ラブライブ!サンシャイン!!~Step! ZERO to OOO Яe-birth~ (白銀るる)
しおりを挟む
1st Season
1/島村耀太と女神とコアメダル
「ぬしが
“神様”なんて本当に存在するのだろうか。
世界にはさまざまな宗教・神話が存在し、そしてその全てに“神”あるいはそれに等しい存在がある。
ゲーム等においてもそれらをモチーフにしたキャラが存在していて、姿形や性格はそれぞれだ。
そして……今、俺の目の前で神を名乗るその人は……。
「わらわは女神。女神ミコ。ようそこ、天界へ」
変人、否、変“神”であると。
女神、そう名乗った彼女は、まだ名乗ってもいない俺の名前を当てたことや、その出で立ちから嘘ではなさそうだが……。
「子供……」
見た目が完全に子供だ。ラノベに出てきてもおかしくはないロリなのだ。
「誰が子供じゃ! わらわはこれでも1200歳じゃ! ……って何を言わすか!」
いや、貴女が勝手に言ったんでしょう、なんてツッコんでも話が進まない気がするのでやめておこう。
「まあ良い。それよりも耀太よ、ぬしはこれが何か分かるな?」
女神様が指をパチンと鳴らすと、彼女の眼前にホルダーが1つ現れた。しかも、それには俺もよく知っている模様が描かれていた。
「それって……仮面ライダーオーズのメダルホルダー……ですか?」
「そうじゃ。コアメダルもちゃんとあるぞ」
女神様がホルダーを手に取って中身を見せてくれたが、明らかに足りていない。詳細に伝えると、タカ・トラ・バッタ・カマキリの4枚しか収められていないのだ。
「どうじゃ? 少ないじゃろう? ……実はな、ぬしらの世界でオーメダル争奪戦が起きたように、わらわの世界でもオーメダル争奪戦が起こったんじゃ」
「え……神様の世界でも仮面ライダーってやってるんですか? っていうかオーメダル争奪戦って……」
「争奪戦中にいろいろあったんじゃが、わらわはなんとかメダルを集めたんじゃ。じゃがな……平成ジェネレーションズFINALでオーズが復活することになり、収まっていた炎が再燃し、しかも身内が
うわぁ……。
それが本当ならかなりドン引きだ。しかも身内に敵って……。
「魔の手から全てのメダルを守るには一人では難しいと判断し、わらわは最後の手段に出たんじゃ」
「最後の手段……?」
女神様から放たれるシリアスな雰囲気。だが何故だろう……嫌な予感しかしない。
「コアメダルに自衛システムを施して下界に落としたんじゃ」
「バカか!? アンタバカなのか!?」
うん、もうこれは読めた。俺が天界とかいう仰々しい場所に呼ばれて理由!
「自衛システムは問題なく発動し、邪神達が仕向けた手先共を倒したんじゃが……暴走して人間達を襲い始めたんじゃ。その後、わらわも下界に化身を送ってシステムを一時的に封印したんじゃが、その封印が解けてしまっての……。そこでぬしの出番という訳じゃ」
「今の流れで何となく察しましたよ……。俺にオーズになってメダルを集めろって言うんでしょ!?」
「おー! 流石分かっとるのー!」
「じゃなきゃ、俺を呼ぶ意味無いじゃないですか……」
最初からぶっ飛んだ話してたけど、この
「大体、何で俺なんですか? 俺以外でも良かった気がするんですけど……」
「まあ、それはわらわの気まぐれじゃ。それにメダルを全て揃えた暁には、ぬしの願いを何でも一つ叶えてやる。どうじゃ、悪い話では無かろう?」
「何でも……?」
「うむ、何でもじゃ」
何でも願いを叶えてくれるか……。確かに悪い話ではないな……。
「ま、まあ、少し考えてみても良いかなー、なんて……」
「おお! 本当か! そうか、良かった!」
「え? ちょっと、まだ引き受けるとは言って……」
「ほれ、オーズドライバーとオーメダルじゃ!」
話が勝手に進められていき、いつの間にか出現していたドライバーとさっきのホルダーがバッグに詰め込まれて俺の肩にかけられていた。
そして──。
「今は下界に降りる許可を申請している途中故、まだナビくらいしか出来ぬが、後から必ず追い付く。それまで頼んだぞ!」
「ちょっ! まっ……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
俺の立っていた場所に魔法陣が展開され、体が浮き上がる。最後に魔法陣が二つに割れて開き、俺は落ちて行った。
こうして──俺こと島村耀太の仮面ライダーオーズとしての戦いが幕を開けたのだった──。
耀太)……何かまた始まってしまいましたが、ひとまず一作目とはパラレルワールドという関係と思っていただければ幸いです。それでは次回「2/少女と赤いメダルとカマキリ」
Count the Medals
タカ×1
カマキリ×1
バッタ×1
トラ×1
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
2/少女とカマキリと赤いメダル
1つ、青年、島村耀太が女神ミコによって天界に召喚される。
2つ、ミコはコアメダルを天界から落としてしまい、それが地上で暴走していると耀太に告げ、また、それを収めて欲しいと彼に願った。
そして3つ、耀太はオーズの力を手に入れ、コアメダルを集める為に地上に降りていった。
Count the Medals
現在、オーズが使えるメダルは?
タカ×1
カマキリ×1
バッタ×1
トラ×1
島村耀太がミコに召喚される1週間前。
寂れた神社で彼らは目を覚ました。
「どうもー! マスキンチャンネルでーす! 今日はですね、この神社にある祠を調査していきたいと思います!」
「いやぁ、この神社は、地元ではマジでヤバい霊が出ると噂されていてですね──」
その日、フリー動画サイトで活動している2人の青年が動画撮影の為に神社に訪れていた。
2人はカメラを回しながら奥へ奥へと足を進めて言った。
「あ、あったあった!」
「うっわ……お札がいっぱい貼ってあんね」
数分ほど歩き、2人は目的の祠を見つけた。
祠には読解不可能な文字が書かれた札が無数に張り付けられていて、如何にも何かありそうなただならぬ雰囲気を放っていた。
「1枚だけ剥がしてみる?」
「いや、やめた方が良くない? 何か見てるだけで気味悪くてさ……。絶対ヤバいって……」
「ほんっとにビビりだなー。1枚くらい剝がしたって大丈夫だって」
「えー……じゃあ、俺はここから見てるから」
「おいカメラ……。まあいいや。そこでちゃんと俺の雄姿を見とけよ!」
2人のうち1人が祠に近づき、貼られていたお札を1枚、勢い良く剥がしてしまった。
「やっぱ何も起こらねーじゃん。ビビり過ぎだって」
お札を剝がした男は余裕の笑みを浮かべてお札をカメラに映した。
余裕の笑みを浮かべてカメラに映る男。
だがその数秒後、異変は起きた。
地面が大きな音を立てて揺れ始めたのだ。
最初は地震が来たと思っていた2人だったが、そうではないことを瞬時に理解してしまった。
「お、おい……祠が……!?」
札を剝がされた祠が震えているのだ。しかも黒い何かを吹き出している状態で。
「マジ……? 幽霊とかマジで出てきちゃう系……?」
更に揺れは大きくなり、最後には祠は弾け飛んだ。
祠だった物はその形を崩し、銀色の何かが流れ出てきた。
「め……メダル……?」
男はそのうちの1枚を拾い上げて確認する。
バッタの絵が彫られた銀色のメダル。
「う、うわぁぁぁ!?」
すると今度はカメラを持っている男が悲鳴をあげた。
メダルを拾った男が祠のあった場所を見ると、手に持ったそれと同じ物が4ヶ所に集まり、人の形を作っていった。
しかしそれは人に非ず。
人に近い、しかし人ではない4体の
「久しぶりだね、こうして外に出るのは」
「ああ……だが、“ナニカ”違和感がある……」
「“ナニカ”……」
「そう、“ナニカ”が決定的に足りない……」
4体の異形は首を傾げ、足りない“ナニカ”の正体を探る。
そのうちの1体がようやく2人の男の存在に気が付いた。その手に握られたメダルにも。
「分かった。ボク達に足りないのはメダルだ」
「そうだわ。確かに足りていない」
「それも……コアメダルが!」
「ええ、そのようね……。けれど、わたし達が復活したということはあの子も復活しているはずよ」
「……オーズ?」
1体がその名前を口にすると同時に、彼らは過去の記憶を思い返していた。自分達は1人残らずヤツらに倒され、封印されたことを。
「もしかしたらオーズがボク達のメダルを持っているかもしれない。そうだとすると今のままじゃかなり分が悪いね」
「それならまずはセルメダルを集めましょう。幸い、そこに良い欲望を持った人間が2人もいるわ」
シャチのような頭部の異形が男達を視界に捉える。
2人は狙われていることに気付き、逃げようとするが恐怖で腰が抜けてこの場を離れることが出来なかった。
「確かに。コイツらの欲望ならすぐに集まるな。それだけじゃない。他の人間達の欲望も……」
不敵な笑みをこぼす虫の異形。
「じゃあ、ボクは人間達の町に行ってみようかな」
ネコ科動物の特徴を持った異形も動いた。
「オレは……」
「貴方はここでわたしと待っていましょう」
「分かった」
サイの角に象の鼻を持った異形は、水棲生物の異形に付き従った。
「それじゃあ……その欲望、解放なさい」
「その欲望、解放しろ」
2つの異形が男達に銀色のメダルを投げる。すると男達の額に投入口が現れ、メダルはその中に消えていった。
そして──
「あ、あれ!?」
「俺達……なんでこんな所に……?」
男達はここで見た物、聞いたことの全てを忘れ、町へ帰って行った。
ここで起きた全てを記録したたった1つのカメラを落としたまま──。
***
碧く輝き、どこまでも広がっている海。
そして海から風に乗って届く潮の香り。
大海という存在を身に染みて感じていた俺は……
「どこだここぉぉぉぉぉぉっ!!」
叫んでいた。
傍から見たら間違いなく不審者だろうが、そう思う人にはぜひ想像してもらいたい。
突然天界(笑)に拉〇られて、さらにリアルコアメダル争奪戦に参加させれる。人の都合を考えないとか、神は慈悲も持ち合わせていないのか……。
『ぬしが良いと言ったんじゃろーが』
「いや俺は考えても良いって……いっ……た……」
『ん? どうした?』
空耳だろうか?今あのロリ神の声が聞こえてるような……?
『誰がロリじゃ! 誰が!』
「心読まれてる!? ってかどっから話しかけてるの!?」
『ついにタメ口になりおった……。まあ良い。わらわは天界からぬしの心に直接話しかけてるんじゃ。ドラ〇ンボールの界〇みたいな感じじゃな』
「そ、そうなんすか……」
天界にはドラゴ〇ボールもあるのかよ。
『それはさておき、今「ここはどこだぁぁぁ」とか言っておったな』
「言ったけど、マジでどこ?」
『静岡じゃ』
「は?」
『だから静岡じゃと言っておるだろう』
「なんで? コアメダルってこの世界に封印したんだろ? もしかしてそれが静岡近辺とか?」
『まあ、それもそうなんじゃが……もっと厄介なことがあっての……』
女神様はそこまで言うと、一呼吸ほど間を開け、今までで1番シリアスな雰囲気を纏った声で言い放った。
『実はな……ここはぬしが暮らしていた世界ではない。謂わばパラレルワールド、ぬしらの言う“ラブライブ!”に近しい世界じゃ』
「……は?」
爆弾と言っても差し支えないその情報は俺の脳みそをフリーズさせ、それが処理されると同時に、
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
また俺は叫んだ。
***
透き通るような青い海。
一帯に響く波の音。
そして潮の香り。
どれも東京では見ることも、聴くことも、感じることも出来ない。
でも──
わたしの求めていたその“音”は、聴こえない。
今日も今までと何も変わらないまま終えるんだと、その場を立ち去ろうとした時、
「? なんだろう?」
波打ち際で何かが光ったのが見えた。ほとんど埋まっていた所為でここからではそれが何なのか分からない。
「メダル?」
私は光った物体に近づき、拾い上げた。
拾い上げたそれは鳥の意匠が彫られた赤いメダルだった。
「なんだか不思議な感じ……。ただのメダル……だよね」
触れた途端、何かわたしに訴えてるような、そんな気がした。
「どこだここぉぉぉぉぉぉっ!!」
「っ!?」
不意にどこからか叫び声が聞こえて驚く。
今度は何なの?
声のした方を見ると、わたしと同じくらいの歳に見える男の子が一人でブツブツ喋っていた。まるで誰かと会話しているみたいに。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
また叫んだ。
本当に何なの? ていうか大丈夫?
なんだろう……すごく関わりたくないのに、それと同じくらい気になっちゃう……。
「……の世界って! なんで!? やっぱりアホなの!?」
なんて言ってるんだろう? ここからじゃ聞こえないなぁ……。
「なんでここにコアメダル封印しちゃったのさ!」
コアメダル……今拾ったのってもしかして……。
鳥の赤いメダル。もしかしたら彼が探しているというのがこれかも。封印がどうのとかいう変なことは置いておいて。
「はぁ……こうしているだけじゃ一歩も前に進めないか……。うん、ご丁寧にライドベンダーまであるし、この辺りを探してみるか」
また一つ聞き慣れない言葉が出たと思うと、彼は銀色の何かを自販機に入れた。普通なら飲み物なんかが出てくるはずだけど、その自販機は倒れて、バイクに変形した……。
「何なのあれ……」
言葉の通りに開いた口が塞がらない。
彼はそれに跨って、どこかに走り去ってしまった……。
「これ……どうしよう……」
***
ライドベンダーを走らせてから10分ほどが過ぎた。
この世界はとても平和だ。コアメダルがぶちまけられたってことが嘘みたいに何もない。
『本当にその通りじゃなぁ』
「元凶が何を言うか……」
『何を言うか! わらわは女神じゃぞ!? それを元凶とはなにごとか!』
「いや、だって貴女がコアメダルをバラまかなければこんなことにはならなかったでしょ……」
『う……それに関してはぐぅの音も出んが……』
一応反省はしてるみたいだな……つーか心の声読めるのか、流石は神様だな。
それにしても、こっちの世界に来たは良いがまだ何も出来ていない。
異世界転移?転生?における一番の問題と言えば、やはりお金と住居だ。
今持っているだけだと、ネカフェを利用し続ければすぐに底を尽きてしまう。
……こんなことになるならもっと我慢しておけばよかったな。
『なんじゃ、そのことなら心配はいらんぞ』
「え?」
俺の心を読み、その心配は杞憂だと言う女神様。
まさか生活できるだけのお金をくれるとか……!?
『こちらに来る前にバイトの面接を受けると連絡をしておいた。履歴書もちゃんと準備してある。住み込みで3食の食事付きじゃ』
「は!? 神か!?」
『おう、わらわは神じゃ。わらわがナビをする。早速バイト先に向かうぞ』
「了解!」
俺は元気いっぱいの返事をし、ハンドルを握り直した。
これで飢えて野垂れ死にする心配はなくなった。
女神様の導きで辿り着いたのは海辺にある旅館、十千万。
ここはAqoursのリーダーである高海千歌ちゃんの家でもある。
ってか、これさっきの場所に戻ってきてるじゃん。
『ほれ、早う入れ。あまり待たせると印象が悪くなるぞ』
「お、おう。そうだな……」
マジか……よりにもよってここですか。思いっ切り物語に介入させる気満々じゃん。
しかし、女神様の言うことはもっともなのでひとまずは面接を受けることにした。
裏口に回った俺は、ここで働く仲居さんに声を掛けられ、事情を話すと面接をする為の部屋まで案内された。
俺は仲居さんに言われるがまま椅子に腰掛け、面接官の人が来るのを待つことになった。
「緊張するな……どんな人が来るんだろ」
『そう固くなるな。リラックスして、さっきわらわが教えた通りに答えるんじゃ。良いな?』
「う、うん……」
『わらわは用がある故、少しだけ離席させてもらう』
女神様との念話が終わり、とうとう1人になった。
そう言えばこっちに来て1人になるのは初めてだな……。
とりあえず女神様の教えてくれた通りにことを進めよう。
それから間もなくして1人の女性が部屋に入って来た。
「お待たせしました。貴方が島村耀太君?」
「は、はい、島村耀太です」
「わたしはこの旅館、十千万の若女将の高海志満です。これから面接だけど、そんなに緊張しなくて大丈夫よ」
「はい、よろしくお願いします」
こうして俺と志満さんの1対1の面接が始まった。
***
それから何の滞りも無く、面接は終わった。
内容的としては一般的な面接と同じなので省くが、結果としては採用だ。
そして今は志満さんの案内の元、空き部屋に来ていた。
「今日からここが耀太君の部屋よ。布団はその中に閉まってあるから寝る時はそれを使ってね。それから制服も夜までに用意しておくから、今日はゆっくりしていて大丈夫よ」
「はい、ありがとうございます!」
「それから耀太君は浦の星学院に通うのよね?」
「あー……まあ、そうですね」
「わたしの妹の千歌ちゃんも浦の星に通ってるの。今日は友達の曜ちゃんと東京に行ってていないんだけど、帰ってきたら挨拶してあげてね」
「分かりました」
それだけ言うと志満さんは仕事に戻っていった。
そう言って志満さんは行ってしまった。
「さて、話を聞こうかロリ神様?」
返事のないただの屍のようだ……。
「いや屍のようだじゃねーよ! おーいロリ女神! ……ホントにいないのか。……しょうがない、この世界のことを少し調べるか……」
そう思い立った俺はスマホを取り出してネットニュースを開いた。
1つずつ記事をチェックしていると、気になるワードが目に入った。
「謎の生き物が出現……?」
俺はまさかと思いながら記事を開く。
そのページには、魚のような生物や虫のような怪物の写真が載せられていて、その正体不明の生物による被害がこと細かく記されていた。
「これ……ヤミーとグリードじゃん……」
写真1はピラニアヤミー、写真2は間違いなくウヴァだ。
……1番新しい事件は一昨日起きたばかり。
もしかしたら何かメダルの手がかりが掴めるかも。
思い立ったが吉日だ、と俺は十千万を飛び出した。
***
今日はなんか変だな、わたし……。
あの男の子のことすごく気になるし、これ返しそびれちゃうし……。
はぁ……。
もう帰って休もうかな……。
「「うわあああああっ!」」
そう思った矢先にわたしの目の前に現れた限りなく生物に近い何か。
手に刃物を持って、いや、生えているそれ。
生き物で例えるならカマキリのよう。
「コアメダルを渡せ」
喋った……! というかコアメダルってやっぱり……
カマキリのようなものは少しづつ距離を縮めてくる。
『おい!』
さっきとはまた違った声が聞こえた。
本当に何なのよ……。
『ヤツに俺のコアは絶対渡すな!』
聞こえたというよりは心……というか脳に直接話しかけられたような感じ……?
でもどっちにせよ、今は逃げなきゃあれに襲われるっ!
来た道を戻るように向きを変えて走り出した。
***
「はぁ……」
十千万を出てもうそこそこの時間が経過したが、めぼしい情報なんかは全くもって見つからなかった……。
聞き込みしても誰も知らぬ存ぜぬだし、ロリ神なら何か分かるかなと思って呼んでは見たものの、警察の人の職質されるし(一人で、しかもロリ神なんて叫んでたら当然かもだけど)。
……頼みの綱として最後まで取っておいたSNS。
現代社会において珍しい物が見つかれば即拡散される可能性が高い、というかほぼ確実にされるだろう。
現在人脈の乏しいとかいうレベルじゃない俺にとって一番確実な手段だから、これでダメなら見つけるのは無理だろう。
どうか!どうか見つかりますように!
キーワード、メダルで検索。
……びっくりするほど何もねぇ。
いやまだだ!オーズ本編だとカザリが拡散されていた。
怪人、もしくは怪物で検索すればワンチャン……!
………………
キタ─────ッ!
出てきたのはグリード……ではなく、グリードがセルメダルを集める為に、人間の欲望を糧とし(例外はあるが)、使役する怪人ヤミー。
画像とともにアップされていた文章を読むと、
「えーっと……『女の子を追い回す変態怪人www』……」
なんだろう。ヤミーの親が変態だったとか。
何にしたって早く見つけて女の子を助けなきゃ。
また狙ったようなタイミングで、ライドベンダーを発見。ロリ神の仕業であることは確定として、今は件の女の子とヤミーだ。
「場所は……まだ遠くまで行ってないはず。これなら飛ばせば間に合う!」
再び俺はライドベンダーを走らせた。
***
逃げきれない。
現状がそうであるというだけじゃない。ヒトの本能がそう訴えている。
走って、隠れて、また走る。それを繰り返していくうちにわたしの体力はどんどん消費されていった。
それに対してあのカマキリお化けからは疲れを感じない。
そんな二人(?)が追いかけっこをしてどちらが勝つかなんて、火を見るより明らかだった。
カマキリお化けの目的はこのメダル。渡してしまえば、この恐怖からも解放されると思う。
「でも……やっぱりダメだよね……」
今は逃げ切る。それだけを考えよう。
でも──、
「そんな……」
まだこの辺りに詳しくないことがたたって、追いつめられてしまった。
目の前に広がる海。後ろからはカマキリお化け。もう逃げ場がない。
「コアメダルを渡せ。そうすればお前を殺すことはしない」
嘘。それが感じられない。多分これを渡せばあいつはわたしを殺すことはしないだろう。
じりじりと迫るカマキリお化け。
メダルを握りしめて睨む。
カマキリお化けは足を止めて構える。
この時、わたしは生まれて初めて「死」というものを意識した。
刃やいばが振り上げられたと同時に目を閉じてしまう。そして次の瞬間には振り下ろされて……。
けれど、
「待ぁぁぁてぇぇぇッ!」
その時が来ることは無かった。
そしてその代わりに、彼がやって来た。
耀太)おっす!オラ、耀太!……この入り方絶対違うよなぁ……。っとそれは置いといて……、ライドベンダーでのヤミーの捜索中、やっとロリ神と再会した俺。彼女のナビゲートもあり、手遅れになる前にヤミーを発見する事が出来た。
少女)え?え?えぇぇぇ!?男の子が三色になった!?
???)まさかこの時代でもオーズに会えるとはなぁ。
OOO)なっ!?お前は!
少女)こ、今度は腕だけのお化けぇぇ!?
耀太)次回、ラブライブ!サンシャイン!!~Step! ZERO to OOO~ 「3/出会いとオーズと赤い腕」
Count the Medals
タカ×1
カマキリ×1
バッタ×1
トラ×1
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
3/出会いとオーズと赤い腕
女神ミコによって天界に召喚された耀太は、コアメダルを集める為にオーズとなって下界に降りた。
一方、地上では桜内梨子がコアメダルを発見し、ヤミーに追われることになってしまう。追い詰められ、もうダメかと思われたその時、ライドベンダーに乗った耀太が到着したのだった。
Count the Medals
現在、オーズの使えるメダルは?
タカ×1
カマキリ×1
バッタ×1
トラ×1
法定速度を大幅に超え、沼津の町を疾走するライドベンダー。
道行く人がみんな俺を見ている気がするが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
俺は更にライドベンダーの速度をアップさせた。
『戻って来てみればぬし……世界を渡って初日からスピード違反とは感心せんぞ……』
「俺だってこんなに飛ばしたかねーよ! けど、早くヤミーを見つけないと不味いことに……」
『なるほどな……。むむ? 確かにこれは不味いな。今、追われている
マジかよ……ってことは、あのカマキリヤミーはウヴァの差し金か!
『仕方ない。今回は特別じゃぞ』
「え? 特別って何が……」
女神様との念話が切れた直後、「うわっ!?」「きゃー!?」という叫び声が四方八方から聞こえてきた。
そして何が起きているのか理解出来ないまま、俺はライドベンダーごと宙に浮いた。
「た、タコカンドロイドの道!? って……うわぁぁぁぁぁ!?」
そのまま俺はヤミーを見つけるまで空を疾走した。
道無き道を飛んだ為、時間はさほどかからなかった。
「あっぶねー……女の子も……俺も」
辿り着いた先にいたのは、カマキリヤミー1体と女の子が1人。……確かにこの図だけ見れば薄い本みたいな展開に見えなくないな。
「お前、何者だ? 何をしに来た?」
「何って、この状況でそんなの1つしかないだろ。その子と、ついでにその子が持ってるコアメダルを守りに来た!」
俺はヤミーに向かって高らかに宣言し、同時にオーズドライバーを腰に当てて装着した。
「まさか!? それはオーズの!? よせ! それを使えばタダでは済まないぞ!?」
「ご忠告どうも。でもね、戦わない訳には行かなんだよ!」
カマキリヤミーの忠告と同時にタカとバッタのコアを3つあるうちの両端のスロットにセットし、その間にトラメダルをはめ込む。
それからオーカテドラルを傾け、最後にオースキャナーで3枚のメダルを読み込んだ。
タ・ト・バ! タ・ト・バ! タ・ト・バ!!」
脳内に響く例の変身音。
3色の輝きが俺の体を包み込んで変化させる。
赤のメインカラーに緑の複眼が特徴的なタカヘッド、両腕にかぎ爪「トラクロー」を装備したトラアーム、驚異的な跳躍力を誇るバッタレッグからなるオーズの基本形態。
オーズ タトバコンボへの変身が完了した。
「良いだろう……。人間、後悔させてやろう!」
カマキリヤミーは視界から女の子を外し、俺へと向きを変えて突っ込んできた。
カマによる斬撃をかわし、腹部にパンチを叩き込む。
後ろに仰け反った隙に接近し、追撃を加えた。
「ぐっ……調子に乗るな!」
更に追撃しようと懐に入ったが、その瞬間にカマが胸部に炸裂する。
俺は大きく吹っ飛ばされ、胸に激しい痛みを感じると同時にオーラングサークルのトラの模様が点滅し始めた。
「クッソ……ダメージを受け過ぎたか……」
胴体部分のメダルを交換せざるを得ない状況となってしまった俺。
トラさん、本当に不遇過ぎる……。モノローグで紹介したトラクローをまだ使ってないのに……。
だが、このままではヤツの攻撃に耐えることは出来ない。
俺は立ち上がりながらカマキリメダルを取り出し、トラメダルと交換した。
「タカ! カマキリ! バッタ!」
黄色メインだったトラアームは緑のカマキリアームに変わり、オーラングのトラの部分もカマキリに変化する。
亜種形態、タカキリバの完成だ。
オーズの武装の1つ、カマキリソードを展開し、俺は反撃を開始した。
バッタレッグの力を使ってヤミーをかく乱し、カマキリソードで何度も斬りつけた。
斬撃が直撃する度、カマキリヤミーの体からセルメダルが零れ落ちる。
ダメージが蓄積した所為か、足下がおぼつかない様子のカマキリヤミー。
俺は、その隙に腕と脚にエネルギーを送り込み、ヤツにトドメの一撃を叩き込んだ。
「これで決まりだぁぁぁぁぁ!」
エネルギーが宿った刃がヤミーに体をバツ字に斬り裂き、爆発を起こした。
カマキリヤミーはセルメダルに還元され、そこにはメダルの山だけが残った。
***
「ふう……命を助けるのって本当に大変なんだな……」
変身を解いてみるとそこそこな数の傷があり、少量ではあるが流血もしていた。
だが女の子の方は怯えている様子は少しあるものの、外傷などは全く見られない。
俺はその姿に安堵し、溜め息を吐いた。
そこでやっと気が付いた。
赤紫色のロングヘアーに黄色い瞳。
困り眉での微笑が印象強く残っている(作者の偏見)美少女、桜内梨子ちゃんだった。
しかし、ここで彼女の名前を呼んだら俺は不審者以外の何でもなくなってしまう。
そもそもオーズを知らない人から見たら、俺はヤバい姿に変わる不審者でしかないのだが。
「大丈夫だった? 怪我とか無い?」
ここはセオリー通りの言葉を掛ける。
それが正解のはずだ。
まだ困惑している様子の彼女に、俺は「落ち着いて」と言葉を掛けた。
「た、助けていただいてありがとうございます……」
「うん、無事で良かった。俺、島村耀太。怪しいもんじゃないから」
「えっと……わたし、梨子っていいます……。その、傷の方は大丈夫ですか……?」
怪しさしかないファーストコンタクトにも関わらず、彼女は俺の傷の心配をしてくれた。
「俺の傷は大丈夫。それより、君に聞きたいことがあるんだ。梨子ちゃん、こういうメダルに心当たり無い?」
「それ、持ってます。さっき砂浜で拾ったんです……。あれ?」
俺にメダルを見せようと手を開いた梨子ちゃんだったが、彼女の手の中には何も収められていなかった。
「無い!? さっきまであったのに……」
梨子ちゃんの反応を見る限り、嘘ではないことは確かだ。
ではメダルはどこへ消えてしまったのか?
それは、口をパクパクさせている梨子ちゃんの視線が教えてくれた。
おそるおそる振り返ってみると、先ほどまでカマキリヤミーだったセルメダルの山が集まってナニカを形作っていた。
赤い腕──梨子ちゃんがそう言葉を漏らした。
「まさか……この時代にオーズがいたとはなぁ」
俺の方に寄ってくる腕。
その腕を警戒してか、あるいは恐怖心を抱いているのか、梨子ちゃんは俺の背後に隠れる。
「グリードのアンクだな」
「やっぱり知ってるか。まあ、メダルとソレの使い方を知ってる時点で察していたがな」
俺と梨子ちゃんの周りをうろうろと浮遊するアンク。
アンクが梨子ちゃんに近づくと、梨子ちゃんは更に警戒心を高めて俺の服を強く掴む。
「この腕だけのお化け、何なんですか?」
「コイツはアンクって言って……えーっと、さっきのカマキリの怪人、ヤミーの親分みたいなヤツかな」
「さっきの怪物の!?」
「おい、アレは俺のヤミーじゃないぞ!」
「分かってるって。あれはウヴァのヤミーだろ。だから何でお前のコアを狙ってたのか、少し気になるところではあるけど……」
「虫頭のヤミーは虫頭ってことだろ」
アンクは、ウヴァの悪口を吐きつつ、梨子ちゃんの言葉を否定した。
だからと言って梨子ちゃんの警戒心が解けたわけではないが……。
「それよりお前」
「耀太だよ。島村耀太」
「ヨータ、お前はこれからもオーズとして戦う、そうだな?」
「まあな。ついて来るって言うんだろ? 良いよ。っていうかそっちのが好都合だ」
「は、言ったな。なら、とことん利用させてもらうことにする」
「さあ、それはどうかな?」
俺は、原典のアンクが一杯も二杯も食わされた火野映司の真似をし、「食えないヤツ」のような態度で言葉を返した。
それから踵を返し、今度は梨子ちゃんの方に身体の向きを戻した。
「とりあえず、今日は送ってくよ。あんなことがあった後だしね」
「え!? でも……」
「あん?」
俺は、梨子ちゃんに睨みを利かせているアンクを掴み、女神様から貰ったバッグに押し込んだ。
「お前、何のつもりだ!?」
「梨子ちゃんが怖がってるんだ。ついてくるつもりなら今日はこんなで我慢な」
「ちっ」
コアメダルを集めるという共通の目的を持った俺とアンクの間に協定が結ばれた。
異世界からやって来た俺、グリードのアンク、そしてこの世界の少女の桜内梨子。
決して交わることのなかった3人の出会い。
これが
耀太)これからはアンクも一緒か。心強いんだか、不安だかよく分からないけど、やることは変わらない。
女神)うむ。出だしは好調のようじゃの。アンクの住まいはわらわのい力で解決したし、次はいよいよ初の学校回……の前にこっちじゃの。
耀太)次回「幼なじみと巨大ヤミーとプレゼント」
目次 感想へのリンク しおりを挟む