶碗かコップとか必要なもの買ってこないといけないな」

 お風呂から上がると整理が終わったリリアナは制服からいつか見た私服に着替えていた。

 

「リリアナ、お風呂空いたから入りな、洗面所に未使用に青のバスタオルが置いてあるからそれ使いなよ」

「分かりました、お風呂頂きます。あとカレンから主宛に荷物を預かっていますので確認しておいてください」

 机の上には茶色の紙袋が一つ置かれている。

 カレンが俺に荷物か珍しいな。

 濡れた髪をタオルで拭きながら、紙袋から中身を取り出すとその正体は小説。別段珍しくもない普通の単行本だが、問題はその本の種類だ。

「…何故に官能小説と恋愛小説しかも結構アダルティ?」

 合計で五冊の小説にカレンが入れたであろうメモ紙が一枚入っていた。

 折られたメモ紙には、『リリアナ様が購入した官能小説と同じものを入れていきます。プレイにお役立てください』と書かれている。リリアナ…お前の買い物はカレンに筒抜けみたいだぞ。趣味の恋愛小説を書くこともバレてるし。

 苦笑いしながら適当に手を取った一冊を髪を拭きながら適当に流し読みしていく。

 内容は至ってシンプルな恋愛小説。

 主人公の女の子を助けた男に恋心を抱いた女の子が男のメイドとして屋敷で雇われて、夜になると男にご奉仕をする。そして問題が起こった時は男を支えて共に問題を解決する普通の話だ。

 どこか俺とリリアナにも似てなくもないけど、ここまでラブラブしてるか?……してるか。他のはどうだろ。

 別の小説をてにとって開くと種類は官能小説。それも結構ハードなものらしい。

 主人公の女の子が自分を買った男に毎晩調教される話。

 縛られたり、玩具で遊ばれたり、裸で夜の公園を散歩させられたり、撮影しながらしたり、複数と行為したり、リリアナってド定番の恋愛ものが好きじゃなかったけ。

 

「お風呂ありがとうございました、主。何を読んでるいるのですか」

「ん、これか。これはカレンからの荷物だよ」

 本の表紙を見せるとパジャマ姿のリリアナが固まった。流石に自分が買った官能小説と同じものを他人が持っていたら驚くだろうな。

「珍しいなお前がこんな本を買うなんて」

「それは、その…主との行為が、そのマンネリ化しないように、カレンに進められまして…」

 …犯人はお前かカレン。

 呆れと同時によくやったと思いつつ、いつの間にか隣に腰を下ろしたリリアナから香るシャンプーの匂いと発情する雌の匂いカンピオーネとなって強化された嗅覚は容易に感じとった。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

リリアナside

 

 

 まさか私の買った小説が主にバレるとは、といかカレンめまたやってくれたな!恋愛小説だけならまだよかった。官能小説の方は内容がハードなのもあるというのに。……別に主との夜が満足出来ないとそういうわけではない、優しくしてくれて、キスだって好きだし好ましい、それに…その、せ、セックスも嫌いではないが、本来なら私が主を気持ちよくさせて奉仕するべきなのに、私ばっかりが満足してしまっている。

 その点、小説は参考になる。

 メイドが朝、主を起こして朝のご奉仕をしたり、朝食をあーんと食べさせたり、口移ししたり、色々している。勿論、騎士として扱ってくれるのは嬉しい限りだ、だが、やっぱり女としても扱って欲しい時もある。

 

「なあ、リリアナ」

「は、はい!」

 物思いに耽っていると主から突然、声が掛けられ、私は慌てて返事を返した。

「お前、発情してる?」

 ッ!小説の事を考えているうちに私は興奮していたのか、しかも主の隣で!いや、確かに考えだすと止まらないが、まさか、そんな…胸に手をおいて体に集中すると理解してしまった。

 汗ではないものでショーツが濡れていることに。なにより、胸が熱く、隣にいる主が恋しい。じわー、と胸に甘いような感じが広がっている。それが主の嗅覚には容易に嗅ぎとることが出来のだろう。

 

「……はい、してます。主が私の小説を持っていて、その主が小説の内容を私にするんじゃないかって思って…その…期待しました…うぅ」

 そっか、と言うと主は私を主の開いた股の間に座らせて、両腕で私の体を強く抱きしめてきた。

 熱い、私の体が熱いのか、それとも主の体が熱いのか分からないけど、熱い。

「なら、小説に習って今日はリリアナを虐めるとしようか」

 主の左手はシャツの中に、右手はショーツの中に侵入し、優しい手付きで肌を撫で時には爪で軽く擦ってくる。二つの刺激に反応して私は体を捩るが、主の太い腕に抱かれてまともに動くことすら出来ない。ただ、主の与えてくる刺激に、快楽に悶える事しか出来ない。

「ふぁっ、あっ❤あっ❤やっ…」

 お腹を撫でていた右手は緩やかにズボンを脱がしショーツを中へと入り込み、既に体の熱気でしっとりと湿っているおまんこを攻めてきた。

 にちゅっ❤にちゅっ❤と二人しかいない家の中に卑猥な音が響く。

「折角だから、指でいっぱい絶頂させてあげるよ。リリアナは何回でギブアップするかな、あむ」

「ひゃ!ある、じ、耳をかま、ひぃ!舐めでください」

 おまんこの中で二本の指が動き、左手は私を抑えつつ乳首を撫でたり、つまんでくる。加えて耳も甘噛みされたり、舌で中をなめられ頭に直接、じゅるじゅるという音が響いてくる。三点を同時に責められて逃げようにも逃げられない快楽の地獄にリリアナは涼が満足するまで玩具のように遊ばれることしかない。出来る事と言えば、喘ぎ声をあげることと絶頂するのみ。

 

 

 

「あっ❤あ❤あっ❤、イクッ!イっちゃいます!ふぁあぁああっ❤❤」

 足先まで伸ばして、絶頂している最中も涼の手は止まらない。寧ろ、絶頂している最中にこそ強く攻めてくる。全身を震わせて、いじられる手によって常に軽い絶頂をして、強く虐められば深い絶頂をするのを無限に繰り返し続けていた。

 常に視界はフラッシュ。ただ、叫んで絶頂して、主の気分によって攻め手が軽くなったり、強くなったり、小説に出てきたメイドがご主人様の玩具にされている光景と酷似していた。

「あるじ、手とめで。イッら、イひました…から手、とめれくらざい…あ゛っ…かは」

 動き続ける涼の手を止めようとリリアナは涼の左腕に腕を絡めて引きはがそうとするが、絶頂しているリリアナにそんな力が出せるわけもない。

「むひ、無理です、あるじ……」

「ほら、お前の買った小説に倣って言うセリフがあるだろ?それが言えたら今日は許してやるよ」

 耳元で囁く主の声が茹だった頭に麻薬にように響く。

 もし、主の言うように小説に出てきたメイドが言うセリフを口にしてしまえば私は騎士としてだけではなくメイドのように、奴隷のように、雌のように主に支配されることになる……主は私にそうなるようにと言っているのだ。

 差し出せと、騎士としての忠義だけではなく。女としての全てを差し出せと。

 きっと、口にすれば戻れなくなる。

「言わないならこの後もずっとこのままだな」

 その言葉に揺らぐ、口にすれば解放される。なにより遠からず望んでいたことだ。

 仕える主に全てを捧げらるようにと望まれている。

 

「……私の、リリアナの全てを捧げます、主」

 言った、言ってしまった。

 宣言に反応してなのか、首に熱が走る。

「お前の首にお腹についている淫紋と同じように消えるけど効果は違う。お腹の方はストックした魔力量を見るためのもの。捧げた証だ」

 子宮の上に浮かび上がる淫紋は愛の証。

 首に浮かび上がる淫紋は全てを捧げるという主従と服従の証。

 この瞬間、リリアナは涼に雌と肉体も精神も魂すらも捧げた、その証が首の首輪型の淫紋だ。

「首輪の淫紋は服従の証だ。リリアナこれはもう消えない、お前は騎士としてだけじゃない女として、雌としても俺のものだ」

 全てを捧げてしまった、もう後戻りはできない。

 騎士としてあるまじき行動をしておきながら私が子宮は疼いている。

「はい、主。リリアナの全ては貴方のものです」

 



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女神アテナ

 学校を終えるとエリカから話があると聞いたので、俺とリリアナと祐理は、祐理の家でもある神社に集まった。エリカはカバンの中から人の顔が彫られた石製のメダルと取り出すとメダルについて説明を始めた。

「これはイタリアから持ってきた神具の一種よ。ゴルゴネイオンと言って最近になって呪力を溜め込みだしたの。ある魔女が霊視したところ女神の姿を見たらしいわ」

 手渡されたメダル、ゴルゴネイオンに視線を落とすと呪力が溜まっているのは肌で感じ取れる。そしてコレを追って女神が日本に近づいてきていることがカンピオーネとしての本能が感じ取った。

「そんなもんを日本に持ってくるなんて何を考えているんだエリカ!?」

「そうですエリカさん!日本で王と神の戦いでもなさるおつもりですか!」

「私としても他の手を考えたわ、それこそドニ卿に戦ってもらうっていう手もね……でもあの方は現在、いつもの行方不明状態、探している間に神具は女神の手に渡ってしまうわ」

ドニは誰にも告げることなく気のままにふらりと出掛ける習性というか、習慣のようなものがある。置き手紙でも残せばいいのに、何もせずに行くのでイタリアの魔術関係者はドニが消える度に足取りを毎回追うことになっている。そして、今回は運悪く出掛けてるのと神具の活性化が重なってしまったようだ。

 

 

 エリカから受け取ったゴルゴネイオンに視線を落とすと、ゆっくりと感覚が神との戦いに適したものに変わっていく。体が、本能がまつろわぬ神との戦いを予期していた。

「祐理、悪いけど霊視を頼む」

 はい、と渡したゴルゴネイオンを両手で持ち、目を閉じた。体の周りに目に見えずとも感じる呪力。

「再生を繰り返す蛇は不死の象徴。大地の恵みと死を諸共司る、大いなる母の系譜に連なるもの。夜の瞳、銀の髪を持つ女神、その位と齢を剥奪され故に幼く、故にまつろわず。その名は―――アテナ、きゃ!」

 女神の名を口にするとそれに反応するようにゴルゴネイオンは紫色に怪しく光り輝いた。驚いた祐理はゴルゴネイオンを地面に落としてしまったが、欠けるようなこともなく寧ろ、メダルの異質さが増した。

 祐理の霊視を通して、アテナはこっちを見た。つまり、此処にゴルゴネイオンがあると見つかったってことだ。

 

「……甘粕に連絡して戦える場所を用意させるか」

 ポケットからスマホを取り出して、電話帳から甘粕の名前をタッチして連絡する。これから王と神の戦いが始まることを。

 電話でまつろわぬ神が近づいている事を伝えると、都市部から離れた港近くを市民を避難させて戦える場所を用意してくれるそうだ。

 

 スマホをポケットにしまうと、心配そうに俺を見つめる祐理とリリアナ。エリカは不適に笑っていた。

「リリアナ、祐理はこのまま待機しろ、エリカは俺とついてこい」

「主、なぜ!私ではなくエリカを」

「エリカ、お前、俺がまつろわぬ神と戦う様に誘導したろ」

 そう笑うエリカに告げると、えぇ、と、悪びれる様子もなく頷き。彼女が肯定した瞬間、祐理は俺を守る様に前に立ち、リリアナは素早く愛剣のサーベル、イル・マエストロを出現させてエリカの首に突きつけた。

 

「どういうつもりだエリカ、まつろわぬ神を誘導するなど!」

「そうです、エリカさん。納得できる説明をしてください!」

 エリカは二人の言葉に分かったわ、話す、と言ってどういう思惑があるのか正直に語った。

「涼はまだカンピオーネになってから短くて、権能も黙示録の獣、デメテル、ウルスラグナの三つしかない。それじゃ、きっとこれから先困るわ」

「だから、俺が権能を手に入れるチャンスを増やすためにまつろわぬ神を誘導したのか」

「勿論、最初はドニ卿に戦ってもらうのがイタリア全域の総意だったわ。でもいないんだもの。誰に変わりを頼むとなれば、最終的には一番まともな涼に白羽の矢が立ったのよ。だったら、私が仕える主が強くなるために下準備をするもの悪くないでしょ」

 エリカが言っていることも理解できる。

 カンピオーネの強さが権能に依存するわけでは決してない。それでもまつろわぬ神によっては権能が封じられたり、ウルスラグナのように神格を切り裂く力によって権能が斬られることもある。そんな時、別の使える権能があればそれだけ勝率を上げる事が出来る。エリカはそれを考え、行動に移した。

 結局は俺の為に動いてくれていた。そんな理由があると、怒るにも怒れないがそういうわけにもいかない。

 

「はぁ~、エリカは俺と一緒に来い。リリアナと祐理は編纂委員会の手伝いをしてやってくれ」

 

 

 

 

 

 迎えに来てくれた甘粕の車にリリアナと祐理を乗せて、俺はエリカの従者、アリアンナが運転する車で編纂委員会が用意しておいてくれた港近くの空き地に車で移動していた。

 後部座席にエリカと並んで座っているとエリカから会話を切り出した。

 

「怒らないのね」

「お前が俺に相談なく動いたことをか」

「リリアナや祐理のリアクションが普通でしょ。なのに貴方は怒らなかった」

「獣群師団の構成員は俺の事を思って偶にやらかすから慣れてるよ。それでもお仕置きくらいはしないとな、アテナの情報を教授の術で俺に教えてくれ。今はそれでよしとしてやる」

「ふふ、いいわ、貴方を受け入れてあげる。んちゅ」

 顔を互いに近づけて、唇を重ねた。

 柔らかく、ぷるっとした潤いのある唇を堪能する。エリカは震えていた。

「キスは初めてか?」

「……初めてよ、文句あるかしら」

「いいや、お前の初めては全部俺が貰う予定だから気にするな。ほら、舌出せ、教授の術を続けるぞ」

恐る恐る舌を伸ばしてくるエリカの舌を俺は自分の舌を器用に動かし絡めとる。

んぅ、と声を漏らすが離すようなことはしない。術が途切れてしまうし、それにいつもの強気なエリカがこうも弱さを見せるのは少し興奮もする。

 

「んぅ、ちゅ…じゅるぅ、ちゅぱ…ぁはあ」

唇を離すと荒い息をしながら俺を見つめてくるエリカ。

「は、初めてなのに激しすぎるわよ……」

「それくらいじゃないとお仕置きにならないだろ。戦いが終わって帰ってきたら夜は別のお仕置きだからな、覚悟しろよ」

そうエリカに告げ、再び唇を塞いだ。

 

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 目的地の港近くの空き地に到着する頃には後部座席で横になり、キスのし過ぎでキャパシティーオーバーになったのか、顔を腕で隠して白い肌を赤く染めて肩で息をしていた。

 運転しているアリアンナもキスしている光景をバックミラー越しに覗いていたらしく、顔を赤くして素早く去っていった。

 キスだけであれなら夜の反応が楽しみだな。

 

「来たか神殺しよ」

 空き地の中心には女子高生らしき制服に、猫耳がついたニット帽を被っている女の子がいた。

「…えっと、アテナで合ってるよな」

「然り、妾はアテナ」

 なんか、想像と違うな。いや、神相手に常識とか説くのも無理があるし、まつろわぬ神の姿なんて当てにするだけ無駄か。

「汝は妾が求めしゴルゴネイオンを持っているな」

 やっぱりある程度の位置はつかめるのか。

 ポケットに入れていたゴルゴネイオンを取り出すと、アテナの闇色の瞳を蛇が獲物を狙ったように俺を捉えた。

 

「それを渡せ、神殺しよ。妾は本来あるべき姿を取り戻さねばならん」

「……一つ賭けをしないか」

「賭けとな?」

「ゴルゴネイオンを吸収したお前に勝ったなら、お前は俺の物になれ!」

「ほう、この女神アテナを欲するか、強欲な神殺しだ」

 面白いとばかりに笑いうアテナ。

「ゼウスのように嫌な雰囲気は感じられない、やはり英雄色を好むというやつか。いいだろう、お主が妾を討つことが出来たのなら妾はお主を受け入れよう。強き戦士としても、夫としてもな」

 賭け事が成立したところで手に持っていたゴルゴネイオンを投げ渡すと、アテナの手に収まったゴルゴネイオンは物体から形を無くして呪力に変わり、アテナの体へと吸収されていった。紫色の呪力がアテナを包み、カンピオーネの直感がまつろわぬ神の存在を強く感じ取る。

 それによって無意識に体に力が入る。

 アテナを包んでいた紫色の呪力が解けると、そこにはさっきまでの制服姿のアテナではなく、白い服着ており、短かった銀髪はロングに変わっていた。なにより感じるのはまつろわぬ神としての存在力。カンピオーネの仇敵。

「さあ、始めようか、アテナ《滅び時は来た、穢れし世界。混沌をもって全てを無に帰す。この牙、この爪は世界を殺す、我は獣なり》」

 『混沌獣』の聖句を唱えると右腕全体に黒と赤の入り混じった怪物の腕が現れ、アテナも対するように闇から蛇の形を模した鎌を生み出し構えた。

 始まるのは、カンピオーネとまつろわぬ神との戦い。

 獣と蛇の戦いだ。

 



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切り札

 子供の姿から大人の姿に成長、いや本来あるべき姿に戻った女神アテナ。その手にある鎌が俺を切り裂くために振り下ろされる。

 鈍く銀色に光る鎌が迫ってくるが、腕で弾き返す。

 そこから始まったのは怒涛のラッシュ。

 鎌という独特な形状の刃は攻撃を躱すにしろ、防ぐにしろ戦いづらい。なにより戦いなれているのかアテナの動きには無駄がない。

 対して俺は人の頭を握り潰れるほど大きくなった腕は体の重心は右に偏り、動きよりも威力を重視したもの。当たればカンピオーネだろうと、まつろわぬ神だろうと傷つけ、倒す為の一手になりもするがそれも当たらなければ意味がない。

 防御に関しては問題なくとも攻めきれない。

「どうした神殺しよ!防戦一方だぞ!」

「あぶな!」

 凄まじい勢いで振り下ろされる鎌を紙一重で躱すと刃をコンクリートの地面を深々と砕き、刃の半分ほどは地面に突き刺さっていた。

 その隙に、アテナに向かって蹴りを繰り出すも鎌の柄によって防がれる。

「なんとも戦士とは言い難い戦い方だな」

「生憎とこちとら獣で、っね!」

 右腕を大きく振り下ろしアテナに攻撃を与えると、防がれたがガードの上からでもアテナを吹っ飛ばすことが出来た。防がれてもアテナを吹っ飛ばすことが出来たということは防がれなければ十分なダメージを与えることが出来るってことだけど、流石に相性が悪すぎる、作り変えるか。

 俺の意思に従って右腕全体を覆っていた黒と赤の入り混じった怪物の腕は消える。

「なんだ、もう戦うのは終わりか?」

「そんなわけないだろ、新しい武器を作るんだよ」

 集中しろ、いま必要なのは威力じゃない。攻撃を防ぎつつ確実にアテナにダメージを与えられる武器。けれど鎌の攻撃に負けるようなものじゃ駄目だ。防御も威力も速度もバランスの取れたものが必要だ。

 右腕だけを覆っていた黒と赤のオーラは半分に分かれ、片方がそのまま右手に留まり。もう半分は左手を覆った。

 半分に分かれてことで最初の腕よりも変化する範囲は小さくなり指先から肘までしか変わっていないが、両手が武器へと変わる。

 『混沌獣』はライオンやトラといって普通の獣からペガサスやセイレーンといって霊獣や神獣のサンプリングをして、自身の血肉を媒体に顕現させる。その時、顕現させる獣を合成させることでキメラを生み出すようにあり得ない生物を生み出すことも出来る、どんな状況にも適応した肉体を生み出す。

 

「器用なことだ」

 鎌を振り回して再び構える。

「そんじゃ、第二ラウンドと行こうか!」

 俺も両手の腕を構えて、アテナに飛び掛かる。

 

 

 

 

 

 上、下、右、左と襲ってくる鎌を躱すか防いで直撃を避け、俺も攻撃を繰り出す。

 その攻撃は互いに凶器を手に持ちながらダンスを踊るように戦っているようにすら見えた。

「全く鎌なんて戦いずらい武器を使いやがって」

 鎌の歪曲した独特な形状の刃は躱すにも大きな移動が必要になる、しかも柄が長いことからギリギリで躱そうとするとアテナは僅かに柄を持ち替えて振る範囲が大きくなってギリギリで躱そうものなら斬られることになる。

 ドニの魔剣も厄介だけどこっちは武器の性能じゃなくて形状が面倒だ。 

「ならば、こちらの方がよいかな」

 指をくい、と上げると地面を砕いて出現した大蛇。首をしならせ、俺を食おうと大口を開き真っ直ぐに襲い掛かってくる。

 素早くジャンプして躱すと大蛇の牙はコンクリートを容易く砕き、すぐさま空中に居る俺へと牙を向けてきた。 

 下から掬い上げるように押しかかってくる大蛇の顎に回し蹴りを繰り出す無理やり方向転換させて回避と攻撃を同時に行う。

「ほう、空中でも躱すか。ならば数を増やすまでだ」

 アテナの宣言通り、先と同じように地面を砕いて大蛇が三匹出撃。合計の四匹の大蛇がいることになる。

 一匹でも面倒だってのに四匹に増えやがった。

 一斉に突撃してくる大蛇を躱していくが、大蛇の巨体によって視界が遮られて瞬間、隙を突かれて背中からアテナの鎌の刃が走る。

「っつ!」

「妾から目を話すとは浅はかだぞ!」

「わざわざ近くまで来てくれてあんがとよ、蛇と一緒にこれでもくらえ!」

 両手を振り下ろすと同時に俺の全身から白く光る電気を放出した。

 バチィ!バチィ!と音をあげながら周辺にいるアテナ、大蛇の全身を電気が駆け巡った。

 アテナに対しては威力は劣るだろう、だが召喚したとはいえ大蛇も生物だ。電気というのはどんな生物においても等しく弱点となる。

 

 頭から尾まで感電した大蛇が全身から湯気上げ、所々を焦がし地面に伏した塵となって消えていった。

 アテナも少なからず電気を受けたのか白い服の裾や肌が若干、黒く焦げている。

「雷、いや電気か」

「デンキウナギだよ、体内に発電器官をもつ数少ない生物の一種だ。至近距離じゃないとまともに使えないがこういう時は便利だよな」

 背中から流れていた血も既にカンピオーネのスペックにより止まっている。

「これである程度は最初の状態だよな」

 とわいえ、デンキウナギは再使用に時間が掛かる、この戦いの最中には使えない。どっちにしろ手札の一つを使っちまった。他にもあるにしろこのままだとジリ貧のままいって負ける。

「一つ切り札をきろうか、《我は言霊の技を以って、世に義を顕す。これらの呪言は強力にして雄弁なり。勝利を呼ぶ智慧の剣なり》」

 虚空から抜き放たれて黄金の剣。

 数週間前に軍神ウルスラグナから簒奪し、のちに『黄金の智慧(ゴゥルド・ウィズダム)』と名付けられこととなる権能を発動した。それと同時に発動していた『混沌獣』は自動で効果が無くなり両手も素肌が晒される。

 どうもこの二つの権能は相性が悪いらしく。

 手に握る黄金の剣よりも一回り小さい剣が生まれ、空中に漂うっている。

「黄金の剣とはまた奇妙なものを」

「ただの綺麗な剣だと思うなよ。貴方は蛇と関わりの深い女神だ。アテナとメデューサは元々同じ起源を持つ蛇の女神。恐ろしい蛇に知縁する智慧の女神。古き地母神だった」

「言霊を使うか」

「大地の恵みを司る女神はただ優しいだけの女神じゃない。春に生まれて命を冬には奪い、気まぐれで天災を起こし作物を枯らす生命と死の女神でもあった。地母神となる女神は総じて狩猟や森との関連があり、時には狩猟や森の女神に地母神という側面が与えられることもあった。これらは農耕文化が発達した時期に周期的な季節の変わり目が色濃く出た土地で多く起こったことだ」

 口にした言霊に従って黄金の剣たちはアテナに向かって飛んでいく。

「不快だぞ!忌まわしき過去を思い起こさせてくれるな!」

「死の神であるアテナは梟にも化身する。夜と冥界を渡る鳥、闇と死の支配者。大地母神の蛇、冥府の鳥、女の叡智、この三位一体がアテナの最も古い形だ。かつて貴方は翼持つ蛇の女王だった」

 止まることなく口にする女神アテナの過去についての情報。

 それに伴ってアテナからの反撃は激しくなっていく。鎌を弓に変え、止まることなく飛んでくる矢を黄金の剣で斬り落とす。

「アテナはもともとゼウスの娘じゃなく神々の女王、生命と死を司る偉大なる女神にはそれが相応しい地位だった。でも女王への謀反が起きた。ゼウスを始めとする男の神たちが反旗を翻し、成り上がり新たに神々の王となってしまった。神話は書き換えられ女王は、王の娘となりメデューサは魔物まで貶められた」

 古来は王という存在の文化は存在せず。女性と男性は平等、そえぞれ与えられた仕事をこなしていた。それが文化が発達し国になってことで王が生まれ、王となるのは男性だという女性を支配することが文化となった。その影響は神話にまで及び、神話の王のゼウスつまり男性に王権が移ることとなった。

「翼ある蛇の女王はこうして蛇の姿を失い、ただ美しいだけの女神になる。地母神としてのアテナの蛇はやがて別の怪物として語られるようになる翼ある蛇つまり竜として。神話の中で倒される邪悪なる竜はアテナのような敗北した地母神を貶めた姿だ、没落したかつての女王。アンタの神格斬らせてもらうぞ!」

 両手に握る黄金の剣で一太刀、アテナへ与える。

 

 『黄金の智慧』の力は神格を切り裂く刃。

 対象となる神についての知識を言霊として口にすることで、剣を作り出し神格を切り裂く。神には複数の顔がある。アテナならいま口にしたように地母神という古き姿以外にも、都市の守護神としての姿、智慧の女神、戦女神という戦略を司るなど多くを司っている。剣で切れる神格は一つだけ、仮に蛇の力を強く行使する地母神としてのアテナを切ったしても戦女神などの別の側面は消えないつまり………戦いは終わってない。

 

 

「まさか地母神としての妾の神格を斬るとはな、一手足りぬぞ!」

 ヒュン、と振り下ろされる鎌を輝きを失った黄金の剣で防ぐ。

「《我は愛を誓いし者がいる、我の帰りをも待つものがいる。心が繋がる限り我の愛は永遠なり》」

 ウルスラグナとの戦いの中で見つけ出したデメテルの権能『愛する者に愛を』の新しい力。

 この権能の中心にあるのは”愛”。俺から誰かにというものが魔力の譲渡や加護という形に現れていただけ、誰かから俺への愛は別の形で効果を発揮する。

「我が翼、幻影の刃を成す鋼よ。――イル・マエストロ、我に力を!」

 いつかリリアナが叫んでいた言葉と違わぬ言葉を口にすると輝きを失った黄金の剣の代わりに右手の中に現れたしたのは、俺の騎士リリアナ・クラニチャールのサーベル型の愛剣―――イル・マエストロ。

 

 イル・マエストロを構え力強い一歩を踏み出して繰り出した突きは、防御しようとした鎌の柄を弾きそのままアテナの肌を切り裂いた。

「っく!まさか剣を呼び出し、あまつさえ攻撃を受けようとは」

 肩に傷を負ったアテナは後ろへと下がり、血が染み出る肩を手で押さえる。

 ただの剣、いやいくらリリアナが使うイル・マエストロでも神を傷つけることは普通なら出来ない。可能だとすれば魔剣や聖剣の類か、同じ土俵に立つ権能によって生み出された武器か強化を受けた武器、呪詛や特別な素材を使って作り出した武器でなければならない。イル・マエストロにはそのどれにも当てはまらないが傷を与えられる。

 イル・マエストロには『魔曲』という旋律を奏でる力が備わっている。聴く者の心を乱し怪しき曲、呪力を減衰させる魔曲、体力を奪う魔曲、幻覚を誘発する魔曲、と様々な魔曲を奏でることが出来る。だが、それは人間には効果を発揮してもまつろわぬ神にまでは届かない、ならば足りない分は『混沌獣』の力でセイレーンの歌声で足りない分を埋めることでまつろわぬ神にまで届く刃とした。

「流石に魔曲の効果がすぐに出るわけじゃないが、聞けば聞く分だけ後から効果が現れる。なにより神に傷を与えられる武器ってだけでも十分だ」

 一度は軍神ウルスラグナに留めを刺した使い方だ。神に届くことは証明されている。

「まさか、妾に届く刃が愛の力とは!」 

「そういうこった……さて、アンタを倒せる力があることは証明できたんだ一気に行かせてもらう」

 

 

 

 

 鎌と剣が衝突する度に火花が散って暗闇に明かりを灯す。

 さっきとは打って変わって直感に頼りにイル・マエストロを振る。

 『黄金の智慧』の効果が無くなったことでアテナと斬り合う為に『混沌獣』の黒と赤のオーラを脚に纏わせ移動強化。ブーツにようにオーラを纏うがつま先は獣ように三本の爪が生え、人間の脚とは言い難い形状となっている。

 速度を活かし、格上のアテナと斬り合う。

「流石に貴様も手札が無くなってか!」

「……どうだろうな」

 正直、もう無い。『黄金の智慧』は一日一回しか使えず、残り二つも現状使っている状態で何とか食いついている状態。

 アテナは鎌を振り回し連続し、連続して斬撃が襲ってくる。ウルスラグナは複数の化身との一撃必殺に対して、アテナは威力は劣るながらも連続攻撃。

 こっちも権能の連続使用で体力も呪力も限界に近い。そろそろ本当にまずいか。

「妾の前で考え事とは余裕だな!」

 っふ、とアテナを見ると大きく振り上げた鎌を振り下ろしてくる。

 武器を失うわけにはいかないとイル・マエストロを手放さない為に左手を盾として体を守る。

 刃が一閃すると左手の肘から先がボトと地面に落ち。その隙にアテナの鎌が俺の首に添えられる。

「さあ、片腕で妾を討てるか」

 不適に笑うアテナを見上げ、アテナの目を視線を俺に釘付けにしている間に斬られて地面に転がっている腕を『混沌獣』の力で遠隔操作する。血肉には腕も流れた血も含まれ、そして集まった全てはその姿を変えた。

 静かに漆黒の翼を広げて飛び立った。あとは待つだけだ、時を。

「一応、確認しておく。俺が勝ったらお前は俺の物になるって賭けはまだ有効だよな」

「ああ有効だとも、だがお主にこの状況を打破できる手段があるのか?」

 人間だろうと、神だろうと自分が優位になった時、気が緩むのは変わらない。その時こそ起死回生の一撃が最も有効打足りえる。

「ああ、あるさ!来い八咫烏!」

 腕一本と流した多量の血から生み出された三本の足を持ち、天照の使いとも太陽そのものだとも言われる神獣の八咫烏が大空から真っ直ぐにアテナめがけて降りてくる。

 材料として使ったものが多かったのか伝承での一咫=18センチを軽く超えて全長50センチはあるだろうか。

 八咫烏の飛ぶ軌跡には白く橙の入り混じった太陽の炎が走る。闇のものは総じて太陽に弱く、死の女神の側面が強いアテナも例外じゃない。いままさにアテナを倒せる一撃が降ってくる。

「お主!腕を斬られたのはワザとか!?」

「当たり前だろ、最初に流した血の量じゃ足りなかったからな。それに最初からこれが切り札だ。最初に使ってもアンタを倒すには足りない、だから一撃で倒せるまでアンタの体力を削ればいい!」

 逃げようとするアテナに剣と突きつけ、無理やり移動させないようにする。

「このままだと貴様も巻き沿いだぞ」

「問題ないさ、『混沌獣』の力で俺は耐熱に優れた生物の効果を体に宿す。一緒に太陽の炎を受けても弱点であるアンタの方が先に倒れる!さあ、一緒に日光浴とでもしゃれ込もうか!」

 大きな翼を広げて地上に太陽の炎を纏った八咫烏は衝突。そこを中心に俺とアテナを巻き込んで太陽の炎の大爆発を引き起こした。

 



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日常の一コマ

「アテナの権能による停電であちこちで交通事故などもありましたが犠牲者は無し。神無月さんの最後の一撃によって溶けたコンクリートは隕石が落ちてきて、停電も影響ということで片付けました。建造物などが壊されていないだけいつもより比較的、楽な事後処理でしたよ」

「ご苦労!あむ、このリンゴ旨いな」

 甘粕さんがお見舞いにと持ってきたリンゴをリリアナが綺麗に一剥き。切りそろえたリンゴをフォークで突き刺してあ~んと食べさせてくれるリリアナ。

 

 

「……腕の調子はどうですか」

 甲斐甲斐しく世話を焼くリリアナから肘から先がない俺の左腕に視線を移した。

 八咫烏の材料とした左腕は本来なら元に戻るはずだったが、あまりにも火力を出し過ぎたせいで腕ごと灰となり帰らぬ腕となってしまった。カンピオーネの回復力をもってすれば千切れてた腕なら断面をくっつけておけば治るが、灰になった腕では流石に無理がある。現在は片腕無しの姿で学校に行くわけにも行かず、休みをとって家で『混沌獣』の力でトカゲと蛸の再生力を付加して文字通り生やすことで直すしかない。

 片腕を無くして帰ってきた時の、リリアナと祐理の驚きようは凄まじかった。それにアテナも連れて帰ってきたことで大騒ぎでもあった。また、女が増えたとな。

「大丈夫だろ、生えてくるって。現に昨日より直ってるし」

 昨日より少し伸びた左手を振って直っていることをアピールしておく。

「大丈夫です、主!腕が直るまで、私がお世話します!」

 横でリンゴを乗せて皿を持ってお世話する宣言をするリリアナ。

 キッチンでは、祐理とゴルゴネイオンが抜けて小さい姿になったエプロン姿のアテナが一緒に晩御飯の準備を一緒にしている。

 最初こそ、アテナと距離が分からずよそよそしかったが、いまでは祐理もアテナと友達のように会話していた。

「まさか女神すら女としてかこうなんて……前代未聞ですよ」

「仕方ないだろ惚れちゃったんだ、リリアナに最初に会った時と同じ感じがしたんだよ。それに魔王なんだ好き勝手に生きるさ」

 空いている右手でリリアナの頭に手を置いて撫でてやるとさらさらした銀髪が揺れ、気持ちよさそうに目を細める。指の間を流れていく銀線。

 やっぱり戦いの後はのんびりしたくなる。

 

 きっと彼女たちが神無月さんの逆鱗でしょうね、と仲良く生活している彼等を見て甘粕はそう思う。両親をまつろわぬ神に殺され、仇を取ることで図らずもカンピオーネとなり、リリアナさんを騎士として大人に頼らず一人で戦ってきた彼からすれば正史編纂委員会もあくまでもビジネスの関係でしかない。隠居して権力に胡坐をかいている老人たちが彼の力を欲して、周囲の誰かに手を出したならきっとと躊躇なく滅ぼされる。彼はそれくらいするだろう。

「ほんと、給料が見合わない仕事だ」

「ん?どうした」

「いえ、そろそろ大人はお暇しようかと」

「そっか、リンゴあんがとな」

「そういえば、エリカさんは?」

「エリカならイタリアで今回の一件の報告だよ。原因を作ったんだ最後まで仕事させるさ」

 今回のアテナの一件は、エリカが持ってきたものだ。どうもイタリアでも無茶を押し通したらしく色々と大変らしい。何かあったら『獣群師団』に連絡入れれば上手くやってくれるだろう。

 

「お二人とも晩御飯、出来上がりましたよ」

 リリアナの撫でてのんびりと平日なのに休みを堪能していると、キッチンから聞こえてくる祐理の声。

「神無月涼よ、味わうが良い、妾の手料理を!」

 大皿に山盛りになった唐揚げを持って、昨夜との戦いとは打って変わってなんとも現代に馴染んだ女神アテナの姿がそこにはあった。

 にしても初手料理が唐揚げってチョイスがなんとも。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 数日して左腕は完治。

 久々の学校は前と同じで男子陣からの嫉妬の視線が痛い。

 エリカはいまだにイタリアで事後処理なので、俺はリリアナと祐理の三人で教室で昼食を取っている。

「あむ、流石は祐理の手料理、旨いな」

 祐理から貰った卵焼きを味わう。砂糖が入っているのか僅かに甘く、それでいて出汁の風味が鼻を抜ける。

「主、こっちのほうれん草のおひたしも美味しいですよ」

 あ~ん、と端で自分のほうれん草のおひたしを俺に食べさせようと近づけてくる。

「あ~ん、うん、旨い」

 醤油を味と新鮮なほうれん草のおひたしに舌鼓を打っていると向かい側に座っている護堂が。

「一週間も休んだかと思えば元気だな」

「ああ、ちょっと神様と戦ったから回復に時間が掛かったんだ」

「っは!?いつだよ」

「少し前に電子機器系統が全部停止したろ、それがだよ。腕一本使ってトドメを刺したからな生やすのに時間掛ったんだ」

 ご飯を口に放り込みながら護堂の質問に答えていく。

「結局、戦った女神アテナを自分の女として囲ったではありませんか」

 左に座る祐理が頬を膨らませながらそう口にする。

「そう拗ねるなよ、今度デートでも付き合ってやるからさ、なんだったら最後までするか」

 耳元で囁くと顔を真っ赤にして俯いてしまった祐理。リリアナとは何度も性行為をしてきたが、祐理とはキスで止まっている。いい加減、先に進みたいし、アテナの一件で祐理にも最低でも魔力のストックだけでもしておきたいということもある。こっちに関してはエリカも同様だ、その前にお仕置きを受けてもらわないといけないけどな。

 

 

 

 

 

 学校を終えていつもなら真っ直ぐに家に帰るところ今日はデパートにやってきた。俺の家に住むことなったリリアナとアテナの使う食器やら個人用品を買うためだ、いつまでも客用の物を使わせておくわけにもいかない。

 アテナは家に電話してデパートに行くことを伝え、迎えに行くと言うと一人で来れるというので待っていると本当にやってきた、スマホを片手にな。数日前に渡したスマホを存分に使いこなす現代に順応した女神様が誕生していた。

「随分と使いこなしているようで」

「うむ、このスマホというものは便利だ。特にゲームが面白いぞ!」

 アプリゲームを起動して画面を俺に向けてくるアテナ。

 画面にはアテナそっくりなキャラが剣と盾を持ってモンスターと戦っている。プレイヤー(都市守護神)VSモンスターというシュールな組み合わせに微妙な気持ちになりながら良かったな、と言っておく。

 

 四人で食器が並べられている棚を物色していく。

「茶碗にも色んな種類があるのだな」

 アテナは紫色の花が描かれた茶碗を持ち持ち上げて、好みにある茶碗を探していく。リリアナと祐理は二人で食器を探しに行き、俺はアテナを一人にするわけにも行かないので一緒に行動。

「好きなのでいいぞ、自分で使うもんだからな」

 見つけては手に取って、また棚に戻すを繰り返すアテナ。どうも好みに合わなかったらしい。

「う~む、悩むな」

 アテナが一人で悩んでいる間にリリアナと祐理も自分の茶碗と箸、コップを持って帰ってきた。

「戻りました、主」

「アテナ様は随分と悩まれているようですね」

 二人は選んだ食器を俺が持つカゴの中に入れて、茶碗を片手に頭を悩ませているアテナを見て。

「神無月さんが決めて差し上げてはどうですか?」

「そうだな、それがいい。涼よ、お主が決めてくれ」

「そうだな……これなんてどうだ」

 少し上の棚にあった紫色の猫と三日月のシルエットが描かれてシンプルな茶碗を手に取ってアテナに手渡した

「猫耳の帽子と同じ猫だし、なんかこれが良いかなって。どうだ?」

 茶碗を受け取ったアテナは満足したのか、俺が持つカゴの中に茶碗を入れた。笑いながら俺の顔を見上げてくるアテナの頭を撫でるとアテナは気持ちよさそうに目を細め、猫のように手に頭を擦りつけてくる。

  

 その後、アテナの茶碗はシリーズものらしく同じ柄が描かれた箸とコップを購入して、帰り道に入り口で見かけタコ焼き屋でたい焼きを買って食べながら家へと帰っていく。

「たい焼きとは中々、美味だな」

「そうですね、クリームもなかなか」

 アテナは小倉、リリアナはクリーム注文してたい焼きにかぶり付く。祐理は食べ歩きするとご飯が食べられなくなると言って買わなかったが、やっぱり食べたそうにしていたので俺の食べかけのたい焼きを渡しておいた。

「あ、ありがとうございます、あむ」

 顔を赤くしながら食べる祐理に、祐理の食べかけのたい焼きを見つめるアテナとリリアナ。

 人が食べているたい焼きをそんな目で見なくてもよくね。

 神殺し、女神、騎士、姫巫女という物騒な組み合わせで、学生らしい食べ歩きとお喋りをしながら帰る珍しい時間を過ごしながら家へと向かった。

 



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長い夜

 いつもの制服を脱ぎ、いまは寝間着として使っている俺のティーシャツに下着という興奮をそそる格好で俺のベットに横になっているアテナ。

 無表情を保っているが頬は赤く染まり、恥ずかしそうに内股でもじもじしている。

「やっぱり緊張してる?」

「ああ、だが、リリアナにも聞いた。涼と交わるのは身も心も満たされて愛されると。妾もそれを味わったみたいそれに……好きな者と性行為したいというのは女神だって変わらないのだぞ」

 恨めしそうに俺を睨んでくるアテナも、いの状況では照れ隠し程度の効果しかない。

「ほんと可愛いなお前、んむぅ、ん゛うっ」

 アテナの唇を塞ぐ。

 一瞬、体を震わせたが抵抗することなくキスを受け入れた。

 焦らず、唇が軽く触れるだけのキスをして、唇を離すとアテナは名残惜しそうにあっ、と声を漏らした。

「……もっと、んぅ、ちゅる、ちゅぱ、は❤んあっ❤」

 小さい舌を自分から伸ばしてキスをせがんでくるアテナの要望に応えて、舌を絡める大人のキスをしていく。アテナの小さな舌を舌で絡めて、しごくように動かすと次第にアテナの鼻息は荒くなり口の端からは涎が零れていく。

「ぷは、服、脱がすぞ」

 男物のせいでアテナの小柄な体には合ってないサイズのシャツを脱がし、下着だけになったアテナは胸を隠そうとするがその手に指を絡めてる。

 いつもより一段と体温は高く、肌は少し汗をかいているのが触れると分かる。

「あまり見るな、胸は大きくないから」

 隠すことの出来ない胸を気にしてそんなことを言うアテナ。

「気にするな、俺は大きな胸も、小さな胸も好きだぞ」

 絡めている指を解いて、横になっているアテナを後ろ向きに抱き上げ、小さいと気にしている胸に優しく触る。手の平に収まるサイズの胸を揉み、先端のピンク色のぷっくりとして乳首を指で挟みんでくにくにと揉んだり、撫でたる。

「……小さい胸なんて撫でて楽しいのか?」

「そりゃ~な。好きな奴の胸だ、触ってて嫌にはならないだろ」

「……妾だけが見せて触らせるのは不公平というものだ」

 突然、反転してアテナを膝の上に乗せて向かい合う体制になるとアテナの手は俺の下着の中に入って俺の肉棒を触ってくる。小さい柔らかい手が男臭くて、血管が浮かび上がったものを触っていると思うとそれだけでそそる。

 不適な笑みを浮かべて、どこから仕入れた知識なのか慣れて手付きで肉棒を握りゆっくりと前後させる。

「おま、そんな知識何処で手に入れた」

「ふふ、スマホなどという便利アイテムを妾に渡すとは迂闊だったな、智慧の女神が勉強すればそれだけで行動範囲も広がるというものだ」

 細く白い指を巧に動かし、カリの部分を軽く爪で撫でてきたり、裏筋を指でなぞってくる。くすぐったいような慣れない感覚に無意識に体が反応してしまう。

「っく!アテナそれヤバイから。だから…」

「あ…」

 アテナをベッドに押し倒し、俺も着ているものを全部脱ぎ去る、アテナの視線はさっきまで触っていた俺の肉棒に釘付けになっている。アテナは反射的に股を閉じてしまっているが、頭を撫でながらゆっくりと膝から内股を撫でながら根本へ動かして股を広げさせる。

 右手の人差し指をゆっくりとアテナのおまんこの中に入れると、あれだけキスと胸を揉んだだけあって中は熱く、愛液を指を伝っていくほどだ。

 これくらいなら問題ないか。

 少し激しめに指を出し入れするとアテナはんぅく、と甘い声を漏らす。

「りょ、涼❤、ダメだ、あ、ああ、あ゛ぁあ゛あっ❤」  

 限界に達してアテナはおまんこからプシャアと愛液を噴射してシーツに染みを作った。

「はぁ…はぁ…もう、いいだろ、涼。愛してくれ❤」

 両手を伸ばしてくるアテナに従って、俺は自分のモノをひくひくしているアテナのおまんこに当て、腰を前に動かした。

 ずぅぷっ…と先端が中に入ると処女神であるアテナには処女膜に当たり進行は一旦、止まる。

「んッ、大丈夫…一気に来てくれ。っははぁ❤あぁん❤」

 アテナに言われて通り、一息で腰を前に突き出し。処女膜を破ると痛がることなく寧ろ一番奥子宮を突いた快感の方が勝っていたのか喘ぎ声を上げて口を半開きにして膣内は痙攣している。

「入ったぞ……流石に狭いな」

 アテナの小さい体は勿論、中も狭く締め付けはリリアナよりも強い。なにより初めてのアテナは慣れてないから無理は出来ない。

 溢れ出る愛液に混ざって赤い血が流れ、シーツに赤い染みをつけた。

「痛くないか」

「はーっ、はーっ、多少痛むが心地いい痛みは初めてだ」

 嬉しそうに笑みを浮かべるアテナ。

「…悪い、アテナ。俺も限界なんだけど、おまんこがきゅうきゅう吸い付いてきてるし」

「そういう、恥ずかしいことを言うな。もう動いてもいいぞ、妾も涼をもっと感じたい」

「そんじゃ遠慮な、っく」

「うあ゛あ!?」

 アテナの腰を掴んで勢いよく腰を前に突き出し、下腹部が軽く盛り上がりそこに根本までみっちりと詰まっているのが分かる。

 ふか、深い、とアテナは言っているが、その反面、体は愛液をたっぷりと分泌して滑りが良くなり腰の動きがスムーズになってくる。

 腰を動かせばズブッズブッと音を寝室に響かせてアテナも喘ぎ声を上げる。

 一回、一回、子宮口を突くたびにアテナは声を上げて、おまんこから愛液がぶちゅ、と音を立てる。

「アテナ、お前にも権能を使うからな」

「え、権能?」

 強烈な快感のせいでいつもの気の大きさはなく少し意識が朦朧としているアテナに声を掛ける。

「『愛する者に愛を』は俺とのキスや精液を魔力に返還してストックすることが出来る。リリアナは身も心も捧げる誓いを立てたからそれ以上のものが付加されてるけど、アテナはまだそこまでいってないからまずは淫紋を刻むところからな。ちゃんと俺の精液受け取れよ」

「ま、まっれくれ、まだ、ここ、ろあ❤、のじゅんびが❤」

 アテナの両足の膝裏に手を入れて持ち上げる体勢に変えて、一気に激しくしてラストスパートをかける。

「っく、出すぞ、アテナ」

「あ、出してくれ、中に、一番奥に❤」

 

 ―――どぷっ❤、どぷっ❤

 

「あ❤、あ❤、ああ゛~~❤あ゛❤」

 久しぶりのセックスで溜まっていた精液をたっぷりと処女の子宮の中に出し切った。数秒掛けて出し切りアテナのおまんこから肉棒を抜き取るとドプと精液が溢れ出てきた。

 流石に女神であるアテナも限界なのか、口元から涎を垂らして放心状態のまま天井を見上げている。

「気持ちよかったか?」

「…気持ちよかったぁ、涼、愛してるぞ❤」

 そう言い残して限界を迎えたのかアテナを眠りに落ちた。

 俺は一人でアテナを起こさないように性行為の事後処理であるシーツの片付けや、お湯に浸したタオルでアテナの体を拭き、下着を履かせてパジャマに着ていたシャツを着せて部屋を後にした。

 

 

 

 

 

「エリカ~っどうだ?」

 部屋に入ると鼻につくのは雌の匂い。

 さっきまで性行為をしていたアテナの匂いなんて比較にならない強烈な匂いが強化されて嗅覚を刺激してくる。

「んぅ…!❤んぁ…❤りょう、ほどいて…あ❤」

 ベッドの上で両手首同士とふくらはぎと太もも同士を縛るSM用の革ベルトに拘束されてM字開脚しているエリカ。それも目隠しに乳首にはローター、おまんこにはバイブ、アナルにはアナルパールを突っ込んでアテナの性行為している間、約二時間放置プレイをしていた。

 

 俺たちが学校から帰ってきてから少し経過してイタリアから戻ってきたエリカに前に宣言した通りお仕置きをしているわけだ。プレイの情報源はリリアナの持っていた官能小説からもってきた。

「悪いけどアテナとしただけじゃ我慢できないし、まだお仕置きは終わってないぞ、エリカ」



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エリカへのお仕置き1

 玉のようにな汗を流しシーツを愛液で濡らしているエリカ。

 おまんこに刺さったバイブの振動に合わせて中から愛液を流し、アナルがきゅうきゅうとしまってアナルパールの外に出ている指を引っかける部分がアナルの動きに合わせてピクピク動いている。すぐにでも指を引っかけてアナルパールを引っ張り出してやりたいところだが我慢して、先にバイブに手を掛けた。

 

「どうだ放置プレイも悪くないだろ」

「んひぃ!涼、そんな、動かさないん゛ぅ❤」

 バイブを握ってぐりぐりと中に押し込んだり、抉る様に動かすといつものエリカじゃ絶対に出さない声を漏らす。

 

 バイブのスイッチを切り、おまんこから抜くとバイブとの間に透明な糸を引き。バイブを抜き取ったおまんこはバイブを名残惜しそうにパクパクしている。

 さて、イかせる前にアナルをいじるか。

「さてアナルの抜くぞ」

 いまだに二時間の放置とバイブのいじりで荒い呼吸を繰り返しているエリカのアナルに入っているアナルパールのリングに指を引っかけて一つ目の球体を引っ張り出す。

「やっ…待って…っ、ん゛ぃっ!❤❤❤」

 中からゆっくりと顔を出した球体に合わせてアナルは盛り上がりローションと腸液が混ざりあったものでベトベトなったそれが出てくる。ズュポン!と卑猥な音を立てながら一つ目の球体が出ると同時にエリカは声を上げ。体もビクビクと震わせて反応、両手首同士を縛る手錠を外そうと無意識に動いているが言うことの聞かない体はただ悶えることしか出来ない。

 いつもの強きのエリカが玩具一つでここまで乱れる姿を見ると興奮してくる。

「入れる時も凄いけど、アナルは抜くときがたまらないだろ。リリアナにも試した事あったけど、その時の乱れ様は凄かったよ。エリカもアナルにハマるかもな」

「はぁ……それだめよ、涼。お尻壊れちゃう…はぁ❤…」

 口ではダメと言うわりには、さっきの刺激をもう一度味わいたいとばかりに体をもじもじとくねらせている。

 なら望み通りに、もう一度味合わせてやるよ。ただしもっと強いのをな

「そら今度は一気に行くぞ」

「えっ…ぁ…駄目!…一気なんて、お゛っ!?お゛ぉーーー!!?❤❤」

 滑らないようにしっかりとリングに指を引っかけ、一気に引き抜く。ズュルルルという音を上げてエリカの中に残っていた9個の球体は連続して内側からアナルを刺激する。一つでもあの乱れ様だ、9個の球体が連続して引っ張り出される感覚は最初に比じゃない。

 体を弓なりにして陸に上げられた魚のようにピクピクしながら、アナルはぽっかりと口を開けている。アナルパールを入れた時は、ぴったりとしまっていたアナルが少し緩んだようだ。

「随分と派手にイったな。エリカ、悪いけど俺もそろそろ限界なんだ」 

 手足を縛っている拘束を解くと、エリカは俺に飛び掛かってくると押し倒してくる。

「はぁ…もう我慢しないわ。涼のおちんちん入れてよ、おまんこに」

 自分からおまんこを左右に広げて入れて、とアピールしてくるエリカ。いいぞ、と許可を出すと、腰を下ろして根本までおちんちんを飲み込んでいく。入口に先端がくっつくと吸い付き、膣内に侵入していくとエリカの体温で熱く、おちんちんを嬉しそうに締め付けてくるのにトロトロで直ぐにでも射精してしまいそうになるが、俺よりもエリカの方が余裕はなさそうだ。

「エリカ……挿れただけでイっただろ」

「しかたないじゃない気持ちよすぎるんだもの。バイブと全然違うんだから…❤」

 そういうこと言われると嬉しくなるのは俺が単純だからなのか。それとも惚れた弱みか。

 エリカの腰を掴み、待って、と言っているエリカを無視して勢いよく腰を突き上げる。

「ん゛ひっ❤」

 手首を掴み取り前に引っ張る様にエリカを引きながら腰を突き上げる度にエリカはん゛ぃ、う゛っ、と変な声を上げて体を弓なりにのけ反らせて絶頂している。

 中のヒダヒダか肉棒に絡みつき離さず、膣と肉棒の隙間からとめどなく愛液が流れ出て動きが良くなり気持ちよくなって腰の動きも早くなっていく。

 流石にこっちも限界だ。

 エリカを抱え込みベッドに押し倒す。

 密着してエリカが逃げる隙間も作らず、体重を乗せて子宮を潰すくらい強く腰を突き出す。

「イっちゃってる、涼❤、子宮が潰れちゃう❤」

 そういう割には抵抗するようすもなく寧ろ、脚を腰に絡めてくるエリカ。

「ちゅぷ、れろ、ぬちゅ」

「んぅ、れあ❤、はえ❤」

 頬を撫でると物欲しそうに舌を伸ばしてくるエリカ。

 伸ばしてくるエリカの舌に俺は舌を絡めて甘い唾液を味わい。口内に舌を入れるとエリカは唇を重ねてくる。それどころか俺の舌から伝う唾液を美味しそうに飲んでいる。

 我慢できず出そうになった時、ベッドのスプリングを利用して今までい一番強く腰をエリカに打ち付け。子宮口になる性感帯ポルチオを攻めながら一番奥で我慢の限界を迎えて精液を出した。

「ん――――ッ❤❤❤」

 射精の間も唇は離さないでいると精液が子宮の奥をノックする度にそれに重なるようにエリカも体を震わせて絶頂しているのが絡めている舌が痙攣していることから分かる。

 

 唇を離すと唾液が二人の間に糸を引き、エリカの顔はもう雌の顔をしていた。

「ふぁ…❤、あっ…きもち…よすぎ❤」

 俺が一回射精する間にエリカは数十回は軽く絶頂しいる、仮に俺が満足するまでエリカとしてら何回絶頂することになるだろうか。

「悪いけどエリカ。まだ満足出来ないから付き合ってもうらぞ」

 エリカの耳元で呟くと口では何も言わなかったが、きゅう!中がしまって返事をしてきた。

 

 



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エリカへのお仕置き2

 ベッドからお風呂に移動してシャワーで全身の汗やら愛液やらが混ざったものを流し、自分の体で相手の体を洗う。

 全身を泡で包み、手で撫でるとぬるりと肌を滑る。

「全く収まってないわね」

 泡より一層、滑りが良くなったエリカのお尻に逸物を擦りつけるとエリカは自分からお尻を突き出してくる。お風呂に入る前に快楽に喘いでいたのが嘘みたいに今では元気だ。

「言ったろ、満足してないって」

 蛇口を捻り熱湯を出して体についた泡を洗い流し、バスチェアに腰を下ろすとエリカは自ら床に膝をつき自分から逸物を口に含んだ。

 ぐぷっ、ぐぷっと音を出し、ふー❤と鼻から呼吸しながら一定の間隔で逸物を根元まで飲み込んでいく。時折、口から出しては根本から先端にかけてアイスでも舐め上げるように舌を這わせてくる。特にカリと裏筋を念入りに汚れを舐め取っていく。

「美味しそうに舐めるんだな」

 エリカの頬に手を当てると上目遣いで潤んだ瞳を向けてくる。

 このままおまんこに入れてもいいけど、折角準備をしたんだアナルを頂かないとな。

「そろそろベッドに戻ろうか」

 エリカは名残惜しそうにペニスから口を離した。

「えぇ、私も体が熱いもの」

 

 

 

 出来ることならシーツを変えておきたいところだけどどうせこの後、同じくらい汚れるならそのままでからということでそのままベッドに行為に入る。

「自分から見せろよエリカ」

 エリカに命令するとベッドに四つん這いになり枕に頭を埋めてお尻を、正確にはアナルを左右にくぱぁと広げる。お風呂に入る前にしまってしまわないようにとアナルプラグを入れておいた。それを出そうとしているのかアナルはピクピクと震えている。

「アナルパールでほぐしておいたから問題なし。アナルパールよりも大きくしたけど軽く飲み込むしエリカはこっちも好きかな」

 コツコツと指先でアナルプラグを強めに突くと腸内にまで振動が伝わるのかエリカは漏れる声を押し殺している。

 長時間の放置プレイとアナルプラグを入れる時に使った特性の媚薬入りローションのお陰手、エリカのアナルは排泄器官ではなく性器に生まれ変わっている。きっとペニスを入れるだけで絶頂を簡単に迎えるようになったことだろう。

「んじゃ、抜くぞ」

 アナルを蓋するように入っているアナルプラグの窪んでいる所に指を掛けて引くと、エリカのアナルは盛り上がっていく。

「ぐひぃぃぃ…❤」

 枕に頭を押し付けて声を押し殺しても隙間から漏れ出る卑猥な声。

 入れる時にたっぷりと使ったローションと腸液が混ざったものが漏れながらアナルプラグも頭を、そしてポンッ!と音を上げながらエリカのアナルから抜き出た。

「やあぁあん!❤❤」

 流石に限界だったのかおまんこからおしっこを漏らしてしまったエリカだが、そんなことに構っている余裕もないのか枕に顔を埋めている。

「はっ❤はぁ❤は…❤」

「ケツ穴、完全に緩くなったな。どうだったアナルプラグ抜いた時、気持ちよかったか」

 アナルに両手の親指を入れて左右に広げると一切の抵抗なく開き、本当に奥の奥まで見えそうになっている。

 エリカは返事こそしなかったけど、首は縦に振っている。

「なら今度はもっと凶悪なものを入れてみるかな。とわいえ、今からは俺のもんに集中してくれよ!」

「え、エリカのお尻にちんぽ、お尻にズボズボ入れてください❤」

 一体、どこでそんなセリフを覚えてきたのか、自分から良く見えるようにお尻を広げて見えやすくしている。 

 俺も我慢の限界なのに、そんな事を言われたら。

「悪いけど、そんなこと言うくらいだ少しくらい乱暴にしたっていいよな!てか我慢とか無理だわ!」

 ペニスをアナルに当てるとローションをたっぷりと垂らして勢いよく腰を前に動かすとエリカのアナルはペニスを根元まで飲み込んだ。

「はぁあ❤きた!奥まで、涼のちんぽ入ってきた❤」

 おまんことは違って、入り口はキツイのに中は熱くて柔らかいのに狭い変わった感触だけど凄まじく気持ちいい。

「やっば、エリカのケツ穴すごい締まる!」

「はぁあん…❤」

 ヌルヌルで熱いのに色んな感触が伝わってくる。

 腰を勢いよく動かす度に小さなお尻が揺れているのが目に入る。

「エリカ、気持ちよく喘いでいる所悪いんだけど、これはお仕置きなんだ。お仕置きならやっぱりこれだと思うんだよ俺はさ!」

 

 片手を大きく上げて平手を揺れるお尻に振り下ろす。

 バチ゛ンッ!

「あ゛ぁあああ…❤痛い、痛いのに❤」

「いいだろ媚薬の効果で痛いも快楽になるんだ。普通なら材料を揃えるに苦労するけど権能の効果で毒も調合できる俺なら大量に作れるって、聞いてないか」

 お尻を叩く度にエリカは長い金髪を振り乱して獣のように喘ぐ。

 赤くなったお尻を一撫でして胸に手を伸ばすと、手に伝わる柔らかい感触と先端には勃って固くなった乳首の感触がある。乳首を指で挟み擦る様に指を動かす。

「エリカはケツ穴掘られて、お尻を叩かれてるのにこんなに乳首を固くしてんのか」

「だ、だめぇ、ちくび…突かれながらいじられたら」

「いいだろ、自分から腰振ってんだからさ」

「え?」

 気づいてなかったのか、エリカは途中から自分から腰を動かしてアナルにペニスを出し入れしていたる。

「気持ちよさそうなところ悪いけど、そろそろ中出していいよな」

「へあ❤うん、だひて…❤お尻の中に…❤いっぱい…❤」

 一番奥に、ペニスを深くまで入れて残り溜まっているものを全て出した。

「イク❤イクイクイク❤う゛う゛う゛❤❤」

 ボビュ❤と音が中から聞こえてくる。

 最後の一滴まで中に出し切り、ペニスを抜くと、ぽっかりと空いたエリカのアナルから精液を漏れ出てくる。

 数十分前にシャワーを浴びたはずなのに俺もエリカも汗まみれ。

 

 

 

 

 染みだらけになったシーツで二人で横になり。

「はー、はー。凄いわ、ちょっと癖になりそう。リリィが貴方とするのが大好きなのは理解できてしまうわね」

「…はー、はー、なんだお前らってそんな話するのか?」

「同じ男と付き合ってるのよ、するに決まってるじゃない。貴方、随分とリリィをイジメてるみたいじゃない」

「エリカも一緒にしてみるか」

「それもいいかもしれないわ。でも当分は二人っきりで甘い夜を過ごしたのよ、ちゅ❤」

 カーテンの隙間から差し込んでくる朝日の中でキスをして今日は終わりとなった。

 

 

 

 



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祐理の首輪

「やってくれたね」

「すいません、やっちゃいました」

 和室で机を挟みながら話す男女。

 女性の名前は沙耶宮 馨。

 甘粕の上司に当たり、正史編纂委員会の次期総帥候補にして沙耶宮家の次期頭首。組織内でも中心に立ち、カンピオーネである涼とはそれなりに長く深いお付き合いをしている間柄。

 そんな人物の懐刀の甘粕と馨が二人で苦い顔しながら話している内容は、本日、万里谷 祐理の霊視による鑑定をお願いしたところどうも狼に属するものだったらしく運悪くカンピオーネの一人、サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンの有する狼の権能に反応して霊視が引っ張られてしまった。簡単に言うと祐理の霊視でヴォバン侯爵を覗き見してしまったわけだ。

 勿論、それだけで終わればよかったのだが、祐理はヴォバン侯爵が数年前に起こした儀式の生贄、そして涼はヴォバン侯爵とは一度は刃を交えた仲。つまり、戦う口実を手に入れたヴォバン侯爵は獲物を見つけて肉食獣の如く笑みを浮かべて現在、飛行機で日本に向かっていることが調べで分かっている。

 

「流石に言わないとヤバイかな」

「言っても、言わなくてもヤバイですけど、どっちかと言えば言った方がまだましな方かと」

 涼はヴォバン侯爵のように無暗矢鱈に権能を使うことはないが、それは何も無い場合のみだ。身内に手を出されたならば、涼は一切の躊躇なく戦いを選択する。

 過去に『獣群師団』が結成して直ぐの頃に構成員目当てにある組織が手を出したことがあったが一日とたたずして歴史200年を超える組織はこの地球上から跡形もなく消滅した、というよりも滅ぼされたと言った方が正しい。文字通り王の怒りを買った結果だ。

 それがヴォバン侯爵を招いた実質の原因である正史編纂委員会に振り下ろされれば日本から正史編纂委員会は消えて無くなる。

 いま彼等に取れるのは正直に話すか、話さないかの二択したない。

「じゃあ、甘粕さん。説明頑張って」

「……え」

 こうして甘粕は戦場どころか、処刑場へと向かうことになった。

 

 

@ @ @

 

「へぇ~それで、あのクソジジィを呼び寄せたってか」

 絨毯の上で床に額を擦りつけて土下座する甘粕。目の前にいるのは胡坐をかき、片手で巫女の服を着た、祐理の腰に腕を回して抱き寄せる。

 若干、照れて顔を赤くしているけど、祐理は抵抗することはなく俺の傍にいる。

 

「はい、すいません」

「まあ、いいや、どうせクソジジィことだ。アテナと戦う為とか、まつろわぬ神を招来する為とか言ってそのうち日本に来ただろ」

 正直、いつか戦うとは思っていた。

 カンピオーネになってすぐの一件でというかヴォバン侯爵とは一度戦っている結果は、ドニの乱入とかで引き分けのような形で片付いたが今回に関してはそんな決着は望めない。

「……どっちにしろ向かってるなら戦うしかないだろ。話し合いで収まるなんて玉じゃないし、そもそも目的は戦う相手が居なくて暇なんだろうさ」

 カンピオーネは戦いを求める。それこそ三大欲求の様に命懸けの戦いを欲する。血が滾るような、命が燃え盛るように熱くなるような言葉にし難い感覚が戦いの中だけにある。多分、それはカンピオーネになった者だけが感じるものがある。それをあのクソジジィは求めているんだろう。

 

 

 

 

「すいません、私のせいでヴォバン侯爵と戦うことになってしまって」

 甘粕さんが帰った後、祐理は暗い顔をしている。

 どうせ霊視したことでも後悔してるんだろう。

「気にすんなよ。言ったろヴォバン侯爵は遅かれ早かれ日本に来るってさ、暇潰しの相手でもしてやれば満足して帰るさ」

 まあ、その満足させるってのが難題なんだがな。

 相手は当代で最古参のカンピオーネ。調べではおよそ三百歳。それだけ長い間戦い勝利を収めてきた証明であり、権能は磨かれている。それだけ権能一つ一つが厄介になってくる。

 どうせ俺と戦った後にアテナと戦い、リリアナと祐理をまつろわぬ神を招来させる生贄として連れて行くだろう。そう考えると腹立つな。

 

 一人どうやってヴォバン侯爵の一件を片付けようかと考えていると俺の顔を不安そうに覗き込んでくる祐理。

 十秒ほど見つめ合ったのちに久しぶりいいかと思い、祐理を押し倒した。

「え!あ、あの!涼さんえっと…その…」

「いつヴォバン侯爵が日本に来るか分からないんだ、その前に呪力のストックをしておくに越したことはないだろ」

 俺は面と向かって、祐理に性行為をしようと言っているわけだ。それに祐理とは初めてじゃない。ヴォバン侯爵との一戦から数週間後に日本に帰国する途中に運悪く出くわしたのが”まつろわぬデメテル”だった。

 搦め手が多く、正面戦闘が主だった敵ばかりと戦ってきた俺からすると随分と苦労したが、無事に倒して日本に帰ってきてから権能の効果を確かめる為という名目で俺の元に送られてきた祐理だ。

 俺と日本の間に繋がりを作る為にと送られてきた祐理は愛人としてやってきたが、本人も儀式の一件で恩義がある俺の元に来ることを望んでいた。結局、彼女いない歴=年齢の俺が見事に祐理の性的な意味で頂いてしまった。

 それからは組織『獣群師団』の地盤作りやらで忙しくて祐理を抱けていなかったからいい機会だ。

「嫌だって言うならしないけど」

 押し倒されながらも抵抗する様子を見せない祐理にワザと質問すると。

「……私も…涼さんと、したいです」

 顔をこれでもかと言うほど赤くする。

 流石にリビングでするわけにはいかないのでお姫様抱っこで祐理を抱き、俺の部屋まで運び込みベッドの上に下ろした。

 

 久々過ぎて緊張しているのか少し固い祐理。その緊張をほぐすためにいきなり本番には入らず、ゆっくりと進める。

「祐理、キスするぞ」

「は、はい!どうぞ」

 ゆっくりと目を閉じた祐理と静かに唇を重ねる。

 柔らかい。

 熱い。

 ゆっくりと唇を離す。

 祐理はもう興奮しすぎたのか既に荒い呼吸をしながらも、次のキスを受け入れる準備が出来ている。

「悪い、祐理。俺さ我慢出来そうにないわ。久しぶりにお前とするのが嬉しいし、キスだけでそんな顔すんだもん、可愛すぎ。んちゅ、じゅる」

「えま、ちゅ、うちゅ…んぅ」

 舌を伸ばし、祐理の唾液を堪能しながら舌を絡め合う。 

 甘い、味覚が感じ取る祐理の唾液の味。変態みたいだが感じるものはしかたない。それに祐理の反応は随分と初々しい。唾液を口の中に入れてやれば懸命にそれを飲み干そうとコクコクと喉を動かしていくる。

 舌を絡めるディープキスをしたまま、祐理の着用している巫女服の中に手を侵入させていく。肌を優しくなぞるように進み、たわわに実った二つの果実に手を近づけると指に触れる布。指に触れていたのはブラの代わりに、祐理が巻いていたさらしだった

「巫女服の時の下着ってさらしってやっぱりエロいな」

「っな!巫女装束をそんな風に言うなんて…罰が当たりますよ」

「その服を着てセックスしようとしている祐理はどうなるんだ」 

 谷間に指を入れて引っ張る様にしてさらしを剥ぎ取ると一切隠すものが無くなった、祐理の胸。激しいディープキスで感じたのか、ピンク色の乳首が固く主張している。

 両手を祐理に手に当てると、少し力を入れてだけで指が胸に沈んでいく。固くなった乳首を指で摘まむと祐理の口からひゃ!と反応が返ってくる。

 右手を胸から下に進み、お腹をさすりながらヘソを少しイジってから赤いスカート状のもの緋袴(ひばかま)の結びを解き脱がすと、淡い緑色の無柄のシンプルなショーツが見えた。既に乳首と同じように感じていた証拠におまんこに部分は溢れ出てきた愛液で濡れて濃くなっている。

「やっぱり濡れてた」

 ショーツの上から指でなぞり、ぷっくりと固くなっている乳首にしゃぶりついた。舌で転がすように乳首を舐めていく。吸い、時には甘噛みしながら、右手の指でショーツの上から祐理のおまんこを撫でる。布越しにも分かるクリトリスを親指で潰すと。

「ふっ…んんっ…ふぁっ…❤」

「気持ちいいか、声出てるもんな」

「や、やめ、声出ちゃいま…っ❤」

 口ではそういうものの抵抗はせず、寧ろ太ももを擦り合わせて体をくねらせている姿は一層、手を激しくしたくなる。

 乳首から口を離して、祐理の足元に移動する。

「少し激しくするから我慢しないと声、リリアナたちに聞こえちゃうかもな」

「…はぁ…え、ちょ、何、してるんですか」

「何って祐理のおまんこを口で気持ちよくするんだよ」

 祐理に脚で手を置き、左右に広げさせると愛液の染みが出来たショーツに口を当てる。布越しで舐める始める。

 慣れない感覚にひっ!と大きな声が祐理の口から零れ、続けて押し寄せてくる快楽に声が漏れないようと両手で自分の口を塞いだ。

 手で塞いでも声が漏れ出るくらいに快感を与えてやるからな。

 舌で舐め、クリトリスを吸うとんん❤と手の隙間から漏れて聞こえてくる。

「ん゛ぅ❤❤ん゛っん゛❤」

 クリトリスを軽く噛むと、祐理は腰を上げてプシュ!プシュ!ショーツの下から潮を漏らした。

「――――っ❤❤」

 普段オナニーをしない祐理にとっては相当、強い快感だったんだろう。

 口元についた潮を舐めとり、祐理の顔を見ると、イったことか、それともおまんこを舐めめられたことが恥ずかしかったのか顔を真っ赤にしている。

「派手にイったな」

「うぅぅ…すいません」

「ここからが本番だ、邪魔だから全部脱がすぞ」

 祐理の着ているものを全て脱がし、俺も全て脱ぎ捨てると固く勃起して血管が浮かび上がるペニスから強烈な存在感を発揮する。

 祐理は初めてだったこともあってしっかり目にしなかったモノに釘付けになっている。

「お、おっきい……それに太いです」

「それじゃ本番と行こうか」

 ペニスを握り亀頭を、祐理の膣口にくっつける。

 俺のペニスから流れる我慢汁と、祐理のおまんこから流れてくる愛液。

 祐理も今からセックスをすると理解してなのか、口では何も言わないけれどふー♡ふー♡と聞いてるだけで興奮しているのが分かる荒い呼吸をしている。

 腰を動かし膣口を越えて膣内を進んでいく。

 きっつ!最後にやってから時間が空きすぎて締まりが元に戻ってる。

 処女と変わらないくらいの締め付けが襲ってくるけど、すぐにイクのは流石に困る。

 祐理を見ると、体を弓なりにして空気を求める魚のように口をパクパクさせている。俺がキツければそれだけ、祐理も、俺のモノで中をかき分けられる感覚を味わっていることになる。

 それにしてもキツいな、締め付けがヤバイ。

「祐理の中めっちゃキツイよ」

「あ゛っ♡んぁ♡りょうさん」

 突くたびに、大きな胸はぷるぷると美味しそうに目の前で揺れ、無性にしゃぶりつきたくなる。

 その感情に逆らうことなく、目の前で揺れる胸の先端にかぶり付き。

 甘い、母乳が出ているわけでもないのにそう感じる。祐理の肌を流れる汗を舌で舐め取り。胸など服を着れば見えないところにキスマークをつけていく。目に見える、俺のモノであるという証。

「祐理、お前は俺についてくるか。俺のモノになる気はあるか」

 リリアナは、俺に肉体も精神も魂すらも捧げ、主従と服従を誓い結果、首に首輪型の淫紋が刻まれた。

 祐理が俺の言葉に同意すれば、リリアナと同じように肉体も精神も魂も捧げることになり、取り消すことは出来ない。

 祐理は優しく微笑むと、俺の頭を胸に抱え込む

「当たり前です。儀式の時に、涼さんに救われて以来、貴方に全てを捧げると決めております」

 温かい。

 肌を重ね合い、感じる温かさ。

 祐理の胸から起き上がると、祐理の首にはリリアナの時と同じ首輪型の淫紋が浮かび上がっているつまり、祐理は俺に全てを捧げた。

「これでお前は俺のモノだ」

 祐理の首を優しく撫で、首輪の効果を発動する。

 子宮に重なる淫紋がストックした魔力量を視覚的に確認するためのものであるのに対して、首輪型の淫紋は主従と服従の目に見える証だけではなく、任意で発動する効果がいくつかある。その一つが発情。意識とは関係なく主である、俺の意思で強制的に発情させることができる。

「ぁ、あぁ…涼さん、からだ、体が熱いです…♡」

「試しに使ってみたけど結構良さそうだな!」

 腰を動かして、祐理のおまんこを攻めると腰の動きに合わせて、祐理が軽く絶頂していく。

 腰を引く時は膣内をカリで削り、前に出す時は子宮を強くノックすると膣内が痙攣して、絶頂したことが簡単に分かる。

「まっ…イクます♡…あっ、や♡」

 発情の効果で簡単にイクようになった体は二度目のセックスで、俺専用になりつつある。

「祐理、そろそろ出すぞ」

 腰ががっしりと掴み、子宮口にぴったりと鈴口をくっつける。

「はひ♡なかにたっぷりだひてください♡」

 ビュルルッ!と子宮壁を強く叩くように、祐理の子宮へと俺の精液が発射される。

 最後の一滴まで余すことなく射精して、ゆっくりとおまんこからペニスを抜くとべったりと愛液が絡みついている。

 祐理は射精と同時に深い絶頂に至った。

「どうだ祐理、首輪型の淫紋の効果は」

「すご、かったですぅ♡……また、してくれますよね」

「ああ、今度はもっと長くな」

 二人でのんびりとしながら、ふっ、と時計を確認すると既に五時半。いつもならリリアナが夕食の準備をしている時間帯。

 二人で顔を青くしながらお風呂へと急いだ。

 結局、夕食には間に合わず。俺はリリアナにお詫びとして夜のお付き合いをする約束をして何とか怒りを収めてもらった。



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獣王と狼王

 何事もなく学校生活を終えた帰り道。肩を並べて隣を歩く、祐理の顔は朝からの優れない。

 リリアナとエリカには、ヴォバン侯爵の動向を獣群師団と連携して調べてもらい。俺は、恐らく一番最初に狙われるであろう、祐理から目を離さないようにしている。

 

「私のせいで、申し訳ありません」

 このセリフを、もう数えるのも忘れるほど聞いた。

「気にするなって言っても、気にするよな」

 彼女が魔導書の鑑定をしなければ、見つからなかったかも知れない、なんてのはかもの話だ。今見つからなかったとしても、来月か、来年かには見つかっただろう。カンピオーネに常識は通用しない。

「祐理、俺は我が儘なんだよ。お前は俺のモノだ誰にもやるきはない」

 顔を赤くして俯いた祐理の手を取り、歩き出す。

 握った手から伝わる、祐理の体温。この心地よさを失わない為に。

 

 

 

 

 祐理を家に連れ帰り、アテナと三人でお茶を啜る。

「それで、ヴォバンとやらとの勝算はいくらあるのだ」

「ん~、前に戦った時は軽くだったからな、大体、四割ってところか」

 カンピオーネの強さは権能に依存しないとは言っても、相性というものはある。

 太陽神から簒奪した権能は、同じ太陽神の権能に相殺され。神話の中で、竜を殺し英雄となった鋼の神格の前では、竜に関する権能は弱くなる。

 俺の場合はそんなものはないけど、『混沌獣』は決め手に欠ける。『黄金の智慧』も使えば相手の権能を封じることはできるけど、止めを刺すには至らない。

 加えて、ヴォバン侯爵の権能は大半がどの神から簒奪したものなのかが謎のままだ。それ故、『黄金の智慧』を使うには後手に回るし、使うには、誰かから知識を教授の術で教えてもらう必要がある。それは戦いと言う一瞬が命運を分ける戦いの中では致命的だ。

 

 いま詳しく分かっている、ヴォバン侯爵の権能は三つ。

 

 狼に関する『貪る群狼』。

 自身を人狼や大型の狼に変身したり、鼠色の体毛を持つ巨大な狼を無数に召喚する権能。

 

 自身が殺した人間の魂を縛り付け、使役する『死せる従僕の檻』

 殺された者は従僕となったヴォバン侯爵の命令に従う。自己判断能力に欠けるが、生前に有していた能力はフルで発揮される。

 

 目にした生物を塩に返る目『ソドムの瞳』

 視界にいる生物を塩の柱に変えてしまうという、これまた凶悪な邪眼。

 

 他にもいくつか権能を持っていると言われているけど使っている姿を確認しれていないし、どのまつわろわぬ神から簒奪したのかも分かっていない。

 

「分かっているのは『貪る群狼』がフェンリルから簒奪したものじゃないってことだけだな」

「っえ!?なんでそんなことが分かるんですか?」

 どの組織が調べても分かっていないことを、俺が言い切ったことが、祐理には不思議らしい。

「前に戦った時にさ、ヴォバン侯爵に触った時になんとなく分かった。狼ではあるけど、フェンリルじゃない。もっと別のものだ。多分、どっかの神が狼に変身した神話なのか、眷属が狼なのかだ。多分だけどな、もう一回、直接見たら答え合わせが出来るんだけどな」

 

「それなら、それで構わん」

 座っていた位置から四つん這いで寄ってくると膝立ちになると俺の首に腕を回し、密着してくるアテナ。

「それだけお主とキスする口実が出来るというものだ」

「別に好きな時に、好きなだけすればいいと思うけど、んっ」

 

 狼に関する神話は目立たないだけで比較的多い。

 ヨーロッパや中国など牧畜が盛んであった地域では狼は家畜を襲う害獣と嫌われているのに対して、農業が盛んであった地域では、農作物へ被害をあたえるシカなどの害獣を駆除する益獣として、怖れられると同時に敬われていた。ある時代では、狼は死や恐怖の対象として描写され、付随して北欧神話では巨大な狼であるフェンリルが神々の敵として描かれた。キリスト教でも、狼は憤怒を司る獣とされ、信仰が広まると同時に狼は悪という印象も広まり、狂犬病が原因の事件では、狼の悪という印象で”人狼”というものが世に生まれ、人狼を恐れて人々が狼を駆逐した記録も残されている。

 

「っふぁ、甘いな」

 ペロリと口元を汚している涎を、アテナは舌で舐め取った。

 横を見ると、顔を真っ赤にした祐理もしてほしそうに近づいてくる。

「わ、私もしたいです…」

「仕方ない、交代してやる」

 最後に唇に軽いキスをして、俺の首から手を解き横にずれると、代わりに祐理が俺の頬に手を置いた。

「りょ、涼さん、っん」

 祐理からのキス。

 アテナのように激しくはない拙いキス。舌の動きもぎこちないけど、初々しさがある。

 

 祐理とのキスを楽しんでいると机の上に置いておいた、スマホが振動。スマホを取ると画面には、リリアナからメールが送られてきたという通知が表示されている。

 キスを一旦中断し、スマホを手に取ると画面には、ヴォバン侯爵が居るホテルの場所が記載されたマップが送られてきていた。

 

「場所も分かったみたいだし…それじゃ、行きますか」

「行くのですね…」

「悪いな、いま倒しておかないと何時、戦うことにあるか分からない。また誰かを失うのは嫌なんだ。大丈夫、絶対に帰ってくるから待っててくれ」

 不安そうな顔をしている祐理の頬を撫で、スマホを片手に家を出ると、背中から羽を生やし、ヴォバン侯爵が居るホテルへと向かった。

 

 

 

@ @ @

 

 

 太陽は沈み時期、夜がやってくる。

 ホテルの前に下り、中に入ると目を疑った。

 ラウンジに人が一切居ない、いや正確には、生きた人が居ない。あるのは塩にされた元人間がある。

「一般人相手でも躊躇なしか」

 塩にされた一般人の横を通り過ぎ、エレベーターに乗って最上階の部屋に向かう。エレベーターを下りると部屋に繋がる扉の前には、生気の感じられない呪術師の格好をした死人が二人たっている。

 生きているのなら、出迎えご苦労、とでも言うけど、残念ながら二人も喋りもしない。意識すらあるのかすら分からない。

 

 呪術師に案内され、部屋を進むと暗がで豪華な装飾が施された椅子に腰を座り、周りには狼を侍らせた黒の外套を身にまとった老人。

 

「久しいな、小僧」

「ああ、ヴォバン侯爵。俺の事なんてよく覚えてたな」

 あったのは数年前の一回きりだったし、まともな勝負もしていない。

「サルバトーレの小僧は私の獲物を奪った憎き奴だが、貴様の場合は権能はなかなか興味深いものだったからな」

 『混沌獣』か。確かに、ヴォバン侯爵が使う『貪る群狼』とは同じ動物に分けられるものだからか。

 

「それで、アンタは何しに日本に来た」

「最近、暇を持て余していてな、貴様の元に前に儀式をした時に使った媛巫女と魔女が居るだろう。加えて、少し前にアテナを自分の女にしたそうじゃないか」

 やっぱり狙いは、祐理、リリアナ、アテナか。

「なんだ、俺と戦う為に来てくれんんじゃないのか」 

 適当な冗談を口にすると、ヴォバン侯爵は、っは!と笑う。

「貴様の思う通り、生贄とアテナはついでだ。貴様との決着がついていないことを、っふ、と思い出してなこうして足を運んだわけだ。なに、私に勝って見せろとは言わん。せめて王の端くれならばそれなりの力というものを示してもらわねば!」

 ようは、暇だったから戦えそうな、俺の元に来たわけか。加えて、祐理たちはオマケとな、腹立つなこのジジイ。とわいえ、俺と戦うのが目的なら、変に祐理たいに被害が行くことはない。それなら気兼ねく闘り合えるってこんだ。

 

「俺の勝利条件は?」

「今から約半日後――日の出までに生きていられたならば、大人しく去ろう。如何かな?」

 どっちかが死ぬまでとはじゃなくて良かった。こんな奴相手に市街地で戦ったら都市機能が落ちるは。

「それでいいぜ」

「では、始めるとしよう。精々楽しませてくれよ小僧ォオオオ―――!!」

 叫ぶと同時にヴォバン侯爵は権能を発動した。

 轟く獣の咆哮。狼の遠吠えを思わせるが、そんな生易しいものじゃない。

 そして、疑惑は核心に変わった。やっぱり、この権能はフェンリルから簒奪したものじゃない。他にも何か混じってる、そう直感が叫ぶ。

 どっちにしろ、フェンリルだろうが、なんだろうがやることは変わらない。戦って勝つだけだ。

「こっちも使わせてもらおうか。《滅び時は来た、穢れし世界。混沌をもって全てを無に帰す。この牙、この爪は世界を殺す、我は獣なり》」

 権能が発動し、右腕は黒と赤の入り混じった怪物の腕に変貌する。

 

「ああ、存分に楽しませてやるよ!」

「先手は頂こう!我が猟犬どもよ、あの小僧の血肉を喰らうがいい!」

 生み出されて数十匹の狼の軍勢が四肢で地を蹴り迫りくる。

「速攻かよ!」

 右手で噛みつこうと飛び掛かってきた狼を次々に叩き潰していく。噛みつかれて程度では、権能で強化されて肉体に傷はつかなくとも痛みは感じるし、何より巨体故に邪魔だ。

「退け!」

 右腕を一旦解除して素早く別の形状へと入れ替える。取り囲んでいる狼の軍勢を退ける一手を繰り出す。

 

 ドシュ!ドシュ!という肉を貫く音と共に狼の軍勢は串刺しになった。

「ほう、なかなか多彩だな」

 ヴォバン侯爵も、俺の姿を見てそう呟く。

 右腕から形状変化したものはマント。それもたマントには鋭利な棘が無数に生えてものだ。モデルにしたのはヤマアラシ。

 ゴム製長靴も容易に貫通する棘は権能で生み出されて狼の軍勢を容易く貫き、絶命させた。

 絶命した狼の軍勢は最初から存在していなかったかのように、体は消え去った。

「なら、これならどうだ」

 次に、ヴォバン侯爵が繰り出してきたのは『死せる従僕の檻』。ホラー映画さながら地面から腕が伸び、全身が露わになった。

 時代も様々な服装の死人。

 呪術師らしく杖を持った人もいれば、鎧に剣を持った人もいる。彼等はヴォバン侯爵の謀略な振る舞いに立ち向かった勇気ある人たち。できれば、傷つけないという選択がしたいけど、正直、そんな余裕はない。なにより此処は戦場。

 いまだ、ヴォバン侯爵本人は直接動いていない。それだけ余裕があるってことだ。

「悪いけど、ゴリ押しで!」

 全身を包むマントを振り回し、棘を飛ばす。権能で生み出されたという本来とは異なる強度と大きさ、鋭利さに射出の速度が加わった棘は鉄製の鎧を貫き、死人の肉体に棘を立てる。

 そのうち何本かが、ヴォバン侯爵にも向かって飛び、ふん!と腕を振って棘を落とす。

 やっぱり、この程度は効果なしか。

「力不足は否めないよな」

 マントから右腕に変えて、構える。

 此処からの戦いが本番。命を賭けた王と王の戦いが始まった。



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覚悟

 その光景は、人間同士の戦いではなかった。

 片や、人狼。

 片や、片腕が異形の人間。

「どうした小僧!その程度か!」

 横凪に迫ってくる鋭利な爪の生えた腕を右手で弾き、そのままの勢いを利用して体を捻り、狼の顔面に蹴りを入れるけど、流石に軽いらしくクリーンヒットしても大して威力がない。

 根本的に力というものが足りてない。

 いくら権能である程度強化されているとしても、相手も同じく権能を使ってる。それも肉体を強化するタイプの権能をだ。

 

 攻撃は直感に従って紙一重で躱すと、ヴォバン侯爵の腕が床を砕く。

 既に同じようにヴォバン侯爵の腕によって部屋の中にある壁や床、家具は粉々、さぞ高いだろう部屋に勿体ない。

「折角だ、従僕も加えてやろう」

 何が、折角だ、だよ!余計なことを!

 再び、呼び出された死せる従僕たち。

 いくら数を減らしても、ヴォバン侯爵が殺した人間全員が従僕になっているなら、従僕の数に限界なんて無いに等しい。つまり、いくら倒しても増え続けるということだ。

  

 腕一本じゃ足りないか。

 アテナ戦でもやったように、右腕の変化している部分が減る代わりに、両手を獣の腕に変化させる。

 近距離には、ヴォバン侯爵と剣士の死人、遠距離には、呪術師の死人。

 臨機応変さには欠けるも、いくら攻撃しても体が無事なら向かってくる死人は厄介極まりない。なにより、ヴォバン侯爵はその死人ごと、俺の事を攻撃してくる。

 ヴォバン侯爵の攻撃を避け、隙を見ては攻撃を当てるを繰り返していると、肩や背中に剣士の死人の剣が当たる。

「くそ!邪魔だ!」

 握り拳で鎧の上から剣士を殴りるとボールが飛ぶように、ひと一人が飛んでいく。

 殴って、蹴って、タックルして、片っ端から死人を薙ぎ払う。目に付いた敵をただ、倒す。

 そこに技術なんてものはない。獣のように獰猛に敵を倒すだけ。

 

「だ~っクソ、減らねえ!」

 いくら倒しても無限に湧いてくるのは流石にしんどくなる。

「従僕の数は無限だ、いくら倒しても無駄だぞ!」

 ヴォバン侯爵の言う通り。無駄だ、なら別の手段を取るまでだ。

 上手くいくかは分かんないけど、試すだけだ。

 

 自分の右腕に視線を移す。

 躊躇せずに、右腕に噛みつき、歯を立てる。歯が皮膚を破り、滲みてる赤い血液が床に落ちる。

「何をしている小僧?」

「アンタの『貪る群狼』は、俺の権能と似ているからな。ちょっと参考にさせてもらおうと思ってね」

 床に落ちた血液は集まり一つのなると、液体という形から粘体というべきか、スライムという言うべきものに変わり。こねられて粘土のように動き出し最終的には、ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾の生えた姿になった。

 

「ガァアアアアアォォォォ――――!!」

 生まれてことを宣言するように咆哮を放つキマイラ。

 『混沌獣』の真骨頂はサンプリングした生物の合成にある。

 肉体から切り離した血肉でも、生物に変化出来ることは、アテナ戦の八咫烏で確認済み。つまり、さっき流した血を媒体に、いま目の前にいるキマイラのようなものを生み出すことも可能だと考えた。なにより、ヴォバン侯爵という見本がいるんだ挑戦しないなんて、勿体ない事はしない。

「上手くいくもんだな、取り合えず、死人を頼むとしよう」

 俺の事をチラリと見ると、命令に従って、死人目掛けて飛び掛かって行った。

 その間に、俺は、ヴォバン侯爵との一騎打ちを取る。

「これで、一対一だ」

「まさか、私と似たことが出来るとは、ならこちらも一つ見せよう!」

 宣言通り、ヴォバン侯爵の姿は人狼から二足から四足に変わり、一回りも二回りも大きくなり大巨狼へと変わっていく。

大型バスほどの巨体の狼。

戦いが原因で出来た部屋の損傷に、巨大狼の体重は不可が掛かるらしく、部屋全体がミシミシと罅が広がっていくのが分かる。

 

 ドォン!と勢いよく地面を蹴り、真っ直ぐに突っ込んでくる。巨大狼と化したヴォバン侯爵。

「ッゴホ!」

 予想を超える速さで飛び掛かってきたヴォバン侯爵。

 肩を噛みつかれ、牙が皮膚を貫き。そのまま、巨体に押されるままに窓ガラスを破り、外に押し出された。

 首を動かし後ろを見ると、迫ってくるコンクリートの地面。

 口を開かせようと牙と体の間に指を入れようとすると、ゴリ、と一段と牙が肉に食い込んだ。

「ッガァ」」 

 冗談抜きでやべぇ!このままだと背中から地面に激突する!しかも目の前の巨体の重さが、俺にダイレクトに掛かる状態でだ。とにかく、腕の変化を背中に回して防御しないと。

 感じる痛みに苛まれながら、意識を集中し、腕を解除を変化を背中に回す。背中が変化し姿形が変わっていく。

 亀やアルマジロ、蟹など、身を守る為に硬い殻を持つ生物は世界中に多く生息している。それらを束ね、身を守る鎧を作り出す。ただ硬く、衝撃を緩和する盾を。

 

 そして、地面に衝突。

「―――ッ!ッグ!」

 一気に全身を駆け巡る衝撃で肺の中の空気が抜ける。そのまま、投げ捨てられ近くに生えていた木の幹に激突する。

「ふん、この程度か…」

 期待外れだ、と吐き捨てるように巨大狼のまま、歩いて何処かに向かう、ヴォバン侯爵を霞む視界で後を追おうとしても体は言うことを聞かない。薄れゆく意識でどうにか立ち上がろうとするも、体に力が入らず。離れていくヴォバン侯爵に向かって手を伸ばすけど、届かない。

 

 このまま、行かせたらどうなるかなんて分かりきってる。また祐理やリリアナを生贄にして儀式を行う、アテナも殺すだろう、エリカも従僕に加えられる。

 神に祈ったところで、人が救われない。なにせ、俺たちの敵が神なのだから。

 ―――また、失うのか、父さんと母さんを食い殺されたように。

 受け入れ……られるわけないだろ!身内は守る、と口にしながら守れず。必ず帰る、と約束しておきながら、帰ることも出来ないで何が、王!何が、神殺しだ!

 俺は…獣王だ。

獣の王にして師団という群れの長。長は群れを守るのが役目、それを果たすべきだ。

 たとえ……人間であることを捨ててでも。敵を負かし、屈服さえ、蹂躙し、滅ぼす。黙示録という世界の終わりにまつわる伝承に出る、黙示録の獣。世界を滅ぼすと、地上を支配すると言われて獣。今まで無意識に避けてきた。権能『混沌獣(ケイオス・ビースト)』の全力発動(・・・・)を、強力な力と引き替えに代償の如く精神を蝕む、獣としての本能。だからこそ、今まで使う力をセーブしてきた。

 片腕、両手、片腕だけの生物変換に留めた。

 バカだった。権能は、俺が簒奪したものだ。俺が手に入れてものだ、俺が自分の力に飲まれてたまるか。

 

 《滅び時は来た、穢れし世界。混沌をもって全てを無に帰す。この牙、この爪は世界を殺す、我は獣なり》

 言葉にせず、心で、精神で、魂で、聖句を唱える。

 銃の引き金をひくように。力を解き放つように。

 

 折れた骨、筋肉繊維、内臓、皮膚を再生すると同時に作り替える、より強靭な肉体へと。

 ヴォバン侯爵の振り下ろされる腕にも、負けない怪力を、負けない耐久度を。狼に変身したヴォバン侯爵に確実に致命傷を与えられる力を。

 今まで、サンプリングしてきた生物の中から選択していく。

 倒れた体が変化していく。

 サイから取った、分厚い皮膚。

 蟹と魚から取った、皮膚を覆う赤と黒の甲殻と鱗

 ゴリラから取った、筋肉の肥大化。

 トカゲから取った、背骨に沿って、バランスを取るために尻尾

 

 形状変化が終わった姿は人とかけ離れてものだ。

 鎧のように全身を甘さず包む鱗と甲羅、衝撃を緩和する厚い皮膚、耐久度を抜ける怪力、体勢を安定させる尻尾。

 その姿は、鋭利で凶悪な全身甲冑に身を包んだバケモノ。

 

「……何処に行く、ヴォバン侯爵!」

 ゆっくりと立ち上がると地面を蹴り、歩いていくヴォバン侯爵に飛びつく。

「なに!?貴様!退け!」

 突然の不意打ちと予想外の行動に驚き。巨体狼の姿で頭部には手が届かず、体を振り回し、俺を落とそうとする。

 皮膚に爪を立て、鎧となっている鱗を逆立てかえしにして体を固定し、ヴォバン侯爵にの眼球目掛けて腕を振り下ろす。

 

 グシャ!

 血しぶきが飛び、眼球が抉れる。

 いくら二百年生きているヴォバン侯爵であったとしても、眼球を抉られる経験などそうは無い。

 

「がぁあああ!貴様、私の目を!」

「死ね、ヴォバン侯爵!アイツらは俺のモノだ!」

 潰した眼球を掴み取り、頭部から飛び降りると同時に引っ張ると、勢いに任せて、ブチブチと何かが千切れる音がしながら眼球が取れる。

 右手にある生暖かい潰れた眼球を投げ捨てる。

 

「調子になるなよ小僧!」

 真っ直ぐ突進してくる、ヴォバン侯爵。

 数分前に受けた体当たりを今回は、受け止める。ドン!と大型トラックと衝突したような衝撃が、耐えられる。

 受け止めた腕を伝い、衝撃は脚に流れて地面に逃げ、足首近くまでが地面に埋まるが問題ない。この攻撃にも耐えられるよう体を変化させた。

 メキメキ、とヴォバン侯爵の顎に手が食い込み、腕と腰に一気に力を入れ、万力の如く顎を全身で掴み、踏ん張る。足が地面に埋まっていくのも気に留めない。

 

「さっきのお返しだ!」

巨大狼に変身しているヴォバン侯爵の半分もない体で持ち上げ、自分がさっき投げ捨てられたと同じように投げ捨てる。

 投げられた巨大は木を数十本ほど薙ぎ倒し、地面を抉ったのちに体を巨大狼から人狼へと変え、嬉しそうに笑いながら立ち上がったヴォバン侯爵。

「やるではないか、王同士の戦いなのだ、こうでなくてはな!」

 空洞になった片目から血の涙を流しながら、白い牙を覗かせて笑うヴォバン侯爵。

「いいぜ、付き合ってやるよ。アイツらを守るためだ」

 沈んだ足を地面から引っこ抜き、地面を目一杯踏みしめ、走り出す。

 獲物を狙う獣の如く、姿勢を低く、地面を這うように走る。

 最初に作った獣の腕よりも、強化した腕。

 鱗を逆立たせ、全身に鋭利な刃が生えたように、尻尾の先端からはサソリやフグの毒を混ぜ合わせた毒が蓄えた毒針を尻尾の先端から伸ばす。

 俺と同じように突進してくるヴォバン侯爵。

 二人の距離は次第に狭まっていき、衝突。互いに一瞬動きが止まった瞬間、腕ではなく尻尾を動かした。

 ヴォバン侯爵の脇腹目掛けてしなる尻尾。ドスッ!とあばら骨を断ち切り、体内に侵入した尻尾から注入される猛毒。カンピオーネは体外からの魔術、呪術、薬品の効果を打ち消すけど、口内接種のような体内から作用する場合は、カンピオーネの無効化は発動しない。つまり、この方法なら生物の毒をヴォバン侯爵に使うことが出来る。

 これで決め手になるなんて思ってない、でも少しでも、動きが鈍くなればそれで良い。

「この程度で…なに…」

 グラリ、と揺らぐ巨体。

 流石は即効性の毒を混ざただけあるな、もう効果が出ていた。

「呪い、いやカンピオーネに術は利かん。ならば、毒の類か」

 もう、気づかれたかよ。まあ、いいさ、毒は利けば儲けもの程度の意味しかない。

「さあ、殴り合いと行こうか」

 腕、脚、尻尾を駆使して、殴り合う。

 振り押される腕を尻尾で防御し、腹を殴り、そのまま蹴りを叩きこむ。

「泥臭い戦い方だな!だが、悪くないぞ!」

「うるせぇ!さっさとくたばりやがれ!」

 とは、言ってもこっちもヤバイ。

 攻撃を受ければ、動きが止まる。そうなればもう一度動き出す間に一撃をもらうことになる。

 今使ってる全身に作用してる形状変化は、体内・体外の両方だ。加えて、初めての試みで大半の変化をカンピオーネの性能と権能の合わせ技で無理やり結びつけて、治癒力に物言わせたものだ。長時間使用は不可能。

 つまり、リミット付きの戦闘スタイル。

 攻撃を受けて、体勢を立て直す時間さえ惜しい。

 

 ヴォバン侯爵に勝つには、単純な性能(スペック)で勝るしかない。

 カンピオーネの獣のような直感的は、戦闘経験によって磨かれる。

 ヴォバン侯爵はカンピオーネとして約300年生きる、古参の魔王。

 対して俺は、カンピオーネなっても僅か数年、まつろわぬ神との戦いだって多くは無い。俺の戦闘はカンピオーネの直感に頼った戦闘スタイル。それじゃヴォバン侯爵に追いつけない、だから『混沌獣』の特性を活かす。

 

 ―――だから、もう一手。

 

 鱗や減らし、甲殻を薄くして、かき集めた分を右手に集める。

 形状は“槍”。

 剣のように振り下ろす必要もない、ただ力で押し切る。

 幻獣ユニコーンの角を穂先とした槍を右手に生み出す。

「一角聖槍!」

 白一色の純白の槍を全身の筋肉と骨に至るまで収縮させて解放した力を一点に集中させた渾身の突き。

 強化さて体の力を集中した槍は、ヴォバン侯爵が反射的に庇うように前に出した腕を貫き、胸へと穂先が突き立てられた。

「ッグ!この程度」

「もういっちょ!枝分かれ!」

 その形は正に枝。

 穂先のユニコーンの角が枝のようにランダムに伸び、ヴォバン侯爵の体内からユニコーンの角が皮膚を貫き顔を出した。

「ガァ!?なに!」

 『混沌獣』で武器を作ったらどうなるか、と権能を取得してすぐに考えたことがあった……つまりこれが答えだ。

 状況に応じて作り替え、その瞬間に適した形状を生み出す。それこそ生物が環境に適応し、進化するように。

「オマケだ、吹っ飛べ!」

 ドゴン!と巨大な物が破裂するような音が響く。

「ゴォポ!ガァ、ァ、小僧、何をした!?」

「体内に広がった一角聖槍を爆発させたんだよ!」

 アリの中にジバクアリという種がいる。自身が自爆することで味方への注意と共に敵の動きを封じた上で道連れを行う。その自爆する対象が敵の体内にある角であったならどれだけの威力を生み出せるだろうか。

 肉を貫き硬質で鋭利な角。それが全身に広がり、内側から内臓、筋肉、血管を傷つけ、皮膚を突き破り、そして爆発。爆風は角の破片を吹き飛ばし、体内から弾丸が撃たれてように肉を抉りながら飛ぶ。

 素早く槍を手放し。次の繰り出す。

「槍だけじゃ、アンタを押し切れない。だから今まで貯めてきた切り札は全部使わせてもらう」

 肩甲骨から生やした二本一対の巨腕。

「ふん!」

 ブォン!と風を切り、巨拳をヴォバン侯爵に放つ。

 一発、二発、三発、三発、四発と止まることのない怒涛のラッシュを繰り出す。

「ガッ…グゥ…」

 体内から角が出た穴から血が噴き出し、両手を重ねてガードする上から殴る。技術もない、ただ、間を開けない連続攻撃。

 これで倒しきれなきゃ、後がない。押し切れ!無理を続けても手を止めるな!

 自分に言い聞かせて、限界を超えて腕を動かす。腕の生やした箇所から広がっていく激痛に顔を歪めながらも止まらない。

「これでラスト!」

 両巨拳を同時に振り下ろす。

 衝撃で地面が砕け、砂煙が舞う。

 

「はぁ、はぁ、流石に倒したか…」

 自分が振り下ろした拳によって生まれたクレーター

「やるではないか、小僧!」

 クレーターから這い上がってきたヴォバン侯爵。

 黒いスーツとコートに砂ぼこりをつけ、全身から血を流し、片目も閉じられている。

 これだけやって倒せないとかありかよ!

 

「では、続きと言うことでよいかな?」

 片目となったエメラルドの目を鈍く光らせて睨んでくる。

「アンタが倒れるまで付き合ってやるよ」

 再び、巨腕を構えると、東の空が白んできた。

 雲の隙間から広がっていく朝日。

 

 ヴォバン侯爵は太陽を恨めしそうに睨みつけると。

「今回の戦は、貴様の勝ちだ小僧。だが、次はこのヴォバンが勝利を頂く!」

 そう言うと、ヴォバン侯爵の姿は竜巻に巻かれ。竜巻が消えた時、そこには姿は無かった。

 

「勝手にやってきて、勝手に帰りやがったか。自分勝手な奴だ」

 思わず地べたに腰を下ろし、そのまま倒れこんだ。

 

 




次回から当分は夏休みというなのエロが続きます。
リアルはもう一月なのにね。

夏休みと言ったら、海、祭り、あとなにかありますかね。
あと『獣群師団』の組織内容も若干出す予定です。


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獣群師団本部

 プライベートジェット機の窓から外を覗くと見えるのは雲の海。

 

 学生の一大イベント夏休み。

 休みに入ってすぐに宿題を終わらせ、残りの休みを謳歌するも良し、最終日近くに友人と集まって宿題を徹夜で終わらせるも良しの学生の間でしか味わえない時間を過ごすことだろう。

 

 俺、祐理、アテナは『獣群師団』が購入したプレイベートジェット機でフィレンツェに本部を置く『獣群師団』に向かっている。向こうにはヴォバン侯爵の一件で調べものをしてくれていたリリアナとエリカがそのまま待機しており、現地で合流する手筈になっている。

 

「ん?」

 右肩に乗っかっている祐理の頭。

 ジェット機の三十分ほど、俺に寄りかかっていたと思えばいつの間にか眠りにつき。反対の肩には、アテナが頭を乗せている。その手には携帯ゲーム機が握られ、アテナが眠っている間にキャラクターが死亡していた。最近アテナはゲームにハマり、こうして携帯ゲームをプレイして、偶にひかりと家のリビングでひかりと協力プレイしている姿を見ることもある。

「そろそろか」

 ジェット機が雲の中を突っ切り、地上が見えてきた。

 カンピオーネになってから幾度となく足を運んだ国イタリア。

「起きろ、祐理、アテナ、着いたぞ」

「ふえ……あ!すいません、涼さん!」

 寝ぼけた顔をしていた祐理だけど、意識がはっきりしてくるにつれて顔が赤く染まっていく祐理。一緒のベッドでも寝たし、セックスもしたのに寝顔見られてくらいで顔を真っ赤にするのか。

「それと、アテナ寝たふりするなよ」

「むっ…なぜバレた?」

「感?」

 そうか、と言って肩から頭はどかしたものの、腕に抱き着いてくるアテナ。

 最近、アテナも人間の生活に大分馴染んできたな。

 ジェット機は問題なく着陸。機長、副機長含め、二人とも『獣群師団』の構成員なので楽で済む。

 手荷物を受け取り、入国審査を済ませて空港の出入り口に向かうと、懐かしい顔の人物が立っていた。黒いスーツに肩まで長さの金髪に眼鏡、見るからに仕事が出来る感を感じさせる大人の女性“セルシア・フェルン”。祐理やリリアナと同じように、ヴォバン侯爵の儀式で贄とされた魔女。今じゃ儀式の後遺症で高度な術は発動出来ず、出来るのは初心者が使うような術か、簡単な占いくらいなもの。儀式のせいで役立たずとなった彼女は所属した組織に帰れるも受け入れられず、同じく儀式の贄となった妹共に『獣群師団』に身を寄せてきた。

 その頃はまだ『獣群師団』なんて名前もなく、同好会が良いところだった。

「お待ちしておりました。涼様」

「お迎えありがとな、こっちのワンピースの子が祐理で、制服に猫耳帽子がアテナな」

「万里谷祐理です」

「アテナだ」

「初めまして、涼様の秘書を務めております、セルシア・フェルンと申します」

 ペコリ、とお辞儀して、では、車にお乗りください、と案内をしてくれた先にあったのは黒塗りの長い車。

 後部座席のドアを開けると中は外見とは違い広く、6人が座ってもある程度の余裕がある広さがあった。

「私、リムジンなんて初めて乗ります」

「俺もだ、前来た時はリムジンなんて無かった」

「これがリムジンというものか」

 三人で人生初リムジンに乗り込むと、リムジンは安全運転で走り始めた。 

 

 

 

 

 

 東京のようなビルに囲まれた街並みではなく、石やレンガで作られた建物が目立ち、遠くにはコロッセオも見える。

 ローマに滞在していた頃に、リリアナと見て周ったっけ。

 

「そういえば、事業の方はどんな感じ?」

「順調ですよ、今ではイタリアでも人気のホテルとして扱ってもらっています」

 隣に座る祐理がホテル?と首を傾げて聞いてくる。

「『獣群師団』は組織として歴史も浅いからお金の調達が難しくてな、そこでホテルを経営することになったんだ。一つは普通の観光客用のホテル。組織には世界中の人が所属してくれるから言語の対応が出来て、教育するのも楽でさ。ほら、日本人が海外旅行をどうすか悩むのって、会話出来るかを不安に思ったりするからだろ。その点うちのホテルは人種やら、宗教やらに詳しいし、同じ出身国の人が務めているホテルなら利用しやすいからな。もう一つが、呪術関係者だけが泊まれるホテル。一般のホテルだと気を使わないといけない部分を気にしなくて良くなるし、カンピオーネのお膝元のホテルだから襲ってくる敵もまず居ない。安心安全の魔王印ってわけ。どっちも売れ行きは右肩上がりだ!」

 稼ぎの成果はこの車然り、プライベートジェット機然りだ。

 ヴォバン侯爵が日本に滞在している間に利用し、戦いの場所にもなったホテルも、本社が手放して事で『獣群師団』が買い取り、現在修理とリフォームの最中。直り次第ホテルとして再利用することになっている。ついでに、占いのお店の皮を被った日本支部も作ろうという案も上がっている。

「そうなんですか、私の知らない所で随分と」

「と言っても、俺もあんまり手を出してない。流石に普通の高校生だった奴がホテル経営だとか言われても分からん」

 『獣群師団』の構成員が自分たちで案を出し合い、試行錯誤の末に今の地位を築き上げた結果だ。彼、彼女たちからすれば拾って貰った恩義に答える為だとしても誇っていい事だと思う。

 その稼ぎのお陰で、俺は楽させてもらっているし、まつろわぬ神が出た時の国とのやり取りも全部丸投げしてる状態だ。

 

 陸路を進んでフィレンツェに到着するまで結構な時間があるから少し遊ぼうか。

 横で外の景色を眺めている祐理に手を伸ばす。

「あの…涼さん?何を…」

 自分に伸びてくる手を疑問に思いながら、此方を見てくる祐理。

「声出すなよ」

 ワンピースの裾をずらし、露わになった祐理の太ももを撫でる。

 象牙のように白く、筋肉が少なく滑らかな肌。

 祐理はビクッと体を震わせるが抵抗をすることはなく。俺の腕に抱き着き、ただ耐える。

 太ももを触ったまま、ゆっくりとスカートの中に進み、指先がショーツに触れた。

 ショーツの上からまんこの筋に沿って指を動かす。

 上下する指に合わせて、身を捩る。

「っん!―――っ♡」

 興奮してきたのかショーツの下からぷくりと主張してくるクリトリスを優しく一撫ですると、祐理の口からくぐもった声が漏れる。

「良い子だ、祐理。そのまま着くまで我慢するんだぞ」

 涙目で上目遣いで、俺の事を見てくる祐理。

「そんな!んぅ♡…ずっと、このままなんて、あぅ、無理です…♡」

 クリトリスを摘み、くりくりと転がす。腕に強くしがみつき、快感を堪えている姿は加虐心を加速させる。

「別に声出してもいいよ、セルシアに見つかるかもだけどな」

「うぅぅ…がま、ん、しま、ひぃ♡す」

 ショーツの上からクリトリスを摘み、指で筋をなぞっていると、反対側の腕を引っ張られる。

 反対側を見れば、いつの間にかゲームを辞めたアテナが、自分からスカートをたくし上げ、虐められるのを待っていた。

「涼、祐理ばっかりずるいぞ」

 空いている反対の手でアテナのショーツをなぞるともう濡れている。恐らく祐理が虐められているのを見て興奮したのかもしれない。

「アテナも声出すなよ」

「うむ…承知し、ぃん♡ている♡」

 左右で別の女を虐めながら暇をつぶすという、同人誌やエロゲーのような空間を形成しながらも、指は止めない。

 二人がイキそうになれば指をわざと止めて絶頂には至らせず、また波が引けば指を動かす。

 そろろそ、直接かな。

 二人同時にショーツの中に指を滑り込ませ、おまんこを優しく撫でる。

 布とは違う柔らかな肌の感触が指に返ってくる、すべすべで柔らかく膣口近くを指で擦るとじゅるり、と愛液が垂れてきているのが分かる。

 祐理を見れば腕に痛い位にしがみつき、太もも同士を擦り合わせて恥じらいながら、口を頑なに閉じている。

 アテナは腕にしがみつきこそしないけど、自分の服を握って度々変わる責め方に我慢し続けている。

 二人のショーツには愛液の染みができ、体から染み出る雌の香り。

 膣肉をかき分けて、俺の指を膣内に侵入させていくと、痛いほどの締め付けが返ってくる。じゅぶ、じゅぶ、と中指で膣内の出し入れを繰り返し親指でクリトリスを撫でたり、潰したりして刺激を与えていく。

 一度イカせる為に、二人の膣内に入っている指をクイッと曲げる。

「「―――ッ!!」」

 不意打ちの指の動きに流石に我慢の限界だったのか、二人は精一杯声を我慢しながら絶頂に至った。我慢していた分だけ二人の体を快感が支配する。

 

 二人が我慢の末の絶頂に放心している間に、車はフィレンツェにある本部に到着。

 建物の外見だけは少し古そうな建物だけど、中身は『獣群師団』の本部。此処とは別の場所に、一般人用のホテルと呪術師関係者用のホテルがある。

 リムジンから降りると少し生暖かい風を肌に感じる。

 後ろを付いてい来る二人は、結局車の中でイってしまったのが恥ずかしかったらしい。

 祐理は二歩ほど後ろで歩き、アテナは頬を膨らませて俺の手に抱き着いてる。セルシアの方はリムジンを駐車場に駐車してくると言っていたので、俺たち三人は先に入って行く。

 建物の見た目とは違い、中は改装してあるから綺麗だ。

 

 ロビーには鷲やグリフォン、獅子の姿をした置物や壁に掛けられたオブジェがいくつもある。

「随分と飾りが多いですね」

「ああ、あれは一種の防衛装置みたいもんだ」  

 本部のあちこちにある置物やオブジェは、俺の血肉で作ったガーゴイルと動物・霊獣・聖獣を合成した疑似ゴーレムだ。

 敵が入ってこようものなら問答無用で襲い掛かる仕組みになっている。

 建物が出来たばっかりは何度か侵入を試みた呪術師が居たけど、入口で呆気なく潰されていた。勿論、一般人用ホテルと呪術関係者用のホテルにも、同じものが外見を変えて配置されている。

 

「待っていたわよ、涼!」

 上を見上げると、二階から顔を出して不敵に笑うエリカの姿と、その隣に立つ少し心配そうに俺を見つめるリリアナの姿がそこにはあった。



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デートの前日

 『獣群師団』本部にて、いつもの顔触れが揃い。お喋りに花を咲かせたい所ではあったが、涼には組織の長としての仕事が山ほど溜まっている。

 それを処理する為にセルシアと共に行ってしまった涼に対して、やることの無くなったリリアナ、エリカ、祐理、アテナが始めたのは女子会である。

 四人はソファに腰を下ろし、机の上にクッキー、一口サイズケーキ、チョコレート、グラスに入った紅茶に氷が浮かぶアイスティーを置いた机を囲み、女子だけの密談が始まった。

 

「ヴォバン侯爵の一件が解決したんですもの、涼にも癒しが必要だと思うの」

 

 紅茶の入ったティーカップをソーサラーに置き、最初の話題を提示したのは、エリカだった。

「それには同感だな。主は最近まとまった休みが無い、これではいつか倒れてしまう」

 

 いくらカンピオーネとはいえ、いまだ学生。学校でも勉強に宿題、偶に起こるまつろわぬ神関連の問題に対応するため世界中を飛び回っている。

 それに、数日前のヴォバン侯爵との戦い。

 重症とも言える傷を負い、権能の強引な行使は本来の体の自然治癒力にも干渉。いつもなら数日で治るような傷も、今回の戦いでは完治まで一週間以上を要した。

 

「古来より男を癒すには女と決まっているわ。それに涼は性欲も強いですもの。そういう意味で癒して上げる、奉仕するのも悪くないと思うのよ!」

「ほ、奉仕ですか!?エリカさん流石にそれは!」

「あら、王が身体を求められたら差し出すのも従者の務めでしょ?それに、もう肌だって重ねているんですもの。いいじゃない」

 

 エリカの言葉に、リリアナと祐理は真っ赤になり、アテナは一回しかしてもらってないと不公平を感じ、三人に責める視線を送る。

 

「エリカ、具体的にはどうするんだ?」

「特に決めてないわ。普通に肌を重ねてもいいし、一緒にお風呂に入って自分の体で涼の体を洗って上げたり、デートに行って夜にホテルで熱い夜を過ごしたりね」

「うむ、妾は悪くないと思う。最近、涼と過ごす時間はあまり取れていないからな」

 

 アテナの言う通り、女子陣が涼と二人っきりになるのは難しい。そもそも涼の家に住んでいる、リリアナとアテナ、通い妻の祐理、度々遊びに来るエリカ。

 最低でも二人は確実に、家にいるだけで涼と会える。他二人も一日の大半は涼と共にいる。

 

「簡単よ、ローテーションを組むの。ひとり一日、涼と朝から晩まで一緒に過ごすの。どう過ごすかは各自に任せるわ。デートを楽しむも良し、部屋に籠って愛を確かめ合うも良し。どうかしら?」

 名案を提示したとばかりに、ドヤ顔をしながら口にクッキーを放り込むエリカ。

 

「う、うむ!わ、悪くないな!」

 そっぽを向きながら賛成するリリアナ。

「そ、そんな、学生らしからぬですね……でも、いいかもしれないです」

 真っ赤にした顔で賛成する祐理

「妾も賛成だ。涼とは濃密な時間を過ごすべきだと思う」

 頷き賛成を示すアテナ 

 数日前のヴォバン侯爵との戦い。カンピオーネのスペックと権能で傷は治っても、疲れは肉体的にも精神的にも残っている。

 それを癒すのは、恋人として傍にいる女たちの役目でもある。

 

「エリカさん、具体的にどうするおつもりですか?」

「そうね。私はシンプルに肌を重ねようかしら。でも折角夏なんですもの。海に行くのも捨てがたいわ」

 季節は夏。イタリアでも海水浴が行える海はいくつかあり、必要とあれば海近くにある別荘で二人っきりに時間を過ごすのも悪くないわ、と付け加えて口にするエリカ。

 完全に一人、自分はどうするかを考えていくエリカに対して、残りの四人もそれぞれどうするかを考えて行く。

 前に妄想して書いた小説の内容にあったように、イタリアを一日デートすることを妄想するリリアナ。

 顔を赤くしながら、一日をどう過ごすかを考える祐理。

 目を瞑り、静かに思考するアテナ。

 各々が二人っきりの時間を過ごすか考えて行く。

 勿論、そんな一日デートなんて話がエリカから涼に説明されているわけもなく、本人のあずかり知らぬ場所で話は進んでいた。

 エリカは一人バルコニーにアイスティーを持って出ると、後を追うようにアテナも出てきた。

「お主の思惑通りか?」

「あら?でも皆喜ぶでしょ」

 エリカの思惑、それは涼との二人っきりの時間の確保だ。

 集団で行動する上でどうしたも無理がある。そこで全員を巻き込み案を出すことで自分のしたいことを相手にもさせて、ちゃっかり自分も同じ分だけを味わうことをエリカは選んだ。

 アテナはそれを分かった上で話に乗り、涼との二人っきりの時間を味わうことを良しとした。

「こんな風に策を巡らせるのは、私の仕事だもの。それに美味しいものは共有するべきでしょ?」

 ふふふ、と笑うエリカの顔は恋する乙女の顔だった。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 

 場所は変わり、セルシアが整理したおいてくれた報告書に目を通している涼。

空っぽになったティーカップに、ポットを傾けて茶葉から淹れた紅茶をカップに注ぐカレン。

 

「リリアナ様たちは神無月様との夏休みをどう過ごすか作戦会議に入っているようです」

「一体、どうやってそんな事を調べたんだよ」

 聞き返すと、メイド服のポケットからスマホを取り出し、そのスマホからリリアナたちの声が流れてくる。

『やっぱり夏は海ではないだろうか、日本ではな夏祭りや花火大会もあるはずだ』

 どうも日本で過ごす夏休みのプランを五人で打ち合わせしてるみたいだ。

 

「俺もデートスポットとか調べてみるかな」

「因みに、リリアナ様はローマの休日に憧れています」

 流石はカレン。リリアナの事なら大半の秘密を知ってる告げ口メイドなだけあり、リリアナの趣味の自作小説を完成する度に俺に送ってくるだけはある。

「それは前にお前から聞いて知ってる。『獣群師団』での住み心地はどうだ?」

「良いですよ、元々イタリアに住んでいましたから。最近では新米メイドの教育にもアリアンナと協力して取り組んでいます」

「それは良いこった。うちは基本、呪術師関連の駆け込み寺みたいなもんだからな。規模は勝手に大きくなって人手も増える。その分資金集めは大変だけど、呪術師の家に生まれたからってならなきゃいけないわけじゃない。仕事なんて探せばいくらでもある」

 そうですね、と頷くカレン。

 たっぷりと注がれてカップを手に取り、口に運ぶ。

 報告書では、ホテルの売り上げは右肩上がり。スタッフという名の組織の人間も上手くいっているらしい。

 場所によってはニュースなどにも取り上げられ、それによってまた売り上げがアップ。

 それにしても……。

 

「なんでいるんすか、ルクレチアさん」

 座っている椅子を少し回転させて窓際を見ると、ソファに腰を下ろして紅茶を飲みながら、クッキーを口に運んでいるルクレチア・ゾラ。

 『サルデーニャの魔女』や『イタリア最高の魔女』とも呼ばれる、イタリアでも上位に入る魔女の一人。見た目こそ二十半ばだが、実年齢は七十近い年齢。

 この人を見ていると魔術がどれだけ便利な物なんかを実感する。

「いいではないか。それに私は、此処で魔女たちの教師をしている」

「まあ、腕のいい呪術師がいれてくれるのはありがたいけど。よくもカンピオーネの組織になんて入ろうと思うよな」

「その理由は、君というカンピオーネが生まれたことにある」

「俺?」

「そう君だよ。君が『赤銅黒十字』と『青銅黒十字』の二人を恋人とし囲ったことで、組織ごとカンピオーネの傘下に入った。その影響でイタリアの小規模な組織は、自衛とカンピオーネに潰されない為に、私を引き込むことに躍起になったというわけだ。毎日来る勧誘の嵐、ポストに入らないかという手紙にうんざりしていた時にふっと思ったのだ。『獣群師団』に入ってしまえば解決するではないか、とな」

 あっけからんに言うが、なかなか大胆な行動だ。

 ウルスラグナの一件で顔を合わせているとはいえ、あれから電話の一本もしていない。仮に俺の怒りを死ぬことになるだろうに。

 

「出ていけと言えば、出て行くが?」

「いや、いい。セルシアが許可を出したってことは、必要だと思ったからなんだろう」

「部下を信用しているようだな」

  

 ふふふと笑うルクレチアから目を離し、報告書を読み進めた。

 

 

 

 

 

 女子会が終わったのか、リリアナたちがエリカを先頭に訪ねてきた。

「涼、私たちとデートしましょ」

 

「それで、夏休み間の四人とデートしながら過ごすのか」

「ええ、他にも夜は二人セットで相手をしてもらったりね。『愛する者に愛を』のお陰で妊娠の心配はない。それに今しかそんな肉欲に溺れる生活だって出来ないでしょ」

「確かに、そうだけど。よくそんな生活を祐理が許したな」

「えっと、その、男性を癒すのは女子の役目ですし…私だってデートだってしたいですから!」

 顔を赤くしながらデートしたと言う祐理。

 

「そうだな、偶には戦いの事を忘れてもいいだろ」

 呼んでいる途中の報告書を机に置いた。

 




この後は当分、夏休みイベントとエロが続きます。


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