GJ部の傍観者〜紅茶風味〜 (橘田 露草)
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ネクタイ

ぐっじょばんは!
くーさんこと露草です。
ちなみにぐっじょばんは、GJ部とこんばんはを合わせた破邪顕正の挨拶です。
口に出すと意外といいにくい。

さて一応事前のお話を。
この小説はオリジナル小説「紅茶のおかわりはいかがですか?」をオマージュから原作準拠に方向転換した小説です。
はい、説明以上!

愛があれば説明なんて必要ない!
それでは新生『紅茶』もといほぼ初めましての二次創作スタートです。


5月ももうすぐ終わるというある日のことだった。

 

「おい、ネクタイ」

 

窓辺の椅子で私物の本を読んでいた(ふみ)だったが、その声で顔を上げる。

声の先には丸テーブル。

現在そこにいるのは京夜(きょうや)真央(まお)

 

「おい、キョロ。ネクタイ」

 

真央が京夜を肘で突きつつ再度言う。

文と同じく本を読んでいた京夜は急に言われ何のことかわからず戸惑ったをしている。

仕方なく助け船を出す。

 

「四ノ宮さん。ネクタイが緩んでるって」

「ああ、うん」

「お姉ちゃんはもう少し具体的に言うように」

「弟うるせー」

 

弟呼ばわりはひどくないかと一瞬思ったが確かに弟には変わりないなと納得し黙る。

真央の指摘通り、京夜のネクタイは緩んでいた。

そう言えば今日は結構暑かったとどうでもいいことを思い出しまた視線を本に戻す。

 

「えーと……あれ?」

 

京夜の声に再度顔を上げる。

文の読んでいるのは所謂ライトノベルというジャンルの本だが、今読んでいるところは難しい言葉やらルビだらけの説明パート。

基本的に難しいところは読み飛ばす派の文はあんまり集中して読んでなかった。

 

それはともかく目の前の光景に目を向ける。

様子から察するに一度ネクタイを全部ほどいた京夜だったが、うまく結べないらしい。

文も朝眠い時とか結び方が一瞬分からなくなるからよくわかる。

 

「あれれ?」

 

今度はちゃんと結べたが京夜的には気に入らなかったらしい。

これは適当な性格の文にはよくわからない。

 

個人的にはもう放課後だからうるさく言わなくてもいいと思うがどうやら真央は気に入らないらしい。

現にだらだらやっている京夜に明らかにイラついているからだ。

 

「あ、ダメだ」

 

3度目の何とやらと言うがどうやら失敗したらしい。

まあ鬼監督のように真央が見張っていれば当然だと思うが。

 

「……メグ」

「はーい」

 

真央に呼ばれにキッチンスペースでお湯を沸かしていた(めぐみ)がやってくる。

手伝ってやれってことだろう。

 

「はい、四ノ宮君失礼しますねぇ」

「あっ!?恵ちゃんちょっと」

「動かないでくださいー」

 

京夜と恵の身長は同じくらい。

流石の女子力というべきか手際よくネクタイを結んでいく。

我が姉ながらよく揺れるものだと、ある一部を見ながら思う。

 

「はいっ、できましたよ♪」

「ありが……」

 

お礼を言おうとしたところで京夜の動きが止まる。

まあ完成したには完成している。

ただしリボン―――所謂女子の結び方で。

 

「ぶふっ!」

 

思わず吹き出す文。

中性的な容姿の京夜には決して似合っていないわけではない。

だがそこそこ似合っているからこそ彼の姿が面白かった。

 

「笑わないでよ、文」

 

文句を言いつつジト目で文を睨む京夜。

 

「ごめんって。というかメグお姉ちゃん、女子の結び方じゃダメでしょ」

「男の子の結び方なんてわかりませんよぅ」

 

ネクタイに敗北した恵はキッチンに戻っていく。

それと代わるように京夜の残念な姿にテーブルを叩いて大爆笑していた真央が近づく。

というか吹き出しただけの文より爆笑していた真央を怒るべきじゃないかと思うが、もう言うタイミングじゃないかと諦める。

 

「しょーがねー。私がやってやる」

 

真央が京夜の前に立つ。

 

「部長出来るんですか?」

「私を誰だと思っている」

 

ロリっ子でしょ、と文は思ったが口には出さない何故なら姉が怖いから。

小さな手を彼の首元に伸ばす。

そして。

 

「ぐえっ」

「こういうのはなーこうやってー」

 

ぎゅうぎゅう締めたのだった。

いい感じにネクタイが京夜の首を絞め、数分もあれば絞殺死体の完成だろう。

そして明日の新聞で『高校生による絞殺事件!?部室での犯行!』とニュースになるのだ。

風評被害で父の会社は倒産、加害者家族の僕らは路頭に迷う。

全然笑えない。

 

「部長苦しい……」

「やめたまえ真央。キョロ君が死んでしまう」

 

そんなmajiで死んじゃう5秒前な光景を止めたのは紫音(しおん)だった。

紫音の制止のおかげで彼は生死の境目から生き延びたのだった。

だが京夜が死ぬ一歩手前の状況にも関わらず文は本に視線を戻していたなぜなら姉が怖いから。

 

「見てられないな、私がやろう」

 

そう言って紫音もネクタイに手を伸ばす。

 

「ほ、本当にできるんですか紫音さん?」

 

一回目は女子にされ、二回目は絞殺されかかったのだ。

京夜が警戒するのも無理はない。

 

「実際に結んだことはないよ。だが何度も目にしてるし、トポロジー的には単純な構造だ」

 

トポロジーってなんだっけ?エコロジーの親戚かなんか?とどうでもいいことを考える文はさておき。

京夜もその自信満々な様子に安心したのか紫音に任せる。

だが。

 

「あれ?」

 

できたのは結び目の形は完璧だが、長さが全然違う代物だった。

これで学校に行こうものなら一発で生活指導教師に捕まるだろう。

 

「ふむ、おかしいな。完璧に再現したはずだが」

 

彼女の隠れポンコツっぷりを知っている文にしてみれば、普通に予想できた結果だった。

思い返せば最初の自信満々っぷりといい、完全にフラグだ。

 

「もういいです!自分でやります!」

 

3度目の正直にも裏切られたからか京夜が自分で結ぼうとする。

とはいえ今更自分でやろうとしてもうまくいかないだろう。

自分が手伝うべきかと文が考えた時だった。

 

部室の奥からぬっと女子生徒が現れ、思わずビクッとなる文。

そう言えば綺羅々(きらら)がいたんだった、完全に忘れていた。

 

京夜も綺羅々のことを忘れていたのか驚きつつ視線を向ける。

2人分の視線に綺羅々はきょとんとしたようにまず文を見て、次に京夜に視線を向ける。

 

「やる?」

 

綺羅々の問いに頷く京夜。

彼女手を伸ばし、彼女の猫耳のような髪が揺れること数秒。

 

「できた?」

 

そこには完璧に結ばれたネクタイがあった。

 

「あ、ありがとうございます……」

「ん」

 

びっくりしたように返事をする京夜。

そんな彼をよそに、文はようやく日常パートに戻った本に視線を戻した。

物語に集中する前に今日の総括を頭の中で呟く。

 

『なんというか、イチャイチャした連中である』と。




一応、姪セクと同時進行になるため毎日は厳しいかもです。
また紅茶と同じくネタに詰まったら投稿しなくなるので応援ください。
‥‥いや駄目すぎるだろ僕(汗)

ではまた次回です。


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ゲームの達人

ぐっじょばんは!
くーさんこと露草です。

色々と遅れました(笑)
姪セクの方と被ってると個人的に面倒な部分があるので、こちらは21時30分投稿固定とさせていただきます。
また、今回からあとがきは原作みたいにキャラプロやミニ会話に使わせていただきます。

では2話です。
※文の口調を変更しました。


ある日の放課後。

部室にいたのは、文と京夜、そして紫音の3人だけだった。

 

「今日は誰も来ませんね」

「そうだね」

 

2人の会話に、文も本を読みながら答える。

 

「お姉ちゃんとメグお姉ちゃんは用事で先に帰るって。バーンシュタインさんはさっき運動部の子に呼ばれてたよ」

「ふーん」

「いや、ふーんって」

 

京夜にしては珍しい塩対応に、思わず顔をあげる。

そこで京夜が自分の方を見てないことに気づく。

何か疎外感を感じ、視線の先ーーパソコンを覗き込む。

 

「チェス‥‥だよね?」

 

京夜が頷く。

そういえば紫音はゲーム好きだった。

それも文と京夜がやっているソーシャルゲームみたいなものではなく、古典ゲーム。

そのうちの1つ、と言っていいのかわからないがそれがチェスだった。

 

「誰かと対戦してるんですか?」

 

京夜が尋ねると、文も気付く。

紫音がマウスに触れてないのに駒が動いていた。

相手の名前を見るに外人さんだろうか。

 

「うん、そう」

「珍しいですねー」

「1ヶ月振り」

 

紫音の悪い癖が出た、と文は思った。

頭のいい紫音の話し方は独特で、階段を一歩も二歩もはずしたような会話の仕方をする。

今のは『NPCではなく人間と対局するのは1ヶ月振り』という意味だ。

姉の幼馴染としてそこそこの付き合いがある文だが、紫音のこの話し方はあまり好きじゃなかったりする。

少し経って京夜も意味が分かったのか苦笑する。

 

「相手ってどんな人なんですか?」

 

京夜は紫音に尋ねるが、興味を失った文は再度本を手に取る。

 

「全米チェスチャンピオン」

「「‥‥はい?」」

 

が、その手は止まった。

今度は京夜も意味がわからなかったのかフリーズする。

文が何とか口を開く。

 

「えっと皇さん‥‥マジで?」

 

おおよそ先輩に対しての言葉遣いではないのはご愛嬌にして欲しい。

 

「あ、違った。この間全米チャンピオンと世界統一王者戦で勝ったから。ええと‥‥暫定的な称号だけど"世界最強"かな?」

「世界最強て‥‥」

 

驚き過ぎて呆然と呟く文。

京夜も口をあんぐりと開けている。

 

「そんな人と戦えるって、紫音さんってもしかしてすごい人何ですか?」

「いや申し込んできたのは彼の方」

「あ‥‥」

 

画面をよく見ていた文が気付く。

相手の名前の横にはチャレンジャー‥‥つまり紫音に挑戦してきたのは相手の方だった。

 

「約束だったから」

「約束ってチャンピオンの方と‥‥?」

「随分前になるけどね。世界王者になったら稽古をつけるなんて約束してしまってね」

「いや、チャンピオンに稽古て」

「若気の至りだね。確かあれは8歳の時だ」

「「ええっ!?」」

 

京夜と交互に合いの手を入れ最後は一緒に驚いた。

もう何も言えない2人を他所に対局は進む。

素人目に見ても頂上決戦と言っていいような白熱の戦いは突如終わる。

 

「‥‥チェックメイト」

 

紫音の呟きの後、画面にYOU WINの文字が表示される。

更にはチャットだろうか、相手から英文のメッセージが送られてくる。

知っている英語だけでも紫音を褒め称えているのがわかった。

 

「さて‥‥」

 

紫音が回転椅子をくるりと回し、文と京夜の方を向く。

 

「彼が再戦を希望しているけど‥‥キミたちもやってみるかい?」

「「無理だよ(です)!」」

 

2人同時に叫ぶ。

そしてお互いの顔を合わせる。

 

「四ノ宮さん!先輩なんだからやってよ!?」

「無茶言わないでよ!文こそ成績いいんじゃないの!?」

「多少成績いいぐらいで世界最強に勝てるわけないでしょ!?」

 

醜い押し付け合いをする2人に紫音が一冊の本を差し出す。

 

「いい教本がある。この際ルールを覚えてみたらどうだろう」

 

そう言って渡したのは‥‥『誰でも簡単!チェス入門』。

ようやく2人とも気付く。

 

「‥‥もしかして紫音さん」

「‥‥からかったな」

 

2人の恨みの視線をクールに流し、紫音は微笑む。

 

「さあね」

 

さて、いつからからかわれていたのかやら。




★天使 文【Fumi Amatsuka】
中等部1年2組所属。
天使家の末っ子で聖羅とは双子。
髪は茶色だが光を当てると桃色が透ける。男子にしては長め。
瞳も茶色(真央のDNA強し)。
身長は背の順で一番前にくるぐらい。
成績優秀だが、『社会に馴れ合いたくねー』という考えから先輩や教師に対しても敬語は使わない。
特技は料理。
森さんは母親派。


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