神話生物でもサッカーがしたい! (ウボァー)
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神話生物でもサッカーがしたい!

イナイレ世界、誰でもサッカーしすぎではなかろうか。
天使に悪魔に宇宙人。なんでもありなイナイレ世界。
じゃあ、神話生物はどうなんだって話。


「サッカーやろうぜ!」

 

 

 ――それが全ての始まりであり、終焉への引き金となった。私はあの時何故承諾してしまったのか、と永遠に後悔し続けるだろう。

 

 ――願わくば、この手記がかの邪神に目をつけられた哀れな被害者達の助けにならんことを。

↑それって個人の日記じゃなくて故人の日記になるってこと? あっ上手いこと言えた!byニャル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ちやがれニャル! そして死ねぇ!」

 

 叫びと共に轟々と炎が巻き上がる。殺意を込めてサッカーボールを射出したのはFW、クトグア。

 

「ちょっやめてよね!? 新人さんの前でぐほぁ!?」

 

 無駄に顔がいいMF、ニャル。クトグアの蹴ったボールが腹にめりこみ、着弾地点を中心に爆発大炎上。

 

 

 

 必殺技。サッカーを嗜むものなら一つは所持しているだろうそれは、科学で解明できない超次元パワーを秘めている。

 必殺技と称されているからといって、殺人に使用するものではない。ないったらない。あくまでもサッカーでのみ使う技だ。

 

 

 

 ――じゃあ、目の前で繰り広げられているコレはなんだ?

 

 

 

 グラウンドを溶解させる超高温を発生させたクトグアの必殺技をまともに食らったにもかかわらず、ニャルは平然と佇んでいた。

 

「もーう、いくら私が黒き神って呼ばれてるからってー、こんなダイナミック日焼けサロン開いちゃうなんて――――開戦の合図と見て良いな?」

 

「ハッ、上等だ――――跡形もなく消してやろう」

 

 

 

「(だれか たすけて)」

 

 グラウンドの端で何も出来ずかたかた震えているのは、かの黒き無貌の神に目をつけられてしまった人間。

 

「あら、あら。どうしましょう?」

 

 新人の正気が直葬されつつあるのに気が付いたのはマネージャー、シュブ=ニグラス。喧嘩と人間、どっちをどうすれば良いのかわからずおろおろしている。

 

「避難だ避難! こんな場所になんの力もない人間を置いておけるか!」

 

 常に黄色いフードを被っているMF、ハスター。硬直している人間の手を引き、保健室へダッシュ。

 

「あれ、どうかしましたか皆さん? 僕が校外走ってる間に何が起きたんです?」

 

 風になろうよ系DF、イタクァ。つい先ほど自主練から帰ってきたので状況を把握できていないようだ。

 

「ふわぁ……ニャルが新人さん連れてきた。で、クトグアといつもの喧嘩中…………ねむ」

 

 眠気と格闘しながら会話に参加したのはGK、クトゥルフ。彼らの喧嘩にそこまで興味がないのか、船をこぐ幅がだんだん大きくなっている。

 

「くだらん。全くもってくだらん。毎度毎度飽きもせずに喧嘩、喧嘩。直せど直せどグラウンドは元に戻らず荒れに荒れて……手がつけられん」

 

 どこにでも行ける系FW、ヨグ=ソトース。眉間にしわを寄せつつもグラウンド整備用のトンボを用意している。

 

「ふつうのにんげんさん。でもこれでじゅういちにん! しあいができる? てけりり」

 

 耐久力に定評があるちびっ子DF、ショゴス。試合ができるかもしれない、という興奮からぴょんぴょん飛び跳ねる。

 

「試合? 馬鹿言うんじゃないよ全く! 僕の巣作りの時間をこれ以上減らせって言うのか!? 大体僕はサッカーにそこまで乗り気じゃなかったんだよ! それをアイツが!」

 

 編み物大好きDF、アトラク=ナチャ。お手製のマフラーを常に首に巻いているが、その原材料が何かは知らない方がいいだろう。

 

「やめんか蜘蛛の。今更何を言おうと奴が喜ぶだけじゃ……ニャルの奴め、何を考えてここまで人間を連れてきおった……?」

 

 見た目に似合わず年寄りのような話し方をしているのはMF、ノーデンス。ニャルの行動の真意について考えようとあごに手を当てる。

 

「…………。………………? ???」

 

 常に目を閉じ、その上にアイマスクを被せているのはFW、アザトース。屡塁江サッカー部の部長である。

 なぜかその手には誰かの入部届けが握られていた。どうして今、と疑問に思いつつも取り敢えず入部届けなのでいつも持ち歩いている判子をぽん、と押す。

 

 

 

「ああ。部長、判子、押しましたね? ふ、ふふふ――」

 

 

 

 ニャルの凍えるような笑い声が頭に直接響いた気がした。……いいや、気がしたのではない。本当に響かせたのだ。その程度、かの神にとっては容易いこと。

 思わずニャルを見る。見た。見てしまった。

 ニャルの顔には深淵へと続く暗闇が、何もかもを飲み込む影が、べったりと張り付いていた。

 

 

 

「あ、あ、あ――――」

 

 

 

 彼は気付いてしまった。気付かされてしまった。

 

 

 

 ここにいるのは全て人間の理解が及ばぬ存在であることを。

 

 

 

 今まで普通だと思っていた日常は、彼らの気まぐれによって続く仮初めの世界であることを。

 

 

 

 今、自分の手を引いているのは、触れているのは。

 

「……む、どうかしたのか? 大丈夫か……?」

 

 人間の姿をしているが、人間ではない。

 

「ひぃいぃっ、ば、ばけ、ばけも――」

 

 黄衣の王。

 

「っ!? まさか、見えて――ニャル! あいつがまた何かしたのか!?」

 

 異常に触れたものが日常を過ごせるはずがない。目を逸らすのには限度があり、心は磨り減り削れ無くなるが定め。

 

 現実逃避とも、走馬灯とも言えない幻覚。つい先程の出来事が、遠い。あの言葉だ。あの言葉で全てが狂い出したんだ。

 ――ああ、頼むから誰か。これを、夢だと言ってくれ。

 

 

 

 

「コッケェーーーッコッコッコッ、コケェーーーーッ!」

 

「まてこら逃げるなシャンタくーん!」

 

 シュート練習中、ちょっと力を入れすぎて狙いと違う場所にボールがすっ飛んでしまった。それだけなら良かったのだが、運悪くボールはニャルが学校の許可なく勝手に作成した飼育スペースに激突。

 破壊された柵から脱走し、自由を満喫しようとするニワトリ。それをなぜかサッカーボールをドリブルしながら追いかけている褐色イケメン、という妙な図が出来上がっていた。

 

「何が悪かったんだい? エサかい? 一番安いので我慢してくれないかなこっちは一応中学生として生活してるんだから必要以上の金銭を動かすと多方面から怪しまれるんだよ妥協してくれないかなぁうーん無理っぽいね! こうなれば必殺技を――ん?」

 

 曲がり角を走り屋もかくやといったスピードでドリフトしようとしていたシャンタくんの足が止まる。

 

「コケッ!?」

 

 突然シャンタくんは目の前に誰か現れた――のではなく、その人物がちょうど角にいたからシャンタくん視点から見えていなかっただけなのだが――ことでビックリしたようだ。

 

「こら! 神妙にお縄につけーい!」

 

 もう逃げられない、と悟りしょぼんとしたニワトリを確保する。

 

「いやーありがとうねー! お陰でシャンタくんを捕まえられたよ!」

 

 戸惑いながらもどうも、と返事を返したのはニャルの見覚えのない生徒だった。

 

「……へえ、ところで君はどこのクラスに? 私はこの学校に長いこといるんだけど、見覚えないから気になって……B組? ああ、転校生か! ふーん、そっかぁ……」

 

 何かに取り憑かれて……いない。狂信者……でもない。普通であることが異常となるこの屡塁江中学校で、本当に異常を何にも持たない一般人がいるなんて! 私の言葉にどこか疑問を持ったようだが、考えるのを後回しにした! 実に愚か! 故に気に入った!

 こんな面白そうなオモチャ、どうして今の今まで気が付かなかったんだ!

 

「……うん、突然で悪いんだけどね。君が良かったら、なんだけど」

 

 サッカーボールを掲げて、笑って。

 

 

 ――サッカーやろうぜ!

 

 

 誰が見ても良い印象を抱く笑顔の練習を欠かさなかった過去の自分に感謝しつつ、なんの疑いもなく承諾した愚かな人間をこれからサッカーで好きにいじり倒せることにワクワクしている自分がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――いやー大成功! いえーい」

 

 黒煙を上げながらも嬉しそうに一人で万歳しているニャルを見て、クトグアが怒りの炎を巻き上げ……はせず、どうしてという疑問の方が勝った。

 

「あ? 何がだよ……待ておいニャル、お前、まさか」

 

「うん、あの子が最後のメンバー! 私とお前の喧嘩見て動けなくなってたから、その隙に入部届け勝手に出しちゃった! 勿論判子もあの子のカバンからこっそり取ってこっそり使ってこっそり返したから問題ないよ!」

 

「いやどこが大丈夫なんだよ。冗談言うんじゃねえよお前燃やした」

 

「結果報告!? あちちちち」

 

 

 

 

「……だから、その、まあ、なんだ……。あー…………すまん」

 

「謝って済むなら警察いらないんだよー?」

 

「どれもこれも貴様のせいじゃろうが! しかも貴様、必殺技の使い方をあの人間の意識がないうちにねじ込みおったな!? そのせいで儂の加護が効かなくなっておる!」

 

「いいじゃん必殺技の一つぐらいさ。あの子まだ必殺技持ってなかったからサービスだよサービス!」

 

「必殺技……ねじ込む……サービス……」

 

「! まさか貴様、後戻りできないところまでこちらに引き込んであの子の逃げ道を断つつもりじゃったか! くっ、気がつくのが遅かったわい……!」

 

「成る程、なぁ? ……ニャル、覚悟はいいか?」

 

「えっ何の覚悟ー?」

 

 理解したくない単語が飛び交う。もうやだこの中学校。日常に帰りたい。

 

「…………」

 

 部長のアザトースにぽん、と肩を優しく叩かれる。死刑宣告だろうか。

 

「せっかくの新入部員なんだし! 初めての練習、うぉう! 見ていっ、てえっ! くれないかなぁってあちちちち!」

 

 最後にせめてシュート練習だけでも見ていってくれないか、とニャルが縋り付く。

 一本だけ、一本だけだから! と明らかに嘘泣きで必死に頼み込む邪神。もういやだはやくかえりたい。精神は復活したのに身体が追いついていない。動かない。

 何も反応がないのをOKのサインだと受け取ったのか、いそいそと準備を始めるニャル。違うそうじゃない。

 

「んむぅ……ねむい……」

 

 眠気からふらふらしながらも、ゴール前に立つクトゥルフ。

 

「それじゃあいきますよー」

 

 とん、と軽くボールを胸元まで蹴り上げる。

 

「シャイニングー!」

 

 ボールが不気味な輝きを帯びる。

 

「トラペゾヘドロン――!」

 

 後ろ回し蹴りの要領で真っ直ぐにボールを蹴り飛ばす。ゴールに向かい真っ直ぐに飛ぶボール。このまま何もしなければ、クトゥルフの真正面にボールが当たるが……クトゥルフはそれを許すKPではない。

 

「んむぅ……コール・オブ・クトゥルフ」

 

「えっそれ使っちゃいます?」

 

 クトゥルフはがおー、と両手を上げて襲いかかろうとする獣を真似たポーズをとる。

 彼の背後に見えたものは、あれは。

 

 

 ――タコに似た頭部から、触手を無数に生やしている。巨大な鉤爪のある手足。ぬらぬらした緑色の鱗に覆われた大きな身体。コウモリに似た細い翼を背負った怪物。

 

 

「…………あっ、コレを見せるのはまだダメだったの? ゴメンねぇ」

 

 ふわあ、とあくびをしながらの謝罪が彼の耳に届いたかどうかは、神のみぞ知る。

 

 

 

 

 

 ――ここは屡塁江(ルルイエ)中学校。邪神が超次元サッカーを興じる為だけに作られた舞台。

 来るもの拒まず去る者おらず。正気を保てる者は無し。

 讃えよ、偉大なる神々を。いあ、いあ――。




これが屡塁江イレブンだ!

FW クトグア アザトース ヨグ=ソトース
MF ニャル ハスター 人間 ノーデンス
DF ショゴス イタクァ アトラク=ナチャ
GK クトゥルフ

マネージャー シュブ=ニグラス

対戦相手が宇宙クラスの強さがあるなら本気出してくれるよ!
神話生物に囲まれたにんげんかわいそう
なお全員「あそこにUFO」に引っかかります


本気技は正体ちらっとでも見せちゃうから強制正気度チェック入ります。勿論対戦相手だけでなく観客もです。ひどい
のでフットボールフロンティアには出ません。代わりに練習試合しかしません。戦った相手は誰であろうと正気が消しとばされます。ひどい


〜オリジナル必殺技〜
「コール・オブ・クトゥルフ」
クトゥルフの本気技。自身の正体を現し、その巨体でゴールを守る。
これ化身じゃない?

「シャイニングトラペゾヘドロン」
ニャルの必殺技。ボールにトラペゾヘドロン的輝きを纏わせシュートする。人間でも覚えられるので威力はそこまで高くない。
この必殺技を覚えた人間の近くにニャルはワープできるというはた迷惑な特性がある。具体的には家の冷蔵庫漁られたり勝手にお風呂沸かされたりする。そして一番風呂は取られる。
人間が書いていた日記にニャルが追記していた。人間に入れられた必殺技の正体はつまり……そういうことです。
帰れ。


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人間が犬を拾った話

つ づ い た
今回はサッカーしてない


 ――転校してきて一週間。屡塁江中学校には慣れることができません。なんなんだアレ。認めたくない。あんな化け物たちが人間の真似事をしているんだ。誰か助けて。助けて。助けて。助けて。助け

 

 

 

 

「わふぅ」

 

 ひまだー、かまえー、と言わんばかりの鳴き声を上げて膝に何かあったかいものが乗っかってくる。

 

 

 

 

 ――昨日、柴犬を拾いました。ティーダという名前をつけました。沖縄の方言で晴れを意味する言葉だそうで、キラキラ太陽のように輝くまんまるおめ目を持つティーダにぴったりだと思います。癒しです。これからエサ代や予防接種など色々お金がかかるけど、ティーダから得られる癒しと比べたら軽いものです。

 

 

 わしゅわしゅと柴犬の頭を撫でると、ピスピスと鼻を鳴らし気持ちよさそうに目を細める。

 

「ティーダは本当にかわいいなぁ。そうだ、明日試しに近場に散歩行くか?」

 

「わぉん!!」

 

 こちらの言葉に反応して声を返してくれるとても賢い柴犬。超次元通り越して異次元なサッカーに関わっていたからこの柴犬に出会えたと思うととても複雑な気持ちでいっぱいになるが、かわいいは全てに優先される。

 両手いっぱいのもふもふを感じながら、人間はあの時のことを思い出していた。

 

 

 

 

 成り行き、というか策にはめられて無理やりサッカー部に入部させられた人間はサッカーボールを蹴りながら帰宅していた。サッカー経験者ではないため、まずはドリブルの練習から始めるとの事だったが――まあグラウンドの上だとニャルがちょっかいを出す。

 

 

「必殺技は? ねえねえ私がインストールさせてあげた必殺技使わないの? ねえねえ必殺技ー」

 

「焼け焦げて死ねぇ!」

 

「やだーこわーい」

 

 

 こんなやり取りがエンドレスに続く。グラウンドでの練習は諦め、自主練する方が効率的だ、と皆(ニャル除く)の結論が揃ったのでこのサッカーボールを貰ったのだった。

 帰宅するときにボールを蹴る、なんていつぶりだろう。小学生の頃を思い出す。ああ、あの頃に戻りたい。帰りたい。かえりたい……。

 

 ……本当いつ死ぬんだろうかあの邪神。クトグアさんには是非とも頑張ってもらいたいが、ブチ切れると全身が炎になるのは勘弁してもらいたい。あれなんなんだろう。でも理解したら自分の中の何かが終わる気がする。

 そういえば『フォマルハウトフォール』とかなんとか言ってた気がする。必殺技……にしては被害大きすぎるけど。なんでグラウンド全体を焼き尽くす必要があるんだろうか。あれ、そういえばあの時俺どうしてたっけ記憶が曖昧で――。

 

 

 

 ……なんで? なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして俺だけがこんな目に合わなきゃいけないんだ――。

 

 

 

 考え事をしているからだろうか。ぽこん、と蹴る位置が中心からずれた。当然、ボールは真っ直ぐから逸れていく。

 

「……あっ」

 

 ころころころ、と坂を下っていくサッカーボール。このままでは小池にぼっちゃんさあ大変になってしまう。待て、と追いかけても止まるはずはなく。あと数メートルでボールが水にダイブしてしまう、そんな時。

 

「わんっ!」

 

 茂みから飛び出した何かがボールに飛びついた。

 犬だ。茶色の毛。柴犬。かわいい。

 

「わふー」

 

 あぐあぐ、と噛んでみたり全身を使ってボールを抱え込もうとしたり。その光景にほっこりするが、このボールはサッカー部から借りているものだ。ずっと柴犬に占領されるわけにはいかない。ボールを柴犬の手から取り返そうと手を伸ばすと、

 

「きゅうん……」

 

 上目遣いのウルウル目。ボールを離そうとしない。なんだこのかわいいの化身は。写真に撮りたい。この癒しを何かに留めておきたい。

 そんな中、ふと浮かんだ名案。いろいろと疲れていたからだろうか、その後のことなど考えもせず人間はある言葉を柴犬に向けて発した。

 

「…………うち来るか?」

 

「ばふぅ? …………わふっ」

 

 ボールをこちらに渡し、とてとてとてと後ろをついてくる柴犬。かなり人間に慣れている。昔は飼い犬だったのだろうか? 柴犬はよくツンデレだと言われているが、この子はそんな気配を一ミリも感じさせない。

 邪神とか、邪神とか邪神とか、あと邪神の邪魔なく無事に家にたどり着いた時、人間は全力のガッツポーズをしていた。

 

 ――癒し、ゲットだぜ!

 

 ふわ、とあくびをした柴犬の顔が明らかに開いてはいけないところまで開いたところを見なかったのは、人間の日頃の行いが良かったからだろう。

 

 

 

 

「は? なんで私のペット飼育スペース(注:学校の許可無く作成)にこんな小汚い犬がいるんだ? 誰が持ち込んだんだ全く……」

 

 この間破壊してしまった柵を魔改造して作られた檻の中には、脱走癖のあるニワトリのシャンタくんと、ニャルの見覚えがない柴犬がいた。小汚い、という言葉に怒りを感じたのか、見る見る間に柴犬は恐ろしい形相へ変わる。

 

「ヴォンッ!!」

 

 頭がぱっかりと十字に割れて細長い舌がちろちろ覗く。垂れてきてはいけない液体をぽたりぽたりと垂らしながら、ニャルを睨みつける。彼らの間にニャル特製なんかすごい魔術で改造した檻がなければ、かわいい柴犬だったものはニャルの喉笛を噛み切っているだろう。

 

「なんだただの猟犬か……ん? 首輪? 野良の猟犬じゃあない、となると誰が……むむっ、ニャルアンテナにビビっときた!」

 

 みょよよん、とニャルのアホ毛が風もないのにうねる。

 

「あーあの子かあ! さっそく面白い運命連れてきたねぇ! キセイジュウ、だったっけ! ぱふぁだよぱふぁ、あれリアルに体験できるじゃんかやったね人間ちゃん!」

 

 この邪神、こう見えて結構幅広い趣味を持つ。有名な作品は全部目を通してもいる。

 人間の創作といえど侮ってはならない。邪神から見てもその発想があったか! と膝を打つこともしばしばあるのだ。そしてそのネタをより凶悪にして探索者に振る舞う。だって邪神だからね。

 

『……愚かな。我が主人を喰らうとでも? 我のエサはカリカリで十分よ』

 

「カリカリ…………ぷ、あ――あっはっはっはっはぁ!! あの人間、お前の正体分かってないのか、そっかそっかぁ! あっはっはっー!」

 

 腹を抑えてげらげら笑いこげる邪神。常に飢えているこの猟犬が、油断しきっている獲物を前にしてしゃぶりつかないはずがない。その飢えを無理やり我慢しての日常など、いつか終わりが来る。そう邪神は考える。その時がいつ来るかが楽しみで楽しみで仕方がないのだ。

 

『我が主人を愚弄するな邪神。たとえ我が貴様に力及ばずとも、貴様を困らせる方法など山の様にある』

 

「ふうん……例えば?」

 

 挑発した瞬間、するりと角をつたってすぐ側にあるニャルガーデン(注:学校の許可無く作成)へと移動する犬。

 その口に何かを咥えている。中身ははっきりと分からないが、小さなものがたくさん入っている紙袋のようだ。

 そのパッケージにでかでかと書かれているのは。

 

 

 

《ミントのタネ》

 

 

 

 思いっきり噛む! 袋が破れる! ブンブン振り回す! 飛び散る種! 満足げな犬!

 

「あーーーーっ!? 私の花壇(注:学校の許可無く作成)がーーーーっ!? なんて恐ろしいことをするんだ犬ゥ!」

 

『ふははは! この狭き檻に来る前に貴様の庭に竹を植えておいてやったぞぉ! これから毎日駆除に追われるがいいわぁ!』

 

「くっそぉ覚えてろ犬! 種どこまで広げやがったんだ畜生めぇ!」

 

 調べてよかった法に接触しないグリーンテロ。

 

『主人、これからも陰ながら主人の恨みを晴らしておくから安心してほしい…………わん!』

 

 しっぽふりふり、柴犬は今日も主人がニャルに嫌がらせを受けた分だけの報復を決行するのだった。




最後かもしれないだろ?
だから ぜんぶ話しておきたいんだ

柴犬、いったい何ィンダロスの猟犬なんだ……?
ティーダという名前をつけられてびっくり。近い、けど遠い。

目をそらすのが少しずつ上手くなってきた人間でした。幸運ロール成功してそう。
え?記憶?クトグアの本気技の余波で発生したダメージのショックロール失敗したんじゃない?


〜オリジナル必殺技〜
「フォマルハウトフォール」
クトグアの本気技。「親方!空から生ける炎が!」なゴッドノウズもどきシュート。ニャルもゴッドノウズもどきシュート持ってるので多分こいつら張り合ってる。あふろてるみ君がんばえー
副次効果でグラウンド全体を焼き尽くす。副次効果とクトグアは言い張っているが真の狙いはその超高熱でニャルを殺すことだろ皆知ってるんだぞ!


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必殺技 とは

み じ か い


 ティーダを愛でるのが毎朝の日課になりつつある。はーかわいい。柴犬最高。柴犬の中でもティーダがナンバーワンの可愛さを誇ることは全俺の中ですでに決まっているのだ!

↑親バカですね、わかります byニャル

 

 

 

 

 

「――必殺技とは何か、か……難しいのぅ」

 

 ノーデンスは人間の問いに答えようとしてくれている。が、かなり悩んでいるようだ。

 超次元サッカー初心者にとって、必殺技は有り得ないものだ。その壁を取っ払うことが超次元先輩部員の役目、だと分かってはいる。分かってはいるのだが……。

 

「儂……というか我等はまあな? 曲がりなりにも神じゃからな? 思いついたことは大体出来てしまうからのう」

 

「他の中学の試合で使われた必殺技を真似したりとかもよくすっからな……」

 

「ひっさつわざなくてもからだでどーんすればなんとかなるー! てけりりー!」

 

「ちびは野蛮だねぇまったく……」

 

「むー!! あみものおわらないくもにいわれたくないー!! てけりり!!」

 

「ハンターズネットォ!!」

 

 常識神達が相談に乗ってくれてはいるが、彼らの言葉は人間の参考になるものではない。人間の姿でいるとはいえ中身は別物、人間と神話生物では体を動かす感覚が違う。あと部室で必殺技使うのやめろ。

 

「…………」

 

 部員が困っていたら助けるのが部長の務め。アザトースは部室の隅にあったホワイトボードを引っ張ってきて赤マジックできゅきゅきゅっと書き上げ、どや! と見せびらかす。

 

『必殺技とは! 自分ができる事だ!』

 

「…………はあ」

 

 いや当然では? とも思ったがまだ続きがあるようなので反論はせずに黙って見ておく。

 

 きゅきゅきゅきゅきゅ。

 

『必殺技は必ず自分の延長線上に存在する。自分の得意なこと、好きなこと。そういうのを極めた先に必殺技がある。まず、サッカーをやっていればエネルギー波は大体のプレイヤーが出せるのは当然だろう。そのエネルギーをより高めていくと生物のビジョンだったり自然現象になっていく。そうして出てくるビジョンがその人らしくない……ってことはそうそうないだろう?』

 

「あ、あー? ……確かにそうだな」

 

「はーい! しょご、とらさんみたことあるよー! てけりり」

 

「虎? 動物園に行ったのか?」

 

「ううん? さっかーでみたの! てけりり」

 

「虎か、柄物としてはダメダメ。大阪のおばちゃん受けはいいかもしれないけどね。ウケる幅が狭すぎる」

 

 きゅきゅっ。

 

『必殺技、一度練習してみる?』

 

「おっついにシャイニングトラペゾヘドロン使っちゃう?」

 

「そぉら目潰しだ!!」

 

「ぐっほおああ!? 目が! 目がああああ!!」

 

 部室の床でびったんびったんしているニャルを放置し、一同はグラウンドへ移動する。

 

「儂が付き合うとしようかの。何、遠慮せずとも良い。必殺技の習得となれば本気で練習せねば意味がないからの」

 

 ノーデンスと人間の1対1。この部内でも力の加減が上手い神話生物一二を争う神が相手ならば不慮の事故は起きるはずがない。……まあ、ニャルがちょっかいを出してきたときに備えてクトグアがスタンバってはいるが。

 

「シュートは……無理やりニャルが仕込んだ必殺技があったのぅ……ではブロック技を考える方が良いかの?」

 

 ブロック技、と言われても人間にはなんとかできるビジョンが全く見えていない。相手は神話生物、人間の力が及ぶ存在ではない。ぶつかる前から勝てない、と本能が警鐘を鳴らしている。

 そんな内心が伝わったのか、ノーデンスは心配から顔を歪めた。

 

「むぅ……難しかったかの? まあ初めてじゃからな、基礎練からにした方が良いかもしれんが」

 

「指笛吹いたら? 何か起きるんじゃない? 赤いペンギンが生えてきたりとかさ!」

 

 才能に溢れた人間の顔が苦痛に歪み、選手として使い物にならなくなっていく様がとても楽しかったなあ、あの見世物……と思い出してニヨニヨしている邪神。あの邪神の言うことをそのままするのもアレだが、ブロックできるイメージが浮かばない以上、今は致し方ない。

 

 

 

 

 俺の力になって、なおかつ必殺技をなんとかしてくれる存在、来てください――!

 

 

 ――ピイィーーーーーーッ!

 

 

 

「――わんっ!!」

 

「ティーダ!?」

 

 指笛を聞きつけ駆け寄ってきたのは、家にいるはずのティーダだった。

 

「えっアレの名前ティーダ? 何で? 召喚繋がり? あっそうだ畜生お前竹を家の下に埋めただろ床突き破ってきたぞ竹!」

 

「アロガント・スパークッ!!」

 

「ニャルガァッ!?」

 

 サッカー関係ないことで怪我させるのは超次元的にはあまりよろしくないですが、相手はニャルなので何も問題ありません。

 

「さて、どう来るかの……?」

 

 初めて見る必殺技にワクワクしているノーデンス。攻撃的な必殺技ではなさそうだが、果たして――?

 

 

「わんわんわん!」(相手選手目掛け走る柴犬)

 

「む、ぬおっ!?」

 

「わんわんわんわふっ」(数秒の格闘の後、人間へボールを持ってくる柴犬)

 

「ほう、なんと鮮やかなボール奪い……いや見事」

 

「わんわんわおーん……」(どこかへ消えていく柴犬)

 

 

「てぃ、てぃーだぁぁ!! 待ってー!」

 

「落ち着け、あの犬が来たのは必殺技じゃ! あの犬は必殺技が終わり元いた場所に戻っただけ、落ち着けい!」

 

「家に帰っただけ、本当に……?」

 

「勿論。儂は絶対に嘘はつかぬ」

 

 ひい、ふう、と深呼吸して落ち着きを取り戻した人間。召喚された柴犬、足元に転がるボール。

 

「――よし! この必殺技の名前は『とってこーい!』だ!」

 

 急募、ネーミングセンス。

 

「えっティンダロスコールとかで良くない?」

 

 クトグアが全力で放ったアロガント・スパークを受けても謎の生命力を発揮して生きているニャル。くたばりかけでも玩具がサッカーをしているとなれば首を突っ込むこの強さ。あ、参考にしなくていいです。

 

「……は? ティ……何て?」

 

「いやその犬のしょムグー! ムググー!!」

 

 右からアトラク=ナチャ、左からはヨグ=ソトースに口を塞がれるニャル。

 

「世の中には知らなくていいこともあるってことだよ、人間」

 

「然り、然り」

 

 

 

 

 

 

「あっそうだ! 今日のドリンクは特別製なんですよ!」

 

「ほう? それは楽しみだな」

 

「風の噂で『神のアクア』というブランドものっぽい高級そうなドリンクがあると聞いたので、張り合ってみました! 黄金の蜂蜜酒です!」

 

「や め よ」




おいでよ楽しい屡塁江中学校。
同級生は神話生物だったり狂信者だったりグールだったり深きものだったりする楽しい中学校です。
建築技術はミ=ゴが提供。安心安全!

〜オリジナル必殺技〜
「とってこーい!」
人間の必殺技。かわいい柴犬が鋭角から現れ、相手からボールを奪って人間に渡してくれる。顔が「あそぼ」って言ってる。癒し。ネーミングセンスは柴犬に食べられました。
ごく稀に柴犬のガワを被るの忘れてくる。

〜キャラクター紹介〜
FW クトグア
キレるのはニャルが絡んでくるときだけなので普段は優しいヤンキー。炎系必殺技担当。豪炎寺君をひそかに応援している。そのままニャルを焼き尽くす火力出せるよう頑張れ頑張れ。
本気じゃないクトグアは嫌がるニャルを無理やりド根性バットのバットにしてイライラを発散する。ところでド根性バットは秋葉名戸の必殺技なんだけどおま――(迫り来る炎)


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しょごととらさん

前話にてショゴスの「サッカーで虎を見た」って発言に誰も突っ込まないの謎なんですが。
うん、今回のお話はまあそういうことだ。


 ――今日は土曜日。晴れ。絶好のサッカー日和です。

 

 あのクソ邪神(ニャル)は赤いペンギンが出てくるシュートを使おうとしたら、地面から生えてきたペンギン達が恐怖からブルブル震えてシュート技として使えなかったそうです。ザマァ。

 そういえば、休みの日のショゴスはいつも友達と遊びに出かけるそうだけど、友達って誰なんだろう? 普通の人ならいいけどなあ……。

↑1号、蹴った後のアレが全身のコリをほぐすのにいいかなーと思ってたんだけどね byニャル

 

 

 

 

「おまたせー! とらさん! てけりり!」

 

「あ、しょご君!」

 

 しょごの友達、とらさん。ツンツンした黒髪がバッチリ似合う小学生。背の高さはしょごの方が低いけれど、年齢はしょごの方が高いのです。びっくり! ……あ、人間としての姿での計算ね。てけりり。あれ? 本当の姿で計算したら、しょご、お年寄りになるのかな……?

 

「しょごもおてつだいするの! てけりり」

 

 出前でよく見る銀色のあれ(おかもちって言うんだって。知らなかった!)をよいしょ、と両手にそれぞれ持つ。

 

「えっと、今日の出前はここと、あっちと――」

 

 住所を聞いて準備万端。

 

「いてきまーす! てけりりー!」

 

 二人でわっせわっせと出前配達なのです! てけりりーっ!!

 

 

 

 

 

 ――それはある日、試合が終わってのことだった。

 

 

「すごい、すごいすごいすごーいっ! ぜんこく、いやもしかしたらせかい……そのぐらいすごーいしゅーと!! てけりりっ!!」

 

「え、わ、わぁ!?」

 

 どこからともなく駆け寄ってきたちびっ子に両手を握られ、力強く上下にブンブン振られる。

 ……シュートを褒められる。それは初めてのことだった。普段は使わないと決めていた必殺技。チームの和を乱すから、出来る限り使わないようにしていたが……。もしかしたら、という思いで放ったそれを見た仲間達の反応は、今までと変わらなくて。

 ――自分は、シュートを打つべきではないんだ。

 

「……? だいじょうぶ? てけりり……」

 

「あ、ううん、何でもないよ! これからも応援よろしくね!」

 

 顔に出ていたようだ。慌てて取り繕う。

 

「とらさんすごかったの! いつかしあいできたらいいね! てけりり」

 

 そう言ってどこかへと走り去るちびっ子。しあい……試合? どこの小学校の子なんだろう、と疑問に思ったが……。もし試合をするとしても、その時はもう、シュートを使わないと心に決めた後になるだろう。

 

「……あ、もうこんな時間!? 急いで帰らないと……お先に失礼します!」

 

 身体が弱い母が今も一人で店を回しているだろう。早く手伝いに行かなければ。荷物をざっと纏めて、走り出した。

 

「はっ、はっ……ただい」

 

 ま、と続くはずの言葉は途切れた。だって。

 

「――もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」

 

「さっきの子……?」

 

 つい先程別れた、シュートを褒めてくれたちびっ子がご飯を食べていたから。生姜焼き定食を頼んだらしい。肉、野菜、ご飯、ときれいに三角食べをしている。

 かちゃん、と箸を置いて。お冷を飲んで。

 

「お、い、しーーーーいっ!! てけりり・っ!!」

 

 見ているこっちが嬉しくなるようないい食べっぷりだ。

 

「あっ、とらさんだ!? ここ、とらさんのおかあさんのおみせだったの!? てけりり!?」

 

 偶然、なんだろう。多分。名前でこの店に惹かれたのかもしれないが。

 

「とらさんのさっかーすごかったの! ほんっとうにすごかった! てけりりー」

 

 ありがとうねえ、と母がお礼を言う。……自分に対してだけなら何とも思わないが、こう、母親にも言われるとなると……恥ずかしい!

 

「虎丸、この子、サッカー友達なの? お手伝いは大丈夫よ、今はお客さんそこまで入ってきてないから。母さん、練習相手がいない、って悩んでたの知ってるんだから」

 

「っ」

 

「あいてがいない、の? てけりり……」

 

 彼はあの試合を見た。シュートを、見た。だから誤魔化しは効かないだろう。

 自分と、他人ではレベルが違う。全力を出したら一人だけでサッカーをすることになってしまう。そうなったら、嫌悪の視線が、ずっと、付き纏う。

 

「……おそと、いく? てけりり」

 

 だから、その誘いを断ることはできなかった。

 

「…………」

 

 ぽん、ぽん、と軽くパスを続ける。時たまに全力を出したりもするが、それも難なく拾っていく。

 自分の全力についていけるこの子は間違いなく強い。それでもって、この子に対しては隠し事が出来ない、そんな気配がする子。ぽつり、ぽつりと言葉をこぼすのも仕方ないことだった。

 

「とらさん、つらくない……? てけりり」

 

「……うん」

 

 本当はシュートを打ちたい。全力を出したい。でもそうすると、皆に迷惑をかけるから。……自分が、皆と違うから。

 

「ずっと、ぎゅーってしてるとつかれちゃうの。てけりり。だからこうしてどっかーん! もたいせつなの! てけりり!」

 

 そう言うとしょご君はサッカーボールをこっちに渡して、距離をとって。

 

「だからしょごにおもいっきりぶつけるといいの! しょごはつよいからだいじょうぶなの! てけりり!」

 

「え、でもっ」

 

 その小さな身体で受け止められるはずがない。このシュートは、自分より体格の大きい相手でも吹き飛ばせる威力がある。

 

「しょご、じつはこうみえてとっぷくらすのDFなのです。せかいにでてもまけません。ふふん。てけりり」

 

 世界、と言われても信じられない。確かに彼が強いのは分かる。が、そのレベルにまで達しているかなんて自分には分からない。よくある誇張表現だろう。

 

「……むー、あまりこういうのとくいじゃないんだけど、やるしかないのかなあ……とらさんのよわむし! へっぽこ! いくじなしー! そんなんだとさっかーするしかくなんてないぞー! おかあさんに『とらくんはだめなこ』っていっちゃうぞー! てけりり!!」

 

 罵倒に慣れていないのが丸わかりだ。呟きが丸聞こえだったし。どうやらしょご君はどうしてもシュートを打たせたいらしい。

 

 ……なら、やってやる。そしてこれが、この必殺技を使う本当の最後になる。

 

「タイガー……ドライブッ!!!!」

 

 

 ――虎が、吠えた。

 

 

 

 

 

 

「……なんてこともあったねえ、せいしゅんだねえ。てけりり」

 

「って、しょご君! あの時のこと思い出させるの、恥ずかしいからやめて欲しいんだけど!」

 

 あんなこともあったけど、今ではすっかりお友達。しかも店のお手伝いもしてくれる。

 

 

 ――そう、あの時のタイガードライブは、彼に受け止められた。そしてこう言われた。

 

『いまでもすごいけど、もっとれんしゅうしたら、もっともーっとすごくできるの! しょごがれんしゅういっしょにするの! しょごはたのしい! とらさんはぜんりょくだせるの! これってうぃんうぃんってやつ……であってる? てけりり?』

 

 ――ああ、あの時が一番サッカーをして楽しいと思えた瞬間になるんだろう。

 

 

 ……まあ、実は彼が中学生だってことには驚いたけど。

 しょご君の中学校にはしょご君よりも強い人がゴロゴロいるらしい。あれだけ実力者が複数いて、フットボールフロンティアに出場したことがないってのは今も気になってるけど……。

 

「これからもよろしくね、しょご君!」

 

「こっちこそ、なの! とらくん! てけりりっ!」

 

 

 宇都宮虎丸は、今日もサッカーを楽しんでいます。




ニャル「全身マッサージよろしくお願いねー」

皇帝ペンギン「やだ……人間の姿の邪神にダメージ与えて体力0にしちゃったら本体でてきア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」

禁断の技とはつまりそういう意味だった……?

ニャル→(宇宙に存在する殆どの)生物に嫌われる
人間→(神話)生物に好かれる


とらくんで何となく分かった人もいるだろうけどそういうことでした。そりゃ練習相手がアレなら小学生でも世界行ける強さになりますわぁ……。
原作の響さんシュート使わないって言ってる彼の情報どこから掴んだのか謎なんだけど。

〜オリジナル必殺技〜
「窮極の門」
ヨグ=ソトースの本気技。ボールとともに異次元へ消え、ボールを蹴るとKPの背後にボールが出現する。
なおデザーム様もといオサーム様の使用する必殺技のグングニルと違い、異次元からシュートしているのではなく蹴った瞬間にゴールに入っている(瞬間移動させている)ので防ぎようがない。
……シュートってなんだっけ?


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