魔法少女が好きだけど悪役になってしまったからあえて敵の幹部として愛でようと思う (天性悪徳令嬢)
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今日の遭遇

ここはS県の某市。

私が「S県のご当地魔法少女」と勝手に呼んでいる「蹴撃少女マギストライカー」通称ストラちゃんの聖地みたいな所だ。

 

ストラちゃんはサッカー王国として知られるS県で活動しており、

ブースターによる加速を加えた蹴り技や、ボール状のエネルギー弾を相手に向けて蹴り飛ばす魔法を多用するサッカーの魔法少女だ。

二年前に初めてその姿を目撃され、その後身軽なフットワークによる活動範囲の広さと高い戦闘センスにより、今年新参ながらもS県の名物魔法少女に認定された物凄い娘である。

 

今回私も様々なツテを辿り、ストラちゃんにまつわる場所を調べ上げ、ここに来ている。

そして勿論、ストラちゃんと同じ空気を思いっ切り吸う気概である。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ストラちゃんの活動範囲内にある公園に来ると、

不意に私の顔面に向けてサッカーボールが飛んでくる。

 

普段なら問題なく避けるのだが、ここはストラちゃんの聖地。

折角なので一つ遊んでみることにした。

 

まず腰を捻り、同時に跳躍を行う。

そしてそのまま脚を伸ばし、ボールに向け遠心力を利用して蹴り下ろす。

 

芯に入る確かな手応えと共に

ボールはまっすぐと飛んで行き、近くの木に当たることによって地に落ちた。

 

 

「すっげー!」

 

ボールの持ち主であろう少女が目をキラキラさせながらやってくる。

 

「今のってマギストライカーの技だよな!生身でできる人、俺初めて見たぞ!」

 

 

「うむ。私もマギストライカーが好きなのでね。いつマギストライカーに会ってもいいように日頃からこの技を練習しているのだ。」

 

「そ、そうなのか?へへっ...」

 

この少女を褒めた訳でもないのに自分の事のように照れる。

 

目測による身長は寸分違わず一致。

声質も近い。性格は言わずもがな。勿論歩幅や呼吸間隔等も全て一致した。

 

恐らくこの少女が「マギストライカー」なのだろう。

 

聖地に来て早速本人に会えるとは嬉しい事だ。

仮に違ったとして、”中の人"を想像する事は一つの楽しみだろう。

 

「この技は俺でもできないのに、オッサンすげぇよ!やっぱり、体を鍛えるべきなのかな?飯食って運動して...」

 

彼女の体格は魔法少女の時と変わらず、発育途中の状態だ。

小四か小五くらいか。

活発でスポーティ。

いかにもサッカー少女という感じがする。

 

「なあなあ!オッサン!どうすればさっきの技ができるんだ!教えてくれよー」

 

子供らしくねだってきて、見ていてとても微笑ましい。

私としても魔法少女と今こうして喋っている訳なので、なにか洒落た言葉で応えたいところだが…。




S県ということで、
サッカーの魔法少女にしてみました。
もうどこかわかりますよね?
魔法少女が特定されない為にも名前は伏せておきます。

2020/9/5
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怪人の襲撃

「マギ」という単語は英語ではないので、
「マジックストライカー」という名前が本来なら正しいです。
それだと語感が悪いのでマギにしました。


「これは技だけじゃない、全てに共通する事なんだけどね。」

 

「ゴクリ」

 

「愛さ。」

 

最初は恥ずかしかったものの、愛を言ったあたりでスイッチが入ったのを確信した。

 

「何かを愛し、そして愛し尽くすことによって、それは想いとなって全ての原動力になる。愛があれば不可能も可能となり、全てを自分の力にできるんだ。私は魔法少女が好きだ。余計な言葉はいらない。ただ純粋に好きなんだ。だからこの技を再現出来た。そう、愛こそが全てなんだよ!』

 

全て言い切った事による達成感と魔法少女相手に熱演できたことに対する喜びを感じていると、

少女も乗ってきた。

 

「おお!つまりその愛?があればできるようになるんだな!よーし!早速特訓だ!ありがとな!オッサン!」

 

ストラちゃんの方はあんまりわかっていないようだったけど

ままそこはおいおいとわかって行くだろう。

 

魔法少女の数だけ魔法少女のストーリーがある。

感動を急ぐ必要は無いさ。

 

「じゃあ私はこれで失礼するよ。マギストライカーみたいにカッコよくなれるように頑張れよ?」

 

「ありがとな!オッサン!」

 

...さて。

予想外の収穫ができたので今日は祝杯を挙げよう。

折角だしS県限定ビールとおツマミで場所は...そうだな、地図アプリによればビジネスホテルが近いらしい。

 

それではこの近くのスーパーに...

 

突然、地面が揺れ 背後で大きな爆発が起こった。

 

「うおっと...これは!」

 

本人と出会った上に生の戦闘シーンも見れそうなので

不謹慎ながらも鼓動が高鳴るのを感じた。

 

場所は隣の商店街らしい。

さっきの公園から近い道は...大通りだが、そこは人通りが多い。

それにストラちゃんならおそらく裏道もいくつか知っているはず。

 

一瞬で脳内で複数のルートを構築し、

後は直感で決める。

余談だがこの直感が外れた事はまず無い。

愛とはこういう事を言うのだろう。

 

私のいる場所から近いのは、

商店街裏の小さな路地を曲がった辺りだろうか。

 

そこから行けるのは隣の塀だ!

 

私はいつの日か魔法少女を守る為に鍛えた脚でアーケードの壁を蹴り、

店の屋根を軽く越えた。

 

手袋をした手で壁を掴み、減速をしながら地面に着地。

それと同時に塀を一気に2つ飛び越え、体を低くして着地した。

 

結構ギリギリな距離だったけど時間が無いのだからしょうがない。

 

案の定塀の向こうの少し離れた辺りから少女が走る音が聞こえてくる。

 

「グリモワール!チェンジアップ!」

 

そう叫ぶと少女の体は光に包まれる。

 

 

魔法少女はそれぞれひとつずつ「グリモア」と呼ばれるアイテムを持っている。

その形は様々で、ボールペンだったり盾だったりするのだが

基本的にそのグリモアを使って変身や技の発動を行っている。

 

ストラちゃんの死角となる丁度良い位置に着地できたので

塀から軽く顔を出して私はその変身を見届ける事にした。




2020/9/5
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蹴撃少女マギストライカー

「マギストライカー見ッ参!」

 

変身を終えた少女は壁を蹴り破りつつ名乗りを上げる。

 

蹴撃少女マギストライカー。

サッカーの魔法少女である彼女のコスチュームは、サッカーのユニフォームを意識したものとなっている。

 

S県のユニフォームの意匠が組み込まれた制服には所々羽のような装飾がついており、

特に脚部にはプロテクター(すね当て)キックブースター(スパイクシューズ)等蹴り技に特化した装備が集中している。

 

 

そして私はスマホのカメラを起動させつつ、アーケードの屋根や壁の突起等を足場に素早く建物の屋上へと上がる。

ここまで手馴れてきたものだ。

 

魔法少女を守れるようにと日々の鍛錬を。

魔法少女を撮るためにと実戦経験を。

そんなこんなで私は軽いアスレチック程度ならなんなくクリアできるうようになっていた。

 

いっその事マスクとシルクハットで変装して魔法少女をサポートでもしようかと考えたが、

それだと明らかに不審者なので今の見守るスタイルに落ち着いたわけだ。

 

 

今回の相手はカマキリのような怪人。

魔法少女と言うよりかはヒーロー物の悪役っぽいデザインをしている。

 

「喰らいやがれっ!」

 

先に攻めたのはストラちゃん。

ブースターの加速と共に怪人の腹部に向けて蹴りを放つ。

 

が、怪人は冷静に体を捻って躱し、着地後の隙を狙って両手の鎌を仕掛ける。

というか怪人の方は一言も喋っていないな。

 

一方ストラちゃんは着地に合わせて左足を軸に回し蹴り。

これには怪人も攻撃を止めざるを得ないようで、

怪人は両腕を使って攻撃を防ぐ。

 

だが、これはまんまとハマったわけだ。

ストラちゃんは脚部ブースターで急激に加速し、そのまま足を振り切って怪人を蹴り飛ばす。

そして余剰エネルギーで数回回った後にブースターを使って再加速。

蹴り上げた怪人に向けてエナジーバレット(サッカーボール)を飛ばしてフィニッシュ!

ストラちゃんの得意技である「ブースト・トルネード」が完璧に決まる。

 

「これが愛の力だッ!」

会心の手応えにストラちゃんも満面の笑み。

そして今の発言はその正体がさっきの少女である事を証明する。

 

「これで一件落着ってとこだな!」

 

戦闘が終了してストラちゃんが撤退したので撮影を止めてスマホをしまう。

 

後はストラちゃんの情報資料を集めるとしよう。

 

屋上から壁伝いに飛び、

変身解除したストラちゃんの後を追いかける。

 

「さぁて、さっきのオッサンみたいに生身でも技を出せるようにしなくちゃな!」

 

カバンからボールを蹴りだし、ドリブルしながら裏路地を移動するストラちゃん。

 

すると私はストラちゃんの他に別の影がある事に気が付いた。

 

夕暮れの影、

建物の上に佇むあのフォルムは...

思わず身を隠し、こっそりと建物の上を見ると、そこにはさっき倒したはずの怪人が立っていた。




2020/9/5
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襲撃

「分身とはいえ一撃で消し去るとは予想以上に重い一撃ですね。」

 

カマキリ怪人が呟く。

成る程さっき倒したのは分身だったという事か。

 

「ですが、変身を解除した今、私の敵ではありません。」

 

怪人が鎌を振り上げると、

そこに黒いエネルギーが収束しているのが見えた。

 

あれ、これまずいんじゃないか?

 

「蹴撃の名を持つ者よ、ここで消えてもらおう」

 

怪人が跳躍し少女に向けて鎌を振り下ろそうとする。

 

ヤバい!

 

そう思った瞬間身体が勝手に動いていた。

 

壁から身を乗り出し、壁を蹴って怪人に向けて跳ぶ。

私は怪人に向けて体当たりをしていた。

 

「何ッ?!」

 

跳躍することで宙に浮いていた怪人は私の体当たりをモロに受ける事で吹っ飛んだ。

 

吹っ飛んだ後は近くの建物の屋根に怪人と一緒に落ち、

身体で衝撃を受けつつ転がる。

 

「やらせはしないさ」

 

決めゼリフが勝手に口から出る。

だが、今の私には自分に酔っている余裕なんてなかった。

 

 

 

何故なら、今私の胸には怪人の鎌が深々と刺さっているからだ。

 

 

ぐッ………。

痛てぇ。クソ痛てぇ。

 

眼には勝手に涙が滲み、口からは血を吐き出す。

 

 

あー...真面目にヤバいかもしれん。

 

「ヒーローにでもなったつもりでしょうか?飛んだ邪魔が入りました。」

 

そして胸からはから吐きたくなるような、ドス黒い衝動が身体中に染み渡る。

おそらく鎌にまとわりついていたエネルギーだろう。

 

怪人はこちらに構わず容赦なく鎌を抜く

「ぐぅっ!」

 

鎌と一緒にドス黒い血が吹き出し、身体の中を風が通るような感覚が走る。

心拍数が早くなるのを感じる。

 

「ああ...クソッ」

 

体が危険信号を出している。

目の前が霞むのを無理矢理堪えて意識を保つ。

 

建物の下の方を見ると、少し離れたところで少女がドリブルをしていた。

 

気付いていない...のか。

あのペースだと時間稼きをしてもすぐに追いつかれるだろう。

私に出来ることといえば、注意を促して変身させることくらいだが…。

 

「がッ!っっは...あ...あ」

 

怪人は私の喉に鎌を突き立てる。

こいつ、私が叫ぶ事すら許さないのか!

 

「マギストライカーのファンといったところでしょうか?」

 

首に突き立てた鎌をグリグリと動かしながらカマキリのような顔を近付けてくる。

 

「もうその歳なんですから。いい加減にそんなくだらない事やめませんか?」

 

くだらない事...だと?

 

こちらを見据える怪人の眼は何も変化のない複眼の筈なのにこちらを嘲笑っているかのように見えた。

 

「貴方が魔法少女に憧れたところで所詮はただの力をつけた人間です。」

 

怪人は顔を上げ、巫山戯た事をほざき始める。

 

「魔法少女の力の源である"白の勇気" そんなもの我々のパワーに比べればチンケな物です。」

 

怪人は再度顔を近付る

 

「いくら魔法少女が強くても、所詮は人間なんです。ちっぽけで弱い、ただの人間なんです。」




2020/9/5
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誕生

此方が喋れないのをいいことに、カマキリの野郎は巫山戯た言葉を捲し立てる。

 

私は強い憎しみを感じながら意識が遠のくのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

幼い頃、私は孤児院で暮らしていた。

自分の親の事は未だに知らないし、知ろうとも思わない。

 

私はその事に怒りや悲しみなんて物は感じなかった。

最初から知らないのだから、自分の中で思う事なんて無いのだろう。

ただ、純粋に虚無感は感じていた。

 

 

 

高校生にもなった頃には、近くの高校に入学して毎日通っていた。

同じクラスの友人もできた。

そして仲の良い友人と居る間は虚無感なんて感じかった。

 

だが、友人が親について愚痴を言う時や

休日に友人が家族と居る所を見た時には言葉にできないような感情を感じた。

 

だが私はその思いを抑圧し、表面上は取り繕って生きていた。

怒ったところで、どうにもならない。そもそも怒りの矛先を向ける場所すらないのだ。

 

自分の存在価値を見出せなかった、自分は何故生きているのかどうしてもわからなかった。

 

 

そんなある日、私の住んでいた街に怪物が現れ、怪物は街を容赦なく破壊して回った。

 

その時外出していた私は怪物の暴れているど真ん中に立っており、

意味も無く通っている学校が破壊され、目的もなく住んでいた家が破壊されるのをただ黙って見ていた。

 

暫く暴れていた怪物は不意に私を見つけると、大きな咆哮をあげ私に向かって爪を振りかざした。

 

対する私は、驚きもせず、冷めた目で自分の死を受け入れていた。

 

 

 

そんな時に魔法少女は現れたのだ。

 

光に包まれた矢が数本怪物の腕に突き刺さり、怪物は建物の壁に磔になった。

 

その魔法少女は怪物の反撃を躱し、獅子の魔法と光の矢で怪物を圧倒した。

 

 

私はその姿を見て生きる希望を見つけたのだ。

 

 

次の日から私は魔法少女について調べあげ、

部屋はポスターや雑誌で溢れかえるようになった。

 

いつの日か、自分が魔法少女を助けられるようにとトーレニングも始めた。

孤児院を出た後は魔法少女に縁のある地域を巡り、

正真正銘魔法少女のオタクになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。

ああそうだ。

 

私は好きなんだ。

 

魔法少女が好きなんだ。

 

その為に生きてきたのに

 

ここで、

今ここでこんな奴に殺されてたまるか。

 

開き直る事で、私の心に潜む何かが目覚めたように感じた。

 

 

 

途端に身体から衝撃が走る。

 

喉から鎌が抜ける感触がする。

息苦しさや体の痛みがみるみる内に引いていく。

 

手を付き、立ち上がる。

 

今まで以上に身体に力が入る。

 

「こんな所で...終われるわけないだろう!」

 

先程の衝撃で吹き飛ばされたらしい怪人は驚いたような声で言った。

 

「ほう、覚醒したのですか。」




2020/9/5
文章を全体的に修正。
特に主人公の行動について変更。


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恐ろしき黒

お気に入り数が過去最高でとても嬉しいです...!

主人公のキャラがまだ固まっていないので、
もしかしたらいきなり口調が変わることがあるかもしれません。


身体中に力が湧くのを感じる

 

「素晴らしい!まだ不安定ですが、確かに強い"黒の邪念"を感じます。」

 

怪人は鎌になっている手で拍手をする。

 

「どうです?私の部下になれば、そこらの怪人とは違う高い階級を差し上げますよ?」

 

私は吐き捨てるように言った

 

「魔法少女をバカにするような屑とは手を組みたくないね」

 

「そうですか...。なら、残念ですがここで消えてもらいましょう」

 

そう言って怪人が振りかざした鎌に再度エネルギーが収束されていく。

 

 

どうする?

今の私は傷も回復して、力もある。

だが、相手は恐らく手練れの怪人で、さらに私にはまだこの力の使い方がわからない。

 

何の方法も無しに真正面からやりあったら恐らくうち負けるだろう。

 

必死に方法を模索していると、

不意に自分の影がこちらへ向けて手を振っているのが見えた。

 

まさか。

 

私は影に向かって念じる。

 

 

“やれるのか?”

 

 

それに対して影は頷く事で返事をした。

 

 

 

そうか、つまりはそういうことか。

 

鎌を振りかざして迫ってくる怪人に対して私は叫んだ。

 

恐ろしき黒(ドレッドブラック)!」

 

私の呼び掛けに応えるように、"影"は跳躍した。

 

私は地を走る影を目で追う。

 

私の影は跳躍した後分離し、2体の魔法少女のシルエットを形作った。

 

影が向かう先は相手の"影"

 

1人の影が怪人の影へ蹴りを入れた。

 

影を蹴られた怪人はそのまま吹っ飛んだ。

 

「何?!貴様!今何をした!」

 

怪人の方はまだ影に気付いていないようだった。

 

2人の影が手を前にかざすと、その手の中に日本刀が出現する。

 

そして走りながら怪人の背後に移動した影は

そのまま怪人の影を斬りつけた。

 

「ぐッ!」

 

1人は背中を、もう1人は右腕の鎌を。

 

影によって斬られた箇所には明確に傷が浮かび上がり、

緑色の体液を噴出していた。

 

流石に怪人も影に気がついたらしい。

 

「影とは小癪な...!」

 

影の少女達は再度攻撃を仕掛ける。

 

地を走るように移動する影に向かって

怪人は左腕の鎌を突き立てた。

 

が、影には攻撃できない。

 

「くっ、ここは一旦戻って体制を...!」

 

怪人は鎌を上にかざして何らかの術式を開始する。

 

「させるわけないだろ!」

 

私は懐からボールペンを取り出し、怪人の複眼に向かって投げつけた。

 

ボールペンはまっすぐ怪人の右目に刺さり、そのまま奥までぶっ刺さった。

 

腕力が確かに強くなってる。

 

気を逸らせれば十分だったのだが、ダメージを与えるまでしてしまった。

 

ダメージを受けてよろめく怪人に向かって

影達は跳躍して切り刻んだ。

 

「ぐあああああああ!!!!!!!」

 

断末魔を上げながら怪人は無残な肉片へと変わった。

 

「はぁっ、はぁっ。」

 

よろけながら私は怪人の死体に近付き、複眼からボールペンを引き抜くと、

生々しい嫌な感触と共に緑色の液で染まったボールペンが出てきた。

 

頭が痛い。

 

身体が地面に引き寄せられるような

重苦しい感覚と共に私はその場に倒れるのであった。




ドレッドブラックは影を操る能力ですね。

操作する影は自立行動も可能で、影の形を変えて様々な形態を取る事ができます。

ドレッドブラックは影のあるものだったら触れる為、攻撃することが出来ますが、
影の無い物に関しては触れられないので攻撃することも防ぐ事も出来ません。

2020/9/5
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闇の契約

色んな設定とかを後書きに書くべきか本編で登場させるべきか迷う。


気が付くと私は深い闇の中に居た。

 

しかし、ただの闇ではなく

強い力のようなものが感じられた。

 

 

 

声が聞こえる。

 

『貴様を我が一族に迎えてやろう。』

 

耳からではなく、脳内に直接響く重苦しい声。

 

『我は"Zの完本" 。無の化身であり、世界を聖なる闇へと還す者』

 

声の持ち主は何故かわからないがすぐにわかった。

 

3mほど前方に居る

 

オーラというのだろうか、

眼に見えなくてもその存在を確かに感知できるほどの明確な「力」

 

心無しかそいつが居るであろう場所は闇が濃い気もした。

 

『"グリモア"を...。その力を我に差し出すのだ』

 

その言葉を聞いた瞬間、

身体の内側からなにか強い力が湧き出るのを感じた。

 

自分でも驚く程の力が身体の内側から溢れる。

そして湧き出た力が私の周りを取り囲むように移動していく。

 

それが一定の強さに達した時、

私の目の前に一冊の本が現れた。

 

黒い皮のような素材に

金銀の装飾が施されており、

表紙には禍々しい字体でアルファベットの「O」が描かれていた。

 

 

『ほう、貴様のグリモアは"Oの断章"のようだな。』

 

声のする方向から黒い邪気が送られてくる。

 

『良いだろう。貴様は我の幹部として選ばれた』

 

黒い邪気は"Oの断章"に吸い込まれていく。

 

『"我の一部"として、貴様には自由を与えよう。好きにするがよい。』

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

声の持ち主から放たれた黒い邪気を本が全て吸い込んだ辺りで私は現実へと意識が戻った。

 

 

 

 

「なんということか!私の『愛』は闇の力だったと言うのか!」

 

 

 

 

非情な現実を目の当たりにした私はその場にひれ伏し、涙を流した。

 

 

 

「これじゃあタキ〇ード仮面みたいなロールプレイができないじゃないか!良くてプリ〇ュアの敵の幹部として登場するイケメンキャラじゃあないか!」

 

自分の事をイケメンに当てはめて考えていることはこの際どうでもよかった。

 

 

私は今まで通りのおっかけができなくなることに涙し、床を拳で思いっ切り叩いた。

 

思いっ切り叩いた事で床には亀裂が入り、

闇の力で力が強化されていることを嫌でも理解し、尚更腹立たしかった。

 

 

 

だが、私はある事に気付く。

 

 

 

敵の幹部として魔法少女を愛でるのもそれはそれで美味しいのではないか?

 

 

「ふふ...ふはははは!!!」

 

今までのおっかけとは違う!

正真正銘魔法少女と対等な立場で愛でれるのだ!

 

「蹴撃の少女マギストライカーよ!いずれまた会おうではないか!」

 

興奮してよくわからない事を言った後、私は建物から飛び降りた。

 

建物は思ったより高かったが、足に痛みはなかった。




設定等

・魔法少女
女性が強い想いを解き放つ事により変身できるようになる。
「白の勇気」と呼ばれるエネルギーをグリモアを通じて使役する。

・怪人
「黒の邪念」と呼ばれる負の感情を使役させて変身する闇の使徒。
魔法少女と違って男でも変身できる。

・グリモア
魔術を行使するのに必要な道具。
このグリモアを媒体とし、自身の魔力をイメージに乗せることで魔法が使える。
本来魔術師となるにはこのグリモアを製作する必要があるが、
現代では二つの完本がグリモアの作成を自動で代行し、魔法少女を増加させている。

・シャドウフォルク
所謂怪人サイド
Zの完本に従い、世界に闇をもたらすのが目的。
己らは世界の影でしかない。だが、闇という真理を抱く唯一の一族である。

・フェアリエルファミリア
所謂魔法少女サイド
怪人から世界を守ることが目的。
平和とは幻想でもある。だが、絆という魔法は幻想すら現実へと変える。



2020/6/20
魔法少女サイドの名前変更
2020/9/5
文章を全体的に修正


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