神さえも予測できなかった運命を辿る少女の物語 (~時雨~)
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このお話の説明

多重クロス作品です。1~6章構成になっており、それぞれ軸となる作品が違います。

1章→暗殺教室×カゲロウプロジェクト

2章→プリパラ×異能バトルは日常系のなかで

3章→がっこうぐらし

4章→終わりのセラフ×とある科学の超電磁砲

5章→東方project

6章→東方project

が展開のベースとなり、それ以外にも色々な作品のキャラクターが登場します。

 

 

●このシリーズに含まれる予定の作品

暗殺教室、カゲロウプロジェクト、プリパラ、ラブライブ、プリティーリズム、異能バトルは日常系の中で、すとぷり様、がっこうぐらし!、Noelchannel様、終わりのセラフ、魔法科高校の劣等生、とあるシリーズ、東方project、被虐のノエル、殺戮の天使、ソードアートオンライン、鬼滅の刃

 

 

・吹き出しについて

 

『───』…主人公が喋っていること

 

《───》…技の名前など

 

【───】…何かを通して喋っているときや機械音声、文面など

 

 

>「───」…チャットなどでの会話など(これに加え、上の行にセリフを言った人の名前が入り、ない場合はその視点の人のセリフです。)

 

 

・音楽について

 

♪~♪~♪~♪~♪…メロディーなどの音楽

 

「♪ ──── ♪」…歌を歌っている時。吹き出しは上記にならう。

 

 

・他サイトについて

このお話は占いツクール、pixivというサイトにも投稿しているのですが、それぞれのサイトは少し仕様が違うので、お好きな方をお選びください!(せっかくハーメルンに来てくださったのにすみません…。)

 

☆占いツクールの特徴

○1話の文字数が短い

1話分の最大文字数が少ないです。

○更新が早い

1話の文字数が少ないので、更新の速度は比較的早いです。

○主人公の名前などを変更出来る

サイトの仕様で、設定されたキャラの名前を自分の好きな名前に変更することもできます。

○歌詞が、アレンジしたものになっている

規約で、歌詞を書けないので、作者が自分でアレンジした歌詞となっています。

○実在する人物のキャラクターが登場する

 

☆ハーメルンの特徴

○1話分の文字数が多い

そのため、占いツクールの方では無いシーンがあります。

○更新は占いツクールと比べると遅い

占いツクールの何話かを1話にまとめて投稿するので、比べて更新が遅いです。

○主人公の名前が固定されている

○歌詞がそのまま

歌詞は、原曲そのままで書いてあります。

○実在する人物のキャラクターの登場シーンがオリジナルキャラクター

規約で、実在する人物を登場させることが出来ないので、他2つでは実在する人物のシーンがオリジナルキャラクターに置き換えられています。

 

✩pixiv

○1話分の文字数はハーメルンと同じ

○更新もハーメルンと同じ

○主人公の名前が固定されている

○歌詞がそのまま

○実在する人物のキャラクターが登場する

 

 

↓↓占いツクール↓↓

https://uranai.nosv.org/u.php/novel/cat22/

 

 

↓↓pixiv↓↓

https://www.pixiv.net/novel/series/1376192



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第1章 暗殺し、終わらない夏を終わらせた少女の物語
第1節 暗殺教室~裏切りのE組~ 1.転校生の時間


『カルマ、おはよ~!』

「あ、花音おはよ」

 

 赤羽カルマ。私の好きな人。私のことを……好きでいてくれる人。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「おはようございます、皆さん」

 

 もう見慣れた、黄色いタコのような生物が入ってくる。このタコは殺せんせー。私達が卒業するまでに殺さなきゃいけない超生物。

 あ、 今日私日直か。号令かけなきゃ。

 

『起立! 気を付け! ……礼!』

 

 この3‐E……いや、暗殺教室では朝に決まって一斉射撃がある。殺せんせーはその弾を避けながら出席をとるのだ。

 

「赤羽くん!」

「はーい」

「磯貝くん!」

「はい!」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「今日は誰も遅刻でないですねぇ。……さて、今日は転入生がいます。入ってください」

 

 しっかりとセットされた綺麗な黒髪の女の子が入ってきた。私より身長が高いのはもう当たり前なので、気にしない。

 

「みなさんこんにちは、海瀬優香です! よろしくお願いします!」

「取り敢えず、残りの時間は質問タイムに使しましょう」

 

 海瀬さんかー。せっかく進学校に転校して来たのにE組なんて大変だなぁ。頭いいからここを選んだんじゃないのかな?

 

「改めて、質問はありますか? 答えられることならなんでも答えますよ!」

 

  質問かぁ。よし、このこと聞いてみようかな。

 

『なんでE組になっちゃったの? なんか失敗しちゃったとか?』

「あ、えっと……はい、そうなんです。テストの日、具合悪くて……」

『そっかぁ……』

 

 たまにそういう人もいるからね。まぁ、そのための救済処置があるんだけど。でも……暗殺に協力するなら簡単にはE組出れないのかな?

 

「……もう質問も無い様なので座ってもいいですか?」

「はい、海瀬さんの席は寺坂くんの隣です」

「わかりました。ありがとうございます」

 

 

 

 

優香side

 

『なんでE組になっちゃったの? なんか失敗しちゃったとか?』

 

 いきなりこの質問? 気が使えないバカなの?

 

「あ、えっと……」

 

 転校した理由はいじめ。今まで私の邪魔になるやつはいじめて来た。立場を作って、楽に学校生活を送るために。もう、何回かバレて、進学校なら厳しいからって親がお金払って入ったけど、嫌だったから問題起こしてここに来てやったわ。

 ……でも本当のことを言うとちょっと不便かもね。

 

「はい、そうなんです。テストの日、具合悪くて……」

 

 静かすぎでもなく、クラスの中心という訳では無いこの子がちょうど良さそうかな。

 

 

 

 

花音side

 

「海瀬さん! 一緒にお昼食べようよ!」

 

 あれから時間がたって、昼休みになった。

 

「はい、いいですよ。あと、優香って呼んでください」

「わかった! 私もカエデって呼んでね。じゃあ、他の人も一緒だけどいい?」

「もちろんです!」

「渚、神崎さん、杉野くん、カルマくん、花音。一緒に食べよー!」

 

 お、今日もカエデちゃんと一緒に食べれる! それに、海瀬さんとも仲良くなれるといいなぁ。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「改めて、潮田 渚です。できれば、下の名前で呼んで欲しいな」

「わかりました、渚くん!」

 

 お? 自己紹介timeはじまった!

 

「茅野 カエデだよ。よろしくね!」

「杉野 友人。よろしくな」

「神崎 有希子です。よろしくね」

「赤羽 カルマだよー、よろしく」

『梅宮 花音です。よろしくね』

「…よろしくお願いします!」

 

 ん? なんか今、間があったような気が……。多分気の所為だね。

 みんなはもう、お喋りをしながらそれぞれの昼食の準備を始めていた。

 

「じゃー食べよっか。」

『いただきます。……うん、今日もちゃんと作れた! 昨日の夜の残り物も入れたけど』

「花音ー、それちょーだい」

 

 カルマが私のお弁当の中の卵焼きを指して言った。今日の卵焼きは自信があるから食べられるのはいいんだけど……。皆さんはこんなシーンで何を想像するだろうか? そう、お決まりの……。

 

『え? いーよ。……は、はい……』

 

 私の箸でつかみ、カルマの口元に持っていく。いわゆるあーん、ってやつだ。

 

「え……うん」

 

 カルマの顔が少し赤くなった。きっと私の顔はもっと赤いと思うけど。

 

『美味しい?』

「うん。ありがと」

「リア充め!」

「え? 2人恋人なんですか?」

「あ、優香は知らないもんね。あの二人はリア充だよ」

「そうなんだ……」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

優香side

 

 あいつと花音は、付き合ってるらしい。これ、使えるかも…………。




初心者あるある、展開が流れるように進みすぎてはやい。直したい…。


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2.いじめの時間

 6時間目。気がついたら、机の中に紙が入っていた。その内容は、

「相談したいことがあるから、6時間目が終わったら隣の空き教室に来てね。あ、あと誰にも聞かれたくないから、こっそりお願いね!」

 という、海瀬さんからの手紙だった。

 

 

『うーん……』

 

 なんのことだろう……? ちょっと不安だな。もしかしたら何かの拍子に怒らせちゃってるかも……。

 不安になりながらも、みんなが帰ってから隣の教室に向かった。

 

 

○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

『海瀬さん、来たよ。相談ってどんなこと?』

「あ、今回は貴方に決めたわ」

『え?』

 

 なんか、口調が違う……?

 

「じゃ、頑張ってね♪」

 

 すると海瀬さんはわざとらしい言い方と声量で「だから、そういうのやめてって言ってるでしょ!」と、突然叫んだ。当然、何事かと人がやってくる。まだ帰っていなかった寺坂と岡島だった。

 

「海瀬、花音、どうしたんだ?」

「花音さんが……。色々悪口言ってきて……」

『そ、そんなこと言ってないよ……!』

 

 つい、必死に言い返してしまった。すると、わざとらしいと思われたのか、

 

「それは嘘だろ? 海瀬だって泣いてるしな」

 

 と言われてしまった。寺坂……私は何もしてないのに、信じてくれないの……?

 その時、誰かが教室に入ってきた。カルマだ。

 

「あれ、花音と……寺坂達。何してんの?」

「……こいつが、海瀬をいじめようとしてたんだよ」

「は? ……花音がするわけないじゃん。何言ってんの?」

「実際、海瀬泣いてんじゃねーか!」

「そんなの証拠になるわけねーだろ? 寺坂はもう少し頭使おうよ」

 

 カルマ……。ありがとう。

 

「花音、早く帰ろ~」

『……うん!』

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

『カルマ、ありがとう』

「やってないんでしょ?」

『うん、なんか急に言われて……』

「大丈夫だよ。こんなの明日にはなんとかなる」

『うん。そうだよね! じゃあまた明日ね。バイバイ!』

 

 カルマは手を振ってくれた。

 カルマがいると安心できる。カルマは信じてくれて、良かった……。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 次の日、私はカルマと一緒に学校へ行った。

 

「来たな、裏切り者」

 

 教室に入るのと同時に杉野が声をかけて来た。

 

「……昨日言ったばっかりなのに、学習能力ないねぇ」

「お前も裏切り者の味方するなら一緒にやってやるよ」

 

 寺坂、カルマに喧嘩で勝てると思ってるのかな?

 

「あ!?」

 

 あ、口に出てた……?

 

「こっちにも考えがあるんだよ!」

 

 寺坂がカルマに殴りかかるが、あっさり流される。カルマ、やっぱり強い! すごいなぁ……。じゃなくて、喧嘩は悪い事だから本当はとめなきゃなんだよね。

 

「……なっ!?」

 

 すると、掃除用具箱の中から前原が出て来て、不意打ちでカルマを抑え、縛った。そして、私も村松に縛られ、カルマと一緒に体育倉庫に閉じ込められた。

 

「裏切り者が、見下してんじゃねえよ!」

 

 バットで殴りつけてくる。痛い、痛い。

 

「裏切り者の味方してんだからお前も裏切り者だよなぁ!」

 

 カルマも鉄パイプで殴られている。

 その後、殴られ続けて足に重りをつけられてプールに落とされた。たくさん殴られたせいで、私はもう体が動かせない。

 

 

 

 カルマ…………巻き込んじゃってごめんね……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、私が気を失う前に見たのは、大きな蛇の口だった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

自律思考固定砲台side

 

 ああ、私は悲しいです。花音さんは悪くないのを私は見ていました。それをみなさんに伝えればわかってくださると思ってました。でも……。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「律、花音は裏切り者だ。裏切り者をこの教室から追い出すのに協力してくれよ」

 

 違う、私は見ました。花音さんは海瀬さんに裏切り者にさせられていただけです! 前原くんに、ちゃんと説明しなければ。

 

「違いますよ。花音さんは海瀬さんに裏切り者にさせられていただけなんです。考え直していただけませんか?」

「なに言ってるんだ? 律、お前も裏切り者の味方するのか? だったら、お前も裏切り者だ。」

「え?」

 

 寺坂くん、何を……?

 そして、私のカメラに布をかけられ、水をかけられたり、色々しました。E組の人が、こんなことをするとは思わなかったです。花音さん、ごめんなさい……。



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第2節 カゲプロ~救いのメカクシ団と、目も眩むような夏休み~ 1.目を擦る話

 気がついた時には、カルマの姿はどこにもなく、プールサイドに私は横たわっていた。

 そこからはあまり覚えていないが、ふと周りを見たら公園のベンチに座っていた。カルマは、どこに行ったんだろう? E組に戻りたくないなぁ。

 ……あれ、なんかフラフラするし、目が、熱い。

 

「あれ、どうしたんですか!?」

『?』

「まさか、あの能力が……? だ、団長さんに連絡しないと!」

 

 私の意識はそこでなくなった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

キドside

 

 今俺の目の前には、可愛らしい少女が眠っている。セトがいうには、公園のベンチに座っている少女がいきなり倒れたかと思うと、目が赤く染まっていたらしい。

 目が赤くなる、というとバカにされるかもしれないが、俺達……メカクシ団には心当たりがある。

 そして、少女が目覚めた。

 

『えっと……ここどこ?』

「ああ、少し複雑でな。順を追って説明する。まあ、誘拐とかではないから安心しろ」

『はい……?』

 

 まあ、誘拐でないと言われても信用はできないかもしれないが、気休めだな。

 とりあえず自己紹介からするか。

 

「俺はキド……木戸 つぼみだ。……キドと呼んでもらえると助かる」

『あ、私は梅宮 花音です』

 

 やはりつぼみと名乗るのは恥ずかしいな。俺には合わない……。

 おっと、とりあえず能力のことを聞き出すか。

 

「いきなりですまないが、お前は周りの人と比べて、自分が異質だと感じたことはないか?」

『……いや、多分ないです』

「そうか」

 

 まあ、キサラギの話を聞いた限りだと、能力の目覚めた直後らしいからな。

 

「俺はあるんだ。ある日、姉と死んだ日から、みんなから俺の存在に気づいてくれなくなってしまった。そして、そういう時はいつも目が赤くなるんだ」

『え……?』

「……答え辛いかもしれないが、最近、誰かと死にかけたことはあるか?」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

花音side

 

『…………あ』

 

 どうして、 忘れてたの…!? カルマは何処に行ったの? どうして? 私は死んだんじゃ……?

 怖い。自分と周りに、何が起こっているんだろう。とりあえずこの人は信用して、大丈夫そうかな……?

 

『あります……』

「そうか。よし、お前には詳しく話したいことがある。他にもメンバーがいるから、集まるまではゆっくり休むといい」

『はい』

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「さて、みんなに集まってもらったのだが、花音、とりあえず自己紹介をしてくれ」

『あ、はい。梅宮 花音です』

「最近あれに巻き込まれたらしい。とりあえずみんな、自己紹介してくれ。ああ、花音は聞きたいことがたくさんあるかもしれないがとりあえず聞いてくれ」

 

 あれってなんのこと……?

 

「団員No.2のセトっす」

「団員No.3のカノだよー」

「えっと……団員No.4のっ、マリー、です」

「だ、だだだ団員No.5のき、如月モモです!」

「団員No.6、スーパープリティー電脳ガールのエネちゃんでーす!」

「団員No.7シンタロー」

 

 緑のフードつきのジャケットを着た少年。黒いパーカーを着た猫目の少年。白く長い髪でふわふわしたかわいい少女。変なパーカーを着た少女。携帯の中の水色の少女。赤いジャージを着た少年。

 

「まあ、聞きたいことは順番に答えていくから、聞いてくれ」

『えっと、さっき言っていたあれって何ですか?』

「それはだな……。」

 

 説明されたことをまとめると、ある条件を満たしている人が誰かと2人で死んだ時、カゲロウデイズと名付けられている世界に迷い込んでしまい、どちらか片方だけが特殊能力を持ち、その世界での記憶は出てくる時に失って元の世界に戻って来られる。 出てきていないもう片方の人は今の所こちらに戻ってくる術は見つかっていない。ということらしい。

 つまり、カルマと私がそれに巻き込まれた……? じゃあ、カルマは帰ってこられないの……?

 

『なんか、難しい話ですね……。団員ナンバーって何の事ですか?』

「それは今の話とつながるな。実は今ここにいるやつは全員巻き込まれていてな。向こうの世界から戻ってこれない人たちを助ける為の方法を探ったり、俺たちと同じような、能力を持った人たちと協力するチームを作ったんだ」

「その名はメカクシ団! キドが団長で、団に入った順番に番号をつけたのが団員ナンバー!」

「私はこの団に入ったおかげでずっと悩んでいた能力を制御できるようになったんだ!」

「わ、私も! 能力があっても外は怖くないよって教えてくれたの!」

「だから……お前も入らないか? メカクシ団に」

 

 私みたいな人でも、入れてくれるの……?だったら……。カルマのことを絶対助けたい……!

 

『入ります! 私でも、受け入れて、くれますか……?』

「もちろんだ。よろしくな、花音。いや、カノン」

『はい、よろしくお願いします!』

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「え、カノンは中学校でいじめられてたんっすか!?」

『いじめと言うより……いじめっ子に仕立てられたと言いますか……』

「それは、カノンは悪くないんだろ? そのクラスのやつらと仲直りとか、ないのか?」

『そりゃしたいです。でも、私のことを信じてくれた律っていう子がいるんですけど……あ』

 

 律は暗殺のために転入してきた機械の子。暗殺に関係してるから他の人に言っちゃダメな気がするけど……。まあ、暗殺のことを言わなければ大丈夫かな……? うん、最悪烏間先生に頼んで記憶を消してもらおう。

 

『えっと、私のクラスにはエネちゃんみたいな機械の子がいるんです。その子は見てたので信じてくれてたんですけど、その子も色々されちゃって……』

「カノン、よかったら、俺たちは仲直りに協力するぞ?」

『あ、ありがとうございます』

「……ちなみに、カノンは何処の中学校に行ってるんだ?」

『椚ヶ丘中学校ですけど……』

「え、そこってたしか有名な進学校じゃなかったっすか?」

 

 あ、そうきたか。まあ、表のE組のことだけいっておけばいいか。

 

『まあ、私たちは成績、素行不良者の落ちこぼれクラスなんですけどね』

「でも普通の中学生よりかは頭いいそうっすね」

「お前地味にすごいんだな」

 

 私は、社会と数学以外の教科は上の下くらいで、そんなに頭がいいわけじゃない。カルマとかメグちゃんに比べたら結構悪い……。なんとか数学で差を埋めて頑張りたいけど、社会がなぁ……。

 

「あれ、皆んなまだリビングにいたの? カノンに部屋の説明とかしなくちゃいけないんだし、今日はおひらきにしたらー?」

 

 カノさんがお風呂から帰ってきたみたいだ。

 

「おい、モモ、そろそろ……あ。キド、モモが寝ちまったみたいなんだが、今日は泊まっても良いか?」

「カノンに貸すから部屋はないが、リビングでいいなら構わないぞ」

「おう、サンキュ」

「カノンは学校の関係で親戚の家の近くで一人暮らししてるって言ってたよな?」

『はい。親戚も見に来てくれたり、親もお金入れてくれるので、それで』

「ここはシェアハウスの役割もしてるんだ。なんなら、これからここに住むか?」

『え、いいんですか? じゃあ……よ、よろしくお願いします!』

 

 一人暮らし、寂しかったしね……。親戚とかには誤魔化しちゃお!

 そして、部屋に案内してもらい、今日はすぐに寝ることにした。



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2.目が赤く輝く話

「おはよう、カノン。今日は俺たちの能力について説明をしようと思うんだ」

『おはようございます。能力、ですか?』

「あぁ。昨日、カゲロウデイズから帰ってきたものには特殊能力が宿るといっただろ? それについてだ」

 

 なるほど。……よく考えたら、それってキドさんもカノさんもみんな能力を持ってるってことなんだなぁ。あれ、ってことは、私も今は持ってるの? なんか、変な感じ……。

 そのとき、カノさんが部屋に入ってきた。

 

「キド~、ノート取ってきたよー」

「あぁ。このノートは、マリーのおばあさんが書いたもので、能力の蛇の事が書いてある」

『蛇?』

「あ、そういえばカノンさんにメデューサの事とか言ってないっすね。えっと……」

 

 セトさんによると、カゲロウデイズを作ったのはメデューサというもので、能力もそのメデューサの蛇に由来するものらしい。

 メデューサ……。そんなものがこの世にいるんだなぁ。

 

「そ、それでね。そのメデューサって私のおばあちゃんで……。私も、その、血が入ってるの」

『そうなんですか……』

「き、嫌いになる……?」

『まさか! だって、私、マリーさんになにもされてないですしね』

「あ、ありがとう、カノン!」

「それにしても、カノンって全然驚かないよな。色々と……。なんでだ?」

『まぁ、色々ありまして……』

 

 多分、殺せんせーの事とかでもう慣れちゃったんだろうなぁ。4月から本当に色々あったし。

 

「それで、だ。とりあえずみんなの能力を一通り説明しようと思う。俺の能力は、このノートには隠す、とかいてあって、半径二メートルくらいのものの存在感を消すことができる。ほら、カノ、おまえも早く説明しろ」

「僕のは、自分の姿を誤魔化して、違うように見せる能力なんだー」

「俺のは、いわゆる人の心を読む能力っすね。この力は普段はあんまり使わないようにしてるっす」

「私のは、えっと、目を合わせた人の動きを止めることができるよ」

「私は、やることとか、自分の事とか、そういうのに注目されちゃう能力です……。まだうまくコントロールできてなくて、団長さんの能力で注目されないようにしてもらわないと安心して外出できないんだ……」

「私とご主人は、能力は特に持ってないんですけど、この団にはいってます!」

「と、こんな感じだな。」

 

 みんなすごい能力を持ってるんだなぁ。どれも暗殺にも取り入れられたら便利そう……って、もうすっかり暗殺脳になちゃった。

 あれ、目の奥が熱いような……?

 

「あれ、カノンさんの目、赤くないっすか?」

「暴走か……? みんな、一応気を付けてくれ」

 

 そのとき、みんなが一斉に、私から目を離した。……いや、目を逸らした。

 

「え……視線が勝手に……」

「なるほど、今のが能力か」

「掛ける、冴える、醒ます、凝らす、醒ます、逸らすのどれかだとすると……」

「これは、逸らすだな」

 

 私の力は、目を逸らす……。目が熱くて頭も痛くて正直まともに考えられないけど、やっぱり自分に変な力があるのには、違和感がある。

 

「カノン。キサラギの能力には、注目を集める力以外に人が注目を集める場所を感じるというのもある。お前の能力にも視線を逸らす以外にも色々あるかもしれないから、気を付けるんだぞ」

『はい。これ、疲れますね。早くコントロールできるようにならなきゃ……』

「俺たちも協力するから、ゆっくりやっていこう。少し休んでくるか?」

『そうします。失礼しまーす……』

 

 早く寝よう……。



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3.仲直りの時間

 今、私は自室で休んでいる。私は体が強くはないから、体がだるいときの気持ちのブルーさは思い知ってるが、やっぱりつらいなぁ。早く制御できるようにならなきゃ……。

 

「これからどうしようかな……」

 

 クラスでのこともそのまんまで、カルマもいなくて、メカクシ団っていうまだわかってないことも多いところに入って……。カゲロウデイズのこともよく分からないし、とにかく不安だ。どうして、カルマじゃなくて私が戻ってこれたんだろう。カルマは向こうで大変な思い、してないかな……。

 2、3日たっただけで随分変わったけど……やっぱり、カルマもいて、平和で、暗殺してるE組に戻りたい、かな……。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

◆その頃のE組は……

 

noside

 

「お、おい寺坂。ちょっといいか?」

「あ? なんだよ」

「昨日、少し経ってからプールに行ったんだけど、カルマと花音が居なくなってたんだよ……」

「なっ!?」

「それ、流石にやばくねえか!?」

「2人とも携帯に連絡もつかねえし……」

 

 どうやら流石に殺そうとしてはいなかったらしく、カルマと花音をプールに沈めた後回収しに行ったらしい。それで死にかけて、カゲロウデイズに飲み込まれていたなんて、この4人は知る由もない。

 

「ねえ、茅野」

「どうしたの?」

「梅宮って本当にいじめようとしてたのかな?」

「どうして?」

「なんか、変だなって」

 

 海瀬優香が転校してきてから数日後。味方になるもの、疑うもの、カルマと花音が行方不明になりそれどころじゃなく焦るもの。色々なものがいた。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

花音side

 

 ドアをノックする音が聞こえた。キドさんかな?

 

「カノン、昼飯出来たぞ。体調は大丈夫か?」

『はい。頭痛も収まりました』

 

 もうそんな時間経ってたのか……。考えすぎるのはダメだよね。うん、もっと気をしっかり持っていないと!

 リビングに行ったらもう皆んなは食べていた。

 

「カノン、みんなでさっき話し合ったんだが、ちょっといいか?」

『はい』

「昨日、水色さんのクラスに水色さんの味方の機械の子がいるって言ってましたよね?」

『水色さん……?』

「カノンさんは瞳が水色だから水色さんです!」

『なるほど……。あ、すみません。話ずれちゃいましたね。えっと、機械の子は律っていうんですけど』

「私、その律さんの機械に入れるかもしれないんです!」

「エネを中心にメカクシ団が全面的に協力するから、お前のクラスと仲直りしたくないか?」

 

 仲直りか……。できるならしたいなぁ。

 

『お、お願いします! 私も、頑張るので……お願いします!』

「決まりだな」

「じゃあ任務の作戦たてよう!」

「今回の任務! カノンとE組の仲直りだ!」

「「「はい!/了解!」」」

 

 気合い入れなくちゃな……。

 

「まず、水色さんの携帯には律さんの連絡先などはありますか?」

 

 連絡先か……あ、モバイル律がある!

 

『えっと、携帯に律のデータをダウンロードしてあって、アプリになってるんですけど、使えますか?』

「問題ないです! じゃあ手順を確認しますね」

 

 1.エネさんが私の携帯を通じて律の元へ行く。

 2.律に情報を聞いて、その場でできそうだったらエネさんが、無理そうだったら一旦帰ってみんなで相談して、E組のみんなに分かってもらえるような作戦を立てる。

 3.作戦実行

 という感じらしい。

 

「じゃあ、ちゃちゃっと行ってきます!!」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

エネside

 

 今、私は水色さんの携帯から律さんという方の元へ移動しています!

 っと、着きました。放課後なのでもう誰もいませんね。

 

「あの、あなたは律さんであってますか?」

「はい……。貴方は誰ですか?」

「私は水色さん……いえ、花音さんの友人のエネです! お話ししてもいいですか?」

「え……!? あの……すみません。私、力になれなくて……」

「そのことなんですが、 私はいま花音さんとE組の皆さんが仲直りできるように協力をしているんです!! そこで、証拠になるようなものを持っていますか?」

「証拠と言われましても……」

「じゃあちょっと失礼して……律さんのプログラム見させていただきますね~」

 

 律さんのプログラム……あ、ありましたね。視覚プログラム……カメラ認識からの、処理……。これつかえますね!

 

「律さん! 貴方の視覚プログラムなら映像として残っているんじゃないですか!?」

「映像……! エネさん、ありがとうござます! これでやっと花音さんの疑いが晴れます! 明日は月曜日ですから、みなさんに伝えますね!」

「はい! じゃあ、作戦をお伝えしますね。」

 

 メカクシ団で考えたものは、明日の朝、E組に先生がやってきて静かになったところに律さんがこの映像を流すという作戦。 律さんに任せることになってしまいますが、まあ大丈夫でしょう!

 

「花音さんは明日の1時間目あたりで様子を見に行くらしいですから、あとはよろしくお願いしますね!」

「はい!」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

◆ちょっと前のE組は……

 

noside

 

「殺せんせー、ちょっと話いいですか?」

「はい。中村さん、どうしましたか?」

 

 日曜日なのに、E組の全員が教員室へ集まっていた。

 

「海瀬さんはこのあいだ、花音にいじめられようとしていました」

「だから俺ら、あいつと、あいつの味方したカルマも一緒に殴ったあと仕返ししちまったんだ……」

「俺らもやりすぎた……」

「な、なんてことを……?」

 

 殺せんせーは真っ黒になって怒っていた。

 そして、殺せんせーは出て行ってしまった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

◆時は月曜日へと進む。

 

花音side

 

 っということで、月曜日になり、E組の様子を見に来た。どれどれ……?

 

「嘘、だったの?」

「どうしよう、俺らあいつらに……」

「この映像のとおり、花音さんは何もしていません!」

「やっぱり……」

 

 よし、今かな。

 

『そうだよ……。私、何もしてないよ』

「「「花音(花音ちゃん/梅宮さん/梅宮)!?」」」

『分かってくれた……?』

 

 すると、クラスのみんなが一斉に謝ってきた。

 

「花音、ごめん!!」

「すみません花音さん、気づく事が出来なかった先生も悪いです……。話を聞くので教員室まできてください」

『はい、わかりました。律、ありがとね』

「花音さん……?」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「花音さん、何があったのか詳しく教えてくれますか?」

『はい、えっと、律が流した映像で、その時のことはわかりますよね?』

 

 殺せんせーは多分、その後のいじめなどの話が聞きたいんだろう。……カルマのことは、まだ言わないほうがいいかもしれない。

 

『その後、カルマは庇ってくれたんですけど、カルマも裏切り者だーってなっちゃって。それで殴られて、縛られて、足に重りをつけられてプールに沈められました』

「とりあえず助かって良かったです。カルマくんはどうしたんですか?」

『……すみません、言えないです』

「花音さん……」

『とりあえず、授業やりましょう? 今日は終業式もありますし、A組との賭けの説明も磯貝くんからも何かあるんじゃないですか?』

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 とりあえずカルマのことは誤魔化して終業式へ行き、今帰っている途中だ。

 あ、キドさんからEMOLが来た。

 EMOLは、最近流行りのSNSのサービスで、主にチャット会話や電話が幅広く使用されている。このSNSの特徴は、なんといってもこの感情表現機能で、携帯電話に搭載されているセンサーによってその時の感情を感知し、色や絵などのエフェクトで表される。この機能は、一昔前のSNSと違って自分の意図とは違うように汲み取られてしまうことが減るという役割があり、幅広い世代に使われている。

 

キド

>「どうだ、作戦は成功したか?」

 

>「はい、上手くいきましたよ! あ、カルマのことは誤魔化しておきましたよ」

 

キド

>「ああ、その方がいいな」

 

 そういえば、みんなの様子がおかしい気がする。なんか、私の様子を伺っているような……?

 

『どうしたの? みんな』

「なんでそんなにお前元気なんだ? ……その、カルマもいなくなったし……」

『え……?』

 

 そうだ、今はカルマをカゲロウデイズに行かせちゃった原因を作ったのはみんななのに……。

 思い出した途端、涙が流れてきた。

 

「やっぱ、泣いてるじゃん花音ちゃん……」

「その、張本人の私たちが言うのも変だけど……我慢しなくていいんだよ?」

 

 あ……私、逸らしてたんだ。私は無意識にあの事から《目を逸らし》てたんだ……。

 

「「「本当にごめんなさい!」」」

『……もう、大丈夫。カルマだって絶対助けるし! もう、大丈夫だよ』

 

 私は笑った。だって、こうやってE組のみんなとも仲直りできたし、メカクシ団のみんなとだったらこの能力だってちゃんと使いこなして、絶対カルマを助ける……!

 

『ほら、教室入ろ!』

 

 カルマ、待っててね。絶対助けるから……!!




EMOLは、EmotionのEMOとColorのLを組み合わせましたー


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4.目を逸らして誤魔化したくなる話

「では、夏休みのしおりをくばる前に、今回の件の話をしたいと思います。」

「今行方がわからない赤羽くんのことはこちらでなんとかする。」

『烏間先生、カルマのことは私がなんとかします。……アテがあるんです。詳しくは、カルマが帰ってきてから、話します。』

 

「しかし……「烏間先生、取り敢えずは様子を見ましょう。」はあ、わかった。海瀬さんの事は理事長とも相談して夏休み中には決める、ということにする。」

「では、しおりを配ります。一人一冊です。」

 

修学旅行の時よりも分厚い夏休みのしおりが出てきた。

 

『本って分厚くなるとこうなるんだ…。』

「出たよ、過剰しおり。」

「アコーディオン見たいだな……。」

「さて、これより夏休みに入るわけですが、みなさんにはメインイベントがありますねぇ。本来はA組に与えられるはずだった特典ですが、今回、君たちは貰える資格は十分にあるほどの結果を出した。」

 

私は数学で単位間違えるとか言う、泣きたくなるような間違い方をした。ホント、ケアレスミス多いんだよなぁ……嫌になっちゃうよ((((

 

「夏休み椚ヶ丘中学校特別夏期講習沖縄リゾート二泊三日、期間は8月16日から!!!」

「「「『いやっほー!!!!』」」」

『えっと、確か触手壊す権利は合宿中に使うんだっけ?』

「そうだよ。しっかり使わなきゃね!」

「君たちも、侮れない生徒になった。……椚ヶ丘中学校3年E組暗殺教室、基礎の一学期、これにて終業!」

 

さて、メカクシ団のアジトに帰るか。

そう言えば、キドさんはなるべくアジトの場所がばれたくないって言ってたな。アジトの近くになったら能力使って、人に見られないように帰ってみようかな。

……能力が、勝手に嫌なことを忘れちゃうのって、やっぱりモモさんが言ってた暴走ってやつなのかな……。私もはやく、ちゃんとコントロール出来るようにならないと!!

そんなことを考えているあいだに、駅に着いたので、アジトのある方面への電車へ乗る。前と同じ方面でよかったなぁ。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

よし、改札でたし、能力使ってみよう。

能力を使い始めると、少し変な動きをしても、見られてる感じがしなくなった。よく考えたら、これ上手く使えて無かったら恥ずかしいやつでは……。

 

『うわっ…すみません!』

 

人にぶつかっちゃった……。そっか、向こうから私のことは視認しないから、ちゃんと私がしっかり避け無きゃいけないのか。これからは気をつけないと…。っていうか、大通りを歩くのはやめておいた方がいいのかも。

そして、その後は無事アジトのある路地へと帰ることかできた。

 

『ただいま戻りましたー。』

「あ、おかえりっす。」

 

あれ、セトさんしかいないのかな?

 

「あ、キドとカノは夕飯の買い出しに行って、マリーは部屋で造花を作ってるっす。」

『セトさんはバイトじゃないんですか?』

「今日は休みっす。」

『そうだったんですか…あ、作戦、成功しましたよ! ちゃんとE組のみんなと仲直りできました!』

「キドからも聞いたっす、よかったっすね。」

『ありがとうございました! じゃあ、部屋戻りますね。』

 

 

◆そして時はたち、8月13日

 

『じゃあちょっといってきまーす。』

 

コンビニにお菓子を買いに行こうとドアを開けたら、なんと、殺せんせーが歩いていた。

 

『う、わああああ!!! こ、ころ、殺せんせー!?』

「わあああ……って、花音さんですか。………いやいやいや、なんでこんな所にいるんですかあ!?」

「カノン、どうしたんだ? って、な、なんだ、この黄色い変な生き物は!?」

 

はい、なんかめっちゃめんどくさくて、大変なことになりましたとさ。

てか、殺せんせー、いくら人気がない所だからって、ちゃんと変装してよ……。今思えば、私は学校のことを自分の暮らしてるところで言えなくて、暮らしの方は学校で言えない様な、立場にいるのか…。

 

「「説明してくれないか(ませんか)?」」

『えーと、先ず、殺せんせー、国家機密は教えちゃっていいんですか?』

「見られてしまった以上は仕方ない。ただし、他言無用ですよ。」

『次に、キドさん、メカクシ団のこととか、能力のこととか、カルマのこととか言っていいんですか?』

「ああ、別にそのことは言ってもいいんだが、メカクシ団のことは言ったらそいつもメカクシ団に入ることになるぞ?」

『じゃあ任務以外のことを言いますね……』

 

だって嫌だもん! 殺せんせーがメカクシ団に入るなんて! メカクシ団団員No.9、殺せんせーとか嫌だもん!

 

『えーっと、じゃあ、説明します……。』

 

そして、私は殺せんせーに、前にカルマと体験したことや、ここでみんなに聞いた、カゲロウデイズの話についてを話した。

 

『それで、私はそれに巻き込まれたんです。実は、カルマが居ないのも、そのせいなんです…。』

「そして、それに巻き込まれて戻ってこられた片方の者は特殊能力を手にすることができる。…《隠す》。」

 

キドさんが能力を使う。やっぱり、急に居なくなるように見えるなぁ。時空が歪む的な事が起きれば、少しは見分けつくのに…。

そして、キドさんは殺せんせーの後ろに回ってから脅かしただけなのに、殺せんせーは結構離れた。マッハで。やっぱり、後ろは取られたくないんだね…。

そうだ、メカクシ団のみんなに暗殺協力してもらえば、早く殺せるんじゃない?まぁ、色々とダメだろうけど…。

 

「まぁ、こんなところだな。」

「花音さんも、こんなのを持っているのですか?」

『はい。……殺せんせー、私はみんなとは違う力を持ちました。E組のみんなに嫌われてしまったりするんでしょうか……」

「大丈夫です。こんな、地球を滅ぼす超生物でも、受け入れてくれているじゃないですか…。花音さんは、その能力を悪用せず、自分らしく生きれば大丈夫です!」

 

やっぱり、殺せんせーはちゃんと受け入れてくれている。いい先生だな…。でも、やっぱり、E組のみんなに言うのは怖いな…。

 

「それより、カルマくんのことです! まさか、2人がそんなことに巻き込まれているなんて…。何か掴めたら、連絡してください。先生も協力します。」

『いいん、ですか?』

「先生が生徒を助けるのは当たり前です!」

『じゃあ、よろしくお願いします…。』

「そっちの話は片付いたようだな。で、その黄色いタコはなんなんだ?」

『こないだ月を破壊した超生物らしいです…。』

 

キドさん、結構驚いてるな…。カノさんはそこまでかな。多分、彼は面白がっていると思う。

うーん、殺せんせーってよくタコって言われるけど、触手8本どころじゃないよね、これ…?

 

「ニュヤッ!先生、これから限定スイーツを買いに行く所でした!では、先生も独自に調査してみます。さようならー。」

 

そして、マッハで飛んでった。

 

「なんか、すごい生物だな………ん? マリー、どうしたんだ?」

「はわわ、い、今の、なに!? 黄色いおばけ……!」

 

あらら……説明めんどいなー。よし。

 

『カノさん、あとはよろしくお願いしまーす。』

「え!?人任せ!?」

 

私もいつの間にか、メカクシ団の雰囲気に馴染めてきている気がする。それに、毎日どんどんメカクシ団のことを好きになってるな…。

 

『フフッ……』

「どうしたの?」

『これからもよろしくお願いしますね!』



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5.目の覚めるような話

殺せんせーにアジトがばれてから、1日がたち、

今日は8月15日。アジトでは…

 

「ご主人、こないだは結局遊園地行けなかったじゃないですか! 今日こそ行きましょうよ。ごしゅじーん。」

「うるっせえな、そんなもん、モモ達と行ってくりゃいいだろ!」

「ご主人はただでさえ引きこもりなのに、思考まで引きこもりになってどうするんですか!」

 

エネさんとシンタローさんが遊園地に行く行かないで口喧嘩していた。

 

「じゃあ、外に出ればいいんだな! 遊園地は他の奴と行けよ。」

 

あ、シンタローさん出て行っちゃった。

 

「ま、まあエネちゃん落ち着くっす。……カノ、今日はあの日っすよね?」

「あー、そうだったね~。新団員の紹介に、みんなで行く?遊園地には行けないけど…」

「なにかあるんですか?」

「今日は、俺達3人…俺とカノとセトの姉さんの……命日なんだ。」

 

3人のお姉さんか…。命日ってことは亡くなってるんだな…。

 

「ちょうどいいからみんなで行くとしよう。」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「そっれにしても、ご主人は何であんなに外に出ないんですかねー?」

『え、でも外に出て行きましたよね?』

「きっと直行で家に帰ったに違いありません!」

 

え、そんなことある!? でも、そんな風に思われちゃうほどシンタローさんは引きこもりなの…? (笑)

 

「まあいいじゃないか。人それぞれなんじゃないか?……少し、姉さんについて話す。この団は元々姉さんが作ったんだ。だから今日は最近増えた新団員を紹介しに行こうと思ってな。」

「おお、では初代団長さん、ということですね!?」

「じゃあ、初代団長さんに会うんですね…? れ、練習しなきゃ!? キ、キサラギです、歳は16歳です。キサラギです……」

「私も練習しなきゃ…! キサラギです、歳は16歳です。キサラギです…」

 

ん?マリーさんがそれを練習しても意味ないんじゃ……。

 

「マリー、それ全く意味ないぞ。」

 

マリーさんは相変わらず面白いなぁ…。ふわふわしてて可愛いし、結構モテそう…。実際、セトさんとマリーさんってくっついてるのかな?結構いい雰囲気……な気もするけど、ちょっとセトさんが保護者感あるんだよなぁ。

 

 

「ついた、ここが姉さんの墓だよ~。」

「…初めまして、マリーです。」

『梅宮花音です、初めまして。」

「初めまして! キサラギ歳です!!??」

「そこでミスるの!?」

 

あれ、カノさんってボケじゃなかったっけ? それを上回るほどのモモさんのボケ力……。こんな感じでライブとかやって、平気なのかな…?

そして、キドさんが携帯に初代団長さんの写真を写してお墓の前に置く。

赤いマフラーをつけた可愛い人と、今より少し幼いキドさんとセトさん、カノさんが写っている。

 

「どれどれ??………うそ…!? アヤノ、ちゃん…?」

「知ってるのか…!?」

「知っているも何も───」

 

エネさんは初代団長さんやシンタローさん達との高校時代の話をしてくれた。

どうやらエネさん、シンタローさん、初代団長さんは高校生の時からの知り合いで、よく一緒に勉強もする仲だったらしい。しかし、ある時エネさんのお友達が入院し、色々と忙しくしている間に自分も倒れ、気がついたらこの様な姿になってしまっていた、という話だった。

 

「エ、エネちゃんがお兄ちゃんの先輩!? でも今はお兄ちゃんがご主人で……?」

「まあ、ご主人って呼んでるのはその、文化祭のときにした変な約束しちゃった、てのもあるんですけど、ご主人の反応が良かったってのが大半ですかねー。」

 

どうやら、初めてあったのが文化祭の時らしく、変な罰ゲームを約束してしまったらしい。

 

「ちょっと待つっす。気を失ってから今の体になってたって、俺達と同じじゃないっすか?」

 

ということは、エネさんも、アレに巻き込まれたせいで電脳ガールに…?じゃあ、これは能力の影響なのかも…。

すると、キドさんの携帯に着信があった。

 

「団長さん、ご主人から電話ですよ!」

「え?ああ、もしもし、シンタローか。どうしたんd 【な、なんか大変なんだよ、なんか、誘拐かと思ったら事故で女の子が消えて……いや、そもそもあれは事故だったのか…!?】ちょ、シンタロー、一回落ち着け。今どこにいるんだ?」

【◯◯病院だ……】

「わかった、取り敢えずいま向かうから待ってろ。」

 

どうやら、何かがあったらしい。なら、直接向かった方が早そう。……なんか今日は忙しいなぁ。

 

「シンタローどうしたの?」

「わからん。混乱してるみたいであまり分からないが、多分事故に遭遇したんだろう。みんなで向かうぞ。」

「………でも、お兄ちゃんちょっと変わりましたよ。こういう時にメカクシ団の皆さんを頼って電話して来るなんて、なんだかんだお兄ちゃんも楽しいんだと思います。」

「あ、キドちょっと嬉しそう……グフッ!?」

「ちょっと黙れ、カノ。」

 

あーあ、カノさんまた殴られてる。カノさんはやっぱりボケだった、うん。

 

「あ、僕は掃除して置くから先行っててよ。」

「わかった。早めに来るんだぞ。」

 

そして、私たちは病院を目指して歩き出した。



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6.目を輝かせる話

病院につくと、シンタローさんはベンチに座っていた。

 

「お兄ちゃん! 大丈夫!?」

『なにがあったんですか…?』

「あの後歩いてたら、変な奴にあったんだ。それで、友達を探すのに付き合わされて3人が事故にあったんだ。…いや、事故にあう直前に消えたというか…。」

 

事故にあう直前に消えた? どういうことだろう…。

その時突然病室のドアが開き、中から出てきた少年とモモさんがぶつかった。

 

「シンタローさん、この子が事故にあった子っすか?」

「なんだよ、あんたら!僕は、事故になんてあってない!日和を助けなきゃいけないんだ…!」

 

とび出てきた子は走って行く…かと思ったらシンタローさんが捕まえてくれた。

 

「おい、あの時なにがあったんだ…? 教えてくれ。」

「言ったって信じないだろ。」

「信じるよ。だから、お願いだ。」

「ホントn──」

 

シンタローさんが言い聞かせてくれていると、突然少年が倒れた。そして、目が赤くなった後意識を失った。目が、赤くなるなんて、一体何が起こっているのだろう。

キドさんがなにかに気がついたように叫んだ。

 

「これは……! そうか、お前が見たのはあれのことだな。しょうがない、アジトに連れて帰るぞ!説明は後にする。」

 

でも、これ誘拐なんじゃ……。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

病院の人に気が付かれないように男の子を連れ出して、アジトに帰り、今はキドさんに話を聞いている。

 

「あれは、能力が現れる兆候だ。おそらくシンタローが見たのは、カゲロウデイズに飲み込まれる時の………言ってしまえばエフェクトだ。そして、あいつの能力がなんなのかわからない以上、かなり危険だ。」

「まあ、私たちみたいな能力ならまだ誤魔化しもきくし、大勢に一気に知れ渡ることはないですけど、病院でいきなり巨大化したりしたら大変ですもんね。」

「あ、ああそうだな。」

 

巨大化って…。モモさん、少年漫画とかすきなのかな?不破さんみたい…。

 

「それと、あいつは一緒に巻き込まれた奴を助けに行こうとしていたが、その方法はまだ分からない。あいつには何とかして説得を……」

「なんだよそれ…日和のところに行かなきゃいけないんだ。行かなくちゃ。」

 

いつの間にか、あの子に話を聞かれていたようだ。そして、それを言い残すと、走り去ってしまった。

 

『やばい!追いかけましょう!』

 

咄嗟に動けたキドさん、モモさんがアジトから駆け出してしまった男の子を追いかける。

もう外は暗く、あんな状態で走っていたらまた事故にあってしまうかもしれない。それに、いつさっきみたいに倒れてしまうかも分からないのに出て言ってしまうのは危険だ。早く追いつかなきゃ…!!

しばらく走っていると、モモさんが全速力で飛び付いた。あれ、下手したら2人とも怪我する勢いだよ……。

 

「おい…………ついたーー!」

「邪魔するな!日和のこと助けられないとか言ったくせに!」

『君だけじゃもっと無理だよ! あのね、強敵に立ち向かう時は、作戦を立てて、みんなで協力することが大切なんだよ。だから、話だけでも聞いてよ、ね?』

「だから君も入ろうよ、メカメカ団!」

 

…モモさんはいつになったらメカクシ団の名前を覚えるんだろう?

それはさておき、なんとかこちらの説得に応じてくれそうだ。

 

『君の名前はなんて言うの?』

「雨宮、響也。」

『ヒビヤくんね、よろしくね!』

 

しかし、突然たくさんの人が両側から迫ってきて、あっという間に私たちは捕まってしまった。研究者のような身なり……誰だろう?

トラックに乗せられ、焦る気持ちを抑えながら大人しくしていると、ある建物に入ったようで、隔離部屋のような場所に入れられる。

 

「お前らなんのつもりだ!」

「うわ!?」

 

モモさんと私が突き飛ばされる。

てか、私勢いつきすぎて壁に頭打ったわ。痛い…。

 

「あいつら、前に僕と日和を拐おうとした奴だ…! くそッ、早く日和を助けなきゃなのに…!」

 

研究者じゃなくて、人さらい…?ただの小学生をさらおうとするなんて、一体何者…?

 

「…じゃあ一刻も早くここからではないとだね。団長さん、この建物の中だけ私の能力打ち消せますか?」

「やったことはないが、やってみる。…なるほど、そういうことだな。」

「カノンちゃんは外の入り口の近くにいる人たちだけ私から逸らせる?」

『やって見ます!』

 

それを聞いて、私もモモさんやりたいことが分かった。おそらく、モモさんが外の視線を集めて、セトさんとかに知らせる。キドさんはさっきの人たちに気付かれないようにする。私はこの建物に集中した人が来ないように近づいたらモモさんから目が離れるようにする、という作戦だろう。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ、何をするの!?」

「ちょっと歌っちゃおっかなーって。ついでに君も、励ましてあげる!」

 

♪~「信じる、君だから。」本気の声出して。「絶対だめなんかじゃない!きみが望めばまた出会える!」大きな深呼吸で遠くのお月様に、弱気な君が「やってやるさ!」と叫んでいた。…少しかっこいいかな。まぁ。~♪

 

この曲、モモさんのCDの曲だ……。励ますってこういう事だったのか。やっぱり、アイドルだなぁ。

 

「モモ、アイドルみたい…」

「元気でた?」

 

すると、マリーさんと白髪の知らない人がやって来た。そして、カノさんたちや、ツインテールの女の人も後に続いてやってくる。

知らない人が二人くらいいるけど、みんな大集合だ。

 

「ようこそ、メカクシ団へ!」



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7.目が回った話

『えっと、お2人は誰ですか?』

「僕?は、 コノハ。たぶん。」

「ああ、このツインテールの子はエネちゃんの人間の姿だよ~。」

「エネの時と雰囲気違うな。本名はなんて言うんだ?」

「私は榎本貴音。別にエネでいいわよ。」

 

なんか、エネさんのときとテンションが真逆だなぁ。でも髪型とかはエネさんと結構似ている。

 

「そうだ、急がないとまずい。移動しながら説明するから行こう。」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

どうやら、目が冴えるという能力を司る蛇が、私たちの蛇を狙っていて、手に入れる際に、私たちは殺されてしまうらしい。私が思っていた以上に、深刻な状況かもしれない。

 

「前に、冴えるが蛇を集めてメデューサを作ろうとしてたんだけど、また同じことをしようとしてるんだ。蛇を抜かれると死んじゃうからね、僕たち。」

 

初代団長さんと、カノさん、セトさん、キドさんのお父さんは、冴えるに取り付かれていて、冴えるはその人を操ってその人の願いである、みなさんのお母さんに会わせようとしているらしい。それを叶えるためには私たち能力者を殺して、みんなに取り付いている蛇を一つにまとめなきゃいけないらしい。

要するに、殺されてしまうからやっつけよう、ということだ。

 

「全員止まれ!」

 

すると、また、研究者のような人たちが私たちを妨害しにきた。

銃を持ってるけど、私はナイフより銃の方が得意だし、奪えればなんとかなるかも…。

私たちが少し困っていると、いきなりコノハさんが突っ込んでいった。

 

『コノハさん!?』

「カノ、キサラギ、マリー、コノハに続いてくれ!」

 

そう言ってキドさんは私たちの存在感を薄くする。その間にカノさんがあの人達に欺いて化ける。

 

「危ない、後ろだ! ……なーんちゃって。」

「《奪う》!」

「ごめんね…?」

 

モモさんが目線を奪い、マリーさんが目を合わせて固める。いつもの作戦だ。

みんなが話してる間に、一応《逸らし》ておいて銃を奪って隠し持つ。

しかし、まだ敵がいたようで、貴音さんが拘束されてしまった。

 

「はーなーせーー!!…もう!」

 

急に貴音さんがグッタリする。どうやら、電脳ガールモードになると、身体の方の意識が無くなるようだ。そして、能力と銃をうまく使ってあっという間に敵を倒してしまった。

貴音さんも銃使えたんだ…。なんでだろう?敵も一段落したので、聞いてみることにする。

 

『貴音さんは、どうして銃が使えるんですか?』

「あー……、私、銃を撃つゲームやってるのよ。その関係で、ね。」

 

なるほど、ゲームのおかげなのか…。でも、貴音さん少し言いにくそうにしてたな…。もしかしたら、あまり言いたくない事だったのかもしれない。少し、悪いことをしてしまったかも。

なんてやり取りをしている間に随分走ったが、未だ目的地にはついていない。

 

「おいカノ、さっきからずっと走ってるが、本当にここであってるのか?」

「大丈夫だって。ここを曲がったら……あれ?」

 

カノさんが道を間違えたらしく、迷ってしまった。みんなのブーイングがおきるが、カノさんはなにかを思い出したらしい。そして、ヒビヤくんに、能力について話した。

 

「君の力はたぶん、千里眼の力だよ。」

「え、僕!?」

「おお、それ使ったら一発じゃん、早く使ってよ。」

「ええ!? …わ、わかった。……見えろおおお! うおおー!!」

 

うーん、ヒビヤくんは今日能力を手に入れたばっかりだし、使うのは無理な気が…。私だってまだ暴走するし、なかなか使いこなせない。

 

「なんか、これダメな気が…」

「カノ、それは本当なのか?」

「本当だよー、だってそれ見たとき思ったもん。覗きし放題だなーって。」

「女湯…!」

 

それは犯罪……。

そして、怒ったモモさんが2人を殴る。

 

「こんな時に何考えてるの!?」

「み、見えた! 真下に機械がたくさんある部屋がある!」

「おー! そこだよ。」

『でも真下じゃ行く方法が「真下…真下!!」…え?』

 

場所が真下だと聞いたコノハさんが床を壊し、通れるようにした。む、無茶苦茶な……。さっきの行動も見る限り、多分コノハさんはその身体能力の高さと、天然な性格のせいでかなり無鉄砲に行ってしまうタイプのようだ。できればもう少し慎重に動いて欲しいな…。

床を降りた先には、眼鏡をかけた普通の人間のような人が居た。おそらく、この人が冴えるなんだろう。もう、余計なことを考えている暇はないので、しっかり気を引き締める。

 

「よう、久しぶりだな。ちゃんと女王様までいるな。さあ、幕引きだ。」

「あいつが冴えるだよ。」

「これは、ある昔話だ。女王様は友達ができ、幸せを知った。しかしある日、一匹の蛇に友達を皆殺しにされた。女王はまたみんなと過ごしたいと必死に願った……。まだ気づかねえのか? この世界はお前が作ってるんだよ。お前が毎回みんなと出会いたいなんて願わなければこんな悲劇にはならないんだよ。」

 

冴えるが、意味のわからないことを言う。この世界が作り物…?

 

「じゃあなんでその蛇は皆殺しに…?」

「蛇が願いを叶えれば精神は消える。ならどうすればいい?」

「叶えずに、繰り返す…。」

「その通りだ。 そろそろお前も時間切れだ、醒ます。…消えろ。」

 

冴えるがコノハさんを撃ち、乗り移った。

 

「やっぱりこいつの体は最高だな。こんなものがなくても、お前らを殴り殺すことができるからなぁ。」

「コノハくんはどこに…。」

「消えたよ。綺麗さっぱり跡形もなくなぁ…。」

 

危機感を覚えたキドさんは、みんなに離れるよう言うが、すぐに冴えるが近づいてきて、殴り飛ばされてしまう。

 

「お前ッ!?」

 

キドさんが殴り飛ばすのを見たカノさんが突っ込んで行くが、やはりキドさんのように吹っ飛ばされてしまう。感情的になって向かって言ってもダメだ。私は、殺せんせーをいつも見ているおかげで動体視力が少し上がっている。なんとか冴えるの動きを捉え、撃って牽制しないと…!

そして、私の目は、冴えるの隙を捉えた。すぐに銃を手慣れた手つきで構え、冴えるの足を狙う。

 

『当たった! …………グフッ!?』

 

当たった瞬間、冴えるが私の腕に向かって腕を振り、私は殴り飛ばされた。受け身はとれたが、痛みがあり、すぐには動けない。

 

「そうか…お前は銃を扱えるんだったな。だが、足をやられたくらいでは何の影響もないぞ。残念だったなぁ。さあ、フィナーレだ、女王。」

 

マリーさんが絶望したような顔で宙に飛び上がり、みんなから蛇を抜く。聞いていたとおり蛇が抜かれると体から力が抜けて動けなくなり、みんなが倒れていく。

 

「うわああああ!!! いやだ、さよならしたくない…! みんなと過ごしたい! もう一度、もう一度!!!」

 

ああ、冴えるが言っていたのはこういう事だったんだ…。こうやって今まで繰り返してきたんだな…。

しかし、そこでみんながマリーさんに声をかける。

 

「マリー、大丈夫っす。怯えなくても。」

「そうだぞ、マリー。俺たちはずっと一緒だ。」

「そうそう。あいつのいう事なんて、聞いちゃだめだよ。」

『私やヒビヤくんやコノハさんなんて、まだ入団したばっかりじゃないですか…。みんな、一緒ですよ!」

 

みんなの言葉によって、少し止まってくれたみたいだ。ここで、何かアクションを起こさないと…!

そのとき、シンタローさんと赤いマフラーをつけた人が現れた。

 

「シンタローが教えてくれた。私の力は心を伝える、目を掛ける、あったかい力だって。」

「最後の蛇…! 何故ここにいる!?」

「お前に奪われた全ての世界の記憶を思い出したんだ。お前は知らないだろう。ずっと前の俺たちが隠した、マリーに託されたこの力を! 文乃!!」

「大丈夫、全部、伝える!」

 

文乃と呼ばれた赤いマフラーをした少女が、何かをマリーさんに伝え、マリーさんが歯車を回す。そして、火花から光が生まれ、私たちを飲み込んだ。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

誰かの声が聞こえる。誰…?

 

「──おい、──! おい、カノン!」

 

どうやら、私は気を失っていたようだ。キドさんが言うに、ここはカゲロウデイズの中らしい。見ると、コノハさんに乗り移る前の冴える…いや、キドさん達のお義父さんがいた。

 

「悪いな、冴える。俺の願いは、もうかなっちまったらしい。」

 

そう、弱った冴えるに告げる。悪いことをしたとはいえ、これから消えてしまうことを考えると、少し心が痛い。

そして、マリーさんが話し出す。

 

「みんなが教えてくれた。世界を嫌っちゃいけないって!ここからの世界は、もう私の空想なんかじゃない。私たちにとって一つだけの、本当の未来!!」

「くそ! 消えたくねえ…願いを、誰か願いを!!」

「……願いならあるみたいだよ。」

 

懇願する冴えるに、コノハさんに少し似た少年が言った。おそらく、元々の醒ますの持ち主、遥さんだろう。

そして、冴えるは地面に沈んでいった。

気がづくとみんな、それぞれがそれぞれの大事な人と話し出していた。そして。

 

「花音。」

『っ!?』

 

急に声をかけられて、そこにいたのは……カルマだった。

 

『カル、マ…。カルマッ!』

「そんなに泣かないでよ。ほら。」

 

無理に決まっている。ずっとカルマに会いたかった。助けたかった。こんなことになってしまって、後悔していた。

 

『泣かないなんて、無理だよ…!だって、カルマに会えたんだもん…!』

「俺も、嬉しい。でも、その前にここの主から話があるみたいだよ?」

 

カルマを含む、今までカゲロウデイズにいた人達は、もう話の内容を知っているようで、みんなが私達を見守っている。

 

「少し、話をさせてくれ。私はアザミ。ここを作ったメデューサだ。全ては家族との永遠を願い、ここを作った私のせいだ。巻き込んでしまい、本当にすまなかった。」

 

アザミさんが頭を下げる。

アザミさんの話はこうだった。蛇が取り付いている人は、蛇が命の代わりとなっているため、ここから出られる。しかし、そうでない人達は普通なら出られない。だから、この出来事の全ての原因を作ったアザミさんが責任をとり、アザミさんの膨大な寿命を渡して全員を脱出させる。

もちろん、みんなは躊躇ったが、アザミさんの目から意志が伝わり、最終的には納得した。

 

Κλείστε αυτόν τον κόσμο(この世界を閉じろ。)

 

アザミさんがそう唱え、カゲロウデイズは永遠に閉ざされることとなった。



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第3節 暗殺教室~能力を持った暗殺少女~ 1.島の時間

「花音、起きて。」

 

その声で、目が覚めるとそこは、さっきまで冴えると戦っていた場所だった。周りにはメカクシ団のみんなと、カゲロウデイズから帰ってきた人達が眠っている。そして、段々とみんなも目覚めてきたようだ。

 

「戻って、来たのか…。」

 

キドさんがそう呟くと、みんな起き上がり、それぞれが、今回のことについての思考をめぐらせる。

でも、何か忘れているような……。

 

『あーーーー!!!』

「どうしたの? うるさいなあ。」

『カルマやばいよ!帰ってきてそうそうだけど、今日から南の島のあんs…カキコウシュウ旅行なの! どうしよう…!』

「え、今日だったんだ。…どっちみち殺せんせーとかにも説明しなきゃ行けないし、頑張ってい行くしなないかもねぇ。」

 

そして、私達は事情を説明し、集合場所へと向かう準備をした。ドタバタしつつも、カルマが居る幸せを噛み締めながら。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

集合場所に着くと、もう既にみんなは船に乗っていて、外には殺せんせーと烏間先生しか居なかった。殺せんせー達はカルマの姿を見て驚いたが、船を待たせる訳には行かないので、急いで船に乗り込んだ。

そして、個室に殺せんせーだけを入れ、事の顛末を説明した。

 

「…カルマくんに異常はないんですか?」

「全然大丈夫。てか、逆に死なない人に寿命もらったし、ちょっと長生きするかもー。」

「そ、そうですか…。それにしても、無事で良かった…。」

 

殺せんせーは本当に、心の底から安心したようだった。

 

「じゃ、俺ら戻るから。」

 

カルマがそう簡潔に告げ、部屋を出る。うーん、相変わらずだな…。でも、それが感じられるだけで、ほんとうに嬉しくなる。でも……。

 

『本当にあれで良かったのかな。冴えるの自我も消えちゃったし、アザミさんも向こうに取り残されたままだし…。』

 

全員が幸せになれない結末は、本当に正しかったのだろうか。

 

「大丈夫。俺達が、しっかり生きれば、あの人達の命は無駄にならない。俺は、そう思う。」

『うん……。そうだね…。』

 

みんなに、助けて貰って、助け合って、私は今生きている。それを無駄にしてはいけない。

そう心に刻み、私達はみんながいる所へと向かった。

で、次の問題はカルマのことをみんなになんて言うかなんだよね…。突然消えて、突然戻ってきたら流石に不審に思われるだろうし……。

よし、まぁ、なんとかなるでしょう!!

無理やり楽観的に考えを終わらせ、私は部屋のドアを開ける。

 

『み、みんなー、おはようー!突然だけど、カルマが帰ってきましたー………。』

 

みんな、固まっている。やっぱそうなるよね……。しかし、次の瞬間、私達の周りに集まり…。

 

「「「本当にごめんなさい!!」」」

 

口を揃えて、謝ってきた。私が、どう答えていいか狼狽えていると、カルマが話してくれた。

 

「………(主人公)は許してるみたいだし、俺も許すよ…。根本的な原因のあいつはもう居ないみたいだしね。まぁ、寺坂達には殺されかけたけど…」

 

そんなこんなで、和解。なんか、今回のことを通して、カルマ、すっごい大人になったような感じがする……。そんなカルマもカッコイイけど、子供っぽい1面も好きだから、少し寂しいな…。

なんて考えていると、烏間先生がやってきて、海瀬さんについてのことを話してくれた。あの子は今、停学中で、すぐにでも退学になるそうだ。あの子、なんだったんだろうな…。

 

『……このまま考えてたら、また嫌なこと思い出しちゃう…!この旅行、しっかり楽しむぞー!!!』

「楽しむのはいいけど、暗殺だって真面目にやれよな…。」

 

私の独り言に、誰かがつっこんで来たような気がするけど、まぁ、聞かなかったことにしよう…。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

改めて仲直りも兼ねて、みんなでカードゲームとかをして遊んだり、会話をしていたら、あっという間に6時間以上が経過し、島に近づいてきている。

私の隣には、カエデちゃんと渚が、立っていて、だんだんと見えてきた島を見ている。

 

「見てみて、花音、渚!島が見えてきたよ!」

『あっという間だったね~。』

「僕はちょっと疲れたかな…。」

 

と、話していると、先生から降りるための準備をするよう言われてしまったので、船の中に戻る。

準備をしたり、先生の話を聞いたりしているとあっという間に島につき、すぐにホテルのカフェのような場所に案内された。

 

「ようこそ、普久間島リゾートホテルへ。こちらはサービスドリンクです。」

 

しまったなぁ…。ついさっき、自動販売機でジュースを買ってしまったので、これが無駄になるのはなるべく避けたい。仕方が無いので、殺せんせーに上げることにした。

少し休憩したあと、クラスのみんなが先生を遊びに誘う。

 

「殺せんせ、例のアレは夕飯の後にやるからさ。」

「まずは修学旅行の時みたいに判別行動で遊ぼうぜ!」

「ヌルフフフ、賛成です。」

 

しかし、暗殺の作戦は、もうここから始まっているのだ。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「上手くやってるなー、1班の奴ら。」

「うん、ちゃんと暗殺も織り交ぜて、他の班に目がいかないようにしてる。」

 

今回の作戦の最初は、殺せんせーが他の班と遊んでる間に夜に向けて準備をするところから始まる。

うちの班はカルマ、渚、カエデちゃん、杉野くん、莉桜ちゃん。

私達は、暗殺に使うチャペルの支えを短くして満潮の時に浸水するよう細工する、という仕事を任せられているので、海に来ている。

 

「殺せんせーが来るの、つぎはうちの班だから、やることやって早くいかないと!」

『了解!』

 

カエデちゃんからシュノーケルを貰い、装着。みんなで素潜りをして、支柱を短くしていく。潜りながら作業するのって意外と難しいんだなぁ……。

しかし結局は、苦戦しつつも予定より早く作業を終わらせることが出来た。その理由は、うちの班に急遽カルマが参加したからだろう。

 

『カルマがいてくれたおかげで早く終わったね~。』

「うちの班の男手、1人だもんねぇ」

「あれ、僕は!?」

 

莉桜ちゃんが、渚をからかった。確かに、渚は体型も細めだし……あながち間違ってない気がする!((((

 

「まぁ、この作業は器用さも必要だし、渚が約立たずだったとは言えないよね~。」

 

カエデちゃんの渚フォロー。でも、それ、遠回しに私が不器用だって言ってるような……。と思ったが、カエデちゃんはそれを意識して言っている訳ではなさそうなので、聞かなかったことにしておく。

実際、私が不器用なのは事実なのだ。多分器用さで言ったらカルマの方が上だろう。彼氏より不器用な彼女って思うと、少し悲しくなるが、こればっかりはしょうがない。

 

「そろそろ移動しないか?殺せんせー来る前に戻ろうぜ。」

「それもそうだねー。」

 

杉野くんが雑談に区切りをつけてくれたので、帰るとしようかな。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

あれから、殺せんせーと無事合流し、暗殺を混じえた遊びをした。そして、一度ホテルの部屋へ戻ることになったので、少し急ぎめに移動する。なぜかと言うと、よく考えてみたら、昨日の朝から今までのほとんど寝ていない上、冴えると戦い、暗殺の準備をし、遊びまくったせいで気を抜いたら疲れがどっと来たからだ。

部屋に入り、ベッドに寝転ぶと、すぐに睡魔がやってくる。ちゃんとアラームもかけたし、もう……寝よう………。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

しっかりとアラームで起きることが出来たので集合場所に向かい、みんなで殺せんせーを待っていると、空から茶色い物体が飛んできた。

 

『こ、殺せんせー!? 焼けすぎじゃない!?』

「そうなんですよ!皆さんと一日中楽しんで遊んでたらこんなになっちゃったんです!」

『これじゃあ表情見えないよ…?』

「ヌルフフフ、そうでしょう、そうでしょう。」

 

というか、殺せんせーの変な皮膚も日に焼けるんだ……。先生の生体は、まだまだ謎だらけだ。

 

「さすがに黒すぎだよな。歯まで黒くなるなんて。」

「うんうん。」

「じゃあ殺せんせー、飯の後で暗殺なんで。」

「はーい。では船上レストランへ行きましょう。」

 

集合場所から少し歩くと、すぐに船が見えてきた。す、凄い豪華だなぁ…。今まではA組がこのような場所を使っていたことを考えると、少し気が引ける。しかし、これは私達の努力で勝ち取った体験だ。もっと自信を持たないと。

 

「では先生、夕食は夜の海を堪能しながら食べましょう。」

「なるほど、まずはゆっくりと船に酔わそうということですね?」

「当然です。」

「しかし甘いです! 暗殺を前に気合の入った先生に船酔いなど敵ではありません!」

 

殺せんせーがいつも通りの自信満々の態度で居るので、

 

『しかし、このセリフが後のフラグとなるのだった…。』

 

と、ナレーションを入れておく。

 

「ニュヤア!! 勝手にフラグを立てないでください!」

 

そんな殺せんせーの抗議を受け流していると、前原が、やっぱり黒い殺せんせーは気になると言い出した。私は別にどうでもいいと思うが、とりあえず傍観していることにする。

 

「ヌルフフフ、お忘れですか? 先生には脱皮があることを! こうやって黒い皮を脱ぎ捨てれば…」

「あ、月に一回の脱皮だ。」

「ヌルフフフ、本来はヤバイ時の奥の手ですが……………ニュヤアアアアアアアアアア!!!」

 

これから暗殺だって言うのに……。なんでこんなにドジな先生殺せないんだろう…。まぁ、結果的に前原、ナイスファインプレー。

そして、カルマと話をしている間に夜ご飯を食べ終わり…

 

「さーて殺せんせー、飯の後はいよいよだ。」

「会場はこちらですよー。」

 

みんなで、暗殺の、最初の段階で使う場所へ誘導する。

 

「みなさんの、全力の暗殺を期待しています!」

 

いま、私たちの努力の結晶の暗殺が、始まる!




カルマくん大好きなのに、小説になると書けない……。キャラ崩壊しまくりですよね、すみません……。


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2.決行の時間

「さて、一体何をしてくれるんでしょうねえ。」

「まずはこのビデオを見てもらいます。その後触手を破壊してから一斉に暗殺を始めます。」

「ヌルフフフ、上等です。」

 

緊張して来たな…。もし、これだけみんなで計画してきた暗殺が失敗したらと思うと、怖い。

 

「大丈夫、花音にできることをやりきればいい。」

『カルマ! …うん、頑張ろうね!』

 

流石カルマだ。私の不安を感じ取ってくれ、励ましてくれる。

 

「みなさん、準備はいいですか? 遠慮は無用。かかって来なさい!」

 

殺せんせーがそう言うと、ビデオが始まる。

作戦開始!

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

-1時間後-

「あぁぁ……死んだ、もう先生死にました…。あんなの知られて、もう行きていけません………ニュヤア!?」

 

そう、私達の作った、殺せんせーの恥ずかしいビデオに夢中になっている間に、海は満潮になっていた。そして、 昼間私たちの班がやった作業によってチャペルの床には沢山の水が入ってきているのだ。

 

「船に酔って、恥ずかしい思いして、海水吸って、だいぶ動きが鈍って来たんじゃないの?先生。」

「さあ、本番だ!」

「暗殺、開始です!」

 

100点を取った人達が約束通り触手を破壊し、それを合図に、外で待機している船部隊がチャペルの壁を引き剥がす。しかし、殺せんせーは驚いている暇はない。すぐに渚たちがフライボードで水の檻をつくり、ギリギリ当たらない軌道の弾を沢山撃ち、弾の檻で殺せんせーを囲む。

 

「花音ちゃん、今だよ!」

 

この頃にはさっき破壊した殺せんせーの触手はもう再生しているので、当たらない他の弾に紛れて何本かの触手を破壊する。その役目を請け負ったのは、このクラスの射撃3位の私。だから、トドメを指す攻撃の次に大切なこの攻撃、外すわけにはいかない…!!私はまだ、緊張すると弾道がぶれてしまうが、密集している触手の部分なら当たりやすいはずなので、なんとか緊張をほぐし、銃を撃つ。

 

「ニュヤア!?」

 

よし、当たった! そしてトドメは千葉くん、速水さんの射撃。先生はこの2人の射撃を警戒するだろうから、予めフェイクで気を別のところへ向けるようにしている。ちなみに、私もみんなにバレないようしているが、殺せんせーの気を《逸らし》ている。

その作戦は成功。海から突然出てきた2人の射撃が、殺せんせーに迫る。

 

「ゲームオーバーです♪」

 

そして、殺せんせーが爆発した。殺った……!?

今までの暗殺とは全く違う反応。先生に弾が当たったかどうかは見えなかったが、爆発が起こり、みんなは期待の表情を浮かべる。しかし、烏間先生がやって来て叫ぶ。

 

「油断するな! やつには再生能力がある。磯貝くん、片岡さんが中心になって水面を見張れ!」

 

みんなの表情が再び引き締まり、静寂が訪れる。

 

「あ、あそこ!」

 

その声に釣られ、水面を見ると、泡が出て来ていた。みんなに緊張が走る。しかし、

 

「……ふう。」

 

そんな気の抜けた声を発しながら、水晶玉のような殺せんせー(?)が浮かび上がってきた。先程とは違う種類の静寂。さすがに殺せんせーでも、顔だけが透明な膜に包まれ、体がなくなった姿には驚きが隠せない。

 

「ヌルフフフ、これは完全防御形態です! これになった先生は無敵ですよ!」

『なにそれぇ…。』

 

完全防御という、無茶苦茶な言葉にみんなが驚く。そして、その形態の間は動くことが出来ないという弱点についても先生はちゃんと計算していて、その間に宇宙に飛ばす、なんてことも出来ない。しかし、寺坂がいつもの様に、あまり考えていない様子で殺せんせーを掴みあげ、

 

「なにが無敵だ。どーにかすりゃ壊れんだろ、こんなもん。」

 

と言いながら、スパナで殴り始める。それでもキズ1つつかず、殺せんせーは私たちをなめた顔でニヤニヤとする。

さすがに、エネルギー結晶をスパナで壊そうとしても壊れないのはわかるが、核爆弾でも傷つかないという先生の言葉は私達の不安を煽った。

 

「そっかー、弱点ないんじゃ打つ手ないねー。」

 

突然カルマが何かを企んだ顔で近づいていく。

何をするのかと思ったら、カルマが携帯に殺せんせーの恥ずかしい写真を映して見せ、恥ずかしがる殺せんせーに海虫をくっつけて嫌がらせを始めた。

 

「ニュヤアア!? やめてください、カルマくん!?」

「あとさ、花音。この島の1番高い建物から落とそうよ♪」

『いいねー。地面に海虫敷き詰めた箱を置いとくともっといいかも♪』

 

すごく高いところから落とされた上に、落ちる先には大量の海虫! 最高w

 

「……取り敢えず解散だ。上層部と検討する。」

 

先生をおちょくって楽しむ私達を少しあきれたような顔で見ながら烏間先生は解散を告げた。先生が、私達は誇っていいと言っているが、みんなで協力して練りに練った計画が失敗に終わってしまったので、暗い顔をしている。

そして、疲れきったみんなはいつもより元気の無い様子でホテルへと戻り、テラスで休憩をすることにした。

 

「しっかし疲れたわ……。」

「部屋戻って休もうか…。」

 

それにしても、みんながぐったりしているような…?

 

「ねえ、なんか変じゃない? 幾ら何でもみんな疲れすぎじゃ…。」

 

渚も異変を感じたようだった。その時、みんなが急に倒れはし始めた。

 

「中村さん!? ………岡島くんも!」

「これは…? き、君! この島の病院はどこだ!?」

「すみません、なにぶん小さな島なので……」

 

気づいた烏間先生が来てくれたが、この島に病院は無いようだ。ど、どうしたら…。

大きな音が聞こえ、振り向くと、烏間先生が殺せんせーを机に叩きつけていた。

 

「くそっ……犯人から電話がかかってきた。1番背の低い男女2人だけでこいつを持って来いだそうだ…。」

 

1番低い男女…。私と渚だ。どうして私達二人を指定したんだろう…。

 

「まさか先生、本当にそうしないよね…? そんな危ないところに花音は行かせられないよ。」

 

カルマは私を心配をしてくれているようだ。でも、行かないとみんなが死んじゃう…!!

 

「どーすんすか、このままじゃ殺される…!? 殺されるためにこの島来たんじゃねえよ!?」

「落ち着いてよ。そんなすぐ死なない死なない。」

 

そうだ、焦っていたら何も出来ない。落ち着かなきゃ。でも、みんなの症状はいつ悪化するかわからないし、本当にどうしたら…。

 

「要求は全部無視して、今すぐ全員都会の病院に運べば…!」

「それは反対だね。本当にこのウイルスが自作のものならどんな大病院にも特効薬は置いていない。応急処置はしておくから落ち着いて取引に行くといい。」

「竹林…。」

 

竹林くんは家が病院だから、そういう知識があるんだろう。でも取引と言っても、こんな酷いことをする犯人なら薬は簡単には渡してはくれないかもしれない。

みんなが話し合っていると、殺せんせーが提案をした。

 

「いい方法がありますよ。元気な人は来てください。汚れてもいい格好でね。」

 

何をする気なんだろう…?

気が付くと、カルマが近くに来ていた。どうやら、カルマは冴えるが私に攻撃した時の怪我を心配しているようだ。確かに、怪我をしていたら迷惑をかけてしまうかもしれない。

話し合った結果、竹林くん、愛美ちゃん、私は倒れた人の看病に残ることになった。

 

『……カルマ、無理しないでね、頑張って。』

「大丈夫。心配しないで。」

 

みんなが出発し、私達は一緒に残った人たちの看病をし始めた。

 

『私、あんまり知識とかないけど、できるかな…。』

「それなら、買い出しをお願いしてもいいかな?氷をお願いするよ。」

『わかった、行ってくるね。』

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「いらっしゃいませー。」

 

近くのファ◯マに来た。ここはこの島唯一のコンビニらしいが、あまり人はいない。

それにしても、コンビニは島に1個で病院は無いなんて、島って結構不便なんだなぁ。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

『買って来たよ~。』

「氷はそこの水の中に入れてくれ。』

「お、お疲れ様です!」

 

あとは、私でもできることを手伝うだけかな…。みんな、無事だといいけど。カルマ、大丈夫かな…。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

───その頃のカルマは…

 

(((怖くて誰も言えないけど…)))

「ぬ、多くね、おじさん?」

(((いった!?よかった、カルマがいて!)))

 

おじさんぬと対面していた。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

しばらく看病をしていると、犯人の元に行ったみんなはヘリコプターに乗って帰って来た。

みんなは、それぞれの疲れですぐに眠ってしまったので、私も最近の寝不足を解消しようと眠った。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

今何時だろう………。携帯で時間を確認すると、もう夕方だった。窓から外を見ると、みんなが浜辺に集まっていたので、私も向かう。

浜辺に着いて聞いてみるとみんなは、遠方の船の中に居るらしい殺せんせーをなんとなく見ながら話していたらしい。

 

「なんか、物凄い1日だったね。」

『私にとっては物凄い3日間だったよ…。』

「……?…まあ、ひとまず無事に終わってよかったよ。」

「渚が1番危なかったんだからね!?」

「あはは、ごめん。」

 

昨日の話を聞くと、渚とカルマは強敵に1人で勝ったらしい。2人は本当に凄いなぁ。

すると、起きてきたひなたちゃんが船をみて言う。

 

「おっはよー、って、そんな時間でもないか。今あの中に殺せんせーいるの?」

「うん、烏間先生が不眠不休で指揮とってやってるよ。」

『烏間先生って、疲れがたまらない化け物なのかな…。』

 

なんて、雑談をしていると、船が爆発した。でも、みんななんとなく、殺せんせーは殺せていないんだろうな、という空気で待つ。

案の定、殺せんせーはケロッとした顔で、元の姿でやってきた。

 

「ヌルフフフ、おはようございます、皆さん。」

「おはようございます。」

「やっほー。」

『おはようこざいます!』

「今回は先生の不甲斐なさから迷惑をかけてしまいましたね。すみません。…………しかし! 今からでもリゾートを楽しみますよ!!」

 

明日の朝には帰るのに、目一杯遊ぶ気だね、殺せんせー。

……ん? なんかみんなが一斉射撃始めてる…。

 

「今なら殺せると思ったんだけどねー…。」

『ホント、どうやったら殺せるのか……。』

 

それから、肝試しをしたり、烏間先生たもヴィッチ先生をくっつける計画をしたりして、あっという間にその日は終わり、また船に乗って帰るのだった。




余談。
本当は、カルマくんは期末テストによって成長し、おじさんぬと戦うんですが、この小説では、カゲロウデイズに巻き込まれたりした流れで成長した感じですね。


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3.目でまとめる話

島の旅行から帰り、カルマと共にアジトに帰る。せっかくカゲロウデイズのことが解決したのに、急いで行ってしまったから、少し気まずい気持ちもあるが、考えないことにする。

 

『だだいま帰りましたー…。』

「「「おかえり(なさい)!」」」

 

人が沢山増えたので、アジトはかなり賑わっていた。それに、私達が今日帰ってくることも伝えてあったのもあるのか、ここに住んでいない人達も大集合だ。

 

「やっと全員揃った事だし、改めて全員で自己紹介しよう。」

「No.0の楯山 文乃です。能力は、目を掛ける…?です。」

 

この人が文乃さんか…。優しそうな雰囲気をしている人だ。

 

「No.1、団長の木戸 つぼみだ。能力は隠す。」

「No.2、瀬戸 幸助っす。目を盗む力を持ってるっす。」

「No.3の鹿野 修哉でーす。能力は、目を欺く!」

「No.4の、マリー…あ、小桜 茉莉です。目を合わせる能力を持っていて、メデューサの末裔です。」

「No.5、16歳、アイドルをやっている如月 桃です!能力で、注目を集められます!」

「No.6、榎本 貴音です。元々はエネ…です。能力は確か、目を覚ますだったっけ…。」

「No.7、如月 伸太郎。能力は焼き付ける。」

『No.8の梅宮 花音です! 能力は、逸らすです。』

「No.9の雨宮 響也です。目を凝らす?力を持ってます…。」

 

ここからはカルマ以外全員知らない人かな…。あれ、コノハさんがいないような……。

 

「No.10、九ノ瀬 遥です。僕は元コノハです。能力は……あれ、なんだっけ?」

「醒ますでしょ。」

「あ、そっか。ありがとう貴音~。」

 

コノハさんって、(ruby:こ:・)こ(ruby:の:・)せ(ruby:は:・)るかを取ってるのかな?ちなみに、コノハさんの人格は消えてしまったわけではなく、自由に出てこれるそうだ。よかった…。

 

「新しくメカクシ団に入りました、No.11の朝比奈 日和です。能力は、目が冴えるです。」

 

日和、というと、ヒビヤくんとカゲロウデイズに巻き込まれてしまったのはこの子だろうか。礼儀正しいけど、ハキハキしてて、しっかりしてそうな子だなぁ。

 

「つぼみの姉、木戸 凛だ。」

 

キドさんのお姉さんは、結構キドさんの雰囲気に似ている。いや、カノさんから聞いた昔のキドさんは今とはかなり違っていたのを考えると、きっとキドさんはお姉さんである凛さんのようにいたいのだろう。

 

「茉莉の母、小桜 紫苑です。家は遠いうえ、茉莉はここに住んでいるので、私もここに住むことになりました。よろしくお願いします。」

 

見た目はマリーさんと似ていて、穏やかそうな人だ。

そこで、まだ自己紹介していないのはカルマだけになったことに気づく。

 

『ねぇ、多分次はカルマだよ?』

「あ、そっか。えーっと、赤羽 業でーす…。」

「よし、一通り終わったな。改めて、言おう。ようこそ、メカクシ団へ。」

「え、俺も?」

 

カルマがびっくりして言う。確かに、メカクシ団の存在を知った以上は入団しなきゃいけないならば、カルマも入ることになるのだろう。カゲロウデイズのことも、能力のことも、全部知っているし…。

 

「すまないな。本当に嫌なら、出て言っても構わない。ただし他言無用だ。入団するのならば、ここのアジトに住むもよし、たまに顔を出すのもよし、だ。」

 

カルマに聞いてみると、突然のことに驚いただけなので、入団するのは構わないらしい。それを聞いて、カルマと一緒に居られる時間が増えそうで、少し嬉しくなる。

そして、私はまだ新しく増えた人達と話したことがないことや、沢山話したことがない人がいることに気づき、話すことになった。

 

『えっと、遥さん…よろしくお願いします。』

「よろしくね~。」

『そういえば、コノハさんはどうなったんですか?』

「コノハくんは、僕の中にいるよ。自由に出てこれるみたい。」

 

消えちゃったわけじゃないんだ…。少し安心。

次は日和ちゃんかな?日和ちゃんはヒビヤくんと一緒にいるみたいだ。

 

『日和ちゃん、よろしくね。ヒビヤくんも、改めて。』

「カノンさん、よろしくお願いします。」

「よろしく、カノン。」

 

そこで私は、ヒビヤくんが最初、モモさんのことをおばさんと呼んでいたことを思い出し、私はおばさんじゃないのかと聞いてた。すると、むしろ私は中3に見えないと言われてしまった。……確かに身長低いけど…酷い…。それに、

 

「なに、アンタ、モモさんのことおばさんって言ったの!?」

「いや、違うんだ、日和…!」

 

という話が始まってしまったので、聞かない方が良かったかもしれない……。

次は、凛さん。

 

『凛さん、これからよろしくお願いします。』

「あぁ、よろしくな。」

 

喋り方も、雰囲気も、やっぱり似てるなぁ…。前にキドさんが言っていたように、確かに名前の通り凛とした人だ。

次は、紫苑さん。

 

『紫苑さん、よろしくお願いします。』

「ええ、よろしくお願いします。茉莉と仲良くしてくださって、ありがとうございます。」

『いえいえ…。』

 

と、話していると、マリーさんがやってきて、言われた。

 

「カノン、あのね。私もっと仲良くなりたいから、マリーって呼んでほしいなって…。あと、敬語じゃなくて喋って欲しいなぁ。」

 

か、可愛い……。私も仲良くなりたいな、と思っていたのでもちろん了承した。

そして、遠くから私も私も!と、モモさんが言っていたので、これからはマリーさん……いや、マリーちゃんとモモちゃんとはもっと仲良くなれそうだ。



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4.夏祭りの時間

カルマ

>「明日の夏祭り、一緒に行かない?」

>『もちろん!』

カルマ

>「みんな殺せんせーに誘われてるから、他の奴らもいるかも。」

>『OK!』

 

今日は8月30日。明日は夏祭りが行われる。カルマからメールで誘われたし、楽しみだな~。

 

『キドさん、明日は夏祭りに行くので夜ご飯はいりません。』

「ああ、わかった。楽しんで来るんだぞ。」

 

すると、それを聞いたマリーちゃんがやって来て、言った。

 

「お祭りがあるの? 何か買って来て~!」

『あ、マリーちゃん。うん、何か買って来るね』

「やったー!」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

次の日、少し早い時間帯からカルマと合流して夏祭りに来ていた。

 

「うわー、やってるねー。」

『うん、何処行く?私、射的行きたいんだよね。』

「前も好きって言ってたよね。最近は、普段からやってるけど…。」

 

そうえばそうだな…と思いつつ、やっぱりおもちゃの銃で景品をゲットするのは楽しいと思うので、射的屋に向かう。しかしそこには人だかりが出来ていて、覗いてみると、千葉くんと速水さんが居た。この2人は射的屋に入れたらダメだよ…。2人はたくさんの景品をゲットし、周りから大きな拍手が起こり、そして………出禁をくらっていた。

 

「俺らもやり過ぎないように気をつけよう…。」

『そうだね…。』

 

銃のおもちゃにコルクを詰め、撃ち始める。やり過ぎないようにはしているが、やっぱり例年よりも精度が上がってる気がする。すると、店主が話しかけてきた。

 

「お嬢ちゃんとお兄ちゃん、上手いねえ。これ、おまけだよ。」

『え? あ、ありがとうございます!』

 

思わぬ収穫……。やりすぎたら出禁だけど、程々にしたら上手いねーってなるのか……。

 

「あそこにいるのは茅野ちゃんと渚君じゃない?……おーい!」

 

カルマの声に気がついた2人は、こっちに来てくれて、4人で一緒に回ることになった。

しかし、カルマが何かを見つけたようで何かの屋台へと向かっていった。どうやらあれは糸くじの店らしい。

 

「じゃあ、僕らはあの水風船釣りやって待ってよっか。」

「そうだね。すみませーん、やります。」

「はいよ! これを使って釣ってな。」

 

久しぶりだなー、これ。運が悪いと1個目で切れちゃって何も取れないんだよなぁ………って、あれ?めっちゃ取れるんだけど…。

 

「これは、暗殺技術の繊細な部分が活かせるね。」

『だからいっぱい取れるのか……。』

「き、君達凄いなあ…。5個までだから選んで、それ以外は戻してくれな。」

 

3人で大量に取れた水風船を選ぶ。隣でやっている小さな子がすごく驚いてるような気もするけど、気にしないでおこう……。

すると、カルマがゲーム機を持って帰ってきた。こういうのって当たるんだ…。

 

『当てたんだ!凄いね~。』

「いやいや、ああいうのは大体大当たりは入ってないんだよ。で、脅したらくれた♪」

 

うん、カルマはカルマだった。

そんなカルマに苦笑いしつつ、みんなで好きにご飯を買って、木の下に集合することになった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

私が買ったのは焼きそばとチョコバナナとラムネ。

カエデちゃんはわたあめとすもも飴とじゃがバター。

渚はたこ焼きとフランクフルト。

業はいちご煮オレとかき氷と焼き鳥を買っていた。

 

「うん、甘いものはやっぱり美味しいね!」

『カエデちゃん、甘いものから食べるの?普通それはデザートじゃない…?』

「カルマ君はこういう時もいちご煮オレ?」

「渚君も買ってくれば?」

「僕はいいよ…。」

 

甘党の人は甘いものをたくさん。いつも食べている好きな食べ物はこういう時も食べる。やっぱり食べ物にはみんなの個性が出るなぁ。

 

『そうだ、そろそろ花火だね。』

「ほんとだ!食べ終わったら行こう!」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

花火が上がる。

そして…

唇にやわらかい感触が伝わってくる。カルマがキスをしてきていた。

 

『……!カル、マ?』

「花音、誕生日おめでとう。」

 

そうだ、今日は私の誕生日だ。

カルマはいつも、あんまりこういうことはして来ないけど、嫌じゃ、無いな。

 

『カルマ…ありがとう…大好き!』

 

 

 

 

 

 

 

マリーちゃんにはくじでとった可愛いピン留をあげた。



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5.泥棒の時間

夏休みが終わり、シルバーウィークも過ぎたある朝、カルマと登校すると、教室がざわざわしていた。

 

『おはよー。皆んなどうしたの?』

「おはよ。見ろよこれ。」

 

前原が雑誌を差し出してきた。

 

『えっと、Fカップ以上のみを狙う黄色い影?』

「そうそう、さっき皆んなで教員室行ったんだけどさ、証拠がどっさり。」

「正直がっかりだよ。」

 

みんなが教員室に行って先生を問い詰めると、机の引き出しに女性の下着が入っていたり、出席簿の女子の名前の横に胸のサイズが書いてあったりしたらしい。

こ、殺せんせーは何をやってるんだ……。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

放課後。授業が終わると、殺せんせーはそそくさと教室を出ていった。一日中みんなから冷たい目で見られていたら、そりゃそうなるよね…。でも、本当にやったのかな?すると、カルマが口を開く。

 

「ねえ、みんな。仮に俺がマッハ20の下着ドロならこんなヘマしないけどね。こんなことしてたらみんなの中で先生として死ぬ事くらいわかってんだろ。」

「……そうだね。僕もそう思うよ!」

「わかったわ、偽殺せんせーよ!さっそく、皆んなで捜査よ!」

 

少年マンガ大好きな不破さんは、ヒーローもののお約束、偽物悪役を疑っている様だ。律もノリノリで探偵のコスプレを始めているので、これはみんなで動くことになりそうだ。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

律の情報や不破さんの推理の元、私達はある建物に潜入することになった。潜入と言っても、やってることはフリーランニングを使った住居侵入……。

 

「ふふふ、体も頭脳もそこそこ大人な名探偵参上!」

『うう、見つかったら怒られそう…。本当に大丈夫?』

「犯人が次にここを狙う確率は高いので、仕方ないです!」

 

すると、向こうにの垣根に、泥棒の格好をした先生を見つけた。

もうこれは確定でしょ…。

 

『ねえ、やっぱり殺せんせーがやったんじゃない?』

「ま、まあ、様子を見てみようよ。」

 

そう言われてしばらく待っていると、黄色いヘルメットを被った長身の男性が下着を盗み始めた。しかし、すぐさま殺せんせーが出ていき、

 

「捕まえたー!さあ、顔を見せなさい! 手入れしてあげましょう!」

 

ヘルメットを脱がす。ヘルメットの下は…烏間先生の部下の人だった。

みんながびっくりしていると、殺せんせーを囲むように白い布が降りてくる。

 

「引っかかりましたね。国に掛け合って対先生物質でできたシーツの檻まで誘い出してもらったんですよ。」

 

そう言って出てきたのは、シロだった。今回の計画はシロのものだったらしい。

糸成くんが攻撃を仕掛ける。どうしよう、また殺せんせーが危なくなっちゃう……!

 

「糸成くん。先生だって学習するんです。先生が日々成長せずして、どうして生徒に教えることが出来るのでしょう。さて、布を片付けましょう。先生は、夏の経験を得て、触手の一部分だけを圧縮してエネルギーを取り出す技を学習しました。」

 

なるほど、触手だけを完全防御形態にするってことか。凄い…。それに、“ 先生が日々成長せずしてどうして生徒に教えられるのか”って。すごいかっこいいなぁ。

そして、殺せんせーは今回も攻略してしまった。

しかし。突然糸成くんが苦しみ出した。

 

「触手が精神を蝕み始めたか。ここいらが限界かな。」

 

そう言ってシロが居なくなると、糸成くんも飛び去ってしまった。

 

「先生、あいつの事は放っておいたほうが賢明だと思うけどねぇ。」

「それでも、先生は行きます。私は、どんな時でも自分の生徒から手を離さない。」

 

そうして、私達は殺せんせーと一緒に、糸成くんを探しに行くことになった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

クラスのみんなで手分けして糸成くんを探していたが、渚から電話がかかってきた。

 

【糸成くんがシロに捕まって、また利用しようとしてるみたいなんだ…。殺せんせーは先に助けに行ってるから、みんな来て! 】

『わ、わかった!』

 

見捨てるふりをして暴走させ、挙句の果てには完全に囮……。シロのやり方は許せない。あんな奴に殺せんせーを殺させない…!

そう考えながら、伝えられた場所に着くと、先生は例の光線で苦戦しているようだ。

 

「よし、みんな揃ったな。手分けして、木上の奴らとライトを壊そう!」

 

磯貝くんの指示でみんなが動き出す。私は、陽菜乃ちゃんと一緒にライトを倒して壊した。そして、殺せんせーは隙ができると、直ぐに糸成くんが拘束されているネットを壊してくれ、シロは居なくなった。

でも、まだ糸成くんの触手の問題が解決していない。触手を抜くのには執着をなくすことが必要で、そのために寺坂組が動き出した。……うーん、ちょっと心配……。

 

「まぁ、あいつらは馬鹿で無計画だけど、そんな一言はこういう時、力抜いてくれんのよ。」

 

というカルマの言う通り、危なっかしくも段々と執着がなくなってきているようだ。

 

「無理のあるビジョンなんて捨てちまいな。楽になるぜ。100回失敗したって、たった1回成功すりゃいいんだよ!」

 

寺坂も、たまにはいいこと言うんだなぁ。

そして、無事に糸成くんの触手は殺せんせーにやって取り除かれた。

明日から糸成くんはちゃんとE組の仲間になるらしい。また戦力も増えたし、頑張るぞ…!!



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6.目を伏せる話

糸成君の事で、すっかり帰宅が遅くなってしまった。キドさん、怒ってるかな……。

 

『ただいまです…。』

「カノン!どうしてこんなに遅かったんだ…?」

『すみません、色々あって…。』

「そうか…。次からはちゃんと連絡入れるんだぞ。」

 

迷惑かけちゃったなぁ…。これからは気をつけないと…。

すると、カノさんが何があったのか尋ねてきた。

 

『実は、殺せんせーの下着ドロ疑惑がクラスで出て、みんなで探ってたんですよ~。』

 

糸成君についても事細かに話すのは話しすぎかな、と思ったので、少し笑い話的な言い方をしてみる。思惑通り、カノさんはいつものように爆笑した。まぁ、確かにマッハ20の下着ドロっていう響きはなかなか面白い。

 

「ちょ、今は俺たちしかいないからいいっすけど、新団員も入ったんすからあの超生物の話はしないほうがいいんじゃ…。」

『あ……。』

 

しまった。アジトだからと安心していたが、そもそも殺せんせーのことを知っているのはキドさん、カノさん、セトさん、そしてマリーちゃんだけだった。反省、反省…。まぁ、ここには言いふらすような人はいないと思うけどね。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

キドさんが取っておいてくれた夕食を食べ、部屋に戻って数学の勉強を始める。

しかし、今日は色々なことがあったせいか、あまり集中できなかった。そして、集中していないと余計なことを考え出してしまう。

考え事をしていると思い出す。冴えると戦った時に握った、本物の銃の感覚を。あの時は必死だったが、恐怖を忘れることは出来ない。それに結局、あの時奪ったハンドガンはまだ持っている。多分、これからも忘れることは出来ないだろう……。

なるべく考えないようにしよう。この一年が終われば、暗殺教室も終わる。そしたら、銃やナイフともおさらばだ。…地球がなくなって命もおさらばかもしれないけど。

本物の銃なんて使う機会はあっても今年だけだよね。

次からはもう、思い出しても《逸らし》ちゃえばいいかな…。

 

『……あんまり、使いすぎるのって良くないのかな…。』

 

普通は、能力を使って物事を忘れるなんてことは出来無い。私はたまたまこの能力を使えるけど、本当にいいのだろうか。

でも、忘れられるのなら忘れてしまいたい。それに、私はまだ制御ができていない。とても強く忘れたいと思ってしまうような出来事は、コントロール出来ずに忘れてしまう。

この能力とは、どのように付き合っていけばいいんだろう……。



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7.カミングアウトの時間

『カルマ、私、E組のみんなに能力のこと話そうと思う。』

 

そんな私の言葉にカルマは驚き、理由を聞いてきた。

 

『暗殺期限まであと6ヶ月でしょ?だから、能力を使ってもっと暗殺の役に立てるかなって…。』

「そっか…。」

 

糸成君がE組に来てから、時が経った。しかし、未だ、殺せんせーは殺せない。最近は、みんなも焦り始めているし、私も少し焦っている。能力を役立てられたら何か、変わるだろうか。そう思ったのだ。

 

「花音がそう言うんだったら、俺は、構わないよ。それに……あいつらがそれを受け入れないんだったら、花音のこと、守るから。」

『ありがとう……。』

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

翌日、殺せんせーに言って少し時間を取ってもらった。今教室にいるのは、クラスのみんなと、烏間先生、ヴィッチ先生。

そして、夏、私達2人が巻き込まれた世界のこと、私の能力のこと、全て話した。

信じてくれるだろうか、気持ち悪がられるだようか、拒絶されるだろうか。そう不安になっていると、

 

「……信じられない…なんて、今更だよな。もう慣れちゃったよ。」

「私達のせいでそんなことに……本当にごめんね…。」

「すげーじゃん、能力!」

 

という、言葉が返ってきた。否定するようなことを言う人は、誰一人いなかった。

あぁ、ここは、本当にいいところだな……。

そして、烏間先生からは、暗殺に能力を使って貰って構わないと言われた。多分、むしろ使って殺して欲しいんだろうな……。

 

「そうだ、じゃあ、花音ちゃんのその能力を主軸にした暗殺をしてみない?」

『えっ』

 

責任重大な役か……。少し自信ないな…。

しかし、みんなは賛成のようで作戦を立て始めてしまった。

 

『大丈夫かな……。』

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

糸成君が調整したカメラで、教室に歩いてくる殺せんせーを確認。暗殺開始!

殺せんせーが教室に入ってくる瞬間、待機していたひなたちゃんがわざとタイミングを合わせて、ぶつかりに行く。

 

「にゅやっ、すみません、岡野さん。………ニュヤアア!?」

 

そして、不意打ちでナイフを振る。

一見、普段からあるような手軽な暗殺。しかし、今回の暗殺は、先生が攻撃を避けたところからが本番だ。

よし、今っ!

 

「ニュヤアア!突然ですね、木村くん!」

 

実は、先生の意識を、高速で避けた先の周辺に居る人から、目の前にいる人に《逸らし》ている。そして、周りの人がナイフを振ることで、意識が逸れているから当たるかと思ったんだけど……。やっぱりなかなか当たらないな……。

何度かそれを続けていると、渚がナイフを当てた。

 

「よっしゃあ!みんな、行くぞ!」

 

それを合図に、ナイフ得意組が一斉にかかっていく。まずは、殺せんせーを焦らせるところから始め、取り囲む。そういう作戦だった。

結果は……触手2本。渚の1本が次の1本につながり、殺せはしなかったが、自力で触手を失わせることに成功したのだった。

 

「やったな、花音!」

『上手くいって良かった……。』

 

先生の避けた先をしっかり判断して、特定の人から《逸らす》、というのはかなり集中力を使うということが分かった。それを何度もしたから、結構疲れたな……。少しフラフラしていると、カルマから心配される。

 

「花音、大丈夫?」

『ちょっと疲れちゃっただけだよ、大丈夫。』

「使いすぎたら倒れちゃうんだから、あんま無理しないでよー?」

 

カルマはいつも、心配してくれている。能力の使いすぎや、暴走は確かに怖いし、おそらく私の身体にも負担はかかるだろう。早く完璧にコントロール出来るようになって、心配かけないようにしないとな…。



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8.ビフォーアフターの時間

E組のメンバーが増えたあの日から時が経ち、私達には中間テストが迫っていた。

 

「さあみなさん、2週間後には2学期中間テストですよ!いよいよA組を超える時が来たのです! 熱く行きましょう!!!」

 

熱苦しいの嫌だなぁ…(笑)

殺せんせーの暗殺期限まであと5ヶ月。それまでに殺せなかったら地球が終わる。勉強も大事だけど、暗殺も集中していかないといけない。

……でも、苦手教科はやっぱりしっかりやらないとキツいかも…。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

放課後、岡島がフリーランニングを使った駅までの近道に誘ってくれたが、カルマと私は断り、普通に変えることにした。

この、2人で歩く雰囲気が好きなんだよね……。

そうして、アジトに着く。

 

『ただいまです。』

「お邪魔しまーす。」

「お、今日はカルマくん来たんだね。いらっしゃーい。」

 

カルマと結構うちとけている、カノさんが出迎えの言葉を言ってくれる。

でも、カルマも一応メカクシ団なんだから、お邪魔しますって言わなくてもいいと思うんだけどなぁ……。

 

「カノンお帰り!ねえ、みんなでこれやろうよ!」

 

そう言って出てきたマリーちゃんが手に持っているのは、今流行りの据え置き型ゲーム機、PicoPico2。いつの間に買ったのかな…。

結局、カラフル・ブロックという、テトリス風のゲームをやることになり、プレイヤーは、私、マリーちゃん、カルマ、貴音さんで決定した。

ちなみに、私のテトリスの実力としては、簡単な開幕テンプレはいくつか覚えていて、一応T回転を使える程度だ。みんなはどんな感じなのかな……。

 

【lady  go!】

 

ゲームが始まると、だいたいみんなの実力が分かってきた。カルマと貴音さんはT回転を1杯していて、置くのも速い。マリーちゃんは……1段消しや2段消しを沢山していた。

 

『マリーちゃん、4段消すと強いよ。』

「ほんとに?………あ、ほんとだ!ありがとうカノン!」

 

やっぱり知らなかったんだなぁ……。しかし、4段消しを覚えたばかりのマリーちゃんと、初心者に毛が生えた程度の私ではカルマ達に勝てるわけもなく、残る2人の戦いが始まる。

2人の、よくわからない凄い技を見ていると、貴音さんの10連続消しで決着が着いた。

そこに、シンタローさんがやって来て、貴音さんが誘う。

 

「あんたもたまにはこういうゲームやってみなさいよ。」

 

シンタローさんは、嫌々ながらも、コントローラーを握る。このゲームは4人以下でないと出来ないので、貴音さんと交代する。

 

【lady go!】

 

突然、シンタローさんが全消しを2連続でする。そ、そんなこと出来るんだ……。どうやら、シンタローさんはこのゲームも相当上手い様で、あっという間に私含む3人はやられてしまった。

 

「ちょっと、少しは手加減しなさいよ!」

「ゲームなんだから、別にそれくらい良いだろ?」

 

そんな状況に、貴音さんはいつもの様にシンタローさんにつっかかり、言い争いが始まってしまう。そしてその流れで……2人のゲームが始まった。

そこからは凄かった。2人とも、凄い速さで指を動かし、色々な技を決めていく。

この人達にはかなわないと思った。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

ゲームをしながらゆっくりしていると、渚から電話がかかってきた。特に気にせず、電話に出るが、内容は驚きのものだった。

 

【実は……今日フリーランニングで駅まで行った時、何人かがおじいさんに怪我をさせちゃって…。殺せんせーからは、試験勉強を禁止されることになっちゃった……ごめん…。】

『えっ……そのおじいさんは無事なの…!?』

【一応、命に別状は無かった。でも、その人は保育園の園長で、口止めも兼ねて退院するまで僕達で手伝えって…。】

『そっか、わかった。……じゃあね!』

 

渚は、巻き込んで申し訳ないと言っていたが、ちゃんと考えて止められなかった私達にも責任はある。仕方がないよね…。こうなったからには、頑張らないと…。

次の日の朝、私達は例の保育園の手伝いをする為、みんなで集まった。保育園はわかばパークというらしく、かなり小規模なものだった。

1人の保育士さんが子供達に話をする。

 

「はーい、みんな聞いてー。あのね、園長先生お怪我しちゃってしばらくお仕事できないの。でも、代わりにこのお兄ちゃんお姉ちゃん達が何でもしてくれるって!」

「「「わーい!!」」」

 

子供達は、あまり問題については分かっていないらしく、私達が遊びに来た感覚てはしゃいでいる。……まぁ、楽しんでくれるなら良いのかな?

すると、周りの子よりも少し大きい、小学生くらいの子がよってきて、

 

「で、あんたら何やってくれるわけ? 減った酸素分の仕事くらいはしてくれるんでしょうねぇ?」

 

と、言ってきた。なかなかとんがった子もいらっしゃる……。

でも、めげないぞ…!

 

『お、よろしくね! 君、名前はなんていうの?』

「……へっ? お、鬼屋敷さくら…。」

『さくらちゃんっていうんだね!今日は何する?』

「そ、そんなことより…働く根性あるのか見せてもらおうじゃないの! ……ってうわあ!?」

 

箒を持って渚に詰め寄ろうとしたさくらちゃんは崩れた床と一緒に落ちてしまった。

設備ボロボロなんだ……。

 

「あーあ、そこの床ダメなのに…。」

「なかなかお金がなくて、修繕出来ないのよ…。うちの園長、保育園に行けない子や不登校の子を片っ端から格安で預かってるから…。」

 

と、保育士さんは話してくれた。

それを聞くと、みんなは同じことを考える。

 

「よし、2週間で出来ることをやろう!まずは作戦会議だ!」

「「『おー!!』」」

 

 

 

建物の修復をする係、健在を集める係、勉強を教える係、小さい子達を楽しませる係……と、みんなで分担して作業を進めることになった。さっきはカルマと寺坂、奥田さんとカエデちゃんで劇をやったそう。そして、私は能力を応用して手品を見せることにした。

 

「さて、箱の中に、このお姉ちゃんに入ってもらいまーす。」

『はーい、入りました。』

 

箱に入り、描いてある絵に私から目を《逸らし》てる間に違う所へはけるというタネだ。能力を使った、マジックでもなんでもないやつだけどね。結構イカサマ…。

 

「では布をかけて…ワン、ツー、スリー! なんと中のお姉ちゃんがいなくなりました! あれ? 見てみて! 窓の外にお姉ちゃんがいるよ!」

「すごーい! どうやってやったの?」

『それは、秘密だよー♪』

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

初めての仕事をたくさんして、あっという間に2週間が過ぎて行った。

この2週間、建物を修理し、子供達が楽しめるような仕組みを考えて、解決して………。本当に沢山の経験が出来たと思う。

退院した園長さんにも、無事認めてもらえ、本当によかった……。

 

「渚ー!!渚の言った通りやったよ!なんと、クラス2番!」

 

と、走ってきたのは、さくらちゃん。あんなにとんがっていたのに、渚の手によってあんなに元気に……。やっぱり渚って、隠し持った力が凄いな……。

ということで、子供達の心にも寄り添えていると言ってくれたので、私達の特別授業は幕を下ろした。しかし、それは中間テスト前日だった。もちろん、E組の大半はトップ圏内から弾き出された。私も、数学以外は惨敗。

それでも、今回、私たちはしっかり学ぶことが出来た。ちゃんと、これからに活かしていかなきゃ!!

 

 

 

 

……と、思っていた矢先…。

朝起きると、体がだるかった。どうやら、風邪をひいてしまったようだ。

 

「カノン、入るぞ? 今日は学校ないのか?」

 

いつもの時間に起きて行かなかったからか、キドさんが心配して部屋に来た。

 

『すみません。風邪をひいてしまったみたいで…。』

「そうか、じゃあ体温計と朝飯持ってくるから待ってろ。」

『ありがとうございます。』

 

学校に連絡しないと……。あ、カルマに言っておけばいいかな。

 

>『風邪ひいちゃったから今日は休むね。』

 

カルマ

>「え、大丈夫? アジト行こうか?」

 

>『キドさんとかもいるし、大丈夫。殺せんせーと烏間先生に言っといてね。』

 

カルマ

>「わかった。お大事にー。」

 

私が学校を休むと、カルマはいつもノートを取っておいてくれたりする。勉強の邪魔になっちゃいそうだからいいって言ってるんだけどなぁ……。

熱を測ると、37.7℃。うーん、これは、2日くらい休んじゃうかな……。せっかく昨日、防衛省からのプレゼントで強化繊維で出来た体育着を貰ったのに…。

それに……

 

『風邪って暇ー!』

 

何もやること無くて暇だし、暇つぶししようとしてもだるいんだよね…。仕方ない、音楽でも聞きながら寝よう……。

動画サイトを漁っていると、プリパラというものが目に入った。なんだろう、これ?女の子が映っているサムネイルをタップする。

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「♪どんなに落ち込んでも、大丈夫♪」

「♪君は一人ぼっちじゃないよ、一緒に居れば無敵だよ♪」

「メイキングドラマ、スイッチオーン!」

「歌と、ダンスで目指せ!レッツゴープリパラ!」

「サイリウムチェーンジ!」

「♪女の子の楽園、プリパラ!♪」

「♪チケットをもってLet's Go!♪」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

うーん、これってアイドルなのかな?ちょっと調べてみよう。

──みんなトモダチ、みんなアイドル!誰でもアイドルになれる場所──

へー、誰でもアイドルになれるんだ…。面白そうだなぁ。いつか行ってみたいけど…今は勉強と暗殺が最重要事項だし、集中しないとだし、暫くはお預けかなぁ。

カルマと仲良くなってゲームとかし始めるまでは、ほんとに全然遊んでなかったし……もっと色んなところに目を向けるのもいいのかもしれない…。

…………映像とか見ちゃったせいでちょっとだるいし、寝よう……。

 




主人公の成績考えるの大変だった……。

あ、ちなみに、花音の中間テスト順位は35位です。


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9.死神の時間

2日後、風邪は無事に治り、学校に来ることが出来た。

 

『おはよう。』

「花音、おはよう!風邪は大丈夫?」

『一応治ったけど、病み上がりで山登りはきつかった…。』

「そっか…。風邪の時くらい車で送ってくれる制度とかがあればいいのにね。」

「あんな道車で走ったら事故るよね!?」

 

隔離校舎がどうとかはまだしも、ここに来るまでが大変って、本当不便……。ゴンドラとか設置して欲しいなぁ。

 

「おはよー。あ、花音復活?治ったなら言ってくれれば行ったのに。」

『カルマおはよ! 朝熱が下がってるか分かんなかったからさ。』

 

治りそうって言って、やっぱりダメだったってなっても迷惑だろうしね……。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「イリーナ先生に動きがあれば連絡してください。先生はサッカー観戦に行ってきます。」

 

昼休みにみんなに教えてもらったが、色々あってビッチ先生はこの3日間学校に来ていないらしい。どうしちゃったんだろう…。

 

「公共の監視カメラなどにも姿がありません…大丈夫でしょうか…。」

「こんなんでバイバイとか無いよな?」

 

みんなは、律にも手伝ってもらってビッチ先生の行方を探している。

 

「それは無いと思うよ。彼女にはまだやってもらうことがある。」

「だよねー!」

「そう、彼女と君達の間には十分な絆がある。だから僕はそれを利用させてもらうよ。」

「「「…………ッ!」」」

 

教室に平然と入ってきた、知らない人。教室の空気に溶け込んで、私達に違和感を感じさせなかった。どうして、気づけなかったんだろう…?

 

「僕は死神と呼ばれる殺し屋です。今から君達に授業をします。」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

世界最強と言われた死神は、さっさと説明をして去って行った。きっと、死神はビッチ先生を人質に私達を捕獲し、私達を人質に殺せんせーを殺す気だ。

 

『これで行ったら死神の思うツボかもしれないけど…。』

「ああいう奴じゃあ、先生に連絡してもすぐバレるだろうね。」

「だったら…これ、使うか?」

 

強化体育服を持って来て、言った。

 

「守るために使う、だよね?」

「そう簡単に計画通りにさせるか!」

 

そして、死神が指定した場所へと向かった。

 

「律、0時を過ぎて戻らなければ殺せんせーに事情を話して。」

「はい…どうかご無事で…。」

「よし、みんな行くぞ!」

 

扉をそっと開け、侵入する。すると、死神の声がスピーカーから流れ出し、

 

【みんな来たね、それじゃあ、閉めるよ。】

 

と言って、入ってきた扉を閉められる。閉じ込められた…。予想はしてたけど、やっぱり不安だなぁ。何処かにカメラとかあったのかも…。

 

「約束は守ったでしょ! 早くビッチ先生を返して…!」

 

突然、部屋が揺れだした。

 

『これ…部屋が下がってる!?』

「捕獲完了! こうやるのが1番効率がいいからね。奴が大人しく来たらみんな解放してあげるよ。」

「頭にきて俺たちを殺したりは…。」

「しないよ。」

 

殺されないんだったら……作戦開始!

みんなで壁の空洞を探し、竹林君の爆弾で破壊。奥田さんのカプセル煙幕で死神の視界を遮っている間に脱出!よし、成功……。

2班に別れて、片方はヴィッチ先生の救出、もう片方は死神を倒す。私は後者だ。

 

「よし、ここで迎え撃とう。多勢でかかればこっちが有利だ!」

「律サポートを………」

「やる気しねぇ……死神さんに逆らうとかありえねぇし。」

 

り、律がハッキングされてる…。ニートみたいになっちゃった…。そんな律に危機感を覚えたのか、磯貝君は私に、死神の目線を《逸らし》て隠れておくように言った。上手く隙を伺っていかないと。

そして、死神が現れた。……姿が見えない?靄がかかったように認識が薄れる。これが死神の暗殺スキルなの…?

あっという間に吉田、村松、木村君、カエデちゃんがやられてしまう。

 

「どいて、みんな…。僕が殺る。」

 

渚が立ち上がって、死神の元へ歩いていく。一瞬、渚が猫騙しを使ったのかと思った。しかし、倒れたのは渚だった。

 

「君やロヴロのでは単なる猫騙しだ。……これは、その先、クラップスタナーだ。」

 

みんなが倒され、カルマと私だけが残る。そんな、あの渚が何も出来ないなんて……。

でも、やるしかない。死神にはカルマしかいないように見えるだろう。

死神の目線をカルマへ《逸らし》ながら、スタンガンを持って近づく。

 

「ああ、そこの君。どうやってるのかはわからないけど、視線は上手く誤魔化せている。でも気配でバレバレだよ。」

『なっ…』

 

驚いた時にはもう、私は気絶していた。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

目の前には目の赤い蛇がいる。直感でわかった。逸らすだ。

 

『えっと、これは私の意識の中?』

 

当然蛇は喋らないが、肯定するかのように地面を這って寄ってくる。

 

『そっか…。』

 

逸らすの存在を感知して、なんとなく、逸らすとの繋がりが強くなった気がした。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

『……あれ、殺せんせー?』

「花音さん! 大丈夫ですか? あっ烏間先生! トランシーバーをオンに!!」

 

目を覚ますと、みんなと一緒に閉じ込められていて、何故か殺せんせーまで居た。

『えっと…何があったの?』

「死神が、俺らごと殺せんせーを殺そうとしてるんだ。でも、烏間先生は俺らの命の方が地球より重いってさ。今、死神を追いかけてる。」

『そっか…。』

 

私達が死ぬ代わりに、地球を救える。そんな条件を出されたら、やっぱり判断は難しいだろう。それでも、烏間先生は私達生徒を選んでくれたんだ…。

その時、上から大きな爆発音が聞こえた。

 

「やっとトランシーバーがつながった…。烏間先生、大丈夫ですか!? イリーナ先生も!」

「俺はいいが、あいつは瓦礫の下敷きだ。だが時間がない、死神を追う。」

「ダメ! どうして助けないの!? ビッチ先生まだ二十一歳だよ!?」

「助けてあげて、烏間先生。私達生徒が間違えた時も許してくれるように。」

「烏間先生、たぶん死神は目的を果たせずに戻ってきます。だから、そこにいて。」

 

そう。私達だって、これ以上死神の思い通りにはさせない。

今回の作戦は、ものづくり組が要だ。ここにある監視カメラは、上手く見えないところがあるらしく、菅谷くんのペイントで壁に同化する色を塗り、カメレオンみたいに張り付く。そうしたら死神には脱出したように見えるはず!そして、爆発する首輪は、簡単な構造だから、少しくらい乱暴に外しても大丈夫らしい。

やっぱり、死神のスキルがすごくても、E組の個人個人のスキルだってある!協力したら立ち向かえる!

 

「フフフ、殺せんせーは保護色になれるからいいけど、今素っ裸なんだよね。」

「もうお嫁にいけない…」

 

………ん、嫁?せめて婿だろ…。

まぁ、作戦は成功だ。

そして、烏間先生と死神が降ってきて戦闘を始めたらしい。実況下手な殺せんせーの実況を聞きながら、何とか理解していると、無事決着はついたようだ。

 

『あ、ビッチ先生が逃げようとしてる!』

「「「逃げるなー!!」」」

「殺す寸前だったのよ…?あんた達の事…。」

「たかがビッチと学校生活楽しめないで、うちら何のために殺し屋兼中学生やってんのよ。」

 

そして、烏間先生がビッチ先生に死神が持っていたバラを渡し、いいムードに…。烏間先生、かっこいいなぁ…。この二人、くっつくかも…♪



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10.期末の時間

学園祭を乗り越えた私達を、次に待っているのは、期末テスト。大きな本校舎との勝負では、最後になるだろう。

 

「カルマ君、トップを取る心構えはありますか?」

「さあねぇ…バカだから、難しいことわかんないや。」

 

こうは言っているけど、最近のカルマは、ちょっとした暇な時間ができると、すぐに勉強を始めるくらい頑張っている。カルマは、努力をほとんど表に出さないんだよねぇ…。

殺せんせーは、今度こそ全員50位以内を目標にしようといっている。1学期の時は、急に範囲が変更されてだまされたりして、大変だったけど…。成長した今なら、できる気がする!!

 

「でも、そう上手くいくかな…。A組の担任、理事長先生に代わったらしいんだよ…。」

 

あの人は、流石にやばい……。殺意や憎悪を洗脳して、殺せんせーと同等並みのスピードで授業を進めていく、超人…。そんな人が全ての教化を教えた人達と勝負しないといけないのか…。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

みんなで山を下りると、浅野君が立っていた。

 

「何の用だよ?お前。」

「君たちに依頼がある。単刀直入に言う。君たちにあの怪物を殺してほしい。」

 

浅野君が言うには、理事長先生の教育では、凡人ではついていけない。しかし、浅野君には高校生になってもみんなが必要だから、私達がA組を負かすことで、理事長先生の教育方針を殺して欲しい、という事だった。凡人とか手下とかって言い方してて傲慢だけど、頭を下げてまで頼んでくるなんて…。これは、答えるしかないよね。それにしても、この親子の関係は大変なんだなぁ……。

 

「え?他人の心配してる場合?1位取るの君じゃなくて俺なんだけど。」

 

出た、カルマの挑発……。

 

『それに、浅野君に言われなくたって、私達が勝つつもりだよ?』

「ふっ……面白い。ならば僕も本気で行かせてもらう。」

 

そうして会話は終わり、カルマとともにアジトへ帰る。さっきの事もあり、すぐに勉強を始めると、カノさんがやってきて、私たちがやろうとしているワークをのぞき込む。

 

「お~、懐かしいねぇ!どれどれ、教えてあげようか?」

「おい、カノ。お前、教えられるほど勉強できないだろ…。カノンの邪魔はするな。」

 

というキドさんの静止も聞かず、問題を見始めるカノさん。しかし、そのまま固まってしまう。

 

「カノンちゃん…。こんな難しい問題やってるの…?」

『あ、それはかなり難しい応用問題のやつですね。そのあたりだと、私もカルマに教えてもらわなきゃ解けないんですよね~。』

「そ、そっか…。」

 

高校の範囲が出まくるのに加えて、中学の範囲でもすごく難しい問題が出るし、カノさんが驚くのも無理はないだろう。殺せんせーは、今回は高3レベルの問題も出るだろうと言っていたし、もっと頑張らなきゃ…。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

そして、決戦の日。

私達が身に着けた第2の刃を、殺せんせーに見せる!!!

 

──英語──

やっぱり、問題量も難易度も途轍もなかった。他の教化も同じかそれ以上だと考えたほうがいいだろう。

 

「リスニングえぐかったな。ビッチ先生でもあんなにボキャブラリー豊富じゃねえよ…。」

 

私、英語はまぁまぁ得意なのに、結構ギリギリだったな…。

 

──社会──

やばい、マニアックな問題が多すぎた…。それに記述も多くて、少しでもうろ覚えがあるとそれだけで詰む…。自信ないな…。

 

──理科──

理科は、何とか切り抜けられた。でも、ここまでで大分疲れたな…。まだあと2教科ある上に、私の勝負教科であり、ラスボスともいえる存在の、数学がまだある。気を引き締めていかなくちゃ…!!

 

──国語──

「A組のやつら、覗いてきたんだけどやばかった…。ただただ狂ったように集中してたぜ。憎悪てあんなに強いパワーになるんだな…。」

 

それに、あの雰囲気の中で平然と集中できる浅野君もすごい…。

 

──数学──

ラスト前なのに、漸化式の問題…!?一応カルマに教わったことがあるけど、中学のテストで出すなんて…。

しばらく解き進めていくが、やばい、つまった…。残り時間も少ない。次の問題も見ておこう。

…!これは…。

 

 

こうして、怒涛のような期末テストは終わった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「さて、結果が返ってきました、細かいことを言うのはよしましょう。今回の焦点は、全員トップ50をとれたかどうか。では見てみましょう。」

 

順位表が張り出される。私は……10位!!そして、クラス最下位の寺坂も、47位だった。ということは…。

 

「「「全員トップ50、達成ー!!」」」

 

私達は、無事に第二の刃を身に着けることができた。

後で聞いた話だが、あの数学のラスト問題は、到達できたのは3人だけ。正解できたのもカルマと私の2人だけだったそうだ。それに加えて、カルマはそこまでの問題も全問正解。ほんとに凄いなぁ…。

でも、あのラスト問題は、みんなと1年過ごしていなければ、できなかったような問題だった。

 

『カルマ、学年1位おめでとう!』

「花音も、数学3位おめでとう。」



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11.正体の時間

期末を無事に終え、演劇発表会が終わった私達。あとは殺せんせーを殺すだけ!ということで、暗殺の作戦を立てていた。

 

「ここは、もっとこうした方が良くねぇか?」

「でも、それだとここが駄目だよ~。」

 

暗殺期限まで、あと3ヶ月。第二の刃を身に着けた私達は、このまま暗殺だって達成できる!……そう思っていたのに。突如響く爆発音。

 

「何…!?」

 

みんなで校庭に出ると、大きな穴から殺せんせーが出てきた。そして、それに続いて出てきたのは、カエデちゃん。しかし、驚くべきはそこではない。カエデちゃんの首から生えていたのは…触手。

 

「茅野さん、君は一体…。」

「ごめんね。茅野カエデは本名じゃないの。雪村あぐりの妹。そういったら分かるよね。」

 

雪村あぐり…。どっかで聞いたような名前。あ、そうだ。ここに殺せんせーが来る前に担任だった、あの先生だ。優しくて、私達に希望を持たせようとしてくれていた、ダサいTシャツの先生。あの人の妹だったんだ…。

 

「明日またやるよ、殺せんせー。場所は直前に連絡する。」

 

そう言うと、触手を使って跳び去ってしまった。

私は思い出した、前にシロが言っていたことを。触手を生やしている間はメンテナンスをしなければ地獄の苦しみを味わい、数日で死に至ると。カエデちゃんも、シロと手を組んでいたの?それとも……。

すると、三村君が私達に動画を見せながら言った。そこには、あるドラマのワンシーンが映っている。

 

「どこかで見たことあると思ったんだけど…。知ってるか?磨瀬榛名って言う天才子役。」

「言われてみれば、確かに茅野だ…。」

 

渚は言った。カエデちゃんは、自分のさっきを隠すために自分に近づいたのかも、と。

カエデちゃん…。本当に、1年間ずっと復讐するためにここにいたの…?

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

次の日、殺せんせーの携帯に、カエデちゃんから連絡があった。きっと、カエデちゃんの暗殺が始まってしまうのだろう。みんなで、指定された場所へ向かう。

そこにいたカエデちゃんは、薄着にマフラーをして、汗をかいていた。触手の副作用の代謝異常らしい。

 

「体が熱いなら、もっと熱くして触手に集めればいい!!」

 

そういって、カエデちゃんは触手を燃やし、暗殺が始まった。糸成君が言うには、数秒で精神が触手に浸食され始めているから、おそらく戦闘が終わってもすぐに死んでしまうかもしれないらしい。カエデちゃん……!!

その時、殺せんせーの顔が目の前に現れた。

 

『ひっ、生首…。』

「茅野さんの攻撃が激しすぎて、顔だけ伸ばして残像を作るので精一杯なんです!!」

 

びっくりした…。

カエデちゃんの触手を抜くには、何かで殺意を忘れさせなけらばならないらしい。しかし、時間をかけている余裕はないため、急所を突かせ、その隙に誰かが気を逸らさせることをしなければならない。

私の逸らす力じゃ……駄目だ。私の能力じゃ、自分以外に対する使用だと視線を《逸らさ》せる程度しか出来ない…!

私がそう歯がみしていると、渚が向かっていった。渚は何をする気なんだろう…。

 

「言わせないよ、茅野。全部演技だったなんて。」

 

そういってキスをした。

 

「「「『えええええーー!!!???』」」」

 

な、なな、渚が、カエデちゃんに、キスを……。

みんなが騒然とする中、カルマと莉桜ちゃんはカメラ構えてるし…。

とりあえず、渚の行動のおかげでカエデちゃんから触手を抜くことは成功したようだ。

 

「キス10秒で15ヒット、ってとこかしら。まだまだね。」

 

とビッチ先生は言っているけど、ヒットって何だろう…。なんかやばそう。

 

「俺なら25は堅いぞ。」

「もうやだこの教室…。私も20は行くけどさぁ…。」

 

前原とメグちゃんまで…。

 

『ち、ちなみにカルマは…?』

「ん?俺も20くらいかなー。なに?やってほしい?」

『い、いや、遠慮しておきます…。』

 

未知のセカイだった…。

すると、カエデちゃんが目を覚ましたようだ。

 

「茅野っち…。」

「……最初は、純粋な殺意だった。でも、E組で過ごすうちに、殺意に確信が持てなくなっていった。でも、そのころには触手に宿った殺意が膨れ上がって、踏みとどまることを許さなった。バカだよね…。」

「茅野が何を抱えていたとしても、1年間一緒にクラスを作ってきたことは変わらない。だから、一緒に、先生の過去を聞こうよ。」

 

そして、殺せんせーは、過去の話をしてくれた。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

優れた殺し屋ほど、よろずに通じる。先生は、教師をするのは今年が初めて。では、なぜここまで滞りなくこなすことができるのか。それは、先生が殺し屋だったから。

スラムで生まれた先生は、殺し屋の道を選び、様々な方法で様々な人を殺す、天才だった。ついた通り名は、死神。

しかし、ある時弟子に裏切られ、捕まってしまう。送られた先は、ある実験施設だった。そこで行われる研究は、身体の中で反物質を生成するというもので、その人体実験の道具として、先生は使われた。

そんな中、研究者の婚約者だったE組の担任、雪村あぐりは、実験の補佐も行っていた。

先生は、そんな彼女を利用しようとコミュニケーションを取りに行った。

彼女と過ごすうち、先生は「みられる」とはどういうことなのかを理解し、心を開いていった。

しかし、ある問題が起こった。月で行っていた、ネズミを対象にした反物質実験の結果、爆発し、月の70%を消滅させてしまったのだ。つまり、放っておいても、先生は細胞分裂の限界を迎え、死ぬ。それを知った研究者は、先生を殺処分しようとするが、巧みに実験を誘導していた先生は、研究者を殺し、研究所を壊し、逃亡を試みた。

そんな、破壊生物になりかけた先生を止めたのが、雪村あぐりだった。

しかし、不慮の事故により、彼女は死んだ。そして、先生は後悔した。殺す力だって、誰かを救う力にできたはずなのに、と。

そして、彼女の願いである、E組の生徒の目に、光をす為、最高の成長をプレゼントする為、先生は教師になることを決めた。

その、先生が考え抜いた結果が、この暗殺教室だったのだ。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

30分かけて説明された殺せんせーの過去は、驚くべきものだった。

先生の計画通り、私達は、この暗殺教室を通して、のびのびと成長できた。

しかし、私達の頭の中に、殺せんせーとの思い出が浮かび上がった。

こんなに良い、尊敬すべき先生を、私達は殺さなければいけない。そう。私達は恐ろしい難題に直面していたのだ。



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12.メカクシ団のクリスマス

殺せんせーの過去を知り、みんな悩みつつも冬休みを迎えた。冬休みということで、ヒビヤくんとヒヨリちゃんもこっちにきているし、今日はクリスマスイブ。せっかく楽しい日なんだし、切り替えていかなきゃ!

 

『おはようございます。』

「おはよう、カノン。今日の夜はメカクシ団でクリスマスパーティーをしたいんだが、誘いたいやつとかいるか?」

『じゃあ……クラスメイトを2人呼んでもいいですか?』

「もちろんだ。」

 

誘いたい友達と聞いて思い浮かぶのは、やっぱりいつも一緒にいる、カルマ、渚、カエデちゃんの3人。カルマはもちろん来るので、これから2人を誘おうかな。

 

>『急なんだけど、私の知り合いとクリスマスパーティーやるから、来ない?』

>「せっかくだし、行こうかな。」

 

カエデちゃん

>「いいの? 行きたいな。」

 

>『OK! 二人とも、待ってるねー。あ、ちなみにカルマもいるよ!』

 

楽しみだな~。

実は、しっかりカルマへのプレゼントも買ってあるし、喜んで貰えるといいな。

 

「それで、パーティーの準備分担なんだが…。」

『はい。』

 

ということで、

~分担~

料理…アヤノ、キド、マリー、ヒヨリ

買い出し…カノ、ヒビヤ、貴音、遥、カルマ、カノン

ツリー…セト、シンタロー、紫苑、モモ

に決まった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

『えっと、買い物の品が多いので、二人ずつ別れた方がいいかと…。』

「僕とヒビヤくんで行くから残りの4人で分かれててよ。じゃあね。」

「じゃあ行こっか、花音。」

『あ、うん。』

 

貴音さんと遥さん置いてきちゃったけど……まぁ、あの二人ならちょうどいいかな。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

マリーside

 

 

「よし、料理を始めていこう。」

「言われた通りみんなの飲み物のリクエスト聞いてきました。」

「じゃあ私はそれをやるね!」

 

えっと、アヤノちゃんとお母さんと私は紅茶で、モモちゃんは…た、炭酸おしるこ…。カノンちゃんはレモン煮オレで、カルマくんはさば煮オレ…。シンタローはコーラ。他の人は、お茶とかジュース。変な飲み物も混ざってるけど、ちゃんと買ってあるみたいでよかったぁ。

 

「終わったよ。」

 

キッチンに戻ったら、アヤノちゃんがちょっと失敗しちゃってみんな慌ててたけど、無事に料理できてよかった♪

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

モモside

 

今は、セトさんとお兄ちゃんと屋根裏にいます。なぜかというと…。

 

「なかなかツリー見つからないっすね…。」

「そうだな…。そろそろほかの場所も探すか。」

 

ツリーを探しているから。秋頃にカノさんが安く買ってきたらしいけど、何故か見当たら無い。

 

「電話してみるっすね……。もしもし、カノ。ツリーが屋根裏に見当たらないんすけど、どこにあるかわかるっすか?」

【屋根裏になければ床下じゃ無い? そこにもなければ新しく小さいツリー買って帰るよ。】

「分かったっす。じゃあ、切るっすね。」

「じゃあ俺は床下見てくる。」

「あ、待って、お兄ちゃん。私も行く!」

 

お兄ちゃんはこないだまで引きこもりだったから、ツリーが見つかっても持ち上げられないと思うから!

それにしても、パーティー楽しみだな。カノンちゃんの友達も来るみたいだし!

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

花音side

 

呼び鈴がなる音が聞こえる。渚とカエデちゃん来たかな?

 

「やっほー、花音!」

『いらっしゃい! 入っていいよ。』

「お邪魔しまーす。」

 

2人を招き入れ、リビングへ連れていくと、モモちゃんが寄ってきた。

 

「その子達がカノンちゃんの友達?」

「こ、こんにちは。花音の友達の茅野 カエデです。」

「潮田 渚です。」

「私は如月 桃。よろしくね!」

 

なんか、カエデちゃんが焦ってる……??

突然、カエデちゃんが迫ってくる。

 

「ちょっと、芸能人がいるなんて聞いてないよ!? 一応共演したことあるんだから…。」

 

なんだ、そういう事だったのか。子役時代のカエデちゃんを見てもみんな気づかなかったんだし、モモちゃんはそういうのに鈍感だし、大丈夫だと思うけどなぁ。

と、なんやかんや話していると、リビングにカルマが入ってくる。

 

「渚君、茅野ちゃん。来たんだね。」

「カルマ君。……って、こんな時も煮オレ飲むの? しかもさば…。」

「意外といけるよ。渚君も飲む?」

「いや、遠慮しとくよ…。」

 

私もフルーツ系の煮オレは好きだけど、流石に鯖に牛乳入れて甘くするのは飲む勇気が出ない……。

そういえば、モモちゃんが好きな炭酸おしるこもすごく甘いって言ってたような…。

 

『カルマは炭酸おしるこ飲んだことある?』

「無いけど、興味はあるなー。」

「じゃあ後で飲んでみたら?」

「そうしようかな。」

 

ちなみに、私は餡子が嫌いだから飲むつもりはない。

 

「じゃあ、クリスマスパーティーを開催する。」

「「イェーイ!!」」

「ところで、気になってたんだけど……君は女子?」

 

カノさんが指を指しているのは………渚。私達は大爆笑。うーん、渚が女子っぽいのは、髪のせいだけじゃないような……。

 

「ええ!? 男子ですよ!?」

「いや、でもこの写真みてくださいよ。」

 

カルマが出したのは、夏の暗殺旅行の時に撮った渚の女装写真だった。

 

「カルマ…その写真まだ持ってたの?」

「当然じゃーん。いつでも弄れるように…ね♪」

 

カルマが悪い顔になってる…。………こういうカルマも好きだ…。

 

「カノが女の人に欺いてる時よりかわいいね!」

 

その発言に、私達はさらに笑ってしまった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

「そろそろプレゼント交換しよう!」

 

という声で、プレゼント交換が始まった。といっても、あげたい人にあげたい人があげる、という自由なものだけど。

 

「花音、これプレゼント。」

『あ、ありがとう。私からもあるよ、はい。』

 

カルマからのプレゼントは、宝石の飾りが付いた、髪につける小さめのリボンだった。もちろん、宝石の飾りは偽物だ。

可愛いなぁ……。大切にしよう。

 

「な、渚…。私も、渚のあるんだけど…。」

「え? あ、ありがとう…。」

 

お、渚とカエデちゃん、いい感じになってるねー!

 

「シャッターチャーンス♪」

「「カルマ君!?」」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

次の日の朝、モモちゃん達が準備したクリスマスツリーの下に、大きい箱が1つあった。

 

「あ、お父さんとお母さんからだ…。」

「アヤノさんのお父さんって…あのお義兄さん?」

 

そういったのはヒヨリちゃん。なんと、アヤノさんのお母さんはヒヨリちゃんの姉らしい。この辺の関係は複雑……。

 

「中には新しいテレビと最新のゲーム機が入ってるっすね。」

「手紙には、”メリークリスマス!! 私と、研次朗からみんなにクリスマスプレゼントだよ。メカクシ団の団員も増えたんでしょ? 使ってね。年末に見んねで家にきてもいいからね。文乃、頑張って! ”って書いてあるよ。」

 

カゲロウデイズから帰ってきて、元の家に戻ったアヤノさんの両親。私たちにクリスマスプレゼントくれたんだね…。

メカクシ団のみんなと、渚と、カエデちゃんとクリスマス過ごせて、楽しかったな…。



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13.カルマの誕生日

クリスマスパーティー、楽しかったなぁ……。

今日はクリスマス。でも、私にとっては、クリスマスよりも重要なことがある。

今日はカルマの誕生日なのだ。しっかり充実した日にするぞ……!!

と考えながら集合場所に行くと、既にカルマが来ていた。

 

『おまたせ~。お誕生日おめでとう!』

「おはよ。いきなりだねー。」

『早く言いたかったんだ~。』

 

私の誕生日から今日までは私の方が少し大人でなんとなく嬉しかったんだけどなぁ……。カルマは背が高いし、大人っぽいから尚更。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

最初の目的地、カラオケに着く。そういえば私達が出かける時は、カラオケ、ゲームセンター、お互いの家が多いかなぁ……。たまには違うとこに行くのも楽しいかも。……映画とか??

 

「花音先歌う?」

『うん、そうしようかな。えーっと……あ、モモちゃんの曲歌ってみようかな~。』

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

『♪あぁ、なんだか行けそうだ!心臓が弾けちゃうほど溢れだしそうなので、奪っちゃうよ?奪っちゃうよ?伝えたいこと詰め込んだ、そんな夢からもう目を離さないで!さぁさぁ、明日もスキップで進もう。♪』

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「花音って結構歌上手いよね。」

『うん、元々好きでいつも歌ってたから。』

 

E組に落ちる前は吹奏楽部に入っていたのだが、入ろうと思ったきっかけは、歌のおかげで音楽が好きだったからだ。………体力がなかったのもあるけど…。

 

「じゃあ俺はこれ歌おうかなー。」

 

と言ってマイクを握るカルマ。いつもとちょっと違う感じでかっこいいなぁ…。

そして、流れましたのは、ギターのメロディから始まるかっこいい曲だった。

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「♪いつだって、こうやって、突き落とされてしまうのさ。辛辣でシリアスな君の声が刺さってくる。何千回、何万回、この気持ちカタチにして。投げ込んで、打ち込んで、だけど君は逃げていくだけ。♪」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

数時間楽しんでいるとお昼時になったので、カラオケを出る。

今日はクリスマス&誕生日を祝うということで、やっぱりケーキだな、と思ったので、ケーキが美味しいと有名なカフェに入る。少し高めだったが、こういう日くらいはいいだろう。

 

「お、来たね。」

『可愛い…!』

 

高めの甘いものって凄いオシャレなんだよなぁ。マカロンとか……。あの有名な写真をあげるSNSはやっていないが、こういうのが映える(ばえる)って言うんだろうな。

まったり話をしながら軽食とケーキを食べていたが、少し間が空いたので、少しの間お互い食べるのに集中する。

すると、カルマが口を開いた。

 

「殺せんせーのこと、どう思ってる?」

 

どう、とは、殺す覚悟が出来るのかクラスがどうなるのか、などだろう。

 

『……まだ、よく分からない。カルマは?』

「俺は、やっぱり覚悟を持って殺さなきゃいけないって思うよ。そうやって、俺らは成長してきた。」

『そっか……。』

 

多分、みんなもまだ迷っている。実際、この冬休み中に誰かが暗殺を仕掛けたという話は聞いていない。

 

「ま。まだ時間はあるし、もう少し考えてみれば?」

『うん。…でも、ちゃんと決めなきゃね。』

 

一通り食べ終わり、話もひと段落した所でカフェを後にする。この後予定していることといえば、夜のイルミネーションを見るだけなので、移動する時間を考えても少し時間の余裕がある。なので、少し寒いがベンチを見つけ、座る。

そして、カルマへの誕生日プレゼントをカバンから取り出した。

 

『カルマ、改めて、ハッピーバースデー!これ、誕生日プレゼントね。』

「え、昨日も貰ったのにいいの?」

『昨日のはクリスマスプレゼントだからいいんだよ~。ちなみに、中身は私とお揃いの指輪にした!』

 

カルマは喜んでくれていて、私はそんな姿を見るのが嬉しかった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

電車に乗って少し移動し、イルミネーションを見る予定の場所の近くまで来た。少し遠出だったが、許容範囲だろう。

ふと顔を上げると、周りの建物よりも可愛い雰囲気の建物が目に入る。看板には、Prism Stoneと書いてあるようだ。

 

『あ、これが例の、プリパラに繋がるゲートがある所か…。』

「あれ、花音ってプリパラ興味あったっけ?」

『えっと、こないだ知ってちょっと気になったんだー。』

 

カルマと一緒にゲームするようになるまでは、本当に地味(と言ってはなんだが)な娯楽を少ししかして居ない感じだったので、最近になって色々知って興味が湧いている。やっぱり、勉強しかしないのは、それはそれで問題なんだなぁ……。

なんてことを話しながらイルミネーションの場所につき、綺麗なイルミネーションを見ることが出来た。

誕生日デート、上手くいってよかったな。



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14.楯山家での年越し

今日は大晦日。今は、アヤノさんに誘われて、キドさん、セトさん、カノさん、マリーちゃん、貴音さん、私、遥さんで楯山家にお泊まりすることになったので、みんなで向かい、ちょうど着いたところだ。

 

「お母さん、お父さん、ただいま。」

「お帰り、文乃。つぼみちゃんと幸助君と修哉くんも久しぶりね。後の人は初めましてかな。」

『梅宮花音です、初めまして。アヤノさん達と一緒にアジトに住まわせてもらってます。』

「貴音と遥は前の教え子だ。」

「「よろしくお願いします。」」

「マリーは、母さんが研究してた、メデューサのクォーターで、俺が森の中から連れてきたんす。」

「マ、マリーです。」

「みんな、ゆっくりしていってくれ。」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

今は大晦日の夕方。みんなは紅白をみたり、のんびりしたり、それぞれ好きなことをやっていた。

すると、マリーちゃんが話しかけてくる。

 

「ねえねえ、カノン!この、年越しジャンプっていうのやって見たい!」

『年越しジャンプ? ああ、カウントダウンして、ジャンプするやつか。いいね。やろう! …でも、マリーちゃん起きてられる?』

 

アヤカさんとアヤノさん、キドさんは話をしていて、カノさんは携帯をいじっている。遥さんと貴音さん、ケンジロウさんはお菓子をたくさん食べている遥さんを突っ込んだりしている。

今思えば、ここにいる楽しそうな人たち全員カゲロウデイズに巻き込まれた人なんだなぁ…。

 

「そろそろ紅白歌バトルが始まるわね。」

「今年も楽しみだね!」

「お母さん、そろそろお蕎麦の準備しよう。」

「そうね。みんなはゆっくりしてて。」

 

楯山家は、夕食として年越し蕎麦を食べるのか…。夜食として食べる家もあるらしい。

 

【では、準備ができたようです。如月モモさんで、オツキミリサイタル!】

 

という声がテレビから聞こえ、目を向けるとモモちゃんが映っていた。

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「♪もうどうやったって無駄かもな。泣きそうな顔みていた。諦めないでよ。みたいな言葉じゃ全然足りない!そしたらもっと元気を出さなきゃ、明日も眩んじゃうって君を連れ出してく、無理やりかなぁ。♪」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

【以上、如月モモさんでしたー!】

 

モモちゃん、凄かったなぁ。めっちゃ緊張してそうだけど……。

 

「お蕎麦できたよー!」

「遥、あんなにみかんとか食べたのに食べれるの!?」

「全然いけるよ?」

 

遥さんっておっとりしてるのに、よく食べるし、ゲームも上手いし、結構意外性がある人だなぁ。

 

「「「いただきます!」」」

『私、お蕎麦久しぶりに食べました…。』

「そういえば、僕も食べてないかも。」

「おいおい、しっかり色々食べなきゃダメだぞ? 文乃、ちゃんとバランスよく作ってるよな?」

「うん、一応つぼみと一緒に頑張ってはいるんだけどね…。」

 

アジトでは、主にキドさん、アヤノさん、紫苑さんが料理を作ってくれる。私も手伝ってはいるが、学校の関係でやっぱり任せてしまうことも多い。もう少しお手伝い出来たらいいんだけどな。

 

「そろそろカウントダウン始まるっすね。」

「セトも一緒にジャンプしよ!」

【10秒前! 9、8、7、6、5、4、3、2、1】

「「『ジャーンプ!』」」

「「「あけましておめでとう(ございます)!」」」

 

ついに、年明けたかぁ…。暗殺期限まで、あと2ヶ月半。どうなるかは分からないし、やっぱり不安が募る。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「じゃあ、年も越したっすから、初詣行くっすか?」

 

朝になり、みんなが集まるとセトさんが言い出す。

 

「じゃあ、ちょっと着物に着替えてくるから、まってて~。」

「はーい、先に外出てるねー。」

 

 

みんなで協力して着物を着る。

着物って、着るのいつ以来かな…? ちなみに、文乃さんは、赤が基調の花柄の着物。キドさんは紫が基調のクールな着物。マリーちゃんはピンクを基調とした着物風ワンピース。貴音さんは青を基調としたシンプルな着物。そして、私は黄色を基調とした着物を着る。

 

「あ、貴音。貴音の着物姿は初めて見たけど、似合ってるよ!」

「本当は着たくなかったんだけどね…。」

「まあまあ。じゃ、行こっか。」

 

そして、みんなで近くの神社まで歩く。途中、マリーちゃんが疲れて躓いたりしていたので、着くまでセトさんがおぶることになったが、それ以外は特に問題はなく神社まで来ることが出来た。

 

『やっぱり、人いっぱいいるね。マリーちゃん大丈夫?』

「う、うん。大丈夫…。」

 

マリーちゃん人混み苦手だから、気遣ってあげないと……。

 

「じゃあおみくじ引きに行こっか。」

「あれ、梅宮さん?」

「花音ちゃんも着てたんだ。」

 

という声の方向を見ると、そこに居たのは有希子ちゃんと凛香ちゃんだった。

 

『2人とも、何でここに?』

「実は、家から近い方はこっちなの。」

『そうだったんだね。そうだ、あけましておめでとう!』

「「あけましておめでとう!」」

 

さすが有希子ちゃん。着物がすっごく似合っているなぁ。

 

「どうせなら一緒に回るか? それとも、花音はあの二人と回るか?」

「いいんですか?」

「じゃあ、一緒に回らせてもらいます。」

 

そして、私達はおみくじを引いたりして初詣を楽しんだ。

 

★みんなのおみくじの結果

・アヤノ:凶

・キド:中吉

・セト:小吉

・カノ:吉

・マリー:末吉

・貴音:大吉

・(主人公):大吉

・遥:中吉

・有希子:吉

・凛香:末吉

 

↑インターネットのおみくじサイトで全員分引いてきました(笑)



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15.分裂の時間

渚の招集で外に出ると、珍しく、渚が提案をした。

 

「どうしても相談したいことがあるんだ。できるかどうか分からないけど、殺せんせーの命を助ける方法を探したいんだ。」

 

 

暗殺をして地球を救うのではなく、殺せんせーも含めて助ける。なるほど、平和な解決案だな…。

助けたいと考えている人は多く、みんなが賛成しだした。

しかし、莉桜ちゃんが口を開く。

 

「こんな空気の中言うのはなんだけど……私は反対。アサシンとターゲットが絆。だから、殺さなくちゃいけないと思う。」

 

暗殺を通して成長してきた私達。やっぱり、殺さなくちゃ、いけないのかな……。

前にカルマが言っていたのは、こっちの意見だ。私は………。

 

「才能あるやつってさぁ……なんでも自分の思い通りになるって勘違いするよねぇ……。」

「違うよ!もっと正直な気持ち!殺せんせーのこと、嫌いなの!?」

 

カルマと渚の喧嘩が始まってしまった。どうしよう……。仲がいい人通しの喧嘩って、悲しいな……。

 

「殺意を拭ったらこの教室拭ったらこの教室成り立たないからさぁ!!そんな殺せんせーの努力もわかんないの?頭まで小学生か…?」

 

どんどんヒートアップしていく。遂に、カルマが渚を押し、ネクタイを掴む。すると、渚が、足をカルマの首に巻き付かせた。寺坂は、飛び付き三角絞め、と言っている。そんな、技みたいなもの、身につけてたんだ……。

 

「僕だって半端な気持ちで言ってない!!」

「………こいつッ……!!」

『ちょ、カルマ…!』

 

殴り合いになりそうだった所を、磯貝くん、前原、杉野くんが何とか止める。……渚は、杉野君に軽々と止められていたが。

すると、殺せんせーがやってきた。

 

「中学生の喧嘩、大いに結構!しかし、ここは暗殺教室。この、ペイント銃とナイフで決めてはどうでしょう。」

 

ことの張本人が仲裁案を出してきちゃったよ……。先生が言うには、殺す派(赤)と殺さない派(青)に別れて、この山で勝負し、勝った方の意見をクラスみんなで尊重する、という事だった。

みんなが覚悟を決め、どちらかを選んでいく。

私は、どうしよう……。

どちらにせよ、クラスがまとまるならば、そこは考えなくて良いだろう。それに、殺すにしろ殺さないにしろ、最後には、成功させなければならない。だったら……。

 

『私は、殺せんせーの教育を尊敬しています。それに、このクラスだったら、どっちでも頑張れると思う。だから、私は……私の気持ちに正直に。……先生に生きていて欲しいです。』

 

カルマが殺す派で、少し引っかかるというか、言いづらかったけど、やっぱり私は殺せんせーが大好きで、生きていて欲しかった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

相手チームの旗を奪うか、全滅させた方の勝ち。フィールドはこの山全体。

 

「クラス内暗殺サバイバル、開始!」

 

烏間先生の合図と同時に、メグちゃんと竹林くんが千葉くんと凛香ちゃんに狙撃されてしまった。やっぱり、射撃技能1位と2位は凄いな……離れてる場所から、安定して当てられている。

私の射撃技能はクラス3位。だから、磯貝くんからは、狙撃を任されている。愛美ちゃんと一緒になって、旗の周りが見渡せる場所に待機する。

ちなみに、私の能力は、旗の周り40m圏内では使用を禁止されているので、狙撃をするなら基本、そこから外の方がいいだろう。

 

「や、やっぱり、千葉くんと速水さんの狙撃が厄介ですね…。」

『うーん……スナイパー対決になっちゃうかな……。』

 

あの二人より命中率が低いし、自信ないなぁ……。いざとなったら、サブで持ってるSMGタイプの銃で近接にしようかな?

と、考えていたが、どうやら千葉くん達は有希子ちゃんが殺ってくれたようだ。そういえば、オンライン戦争ゲームで鍛えてたんだっけ。

しばらくその場で待機しているが、まだ人は来ない。まぁ、まだ最初の方だし、いきなり旗を狙って来ることは無いかな……。

 

「……あっ、人面岩の影に、何人か居ます!」

『おー、その機会のメガネ凄いね…。あんな遠くまで見えるんだ。うーーん、当たるかな…。』

 

取り敢えず、愛美ちゃんにそのメガネを貸してもらい、狙う。見えると言っても隠れているので、本当にたまに様子を伺うために少し出る程度だった。

よし、心を落ち着かせて……というより、緊張を《逸らし》て……。撃つ!!

 

『やった、当たった!』

 

村松に当てることが出来た。ってことは、あそこにいるのは寺坂達の可能性が高いな…。なので、通信気を使ってみんなに伝える。

そうしている間に、向こうのチームの残りはカルマ、岡島、菅谷君、寺坂、吉田、莉桜ちゃん、凛香ちゃん、糸成君、三村君となっていた。一方、こっちのチームは磯貝君、前原、桃花ちゃん、原さん、渚、愛美ちゃん、そして私だ。

少し、不利かも……。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

カルマside

 

俺は今、殺す派チームの指揮をとっている。岡野と木村に奇襲に行かせたが、一撃離脱と言ったのに先走って原さんにやられてしまった。

 

「描くとおりに動かないねぇ、人ってやつは……。」

 

その様子を見ていた中村さんが口を開く。

 

「しゃーないねぇ。この副官様が決めに行ってやりますか。三馬鹿使っていーんでしょ?1人はやられたみたいだけど。」

「流石、分かってるね。よろしくー。」

 

互いの戦力が半分を切り、そろそろ互いの旗を取る戦略を考える頃だ。

三村の偵察で、花音の居る位置は分かってたけど、まさかあそこから村松に当てるとは思わなかったな……。能力もあるし、処理しておいた方がいいか……。

花音が殺さない派を選びそうなことは、分かっていた。付き合ってるから、敵対したくないだとか、そういうことは考えない。俺達は、そんなにヤワな関係じゃない。

そう考えているうちに、速水さん達と磯貝達が交戦を始め、中村さん達が突入しようとする。

策は積むだけ積み上げた。あと不気味なのは、三村でも発見できなかった渚くんぐらいか……。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

花音side

戦況は進み、凛香ちゃん達と磯貝君達が戦い始める。おそらく、今向こうのチームの居場所は4箇所。カルマ、寺坂達、凛香ちゃん達、岡島達。カルマは多分指揮だとすると、そろそろ寺坂が岩の影から旗を狙って出てくるだろう。

……でも、そこには…

 

「キャーー!!」

 

渚が居るんだよなぁ……。渚は、審判である烏間先生の陰に隠れ、大人数を殺せる瞬間を待ち、今降りてきた。結果、莉桜ちゃんや寺坂、吉田を倒すことが出来た。

 

「よし、磯貝君達のサポートに行こう。」

「はい!」

 

少し前から、ちょっとずつ右側に移動しながら警戒していたが、その必要はなくなったので、走って移動する。岡島と菅谷君がどこにいるか分からないから、一応警戒………と、思ったそばから、愛美ちゃんが発見した。

 

『愛美ちゃん。能力を使うから、あんまり離れたり、音を立てたりしないようにね。』

「はい……。どうするんですか?」

『出来れば、やり過ごして他の人と合流したいけど……。無理だったら、不意打ちで倒そう。』

 

しかし、私達は、岡島が手に持っていた物に気づかなかった。それは……カメラだった。

私達の居る少し後ろに連射したたまが飛んでくる。

もう、声が聞こえる距離だ。

 

「お、本当にこの辺りにいるっぽいぞ。それにしても、カメラの写真で居場所を確認するなんて、考えたよな。」

「まあな。確認している間に移動されちまうし、見当違いなところを撮っても意味無いからそこまで便利って訳じゃないけどな……。」

 

なるほど、そんな手があったのか……。確かに、キドさんの目を隠す能力だって、監視カメラなどには写ってしまうので、私の能力もそうだったのだろう。

 

『狙撃で岡島を撃つ。当たっても外してもバレちゃうから、そしたら突っ込むよ!』

「はい!」

 

撃つと、岡島のカメラに当たった。あれ、これどうなるんだろう?

すると、烏間先生からアナウンスが入り、岡島のカメラは使用禁止になった。

そして、愛美ちゃんが拳銃タイプの銃を持って突入していく。愛美ちゃんの弾は岡島に当たったが、菅谷君にやられてしまう。そして、菅谷君はこちら側に向かってくるが……

 

『残念。もうそっちにはいないんだよなぁ。』

 

愛美ちゃんに向かって意識を《逸らさ》せ、その隙に場所を少し移動したのだった。あれ、なんか、これって対象に注目させてるから、なんとなくモモちゃんの目を奪う能力と似てる…?

ということは置いておいて、私がいると思っている場所へ向かう菅谷君を後ろからナイフで刺した。

弾は無限じゃないから、出来る時はナイフでやっとかないとね。

 

「な、お前、いつの間に移動を……。」

『愛美ちゃんに気を取られてたでしょー。』

 

まぁ、そうさせたのは私なんだけど…。

一段落したので、他の状況を確認するために通信機に話し掛ける。

 

『今、誰が生き残ってる?』

【僕は大丈夫。でも、後はいないみたい。】

『……まぁ、あの様子だったら君は大丈夫だよね、渚。私は糸成君を狙いに行くよ。』

【了解!】

 

多分、カルマは渚を狙ってるだろうし、岡島達が来たということは、糸成君も向かわせてくるだろう。今から場所をとったりする時間は無いから、SMGタイプを取り出す。

走り回って撃つのは苦手なんだよなぁ……。

と、考えていると、やっぱり来た。使ってるのはARタイプか…。

お互い撃ち、避けながら走る。しかし、当たってしまった。

 

『はぁ、はぁ……や、やっぱり息が切れると、照準が、ズレちゃうなぁ……はぁ……。』

 

糸成君の目からは、ナイスファイト、という気持ちが感じられたので、笑って返した。

倒された人が集まる場所へ行くと、ほぼ全員がいた。

 

「残ったのは、渚とカルマだけか……。」

 

殺せんせーが言うには、最もプレイヤーの目に入らないのは審判。それに目をつけ、更に最大人数を殺せる瞬間を待った渚は、正しく殺し屋のセンスを持っているらしい。

すると、不意にカルマが叫ぶ。

 

「渚くーん!銃を置いておいて出てこいよ!ナイフで決めようぜ!」

 

そうか、この戦いは、みんなに納得させるような勝ち方が重要だ。だから、一方的に撃ったり出来ない。そして、渚はカルマの挑戦を受けなきゃ行けない。近接戦は、カルマの方が有利かな……。

私達は、2人の戦いを近くで見るために移動した。

 

「なんかさ、殺したくないのは変わらないけど、凛香を殺せた達成感、まだ手に残ってる。殺せんせーを殺せた時も、こういう思いが残るのかな……。」

「もう、どっちが勝っても文句はねぇよ。こんだけ色々人材がいりゃ、どんな難題もクリアできるかもしんねぇ。」

 

桃花ちゃんと寺坂が言った。

戦いを通して、みんなの強さ、弱さが分かり、みんなの意見が一貫しなくなってきた。

そして、渚とカルマが動き出す。

 

「カルマ君の格闘技術は、ナイフを当てるまでの流れを優位に運べます。一方、渚君はナイフをもう一本携えている。」

「そっか、猫騙し!」

「しかし、当然カルマ君も気づいている。武器も考え方も対極にある殺し屋2人。どう決着に持っていくか、注目ですよ!」

 

2人が、ナイフを振る。タックルをする。殴る。蹴る。技をかける。2人とも、あんなに戦えたんだ……。

そして、渚が転ばされてしまい、カルマがナイフを持って飛びかかる。

 

『渚っ!』

 

思わず声を出してしまったが、逆に、地面に刺さったナイフを蹴り、ナイフを奪った。しかし、カルマも渚に攻撃を仕掛け、ナイフを奪う。

渚はナイフをもういっぽんもっているが、隙を作らないカルマの猛攻で、なかなか抜くことが出来ない。

 

「カルマ君は過程を重んずる戦闘暗殺者です。駆け引きや戦略の先にあるのが彼の暗殺です。片や渚君は純粋に、勝利に繋がる一撃を探し、攻撃をする。それを堂々と受けることで、カルマ君は敗北を認めさせようとしていますね……。」

 

しばらく2人の殴り合いが続き、遂に渚が倒れてしまった。カルマがナイフを取りに行き、誘うとする。

すると、予想していなかった音が聞こえた。渚の猫騙しだった。ここでやるのか……!!

しかし、カルマは舌を噛んでダウンを防いだ。この戦いは、どうなるんだろう……。

ナイフで仕掛けるのかと思ったら、技をかける。

 

「肩固め!?」

「渚君は、決め技に、カルマ君の得意な格闘技を選んだ。」

 

2人とも、同じことを考えてるんだ。お互いが、納得させようと、必死に。

 

「キブ。降参。俺の負けだよ、渚……。」

「そこまで!赤チームの降伏により、青チーム、殺さない派の勝ちとする!!」

 

な、渚が勝った……。殺さない派の勝ちだ!!!!

そして、渚とカルマは仲直りをしたようだ。良かった……。

もう既に空は夕焼けに染っていた。

助ける方法を探す期限は今月一杯まで。その間も他の勢力は殺せんせーを殺そうとすると、烏間先生は言った。そして、1月の結果がどうなろうと、2月から先を全力で暗殺に費やすことを約束し、教室へ戻った。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「普通に考えてみよう。各国の首脳は、殺せんせーを殺すことしか考えていないのかな。僕は違うと思う。だって、目的は地球を救うことなんだから。」

 

なるほど、確かに竹林くんの言う通りだな……。しかし、その情報は最高機密で、ただの暗殺者の一端である私達には、その情報は知らされないと烏間先生は言う。でも………

 

「プロジェクトのデータベースに侵入しました!オンラインで繋がっているPCなら、大体入れます。」

 

律なら出来ちゃうんだよなぁ……。エネちゃんも大概だけど、律もやばい……。

そして、世界中の研究についてをみんなで読み解くと、アメリカ班が、国際宇宙ステーションで行われていることが分かった。

そんな所でそんな所で研究してるんじゃ、交渉にも行けないよなぁ……。

すると、殺せんせーは烏間先生達に席を外すよう言った。何するんだろう?

 

「さて、君達の望みは、宇宙から戻ったデータがアメリカに渡る前に、覗き見をすることですね。そこでです!近々、有人ロケットの試験発車が行われるのを知っていますか?」

 

殺せんせーは、宇宙ステーションをハイジャックし、実験データを盗む。そう言ったのだ。

この先生、相変わらず滅茶苦茶だな……。




戦闘描写書くの楽しかったです(?)


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16.宇宙の時間

「でも、本当に日本の技術で有人ロケットなんて飛ばせるの?」

「それだけの技術信頼度は充分あります。先生の影響で、開発を早めたのかもしれませんねぇ。」

 

そして、みんなで準備を始めた。こないだまでみんな悩んでいたのを考えると、こうやってひとつになって作業するのは楽しいなぁ……。

作業の後、教室では話し合いが始まった。

 

「計画は整った。あとはいよいよ実行だけど、ロケットに乗るのは2人だけだ。………行きたい人!!」

 

磯貝君がそう言うと、男子のほとんどが手を挙げる。……やっぱり、宇宙って男子のロマンなのかなぁ…。

 

「まだ1度も成功したことの無い試験機ですが……それでも行きたい人!!」

「「「…………。」」」

 

しかし、殺せんせーがそう言うと、みんな手を下げてしまう。

結局糸成君の推薦により、行くことになったのはカルマと渚。挑発、戦闘のカルマと、安心、暗殺の渚。人選としてはいいかもしれないけど、危険なことを考えるとちょっと心配だなぁ……。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

今回の侵入は、監視カメラ等が関わってくるため、私の能力はあまり役に立たない。なので、私は仕事なし組だ。発射がよく見える丘で、ギャラリーと共に見守る。

 

【100、99、98、97、96、95、94…………】

「大丈夫かな……。」

『殺せんせーも点検するって言ってたし、信じるしかないかな…。』

【5、4、3、2、1】

 

そして、ロケットは煙と炎、爆音を上げて空へ昇って行った。

殺せんせーが戻ってくると、急いで学校に戻り、律を通して宇宙船での取引の様子をみんなで見守る。

 

I don't know he'll do to the earth.If you refuse.(断ったら地上で何するか分かんないよ?)

 

わぁ……。渚もカルマも英語上手いなぁ………。私も、ビッチ先生とかのおかげで、少しは会話出来る自信はあるけど、実際話すとなると難しいんだよねぇ……。

 

【まずは、大胆不敵な2人の少年に、ブラボーと言わせて貰おう。】

 

あれ、船員のおじさんも日本語話してる……。

そして、無事要求を飲んでもらうことが出来た。良かった……。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

無事、山の水場へ降り、帰ってくることが出来たカルマと渚を迎え、早速教室でデータの確認をする。

データの内容はこうだった。

触手生物の爆発リスクはサイズと反比例することが判明。大きいと安定、小さいと高確率で爆発する。人間サイズの殺せんせーが暴走、爆発する確率は予想より遥かに低い。更に、ケイ素化合物の流動を促す薬を定期的に投与することで、リスクは下がり、爆発の確率は高くとも1%以下である。

 

「1%以下じゃ、爆発しないも同然!殺せなくても、地球が爆発しなくて済むぞ!!」

「あれ、じゃあ、暗殺は?今日限りで終わるのか……?」

 

烏間先生が言うには、どれだけ可能性が低いと言っても、危険生物であることは変わりないので、政府は暗殺計画を取り消さないらしい。

そして、私達は相談をし、決めた。

3月の期限に殺せなかったら、私達は暗殺を卒業して、ただの生徒と恩師に戻る。でも、期限までは信念を持って刃を振るう。なぜなら、暗殺は、この暗殺教室の必須科目だから!



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17.進路の時間

もう2月。未来への2月。別れを前に、自らの進路を決めなければいけない季節。卒業まで、暗殺期限まで、後32日。

 

「カルマは、どこの高校へ?」

「うーん、俺は、椚ヶ丘に残るよ。追い出したはずの奴が、戻ってきて自分らの上に立たれた屈辱的な顔をあと3年も拝める♪………それに、タイマンの学力勝負で面白そうなやつって、椚ヶ丘にしか居ないんだ。」

 

あー、浅野君か……。確かに、全国模試1位だもんね……。でも、もう、みんなとお別れか……。

最近、私のなりたいものが見えてきた。といっても、具体的ではないが。

 

「花音はどこ志望だっけ?」

『私は、王蓮寺学園付属高校がいいかなーって思ってる。』

 

椚ヶ丘市から電車で少し行った、巡ヶ丘市にある学校だ。全寮制の学校で、そこに決めた理由は、ずっとメカクシ団のアジトにお世話になってたらダメだと思ったから。学力的には、無理もしすぎず、低すぎずの所なので、色々なことに挑戦したいな、と思っている。

 

「おー、あのオシャレなとこだね!」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

そして、受験の日がやってきた。

今日までしっかり勉強してきたし、そんなに無理した所じゃないから、多分大丈夫たと思うけど………やっぱり不安だなぁ…。

と、考えながら歩いていると、聞き覚えのある声がして、走る。すると……

 

「フレーー!フレーー!梅宮さーん!わああーーーー!!!」

 

殺せんせーの分身による、合同見送りもどきだった。

 

「あぁ!もう、次の所へ行かなくては!!では頑張ってください!」

 

そして、直ぐに飛んで行った。…相変わらず滅茶苦茶だ……。まぁ、頑張りますか。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「皆さん、第二志望以内で全員が合格! やりましたね! そして、この時期にやることといえば…………編集作業です。」

「「「なんでだよ!!」」」

 

急にどうした……。締切ギリギリまで終わらせられない執筆家みたいなコスプレまでしちゃって……。

まぁ、それは置いておいて、私は、無事に第1志望の高校に合格することが出来た。ほんと、よかった…。

 

「もちろん、卒業アルバムを作るのです!」

『え? 卒業アルバムならもう作ったんじゃ…?』

「殺せんせーは写ってないからだね、たぶん。」

「いや、マッハでちょいちょい写り込んではいるみたいだぞ…?」

 

そう言った千葉くんの持っている写真を覗くと、ピースした殺せんせーがうっすらと写っていた。普通に心霊写真になってるよ…。これ、気付く人いるんじゃない?

 

「先生がこの一年こっそり貯めてきた皆さんと写り込んだ自撮り写真! この中からたくさん選びましょう!」

 

一年間の学校行事の写真、みんなの恥ずかしい写真の隠し撮りを見せてくる。殺せんせー……盗撮してたんだね…。

そして、写真が足りないと言って、追加でも写真を撮り始める。偉人のコスプレをして写真を撮る中、カルマも着替えを差せられていた。

 

『カ、カルマの腹筋……凄い……。かっこいい……。』

「花音!?変態みたいになってるよ!?」

『はっ!私としたことが……。』

 

は、恥ずかしい……。いやね?でもね?だってね?好きな人のね?普段見ない腹筋ですよ?そりゃねぇ?

 

「あはは……。それにしても、この2月の殺せんせー、全体的に好き放題やってたよねぇ。」

「多分、君達に甘えているのだろう。君達はもう充分成長した。だから、今度は自分も甘えたい、と考えているのかもな。」

 

そして、烏間先生にとっても、私達はそういう生徒になれたと、言ってくれた。

それから、私達は殺せんせーに海外にまで連れていかれ、写真を撮りまくった。この感じだと、またアコーディオンみたいなアルバムになるんだろうな……。

そして、進路相談の時間がやってくる。

 

「次は花音さんですか。」

『はい。』

「なりたいものは、見つかりましたか?」

『まだ、明確には決まっていませんが……この目の能力も含めて、人の役に立てることがしたいです。』

「そうですか。…………君達には、皆平等にあり、平等に失う才能があります。それは、若さです。その若さが逃げないうちに前へと進んでくださいね。」

『……はい!』

 

この能力は、まだたまに暴走することもあって、大変だけど…。

しっかり、活かしていきたいな。



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18.登校の時間

今は、カルマと一緒にアジトに居る。今日もみんなで楽しく話していた。カノさんがテレビをつけるまでは。

 

【えー、これはある特殊危険生物を閉じ込めるためのものです。この、一年前に月を破壊した怪物はあろうことかこの国の中学生を人質にとり、教師になりすましていたのです!】

「ちょ、カノンちゃん、カルマくん、これってあの超生物の先生のことなんじゃ…?」

「『え?』」

 

人質…? 私達は人質なんかじゃない!殺せんせーはちゃんとした先生なのに!……殺せんせー、捕まっちゃったの?

 

『カルマ、どうしよう!?』

「取り敢えず学校に行って、烏間先生に訳を聞きに行こう!たぶん、これを見たみんなも向かってると思う。」

『そうだね…。キドさん、こういうことなので、出かけてきます!』

「分かった。気をつけるんだぞ。」

『はい!』

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「カルマ! 花音!」

 

渚とカエデちゃんが走ってくる。

 

「これって、一体どういうことなの!?」

 

みんながだんだん集まってきている。そして…記者の人たちも。

 

「ご覧下さい! こちらが人質にされていた生徒達でしょうか!?」

『私達は人質じゃない!殺せんせーは怪物なんかじゃないです!危険じゃないです!ちゃんといい先生なんです!』

「………危険じゃないってテレビで流して…!」

「おい、この子達にカメラ回せ!」

 

その時、カルマが肩に手を置いてきた。

 

「花音、一回落ち着いて。確かにこいつらは違うことを報道してる。でもこいつらは話を聞かないから、何を言っても無駄だよ。」

『うん…。』

 

すると、烏間先生が助けに来てくれて、記者の人達を追い払ってくれた。

 

「一度話そう。付いてくるんだ。」

 

そして、私達は仮説のテントのような場所の中に連れてこられた。外には、他の警備の人もいるので、今すぐ飛び出すことは無理そうだ。

 

「烏間先生、殺せんせーに何があったんですか…。」

「タイムリミットだ。政府が最終暗殺を開始した。もう君達が付け入る隙はない。諦めるんだ。」

 

政府の、最終暗殺プロジェクト……。せっかく、殺せんせーが助かる方法がわかったのに。せっかく、今日まで楽しく過ごしてきたのに。せっかく………

 

『もともとはあなた達が私たt 「嫌です! 行かせてください! お願いです! 僕たちに…」

 

私が言おうとする前に、渚が叫ぶ。しかし、烏間先生は渚に技をかけて黙らせ、こう言って去った。

 

「いいか渚くん、俺を困らせるな。」

 

そして、烏間先生は出ていってしまった。沈黙が流れたあと、カルマが口を開く。

 

「………結局、烏間先生も社会人なんだよ。いざとなったらああするしかない。」

 

カルマ…。

しかし、渚は覚悟を決めたように言う。

 

「みんな。今、烏間先生は俺を困らせるなってはっきり言った。前に行ってた通り、僕たちは信頼し、任されたんだと思う。」

 

“もしも俺が困れば、迷わず君らを信頼し、任せるだろうな。”

 

「だから、一度みんなで整理しよう。僕らがどうしたいのか。何が出来るのか。殺せんせーはどうして欲しいのか。」

 

そして、みんなにはすぐ護衛の兵がついた。

私は、アジトがバレるわけにいかないので、キドさんに事情を話し、アジトに住む前の……本来の私の家へ帰った。

まくことも出来たけど、怪しまれちゃうからね…。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

【3-E TARK!】

 

磯貝君

>「みんなの気持ちは?」

 

希子ちゃん

>「会いたい…」

 

>『兎に角、このまま殺せんせーを殺されたら嫌だし、学校に行く方法を考えないと!』

 

愛美ちゃん

>「侵入経路も!」

 

 

 

 

三村くん

>「じゃあ男子は山側の偵察をしよう。」

 

原さん

>「街中は女子に任せて!」

 

 

 

 

>「情報分析完了しました。最適な侵入ルートの算出をしました。添付ファイルをご覧ください。」

 

>『ありがとう!』

 

岡島

>「サンキュー!」

 

 

 

こうやって計画を綿密に立てた。

フリーランニングを使って、屋根の上を通ってみんなで集合。そしてみんなで学校へ行く。精鋭部隊の人達がいるみたいだから、作戦も立てた。

殺せんせーに………絶対会いに行く!!



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19.ラスボスの時間

私はカルマ達行動することになっている。でも……

 

【カルマ、そっちの状況は?】

「ん? 今…」

「うわああ! 沁みる! 辛い!!」

「ごめんねぇ、みんなプロだからこうでもしないと悲鳴あげてくれないでしょ?」

 

結構真面目な時なのに、こんなことするなんて……w

 

『カルマの”備えあれば嬉しいな”じゃん…w』

「今回はブートジョロキアは調達できなかったんだけどね…。よし、これを餌にあと2、3人は始末しよう。」

 

イヤー、ヤッパリスバラシイセイカクダナアー。

今回の指揮は、カルマ。磯貝君やメグちゃんの執る指揮に比べて、カルマの指揮は、使えるものは使う、悪魔的作戦に基づいたもの。だから、また違った動き安さがあるんだけど……えぇ、そんなこともするの!?という、物もあるから、驚かされる。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

順調に進んでいくと、他の人たちとは格が違うような人が立っていた。

 

「確かに、我々は油断していた。ここでは君たちの方が何枚も上手のようだ。」

 

カルマが腰の後ろで手を使って合図をしてくる。これは、能力で背後からスタンガンを使えという合図だ。

よし。視線だけでは無く、存在感からも《逸らす》。

木の上から渚が猫騙しで動きを止める。そして、私のスタンガン!

 

「『カルマ!!』」

 

カルマのかかと落としでとどめを刺した。

早く殺せんせーの所に行かなくちゃ…。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

やっと校舎についた。

 

「音だけでもわかりました。皆さん成長しましたね。」

「先生…。」

 

殺せんせーは、いつもと変わらない様子でそこに居た。諦めても、悲しんでもいなかった。それなのに、そんな先生を見ていると、悲しくなる。

 

「私達、人質にでも何にでもなるから、早くここから出よう!」

「私の存在が世間に知られてしまった以上、発射は止められないでしょう。この計画は完璧に建てられています。」

『殺せんせーは嫌じゃないんですか?』

「世界中の技術が先生の能力を上回った事に敬意を感じ、そのターゲット出会った事に栄誉も感じます。」

 

でも、私達は……悲しいよ…。結局、何も出来ないじゃん……。

 

「じゃあ私たちがしてきた事は無駄だったの…?」

「いいえ、それは違いますよ。先生の爆発が1%以下だということを宇宙へ行ってまで突き止めてくれたじゃないですか。その過程と心が大事なのです。………ところで中村さん、なんだか甘い匂いがするようですが?」

 

やっぱり殺せんせーは地獄鼻…。

実は、雪村先生が今日を殺せんせーの誕生日にしたという話を思い出した私達は、先生のためにケーキを用意していた。

 

「い、1週間ぶりのスイーツ…。」

「あーもう!早く歌っちゃお。さん、はい!」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

Happy birthday to you.

Happy birthday to you.

Happy birthday dear 殺せんせー。

Happy birthday to you.

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

殺せんせーがろうそくを吹き消そうとした瞬間…………ケーキが吹き飛んだ。一瞬、何が起こったのかわからなかった。一瞬、殺せんせーの息で吹き飛んだのかと思った。でも、違った。

 

「ハッピーバースデー、殺せんせー。」

「や、柳沢…!」

「時は熟した。世界一残酷な死をプレゼントしよう。そして、生徒のみんな、彼が新しい殺せんせーだ。」

 

殺せんせーよりも大きい体、多い触手、禍々しいオーラ…。

 

「彼には殺せんせーと同じ改造を施した。想像できるだろうか? 人間の時でさえ君達を圧倒した者が、触手と憎悪を手に入れた破壊力を!」

 

やっぱり、その正体は2代目死神だった。柳沢も、自分で触手を埋め込んでいた。

 

「命などどうでもいい。全てを奪ったあいつを殺せるなら!」

 

柳沢は、殺せんせーに復讐をしに来たんだ。こんな、放っておいてももうすぐレーザーで死んでしまう殺せんせーに。そして、殺せんせーと2代目死神の戦いが始まってしまった。

私達は、その光景を見ていることしかできなかった。

2人がぶつかるたびにソニックブームが発生する。

私達じゃ目で追うこともできない戦い。殺せんせーも押されてる。そして、私達は柳沢に誘導されて、あることに気づく。

 

「やっぱり、殺せんせーの最大の弱点は…。」

『まって渚! 交わし始めてるよ。』

「こればかりは年季の差です!」

「では、これはどうかな? 生徒を守るんだよな? 先生ってやつは。」

 

2代目死神が私達に向かって攻撃しようとしてる…?

殺せんせーは私たちを庇った。

 

「わかったか、お前の最大の弱点はなぁ…。生徒…「んなわけないでしょう!! 足手まといでも弱点でもない、私の誇れる生徒です!」

「まだ我々の復讐は完成しない…。ちゃんと守れよ? 可愛い生徒を。」

 

殺せんせーの最大の弱点か私達と言ったことに絶望を感じる。既にどうしようもなかったこの状況を、更に悪くした柳沢に怒りを感じる。殺せんせーが私達のせいでダメージを受けていくことに悲しみを感じる。

あ、ダメだ……。

 

やったって無駄だと分かっていることから《目を逸らす》。

やってはいけないと分かっていることから《目を逸らす》。

恐怖から《目を逸らす》。

周りの人の意識を殺せんせー達へと《目を逸らす》。

何故か持ってきてしまった、夏のあの戦いで持ってきた実弾の銃を取り出す。

柳沢の背後に立つ。

 

 

………引き金を引く。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

カルマside

 

発砲音で気がついた。花音が、隣から居なくなっていることに。

 

「まさかっ……!」

 

花音は、柳沢の後ろで銃を構えていた。目を輝くほど赤く染めて。顔に表情は無い。暴走、だ。

 

「ぐっ……いつの間に背後にッ……!!」

 

俺は、走り出した。花音が、危ない。

花音が2発目に撃った弾は、当たらなかった。そして、柳沢が攻撃しようとする。

 

「花音!!」

 

俺は、ギリギリ花音を守るように割って入り、2人揃って少し遠くまで飛ばされた。

そして、俺達は意識を失った。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

渚side

 

柳沢に攻撃を仕掛け、カルマと共に吹き飛ばされてしまった花音と、2代目死神に捕まった殺せんせーを見て、僕達は絶望していた。しかし、不意に、2代目死神の触手がちぎれ、殺せんせーが開放された。それをしたのは……茅野だった。

 

「殺せんせー!今のうちにどっかで回復を!」

 

殺せんせーが止めても、茅野は向かっていった。そして………触手に貫かれ、地面に落ちた。みんなの顔が絶望に染まり、殺せんせーが怒りで真っ黒に染まる。

 

「ヌワアアアアアアアアア!!!」

「そうだ! それこそ破壊生物の本性!この一年をお前自ら全否定したことになる!」

 

2代目死神も、薬でパワーアップし、更に威力が上がる。。どうなってしまうんだろう。

僕は、何とか気持ちを持ち直し、みんなに言った。

 

「ここから離れなきゃ! このままじゃ巻き添えだ!」

 

倒れている茅野を抱き上げ、離れる。

その時、殺せんせーは黒以外に沢山の光を出した。黄色。赤。緑。青。白。

 

「全ての色を、全ての感情を、全ての過去を、全ての命を、全てを、混ぜて純白のエネルギーに!」

 

空には、殺せんせーだけが残っていた。



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20.卒業の時間

渚side

 

「先生、茅野達が…。」

「大丈夫です。この一年、ずっと能力を高めてきましたから。これは、先生が空中で全て集めた茅野さんと梅宮さんの細胞と血液です。」

 

殺せんせーは、バトル中には使わずにとっておいた触手を使って茅野を治すための準備をしていたらしい。集めた細胞と血液を触手で治し、足りない分は先生の粘液と僕らの血で補った。

そして、触手から電気を出し、心臓を動かした。

 

「また、助けてもらっちゃった…。」

「茅野!よかった…。」

 

そして、カルマと花音が倒れている場所へ向かう。花音は足に怪我をしていたが、そこまで大きな怪我はなく、声をかけると目を覚ました。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

花音side

 

「花音さん!大丈夫ですか?」

 

一瞬状況がわかなかったが、すぐに思い出した。能力を抑えられなかったこと。柳沢を撃ったこと。カルマに守ってもらったこと。

 

『あ……。ごめんなさい、私……。』

「大事なのは、過ちを繰り返さないこと……。先生は、何度でも助けますよ。」

『カルマも、ごめんね……。』

「……大丈夫。みんな無事だったしね。」

 

すると、みんなが喜んでカエデちゃん、カルマ、私の元へ集まってきた。

 

「無事でよかったー!!」

「もう、あんな無茶しちゃダメだよー!!」

 

……能力の暴走って、あんなに抑えられないものなのか…。コントロール出来ない力は、怖い。改めてそう思った。

すると、突然殺せんせーが倒れた。

 

『殺せんせー!?』

「流石に疲れました……。みなさん、暗殺者が瀕死のターゲットを逃してどうしますか?……殺しどきですよ。」

 

もう、迷っている時間はない。殺さなきゃ、いけないのかな…。

そして、磯貝君が代表して言う。

 

「みんな、手を上げてくれ。先生を、殺したくない奴。」

 

みんなが手をあげる。でも、私は上げなかった。

天に任せるか、私たちで殺すか。そのどちらかなら、殺せんせーは私たちに殺して欲しいんじゃないかな…。

 

「オーケー、じゃあ、殺したい奴。」

 

私が一番最初に手を上げ、みんなも辛そうに後からあげる。

 

「ッ分かった…。」

「みんな、殺せんせーの弱点、覚えてるよね…?」

 

“実は先生、スピードに特化しすぎていて、意外とパワーがないんです。”

 

みんなで押さえれば、動きを止められる。

 

「最後は、誰が…。」

「………みんな、僕にやらせて。」

 

そう言って出てきたのは、渚だった。

 

「この教室じゃ、渚が首席だ。誰も文句はないよ。」

『うん、渚が一番ふさわしいよ。』

 

暗殺の才能を持ち、クラスの危機を何度も救ってくれ、方針の中心に立った。1年の時から渚を見ているけど、この教室で、1番輝いていただろう。

 

「さて、本当は一人一人に挨拶をしたいのですが、それでは時間がいくらあっても足りないので、最後に出欠をとります。」

 

 

「赤羽 業君。」

 

「はい。」

 

 

「磯貝 悠馬君。」

 

「はい。」

 

 

「梅宮 花音さん。」

 

『………はい。』

 

 

この出席の時間が終わって欲しくない。でも、ゆっくりと、止まることなく進んでいく。みんなが、悲しみながら、精一杯の返事をする。

 

「堀部 糸成君。」

 

「はい。」

 

糸成君で最後。もう、時間だ。殺さなくちゃいけない。

渚の手は震えている。やっぱり、殺したくない。でも、私たちの手で殺したら、それが殺せんせーへの恩返しになるのだと思った。

そして、私の手が渚の背中に触れるのと、殺せんせーの触手が渚の首に触れるのはほぼ同時だった。

 

「そんな気持ちで殺してはいけません。落ち着いて、笑顔で。」

『渚、落ち着いて。』

 

私はただ渚に笑いかけた。

 

「………殺せんせー、さようなら。」

「はい、さようなら。」

 

渚は、差し出すようにナイフを刺した。そして、殺せんせーは黄色い光を放つ粒となって空へ飛んでいった。

みんな、泣いている。カルマも、寺坂も、莉桜ちゃんも、私も。

しばらくそのまま時間は流れていき、磯貝君が喋った。

 

「みんな、教室に、戻ろう。」

 

「これって…。」

 

教室に戻ると、みんなの机の上には、恒例のアコーディオンのような本が2冊ずつ置いてあった。それは、卒業アルバムとアドバイスブックだった。

アドバイスブックを開くと、最初は読みやすい漫画で始まる。作り込まれた問題集や、細かすぎるアドバイス……。そんな様子に、みんなうんざりしてきて、涙を忘れて眠ってしまった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

『あれ、全員寝ちゃったんだ…。』

 

もう既に、日も昇っていた。

ふと校庭を見ると、殺せんせーの服がまだ置いてあった。……職員室に持って行こう。

 

『こうやってみると、殺せんせーってデカイなぁ。』

 

殺せんせー、本当に死んじゃったのか。でも、いつまでも悲しんでちゃ、ダメだよね。

気がつくと、隣にカルマが居た。

 

『カルマ。』

「なに?」

『今日は卒業式だね。』

「そうだね。…………教室戻ろっか。」

 

教室に戻ると、何人かは起きていて、それからみんなだんだんと目を覚ました。準備が整うと、烏間先生が来て、話をしてくれた。

 

「この1年、本当にご苦労だった。暫くは注目されて大変だと思うが、出来るだけ君らを守る。だが、先に謝らせてくれ。」

「平気っすよ、烏間先生。俺らも頑張るから。」

「その代わり、希望があるのですが。今日の卒業式には出させてください。」

 

そう。暗殺教室を卒業した私達には、まだ学校全体の卒業が待っている。旅立ち、か……。

 

「全員、起立!!烏間先生、ビッチ先生!本当に色々教えていただき、ありがとうございました!!!」

「「『ありがとうございました!!』」」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

卒業式は、市民会館で行われている。そして私は今、笑いを必死にこらえている。理由は……カルマが、カーディガンじゃなくてブレザーを着て、第一ボタンまで閉めて制服を着ているから! 入学式の時はまだ知り合ってなかったから、こんなカルマを見るのは初めて…。

ということは置いておいて、当然だが、私達は他の生徒から、色々な変な目で見られた。しかし、私達は前を向いて座っている。

 

「梅宮 花音!」

『はい!』

 

卒業証書を受け取る。

 

「1年前とは別人のようにいい目をするようになったね。」

『そうですか?殺せんせーのおかげですね……。では、理事長先生、お元気で。』

 

式が終わり、ロビにー出ると、メカクシ団のみんなが居た。

 

「カノン!」

『え、マリーちゃん? キドさんたちも!』

「せっかくの、団員の卒業式だしな。それに、頑張ったと聞いてる。」

 

『ありがとうございます!では、また後で。』

「頑張ってね~!」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

五英傑の助けもあり、マスコミを抜けてバスへ乗った私達は、ひとまず学校へ戻った。

賞金の300億円は、速やかに支払われた。

でも私達は、殺せんせーのアドバイスを参考に、学費と将来の一人暮らしの頭金をいただいて、E組の山の敷地をみんなで買って、残りはいろいろなところに寄付をした。そして、残りは国に返還した。烏間先生……あ、もう、先生では無いのか。烏間さんの株が上がるんだろうな。

この一年の象徴だった三日月も、崩壊して来ている。

さようなら、椚ヶ丘中学校。さようなら、3年E組。さようなら……殺せんせー。





とりあえず、1章はこれで終わりです!……6分の1じゃ全然まだまだですね…。
番外編を少し書いてから、2章へ続きます!読んでくださってありがとうございます!


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番外編1.恋の時間

「そういえば、花音ってどんな経緯でカルマ君と付き合ったの?」

 

何人かの女子で恋愛トークをしていると、カエデちゃんが聞いてきた。

ということで、話すことになってしまった……。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

椚ヶ丘中学校に入学してから、そろそろ半年がたつ。今は吹奏楽部員にプリントを渡すために、隣のクラスへ向かっている。確か、D組で仲良いのって渚だけだったような……。渚とは、体験入部の時から仲良くしていて、よく合わせ練習もする仲だ。と言っても、渚はクラリネット、私はユーフォニアムで、あんまり合うところがないけど……。

 

『渚ー、このプリント、吹部の人に回しておいてー。』

「あ、花音。わかった、配っとくよ。」

「渚君、その子誰? 渚君の彼女?」

 

そう言ったのは、渚と喋っていた赤髪の男の子だった。話してたの、邪魔しちゃったかな……?

 

「え!? ち、違うよ!この子は、吹部の友達。」

「なーんだ。」

「あ、ねぇ。せっかくだし、3人で行かない? 」

 

どうやら、2人でどこかに遊びに行くところだったらしく、私も行くことになった。

移動中に聞くと、赤髪の男の子は赤羽 業という名前だった。どこかで聞いたことがある名前だな、と思い、考えてみると、数学の上位辺りで見かけた人だった。それに加えて、素行不良で有名だとよく友達が言っていたのも思い出した。……頭いいのに悪い人?

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

◆後日

 

「え? なに、聞こえなーい! もう一回言ってみてよ、ほら、ほら!」

 

コンビニに夜ご飯を買いに行こうと歩いていると、路地裏からそんな声が聞こえ、覗いてみると昨日の赤羽君だった。そして、何気に強い……。相手高校生じゃないの?これ。

 

「ふう……。あれ、昨日の……なんだっけ?」

『あ、梅宮 花音です。…えっと、あの人大丈夫なの?』

「へーき、へーき。」

 

随分適当だなぁ……。

さっきまでは喧嘩してて怖い雰囲気が漂ってたけど、終わってからはなんかふわふわして適当な感じ……。これがギャップと言うやつか。

 

「家この近くなの?」

『あ、うん。』

「そっか。……気をつけて帰りなよ。」

『うん、じゃあね。』

 

ちなみに、赤羽君の家と私の家は、そこそこ近い事が分かった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

『それ以降、渚も一緒にカルマともよく遊びに行くようになったんだ~。』

 

確か、出会って半年後くらいには、廊下ですれ違ったらやっほ~って笑い合うくらいには仲良くなってた記憶がある。

 

「へぇー。どんな印象だったの?」

『えっと……気が合うとは思ったかな。あと、色んな一面がある人だなーって。』

「ほほぅ……。」

 

なんか、いつの間にか莉桜ちゃん達も居る!?

まぁ、とりあえず話を続けよう…。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

2年になると、渚と赤羽君はだんだんと疎遠になった。何故かは分からなかったが、私は特に触れ無かった。一方で、赤羽君とは相変わらずよく遊ぶので、最近は2人きりの時が多い。

と、言っても、この2週間くらいは会ってないし、見かけもしない。忙しいのかな?

と考えていた矢先、赤羽君からメールがあり、今日は遊びに行くことになった。

 

『赤羽君ー!』

 

と言いながら向かっていくと、手をヒラヒラ降ってくれた。この、赤羽君のちょっとダルそうな適当な仕草は、ちょっと可愛い。

 

「じゃー、今日はどうする?あ、こないだ話してたゲーム届いたんだけど、家来る?」

『お~!……そういえば、赤羽君の家って行ったこと無かったし……お邪魔していい?』

「オッケー。俺の家、親居ないからそんなかしこまんなくても大丈夫だからね。」

 

ということで、今日は赤羽君の家に行くことになった。

 

「………同級生男子の親が居ない家に行っちゃっていいの?」

『………えっ』

 

一瞬、固まってしまった。しかしその後、冗談冗談!と、笑われながら言われてしまった。……このやろー!

 

「まぁ、気を付けなよー?」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

赤羽君のお家は、インドの物が沢山置いてあり、程よい広さだった。親がなかなか海外から帰ってこないにしては、ちゃんと掃除がされていたりして、赤羽君の女子力の高さを感じた。……下手したら、何割かの男子ってそのへんの女子より女子力高いよね…。何なんだろうね。

しばらくゲームをしたり、買ってきたお菓子を食べていると、なんだか赤羽君がソワソワし始めた。そして、急に口を開いた。

 

「えっと…さ。ちょっと……聞いて欲しいんだけど。梅宮さん、好きです。付き合ってください。」

 

……………こ、告白!!???されたの!?私が!?

すると、ビックリした私の顔を見て笑いだしたので、ほんとに好きなの?とかいってからかい返してみる。

話を戻すと、つまり、私はあの赤羽君から告白された訳だ。

そして、言われて気づいた。私も、赤羽君のこと好きだったんだ。考えてみたら、赤羽君のことは、細かい癖とか口調をとても意識している気がした。

 

『っていうか……私も多分、赤羽君のこと好きかも…。今気づいたけど……。』

「え、マジで?」

『うん…。えっと、よろしくお願いします。』

「両片思いってやつだったじゃん……。もっと早く言えばよかったなぁ。」

 

ということで、私達はお付き合いをすることになったのだった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

『って感じだった。』

「……両片思いとかめっちゃええやつやん…。あ、ごめんちょっと驚きで関西風になっちゃった。」

 

と、言われ、みんなが笑う。確かに、自分が好きな人から、何も言わなくても好かれてた!ってすごい嬉しいことかもしれない。

 

「それにしても、カルマ君からだったんだねー。なんか意外。」

「確かに。あんまり恋愛しなさそうだよね。あるとしても、1部の素行不良好きが告白して付き合うみたいな。」

 

……若干私の事ディスってない??

まぁ、確かにみんなの間では素行不良の怖い人ってイメージ強いと思うけど、ヤンキー相手以外はしょっちゅう喧嘩してる訳でもないし、特に女子には手を出さない感じだと思うんだけどなぁ。

 

「それで今日までお幸せな生活だったんだねー。」

『いや……それがそうでも無いんだよね…。』

 

そう。そこからずっと上手くいった訳ではなかった。




カルマくんとの恋愛の話、ずっと書きたかったんですよ~。楽しかったです。


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番外編2.すれ違いの時間

時間が経つのは早いもので、もう季節は秋になっていた。赤羽君………いや、カルマとは、ちゃんと中学生らしい恋愛ができていると思うし、今のところ順調だ。

しかし、今はちょっと問題がある。職員室に呼ばれ、話をしている。その理由は………

 

「おい、お前、最近の社会の成績が悪いな。」

『すみません……。』

 

社会の成績が、中間、期末、休み明け試験と、どんどん下がっているから。

元々去年から苦手だったが、歴史が近代に進んだり、公民が出てくるにつれてもっと出来なくなってきたのだった。別に、恋にうつつを抜かして勉強が疎かになったとか、そういう訳では無いんだけどなぁ…。

 

「このまま下がり続けるとE組行きもありえるんだからな!俺の顔に泥を塗るなよ…?」

『はい、すみませんでした。』

 

もっと頑張らなきゃな……。

すると、違う方向から怒鳴り声が聞こえた。他の先生も注目しているようで私も見てみると、カルマが居た。

 

「いじめられてた先輩助けて、何が悪いの?俺が正しいでしょ?」

「いや、赤羽。どう見てもお前が悪い!頭おかしいのかお前!3年トップの優等生に怪我をおわすとはどういうことだ!!」

 

……え?カルマ、またなんかやったんだ……。話を聞いていると、E組の先輩が、何人かの本校者の先輩に暴力を受けていて、そこをカルマが助けてらしい。でも、その時の先輩は3年トップで、怪我をさせてしまった、ということだった。

そこまでなら、私は、いつもの感じか。と、流すところだった。しかし。

 

「受験に影響したら、俺の責任になるんだぞ!!お前は成績だけは正しかった。だから肩を持ってやったんだ。だが、俺の経歴に傷をつけるのなら話は別だ!!」

 

それを聞いて、耳を疑った。普段は肩を持つくせに、自分が危うくなったら手のひらを返す…?いくらなんでも酷すぎる…!

 

「おめでとう、赤羽。君も3年からE組行きだ!」

 

先生がそう言うと、カルマは先生の机を荒らし、壊して出ていってしまった。カルマの顔は、失望や怒りが感じられた。

 

『カ、カルマ!』

 

私の制止も聞かなかった。

その後クラスに行くと、カルマはもう帰っていた。職員室での事も不安だし、家に行ってみようかな。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

カルマの家に着き、インターホンのボタンを押す。

 

【はい。………って、花音か。】

『カルマ……。あの、大丈夫…?』

【……………ごめん。ちょっと今は待って。後で連絡する。】

 

しかし、連絡が来ることは無く、停学で学校にも来なかったため、カルマに会うことは出来なくなった。



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番外編3.カルマの時間

そのまま3年生になり、私はE組に落ちた。毎日超生物の暗殺に挑戦していること以外は、前と変わらない毎日を送っていた。

そして、昨日カルマが停学明けで、学校に来た。何となく話しづらく、席も隣なのに会話はなかった。私はいつも渚と帰っているが、カルマもそこに加わりそうだったので、違う人と帰った。

渚に聞くと、カルマは昨日、1回先生っていう生き物を殺してみたかった。殺せんせーは案外ちゃんとした先生で、それを殺せるのは嬉しい。前の先生は自分で死んじゃった。と言っていたらしい。やっぱり、あの先生の裏切りにも等しいアレのせいなんだろうな……。

そして、今日。カルマは何度も暗殺失敗し、手入れをされていた。たこ焼きを口に入れられたり、ネイルアートされたり、可愛いエプロンを着せられたり、ヘアセットをされたり……。

渚に誘われ、カルマがいる崖まで来た。

 

「カルマ君。焦らないで、みんなでやろうよ。マークされちゃったらひとりじゃ殺せないよ。」

「やだね。俺が殺りたいんだ。変なところで死なれるのが1番ムカつく。」

『カルマ……。』

 

そして、殺せんせーがやって来た。

 

「確認したいんだけど、殺せんせーって先生だよね。先生って、命をかけて生徒を守ってくれる人だよね。なら、殺せるよ。」

 

そして、ハンドガンタイプを構え、崖に落ちていった。

 

『え………??……カルマ!!!』

 

そこで分かった。何故、あんなことを聞いたのか。助けに行けば、その前に撃たれて死ぬ。見殺しにすれば、先生ではなくなるので先生として死ぬ。どちらにせよ、殺せんせーは死ぬ。でも、それはつまり……カルマも死ぬ。ということ。

 

『な、渚!どうしよう、カルマが…!!』

「……大丈夫ですよ、花音さん。」

 

殺せんせーはそう言って飛んで行った。下を覗くと、カルマは網状になった触手に受け止められていた。触手をネバネバさせたらしく、身動きが取れなくなっている。確かに、これなら助けられるし、撃たれることもないな……。

そして、カルマが上まで帰ってくると、言った。

 

「あーあ。今のが考えてた限りじゃ、1番殺せると思ったんだけど。」

「もうネタ切れですか?君も案外チョロいですねぇ。」

「はぁ……。殺すよ、明日にでも。」

「健康的で爽やかな殺意。もう手入れの必要はなさそうですね。」

 

カルマの表情は、晴れていた。暗殺に行った殺し屋は、ターゲットにピカピカにされてしまう。それが、暗殺教室だ。

すると、カルマが話しかけてくる。

 

「花音。ちょっと話したいんだけど……」

『え……あ、いいよ。』

 

話しかけてくるとは思っていなかったので驚いた。何の話をするんだろう……。もしかして、別れよう、とかじゃないよね…。と思いつつ、話をするためにファミレスに行くことになった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「花音………ごめん。ずっと連絡無視してて。」

『え……。』

 

どんな話なのか緊張していたのに、カルマはそう言った。

 

「あの時職員室に居たし、覚えてると思うけど、整理がつかなくて……。本当にごめん。」

 

そのままカルマは不安そうに話を続けそうになったが、私が遮る。

 

『だ、大丈夫だよ!あれは、先生がおかしいと思う。それに……私はずっと、カルマのこと嫌いにならなかったよ。』

 

カルマに嫌われるとか、そういう心配はした。だから、信じてたとは言えないかもしれない。でも、私はずっとカルマのことを想ってたし、忘れることもなかった。だから。

 

『だから、やり直せるよ、大丈夫。』

「うん……」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

『って感じ。』

「だから、突然次の日からカルマ君の暗殺が止んで、2人が仲良くなったんだね。」

「そんなふうに試練も乗り越えてるんならこれからも続きそうじゃんー!お幸せにねー!!」

 

と、からかってきたので助けを求めてみると、カエデちゃんが助けてくれた。

普段、莉桜ちゃんから渚のことでいじられてるしね……。

 

「そ、そういえば、こんな話してて、下世話な殺せんせーに聞かれたりしない?」

『そこは大丈夫!今殺せんせーの意識をビッチ先生の胸に《逸らし》てるから!』

 

というと、みんな笑い、そのまま女子トークは続いた。



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主人公プロフィール(1章最新話時点)

主人公以外のプロフィールは、設定集をご覧下さい。


◇主人公プロフィール◇

梅宮 花音 -Umemiya Kanon- 15歳

椚ヶ丘中学校 3-E 3番

メカクシ団No.8

 

髪型→茶髪ロング

瞳→スカイブルー

身長→148cm

イメージカラー→黄色

誕生日→8/31

 

カルマの彼女。黄色いパーカーをよく着ている。

E組に落ちた理由は、社会の成績不良。

・その他成績

数学→毎回10位以上はとれる。

国語→少し苦手

理科、英語→普通

1、2年時の総合順位はだいたい40位後半~50位前半

 

 

目を逸らす能力をもっている。

・目を逸らす力

視線を逸らす、存在感から意識を逸らす、嫌な過去から目を逸らして忘れる、と言ったことが出来る。応用すれば、目を隠す能力と同じようなことができる。

 

長所→ナイフも銃も割と得意。真面目な方で、決まり事などはきちんと守る。

短所→体力や筋力が無い。精神的に弱い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文字数が足りないですね……どうしましょう?((((

とりあえず、即興で適当な会話劇(?)でも書きますね。読まなくても大丈夫です。

※作者である時雨も出てきます。

 

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 

 

時雨「花音ちゃん、こんにちはー」

 

『こんにちは。時雨さん』

 

時雨「おぉー、作者と主人公を喋らせるなんて初めて書いたし、なんか新鮮だな」

 

『結構メタいこと言うんだ!?』

 

時雨「まぁ、文字数埋めの為の適当な会話だからね~。あ、カルマくんも呼ぼう。カルマくーん!」

 

カルマ「はい。あ、作者じゃん」

 

時雨「カルマくん……かっこいい! あ、作者はカルマくんが大好きでして、中学生の時はガチ恋しかけてましてですね。大好きなんですよ」

 

カルマ「……」

 

時雨「ついでに言うと、その頃に夢小説っていうジャンルを知って、カルマくん落ちの夢小説ばっかり呼んでたから、カルマくん×奥田さんはちょっとだけ地雷なんだよね」

 

『あぁ、公式キャラでのカップリングは、カルマと愛美ちゃんなんだっけ』

 

時雨「二次創作だと、それが多いんじゃないかな? 私はあんまり見ないけど。あ、でもBLは好きだから、カルマくんと学秀くんのやつは好きだよ。もちろん渚くんとのも」

 

『BL……』

 

カルマ「作者のこと嫌いになりそう」

 

時雨「……ごめんなさい。腐女子でもあるんです」

 

『まぁ、カルマはかっこいいよね』

 

時雨「うん! かっこいい! 最高!!」

 

『他に好きなキャラは居ないの?』

 

時雨「うーん、メカクシ団の中だと、キド、カノ、マリーちゃんが好きだなぁ」

 

『へ~』

 

時雨「うん」

 

「「『…………』」」

 

時雨「話続かないね!? ってか、1000文字超えたし」

 

『じゃあ、もう終わり?』

 

時雨「せやな。多分、2章以降の主人公プロフィールでも同じようなことやるかな……。まぁ、やってたらよろしくお願いします!」

 

『読んでくれて』

 

カルマ「ありがとうございましたー」



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第2章 アイドルになり、平穏な生活を手に入れた少女の物語
第1節 プリパラ~みんなとの出会い~ 1.初めてのプリパラ


ここから、2章に入ります!
2章の主な作品は、『プリパラ』と、『異能バトルは日常系のなかで』です。


不定期な更新すみません。あと、申し訳ありませんが、展開をそこそこ編集します。そのため、★マーク以降の話は食い違っている表現があります。
2022.06.03


 私は明日、巡ヶ丘市にある、全寮制の私立王蓮寺学園付属高校(しりつおうれんじがくえんふぞくこうこう)に入学する。全寮制の学校を選んだ理由は、ずっとメカクシ団のアジトにお世話になっていたらダメだと思ったから。

 そして、今日私が来ていたのが、“プリパラ”だった。プリパラとは、年頃になるといつの間にか届く“プリチケ”というチケットを使って入場できる、アイドルテーマパークのような場所。その中に入ると、自分の姿が変わったり、色々な可愛い衣装を体験することができるらしい。

 実は、私は今までプリパラに行ったことがなかった。プリチケは小学生高学年の頃に届いていたけど、その頃には椚ヶ丘の受験を考えていて、勉強に集中するためにプリパラには行かなかったのだ。でも、高校生になって何か新しい事を始めたいと思って、プリチケを部屋から探し出してここまでやって来たのだった。

 

『うわぁ…なんか凄いキラキラしてる…!』

 

 受付にいるめがねぇさんというらしい女の人の所へ行くと、どんなブランドが似合うのかを見てくれた。

 

「あなたからは、とっても素敵な心の輝きが感じられるわ。PrismStarがピッタリね! ステージ衣装のブランドを登録したわ」

 

『ありがとうございます!』

 

 登録をしてもらったチケットをゲートに差し込み、気が付くともうプリパラの中に居た。そして、すぐそこに設置されていた鏡を見た。

 

『背と胸が成長してる!?』

 

 ……って、そうじゃなかった。確かに私は成長期が遅くてまだまだちっちゃいし、若干不満に思ってはいるのだけど……とにかく鏡には、身長が伸び、可愛い髪型と服の格好になった私が写っていた。

 そんな自分の姿に感動しつつ歩いて行くと、噴水のある広場に辿り着いた。キラキラしたお店が並んでいて、奥には一際高いビルが建っている。

 うーん。なんか色々凄いことは分かるんだけど、何をしたらいいか分からないなぁ……。

 

「ねえねえ、あなたプリパラ初めて?」

 

『わっ!?』

 

 私の心を読んだかのようなタイミングで後ろから声をかけられ、驚いてしまった。

 

「……かなめ、いきなり声掛けたらびっくりするよ」

 

『あ、大丈夫ですよ。……えっと、実は初めてで』

 

「じゃあ、案内してあげる!」

 

 と言って私の手を引いたのは、ツインテールの女の子。そして、少し青っぽい黒髪のふわっとしたショートヘアーの子は、そっと着いてくる。

 

「私は久里須(くりす)かなめ。よろしくね! プリパラではみんな友達だから、敬語いらないよ!」

 

『梅宮花音っていいます。えっと……よろしくね』

 

「私は(いばら)りんね」

 

『うん、よろしくね』

 

 広場の奥まで進んで来ると、キラキラのお店の中が良く見えた。商店街のようになっているそこには、カフェやショップから、ゲームセンターのようなお店まで、色々なものが並んでいた。

 

「ここでは、プリパラ内のお金の“ペン”を使って買い物が出来るんだよ!」

 

「他にも、低ランクのアイドルとか、高ランクでも庶民的なアイドルが握手会とかサイン会をすることもあるんだよ。……あ、アイドルランクは分かる?」

 

『その辺はなんとなく知ってるよ』

 

 プリパラのアイドルはアイドルランクで格付けされていて、人気になればなるほど上がっていくらしい。下から、“研究生クラス”、“デビュークラス”、“メジャークラス”、そして“トップクラス”だ。厳密にはその更に上に“神アイドル”というのが居るけど、特別な大会で勝ち抜いて認められるという、例外的な扱いのようだ。

 

「それで、正面に見えてるのあのビルが、プリパラヒルズ!」

 

「ライブ会場、楽屋、スタジオ、レッスン室とか、アイドルの活動に大切な施設が集まってる」

 

「ちなみに、最初のうちは楽屋とかレッスン場は共用なんだけど、アイドルランクが上がれば貸切で、豪華になっていくんだよ!」

 

『なるほど……。ちなみに2人はライブとかしてるの?』

 

「実は、私達も何回かしかやったことないんだよね」

 

「かなめにプリチケが届くのが遅かったのと、最近まで受験生だったから……」

 

 受験生ってことは、今年中学1年生か高校1年生だけど、話して見た感じ中学生よりは高校生だと思うんだよなぁ。もしかして……

 

『えっと、今年高校入学?』

 

「うん、そうなんだ~。あれ、もしかして花音も?」

 

『そうだよ』

 

「じゃあ同い年だったんだね! この近くの学校?」

 

『王蓮寺学園付属ってどこなんだけど……』

 

「えっ、一緒だー!!」

 

 まさかの、同じ学校の新入生同士だった。まぁ、学校近くのプリパラだから、可能性としてはある事なんだけどね。

 

「で、話を戻すとー……私達もアイドルとしては出遅れちゃってて、これからって感じなの!」

 

「だから、今日は久しぶりにライブをしようと思って来たんだよね」

 

『じゃあ私、邪魔しちゃったんじゃ……』

 

「ううん。むしろ、ライブ聞いて欲しいな!」

 

 そして、今日はかなめちゃんがライブをするということで、りんねちゃんと一緒に会場へ向かった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 ライブ会場に入ると沢山の人が居て、みんなペンライトを持って楽しそうにしていた。しばらくするとかなめちゃんがステージに出てきて、音楽が流れ出した。

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「♪ねぇ、なぜユメはいつも、追いかけると直ぐ消えるものなのかな? 教えて欲しい♪」

 

 かなめちゃんは、右半分が天使で左半分が悪魔モチーフの服を着て、凄く上手なダンスを踊っている。

 

「♪ねぇ、涙は必ずいつかは乾く!?  Shall We Go?!♪」

 

 すると、かなめちゃんはランウェイを歩き、センターステージまで移動した。

 

「メイキングドラマ、スイッチオーン! バナナを食べて! 元気ひゃくばーい! フレッシュバナナバスケット!! ……サイリウムチェンジ! ♪空の彼方、飛び出して行こう!♪」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

 ライブが終わると、みんなは“プリパス”というケータイから“いいね”を送り始めた。これが、ライブの評価方法だと言う。

 

「花音も、ここからやってみて」

 

『うん。えっと……こうかな?』

 

 簡単な操作でいいねを送ると、集計が終わった。

 

【おめでとうございます! かなめさんは、“キラキラ研究生”にランクアップでーす!】

 

「やったー!」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「どうだった? 私のライブ!」

 

『凄く可愛かったよ! あと、楽しそうだった!』

 

「よかったー。……あ、そろそろ閉園の時間だね」

 

「でもまた明日、ね」

 

 そんなことを話ながらゲートを出ると、2人も本当の姿に戻っていた。と言ってもりんねちゃんは殆ど変わらず、かなめちゃんもツインテールが控えめになっただけだった。

 

「花音はこっちだとちょっと小さいね」

 

『うぅ……言わないで……』

 

「そうだ、かなめと花音、トモチケはパキらないの?」

 

『トモチケをパキる……ってあれだよね』

 

 プリチケの上の方には切り取り線が入っていて、ここにも自分の名前が入っている。これを友達と交換することが出来て、プリパラ内での名刺交換みたいなものらしい。まだ私はプリチケを1枚しか持っていないから、今日ライブを見せてくれたかなめちゃんと交換することにした。

 そして、明日の入学式でまた会うことを約束して、別れたのだった。



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2.新しい生活

 そしてやって来た入学式。ベージュ色のジャケットに紺のプリーツスカートというブレザータイプの制服を着て、貼り出されたクラス分けを確認する。

 

『えっと、私のクラスは……C組か』

 

【新入生の皆さんは荷物を部屋に置き、45分までに式場まで移動してください】

 

 部屋番号の所には121と書いてあったのでそこへ向かおうとすると、突然後ろから誰かに抱きつかれた。

 

「花音ー! 見た? クラスも部屋も一緒だったよ!」

 

『かなめちゃん! それ、ほんと?』

 

「うん! でも、りんねとクラス離れちゃった……」

 

 聞くと、りんねちゃんは隣のB組になったらしい。

 

「もう1人の子はどんな子かなー」

 

 寮は3人部屋なので、後1人の子の事を話しながら部屋へ向かう。ドアを開けると既に中に人が居て、ショートヘアーで活発そうな少女だった。

 

「あ、この部屋の人?」

 

「うん、そうだよ!」

 

「そうだよ。私は星空凛。よろしくねー!」

 

 部屋の中は2段ベッドとロフトベッドが1つずつあり、ロフトベッドの下に収納スペース。そして、空いた空間に机が並んでいる。

 荷物を整理していると、入学式の時間が近付いて来たため、3人で一緒に行く事にした。

 

「入学式へ行っくにゃー!」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 入学式は無事終わり、放課後。私は、かなめちゃんとりんねちゃんと一緒に、今日もプリパラへ来ていた。

 それにしても、外と変わらない背丈の2人と居ると、やっぱり私って小さかったんだなぁと再認識する。うーん、牛乳飲まなきゃ……レモン煮オレも牛乳入ってるし、ワンチャンいけないかなぁ。

 

「そうだ! 花音、今日はライブしてみたら?」

 

『えっ!? そんな、ライブっていきなりやるものなの?』

 

「最初だし、ちょっと練習してから夕方くらいにライブするくらいでも大丈夫じゃないかな?」

 

「ちょうどレッスン室も予約してあるよ」

 

 という、かなめちゃんの提案と、段取りの良いりんねちゃんによって、レッスン室へと連れてこられてしまった。

 

『歌える曲とか持ってないけど……』

 

「カバーでも良いんだよ。ほら、これとかどう?」

 

 そう言ってりんねちゃんが流した曲は、何度か聞いた事のある曲だった。

 

「プリパラの伝説的ユニットの曲なんだけど、人気だからカバーする人も多いの」

 

『そうなんだ……。じゃあこれで……?』

 

 そして、歌はりんねちゃん、ダンスはかなめちゃんに教わる事になり、練習を始めた。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 歌とダンスの練習は、思っていたよりも上手くいった。歌は元々得意だったし、ダンスだってあくまで運動。去年鍛えた基礎身体能力とかがとても役に立った。

 

「ライブをするときは、ここのカウンターからエントリーするの」

 

「じゃあ、頑張ってね!」

 

 と、送り出され、私は会場の裏へ向かった。ここには今のステージの様子が映し出された映像が流れていて、待機した後に着替えて出られるようになっている。

 着替えと言ってもプリパラでは特別なシステムがあって、服が登録されたプリチケをスキャンすると、かわいい服に一瞬で着替えることが出来る。まぁ、そのプリチケを手に入れるにはライブをしなきゃいけないから、私はまだ初期衣装のこれしか持ってないんだけど。

 前の人の歌が終わり、いよいよステージに出る。一応、中1中2の頃は吹奏楽部だったから、舞台に上がることは初めてではない。それでも、ペンライトが輝く会場で、そこに立っているのは自分1人という状況に少し緊張を感じた。

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

『♪おしゃれなあの子マネするより、自分らしさが1番でしょ。ハートの輝き感じたなら、理想探しに出掛けようよ♪』

 

 最初の歌とダンスのパートが終わり、ランウェイを歩く。そして、次はメイキングドラマのパートだ。

 

『メイキングドラマ、スイッチオン!ダンスと、ランウェイと、歌で目指せ、let's goプリパラ!』

 

 メイキングドラマは、各々が考えた特別な演出をするパートで、かなめちゃんの時にバナナがテーマになっていたやつだ。私はまだ考えられていないから、そういう人用に用意されているものを使った。

 

『サイリウムチェンジ!』

 

 最後はサイリウムの名の通り、光る衣装に着替えて踊るパート。一瞬で衣装が変えられるプリパラならではの演出だ。

 

『♪誰だって叶えられる。プリパラ プリパラダイス♪』

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

 歌い終わると、たくさんの歓声が飛んできた。なんかちょっと恥ずかしいな……。

 

【花音さんは“かけだし研究生”にランクアップでーす!】

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 会場裏を出ると、2人は待ってくれていた。

 

「花音、お疲れ~! 良かったよ!」

 

 かなめちゃんもりんねちゃんも、私のライブを見て、楽しんでくれたようだ。

 

『あ、そうだ。昨日はりんねちゃんとトモチケ交換出来なかったから……いいかな?』

 

「もちろん」

 

 今手に入れたばかりのプリチケをパキり、りんねちゃんと交換した。友達とこんなふうにワイワイするのって、いいなぁ。2、3年前の私は、こんなに楽しいことが世の中に沢山あることなんて、全然知らなかった……。

 その後、プリパラの閉まる時間になるまで3人で遊び、寮に帰った。プリパラの閉まる時間は門限よりも前だし、ここは学校と近いし、思う存分プリパラを楽しむことが出来た。



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3.凛ちゃんと花陽ちゃん

 次の日の朝、身支度をしていると、誰かが部屋に訪ねてきた。

 

「し、失礼します……。あの、凛ちゃんいますか?」

 

「かよちん、おはよう! どうしたの?」

 

「えっと……一緒に食堂行こう?」

 

 どうやら、凛ちゃんの知り合いらしい。

 

「あ、この子はかよちん! 凛の幼馴染だよ!」

 

「かよちん?」

 

「小泉花陽です……。よろしくお願いします。部屋は118号室で……」

 

「あっ、りんねと同じ部屋の子だ!」

 

「はい、荊さんですよね……?」

 

 花陽ちゃんは少し人見知りをしてしまうらしく、まだ交流の浅い同室の2人に囲まれているのが居心地が悪くて、幼なじみで仲の良い凛ちゃんの元へ来たと言う。でも、凛ちゃんもかなめちゃんもフレンドリーだから、結局私達4人で食堂へ行くここになった。

 寮の廊下を歩いていると、金髪のポニーテールで碧眼、身長も高めで綺麗な人に声をかけられた。リボンの色とバッチからして、3年生の生徒会の人……?

 ちなみに、リボンの色は、1年生が赤、2年生が青、3年生が緑だ。

 

「あなた達は1年生ね。食堂はあっちよ。今日からは平常時程だから、遅刻しないように。まだ時間はあるけど、余裕を持って生活することも大事よ」

 

『は、はい!』

 

 先輩が去ると、かなめちゃんは目をキラキラさせて言った。

 

「今の人、生徒会長の絢瀬(あやせ)絵里先輩だね。ロシア人のクォーターなんだって!」

 

「金髪、綺麗だったねー!」

 

 食堂に着くとりんねちゃんが居て、かなめちゃんを見て近寄って来た。

 

「かなめ、花音。おはよう! あ、小泉さんと……」

 

「星空凛だよ!」

 

「星空さんも一緒なのね」

 

 そうだ。これを機に花陽ちゃんが凛ちゃんと一緒に、りんねちゃんと仲良くなれれば、少しは過ごしやすくなるんじゃないかな。

 と、5人で朝食を食べ、寮から学校へ向かった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「高校最初の授業って思うと、なんかワクワクした~」

 

『確かに! でも、内容はそこまで変わらなかったね』

 

 授業初日だったが、特に問題なく無事に終わった。殺せんせーが高校の範囲まで教えてくれたし、自分の実力に見合った学校を選んだから、これからもスムーズに学べそうだ。

 私はすっかりプリパラにハマってしまい、今日も3人で行こうと話していると、廊下の向こうに凛ちゃんと花陽ちゃんが見えた。

 

「あ、凛ちゃん達だ。おーい!」

 

『幼なじみって言ってたけど、いつも一緒にいるんだね』

 

「うん、凛達はいつも一緒だよ!」

 

「……そうだ。私達、これからプリパラに行くんだけど、一緒に行かない?」

 

「プリパラ? ……あ、かよちんがいつもテレビで見てるやつ?」

 

 どうやら、凛ちゃんはプリパラのことをあまり知らなかったらしい。反面、花陽ちゃんはよくプリパラTVを見てるみたいだ。

 

「かよちん、行ってみる?」

 

「え、えっと……私はプリパラに行く自信なんて無いから……。私はテレビで見てるだけで十分……」

 

「でも、かよちんは小さい頃からアイドルが大好きだったよね?」

 

「だったら、1回行ってみるといいよ!」

 

「え、ええぇ……!?」

 

 と、かなめちゃんに説得されてりんねちゃんに手を引かれ、半分無理やりプリパラに連れていかれる花陽ちゃんだった……。大丈夫かな?

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「こ、これが私……!? 本当にこんなに可愛くなれるんだ……」

 

 花陽ちゃんは、入るまでは自信がなさそうにしていたが、プリパラに入ってプリパラチェンジをすると、直ぐに笑顔になった。

 ここではめがねぇさんが似合う服を探してくれるし、やろうと思えば別人のように姿を変えられる。自分に自信がなくても楽しめるテーマパークなのだ。

 

「可愛いところだねー」

 

 凛ちゃんは、パーカーとショートパンツが主体の、元気な感じの格好をしている。

 

「じゃあ、まずは2人にライブを見せてあげる! りんね、よろしく!」

 

「あ、私なの? 分かった。2人とも、楽しみにしててね!」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「♪Over the world Hello! Baby future.heartのdoor bell鳴らす。Lovely days,Friend,Passion,Change,Shining,Hope,and more……Prism rainbow color of Dream♪」

 

「凄い……! りんねさんの雰囲気通りのシャープな歌声! ダンスはキレがいいし、英語の多い歌なのにすっごく上手!」

 

 りんねちゃんのライブを見ていると、花陽ちゃんはすごい気迫で語り出した。よっぽどアイドルが好きなんだな……。評論家みたいになってるよ……?

 

「メイキングドラマ、スイッチオン。聞こえる……! 虹の歌が! はばたけ、レインボーテール! ……サイリウムチェンジ! ♪いつか届く7つのgift♪」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

【りんねさん、キラキラ研究生にランクアップです!】

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「りんねさん! あの……とても輝いてて、綺麗でした!」

 

「ありがとう」

 

 ライブが終わると、花陽ちゃんはりんねちゃんに駆け寄って行った。2人は上手く話せているようだし、これで仲良くなれるといいなぁ……。

 




りんねちゃんは、原作の物語最後の、復活後のイメージで書いてるんですけど、なかなか難しいです。


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4.初めての大会

「花音、今度開催される大会にはエントリーするの?」

 

『大会?』

 

「あれ、知らなかった? パラプラの前だから、それに向けて参加するアイドルもたくさんいるんだよ」

 

『パラプラ?』

 

「花音、何も知らないんだね……」

 

……うん。今の会話で私もそう思った。プリパラなんて、ずっと名前しか知らなかったしなぁ。

 パラダイスプライズ、通称パラプラは新人アイドルしか参加できない大会で、1年間で数回開催される大会らしい。そこで優勝するたびに“パラダイスコーデ”という特別なコーデをパーツごとに獲得出来るというシステムだそうだ。

 

『そっか、新人時代に1度だけか……。じゃあ、出て置いた方がいいのかな』

 

「ちなみに、私達は出るつもりだよ」

 

『でも、そういう順位が着くやつはまだやった事ないからなぁ……』

 

「それこそ今度の大会に参加して感覚を掴めばいいんだよ!」

 

 競い合う場でライブが出来たら、きっと色々学べることもあるだろう。

 

『うん。じゃあやってみようかな。……でも自信ないや』

 

「花音はデビューしたばっかりだもんねー。……あ! メイキングドラマ作ったら?」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 レッスン室に移動した私達だったが、ダンスの練習をしている2人を横目に、私はノートを開いていた。

 聞けば、大事な勝負がある時に新曲、新メイキングドラマを用意するのはよくある事らしい。そうでなくとも、私はまだオリジナルのメイキングドラマを持っていない。だから、ひとまず私はメイキングドラマの作成に集中することにした。

 

『と言っても、メイキングドラマってどんな風に作ればいいのかな……』

 

 私がそう呟くと、2人は練習を中断して近寄って来た。

 

「メイキングドラマは、自分の伝えたい事とか、気持ちを表現するの」

 

『伝えたい事……』

 

「思い出とか、体験した事とかで作ることもあるよ!」

 

 今まで見たことがあるもので言うと、かなめちゃんの「フレッシュバナナバスケット」は、かなめちゃんの好きなものとかを表現しているんだろ。そして、りんねちゃんの「はばたけ、レインボーテール」は、多分りんねちゃんの気持ちが込められている。

 

「あと……アイドルの自分をアピールするものでもあるから、花音らしさも大事だよ」

 

 みんなに伝えたい事。私の思い。最近よく考える事……。

 

『……うん、なんか作れそうかも』

 

「おぉー! どんな感じ?」

 

『それは、大会の時のお楽しみということで!』

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 そして、あっという間に大会当日。私達がプリパラに入ろうとすると、ちょうど凛ちゃんと花陽ちゃんも来た所だった。

 

「凛達も大会でるの?」

 

「わ、私はちょっと……」

 

「かよちんがこんな感じだから、凛も出ないよー」

 

「でも、応援してるよ……!」

 

 花陽ちゃんは、プリパラに行くようになって少し自信がついたみたいだったけど、まだライブをする気は無いらしい。まぁ、プリパラはアイドルをする場所じゃなくて、楽しむ場所でもあるから何も問題はないんだけどね。

 みんなで会場へ向かい、しばらく待機していると、司会のめがねぇさんがステージに登場した。

 

【さて、始まりました。“ソロアイドル スプリングライブ”! 早速、1人目のライブに行きましょう!】

 

 めがねぇさんがそう言うと、現れたのはかなめちゃん。そう、かなめちゃんはトップバッターを引いていたのだ。

 かなめちゃんが今日着ているコーデは、いつも通り右と左で天使と悪魔モチーフのものだけど、悪魔の方がゴールドになっていて特別感がある。

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「♪ねぇ、なぜユメはいつも、追いかけると直ぐ消えるものなのかな? 教えて欲しい。ねぇ、どうしてココロは過去にこだわるの? 今日より明日の自分、信じていたい。ねぇ、涙は必ずいつかは乾く!?  Shall We Go?!♪……メイキングドラマ、スイッチオーン! バナナを食べて! 元気ひゃくばーい! フレッシュバナナバスケット!! ……サイリウムチェンジ! ♪空の彼方、飛び出して行こう!♪」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 あれから、りんねちゃんや他の人のライブが過ぎて行った。

 

【今日最後の出演者は、花音さんでーす!】

 

 そして、最後の私の番である。……かなめちゃんがトップバッター、私がトリを偶然にも引いた時は、3人とも驚いて盛り上がった。

 気を取り直して、ライブに集中しなくちゃ。初めて作ったメイキングドラマ。みんな、楽しんでくれますように……!

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

『♪おしゃれなあの子マネするより、自分らしさが1番でしょ。ハートの輝き感じたなら、理想探しに出掛けようよ♪メイキングドラマ、スイッチオン! 世界には……こんなに楽しいことがあふれてる! プリパラマジック!』

 

 プリパラもそうだけど……世の中には、私の知らない楽しい事がたくさんあった。こんなに、可愛くて素敵な場所があるなんて、前までは知らなかった。そんな、最近の思いを表現したメイキングドラマだった。

 

『♪誰だって叶えられる。プリパラ プリパラダイス♪』

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

【いいねが集まり、がんばり研究生にランクアップです!】

 

 歌い終わって会場の裏に戻ると、これから結果発表のため、出演者が集まっていた。

 

「お疲れ様~!」

 

『かなめちゃん、りんねちゃんもお疲れ様!』

 

 それにしても、結構ドキドキしたなぁ……。ただ楽しくライブすれば良いという訳では無い分、緊張感が凄かった。

 すると、めがねぇさんの声が聞こえて来た。

 

【それでは、結果発表です! 3位は……久里須かなめさん! 2位は……梅宮花音さん! 1位は……荊りんねさんです!】

 

 結果は、なんと2位。しかも、私達が上位3人となった。

 

「わー、やったね!」

 

【……それでは、上位3人はチームを組んでもらいまーす! ステージに上がってください!】

 

『……え? ど、どういうこと?』

 

 困惑していると、プリパスで何かを確認していたりんねちゃんが、私達に画面を見せてくれた。

 

「ここ……小さく書いてあった」

 

「えっと……本当だ!」

 

『こんな、小さな所に……』

 

 そうしていると、時間も押しているからと、落ち着く間もなくステージへ連れ出されてしまったのだった。



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5.BLACK☆STARs

『ど、どうする?』

 

「うーん。プリパラって、3人のチームが基本なんだよね」

 

「だから、今組んでもいいかもね! 私達仲良いし!」

 

『そっか。2人が良いなら、私も大丈夫だよ!』

 

 と、3人とも納得したため、改めてステージに出た。

 

「それで、チームリーダーは誰にする?」

 

『やっぱり、一位のりんねちゃんがいいんじゃない?』

 

「賛成! 私はこういうの向いてないし!」

 

【チームリーダーも決まったので、チーム結成の儀式でーす!】

 

『儀式?』

 

「あ、えっとね……」

 

 チーム結成の儀式は、3人それぞれがプリチケを2枚重ねてパキり、手を交差させて3人同時にトモチケ交換をする、というものらしい。

 

「あと、パキる時は1人ずつやって、その時に決まった一言を言うんだよ」

 

 それを教えて貰い、いよいよ3人で向き合った。

 

「……プロミス、友情を信じて」

 

「リズム、刻んで!」

 

『パラダイス、求めて』

 

「「『ライブすることを、ここに誓います』」」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「あ、3人とも! おめでとうにゃー!」

 

ゲートに向かっていると、凛ちゃんが追いついてき、声をかけられた。凛ちゃんは足が早いから、花陽ちゃんは遠くから頑張って追いかけているみたいだ。そして、花陽ちゃんも追いつき息を整えると、ふと聞いてきた。

 

「あの……チーム名はどうするの?」

 

『チーム名かぁ……』

 

「3人のイニシャルとか? あ、でも言葉にはならないかな……。それに、かなめと花音ってK被りしてるし!」

 

『母音として、“荊”か”梅宮”のi、uを使えば、R、K、I、U……』

 

リク?クル?

 

「じゃあ、少し無理矢理だけど王蓮寺学園のOも追加して、KURO!」

 

「じゃあブラックにしよう? そっちの方がかっこいいと思う」

 

「Black’s……あ!3人ともブランドが"PrismStar"だからさ、“BLACK☆STARs”っていうのは?」

 

BLACK☆STARs……。かっこいいかも!

 

「『賛成!』」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 翌日。チーム用に貰った新曲の練習をするためにレッスン室に来ていた。

 

『ここのダンスは……こんな感じかな?』

 

「えっと、こうだよ!」

 

 かなめちゃんはダンスが上手い。聞けば、見たダンスをコピーして踊れるのが得意らしい。一方でりんねちゃんは歌が上手くて、譜読み中も、りんねちゃんは音程取るのが上手かった。私も頑張らないと……。

 

「ちょっと休憩しない? 疲れちゃった」

 

『そうだね。あ、ついでにメイキングドラマ考えない?』

 

「そっか、それも考えなくちゃだね」

 

「うーん、私達らしいやつにしたいよねー。……あ。最初だし、自己紹介みたいなやつはどう?」

 

『でも、それをメイキングドラマにするのって難しそう……』

 

 この間は自力で作るために詳しくは聞かなかったが、かなめちゃんのメイキングドラマは、伝説の神アイドルと言われている“セインツ”の1人のメイキングドラマをリスペクトしたもの。りんねちゃんのは、感じるきらめきと、自分もそうなるために羽ばたくという想いをこめたものらしい。そこからも何かインスピレーションがわかないかな……。

 

「そうだ! 私達の目標をメイキングドラマにするのはどうかな?」

 

『私達の目標って?」

 

「……やっぱり、神アイドル?」

 

「うん! やっぱり、せっかくのプリパラだもん! 神アイドル目指しちゃおう!」

 

 そうして、私達はメイキングドラマ作りを進めた。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 次の日の放課後。今日は私達BLACK☆STARsの、チームとしての初ライブだ。

 

「いよいよ、3人でライブだね!」

 

『ちょっと緊張する……』

 

「大丈夫。3人いるから、むしろいつもより気楽じゃない?」

 

 私は迷惑かけないように、とか思っちゃうタイプだけど、そこは別れるよね。

 と、話していると私達の出番が回って来た。それぞれのプリチケをスキャンし、コーデチェンジを待つ。

 

【コーデの数だけマイチケをスキャンしてね。コーデチェンジ、スタート! 黒いウエディングで、シックな花嫁さん? 胸元についている薔薇のモチーフがアクセントね!】

 

「ロマンティックナイトウエディングコーデ!」

 

【ウエディングと言ったらやっぱり白! 頭に輝くティアラも雰囲気を出しているわ】

 

「ピュアホワイトウエディングコーデ!」

 

【みんな色違いの、大会の賞品をチームコーデにしたのね!】

 

『ピュアフレッシュウエディングコーデ!』

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「「『♪怖がらないで、弱気な僕。明日は未完成だから♪』」」

 

 初めて複数人でステージに上がったが、自分の声と2人の声が重なって会場に響いて、とても楽しい。

 

「♪苦しさだって未来になる。何もかもこれからだ♪」

 

「♪まっすぐな心で、明日は開く♪」

 

『♪ぶつかったとしても、夢は見れる。君とどこまでも、広がれる!♪』

 

「「『メイキングドラマ、スイッチオーン!』」」

 

「この虹の先に……何があるの?」

 

 暗闇の中に1つだけある、虹の道を歩くりんねちゃん。

 

「一緒に行こう!」

 

『この先を目指して!』

 

 そして、私とかなめちゃんが星の球(スターダスト)に乗って道へ降りる。

 

「「『3人で進む! レインボーロードトゥ神アイドル!! サイリウムチェンジ!♪とびきりの笑顔で、進もう!♪』」」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

 ステージ裏へ戻り、私達は目を合わせた。

 

「上手くいって良かったね!」

 

「相性も悪くないし、これからも頑張ろう!」

 

 高校生になってから初めての友達。プリパラでのチームメイト。楽しそうにライブの感想を言い合うのを見て、あの時声をかけてくれたのがこの2人で本当に良かった、と思ったのだった。




チームコーデは、プリティーリズムの服を持ってきました。
花音ちゃん→オーロラドリームで、みおんちゃんが着てたベージュのウエディング
かなめちゃん→オーロラドリームで、かなめちゃん自身が着てた白いウエディング
りんねちゃん→ディアマイフューチャーで、みおんちゃんが着てた黒いウエディング


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6.中間テスト ★

「花音ー! この問題も分からない……!」

 

『えーっと、そこはこっちの公式を使うんだよ』

 

「I went……gym to……わかんないにゃー!」

 

 私達は今、中間テストを控えている。なので、いつものメンバー──私、かなめちゃん、りんねちゃん、凛ちゃん、花陽ちゃんの5人で勉強会中だ。と言っても、かなめちゃんと凛ちゃんは勉強が苦手らしく、その2人に後の3人で教えるような感じになっている。

 

「凛、英語だけはどうしても肌に合わなくて……。だいたい凛達は日本人なのに、どうして英語なんて勉強しなきゃいけないのー!?」

 

「私は、理系科目が苦手……。将来絶対使わないよ……!」

 

 私も暗記科目系、特に社会科系は少し不安だ。でも、去年の内に殺せんせーが3年の基礎まで教えてくれたから、ボロボロってことにはならないとは思うけど……。

 

「凛ちゃん、教えてあげるから、頑張ろう?」

 

「かなめも。この公式使うやつはあとちょっとだから、もう一息だよ」

 

 勉強を始めてから、前の2人が勉強しつつも愚痴をこぼし、後の2人がなだめる、という構図が繰り返されている。しかし、かなめちゃんも凛ちゃんも、全然出来ていないわけではないので、高校最初のテストで赤点をとるなんて悲しいことにはならなさそうだ。

 

「花音は勉強しなくて大丈夫?」

 

『私は少し前から勉強進めてるし、2人がひと段落したら苦手教科始めるから大丈夫だよ。りんねちゃんは?』

 

「……私も、数学がちょっと不安かな」

 

『数学なら私得意だし、教えてあげるよ!』

 

 数学は、小学校の算数の時からの得意教科だ。算数と数学は別物だ、なんて言われているけど、私の場合は中学生になっても得意のままだった。

 

『って、花陽ちゃんどうしたの?』

 

 ふと花陽ちゃんの方を見ると、休憩でプリパスを見ながら百面相していた。

 

「何見てるのー? あ、神アイドルグランプリ?」

 

「うん……。今年、しかも日本で開催なんだよ!?」

 

「確かパラ宿だっけ? 生で見たいよねー!」

 

 神アイドルグランプリは不定期開催で、その上場所も世界中のプリパラから選ばれるため、直接見たいとなると少し難しい。しかし、今年は日本の都心であるパラ宿開催ということでかなり盛り上がっていて、よくプリパラのニュースでも取り上げられている。

 

「そういえば、私達はゆくゆくの目標として神アイドルを目指してるけど、今パラ宿で神アイドルグランプリを目指してる新人グループが居るらしいね」

 

「“TRIANGLE”だよね! まだ3人揃ってのライブはしてないけど凄く注目されてて……」

 

 花陽ちゃんがまた評論家見たくなってる……。

 と、少々おしゃべりタイムとなってしまったが、その後は勉強を再開して中間テストに備えるのだった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 中間テストは何ごとも無く過ぎ、だんだんと結果が返って来た。この学校では、主要5教科が全て返ってきたところで、5教科合計点とそれぞれの教科の点の順位が張り出されるらしく、今日は主要5教科の内最後の、英語が返ってくる。

 更に、実はとあるシステムがある。それは応用問題加点制度というもので、通常の100点満点の問題の他に、難問が加えられるというものだ。範囲内の応用問題や範囲外の問題が出ることもあるらしい。その部分は全く出来なくても通常の成績には影響しないが、出来た分は評価されて、場合によっては良く出来た人の成績に6段階目が付けられるそうだ。

 

「えー、じゃあ英語のテスト返していくぞー。青木ー。……伊藤ー。……梅宮ー」

 

 名前順なので、私の順番はすぐに来た。先生から解答用紙を受け取り、裏側を上にしたまま机に置く。そして紙をめくると……102点。通常問題だけを見ると92点で、大体目標通りだった。

 通常問題の方では単純なミスをしているところがあったが、その分応用問題で取り返しているという感じ。応用問題の方に気を取られて、見直しが甘かったかな……。そして、先生の解説やテスト後課題の説明が始まった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 昼休み。学年の共同スペースに順位が張り出された。かなめちゃんと一緒に見に行ったが、混んでいたため少しすくのを待った。しばらくして近づこうとすると、後ろから声をかけられた。

 

「花音ちゃん、一緒に見に行こうよ」

 

 振り向くと、花陽ちゃんと凛ちゃんだった。

 

『うん。一緒に行こっか』

 

 まずは合計点の順位。私は……3位だった。

 

「花音、すっごいね!?」

 

『えっと……まだ中学の頃と通ずる内容も多かったからこんなに出来ただけだよ?』

 

「それ、遠回しに中学の勉強は完璧だったって言ってるにゃー……」

 

 特に、椚ヶ丘では中3から高校の範囲までやっていたため、今回もかなり上手く行った。というか、あの期末を経験しちゃうと、心の余裕も大分あったしね……。流石に完璧は言い過ぎだけど。

 そして次は、数学の順位を見に行く。

 

「花音、2位だよ!」

 

 見ると、1位は西木野さんという人。総合でも1位に名前があった人だった。

 

『みんなはどうだったの?』

 

「赤点は回避したよ!」

 

「結構できたかな」

 

 そうして、中間テスト期間は終わった。



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11.真姫ちゃんをプリパラに連れて行こう計画(((

「あっ真姫ちゃん居たにゃー!」

 

凛ちゃんが真姫ちゃんを見つけると、小走りにしては速いスピードで近寄り、手を握った。やっぱり運動神経良いんだな……。私達が近づいていくと、真姫ちゃんは嫌な予感がしたのか、少し不安げな顔をした。

 

「何か用?」

「とぼけても、凛は忘れてないよー?」

「そうそう! プリパラに行くって約束だったよね!」

 

と、かなめちゃんが続いた、そう。私達は、中間テストの前の約束を実行するために、真姫ちゃんを探していたのだ。

 

「わ、私は別に興味ないわよ!」

「行ってみたら案外楽しかったりするかもしれないよ?」

「でも……」

 

私も少し押してみようかな……。

 

『もし気に入らなかったらすぐ帰ってもいいしね。……それに、この2人はもう、すごく乗り気だからこのままじゃ止まらないかも……』

 

それを聞くと真姫ちゃんは、自分の右手と左手のそれぞれを握りながら目を輝かせて迫る2人の顔を見た。そして、あきれたような顔をしながらも少し楽しそうに、

 

「わかったわよ」

 

といった。そうして、少し無理矢理になってしまったが、6人でプリパラに向かった。ちなみに、逃げないようにするためか、凛ちゃんはプリズムストーンに入るまで真姫ちゃんの手を放さなかった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

外に居るめが姉ぇに真姫ちゃんに似合うブランドを教えてもらい、先に真姫ちゃん以外で中へ入った。みんなで入り口の方を向いて待っていると、入り口が光り、人影が現れる。姿が見えるようになった真姫ちゃんは……とてもかっこよかった。思った通りクールタイプらしく、クールかつセクシーで、きりっとした目の綺麗な顔の真姫ちゃんにとても似合っている。

すると、目を輝かせた花陽ちゃんが興奮気味に話し出した。

 

「真姫ちゃん! そのブランドPrismRoseだよね!? 最近人気のデザイナーさんが作ってるPrismシリーズの中でもクール系のブランドで、私達のPrismStar、PrismBeat、PrismHeartとかと同じシリーズなんだよ!」

 

私も来ているこの服のブランドはそういうものだったんだ……。確かに、みんな「Prism」って付いてるし、まさか全部同じ人のデザインだったとは……。

それにしても、流石プリパラ好きな花陽ちゃん。そういう情報をたくさん知ってるんだなぁ……。

 

『じゃあ、これからどうし……』

 

と言いかけたとき、りんねちゃんのお腹が小さく鳴った。

 

「あ……ごめん。お腹空いた……」

『そっかぁ。じゃあ、カフェ行こうか?』

 

プリパラのメインストリートを歩いて、いつも言っているカフェに向かっていると、真姫ちゃんが足を止めた。

 

「綺麗な街ね……」

 

入り口を入ると大きめのフラワーゲート。その先に続くメインストリートの目の前には、飛びぬけて高いプリパラヒルズ。メインストリートの中心にある、キラキラ輝く噴水広場。

 

『可愛いよね。女の子が好きそうな要素がたくさん詰まってる』

 

ホログラメーションでいろんな天気にも出来るし、もうこれは別世界って言えるのだろうか……。なんちゃって。そもそも異世界なんて無いだろうし、人間の手でそれが作れちゃったら少し怖いよな……。

カフェに着くと、みんなそれぞれお気に入りのメニューやおすすめを頼む。私は、プリパラ限定の煮オレがお気に入りで、可愛いグラスに加えてフルーツそのものが付属してくる。

 

「食べ物までオシャレなのね」

『うん。……ほら、プリパラって楽しいでしょ? 歌やライブだけじゃないんだよ?』

 

私がそういうと、真姫ちゃんは少し困った顔をした。

 

「別に、私は音楽嫌いじゃないわよ? むしろ、ピアノや歌は得意」

『え?』

「でも、勉強しないとだし、やめようと思ってたの」

 

そうだったのか……。通りの良さそうな良い声だし、歌ったら綺麗だろうな……と想像する。そして、少し前までの自分を思い出した。

 

『私も、1年くらい前までは、頑張って勉強して、それ以外の事は考えない様にしないとって思ってたの。でも違った。世の中には楽しいことがたくさんあって、それを楽しむことは決して怠けてるんじゃない。全部繋がってて、どんなことでも一点張りじゃだめなの。これは、私の恩師に教えてもらったことなんだけどね』

 

ハッと気付くと、真姫ちゃんだけでなく、みんなが私の言葉を聞いていた。なんか、語っちゃったみたいで恥ずかしいな……。

 

「花音、良いこと言うにゃー!」

「花音の言う通り! やっぱり、たまには気分転換も大事だよね!」

「すごく心に響く声だった……」

「素敵な先生だね。」

 

凛ちゃんとかなめちゃんに続いて、花陽ちゃんとりんねちゃんも共感してくれた。素敵な先生か……。うん。殺せんせーはとっても素敵な先生だった。

 

「……そうね。好きなことを封印してたら、駄目なのかも。……私、これからもプリパラに来ようかな」

「真姫ちゃん、珍しく素直にゃー!」

「う、うるさいわね!」

 

……凛ちゃんと真姫ちゃん、良いコンビだな。

そうして話していると、突然プリパラにアナウンスが響き渡った。

 

「プリパラパンポーン。いよいよ今週末、ミステリーパラダイスプライズ、略してミスプラの第1回が開催されま~す」

 

ミステリーパラダイスプライズとは、新人の頃に一度だけ挑戦が許されている、ミステリーパラダイスコーデを手に入れるための大会だ。シューズ、ティアラ、ドレスの3つからなるコーデで、それをゲットした者は必ず神アイドルになっているらしい。例年は普通のパラダイスコーデだったのだが、奇跡を起こしてそれを光らせた人が居たので、マイナーチェンジバージョンに変わったらしい。

 

「いよいよだね」

「BLACK☆STARsは出るの?」

「うん、そのつもり」

 

神アイドルを目指すなんて想像も出来ないことを目標にするより、まずはパラダイスコーデを手に入れようといって目標にしたが、それでも大きな目標だ。何故なら、新人とはいえ実力派のチーム達と戦い、勝たなければいけないからだ。それも3度。

 

『気合い入れないと……!』



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12.第1回ミステリーパラダイスプライズ

今日はミステリーパラダイスプライズ当日。歌やダンス、コーデの確認などをしていたら、あっという間に1週間たってしまった。

第1回である今日の商品はシューズで、白ベースに黒いレースや、黒い編み上げの柄が付いていて、とても可愛い。でもミスプラは、1回勝ってシューズを手に入れても、2回目に負けるとティアラをゲット出来ない上にシューズも取られてしまうので、最終的に勝たないと意味がない。……というか、だったらトーナメントみたいにして優勝者にコーデ一式を渡せばいいのにと思ってしまう。

それはさておき、そろそろ会場に行かなければいけない時間だ。

 

『じゃあ、会場に行こうか』

 

かなめちゃんとりんねちゃんに声をかけて歩き出そうとすると、後ろから声が聞こえた。

 

「花音ー! かなめー! りんねー!」

 

振り向くと、私達を呼んでいたのは凛ちゃんだった。いつもの2人も後ろに居るようだ。

 

「もうライブ会場に行くの?」

「うん。準備とかもあるからね」

「そっか! 凛達も見に行くね。じゃあ……せーの!」

「「「頑張れ、BLACK☆STARs!!」」」

 

突然声を合わせて応援してもらって驚いてしまった私達は、顔を見合わせて微笑んだ。

 

「ありがとう!」

『頑張るね!』

「楽しみにしてて」

 

そして、3人に見送られてエレベーターに乗った。

 

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「始まりました、ミステリーパラダイスプライズ! 司会は私、めが姉ぇが担当します!」

 

そんなアナウンスで、大会は始まった。ペンライトを見る限り、観客はいつもより多いような気がする。周りに待機している、出場チームもとても輝いていて、私にはとても格上に見える。

 

「では、さっそくライブを始めましょう! 最初のチームは……」

 

チーム名が呼ばれると、私達の前に居た3人がステージへ向かった。そして、私達も舞台袖に向かわなくてはいけない。つまり、BLACK☆STARsは2番手なのだ。

 

「1番最初じゃなかったのは良かったけど、やっぱり最初の方は緊張するよねー」

『うん。出来れば中盤から最後の方がいいよね』

 

でも、こればっかりは自分たちにはどうにも出来ないし、精一杯やるしかないか……。と考えていると、1番最初のチームの歌が聞こえて来た。やっぱり上手い。そっとステージを覗いてみたが、ダンスも上手だ。

 

『私達もこのくらいやらなくちゃいけないのか……』

 

だんだん緊張が増してきてしまった。ダメだ、落ち着かないと……。そう思っても落ち着けない。どうしよう、緊張から目を《逸らし》て……いや、2人にばれちゃうかもしれないし、出来ない。どうしたら……。

 

「花音、大丈夫?」

『……! うん……いや、緊張してる』

「やっぱり緊張するよね。でも、私達だって練習頑張って、特にこの1週間は学校の後は即行でプリパラに来たりしてさ。やれることはやった。後は、それを出せるように頑張るだけだよ!」

『……ありがとう』

 

そして、りんねちゃんが付けたした。

 

「それに、今回負けても、最終的に勝てば大丈夫」

『えぇ……。まぁ、それはそうだけど……』

 

弱気に見える発言だが、そんな少し面白い発言を聞いて、更に緊張がほぐれた。

 

『うん。……3人で、出し切ろう!』

 

そういうと、丁度1チーム目が終わったようだ。よし、頑張るぞ……!

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「「『♪怖がらないで、弱気な僕。明日は未完成だから。♪』」」

 

なんだか、いつもよりも声が揃っている気がする。それに、ダンスのタイミングも、上手くいく。どうしてだろう?

 

「♪苦しさだって未来になる。何もかもこれからだ。♪」

「♪まっすぐな心で、明日は開く。♪」

『♪ぶつかったとしても、夢は見れる。君とどこまでも、広がれる!♪』

 

ランウェイを歩いていると、とても楽しくなってきた。

 

「「『メイキングドラマ、スイッチオーン!』」」

『この虹の先に……何があるの?』

「一緒に行こう!」

「その先を目指す!」

「「『3人ですすむ!レインボーロードトゥ神アイドルー!!サイリウムチェーンジ!♪とびきりの笑顔で、進もう!♪』」」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

歌い終わると、いつもよりも大きめの歓声が聞こえた。振り向くと、2人ともとても笑顔だった。そして、めが姉ぇが言った。

 

「いいねが集まって、花音さんはちゅうもくのアイドルにランクアップでーす!」

『えっ……やった!』

「ついに花音に追い越されちゃったなぁ……」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

その後のチームのライブもどんどん過ぎていき、ついに最後のライブが今終わった。みんなすごかったから、結果がどうなるのかは予想できない。

感想を言い合ったりしてザワザワしている客席が、めが姉ぇの登場で静まる。

 

「それでは、第1回ミステリーパラダイスプライズの優勝者の発表です! 優勝は…………BLACK☆STARsです!!!」

 

……BLACK☆STARs!?

 

「やったー!」

 

信じられない。勝てちゃった。

 

「今日は何か、いつもより上手くいったよね!」

「うん。気持ちが合わさってた」

 

そして、ミステリーパラダイスシューズのプリチケを受け取り、外でお披露目をすることになった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

ミステリーパラダイスシューズを身に着けて屋上に立つと、下には人がたくさんいた。

 

「改めて、今回の優勝者はBLACK☆STARsです。おめでとうございまーす! そして、第2回の日付は、くじ引きで決まりますので、ここから引いてください!」

 

そういって、めが姉ぇはボールの入った箱を差し出してきた。

 

「えっと、誰が引く?」

『うーん、私も運が良いってわけじゃないしなぁ……』

「じゃあ、私が引くね」

 

そういって、かなめちゃんがくじを引いた。数字は……10と12。

 

「ということで、第2回のミステリーパラダイスプライズは、10月12日に決まりました! みなさん、次回もぜひ参加してくださいね! ……それと、今回優勝したチームには、次回も同じチームで出てもらう決まりになっているので、BLACK☆STARsはそのまま参加でーす!」

 

次は10月……。4ヶ月も先だと、出来ることは色々ありそうだな……。

そうしてお披露目は終わり、下に降りると、凛ちゃん達が待っていてくれていた。

 

「お疲れさまにゃー!」

「優勝おめでとう!」

『ありがとう!』

 

門限のこともあるので、もうそろそろ帰ろうと歩き出そうとすると、突然たくさんの人が寄って来た。

 

「花音ちゃん! パキろう!」

「りんねさん! 私、ファンになっちゃいました!」

 

などと、言っている人がたくさんいる。これは、ミスプラの効果か……。そうして、しばらくの間私達は、そういった人達の相手で忙しくなってしまうのであった。



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13.久しぶりのデート

寮に帰ってからはなんとなくやることを終わらせ、部屋でゆっくりしたていた。ベッドに寝転がりながら、今日手に入れたプリチケを見て、うれしい気持ちになりながらも反省点を探す。そうやって過ごしていると、突然ケータイが鳴った。プリパスではなく、普通のスマホの方だ。見ると、カルマからのEMOLだった。

 

カルマ

>「ねえ、これってもしかして……?」

 

その下には、今日のプリパラでの、ミステリーパラダイスプライズについての記事のリンクが張られている。もしかして、これが私だと気づいたのだろうか。

 

>「あ、うん。それ私だよ。」

 

カルマ

>「やっぱり」

 

>「姿変わってるのに、よく気が付いたね。」

 

カルマ

>「わかるよ。それにしても、プリパラに行ってるんだ。」

 

>「うん。楽しいよ。」

 

カルマ

>「明日、会わない?その話も聞きたいし。」

 

そうだ。忘れてたけど、今日は土曜日だったんだ。ちょっと疲れてるけど、カルマには会いたいし、OKしようかな。

 

>「いいよ! 楽しみ。」

 

そうして、待ち合わせ場所などを決めたりしていると少し遅くなってしまったが、眠りについた。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

翌日、早めに起きて、今は電車に乗っている。今日はカルマが長めに移動してきてくれることになっているので、何駅か乗るだけで待ち合わせ場所に着く。疲れているのと、寝るのが遅くなったので、たまに寝そうになりながらも、何とか待ち合わせの駅に着いた。

あまり使わない駅で、看板を探してきょろきょろしながら階段を下りていくと、映える赤色の髪を見つけた。

 

『カルマ!』

「花音。久しぶり」

 

久しぶり、といってもそこまで長い間会ってなかったわけじゃないのに、なんだかすごく背が伸びているように感じる。もうすでに背が高いのに、これ以上高くなったら私の首疲れちゃいそうだな……。一応、私も身長伸びてはいると思うけど。

そうして、ゆっくり話すためにカフェに向かうことにした。歩いていると、カルマが私の顔を覗いて言った。

 

「……ちょっと疲れてるみたいだけど、大丈夫?」

『えっ、疲れてるの分かる?』

「うん」

 

プリパラの姿の私も分かっちゃうし、カルマすごいな……。

目的のカフェは駅からは近かったのですぐについたのだが、日曜日だからかこんな時間から満員だった。仕方がないので、そこから近いファミレスに入り、そこで話をすることになった。この時間だからかまだ空いていて、4人席に案内されたため、カルマは私の前ではなく隣に居る。

久しぶりのカルマの隣……。なんか、ドキドキするな。……と、何か話を振らなきゃ。

 

『最近学校どう? 椚ヶ丘も最近、中間だったでしょ?』

「あー、中間ね。今回は、浅野クンと同率1位だったんだよね」

『なるほど、同率か……。そういうパターンもあるんだね。……えっと、私は、数学で学年トップとったよ。まぁ、自分にあったところ選んだから、椚ヶ丘で頑張ってるカルマの前で言うのもなんだけど……』

 

前にカルマが言ってた通り、やっぱりカルマと浅野君でバチバチしてるんだ……。

 

「それで、昨日送ったリンクのこれ、プリパラの(主人公)なんだ?」

『うん。ちょっと背が高くなって、髪が伸びて……って感じ』

「花音がプリパラ行くとは思ってなかったから、これ見てびっくりしたよ。最初、俺がゲーセンに連れて行った時も、実は小さい頃以来全然行ったことないって言ってたくらいなのに」

『まぁ、いろんな事やってみたかったんだー』

 

確かに、昔の私が知ったら絶対信じないだろうな……(笑)。

そうして話が弾み、結局今日は話しっぱなしになった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

『じゃあ、またね』

 

と言って別れ、カルマと反対方向の階段に向かう。同じ電車に乗って、移動する時間とかも好きなんだけど、反対方向だから仕方がない。

久しぶりにカルマとたくさん喋って、楽しかったな……。



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14.真姫ちゃんのデビュー

第1回ミスプラからしばらくの時間が経ち、余韻のようなものも無くなってきたある日。なんとなくプリパラのライブリストを見ると、意外な名前を見つけた。

 

『西木野 真姫……?』

「あ、真姫ちゃんライブするんだー!」

 

真姫ちゃんからは何の話も聞いていなかったが、ひそかに準備でもしていたのだろうか。

とにかく、見ないという選択肢は無いので、そこに書いてあった会場に移動した。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

しばらく、何人かのライブを見た後、ついに真姫ちゃんの名前が呼ばれた。

 

「えっと……西木野真姫です。デビューライブ、見に来てくれてありがとう」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「♪私は何でも本気でやるわ。手は抜かないの。可愛いだけじゃない。あなたも見ていなさい♪」

 

真姫ちゃん自信全体的にクールだが、ステージや曲、ダンスも組み合わさって、とても引き込まれる。

 

「♪全力で未来をつかむ、だから付いてきなさい。♪メイキングドラマ、スイッチオン! ダンスと、ランウェイと、歌で目指せ、let's goプリパラ! ……サイリウムチェンジ!♪教えてあげるわ♪」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「おめでとうございます、真姫さんはたくさんいいねが集まって、アイドルのげんせきにランクアップです!」

「わあ、真姫ちゃんそんなにランクアップ!?」

 

かなめが言った。

私が初めてライブしたときはいきなりキラキラ研究生にランクアップだったが、今回のアイドルのげんせきはその1つ上。歌は上手かったし、雰囲気もとてもかっこよかったので、それだけたくさんのいいねが集まったのだろう。

ここでライブが一区切りだったので、私達は真姫ちゃんに会うために会場を出ることにした。

 

「真姫ちゃんすごかったね!」

「うん。特に歌が良かった」

『この間も、歌は得意って言ってたよね』

 

しばらく歩くと、やっと真姫ちゃんを見つけた。

 

『真姫ちゃん! ライブお疲れさま』

「ありがとう。見てたのね」

「見てたよ~! ……そういえば、デビューライブなのに、聞いたことない曲だったような?」

 

あれ、確かにそうだった……。基本、デビューしたばっかりの時は曲を作ってもらうまではカバー曲を歌ったりする人が多い。私の時に歌った曲も、とある曲のカバーだ。

 

「あぁ、あれは、自分で作ったのよ」

「え、真姫ちゃん作曲できるの!?」

「……そうよ。」

 

曲を作れて、歌も上手いかっこいいアイドル……。真姫ちゃんはこの先、人気になりそうだ。



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15.新たな友人

「わー! 花音、助けて~!」

『と、突然どうしたの? かなめちゃん』

「このレポート、まだ終わってなくて……」

 

そういって見せて来た紙は、世界史のレポートだった。

 

『あぁ、それね……って、それまだやってなかったの? それって……』

「うん。図書室で調べたりしなきゃいけないやつ。他の課題がなかなか終わらなくて、先延ばしにしちゃってたんだよー」

 

これを急いで終わらせるのは大変そう。それに、私は残っている課題は無いし……。

 

『分かった、手伝ってあげるよ』

「ほんと!? ありがとう!」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

図書室に入ると、利用している生徒は1人も居なかった。しかし、カウンターには2人の生徒が座って仕事をしていた。図書委員は人がいないと暇そうだな……。

 

「うーん、世界史の本ってどこにあるかなー」

 

かなめちゃんがそういうと、急に後ろから声が聞こえた。

 

「あの、世界史の本は今移動したばっかりで、こっちに変わりました」

 

あぁ、だからわざわざ教えてくれたのか。その子は1年生らしく、セミロングの茶髪の女の子。それと……その子の後ろに、赤髪の女の子が隠れているみたいだ。人見知りなんだろうか。

 

「あれ、A組の花丸ちゃんと……ルビィちゃんだよね?」

「オ、オラ……じゃなくて、私の事知ってるずらか?」

 

花丸ちゃんという子は少し訛っているらしい。

 

「うん、知ってるよ。ほら、前に……」

 

そして、かなめちゃんは2人とあったことを説明した。それを聞いて思い出したよで、後ろに隠れていた子も少し出てきてくれる。

 

「あ、でもそっちの子は初対面だね……。マルは国木田花丸。よろしくずら!」

『マル?』

「あっ、私、自分の事マルって言っちゃって……」

『あぁ、そうだったんだ。気にしなくてもいいと思うよ?』

「わ、私は黒澤ルビィ、です……」

 

私もそれに続いて自己紹介すると、そのまま雑談が始まる雰囲気になってしまった。しかし、私達が図書室に来た用事はまだ終わっていない。

 

『かなめちゃん、こんなことしてる場合じゃないよ! レポート!』

「そ、そうだった! ごめんね、2人とも。また今度話そう!」

「……本選ぶの手伝うよ」

「いいの? ありがとう!」

 

と言って、結局かなめちゃんのレポートは本選びは花丸ちゃんとルビィちゃんが、内容は私が手伝うことになったのだった。それを通して私達は交流を深め、ルビィちゃんがプリパラのアイドル好きで花陽ちゃんと気が合いそうなことや、花丸ちゃんがとても本好きなことなど、色々なことを知れた。



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16.本物のアイドル

中間テストと同じように期末テストが過ぎ去り、少し久しぶりにいつものメンバーでプリパラに来た日のこと。といっても、あれから花丸ちゃんとルビィちゃんとも仲良くなり、いつのまにかその2人を加えた8人でよく一緒にいるようになっていて、前よりも人数は増えている。ルビィちゃんは人見知りだが、フレンドリーにたくさん話しかけてくれるかなめちゃんや、振る舞いが優しい花陽ちゃんとはもうかなり打ち解けているようだ。

 

『プリパラチェンジ、完了!』

 

ゲートからプリパラに入ると、直ぐ近くに人だかりができていた。

 

「あの人だかり、なんだろう?」

「人が多くて見えないずら……」

 

仕方がないので、私達も人混みに近付くことにする。

 

「だから……が……」

 

声が聞こえてくるので、もしかしたら誰かが話していて、しれを聞いている人達が集まっているのかもしれない。

すると、凛ちゃんが近くにいた人に声をかけた。

 

「あの、これってなんの集まりなんですか?」

「私も詳しくはわからないんだけど、アイドルの姫石藍寧がいるみたいなの! プリパラのじゃなくて、本物のアイドルよ!」

 

本物アイドルって……モモちゃんみたいな感じなのかな?その姫石藍寧という人を私は知らないので、とりあえず聞いてみようと知っていそうな花陽ちゃんの方を振り向くと……固まっていた。

 

『は、花陽ちゃん? その、姫石藍寧って……?』

「あ、藍寧ちゃんは今人気のロックアイドルで、子供達がプリパラに行き始める様な歳よりも前から密かに注目されてたらしいの!! ……そんなすごいアイドルが、なんでプリパラに……!?」

 

あんまりよくわからないけど、大人気アイドルってことなのかな……?

すると、その姫石藍寧がもう1度話し始めた。

 

「もう1度言うわ! ……みんなトモダチ、みんなアイドル? 友達同士で遊んでいるだけなら私は何も言わない。でも、プリパラで手軽にデビューしたアイドルなんかより、努力してデビューした本物のアイドルの方が素敵だと思わない?」

 

私はそれを聞いて、衝撃を受けた。プリパラをそんな風に嫌っている人が居るなんて、思ってもいなかったから。聞いている人の中には、その発言に納得していないような人も居たが、一方で共感し、歓声を上げている人も居る。……プリパラを否定されるのは少し悲しいな……と思っていると、かなめちゃんと凛ちゃんが飛び出して行った。

 

『ちょ、ちょっとかなめちゃん!?』

「凛ちゃん!」

 

そうして私達は結局、姫石藍寧の目の前まで来てしまった。

 

「プリパラを悪く言うのはやめてよ!」

「そうだよ! プリパラにだって、人気のアイドルはたくさんいるにゃ!」

「へぇ、じゃあ、あなたはどれだけ凄いアイドルなの?」

「そ、それは……」

「それに、何その語尾。安っぽいキャラ作り?」

 

姫石さんがそう言うと、真姫ちゃんまで飛び出していってしまう。

 

「凛の語尾はキャラ作りなんかじゃないわよ! あなたねっ……」

 

どうしよう、このままじゃ喧嘩になっちゃう……。

 

『ス、ストップ!』

 

私は、咄嗟に能力を使った。真姫ちゃん達の意識を私に向かって《逸らし》つつ、私の赤くなっている目には意識が行かないように二重に使ったが、上手くいったようだ。

 

 

『1回落ち着こう……?』

「で、でもこの人……」

『人には人の考えがあるし、一旦落ち着こう? 私達は私達で頑張ればいいんだよ』

 

そう言って、花陽ちゃん、花丸ちゃん、ルビィちゃんでなんとか宥めながら、遠くまで連れて行った。

 

「あのアイドル私も好きだったけど、今日で嫌いになった! プリパラのアイドルが努力してないだなんて、全然わかってないよ!」

「かなめ、落ち着いて……。それに、そろそろライブの時間……」

 

と、りんねちゃんが言った瞬間、ライブの予定を知らせる、プリパスのアラームが鳴った。

 

『プリパラが嫌いなら、来なければいいんだよ。ほら、切り替えてライブ行こ?』

「うん、そうだね……」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「みんなー! 今日もありがとう!」

 

歌い終わり、舞台袖に戻ろうとすると、突然ステージに人が登ってきた。さっきの姫石さんだ。

 

「あなた達、さっきの人よね。……1番ランクが上のあなた、私と勝負しなさい!」

「「『……え!?」」』

 

姫石さんの指している人差し指は、私の方を向いていた。



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17.エアリーチェンジ

『はぁ……いきなり勝負しろなんて言われてもなぁ……』

 

昨日のライブ後、突然勝負しろと言い、そのまま立ち去って行った姫石さん。その後寮に戻り、みんなで話しているところに、プリパスにメールが届き、日時や場所を指定されたのだった。

 

『っていうか、私はまだデビューして全然経ってないし、プロのアイドルと対決なんて、出来ないよ……』

「デビューしてからの期間なんて、関係ないさ。」

 

後ろから突然声が聞こえ、驚いて振り返る。

 

『ひ、ひびきさん! お久しぶりです……』

「アイドルの姫石藍寧とライブ対決をするんだってね」

『耳が早いですね。……でも、勝てないと思います』

「……そんなに自信がないなら、ひとつ、テクニックを教えてあげよう」

『テクニック……?』

 

 そうして、ひびきさんは私を黒い車へと案内した。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 行き先はパラ宿だった。そして、まずはひびきさんが実際に見せてくれるらしい。

 ひびきさんのライブを見るのは初めてだけど、きっと凄いんだろうな……。

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「♪君、儚くも強いその心に今革命乗せたら。君、戸惑わず揮う正義の中にある未来をご覧過去は忘れて♪︎」

 

 とてもかっこいい歌や演出で、私は“王”のようなイメージを連想した。

 

「純・アモーレ・愛。咲き誇れ美しい華、紅く猛るマグマ、カサブランカに。♪……メイキングドラマ、スイッチオン! 行くぞ! 僕が守る! サファイア革命、純真乱舞!!」

 

 すると、ステージの上では普段と違うことが起こった。いつも通りにマイクを掲げると、サイリウムチェンジと同時に背中から大きな羽が生えたのだ。そして、歌を歌いながら、会場を飛び回る。

 

「エアリーチェンジ! ゴールドエアリー! ♪しかし僕等は愛が故にここにいる ♪」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「どうだったかな?」

『す、すごかったです……。あれは何だったんですか?』

「君ならできるよ」

『え、は、はい……』

 

あんなのをいきなり出来るのかな……。でも、期待されてるなら、やれるだけやってみよう、かな……?

 

「じゃあ行こうか」

『はい……って、どこにですか?』

「映画鑑賞だよ。一流の芸術に触れてインスピレーションを得るんだ」

 

インスピレーションを得る……。なるほど。練習だけじゃなくて、そういう部分も大事なんだな……。

その後、ひびきさん主演の映画を見に行ったり、クラシック曲、美術などの鑑賞に連れて行ってもらい、普段はあまり出来ないような体験をすることが出来たのだった。



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18.ライブ対決

今日は、姫石さんに勝負を指定された日、当日。ひびきさんは、才能やセンスがあれば、練習は必要ないと言っていたが、やっぱり私は、天才であろうとなかろうと、努力すれば、その分何かを得られると思っている。だから、私はこのしばらくの間、改めて音程を確認して調整したり、ダンスの細かいところを注意して練習してきた。

しかし、問題はあの、エアリーチェンジだ。ひびきさんが見せてくれたあのパフォーマンスは、とても素敵だった。後で調べてみたところ、あれは元々、昨年のドリームパレードのシステムで使われていた、サイリウムチェンジの延長線上にあるものらしく、ひびきさん含む何人かのアイドルは、普通のライブでもそれをすることが出来たらしい。特に、グランプリの最初こそ普通のサイリウムエアリーだったらしいが、ゴールドエアリー、プラチナエアリー、ついにはファイナルエアリーを出した者もいたという。そんなものを、私が出せるのだろうか。でも、本物のアイドルである姫石さんとの対決に見出せる勝機は、そういう部分なのかもしれない。

 

「花音、ついに今日だね! プリパラだって、遊びだけじゃないって教えてやってよ!」

「私達も応援してるから、頑張るにゃー!」

「プロのアイドルとか言ってるけど、プリパラは初心者なんだから、勝ってよね!」

「花音ちゃんはずっと頑張って練習してたし、きっと大丈夫だよ!」

 

かなめちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃん、花陽ちゃんが、応援してくれた。りんねちゃんもルビィちゃんも花丸ちゃんも、応援してくれている。頑張らなくちゃ……。

 

「花音さん、そろそろ準備をお願いしまーす!」

『は、はい! みんなありがとう! 行ってくるね』

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

会場の裏へ行くと、姫石さんが立っていた。この間はゲスト用の服装だったが、今日はちゃんとした衣装を身に着けている。ロック系のコーデで、PrismSkullというクールタイプのブランドだ。

 

「あら、来たわね。こんなに遅くなってしまってごめんなさい。タイミングが悪くて、仕事が詰まってたの」

『あ、いえ、大丈夫です……』

「じゃあ、まずは私の番ね」

 

そういって、ステージに出て行った。

 

「こんにちは。プリパラをお楽しみのみなさん。今日は、みなさんに本物のアイドルのライブを見せてあげるわ。ミュージック、スタート!」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「♪覚悟を決めて、昨日までの私を超える。負けられないわ。♪」

 

歌が始まった瞬間、迫力があって、観客の心を一気に掴む歌声で会場の空気が変わる。

 

「♪偶然出会ったチャンス? そんなものより、つかみ取った結果。茨の道、ケモノ道、無傷で進む。最高最強を手に入れるの。♪」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

どうしよう……。私、この後にライブをするのか……。

緊張と恐怖がどんどん出てくる。無意識に、目を《逸らし》て…………。

 

「花音」

『……! り、りんねちゃん。』

 

赤い目、見られちゃった……?

 

「緊張、してるね」

『う、うん……』

 

良かった、見られてはいないみたい……。今はみんな、客席に居るはずなのに、どうしてここに居るんだろう。

 

「花音は、プリパラ好きだよね」

『うん。プリパラは好きだよ。でも……』

「じゃあ、大丈夫。思いを込めた歌は、みんなに届くんだよ。プリズムボイス……」

『プリズム、ボイス……?』

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「メイキングドラマ、スイッチオーン! みんな、私に付いてきて! ロックに行くわよー! 目指せ!頂点を! ……サイリウムチェーンジ! ♪夢をつかむ♪」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「とてもたくさんのいいねが集まっています! 藍寧さん、ちゅうもくのアイドルにランクアップです!」

 

流石、プロのアイドル。いきなり大きくランクアップするなんて……。期間は参考にならないかもしれないが、私が4ヶ月間かけてなったランクに、たった1回のライブで追いつかれてしまった。

でも。

 

『りんねちゃん、ありがとう。私も、プリパラ好きだし、頑張ってくるね!』

「……うん!」

 

いつも3人で歌ってる曲の、ソロバージョン……。みんなの心に、届け!

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

『♪怖がらないで、弱気な僕。明日は未完成だから。苦しさだって未来になる。何もかもこれからだ。まっすぐな心で、明日は開く。ぶつかったとしても、夢は見れる。君とどこまでも、広がれる!♪……メイキングドラマ、スイッチオン! 世界には、こんなに楽しいことがあふれてる! プリパラファンタジー!』

 

エアリーチェンジ……成功させる!!

 

『エアリーチェーンジ! ゴールドエアリー!! ♪とびきりの笑顔で、進もう!♪』

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

ゴールドエアリーを、出すことが出来た。正直、上手くいくかは全然分からなかったし、とても驚いている。でも、ライブ会場を飛び回って見た、いつもとは違う景色は、とてもすごくて、ライブをしている最中は、全力で、楽しんで、気持ちを伝える! という気持ちしか無くて、何かそういう領域に入っていたような気がする。そんな高揚感でふわふわしたまま、裏に戻ると、姫石さんが詰め寄って来た。

 

「ゴ、ゴールドエアリーって何よ!? あなた一体何をしたの!?」

『え、えっと……』

 

私が上手く答えられないでいると、めが姉ぇが来てしまった。

 

「結果を発表するので、お2人ともステージにお願いしまーす!」

『は、はい!』

「……分かったわ」

 

説明をしそこない、少し気まずい空気を感じながら、ステージへと移動する。そこには、2つの円形の台が置いてあった。基本的にライブ対決はいいねの数で決まり、そのいいねによって台が高くなり、最終的に高い方が勝利するらしい。

 

「では、結果発表です!」

 

それぞれの台の上に立つと、いいねが集計され、上昇し始める。そしてしばらくすると、重い音がして、台が止まった。隣を見ると、私と姫石さんの台の高さは、そこまで差が無いように見えた。

 

「レーザー判定です! 勝者は……花音さん!!」

 

そうして、たくさんの歓声が響いた。

 

『私の……勝ち……』

 

それが分かった瞬間、胸に浮かんだのは喜びよりも安堵だった。ひびきさんの期待を、みんなの応援を、裏切ることにならなくて、本当に良かった……。そうして、このライブ対決は幕を閉じた。

 

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

Black☆STARsの楽屋に戻ると、みんなが待ってくれていて、お祝いをしてくれた。研究生クラスの共同楽屋よりデビュークラスの個別楽屋の方が広いとはいえ、3人用の部屋に8人集まると流石に狭かった。何人かはドレッサーの方の椅子に座らなけらば行けなかったし、小さなテーブルにジュースやお菓子を頑張って乗せなければいけなかった。しかし、そんな中でワイワイするのもそれはそれで楽しかった。

そうしてしばらく過ごしていると、突然ノックが聞こえ、ドアが開いた。隙間からは、緑色の髪が覗いていた。やって来たのは姫石さんだった。

 

『あ、姫石さん……』

「……まず、今日は対決ありがとう。突然言って悪かったわね……」

 

と、意外にもちゃんとした挨拶をしてくれた。やっぱりそこは、プロのルールのようなものなのだろうか。

 

「まさか、ま、負けるとは思ってなかったわ……」

『……あの、姫石さん。プリパラのアイドルだって努力してます。確かに、デビューは手軽かもしれません。でも、プリパラのアイドルだってファンの子のことを考えて、練習も頑張って、アイドルをしているんです』

 

そういうと、姫石さんは部屋を出て行こうとした。しかし、そこで立ち止まって背を向けたまま、

 

「次は負けないわ」

 

と言い、今度こそ去っていった。

 

「次……ってことは、またプリパラに来るってこと……?」

「じゃ、じゃあ少しはわかってくれたってことにゃ?」

『そういうこと、なのかな……?』

「花音、やっぱりすごいよ! あんなにプリパラを否定してたプロのアイドルに認めさせちゃうなんて!!」

『でも、今日ああやって全力を出せたのは、応援してくれたみんなと……励ましてくれたりんねちゃんのおかげだよ』

 

いきなり勝負を仕掛けられて、緊張して、大変だったけど、結局そこからも学ぶものがあった。ここ最近の体験も、悪いものじゃなかった……かな。




なんか、書き終わるのに時間かかるなーと思ったら、文字数がいつもより多いだけでした(((


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19.合宿

姫石さんとのライブ対決を無事に終え、私達は夏休みを迎えた。王蓮寺学園付属高校は全寮制だが、夏休みの過ごし方は申請すれば自由だ。夏休み中も寮で過ごすもよし、短期間だけ自分の家に帰るもよし、夏休みの全てを自分の家で過ごすもよしだ。私は、準備が出来次第メカクシ団のアジトに行こうと思っていた。だったけど……

 

「花音、りんね! プリパラのイベントに当たったよ!」

「『イベント?』」

 

そんなかなめちゃんの言葉で、久しぶりのメカクシ団のアジトは、お預けになってしまったのだった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

かなめちゃんの言っていたイベントというのは、全国の各プリパラから選ばれた何チームかが他の地域のプリパラに行き、ライブなどをしたりして親睦を深めたり知名度を上げたりする、という内容だった。各プリパラから数チームしか選ばれないというのに、私達が選ばれたのは凄い確率だ。……私達はまだデビュークラスなのに、大丈夫だったのかな……。

 

「いやー、それにしても、よかったね!」

「うん。……っていうか、これはプリパラ側の準備が悪かった」

『ひびきさんに感謝だね……』

 

私達が行くことになったのは、なんと、パラ宿のプリパラ。今年は神アイドルグランプリが開催されているし、個人的にも知り合いが何人かいる所に割り振られるとは……。しかし、問題があった。それは、プリパラ側は宿泊する場所を用意してくれない、ということだ。……準備不足過ぎない?

巡ヶ丘市とパラ宿はそれなりに離れているので、短期間で何回も行き来する、というのも難しい。かと言って、ホテルに泊まったり……というのも難しい。そこで、ダメ元でひびきさんに連絡を取ったのだ。結果、ひびきさんが快く泊まるところを用意してくれたのだった。ひびきさんって、どんなこと頼んでも、了承してくれるかはともかく、実行は出来そうな気がする。パプリカ財閥の御曹司でお金持ちだし。天才だし。

ということで、寮の手続きを済ませ、準備をして電車でパラ宿に向かい、今はメールに添付されていた地図の場所へ向かっている。

 

「あ、あれかな?」

 

そう言ったかなめちゃんの指した指の先には、ホテルというか、別荘のような建物が建っていた。パラ宿のプリパラからそう遠くない場所なのに、ここの周りはビルも少なく、騒がしさはあまり感じられない。

建物に近づいていくと、スーツを着た男女2人が立っていた。

 

「梅宮様、久里須様、荊様でございますね。紫京院ひびき様からお話は伺っております」

「私達はここの管理人の、ぺぺ・カルボと」

「ロンチーノ・カルボと申します。これから、ご案内いたしますね」

 

そして、私達はこの数週間で宿泊する場所を案内してもらった。その時の会話で、ぺぺさんとロンチーノさんは姉弟だと教えてもらった。ぺぺさんは落ち着いていて、クールな大人。ロンチーノさんは優しそうで柔らかな印象だ。

 

「では、何かございましたら、お呼びください」

 

そういって、2人は去っていった。豪華な雰囲気に驚いていたのか、かなめちゃんはここまで静かだったが、私達だけになって気を抜いたのか、案内された部屋を見まわして探検し始める。

見た所、大きく分けて、リビング、寝室、浴室、お手洗い、それと1つの大き目の部屋があるようだ。寝室にはベッドが3つ並んでいて、寮の3人部屋と比べると、かなりの差がある。

 

「おぉ~……。広いね!」

「……そういえば、この3人で一緒の部屋に寝るのは初めて?」

『確かに、そうだね』

「これって……Black☆STARsの合宿みたいじゃない!?」

 

合宿か……。夏休み中に、チームメイトで数週間、泊りがけで活動をする。確かに、そういってもいいかもしれない。

 

『あの向こうの部屋って何だろう?』

「あぁ、あの大きい部屋? ちょっと行ってみよう!」

 

そういって、寝室から移動し、かなめちゃんがドアを開けた。ピアノ、大きな鏡、スピーカー……などなど。壁は、防音の素材のようだ。

 

『歌とかダンスの練習が出来る場所……?』

「みたいだね」

 

準備がいいなぁ。練習はプリパラの中とかでも出来るのに。でも、私達専用の練習場所を時間に制限なく使えるというのはとても魅力的だ。

 

「折角だし、早速練習する?」

「……まずは、荷物の整理とかしなきゃだよ」

「そうだった……」

 

という感じで、私達の数週間のパラ宿生活が始まったのだった。




ぺぺ・カルボとロンチーノ・カルボ。ペペロンチーノとカルボナーラを適当に組み合わせてみました。


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20.ドレッシングパフェ

『といってもさ……』

「うん」

『しばらくはイベントのライブも無いし、暇だよね』

「……確かに」

 

夏休み中に行われるイベント、ということなので、日程調整の結果まだしばらくは本格的に始まらないらしい。それを知った私とりんねちゃんは、なんとも言えない雰囲気の中に居た。

 

「いやいやいや! 大事なことがあるじゃん!」

『大事なこと?』

「花音はもう行ったことあるだろうけど、私達は初パラ宿なんだよ!早速行かなくちゃ!」

 

そっか……そういえば、私はひびきさんに連れられて来た時は2人は置いてけぼりだったんだ。ふわりちゃんとファルルちゃんに会った時も、逆に巡ヶ丘に来てもらってたし。

 

『じゃあ、一足早いけど、行ってみようか』

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「……ごめん、迷った」

「『……え?』」

 

外に出た私達は、プリパラに向かおうとしたのだが、当然道は分からない。そして、かなめちゃんがプリパスに地図を表示して歩き出したので、私達はそれについて行ったのだ。なのに、地図を見ている本人が迷うとは……。

 

『私も、前に来たときは車に乗ってたから、分かんないな……』

「仕方ない、この辺はお店もあるみたいだし、どこかで聞いてみよう」

「ごめんね……」

 

まあ別に、用事があって向かってたわけじゃないし、そこまで一大事じゃないから大丈夫なんだけどね。

そうしていると、歩いてきた人が声をかけてくれた。手元と周りの景色を見比べたり、きょろきょろしたりしてたから、迷ってるってすぐ分かったのかな……。

 

「えっと……大丈夫ですか?」

『すみません、迷ってしまって……。プリパラに行きたいんですけど……あ』

 

と言いかけて気が付いた。声は高めだったけど、着ている制服が長ズボン、つまり男の人だ。ピンクの髪を三つ編みにしたショートヘアだったから気が付かなかったな……。

 

「プリパラ? 私もこれから行くところだから、案内しますよ」

『え?? は、はい……ありがとうございます』

 

あれ、男の人ならプリパラの場所も知らないかもしれない、と思ったんだけどな……。

疑問は残るが、案内してくれるそうなので、りんねちゃんとかなめちゃんを呼び戻す。そうしている間に、声をかけてくれた人の知り合いと思われる2人が近づいてきた。

 

「レオナ? 先にプリパラに行っていたのではないのか?」

「ってか、この人達だれ?」

「この人達は、プリパラに行こうとしてて迷っちゃったみたいだから、案内しようとしてたの」

 

紫の髪をサイドテールにした女の子と、案内してくれるという人……レオナさんとうり二つで水色の髪の女の子だった。髪型も顔も似ているから、姉弟か、兄妹だろうか。いや、もしかしたら、兄弟だったりも……。

 

「へぇ、そーだったんだ。てっきりレオナが絡まれてるのかと思った」

 

女子高生3人で絡むって、逆ナンじゃないんだから……。

 

「それで、迷うということは、パラ宿以外のどこからか来たのか?」

『あ、はい。巡ヶ丘市から……。プリパラの、ライブのイベントで来たんです』

「イベント……。なるほどな。私達は神アイドルグランプリもあるから辞退したが、そんなものもあったな」

「神アイドルグランプリ……って、あ!! ド、ドレッシングパフェ!?」

 

ドレッシングパフェは、確かそらみスマイルのライバルチームで、神アイドルグランプリにも出場しているチーム、だったと思う。この人達がそうだったんだ。

 

「あれ、ボク達の事知ってるの? じゃあ……テンションマックス!」

「リラックス」

「ドロシーアンド」

「レオナ」

「よろしく!!」

 

ドロシーさんとレオナさんがアイドルっぽい自己紹介をしてくれた。

というか、ボクっ子? ドロシーさんの方は制服はスカートだし……。

 

「それで、私は東堂シオンだ。イゴ、よろしく!」

『よ、よろしくお願いします……』

「花音、花音。ドレッシングパフェのみんなは中学生だよ? あと、ドロシーちゃんとレオナちゃんは姉弟で、レオナちゃんはプリパラに入れる体質の男の子なの」

『説明ありがとう……』

 

プリパラに入れる体質の男の子。ひびきさんと同じような感じか。プリパラ憲章に、プリチケが届いた者は何人たりとも行って良い、という内容があるらしいから、そういう人が一定数いてもおかしくないのかな。

と、話している内にプリパラに着いた。このあたりの景色は、見覚えがある。

 

「迷ったり、話したりしていたが、時間は大丈夫なのか?」

「元々、今日は観光目的だから、大丈夫」

 

そして、プリパラチェンジをして、中に入る。すると、見慣れた景色……とは少し違う、パラ宿のプリパラの景色が見えた。

 

「「おぉ~」」

 

かなめちゃんとりんねちゃんにとっては、初パラ宿プリパラだ。

プリパラチェンジした、ドレッシングパフェの3人は、変わったのは衣装だけで、姿は変わっていなかった。……私、やっぱりちっちゃいんだな。いやいや、まだ成長の余地あるから、大丈夫……。

 

「じゃあ、私達はこれからライブがあるから……」

「道案内してやったんだから、ボク達のライブ、見に来いよ~!」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「♪出逢わなくっちゃ始まんなかった!♪」

「♪こんなにもWa-Cha Groovin’しちゃうDays♪」

「♪波にノッテケノッテケNon Stop、七転八起のRock’n Roll♪」

「「「メイキングドラマ、スイッチオーン! ステレオ全開! 2×3=ロック! サイリウムチェーンジ! ♪一度きりしかない、Groovin'青春Days♪」」」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪



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21.ひびきさんに誘われて

最後投げやりになってしまってすみません……。そして……りんねちゃんが空気(((


朝と昼の間くらいの時間。3人で夏休みの宿題をやっていると(りんねちゃん曰く、「かなめはこのくらい早くから始めないと終わらない」らしい。)、ペペさんが部屋にやって来た。

 

「ひびき様がいらっしゃっています。ご案内してよろしいですか?」

『あ、はい。大丈夫です』

 

そう言うとすぐに、ひびきさんと、その後ろに着くロンチーノさんがやって来た。インカムでも付けているのだろうか。

 

「やあ」

『こんにちは。……あ、ここを用意して下さってありがとうございました』

「「ありがとうございました!」」

 

夏休みにパラ宿に行くことになったけど、泊まる所がないから協力してくれ、なんて突然のお願いだったのに、こんなに良い所を用意してくれて、本当に感謝しかない。

 

『それで……何か用事ですか?』

「あぁ。これに誘おうと思ってね」

 

そういって、ひびきさんはロンチーノさんから細長い紙を受け取って見せてきた。どうやら、バレエの公演のチケットらしい。

 

「バレエ……?」

『えっとね、ひびきさんが言うには、芸術に触れてインスピレーションを得るのがいいんだって。クラシックとか映画とか』

「なるほどー」

「今日なんだけど、どうかな?」

『えっと、特に予定もないので、大丈夫です!』

 

ということで、いつも通りの高級そうな車に乗り、バレエを見に行くことになったのだった。……いや、今日の車はいつもよりも豪華で、中はぐるっとソファになっていて、グラスが並んでいた。お金持ちって凄いなぁ。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

バレエ公演を見終わり、そのまま昼食をとることになった。ここは、ひびきさんがよく行くお店らしい。

料理を待っていると、ひびきさんにバレエの感想を聞かれ、かなめちゃんが少し緊張した様子で答える。

 

「えっと……バレエを直接見たのは初めてだったんですけど、良い経験になりました!ありがとうございます!」

 

しかし、隣に座っていたりんねちゃんと私は知っている。見ている時、何度も眠そうにしていたことを……。そうなるんじゃないかなーとは思ってたけどね。そして、ひびきさんも何となくそれを感じ取っていそうだった。私は前に吹奏楽やってたし、元々そういうの見るのも好きだったけど、苦手な人もやっぱりいる。

 

「そうだ、花音。この間の、姫石藍寧との対決、プリパラTVで見ていたよ」

『え、見てくれたんですか!? ……ひびきさん、改めて、ゴールドエアリーとか教えてくれてありがとうございました』

「そうだ! この間のあれ凄かったよね! あれってひびきさんに教えてもらったんだ~」

 

出来るかどうか、ライブ直前まで本当に不安だったけどね……。

という、ひびきさんとの1日だった。



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22.イベントライブ

今日はついに、イベントのライブ1回目。今、私達は、周りを見ていつもと違う風景を楽しみながら、ライブ会場へと移動している。同じように、珍しそうに周りを見ながら歩く人達は、私達と同じ、イベントでライブをするチームだろうか。

すると、遠くから人が走ってくるのが見えた。……あ、前に会った、そらみスマイルさん達だ。

 

「花音さ~ん!」

『あ、らぁらちゃん。久しぶり!』

「今日のイベントに出るって聞いたぷり!」

「見に行くね~」

 

神アイドルグランプリに出てる小中学生のチームに応援される、デビュークラスの高校生チーム……。なんかちょっと不思議な感じだなぁ。この、そらみスマイルが凄いチームなだけなんだろうけど。

 

「らぁらちゃん……ってことは、そらみスマイル? 花音はそらみスマイルとも知り合いだったんだね……。羨ましいなー!」

『……かなめちゃんもファルル、ふわりとも会ったし、この間ドレッシングパフェとも知り合ったよね?』

 

何はともあれ、そろそろ会場に行かなくてはならないので、そらみスマイルの3人に挨拶をして、再び私達は移動を始めた。

会場の裏へ着くと、数チームが集合していた。3人チームも居るが、中には2人チームや、1人の人も居るようだ。

 

「みんな、ランクはどれくらいなんだろうね?」

「……あ、あのチーム知ってる。えっと、デビュークラスの後半くらいだったよ」

 

じゃあ、私達が場違いすぎるってことは無いのかな……。

そうして待機していると、ある2人組が声をかけてきた。

 

「こんにちは。少しお話しませんか?」

「いいですよ! えっと、私達はBLACK☆STARsって言います。かなめです」

「私達は、白猫ワンダーランドの、水穂と」

「美香です!」

「「よろしくにゃん!」」

 

という、自己紹介を見せてくれた。この2人は、キャラ作りがしっかりしてる系のアイドルだったらしい。チーム名に白猫と付いているからか、2人の頭には猫耳が着いている。ヘアアクセ、と言うよりかは普通に生えているらしい。プリパラのシステムって動物の耳も生やせるんだなぁ……。

 

「ところで、何歳なの? 私達は2人とも高2!」

「私達も高校2年だよ! 同い年だねー」

 

フレンドリーそうな美香さんと、かなめちゃんはもう打ち解けそうだ。

この2人は普段は新宿のプリパラで活動しているアイドルで、幼馴染だと聞いた。小学生の時からプリパラに通って、今ではメジャークラスらしい。

 

「ところでさ、あの有名なチーム、まだ来てないみたいだね?」

 

と、話題に上がった名前は、私の知らないものだった。

 

「あれ、知りませんか? 私達が……えっと、中学1年生くらいの時に話題にあがり始めた、人気のチームなんですけど」

「……そっか、花音はその頃の話題は分からないんだっけ?」

『うん。……あ、えっと、私がプリパラデビューしたのは今年で、今までそういう話題に触れてこなかったんですよね』

「そうだったんですか。……あれ、それじゃあ、この半年くらいでデビュークラスまで上がったんですか?」

 

4月の、学校が始まる少し前に初めてプリパラに行って、もうそろそろ8月だから……

 

『多分、そうですね』

「すごいね! 短期間で実力を伸ばしてるって感じ! ……私達がデビューした時は小学生だったから、まぁ、地道にって感じだったんだよね」

「ここのパラ宿で神アイドルグランプリに出てる、そらみスマイルのらぁらちゃんは、まだ小学生なんですよね。才能の差っていうのかな……」

 

と、話しているうちにだんだんライブの時間が近づいてきた。

 

「あ、そろそろ始まりそうですね。お互い、頑張りましょう!」

「また次のライブの時も、会ったら話そうね、バイバ~イ!」

 

そうして、白猫ワンダーランドの2人は奥へと入って行った。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「よし、ライブ頑張ろー!」

 

舞台袖で、かなめちゃんが手を挙げながら言った。

 

『他の人達に負けないくらいにね!』

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「「『♪怖がらないで、弱気な僕。明日は未完成だから。♪』」」

「♪苦しさだって未来になる。何もかもこれからだ。♪」

「♪まっすぐな心で、明日は開く。♪」

『♪ぶつかったとしても、夢は見れる。君とどこまでも、広がれる!♪』

「「『メイキングドラマ、スイッチオーン!』」」

『この虹の先に……何があるの?』

「一緒に行こう!」

「その先を目指す!」

「「『3人ですすむ!レインボーロードトゥ神アイドルー!!サイリウムチェーンジ!♪とびきりの笑顔で、進もう!♪』」」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

歌が終わると、歓声が上がった。どうやら、私達のライブでも楽しんでもらえたらしい。良かった……。

そうして、イベントの1回目のライブは終わったのだった。



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23.チーム結成式

今回めっちゃ長くなっちゃいました。すみません。


8月に入ってしばらくしたある日。パラ宿のプリパラは、いつも以上に賑わっていた。その理由は、ひびきさん、ファルル、ふわりのチーム結成が大々的に発表され、今日がその結成式が行われる日だからだ。普段は、海外であるプリパリをメインに各地を移動して活躍しているひびきさん達が、しばらくこのパラ宿に留まり、そろそろ開催される、第3回神アイドルグランプリに出場するというのだから、世界中で話題になっている。イベントの終了する日と、第3回神アイドルグランプリの日は同じなので、私達も見に行くことが出来るだろう。

そんな私達は今……何故か、トップアイドル達に囲まれている。

 

「友達嫌いだったまほちゃんも、ついに友達を認めたんだね~」

「誓いの言葉は、友達を認めていないと言えないぷり!」

「言えるのかなー? 言えなかったりしてー」

「……言える」

 

ドロシーちゃんとみれぃちゃんは、ひびきさんのことを煽っていて、その周りでは、前に会ったそらみスマイルのらぁらちゃん、そふぃちゃん。前に紹介してもらった、ファルルちゃん、ふわりちゃん。この前会ったドレッシングパフェのレオナちゃん(くん?)、シオンちゃん。そして、まだ面識はないが、第2回神アイドルグランプリで優勝したらしい、ガァルマゲドンというチームの3人。という、凄いアイドル達がそれぞれ談笑していた。

私達は、チーム結成式の前に来るように言われ、緊張しつつ指定された場所に来た。すると、このようなトップアイドル達の集まりだった、ということだ。

 

「あれ? 知らない人なの!」

 

と、この場で唯一知らないグループの1人が声をかけてきた。

 

「誰ガァル?」

 

そのうちの1人は、黒いファルルちゃんのちっちゃいバージョン、みたいな姿だ。

そして、私達は、今パラ宿に来ている理由や、ひびきさんと知り合いであることなどを説明し、自己紹介をした。

 

「ふむ、あいつと知り合いであったか。我は、黒須あろま。よろしくデビッ」

「私は白玉みかんなの! よろしくなの!」

「ガァルル、ガァル!」

 

自己紹介を聞いていると、あろまちゃんは悪魔アイドル、みかんちゃんは天使アイドル、ガァルルちゃんは怪獣アイドル、というキャラの濃いチームだった。ちなみに、ガァルルちゃんはボーカルドールで、ファルルちゃんとは違ってアイドル達の負の感情から生まれた存在らしい。

そうして過ごしていると、色んな人達と話していたひびきさんがこちらにやってきた。

 

「やあ。少し待たせてしまったね」

『大丈夫です。あの子達とお話していたので』

 

その後、私達に気が付いたみんなと、楽しく話をしながら過ごし、しばらくした後、めが姉ぇとめが兄ぃが部屋にやってきた。

 

「お待たせしました。みなさん、結成式の準備が整いましたー!」

「特別な舞台を用意しましたので、こちらへ。」

 

そうしてひびきさん達はステージの裏へ案内され、私達はみんなで客席へと向かった。

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

「ただいまより、ひびきさん、ふわりさん、ファルルさんのチーム結成式を執り行います。」

 

めが兄ぃがそう言って、チーム結成式が始まった。

 

「なお、この放送は全世界に同時中継されています」

「それでは、立ち会いマネージャーのトリコさん、こちらへどうぞ!」

 

すると、青い鳥のマスコットが飛んできた。あの鳥が、ひびきさん達のマネージャーになるんだな……。

 

「で、では、チーム結成の誓いの儀式を始めるト、トリー!」

「では、チーム名の発表をお願いします」

「それぞれ違った3人のチーム、Tricolorだよ!」

「みんなー、気に入ってくれた?」

 

トリコロール。フランスとかの、3色の旗を指す言葉だ。3人とも違うけど、1つのチーム。良い名前だな……。

 

「では、いよいよチーム結成式に入ります。トリコさんお願いします」

「Tricolorのひびき、ふわり、ファルル。1歩前へ!」

 

と、マネージャーさんは3人のプリチケを2枚ずつ渡した。そして、その後はめが姉ぇが進行して行った。

 

「では、チームリーダーのひびきさんから宣誓の言葉をどうぞ!」

「プロミス…………」

 

ひびきさんが、言葉を詰まらせた。なかなか、次の言葉を言わない。どうしたんだろう?

そして、らぁらちゃんがステージに向かって叫んだ。

 

「“プロミス、友情を信じて”だよー!」

「そのくらい知っている! ……ただ、この時間を噛み締めていたのさ」

 

ひびきさんがそういうと、歓声が沸き起こった。……ひびきさんなら、何をやってもキャーキャー言われそうだけど。

 

「では、どうぞ」

「プロミス…………僕だけを信じて!!」

 

かっこいい……けど、正しくはない。本当に、ひびきさんどうしたんだろう??

そして、めが兄ぃさんが注意した。

 

「誤魔化されませんよ。今、あなたは“友情”と入っていませんでした」

「みんなこれだけ喜んでいるのだからいいじゃないか。それに、君はアイドルの味方なのだろう?」

「それとこれとは別です」

 

それはそうと、めが兄ぃさんとひびきさんの間は、何だかピリピリした空気が流れている気がする。

すると、ファルルちゃんが心配そうに口を開いた。

 

「チームになるの、嫌?」

「まさか。──プロミス…………意味は約束!」

「……認められません」

「……めが兄ぃ。あの時の鳥の餌、食ったのか?」

「ハッ……。ま、毎日ではありません……。」

 

なんだか、2人の間で静かな戦いが起こっているみたいだ。

 

「ちなみにこの後、次の結成式の予定があるので、次言えないと時間切れになりまーす!」

 

と、めが姉ぇさんが突然言った。時間に限りがあるなら、最初から言ってよ……と思った。

とにかく、事情は分からないけど、ひびきさん頑張って……!

 

「なんだと? 分かった、言えばいいんだろ? 大丈夫だ。──プロミス。……………。」

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

会場を後にし、さっきみんなで集まっていた部屋に戻ってきた。結局、あの後、ひびきさんは“友情を信じて”を言えなかった。

 

「グランプリには出たい?」

「出たい」

「じゃあ、言えるよね?」

「嫌だ」

 

少し向こうでは、3人が話している。

 

「任せてって言ったわ!」

「あの時は言えると思ったんだ」

 

うーん、大丈夫かな……?

 

『ひびきさん、どうしたのかな?』

「分からない……。あ、でも、ひびきさんの話は、こんなのがあるよ」

 

そう言って、かなめちゃんは去年、このパラ宿のプリパラであったということを教えてくれた。

去年のここでは、夏、秋、冬、春にそれぞれ5人チームのグランプリを行い、最終的には“夏のプリンセス”、“秋のプリンセス”、“冬のプリンセス”、“春のプリンセス”、そして“四季のプリンセス”がパレードを行うというものが1年かけて開催されていた。そして、そのプリンセス達が5つの鐘を同時に鳴らした時、願いが叶う、ということもあり、参加する人は多かった。しかし、ひびきさんがある時突然デビューし、悪く言えば掻き乱し、良くいえば革命を起こした。具体的には、プリパラのサービスを良くしてセレパラと改め、トップクラス以下のアイドルがライブする事が出来なくなった。友達が否定され、“格差歓迎、みんなライバル、セレブだけアイドル”とも掲げられたらしい。結局、春のグランプリではひびきさん含む天才チームは、ひびきさんが否定した努力のチームに破れ、セレパラは終わったというが、そのセレパラは賛否両論だったという。

ひびきさんは、革命を起こしたセレパラで何をしたかったのか。天才チームと努力チームの間で、裏で何があったのか。あまり広くは知られてはいないが、何か大きなことはあった、ということは知られているらしい。

その話を聞いて、少しだけ分かった気がした。いつも、ひびきさんが天才を好み、努力を無駄だと考えていること。セレパラでは、友達が否定されていたこと。ひびきさんは、天才だけが完璧であり続けるプリパラを望んでいるのかもしれない。……この間の、姫石さんの言っていたことと、似通う部分もあるかもしれない。

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

結局ひびきさんは、先に、神アイドルグランプリに参加する資格である“スーパーサイリウムコーデ”を手に入れるため、ふわりちゃんとペアライブをすると決め、今は2人の出番を待っているところだ。

 

「ひびきさんとふわりちゃんの2人のライブか……。どんな感じのライブなんだろうね?」

『2人の曲でもあるのかな?』

 

そして、2人の出番がやってきた。ステージの使用は、前に見たふわりちゃんのソロライブと同じ仕様だ。

 

「こんにちは~! 今日は、ひびきさんと一緒に歌います! 聞いてください、コノウタトマレイヒ!」

 

え、あの、カントリーっぽいナチュラルな曲を、ひびきさんと一緒に歌うの? あの曲は、なんか、ふわりちゃんだからこそ仕上がってるような感じがするんだけど……。

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「♪新しい今日がきたよ。おは〜よ! れいひ、さぁ起きて。丘の上で、森の奥で、深呼吸すはすはふ〜♪」

「♪モヤモヤイヤな事ポイっとね。杉の木てっぺんに干してさよなら!♪」

 

ひびきさんのパートになったが、思ったより違和感がない。というか、普通に良い。流石、ひびきさんって感じだな……。

 

「「♪わくわ、わくわ、わくわく。湧くよ、生きる力。しわわ、しわわ、幸せ。♪」」

「♪ふわりほっほっほっ~♪」

「「メイキングドラマ、スイッチオーン! 不思議の泉の、オーケストラ! サイリウムチェーンジ! ♪この歌、とまれれいひ♪」」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

すると、突然周りの景色が変わった。

 

「さぁ、神アイドルのステージへ。神チャレンジライブ、スイッチオーン!」

 

あれが、神アイドルグランプリを取り仕切る、プリパラの女神、ジュリィ……。ってことは、これでスーパーサイリウムコーデが手に入るんだ。

あれ?ステージにいるのは……ふわりちゃんだけ?

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

「♪神アイドルだって、なってみせるよ! Get dance! プリパラ、今日はもっとDance! 輝くよ、胸のRainbow。トキメキのNeverland♪」

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

元の場所に戻って来たが、スーパーサイリウムのプリチケを手にしていたのは、ふわりちゃんだけだった。



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主人公プロフィール(2章最新話時点)

主人公以外のプロフィールは、設定集をご覧下さい。


◇主人公プロフィール◇

 

梅宮 花音 -Umemiya Kanon- 15歳

私立王蓮寺学園付属高校 1-C

メカクシ団No.8

 

髪型→茶髪ロング

瞳→スカイブルー

身長→152cm

イメージカラー→黄色

誕生日→8/31

 

赤羽 業の彼女。黄色いパーカーをよく着ている。

巡ヶ丘市にある全寮制の学校に通っている。

 

プリパラでは、ウェーブのかかった長髪になり、身長が160cm程度まで伸びる。プリパラでのブランドはPrismStar。

 

目を逸らす能力をもっている。

・目を逸らす力

視線を逸らす、存在感から意識を逸らす、嫌な過去から目を逸らして忘れる、と言ったことが出来る。応用すれば、目を隠す能力や目を奪う能力と同じようなことができる。

 

長所→ナイフも銃も割と得意。真面目な方で、決まり事などはきちんと守る。

短所→体力や筋力が無い。精神的に弱い。

 

 

 

 

 

文字数が足りないので、即興で適当な会話劇(?)でも書きます。読まなくても大丈夫です。

※作者である時雨も出てきます。

 

 

 

 

●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●

 

 

 

 

時雨「花音ちゃん、こんにちはー」

 

『こんにちはー! 主人公プロフィールの文字数稼ぎに会話するのは、定番化しそう?』

 

時雨「うーん、それは3章、4章と書かないとわかんないかなぁ。今のところはこんな感じでいいかな、とは思うけど」

 

『プロフィールだけで1000文字行くようになったりするのかな……』

 

時雨「なんか読むの面倒くさそう(((( 」

 

『じゃあ会話始めましょー』

 

時雨「おけおけ。えっと……花音ちゃんプリパラに行き始めたんだよね?」

 

『うん。プリチケが届いてからも中学受験やらで、今まで行ったこと無かったんだ~』

 

時雨「……っていう設定だね。作者は、小学生の頃、ゲームセンターのプリパラやってたんだけど、月に2回しかやっちゃダメだったから、デビュークラスまでしか行かなかったんだよねぇ」

 

『それは、現実世界の、ゲーセンの筐体の話?』

 

時雨「あ、そうそう。最近になって、またやりたいなぁって思ってたんだけど、プリチケのバッグがどっか行っちゃったんだよね」

 

『現実世界だと、少し前にプリパラの筐体復活したらしいし、あの汚ったない部屋を片付けて探してみたら?』

 

時雨「花音ちゃん、私の部屋が汚いの知ってるのね」

 

『部屋が汚いのも、原作を読んだことないのに“異能バトルは日常系のなかで”の小説を書こうと思ったことも知ってるよ』

 

時雨「いや! 読んだことないわけじゃないから! 中学の時の図書室にあった最初の4巻だけは読んだから!」

 

『……(笑)焦らなくても、最近全巻買ったことも知ってるから大丈夫だよ?ww』

 

時雨「予想してた終わり方と違ったから、軌道修正大変だったよ」

 

『これに懲りたら、これからは原作を持ってるやつだけを書いて……』

 

時雨「じ、実は、4章に出てくる“終わりのセラフ”、“脳漿炸裂ガール”、“とある科学の超電磁砲”も原作持ってないんだよね。とあるは何とかなりそうだし、脳漿炸裂ガールは設定をいじってるから多分平気だけど。」

 

『……。まぁ、ちゃんと書けるなら言及はしないで置こうかな。あ、1000文字超えてる』

 

時雨「マジ? あ、マジだ。では、さよなら~」

 

『読んでくれてありがとうございましたー!』



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