真・恋姫†BASARA 革命 劉旗の大望を創世する東照 (武者ジバニャン)
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序章

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。それを許容できない方々はブラウザーバックを推奨します。

注意、当作品に恋姫†無双主人公、北郷一刀は出しません。居ても空気になってしまうのでご了承ください。


オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。
ご理解の程、宜しくお願いいたします。


イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


天下泰平となってある日。それは日ノ本の中心地となった江戸城から始まる。

 

 

 

《江戸城》

 

 

江戸城の天守閣にて、ある一人の名を馳せた戦国大名が自身が作り上げた国を眺めていた。

 

 

家康「うむ、今日も平和で良いな」

 

 

この黄色のフード付きの戦装束を身にまとう鍛え抜かれた肉体を持つこの男こそ、天下人徳川家康。嘗て幼名竹千代の時今川義元の下で人質となり、次いでその今川を桶狭間の戦いで討ち果たした乱世に現れた魔王・織田信長に仕える。

だがその信長は家臣明智光秀に討たれ、その謀反を起こした光秀を討ち取り、力の名の下に天下に覇を唱えた覇王・豊臣秀吉に臣従したがそれに抗い、己の拳でもって秀吉を打倒した。

 

 

しかしその秀吉の左腕にして、家康の無二の友とも言えた男・石田光成と対立。両者は関ヶ原にて東西に分かれた総力戦にて激しく激突した。

 

 

両軍激しく激突し、熾烈苛烈極めた末家康率いる東軍が見事勝利を収めた。関ヶ原で勝利を掴んだ家康は泰平の世を齎したのだった。

 

 

古きに囚われ新しき世を拒み続けた者、新しき世の為に散った者、儚く消えた逝った者、それぞれの想いと心を背負って次代にも語り引き継がせんと胸に誓いここまでやって来た。

その想いが彼の心に深い気持ちを燻らせる。

 

 

家康「....長かったな」

 

 

 

そんな彼の背後から家臣が現れた。

 

 

 

「家康様」

 

 

家康「ん?どうした?」

 

 

現れた家臣がとても複雑な表情を浮かべていた。

 

 

「実は、先ほど奇妙な銅鏡を見つけまして....」

 

 

家康「銅鏡?おかしいな、そのようなが在るなど今まで聞いた事は無いぞ?」

 

 

家康の問いに家臣は困ったように答える。

 

 

「はい...しかしながら、それが見つかりまして.....」

 

 

家康「ふむ、分かった。案内してくれ」

 

 

「ハハッ!」

 

 

 

家臣の案内で、その奇妙な銅鏡が在ると言う蔵へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銅鏡が在ると言う蔵へ辿り着いた家康の前に、鋼鉄の鎧を全身に身に纏う巨漢の男が聳え立っていた。

 

 

家康「おお!忠勝」

 

 

忠勝「.....!」

 

 

彼の名は本多忠勝。戦国乱世において「戦国最強」の二つ名を欲しいままにした無双の武士で、いかなる武器でも傷一つ付ける事は不可能と言われ恐れられていた、家康に過ぎたる者である。

 

 

「家康様、こちらの蔵にその銅鏡が御座います」

 

 

家康「そうか。すまないが、それを持って来てくれ」

 

 

「ハ!直ちに!」

 

 

家康の命により、家臣が銅鏡を取りに行った。そして少し時間が過ぎた頃に家臣が戻って来た。その両手には丸い形をした古い銅鏡を持っている。

 

 

「こちらです」

 

 

家康「ほう?これがか....」

 

 

忠勝「?」

 

 

家臣から手渡されてまじまじと見つめる家康とその傍らで凝視する忠勝。しかし何処から見ても只の時代が古い鏡としか見えなかった。

 

 

家康「ふむ、こんな物が何故蔵の中に.....」

 

 

っとその時、突然鏡が急に光り出したのだ。

 

 

家康「な、なんだ!?」

 

 

忠勝「!?」

 

 

突然の眩い光が家康と忠勝をまるで包み込むようにして激しく輝き出した。家臣も突如起きた出来事に驚愕する。

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

そして激しい光が止むと、そこに居た筈の家康と忠勝の姿が何処にも居なかった。

 

 

「そ、そんな!?家康様ぁ!!忠勝様ぁ!!」

 

 

 

このとんでもない事態に城中の者たちが総出で家康と忠勝の捜索を行うが一向見つからなかった。

 

 

 

しかし此処から物語の扉が開かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

在る地にて真昼にも関わらず複数の流星が空に流れ、その流星たちを幾人の者たちが見ていた。

 

 

 

桃色の髪の娘「星が....降ってくる」

 

 

別の場所でも。

 

 

軍を率いる金髪の少女「真昼に、空から星とは....」

 

 

他でも。

 

 

騎馬の女の子「姉様、あれ!!流れ星!!」

 

 

騎兵を率いる娘「....ちっ。あんま、気分の良いもんじゃねぇな」

 

 

また別でも。

 

 

豪奢な衣装の娘「......」

 

 

臣下の少女「主上様、見てはなりません!お目が穢れます!」

 

 

貴族風な少女「あれは....凶兆?」

 

 

また他でも。

 

 

船上で戦う褐色肌の娘「それとも、世界を変える嚆矢となるか....」

 

 

 

これからバサラ者たちと恋姫らの物語が今、始まる。




皆さまどうも、モブ兵士と申します。何の更新もせず、またもや新作を書いた事を此処にお詫びします。

何故に戦国BASARAと真・恋姫†無双のクロスオーバーを書いたのかと思いますと、実は先週の仕事帰りにメロンブックスに寄った際に真・恋姫†無双革命・劉旗の大望が在ったためそれを買い、そしてそれをプレイしながら戦国BASARAを見ていました。

そこで書いてみようかな?っと思い書いた次第です。



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第一章 東照、外史に来たれり

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。それを許容できない方々はブラウザーバックを推奨します。

それと当作品のバサラ武将たちはかなりの無双を行うと思いますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。
ご理解の程、宜しくお願いいたします。


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イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


泰平の世を築いた天下人・徳川家康、その彼と戦国最強の武人本多忠勝は奇妙な銅鏡を目にする。

 

彼らは銅鏡を覗き見た瞬間、突如銅鏡が激しく輝きだして二人を包み込む。

 

そしてとある大陸各地にて謎の流星が幾重にも降り注ぎ、その一つが戦火に包まれた町に飛来する。

 

 

 

 

家康「う.....む」

 

 

 

飛来した一つの流星と共に町のど真ん中に落ちたのは徳川家康であった。何とか意識を取戻して起き上がる。

 

 

 

家康「こ、ここは....」

 

 

 

彼が目に広がっていたのは、戦場であった。そして兵士らしき恰好をした者たちと、それらと争っている黄色の衣装に身を包んだ者たちが互いに武器を持って彼をぐるりと取り囲んでいる。

 

 

家康「なんだ!?お主たちは!!」

 

 

家康は驚愕し取り囲む彼らに問いかけるが、向こうはそれに答える事無く突如現れた家康を警戒する。するとその時である。

 

 

 

???「!、こっちに!」

 

 

家康「ん?!あっ!おい!」

 

 

突然家康の視界に現れた桃色の髪の少女が彼の手を掴み、走り連れ去る。それに対して逃がさんと黄色の頭巾の者たちが急ぎ二人を追おうとする。

 

 

「逃がすんじゃないん!!追うんだ!!」

 

 

桃色髪の少女「鈴々ちゃん!後はお願い!!」

 

 

???「分かったのだ!!」

 

 

っと何処かへ合図の言葉を投げ掛けると誰かがそれに答え、黄色の頭巾の者たちを足止めるのだった。その間にも家康は自分の手を握って共に走る少女を気にしながら、辺りを見渡す。

 

その走り続ける中で見えるのは見た事も無い建物の列、彼自身今の今まで見た事も無い景色である。何故自分がこのような事になっているのか?そして此処は何処かなのか?それに自分を助けてくれたこの少女は?家康にとって分からない事だらけである。

 

 

家康「(思い出せ...ワシは確か、あの奇妙な銅鏡を調べようとしたのだ。その時、銅鏡が突然輝きだして、ワシと忠勝を.....そうだ!忠勝はどうした!?)」

 

 

そう思考する家康に、桃色の髪の少女が彼に走りながら語りかけるのだった。

 

 

桃色の髪の少女「ハァハァ!もうすぐ安全な所に着きますからね....天の御使い様!」

 

 

家康「ん?」

 

 

桃色の髪の少女「でもびっくりしましたよ。黄巾党と戦っている所に、いきなり降ってくるんですもん」

 

 

家康「な、なんだと...?」

 

 

いきなりこの少女から出た話しに家康は理解出来なかった。自分が空から降って来た?それにこの少女から先ほど言っていた天の御使いとは?

 

 

だが一つだけ、彼自身聞いた事が在る言葉があった。黄巾党...それは中国後漢末期の西暦184年に太平よく道の教祖・張角を指導者とする太平道の信者が大陸各地で起こした農民反乱。その目印に黄色い頭巾を被る姿から黄巾党と呼ばれていた。

 

しかしそれは家康がよく何度か読んだ三国志が記された書物の内容で、実際に黄巾党が存在する訳がない。

 

 

するといきなり桃色の髪の少女が走る足を止めて、驚いた様子で家康を見上げ問いかける。

 

 

桃色の髪の少女「ふえ...?違うんですか?」

 

 

家康「あー、すまんが....。ワシはただの人で、お主の言う天の御使いと言う者ではないんだ」

 

 

そう口にした家康に対して、彼女は問いかける。

 

 

 

桃色の髪の少女「.....でも、天から流れ星になって降りてらっしゃいましたよね?」

 

 

家康「なんだって?」

 

 

彼女から聞かされたのは驚くべき話であった。自身が空から降って来たなどと何とも信じられないが、彼女の眼は決して嘘を申しているそれではない。

それに思い返すと、先ほど者たちが家康を取り囲んでいたのはそう言う事であったからなのだろう。

 

 

桃色の髪の少女「だから私も、貴方が予言にあった天の御使い様なのかな....って思ってたんですけど」

 

 

家康「ふむ...だがやはり、ワシはそうような神仏に遣わされた存在ではないんだ。すまないが人違いだ」

 

 

桃色の髪の少女「え....?」

 

 

彼女は、家康の言葉の意味が分からなかったのか、それともショックだったのか、ぽかんとしてしまう。だが直ぐに。

 

 

桃色の髪の少女「あ....あははは....気にしないでください。私も勘違いしちゃっただけなので」

 

 

彼女はあからさまにがっかりしているが、こればかりは家康でもどうしようもない。それよりも家康は此処が何処なのか知りたい為、彼女に現在の所在を問いかける。

 

 

家康「申し訳ないが、此処は何処なのか教えてくれないか?」

 

 

桃色の髪の少女「此処は青州の平原ですよ」

 

 

そう返す彼女は先ほどのがっかりした態度から打って変って笑顔で返した。だが青州と言われて益々分からなくなった。

そんな混乱している家康に、彼女は....。

 

 

桃色の髪の少女「あの....とりあえず、此処は危ないので町の皆が避難している所にご案内しますね」

 

 

っがその時である。

 

 

「見つけたぜ!」

 

 

何と黄巾党の輩が、いつの間にか二人に追いついていた。しかもその数は100人も居る。

 

 

家康「ん!」

 

 

「おうおう!よくも邪魔ぁしてくれたなぁ!」

 

 

桃色の髪の少女「くっ!御使い様は逃げてください!!」

 

 

彼女は自分よりも家康に逃げるよう促しながら彼を庇うように黄巾党たちの前に立ちふさがる、自身の事など弁えずにだ。

 

 

桃色の髪の少女「この通りを真っ直ぐ行けば、安全な所に着きますから」

 

 

家康「なに!?お主は?!」

 

 

桃色の髪の少女「私は此処で時間を稼ぎますから...」

 

 

っと彼女は何の淀みも無い笑顔で家康に言うと、腰から下げていた両刃の剣をゆっくりと引き抜き、黄巾党相手に構える。

 

 

家康「.....」

 

 

しかし彼女の剣を構える姿は誰から見ても分かるくらいに腰に力が入っていない、素人丸出しの構えだった。

そんな彼女の姿を見て頭目の男が見下しながらに桃色の髪の少女を問い詰める。

 

 

「あはははは!!それでどうするつもりだ、嬢ちゃん!」

 

 

桃色の髪の少女「あ....あなたたち相手に、時間を稼ぐくらい、わたし1人でも....!!」

 

 

 

剣を構える彼女に、奴らは下卑た笑みで彼女の体嘗め回すように見て、舌を舐めずりながらに言う。

 

 

「ぎひひひひっ、そんな危ないもんなんか捨てて、俺の股間の剣を握った方が断然いいぜぇ~?ほぉらぁ....」

 

 

桃色の髪の少女「ひっ!!」

 

 

近寄ってくる黄巾党に彼女は恐怖で一瞬怯えるが、それでも自分の後ろに居る家康を逃がす為に怖くても退く訳にはいかないと剣を構え直す。

だが今の黄巾党たちが彼女をどういう目で見てるかなんて誰の眼にも明白あろう。容姿なんぞ男が全て彼女の見かけに鼻の下を伸ばしてしまう位に美しくそしてとても発育が良い。

とても少女と言うには余りに良すぎる程の良い女体をしている。

 

 

「男の方は殺せ!この嬢ちゃんは....ひひひひっ」

 

 

「たまんねぇ女体をしてるぜぇ~」

 

 

「ここ最近女を犯してねぇから、かーなーり溜まってるぜ。あ~早くヤりてぇ~!」

 

 

「しっかりと俺のガキを孕ませてやるよぉ~!ひゃははははは!」

 

 

彼女を見る奴らは既にハイエナ、最早人間とは言えないほどの下衆同然である。これに家康は先ほどから憤りを禁じえずそれが表情に出ていた。

その間にも彼女は再度家康に逃げるよう促す。

 

 

桃色の髪の少女「逃げてッ!私は....大丈夫、だから.....」

 

 

家康「.....」

 

 

そう口にする彼女の笑顔とは反対に、彼女の手足はこれから忍びよって来るであろう、女にとって死よりも恐ろしい未来に恐怖で震えていた。

 

そんな恐怖に我慢する彼女に、家康はゆっくりと彼女の肩にポンっと手を乗せる。いきなりの事に彼女は理解できずに家康の見つめる。すると彼は.....。

 

 

家康「大丈夫だ」

 

 

桃色の髪の少女「え....?」

 

 

家康「お主は下がっているんだ。この者らはワシが相手をする」

 

 

桃色の髪の少女「そ、そんなぁ!?ダメです!!」

 

 

家康「大丈夫だ」

 

 

彼女が止めよとするが、家康はそれを無視して奴らの前に立ちふさがる。

これに頭目の男は、鬱陶しいと言わんばかりの態度を露わにして家康に怒気を向ける。

 

 

「テメェは邪魔なんだよ!!どけやぁ!!」

 

 

家康「いいや、どかん」

 

 

「テメェ....」

 

 

家康の眼つきが鋭く敵を見据え、得物である手甲...金洋丸手甲を身に着けている己の両の拳を構える。

 

 

 

家康「さぁ!ワシの拳に挑む奴はおるか!!」

 

 

 

 

 

戦闘BGM《徳川家康のテーマ》

 

 

 

 

 

 

家康の挑発に苛立った黄巾党らは揃って襲いかかる。

 

 

「ぶっ殺せぇー!!」

 

 

「相手は丸腰だぁ!!」

 

 

家康「ヌオオオオッ!!!」

 

 

家康は腕に捻りを加え、更に力を溜めた拳の突きを敵の集団に放つ。そしてそれが大きな衝撃波となり、襲いかかる黄巾党たちは悲鳴を挙げて吹っ飛んだ。

残された頭目の男と数人の子分たち、そして家康の後ろに控えている少女はこの突然の光景に驚愕する。

 

 

桃色の髪の少女「す、すごい....」

 

 

「ば、バカな!?」

 

 

子分の1人が頭目の男にこの状況に恐れ、指示を乞うのだった。

 

 

「か、頭!どうしやしょ!?」

 

 

「バカ野郎!!だったら残った連中を呼びやがれぇ!!」

 

 

「へ、へい!!」

 

 

頭目の男の命令で仲間を呼ぶ笛を鳴らす。すると家康の眼前に更に敵が増えるが、そんな物家康のようなバサラ武者の前では無力と言えよう。

 

 

「おめぇらぁ!!あの男を殺せぇ!!」

 

 

「「「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」」」」」」

 

 

向かって来る敵に、家康は素早く動き正面から向かっていく。次いで敵に対して力が籠り敵を屠らんと眼にも止まらぬ拳のラッシュを繰り出した。

 

 

家康「ヌオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――っ!!!」

 

 

素早く、けれど確実に敵を屠る粉砕の連打を黄巾党たちに叩きつける。それらの殆どが家康の拳から繰り出す強烈な剛撃に為す術なく空の彼方まで吹っ飛んで行ってしまった。

そして遂にはその場に居た黄巾党は全て家康の手によって全滅されたのだった。

 

 

桃色の髪の少女「.....」

 

 

 

目の前で繰り広げられた圧倒的なまでの無双っぷりな戦いを垣間見た彼女は呆気に取られてしまった。っとその彼女の背後から誰かを呼ぶ声が.....。

 

 

 

???「桃香さまぁー!」

 

 

桃色の髪の少女「あ!愛紗ちゃん!」

 

 

家康「ん?」

 

 

家康も後ろから聞こえた声に気付き振り返ると、そこには薙刀のような得物を持った黒髪の少女が現れ、桃色の髪の少女のもとまで素早く駆け寄る。

 

 

黒髪の少女「桃香様!ご無事ですか!?」

 

 

桃色の髪の少女「うん、私は大丈夫だよ」

 

 

黒髪の少女「まったく、心配したのですよ。避難している皆の事をお願いしたはずですが...?」

 

 

っと桃色の髪の少女に心配しながらに言うと、黒髪の少女に謝罪を口にして訳も話した。

 

 

桃色の髪の少女「ごめんね?でもでも!空から星が降って来たの!」

 

 

黒髪の少女「星が...?」

 

 

桃色の髪の少女「うん、そしたらその星からあの男の人が出て来たの。ほら、前に管路さんに占って貰ったでしょ?平原に星が降る時、わたしたちを導いてくれる、天の御使い様が現れるって....。それにね?さっき私を黄巾党から守ってくれたの」

 

 

黒髪の少女「なんと!?......あの!」

 

 

家康「ん?」

 

 

黒髪の少女が家康に話しかけてきた。

 

 

黒髪の少女「我が主を救って頂き、誠にありがとうございます」

 

 

家康「いや、ワシはただやるべき事をやったまでだ」

 

 

黒髪の少女「それでも...ありがとうございます」

 

 

彼女は家康に頭を下げて礼の言葉を口にするが、家康は困ったように人差し指で頬を掻く。っとそんな家康に対して黒髪の少女が....。

 

 

黒髪の少女「あ!まだ名乗っていませんでしたね?我が名は関羽、字は雲長ともうします」

 

 

家康「......................................................ん?」

 

 

 

彼女の口から語れた名に、家康は一瞬何を言っているのか分からなかった。

 

 

家康「す、すまない。もう一度教えてくれないか?」

 

 

黒髪の少女→関羽「え?はい、ではもう一度...コホン!我が名は関羽、字は雲長と申します。貴方様が助けて下さった劉備玄徳様の義妹です」

 

 

家康「.......」

 

 

呆気に取られた家康は、先ほど助けた桃色の髪の少女へ視線を向けると、彼女は笑顔で名乗り始める。

 

 

桃色の髪の少女→劉備「あ!申し遅れました!私は劉備、字は玄徳と言います。助けてくれて本当にありがとうございます」

 

 

家康「..............」

 

 

劉備、関羽と言えば三国志に出てくる有名な将である。これは一体如何言う事か?それに自分と共に鏡の光に呑まれた忠勝は何処に行ったのか?そしてこれから家康は一体どうなるのか?

 

 

続く。

 

 




今回はここまで、コメント・ご感想がありましたらどうぞ。それではまた次回。


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第二章 東照、絆の拳を振るわん

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。それを許容できない方々はブラウザーバックを推奨します。

それと当作品のバサラ武将たちはかなりの無双を行うと思いますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。
ご理解の程、宜しくお願いいたします。

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イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


前回、流れ星と共に全く知らぬ地に降り立った天下人・徳川家康。その彼を待ち受けたのは何と三国志の話にでてくる農民で構成された一揆衆・黄巾党と、それに抗う武装していた人間たちとの戦場であった。

訳も分からず家康は黄巾党と戦闘をし、これを撃退。そしてその直後に偶然出会った桃色の髪の少女と黒髪の少女が、何と自ら三国志の英雄である劉備と関羽と名乗ったのだから更に混乱する家康。

 

さぁ何故自分は此処に来てしまったのか?そして日ノ本に戻れる手段は在るのか?それに自分と共に巻き込まれた忠勝は何処に居るのか?

 

 

 

物語は、劉備の名乗りから始まる。

 

 

 

 

 

劉備「あ!申し遅れました!私は劉備、字は玄徳と言います。助けてくれて本当にありがとうございます」

 

 

家康「..............」

 

 

今、家康の目の前に居るこの二人の少女...劉備と関羽に唖然とする。そんな中....。

 

 

 

???「おねぇちゃーん!あいしゃぁー!」

 

 

家康「ん?」

 

 

関羽「おお、鈴々か」

 

 

離れた所から走って来たのは、赤く短い髪形で可愛らしい虎の髪飾りをした背が小さい女の子であった。だがその小さい背とは裏腹に彼女が携えているのは長物の武器は遥に大きい。

その小さい女の子は劉備と関羽に駆け寄って来た。

 

 

???「二人共、無事だったのだ?こっちの黄巾党は殆ど逃げて行ったのだ!」

 

 

関羽「そうか。私の方も大丈夫だぞ」

 

 

???「桃香お姉ちゃんも?」

 

 

劉備「うん♪この男の人が私を黄巾党から守ってくれたんだよ」

 

 

???「にゃ?」

 

 

劉備が説明すると、女の子は家康を見て礼の言葉を口にした。

 

 

???「お兄ちゃん。お姉ちゃんを助けてくれてありがとうなのだ!」

 

 

家康「嗚呼、別にいいんだ」

 

 

???→張飛「鈴々は張飛、字は翼徳なのだ!」

 

 

元気一杯な笑顔で女の子に、家康は頭の中で何が何だか分からなくなり黙ってしまう。

 

 

家康「....」

 

 

そんな家康に劉備が問いかけきた。

 

 

劉備「あ、あのう?どうかしました?」

 

 

家康「い、いや!何でもないんだ。では!ワシも名乗らせて貰おう。ワシの名は徳川家康、字はない」

 

 

関羽「字は無いのですか?」

 

 

張飛「珍しいのだ」

 

 

劉備「それに格好も見た事も無いですよね?」

 

 

っと劉備は家康をまじまじと見つめる。確かに家康などの日ノ本の武将の格好など、過去の、それも三国志の住人からすれば珍しい。

 

フード付の羽織、胴当て、手甲、草摺、袴、具足、これらは彼女らからすれば奇抜な物であろう。

 

そんな凝視してくる劉備たちに家康は問いかける。

 

 

家康「すまないが、聞きたい事があるのだがいいか?」

 

 

劉備「はい、何ですか?」

 

 

家康「実は、ワシの連れを見なかったか?」

 

 

関羽「ん?あなた以外にも天から降って来た方が居るのですか?」

 

 

家康「え?あ、嗚呼.....そうかもしれない」

 

 

張飛「見てないのだ」

 

 

劉備「あ!もしかしたら!」

 

 

家康「ん?」

 

 

劉備が何かを思い出した。

 

 

劉備「実は、空を幾つもの流星が流れていました!もしかしたら.....」

 

 

家康「.....そうか」

 

 

余り信じられないが、自身と共に忠勝も流星とやらになって何処かの地に落ちたやもしれないと家康は判断した。まず日ノ本に帰る前に忠勝を探す事に決めたが此処は全くに知らぬ土地、無闇に動いても見つからないだろう、そう思案に暮れる家康に劉備たちが話し込んでいた。

 

 

張飛「あのお兄ちゃんが、天の御使い?」

 

 

関羽「それは分からない。桃香様はどう思われますか?」

 

 

劉備「うーん、私はそうだと思うんだけどなぁ~」

 

 

関羽「しかし桃香様が言うに、かの御仁中々の武を持っていらっしゃると思われます」

 

 

張飛「あのお兄ちゃん、とっても強いのだぁ?」

 

 

劉備「うん!とっても!1人で大勢の黄巾党をやっつけたんだよ!」

 

 

張飛「すっごいのだぁ!」

 

 

劉旗の話しに張飛は興味が湧いたみたいに喜び、関羽もそんな武を持つ家康に興味を抱くのだった。っとそんな中劉備が突然炊き出しの手伝いをしようと言い始めるのだった。

先ほどまで怖い思いをした少女とは思えない活発さであると家康はそう感じ入る。

しかし見渡せば、町の中は戦場跡と言ってい良いもので、巻き込まれた人々も何とも辛そうな面持ちをしていて、生きる気力を失いかけている。

だから彼女は炊き出しをしようと言い出したのだ。少しでも町の人間たちに安心と生きている喜びを持ち直してほしいが為に...。

 

そんな彼女の想いに家康も炊き出しの手伝いをすると申し入れたのだった。

 

 

劉備「え?家康さん。いいんですか?」

 

 

家康「嗚呼、もちろんだとも。劉備殿たちが民の為にやると言うならば、このワシも手伝おう!」

 

 

劉備「家康さん....」

 

 

関羽「あ、ありがとうございます。偶然出会った私達の為に...」

 

 

家康「なぁに、この偶然の出会いもまた絆さ」

 

 

関羽「///」

 

 

劉備「///」

 

 

 

ふわりと笑顔で語る家康に、彼女ら二人は頬を赤く染めて恥ずかしがる。そんな彼女たちの表情に気付かず、家康は号令をかけた。

 

 

 

家康「では始めよう!絆と共に!!」

 

 

 

そして炊き出しの手伝いを始めた彼らは、それらを町の人々に配り始める。

 

 

 

劉備「はいっ。ご飯はまだたくさんありますからね」

 

 

張飛「慌てないで大丈夫なのだ!1人順番ずつなのだ!」

 

 

家康「まだまだ在るから存分に食べてくれ!」

 

 

関羽「横入りはダメだぞ!順番を守るんだ!」

 

 

 

町の人々に炊き出しの飯を配り終わった後、彼らも炊き出しの飯にありつく事に。その中で家康は劉備たちと話す機会が出来た為、飯は食べずに喋る。

その内容は彼女らが互いに呼び合っていた、劉備・関羽・張飛の名とは違う別の名の事である。

 

 

 

 

家康「なるほど....真名とはそういう物なのか....」

 

 

劉備「はい。心から許した相手でなくては、決して呼ばせることを許されない神聖な名なのです」

 

 

家康「そうなのか...うっかり呼ばなくて良かった」

 

 

関羽「天の国には、真名は無いのですか?」

 

 

家康「ん?嗚呼、そういう神聖な名は無いな。ただ幼名や仮名などがある」

 

 

関羽「そうなのですか...」

 

 

 

そんな中、四人の中でいつのまに早く飯を食べ終えた張飛が物足りなさそうにしていた。

 

 

 

 

張飛「....うぅ、ご飯、全然足りないのだぁ...」

 

 

家康「ん?張飛殿、もう飯を食べ終えたのか?」

 

 

張飛「にゃ~」

 

 

確かに炊き出しとは言ってもご飯は薄いお粥のような物で、しかも量はそんなお世辞にも多くは無い。それでも張飛には育ち盛りの女の子にはちと耐えられないのであろう。

そこで家康は、未だ手を付けていない自身の飯を張飛に渡した。

 

 

家康「張飛殿、良かったらワシのを譲ろう。まだ全然手を付けていないから大丈夫だ」

 

 

張飛「いいのだ?わーい!」

 

 

劉備「え!?家康さん!?」

 

 

関羽「そ、それでは貴方は!?」

 

 

家康「なぁに。飯一つ抜かしても大丈夫さ」

 

 

劉備「家康さん....」

 

 

関羽「申し訳ありません....」

 

 

二人はバツが悪そうにしているが、当の家康本人は些末な事だと言って気にして居なかった。そんな彼に張飛が...。

 

 

張飛「お兄ちゃん、鈴々のことは鈴々....じゃなくて、張飛でいいのだ。殿は要らないのだ」

 

 

家康「分かった張飛、これでいいか?」

 

 

張飛「にゃ!」

 

 

関羽「全くお前は....」

 

 

 

そんな悪びれも無く家康の飯を食べる義妹の姿に呆れてしまう関羽であった。そして話は先ほどの黄巾党に変わる。

 

 

 

家康「先ほどの黄巾党たち....あれで全部と思うか?」

 

 

関羽「いえ、恐らく略奪の為に送られた一隊ではないかと....」

 

 

家康「ふむ....」

 

 

劉備「そうなるとまた来るのかな?」

 

 

関羽「しばらくは様子見でしょう。反撃するにしても、戦力を整える必要が在るでしょうから....」

 

 

劉備「そっか....」

 

 

張飛「だったらこっちから先に殴り込んでやるのだ!」

 

 

関羽「仲間を集められる前に叩くか....」

 

 

 

そんな彼らに先ほどまで黄巾党と戦っていた兵士たちがやって来た。

 

 

 

「劉備様、関羽様」

 

 

「先ほどは加勢、ありがとうございました」

 

 

「黄巾の連中を倒しに行くなら、俺たちも同行させてください!」

 

 

「俺たちで隊長の無念を晴らしてやるんだ!!」

 

 

家康「この者たちは....?」

 

 

家康が問いかけると悲痛な表情をする関羽が答える。

 

 

関羽「...彼らはこの町を守っていた兵士たちです。今回の戦いで、指揮をしていた将を失っております....」

 

 

家康「....」

 

 

彼女から語れた話しに家康も辛い顔になる。確かに先ほどまでこの町は黄巾党によって襲撃を受けており、酷い被害を被っている、町や財産、そして当然人にもそれが爪痕となって無残に残って居る。

すると兵士たちの後ろから続々と町の人々が集まって来て、劉備たちに頼み込んできた。

 

 

「オラは父ちゃんを殺されたんだ。仇を取らせてくれ!」

 

 

「俺も何でもする!弓矢なら、狩りで使ってるから任せてくれ!」

 

 

そう気勢を上げる彼ら。彼らは奪われたのだ、大切な者たちを。その彼らの表情にはその大切な物を奪われ、失った事への憤り、怒り、そして憎しみが窺える。

 

 

劉備「愛紗ちゃん....」

 

 

関羽「むぅ....」

 

 

だが対して劉備や関羽は表情が暗かった。そんな彼女の暗い理由を家康は察した。戦いに出れば兵士たちの話しに出ていた隊長や、町の者の家族のように次の犠牲者が出てしまうからだ。

下手をすれば援護どころか足を引っ張ることになりかねない。だがそれ以上に、彼らにはこれ以上犠牲になって欲しくは無い、それが彼女らの思いなのだろう。

 

 

関羽「結構だ。皆は町を守る事に専念してくれ」

 

 

劉備「うん。戦うのは私たちに任せてください」

 

 

っと、そんな町の者たちに関羽が毅然とした態度で、そして劉備は安心させるような笑みでこれを断る。

 

 

「し、しかし....」

 

 

っが、それでも町の者たちはこれに対して受け入れ難く、難色を表す。それに彼女たち三人だけで黄巾党の相手は厳しいのを知っている。

このまま劉備たちだけで行けば間違いなく危険であろう。それ故、家康は....。

 

 

家康「ならばどうだ?ワシと劉備殿たちが彼らを束ね、指揮し、黄巾党に挑むと言うのは....?」

 

 

劉備「え!?」

 

 

関羽「家康殿!?」

 

 

家康「どうだ?」

 

 

関羽「危険すぎます!!兵士とて此度の戦いで被害を受けており、民だって武器の使い方を知らない者だって居るのですよ!?」

 

 

家康「それをワシらで教える。それに戦術に関してもワシが練ろう」

 

 

劉備「家康さん...戦の経験があるんですか...?」

 

 

家康「嗚呼。だからどうだろうか?」

 

 

劉備「でも...」

 

 

関羽「......」

 

 

 

しかしこれに劉備と関羽はまだ了承出来ない様子である。それでも家康は言葉を紡ぐ。

 

 

 

家康「確かに辛い物になるだろう...。だが、それでは掛け替えの無い大切な者たちとの絆を失う事になる。だがここで諦めてはいけない!絆を結ぶ事を!そして絆を信じる事を!」

 

 

関羽「家康殿....」

 

 

劉備「絆....」

 

 

家康「そうだ!希望と共に結び合う絆で団結させる事が人にとって必要な事なんだ。それによって救われる者も居る。自分は1人でなく、共に支えてくれる仲間が、友がいると!」

 

 

劉備「....」

 

 

関羽「....」

 

 

彼の言葉に感じ入ったのか、2人はこれ以上断る言葉を出す事が出来なかった。それにこの男の語る姿に何故か心に来る物がある。

 

 

「天から来たお人まで居るなら、勝ったも同然だ!」

 

 

「嗚呼!それになんかこの人、太陽みたいに輝いてるように見えるんだよな」

 

 

「ご加護を!天のご加護を我らに!」

 

 

家康「こ、困ったなぁ....」

 

 

町の者たちは先ほど弁舌した家康を、天から来たと噂だけで尾ひれが付くような評価になってしまっている。何とも痒い気持ちを抱いてしまう。

そんな中町の者たちに同調したのか、先ほどまで家康から貰った飯を食べて大人しくしていた張飛が明るい声を上げる。

 

 

張飛「じゃあ、鈴々がやるのだ!」

 

 

劉備「鈴々ちゃん!?」

 

 

突然張飛が割って入って来たことに劉備は驚くが、張飛は話し続ける。

 

 

張飛「みんなでばーって戦って、どかーんってやっつければいいだけでしょ?簡単なのだ」

 

 

等とニコッと笑って余裕を見せる。その張飛に関羽は呆れてしまう。

 

 

関羽「おまえなぁ。簡単ではないからだな....!」

 

 

劉備「.....」

 

 

すると劉備が決意したかのように町の者たちに向き直り、静かに口を開いた。

 

 

劉備「....わかったよ。みなさん、力をお貸しください」

 

 

「「「「「「おおおおおおおおおおお....!」」」」」」

 

 

決意を固めた劉備に町の者たちは大いに沸きだした。沸き立つ民たちの中、彼女は家康に共に戦ってくれるよう頼む。

 

 

劉備「家康さん....力を貸して下さい」

 

 

家康「嗚呼、もちろんだとも!」

 

 

彼女の頼みに、家康は自分の胸を叩き自信を持って引き受ける。これに彼女や関羽、張飛は安堵する。そしてそのまま劉備は町の者たちに決意固めた顔で語る。

 

 

 

劉備「わたしも戦いは素人で......みなさんにも、ご迷惑をお掛けする思いますけど......よろしくお願いします」

 

 

「いえ、我らも指揮官を失った身。助かります」

 

 

「天の人も付いているし、俺たちも頑張るぞ!」

 

 

「おーっ!」

 

 

大いに士気が向上したようで、彼らは口々に溢れんばかりの劉備コールを挙げるのだった。

 

 

関羽「桃香様、よろしいのですか?」

 

 

劉備「うん。.....もうこれしかないと思うから.....わたしがやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、明日に黄巾党との戦に備えて皆せわしなく動き続けている。住人らは兵士たちから余った兵装を受け取りなり、既に準備の方は終わっているものの、少しでもやれる事はやっておきたいが為、策を考えると口にした家康は張飛に偵察を頼み込み、劉備と共に彼女の帰りを待っていた。

 

 

家康「.....」

 

 

するとその張飛が急ぎ足で戻って来た。

 

 

張飛「お兄ちゃん!戻って来たのだ!」

 

 

劉備「鈴々ちゃん、お帰り!」

 

 

家康「おお!ご苦労だったな?張飛」

 

 

っと労いを込めて彼女の頭を撫でてやる。その大きく温かい手に撫でられて不思議と嬉しくなり頬を赤くして、張飛は喜んだ。

 

 

 

張飛「にゃ!えへへへ///」

 

 

家康「それでどうだった」

 

 

撫でる手を止めて家康は敵の現状を確認する。若干名残惜しそうにしていたが、張飛はすぐさま自分の役割を果たす為、自分が見てきた敵の状況を伝える。

 

 

張飛「うん!ここから一里ほど行った所に陣を張ってたのだ。数は四千は居たよ!」

 

 

家康「ふむ。関羽殿、此方の数は?」

 

 

関羽「はい。およそ二千と行った所です。一応、武器の扱いや戦い方は教えておきました。ですが...俄か仕込みでどこまでやれるか....」

 

 

家康「うん!それで十分だ....さて」

 

 

 

家康は策を考え始める。しかし策と言っても今回兵士が少なく、その大半が民の為犠牲を余り負わしたくはない。それに真面に戦えるのは関羽と張飛、それと自分だけであるし劉備に至っては正直、前線には向かない。

ならば此方の被害を出来るだけ少なくする方法を考えなければならない。

 

 

 

家康「うむ!分かった!これが現状、最善だろう」

 

 

1人脳内で思案し結果、どうやら決まったようだ。それに劉備が知りたがって聞き出してきた。

 

 

劉備「本当ですか!?教えてくれますか?」

 

 

家康「嗚呼!もちろんだとも!」

 

 

関羽「どのような策ですか?」

 

 

家康「嗚呼、実は.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、町の入口にて覚悟を決めてこれより戦地に赴かんとする者たちが集まっていた。皆これからの戦いに於いて不安と恐れを抱いている。

そんな中、劉備と関羽、張飛の三人は何故か浮かない表情をしていた。

 

 

家康「ん?どうした?浮かない顔だが....」

 

 

それに対して当の家康はそんな三人が気になり問いかけると、そんな彼に劉備と関羽、張飛が声を荒げる。

 

 

劉備「当たり前ですよ!だった家康さんが1人で突っ込んで陽動をするなんて聞かされたら、そうなりますよ!」

 

 

関羽「そうです!!このようなのは策とは言えません!!無謀です!!」

 

 

張飛「そうなのだ!危ないのだ!」

 

 

 

家康の策...それは家康が単身で敵陣に特攻、そのまま暴れ回って統率をかき乱して頃合いを見計らったら関羽、張飛がそれぞれ兵を率いて突撃、混乱している敵を一対二という状況で各個撃破するというものである。

 

 

家康「しかし現状、これが最善なんだ。此方は数や質が敵に比べて劣っている。その為にも出来るだけ敵を混乱させ、ワシが有利な状況を作らねばならない」

 

 

劉備「だ、だけど....それでもダメです!!家康さん1人でなんて!!」

 

 

劉備たちは一向に引き下がらずに居る、しかし家康は....。

 

 

家康「安心してくれ、ワシはそこまで弱くない。それにな、ワシは犠牲を払いたくはない....皆の前に立つ理由などそれだけさ」

 

 

関羽「家康殿....」

 

 

劉備「家康さん....」

 

 

張飛「お兄ちゃん...」

 

 

家康「皆との絆を繋ぐ為にも、ワシは絶対に死なない!」

 

 

まるでそれは劉備たち、そしてこれを黙って聞いていた同士たち全員に約束するかのように、天にむかって拳を掲げ誓いの声を挙げる。

 

その家康に劉備が祈るように希った。

 

 

劉備「家康さん、約束してください。必ず戻って来るって....」

 

 

家康「嗚呼!誓おう!劉備殿たちと結ぶ絆に誓ってっ!」

 

 

 

劉備に約束を交わし、家康は一歩踏み出て皆の前に立つ。

 

 

家康「みんな、いいか!必ず敵一人に対して二人一組で挑むんだ!大丈夫だっ!必ず勝てる!共に轡を並べる仲間との絆をしんじるんだっ!!」

 

 

 

「「「「「「オオオオオオオオオオオオオオーーッ!!!」」」」」」

 

 

 

家康の鼓舞により、士気は最高潮まであがる。

皆を鼓舞し、士気を上げる家康の姿はまるで陽の光の如く照らしてくれるような気持ちにさせてくれる。この男は此処でも皆を照らす太陽であった。

 

 

家康「では!行ってくる!」

 

 

そう言い残して、家康は街に残っていた数少ない馬の一頭を駆り、黄巾党の陣まで向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって黄巾党が陣地にしている野営地。そこの周りを警戒する為に居る見張りの1人が自身の視界に写る物に気付く。

 

 

 

「ん?なんだぁ?ありゃ?」

 

 

その言葉に他の見張り者たちも、その者が見ている方角に眼を向けると騎馬兵が一騎、砂塵を上げて此方に向かってくるのを確認する。

 

 

「おい、一騎でこっちに来るぞ?」

 

 

「町の者か?」

 

 

「知らねぇ。でも此処で始末しよう」

 

 

そう口にした1人が弓を構えて、向かってくる騎馬兵に向けて放った。っが、放った矢は的に命中することは無かった。何故ならその騎馬兵はいつの間にか姿を消し、敵の視界から居なくなっていた。

 

 

「い、いない...?」

 

 

「ば、バカな!?」

 

 

「おい!!よく探せっ!!馬ごと居なくなる筈がないだろっ!?」

 

 

っと、その時である。1人が自分の影と重なる何かに気付く。そしてそのまま頭上を見上げると.....。

 

 

 

「?....っ!?ひぃ!!」

 

 

 

気付いた時には既に遅く、彼らを跳躍してきた馬の着地によって引き起こされた衝撃波に吹き飛ばされたのだった。

 

 

 

家康「おお!これが所謂、汗血馬という物か~。いつも忠勝の上に乗っていたから久しく忘れていたなぁ」

 

 

 

家康が乗って来た馬、それは赤と言う毛色をし体格も通常の馬よりも中々に状態が良い。そう満足して家康は己が乗る馬を撫でる。

このような名馬が何故ゆえ斯様な町に居たのか疑問ではあるが、兎も角家康は馬から降りて己の敵である黄巾党に対して鋭く睨みながら見据える。

黄巾党らも突然来襲に慌てながらも、武器を携えて家康を取り囲むのだった。

 

 

 

「て、てめぇ!!何もんだぁ!!俺たちを黄巾党と知ってての事だろうなぁ!!!」

 

 

 

そう吠える奴らに家康は冷静に口にした。

 

 

家康「罪なき民を虐げたお前たちに、ワシは情けを掛けない。だから....お前たちを討ち果たす事に、迷いはしないっ!!」

 

 

その家康の言葉に黄巾党たちは嘲笑うのだった。

 

 

 

「だははははははっ!!なぁにを言ってやがるっ!!殺せぇ!!」

 

 

 

その言葉と共に、黄巾党どもが家康に取り囲んだまま襲いかかる.....っが。

 

 

 

 

戦闘BGM「徳川家康のテーマ」

 

 

 

 

家康「ハアアァァァァァ.....」

 

 

家康を中心として、黄巾党共の足元に黄金の葵の家紋が広範囲に浮かび上がる。

 

 

家康「さぁ!行くぞ!!淡く微笑め東の照っ!!」

 

 

家康が腕を天に向かって振り上げると光の奔流が天へと昇っていき、これに多くの敵が巻き込まれて逝った。この途方もない力に、残った賊徒らは何が何だか分からず動揺してしまう。

 

 

「な....なんだ!?なんなんだ!?今の...!?」

 

 

「黄金の光に巻き込まれて....仲間が大勢、天に昇って吹っ飛びやがった....!」

 

 

「ありえねぇ!!こんなの....人間が出来ることじゃねぇ!!!」

 

 

人智を遥に超え、理解不能な力を前に怯えすくむ黄巾党。そんな戦意を失いつつある者どもに家康は拳を構える。

 

 

家康「さぁ!討って来い!!この全身でその声を聴いてやるっ!!」

 

 

「こ...このう!!!」

 

 

「く、くそがぁ!!」

 

 

「うおおおおおおおおっ!!!」

 

 

 

最早自棄糞の極みと言っていいだろう。家康の挑発に何人かの賊徒どもが命を捨てるかの如く彼に向かって刃を振り翳そうとするが、家康は軽快な体捌きにて鎧や身体すら打ち貫く剛拳で以って次々に玉砕させていく。

これが続けざまに起こり、拳の一つ、また一つと黄巾の雑兵どもが数十、数百という命の火が消えていく。

その結果、家康の背後には敵の屍がそこら中に散乱しており足の踏み場がない。

 

 

 

家康「さぁ次だ!」

 

 

 

っと、家康は迷わず闘志を燃やして眼前の敵を追い詰める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方劉備たちは、その家康が繰り広げている戦いの場から、少し離れた所で待機している。

 

 

劉備「家康さん....凄い」

 

 

張飛「お兄ちゃん、強いのだぁ!」

 

 

関羽「......」

 

 

 

彼女らは今、信じられない光景を目にしている。

たった一人の人間が、拳だけで四千もの敵勢を追い詰めているという異常さに眼を疑ったが、しかし現実にそれが行われている。

その鬼気迫る戦い振りに劉備らは改めて凄い人物と出会ったと思い知った。

 

 

劉備「....愛紗ちゃん」

 

 

関羽「はい、何でしょ?桃香様」

 

 

劉備「私ね?家康さんこそが、絶対に天の御使いだと思うの」

 

 

そう確信するかの顔で劉備は関羽に語りかける。それには関羽も同意する。

 

 

関羽「はい。私もあの方こそが、天の御使いであると確信しております!」

 

 

劉備「うん!じゃあ私たちも家康さんの下へ行こう!!」

 

 

関羽「はい!!皆の者よ、これより敵に突撃を掛ける!最早奴らに戦意の欠片ももない!ただの烏合の衆共に、団結して挑むのだぁ!!」

 

 

張飛「お兄ちゃんを援護しに行くのだぁ!!」

 

 

劉備「大丈夫です!!皆さんには仲間との絆の力があります!決して黄巾党なんかに負けません!!」

 

 

 

「「「「「「オオオオオオオオオオオオオーーッ!!!!」」」」」

 

 

 

彼女たちの掛け声と共に町の者たちは待機していた場所から飛び出し、一気に黄巾党の陣地に攻め込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家康は尚も敵を追い詰める。黄巾党の雑兵共は最早抵抗など出来ず只々後方へ後退する一方である、そんな彼らに....。

 

 

「てめぇらぁ!!何をやってるっ!!」

 

 

っと敵総大将と思われる男が現れる。図体がデカい体をしており、その大きな手には大きな曲刀が握られている。

 

 

「よくもやってくれたなぁ?この野郎...」

 

 

家康「ほう?お前が総大将か....」

 

 

「子分どもはビビってるようだが、俺様はちげぇぞ?」

 

 

そう家康に対して威圧するが、当の本人は全く効いておらず逆に挑発を仕掛ける。

 

 

家康「手加減はしない....だから、しっかりと身を護ってくれよ?」

 

 

「て、てめぇ!?舐めやがってぇ!!」

 

 

家康の挑発に堪忍袋がキレた総大将は曲刀を振り下ろすが、手甲を身に着けた家康の拳によって砕かれる。

 

 

「な!?バカな!?」

 

 

家康「ウオオオオオオッ!!」

 

 

 

そのまま家康の大地をも砕く剛拳によって、総大将は物言わぬ屍に成り果てるのだった。

 

 

 

「大将がやられたぁ!!」

 

 

「に、逃げろぉ!!」

 

 

 

総大将がやられたことに衝撃を受けた賊徒どもは逃げようとするが、それは既に遅い。

何故ならば関羽と張飛が率いる部隊がその退路を塞ぐかのように現れ、挟み撃ちにする。

 

 

関羽「行くぞ!黄巾の賊共を討ち果たす!!」

 

 

張飛「みーんなまとめて、ぶったおすのだぁー!」

 

 

「「「「「「オオオオオオオオオオオオオ―――ッ!!!!」」」」」

 

 

一気呵成に敵の殲滅にかかる。これより戦局は定まった。

 

 

家康「.....終わったな」

 

 

 

これにより戦は家康たちの勝利によって終わる....。

 

 

 

 

 




今回はここまで。それではまた次回。


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第三章 誓いを交わす

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。

それと当作品のバサラ武将たちはかなりの無双を行うと思いますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。

オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。
ご理解の程、宜しくお願いいたします。


イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


今回の話しは前回の黄巾党を撃破した直後から始まる。

 

 

黄巾党を撃破し、勝利の喜びに興奮が冷めぬ住人らと共に家康は町に戻った。

帰還してきた者たちの姿に、無事を祈り帰りを待っていた家族たちが笑顔と涙を浮かべながら帰ってきてくれた彼らを迎える。

戦から無事に戻る事が出来た者たちと、それを喜び迎える者たち。

 

しかし....それとは対照的な者たちが当然に居た。戦と言う理が在れば必ずしも起きる事だ。

そう、人の死である。幾ら家康の無双の武によって敵を大いに混乱させ、戦に有利になったとは言え、それでも戦いにおいて敵味方問わず死人は出る。

先の戦いで味方に死者を出してしまったのだ。愛する者を、大切な者を失い沈痛な想いに涙を流し、今此処に...この世から居なくなってしまった者の名を叫び彼らは泣いた。

その光景に、彼らを戦いに誘った家康にとって自身の胸を締め付けられるものだった。

 

 

家康「......」

 

 

彼は無言で己が両の拳を強く握りしめる。それを見かねたのか、劉備が心配そうな表情で声をかける。

 

 

劉備「家康さん、大丈夫ですか....?」

 

家康「.....嗚呼、大丈夫だ」

 

関羽「家康殿....」

 

 

関羽も家康を気に掛け、張飛もまた劉備や関羽と同様に家康の事を心配する。

 

張飛「お兄ちゃん...?鈴々たち勝ったんだよ?どうして.....悲しそうな顔をしてるの....?」

 

家康「....」

 

張飛「お兄ちゃん...?」

 

家康「大丈夫だ。ワシは」

 

っと家康は大丈夫だと言うが、その瞳は悲しみによって染められている。彼は戦を幾度も数えきれぬ程にその体で、拳で体験したきた。

そして死に逝く者たちの姿、その者たちの死を受け入れられず悲しみで悲歎に暮れる者たちの姿を彼はそれを何度も見てきた。

これは自分が引き起こした咎、なれば彼らに残酷な想いをさせる咎人である自分はこの罪を受け入れなければならない。

それが日ノ本に絆の天下を齎す為に幾度の罪を背負ってきた自分のけじめであり、此度もまたそれと同じくすると家康はそう自分に言い聞かせる。

そんな彼の様子に張飛は未だに心配する。

 

張飛「本当に大丈夫なの?」

 

家康「嗚呼、本当に大丈夫さ。ありがとう張飛」

 

再度声を掛けてくれた張飛の頭を撫でながら家康は笑みを溢す。

張飛も信じたようなのか、家康に撫でて貰った頭を嬉々として触れる。

そんな中、家康に劉備と関羽が声を掛ける。

 

劉備「あの、家康さん」

 

家康「ん?」

 

関羽「お話したいことが在りまして....」

 

家康「ワシに?何の?」

 

問いかけるが、彼女ら二人は何処か言いづらそうな面持ちを見せている。

そんな彼女らに家康は察したのか、別の場所で話すよう促す。

 

家康「此処ではなんだ。場所を変えよう」

 

彼らは自分たち以外誰も来ない場所まで移動すると話を始めた。

 

家康「それで、劉備殿。ワシにどんな話を...?」

等と聞いたが家康自身薄々彼女たちが何か自分に対して、大事な願いを口にするのではと気づいている。

だがそれを口にはしない、彼女たちの口からそれを聞き、その想いを直接聞かなければ無礼だと家康は感じていた。

そして劉備はその想いを口にし始める。

 

劉備「私たちはこの荒れた世界をどうにかしたいと思って、三人で旅してきました」

 

張飛「でも鈴々たちだけじゃ、全然ダメなのだ...困ってる人たちをみんな、みーんな!助けてあげることができなかったのだ...」

 

関羽「ですが!ある時、ある占いの話を聞きました!」

 

家康「それが...天の御使い、か」

家康の言葉に三人は真剣な顔で頷いた。

彼女たちは家康に求めているのだ。力なく声を挙げたくとも挙げることが出来ずただ搾取され続け蹂躙されて、命や尊厳なんて無下にされて食いつくされて潰されていく。

そんな絶望的な毎日がこの大陸で起きている、希望なんて最早この世界にとって在ってないような物である。

 

劉備「だから私たちは藁にもすがりたいんです!!救える命を!明日を!皆が笑っていける....そんな....そんな世界を作りたいんですっ!!」

 

家康「....」

 

家康は黙って彼女たちの心からの叫びとも受け取れる言葉を、真面目に聞き入れる。

そして彼女たちは...

 

劉備「お願いします!!家康さん!!貴方の力を!!私たちに貸してください!!」

張飛「もうお兄ちゃんしか頼れる相手が居ないのだ!!」

関羽「家康殿!!どうか!!お願いいたします!!力なき民たちの為に!!どうか!!」

 

家康「....」

 

彼女たちは必死に懇願する、それを家康は眼を閉じて日ノ本での記憶を想い起こす。

かつて自分が従っていた魔王・織田信長によって日ノ本は恐怖によって苦しんでいた。

民もまたその恐怖に蹂躙され苦しみ、悲しみ、救いを乞う叫びを口にしていた。

信長の恐怖の力に恐れながらもそれに魅了され従っていた...もしあの時、信長の凶行に自分が起って明智光秀よりも先に信長を討っていたら....。

だがそれでも豊臣が台頭していただろう。

結局豊臣の時も家康は富国強兵を貫く覇王・豊臣秀吉の下、その拳を奮っていた。

信長の時と同じく弱き者たちから笑顔と今を奪って...その拳で。

だからこそ信長みたく恐怖で縛るのではなく、秀吉のように力で支配するのでもく、人が絆を紡いでいける天下が見たいーーそれを日ノ本の民に過ごして欲しいと家康あの日...天下人となり北条を降したばかりだと言うのに今度は外国にまで拳を振りかざして日ノ本の民に苦しみを強いる秀吉をーー彼は討ったのだ。

それもまた絆の世を作る為に己の重き荷として背負うと決めた。

だがそれがまた新たな悲劇の引き金ともなり、自分にとって図り知れない悲しみ別れなることも家康はそれを受け入れ...

 

 

 

 

私の絆を奪い、一方では絆を説く!!!!! 答えろ――ッ!この矛盾の行方をッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

家康「っ!」

 

 

 

宣言しろ!!!!!!! 掲げた絆は嘘八百と!!!!!!!! そして二度と絆と口にするな!!!!!!!!!! その傲慢が!強欲が!貴様の死因だッ!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

家康「...」

 

 

 

返せっ!!あの日々を!!秀吉様が居たあの頃の刹那の日々を!!!!!貴様がっ!!!よりによって私が心から友と信じた貴様がぁあああああああああああっ!!!!!!

 

 

家康「.....」

 

過去の記憶ーーそれは家康にとって忘れてはならぬ物。

彼の様子が気になったのか、劉備が心配そうに声をかけてきた。

 

劉備「あの、家康さん?大丈夫ですか?何処か具合が?」

家康「いや、そうじゃない。劉備殿」

劉備「は、はい!」

 

家康の声音が先ほどに増して強く、彼の目は劉備たち三人をしっかりと見据え離さない。

彼女たちはこれに忽ちビクッとなってしまうが、家康はお構い無しに言葉を紡ぐ。

 

家康「劉備殿、お主たちの気持ちはワシには分かる」

劉備「っ!?じゃあ...「だが」...え?」

家康「その理想を体現するには、かなり険しくそしてそれは修羅の道だ劉備殿。

正直、今の劉備殿たちが満足に歩み進めるとはワシには思えない...」

劉備「そ、それは...でも!やってみなくちゃ!!!」

家康「では出来るのか?その理想を形にするため、その手を血に染め続けることが....」

劉備「そ、それは...」

 

家康「...」

 

家康は思うーー彼女は純粋すぎる。小さな小さな石ころでも躓けば忽ち立ち上がるのも難しいとすら感じる程に...。

彼女は現実という残酷さに耐えていける強さがないのは明白、関羽や張飛が居なければきっと此処までやっていけてなかっただろう。

その二人は劉備を心配している中、俯いていた劉備は顔を挙げて見せる。

その顔は涙で濡れていた。

 

劉備「私...小さな村で育ちました。そこで私は小さいけれど幸せに暮らしていくんだって思ってました...」

 

家康「...」

 

劉備「でも村を賊に燃やされ、家族や大切な人たちを殺されて苦しんでいる人たちが居ると知って居ても立っても居られませんでした。

私にだって何か出来るはずーー苦しんでいる人たち、悲しみに暮れている人たちを助けたいっ!支えたいっ!皆が笑顔に、生きられるそんな世界を作りたいってっ!!!

 

確かに私は愛沙ちゃんや鈴々ちゃん、そして家康みたいに全然強くないけど....でも!!たとえどんな苦しい道でも乗り越えて見せます!!!

 

この苦しみ満ちた世を!皆が笑っていける世界に変えたいんです!!

 

家康さん!!どうか!!どうかぁ!!お願いしますっ!!!

 

私たちに力を貸してくださいっ!!!」

 

家康「....」

 

家康は彼女を見つめ、そしてーー

 

 

家康「分かった」

 

劉備「え?!」

 

関羽「いまなんと?!」

 

張飛「鈴々たちに力を貸してくれるのだ!?」

 

家康「嗚呼。ワシは決めた、劉備殿たちの理想を形にすると...」

 

家康の返答に劉備たち三人は喜び合う、それを家康は微笑ましく見守る。

そして....

 

劉備「あのね家康さん。わたしの事、その...桃香って呼んでくれたら、嬉しいなぁ」

そう顔を赤く染める劉備は己の神聖な名である真名を呼んで欲しいと願う。

 

家康「っ!いやそれは、劉備殿にとって大切な名のはずじゃ...」

 

劉備「だからなんです。わたし、家康さん...ううん、ご主人様にそう呼んで欲しいんです」

 

家康「ご主人様!?な、なんだその呼び方は!?」

思わぬ呼ばれ方に驚愕する家康に劉備は笑みを浮かべて話す。

 

劉備「だって天の国から来た人なら、わたしたちは敬意を払うべきでしょ?

予言にあった、わたしたちを導いてくれる人で...実際今回、家康さんがすっごく頑張ってくれたからーーわたし、決断できたの」

 

彼女の目に見るともうそれは決意に満ちている。関羽や張飛にも視線を向けるが二人もまた笑みを浮かべ覚悟を決めている様子。

 

関羽「私も家康殿に...いえ、ご主人様にならば問題ありません」

張飛「鈴々も!お兄ちゃんとなら、絶対出来るって思えるのだ!」

劉備「だからご主人様って呼びたいんだけど....ダメ、ですか?」

 

家康「(これは...もう、仕方ないな)...分かった」

家康は笑みを浮かべて受け入れた。これにはまた三人は喜びの笑みを浮かべる。

 

張飛「じゃあ鈴々も!鈴々って呼んでいいのだ!」

 

関羽「私も、その...真名である愛紗の名を、貴方に...ご主人様に...」

 

家康「分かった...桃香」

 

劉備「うんっ♪」

 

家康「鈴々」

 

張飛「おうっ!」

 

家康「愛紗」

 

関羽「はい!」

 

家康「皆の真名、預からせてもらう」

 

彼女たちの真名を受けとること決意した家康、その彼に劉備ーー桃香は在ることを提案するとこに。

 

桃香「そうだ!今から良いところに行こう♪ご主人様」

 

家康「良いところ?」

 

桃香「うん♪ほらこっち!」

 

家康「お、おい!と、桃香!」

 

桃香に手を引っ張られるがまま連れてこられた場所ーーそこは桜の花にも似た美しい辺り一面桃色に染める、桃の花園であった。

 

家康「これは...」

桃香「綺麗でしょ?」

愛紗「そうか...もう桃の季節か」

鈴々「いい匂いもするのだ。桃、なってるのかな?」

桃香「ふふっ。実がなるのはもうちょっと後かな」

 

桃香は三人に語る。

 

桃香「じゃあ、改めて....この四人で、頑張ろう!」

 

そう言うと、桃香は盃それぞれ三人に渡して酒を注ぐ。そして彼女は持っている盃を高々に掲げる。

それに応えるように、鈴々、愛紗、そして家康も同じく盃を掲げる。

そして...

 

家康「我ら四人っ!」

 

桃香「姓は違えども、兄妹の契りを結びしからは!」

 

鈴々「心を同じくして助け合い、みんなで力なき人々を救うのだ!」

 

愛沙「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも!」

 

桃香「願わくは同年、同月、同日に死せんことを!」

 

家康「そしてーー」

 

桃香、愛紗、鈴々は家康を見つめるとーー

 

家康「この乱世に満ちた世界に絆の世を作ろうっ!!」

 

桃香「ご主人様...」

 

鈴々「うん♪」

 

愛紗「絆...素敵です」

 

家康「うむ!では!」

 

「「「「乾杯!」」」」

 

桃園に響くは、彼ら四人の結義の声。そしてその中で家康内心こうも誓っていた。

 

家康「(そうだ。ワシがこの子達を導こう!絆が紡がれる善き世を!その為ならばワシは幾らでも背負おう!あらゆる咎を!!重き荷も!!!)」

 

そしてこれが....この全く異なる三國の世に降り立った徳川家康の長い長い旅と戦いの、始まりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりに書きました。


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キャラクターストーリー・鈴々 鈴々と鍛練なのだ!

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。 
恋姫主人公北郷一刀は出ません、大変申し訳ありません。

当作品のバサラ武将たちはかなりの無双を行うと思いますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。

あとオリジナルのBASARA武将出したり、恋姫キャラとのカップリング描写とかも書いたりします。


イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


ある日のこと家康は物思いに耽っていた、桃香たちの理想をどう導くべきかと...。

正直今家康たちの取り巻く状況は余り良しという訳ではない、だがそれでも彼女たちの想いを無下になど家康には出来ない。

この世界に絆の世を作ると固く誓った以上、家康にはもう躊躇うという言葉はないのだ。

 

家康「しかしーー」

 

家康は歩きながら腕を組んで、桃香や愛紗、鈴々の顔を思い浮かべた。

自分が知ってる三國志の英雄である劉備、関羽、張飛は本来男のはずであった...にもかかわらず出会いし三者三様、可憐な美少女たちである。

桃香はほんわかなした癒しを齎すようで暖かい。

愛紗は艶やか黒髪が印象的では凛々しいと感じさせる。

 

家康「鈴々は...ん?」

 

 

鈴々「はーっ、たーっ! やぁ、やっ、や!はっ!!」

そう物思いに耽る家康の視界に、自身の身長よりも長物の矛を振り回して鍛練しているようだ。

 

家康「鈴々は三人の中でもずば抜けて、ワシが知る英傑『張翼徳』とはかけ離れているな」

 

まだ小さな体であれだけの長物を操ってよく体が流れないものだと家康は感心している。

それに流れないどころか鋭く翻った矛の刃先が、キラリと陽光を照り返す。

彼女の気合いが乗ってきたのか、矛を振るう速さが上がる。

矛の切っ先は並みの人間では目で追えなくなっている。

 

鈴々「たっ、たっ、や、はっ!」

 

家康「ほう...」

矛が空を斬るたび走る光は、例えるなら白昼の流れ星。

 

鈴々「はーーーーーっ!!」

流麗で、力強い身のこなしは天下の猛将の名に恥じないものだ。

武を振るう者として彼女の技量には目を見張る。

 

鈴々「はあああぁぁ~~~っ!はぁ、はっ、はっ!」

拳で戦う家康が仮に鈴々と試合った場合、長物の鈴々が優位ではある。

だが長年日ノ本での戦において常に拳で戦ってきた家康は、それに対して対策が無いわけではない。

 

家康「だが、凄いな」

 

鈴々「はーっ! たっ、や、た!」

洗練された動き、それを難なくこなす鈴々。だが...

 

 

コテ、っとアホらしい音共に鈴々は...

 

鈴々「にゃーっ!」

 

....コケた。

 

鈴々「にゃっ、そこに居るのは誰なのだ!」

気配に気づいたのか転んでしまった場面を見られたと恥ずかしさを隠さんと、鈴々はムッとした顔で起き上がる。

それを見て家康は微笑みながらに近寄り声をかけた。

 

家康「ワシさ、鈴々」

 

鈴々「あ!お兄ちゃん!」

自分を見ていたのが家康だと知ると先ほどのムッとした顔から、パァっと明るくニコニコとした笑みを浮かべて武人の魂たる武器を放り捨てて家康の腹に抱きついた。

 

鈴々「~♪何してるの?お散歩?退屈なら鈴々と遊ぶのだ」

猛虎が、瞬く間に猫に変わった。

鈴々は弾むように家康の腹に頬をすりすりと寄せてくる。

 

家康「こらこら鈴々、いかんだろ...」

 

鈴々「ほえ?」

 

家康「武器は武人の魂だぞ。放り捨てたらダメだぞ」

っと諭す家康なのだが...

 

鈴々「武器は武器なのだ」

家康を見上げながら愛らしく小首を傾げる鈴々であった。

 

鈴々「矛でも剣でも包丁と変わらないよ。

戦場で戦うのは鈴々、傷つけるのも鈴々なのだ」

 

家康「...そうか、そうだな」

 

鈴々「にゃ?」

こんな可愛く小さくとも、鈴々は武人であるのは事実。

今までそうしてきたのだろう、でなければここまで強く生きてこれなかったはずと家康は納得する。

 

家康「何でもないさ。偉いぞ、鈴々」

鈴々「なんだか褒められてるのだ♪」

 

家康に撫でられ嬉々として笑みを浮かべ、喜びを露にする鈴々。

ぐりぐりと鈴々の頭を撫でながら、強く思う...ここは嘗ての日ノ本と同じ乱世なのだ、と。

 

家康「そぉれ!」

すると家康は笑みを浮かべながら鈴々を、屈んで両手で抱き上げた。

 

鈴々「にゃー♪」

 

家康「ほぉーれ!」

まるで父親が子を遊んでやってるかのような光景。

鈴々もそれが嬉しいのか、楽しく喜びに溢れていた。

 

鈴々「にゃはははは、今のもっかいやって!もっかい!」

家康「よぉし!ほぉーら!」

鈴々「にゃーーーーーーっ!」

今の鈴々は完全に無邪気な子供である。

すると鈴々は...

 

鈴々「ふー....えっと、なにしてたんだっけ?」

 

家康に構って貰って自分がそれまで鍛練していたことなのど、既に記憶から忘れてしまっている。

 

家康「おいおい...鍛練してたんじゃないのか?」

鈴々「いけない!鈴々、鍛練の途中だったのだ」

苦笑いを浮かべる家康、それに思い出した鈴々はいけない!と気づいた。

 

鈴々「遊ぶのは後、ごめんねお兄ちゃん!構ってあげられないのだ」

しがみ付いていた家康の身体からぴょんと下りての大人ぶった言葉に、家康は吹き出してしまうが耐える。

 

家康「すまんすまん。邪魔してはいかんな」

 

鈴々「邪魔じゃないのだ。鈴々は鍛練の途中だから遊んではあげられないのだ」

 

家康「一生懸命だな」

鈴々「一生懸命なのだ!」

さっき放り捨てた矛を拾いあげる鈴々の横顔は、とっくに引き締まっていた。

 

鈴々「愛紗が言ってた『やくわり』なのだ。

鈴々は難しいことはわからないからね、難しいのはお姉ちゃんとお兄ちゃんにお任せ」

 

家康「そうか」

 

鈴々「その代わり、戦うのはお任せなのだ!お姉ちゃんや民の人たち、皆守るのだ!」

その声は明るく、空の彼方まで届くかのようである。

 

鈴々「でもお兄ちゃん、愛紗や鈴々よりもすっごく強いから鈴々もっと頑張るのだ!もっと頑張って、お兄ちゃんも守ってあげるから安心して」

 

家康「はははっ、頼もしいな。だが愛紗は守ってあげないのか?」

鈴々「愛紗は鈴々の次に強いから、勝手に自分の身を守ればいいのだ」

家康「ははははっ、そうかそうか」

鈴々「でも危なかったら助けてあげるのた」

何だかんだで義姉の愛紗が好きな鈴々だと、家康は思う。

 

家康「優しいな、鈴々」

また鈴々の頭を撫でてやることにする家康。

 

鈴々「また褒められたのだ」

頭を再び撫でられ鈴々もまた喜びを表す。

どんなに強くともまだこの子は、こんなにも優しい子供なのだ。

 

家康「立派だぞ鈴々。小さいのに、ちゃんと自分の役割を分かっているんだ」

鈴々「小さくないのだ!」

家康「おっと、すまんすまん。許してくれ」

 

膨れる頬っぺたにつついてご機嫌とりをして見せる家康。

すると鈴々が....

 

鈴々「そうだ!お兄ちゃんも、鈴々と一緒に鍛練する?」

家康「ん?いいのか?」

鈴々「うん!」

家康「よし!じゃあやるか!」

鈴々「やったのだ!」

 

二人は家康と鈴々は共に鍛練することとなった。

鈴々から仕掛けてくる。

 

鈴々「たぁっ!やっ!」

彼女の矛が素早く家康に向かって鋭い突きを放ってくる。

だが....

 

家康「ふんッ!おらッ!」

それを難なく裁きながら鈴々の間合いに入って拳を突きいれる。

 

鈴々「にゃにゃ!?今のは当たりそうだったのだ!」

 

家康「はははっ、長物相手とは何度もやってるからな」

そう。嘗て日ノ本で彼の心の師と仰ぐ男・甲斐の虎、武田信玄の下にいる赤き若武者ーー真田幸村。

そしてその幸村の兄にして信濃の獅子と畏れられ、家康と共に天下統一果たしてくれた友ーー真田信之。

更には四国と西の海を束ねる風雲児、自らを「西海の鬼」や「鬼ヶ島の鬼」と称して家康のもう一人の友ーー長曽我部元親とも矛を交えたことがある。

それらが家康の戦いの糧になっている。

 

鈴々「どんどん行くのだぁ!」

 

家康「よし!来い!」

 

鈴々「うりゃうりゃ!」

 

家康「うおおっ!」

更に素早い突きを放つ鈴々、ならばと家康はそれよりも早い拳のラッシュで迎え撃つ。

 

鈴々「お兄ちゃん凄いのだ!もっとやるのだ!」

家康「うむ!どんどん来い!」

互いに熱くヒートアップしてしまい、終いには二人して愛紗に「やり過ぎ」だと叱られるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。


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キャラクターストーリー・桃香と愛紗 街で子供たちと

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。 
恋姫主人公北郷一刀は出ません、出しません、大変申し訳ありません。

当作品のバサラ武将たちはかなりの無双を行うと思いますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。

あとオリジナルのBASARA武将出したり、恋姫キャラとのカップリング描写とかも書いたりします。


イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


前回の黄巾党騒ぎからようやく落ち着きを取り戻し、復興を始めた街の住人たち。

家康を始め、桃香、愛紗、鈴々も住人たちと共に復興に励んでいる。

お陰か以前よりも街の人々の顔が穏やかになっているのが、家康の目にも見てとれる。

 

家康「これもまた絆だな」

 

互いに手を取る姿ーーそこに家康が求める絆が垣間見える。

その光景を見ながら家康は思う、きっと此処だけではないと。

未だに黄巾党やそれに呼応して賊などが暴れ、近隣の街や村を襲っているのやも知れない。

これもまた乱世が生んだ悲しき現実であると家康は再認識する。

この世界は戦禍の中にあり、無力な民は貧困と圧政で泣き、喘いでいるのだ。

 

家康「何とかしなければ、な」

 

家康の胸中には、桃香たちの想いを受け取った時の決意は変わらずある。

 

家康「これからどう動く、か」

 

最大の問題はである。真っ青な空を仰ぎ家康は呟いた。

っと、考えごとしていては周りの迷惑をかけてしまうと足取りをしっかりして進み続ける。

と...その時だった。

 

前方から賑やかな声。

人だかりが道を塞いでいるのに気付き、背が大きい家康は何事かと目を凝らして見ると...

 

桃香「わわわわ、引っ張らないで~!」

 

家康「あれは...桃香」

 

良く見ると、人垣を成しているのは大半が子供である。

 

桃香「はぅー」

 

背が高くない桃香が、頭ひとつ抜けてるのが分かる。

お供の、男性と比べても長身と言える愛紗が目立つのも気づく。

 

愛紗「あ...」

 

すると愛紗の視界に、家康が居ることに気づくと彼女は快く会釈してくれた。

桃香も愛紗の目を向ける先に家康が居ることを嬉々として顔を綻ばせる。

 

桃香「ご主人様....ひゃん!?こらぁ、誰っ?お尻触ったの」

 

子供1「ボクじゃないよ」

子供2「オイラでもないぞ」

 

桃香「ウソぉ、だって....きゃう!?裾を引っ張っちゃダメー」

 

子供3「劉備さまー、遊んでー!」

 

桃香「今日はダメ、遊びに来たんじゃないのっ!わたしたちはみんなの平和を守るために...!」

っと、子供たちに言い聞かせようとする桃香....

 

子供4「......ふぇっ」

 

桃香「何して遊ぼっかー?追いかけっこかなー」

 

なのだったが、今にも泣きそう子供の顔を見て直ぐに変わってしまうのだった。

人が好い...その言葉に尽き、子供たちに弄ばれる桃香は戸惑いながらに嬉しそうである。

そんな彼女の様子を、微笑ましく眺める家康の隣にいつの間にか並ぶように愛紗が立っていた。

 

愛紗「ご主人様が見当たらないと皆で心配していたのですが、街を散策なさっていたのですか」

 

家康「嗚呼。断りもなく出かけてしまったな、すまない」

愛紗「いえ、問題ありません。ここは平和な街です」

 

苦笑を浮かべ謝罪する家康に、愛紗は微笑みながら首を横にふる。

確かにここは以前に比べて平和になった、これは彼らの力在ったればこそであろう。

っと、二人がそんなやり取りをしていると....

 

桃香「愛紗ちゃ~ん、ご主人様~~~」

桃香は半べそになって家康と愛紗に助けを求める。

 

家康「はははっ、頑張れ桃香」

しかしそれが見ていてそんな嫌という風には見えないので、家康は笑いながらに応援してあげた。

子供たちは尚も桃香に甘え、遊んでとせがむ。

 

子供1「んとね~、えっとね~、だっこ!」

桃香「遊ぶんじゃなかったの~?」

子供1「だっこで遊ぶ!」

 

家康「ははっ、子供が言うことは脈絡がないな」

愛紗「微笑ましいものです」

 

見ていても微笑ましい、危険などないと分かる。

家康と愛紗も人垣を抜け、静観の構えで見守る。

 

愛紗「桃香様が街へ出ると、いつもこの調子です」

っと、笑みを浮かべて説明する愛紗だが子供たちの手前、声は潜めて肩を竦める。

 

愛紗「桃香さまは暇さえあれば、こうして自ら街の治安維持に努めていらっしゃいます」

桃香「愛紗ちゃ~~ん」

未だに愛紗に助け求める情けない声をする桃香を見て、家康は愛紗に話しかける。

 

家康「それで愛紗は護衛か?精が出るな」

愛紗「ああいう子供たちに紛れて、桃香さまの命を狙う輩がないとも限りません」

家康「確かに、な。桃香は周囲に好い影響を与えてくれる...まるで太陽みたいだな」

両腕を組み合わせながら、子供たちと戯れる桃香を見てそう呟く家康に愛紗は笑みを浮かべ...

 

愛紗「ご主人様もそうですよ」

家康「ん?」

愛紗「あ!!いえ!!何でもありません///」

つい口に出てしまい焦る愛紗の頬は赤くなっている、その間桃香は未だに子供たちに遊ばれている。

 

桃香「また、お尻触った~~!」

 

家康「ははっ、桃香も大変だな」

愛紗「困ったものです。桃香さまはこの通り、街を歩けばすぐ呼び止められてしまいます」

そう言いつつ口調はちっとも困ってはいない愛紗。

 

愛紗「特に、子供たちに見つかってしまうと諦める他ありません」

家康「慕われてる証、それもまた絆だ」

愛紗「絆...ご主人様は、絆を重んじるのですね?」

家康「嗚呼。絆は何よりも勝る大切なものだ、でなければああして子供たちや街の者たちも明るくはならんさ」

 

愛紗「ご主人様...」

笑みを浮かべて話す家康に、愛紗は彼の話を聞いて不思議と嬉しくなる。

目の前の彼に主と扇いで良かったとすら、彼女は感じてしまうほどに...。

 

家康「これだと、この街に生きる老若男女...動物までも、桃香を慕わぬ者は居らんだろうなぁ」

愛紗「これぞ、私や鈴々が剣を捧げると決めたお方の威徳というものです」

まるで桃香のことを自身のことのように鼻息を荒く、愛紗は豊かな胸を逸らして威張る。

このような所からも、愛紗の桃香に対する想いが感じられると家康は思うのだった。

 

愛紗「この大陸において民が求めているのは唯一....弱きを守る、慈しみの心を有した指導者です」

家康「そうだな」

愛紗「桃香さまは万人に己を重ね、その痛みを己の痛みとすることが出来るお方です」

家康「そうか...」

 

彼女の話を真剣な顔になる家康。確かに万人の痛みを己の痛みとして感じとる慈しみ、それは大切であるし貴重ではある。

しかし家康としては以前の桃園の誓いの際に、桃香は純粋すぎる所がある。

それが反って彼女の心を抉り傷つけ、彼女を追い込んでしまうのではと危惧してしまう。

 

家康「しかしそれが、桃香一人で背負うには苦しいものだ」

愛紗「え?」

家康「だが大丈夫だ。ワシが桃香や、愛紗たちが背負いキレない程重み....ワシが背負う!」

愛紗「ご主人様...」

 

家康は己の逞しい胸板に拳を叩いて見せ安心感を与える。

愛紗はその姿に頬を染めて先ほどよりも、更に胸の奥が暖かくなるのを感じる。

 

愛紗「桃香さまや...そして私も貴方を頼りにしております、ご主人様」

家康「嗚呼!任せてくれ!」

っと良い雰囲気を作っていく二人...

 

桃香「ひ~~ん、ご主人様ぁ~~~」

愛紗「あれでは、いつまでも見回りの続きが出来ませんね。

ご主人様には申し訳ありませんが、早速お役に立っていただきましょうか」

家康「ん?」

助けを求める桃香を見て仕方なしと思った愛紗が...

 

愛紗「子供らよ、こちらの方がお前たちの遊び相手を務めてくれるそうだ」

桃香「ほんとっ!?」

愛紗の話を聞いて、助け船が来たと思わんばかりに眼を輝かせる桃香。

 

桃香「やった♪みんな、お兄ちゃんにも一緒に遊んでもらおっ!」

愛紗「さ、どうぞ?ご主人様」

家康「お!よぉし!子供たち、ワシとも遊ぼう!」

 

率先して子供たちに声をかける。子供たちは大きい家康を見上げながら何だか嬉しくなって直ぐに桃香から離れていき、家康の周りに囲んでしまう。

 

子供1「お兄ちゃん!だっこ!」

子供2「オイラ!おんぶ!」

子供3「わたしもぉ...」

 

家康「よしよぉし、分かった」

せがんでくる子供に困り顔見せず、子供たちをそれぞれ三人づつ自分の鍛え上げた腕に掴まらせて難なく持ち上げた。

 

家康「ほぉら!」

子供1「きゃあっ♪」

子供2「すっげー!」

子供3「お兄ちゃん、ちからもちぃー♪」

子供4「お兄ちゃん、それもっとやって~」

子供5「ぼくもぉー!」

子供6「わたしもぉ~!」

 

皆娯楽や楽しさに餓えているのだろう。家康に群がって遊んでとせがむ子供たちが後を絶えないが、しかし家康はそれを苦とは思わず遊び相手を努める。

 

愛紗「流石です、ご主人様。では、この場はお任せします。桃香さま?見回りを...」

その姿に愛紗は此処は家康に任せて、桃香に見回りの続きをと誘うが....

 

桃香「じゃあじゃあ、じゃんけん?鬼を決めないと」

愛紗「.....」

いつの間にか他の子供たちと鬼ごっこしようと、じゃんけんを始める桃香に唖然とする愛紗。

すると桃香がそんな彼女も誘い出す。

 

桃香「何してるの?愛紗ちゃん。一緒に遊ぼ」

愛紗「う....ッ!?」

キラキラと輝く瞳に射抜かれて、よろめく愛紗。

 

愛紗「....少しだけなら、付き合ってもよいでしょ」

家康「お!いいぞぉ!大勢の方が楽しいだろう」

子供たち「「「「「「うんっ!」」」」」」

 

見回りの筈がいつの間にやら、子供たちと戯れる時間に変わり果てていた。

その後他の子供たちも混ざり、ならばと鈴々も誘おうとまで話になってもうそんなこんなで結局、夕方まで楽しい時間は続いていったのだった...。

 

その中で桃香は嬉しそうに愛紗に....

 

桃香「ご主人様がわたしたちの所に来てくれて、ほんとに良かったよね♪愛紗ちゃん!」

愛紗「と、桃香さま///」

桃香「えへへ///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。


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第四章 隊商の救出

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。それを許容できない方々はブラウザーバックを推奨します。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなりの無双を行うと思いますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。
ご理解の程、宜しくお願いいたします。


あと今回、本編長めだと思いますので読みにくい所が多々あると思われますが、どうかそちらも宜しくお願い致します。


イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


前回、黄巾党と戦うことを決めた家康は、劉備たちと協力して事にあたり見事黄巾党を撃破することが出来た。その後、家康は劉備たちに懇願され、自身が天の御使いであることを受け入れ彼女らと桃園の誓いを交わしたのだった。

 

そしてその戦いから十日が経ち、現在町では復興作業が行われ、荒れてしまった町が今、人々によってに回復していき、町の者たちの表情には活き活きとした前向きな物を感じる。

 

そんな中、町の広場にて大勢の男たちが武具を纏って愛紗の指導の下、気合いを込めて槍を突きこみながら声を上げていた。

 

 

兵士たち「はぁっ!はぁぁっ!!」

 

 

愛紗「腕で振り回すのではない!足と!腰を入れるのだ!そんな気合いでは勝てる戦にも勝てんぞ!!」

 

 

兵士たち「はいっ!」

 

 

住人たち、特に若い男たちがこのように自ら兵士として訓練を受けているのかと言うと、自分たちの町を黄巾党のような賊徒どもに好き勝手にされない為に、彼らは家康たちに本格的な訓練を受けたい旨を伝え、そんな彼らの思いに家康らは了承し受け入れて、彼らに手解きをする事に。

 

訓練だけでなく警備や用心棒なども引き受けている。何れ来るかもしれない兵士や役人の応援が来るまでの間ではあるが。

 

 

家康「愛紗、精が出てるな?」

 

愛紗「あ!ご主人さま!」

 

 

兵士たちに指南している関羽の下へ、家康が声を掛けに来た。

 

 

家康「頑張っているな」

 

愛紗「い、いえ!そのようなことはありません。それより、何か?」

 

家康「嗚呼、すまない。実は桃香を探しているのだが知らないか?」

 

愛紗「桃香様でしたら、おそらくいつもの所でしょう」

 

家康「そうか。そう言えば兵士たちの訓練はどうだ?」

 

愛紗「まぁ、最初の頃よりは形になったと思いますが.....まだまだですね」

 

そう呟きながら視線を兵士たちに向けると、関羽の指南によって疲れによってくたびれてしまい、ぜぇぜぇと音を上げている。

そんな彼らに関羽は「情けない」と思うが、家康は苦笑いを浮かべる。

 

家康「最初は誰しもそうだ。最初から全て完璧な者などいないさ」

 

愛紗「それは...そうですね」

 

家康に諭され、彼の言う通りと思い顎に手を置き考え始める。そう。誰しもが森羅万象、全ての事を何の苦も無く完璧に熟せるなど出来はしない。

関羽や張飛、そして家康のように武に秀でる者たちでも初めからそうではないのと同じなのだ。そんな彼女の肩に手を置きながらに呟く。

 

 

家康「愛紗、人は誰しも全て同じように上手くは行かないものだ。それを覚えてくれ」

 

愛紗「ご主人様.....はい!」

 

家康「うむ。じゃあ、ワシは桃香の下へ行く。兵士たちを頼むぞ?」

 

愛紗「はい!お任せを!」

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

家康「お!やっぱり此処に居たな?桃香」

 

関羽が教えてくれたいつもの場所....町はずれの畑に足を運んだ家康は、劉備が農家の者たちに混じって畑仕事の真っ最中であった。

そんな民たちと畑仕事に勤しみながら、楽しく行っている彼女が家康の存在に気付き、手を大きく振って見せて彼の下へ駆け寄って来てくれた。

 

桃香「あ!ご主人様ー!」

 

家康「頑張ってるな桃香」

 

桃香「ご主人様。倉庫のお手伝いは終わったの?」

 

家康「嗚呼、こっちは終わった」

 

桃香「凄い!」

 

家康「いやなに、やる事をやったまでだ」

 

謙遜する家康。その彼に劉備は「そんな事はない」と称賛する。

 

 

桃香「ううん!ご主人様は十分すごいよ!だってたった一人で黄巾党だって相手出来ちゃうし、そればかりかこの町の復興だって、ご主人様が先導しながら力仕事を手伝ってくれたから、ここまで町が良くなったんだよ!」

 

 

そう。この町の復興には家康が力仕事をやりながら皆に的確に指示をし、それの通りに上手く行ったお陰である。

 

 

桃香「ご主人様は本当に凄いよ。算術だって私や愛紗ちゃんよりもずっと詳しいし、馬の扱いだってとても上手かったよ」

 

 

家康「その代わり、字はワシが知ってるのとは違うから困ったよ」

 

 

家康の言う通り。言葉自体通じるし、同じ漢字圏だから字は何とかなると慢心してしまい、彼自身困ってしまったのは言うまでもない。

何せ読める字が在っても意味が違う事だって珍しくはない。

とは言え算術が出来るのは貴重とも言えよう。ともあれ最低限必要な字は合間に劉備と関羽のお陰で事足りた。

 

 

家康「桃香の所も、大変だな?」

 

桃香「でも、この辺りのお野菜はもうすぐ収穫できそうなんだ。そうなったら、食べ物の事情はもうちょっと楽になると思うんだよね」

 

家康「ほう?桃香は詳しいな?」

 

桃香「あはは....。愛紗ちゃんたちと旅に出る前は、筵を織ったり畑仕事をしていただけだしねぇ」

 

 

この十日の間で彼女は家康に対してかなり親しみを込めて会話してくれる。それに彼女の笑顔は人を惹きつける物を感じさせる。

そんな彼女の笑顔が曇る。

 

桃香「でも、こうやって畑を耕してるのは楽しいのだけど......これでいいのかなぁって思っちゃうの」

 

家康「確かにその気持ち分かる。だが.....」

 

桃香「うん....分ってる。次のお役人が来るまでは、此処を守らないとだよね.....」

 

家康「嗚呼、そうだ」

 

桃香「.....」

 

家康「所で、桃香たちはこれからどうするんだ?」

 

桃香「え...?あ、えっと....北を目指す予定だよ」

 

家康「北、か」

 

 

桃香「うん。管路さんの天の御使いの予言もあったし、それに黄巾党が暴れてるって聞いたから、愛紗ちゃんたちと平原に来たんだけど.....」

 

っと上目使いで家康の顔を覗き見やる。彼女が言った予言...それは天の御使いが降臨し、乱世を鎮静すという奴だ。その本人である家康は困ったように返した。

 

桃香「私たちは、ご主人様が天の御使いって信じてる。だって1人大勢の人を助けたんだよ?」

 

家康「....」

 

その時である。

 

鈴々「あ、お姉ちゃんたち!こんな所にいたのだ!」

 

鈴々が急ぐようにやって来たのだ。

 

桃香「どうしたの?鈴々ちゃん」

 

家康「まさか、また賊が来たのか?」

 

鈴々「そうじゃないのだ。なんか次のお役人さんが着いたから、お姉ちゃんたちにも来てほしいのだ!」

 

家康「なに?もう来たのか?」

 

 

町が襲われた事に対して直ぐに応援など来るはずも無く、後任の役人とて到着するのにもかなり時間が掛かると言うのに、そのペースから考えると後任が来るのは早いと言える。

 

 

桃香「襲われてる報告は早くからしていたって言うし、州牧さまも急いで動いてくれたのかも....」

 

家康「ふむ....」

 

鈴々「お姉ちゃんたちは先に行ってて、鈴々は愛紗を探しにいくのだ!」

 

家康「愛紗なら、兵士たちに訓練をつけているぞ」

 

鈴々「分かったのだ!」

 

 

家康に教えて貰い、鈴々は急ぎ愛紗の下へと走って行った。

 

 

桃香「ご主人様。私たちも行きましょ」

 

家康「嗚呼」

 

二人も後任の役人が待っている屋敷へと向かった。っが、途中鈴々が迎えに行った筈の愛紗が鈴々と入れ違いで家康たちと合流する。

その為、鈴々を待つことにしたが中々来ない為、三人だけで役人が居る部屋へと入る。

 

 

桃香「すみません!遅くなりましたー!」

 

 

だがしかし、屋敷に着いた時にはもう町の者たちと役人との話は既に終わっていた。

 

 

文官の女の子「お気になさらず。貴方方がこの町を守るのに尽力して下さった....劉備玄徳殿ですね?」

 

 

そこに居たのは眼鏡を掛けた知的な女の子と、彼女の護衛なのであろう鉢鉄を巻いた武官の女の子がいたのである。二人の内、文官の女の子が桃香の名を知っている事に、当の本人は驚いてしまう。

 

 

桃香「え!?あ、あの!!わたし、お名前って名乗りましたっけ....?」

 

 

文官の女の子「ああ...失礼しました。お名前は公孫賛殿から窺っていたので...」

 

 

桃香「え!?そうだったんですか!?」

 

 

何やら桃香は公孫賛という人物を知っている様子。そのまま彼女は文官の女の子に問いかける。

 

 

桃香「あの....公孫賛さまって、今幽州で何のお仕事してるんですか?」

 

 

彼女がそう問いかけると、控えていた武官の女の子が答えた。

 

 

武官の女の子「え?公孫賛さん、今幽州の州牧だよ?」

 

 

桃香「えええええええええええええっ!?」

 

 

彼女は突然驚愕の悲鳴を上げる。そんな彼女に家康が問いかける。

 

家康「い、一体どうしたんだ...桃香」

 

桃香「そ、そのう...実は公孫賛って言う人は、私が通っていた同じ塾の門下生で、友達なの。まさかそんなに偉くなってるなんて思わないよぅ。てっきり、州の役人とか、将軍とかになってるだろうなって....」

 

家康「そ、そうか....」

 

 

そんなやり取りをする彼らに、文官の女の子が名乗りを始めた。

 

 

文官の女の子→戯志才「名乗るのが遅くなりました。私は戯志才と申します。各地を巡り、見識を深める旅の途中で....。今は公孫賛殿の下でお世話になっております」

 

武官の女の子→馬岱「馬岱だよ。同じく公孫賛さんの食客で、今は戯志才さんたちの用心棒って感じかなぁ....」

 

家康「.....」

 

彼女らの名を聞いて家康は言葉を無くす。馬岱はあの錦馬超と有名な武将、馬超の親戚のとして書物で知っている。っが驚いたのは目の前に居るこの戯志才と名乗る少女、この名の人物はかの有名な曹操が「策略に優れた人物」と思い、篤く尊重していたが早くに病で亡くなってしまったという逸話が在る。

そのような人物たちがこのような場で、しかも桃香たちと同様に女の子として登場しているのは、家康にとってもう何が何やらと言った次第だ。

 

桃香「じゃあ、戯志才さんがこの街の新しいお役人さま?」

 

戯志才「いえ、私もただの客分ですので、役人は...」

 

程立「程立と申しますー」

 

その言葉と共に戯志才の影から出て来たのは、小柄な少女であった。

だが家康は彼女が発した名前ーー程立には記憶にある。三国時代の政治家であり策士であり、謀略にも長けていた魏の創業時代に活躍した人物。

 

家康「(やはり...女子なのだな)」

 

桃香「あ....はい、よろしくお願いします」

 

戯志才「それと、彼女の補佐が居るのですが、彼女には既に引き継ぎの作業に入ってもらっています」

 

桃香「ええっ!?もうお仕事ですか?」

 

家康「ほう、早いのだな」

 

程立「恥ずかしがり屋さんなのでー」

 

馬岱「そうなんだよ。たんぽぽも旅の間、一回も話したことがなくってさー」

 

家康「ならば、どうしてそのような者が補佐に...?」

 

家康の疑問は最もであるからして言葉に出たが、それを戯志才が訳を話してくれた。

 

戯志才「古い知り合いから、社会勉強に連れ出してくると頼まれまして。

対面の仕事以外では優秀なのですが....」

 

程立「.....ぐー」

っといきなり寝息を立てる程立、しかし戯志才がすかさず起こし始める。

 

戯志才「風。起きてください。話は終わりましたよ」

 

程立「....おおっ。で、どこまでお話しましたかー?」

 

戯志才「特に進んでませんよ。

それで、ここからが本題なのですが....」

 

 

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一方、ここ書庫にて一人調べ物をしている小さな少女が居る。

変わった被り物ーー魔女っ娘みたいな帽子にリボンが付けられて何とも可愛いらしい姿である。

この少女こそが戯志才たちが言っていた役人の者なのである。

 

役人の女の子「ブツブツ....」

 

彼女は何やら一人ブツブツと口にしながら、ひたすら調べ事に勤しんでいる様子。

 

役人の女の子「....なるほど。現状はこう....。だったら、今後の防衛と復興の計画としては....」

っとその時であった。

 

鈴々「愛紗ー。愛紗ー、どこなのだー?」

 

扉が開けられ鈴々が唐突に入ってきた。どうやら愛紗を探しているのだが、未だに見つからずにいる様である。

 

役人の女の子「.....あ、あわわっ!?」

 

鈴々が入ってきて動揺して少女は慌てる。

 

鈴々「あれ、人がいたのだ。ねー、愛紗知らない?」

しかしそんなお構い無しに鈴々は彼女に愛紗の居どころを問う。

 

役人の女の子「......!!!(ふるふるふる)」

 

だが彼女、言葉をまともに発することは出来ず只々首を横に振り続けるのみである。

 

鈴々「そっか。じゃあいいのだ、じゃましたのだ。

愛紗ー。どこなのだ、愛紗ー」

 

鈴々はそれだけ言うとまた愛紗を探し始める。

 

役人の女の子「......はぅぅ、びっくりしたぁ」

少女は余りのことに、未だに動揺が抜けていない。

どうやら人付き合いが不慣れなのか、人見知りが激しい様子。

 

役人の女の子「うぅ.....でも、せっかく社会勉強に来たんだもん.....。

ここでくじけたら、朱里ちゃんに笑われちゃう...」

 

っと一人口漏らす少女であった。

 

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馬岱「いやはや、話が早くて助かったよー」

 

戯志才らと話があってから、数日後。

家康たちは戯志才や馬岱と一緒に、平原の街道を北へ向かっている最中である。

 

桃香「わたしたちもこれから拍珪ちゃんに会いに行こうと思ってたから、こっちも助かったよ」

 

戯志才の本題というのは、桃香たちを公孫賛の待つ幽州の都・薊へと案内する事であった。

 

馬岱「でも、街の人たちから凄く残念がられてたね、劉備さん」

 

彼女がそう指摘すると桃香は申し訳ないような顔をしてしまう。

実は幽州へと向かう際に、街の住人たちから家康や桃香に「まだ此処に居て欲しい」と懇願されてしまったのだが、桃香の私塾仲間である公孫賛からの呼び掛けに行かなければと思い、後ろ髪をひかれる面持ちではあるが行くことにしたのだ。

 

桃香「うん。ああ引き留められると、残っても良かったかなぁ....ってちょっとおもっちゃうね」

 

馬岱「家康さんなんか、子供たちが全然離してくれなかったもんね」

 

家康「ははっ。いやぁ~大変だったが、それでも求められるのは嬉しいものさ」

 

戯志才「とは言え伯珪殿の麾下に入れば平原に戻る場面もあるでしょう。

ここは黄巾党の勢力も大きい場所ですし」

 

愛紗「そうです。まずは我らも、もっと力を手に入れないと」

 

桃香「そうだね.....。わたしたち、四人だけだもんね....」

 

愛紗が鍛えてた兵たちも、ほとんどが今回の北上に同行したいと申してくれたが、結局皆街の守りに残してしまったのだ。

あの街から兵や男手を連れて出すのは、これより先の復興やら防衛やらにも影響するのは明白。

だが桃香たちにも少しは戦力がないと、心持とない。

 

戯志才「力なき思想に、意味はありませんからね」

 

彼女の言うていることは確かである。

 

馬岱「でも戯志才さんだって、頭は良いけど別に戦える訳じゃないよね?」

 

戯志才「武勇や剣の腕前だけが、力ではありませんから...しかし」

だが戯志才の目線が、赤い肝血馬に見事乗り熟す家康にチラリと向く。

 

戯志才「しかし、劉備殿たちから聞いて驚きました....家康殿は、類い稀らぬ統率力で住人たちを束ねて黄巾党と対したとは...」

 

馬岱「しかも一人で殆どやっつけたんでしょ?」

 

家康「ははっ」

 

馬岱がニヤニヤしながら家康に問いかけると、家康自身はただ爽やかに笑みを溢す。

そんな彼に擁護するよう、自分のことのように嬉々として桃香が口ずさむ。

 

桃香「ご主人様はとっても強いんだよぉ♪拳で黄巾党をズバーンってやっつけたんだからぁ♪」

愛紗「はい。素晴らしい武勇でした」

 

戯志才「.....」

 

家康「ん?戯志才殿?」

 

戯志才「いえ、なんでも」

 

家康「?」

 

やがて街道の向こうから聞こえてきたのは、人の声と、鉄と鉄のぶつかりあうような激しい音。

 

家康「ん!この音は...」

愛紗「誰かが戦っているようですね」

 

そこに慌てて戻ってきたのは、先の様子を見に行っていた鈴々であった。

 

鈴々「大変なのだ!お兄ちゃん!向こうで、隊商が襲われてるのだ!」

 

桃香「...戯志才さん!」

 

戯志才「入り用なら、我らの兵を半数お貸ししましょう。

存分にお使いに...あれ?」

 

桃香「え?」

 

戯志才が呆気に取られたかのような顔をしている、どうやら家康が先に先行していく模様である。

 

愛紗「ご主人様!?」

 

家康「ワシは先に行って、隊商の者たちを助けにいく!あとから来てくれ!」

っと残して家康は馬を走らしていくのだった。突飛かつ凄い行動力に驚く彼女たちではあるが、戯志才は彼の素早い動きに称賛する。

 

戯志才「素早い行動力ですね、流石です。では馬岱殿は半分で我々の警護と周辺警戒をお願いします」

 

馬岱「えーっ。たんぽぽも戦いたーい!」

 

愛紗「馬岱、戯志才、後方は任せた!行くぞ鈴々!ご主人様の後を追う!」

 

鈴々「分かったのだ!」

 

戯志才は想定したかのように、すぐに進み出た半数の兵を引き連れて愛紗と鈴々は勢いよく走りだして家康の跡を追うように駆けていく。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

一方、家康が向かった先では確かに戦闘が行われており、隊商を守る護衛の兵士たちが黄巾党と思われる賊と戦っている、が....

 

護衛の兵士1「ぐはっ!」

 

護衛の兵士2「がぁあっ!」

 

しかし多勢に無勢か、黄巾党の連中に呆気なく殺られその数もあと少ない。

邪魔な護衛を倒した黄巾党の連中は、直ぐ様略奪行為を行うべく隊商の荷車を漁り始める。

それを隊商と一緒に行動していた、オレンジ色のロングヘアと尻尾のような飾りをした双子がいる。

 

女の子A「あ、あぅぅ....」

 

「おっ、こっちの荷車にも良いものが載ってるじゃねぇか!持っていけ!」

 

女の子B「あっ、こらー!それ、電々たちのお着替えが入ってるのにー!返しなさーい!」

 

「ついでにその小娘どもも連れていけ!」

 

女の子A「うぅ.....何すんだよ!はなせー!」

女の子B「雷々!」

女の子A「電々は逃げてー!」

 

っとその時である。

 

「....何だ?」

 

「あ、アニキ、何かこっちに来てる奴が!」

 

「あ?馬一頭に人一人じゃねぇか...」

 

等と言った矢先、遠目に映っていた。馬に乗る人影が急に居なくなった途端少女たちを抑えていた手下たちが吹き飛ばされた。

 

「ぐへっ!!」

「ぐぼっ!!」

 

彼女たちを囲んでいた黄巾党らを一蹴したのは、愛紗たちよりも先んじて駆けていった家康であった。

 

家康「お主たち、怪我はないか!」

女の子A「は、はい」

女の子B「な、ないです!」

 

家康「よし!ならば、ここはワシに任せて安全な場所まで下がれ!」

 

女の子たち「「は、はい!」」

 

家康によって彼女たちはすぐに安全な岩壁まで下がり、様子を眺めることに。

対して家康の邪魔によって収穫を取り逃がした黄巾党は、邪魔者である彼に苛立ちを隠せない。

 

「てめぇ!!よくも邪魔しやがってっ!!」

 

家康「さぁ!来い!存分に相手をしてやろう!」

そう不敵に笑みを溢しながら手甲「光冠飛燕手甲」を填めた両の拳

を構えて迎え撃つ姿勢を見せる。

 

「やっちまえ!!」

「「「「「うおおおおーー!!!」」」」」

 

黄巾党らは家康に目掛けて殺到してくる。隊商の少女たちはこのままでは家康が危ないと思い叫びそうになるが、家康自身は....

 

家康「はああああっっ!一撃だッ!」

 

まさにその言葉通り、渾身一撃...家康の技の一つ。通常攻撃何段目からでも派生できるタメ攻撃。敵を浮かせる効果があり、威力も上増し黄巾党らを次々に叩きのめす。

 

「な、なんだぁ!?今の!?」

「ば、化け物!?」

 

家康「まだまだいぐぞぉ!うおおおおーー!!!」

 

家康の進撃は止まらない。東風の乱舞...広範囲に及ぶ拳の乱舞攻撃、素早く且つ一発一発が豪快にして強い。

嵐の如く怒涛の乱舞、拳の乱舞により黄巾党らはあっという間やられてしてしまうのだった。

 

「ば、ば...化け物っ..」

「に、にげろぉー!」

 

生き残っている黄巾党はもう数えて数人程度で、家康の規格外な強さに恐れて千鳥足でその場を走り逃げていくのだった。

 

家康「どうだ、ワシの拳は重かったろう?」

 

女の子A「ふわぁ...」

女の子B「あんなに居た黄巾党を...」

 

たった一人で蹴散らした家康の強さに驚嘆の感情を禁じ得ない彼女たちではあるが、家康は彼女らの安否を確かめるように優しく近寄る。

 

家康「お主たち、大事はないようだな?」

 

女の子たち「「は、はい!」」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

愛紗「あ...!」

鈴々「黄巾党たち、みんな居なくなってるのだ!」

 

家康の跡を追いかけてきた愛紗たち...その後方から桃香や戯志才、馬岱も到着するが、既に後の祭り。

 

戯志才「これは...」

馬岱「あれ?黄巾党は?」

 

桃香「あー...多分もうご主人様が一人で...はは」

桃香は何となく察し、やはり家康が全て倒したのだと理解して二人に告げると馬岱が呆気になる。

 

馬岱「え?!家康さん一人で?!ほんと強いんだ!?」

桃香「そ、そうだよ!ご主人様はとっても!とーっても強いんだから!」

戯志才「....」

 

馬岱に自慢する桃香を他所に、戯志才は家康を静かに見つめる。

その家康はと言うと....

 

鈴々「お兄ちゃんだけ、黄巾党やっつけてズルいのだ!鈴々も今度は一緒にやっつけたいのだ!」

 

家康「嗚呼、すまんすまん。悪かったよ鈴々」

 

愛紗「ご主人様!!」

 

家康「あ、あぁ...どうした?愛紗」

 

愛紗「お一人で行かれるなど、危険すぎます!!」

 

家康「あ、あー...だがこの通りワシはピンピンして...」

 

愛紗「ご主人様は我らにとって大事なお方!なのに...もう少し、ご自分の立場を考えてください!!」

 

家康「す、すまない!」

っと鈴々には一人で活躍されて拗ねたりされ、愛紗にはこの通り主である家康が単身敵陣に向かったことに諌められる始末。

すると、隊商の女の子たち二人はずっと家康の傍まで詰め寄ると...

 

女の子A「凄い強かった!」

女の子B「うん、カッコいいかも。電々、凄い好み~」

 

家康「あ、嗚呼...」

 

女の子A「お兄さんのお名前は?お手紙書いていい?

一緒にご飯食べに行く?」

女の子B「お兄さん凄い強いねぇ!あ、ご主人様って言うのどういう意味ー?」

 

家康「いやそれは...」

 

女の子B「あっ、ちゃんとお礼しないと!電々かわいいから、一緒にご飯とか食べたらちゃんとお礼になるよね?」

女の子A「でも、真名を呼んで良いかは、もうちょっとお話とかしてからかなー?」

 

家康「そ、それは...」

 

愛紗「...ご主人様...」

双子の余りに積極的な行動に苦笑する家康なのだが、その彼の背後から嫉妬するかのようにジト目で見つめる愛紗。

 

その間にも戯志才は人知越えてる強さを持つ家康に対して何かしらの感情を持ち始めていた。

 

戯志才「(この御仁....もしかしたら、私にとって...)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。
長めに書いてしまい、申し訳ありません。


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第五章 積荷の奪還

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。それを許容できない方々はブラウザーバックを推奨します。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなりの無双を行うと思いますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。
ご理解の程、宜しくお願いいたします。


町の復興など徐々に尽力しようとする家康たち一行。

その彼らの下にようやく役人の協力が来てくれることになった、そこで役人の協力に来てくれていた戯志才から、幽州にいる州牧・公孫瓚と会ってほしいということで向かってる途中、黄巾党に襲われている隊商の一団があると聞きつけた家康たちはこれを救出する。

 

話はそこから繋がるのだった。

 

糜竺「えーっと、雷々は麋竺だよ!東の徐州から来ました~!」

糜芳「電々は、麋芳って言いまぁす。よろしくお願いしまーす♪」

糜竺と糜芳「「助けてくれて、ありがとうございましたー!」」

 

家康「あ、嗚呼...」

何とも快活でとても先ほど襲われた少女たちとは思えない、その陽気っぷりに家康は呆気に取られる。

その日の夜。合同の陣地を張った家康たちは、改めて隊商の指揮を勤めていたとされる糜竺と糜芳の二人から自己紹介を受けていた。

 

今風の若者で言うと、オレンジのロングヘアーが糜芳でショートヘアーをしているのが糜竺と紹介を受けてはいるが....

 

桃香「ええっと、糜竺ちゃんと糜芳ちゃんはよく似てるけど.....双子?それとも姉妹?」

 

糜竺「えーっ。全然似てないよ、ねぇ」

糜芳「そうだよ。元気な方が雷々で、可愛い方が電々だよ♪」

 

愛紗「いや...そう言われても、我々の目からすればな....」

全く見分けなど一見で判別はつかない程に、二人の容姿はよく似ている。

 

糜芳「ひどーい!」

糜竺「そうだよ!こんなに違うのに!」

二人「「ねーっ?」」

っと言うが、家康たちにはどちらとも元気でどちらとも可愛いと、見ても区別が付かない。

 

家康「こ、これは困ったなぁ...」

 

家康も困ったかみたく後ろ髪を掻いてみせる。

 

鈴々「自分で自分なんて見えないから、そっくりなのにわかってないのだ」

確かに鈴々の正論である。

 

戯志才「.....しかし徐州の糜家と言えば、千にも及ぶ食客を抱える豪商の一族。

そのご息女が、どうしてこんな所に?」

戯志才は博識に語る。因みに正史の歴史では、はじめは二人共に陶謙に仕え、次いで劉備に仕えた。劉備が曹操を頼った際に曹操から彭城国の相に任命された。

しかし、劉備が曹操から離反するとそれに従ったされ、劉備に仕えた後、呉にも仕えたとされる。

 

馬岱「ふええ。戯志才さん、詳しいねぇ」

戯志才「徐州にも滞在した事がありますので...」

 

すると糜竺たちが理由を話始めた。

 

糜竺「えーっとね。雷々たち、ご先祖さまみたいに、どかーん!って大きいことをしようと思ってお家を出てきたんだけど....」

糜芳「ここまで来た所で、賊に襲われちゃったんだー」

糜竺「たぶん、山の向こうにいるって聞いた奴らだと思うんだけど...」

 

家康「なるほどなぁ...」

どうやら家康が仕留めたのは一団にすぎない模様。更に問題がある様子で...

 

愛紗「荷車なら取り返したが、あれだけではないのか?」

 

愛紗の問いに二人は首を横に振り、それだけではないと答える。

 

糜竺「全然だよー。旅先で売ろうと思った荷物や食料も、もっともっといっぱいあったんだからぁ」

糜芳「お金もね」

どうやらまだ奪われた物が山程ある様子。

 

糜竺「あの軍資金で....ご先祖さまみたくおっきな事をしようと思ったのに....」

糜芳「七光りとかって言われたくないしね~」

今回のことは相当キテるのか、二人は真剣に困ってると見て分かる通りの顔を見せる。

すると二人は....

 

糜竺「劉備お姉ちゃんたち、お役人さまなんでしょ?取られた荷物を取り返すの、手伝って!」

糜芳「関羽お姉ちゃんたちにも、お礼はちゃんとするから!....取り返したお金からだけど」

 

愛紗「むぅ...」

桃香「ねぇ、愛紗ちゃん...鈴々ちゃん」

愛紗「...そうですね」

鈴々「鈴々も。悪いヤツは、放っておけないのだ」

桃香は義妹たちの顔を見て微笑み、二人もそれに頷き決意する。

家康自身も彼女の性格上からすれば、困ってる者に助けを求められてイヤとは言わないのは知ってる。

 

だが.....

 

戯志才「反対です」

 

短くも、それでいてぴしゃりとそういい放つ戯志才である。

 

桃香「戯志才さん....!?」

 

家康「....」

 

余りの言葉に桃香たち三人や糜竺と糜芳は驚愕する中、家康だけは冷静に腕を組ながらそれを静観する。

 

戯志才「賊の討伐は、この辺りに駐留する幽州軍に任せるべきでしょう。

我々が優先すべきは、薊への到着のはず」

 

糜芳「そんなぁ...!」

 

桃香「でも、さっきは兵を貸してくれたじゃないですか!」

戯志才「あれは目の前で起きていたためで、行軍のための障害を排除が目的だったからです...まぁ家康殿が賊を一人で片付けたから無為になりましたが」

 

等と冷静に言う彼女に桃香は納得出来ずくってかかる。

 

桃香「それがどう違うのですか!

目の前で、二人が困ってるんですよ!?」

 

桃香からすれば当然の反論であろうが、戯志才はそれでも何食わぬと様相で尚も返す。

 

戯志才「助けないとは言ってません。

ただ、我々のすべき事を見失うなと言っているだけです」

そう。本来桃香たちが街道を沿って移動している目的は、幽州の薊に向けての旅路。

それを戯志才は指摘しているのだ、それに家康は....

 

家康「薊までの道のり半ば、ただずっと同じことを続ける訳には...いかん、か」

愛紗「ご主人様...!」

戯志才「そうです。薊までの旅路で同じ事を続けていては、いつまで経っても目的を果たす事は出来ませんよ」

 

確かに彼女の言う通り。こんなことがこの先二度三度起きて、それを同じ繰り返しみたく人助けしていては前に進む処か、反って疲弊し目的自体の話ではないのは明白。

 

桃香「.....そ、それは」

正論でしかないので、間違ってはいない。それ故に桃香は何も言い返すことも覆すことも出来ない。

 

戯志才「幽州州牧の名代として口添えは用意できますし、それに徐州の糜家の名を使えば駐留軍も邪険には扱うことはないでしょ」

 

現実的かつ合理的な解決法の説明に誰も口を挟めない。だが糜竺と糜芳は理解はしていても納得はしてない様子で....

 

糜竺「うぅぅ....」

糜芳「戯志才さんのバカー!!」

冷淡な戯志才の言葉に糜竺と糜芳は泣きながら走り去ってしまう。

 

戯志才「....ふむ、まぁ、仕方ありませんね。

それでは失礼します。明日も早いですから、皆さんも早目に休んでください」

 

彼女は悪びれもなくその場を後にする。

 

戯志才「馬岱殿」

馬岱「え、ええっと...その....ごめんね」

 

戯志才は表情一つ変えることなく、ばつが悪そうな馬岱を連れて自分たちの天幕へ去っていく。

そして残された家康たちの周囲には寂しい空気が流れる。

 

愛紗「.....むぅ」

鈴々「うー。.....なんだか、もやもやするのだ」

何とも言えない、やりきれないとばかりな面持ちの三人。家康はそんな三人とは違って真剣な顔を崩していない。

そんな彼に鈴々が自分たちは間違っているのか、問いかけてきた。

 

鈴々「ねぇ、お兄ちゃん。鈴々たち...間違ってるの?」

家康「そう言う訳ではないんだ鈴々。物事は色々と複雑に出来てる」

愛紗「ご主人様は先ほど、戯志才殿の言葉に何故賛同するような....」

家康「確かに救いを求める手を掬い上げること、悪いことではないし正しい行いだ。

だがそれの全てを是としすぎて、自分の為すことを忘れてはいけないのも事実だ」

桃香「.....」

愛紗「.....それは」

 

そう。全てを是とし過ぎると自分本来の進む道というのが険しくなるのは当然である。

何事も限度や塩梅というのがある。

 

桃香「....ご主人様」

家康「ん?」

桃香「....ごめん。ご主人様。ちょっと.....一人で考えごとしてくるね?」

家康「....そうか」

 

結局、彼ら四人も誰ともなしに解散となって宛がわれた天幕に入ることに。

家康はそのまま座して天井を眺める。

家康からしても戯志才が言うこと、正しいとわかっているし理解している。

物事とはそうなのだ。

 

家康「彼女の言う通り、昼間はワシの力で何とかなったものだから、な....」

 

力という言葉に家康の顔が歪む。

 

家康「.....力、か」

 

 

 

 

 

力こそ全て!!

 

 

 

 

やはりだ・・・この国は弱い!!

 

 

 

 

この日ノ本を、在るべき形に・・・!

   我が統べる・・・剛き国に!!

 

 

 

 

 

それは嘗て家康が忘れてはならぬ記憶....己が背負うべき物....何よりも己の身に、そして拳にもハッキリと"あの時の"感覚が残っている。

 

家康「....」

 

桃香「ご主人様.....起きてる?」

 

突然天幕の外から桃香の声が聞こえてきた。

 

家康「ん?桃香?」

 

天幕を開けると申し訳なさそうにして桃香がそこにいた。

 

家康「どうしたんだ?」

桃香「すこしお話しても、いいかなって....」

ばつが悪そうにしながらも誘う桃香に、家康は笑いながらも応じる。

 

家康「かまわんさ」

桃香「....ありがとう」

二人は夜中、陣中を歩きながら話こむこと。

 

桃香「さっきは、その....ごめんね」

不寝番の兵士たちがちらほらと見えるだけの陣中、家康と桃香は互いにどこに行くともなしにその中をぶらつく。

その最中、家康は桃香に申し訳ないように口を開いた。

 

家康「桃香....。先ほどは戯志才殿の件では何も言わずですまない」  

桃香「....ご主人様」

 

二人の間に微妙な空気が流れる。

 

桃香「昼間戯志才さんが言っていたよね。力なき思想に意味はないって」

家康「そうだな」

桃香「わたしは大陸を平和にしたいって思ってて、ご主人様や愛紗ちゃん、鈴々ちゃんが力を貸してくれて。

それで力も揃ってるって思ってたけど....」

 

だが彼女はそれが足りないと気づいたのだろう、申し訳ないとばかりに苦笑して見せた。

 

桃香「....まだまだ、全然足りないんだなって」

そう。今現状四人居る状況というだけで、その中で家康が特出した強さを持っているだけな為に戯志才の言葉に逆らい動くことや、糜竺と糜芳を救うこともろくに出来るかも定かではない。

 

家康「....ならばどうする?薊に急ぐか?」

桃香「頭じゃ、それが一番だってわかってるんだよ。でも....」

割りきれるくらいならば、彼女自身ここまでは悩んではいない。

 

家康「....力が、欲しいか?桃香」

桃香「....うん。困ってる人を助けられる力は、欲しいよ」

家康「そうか」

 

そんなやり取りの中でふと二人の視界に、糜竺と糜芳が生き残った隊商の面々と何やら作業をしている様子。

 

糜竺「ほら、準備急いで~!」

糜芳「夜明けまでにいくよ!」

 

桃香「って、どうしたの?!二人とも」

糜竺「あっ、劉備お姉ちゃんと家康お兄ちゃん!」

家康「これは、一体...」

糜芳「あのね、電々たちでね、盗られた荷物取り返しにいくの」

桃香「取り返しにって、その数で!?」

二人と共にいる護衛の兵士たち数はもう、そほど多くはない。

賊のアジトを攻略するとして余りに不十分な戦力で不安すぎる。

そんなの焼け石に水でしかなく、どうにもならない。

 

糜芳「その数でもなんでもだよ」

糜竺「商人とって、商品は命の次に大事だもん!」

 

家康「....」

商人としての維持か。しかしそこに賭けようとする二人の手が互いに握りあっている、そこに家康の言う絆が存在している。

絆を重んじる家康にとってそれは何より替えがたき物、ならばと家康は桃香を見ると彼女は決意したように頷き見せる。

 

桃香「ご主人様」

 

家康「うん」

 

すると...

 

鈴々「こっちの荷物、全部まとめたのだ!」

愛紗「武具も確認、終わったぞ」

 

桃香「ふえっ!?愛紗ちゃん....鈴々ちゃん.....」

愛紗「と、桃香さま!」

鈴々「お兄ちゃん....!」

家康「二人ともどうした...」

 

そこに糜竺たちの手伝いをしている愛紗たちがいた。

 

愛紗「あの....これは、その.....我々の旅にも資金は必要だと思いまして...ですが、糜竺たちの謝礼が想像よりも大きなだったもので」

鈴々「それに、お姉ちゃんはいつも言ってたのだ。困ってる人は見捨ててられないって。だから....ね?」

桃香「....ふふっ」

っとしどろもどろで言い訳を始める二人を前に、桃香は思わず笑いだすだけ。

 

愛紗「と....桃香さま!?」

家康「はははっ」

愛紗「ご主人様も?!」

家康「いや、なに。ワシたちは怒ってなどいないさ、な?桃香」

桃香「うん。わたしこそごめんね。こういう時は、わたしが最初に言わなくちゃいけなかったのに」

 

桃香はやはり糜芳たちを放って行くとはできなかったようで、初めからそのつもりだったようだ。

当然家康もそうである。

 

家康「よし!ならば急いで出発するとしよ。戯志才殿たちに見つかれば面倒だ」

 

桃香「うん♪」

愛紗「はい!」

鈴々、糜芳、糜竺「「「おーっ!」」」

 

結局家康たちは賊が根城にしているであろう、場所へと向かうのだった。

それをやはりと戯志才と馬岱は見ていたのだった。

 

馬岱「戯志才さーん。

劉備さんたち、こっそり賊の退治に行っちゃったけど....良かったの?」

戯志才「もちろんです。我々には我々の、彼女たちには彼女たちの都合がありますし...あの人たちが、どう動くか興味がありましたから」

 

戯志才はニコリと語る。馬岱からしたらそれは質が悪いような物で拗ねるには丁度いい。

 

馬岱「それって、わざと意地悪したってこと?そういうの、たんぽぽまで巻き込まないで欲しいんだけどー」

戯志才「ちゃんと馬岱殿の挽回の機会は用意しますよ。

少し経ったら起こしますから、仮眠でも取ってください」

馬岱「戯志才さんだけ悪者っていうのも、それはそれで後味悪いんだけどねぇ。

....まぁいいや。たんぽぽ、ちょっと寝てくるよ」

戯志才「はい。では、私は出陣の用意を進めておきますので」

 

馬岱が天幕に入り、仮眠に入るのを確かめた戯志才は一人口を開いた。

 

戯志才「...それに。私自身、あの御仁ーー家康殿を見定めたいので....あの漂う覇気、もしあの人が私の求める方なら...」

 

 

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糜竺と糜芳の案内に従って、険しい山道を進む一行。

そのあったのは、道を塞ぐように建てられた古い砦だった。

 

家康「こんな所に砦があるとは...」

 

愛紗「昔の関所のようですね。

街道が変わりでもして、使われなくなったのでしょう」

見ていて殺風景、砦の至るところに古い傷や補修したとされるが乱雑になっている箇所が見受けられる。

まともに人が使うにしても環境が古く、衛生上よろしいとは思えない。

すると糜竺が何か気付き指を指した。

糜竺「あっ、あの旗だよ!賊が立てた旗!」

糜芳「外には電々たちの荷車も捨ててある....」

 

黄色でボロボロ、汚れなどで付いて如何にもな旗印が見つかり、更には糜竺たち隊商から奪った証である荷車も置かれている。

 

家康「うむ、間違いはないな」

桃香「そうだね!」

愛紗「それで、どうしますか?」

家康「うむ...」

作戦と呼べる代物を考える余裕がこの状況にあるかと思うと、正直心許ない。

これだけの要塞となると家康一人でと考えるが...

 

愛紗「まさか、またお一人で....などと、考えているのですか?ご主人様?」

家康「え?あ、あーっ。いやそんなことは...」

鈴々「ズルいのだ!鈴々も賊をやっつけたいのだ!」

 

愛紗には睨まれ鈴々にはムスっとされる家康。そんな彼に糜芳と糜竺は家康の実力を見ているので実はこの状況で一番期待している。

 

糜竺「家康お兄ちゃん、とっても強いし!」

糜芳「うん!行けるよ!」

家康「はははっ。ワシ一人で何とか出来るとは全て思っておらんさ....こんな時、忠勝も居れば心強いのだがな」

今この場に居らず、そして自分と同じように何処かに居るであろう徳川第一の絆にして家康に過ぎたる者ーー戦国最強・本多忠勝。

もし忠勝が居れば自分と二人で、あの賊の砦を制圧することなど造作もないだろう。

 

桃香「ただ、かつ?」

家康「ん?嗚呼、忠勝というのはワシの家臣のことさ」

愛紗「そうなのですか?!」

桃香「え?!」

家臣と言う言葉を聞いた桃香と愛紗は驚く。まさか家康は自分たちが想像していたより偉い立場の人間なのではと...。

因みに鈴々は難しいことにはさっぱりなので、ぼけっとしている。

 

桃香「ご主人様、もしかして....天の人で一番偉い人、なの?」

家康「あ、あーっ。いやそんな偉いというほどは....」

糜竺「ふぇっ!?お兄さん天の人なの?すごーい!」

糜芳「だからそんなカッコいい格好してるんだ。

それ、天の国の服なんだよね?いいなー、電々もそういうの着てみたーい」

家康「は、ははっ...」

 

彼のフード付の羽織、胴当て、手甲、草摺、袴、具足、それらを眺めながら羨ましがる二人。

そんな彼女らに苦笑する家康だが、こうしていては埒が空かないので策を練り始めて、辺りにあった小石を拾い地面にざっくりとした図を書いて見せる。

 

家康「さて....関所ということだが、向こうにも当然門はあるな?」

愛紗「恐らく」

家康が書いているのは街道と、関所としてそれを塞ぐ東西二つの門。

そして自分たちの居る辺りに、現在地を示す丸。

 

家康「とりあえずワシが考える策としては、崖より奇襲し中の賊たちを向こうに押し出すというものだ」

桃香「え?でもそうなったら、向こうの....東門を開けて賊が逃げちゃわない?」

 

桃香の懸念は確かにその通り。ここは関所、こちら側と向こう側に門があればそうなるが、家康の狙い目としてそこである。

土に描かれている図面にある東側の門を開けると、そこに敵を示す大きな矢印を一つ書いて見せる。

 

家康「今回ワシらの目的は奪われた荷物だ。敵を砦から追い出した後で、東門を閉じる」

愛紗「.....なるほど。そうすれば、賊は関所に戻れなくなりますね」

家康「そうだ。ワシたちは荷物を回収して、反対側の西門から悠々と帰ればいい。

残った賊は、地元の駐留軍に任すとしよう」

即興で考えたにしては中々だと愛紗は家康に感嘆な思いを抱く。

 

愛紗「流石はご主人様です....それで配置はいかがしますか?」

家康「ワシらで城壁の上の確保し奇襲する。ちょうどここからあの...」

 

家康が指さした先にはあの砦の城壁に繋がる横路があるのを見つける。

 

家康「あの崖道から城壁に行けるようだ。あそこから行こう...その騒ぎに乗じて愛紗たちは中庭に向かい、ワシらの逃走経路の西門の確保と敵を追い出す東門の確保だ」

愛紗「わかりました!」

鈴々「ガッテンなのだ!」

 

糜竺「お兄さん、すごーい!あたまいいー!」

桃香「ご主人様ってホント頼もしいよ♪」

糜芳「うん、カッコいい...」

皆家康を称賛する。が、本人はその称賛を受けながらも、既に徳川軍総大将たる男ーー一軍を束ねる歴戦の戦人の顔となっている。

敵との戦力に比べて家康たちは寡兵、つまりは敵と比較すると部隊数が少ない。

今はまだ夜だが何れは夜が明けてしまう。奇襲の為にこのまま進むことを皆に指示する家康。

 

家康「では動こう!間もなく夜が明ける....奇襲向いたこの夜半こそ、ワシらの勝負時だ!」

 

桃香「だったらみんな.....」

 

糜竺と糜芳「「作戦、開始ー!!」」

 

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作戦は開始された。家康たちは砦の城壁上に通じる横の崖を慎重に登り、気付かれないように砦の奇襲ポイントをたどり着いた。

 

家康「では行くぞ!」

桃香「うん!」

 

「「「「「「うおおおおー!!」」」」」

 

家康の合図で桃香、糜芳と糜芳、連れてきた隊商の兵士たちは横から雪崩れるように賊に見事奇襲せしめることに成功す。

思わぬことに何が何だか分からない敵はあれよあれよと、攻撃されるのだった。

 

「な、なんだ!?テメェらどっからここに!?」

 

糜芳「横の崖を登ってきたんだよ~」

 

突如のことに賊たちは混乱する。その間、愛紗と鈴々は門がある中庭に向かう。

 

「こ、こんな!?」

 

「ど、どうすんだ!?」

 

愛紗「今だ!押し出せ!」

鈴々「突撃!粉砕!勝利なのだ!」

 

糜竺「電々、行くよ!」

糜芳「うん!」

 

二人はそれぞれ得意の武器で賊を蹴散らしていく。

 

糜竺「はぁぁー!」

 

「ぐはっ!」

 

糜芳「てえーい!」

 

「ぐふっ!」

 

隊商が襲われてた時はピンチであった二人や護衛の兵士たちだったが、今回は大活躍である。

それほど明るくもない月明かりの中。

息の合った動きで舞うような攻撃を仕掛ける二人、それは戦ってるというよりかは舞踊る一種の戦舞の如くに家康は見えた。

 

家康「二人揃うと何倍にも強いということか...あれも絆、だな」

 

 

彼女らは兵士たちと共に同時に賊を討ち取りを行う。

 

「こ、こいつら!?」

 

愛紗「はあああー!!我が偃月刀の錆にしてくれる!!」

 

愛紗は自身が青龍偃月刀を巧み操りながら迫る賊徒どもを、叩き切り伏せる。

賊たちは彼女が振るう武に怖れるがそれを関羽雲長、決して容赦しないとか弱き者たちを搾取してきた敵を片っ端から斬り続ける。

 

鈴々「鈴々も!どんどん暴れるのだー!」

 

鈴々も自分よりも長い蛇矛を力一杯大人が顔負けにするほど、強く凪ぎ払って賊を潰していく。

まさか敵もこんな華奢な身体で小さな子供相手にボロボロにされるなど、夢にも思わないだろ。

だが鈴々はそんなお構い無しに相手を倒していく。

そんな二人に守られながらも桃香も剣を握り、自分の身を守って戦っている。

 

桃香「くっ!」

 

「こいつだけ弱いぜ!へへっ」

 

「俺たちが可愛がって...ぶべらっ!!」

 

桃香「え?ご、ご主人様!ありがとう!」

桃香の未熟な剣を見てあわよくば下衆なことをしようと、蜜にたかり躙り寄る蟲の如く近寄る賊たちを家康の剛拳によって骸に変わる。

 

家康「桃香!合図の為、鏑矢の用意を頼む!」

桃香「うん!」

 

家康「よし!さぁ!みんなワシに続け!」

 

「「「「「うおおおおー!!」」」」」

 

勢いに乗る家康率いる勢力に賊は浮き足立ち、もうまともな判断が出来ない。

それに.....

 

家康「ワシの拳、とくとその身で感じろ!!」

両の拳から成る普通の人間では目で追う処か、捌くことなんてのも無理な連続ラッシュ。

そこから腕の捻りを加えた強大な突き攻撃で、目に映る敵勢を残さず屠っていく。

 

家康「うおおおおー!!」

 

一番この中で敵を軒並み潰しているのは、間違いなく断トツに家康であるの明白。

家康の拳による蹂躙はもう歯止めが利かないのでは?思わんばかりに力を溜めた拳を地に叩きつけ、衝撃波で敵を吹き飛ばす技ーー陽岩割りにて巻き込まれた何100人の敵兵達が人形のように宙を飛び、ボロボロと雨みたく落ちてそこから起き上がらず事切れて動かない。

 

余りに人外すぎる強さに敵は恐れ戦き、味方は士気が高なり意気揚々と上気する。

 

愛紗「ご主人様....なんという」

鈴々「やっぱりお兄ちゃん....とーっても強いのだ!」

桃香「ご主人様....」

 

糜竺「お兄さん。ホント強い....!」

糜芳「うん!奇襲も凄いけど、今なんかもっと凄いよね~!」

 

戦闘そのものは圧倒的に寡兵であるはずの家康たちの優勢....最早心配ない展開なのだが。

 

家康「ん?」 

ここで家康、敵の様子に違和感を感じとる。

 

糜竺「どうしたの?」

糜芳「このまま行けば勝てるよ?」

 

家康「いや....連中、門を開けて何故逃げようしない...?」

 

賊たちは、東門を背中にして愛紗たちの攻撃を防いでる。

それが門を開ける為の時間稼ぎ....とは思えず、奴らは一向に誰も開ける気配を見せない。

 

家康「まさか、討ち死に覚悟で立ち往生する気か?」

 

だがその原因が直ぐにわかった。

 

糜竺「あーっ!お兄さん!壁の外、大きな岩が沢山転がってるよ!!」

家康「なんだと!?」

糜竺の言葉に外側を見れば、城門前には無数の大岩が転がり落ち...巨大な門扉を押し潰しているように塞いでいたのだ。

 

家康「まさか、この関所が使われなくなった理由は...!」

 

糜竺「お兄さんどうしよ...?」

糜芳「でもこのままなら、全部やっけられそうだよ!」

家康「いやそれでも手勢が少ないワシらにも限界はくる...!」

 

家康自身、これには盲点であった。この世界において未だ地形の把握や状況など分かっていなかったのは理解していたが、ここに来てそれが仇になるとは不味い焦る。

 

家康「(偵察を行っておれば....!)」

口惜しそうにする家康だが、その時である。

後方から外の警戒を頼み、鏑矢を上げるよう指示しておいた桃香からの合図である。

 

一本は敵が向こうの門を開けた時。

二本は敵にまだ増援が存在しそれを家康たちに知らせる時。

なのだが、突如三本目が空に放たれた。

 

家康「三本目の鏑矢は、段取りにはないはずだ」

 

糜芳「お兄さん、あっち!あっちに明かりが見える!」

 

彼女が指し示したのは、家康たちの背中側....。

荷物を奪還した際に退却する予定の西門の先。

まだ夜を残すそちら側に、糜芳の言う通り、松明らしき明かりがいくつも揺れていた。

 

家康「明かりが...まさか!」

家康は悟る。これが敵のではないとなると残される可能性は一つしかない、なればと....。

 

家康「愛紗!東門の外側が岩で塞がっている!西門を開けるんだ!」

 

愛紗「よろしいのですか?!」

東門が使えない状態だと知り驚く愛紗だが、更に西門を開放せよとの命令にも驚く。

この状況下で賊を追い詰めてる以上、下がり西門を開けるのはそう難しくはない。

だが懸念としては開けた西門を見て、残った敵が殺到してしまうということ。

だが家康は賭けることにする。

 

家康「ああ、かまわない!二人とも無理はするな!流れに乗って出るんだ!」

鈴々「わかったのだ!」

愛紗「私が先行する!背中は任せたぞ!鈴々」

鈴々「おう!なのだ!」

 

愛紗たちは賊どもを追い込んで来たばかりの通路を引き返して、西門へと走り出す。

 

家康「ワシらも反対側まで急ぐぞ!糜竺、糜芳!」

糜竺「うん!」

糜芳「まかせて!」

 

 

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とうとう夜が明け始める。西門の扉が開くのを待っていたのは、兵士たちを連れて馬に乗っている馬岱であった。

 

馬岱「おー。ホントに開いた....えーっと、あっちが関羽さんで、こっちが賊か。

たんぽぽたちは賊を叩けばいいんだよね」

っと彼女は手にしている槍を構え直して、気合いをいれる。

 

馬岱「ならみんな!一番良いところ、わたしたちでぜーんぶ持ってっちゃうよ!総員、突撃ぃー!」

 

「「「「「うおおおおー!!」」」」」

彼女の号令と共に西門から出てきた賊たちは、一人残らず全滅されることとなった。

これにより今回の戦闘はこれで終息する。

 

家康「桃香、馬岱殿」

朝日がもう登り、谷間の関所に太陽の光が差し込む頃。

家康は外にいた桃香たちと合流する。

 

桃香「ご主人様、良かった....!みんなは?」

家康「糜竺たちは荷物の確認をしてる所だ。愛紗はその護衛を任せてある。鈴々は....」

そう言って家康は二人に背中に見せる...彼の大きな背中におんぶをして貰ってグッスリと寝ている鈴々に、二人は苦笑してみせる。

 

鈴々「くー.....むにゃむにゃ、お兄ちゃん」

桃香「ふふっ。夜通し戦ってたもんね」

家康「だが、馬岱殿が応援に来てくれて助かった。

これは....戯士才殿の差し金だろう?」

家康はフワリと微笑みを浮かべて訪ねる。それに対して桃香と馬岱はえ?驚きながら口にする。

 

桃香「戯士才さんが?!そうなの?」

馬岱「へぇぇ、凄い気づいてたんだ」

家康「あれだけの出立の準備すれば、気づくさ。

それに戯士才殿は旅慣れてるとも言っていたからな、もしかしたらここの関所の事情も検討ついていたのではないか?」

馬岱「みたいだよ。で、たんぽぽに助けに行ってあげろってさ。

素直じゃないよねぇ」

拗ねたように愚痴を漏らす馬岱。だが家康は首を横にふる。

 

家康「そうでもない。相手を信じ優れた軍師さ、彼女は......だろ?戯士才殿」

戯士才「家康殿は、分かっていらっしゃいますね。あと馬岱殿、素直じゃなくて悪かったですね」

 

馬岱「げっ、来た」

聞かれたとバツが悪そうに口漏らす馬岱を横目に見る戯士才は、名に食わぬ顔で話す。

 

戯士才「既に出立の予定は過ぎていましたから」

家康「戯士才殿....お陰で助かった。ありがとう」

戯士才「いえ、あなた方を無事に薊までお連れするのが、私の役目ですのですか。

ここで皆さんに何かあると困りますので....それに」

 

戯士才が細目で家康をチラリと見つめる。

 

家康「ん?」

戯士才「.....私としては、今回家康殿を知れて良かったと思います。貴方は武人でありながらも将としても優れた御方なのだと....」

家康「いや、ワシは....」

戯士才「貴方にならば.....私はこの才を....と」

家康「それは一体....」

意味深な彼女の言葉の途中、糜竺たちが駆け寄ってきた。

 

糜芳「劉備お姉ちゃん、お兄さん!」

桃香「糜竺ちゃん、糜芳ちゃん!荷物は無事だった?」

糜竺「うん!ぜーんぶ大丈夫だった!」

どうやら彼女たちの大事な荷物は無事取り戻せた様子。二人は桃香の手を取り、感謝述べた。

 

糜芳「みんな劉備お姉ちゃんたちのおかげだよ!本当にありがとうね!」

そんな満面な笑みを見せてくれた二人だったが、家康の側にいた戯士才と目が合った途端....。

 

糜竺と糜芳「「べーっ!」」

家康「こらこら、戯士才殿だってワシらを助けてくれたのだぞ。そんな顔をしちゃいけない」

糜竺「えーっ。だったら最初っから協力してくれたら良かったのに!」

糜芳「けちー!」

戯士才「ケチで結構です!」

糜芳と糜竺「「ぶー!」」

嫌みも悪態もクールに受け流す戯士才を相手に、二人はしばらく頬を膨らましていた。

だが....。

 

糜竺「そうだ!それでね、劉備お姉ちゃん」

糜芳「電々たち、お姉ちゃんたちに付いていこうと思うんだ!」

桃香「......えっ!?」

家康「ん?」

 

突然のことに飲み込めていない桃香と家康だが、糜竺たちはニコニコとその訳を話す。

 

糜竺「雷々たちだけで頑張るより、お姉ちゃんたちと一緒のほうが、もーっとでっかい事が出来るかなーって」

糜芳「ねぇ、いいでしょー?」

桃香「えええええ.....良いのかなぁ」

戯士才「....良いのではありませんか?資金や兵士も一緒に、という事なのでしょう?」

糜竺「けちんぼ戯士才さんには言ってないもん!そうだけど!」

 

戯士才にまだトゲトゲしい糜竺から代わって、糜芳が家康の傍らに近寄ってきた。

 

糜芳「ねぇ、お兄さん。

お兄さんも電々たちが一緒の方が嬉しいよね?ね?」

家康「まぁ、確かに。賑やか良いことだ」

 

家康としても、戯士才が言うように資金や戦力が増えるのは状況面からするとありがたいと感じるのは禁じ得ない。

だがそれ以上に.....

 

家康「絆がふえるのも良いこと、だな」

戯士才「家康殿...」

桃香「ご主人様....ならいいか。だったら、これからよろしくね、糜竺ちゃん、糜芳ちゃん」

糜竺「うん!雷々のこと、これからは真名の雷々って呼んでいいからね!」

糜芳「電々の真名も呼んでいいよ!」

桃香「わかったよ。なら、わたしも桃香でいいからね」

 

戯士才「......」

三人のやり取りをただ平静に見つめる戯士才...そんな彼女を見て家康は「やはり」かと悟る。

戯士才は恐らく雷々と電々がこうなるとまで計算の内に入れて、わざと嫌われ役を担っただと...。

 

戯士才「....家康殿。どうかしましたか?」

家康「いや....戯士才殿は良き軍師になると、そう思っただけだ」

戯士才「....や、やめてください///」

微笑む家康からの賞賛の言葉に思わず顔をそっぽ向いてしまうが、彼女の頬は赤くそまっているのが分かる。

 

馬岱「なになに?家康さん、戯士才にそんな目で?やーらしー♪」

家康「え?!あ、いや!ワシはただなぁ....!」

桃香「ご主人様ぁ.....??」

 

馬岱の言葉に釣られたのか、桃香の顔がムッとなって家康を見つめる。

そんな中、雷々と電々は....。

 

雷々「あっ、そうか。桃香ちゃんの仲間になるなら、お兄さんのこともご主人様って呼ばないとだね!」

電々「電々、強くてカッコいいご主人になら.....やらしーのもアリな気がするなー♪」

桃香「ご主人様ぁ.....!!」

まさに火に油とばかりに桃香の顔が怒り始める。これは家康からすると飛び火以外の何物でもないのだが....。

 

家康「ま、待ってくれ!ワシは何も!」

鈴々「むにゃ.....お兄ちゃん、やらしーのだ?」

何とも間が悪いところに家康におんぶされてる鈴々が起きたのだった。

だがそれだけでなく....。

 

愛紗「.....ご主人様?」

家康「?!...あ、愛紗?」

 

振り向くとそこには、笑顔で背後には般若が聳え立ってそうな気を纏っている愛紗がそこにいたのだった....。

 

 

愛紗「どういうことか...詳しくお聞かせください、ね?」

家康「あ、いや....ワシは、その....は、はい」

 

この後、何故か愛紗と桃香にこってり絞られた家康だった....。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。


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第六章 幽州

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなりの無双を行うと思いますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。
ご理解の程、宜しくお願いいたします。


前回。糜竺たち共に賊たちと戦い、彼女たちの大事な荷物を取り戻した徳川家康ら一向。

糜竺と糜芳ーー二人から真名を預かり、共に幽州の都である薊へと旅路を再開することに。

 

 

幽州・薊

 

桃香「ふわぁ.....。凄い都....」

雷々と電々の二人を一向に加え、更に北へと向かうことしばらく。

家康たちは漸くたどり着いたのは、幽州の都として存在する薊である。

 

家康「うむ。本当良く出来た都だ、ワシらがいた街よりも活気がある」

最初の街やこの旅路の途中寄った他の街よりも、規模は正に文字通り『都』と言う表現そのものである。

 

雷々「はれ?ご主人様は大きな街って初めてなの?」

家康「ああ....この地に来てから、ここが一番大きな街だな」

外から来た家康からしてみると、古代中国の都に居るというのが異例。

だが賑わいなどを見ると家康個人からしてみると、何処か居心地が良くとすら感じ得る。

 

家康「まるで...三河に居るように思えるな」

愛紗「みかわ...?」

電々「それが天の世界?ご主人様の?」

彼が発した故郷の名に二人は反応して問いかけてきた。

 

家康「あー。三河というのはワシが生まれた故郷で、代々守ってきた土地なんだ」

桃香「そうなんだ!(やっぱりご主人様って、凄い人なんだ...)」

戯士才「.....」

桃香は興味深く聞きながら家康は普通の者ではないと感じ、戯士才もまたそんな家康の話を一言一句聞き逃さずにいる。

 

電々「でもこっちの都って、もっと大きいよね?」

雷々「うん。もっともっと、もーっとおっきいよ」

やはり此処以上の都の存在を知っているのか、二人は自慢気に胸を前に突きだして見せる。

商いを生業をしていた豪族出身なだけに都の往来経験は、多々あると見るべきと家康は納得する。

 

家康「二人とも、やはり此処よりも栄えた都にも行ったことがあるのだな」

雷々「うん!行った事あるよ、都!」

家康「都、か....」

雷々たちが言う都というのは、家康で言う天下の中枢である江戸と京の都と言った場所を指しているに違いない。

彼女たちの反応からすると、幽州の都は地方自治の大きな街...程度の規模と見ているのやも知れない。

 

桃香「うぅ。わたし、幽州の北から出たことなかったもんなぁ...」

愛紗「戯士才も色んな所を旅をしてると言っておりましたし...」

戯士才「はい」

警護の兵を連れて一足先に城に戻った馬岱も、北西の地から来たと家康たちは聞いている。

 

桃香「そ....そうだ!愛紗ちゃんと鈴々ちゃんは...!!」

愛紗「そ、それが、その....」

あまり外の世界に出たことのない桃香は、自分よりも各地を回っていた愛紗に期待を込めた視線を向けるが、当人は露骨に視線を反らしてみせる。

その代わり、鈴々が呆気なく正直に話した。

 

鈴々「都はないけど、もっと大きな街に行ったことあるのだ。薊もお姉ちゃんに会う前に来たよ」

桃香「あぅぅ....わたしとご主人様だけかぁ。あ、でもご主人様は...」

先ほど家康から聞いた三河の話を思い出すと、田舎者は恐らく自分だけと感じる。

そんな彼女に家康は苦笑する。

 

家康「は、ははっ...ワシとてこのような都来たの初めてだから、桃香と同じさ」

桃香「うん....ん?」

小さく呟いたきり、その先をぼうっと眺めたまま。

 

愛紗「.....桃香さま?どうかされましたか?」

桃香「ううん、あれ」

桃香の視線の先に居たのは、大通りを城へと向かう騎馬兵の一団だった。

揃って天を指す槍は光をキラキラと弾き、青空にひるがえる大きな軍旗がそれに続いている。

人も馬も揃いの装備で大通りを進むそれは、家康から見ても練度が高いと伝わってくるほど。

 

家康「(雄壮、だな...)」

まさにその言葉をそのまま形にするとこうなると思わせる行軍に、通りのあちこちから拍手や感嘆が自然と沸き起こる。

 

愛紗「これは....凄いですね」

鈴々「カッコいいのだ....」

戯士才「あれは...馬孟起殿の西涼兵ですね。

彼女も私たちと同じ、伯挂殿の客人ですよ」

桃香「そ....そう、なんだ」

行軍の後ろ姿が見えなくなるまで、西涼の騎馬隊をぼんやり見送ってた桃香だが....。

ふと彼の腕をそっと掴みながら、何やら様子が変化を見せる。

 

家康「どうした?桃香」

桃香「ね、ねぇ....ご主人様。わたしたち、この格好で行っても大丈夫かなぁ...?」

洗濯はそれなりにしてるから小綺麗だとは思うが...桃香たちの服はあちこちすり切れている、継ぎや補修の跡も少なくはない。

対して家康の元々戦の為にある格好なので、小綺麗などは気をつけてはいるが...彼女たちみたくそこまでとはなかった。

しかし彼女たちからすると、先ほどの孟起と呼ばれし武将の風格漂う行軍を見せられた後では、お世辞にも立派とは言えないのだろう。

 

男である家康はまだしも、桃香たちは女子なのだから。

 

電々「だったら、先に服屋さんに行く?お金なら電々たちのがあるでしょ?」

桃香「うーん....でも電々ちゃんたちのお金は、これからのための大事なお金だし...」

電々「でもでも、商談も顔合わせも、第一印象ってとっても大事だよ!」

桃香「そ、そうなのかなぁ...」

電々「だからほら、まずは服をちゃんとしよ!電々たちのお金なんだから、使い方は電々が決めていいよね!けってーい!」

 

確かに最も且つ正論でもある。元々電々たちの資金なのだから、本来の持ち主である電々がその決定力を持つのは何ら問題はない。

それにこれから幽州州牧に目通りするのなら、見映えなどの第一印象欠かしてはそれこそ不味い。

 

電々「戯士才さん、この辺りの服屋さんってどこにあるの?出来るだけかわいい服のあるお店がいいなー!」

戯士才「....可愛いかどうかはわかりかねますが、向こうに服飾店街はありますね」

電々「ありがと!じゃあ、とつげきーっ!」

桃香「え、あ、ひゃあっ!」

 

電々は元気よく桃香の手を取って走りだしてしまうのだった。

 

電々「雷々も早く来てねー!」

雷々「はいはい。しょうがないなー、電々は」

 

姉妹である電々に呆れる雷々ではあるが、彼女は鈴々と愛紗に笑みを浮かべて....。

 

雷々「じゃ、鈴々ちゃんと愛紗ちゃんもね!」

 

連れさられた桃香を呆然と見送っていた愛紗と鈴々の手を取って掴んでみせる。

 

愛紗「わ、私もかっ!?」

鈴々「鈴々も今の服でいいのだー!」

雷々「雷々は別にいいけど、電々が許さないよ。

ほら、いくよー!」

 

雷々も、このような時の電々がどういう時かとよく知っているのだろう。

愛紗や鈴々の手を取ると、やはり元気よく走りだしたのだった。

 

家康「....いってしまった」

戯士才「やれやれ.....伯珪殿との面会の刻限に、間に合えばいいのですが」

 

結局置き去りにされたのは家康と戯士才。家康は苦笑交じりに戯士才に言葉を投げると、戯士才は勝手気ままに行動する桃香たちに呆れてしまい溜息を隠さないのであった。

 

戯士才「難儀しますね?家康殿」

家康「ハハハッ、そうだな。女子とこのように旅をするというのは初めてだから、新鮮だ」

 

確かに今まで日ノ本統一の為に懸命に奔走する毎日...日ノ本各地での諸侯との覇権を賭けた戦い...艱難辛苦ばかりの道のり...血涙血反吐を耐えて耐えて戦い抜いた結果、ようやく安寧した日ノ本にすることが出来た。

その道程の半ばにて、彼自身が述べていたように桃香や愛紗みたいな少女たちとこんな旅をするなどと言う経験はないし、新鮮そのものである。

だが彼自身がこの世界に居ることも尚も不思議と思う、それに気掛かりなのは自身が居ない日ノ本はどうなっているかという気持ちもある。

 

家康「(しかし、もしかしたら慶次や軍神殿、それに独眼竜が居れば...きっと大丈夫、だろう)」

戯士才「....」

 

だが絆で紡いだ諸侯がきっと家康不在の半ば、何かしらの行動をしてくれていると信じてもいる。

そう信じながら天を仰ぎ見る家康...そんな彼の横顔を戯士才はただ見つめているのだった。

 

 

 

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公孫瓚「あはは、そりゃ大変だったな!」

 

桃香「笑い事じゃないよぅ。もう.....」

 

電々たちに振り回されて大変だったと愚直漏らす桃香。衣装はああでもないこうでもないと大騒ぎする電々を何とか宥め...結局は元の格好を新品にするということで落ち着いたのだが、その間家康はずっと女子たちの衣装騒ぎのせいで放置されていたのは言うまでもなく。

その彼女に労うように笑みを浮かべて口にする相手、赤いポニーテールの美少女...公孫瓚、字は伯珪。

幽州州牧を務める役目をもっている彼女と桃香は、同門の塾にて勉学を励んだ友人であった。

 

桃香「でも....久しぶりだね、白蓮ちゃん」

 

公孫瓚「ああ。風鈴先生の所を出て以来か...?

....っと、積もる話はあとだな」

 

そう彼女は姿勢を正してみせると....

 

公孫瓚「....改めて、公孫伯珪だ。この幽州の州牧をしている」

 

州牧としての威厳を見せる彼女はしっかりとした自己紹介をして見せる。

 

公孫瓚「平原の件、州牧として礼を言わせてもらう。

こんな田舎じゃ大したもてなしも出来ないが、客人として歓待させるから、ゆっくりしていってくれ」

 

家康たちに暖かく迎えてくれる彼女。今回彼らを連れてきた戯士才にも労う。

 

公孫瓚「戯士才も案内ご苦労だったな、助かったよ」

 

戯士才「構いません。私としては得難い経験と“貴重な出会い”が出来ました」

 

公孫瓚「あとは....報告はだいたい馬岱から聞いたけど、彼女たちが桃香の妹分と、そして天の使いって人か」

 

桃香「うん。関羽ちゃんと、張飛ちゃん。

それから、ここに来る途中で一緒に来てくれることになった、麋竺ちゃんと糜芳ちゃんだよ」

 

そして微笑む彼女は自分の隣に立っている家康も紹介して見せる。

 

桃香「それと....こちらが、ご主人様」

 

家康「お初にお目にかかる。某、徳川家康と申す、今は縁あって桃香たちと旅をしている」

 

公孫瓚「そんなに堅くならなくていいって。

桃香の旦那なら、私の弟...?いや、家康殿私よりも年上っぽいから、この場合兄みたいになるのかな?

まぁ!私のことは気軽に呼び捨てにしてくれ」

 

桃香「ふぇっ!?白蓮ちゃん!!」

 

公孫瓚「なんだ、ご主人様って呼んでるからそうかと思ったけど、違うのか?」

 

家康「ん?」

 

公孫瓚はどうやら桃香と家康の関係に対してあらぬ方向で誤解している模様。

突然のことばに桃香は頬を赤くしてしまい、余りの気恥ずかしさにもじもじしてしまって動揺を晒してしまう。

 

桃香「あぅぅ。そういうのじゃなくって....ご主人様は、わたしたちを導いてくれる大事な人だから、ご主人様って呼んでるんだよぅ....」

 

公孫瓚「あ、そうなのか...?」

 

桃香「旦那さまだんて、そんな....あぅぅ....」

 

家康「桃香?どうした?」

桃香「な!!何でもないよ!!///うん!!///」

 

っが、当の家康自身は何ともないとした風で桃香の様子が気になって声をかける。家康に突如声をかけられぎょっとなり驚きながらも何とか平静を取り戻そうとしている、が...内心では家康に対して、激しく思い揺らいでそうではある。

 

公孫瓚「なるほどなぁ。ま、挨拶も終わったし、こんな所で話すのもなんだな。

食事も用意させてるから、後の話は食べながらにするか」

 

鈴々「ごはん!!」

 

食事と聞いていの一番に反応するのは当然であろう鈴々。やはり遊ぶ食べるは子供にとって何よりの楽しみなのだろう、そんな鈴々に「やれやれ」と愛紗は呆れているのは当然。

 

愛紗「......鈴々。そういう所だけ反応するんじゃない」

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

公孫瓚を先頭に州牧である彼女が使う屋敷の案内を受ける家康たち。

 

公孫瓚「何か入り用な物があったら遠慮なく言ってくれ。

今日は風呂の支度もしてあるから、自由に使ってくれよ」

 

桃香「ホント!?ありがとう、白蓮ちゃん!」

 

雷々「やったー!お風呂!」

 

電々「わぁい!電々、お風呂だいすき!」

 

この世界においてにも、風呂は存在している。

ただ日ノ本の時とは違い三国志時代...古代中国のこの時代に水や燃料も限られている。

そう中々にやたらと気軽に入れるようなものではない。

この時代においての風呂とは正に客人に対しての歓待の証として申し分ない、それをわざわざ用意してくれた公孫瓚は、本当に桃香が来たことに嬉しいのだろう。

 

馬岱「あっ、劉備さん!」

 

公孫瓚に食堂まで案内してもらってると...廊下で声をかけてきたのは馬岱だった。

 

桃香「馬岱ちゃん。さっきは兵士さんたちのこと、ありが....」

 

そう言いかけた桃香が思わず言葉を途切れさせたのは、馬岱一人じゃなかったからである。そこには昼間家康たちが見た長いポニーテールの騎馬武者少女――馬孟起が立っていたからだ。

 

馬超「.....ん?」

 

桃香「あ....っ。さっきの....!」

 

公孫瓚「なんだ馬超。もう玄徳に会ってたのか?」

 

家康「(馬超....三国志でも有名なあの錦馬超か....)」

 

馬超の名を聞いて内心驚く家康。馬超と言えば、西涼の有力者馬騰の長男でその武者振りの見事さから「錦馬超」の異名を持つ。

更には史実にて馬超は関羽、張飛、黄忠、趙雲の四名と共に「五虎大将軍」と呼称されるほど後の蜀に無くてはならない勇将となっている。

 

馬超「いや....鶸?」

 

馬超は隣にいる彼女と似た髪型で胸が馬超に比べて控えめな少女...馬休に尋ねる。

 

馬休「いえ、私も覚えが...」

 

桃香「あ、そうじゃなくって、ですね。

お城に着いた時、騎馬隊を率いて戻ってくる所を見かけたので...」

 

馬超「そういうことか。伯珪殿、こちらは?」

 

桃香から理由を聞き納得したように微笑む馬超は公孫瓚に尋ねる。その彼女に馬岱が呆れるように口を開いた。

 

馬岱「もう。さっき話したでしょうー!

劉備さんと、天から来た家康さんだよ」

 

馬超「ああ、平原の!話は色々と聞いてるよ」

 

桃香「ふぇっ!?」

 

馬超から思わぬ言葉に驚きを隠せない桃香だが、家康はふとある事に気付く。

 

家康「....馬岱殿と馬超殿の姓が同じということは...」

 

馬岱「翠姉様は、たんぽぽの従姉妹だよ」

 

それを聞いて家康は納得する。馬岱は西涼から来たと告げており、言われてみれば二人の雰囲気や格好などほとんど似通っている。

しかし馬超の方が纏う気が強いと感じると家康は思う。

 

馬超「あたしは馬超。字は孟起だ。

我が母・馬騰の命で、天下を見て回る旅をしてる....さん付けなんて堅苦しくしないで、馬超でいい。殿も要らない」

 

彼女は爽やかに笑みを浮かべて呼吸するような自然さで劉備に握手を求める。

 

桃香「え、あ....はいっ!わたしは劉備...字は、玄徳って言います。

こちらこそ、よろしくおねがいひます!!」

 

公孫瓚「噛んだ」

 

愛紗「噛みましたね」

 

鈴々「嚙んだのだ」

 

馬超に握手を求められた桃香は緊張の余り嚙むという始末を見せる。そんな情けなくも一応弁明する桃香。

 

桃香「だ、だって....いきなりこんなすごい人に握手されたら、緊張しちゃうでしょ...!白蓮ちゃんまで...」

 

桃香からすれば、先ほどまで見劣りするしないで大分気にしていた相手であるからして仕方ないのであろう。

そのような相手からいきなり気軽に挨拶と握手をなどされれば、それは緊張するのも致し方ない。

 

馬超「あはは、そんな大したもんじゃないよ。で、こっちが...」

 

馬休「馬超の妹の馬休です。

このたびは、馬岱がご迷惑をおかけしました」

 

馬岱「ちょっとぉ!なんでいきなりたんぽぽの謝罪からなの!」

 

馬休が自分の謝罪の言葉を述べることに納得できず文句言うが...

 

馬休「だって、蒲公英だし。絶対迷惑かけてるでしょ」

 

馬岱「えー!そんなことないよー!」

 

桃香「あの...馬岱ちゃんには、たくさんお世話になりましたから」

 

桃香がそんな馬岱に擁護するべく馬休に告げると、馬岱は胸を張って自慢げな態度を見せる。

 

馬岱「ほら。劉備さんもこう言ってるでしょ」

 

馬休「はいはい」

 

公孫瓚「馬超。これからみんなで食事なんだが、お前たちもどうだ?」

 

馬超「さっき済ませたばかりだし、遠慮しとくよ。

それに、古い友が遠くから来てくれた時は、まずはそっちを優先するもんだ」

 

っと中々に律義なことを言う馬超。家康は内心彼女の真摯な姿勢に感心してしまう。

 

馬岱「だ、だったらたんぽぽだけ....」

 

馬休「ほら。蒲公英も邪魔しないの」

 

さり気なく食事に混ざろうとする馬岱に、馬休は首根っこを捕まえて連行する。

 

馬岱「あーれー。家康さん、たすけてー!」

 

馬超「今日の件の報告は、また明日にさせてもらうよ。それじゃな」

 

そして馬岱は馬超と馬休に引きずられるようにして、廊下の向こうへと消えてしまうのであった。

 

雷々「...ふぇぇ。なんだか、格好良かったねぇ」

 

電々「うん...。ああいうのを、男前って言うんだろうね、女の人だけど」

 

家康「だが、思ったよりも気さくな話しやすい御仁だったな、馬超殿は」

 

公孫瓚「ここからはるか西の、涼州の出身だからな。

あっちの生まれは、ああいう性格の連中が多いぞ」

 

公孫瓚がそう説明してくれる中、愛紗が尋ねる。

 

愛紗「すみません、公孫瓚殿。馬騰殿といえば....あの?」

 

すると公孫瓚は真顔で首を縦に振りながら肯定する。

 

公孫瓚「ああ、あの、だよ」

 

鈴々「あの....って、愛紗は知ってるのだ?」

 

愛紗「....お名前くらいはな」

 

戯士才「馬騰殿は、近隣の異民族にもその名は知れ渡る、西涼の大英雄ですからね」

 

家康「ほう...」

 

それ程の英傑の娘である馬超と馬休は正に一族のサラブレッドと称されても、何ら可笑しくはない。

 

公孫瓚「ま、その辺りの話も食堂でな。こっちだよ」

 

公孫瓚に連れられ一同は食堂向かい、そこで皆楽しく美味しい食事を堪能することが出来た。

 

 

 

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公孫瓚「なるほどな.....にわかには信じられない話だが、桃香が信じてるっていうなら、それでいいか」

 

翌日。家康は桃香や馬超たちが一緒に公孫瓚の部屋にて呼ばれ、ここまでの経緯を話を聞かせることとなった。

彼がこの世界の住人ではないこと、本来は日ノ本の人間でありこの世界に来た切っ掛けも話した。

家康がそれを語る姿一挙手一投足を公孫瓚は真剣に見つめている。

それでも家康は己が噓偽りを申していないことを口にする。

 

家康「ワシは此処に居る皆を騙すつもりはない。

それにワシ自身も自分の状況を分かっていない所の方が多い....だが、桃香や愛紗たちの夢には協力を惜しむつもりはないとワシは決めている」

 

桃香「ご主人様...」

 

愛紗「...///」

 

彼の姿勢に誰もが怪しいとは思っていなかった。桃香はそんな家康の姿に頬を赤くして見つめ、愛紗は彼女と同様に嬉々として聞いている。

鈴々や雷々、電々に至ってはニコニコして嬉しそうにしている。

馬超などは家康と会話など交わしては未だないが、それでも彼の真摯な姿に好感を抱いていた。

 

馬超「正直で真っ直ぐな人だな」

 

戯士才「ええ。それに家康殿は武将として高い資質を持っていますよ....何せ此処に来るまでの黄巾党をほとんど家康殿が倒していますから...」

 

馬超「それほんとか!?」

 

戯士才からの驚愕する馬超。その彼女に戯士才が嘘を言っているわけではないと馬岱が肯定する。

 

馬岱「ほんとだよ。家康さんすんごい強いんだから、黄巾党たちがまるで紙みたいにぶっ飛ばされたんだから」

 

馬超「とんでもないな...」

 

戯士才「....」

 

馬岱からも此処まで言わせる家康に心から驚きながら見る馬超。そんな彼女の横で戯士才は家康をジッと眼を反らすことなく彼の挙動一つ一つを見逃さんと、その全てを瞳で見つめるのであった。

 

戯士才「(益々、貴方から眼を反らすことなど出来ませんよ....家康殿)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は此処まで。


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第七章 唐突の申し出

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなりの無双を行うと思いますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。
ご理解の程、宜しくお願いいたします。

今回短めですのでどうかお許しください。


幽州の都・薊にたどり着いた家康たち一行。そこで彼らは桃香の塾時代の旧友である公孫瓚と出会う。

更に馬岱の従姉妹である西涼の騎馬武者・馬超と馬休とも知り合った。

その翌日には家康のことも公孫瓚に説明することなり、彼の話に噓偽りはないと感じた公孫瓚は家康を信じることにした。

更に馬超は家康が一人でほとんどの黄巾党を倒していることに驚愕していた。そんな彼女の隣では戯士才は家康をただただ見つめている。

 

戯士才「....」

 

馬超「そんな凄いんだなぁ、家康って...」

 

家康「いやいや、ワシはそんな....。だがそれよりも、ワシの連れがもしかしたらこの地の何処かにいると思うのだが....」

 

家康はずっと気掛かりだった、それは自分の家臣にして徳川家重臣――本多忠勝のことである。

自分と同じくあの奇妙な銅鏡の光を浴びて、自分と同じくこの地の何処かに居るはずなのではとずっと考えていた。

出来れば探しだして見つけたいが、自分が今桃香たちの元から離れるわけにはいかない。

 

馬超「そっか....じゃあ、その家康の連れを見つけたら、あんたにも教えてやるよ」

 

家康「おー!馬超殿!ありがとう!」

 

公孫瓚「なら家康の件はそれで良いとして....目下の問題は黄巾党か」

 

公孫瓚は小さく息を吐いて、大きな机の上に地図を広げて見せる。

 

家康「黄巾党...か。そう言えば各地で暴れているようだが、どういう規模なんだ?」

 

公孫瓚「私たちも完全に把握は出来てないんだ。

分かっているのは、神出鬼没なのと....体の一部に黄色い布を巻いているってことくらい。後は....」

 

公孫瓚「首領の名は、大賢良師・張角って言うらしいけど、それも分かってるのは名前だけなんだ」

 

家康「そうか...」

 

家康はふと思う。この世界に来て自分が知る三国志と異なっているのは、自分が知る主要かつ有名な三国志に登場する英傑が女子となっている。

それに張角は三国志の史実にて黄巾の乱の中心人物であるからして、おそらくこの張角すらも女子なのだろうと家康は予想する。

 

馬超「黄巾党は、主に西涼より東.....大陸の北側で活動してる。この地図の全域だな」

 

公孫瓚が机の上に広げた地図は、その北半分の拡大図らしい。

家康にも何とか読める文字で、幽州と、他に五つか六つの州らしき名前が記載されている。

 

家康「参考までに聞きたいのだが、平原から薊までどのくらいなる?」

 

戯士才「平原から薊でしたら、ここから....」

 

家康の問いに戯士才は幽州の国境の向こう...青州の一角を指した後、指を少し上に滑らして....。

 

戯士才「...この辺りです」

 

家康「たったこれだけの距離、か...」

 

馬超「平原なんてすぐそこだからな」

 

家康「そうか...」

 

家康がこの中原の地図を漸く拝めることができたのは僥倖とも言えよう。この地図を見たことで改めてこの大陸が日ノ本よりも広大にして雄大。

この大陸――未来、明と呼ばれしこの土地を、あの覇王・豊臣秀吉はその力で以て支配しようと考えていたのかと、改めてかの覇王のやり方は間違いだったと思える。

 

家康「...」

 

公孫瓚「とりあえず続きいいか?」

 

家康「ん?ああ、すまない」

 

公孫瓚「今回、馬超に頼んで、幽州の北側を回って貰ったんだよな。

結局、どの辺りまで行けたんだ?」

 

馬超「薊を出て....半島の先までは一通りだな」

 

馬超がさらりとなぞった地図は、幽州の北部、丸々全部であった。

 

公孫瓚「さすが西涼の機動力は大したもんだな。

で、残りのこっち側は私たちがやってるから...」

 

そう言って公孫瓚が事もなげに指で囲った場所...幽州の内陸部も、家康たちが歩いた範囲とは比べものにならないくらい広い。

 

公孫瓚「....後は、青州か」

 

桃香「青州って、隣りの州?

白蓮ちゃんって、幽州の州牧じゃないの?」

 

確かに幽州州牧である彼女が何故か、自分の管轄外な青州にまで目を向けるのは不思議だと感じるのは自然であろう。

だがそれには訳ありだとばかりに公孫瓚は困り果てた顔を見せる。

 

公孫瓚「そうなんだけど、青州の州牧が...黄巾の騒ぎで姿を消しちゃってな」

 

桃香「えっ!?青州の州牧さまが!?」

 

公孫瓚「嗚呼。今は徐州州牧の陶謙殿と協力して、出来る所までは管理してるんだよ」

 

家康「州牧が逃げるだと?州一番の責任者が?」

 

馬超「普通なら逃げるわけないんだが、そんな腰抜けが州牧に収まれるのが今の世の中でな.....世も末だよ」

 

家康「そこまで、か...」

 

世も末...正にその言葉通り。人心乱れに乱れ、黄巾のような賊相手に恐れ民や領地を守るべき立場にある州牧ですら己の役目を捨てていなくなるなど、この世の乱れは家康が思っている以上に相当酷い。

 

愛紗「だから平原の警備や役人の手配を公孫瓚殿がしてたのか。

平原が国境の向こうだったから....」

 

馬超「ならそっちの討伐はあたしがやろう」

 

桃香「え?いいんですか?」

 

馬超「母様には陶謙殿にも挨拶に行けって言われてたしな。

ちょうど良いだろう」

 

徐州は青州の更に南に存在する、だが平原よりもかなり遠くに位置する。

その幽州の端から戻ってきて今度は反対側の遥か先に行くとは中々の行動力だと感心する一同。

 

桃香「凄いね....西涼の機動力」

 

馬超「それが自慢だからな」

 

桃香「それで....白蓮ちゃん。

わたしたちにも手伝える事ってあるかな?わたし、白蓮ちゃんをお手伝いしようと思って来たんだよ」

 

公孫瓚「そりゃ助かるよ。だったら、しばらくはこの辺りや北の賊討伐を手伝ってもらって良いか?

黄巾党も、小さい所は中々潰しきれなくてな」

 

桃香「わかったよ。ご主人様もそれでいい?」

 

家康「ああ。勿論だ」

 

これに家康に拒否する理由などありはしない。

快く頷くと、公孫瓚も満足そうな表情をしてくれた。

 

公孫瓚「なら、兵は....あ!そうだ!戯士才が残るって言ってたな、護衛に付けてた隊もそのまま付けるつもりではあるんだが。

連中と合わせて、それで足りそうか?」

 

桃香「え!?戯士才さんが!?」

 

戯士才「はい」

 

意外な話に桃香たちは驚愕する中、家康はどうして彼女がどんな意図で残るか気になった。

 

家康「戯士才殿、なぜ此処に残ろうと...?」

 

戯士才「本来ここには旅の途中に寄っただけででした。

今回の平原の旅が終わったら、もともと出るつもりだったのです」

 

家康「では何故此処に残ろうと...?」

 

彼女が此処に残るとは思わなかった。何せ戯士才は何れ主となる人物の下へ赴き、その人物の軍師となって桃香――劉備玄徳の理想を阻む側としてその才を振るう。

 

公孫瓚「私としては此処に残ってくれるのは正直助かるよ」

 

有力者として優秀な人物が周りに居てくれるのは嬉しいのだろう。戯士才は役人としても優秀であるのは家康たちも分かっていたし、先の砦攻略においても家康が称賛するほどに軍略も中々な人物である。

家康としては三国志を知っているので戯士才が本来どんな人物なのかというのは分かっている。

 

戯士才「....公孫瓚殿。申し訳ございませんが、私が此処に残るのは公孫瓚殿に仕官するわけではありませんよ」

 

公孫瓚「え?!(そうなのか!?てっきり私の下で働くのかと(´;ω;`)ウッ…)」

 

彼女としては此処に残って自分の下で働いて欲しかったようだったが、どうやら望みが断たれたようである。

すると戯士才は家康に振り向き、真っ直ぐ彼を見据えて.....

 

 

 

戯士才「....家康殿、どうか私を....貴方の下で軍師として働かせていただけませんか?」

 

桃香「え!?」

 

公孫瓚「なんだと!?」

 

愛紗「なんと!?」

 

鈴々「にゃにゃ!?」

 

 

 

家康「っ!」

 

 

言われた本人も突然のことに驚愕するが、対し戯士才は家康に向かって....

 

 

戯士才「貴方に是非ともお仕えしたい....この気持ち、これ以上抑えることが出来ません。どうか...お聞き届けください」

 

家康「....」

 

 

 

 

 




今回はここまで。短めですが、どうかお許しください。


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第八章 加わる智者

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなりの無双を行うと思いますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。
ご理解の程、宜しくお願いいたします。


公孫瓚のもとにたどり着いた家康たち一行はそこで西涼の馬超と出会い知り合う。

公孫瓚から幽州でも黄巾党に手古摺ってるよう話を聞き、彼らは一先ず幽州に留まり彼女に助力することとなった。

 

そんな中、戯士才はいきなり思わぬ発言を口にする。

 

戯士才「....家康殿、どうか私を....貴方の下で軍師として働かせていただけませんか?」

 

桃香「え!?」

 

公孫瓚「なんだと!?」

 

愛紗「なんと!?」

 

鈴々「にゃにゃ!?」

 

 

 

家康「っ!」

 

 

言われた本人も突然のことに驚愕するが、対し戯士才は家康に向かって....

 

 

戯士才「貴方に是非ともお仕えしたい....この気持ち、これ以上抑えることが出来ません。どうか...お聞き届けください」

 

家康「....」

 

戯士才から突如仕官したいと請われた家康は無言で彼女を見つめる。対する戯士才の瞳は一切揺らいでいない、家康の眼を一切反らさず見つめている。

家康としてはこの話、正直受け入れたいと思うーーが、自分の今の状況は日の本に居た時と違って根なし草で家臣を新しく受け入れてもそれに見合うだけの報酬で報いることは出来ないのが現状。

 

家康「....戯士才殿」

 

戯士才「はい」

 

家康「その仕官の申し出、ワシは嬉しく思うーーだが」

 

戯士才「...家臣に迎えても報酬を満足に与えることが出来ないと思っていますか?」

 

家康「え?...ああ。今のワシは根なし草な状態だ」

 

戯士才「それは見てて分かりました...ですが、私はそのような物よりも――自分の才を使ってくださり、そしてそれをもって大事を成してくれる主を欲しているのです」

 

家康「それは...」

 

家康はそれが何なのか気になり尋ねると、戯士才は真剣な顔で口を開く。

 

戯士才「...私は、いえ――今平原で家康殿たちが居たあの街で善政しているであろう、程立と共にある人物の下に仕官しようか思案していました」

 

劉備「ある人物...?」

戯士才「陳留にいる、曹操殿です」

家康「(やはり、曹操ーーということは戯士才、彼女の本来の名は...)」

 

ここまでくると彼女――戯士才の本来の名前が分かってきた。しかし敢えて家康はそれを口にはしない、いずれ彼女本人から語られると考えているからである。

家康がそう考えている最中愛紗が、戯士才に対して家康に仕える理由を尋ねる。

 

愛紗「戯士才、何故ご主人様に仕えたいと?」

 

戯士才「家康殿には私が求める主としての覇気といいますか、今まで見てきた人物とは違う途方もない力を感じました」

 

桃香「力...」

 

戯士才「はい。以前に言いましたね?力なき思想には何の意味はない...っと」

 

桃香「...はい」

 

戯士才「口にするだけの理想など、それを体現するに必要な力と覚悟がなくば意味をなしません。

しかし家康殿はそれすら体現出来うる器と...力をお持ちです。

私は、それに感化され、そして出来ればその大器を持つ家康殿に仕えお支えしたいのです」

 

彼女は家康が大きなことを成しとげたと見抜いている。それが徳川家康――天下人として無意識に出してしまっていた覇気を武将でもない彼女によって暴かれてしまったのかと思ってしまう。

家康は力をという物を本来全てを是とするわけではない、ただ天下を...日ノ本の争乱を鎮め絆による平和には力が必要だったと結論に至ったのだ。

故に力を受け入れ、天下に名乗りにでた。全ては日ノ本に絆による天下を築かんが為。

そしてこの地でも争乱を鎮める為、桃香たちの為にも絆の世を作らんがために尽力しようとしている彼は再び力を振るう覚悟している。

それを戯士才から見ると彼女の望むモノに見えていたのだろう。

 

戯士才「私はですね家康殿。貴方から与えられる褒美よりも、貴方が成そうする大事を支える知者となること...その喜びが何よりの褒美になると思っています」

 

家康「戯士才殿...」

 

戯士才「どうか、お願いします。家康殿」

 

家康「....戯士才殿。お主にはワシよりももっと相応しい主に出会えるはずだ。それこそ曹操殿に...」

 

戯士才は頭を横に振って否定するように口を挟む。

 

戯士才「....いえ、私は決めました。家康殿に是非お仕えしたいのです」

 

家康「しかし....」

 

困る家康だが、桃香これに....

 

 

桃香「....ご主人様、戯士才さんのお願いを聞いてあげて」

 

家康「桃香」

 

桃香「戯士才さんはご主人様を望んでる。それってご主人様が凄いってことだよ!」

 

っと桃香は戯士才の加入に賛成のようで...

 

鈴々「鈴々も!おねえちゃんに賛成!」

 

愛紗「鈴々もか!」

 

鈴々「だって戯士才のおねえちゃんは頭いいんでしょ?だったら難しいこととか、何とかしてくれそうだし、きっとお兄ちゃんも助かるのだ!」

 

鈴々にしては珍しく最もらしいことを口にする。愛紗や桃香は自分たちの末の義妹が、こんなことを言うことに驚きを隠せない。

純粋さからきた無自覚に言っているのかもしれないが、しかし子供の言うことは時に真理でもある。

戯士才が加入すればそれは即ち軍師として優秀な者が加わることになる。

 

家康「....」

 

戯士才「家康殿...」

 

家康は目を閉じて考える。この世界は自分が知る三国志の物とはもしかしたら違うのかもしれない、現に本来男であるはずの三国志の英傑たちは皆女子である。

なら彼女らの心象も変わって本来尽くす陣営も変わることもあるのでは?っと。

それに戯士才もこうして自分に仕えると言ってくれている。

これも偶然に築かれた絆であろうか、ならばと家康は....

 

家康「.....分かった」

 

戯士才「家康殿!」

 

家康「...ただし。戯士才殿....お主の本来の名を聞かせてほしい」

 

戯士才「っ!?」

 

桃香「本来の名?」

 

家康「ああ」

 

戯士才「....どうして、私のこの名が偽名であると...?」

 

戯士才からしてみれば自分が彼らに偽名であると告げたことはないが、家康に言われて気まずそうに顔を歪ませる。

 

家康「....単にワシの...勘だ」

 

戯士才「勘、ですか....家康殿には隠しごとはむり、ということですかね」

 

家康「そうでもないさ。ワシとて全てが全て、分かるわけではない」

 

戯士才「そう、ですか...はぁ」

 

戯士才は溜息を吐きながらも意を決し、家康を見据える。

 

戯士才→郭嘉「私の本来名は、郭嘉。字は奉孝...そして、真名は....」

 

彼女――郭嘉が真名までも口にしようとしたが、それを家康は手で制して止める。いきなりのことに何故?と思う郭嘉や桃香たち。

しかし家康は....

 

家康「...郭嘉。真名を教えるのは、これからのワシの働きをしっかりと見て判断してくれ。そして...」

 

郭嘉「そして...?」

 

家康「その時、ワシにまだ仕えたいと気持ちを抱いてくれているその時にこそ、真名を教えてほしい」

 

郭嘉「家康殿....」

 

家康「頼む」

 

家康は彼女を強く、そしてしっかりと見つめてそう告げた。彼女も家康の想いを汲んだのか、首を縦に振り受け入れてくれた。

 

郭嘉「...分かりました。ですが、貴方様の軍師として働きたいと言う気持ち...決して揺らぎません」

 

家康「そうか」

 

こうして仮という形ではあるが、郭嘉が軍師として家康の仲間になった。

 

 

 

 

 




今回はここまで。今回も駄文で大変申し訳ございません。


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第九章 出兵

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。

今回は長文ではありますが、よろしくお願いいたします。


イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


青州・斎

 

深夜、とある陣地にて何やら怪しげに動く三人の少女たち。一人は眼鏡をかけた紫色の髪の娘、水色のサイドテールの娘、そして桃色の黄色のリボンをつけたロングヘアの娘、彼女らは特徴的且つ可愛いらしい黄色の衣装を着込んでいる。

 

旅芸人の娘C「.....」

 

眼鏡をかけた娘が陣中の辺りを警戒しながら見渡している。辺りに自分たちしか居ないと分かったのか、彼女はあとの二人に合図する。

 

旅芸人の娘C「こっちよ、姉さんたち」

 

旅芸人の娘A「人和ちゃん、本当に大丈夫なの?」

 

桃色髪の娘は不安げにしながら問いかける。

 

旅芸人の娘C「大丈夫よ、天和姉さん。このまえ仕掛けてきた馬超って人のおかげで、警備もかなり手薄になってるし....逃げるなら、今しかないわ」

 

旅芸人の娘B「そっか。これで、ちぃたちも晴れて自由の身なのね...!」

 

などと嬉しそうにする水色髪の娘、何やら窮屈な思いをしていた様子。その為か深夜の陣地に彼女の声が少し響いてしまう。

 

旅芸人の娘C「ちぃ姉さん、声が大きい。

....気づかれたらおしまいなんだから、急いで」

 

旅芸人の娘B「はいはい」

 

旅芸人の娘C「はいは一回」

 

旅芸人の娘B「はーい」

 

旅芸人の娘A「人和ちゃんも十分声、おっきいよぅ....」

 

などと言うやり取りの中、三人の娘...張角・張宝・張梁...真名を天和・地和・人和の張三姉妹は、夜の闇の中に消えていくのだった。

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

馬超「行け!西涼の勇者たちよ!

平原の賊共に、西涼兵の勇ましさと蹄の響き、徹底的に刻みこんでやれ!」

 

西涼兵たち「「「「うおおおおおおーっ!!」」」」

 

馬超「総員、突撃ぃいいいっ!!!」

 

馬超の号令により西涼騎馬兵らは賊徒の群れに対して勢い強い突撃を敢行、その様は正に疾風の如く速く、その勢いは怒涛の如く強かった。

敵は西涼の攻撃に怯み、反撃しようにも馬超ら西涼兵の機動力に追いつけず一方的にやられていく。

 

その光景を随行部隊として行動を共にしていた愛紗と雷々が見て感歎の声を漏らす。

 

雷々「....何度見てもかっこいいねー。馬超さんの突撃」

 

愛紗「ああ。槍働きで負けるとは思わんが.....あの騎馬での戦いぶりは、見事過ぎて参考にならん」

 

愛紗がそう口にする中、馬超は見事な騎馬術にて己の愛馬を巧に操りながら、得意の槍にて黄巾の雑兵を容赦なく間断ない攻めで次々に討ち取っていく。

 

愛紗「....っと、いつまでも見とれているわけにもいかんか。

雷々、我々も出るぞ!」

 

雷々「はーい!」

 

愛紗「歩兵部隊も前進!

西涼の猛者たちが蹴散らした賊どもに、トドメを刺してやれ!」

 

「「「「「うおおおおおおーっ!!」」」」

 

愛紗「攻撃開始ぃっ!!」

 

愛紗の号令により歩兵部隊が前進。愛紗と雷々が二つ部隊を指揮しながら騎馬隊に翻弄されている賊たちの左右側面から挟み込むように攻める。

その様子を家康と彼の軍師となった郭嘉が見ている。

 

 

家康「よし!上手くいったな」

 

郭嘉「はい。家康様」

 

今回黄巾党が現れたので、討伐の為に家康は馬超と協力してその遠征に来ていた。

此度の遠征には馬超・馬岱・馬休。愛紗と雷々、そして軍師として郭嘉と共に来ていた。

 

家康「ここまでくれば、ワシが出張ることはない、か」

 

郭嘉「ええ。馬超殿たち西涼の騎馬隊や愛紗さんたちが上手く動いてくれてます....それにこの程度相手に家康様自ら出張ることもないでしょう」

 

郭嘉...真名は稟。家康には真名を告げることを止められたが、桃香たちとは真名を預け合った。

家康から「これから共にする仲間となるのだから、互いに真名を預け合っても良いだろう」と後押しされたが故である。

因みに稟との間に不和があった雷々と電々とは、家康が仲立ちしてくれたお陰で和解している。

 

 

家康「だがワシ自身出なければ不味い時もあるだろう。そうなったらワシは進んで出て拳を振ろう」

 

郭嘉→稟「家康様...」

 

そう語りながら戦場を見据え両手を組む家康の横顔を見つめる稟。その瞳は先ほどの軍師として目ではなく何時の間にか自分でも気づかぬ間に、熱いときめくようなそれになってしまっている。

一方戦人として歴戦の将としての面構えになっている家康は、そんな乙女な気持ちで見つめてくる稟には気づかず、当の家康自身は戦いの成り行きを見守っているのだった....。

 

 

そして結果、戦いは家康たちの快勝で終わるのだった。馬超たちの協力もあったとはいえ、家康が前線に出ることなく終わったのは今回が初である。

彼らはそのまま帰路に着く。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

桃香「ご主人様...まだかなぁ」

 

一方、桃香は嘗て幽州に向かう前の青州・平原の町――家康と初めて出会ったあの町にいる。

この町に戻ってきた彼女は現在役人として地位に就き、この町の完全な復興や発展の為にと勉強しながら励んでいる。

今回家康は賊討伐の為に、一人で頑張っているが居る時は家康と共に稟の助力もあって何とかやっている。

因みに電々と鈴々は家康から町の守護と、並びに畑仕事や訓練などに勤めてほしいと言われているので平原の町に桃香共々留守番である。

 

だが何故彼女が平原の町に戻り、こうして役人の仕事に就いたのかというと....

 

 

 

【回想】幽州・薊

 

桃香「....程立さんが役人の仕事を辞める?」

 

それは、いつものように薊周辺の賊を退治して、報告に戻った時のことであった。

突如平原の町にて、役人の仕事に就いていた稟の友人である程立から役人の仕事を辞するという内容だった。

因みにだが稟は既に程立に、自分が家康の下に仕えると報告は済ましているようで程立もこれを了承している。

 

家康「辞めると言う事は、まだ出発はしていないわけだな公孫瓚殿。何か問題でもあったのか?」

 

公孫瓚「実は、程立を紹介してくれた水鏡先生って方が荊州にお住まいなんだが、どうも病気らしくてな。

一度、暇が欲しいって事になったんだよ」

 

桃香「先生が病気に...」

 

医療や交通も戦国時代に比べて発達していないこの時代、病気の連絡というのは重いものがある。

特に長距離の相手となると、連絡の時点で手遅れと言うことも少なくない。

もっと言えば、見舞いに行って戻って来られる保証もない。

故に遠方に見舞いや看病に行くことは、このように仕事を辞める覚悟で向かうこともそう珍しくはないのだ。

 

桃香「ねぇ....白蓮ちゃん。わたしたちに、何かできることはないかな?」

 

公孫瓚「....ふむ」

 

桃香「水鏡先生が病気だなんて、他人事とは思えないし....。あの町の人なら、わたしも少しだけ知ってるから、きっと力になれると思うんだ」

 

そう語る桃香の切実で悲しげである。

 

桃香「もし風鈴先生が病気だっていう連絡が届いたら、わたしだって凄く心配だもん」

 

公孫瓚「なるほどなぁ。....程立の言った通りか」

 

家康「ん?」

 

公孫瓚「手紙には、桃香ならきっとそう言うだろうから、この後の町の事を任せたいって書いてあってな」

 

桃香「それって....えっ!?でも私、お役人の仕事なんてしたことないよ!?」

 

公孫瓚「そうは言うけど、風鈴先生の所じゃ学問の成績は良かっただろ?」

 

桃香「それは...」

 

公孫瓚「あの頃はみんな、桃香が一番に役人になるって思ってたんだぞ?」

 

桃香「それはそうかもだけど....」

 

いきなりのことに戸惑う桃香ではあるが、公孫瓚からあることを教えてくれた。

 

公孫瓚「あの町の人たちも、桃香が役人なって欲しいって言ってくれてるんだ」

 

桃香「町の人たちが...」

 

桃香がそう口にした後、何か考えるように少しだけ目を閉じて....

 

桃香「....わかったよ」

 

彼女は笑みを浮かべて承諾することに。何より他人から求められれば彼女は断ることはせず、純粋に助けになりたいと思いながらそれを成してきた...それが彼女の人として美しき姿である。

 

桃香「だからね、白蓮ちゃん。

程立さんには、町の事は心配しないで、すぐに先生の所に出発してってお返事して欲しいんだけど....」

 

公孫瓚「ああ。桃香ならそう言うだろうと思って、もう出発するように使いは出してあるんだ」

 

 

【回想終了】

 

 

っと、そんなことがあり、桃香は家康たちと伴って平原に戻ってきたというわけと相成った。

 

桃香「うぅ~、ご主人様や稟さんが居ないとこうまで大変なんてぇ~....」

 

役人の仕事は比べるものにならないくらい多忙であった。桃香は毎日大騒ぎしながら過ごして頑張っている。

家康も見かねて稟や愛紗からこの時代での言語や字を学びながら、桃香の仕事の手伝いを積極的にしてくれていた。

稟も前述した通り助力してくれ、愛紗も訓練など合間に手伝ってくれている。

 

桃香「ご主人様って凄い...字が全く分からなかったのに、慣れるのが早くて....」

 

桃香は家康のことを考えていた。最初こっちの世界での字に対して当初苦戦していた家康ではあったが、愛紗や稟のおかげで直ぐに何とかなり、今では桃香の仕事の手伝いなどしてくれている。

 

桃香「ご主人様って...天の世界じゃ一体どんな人だったのかなぁ...」

 

彼女はふと思った。自分は未だ家康のことをまだ何も知らないのでは?と。

頼りなる年上の男性...そして。

 

桃香「ご主人様って...頼りなるし、それに.....」

 

何やら彼女の顔が赤くなっている。だが直ぐに自身の両頬をパンっと叩き気合いを入れる。

 

桃香「よし!!ご主人様たちが帰って来る前に頑張ってやろう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桃香「はふぅ....疲れたぁ」

 

そして、その日の面会と執務を終えた桃香は、机にぐったりと突っ伏していた。多忙な一日が終わり既に陽が沈み始めている最中である。

っと執務室の扉が開き、家康・稟・馬超・愛紗の四名が入ってきた。

 

家康「桃香、今戻った」

 

桃香「ご主人様!?ふぇっ!?」

 

馬超「なんだ、随分疲れてみたいだな」

 

稟「お疲れ様です、桃香さん」

 

愛紗「桃香さま....だらしないですよ」

 

桃香「あ、あぅぅ....恥ずかしい。鈴々ちゃんにご主人様が帰ってきたら、直ぐに知らせにきてって言ったのに....」

 

家康「ん?鈴々だったら、さっきまで昼寝していたぞ?」

 

桃香「そ、そんなぁ...」

 

家康「あー、それとだな...桃香」

 

桃香「どうしたの?ご主人様」

 

家康が苦笑交じりで何か言おうとしている。気になった桃香が問いかけたのだが、その理由が直ぐに分かった。

 

公孫瓚「わたしも来てるんだが」

 

突然幽州にいるはずの公孫瓚がそこにいた。

 

桃香「白蓮ちゃん!?なんで!?」

 

公孫瓚「いやなに、桃香がちゃんと仕事出来てるか気になってな。それに馬超が徐州や青州から戻って、この平原で家康たちと一緒に賊の討伐していたことも聞いたぞ」

 

徐州と青州を回った馬超が、旅の終わりに平原に寄ってくれたのはつい先日のこと。

更に愛紗たちに騎兵の運用を教えてくれる話になって、近辺の賊討伐を手伝ってくれることにもなったのだ。

 

馬超「ま、机の仕事が面倒なのは分かるけどな。

あたしも鶸に任せっきりだよ」

 

桃香「ふわぁ....馬超さんにも、苦手なことってあるんだ。

あ!そうだ!今回の賊討伐はどうだったの?」

 

馬超「ああ。言葉の訛りからしても、冀州から流れてきた連中だろうな。

数はそれなりにいたけど、関羽たちもいたし、楽させてもらったよ」

 

愛紗「こちらこそ、西涼の兵の勇猛さと機動力、恐れ入りました」

 

家康「今回ワシは活躍することはなかった」

 

桃香「え!?そうなの?」

 

意外とばかりに驚きを隠せない桃香。この平原の賊討伐には欠かさず家康の活躍が大きく、此度も彼がやってくれたのも大きいと思っていた。

 

稟「毎度毎度家康様が出張る必要はないのです」

 

愛紗「それに関しては同意だな。ご主人様は本来は大将です...その自覚をもっと持ってください」

 

家康「あ、ああ。そうだな、はは」

 

苦笑いで答える家康の横で公孫瓚が何か考える素振りを見せる。

 

公孫瓚「ふむ....冀州か」

 

冀州...青州の西端にある平原の更に西...内陸部にある州である。

 

馬超「あそこの民も重税に喘いでるって言うし、まぁそれでも州牧がいるぶん、青州よりはマシらしいけど」

 

家康「やはりここ青州はそんなに酷いのだな?」

 

馬超「徐州にいく途中に通ったけど、今まで見てきた中じゃ一番酷かったな。退治した賊も、またすぐに湧いて出ると思う」

 

家康「...そうか」

 

公孫瓚「馬超....後で、詳しく話を聞かせてもらえるか?」

 

公孫瓚からしてみれば態々この平原まで出てきたのは、この話を直に聞きたかったからであろう。

 

馬超「ああ。母様が、今のうちに色んな所を見て回れって言った理由がよくわかったよ」

 

納得したかのように語る馬超。一方桃香は真剣な顔で公孫瓚を見つめて口を開いた。

 

桃香「....白蓮ちゃん」

 

彼女の顔――現状の青州一帯の状況を看過できないと公孫瓚に力を貸してほしいと、桃香は彼女に見つめている。

しかし公孫瓚はこれに困ったような顔で語る。

 

公孫瓚「何とかしたいの山々なんだが、幽州もそこまで余裕があるわけじゃないしな」

桃香「そうなの?」

公孫瓚「北方もまたキナ臭くなってるし。正直、州の接してる辺りの面倒を見るだけで精一杯だよ」

 

家康「幽州でもか....」

 

州牧が管理していても現状の治安がそんなに良くはないというのは、酷い以上の問題だと感じる家康。

日ノ本でもここまで酷くはなかった。しかしここではその酷さが罷り通っているのに、険しい顔になってしまう。

 

公孫瓚「いち州牧に出来ることなんて、たかが知れてるってことだよ。悔しいけどな」

 

馬超「ま、公孫瓚も劉備も頑張ってると思うぜ。

それは、大陸を回ったあたしが保証するさ」

 

桃香「ありがとう。でも、みんなが助けてくれるおかげだよ」

 

馬超の称賛に桃香は嬉々として微笑むが謙遜を見せる。彼女からしてみれば、この平原の町でここまで役人の仕事をし続けるのは周りの助けとあるからこそと思っている。

 

馬超「それも人徳ってやつだよ。もっと自信を持ちなって」

 

家康「馬超の言う通りだ、桃香」

 

桃香「ご主人様...」

 

家康「桃香が頑張れているからこそ、この町の民は以前に比べて笑顔になっているではないか。

ワシはそう思っている...それに桃香も中々に仕事が慣れてきたじゃないか」

 

桃香「ご主人様....ありがとう」

 

愛紗「....むぅ」

 

稟「.....」

 

家康に言われると先ほどの馬超の称賛よりも嬉しくなり、頬を赤くなってしまう。

そんな家康に褒められる桃香が羨ましいと内心抱く愛紗と稟は、家康に物欲しそうな目でさり気なく送っていた。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

それから数日が過ぎた頃....。

 

桃香「.....斉国に黄巾党が?」

 

それは馬超たちが平原を後にしたことであった。いつものように賊討伐の報告....とはいつもと少し様子が違っていたのだ。

その報告をしてくれたのは一人の派手な露出、お腹や胸元が開いた服装をした褐色の美女――太史慈、字は子義。

彼女は自分が仕えている県令の武官なのだが、現在彼女が属する県令の城が黄巾の連中に攻撃を受けている模様だ。

敵の包囲網を突破し、平原相を務めていた劉備である桃香に救援要請の使者として赴いた。

斉国とは桃香たちがいる平原と同じく青州内部にある領土のひとつのことである。

 

太史慈「うん。私たちも想像もしてなかった規模の大軍でね、県令の城がすっかり囲まれちゃって....。

助けを呼ばなきゃってことで、私が連中の包囲を抜けて、何とかここまで来たんだけどさ」

 

公孫瓚「太史慈と言ったか。

県令の書状は本物のようだが....他の兵は?」

 

太史慈「最初から連れてきてないよ。

私一人で抜ける方が楽だったからね」

 

家康「敵陣を単身突破とは....また、無茶をする」

 

愛紗「....ご主人様」

 

家康がそう口に漏らすと、愛紗が咎めるようなジト目で見つめる。

 

家康「ん?」

 

愛紗「ご自身もよく単身で行かれますよね...?」

 

稟「ええ。よぉく、です」

 

家康「あ...あー、ははは」

 

稟も便乗して家康をジト目で見る。二人からの視線に何も言い訳出来ないと苦笑して見せる。

家康がよく率先し先導して賊討伐に乗り出して、彼の実力による討伐が多い。

婆沙羅な彼の戦ぶりには兵士たちは興奮し彼に続くように賊を討つが、しかし討伐において家康は大将を勤めているので、二人は何度も諌めること多々ある。

 

家康「...だが。青州の斉国は、平原の隣の隣だろ?遠くはないか?」

 

凛「はい、遠いです。更に向こうもかなり治安が荒れてるとも聞きます」

 

愛紗「しかし、どうして我々に?

斉国に属する県令なら....青州の州牧はいないにしても、斉の相に助けを求めるのが筋だろう」

 

この世界の県とは、日本や世界などの県と違って群や国の更に下の単位になる。

その県をまとめるのが国や群で、それをまとめるのが州。

州を治めるのが州牧で、国を治めるのが相であるのだ。

 

家康「(しかし、治めるべき者を流し、二つも向こうの平原の駆け出し役人に助けを求めるというのは....順番がおかしい)」

 

家康が疑問を抱く中、太史慈は落ち込むように話す。

 

太史慈「そりゃ、出来るならそうしてるけどね。

斉の相がダメでも、個人的に知り合いはいるし」

 

だが直ぐに彼女の目つきが鋭くなる。

 

太史慈「けど...知ってるでしょ?

今の青州は、どこも他を助けられる状況じゃないって」

 

桃香「.....」

 

彼女の言葉に桃香は落ち込む。馬超からも、公孫瓚からも聞かされていた。

州牧が今なお不在の青州は、何処も酷い有様であるのだ。

 

太史慈「で、いまこの辺りで一番強くて頼りになるのが、貴方....平原の劉玄徳って聞いたんだけど....」

 

太史慈はそこで言葉を止めると、席についた桃香の両脇――公孫瓚と愛紗を値踏みするように、何度か視線を行き来させている。

 

太史慈「.....ホントはどっちが劉玄徳?」

 

桃香「はい?」

 

太史慈「私みたいな怪しい使者を前に、警戒するのはわかるけどね。

面会に堂々と影武者を出すのは、流石に失礼じゃない?

書状が本物だってことは確認したよね?」

 

桃香「あ、あはは....」

 

家康「こ、これは....」

 

どうやら太史慈は目の前にいる桃香が、余所者を警戒して用意された影武者だと思われている模様である。

それだけまだ彼女が役人としてまだまだだと言うことなのだろう。

 

公孫瓚「桃香はまだまだ風格が足りないしなぁ」

 

太史慈「ってことは、そっちの髪が長いの、あんたが劉玄徳か!」

 

公孫瓚「私じゃないのかよ!この流れだと私だろ!」

 

などとボケとツッコミが流れ良くでる始末。

 

太史慈「....いや、あんたより髪が長いのの方が強そうだと思って」

 

公孫瓚「うぅ.....これでも、桃香よりだいぶ偉いんだぞ、私....」

 

 

そんな会話の状況を壁側で立って見ている家康と稟は、何とも言えないとばかりに見ている。

 

家康「これは、なんと....」

 

稟「正直、呆れますね」

 

二人が呟く中、愛紗も呆れるように太史慈に対して返答する。

 

愛紗「失礼な奴だな。私は桃香さま....劉玄徳ではない」

 

太史慈「え?そうなの?なら....」

 

太史慈の視線が家康に向けられる。

 

太史慈「....そっちのお兄さん?確かにお兄さん、凄い強そうだし、貴方が....」

 

家康「いや、ワシは劉玄徳ではない。本物の劉玄徳は、ちゃんとお主の目の前に座っている彼女だ」

 

太史慈「え?」

 

家康に言われ太史慈は桃香を視線を戻すと、目の前にいる桃香は苦笑交じえて申し訳なさげにしながら....。

 

桃香「すみません、影武者とかじゃなくて、私が本物の劉備です」

 

太史慈「え........っ」

 

間の抜けた声を漏らす太史慈。

 

桃香「で、こちらは、ちょうどわたしたちの様子を見に来てくれた、幽州州牧の公孫瓚さん」

 

公孫瓚「幽州州牧の公孫瓚だ。よろしく」

 

太史慈「あ....え、州牧....?なんで幽州州牧がこんな所に」

 

公孫瓚「桃香とは旧知の仲でな。今日は仕事ぶりを見に来ていたんだ」

 

そしてその最中に最初の面会相手が、太史慈だったわけだ。太史慈は完全に無礼を働いたと焦る表情を浮かべている。

 

太史慈「....そう、なんだ。なんていうか.....全体的に、ごめん」

 

使者でありながら、助けを求める相手に対して無礼を働いた己を恥じて落ち込む太史慈。

とはいえ、家康から見ても根は悪い人物ではないと感じる。

太史慈は桃香が恐縮するくらい、深々と頭を下げる。

 

桃香「あ、あのっ。強くないのは当たってますし、そんなに気にしないでください....頭をあげて」

 

愛紗「全く。なんと無礼な奴だ」

 

公孫瓚「野に下ってる連中なんて礼儀作法なんてこんなもんだよ。

お前たちも似たようなもんだったろ?腹を立てるだけ損だぞ」

 

愛紗「わ、わたしはここまで無法では....!!」

 

稟「鈴々さんだってこんもんじゃないでしょ?

 

愛紗「......ぐぬぬ」

 

公孫瓚と稟に言われ最早ぐうの音もでない愛紗。家康はそんな中、桃香にどうすべきか問いかける。

 

家康「....で、桃香、どうする?」

 

彼は太史慈の要請を聞き入れるのか知りたいのだ。

 

家康「城を攻めるほどの部隊が相手だろう。距離もあるし、かなりの遠征となるぞ」

 

凛「確かに。それに平原の中なら、移動するにも馬でせいぜい数日。現れる賊の規模も家康さまや、愛紗さんと馬超殿で制圧出来るくらいです」

 

実際は家康の異常な戦闘力でほとんど蹴散らし、そこを愛紗の率いる部隊で殲滅してる。

しかし家康たちの町も城代わりに屋敷があるぐらいの小さな町だ、襲ってきたのは賊の一軍程度のもある。

城攻めが出来る規模の黄巾党となると、正直今の彼らの率いる戦力では難しい。

 

愛紗「そもそも....その城は、まだ保ちそうか?」

 

太史慈「腕に覚えのある食客もかなりいるし、兵や糧食も揃ってるから、しばらくは大丈夫だと思うけどね」

 

桃香「食客がかなりって.....その県令さん、お金持ちなんですね」

 

太史慈「.....ああ、まあね」

 

太史慈は言葉を濁した辺り、向こうにも色々と事情がある様子。こういう時代、金銭がある理由は大体想像がつく。

 

公孫瓚「斉への遠征って事なら、私が引き受けてもいいが....今回は戦うつもりじゃなかったから、大して兵を連れてきてないんだよなぁ」

 

桃香「でも、これから幽州に戻って準備してたら、もっと時間がかかるでしょ?

だったら、わたしたちが兵を出した方が良いとおもう」

 

稟「ではこんなのはどうでしょうか。伯珪殿の兵を桃香さんの部隊に編入して合同軍といことにするのです」

 

軍師として案を飛ばす稟。それに公孫瓚は納得する。

 

公孫瓚「うん、それならいいか」

 

家康「糧食や物資は、距離をざっくりと見積もって用意してもらおう。

なるべく早くでるべきだ」

 

桃香「うん。お願い、ご主人様」

 

太史慈「....えええ」

 

家康たちのやり取りを眺めてた太史慈が漏らしたのは、さっきの桃香を間違えた時以上に引き気味の声であった。

 

公孫瓚「どうした?」

 

太史慈「いや、もう出兵の話をしてるからさ....」

 

公孫瓚「そりゃするだろ」

 

桃香「するよねえ?」

 

家康「まぁな」

 

揃って首を傾ける桃香たちと同じで、家康も太史慈が引いてる意味が分からなかった。

使者の前で軍事関係の話をすべきではなかったかと思ってしまうが、しかし太史慈は助けを求めて来た側なのだ、具体的な数に触れていないので情報というほどではないはずと考える。

 

太史慈「えーっと....そうじゃなくってさ」

 

桃香「でも、早く行かないとお城も落とされちゃうかもしれないし、急いだほうがいいでしょ?」

 

太史慈「......ああ、うん。まぁ、助かるからいいけど」

 

家康「?」

 

 

 

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一方、その同じく青州に存在する斉国の城にて一人の食客が屋根から黄巾党の群れを見下ろしていた。

 

食客「......ふっ。賊め、今日も動きだしたか。懲りん奴らだ。だが使者が平原に向かっていったのだ、平原の相である劉玄徳に会っているであろう...それに確か、拳で賊を打ち払う天の御使いと言われる男もいると聞くしな」

 

その食客の女....胸上部を露出し煽情的な格好、腿も晒し丈の短い着物、肩周りと脚は洋服のようにも見える。

そんな彼女に話しかける者が....。

 

 

天和「あのー!」

 

食客「....」

 

呼びかけるが食客の女には聞こえてないのだろうか、返答がない。

 

地和「....高い所だから聞こえないんじゃない?」

 

天和「そっか。おーい、おーい! そこの、屋根の上の人ー!」

 

食客「そう声を張らずともちゃんと聞こえている。何だ、娘!」

 

天和「あの、お食事を持って来たんですけど、いかがですか?」

 

食客「今は結構!それより....」

 

食客の女は食事を持ってきてくれた少女たち...天和と地和の二人を見つめる。

天和と地和――張角と張宝、そしてこの場に居ない張梁。この姉妹たちは先の夜に黄巾党の陣地から忍ぶように闇に紛れて逃げ出し、青州の斉国の城に正体がバレず入ることができた。

 

天和「.....ね、ねぇ、ちーちゃん。

なんであの人、おねえちゃんたちのこと、ずっと見つめてるのかな?」

 

地和「わ、わかんないわよ。

.....まさか、ちぃたちのこと....!」

 

食客「.....おぬしら、旅の芸人か?」

 

天和「あ....はい。そうですけど!」

 

食客「そうか...。ならば、戻って中の連中に伝えよ。

賊共が動きだしたとな」

 

二人に賊の動きを知らせるよう伝える食客。彼女の視界に映る黄巾党共の動きに、確かに変化があった。

どうやら再び攻め込む為の準備に入る模様。

 

天和「ふえ?わかりました。あなたは....?」

 

彼女がそう尋ねると食客の女は傍に置かれた龍の意匠を模った槍を手にし、賊を見据えながら答えた。

 

食客「私は連中の足止めに行ってくる!.....はぁっ!」

 

食客の女は槍を構え、高所から飛び降りる。その行為に二人は驚愕する。

 

天和「えー!?」

 

地和「ちょっと、あんな高い所から飛び降りるなんて.....何考えてるのよ!!」

 

しかし食客の女は軽々と着地して、すぐさま黄巾党に向かっていく。

 

地和「うわ.....もうあんな所を走ってる。信じられない....」

 

天和「おねえちゃん、あんな所から落ちたら、絶対死んじゃうよ」

 

地和「普通は死ぬってば。.....それより、賊が来たって伝えてきましょ!

急ぐわよ!姉さん!」

 

天和「あーっ、ちーちゃん、待ってよーっ!」

 

 

二人が去った後、それを眺める人影がひとつ。

 

 

???「....賊が動く、か。それにしても、拳で賊を....天の御使いか....家康、お前なのか?」

 

 

その男、錨のような鋭い大きな得物を悠々と担ぎながら口にしながらその場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。拙い長文となりましたが、お読みくださってありがとうございます。

次回にはBASARA武将を二人出します。多分タイミング的に此処でいいかなと思いました。
これに対しコメントありましたらどうぞ。正直此処以外に出す味方BASARA武将のタイミングが分からなかったので、申し訳ございません。


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第十章 再会の鬼!

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。

あとですが、今回家康側に二人ほどBASARA武将いれます。入れると言ってもそんなすぐに二人纏めてではないと思います。
まず一人目です。展開的に無理矢理感が全開ですが、どうか多目に見てくださると幸いです。
どうかよろしくお願いいたします。

イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


前回、青州の斉国から救援要請の使者として太史慈がやってきた。

彼女の話では黄巾党が斉国の相がいる居城に攻めている最中だと言う、これを聞き入れ家康たちは出兵に決める。

家康たちはすぐさま、斉国へと行軍するのだった。

 

太史慈「.....で、三日で出発しちゃうんだもんなぁ」

 

その三日後。家康たちは公孫瓚との合同軍を率いて、斉に続く街道を進んでいた。

 

桃香「ごめんね、太史慈さん。

こんな遠くへの遠征って初めてだから、準備に時間がかかちゃって」

 

桃香は申し訳なさそうに先導してくれる太史慈に謝罪の言葉を述べるが、太史慈はそうではないと否定する。

 

太史慈「いやいやいや....逆だって、逆。

どうして三日で出られるんだってビックリしてるんだよ」

 

家康「他ではどうなんだ?」

 

太史慈「そうだなぁ。

まず助けに行くかどうかの会議だけで、10日とか半月とか掛かるかなぁ」

 

家康はこれを聞き啞然となる。日ノ本でも確かにそのような軍議は行うが、しかしそれでもそこまで時を無駄に使うほどの愚はしなかった。

それにそこまで時間を無駄にしては助かる物も助かることはない。

 

鈴々「それじゃ、会議してる間にお城が落ちちゃうのだ!」

 

鈴々は率直に口にする。正にその通りである。徒に無駄に会議など何の意味があるのか、家康や桃香もそう思っている。

 

愛紗「....一体、何をそんなに会議をすることがあるんだ」

 

太史慈「敵に勝てるかとか、助けにいって得するかとか、

周りに睨まれないかとか、そこの城主と仲が良いかとか....」

 

愛紗「......」

 

愛紗も家康や桃香と同じく啞然となるが、太史慈は情けなく言葉を続ける。

 

太史慈「後は.....いくら出したか、かな」

 

桃香「もしかして、助けてもらうにも賄賂が必要ってこと?」

 

太史慈「そうそう。私、手持ちのお金とか旅の間に尽きちゃってさぁ。

そういうのをせびられたらどうしようかって思ってたよ」

 

愛紗「.....むぅ」

 

聞いてて穏やかではない。慌てて助けを求めて来るような時に、賄賂を準備する余裕などないだろうにと桃香や愛紗たちは内心思う。

だがこの時代、黄巾党などの賊が暴れ好き放題に跋扈しているような乱れに乱れている最中。

自分の保身や富や権力を守りたい者がいるのは確かであり、そのためになら賄賂など使い何とかしようとする輩はいるのだ。

 

太史慈「とはいえ、青州じゃそれが常識だしね」

 

公孫瓚「そうだな.....。今じゃこれが当たり前になってるけど、幽州も昔はそうだったな」

 

桃香「......うん。そうだったね」

 

太史慈の話に、公孫瓚も桃香も何か思い出したのであろう。

しかしそれが絶対にろくでもない事なのは、その口ぶりからして明らかである。

 

家康「(そういうことがなければ、桃香みたいな女子が立とうなど思わないだろう...)」

 

確かに桃香のような満足に剣など振るったことのない少女が、この乱世を何とかしたいと自ら進んで立って世を平和にしたい、笑顔で満たしたいなど言う理想を抱いて体現しようと考えない。

だが桃香はそれを成そうしているのだ。

 

家康「こらこら、それを何とかしようと桃香も公孫瓚も頑張っておるのだろ。

ならば、それで今はいいじゃないか」

 

公孫瓚「....だな」

 

桃香「ん、ありがと。ご主人様」

 

先ほどに比べて顔の暗さが失せて、明るさを戻っていく。

 

愛紗「ですが、ここから斉まで長いですよ。....急がねば」

 

稟「愛紗さん、焦っても行軍速度は上がりませんよ。

それより、速度を乱して兵を消耗させないようにしないと」

 

愛紗「むぅ....」

 

何とか斉国に急ぎたいと愛紗は行軍速度を上げようと伝えるが、軍師としてそれを容認できない稟は現実的に諌める。

実際に現在位置から斉まで距離はまだまだある。そんな状態でいきなり行軍を速めても無駄に兵士たちの体力を消耗させ、疲弊させてしまい斉国に着いた頃には脱落者だって出してしまうなんて笑えない始末になり兼ねない。

 

今までみたいに少数編成での部隊や、愛紗や鈴々、そして家康であれば全力で馬を飛ばして無双すれば大体片がついていた。

 

家康「将を名乗るなら、こういう事の扱いにも慣れないとな。

槍働きだけじゃ、軍は率いていけないぞ」

 

愛紗「.....はい。軍を率いるというのは、歯がゆいものですね」

 

家康「気持ちはワシも分かる。だから一人で焦り、抱えるものじゃない。

絆結ばれた皆がここにいるのだ、だからその時は頼みにすればいいんだ」

 

愛紗「ご主人様....はい///」

 

そう愛紗に言い聞かせるよう優しく諭す家康。そんな家康の優しさに頬を赤くしてしまいながらも、愛紗は嬉々となるのだった。

そのまま一行は行軍を続けるのであった...。

 

 

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青州・斉

 

 

一方、その斉では....。

 

人和「ちぃ姉さん。今日の食事、分けてもらってきたわよ」

 

地和「あ、人和....」

 

妹から食事を受け取る地和だが、その顔は何とも暗い。彼女ら姉妹この斉国に来てから数日が経っているが未だ黄巾党らはこの斉国の居城を攻めている。

 

地和「また攻撃が始まってる。今日も大丈夫....よね」

 

人和「どうかしらね。最近では負傷者も増えているし....武器庫の矢も尽きかけてるって聞いたわよ」

 

地和「ちょっと!そんな心配になるようなこと言わないでってば!」

 

妹からの不安しかない話に声を出す地和。しかし実際、これまでの黄巾党による攻めに籠城をしている為、城壁から射掛ける矢の数が不足し始めている。

 

人和「聞きたがってたのはちぃ姉さんでしょ」

 

八つ当たり気味に声を荒げる地和に呆れながらに言う人和。そんな地和は頭を搔きむしりながら愚痴をこぼした。

 

地和「うぅ....なんでこんな所で足止め食らってるのよ。やっぱり逃げる先、間違えたんじゃないの?人和」

 

人和「青州みたいな辺境で逃げられる場所なんて知らないわよ」

 

地和「でもぉ!」

 

人和「それに、ちゃんとしたお客さんたちの前で歌いたいって言ったのは、ちぃ姉さんも一緒でしょ?」

 

地和「そりゃ、どこだってあそこよりはマシだし.....。

でも、こんな事になるなんて知ってたら....!!」

 

愚痴をボロボロとこぼす地和、彼女はこのような事態に嫌というほど嘆く。そんな姉に自分も同じくそうだと口にする人和。

 

人和「知っていたら私だって来なかったわよ。守備隊の人の話だと、もう少ししたら、助けが来るって話だけど」

 

地和「どうだか。この青州にそんな奇特な連中が残ってるわけがないじゃない」

 

人和「....でも、助けが来ないとずっとこのままなのよ?」

 

尚もぐちぐちと言う地和に人和は現実を突き付ける。実際、この居城の周囲は黄巾党が攻めており、逃げられる隙がない。

 

人和「それとも....戻る?」

 

地和「もぅ....どうしてこんなことになっちゃったのよぉ。

ちぃたち、何か悪いことした....?」

 

 

その時であった....。

 

 

???「ちょいといいかい?そこの嬢ちゃんたち」

 

人和「だれ?」

 

地和「なによ?」

 

2人は声の方へ振り向くと....。

 

???「いやなに。アンタたちが何やら騒いでるからよ、気になってな」

 

2人が振り向いた先に居たのは、紫色の眼帯が左目を覆い、身体は...派手な布を巻き付けただけの...半裸の男。

だがその身体は一目見て分かる程、激しく鍛えぬかれていた。

彼の片手には船の錨ような形状を大きな槍の如き武器を担いでいる。

目の前の男に二人は警戒するが、男は笑みを浮かべて声をかける。

 

???「そう警戒すんな。何も取って食うってわけじゃねぇ」

 

人和「じゃあなに?」

 

???「俺はぁ、アンタたちと話しがしたいだけさ」

 

地和「あ、あんた...そんな賊みたいな風体で何言ってるのよ...!」

 

???「賊...?おいおい、俺をそこらの腐った下衆な賊と一緒にすんな。俺は誇りある海賊だぜ」

 

地和・人和「「海賊...?」」

 

男の言葉に?なるが、しかし彼は話を続ける。

 

???「ああ。それよりも、だ。アンタたちは旅芸人かい?」

 

人和「そうだけど...?それがなに?」

 

???「黄巾党みたいに黄色の衣装に身に包んで、か」

 

地和・人和「「!?」」

 

男の言葉にビクッと動揺してしまう二人。しかもそれが顔にも出てしまい今更隠そうとしても、眼帯の男には既にバレてしまっている。

 

???「アンタたち、外の奴らと何か関係あんじゃねぇか?」

 

人和「....それを話して、どうする?城主に告げ口する?」

 

???「いや?しねぇよ?」

 

地和「え!?」

 

男が告げ口されれば自分たちは終わりだと踏んでいた二人。しかし男から出たのは告げることはしないとの返答。

これに地和と人和も耳を疑う。しかし男の話は続く。

 

???「これから来る援軍にはきっとお前らを匿ってくれるいい奴がいる。そいつに頼めば何とかしてくれるかもな」

 

地和「そんなの...有り得ないわよ」

 

???「そうでもねぇさ。そいつは俺の――最高の友だ。きっと助かてくれる、だから話してみろ」

 

人和「.....ホントなの?」

 

地和「ちょっと!人和!!」

 

眼帯の男の目をしっかりと見つめる人和は、男が噓を言っているようには見えなかった。寧ろ本当に自分たちの話を聞いてくれるようしっかりと見つめ返してくれる。

 

???「ああ。でもまずアンタたちの名前を聞かせてくれ」

 

人和「分かったわ。ちぃ姉さん...この人は噓を言わないと思う」

 

地和「......人和がそう言うなら...」

 

二人は意を決して自身の本来の名を告げる。

 

人和「私の名前は、張梁」

 

地和「ちぃは、張宝」

 

???「....」

 

男は二人の名前を聞いて察した。目の前にいるのは黄巾党を率いていると言われている人物。だが目の前にいるのは見てくれ戦いやら争いなんて出来そうにない少女たち。

男はどういう事なのか問いかける。

 

???「アンタたちが、黄巾党を従えてるって言う張角の...?」

 

人和「それは違うわ!それには理由があるの....」

 

???「理由だぁ?」

 

訝しむ男に人和はその理由を告げた。最初天和――長女・張角と三人でただの歌って踊る旅芸人の娘たちであった。

そんなある時である、怪しげな書物を手にしてから急に自分たちの歌を支持してくれる人間が増え始めたのだ。

その本――太平要術の書というらしく。彼女たちが書物を開き目を通して際、書物の内容全て歌で人を魅了するというものが書かれていたらしく、それを元にしてみせたら見事人が集まりまくったのだ。

その歌の舞台で地和が思わず「天下を取るっ!!」などと、その場のノリと勢いで観客に言ってしまったのが全ての始まりであった。

書物には魅了だけでなく洗脳に近いものも書かれていたらしく、それが災いして彼女たちに心酔していた民草だった連中は黄色の布を身につけて黄巾党を名乗りだして世を乱し始めたのだ。

 

???「なるほどなぁ。けどなぁ、そんな怪しげなもんに手を出したのがそもそも始まりだぜ」

 

人和「それは....そうね」

 

地和「....ちぃも、反省してる。でも!まさかこんな!世の中を滅茶苦茶にするようなことになるなんて思ってなかったの!!」

 

???「....」

 

二人は男からそう諭されて、不用意に怪しげな物に手を出したが為にこうなったのだと後悔している。

そんな最中....

 

 

天和「あ、ちーちゃん、れんほーちゃん、こんな所にいたー!」

 

地和「天和姉さん、その子たちは....」

 

???「あん?」

 

そこには天和が子供たちを連れてやってきた。

 

天和「あのね、避難してる子たちが、今日も歌ってほしいって」

 

子供A「うん。天和おねえちゃんたちの歌、すっごく好き!」

 

子供B「あーっ。真名を勝手に呼んだら、怒られるんだぞぉ!」

 

子供A「お、おねえちゃんたちはいいんだよ!ねぇ、おねえちゃん」

 

天和「うん、いいよー。お姉ちゃんたち、みんなにそう呼んでほしいから」

 

っと、にこりと子供たちに微笑む天和。それを見て眼帯の男は微笑みながら立ち上がる。

 

???「んじゃあ、俺はここで失礼するぜ」

 

天和「れんほーちゃん、その人は....」

 

人和「あ!ちょっと!待って!」

 

???「あ?」

 

人和は急ぎ男に声をかける。

 

人和「貴方の、名前は...?」

 

彼女の問いに眼帯男は不敵な笑みを浮かべて.....

 

 

 

 

「俺かい?俺の名は長曾我部元親、西海の鬼とはこの俺のことよ!!」

 

 

 

自らを「西海の鬼」や「鬼ヶ島の鬼」と称する、四国と西の海を束ねる風雲児にして天下人・徳川家康の熱き友情を誓い合う者。

 

 

人和「長宗我部...」

 

地和「元親...」

 

元親「アンタたちのことは、俺が援軍にくるダチに口添えしてやる。安心しな」

 

そう告げて元親はいなくなった。彼がいなくなった後天和が妹たちに何があったのか問いかける。

 

天和「あの人は?」

 

地和「う、うん....ちぃたちを助けてくれるかも....」

 

天和「そうなの...?」

 

人和「.....えぇ、今はあの人を...信じてみましょ」

 

地和「うん....」

 

天和「そうだ!子供たちにおねえちゃんたちの歌を聞かせてあげよう!」

 

地和「そうだね」

 

人和「そうね。いつまでも暗い気分じゃ、嫌だものね」

 

天和「うん!」

 

彼女たちがそう呟いている中、元親は歩きながら空を仰ぎ見ながら呟いた。

 

元親「家康....早く会いてぇもんだなぁ」

 

 

そして元親はそのまま戦い続く城壁へと向かう。

 

元親「さぁ、俺もここから暴れるとするかぁ。鬼らしくな」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

一方、未だ城を攻略せんとする黄巾党と、それを阻止する守らんとする守備隊との攻防が続いている。

攻防と言っても守り側が矢で、長い梯子をかけて来ようとしている敵勢に射掛けて妨害している。

だが既に矢の数は不足し尽きかけている。

 

食客「.....」

 

兵士A「これが最後の矢だ、大事に仕え!」

 

兵士B「投げられるものなら何でも持ってこい!

屋敷の壁を崩しても、鍋でもいい!

ここの城壁を抜かれたらおしまいだぞ!」

 

兵士C[ちっ、連中、梯子をかけて来やがった!落とせ!落とせ―!」

 

っと、その時である。突如城内から歌声が聞こえてきた。

 

食客「....歌?」

 

突如の歌――戦場には似つかわしくない、綺麗で心を癒してくれるそんな歌声であった。しかしそんな歌声を聞いてか、守備隊の兵たちが....

 

兵士A「天和ちゃんたちだ!今日も歌ってくれてるのか」

 

兵士B「地和ちゃんたちのおかげで、籠城なのに癒されてよな...」

 

兵士C「っていうか、あんな可愛い子たちの真名を呼んで良いとか、ドキドキしちゃうよな。人和ちゃん...」

 

兵士D「わかる!俺、女の人に真名を呼んでいいなんて言われたの、母ちゃんと妹以外で初めてだぜ!」

 

兵士A「お前ら!この城壁が抜かれたら、天和ちゃんたちまでも酷い目に遭わされちまうんだ!気張っていくぞー!!」

 

兵士たち「「「「うおおおおおおーっ!!」」」」

 

先ほどの疲弊顔から一変、天和たちの歌を聞いてから兵士たちの士気が上昇している。

そんな様子を見て微笑む食客の女。

 

食客「....フッ。気合いだけで何とかなるなら、こんな事態にはならんだろうさ」

 

兵士A「子龍殿!」

 

兵士B「なら、どうしろと....」

 

食客の女――子龍は語る。

 

子龍「連中は、矢の代わりに私が散らしてこよう。

矢、一万の働き程度はしてみせるさ」

 

兵士D「待ってください、それなら我らも....!」

 

子龍「お主らはこの壁を守るのだろう?それよりも...」

 

子龍は城内で歌い、民草を元気づけてる張三姉妹に目を向けてから微笑み....

 

子龍「あの歌手の娘たちに、北方常山の趙子龍は皆を守って勇ましく散ったと伝えてくれ」

 

兵士A「子龍殿!」

 

子龍「では!さら...」

 

兵士C「お待ちください!!城壁から誰か飛び降りたようです!!」

 

子龍「なに?!」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

城壁を攻略中だった黄巾党の前に元親は悠々と不敵な笑みで現る。

 

「て、てめぇ!!一体なにもんだ!!」

 

元親「俺か?これからぶっ潰されるてめぇらに、言う必要はねぇ、なぁ!!!」

 

「ぐびゃあっ!!」

 

瞬間、男の顔を元親の飛ばした碇槍の矛先が押し潰す。

グシャリと不快な音を立てた後、男は倒れ物言わぬ亡骸と成り果てた。

仲間の1人が無惨な姿になってしまって周囲を取り囲んだ男達が一歩退いた。

 

元親「さぁて!今からてめぇら、俺の!この鬼の生贄になってもらうぜっ!!」

 

《戦闘BGM:戦国BASARA・長宗我部元親のテーマ》

 

元親は怒声と共に、碇槍を大きく振り回した。

鎖に繋がれた矛先は、逃げ遅れた黄巾党の男達を次々と巻き込む。

巻き込まれる黄巾党の奴らはある者は腕を潰され、身体中の骨が砕け散り、頭が飛ぶ。

だがそんなの元親には知ったことではない。目の前の敵はこれまで村々を焼き、男や老人、子供を皆殺しにし、女を己が性欲を満たさんと悍ましく貪り犯してきたクズども。

なればそのような悪鬼どもを皆殺しにし、狩るのは鬼と呼ばれし長宗我部元親としてやるべき事。

元親の碇槍を握る力が増す、目の前の黄巾党を睨みもまた増す。

 

元親「てめぇらに情けなんていらねぇ。地獄なんて生温い、生まれたことを後悔しながらあの世に逝きな」

 

元親はこの斉国に来る前に、黄巾党によって滅ぼされた小さな村を見つけていた。

それを思うと怒りが増していくのだ。

彼の得物――釣果・鬼糸巻鱏に炎が纏い、周りの黄巾党を巻き込みながら焼き潰していく。

 

元帳「せやッ!!おぉらっ!!」

 

 

子龍「なんと...」

 

兵士A「たった一人で....」

 

兵士B「黄巾党の奴らを圧倒している...」

 

目の前で起きている出来事に信じられないとばかりに目を疑う趙子龍たち。しかしそれでも目の前でたった一人の男が無双しながら黄巾党を悉く蹴散らしている。

だがそんな戦いぶりを見て、彼女――趙子龍は自分よりも先に打って出られたことに悔しいという気持ちがあった。

そして彼女は....。

 

兵士A「子龍殿!どちらへ!?」

 

子龍「フッ。このままただ座して見ているのは趣味ではないのでな」

 

彼女はそのまま城壁より飛び降りる。着地した彼女は、そのまま元親の所為で混乱している黄巾党の群れに向かって吶喊していく。

 

子龍「我が名は趙雲!字は子龍!黄巾の者共!!覚悟せよ!!」

 

「な、なんだ!?」

 

趙雲「ハァ!!!」

 

「ギャア!!!」

 

何人か見事な槍捌きにて討ち取りながら元親の背後に立つ。

 

元親「あ?アンタ...」

 

趙雲「いやなに、一人だけいい恰好させるのはズルいと思いましてな、フッ」

 

元親「....ハハハッ!そうかいそうかい!アンタ、この鬼と張り合おうってのかい?いいぜ!ついて来れるなら、来な!」

 

趙雲「おう!」

 

 

元親と趙雲はそのまま黄巾の連中を駆逐していくのである。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

2人が今黄巾の連中と戦う中、家康たちは更に東に進み、群境を超えて....目指す斉国の城まで間もなくであった。

 

愛紗「見えてきたぞ!」

 

愛紗の指さす先に広がってるのは、城の周りに城下町とそれを囲む城壁まで備えた、想像以上にちゃんとした街だった。

 

公孫瓚「連中、相当な規模だな....。聞いてた話よりも多くないか?」

 

桃香「でも、まだ城門は壊されてないよ」

 

桃香が言う通りまだ城門は破壊されてない模様、それどころか何やら城の外で戦闘が行われている様子である。

 

稟「はい。どうやら味方が上手く敵を押し留めて城門を守っているようですね」

 

愛紗「ああ。だが...」

 

愛紗がそこで言葉を止めたのはその城門前で明らかに違和感があったのだ。

 

電々「ねぇねぇ。お城の人達、なんで矢を撃ち返してないの?」

 

雷々「あっ、ホントだ!普通は矢を使うよね。来るなーって!」

 

家康「恐らく....矢が尽きているのかもしれないな」

 

そうである。城壁の上から矢が射かけるのは籠城でする反撃の基本中の基本。

なのに目の前の城壁ではそのような様子が一切ない....しかし上から落としているのは別のものである。

 

愛紗「恐らく、石ですね。

中の建物でも崩したのではないでしょうか」

 

公孫瓚「けど、なんだ?黄巾党の連中、まだ城門を壊していないが...それどころか、城壁にすら登っていないし....」

 

家康「.....ん?」

 

すると家康の目に何か身に覚えのある姿が一瞬見えたような気がする。

 

桃香「ご主人様、どうしたの?」

 

稟「家康さま...?いかがされました?」

 

家康「いや....あれは....まさか」

 

家康は目を擦りもう一度凝視する。すると彼の視界に、碇のようなモノに乗って黄巾党を轢き潰す男の姿が映る。

その男の姿を見て家康は見間違いではないと確信する。

 

家康「あれは....間違いない」

 

そう口にする家康に対して、雷々が何か策がないか尋ねる。

 

雷々「ねぇねぇ稟さん。何か凄い作戦ってないの?」

 

稟「そうですね。現状、敵の動きが何やら正常ではないようですし、背後より攻撃をと思うのですが...」

 

稟の軍師として意見を聞くなかで家康が....

 

家康「...それでいこう」

 

稟「え?」

 

桃香「ご主人様?」

 

愛紗「それは....」

 

公孫瓚「一体....」

 

太史慈「どういうこと?」

 

鈴々「にゃ?」

 

電々・雷々「「?」」

 

皆が?となるが家康は向こうで戦う人物が自分が知る彼ならば、このまま自分が先頭になって合流して敵を挟み討ちにすればと考える。

しかしそれに愛紗が何か感じ、まさかと思い問いかける。

 

愛紗「ご主人様!まさか、ご自身が先頭になって行かれるおつもりですか!?」

 

家康「そうだ」

 

愛紗「危険すぎます!!ご主人様は大将なのですよ!!」

 

太史慈「あれ?家康がそうなの?」

 

稟「家康さまは戦のご経験があるので、戦場においては家康さまが指揮を執って貰っているのです」

 

太史慈「へぇーそうなんだぁ。家康って強そうだし、凄いねぇ」

 

家康の強さを改めて知る太史慈。武人としての性か、強いと聞かされてそれがどれぐらいか確かめたいと内心思ってしまう。

そんな彼女をよそに、愛紗は激しく反対する。

 

愛紗「反対です!ご主人様はどうしてそこまでして、自ら危険なことをなさるのですか!?」

 

家康「ワシとて何も好んでいくわけではない。しかし現状...城の者たちを助けるにはこれが一番なんだ」

 

愛紗「しかし...!」

 

桃香「ご主人様....でも」

 

鈴々「お兄ちゃん...」

 

雷々・電々「ご主人様...」

 

公孫瓚「家康...」

 

 

皆としては家康にそこまでして無茶をしてほしくはないが、だが彼我の戦力差を考えるならば家康の言う事ももっともである。

非現実的ではあるが、家康のような婆沙羅者の武は正に多勢を覆すことも出来るのも事実。

愛紗と同じく正直家康に無双できる力を持っているとしても、主と仰ぐ彼に無茶や無謀をしてほしくはない。

しかし現状を覆すことを出来るのも家康...ならば稟は。

 

 

稟「....分かりました」

 

桃香・愛紗「「稟さん!?|稟!?」」

 

家康「ありがとう、郭嘉」

 

稟「ですが!....お願いがあります」

 

家康「...なんだ?」

 

稟「....真名で呼んでください。私は家康さま以外の誰かに仕えるつもりは毛頭ありません...ましてや曹操殿ですら仕える気はありません」

 

家康「....」

 

稟「....」

 

彼女の瞳は潤んでいるものの、それでも必死に訴えるのが家康には理解できた。それに彼女は軍師として家康を支えたいと言う強い気持ちを抱いている。

彼女の覚悟、それを無下にはできない。

 

家康「分かった....では、頼む。稟」

 

稟「っ!...はい!!」

 

主である家康に真名を呼んでくれたことに感激し、涙目になる稟。その最中、愛紗が....

 

愛紗「...ご主人様」

 

家康「どうした?愛紗」

 

愛紗「ご主人様のお気持ち分かりました。ですが、護衛にわたしも同行させてください。

ご主人様のお背中、このわたしがお守りいたします」

 

家康「....」

 

桃香「愛紗ちゃん...」

 

彼女も譲れないのだろう。どうあっても引き下がる気はないらしく家康は自身が折れることとした。

 

家康「わかった。ならば愛紗も頼む」

愛紗「はい!この関雲長!必ずや!!」

 

桃香「愛紗ちゃん、ご主人様をお願いね!」

愛紗「はい!...鈴々、桃香さまを頼むぞ!」

鈴々「任されたのだ!」

 

雷々「雷々たちも頑張るよ!ご主人様!」

電々「頼りにしてね!」

 

公孫瓚「私も居るからな」

 

太史慈「任せっきりにはしないから、安心して。必ず城にたどり着いて合流させるから!」

 

家康「ああ!...よし!!」

 

家康は皆の前に一歩前に出て大きく声を上げる。

 

 

 

家康「今より斉国の居城を救援に向かう!!ワシが先頭を取る!行くぞ!!絆と共に!!」

 

「「「「うおおおおおおーっ!!」」」」

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

家康たちが全力で向かって来てる中、元親と趙雲は未だ黄巾の連中と戦っている。

 

元親「オラオラオラァ!!」

 

趙雲「はあああっ!!」

 

碇槍を豪快に振るい続けて、黄巾の者共を蹴散らしていく。それを追う形で趙雲も槍を振るいながら奮闘していた。

まるで嵐の如く、敵を次々に屠りなぎ倒していく。

 

元親「オラオラ!どぉしたぁ!!この程度かぁ!!!」

 

碇槍で周りの敵を巻き込みながら碇槍を振るうその姿――正しく鬼。

 

元親「うおおッ!どぉりゃあっ!」

 

一触――碇で複数の敵を引き寄せ、引き寄せた際にまるで獲物を待っていたかのように至近距離での追加攻撃を容赦なく叩き込み潰していく元親の固有技。

 

趙雲「はぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

趙雲も負けじと槍を振るう。そして周囲に押し寄せた黄巾党が血飛沫を上げて吹き飛ぶ。

 

趙雲「恐れる者は背を向けろッ! 恐れぬ者は掛かって来い! 我が名は趙子竜! 一身これ刃なり!」

 

燃え盛る炎のような気合と共に槍が次々と繰り出される。彼女も元親に負けじと武人として意地を見せる。

 

元親「へっ。やるじゃねぇかアンタ」

 

そう不敵に笑みをこぼす元親に、趙雲も負けじと笑みを浮かべる。

 

趙雲「なんの。まだまだこれからだ」

 

元親「そうかい!ならついて来な!」

 

趙雲「おう!」

 

二人は地を蹴り、敵の群れに尚も食い掛る。趙雲の戦場での動きはまるで死を招く蝶のように美しく、元親は荒ぶり猛る全てを喰らう戦鬼であった。

自由自在に動いて命を奪う趙雲の槍は思わず敵も見惚れてしまう程に輝き、元親の碇槍は敵が全て恐れ怯えてしまう程燃えている。

 

趙雲「なんて御仁だ...一切息切れもせず」

 

元親の荒ぶる姿に驚きながらも趙雲は槍捌きを緩めない、しかし....

 

趙雲「(だが...私の方は正直キツイ、か...)」

 

趙雲の方は元親と違って、段々と槍に繊細さが薄れて来ている。そこを敵は見逃さなかった。

 

「女の方が限界だ!!そいつからやれ!」

 

趙雲「出来るならするが良い。但し……そう易々とできると思うなッ!!」

 

振るう槍はまるで暴風の如く黄巾党を跳ね飛ばしていく。当然元親にも襲うがしかしそれらも続々と何言わぬ屍となっていく。

尽きる事なく元親と趙雲を囲む黄巾党は槍が振るわれる度に死者となっていく。

だが永久に動かぬ死体と成りつつも、黄巾党の恨みと執念は残り続けた。

蝶のように動く趙雲の動きを阻むように黄巾党の屍は垣を作り始める。

 

趙雲「チッ!!」

 

槍を振るう彼女は徐々に狭まる足場を苦々しく思ったらしい。

誰の耳にも聞こえるように高々と舌打ちをした。

趙雲の心中に徐々に募っていく苛立ちと共に焦る。

激しい悔しさと同時に湧き上がる死の予感。

 

趙雲「だがッ! 私はまだ負けん! 負ける訳にはいかんッ!!」

 

募っていく不安を振り払うように彼女は吠える。っが、元親が叫ぶ。

 

元親「おい!後ろだ!」

 

趙雲「っ!」

 

振り向けばそこに黄巾党の兵が自分に向かって剣を振り下ろす所であった。

 

趙雲「しまっ!」

 

その時だった、一騎の馬が敵中に飛び込んできたのだ。そこから降りたのは家康と共に乗ってきた関羽である。

 

家康「はあああっ!!」

 

「ぶびゃあ!!」

今にも趙雲が切られる所を家康が拳で以て、彼女に刃を振りかざす黄巾党の一人を吹き飛ばし、城壁にめりこんでしまった。

人間でこんな芸当出来るわけがないと趙雲は呆気になるが、家康は彼女に無事か問いかける。

 

家康「無事か!」

趙雲「え....あ、はい....(拳で、人を城壁まで殴りとばした...)」

 

家康「無事でなによりだ!」

愛紗「ご主人様!」

 

直ぐに愛紗が家康の傍まで駆け寄り、周りにいる敵を睨みながら主である彼を守らんと偃月刀を構える。

 

趙雲「(....偃月刀....では、あれが関雲長か)」

 

家康「愛紗!彼女を!」

愛紗「はい!」

 

家康に命じられた愛紗はすぐに趙雲に駆け寄る。

 

愛紗「大丈夫か!」

趙雲「あ、ああ」

愛紗「まったく無茶をする」

趙雲「その手に持つ青龍刀……お主、もしや武勇の誉れ高き関雲長殿か?」

 

愛紗「いかにも。我が主、劉玄徳と徳川家康の求めに応じ、斉国を御助けする為に来た。動けるか?」

趙雲「……無論だ。助太刀に深く感謝する」

 

趙雲は力強く頷く。彼女は力が戻ったのか立ち上がり、愛紗は趙雲の承諾を得て微笑を浮かべた。

 

愛紗「うむ。まもなくわが軍の部隊が敵の背後から攻撃する。我等と共に退いてもらいたい」

 

それを聞いた趙雲は意地の悪い笑みを浮かべる。

 

趙雲「なるほど....混乱している隙に、か」

愛紗「そうだ」

趙雲「わかった。素直に貴方の言葉を聞いておこう」

愛紗「ならば話は早い。今は敵を打ち砕き、早々に退くとしよう」

 

素直に責めを受け入れた趙雲に愛紗は微笑する。

そして改めて自分達を囲む黄巾党を睨み付け、互いに口を開いた。

 

趙雲「良いだろう。名高き関羽に背中を預けられるのならば、私も本気が出せると言う物だ」

愛紗「ふっ、頼もしいな」

趙雲「....お互いに、な」

 

不適に笑いあい、両者は背中を合わせる。

 

趙雲「聞けぃ! 下衆ども! 我が名は趙雲! この名を聞いてまだ恐れぬなら、我が命を奪ってみせよ!」

愛紗「そして賊徒よ、刮目せよ! 我が名は関羽! 天の御遣いにして徳川家康が一の家臣! 我が青竜刀を味わいたい者は掛かって来るが良い!」

 

互いに背中を預けた2人の名乗り。

その声は黄巾党にとって、死の宣告のように響いた。

互いの隙を補うように呼吸を合わせ、2人は死の舞を舞う。

2人の周囲に黄巾党の血飛沫が飛び、悲鳴が轟いた。

 

「ぎゃあ!!」「うびゃ!!」「がはっ!!」

 

愛紗の偃月刀が暴風の如く振るわれ、その度に黄巾党の頭が次々に跳ね飛ぶ。

趙雲の槍が稲妻の如く振るわれる度に貫いた身体から噴出した鮮血が宙を舞った。

奴らからすればそれは地獄絵図と言って良いだろう。

立った2人の凛々しくも美しい少女に黄巾党は成す術も無く屍と成り果て死んでいく。

 

趙雲「どうした賊徒よ! 我はまだ健在ぞ! 我が命を脅かす者はおらんのかッ!」

愛紗「どうした! 下衆と言えども男であろう! 我と思う者は名乗りを上げよ!」

 

2人の挑発に刺激された黄巾党が殺到するが、無駄な事だった。

 

愛紗「はぁぁぁぁぁぁぁッ!」

趙雲「せぇぇぇぇぇいッ!」

 

気合いと共に振るわれた槍と青龍刀が全てを斬り裂き、貫く。

っとその時である。

 

 

太史慈「でえええええええいっ!!!」

 

「がぁっ!!!」

烈火如き激しく敵を貫いたのは、太史慈の槍の猛撃だった。

 

愛紗「太史慈!」

 

太史慈「敵さんほとんど恐惶状態だから攻め時だよ!」

 

「「「「うおおおおおおーっ!!」」」」

 

彼女の言葉に桃香と公孫瓚の合同軍兵士たちは戦意高々に黄巾党を攻める。

 

愛紗「ご主人様!」

 

 

家康「愛紗!ここは任せた!」

愛紗「はい!...え?ご主人様!?」

 

突如家康はそのまま拳を振るいながら突き進む。

 

家康「うおおおおおおーっ!!」

元親「家康...フッ。やっぱり居やがったぜ」

 

家康の姿を目の当たりにした元親は、友との再会に喜びに満ちていくのが分かる。

 

元親「フッ。....うぉおおおおらああああああああーっ!!」

 

元親も碇槍を振り回して敵を薙ぎ払いながら、自身の方へと向かって来てる家康の下まで駆ける。

そして家康の拳と元親の碇槍が真っ正面からぶつかり合い、その反動か爆発にも似た衝撃波が周囲の黄巾党を巻き込み全て吹き飛ばした。

 

家康「元親」

元親「家康」

 

二人は互いに顔を合わせてから、フッと笑みを浮かべて....。

 

元親「こっちでもいい顔してるじゃねえか、家康…」

家康「友と向き合える、それが嬉しいのさ!」

 

元親「なら始めようぜ、鬼と東照の宴をよ!」

家康「嗚呼!」

 

互いに見合った二人はそのまま、まだ居る黄巾の連中に顔を向けると...

 

家康「はあああっ!!」

元親「うおおおおおおーっ!!」

 

二人は黄巾の連中に飛びかかる。

 

 

元親「おい!身の程知らずの田舎もんがよぉ...わかってんだろうなぁ?この長曾我部元親様を、楽しませろよ!!」

 

「くっそぉ!!や、やっちまえ!!」

 

「「「「「うおおおおおおおお!!」」」」」

 

彼の挑発に触発した黄巾兵どもが一同に襲い掛かる。これを見た元親は自然と笑みが浮かぶ。

 

元親「へッ!おい!....オォラァっ!!!」

 

固有技「一触」...碇槍を敵目掛けて投擲し、引っ掛かった複数の敵をそのまま引き寄せ....。

 

「なんだぁ!!うぎゃあ!!」「引っ掛かって逃げ出せネェ!!」「たすけてくれぇ!!」

 

元親「おやおや、情けねぇなぁ...オラオラオラァ―――ーッ!!!!!」

 

引き寄せた敵共を、情け容赦なく次々に碇槍で力一杯込めた叩き付けや、豪快な薙ぎ払いの二段攻撃を繰り出す。その豪快な攻撃に黄巾兵たちは、抵抗すら出来ずそのまま鬼の餌食となっていった。

 

元親「まだまだぁ!!終わらねぇぞぉ!!せい!ハッ!イィヤッホウ!!」

 

固有技「十飛」...碇槍を空中の何処かにかけてぶら下がり、そこからの突進蹴りを打ち込み続々と黄巾兵らをひき殺して死体というには余りにも酷い形へと変えてゆく。

 

「おい!やべぇぞ!!にげよう!!」「逃げるってどこへ!!?」

弱音を吐き始める賊共。しかしそんなのは西海の鬼には無意味である。

 

元親「おいおい、逃げるなんざぁ野暮だぜ?もっと俺様を楽しませてからぁ....あの世に逝くんだなぁ!!オラァ―――ーッ!!」

 

元親は一心不乱、縦横無尽に碇槍を振いまくる。それに逃げさせる暇を与えない位に...。

その容赦ない阿修羅のような戦いぶりに愛紗は驚愕する。

 

愛紗「なんだ...あの男は...!」

 

そしてそれは家康もそうである。

 

家康「とぅあ!!せやっ!!」

 

 

「がはっ!!」「うぎゃ!!」「あぎゃ!!」

 

拳を振るう力を敵に体に叩き込む。一発一発が強力でまとも食らって敵が纏っている防具は一瞬に砕け、人体すらタダでは済まず亡骸となっていく。

 

家康「せやっ!!てあっ!!ハアッ!!負けられんっ!!」

 

渾身一撃...家康が繰り出す様々な通常の攻撃に力を貯め、より強く強力な打撃を敵に与える。

力を貯めながら拳を奮っていた家康は、正面に正拳突きを放つ技を繰り出す。

 

家康「ハァっ!!受けてみろっ!!!」

 

三発も真っ正面に放たれた剛撃は、地面を大きく抉り黄巾の連中を巻き込み諸共砕いてしまった。

その人外な荒業に趙雲と、そして家康の強さに興味を抱いていた太史慈は啞然としてしまう。

 

趙雲「ば、バカな....」

太史慈「家康....すごっ」

 

彼らの激しい反撃に黄巾の連中の生き残りは逃げ出し始めた。

 

「こんなのはやべぇ!!」

 

「一度退却しろっ!!」

 

「お頭に知らせるんだぁ!!」

 

次々に逃げ出す黄巾の連中。稟はそれに対して追撃を命令する。

 

稟「追撃してください。出来るだけ多く、敵を討ち取ってください!」

 

鈴々「了解なのだ!」

 

雷々「電々いくよ!」

 

電々「うん!」

 

公孫瓚「私もいくぞ!」

 

彼女らが率いて追撃が行われる中、桃香は愛紗の下に駆けつける。

 

桃香「愛紗ちゃん!」

愛紗「桃香さま」

 

桃香「ご主人様は...?」

愛紗「あちらに...」

桃香「え...?」

 

愛紗が指さす先には....。

 

家康「元親、ワシに力を貸してくれるか?」

 

元親「へっ。みずくせぇな家康!」

 

家康「そうだな」

 

互いに笑い合う家康と元親...。

 

家康「鎖で結ぶ絆に...」

 

元親「未知への航海に、幸あれ...」

 

 

こうして再会を果たした家康と元親の二人だった...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。斉国の話はまだ続きます。二人目のBASARA武将も出します。
どうぞよろしくお願いいたします。


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第十一章 一時の安らぎ

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。

二人目のBASARA武将登場はもう少しお待ちください。


イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


前回、斉国にたどり着いた家康たち一向。

そこで家康は、友情を誓いあったかけが得ない友ーー長宗我部元親と再会を果たす。

再会を果たして彼らは見事黄巾党を追い払った。

 

友との再会に元親は家康の首に、自分の腕を絡ませながら喜ぶ。

 

元親「家康!お前に会えるなんてな!」

家康「そりゃワシもさ元親....おいおい、腕に力を入れんでくれ!首がしまる」

元親「ははは!悪い悪い!」

 

そう言いながらも両者は喜びあっている。日ノ本からいきなり突如この全く未知とも言える場所にて、漸く自分の知り合いにそれも友人に会えたのだから当然とも言える。

徳川家康と長宗我部元親....この二人は嘗て戦の中で互いに認め合い、固い友情を誓い合ったもの同士である。

家康の為とあらば駆けつけるとも固く決意している、それが長宗我部元親という男である。

二人のやり取りに呆気になる桃香たち。その彼女たちの近くに稟たちがやって来て、桃香と愛紗と同じ反応をしてしまう。

 

稟「こ、これは、一体...」

鈴々「あの眼帯のお兄ちゃんは誰なのだ?お兄ちゃんの知り合い?」

電々「でもなんかカッコいい、かも...」

雷々「電々そればっかじゃない?」

公孫賛「なんだか、おっかない感じな奴だな...」

 

太史慈「家康もだけど。あの眼帯のお兄さんもヤバいね」

趙雲「ああ。だが...あの家康と言う御仁、面白いな」

 

趙雲はどうやら家康に深い興味が湧いたらしく笑みを溢す。

だがいい加減男同士の友情に水要らずと言う訳にはいかないとばかりに、桃香と愛紗が我慢出来ずに家康たちに声をかける。

 

桃香「ご主人さま!そ、その人は誰?!ご主人さまとはどういう関係!!」

愛紗「見てくれ賊のような風体をしています。何者ですか?」

 

家康「嗚呼、すまない。この者は長宗我部元親ーーワシと絆で結ばれた親友だ」

元親「俺の名は長宗我部元親。みんなから西海の鬼と呼ばれてる、よろしくな!」

 

桃香「お、鬼?」

愛紗「は、はぁ...」

 

家康の紹介を受けて親しみ笑みを浮かべて元親も桃香たちに名乗る。見てくれ此方が怯んでしまう要素があるが、元親の屈託ない笑顔を見るとそんな気持ちが失せてしまった。

それに彼女らが信じる家康が自ら親友とも称しているのだから、信じても大丈夫だと納得することに。

っとすると愛紗が突然家康に身を乗り出すように近づき、顔は怒っていた。

 

愛紗「あ!それよりも!ご主人さま!」

家康「ど、どうした?あ、愛紗」

愛紗「ご主人さまの背中を守ると私は言いました!」

家康「あ、ああ。言っていたな...」

愛紗「でしたら!先ほどみたく突然突っ張しらないでください!!」

 

先ほど愛紗に趙雲を任せて、家康が元親の下まで駆け出したことを怒っているのだろう。

 

家康「すまんすまん。いやぁ、元親の姿を見つけてつい嬉しくてなぁ...」

愛紗「それでも!!...どうか、無茶はしないで...ください」

 

目を伏せて辛そうな表情を浮かべる愛紗。自分が無理なことを考え実行したから、彼女にこんな顔をさせてしまったなのかと申し訳ないと想い、家康は愛紗の肩に手を乗せる。

 

家康「すまない、愛紗。これからは気をつける」

愛紗「はい...必ず、ですよ?」

家康「ああ。....ん?」

 

っとそんなやり取りの中、家康の後ろに抱きつくように桃香がくっついていた。

 

家康「と、桃香?どうした?」

桃香「愛紗ちゃんもだけど、私だってご主人さまのこと、心配してたんだよ...?」

家康「桃香...そうだな、すまない」

桃香「ん...」

 

桃香の頭を撫でて彼女を安心させようとする。家康の大きな手の温もりが心地よく感じ、桃香は嬉しくなる。

趙雲が家康に話しかけてきた。

 

趙雲「先ほどは助太刀感謝いたします」

家康「おお!先ほどの....。大事なかったようだな!」

 

話しかけてきた趙雲の姿を無事であることを見て、家康は自分のことように笑みを浮かべて見せる。

そんな家康を見ているとまるで暖かい陽の光を浴びて、心地よい気分に包まれてしまう。

目の前のこの人物にそのような好感が持てると趙雲はそう内心、感じていた。

 

趙雲「それにしても...中々に凄まじい武でしたなぁ。

貴方やそちらの御仁、まだまだ上には上があると思い知らせましたぞ」

 

っとにこやかに語る趙雲。己よりも――ましてや男で自分よりも強い者に会えたことに驚嘆しているのだ。

 

家康「いやぁ、ワシ以外にもまだまだ猛者はおるさ」

趙雲「それでも拳で多勢を圧倒するなど異常ですよ、フフッ」

 

などと趙雲がそう口にしながら家康に熱い眼差しを向けると、二人の間に稟が割って入る。

 

稟「おほん!家康さま。こちらが運んできた矢の補給を済ませましょう」

家康「ああ、そうだな。元親、話は後でしよう」

 

元親「おお!わかった」

家康「桃香は先ほどの戦で怪我はしなかったか?」

 

桃香「うん。鈴々ちゃんや白蓮ちゃんもいたから、大丈夫だよ。

あれ?そう言えば....」

 

桃香は何かに気付き、辺りを見渡してみる。

 

桃香「.....太史慈さんは?」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

太史慈「.......」

 

城壁から見下ろせる、小さな庭園。

そこで気が抜けたように立つ背中は...太史慈のものだった。

そしてその表情は暗く、居たたまれないものとなっていた。だがそれには理由があった、実は彼女が桃香たちの居る平原へと向かっていく際に....

 

桃香「じゃあ、太史慈さんが城を出た時の騒ぎに紛れて、県令の人は....」

 

趙雲は冷静に頷きながら肯定し答えた。

 

趙雲「左様。連中はそもそも子義が助けを呼んでくるなどと、信じておらなんだのでしょう」

桃香「そんな....」

 

家康「....」

 

そう。この城の城主...この街を預かる県令は、太史慈が城の包囲網を突破した夜、食客を護衛にして夜逃げして既に居ないのである。

 

家康「で、趙雲殿と取り残された兵で籠城し、

逃げ遅れた民たち守っていたのか...」

 

この話に愛紗や稟、鈴々や雷々と電々も静かにそして辛そうに聞いていた。家康は元親にも聞こうと彼に視線を向けると、元親は頷き答える。

 

元親「ああ。連中はもうとっくにいねぇよ。俺がそれを聞いたのは翌日だ」

家康「...そう、か」

 

桃香「.....わたし、ちょっと」

趙雲「放っておけばよろしい」

 

太史慈が気になり放っておけないのか、桃香は庭に向かうとしたが、短い言葉で押しとどめてみせる。

 

桃香「でも....」

趙雲「そもそも、何と言葉をかけるおつもか?」

桃香「それは....」

 

実際家康も、彼女の背中になんと声をかけたらいいかなど分からない。それに今慰めの言葉をかけても、返って無用に彼女の心を傷つけてしまうと思ってしまう。

だからこそ遠くから見てることしか出来ない。

 

趙雲「所詮我らなど、金で集まった浮き草でしか過ぎませぬ。

よほどの義士でもない限り、そのまま姿を消してもおかしくはない」

 

彼女の言葉に間違いはない。食客は所詮金で釣られ、報酬の為に働くに過ぎない。

 

趙雲「だとすれば....それを囮に逃げ出した城主の振る舞いも、まぁ、責められる謂れはないでしょうなぁ」

桃香「でも.....この街を預かってた人なんでしょ?

そのはずなのに、どうして...」

 

趙雲「この腐り果てた渡世では、その方が利が多いからでしょう。

何より皆、命は惜しいですからな」

 

趙雲が言っていることは全て誤りはない。人間皆、己の命が大切なのは当たり前である。

自分の命が助かり、自分にとって利があればそれを選ぶのは人間の性と言える。

それが人間というものである。

しかし桃香は納得出来ていない。

 

桃香「それでも.....太史慈さんは、命を賭けてわたしたちの所に来てくれたのに...

....そんなのって....ないよ.....」

 

愛紗「桃香さま....」

 

家康「.....」

 

元親「.....」

 

彼女は自分のことのように涙が溢れてしまう。それでも彼女は涙を拭って強い瞳で趙雲を見る。

 

桃香「....やっぱりわたし、太史慈さんの所に行ってくる。

何も出来ないのはわかってるけど、それでも、傍にいることはできるでしょ」

 

そのまま彼女は太史慈の下まで走っていくのだった。

 

趙雲「やれやれ。奇特なお方だ」

 

庭に続く階段を駆けていく桃香の背中にそう呟くだけで、趙雲はそれ以上止めることはしないのだった。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

地和「みんなー!次は、みんなの知ってるあの歌、いくからねー!」

 

天和「みんなも一緒に歌ってくれると、お姉ちゃん、嬉しいなー」

 

人和「じゃあ、始めるわよ....♪」

 

その日の夜。城の庭で開かれたのは無事に戦いを生き残った兵たちと、城に逃げ込んだ街の民を労うため、そして今回助けに来てくれた家康たちの歓迎も兼ねた宴だった。

その宴にあの天和・地和・人和の三姉妹が宴を盛り上げる歌を歌っている。

 

雷々「あっ!天和ちゃんたちの歌ってるこれ、雷々知ってる!徐州の歌だ!」

電々「電々も知ってるー!」

鈴々「鈴々は知らないのだ」

雷々「だったら、教えてあげる!

簡単だから、ついて歌うといいよ!」

 

舞台で歌う三人に合わせて、鈴々たちや街の者たちも、楽しそうに歌っている。

それは、家康にとって見ていて微笑ましく思い、これを見るためにここまでやってきたかと思えてくる光景だった。

 

公孫瓚「....それにしても、家康」

 

家康「ん?どうした?公孫瓚」

 

公孫瓚は何とも釈然としない顔で家康に声をかける。

 

公孫瓚「....本当にいいのか?“あんな事を”約束して....」

 

家康「ああ。あれか...」

 

【回想】

 

 

それは昼間、事後処理に家康が陣頭指揮を取って落ち着いてきた時であった。

元親が家康たちに大事な話があると言われ、桃香のおかげで漸く落ち着いた太史慈を除き、桃香たちを伴って人気のない場所まで移動した。

 

家康「元親、それで大事な話ってなんだ?」

 

元親「ああ、それはな...おい、出てきていいぞ」

 

元親の声に木陰から出てきたのは、天和たち三姉妹だった。彼女たちの表情は不安げで恐る恐る元親の傍まで駆け寄り、家康を見る。

一体どういうことなのかと元親を見ると....

 

元親「こいつが、俺の友――徳川家康だ。挨拶しな」

 

天和「ど、どうも...」

地和「は、初めまして...」

人和「....よろしく」

 

何とも言えない様子に愛紗は尋ねる。

 

愛紗「彼女たちがどうしたと言うのですか?」

 

元親「そう急かすなって。ほれ!自分の本来の名前を言ってみろ」

 

稟「本来の、名?」

 

すると意を決したのか三姉妹は自ら口にする。

 

天和「....名前は、張角、っといいます」

地和「ちぃは、張宝」

人和「張梁よ」

 

家康「なっ!?」

桃香「えぇ!?」

愛紗「なに?!」

 

鈴々「にゃにゃ!?」

稟「張角!?」

公孫瓚「な、なんだと!?」

 

雷々「うそ!?」

電々「張角って!黄巾党の!?」

 

家康たちは驚愕に包まれるのに十分なことであった。目の前に黄巾党を束ねているとされる首魁・張角が今、彼らの前にいるなどそれは驚くのは仕方ない。

だが一同の中で手早く動いたのは愛紗であった。彼女は手にしている偃月刀をもって三姉妹に向ける。

 

愛紗「黄巾党の首魁・張角!!それが本当であれば、ここで...!」

 

天和・地和・人和「「「ひぃ!!」」」

 

元親「待ちな」

 

彼女たちに偃月刀を向ける愛紗に阻むように立つ元親。それに対して愛紗は怒る。

 

愛紗「長宗我部殿!!なぜ邪魔をされる!!?ご主人様の友だとしても、邪魔立てするのであれば...!」

家康「よせ愛紗!」

 

激昂する愛紗を止める家康。それに愛紗は驚愕してしまう。

 

愛紗「ご主人様!?どうしてですか!?」

家康「元親の話を聞こう」

愛紗「しかし!!」

家康「頼む」

愛紗「....わかり、ました」

 

納得は出来ないながらも、家康の言葉に従う。彼女が落ち着いた様子を見て、気を取り直して家康は尋ねる。

 

家康「どういうことなんだ?是非とも詳しく話してくれ」

 

天和「う、うん...じゃなくて、はい!」

地和「そ、その...」

人和「実は...」

 

三姉妹は素直に正直に事の全てを話した。自分たち三人が本来はただの歌う旅芸人で、道中太平妖術の書という怪しげな書物を手にしてから自分たちのお客が増えたこと。

だがその舞台の最中、地和がノリと勢いでつい「天下を取る!」という言葉に、書物の力によって洗脳と扇動されてしまい客人たちは暴走して黄巾党として世を乱してしまったことを...。

彼女たちから理由を聞いた家康たち。その表情は複雑と言ったものだった、仕方ないだろう。

まさか黄巾の乱の始まり、その切っ掛けがよもやそんなことからなど誰が予想できようか。

三姉妹とて歌を純粋に愛してるだけの旅芸人の娘、自分たちが歌うものを多くの人に聞いてほしいだけなのだ。

しかし....

 

愛紗「しかし....このことを聞かせて、長宗我部殿は家康様に何をお求めに?」

 

元親「確かに理由はどうあれ、こいつらは途方もねぇ罪を犯した。これは紛れもねぇ。

だがこいつらはそれを悔いている」

 

稟「長宗我部殿は....彼女たちを保護してほしいと?」

愛紗「なんだと!?」

桃香「えぇ!?」

 

鈴々「にゃあ!?ゆるしてってことなのだ?!」

雷々・電々「「えぇ!?」

公孫瓚「バカな!?」

 

稟の言葉に愛紗や桃香、鈴々たちもまたも驚愕する。しかし家康は驚愕する彼女たちは違い、真剣な顔で元親を見つめる。

 

家康「....」

元親「家康。このままじゃ、こいつらは間違いなく処刑される。だがこいつらにも償う機会を作ってやりてぇ」

家康「元親...」

元親「家康...覚えてるか?日ノ本で、四国で俺の部下...野郎共たちが大谷と毛利の罠で殺され、お前の仕業だと仕向けられて俺がそれにまんまとハマってしまったことを...」

家康「ああ...覚えている」

 

それは日ノ本がまだ乱世だった頃、家康が先の天下人・覇王豊臣秀吉を討ち取って間もなく、秀吉の左腕・石田三成と天下分け目戦を控えていた頃。

三成の補佐を務める大谷吉継と、元親の宿敵にして日ノ本・中国地方の大名である毛利元就の策略によって、元親の大切な部下たちが謀略によって無惨に殺されてしまった。

しかもその現場にわざとらしく徳川の家紋が刻まれた旗印を捨てて。

仲間たちを殺され、冷静さを無くしてしまい、とうとう元親は怒りのまま家康がいる三河に侵攻し両者は戦うこととなってしまった。

その際、雑賀孫市の割り込みによって最悪の結末は間逃れた。

 

元親「あの時は、サヤカが居なかったら、俺はとんでもねぇ間違いを犯してしまう所だった」

 

家康「元親...」

 

元親「こいつらもそうだ。こいつらはとんでもねぇ間違いを犯して悔いてやがるっ!その償いを!もう一度、やり直す機会を与えてやりてぇ!!」

 

家康「.....」

愛紗「し、しかし!!例え我らが保護しても、大陸中で張角はお尋ね者としているはず....」

 

 

趙雲「そうでもないぞ」

 

 

家康「ん?趙雲殿」

 

何時の間にか趙雲が現れ、彼女は家康の傍まで近寄ってきた。

 

家康「趙雲殿。そうでもないとは?」

趙雲「これを....」

 

趙雲は懐からある一枚の紙を家康に手渡した。その紙には、絵が書かれていた。

身長が三メートルはあろうか、髭もじゃの男で、腕は八本、足は六本、頭には三本の角が生えている。

人間としての原形が最早ないと言っていい。

 

家康「これは?」

趙雲「今、この大陸で流布されてる、張角の似姿を書かれた絵です」

桃香「え?でも...これ」

鈴々「なんかへんてこりんのお化けなのだ!」

雷々「うん。人間じゃないよもう...」

電々「気持ち悪い~」

公孫瓚「こりゃあ酷いな...」

 

天和「え~!おねえちゃん、こんな感じにされてるの~?ひどぉい!」

地和「うわぁ....天和姉さん」

人和「....姉さん」

 

自身の似顔絵を見て、あまりの醜悪な絵面に衝撃と絶望する天和。妹たちもそんな姉になんと言えばいいか分からず、顔を引き攣ってしまう。

 

稟「....なるほど」

愛紗「稟。なにを納得しているんだ?」

稟「三人にお聞きしますが、黄巾の乱の半ば...あまり顔を晒すようなことは?」

 

人和「ないわ。彼らと行動している時はほとんど天幕で籠っていたのがずっとだったから...」

 

稟「そう、ですか...」

桃香「あの、稟さん...。どういうことですか?」

 

何事か分からず尋ねる桃香だが、稟はそのわけを教える。

 

稟「乱が起きてから、彼女たちは歌の舞台を開いていない。その為、その素顔をも公衆にも晒していなかった」

公孫瓚「それが?」

家康「つまり、彼女らの正確な顔を知るのはここに居るワシらだけ、ということだ」

 

家康の言葉に稟は頷き、桃香たちは「そうか!」と納得する。今現状張角の姿は趙雲が持ってきた人とは形容し難い不気味で使えない絵のみで、本当の張角の姿を誰も知らない。

家康は三人に....

 

家康「三人に尋ねる」

 

天和「は、はい!」

地和「な、なに?」

人和「....」

 

家康「お主たちは、保護を求めたいのだな?」

 

家康の眉間に皺が寄り険しい顔で問いかける姿に、三人は恐る恐る答える。

 

三人「「「は、はい」」」

家康「お主たちはこれからも生きることを決めるなら、起きてしまった罪を、それを償っていく覚悟はあるのか?」

 

桃香「ご主人様...」

 

桃香は家康の問う姿に不安になり割って入ろうとするが、趙雲がそれを無言で阻む。家康に問われた天和たちは、顔を俯かせてしまう。

自分たちが犯してしまった罪――それは重い言葉である、しかし....

 

天和「い、生きたい、です....」

 

家康「....」

 

天和「私は、まだ、生きたいっ!ちぃちゃんやれんほーちゃんと、これからも歌を歌いたいっ!!その為にも、わたしはしっかりと償いたいっ!!」

 

家康「そうか....わかった」

 

震えながらに自分の想いを伝える天和に、家康は険しい顔から暖かい優しい笑みを浮かべてみせる。

そして桃香と愛紗に振り返り、家康は...

 

家康「ワシはこの三人を保護したいと思う。反対はいるか?」

桃香「ううん。いないよ、ご主人様」

愛紗「....正直、複雑ではありますが...ご主人様がそうお決めなったのであれば」

 

稟「家康さまの御心のままに...」

鈴々「鈴々はお兄ちゃんに賛成なのだ!」

雷々・電々「「わたしたちもさんせー!」

公孫瓚「まぁ....家康がいいって言うなら、わたしはこれ以上何も言わないけどさ...」

 

家康「うん...趙雲殿」

趙雲「はい?」

 

家康「このこと、出来れば...」

 

家康は趙雲に三人について口を噤んで欲しいと目で訴える。それに趙雲は悪戯が含んだ笑みを浮かべてみせる。

 

趙雲「フフフ....わたしとて、こんな覚悟を決めた乙女を苛めるなど趣味の悪いことは致しませぬよ、家康殿」

 

人和「あの.....わたしたち...」

 

人和が口を開き、家康たちに尋ねる。家康は彼女たちに振り向き...

 

家康「しばらくはワシたちの下で保護という形になるが、それで良いか?」

 

天和「は、はい!」

地和「こ、これからも天和姉さんと人和といられるんだ...」

人和「うん...そうよ!ちぃ姉さん!」

 

三人は嬉しさからか、抱き合いながら涙を流している。姉妹たちの絆――その姿を見守りながら見つめる家康の横に立つ元親が礼の言葉を口にする。

 

元親「ありがとな、家康」

家康「なぁに、気にするな元親」

 

 

【回想終了】

 

公孫瓚「本当に良かったのか?」

 

家康「なぁに。何とかなるさ」

 

公孫瓚「まったく....」

 

呆れ交じりに溜息を漏らす公孫瓚。その横で桃香がそうでもないと口にする。

 

桃香「でも。お城に逃げてきた人たちのお世話をしたり、歌で元気づけたりしてたみたいだよ。

それに...いまみんなが呼んでる名前って、真名なんだって」

公孫瓚「剛毅すぎるだろ」

稟「ですが、彼女たちが真名を呼ばせてることが幸いしてか、それが隠れ蓑になっているとも考えられます」

 

稟の指摘はいい所を突いている。彼女たち姉妹が旅芸人の娘として真名を許して、多くの人間に呼ばせていることが浸透して彼女たちが黄巾党の張姉妹という認識がないのは、そのお陰とも言える。

 

太史慈「あはは。思いっきり楽しんでるね」

 

そこへ太史慈がやってきた。

 

桃香「太史慈さん!その....」

太史慈「ああ、さっきはありがとね、劉備。

みんなにも心配かけたみたいだね」

家康「...もう大丈夫....ではないな」

 

家康がそう尋ねると太史慈は笑顔を浮かべて否定する。

 

太史慈「もう大丈夫だってば。

....重い税金で贅沢してた連中だし、もしかしたらなーとは思ってたから、さ」

桃香「そう、なんだ...」

太史慈「そういう奴の食客になってたんだから、私も文句は言える立場ではないしね」

 

苦笑交じりにそう口にする太史慈。彼女もこの斉国からすれば、趙雲同様食客の立場であった。

 

公孫瓚「...そうか」

太史慈「ほら、そういう暗い顔はなしなし。

戦勝祝いの席なんだよ?もっと楽しまなきゃ」

 

そう明るく接する太史慈。すると雷々と電々、鈴々がこちらに気づいた。

 

雷々「あっ、太史慈さんだ!」

電々「桃香ちゃんも歌おー!」

鈴々「おねえちゃん!次は天和ちゃんたち、幽州の歌を歌ってくれるって!」

 

三人は桃香の腕を掴みとり、引っ張るように連れていく。

 

桃香「ふぇっ!?あ、ちょっと三人とも、引っ張らないでー!」

 

太史慈「ほら、この子たちがよっぽど楽しみ方がわかってるじゃない。

三人とも、劉備を連れていけー!」

 

桃香「きゃーっ!」

 

桃香はそのまま三人に連れていかれ、民たちが踊る輪の中へと入っていくのだった。

 

公孫瓚「やれやれ。騒がしい連中だな」

家康「ははは。いいことだ」

太史慈「でも、いい連中だと思うよ」

家康「ああ、ワシもそう思う」

稟「そうですね」

 

元親「いい仲間じゃねぇか、家康」

 

っとそこへ酒瓶を担いで元親がやってきた。

 

家康「おお!元親」

元親「ほら、飲めよ家康」

 

元親が注いだ酒が入った盃を受け取り飲み干す。

 

家康「いい酒だ」

元親「そうかい」

 

酒を飲んだ家康は心地よい気分になった。周りは戦があったことなど忘れて祝い、楽しんでいる。

その中には桃香や鈴々たちが喜び合い、気づけば天和たちとも笑い合っている。

それを見て家康は.....

 

 

家康「いいものだな、本当に」

 

愛紗「ご主人様....はい、そうですね」

 

嬉々として口にする家康の隣で嬉しそうに彼にそう告げる愛紗であった....。

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。二人目のBASARA武将はまだ先になります。申し訳ございません。


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第十二章 戦の後

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


前回、元親から天和・地和・人和の三姉妹と紹介を受ける家康たち。

しかし彼女たちこそ黄巾党を率いて乱を起こしてしまった、張三姉妹であった。

乱を起こした元凶だと知って愛紗は刃向けるが、家康はそれを治め、三姉妹を保護することを決めた。

彼女たちとの一件が終わり、話は戦後の宴の席に始まる。

 

太史慈は今回の賊討伐に対して、改めて家康たちに礼の言葉を述べた。

 

太史慈「色々大変な思いもしたけど、平原に助けを求めに行って良かったよ。

....二人ともありがとうね、公孫瓚、家康」

家康「それを聞いたら、桃香も喜ぶ」

 

太史慈「元親もありがとう。あなたが奮闘してくれなかったら、きっと戦場は城内まで広がってた....」

元親「ははは。気にすんなよ、俺は仁義に悖るのは嫌いなんでね」

家康「ああ。元親はそう言う男さ」

 

そう言って家康と元親は互いの盃を酌み交わした。それを見て愛紗は...

 

愛紗「本当に仲が良いのですね?お二人は...」

家康「何せ元親とは戦で戦い合って、互いに認め合った仲だからな!」

元親「おうよ!家康はこの俺が見込んだ男の中の男さぁ!」

 

快活な笑みを浮かべあう家康と元親。男同士友情というのはこういう物なのだろうと、愛紗や稟、公孫瓚や太史慈は納得する。

 

家康「そう言えば、元親...」

元親「ん?どうした?」

家康「お前はどうやってこの地に...いや、この大陸に来れたんだ?」

 

家康がそう尋ねると、元親は困ったような顔を見せる。

 

元親「それがなぁ....俺も分らねぇんだ」

家康「どういうことだ?」

元親「それがぁ....」

 

元親がこの三国志の世界に来てしまった理由――それはある日のことであった。四国にて散ってしまった仲間たちの墓参りの帰り道、その道中にて奇妙な銅鏡が捨てられていた。

それを拾い城に持ち帰った元親は興味を惹かれ、銅鏡をまじまじと眺めていたら、突然銅鏡が光り出して気付けばこの世界にいたということらしい。

 

元親「...って、なわけだ」

家康「....そうか」

 

家康は内心自分以外にも銅鏡によってこの世界に引き込まれたのかと考える。

 

元親「家康。お前だけなのか?この世界にきたのは...」

家康「いや...忠勝も一緒に銅鏡の光を浴びてしまい...」

元親「一緒に、か...」

家康「ああ。だが忠勝ならば大丈夫さ、アイツならばワシを探しているかもだしな」

元親「そうかもな、本多ならお前を探してるだろうしな」

 

二人の会話に愛紗が気になって混ざる。

 

愛紗「あの、本多とは...」

家康「忠勝。以前話したワシの家臣だ」

愛紗「どのようなお方なのですか?」

家康「ワシの家臣の中で、頼もしいやつだ」

元親「戦国最強と言われ、家康に過ぎたる者とも呼ばれるくらいだからな」

稟「戦国最強....それは比喩、というわけではないのですよね...?」

 

稟は恐る恐る問いかける。家康と元親の異常な無双ぶりを見ている為、きっと話題の人物も尋常ではない力を持っているのであろうと推察する。

それは愛紗も同じであるが、戦国最強という言葉に興味を惹かれるのは彼女が武人である証。

 

愛紗「戦国、最強....。一度お手合わせしたいですね」

家康「とんでもないくらい強いぞ?忠勝は」

 

愛紗にそうにこやかに語る家康。そんな中、彼らの会話に気になったのか、太史慈が公孫瓚に話しかける。

 

太史慈「ねぇ公孫瓚。家康の話してた銅鏡って...?」

公孫瓚「ああ。家康は天からきたらしいんだよ」

太史慈「えっ!?天!?なにそれ!?じゃあ元親も!」

公孫瓚「話からするとそうかもな」

太史慈「ふーん」

 

2人がそう会話する中、家康は何か気付き辺りを見渡す。

 

稟「....家康さま、いかがされました?」

家康「いや....ちょっとな....」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

家康「おお.....こんな所にいたか」

 

宴から抜け出して、城壁の上に顔を出せば...一人そこで盃を傾ける趙雲がいた。

 

趙雲「おや。天の御使い殿」

家康「はは。その呼び方はよしてくれ、家康でいい。しかし誰に聞いたんだ?」

趙雲「江湖を渡り歩いておれば、その程度の噂はいくらでも耳に入ってきますゆえ」

 

確かに家康ほどの人物がああも多くの黄巾党相手に暴れれば、いくらでも噂となろう。

 

趙雲「平原の劉玄徳は、天の御使いを迎え、民草に善政と徳を振りまいている....とか」

家康「あー...ははは。そこまでそんな有名なのか....?」

 

家康としては、桃香の件は太史慈も頼ってくれたと考え、天の御使いなんて自分としては胡散臭いとしか思っていない。

 

趙雲「ははは。....して、何用ですかな?御使い殿は、下で宴を楽しんでおるものと思っていましたが」

家康「一つ、聞きたいことがあってな」

趙雲「はて。口説くのであれば、酒の一つも差し入れていただきたい所ですが」

家康「そう言うと思ってな。元親から譲って貰った酒を持ってきてある」

 

家康は酒瓶を趙雲に見せびらかしておく。それを彼女はフフッと笑ってから家康から一献受けるのであった。

 

趙雲「ふぅ...これは中々に良い酒ですな。っで?なにをお聞きに?」

家康「趙雲殿は、なぜ残った?」

 

趙雲は太史慈と同様で県令の食客としてこの城に居た。その県令は太史慈を囮に、残りの食客に護衛をさせて逃げた。

しかし彼女はここに残って戦っていた。

 

趙雲「ここで民草を見捨てるのは、美しくありませんからな」

家康「美しくない、か...」

趙雲「左様。この趙子龍、酒のために売る武はあっても、美学まで投げうるつもりはありませぬゆえ」

 

そう事もなげに呟くと、彼女は小さな盃をゆっくりとあおってみせる。

 

家康「誇り、か」

趙雲「安い言い換えをなさる」

趙雲「それに....悪政を働く小役人を守って死ぬよりも、無辜の民を守るために死した方が、後の語り草になりましょうて」

家康「そうか...」

趙雲「ちょうどああして、旅芸人もいたことですし...」

 

次の一杯を注いだ趙雲は下を見下ろす。そこには庭で開かれている宴であった。

歌う天和たちは余程慕われてるのか、鈴々たちだけじゃなく、城内にいる者たちにも次々と歌をせがまれている。

 

家康「いいものだ、こうして民の嬉しい姿を見るのは」

趙雲「ええ。その民の為を思って死に場所とする...武人としては良いものでしょう?」

家康「だが、北方常山の趙子龍の死に場所は、ここではない」

趙雲「どうやらそのようで、玄徳殿や関雲長殿、そして家康殿のおかげで、ひとつ死地を逃してしまった」

家康「おいおい」

趙雲「玄徳殿なら、この浮き草の散り様にも涙を流して下さったのでしょうな....」

家康「桃香であればそうだろうなぁ...」

 

すると趙雲は残った酒を徳利から直接あおると、その場にゆっくりと立ち上がる。

 

趙雲「....ふむ。いささか酒が回りすぎたようだ。

私はこれにて、失礼させていただこう」

家康「....」

 

煌々と輝く満月の下。そう言い残して立ち去る趙雲の足取りは、酔ってるどころか昼間の戦いの時と変わらない、静で正確であった。

 

家康「...本当に、ここがお主の死に場所ではないぞ。趙雲」

 

その背中を見送りながら、家康はぽつりと呟き月を眺めるのであった。

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

その数日後...。

 

桃香「ねぇ白蓮ちゃん。お城って....本当に燃やしちゃうの?」

 

城門の外で桃香が口にしたのは、そんな問いであった。これに公孫瓚は困ったように返答する。

 

公孫瓚「街の連中とも話し合った結果だよ」

 

そう言いながら公孫瓚は周りを見渡す。門の外にいるのは家康たちだけじゃない。

城を守っていた兵士たち、避難していた街の人間。外から逃げてきた者たちや近くの街の親戚なんて者もいる。

 

公孫瓚「城に籠ってた人も大した人数じゃないし、近くの親族に頼る連中も多いからな。

残りも、近くの町にそれぞれ別れるそうだ」

 

彼女の言葉通り。この街の人間はもうこの斉国の街に留まり続けるのは辞めて、皆それぞれ親族がいる町や村、または別の新しく安全な場所へと移り住もうと考えてこの城を捨てるようだ。

 

鈴々「でも....なんだかもったいないのだ」

愛紗「仕方ないだろう。下手に放って賊の根城にでも使われては、それこそこの街が浮かばれん」

稟「はい。それに今回の戦で城壁がかなり傷んでしまってますし...更に本来居るべき県令も逃げ出しておりません。

ならば直すよりも燃やしてしまったほうがいいのですよ」

 

避難していた者たちや戻ってきた者を合わせても、明らかにかつての街を取り戻せる規模ではない。

何よりも半壊した城壁を直す宛もない現状、下手に人を集めても賊たちの餌食となるのは必定である。

 

公孫瓚「これ以上は、わたしたちじゃ何も出来ないよ。

せいぜい、近くの街まで送ってやるくらいが精々さ」

桃香「......うん」

 

公孫瓚からそう諭される桃香ではあるが、その顔は複雑といったものであった。そんな彼女であったが、家康に振り返り天和たちのことを聞く。

 

桃香「それで....ご主人様。天和ちゃんたちのことだけど、このまま平原に連れていっていいんだよね?」

家康「ああ。三人はそれでよいな?」

 

家康が三姉妹に問いかけるも、天和たちは頷きみせる。

 

天和「うん!」

地和「ちぃたちもしっかりと生きるから」

人和「ええ....あ、でも...」

 

人和はチラチラと元親に視線を向ける、まるで気になるような素振りで。天和と地和も人和と同じで元親にチラチラと見ている。

三姉妹が元親を見ているからか、家康は今度は元親に目を向けて尋ねる。

 

家康「元親。お前はどうする?」

元親「へっ!家康よぉ。聞くのは野暮だぜ?友であるおめぇの為に力を貸すぜ」

 

桃香「長宗我部さん!ありがとうございます!」

愛紗「よろしくお願いします、長宗我部殿」

鈴々「よろしくなのだ!」

 

稟「よろしく」

雷々・電々「「よろしくお願いしまーす」」

 

元親「おうよ!あと、今後俺のことは兄貴と呼んでくれ!」

 

桃香・愛紗「「は、はい」」

鈴々「兄貴なのだ!」

雷々・電々「「アニキー!」」

 

稟「わたしは遠慮しときます」

 

天和・地和・人和「「「///」」」

 

元親が家康の陣営に加入してくれたことに皆嬉しく思う中、天和たちは元親が一緒にいてくれることに顔を赤くして嬉々としていた。

 

家康「して...太史慈殿はどうする?」

公孫瓚「そうだな。良かったら、幽州に....」

太史慈「うーん。私も当分、食客や宮仕えはいいかな....。しばらくは気楽にブラブラさせてもらうよ」

桃香「....そうだよね」

 

太史慈の心情を鑑みれば致し方ない。此度の件では彼女に相当の心にくるものがあった、それは彼女だけでなく県令がいなくなった所為で農民に戻るという兵士たちもかなりいる。

 

太史慈「あ、別に劉備や家康、公孫瓚が嫌ってわけじゃないからね?

気が向いたら、幽州にでも行かせてもらうよ.....今度は、ゆっくり遊びにね」

桃香「うん。その時は、みんなで歓迎するよ」

 

太史慈の言葉に桃香は笑顔となる。彼女は今回心の荷を下ろして心の行くままに過ごすのだろうが、家康はいずれ太史慈が主君を得るだろうと思う。

すると彼女と代わるように趙雲が口にする。

 

趙雲「では、幽州には私が同行させていただこう」

愛紗「お主がくるのか!?」

趙雲「なんだ。私では不服か?」

愛紗「うむむ。そういうことではないが...」

 

唸ってしまう愛紗ではあるが、口では趙雲が上なのはこれは誰の目でも明らかである。

仮に言い合いになっても結局は言いくるめられ、煙に巻かれるのがオチである。

性格的に正反対な愛紗と趙雲ではあるが、いずれ趙雲は大事な仲間となると考える家康は頑張って慣れてほしいと心の中で思っておく。

 

家康「しかしいいのか?食客で酷い目にあったばかりのはずだが...」

趙雲「なに。私が必死に城を守っておる間、子義は随分といい目を見たようですしな。

私もそれにあずかれるなら良かろうと」

趙雲「何より、路銀のアテに逃げられてしまいましたので、一人旅をする金がない」

公孫瓚「そうか。なら、歓迎する」

趙雲「.....む?伯珪殿か」

公孫瓚「どうした。私の所じゃ不満か?

趙雲「いや、そういうわけではないのですが....」

 

彼女からしてみれば、そんな反応になる。

賊を追い払った後の様子からしても、桃香や愛紗のほうが気になってただろう。

 

桃香「あはは....。わたしの所じゃ、食客を養うようなお金なんてないし。

趙雲さん、仕官がしたいわけじゃないんでしょ?」

趙雲「ふむ....」

雷々「じゃあ雷々たちの食客になる?いいよね、電々」

電々「うん!食客って一人くらいいるといいなーって思ってたし、趙雲さんくらい強くてカッコよかったら大歓迎だよ!」

 

などと話が盛り上がるが、趙雲は考えた結果...

 

趙雲「.....伯珪殿、世話になる」

公孫瓚「おう。歓迎するよ」

 

流石に小さい二人の食客っていうのは不安が大きかったようで、同じ幽州ならまた一緒に動く機会もあるだろうと家康は思った。

 

太史慈「みんな、本当に世話になったね。なら....また、どこかで!」

 

太史慈はそのままその場から去る。

 

家康「よし!ワシらも平原に帰ろうか!」

 

桃香「うん!」

 

愛紗「はい!」

 

広い大陸、一度別れた人とまた会えるなど、それこそ砂漠に落ちた宝石を見つけるようなもの。

だが名前を知っていれば。

会いたいと思っていれば。

再会できる可能性は、ぐっと上がるはずである。




今回はここまで。二人目のBASARA武将出すのに結構かかります。申し訳ございません。


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キャラクターストーリー・雷々・電々 桃香ちゃんには負けない

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



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イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


ある日のこと。家康が政務してる最中であった。

愛紗が申し訳ないと言った表情で家康に謝罪を述べている。

 

愛紗「ご主人様。申し訳ございません....このような雑事を手伝わせてしまって」

家康「いやなに。こんなのは慣れているから大丈夫だ。それに稟も居るから心強い」

稟「お任せください、家康さま」

 

晴れて漸く家康に真名で呼ばれるようになった稟も、こうした雑務にも進んで家康のためと行っている。

家康も国主であり、日ノ本の天下人でもあるからか、国務に関して仕事なども手馴れていた。

なので何も苦ではない、だが愛紗としては家康にこんな雑務をやらすのは心苦しいようで。

 

愛紗「本来であれば、天の御使いであるご主人様には悠然と構えていただきたいのですが....」

家康「いやぁまぁ、その天の御使いというのはやっぱり痒い呼ばれ方で...それはそれで居心地悪そうでな」

愛紗「....そ、そうですか」

 

家康は愛紗の表情を見て不味いと思った。彼女からしたら、大したことくれなさそうみたく聞こえてしまったのかと焦る。

 

家康「ああいや!そのだな!こうして愛紗や桃香と気の置けない仲というか...一緒に仕事を出来る方が、楽しいと思ってな...!」

愛紗「っ!そうですか...!」

稟「むぅ」

 

 

愛紗の顔は嬉しさと安堵の気持ちで一杯で華やいだ。だが逆に稟が頬を膨らませてしまっているが、家康は一旦おいておこうと思う。

 

家康「....っで、次はなにを見ればいい?」

愛紗「はい!私が選んだ者の中から、隊の長を選んでいただきますでしょうか」

愛紗「天の御使いに選ばれたとあれば、皆も一層意気に感じることでしょう」

家康「そうか」

愛紗「能力などに関してはご心配には及びません。どの者を選んでも、十全に部隊を指揮することができるでしょう」

 

今度は部隊を指揮する長を決めてほしい旨を家康に伝える。

 

愛紗「それと....部隊の間で使う、連絡手段について、何かお考えをいただければと」

家康「ふむ、連絡手段か」

凛「確かに戦場では、狼煙や文だけで意思疎通は難しいでしょう」

愛紗「ええ。そのような難しい状況も想定されます。例えば...」

 

愛紗が指でバツを作ってみせる。

 

家康「ここから先は進めない、か」

愛紗「はい。そのような意味です。簡単な合図を取り決めておくことで、不測の事態にも対応できるようにしておきたいのです」

家康「なるほど....」

愛紗「お願いしてもよろしいでしょうか?」

家康「あい分かった!考えておこう!」

愛紗「お願いします」

 

愛紗や鈴々がおり、雷々や電々、軍師として稟も加わり友である元親までもこちらに来てくれた。

手勢としてはまずまずといって良いぐらいかもしれないが、だがこの先の乱世において、まだ人はほしいと思う家康。

軍備に関して家康が指揮している。補佐には愛紗と稟が携わってくれている。

桃香も役人の仕事を懸命にやっている、家康もより一層励まねばと思う。

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

仕事がひと段落して家康は廊下を歩いてた。そこへ...

 

雷々「電々。あそこのお茶美味しかったね~」

電々「ね~。わたしたちのお店でも売ってみたいね」

 

通路の反対側から雷々と電々が歩いてきた。

 

家康「ん?雷々と電々」

雷々「あー、ご主人様だ!」

電々「こんにちは~!」

家康「二人揃って....はいつものことか、なにしていたんだ?」

雷々「なにっていうと....なんだろうねえ?」

電々「うーん...見聞を広めてる、かな?」

 

何とも的を得ない話ではある。だがそんなのこの二人には関係ないみたいで、自分たちの調子で話している。

 

雷々「あ、そうそれ!

雷々たちは色んなお店を参考にしないといけないからね!」

家康「ほう!勉強熱心だな」

雷々「えへへー、それほどでもー!」

電々「どこのお菓子もおいしくって止まらなくなっちゃたよー」

 

ただの食べ歩きしていた様子。年頃の女子、如何にこの乱世で生き抜こうと強くあろうともまだ少女たちなのだ。

 

家康「商材になるのなら、大事なことだ」

 

二人をみて微笑ましくなる家康はふと思い、二人に尋ねる。

 

家康「そうだ。桃香がどこに居るか知らないか?」

雷々「桃香ちゃん?会ったよ」

電々「うん、ついさっき」

家康「そうか。どこだ?」

雷々「ご主人様、桃香ちゃんに用事?」

家康「ああ。愛紗と一緒に部隊の編成で連絡手段を考えていたから、桃香にも確認してもらおうと思ってな」

 

家康がそう告げると、二人の眼が輝いて彼に称賛する。

 

電々「すごーい!ご主人様、愛紗ちゃんみたいなお仕事も出来るなんて!」

家康「ははは。こんなの慣れてるからなんてことはない。所で桃香は?」

電々「あ、そだったそだった。

桃香ちゃんはね、お茶屋にいるよ~」

家康「茶屋か」

 

どうやら彼女は息抜きをしているらしい。だがその直後に理由はそうではない。

 

雷々「なんかね。お茶屋のご主人が急にお腹を壊しちゃったんだって!」

電々「で、たまたま通りがかった桃香ちゃんが、店番を変わってあげたって言ってたよ」

家康「なるほど。桃香らしいな」

 

いかにも桃香らしいと笑みを浮かべてしまう。たとえどんなことでも困っている者、辛くしている者を見逃さず無視せず助けようとする桃香の人徳である。

 

雷々「ねー!桃香ちゃんは優しいよね!」

電々「そこのお茶もすっごく美味しかったんだよ~。

桃香ちゃんにすすめられて、ついつい飲んじゃったんだけど」

 

どうやらその店の茶は美味いなのであろうが、それでも桃香ほどの明るい美少女から勧められれば、なんでも美味しくいただける気がすると感じる。

それだけ彼女には愛嬌が大きいのだ。

 

雷々「あ、で、お仕事なんだよね!

雷々たちが桃香ちゃんを呼んできてあげよっか?」

家康「ん?だが戻ってきたばかりだろ?

市場まではそう遠くはないし、ワシが直にいっても...」

電々「ううん、いいのいいの!ご主人様はここで待ってて~!!」

 

電々は待っててね、と両手で制してから、雷々と共にばたばたと走って行ってしまった。

 

家康「....下手に動いてすれ違いなるよりも、二人に任せておくか」

 

その後二人の言伝によって急いで屋敷に戻ってきた桃香は、無事家康と入れ違うことなく戻ってきた。

桃香は家康に呼ばれたことに内心ドキドキしながらも、家康に部隊間の連絡などの手段に関しての話を聞き、ぽわわ~...という効果音が聞こえてきそうな、心から感心しきった表情だった。

 

桃香「じゃあ、愛紗ちゃんのところにいってくるね。

ご主人様、わざわざありがとう!」

家康「ああ。雷々と電々が呼びにいってくれたが、二人は?」

桃香「あー....急いで戻ってきたから、ちょっとわからないかも」

家康「そうか。ではワシがちょっと探してこよう」

桃香「うん!じゃ、ご主人様、また後でね!」

 

桃香は手を振りその場から立ち去る。そして家康は雷々と電々の二人を探すため、市場へと向かう。

市場へとやってきた家康は、人が行きかう中をゆっくりと見回すが、二人の姿は見つからない。

人混みの中、見つけるのはなかなかに難しいそうだ。

 

電々「よってらっしゃいみてらっしゃ~い!」

家康「ん?」

電々「とーってもおいしいお茶ですよー!

買い物休憩に一杯いかがですか~?」

家康「あれは...」

 

電々「さー、おじさま、是非飲んでいってくださいな~」

「あぁ、それじゃあ一杯いただこうかねぇ....」

電々「は~い!雷々、お客様一人ご案内~!」

雷々「はいよー!」

 

茶屋は雷々と電々の姉妹に乗っ取られていた。電々に案内された老人は、店の中に設けられた座席に腰掛け、雷々が運んできたお茶をすすっている。

 

電々「あー、ご主人様。どうしたの?」

 

家康に気づいた電々がぱたぱたと戻ってくる。

 

家康「どうした、ではないんだが....二人を探しに来たんだ」

電々「わたしたちを?なんで?」

家康「いやなに。あのあと桃香に、ちゃんと仕事の内容を伝えることが出来たからな。

その礼を言おうと思ってな」

電々「あ、そうなの!でもいいよう、お礼なんて~」

家康「いやそういうわけにもいくまい...。ところで、二人はここで何をしてるんだ?」

電々「店番だよ~?あ、そうだ!お礼したいなら、ご主人様もお茶を飲んでって~!」

 

電々は言うやいなや俺の腕をがっちり抱きしめて、茶屋の中に引っ張っていく。

 

電々「雷々、ご主人様ごあんな~い!」

雷々「いらっしゃーい!さぁご主人様、ここに座ってね!お茶は冷たいの?熱いの?」

家康「ならば、冷たいので...」

雷々「はーい!ちょっとお待ちを~!」

 

雷々は店の奥に引っ込むと、すぐに湯飲みをお盆に載せて戻ってきた。

 

雷々「お代は後ほど~!」

家康「ああ。わかった」

 

流石は商売人、その行動力は見習うべきなのかもしれぬと思う。

 

家康「しかし、どうしてまた茶屋を...?」

電々「んとね。お茶屋のご主人さんね、お腹が痛いの治らなくて、今お医者さんのところにいってるの」

家康「そうだったのか」

雷々「でも桃香ちゃんはお仕事があるから、雷々たちが店番を引き受けたってわけ!」

 

彼女たちの説明を聞きながら、出された湯飲みを啜り飲む。日ノ本のお茶とはまた違う味わいではあるが、独特で且つ旨味がよい。

 

電々「それじゃあ、またお店に行ってくるね!」

雷々「わかった!」

家康「二人して、生粋の商人なのだな」

 

雷々「そうだよ!わたしたちは商売人だからね!」

電々「お茶もいっぱい売っちゃうよ~!

桃香ちゃんには負けないんだから!」

 

そう息巻いて、電々は店の外に出ていった。

 

家康「(桃香に負けない?どういうことだ?)」

 

その後も電々が客引きを行い上手く客人を引き入れる。雷々も店内で接客を行いながら商品の提供も器用にやっている。

雷々も電々も元気がよく何より可愛い。

ああいう少女たちに声をかけられれば、ホイホイと店に入ってしまうのは仕方ない。

 

そして時間は過ぎて、いつ間にやら夜になった頃。既に客人たちはいなくなり店じまいとなった店内、医者に見てもらっていた本来の店主が戻って来ており、店番をしてもらっていた雷々と電々に感謝を述べていた。

 

店主「いやぁ....申し訳ない。

すっかり店の面倒を見てもらっちまって」

 

雷々「いーのいーの!」

電々「自分たちのお店が持てたみたいで楽しかったもんね~」

 

店主「はっは、そいつは良かった!....おお、いつものよりも売上が多いな...」

 

雷々「ほんと?」

電々「さすが、わたしたちだね~!」

 

店主「うーん、やっぱり可愛い女の子の売り子でも雇ったほうがいいのかねぇ....。

って午前中の売上もすごいな」

 

店主は目を丸くしながら売上を確認している。

 

家康「(ん?午前中であれば、桃香が店番していた頃か...?)」

 

店主「あんたたちもだが....劉備さん、だったな。あの人も商才があるのかねぇ。よくよくお礼を言っておいてくれよ!」

 

雷々「うん!わかったよ!」

電々「体に気をつけてくださいね~!」

 

雷々と電々が別れを告げてから、家康も二人と共に店をでた。

 

雷々「むすー」

 

店をでてすぐ、雷々が鼻息荒く膨れていた。

 

家康「ん?どうしたんだ?雷々」

雷々「何でもないよー」

家康「そうか?」

電々「んとね、桃香ちゃんの時のほうが、わたしたちよりも売上が良かったんだ」

家康「ん?だが、桃香が店番をしていたのは朝の間くらいしかなかったはずじゃ...」

 

売上自体であれば雷々たちのほうが良かったのだが、桃香が雷々たちと同じくくらい店番をしていたら、かなりの売上をたたき上げていただろうと雷々と電々は説明してくれた。

 

電々「おかしいよねぇ。電々たち、二人で店番してたんだから、ほんとならもっともーっと売上ててもおかしくないのに....」

雷々「うーん。朝の方がお茶を買ってくれる人が多かったのかなぁ」

 

落ち込みを見せる雷々と電々。それを家康は考えながら自分なりの考えを伝えてみる。

 

家康「....そうだな。雷々が言うように、朝の方が茶を飲みたいという者が多いのかもしれない。

肌寒いと温かい茶を飲みたいなるしな」

電々「あ~、確かに!朝はやっぱりほかほかのお茶がいいよね~。

目もパッチリって覚めるし」

雷々「電々、それじゃあダメだよ!お昼以降もお茶を売れるように考えるのが、商売人でしょ!」

電々「あわわ、たしかに!」

雷々「そうだよ!さ、お部屋に帰ったら、どうしたらお茶がもっと売れるのか、考えてみよ!」

電々「うん!」

 

諦めない姿勢。それを見事前向きに見せる二人に家康は微笑ましく思える。

 

家康「何事も勉強だな」

 

雷々「そうだよ!雷々たちは大陸一の商売人になるんだから!」

電々「桃香ちゃんに負けられないもん!」

 

商売人としての意地というものなのだろう。しかし果たして勝ち負けはあるのだろうか...っと思わなくもないが、商売人の世界はそれほどに厳しいものなのであろう。

雷々と電々も今は満足できなくとも、経験を積み勉強してく間に、桃香と比べるだけじゃなく自分たちのやり方を身につけていけばいい。

 

家康「(まだまだ、これからだからな)」

 

 




今回はここまで。


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キャラクターストーリー・稟 鼻血は忠義

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



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イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


ある日、自己鍛錬を励んでいた家康。気づけば既に昼時になっていた。

 

家康「昼か。うん、昼食にするか!」

っと、用意していた手拭いで汗ばんだ身体を拭く為に、上半身に身につけている甲冑やフード付きの陣羽織を脱ぐ。

脱いだ家康の上半身は裸ーー鍛え抜かれ、盛り上がりを見せる筋肉が見られる。

嘗てまだ槍を扱っていた頃はここまでの筋肉はなかったが、彼が絆の為にと槍を捨て、天下を掴むために自らの拳を武器とすると決意してから死にもの狂いで鍛練して今の彼が此処にいる。

その時である。

 

家康「ん?!.....誰だ!」

 

身体の汗を拭く自分の背後に気配を感じ、彼は険しい顔で一気に振り向いた。

鍛練後だとどうしても神経が尖ってしまうのは武将としての性と言えよう。

背後より来たとされる人物は、これに....

 

「きゃあ!!」

 

家康「ん?....り、稟!」

 

驚き、堪らず尻餅を着く形で倒れてしまった。その正体は稟であった、彼女は痛みに涙目なりながらも家康を見上げて口を開いた。

 

稟「す、すみません...」

家康「大丈夫か!稟。すまない、驚かせてしまったな」

稟「いえ!」

 

家康は彼女に手を差しのべる。稟は家康から差しのべられた手にドキッとしてしまい、頬を赤く染めてしまい彼の手を掴むべきかと躊躇う。

 

家康「どうした?稟」

稟「い、いえ!!な、なにも!!.....って」

家康「ん?」

 

稟「....」

稟はようやく気づいた、家康が今上半身裸であるのを。彼の逞しい肉体ーー無駄のない引き締まった筋肉、腹の腹筋など見事キレイに六つに分かれている。

しかも先ほどまで鈍ってはいけないと自主鍛練を行っていた為に、汗ばんだまま。

それが目の前で自身が主と仰ぐ人物のそんな姿に稟は....

 

稟「....も」

家康「も?」

稟「申し訳ありませんっ!!」

家康「お、おい!稟!」

 

っと、彼女は堪らずその場から逃げるように猛烈な走りで去っていった...鼻を抑えながら。

無我夢中に走り、自室にたどり着いた稟は勢い強く閉じた扉に張り付いたまま、鼻を抑えながら息を荒くしてしまっている。

 

稟「はぁ...はぁ...はぁ...」

 

抑えてた鼻から手を離し、両手を自身の身体を包むように抱く。

 

稟「家康さま...はぁ...はぁ」

 

高ぶる鼓動が歯止めが利かないのを感じ、彼女の口から自然と主・家康の名がでる。

 

稟「...はぁ...はぁ....家康、さまぁ」

 

その彼女の鼻からは一筋の、赤い、雫が.....。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

その後日....。

 

桃香「それでね愛紗ちゃん、ご主人様ったらねぇ」

愛紗「そうなんですか?フフッ」

 

桃香と愛紗が楽しそうに談笑しながら屋敷の廊下を歩いてる最中であった。

 

???「家康さまっ!!」

 

桃香・愛紗「「っ!?」」

 

廊下にも響くような耳がキーンとなる程の大声、二人は一体何事かと仰天する。

キョロキョロと見渡すと、それは家康がよくこの街の政務をする際に使う部屋から聞こえる。

 

稟「今ではないと仰いますが、では!いつがその時なのですか?!」

 

愛紗「この声....稟、ですねぇ」

桃香「そうみたいだね。ご主人様がお仕事に使う部屋から、だね」

愛紗「はい...」

 

その部屋では稟が家康に鬼気迫るが如く、鼻息荒くして迫る形となっている。

対する家康は苦笑交じりに困り果てながら後ろ髪を掻いてしまう。

 

稟「何故、惰弱なお考えで水を差すのですか」

 

家康「惰弱と言われてもなぁ...」

稟「今こそ飛躍の時。....家康さまはお感じになりませんか?この高まりを」

 

漸く真名を呼んで貰えるようになった彼女は最近家康に対して、忌憚なく意見具申するほどに家康付の軍師として、彼を補佐する副将ともとれる立ち位置にいるようになっている。

だがこの雰囲気、ほのぼのと言えるものではない。

そんな彼女、普段のクールさとは打って変わって、両手を大きく振り回して熱の籠った弁を続けている。

 

家康「まぁだが。戦勝に沸くのは当然だろう」

稟「その機を最大限に活かすことを、なぜお考えにならないのですか!」

家康「だが未だワシらは弱小だ。今ある手勢も、どれも貴重なんだ」

稟「しかし!家康さまのお力のおかげで志願者も増えつつあります!」

 

稟の口からでた志願者というのは、これまでに活躍した家康の武勇伝に惹かれて平原一帯の若者たちが、彼の膝元にて兵士となりたいと募ってきている。

それは良いことなのだが....

 

稟「この一帯の後顧の憂いを断ち切りましょう!!なのに...そのための策に、なぜ異を唱えるのですか!」

家康「確かにまだこの平原にもまだ少しではあるが、賊は存在している」

 

彼女がここまで熱くなっているのは、平原にはまだ賊は出没している。その跋扈している報告が家康の下に再三届いているが、しかしそれを彼は今回、出陣しなかった。

 

稟「辺りに巣くう賊を、なぜ家康さまは見て見ぬふりをなさるのですか!?」

家康「稟の気持ちも分かる。ワシとて出来るなら出陣すべきなのだと理解もできる」

稟「であれば!」

家康「だが、戦するにしても動くのは人だ。更に必要な糧食もまた、人の手がなければ作れないんだ。戦には兵が、糧食は献上してくれている民の存在がなければ立ちいかない」

 

国主であり今まで数数え切れない戦を経験をした者でなければ、それは言えない言葉である。

兵がなければ戦などできないし、その戦に欠かせない糧食がなければ腹が減り戦うなど不可能。

しかもその糧食とて民の協力が無ければ用いることなど出来ないのだ。

 

稟「しかし民たちは賊に脅され、喘いでいるのです!

それを家康さまはお見逃すおつもりですか!」

家康「....そう捉えても構わない」

稟「なんという愚挙...なんという愚行!蟻の一穴より堤も崩れるというのに...」

稟「それにこの一事を見逃しては、天の御使いでもある徳川家康の風評にも障りましょう!!」

 

何とも軍師としては頭に血が上り過ぎているのでは?思えてしまうぐらい、今の彼女は冷静さが見受けられない。家康はそれが気になっている。

 

家康「稟....すこし頭に血が登りすぎじゃないか?」

稟「そんなことは...!」

家康「逸るのも分かる。だが何も一人で考えこみ過ぎて、本来の自分を見失っては元も子もないぞ」

稟「し、しかし...!」

家康「大事と小事を同じ天秤にかけたくない稟の気持ち....それを無下にしたいわけじゃない。

そうだな....稟がそう申したいのであれば、お主の言う通り、制圧する部隊を派遣しよう」

稟「.....御意!」

 

稟の粘りが勝ったのか。家康は苦笑しながらも彼女の想いを汲んだようだ。

 

家康「兵はどれくらい必要だ?....なるべく少数精鋭で見積もってほしい」

稟「はい....では」

 

 

 

 

 

 

 

稟「...っと、いかがでしょうか?家康さま」

家康「ああ。....それにしても」

稟「はい?」

 

家康は席を立ち上がり、稟の目の前まで近寄る。対する稟は家康が目の前まで近寄ってきたことに、焦り戸惑う。

 

稟「い、いいいいいいえやすさまっ///!?」

家康「ありがとう、稟。感謝しているお前には」

稟「そ、そそそそそそんな!!」

家康「ワシには過ぎた軍師だ」

稟「い、家康さま...」

 

そして家康は何を思ったのか、稟の頭に己の手を乗せて撫でてやることにした。

 

稟「っ!!?」

 

これに堪らず彼女の顔は茹でたタコのみたく真っ赤になってしまった。

 

家康「これからもワシと桃香を支えてくれ、稟」

 

稟「.....」

 

家康「稟...?」

 

稟「....ぶはっ!!!」

 

家康「っ!!?」

 

彼女の鼻からとんでもない量の鼻血を噴出したのだった。そして自ら作った鼻血の溜まりに崩れ落ち、稟はニヤニヤとした顔して動かなくなった。

 

家康「り、稟!?お、おい!」

 

すると扉が開かれ、桃香と愛紗が入ってきた。

 

桃香「どうしたの!?」

愛紗「ご主人様!!」

 

家康「ふ、二人とも!?」

 

何とも間が悪い。桃香と愛紗の視界には家康と鼻血垂らして倒れる稟....このヤバイような状況に、どう言い包めることが出来るか家康は顔を引きつるしかなかった。

 

桃香「これは...」

愛紗「どういうことですかぁ!?」

 

桃香・愛紗「「ご主人様ぁ~!!」」

 

家康「あ、いや...これはぁ...」

 

稟「....あ、あぁ....家康さまぁ///....うぅっ///」

 

当の本人は何とも幸せに満ちているようである。

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。


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キャラクターストーリー・張三姉妹 兄貴は召使い

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



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イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


ある日、元親は家康に呼ばれて彼の執務室まで来ていた。

 

元親「家康。どうしたんだ?」

家康「ああ。来てもらってすまないな...」

元親「なぁに気にすんな。っで?用件ってのは?」

家康「ああ。天和・地和・人和の三姉妹のことは知ってるだろ?」

元親「ああ」

 

天和・地和・人和の三姉妹――本来の名である張角・張宝・張梁の三人。怪しげな書物を手にした為に黄巾の乱を引き起こしてしまい耐えられず、黄巾党から逃げる。

逃げた先の青州の斉国にて元親と出会ったことで、家康の保護を受けられることとなった。

 

元親「そのあいつらがどうしたんだ?」

家康「今日から元親。お前に彼女たち三人の仲介をお願いしたいんだ」

 

家康からの思わぬ言葉に元親は首を傾ける。彼は確かに斉国にて張三姉妹とは面識があるがそこまで深く知った仲ではない、にもかかわらず何故自分なのかと思ってしまう。

 

元親「おいおい家康。どうして俺があいつらの仲介役をやるんだ?」

家康「桃香もワシも、この平原の市政で彼女たちまで手が回らない。

稟もワシたちの補佐など他にもやってもらっている仕事があるし、愛紗や鈴々、雷々や電々も訓練などで無理なんだ」

元親「なるほどな」

家康「それに、彼女たちの存在は戦で居場所を失った者たちの心の支えにもなる。

彼女たちの歌はそれだけ、皆の心を癒してくれる」

稟「つまり、彼女たちに今後慰安として青州平原各地で慰安として、歌う旅芸人をしてほしいということですね」

家康「そうだ」

 

張三姉妹の歌は多くの人の心を惹きつける程に魅力的な物である。

実際、斉国では彼女たちの歌に守備隊兵士たちは士気を向上させて苦戦しながらも、見事城を防衛していた。

今後もこの乱世で家を、家族を失い心の傷を負う者たちが現れ続けるだろう、なればこそ彼女たちの存在はある意味必要不可欠なのだ。

 

元親「そうかい。そういう事情なら仕方ねえ」

桃香「ごめんなさい、元親さん」

元親「なぁに気にすんな」

家康「頼む、元親」

 

家康と桃香は申し訳なく思いながら頼み込む。そんな二人に対し、にこやかに元親は気にしてないとばかりに口にする。

 

元親「だから気にすんなって。んじゃ!行ってくるぜ」

 

そう言って部屋からでた元親。やり取りを見ていた稟が家康に話しかける。

 

稟「元親殿にお任せして良かったのですか?」

家康「大丈夫さ。元親はああ見えて面倒見がいいんだ」

桃香「そうなの?」

家康「ああ。日ノ本では元親に慕っている人間が大勢いるからな、皆あいつの人柄が好きでついてきているんだ」

 

元親の国・四国には皆元親の兄貴ぶりや男気に惚れて慕い、海の果て地の果てまでも付いて行くと豪語するくらいに義理堅い者たちばかりである。

それは全て、長宗我部元親の人間がよく形となっている証拠である。それを友でもある家康が分かっているからこそ、張三姉妹を元親に任せると決めたのだ。

 

桃香「元親さんって凄いんだね!」

稟「人は見かけによらないというわけですか」

家康「元親なら上手くやってくれるさ!」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

元親「さぁてと....あいつらは、いるかな?」

 

元親は三人がよく居るという酒屋を訪れた。

何度か顔を合わせてはいるが、斉国以来まともに会話する機会がなかった。

店内を見渡してみる元親、するとそれらしき姿が目に映る。

 

元親「お...いたな」

 

彼の視線の先に....

 

 

地和「ちょっとお姉ちゃん、それちぃの」

 

真ん中に座った天和が杏仁豆腐を手に取ると、その右手側に座っていた地和が抗議の声をあげている。

だが天和は明るく笑いながらいなす。

 

天和「良いでしょ、別にー。ちーちゃんが新しいのを頼めばいいの。はい解決ー」

地和「いいけどー。すみません、杏仁豆腐ついかー!」

人和「太らないように注意してよね、二人とも」

 

姉二人に注意する人和だが、それをそんなの気にしないとばかりに言い返す。

 

地和「大丈夫♪食べても太らない体質だもーん」

天和「ちーちゃんよく食べるわねー。おねえちゃんも負けてられなーい」

 

天和は腕まくりをすると、目の前のごま団子や小籠包を次々と口に入れていく。美味しい美味しいと声に出しては、次の料理に手をだしていく。

 

人和「はぁ...」

 

さっきの二人を窘める人和も、呆れ溜息をつきながらも箸を動かして手を止めず食している。

食いしん坊な奴らだと呆れつつ、とりあえず元親は声をかけてみることに。

 

元親「よぉ!いい食いっぷりだな」

 

天和「あ!」

地和「え!?」

人和「っ!!」

 

突然現れた元親に声をかけられた三人は同時に驚き、思わず喉を詰まらせて苦悶の表情を浮かべながら水を一気に飲み干した。

 

天和「はぁ...はぁ」

地和「喉、詰まらせて死ぬとこだったわ...」

人和「けほっ!...はぁ」

 

元親「飯時に邪魔してわりぃな」

 

食事中に話かけた自分が悪いからと謝罪の言葉を述べる元親。

彼に対してそんな深く責めることはせず、人和が気にしないと口にする。

 

人和「気にしないで。所で...何しにきたの?元親、さん」

 

元親「おいおい。そんな他人行儀な呼び方すんなよ...俺のことは兄貴と呼んでくれ。

俺の故郷じゃ、仲間の野郎どもからはそう呼ばれてるんだ」

 

他人行儀な呼びに待ったをかけて、自身が呼ばれ好んできた「兄貴」という呼びでいいと三人に告げる。

人和は「流石に、そのそれは恥ずかしい」と何故か顔を赤くして抵抗を見せるが、天和と地和の二人は人和とは違い、不敵な笑みを浮かべてそれは良いこときいたと言う顔をする。

 

地和「じゃあさぁ!ちかにぃって呼んでいい?」

元親「ん?おお!好きに呼びな!」

天和「じゃあおねえちゃんはぁー....ちかくん!」

元親「いいぜぇ!呼びたいように呼べ!」

 

天和・地和「「(よし!!)」」

 

人和「ちょ!」

 

三人はそれぞれ反応を見せる中、元親は今回三人の前に現れた理由を告げる。

 

元親「俺が今回来たのは、家康からお前たちの世話係を任されたんだ。よろしくな」

地和「世話係?」

人和「家康さんから?」

元親「そうだ」

天和「そうなんだぁー....ふーん」

 

天和は席から立ち上がり、近寄ってねめつけるような視線をむけ、元親を上から下から舐めるように見てくる。

元親からしたら少しだけむずかゆい気持ちを抱いてしまう。

 

元親「ん?どうした?」

天和「うん!ちかちゃんなら、いいよ!」

地和「ちょっと!おねえちゃん!」

 

そんな近い距離の二人の間に割って入り声をあげる。

 

地和「おねえちゃん...ちょっと近い!!」

天和「えーそんなことないけどなぁー」

人和「二人とも、元親さんの話は終わってないはずよ。失礼よ」

天和・地和「「はーい」」

 

二人に注意した人和は元親に視線をむける。

 

人和「...桃香さんから聞いたけど、元親さんも家康さんと同じ天の国から来たんでしょ?」

元親「ん?ああ、そうだぜ」

人和「天の国じゃどんなことしてたの?」

地和「あ!それ聞きたい!」

元親「あ?そうだなぁ....自分たちで作った船で海に渡って...」

天和「海?」

 

海を知らず行ったこともない彼女からすると興味が湧く。

 

元親「ああ。海は広いぞー!でっけぇ!果てがねぇ!」

 

そう嬉しそうに語る元親に天和は共感したかのようにワクワクしながら耳にする。

 

天和「えー!いいなぁ!!おねえちゃん、海行ってみたい!」

人和「天和姉さん。話が逸れるから今は黙って....。ところで、元親さんは世話係って言ったけど、どんなことをするの?」

 

人和は長女が子供みたくなっているのを止めて本題に移る。

 

元親「あー...そうだなぁ。けどまぁ、お前たちの本来の目的は歌う芸人として人気者になる...ってことなんだよな?」

地和「まぁ、ね」

元親「お前らの歌で斉国の奴らはみんな元気になっただろ?ああいう風に、今後悲しむ奴らが現れる。

ならお前らがしばらくやることは...」

人和「歌で民の人たちを癒すってことね」

 

人和は指でメガネを押さえながらそう口にする。それを聞いて地和は若干面倒くさそうな嫌な顔をしている。

 

地和「えー....」

人和「ちぃ姉さん。わたしたちは我儘を言える立場じゃないのよ?」

地和「だってぇ!」

人和「じゃあ、どこかの勢力に捕まって...」

 

人和は親指を立てて、首を横に掻ききる姿勢を取ってみせる。

あどけない顔の割に容赦ない。

 

地和「うー.....それもやだ」

人和「なら我慢してよね」

地和「ぐぬぬー...」

 

うなりながらも、地和は身を潜めてしまう。

人和に頭が上がらないみたいである。

そんな中、天和は嬉々として元親に問いかける。

 

天和「わたしたちの世話係なら、頼りにしてもいいんだよねぇー♪」

元親「おうよ!この西海の鬼にどんと任せろぉい!」

 

元親は自身の胸板に力強く叩いて胸を張る。

 

天和「じゃあ....ちかくん!お茶とお菓子をとってきてぇ♪」

元親「おう。いいぜ」

 

天和の求めに元親は茶と菓子を天和の下まで持って戻る。

 

元親「ほらよ」

天和「うん、ありがと♪」

地和「あ、ちぃは杏仁豆腐を追加ね!」

元親「へいへい」

人和「私は鉄観音茶おかわり」

元親「おうよ」

 

元親は言わるがまま、次々とお茶や料理を用意してやる。三姉妹にこき使われると言うのに疲れる風はない。

 

天和「ちかくん、頑張れ♪」

地和「ちかにぃ、早く!」

人和「お茶、お願い」

 

元親「ったく。注文が多いじゃじゃ馬だぜ」

 

そう愚痴を口にする元親を余所に、天和たちはそんな元親を見て嬉しそうにしている。

 

天和「えへへ、これを機にちかくんと仲良くしたいね~♪」

地和「ま、まぁ...頼りがいあるしぃ~、か、カッコイイし...///」

人和「それに何かあっても、助けてくれそうだし、ね」

 

 




今回はここまで。


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キャラクターストーリー・鈴々 こっそりお昼寝なのだ!

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


一体これはどうしたのか?...家康は天にむかってそう叫びたくなる衝動に駆られてしまう。

 

家康「忙しい...」

 

現在徳川家康は...忙しい、それも途轍もなく忙しい。日ノ本とは勝手が違う為か文化の違いなどもあるのだろう、統治に関して厳しい。

しかし生中な気持ちで行うわけにもいかない。

 

家康「信じてくれる民たちの為に、その絆を裏切ってはいけないな」

 

民の生活を背負ってということ、その責任は日ノ本の時と同じなのは一緒である。

責任はとても重大なのだ、簡単に怠けてはいられない。

....という気持ちが疲れに悲鳴を上げたい弱音よりも強くなる、だが正直机上での仕事よりも前線で拳を振るうのが一番かと思ってしまう。

やはり戦人である彼にとっては机上の書簡や文に目を通す仕事は、目が回るような数があって消耗気味である。

 

稟「家康さま。こちらもお願いします」

家康「ああ」

 

次から次へと、案件が上がってくる。彼を補佐する稟も手伝ってくれるが、やはり文官が足りないのは痛い。

 

家康「...文官足りないのは痛いな」

稟「家康さまに負担がかかり誠に申し訳ございません...」

 

己の不甲斐なさと、主・家康に申し訳ないという顔を見せる稟である。しかし家康は笑いながら手で制して謝罪の言葉は不要とばかりに口にする。

 

家康「稟がそんな謝る必要はないさ。お前も忙しい中、ワシを補佐してくれるじゃないか。ありがとう」

稟「家康さま....」

 

彼女にとって主である彼からありがたいと思える言葉に、頬を赤くして涙目になる。

 

家康「さぁて...仕事に戻ろう」

稟「はい!」

 

目を通す案件は治水工事や窃盗など大きいものから、小さいものまで家康の下まで来ている。

これらの全てを目を通しておかなければ、桃香や愛紗に負担がかかる。

それから時間が過ぎて、ある程度案件の書簡や書類が大分減ってきた頃、愛紗がやってきた。

 

愛紗「ご主人様」

家康「ん?愛紗。どうした?」

愛紗「お忙しいところ失礼致します」

家康「何かあったのか?」

 

すると愛紗の顔が何やら険しくなる。一体どうしたのか?と思いながら訝しむ家康に、愛紗はその理由を吐露する。

 

愛紗「はい...あの、ご主人様。

鈴々はこちらに参りませんでしたか?」

家康「....?いや、今日は見てないな」

 

家康の返答に溜息をつく。彼女の様子からすると鈴々はどうやら何処かで道草をくっているのだろうと、家康は困ったように苦笑する。

 

愛紗「てっきり、ご主人様のところかと思っていましたが....街にでも繰り出したのでしょうか」

家康「話から察するに、仕事を放棄して逃げ出したってところか?」

愛紗「逃げたか、単に忘れているのか....あれはそうまで無責任な人間ではないと信じたいのですが」

 

そう目を閉じて語る愛紗。だがすぐに目をあけ鋭くなる。

 

愛紗「....城の何処かにも姿が見えない以上、庇い立ては出来ませんんね」

家康「なにか大事な用事があるのか?」

愛紗「大事ではない用事で、この忙しい中、探し回ったりするものですか」

 

怒りを押さえ込もうしているのが、口調や態度からも伺える。

 

家康「(これはよっぽどだな)」

愛紗「先日、徴兵した新兵の調練です。

鈴々め....自ら買って出ておきながら、いつまで待っても現れません」

家康「そ、そうか....それは大変だ」

 

愛紗の顔はサボった鈴々に対して許すまじと、般若の如く怒りのオーラを放っている。

その様子を稟が呆れながらも口を開く。

 

稟「しかし、相手が新兵であることが問題なのは事実ですね。

将がなめられると戦を軽んじてしまいますから...」

愛紗「稟の言う通り!そうして命を落とすのは兵なのです!!」

 

っと稟の言葉に肯定すると共に、バンっと家康の机に両手を叩きつけながら力説する愛紗。

 

家康「わ、わかるぞっ!?う、うん!」

愛紗「一軍を預かる将としての心構えが備わっていれば、決して犯さぬ過ちであるはずです!!」

家康「いやまぁ....こういうの言い方は酷いが、鈴々にはまだ早いかもな」

稟「確かに。武に関しては一廉の者ですが....ですが鈴々はまだ子供です」

愛紗「それは承知しています。

ですが、鈴々が、最近の兵士はヒョロイと言い出しまして...」

 

鈴々から見れば皆の武は並程度に見えるであろう、だがだからといって自らやると決めた仕事を蔑ろにするのは別である。

 

愛紗「だから自分が根性を叩き込むのだと吠えるので、仕方なく承諾したのです」

稟「それなのに肝心の本人が仕事を蔑ろにするのは論外ですね」

愛紗「そう。だと言うのに姿を見せぬなど、将として以前の問題でもあると思いませんか?」

家康「確かに、な...」

愛紗「お邪魔しました、では!私は鈴々を探しに行きますので」

 

愛紗は再び鈴々を探しに向かおうと部屋を出て行こうとした時である、家康が待ったをかける。

 

家康「ならばワシも一緒に探そう」

愛紗「いえ、ご多忙なご主人様にわざわざ出向いていただくほどの用事では...」

家康「大丈夫だ、ほとんどの物は片付いている。あとは僅かで、それらもすぐに終わるものばかりだ」

愛紗「そう....ですか」

 

家康から見るからに、頭に血が上ってるように見える。

この状況でのまま見つかれば鈴々は恐らくただ られるだけでは済まない。

 

愛紗「わたしだけでなく、ご主人様まで心配と多大な迷惑をおかけするとは....許し難い。

キツく灸を据えてやりましょう」

家康「(やれやれ)....稟、すまない。終わったら休憩に入って構わないからな」

稟「はい、家康さま」

 

愛紗と共に家康は執務室から出ていき、二人で鈴々を探しに行くことに。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

ピリピリしっぱなしの愛紗と伴ってまずは城門に向かう家康。城から出たなら、門番から聞くのが一番手っ取り早いと思ったからだ。

 

家康「ふむ」

 

考えは悪くはなかったが、空振り。

張飛様はお見かけしていませんと門番からそう言われたのだった。

 

愛紗「では、街のどこかですね。厨房にはいませんでしたので...」

 

家康は内心、どうせ見つかるなら早く見つかり、愛紗の怒りが低く済んでほしいと思っていた。

 

愛紗「庭を見回ってみます。

長丁場になるかもしれませんが、ご主人様はいかがなさいますか?」

家康「付き合うさ」

 

しかし今、見つかっても手遅れのようなもの。最早これは傍にいて手ひどくならないよう、見守ってやるしかないと家康は覚悟するしかない。

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

肩が触れ合う距離で並んで歩く家康と愛紗。その最中、愛紗が語りはじめる。

 

愛紗「あれは昔からこうなのです」

家康「そうか」

愛紗「気ままな上、大切なことがすぐに頭から抜け落ちてしまうのです」

家康「はは、わざとではないのだろ?何か他に楽しいことがあると」

 

っと愚痴を口ずさみはじめる愛紗に苦笑交じりになる家康だが、愛紗はそれに嬉しくもなさそうにする。

 

愛紗「ご主人様もだんだん、鈴々という人物が分かってきたようですね」

家康「そうか?」

愛紗「いくら言ってもあの性分だけは直りません」

家康「....そうか」

 

家康が何とも気の抜けた息をつくと、愛紗はムッとして問いかける。

 

愛紗「なんです?その気のない鼻息は...」

家康「いやなに。聞き流したわけじゃない、愛紗は本当の姉のようだなと思ったんだ」

愛紗「姉妹と誓い合った仲です。あれを想うのは当然のこと」

 

思い合うという言葉がさらりと出る愛紗に、これは鈴々の身を案じる必要はないと思う。

 

愛紗「己が恥と同様に、あれの振る舞いを恥じるのも姉として当然のことです」

家康「....はは」

 

どうやら共に探す必要がある様子。

 

愛紗「あれが反省しない理由の一端は、ご主人様や桃香さまにもあるのですよ。

お二人が甘やかすから...」

家康「そ、そうか...」

 

矛先が家康にまで向けられる始末。これは苦笑いで誤魔化す他ないと決め込むが、愛紗はそこまで甘くはなかった。

 

愛紗「ご主人様からも厳しく言っていただきたい。

あれは私の説教など聞かぬのです」

家康「わかった、わかった」

愛紗「必ずですね?約束しましたね?後で聞かなかったとは言わせませんよ」

家康「ああ。大丈夫だ」

 

その時、近くカサッと音がし、家康はすぐにその音の元に目を向ける。

 

家康「ん?」

愛紗「どうかなさいましたか?」

 

木の枝が揺れたようなのを見逃さなかった家康は、そのまま耳をすましてみることに。すると...

 

???「すぴー.....んにゃ、あ....くー、くー」

 

家康「これは...」

 

何ともこちらにも眠り誘ういい寝心地のいびきであろうか。家康はその大元がいる木に向かって歩く、愛紗も家康が突然木に向かって行くのが気になり、怪訝そうに片眉を跳ね上げながらもついて行く。

そして二人して問題の木の傍らにて共に耳を傾ける。

 

鈴々「くぅ、すぅ....すーー」

 

家康「これは...」

愛紗「はい....聞こえますね、のんきな寝息が」

 

鈴々「くーーー....」

 

そこには木の枝の上で上手く寝台代わりににして眠っている鈴々の姿が、そこにあった。

 

家康「ははは、これは....器用に寝るな、鈴々」

愛紗「猿なのです」

 

一刀両断、切り伏せ溜息を吐く愛紗。その間にも...

 

鈴々「だぁめー、なのだー.....みんな鈴々のう!がぶ、もぐもぐ」

愛紗「まったく....涎まで垂らして。他の者には決して見せられぬ姿です」

鈴々「う~~~」

 

誰かと食べ物を巡って戦っているのだろうか、眉間に皺が刻まれる鈴々。

 

鈴々「にぇへ♪ぐぅ、ぐぅ....」

 

だがすぐに機嫌のよい顔で寝息を立てる。表情はふにゃふにゃに溶けて、口を動かしている。

 

愛紗「......」

 

愛紗はそっと目頭を押さえて、目の前の妹の情けない姿に呆れてしまっている。

 

鈴々「食べたら....いくのだ、もうひょっと....まってなのだぁ」

 

愛紗「どこへいこうと言うのでしょうか」

家康「恐らく訓練だろうな。どうやら忘れてはなかったようだな」

愛紗「尚更に許し難いことです。まったく....将としての務めを放り出して、よくも」

家康「しかしまぁ、平和な寝顔だな。気持ち良さそうだ」

愛紗「ごほん!ごほん!」

 

鈴々の気持ち良い寝顔に羨ましいと思ってしまい、つい本音が出てしまう家康に愛紗は咳き込みながら横目で睨んでくる。

 

家康「け、けしからんな!は、ははは!」

 

鈴々「うるしゃい...のだ」

 

っとそんな二人がやり取りに、鈴々は身じろぎ枝が大きくたわむ。

 

鈴々「食べたらいくって言ってる....のだ、がぶっ、す~~~~、す~~」

 

愛紗「まったく...すぅ」

 

すると、すぅ、っと息を溜める愛紗の豊かな胸が膨らむ。

 

愛紗「鈴々~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!」

 

鈴々「にゃにゃ!?」

 

愛紗の怒号同然の叫びに、枝の上で寝てる鈴々は当然木から落ちた猿の如く落ちてしまう。

 

鈴々「いったああぁぁ~~~~い...のだ!」

愛紗「当たり前だっ!!まったく!!お前は!!!」

鈴々「む、自分が大きな声を出しておいて偉そうなのだ!鈴々お尻うっちゃ...」

愛紗「お尻どころではない!ご主人様が...」

 

愛紗は別のことで慌て怒っている。

 

鈴々「お兄ちゃん?」

家康「いやぁ、寸で間に合った...あたた」

 

愛紗が大きな声で叫ぶため地面に落ちる鈴々を、スライディングして庇うように自ら腹で受け止め、下敷きになった家康。

 

鈴々「お兄ちゃん」

 

正に間一髪...頭から落ちてきた為に危うかった。動かなければ怪我は間逃れなかっただろう。

 

家康「怪我はないか?鈴々」

鈴々「おでこをぶつけたのだ」

家康「すまないな。受け止めるにはこうするしかなかった」

 

笑顔で鈴々をそう言ってやると、鈴々は顔を家康に突き出した。

 

家康「ん?」

鈴々「痛いの痛いの飛んでけってして、鈴々のおでこ...」

家康「こうか?」

鈴々「にゃー♪」

愛紗「甘えている場合かーーーーーーー!!!」

 

家康に甘える鈴々に苛立ちを隠さず、まったく調練をサボって昼寝に興じていたことに激昂する愛紗。

 

鈴々「うーん、なのだ」

家康「しかし、鈴々。あんなところで昼寝はいかんぞぉ?危ないからな」

愛紗「っ、そ、その通りだ!」

 

愛紗に約束した手前、家康は厳しく言っておく。

 

鈴々「あう、ごめんなさいなのだ....」

家康「それにだ、愛紗と約束したことがあったんだろ?」

鈴々「愛紗と....?遊ぶ約束はしてないのだ」

 

ケロッともう新兵の訓練のことなど忘れている様子、これには家康苦笑、そして愛紗は当然怒るのは明白であった。

 

愛紗「遊ぶ約束などするか!新兵の訓練だ!お前が自ら買って出たのではなかったか」

鈴々「訓練......................あ!」

 

長い間をおいて漸く何のことか思い出した鈴々。その顔は不味いといったものであり、自分がそれにサボり挙句の果て昼寝というお粗末をしたことに焦る。

 

鈴々「そうだったのだ!午後から、兵士の訓練をするんだっけ....」

愛紗「とっくに午後だっ!!」

鈴々「ううううううううぅぅ....」

 

目を剥いて家康と愛紗と見回した鈴々が珍しく、しょんぼりと俯いてしまう。

 

愛紗「こほん....いいか?

おまえは最早一軍の将、将には将の責任がある」

 

先ほどの怒りとは打って変わって諭すような口調で話す愛紗。

 

愛紗「今日のような行いは、私や部下だけでなく、桃香さまやご主人様の信頼を裏切ることだ」

鈴々「.....反省しているのだ」

愛紗「本当か?この場を逃れようと適当なことを言っているのではないだろうな」

 

疑うように睨む愛紗に、鈴々は申し訳ないように顔を俯かせる。

 

鈴々「ほんとのほんとに、ごめんなさいなのだ」

愛紗「....反省は、しているようだな」

 

普段、あんなに元気な鈴々がこんなにもしょげるなど家康は初めて見たと驚愕する。

鈴々と対する愛紗は、そんな猛省する妹分にこれ以上怒るに怒れないのか、強くでることはなかった。

ならば家康は微笑みながら優しく諭す。

 

家康「いいんだ、失敗は誰にでもあることだ。

完全なものなどいない」

愛紗「ご主人様、あ、甘やかしては.....その」

家康「失敗することが悪いじゃない。

悪いのは、失敗しておきながら反省しないことだ」

愛紗「...............」

 

家康「鈴々は反省したのだろ?」

鈴々「はい!なのだ!!」

 

家康の問いかけに鈴々は元気よく返事をして見せる。その鈴々に家康は笑みで頭を撫でてやる。

 

家康「偉いぞぉ、鈴々」

鈴々「鈴々、いっぱい反省したからもう平気なのだ」

 

先ほどの意気消沈した暗さから一変して、明るく元気よくしてみせる。

 

家康「だそうだ、愛紗」

愛紗「う....!?」

 

っと、家康と鈴々、二人から見据えられてはさしもの関羽でもよろめく。

 

愛紗「鈴々がまさしく、将としての自覚を持ったのであれば.....それ以上は何も申し上げません」

家康「そうか。鈴々、良かったな?許してくれるそうだ」

鈴々「うんっ!」

家康「さて、それじゃあ仕事を頑張るか?

これから新兵の訓練だろ」

鈴々「ん、行ってくるのだ!」

 

すっかりいつもの元気な鈴々に戻り、下敷きの家康の上からぴょんと下りて、木の根元に転がっていた蛇矛を握る。

 

鈴々「終わったら遊ぼうね、お兄ちゃーーん!」

 

物凄い速さ...土煙をあげていく背中はすぐに見えなくなってしまった。そんな鈴々の姿を見守る家康の隣に、いつの間にか寄り添うように立っていた愛紗が、感嘆な声を口にする。

 

愛紗「....さすがと申しあげるべきかでしょうか。ご主人様は人心の掌握に長けていらっしゃる」

家康「人心掌握...か。周りの者から見れば、そうかもしれんな」

愛紗「ご主人様」

 

戦国において常に先頭に立ち、先導していた為、他を引っ張り導くのは家康の十八番と言ってもよい長所だ。

愛紗はそんな家康のそれを称賛している。

 

愛紗「お見事な仲裁でした。

私自身、感服してご主人様の理に耳を傾けていましたよ」

家康「そこまで持ち上げられるのは痒いなぁ...」

愛紗「勉強になりました。これからもよろしく、ご指導ご鞭撻のほどをお願い致します。では」

 

笑みを浮かべて踵を揃えて一礼、愛紗も小走りに消えた。

 

家康「いい形で収まってよいか」

 

良き形で終わり安堵する家康。

 

家康「さぁて、ワシも残りの仕事を片付けるか」

 

彼もまた己のすべき仕事に戻るのであった。




今回はここまで。


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キャラクターストーリー・桃香 足りない「何か」

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



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イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


家康「ふっ!」

 

百年以上続いた戦乱を終えた日ノ本から来た家康は、天下の豪傑――三国志の英傑たちと戦えるなど夢にも思えなかった。

そう考えながら拳を振るい、音を鳴らし空を切る。現在家康は鍛錬中である。

彼の両手を守る――そして敵を打ち砕く武器でもある拳を纏う手甲が、陽光によって照り返す。

 

家康「ふんっ!てぇあっ!!」

 

拳を振るう姿に一切の鈍りが見受けられない。この三国志の世界にでも起きている戦乱を治める為、己の武勇を更に磨きを上げる。

今自分の下には頼れる仲間がいる。

桃香たちを始め、雷々と電々、それに軍師として稟もいて、しかも同じ日ノ本の出身で家康の友である長宗我部元親もいる。

これからの世界に絆の世を作ると決めた以上、それを成すまで死ぬことは出来ない。

 

家康「ふんッ!おらッ、でやっ!」

 

それに家康本人、日ノ本にとって無くてはならない天下人。この世界から日ノ本に帰還する術も探さなければならない、必ずこの世界の乱世を終わらせ日ノ本にも帰る。

家康の心はそう決めている、その思いがある。

 

家康「ふぅ...」

 

汗と一緒に雑念が流れ出ていく、その感じが心地よかった。

 

家康「ふうっ....よし!」

 

自分の拳のままの右手を、広げた左手にパンっと鳴らして叩く。

その時であった....

 

 

???「あうぅ~~~~~~~ぅ......」

 

家康「....ん?」

 

耳をすましてみると、聞き覚えの声がすると家康はその方へと歩く。

 

桃香「ふえぇ~~~~~~~~.....っ」

 

声は桃香であった。声の調子で、頭を抱える様が容易に想像出来ると苦笑する家康。

中庭で木陰を選んで、机や長椅子が点々と用意されている。

声も恐らくその辺りから、ぐるりと周囲を見回して....。

 

桃香「はうぅぅ~~~~~ん」

 

桃香がそこにいた。傍らに硯、手には筆。さらに分厚い本を積んでいる。

何やら勉強中だと思われる、邪魔しては悪い感じる。

 

桃香「.....??あ、ご主人様....」

 

集中が乱れてたと見える。

声をかけずに立ち去るか迷う間に、向こうの頭が上がった。

 

桃香「ご主人様は何してたの?鍛錬?」

家康「ああ、そうだ。鈍るわけにはいかないからな」

 

家康が多忙な中も鍛錬していることに感歎な声をあげる。

 

桃香「ご主人様、色々と頑張ってるんだね~。政務だって一緒にやっているのに...」

家康「桃香こそ、何やら勉学に励んでいるじゃないか」

桃香「これ?これは~~....」

 

歯切れ悪く目を伏せて、一度筆をおいてしまう。

 

家康「字の練習か?」

桃香「わたし、そんなに字は汚くないもん。もっとちゃんとしたお勉強っ!」

桃香「歴史のこととか、政治体系のこととか、いくら勉強しても全然おわんなくて~」

 

絵に描いたように困った顔をしながらも、こうして勉学している様を家康にみせる。

 

桃香「場所によって税のかけ方とか、戸数の計算とか、もう全然違うんだもん。大変すぎるよ~....」

 

元々得意ではない様子。家康から見ても難しいことをして苦労しているのがわかる。

 

桃香「昔、白蓮ちゃんたちと一緒に風鈴先生のところでやったはずなんだけど。

こんなはずじゃないのになぁ」

家康「そんなものさ。昔手慣れていたものが、その瞬間忘れるなんて」

桃香「ご主人様もなんだ!一緒だね~♪」

 

自分だけでないと嬉々としてしまう桃香ではあるが、家康は苦笑交じりに言う。

 

家康「喜んでいてはいかんだろ」

 

これでは愛紗も大変だなと思ってしまう。三姉妹で一番真面目で中でも働いていると考えるのは、やはり愛紗だと思われる。

鈴々は勉学など無理なのは明白。桃香はこの様でしかも中々に天然なところあるからして、抜けている節が見受けられる。

 

桃香「ご主人様はわかる?」

家康「ん?なにがだ?」

桃香「じゅよーときょーきゅーとか、かへーの流れ、とか」

家康「それはまぁ、分かるが...」

桃香「.....」

 

桃香の瞳に星が見える。家康をまるで救世主を見ているかのように見つめている。

 

桃香「分かるだけじゃなくて、あんまり頭が良くないわたしに分かりやすく嚙み砕いて説明もできる?」

家康「うーん....」

桃香「すっごく真面目に授業受けるからぁ.....お願い、ご主人様。力をかして」

 

手で家康を仰ぐみたいに、桃香は何度もひれ伏す。

 

家康「...しかし、ワシが知っている知識がこっちでも通用するか、分からないぞ」

桃香「謙遜しなくてもいいからぁ.....それとも、わたしなんかにはもったいないなくて、知識を分け与えてなんてあげられないの?」

 

哀願から苛立ちへ、桃香の機嫌はわかりやすく変化を見せていた。それだけ彼女が真剣である証とも取れる。

これは無下に出来ぬと家康は意を決して受け答える。

 

家康「よし!わかった!ワシにできる限り協力しよう!」

桃香「っ!...大好き!!」

 

歓声と共に桃香は家康に抱きつく。これが現代の――それも思春期の青少年であれば桃香のような美少女に抱きつかれると、しどろもどろになるだろう。

だが家康は動揺もせず困ったように彼女に諭す。

 

家康「大好きとか、冗談はいい...。

ほらほら、勉学するのだろ?」

桃香「ほんとに大好きだし、感謝でいっぱいなの」

 

自分の胸に家康の手を引き寄せる。その豊かな胸の感触は実に柔らかく、心地よいと思える。

流石にこれには驚きの顔を浮かべる家康、だが桃香は気にせず彼を引き寄せる。

 

桃香「隣りにきて!!聞きたいことがい~っぱいあるの」

家康「あ、ああ...」

桃香「どうぞ」

 

お尻を動かして、椅子を半分譲って家康に座らせる。

 

家康「あー...これは、気が散るなぁ」

桃香「なんで?」

 

数数えない場数を超えてきた家康だが、桃香のような娘とのこのような状況は刺激が強い。

不味いと思い家康は、桃香の側面に回る。

 

桃香「変なの。隣からだと、文字も読みづらいと思うのに」

家康「まぁまぁ、いいから。っで?どこが分からないんだ?」

桃香「んと~」

 

漸く本題である事に移り変わり、桃香は家康に教えを求める。その途中、無意識に家康は桃香の外見に視線をむける――細見なのに豊かな胸元、淡いピンク色の咲いた唇。

 

桃香「ご主人様...?聞いてる?」

家康「ん?...あ、ああ!すまない」

 

桃香の一声でハッと戻って勉学の教授を教え続ける。

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

家康「....そうだ。ここの経済の流れだが、生産と供給のことを指しているんだ」

桃香「生産は、お米とかのことでしょう?」

家康「そうだな。米、野菜の生産する者がいて、それを売る者がいる」

桃香「市で?」

家康「いいや、市はその後だ。

例えばだが....桃香は昼、拉麺を食べるとする」

 

家康から見て桃香は飲み込みのいい娘ではなかったが、熱心な聴客ではあった。

 

家康「拉麺に必要な...小麦粉。

これを作り、豚を飼育している農民がいるな?」

桃香「うん」

家康「で、その材料を買って、拉麺を作る店の者がいる。それで...」

 

その後も長々と家康は懇切丁寧、桃香に分かりやすく説明してみせる。

その仕組みに何とか覚えておこうと必死に家康の話を耳に入れる。

だがまだまだ混乱してしまう節があり、悩んでいる。

家康は苦笑してしまうが、それでも優しく教えつづける。これ以上混乱させまいと、頃合いを見て...。

 

家康「桃香は人の話をちゃんと聞く娘だと言うのが、よくわかった。

ならば、周りもきっと助けてくれるさ。愛紗や他の者たちも」

桃香「....それ、ちょっと無責任かも」

家康「では、自分でやるのか?政や戦を」

桃香「あ....」

 

家康のこの言葉に桃香は自分が何を言っているのか気付く。経済云々よりもよっぽど大切ことである。

 

桃香「そうか。そうだね....ほんとだ」

 

桃香のふにゃっとした笑顔、これを見て不思議と家康も笑みを浮かべてしまう。

 

桃香「だから、勉強しないでいいってわけではないと思うけど....うん、ご主人様にそう言ってもらえたら、凄く楽になったよ」

家康「それは良かった」

桃香「わたし、たくさんお友達を作る!

わたしに足りないたくさんのものを持ってて、優しくて、わたしの力になってくれる人たちを」

家康「そうか」

 

彼女の笑顔、その直向きさ、これを見ると心を許してしまう。

 

桃香「需要と供給!その代わり、わたしもその人たちに足りない何かになるね!」

家康「ああ!桃香ならきっと、なれる!」

桃香「あ.....えへへへ」

 

そんな桃香に対して、家康は頭を撫でて笑い合う。彼の心は晴れやかな気持ちとなる。

 

家康「ワシも、桃香にとって足りない何かになれるよう、頑張ろう!」

桃香「じゃあ、わたしもご主人様の『大切』にしてね」

家康「よし!わかった。では....」

 

勉強よりもいい話が出来たと思いながら、家康はその場を後にしようとすると、桃香は残念そうに見つめてくる。

 

桃香「あ、行っちゃうの?」

家康「ああ、後で稟と共に仕事があるんでな」

桃香「そ、そうなんだ」

家康「ではな」

 

手を振って踵を返すに多少の名残惜しさがあったが、家康はそのまま歩く。

 

家康「ワシの、大切、か....」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

桃香「わかった、だって....あっさり流されちゃった」

 

家康が去ったあと、桃香はいささか残念がっている。家康との時間――彼女にとって有意義かつとても大事なものであった。

 

桃香「ちょっと勇気を出したのになぁ、ご主人様は不思議。わたしが持っていない、たくさんを持ってて」

桃香「なのに、ちっとも飾らない...」

 

そう口にしながら家康が去った方向へ目を向ける。もう一度こっちに戻ってこないか、またもう一度お話しができないかと淡い期待が心に燻っている。

 

桃香「....ご主人様のことを考えてたらドキドキしちゃった」

 

 

 

 




今回はここまで。


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第十三章 官軍による黄巾征伐

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



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司隷

 

司隷――中国・漢代に都が置かれた長安・洛陽及びその周辺一体の首都圏行政を監督した司隷校尉の管掌地域の通称である。

その司隷にて今、官軍が兵を率いて黄巾党と戦闘を行っている。攻めている官軍の将は銀髪の女性・華雄と、眼鏡をかけた茶髪で黒い戦装束の眼つきが鋭い女性・皇甫嵩の二人が指揮を取っている。

 

華雄「進め進め!黄巾の賊共を、天子さまのおわす司隷から追い出してやれ!!」

皇甫嵩「華雄さん。今回の作戦は黄巾党を追い出すのが目的だから、無理に攻めなくていいわよ」

華雄「はっ、皇甫嵩殿!総員、突撃用意!」

皇甫嵩「だからしないでいいのよ!」

 

理性的に戦場を見ている皇甫嵩からの忠告を聞いておいて、兵士たちに突撃を命令する華雄の猪っぷりに呆れつつも る。

 

華雄「無理はしない!ただ普通に攻めるだけだ!」

 

などと屁理屈めいた言葉に皇甫嵩は目頭を押さえる。

 

皇甫嵩「あなたの普通は猛攻撃でしょう?

今の私たちの任務は殲滅ではなく、洛陽を守ることが最優先なの」

華雄「ぐぬぬ....この程度の相手、どうして仕掛けてはいかんのだ....」

 

武人として戦の武功を立てることが、彼女の意識が行ってしまっている。皇甫嵩は現実的な意見を口にする。

 

皇甫嵩「質はともかく、正面対決していい数ではないわ。他の隊と足並みを揃えないと....心配しなくても、次は攻撃の命令がくるから」

華雄「次攻めるのならば今攻めても変わらんだろうに....ぬぬぅ」

 

面倒くさそうにする華雄であった。

 

 

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官軍は別戦場でも黄巾と戦っている。豊満な胸に晒を巻き、羽織を着込んでいる女武者・張遼、もう一人は皇甫嵩と同じ眼鏡をかけ柔らかく優しげな女性・盧植。

この盧植、彼女こそが桃香こと劉備玄徳と公孫瓚の恩師である。

 

張遼「お前ら、無理に攻めんでええからな!今回の作戦は長丁場や、今は力を温存して、のんびりしとき!

連中を無理に散らすんやないで!」

盧植「ごめんなさいね、霞ちゃん。

神速の用兵が自慢の張文遠に、こんな作戦を任せちゃって」

張遼「あはは、そない持ち上げられたらくすぐったいて、盧植先生。

月や詠の立てたやし、空気くらい読みますて」

 

申し訳ないとばかりに、彼女の得意とする用兵術をさせてやれないと謝罪する盧植であはるが、張遼はそんなのにこやかに答える。

 

張遼「ま....華雄は我慢できとるかどうか微妙なとこやけど」

 

今ごろきっと、自重出来ず突撃したくてうずうずしているであろう華雄に呆れる。

 

盧植「楼杏さんが上手くやるわよ。

とりあえず、本陣の月さんたちに定期連絡を送っておきましょう」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

官軍本陣

 

???「みんな...大丈夫かな、詠ちゃん」

???「風鈴さんや楼杏さんもいるんだし、大丈夫よ。月」

???「まぁ.....華雄はちょっと大丈夫じゃない気もするけど」

???「......」

 

???→賈駆「....そ、その時の作戦も考えてあるから安心して!

この賈文和に、抜かりはないよ!」

 

眼鏡をかけている彼女、賈駆文和――官軍に所属する董卓を補佐する智謀に長けた軍師である。

そしてもう一人...賈駆と違い、気品ある貴人の少女・董卓仲頴。

涼州隴西郡臨洮県の人物で、辺境の将の1人にすぎなかったが、軍事力を背景に次第に頭角を現すようになった。

 

賈駆「(....隊は戦力比で割り振ったけど、華雄、風鈴さんと組ませとけば良かったかなぁ)」

 

内心人選ミスをしたと後悔しているが、しかし現状大きな被害報告は来ていない為、まだ何かしらの変更はしなくていいと賈駆は思う。

 

董卓「詠ちゃん...」

賈駆「とにかく、あいつらが口出しして来ないうちに、この司隷から賊共を追い出さないと」

賈駆「そのために井州や豫洲の州牧とも連携を取って動いているんだもの。

この一大作戦、何としても成功させるわよ」

董卓「そうだね。出来るだけの手をうったし、後はみんなを信じるしかないよね」

 

賈駆の言葉に頷き、今戦っている華雄たちを信じて勝利を手にしようと頑張ろう誓う二人。

そこへ兵士が報告にやってきた。

 

「盧植さまより報告です!作戦は順調、このまま豫洲方面に黄巾の賊を追い出すとのこと!」

 

「ご報告!皇甫嵩隊、作戦通り、井州方面に賊を追撃します!」

 

賈駆「よろしい!なら、呂布隊にも状況を通達して」

 

賈駆は声音を高々に兵士たちに指揮する。

 

賈駆「両隊が撃ち漏らした敵は、我ら董卓隊と呂布隊で追撃する!総員、戦闘準備にかかれ!」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

また所変わって....。

 

徐州

 

 

盧植「もうすぐ豫洲ね....。霞ちゃん、黄巾党のようすはどう?」

張遼「今のところ、順調やな。詠の作戦通り、付かず離れず、くらいで追うとります。

こんだけ大きい部隊やと、追うのも楽ですわ」

 

現在彼女たちは賈駆が立てた作戦に沿って、黄巾党をここ徐州まで適度な距離を保ちながら豫洲まで誘そい出している。

 

張遼「そろそろ、向こうの州牧だかとも合流できるはずやけど.....合流するんは、どうゆう輩なんです?」

盧植「曹孟徳さんね。苑州の州牧を勤めている子が、警邏を任されていると聞いたわ」

張遼「.....隣りの州の牧が出張ってくるて、人が足らんのはどこも一緒かぁ」

 

そこへ兵士からの報告がやってきた。

 

「盧植さま!苑州州牧・曹孟徳の使いを名乗る者が面会を求めていますが」

 

盧植「ありがとう。お通しして」

 

兵士は盧植の命により面会希望者を連れてきた。一人はクールな印象をもつ女と猫耳のような被り物をしている少女がやってきた。

 

夏侯淵「中郎将殿、お初にお目にかかります。

曹孟徳の名代として参りました、夏侯妙才と申します。

こちらは軍師荀文若」

 

夏侯淵の自己紹介によって荀彧は無言の会釈する。

 

盧植「今回の作戦への協力、感謝します、妙才殿。孟徳殿は?」

夏侯淵「現在、北の冀州や南の揚州からも賊が大量に流れ込んでおりまして....そちらの掃討作戦を。

中郎将殿には、くれぐれもよろしくと申し付けられております」

盧植「どこも賊の押し付け合いは同じか....申し訳ないわね。

では、堅苦しい挨拶はもうおしまいにしましょう。

作戦は以前お伝えした通りなのだけれど...」

 

彼女が作戦の内容を話す際、無言であった荀彧がそれに待ったをかけて口を開いた。

 

荀彧「そのことですが、こちらに改善した策の提案がございます。

....お聞きいただけますでしょうか?」

盧植「もちろんよ。ぜひ聞かせてちょうだい」

 

恐る恐る尋ねる荀彧に対し盧植は笑みで受け答える。その中で夏侯淵は内心呟いた。

 

夏侯淵「(...“彼らが”居ればもっと容易いかったかもな)」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

井州

 

その頃、井州に移動中の華雄と皇甫嵩は...。

 

皇甫嵩「もう少しで井州か....。華雄さん。敵の状況はどう?」

華雄「前と変わらん。この細い山道なら、連中も逃げるのが精一杯だろう」

皇甫嵩「あら、さすがに突撃したいとは言わないのね」

華雄「この後は、井州軍との共同作戦なのだろう?なら、焦る必要もない」

 

などと揶揄う皇甫嵩に華雄は勇ましく胸を張りながら答える。彼女としては正面から敵を打倒して、武功を上げたいのが本心だがそれを今抑えている。

 

皇甫嵩「ええ。この山道で後ろから突いても、前に逃げられるだけだし....」

皇甫嵩「山道を出た所で待ち伏せを受けないように、十分に警戒して進みましょう」

華雄「そんな用兵のできる連中とも思えんがな....」

 

そう口にする華雄。

 

華雄「....ああ、そう言えば、向こうの州牧というのはどういう奴なのだ?強いのか?」

皇甫嵩「そうね。袁本初殿は汝南袁氏の出だけれど.....戦の腕は、どうだったかしら」

 

その時であった。激しい剣戟の響きが聞こえてきた。

 

華雄「なんだ?騒がしいな」

 

「報告です!山道を逃げていた黄巾党どもが、反転!こちらに突っ込んできた模様!!」

 

皇甫嵩「なんですって!?どうして!?」

 

「わかりません!ですが、敵の攻撃を受け止めたこちらの先頭は大混乱で....」

 

突如の変事に驚愕する皇甫嵩と華雄。まさか黄巾の連中が反転して攻撃してくるなど思いもよらない、だがこのままでは折角の策が水泡に消えてしまうのだけは、何としても阻止しなければならない。

皇甫嵩はすぐに意識を変える。

 

皇甫嵩「逃げ道のないこの山道なら、そうなるか....華雄さん」

華雄「任せろ!出る!!」

 

華雄はそのまま部隊の先陣までに馬に駆けていく。皇甫嵩はすぐに部隊指揮を行う。

 

皇甫嵩「第二陣以降はひとまず後退して、敵との距離を取る!

崖の上に斥候部隊とも連絡をとって!

状況を把握しなければどうにもならないわ!」

 

「はっ!銅鑼を鳴らせー!後退、後退ー!!」

 

下知により銅鑼が鳴り部隊全体に戦闘態勢に入る。その間、皇甫嵩は何故か憂うような顔になる。

 

皇甫嵩「(出口での待ち伏せならともかく、この地形での反転攻撃なんてお互い消耗するだけでしょうに....)」

 

確かに出口付近で待ち伏せで皇甫嵩たちを待ち受け奇襲...っとなれば理解できるが、しかし何故か敵は反転してきた。

この奇妙なことに皇甫嵩は分からなかった。

 

皇甫嵩「(この先で、何が起きているの....?)」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

その先にて....。

 

袁紹「おーっほっほっほっほ!おーっほっほっほっほ!大勝利、大勝利ですわ!」

 

いま戦場にて耳障りで無駄に馬鹿な笑い声を高らかに上げている、この何ともおめでたい者の名は袁紹、字は本初。

後漢時代に4代にわたって三公を輩出した名門汝南袁氏の出身、生まれて間もなく父の袁成と死別し、叔父の袁逢と袁隗に育てられたという。

 

袁紹「敵の大部隊が細い山道を抜けてきた所で、わたくしの、この袁本初の可愛い兵たちが、総攻撃!

まさに一網打尽! 一・網・打・尽、ですわ!」

 

先ほどの皇甫嵩たちの部隊に黄巾の連中が反転して、攻撃を仕掛けてきたのはこの袁紹が山道出口付近で待ち構えて仕掛けたのが原因。

 

袁紹「相手に全力を出させず、こちらは全力を出す。

ああ.....やはり戦場で最後にモノを言うのは、

頭脳と兵法ですわね。おーっほっほっほっほ!おーっほっほっほっほ!」

 

などと五月蠅い高笑いをあげる袁紹に、傍に控える袁紹の軍師である田豊が口を開く。

 

田豊「あぅぅ....麗羽さま。これ、本当に良かったんですか?」

袁紹「あら、真直さん。

我が袁家軍師たる田元晧ともあろう者が、何を弱気なことをおっしゃっていますの?」

 

軍師である田豊の不安に対し、袁紹は全く何も考えない向こう見ずな物言いを口にする。

 

袁紹「都から落ち延びてきた黄巾の賊なぞに、慈悲など必要ありませんでしょう?」

田豊「そすじゃなくて、あの山道の後方って、天子さまの軍隊がいるんですよ?」

袁紹「それがどうかなさいまして?この山道での挟撃作戦なら、それこそ賊の逃げ場はどこにもありませんでしょうに」

田豊「......あ、はい。それはそうなんですけど、向こうの被害ってものが...」

袁紹「天子さまの精強な軍隊なら、どうという事もないでしょう。それにもし向こうの軍隊がやられても、わたくしには知りませんわ♪」

田豊「うわぁ....」

 

自分勝手な言い分、ああ言えばこう言う。これには田豊かなりのドン引きである。

 

田豊「.....荀彧殿の危惧がそのまま当たったわね」

 

彼女の一言に袁紹の眉が吊り上がり、田豊に横目で見る。

 

袁紹「....随分と不愉快な名前が聞こえましたわね」

田豊「あ....いや、その...」

袁紹「まぁいいですわ。今回わたくしの、大勝利ですもの!おーっほっほっほっほ!」

 

 

今回の官軍による黄巾討伐は結果として敵に被害大きかったが、しかれども官軍自体にも見過ごすことが出来ない被害が続出した。

しかし、一方で曹孟徳が指揮する豫洲での黄巾討伐にて面妖至極な話がまことしやか流れていた。

何でも曹孟徳が率いる軍勢が全くの無傷で2万の黄巾を殲滅したらしい。

 

戦場に“蒼い龍”が雷鳴を鳴らして黄巾を丸吞みにし、更に“二匹の鬼”が大きな太刀と大きな斧で黄巾を次々と斬殺していったと言う話が....。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。


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第十四章 黄巾討伐

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



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その一報を受けて以来、平原は大騒ぎとなっていた。

 

桃香「ね、ねぇ...ご主人様。中郎将さまをお迎えする時の式次第って、これでいいんだっけ?」

家康「桃香落ち着つくんだ。公孫瓚なら、礼儀作法に詳しいはずだ」

 

家康たちがこうも忙しくなってるのに理由がある。青州に追い込んだ黄巾党を討伐するため、官軍の中郎将を務める皇甫嵩が率いる軍が今平原に派遣されたらしく、それに迎え入れ協力しろと態々朝廷から知らせが来たのだ。

丁寧だが最低限の内容が書かれた書状が公孫瓚の所に来た所までは、桃香たちは大変だな...っとのんきに構えていた。

しかし家康と稟はきっと自分たちも来るのではと案じていたが、予想通り家康たちにもその要請に協力しろとのことであった。

 

公孫瓚「何でもかんでも私を頼られても困るぞ....趙雲、何とかならないか?」

趙雲「やれやれ。江湖の流儀ならいざしらず、私に求めるものでもあるまいに。

何よりここで一番偉いのは、州牧殿でしょう」

桃香「そうだよ。頼りにしてるんだからね、白蓮ちゃん」

 

今回の官軍が派遣されるに対し、迎える為に公孫瓚が趙雲を伴って来てくれたのだ。

都からくる官軍本隊との合流地点はこの平原である。

そのうえ桃香も討伐隊に同行するようにと依頼まで付け加えられていて、対岸の火事が家康たちにまで飛び火したわけだ。

 

桃香「この、書状に書いてある『出迎えは簡単で構わない』も怖いよね....」

公孫瓚「それな....」

 

溜息をつく二人。来る側である者たちからそう畏まって迎えなくていいと書かれているらしいが、迎える側である自分たちからしたら『簡単な出迎え』と言われても分からない。

 

公孫瓚「うぅ、趙雲だけじゃなく、都の礼法に詳しい奴とか、もっと連れてくればよかった....」

家康「それよりも。そもそもな話だが、中郎将というのはどのくらいの官位なんだ」

桃香「わたしもあんまり...」

稟「禁城の警備兵や、天子様の近衛部隊を率いる武官の立場を指します」

家康「そうなのか」

桃香「でもそれって、青州まで遠征するようなお役目なの?天子様の近衛なんだよね?」

 

桃香の疑問はもっともであろう。本来中郎将は、近衛軍に属する指揮官で、平時においては宮殿や皇帝の身辺を守る地位である。

 

趙雲「その近衛が出張るほどの事態ゆえ、伯珪殿がこの有様なのでは?」

家康「なるほど。分かりやすいな」

公孫瓚「皇甫嵩殿も、公明正大な武官って噂くらいは知ってるけど、会ったことがあるわけじゃないから何とも言えないなぁ。

基本、雲の上の人だし」

趙雲「ふむ...その公明正大という謳い文句からして、眉に唾を付けるべき目安のようなものですからな」

 

趙雲が言うのも、分からんでもない。公明正大というのが、桃香や公孫瓚での程度なのか、『都の将にしては』という但し書きが付く程度なのか、単に噂が一人歩きしてるだけなのか。

それが全くもって彼らを悩ませるが、だが官軍を出迎えをしなければ失礼にあたるのは明白。

 

公孫瓚「禁城は、権謀渦巻く魑魅魍魎の巣って噂だし....私もよっぽどの用事がある時しか行かないしな」

家康「それほどなのか...」

稟「はい。民の為のまともな政など機能しているとは思えません...」

公孫瓚「そんな中で仕事するなんて、よっぽどの優秀な人間でないとやっていけないよ」

 

所謂エリートと呼ばれる。だとしたら公明正大と言っても、やはり賄賂の要求あったり、庶民には分からない妙な地雷を持ってたりするかもしれない。

そのような話を聞いていると桃香の顔が不安になっていく。

 

桃香「....なんか、話を聞いたらもっと不安になって来たよ。

失礼なことしないように、注意しないと」

家康「万全の準備はしておこう」

桃香「そうだね...」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

執務室で話を一応の取り決めを付け、家康は稟を伴って廊下を歩いていると、向かい側に愛紗と雷々と電々が何やら不安げな表情で話し合っている。

すると愛紗が家康に気付いた。

 

愛紗「ああ....ご主人様」

家康「どうした?三人とも。そんな顔して...何かあったのか?」

電々「....この間、青州にいったでしょ?」

雷々「それで、雷々たちが通った頃よりずっと大変なことになってたから...」

家康「ああ...そうか」

 

雷々と電々は青州のすぐ南の、徐州の出身だったと家康は思い出す。いま色々あって幽州や平原まで来ているが、青州のあの状況を見れば確かに故郷が心配にもなろう。

この間徐州まで行ってた馬超にも色々話を聞いていたくらいだ。

 

家康「とりあえず青州の黄巾を討伐するために、都からくる軍と協力することになった。

もし気になるなら、そのまま徐州の様子を見に行くの手さ」

雷々「うぅ....でも、おっきいことをするまで、帰らないって決めたし....」

電々「.....だよねぇ」

愛紗「....というわけでなのですよ。私もこういった助言は、得意ではなくて」

稟「お辛いはずです。故郷がいまどんなことになってるか...」

 

雷々「.....うぅぅ」

電々「.....うみゅぅ」

 

不安そうな二人の頭を軽く撫でてみても、いつもと違って二人の表情は晴れないまま。

皇甫嵩がどのような人物なのか分からないが、二人の為にも青州遠征、無事に成功させなければ...家康はそう固く誓う。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

皇甫嵩「ああ...不安がらせてしまったみたいで、ごめんなさい」

 

それからしばらく経って。

その言葉と共に家康たちにペコリと頭を下げたのは、平原を訪れた中朗将である皇甫嵩本人であった。

彼女の謝罪に皆、慌ててしまう。

 

公孫瓚「え、あ、あの!頭を上げてください、皇甫嵩殿!」

皇甫嵩「出迎えは不要ときちんと書いておけば良かったわね。余計な気を回せてしまったわ」

桃香「す....すみません...」

皇甫嵩「いいのよ。私ももともと西涼の出だし、堅苦しいのは苦手なのよ」

家康「西涼....もしや、馬超と同郷なのか?」

皇甫嵩「ええ。馬騰殿は私の盟友だし...この前の旅の帰りにも、都に寄ってくれてね」

皇甫嵩「幽州の話は、その時に翠さんから聞いていたの。

だから、翠さんと同じように接してくれたので構わないからね?」

桃香「そのお名前....馬超さんの真名ですか?」

皇甫嵩「そうだけれど....ああ、そうか。

あの子が一番上だから、鶸ちゃんと蒲公英ちゃんも真名で呼ばれないものね」

 

この世界の人間は真名が当たり前だから、呼ばなかったり呼び分けたりが自然に出てくる。

別世界の家康からすると、これが中々に難しい。

 

皇甫嵩「まぁ、あの子の話は改めさせてもらうとして、あなたたちには、書状を預かっているの」

 

皇甫嵩はクスリと微笑むと、懐から紙に包まれた一通の書状を取り出した。

 

公孫瓚「署名は....董仲頴殿?この作戦の責任者殿か。

こんな書状をわざわざくれるなんて、丁寧な人だな」

桃香「もう一つは....風鈴先生のお手紙だ!」

家康「確か、桃香と公孫瓚の恩師だったな?」

桃香「うん♪」

公孫瓚「皇甫嵩殿をお待たせしてるんだから、急いで読むぞ、桃香」

桃香「う...うん」

 

強張りながら手紙を読もうとする桃香に、皇甫嵩は微笑みながら口にする。

 

皇甫嵩「ふふっ。そこまで慌てなくてもいいわよ」

皇甫嵩「....ふぅ、お茶が美味しい」

 

2人に責任者と恩師の手紙を先に読むよう促して、皇甫嵩はのんびりと茶を楽しんでいる。

 

家康「皇甫嵩殿...良いのか?急がなくて」

皇甫嵩「作戦は急ぎたけれど、こんな顔合わせの時まで急かすつもりはまいわよ。

たまには息抜きもしないとね」

家康「そうなのか....」

皇甫嵩「....どうかしました?天の御使い殿」

 

そう笑みを浮かべて家康に声を掛ける皇甫嵩。

 

家康「あ、いや。それも馬超から聞いておられるのか?」

 

朝廷付き武官の印象と全く違うと言いかけそうだが、それ失礼だと無難な話題に振り直す。

 

皇甫嵩「それもあるけどね....。噂は色々な所から伝わってくるもの。

あなたも劉備さんも、自分たちが思っているよりずっと有名人なのよ?」

家康「....そうなのか」

皇甫嵩「自己評価と他人からの印象なんて、嚙み合わないのは世の常」

皇甫嵩「それに、天の御使い――徳川家康は凄まじい武人であるとも聞いているわ」

 

皇甫嵩からの自分の高い評価されてることに痒い気持ちになってしまう家康。皇甫嵩はそんな彼に微笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。

 

皇甫嵩「私だって、大層な肩書はあるけど、実際には見ての通りただの人よ。

想像していた中郎将とは印象が違ってでしょう?」

家康「....あ、いや」

皇甫嵩「顔に書いてあったわよ。

あなたは、噓をつくのが嫌いな所があるのね、フフフ」

 

こういう所、やはり謀略の巣窟で暮らしてるだけあり、それを指摘されて嫌な顔せずにならないあたり不思議な御仁だと思える。

 

皇甫嵩「まぁ....私も月さんも、そんなに上手なわけでもないけどね」

家康「ご同僚の?」

皇甫嵩「ええ。さっきの手紙のもう一人の主で、この作戦の責任者を引き受けている子よ。

董仲頴....董卓というのだけど」

家康「と、董卓!?」

皇甫嵩「あら?知り合い?」

家康「あ、いや、名前を知っているので....」

 

董卓と言えば霊帝死後の政治的混乱に乗じて政治の実権を握り、少帝を廃して献帝を擁立し、一時は宮廷で権勢をほしいままにした奸雄。

だが、諸侯や他の朝臣らの反感を買い、最期は側近で養子になっていた呂布に殺された。

 

皇甫嵩「彼女は優しくてとても誠実な子よ。私としては...今後の朝廷を背負って立つのは、あの子だと思っているわ」

家康「そ、そう、なのか...」

 

家康の知識にある董卓の印象が違っていく。だがよくよく考えると黄巾党の首魁である張角も、この世界ではただの歌を愛する旅芸人の美少女。

ならばあの奸雄・董卓も女の子の可能性だってある。

 

皇甫嵩「だから、そういう意味でも今回の作戦は失敗できないの」

家康「...」

 

皇甫嵩がこれだけ信頼して力になりたいと思ってるという事は、所謂権力側で好き勝手にしてるわけではないらしい。

家康が皇甫嵩とそんなやり取りをしてると、桃香と公孫瓚は手紙を読み終わったようで皇甫嵩に話しかける。

 

公孫瓚「....申し訳ありません。話を中座させてしまって、風鈴先生、今は中朗将をなさっているんですね」

桃香「董卓さんのお手紙も、青州やわたしたちの事をすごく気遣ってくれてました。

....優しい方なんですね」

皇甫嵩「ええ。二人には、私もとてもお世話になっているわ」

 

ゆっくりしていいと言われつつ、二通の手紙を慌てて読み終えた二人に苦笑しながら、皇甫嵩は茶の椀を置いてみせる。

 

家康「二人とも、手紙とかのやり取りしてたと聞いたが....盧植殿のこと、知らなかったのか?」

公孫瓚「先生、自分の仕事のことはほとんど書かないんだよ。

私的な近況とか、わたしたちへの助言は書いてくれるけど」

皇甫嵩「中朗将だと外では出来ない話も多いし....そもそも自分の官職を誇るような方でもないものね」

 

朝廷に近しいと機密事項にも触れている以上、外に漏らすわけにはいかない為、手紙などに官職に関わることを迂闊書くなど法度なのは仕方ないと言える。

 

公孫瓚「先生も応援してくれるし、頑張らないとな、桃香」

桃香「うん!よろしくお願いします、皇甫嵩さん」

皇甫嵩「こちらこそ。なら....本題に入りましょうか」

 

そう穏やかに微笑む彼女だったが、眼鏡の奥でキラリと光る瞳は、確かに優秀な武人に相応しい底知れぬ輝きを秘めている。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

家康「はぁああああーーっ!!」

 

元親「うぉおおおおらああああああああーっ!!」

 

 

家康たちは出兵を始めた。公孫瓚の力も及ばない、青州の中央部...この間救援に訪れた斉を過ぎて、時折見つかる賊たちを払いながら....。

その中で皇甫嵩は....。

 

皇甫嵩「これは...凄い、わね...」

 

皇甫嵩・公孫瓚との合同で軍を進行するが、家康と元親が先頭に立って進む形で行軍するので2人が真っ先に賊を一蹴してしまう。

その為、行軍する彼女らの兵士たちに損害は出なかった。

目の前で見る家康と元親、婆沙羅者たちの尋常じゃない武を見て啞然としてしまう。

彼女の気持ちが分かると、桃香たちは察してしまう。

 

桃香「あはは...。お気持ちは分かります」

愛紗「確かにご主人様たちは、お強いですから...」

公孫瓚「本当ならおかしいけどな」

稟「ほんとです」

 

鈴々「ぶぅー、鈴々もお兄ちゃんと一緒に暴れたいのだ!」

趙雲「いつか、手合わせしたいものだな」

 

などとそれぞれ口にする中で、家康と元親は皆の下へと戻る。

 

元親「家康。鈍ってねぇよだな」

家康「元親も、腕は落ちてないな」

元親「おうよ!」

 

愛紗「ご主人様...あまり無茶はしなでくださいと...」

稟「家康さまはほんと軍師泣かせです」

 

愛紗と稟はジト目で家康の行いを糾弾するように口ずさみ、それを受ける家康としては言い返し難いので苦笑いを見せるしかなかった。

 

家康「いやぁ、ははは...」

 

皇甫嵩「家康殿たちは本当にお強い...。でも劉備さんたちの話で、状況は把握していたつもりだけどまさかこれほど青州も酷いとは...」

 

皇甫嵩は厳しい表情へ変わる...放棄されたままの県令の城に、賊に荒らされた田畑。

そんな有り様の斉を過ぎて、青州の奥へ進んでいくごとに...。

その荒れようは、家康たちの想像さえ超えていく。

 

趙雲「地獄というものが本当にあるのなら、ここはその入り口やもしれませぬな」

元親「地獄への入り口...確かにここの民草とって、その通りかもなぁ」

 

愛紗「趙雲はこの辺りのことは知っていたのか?」

趙雲「あの城にいた頃、子義や他の食客から聞きかじった程度だがな....。

とはいえ、今はそれよりも悪くなっているのやもしれん」

 

あの斉での戦いの後、各地の軍の反撃を受けて、散り散りになった黄巾の残党たちは青州に逃げ込むようになったらしい。

 

稟「...家康さま」

家康「ん?」

 

稟は家康の傍らに近寄って耳元で囁くように口ずさむ。

 

稟「...一番に大きいのは、天和さんたちが黄巾党の前から居なくなったのもあるかもしれません」

家康「...それもあるかもな」

 

稟の指摘も当たっている。黄巾共たちにとって象徴である天和たち三姉妹が、居なくなり士気がかなり落ち込んでしまい追い込まれてしまった。

彼らの中には今も三姉妹を探す者たちは居るようだが、しかしそんな余裕など官軍や各州の軍が許すはずもなく追討している。

 

愛紗「青州の牧は、今なおお決まっていないと聞きますが....州牧とは、それほどになり手のいないものなのですか?」

趙雲「この惨状を見て、牧を引き受けようという物好きもおるまい」

鈴々「本当に誰もいないの?おねえちゃんだったら、やるって言いそうだけど」

趙雲「玄徳殿が正真正銘の物好きなのは間違いないが、今の立場から一足飛びに牧というのも難しかろうな」

皇甫嵩「そうね...。なかなかね、難しいのよ」

 

皇甫嵩の一言は、桃香が州牧になるのはと言う意味だけでなく、他の意味での『難しい』を束にしたようなものであろう。

そんな重みを家康は感じる。恐らく朝廷では、官職・利権の売買など、泥沼の派閥争いとか、そのようなことがとっくに始まってるのだろう。

 

皇甫嵩「次の州牧が決まるのは恐らく、この黄巾の騒ぎが落ち着いた後になるでしょうね」

趙雲「誰かが雑草を払い、田畑に種を撒き終えてからか。いや....実がなってからの方が旨味があるか」

愛紗「趙雲。口がすぎるぞ」

 

睨むように趙雲に指摘する愛紗だが、趙雲は何処吹く風とばかりに気にせず言葉を続ける。

 

趙雲「言うだろう。人の口に戸は立てられぬと」

皇甫嵩「私としては耳が痛い話だけど、言うでしょ?口は禍の元と」

趙雲「....心得ておきましょう」

 

鈴々「うぅ...口の話してたらお腹すいてきたのだ」

愛紗「昼ならさっき済ませたばかりではないか」

元親「ははは!鈴々は食いしん坊だなぁ!」

家康「まぁまぁ。災いの門にするより、何か食べてるくらいがいいさ」

鈴々「じゃあ...」

 

腹がへった鈴々は家康に期待するように瞳を輝かせて見つめる。

 

家康「行軍中は夕飯まで頑張れとしか言えんがな」

鈴々「えええええ...」

 

皇甫嵩「....ふふっ。それにしても、賑やかねぇ」

 

分かり切った結果に落ち込んでしまう鈴々。そんな今行軍中だと言うのに似つかない陽気な雰囲気に、つい笑みを溢す皇甫嵩。

 

愛紗「不調法な者ばかりで申し訳ありません」

皇甫嵩「いいのよ。このくらいの方が、私としては気楽でいいわ」

 

彼女としてはこういう雰囲気は珍しいものなのであろう。っとその時である、雷々と電々が新たな知らせを持ってきた。

 

雷々「ご主人様!皇甫嵩さん!」

電々「いま斥候に送った兵士さんたちが、黄巾の大部隊を見つけたって!」

 

家康「わかった!」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

公孫瓚「....なるほど。これは確かに」

 

作戦の為に建てられた天幕の中。

報告のあった部隊は、今までの黄巾の賊とは明らかに規模が違っていた。

 

皇甫嵩「こちらの偵察では、他の州に比べてかなりの規模だと言うのが分かったわ。恐らくこれが本隊の可能性もあるわ」

桃香「なら...この部隊を倒したら、黄巾党との戦いは落ち着くんですか?」

皇甫嵩「そこまで単純ではないだろうけど...。でも最近黄巾党が妙なことになっているのは確かよ」

趙雲「妙なこと?」

 

皇甫嵩は眼鏡を押さえながら答える。

 

皇甫嵩「張角が、どこかの戦場で死んだか...または行方を暗まして逃げたとも話よ」

桃香「そ、そうなんですか...!」

 

皇甫嵩の話に桃香は動揺する気持ちを抑えて口にする。黄巾党の首魁である天和が現在、家康の名の下保護を受けているのは秘密となっている。

それ故に今回三姉妹は官軍に気づかれないようにしている。因みに三人は平原の街で留守番となっている。

 

桃香「それより、作戦なんですけど....本当にこれ何ですか?」

 

天和たちの話から切り替えるとの名目もあるが、作戦のことも気になっていた桃香が皇甫嵩に問いかける。

すると皇甫嵩は答える。

 

皇甫嵩「....ええ。天子様の軍隊に、これ以外はありえないわ」

 

公孫瓚「....」

桃香「...」

愛紗「....」

 

家康「....」

元親「....はぁ」

 

静かに断言する皇甫嵩の言葉に、溜息を吐く元親を除き皆黙ってしまう。

 

趙雲「....まさか、正面からのぶつかり合いとは」

 

そう。官軍側の提案した策は、作戦も何もない、正面からの激突であった。

これに対し軍師である稟は不快感を露にする表情を浮かべる。

 

稟「....言い分としてはわかりますが、分が悪いのは理解していますか?」

桃香「稟さんの言う通り....何か作戦がないと、わたしたちの被害も...」

皇甫嵩「わかってはいるけどね....。

今の朝廷の軍に、小細工は許さないのよ。何とか、聞き入れてもらえない?」

 

元親「そのために自分の兵隊どもに、死ね、っと...?」

家康「元親...」

 

元親としてもこの話に納得できないものである。わざわざ自軍にとって被害が大きくなるはずなのに、それを敢えて選ぶなど愚策よりも質が悪い。

 

皇甫嵩「確かにあなたたちの言いたいことはわかるわ。だけどそこをお願い...」

 

皇甫嵩は必死な想いで頭を下げてしまう、それを見た桃香たちが慌ててやめさせる。

 

桃香「あ、頭を上げてください!」

 

彼女らの様子に元親も居づらい気持ちになってしまう。彼としても別に皇甫嵩を責めたいわけではない、ただこれでは余りにも自分たちにも大きい痛手を被り、人死を無駄に増やしてまで手に入れるべきなのかと思ってしまったのだ。

ここまでの道中にあった村を襲ってる賊とか、追い剝ぎを行っていた連中を蹴散らすのとは訳が違う。

しかし作戦を遂行する官軍や皇甫嵩の立場...家康たちとは違うのもまたそうなのだろう。

 

家康「....ならば」

稟「家康さま?」

皇甫嵩「なにかあるの?」

 

家康「策と言う訳ではないが、官軍はともかく...ワシら幽州軍は、不調法な田舎者ということだったな?稟」

稟「え...?あ、はい」

家康「ならばなのだが....」

 

家康が口にする提案とは....。その一方....

 

 

 

 

 

彼らがいる場所から離れた場所の道にて....。

 

 

「.....!」

 

巨大な螺旋状の槍を持つ巨大な影が立っていた....。




今回はここまで。


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第十五章 登場、第一の絆

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


前回、朝廷から黄巾党への討伐に協力せよと書状が届き、家康たちは官軍から派遣された中朗将を務める皇甫嵩と共に青州の更に奥地にて、大規模な黄巾党残党部隊を発見。

これに対して官軍の立場上、皇甫嵩は真っ正面から敵と衝突して、これを小細工せず殲滅しなければならないと告げてきた。

しかし官軍に比べて戦力が低い家康と桃香たちからすれば、無駄に貴重な兵を失うのは困る。

だが皇甫嵩の立場上もあり強く抗議することも出来なかった...ならばと、家康がある提案を具申するのだった。

 

愛紗「ご主人様の策とはいえ....本当にこれで良かったのか」

 

複雑な表情で口にする愛紗。その彼女の傍らに立っている鈴々が不思議そうな顔で愛紗に問いかける。

 

鈴々「ふえ?皇甫嵩も何も言わなかったよ?」

愛紗「それは...まぁ」

 

趙雲「まぁ、我々は命令を無視して専行した不調法者の集まりゆえ、何も言う事などないだろうさ」

 

鈴々の疑問に耳を傾ける愛紗の後ろから近寄りながら、気にもしない風に口走る。その直後、彼女の顔が不敵な笑みを浮かべるのだった。

 

趙雲「...ふっ。それにしても、天の御使い殿もなかなか悪いことをお考えになる」

愛紗「随分と楽しそうだな、趙雲」

 

そんな楽しげに語る彼女を睨みながら愛紗は声掛ける。愛紗としてはこの戦、勝てたとしても自分たちにとって手痛い結果になってしまえば意味がない。

彼女たちには家康と元親という強力な猛将がいるが、しかしそれに対して愛紗は桃香と共に主と仰ぐ家康には必要以上に最前線出て欲しくないのだ。

だが現状、愛紗の気持ちが優先できるほど余裕があるわけではない。自分の気持ちを封印して目先のやるべきことをしなければと複雑ではあるがやらねばという愛紗と、そんな彼女と違って目先のことに楽し気な趙雲はまことに正反対と言える。

 

趙雲「知らんのか?世の中で二番目に楽しいことは、するなと言われたことをこっそりする事だろう」

鈴々「一番目は何なのだ?ごはん?」

愛紗「...言わなくていい。大体わかる」

 

雑談に耽る彼女たちではあったが、趙雲の顔つきが変わる。

 

趙雲「それよりも、連中の背後が見えてきたぞ。

ここからなら、良い奇襲になりそうだな」

鈴々「まだ鈴々たちに気づいてないみたいなのだ」

愛紗「ならばなおのこと良かろう。2人とも、準備はいいな」

趙雲「無論」

鈴々「鈴々も大丈夫なのだ!」

 

愛紗「うむ!元親殿もよろしいですか?」

 

元親「おう!俺もいつでもいいぜ」

 

愛紗は元親にも準備のほどを問いかけるも、元親は今から始まる戦に今か今かと待っていた様子である。そんな気張る元親ではるが、愛紗に声をかける。

 

元親「愛紗よ」

愛紗「はい?なんでしょ」

元親「家康はな。思ってるよりもお前さんを期待してると思うぜ」

愛紗「いきなり何故...そのような...」

 

突然のことにドキっとして顔を赤くしてしまう愛紗。家康のことになると熱くなってしまう彼女に元親は笑いながらに伝える。

 

元親「あいつはな。日ノ本じゃあ自軍で頼れるのはいつも本多忠勝ぐらいだったから、ここに来てあんたたちと出会ってからそれが嬉しいのだろうよ」」

愛紗「ご主人様がそんな...」

元親「ま!あとは家康から聞くんだな」

愛紗「.....はい!!では....突撃!!」

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

桃香「ご主人様!皇甫嵩さん!愛紗ちゃんたちの奇襲、始まったみたいだよ!

火の手が上がってる!」

家康「分かった!」

皇甫嵩「了解よ」

 

桃香からの報告を受け取る家康と皇甫嵩。その隣で溜息を漏らすのが止まらない公孫瓚は家康に愚痴る。

 

公孫瓚「まったく....。屁理屈もいい所だろ、家康」

家康「ん?はっは。いいだろ、ワシらの統率が取れてないのが悪いだけなのだから、皇甫嵩殿や官軍は悪くはない」

 

家康が立てた案とは...いつもみたく奇襲を掛けるだけなのだが、それは飽く迄も家康たちが官軍の将である皇甫嵩の命令を無視して勝手に奇襲に行っているという体を為しているに過ぎない。

それに対して官軍である彼女は、これに無理矢理に付き合わされただけ。

公孫瓚からしたら、思いっきり屁理屈である...それが、家康の描いた絵面であった。

稟としても軍師の立場上、これに眼鏡を押さえながらもこの方法に全面的に否定できない。

 

稟「確かにこれは、そうかもしれません....しかし、これならば我らにとっても何ら問題は起きないと思われますが...」

家康「しかしこれで上手くいけば、大丈夫だ」

皇甫嵩「....本音を言えば、こちらから頼むわけにもいかないしね。色々汲んでくれて助かったわ」

 

皇甫嵩としては家康の案は渡りに船と言えるものではある。家康たちのような自由に軍を動かす者たちとは違い、立場や見栄など過剰な官軍だと『賊相手に小細工や狡猾な策許さん』などと言う、そのような堅苦しい考えで動く軍では窮屈である。

 

桃香「でもこっちもできる限りをしたんだけだし。これ以上は、何かあったらごめんなさい」

皇甫嵩「十分よ。これ以上はわたしたちの問題だから」

桃香「あ、でも。これ...不興を買わないための策なんじゃ...?」

家康「そうなんだが....そんな簡単ではないだろ?朝廷は」

 

やらなければ重大な立場として重い責を背負っているのは確か。

恐らく正面から激突しても、『被害が大きかった』などの適当な理由を付けて責任を追及されてしまうだろう。

だとしたらと家康は、自分たちのやりたいことを好きにやった方が良いと考える。

可能な限り、逃げ道や言い分を作っておいて。

 

公孫瓚「だな。私たち州牧でさえ、何をやっても文句を言われる時は言われるしなぁ」

桃香「何をやっても....」

稟「それが、今の朝廷の仕組みですからね...」

皇甫嵩「ふふっ、そういうこと」

 

彼女は公孫瓚と稟の言葉に同意しながら笑みを浮かべる。

 

皇甫嵩「でもね....ここで私が感謝の言葉したことと、兵の犠牲を最小限になるよう力を尽力したということは、確かな事実よ」

 

彼女は自身の素直の気持ちを述べる。

 

皇甫嵩「あなたも家康さんも、それは胸を張って」

桃香「....ありがとうございます」

皇甫嵩「なら、そろそろ我々も攻撃を始めましょう!

本隊は天子さまの軍らしく、小細工なしで行くわよ!」

 

皇甫嵩の天高く響く声に兵士たちは顔を引き締め、これからの戦に臨む。

 

皇甫嵩「総員、攻撃を開始なさい!」

 

「「「「「「うぉおおおおおおおおおおーーー!!!」」」」」」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

家康たちが戦を始めたその戦場から離れた場所から、その光景を見ている“者たち”がいた。

一人はぽけっーとした顔で、顔には猫髭のような模様があり、裸に近い三角ビキニを着て小柄ながらその体格に見合わぬ斧を持っている少女が、自身の隣にたつゆうに3メートルはあろうかという巨体を全身鋼の鎧で覆ったその存在に声をかける。

 

???「あそこにいくの?」

 

???「....!!」

 

彼女の問いに声ではなく、けたたましい機械音で返事をしている様子。これだけ会話などしているなんて成立している筈もないと、誰もがそう思うであろうが....

 

???「うん、わかった。なら、シャンも一緒にいく」

 

なんと会話出来ている様子であり、シャンと自称して随行すると宣言する。

その彼女に、巨体の持ち主はその大きな手で彼女を持ち上げ背に乗せた。

 

???「....!!」

 

その大きな機械音と共に、背中の鎧の一部が変形したと思いきや、そこから噴射装置のような二つの筒が現ると轟音と共に火を噴く。

巨体の者の背に乗っている少女はこれから起きることを知っているみたいで、しっかりとしがみついている。

するとその直後、轟音と同時にその巨体は一気に飛び上がり、家康たちがいる戦場へと飛んでいくのであった。

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

その頃戦場では...。

 

元親「うおおッ、いただくぜッ!」

 

碇で敵を引き寄せる元親は、引き寄せた敵を至近距離で豪快に碇槍で叩き潰して容赦なく蹂躙する。

 

元親「沈みなッ、漁り火よォッ!」

 

その場で碇を振り回す固有奥義である乱舞攻撃・六限で以て更に蹂躙の速度を加速させる。目の前の黄巾党らに手加減や情けなどかける必要はない。

彼らは嘗ては天和たちの先導によって変わったとはいえ、自らの欲望のまま弱き民を虐げてきた獣同然である。

 

元親「てめぇらに慈悲はいらねぇ!!どぉおオラァ!!!!」

 

碇槍・長槍皇炎を振り回しながら、火の竜巻を巻き起こして周囲の黄巾党たちを巻き込みその餌食にしていくのであった。

元親一人でもいけるのでは?と錯覚してしまうが、まだまだ敵は大量にいる。元親が奮闘している最中、愛紗たちも負けじと己の武を振るい黄巾党たちを倒している。

 

愛紗「はあああっ!!」

 

鈴々「鈴々が全部やっつけるのだぁ!!」

 

趙雲「はいはいはいぃー!!!」

 

愛紗が偃月刀でもって迫る黄巾たちを薙ぎ、切り裂き、一刀両断にしていく。更に大地を蹴り駆けて次の敵勢へと切り込んでいく。

その愛紗の背を守りながら鈴々が蛇矛で連続した目にも止まらぬ突きで、眼前の敵をハチの巣にして亡き者にしてく。

そして次の敵へと標的を変えて蛇矛を振り回しながら、黄巾どもを切り刻む。

趙雲も勇ましい愛紗、荒々しい鈴々とは違い美しいほど優美な動きで敵を翻弄して、槍を以て神速とも言える連続した槍技にて黄巾兵を物言わぬ屍に変えていく。

 

愛紗「むぅ....これは」

 

これだけの敵を屠っているはずなのだが、敵に未だ勢いに衰えが見受けられない。寧ろ....

 

「張角さまを取り戻せー!!」

 

「大賢良師さまを俺たちの下にぃ!!!」

 

今自分たちが追い詰められている者たちとは思えぬその勢い...油が注がれた大きな火の如くで、その瞳も正気とは思えないぐらい血走っている。

その様子に愛紗たちは無自覚にも一歩後ろに下がってしまう。

 

鈴々「うぅ....こいつら、倒しても倒しても向かってくるのだ。なんか怖いのだーっ!」

趙雲「それに、ここまで数を頼みに押されてはな」

 

そう苦悶の表情を浮かべる三人に雷々と電々の二人がやってきた。

 

雷々「愛紗ちゃん!鈴々ちゃん!趙雲さぁん!アニキぃー!」

電々「敵も後退を始めたから、奇襲部隊も戻ってきてってー!!」

 

愛紗「わかった!こちらも敵陣を離れるぞ!!...元親殿!後退します!!」

 

元親「おう!...っ!?雷々、電々!!」

 

雷々・電々「「え?」」

 

鈴々「後ろ!!」

 

愛紗「っ!?」

 

「すきありだぁ!!」

 

雷々と電々が振り向いた先には狂気に満ちた表情で、巨漢の黄巾兵士が二人に襲い掛かろうとしていた。愛紗や趙雲、鈴々、そして元親の今の距離では間に合わない。

雷々と電々も唐突のことに思うように反応できず、このままではやられてしまう。

 

愛紗「危ないっ!!」

 

愛紗が叫んだ、その時であった。上空から何かが高速で飛来、そのまま雷々と電々を襲い掛かろうとしていた巨漢の黄巾兵を真上に轟音と落ち、叩き潰してしまった。

黄巾兵は原型も無くなってしまった、雷々と電々は怪我もなく無事であった。愛紗は急ぎ二人に駆け寄る。

 

愛紗「大丈夫か!?」

 

雷々「う、うん...」

電々「で、でも....あ、あれ...」

 

愛紗「え...え?」

 

雷々と電々が指差した先には....。

 

趙雲「な、なんだ、あれは....」

鈴々「お、大きいのだぁ!」

 

愛紗たちは目の前に存在しているモノに言葉もなく啞然としてしまうが、元親は驚愕しながらもその存在を知っていた。

 

元親「あ、あいつはっ!!」

 

 

 

 

 

「....!」

 

その者...全身を覆う赤茶けた鎧、というか分厚い装甲板と時折赤く輝く右目が特徴。

一見すると全身機械の完全なロボットのようだが、左目・口・鼻などには生身の生体部分らしきものもある。

ゆうに3メートルはあろうかという巨体を全身鋼の鎧で覆い、手にした削岩用回転式突撃槍――つまりドリル状の巨大な槍を携えたその者を、長宗我部元親は知っている。

 

元親「お、おめぇは!!本多、忠勝!!」

 

愛紗「っ!?ほ、本多、忠勝って...!!こ、この、方が...!?」

 

 

 

この者こそ、徳川家康にとってなくてはならない徳川第一の絆にして、家康の過ぎたる者、そして戦国最強の称号を持つ無双の武人・本多忠勝である。

 

忠勝「....!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。いつも雑な出来で申し訳ありません。


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第十六章 戦国最強

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


黄巾討伐の為に戦が始まった。家康たち本隊とは別として奇襲を任された愛紗たちは、奮戦するが数が圧倒的に黄巾たちに分があった。

窮地に立たされたその時、家康に過ぎたる者――戦国最強・本多忠勝が現る。

 

 

元親「あ、あいつはっ!!」

 

 

「....!」

 

その者...全身を覆う赤茶けた鎧、というか分厚い装甲板と時折赤く輝く右目が特徴。

一見すると全身機械の完全なロボットのようだが、左目・口・鼻などには生身の生体部分らしきものもある。

ゆうに3メートルはあろうかという巨体を全身鋼の鎧で覆い、手にした削岩用回転式突撃槍――つまりドリル状の巨大な槍を携えたその者を、長宗我部元親は知っている。

 

元親「お、おめぇは!!本多、忠勝!!」

 

愛紗「っ!?ほ、本多、忠勝って...!!こ、この、方が...!?」

 

 

この者こそ、徳川家康にとってなくてはならない徳川第一の絆にして、家康の過ぎたる者、そして戦国最強の称号を持つ無双の武人・本多忠勝である。

 

忠勝「....!!」

 

愛紗は忠勝を頭から足の爪先まで啞然としながらも凝視する。目の前にいるこの人?が家康が最も信頼する家臣なのか、と...。

 

愛紗「この方が...戦国最強」

 

忠勝「...!」

 

愛紗「え...?」

 

機械の駆動音鳴らすと共に愛紗に視線を向ける忠勝。

 

愛紗「仲間と共に、下がれ...?」

雷々「私もそう聞こえた...」

電々「電々も...」

 

忠勝「...」

 

その忠勝の背から少女が降りてきた。

 

???「お兄ちゃんがいれば、安心」

 

趙雲「お主は?」

???「シャンの名前は、徐晃、字は公明。お兄ちゃんの連れ」

鈴々「お兄ちゃん?」

徐晃「ん」

 

忠勝が連れていた少女――徐晃は、お兄ちゃんが忠勝であると指差ししてみせる。

一方元親が忠勝に近寄って声をかける。

 

元親「おう!本多!元気そうじゃねぇか!」

忠勝「....!!」

元親「ああ。家康の奴もこの戦場にいるぜ!」

忠勝「...!!!」

 

元親とこの地で出会ったことにも驚愕するが、それ以上にやっと己の大切な主である家康の無事を知り、忠勝は大いに喜ぶように体でジェスチャーしてみせる。

 

元親「へへっ。喜んでやがるぜ!」

忠勝「...!」

元親「ん?おうよ!なら俺も残るぜ!」

忠勝「....!」

元親「ああ!いくぜ!本多!」

 

元親は愛紗たちと後退するのを止め、忠勝と共に敵を倒すつもりでいる様子。

その元親に愛紗は引き止める。

 

愛紗「お、お待ちください!一度後退してご主人様の本隊と合流を...!」

元親「本多がいればもうこの戦、勝ったも同然だ!」

 

趙雲「それほどの御仁、なのですか?このお方は...」

鈴々「でもでっかくて強そうなのだ!」

 

雷々「持ってる武器もおっきい!」

電々「あ!敵が戻ってくる!」

 

電々が黄巾党たちが態勢を整えて、今再び奇襲部隊である愛紗たちに襲い掛かろうと迫ってくる。

 

忠勝「...」

徐晃「ん?...え」

 

忠勝は徐晃に振り向き何かを伝えているようで、それは彼女は忠勝が何を伝えているのか理解したらしく、若干納得できなさそうな顔をするが引き下がり大人しく首を縦にふる。

 

徐晃「...うん、わかった....」

忠勝「...!」

 

忠勝は徐晃の返事を聞いた後、元親に振り向き『準備はいいか?』と言う風に機械音をけたたましく鳴らす。

 

元親「おう!いくぜ!戦国最強っ!!」

忠勝「....!!!」

 

 

《戦闘BGM・戦国BASARA 本多忠勝のテーマ》

 

 

元親の声を合図に忠勝はドリル状の巨大な槍――三池光世改槍を構えたと同時に、背中の鎧の一部が変形し二門の噴射口が現れ火を噴く。

機動形態――背中から展開した噴射口を吹かし、一定時間高速移動する忠勝の形態の一つである。

その機動形態と併用する為、忠勝は三池光世改槍の穂先を激しく回転させ、そして噴射口が爆発音を響かせたと同時に鋼鉄の巨躯体を凄まじい速度で滑走しながら、穂先を回転した三池光世改槍で次々に数が多い黄巾党たちを亡き者にしていく。

 

愛紗「こ、これは!?」

 

突進形態――ドリルを構えて文字通り突撃する形態。機動形態の豪速と共に併せたと相まって、その威力はとんでもなかった。

 

「ぎゃあああああああ!!!」

 

「仲間が次々に轢き殺されてるっ!!?」

 

「ば、化け物だ!!」

 

「槍みたいな武器に、バラバラにされやがった!!ひぃ!!」

 

目の前に人間とはかけ離れた鋼鉄の巨人が、巨大なドリルを振り回す姿は敵からしたら恐怖でしかないだろう。

しかし忠勝は攻撃を緩めるつもりはない。更に激しく攻めようと矛先が高速回転する槍を豪快に、且つ隙を見せないその鋼鉄の巨体からは想像できない素早い動きで、周囲の黄巾兵らを潰し、射殺す。

その戦う姿に元親は不敵に笑みを浮かべて、敵を倒しながら戦国最強を称賛する。

 

元親「流石戦国最強だ!こっちまで高ぶるぜ!」

 

そんな元親とは違って、徐晃を除き愛紗たちは目の前で起きている出来事に驚くしかなかった。

 

趙雲「な、なんだ...これは」

鈴々「敵があっという間にやっつけられてるのだ....」

雷々「うそ....」

電々「ひ、人なの...?」

 

愛紗「こ、これが....戦国最強、本多忠勝殿」

 

その愛紗の横では、ここまでもう見慣れているのか忠勝の無双ぶりに徐晃は感嘆の声をあげる。

 

徐晃「お兄ちゃん、ほんととても強い」

 

その時忠勝は、周りの反応など気にも留めずどんどん黄巾党らを亡き者にしながら蹂躙する。先ほど愛紗たちに対してやられながらも引き下がらず、今はもう自分たちの下にいない張角を狂信する異常な意思の強さを見せていたが、目の前で暴れる戦国最強の力の所為で恐怖が勝り、最早まともな抵抗なんて出来ず次々にやられてしまうだけであった。

 

そして遂に忠勝は婆沙羅者でしか持てない、伝家の宝刀を使用する。

 

元親「まずい!!お前ら!!本多から出来るだけ離れるぞ!!」

 

愛紗「え?!」

趙雲「な、なぜ!?」

 

元親「いいから!!早くしろっ!!」

 

怒鳴る元親に言われるがまま忠勝から急いで離れる。すると....

 

 

忠勝「....!!!」

 

忠勝は槍を地面に突き刺した直後、背中から車輪のようなものを展開したと思いきや、超広範囲に電撃または凄まじい威力のレーザーの雨を降らせたのだった。

 

「ぎゃあああああああ!!!」

 

「空から光の雨がぁああああ!!!」

 

「しぬぅっ!!!たすけぇ!!!!!」

 

黄巾党たちのやられる姿に最早言葉を無くす愛紗たち。一体なぜこうなっているのかも理解できないでいる。

 

元親「ほんと、流石だぜ。戦国最強」

 

 

婆沙羅者でしか使えぬ伝家の宝刀・バサラ技――家康たちが住む戦国の世にて、武に秀でる武将のみが使える強力な技。

広範囲に降る光の雨に黄巾党たちは逃げられる者は一人たりとも居なかった、かなりの時間光の雨を降らせた忠勝ではあったが、バサラ技を解除した時にはもう黄巾党たちは既に一人も生き残りは誰一人も居なかったのであった。

 

その光景に愛紗たちはもう啞然とするしかなく...

 

 

愛紗「じ、次元が...違いすぎる...」

 

間近で見た戦国最強の強さにその言葉を出すのが精一杯であった。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

そして戦いは完全に家康たちの勝利となって夕方になったころ...。

 

 

家康「忠勝っ!!」

 

忠勝「....!!」

 

主・家康との再会に喜ぶように忠勝は思わず、家康を持ち上げてしまった。

 

家康「ははは!おいおい!忠勝。会えてうれしいのはわかったから、降ろしてくれ」

 

忠勝「...!」

 

家康もそう言いながらも家臣である忠勝に会えて嬉しさを隠していない。そんな家康の姿に桃香たちは見ていた。

 

桃香「ご主人様...家臣の人に会えて嬉しそうだね」

稟「そうですね。家康様の嬉しそうな顔...」

公孫瓚「にしてもでかいな、本当に同じ人間なのか...?」

皇甫嵩「確かにそうね」

 

鈴々「すっごい強かったのだ!黄巾党たちがバーンってやられたの!」

雷々「うんうん!なんかもう、気づいた時にはあっという間だったよね?電々」

電々「うん!すごかったよ~!」

 

元親「戦国最強の名は伊達じゃねぇのさ!」

 

趙雲「戦国最強、か...」

愛紗「.....」

 

趙雲は戦国最強と呼ばれし忠勝の強さに武人として興味があるのか、先ほど見せた力に怖気づいている様子はない。

一方愛紗は、忠勝に会えてうれしがる家康を見て複雑な表情を浮かべている。

そんな中、忠勝は家康を降ろすと徐晃が話しかけてきた。

 

徐晃「ねぇ、お兄ちゃん。この人がお兄ちゃんが言ってた主の人?」

忠勝「...!」

 

家康「ん?忠勝。この少女は?」

徐晃「シャンの名前は徐晃、字は公明。お兄ちゃんと一緒にずっと行動してた」

家康「そうだったのか(徐晃...確か、史実では曹操の家臣の...)」

 

そう思いながら徐晃を見ていると、彼女は忠勝の傍らに侍るように近づく。

 

徐晃「お兄ちゃんの主なら、お兄ちゃんはずっとこの人のところにいるの?」

忠勝「....!」

徐晃「わかった。なら、シャンも一緒にいる」

家康「それは...」

 

徐晃は家康に振り向き...。

 

徐晃「真名は香風。これからよろしく、家康さま」

家康「いいのか?真名を教えて」

香風「優しいお兄ちゃんの主なら信頼できるから」

家康「分かった!ではよろしく頼む!香風!」

香風「うん」

 

桃香「ご主人様、また仲間が増えたね!」

家康「ああ!絆が増えるのはいいことだ」

桃香「うん!」

 

家康の下に戦国最強・本多忠勝が合流し、そして徐晃までもが仲間に加わった。これでようやく黄巾党との戦いに終着が見え始めた...。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。


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第十七章 伏龍・鳳雛

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


前回、愛紗たちの前に現れた徳川の第一の絆にして戦国最強・本多忠勝。

その名に違わず圧倒的な力を以て、黄巾党を殲滅せしめた。

戦いの後、忠勝との再会を果たした家康はそこで彼と行動を共にしていた徐晃を仲間にするのだった。

 

戦いを終えた家康たちは天幕にて話し合っていた。

 

皇甫嵩「此度の戦ではこちらの被害は意外なことに軽微だったわ」

公孫瓚「それはこちらも嬉しい話ですね」

皇甫嵩「ええ。でも敵の残党もまだ少し残って、戦場から逃げたのを確認しているわ。

これを追撃して早々にこの戦いを終わらせないと....」

 

黄巾党本隊総数の約大半を本多忠勝の手によって、完全に殲滅されたのだが残った敵は直ぐに逃げたようだ。

 

稟「こちらが放った斥候の情報ではこの先から一里離れた先に、砦があるようです」

趙雲「それが奴らの根城か。ならば本気で行かねばな」

電々「なら、あとはやっつけるだけだね~」

雷々「楽勝!楽勝!」

鈴々「今度こそやっつけるのだ!」

 

稟の報告に武将たちは意気揚々となっている。

 

徐晃「シャンも参加する」

桃香「いいの?香風ちゃん」

香風「うん、お兄ちゃんと一緒にいく」

 

徐晃――香風も戦に参戦することに桃香が問いかける。香風としては前回、忠勝に言われて参戦は出来なかった、なので今度こそ参加したいと願っている。

 

元親「いいじゃねぇか。それに家康や俺、そして本多もいるんだ。負ける戦じゃねぇよ」

忠勝「...!」

 

元親の言葉に忠勝は機械音を高々にあげて戦意が高い姿勢を見せる。そんな戦国最強の姿に桃香は「頼もしい」と口走りながら笑みを浮かべる。

 

桃香「そうだね!忠勝さんもいるんだし、きっと大丈夫!ね?ご主人様!」

家康「ああ!次はワシも前線に出るし、忠勝と共に励もう!」

 

愛紗「っ!?」

稟「家康さまもですか?」

 

家康「ああ。なぁに大丈夫だ...砦の攻略するのはワシらだ」

稟「確かに、そうですが....」

 

桃香「ご主人様...無理は...」

家康「大丈夫さ。それにワシも出ればその分被害も少なくて済む」

桃香「そう、だね....でも!無理はしないでね!」

家康「ああ。約束だ」

 

桃香と稟としては家康には本陣にて構えていて、前線は忠勝や元親を中心で事に当たって欲しいというのが本音だ。

しかし家康もまた強力な武人でもあるのも事実、彼が加わればそれこそ味方の被害もかなり減じれる。

家康は忠勝と元親に共に戦働きを励もうと告げる。

 

家康「二人とも、よろしく頼む」

元親「おうよ!俺ら三人でかかりゃあ楽勝よぉ!」

忠勝「.....!!」

 

愛紗「....」

 

そんな三人のやり取りを愛紗は複雑な表情で見つめる。彼女が家康を見つめる中、鈴々が家康の腹に抱きついてきて頬を膨らませて抗議する。

 

鈴々「むぅ!!お兄ちゃん!鈴々も一緒にいくのだ!」

家康「ああ!鈴々も、あてにしてるぞ」

雷々・電々「「はいはいはーい!」」

家康「勿論雷々・電々も忘れてないさ」

 

家康に言われて三人は大いに無邪気な顔で喜びを見せる。家康は今度の砦の攻略には稟に策を講じて貰う為に指示する。

 

家康「稟、砦の攻略の為の策を頼む」

稟「は!かしこまりました!」

 

主から求められ稟は喜びの顔で了解した。彼女の心の内では今、天にも登るような歓喜に満ちていることであろう。

 

稟「(ようやく家康さまの為に働ける...嬉しい、はぁはぁ)」

家康「進軍は明日。今日はここで陣を布き、休息としよう」

桃香「うん!」

公孫瓚「ああ!」

皇甫嵩「ええ」

 

 

 

愛紗「....私は見回りに行って参ります」

 

皆が意気込みを高める中で、言葉を残して愛紗は一足早く天幕から出ていくのだった。

 

桃香「愛紗ちゃん...?」

家康「どうしたんだ?」

 

趙雲「....」

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

陣の周囲を見回りを始めた愛紗だが、彼女の顔は暗かった。理由は何故か?それは...

 

愛紗「本多殿がいれば、最早楽な戦、か....」

 

彼女が抱いているもの――それは本多忠勝という戦国最強が見せた圧倒的な力。それを目の当たりにした彼女は家康の為に自分は役に立つのか?自分ではもう家康を守るなど不要なのでは?と今の愛紗の気持ちは、そのような暗い気持ちになってしまう。

戦いの前に元親が言っていたことを思い出す。

 

 

 

 

家康はな。思ってるよりもお前さんを期待してると思うぜ

 

あいつはな。日ノ本じゃあ自軍で頼れるのはいつも本多忠勝ぐらいだったから、ここに来てあんたたちと出会ってからそれが嬉しいのだろうよ

 

 

 

 

愛紗「....」

 

今まで自分は家康を桃香と同じく大切な主として敬い、命を賭けて守るために己の武を捧げると決めた。

だが家康には忠勝という最強の家臣が存在している、自分ではもう家康を守って戦うことはもうダメなのかと思ってしまっている。

 

愛紗「.....ご主人様」

 

「随分と暗い顔だな」

 

愛紗「...なんだ、趙雲」

 

彼女の背後から趙雲が現れ、愛紗に話しかけてきた。

 

趙雲「なにやら、思い詰めたようなものだったぞ」

 

愛紗「お前には関係ない。明日にはまた戦だ、休んだらどうだ」

 

そのまま歩こうとした際、趙雲が口開く。

 

趙雲「戦国最強...確かに強かったな」

愛紗「...っ」

趙雲「お主、本多殿がいれば家康殿にあてにされないと思っているのか?」

愛紗「....」

趙雲「関羽...お主」

 

っと趙雲が何かを言おうとした際...

 

 

???「あ、あのー!」

 

愛紗「ん?」

趙雲「なんだ?」

 

振り向けば二人の少女がいた。少女のうち、一人は頭にベレー帽のようなものをかぶっている少女。

もう一人は頭に魔女のようなとんがり帽子をかぶっていた。

どうしてこの陣地に子供が?っと不思議になる二人ではあったが、趙雲が二人に声をかける。

 

趙雲「どうしたんだ?」

 

ベレー帽の少女「ええっと、わたくしたちは...」

とんがり帽子の少女「わたくしたちは、その....り、りゅうびしゃまに...!...ええっと、はぅぅ」

 

しかし随分と緊張している。

だが愛紗たちから見ても悪意があるようには見えないので、キツイ追い払うという考えは出さなかった。

 

愛紗「賊に村を追われた子か?」

趙雲「そうかもな。確か南に避難所が設けられていると皇甫嵩殿が言っていたぞ」

 

愛紗たちが少女らを避難所に向かわせようと話し合っている中、少女らは何やらもじもじと言いたそうな態度を見せるが、しかしそれを口にする勇気がないのか何も言えず。

 

愛紗「怖がらなくていいんだ。もう大丈夫だからな」

 

とんがり帽子の少女「はぅぅ...」

 

とんがり帽子を被る少女に何気なしに手を差し伸ばすが、その子は倒れそうになるともう一人の少女に慌てて支えられる。

ベレー帽の少女「ひ、雛里ちゃん、しっかりして...!」

 

愛紗「だ、大丈夫か!?」

趙雲「お主が急に近寄るからであろう?仕方ない...誰か、この子達を避難所に連れて行ってやってくれ」

 

「はっ!でしたら二人とも、こちらへ」

 

ベレー帽の少女「はぅぅ...そうじゃなくて...」

 

二人は兵士によって手を引かれて、そのまま避難所の方へと行ってしまった。再び趙雲と二人に戻った愛紗ではあるが、見回りを再開すべく歩き始めた。

 

愛紗「ではな、趙雲」

 

趙雲「一つ言っておく」

 

愛紗「....なんだ?」

 

趙雲「家康殿は、誰かおいそれと天秤にかけて、蔑ろにするような御仁ではないぞ」

 

愛紗「....」

 

趙雲「私はそう思うがな」

 

愛紗「....お前に言われずとも、ご主人様はそのような方ではない」

 

それだけを言い残し、愛紗は趙雲の下から離れていくのであった...。その愛紗の背中は哀愁漂う悲しくもそして寂しい。

 

趙雲「やれやれ...心根弱いやつだな」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

一方、避難所...。

 

ベレー帽の少女「はわわ...」

とんがり帽子の少女「あわわ...」」

 

兵士によって避難所に案内された先ほどの少女たち、彼女たちはしどろもどろになってこれからどうすべきかと悩んでいる様子。

 

ベレー帽の少女「うぅ....どうしてこんなことに」

とんがり帽子の少女「し、仕方ないよ。

緊張しちゃって、ちゃんと言えなかった私たちも悪いんだし」

 

二人には目的があるようでそれを逃してしまったようだ。

 

ベレー帽の少女「そうだね...。明日こそがんばろう」

とんがり帽子の少女「うんっ」

 

彼女たちは明日に期待をしその夜は就寝した。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

その翌日、事態は急変した。天幕内では皆思い詰めた顔で今の状況を整理すべく、話し合っている。

 

家康「....稟。状況を整理しよう」

稟「はい、家康さま...。では状況をご説明いたします」

 

彼女はそこで解説を始めた。その内容は家康たちが追い詰めた黄巾党本隊の残党が、昨夜の内に砦から抜け出してそこから少し離れた所にある街に急襲し、そこに立てこもりを始めてしまった。

街の様子は突然の襲来によって街の外観は、あちこち壁が崩れており、街を守っていたと思われる自警団の死体が街の門前に散乱していた。

何とか街から逃げ切れた者たちもいるようだが、被害者は少なくはない。

 

この報告内容に皆驚愕し、急いで現場となっている街へと急行したのだ。

 

家康「....まさか、連中がこのような行動にでるとはな」

稟「はい、迂闊でした」

桃香「街の人たちは辛うじて、避難してきたけど」

公孫瓚「...今はまず、この状況を何とかすべきだ」

皇甫嵩「ええ。それにあの街の外観を見る限り、侵入は容易そうだし、そこから攻めれば落ちるのはすぐのはず」

 

元親「なら話は決まりだな」

忠勝「...!」

徐晃「うん」

 

雷々「早く街の人たちを助けよ!」

電々「そうだよ!」

 

愛紗「今度こそ、終わらせる!」

趙雲「ああ...ん」

 

愛紗「ん?どうした?」

 

その時であった。天幕に愛紗たちと接触してきたあの少女たちがやってきた。

 

ベレー帽の少女「あ、あの....」

とんがり帽子の少女「りゅ、び...しゃまに」

 

愛紗「お前たち!何故ここに!?」

家康「また?どういうことだ?」

愛紗「はい...昨日趙雲と共に話しかけてきました。恐らく街から避難してきたものたちかと...」

 

愛紗がそう伝えると、ベレー帽の少女が居ても立っても居られないとばかりに声をあげる。

 

ベレー帽の少女「あ、あの!!わたしたち!!り、劉備さまにお会いたくて...き、きました!」

桃香「え?わたし?」

ベレー帽の少女「あ、あなたさまが、劉備さまですか...?」

桃香「うん、そうだよ。わたしが劉玄徳。はじめまして」

 

ベレー帽の少女「あ、は、はい!」

とんがり帽子の少女「り、劉備さま...!」

 

少女は上目遣いで尋ねると、桃香は優しい笑みでそうだと伝える。すると2人は目的の人物に会えたことに嬉しいのか、しどろもどろになってしまう。

 

ベレー帽の少女「わ....私、ううん、私たち...」

桃香「....ん?」

 

ベレー帽の少女「あなたに、おちゅかえしたくてきました!!」

 

愛紗「(噛んだ)」

趙雲「(噛んだな)」

稟「(嚙みましたね)」

鈴々「(嚙んだのだ)」

香風「嚙んでる)」

 

桃香「.....ふえっ!?ど、どうしよ!ご主人様!!」

 

見事に噛んでしまったようだが、桃香は彼女が自分に仕官したいと願いでたことに驚愕してしまう。

桃香はどう反応すべきか分からず、家康に助け舟を求める。

その間鈴々や雷々、電々が少女たちを珍しそうに見ていた。

 

鈴々「こんなにちっちゃいのに仕えたいのだ?」

 

雷々「そうだよねぇ」

 

電々「桃香ちゃんにちゃんとお仕え出来るのかなぁ?」

 

愛紗「お前たちが言えた義理ではなかろう」

 

鈴々・雷々・電々「「「ブーブー!」」」

 

っと騒ぐ中、2人の少女たちは今一杯一杯で外野など目にも止めていない。ただ桃香を見て、一生懸命に背筋を伸ばしている。

 

家康「...2人とも。名は?」

 

ベレー帽の少女→諸葛亮「わ、私は、姓は諸葛、名は亮、字は孔明と申します。

玄徳さまのお噂と、こちらの雛里ちゃん.....鳳統からお話を聞いて、ぜひお力になれればと...」

 

家康「(しょ!?)」

元親「(諸葛亮だぁ!?)」

忠勝「....!?」

 

日ノ本の三人は彼女の名を聞いて驚いてしまう。諸葛亮――それは蜀にとって稀代の名軍師にして丞相をも務め、蜀の為に尽力した名将である。

しかも隣のとんがり帽子の少女が、鳳雛と呼ばれし軍略家でもある鳳統であることにも驚愕する。

家康はいつか諸葛亮と会う可能性は考えていたが、まさかこんな機会でもって会うなど予想してなかった。

しかも鳳統と同時になど夢にも思わなかった、家康の元には既に魏において名軍師である郭嘉もいる。

これで劉備側に三国志において稀代の軍師が、勢力を超えて同じ轡を並ぶことになる。

 

愛紗「お話...?桃香さま。彼女、鳳統と会ったことがあるのですか?」

桃香「ううん。覚えがなくて.....」

鳳統「あ.....い、いえ。直接お会いしたことは、なくて....」

鳳統「水鏡先生の所で学問を修めてすぐの頃、世の中の事を勉強することになって、平原の町を治める役人の補佐として...」

桃香「平原の役人って....え。あなた、字は?」

鳳統「はい。士元...と申します」

 

桃香「え.....。あ――――――――――――!!」

鳳統「ひゃっ!?」

 

何かに気付き思わず声を上げる桃香、鳳統は驚きと共に悲鳴を溢してしまう。

 

桃香「ご主人様!」

家康「ああ。あの指南書の...!」

桃香「ちょっと待ってて!」

鳳統「え...?」

 

鳳統が首をかしげる。だが桃香は慌てて部屋の隅にいくと、置いてある荷物から何かを探し始めた。

 

趙雲「元平原の役人であれば、伯珪殿は面識があるのでは?」

公孫瓚「一年くらい前に一度だけだぞ。そこまで記憶力に自信はないよ」

 

趙雲がそう公孫瓚に問うが、そこまでのことなど覚えてないときっぱりと否定する。

すると桃香の胸元には、一冊の本が大事そうに抱えられていた。

 

桃香「....お待たせ!この本を書いてくれたの、あなただよね?」

鳳統「は、はい。私が書き留めたものを、程立さんが置いて帰るようにって」

稟「風が...」

 

桃香が持ってきたのは鳳統が執筆した本である。その本のおかげで、彼女は役人になったばかりではあったが何をすればいいかも、その本を基に市政を布くことで何とかなったのだ。

 

桃香「この本のおかげで、街の復興がどんどん良くなったんだよ!」

鳳統「そ....そうだったんですか。良かった....お役に立てたんですね」

桃香「うん。士元さんのおかげで、わたしがどれだけ助けられたか...本当に、本当にありがとう!」

 

桃香は自身の両手を、鳳統の両手を優しく包み込むようにしながら感謝を述べる。鳳統ははにかみながら頬を赤くして感謝の言葉に頷くのであった。

鳳統の才について桃香の話で分かった。だがまだ諸葛亮の能力が分からないと趙雲は、彼女が何を出来るのかと問いかける。

 

趙雲「して、鳳統殿はわかったが...孔明殿は何ができる?」

諸葛亮「出来るのは、策を考えることだけです」

稟「策、ですか...」

鳳統「私も兵法や軍略のお勉強はしてますが....朱里ちゃんは、もっとすごいです」

桃香「士元さんより、もっとすごい...」

稟「ほう...?」

 

鳳統よりも更に才があると聞き、固唾を飲んでしまう桃香。同じ軍師を志す稟としても諸葛亮の能力が気になるのか、押さえる眼鏡のレンズが光る。

 

公孫瓚「なら早速で悪いが、次の黄巾との戦いで使えそうな策はないか?」

諸葛亮「はい。でしたら、この辺りの地図はありますか?」

皇甫嵩「ええ。これでいい?敵味方の現状の位置は、こうよ」

 

もともとは軍議の最中である。皇甫嵩が広げてた地図の上に、敵と味方の位置と向きを示す駒を置き直してみせる。

 

公孫瓚「それで今の状況なんだが...」

 

皇甫嵩と公孫瓚の説明をふんふんと聞いていた諸葛亮は、やがて考えをまとめるように目を閉じてしまう。

その間、鈴々は自分と同じくらいの少女がそんな直ぐ策ができるものかと疑問視してしまう。

 

鈴々「でもそんなすぐに策って出来るの?」

愛紗「だな。一晩与えても構わんが...」

 

愛紗も孔明の才能に信じてないのか、鈴々に同調する。

 

元親「おいおい...」

稟「いえ。孔明殿はもう考えがまとまったようですよ」

 

諸葛亮「はい。説明させていただいて、よろしいでしょうか?」

桃香「もうできたの?!」

香風「はやい」

忠勝「...!?」

家康「おー!流石だ!」

 

それぞれ彼女に対して反応を見せる中、諸葛亮はなんてことはないと笑みを浮かべて説明を始める。

 

諸葛亮「大きな流れだけではありますが、ひととおり」

 

諸葛亮は、先ず促す皇甫嵩たちの様子を確かめて、そっと駒に手を伸ばす。

 

諸葛亮「では、まず....お味方の配置は、こうします」

稟「ほう...やはりですか」

 

愛紗「この配置は...おい!」

 

稟は何かを理解したように興味深く諸葛亮を見つめる。愛紗は稟とは違い、諸葛亮が提案する配置に対して思わず声をあげてしまう。

 

諸葛亮「ひゃっ...」

 

愛紗の声に思わず怯えてしまうが、家康がそんな諸葛亮の肩に手をおいて落ち着かせる。

 

家康「大丈夫だ、孔明」

諸葛亮「あ...は、はい」

家康「愛紗も威嚇してはだめだ。先ずは孔明の話を最後まで聞こう」

愛紗「....わかりました。ですが、この配置はどう見ても...」

 

しかし未だ納得できないのか、愛紗は機嫌が悪いままである。何せ、諸葛亮の示した味方の配置と駒の向きは愛紗が声を荒げるのも無理もないのだが、稟はそれでも何も反対するような発言はしなかった。

 

趙雲「郭嘉。お主、同じ軍師という立場でこの布陣に何か言いたいことは?」

稟「....いえ。この布陣、私はこれでいいと思います」

元親「でもよぉ、こいつは....」

 

冷静な稟を除き、家康たちは動揺する策...それは。

 

諸葛亮「はい。敵陣には、正々堂々、真っ正面からぶつかります」

 

一番最初に切り捨てた案だったからだ。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

愛紗「ご主人様。見回りですか?」

 

波乱含みの軍議を終えた後....その日の夜。陣地を歩いていた家康に声をかけてきたのは、愛紗だった。

 

家康「いやなに、少し眠れなくてな。愛紗も?」

愛紗「私は不寝番の指揮を執っていました。交代しましたので、もう寝ます」

家康「そうか」

 

職務に忠実な彼女だが家康はそんな愛紗の姿勢に敬う、しかし彼女の顔が歪む。

 

愛紗「ですが....本当に、あの諸葛亮の策を採用なさるのですか?」

家康「信用できないか?」

愛紗「あれは一番最初に否定したものです。なのに、それを採用するなどこちらの被害が間違いありません」

家康「ふむ」

 

彼女の危惧は間違いではないだろう。真っ正面からの衝突は策というよりも愚策と言える、なのにそれを稟と同じく軍師を志す諸葛亮が、そんな愚策を提案するなんて正気ではないと疑いを持ってしまう。

しかし採用すると決定した家康だった、その彼に何故と思ってしまう。

 

愛紗「ご主人様は...どうしてそこまで、あの者を信用なさるのですか?」

愛紗「いつもなら、早々に信用なさる桃香さまに釘をお刺しになるのはご主人様なのに」

 

愛紗からしたら至極当然な疑問である。家康は諸葛亮と鳳統が、劉備にとってなくてはならない名軍師であることを歴史書を見ているため知っているから、諸葛亮の案を採用したなどそれをおいそれと愛紗に告げるのは気が引ける。

 

家康「鳳統の推薦....というだけじゃ、ダメか?」

愛紗「鳳統の考えが優れているのはわかりますが....それと人を見る目は同じではありませんから」

 

心配を隠さない愛紗に家康は苦笑しながらも何とか諭そうとする。

 

家康「とりあえず、一度様子を見てほしい。何より、稟ですら賛成していたし...何より軍師が増えるのはいいことだ」

 

軍師が増えるのは確かによいことだ。稟にだけ負担を強いるのは良くないが、家康は元々前線で動くタイプなので頭で働かす者ではない。

公孫瓚も策を考えて弄する人間ではないし、皇甫嵩は官軍っていう縛りが在る。

 

愛紗「....はい」

家康「(しかし、諸葛亮が本当にあの諸葛亮なら、この先の桃香にとって、愛紗たちと同じくらい必要な人物になるはずだ)」

 

家康はそう今後の桃香の先行きを考える、彼女の理想には諸葛亮はどうしても必要なのだ。

 

家康「大丈夫だ。いざとなれば、ワシや元親、それに忠勝もいる!」

愛紗「....そう、ですね」

家康「ん?」

 

彼女の顔が暗くなったのにどうしてか気になってしまった。

 

家康「どうした?愛紗」

愛紗「.....いえ!何でもありません!」

家康「そうか?でもな愛紗」

愛紗「はい?」

家康「ワシは愛紗のことも頼りにしている」

愛紗「ご主人様...!」

 

家康のその一言に先ほどとは代わって表情が明るくなる。

 

家康「しかし余り気負いすぎないでくれ」

愛紗「ご主人様.....はい!」

家康「さぁ!明日もあるし、もう寝た方がいい」

愛紗「ご主人様、ありがとうございます.....その、おやすみなさい」

家康「ああ。おやすみ」

 

頬を赤く染めながら家康に別れを告げて、愛紗はそのまま天幕へと向かっていくのであった。

愛紗と別れ、少し離れた所で稟が夜空を眺めていた。

 

稟「家康さま...」

家康「まだ起きていたのか?稟」

稟「はい」

 

家康は自然に彼女の横に並ぶように立つ。

 

家康「そう言えば...稟はどうして諸葛亮の案を反対しなかった?皇甫嵩殿が最初に正面からの衝突には、反対の姿勢を見せていただろ」

稟「...諸葛亮殿はただ愚策を考える御仁ではないです」

家康「そうか」

稟「彼女は桃香さんの軍師になりたいようですので、そこまで彼女に気は引きません。私は家康さまの、家康さまだけの軍師ですから」

家康「そ、そうか」

 

苦笑交じりに稟の自分に対して忠実な姿勢に推し負けてしまう。同時に彼女のその自分に尽くす姿に、ある人物を思い出す。

 

家康「稟のそのワシに尽くす姿....ワシの家臣の一人に似ているな」

稟「忠勝殿では?」

家康「いや忠勝にも負けないぐらい、ワシへの忠義に強く生きる男がいるんだ」

稟「それほどですか...」

家康「今は義理の母にあたる女性の元に帰省して、戦で受けた傷の静養している」

稟「武官ですか?文官ですか?」

家康「武官だ。その実力は忠勝に並ぶほど、徳川の双璧と言われるぐらいで、赤備えという集団を率いる強き武人だ」

 

そう誇らしげに、そしてその家臣を思うように語る家康に、稟は羨ましいと感じている。

 

家康「じゃ、ワシは明日に備えて寝るよ。稟も早く寝るんだぞ?」

稟「はい、家康さま」

 

明日の戦に控え家康は稟と別れて、天幕に入り就寝についた。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

そして翌日....。

 

桃香「ご主人様!準備はいいよ!」

公孫瓚「こちらもいいぞ、家康」

 

家康「わかった!...愛紗!」

愛紗「はい!我らもいけます!」

趙雲「お任せを」

鈴々「頑張るのだ!」

雷々・電々「「任せてー!」」

 

家康は諸将を見渡しながら、準備のほどを確かめる。

 

家康「稟、諸葛亮と鳳統と共に臨機応変に頼む」

稟「はい!家康さま」

諸葛亮「は、はい!」

鳳統「が、頑張りましゅ!」

 

家康「元親、忠勝、香風!」

元親「おうよ!いけるぜ!家康!」

忠勝「...!!!」

香風「シャンも、お兄ちゃんと一緒に頑張る」

 

家康「皇甫嵩殿、こちらは準備よしだ!」

皇甫嵩「ええ。分かったわ!」

 

そして皇甫嵩が兵士たちの前に立ち、鼓舞する為に檄を飛ばす。

 

皇甫嵩「今回で長期間続いた黄巾党との戦に、終わりの楔を打ち込むっ!!全軍出撃!!」

 

「「「「うおおおおおおおっ!!!!」」」」

 

 




今回はここまで。引っ張ってすみません。


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第十八章 乱の終わりを告げる

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


前回、家康たちの下に伏龍と鳳雛と呼ばれし諸葛亮と鳳統が現れ、桃香に仕えたいと願ってきた。

諸葛亮は此度の戦において、真っ正面から敵を討伐するという案を出し、家康はこれを採用するのだった。

そしてとうとう戦が始まるのであった。

 

鈴々「愛紗!黄巾党の連中がやってきたのだ!」

 

鈴々の知らせに愛紗は自分の目で確かめる。その通りに黄巾党らは、街から打って出て愛紗と鈴々が率いる部隊に向けて進軍してくる。

 

愛紗「よし、予定通り、正面からぶつかるぞ!総員、攻撃開始!」

 

「「「「うおおおーっ!!」」」」

 

愛紗たちの部隊はそのまま敵部隊と激突し、戦闘を開始する。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

鳳統「始まりました...」

 

高台に築いた本陣から、敵と味方の様子がよく見える。

黄巾の軍勢も、家康たちの動きが分かっているのだろう。

作戦通り正面からぶつかってくる、その勢いはまるで自棄を起こしているようにも見える。

 

公孫瓚「黄巾の連中、前回本多一人にボロボロにされたにも関わらず、勢いが凄まじいな。

こちらの規模に自棄になっているのか....?」

諸葛亮「....向こうにも後がないと悟っているのでしょう。敵陣の中には、今は居ない張角への忠義を尽くそうといるのでしょう」

 

そんな諸葛亮と公孫瓚の冷静な分析を尻目に、最初の激突を受け止められた官軍と幽州連合軍は、砂塵を立ててゆっくりと撤退を始めていく。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

愛紗たちの撤退に黄巾党たちは勢いづいた。

 

「おっ。連中、ひと当てしただけで逃げ腰だぜ!」

 

「進め進め!このまま一気に連中を追い返してやれ!」

 

「官軍をやっつけろーっ!!」

 

黄巾の連中はそのまま愛紗たちの部隊に追撃をかかる。その際、街を占拠していた兵力をそのまま全部追撃に出て、街にはもう黄巾は居なくなりもぬけの殻となる。

撤退中の愛紗は、敵が全力で追撃に出たことを察した。

 

愛紗「....連中、思った以上に勢いがあるな」

趙雲「勢いに飲まれておるのだろう。

それが孔明殿の手のひらの上とも知らずに、な」

愛紗「そして引き際を見誤るわけか。

.....ならば趙雲、我々も離脱する。殿は任せるぞ」

趙雲「分かった」

愛紗「総員、私に続け!落ち着いて動けば問題ない!!」

趙雲「我らは出来るだけ派手に砂埃を立てて走るぞ!

こちらも慌てず、連中を引き離さない程度に加減して構わんからな!」

 

愛紗の率いる部隊は先に進み、趙雲が率いる部隊がその背後を守り且つ、砂塵を立てながら適度な距離を保ち敵を誘き寄せながら引く。

敵を誘き寄せながら撤退していく愛紗たちの部隊、それを知らずに黄巾の部隊は必死になって追う。

 

「追いかけろー!!」

 

「逃がすなぁ!!」

 

「へへっ!行けるぞ!!」

 

「先頭を率いてる奴、女だったぜ!それもかなりの上玉だ!」

 

「マジかよ!なら、追い詰めた後にじっくりと嬲ってやるっ!!」

 

自分たちが追い詰められ、そして今誘い出されているとも知らずに、敵に女がいると知ると下卑た嗤いを浮かべて自分たちの正直な欲望を表に出しながら追い続ける。

官軍を追い続けると周りの風景が変わっていく。広い場所であったのが、徐々に道のりが狭くなっている。

 

「おい、なんか道が狭くないか?」

 

「あ?そう言えば....」

 

「おい!前方を逃げていた官軍が.....消えた!」

 

「なんだって!?」

 

自分たちが追っていたはずの官軍が居なくなったことに驚愕する黄巾党。

彼らが居るのは道のり険しい、狭く見通しがつき難い難所であった。

まともに指揮する者が居なければ、その場を潜り抜けるのは難しい。

しかも黄巾党たちが居る場所は、おかしな点がもう一つあった。

 

「この足元....なんだか、ベトベトしてないか?」

 

「さっきまではこんなのなかったぞ。まるで、いま撒いたばかりみたいな....」

 

「こ、これって...罠じゃ!!一度進軍を止めろ!!」

 

「バカ!!止まれって言われて止まるもんじゃねぇだろ!!」

 

彼らの足元にはベトベトした粘着したものが撒かれており、黄巾党の進軍を著しく低下させる。

それどころか後方から味方が続々と来ている所為で、進軍を思うように止めることなど出来ない。

おかげで先頭と後方が混乱を起こして、その場に停滞してしまう。

だが更に奴らに襲い掛かることが起こる。

 

「おい!俺たちの後方に、官軍の軍団が....!!」

 

「なんだって!?」

 

混乱を起こしてしまっている黄巾党の後方に、官・幽州連合の軍勢が迫っていたのだった。

黄巾党から逃げているように見えて、実はその立ち位置はすっかり逆転していた。

 

家康「砂塵で誤魔化して、少しずつ部隊を離脱させるとはな」

 

そして大きく周囲を回り込んで、奴らの後方に再集結していくというものであった。

砂塵の中であれば少しずつ減っていくから気付き難いし、迫っている側も優勢だと勢いに乗せられて、余計に前しか見えなくなってしまう。

それが変だと、逃げていた側に誘導されたんだんと気づいた頃には、もう止まれなくなって今に至るというわけである。

 

元親「おうおう!こりゃあ大量に釣れたな!」

忠勝「....!!」

家康「ああ、忠勝。策は見事にハマったというわけだ」

香風「すごい」

公孫瓚「とは言え、こんなに鮮やかに決まる物なのか」」

諸葛亮「砂埃もよく立ってくれましたし、皆さんの部隊ほどの練度があれば、このくらいの動きは十分出来ますから」

皇甫嵩「私たちの練度って....いつの間に見ていたの?」

 

諸葛亮と鳳統は既に家康たちの兵力とその練度を見ていたようだ。それ故、此度の策を練ることが出来た模様。

諸葛亮の代わりに傍に居る鳳統が答える。

 

鳳統「避難していた時に、何度か」

公孫瓚「....それでこれか、恐れいったな」

諸葛亮「追い込んだあの山道は、先月の大雨で崩れたままになっていますから。

このまま奥に逃げても、身動きが取れなくなるだけです」

稟「流石ですね」

 

そしてダメ押しは、殿の趙雲たちが離脱する時に捨てていった油の樽である。

黄巾党たちの追撃の中で踏みつぶされたそれは、奴らの足元を油まみれにしていき....。

 

諸葛亮「では、油を撒いた辺りに向けて、火矢を一斉に放ってください!

相手の動きが鈍ったら、一斉に攻撃をお願いします!」

公孫瓚「なら、私たちも攻撃隊に合流するぞ」

家康「よし!ワシらも行くぞ!皇甫嵩殿と桃香、雷々と電々は、本陣の守備と遊撃を頼む」

桃香「わかったよ!」

皇甫嵩「ええ!」

雷々と電々「「うん!!」」

 

家康は元親、忠勝、香風に振り向き前線に赴くことを告げる。

 

家康「元親、香風、忠勝。行くぞ!」

元親「おう!」

香風「任せて、家康さま。お兄ちゃんと一緒にやる」

忠勝「....!!!」

 

家康「よし!では出陣するぞ!!」

 

号令と共に家康は元親、忠勝、香風、それに公孫瓚とその兵士たちを引き連れて前線へと向かう。

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

諸葛亮「今です!一斉に火矢を!」

 

諸葛亮の下知により兵士たちが一斉に黄巾党たちがいる場所へ、火矢を放った。放たれた大量の火矢は面白いように油が撒かれた地面に次々と突き刺さると、瞬時に引火。

奴らが居る場所は火の海と化し、黄巾党たちを巻き込みながら広がっていく。

 

「うわぁああああっ!?燃える....地面が燃えるっ!!」

 

「熱いぃ!!!熱いぃいいいいい!!!!!」

 

「ぎぃいいいいいやあああああ!!!」

 

阿鼻叫喚...地獄絵図、正にその光景はその二つの言葉に尽きていた。猛烈な業火によって黄巾党たちを飲み込み、燃やし尽くさんとどんどん広がる。

その光景に愛紗は胸を痛む、義を重んじ常に正道を大切にしている彼女にとってこれはキツイものがあった。

 

愛紗「ぐっ....なんとも....胸の痛む光景だが....」

趙雲「ここでひるんでいるようでは、勝てる戦も勝てぬぞ?」

 

しかしその愛紗に趙雲はこれが現実だと知らせるように、突き放すような言葉を投げかける。

 

愛紗「分かっている!今度こそ、この戦乱を終わらせるのだ!!突撃ぃぃぃ!!!」

 

愛紗の号令によって部隊は総出で一気に混乱する黄巾党に攻撃を敢行する。彼らの攻撃に黄巾はまともに反応など出来ない、火計によってもう軍勢は全く機能などしていない。

最早烏合の衆以下の群れと成り果てた奴らにもう何も出来ない。

そこを愛紗、鈴々、趙雲率いる部隊が容赦なく攻め立てる。

 

愛紗「はあああっ!!」

 

鈴々「でりゃりゃりゃりゃ!!」

 

趙雲「はいはいはいぃいいいいい!!!」

 

三人の振るう力によって敵は続々と屍となり倒れていく。彼女らが率いる兵士たちもここまで上手くことに驚愕しながらも、黄巾党たちへ慈悲などくれてやるかと情など沸くことはなく、自身が握る武器に家族や友人を奪われた怒りを乗せて切り込んでいく。

 

「うおおお!!」

 

「これは家族の仇だぁ!!」

 

「死ねぇ!!黄巾のクズどもぉ!!」

 

「お前らなんぞ同じ人間じゃねぇ!!犬畜生以下の獣だぁ!!くたばれぇ!!」

 

進撃を受ける黄巾は彼らの鬼のような猛追に何とか反撃しようにも、歯が立たたず死に絶えていく。

 

「ぎゃあああああああ!!!」

 

「ぐぎゃあ!!」

 

「ひぃ!!たすけ...ぶびゃああ!!」

 

やられる仲間の姿を見て最早どうにも出来ないと見たのか、黄巾の中で逃げるように指示して声をあげる。

 

「逃げるぞぉ!!」

 

「そ、そうだ!ここで逃げて、再起をはかるんだ!!」

 

「そうだ!そしていつか張角さまを見つけて、また大暴れするんだ!」

 

「ああ!!にげ....っ!?」

 

だがそこへ....。

 

家康「はああああっっ!一撃だッ!!!」

 

突如彼らの頭上から現れた家康が、地面に拳を撃ち放ち巨大な衝撃波を引き起こす。

その強烈な衝撃波によってその場にいた黄巾兵たちは大量に吹き飛ばされ、そして物言わぬ死体となる。

更に家康は敵に突進技していき、そのまま正面に強烈な正拳突きを行うと凄まじい衝撃が黄巾兵らを襲い、亡き者にする。

そのまま目にも止まらぬ猛烈な拳のラッシュで、多勢の相手を次々にその剛拳で息の根を消す。

 

家康「まだまだ行くぞ!!」

 

 

元親「おぅらっ!追い風だぁ~~ッ!」

 

碇で敵を引き寄せ、炎を纏った碇による2段攻撃を行い燃やし尽くした。

続いて碇にぶら下がって蹴りを繰り出して、叩き潰す。

更に武器を前方に投げつけ、衝撃波を発生させると黄巾兵らは吹き飛ばされ地面に叩き付けられた。

碇槍を振り回しながら敵を巻き込み、次いでその槍の先端をとばしては何人かの身体を射抜き貫いた。

鬼の荒ぶる姿に恐怖する黄巾たちは逃げようとするが、碇槍に乗り逃げる敵を追いかけては容赦なく轢き潰す。

 

 

元親「鬼ヶ島の鬼ってぇのは俺のことよ!さぁ!鬼の生贄になりてぇ奴は!!どいつだぁ!!!」

 

 

忠勝「....!!!」

 

家康と元親の二人...確かに凄まじい武ではあるが、だがそれよりもこの忠勝が黄巾兵らの前に聳え立つと、対する黄巾たちは忠勝の巨大さと圧倒的な存在感に怯え竦んでしまう。

だが忠勝はそんな奴らに情けは掛けない、掛ければまた無辜の民草がこの者たちによって命や大切なものを奪われてしまう。

ならばここでその全ての禍根を一切合切断ち切らんと、忠勝は巨大な機功槍を振り回しながら敵を潰し、叩き、射殺す。

 

公孫瓚「私だってやるぞ!」

 

公孫瓚も白馬に乗り部下を従えて切り込む。家康や愛紗たちみたくそんな武に秀でているわけではないが、その見事な気馬術で敵を翻弄して剣で斬る。

 

香風「シャンも、やる!!」

 

香風も忠勝に続き、その華奢な身体には似つかない大きな斧で周りの敵を次々に叩き斬り、または潰してまわる。

香風のような背が小さな少女ならばと、甘く見た何人かの黄巾たちは彼女に襲い掛かるが、それを逆に返り討ちにして真っ二つにしてしまう。

そんな香風の背後から襲おうと密かに黄巾の一人が迫る....だが。

 

「ぎゃあああああああ!!!」

 

香風「ん?」

 

香風が振り向けば、そこには身体中に無数の風穴があけられた無惨な死に様を遂げた敵が倒れていた。

何事かと思いきや、香風の周りを浮遊する3つの物体があった。それは本多忠勝の戦闘形態の一つである、援護形態によって背中の鎧から射出された支援兵器であった。

その三つの支援兵器は自動追尾し、ビームで攻撃するという全くもって時代感が可笑しいと禁じ得ない代物である。

 

香風「ありがとう...お兄ちゃん」

忠勝「...!」

 

頬を赤く染めながら嬉しそうに忠勝に礼を言う香風。その彼女の頭を優しく撫でる忠勝、その忠勝に家康の声が響く。

 

家康「忠勝っ!!」

 

忠勝「....!!」

 

家康が何を望んで声をあげたのか理解しているのか、忠勝は何と己の得物である機功槍をそのまま彼に向かって投げる。

家康はそれを見事に両手で掴み受け取ると、敵に向けて忠勝の槍を前方に投げ入れた。

着弾した槍は地面で回転し進み周囲を巻き込み、竜巻が発生させ、範囲が広げて敵を倒していく。

 

家康「このまま突き進むぞ!!」

 

元親「おうよ!」

 

忠勝「....!!!」

 

香風「うん!」

 

公孫瓚「分かった!」

 

「「「「うおおおー!!!」」」」

 

家康の大きな声に元親や忠勝、香風やそれに兵士たちは呼応する。

 

愛紗「ご主人様!」

 

趙雲「流石は家康殿....兵士たちをその気にさせる。それにその武も」

 

鈴々「お兄ちゃんたちに続くのだ!」

 

愛紗たちも家康の下に馳せ参じようと敵を倒しながら戦場を疾駆する。家康を先頭にして戦意が今まで以上に高い軍勢が集結して黄巾たちの前に立ちはだかる。

 

家康「行くぞ!ここでこの騒乱を終わらす!絆の名の下に!!」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

家康の号令の下、多勢の敵をどんどん蹂躙していく様は本陣から見ている桃香、稟、諸葛亮、鳳統、皇甫嵩がそれを眺めている。

諸葛亮と鳳統は家康の見事な統率力に驚嘆していた。

 

諸葛亮「御使いさま....すごい」

鳳統「うん....統率しながら黄巾をやっつけてる」

桃香「ご主人様...やっぱり凄い」

稟「流石!家康さま!わたしの尊い御方!!

 

皇甫嵩「....」

 

驚嘆する桃香たちを余所に、皇甫嵩は静かに見つめている。家康や元親、忠勝の凄さには改めて感じるが、彼女は別のことを感じていた。

 

皇甫嵩「(彼ら三人のような存在が、もしかしたら他にも居たりしないのかしら...?)」

 

そんな疑問を抱く中、雷々と電々が何かに気づいて桃香に知らせる。

 

雷々「桃香ちゃん!あれ!」

桃香「あれ?」

電々「あれって....どこの部隊だろ」」

 

皇甫嵩「部隊?」

 

電々の指した先に見えるのは、さっき趙雲が立てていた以上の大量の砂塵であった。

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

鈴々「お兄ちゃん!愛紗!逃げる奴が出始めたのだ!」

 

愛紗「ご主人様!」

 

家康「みんな!もうすぐだ!敵の攻撃は全力で受け流すんだ!死兵の攻撃を正面から受けても、いいことはないぞ!」

 

公孫瓚「家康!後ろから何かきたぞ!!」

 

愛紗「なんだって!?」

 

公孫瓚の知らせに家康たちはその方角に向く。すると...。

 

家康「いや、あれは....!」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 

「Let's party! Ya-ha-!!」

 

「「「「「イエー―――――っ!!!!」」」」」

 

その部隊は幽州連合軍みたく不揃いな軍装とは違い、且つ黄巾党ようなボロボロの装いでもない。

だがその見た目...世に言う暴走族のそれである。

それを率いる者――具足に、青い陣羽織、兜には三日月の前当て、腰には6本の刀、そして手綱を握らず悠々と腕を組みながらも愛馬を乗りこなす男...家康、そして元親と忠勝もその姿を見て驚愕する。

 

元親「あいつは!?」

 

忠勝「....!?」

 

 

三人はその男を知っている。まさかあの男もか!?とそう動揺するしかなかった。

だが彼らの心境など知らぬが如く、軍勢を率いる男は尚も進む。

そして家康はその名を口にするのだった。

 

 

家康「ど、独眼竜!?」

 

 

 

その男こそ、奥州筆頭・独眼竜 伊達政宗。

 

 

 

 

政宗「独眼竜・伊達政宗!!推して参るっ!!」

 

 

 




今回はここまで。


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第十九章 同郷者との再会

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。

今回オリジナルのBASARA武将が一人出ます。



イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


前回、黄巾党との最後の戦を繰り広げる家康たち。

そこへ謎の一軍が現れ、突如乱入してきた。

その軍勢を率いる男の姿に家康は驚愕するのだった。

 

「Let's party! Ya-ha-!!」

 

「「「「「イエー―――――っ!!!!」」」」」

 

その部隊は幽州連合軍みたく不揃いな軍装とは違い、且つ黄巾党ようなボロボロの装いでもない。

だがその見た目...世に言う暴走族のそれである。

それを率いる者――具足に、青い陣羽織、兜には三日月の前当て、腰には6本の刀、そして手綱を握らず悠々と腕を組みながらも愛馬を乗りこなす男...家康、そして元親と忠勝もその姿を見て驚愕する。

 

元親「あいつは!?」

 

忠勝「....!?」

 

 

三人はその男を知っている。まさかあの男もか!?とそう動揺するしかなかった。

だが彼らの心境など知らぬが如く、軍勢を率いる男は尚も進む。

そして家康はその名を口にするのだった。

 

家康「ど、独眼竜!?」

 

その男こそ、奥州筆頭・独眼竜 伊達政宗。

 

政宗「独眼竜・伊達政宗!!推して参るっ!!」

 

軍勢を率いる政宗は疾走しながら、黄巾党に迫っている。その政宗の背後に続くように馬に乗って駆けている四人の姿。

四人の内、三人は鈴々くらいの背丈の少女が二人と、もう一人は愛紗くらいの女性がいる。

四人目は男であるが、その男も家康たちは知っている。

頬傷・オールバックに反りの少ない日本刀という外見の為か、風貌はどことなく893に見えるその男の名は、片倉小十郎...伊達政宗が全幅の信頼を寄せる家臣である。

 

その小十郎が疾走する政宗に近寄り進言する。

 

小十郎「政宗さま!!目の前にいるのは黄巾党だけではない模様!恐らく官軍の者たちかと!」

 

政宗「Ha!ならそいつらの分の獲物までかっさらうまでだ!小十郎!!」

 

小十郎「は!!行くぞ!!春蘭!!季衣!!流琉!!」

 

夏候惇「おう!任せろ!小十郎!」

 

許緒・典韋「「はい!!」」

 

駆ける政宗たちの軍勢は黄巾党らに襲い掛かる、その様を桃香たちは見ていた。

 

桃香「すごい...」

 

それは...黄色い布以外は武器も戦装束もバラバラの黄巾兵が、揃いの鎧に身に包んだ一団に凄まじい勢いで蹂躙されていく圧倒的な光景であった。

だが何よりも....。

 

稟「戦場に...雷が」

皇甫嵩「雷が、走ってる...?」

 

雷鳴...空には暗雲もなく、雨も振ってもいない。しかし戦場には轟音と共に雷が閃光の如く走っているようだった。

それはまるで...。

 

桃香「龍が、戦場を走っているみたい...」

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

政宗「Get ready!!さぁ、パーティの始まりだ!!」

 

政宗は不敵な笑みを浮かべながら、腰に下げている6本の刀の内一本だけ抜いて戦っている。

 

政宗「ハァッ!オラァ!」

 

動き動きに隙などなく素早く、鋭く、そして容赦ない斬撃を連続して繰り出す。

更には....。

 

政宗「MAGNUMッ!!」

 

刀を回転させながら前方に突きを放って突進して多くの黄巾兵らを斬り飛ばす。

 

「な、なんだ!?あいつは!?」

 

「あ、青い、龍が....」

 

「か、雷がとんで...ひっ!」

 

家康たちの圧倒的な力の前でも何も出来なかったのに、その上またとんでもない者が現れ、自分たちにこれ以上何ができると絶望している。

そんな中まだ抵抗の意思を持つ一人の黄巾兵が政宗の背後から斬りかかる。

 

「隙ありだぁ!!」

 

だがその前に....。

 

小十郎「邪魔だ!!」

 

「ぎゃあ!!」

 

政宗「ん?」

 

政宗が振り向けば、背後から斬りかかろうとしていた黄巾兵が既に小十郎の刀によって息絶え倒れている。

 

小十郎「ご油断召されるな!政宗さま!」

 

政宗「あ?俺の背中はお前が持つんだろ?」

 

そう問いながら笑みを浮かべて次々に敵を斬り捨てる政宗、その彼に続くように小十郎も素早い斬撃であっという間に複数の敵を斬る。

 

政宗「なら小十郎、合わせろ!」

小十郎「は!!」

 

政宗「HELL DRAGON!!」

 

政宗が腰だめにして前方に青い稲妻を放ち、目の前に映る敵が放たれた雷状の龍に吞まれ餌食となる。

 

小十郎「鳴神!!」

 

政宗に続き小十郎も前方に強力な雷撃を放って、前方の黄巾兵らを亡き者にする。

 

政宗「いいぜぇ!どんどんheat upしてきたぜ!」

 

政宗の戦意が昂ぶり、どんどん一刀の下黄巾党を斬り捨てていく。その家康たちとは違う、荒ぶる龍が如くの強さに見ていた愛紗や趙雲、鈴々、公孫瓚、香風は圧倒される。

 

愛紗「な、なんて...」

 

趙雲「あの者...一体何者だ....?」

 

鈴々「お兄ちゃんたち同じくらい強いのだ...!」

 

公孫瓚「何なんだ...あいつは!?」

 

香風「凄い...」

 

そんな中、政宗や小十郎の強さほどではないが、彼らと共に兵を率いていた夏候惇らも十分に戦働きをしている。

 

夏候惇「うおおお!!」

 

特徴的な形をしている剣で周囲の敵を斬り伏せて。

 

許緒・典韋「「てやああああ!!」」

 

許緒が巨大な鉄球を、典韋が巨大なヨーヨーような武器で鈴々と同じ背丈にもかかわらず軽々と奮って、周囲の敵を吹き飛ばす。

そんな彼女たちに随行して戦っている兵士たちの旗が、愛紗たちや本陣にいる桃香たちの視界に入る。

 

桃香「あの旗...」

 

電々「んー、曹って書いてあるみたいだけど...」

 

稟「曹...恐らく苑州の、曹操殿でしょう」

 

曹操...三国志において悠然と輝く名前。乱世の奸雄、治世の能臣。

魏の主にして、蜀と呉、それぞれの勢力と長い長い戦いを繰り広げることになる、歴史において劉備最大にして強大な敵である。

 

桃香「こっちに連絡なくて、いきなり飛び込んできたんだけど....すごい勢いだよね」

諸葛亮「曹操さんの軍は、ただの一度の突撃でしたが...敵の一番薄い所に確実に叩き、そのまま崩しています」

稟「兵の精強さも練度も、我々とは比べものになりませんよ」

桃香「なるほど...」

稟「まぁ、将の強さの質はこちらが上ですね。家康さまや元親殿、そして忠勝殿もいますから」

 

完膚なきまでに蒼き雷鳴が易々と嚙み砕くように、叩き潰していくのだった。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

政宗「こんなもんか。これじゃあtrainingにもならねぇな」

 

小十郎「では後は、官軍に任せるとしましょう。流琉」

 

典韋「はいっ!撤収、撤収ーっ!」

 

引き上げようとする政宗たち、そこへ...。

 

愛紗「おおい、おぬしたち!」

 

政宗「あ?」

 

愛紗が駆け寄り声をかけてきた。政宗は目を細めて彼女を品定めをするかのように見ている。

 

政宗「なんだ?」

 

愛紗「我が名は関羽雲長。

都と幽州の合同軍で、指揮の一端を預かっている者だ。

この部隊の指揮官とお見受けするが、名を聞かせて願いたい」

 

政宗「~♪(関羽もやっぱ女か)」

 

愛紗「?...なにか?」

 

関羽も女性だと知ると口笛を吹いて見せる政宗にいぶかしむ愛紗。

彼女の内心では自分が名乗ったにも関わらず、口笛吹くなど少々礼儀が悪い人物と認識していた。

 

政宗「sorry俺の名は、伊達政宗。苑州州牧、曹操の頼みで黄巾の討伐できた」

 

愛紗「そうですか。ご助力感謝します」

 

政宗「所でなぁ...あんたたちの所に、徳川家康って奴、いるか?」

 

愛紗「え?」

 

いきなり政宗から問われた質問に一瞬戸惑う愛紗、何故に目の前の男は家康のことを聞いてくるのか。

 

愛紗「何故それをお聞きに?」

 

政宗に眼を鋭くしてそう問い返す。助力はしてもらったが、だが己の内では「この男は侮れない、脅威だ」と告げているのだ。

おいそれと主・家康のことを話すのは、愛紗の忠義に反する。

しかしそんな彼女の心中など知ってか知らずか、政宗は不敵に笑みを浮かべて口を開く。

 

政宗「いやなに、同郷の奴に挨拶してぇと思っただけだ。そう目くじら立てるなよ、折角のcuteな顔が台無しだぜ?」

 

愛紗「きゅ、きゅーと?なんです?それは」

 

政宗「可愛いってことだ」

 

愛紗「かわっ!!人をからかうのはお止め頂きたい!!」

 

政宗から言われた一言、その唐突なことに動揺してしまう。

そんな愛紗の態度が面白いのか、政宗は笑ってみせた。

政宗の態度に益々これは家康に会わすのは嫌だとハッキリ芽生えてしまう愛紗ではあるが、そこへ彼女にとって運悪く...。

 

家康「独眼竜!やはりお前だったか!」

 

政宗「ha!long time no see.元気そうじゃねぇか、家康」

 

家康「はっは!お前もな!」 

愛紗「ご、ご主人さま!」

 

家康が愛紗の背後から現れ、何の迷いなく政宗にフレンドリーに声をかけて互いの肩をポンっと叩いてみせる。

愛紗からすればいきなり躊躇いなく、目の前の右目に眼帯を付けている男に気兼ねなく談笑することに驚く。

だが家康だけではなかった。

 

元親「やっぱり独眼竜じゃあねぇか!元気か、おい!ははっ!」

忠勝「....!!!」

 

政宗「西海の鬼に、本多も一緒か。こりゃinterestingな組み合わせだな」

 

元親と忠勝も政宗に近寄り声を掛ける。ここは戦場であり周囲には敵の死骸が散乱している、そんな中で同郷の人間と旧交を喜ぶのは異質ではある。

 

愛紗「ご主人様!」

家康「ん?」

 

愛紗「ご主人様はこの男を知っているのですか?」

家康「ああ。この伊達政宗...日ノ本でワシの大事に力を貸してくれた頼りになる男だ」

 

家康は政宗を笑顔で紹介してみせ、それに対して政宗は「相変わらずだぜ」と家康の誰にでも親し気に信じる姿勢に苦笑交じりにしている。

そこへ政宗の家臣である小十郎がやってきた。

 

小十郎「政宗さま」

 

家康「おー!片倉殿!お主も一緒だったか!」

 

小十郎「久しぶりだな、徳川。それに長宗我部と本多もな」

 

元親「右目の兄さんもいるのか」

 

忠勝「...!!」

 

政宗「所で小十郎。何かあったか?」

 

小十郎「先ほど華琳が官軍のもとへ挨拶に向かったようです」

 

政宗「All right小十郎。じゃあ俺らも行くか。ここの黄巾党は居なくなったしな」

 

小十郎「わかりました」

 

家康「どうした?」

 

政宗「俺が世話になってる奴が今、そっちの本陣に挨拶にいってるんだよ。俺たちは撤退するけどな」

 

家康「お前が世話にって....独眼竜と片倉殿は今、何処かの軍勢に身を寄せているのか?」

 

政宗「ああ。俺たち今....曹操の下にいるんだよ」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

現在、桃香たちの本陣に姿を見せたのは、馬に跨る二人の女の子。

二人の少女...目の覚めたような明るい髪を綺麗に巻いた小柄な女子と、その女子の影のように控える細見のクールな雰囲気の女子。

その金髪の少女が桃香と一緒にいる皇甫嵩に声をかけてきた。

 

曹操「苑州州牧の曹孟徳と申します。こちらは副官の夏侯妙才」

 

曹操の紹介に夏侯淵は無言で会釈すると、曹操は今回この戦場に参上した理由を告げる。

 

曹操「中郎将の董仲頴殿から、皇甫嵩殿を助力するようにという命を受け、苑州より罷り越しました」

 

一切の動きと発言に躊躇いはなく、その表情と細い指先に至るまで、己の実力に対する絶対的な自信のようなものが溢れ出している。

 

稟「(これが曹孟徳....)」

 

 

本来仕えたいと願っていた曹孟徳を前にして、稟は彼女の存在感に一瞬たじろぐが、しかしそれでも顔には出さず毅然とした。

そんな彼女を余所に曹操は話を続けるのだった。

 

曹操「とはいえ、既に決着も見えていた様子。

仲頴殿の指示とは言え、出過ぎた真似をしてしまったようで、お詫びいたします」

 

桃香「あ、いえ....こちらこそ、助かりました」

 

皇甫嵩「ええ、私からも感謝させていただくわ。それでそちらに逃げ込んだ賊は?」

 

皇甫嵩の問いに対して夏侯淵が主である曹操の代わりに答える。

 

夏侯淵「豫洲の賊はこちらの部隊が討伐を行い、先ほど伝令よりもう間もなく終えるとのこと。

ただ、首領の張角らしき者はおりませんでした」

 

皇甫嵩「そう...」

 

桃香「....」

 

曹操「.....何か?」

 

桃香「あ!いえ!何でもありません!!」

 

桃香は思わず曹操を見てボーっとしていた様子。天然で何処か抜けている自分とは違い、何事も自信があると毅然な姿勢をしている曹操を見て、無意識になって見ていたのだ。

 

曹操「そう。もしかして、あなたが劉玄徳?」

 

桃香「は、はい!」

 

曹操「そして、そちらは...?」

 

曹操の視線が諸葛亮に向く。

 

諸葛亮「あ、はい。諸葛孔明と申します」

 

ビクッとしながらも恐る恐る己の名を口にする孔明、因みに鳳統は物陰に隠れている。

 

曹操「そう。....今回の策は、貴方が?」

 

諸葛亮「は....はい。でも私と一緒に郭嘉さんも...」

 

曹操「郭嘉...?」

 

稟「私が郭嘉、字は奉孝です」

 

曹操「ふーん」

 

曹操は稟に近づき、頭から足の爪先まで値踏みするように彼女をじっくりと舐めるように視線を向ける。

稟は内心ドキドキしながらも表には出さず、毅然としている。

 

曹操「貴方も軍師?」

 

稟「はい」

 

曹操「....貴方の主は、劉玄徳?」

 

稟「いえ。私の主は天の御使いである、徳川家康さまお一人のみです!」

 

曹操「徳川家康...」

 

夏侯淵「以前に政宗が言っていた男の名ですね」

 

曹操「そのようね」

 

稟と話していると夏侯淵が知らせるように曹操に報告する。

 

夏侯淵「.....華琳さま、政宗たちが撤退をするようです。こちらも」

 

曹操「そうね。それに今頃、豫洲では“義弘たち”がもう決着がつけているかもだしね。なら、今日はこれで失礼させていただきましょう」

 

夏侯淵に促された曹操は馬を巧に操りながら。

 

曹操「では、さよなら」

 

曹操はそのまま夏侯淵と伴って馬を駆け、去っていくのだった。

 

桃香「はぁああ....なんていうか、すごかったね」

 

曹操が居なくなり気が抜けたのか、溜息を吐く桃香。

余りにも全く会ったことのない人物との対面に気疲れしてしまったようだ。

 

桃香「緊張したぁ。鳳統ちゃんも、出てきて大丈夫だよ」

 

鳳統「うぅ...すみません」

 

諸葛亮「雰囲気もすごかったですが....曹操さん、周辺諸国の情報もよく集めておいでのようですね」

 

飛び入り参加の諸葛亮と鳳統以外は、紹介さえ必要なかったということは、その必要がないくらい桃香たちを知っていたということになる。

 

諸葛亮「策をたてたのは私かと確かめただけでしたし、皆さんの用兵の癖も把握済みだったのかもしれないです」

桃香「そうなんだ...」

諸葛亮「それに、下の戦いも....動かしていた兵は、わが軍の半分もいませんでした」

桃香「その人数で、向こうの黄巾兵をやっつけたってこと...」

 

 

平原の軍とて、公孫瓚や愛紗、そして家康のおかげで十分に訓練を積んできた。

そんな幽州軍が警戒していったん距離を置く相手に、力任せにそれも少数で黙らす曹操の軍の力量に啞然とするしかない。

 

桃香「曹操、さん....か」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

その曹操は戦場に赴き、夏候惇と許緒、典韋と合流していた。

 

夏候惇「華琳さま!お帰りなさいませ!」

 

曹操「ええ。そちらは問題はなかったようね、春蘭」

 

夏候惇「新兵どもの初陣にしては、まぁまぁでした。まぁほとんどの敵は政宗と小十郎が蹴散らしてましたが.....」

 

曹操「政宗が....やはり流石、龍を名乗るだけあるわ」

 

そう夏候惇と話していると、その本人が曹操の前までやってきた。

 

政宗「good jobだったみてぇだな、華琳」

曹操「あなたと小十郎こそ、お疲れ様。で?会えたの?徳川家康」

 

政宗「ああ。会えたぜ」

曹操「そう、良かったわね」

 

政宗が満足そうに語る姿に笑みを浮かべてしまう曹操、その彼女に夏侯淵が豫洲に帰還すべきと具申する。

 

夏侯淵「華琳さま。豫洲に帰還すべきかと」

曹操「そうね。確かにあっちにはまだ黄巾党の残党の大半を残しているものね」

 

夏候惇「大丈夫でしょう!豫洲には“義弘殿”がおります!」

曹操「あら?義弘だけじゃないでしょ?鬼は」

 

曹操がいたずらっぽく笑みを浮かべて口にすると、夏候惇はムッとなり顔をそっぽを向く。

 

夏候惇「“あやつ”は好きませぬ!!いくら義弘殿の甥っ子とは言え、無礼すぎます!」

小十郎「だがわきまえる所はわきまえる奴だ、“あの男”は...」

 

政宗「まぁ...ちと面倒なBerserkerだけどな」

曹操「だからこそ、豫洲に柳琳も一緒に残したのでしょう?義弘殿以外に、彼を御せるのは柳琳ぐらいだもの。まぁ次いで華侖も残してきたけど、あの子やけに彼に懐いてるのよね」

 

っとまるで面倒そうに語る曹操。そんな彼女に同意するように政宗はとあることを口にする。

 

政宗「まぁ何はともあれ、仕方ねぇさ...何せ....

 

 

 

 

 

 

鬼島津だからな」

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

その豫洲にて.....。

 

「が.....ああ....」

 

「ぁ...たすけ.....」

 

豫洲のとある広大な何もない土地にて、戦....いや戦だったものが起きていたが、既にもうことは終わっていた。

地べたに倒れているのは黄巾党の兵ばかりで、こと切れる寸前の者もいるが大半は無惨な姿で屍を晒している。

 

そんな戦場の光景を何とも言えない顔で見ている女子がいた。彼女は曹純、字は子和 、真名は柳琳、曹操の従妹である。

今回彼女はこの豫洲の戦にて自分が率いる部隊と共に来ている。

 

 

曹純「.....」

 

そんな彼女の背後から...。

 

???「柳琳♪なにしてんすか?」

曹純「きゃ!って、華侖姉さん...」

 

彼女は曹仁、字は子孝、真名は華侖、曹操の従妹で曹純の姉である。その曹仁が妹の様子に無邪気な様子で聞いてきた。

 

曹仁「どしたんすか?」

曹純「ただ...心配で」

曹仁「心配?大丈夫っすよぉ~。よしじぃと一緒なら無茶しないっす、とよっちは」

 

曹純「そうだといいのだけど....」

 

そんな曹純が心配な顔をしている頃....戦場のど真ん中では、二人の男が立っていた。

 

一人は筋骨隆々な白髪の老将。老躯とは思えない屈強な体型だが、背丈は小柄でずんぐりしている。

髪は白髪で、月代(さかやき)は剃られ、茶筅髷(ちゃせんまげ)に結ってあり、勇ましい口髭や顎髭を生やしている。

右上半身を露出させた袈裟掛けのような胴衣を着て、(くろがね)の肩当て、籠手、脛当(すねあて)等を着用した典型的な武者姿をしている。

注連縄(しめなわ)を上半身に(たすき)掛けのようにしており、腰にも注連縄を巻いている。

左肩当てには、「丸に十の字」が家紋みたく入っている。

更に自分の背丈よりも大きな刀剣を背負っている。

 

老将「....」

 

もう一人は赤茶色の髪をし、大柄で筋肉隆々、背が家康や政宗よりも大きな青年で、左半身には刺青を入れている。

老将とは非対称で左半身を露出させ、鬼の顔を模した肩当て、両腕には籠手、下半身には具足を纏い、頭の前当てには三本の鬼の角の意匠した飾りがある。

そして青年は大きな斧を背負っている。

 

青年「ふわぁ~...ああ、怠いのぅ」

 

男は気だるげにそしてつまらないとばかりに、戦場を見渡してぼやいた。その青年に老将――島津義弘が口にする。

 

老将「豊久ぁ!戦場でなにぼやいとるね!」

 

彼の名は島津義弘――酒好きで豪放磊落な性格をした猛将。薩摩伝統の剣術『示現流』を前面に出した性格付けをされており、戦と剣の道を極めるのに生涯を捧げた生粋の武人。

 

青年「あーはいはい。叔父御はうっさいのう」

 

その義弘が呼ぶ男、彼の名は島津豊久、義弘の弟・島津家久の嫡男であり義弘の甥っ子である。

そして戦国にてその武勇は義弘にも引けを取らぬ程強い、その叔父である義弘と共に彼ら二人は鬼島津と恐れられたが、この豊久、他にも別名で呼ばれていた。

 

そんな豊久の足を何かが掴んできた感触が....。

 

豊久「.....あ?」

 

「はぁ....はぁ.......か、官軍の....手先め....」

 

豊久「....」

 

自分の足を掴んできた黄巾兵の手を足で払いのけ、怖い顔で黄巾兵を睨む。

 

「あ....あ」

 

本物の鬼を見ているようで恐怖して怯えるが、豊久には関係ない。

 

豊久「その被害者ヅラ...今まで多くの民草のもん奪ってきておいて....おめったいのう」

 

「あ...あ....ああ」

 

そして片足をあげ....。

 

「ま....まって.....」

 

そのまま一気に.....。

 

 

 

 

 

ぐしゃっ!!!

 

 

 

 

 

 

生々しく、そして悍ましい音が鳴り、それを耳にした義弘の顔が険しく豊久を睨む。

 

義弘「豊久ぁ」

 

そんな己を諌めてくるように睨む義弘に対して豊久は....。

 

豊久「なんね?叔父御。おいが日ノ本でなんて呼ばれちょったか、忘れたんか?

 

 

 

島津の悪鬼じゃぞ」

 

義弘「....」

 

諦めたのか、義弘はそのまま歩きだした。

 

義弘「戻んど、豊久」

 

豊久「へいへい」

 

そんな歩く二人の背後には....夥しい死屍累々の山と化した黄巾兵の死骸がそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こんかいはここまで。コメントなどありましたら、遠慮なくどうぞ。
今回出した島津豊久についての設定をどうぞ。

島津豊久

属性 炎

武器 斧

防具 肩当てと兜

肩書 百鬼羅刹

登場時の書き文字 来陣

一人称 おいまたはワシ

イメージCV 小西克幸

イメージキャラクターモデル・ヘラクレス(終ワル)


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第二十章 争乱の後

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。




イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


前回の戦いで黄巾党を撃破することに成功した家康たち一行、その夜彼らは曹操の使者――片倉小十郎に残党の引き渡しを終えていた。

 

家康「では片倉殿、引き渡した賊は任せた」

小十郎「ああ、任せろ徳川。それにしてもお前はあの劉備と行動、か」

家康「お主と独眼竜はあの曹操殿とか、凄いな」

小十郎「うちには政宗様と俺だけじゃない」

家康「というと?」

 

訝しげに問いかける家康に小十郎は言う。

 

小十郎「ああ、うちには島津義弘殿と、その甥、島津豊久だ」

家康と忠勝「「っ!!」」

 

小十郎から聞いた名前に家康とその背後に控えていた忠勝は衝撃を受けた。その家康の傍に居る愛紗と稟は一体どういう人物なのか知りたそうにしていた。

 

愛紗「ご主人様、あのう....その御仁らはどういう」

家康「義弘殿は生粋の武人でな、鬼島津と呼ばれ、この忠勝の唯一無二の好敵手なんだ」

愛紗「忠勝殿の!?」

稟「なんと!?」

 

二人は思わず忠勝を見上げる。まさかこれまでの戦いで無双の戦ぶりを見せ、最早彼に敵なしと思っていたがその好敵手と聞いて驚き、っと共に戦国最強の唯一無二の好敵手と聞いて興味を抱いてしまう。

 

愛紗「っでもう一人は?」

家康「もう一人、島津豊久は....」

 

家康は複雑な顔でもう一人の人物のことを教えた。島津豊久...島津家四男で義弘の弟、家久の子供で義弘の甥。

日ノ本、西国の武将で武芸は義弘に勝るとも劣らない強力な武を持ち、豊臣の九州征伐や小田原城攻略で多くの敵兵を恐怖させ、関ヶ原の前哨戦である杭瀬川にて一人で東軍兵士1000人を斬殺し、本戦関ヶ原でも敗北確定したにも関わらず島津軍による中央突破し、義弘と島津軍将兵を逃がす為に一人で殿を務めて東軍兵士を2000を斬り殺し、甚大な被害を与えた。

彼は恐れられ、付いた異名が「島津の悪鬼」。

 

愛紗「鬼島津と島津の悪鬼、ですか....恐ろしいですね」

家康「ああ、その関ヶ原では島津豊久相手にワシが率いる兵士たちは次々に命を落としてしまった」

稟「その際はどうやって切り抜けたんですか?やはり家康様か忠勝殿が?」

 

稟の問いに家康は首を左右に振り、否定する。

 

家康「いや...以前稟に言ったろ?忠勝ともう一人――“徳川の双璧と呼ばれし武将”が居るって。その時、その者が島津豊久と激しい血みどろの死闘を繰り広げて、漸く彼の者に深手を負わして退けたんだ。

療養するきっかけの怪我はその時だ」

 

稟「なんと....」

愛紗「そのような者が曹操殿の下に...」

 

二人が啞然とする中、小十郎はお暇すると言って馬に跨る。

 

小十郎「じゃあな、徳川――ああ、そうだ」

家康「ん?」

 

小十郎が何かを伝え忘れたとある事を口にする。

 

小十郎「うちの夏候惇が、以前にある集団を目にしたそうだ。二本の槍を持つ男と、梯子のような長物の武器を持つ大柄な男が赤い装束の兵団を率いていたそうだ」

家康「まさか...!」

 

家康はその特徴を聞いて“二人の男”を思い起こす。その間小十郎は兵士たちと共に捕縛した賊を連行していき去っていく。

何であれ漸く事が終わったことに実感しながら、愛紗は口を開いた。

 

愛紗「とりあえず...今回の遠征は、此処までですか」

家康「....そうだな。今回でこの争乱は収まったと言えよう」

 

皇甫嵩「そうね、家康さんの言う通りね」

 

家康の言葉に肯定しながら皇甫嵩や、桃香や公孫瓚たちが家康たちの元に来た。

 

公孫瓚「あの乱戦だったし、最後は曹操の乱入もあったしな。

けど、あの眼帯の男やさっきの強面の男、ほんと強かったな――家康たち並みに強いって感じだな」

趙雲「やれやれ。世界はまだまだ広いですな、家康殿らと同じ強さの御仁らと手合わせ願いたいものだな」

愛紗「....骨が折れるぞ」

皇甫嵩「ともあれ、公孫瓚さん、劉備さん、そして家康さん今回は本当にありがとう」

 

皇甫嵩は今回の争乱終結に導いてくれた家康たちに感謝の言葉を送る。

 

桃香「私たちも皇甫嵩さんや董卓さんに助けてもらいましたし、風鈴先生や皆さんのお役に立てたなら、何よりです」

 

桃香は笑みを浮かべて首を左右に振り、謙虚に返答する。

 

桃香「何よりも、最後の戦いで大きな犠牲が出なかったのは、諸葛亮さんと鳳統さん、そしてご主人様や元親さん、忠勝さんのお陰です」

諸葛亮「いえ.....曹操さんの軍を見て、世の中にはまだまだ上がいると.....思い知りました」

 

諸葛亮は自分の才が全て通用したとは思っていないとそう言う。鳳統も彼女に同意するように首を何度も縦に振る。

その二人に桃香は彼女たちの軍師としての才能に、高い評価を抱いている。それは家康も同じようで、桃香からの視線に気づき彼は笑みで頷く。

 

桃香「私たちには諸葛亮さんと鳳統さんの力が必要なんだ。だから....ね、ご主人様」

家康「ああ」

 

諸葛亮「それって...」

桃香「これからは、二人には桃香って呼んでほしいな」

 

諸葛亮「はわわ!!」

鳳統「やったね、朱里ちゃん!」

 

二人は桃香と家康からの求めに対して思い寄らなかったらしく、余りのことに驚きそして喜びへと変わる。

 

諸葛亮「うん!雛里ちゃん!――私のことは、朱里って呼んでください」

鳳統「わたしは雛里です。これからよろしくお願いします、桃香さま!」

 

喜び自ら真名を教え伝える二人。すると鈴々がとあることを口にする。

 

鈴々「だったら、お兄ちゃんのこともご主人様って呼ぶのだ?」

諸葛亮→朱里「はうっ!?」

鳳統→雛里「あ....そ、そうですね」

 

鈴々の言葉に朱里と雛里は顔を赤くして恥ずかしがりながらも、二人はモジモジとしながら家康に視線を向ける。

その二人の天才少女に家康は頬を搔きつつ苦笑いを浮かべる。

 

家康「ははは...あれは桃香が勝手に呼んでるだけだ。嫌だったら無理に呼ばなくていい」

 

鈴々からその話を聞いた瞬間から、二人とも真っ赤になったまま。しかし家康の隣にいる稟と愛紗は頷くように縦に振りながら話を挟む。

 

稟「いえ、家康様は今やそう呼ばれるに相応しい御方。当然です」

愛紗「稟の言う通りです。ご主人様は皆に親しまれる、呼び名はその証です」

家康「いやぁ...しかしだなぁ...」

 

何とも言えず苦笑いで複雑な心境の家康。ご主人様などと言われるのは正直慣れてはいない、日ノ本では政威大将軍という位を持ち、天下人なども言われて気恥ずかしさも抱いていた。

ご主人様と呼ばれるより、家康様と呼ばれる方がまだいいとすら思う。

 

朱里「それはその.....桃香さまたちも呼んでいらっしゃるわけですし、嫌っていうわけじゃないんですけど....」

雛里「でも、その.....。ご、ご主人....はぅぅ」

雛里「あの.....れ、練習してからで、いいですか?」

 

元親「ははは!じゃあ俺もご主人様って呼んだほうがいいか?家康(笑)」

家康「おいおい、勘弁してくれよ、元親」

 

元親が場を和ますつもりで家康に揶揄う。そのお陰か、皆笑いに包まれる。

二人ともご主人様と呼ぶのに躊躇いと恥ずかしさで、恐る恐る懸命に言おうとするがやはりモジモジとしてしまう。

愛紗ですら最初、家康にご主人様と呼ぶのに慣れるまで地味に時間が掛かっている。

家康は別段呼び名に関して本人に全て任せるつもりで、これ以上は口を挟むのはやめておこうと思う。

 

雷々「.....」

電々「.....」

 

そんな中....いつもなら率先して騒ぎに加わってくるはずの元気な二人は、じっと黙ったままだった。

気になった桃香は2人に問い掛ける。

 

桃香「....どうしたの?雷々ちゃん、電々ちゃん」

雷々「うん.....。あのね」

電々「えっとね....」

 

何処か言いにくいような態度の二人、すると漸く電々からそれが語られる。

 

電々「あのね?....電々たち、徐州に帰ろうかなーって」

桃香「.....そっか。じゃあ仕方ない、ね?ご主人様」

家康「そうだな」

 

突然の申し出に皆驚くが、桃香と家康は驚きはせずそれを微笑みながらに受け入れる。するとそんな突然の申し出をした二人は慌てて弁明する。

 

雷々「あっ。別に桃香ちゃんやご主人様たちが嫌いになったわけじゃないよ!」

桃香「ふふっ。わかってるよ、ね?ご主人様」

家康「ああ、二人がこれまで頑張ってくれたことは知ってるさ」

 

家康も桃香も薄々は察していたのだろう。返す言葉は優しくあったが、それほど多いわけではない。

更に電々が徐州に帰る理由を話す。

 

電々「青州は幽州と徐州で半分こしてるのに、徐州の話って聞かないでしょ....?ここだって、徐州の方が近いのに」

雷々「だからね、雷々たち、幽州ででっかい事をする前に生まれ育った徐州の力になりたいなーって思ったの」

電々「それに、徐州が青州みたいになったら嫌だもん」

家康「....そうか」

忠勝「.....」

元親「おめぇら...」

 

二人の話に家康や忠勝、元親も同情する。確かにこの中原は今や荒れるに荒れ、人心も荒んでいる。

二人の故郷もこの青州や先の幽州と同じ状況となっていると思うと気が気でないのだ。

 

愛紗「...ふむ。寂しくなるな」

稟「そうですね」

公孫瓚「まぁ、青州を経由すればすぐだよ。徐州の陶謙殿とは、それなりに繋がりもあるしな」

電々「そうそう。だから、徐州が元気になったら....また平原に帰ってくるね」

雷々「その時は、またでっかい事、頑張るから!.....いい?桃香ちゃん」」

桃香「勿論。雷々ちゃんと電々ちゃんには、今まで沢山お世話になったし、二人が決めたことなら、私も応援するよ」

 

雷々のお願いにも似た問いに桃香は笑みのまま、二人のこれからの背中を推すように後押しする。

 

桃香「二人の力で、徐州を元気にしてね?」」

 

電々と雷々「「うん!ありがとう、桃香ちゃん!ご主人様も頑張って!」

 

家康「ああ。ワシも応援しているぞ!そしてまた二人との絆が再び相まみえることを願っている!」

 

電々と雷々「「うん!」」

 

 

そして次の日。家康たちは南に向かう雷々と電々を見送って、改めて西....平原や洛陽への帰路につくのであった。

 

 

 



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キャラクターストーリー・朱里と雛里 市街見物

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。




イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


取り急ぎの仕事は何もないある一日、家康は一人中庭にいた。

一日中休みという状況で、今まで戦続きの身でいきなりの休みと言われても、特段やること為すことが幾つも思い浮かばない。

 

家康「他の皆は仕事を持って忙しいんだ。邪魔しては不味いな」

などと一人呟く家康、いつも自分の周りに侍ている稟ですら此処に居らず、桃香と共に市政の為の執務に行っている。

家康もそれに手伝おうかと思ったが、稟から「家康様は誰よりも休まずお働きになっているので、今日ぐらいはお休みください!」っと言われてしまったので、彼女の強い圧に押されて諦めた。

 

家康「うむ、よし!なら市にでも見回りがてら、行くか!」

 

その時であった。

 

???1「......でも、もし怖い人がいたら....」

???2「平気だよぉ」

 

家康「ん?」

城門の前で腕の引っ張りっこをしている、二人の少女を視界に入る。

それは誰よりも忙しく、机にかじりついて職務にふけっていそうな朱里と雛里の二人。

 

雛里「街に行くと、人攫いが出るって....だれかが」

必死な表情で訴える雛里に、朱里が何か言い聞かせる感じである。しかし雛里はそんな朱里の言葉に対して、暗めな意見を口にする。

 

雛里「試着室に穴が空いてて....袋詰めにされて、裏口から担ぎ出されちゃうの....」

朱里「趙雲さんでしょ?それ言ったの」

雛里「......」

 

その通りと雛里は不安げに首を縦に頷く。朱里はプンプンと可愛いらしく怒った様子で趙雲に対し、愚痴る。

 

朱里「もう、すぐ面白半分に人を脅かすんだから。よく言っておかないと」

 

家康から見てやり取りは朱里が優勢なのだろう、雛里は口を噤んで俯いてしまう。

だが朱里は今回こうして此処にいる理由を話す。

 

朱里「内政面での献策の前に、自分たちの眼で街を見回っておくんじゃなかったの?」

その様子はまるで姉のように威張っている、雛里の前ではそういうものなのかと家康は新鮮なモノを見ていた。

 

朱里「二人なら平気だよ。手を繋いでいこう」

雛里「.........うん」

雛里もそれに安心したのか、朱里の手を快く繋いでみせる。家康としては微笑ましく思えたのか、特別隠れる理由もないので距離を詰める。

 

雛里「あわ.....あ、そ、そうだ。いざという時のために、お金は別々に隠し持ってたほうが」

朱里「平気!靴の中に隠してあるから」

雛里「さすがの機転だね、朱里ちゃん.....備えあれば憂いもないよ」

予めスリなどの対策をしっかりとしている朱里は胸を張るように、誇らしげにしている。

 

家康「中々にしっかりとしているな」

朱里「あ」

雛里「あわ」

揃って眼を丸くして振り返る二人に、家康は苦笑いを浮かべる。

 

家康「ここで何をしているんだ?二人とも。何か使いならワシが行ってきてやるぞ」

雛里「あわ!つ、使い走りなどではっ....なく、ではなく、め、滅相もございません!ご主人様にお買い物を頼むなんて、滅相も!」

朱里「二回言っちゃったよ雛里ちゃん....」

家康が顔を見せた瞬間、何故か二人して固まってしまう。まだこの二人、この城に来て浅く、天の御使いであり主でもある家康に対して萎縮してしまう。

 

朱里「じ、実は、そ、その前に.....先の大勝、心よりお喜び申し上げます」

雛里「ですっ」

2人は先の黄巾党での争乱での勝利のことを掘り返すようにし、且つその時の勝利を称賛する。

家康はそれが気恥ずかしく頬を搔く、その家康に朱里は此処で何をしていたのかを話す。

 

朱里「雛里ちゃんと2人で、町の実情を視察にいこうという話になりまして」

家康「そうか。ご苦労様だな」

雛里「ご主人様のご信頼を賜る軍師として、と、当然のこと...です!」

雛里は手と首を一緒に振って、すぐに朱里の後ろに恥ずかしさの余りに隠れる。

 

家康「街へ....か」

家康はよくよく考え、渡りに船と考える。

 

家康「そういうことであれば、ワシも一緒にいていいか?」

朱里「街へ、ですか....?」

思わぬ問いに朱里は眼を丸くして聞き返す。家康からしたら2人は軍師として才は稟に劣らぬが、武はやはり皆無だ。

自分が護衛する形で、且つ軍師としての彼女たちの意見も貰う――謂わば交換としてはいいと言える。

 

家康「用心棒としてどうだろう。人攫いが現れたらしっかりと守ろう」

っと家康は腕の筋肉を見せながら笑みを見せる。

 

雛里「聞いていたんですか?」

家康「まぁな」

雛里の問いに肩を竦めて答える。その家康に朱里は恐る恐る上目遣いで聞いてくる。

 

朱里「で、ですが...よろしいのですか?ご主人様にそのような....」

家康「なぁに、ワシは今暇をしていたから構わんさ」

家康は戸惑う朱里の頭を優しく撫でてやる。これに朱里は安堵感ような安らいだ気持ちを抱き、家康の手をその小さな両手で取る。

 

朱里「では、どうか、よろしくお願いします!」

家康「ああ。約束だ」

雛里「......♪」

ということで、家康は二人ともに市に行くことになった。右は朱里、左には雛里が回って上目遣いで家康の顔を見上げてくる。

家康も二人に見返すと雛里はまだ照れくさそうに俯いてしまった。

 

家康「逸れたら危ないから、しっかりとワシの手を繋いでおくといい」

雛里「は、はいっ」

彼から繋いだ手は、どちらにも解かれなかった。そのまま市へと足を運ぶ家康たち三人――『逸れない為の』手を繋ぐ行為は、建前通りの意味を持ちつつあった。

 

雛里「.....凄い人だかりです」

雛里からキュッと握り締めてくる指には、強張りを感じる。

 

朱里「ほんとだね、お店もたくさん立って.....ふぅん、この辺りでは見ないような品まである」

対称的に朱里の方は市の人、店、品などを遠目で観察しながら関心している風である。

家康も街の中、特に市の辺りは大勢の人でごった返して歩く難いなと苦笑交じりに感じていた。

 

家康「(それにまさか、朱里と雛里がこんなにも夢中になるとはな)」

辺りをキョロキョロする雛里。額にはうっすらと汗の粒が浮かんでいる。上がり症なのか、人が多くいる場所はそんなに慣れていないのであろう。

それとは反対に朱里は笑みを浮かべて、目先の市を正確に観察している。

その中で彼女や雛里より、夜になれば人が引き、治安への不安が分かりやすくならなど。

他、物取りや恐喝を取り締まるための警邏隊が如何に必要性が高いかを聞かされる。

 

家康「凄いな。そこまで考えるとはな」

朱里「市は街の顔と言えるものです。なのでこの市の活気を良くして守るのもまた大切なんです」

家康「そうだな。誰もが笑み浮かべ、他者と関わりあって生きて守っていく姿...正にそれも絆だ」

雛里「絆、ですか...?」

 

雛里は家康の口からでた「絆」という言葉に聞き返す。

 

家康「ああ。絆は人にとって無くてはならない大事なモノだ――力や恐怖、それら人を縛るものでは天下や人、全てを思い通りにするなどあってはならない」

朱里「ご主人様....」

雛里「....っ」

そう説く家康の顔は先ほどの優しい顔から一変、険しく鋭いものになっている。2人はそんな彼に不安げに必死に手を握り締める。

 

家康「あ、ああ!すまない。ワシも一人の人だ、一人で思い通りなんて思わんさ。他者と手を携えて助け合い、天下を良くする――ワシはそう思っている」

朱里「ご主人様のそういう所、素敵です!」

雛里「私と朱里ちゃんの眼に、誤りはありません.....あなたこそ、この天下に安寧をもたらす方です」

家康「ワシだけじゃないさ――それは桃香や愛紗、朱里や雛里たちがいることでそうなるんだ」

家康の言葉に2人は段々と嬉しさが増していく。桃香や愛紗が彼を主と仰ぐのは凄く分かる気がしてきた、彼ならばきっと――否、必ずこの乱れた世を正してくれると信じている。

2人は互いの顔を見合わせてから家康に言う。

 

朱里「大願成就の日まで、私たちがご主人様の知となり、手足となることを誓います!」

雛里「誓います!」

家康「そうか...ありがとう、2人とも」

 

その後、暫く三人は市を見学し店など回っていった。いつしか家康に連れられている2人の天才軍師である少女らの顔は、軍師としてではなくただ普通の女の子の顔になって家康の手を握っていた。

そして城に戻って三人はそこで別れることに。

 

家康「じゃあワシはここで」

朱里「ご主人様、今日はありがとうございました!」

雛里「た、楽しかったです///」

朱里は笑みを浮かべ、雛里は微笑みながらも顔を赤くして俯いている。そんな二人に家康は優しく笑みを浮かべて2人の頭にそっと手を乗せた。

 

家康「ではな」

そう言い残し、家康は去っていく。朱里と雛里はそんな彼の背が見えなくなるまで見つめる。

 

朱里「雛里ちゃん...」

雛里「なぁに?朱里ちゃん」

朱里「桃香さまも素敵な人だけど、ご主人様ももっと素敵な人だね///♪」

雛里「っ!...うん///♪」

 

2人は頬を赤くしながら家康に触れて貰った頭を、何度も擦っては嬉々として笑みを浮かべ合っていたのだった....。

 

 



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キャラクターストーリー・稟 鼻血は忠義弐

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


家康はあれやこれやと仕事を熟し、市政の為に奮闘していた。

その日も街の警邏を進んで自分から行い、異常もなく桃香に報告を済ませた。

次にどうすべきかと考えている最中、向かい側から稟が毅然とした顔つきで此方に歩いてくる。

 

稟「家康様、このようなところで何をしていらっしゃるのですか?」

家康「おー、稟。今警邏から帰ってきたんだ。稟は今から執務か?」

稟「はい、そうです。......しかし家康様」

家康「ん?」

家康は彼女のことを理解してきて、今の稟が何を言いたそうにしているのか分かるので「不味いなぁ」っと苦笑し頬を搔いてしまう。

 

稟「家康様...貴方様が民のためにと自ら警邏したいというお気持ち、痛く理解しております―――しかし、貴方さまは最早この平原にて無くてはならない大事な御方なのです!それなのに、それなのに!!貴方様はそのご自覚がお有りですか!!」

 

家康「し、しかしだなぁ...桃香もやっと市政にやってこれるようになったし、朱里や雛里も居るからであって...」

稟「な....なんたる怠慢....!」

家康としては頼りとなる軍師が増えたことで家康個人として、仕事の余裕が出てきた。ならば執務だけでなく治安の守護も自らやるのもいいと思ったのだ。

しかし稟としては、この勢力の中心となっている家康が軽々に危ういことをするばかりか、自覚をもって此方にて市政のみに励んでくれないことに憤慨している。

 

家康「怠慢...という訳ではないんじゃないか?は、はは...」

稟「っ.....あぁ言えばこう言う、そのような甘言で」

家康「甘言?ワシが、か?そういうわけではないぞ」

頬を搔きつつ、家康なりに弁明する。だが稟の憤りは終わらず、家康に尚も食ってかかる。

 

稟「これ以上私を呆れさせないで.....いただきたい」

家康は稟の様子をよぉく見つつ、彼女がどうしてこうも食ってかかるか理解した。稟は家康“だけ”の軍師と宣誓している。

彼女としては家康が自ら危険に向かっているのを心配なのだろうと気付く。

彼は思わず稟の頭を撫でると、稟は思わぬことに驚いてしまう。

 

稟「い、家康様っ!?」

家康「すまないな、稟――お主の言う通りかもしれないな。もう少し気を付けておくよ」

稟「は、い、いえ....えっと.....」

家康から撫でて貰う、少なからず彼女はやって貰ったことはある。しかし鈴々や徐州へと向かっていった電々と雷々に比べてそんなにして貰ったことはない。

家康からの温もり――彼女はこれを感じると、どうしても腑抜けそうになってしまう。

敬愛する主からの寵愛と思う稟にとってこれは、甘い毒である。

その結果――

 

 

稟「ブゥ――――――――――――――っ!!!」

家康「り、稟!?」

その彼女にとっての甘い毒の所為で、鼻から夥しい量の鼻血が飛び散った。床に倒れそうになるも彼女を寸前で抱きかかえる家康。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

稟「ん.....んぅ?」

 

家康「お、稟。目が覚めたか!」

ゆっくりと稟の瞳が開いていく稟。ぼんやりとして、まだ焦点が定まっていない。

 

稟「い、いえやす、さま....」

鼻血を出してからか、唇が何かを言いかけて震えている。

 

家康「苦しいのか?今、医者を...」

稟「こ、ここは....?」

2人が居る場所は先ほどの廊下ではなく、稟の自室である。稟が鼻血をだし倒れ、家康が急いで彼女の部屋まで運んで寝台に寝かせてあげていたのだ。

 

家康「お主の部屋だ。今から医者を呼ぼう」

稟「い、いえ....大丈夫、です」

彼女は無理に自身の身体を鞭打つように上半身を起き上がらせて、彼を止める。

すると彼女、どうしたのか顔を俯かせて表情が暗くなる。

 

家康「どうした?稟」

稟「.....申し訳ございません。肝心な時に鼻血を吹いてばかりの煩わしい女で――家康様はこんな私など、呆れてしまっておいでですよね....?」

などと彼女は思わず家康に恐る恐る顔を上げて、不安げな上目遣いで見つめてくる。

 

家康「稟...」

稟「....申し訳、ございません....」

彼女は自分が情けないと己を責めた。彼女は己が現在抱いる本心を吐露する。

 

稟「私....本当は先ほどの件で、家康様に言ったことは....ただ、家康様にもっと私に必要として貰おうと構って欲しかったのです...」

家康「そうだったのか....」

構って欲しかったと自ら白状する弱々しく見せる稟――その彼女を今一人にするのはいけないと、家康は近くにあった椅子に腰掛けた。

 

稟「こんな私では...お役に立てな――」

家康「稟」

稟「え...?」

家康は咄嗟に彼女の手を両手で包み込むように、そっと触れてきた。これに思わず稟は鼻血が出そうだったが何とか耐えた。

 

家康「稟、ワシはな。お前に何度も救われているんだ」

稟「で、ですが!こんな鼻血を流す女など!」

家康「稟、ワシはどんな稟でも大切と思っている」

 

稟「え.....?」

いきなりの言葉に稟は眼を丸くして間の抜けた声を漏らした。一方の家康は微笑みを浮かべて彼女に諭す。

 

家康「人と違うだけなんて、そんなのは稟だけじゃないさ。誰にだってある」

稟「そ、そうなの、ですか....?」

家康「ああ。それに稟に何かあればワシは心配だ」

稟「家康様....」

家康「....ワシを思ってくれるのは本当に嬉しい。だから出来るだけ、稟の願いは聞くつもりだ」

稟「ま、まことですか!!」

いつの間にか彼女は身を乗り出して、家康に迫る――っが、鼻から若干鼻血が垂れる。家康は一瞬たじろぐも「あ、ああ。本当だ」と彼女に安心感を与える。

それを聞き、家康から離れた彼女は頬を赤くしながら両手を胸の前で組み、涙を流す。

 

稟「ありがとう、ございます...」

家康「だが何かあったら不味い。いつかは医者を探そう、な?」

稟「はい...家康様」

家康「うん。じゃあワシはこれで行く――今はゆっくりと休むんだ、いいな?」

稟「はい...」

家康「ではな」

そう言い残し、稟の部屋から退出する家康。彼が居なくなるも、彼女はずっと主が握ってくれた手をそっと大切な宝物みたく大事そうにしながら潤みある瞳で見つめる。

 

稟「嬉しいです....家康様、我が敬愛する御方....」



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キャラクターストーリー・香風 空から降ってきた出会い

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



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イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


或る日のお昼頃であった。その日は偶然にも桃香や愛紗、鈴々などや家康や元親も仕事がなく非番となった時のことである。

 

桃香「うーん♪この饅頭美味しいね!」

愛紗「桃香さま、お行儀が悪いですよ」

中庭にある屋根付きの休憩場で饅頭を頬張る桃香、その彼女に呆れつつ苦笑いを浮かべてしまう愛紗。その横には稟もいる。

 

稟「しかし今日のような良き一日は貴重ですし、お気持ちは分かりますがね」

桃香「でしょう!稟さん、一つどうぞ!」

稟「ありがとうございます」

っとクールな返事で桃香から饅頭を貰い、行儀よく食べる。その中で三人は雑談する。

 

愛紗「しかし、こんな時間を過ごして良いのでしょうか...」

桃香「いいの!少しぐらい休んでだって罰は当たりません!」

稟「っと言いつつ、桃香さんはこういう休みを誰よりも望んでいるのでは?」

稟に痛い所を突かれたみたく情けなくも苦笑いを浮かべて「わかっちゃうかなぁ...はは」っと口を漏らす。

稟と愛紗はそれに呆れるように溜息を吐いてしまう、彼女は思わず慌てて話題を変える。

 

桃香「そ、それよりも!“あの子”はどう?稟さん」

愛紗「あの子?」

愛紗は誰のことか分からず聞き返すが、稟は「あぁ」っとすぐに気づき返答する。

 

稟「香風(シャンフー)さんですね?」

桃香「うん!香風ちゃん」

愛紗「彼女がどうかしたのですか?桃香さま」

桃香「あの子さ、忠勝さんと一緒にうちに来てくれたでしょ?こっちで馴染めてるかなって気になって...」

香風...姓徐、名は晃、字は公明。見てくれ露出ある服装をして風貌は口数が少なく、あまり感情が表に出ない少女という印象であると、愛紗や桃香は思っていた。

その彼女に関して稟から思いも寄らぬ話を聞く。

 

稟「彼女は優秀ですよ。執務を任せたら逸早く、そして間違いもなく正確にやってくれました」

愛紗「なんだと?!凄いな」

桃香「え?!武将だけじゃなく、政務も出来るの?!」

稟から語られた話に耳を疑う2人、だが稟から聞く話はそれだけなく――

 

稟「彼女、以前は都にて役人の仕事もやっていたらしく、頼んだ仕事を難なくやり遂げてましたよ」

彼女から聞いて2人は感嘆の声を口にするのだった。

 

桃香「凄いなぁ~、香風ちゃん」

???「凄い?」

桃香「うんうん、とっても凄いよ♪....え?」

愛紗「え?」

稟「おや?」

ふと突然聞こえる別人の声、三人はその方へ眼を向けるとそこには――いつの間にかひょっこりと居座って桃香たちを見つめる香風が其処に居た。

 

桃香「しゃ、香風ちゃん!?」

愛紗「い、いつからそこに!?」

香風「今」

稟「何の躊躇いなく来ましたね」

香風は平然とひらひらと手を振る。

 

香風「饅頭、美味しそう」

桃香「あ、一個あげる!」

桃香たちが食べている饅頭を物欲しそうに見る香風に、桃香は親切に分け与える。

貰った饅頭を香風は美味しそうに食べて、味を堪能する。

 

香風「美味しい♪」

桃香「よかった♪」

愛紗「....そうだ。香風に聞きたいことがあった」

愛紗は香風に対して、ふとある事が気になったのか彼女に問い掛ける。

 

愛紗「お主は我らと初めて出会ったとき、忠勝殿と一緒だったな?」

香風「うん」

愛紗「忠勝殿とはどういう経緯で出会ったのだ?」

愛紗の問いに、桃香や稟もそれに関して興味が沸いた。確かに彼女はどうやってあの戦国最強と称される家康の家臣である、本多忠勝と出会ったのか極めて気になった。

なので2人も愛紗に便乗する形で、香風に問い掛ける。

 

桃香「香風ちゃん、良ければ教えて?」

稟「そうですね。あの忠勝殿とどう出会ったのか、知りたいですね」

香風「いいよ」

即答であった。彼女は気だるげにそれを快諾して忠勝との出会いを語り始める。

 

香風「あれは...」

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

それは家康と、そして忠勝がこの三国志の世界に来た時のころに遡る。

香風は都で役人の仕事に従事していたが、漢王朝の官僚たちの腐敗と悪政ぶりに嫌気が挿し、彼女は都から出ていった。

宛など正直何もなくただ気の向くまま、旅に明け暮れていた。そんな中、旅路の途中にて彼女はふと空を見上げると――

 

香風「何か、降ってくる...」

そう落ち着いた声で呟く香風。確かに彼女の視界の空に一点――物なのか、何かが落ちてくる。そして段々と形が分かるぐらいに見えてきた。

 

香風「なに?あれ」

それは間違いなく自分が立っている場所へと落ちて来ていた。

だが同時にその落ちてくる物がデカいと気付く――っが、気づき避けるには遅すぎた。

もう避けたり逃げたりするのにもう手遅れだった。このままだとこの落ちてくるデカい物体の下敷きになるんだと覚悟しながらも、香風の表情は至って冷静であった。

しかしその時だった、突然落ちてきたもの落ちているにも関わらず、軌道を逸らして別の場所へ落下したのだった。

香風は何が何だか分からないが、しかしそれよりも気になって思わずその物体が落下した所へと走る。

 

香風「いた」

 

物体が落下した森へとたどり着いた香風がそこで見たのは、大きく周囲の木々をなぎ倒したデカいクレーターが其処にあり、そしてその中心には――

 

香風「あれは....人?」

そこには確かに人?らしきものが見える。彼女は危険だと言うのに躊躇いなく近づき始める。

そして近づくにすれ、その人らしきものが自分が知る人とは比較的にデカいと気づいた。

 

香風「おー、おおきい」

感情もないような間の抜けた声を漏らす香風。その時であった、彼女の背後より近づくものが複数現れる。

 

「おう、何だこりゃ?」

 

香風「ん?」

香風が振り返るとそこには複数の男たちが。その先頭には三人組の如何にも悪そうな男たちが居た。左に肥満体な男に、右にはチビな体型の男に、真ん中には如何にもボスだと言わんばかりの男がいる。

彼らは香風を見るとニヤニヤとした下卑た顔を浮かべて彼女をねっとりと舐めるように見つめる。

 

「兄貴、女ですぜ」

「可愛いんだな」

「こいつは中々に上玉かもなぁ、へへ」

 

男たちは賊だと香風はすぐに理解した。連中は何の迷いなく香風にじりじりと迫ってくる、このような連中が女性に対してやる事など知れたことである。

間違いなく捕まれば凌辱が待っている――なのに、香風は悲惨な末路が迫っているのに何の恐れも抱いていない。

 

「兄貴、こいつ怖がってないみたいですぜ?」

「ふん!すぐに沢山鳴かせてやるさぁ、ぐへへへ」

「オイラも沢山可愛いがって、喘がせてあげるんだなぁ」

 

男たちはとうとう香風のすぐ傍まで迫ってきた――っが、その時であった。香風や賊どもを覆うように暗くなった。

 

「ん?なんだ急に暗く....」

「あ、兄貴...あ、あれ!」

「あん?..............え?」

 

 

忠勝「.....!」

彼らは眼を疑った。なぜならば香風の後ろより、ゆうに3メートルはあろうかという全身鋼の鎧で覆う巨体がそこに聳え立って右目が赤く光り、けたたましい機械音を響かせる。

賊はその鋼の巨体――本多忠勝の姿を見て驚き、思わず全員武器を取って構える。

 

「て、てめぇ!!な、なにもんだ!ごら!!」

 

兄貴と呼ばれる頭目らしき男が忠勝の姿を見て、足をブルブルと震わして問いただしてきた。他の連中も武器を構えてはいるが、同じようにびくびくと忠勝にビビッている様子――ただ一人、香風は....。

 

香風「.....」

彼女は忠勝の姿を怖がりもせず、ジッと見つめている。そんな中、忠勝は周囲を見渡して自分が何処に居るのかを確認する。

 

忠勝「....!」

ここは日ノ本の何処か、なぜこんな所にいるのか、主家康はどうしたのか忠勝の頭の中は混乱していた。

だが目の前にいる男たちは自分に武器を向けており、そして自分の傍にいる少女は敵ではないと察する。

そして少女は自分が起きるまで危機的状況だったのだとも理解し、忠勝は機械音を大きく鳴らすと共に――自分の手にしているドリル状の忠勝専用の槍・三池光世改槍を振るった。

 

「な、なん...ぶぎゃ!!!」

 

忠勝の攻撃に賊どもは一瞬で薙ぎ払われ、吹き飛ばされるのであった。

 

「ひっ、ひぃいい!!お、覚えてやがれぇ!!」

 

賊どもは重傷ではあるが、散り散りで逃げていった。連中が居なくなって残ったのは忠勝と香風のみとなった。

香風は自分が助けられたのだと理解し、忠勝に礼を言う。

 

香風「ありがとう」

忠勝「.....!」

香風「え?“怪我はないか?”...そう言ったの?」

忠勝「.....!」

忠勝は一切喋っていない――にも関わらず、彼女は彼が何を言っているのか理解した。

香風は内心「変った人」と思ってしまうが、それでも彼女は忠勝に対して不思議と好感が持てた。

すると忠勝は再び機械音を鳴らす。

 

忠勝「....!」

香風「え?ここは、ひのものとの何処だって?」

忠勝「......!!」

 

 

 

香風「......ひのものとってなに?」

 

 

忠勝「........................................................Σ(・□・;)!!」

忠勝はそこで暫く思考が停止してしまうのだった。彼が再び意識を取り戻してから、香風から彼女が知る限りのことを聞いた。

ここは日ノ本ではなく後漢末期の中国、つまり三国志の世界だと分かった。

 

香風「字がない、不思議」

忠勝「....!」

香風「...お兄ちゃんはどうするの?」

忠勝「....!?」

忠勝はいきなり香風から「お兄ちゃん」と呼ばれて驚き焦る。香風は冷静のままその理由を話す。

 

香風「うん、お兄ちゃん。なんか一緒にいて安心するから、そんな感じする」

忠勝「.....!」

香風「ううん、徐晃じゃなくて、香風って呼んで」

忠勝は香風と聞いて頭の上に?に浮かぶ。彼女より真名のことも聞いた、それは神聖な名前で親しい間柄の者でなければ呼んではいけないと、先ほど香風から聞いたばかりだ。

なのに彼女はそれを教えてきた、忠勝としてはそんな大事な名前を易々と呼ぶに値したことはしてないと言うが――

 

香風「さっき、助けけてくれた。これじゃダメ?」

忠勝「....」

それは当たり前のことと忠勝は言う。しかし香風は「それでもシャンが良いって言ってるから、きにしないで」と言われたので忠勝は渋々と受け入れた。

 

香風「それでお兄ちゃんはどうするの?」

忠勝「………!」

香風「お兄ちゃんの主を探すの?」

忠勝「………!」

忠勝の返答に香風は何か考えたのか、忠勝に伝える。

 

香風「シャンも一緒に居て良い?」

忠勝「………!?」

香風「うん、助けてくれた、お礼」

忠勝「………!」

それから二人は移動しることに。その道中、忠勝は香風が役人の仕事をしていたことを知る。

 

香風「でもやめたの。だって都は賄賂や汚職をする人が多いから、やりがいがなくなった」

忠勝「………」

香風「旅の目的もない。ただ自由に回っているだけ」

香風は徐に空を見上げる。彼女の視界に鳥が映る、それを見る目が何処か羨ましそうにしている。

 

香風「……あの鳥みたいに、自由に空を飛んでいたら、いいなぁ……」

忠勝「………」

っと何を思ったのか、忠勝がいきなり香風を優しく持ち上げた。

 

香風「お、お兄ちゃん?」

香風も突然のことに驚く素振りを見せる中、忠勝の背中の鎧の一部が変形し二門の噴射口が現れ火を噴く。

そしてそのまま香風を抱き抱えながら、忠勝は空へと飛ぶ。

 

香風「そ、空を、飛んでる」

初めての体験、自分が鳥と同じ視点になるなんて思いもよらず、香風は目の前に広がる景色に眼を奪われていた。

驚きはあるが、怖いとは思わず処かまさか自分が空に浮かぶなどと喜びすら抱いていた。

 

香風「凄い、凄い!お兄ちゃん、凄いよ!」

感情を表に晒すことなどない香風は、そこで初めて大袈裟に喜んだ。

忠勝はそんな少女の喜びの姿に、忠勝も何処か嬉しそうである。

そして地上に着地し、彼女を降ろす。

香風は未だ空を飛んだ体験の興奮が冷めず、忠勝に迫る。

 

香風「お兄ちゃん、どうやって飛んだの!?教えて!」

忠勝「………!?」

思わぬ反応に焦る忠勝だが、香風は彼が凄く気に入ったようで思わず忠勝の鋼鉄の足に飛び付く。

 

香風「~♪…暖かい」

忠勝「………」

完全に忠勝に懐いた香風は、忠勝に言う。

 

忠勝「………!」

香風「……シャン、ずっと一緒についていく」

忠勝「………!?」

彼女からそう言われ、忠勝は彼女に良いのかと尋ねる様子を見せる。

それに香風は笑みを浮かべて、頷いて見せた。

 

香風「うん、お兄ちゃんとずっと一緒がいい」

忠勝「………」

彼女の意思は固いようで、忠勝は受け入れることにしたのだった。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

香風「それでお兄ちゃんと一緒に、家康さまを探す旅をしてたの」

桃香「そうなんだ…」

愛紗「大変だったのだな…」

稟「…しかし警戒もせずに、真名を即座に教えるとは」

香風「お兄ちゃんは、シャンにとって凄く落ち着くから……」

っと彼女は嬉しそうにし、笑みまで浮かべていた。

その忠勝との出会いが彼女にとって大切な宝物なのであろう………。

 



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キャラクターストーリー・愛紗 彼女の誓い

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


その日、家康は桃香と廊下で雑談を興じていた。桃香は家康との雑談が楽しいのか、はたまた嬉しいのか、彼にこの前鈴々と街に遊びに行った時のことを話していた。

 

桃香「それでね~?この前は、鈴々ちゃんと一緒に街にいったの」

家康「ほお?よかったじゃないか」

嬉しそうに話す桃香が微笑ましいのか、家康は子を暖かく見守る親のような笑みを浮かべている。

桃香が大きな瞳をキラキラと輝かせながら話す言葉に耳を傾ける。

彼女の笑顔を見てると、家康はこっちまで楽しくなってくると思えてくる。

 

桃香「ご主人様も一緒に来ればよかったのに。わたしたち、いっぱい探してたんだよ」

彼女は凄く残念そうに頬を膨れまして拗ねてしまう。表情を二転三転コロコロ変える桃香に、家康は苦笑してしまう。

 

家康「すまないな。その時は忠勝と一緒に警邏に行っていたんだ」

苦笑いの家康だが、その時彼が気になっていることがある。それは、先ほどより桃香に抱かれた自分の肘が彼女のぽよぽよと柔らかい女性を強調している大きな胸に埋まっている。

しかし桃香はそんなの気にせずに話を続けている。

 

桃香「市で食べたお饅頭がとっても美味しかったの」

家康「そうか....ははは、それは一緒に食べたかったな」

桃香「お店は覚えてるから、一緒に行こ?今度」

彼女はどうしてか、腕を組んで歩きたがるのはどうしてかと不思議がる。だがそれにしても年下である彼女の積極的な行動にはたじろいでしまう。

 

家康「今から街にいくから、教えてくれ。余裕があればいけるかもしれない」

彼は今日も警邏に出なければならないのだ。街に向かう途中で偶然に桃香と出会い、それならばと途中まで話しながら行こうということになったのが、そもそもの始まり。

 

桃香「一人で食べたって美味しくないの!今度、みんなで一緒にいこう」

家康「と、桃香....その、だな...あんまり強く肘を抱いていると、その...」

桃香「え.....あ」

指摘すると桃香は、ハッと気づいたように腕の力を緩めた。すると桃香が不安げに家康に問い掛ける。

 

桃香「.....ご主人様は、こういう押し付けがましい女の子は、苦手?」

家康「ん?!」

いきなりの問いに家康は思わず驚く。

 

桃香「だって、困った顔した」

家康「それは気のせいだ桃香....ワシはそんなことを思ってはいない」

桃香「ほんと?」

家康「ああ!本当だ」

桃香「じゃあ、大胆な女の子の方が好き?」

家康に嫌われてないと知ると、桃香は再び彼に迫りながら問いかける。唐突な質問、今まで天下統一の為、絆の世を日ノ本に齎そうと奔走していた自分に好みの女子に関しての問いを掛けられても正直どう答えれば分からない。

 

家康「その、だな....」

桃香「年下と年上はどっちが好き?」

桃香の貪欲とも言えるその積極さにこれまで幾多の戦場を切り抜けた歴戦の将であり、天下人である徳川家康と言えどもこれには勝てなかった。

 

家康「桃香、一体どうしてそんなことを?」

桃香「えっと...そ、そう!世間話!ご主人様とこういうお話はあんまりしたことなかったでしょ!だから、ね!」

そう言われてみると確かにそんな世間話と言えるほど、彼女とそんな多くした覚えがないと気付く。

だが桃香の女子力高い質問は続いた――料理ができる女の子は好きか、お洒落な女の子は好きか、女の子のどんな髪型が好きか、などと色々と問われて、さしもの家康もタジタジであった。

 

っとその時であった。

 

愛紗「何をイチャイチャとしているのです?お二人は」

桃香「あ、愛紗ちゃん!?こ、これは....あはは」

家康の背後より突如現れた愛紗によって、桃香との雑談(桃香の一方的な)が終わりを告げる。

桃香は慌てて家康の腕を解く。

 

愛紗「意外な所でお見かけしました。ご主人様は警邏、桃香さまは政務ではありませんでしたか?」

家康「す、すまない!いま行こうと思ってな」

桃香「私もすぐやるね!さよならー!」

桃香は負い目あるみたくパタパタと足音を鳴らして走り去る。

彼女が居なくなると愛紗は溜め息をついてしまう。

 

愛紗「はぁ………まったく。桃香さまの、のんびりとしたお心根は変わりようはないようです」

家康「まぁあれでこそ桃香という感じがある」

愛紗「桃香さまが仕事を残していることくらい、察しがつくでしょ?たしなめていただくくらいでなければ、困ります」

家康「すまない!行こうと思っていたのだが……」

何とか弁明しようとするが、愛紗はーーぷい、っとそっぽを向いてしまう。

 

愛紗「執務室と外は逆方向です」

 

家康は愛紗を見つめ苦笑しながら「生真面目だな」と心内で思った。

もっともこうして引き締めて貰っているお陰で、助かってるのも事実だとも思っている。

 

家康「ちょっと弛んでいた。気をつけるよ、愛紗」

愛紗「謝っていただくほどでは………」

家康「これからも、ワシが弛んでいたらビシッと言ってくれ。頼りにしている愛紗」

愛紗「………っーーはっ!」

踵を揃えて直立し、家康に返礼する。やはり真面目と思いつつ家康も自らの仕事を全うすべく、警邏に赴こうと足を向ける。

 

家康「それじゃあ、行ってくる」

愛紗「あ、お待ちくださいご主人様。お一人で警邏に行かれるおつもりですか?」

家康「ん?ああ、そうだが....」

キョトンとした態度で愛紗に答えると、彼女はそれに待ったをかける。

 

愛紗「万が一のことが起きないとも限りません。私も同行いたします」

家康「え?」

愛紗からの唐突の申し出に家康は、思わず間の抜けた声を漏らしてしまう。しかし愛紗は諭すように話を続ける。

 

愛紗「ご主人様は、天の御使いという替えの利かない存在であり、我らにとって大事な存在です。もっと御身を大切にしてください」

早口に言いいながら彼女は家康の隣に並ぶ。そしてさも当たり前のように今から共に行こうと笑みを浮かべる。

 

愛紗「ご主人様、参りましょう」

家康「そ、そうだな」

しかし家康、愛紗と2人の時間というのも、桃香同様、中々に持てない貴重な時間だ。

そして二人はそのまま街へと向かうのであった....。

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

愛紗「今日も賑やかですね」

家康「そうだな」

戦いの爪痕は過去のもの....なんだかんだで皆、たくましいものだと感心する。市も立って、街の大通りは活気に満ちている。

 

「あっ!?関将軍....」

 

愛紗「む?」

 

「し、失礼いたしました~~~~っ!!」

愛紗が振り向くと、身体を二つ折にして声を掛けてきた町娘はバタバタと走り去ってしまう。

 

愛紗「...............」

家康「あれは愛紗に怯えてたわけじゃないさ」

愛紗「......そうでしょうか」

家康なりにすかさずフォローをするが、これで案外傷つきやすい、愛紗の性質はわかってきているのだ。

 

家康「愛紗はワシなんかよりずっと凛々しいし、威厳があるからだ」

愛紗「よしてください、そのようなご冗談を!」

家康「そんな意地を張ってはもたないぞ」

頑として真面目に家康に怒る愛紗。武人として、武将として楽観するようなことを言えないし、言わない。

陽気な家康に彼女は怒り説教する。

 

愛紗「怒らせるからです!まだまだ気を緩めていい状況ではないことくらい、ご承知でしょう」

また始まってしまったと家康は苦笑いを浮かべる、クドクドと始まったお説教を聞き流そうかと一瞬考えるが、愛紗に悪いと思いやめた。

 

愛紗「天下泰平の大願成就に向けて、我らは一歩を踏み出したに過ぎません!今こそ心身を引き締めて!」

家康「.....お、いい香りがするな」

愛紗「............」

家康の鼻が店から漂う香ばしい香りに釣られてしまう。それに対して愛紗の顔が更にムッとなる。

それを見て家康は苦笑交じりに愛紗に諭す。

 

家康「いつも張りつめていたら、どこかで切れてしまうぞ。愛紗はちょっと生真面目すぎるぞ?こういう時は抜かないと」

愛紗「桃香さまのようなことを仰る」

家康「皆がそう言うんだ、少しは耳を傾けておいていいと思うぞ」

家康からそう言われて、愛紗は「む、むう」っと口からでて考えるようにする。

そして考えてから彼女は言う。

 

愛紗「性分なのでしょうね。私はそのような器用にはできておりませんので」

家康「しかし、志は立派だと思う」

愛紗「私の志は桃香さまから頂きました」

彼女は嘗て一人の武侠であった....世を憂い、憤りのままに力を振るうばかり。

しかし桃香と出会い、それが一気に変わってしまった――今までと違い、桃香と歩み始めてから自分たちが世を変えるなどとは夢にも思わなかった。

 

愛紗「私の武に理由をくださったのは、桃香さまです」

これまで、彼女から聞いたことがない...これはきっと凄い大切な話だ。

 

愛紗「桃香さまに出会う前の私は、村を巡り、盗賊たちを討つ程度のことを満足をしていました。まるで救世主にでもなったように」

愛紗の過去に思いがけず触れて、余計な一切を言う気は失せた。ただ耳を澄まして、横顔を見入る。

 

愛紗「私は、私の器の中でしか物を考えず.....己の限界を勝手に定めていました。遥かに強大な敵と戦うことなど、考えもしなかったのです」

彼女の語る姿に熱が入る。彼女が桃香と出会った時ーーか弱い腕で剣を握り、背には無力な民を庇い、百にも近い盗賊の前に立ち塞がっていた、と。

その時の愛紗の眼に映る桃香は、大きく眩しく見えたと誇らしげに桃香を語る愛紗は、常にはない少しの幼さを見せる。

 

愛紗「あの方には際立った武も、才もありません。

しかし不器用なまでの優しさがあります」

家康「そうか」

愛紗「あの方の出会いが、私に理由をくれました」

家康「理由?」

愛紗「盗賊を追い払った後、桃香さまが『そんなに強いお二人なら、もっとたくさんの人を救えると思いますよ』と」

家康「ははは、桃香らしいな」

それを聞いて家康は実に桃香らしいと口にする。本来なら救ってくれてありがとうなのだが、だが自分よりも他人を優先する桃香ならではと思える。

かつてない安らかな気持ちで、家康と愛紗は笑い合う。

 

愛紗「胸に風が吹き込むのを感じました。あの方が、私の武に理由をくれましたーー私たちの居場所を見つけることが出来たのです」

鈴々を入れた三人が掲げる理想の根幹にあるものは、透明と言えるほどに澄んだ眩い意志だった。

彼女らの出会いとその理想の奥底を聞いて、家康は強く納得する。

 

家康「そうだったのだな。ーーならばワシも、愛紗の力になりたいと改めて思う」

愛紗「………私の?」

思わぬ発言にキョトンとして眼を丸くして家康を見つめる。

 

家康「ああ。愛紗や桃香、皆の分もだ」

愛紗「ご主人様……」

家康のその言葉に愛紗は感極まり更に瞳まで潤み、嬉しさが込み上がる。

やはり彼を主と仰いで正しかったと愛紗はそう思う。

 

愛紗「はい……期待しております、ご主人様」

家康「よし!なら、腹ごしらえに饅頭でも食べに行くか!」

っと家康は愛紗の手を握り、桃香が教えてくれた饅頭が店へと向かう。

その間に愛紗は呆れつつも笑みを浮かべていた。

 

愛紗「もう………ご主人様」

家康「ん?」

彼女は優しき笑みで呟く。

 

愛紗「これからも、どうか、私たちをよろしくお願いします」

家康「ああ」

っと笑みを浮かべ合う二人はそのまま歩き続けるのであった。



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第二十一章 新たな動乱の序章

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



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青州

 

ここ青州にて一陣の暴風が吹いていた。

 

???「邪魔」

 

大きな2本のアホ毛が特徴の赤い髪色、その手には長い方天戟、見た目などは肌が薄い褐色肌でスタイルなど愛紗や趙雲にも引けは取らないぐらいに抜群の美少女である。

その彼女が一言発した途端に、周囲の賊どもが一気に血しぶきを上げて次々と絶命して果てる。

その彼女に愛紗が注意する。

 

愛紗「賊は無暗に殺すな!投降した者は受け入れてやれ!―――呂布殿!」

 

???「....」

 

彼女...賊を次々に屠っている彼女こそ、戦場で文字通り無双の強さを誇り天下無双、または三國無双など謳われるかの武将・呂布、字名は奉先。彼女は朝廷に属する董卓の配下である。

愛紗から注意を受ける呂布であるが、感情をあまり表に出さないタイプなのか反応が薄くて無言の様子を見せる。

 

呂布「....」

 

無言で注意してくる愛紗を見据える。その間も愛紗は尚も呂布に苦言を呈する。

 

愛紗「今回の作戦の趣旨を違えるな!賊の平定が目的であって、殲滅ではないぞ!」

呂布「.....」

愛紗「貴様...!」

しかし呂布、これに対し真面目に聞いている節はなく、煩わしいと眼を逸らして聞き流しているだけであった。

それに気づいた愛紗は顔を顰めて険しくなり、態度の悪い呂布に憤る。

呂布と愛紗――2人の間にじわりと高まりつつある緊張を一つの大きな影が現れ、破ることとなる。

 

愛紗「た、忠勝殿!!」

忠勝「....!」

 

呂布「.....」

 

2人の間に割って入るように忠勝が空より降りてきた。静かな機械音を鳴らしながら大きく聳え立って見せる忠勝。

彼は愛紗と呂布に「身内で無駄な争いをするな」と仲裁のつもりで来たのだ。

だが未だに呂布の態度に蟠りを抱き、納得出来ないでいる愛紗は忠勝に訴える。

 

愛紗「忠勝殿!止めないでください!この者、己が将である自覚などない態度に看過出来ません!」

忠勝「.....!」

愛紗「...っ!――そ、それは!....わかり、ました」

呂布の態度に怒り続ける愛紗、だが忠勝は「我らは合同軍であるから、朝廷の者たちと諍い起こすのは良きことではないし、何よりも家康様に要らぬ負担がかかる」っとやはり喋ることはなく、機械音を鳴らしているにも関わらずそれが愛紗に伝わる。

喋っているわけではない機械音を鳴らしてだけなのに、意思が疎通できることに若干まだ疑問を抱く愛紗ではあるが彼の伝えたいことは理解し、家康に負担がかかると言われれば渋々ではあるが納得するしかなかった。

今回、彼らがどうして朝廷から派遣された呂布と共にこうして賊の平定をしているのか――結論から言えば、黄巾の乱が終わっても青州の中央部は大して平和にはならなかった。

黄巾党の大きな動きはぱったりと途絶えるが、州牧は相変わらず決まらないままであった。

あちこちから賊が流れこんでくる無法地帯なのも変わっていない。

徐州に戻った雷々と電々が頑張ってるという噂は聞くものの、そうすぐに勢力を盛り返すという訳ではなかった。

 

???「恋どのー」

???2「アホ恋、やっぱこないになっとったか」

 

呂布「音々音、霞」

 

呂布の下に駆け付けたのは、小さい女の子と愛紗や呂布に負けない豊満な胸に晒し木綿を巻き、偃月刀を持つ関西弁を話す女性が現れる。

小さい女の子は陳宮、そして女性の方は張遼、字名は文遠――2人とも呂布と同じ董卓配下の将。

彼女らも呂布と共に中朗将の盧植や董卓がこちらの状況を気にかけ、青州平定の名目で援軍として送くられたのだ。

 

張遼「恋、アンタどうせ見境なしに暴れ回ったんやろ」

呂布「......?」

張遼「自覚もないんかい!!」

張遼のツッコミが飛ぶ中、忠勝の傍に駆け付けた香風が喋る。

 

香風「もう皆お腹もすいてるから、早く戻ってご飯にしよ」

呂布「......ごはん」

香風の言葉に耳をぴくっとさせ、更には腹の虫を鳴らす呂布。その彼女に陳宮もその通りだと賛成する。

 

陳宮「残念ながらその通りですぞ。恋殿、帰ってご飯にするのです」

呂布「.....(コクッ)」

呂布は陳宮の申し出に賛成するように強く頷く。そんなやり取りの中、張遼が愛紗と忠勝、香風に申し訳なさそうに呂布に代わって謝罪の言葉を述べる。

 

張遼「.....なんや、迷惑かけてすまんなぁ。そっちの劉備ちゃんが平原の相になったばっかで忙しいのにな」

愛紗「いえ。だからこそ、応援があるのとないのとで大違いですから。助かります、張遼殿」

二人がそうやり取りを交わす中、忠勝は徐に呂布を見つめていた。「あれが呂布か」っと忠勝はそう思っているようだ、

すると呂布と目が合ってしまう。

 

呂布「......」

忠勝「......!」

 

呂布は何を思ったのか、忠勝の傍まで近寄って遥かに巨体な彼を見上げながら見つめてくる。その呂布に愛紗や香風、張遼や陳宮もこれに不思議がる。

外野がそんな反応する中、呂布は忠勝に話しかける。

 

呂布「.....とっても、強そう」

忠勝「....!」

無表情でそう告げる呂布は何事もなかったように、自分の本陣へと帰路へつく。陳宮や張遼も続くように去っていく。

 

愛紗「...あれで朝廷に仕えるとは」

香風「でもあの呂布って人、噂には聞いてる。一人で多くの黄巾党を殲滅したって」

 

忠勝「....」

 

愛紗と香風が呂布について喋っているのを余所に、忠勝はその本人の背中が見えなくなるまで見つめるのであった。

そして賊の平定を終わらした呂布らは直ぐに都へと帰還する。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

司隷・洛陽

 

洛陽...この中原の、漢王朝の中心部であり政の全てをここで行われている。その玉座の間で2人の女性がいた。

 

何進「やれやれ....未だ青州の平定すらならずとは。国庫も厳しいというのに、何度兵を出せば気が済むのだ、董仲穎」

彼女は何進、漢の大将軍である。以前は市井の肉屋だったが、妹が宮中に入ったことをきっかけに武官として取り立てられた。

全くの無能というわけではないが、酷薄で権力欲が強く、保身を第一に考える性格の持ち主。

その彼女に平伏するのは董卓、字名は仲頴...涼州の州牧であったが、軍事力を背景に次第に頭角を現すようになり現在は中朗将の位を与えられている。

その董卓の傍に控えている眼鏡を掛けた少女は賈詡、字名は文和...彼女の配下であり軍師も務める。

 

賈詡「(国庫が厳しいのはお前たちの贅沢三昧の所為だろ....)」

 

などと内心、嫌味ったらしく董卓にグチグチと責めてくる何進に憤る。その彼女を余所に董卓は冷静な態度で何進に応対する。

 

董卓「そうはおっしゃいますが.....新しい州牧を任ずるにはまず現地の平定が必要と、先日の軍議で何進殿も同意下さったではありませんか」

何進「ほう、余の判断に誤りがあったと。自らの不手際を棚に上げて」

董卓「.......けしてそのような」

何進の理不尽で身勝手な問い攻めに当惑する董卓。それを面白く見つつ嘲笑しながら何進は嫌味を続ける。

 

何進「まぁいい。で、涼州や漢中への対応はどうなっている?彼奴ら、ろくに臣下の礼も取らぬ不忠者共、しっかりと弁えさせているのだろうな?」

董卓「それには皇甫嵩殿、盧植殿にお任せしております。ですので直ぐに恭順させることができるでしょう」

何進「見込みの話など不要だ。結果のみを知らせれば良い」

董卓の話に全く相手にする気などなく、彼女に理不尽に押し付ける。その言葉に董卓は苦虫を嚙み潰したように顔を険しくする。

 

何進「なんだ?何か文句でもあるのか?」

董卓「いえ!そのような!」

何進「ふん。中朗将のなり手など幾らでもおるわ。冀州の袁紹、揚州の袁術....禁城でもそれ以外の者共も是非にという文が数多く届いておる」

何進は――特に袁紹は名ばかりの中軍校尉ではなく、実際に官軍を率いる職を欲しがっているようだし、っと嘲笑うように嫌味っぽく董卓に聞かせる。

そこへ何進の実の妹であり漢の皇后でもある何皇后がやってきた。

 

何皇后「姉様。空丹様が、会議はまだ終わらないのかと言っているわよ」

何進「ああ、そうであった。.....まったく、着物の誂えなど余がおらずとも何とでもなるだろうに」

 

董卓「.....」

賈詡「(その着物一着で、地方へ兵をどれだけ出せると思ってるんだよ!!くそ!!)」

何ともこの乱世によって民草が苦しんでいるというのに、この何進と何皇后の会話に呆れと失望の感情が沸々と湧いてくる董卓と賈詡。

そこで軍議は終了し、何進たちはすぐに玉座の間から出ていく。残されてからすぐに声を挙げたのは賈詡であった、彼女は先ほどより何進の傲慢なる姿勢に怒りを貯めており漸くそこで吹き上がったのだ。

 

賈詡「何なのよ!!あれは!!あいつら何様なんだ!!」

董卓「詠ちゃん...落ち着いて、ね?」

何とか宥めようとする董卓の気持ちに逆らうように賈詡の怒りは収まることはなかった。

 

賈詡「それに袁紹....袁術だって!?何進は本気であいつらに中朗将の任を任す気!?そうなったら漢王朝はおしまいよ!!おしまい!!」

董卓「詠ちゃん、声が大きいよ....」

董卓に指摘され、賈詡は漸く落ち着いて「ごめん、月」っと彼女の真名を口にしながら謝罪するのであった。

 

董卓「でもせめて、風鈴さんや楼杏さんが居てくれれば、ちょっとは違ったと思うんだけど」

賈詡「.....各地の平定に行かせたのは、それが狙いだったんだよ。そういうことには知恵が回るんだから、あの肉屋」

玉座の間から離れながら自室へ移動の中でそう話し合う2人――その中で賈詡は意を決した顔で董卓に告げる。

 

賈詡「もう我慢なんてしてる場合じゃない。今がその時だよ、月」

彼女の言葉に董卓の顔が強張る。緊張感すら彼女らの周りに張りつめてしまうぐらいに。

 

董卓「うん」

賈詡「迷ってる時間はないんだよ、月。霞たちが戻ってきたらすぐにでも...」

董卓「....そうじゃないよ。動くにしてもその後のことも考えなきゃ...」

彼女に言われてバツが悪そうに顔を俯かせる賈詡、軍師であるのに感情的になってしまったと反省する。

その時、董卓の自室の扉の外側から声が聞こえる。

 

???「仲頴.....董仲頴は居りますか?」

董卓「劉協さま!?」

賈詡「ど、どうしてこちらに!?」

二人は急いで扉を開けると、そこには一人の貴人の少女が立っていた。

彼女は劉協、漢の皇女で漢王朝の帝・霊帝の妹である。その彼女が単身董卓の部屋までやってきたことに驚き、急いで中に入ってほしいと懇願し招き入れる。

 

董卓「劉協様...どうしてこちらに?」

劉協「お姉さまのことです」

董卓「主上様の....」

劉協は恐る恐る神妙な顔で話始める。あの黄巾党の騒ぎが収まってからというもの、何進や何皇后は霊帝に対してより一層の無駄な国庫の浪費を求めるようになったと。

禁城で育った劉協だが、しかしよく宮中に日夜運ばれてくる高価な宝石や着物を見て、あれは国庫を大きく圧迫させていると理解していた。

 

劉協「あれは国庫を酷く枯渇させる行いなのではないですか?」

董卓「それは.....」

劉協「天子の妹だと遠慮せず、正直に答えてください。わたしはそれを教えてほしくて、ここに来たのです」

劉協の必死な気持ちにこれ以上言わないのは無礼だと、董卓は決意して彼女の問いに答える。

 

董卓「でしたら....その通りです」

劉協「.....やっぱり、そうなのですね」

やはりと劉協は暗く顔を俯かせてしまう。董卓からは、このままでは第二の黄巾党どころか、大陸全土を巻き込む更に長い長い乱世の時代になってしまうと危惧される。

それほどの状況になっているのかと劉協は驚愕し、このままでは間違いなく漢王朝は滅びの道へと進む言われて居ても立っても居られないと焦る。

 

劉協「わたしに、何かできることはありませんか?」

統治を怠った王朝が滅びるのは、定めと教わっている。しかし正しい行いをする董卓や皇甫嵩や盧植、それに民草たちがこれ以上苦しむことだけは避けなければならないと、董卓に哀願するように頼み込む。

 

劉協「この国の良心は、もうあなた方だけなのです」

董卓「劉協さま....」

彼女の眼を見て董卓は決意し、劉協に告げる。

 

董卓「でしたら、劉協様。恐れながら....私に、劉協様の真名を呼ぶことをお許しください!」

劉協「もちろんです!この国を救うため、力を貸してください。月」

董卓「ありがとうございます。白湯さま」

董卓はもう迷いのない顔を浮かべており、賈詡はそれを見て察して彼女の言葉を待つ。

 

董卓「詠ちゃん。私、決めたよ」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

その数日....。宮中の中庭にて寛ぐ2人の女性...一人はこの漢王朝の帝である霊帝、後漢王朝の第12代皇帝で、本名は劉宏――そして劉協の実の姉である。

 

霊帝「ふぁあ....黄、今日はいい天気ね」

趙忠「はい、空丹様」

気だるげに天気の心地よさに堪能する霊帝に肯定する女性は趙忠、人民に重い賦役・租税を課し、官位さえも売り出して金や宝石などに費やし、民草に負担を強いて得た官位「中常侍」を使って皇帝に取り入った宦官「十常侍」の一人。

 

その二人はこの大陸で起きている出来事など知ったことかと寛ぐ中、そこへ焦るように何進がやってきた。

 

何進「空丹様!一大事にございます!!」

霊帝「どうしたの?傾。騒がしいようだけど」

何進「董卓の奴め!とうとう本性を現しました!反乱です!兵を挙げ、この宮中にまで迫っております!」

荒れる息を整える何進から告げられた報告に、霊帝はどういうことかサッパリ理解していないが付き人の趙忠はそうではなく真っ青な顔で驚愕する。

だがことは急がねばならないと考え、霊帝を安全な場所に避難させるよう移動させる。

その間に何進は兵を集めて董卓を迎え撃とうとする。

 

何進「董卓め!許さんぞ!」

 

その董卓本人が兵や、張遼、賈詡、呂布、陳宮、更に張遼や呂布と同じ董卓配下の武将華雄を引き連れて現れる。

その冷静な表情の董卓を見て苛立ちを募り、何進は激怒する。

 

何進「董卓!貴様ここをどこと心得ている!!何をしているのか、分かっているのだろうな!!」

 

董卓「分かっているからこうしているのです」

彼女は天子を刃向かっているのではなく、天子を利用して私欲に貪る賊を誅滅しに来た何進に豪語する。

その言葉に何進は身勝手にも更に怒りを露にした。

 

何進「天に唾する西涼の田舎者風情が!!者共!逆賊董卓に天誅を食らわしてやれぇ!!」

 

董卓「正当な天子様に仕える勇敢な将兵よ!天子様を蔑ろにする何進に鉄槌を!!」

 

董卓と何進....2人の号令によって両者が率いる将兵らは激突したが――

 

呂布「邪魔」

 

張遼「どぉらぁあああ!!失せろやぁ!!」

 

華雄「身の程知らずがっ!!我が武によって朽ち果てろ!」

 

だが練度や質の違いすぎる為、早々に何進率いる将兵全て撃破されてしまった。

その結果、何進と何皇后の行方は知れずとなり、霊帝と趙忠は囚われることとなった。

そして霊帝である劉宏は帝から即日退位され、彼女の実妹である劉協が新たに献帝として即位することと相成った。

 

 

 

 



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第二十二章 各地での反応

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



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幽州・薊

 

あの洛陽での騒動から時が経ち、ここ幽州にある薊にて桃香と家康、それに公孫瓚が城門前で集まっていた。

 

桃香「風鈴先生....大丈夫かな」

公孫瓚「予定ではもうすぐ着くはずなんだけどな」

 

家康「....」

 

洛陽では帝が霊帝から献帝に代わり、これまで何進がいた地位に董卓が収まった。

それだけでも驚愕の急報であったが、それに留まらず、桃香と公孫瓚の恩師であり漢王朝に仕えているはずの朝廷の臣下であるはずの盧植が洛陽より追放されることとなった。

盧植は洛陽での簒奪騒ぎを聞きつけ、急ぎ帰還し事の真相を董卓に問い詰めるも「朝廷の為、陛下の為、この大陸の民の為にやった」っと聞かされ耳を疑った。

董卓から新たに据えた劉協を共に支えようと誘われるが、盧植はこれを拒否。

結果追放という形でこの幽州まで流されるという通達が、桃香と公孫瓚にもやってきたのだ。

 

家康「....やはり本当なのか?」

公孫瓚「正直、私も書状を見た時、眼を疑ったよ。けど皇甫嵩殿の印章は本物だったし....だからこうやって、桃香も呼んだんだ」

公孫瓚は桃香に謝罪を述べる。本当であれば平原で迎えられれば良かったと言い、しかし結果は薊までの護送って扱いだったのだ。

恩師のただならぬ状況に公孫瓚も焦ったのだろう。だが桃香は首を左右に振り、自分も公孫瓚と同じだと言う。

 

桃香「ううん、雛里ちゃんや愛紗ちゃんが、行ってきていいって言ってくれたから」

家康「朝廷は最近とんでもない事になってるみたいだしな」

 

家康の言葉に公孫瓚は頷く。彼女の話では朝廷の何処を歩いても血の匂いがするとか、挨拶に行った州牧だか太守だかが追い返されたなんと噂が、悪く流れていると聞いてるらしい。

 

公孫瓚「正直今の朝廷の状況がハッキリと流れてこないんだ」

彼女の話に朱里も眼を伏せて申し訳なさそうに喋る。

 

朱里「情報を集めているのですが、とにかく錯綜していて、真実の精査が困難を極めています」

稟「何進将軍や何皇后、十常侍を含む高級官の多くが粛清されたことと、それを指揮したのが董卓殿というだけです」

朱里「あとは霊帝の代わりに献帝が即位したとききました」

公孫瓚「その献帝が、帝位を簒奪するために董卓をそそのかした、なんて話もあったぞ」

朱里と稟の話に補足するように公孫瓚が頷きながら話す。更に噂では董卓は匈奴の先手だとか、既に真の董卓は亡く、もののけがすり替わったなどと眉唾物の噂まで流れている始末。

 

公孫瓚「わけがわからんな...」

稟「それだけ都が混乱の極みなのでしょう。皇甫嵩殿の話では董卓殿は、誠実で優しい方だとか、まぁ事実は定かではないですが...」

桃香「董卓さんの、その....粛清、したのって、そういう人たちなんじゃないかな?」

桃香は恐る恐る不安げに口ずさむ。その彼女に家康は言う。

 

家康「そうしたくなる気持ちは分かるが、あまりにも性急すぎるとワシは思う。これではただ悪戯に混乱を続けるだけだ」

公孫瓚「それに風鈴先生は賄賂を送ったりしない、受け取ったりする人じゃない。追放される理由がないじゃないか」

桃香「そうだよね....」

 

その時だった。彼らの視界にある一団が映り、朱里がそれを見ながら知らせる。

 

朱里「あ、見えてきましたよ。あの隊列では?」

公孫瓚「おっと、お喋りはここまでだな。丁重にお迎えしよう」

そして盧植を乗せた馬車を護送する一団が桃香たちの前で止まり、その馬車より盧植が降りてきた。

久しぶりの恩師との再会に桃香は嬉しさが生じ、彼女に抱きつく。教え子との再会に笑みを浮かべる盧植であったが、しかし公孫瓚が用意した部屋にて真剣な顔で都で起きた出来事を話してくれた。

 

桃香「じゃあ.....董卓さんの噂は、みんな本当なんですか?」

盧植「ええ。.....少なくとも、都に粛清の嵐が吹き荒れたのは事実。十常侍は壊滅、何進大将軍は行方不明よ」

粛清されたのはどれも悪評や悪行のある人間ばかり。だが余りの苛烈すぎて誰もが董卓の顔色を伺い、萎縮してしまっているらしい。

 

公孫瓚「先生がいたのに、どうして....?」

盧植「私と楼杏さんは、地方の反乱の平定に出ていたのよ。その間に何があったかは分からないけれど....洛陽に戻って月ちゃんの真意を質そうとしたら、こうなってしまって....」

家康「皇甫嵩殿は?」

盧植「楼杏さんは朝廷に残ったわ。新参者の私と違って、古い家柄だしね。

おかげでこうして色々取り計らってもらえたけど....」

彼女にも辛い目を見させてしまったと、眼を伏せて後悔が混じった顔を浮かべてしまう盧植。

元の同僚を追放する手続きをするなんて、皇甫嵩はどんな気持ちだったのだろうか。

きっと計り知れない悔しさがあったのだろう。

家康たちはそれ以上何もいう事が出来ず、顔を見合わせるしかなかった。

 

盧植「こうなるかもしれないっていうのは分かっていたのに。月ちゃんたちの代わりに、私が都に残っていれば....」

そうすればこんな状況にはならなかったのではと悔しさが募り、握り拳に力が籠る。

 

家康「しかし...盧植殿」

盧植「貴方たちも、風鈴で構わないわよ。白蓮ちゃんや桃香ちゃんを支えてくれている子たちでしょう?ずっと会いたいと思っていたの」

家康とは初めての挨拶となる。しかしこんな形でなるとは皮肉であろう。

 

家康「風鈴殿の追放が幽州だったのは、どうしてなのだろうか。桃香たちが教え子なのは董卓殿もよく知っているはずでは?」

盧植→風鈴「そうね。月ちゃんが何も言わなかったのは月ちゃんなりの最後の温情なのか....」

稟「我々を試しているか、ですか...」

公孫瓚「ともかく、先生の預かりは正式に幽州ってことになってるんだ。先生にも気軽に会えるから、桃香も会いに来てくれていいからな」

桃香「うん。ありがとう、白蓮ちゃん」

風鈴「私からもありがとうね?白蓮ちゃん」

 

場の空気を改めるように努めて振る舞う公孫瓚に、風鈴や桃香も漸く穏やかな笑みを浮かべる。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

家康「....桃香」

朱里「桃香さま...」

 

彼らは廊下を歩く中で何処か心此処に非ずな桃香に呼びかける。

 

桃香「あ.....ごめんね、なに?」

家康「いやなに...ぼうっとしているから風鈴殿のことを考えてるのかと思ってな」

風鈴と別れた後、薊の城の廊下を歩きながら桃香は家康たちの声など届いてない感じであった。

桃香は眼を伏せて悲しげに呟く。

 

桃香「うん....先生のことも考えてたけど、そうじゃないの」

家康「....董卓殿のことか?」

彼女は家康の問いに頷く。これまでの手紙の内容では、青州の事も気遣ってくれる人間からしたら信じられないと言うものらしい。

家康としては史実の董卓が暴虐の限りを尽くす悪漢だといのを知っているが、この世界での董卓は皇甫嵩から聞いた話や以前貰った手紙の内容を読んで「これがあの董卓なのか?」と思えるぐらい、気遣いも細やかで良き人だったと印象に残っていた。

 

桃香「会ったことはないけど、朝廷にもこういう考えの人がいるんだって....。何となくご主人様や愛紗ちゃんたちみたいな、仲間みたいな気がしてたから」

身分は凄く上の人だから、失礼なんだけどねっと苦笑交じりに言う。しかしだからこそ、そんな性急で非情な手段に訴えるなど、考えにくかった。

 

朱里「ですが....これからまた、大きな動きがあると思います」

桃香「動き?」

稟「そうですね。風鈴殿の話、我らが集めた情報...これらを総合すると、今回の粛清、あまりにも動きが性急すぎます」

家康「つまり、大きな反発がある、ということだな?」

稟「反発程度で済めばよいのですが....」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

冀州

 

文醜「全体止まれー!」

顔良「麗羽さま、いかがでしょうか?」

 

ここ冀州にてとある軍隊が大規模訓練を行っていた。それを指揮しているのは2人の少女、彼女らは文醜と顔良....冀州一帯を納める袁家当主・袁紹の配下の将である。

そしてその顔良に呼びかけられたのは、金髪縦ロールのお嬢様風の少女・彼女こそ袁家の当主・袁紹、字名は本初。4代にわたって三公を輩出した名門汝南袁氏の出身である。

その袁紹は目の前で増強した軍勢を見て満足したような顔を浮かべる。

 

袁紹「えぇ!えぇ!とても素晴らしいですわ。これで我が袁家の冀州軍も、ここまで強くなりましたわ!よく頑張ってくださいましたわ、2人とも」

顔良「この半年、大分無理しちゃいましたからね。軍備増強で税金もさらに上げるしかありませんでしたから」

っと苦笑いで苦労したと顔をする顔良。しかし袁紹はそんなの屁でもないと高笑いをしながらに言う。

 

袁紹「全てはあの、董卓に復讐するためですわ。ひいてはそれが空丹様のため、更には漢王朝のためですわ!そんなの当たり前ですわ!」

文醜「で、呂布に勝つんですね!」

顔良「か、勝てるんですかぁ?」

袁紹「あのような卑怯な戦い方をしてきた連中、正面からなら負けませんわ!」

呂布がどうとか、復讐がどうとか言う話には理由がある。それは董卓が行った何進を含めた高級官僚の粛清のあの日――あの時、袁紹は何進に呼ばれて洛陽に兵を率いて駐屯していた。

しかし董卓の粛清が開始されたと同時に、彼女が放った刺客として呂布が袁紹の軍に奇襲を仕掛け、単身で袁軍の兵に打撃を与えた。

何とかして冀州に逃げ帰った袁紹は、董卓や呂布に雪辱を晴らす為にこうして軍を再編、増強を行っていた。

 

袁紹「それに、対抗する策はちゃんと考えておりますもの。おーほっほっほ!おーほっほっほ!」

???「麗羽さま!大変です!」

っとそこへ眼鏡を掛けた少女が現れる、彼女は田豊、袁紹軍筆頭軍師である。その彼女は息を切らしながら何かを知らせにやってきた。

 

袁紹「なんですの?真直さん。人が半年ぶりに良い気分に浸っておりましたのに」

田豊「はぁはぁはぁ!....それどころじゃ、なくって、ですね!」

顔良「真直ちゃん大丈夫?」

文醜「水飲むかー?」

気遣う文醜と顔良、その二人に「ありがとう」と礼を述べた後、袁紹に可及的速やかに知らせるべき事を告げる。

 

田豊「都に送っていた間者から報告がありまして....董卓が、相国になったそうです」

袁紹「な....っ!?」

田豊「で、都を洛陽から長安に移すとか」

袁紹「な、な、な.....なななななな......!」

 

田豊からの報告に袁紹は先ほどの上機嫌から一変、驚愕して思うように言葉がでない。そんな彼女とは違い文醜と顔良は何のことかサッパリだった。

 

文醜「なぁなぁ、都を移すのが大騒ぎなのはわかるけど、しょーこくってなんだ?都にそんな官位あったか?」

顔良「さぁ、聞いたことはないけど....」

田豊「仕方ないわよ。もう随分長く空席が続いていた官位だもの」

相国とは、太政大臣の唐名。 中国の漢代における廷臣の最高職であり、 現代では元首が政務を総攬する国(大統領制の国や君主が任意に政府要職者を任命できる国)の首相に類似する位である。

袁紹はそんな文醜と顔良を放って一人苛立ち、とうとう怒りだした。

 

袁紹「許せませんわ!!あの逆賊!!真直さん!!例の檄文は用意出来てますわよね!すぐに大陸中の諸侯に早馬を出しなさい!!大至急ですわよ!!」

田豊「は、はい!!」

 

袁紹「待っていなさい....逆賊はこのわたくし、袁本初が華麗に雄々しく討伐してみせますわ!!」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

苑州・陳留

 

ここ苑州・陳留の城にある玉座の間では曹操が軍議にて、軍師である荀彧から袁紹から届いた檄文を読み報告していた。

 

曹操「.....なるほど。董仲頴が相国に任じられ、しかも遷都まで言い出したら....それは麗羽も荒れるでしょうね」

荀彧「あれは事あるごとに三公を輩出している名家だと、豪語していますから」

そして袁紹が自分よりも高い地位になった董卓に対して、嫉妬で怒っているのだと嘲笑いながらいい気味だと荀彧は言う。

この荀彧、嘗ては袁紹の下で軍師を務めていたのだが、余りに人の話を聞かず自己中心的に事を進める袁紹に嫌気が差してこの曹操の配下となったのだ。

 

曹操「そんなことより、我らはこの董卓討伐軍を興すべしという檄文にたいして、どう振る舞うべきかしら?」

その曹操に手を上げる者が――その者は美しく魅惑的なスタイルの女性、彼女は陳珪、字名は漢瑜。

元肺国の相だったが、黄巾党の侵攻で落城寸前だったところを曹操に救われ、その実力を認め、その庇護を得る為に彼女に国をあけ渡した。

常に笑顔を絶やさないが、腹の底では何を考えているか読みにくい為、曹操に下った後も「女狐」と呼ばれている。

 

陳珪「参加すべきかと....袁紹殿は小物ですが、こと奸智と政治力に関しては中々のもの」

更には集めた諸侯の前で欠席した曹操を悪し様に言うのは間違いないと言う。それを聞いて曹操は「ああ...間違いないわね」と嘲笑を浮かべ、彼女の頭の中でそんなことを小物っぽく偉そうに口ずさむ袁紹をイメージする。

 

陳珪「しかし、何よりもこの戦い、大陸中の諸侯や勇者が一堂に会する戦となるでしょう。今の弱体化した官軍では恐らく袁紹たちには勝てません」

袁紹の軍はこの大陸では数多く強力であり、今の曹操の勢力では止められない。ならばそれを利用して曹操の立場と力を示す場として使うのが最良と意見する。

 

荀彧「そのために袁紹に利用されようと言うの!燈!」

陳珪「それはお互いさまでしょ。要は最後に、払った額よりこちらの取り分が多ければいいのだし。

.....策の見せ所よ、軍師殿」

荀彧「....むぅ」

 

上手く言いくるめられる荀彧、それを見て曹操は笑いを浮かべる。

 

曹操「ふふふ、桂花、貴女の負けよ......政宗」

 

政宗「あん?」

曹操はずっと彼女らの話を聞き流して壁に凭れ、両腕を組んでいた政宗に声をかける。

 

曹操「激しい戦になるわ、期待してるわよ?」

政宗「Alright まぁお前の天下を見るためだ...任せろ」

政宗の言葉に曹操は嬉々として笑みを浮かべて「えぇ、よろしくね」っと、独眼竜・伊達政宗に信頼の思いを込めて言葉をかけるのであった。

そんな中、政宗は内心思う。

 

政宗「(家康の奴は当然来るだろうな....あとは、“あの男”も、恐らく)」

 

そして袁紹より放たれた檄文は大陸中に回り、董卓討つべし!という声が上がりつつあった。

 



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第二十三章 参加する理由

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。

今回あるBASARA武将が新たに出てきます。


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青州・平原

 

その夜、家康は城壁に立っていた。その背後には忠勝が主の守るかのごとく控えている。

 

家康「....」

彼は一人、董卓のことを考えていた。力による粛清――それは家康が嘗て拒絶し、嫌悪したもの。

ただ縛り付け、支配し恐怖させる力は彼にとって忌み嫌う。それはあってはならないのだ、決して許されるものではない。

その時だった、家康の脳裏にある事を思い出す。

 

 

わが見せる未来、貴様程度に見せることは出来ぬ!豊臣秀吉、我が力が、時代を変える!家康よ!貴様もこの力を受け入れよ!!

 

 

秀吉が創造する世界こそ、この国のあるべき姿なんだよ家康君。君は結局、秀吉の庇護の下、力を受け入れたのだから

 

 

家康「.....」

嘗ての記憶――それを思い出し、いつの間にか握られた拳に力が籠る。確かに家康は“あの時”、己の意思で力を受け入れた。

しかしその結果、多くの流血が流れ途方もない悲しみだけが広がってしまった。自分があの時――豊臣に身を置いてた時にそれを酷く痛感した。

何かを為すために性急に進めれば、ただ徒に血が流れるだけなのだと。

 

家康「....董卓殿も、そうなる、か」

忠勝「....」

そう口ずさむ家康。その背後から声が――

 

桃香「あ....ご主人様。それに忠勝さんも」

そこへ桃香、鈴々、愛紗がやってきた。振り向く家康は三人が揃って見るのは久しぶりだなと思った。

 

家康「三人でいるのは久しぶりに見るな」

忠勝「....!」

愛紗「そうですね。鈴々も長いこと、青州の賊討伐に出ていましたから」

っと微笑みながらに愛紗が答える。暫くの間、三人ともそれぞれやるべき事があって、こうして集うなんて暇はなかったぐらいだ。

だからか桃香や鈴々も愛紗と同じ思いと、笑みを浮かべていた。

 

鈴々「ずーっと星と一緒だったから、肩がこったのだ」

愛紗「そうだな。あの口ぶりが移らんだけマシだろ」

鈴々が疲れたとばかりに肩を回してみせ、愛紗は眼を閉じてそれに同意する。そんな二人の姉妹に苦笑いする桃香。

 

桃香「あはは....。でも、趙雲さんと仲良くなったんだね」

そう。鈴々と愛紗は既に趙雲より星という真名を預かったのだ。賊討伐を長いこと共に明け暮れたお陰か、互いに背中を預けて任せられると認識したが故になった。

家康は「なるほど、真名とはこういう判断の仕方もあるのか」と納得し、理解した。

 

鈴々「星、美味しいものの見つけ方がすごかったのだ。いっつもよくわからないことばっかり言ってるだけじゃなかったのだ」

家康「そうか。仲が良くなるのはいいことだ」

にこやかに言う鈴々の頭を撫でてやると、彼女は嬉しそうに自分の頭に乗せられる家康の手を掴む。

だが家康はある事に気付く。それは....三人が久しぶりに揃ってた割には、振り向いた際に最初それ程楽しそうではなかったのだ。

家康は桃香にどうかしたのか?と聞いてみることに、すると彼女は悲しげに顔を顰めてその理由を話す。

 

桃香「あの....ね?ご主人様。お話、聞いたでしょ?」

家康「.....連合に加わるかどうか、か」

桃香は「うん」っと呟き頷く。その日、視察より戻った家康が聞いたのは冀州州牧・袁紹が起こす董卓討伐の軍....謂わば反董卓連合とでも言うべき軍に、加わるかどうかの連絡が来たのだ。

勿論平原の相である桃香に、他州の州牧から直接話があったわけじゃない。

公孫瓚宛に誘いが来て、その公孫瓚から「良ければ手伝ってほしい」と寄せられた。

 

桃香「白蓮ちゃんは、平原は行軍の通り道だから、合流するかどうかは、ここを通る時に答えてくれればいいって言ってくれたんだけど....」

家康「公孫瓚は参加する気なんだな。桃香としては....どうしたいんだ?」

桃香「わたしは.....」

桃香は悩むように眼を伏せてしまう。とは言え、この三人が公孫瓚の動きも分かっているのだから、参加するかどうかで揉めてるはずがないと理解している。

問題になっているのは、恐らく更に深い理由。

 

家康「遠慮することはない。ワシとて、愛紗や鈴々と一緒に桃園で杯を交わした仲だ」

家康は桃香が一体何を考えているのか、それに気づいていた。彼女は董卓を討伐する気などない、寧ろ――

 

家康「董卓殿を助けたいのだろ?」

桃香「気づいてたんだ....」

桃香たち三人はこれに驚いた。しかし家康からしたら既に一緒にいる時間が長くなると、桃香が何を考えているのか大体分かっている。

彼女は董卓を救う気でいるのだと。

 

愛紗「董卓は青州の平定に支援してくれていたし、皇甫嵩殿や風鈴先生も、本来は誠実で優しい子なのだとおっしゃっています」

それ故に愛紗も連合参加に賛成ではあるが、彼女の命を奪うのではないと告げる。それに桃香も強く頷き、自分が何を成したいのかを家康に告げた。

 

桃香「うん。だから何とかして、私たちで一番早く捕まえて....保護して、処刑されちゃうようなことだけはないようにしてあげたいの」

家康「そうか。....よし!ならば!ワシも賛成だ!もし、本当に悪党なのであれば手元で監視しておけば、悪事は働けないだろう」

愛紗「....そういうことです」

家康の言葉に愛紗は嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

家康「険しいことになるな、力を貸してくれるな?忠勝」

忠勝「....!!」

 

「当然です家康様!」っと語るかのようにけたたましく機械音を鳴らして、ガッツポーズをする忠勝。

だが董卓を助ける目的で彼女を討伐する軍に参加するなら、その時点で家康たちは裏切り者の烙印を押され、公孫瓚も巻き込むことになる。

どのタイミングで切り出すか、そう考えたら、公孫瓚たちが平原に来るギリギリまで考える時間があるのはありがたい。

そんな話があってから、しばらくして平原にやってきたのは、董卓討伐の準備を整えた公孫瓚軍だったのだが――

 

 

雷々と電々「「桃香ちゃーん!」」

桃香「え!?雷々ちゃんと電々ちゃん!?」

公孫瓚が率いてきたのは、幽州の軍だけじゃなかった。そこには徐州へと旅立った雷々と電々が兵士を引き連れてやってきたのだ。

 

家康「二人とも元気そうだな」

元親「おー!雷々と電々!元気だったか?」

忠勝「....!」

 

家康たちの姿を目にすると雷々と電々は嬉しそうに駆け寄る。

 

雷々「ご主人様!アニキ!久しぶりー!」

電々「忠勝さんも元気だったぁー?」

家康「まさか徐州からの名代は2人なのか?」

雷々たちは家康の問いに快活に「うん!」答える。彼女らは徐州州牧・陶謙のお願いにより名代として馳せ参じたのだ。

しかし徐州だけでは出せる兵士の数が限られている為、公孫瓚と共に行くことになったのだ。

公孫瓚も、指揮や判断はこちらに従う形ということで引き受けたらしい。幽州の軍も兵に余裕があるわけじゃない為にありがたいと感じている。

 

元親「しっかし驚いたぜ。でも背は変わんねぇな(笑)」

雷々「あー!ひっどぉーいアニキぃ!」

電々「そうだそうだ!ブゥ~!」

元親の揶揄いに頬を膨らます2人、端から見れば兄に弄られる妹と言った様子である。そんな中、愛紗が2人に尋ねた。

 

愛紗「だが、徐州軍の将は雷々と電々だけなのか?」

電々「ううん、美花ちゃんもいるよ?」

家康「それは誰かの真名か?」

雷々「うん。すぐに来ると思うけど.....あ、きたきた!美花ちゃん、こっちこっちー!」

雷々の呼びかけに応じて家康たちの前にやってきたのは、一人のメイド姿の女性がやってきた。胸元がセクシーに開いており、女の色香というもの醸し出している。

 

孫乾「お初にお目にかかります。徐州から参りました、孫乾と申します。主に、徐州軍の実務を取り仕切っております。

皆様、お気軽に、孫乾とお呼び捨てくださいませ」

桃香「あ....はい。よろしくお願いします。劉玄徳です」

孫乾「貴女が劉玄徳さまなのですね」

桃香「あ、はい」

孫乾「そして貴方様が、徳川家康様」

家康「あ、ああ...しかし何故?ワシはまだ名乗っていないはずだが...」

確かに彼の言う通り、家康は自分の名を孫乾に告げてはいない。にも関わらず、彼女はさも知っているとばかりに笑みを浮かべる。

家康は雷々と電々に問い掛ける。

 

家康「2人が先にワシのことを教えてくれたのか?」

しかし2人は首を左右に振り、答える。

 

雷々「ううん、美花ちゃんや陶謙さまも私たちが徐州にくる前から知ってたみたい」

電々「うんうん」

家康「どういうことだ?」

疑問を抱く家康、それに元親や忠勝も同じくであったが、孫乾はその種明かしをする。

 

 

孫乾「それは.....小太郎さま」

 

家康「ん?!」

 

元親「こ、こいつは!!」

 

忠勝「.....!?」

 

突如一陣の大きな風が吹いた。思わぬ強風に桃香や雷々、電々はスカートを抑え、愛紗や鈴々、公孫瓚は風によって舞い散る砂誇りが目に入らぬよう眼を細める。

すると風が止み、いつの間にか孫乾の隣に一人の男が立っていた。その姿を見て、家康や忠勝、元親は驚愕する。

 

元親「お、おい!アイツは!!」

忠勝「....!?」

 

家康「お、お前は!?」

 

その者、白黒の忍び衣装、頭部と眼を隠した鉢がね、そこから見える赤い後ろ髪、背中には左右両方収納されている対刀、その人物を見て家康は驚いた。

まさかあの者もいるとは、っと...。

 

 

 

家康「伝説の忍び....風魔小太郎...!」

 

小太郎「......」

 

その者、関東地方を代表する武将北条家に仕える傭兵であり、多くの忍者から「伝説の忍び」と謳われる間違いなく最強の戦忍。

彼の名は、風魔小太郎....。その彼が今、孫乾の隣に風のように現れ、両腕を組んで無言に微動だにせず立っていた。

 

 



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第二十四章 連合参加

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。



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家康たちの前に現れた風魔小太郎、その姿に家康、元親は驚いた。

 

元親「あいつは北条の忍び...風魔小太郎じゃねぇか」

家康「まさかお主まで居るとは...」

 

小太郎「.....」

2人の言葉に対し、小太郎は一切のリアクションをすることはなかった。それどころか彼自身、一切一言も喋る気配すらない。

ただ無言に腕を組んで微動だにせず立っているのみである。

その小太郎を見て、桃香と愛紗が彼が何者なのかと、知っていると思われる家康に問い掛ける。

 

桃香「あ、あの...ご主人様。あの人、誰なの?」

愛紗「お知り合い、なのですか?」

 

家康「あの者は、風魔小太郎。ワシらが住む日ノ本では伝説の忍びと言われている強者だ」

忍びと言われて桃香たちは、何のことかと不思議がる。なので元親から「こっちで言えば間者、刺客みたいなもんだ」と教えられると、桃香は「え!?刺客!?」っと驚き、愛紗は思わず小太郎に偃月刀を向けて、鋭く睨む。

 

愛紗「刺客!!どこの者だ!!桃香さまか!!それともご主人様が狙いか!!答えろ!!」

 

小太郎「......」

だが対する小太郎は一切動じることなどなく、ただ自身に刃を向ける愛紗を顔を向けるだけである。

その全く相手にされていない小太郎の態度に、愛紗は憤る。

 

愛紗「貴様ぁ!!」

桃香「あ、愛紗ちゃん!!だ、ダメ!!」

家康「よせ!!愛紗!!」

桃香と家康の制止は間に合わず、愛紗の偃月刀の刃が小太郎に振り下ろされる――っが、彼女の斬撃は当たる直前に小太郎が姿が一瞬で消え、彼が消えた場所には羽だけが舞い落ちる。

突如消えたことに動揺し、周囲を見渡し「どこだ!!何処にいる!!」っと愛紗は怒号を上げる。

だがすぐに彼女の首筋に冷たく硬いモノの感触がした。

 

愛紗「っ!?」

 

小太郎「.....」

 

公孫瓚「か、関羽の後ろからいきなり!?」

愛紗の背後より小太郎が対刀“零”の刃先を少し程度に充てる。桃香たちは何が何のか分からず、どうなっているのかも理解できないが、家康が小太郎の肩に軽く叩く。

 

家康「風魔――こちらの身内が無礼をした、すまない。だから矛を納めてくれないか?」

小太郎「.....」

家康からお願いされ、小太郎は素直に対刀を背中の鞘に納める。その謝罪を述べる家康に愛紗が食ってかかる。

 

愛紗「ご主人様!!なぜ謝るのですか!?その者は刺客なのですよ!!」

小太郎が刺客、または間者と聞かされれば黙っていることなど出来ないのが、長年桃香を守り共にしてきた愛紗である。

しかし家康に同調するように元親も待ったをかける。

 

元親「悪いがな、お前じゃあ風魔に勝てねぇぞ。それにこいつは恐らく味方っぽいしな――そうだろ?孫乾さんよ」

っと元親が問いかけると、桃香たちは「え!?」驚愕しながらも孫乾に振り向くと孫乾は笑みを浮かべながら、小太郎の傍まで近寄る。

 

孫乾「はい。小太郎さまは、現在我が主陶謙様の下に身を置いております」

家康「そうだったのか」

忠勝「....!」

孫乾「ええ。ですので、小太郎さまは敵ではありません」

その言葉を口にする瞬間、孫乾の眼が鋭くそして冷たく彼に敵意を向けた愛紗を睨む。

まるで彼に敵対する者は絶対に許さないとばかりに。

愛紗はバツが悪そうにして眼を伏せてしまい、桃香が彼女の肩に手を乗せながら心配

そうに見つめる。

そして居心地が悪そうに顔を俯かせる愛紗ではあるが、彼女は渋々と小太郎に謝罪を述べる。

 

愛紗「す、すまなかった」

孫乾「分かってくださればいいのです」

小太郎「....」

一方の小太郎はやはり喋らない。この空気を変えるため、公孫瓚が人払いをお願いする。

 

公孫瓚「すまないが、桃香。ちょっと人払いできるか?大事な話をしたいんだ」

桃香「え....あ、うん。だったら、わたしのお部屋でいい?わたしも、話したい事があって.....」

桃香の部屋に通されたのは、家康、元親、稟、朱里、公孫瓚、そして雷々だけだった。

 

家康「ん?電々は?孫乾殿は?」

元親「風魔もいねぇな」

公孫瓚「ああ.....ちょっとな。少し遅れてくる」

人払いという時点で面倒な話なのは家康たちは理解していたが、公孫瓚があそこまで言いにくそうにしてるのは珍しい。

しかし面倒事を話すのは何も公孫瓚だけではない。

 

桃香「それで、白蓮ちゃんのお話って?」

公孫瓚「それなんだけどな。私じゃなくて....」

すると扉が開き、入ってきたのは孫乾と電々、そして桃香と公孫瓚の恩師である盧植...風鈴であった。

 

風鈴「....桃香ちゃん」

桃香「先生!?」

孫乾たちに連れて来られた風鈴、彼女は神妙な顔をしている。

 

家康「公孫瓚、これは....」

家康が彼女に問い掛けると、風鈴が申し訳なさそうに謝罪してくる。

 

風鈴「.....ごめんなさい。でも、どうしても月ちゃんの気持ちが知りたくて.....白蓮ちゃんに無理を言って、ここまで同行させてもらったの」

公孫瓚「問題なのは分かっているよ。でも.....先生に平伏までされたら、嫌だなんて言えないだろ。董卓の件は、私もずっと疑問に思ってたしな」

彼女の話を聞いて「これはもしや...」と思った家康と桃香は、彼女に問いかけると公孫瓚は頷く。

 

公孫瓚「ああ。わたしたちは、連合には参加するが.....董卓討伐をするんじゃなく、助ける為に動く。少なくとも、断ずるのはその本心を確かめてからだ」

稟「それは、徐州の方も承知なのですか?」

此処に本来来てはならない風鈴を、孫乾や雷々たちと共に連れてきたということは、承知の上ではあるのであろう。

 

雷々「雷々たちも、董卓さんを助けたいもん」

電々「そうそう。徐州の賊の平定も、董卓さんがたくさん応援をだしてくれたんだよ」

孫乾「はい。仲頴殿は徐州にとっても大恩ある御方です。

この件も踏まえた上で、全ての判断は公孫瓚さまにお預けしております」

っと孫乾も董卓は恩人であり、助けたいと思っているようだ。公孫瓚も事が事ではあるが、反董卓連合の諸侯らを皆出し抜こうと考えている。

一歩間違えれば、連合全体を敵に回す羽目になる。

 

公孫瓚「徐州の連中は、聞いてなかったで通す建前にはなってるけど、桃香はそれも難しいだろうからな」

家康「....そうか」

それはそうだ。桃香と公孫瓚、そして風鈴の三人の関係を少しでも調べれば、2人の企みに桃香が無関係だなんて思わないだろう。

 

朱里「だから、返答は軍を平原にいれてからで良いと?」

公孫瓚「どこに間者がいるかもわかんないし、事前に妙な動きを察知されるわけにはいかないしな。

出立は明日の朝になるから、それまでに答えてくれればいい」

桃香「.....」

公孫瓚「で、桃香の話は何なんだ?出来うる限りの無茶は聞かせてもらうつもりだ」

公孫瓚の話を聞いた後、桃香は笑みを浮かべる。

 

桃香「ううん、もう必要ないよ」

公孫瓚「?」

桃香「わたしたちも、同じことを白蓮ちゃんにお願いしたかったんだ。

みんなに迷惑をかけるのはわかってるけど……わたしたちも、董卓さんがどうしてこんな事をしたのか知りたかったの」

桃香も自分たちと同じ考えだと知り、驚きはせず公孫瓚は静かに笑みを浮かべただ「そうか、助かる。桃香」っと口ずさむ。

風鈴「ありがとう、桃香ちゃん」

その結果、幽州と徐州、それと実質勢力下の青州の連合軍は、同じ計画を抱えた同盟となって、平原を出発する。

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

家康「そろそろだな」

家康たちは順調に街道を進んで司隷に入り、反董卓連合の集合場所まであとわずかの所まで迫っていた。

その道中、桃香は孫乾に問い掛ける。

 

桃香「あの、孫乾さん」

孫乾「はい、何でしょうか」

桃香「あの....風魔さんは?」

桃香はずっと行軍中である軍勢の中に、風魔小太郎が居ないことに気になった。これに孫乾は「嗚呼、小太郎さまでしたら」っと言った直後、彼女の隣に小太郎が風のように出現する。

 

公孫瓚「いやほんと、心臓に悪いな」

雷々「ビューン!ってくるよね!」

電々「うんうん、初めて会った時なんかも驚いたもん」

肝っ玉が冷えたと溜息を吐く公孫瓚とは違い、電々と雷々は小太郎に対して「凄い!」だとか、「カッコイイ」とか彼に称賛するかのように、はしゃいで騒ぐ。

その彼に愛紗は未だ警戒するように睨んでいる。そんな彼女に家康が苦笑いで諭す。

 

家康「ははは...愛紗。風魔は、忍びという立場上仕方ないんだ....分かってやってくれ」

愛紗「しかし...」

しかし義に厚い彼女からすると、忍びが刺客と同然の存在だと聞かせては怪しんでしまうのは仕方ないのであろう。

 

元親「けどよぉ家康。あの風魔が居るなんざ、こりゃあ心強いな」

稟「それほどなのですか?」

家康「ああ。忍びというのは暗殺だけじゃない、間者や密偵なのも長けている」

朱里「つまり...諜報には誰よりもずば抜けているのですね?」

雛里「であれば、それは私たちにとっても利になりますね」

彼らが小太郎に対し、批判的ではないのに愛紗は一人拗ねるように顔を俯かせてしまう。その彼女に桃香が言う。

 

桃香「愛紗ちゃん。風魔さんは孫乾さんに信頼されてんだよ、だからきっと信じられるよ」

愛紗「はい....」

神妙な顔で返事する愛紗。その間に彼らは連合軍の集結場所にたどり着いたのだった....。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

袁紹「まぁまぁ、ようこそおいでくださいましたわ」

 

公孫瓚「....」

桃香「.....」

愛紗「.....」

連合軍の使いと名乗って現れたやたらゴージャスな人物を前に、誰もが言葉を失っていた。

使いというより、本人登場である。

 

袁紹「わたくしがこの連合軍の主催を務めさせていただきます、袁本初と申します。

こちらが、わが軍の筆頭を務める文醜と顔良」

顔良「よろしくお願いします」

文醜「よろしくな!」

 

笑みを浮かべ家康たちをグイグイと迫るように歓迎する袁紹ら。これにタジタジとなるが、袁紹から主要な人物で集まって全体の顔合わせするらしいのでその案内をしてもらうことに。

顔合わせには家康と公孫瓚、稟と朱里、桃香と雷々の四人で行くことになり、他の者たちは陣地の構築に向かってもらうことになった。

無数の陣地や天幕が並ぶ荒野の中央――周囲の天幕の何倍もある巨大な天幕は、その偉容だけで十分なランドマークになっていた。

 

桃香「凄い...これが連合」

集まりに集まった諸侯の顔ぶれに桃香は驚嘆の声を漏らす。中に詰めていた将たちは、百人を超えていた。

彼女ら、彼ら一人一人が、桃香や公孫瓚と同じように袁紹の呼びかけに応え、軍を率いてここに集まってきたということだ。

そこで家康は曹操と一緒に来ている伊達政宗の姿を目にする。

 

家康「(独眼竜....やはり来たか)」

 

政宗「(やっぱ来たな、家康。だが他に....フッ、やっぱな)」

 

政宗は不敵な笑みを浮かべて、家康が立っている場所とは違う方向へ眼を向けている。家康もそれに釣られてそこへ眼を向けると―――

 

家康「(あ、あれは!?)」

そこには2人の男が立っていた、一人は鍛えられた筋肉やチャンピオンベルトのように巻いた六文銭、身長185cm以上あろう大柄な体躯。

連獅子をイメージしたツインテールのような白髪をしたクールな雰囲気を持つ男...真田家長男であり、「信濃の獅子」の異名で呼ばれ、家康と共に天下取りに貢献した戦人・真田信之。

そしてもう一人は、長い赤鉢巻を頭に巻き、真田家の家紋である六文銭を首に下げており、下半身は具足、上半身はライダースジャケット風の装束を纏った彼...信之の弟、伊達政宗の好敵手でもあり、日ノ本一の兵と呼ばれし武将・真田幸村。

 

家康「(信之....それに真田!お主たちも此処に居るとは!!)」

 

戦国において圧倒的な力を誇る英傑たちが今、この反董卓連合の場にて集う。



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第二十五章 再会せし戦国の英傑たち

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。

新たなオリジナルキャラが出ます。

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漸く反董卓連合に参加する諸侯らが集結する場にたどり着いた家康たち。

そこで彼が目にしたのは、以前に再会した政宗だけでなく、政宗の好敵手である真田幸村とその兄・真田信之の二人であった。

真田兄弟も政宗と家康を見かけ、幸村は笑みを浮かべ会釈し声は上げないが、此方に軽く手を振る。

信之も家康に笑みを浮かべるだけだが、しかし共に天下を駆けた友との再会に嬉しさを彼なりに見せた。

声をかけたいという気持ちを抱くが、しかし諸侯の手前無暗に勝手なことをしては桃香や公孫瓚に迷惑がかかる。

家康はグッと耐える中、この連合軍の主催たる袁紹が目立ちたいとばかり、諸侯らのど真ん中に立ち自ら名乗り始める。

 

袁紹「まずは、わたくしからご挨拶しますわ!わたくしが!このわたくしが、袁本初!三公を輩出した袁一族の、当代を預かる者ですわ」

袁術「.....なんじゃと。袁家の当主は、この妾じゃろうに....」

その袁紹の背後より幼子並みに背が小さい女の子...袁紹の従妹である袁術が密かに愚痴る。

しかしそれは辺りから巻き起こった拍手によってかき消された。

 

袁術「では、次は妾の番じゃな」

その言葉と共に立ち上がったのは、さっきの袁紹の呟きに反応した小さい女の子...袁術である。

 

袁術「准南の袁術じゃ。当代の袁一族を預かっておる。此度の遠征に伴い、揚州の名代として参加させてもらう」

袁紹から「は?袁一族の当主はわたく...」っと口漏らすが、それを態とらしく遮る者が現れる。

袁術を補佐する副将・張勲である。彼女はニコニコと愛想笑いを浮かべて自己紹介する。

 

張勲「副官を務めさせていただいてます、張勲と申しまぁす!」

そして袁術と張勲の挨拶が終わり、次に立ち上がったのは桃色の髪色をした褐色肌の女性が副将2人と共に立ち上がる。

 

孫策「丹陽の孫策よ。袁術と同じく、揚州の代表として参加させてもらうわ。

こちらが、副官の程普と軍師の周瑜」

そして孫策はその周瑜と程普の背後に控えている真田信之と真田幸村に眼を向けて、誇らしいと微笑み紹介する。

 

孫策「更に彼ら2人は、我ら孫呉に力を貸してくれている盟友である真田信之と、その弟真田幸村よ」

 

幸村「真田源次郎幸村と申す!以後、お見知りおきを!」

信之「真田信之にござる」

孫策「実際に軍を率いているのは母の孫堅だけれど....今は席を外しているから、私たちの挨拶で代えさせてもらうわ」

孫堅という名が出た瞬間、辺りは一瞬ざわつく。皆、孫堅のことを色々知っていると言った様子である。

 

公孫瓚「幽州の公孫瓚だ。今回は幽州と徐州合同軍で参加させてもらうことになった。

こちらが陶謙殿の名代としてきた、麋竺と縻芳。

それと....副官を務める、平原の劉玄徳と軍師の諸葛亮、補佐の徳川家康殿とその軍師の郭嘉だ」

 

桃香「平原から来た劉備です。此方は軍師の諸葛亮ちゃん、そして此方がご主人さ....じゃなく!徳川家康さんと、その軍師の郭嘉さんです」

 

家康「某、徳川家康と言う!今日、ここに結ばれる絆に感謝致す!どうかよろしく頼み申す」

郭嘉「....」

 

家康が挨拶し、稟が目礼だけしたその瞬間、巨大な天幕の中、明らかにダレきった空気で話を聞いていた将たちが同時にざわつく。

幾つもの視線が同時に家康たちに向けられる。

 

桃香「......ひぁっ」

それは....家康たちを値踏みするような視線、特に家康を見る目がすごかった。諸侯らの中で「あれが拳で黄巾党を蹴散らした豪傑か」とか、「太陽みたく惹かれてしまう」など口々にする者が現れる。

だがそれは家康だけでなく、先ほどの真田兄弟に対しても未だひそひそと彼らを好機な眼で見ている、主に女性の将らが。

だがそんな流れを壊すように、一人の女将が立ち上がる。その女将、ポニーテールで前髪が分かれた髪型で、胸元が開いた緑色の戦装束をしている。

この女性の姿に各諸侯はどよめき、公孫瓚が家康の耳元で囁く。

 

公孫瓚「家康。あれが馬超たちの母親...馬騰殿だよ」

家康「あれが馬騰殿か」

 

馬騰は各地の諸侯らを値踏みするように見渡してから、口を開いた。

 

馬騰「涼州の馬騰だ。後ろに居んのはアタシの娘の馬超さ、よろしくな」

馬超「よろしく」

 

そして最後に曹操が立ち上がり、名乗り始める。

 

曹操「苑州牧の曹孟徳よ。こちらは我が軍の夏候惇、夏侯淵....そして、ふふっ――盟友の伊達政宗よ」

曹操は嬉々として政宗を自慢するようにして紹介する。それに応じるように両腕を組んだままの政宗は立ち上がり、目礼する。

目礼しつつ席に座る瞬間、家康と幸村を交互に視線を送っていた。そして顔合わせが終わり、そのまま軍議も行って終わらした。

家康はそこで漸く桃香たちに用事があるからと先に戻るよう促し、伊達政宗と真田兄弟と話をすることが出来た。

 

政宗「You doing OK?久しぶりだな、真田、家康・・・!」

幸村「お久しゅうござる。政宗殿、そして徳川殿!このような所でお二人に会えるとは....この幸村、望外の喜びにござる!!」

家康「ハッハッ! 本当にそうだな...ワシらを結ぶ、この絆に感謝せねばならんな!そして信之...お前もこっちに来ていたんだな」

家康は信之に笑みを浮かべて問いかける。

 

信之「ああ。お前が消えたと聞いて急ぎ探そうとした際に、奇妙な銅鏡を見つけ気づけば孫堅殿の領地に居た。その道中で幸村や親父殿とも出くわした」

家康「昌幸殿も居るのか」

信之「親父殿だけではない。信玄公や佐助」

信之から出た名前にまさかと驚く。信之と幸村の実父であり、武田軍において「戦国の奇術師」と異名される真田昌幸、幸村の配下であり真田忍者隊の頭である猿飛佐助、更に武田軍総大将にして甲斐国主――家康の心の師であり「甲斐の虎」武田信玄。

だがそれだけではなく....

 

幸村「更に....」

その時だった。

 

???「....信之、幸村」

信之「ん?」

幸村「おー!」

政宗「アイツは...」

家康「お主は...!」

 

彼らが振り返るとそこには、一人の武将が佇んでいた。その者、連獅子のようなイメージで毛を付けており、頭部から背中へ垂れ下がる長く白い鬣が靡いている。

白い防寒服みたいな陣羽織と甲冑で、腕、胸に氷の結晶ような装飾が用いている。

前頭部には鋭く尖った氷の剣のような角、両肩にはライオンの前足を模した装甲、具足部分も同じく。頭部の顔部分がライオンの顔がマスクで、襟周りのパーツは、ライオンの下顎となっており、全体としてライオンの顔に見立てている。

両肩のライオンの手で胸の氷を掴んでいるイメージで構成されている。

しかもその者、信之より一回り背が大きい大柄である。

目の前の人物を見て、信之は名を呼んだ。

 

信之「どうした?ーー勝頼」

 

その人物...甲斐の虎の息子にして、更に信之の幼き頃からの親友でもあり、「甲斐の氷獣」と謳われる武田信玄の実子...武田勝頼である。

 

勝頼「....父上が呼んでいる」

幸村「なんと!分かり申した!政宗殿!貴殿との決着....この地にて叶う事を願いまする!」

政宗「Haッ! 何処だろうと関係ねぇ!俺とあんたがいる所が戦場だ!まぁ、今はその時じゃねぇが....とりあえず、首を洗って待ってな!」

幸村「それは貴殿も同じこと!!この幸村、必ずや竜を超えて見せましょうぞ!」

 

好敵手との再会に心燃やす2人。その中で勝頼は家康にさり気なく声をかける。

 

勝頼「....徳川殿、お久しゅうござる」

家康「ああ!勝頼殿。貴殿との再会を結ぶ絆に感謝を...」

信之「フッ、家康の絆は相変わらずだ」

勝頼「そうだな」

嬉しそうに言う信之、それとは反対に顔が見えずしかも声に生気がないような冷たい声音で肯定する勝頼。

日ノ本で共に生きる武将たちとの会話に、何かを思い馳せる家康が呟いた。

 

家康「だが、一度この世界に来ている者たち、皆に会いたいな」

信之「そうだな...今夜辺りはどうだ?明日には、行軍が始まって忙しくなるからな」

 

幸村「流石、兄上。某も異論はありませぬ」

政宗「俺も賛成だ。あんたは?武田勝頼」

勝頼「....構わない」

 

家康「うむ、ワシも大丈夫だ!それでは、今夜!またここに集合だ!」

信之の提案に幸村や政宗、そして勝頼も賛成する。そしてそれに大いに喜びながら了承しながら、集合の場所に一同異論なく賛同し一度そこで退散する。

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

家康が陣地に戻ると、桃香たちは一斉に家康に問い詰める。愛紗や稟は家康の身を案じていたばかりに、一方的で理不尽な説教をし始める。

何とかして2人を宥めた後家康は元親、忠勝、そして小太郎に事情を話す。元親は大いに喜び、忠勝も同様に体で表現するようにけたたましく機械音を鳴らす。小太郎に関しては無言で喋ることはなかったが、首を縦にゆっくりと頷いて見せた。

その夜、家康は勝手に行くわけには行かないので、桃香が休んでいる天幕に向かい一言言いに来た。

 

家康「桃香、夜分遅くにすまない」

 

桃香「ご、ご主人様!?ど、どうしたの!!?///」

天幕の向こうより桃香の焦る声が聞こえるが、家康は気にせず話を続けることに。

 

家康「知り合いに会ってくるから陣を抜ける。すぐに戻るから安心してくれ」

桃香「....その知り合いって、天の....、ご主人様の世界の知り合いの人たち?」

恐る恐る上目遣いで聞いてくる桃香。それに家康は笑顔で「ああ!そうだ。だから安心してくれ」っと言うが、彼の言葉に何かを考える桃香であったが、すぐに顔を上げて家康に言う。

 

桃香「そ、それなら!私も連れて行ってくれないかな?」

家康「ん?どうしてだ?」

桃香「そ、その....ご主人様の世界の人たちがどんな人たちか、会ってみたいの....ダメ?」

しばし、考える家康だったが、特に問題は無いだろう顔を上げる。

 

家康「分かった。じゃあ一緒に行こう」

桃香「う、うん!!」

許しをくれたことに桃香は嬉しさからか、頬を赤くしつつも元気に頷く。

こうして桃香も伴い、元親と忠勝、小太郎をも引き連れて集合する場所へとたどり着いた。

集合地点には、すでに幸村と政宗が来ていた。彼らもまた同行者がついて来ており、自分の所だけでなかった事に家康が安堵の息を吐く。

 

政宗「来たか、家康」

幸村「徳川殿!」

家康「すまんな、待たせたか?」

信之「いや、俺たちも今来た」

 

遅れた家康は謝罪するが、どうやら皆、今集まったばかりらしい。

 

元親「おうっ信之!久しぶりだなぁ~。元気だったか!」

信之「ああ。元親、お前も元気そうだな」

 

早速、元親が信之に駆け寄り再会を喜ぶ。

 

義弘「忠勝どん!久しぶりじゃのう!」

忠勝「………!」

 

忠勝も島津義弘との、好敵手との再会に喜ぶ。

 

家康「我が師、信玄公。お久しぶりです」

信玄「うむ、三河の。息災で何よりじゃ」

 

家康も心の師と仰ぐ信玄に挨拶する。

 

小十郎「まさか、北条の忍びである風魔までもがな」

佐助「確かにね、片倉の旦那。ーー伝説の忍びさんよ、よろしく」

小太郎「………」

佐助「はいはい、そっけないと……」

小十郎と佐助は小太郎と対話するが、しかし小太郎は無言で喋らず、佐助の握手すら反応しない。

そんな中、義弘の甥である豊久が昌幸と勝頼と会話していた。

 

昌幸「これはこれは、島津豊久殿。西軍以来だねぇ」

勝頼「………」

豊久「おぅおぅ、真田昌幸どん!それと武田勝頼どん!こりゃあ久しぶりじゃあ!」

豊久は勝頼の首に腕を絡ませて絡む。勝頼は一切反応を見せず、冷淡であった。

 

幸村「政宗殿!決着を楽しみにしておりますぞ!」

政宗「Ha!そりゃあ俺もさ!真田幸村!」

家康「はっはっ!相変わらずだな、二人とも」

政宗「おめぇもな、家康」

幸村「徳川殿とも!某、また武を競い合いましょうぞ!!」

 

などと戦国の同胞たちとのやり取りに興じる家康の腕に、桃香がツンツンとつついて構って欲しいとばかりに話しかける。

 

桃香「あ、あのね?ご主人様、私にもこの人たちを紹介して欲しい……」

孫策「信之!私にも紹介してよ!」

孫権「幸村、あの………」

孫堅「ごら!信玄!!オレにも紹介しやがれ!!」

曹操「政宗、再会に浸るのは結構なのだけど、そろそろ私にも紹介してくれないかしら?」

っと、完全に置いてきぼりを食らっている三国の将たちは我慢の限界であったようで、自分たちにも紹介するように促す。

 

家康「ははっ!すまんな、桃香」

信之「分かったから、騒ぐな雪蓮」

幸村「れ、蓮華殿!謝りますので、あまりくっ付かないで欲しいでござる……!」

信玄「はははっ!すまぬすまぬ、炎蓮よ」

政宗「おっと、sorry悪かったな……」

 

そうしてまず最初政宗から始まる。

 

政宗「んじゃあ、最初は俺らだな。俺の名は伊達政宗、んで、こっちは腹心の片倉小十郎と、鬼島津の島津義弘とその甥島津豊久。知っての通り、曹操の所にいる・・・こんなもんで良いか?」

小十郎「片倉小十郎だ、よろしく頼む」

義弘「島津義弘ち申す、よろしゅうのう……んで、こやつがぁ」

豊久「ふぁあ………島津豊久じゃ」

っと無愛想で淡々と欠伸しながら自分を名乗る豊久。それに対して義弘の拳骨が飛び、豊久の頭を叩く。

 

豊久「いで!!なにすっど!!叔父御!!」

義弘「そげん態度すっからじゃ!ばかもん!」

豊久「なんじゃと!!この老いぼれ!!」

っと叔父である義弘と親子同然の喧嘩が始まる瞬間、曹操が笑みを浮かべて呟く。

 

曹操「いいの?豊久。あとで柳琳に言いつけてあげましょうか?(笑)」

豊久の顔が青ざめて「いや何でもなか……」っと大人しくなる。

その後、曹操が名乗る。

 

曹操「それで、私が曹孟徳よ。とりあえず、よろしくと言っておくわ」

 

続いて幸村が紹介を始める。

 

幸村「では、続いては我らが!某、真田源次郎幸村!此方は我が父真田昌幸、我が兄真田信之でござる。

次いでこの者が真田忍隊隊長の猿飛佐助にござる。

それから、我が主君にして、生涯の師である武田信玄公と、そのご子息である武田勝頼殿にござる! 現在は孫堅殿に拾われ世話になっている次第、曹操殿、劉備殿、どうかお見知り置きを!」

 

昌幸「さぁさぁ、お立ち合い。幸村の父、昌幸にござぁーい!」

信之「幸村の兄、信之でござる。よろしくお頼み申す」

佐助「程々によろしくねー」

信玄「武田信玄じゃ。あの劉備や曹操に紹介されるとは思わなんだ。やはり、生きておれば様々な事に出会えるのう……のう?勝頼」

勝頼「………然り」

 

彼ら武田組が紹介終わると、孫家の女性らが名乗り始める。

 

孫堅「孫堅だ。よろしく頼むぞ」

孫策「娘の孫策よ、よろしく~♪」

孫権「孫堅の娘で、孫策の妹の孫権だ、よろしく頼む」

 

孫家の女性陣の衣装の露出さに、政宗が揶揄する。

 

政宗「にしても、女が苦手の真田幸村がよく平気だなぁ」

信之「いや、全然だ。以前だって孫策の妹の孫権殿に抱きつかれた際に、あまりのことに気絶したぐらいだ」

幸村「な、何をいきなり!あ、兄上!」

唐突の兄の発言に幸村は動揺してしまう。それを信玄は見逃しはしなかった。

 

信玄「幸村ぁぁっ!! この未熟者がぁああっ!!」

幸村「ぶべらぁぁ!」

孫権「ゆ、幸村!!」

 

桃香「ひぇぇ………」

曹操「………なに?」

信玄の愛の鉄拳が幸村に直撃し、吹き飛ばされる。

戦国の者と孫堅と孫策は最早見慣れたものだが、桃香と曹操は何が起こったか分からず、目を白黒している。

姉や母と同じく見慣れてはいるが、孫権は幸村の身を案じて叫ぶ。

しかし信玄は心を鬼にして幸村に渇を入れる。

 

信玄「幸村よ!!お主のその弱点、蓮華の協力も有りながら、未だ克服の兆しが見えんぞ!」

幸村「うぅぅ………し、しかしお館様。これでも大分ましにはなったのでございます。そ、それに、女子が苦手でも戦に支障は………」

信玄「愚か者がぁあああっ!!!」

幸村「ぶっはぁぁぁ!」

強烈なアッパーを食らい天高く飛ぶ幸村、すぐにそのまま地面に落下し、すぐさま信玄の前に跪く。

 

信玄「馬鹿者がぁああ!!!主要な将の多くが女人ではないか!!!そのような世界で女人が苦手などと言う事は、それは即ち弱点以外の何物でもないぞ!武人たるもの、命取りと知れぇい!!幸村!!」

幸村「お、お館様ぁあああああーっ!!この幸村、慢心しておりましたぁ!必ずやこの弱点、克服して見せましょうぞぉっ!」

信玄「うむ、幸村!」

幸村「お館様ぁ!」

信玄「幸村ぁあっ!」

幸村「お館様ぁあっ!」

信玄「ゆぅうううきむらぁああああ!!」

幸村「おおやかたさばぁあああああ!!」

いつしか二人は名前を呼びあい強烈な殴り愛に発展していく。その様子を見ていた曹操は唖然とし、政宗に訊ねる。

 

曹操「………なに、あれ」

政宗「アレは深く考えたらダメだ……」

 

対して桃香はこの状況を止めようとするが、既に家康に止められていた。

 

桃香「ご、ご主人様っ!?あの二人を止めないと!?」

家康「ハッハッ!あれは真田と信玄公の絆の証だ。いつもの事だから、大丈夫だ!」

桃香「そ、そうなんだ~」

孫権と佐助によって宥められ二人の殴り愛が終わると、最後に家康の番である。

 

家康「では、最後、ワシの名は徳川家康。それからこっちが、ワシの忠臣にして、徳川第一の絆たる戦国最強本多忠勝。

こっちはワシの友の一人、四国の鬼長曽我部元親。

最後に伝説の忍び、風魔小太郎。現在ワシらは劉備殿の元で世話になっている。

曹操殿、孫堅殿、今日ここであなた達に会えたこの絆に感謝したい」

 

忠勝「………!!」

元親「鬼が島の鬼たぁ、この俺の事よ!仲良くしてくれや」

小太郎「………」

 

桃香「じゃ、じゃあ私から!私が劉備、字は玄徳といいます!ご主人………家康さんには、とってもお世話になってます!これから仲良くしてくださいね!」

 

すると孫堅が家康に問いかける。

 

孫堅「おい家康」

家康「ん?なんだろうか?孫堅殿」

孫堅「そこの本多とかいうの、そいつは人間か?」

孫策「私も思ってた!完全にカラクリよね~その人(笑)」

孫権「ね、姉様!」

信之「雪蓮、失礼だぞ」

母孫堅の疑問に便乗するように、孫策も笑いながら口にする。

口にはしないが曹操同じことを思っていた。

そんな彼女らに家康が笑みを浮かべ、答える。

 

家康「はっはっは!それ故に忠勝が凄いと言う事だな!孫堅殿、孫策殿、忠勝は確かに人間離れしているかもしれないが、れっきとした人間だ」

孫堅「そうか………それにしても、戦国最強、か。ふふっ手合わせしてみてぇな」

忠勝「………!」

獲物を見るように不敵に笑う孫堅、忠勝は臆することなく雄々しく機械音を鳴らして堂々としている。

その後も楽しく話しが続いたが、明日から始まる大戰の事も考えて、今日はこの辺りでお開きという事になった。

 

政宗「今回は連合として一緒だが、それが終われば………分かるよな?you see?」

 

幸村「無論!それもまた戦国の習い!この幸村!全身全霊をもって御相手しましょうぞぉ!!」

 

家康「ああ。悲しいことだが、しかし!それでもこの世に絆の太平の世を作らんが為!ワシも負けられん!!」

桃香「ご主人様……」

 

こうして、彼らはそれぞれの陣へと帰っていく。明日から漸くの大戰が始まる、彼らは各々の思いを持って明日に臨むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリジナルBASARA武将

武田勝頼

属性 氷

武器 偃月刀

防具  全身の鎧と鬣

肩書 百獣氷牙

登場時の書き文字 招来

一人称 拙者または自分




オリジナル恋姫武将

馬騰 

真名 翡翠

武器 槍

スリーサイズ B87(G) W60 H90

馬超の母であり、涼州においてその人ありと言わしめる英傑。
その実力は、孫堅と並ぶほど。
戦の際には将として立派にやるが、日常生活ではだらしなく、いつも娘馬超に叱られる。








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第二十六章 開戦

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。

新たなオリジナルキャラが出ます。

イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


【汜水関】

 

汜水関は汜水鎮の西南部に置かれた関所で洛陽東辺を扼する要衝である。その汜水関城壁にて一人の女将が、関の外...そこに集結している反董卓連合の軍勢を見ていた。

 

張遼「........反董卓連合かぁ。来るべくして来たっちゅう感じやけど....実際、多いなぁ」

彼女...張遼は、眼前に広がる董卓を討とうという軍勢を見て、溜息を漏らす。これから先、この軍勢が自分たちに容赦なく向かってくるのだ。

そう思うと億劫だとも思うが、しかしそこは気を引き締める。

 

張遼「ねね。向こうの所属はどこや」

陳宮「冀州と井州の袁紹と、袁紹と親交のある周辺の豪族を中心に揚州の袁術と孫堅、苑州の曹操、あと幽州と徐州の連合を率いる公孫瓚....といった所ですな」

更に涼州の馬騰が長女・馬超を伴って来ていることも察知済みである。因みにこの連合軍に参加していないのは中央と距離を置く荊州と益州、交州のみである。

それでも戦力としては大陸の半分が、董卓を征伐せんとここに来ている。

 

張遼「流石にこりゃしんどいなぁ」

そんな愚痴を溢す張遼。そこへ彼女に喝をいれる声が聞こえる。

 

???「そんな弱気でどうする。どうせ連中など、烏合の衆だろ」

現れたのは銀髪の女将...華雄である。彼女もまた董卓の配下として属しており、武将として並々ならぬ実力を持つ。

その彼女、目先の敵軍の戦力に対して臆する態度がない。その彼女に同調するように陳宮もこれに賛同する。

 

陳宮「そうですぞ。それに盟主があの袁紹では纏まりなど皆無に等しいではありませんか」

張遼「烏合の衆て言うけどなぁ!黄巾の時に、その数だけで酷い目に遭うたんも忘れたんか?籠城や籠城」

2人と違って物量というモノに危機感を抱いている張遼は、攻めではなく防衛として道...籠城を選ぶ。

これには納得できぬと華雄が食ってかかる。

 

華雄「だが、戦わねば勝てんだろ」

張遼「籠城は負けんへんための戦や」

「最初から籠城しても士気は上がらん」とか「やはり打って出てひと当てした方がいい」と華雄はぼやくが、張遼としてはそんなのは自分が戦いたいだけだろとツッコミを入れられてしまう。

 

華雄「むむむ」

張遼「なにがむむむや、アホ.......せやけど、ぶつかれるのは兵に余裕のある今だけかぁ」

確かに兵の数は余裕があり、しかも汜水関の東西は関を挟み込むようにした巨大な岸壁が聳えている。

如何に兵数が此方よりも多いとはいえ、この地形では関を囲んだりは出来はしない。

華雄と陳宮に懇願するように見つめられ、張遼は「ああ!!もう!!」っと叫びつつ結論を口にする。

 

張遼「勝てそうな相手が挑んできたらやで!!いきなり総攻撃やったら、籠城や!!それでええな!!」

華雄「おう!」

陳宮「では、恋殿を呼んでくるのです!」

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

その一方で官軍側では既に動きを起こす。揚州の袁術と孫堅率いる軍勢が汜水関の攻略に向かう。

孫堅率いる軍勢には娘孫策や、孫堅配下の女将である黄蓋、程普。

彼女の隣には以前家康と桃香と協力し、青州の斉で出会った太史慈もそこにいる。

そして孫堅の隣には孫家の盟友として居り、家康と同じくこの世界に飛ばされた甲斐武田家の面々...信玄、勝頼、昌幸、信之、幸村、佐助の6人。

 

信玄「昌幸、あれが....」

昌幸「汜水関ですな」

信玄は彼に語りかけ、昌幸もそれに頷く。その中で孫堅がついてきた袁術に話しかける。

 

孫堅「....袁術殿まで、参られたのか」

袁術「同じ揚州勢で、おぬしだけに先鋒の栄誉をもっていかれてたまるか。.....打ち合わせ通りでいいのじゃな?」

袁術は孫堅に対してそう尋ねる。彼女としては孫堅に董卓を討ち取られ、帝すら助けられるようなことは避けたい。

 

孫堅「ああ。此方が主力を引き受け、そちらが門を目指す。荒事はこちらに任されよ。.....近づけば、無事は保証できんぞ?」

っと盟約を結び自分が産み持つ娘の一人と同い年で幼い袁術に対して、嘲笑しながら語気を強くし脅す。

 

袁術「......ひっ!!じゃ、じゃから、敵なぞ好きなだけ食い散らかして良いと言うておろうが!戦は全てお主に任せる!」

最早脅迫に等しい孫堅の威圧に袁術は頗る怯えてしまう。彼女としては勝手に強い者と戦ってくれて多いに結構だし、並みの手柄に興味がないのは御しやすくて良いとすら思うが、どうしてこうも戦いたがるのか理解できない。

その時だった。孫堅たちの目の前に見える汜水関の城門がゆっくりと開かれた。其処より敵軍が続々と現れ、陣形をなしている。

 

孫堅「....っと、向こうも出てきたみたいだな。分かってるじゃねぇか....なぁ?信玄」

敵軍の出現に心から嬉しそうに口角を吊り上げ笑みを浮かべ、孫家の盟友となっている武田の総大将たる甲斐の虎こと、武田信玄に声をかける。

 

信玄「うむ。どうやら向こうにも戦のことしか考えられぬ者が居るようじゃな」

孫堅「戦狂い大いに結構!ならば.....てめぇらも行くぞっ!」

孫策「応っ!」

黄蓋「お任せあれ!」

程普「はい!」

太史慈「おっまかせ♪」

 

孫堅「韓当!お前も頼むぞ!」

韓当「は!」

孫堅に声をかけられた人物、程普と黄蓋の二人と同じく孫堅の譜代家臣である女将...紫色の前髪がクロスしたロングヘアで右頬に傷があり、程普と同じ白肌で露出ある装束で険しい顔をした女性、彼女の名は韓当、字名は韓綜、真名は燐火(リンフォ)

彼女は孫堅に長く仕え、黄蓋と程普の長きに渡る戦友である。

 

信玄「うむ!ワシらも行くぞ!」

昌幸「このやつがねにお任せあれ」

幸村「この幸村!心熱く滾っておりまする!」

信之「この信之、一跨ぎに敵を踏み潰しましょう」

佐助「お館様、物見やら何やらはお任せをっ」

 

信玄「うむ!....勝頼」

勝頼「.....は」

昌幸たちの声に頷いた信玄は、最後に息子・勝頼に声をかける。鎧兜により素顔は全く見えず、しかも生気のない感情が籠ってない声音で勝頼は返事する。

その息子に信玄は言う。

 

信玄「勝頼よ、励めよ」

勝頼「......御意に」

勝頼は自身が乗る馬の手綱を右手で操り、左手には柄が長く、刃は大きく愛紗が持つ偃月刀とは比較にならない大きさを誇り、まるで獣の牙を思わせる形になっており、鍔の部分は青白い獅子の意匠になっている。

勝頼が先に行った後、彼の後を追うように太史慈が続く。

 

そうして孫堅率いる軍勢が董卓軍とぶつかる形で、とうとう戦が幕を開ける。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

家康「......始まったな」

忠勝「.....!」

汜水関から少し離れた場所....家康たちは、信玄と孫堅らの初戦の光景を見守っていた。

 

家康「関の前はあまり広くないな。部隊の展開を考えるなら、揚州だけを動かすというのは正解だな」

稟「そうですね。更に敵に比べて揚州勢...特に孫堅殿の軍が展開速度が速く、それに対して董卓軍は防戦一方です」

家康の隣に擦り寄るように侍りつつ、稟は冷静に戦況を分析している。その稟とは反対側に愛紗が家康に問い掛ける。

 

愛紗「ご主人様。このように見ているだけで良いのですか?」

家康「後方からの戦況偵察も立派な役目だ。いつもは桃香や雛里がやってくれてるが、今回は味方も規模が大きいからな」

周辺の地形を把握したり、後方の軍師たちに戦況を伝達したり、周囲に別働隊がいないか把握したり最前線で戦う以外にも、戦場ですることは沢山ある。

桃香がやっていると聞いて、愛紗は驚くように目を丸くしてしまう。

 

愛紗「桃香さまが...」

家康「自分は戦いは得意じゃないから、ワシや紗たちが戦いに集中できるようにするのが仕事だと言っていた」

愛紗「そうですか.....」

家康「ああ。何より、いま汜水関を攻めたらワシたちが孫堅殿に狙われる。敵の部隊は.....愛紗、旗の文字は見えるか?」

愛紗「あ.....はい。この距離なら何とか」

香風「....ん?誰かきた」

忠勝の傍にいた香風が、何者かの気配を感じ振り向き知らせる。

 

曹仁「こんちはっすー。幽州の人っすか?」

 

家康「ん?ああ。そうだが...」

 

曹純「苑州軍の曹純と申します。こちらは、姉の曹仁。....それと」

豊久「教えんでよか。家康どんは知っちょい」

曹純が島津豊久のことを紹介しようとしたが、彼女に無愛想そうにそっぽ向いたまま口出しを制止する。

 

愛紗「むっ」

稟「....っ」

その豊久の家康に対する態度に眉間に皺を寄せ、鋭く睨む。彼女だけでなく稟も同じく豊久を睨んでいる。

そんな彼女らの肩をそれぞれ乗せて宥めてから、家康は豊久に声をかける。

 

家康「昨日はあまり話出来なかったな、豊久。元気そうだ」

豊久「家康どんも変わりなかね。忠勝どんも」

忠勝「....!」

豊久「相変わらず、なにをゆうちょっとか分からんのう....戦国最強どんは」

香風「むぅ」

忠勝が何を言っているのか分からないと小馬鹿にする態度に、香風の機嫌が悪くなる。いつもぽやんとした性格でよく眠そうにしている彼女だが、慕っている忠勝のことを馬鹿にされたようで許せないと睨んでいる。

とうとう堪らず愛紗が豊久に食ってかかる。

 

愛紗「貴様ぁ、ご主人様や忠勝殿に対して無礼であろう!!何様だ!!」

豊久「....あ?なんじゃ?こん小娘。雑魚はひっこんでろ」

愛紗「貴様ぁああ!!」

我慢ならず、愛紗は青龍偃月刀を豊久に向けようとしたが、それを家康によって阻まれてしまう。

 

愛紗「ご、ご主人様!!どうして!!」

家康「ダメだ、愛紗。彼は曹操殿の将としている、つまり味方だ」

愛紗「し、しかし!!」

柳琳家康によって諭されている中、豊久に対して曹純が....

 

曹純「......豊久さん?」

豊久「っ!?」

背後より呼びかけられ、身体がビクッと跳ねながらゆっくりと振り向くと曹純が額に青筋を立て、堪忍袋すらピクピクとし、笑みを浮かべている。

 

豊久「あ....あ、いや、その....」

曹純「あとで、いいですね?」

豊久「え?....あ、そ、そのう....」

曹純「い い で す ね?」

豊久「は、はい...」

笑みを浮かべつつも、強い語気で威圧しながら自分よりも遥かに図体デカい豊久に迫る。

豊久本人も年下の女の子にこうも責められているにも関わらず、彼は目の前の曹純に対して逆らえないのか酷く怯んでしまっている。

 

曹仁「柳琳怖いっすー」

曹仁もビビるが、話を変える為に家康が自分たちのことを紹介する。

 

家康「ワシは幽州の徳川家康。こちらは本多忠勝、関羽、郭嘉、徐晃」

曹純「豊久さんが失礼な態度をして申し訳ございません」

家康「いやなに、豊久は態度はこんなだが、根は不器用で優しい奴だ」

豊久「....けっ」

曹純「はい。それは、私も思っています」

そう言いながら、曹純は豊久に先ほどの怖い笑みではなく、本当に心からの優しい笑みを浮かべる。それに対して豊久はそっぽ向いて顔を向けない。

その豊久は話題を変えるべく、汜水関の現況を問いかける。

 

豊久「そんで?汜水関の状況はどげんね?」

家康「今のところ、孫堅殿と袁術殿の攻撃は始まったばかりだ。....迎え撃っているのは....愛紗、旗は?」

愛紗「はい。敵の旗は、あれは呂布と....あの華の旗は誰だ?」

曹純「華雄さんでしょうね。以前、豫洲の黄巾討伐でご一緒したことがあります」

その華雄の部隊は呂布の部隊に先駆けて、まっすぐ孫家の旗に向かっている。

 

香風「孫堅殿を迎え撃つの、呂布じゃないの?」

曹純「華雄さんは好戦的な方ですし、強い孫堅さんと戦いたがったのではないですか?」

曹純の話に家康は、華雄が孫堅の相手をすることで時間を稼ぎ、その間に呂布が袁術を叩く算段なのではと見た。

 

稟「恐らく華雄は時間稼ぎ、呂布が本命かもですね」

曹純「はい。現場はともかく、軍師の意図はそちらかと」

彼女の言う通り、呂布の軍は華雄からワンテンポ遅れて袁術に接敵していく。

そして敵陣に突っ込んだのにも関わらず、旗の動きと勢いに一切の衰えがない。その群れを忠勝は静かに見つめる。

 

香風「お兄ちゃん?」

香風は不思議そうに忠勝を見上げる。忠勝はずっと一つの旗....呂布の軍旗をジッと見つめている。

そんな中、曹仁が何かに気づいた。

 

曹仁「ねぇねぇ、袁術軍って、なんか撤退し始めてないっすか?」

家康「なに?」

豊久「あー...ありゃあ確かに引いとるのう」

曹仁や豊久の言う通り、袁術軍はゆっくりと撤退を始めている。その割に華雄と戦闘中の孫堅軍はその場から動く気配がない。

 

愛紗「ご主人様。これは....良くないのではありませんか?」

家康「.....そうだな。しかし」

稟「しかし?なんですか?」

二人は怪訝そうに家康を見つめると、忠勝がいきなり機械音を鳴らす。

 

忠勝「!!!」

家康「....忠勝。分かった、では孫堅殿の援軍に向かってくれ」

忠勝「!!」

忠勝は一人で孫堅の軍の救援に向かうと伝えてきた。それを愛紗が待ったをかける。

 

愛紗「お、お待ちください!忠勝殿一人で!」

家康「忠勝一人ではないさ。ワシもでる」

稟「家康様も!?」

愛紗「っ!?」

家康自らも忠勝と共にでるとのことに驚愕する2人。2人とも家康を慕っていることから、反対するのは目に見えていた。

 

愛紗「ダメです!!ご主人様と忠勝殿2人だけなど!!」

稟「そうです!!どうかおやめください!!」

家康「大丈夫さ。それに向こうには孫家と袂を共にしている信玄公たちもいる...何とでもなる」

家康は尚も渋る2人に何とか説得する中、忠勝も香風に安心させるよう彼女の頭を撫でてやる。

 

香風「お兄ちゃん...」

忠勝「...!」

未だに納得出来ていない愛紗と稟に半ば押し切る形で、桃香たち本隊に報告するように告げる。

 

家康「桃香たちに報告を頼む。大丈夫だ、必ず戻る」

愛紗「ご主人様!!」

家康「忠勝!!」

家康が叫ぶと忠勝の背中の鎧の一部が変形し二門の噴射口が現れ火を噴く。忠勝が飛び上がると同時に、家康を高く跳躍しタイミング良く忠勝の背に乗りあがる。

そのまま自身の背に仁王立ちの家康を乗せた忠勝は、戦場へと向かって飛翔してく。

 

曹純「飛んでった....」

曹仁「凄いっす!」

忠勝が飛ぶ姿に曹純は目を丸くして啞然とし、曹仁は目を輝かせて興味深く喜んでいる。

置いてかれた彼女らはすぐにそれぞれの本隊に、孫堅軍の状況を知らせることを考える。

 

稟「愛紗、家康様のことが心配なのは私も同じです....しかし」

愛紗「.....分かっている。すぐに桃香さまに報告に向かうぞ!」

香風「....うん」

 

曹純「私たちも行きましょう!姉さん」

曹仁「分かったっす」

曹純「どうしたの?」

曹仁「....とよっち、どうしたんすか?」

曹純「え?」

曹仁の言葉に曹純は振り向くと、豊久は淡々とした顔をしている。それが気になった曹純が声をかけた。

 

曹純「豊久さん?どうしたんですか?」

豊久「家康どんや、忠勝どんが行ったんじゃ。ならオイらが行っても後の祭り――行ってん無駄じゃ」

曹仁「どうしてっすか?」

曹仁が豊久に抱きつきながら問いかけると、それに対して豊久は退屈そうに言う。

 

 

豊久「孫堅のところには、甲斐の虎どもが居るからのう」

曹純「かいの...とら?」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

その一方、戦場では....。

 

信玄「そりゃあああああああああ!!!吹き飛べぇい!!」

信玄が軍配を模した斧、軍配斧・虎兜吹を上段より大きく振りかぶって地面に叩きつけると共に、大きな衝撃が響き、大地は地面や岩盤を隆起させて大量の兵士らを打ち上げ吹き飛ばす。

更に信玄の進撃は止まらない、その信玄と共に武田の軍師にして戦国の奇術師と称する真田昌幸もまた戦場を闊歩する。

 

昌幸「只今御覧入れたるは、敵掃討の大奇術!昌幸自慢の見世物に御座ぁい!」

投げた帽子が真下に居る敵を吸込み、昌幸の目の前に落下させる。それを見越して自身の武器である短槍・

太郎虎杖をもって俊敏に切り裂き、次いで短槍を四本取り出して敵に向かって投擲、着弾した途端に瞬間移動したかみたく敵に接近して攻撃する。

 

信玄「まぁーさぁーゆぅーきぃーっ!!油断はならぬぞぉおおおーーーッ!!!」

昌幸「御意にござりまするぅ!!おぉ・やぁ・くゎ・たぁ・さぁむわぁーーーッ!!」

黄蓋「流石は信玄公に昌幸殿じゃ...」

共にいる孫家家臣である女将・黄蓋が感嘆の声を漏らす中、武田主従の二人は熱き咆哮と共に敵を蹴散らす。それをサポートするように真田幸村直下の忍びである猿飛佐助が忍術にて敵を翻弄しつつ撃破していく。

 

佐助「やれやれ...お館様どころか、昌幸の大旦那も派手にやるねぇ~。まぁ俺様も仕事やりますか、っと!!」

リーチは短いが動作が非常に速く、忍びらしい体術に手裏剣を交えたアクロバティックな攻撃で敵を次々に討ち取る。

更に前方へ滑り込みながら切りつけ、二体の影を出現させて追撃する。

 

昌幸「佐助!状況は!」

佐助「こっちが押してますけど、袁術の軍が密かに後退してますよ」

昌幸「やはりか...」

佐助からの報告に、昌幸は顔が険しくなる。それを聞いていた信玄も同じ表情で佐助に問い掛ける。

 

信玄「佐助。幸村たちはどうか?」

佐助「幸村の大将は相変わらず暑苦しくやってくれてますよ、信之の旦那も、あと勝頼様も」

昌幸「そうか」

幸村や信之、そして勝頼が奮戦している報告に信玄と昌幸は息子たちを誇りに思う。

自身の息子たちが良くやっているのを聞いて嬉し気にする2人を見て、黄蓋も笑みを浮かべる。

その佐助の言葉通り、幸村が熱い咆哮を挙げて敵に吶喊していた。

 

 

幸村「おおおおおおおお!!!!侵略すること火の如し!!燃ゆる二槍で突き進まん!!」

二槍...真炎・無銘を振り回しながら前進し、前方広範囲の敵を巻き込みながら次々に撃破していく。

 

幸村「おおおおおおおお!!!!虎炎!!」

炎を纏った拳を大きく振りかぶって敵の群れに叩きつける。腕に纏った炎が敵群に直撃し、大きく爆発を引き起こして敵兵らを多く吹き飛ばして蹴散らす。

その一騎当千の如く見せる幸村の武働きを複数の護衛兵に守られながら孫権が、彼の身を按じながら見守っている。

 

孫権「幸村....」

甘寧「蓮華様」

孫権「思春」

彼女を呼ぶのは甘寧、字名は興覇。孫家の武官であり主に孫権に仕えている。

その甘寧が孫権に安心させるように話す。

 

甘寧「幸村は暑苦しい男ではありますが、しかしその武は孫堅様がお認めになるぐらいに...」

孫権「分かっているわ、思春。でも、心配なの....」

甘寧「蓮華様....」

眼を伏せる甘寧を尻目に、孫権は祈るように遠目の幸村を見つめる。

その間にも幸村は突進しながら前方広範囲を斬りつけ、そのまま飛翔しながら敵兵を薙ぎ払う。

 

幸村「み・な・ぎ・るぁああああああーーーっ!!!」

その幸村に挑む巨漢の武将が現れる。

 

「貴様!そこまでだ!我が名は徐栄!!我と勝負せよ!!」

 

幸村「ん!名のある武人とお見受けいたす!!いざ尋常に勝負ぅううううーーーっ!!!」

 

「よし!来い!!....え?」

 

幸村「うおおおおおーーーーっ!!」

その時だった、徐栄は目を丸くする。何故ならば、幸村が信じられぬ速さで徐栄に迫り、二槍を振り上げて浮かせる。

幸村自身も跳躍し、追撃するように強烈な蹴りで打ち落として、止めとばかりに固有奥義である虎炎を叩きつける。

人間とは思えない強さの幸村によって、巨漢の男・徐栄は物言わぬ骸となって果てた。

その圧倒的な武の見せ所は幸村だけでは留まらなかった。

 

信之「.....」

幸村の兄である信之は戦場の中、長物で梯子状の武器である梯子槍・御嶽断を地に着き眼を瞑っている。

その信之の周囲には董卓軍の兵士たちが四方八方より囲んで、今か今かと剣を向けつつじりじりと迫っている。

そして一人の兵士が焦れたのか、信之に向かって剣を大きく振りかぶって襲い掛かる。

 

「でやぁあああああ!!」

 

信之「......奮!!!」

眼を大きく開けて信之は兵士よりも速くに、梯子槍を振るいながら吹き飛ばす。

そして信之は梯子槍を豪快に振り回し、攻撃しながら軽々と敵兵を鷲掴み、そのまま掴んだ兵士を敵群に向けて豪快に投げつける。

人一人を軽々と投げつける怪力に怯える董卓兵士たち。その彼らに信之は駆け走り、筋肉隆々とした肉体でありながらもその脚力による走りは速く、その疾走からの梯子槍による叩き付けで多くの敵兵が死にゆく。

 

信之「斯様な小勢、物の数ではないわ!」

そう吠える信之は振り回した梯子槍で敵兵を拘束し、その状態で梯子槍を振り回しながら前方に跳ねて敵を地面に叩き付け、その後拘束した敵を凄まじい力で投げつける。

投げられた兵士はまるで大砲の砲弾みたく吹き飛び、その勢いは弱まることはなく処か更に増して直撃。

多くの者たちを巻き込み、絶命していく。

その信之の背後より一人の敵兵が彼に斬りかかろうとしたその時....

 

孫策「はあ!!」

 

「ぎゃあ!!!」

 

彼の背後を守るように孫策が透かさず駆けつけ、剣を抜いて敵兵を切り裂く。倒した後、孫策は信之の大きな背中に自身の背を合わせて笑みを浮かべる。

 

孫策「まったく!一人で突っ走しり過ぎよ?もう」

信之「何しにきた」

孫策「はぁ~!?何しにきたぁ~!?冥琳と私が心配してたってんのに!なにその言い草!!」

無愛想にしながら孫策に振り向かないでそう口にする信之に、孫策はイラッときて抗議する。

騒ぐ孫策に信之は一切反応せず、信之は敵に吶喊する。

 

信之「この信之、勇者の道を、ただ征くのみ!!」

孫策「ちょ!!」

駆け走り、飛び膝蹴りを繰り出しながら跳躍する。両手で梯子槍を持って地面に叩きつけながら敵兵を多く巻き込み討ち取る。

そのまま梯子槍を地面に立ててから回転し、全方位の敵兵を巻き込んだ後、死屍累々と成していた。

 

孫策「ほんと....幸村といい、信玄公といい、昌幸たちといい、貴方といい、常識離れ過ぎるわよ」

その光景に孫策は顔を引き攣るように乾いた笑いを浮かべる。

信之の前に敵将が現れる。

 

「我が名は郭汜ぃ!!逆賊袁紹に従う愚か者よぉ!!ここでし...」

 

信之「邪魔だ」

梯子槍をハンマーみたく、思いっきり目の前の敵将をモグラ叩きの如く地面に叩きめりこむ。

胴体が丸ごと地面に埋まってしまい、頭より血を流して絶命する敵将を見下ろしながら信之は....

 

信之「惰弱成り...我が敵に非ず」

孫策「.....もう化け物よ」

程普「雪蓮さま!」

そこへ程普が急いでやってきた。

 

孫策「どうしたの?粋怜」

程普「佐助くんの報告で、袁術の軍が後退を始めました!」

孫策「はぁ!?あいつもう逃げるの!?」

袁術後退の報に孫策は驚きつつも呆れてしまう。信之は冷静に程普に話しかける。

 

信之「粋怜。勝頼は?」

程普「貴方や幸村くんみたく、奮戦してるわ!今は梨晏と燐火が付いてる」

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

程普がそう話している頃....。

 

太史慈「ハァ!!」

太史慈が三又槍による素早い突きで容赦なく敵兵を次々に討ち取る。続け様に薙ぎ払いつつ、周囲に居る敵兵を続々と討ち取る。

彼女だけでなく、黄蓋と程普の二人と同じ孫家譜代の家臣である韓当も善戦している。

 

韓当「でぇやぁあああ!!!」

韓当は朴刀という日本の薙刀に当たる長柄武器で、一振りで敵を三人纏めて切り捨てる。

その韓当に太史慈が駆け寄る。

 

太史慈「燐火さん!」

韓当「梨晏!勝頼殿は!」

太史慈「あそこに!」

太史慈が指さす先では、衝撃的な光景が2人の視界に入り込む。

 

 

「あ....が...」

 

「さ....む..い」

 

「う...ごけ...な...い」

 

そこには身体全体が凍って全く動かすことが出来ず、静かな断末魔を遂げる董卓軍の兵士たち。

一人二人三人とかいうものではなく、千人程どれもが氷漬けになって死に絶えていく。

彼らが居る場には白い冷気が漂って、董卓兵らを覆い包みこんでいる。その中心には獅子の如き鎧姿の男...信玄の息子である勝頼が静かに佇んでいる。

そんな勝頼に冷気の中にも関わらず、一人勇気か無謀か彼に襲い掛かる。

 

「はぁあああああ!!」

 

勝頼「....ん」

横からの襲い掛かる刃を、自身の武器である獅子の意匠をした偃月刀・氷獅子で余裕で防御する。

襲い掛かったのは女将であった。

 

「貴様か!!兵たちをこんな目にしたのは!!」

 

勝頼「.....いかにも」

 

「許せぬ!!どんな手を使ったか知らぬが!この李傕が貴様を討つ!!てやああああああ!!!」

敵将が尋常ではない槍捌きによる凄まじい連続突きにて、勝頼に攻撃する。

だが勝頼は偃月刀を自身の前に翳し、そのまま素早く回転させて敵将の攻撃を全て防御する。

一突きも勝頼の巨躯体に傷一つ入ることはなく全て防がれ、処か...敵将の槍の穂先が凍ってしまい砕けてしまった。

 

「ば、バカな....こんなことが!」

 

勝頼「.....氷烈」

その言葉を口にしたと思いきや、敵将の先ほどの連続突きとは比較にならぬ位、偃月刀による目にも止まらぬ連続突きが襲い掛かる。

 

「う、うあああああああああああああああああ!!!!!....あ....ぁ...ぁ...」

連続突きによる攻撃を受けて敵将の身体が凍っていき、遂には氷の彫像みたくなり果ててしまう。

そんな敵将の最期を見届けた勝頼は呟いた。

 

勝頼「....哀れなり」

その勝頼の元に太史慈と韓当が駆け寄る。

 

太史慈「勝頼!大丈夫!」

韓当「お怪我は!」

勝頼「.....大事ない」

彼からの返答に二人はホッとした表情をする。そこへ佐助がやってきた。

 

佐助「勝頼様」

勝頼「.....佐助、いかがした?」

佐助「袁術の軍が勝手に撤退して、しかも炎蓮の大将が今、華雄と呂布の二人の敵将に挟撃されてますよ!」

太史慈「うそ!!」

韓当「いかん!!」

勝頼の傍にいる太史慈と韓当の表情には焦燥が浮かび、今にも急がねばとしている中...勝頼は一人何かに気付き見上げる。

 

太史慈「勝頼...?」

勝頼「....あれは、本多殿」

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

孫堅は現在董卓軍の将である華雄と、そして飛翔軍にして天下無双と謳われる呂布と戦闘中であった。

 

華雄「くっ!!こ、この!!」

孫堅「おらぁ!!」

華雄「ぐっ!!うああああああ!!!」

孫堅は巧みに且つ豪快な剣術で華雄を圧倒し、吹き飛ばす。余りの剛力に耐え切れず華雄は気を失ってしまう。

そして呂布との一対一の戦いになり、孫堅は襲い掛かる。

 

孫堅「楽しいなぁ!おい!!雑魚どもを蹂躙するよりも、ずっとな!!そうだろ?呂布!!でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

呂布「......恋は、別に楽しくない」

戦闘に喜びに興じる孫堅に対し、呂布は煩わしいと方天戟を振るい応戦する。江東の狂虎と謳われる孫堅、その戦闘力は有り余るもので呂布すら迫る。

二人は強力な剣戟の応酬を繰り出し、互いに一進一退。孫堅の剣と呂布の方天戟がぶつかり合い、火花を激しく散らし続ける。

 

孫堅「そりゃあ結構!だが、オレとお前、どっちか死ぬまで付き合ってもらうぜぇぇっ!!」

呂布「っ......恋は、死なないっ!!」

二人の打ち合いは収まらないが、しかし状況は徐々に呂布に傾いていく。

 

呂布「はぁ.....っ!!」

孫堅「....ぐっ!!」

その瞬間、呂布の一撃が孫堅を弾き飛ばし...彼女の大きな体が勢いよく吹き飛ぶ。

 

孫堅「ぐっ!!こいつ....っ!?」

呂布「.....死ね」

吹き飛ばされ体勢が崩れた孫堅の隙を、呂布は見逃すことはしなかった。彼女は素早く孫堅の懐に入り込み、反応できる時すら与えることなく一撃を加えようとしていた。

このままでは孫堅は間違いなく斬られ死ぬ....っが、その時だった。

 

呂布「っ!!」

二人が立っている場だけ暗くなる。何事かと思いきや、呂布が勢いよく孫堅から距離を離した。

それと同じくして上から家康と忠勝が地上に降りてきた。

 

孫堅「....おめぇらは、徳川と本多」

 

家康「大事ないか!孫堅殿!」

 

 

忠勝「!!!」

 

呂布「.....」

家康が孫堅の無事を確かめる中、忠勝は呂布と対峙するのであった。




オリジナル恋姫武将

韓当

真名 燐火

武器 朴刀

スリーサイズ B112(J)W60H88

孫堅の譜代家臣であり、黄蓋と程普とは同期の友である。
いつも険しく自他共に厳しいが、年下の面倒を率先して見る。
しかし本人、恋話や男女の営みの話になると、顔を真っ赤にして初心な反応を見せる。





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第二十七 開幕!戦国最強 対 天下無双

駄文と勝手なオリジナル要素が含まれています。ご注意ください。
恋姫主人公である北郷一刀はでません、出しません。

それと当作品のバサラ武将たちはかなり無双してしまいますが、どうかご理解くださいますよう宜しくお願い致します。
オリジナルのBASARA武将が登場したり、オリジナルの恋姫キャラも出すことがあります。
恋姫キャラとBASARA武将とのカップリング描写などあります。


イメージOP『Thunderclap』戦国BASARA Judge end

イメージED『黄昏』戦国BASARA3宴


呂布「.....死ね」

 

吹き飛ばされ体勢が崩れた孫堅の隙を、呂布は見逃すことはしなかった。彼女は素早く孫堅の懐に入り込み、反応できる時すら与えることなく一撃を加えようとしていた。

 

このままでは孫堅は間違いなく斬られ死ぬ....っが、その時だった。

 

 

 

呂布「っ!!」

 

二人が立っている場だけ暗くなる。何事かと思いきや、呂布が勢いよく孫堅から距離を離した。

 

それと同じくして上から家康と忠勝が地上に降りてきた。

 

孫堅「....おめぇらは、徳川と本多」

 

家康「大事ないか!孫堅殿!」

 

忠勝「!!!」

 

呂布「.....」

 

家康が孫堅の無事を確かめる中、忠勝は呂布と対峙するのであった。

家康と忠勝の出現の直後に、信玄たちや孫策らが駆けつける。

 

孫権「母様!」

孫策「母様!無事!」

孫堅「見りゃ分かるだろ、生きてるに決まってるだろうが……」

二人の娘が母孫堅の傍に駆け寄り、その無事の姿に安堵の溜め息を吐く。

黄蓋たち家臣らも同様の気持ちを抱き安堵する。

信玄らも同じくであったが、それと同時に目の前で本多忠勝が、呂布と対峙しているのに目が行く。

 

信玄「本多忠勝が、呂布と対峙しておる」

昌幸「これは見物ですな、お館様」

信玄「うむ」

 

幸村「兄上!」

信之「よく見ておけ、幸村」

幸村「は!」

信玄や幸村たちは目の前の出来事に食い入るように見つめる。

その中で、人間とは思える図体と鋼鉄の本多忠勝の姿を目撃した孫家家臣武将たちは、その余りの大きさの忠勝に驚嘆の声を漏らす。

 

黄蓋「な、なんじゃ!?あ、あの鋼鉄の巨人みたいな奴は…」

程普「で、でかいわね……」

太史慈「うっわぁ~!凄いねぇー!武器もおっきい!!」

燐火「何物なのだ、あやつは……」

甘寧「人間なのか?」

その彼女らに勝頼が静かに話し教える。

 

勝頼「……徳川殿の家臣、本多忠勝」

程普「本多…?」

太史慈「忠勝…?もしかして人間なの?あの鋼鉄のおっきいの」

勝頼「……そうだ。そしてこうも呼ばれている……戦国最強、と」

太史慈「戦国最強……(家康って斉で会った時もそうだけど、あんなとんでもないのが家臣ってどんだけなの?!)」

勝頼の言葉に彼女らはただ黙って忠勝の背を見つめる。

そんな外野らがそうしている最中、孫堅の一撃を喰らい気を失っていた華雄が目を覚ます。

 

華雄「....っ...うぅっ....っ!呂布!!」

 

彼女は真っ先に呂布の助太刀をしようと向かうが、それを家康が阻んだ。

 

華雄「貴様!!」

家康「忠勝!任せたぞ!」

忠勝「!!!」

 

家康は忠勝に命じつつ華雄と対峙する。

主である家康よりの命じに応えるように、けたたましく機械音を鳴らしつつ三池光世改槍の穂先を呂布に向ける。

呂布もまた忠勝に倣うかの如く、方天戟を対峙する彼に確と向け敵意を放つ。

そうして戦国最強と天下無双の決闘が始まる。

手始めに動いたのは忠勝であった、三池光世改槍を上段より力を乗せて叩き下ろす。

そのドリル状の穂先を回転させたまま、振り下ろす一撃は当たれば間違いなく即死である。

だが呂布は辛うじてそれを回避することが出来たが、さっきまで彼女が居た場所には巨大なクレーターが出来上がってた。

直撃していれば、いかに呂布であっても命は無かったであろう。

呂布は空かさず攻撃直後の為、硬直してるであろ忠勝の懐まで駆け寄り、反撃を行う。

 

呂布「……次、恋の番」

 

あれだけの図体、更にあれだけの武器だ……きっと真面に早く反応なんて出来ないはず。

ならば振り下ろした直後の真横から一撃喰らわせれば終わりだろうと呂布の方天戟が閃く。

 

 

 

 

だが………。

 

 

呂布「うそ………!」

 

忠勝「……!」

結果、呂布の一撃は忠勝に届くことはなかった。

常人では振るう所か、持ち上げる事すら不可能な機巧槍•三池光世改槍を軽々と振るい、余裕で攻撃を防いだのである。

信玄たちや、華雄と対峙している家康は当然かと笑みを浮かべており、逆に忠勝の凄さを知らぬ孫家の者たちや敵将の華雄は、呂布相手に単身で真っ向から攻防を見せる彼の強さに、驚きの余りに開いた口を閉じることが出来なかった。

そんな中、呂布は再度忠勝に強烈な一撃を振るう。しかし忠勝はそれをいなしてからの薙ぎ払い、次いで大上段からの振り下ろしで呂布を牽制。

それを何とかして躱すが、その最後の振り下ろしで起きた大きな土煙によって目の前の忠勝の姿が見えなくなった。

だが彼女は自身の直感にて不味いと感じ、すぐさま後ろに跳躍する。すると目の前の土煙から忠勝の槍のドリル状の穂先が突き抜け迫ってきた。

 

呂布「っ...!」

 

呂布は驚きつつも方天戟で翳しこれを防御、なんと忠勝の圧倒的な膂力を真っ向より受け止めた。

機功槍の牙突に耐えた呂布に対し、忠勝は突き出したまま槍の先端部を高速回転させてそのまま呂布を巻き込む。

 

呂布「くっ...!」

三池光世改槍の穂先による高速回転に呂布は方天戟で防御し身動きは出来ず、苦悶の表情を浮かべる。

 

華雄「あの呂布が、押されているだと?!」

家康と対峙している華雄は信じられぬと眼を大きく開いて焦点が定まっていない。

その時、愛紗の報告を受けて孫堅の救援に桃香たちが駆けつける。

 

桃香「ご主人様!」

愛紗「ご無事ですか!!」

家康「桃香!愛紗!」

愛紗が桃香たちの本隊を連れて来てくれたのは、軍の動ける速度からすればあっという間であった。

だが彼女らもまた目の前で起きている二人の最強のぶつかり合いに目がいってしまう。

 

愛紗「こ、これは...!」

香風「お兄ちゃん!」

 

彼女らの視界には忠勝と呂布が尚も戦っている。呂布が方天戟で忠勝の攻めを弾き、反撃を行う。

 

呂布「はぁ....!」

忠勝「!!!」

だが忠勝は薙ぎ払った後、槍を身構えてから強力な突進攻撃を繰り出して呂布を吹き飛ばす。

 

呂布「っ...!!!」

体勢を急いで整えた呂布は尚も忠勝に挑む、忠勝も体勢を整えて呂布を迎え撃つ。

二人は真っ向から互いの力をぶつけ合い、恐ろしい程の轟音と閃光、そして衝撃波が戦場を襲う。

戦国最強たる忠勝にこの世界の住人である呂布が互角に戦えてることに感嘆の声を信玄らは漏らす。

 

信玄「ほう...あの本多忠勝と互角とはのう」

昌幸「流石は呂布ですな、こりゃ我らの日ノ本でも確と武将ができるでしょうなぁ」

佐助「いやいや、すんごいねぇ~こりゃあ」

信之「呂布にも引けを取らない、流石は忠勝殿」

幸村「この幸村!本多殿に負けぬよう更に鍛錬をつみとうござる!!」

勝頼「....うむ」

 

忠勝と呂布、二人の武のぶつかり合いは凄まじさを増していくのだが、だが呂布が押されていってしまう。

 

呂布「......うぅっ!」

忠勝「!!!」

だがその時だった、一騎の馬が走り込み二人の間に割って入る。

 

張遼「せやあああああああああああああっ!!」

忠勝「!」

現れたのは張遼だった。彼女は忠勝に防がれるのは承知で攻撃を行い、呂布を救援したのだ。

 

張遼「恋!華雄!撤退すんで!!」

華雄「お……おう!」

呂布「……わかった」

張遼は自分が乗っている馬とは別に、もう二頭誰も乗っていない騎馬を連れており、二人に乗れと促す。

二人はそれぞれ騎馬に乗り込み、張遼は直ぐに汜水関に戻ろうとするが呂布は馬を動かさず、忠勝を見つめる。

 

呂布「……」

張遼「どないしたんや!恋!はよせい!」

呂布「……」

 

忠勝「……」

呂布はジッと忠勝を見つめた後ーー

 

 

呂布「……名前、教えて」

忠勝「……!」

呂布「……ただ、かつ…覚えた。恋の真名、恋って呼んで」

忠勝の名前を覚え、自らの真名を教える呂布の顔は、何処か嬉しそうだった。

そうして張遼や華雄の後を追うように、呂布は汜水関へと後退していくのであった。

その後ろ姿を忠勝はただジッと見つめるのみであった。

その彼の隣に家康がやってきた。

 

家康「呂布は強敵だったか?忠勝」

忠勝「……!」

家康「ハッハッ!そうか!それは良かったな!」

忠勝と呂布の一戦は終わり、家康たちの汜水関での最初の攻防は、こうして幕を閉じたのであった。

 

 

 



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