彼女は生まれ変わる (蘆骨)
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一 . 落下のち溺死
口調の違いなど、ミスが連発する可能性大。
生暖かい目で見守って下さるとありがたいです。
自分は死んだ。
登山中に誤って脚を踏み外して崖から落下し、川に落ちた
どうして死んだのに意識があるのかって?
HAHAHA!・・・それは自分でも分からない。
川に落ち、もがいた末意識を失い、次の瞬間何もない真っ黒な空間へ放り出され、身体も動かせずに落下する感覚に只身を任せる。そんな状況である。
死後の裁判とやらも受けた記憶がないので、地獄体験ツアー~4億3200万年片道切符の旅~でない事を祈るばかりだ。
それにしてもまさか20と数歳で死ぬことになるとは夢にも思わなかった。
願うならば来世は落下死や溺死をしない強靭な肉体に産まれたいものである。
叶ったら叶ったで人外確定だが。
まあ、そんなことよりも・・・いつまでこの状態が続くのだろうか。
本当に阿鼻地獄よろしく2千年間このまま?
そこまでの悪行をはたらいた覚えはないので勘弁して欲しい。
そう心の中で呟いていた次の瞬間。
ザパンッ!という音と共に身体の感覚が戻る。
「 ! ! ! ? ? ? 」
但し、水の中で。
「(水中!?死んでない!?走馬灯!?)」
軽いパニックになりながらも水の侵入を防ぐために慌てて口を塞ぐ。
が、直ぐに気がつく。
「・・・脚、着く」
立ち上がって水面から顔を出し、そう呟く。
そして、先ほどまでの慌てようが酷く滑稽に思え・・・凄く悲い気持ちになった。
結論から言うと、
助 か っ て ま せ ん で し た 。
なんでそんなこと分かるのかって?なに、誰にでも直ぐ分かる簡単なことさ!
立ち上がった後、濡れっぱなしっていうのも嫌なので陸地へ上がり、身体に異常がないかチェックしようとする。
すると違和感を感じて自分の体を見ればあら不思議、男の夢を具現化したようなあるはずのないたわわなものが胸に二つくっついてるからだよコンチクショウ!!!
死んだ事はまだ良い。いや、良くないがこの際置いておく。
まさかのTS?元々男なんだけど!?男の象徴だって無くなっt───
────── んん?・・・んんん!?
確かに無い、無いんだけど・・・あれぇ?
男でないなら女に生まれ変わった筈。
それは主張の激しい胸部装甲が証明している。間違いない。
しかし、確認するとアレどころか人体構造的になくてはならないものまで・・・あっれぇ?
いやどゆこと?なくなると人体に異常をきたすものまで消滅してるんですけど?
そう混乱している時、少し前の思考がフィードバックする。
体が動かせない真っ暗な空間にいた時のことだ。
『叶ったら叶ったで人外確定だが』
うん。
『人外確定だが』
・・・うん。
『人外』
・・・・いや、まさか・・・ねぇ?
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二 . 生まれ変り
そのまさかでした。
まさか本当に無いなんて・・・もちろん断定した理由はそれだけじゃない。
行っていないのだ、呼吸を。
パニックになっていたせいで気付くのが遅れたが、身体の感覚が戻ってから呼吸をしていなかったし、水が口に侵入することも無かった。
更に水中でも視界もクリアになっている。
パッと確認できた身体に起きた変化というか異常はこのくらい。
あぁ・・・それと外見も変わっていた。
身長が目測体感で大体2mと少しのボンキュッボンだいなまいとぼでー。
瞳はタイガーアイの様にも見える金褐色。
髪は腰下まで伸びた艶のある黒髪ロング、角度によって銀にグラデーションがかって見え、漆を塗ったように美しい。
顔も生前?とは似ても似つかなく、吊り目の凛とした相貌。
思わず、水面に映る姿を2度見してしまった。
あ、服はちゃんと来てたよ?へそ出しで袴のスリット部分からハリのある太腿が覗くなんかえっちぃ巫女装束みたいなもの。
まあ正直そんなことはどうでも良いのだ、目を背けていた現実に比べれば問題じゃない。
いや、ほんとに。
その問題っていうのが現在地である。
いや~、困ったね。
現実逃避してても仕方ないんだけど、したくもなっちゃうよねぇ・・・だって此処、完全に孤島で周り360度海なんだもの。
オーシャン!マル!モーリェ!絶海の孤島!
いくら何でも今世ベリーハードよ!?
・・・と、そんなこんなで死んだ魚の目をしながら膝を抱えて今に至る。
10分ほど微動だにせずたっぷりと現実逃避したが、座ってても仕方ないので取り敢えずこの島の外周を歩き回ることにした。
運が良ければ船が通りかかるかもしれないし、島の大きさは知っておきたい。
そう考え外周を回り、色々と散策した結果、ある程度の島の大きと植生が分かった。
この島自体は大した大きさではなく、体感1時間程度で1周出来る。
だがこの島に生えている植物は日本国内では見たことがない、勿論知らないだけという可能性もあるが、背の高いシダの様な植物に細かい網目状の樹皮を持つ樹木人の気配のない樹林。
控えめに言っても日本に自生しているとは思えなかった。
まぁ、何が言いたいのかというと、
「・・・詰んだ」
希望ゼロである。
お先真っ暗である。
ワタシ ニホンゴイガイ ハナセナイ。
そんな絶望的な状況を自覚したが、呆けていても生きていける訳ではないので、思いつく限り手あたり次第手を付けてみることにした。
こういうのはネガティブになったやつから死ぬのだ。ポジティブにいこう。
先ずは寝床である、
できるだけ海から離れ過ぎない場所がいい。行き来に体力を使うし渡船を見逃すのもいただけない。
助けてくれるとも気付いてくれるとも限らないが、可能性は少しでも拾っておきたい。
諸々を考慮して、丁度いい大きさの木の洞を見つけることができた。
雨風を凌げるなら上々だ。
次は食料なんだけど、一向にお腹が空く気配がないし喉も乾かない。
が、一時的なものかもしれないので、食料と水を確保できるようにしておきたい。
水は湧き出ている場所を見つけることができたので問題はない。
食料に関しては、飢餓感に襲われている訳でもないのに得体のしれない木の実を食べるのもちょっと・・・と思ったので、取り敢えず浅瀬で泳ぎ、何かいないか探してみることにした。
潜った私は、息継ぎをしなくても問題がないのをいいことにスイスイと海中を散策する。
海中移動に慣れたのか、泳ぐスピードは時間が経つごとに上がっていき、自由に泳ぎ回れるようになる。
その慣れに比例するかように視野も広くなっていく。
違和感を感じ始めたのはこの頃だった。
海中散策が思いのほか楽しく、海草やら貝やらを見て楽しんでいた時にふと気づいたのだ、
なんか見つけるたびに貝やら魚の様な生き物が小さくなってね?と。
気のせいかな?と放置していると、ある大きな異変に気が付く。
あれ、下半身の感覚が変だ、どうしたんだろう?するとそこには立派な尻尾が!まるで人魚の様じゃあないか!
オプションにトカゲの様な細長い指と鋭い鉤爪の生えた脚までついてる!至れり尽くせりだね!やったぁ!
本当に何で気付かなかった、私・・・。
その時の私はそれはそれは焦り、その場で
「(戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ(ry )」
と念じ続けた。
それはもう本気と書いてガチと読むくらい必死に念じた。
するとなんということでしょう、1分もしない内に下半身は元に戻り、視野は狭まり、身体が縮んでいくじゃありませんか。
視界や身体にも変化が起きていたことに気づいたのはこの時である。
自分で言うのもなんだが、鈍いとか鈍感ってレベルじゃないと思う。
猛省。
その後だが、同じような事を数度繰り返すうちに、変化をコントロール出来るようになった。
それも、まるで変身出来なかった事の方が不自然だったのだと言わんばかりのレベルで。
足だけを変化なんてことも可能である。
同時に直感で感じていた、下半身だけではまだ完全に変身出来ていないということを。
むむむ、もう夜・・・。
謎ではあるが、幸い光源が無くても昼と変わらない様に辺りを見通すことが出来る。
一旦区切りをつけるために島へ上がるべきか・・・でも小骨が引っ掛かった時みたく気持ち悪いんだよねぇ。
いっか、続行続行。
別に眠くもないから大丈夫でしょ。
ムズムズするし早速やっちゃお。
頭の中でそうまとめると彼女は静かに目を閉じる。
そして外界を遮断し集中高め自分の中にある力を解き放ち始める。
それと同時に彼女の肢体を青白い光が包み始め、時間が進むごとに彼女を包む光は際限などないと主張するかの如く発光を強めていく。
変化は爆発的だった。
彼女を一際強い白光が蔽いつくすと、嵐の前の静けさを暗示するかの如く、世界から一瞬音が消失する。
そして次の瞬間、全てを飲み込み、惑星の反対側にいても感じられる程に強大な閃光と共に彼女は真にこの世界へと生まれ落ちた。
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