|ich liebe dich《イヒリーベディッヒ 》(相馬 七緒編) (nonoi)
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相馬 七緒編 キャラクター紹介&用語解説

現時点で本編に名前が登場しているメンバーです。
サブキャラクター欄は本編が進み、登場次第追記します。

また、サブキャラクター欄の下に専門用語解説欄を設けています。原作をプレイしていない人向けの簡単な説明です。私の個人的解釈で書いているので原作とのズレがあるかもしれませんが、ご了承下さい。
書いていない用語で質問があれば追記します。


○メインキャラクター

 

保科柊史(ホシナ シュウジ)

原作の主人公。勿論本作でも主人公。

人の感情を五感で感じる能力がある。例えば、心配されると酸味を感じたり、嫉妬の視線が本当に体を突き刺さるように感じたりする。

この能力の所為で過去に辛い思い出があり、それを悩みとしながらも解決を諦め、心に穴が空いていた。周りに流されるように死んだ魚の様な目で生きてきたが、寧々との邂逅を機にオカルト研究部に入部。その後は自然に笑える人生を目指し、オカ研の活動に精を出す。

周りに波風を立てない様生きてきたからか、性格は温厚。但し、人付き合いを避けてきた為か、度々デリカシーのない言動を見せる。

ストーリー現在は、恋愛関係に非常に敏感であり、「恋愛」というワードを聞くだけで以前の死んだ魚の様な目になる。

 

相馬七緒(ソウマ ナナオ)

本作のヒロイン。原作ではサブキャラ。

喫茶店Schwarz・Katze( シュバルツ・カッツェ)のオーナーであり、魔女としての寧々と契約を結ぶ、黒猫のアルプ。

アルプとして相当長い年月を生きている様で、人化も安定して維持できる。

性格は温厚だが、アルプのルールを重要視しており、ルールを侵す者には激情を見せる。過去にとある者がルールを侵した際には、正座をさせて長時間説教をした。

人としての感情をある程度理解している節がある。時折猫としての基準で話す時があるが、冗談とも取れる言い方をするので真偽は不明である。

オリジナルではあるが、本編では、七緒の人化の進行具合、又、原作では触れられなかった七緒の過去について触れて行く。

 

綾地寧々(アヤチ ネネ)

原作でのセンターヒロイン。

とある願いの為に七緒と契約し、魔女となる。

魔女となった代償に、所構わず発情してしまい、ナニしないと治らない体質を持つ。それがきっかけとなり、柊史と知り合うというのが原作ストーリーの始まり。

性格は温厚…を装っているが、実は天然でドジな子供っぽい性格。発情関係で柊史に痴態を見せては言い訳しながら墓穴を掘り、度々、光の無い瞳で闇堕ちするダウナー寧々が姿を見せる。

オカルト研究部で占いなどを行い、相談などを受け付け、相談者の悩みを解決する事で心の欠片を回収すると言うシステムを作り上げる。

しかし、ストーリー現在では『とある事情』により、欠片の回収には消極的。

 

因幡めぐる(イナバ メグル)

原作メインヒロインの1人。

柊史達とは1つ下の学年の女の子。

イメチェンして入学デビューしようとしたが、イメチェン勉強が原因で入学時に体調を崩し、いざ登校した時には人間関係が出来上がっていて孤立気味になる。柊史がオカ研に入部した数週間後にオカ研を訪れ、現状の改善を相談する。それを機にオカ研部室に入り浸り、入部に至った。

性格は人懐っこい性格で、思った事を口にしてしまう所為で柊史には一言余計な事を言ってしまったりするが、ちゃんと謝る事が出来る素直な子である。

無類のゲーム好きで、「モンスター狩人」と言うゲームを発売して間もない時期にソロで300時間程プレイしていた猛者である。

ストーリー現在では冬場の為、トレードマークのマフラーが本格的に仕事し始めるが、元々寒がりなのでそれでも少し足りない様だ。厚着をしたいと思いながらも「オシャレは我慢です!」と言いながら日々凍えている。

 

椎葉紬 (シイバ ツムギ)

原作ヒロインの1人。

親の都合で学院に転校してきた男装する魔女の女の子。

別に趣味で男装をしている訳では無く、魔女となった際の代償として、「女の子らしい格好が出来ない」と言う体質になってしまった所為である。

代償の影響で、ある程度女の子っぽい格好をすると胃の内容物をリバースしてしまう。

しかし本人としてはその体質が非常に不服であり、オカ研に入部してからはめぐると共に、どこまでなら許容範囲なのかを探るチキンレースじみた事をしている。

ストーリー現在では、恋愛相談に来る女の子達から向けられる「男子1人出て行ったけど君は…?」みたいな視線を浴びて「私は女の子だよーー!」と叫ぶのが部室の日常となっている。

 

戸隠憧子(トガクシ トウコ)

原作ヒロインの1人。

柊史達の先輩で、以前は生徒会長を務めていた。

任期中に果たせなかった寧々との約束を果たす為、ハロウィンパーティでは臨時部員としてオカ研に在籍していた。

整った顔立ちと落ち着いた物腰から男女共に好かれている。その反面、人をからかう事を好み、柊史をいじる事もしばしば。

ストーリー現在では、クリスマスを前に、恋に悩む女の子達を見たいが為に、オカ研OGを名乗りながら部室に入り浸る。最近現れない憧子を思いながら仕事をする越路さんが寂しがっているのはまた別の話。

 

○サブキャラクター

 

厚真沙耶子(アヅマ サヤコ)

憧子の隣のクラスの女の子

長年可愛がっていた愛犬が亡くなり、喪失感から心に穴が空きかけている程落ち込んでいる。

苦しむ愛犬の最期を前に、何も出来なかった自分を責めており、それも落ち込む原因となっている。

いつまでも落ち込む自分をなんとかしたいと思っており、相談に乗ってくれると言うオカ研の扉を叩く。落ち込んだ時はオカ研を訪れたり、寧々達に電話を掛けたりして、前を向こうと頑張っている。

 

仮屋和奏(カリヤ ワカナ)

ギターが趣味で、そのギターを買う為にシュバルツ・カッツェでバイトを始める。念願のギターを買った後も、七緒からの提案でバイトを継続し、ストーリー現在も続けている。

数少ない柊史の友人の1人であり、よく柊史海道と共に過ごす。

さっぱりしていて、非常に男らしい性格をしており、それが人付き合いの少ない柊史が女子である仮屋と仲良くやれる一因でもあるだろう。

 

海道(カイドウ)

ドMの変態。柊史の親友的ポジション。

良いキャラなんだけど本作では(多分)出ないので紹介は割愛。名前すら割愛。

1人ハブられてもきっと寂しそうにしながらも興奮している事だろう。

 

川上君

めぐるのクラスメイトの男子

同じくクラスメイト前田さんと付き合っており、初デートのプランで悩んでいた際、めぐるに半ば強引に連れられて相談者となる。

ストーリー現在ではクリスマスを前にロマンチックなデートプランを考える為に日々頭を悩ませている。

 

○専門用語解説

 

・魔女

願いを叶える為にアルプと契約した人の事。

男女問わず契約した人を魔女と呼び、生涯に一つだけ、魔法を使う事ができる。

但し、魔女となる時に代償と呼ばれるものがランダムで与えられ、その代償によって生じた感情がアルプへ契約代金として支払われる。

魔女は魔法を使うための魔力を自分で集めなければならない為、日々心の欠片を集める。

因みに、使う魔法によって使用する魔力量が違うので、魔女毎に集めなければいけない心の欠片の量が違う。

また、柊史は魔女ではないが、母親の魔法を一部受け継いでいる為、魔女となる事は出来ない。

 

・アルプ

アルプとは、元は動物で、強い感情に長時間晒される事で長命になり、その上で長い年月を重ねるとこの世の理以外が見えるようになり、人間の姿に変化できる存在になる。

魔女から心の欠片や代償を徴収するのは、人の感情を知り、姿だけではなく内面も人間になる為。

魔力が感情を元に得られるものである事も感情を知ろうとする一因である。

また、テレパシーなどの簡単な魔法は何度でも使える。

例えば、七緒が猫に戻る時は、人語を話せない為、テレパシーで話している。

 

・心の欠片

人は感情の起伏があると、その感情が肥大化する。その部分はその後も肥大化したままとなり、何かあった時に、その肥大化した感情が心のバランスを崩す要因となる。

例えば、何かを得て喜ぶ場合、喜びの感情が肥大化する。その状態でその何かを無くしたりすると、喜びが大きい分、落胆が激しくなる。

その肥大化した感情を魔女が壊す事で、心の欠片となり、持ち主から離れる。

元の持ち主は心のバランスを取れ、魔女は心の欠片を得られると言う、どちらにとっても良い結果となる。

 

・心の穴

人は悩みを抱えた時に、なんとか自分なりに解決するが、特定の悩みが無くならず、解決も出来なくて諦めてしまうと、心を蝕み、やがて穴が空く。悩み自体が解決するか、上手く飲み込んで前を向く事が出来れば、心の穴は修復される。

魔女の集めた心の欠片を使えば、応急処置にはなるが、解決しなければまた穴が空くと思われる。

 

 




※chapter1-②終了段階での登場人物一覧になります。
基本は柊史、七緒の事さえ分かれば支障はないかと思いますが、他のキャラクターについて詳しく知りたい場合は原作を是非プレイしてみて下さい。私などでは語り尽くせないくらい魅力の詰まったキャラクター達ですので。



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Prologue〜chapter①-1

小説書くのは初めてです!
拙い文章ですが頑張って書いていきますので、楽しんで頂けると幸いです!

文字数の都合上、プロローグと本編に少し入っています。

※注意
原作のストーリーを改変しながらのストーリーな為、ネタバレ要素を多分に含みます。また、筆者の解釈等も含まれるため、解釈違いや改変が苦手な方はご注意下さい


prologue

 

(ここは…どこだろう…?)

 

気が付くと、暗くて寒い、見知らぬ道路の真ん中で、微かに見覚えのある布に包まれて転がっていた。

ここがどこで自分が誰なのかも一向に思い出せないが、いつまでもこんな所に転がっているべきではないのは理解できる。

とはいえ。

 

(お腹が減って身体が動かない…)

 

多少這いずるくらいなら出来そうだが、布が絡まっていて上手く抜け出す事が出来ない。それに下手に布から出てしまえば、今度は寒さにやられてしまうだろう。

 

(いつまでこうしていればいいんだろう…)

 

このまま餓死するか、凍死するか。もしくは何者かに襲われるかも知れない。

動けないまま、半ば諦めの境地に入ったところで、こちらに歩いてくる人影を見つける。

敵か味方かは分からないがこれを逃すと次の機会はない気がする。なりふり構ってはいられない。

 

(助けて…)

 

精一杯声を出したつもりだったが、か細い弱った声だった。

 

(気づいて…)

 

残り少ない力を使い、もぞもぞと動いて存在を主張する。

 

(おねがい…きづいて…たす…け…て…)

 

最後の力を振り絞り、人影に向けて手を伸ばす。

 

「あら…?」

 

どうやらその人はこちらに気づいてくれたようだ。だが、意識が朦朧としていて視界も霞み、近づく人の表情もうまく読み取れない。

 

「あなた…大丈夫…?」

 

気遣う声に返す力ももう無い。伸ばした手も既に地に落ちている。

自分を見下ろすその人は、しばし何かを考え込んでいたようだが、唐突に自分を布で巻き、抱き上げ、走り出した。

 

「もう…後悔したくない!」

 

自分を優しく抱き、必死に走る様子を見るに、どうやら助けてくれるらしい。ああ、この人なら必ず助けてくれる。そう思える何かが確かに伝わってくる。

 

「大丈夫…!私が絶対に助けるから…!」

 

薄れゆく意識の中、最後に聞いた声は優しさに満ちていた。

 

 

chapter①-1

 

ハロウィンパーティを無事終えて、時は流れること1ヶ月とちょっと。期末試験も無事終えて、もうすぐ冬休みという時期である。

授業を終えて、いつも通りオカ研を目指す柊史だったが、その足取りは重かった。

 

「はぁ…また今日も恋愛相談かな…」

 

そう、ここ最近はクリスマスが近い事もあってか、恋愛相談ばかり来るのである。多い日には3人も。

まだ男性が来るなら柊史も気が楽だったが、来るのは軒並み女性だった。

それもそうだろう。オカ研メンバーは柊史を除くと、部長の寧々を筆頭に、めぐる、紬、後は自称OGの憧子という圧倒的女性率を誇るのである。

そうして連日、女性の恋愛相談が持ち込まれるオカ研部室に、柊史の居場所があるかといえば。

 

「そもそも恋愛経験の無い俺に男女のアレコレで話せる事なんて無いだろうし、需要はないだろうなぁ…」

 

という事で、最近のオカ研では柊史の肩身が大変狭いのである。

恋愛相談を始める前の「え、この人いつまでいるんだろう」みたいな視線を向けられる日々はなかなか辛いものだ。きつめの苦味を感じるくらいだから、依頼者達には割と本気で邪魔なのだろう。なのでここ数日は、恋愛相談者が来たら自主的に早退する様にしている。

とは言っても、今は部活開始と同時に相談者が来るので、部室に着くと同時に追い出されるので、最早部室に行く必要すら無いんじゃないかと思っている。

とはいえ一切顔を出さないのもなんだか悪い気がして、今日もこうして部室に来たわけなんだが。

コンコン、と部室のドアをノックすると中から寧々が現れた。

 

「あ、保科君。そろそろ来る頃だと思ってました。ですが、大変言いにくいのですが既に…」

 

苦笑しながら迎えてくれた寧々の背後には、既に今日の相談者であろう女性がいる。しかも寧々の様子を見るに、いつもの恋愛相談だとすぐ分かる。

 

「あーなるほど。なら悪いけど今日も綾地さん達に任せて退散するよ」

「すいません保科君…。もう少ししたら落ち着くとは思うんですが…」

「大丈夫だよ、気にしないで。いつも通り相馬さんの所にいるから、必要になったら呼んで」

「分かりました。ではこちらも終わったらそちらに顔を出しますね。七緒にもよろしく伝えておいて下さい」

「分かった。それじゃ恋愛相談、頑張って」

 

ここ数日繰り返される会話を終えて、申し訳無さそうにする寧々に見送られながら、柊史は部室を後にする。

 

「まぁ、下手に首突っ込むよりは良いんだろうけどさ…。なんだか除け者にされてる気分になるな…」

 

寧々達にそんなつもりはない事は十分分かっているが、少し寂しい気がするのも事実。

とはいえ、そんな事を気にしても何も始まらないので。

 

「今日は仮屋もバイト休みって言ってたし、相馬さんと話しながらゆっくりするか」

 

今日はどんな話をしようか。そんな事を考えながら、今日も今日とて相馬七緒の営む店に向かう柊史であった。




とりあえず触りの部分だけの投稿です

次回投稿予定は9月15日の夕方頃です。
文字数多くなったのでchapter1-②だけになります。


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chapter1-②

ようやく第2話が投稿できました…本当更新ペース遅くてすいません…
今回は主役2人だけの会話回なので少し長くなっちゃいました。
2人でまったり過ごすひと時をどうぞお楽しみ下さい

また、原作をプレイしていない人向けにキャラ紹介と用語解説も併せて投稿しましたので分からない用語やこの人誰?って言うのがあればそちらに目を通して頂けると多少は分かるかも知れないので是非ご覧下さいませ


chapter①-2

 

「こんにちはー」

 

カランコロンと、小気味良いを音を鳴らして、柊史がドアを潜ったのは、学院を出てしばらく歩いた所にある喫茶店「Schwarz・Katze(シュバルツ・カッツェ )」。

ドイツ語で「黒猫」を意味する名を冠するこの店は、外観内装共にとても落ち着いた雰囲気であり、オーナーの性格も相まってとてもゆったりと出来る空間となっている。

その上、出てくる飲み物は軒並み美味いし、食べ物も言わずもがな。特にパフェは、種類も豊富で、どれも味・見た目共に素晴らしい一品だ。

そんな、最近柊史のお気に入りとなりつつあるこの店のオーナーが。

 

「おや、保科君じゃないか。いらっしゃい」

 

この人、相馬 七緒である。

柊史の能力を知る数少ない人物の1人であり、魔女である寧々の契約相手でもある。

 

「今日は仮屋さんが休みだったからね。もうそんな時間になっていたとは思わなかったよ。今日は何にするんだい?」

「今日もブレンドでお願いします」

「最近はずっとブレンドだね。随分と気に入ってくれているようだが、飽きないのかい?」

 

そう言いながら柊史にカウンター席に座るよう促し、コーヒーを入れる準備を始める。

 

「相馬さんのブレンド、好きなんですよ。お世辞抜きで美味しいですから。ずっと飲んでいられます」

 

そう言うと、七緒は一瞬、意表を突かれたような表情をしたが。

 

「そ、そうか。お気に召してくれたなら何よりだよ」

 

すぐ誤魔化すように顔を背けてブレンドを入れ始める。だが、背けた顔から覗く口元が緩んでいるのを、柊史は見逃さない。

そう、七緒は自分の作った物を褒められると、嬉しそうにするのだ。他のお客さんがボソッと「美味しい」と呟く時もしっかり聞き取って嬉しそうにしている。

しかし、柊史は知っている。最近気づいた事だが、七緒はただのお客からの感想は喜ぶだけだが、身内から面と向かって褒められると、照れるのだ。能力を通して甘味が伝わってくるので、本気で照れていると思われる。

これに気づいた柊史は、滅多に感情を露わにしない七緒をからかう事を(とは言っても本心だが)マイブームにしつつあるのだが。

 

「褒められるのは嬉しいが、そうやって私をからかうのは感心しないよ。私だって怒るんだよ?」

 

と、言いながら七緒はカップを配膳する。

 

「あ、バレてましたか。すいませんでした」

 

柊史は平謝りしながら、出されたコーヒーを1口飲んで続ける。

 

「でも言ってる事は本心ですから許して下さい。本当、美味しいです」

「分かったよ。そう何度も言わなくても、保科君が美味しそうに飲んでくれているのを見たら伝わるさ」

 

七緒はそう言って少し呆れながら、カウンターの向こうに戻る。

 

「でも相馬さんが怒る所なんて見た事ないですけど、相馬さんでも怒る事なんてあるんですか?」

「保科君は忘れてるかも知れないが、これでも私は猫だよ?猫なんてのは大概気性が荒いものさ。例に漏れず、私もね。私が野生の猫より多少理性的に見えるのは、アルプとして色んな感情を学んできたからだよ」

「あーそう言えばそうでしたね。相馬さんの猫姿なんて随分前に一度見たきりですから、忘れてました」

 

そう。会話にある通り、相馬七緒は猫のアルプなのだ。店の名前が指す通り、黒猫のアルプ。

寧々の契約者にして、完全なる人間となる為に、心の欠片という形で人の感情を集め、学ぶアルプなのである。

 

「でも、相馬さんはもう殆ど人間と言っても過言じゃ無いくらい人間らしいですよ。こうやって普通に会話しても、猫だなんて忘れるくらいには」

「嬉しい事を言ってくれるが、私にだってまだまだ分からない感情があるよ。例えば、恋愛感情とかね」

 

と、気軽に言った七緒の言葉を聞いた途端、柊史の目が虚ろになる。それはもう以前の死んだ魚の目と言われた頃のように。

 

「恋愛感情…そうですね…俺も分かりませんよ…恋愛なんて今までした事ないですから…そりゃ戦力外にもなりますよ…はは…」

「あーいや、すまない。今の保科君に『恋愛』は禁句だったな…私が悪かった。謝るからそんな寧々みたいな眼をするのはやめてくれ」

 

まるでダウナー寧々の様な柊史の落ち込み方に、流石の七緒も慌てて慰める。

 

「俺だって男が来てくれたら力になりますよ。いやまぁ、恋愛経験ないんでそこまで役に立たないとは思いますけど、それでも多少できる事はあると思うんです」

「しかし、来るのは女子ばかり、という話だったね。でも本当に1人も男子は来ないのかい?1人くらい来ていても良さそうなものだが」

「いえ、全く。今まで男子の恋愛相談者なんて、1人しか来たことありませんよ。因幡さんが半ば強引に連れてきた川上君という一年生だけです」

「ああ、以前話していた、初デートのプランが云々という話の彼か。心の欠片が回収できるくらいの不安を抱えていたんだったか」

「そうです。解決した後の喜びようと言ったらもう、彼に向けて隕石が落ちてこないものかと思ったくらいでしたよ。…あれ、でもよく考えたらあの時も因幡さん達にダメ出しされただけであんまり役に立ってなかったな…あれ、もしかして男子が来ても俺って要らないんじゃ…」

 

ぶつぶつと呟きながら1人で勝手に沈んでゆく保科柊史。目は光を失い、最早どこを見ているかも分からない。

柊史の落ち込み様に、見兼ねた七緒は強引に話を変えることにする。

 

「そ、そういえば保科君。相談者といえばあの子はどうなんだい?厚真さんだったかな?最近では珍しい普通の相談者なのだろう?」

「ああ、厚真先輩ですか。そうですね、恋愛ではない普通の…とは言っても彼女は少し深刻な話ですけどね」

 

恋愛関係の話じゃ無くなると、途端に柊史の目に光が戻る。最早恋愛についての事で、心に穴が空いてるのではなかろうかと七緒が疑うくらいに。

 

「愛犬を亡くした…だったかな。寧々から少し話を聞いた限りでは、心のバランスが大いに崩れているようだな」

「はい。心に穴が空きかけているかも知れないので、どうしても他人事とは思えなくて…カウンセリングの様な形になりますけど、落ち着くまではみんなで話を聞いてあげようかと思ってます」

「そうしてあげるといい。話しているうちに自分の中で整理がついて、心も時期にバランスを取り戻すだろうからね」

「分かりました。心の欠片は取れそうにありませんけど、やっぱり心の穴と聞くと見過ごせませんからね。頑張ります。あ、でもそう言えばここ数日は調子が良さそうでしたよ」

「そうなのかい?何か立ち直るきっかけでもあったのかな」

「どうやら仔犬を拾ったそうで、その子のお世話で連日大変みたいです。大変と言う割には笑いながらとても生き生きしていましたけどね」

「別の生きがいを見つけたならいい事だよ。いつまでも落ち込んでいるよりは、そうやって哀しみを乗り越えられる方が、愛犬だって浮かばれるだろう」

「そうですね」

 

柊史は頷きながらカップに手を伸ばすが、いつの間にやら飲み干していたようで、既にカップは空だった。

それに気づいた七緒は2杯目のコーヒーを注いでくれる。

 

「とはいえ、心のバランスを崩すくらいの喪失感か…逆に言えば、その愛犬とやらは随分愛されていたんだね。同じ動物としては羨ましい限りだよ」

「ええ、少し話を聞いただけでもとても可愛がっていたのが分かりました。そんな人に看取られて逝ったなら、犬も幸せだったでしょうね」

「そこまでの愛情を注がれていたならば、アルプに成る可能性もあったかも知れないな…亡くなってしまった今、そんな事を言っても仕方がないけれどね…」

「アルプに成る…愛情を注ぐとアルプに成れるものなんですか?」

「そんな簡単な話ではないよ。愛情を注ぐだけで成れるならこの世の飼われている動物は皆アルプに成っているだろうさ。アルプというのはね、長年強い感情に晒されると成る可能性があるんだ。それがプラスであれ、マイナスであれね。だから単に愛情と言っても厚真さん程の強く、深いものでなければ可能性すらないんだよ」

「なるほど。アルプにとっては人の感情が魔力になるから、長い間強い魔力を身近に感じる事で、自分の魔力として吸収し、扱えるようになる…とかそんな感じですか」

「まぁ大まかに言うとそんなところかな。前段階として長命になる、という段階があって、その後にこの世の理以外のものが見えるようになり、ようやく人化の術が使えるようになるんだ。人化が出来るようになって、初めてアルプの一員という訳だね」

「アルプに成るとは簡単に言っても、その間には色々あるんですね。相馬さんも当然その道を歩んできた訳で…ってあれ、そういえば相馬さんって綾地さんと契約する前からここに居るんですか?」

「そうだね。アルプとして活動し始めた頃にはこの辺りにいたよ。人化が安定するようになってからこの店を構えたんだ」

「じゃあそれ以前はどうしてたんですか?相馬さんの昔の話って聞いた事無かったですよね?」

 

柊史はふと気になった事を七緒に聞いてみる。

それを聞かれた七緒は意表を突かれたような驚いた顔をした。

 

「アルプに成る前…それは…」

 

七緒は過去を振り返るように目を瞑り、しばらく考え込んでいたが。

 

「いや、もう覚えていないな。なにせ随分昔の事だからね。というか保科君。女の過去を詮索するのはあまり褒められた事ではないよ。覚えておくといい」

 

と、笑って誤魔化されてしまった。

その後、七緒は話を変えてしまった為、この時柊史がその先を聞く事は出来なかったが、この不思議な雰囲気の女性がどのように生まれたのか、そしてどのように生きてきたのか。それが気になってその後の会話に集中出来なくなった柊史なのであった。




相馬さんの過去は完全オリジナルなので今後描かれていくお話をお楽しみに…

会話が連続していて、話す人たちの描写が少ないという書き方はもしかしたら読み辛いかも知れません。徐々に人物描写も増やしていけたらとは思っていますので今はまだこのままで行かせて下さい…
独特の作風としてご理解頂ければと…

2020.3.2
この後のストーリーとの兼ね合いで、部分的に改稿しました。
厚真さん関連が大部分となります。
その他は言い回しを変えてあるだけで特にストーリーに変更はありません。


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chapter1-③

投稿が遅れて本っっっっ当に申し訳ありませんでした!
復帰予告をしたにも関わらず1ヶ月以上の無言延期は言い訳の余地なく私の不徳の致すところでございます。
それでも読んで頂けるのならば、楽しんで頂ける事を祈っております。
それでは長くなりましたが、本編をどうぞ。


「なぁ、仮屋は相馬さんの昔話とか聞いた事あるか?」

「なにさ保科、急になんの話?」

 

七緒とアルプについての話をした次の日、昼食後に教室に帰る途中、海道がお手洗いに行ったタイミングで柊史は和奏に質問を投げかけた。

 

「相馬さんの過去の事だよ。バイトしてて世間話とかしてる時に話したりしない?」

「オーナーの昔話ねぇ…あんまり聞いた事ないけど…というかなんであたしに聞くのさ?そういう話なら綾地さんに聞くか、それこそ保科なら直接聞けば話してくれるんじゃないの?」

「昨日相馬さんに聞いたけどはぐらかされたんだよ。でも誤魔化されると余計に気になっちゃってさ。仮屋ならバイト中に聞いた事とかあるんじゃないかと思って。綾地さんとは最近、落ち着いて話せるタイミング無いし」

 

昨日の今日という事もあるが、教室で寧々と話すと男連中からの視線が痛いし、今の部室には柊史の居場所が無いので、現在寧々と話すのは柊史にとって、少々ハードルが高い状況となっている。

 

「まぁそれもそうか。綾地さん達は今、部活関係で大変だもんねぇ」

「それは暗に俺が役に立たなくて戦力にならないからみんなが大変だと言ってるのか?そうですよ、オカ研の役立たず男子部員とは俺の事ですよ?はは」

 

そう言って例の発作を起こす柊史。最早、和奏にとっては見飽きた光景だ。

 

「ああもーそういう意味で言ったんじゃないよ。自分で地雷踏んで傷付くのホントやめな?そんなに自傷行為続けてたらそのうち癖になって海道みたいなドMになっちゃうよ?」

「…それは嫌だな。本気で嫌だ。ドMは海道だけで十分だ」

 

トイレに行っている間に貶されて人知れずくしゃみをしている海道。流石に言葉のナイフは届かず、ご褒美には至らない模様。

そんな事は置いておいて。

 

「というか、オーナー本人がはぐらかした事を他の人に聞くもんじゃないよ。そういう事はもし知ってたとしてもあたしの口からは言えないよ?綾地さんだってきっと同じだね。女性の過去は詮索しちゃいけないもんだ」

「それも相馬さんに言われたな。やっぱり仮屋もそういうのは聞かれたくないもんなのか?」

「はぁ…この流れで息をする様に聞いてくるから保科はデリカシーがないって言われるのさ。あたしはまだ詮索される程の過去を持ち合わせちゃいないよ。それに…」

 

少し間を置いて、和奏は言い放った。

 

「仮にあったとしても…。保科には、言わない」

 

そう言って顔に少し影を落とす和奏に、それ以上踏み込めなくなった柊史。

数少ない友人である和奏が、この若さで一体何を抱えているのか。いつか力になれる日は来るのだろうか。そう思わざるを得ない柊史であった。

 

閑話休題。

 

未だにトイレから戻らない海道を忘れ去って、教室に戻った柊史と和奏。昼休みはまだ少し残っている。

 

「オーナーの過去の話だけどさ、そもそも保科が聞けないなら誰にも聞けないと思うんだよね。綾地さん以外はって事になるけど」

 

和奏は空いていた柊史の前の席に座って話かけてきた。どうやらもう少し相談に付き合ってくれるらしい。

 

「なんでそう思うんだ?他にもいるんじゃないのか?」

「だって、あそこでバイトし始めて結構経つけど、オーナーがあそこまで気安く話してるお客さんなんて、保科以外では常連客でも見た事ないよ?電話とかでも事務的な会話しかしてないし」

「そうなのか?あんなに話しやすい人中々いないぞ?仮屋が知らないだけで案外いるんじゃないのか?」

 

そう言われて和奏はなんとか思い出す様なそぶりをするが少しして顔を横に振る。

 

「うーん…やっぱりいないかな。ほら、オーナーって美人じゃない?だから偶に言い寄ってくる人とかもいるんだよ。でも綺麗にあしらって殆ど会話にもならないんだよね。そんな感じで他のお客さんともあんまり会話しないから、保科みたいに話してるのはかなり珍しいんだよ」

「そうか。俺だけなのか…」

 

バイトをしていてあの店の実情をよく知る和奏からそう聞くと、なんだか自分だけが特別なんじゃないか、もしかして七緒は自分の事を…なんて淡い期待してしまう柊史。

 

「まぁどんな事考えてるのかは大体分かるけどさー。自意識過剰も大概にしなよ?過度な妄想は身を滅ぼすよ?」

 

そんな柊史の想像をいとも簡単に読み取る和奏。やはりエスパーなんじゃないかと思ってしまう柊史は驚きを隠せない。

 

「あのねー、保科や海道が考えそうな事なんて簡単に想像出来るっての。大体あんた達はーーー」

 

何やら仮屋先生のお説教が始まってしまい、早く帰ってこい海道と、思いながらありがたーいお言葉を粛々と聴いていた柊史の元へ、教室に駆け込んできた寧々が一目散にやってきた。後ろからは紬も追いかけて来る。

如何にも焦りを隠せない寧々を見て、驚く和奏と柊史。周りのクラスメイトも何事かとざわつき始める。

 

「お話のところ申し訳ありません!緊急の用事で今日は早退させて貰います!先生には体調不良とでも断っておいて下さい!オカ研の方も今日は休止という事でお願いします!それでは!」

 

用件を一息で伝えた後、踵を返した寧々は、自分の荷物を持って廊下へ飛び出して行った。

普段冷静な寧々があそこまで取り乱している様を見て、呆気にとられる柊史。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ綾地さーん!ごめんね、保科くん!アカギから連絡があって急いで相馬さんの所に行かなきゃいけないんだ!本当は呼ばれたのは綾地さんだけなんだけど、心配だから私も行ってくる!」

 

寧々より少し丁寧に説明した紬は、寧々同様に荷物を取りに席に戻る。

柊史は慌てて紬を追い、小さめの声で問いかける。

 

「魔女関連の事なんだよね。だったら俺も行った方が…」

「ごめんね。保科君は絶対連れてきちゃダメって言われたんだ。あと、今日は寄り道せずに帰れってアカギが。後でちゃんと事情は説明するから今回は待っててくれないかな」

 

柊史が言い切る前に食い気味で返す紬。本気で申し訳なさそうな表情をする紬を前に、柊史は言葉を詰まらせる。

 

「あーそれと、仮屋さんに今日のバイトはお休みだって伝えておいてくれるかな。それじゃあ私も行ってくるね!」

「…分かった。椎葉さんも気をつけて…」

 

柊史が言い切る前に、紬は寧々を追いかけて教室を飛び出した。

事情を把握できないクラスメイトが一体何事かと騒ぎ始める中、柊史は寧々の慌て方、紬の話から何があったのかを何となく把握してしまう。恐らく七緒に何かがあったのではないだろうか。それもとても重大な何かが。

 

(相馬さんが怪我でもした…?それとも風邪?それで綾地さん達があそこまで慌てるか?それとも…)

 

嫌な想像ばかりしてしまう柊史。七緒が心配で今すぐにでも寧々達を追いかけたい衝動に駆られる。しかし紬の話によれば柊史は来て欲しく無いらしい。

 

(それに行ったとして何か出来るのか?それどころか邪魔をしてしまうんじゃ…)

 

「なーに1人で考え込んでんのさ保科!」

 

そんな声と共に背中を叩かれて我に帰った柊史が振り向くと柊史を気遣うように笑う和奏がいた。

 

「仮屋…」

「何があったか分かんないけどさ、多分オーナーになにかあったんでしょ?保科は行かなくていいの?」

「椎葉さんが言うには、絶対に来るなって言ってたらしくて…」

「それでも保科はオーナーが心配なんでしょ?ほら、先生にはアタシから言っておくから保科も…」

「でも、俺が行ったところで役に立てるか分からないし、寧ろ邪魔だから来るなって言われてるんじゃないかなって…」

 

ぐだくだと言い訳を続けながら項垂れていく柊史を見て和奏は…

 

「あーもううだうだうっさーい!」

 

柊史にケツキックを決めた。

それはもう綺麗なケツキックを。

スパーンとか小気味のいい音がするくらいの。

唐突過ぎて声も出ないまま崩れ落ちる柊史。痛過ぎてちょっと涙が出ている。

ざわつく教室が一瞬で静かになる程の強烈な一発だった。

 

「ちょっ…いった…えっかりやなにしてっ…」

 

呻きながら見上げると仮屋は腕を組んで仁王立ちして柊史を見下ろしていた。完全に切れている。

 

「結局保科は行きたいのか行きたくないのかどっちなの!」

「そりゃ行きたいけど…来るなって…」

「はー最近の保科はちょっとは積極的になってきたかと思ってたけど、恋愛相談でまたすっかり腑抜けちゃったみたいだね。来るなって言われたからって怖気付いてんじゃないよ!オーナーが心配なんでしょ!行きたいんでしょ!言い訳並べて行かない理由を探すくらいなら男らしく行ってこい!」

「でも…」

「おや保科。まだ足りないようならもう一回『気合』を入れてあげようじゃないかー」

「わ、分かった!行く!行ってきます!」

 

とてつもない怒気を纏って笑顔でにじり寄ってくる和奏を前に、腑抜けていた柊史も慌てて立ち上がる。

鞄を持って駆け出した柊史は教室の入り口で不意に足を止めると。

 

「仮屋!ありがとな。行ってきます!」

 

そう言い残して、教室を出て行った。

 

「まったく、そんなに心配ならさっさと行ったらよかったものを…世話の焼ける奴だぁね」

 

呆れたように笑う和奏と、何が何やら全く思考が追いつかないクラスメイト。そんな教室に遅すぎる帰還を果たす男が一人。

 

「あれー?柊史の奴、鞄持ってどこ行ったん?サボりとか次、佳苗ちゃんの授業なのに度胸あんなーってあれ?なにこの空気。なんかあったの」

「肝心な時に遅いわ海道ー!」

「え、まって、なんで和奏ちゃん怒ってんの⁉︎ちょ、まっ…あーーーーー!!!」

 

昼休みが終わる教室にはチャイムと、ケツキックの音と、海道の悲鳴がこだまするのであった。




どうもこんにちはnonoiです。
投稿が遅れた事、重ねてお詫び申し上げます。
投稿が遅れてしまった事の理由としましては「忙しかった」の一言に尽きます。
色々と時間の取られる事が続いてしまい、結果として延期の連絡もしないままここまで延期してしまいました。
延期の報告すら忙しさに感けて怠ってしまった事も本当に申し訳ありませんでした。
以後は、発信した投稿予定等を覆えす事の無い様、また、仮に遅れてしまう際には必ず送れる事の旨、また、延期後の予定日をしっかりと連絡させて頂きます。

この度は本当に申し訳ありませんでした。

またこの様な事態があったにも関わらず大変言い辛い事ではありますが
次回投稿予定は未定とさせていただきます。
次回投稿分が上がり次第連絡させて頂きます


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