友情絶唱 宇宙、キターーーーーッ!!! (クロトダン)
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1:再、会、変、身!

新作です。すみません。

絶望していた響にフォーゼの主人公みたいな熱い人物が助けてくれたらどうなるのかと思い筆を取りました。

では、どうぞ。



少女は再会する、自身を絶望から救ってくれた青年に。

青年は再会する、自身が助けてあげた少女に。




――響視点――

 

 

――二年前――

 

 

「テメーら、たった一人の女の子になにしてやがんだ!」

 

 

 当時、世の中に絶望していた私を偶然通りすがった男子高校生が助けてくれた。

 

「お前らまとめてタイマンはらせてもらうぜ!」

 

 そう言った後、彼はたった一人で私を囲っていた複数の人達に大立ち回りを繰り広げ、顔を痣だらけになりながらも私を絶望から救ってくれた。

 

「よう、大丈夫か?」

 

「大丈夫って、……どうして私を助けてくれたのですか?」

 

 私はどうして助けてくれたのか彼に質問すると彼は――

 

「なんでって……困っていたら、助けてやるのは当たり前だろ?なに言っているんだ?」

 

 それがどうしたとその人は笑いながら答えてくれた。

 

 その後、家に送ってくれている間に自己紹介をした私は、どうして街の人達に虐げられている理由を彼―如月 弦太郎さん―に伝えると弦太郎さんは――

 

「おかしいだろそれ!?お前は頑張ってノイズから生き延びただけなのに、それなのに生きる事が悪いなんて間違っているだろっ!」

 

 ――と、私の両肩を掴んで正面を向くようにすると悲しそうな表情で怒った後、涙を流してくれた。

 

「辛かったよなぁ……!悲しかったよなぁ……!ごめんなっ!お前がこんな目にあっているのに俺は今日まで知らずに呑気に過ごして本当にごめんなぁっ!」

 

 弦太郎さんの言葉を聞いた私は今まで我慢していた感情が一気に溢れでて、弦太郎さんの胸に顔を(うず)めて彼と同じように涙を流して大声を出して胸に閉まっていた想いを口にした。

 

「っ!?うぐ、うあぁァァァァァっ!辛かったよぉ!悲しかったよぉっ!こんな目に会うのなら死んじゃえばよかったと思ってた!でも…それでも……!」

 

 

――『生きるのを諦めるな!』――

 

 

「それでも……生きるのを、諦めるなって言ってくれたから生きようと頑張ったんだ!だから、助けてくれてありがとう……うぅぅぁぁぁ!」

 

「ああ、わかった。お前はよく頑張った!だから今は好きなだけ泣け!お前が泣き止むまで俺は側にいてやるからな!」

 

 

 

 

 しばらくして泣き止んだ私は、弦太郎さんの赤いシャツが私の涙と鼻水で汚れてしまい申し訳なくなり謝ったけど、弦太郎さんは「気にするな、涙は心の洗濯だ。たっぷり泣いたお前の心は真っ白になっているぜ」と気にする事もなく笑顔で答えてくれた。

 

 それから弦太郎さんは私がリディアン音楽院に入学する為にこの街を出るまで、できる限り私の側にいてくれた。

 ある時は弦太郎さんの友達の人達を紹介してもらって未来と一緒に楽しく過ごした。

 またある時は、弦太郎さんの友達が作ったフードロイドと呼ばれるロボットを見せてくれたり、またある時は弦太郎さんのバイクに乗せてもらって夕焼けの海を見に行ったりと楽しい思い出をくれた。

 

 そして、生まれ育った街を離れる際に私は「また会えますか?」と質問すると弦太郎さんは「安心しろ響!例えどんなに離れていようが、俺とお前には固い絆で繋がっているぜ!だから俺達はまた会えるさ!」と右手で左胸を二回叩いてから右腕を前に伸ばした後ニカッと笑顔を見せてくれた。

 それに釣られて私も思わず笑顔になってしまうけど、不思議と悪い気はしなくて、むしろ心地いい気分になった。

 

 

 

 そして、私がリディアン音楽院に入学して一ヶ月近く経ったある日弦太郎さんと再会した。

 

 ノイズが現れた最悪の状況の中で……。

 

 

 

 

 学校の帰りにノイズに遭遇した私は母親とはぐれた女の子を連れて逃げ続けている内に工場区域に入り込み、その最中に不思議な鎧を纏って困惑していると視界の端に見覚えのある白いバイクが私の前に現れ、乗っていた人はヘルメットを取ると……。

 

「弦太郎……さん?」

 

「おう!大丈夫か響?その格好カッコいいな!」

 

 現れたのは二年前私を助けてくれた恩人、如月 弦太郎さんがあの時と変わらない笑顔を向けてくれた。

 

「もう大丈夫だ、後は俺に任せろ」

 

「えっ!?駄目ですよ!生身でノイズに触れたら死んじゃいますよ!」

 

「へ、心配すんな」

 

 弦太郎さんはそう言うとどこから出したのか4つのスイッチと赤い4つのレバーが付いた蒼い色をした大きな箱みたいなのを取り出すと、それを自身のお腹に当てると銀色の帯が伸びて弦太郎さんですお腹を一周すると蒼い箱に繋がるとベルトに変わった。

 弦太郎さんはまず左手で右側の2つの赤いレバーを下ろして、次に右手で左側の2つの赤いレバーを下ろした後右手をベルトの右側に付いてある黒いレバーを掴み左腕を顔の前に翳すとベルトから機械的な音声によるカウントダウンが聞こえてきた。

 

 

 

3!

 

 

2!

 

 

1!

 

 

「変身!」

 

 その言葉の後、弦太郎さんはレバーを引いて右腕を上に上げると彼の頭上から二本の輪っかが現れ、そこから光が照射され、弦太郎さんの身体が光に包まれた。

 

「シャアッ!」

 

 光が収まると弦太郎さんの姿が大きく変わっていた!

 

「宇宙………キターーーーーッ!!!

 

 弦太郎さんは身体をちぢこませた後、両手両足を大きく伸ばして、大声で本当に宇宙まで届きそうな声で叫びました。

 叫び終わった後、弦太郎さんは右手で左胸を叩いてから右腕をノイズ達に向けて聞き慣れたあの言葉を口にした。

 

 

 

「仮面ライダーフォーゼ!タイマン、はらせてもらうぜ!」

 

 

 

――響視点、終了――

 




またまた新作です。クロトダンです。

一話目から駆け出し気味ですが、いかがでしょうか?

そして、前半の響の気持ちに思わず泣いてしまいました。
それで、何故シンフォギアに仮面ライダーフォーゼを選んだというと……


シンフォギアGを視聴して過去の響に、未来以外に一人位は助けてくれる人はいなかったのかと何度も考えた時、ちょうどテレビ台に置いていた仮面ライダーフォーゼの映画のDVDが目に入り、フォーゼの主人公のような熱い人間がいたら響は救われたのではないかと頭によぎり、この作品が生まれました。

次の投稿はまだ未定ですが、完結目指して頑張ります。



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2:宇、宙、戦、士!

み、未来さんがーーーーー!?

そして訃堂の爺はアダム以上の人でなしですね。




少女は困惑する、自身の姿と宇宙の力を持った青年の姿に。

青年は戦う、宇宙の力を身に纏い友達である少女を守る為に。



――三人称視点――

 

 

 あまりの光景に少女は驚きを隠せなかった。

 

 久しぶりに再会した恩人が光と蒸気に包まれた後、全身を白いスーツに身に纏い、顔は額に触覚が付いたロケットの形をした頭部を付けて、その下は全体を白をメインにした宇宙服を彷彿させるスーツを纏っていた。

 更にその姿をよく見ると四肢には○(右腕)・×(右脚)・△(左脚)・□(左腕)のあるゲーム機のコントローラーのボタンのマークが刻まれていた。

 

「ウォラァッ!」

 

 如月 弦太郎――【仮面ライダーフォーゼ・ベースステイツ】に変身した彼は、ノイズに向かって駆け出していってからジャンプして大きく振りかぶった右拳を目の前にいたノイズに突きだした。

 響はその後の光景が頭によぎり、ノイズに触れて炭に分解される彼の姿を幻視して目を瞑ったが、彼――仮面ライダーフォーゼは少女の予想を大きく覆した。

 

 フォーゼの振り抜いた拳は分解される事もなくノイズの身体を貫いたからだ!

 

 フォーゼはその勢いを緩めず拳の他に前蹴りでノイズを蹴り飛ばし、ノイズの身体を掴んで頭突きを喰らわせたりと不良の喧嘩のような戦い方で次々とノイズを倒していく。

 

「まずはこいつだ!」

 

【―ロケット・オン―】

 

 目の前のノイズを蹴り飛ばしたフォーゼは自身の腰に付いているベルト――フォーゼドライバーに刺さっている右端のボタン【アストロスイッチ01、ロケットスイッチ】を押すとフォーゼドライバーから機械の音声が流れた後、彼の右腕にオレンジ色のロケット【ロケットモジュール】が装着された。

 

「ライダー……ロケットパーンチッ!」

 

ロケットモジュールを装着したフォーゼは、腰を落として構えると技名を叫びながらノイズの群れにロケットのように突っ込んでいき、ノイズ達を空高く吹き飛ばし、そのまま炭に分解されていく。

 

「次はこれだ!」

 

【―ランチャー・レーダー・オン―】

 

 右腕のロケットモジュールを消した後、次に【アストロスイッチ02、ランチャースイッチ】と【アストロスイッチ04、レーダースイッチ】のスイッチを入れるとフォーゼの右足に青いミサイルランチャー――【ランチャーモジュール】―が装着され、左腕にはアンテナが付いた仲間との通信に利用でき、また標的を探したり敵に狙いを定めるためのサーチャーにもなる【レーダーモジュール】が装着されるとレーダーを前に突きだし、レーダーについているモニターにロックオンカーソルが映し出される。

 

「ロックオン!いっけー!」

 

 狙いを定めたフォーゼは右足を前に出して力強く踏み込むと、ランチャーモジュールから5本のミサイルが発射され狙いを定めたノイズに着弾すると爆発が起きた。さらにミサイルの爆炎により周りにいた複数のノイズもそれに呑み込まれて炭に分解されていく。

 

 それを観ていた響と幼い少女は次々とノイズを倒していくフォーゼの動きに思わず喜びの声をあげてしまう。

 

「白いお兄ちゃんカッコいい!」

 

「弦太郎さん、すごい……!あ、弦太郎さん後ろです!」

 

「え?後ろ……って、うおぉぉっ!?」

 

 人型のノイズに頭突きを喰らわしていたフォーゼの背後に近づいた巨大ノイズが振り上げた挟みがフォーゼに向けて振り下ろされた。それを見た響の避けろという声に反応したフォーゼは慌ててその場から急いで離れようとしたが、それより早く巨大ノイズの挟みがフォーゼに当たろうとしたその時――

 

 

「―Imyuteus amenohabakiri tron―」

 

 

斬!!

 

 ――歌が聴こえた直後、蒼い斬撃が巨大ノイズの身体を真っ二つに斬り裂き大量の炭に変えた。

 巨大ノイズを斬り裂いた斬撃を放った主は地面に着地すると視線を響の方を向く、響はその人物の顔を見て驚いてその人物の名前を口にした。

 

「翼さん!?なんで?」

 

「呆けないで、貴女はその子を守りなさい」

 

 響の言葉を遮るように言った翼はアームドギアの刀を手にまだ残っているノイズに向けて走っていき、ノイズを斬り裂いていく。翼が人型のノイズを倒していると翼の背後からカエル型ノイズが襲い掛かる。

 それを確認した翼はアームドギアを大きく変形させて【蒼の一閃】で迎え撃とうと刀を振りかぶろうとした瞬間。

 

【―クロー―】

 

【―クロー・オン―】

 

「セイヤー!」

 

 【アストロスイッチ33、クロースイッチ】をロケットスイッチと入れ替え、右腕にクローモジュールを装着したフォーゼは背面に付いているジェットパックユニット・スラストマニューバーを噴出させ、彼女の前に飛び出してクローモジュールでカエル型ノイズを斬り裂いた。

 

「貴方は……!」

 

「っとと、大丈夫かお前?俺は仮面ライダーフォーゼ!さっきは助けてくれてありがとな!」

 

 翼は自身を守ったフォーゼに驚いていると、フォーゼはたたらを踏んで姿勢を整えた後、翼の顔を見て大丈夫かと声をかける。助けてくれたフォーゼに声をかけようとしたが、まだ残っているノイズが二人に向けて飛び掛かってくるがそれに気付いた二人はその場から飛び退く。

 

「よっと、残りの数も少ないな。これで決めるぜ!」

 

【―ロケット―】

 

【―ロケット・オン―】

 

【―ドリル・オン―】

 

「ハッ!」

 

 地面に着地したフォーゼはドライバーの右端の【◯スロット】に挿入されているクロースイッチをロケットスイッチに差し替えるとロケットモジュールを展開するとロケットモジュールから炎が噴射され空中に飛び上がると同時に【△スロット】に挿入されている【アストロスイッチ03・ドリルスイッチ】を起動、△が記されている左足に黄色のドリル【ドリルモジュール】が展開、左足に装着する。

 フォーゼは空中に一度滞空して左手をドライバーの右側に付属している【エンターレバー】に伸ばしてエンターレバーを引くと、フォーゼドライバーから機械音声が流れる。

 

【―ロケット・ドリル・リミットブレイク―】

 

 その音声が流れた後、角度を斜め下に向けた右腕のロケットモジュールで加速して左脚のドリルモジュールで敵を貫く跳び蹴りの姿勢でノイズ達に突撃していく。

 起動中のアストロスイッチの貯蔵しているコズミックエナジーを大幅に消費する仮面ライダーフォーゼの必殺技の一つ、その名も―――

 

 

「ライダーロケットドリルキィィィック!!」

 

 

―ギュリギュリギュリ、キキィィィィッ!―

 

 残っていたノイズの群れを一直線に貫いたフォーゼはそのままドリルモジュールで地面に着地すると技の勢いが止まらずその場で数回ほど回転した後、回転が止まると左膝に左腕を乗せ、ロケットモジュールを上に掲げた姿勢を取ると遅れてノイズは爆発。近くに残っていたノイズもそれに巻き込まれて連鎖的に爆発し、一つ残らず炭に変わった。

 

 

――三人称視点、終了――

 

 

 

 

――響視点――

 

 

 あの後、政府の人達がやって来てノイズだった物を掃除機みたいなので吸い込んでいるのを見ていると白いスーツから元の姿に戻った弦太郎さんが近づいてきた。

 

「ふう、終わった終わった~。大丈夫だったか響?」

 

「あ、あの弦太郎さん!さっきは助けてくれてありがとうございます!それにさっきの姿は――」

 

 私は弦太郎さんに助けてもらったお礼を言った後、ノイズを倒した力と姿について質問しようと――

 

「温かいもの、どうぞ」

 

 制服を着た女の人が温かい飲み物を差し出してくれた。

 

「あ、温かいものどうも。……ふは~、え?あ……!」

 

 コップを受け取った私はそれを飲んだ後思わずホッとすると私が纏っていたスーツが解けて、元の制服姿に戻りそれに驚いてコップを落としてしまい、そのまま後ろに倒れそうになる。

 

「ありがとうございま……あ、ありがとうございます!実は翼さんに助けてもらったこれで2回目なんです!」

 

「2回目……?」

 

 倒れそうになった私をリディアンの制服を着た翼さんが受け止めてくれて、私は体勢を整えてお礼を言うと翼さんは首をかしげる。

 

「あはは……それじゃあ、私達はこれで、弦太郎さんいきましょ……」

 

 私が助けた女の子がお母さんと抱き合っているのを見た後、弦太郎さんと一緒にその場を去ろうとしたけど……。

 

―ザザッ!―

 

翼さんを中心に黒いスーツを着た人達が私達の周りを囲んでいた。

 

「悪いけど、あなた達をこのまま帰す訳にはいきません」

 

「はあ、なんでだよ!?」

 

「あなた達を特異災害対策機動部二課まで同行してもらいます」

 

「だからどうしてなのか理由を教えて―ピーガチャッ!―ガチャッ?って、なんだよこれ!」

 

 弦太郎さんが翼にどうしてなのか理由を聞こうとしていると弦太郎さんの両腕に手錠が掛けられた!

 

「弦太郎さん!?―ピーガチャッ!―って、私もぉ!?」

 

「すみませんね。あなた達の身柄を拘束させていただきます」

 

 弦太郎さんに声を掛けようと手を伸ばそうとしたら、いつの間にそこに現れた男の人に私の両腕に手錠を掛けられてた!

 

「な、なんでぇぇぇぇぇぇっ!?

 

 そのまま私達は車に乗せられ、どこかに連れて行かれてしまった。

 

 これから私達、どうなっちゃうの!? 

 

 

――響視点、終了――

 

 




うわー短い、まだアニメ2話の前半だぞこれ?

どうもクロトダンです。
いかがでしたか?

やっぱりフォーゼは面白いですねー!
戦闘描写を書くときフォーゼの戦闘シーンを何度も繰り返し観ながら書きました。
アストロスイッチの種類と効果いくつか忘れて苦労しました。

そして仮面ライダージオウ最終回面白かった!
龍騎の最終回と似た展開でしたが、個人的にはこういう終わり方もありだと思います!

そしてオーマジオウ、スペックがムテキよりチート過ぎる……!

ゼロワンも楽しみです!


次は二課との顔合わせとフォーゼについての話です。
次回はフォーゼサイドのオリジナルキャラクターが出ますのでお楽しみください!


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3:事、情、説、明!

XVも今月で終わりか……さみしく感じるな。

では、どうぞ。






少女は知る、自身が知らなかった、青年が持つもう一つの顔を。

青年は語る、自身が経験した戦いの歴史を。


――特異災害対策機動部二課――

 

 

――響視点――

 

 

 弦太郎さんと一緒にリディアンの地下に連れられてこれから何が起こるのか身構えながら扉が開いて中に入ると――

 

「ようこそ!特異災害対策機動部二課へ!」

 

 なんか私達の歓迎パーティーが開いてた!?

 

 

 

 

「俺は風鳴弦十郎、特異災害対策機動部二課の司令をしている」

 

「おお司令っすか!弦十郎さんってスゲーえらい人なんだな!俺は如月 弦太郎!世界中の人達と友達になるのが夢で仮面ライダーをやっているぜ!」

 

「はっはっはっ!世界中の人達と友達か!凄い夢を持っているな君は、良ければ俺も君の友達にしてもらえないか?」

 

「いいっすよ!そんじゃ早速、こうして…こうして…こうして……こう!」

 

 弦太郎さんは風鳴弦十郎さんの手を取るとガシッ!と握手してから、手を組み換えて違う握手をした後、握った拳を弦十郎さんの拳に当て、更に拳の上から振り下ろして更に下から拳を振り上げた。弦太郎さんオリジナルの握手、友情の証をした二人はお互い笑顔になる。

 

 

「……暑苦しい人が増えたな」

 

「司令も気が合う人が出来てすごく嬉しそうね」

 

 

 笑いあっている二人を見ていた職員の人達の会話を聞いて私は苦笑していると――

 

「はーい、意気投合しているところ悪いけど、そろそろあなたが変身していた姿について教えてくれないかしら?」

 

 白衣を着た女の人―櫻井了子さんが弦太郎さんにあの姿について質問をした。

 

「あー、それはいいっすけど……ダチに連絡していいかな?あれは俺一人の判断で話すのはちょっとまずいんすよ……」

 

「あら?あれはあなた個人の物じゃないの?」

 

「あのベルト――フォーゼドライバーって言うんすけど、あれは俺のダチの親父さんが残してくれた物なんすよ。本当ならそのダチが変身する予定だったんだけど、訳あってそいつの変わりに俺が変身する事になったんだ。

 それ以降、フォーゼドライバーを渡された俺は仮面ライダーフォーゼに変身し続けたんだ。……だから、ダチに黙って勝手にフォーゼの事を喋ったら、俺は二度とダチに顔向け出来ねー」

 

 真剣な表情をして了子さんにはっきりと言うと、了子さんは息を吐いて弦太郎さんに友達と連絡してくれるようお願いした。

 

「……ふぅ、わかったわ。お姉さんの負けね。なら、その友達と連絡してくれるかしら?私も君の友達と話してみたいわ」

 

「うすっ!ありがとうございます!今連絡するからちょっと待っててくれ!」

 

「あ、ここ地上からすごく離れた地下だから携帯の電波は入らない……って、あら変わった携帯ね?」

 

 

 

 弦太郎さんは2つのスイッチが付いた表面にNとSのアルファベットが記された赤と青の折り畳み式の携帯電話を取り出して、アドレス帳からその友達に連絡を始めた。

 

「…………あ!もしもし、賢吾か?」

 

『弦太郎か?卒業式以来だな。どうしたんだ?まさか…また何かあったのか?』

 

「ああ、実はな……」

 

 電話の相手は賢吾さんだった。

 

 歌星 賢吾さん、弦太郎さんの友達の一人で一番の親友。初めて会った時は冷たい印象だったけど、話してみると優しい人で、弦太郎さんやその友達の人達が破天荒な事をしたらものすごい突っ込みをいれたのを見て驚いた。

 当時の賢吾さんは病弱で、一緒にいる時も発作を起こして倒れたのを何度も目撃して、通っていた高校では【学園一のサボリ魔】や【保健室の主】と本人が自称するほどの病弱だった。

 でも、去年の夏頃に発作がなかったかのように元気になっていたけど、いつ病弱が治ったのか今でも不思議なんだよね。

 

 

『君は馬鹿かああああああぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

 

「うわっ!ごめんなさいっ!?」

 

 賢吾さんが電話越しで周りに聞こえるぐらいの大声で弦太郎さんを叱りつけた。その声を聞いて、中学生時代に弦太郎さん達と一緒に賢吾さんに叱られた時を思い出して思わず謝ってしまった。

 

『君は何を考えている!もしフォーゼシステムがノイズに通じなかったら、君は炭素分解して死んでいたかもしれなかったんだぞ!変身する前にそのくらいの予想は出来なかったのか!!』

 

「~~~っ!い、いや賢吾これには深い訳が」

 

 携帯から耳を離した弦太郎さんは、必死に弁明をしていると賢吾さんはゆっくりとため息を吐いた。

 

『……はあ。まあいい、君の人の良さは学生の頃から知っている。先ほど聞いたが、立花を助ける為にフォーゼに変身したんだろ?例え、ノイズに通じなかったとしても君は彼女を必ず助けるに決まっている』

 

「け、賢吾ぉ……!」

 

『ただし、この続きは明日直接会ってするからな。わかったな弦太郎?』

 

「お、おう……わかったぜ」

 

 賢吾さんの言葉に弦太郎は声を震わせて返事をした。弦太郎さん御愁傷様です。

 

 

―響視点、終了―

 

 

 

 

―弦太郎視点―

 

 

『よろしい。では、楽しみにしておけよ?』

 

 NSマグフォンから聞こえるダチの声を耳にしながら、俺は背中から流れる冷や汗が止まらなくなっていた。

 

(やべーよ、賢吾のやつ本気で怒ってる……!そりゃあ、俺も無茶をしたと反省しているさ!でも、あの時響を助けるにはああするしかなかったし……)

 

『ハァ……それで、フォーゼについての説明だったな?説明するには条件がある。シンフォギアシステムだったか?それについての情報を直接会って教えてくれるのなら、こちらも情報を開示すると伝えてくれ』

 

「お?おう、わかった」

 

 考え事をしているとそう言われて、NSマグフォンから耳を離して、弦十郎さんに賢吾が言った内容を伝えると難しい顔をして顎に手を置いた。

 

「……教えてあげてもいいわよ、弦十郎君」

 

 しばらく待っていると了子さんが弦十郎さん教えてもいいと声をかけてきた。

 

「いいのか了子君?」

 

「ええ、シンフォギアシステムとは違う未知の力。それであの力について判るのならね。……ただし、教える内容については一部の開示可能なのに限定するけど……それでいいかしら?」

 

「ちょっと待ってくれ。…………大丈夫だって、それとこちらも情報は限定すると言ってるッス」

 

「あらそう。なら、問題ないわね?」

 

 賢吾から聞いた内容を伝えると了子さんは両手をポンッと叩いて、笑顔を見せる。

 

 俺は賢吾に一言声をかけてから、NSマグフォンの通話停止ボタンを切ってから、賢吾に伝えていい範囲の内容と俺がフォーゼになった経緯を二課にいる人達に伝えるようと口を開いた。

 

 

―弦太郎視点、終了―

 

 

 

――リディアン音楽院、女子寮――

 

 

――響視点――

 

 

「ただいま~」

 

「響!もう、こんな時間までどこ行ってたの!」

 

 特異災害対策機動部二課で、了子さんに身体を検査してもらい、弦太郎さんの説明を聞き終わった後、私と未来が住む寮部屋に到着して疲れた声を出すとリビングに繋がる扉から未来が怒りながら出迎えてくれた。

 

「ごめん、ちょっとドタバタして……」

 

「近くでノイズが現れたからすっごく心配したんだよ!」

 

「うん……本当にごめん」

 

 未来に話しかけられながらリビングにたどり着くとリビングにある畳にうつ伏せになって、申し訳ない気持ちで未来にごめんと伝える事しか出来なかった。

 

 

 

「あのね未来……」

 

夕飯を食べて、未来と一緒にお風呂に入った後、二人で二段ベッドの上段の布団に横になる中、二人の間に流れる気まずい空気に耐えきれなくなった私は隣で横になっている未来に声をかけた。

 

「……なに?」

 

 

―『今日の事は誰にもナイショよ?』―

 

 

「えと……弦太郎さんって覚えてる?」

 

 未来に今日起きた事を伝えようと口を開きかけた時、了子さんに言われた言葉を思い出して、咄嗟に弦太郎さんの事を話題にした。

 

「弦太郎さん?もちろん覚えてるよ。リディアンに入学するまで私達を何度も助けてくれた高校生の人だよね。でも、急にどうしたの?」

 

「ううん、ちょっと思い出して今何してるのかなーって……」

 

「そうだね……いつもリーゼントで短ランとボンタンを着ていて、すごい友達思いの人で、それに紹介してもらった友達の人達も個性的だったよね?」

 

「うん、そうだね。いつも最後は賢吾さんに怒られていたね」

 

「ふふ、たまに響も一緒に怒られていたね」

 

「あはは、そうだね」

 

 未来と話している中、私は弦太郎さんから伝えられた内容を思い出していた。

 

 

―『高校二年生の時、俺は転校した学園に現れた怪人を倒そうと、戦えない賢吾の代わりに仮面ライダーに変身して学園と生徒の平和を護っていたんだ。卒業するまでの一年間、ずっとな』―

 

 

 知らなかった。二年前、私と出会う前から弦太郎さんは仮面ライダーに変身して戦い続けたんだ。

 

 確かに思い返してみれば、たまに傷だらけでいる姿を何度か目にしていたけど……まさか、命懸けで戦っているなんて、あの優しい人からは想像出来なかった。

 あの人はそれを私達に誤魔化しながら、安心させる為に会いに来てくれていたんだ……。

 

(仮面ライダー……フォーゼ、か……。私、弦太郎さんの友達なのに、あの人の事、何も知らなかったんだなぁ……)

 

 心の中でそう想い、あの人の子供のような笑顔を頭に想い浮かべ、遅くまで未来と話し続けた。

 

 

――響視点、終了――

 

 

 

 

――特異災害対策機動部二課、櫻井了子の研究室――

 

 

――三人称視点――

 

 

 

 様々な器具が置いてある研究室に風鳴弦十郎と櫻井了子が話しあっていた。

 

「宇宙の力、コズミックエナジーにその力を凝縮したアストロスイッチ。そして星座の象徴の怪人ゾディアーツ……か」

 

 弦十郎は腕を組んで、弦太郎が説明した内容を思い返していた。

 

「それにしても信じられないねぇ、そんな凝縮したエネルギーを持ったのが過去に現れていたなんて……。それにこちらのセンサーに反応がなかった理由(ワケ)を調べた歌星 賢吾君が言っていた、一部の施設と学園を中心に特殊な電波が流れていて、それのせいで反応が外に漏れなかったみたいなんて信じられないわ」

 

 調べたいと賢吾に改めて許可を得て、弦太郎から預かった【アストロスイッチ12、ビートスイッチ】を右手の親指と人指し指で摘まんで、自身の顔の前に翳した後、ゆっくりと机の上に置いた。

 机の上には彼から預かったビートスイッチを含めた4つのアストロスイッチ【アストロスイッチ09、ホッピングスイッチ】、【アストロスイッチ26、ホイールスイッチ】、【アストロスイッチ33、クロースイッチ】が置かれていた。

 

「ああ。だが、それを仲間達の絆の力で敵の野望を阻止し、更に分かり合った。それに、我々の知らない間に世界を救ってくれていたとは……彼と彼の友達には感謝してもしきれないな」

 

「ええ、そうね……」

 

 机の上にあるアストロスイッチを見て、この場にいない弦太郎と彼の友達に感謝の言葉を言う中、了子は返事を返しつつ、4つのアストロスイッチを睨みつける。

 

(宇宙の力……、もし手に入れれば()()に使えるかもしれんな)

 

 そう思考していた了子は隣に立つ弦十郎に気づかれないように冷徹な笑みを浮かべていた。

 

 

――三人称視点、終了――

 

 




CSMブレイバックル&ラウザー面白い。

どうも、皆様クロトダンです。

いかがでしたか?
自分でもムリヤリ感がひしひしと感じています。

XV9話、本当にあの爺は人でなしを越えて外道でしたね。

そして遂に始まった仮面ライダーゼロワン!
シンプルな見た目なのにそれを上回るくらいのアクションシーンが燃えました。
あのサイバーっぽいバッタもカッコかわいかったです。

そして、話しの最後にアストロスイッチをフィーネに目を付けられてしまいましたね。果たして主人公はフィーネの野望を打ち砕き、サジタリウスであった理事長の時のようにダチになれるのか?


それではまた。


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4:親、友、登、場!

XV10話11話まとめて一言、

宇宙キターーーー!




フォーゼを見直して気になったんですけど、ラビットハッチが月面にあって、更に何度も月面を歩き回ってNASAとか衛星とかによく気付かれなかったなと疑問に思います。


少女は戸惑う、自身に向けられた憧れの人が持つ剣に。

青年は問う、日だまりの少女に剣を突きつける片翼の少女に。



――響視点――

 

 

 弦太郎さんと再開した翌日の放課後。教室まで迎えに来てくれた翼さんに連れられた私は、学校の地下にある二課に行くと、先に二課に来ていた弦太郎さんとそこにはいない筈の意外な人に会って驚いてしまった。

 

「け、賢吾さん!?どうしてここに!?」

 

 黒いトランクケースを持った弦太郎さんの一番の親友である歌星 賢吾さんが二課の司令室にいたからだ!

 

「卒業以来だな立花。君の事情は彼らから聞いた。大変だったな」

 

 私の声を聞いて顔を向けた賢吾さんは片手を上げて挨拶をしてくれた。

 

「は、はい!……あの、賢吾さんはなんでここに?」

 

「昨日二課の人達にフォーゼシステムとコズミックエナジーについて説明すると約束してな、弦太郎に道案内を頼んでここに来たんだ。ちょうど今話すところだ。君はどうしてここに?」

 

「昨日話したろ?響が変身して襲ってきたノイズをぶん殴ったって」

 

「彼の言う通りよ。それに、響ちゃんは昨日の検査の結果とシンフォギアについて説明する為に呼んだの」

 

 賢吾さんの質問を了子さんが私の代わりに答えてくれた。

 

「そういう事か……わかった。なら、君も聞いたほうがいい。フォーゼシステムと俺達《宇宙仮面ライダー部》の事を」

 

 

 

 

 それから、賢吾さんと弦太郎さんの口から彼らの学校で起きた出来事について説明を受けた。

 弦太郎さんが転校したその日にゾディアーツという怪物が現れ、賢吾さんの代わりにフォーゼに変身して戦い、その場に居合わせた野座間 友子さんがフォーゼを仮面ライダーと言ったのを切っ掛けに幼なじみの城島 ユウキさんと一緒に仮面ライダー部という部活を作った事。

 

 相次ぐゾディアーツとの戦いを通して風城 美羽さん、大文字 隼さん、JK(ジェイク)さん、野座間 友子さんと友達になっていき、仮面ライダー部を認めなかった賢吾さんと改めて親友になった事。

 ゾディアーツの上位の存在【ホロスコープス】についてや弦太郎さんが去年の夏に現れた衛星兵器【XVⅡ】と友達になった事。

 

 時には仲間達と喧嘩になったと言ってたけど、それでもまた仲直りして、最後は仲間達と共にゾディアーツ事件を解決した事を私達に教えてくれた。

 

「以上が俺達が経験した内容です」

 

 賢吾さんの説明を聞いた弦十郎さんと了子さんが弦太郎さんと賢吾さんの功績に驚きを隠せないでいた。

 

「……小型ロケットブースター搭載バイクで大気圏を離脱するだけじゃなく、機材も使わず単独で大気圏を突入しても装着者を保護するスーツ……色々規格外過ぎるわね」

 

「それに機械である衛星兵器と友達になるとは……君達には驚く事ばかりだな」

 

 弦十郎さんの言う通り機械と友達になるなんて、弦太郎さんは本当に凄いと改めて思った。

 

「すみません。先ほど言っていた《宇宙仮面ライダー部》とは一体なんですか?」

 

「ああ、それは――」

 

「待ってくれ賢吾。それは俺に言わせてくれ」

 

 二課に着いてから一度も喋らなかった翼さんが賢吾さんに質問をしてきた。賢吾さんが説明しようとすると弦太郎が賢吾さんの代わりに説明すると言って前に出てきた。

 

「宇宙仮面ライダー部ってのは、学園と世界の自由と平和の為に設立した部活なんだ。最初はただの《仮面ライダー部》だったけど、戦いの途中で起こったある出来事の後に《宇宙仮面ライダー部》に変わったんだ」

 

「なるほど……そのある出来事とは一体?」

 

「いやそれは……」

 

「すまないがそれに関しては言うことは出来ない。貴方方には悪いがあれは俺達にとって、とても大切な事だからな」

 

 翼さんが更に言及すると弦太郎さんが口ごもると今度は賢吾さんが前に出て、きっぱりと断った。

 

「こちらからの説明は以上だ。次はそちらの事を教えてもらえないか?」

 

 

 

 

 その後、了子さんから私の身に起こった事とシンフォギアについて説明を受けた。聖遺物という欠片を加工して歌を唄う事でノイズと戦える力だと教えてもらった。

 それを聞いた賢吾さんは何故私がシンフォギアを纏えたのか質問すると了子さんが私の身体の中にある聖遺物の破片が二年前に死んでしまった奏さんが使っていたガングニールだと教えてくれた。

 

 その後、翼さんに奏さんの代わりに一緒に戦うと言った直後、ノイズが現れた警報が鳴り響き、司令室に向かうとノイズがリディアンの近くに現れたらしい。それを見た翼さんは一人現場に向かって行った。

 

「俺も行くぜ!」

 

「わ、私も行きます!」

 

「待つんだ、君達はまだ……」

 

 弦太郎さんと私が現場に向かおうとすると弦十郎さんに呼び止められた。

 

「翼一人だけじゃ心配だろ!それに誰かが助けを求めたら、それに答えてやるのが仮面ライダーの役目だ!」

 

「私もこの力が誰かの助けになるなら……ノイズと戦えるから、だから行きます!」

 

 そう言って私達は司令室を出ていき翼さんが先に向かった現場に走って行った。

 

 

――響視点、終了――

 

 

 

 

――三人称視点――

 

 

 リディアンから離れた道路に到着した翼は【第2号聖遺物、天羽々斬】を身に纏い、複数のノイズが合体した四足型巨大ノイズに向けて剣のアームドギアを構えて巨大ノイズに斬りかかった。

 巨大ノイズは自身の頭部にある羽を全て翼に向けて飛ばしてくるが、翼は跳躍して脚部にあるブレードを展開、身体を回転させて巨大ノイズが飛ばしてきた羽を全て斬り落とした。

 

 羽を斬り落とされた巨大ノイズは雄叫びを上げて、地面に着地した翼に向けてその巨大な口を開いて噛みつこうと飛び掛かってきた。

 翼はアームドギアの形状を巨大な剣に変え、迎え撃とうと構えた、その時――

 

【―ドリル・オン―】

 

「こんのぉぉぉぉぉっ!」

 

「ライダードリルキーック!」

 

 

―ドガガッ!―

 

 

 上空からガングニールのシンフォギアを纏った響と左足にドリルモジュールを装着したフォーゼが降ってきて、巨大ノイズの胴体に蹴り(フォーゼは抉っているが)を入れ、その巨体を蹴り飛ばした!

 

「わりぃ!待たせたな!」

 

「翼さん、今です!」

 

「……っ!はっ!」

 

【―蒼の一閃―】

 

 二人は翼に声をかけながら、そのまま地面に向けて落下していく。二人の姿を見た翼は口から出掛けた言葉を抑えようと唇を噛んで、蹴り飛ばされた巨大ノイズに向けて跳躍し、《蒼の一閃》を巨大ノイズ目掛けて振り下ろし巨大ノイズは真っ二つに斬り裂かれ大量の炭に変わると同時に爆発した。

 

「やった!翼さん!」

 

 響は地面に尻もちを着きながらも翼の役にたったと思い、喜びの笑みを浮かべた。

 

(……あれ?気のせいか?)

 

 ドリルスイッチを切り、背中のジェットパックユニット【スラストマニューバー】を吹かせ、地面に着地したフォーゼは翼の顔を見て違和感を感じていた。

 

(翼のやつ、なんであんな――)

 

 

 ――辛い顔をしてんだ?

 

 

 フォーゼが自身が感じた翼の様子に疑問を浮かべている間に響は翼の下に駆け寄り、翼に――

 

「私まだ足手まといですけど、一生懸命頑張ります。だから、私と一緒に戦ってください!」と笑みを浮かべてそう言った。

 

「…………そうね」

 

 少し間を空けてから口を開いた翼は一度言葉を切ってからゆっくりと身体を響の方に向いて、言葉の続きを言った。

 

「戦いましょうか……私達」

 

「……え?」

 

 その言葉の後にアームドギアの剣を響に突きつける。響は何故翼が剣を自分に向けているのか理解出来ず、戸惑いの声を上げる事しか出来なかった。

 

「な、何やってんだよ翼!?響はお前と一緒に戦っていきたいと言ったんだ、なのになんで剣を突きつけているんだよ!」

 

 翼が響に剣を突きつけたのを見たフォーゼは二人の間に立ち、翼にどうして剣を突きつけたのか問いただす。

 

「そ、そうですよ。それに私は翼さんと戦うつもりは――」

 

「そんな事わかっているわ」

 

「え?」

 

 フォーゼの言葉に続くように響は自身が言った言葉の意味を説明しようとするが、翼はそれを一蹴した。

 

「私が彼女と戦いたいから」

 

「っ!なんで響と戦いたいんだよ!」

 

「私がその娘を受け入れないからよ。戦う覚悟も持たず、ノコノコと遊び半分で戦場立つその娘が奏の……奏の何を受け継いでいると言うの!」

 

「そんな……!」

 

 翼が言った言葉にフォーゼが理由を問うと翼は目線を響に向けて、自身が抱いている感情気を言葉に出した。

 

「ッ!そんなの……そんなの八つ当たりじゃねーか!戦って欲しくないなら、普通に言葉にして言えばいいだろ!」

 

「例えそうだとしても、その娘は自分が何を言ったのか理解してると思いますか?奏の代わりに戦う?……ふざけないで!

貴女なんかが奏の代わりになると思っているのが私はそれが許さない!ハアァァーーッ!」

 

 自身の胸に秘めた感情を表に出して言った翼は、アームドギアを構えて響に向けて斬りかかった。

 

 

 

 

――特異災害対策機動部二課、司令室――

 

 

「何をしているんだあいつらは!」

 

 二課の司令室のモニターに映っている光景を見た弦十郎は眉間に顔をしかめそう口にした。

 

「あらあら、青春ねー」

 

「司令どちらに?」

 

「あの馬鹿共を止めに行く!何を考えているんだ全く!」

 

 了子がずれた感想を言っている間に司令室から出ていこうとする弦十郎を見た友里 あおいが弦十郎に声をかけると彼は一言そう言った後一人エレベーターに乗って地上に向かって行った。

 

 

 

 

「ハアッ!」

 

「くっ!」

 

【―シールド―】

 

【―シールド・オン―】

 

 翼が振り下ろした剣を【アストロスイッチ18・シールドスイッチ】をフォーゼドライバーの左端の□スロットに挿入してスイッチを起動。スペースシャトル型のシールドが物質化(マテリアライズ)して、彼の左腕に装着すると同時に振り下ろされた剣を間一髪で受け止めた。

 

 ギィンッ!と金属音が鳴り響き、両者の武器から火花が生じる。

 

「だからと言って、響に剣を向けるのは間違っているだろうが!そんな事を奏って奴が望んでいるとお前は思っているのかよ!」

 

「っ!うるさい!」

 

「うあっ!?」

 

 フォーゼが言った言葉に顔をしかめた翼は距離を取るために彼の腹に蹴りを入れて、フォーゼはいきなりの事で体勢が崩れ、背中から地面に倒れてしまった。

 翼は地面を蹴り、大きく跳躍すると自身が持つアームドギアをフォーゼ目掛けて投擲する。フォーゼは自身に向かってくる剣を弾き飛ばそうと左腕のシールドモジュールを前に出して構えようとした。だが、現実は彼の予想を裏切った。何故なら――

 

「へ?」

 

 ――翼が投擲したアームドギアがその形状を大きく変化させ、先ほどの巨大ノイズより巨大な大剣に変化したからだ。

 

 

【―天の逆鱗―】

 

 

「ハァァァァァァァッ!」

 

 翼は巨大な大剣に変化したアームドギアの柄尻に足をかけるとライダーキックに似た体勢でフォーゼに向けて突進していく。

 

「まてまてまてまてっ!?」

 

「うわぁぁぁぁっ!?」

 

 ロケットモジュールを使って響を連れて回避すればいいのに、フォーゼはそのあまりの光景冷静さを失い慌てふためる事しか出来なかった。

 響も混乱してしまいフォーゼが大剣の下敷きになるのを視ているしか出来なかった。……だが。

 

「フンッ!」

 

「お、叔父様!?」

 

 それを二課の司令室から駆けつけた弦十郎が突きだした拳が翼が繰り出した《天の逆鱗》受け止めた。

 

はぁぁぁぁぁぁ……っ!ハアッ!

 

「う、嘘だろ……!」

 

 それだけではなく、弦十郎はその衝撃を発頸で地面に受け流すと受け流した衝撃を地面が耐えきれず、舗装された道路が砕け、それだけじゃなく地面に埋められていた水道管が破裂して流れていた水が辺りに降り注いだ。

 

「あーあ、全くこんなにしちまって……何をしているんだお前達は?この靴高かったんだぞ」

 

 地面が砕けたのは彼のせいだが、弦十郎はため息を吐きながら周りより駄目になった自身の靴を心配していた。

 

「ご、ごめんなさい」

 

「わりぃ……弦十郎さん」

 

「気にするな、さて……」

 

 二人の謝罪に軽く返すと弦十郎は地面に座り込んでいる翼に近づいた。

 

「どうした翼。ろくに狙いを定めずに攻撃するなんてらしくないな……って、お前泣いて――」

 

「泣いてなんかいません!」

 

 翼の顔を見て弦十郎は声をかけるがそれを彼女は否定した。

 

「私は……風鳴 翼はその身を剣にした防人です。……だから、泣いてなんかいません」

 

 姪である彼女のその姿に声をかけるのを止めた弦十郎は彼女に声を掛けず、黙って彼女の手を取り地面から立ち上がらせた。

 

「私、自分がまだダメダメなのはわかっています。だから――」

 

 響はもう一度、翼にとっては逆撫でてしまう言葉を言ってしまい、それを聞いた翼は振りかぶって響の左頬に平手打ちをした。

 

 ――その瞳に涙を流しながら。

 

「…………」

 

 フォーゼはドライバーに付いている赤いスイッチ【トランスイッチ】を全て上げ、変身が解除され如月 弦太郎、姿に戻ると降り注ぐ水に濡れるのを気にしないで目線を響に向けて声を上げている翼に向けていた。

 

(翼の目、最初に会ったばかりの賢吾の目にそっくりだ)

 

 弦太郎は先ほどの翼の目を見て、かつて一人で背負い込もうとした自身の親友、星河 賢吾の姿を思い浮かんでいた。

 

 

――三人称視点、終了――

 




展開が凄いな今週のXV。

どうもクロトダンです。

いかがでしょうか?今回は主人公の親友の歌星 賢吾が登場と翼の暴走回でした。

改めて見直してみると初期の翼ってフォーゼの最初の頃の賢吾と似ていると思うんです。(背負い込もうとするところとか)

あ、ちなみにアストロスイッチとフォーゼの説明ですが、全て言った訳ではありません。
さすがにゾディアーツが元は人間がスイッチで変身した存在とは言えませんし、空間転移するコズミックステイツの事を話したら大変な事になりますからね(特にフィーネが利用しようと奪おうとする)


さて、次はクリス登場回ですね。そろそろステイツチェンジさせようかな……。

次回を楽しみにしてください!


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5:防、人、覚、悟!

お待たせしました。
相変わらず、稚拙な作品ですが楽しんでいただければ嬉しいです。

誤字脱字がありましたら遠慮なく指摘してください。


シンフォギアXV完結おめでとう!
最高の燃える作品に会わせてくれてありがとう!




――三人称視点――

 

 

「むむむ……!」

 

 翼が響に剣を向けてから数日が経ち。如月 弦太郎は、自身が通う大学の食堂の片隅で一人食事をあまり食べず腕を組んで考え事をしていた。

 

「うーん……だぁぁぁっ!駄目だ、なんも思い付かねー!」

 

「さっきからどうした如月?今朝からずっとその調子だが、何を悩んでいるんだ?」

 

 いい案が思い付かず、自身のトレードマークであるリーゼントにしている頭を抱えて声を上げていると彼の親友である歌星 賢吾が食事が載ったおぼんを持って、弦太郎と対面になるように座った。

 

「おお、賢吾か。いや、ちょっとな……」

 

「……もしかして、あの時の事か?」

 

 話しかけられた弦太郎は、頬をかきながら目を逸らした。それを見た賢吾は数日前の出来事だと気付き、小声で質問すると弦太郎は誤魔化せないと判断し、親友の問いに肯定し、自分も小声で先ほど悩んでいた内容について話し初めた。

 

「実は翼の事なんだけど、あいつ……昔の賢吾に似ていたんだ」

 

「俺に?どういう事だ?」

 

「見た目じゃなくて、なんつーか……なんかあいつの目が最初に会った頃の賢吾に似ているんだ」

 

「む……それは……」

 

 翼が自分に似ていると言われた賢吾は弦太郎に何故と問うと、弦太郎は自身が感じた事を伝えると賢吾は昔の自分が仲間達にした態度を思い出して、ばつが悪そうな顔をするとテーブルに両手をついて頭を下げる。

 

「あの頃はすまなかった。父さんの仇やゾディアーツの事で頭がいっぱいで、君達には冷たい態度をとってしまって……」

 

「何言ってんだよ賢吾。俺達は気にしてないし、それはもう終わった事だから気にすんなよ」

 

「すまない……いや、ありがとう如月」

 

 弦太郎に気にするなと言われた賢吾は自分の親友に礼を言うと笑みを浮かべた。

 

「あの後、弦十郎さんから聞いたんだけどさ……翼は奏って人が死んでから、ずっと一人で戦っていたんだ。でも、俺はあいつの聞に気持ちを無視してあんな事を言っちまって……。

勿論次の日に会った時に謝った。だけど……」

 

「未だに彼女とギクシャクして、更にあの二人のわだかまりも解決してなくて、どうすればいいか分からず悩んでいたと?」

 

「そうなんだよな~、はあ……」

 

 賢吾に言われた弦太郎はため息を吐いてテーブルに突っ伏していると、賢吾は食事の手を止めて弦太郎に話しかける。

 

「なあ、如月。覚えているか?俺がラビットハッチから地上に戻れなくなった日の事」

 

「勿論覚えてるぜ。お前を助ける為に頑張ったからな、あの時は本当に大変だった。でもあれを通してお前と本当の友達になることができたけどな」

 

 弦太郎は高校時代に起こったラビットハッチに繋がるロッカーが後に顧問になる、とある教師の手で撤去されてしまい、地上と分断しラビットハッチにいた賢吾が月に取り残されてしまった事件があった。

 当時の仮面ライダー部のメンバー達が賢吾を助けようと行動していたが、その時現れた羅針盤(らしんばん)座の星座の象徴を持つゾディアーツ、《ピクシス・ゾディアーツ》の物体(生物、非生物問わず)誘導する能力でフォーゼが放ったランチャーの弾道をロッカーに誘導させて、破壊された事があった。

 だが、破壊されたロッカーは偽物であり、本物のロッカーはその教師が別の場所に隠していたおかげで再びラビットハッチに繋げる事が出来、それ以来二人は親友になった。

 

「ああ、そうだな。おそらく風鳴は亡くなった天羽 奏が使っていたガングニールを纏う立花の事を認めたくないんだろう。

最初は君がフォーゼに変身するのを認めたくなかった時の俺と同じなんだろう」

 

 そう、賢吾も最初は弦太郎がフォーゼに変身するのを認めなかった。だが、戦いの中で賢吾は弦太郎と親友になり、頑なに否定していた仮面ライダー部の存在を認める事が出来た。

 

「あの時、性格がねじ曲がっていた俺と友達になってくれたお前なら、いつか立花と風鳴の中を取り持ってくれるだろう?」

 

「賢吾……ああ!そうだったな!俺はいつだってダチになる時はいつも正面からぶつかってきた。なら、響と一緒に翼とダチになってやるぜ!」

 

「馬鹿、声がデカイ!」

 

 賢吾の言葉を聞いた弦太郎は両手で両頬を叩き、椅子から立ち上がって右手を天高く掲げて、翼と友達になると声を上げる。

 それを見た賢吾は周りから集まる視線を感じつつ、弦太郎の腕を掴み、大声で気合いの籠った叫びを上げる彼を落ち着かせるのにしばらく時間がかかった。

 

 

――三人称視点、終了――

 

 

 

 

――響視点――

 

 

 あれから一ヶ月が経った。

 私は未だに翼さんとまだ和解出来てない。あの後、弦太郎さんも協力してくれたけどそれでも翼さんはまだ私を認めてくれなくて、それに――

 

(翼さん、泣いてた……)

 

 ――あの夜、私の頬を叩いた時、翼さんが涙を流した顔が思い浮かんだ。

 

(私は奏さんの()()()()()()()()と言ったのに、何で翼さんは認めてくれないのかな……?)

 

―ピピピッ―

 

 翼さんについて悩んでいると私の携帯に二課からの召集のメールが届いた。

 

「何?朝と夜のアラームの設定を間違えたの?」

 

 メールを確認していると一緒にレポートをまとめていた未来が首を傾けて、どうしたの?と聞いてきた。

 私は誤魔化しながら、どうしても外に行かなきゃいけないと未来に謝ると未来はしょうがないなとため息を吐いて、私の着替えを手伝ってくれた。

 

「夜間外出や門限はなんとかしてあげるけど、その代わり。こっちの方は一緒に行くって約束忘れないでね?」

 

 着替え終わった後、机に置いてあるノートPCを抱えて画面を私に見えるように向けると画面には、流れ星が流れている動画が乗っていた。

 私は未来に大丈夫と伝えてから寮を後にして、リディアンの地下にある特異災害対策機動部二課に向かって行った。

 

 

 

 

 ――この時、私はまだ知らなかった――

 

 

 ――この次の日に起きる出来事を……――

 

 

 ――そして――

 

 

 ――私せいで、翼さんを傷つけてしまった事を……――

 

 

 

 

――響視点、終了――

 

 

 

 

――弦太郎視点――

 

 

 次の日の夕方、俺はマシンマッシグラーに跨がり、法定速度ギリギリまでアクセルを回し、耳に嵌めた通信機から友里さんと連絡を取りながら、ノイズが現れた場所に向かっていた。

 

『弦太郎君、ノイズは地下鉄内に大量に出現しています!現在、響ちゃんが一人でノイズの討伐をしていますがそれもいつまで持つかわかりません。翼さんも現場にもうすぐ到着しますが、もしかしたらまた前回のように……。急いで現場に急行してください!』

 

「わかってる!」

 

 俺はハンドルから左手を離し、懐から取り出したバックル状態の【フォーゼドライバー】を手に取り、それを腹部に当てるとフォーゼドライバーからベルト部分が伸びて腰に巻きついて銀色のベルトになる。

 運転しているまま、左手でフォーゼドライバーの手前の赤いボタン【トランスイッチ】を全て下ろした後、左腕を顔の前にかざすとフォーゼドライバーからカウントダウンが流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「変身!」

 

 カウントダウンの後に変身と叫び、左手でドライバーの右側にある【エンターレバー】を引いた後、ドライバーから出てきた光と蒸気に包まれ、仮面ライダーフォーゼに変身した。

 

「宇宙……キターーーーーッ!!

 

 変身した俺はアクセルを全開にして、マッシグラーの後部に付いてある小型ブーストノズルから炎が噴き出し、急いで現場に向かって行った。

 

 

――弦太郎視点、終了――

 

 

 

 

――三人称視点――

 

 

 フォーゼがノイズが現れた地下鉄に向かっている途中、空から一筋の青い流星が流れているのが見えた。

 一瞬、アメリカに留学した友である()()()()()かと思ったが、流星から蒼い斬撃が地上に向けて放たれた後、爆発した。

 爆発したのを見たフォーゼはその可能性を否定して、マッシグラーの進路を変えて、斬撃が落ちた公園に向かって行った。

 

 フォーゼが公園に到着すると、先に到着していた翼がギアを纏っていた状態で、彼女は白い鎧―ネフシュタンの鎧―を纏った少女と戦っていた。その近くには同じくギアを纏っている響が首が長い鳥顔のノイズに身体を拘束されていた。

 

「響!一体何があったんだ!」

 

「弦太郎さん!お願いです!私の事はいいから、翼さんとあの娘の戦いを止めてください!」

 

 フォーゼは拘束されている響に声をかけ、何かあったのか質問すると響は自分の事より、翼と鎧の少女の戦いを止めるように言ってきた。

 

「どういう事だ!何で翼は白い鎧の奴と戦っているんだ!?」

 

 フォーゼは言葉の意味を聞こうと響に質問を投げ掛けると――

 

「へぇ、あんたが仮面ライダーフォーゼか?聞いていたより間抜けそうなツラしてんじゃねぇか?」

 

「なんだと!誰が間抜け面だ!」

 

 ――フォーゼの姿を確認したネフシュタンの少女が、翼を蹴り飛ばし、彼の姿を見てそう言ってきた。

 

「ハッ、鏡見たことねぇのか?ちょうどいい、その女のついでにテメーの持つアストロスイッチってのを渡して貰おうか?」

 

「アストロスイッチを!?」

 

 フォーゼはネフシュタンの少女が口にしたその言葉に驚きを隠せなかった。何故なら――

 

(どういう事だ?アストロスイッチの存在を知っているのは二課の人達を除いて、俺が卒業した天校の一部の教師と生徒、そしてライダー部のメンバーしか知らない筈なのに何でこいつはスイッチの事を知っているんだ?)

 

 ――そう、アストロスイッチを知っているのは一部の人だけしか知らないのに目の前の少女はスイッチの事を知っていて、しかもアストロスイッチを渡せと言ってきた。

 

「ふざけんな!アストロスイッチは賢吾から預かって、俺達ライダー部を繋いでくれた大切な物だ!一つたりとも渡してたまるものかよ!」

 

「へぇー、そうかい。なら、力ずくで渡して貰おうか!」

 

 そう言った少女は手に持っていた銃剣のような杖―ソロモンの杖―を向けると、杖から緑色の光が地面に放たれるとそこからフォーゼを囲むように沢山のノイズが現れた。

 

「な、どうしてノイズが!?」

 

「ハッ、知りたきゃそいつらに勝ってみせな!」

 

 少女の言葉を皮切りにノイズ達は一斉に俺に向かって突撃してきた。

 

「うぉっ!?く、とりあえず今はノイズ達をなんとかしねーと!」

 

【―チェーンソー―】

 

【チェーンソー・オン】

 

 フォーゼは△スロットに装填してあるランチャースイッチを抜いて【アストロスイッチ08・チェーンソースイッチ】を装填して、すぐにスイッチを入れると右足の×マークからコズミックエナジーが展開、物質化(マテリアライズ)が完了するとフォーゼの右足に青いチェーンソーが付いた足甲、【チェーンソーモジュール】が装着される。

 フォーゼは身体を大きく回転してチェーンソーモジュールが装着した右足で襲いかかってくるノイズを斬り裂き、背中のジェットパックユニット・スラストマニューバ噴出させて身体を浮かび上がらせ、飛んでくる飛行型ノイズを斬り裂いた。

 

【―マジックハンド―】

 

【―ガトリング―】

 

【―マジックハンド・ガトリング・オン―】

 

 チェーンソーのスイッチを切ったフォーゼはドライバーの○スロットに装填してあるロケットスイッチと△スロットに装填してあるドリルスイッチを抜き取り、○スロットに【アストロスイッチ05・マジックハンドスイッチ】、△スロットに【アストロスイッチ19・ガトリングスイッチ】を装填してスイッチを入れる。

 スイッチを入れたフォーゼの右腕と左足にコズミックエナジーが展開、物質化(マテリアライズ)すると右腕にマジックハンドモジュール、左足にガトリングモジュールが装着される。

 

「オラオラッ!喰らえっ!」

 

 マジックハンドモジュールで人型ノイズの身体を掴み、そのままノイズごとマジックハンドモジュールをハンマーのように振り回して囲んでいたノイズ達を吹き飛ばし、ガトリングモジュールで離れている他のノイズに向けて無数の弾丸を撃ち放ち、ノイズ達は無数に撃ち放たれたコズミックエナジーの弾丸によって身体を穴だらけになり炭に変わり果てる。

 

「次はこれだ!」

 

【―チェーンアレイ―】

 

【―ホイール―】

 

【―ハンマー―】

 

【―チェーンアレイ・ホイール・ハンマー・オン―】

 

 マジックハンドとガトリングのスイッチを切り、マジックハンドとガトリングスイッチと□スロットに装填していたレーダースイッチを抜き取り、○スロットに【アストロスイッチ13・チェーンアレイスイッチ】、□スロットに【アストロスイッチ22・ハンマースイッチ】、△スロットに【アストロスイッチ26・ホイールスイッチ】を装填してその3つのスイッチを入れる。

 フォーゼの右腕に鎖付きの鉄球【チェーンアレイモジュール】、左足に2つのタイヤが並列に並んだ【ホイールモジュール】、そして左腕に大きなハンマー【ハンマーモジュール】が物質化(マテリアライズ)する。

 

 フォーゼは右足を上げて左足のホイールモジュールに体重をかけると、ホイールモジュールのタイヤが高速回転して、高速移動でノイズ達の前に移動するとすれ違い様に左腕のハンマーモジュールを横に振るうと、先頭にいたノイズをボールのように後方に飛んでいく。

 更にハンマーモジュールを振り向いた勢いを利用してチェーンアレイモジュールを大きく振り回すとチェーンアレイモジュールの鎖が伸びていき、周りのノイズを凪ぎ払っていく。

 

「ちっ、中々やるじゃねーか……」

 

「そこだっ!」

 

「おっと、いい加減しつけーんだよ!」

 

「ぐあっ!?」

 

「翼(さん)!」

 

 背中を見せたネフシュタンの少女に翼はアームドギアの剣を振りおろすが、少女は鎧と繋がっている刺の鞭で剣を防ぎ、鞭を払って翼を地面に倒した。

 

「そろそろ諦めたらどうだ人気者?あんたじゃあたしに勝てないとわかったろ?やっぱり鎧も仲間もあんたには過ぎてんじゃねーか」

 

「ぐっ……!」

 

「待て、なんでお前は響を連れていこうとするんだ!どうしてノイズを従えてんのか教えてくれ!」

 

 ノイズを全て倒したフォーゼが少女の前に出て、どうして響と自身が持つアストロスイッチを狙うのか問いかける。

 

「チッ、もう倒したのか。けどなぁ……仮面ライダーだがなんだか知らねーが、テメーみたいな奴があたしは大嫌いなんだよっ!」

 

「くっ!」

 

「ちょせぇ!」

 

「グゥッ!?」

 

 ネフシュタンの少女がそう叫ぶと同時に刺の鞭をフォーゼに向けて繰り出した。フォーゼは地面に転がってそれを避けるが、それを読んでいた少女は手首を動かすと鞭の軌道が変わると、まるで蛇のようにフォーゼを捉え、まだ避けた時の体勢が整えてないフォーゼの首に絡みついた。

 フォーゼは両手で自身の首を締め付けている鞭を外そうとするが、少女は空いているもう片方の手で鞭を持ち、逃がさないようにフォーゼの首を締め付けるのを強くする。

 

「弦太郎さん!」

 

「これでしまいだ。テメーを落として、そこの女とスイッチを戴いておさらばだ」

 

「ぐう……っ、そうは、させ……るかよ……っ!」

 

「ハッ、負け惜しみを。さっさと締め落として……っ!?くっ!」

 

【―蒼の一閃―】

 

 フォーゼの意識を落とそうと鞭を引っ張ろうとした瞬間、フォーゼと少女の間に蒼い斬撃が地面を削りながら突き進む。

 少女は舌打ちをしてフォーゼの首を締め付けた鞭を手元に戻しながら、その場を蹴るように跳び退きフォーゼから離れた場所に着地すると彼女に向けて放たれた三本の短刀。迫ってきた。少女は鞭を一振りして短刀を上に弾き、斬撃が来た方向に視線向けると――

 

「ハァ…ハァ…、貴女の相手は……この私よ」

 

「翼(さん)!」

 

 大剣に変えたアームドギアを振り下ろした翼が息を整えて、ネフシュタンの少女を睨み付ける。

 

「ち、しつけーな女だな。あんたじゃこのあたしには勝てないのはわかってんだろ?」

 

「それでも……それでも私は決めたんだ」

 

 翼はアームドギアの剣を元の形に戻し、自身の胸に浮かんだ想いをネフシュタンの少女に告げる。

 

「奏が……奏が命がけで助けた命を、今度は私が護るとこの心に決めたんだ。だから――」

 

 一度言葉を切り、目線を自身の後ろにいる二人に向ける。

 

「防人の生きざま……覚悟を見せてあげる!あなた達の胸にその姿を焼き付けなさい!」

 

「まさか、唄うのか、絶唱を……!そうはさせると……なっ!?身体が!?」

 

 翼がこれからやろうとする事に気付いた少女が阻止しようとするが、自身の身体が動かない事に驚き、どうしてそうなったのかなんとか動かせる首を回して足元を見ると、そこには自身の影に先ほど弾いた一本の短刀が影を縫いつけるように地面突き刺さっていたからだ!

 

【―影縫い―】

 

「月が出てる内に決着をつけましょう」

 

 そう言った翼は剣のアームドギアを持った右手を上にゆっくりと上げ、目を瞑ってある唄を始めた。そのある唄の名は――

 

 

【―絶唱―】

 

 

「―Gatradis babel ziggurat edenal Emustolrozen fine el baral zizzl―」

 

翼は絶唱を唄いながら鎧の少女にゆっくりと近づいていく。少女は近づかせるかとかろうじて動かせた腕を前に伸ばし、ソロモンの杖からノイズを召喚する光を放ち、自身の壁になるように前方に召喚するが、既に翼は少女の目の前に立っていた。

 

「―Gatrardis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl ―」

 

 鼻と鼻が当たりそうな距離まで近づいた翼の顔をを見て小さな悲鳴上げ、顔を逸らせようとするが、《影縫い》の効果によりそれは叶わず、翼は少女の顔に手を添え、唄い終えて微笑を浮かべると翼の口から血が流れた次の瞬間――。

 

 翼から強大なエネルギーが迸り、彼女の身体から光が溢れた後、目の前にいる少女と周囲にいるノイズごと絶唱によるエネルギーが辺りを包むように解放された!

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

翼の目の前に立っていた鎧の少女は絶唱のエネルギーを諸に受けて吹き飛ばされ、彼女達から離れた場所にいた響とフォーゼは絶唱により起きた衝撃波を受けて吹き飛ばされた。

 絶唱のエネルギーが収まっていくと周囲にいたノイズが殲滅していて、噴水まで吹き飛ばされたネフシュタンの少女は鎧が砕けた箇所を修復しようとする鎧の侵食の痛みに舌打ちをした後、ネフシュタンの鎧に備わっていた飛翔の能力で空中に浮くと悔しそうにその場から去っていった。

 

「翼さーん!」

 

「翼っ!」

 

「無事か翼!」

 

 絶唱の余波で吹き飛ばされた響とフォーゼは声をかけながら翼に駆け寄っていく途中、二課本部から急行した弦十郎が車から降りて黙ってその場に立ち尽くす翼に声をかける。

 

「私とて……人類を守護を果たす、防人です……だから」

 

 声をかけられた翼は声をかけてくれた弦十郎に答えるように声を出しながら、ゆっくりと背後を振り向くと、彼女の顔をを見た三人は驚いて息を呑んでしまった。

 何故なら、彼女の顔から目と口から大量の血が流れていたからだ。

 

「……こんなところで、折れる剣では、ありませ……ん」

 

「翼っ!」

 

「しっかりしろ!死ぬんじゃねーぞ翼!」

 

「あ……ああ……っ!」

 

 そう言った彼女はそのままゆっくりと背後から地面に向かって倒れ、それを見た弦十郎は倒れた翼の下に駆け寄り、フォーゼは【アストロスイッチ24・メディカルスイッチ】を取り出し、翼に声をかける。

 膝をついて自分のせいで重症を負ってしまった翼の姿を見た響は、彼女の名前を叫んだ‼️

 

「翼さーん!」

 

 月が照らし続ける暗い夜空に響の悲鳴が響き渡った。

 

 

――三人称視点、終了――

 




どうも皆さん、クロトダンです。

いかがでしょうか?眠気を我慢しながら書いたので、ちょっとおかしな文章になってると思います。
もし、見つけたら教えてください。

誤字脱字がありましたら気軽に報告してください。


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6:撃、槍、修、行!

おおぉぉぉぉ待たせしましたぁぁぁぁーーっ!(←背中にロケットを背負って大気圏を離脱中)



少女は強くなる、自身が護りたいものが傷つけない為に。

青年は思い出す、かつての自分が抱いていた思いを。




――三人称視点――

 

 

――二課直轄の医療施設――

 

 

 完全聖遺物ネフシュタンの鎧を纏った少女との戦闘から数時間後、響達は絶唱を唄い重症を負った翼が運ばれた私立リディアン音楽院高等科に隣接する表向きは総合病院の体裁をもつ二課直轄の医療施設にいた。

 

 本来の歴史なら翼は一命を取り留めまだ予断の許されない状態になる筈だが、倒れた直後の翼にフォーゼが出した【アストロスイッチ24:メディカルスイッチ】によるコズミックエネルギーが凝縮した傷薬によって回復したが、絶唱の影響かメディカルスイッチでも完全には回復する事が出来なかったが、なんとか重症から遠ざける状態までに回復し手術は無事に成功。

 後は本人の意識が回復するのを待つのみですと手術した医者から聞いたいつもの赤いシャツから白いスーツに身に纏った風鳴 弦十郎は医者に頭を下げた後、背後に控えた部下を引き連れ行方を眩ませたネフシュタンの鎧の捜索をしにこの場を跡にした。

 

 弦十郎達が去って行く中、手術室に繋がる通路の脇にあるベンチに座っていた立花 響は顔を俯かせて悲しい表情を浮かべていた。

 

「響……」

 

「お二人が気に病む必要はありませんよ」

 

 彼女の隣に座っていた弦太郎はなんて声をかけるか迷っていると小川 慎二が二人に声をかけながらベンチの側にある自販機からコーヒーを購入した後、空いている椅子に座った。

 

「翼さんが自ら意思で唄ったのですから……」

 

「小川さん……」

 

「(コク……)ご存知と思いますが以前翼さんはアーティストユニットを組んでいました」

 

 コーヒーを一口飲んだ後、小川は二人に翼の過去を話し出した。

 二年前かつて彼女が組んでいたアーティストユニット【ツヴァイウィング】の初ライヴの出来事や絶唱を唄い命を燃やし尽くした翼の片翼である【天羽 奏】の事、彼女を亡くした後の翼が奏の失った穴を埋めるべくがむしゃらに戦い、恋愛や青春を犠牲にして自身を殺し、一振りの剣としてこの二年間を過ごしてきたこと。

 

 そして今回の戦いで命を賭して自らの使命を果たそうと絶唱を唄った事……。

 

「グスッ……そんなの……酷すぎます……」

 

 それを聞いた響は涙を流しながら自らが翼に発した言葉の意味にようやく気づき、自分のせいで翼を苦しめていたと自身を恥じていた。

 弦太郎も声に出してなかったが翼の抱えていた過去を知り、それを知ろうとせず彼女と友達になろうとしていた自分自身を許せないと拳を握りしめていた。

 

「お二人共。僕のお願いを聞いてもらえますか?」

 

 その問いに二人は顔を上げ、彼の顔を見ると小川は優しい表情を向けてある言葉を二人に言った。

 

「翼さんの事嫌いにならないでください。翼さんを世界で一人ぼっちにさせないでください」

 

「「……はい!」」

 

 小川からの願いを聞いた二人は涙を拭い力強く返事を返した。

 

 

 

 

――――

 

 

「内通者、か……確かに気になるな」

 

 それから時が飛んで弦太郎が通う大学にある中庭の片隅で彼の親友である歌星 賢吾は弦太郎が二課本部で話した内容を聞いた後、顎に手を添えて話の内容を整理していた。

 敵は響という個人と弦太郎がもつアストロスイッチを狙っていた事は二課の情報を流した内通者について考えていた。

 

「(しかしアストロスイッチは分かるが、何故立花を狙っていた?シンフォギア装者であるなら同じ装者である風鳴 翼を拐えば済む事なのに敵は彼女ではなく立花を指名していた。何故立花を狙う?敵は何を考えている?)ん?」

 

 アストロスイッチを狙っていた理由はある程度予想できるが何故響を狙っているのかと天才的な頭脳をもつ賢吾でもシンフォギア装者である事以外の理由が思い付かないでいる中、弦太郎はいつもの明るさがなく更に表情を暗くしていた。

 

「どうした何か考えごとか?」

 

「ああいや。その……俺、本当に駄目だなぁって思ってた」

 

「どういう事だ?」

 

 弦太郎は賢吾に小川から聞いた翼が抱えていた過去、そして二課本部で涙を流した響の気持ちを伝えた。

 

「俺、仮面ライダーになってから色々あって沢山のダチと出会ってきたけどさ、翼が抱えている気持ちや響が抱えている気持ちを知ろうとしないでなんとかしてやろうとしてさ……俺が足を引っ張ったせいで翼が傷ついて、響が言った言葉の意味をもっと早く気付いておけばあいつをあそこまで傷つけずにすんだのに空回りをしていた俺は本当に駄目だなぁって……」

 

「…………フゥ。まったく、君は大学生になってそんな事を考えていたのか?」

 

「……なんだと?」

 

 そう言葉を口にした弦太郎は悲しそうな表情を浮かべていると賢吾はため息を吐いた後、肩を竦めながら話すとそれを聞いた弦太郎は目付きを鋭くして彼を睨み付ける。

 

「そんな事だと?賢吾お前……どうしてそう言えんだよ!」 

 

 弦太郎は賢吾の胸倉を掴んで怒鳴りつけると賢吾はそれを気にせず、弦太郎に声をかける。

 

「それはこちらのセリフだ。君は昔立花を助けた時に俺達に言った言葉を忘れたのか?」

 

「俺が言った言葉……?」

 

 賢吾の言葉を聞いて彼の胸倉から手を放すと賢吾は少し服装を直した後、弦太郎に昔彼自身が言った言葉を口にした。

 

「ああ、あの時JKが言っただろう――

『彼女を助けてもそれは一時しのぎに過ぎないッスよ!あまり深く関わると今度は弦太郎さんに矛先が向けられるだけですよ!』

――と、だが君それを聞いても考えを変えず俺達にこう言ったんだ」

 

『何言ってやがる!ただ生き残っただけの女の子に理不尽な理由で虐げられるのを黙って見てろ?ふざけるなよ!例え矛先が俺に向けられて、それで命を落としそうになっても……それでも俺は響を助ける!』

『あいつは生きるのを諦めるなと言われたんだ!ここであいつを見捨てたら、その言葉を言ってくれた奴の気持ちを踏みにじる事になる!それをしなかったら一生後悔する。たった一人の女の子を救えなかったら俺は……俺自身を許せねー!』

 

「君が言ったその言葉のおかげで今の俺達はここにいるんだ。だから彼女達を傷つけ泣かせたから悩んでいる?そうじゃないだろう!俺達が知る如月 弦太郎はどんな厄介事でも頭を突っ込んだり、時には頭を抱える出来事を起こすバカだが……その勘の良さと人に対する観察眼。そして君自身がもつ人を惹き付け友情を結んできた力があるだろう!あの時の俺に気持ちをぶつけてきたように正面から彼女達と向き合って改めて友情を結んでみせろ!」

 

「っ!!」

 

 賢吾の言葉を聞いた弦太郎は目を見開き、自分もいつの間にか精神的に参っていた事に気付いた。賢吾の言う通り昔の自分なら例え悩んでいても自分はゾディアーツやそのスイッチャーであった学園の生徒を相手に正面からぶつかって友達になった。

 それに目の前の親友の命を一度奪った【十二星座の使徒】(ホロスコープス)のリーダーである射手座のゾディアーツ(サジタリウス・ゾディアーツ)――かつて自分達が通っていた今は亡き学園高校の理事長、《我望光明》も賢吾が残した手紙のおかげで敵討ちをするではなく友達になるという選択を選び、仮面ライダー部全員の思いをぶつけることで友達になることができ、仮面ライダー部の気持ちを受け取り改心した我望がその命が消える前にアクエリアス・ゾディアーツの能力で賢吾を人間として復活させた。

 

「(そうだ……俺はどんな時でも相手の気持ちもまとめて正面からぶつかって友達になってきたんだ。それを俺はいつの間にか忘れていたんだな……)ありがとう賢吾、おかげで思い出したぜ」

 

「まったく相変わらず世話をかける奴だな君は?なら、答えは決まったか?」

 

「ああ!俺は翼を一人ぼっちにさせないし、響の悩みも一緒に考える。それを全部まとめてもう一度ダチになってやる!」

 

 賢吾の言葉を聞いた弦太郎は先ほどまで落ち込んでいたのが嘘のように元気になり、拳を空に向けて突き上げた。

 

――ピピピ!ピピピ!――

 

 そのタイミングで弦太郎のポケットに入れていた【NSマグフォン】から通話を知らせる音楽が流れてきた。

 

「はい。ああ、響か。ちょうど連絡しようと思ったんだ。どうした?」

 

『弦太郎さん、お話ししたい事があります』

 

「……なんだ?俺で良ければ言ってみな?」

 

 電話に出ると響が今朝まで二課本部で落ち込んでいたとは思えないほど声に力が込められていた事に気付き、話しを聞く姿勢をとる。

 

『私、強くなりたいです。護りたいものの為に、もう誰も傷つけずに済むように私は……私のまま強くなりたいです!』

 

 それは弦太郎にとって昔から知っていた少女が初めて言った願いだった。初めて会った時から現在に至るまで響は弦太郎達と関わって元気になってきたが、自分達に遠慮してたのか今まで一度も彼女自身からお願いを言わなかった。

 そんな妹分の力強い願いを聞いた弦太郎は口元に笑みを浮かべ、嬉しくなりそんな彼女の願いを一緒に叶えようと口を開いた。

 

「響……ああ、いいぜ。お前がそれを選ぶんなら俺もそれに付き合うぜ!」

 

『弦太郎さん……!ありがとうございます!』

 

 その言葉を聞いた響は通話越しでもわかるほどの元気な声で礼を言った。

 

 

――翌日、風鳴 弦十郎の邸宅――

 

 

「「頼もーうっ!」」

 

「うおっ!?なんだいきなり?」

 

 その翌日の朝、弦十郎が日課のトレーニングをしようとした時に突然聞き覚えのある声に驚き、なんだと思い自宅の門に向かうとそこには制服姿の響と私服姿の弦太郎がそこに立っていた。

 

「おはようございます!弦十郎さん!あんたに頼みたいことがあるんだ!」

 

「頼みたい事?」

 

「はい!私に戦い方を教えてください!」

 

「俺が君に……?」

 

「弦十郎さんならきっとすごい武術を知っているんじゃないかと思って!」

 

 響の言葉を聞いた弦十郎は腕を組んで思考した後、響の隣に立つ弦太郎に視線を向け声をかける。

 

「……弦太郎君もか?」

 

「いや、俺はもう自分の戦い方が決まっているから大丈夫だ。だけど、もう二度とあんな事が起きないように自分を鍛え直したいんだ」

 

 弦太郎の眼を見た弦十郎はその力強い意思を感じ取り、一度目を閉じて思考した後、目を開いて二人。願いを聞く事にした。

 

「……わかった。俺のやり方は厳しいぞ?」

 

「はい!」「押す!」

 

 二人は力強く返事を返すとそれを聞いた弦十郎は頷いた後、二人に修行の前にある質問をした。

 

「ところで二人はアクション映画とか嗜むか?」

 

「「へ?」」

 

 

――三人称視点、終了――

 

 




どうも皆様、クロトダンです。(←大気圏離脱に失敗して地面に頭からめり込んでいる)

ようやく、よーうやく続きを投稿できました。
もうあまりこの作品を覚えている人はいないと思いますが、本当にお待たせしてすみません。(通常営業)

今回は原作4話に後半にあたる弦十郎に弟子入り回とフォーゼサイドの話でした。

次回はデュランダル輸送回で遂に雷電野郎にステイツチェンジします!
お楽しみに!






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7:移、送、作、戦!

皆さんお待ちかねのステイツチェンジです。


それと皆さんにご報告があります。

この作品を見た友達が『性格がまんま本人だから、オリキャラじゃなくて原作のキャラにした方がいいんじゃね?』と言われましたのでフォーゼサイドのキャラ達をオリキャラから原作キャラに変更し、オリ主タグは消す事にしました。
今まで投稿した話も随時修正していきます。
こちらの都合で申し訳ありません。

これからも【友情絶唱 宇宙、キターーーーーッ!!!】をよろしくお願いします。



――三人称視点――

 

 

 響が弦太郎と共に弦十郎に弟子入りしてから数日が経った。戦い方を知らなかった響は弦十郎の持つ武術を習い、戦闘スタイルが定まっている弦太郎は武術を習わなかったが自身を鍛え直す事にした。

 まあ、アクション映画を元にしたツッコミ所がある修行だが……それでも二人は以前より確実に強くなっていた。

 

「移送任務?しかも明日の早朝から?」

 

「ああ、詳しい事は言えねーがそれの移送が無事に終わるまで俺と響がそれに出撃する事になったんだ」

 

 そんなある日、二課の良き理解者であった広木防衛大臣が殺されたとの情報が彼らの耳に入った。

 その後、広木防衛大臣と会談する為に向かった櫻井 了子から亡くなった広木防衛大臣から()()()()極秘指令、二課本部最奥に格納された完全聖遺物【デュランダル】を永田町にある【記憶の遺跡】への移送任務を下された。

 

 デュランダルを狙う敵に備え、装者である響と民間協力者であり仮面ライダーである弦太郎が早朝から出撃する事が決まった。

 任務の為、一度自宅から荷物を取りに来た弦太郎だが、突然嫌な予感を感じ、もしもに備え賢吾にアストロスイッチの調整を頼もうと彼の住むマンションに来ていた。

 

「なるほど。確かにもしもに備えるのはいいことだな。ほら、調整は既に終わったぞ」

 

「いつもすまねーな。これで何があっても大丈夫だ」

 

「気にするな弦太郎。だが、昔から君の勘はよく当たる事が多い。何が起こるかわからないが気を付けろよ?」

 

「ああ、わかってるって!」

 

 賢吾の忠告を聞いた弦太郎は笑みを浮かべて返事をした。

 

 

 

 

――翌日の早朝――

 

 

 上空を風鳴 弦十郎が乗ったヘリが周辺を見渡し、立花 響を乗せた櫻井 了子の運転する車を中心に前後左右を護衛車で堅め、その後方にマシンマッシグラーに搭乗した如月 弦太郎を配置した布陣。防衛大臣殺害犯を検挙する名目でデュランダルの移送作戦、櫻井 了子命名の【天下の往来独り占め作戦】が実行された。

 

 本部から出発した一行は警戒しつつも何事もなく進んでいたが、一行が道路橋を渡っている途中で事態が動き出した。

 

 突如橋の一部が崩れ落ちた。

 それを見た一行はハンドルを切ってそれを避けるが護衛車の一台が避けきれず落下し爆発した。

 

 狙われないようにスピードを上げた一行は街に入ってもスピードは落とさず、そのまま道路を突き進むが後方の護衛車が下水道から突き上がったマンホールに車体を飛ばされ、弦太郎が運転するマシンマッシグラーに落下していくが弦太郎はすぐさま車体を横に移動する事で直撃を避けたが地面に落下した護衛車は落下した衝撃で爆発した。

 

『下水道だ!ノイズは下水道から攻撃している!』

 

 上空のヘリに乗っている弦十郎からノイズが下水道から攻撃してきてると連絡が入った。

 また一台護衛車が上に飛ばされ今度は了子が運転する車に落下していくが了子は冷静にハンドルを右に切ると弦十郎にどうするか連絡を取る。

 

「了子さん!」

 

 弦十郎からの指示を受けた後、了子の乗る車の横にマシンマッシグラーに乗った弦太郎が並走しながら了子に声をかける。声をかけられた了子は弦十郎から出された指示の内容を伝えた。

 

「弦太郎君、このままこの先の薬品工場に向かうわよ。このままここで襲われるよりはましになるわ」

 

「わかった!」

 

 弦太郎の返事を聞いた了子は残っていた護衛車と後方に移動したマシンマッシグラーと共に進路を薬品工場に向けて更にスピードを上げた。

 

 一行が薬品工場に入ると前を走る護衛車の上にノイズが飛び乗ると乗っていた職員が慌てて護衛車から転がるように降りると護衛車はそのまま工場の壁にぶつかり爆発、ノイズ達は爆発で起きた炎で近づけず足踏みしていた。

 

「やった!狙い通りです!……うわぁぁぁっ!?」

 

「響!了子さん!」

 

 作戦が上手くいったのを見た響が喜びの声をあげたが、突然()()()()()()()完全に仰向けになってしまい回転しながら地面を大きく滑り出した。

 ある程度進み車が止まった後、マシンマッシグラーを止めた弦太郎がマシンマッシグラーから降りて、横転した車に駆け寄り乗っていた二人が無事なのか声をかける。

 

「二人共大丈夫か!」

 

「ええ、大丈夫よ」

 

「あいたたた……はい、私も大丈夫です。それより弦太郎さんデュランダルを」

 

「わかった!って、意外と重てーな!」

 

「だったらいっそのこと、それは置いて私達は逃げちゃいましょ?」

 

「「それは駄目です(だろ)!?」」

 

「そりゃそうか……っ!」

 

 了子の笑えない冗談に二人が突っ込んでいるとその隙をノイズが体を変形させ、三人襲いかかった!

 三人はすぐにその場を離れ、ノイズの攻撃を避けると目標を見失ったノイズ横転した車に突き刺さり爆発。それに起きた爆風で三人の身体は大きく吹き飛ばされ地面の上に倒れこんだ。

 

「痛っ……まずい!?」

 

「ああっ!?」

 

 直ぐに身体を起き上がらせるがその隙をノイズ達が体を変形させ、こちらに襲いかかるのが視界に入った。

 弦太郎はフォーゼに変身しようと懐からフォーゼドライバーを取りだそうもするがそれより早くノイズが目の前に迫り来て、二人は眼を閉じて死を覚悟した……その時。

 

 彼らの前に立った了子が前方に翳した右手から光の盾が現れ、二人を死から遠ざけた。

 

「了子……さん?」

 

「それは一体……?」

 

「しょうがないわね」

 

 了子が見せた人間離れした力に戸惑いの声を出す二人だが、何事もなかったかのように了子は二人笑みを向ける。

 

「あなた達のやりたい事を……やりたいようにやりなさい」

 

「……はい!私、歌います!」

 

「礼を言うぜ了子さん!」

 

 了子からの言葉を聞いた二人は力強く頷いて自分達の力を身に纏う。

 

 

「―Balwisyall Nescell gungnir tron―」

 

 

3!

 

2!

 

1!

 

 

「変身!」

 

 響は聖詠を唄い撃槍を身に纏い、弦太郎はフォーゼドライバーを使い仮面ライダーフォーゼに変身した。

 

「しゃあ!宇宙、キターーーーッ!!仮面ライダーフォーゼ!お前ら纏めてタイマン張らせてもらうぜ!」

 

「行きます!」

 

「おう!」

 

 フォーゼがいつもの決め台詞をしたのを皮切りに二人はノイズの群れに向けて駆け出して行った。

 

 

 

 

【―ロケット・オン―】

 

「ライダーロケットパーンチ!」

 

 最初に開戦の火蓋を切ったのは右腕にロケットモジュールを装備したフォーゼのライダーロケットパンチがノイズの群れに突撃しノイズを次々と上空に吹き飛ばしていく。

 

【―スパイク―】

 

【―スパイク・オン―】

 

「オラっ!オラオラッ!もう一丁オォラァッ!」

 

 ロケットモジュールのスイッチを切り、フォーゼドライバーの△スロットからドリルスイッチを抜いて空いたスロットに【アストロスイッチNo.15:スパイクスイッチ】を装填しスイッチを起動とフォーゼの左足にキックしたと同時にスパイクからトゲが伸びて相手を突き刺す【スパイクモジュール】が物質化(マテリアライズ)され、カエル型ノイズの顔面に装備したスパイクモジュールを叩き込み蹴りを入れた瞬間スパイクモジュールからトゲが伸びてカエル型の体を穴だらけにした後黒い砂になって崩れ落ちた。

 勢いを弛めないフォーゼはそのまま次のノイズの体にスパイクモジュールを叩き込み次々と黒い砂に変えていく。

 

(ヒールが邪魔だ!)

 

 少し離れた場所でノイズと戦っていた響はギアの脚部にあるヒールのせいで思うように動けないと判断して、地面に蹴りを入れて両足ヒールを壊し弦十郎に教わった武術―中国拳法の構えを取り、胸に浮かんだ歌を歌いながらノイズの体を次々とその拳や蹴りで撃ち抜いていく。

 

「やるな響。それじゃ俺も久しぶりにビリビリいくぜ!」

 

【―エレキ―】

 

 フォーゼドライバーのロケットモジュールを抜くと空いた○スロットに【アストロスイッチNo.10:エレキスイッチ】を装填して、スイッチを入れるとフォーゼの身に変化が起こった。

 

【―エレキ・オン―】

 

 エレキスイッチを起動した直後フォーゼの右手にロッド型のモジュール【エレキモジュール】が握られ、更に右腕のモジュールデッカーが金色に染まるとそこから電撃が迸り、更にフォーゼの周りに複数の雷太鼓のような物が現れて雷太鼓から電撃がフォーゼの身体に降り注ぐと左腕、右脚、左脚以外の部分が金色、複眼が青く染まり、胴衣には雷神太鼓の意匠が施され、マスク形状やボディの光沢あるゴールドから月面着陸船イーグルを彷彿とさせる姿。

 

 これがエレキスイッチを使ったフォーゼのもう一つの姿、仮面ライダーフォーゼ、エレキステイツにステイツチェンジした!(以下フォーゼES)

 

(っ!姿が変わっただと!?まだ力を隠していたのか!)

 

 フォーゼが姿を変えたのを目撃した了子は内心驚いた後、エレキステイツになったフォーゼを睨み付ける。

 

「いくぜ!」

 

 了子が睨み付けているのを知らないフォーゼはエレキステイツの専用武器、エレキモジュール事【ビリーザロッド】の三つあるソケットの内、左側のソケットにコードが付いたプラグを差し込むとビリーザロッドに雷が身に纏い、地面を蹴るように駆け出し迎え撃とうとフォーゼに向かって駆け出してきた三体のノイズの体にビリーザロッドを振りかざした!

 

「ハアッ!」

 

 フォーゼESがビリーザロッドを振り抜いた後、ロッドを喰らった三体のノイズの体から電気が迸り、電気を撒き散らしながら黒い砂に変わって崩れ落ちた。

 

 これがビリーザロッドの能力、コードのプラグを三つのコンセントに差し替える事で機能を変更して先ほどの電撃を纏わせての打撃の他に、電気の斬撃や電磁ネットを飛ばす事も可能になる。

 

「へへ!今日も絶好調だな。まだまだいくぜ!」

 

 フォーゼESはフォーゼドライバーに装填してあるエレキスイッチに視線を落とし声をかけた後、次のノイズに向けて駆け出していった。

 

 

 

 

「あの女、戦えるようになったのか…!」

 

 薬品工場の建築物の一つの上に立って響とフォーゼESの戦いを見下ろしていたネフシュタンの少女が以前とは違う響の変わりように驚いていた。

 

「(けど、んなことは関係ねぇ!アイツもあのヘンテコ頭の持つスイッチも纏めてものにしてやる!)うおぉぉぉぉっ!」

 

「っ!」

 

 建築物から飛び降りながら水晶状の鞭をノイズと戦っている響に向かって振り下ろしたが、それに気付いた響はその場を跳躍してネフシュタンの少女の攻撃をかわしたがその後に繰り出された少女の跳び蹴りをもらい地面に落下した。

 地面に落下した響は頭を振りながら地面から身体を起こすとこちらに向かってくるノイズが視界に入るのを見ると即座に立ち上がり、ノイズを迎え撃とうと拳を構えた。

 

「響!……お前よくも!」

 

「ハッ!次はテメーのスイッチを奪わせてもらうぜ?」

 

「そうはさせるかよ!」

 

 ネフシュタンの少女が繰り出した水晶状の鞭をフォーゼESは姿勢を低くする事でかわし、ビリーザロッドを少女の肩に向けて振り下ろしたがネフシュタンの少女は余裕を持ってビリーザロッドをかわしてフォーゼESの頭部に蹴りをおみまいする。

 フォーゼESは左腕のモジュールデッカーで蹴りを防ぐと左腕を大きく振ってネフシュタンの少女の足を弾くと蹴りを出したネフシュタンの少女の姿勢が一瞬崩れた。

 

「オラッ!」

 

「くぅっ!?」

 

 そこをフォーゼESは前蹴りをネフシュタンの少女に向けて繰り出したが手元に戻した鞭を両手に短く持って鞭をピンと張る事で前蹴りを防ぐと同時に後ろに跳躍して衝撃を和らげた。

 

「やるじゃねーかヘンテコ頭……!」

 

「ヘンテコ頭じゃねー!俺は仮面ライダーフォーゼ!この宇宙にいるみんなと友達になる男だ!」

 

「この宇宙いるみんなと友達……?ハッ!眠てぇ事を言ってんだぁ?そんなこと出来る訳ねーだろ!」

 

 フォーゼESの言った言葉を聞いて激昂したネフシュタンの少女は彼の言葉を否定するかのように怒りが篭った声を叫んだ後、再び鞭をフォーゼESに向けて繰り出した。

 

「くっ!(なんだ怒っているのにどうして……)」

 

――泣いているように見えるんだ?

 

 少女の攻撃をかわしたフォーゼESはバイザーに隠された彼女が泣いている姿を幻視してどうしてだと内心首を傾げる。

 

「まとめてぶっ飛びやがれぇぇぇぇっ!」

 

【―NIRVANA GEDON―】

 

 激昂したネフシュタンの少女は鞭を頭上に掲げると鞭の先端からエネルギー球を生成するとフォーゼESに向けて投げつけた!

 

「っ!なら!」

 

 ネフシュタンの少女から放たれたエネルギー球が自身に向かってくるのを見たフォーゼESはビリーザロッドに差したプラグを左側コンセントから上のコンセントに差し換え、フォーゼドライバーに装填されたエレキスイッチを抜くとビリーザロッドの柄にあるスロットに差し込むとビリーザロッドから警告音が鳴った後、エレキスイッチに内蔵されたコズミックエナジーが最大出力に増大にしたフォーゼESの必殺技の一つ、その名も――。

 

 

【―リミットブレイク―】

 

 

ライダー百億ボルトシュート!

 

 エレキスイッチをセットしたロッドから電気の斬撃を飛ばし、離れた距離の敵も真っ二つに切り裂く必殺技、【ライダー百億ボルトシュート】が少女が放った【NIRVANA GEDON】とぶつかり合い二つのエネルギーが拮抗した後、空中で爆発した。

 

「うおっ!?」

 

「クッ!?」

 

 二つのエネルギーが爆発した時に起きた爆風で二人は足に力を入れて、吹き飛ばされないように爆風が収まるまで踏みとどまる。

 

「(ちっ……何を手こずっている……ん?)……な!覚醒……起動っ?」

 

 その様子を離れた所で見ていた了子は自身の後ろに置いてあったデュランダルが入ったトランクケースからデュランダルが飛び出したのを見て驚愕の声を上げる。

 

「こいつがデュランダルか……。デュランダルはあたしがもらったぁぁぁぁっ!」

 

 フォーゼESと戦っていたネフシュタンの少女は空中に浮かぶデュランダルを見るとフォーゼESの戦闘を中断して地面を跳躍してデュランダルに手を伸ばす。

 

「よしこれであたしは……―ガクンッ―なっ!?」

 

「させっかよ!」

 

【―ウインチ―】

 

【―ウインチ・オン―】

 

 後少しでデュランダルに手が届くというところでフォーゼESがレーダースイッチと差し換えた【アストロスイッチNo.16:ウインチスイッチ】のスイッチを起動させ、物質化(マテリアライズ)したフック付きのロープユニット【ウインチモジュール】を射出させ、少女の足に巻き付けるとそれを力強く後ろに引いてデュランダルから引き剥がし地面に放り投げた。

 

「今だ響!回収しろ!」

 

「はい!」

 

 フォーゼESの言葉に応じた響は地面を跳躍して、空中に浮かぶデュランダルに向けて手を伸ばし、デュランダルの柄を握りしめた。

 

「やった!……え?」

 

―キィィィィンッ―

 

 響がデュランダルを掴んだ瞬間、その場にいた全員がデュランダルから力強い波動が放たれたのを感じた。

 

「響……?」

 

 地面に着地して黙ったままの響にフォーゼESは声をかけるが、返ってきたのはいつもの彼女の声ではなかった。

 

「ヴヴヴヴヴ……ア″ア″ア″ア″ア″ア″ア″ッ!!

 

 デュランダルが黄金の光を頭上に放つと待機状態から起動状態に変わると上半身を黒く染め上げた響が握りしめたデュランダルを頭上に掲げ、獣のような雄叫びを上げた。

 

「響!どうしたんだ!?しっかりしろ!」

 

「こいつ何を……っ!」

 

 デュランダルを起動させた響を見たネフシュタンの少女は彼女のその姿に思わず後退りすると自身の背後でデュランダルを見て恍惚の表情を浮かべた櫻井 了子の顔に気づく。

 

「チッ!そんな力を見せびらかすなぁ!」

 

 了子の顔を見たネフシュタンの少女は舌打ちをした後、ソロモンの杖を前にかざしてノイズを召喚して響を押さえ込もうとするが、それまで見向きもしなかった響がそれにに気付き、紅く染まった眼をネフシュタンの少女に向けた。

 

「っ!?」

 

 その眼を見たネフシュタンの少女は響の殺意と破壊の感情をぶつけられ、身体が恐怖ですくんでしまう。

 

グヴゥゥゥゥ……ア″ア″ア″ア″ア″ア″ア″ァァァァァァッ!!

 

「(ヤバい!身体が動かねぇ……殺られる!)―「ウオォォォォォッ!」―なっ!」

 

「間に合えぇぇぇぇっ!」

 

 恐怖で身体が動かせず少女が死を覚悟をしたその直後、ホイールモジュールを起動させて彼女に手を伸ばすフォーゼESの姿が彼女の視界に入った。

 フォーゼESの手がネフシュタンの少女に届いた瞬間、響が持つデュランダルの黄金の斬撃が振り下ろされ辺りが光に包まれた。

 

 

――三人称視点、終了――

 

 




どうも皆様、クロトダンです。

第7話いかがでしたか?
今回は力を入れて書いてみましたがおかしなところがありましたら遠慮なく教えてください。

そして今回の話でアンケート関係ないじゃん!とツッコミが入れられると思いますがそれは次回の戦闘で出しますのでお待ちください。


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8:友、達、登、場!

読者の皆さんが忘れた頃に投稿する駄目な作者、その名は……クロトォォォォォダァァンンンゥッ!(Dr.ウェル風)
あ痛!ごめんなさい!石を投げないで!


青年は知る、片翼の少女の胸の内を

片翼の少女は語る、自身が抱いた気持ちを


――フィーネの屋敷――

 

 

――三人称視点――

 

 

「化け物め……!」

 

 街から離れた郊外にある屋敷の側の巨大な湖の前に完全聖遺物《ソロモンの杖》を持った一人の少女――雪音 クリスが先日起きた起動した完全聖遺物《デュランダル》を持った立花 響が暴走した出来事を思い出していた。

 

(このあたしが二度の確保をさせるくらい、フィーネは立花 響(あの女)に御執心かよ……。それに……)

 

 クリスは唇を噛み、先日に起きたもう一つの出来事を思い出す。

 

『ハァ、ハァ、ハァ…怪我、ないみたいだな……良かった……』

 

(なんでアイツはあたしの身を心配なんかしたんだ!敵であるあたしを、なんで……!)

 

 

 デュランダルから自身を助けてくれた仮面ライダーフォーゼの行動にしばらく考えた後、理解できないと頭を左右に振っていると自身の背後に人が立っている事に気付いた。

 クリスは背後を振り向くと背後に立っていた黒い服を着た金髪の女性―フィーネの顔を見るとを目尻を上げて口を開いた。

 

「わかっているよ。自分が課せられた事くらい……!」

 

 クリスは持っていたソロモンの杖をフィーネに向けて投げ渡した。投げられたソロモンの杖を受け取ったフィーネは完全聖遺物であるソロモンの杖を投げた事をクリスに咎めず黙ったまま彼女の顔を見る。

 

ソロモンの杖(こんな物)なんか無くても、アンタの言う事くらいやってやるよ!そいつがあたしの目的だからな!」

 

 そう言ってこの場から立ち去るクリスの後ろ姿を見たフィーネはクリスの姿をサングラスに隠された冷たい瞳で彼女見つめ続ける。

 

「……計画の為に手元に置いたがここまで役に立たないとは……捨て時か」

 

 クリスの姿が見えなくなった後、呟いたフィーネはコートのポケットに手を入れるとポケットから長方形のスイッチが付いた機械を取り出した。

 

「財団と名乗る奴らから渡されたコレがあの娘より役に立てばいいがな……」

 

 そう言ったフィーネの顔には冷たい笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

――二課直轄の医療施設、個人病室――

 

 

 場面が変わり、以前絶唱を唄った風鳴 翼が入院している病院。そこには前回の任務で負傷して入院した弦太郎がいる病室に彼以外の数人の人達が集まっていた。

 

「でもよかったー。弦ちゃんが入院したって聞いて心配してたけど、怪我が軽くて安心したよ」

 

 最初に口を開いたのは腰まで伸びた黒髪の女性で弦太郎の幼なじみの《城島 ユウキ》。かつて弦太郎と賢吾と共に《仮面ライダー部》に所属していた女性であり、その持ち前の明るさと豊富な宇宙知識を持つ仮面ライダー部の二代目部長を勤めていた。

 

「そうね。でも、車に轢かれそうになった子供を助けて怪我をしたら元も子もないわよ?」

 

 ユウキの次に口を開いたのは、首筋まで切り揃えた茶髪の女性は《風城 美羽》。弦太郎、賢吾、ユウキの一つ上の先輩であり、仮面ライダー部の初代部長を務め、卒業後は会長に就任した実績を持つ女性。

 天の川高校の元女王(クイーン)であり、その女王気質な性格で弦太郎達を見下していたが弦太郎と関わっていく内に和解、その後仮面ライダー部の部長に(押し掛けるように)就任し、持ち前の性格なのかゾディアーツ相手にも物怖じせず、正義感の強い勇気ある一面を見せたり、結構的確な指示や助言をしたりと半端な根拠など必要とすらしないその自信と決断力で仮面ライダー部の力になっていた。

 

「美羽の言う通りだ変身しなくなったから鈍ったんじゃないか弦太郎?退院したら俺が直々に鍛え直してやろうか?」ティリーンッ☆

 

 美羽の言葉に同意して星を飛ばした男は《大文字 隼》。美羽と同じ弦太郎達の先輩であり、仮面ライダー部のサポートマシン《パワーダイザー》のパイロット。

 最初は美羽と同じく弦太郎達を見下していたが弦太郎と関わっていく内に和解後、ダイザーに乗り込みフォーゼと共に戦ったり、周囲へ及びそうな被害を抑えこんだりと、フォーゼの活躍に無くてはならない頼れる先輩である。

 ゾディアーツ事件終結は美羽に指輪を渡しながら告白し(その後ちょっとした事があったが)恋人関係になっている。

 

「いやいや隼先輩、退院後に鍛えるのは流石にまずいっしょ?」

 

 隼が言った言葉に苦笑しながら喋ったのは弦太郎達の後輩である《JK(ジェイク)》。見た目は制服を着崩したチャラ男風の茶髪の男性。学園一の情報通でその持ち前の明るさとコミュ力で仮面ライダー部の情報収集に役立った実績をもつ。

 かつては友情を軽視していた事があり、弦太郎の人の良さにつけこんで用心棒代わりに近づいて、彼が持っていたエレキスイッチを盗んだ経緯もあったが、ユニコーン・ゾディアーツとの戦いの中、弦太郎の助力後その曲がった根性を直すと弦太郎直々に仮面ライダー部に強制入部された。

 本名は神宮 海蔵。ただし本人はこの名前を気に入ってない。

 

「これ、お見舞いのバナナとリンゴです」

 

 一人だけ冷静に見舞いの品を渡したのは野座間 友子。

 ネットで仮面ライダーの都市伝説を見かけ、フォーゼを最初に【仮面ライダー】と最初に呼んだのは彼女であり、弦太郎達の後輩でJKと同じ同級生の少女。

 PC機器を利用した、JKとは異なる方面での情報収集に優れており、ゾディアーツの正体を調べて知らせる等の活躍を仮面ライダー部に貢献してきた。

 かつては行動や感性がズレていた所謂【霊感少女】であり、他人が感じることのできないモノが見えたり感じたりできるという境遇故、その言動から周囲に拒絶されて生きてきた。月の力で新しい自分に生まれ変わるためにアルター・ゾディアーツの計画に参加していたがフォーゼに変身した弦太朗によって月まで連れて行かれ「月には何も無い、自分は自分なんだから変わる必要は無い」と諭されフォーゼと共にアルター・ゾディアーツの計画を阻止した。

 【アストロスイッチ20・ファイヤースイッチ】の能力にいち早く気づく等の侮れない一面を持つ。

 弦太郎いわくかなりの美少女なのだが本人はすっぴんを嫌っており、いつも目の下に黒いメイクをしている。

 

「いやー、すまねぇなみんな。気付いたら身体が勝手に動いてさ」

 

 全く相変わらずだなー、と弦太郎の言葉を聞いた面々が弦太郎の変わらない性格に笑みを浮かべる。

 弦太郎はみんなと笑いあった後窓際に立つ賢吾に視線を向けると賢吾が彼の側に寄り、他のみんなに聞こえないように口を開いた。

 

(おい賢吾、どうしてユウキ達に俺が入院してるって知ったんだ?それに子供を助けたってどういう事なんだ?)

 

(すまない。大学から出る所でユウキに捕って、誤魔化せず任務の事を伏せて君が子供を助けた時に怪我をして入院してる事を話したら、彼女が慌てて見舞いに行くと騒いで、そこから風城先輩達が聞き付けてJK達を呼んで今に至る)

 

(そうか、わりーなこの礼は後でするからな)

 

(ああ、そうしてくれ)

 

「ちょっと、二人して何をコソコソ話しているのかしら?」

 

 二人が話しているとそれに気付いた美羽が腰に手を当て、声をかけてきた。

 

「いや何でもない。弦太郎に講義に使ったノートの内容を見せてくれと頼まれただけだ」

 

「そ、そうなんだよ!今日受ける予定の講義は外せないからな!」

 

「ふーん、そう……ま、いいわ。入院したって聞いて心配したけど、弦太郎が元気そうで安心したらお腹空いちゃった。だから……」

 

「ん?」

 

 理由を話す二人の様子を見た美羽は一瞬目を細めた後、すぐに元の不適な笑みを浮かべると賢吾の腕を取ると後ろに立つユウキ達の方に身体を向けるといい笑顔で口を開いた。

 

「それじゃ今からお昼食べにいきましょうか。賢吾の奢りで!」

 

「はあっ!?」

 

 その言葉を聞いた賢吾は文句を言おうと声を上げるがそんな彼の首に腕を回した美羽は他の面々に声をかける。

 

「お?マジっすか?賢吾さんゴチになりまーす!」

 

「そんな訳あるか!先輩どういう事ですか!」

 

「えっ?えっ?あの美羽さん賢吾君困ってますよ」

 

「いいからいいから。ホラ、準も友子も行くわよ。それじゃね弦太郎、また来るわ」

 

「お、おう……」

 

 弦太郎にまた来ると言って賢吾を引きずって美羽は他の面々を引き連れて病室をあとにした。

 

「賢吾すまねぇ……今度なんか奢らねーとな」

 

 自分だけになった病室で弦太郎は申し訳ないとこの場にいない賢吾に合掌した。

 

 

 

 

――お好み焼き屋ふらわー――

 

 

「それじゃ話してもらうわよ?」

 

「……何の事だ?」

 

 病院から商店街にあるお好み焼き屋ふらわーに移動した賢吾達は店長であるおばちゃんに注文した後、病室で二人に何か隠してると勘づいた美羽が隣に座らさせた賢吾に質問をした。質問された賢吾は彼女が自分達が何か隠してると勘づいて質問していると察し、みんなを巻き込む訳にもいかないと質問をはぐらかした。

 

「誤魔化しても無駄よ。あの弦太郎が子供を助けて簡単に怪我をする訳ないでしょ?それで、あんた達何を隠してるの?」

 

 美羽の的を射ていた指摘に賢吾は内心冷や汗をかいていた。高校からの長い付き合いでありフォーゼとして戦ってきた弦太郎を知っている彼女達からしてみれば、何らかの事件に巻き込まれている、又は関わっているのではないかと結論付けた美羽は賢吾を連れ出して彼を問い詰めた。

 それを聞いていた他のみんなも気になり全員の視線が賢吾のに集中する。

 

「何を言ってるんだ。さっきも言った通り弦太郎は子供を助けた時に壁に頭を打って――「あら?頭を打ったのなら病衣の下に包帯なんか巻く必要はない筈よ?」――ぐっ……」

 

 誤魔化そうとした賢吾の言葉を遮るように指摘され、賢吾は思わず顔をしかめてしまう。

 

「(流石は風城先輩、勘の鋭さは相変わらず健在か。だがそれでもこちらの問題で彼らを巻き込む訳にはいかない……!)だから弦太郎の怪我は――」

 

 賢吾がもう一度発言しようとした直後、ガラリとふらわーの扉が開かれ賢吾達の視線がそちらに向けられる。

 

「あ、未来ちゃん!久しぶりー!」

 

「え、ユウキさん?それに賢吾さん、美羽さん、隼さん、JKさん、友子さんも!どうしてここに?」

 

 ふらわーに入ってきたのは二年前の付き合いであり、弦太郎が助けた立花 響の親友の小日向 未来が卒業までお世話になった賢吾達が店内にいる事に驚いていた。

 

 

 

 

 

 

――医療施設――

 

 

「あれ?翼?」

 

「如月……さん?」

 

 賢吾達が病室から出て行ってから数時間後。弦太郎は飲み物を買いに行った後、気分転換に屋上に向かうとそこでベンチに座っている翼を見かけ、少し驚きながら声をかけると呼ばれた翼も声をかけてきた人物が屋上にいることに驚いていた。

 

「えーと、もう歩けんだな。身体は大丈夫なのか?」

 

「あ、はい。ご覧の通り歩けるまでに回復しました。ご心配をかけてすみません」

 

「お、おう…気にすんな」

 

「「…………」」

 

 その後の会話が途切れてしまい互いに何を話せばいいのか分からず暫し無言になってしまう二人。

 

「あの如月さん!」

 

「ん?」

 

 弦太郎が何か話したらいいかと悩んでいると翼がベンチから立ち上がって声をかけた。

 

「あの時、絶唱を唄った私を助けてくれてありがとうございます!それにあなたと立花に対して今まで失礼な態度を取ってしまいすみませんでした!」

 

「あ、ああ。どうしたんだいきなり?」

 

 弦太郎は礼を言って頭を下げた翼の様子に驚きつつも話を聞こうとベンチに座るように促してからベンチに座ると翼はその理由を話し出した。

 

「私は奏が死んだのは自分が弱かったからという後悔の念からその使命感を糧にこの二年間己を一振りの剣としてノイズと戦い続けました。

 ですが、立花の胸に奏のガングニールが宿っている事を知り、彼女に対して複雑な思いを抱き、戦う覚悟がなかった彼女が奏のギアを受け継ぎ奏の代わりに戦うと聞いた私はそれを否定する為に彼女に刃を向け、そして彼女と私の間を取り持ってくれたあなたに対して冷たく接してました」

 

 ベンチに座っている彼女の姿に弦太郎は黙って彼女の言葉を聞いて、翼に声をかけようと口を開こうとしたが――

 

「けど、あの出来事をきっかけに覚悟を決めてから努力するようになったと叔父様と小川さんから話を聞きました。そして今日、見舞いにきてくれた彼女と話をしました」

 

 ――翼が発した次の言葉を聞いてその口を閉じた。

 

「彼女に覚悟を問いました。その問いに彼女は護りたいものがあるからと答えました。誰かをノイズの手から最速で、最短で、真っ直ぐに一直線に駆け付けたいと彼女の胸の想いを告げられました。それを聞いて以前とは違う彼女を見て、彼女は一人の戦士として戦えると安心しました」

 

 そう言った翼の顔は以前とは違う優しい笑みを浮かべていた。彼女の笑みを見た弦太郎も笑みを浮かべて口を開いた。

 

「……そうか。それを聞いて俺も安心した。響もそうだけど、お前があいつと胸を割って話してくれた事が俺も嬉しいぜ。それに――」

 

 一度言葉を切ると顔を翼に向けてニカッと笑顔を浮かべ言葉の続きを言おうと口を開いた。

 

「お前、笑うとスゲーかわいいな」

 

「なっ!かわっ!?」

 

 弦太郎の発言した言葉を不意打ち気味に聞いた翼は顔を真っ赤にして口をパクパクしていた。そんな彼女の反応を見た弦太郎は思わず吹き出してしまい、それを見た翼はからかわれたと気付くと顔を真っ赤にしたま弦太郎に文句を言った。

 だが、そんな彼女の表情は年相応の少女のように笑っていた。

 

「ははっ!わりーわりー―ピピピッ―ん、賢吾?はい、こちら弦太郎」

 

 翼と笑いあっているとNSマグフォンに賢吾から通信が入った。何かあったのかと通話ボタンを押し通信を繋げると通話口から賢吾の声が彼の耳に入る。

 

『弦太郎!ネフシュタンの少女が現れた!』

 

「あいつが!場所は!」

 

『場所は森林公園、今立花が彼女と交戦中だ!』

 

「響が……わかった!直ぐにそっちに向かう!」

 

『ああ。……それともう一つ伝える事がある。……小日向とユウキ達が現場に居合わせ、立花がギアを纏った姿を見られた』

 

「なっ!?」

 

 賢吾が言った内容に弦太郎は驚いて声を失うが、直ぐにユウキ達が無事かどうか質問する。

 

「賢吾、未来とユウキは無事なのか!他のみんなは!?」

 

『安心しろ小日向と彼女を庇った大文字先輩がかすり傷を負ったが、他のみんなは俺を含めて怪我をしていない』

 

「そうか……」

 

 その言葉を聞いた弦太郎は未来と準が怪我した事に心を痛めるが頭を振って、気持ちを切り替え直ぐに向かうと伝えるとマグフォンの通信を切るとマグフォンの会話を聞いた翼が声をかける。

 

「ネフシュタンの少女が現れたのですね?」

 

「ああ、今響があいつと戦っている。それに俺のダチがその場に居合わせちまった」

 

「如月さんの……!お友達は無事ですかっ?」

 

「大丈夫だ。かすり傷を負った以外みんな無事だ。俺は直ぐに響の下に行かねーと」

 

「如月さん、私も一緒に連れて行ってください」

 

 懐からフォーゼドライバーを取り出して腰に押し当てベルトが彼の腰に巻かれると翼は彼に自分も連れて行ってくれと声をかけた。その言葉を聞いた弦太郎はそれに驚くもまだ体調が回復仕切ってない彼女の身を案じて止めようと口を開いた。

 

「駄目だ!お前はまだ病み上がりだろ!その状態で行ったらまた倒れるかもしれねーんだぞ!?」

 

「それは如月さんも同じ事でしょう!」

 

「うぐっ……!」

 

 翼に痛い所を突かれてしまい口を閉じると翼はそのまま畳み掛けるように言葉を続けた。

 

「確かに私は一度ネフシュタンの鎧を纏った彼女を見て立花の言葉を聞かずあのような結果をしてしまいした。ですが、装者としてではなく一人の仲間として立花を助けにいきたいです!」

 

「翼………よし、わかった!お前がそう決めたならもう言わねー。でも、無茶はすんな?お前はもう一人じゃないからな」

 

 そう言った弦太郎は自身の右手を彼女に差し出すとその意味に気付いた翼はフッと笑みを浮かべると礼をいいながらそれに答えた。

 

「はい、ありがとうございます」

 

 握手をした後拳をぶつけ合う【友情のシルシ】をした二人は互いに笑みを浮かべた後、弦太郎はフォーゼドライバーの赤いレバー【トランスイッチ】を全て下ろし、フォーゼドライバーからカウントダウンが流れる。

 

 

 

 

 

 

変身!

 

 その言葉の後にドライバーの右側にあるエンターレバーを右手で引くとフォーゼドライバーから光輪が現れ、そこから光と蒸気が弦太郎に降り注ぎ、光が治まるといつもの弦太郎の姿ではなく、宇宙と世界の平和を護る戦士、仮面ライダーフォーゼに変身した。

 

「宇宙ぅぅぅ……………キターーーーーーーーーーー!!

 

 変身したフォーゼはいつものように身体を限界まで縮め、いつもより長く溜めた後、フォーゼの叫び声が地球から太陽まで届くとフォーゼは左手で翼の腰を抱き寄せる。

 

「よし!それじゃいくぜ翼!」

 

「えっ?あの、如月さん、何をそれに行くってどうやって…………まさかっ!?」

 

 フォーゼのいきなりの行動に翼は顔を赤くしてどうやって現場に行くのかと質問しようとしたが、フォーゼのやろうとしてる事に気付き顔を青くする。そんな翼の様子に気付かないフォーゼはフォーゼドライバーに装填してあるロケットスイッチを起動させ、右腕に物質化(マテリアライズ)したロケットモジュールから炎を噴射させると翼を落とさないように彼女の腰をしっかりと抱き締める。

 

「しっかり捕まっていろよ?」

 

「ま、待ってください!このまま飛ぶと病衣がはだけます!せめてギアを纏ってからで―「いっくぜぇぇぇっ!」―キャァァァァァァァァァァッ!?!?」

 

 翼の願いも虚しく、ロケットモジュールの推進力で空に飛び立つフォーゼと風圧で病衣がはだけないように力いっぱいフォーゼの身体に抱きつき、早く現場についてくれと翼の頭の中はその言葉がいっぱいになっていた。

 

 

 

――三人称視点、終了――




どうも皆さん、お久しぶりです。クロトダンです。

今回は仮面ライダー部のみんなと翼の胸の内を語る話でした。
そして、財団Xがフィーネに渡した機械とは……次回をお楽しみに。


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9:電、撃、一、閃!

この前10年ぶりの電王の映画を見に行きました。
令和になっても変わらないモモタロス達が観れて楽しかったです。


青年は驚愕する、自身と因縁深い存在に……。

銀髪の少女は涙を流す、自分がすがっていた人に見放された事に……。


――三人称視点――

 

 

 

「ここか!響はどこにいるんだ……!」

 

「如月さん、あそこです!」

 

 病院から飛び立ったフォーゼが翼を抱えた状態で目的地である森林公園の真上に到着し、上空から響の姿を探していると上空からでも目立つ銃撃と爆発を発見した翼が場所に指を差してフォーゼに伝えるとフォーゼはロケットモジュールの向きを変えて指定された場所に移動した。

 

「見えた!響だ!それにもう一人のあいつは……?」

 

 ある程度移動すると響の姿と彼女に銃撃を飛ばしている赤い鎧を纏った少女――《第二号聖遺物・イチイバル》を纏った雪音 クリスの姿がフォーゼの視界に入りこんだ。

 

「あれは……まさか、第二号聖遺物!」

 

「知ってるのかっ?」

 

「はい、あれは10年前に何者かに盗まれた第二号聖遺物、イチイバルです。ネフシュタンだけでなく第二号聖遺物まで敵の手に堕ちているなんて……」

 

「そうなのか……って!あれはヤバイ!」

 

 翼の説明を聞いたフォーゼが視線を再び地上に向けるとクリスが腰のリアスカートから展開したミサイルが発射されそうなのを目撃して助けようとロケットモジュールを加速させた。

 

「くそ、間に合わねぇ!」

 

「如月さん!私を向こうまで投げてください!」

 

 地上から上空まで距離が離れており、ロケットモジュールを加速したとしてもその間にミサイルが響に直撃してしまう。仮面の下で苦い表情をしながら地上に向かおうとするフォーゼに翼が自分を地上に投げろと提案を投げた。

 

「そんな無茶……っ!?……いや、わかった!頼んだぜ翼!」

 

 フォーゼは無茶だと発言しようとしたが、翼の言葉の真意に気付くと彼女の顔を見て頷いた後、翼を信じて彼女を地上にいる響達に向けて力いっぱいぶん投げた!

 

「―Imyuteus amenohabakiri tron―」

 

 フォーゼにぶん投げられた翼は聖詠を唄い天羽々斬のシンフォギアを身に纏うと直ぐに脚部のアーマーからアームドギアである刀を取り出し地上に向けて投擲した。

 投擲されたアームドギアが刀から巨大な大剣へと形を変えて響に向けて放たれたミサイルの間に入るように地上に突き刺さり響の盾代わりになるのと同時にミサイルが爆発した。

 

 

 

 

「盾……?―「盾とは失礼な」―っ!」

 

「剣だ」

 

 第二号聖遺物・イチイバルを纏ったクリスは響に向けて放たれたミサイルが起こした爆煙が晴れて突然現れた巨大な壁に疑問の声をあげていると彼女の頭上から声が聞こえ、目を見開き視線を頭上に向けると壁の上……否、巨大な剣に変化したアームドギアの上に降り立った翼が盾と言われて少し眉を寄せて下にいるクリスを見下ろしていた。

 

「……ハッ。死に体と聞いていたが、足手まといを助けにきたのかよ?」

 

「もう何も失うものかと決めたんだ」

 

 クリスは突如現れた翼に驚いていたが直ぐ様煽るように悪態を彼女に告げるが、翼はそれに載らず、冷静に自身が決めた気持ちを口にした。

 巨大剣の上にいる翼の横をフォーゼが遅れて通り過ぎ、地面に着地してロケットモジュールの展開を解除してから地面に膝をついている響に手を差し出した。

 

「無事か響?」

 

「弦太郎さん、翼さん……」

 

 差し出された手を握り立ち上がった響は二人の名を呼ぶと頭上から見届けていた翼が彼女に声をかけた。

 

「気付いたか立花。だけど私も如月さんも十全ではない、力を貸して欲しい」

 

「は、はい!」

 

「ウリャァァッ!」

 

【―BILLION MAIDEN―】

 

 翼からの言葉を聞いた響は直ぐに返事を返すとそれと同時にクリスがアームドギアをボウガンから4門の三連ガトリング砲に変形させた技、【BILLION MAIDEN】を頭上にいる翼に向けて放つが翼は巨大剣から飛び降り、冷静に銃撃をかわしながら着地すると同時にクリスに向けて刃を二度繰り出した。

 クリスは一度目の斬撃を身を引く事でかわし、二度目の斬撃を後方に跳んで避けると直ぐに右のガトリング砲から銃撃を放つが、地面を蹴って避けると同時にクリスの頭上を華麗な宙返りで背後を取りながら空中で刃を横凪ぎに振るう。それを見たクリスは頭を下げて刃をやり過ごすがその隙を地面に降り立った翼が握っている柄で彼女のアームドギアを力強く叩きつけた。

 

(この女、以前と動きが違う……!?)

 

 その衝撃に一瞬怯んだクリスは後退するが、いつの間に背後に回り込まれた翼が剣を首もとに突きつけられ動きを止めて以前とは違う彼女の動きに驚きを隠せずにいた。

 

「翼さんその娘は……」

 

「わかっている」

 

「くっ!」

 

 また前みたいになるのではと心配した響が声をかけると翼はそれに口元に笑みを浮かべて答えるとクリスは舌打ちをするとアームドギアで剣を上にかち上げると距離を取りながら向き合い、互いの得物を突きつける。

 

「(刃を交えて敵じゃないと信じたい。それに10年前に失われた第二号聖遺物について問わなければ……)参るっ!」

 

「こんの……なっ!?」

 

 クリスが再び銃撃を放とうとした瞬間、頭上から急降下した二体の飛行型ノイズがアームドギアを破壊したのを目撃して驚いて動きを止めてしまい、その隙を三体目の飛行型ノイズが回転しながらクリスに襲いかかった。

 

「クリスちゃん、危ない!ぐあっ!?」

 

「響っ!」「立花っ!」

 

 飛行型ノイズの攻撃がクリスに当たると思われたがそれを見て駆け出した響が身を挺して庇い、代わりにダメージを受けてしまった。

 

「お前何してんだよ!?」

 

「ごめん……クリスちゃんに当たりそうだったから、つい……」

 

「……っ!馬鹿にしてお前といい、あいつといい、余計なお節介なんだよ!」

 

 フォーゼと翼が駆け寄り周りを警戒していると、ノイズの攻撃を代わりに受けて倒れそうになった響を咄嗟に受け止めたクリスが彼女にどうして庇ったと問いかけると響の答えを聞いて、理解できないと叫んでいると突如女性の声が四人の耳に入る。

 

「命じた事も出来ないなんて、どこまで私を失望させるのかしら……ねぇ、クリス?」

 

「誰だ!」

 

 フォーゼが周りを見渡し声の主を探していると海を見渡す展望台の手すりに寄り掛かる女性の姿が彼らの視界に入った。フォーゼと翼は眼を凝らし、その姿を確かめようとしたが夕日の逆光で詳細な姿が確認出来なかったが辛うじて金髪の女性であると視認できた。

 

「これはどういう事だフィーネ!」

 

(フィーネ?終わりの名を持つ者……?)

 

 クリスが現れた金髪の女性――フィーネの名を呼ぶとそれを聞いた翼は終わりの名の意味を持つ女性に警戒を強くした。クリスは響を突き飛ばして立ち上がりフィーネに向かって、悲痛な声を出しながらフィーネに語りかける。突き飛ばされた響を翼は直ぐに受け止め、フォーゼと共に二人の会話を見守る。

 

「……っ!こんな奴らがいなくて戦争の火種くらいあたしだけで消す事が出来る!そうすればあんたが言ってた呪いから解放すれば、バラバラになった世界が一つに戻れるんだろうっ!」

 

「……ハァ、もう貴女に用はないわ」

 

「っ!?なんだよそれ……っ!どういう事だよ!」

 

 フィーネはクリスの問いかけに答えず手を翳すとクリスの手によりがバラバラになったネフシュタンの鎧が光の粒子に変換、彼女の手の平の上で一つに収束されると彼女の手に吸収されるのを見たフィーネは口元に笑みを浮かべた後、コートのポケットから取り出した黒い長方形の機械をフォーゼ達に向けてボタンを押すと機械から光が放出される。

 放出された光がフォーゼ達の前に降り注がれると光から忍者のような外見をした星屑の兵士――ダスタードが彼らの前に現れた。

 

「さようなら、クリス」

 

 フィーネがクリスに向けて告げた直後、5体のダスタードが刀を抜いてフォーゼ達に襲いかかった!

 

 

 

 

【―シールド・オン―】

 

「危ねぇ!」

 

 フィーネが告げた言葉を聞いたショックで膝をついたクリスに向けて振り下ろされた刃をシールドモジュールを物質化(マテリアライズ)したフォーゼが間に入って刃を防ぐと、シールドモジュールごと刃を振り払い下げダスタードの体を力強く前蹴りで蹴り飛ばしたが、ダスタードは空中で回転して蹴り飛ばされた勢いを殺し地面に着地すると何事もなかったかのように刀を構える。

 

「お前、なんで……?」

 

「そんな状態のお前を放っておけるかよ!それにあいつには色々聞きたい事もあるしな」

 

 敵である自分を助けたフォーゼの行動に問いかけると彼女の問いに対してフォーゼは自分の真っ直ぐな気持ちを伝え、攻撃してきたダスタードの腕を取り、関節を決めながらこちらを傍観しているフィーネを睨み付ける。

 

「こいつらは一体……!くっ!」

 

 ダスタードの繰り出した刃を防いだ翼は病み上がりの状態で左腕で抱えた響を庇いながら、二体目のダスタードが繰り出した刃を辛うじて弾くがその顔には疲労が見え始めていた。

 

「こっの!コイツで一気に決めてやる!」

 

【―エレキ―】

 

【―エレキ・オン―】

 

 ダスタードを頭突きで怯ませ、更におまけと蹴りを喰らわせたフォーゼはロケットスイッチを抜いたフォーゼドライバーにエレキスイッチを装填して直ぐにエレキスイッチを起動させ、エレキステイツにステイツチェンジすると左ソケットにプラグを装填したビリーザロッドを片手にこちらに向かってくるダスタード達を迎え撃とうと駆け出した!

 

「うぉらっ!」

 

 フォーゼESは一体目のダスタードの攻撃を身を屈めてかわしてがら空きになった背中を蹴りつけ、次に向かってきた二体目と三体目のダスタードが振りかざした刃をビリーザロッドで防ぐと片方に頭突き、もう片方には前蹴りを繰り出し地面に転倒させた。

 

「っと!甘いぜ!」

 

 それを見た四体目のダスタードが距離を取り、取り出した数枚の手裏剣をフォーゼESに向けて投擲するが左腕に展開してあるシールドモジュールで手裏剣を弾いて距離を詰めてビリーザロッドを袈裟斬りに振り下ろした。

 残った五体目のダスタードは助走をつけて飛び上がり頭上から刀を振り下ろすがフォーゼESは怯まずビリーザロッドを横凪ぎに振るい、地面に叩き落とすとフォーゼドライバーから抜いたエレキスイッチをビリーザロッドに装填させる。

 

「コイツで終わりだ!」

 

【―リミットブレイク!―】

 

 立ち上がった五体のダスタード達は各々の刀を構えて、駆け出して刃を振りかざすが、必殺技を発動させたフォーゼESの電撃が空間を斬り裂いた。

 

ライダー百億ボルトブレェェイクッ!

 

 すれ違い様に帯電したビリーザロッドでダスタード達の体を斬り付け、体内に流し込まれた強力な電撃に耐えきれずその身を星屑になって散り果てた。

 

 その様子を見終えたフィーネはクスリと冷たい笑みを浮かべた後、手すりから飛び降り彼らの前から姿を眩ました。

 

「待ってくれよ!フィーネェェェッ!」

 

「あ、おい!」

 

 それを見たクリスも後を追い掛けようと飛び上がり、彼らの前から姿を消し、彼女を止めようと手を伸ばしたフォーゼESだったが止める事叶わず、行き場を失くした手を下ろし悔しそうに拳を握り締める事しか出来なかった……。

 

 

 

――三人称視点、終了――




俺、参上!どうもクロトダンです。

今回は長くなりそうになったので分割しました。

次回はライダー部のメンバーとの話し合いを予定してます。


今回のイベントはクリアしましたか?自分クロトダンは思わず泣いてしまいました。
そして綺麗なウェルはいつもの顔芸と黒さがないから違和感を感じました(笑)

次回を楽しみにしてください。


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10:遠、退、日、溜!

お待たせしました。いや、本当にお待たせしてすみません。
約一年ぶりの投稿です。
活動報告の内容もありますが、凄く難産でした……。
プロットではGXとジジイとフォーゼとの対決シーンまであるんですが、それを文章にするのが難しい。

タイトルの意味は遠退く日溜まり。


青年は苦悩する、自身の無力さに……

日溜りの少女は涙を流す、大切なお日さまを避けてしまう自身の感情に……


――三人称視点――

 

 

――賢悟の住むマンション――

 

 

「賢吾から聞いたけどあなたの口から話してもらうわよ弦太郎?」

 

 ネフシュタンの鎧の少女――雪音 クリスの襲撃した日から一夜明けた夕方。賢悟が住むマンションの一室のリビングに備え付けられているソファーに座った風城 美羽が目の前で正座している人物――弦太郎に問い詰めていた。その彼女の後ろにはライダー部のメンバーもその場にいる。

 

「あ、あのな美羽。これには深い訳が……」

 

「言い訳しない!私は話してと言ったの!これは宇宙仮面ライダー部の元会長として、何よりあなたの友達としての義務なの!なのに私達を危ない目に合わせない為……?ふざけないで!私達はあなたが思っているほど弱い存在じゃないわ!」

 

「美羽……」

 

「美羽の言う通りだ弦太郎」

 

「隼……」

 

 立ち上がって指を差している美羽の後ろで立っていた大文字 隼が彼女の隣に立ち、彼女の言葉を継ぐように弦太郎に話しかける。

 

「俺達はあの戦いを乗り越えてきた仲間だろう?それなのにお前は俺達に危険がないように遠ざけようとした。その気持ちは俺にもわかる。でもな……せめて一言ぐらい教えてもいいじゃないか!そんなに俺達はお前にとって頼りない存在か……?」

 

「(隼……、美羽……、ユウキ……、JK ……、友子……。ああ、俺は大馬鹿野郎だ!みんなに危険がないように全部背負っていると思っていたつもりだったのに……逆に心配かけさせちまうなんて……本当に大馬鹿野郎だ!)」ゴッ!

 

「弦太郎!?」

 

「弦ちゃん!?」

 

 美羽の涙と隼の気持ちを聞いた弦太郎は二人の顔と後ろに立つ城島 ユウキ、JK 、野座間 友子の悲しい表情を見て一度顔を俯け、しばらく思考すると突然握り締めた右拳を自分の額を殴りつけた。それを見た賢吾達は驚きの声を上げていると弦太郎は両手を床に付いて頭を下げた姿勢、土下座の体勢を取ると謝罪の言葉を吐き出した。

 

「すまねえみんな!俺がみんなを巻き込みたくないと勝手に決めたせいでお前らの気持ちをないがしろにして本当にすまねえ!」

 

「弦太郎……」

 

 弦太郎の謝罪の言葉を受け、しばらく間が空いてからその空気を変えるようにJKが最初に口を開いた。

 

「気にしないでくださいッスよ弦太郎さん。弦太郎さんが不器用なのは知ってますから」

 

「そうそう、弦ちゃんってば昔からそうなんだよねー」

 

「でも、そんな強引な弦太郎さんのおかげで今の私達がいるから……」

 

「それにお前が頭を悩ませるなんて弦太郎らしくないしな」

 

「ま、要するに例え戦う力がなくても私達はあなたの仲間だから、一人で背負い込まないの。分かった?」

 

 JKに続いてユウキ、友子、隼が弦太郎に声をかけ、最後に美羽がソファーから立ち上がり優しい笑みを弦太郎に向ける。

 

「JK、ユウキ、友子、隼、美羽……みんな……。ああ、一人で背負い込むのは俺らしくねえ!みんな、よろしく頼むぜ!」

 

 ユウキ達の言葉を聞いた弦太郎は床から立ち上がり、礼の言葉を言いながら胸を叩いて右腕を突きだした。

 

「しかし、問題はもう一つ残ってるな」

 

「うん、響ちゃんと未来ちゃんだよね……」

 

 賢吾の言葉の意味を汲み取ったユウキが二人の少女の名前を言葉にするとそれを聞いた弦太郎達は口を閉じ、二人の方に顔を向ける。

 

「確かに昨日の事は小日向には辛い事だったな……」

 

「それはそうでしょ隼。響は未来にとって一番の親友だからあの娘からしたらショックなのは当たり前よ」

 

「で、でも説明を受けた後に賢吾君がその理由を含めてフォローしてくれたんでしょ?」

 

「ああ。だが……これは俺達が言っても彼女自身が納得出来ないだろう……こればかりはどうする事も出来ない」

 

「ああ、そうだな(それにあの時のあいつの様子もな……)」

 

 賢吾達が話している最中、弦太郎は昨日目の前から去った銀髪の少女―雪音 クリスについて考えていた。

 雪音 クリスの様子は弦太郎の目から見ても気になっていた。その理由は彼女自身に過去にあった。幼い頃に両親が戦争に巻き込まれたせいで失い、日本に保護された後フィーネに拉致され、【争いを無くせば平和な世界を創れる】とフィーネに唆され家族を失い孤独への恐怖に怯えた彼女はフィーネに虐待を受けながらも自身を見放さないでくれる唯一の存在であると依存し、自身を愛してくれていると信じて付き従っていた。

 だが。先日に起きた戦場に現れた唯一の拠り所に見限られ、泣きそうな表情を浮かべていた彼女の顔が弦太郎の頭に焼き付いていた。

 

「くそっ!仮面ライダーなのに俺は何もできねーのかよ!」

 

「弦ちゃん……」

 

 何も出来ない自身の無力さに苛立った弦太郎は声をあげるしかなかった……。

 

 

◇◇◇

 

 

 次の日、未来が響と仲違いしてから3日経った早朝。未来は雨が降り注ぐ商店街を傘を差して一人で歩いていた。響が隠していた秘密を知ったあの日から未来は響を避けていた。

 響の秘密を目の前で見た彼女は二課の職員による説明を受け、親友が自ら危険に突っ込んでいた事に戸惑いを隠せずショックと隠し事をした怒りを胸に持ち、二人の家に帰宅した響にどうして隠し事をしない言ったのどうして嘘をついたのかと責めた。責めてしまった……。

 未来は頭では響が自身の事を案じていた事だと理解していたが、大切な親友が嘘をついてまで隠し事をした事への気持ちが勝り、親友を傷付けてしまった。

 その次の日もリディアン音楽院で響が話しかけようとしても未来は響の友達ではいられないと彼女を拒絶してしまった。そして今日の早朝からご飯を食べず制服に着替えた彼女はまだベッドに横になっている響を置いて、彼女の悲しみを表すかのように降っている雨の中を一人歩いている中、未来は2日前の賢吾が言った言葉を思い出していた。

 

『小日向。確かに立花は今日までこの事を隠していた。だが、それでも彼女は危険な目に合わせないように親友である君に隠し事をした事に胸を痛めていた。だから立花の事を責めないでやってくれ』

 

「(わかってる……響が私の事を案じてやったのは。でも、そんな響の気持ちを拒絶した私はもう……)ん?あっ!」 

 

 ――親友ではいられない。とその暗い気持ちを胸に抱きながら歩いていると商店街の路地裏を通りかかった時、彼女の耳に物音が聞こえた。何かと思い視線を路地裏に向けるとそこには人が倒れているのが見えた。

 

「だ、大丈夫!?返事をして!」

 

 未来は倒れている人の側に駆け寄り、声をかけながらその姿を確認するとそこには赤い服を着た銀髪の少女――雪音 クリスが倒れていた。

 未来は倒れているクリスの腕を肩に回してなんとか起き上がらせると、このままでは体調を崩してしまうと思い未来は知り合いのおばちゃんがやっているお好み焼き屋【ふらわー】が近くにあることを思い出し、クリスを背負いふらわーに向かった。

 

 

◇◇◇

 

 

「オオォラァァァッ!」

 

 雨が止み青空の下、ノイズの出現の連絡を受けフォーゼに変身した弦太郎は現場に到着し、街に現れたノイズに向けて飛び蹴りをくらわせ、それを受けたノイズはボールのように蹴り飛ばされた。

 

「くそ!何で街中にノイズが!?あのフィーネって女、何を考えてやがる!」

 

【―ジャイアントフット―】

 

【―ジャイアントフット・オン―】

 

 そう悪態をつきながら冷静に飛行型ノイズの突撃攻撃をかわし、右足に物質化(マテリアライズ)したジャイアントフットモジュールで思い切り地面を踏みつけるとノイズ達の頭上に重力を一時的に増幅した巨大な足の固まりが形作られ、ノイズ達をまとめて押し潰し炭に変える。

 

「きりがねぇ……こうなったらコイツで……ん?な、なんだ!」

 

 ジャイアントフットのスイッチを切り、まだ大量にいるノイズを見据えつつ、次のスイッチを取り出そうとした矢先にノイズ達が一度動きを止め次の瞬間ある場所を目掛けてその身を変化させながら一斉に商店街の方へ移動を始めた。まるで()()を見つけたかのように。

 

「こいつらなんで俺を無視するんだ?向こうに何があるってんだ…………まさか!」

 

【―ロケット・オン―】

 

 ノイズの奇妙な動きに疑問を持ったフォーゼはその理由について考えていると視線の先に上空に向けて無数の弾丸が見えると涙を流したクリスの顔が思い浮かび、ノイズ達の狙いがあの時の少女だと確信したフォーゼは直ぐにロケットモジュールを物質化(マテリアライズ)させるとノイズ達が向かった商店街の方向に向けて飛び立った。

 

 

◇◇◇

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……。雑魚共が、手間かけさせやがって……」

 

 商店街の入り口の前にある川辺で【第二号聖遺物・イチイバル】を身に纏ったクリスが乱れた息を整えながら、自身を狙い新たに現れたノイズ達を睨みつつ悪態をつきながらチラリと視線を一つのビルの屋上に向ける。

 

「(あのおっさんはもういないか……けど、これでいい。あたしは一人で戦っている方がいいんだ。だから)……これ以上、関係のない奴らに手ぇ出すんじゃねぇ!」

 

 そう叫んでガトリング形態にしたアームドギアをノイズ達に向け引き金を引こうとした瞬間、彼女の背後から星屑の忍者(ダスタード)達が襲いかかり彼女に向けて刃を振り下ろした!

 

「なっ!?こいつらあの時の!?くっ!」

 

 間一髪ダスタードの襲撃に気づいて地面を転がることでかわしたクリスは相手の姿をみて驚きつつ、再び距離を詰め振り抜いた刀を避けながらアームドギアをガトリングからボウガン形態に変形させ、距離を取ろうと弾幕を張るがダスタード達は苦もなくかわし、クリスの命を奪おうと刃を振りかざす。

 それを見たクリスは距離を詰められないよう川辺を移動しながら弾幕を張りつつ、他の武装を使おうとリアスカートからミサイルを展開しようとするが、そうはさせないとノイズ達がそれを邪魔をする。

 ノイズの攻撃を避けて迎撃しようとするとそれをダスタードが攻め、ダスタード達を攻撃しようとすると今度はノイズがそれを妨害される。人を襲うノイズ達とダスタード達のあり得ない連携攻撃にクリスは思うよう攻撃出来ない状況に顔をしかめる。

 

「クソ!こいつらいっちょまえに連携しやがって……っ!って、まずッ!?」

 

 ダスタードとノイズの連携に気を取られ、イチイバルのヒールが川辺の石に挟まり態勢が崩れ背中から倒れてしまった。直ぐに起き上がろうとするがその隙をダスタードは見逃さず、クリスの腹を足で踏みつける。

 

「この、放しやが……ガァァァッ!?」

 

 ダスタードの足を振り払おうと抵抗しようとするがそれを許さないとダスタードは足に力を入れて、腹を圧迫されたクリスはその痛みに堪えきれず苦痛の声を上げる。ダスタードは痛みに悶えるクリスの首を左手で掴み、もう片方の手で握る刀を振り上げる。

 

「ペッ!クソ、ったれ……ここまでかよ……っ」

 

 首を掴まれ自身を見下ろすダスタードの顔に唾を吐いたクリスは苦悶の表情で相手を睨みつけ、自身に向けて振り下ろされる刃を見て涙を流し目を瞑った。

 

【―ロケット・ドリル―】

 

「そいつからぁ……」

 

 だが――。

 

離れろぉぉぉぉぉっ!!

 

【―リミット・ブレイク―】

 

ライダー!ロケットドリルキィィィック!!!!

 

 少女の胸に振り下ろされようとした凶刃は駆けつけた仮面ライダーフォーゼの繰り出した必殺技がダスタードの身体を貫いた事によって阻止された!

 

 

 




本当にお待たせしてすみません。クロトダンです。
久しぶり過ぎて時間がかかりました。

さて今回はライダー部のメンバーとの話し合いと未来の気持ちを書きました。(中身薄すぎてすみません)
そしてクリスのピンチを救った仮面ライダーフォーゼが登場!
次回は遂にあの消防野郎が登場します!


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11:伸、手、繋、絆!

調子がよかったので連続投稿です。
初めて楽曲コード使用してみようとしましたが、使い方がわからず断念しました。
ではどうぞ。

タイトルの意味は伸ばした手と繋がる絆。





青年は手を伸ばす、罪を背負い込もうとする銀髪の少女に……。

銀髪の少女は戸惑う、自分を心配する戦士の言葉に……。


――三人称視点――

 

 

「お前は………!」

 

「よう、無事みたいだな。良かった」

 

 クリスはダスタードが振り下ろした凶刃から救ってくれた仮面ライダーフォーゼの姿を見て驚愕の声をあげ、声をかけられたフォーゼはロケットとドリルのスイッチを切ってクリスの方を向き、倒れている彼女に近寄り手を伸ばした。それを見たクリスは一瞬その手を掴もうとしたが直ぐにその手を振り払い自力で立ち上がる。

 

「何であたしを助けた!あのおっさんもあのバカも何であたしを助ける!?お前らに何度もひどい事をした敵であるあたしを!何で……」

 

「何言ってんだお前?そんなの敵とか味方とか関係ねーだろ。そいつが困ってたり泣いていたら、その手を掴んで助けるのが当たり前だろ!だから……」

 

 フォーゼは当然だろと自信をもって言った言葉に眼を見開いているクリスに向けて手を伸ばした。

 

「俺と一緒に戦ってくれ、クリス」

 

 クリスは自身に向けて手を伸ばすフォーゼの顔を見てしばらく思考すると小さく笑い口を開いた。

 

「…………ハッ、お前あのバカと同じバカなんだな?」

 

「な!お前、バカってなんだよバカって!」

 

 いきなりバカ呼ばわりされたフォーゼはどういう事だと質問するが、クリスはそれを無視してフォーゼの横を通り過ぎ彼の前に立つとボウガン形態のアームドギアを構え、背後にいるフォーゼに目線を向ける。

 

「勝手にしろ。あたしの邪魔をしなければな」

 

「……へへっ!ああ!勝手にするぜ」

 

 クリスの言葉を聞いたフォーゼ右手で頭をキュッと擦るとクリスの隣に並び立ち、自身の胸を二回叩いた拳を自分を襲いかかろうとしているノイズとダスタードの群れに向けて突き付ける。

 

「おっし、行くぜクリス!」

 

「ハッ!それはこっちの台詞だ!」

 

 その言葉を合図に二人は敵に向かって走り出した!それを見たダスタード達は刀を構え駆け出し、最初に体を変形させた複数の飛行型ノイズが二人に襲いかかる。

 

【―ガトリング―】

 

【―ガトリング・オン―】

 

 槍のように降りかかる飛行型ノイズ達の攻撃を二人は左右に飛んで避けると△スロットのドリルスイッチから【アストロスイッチ19・ガトリングスイッチ】と差し換えたフォーゼが左足に物質化(マテリアライズ)したガトリングモジュールを、アームドギアをボウガンからガトリング形態に変形させたクリスが左右から挟み込むようにノイズに銃弾の雨を味合わせ炭に変える。

 

【―クロー・シザース―】

 

【―クロー・シザース・オン―】

 

 鎌を持つ人型ノイズが振り下ろした鎌をフォーゼは□スロットのレーダースイッチを【アストロスイッチ11・シザーススイッチ】に差し換え物質化(マテリアライズ)したシザースモジュールで受け止め、◯スロットのロケットスイッチとクロースイッチを差し換え、物質化(マテリアライズ)させたクローモジュールで人型ノイズの体を切り裂き炭に変え、すぐさま次に襲いかかるノイズを両手のモジュールで切り裂いた。

 

【―BILLON MAIDEN―】

 

 クリスはノイズとダスタードの攻撃を避けると地面を蹴って飛び上がると頭上からガトリングの雨を降らせ、穴だらけに変え地面に着地するとすぐに移動してダスタードの刃をしゃがんでかわしその勢いで足払いをかけ、ダスタードを転倒させアームドギアの銃口を押し付け至近距離で撃ちまくり、ダスタードは形を保てず星屑に散り果てる。

 

「やるじゃないか!」

 

「お前もな!ヘンテコ頭なのに!」

 

「ヘンテコ頭じゃねーよ!」

 

「へッ!……!(あたし今……)」

 

 ノイズとダスタードを倒していく最中に一度互いの背中を合わせると軽口を交わし、クリスは自分でも気づかず自然笑みを浮かんでいる自分に驚いていた。

 彼女の事情を知らんとばかりに三体のダスタードが手裏剣を飛ばしてくるが、二人は難なく避けるとクリスはガトリングを三体のダスタードに向けて撃ち倒す。

 

「よし!こっちも赤く燃えるぜ!」

 

 それを見たフォーゼが展開していたクローモジュールとシザースモジュールのスイッチを切ってクロースイッチを抜いて、赤いスイッチ、【アストロスイッチ20・ファイヤースイッチ】を◯スロットに挿し込み、スイッチをいれると右腕のモジュールデッカーが赤くなりファイヤースイッチから炎が吹き荒れフォーゼの身体を包み込むとフォーゼの姿が変わっていく。

 

【―ファイヤー―】

 

【―ファイヤーオン―】

 

熱い炎がドッとくるぜ!

 

 炎が消えると雷神を彷彿させたエレキステイツに対し、フォーゼのライダースーツが赤く染まり、の字を模るように三角形の意匠の不動明王をイメージした姿。

 仮面ライダーフォーゼ・ファイヤーステイツ(以下:フォーゼFS )にステイツチェンジした!

 

「今度は赤くなった!?」

 

「おう!フォーゼ・ファイヤーステイツだ。行くぜ!」

 

 フォーゼFSは驚くクリスに軽く説明してから、消火器を彷彿させるファイヤーステイツ専用モジュール、【ヒーハックガン・火炎モード】を構え引き金を引くとヒーハックガンから火炎弾が放たれ、ノイズに着弾しノイズの体が燃え上がり瞬く間に炭に変えた。次にフォーゼはヒーハックガンの向きを空中に向け再び引き金を数度引き空中から迫ってきた飛行型ノイズとダスタードに当たり燃え上がらせ炭と星屑に変えた。

 

【―CUT IN CUT OUT ―】

 

 クリスは素早く動き回るダスタード達に展開したリアスカートから追尾式の小型ミサイルを射出し、撃ち出された小型ミサイルがダスタード達に着弾し星屑に散り果てその余波にノイズも巻き込まれ炭に変わり果てた。

 

「こいつでとどめだ!」

 

【―リミットブレイク―】

 

 一ヶ所に集まった残ったノイズとダスタード達にとどめを差すためにフォーゼFSはフォーゼドライバーからファイヤースイッチを抜き取り、ヒーハックガンの挿入口に装填しヒーハックガンから警告音が鳴り響き、コズミックエナジーが最大になるとゆっくりとヒーハックガンを前方に腰だめにして構える。それに合わせてフォーゼと並び立ったクリスも背後から二機の大型ミサイルを展開しそれと同時にリアスカートと脚部から大型ミサイルを支える副脚が展開、地面に固定される。

 

ライダー爆熱シュートォォォッ!!!!

 

くらいやがれぇぇぇぇっ!!!!

 

【―MEGA DETH FUGA ―】

 

 引き金を引いたヒーハックガンから巨大火炎弾とクリスが放った二機の大型ミサイルが前方のノイズとダスタード達に迫り、ノイズとダスタード達はなすすべもなく爆炎に包み込まれ、川辺から巨大な火柱が立ち昇り数秒間燃え続け火柱が消え去るとそこには巨大な焦げ跡しか残っていなかった。

 

 

◇◇◇

 

 

「ふぅ……終わったな」

 

「……ああ」

 

 ノイズを殲滅し周りにまだ残ってないか確認したフォーゼは大きく息を吐いて、ヒーハックガンを肩に担ぎ汗を拭うように頭部をキュッと擦りあげる。

 フォーゼの横で武装を収納したクリスは踵を返して黙ってその場から去ろうとするがそれに気付いたフォーゼが彼女に声をかける。

 

「待ってくれクリス!」

 

 声をかけられたクリスは歩みを止め顔を向けずなんだよと返事をするとフォーゼは背中を見せる彼女に何故一人でいようとするんだと質問した後、俺達と一緒に戦おうと声をかける。

 

「一緒に戦おう?ふざけんな!さっきは成り行きで共闘したけどなぁ!あたしは大人達の事が信じられねーんだよ!」

 

「信じられないって……それはどういう事だ?お前に一体何があったんだよ!」

 

「ああ、いいぜ……なら聞かせてやるよ、あたしが過去にどんな目にあったのか」

 

 フォーゼの問いかけに答えるように振り向いてクリスは自身の過去を久地にした。幼い頃にNGO活動していた両親が内戦に巻き込まれ失った後、その国の大人達に捕まり捕虜となり凌辱され、暴力を振るわれ、やめてくれと懇願しても聞き入れてくれず、赤い手袋と赤いスカーフをしたある一人の男に助けられる日まで絶望の日々を送っていた事。

 その後、日本政府に保護され日本に着いた直後にフィーネに拉致され、フィーネの口車に乗せられ沢山の人達を傷つけ挙げ句の果てに見捨てられま事をフォーゼに自分の気持ちをぶつけるように話した。

 

「どうだ……?これでわかっただろ。あたしはお前等と一緒に戦う資格なんてないんだ。だから汚れたあたしは一人でいたほうが……「そんな事言うなよ!」えっ?」

 

 自身の過去を話しその時の悲しみを思い出して涙を流すクリスの言葉を遮るようにフォーゼが違うと叫んで彼女の両肩を掴み、顔を上げたクリスの瞳と目を合わせると自分の気持ちを彼女に伝える。

 

「確かに傷付いた心は治らないし、犯した罪は消えない。でもな!それを償おうと一人で背負いこむ必要はないんだよ!お前は誰も信じられないかもしれないけど、お前の事を心配してる人間だっているんだ!だからさ!……そんな悲しい事を言わないでくれよ、クリス……」

 

「っ!(こいつ泣いているのか?あたしの為に、なんで……?)離れろっ!」

 

「おわっ!?」

 

 フォーゼが自分の為に泣いているのに気付いたクリスはフォーゼの顔を見る。そこには仮面で隠されて見えない筈のフォーゼ(弦太郎)の涙を流す顔が幻視した。それに驚いたクリスはフォーゼの胸を両手突き飛ばし、フォーゼは突然の事で踏ん張れず地面に尻餅をついてしまい、その隙にクリスはシンフォギアで向上した身体能力でその場から飛び上がり、フォーゼの前から姿を消した。

 

 

◇◇◇

 

 

「あ!弦太郎さーん!こっちです!こっち!」

 

 すっかり空が暗くなり、ノイズの危険ななくなった街に人が戻り初め避難した人達が政府の指示に従いそれぞれ帰路についている中、小川から連絡を受けて商店街に到着した弦太郎は回りを見渡しながら歩いていると自分の名前を呼ぶ妹分の声が聞こえるとそちらに顔を向けると視線の先に泥で汚れて髪がボサボサでこちらに手を振っている響と彼女の隣で同じく姿で手を繋いでこちらに手を振っている未来がいた。

 その彼女達の後ろにワインレッドのシャツが目立つ弦十郎と先ほど連絡をくれたスーツ姿の小川がいた。

 

「響!未来!無事だったんだな!……その様子だと仲直りしたんだな」

 

「はい!心配かけてすみませんでした。でも、もうすっかり元通りになりました!」

 

「私からも心配かけてすみませんでした。でも、もう響一人に背負わせたりしません。私も私ができる範囲で響の助けになります!」

 

「ヘへ、二人ともいい顔してるじゃねーか。仲直りできて俺も嬉しいぜ!」

 

「「はい!」」

 

 弦太郎が笑顔になって胸を二回叩いて拳を前に突き出すとそれに答えるように二人も笑顔で胸を二回叩いて拳を前に突き出すと三人は同時に吹き出して笑いあった。

 

 再び繋がり元通り、いやそれ以上の絆になった二人の少女達の笑顔を見て笑い合う弦太郎。だが、そんな彼の心には一人で背負いこむ銀髪の少女の顔を思い出していた……。

 

 

 




フォーゼとの共闘でテンションが上がったクリスがその流れで威力の高いMEGA DETH FUGAを出してしまい、ライダー爆熱シュートとの相乗効果でヤバイ威力に……(汗)
そしてクリスを助けた赤い手袋とスカーフを巻いた男は一体誰なんだ……!
そしてクリスの心を弦太郎は救えるのか……!


次回はデート回!ライダー部のメンバーと一緒に遊びにいきます!


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12:女、王、計、略!

またまた調子がよかったので連続投稿です。
今回はちょっとギャグに走ってみました。

タカユキ2199さん誤字報告ありがとうございます!


タイトルの意味はそのままです。



青年は背中を押す、片翼の少女が夢を再び掴む為に……。

片翼の少女は答えを得る、自分の事を思ってくれた仲間達のおかげで……。



――三人称視点――

 

――弦太郎達が通う大学――

 

 

 クリスが再び目の前から去り、響と未来の絆が元に戻った日から翌日の夕方。大学にある使われてない教室で弦太郎、賢吾、ユウキの三人が集まって話していた。

 

「それじゃ未来ちゃん仲直り出来たんだ!あの二人が喧嘩してるのなんて悲しかったけど、仲直りできて本当によかった~~」

 

「しかし、ノイズの他にまたダスタードがいたなんてな……。そのフィーネという女、財団Xと繋がりがあるのか?」

 

 弦太郎から二人の仲が元に戻ったと聞いたユウキが安心したのか大きなため息を吐き、その隣で賢吾が顎に手を当てフィーネが彼らと因縁がある財団Xと関わりがあるのか考えていた。

 

 【財団X】

 

 それは彼ら仮面ライダー達と何度も対立した闇の組織。表向きは科学研究財団の看板を掲げ、知名度も高いがその実態は強力な兵士を手にするために様々な悪の組織や個人に援助を行う死の商人。

 彼らは援助をする見返りに″協力者からその研究成果を吸い上げ″、組織の戦力に加えている。

 しかも組織が持つ無尽蔵の資金と世界中に張り巡らした巨大なネットワークを駆使して、最終的に壮大な計画を成し遂げようとしているらしい。仮面ライダーWを初めとした仮面ライダー達が財団の野望を何度も阻止し続けてきたが、その巨大な組織力で何度も仮面ライダー達の前に現れた。

 

 だが、二年前に起きた【レム・カンナギ】の反乱よって有力な幹部数名が殺害され、そしてカンナギの野望に気付いたフォーゼと仮面ライダーオーズ、そして未来からきた仮面ライダーアクアと栄光の七人ライダー達の活躍によりカンナギの野望を阻止し、酷い痛手を負った財団は活動を縮小、しばらく表舞台から姿を消していた。

 

 だが、前回と昨日の現場でフィーネと名乗る女がホロスコープスの駒であるダスタードを使役したのを弦太郎から聞いた賢吾は今回の事件に再び財団Xが関わっているではないかと警戒していた。

 

「財団の目的がわからないがもし本当に奴らが関わっているとしたら厄介だな。弦太郎この事は風鳴司令には?」

 

「ああ、もう伝えた。弦十郎さんも警戒してるみたいだけど、あいつらの神出鬼没ぶりは厄介だからな……。弦十郎さんはできる限り調べてみるって言ってたぜ」

 

「そうか、今の所は二課の情報収集力に期待するしかないな。俺達も出来る限り警戒しておこう」

 

「おう!……ん、響?」

 

 賢吾の慎重な意見を聞いた弦太郎は力強く返事をした直後、彼の胸ポケットに入れてあるNSマグフォンから着信音に気付き、画面を見ると妹分の名前が書かれてあった。

 

「おう、どうした響?何かあったのか?」

 

『あ、弦太郎さん!次の日曜日空いてますか?』

 

「日曜?ああ、一応空いてるけど……それがどうした?」

 

『その日、私達とデートしましょう!』

 

 妹分の突然の提案を聞いた弦太郎は驚きのあまり大きな声をあげてしまったのは言うまでもない。

 

 

◇◇◇

 

 

――日曜日、都内の公園――

 

 

「ほ、ほ、本物の風鳴 翼さんだぁ!」

 

「ユウキ、声がデカイ!」

 

「あわわ、ゴメンね。でも、あの有名な翼さんが目の前にいるなんて夢じゃないかなっ!?」

 

「あはは……夢じゃないですから安心してください」

 

 弦太郎達が響から指定された公園に到着するとユウキが先に到着していた翼の姿を見て感激のあまり大きな声をあげてしまい、それを賢吾が注意すると慌てて声を押抑えて謝罪してもう一度翼の姿を見て夢じゃないかと自分の頬を引っ張っていた。

 翼の事を知っている弦太郎と賢吾を除いて美羽、隼、JK、友子もユウキほどではないが有名なトップアーティストである彼女が自分達の前にいる事に驚いていた。

 

 数日前、あの後混乱してる弦太郎からNSマグフォンを取って電話を代わった賢吾が同じく説明を省いた親友から電話を代わった未来に詳しい話を聞いた。

 内容は響、未来、そして怪我から完全に復帰した翼と一緒に買い物しようとのお誘いの電話だった。その内容をユウキと混乱から落ち着いた弦太郎に伝えるとそれを聞いたユウキがどうせなら他の四人も一緒にいかないかと提案、それを未来が翼に聞いてみると本人から大丈夫だと返事をもらうとユウキは直ぐに四人のスマフォにメールを送ると四人共に肯定の返事が着て、一緒に買い物にいくことになったのだ。

 

 ユウキが落ち着いてから改めて弦太郎と賢吾を除いたメンバーが翼と自己紹介を終えて、待ち合わせの時間になっても未だ来ない二人の少女を待っていた。

 

「来ないな」

 

「また響が寝坊したかもね」

 

「高校生になっても相変わらずッスねー」

 

「あの、立花が遅刻するのは前からですか?」

 

 隼が未だ来ない二人について発言すると美羽が響が寝坊したのではないかと言うと両手を頭に回したJKが笑いながら喋っていると翼が響について質問した。

 

「うん、そうだよ。元気になって遊びに行く時は何度もあったしねー。よくみんなで迎えにいってたなー」

 

「ま、それを言ったら弦太郎も負けてはなかったがな」

 

「もしかしたら弦太郎さんの遅刻癖が移ったかもしれないッスね」

 

「うん、確かにそうかも」

 

「そうそう……って、おい!それはどういう意味だよ!」

 

 弦太郎のノリツッコミするとみんなは笑みを浮かべ笑い合い、そんなみんなの笑い声に釣られて翼も思わず笑っていると公園の入り口から響と未来がようやく到着し、美羽の推測通り響が寝坊した事謝罪した後、一行は目的地に向かっていった。

 

 

――複合商業施設――

 

 

 目的地である商業施設に到着した一行はまず生活雑貨店に向かい小物を買ったり、次にぬいぐるみが売っている店に向かうとはやぶさ君のぬいぐるみを見つけたユウキが暴走したり、服屋さんに向かえば美羽が提案したファッション大会が始まり、男性陣は女性陣が購入した荷物持ちになっていた。

 ゲームコーナーのUFOキャッチャーで響が奇声を放ち景品を取ろうしたが失敗しUFOキャッチャーを壊そうとしたり、未来の提案でカラオケ屋に移動しそこで翼の生歌が披露され、一同は盛り上がり楽しい時間を過ごしていた。

 

 

◇◇◇

 

 

「どう?隼」

 

「駄目だ。入り口より数が少ないが何人かいるな」

 

 美羽に問われた隼がカラオケ屋の裏口の扉の隙間から外の様子を伺うと店の裏口に数人の男達が裏口の扉が開くのを伺っていた。

 

「まさか、商業施設から付けられていたなんて……」

 

「それにSNSでこの場所に入ったのを見たって投稿がどんどん拡散されてる」

 

 賢吾が店内の通路の片隅に転がって気絶している男を見て頭を抱え、友子がタブレットからSNSに投稿された内容を見て顔をしかめていた。

 事の発端は商業施設からカラオケ店に向かう最中に翼の熱烈なファンが変装していた彼女の姿をみて翼だと見抜き跡を追いかけ、カラオケ店で翼がトイレに行った帰りに男が現れ翼に迫ろうとしたが、騒ぎに気付いた隼と弦太郎が男を取り押さえ気絶させて、急いで店を出ようとしたが他にも目撃した人物がSNSに投稿した内容をみた人達が入り口に集まっていた。

 外の人達の様子のおかしさに気付き、店員に入り口を締めるよう指示をしたカラオケ店の店長に謝罪と事情を説明するとそれを聞いた店長の計らいに気絶させた男を任せ一同は裏口に行ったがそこにも数人の人が裏口を陣取っていた。

 

「すみません私のせいで……」

 

「いや、君のせいではない。気にするな」

 

「そうですよ!翼さんは悪くありません!」

 

「それにバレないと思ってたこっちが油断してたから、貴女に責はないわ」

 

「ですが……」

 

「安心なさい。私達に任せて。もしかすると思って用意してよかったわ、隼」

 

「ああ」

 

 気にやむ翼に美羽がウインクをすると隼に目配せすると彼が背負っていたリュックを床に置き中身を皆に見せるように開くと、それを見た弦太郎達は驚きの声をあげる。

 

「天高の元クイーンの技術()、見せてあげるわ」

 

 皆の驚く顔をみた美羽はリュックからあるものを取り出して、ニヤリと悪い笑みを浮かべた。

 

 

◇◇◇

 

 

「本当なのか?ここを張ってれば風鳴 翼が現れるのか?」

 

「間違いねーよ、入り口があんなに人がいれば裏口から逃げるに決まってる」

 

 カラオケ店の裏口に続く路地裏の前で三人の男が話し合っていた。彼らもSNSの投稿をみて翼を一目見ようとやって来たが、入り口には大勢の人達が集まっていて諦めようとしたが三人の内一人が裏口に回って待ち伏せしようと提案し、他の二人もそれに乗り入り口に集まる人達に気付かれない内にこうして待ち伏せしていた。

 

「あー、もし翼さんと会ったらサインとか貰えないかなー」

 

「オレは握手して一緒に写真を撮りたいな。あわよくば連絡先を交換出来たらいいけど……」

 

「おいおい、何羨ましい事言ってんだよ。ここを教えた俺にも教えろよ?」

 

「ああ、わかってるよ」

 

 男達はニヤニヤとゲスな笑みを浮かべながら、今か今かと裏口の扉が開くのを待っているとゆっくりと扉が開くのが目に入った。それを見た一人の男が他の二人に声をかけて、裏口の扉から翼が出てくるのを待っているとそこには……。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()が現れた。

 

「「「…………はっ?」」」

 

「お、俺は……」

 

 男達は目の前にいる女装した隼を見て思考が停止する。そんな男達をよそに顔を俯かせていた隼は覚悟を決めたのか、顔を上げると血涙を流して叫びながら男達に向かって行った。

 

「俺は……風鳴 翼だぁぁぁぁぁぁっ!!!!

 

「「「ギャアァァァァァァァッ!!!???化物ぉぉぉぉぉっ!!!???!?」」」

 

 自分達に迫ってくる隼に恐怖を感じた男達は悲鳴を上げながら、路地裏から飛び出して逃げて行った。

 

 大げさかと思うが想像してみてくれ。君の目の前にフルメイクでトップアーティストの女装をした大男が血涙を流しながら迫ってきたら、平然としていられると思うか?

 

「プックク……み、見事な名演技だったわよ隼。あ、あなたをメイクして上げたかいがあったわ……くくっ」

 

 男達を追い払った隼の後ろから髪型以外隼と同じ格好をした美羽が笑いを堪えつつ隼の背中を叩きながら、労いの言葉をかける。

 

「フ……そうか、君が喜んでくれるなら身体を張ったかいがあったさ……」

 

 と、かっこいい言葉を口にする隼だったが、それと引き替えに大事なものが失ったを感じていた。御愁傷様としか言えない……。

 

「さあ、あんた達も早く出てきなさい。作戦はまだ始まったばかりよ?」

 

 何とか笑いが治まると美羽は扉の中にいる残りのメンバーに声をかけると扉から隼と同じ格好をした賢吾、ユウキ、JK、友子が現れた。

 

「何で、俺がこんな格好を……」

 

「ま、まあまあ賢吾君。ここは翼さんの為だと思って!それに似合ってるよその格好」

 

「ユウキ、それを言われても素直に喜べないぞ……」

 

 翼と同じ格好をした賢吾が頭を抑えて文句を言うと同じく変装したユウキがずれたフォローをして、更に気が滅入ってしまう賢吾。

 

「いやいや、これはないっショ。誰得ッスかこれ?」

 

「……これ、流星さんに見せたら驚くかな?」

 

 こちらも同じく翼の格好をしたJKが服の上着を摘まみ苦笑いになる。友子は自前の手鏡で自分の姿を見て、留学している思い人である流星の事を呟いていた。

 そんな美羽の手腕を間近で見た響と未来はその腕前に感嘆の声をあげていた。

 

「美羽さん凄い……あっという間に賢吾さん達をメイクするなんて……」

 

「うん、それにあの時買った大量の服はこれの為だったんだ……」

 

 そう、これが美羽が提案した秘策。リュックの中には商業施設で購入した大量の女性用の衣服と翼と同じ髪型の青いウィッグが入っていており、それを弦太郎と響、未来を除いたライダー部のメンバーを変装させた陽動作戦だ。

 

「すみません皆さん。私の為に辛い役目を押し付けてしまって……」

 

「何言ってるのよ?」

 

「あいったぁ……っ!」

 

「このくらい別に大したことないわよ。ねぇみんな?」

 

 翼が賢吾達に謝罪するとそれを見た美羽は翼の額をデコピンして、腰な手を当て自身たっぷりに言うと賢吾達に声をかける。

 

「ま、確かにゾディアーツと比べたらそこまで危険ではないしな」

 

「まぁ、これくらいが俺ららしいですしね」

 

「ダイザーの操縦より簡単だしな」

 

「だから気にしないでください」

 

「誰も翼さんの事を迷惑に思ってないですから!」

 

「皆さん、ありがとうございます……!」

 

 賢吾達の言葉を聞いた翼は感極まって涙をこらえると頭を下げて、心からの感謝の言葉を口にした。それを見た美羽は頷いた後、弦太郎に声をかける。

 

「よろしい。それと……弦太郎。あなたはしっかりとあの娘達を護ってあげるのよ?彼女達に傷なんか付けたら承知しないわよ?」

 

「ああ!任せろ!翼達は俺は護ってやる!」

 

「言ったわね?それじゃ終わったらあの公園に待ち合わせね。みんな、手筈通りにいくわよ!」

 

「「「「はい!(ああ!)」」」」

 

 ウィッグを被った美羽が合図すると六人は二人一組になって一斉に路地裏から飛び出し、出来る限り追っかけ達を惹き付けながら走り出した。

 それに遅れて弦太郎は路地裏から顔を出して誰もいない事を確認して翼、響、未来を連れて人目を避けながら目的地である公園に向かって走り出した。

 

 

◇◇◇

 

 

「ふぅ……ここまでくればもう安心だな」

 

「はぁ……はぁ……はぁ……、こんなに走って、ノイズと戦った時より疲れるなんて……」

 

「うひぃぃ……こんなに走ったの久しぶりだよ~」

 

「私なんてノイズに追いかけられた時くらいに疲れたよぉ……」

 

 夕暮れに照らされた空の下。街を一望できる高台の公園に到着した弦太郎は汗を拭い、翼達は乱れた息を整えながらベンチに座り込んでいた。 

 

「むぅぅぅ~~同じくらい走ったのになんで弦太郎さんは疲れてないの?」

 

「ん?なんでって言われてもなぁ……まあ、走るより戦うほうが体力使うからなー。気付いたら自然とこうなったし、要するに慣れってやつだな、うん」

 

「もう、答えになってなーい!」

 

 弦太郎の答えに響がムキーッ!と抗議するとそれを見た翼は堪えきれず吹き出してしまい、それを見た三人も釣られて笑い出した。

 

「あはははっ……ふぅ。でもこんなに清々しいのは久しぶり。防人であるこの身は常に戦場にありましたから、こんなに楽しかったのは初めてだ……」

 

「翼さん……」

 

 翼の憂いを帯びた横顔を見た響はベンチから立ち上がると翼の手を取った。

 

「翼さん!ちょっと着いてきてください!」

 

「えっ?立花どこに連れていくんだっ?」

 

「いいからいいから!」

 

 戸惑う翼に笑顔を向けて目的の場所に向かい、その後を弦太郎と未来が着いていく。

 

「着きました!見てください翼さん!」

 

「何をって、これは……!」

 

 階段を登って響が案内したのは街を一望できる場所だった。響は指を指して街の景色に驚いている翼に説明する。

 

 最初に待ち合わせした公園。みんなで買い物をして遊んだ商業施設。先ほどまで歌っていたカラオケ店に指を指した響は笑顔で翼が戦ってくれたから、今を生きる人達が暮らせる世界を護っているんだと伝えていく。

 

「だから、知らないなんて言わないでください」

 

 響の言葉に続くように歩いてきた弦太郎が翼の隣に立つと翼に自身の想いを伝える。

 

「そうだぜ翼、お前がしたことは間違ってないんだ。お前は一人で背負いこんで戦った。でもな、お前はもう一人じゃない。俺達がいる。だから、お前は自分でやりたい事をやればいいんだ」

 

「あぁ……そうか、これが奏が見てきた世界なんだ……」

 

 二人の言葉を聞いた翼は顔を俯かせてると、かつて奏が話してくれた言葉の意味を理解すると、顔をあげ心からの笑みを二人に向ける。

 翼の晴れやかな笑みを見た二人はそれに釣られて笑みを浮かべると展望台に繋がる階段から囮を買って出た賢吾達が無事に姿を現した。

 

 それを見た弦太郎は響達を連れて賢吾達と合流しようと駆けていった。

 

 

――三人称視点、終了――




ヌオおぉぉぉぉ~疲れた~。どうもクロトダンです。
シンフォギアの映像を観ながら書いているんですが、他の作品と被ってないか不安になります。

そして賢吾達の女装回。隼の女装した姿を想像しながら楽しんで書きました(笑)


次回は青春磁力が登場します。


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13:片、翼、想、歌!

連続更新4回目!

タイトルの意味は片翼の想い歌。


青年は戦う、片翼の少女の夢を守る為に……

もう一人の片翼は安心する、夢を諦めた少女がもう一度空へ羽ばたくのを見て……。


――三人称視点――

 

――リディアン音楽院、屋上――

 

 

「復帰ステージのライブですか!?」

 

 トラブルもあった楽しいデート回(少し違うが)から翌日。昼休みのリディアンの屋上で翼に呼ばれた響と未来は、翼からアーティストフェスのチケットを手渡された。

 

「ああ。アーティストフェスが十日後に開催されるのだが、そこに急遽ねじ込んでもらったんだ。中止になったライブの代わりというわけだ」

 

「なるほど」

 

「あ……」

 

 翼の話を聞いた未来が納得していると響がどこのステージなのかチケットの裏側を確認するとそこには二年前の悲劇が起きた響にとって因縁あるステージの名前が書かれてあった。

 

「翼さん、ここって……」

 

「……すまない、立花にとって辛い思い出のある場所なんだ……―「ありがとうございます。翼さん」―え?」

 

 問われた翼は悲しい表情で響に謝罪するが突然、響からのお礼を言われ顔をあげて彼女の顔を見上げる。そこには力強い笑みを浮かべた響が真っ直ぐに翼の顔を見つめていた。

 

「響……?」

 

「いくら辛くても過去は絶対に乗り越えていくことができます!そうですよね?翼さん!」

 

「……ああ、そうだな。私も、そうなりたいと思っている」

 

 響の言葉を聞いて優しい笑みを浮かべた翼は再び上着のポケットから封筒を取り出して二人に手渡した。封筒を受け取った未来が中身を見ていいかと許可を得てから、中身を確認すると中には先ほど渡されたのと同じアーティストフェスのチケットが7枚入っていた。チケットを見た響が翼の顔を見ると翼はコクりと頷いた。

 

「翼さん。これ、もしかして……?」

 

「ああ、如月さん達の分だ。あの人達にも世話になったお礼にな。如月さん達の連絡先が知らないから、手間をかけてすまないが、もし如月さん達の都合が良ければ誘ってくれないか?」

 

「まかせてください!弦太郎さん達なら、絶対に行くと思います!」

 

「みんなで応援してますね」

 

「ああ。その時はよろしく頼む」

 

「「はい!」」

 

 翼からの頼みを聞いて二人は元気よく返事を返した。

 

 

◇◇◇

 

 

――アーティストフェス、ライブステージ入り口前――

 

 

 十日後、アーティストフェス当日。響からライブの誘いを受けて二つ返事で了承した弦太郎達は、開演時間前に既に到着して響と未来が来るのを待っていると、ユウキが小走りで向かって来る未来の姿をみて大きく手を振って呼び掛ける。

 

「あ!おーい、未来ちゃん!こっちこっち!」

 

「すみません。待たせちゃって……!」

 

「あれ?響はどうしたんだ?」

 

「響はその、補習で……」

 

 その言葉を聞いた弦太郎達はああ、なるほど……となんとも言えない表情を浮かべていた。

 

「どうする?後30分で開演するぞ?間に合うか?」

 

「うーん……よし!ちょっくら俺がマッシグラーで迎えに行って……―ピピピピッ!―っ!はい、こちら弦太郎」

 

『はい、響です』

 

 自分の腕時計を見た隼が響が間に合うか心配の言葉を言うと腕を組んでいた弦太郎が迎えに行こうと提案すると二課から渡された通信機から通信が入り、それを聞いた弦太郎は目付きを変え、通信に出ると同じく通信が繋がった響の声も聞こえた。

 

『ノイズの出現パターンを検知した。翼にもこれから連絡を―「待ってくれ、弦十郎さん」―……なんだ弦太郎君』

 

「現場に行くのは俺と響だけで行かせてくれ。今回のライブは翼にとって大事なライブなんだ。だから、絶対に中止にしたら駄目だ。翼には連絡しないでくれ。いいよな響?」

 

『はい!私も同じ意見です!翼さんには自分の戦いに望んで欲しいんです。あの会場で最後まで歌いきって欲しいんです……!お願いします!』

 

「…………やれるんだな?二人とも?」

 

 二人の想いを聞いた弦十郎は目を見開き、口元に笑みを浮かべた後、二人に出来るかと質問する。

 

「『ああっ!(はいっ!)』」

 

 それを聞いた二人は力強い返事を返し、通信を切った。通信を切った弦太郎は後ろにいる未来達の方を振り向いて申し訳なさそう表情を浮かべていた。

 

「わりぃ、みんなそういう訳だから……」

 

「そんな顔をするな弦太郎」 

 

「……賢吾?」

 

「俺達もお前と同じ気持ちだ。今回のライブは彼女にとって大切な事だ。ノイズなんかに邪魔されてもしたら、風鳴の夢に泥を塗ることになる。だから……立花と共にさっさと片付けてこい!」

 

「賢吾、未来、みんな……。ああ!まかせろ!俺達の分まで翼の応援してくれ!じゃあ行ってくるぜ!」

 

 親友の言葉を聞いた弦太郎は胸が熱くなり、笑みを浮かべサムズアップをしてから賢吾達から走り出した。

 しばらく街中を走っていた弦太郎は、人通りが少なくなったのを確認するとフォーゼドライバーを腰に巻いた弦太郎はフォーゼドライバーにある4つの【トランスイッチ】を全て倒し、フォーゼドライバーのバックル中央の液晶画面【ステイタスモニター】に光が灯る。走りながら弦太郎は左腕を顔の前に右手をフォーゼドライバーの右横にある【エンターレバー】を握るとフォーゼドライバーからカウントダウンが流れる。

 

 

 

 

 

 

変身っ!

 

 エンターレバーを引き右腕を空に翳すとベルトから二本の輪が展開され軽快な音が流れると同時に光と蒸気が弦太郎の身体を包み込み、光と蒸気が収まると弦太郎は仮面ライダーフォーゼ・ベーシックステイツに変身した!

 

【―ロケット・オン―】

 

「宇宙……キターーーーーーッ!!!

 

 変身が完了したフォーゼはロケットモジュールを物質化(マテリアライズ)させ、身体を屈め全身のバネを使ってお馴染みのセリフを叫びながら、炎を噴射させたロケットモジュールで大空を飛び上がり現場に向かっていった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

「いい加減、しつこいんだよ!」

 

 ノイズが現れた街から離れた港の倉庫街でイチイバルを纏ったクリスが一人で倉庫街をひしめくノイズ達と戦っていた。クリスはガトリングやミサイル等を使ってノイズ達を次々と殲滅させていくがノイズ達を倒してもその数が一向に減っていなかった。

 その原因はノイズ達の奥にいるそれぞれ二つの砲門を持つ、竜のような顔を模した二本首の要塞型ノイズが減らされた以上の数のノイズを生み出していたからだ。

 クリスは先に要塞型ノイズを倒そうとするが要塞型を守るように他のノイズ達がその行動を阻害され、攻めあぐねていた。

 

「なっ!?まずいっ!」

 

 邪魔をするノイズ達の攻撃をかわしながら、要塞型にガトリングとミサイルの雨をくらわせるが狙いが甘く決定打に欠けていた。クリスは移動しながら、ここいらで大技を繰り出そうと思考を割いていると要塞型から繰り出された砲撃に気づくのが遅れてしまい、なんとか直撃は避けようと地面を蹴ってその場から離れるが地面に着弾した時に起きた爆風に煽られ、地面を何度も転がった。

 

「くっそ、やりやがったな……っ!しまっ……!?」

 

 悪態をつき直ぐに地面から立ち上がろうとするが、要塞型ノイズの追い討ちの砲弾がまだ地面に倒れているクリスに向かって放たれた。

 回避が間に合わず放たれた砲弾がクリスに直撃すると思われたその時――。

 

「はあっ!」

 

「オラァッ!」

 

 直撃する直前、仮面ライダーフォーゼとガングニールを纏った響が彼女の前に立ち、響は蹴りでフォーゼはハンマーモジュールで砲弾を叩き落としクリスの危機を救った!

 

「っ!お前ら!」

 

 クリスは自身を助けた二人を見て驚きの声をあげるが、二人は顔をクリスに向け言葉をかけず笑みを浮かべて頷いた後、ノイズの群れに向かっていった。

 

【クロー・チェーンソー・オン】

 

 ノイズの群れに向かったフォーゼは物質化(マテリアライズ)させた右腕のクローモジュールでノイズの攻撃をかわしながら切り裂き、ノイズの横を通り過ぎ様に右足のチェーンソーモジュールでノイズの胴体を真っ二つにする。

 

「次はこいつだ!」

 

【マジックハンド・ホイール・ジャイロ・オン】

 

 クローとチェーンソーのスイッチを切ってスイッチをクロースイッチ、ドリルスイッチ、ハンマースイッチを抜き取ると、代わりにフォーゼドライバーにマジックハンドスイッチ、ホイールスイッチ、【アストロスイッチ37・ジャイロスイッチ】をそれぞれ○、△、□のスロットに装填、すぐにスイッチを入れて物質化(マテリアライズ)させ左足のホイールモジュールでノイズを轢きながらノイズの中を走り回り、左腕のジャイロモジュールで低空を飛び、再びホイールモジュールで地面を駆けるのを繰り返しながら右腕のマジックハンドモジュールで凪ぎ払い、ノイズ達を引っ掻き回す。

 

「はあぁぁぁぁぁっ!」

 

 同じくノイズの群れに突っ込んでいった響は背後からきた人型ノイズを裏拳で怯ませると、そこから肘打ちを当て炭に変え、正面からきた二体のノイズの内一体に正拳突きを繰り出し、息つく間も無くもう一体に回し蹴りをくらわせる。

 

「おぅらぁっ!割って、差す!」

 

【―Nマグネット―】

 

【―Sマグネット―】

 

 目の前にいたノイズを前蹴りで蹴り飛ばしたフォーゼは取り出したNSマグフォンを開いて両手に持つとマグフォンを二つに割って右手に【アストロスイッチ30・Nマグネットスイッチ】、左手に【アストロスイッチ31・Sマグネットスイッチ】をフォーゼドライバーの両端のスロットに装填させ、二つのスイッチを入れる。

 

【―N、S、マグネ~ット・オン―】

 

 二つのマグネットスイッチから頭部アーマーとキャノン砲を備えた肩と胸部アーマーが現れ、フォーゼの左右に半透明の巨大なU字磁石が現れるとフォーゼの身体を挟み込み、アーマーの装着が完了したフォーゼの砲撃形態。

 仮面ライダーフォーゼ・マグネットステイツ(以下:フォーゼMS)にステイツチェンジした!

 

「さらに!」

 

【―ランチャー・ガトリング・オン―】

 

「一斉掃射っ!」

 

 フォーゼドライバーの×スロットと△スロットに装填して物質化(マテリアライズ)したランチャーモジュールとガトリングモジュールと両肩の超電磁砲(レールガン)であるNSマグネットキャノンをドライバーに装填されたNとSのマグネットスイッチのトリガーを引いてミサイル、銃弾、超電磁砲(レールガン)が一斉放たれ、無数のノイズを次々と撃ち抜いていく。

 

 フォーゼMSと響が地上でノイズを次々と倒していくなか、空中から槍のように襲撃してくる複数の飛行型ノイズが二人の頭上から強襲してきたが、横から放たれた無数の銃弾が飛行型ノイズ達の体を撃墜させ、空中に炭に変えた。

 

「「っ!」」

 

「これで貸し借り無しだぁ!」

 

 放たれた銃弾の音で不意打ちを受けそうになった事に気付いた二人は銃弾が放たれた方を向くと、そこにはガトリング形態のアームドギアを構えたクリスが宙を舞いながら、先ほど助けられた借りは返したと言って他のノイズに向けて銃弾を放っていた。

 

「クリスちゃん……!」

 

「ありがとなっ!クリス!」

 

 二人は笑みを浮かべてクリスに礼を言って、再び構えノイズを倒していく。フォーゼMSと響が加わった事により先ほどより早い速度でノイズはを殲滅していく三人。残りは最初より数が減ったノイズとそれを生み出す要塞型が残っていた。

 

「よし、一気に決めるぞ!」

 

「はい!」

 

「あたしに指図すんな!」

 

 フォーゼMSが二人を鼓舞するとそれに元気よく響が答え、クリスがフォーゼMSに文句を言いながらも、両手のガトリングとリアスカートから展開したミサイルを撃ち放ち、空中にいる飛行型ノイズ達を全て撃ち墜としていく。

 クリスの後に続くように響が飛び上がり、一回転してから手動で限界まで引き上げた右腕のガントレットを地面に叩きつけると地面が崩壊しその衝撃で要塞型以外のノイズ達を炭に変えた。

 

 フォーゼMSはフォーゼドライバーのエンターレバーを引いて、両肩のNSマグネットキャノンが肩から分離して空中でU字磁石状に合体、自身の前方に待機させ最後の一体になった要塞型ノイズに狙いをつけ、フォーゼドライバーに装填されたNマグネットスイッチの後部のカバーを外し、カバー下のボタンを押してフォーゼMSの必殺技を放つ。その必殺技の名は……

 

ライダー超電磁ボンバーッ!!!!!

!!!!!」

 

 合体させたNSマグネットキャノンの両砲から赤と青の閃光を束ねた紫の光弾が放たれ、光弾が直撃した要塞型ノイズの巨体を赤と青の球体の力場に捕らえ、球体の内部に小型ブラックホールが発生され、要塞型ノイズの巨体がどんどん圧縮されていき、圧縮したエネルギーが臨界になり内部から爆発した!

 

 全てのノイズが大量の炭になって辺りを降り注ぐ中、響とフォーゼMSは翼が歌っているライブステージの方角を見上げて、彼女の歌を、夢を守る事が出来て笑みを浮かべていた。

 

 

◇◇◇

 

 

―アーティストフェス、ライブステージ―

 

 響と弦太郎がノイズを全て倒し終えた頃、ステージに立って自身の想いを込めた歌を歌い終え、ステージにいるファンから惜しみない拍手と歓声が沸き起こっていた。

 

「ありがとうみんな!今日は思いっきり歌を歌えて気持ちよかった!」

 

 翼が心からの感謝を伝えるとそれを聞いたファン達から再び歓声が沸き起こる。

 翼は一度深く呼吸してから、心から全力で歌ったおかげで忘れていた気持ちを思い出し、歌を歌いそれを聴いてくれる人達の前で歌うのが大好きだという気持ちをファン達に向かって告白した。

 そして、自身が国を越えて歌を歌わないかと誘われた事を静かに自身がそれを迷っていた事を伝えた。だが、翼は例え言葉が伝わらなくても、世界中の人達に自身の歌を聴いてもらいたいとそして自分の歌が誰かの為になると信じている事を告げる。

 

「たった一つのわがままだから、聞いて欲しい……許して欲しい……!」

 

 そう言った翼の頭の中に彼女の大切な片翼の姿が思い浮かぶ……。

 

「許して、欲しい……」

 

 悲しい表情で俯く彼女にいない筈の(大切な)人の声が彼女の目の前から聞こえた。

 

―許すさ、当たり前だろ……?―

 

「……えっ?」

 

 その声に驚いて顔をあげた瞬間、ステージ中からファンの励ます声が沸き起こる。翼はファンの励ましの声を聞きながら、大切な片翼の声を聞いた翼は涙を流しながら感謝の言葉を言った後、顔を上げて夜空を見上げ心の中でありがとうと伝えていた。

 

「(ありがとう……奏……)」

 

 

◇◇◇

 

 

『―《もう大丈夫みたいだな……》―』

 

 ライブステージの真上に広がる夜空に浮かんでいる赤い長髪の一人の女性がステージに立つ翼を優しい笑みを浮かべながら見下ろしていた。

 普通の人が空中に浮かぶのは普通ならあり得ない筈なのだが、よく見ると女性の身体は半透明だった。

 

『―《全く、最後まで心配かけてくれちゃって、おちおち死んでいられなかったよ、翼……》―』

 

 女性の名は【天羽 奏】。二年前にこのライブステージで命を落とした、翼の大切な片翼だった人だ。

 

 彼女は死んだ後、自分のせいで背負わせてしまった翼の事が心配で今日まで翼を見守ってきた。

 だが、二ヶ月前に自分が助けた少女が自分と同じガングニールの装者として、そして同時に生前耳にしてた都市伝説の存在である仮面ライダーが翼の前に現れたおかげで自分が知る優しい翼に戻ってくれた。

 そして今回の復帰ライブで歌う翼の姿を幽霊の特権で間近で彼女の歌を最後まで聴いていた。そして歌を歌い終えた翼の言葉を聞いた奏は悲しい表情で俯いている彼女の前に立ち、聞こえないとわかっていても自分の言葉を彼女に伝えた。

 奇跡かまたは偶然か奏の声が聞こえた翼が顔を上げたのを見て奏は驚いてしまったが軽く笑った後、身体を浮かび上がらせて、夜空広がる空まで上がり今に至る。

 

 奏は視線をライブステージから反対の方向を見つめると視線の先からガングニールを纏った響を背負って、ロケットモジュールで急いでライブステージに向かっている仮面ライダーフォーゼの姿が彼女の視界に入ってきた。

 

「ウオォォォォォォッ!?間に合えぇぇぇぇぇっ!!」

 

「急いでください、弦太郎さん!今ならまだ閉演前のトークまでには間に合う筈です!」

 

「おう!わかってる!しっかり掴まっていろよ!」

 

『―《……あはははっ!カッコいい事言った癖に締まらないな……!》―』

 

 幽霊の身体のおかげかまだ離れた距離にいる二人の姿と会話がに耳に入り、その内容を聴いた奏は死んでから久しぶりに心から笑いだした。

 

『―《ははは、はぁ……あんた達のおかげで翼はまた、再び羽ばたく事が出来たよ。ありがとな》―』

 

 ようやく笑いが治まると奏はライブステージに急いで向かってくるフォーゼと響に礼を言うと奏は消える前に彼女の横を通り過ぎるフォーゼに向けて最後の言葉を伝える。

 

『―《翼の事を頼んだよ……仮面ライダーフォーゼ》―』

 

「っ!」

 

「わわっ!ど、どうしましたっ?」

 

「……いや、わりぃ何でもない。急ごう!(……ああ、まかせろ)」

 

 突然、空中で方向転換したフォーゼに振り落とされそうになりつつもしがみついた響がフォーゼに質問すると、空中で滞空しながらフォーゼは自身の耳に聞こえた自分の名前を呼んだ女性の声に驚いていたが、何でもないと伝えるとフォーゼは胸の内で先ほどの声に答え、急いでライブステージに向かっていった。

 

 

――三人称視点、終了――

 




いかがでしたか?クロトダンです。
ちょっと話が急過ぎでしたね。

しかし、ようやくこの作品も佳境に入りました。アニメの一話を半分ずつ分けながら書いてきましたが、後少しであの友情のスイッチが登場させる事が出来ますね!

このままの勢いを忘れずに最終決戦までいきたいです!


それでは!


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14:繋、手、紡、心!

あれ?一万文字近く?マジで……?
区切ろうにも中途半端になるし、うーんよし!このままいきます!
そろそろ話も佳境にはいるので今回は少し駆け足気味です。


タイトルの意味は繋いだ手が紡いだ心。


青年は手を伸ばす、絆を掴んだその手を銀髪の少女に向けて……

撃槍の少女は手を握る、誰かと手を握る為に……


―郊外の屋敷前―

 

――三人称視点――

 

 

 街から離れた郊外にある屋敷の前で、数名の部下達を率いた弦十郎が、一連の事件の首謀者であるフィーネが潜伏している屋敷の前に立っていた。

 

「突入の準備が出来ました。いつでも動けます。司令、指示を」

 

 突入の準備をしていた部下の1人が突入の準備完了したと報告を受け、弦十郎は一度目を瞑り今回の事件の首謀者である彼女の姿を思い出していた……。

 

「(出来ればそうでないと心のどこかで願っている自分がいる。だが!これ以上罪を重ねる前に君を止めたい)……よし、いくぞ!」

 

「了解です!」

 

 弦十郎の合図と共に両開きの扉を開け、突入した部下達と共にが警戒して各部屋を確認しながら通路を進んでいく。しばらく奥に進んで行くと一つだけ他の部屋とは違う雰囲気の部屋が見えてきた。さらによく見ると扉が開いていたのが確認出来た。

 先に中に入ろうとする部下を止め、代わりに弦十郎が部屋の中に入ると恐らく彼女の研究室だと思われる部屋に入り、部屋の中には複数の武装した男達が事切れた姿で倒れており、さらに部屋の中心には彼が助けたかった少女―雪音 クリスが部屋に入ってきた弦十郎の顔を見て佇んでいた。

 

「違う……あたしじゃない!やったのは……!」

 

 後退りながら怯えた表情でこの惨状を否定するクリスだが、部屋に突入した部下に一瞬身構えたが、自分を無視して通り過ぎたのを見て、戸惑っている彼女に近付いた弦十郎は安心させる為にクリスの頭に手を乗せ、心配するなと声をかける。

 

「誰も君がやったと思ってない。全ては……君や俺達の側にいた、彼女の仕業だ……」

 

「え……?」

 

「(もう君を止める事が出来ないのか?了子……)」

 

 そう言って弦十郎は、部屋の惨状を引き起こしたこの場にはいないいつも笑顔で二課を元気つけてくれた櫻井 了子の顔を思い浮かべていた。

 

「風鳴司令……!」

 

 死体の一つを調べていた部下の1人が声をかけてきて、死体に張り付けてある【I LOVE YOU SAYONARA】と書かれた紙を取ろうと手を伸ばしていた。

 

「っ!?待て!触るな!」

 

 それを見て何かに気付いた弦十郎が制止の声を出すが時既に遅く、その紙を持ち上げた瞬間、全ての死体の真下から光が溢れ出すとそこから死体を押し退けて真下から、弦太郎の報告にあった八体の黒い忍者―ダスタード達が現れた!

 ダスタード達は突然の事で驚いている部下達に死体を投げ動きを止め、その隙に横を通り過ぎその先に立つ弦十郎達に狙いを定めて、その手に持った刃を振り翳してきた!

 

「っ!?(聖詠を……駄目だ間に合わない!)」

 

 目の前に迫ってきたダスタードを迎え撃とうと聖詠を唄おうとしたが、それの前に速く相手が刃を振り下ろそうとしたその時――。

 

「ハァッ!」

 

「なっ!?」

 

 振り下ろされる直前に弦十郎がクリスの前に出てきて、握り締めた拳を襲い掛かってきたダスタードの身体に叩き込み、その身体をボールのように突き飛ばし壁にめり込みダスタードは一瞬痙攣した後ガクリと首垂らし星屑を散らしながら消滅した。

 

「フンッ!ハァァァァァ……ハアァッ!!!」 

 

 次に弦十郎は飛ばしてきた手裏剣を視認すると気を纏わせた震脚で地面を捲らせて即席の盾にしてそれを防ぎ、気を込めて突き出した事で壁を砕き、即席の砲弾にして瓦礫を飛ばし三体のダスタード達の身体を穿き貫いた。

 

「む……っ!おおぉぉッ!フンッ!」

 

 残った四体のダスタード達は弦十郎の四方を囲み、弦十郎の動きを阻害しようとその手に持つ刀を振り上げ斬りかかってくる。だが、弦十郎はそれ避けるのではなく一歩踏み込んで、その内の一体に近付き、膝を軽く曲げて懐に入り込むと相手の胸に背中を当て、その大柄な身体から繰り出した鉄山靠で吹き飛ばし、次に左右から振り下ろしてきた刃を左右の二本の指で挟み、腕を振り上げ刀を奪い捨てると得物を失った二体のダスタードにそれぞれ拳と蹴りを喰らわせ地面に叩きつけ星屑を散り果てる。

 最後の一体のダスタードが繰り出してくる刃をかわして右手を手刀にして刃をへし折った。

 得物を折られた事に驚いていたダスタードに弦十郎はとどめの一撃を放ち、ダスタードの身体は奥の機材が乗った机がある場所まで吹き飛ばされた。

 このまま機材ごと巻き混んで倒れるかと思われたが、ダスタードは吹き飛ばされながら身体を捻って地面に着地したが、ダスタードの左腕が肩から弾けとび地面に倒れこんだ。恐らく拳をくらう直前に身体をずらし、直撃を避けたようだ。

 

「司令!ご無事ですか!?」

 

「ああ、問題ない。だが、油断するなまだ終わっては……何だとっ!?」

 

 残心を取った弦十郎に起き上がった部下の一人から声をかけられ目線を外さずに返事をするが、突如左腕を失くしたダスタードの残った右腕に握られた長方形の機械を握り締めているのを見て驚愕の声をあげる。弦十郎が阻止しようと動こうとするがダスタードはそれより早く赤いボタンを押し。次の瞬間、屋敷全体に爆発が起こり、その衝撃で屋敷の天井が崩れ落ち弦十郎達の上に落下した。

 

 

◇◇◇

 

 

 爆発により起きた煙が晴れると崩れ落ちた天井の一部を片腕で支え、落ちてくる瓦礫に当たらないようにクリスを抱き寄せた弦十郎が立っていた。一緒に崩落に巻き込まれた部下達もかすり傷を追ってはいたが立ち上がる姿が確認出来た。

 

「どうなってんだよ、こいつは……!?」

 

「安心しろ、衝撃は発勁で掻き消した」

 

「そうじゃねーよ!なんでギアを纏えないやつがあたしを護ったんだよ!?」

 

 弦十郎のずれた発言に突っ込みをして彼の腕から抜け出したクリスは、弦十郎から距離を取って睨み付ける。弦十郎は支えていた瓦礫を下ろすとクリスの質問に答える。

 

「俺がお前を護るのはギアのあるなしじゃなくて、お前より少しばかり大人だからだ」

 

「大人…?」

 

 その言葉を聞いたクリスは眉間を寄せ、その言葉を否定するように弦十郎に自分の気持ちをぶつけるように吐き出した。

 

「あたしは大人は嫌いだ!死んだパパとママも大っ嫌いだ!とんだ夢想家で臆病者!被災地で難民救済?歌で世界を平和にする……?大人が夢なんか見てるんじゃねーよッ!?」

 

「大人が夢を……ね」

 

「本当に戦争をなくしたいなら、戦う意思と力を持つ奴らを片っ端から片付ければいい!それが一番合理的で現実的だ!」

 

「……そいつがお前の流儀か?なら聞くが、そのやり方でお前は戦いをなくせたのか?」

 

「それは……」

 

 そう吐き捨てると話を聞いていた弦十郎からの言葉に戸惑うクリス。弦十郎は黙ったクリスに自身の考えを伝えようと口を開いた。

 

 ――弦十郎は語る。

 

 いい大人は夢を見ない。だが、大人だからこそ夢を見る。大人になれば背が伸び、力も強くなる。財布の中の小遣いも少しは増える。ただ夢を見るだけだった子供でも、大人になれば叶えるチャンスが大きくなり夢を見る意味が大きくなると……。クリスの両親はただ夢を見に戦場に向かったのでなく、自分達の信じる歌で世界を平和にするって夢を叶える為に自らの意思でこの世の地獄に足を踏み込んだんじゃないのか?とクリスに告げる。

 

「なんで、そんな事……?」

 

「お前に見せたかったんだろう……。夢は叶えられるという、揺るがない現実をな……」

 

 そう告げた彼の言葉を聞いて息を呑んだクリスに歩みよった弦十郎が彼女の前に立つと優しい言葉を告げてから優しく彼女を抱き締めた。

 

「お前は嫌いと吐き捨てたが……、お前の両親はきっと、お前を大切に思っていたんだろうな」

 

「うぐ、うあぁあぁぁぁ!」

 

 クリスは弦十郎の優しさと暖かさ、そして亡くなった両親の思いを受け、涙を流し今まで溜め込んでいた気持ちを吐き出すように泣き出した。

 

 

◇◇◇

 

 

――数時間後――

 

「カ・ディンギル……か」

 

 賢吾とユウキと一緒に帰っている途中、二課からの通信が入り、報告を聞いて通信を切った弦太郎が弦十郎が言った言葉を口に出していた。

 

「な~んか、凄そうな名前だね?天を衝く塔だっけ?検索しても関係ないゲームのサイトばっかり出てくるよ」

 

「ああ。だが、そんな塔が造られているなら耳に入るはずだ。一体どこに……?」

 

「うーん……そうか!わかったぜ!」

 

「何かわかったの、弦ちゃん?」

 

 カ・ディンギルについて頭を悩ませていると、腕を組んでいた弦太郎が何かわかったのか指を鳴らした。

 

「ああ。もしかしたら、カ・ディンギルって地面の下に建てられているんじゃないか?」

 

「いやいや、弦ちゃん。さすがにそんなデカイのだと地面の中でやったら周りが大騒ぎだよ?」

 

「あ、そっか!」

 

「全く、相変わらず君は面白い事を言うな……ん?」

 

 弦太郎の言葉に肩を竦めていた賢吾が何か引っ掛かったのか、顎に手を当て今まで手に入れた情報を整理する。

 

「(手を衝く塔、その名の通り天に届くほどの高さの塔が誰にも知られずに建てられるか?本当に弦太郎の言う通り地下に建造されていたとしても、噂ぐらいは耳に入る筈だ。いや、何か引っ掛かる。俺は何を見落としている?…………っ!?)……まさか」

 

「どうした賢吾?急に黙りこんで?何かわかったのか?」

 

 点と点が繋がってそれに気付いた賢吾が目を見開いているとその様子に気付いた弦太郎が声をかける。

 

「……そうだ。君が言った言葉のおかげでな。そして……フィーネの正体もな」

 

「ええっ!?」

 

「それはマジなのか賢吾!?」

 

「ああ、カ・ディンギルの場所。そして立花とアストロスイッチを狙っていた今回の事件の犯人、フィーネの正体は……」

 

 、賢吾の言葉を聞いて驚きを隠せずに賢吾に質問する二人に賢吾が答えようとした瞬間。

 

「「「っ!?」」」

 

 突然、街中にノイズが出現したのを告げるアラートが三人の耳に入る。

 

「―ピピッ!―はい、こちら弦太郎」

 

 ノイズの出現に身構えていると二課から通信が入る。内容は超大型の飛行型のノイズ6体が一度に出現、市民を襲わず真っ直ぐスカイタワーを目指して市街地の上を飛んでいるとの事を告げられる。

 

「わかった。すぐに現場に向かう。という訳だ。二人は直ぐにシェルターに向かってくれ」

 

「弦ちゃん……」

 

「心配すんなって、ユウキ。さっさと片づけてくるから安心しろ」

 

 通信を切ってこちらを見る二人に大丈夫と笑みを向けてから取り出したフォーゼドライバーを腰に巻いていると賢吾が声をかける。

 

「弦太郎。恐らく今回の出現は陽動の可能性がある。もしフィーネが仕掛けてくるなら、何かある筈だ。警戒しておいたほうがいい」

 

「賢吾……ああ、わかったぜ!」

 

 賢吾の言葉を聞いてサムズアップを出した後、フォーゼドライバーのトランスイッチを全て押し、変身ポーズを取り、カウントダウンが流れる。

 

 

 

 

 

 

「変身!」

 

 ドライバーのエンターレバーを引いて、蒸気と光に包まれると弦太郎は仮面ライダーフォーゼに変身が完了した。

 

「宇宙…………キタァァァァァッ!

 

 フォーゼが身体を屈めてから、両腕を上げて立ち上がりその叫びが太陽まで届いたあと、懐からオレンジ色のロケットのブースターが付いたスイッチ、【アストロスイッチSー1・ロケットスーパーワンスイッチ】を取り出し、それを握りしめ声をかけた後フォーゼドライバーに差し込んでスイッチを入れた。

 

「力を借りるぜ!ナデシコ!」

 

【―ロケットスーパー―】

 

【―ロケットオン―】

 

 その音声の後、フォーゼの両腕に二基のロケットモジュールが装着されると同時にボディカラーもロケットモジュールと同じオレンジ色に染まり、複眼も青に変化した姿。

 

 仮面ライダーフォーゼ・ロケットステイツ(以下:フォーゼRS)にステイツチェンジした!

 

「久しぶりのロケットキター!♪」

 

 フォーゼRSの姿を見てテンションが上がったユウキが両手を使って頭の上で合わせロケットの形にしながら声をだした。

 

「んじゃ、行ってくるぜ!フッ!」

 

 ロケットモジュールが装着された片腕を上げて二人に声をかけた後、両腕のロケットモジュールから炎を噴射させ、フォーゼRSは大空を高く飛び上がりノイズが向かうスカイタワーに向けて飛び立った。

 

 

◇◇◇

 

 

 フォーゼRSが現場に向けて飛行していると目的地であるスカイタワーに集まる6体の超大型飛行ノイズの姿を目視した。しかもよく見るとゆっくり旋回しながら超大型飛行ノイズの真下から無数のノイズが地上にばらまかれていた。

 

「これ以上好き勝手させるか!」

 

【―ロケットリミットブレイク―】

 

 それを見たフォーゼRSは左腕のロケットモジュールを一時解除して、ドライバーのエンターレバーを引いて左腕を空中に分解状態で留まっていたロケットモジュールを再装着し、ロケットモジュールを前後に腕を回す、加速して錐揉み回転をしながら超大型飛行ノイズに向けてキックを放つ、フォーゼRSの必殺技。その名は――。

 

ライダーきりもみクラッシャァァァーーッ!!!

 

 フォーゼRSの繰り出した必殺技が一体の超大型飛行ノイズの体を貫通し、その勢いのまま真下にばらまいていたノイズも撃破しながら地上に降り立ち、それと同時にもう一体の超大型飛行ノイズを撃破したガングニールを纏った響がフォーゼのちょうど後ろに着地した。

 

「弦太郎さん!」

 

「響か!ちょうどいいタイミングだな!」

 

「―Imyuteus amenohabakiri tron―」

 

【―蒼ノ一閃―】

 

 二人が話しているとちょうどバイクに乗っていた翼も現着し、バイクから飛び上がって蒼ノ一閃を放つが、空中にいる無数の飛行型ノイズを斬り裂きながら減衰され、超大型飛行ノイズに当たる直前に消滅するのを見て歯噛みする。

 

「相手に頭上を取られるのが、こうも立ち回りにくいとは!」

 

「なら、もう一度俺が空から攻撃をするぜ!」

 

「それなら私達もヘリを使って……ああっ!」

 

 響の声を聞いて視線を空中に向けると響を運んでくれたヘリが操縦席ごとノイズに撃墜され爆発した。それを見た翼はノイズに向けて剣を構えるが、飛行型ノイズが三人に襲いかかってくるが三人は飛び退いてそれを避ける。

 

「くっ!仕方ねー!」

 

 空中に飛び上がったフォーゼRSは自身に向かってくる飛行型ノイズを相手取りながら、もう一度ライダーきりもみクラッシャーを超大型飛行ノイズに繰り出し撃破したが間を開けず短時間に二度のリミットブレイクをしたことでロケットスーパーワンスイッチのコズミックエナジーが空になってしまい、ロケットステイツから通常のベースステイツに戻り地上に降り着地する。

 

「くそ、すまねぇナデシコ……!」

 

 コズミックエナジーが失くなったロケットスーパーワンスイッチを見て謝罪した後、懐に仕舞い、新たに襲いかかってくるノイズを迎撃しながら他の二人と合流する。

 

「弦太郎さん、さっきの姿は……!」

 

「すまねぇ、連続でリミットブレイクしたからコズミックエナジーが空になってしばらく使えない」

 

「そんな……」

 

「臆する二人とも、我々が後退ればそれだけ戦線が後退することだ」

 

「ああ、それはわかってるが……この数をだとスイッチが持つか……なんだッ!」

 

 三人が襲いかかる飛行型ノイズを迎撃しようと構えようとした直前、突如横から放たれた無数の銃弾が飛行型ノイズを撃ち落とした。それを見た三人は驚きを隠せずまさかと思い銃弾が放たれた方を向くとそこにいたのは、イチイバルを身に纏ったクリスが片手にガトリングを装着し、空いたもう片方の手に握りしめた弦十郎に渡された通信機を三人に見せつけるように突きだした。

 

「フンッ!コイツがピーチクパーチク喧しいから、ちょっと出張ってきただけだ。それに勘違いするなよ、あたしはお前らの助っ人になったつもりはねぇからなっ!」

 

『助っ人だ。少々到着が遅くなったがな』

 

「うぐ……っ!」

 

 握りしめた通信機から聞こえた弦十郎の言葉にクリスの顔が赤くなり、それを聞いた弦太郎と響は笑みを浮かべるクリスの顔を見る。

 

「助っ人?」

 

『そうだ。第二号聖遺物、イチイバルのシンフォギア装者、雪音 クリス君だ』

 

「クリスちゃーんっ!ありがとう、絶対わかりあえるって信じてたよ!」

 

「この馬鹿!?あたしの話を聞いてなかったのかよっ!?」

 

 それを聞き終わった響が感極まってクリスに抱き着き、抱き着かれたクリスはまた顔を赤くして響の顔を押し退け、引き剥がそうと苦戦する。

 

「さっきは助かったぜクリス!俺達と戦ってくれんだな!」

 

「はぁっ!?お前まで話聞いてなかったのかよっ!?馬鹿しかいないのか!」

 

「んんっ!とにかく!今は連携してノイズを!」

 

 抱き着かれているクリスにフォーゼが礼を言って嬉しそうに質問し、それを聞いて驚きの声をあげていると、気を取り直した翼が剣を構える。

 

「ふんっ、知るか。勝手にやらせてもらう。あたしの邪魔だけはすんなよ!」

 

「ええぇぇぇぇっ!?」

 

「お、おい!クリス!」

 

 フォーゼ達の声かけに目もくれず、ガトリング形態からボウガン形態に変形させたアームドギアを空にいる飛行型ノイズの群れに向けて撃ち放ち、次々と撃墜していく。

 

「ど、どうしましょう!?」

 

「とりあえず、空中のノイズはあの娘に任せて私達は地上のノイズを!如月さんは遊撃をお願いします!」

 

「わかった!」

 

「は、はい!」

 

 そう言って前に出て刃を振るう翼に続いて、二人も各々ノイズを撃破していく。翼がノイズの一体を斬り裂いて地上から跳び上がりビルの屋上に降り立つと先に屋上でノイズを攻撃していたクリスの背中にぶつかり、アームドギアを解いて攻撃をやめたクリスが翼に噛み付いた。

 

「何しやがる!すっこんでな!」

 

「貴女こそいい加減にして!一人で戦っているつもりなの?」

 

「あたしはいつだって一人だ!こちとら仲間になったつもりはこれっぽっちもねぇよ!」

 

「確かにあたしらが争う理由もない、かといって争わない理由もあるものかよ?こないだまで戦っていたんだぞ?そんな簡単に人と人が……ッ!?」

 

 突然手を握られたことに驚いたクリスは言葉を止め手を握ってきた響の顔を見る。

 

「出来るよ、誰とだって仲良くなれる」

 

「響の言う通りだ」

 

「あ……」

 

 そう言って響の隣に立ったフォーゼは翼の手を取り、それをみて目を丸くした翼はフォーゼの顔を見る。響は空いた片方の手をフォーゼが差し出した手を握り、目を瞑り二人に自身の想いを伝える。

 

「どうして私にはアームドギアがないんだろうって、ずっと思ってた。最初はいつまでも半人前だから焦っていたけど、今は思わない。何も握ってないこの手は誰かの手を握る為にあるから、こうして二人の手を握りあえることが出来る、弦太郎さんみたいに友達に、仲良くなれるってね!」

 

「立花……」

 

「なっ!この馬鹿に当てられたのかよ!?」

 

 響の想いを聞いた翼は握っていた剣を地面に突き刺して手を伸ばし、クリスの手を握り、それに驚いたクリスはその手を振り払って翼に質問する。

 

「そうだと思う。そして、きっと貴女も……」

 

「冗談だろ……!」

 

「本気だぜ、クリス?」

 

「お前……」

 

 顔を背けるクリスにフォーゼが彼女に近づき、声をかけ手を伸ばす。

 

「確かに俺達は最初は敵同士だった。でも、そんな俺達が今はこうして一緒に戦っている。けど、ぶつかりあったからこそ、そいつの心に触れる事が出来る!だから、俺達とダチになってくれクリス!」

 

「……なんだよそれ。めちゃくちゃじゃねーか。でも、悪くねぇな……!って、おい!何を?」

 

 フォーゼのめちゃくちゃな言葉に呆れていたが、不思議と悪い気がしない自分に気付いて、自然とニヤリと笑みを浮かべるとフォーゼの手を取って握りしめると、突然フォーゼが手を組み換えたフォーゼに驚くが、フォーゼは更に拳を三回ぶつけるフォーゼ(弦太郎)オリジナルの【友情の証】を交わした。

 

「これで俺達はダチだ!」

 

「……ふんっ」

 

 仮面越しでも感じる笑顔のフォーゼにクリスはそっぽを向くが、超大型飛行ノイズの影が四人を覆い被さり、四人は一斉に上空を見上げる。

 

「大元を仕留めないとキリがない……!」

 

「だったら、あたしに考えがある」

 

「何か手があるのか?」

 

 翼の呟きに答えるようにクリスが不適に笑う。彼女の言葉を聞いたフォーゼが質問する。

 

「イチイバルの特性は長射程広域攻撃。派手にぶっ放せる、あたしでなきゃ出来ないことだ」

 

「まさか、絶唱を……?」

 

「ばーか、あたしの命はそんなに安くねぇ」

 

「なら、どうやって?」

 

 響の問いにクリスは否定すると今度は翼が出した問いに答える。

 

「簡単な事だ。ギアの出力を上げつつも放出を抑える。行き場の無くなったエネルギーを臨界まで溜め込んで、一気に解き放つ」

 

「しかし、チャージ中は身動きが取れない危険過ぎる」

 

 クリスが出した案に翼が指摘するとそれを聞いたフォーゼが前に出て、三人に自分の考えを告げる。

 

「なら、俺達がクリスを護ればいいだろ?簡単じゃねーか」

 

「そうですね。私達がクリスちゃんには指一本も触れさせない!絶対にね!」

 

 フォーゼの言葉に賛同した響が両手を握って自信を持って言った後、三人はビルの屋上から飛び降り、ノイズがクリスに近づかないようにノイズの大群に向かっていく。

 

「ッ!……へっ!(頼んでもないことを……あたしも引き下がれないじゃねぇか!)」

 

 戦っている三人の背中を見たクリスはその気持ちを表すように胸に浮かんだ歌を唄う。

 

「やぁ!ハッ!(誰も繋ぎ、繋がる手を持っている!私の戦いは誰かと手を繋ぐこと!)」

 

 拳や蹴りを繰り出して、ノイズの体を打ち砕いていく響が。

 

「ふっ!セイッ!(砕いて壊すも束ねて使うも力。ふふっ!立花らしいアームドギアだ!)」

 

 剣を振るい、返す刀で刃を閃きノイズを両断する翼が。

 

「おらっ!ソラッ!(最初は出会いが最悪だった。けど、響が手を伸ばして握りしめたからこそ、今こうしてダチになれた!だから……)」

 

「「「託した!」」」

 

 右腕のクローモジュールで切り裂き、右足のチェーンソーモジュールでノイズの体を両断したフォーゼがギアの出力を上げているクリスの方を向いて、言葉を告げるとそれに答えるようにクリスが力を解放し、背部に四基の大型ミサイル、拡がったリアスカートから多数のミサイルポッドが、そして両腕にガトリング形態にしたアームドギアを同時展開し、上空のノイズに向ける。

 

【―MEGA DETH QUARTET―】

 

 自身の今の想いを込めて撃ち放ったMEGA DETH QUARTETが一斉に撃ち放たれた!

 撃ち放たれたガトリングの銃弾が手前にいる飛行型ノイズを撃ち墜とし、ミサイルポッドから放たれたマイクロミサイルが奥にいる飛行型ノイズに迫り、撃墜していく。最後に大型ミサイルが三体の超大型飛行ノイズに直撃にその全てが爆炎に包まれながら炭素に変わり墜ちていく。

 それと同時に翼が最後の人型ノイズの体に剣を突き刺し、空を見上げその光景に呟くとそれを聞いたクリスがニヤリと笑ってそれに答える。

 

「やった、のか……?」

 

「ったりめぇだ!」

 

 その言葉の後に倒したノイズだった黒い灰が街に降り注いだ事がそれの証明をしていた。

 

 

◇◇◇

 

 

「やった、やったぁ!クリスちゃーん!」

 

「うわぁ!?やめろ馬鹿!何しやがんだよ!?」

 

 屋上から地上に降りたクリスに響が喜びながら抱き着き、それに照れたクリスが引き剥がすと四人はギアと変身を解除して元の姿に戻ると響がもう一度クリスに抱き着いた。

 

「勝てたのはクリスちゃんのおかげだよ~!えへへ~♪」

 

「ああ、お前が来てくれたおかげだ。ありがとなクリス!」

 

 抱き着いた響を引き剥がし、頬が赤くなった顔を響に向けて口を開く。

 

「だ、だからやめろと言ってるだろうが!?いいか!お前達の仲間になった覚えはない。あたしはただ、フィーネと決着を着けて、やっと見つけた本当の夢を果たしたいだけだ!」

 

「それは本当か!」

 

「夢!クリスちゃんの!?どんな夢なの!聞かせてよ~!」

 

「うるさい馬鹿っ!そこのヘンテコ頭もお前も本当の馬鹿!?」

 

 クリスが夢を見つけたと聞いた弦太郎が自分の事のように喜び、響が笑顔で再び抱き着くがすぐに引き剥がして顔を更に赤くして、それを見られないように顔を下に向ける。その様子を見た三人は笑みを浮かべていると響の持つ通信機から通信が入った。

 

「はい?」

 

『響!学校が、リディアンがノイズに襲われて……―ブツッ―』

 

「未来!?どうしたの!?返事をして!そんな……!?」

 

 通話の途中で未来の通信が途切れ、響は親友の名前を呼ぶが通信機からは雑音が流れるだけだった。通信が繋がらない事に響がショックを受けていると、彼女の肩に弦太郎の手が置かれる。

 

「弦太郎さん、未来が……!」

 

「落ち着け響、話は聞いた。急いでリディアンに向かうぞ!」

 

 弦太郎の言葉を聞いた三人は頷いて、急いでリディアン音楽院に向けて駆け出して行った。

 

 

――三人称視点、終了――

 




話の都合上フォーゼRSが不遇になってしまいました。すみません。

ようやく弦太郎がクリスと和解出来ました。そして未来からリディアンが襲われたとの通信が!
そして次回から遂にフィーネとの決戦になります!
楽しみにしてください!


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15:魔、弓、絶、唱!

本当にお久しぶりです。
こんな作者の作品を待っていてくれた方、そうでない方お待たせしました。
約半年?一年?ぶりの作品投稿です。
久しぶりなので文面が変になっているかもしれませんので、見つけたら教えてください。



青年は叫ぶ、命をかけた少女の名前を――

魔弓の少女は夢を見つけた、両親の夢見た願いを――



――三人称視点――

 

――リディアン音楽院跡地――

 

 

 「これは!?」

 

 紅に染まった満月の夜。未来からの通信を受けた弦太郎達が駆け付けるとそこには、原型が残らないほど破壊にされたリディアン音楽院の光景が彼らの視界に入り、その光景に弦太郎達は言葉を失ってしまう。

 

「未来ぅぅぅぅーーっ!みんなぁぁぁぁーーっ!」

 

「おおぉぉーーいっ!誰かいないかぁぁぁぁーーっ!返事してくれぇぇーーっ!」

 

「リディアンが…………っ!」

 

 響と弦太郎が声を上げて呼び掛けるが誰からも返事が返らず、静寂に包まれた光景に翼が悲しい表情を浮かべていると、崩れた校舎だった物の上から物音が聞こえ上を見上げるとそこには白衣を羽織り、腹部から血の跡を着けた櫻井 了子が目下にいる弦太郎達を見下ろしていた。

 

「櫻井女史!」

 

「良かった!無事だったんだな了子さ―「これはお前の仕業か!フィーネっ!!」―なっ!?どういう事だクリスっ、了子さんがフィーネって……っ!?」

 

「あいつが……あの女がこんなクソッタレな事をした元凶!フィーネだっ!」

 

「フ、フフフ……ハッハッハッハッハッ!!」

 

 クリスの言った言葉に正解だと言わんばかりに櫻井了子は高笑いをあげる。その姿を見た翼が彼女に向けて声を挙げる。

 

「そうなのかっ?その笑いが、答えだと言うのか!?櫻井女史!!」

 

「ハッハッハッ……フッ」

 

 笑うのをやめると了子――いや、フィーネはかけていた眼鏡を取り、束ねていた髪をほどくと光に包まれ、光が収まると黄金に染まったネフシュタンの鎧をその身に付けた、【終末の巫女フィーネ】が彼女達の前に姿を現した。

 

 

 

◇◇

◇◇

◇◇

 

 

 場所は変わって、とある地下シェルター内。

 そこには数人の避難民が集まっていて、その中には弦太郎と別れた賢吾と結城と数ヶ月前に響が助けた親子の姿がそこにいた。

 

「くっ……!」

 

「大丈夫、賢吾君?」

 

「ああ、問題ない。そこまで酷い怪我でもないからな」

 

「すみません崩れた瓦礫から私達を庇って……」

 

「いや、あなたのせいではありません。幸いそれほど酷い怪我ではないので気にしないでください」

 

「ですが……」

 

「お兄ちゃん、痛そうだよ……」

 

 そう言った母親は視線を賢吾の頭部に向ける。その視線の先には自身のジャケットを引き裂いて即席の包帯として巻かれてあるが、額から流れる血によって真っ赤に染まっていた。頭部の怪我だけでなく泥や埃にまみれた服の下にも打撲や打ち身等であざだらけになっていた。

 二人がシェルターに向かう途中で崩れた瓦礫が目の前の親子の上に落下するのを見た結城が【危ない!】と声を挙げると賢吾が親子の元に駆け出し二人を突き飛ばす事で親子を瓦礫から守れたが、代わりに賢吾の身に瓦礫が降り注いだ。

 幸いにも打ち所がよかったのか軽症で済み、なんとか結城と母親の二人がかりで瓦礫を退かし、肩を借りながらシェルターに到着し結城に応急措置を受け今に至る。

 

「気にするな。これくらいの怪我、昔に受けたのと比べたらまだ軽いほうだ」

 

 泣きそうな顔をした少女の頭に手を乗せ、笑みを浮かべ心配をかけさせないよう声をかける。

 確かにゾディアーツと戦っていた天高の時と比べたら、本人からしたらまだ軽いほうだろう。

 

 少女を安心させた賢吾は手を戻すと持っていたフォーゼの顔のシールが着いた小さいアタッシュケース、アストロスイッチを収納とパワーダイザーやフォーゼと通信する機能や情報端末を持つ【アストロスイッチカバン】を開くと、端末の通信機能でフォーゼに連絡を取ろうとするがフィーネが都市一帯に流した妨害電波のせいでフォーゼと通信が繋がらず、思わず舌打ちをする。

 

「くそっ!弦太郎と繋がらない!コイツ(アストロスイッチカバン)の通信ができないほどの妨害電波が出ているのか!」

 

「そんな……あ!そういえば賢吾君。あの時言っていたフィーネの正体っていったい誰なの?」

 

「……そうだ。そいつは俺達が知っている人物、…………櫻井了子だ」

 

 結城の言葉を聞いた賢吾は隣の親子から少し離れてから声を抑えて、結城に聞こえるほどの声で口を開き、その人物の名を……櫻井了子の名前を口にする。

 

「え……?それって……!」

 

「ああ、まるで天高の時と同じだ。全ては彼女の筋書き通りに動いてるとしたら、弦太郎達が危険だ……!」

 

 結城が驚いて思わず手で口を押さえ、賢吾は苦虫を噛んだような表情を浮かべ、フォーゼと通信しようともう一度アストロスイッチカバンを操作をした。

 

 

◇◇

◇◇

◇◇

 

 

「嘘ですよね……?だって了子さんは私達を守ってくれました」

 

「あれは単純にデュランダルを守っただけだ。何せ、貴重な完全聖遺物だからな。お前達を守ったのはおまけだったんだよ」

 

「じゃあ、あんたがフィーネだってんなら……本当の了子さんはどうなったんだよ!」

 

「櫻井了子の肉体は先だって食い尽くされた。……いや、意識は12年前に死んだと言っていい」

 

 フィーネは語る。

 超先史文明期の巫女である【フィーネ】は遺伝子に己の意識を刻印し、自身の血を引く者が【アウフヴァッヘン波形】に接触した際にその身に【フィーネ】としての記憶、能力を全てその人物に引き継がれ、再起動する仕組みを施していた。

 現代科学を凌駕する先史文明期の科学技術。そして、12年前に翼が引き起こした第一号聖遺物【天羽々斬】の覚醒により、実験に立ち会った櫻井了子の内に眠る意識を目覚めさせた。

 

「その目覚めし意識こそが、【フィーネ()】なのだ」

 

「貴女が……了子さんを塗り潰して……」

 

「まるで、過去から甦る亡霊……!」

 

 フィーネの言った言葉に衝撃を受ける響と翼。その二人の反応を見たフィーネは気分を良くしたのか、さらに自身にまつわる事を口にした。

 

「【フィーネ】として覚醒したのは私一人ではない……歴史に記される偉人、英雄。世界中に散らばった私達はパラダイムシフトと呼ばれる技術の大きな転換期にいつも立ち会ってきた」

 

「っ!?……シンフォギアシステム!?」

 

「そのような玩具、為政者からコストを捻出するための副次品に過ぎぬ……」

 

 その言葉に気付いた翼の呟きにフィーネはつまらなそうに吐き捨てる。その態度に翼は激昂を胸に沸くのを感じながらも、それを抑えフィーネに問いをぶつける。

 

「お前の戯れに奏は命を散らせたのか!」

 

「アタシを拾ったり、アメリカの連中とつるんでいたのもそれが理由かよっ!?」

 

「そう!全てはカ・ディンギルの為!!」

 

 フィーネが叫んだ直後、突然巨大な塔が地面を砕きながらその姿を現した!フィーネは狂喜の笑みをこちらに向けた後、背後にそびえ立つカ・ディンギルをる仰ぎ見る。

 

「これこそが地より屹立し、天にも届く一撃を放つ【荷電粒子砲カ・ディンギル】!」

 

「荷電粒子砲!それで世界が一つになると言うのか!?」

 

 クリスが言った言葉にフィーネは自分の目的を口にした。

「今宵、月を穿つ!」

 

「月を!?」

 

「穿つだと!?」

 

 フィーネの目的を聞いた三人の装者達が驚愕する中、フォーゼ――弦太郎は驚きとは別の感情が生まれていた。

 

 その感情の名は――怒り。

 

 その言葉は弦太郎が、ライダー部のみんなからしたら絶対に許せない言葉をフィーネは口にしたからだ。

 

「……今、何て言ったあんた?月を穿つ?……ふざけんな!月は俺達(ライダー部)にとって、大切な思い出だ!何で月を壊す必要があるんだっ!!」

 

「ふんっ、貴様に月がどう関わってるか知らんが……私にとってはあのお方と阻む呪いの塊だっ!!」

 

「呪い、だって……っ?」

 

 フィーネの放った言葉にフォーゼは今度こそ驚愕の声をあげる。

 

 ――フィーネは語る。

 

 それは、かつて己の恋心を拒絶した【創造主】に会いたい一心の行動、創造主の隣に立とうと塔を建てようとした。だが、人が同じ高見に立つ事を赦さなかった【創造主】は塔に雷を落とし、更には人類に共通言語を阻む【バラルの呪詛】をかけた事を。

 

「月が何故、古来より不和の象徴とされてきたかわかるか……?それは、月こそがバラルの呪詛の源だからだ!人類の相互理解を阻むこの呪いを!月を破壊する事で解いてくれる!……そして、再び世界を一つに束ねるっ!!」

 

「それはお前が世界を支配すると言うのか!?安い……安さが爆発しすぎてる!」

 

「……ハァ。……永遠の時を生きる私を余人が止める事等あり得ない」

 

 先ほどとは違う冷めた表情で四人を見下ろすフィーネの前に弦太郎がフォーゼドライバーを片手に前に出る。

 

「だったら、俺達が……あんたを止めてやるぜっ!!

 

 その言葉の後にフォーゼドライバーを腰に装着すると同時に装着達もペンダントを握り共に変身と(聖詠を)口にした。

 

Balwisyall Nescell gungnir tron(3)

 

Imyuteus amenohabakiri tron(2)

 

Killter Ichaival tron(1)

 

「変身!」

 

 共にその言霊を言ったと同時に四人は戦いの装束に身に纏う。

 

「……なら、止めて見せろ仮面ライダー(人間)

 

 その言葉を合図に四人は一斉にフィーネに向けて飛びかかった!

 

 

◇◇

◇◇

◇◇

 

 

 再び場面は変わり、リディアンの地下シェルター内。

 そこでは響と未来のクラスメイトである板場弓美、寺島詩織、安藤創世が隠れていた。

 

「さっきの揺れ、なんだっただろ?」

 

「わかりません。ですが、扉が……」

  

 そう言って詩織が視線を出入口に向ける。その視線の先には瓦礫に埋もれた扉があった。

 先ほど地上で現れたカ・ディンギルが移動した振動の余波が地下シェルターにまで及び、その影響でいくつかのシェルターの扉が瓦礫事崩れてしまい、出ることが叶わなくなった。

 

「もういや!なんなのこれ!?アニメじゃないのに何でこんな事になるのよ!」

 

「弓美……」

 

 頭を抱えて涙を浮かべ叫ぶ弓美の言葉に詩織は悲しげ表情を浮かべ、彼女に寄り添い、落ち着かせようと背中を擦っていると突然出入口を塞いでた瓦礫が内側に倒れこんだ。

 

「キャアッ!なんなの!?」

 

「その声……板場さんなの!」

 

「え?この声って……」

 

 三人が声がした方に顔を向けるとそこには先ほど地上で別れたクラスメイトで友達の一人である小日向未来が出入口から姿を見せていた。

 

「ヒナ!」

 

「小日向さん!」

 

「よかった……みんな無事でよかった!」

 

 三人の無事な姿を見た未来が安堵の表情で喜んでいると後から端末を持った藤尭 朔也が先に入り、それに続いて負傷した弦十郎に肩を貸している友里 あおいと小川 慎二が入室する。

 藤尭が今いるシェルター内のシステムがまだ生きてると伝えると端末と繋げて、地上のカメラとリンクさせようと端末を操作する間に友里が弦十郎をシェルター内に置かれてる二段ベッドの下の段に座らせる。

 それを見守った小川は弦十郎に他のシェルターの様子を見に行くと伝え、この場から離れた。

 

「ヒナ、この人達は……?」

 

「あ、えっと……」

 

 創世が未来に突然友達と共に現れた弦十郎達について質問をし、未来がなんて説明するか口を開く前に弦十郎が彼女達に自分達の身元を明かした。

 

「俺達は特異災害対策機動部の者だ。今回の一連の事件の収束にあたっている」

 

「それって政府の……?」

 

「モニターと再接続完了……こちらから操作できそうです!」

 

 地上とリンクに成功した藤尭が声をあげてから、端末のモニターに地上の映像を映し出す。

 

「響!弦太郎さん!(それにあの時会ったクリスも……!)」

 

「これが……」

 

「……了子さん?」

 

「何よこれ……アニメじゃないんだから……!」

 

「それにあの白い人は……?」

 

 画面には、黄金のネフシュタンの鎧を身に纏ったフィーネに攻撃を仕掛ける三人のシンフォギア装者達と仮面ライダーフォーゼの姿が映し出されていた。

 

 

◇◇

◇◇

◇◇

 

 

「オラァッ!」

 

「くらえ!」

 

 ―ランチャー・オン―

 

【―MEGA DETH PARTY ―】

 

 フォーゼが右足に物質化(マテリアライズ)したランチャーモジュールとクリスのリアスカートから左右に展開して放たれた複数のミサイルがフィーネに向かうが、フィーネは冷静に水晶の鞭を振るい全てのミサイルを叩き落とし爆発させた。

 力押しは悪手と判断したクリスが隣に立つ翼に視線を送る。その視線の意味を感じ取った翼が頷いた後、フィーネに接近し剣のアームドギアを振り下ろすがフィーネは水晶の鞭を剣状に硬直させ、翼の剣を受け止めつばぜり合いになるが、剣状から元の鞭に変えて彼女の剣を絡めとり上に弾き飛ばした。

 

「くっ……、はあっ!」

 

【―逆羅刹―】

 

 得物を失った翼は慌てず、一度後ろに下がると両手を地面に付き逆立ちになり、刃が付いた両足を拡げて身体を回転させる技【逆羅刹】を繰り出した。

 だが、フィーネは余裕の表情で鞭を高速回転させる事で逆羅刹による攻撃を受け止める。

 

「うおおぉぉぉぉぉっ!」

 

「うりゃぁぁぁぁぁっ!」

 

 ―ハンマー・オン―

 

「何っ!?くっ!」

 

 その隙を左腕にハンマーモジュールを物質化(マテリアライズ)したフォーゼと響が同時に攻撃を仕掛ける。

 それに一瞬反応が遅れたフィーネは左腕の篭手で防御するが、二人分の衝撃を受け止めきれず地面が陥没し土煙が上がる。

 

「本命は……」

 

「……っ!?」

 

「こっちだ!」

 

 土煙がはれるとフィーネの視線の先には背部に二つの巨大ミサイルを展開したクリスがミサイルの一つをフィーネに狙いを定めていた!

 クリスがミサイルの一つをフィーネに向けて撃ち放つ!フィーネは空中に飛翔しミサイルの追撃をかわし続ける中、クリスが残った巨大ミサイルをエネルギーを溜めているカ・ディンギルに狙いを定める。

 

「ロックオンアクティブ!スナイプ……」

 

「っ!チィッ!!(やはりミサイル(これ)は囮か!)」

 

「デストロォォイッ!!」

 

させるかァァァァッ!!

 

 クリスの狙いに気付いたフィーネは身体をひねりながら、鞭を振るいカ・ディンギルに向かうミサイルを二つに斬り裂いた。

 

「もう一発は……っ!」

 

 ミサイルを斬り裂いたフィーネは自身を追撃をしていたもう一つのミサイルを探し、まさかと思い頭上を見上げるともう一つのミサイルの先端部に捕まったクリスが、天に向けて飛びたっている姿が視界に入った。

 

「クリスちゃん!?」

 

「何のつもりだ!?」

 

「おい、まさか……やめろクリス!」

 

 クリスの突然の行動に驚く響と翼とは別にクリスの目的に気付いたフォーゼがクリスに向けて制止の声をあげるが既に彼女の姿は成層圏にまで飛びたっていた。

 

「だが!足掻いたところで所詮は玩具!カ・ディンギルの発射を止める事など―――」

 

 【―Gatrandis babel ziggurat edenal―】

 

 ――瞬間、(命の唄)が戦場に響き渡った。

 

「この唄……まさか!?」

 

「絶唱……っ!?」

 

 クリスが唄う絶唱が聞こえた響と翼は驚愕の表情で空を見上げる。

 

 成層圏を越えたクリスはミサイルから飛び離れ、月をバックに腰のリアスカートを開きそこから複数の小さな八面体――リフレクターを展開させ、更に両手の篭手からハンドガンを形成すると両腕を交差させハンドガンの銃口から光弾を発射した。

 

【―Emustolronzen fine baral zizzl―】

 

 発射された光弾は周囲に展開させたリフレクターに反射し、更に別のリフレクターに反射し、更には別のリフレクターに反射を繰り返すと、反射された光が輝き一対の蝶の羽の形を形成した。

 

【―Gatrandis babel ziggurat edenal ―】

 

 交差した両腕を前に突きだし、両手の二丁のハンドガンが変形し、銃身が巨大なロングライフルになるとその二丁のロングライフルを並列にして合わせると一丁のバスターライフルになり、銃身にエネルギーが急速に貯まり始めた。

 

【―Emustolronzen fine el zizzl ―】

 

 最後の唄を唄い終えるとカ・ディンギルから破壊の光が放たれるのとバスターライフルから赤い光が放たれるのは同時だった。

 

「一点収束……!押し止めているだと!?」

 

 フィーネの言う通り、クリスはカ・ディンギルから放たれた光に絶唱のエネルギーを一点収束して放ったおかげでカ・ディンギルの光を押し止めている事に成功している。

 だが、それは一時的なものでしかない。

 絶唱でブーストしているとはいえカ・ディンギルのエネルギーの元になった完全聖遺物であるデュランダルの元々のエネルギー量が上の為、バスターライフルにひびが入り、次第に赤い光が押され始める……。

 

 

◇◇

◇◇

◇◇

 

 

 

 絶唱を唄い自身に向かってくる光に対し、クリスは眼を瞑り穏やかな表情を浮かべていた。

 

(ずっとアタシは……パパとママの事が、大好きだった。……だから、二人の夢を引き継ぐんだ……)

 

 カ・ディンギルの光がクリスに迫る中、クリスは口元に笑みを浮かべ涙を流していた……。

 

(パパとママの変わりに、歌で平和を掴んでみせる……アタシの歌は―――)

 

 瞬間、クリスの身体がカ・ディンギルの光に呑み込まれたのと彼女の中で両親と手を繋ぐ光景が思い浮かべたのは同時だった……。

 

(―――その為に……)

 

 

 

◇◇

◇◇

◇◇

 

 

「し損ねた……!僅かに逸らされたのかっ!?」

 

 完全には破壊されず、その一部だけを欠けさせただけの結果に驚愕の表情を出すフィーネ。

 

 そして、その代償に破壊の光を逸らした魔弓の少女は天から流星のように地上に墜ち、その光景を見ることしか出来なかった青年は仮面で隠された顔を悲痛の表情で魔弓の少女の名を呼び叫んだ。

 

 

「クリスゥゥゥゥゥッ!!」

 

 

 

 

 




今回の話で一番悩んだのはフィーネとの戦闘とカ・ディンギルを止めるシーンでした。
その為に半年以上も空けてしまいすみません。
次話はゆっくりと書いて投稿するつもりですので、またよろしくお願い致します。


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16 : 絶、刀、燃、翔!

お待たせしました。
区切りが悪くなったので分割しました。
 

青年は怒りを抱く、再び見る事しか出来ない己の不甲斐なさに……

絶刀の少女は高く飛ぶ、大切な片翼と共に……



 ―――カ・ディンギルによる月の破壊はかろうじて阻止された。

 

 ―――しかしその代償は彼らにとって、あまりにも大きかった……。

 

 

「クリスちゃん……せっかく、せっかく仲良くなれたのに……!もっと沢山話したかった……っ、話さないと喧嘩することも……今よりもっと仲良くなれることもできないんだよっ!」

 

 地面に手を着き、命を落としたクリスの為に涙を流す響。

 

「立花……」

 

「…………ばかやろう。世界を守っても……お前がいなくなったら守った意味ねーだろうが……っ!」

 

 泣き崩れた響を悲しげな表情で見つめる翼の隣に立つ仮面ライダーフォーゼは仮面の下で涙を流しながら、拳を握りしめ叫んでいた。

 

 だが、命をかけた彼女の行動を―――。

 

「自分を殺して月への直撃を阻止したか……ハッ!無駄な事を……見た夢も叶えられないとは、……とんだ茶番だな!」

 

 ―――フィーネは嘲笑した。

 

「あんた、何で笑ってんだ……?クリスの……クリスがやった事の何がおかしいんだっ!?」

 

「命を燃やして、大切なものを守り抜いた者の思いを……無駄だと笑ったのか!?」

 

 フィーネの言葉に怒りを抱き、フィーネに向けて今にも飛び出さんとした。だが―――

 

 

「……そレガ

 

 

 ――ゾクッ!――

 

 二人の背後から憎しみの声が聞こえた。

 

夢ト命ヲ握リシメタヤツノ、言ウ事カァァァァァッ!!?

 

「響!?」

 

「なっ!?」

 

 二人が背後を振り向くとそこには全身を漆黒に染まり、憎しみに支配された響だった一匹の獣が雄叫びをあげた姿だった。

 

「おい、立花……っ!?」

 

「これって、デュランダルを掴んだ時と……!?」

 

 変貌した響の姿に戸惑う翼とかつて輸送任務でデュランダルを掴んだ時と同じ姿に驚愕するフォーゼ。

 そして、変貌した彼女を見てフィーネは笑みを浮かべていた。

 

「融合したガングニールの欠片が暴走したか。制御で出来ない力に、やがて意識が本能に塗り固められていく」

 

――『響ちゃんの心臓にあるガングニールの欠片は前より体組織と融合してるみたいなの。驚異的な力と回復力はそのせいかもね』――

 

「「っ!?」」

 

 その言葉を聞いて翼と弦太郎は二課で聞いた言葉を思い出した。

 

「まさかお前……立花を使って実験を……っ?」

 

「実験を行っていたのは立花 響だけではない。見てみたいと思わないか?ガングニールに呑み込まれ獣として墜ちていくそいつの姿を……?」

 

 その言葉に二人は再び怒りを覚える。

 

「お前はそのつもりで立花を……っ!奏をっ!!」

 

「あんたは人をなんだと思ってんだっ!」

 

 フィーネに向けて叫ぶ二人の横を獣のように四つん這いになった響がフィーネに襲いかかった!

 

「立花っ!?」

 

「待て、響!」

 

「……ふっ」

 

【―ASGARD ―】

 

 二人の制止の声を耳に入らくなった響は地面を蹴って飛び上がり、空中からフィーネに向けて蹴りを突きだした。それをフィーネは表情を変えず鞭を網目状に束ねてバリアを展開、響の攻撃を防いだ。

 しかし、響は更に力を込めてバリアを破壊したと同時にフィーネに()を振り下ろしフィーネ諸とも地面を砕き、その衝撃に土煙が沸き起こった。

 

 土煙が晴れるとフォーゼと翼の視界に上半身が顔から左右に引き裂かれたフィーネの姿が映りこんだ。

 通常なら即死してもおかしくない状態だが、フィーネはこちらを見ている二人にギョロリと眼を合わせ笑みを浮かべた。その少し離れた場所で瓦礫を吹き飛ばした響が姿を現した。

 

「もうよせ、立花!これ以上……聖遺物の融合を促進させるだけだ!」

 

「翼の言う通りだ!人間に戻れなくなる、止まれ響っ!?」

 

グゥゥゥゥ……ガァァァァァァァッ!!!!

 

 二人の呼び掛けに答えない響は赤い瞳で二人を睨み付け、フィーネから標的を変えて仲間である二人に向けて襲いかかった。

 

「っ!?」

 

「くっ、すまねぇ響!」

 

 ―シールド・オン―

 

ガァァッ!!

 

 真っ先に翼に襲いかかった響に翼の前に出たフォーゼが起動したシールドモジュールで防ぎ、響に謝罪してから蹴り飛ばした。

 蹴り飛ばしされ地面を転がった響はゆっくりと立ち上がり、再び二人に襲いかかろうと姿勢を低くしていた。

 

 

◇◇

◇◇

◇◇

 

 

「どうしちゃったの響!?弦太郎さんと翼さんだよ!?目を覚まして!」

 

 地下シェルターで地上の様子を見ていた未来は暴走した響の様子に戸惑い、画面に映る彼女に声をかけるが――。

 

「もう、終わりだよ……私達……」

 

 ぽつりと弓美が諦めの言葉を呟いた。

 

「学院もメチャクチャになって……響もおかしくなって……」

 

 弓美の言葉に未来は反論しようと口を開く。

 

「終わってない、響だって弦太郎さんと一緒に私達を守ろうとして――」

 

「あれのどこが守ろうとしてる姿なの!?」

 

 未来の言葉を遮り、弓美がその言葉と共に画面に指を指す。画面には仲間であるフォーゼと翼に襲いかかる獣と化した響の姿が映っていた。

 

「私は響を信じる」

 

 だが、未来はそれでも信じると口にする。それを見た弓美は顔を俯かせて、涙を流して床に崩れ落ちる。

 

「私だって響を信じたいよ……!でも……でも……!」

 

「板場さん……」

 

「……もう嫌だよっ。死にたくないよ……誰か助けてよ……響ぃぃっ!?」

 

 だが、彼女が助けを求める者の耳には届かず、声だけがシェルター内に響き渡るだけだった……。

 

 

◇◇

◇◇

◇◇

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ……っ!」

 

「ぐっ!?もうやめろ、響……っ!これ以上は、お前が……苦しくなる、だけ……うあっ!?」

 

「如月……さん……」

 

 地面に突き立てたアームドギアを支えに、響の猛攻を受け、ボロボロの姿になった翼は、荒くなった息を整えながら自分の代わりに攻撃を受けているフォーゼに申し訳ない表情を向ける。

 

「フフフ……どうだ?立花響と刃を交えた感想は?」

 

 そんな彼女にフィーネが響に引き裂かれた筈の身体を巻き戻しのように身体を再生しながら煽るように声をかける。

 

「もはや、人の在り方すら捨て去ったか……!」

 

「私と融合したネフシュタンの再生能力だ。面白かろう?そして……」

 

 フィーネが視線を横に向けるとカ・ディンギルが再起動し再びエネルギーを溜め始めた。

 

「そんな……!?」

 

「そう驚くな。……カ・ディンギルがいかに最強最大の兵器だとしても、たった一撃を放つだけで終わってしまうのであれば兵器として欠陥品。必要が有る限り、何度でも撃ち放てる。……その為のエネルギー炉心には【不滅の刃】であるデュランダルを取り付けてある、……それは尽きる事のない無限の心臓である」

 

「だが、お前を倒せばカ・ディンギルを動かす者はいなくなる!」

 

グゥゥゥゥ……

 

 剣をフィーネに突きつけた翼の前にフォーゼの首を掴み、用はないと地面に落とした響が彼女の前に立ち塞がる。

 

「(すみません、如月さん……私を庇って……。立花を止めるにはもう、これしかない)……立花」

 

 目を瞑り、地面に倒れているフォーゼに胸の内に謝罪をし、響の動きを止めてカ・ディンギルを阻止する一つの方法を選択した翼は目を開き響に声をかける。

 

「私はカ・ディンギルを止める。だからお前も……」

 

ガァァァァァァァッ!!!!

 

 翼の言葉を最後まで聞きもしない響は伸ばした()を向け飛び出した。

 

「…………」

 

 翼は剣を地面に突き刺し、しっかりと彼女の姿を見つめその一撃を無防備に受け入れ鮮血が舞った。

 

「翼……っ!?」

 

「な……!?」

 

 地面に倒れたフォーゼが血を流した翼に驚愕の声をあげるが、それに構わず両腕を拡げ響を優しく抱きしめた。その行動に更に驚き、シェルターでその様子を観ていた未来達も驚愕し、フィーネもあまりの行動に言葉を失う。

 

「……この拳(これ)は、束ねて繋げる力の筈だろ?」

 

 血にまみれた響の腕を取った後、右腰のリアアーマーから短刀を手に取るとそれを響の影に向けて投げつけた。

 

【―影縫い―】

 

 翼は地面に突き刺した剣のアームドギアを引き抜き、動かなくなった響の横を通り過ぎ様に声をかける。

 

「立花……奏から継いだ力を、そんな風に使わないでくれ……」

 

 その言葉を聞いた響の赤い瞳から涙が流れていた。

 

「つ、ばさ……」

 

「如月さん……」

 

 地面から立ち上がったフォーゼが肩で息をしながら自身の横を通り過ぎようとした翼に声をかける。

 

「お前、まさか……」

 

「……すみません、如月さん」

 

 彼女のこれからやろうとしてる行動に気付いたフォーゼの言葉を遮り、翼は悲しい笑みを浮かべる。

 

「立花と……この世界を頼みます」

 

「身体が……っ!翼お前……!?」

 

【―影縫い―】

 

 翼を止めようと腕を伸ばそうとしたフォーゼが自身の身体が動かない事に驚き、翼が響と同じように自身に影縫いをしたと気付き、声をあげる。

 自身の名を叫ぶフォーゼの横を通り過ぎ、フィーネの前まで歩き立ち止まる。

 

「……待たせたな」

 

「どこまでも剣と生きるか……」

 

 フィーネはつまらなそうに翼をみる。翼は剣を強く握りしめ、自身の覚悟をフィーネに向ける。

 

「今日に折れて死んでも、明日に人として歌う為に……!風鳴 翼が歌うのは戦場ではないと知れ!」

 

「人の世界が、剣を受け入れる事など……ありはしないっ!!」

 

 フィーネが鞭を振るい翼に襲いかかるが、翼は地面を蹴って空中に飛び立つ。フィーネは今度は二本の鞭を操り、空中にいる翼を攻撃するが、翼は両脚部のブレードを展開する事で鞭を捌き、アームドギアを大剣に変形させ自身を襲う鞭に向けて【蒼ノ一閃】を放ち動きを止め、地面に降り立つ。

 フィーネはすぐに二本の鞭を振るい翼に襲いかかるが、翼は姿勢を低くする事でそれを回避し、一気にフィーネの懐に潜り込むと大剣を振るい、カ・ディンギルの方へ飛ばし壁に激突した!

 翼は畳み掛けるように地面を蹴って空高く飛ぶと通常形態にしたアームドギアを投げつけ、巨大剣に変形させライダーキックのように右足を突きだした。

 

【―天ノ逆鱗―】

 

「チィっ!!」

 

 フィーネは鞭を幾重に束ね、三枚のASGARDを展開、天ノ逆鱗ノ一撃を受け止めた。

 受け止められた天ノ逆鱗がテコの原理で徐々に垂直に上がり、垂直になると両腰のリアアーマーから双剣を引き抜くと同時に双剣に炎が纏い、炎の翼を羽ばたかせてカ・ディンギルに向けて飛び立った!

 

【―炎鳥極翔斬―】

 

「初めから狙いはカ・ディンギルかっ!!」

 

 翼です狙いに気付いたフィーネは二本の鞭を操り、飛翔する翼の跡を追跡し、叩き落とすことで飛翔を阻止された。

 

 

◇◇

◇◇

◇◇

 

 

 飛翔を阻止され、意識を失い、墜落しながら翼は諦めかけていた。

 

「やはり……私では……」

 

『何弱気になってんだい?』

 

「えっ?」

 

 弱気になっていた翼が眼を開くと、二年前に失った自身の大切な片翼である少女――天羽 奏が彼女の目の前にいた。

 

「奏……?」

 

『翼……』

 

 驚く翼に奏は笑みを浮かべて手を伸ばす。

 

『あたしとお前……両翼揃ったツヴァイウィングなら、どこまでも遠くに飛んでいける……だろ?』

 

「……ああ、そうだね、奏」

 

 それを見た翼も笑みを浮かべ奏の手を握りしめると彼女の意識が戻った。

 

 

◇◇

◇◇

◇◇

 

(そうだ……両翼揃ったツヴァイウィングなら!)

 

 閉じていた眼を開き、双剣に炎を纏わせ、姿勢を整えカ・ディンギルの壁を蹴り、再び空を高く、更に高く飛び立った!

 

 

「(どんなものでも、……越えてみせる!)立花ァァァァァァァッ!!!!」

 

 フィーネの追撃を鳥のように避け、赤い炎を蒼炎に染め上げ、まるで何度でも飛び立つ不死鳥となりカ・ディンギルに突撃した。

 カ・ディンギルから光が溢れ、溜めていたエネルギーが逆流が起こり、行き場がなくなったがエネルギーが臨界に到達、そして……。

 

 

 爆発。

 

 

 カ・ディンギルの近くにいたフィーネは爆発に呑み込まれ、身体が動けない響はただ涙を流す事しか出来ず、フォーゼも動かない自身の身体に怒りを抱き、仮面の下で涙を流して塔へ飛び立った彼女の名前を叫ぶ事しかできなかった……。

 

「翼ァァァァァァァッ!!?」

 




どうもクロトダンです。
イヤーこの作品を投稿して約二年も経ちました。
始めた時は最後までいくのかと不安でしたがよくここまでこれたなと思いました。
そして、無印編も残り二話となりました。皆様、最後までお付き合いください。


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