変人と夢見るガールズバンド達 (ハルカ)
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変人は歌姫を見つけた

なんとなく思い付きで書きました。今頃感あるかな?まあ映画あったし大丈夫でしょう!

それではどうぞ!!

ユーザーページ切ってるのはお許しを


 思春期症候群、それはネットを中心に都市伝説として話題なってなっているもののためこの言葉を知っている人はよっぽどの物知りだろう。

 

 「誰かと人格が入れ替わっていた」「他人の声が聞こえる」など不思議な現象が起きると言われており、精神科医などには多感な思春期の心が見せる思い込みだと言われている。

 

 が、相手にする人もあまりおらず相談すればすぐにパニック症候群や集団催眠なども言われる。

 

 また聞く相手が悪ければ「それは神の声だ」など「あんたは呪われている!」など言ってさらに発症者を追い詰めているのが現実なのだ。

 

 前に一度こんなことがネットに書き込まれた。

 

 「何もしてないのに急に切り傷のようなものが最近出てくるようになりました。これは思春期症候群なのでしょうか?」

 

 某有名なサイトの質問箱だ。投稿者は本当に気にして書き込んだのだろう。

 

 だけど結果は残酷

 

「思春期症候群?あんなの信じてるやつ本当にいたんだwwww」

「てかそれってリスカじゃね?なに?病んでるアピールですか?wwww」

 

 そう、一人も真面目に答えてあげない、思春期症候群はもう完全な都市伝説となっているのだ。

 

 しかしこのような質問箱をする時点で少なからず本当である、って可能性はあるはずだ。だけどそれはもう違う、現実が、この世界が思春期症候群って言葉を信じていないのだ。

 

 

 

 

 

 

「そんな簡単に片付けられてたまるかっての」

 

 普通の一般人の部屋…と言うのだろうか、ベットと勉強机、本棚には訳のわからない本がずらーっと並んでいてぎゅうぎゅうになっていた。パッと見だがもう入る本はないのだろう。

 

「ネットは見てると憂鬱になるもんだな」

 

 携帯の画面を消し部屋のカーテンを開け太陽の日差しがその普通の部屋を照らしてる。

 

「おいおい太陽さんよ、いくら仲がいいからって俺に会えて喜びすぎだろ」

 

 少年は太陽に向かってそう言っていた。

 

 そう、このわけのわからないことを言う変人、彼がこの物語の主人公である。

 

「若宮愛世(あいせ)、俺よー日曜になんでこんな早く起きるんだー?」

 

 本人は早いと言っているが時刻は10時過ぎ、もう昼前の時間時だ。

 

 リビングに行きパンをトースターで焼きバターを塗って牛乳を片手にパンを食べる。その時はテレビをつけ昼前のアイドルバンドが出演しているバラエティー番組を見ていた。

 

「こいつ知ってんだよなー」

 

 牛乳を一気に飲み干しまたわけのわからないことを言っていた、本人は変だと思ってないのだろうか

 

「あ、そう言えば漫画の新刊が今日発売だったな……買いいくか」

 

 珍しいく外出の準備を進める愛世なのであった。

 

「携帯持った、万札1枚持った、よし」

「あれー?兄者おはよございますー今日は早いんですねー」

「俺の可愛い妹よ、あまり遅起きはしない方がいいぞ?」

「兄者の方こそいつもおそようですー」

 

 妹は寝ぼけているまま洗面所へと向かっていく、無理もない昨日も夜遅くまで撮影(・・)をしており帰ってきたのは愛世が既に夢の中にいる時だ。

 

 顔を洗いサッパリしたところで妹は兄の愛世に質問をした。

 

「兄者は今からどこへ?」

「ふっ、旅を探す旅に出るのさ」

「意味不明、です」

 

 妹はそう答え愛世にいってらっしゃいの合図であるかのように手を振ってリビングの中に入っていた。

 

「妹からのいってらっしゃい、これがあるとないとじゃ全然違うな」

 

 家から出た愛世は真っ先に本屋へと向かう。旅を探す旅とは一体なんだったのだろうか、本屋なんて歩いてすぐのところにあるのだから旅、なんて言えたもんじゃない

 

「あれ、新刊置かれてないのか」

「すみません、この漫画なんですけど…」

 

 漫画の1巻を手に取り近くにいた店員さんに新刊は入荷してないか聞いてみると

 

「あ、その作品あまり人気なくて売れないんですよーそこに残ってる在庫が売れるともうなくなりますね」

「おいおい作者さん、いや作者様可哀想だろ」

 

 漫画家なんて楽な仕事じゃない、連載漫画になると毎週締切に焦られ大変なはずだ。頑張って書いた作品を人気がないから、その一言で取り扱わない店舗はこんな小さな店舗では多くあることだ。

 

「はあー都内の大型の本屋に行くか」

 

 よろこべ愛世、これを気に旅を探す旅に出れるのだからな

 

「って人多いな」

 

 それもそのはずか、今日は日曜日つまりの所休みのため出かける人が多い

 

 久しぶりに外を出歩くがこんな小さな駅でもこの人数、都内だともっと人がいるんだろうな

 

 電車に乗るが座れることなんてない、乗った時から席は埋まっているため強制的に立たされる、まあ、乗れないよりかわましだ。

 

 そして都内につくと相変わらず人は沢山いる。周りを見渡せば人、近くを見れば人、立ち止まってる暇なのど許されずずっーと歩いて駅の出口を目指す。

 

「いて、足踏まれたし」

 

 これがこの都会では日常茶飯事だ。

 

「さて本屋本屋〜」

 

 都内の大型本屋ならば望んでいる新刊だって買えるだろう。さっきの店舗見たく人気がないから、で片付けられている可能性はかなり低いのだからな

 

「♪〜♪」

「なんだ、この歌?」

 

 街中のど真ん中から急に歌が聞こえ始めた。辺りを見渡すが誰も反応をしていない

 

「俺の空耳か?……いや違うな」

 

 その後もずっと歌は聞こえてる。俺が聞こえている、なら周りの人達も聞こえているはずだ。

 

「ちょっと通りまーす」

 

 人混みの中進行方向とは逆向きに歩きみんなの邪魔をしている愛世、だけどそれはわざとではない、歌が聞こえる方に向かっているのだ。

 

「見つけた」

 

 その人は綺麗な銀髪だった。透き通る声は俺の耳に入り体に、心に響いてくるなんの混じりっけもない純粋に綺麗な歌声

 

 なのに周りの人達は何も反応をしない、何故だ?こんなにも素晴らしい歌声なのに

 

「ねえ君」

「あ?なに?」

「歌、聞こえてるよね?」

「は?お前何言ってんの?頭大丈夫か?ガイジがよ」

「いやこの歌が聞こえないお前がガイジだ」

 

 話しかけた人が悪かった。ガラの悪い服装をしている女性なんかに聞かずあそこにいる男の子にでも話しかければよかったとな、これが後悔ってやつだ

 

「もうそんなやつほっとこうぜ?」

「チッ、ネットに書き込んでやる」

「やめとけガイジがバレるぞ」

「んだとて「もーいいって!そんなやつほっといて早くタピオカ飲みに行こうよ!」……おう」

 

 どうやらやっと消えたみたいだな、こっちから話しかけていたがあいつはガイジのようだな?

 

 少し嫌なことがあるとすぐネットに書く、いいことがあるとネットに書く、この世界はもう友達だけに報告するって概念が無くなったのか?

 

「にしてもすげー歌声だな」

 

 彼女の方を振り向くとまだ歌っていた、がどうやら終盤のようだな

 

 楽しいと思った時間はすぐに過ぎ去ってしまう。逆に嫌なことは、いや考えなくていいな

 

「………………」

 

 歌い終わった彼女はあたりを見渡し分かったかのような反応をしていた。

 

「いや凄かったよー」

「ッ!あ、あなた聞こえていたの?」

「?はい、凄い、えっとお金払えばいいのかな?」

 

 こうゆう路上ライブってのは聴き終わった後は金を払うものだろ?多分

 

「あちゃーすみません、万札しかないのでこれでいいですか?」

「……別に、お金なんていらないわよ」

「なんで?」

「私が好きで歌ったからよ」

 

 これは物好きがいたもんだなー

 

「こんな町中で?どうゆう心理なんですか?」

「一度歌いたかったのよ、もういいでしょ帰るからどいて」

「金払って「いらない」……」

 

 そう言って彼女は人混みの中へ姿を消したのであった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 いやーさっきの路上ライブは凄かった、なのに誰も聞いてないなんて一体どんな頭してるんだ?

 

 と言うが愛世自身が変人である。

 

「新刊……あった、いやーよかったよかった」

 

 流石大型本屋、ちゃんと人気がなくても新刊置いてるな、もう今度から少し遠いがこちらの本屋に通うようにするか

 

 「今をときめくガールズバンド!その中でも高い技術を持つ本格バンドRoselia!そのCDが現在発売中!皆さん一度手に取ってみては!?」

 

 店内に流れる広告がそんなことを言っていたな、本屋だがCDも売っているためそのような広告が流れるのだろう。

 

「CDって音録音して声加工して上手く歌っているようにしてるだけだろ」

 

 そんなことを言うがCDショップに足を運んでしまう。

 

「だいたいいい歌声ってのは今日の彼女みたいな人を言うんだよ……ん?」

 

 横を見ると彼女達、そのRoselia?の等身大パネルが店内に置かれていた。

 

 横を見てみると先程町中で歌を歌っていた彼女にそっくりさんがそこにいる、いやそっくりじゃない彼女本人なのだろう

 

「へーあの人Roseliaって言うバンドのボーカルか、だから上手かったのか」

 

 一人で彼女の等身大パネルを見つめながらぶつくさ言っていると

 

「なあなあ!今日町中で湊友希那(・・・・)いたよな!」

「ああ!遠くから見てたけどなんか口動かしてたよな?何してたんだろう!」

 

 いや何してたって歌ってたんじゃないのか?現に俺は聞いてたし

 

「歌ってたよ」

「え!?ま、まじで!?」

「湊友希那ってこの人だろ?歌ってたよ、聴いてないのか?」

 

 等身大パネルに指を指してそう言うとRoseliaのファンの彼らは

 

「それ本当かよー!いや聴けばよかった!」

「確かにそうだが俺達にはCDもあるし音楽アプリもある!いつでも聴けるぜ!」

「それはよかったな」

 

 CDを聴く?あんな加工された声聴くより

 

「また本物の歌声聴きたいな」

 

 そうだ、妹に聞こう。あいつもガールズバンドだし?多分知ってるだろ

 

「待ってろよ、妹よー」

 

 本屋を後にして来た道を戻り家を目指す愛世だった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「ただいま妹よー」

「兄者!おかえりです!」

「今日は早くご飯を作ったんですよ!」

「そうか、てか仕事は?」

 

 妹はアイドルバンドに所属しており写真のモデルとしてもかなりの有名な人

 

 若宮イヴ、それが俺の双子の妹(・・・・)だ。

 

「兄者!本日は何があるか知ってますか?」

「まさか俺の誕生日?」

「兄者の誕生日は私と同じです」

「なんだ誕生日じゃないのかー」

 

 俺は誕生日のつもりだったがイヴがそう思ってるのなら違うんだな

 

「今日は日本の歴史!戦国武将スペシャル番組がありますよ!」

「…………イヴは本当に日本が大好きなんだな」

「はい!日本万歳です!」

「うん、それ使い方違う」

 

 スペシャル番組を見るために仕事のスケジュールを調整するとか流石俺の妹、いやすげーや

 

「でもなイヴ?我が家はお前の稼ぎがないと破綻してしまうんだ」

 

 そう、この男クズでもある

 

「?兄者も働いているじゃないですか?」

「俺とイヴの収入の差はすごいんだぞー」

 

 完全に兄ちゃん顔負けだっての

 

「あ!そろそろご飯が炊けますよ!今日はカレーです!」

「そこは和食じゃないんだな」

 

 本当に日本が大好きなのか少し疑いたくなってきたかもしれないな

 

『いただきます』

「さあ兄者!食べてみてください!」

「ごちそうさまでした」

「兄者ーちゃんと食べてくださいよおー!」

「はいはい食べるって、イヴは本当に可愛いなー」

「もーう!兄者に料理作りませんよ?」

「それは困る、この家の料理担当はイヴなんだから」

 

 と言うが最近イヴは仕事が忙しく帰ってくるのが遅いからコンビニ弁当や残り物の料理とかになってしまう。

 

 俺はバイトの賄いがあるからイヴがいない時はそれで済ましている

 

「兄者も料理をするべきです、いつまで経ってもそんなんじゃ一人暮らしできませんよ?」

「俺はイヴより可愛い奥さん見つけるんだよー」

「そ、それはダメです!イヴより少し低い人を探してください!」

「そう簡単に見つからないって」

 

 イヴとはいつもこんな感じで話をして食事をする。ああ、両親はそのままフィンランドの家に居るんだ。

 

 日本に来た理由は、まあイヴがこれだしな?

 

「はっ!早くしないと番組を見逃してしまいます!善は急げ!です!」

「……そうだな」

 

 珍しく意味が当てはまったな

 

「す、凄いです!ノブナガにこんなできごとがあったなんて!」

「イヴは本当に戦国武将好きだな」

「はい!ブシドーを学ぶためにはまず戦国武将を学ばなければなりません!」

「そうか」

 

 イヴに湊友希那について色々話を聞こうとしたが無理そうだな、興奮して収まってくれる様子がないしな

 

「ふぅー凄く面白かったです!兄者!録画してるのでもう一回見ましょう!」

「明日学校だろ?夜更かししたら起きれなくなるぞー」

「ええーん、背に腹はかえられない、です…」

 

 四字熟語を使いたがるイヴなのであった。

 

「湊友希那、か…」

「俺の親友のあいつなら知ってるのかな?」

 

 愛世は一人部屋に戻りそう呟いた。

 

「あの歌なんでみんなには聞こえていなかったんだ?」

 

 その謎が頭の中にずーっと残りその日は心地よく眠ることは出来なかったのであった。

 

 

 愛世が思春期症候群の向き合っていく話の最初ヒロインである湊友希那、彼女にどんなことが起きているのか愛世は後から知るのであった。




今回は試しなんでここまでで、感想とか評価とかつけば書きます!まあなくても書くと思いますが…メインの方の話も書くから遅いと思いますが(笑)

いろんな詳しい話は今後書きます

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いします!

それでは次回の話でまたお会いしましょう!


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変人と歌姫の秘密

続きです。それではどうぞ!!


 朝、イヴが剣道部の朝練があるためいつも早く起きて一緒に途中まで登校する。

 

 イヴは花咲女子学園、俺は羽丘学園、兄妹だが通ってる高校が違う。俺が花咲女子学園なんて通えるわけないだろ?男なんだからさ

 

 イヴは

 

「兄者と同じ高校に行きます!」

「でもなーイヴは日本史以外あんまり成績良くねーしな」

「うう、が、頑張ります!」

「家では同じなんだし学校は違ってもいいだろ?」

「愛別離苦、です」

 

 そこまでは重くないだろ学校違うだけなんだから

 

「兄者!行ってきます!」

「おーう今日は迎えいくからなー」

「押忍!」

 

 イヴは走って剣道場へと向かって行きそれを見届けて俺は羽丘学園へと向かう。

 

 教室に着くが生徒なんておらず俺一人だ。昨日買った漫画を読みながら時間を潰していると

 

「おはよー」

「よーおはよう蘭さんや」

「はい、おはよー」

 

 蘭は俺の隣の席に座る。だってそこが蘭の席なのだから

 

「あんたいつも朝早いよね」

「イヴの朝練と合わせてるからな」

「……あんたとイブ全然似てない」

「そう真顔で言われるとキツイなー」

 

 確かに否定はしない、それには一応理由(・・)があるからな

 

「その漫画、全然人気ないやつじゃん」

「お前までそんなこと言うのかよ」

「な、なんで?」

「漫画家様だって頑張って書いてんだよ、そんなのを面白くないとかネットに書き込んで…そのせいで周りの人達が面白くないって決めつけるんだよ」

 

 実際そうだ。例えば新作のゼリーが発売されたとしよう。そのゼリーを食べて美味しいとネットに書き込めば?それがバズったら?

 

 その商品は人気が出てみんなの手に届く

 

 けど逆に不味いって書き込みがあれば?みんなはそれを見て不味いなら買わなくていいや、って考えになるんだよこの世の中は

 

「てなわけですよ」

「……あ、ごめん、話聞いてなかった」

「やるなーさすが俺の親友」

「あんたと親友なんて死んでもごめんだね」

「シンプルにキツイなー」

 

 俺の数少ない友達だけど親友にはなれないのか

 

「それにあたしにはみんながいるし」

「あー仲良し5人集団?」

「違うAfterglowだって何度も言ってるでしょ?」

「……あ、聞いてなかった」

「ッ!うっざ!」

 

 何言うかさっきの仕返しだよ

 

「あんたも巴とひまりとバイト先同じでしょ?」

「あの二人は仕事以外で話さねーな、てか俺に話しかけるとか罰ゲームか何かで決めてんだよ」

「何それ、笑う」

 

 こんな俺に話しかけてくれる物好きは蘭ぐらいだろ、実際学校で話すのは蘭のぐらいだし?

 

「そんなんだから友達できないんだよ」

「友達は沢山いるぞ」

「だれ?」

「えーと、太陽君に自販機君、男子便所君にあとは先生と蘭、わー5人もいて嬉しいな」

「人って数えていいのはあたしと先生だけだよ」

「友達だからいいんだよ」

 

 イヴは妹だから友達じゃないぞ?家族だから数えていない、友達なんて数人いるだけで何とかなるし?イヴもいるから死にはしないさ

 

「そーゆう蘭も4人だけだろ?」

「うっさい」

「……あっそ」

 

 蘭と仲良くなったのは隣の席だったことが一番の理由だな、まあ本当はいろいろあるが話さなくてもいいだろ

 

「みんなと離れたのは寂しいよ」

「俺と同じクラスになれて嬉しくないの?」

「あんたとなれて喜ぶと思う?」

「だからシンプルに傷つくなー」

「ふふ、自覚はあるよ」

 

 蘭とのこんなやり取りは日常になるほど結構朝は話している。

 

「蘭〜おはよー」

 

 眠くなりそうな声で蘭のことを呼ぶ仲良し集団のメンツことAfterglow、この人達が来たらタイムオーバー

 

「よっこらせっと」

「どこ行くの?」

「ちょっと親友の男子便所君に挨拶さ」

『……………………』

「あっそ、話せれるといいね」

「今日こそ口を開かせてやる」

 

 愛世は訳の分からないことを言って席を外し親友がいる男子トイレに向かって行った。

 

「あはは、相変わらず愛世君は面白いね」

「つぐみ無理しなくていいから」

「またまた〜蘭は気になってるくせにー」

「なわけない、あんなやつただの友達」

 

 そんな会話をするAfterglowのメンツだった。

 

 

「あ、湊友希那について聞くの忘れてた」

 

 まあいいか親友に聞こう。

 

「なあ親友、お前湊友希那って知ってる?」

「……………………」

「だよなー男子トイレから出れないお前が女子のことなんて知らないよなー」

 

 口を開くわけのない男子便所に話しかけ自分で勝手に納得する訳のわからない行動をする愛世であった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 先程言ったと思うが俺には蘭以外にも友達がいる。

 

「先生ー会いに来ました」

「若宮…お前は入口の関係者以外立ち入り禁止の文字が読めないのか?」

「読めますが関係者なので入りました」

「はあー何もないぞ」

「ちょっと聞きたいことがありまして」

 

 この人は日笠(ひかさ)一香(いちか)先生、1年と2年の理科担当の先生だ。先生とは気が合い昼休み俺の話し相手にもなってくれる優しい先生だ。

 

「なんだー?テスト範囲ならそのうち教えるから待っとけ」

 

 そう言うと先生はタバコに火をつけ吸い始めた。今の時代iQOSとかあると思うがそんなものは使わず紙タバコを普通に吸っていた。

 

「違いますよ別件です」

「……ふぅーその別件って?」

「湊友希那、って知ってますか?」

「ああ知ってる、なんせうちの生徒だし今年は副担担当のクラスにいるな」

 

 これは驚いた、同じ学校だったのか

 

「声聞こえましたか?」

「?今日当てた時は答えたぞ」

「なんて?」

「わかりませんって」

 

 聞こえてる?でもこないだの町中での件は周りに聞こえてない雰囲気だった。なんなら聞こえない人もいた。

 

「あの時俺だけ聞こえていた?」

「さっきからなんの話をしてるんだよ」

「いえこないだ湊友希那の声が聞こえてないという奴らが、てかみんながきこえないそぶりをしててですね」

「ほう」

「俺だけに聞こえてる感じだったんですよ」

「……へー」

 

 先生は口から白い煙を吐き捨て俺の話を適当に流す。

 

「俺思うんすよ」

「思春期症候群だって?」

「はい」

 

 これは明らかにおかしいだろ、あの時は俺だけに聞こえていこと、でもこちらでは聞こえている…こんな謎なことあるのか?

 

「本人に確認したのか?」

「してないです、多分あっちは俺のこと忘れてますよ」

「だったらもう気にするな気にするだけ意味が無いからな」

「そうゆうものなんですかね」

「そうゆうものだ、ほら」

 

 先生はポケットから100円玉を取り出し俺に投げてきた。一体なんのつもりなのだろうか

 

「小遣いやるから早く出てけ」

「やったーこれで友達と会話できます」

「……早く行け」

 

 理科準備室から出て行き友達である自販機君の元に向かう。

 

「よー今日も外にいて暑そうだな」

「……………………」

「なに?中は涼しい?飲み物冷やすから?当たり前だろ」

 

 100円入れ微糖の缶コーヒーを買う。すぐに戻ろうとするが隣に目を向けると

 

「じゃあ俺このジュース押すなー!」

「じゃあこれ!」

「俺はこれに人生の全てをかける!」

「よーし!金入れるぞ!」

 

 あれだ、金入れて誰の選んだジュースが選ばれるのか競う無意味なやつだ。その後ろを見てみると

 

 そこにはあの時の彼女が腕を組んで待っていた。

 

「(湊友希那だ、本当に学校にいたのか)」

 

 湊友希那は少し不機嫌そうな顔をしてずーと後ろで待っている。

 

「なああんたらさそんなのガキみたいなことして楽しいのか?」

「ああん?なんだお前」

「ほらあれだよ、自己紹介で変な事言ってた変人だよ」

「んだよまだ学校やめてなかったのかよ」

 

 自己紹介?あああれかそんなことをまだ覚えてたのか、どうでもいいことはすぐに忘れるのがお得意ような顔をしてるんだが…なんで覚えているのだろうか

 

 その後湊友希那は自販機にお金を入れコーヒーを買っていた。

 

「……あなたこないだの人よね」

「覚えてくれてたんですか?嬉しいです」

「まさか同じ学校だったとは思わなかったわ」

「奇遇ですね、俺もです」

 

 俺達は自販機の前で話しておりさっきのヤツらと同じようなもののため

 

「すみません少し話してもいいですか?」

「……昼休み終わるまでならいいわよ」

「やったーありがとうございます」

 

 湊友希那、いや友希那さんと呼ぼう。友希那さんと歩いて中庭のベンチにて話をしていた。

 

「ひとついいかしら?」

「なんですか?」

「あなたは私のことを知っていても私はあなたのこと知らないわ」

「……つまり自己紹介をしろと?」

「ええ、そうね」

 

 自己紹介、ねー

 

「どうも若宮イヴです」

「……若宮さんは女性よ」

「やっぱりイヴのこと知ってましたか」

「?」

「どうもイヴの兄若宮愛世です」

「それは本当?」

「はい」

 

まあ疑われても仕方がない、蘭にも言われたが俺達はそんなに似てないからな

 

「じゃあ愛世」

「いきなり名前呼び、ありがとうございます」

「若宮さんが2人となると名前で呼ぶわ」

「そー言われると傷つくなー」

 

 自己紹介も終わったところで本題に入ろう

 

「友希那さんあの時歌ってましたよね?」

「……ええ」

「周りの人達に聞いたら聴こえないって言ってたんですよ」

「でも愛世には聞こえていた」

「はい」

 

友希那さんはため息をついて俺に話をしてくれた。

 

「私の声が聞こえてないみたいなのよ」

「……ッ!それはいつから?」

「多分先週からね…」

 

 そこから友希那さんは先週の出来事をわかりやすく話してくれた。

 

「すみません、携帯を落としたのですが届いていませんか?」

 

 都内の駅にて携帯を落とした友希那さんは駅員さんにそう質問したらしい

 

「………………」

「すみません携帯届いていませんか?」

「…………?なに?」

「だから携帯届いていませんか?」

「え?なんて?」

「ッ!だから!携帯!届いていませんか?」

 

「えー叫んだんですか?」

「ええ、喉が痛くなったわ」

 

 その後駅員さんは席を外し戻ってきた時には

 

「君声が出ないんだね…気付かずに済まなかった、メモ用紙持ってきたからこれに要件書いて」

「私は喋れるわ」

「んーやっぱり聞こえないねー口は動いてるんだけど」

 

「何度も話しかけても聞こえない、さすがにおかしいと思ったわ」

「まあそうですよね」

 

 こっちは話してるのに聞こえていない、もし俺がその立場だったら怖くなるな

 

「……携帯?届いてーないみたいだね」

「そうですか、ありがとうございました」ペコリ

 

 携帯は見つからなかったがそのまま用事でとある場所に向かったらしい

 

「その場所って?」

「猫カフェよ」

「……可愛いですね」

「う、うるさいわね」

 

 友希那さんは頬を少し赤くしてそっぽを向く、うんすげー可愛い

 

「いらっしゃいませ!お好きな席へどうぞー」

 

 席に座りコーヒーを頼もうとして店員を呼んだ。

 

「すみません注文いいかしら」

「………………」

「すみません注文いいかしら!」

 

「また叫んだんですか?」

「喉が痛かったのは内緒よ」

 

 痛かったんですね

 

「……すみません」

 

 諦めた友希那さんは店員の元に向かい直接話すことを試みたようだ。

 

「注文いいかしら?」

「………………?どういたしました?」

「注文…」

「ッ!お客様申し訳ございません!こちらがお気づき出来ませんでした…!声に障害をお持ちだと気付けず申し訳ございません!」

「(なんなのかしら、これ…)」

 

 その後はメニューに指をさしながら店員に伝え飲み物は飲めたようだ。

 

「でもひとつだけ違ったのよ」

「?」

 

 話を聞くと猫ににゃーんと鳴いたら猫は返事でもするかのようににゃんと鳴いてくれたようだ。

 

「これは一体どうゆうことなのかしら?」

「人間には聞こえず動物には聞こえてると?」

「だとしたら愛世は人間じゃないのね」

「まじですか、俺いつの間に人間やめてたんですかね」

「まだ続きがあるの」

 

 猫カフェを後にした友希那さんは

 

「試したいと思ったの、本当に私の声が聞こえないのか…だから叫んだの」

「なんて?」

 

「にゃーーーーーんって」

 

「可愛いです、もう一回言ってください」

「い、言わないわよ」

「で、周りの反応は?」

「もちろん反応してないわ、だから私は」

「その日で周りに声が聞こえないと察した」

「そう、でもおかしいのよここ(・・)は聞こえてみたいなの」

 

 ここは?つまり学校?それとも自分が住んでる地域のこと?だったらつまり

 

「都内の人だけに聞こえていない?」

「今のところはそうね」

 

 その言い方だとこっちでも声が聞こえなくなってしまうって言い方だよな

 

「病院には行きましたか?」

「言ったわ、けどまともに相手なんかしてくれなかったわ」

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 昼休み終了を知らせるチャイムが学校に鳴り響く、このチャイムが鳴れば昼休みは終わり、つまり午後の授業が始まる。

 

「友希那さん…それって思春期症候群じゃ」

 

 横を見ると友希那さんはもうおらず遠くの方にいた。席を外すならせめて何か言って欲しかったな

 

「あ、俺のコーヒー持って行ってるし」

 

 隣に置いていたコーヒーはどうやら友希那さんに持っていかれていたようだ。午後はこのコーヒーを飲まないときついから乗り越えれないんだよなー

 

 授業開始ギリギリに戻る愛世だった。

 

 

「友希那ーそのコーヒーどうしたの?」

「リサ、そうね、手元にあったから持ってきたの」

「それって……大丈夫なの?」

「愛世のだから大丈夫よ」

「????」

 

 リサは友希那から男の名前が出て少し同様をしたが気の所為だろうといいきかせ授業を受けていた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 放課後、俺は部活なんて入っていないためすぐに帰る。今日はバイトも休みだ、そしてイヴの迎えに行かないといけない

 

「あんた今日暇?」

「イヴの迎えに行くという重要任務がある」

「そっか、ならいいや、また明日」

「おう、また明日」

 

 蘭から話しかけられこのあとの用事を伝えると蘭はAfterglowのメンツと一緒に教室をあとにした。

 

「さて俺もイヴのところ行くか」

 

 帰りの準備をして生徒玄関へ向かう。靴を取りスリッパを入れてイヴのいる花咲に向かうその途中友希那さんを見かけた。

 

「友希那さーん、俺のコーヒー奪ったでしょ」

「……なんのことかしら?」

「俺コーヒー飲まないと午後やっていけないのに…そのせいで爆睡して怒られましたよ」

「それはあなたが悪いわ」

「コーヒーを奪った友希那さんが悪いですよ」

 

 ここまで話してて気づいた。隣に誰かいる、友達と帰っていたのだろうか?でも話に入ってこようとしないなら話を続けてもいいのだろうか?

 

「……愛世、あなたのコーヒーはとても美味しくいただいたわ」

「素直に言えばいいんですよ」

 

 どっちみち先生から貰ったお小遣いだし、無料みたいなもんだからいいけど…そのせいで怒られたのは、もういいや

 

「友希那さん話があるんですけど」

「この後は用事があるわ」

「じゃあその後は?」

「……その後ならいいけど」

「やったーじゃあどこで待っとけばいいですか?」

 

 なんか話が綺麗に進むな、少し綺麗に進みすぎて怖いんだけど大丈夫…だよな?

 

「ライブハウスに来てくれるかしら?そこで話をしましょう…私も、そのあなたが言いかけたこと気になるわ」

「……わかりましたーイヴに場所聞けば大丈夫ですか?」

「ええそうね」

 

 通りで話が上手く進むわけだ。友希那さん本人も気にしてたんだな、しかも俺が言いかけた思春期症候群について、というか俺は最後まで話したけど途中でいなくなったんだけどな

 

 お互い方向が違うためそれぞれの帰り道に進む、俺は花咲、友希那さんはライブハウス、だからイヴのお迎えいって家帰ってゴロゴロして行けば丁度いい時間だな

 

「友希那ーあれが愛世君?」

「ええ、そうよ?」

「実はモカから聞いたんだけど…」

「?」

 

 2人は愛世の話をしながらライブハウスに向かった。

 

 

 

 花咲に着くもイヴの姿は見当たらない、まだHRが終わってないのか?

 

 あー早く来いよイヴのやつー兄ちゃんお前がいないと悲しくて泣くぞ、てかもうイヴさえ入れば生きていけるんじゃね?

 

「………………」

 

 そんなことを考えている愛世を見つめる黒髪で肩まで髪を伸ばしている女子生徒

 

「……なんだ不審者じゃないぞー」

「そんなのわかってますよ、若宮さんならそろそろ来ると思うよ」

「?わかった」

 

 その後生徒は一人で歩いて帰ってる途中

 

「美咲ー!!待て待てー!」

「え!?こ、こころ!先行ったんじゃないの?」

「お手洗いに行ってたわ!」

「そ、そんなことを大声で言わないの」

 

 下品な子だな

 

「ッ!こころは下品な子なんかじゃありませんから!」

「ッ!?お、おう」

 

 な、なんだあの人?俺顔にでも出てたのかな?

 

「兄者ー!!!」

「グハッ!!い、イヴー抱きつくのはいいがもっと優しく」

「ハグハグ〜」

 

 一度抱きつけばなかなか離れない、これが俺の妹イヴなのだ。

 

「今日仕事だろ?一旦家帰って準備するぞ」

「はい!」

 

 家に帰りイヴは仕事の準備をする。そのまま行かないのか?って思うやつもいると思うがイヴが俺と帰りたいと言って一旦家に帰るようにしてるんだ。

 

「イヴーライブハウスCiRCLEの場所教えてくれ」

「だったら後で兄者にメッセージ送ります!」

「助かるよイヴ」

「では!戦に参ります!」

「仕事頑張れよー」

 

 イヴは勢いよく外に出ていき仕事場である都内へと向かって行った。

 

「さてとまだ時間あるしイヴのためにご飯でも作っておくか」

 

 エプロンをつけ料理をして時間を潰す愛世だった。




次回は愛世のこととイブのことを書きます!

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

それではまた次回の話でお会いしましょう!


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