臆病な乙女 (就活頑張れ俺)
しおりを挟む

ヒデアキがオリキャラと雄英高校に入る話。第1期

あらすじ
個性という超常が当たり前になった現代。
この物語は、忌むべき個性を持った少女の話だ。

注意:
この駄文の作者はヒロアカ原作を持ってません。
(ヴィジランテは持っている。)
青山と庄田が不在です。
アニメは視聴してますが、設定を間違えているかもしれません。
戦国乙女のキャラが出ます。
(小早川ヒデアキと毛利モトナリ、カシン居士の3人)
キャラ崩壊あり。
容姿の表現がないのは元キャラありき。



 序章

 

 果てがないほどに、青い空が見渡せるお昼時の公園。

 ピンク色の和服を着た黒髪の少女は、黄色い花柄の毬を手でつき和歌を口ずさんでいた。

 

「あんたがたどこさ、ひごさ、ひごどこさ。…………あっ」

 

 少女が不注意で、跳ねて遊んでいた毬を蹴ってしまった。

 蹴った毬は、少女の追いかける速度よりもはやく転がっていく。

 毬は、少女を遠くから見ていた一人のヒーローの足元まで転がった。

 ヒーローは毬を拾い上げ、彼女に渡し、そして彼女の頭を撫でた。

 

「ヒデアキ。遊ぶのはいいけど、あまり遠くに行っては駄目よ」

 

「はい! モトナリ様!」

 

 満面の笑みの黒髪の少女……ヒデアキは毬を受け取るとまたその毬で遊び始めるのだった。

 

 いつも通りの平和な日常。

 しかし、これは過去の話だ。

 

 

 第一章 ヒーロー社会と私の今。

 

 -side ヒデアキ -

 

『私が来た!! ってね』

 

 中学3年の新学級も始まり、生活に慣れてきた頃。

 今日は日曜日もあって、私はベランダで正座しながらテレビを見ていた。テレビは今週あったニュースをやっていた。とあるヒーローのインタビューだ。

 今週のニュース、ヘドロに成れる個性を持ったヴィランが中学3年の少年を人質に取った所を、この社会では一番有名なヒーロー……オールマイトが解決した。

 少年も無事に怪我無く救出されるというこの個性社会ではよくあるニュースだ。

 ヴィランに対するヒーローの本当によくあるニュースだ。

 

 過去の私は自分の意思ではなかったとは言え、ヴィランになりそしてヒーロー……モトナリ様に助けられた。

 私が、私の苦い過去を思い出しながら、このニュースを見ている時だった。

 

「ん? ヒデアキ? どうしたの?」

 

 私の隣で一緒にテレビを見ていた体育座りの銀髪の少女織神(おりがみ)……幼馴染の織神空……空様が私の顔を覗き込みながら聞いてきた。

 

「いえ、空様。なんでもありません」

 

「んー。渋い顔してたけど。まぁ、困ったことがあったら言ってね。家にいる母さんでもいいし。じゃあ、私は出かけてくるから」

 

 空様は、立ち上がりそのまま出かけて行ってしまった。

 

 私はもやもやした気持ちを整理するべく、立ち上がりテレビを消し空様との相部屋である自身の部屋に戻った。

 

 私、小早川ヒデアキは生まれながらにして国の個性の実験に使われていた。そこから逃げ、モトナリ様に保護され2人暮らしになった。でも、今はモトナリ様と同じチームメンバーの織神様の家にお世話になっている。

 その理由は、私の個性『カシン居士』。この個性を使うと別人格である彼女が目覚める。彼女の性格は非常に狂暴で破壊的だ。そして、私はその個性を暴走させ町一つを破壊した……

一部始終を知っているモトナリ様は魂に干渉できる個性『三魂爪』を使って私の魂に個性『隆景』という魂に干渉できる大鎌…といっても『三魂爪』の一部…を与え、代わりに『カシン居士』の力の部分だけを抜き取った。

 力を持ってしまったモトナリ様は国にとって……目の上のたん瘤になり、今となっては指名手配されている。

これらの事件は公表されることはなかった。というのも、一人の少女が町を破壊したなんて誰も信じないだろうし、この事件を国の人体実験を隠すためにも警察が隠蔽した。

 当然、モトナリ様は引退。今は、行方不明になり所属していたチームも解散した。。

 

「わたしの中のカシンの力はヒデアキ、貴方を欲しがっている。わたしは貴方を殺してしまうかもしれない。貴方と一緒にいられない」

 

 それが私が最後に聞いたモトナリ様の言葉だった。

 

 

「ヒデアキ? いる?」

 

 部屋をノックされると同時に空様の母…織神妖精様の声がした。

 

 よはモトナリ様と同じヒーローチームだった。

 私がモトナリ様の近くにいるとモトナリ様に負担がかかるとして私を預かってくれている。

 

「はい。いますよ」

 

「よかった。お夕飯、何食べたい?」

 

「鍋が食べたいです」

 

「ん。わかった。出来たら呼ぶね」

 

 部屋の前から人の気配が消えた。

 

 私はこのままではいけない。

 織神の家にずっと厄介にもなれない。

 中学3年生の今。私自身これからどうやって生活するか、考えなくてはならないだろう。

 

 

 第2章 将来と雄英高校の話

 

 -side ヒデアキ -

 

 夕方

 

「ふ~ん、ふふふ~ん♪」

 

 キッチンが見えるベランダに戻ると空様の母が鼻歌を歌いながら料理をしていた。部屋の中は煮込み中の海鮮鍋のにおいがした。

 

「私はこれからの将来、どうしたらいいでしょう?」

 

 私は私のこれからに、いてもたってもいられなくて、空様の母に聞いた。

 

「どうしたら、か。ヒデアキは何なりたいの?」

 

「え、と、あのその……特になりたいものはなくて。でも私にはその……」

 

「……ふむ、やっぱ怖いかな。自分の個性が」

 

 私はうなずいた。

 私には個性の暴走の最悪の結果があった。

 そして、この個性は生きていくうえで一生ついて回るものだろう。

 

「はい。私が私でなくなる前に……」

 

「そうね……私が来た、か」

 

「え?」

 

「ヒーローはどう? モトナリもヒーローだったしヒデアキも成れる、と思うなって」

 

 この社会では、個性を悪用するヴィランたちによって事件や犯罪は後を絶たない。

 それに対抗するための人たち、それがヒーローだ。

 ヒーローになればくいっぱぐれることはない。

 というのも国……警察は個性をよしとしておらず、様々な能力のヴィランに対抗できていないのが現状だ。

 それに代わる職業がヒーローだ。

 ヒーローたちは個性を使ってヴィランを捕まえたり、被害者を助けると国から報酬がもらえるようになっている公的な職業だ。

 ただ、ヒーローは強い個性が必要だったり、今はテレビによく出演する客商売の面もあるため万人がなれるものではない。

 

「そんなヒーローなんて私には無理ですぅ……」

 

「そうかな?個性を制御できるようになれば怖くないし。ヒデアキはモトナリと違って他人に優しいし、厳しくないし、正義感も強いと思うな。あのわがままな空にいつも付き合ってくれるし、人気も出ると思うな。」

 

「モトナリ様は優しいですし、それに私にそんな正義感ないですよぅ」

 

「空から聞いてるよ。昨日、小さい子のペットを一緒に探してあげたり、カツアゲにあってる人を影ながら助けたんでしょ」

 

 昨日の話だ。昨日学校が午前中で終わり、帰りに空様が街に行きたいと言い、それに付き合った際、公園で泣いている子のペットを探したり、またまたその際に、見つけた不良にカツアゲにあってる青年を隆景を使って助けた。

 

「あの、それは……」

 

「外で勝手に個性を使っちゃいけないって、空にはいったんだけどね。ばれてないでしょ?」

 

 この個性社会、外での個性の無断使用はヒーロー以外許されていない。

 

「はい。空様の個性でばれてないです」

 

 空様の個性は『認識阻害』だ。自分の皮膚が触れているもの自身も含めてを相手の認識から消すといったものだ。青年を助ける際、空様が個性を使い私の手を触れ、2人で隠れながら不良に接近、私の個性になった『隆景』で不良の魂を一閃した。

 不良は気絶し、青年は無事逃げれた。

 

魂があるなしと言った話はよくテレビで議論されるが、『隆景』を持っていると人を見たときに相手の体の中心に魂が見えた。

 その魂を『隆景』は切ることが出来た。

 生物を切っても外見的には傷はない。

 切られた魂は体と合わないのか体の方が気絶した。魂は時間とともに形を取り戻し、体は意識を取り戻した。

 そのため、『隆景』は無生物に対しては切ることが可能で、生物に対しては怪我をさせず気絶させることの出来る便利な大鎌だ。

 

 だから、空様はいつも言っていた。

 

「わたしたちは、2人で一つ。1人はもう一人のためにもう一人は1人のために。んー、控えめに言って最強だね」

 

 私たちの個性の相性は抜群だ。閑話休題

 

「それなら、いいの。……友達にヒーロー育成学校の先生がいるからちょっと連絡してみるね」

 

 空様の母は鍋の火を止め、部屋に行ってしまった。

 

 

「ただいま~」

 

「おかえりなさい。手を洗ってうがいも忘れないでね。夕飯もできてるから」

 

 空様が帰ってきたようだ。私は夕食のため配膳の準備をしていた。

 

「は~い」

 

 空様の陽気な声が聞こえた。

 

 

 夕食を3人で囲み、「いただきます」の掛け声とともに食べ始めた時だ。空様が

 

「わたし、雄英高校に行く」といった。

 

 雄英高校は超難関、倍率300倍という超難関のヒーロー育成の高校だ。

 

「そう。ちょうどよかった。雄英高校の先生に話を聞いたの」

 

「え? まじ。どうすれば入れるの?」

 

「推薦と一般があるみたい。ただ、推薦枠はもう一杯みたい。一般の試験は10か月後だから今からなら入れるよ」

 

「よし!」空様がガッツポーズしていた。

 

「ヒデアキも雄英高校に行ってみなさいな。あそこならヒデアキも心配しなくて大丈夫だから」

 

「えぇ!? 私には無理ですよぅ……」

 

「ヒデアキ。一緒に行こ?」

 

 空様が私の顔をまっすぐに見て言う。こうなった、空様は非常にわがままだ。こうなった空様は梃子でも動かない。

 

 私は雄英高校を受験することになった。

 

 

 あの夕食から10か月がたった。

 

 そして、今日が受験日。

 

「二人とも、受験票持った?」

 

 空様の母が見送ってくれた。

 

「はい」「行ってくるよ。お母さん」

 

 空様と電車で1時間ほどの距離にある雄英高校に向かった。

 

 

 

 第3章 実技試験と試験結果の話

 

 -side ヒデアキ -

 

「かの英雄ナポレオン・ボナパルトはいった。試練は乗り越えるものだと」

 

 実技試験の説明が終わり、移動が始まった。

 

「ヒデアキ? わたしたち別の会場だけど、頑張ろうね!」

 

「はい、空様!」

 

 そうして私は空様と別々のバスに乗った。

 

 

 会場に着くと2人の男子が言い合っていた。

 

 と、言っても眼鏡の長身の男子が緑髪のおどおどした少年を注意しているようだ。

 

 私は試験について思い出していた。

 4種のロボットを行動不能にすること。

 受験生たちによるロボットの取り合いになることから初めが肝心だ。

 

「はい、スタート!」

 

 司会のヒーロープレゼントマイクの声が聞こえたので、市街地を模倣した会場を全力でダッシュすることにした。

 

 

 スタートダッシュにうまくいったのか、周りに人がいないのでターゲットになるロボットに対して『隆景』で切っていく。

『隆景』は自分の精神の状態で切れ味が変わるので冷静沈着になることが大切だ。

 

 10体ほど、行動停止したのを確認する、とほかの受験生たちも集まってきているのが見えた。

 

「なんだ? あの黒髪の女、あんな武器ありかよ!?」

 

 私をみて、文句を言ってる人たちもいる。

 ただ、ロボットに苦戦している人や腰を抜かして動けない人もいた。

 そういった人を助けるように『隆景』を振るった。

 使い慣れた武器とはいえ、周りにいる人に危害を加えることもあるかもしれない。

 私は、見渡す限りの人を助け、人のいないほうに向かった。

 

 

 人込みのないほうに行くと、ロボットがいた。

 そのロボットの影に、人の魂が見えた。

 その人が襲われているのだろう。

 

 ロボットの頭に飛び乗り、隆景を振るった。

 首をはね、機能の停止を確認してから目の前にいた緑髪の少年に話しかけた。

 

「大丈夫でしたか?」

 

「え? あ、うん。えっと、君は?」

 

「そうですか。それでは……急ぎますので」

 

 私は別の方向へと走り出した。

 

 

 突然、地震のような大きな揺れを感じた。

 

 その方向を見ると、ビルのサイズもあるロボットがいた。

 この大型ロボットは試験の説明によると、あれは、倒しても意味のないターゲットだ。

 大型ロボットの移動による土煙の中、受験者が大型ロボットから逃げるように走る。

 

 走る受験者の中に先ほど助けた緑髪の少年がこけた。

 私は、その少年に手を差し伸べた。

「大丈夫ですか?」

 

「君はさっきの……」

 

 緑髪の少年がぼーっとしている様子に見えたので、少年の腕をつかみ引き立たせた。

 

「早く、逃げてください。このままだとぺしゃんこですよ」

 

「ちょっとまって! アレの足元……」

 

 少年の言うように大型ロボットの足元を見ると、受験生の少女ががれきに脚を取られていた。

 私は、すぐに少女のもとに走り始めた。

 少女のもとにつき、『隆景』をがれきに対して挟み込み、がれきをてこの原理で持ち上げた。

 

「痛い、痛……」

 

「動けますか?」

 

「え? ありがとう」

 

 少女はほふくするようにがれきから這い出た。

 それを確認した私は、『隆景』の刃を心臓に刺すようにしまった。

 しかし、ロボットが近くに来ていることもあり、少女には悪いが、お姫様抱っこで少女を持ち上げた。

 

「え? ちょっと!?」

 

 少女が文句を言うより先に、私がここから離脱するため走り出そうとしたとき、

 

「スマァァァァァァァァァシュッ!!!!」

 

 と大きな掛け声とともに何かが叩きつけられる音が真上からした。

 空を見上げると、そこには、緑髪の少年がロボットを殴ってる姿だった。

 殴られたロボットは、私たちのいる方向とは逆方向倒れた。

 が、少年は自由落下で落ちてきていた。

 

「ちょっと、お願いがあるんやけど……」

 

 抱えていた少女が私に言った。

 

「何ですか?」

 

「あの、鉄の塊の上に私を連れてってほしいん」

 

「わかりました」

 

 私は少女の指示に従い、彼女をロボットの残骸の上に置いた。

 

「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 自由落下している少年の声が聞こえる。

 しかし、このままでは少年は、地面の染みになるだろう。と言っても私にできることはない。

 

「……解除!!」

 

 少女が落ちてきた少年に触れ、個性を発動した。

 少年は地面に叩きつけられることなく、ゆっくりと地面に落ちた。

 

 しかし、少女がいきなり地面に向かって吐き始めた。

 私は、原因がわからず少女の背中をさする。

 ある程度吐き終えた少女が言った。

 

「あの緑髪の子は?」

 

 少年の方を見ると、痛々しい両足と右腕の少年が左手で、這うように動いているのが見えた。

 

「1点でも……」

 

 あの大型ロボットを倒したからといって少年にはルール上ポイントは入らない。

 あの少年が今回取得できたポイントは知らないが、彼の言っていることを考えればこのままでは彼は落第になるかもしれない。

 

「大丈夫。生きてますよ」

 

 私は、そんな少年の現状を見ながらも死ななかったことを重視してそう言った。

 生きていればほかの高校にも行けるだろう。

 

「終了!!」

 

 ヒーロープレゼントマイクの声とともに試験が終わった。

 私は、グロッキー状態の少女を持ち上げ、鉄の塊から降りた。

 

 遠くからきたヒーローリカバリーガールに少年と少女に預け、試験場を後にした。

 

 

「あ~本当に最悪」

 

 雄英高校の門前で空様と合流して家に帰る途中。

 空様が、ため息交じりにそういった。

 

「空様、なんかあったんですか?」

 

「それがさぁ……ロボット同士の同士討ちでポイント稼いでたんだけど、後ろから爆発の個性持ちに爆破食らっちゃってさぁ」

 

 空様の試験会場には暴力的な人がいたようだ。

 

「そんで、わたしは個性使ってたこともあって見向きもされなかったんだよねぇ……」

 

 空様の個性『認識阻害』は使っているとほとんどの人が空様を認識できなくなる。

 それは、今回の機械であるロボットにも使えたようだ。

 しかし、個性を使用していたせいか、他の受験生の流れ弾に当たったようだ。

 

「それはひどいですね。空様、怪我はないですか?」

 

「リガバリーガールに見てもらったし大丈夫。でも、まぁ許せないよねぇ」

 

「そうですね。故意ではないとはいえ、空様にけがをさせるなんて許せないです!」

 

「お~、ヒデアキもそう言ってくれると思ってたよー」

 

 私たちはそんな話をしながら家に帰った。

 

 

 試験から2週間ほど。

 

「空? ヒデアキ? 2人とも起きてる?」

 

 朝6時、空様の母が扉越しに声をかけてきた。

 

「はい。起きてますよ。空様はまだ寝てますが」

 

「……ユリねぇ……大好きぃ……zzz……」

 

「雄英高校から結果来たみたい」

 

 私はベランダで結果を見るため、空様を無理やり起こした。

 

 

『私が来た!!!』

 

 試験結果の封筒を開けて中に入っている小型立体映像装置を付けると、正装したオールマイトが投影された。

 

『なんで、私がここにいるかって? それは、私が雄英高校の教師になるからさ』

 

 どうやら、No1ヒーローオールマイトは教師に転職するらしい。

 

 空様は、緊張しているようでじっと投影されているオールマイトをみている。

 

『織神空君、そして小早川ヒデアキ君。2人の試験の結果は……合格だ!!』

 

「よし!」

 

 空様の既視感のあるガッツポーズを見た。

 どうやら私たちは合格した。

 これから、高校生活が始まることを、期待を胸に膨らませ学校の手続きを始めた。

 

 

 

 第4章 始まる高校生活と体力測定

 

 -side ヒデアキ -

 

 今日は、雄英高校始業式。

 

「ヒデアキはA組で、私はB組ね」

 

 そういって、空様とは教室の前で別れた。

 

 私はA組の扉の前で深呼吸し、扉を開けた。

 

「おはよう! 俺は、聡明中学出身のの飯田天哉だ。今日から宜しく頼む」

 

 と眼鏡の長身の男子に話しかけられた。

 

「おはようございます。私は小早川ヒデアキです」

 

「君は、実技試験で鎌を振っていたな。それが個性か?」

 

「はい。私の個性です。飯田様は、足が速かったですね。試験で見ました」

 

「様? 小早川君、君は……」

 

「おい、入り口で邪魔だ。どけ」

 

 同じクラスの飯田様と話していると後ろに不良のような白髪の少年がいた。

 

「ごめんなさい」

 

 私がどくと、少年は自身の席に座り机に脚を乗せた。そのあと飯田様と白髪の少年……爆轟様は口喧嘩を始めた。

 私も自身の席に座って隣にいたピンク色の皮膚の少女と話し始めた。

 

「わたし、芦戸三奈。よろしくね!」

 

「はい。初めまして。よろしくお願いします。芦戸様」

 

「え~、様なんてつけなくていいよ~」

 

「ごめんなさい。私の癖なんです」

 

「そうなんだ。それじゃあ、仕方ないね。それで、今日はなにやるんだろ?」

 

 と自己紹介がてら芦戸様と話した。

 すると、廊下側から声がした。

 

「友達ごっこなら、マックにでもいってやってろ」

 

 芋虫のような姿のA組の担任の相澤様がそこにいた。

 

 

 そして、A組は始業式にはいかず、体操服を着て校庭で体力測定することになった。

 体力測定は個性使用しての記録だそうだ。

 私は、『隆景』を用いて長座体前屈と砲丸投げにてそれなりの記録を出せた。それ以外は無難だ。

 相澤様は最下位は退学と言っていたが多分、嘘だろう。

 

 砲丸投げが終わり、持っていた『隆景』を体にしまう。

 そして、飯田様と試験の時に知り合った少女……麗日様の隣に行った。

 

「ヒデアキちゃん。その大鎌体にしまえるのすごいよね」

 

「そうですか? 中学の同級生からは自殺してるように見えると言われてましたが……」

 

「え、あぁ、うん。まぁ……でもヒデアキちゃん。なんで、敬語なん?」

 

「これは、癖で。あ、緑谷様の番ですよ」

 

 試験のときに大型のロボットを倒した緑髪の少年……緑谷様の番になった。

 彼も無事に合格していた。

 しかし、緑谷様はこれまでの体力測定で個性を使用した記録がない。

 このままでは、最下位になるだろう。

 

 隣にいた飯田様と爆轟様は緑谷様の個性について話していた。緑谷様は無個性だとか、そうじゃないとか。

 少なくとも、ビルのサイズのロボットを倒すことが出来る個性だ。

 ただ、超パワーの代わりに腕や足を怪我するといったデメリットがあるのだろう。

 そうでなければ、試験のときにあそこまでポイントに執着しなかったはずだ。

 

 緑谷様が個性を発動しようとしたとき、発動されることはなかった。

 相澤様が個性を消したそうだ。個性を消す個性……

 もしかして、私の個性も消せるんじゃないか……? 

 

 そんなこと思っていると、緑谷様が人差し指だけで個性を発動した。

 その後無事に、全員体力測定が終わった。

 私の結果は下から2番目だった。

 

「最下位は退学。あれは嘘だ」

 

 やはり、退学は嘘だったようだ。

 

「じゃあ、全員教室にもどれ。ただし、小早川。お前はここに残るように」

 

 と言って、相澤様は歩いて行ってしまった。

 

「ヒデアキ? なんかあった?」

 

「芦戸様、いいえ。なぜ残るように言われたかわかりませんが、先に戻っていてください」

 

 私はクラスメイトが戻っていくのを後ろで見ていた。

 

 

 相澤様の言うとおりに校庭で待っていると、スーツ姿のオールマイトが来た。

 

「小早川少女!! 初めましてかな?」

 

「オールマイト様。はい。初めまして」

 

「小早川少女は固いなぁ。様づけなんてしないでいいのに……ところで、相澤君にここにいるように言われたんだけどなんか知ってる?」

 

「いいえ、わかりません」

 

 どうやら、オールマイトもここにいるように言われたようだ。

 オールマイトとヒーローについて話していると、相澤様と保健室にいるはずのリカバリーガール、それにこの雄英高校の校長の根津が来た。

 そして、私の個性の話になった。

 

 この後の記憶がない。

 

 

「……アキ! ……ヒデアキ! ヒデアキ!」

 

 私が目を開けると、空様がそこにいた。

 

「やっと、起きたようだね。大体6時間といったところだね」

 

 ここは、雄英高校の保健室だった。

 リカバリーガールによると、私は『カシン居士』を暴走させたそうだ。

 というのも、空様の母から相澤様に連絡がいっており、相澤様の個性が効くかどうか調べるために校庭に残されたそうだ。

 

 実験の結果、相澤様の個性が効いたそうだ。

 だけど、私は個性が消えてから6時間眠りっぱなしだった。

 

「現状は意識を失う以外の危険はない。とみていいかもね。見た目に異様な文様。それに狂暴性は見て取れたけど、使うことは控えたほうがいいだろうね」

 

 リカバリーガールからはそう言われた。

 頭が回っていない。私は私なのだろうか。

 

 家に帰り、空様の母から抱き着かれ、頭をなでてもらった。

 

 

 その日の夜、私と空様、それぞれのベットに入っていた。

 

「ヒデアキ? 起きてる?」

 

「はい。空様。お昼に寝てしまったせいか眠れません」

 

「ねぇ、今日は一緒に寝ない?」

 

「いいですよ」

 

 自分のベットで寝ていた空様は私のベットに入り込み私に引っ付くようにしていた。

 

「ヒデアキ冷え性だよね。つめたーい」

 

「個性の影響ですかね。魂に関係しているのかはわかりませんが、冷えやすいですね。……」

 

「そうだよねー。ともかく、わたしがいいというまでヒデアキはどっかに行っちゃ駄目だから……」

 

 眠そうな支離滅裂なことを言ってる空様は、すぐに眠ってしまった。

 私は、みんなにとって、お荷物なのではないだろうか? 

 

(そうだ。貴様は我にとっての体でしかない。空もその母も全員貴様のことなぞ……)

 

 幻聴が聞こえた。というよりもあいつだろう。

 いまや力もないのに、どうやって私からこの体を奪うというのか。

 それに、空様達は私のことを考えてくれている……

 幸せな気持ちになった私は空様の寝顔を見た後、深く眠った。

 

 

 

 第5章 演習とヒーロースーツ

 

 -side ヒデアキ -

 

「おはようございます」

 

 高校生活2日目。教室につき、席に座るとクラスメイトから質問攻めにあった。

 特に昨日の校庭に残ってからの話だ。

 ただ、この個性を話すのは得策ではないだろう。

 私は、話せないと言ってごまかした。

 私に話しかけてくれた、切島様に耳郎様、上鳴様、それに芦戸様には申し訳なかった。

 

 授業が始まり、午前が何事もなく終わる。

 そして、昼。

 

「お邪魔しまーす」

 

 そう言ってB組の空様がA組に来た。

 

「ヒデアキ? お昼一緒に食べよ」

 

「はい! 空様」

 

 芦戸様や途中あったB組の拳道様も一緒に食堂に行くことになった。

 楽しい昼だった。

 

 午後になり、A組の教室にオールマイトが来た。

 オールマイトは【BATTLE】と書かれた札を掲げた。

 

「今日は、市街地で戦闘演習だ!」

 

 そして、入学前に提出していたヒーロースーツが届いているとのことでそれぞれが着替えて演習場に向かった。

 

「アッキの服かわいい!! それって着物でしょ!?」

 

 演習場につくとそれぞれ普段の制服とは違う、それぞれがコスチュームに着替えていた。

 

「はい。お気に入りです。芦戸様も、肌が露出していて……その色気があります」

 

 私は芦戸様から「アッキ」と呼ばれるようになった。

 というのもヒデアキは男みたいだそうで、そうなった。

 お互いにコスチュームについて話していると、

 

「ヒデアキっぱい……」

 

 と頭がブドウみたいなクラスメイトにぼそりと呟かれた。

 

 A組の全員が揃い、オールマイトによる説明が始まった。

 2vs2のビルの屋内演習だ。

 試験でも使った市街地を模した演習場でビル内のヴィラン側とヒーロー側に分かれてヴィランはハリぼての核兵器を守り、ヒーローはヴィランを捕まえるもしくは核兵器をタッチすることだ。

 

 クラスメイト達がそれぞれ演習を行っていく。

 特に印象に残ったのは緑谷様だ。自身の右腕を犠牲に個性を使い麗日様とのコンビネーションで勝ちを取った。

 しかし、緑谷様の個性はコントロールをすることは出来ないのだろうか。試験の日からから個性を使うたびに怪我している……

 

 ふと、私は、私の個性をコントロールできているのだろうか? 

 

(貴様が我をコントロールできると思っているのか?)

 

 幻聴が聞こえた。

 

「……アキ? アッキぼっとしてたよ?」

 

 芦戸様の声で目を覚ました。

 そうだ、私はヴィラン側で芦戸様とこれから来る2人を迎撃しなければならない。

 気を取り直していこう。

 

 私たちはヴィラン側で2人のヒーロー側のクラスメイトを倒さなければならない。

 ヒーロー側の2人は上鳴様と耳郎様だ。

 2人の個性は知らないので、特攻するわけにもいかないだろう。

 

「アッキ? どうする?」

 

「2人の個性がわかっていないので、まず核を最上階に置いておきましょう。それで2人を分散させて1対1の状況にするのがいいと思います」

 

「そうしよう!」

 

 作戦といった作戦はない。

 芦戸様の個性を聞くと体から酸を出せるそうだ。

 なら戦闘能力はあると考えればそれぞれが1人ずつ相手をして勝てばいいだろう。

 

 私たちは核を最上階である5階に置き、2階に上がる階段近くに2人でいることにした。

 

 私たちの付けているイヤホンからオールマイトの合図から演習が始まった。

 演習が始まり数分後、上鳴様と耳郎様に遭遇した。

 

「芦戸様、逃げましょう!」

 

 私は、2人を分散するため芦戸様と分かれて上層に逃げることにした。

 

「まってくれ! ヒデアキちゃん!」

 

 どうやら、私の方に来たのは上鳴様の方だ。

 芦戸様に無線で確認すると向こうは向こうで作戦通りとのことだ。

 なら、私がすることは対象の沈黙だろう。

 私は通路の曲がり角を通り、『隆景』を心臓から取り出し、勢いよく上鳴様に向かってタックルをした。

 

「うげっ……」

 

 私を追っていた上鳴様に当たり、うめき声が聞こえた。

 倒した上鳴様の上で私は馬なりになった。

 土煙の中、私は『隆景』を一振りした。

 すると上鳴様は意識を失ったように気絶した。

 

「そこまで!」

 

 イヤホンからオールマイトの終了の合図を聞き、この演習が終わったことを理解した。

 

「いやぁ、勝ったね。ブイブイ!」

 

 イヤホンから上機嫌な芦戸様の声が聞こえた。

 

 演習と演習の振り返りが終わり爆轟様と緑谷様をのぞくクラスメイトで、今回の演習について話した。

 クラスメイトの仲が良くなった気がした。

 

 

 第6章 委員長決めとお昼に見た影

 

 -side ヒデアキ -

 

「あれ、学校前に人だかりができてる」

 

「そうですね。空様」

 

 私たちが朝登校すると、校門のところにメディアらしき人だかりができていた。

 

「これはあれだね。オールマイト人気でインタビューってとこかな」

 

「オールマイト先生は人気ですからね……あの人だかりに入るんですか?」

 

「あそこを通らないと教室には行けないし。よし。ヒデアキ、しっかりと私の手を握っててよ」

 

 そう言った空様の手を握ると、空様は勢いよく人だかりの中に行く。すると、予想道理インタビューが飛んできた。

 

「ちょっと、そこの生徒2人オールマイトについて聞きたいんだけど……」

 

「あの、この放送。生放送ですか?」

 

「いや、録画だけど……」

 

「なんだ、それじゃいいや。行くよ。ヒデアキ」

 

「はい。空様」

 

 なんとか、校舎に入れた。マスコミは生徒証やゲスト証を持っていないので校舎には入れない。

 

 

 朝のHRでクラス委員長を決めることになった。

 私以外の人は委員長に関して乗り気だ。

 そこを投票制にしようと飯田様が提案した。

 結果、緑谷様が委員長。八百万というポニーテールが特徴的なクラスメイトが副委員長になった。

 

 午前の授業が終わり、 お昼休みになった。

 

「小早川君。お昼一緒に食べないか?」

 

 飯田様にお昼ご飯に誘われ、その際、緑谷様に麗日様、それに空様も一緒に行くことになった。

 

「そういえば、ヒデアキはだれに投票したん?」

 

「飯田様ですよ。提案ができるって勇気いると思います」

 

「うぉぉぉぉぉぉ……ありがとう、小早川君!!」

 

「そんな、感謝されるようなことじゃないですよ」

 

 私は苦笑いしながらも、飯田様の家の話や空様のB組の話を聞いた。

 

 食事も終わり、教室に戻ろうかと動こうをしたとき、学校中にアラームが鳴った。

 どうやら、不法侵入者が来たようだ。通路の方は人でごった返している。

 

 私は空様に手を引かれるままに、食堂の窓から外に出た。

 

「ここ、校内だから別に個性使ってもいいよね」

 

 と、空様は独り言を言っていた。

 

「空様、どこ行くのですか?」

 

「人のいないところ」

 

 空様に連れられて、校内を進む。

 

「静かに……」

 

 空様は、いきなり止まった。校舎の影から空様は何かを見つけたようだ。

 私もそれを見るためそっと、その方向を見た。

 

 黒い人型の影が誰かと話している光景だった。

 

「ふむ。ありがとう。これで、計画が進む」

 

 黒い影は話し終えたのか姿を消した。そこにいたであろう誰かも、いつの間にかいなかった。

 

 

「何? 今の?」

 

「黒い影のような人間でしょうか」

 

「突然、姿を消したよね。移動系の個性かな?」

 

「それに、誰かと話していましたよね」

 

「足跡もない。本当に何だったの?」

 

 校内の放送で、侵入者はマスコミということだった。

 少なくとも、私たちは別の何者かがいたことを知っている。

 

 教室に戻ると、何事もなかったかのように授業が始まった。

 それと、委員長が緑谷様から飯田様に変わった。

 

 午後の授業が終わり、放課後、麗日様に一緒に帰ろうと誘われたが断った。

 そして、私は空様と職員室に向かった。

 

「相澤先生、お昼にあったことで相談が」

 

 私たちは午後にあったことを話した。

 

「織神。お前、許可なく個性使ったのか」

 

「はい。緊急事態でしたので」

 

「はぁ……そうか。これからは気を付けるように。報告ありがとう。校長に伝える……」

 

「先生どうしましたか? なんか言いたそうですけど」

 

「……お前を見てるとピクシスさんの娘だと思わされるよ」

 

「あれ? 相澤先生。母さんのこと知ってるの?」

 

「知ってる。モトナリさんのチームとは、よくチームアップしてたしな」

 

「え? 先生みたいなアングラ系が!?」

 

「それを言うなら、2人とも俺よりもメディア露出嫌ってたし、出ても狐と猫の仮面してたしな」

 

「あー、道理で。アングラ系の仲って感じですか。というか、知らなかった」

 

「まぁ、とりあえず今日は気を付けて帰れよ。小早川お前もな」

 

 

 学校から帰り、家に着くと、空様の母……織神妖精さんが私に大事な話があるといった。

 

「2人ともお帰りなさい。とりあえず、夕食はできてるけど、その前に話さないといけないことがあるの」

 

「何々? 母さん。超、影の薄い、お父さんの話?」

 

「空。茶化さないの。……ふぅ。ヒデアキ。落ち着いて聞いて。……モトナリが日本に戻ってきたって」

 

 その瞬間、意識を失った。

 

 

 第7章 織神空と小早川ヒデアキの話。

 

 -side 空 -

 

「お母さんはね。ヒーローなの」

 

「お母さんすごーい」

 

 私、織神妖精の娘、織神空の6年前、8歳の話だ。

 私には2人の姉妹がいた。わたしとは3歳差の姉と3歳差の妹だ。

 といっても、2人は別の家に預けられているので、会うときは休みの日だったり、行事のある日だけだ。

 私にとっての世界はそれまで、母親の存在が非常に大きかったと思う。

 父親は個性の関係で常時いるのかいないのかわからないような人なので気にしてない。

 

 お母さんはヒーロー活動をしていて、個性が光を身にまとって高速で動き、相手を爪型のスタンガンで相手を気絶させる。

 そして、困っている人は助けて、時にチームで協力して大きな事件にもかかわったと言っていた。

 ただ、テレビを見ても、お母さんが映ることはなかった。

 

「私のお母さん、ヒーローなんだ」

 

「そんな、名前のヒーロー聞いたこともないし、ネットにも書いてないよ。空ちゃんの嘘つきー」

 

 小学校のころ、そんな話を同級生にした。

 だけど、それが良くなかった。私の話を聞いた同級生たちは私を嘘つきと呼び、私は気づくと一人ぼっちになった。

 でも、それが変わった。

 

「初めまして、わたしは小早川ヒデアキです。よろしくお願いします」

 

「この子は今日から一緒に暮らす、ヒデアキちゃん。空、挨拶しなさい」

 

「私は空。よろしく」

 

 お母さんが突然、新しい家族を連れてきた。

 なんでも、同じヒーローチームの人の娘さんだそうだ。

 その日から、ヒデアキとの同じ部屋での生活が始まった。

 

「空様。この問題はどう解くのでしょう?」

 

「空様。この鍋おいしいですね」

 

「空様ぁ~無理です。この映画怖くて見れません」

 

 ヒデアキは親しい対象には名前に付けて様を付ける。

 顔見知り程度には名字に様を付ける。

 何度も直そうとしたが、半年で直らなかったのでそのままにすることにした。

 性格は臆病、怖がり、おっちょこちょい。でも、個性の『隆景』という大鎌を持つときだけ冷静で強気に見えた。

 それに、ヒデアキはなべ物が好きだった。夏に鍋を出されたときは死ぬかと思ったが。

 

 ヒデアキと一緒にいるのは私にとってかけがえのないものだった。

 学校でも一人になることはなかったし、ヒデアキも私を慕ってくれていた。

 だから、私たちが一人前になるまで一緒にいる。そう私が決めた。

 でも、ヒデアキも、お母さんも何かを隠している。

 いつか、どこかで話してくると私は思っていた。

 だから……

 

 

「ねぇ、お母さん。なんで、ヒデアキにスタンガンを?」

 

 私たちが家に帰り、お母さんに大事な話があると呼び出された時だ。

 お母さんはヒデアキに何かを質問した後、隠し持ったスタンガンをヒデアキに当て気絶させた。

 

「空。ヒデアキを脱がしてあげて。お母さん。タオルもって来るから」

 

 私は思考が追い付かないまま、ヒデアキの来ていた雄英高校の制服を脱がした。

 すると、ヒデアキの首元に黒い筋が浮かんでいるのが見えた。

 筋の先を確かめるために私は、ヒデアキの来ていたYシャツのボタンをはずし、全身を見た。

 すると、筋は心臓を中心に全身に伸びるように黒い紋様が浮かんでいた。

 

「空。今から言うことは、誰にも言っちゃだめだからね」

 

 私はタオルを持って戻ってきたお母さんの言葉にうなずいた。

 

「ヒデアキはもともと、国の個性の研究実験に使われていたの。でも、それをモトナリが暴いてそれでこの子を保護したの。個性実験は失敗という結果になって研究は白紙。無事解決……とはならなかった。ヒデアキの個性は『カシン居士』。町を一つ簡単に破壊できるほどの意思を持った闇の力。それを持ってたの」

 

「……それで?」

 

「『カシン居士』の力の部分はモトナリが魂に干渉する個性で抜き取ったの。その代わり、モトナリが『隆景』をあたえたの。でも、そのせいでモトナリは国から指名手配されることになった。それに、まだヒデアキの中には『カシン居士』はいる。この子は今でも戦ってるの」

 

 信じられなかった。でも、納得はできた。

 始業式の日、ヒデアキは倒れたそうだ。理由は答えてもらえなかった。

 でも、A組の担任は個性を消す個性だという。

 それなら、始業式の体力測定。それが終わってから確かめたのだろう。

『カシン居士』の意思を消せるのかを。

 

「ヒデアキのこの紋様はね。『カシン居士』が体の掌握具合を示してるの」

 

 お母さんは、ヒデアキの心臓のあたりをなぞり紋様に沿って指を進めそして、額を指さした。

 

「もし、顔の額のところに目が浮かんだらその時はヒデアキの意思は眠っていると思って」

 

「……わかったよ。お母さん」

 

 初めて知った。家族の話。

 私はこれからどうヒデアキと接すればいいのだろう。

 いや、変わらない。私がヒデアキを『カシン居士』にさせない。

 ヒデアキの内気の思考もなんとなく分かった。

 それも含めて。私はヒデアキを信じる。

 

 お母さんは、ヒデアキのかいていた汗を拭いてあげていた。

 ヒデアキも今、カシンに心を取られないように戦っているのだろう。

 でも、気になることがある。ヒデアキの母のモトナリはどうしているのだろう。

 

「ねぇ、お母さん。モトナリさんは、今何しているの?」

 

「外国でスパイをやっていた」

 

「やっていた?」

 

「そう。今は、日本に帰ってきてるみたい」

 

「え? ヒデアキのために外に行ってたんじゃないの?」

 

「そうなんだけど……」

 

 お母さんは、それ以上は話さなかった。

 

 

 第8章 私の話と救助訓練

 

 -side ヒデアキ -

 

 起きると見知った部屋だった。

 昨日のことを思い出す。

 家に帰宅し、空様の母……妖精様からモトナリ様が帰ってきたと聞いて気絶したのだ。

 

(モトナリ……私の力を返せ……)

 

 幻聴が聞こえた。

 

「おはよう」

 

 声のした方向を見てみるとパジャマ姿の空様がいた。

 

「おはようございます。空様。今、何時ですか?」

 

「朝方の5時。昨日、学校でごたついてたでしょ。かえってすぐ寝ちゃったんだよね。私たち」

 

「そうでしたね」

 

「……嘘つき」

 

 そう、空様は小声で泣きそうな顔で、リビングの方に向かってしまった。

 

 

 その後の数日はA組のクラスメイトと話したり、空様と他愛のない話をしたり、空様と勉強したり問題のない日常を過ごした。

 

(我の力……それさえあれば)

 

 最近、幻聴がひどい。モトナリ様が日本に戻ってるからだろうか。

 

「アッキ? どうしたの?」

 

「ミナチー。ヒデアキは考え込んでるんだよ。最近お母さんが帰ってきたみたいでね。会うか悩んでるみたい」

 

「ソラチー。ソラチーとアッキは一緒に住んでるんだよね?」

 

「そーだよー」

 

「なんていうか、複雑な家庭環境なんだね」

 

「まーねー」

 

 空様と芦戸様はそんな話をしていた。

 

 

 今日の午後はヒーロー基礎学だ。

 いつも通り、オールマイトが来ると思いきや相澤先生が来た。

 

「今日のヒーロー基礎学は外でやる。まず、外のバスに乗れ」

 

 バス内では、それぞれがどんなヒーローになるか話していた。

 

「ヒデアキちゃんは、容姿もきれいだし、強いし人気でそう」

 

 カエルの個性を持った雨吹様にそういわれた。

 

「上鳴、タックル食らっただけで、のしてたもんね~」

 

 芦戸様がそれに続き、

 

「それ言わないでくれよ~あの時、何が起きたかわかってねぇんだよ~」

 

 上鳴様がそれを認めた。

 

「ですが、あのとき何をしたのですか? 小早川さん」

 

 私に聞いてきたのは、副委員長の八百万様。

 

「えっ、とそれは……」

 

「お前たち、もう着くぞ。準備しろ」

 

 言う瞬間に、担任の相澤先生から降りるよう言われた。

 

 

 ここは、学校内にある、USJ、様々な災害事故が模してあるドーム状の施設だ。

 今回の演習はここで救助訓練をするようだ。

 

「私は、宇宙ヒーローの13号です」

 

 彼は教師の13号先生。救助のスペシャリストで個性はブラックホールだ。

 13号先生からは個性の扱い方は人それぞれ。そして、使い方もそれぞれといったいい話を聞いた。

 

「13号。オールマイトは?」

 

「オールマイトはまだ……」

 

 先生同士で話し合っている。

 ヒーロー基礎学の教師であるオールマイトがいないようだ。

 

 嫌な空気を感じた。

 

 それを最初に気づいたのは相澤先生だ。

 それに続いて、みんながUSJの中央広場を見る。

 すると、黒い靄が広がっていた。

 そこから、人がぞろぞろ出てくる。

 

「ヴィランだ」

 

 その正体にいち早く気付いた相澤先生は13号先生や上鳴様に助けを呼ぶように促すが、

 どうにも電波妨害されているようだ。

 

 相澤先生は時間を稼ぐため、広場にかけていった。

 そして、13号先生の指示のもと外に出ようとしたとき……

 

「初めまして、そしてここで死んでいただきます」

 

 人型の黒い靄がワープしてUSJの出口を防ぐように現れた。

 13号先生が、先手で個性をしようとした瞬間、

 

 爆轟様と切島様が靄に向かって攻撃した。

 が、相手は霧状になり攻撃を無効化した。

 13号先生は爆轟様と切島様がいる関係で個性を使えないでいた。

 そして、靄の反撃でクラスメイトが転移させられてしまった。

 

 私も例外ではなく、転移させられてしまった。

 

 

 第9章 襲い来るヴィランと脳みそヴィランの話。

 

 靄が消え目の前には見渡す限り炎があった。

 ここは、USJの火災エリアだ。

 今日の予定ではここで、炎の対策とか対処の仕方とか、煙に関する勉強とか色々する予定だったのだろう。

 しかし、ヴィランの襲来によりそれもなくなってしまった。

 

「しねぇぇぇぇ」

 

 私に対してヴィランはナイフを振りかぶってきた。

 私はそれを後ろに下がることでよけて、『隆景』を振りヴィランを一閃した。

 ヴィランは気絶したように倒れた。

 

「さぁ、周りに隠れてる皆さんも襲ってきたらどうですか?」

 

 

 見渡せる限りのヴィランは気絶させた。

 戦闘慣れしているヴィランがいなかったのは僥倖だったかもしれない。

 とりあえず、少し離れたところにいるクラスメイト。あれはしっぽが個性の尾白様だろう。

 彼を助けに行くことにした。

 

 尾白様を追っているヴィラン数人を背後から一閃し気絶させた。

 

「尾白様! 周りに敵はいなさそうですよ!」

 

「小早川さん!! よかった無事で」

 

「尾白様もよかったです。これだと、皆様もそれぞれに飛ばされているんでしょうね」

 

「そうかもしれない……ところで、その鎌は?」

 

「これ、私の個性ですよ。見せたことなかったですっけ?」

 

「いや、あるんだけど。その信じられなくて……」

 

「そうでしたか」

 

 私は、周りを見てヴィランがいないことを確認してから、『隆景』を体にしまった。

 

「小早川さん。体大丈夫? 鎌が……」

 

「ええ。ここを出て、早く皆さんに合流しましょう。ここは暖かくて居心地がいいですがそれより、皆様が心配です」

 

 と私は、歩き出した。

 

「え? ここ、暑くないの。なにがなにやら……あ、まって」

 

 尾白様がなんか呟いていましたが、それより今は、皆様の心配だ。

 

 

 中央広場に着くと、大型の脳みそむき出しの巨体のヴィランが相澤先生に対してマウントを取っていた。

 私は、隆景を構え、そのヴィランに切りかかった。

 切ることに成功したが、どうにもこのヴィランの魂はもとから壊れているように見えた。

 これじゃあ、気絶しない。そう、私は直感的に気づいた。

 ヴィランは私にターゲットを移し、攻撃を始めた。

 

「尾白様、相澤様をお願いします!!」

 

 私は、ヴィランを引きつけながら、相澤様から距離を離すように離れた。

 ただ、相手側も馬鹿じゃない。

 私の右足が黒い靄にとられバランスが崩れた。

 油断だ。私は、巨体から繰り出される重い拳をよけることが出来ず、その身に受けそして気絶した。

 

 

 第10章 オールマイトとカシン居士の話

 

 -side オールマイト -

 

「私がきた」

 

 私がUSJに着いた時にはもう小早川少女はうつぶせに倒れていた。

 

 急いで小早川少女、緑谷少年、雨吹少女、峯田少年の4人を担ぎ上げ、階段下に逃がした。

 小早川少女が重症のため、3人に運ぶように伝え、ヴィランの相手をするため広場に戻った。

 

 脳みそヴィランは黒い靄に固定されており小早川君の方に向かって靄から抜け出そうともがいていた。

 

「オールマイトォ。生徒が死に体でどんな気持ちだ? No1ヒーロー?」

 

「死柄木弔、脳無はどうしますか? どうにもあの少女にご執心のようですが」

 

「あぁ? あれは、オールマイトに持ってきたんだけどなぁ。壊れちまったようだし、そのまま放置しとけばいいだろ」

 

「そうですか。わかりました。このまま……ウグゥ」

 

「黒霧どうした?」

 

 ヴィランたちの首魁死柄木と霧状のヴィランである黒霧が話していた。

 すると後ろから、黒霧を襲うように淡い紫色の光が発射されていた。

 後ろを見ると、脳無にやられたはずの小早川少女がそこにいた。

 

 -side カシン -

 

 我の体に傷つけるとは、全くをもって不遜だ。

 しかし、ヒデアキが意識を失ってくれたおかげで我は目が覚めることが出来た。

 我の力でつぶれた内臓は戻ったとはいえ、力を失った我では後1、2発しか力を使えん。

 全く、モトナリの奴め。我の力を奪いおって。

 

 現状、あやつの残した『隆景』があるか。それなら、まぁ戦えるか。

 少なくとも、あの霧の個性、間接的とはいえあれのせいで我の体が傷ついたのだ。

 脳みそむき出しのあやつは、精神が壊れているのだろう。どうしようもない。死んだも同然だ。

 やはり、一番厄介なのは霧の方か。さて、行動に移すか。ここからは、我の時間だ。

 

「ケロ? ヒデアキちゃん目が覚めたの?」

 

「小早川さん!? あの攻撃を受けて……」

 

「うるさいぞ、小娘、小僧」

 

「ヒデアキ? なんだよそれ! お前あのヴィランから直撃を受けてたじゃんかよぉ!」

 

「うるさいと言っている。それに我はヒデアキではないわ。我はカシン。カシン居士だ!」

 

 我は、闇のエネルギーを収束させ霧の奴を横半分に両断するように放った。

 計画道理エネルギーは霧のやつに直撃した。

 仮に死んでもかまわない。我に傷をつけた報いだ。

 

 我は、オールマイトの横に立った。

 

「小早川少女!? 君は怪我人だ。ここは危ない」

 

「何を言っておる。オールマイト。我に怪我などないわ。それにこの前会ったではないか、我はカシンだ」

 

「……やはり、そうか。相澤君から話は聞いていたし理解はしているつもりだった。しかし、今の君の目的は何だ?」

 

「我の目的は一つ。力を取り戻し、この世を征服することよ。そのためにも、こ奴らには死んでもらおう。我の世界にいらぬわ」

 

「言ってることは、頭痛いんだが……今はそう言ってられないな!」

 

「そうだ、独活の大木! そっちの脳みその方を頼んだぞ」

 

 我が相手をしてもあやつは倒しずらい。

 それなら、我はそれを操っている首魁の方に行くとしようではないか。

 我は『隆景』の力を解放して、首魁に向かって振り下ろした。

『隆景』はそれを利用するものの意思の力を光エネルギーにして飛ばすことが出来る。

 そもそも、私の元の力も精神から使ってたし『隆景』と相性がいい。

 でもそのせいでモトナリの『三魂爪』に力も奪われたんだがな。

 

「お前? 死んだんじゃないのか?」

 

 首魁がなんか言っている。

 しかし、飛ばしたエネルギーは首魁の個性によって消されたようだ。

 ふむ、ならば、これでどうか。

 

「黒葬の滅多切り!!」

 

『隆景』の元の持ち主である、モトナリの技『黒葬の舞』を見よう見まねで使ってみた。

 この技は、エネルギーをまとわせた、『隆景』を乱暴に振り回して、光エネルギー何度もとばす。

 元の技の方は見た目がきれいだが、我にそんな技術はない! 

 

「はぁはぁはぁ……こいつ、本当に学生か? 手加減がなさすぎるだろ」

 

 おぉ、大ダメージを与えたようだ。首魁の顔についていた手も落とせたし、このままで我は勝てるのではないだろうか。

 

「もらった!!」

 

 ヒデアキのクラスメイトの赤髪の男が首魁に突っ込むのが見えた。

 しかし、声を出しては襲撃にならないのではないだろうか。

 というより、今、赤髪の方に意識いってるし、首魁の魂を切れば終わりじゃないだろうか。と、思い、試してみたら、成功した。

 首魁は力を失ったように倒れた。

『隆景』強すぎ? いや、我が強すぎるのが悪い。

 

「ヒデアキ。援護サンキュ」

 

「だまれ。赤髪。貴様の手助けがなくとも我はやれたわ」

 

「口悪! ヒデアキ、その姿イメチェンしたのか?」

 

「おぬし、ここは戦場だぞ。気を抜くな。それにあと一人、残って……」

 

 ふむ。力の使いすぎか。それとも、体の負担が大きかったか。

 我は倒れた。

 

 

 第11章 秘密を抱えている私たちの話。

 

-side 空 -

 

 嫌な予感がした。

 そう。それは午後の授業中の話だ。

 校内の緊急放送でUSJにヴィランが入ってきたとの知らせがあったこと。

 そして、ブラド先生から今はA組がUSJで救助訓練を行っていることを聞いた。

 私は担任のブラド先生に話しかけ、USJに行きたいといった。でも、却下された。それは当たり前だった。

 ヴィランが潜んでいるかもしれないところにまだヒーローでもない私がいってどうするというのだろうか。

 例えば、ヴィランにつかまり人質にでもなるかもしれない。

 

 それがわかっていても、いてもたってもいられなくて、私は自習になったこの時間でヒデアキに連絡することにした。

 

「この電話は、現在電波の届かないところか電源が入っておりません」

 

 ヒデアキに電話してみても出ず、他の知っているA組のメンバー三奈、出久、お茶子、天哉に電話してみたがどれも同じだった。

 

「空。君は誰に電話かけてるんだ?」

 

 私に話しかけてきたのはB組をまとめている(自称)の物間寧人だ。

 

「寧人。A組の知っている人にかけてる」

 

「結果は?」

 

「誰も出ない。多分、ヴィラン側に電波障害を起こしてるやつがいる」

 

「その話本当なの? 空」

 

 聞いてきたのは、このクラスを実質的にまとめているクラス委員長の拳道一佳だ。

 

「一佳。今5人目にかけたけど、同じだった」

 

「すると、組織的な犯行かな。一人だけとは考えられない。……この前、マスコミが校内に入ったことがあったじゃん」

 

「うん」

 

「そこで情報集めたとか」

 

「その可能性は高いと思う」

 

「でも、この学校にはオールマイトがいるんだよ。そこを襲うかな?」

 

「確かに。そうなんだけど、私、あの日見たんだよね。黒い霧で消えるように移動したヴィラン」

 

「それってさ、話をまとめるとオールマイトを倒せる算段があってしかも、転移系の個性持ちがいて組織的にヴィランたちが来たってこと?」

 

「そうだと思う。情報がなさ過ぎてあってるかわからないけど」

 

「なぁ、君たち。考えすぎじゃないか?」

 

「いや、寧人。少なくとも転移系の個性持ちがいる時点でこちら側の不利はあると思うよ」

 

「そうだよ。物間。もしかしたら、校舎内にも今潜んでるかもしれない」

 

「2人して、先生たちがいるから大丈夫さ」

 

「私たちに出来ることはない……か」

 

「そうだね。今は、安全が確保されるまでおとなしくするしか……」

 

 この会話をB組のクラスメイトは静かに聞いていた。

 生きていて。ヒデアキ。

 

 

 いつもなら、授業が終わり、放課後になった時間帯。

 

 私は、USJの備え付けの保健室に向かって走っていた。

 電波障害を起こしていたヴィランと倒したからか、それとも、鎮圧に成功したのかはわからない。

 ただ、A組のお茶子ちゃんから電話があって、ヒデアキが倒れたと聞いた。

 そして、私はヒデアキが今寝ている、USJの保健室に着いた。

 

「ヒデアキ!!」

 

 勢いよく扉を開くと、金髪の骨のような男とリカバリーガール、刑事風の見た目の男、それにベットにいるA組の出久。

 

「ここは、保健室だよ。静かにしな……」

 

「はぁ、はぁ、ごめんなさい。でも、ヒデアキは?」

 

「体に怪我はなし、ただ、これは個性の使い過ぎで倒れたんだろうねぇ」

 

「ちょっと、失礼します」

 

 私は寝ているヒデアキの近くにいき様子をみた。

 静かに眠っている。

 顔には紋様は浮かんでいなかった。

 でも、私は確認のために、ヒデアキの来ていた着物を脱がし始めた。

 

「ちょっと、空ちゃん。何やってるの?」

 

 そういうのは、出久だ。

 

「男子はこっちを見ないで」

 

 ヒデアキの心臓のあたりをみるときれいな何もない肌だった。特に『カシン居士』が発動している様子はない。ように見えた。

 

「よかった~」

 

「すまないが、織神少女。小早川少女のことについて知りたいのだが……」

 

 骨のような男に話しかけられた。この男は校内で何回か見た気はする。教師だろうか。

 

「はいなんでしょうか」

 

「なんていうか? 小早川少女は、二重人格だったりするのだろうか?」

 

「いいえ。何でですか?」

 

「あー、うん。まぁ、その聞いた話なんだが、小早川少女は性格が暴力的になったらしい」

 

「それ、誰が言ったんですか? ……」

 

「僕だよ! その、見たんだ。小早川さんの顔に変な文様が浮かんでいて。話しかけても、うるさいとか、だまれとか。我はカシンだとか」

 

 私が骨の人と話しているとそれを止めるように、出久が話に割り込んできた。

 いやな、予感はしていた。ただ、私はヒデアキが『カシン居士』を暴走させてない。

 私は、そう思い込もうとしていたんだ。

 

「ねぇ、出久。その話、聞かせてよ」

 

 私は怪我人である出久に詰め寄って話を聞こうとした。

 

「空様には、もう隠せませんね」

 

 出久に聞こうとしたとき、ヒデアキが目を覚ましたようだ。

 

 

 目を覚ましたヒデアキから、USJであったことを聞いた。

 霧のヴィランの個性で火災エリアに飛ばされたこと。大型のヴィランと戦ったこと。

 そこで、大怪我をしたことも。そして、意識を失ったこと。

 保健室にいるメンバーは静かにその話を聞いていた。

 

「それで、助けに来てくれてありがとうございました。オールマイト」

 

 ヒデアキは金髪の骨の男に対して感謝を伝えた。

 

「ななななな、なにを言っているんだい。僕がオールマイトなわけないじゃないか」

 

 男は挙動不審に言われたことを否定していた。

 

「わたしには、魂が見える力があるんですよ。隠しても無駄です」

 

「そうだったか……」

 

 そういって男は筋骨隆々のオールマイトに変身した。

 

「ばれたなら仕方ないな! ゴフゥ!!」

 

 オールマイトは血を吐いて先ほどの骨の姿に戻った。

 

「大丈夫ですか!? オールマイト!!」

 

 出久がオールマイトに対して心配している。

 というより、出久はこの男がオールマイトだと知っていたのか。

 

「はぁ、みんな秘密持ちすぎじゃない?」

 

「空様、空様も隠してますよね。もともと、ここの高校に来たがった理由もごまかしてますし」

 

「んー。まぁね。と言っても私のは、そこまで重要じゃないから」

 

「ともかく、小早川少女も織神少女もわたしのことは秘密にしてくれると助かる」

 

「はい」「わかりましたよ、オールマイト」

 

 そして、オールマイトからUSJでのカシンの話と、ヴィランたちの話も聞いた。

 ヴィラン連合というのが襲ってきた連中らしい。

 中身はごろつきの集まりで、その中の3人が特異的に強かったそうだ。

 しかし、霧の個性をもつ黒霧により首魁死柄木は逃げたそうだ。

 

 話をし終わり、私は部屋にいた刑事風の男、警察の塚内警部と外に出た。

 塚内警部が本校舎まで送ってくれた。

 

 リカバリーガールはヒデアキを保健室で様子を見るらしく今日はヒデアキは帰れないそうだ。

 

 私は一人で、家に帰ることになった。

 

 

 次の日、授業のあった今日は休校になり、お母さんと一緒にヒデアキを迎えに行った。

 ヒデアキを迎えた際、根津校長から謝られた。

 けど、お母さんは、仕方のないことで謝らなくていいと言っていた。

 そして、私たちは無事に家に帰った。

 

「お帰りなさい。ヒデアキ」

 

 家に着くと、黒い和服の美女が料理をしていた。

 

「モトナリさまぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ヒデアキは泣き始めた。彼女は毛利モトナリ。ヒデアキの保護者だ。

 

「お母さんはモトナリさんが帰ってるの、知ってたの?」

 

「ん。まぁね」

 

「空もひさしぶりね。と行ってもあったのは何年も前だから覚えてないでしょうけど」

 

「あなたみたいな美女を見ていたら忘れませんよ」

 

「あら、お世辞でもうれしいわね。昼ごはん。出来てるから、3人とも手を洗ってきなさいな」

 

「「わー、また鍋だ」」

 

 私とお母さんの棒読みがかぶった瞬間だった。

 

 

 第12章 モトナリさんとヒデアキの話それと聖女の話

 

 -side そら -

 

「お帰りなさい。モトナリ」

 

「ただいま。ピクシス」

 

 食事とそのかたずけが終わり、私たち4人は食卓を囲んでいた。

 

「で、何しに戻ってきたの?」

 

「言いずらいんだけど、私の中の『カシン居士』の力がヒデアキに戻りたがっていてね」

 

「そうだろうと、思ってたよ」

 

「最近、『カシン』を目覚めさせてない?」

 

「目覚めさせてるよ。確かめなきゃいけないことが多かったし、それに昨日、先生さんたちから聞いたけど、怪我して目覚めちゃったみたい。それで……どうするの?」

 

 私とヒデアキは黙って聞いていた。途中、ヒデアキは私の手を握りたそうにしていたので、つかんであげた。

 

「とりあえず。私は、ヒデアキに力を戻す事はしない」

 

「そりゃあねぇ」

 

「何故かわからないけど、力は今、落ち着いてる。と言ってもずっと近くにいたら、ヒデアキにも悪いわ。今は関西の方に借家借りたからそっちにいることにするわ」

 

「そうね。あと、ヒデアキの養育費名目で送って来てたお金。アレ使ってないから、そのまま返す」

 

「いいの? ピクシス」

 

「いいわよ。というより、お金より定期的に会いにくれば一番よかったんだけどね」

 

「無理を言うわね」

 

「ま、あとは2人で話してなさいな。あ、でも、暴走したら困るから。空、あなたがヒデアキについてあげていて。わたしは家事してるからなんかあったら呼んで」

 

「はぁい」

 

 そういってお母さんはリビングから移動した。

 

「本当に久しぶりね。ヒデアキ、あなた、だいぶ成長したんじゃないかしら」

 

「はい。モトナリさまぁぁぁぁぁ!!」

 

 また、ヒデアキが泣き始めた。

 

 そのあとは、モトナリさんのこれまでなにやってたかとか、最近のヒデアキの話とか、私の姉妹について話していた。

 

 気づくと、もう午後6時を回っていた。

 

「さて、わたしはお暇しましょうか」

 

「モトナリ様、行かないでください」

 

「ヒデアキ、あなたが一番わかっているでしょう? 『カシン』は疲れているのか。今は寝ているけど、目が覚めたらあなたが大変よ」

 

「わかってますけど……」

 

「空。ヒデアキのことを頼むわね。ピクシス。仕事が決まったらまた連絡するわ」

 

「仕事決まったらねぇ。お尋ねものなんだからゆっくりしてなさいよ」

 

「そういうわけにはいかないわよ。働かざる者食うべからず。それじゃ、またね」

 

 そういって、モトナリさんは行ってしまった。

 

 

 夜、私たちがそれぞれベットに入ると、ヒデアキが話しかけてきた。

 

「空様、起きてますか?」

 

「何? 一人じゃ眠れないって?」

 

「一人でも眠れます!!」

 

「……起きてるよ。それで?」

 

「わたしお荷物じゃないですか?」

 

「ヒデアキは泣き虫で、おっちょこちょいで、それで私にひっついてくるみたいな子だけど」

 

「散々ないいようですね」

 

「事実じゃん」

 

「事実ですけど」

 

「それでも、お荷物なんて思ったことはない。というより逆に、私は貴方に助けられている」

 

 私は自身のベットから抜け出してヒデアキのベットにもぐりこんだ。

 

「空様?」

 

「そういうことだから! もう寝よ!」

 

「そうですね。おやすみなさい。空様。……ありがとう」

 

「感謝するのはこっちだっつーの」

 

 そういって私たちは熟睡した。

 私は、何があっても、ヒデアキの味方だ。

 

 臆病な乙女 第一部完

 

 次回予告

 とある、聖女の話をしよう。

 彼女の個性は生きてさえいればどんな病でも治してしまうことが出来る。

 しかし、その個性を使うと彼女の体力は尽きていく。

 何度も連続で無理をしてまで使えば彼女は死ぬだろう。

 だからこそ、無理をさせないようにするのが俺たちの役割になるわけだが、その話はまた後で。

 そして、今日も彼女は宣言する。

 

「我ら! リヒト・クライスはアテナ様の名のもとに平和をもたらします!」

 

「兄貴! 頑張ろうな!」「そうだな弟よ!」

「「俺らオーク・オーガ兄弟! 聖女を守るぜ!」」

 

 あとがき

 

 オーク・オーガは最初前後鬼にしてたけど怒りが募ったので変えた。

 

 空の見た目イメージ、そらいろそらうたのにいみさん。

 妖精の見た目イメージ、拡散性の第二かたピクセルさん




マサムネさんを出すのはいいんだけど、立場が難しいので出せんかった。流石に現代社会で浮浪者を出したくないです。警察も考えたけど、あの人オウガイキラーなだけで仕事してるイメージない。
どうでもいいけど、グツグツさん出したい…ですわ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む