ウォズ(と鳴滝)のRoad to vassal! (すごい時代、現代。)
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201X:ウォズのゆううつ
細かいことは気にしない。
というか既にネタ切れなので、誰か書きたい人探してます。
――――彼は悩んでいた。
彼の名は「ウォズ」。2068年の未来からやってきた預言者であり、かの時代で最低最悪の魔王と称される「オーマジオウ」に仕えるものである。
彼の目的は2018年近傍において若き日のオーマジオウである「仮面ライダージオウ」=「常磐ソウゴ」をオーマジオウが君臨する未来へと導くことであり、同じく未来からやってきた「ツクヨミ」や「明光院ゲイツ」とは敵対関係にあった。
未熟なオーマジオウであるうちに駆逐することで、最低最悪の魔王が支配する未来を変えようとする者達の手によって、常磐ソウゴの日常は破壊される。
しかし、その未来を知ったソウゴは最低最悪の魔王ではなく最高最善の魔王になってみせると宣言。その歩みには確かに覇王の片鱗をのぞかせるものの、いまだオーマジオウとは程遠い。
それ以外にも、同じくオーマジオウの排除を目論む「タイムジャッカー」が操るアナザーライダーも交えて三つ巴の戦いが巻き起こる中、彼は自らが持つ預言書「逢魔降臨暦」の知識を使い、常磐ソウゴを正しい歴史に進ませるように務めようとする。
だが、戦いが進むにつれて必要に迫られたのもあり「仮面ライダージオウⅡ(2)」の力を覚醒させ、更には「ゲイツ」「ウォズ」の力を一つに束ね「仮面ライダージオウトリニティ」へと至ったソウゴではあったが、その在り方はもはやオーマジオウとは似て非なる常磐ソウゴ自身の王道とでも言うべき物であった。
そのあり方により本来敵であったはずのツクヨミやゲイツを味方へと引き込み、ウォズをも感服させて見せた。こうして彼は実質的に、「常磐ソウゴ」と「オーマジオウ」という、二人の主を持つような立場に立たされている。
//////////
ある日の昼下がり。その日はライドウォッチの捜索を行うことも、アナザーライダーによる怪事件の話を聞きつけることもなく、平穏な時間が流れていた。そんな中、ウォズは思索にふけっていた。
何故、我が魔王はオーマジオウとかくもかけ離れているのか。
未来からやってきた者達の干渉により過去、つまり常磐ソウゴがオーマジオウへと至る過程は既に書き換えられている。それは未だ私の道筋を照らす預言書「逢魔降臨暦」の記述が書き換わったことからも間違いは無い。だがこの本の存在は、その道筋が書き換わりつつも確かに、この時間がオーマジオウが君臨する未来へとつながっている事を示している。それはやはり、常磐ソウゴはオーマジオウと同一であると言うこと。
常磐ソウゴは何処かの未来でオーマジオウとなる。それについては懸念は無いが、取るに足らないと思っていた相手に、覆されるはずのなかった歴史が左右されたのは事実。これ以上未来を改変されないよう、何が原因で歴史が変わったのか、何をすれば歴史を守れるのか考えなくてはならない。
そもそも、現在のオーマジオウの過去に未来からの干渉は存在したのか?これについては問題は無いと思われる。ジクウドライバーが過去に存在したとは考えにくいし、未来から訪れたツクヨミやゲイツがソウゴとある程度の交流を持った時点でも、「逢魔降臨暦」の記述は変わらずにオーマジオウへの未来を示していた。この二人やタイムジャッカーの干渉は未来に絶対的な影響を及ぼしてはいない。
であれば、まさか……
「私が、原因の一端、なのか?」
オーマジオウが君臨することになった歴史において、私が存在しなかった、あるいはこの私よりも善く導き手の使命を果たした。もしそれが、歴史が書き換わった原因だとしたら。
未来を知り、その守り手を称しながら、行っていたことはそれとはほど遠い事だったとしたら。
「このままではいけない……待っていてくれ、我が魔王」
祝い方のように自己研鑽の必要を感じたとあれば、我が魔王のためにもすぐに取り組むべきだ。
だが前回と違い、オーマジオウに頼るわけにはいかないし、時間転移などしては他人に嗅ぎつけられる可能性がある。時間転移せずに他の魔王に謁見できる方法は……
その時、とある記述が頭をよぎる。数多くの地に赴き、自らの在り方を探し求めた仮面ライダー。彼の関係者であれば、この使命の協力者にふさわしい。
ウォズはまず先方と渡りをつけるため、行動を開始した。
大まかなルール
・滞在期間の目安は6日間。本編の合間に片を付ける。
・魔王本人とウォズが接触可能なこと。この時ウォズが相手のことを魔王だと認識していて、言葉を交わすくらいの交流はあって欲しい。
・魔王は作中人物から広く魔王と認識されていること。
・メタ的、地の文で魔王と言われているのはダメ。
・少数の人物や範囲から魔王と評されている場合、ウォズがその単語にたどり着ければ可。
・面白さ及び書きやすさ優先。(細かいこと気にしない)
誰か続き(か3次創作)書いてくれる人お待ちしてます。マジで。
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サッカーフィールドの魔王
――――私がこの世界に来てから、既に3日が経過していた。
今回の異界渡航において、「仮面ライダー」を知らない世界に初めて渡ると言うこともあり、鳴滝氏にはあまり危険の無い世界を見繕うように頼んでいた。
その甲斐あってか、どうやらこのせかいでは怪人や化け物が存在すると言う話は眉唾物程度にしか語られないものらしく、私もやや変わった格好の旅行者としてすんなりと溶け込んでいた。
しかしここで誤算となったのが、魔王の存在について全く情報を得られなかった事だ。そもそも、魔王というのは魔性を宿す王と書く。それが示すのは、種族的あるいは性質的に魔とされるものを含み、なおかつ他者に王と言わしめるだけの要素を兼ね備えるものだ。その存在には他者とは隔絶された領域にあり、故にそれらの者達は実在非実在を問わず広く名が知れ渡る。伝説、奇跡、絶対、それらが高らかに謳われるところに必ず魔王の名は存在する。接触することは困難であっても、噂や都市伝説は簡単にみつかるはず。
そう思っていた時期が、私にもあった。
だがこの世界は私の知る世界と比べて、あまりにも平和だった。国家間の対立が存在しないわけではないが、世界規模の年少スポーツ大会を実現できる程度には均衡が保たれている。
当然、鳴滝氏には絶対条件として「魔王が存在すること」を言付けてある。彼が私を嵌めて何か得することもない以上、嘘をつかれたとも考えにくい。そればかりか、彼は助言までしてきた。
「最後に一応いっておくが、この世界で魔王と呼ばれる人物は今現在日本にいる。くれぐれも見逃さないよう」
あのときはずいぶんと親切だと感謝の念を抱いたものだが、今考えるとあの含み笑いの裏に何か別の意図があったように思えてならない。
//////////
三日目。昼食を取り終えた私は気分転換でもと町を散策していた。
――――ここまで、この世界の魔王に関して何のヒントも得られていない。これは調査方針が間違っていたのか?
初めに調べたのは近年の戦争や紛争についての記録。そこから破壊的な技術や発明を漁り、念のため昔の歴史や世界各地の伝説なども調べ上げた。
だが、平和な世界ということなのかそれらの中に魔王の名は存在せず、いたとしても全く関係のない子孫であったり、ただの枯れ果てた伝承であるだけであった。魔王の伝承の類も、元居た世界とそれほど変わりないため、あまり参考にならなかった。
――――ここまで不測の事態を考え温存していた滞在資金をもっとつかうべきか?
決断を迫られているうちに、その歩みはいつの間にか街頭の広告用画面の前にあった。どこかのテレビ番組を映した画面に、いくらかの人だかりができている。せっかくの気分転換であるからと、足を止め目を向ける。
画面に映し出されていたのはスポーツ中継。折よく「世界サッカー」のテロップが画面をよぎり、この試合のハイライトらしき映像が流れる。
熱気に満ちたフィールドの中、ボールを受け取ったエースと思しき選手がフィールドを駆け上がる。そして、
ゴールへと迫った彼は、突如ボールとともに跳躍。
「うむ?」
片足を天に掲げると、その先端に剣を思わせる幻が生まれる。
「……は?」
掲げた足がボールにたたきつけられると、剣の幻影はボールとともにゴールへ飛んで行った。
「」
応じるようにキーパーが手に生じさせた巨大なドリルと激突。
「えっ」
火花を散らし、それを打ち破ってゴールへ突き刺さる。
「…………」
「――――必殺シュート、エクスカリバーがドリルクラッシャーを粉砕!このゴールが――――」
実況の中からその単語だけを何とか拾い上げるが、めまいを感じて手近な壁にもたれかかる。
なんというか、想定外すぎてついて行けなかった。
魔王の手がかりをつかめたという希望が、私の足取りを何とか支えていた。
//////////
魔王はすぐに見つかった。そして、
「私に、君の『魔王・ザ・ハンド』を見せてほしい」
夕日が差し込む応接間で、私は彼に頭を下げていた。
――――この世界のサッカーには必殺技が存在する。
それを知った後は早かった。サッカーのファンサイトに魔王という選手や技はないか投稿すると、あっけないほどにすぐ見つかった。立向居勇気。元日本代表である彼は『魔王・ザ・ハンド』という技をもっていた。
翌日、私は彼がいる学校に出向き、面会を申し込んだ。本来通るはずのない急すぎる来訪であったが、この世界に来た際どこからか現れた私の身分証が意外なほどの力を発揮し、練習後の彼と会う約束を取り付けた。
「えっと、何か問題でもあったんですか?」
挨拶もそこそこに、ド直球で要件を切り出された彼は困惑した。
これではいけない。すぐに自分は何らかの組織の派遣員などではないこと、どちらかというといちファンとしての希望であることを伝え、権力の横暴のように見えた部分については謝罪した。
まだ完全に信用されたようではなかったが、話が彼のファンについての部分に差し掛かると、いくらか顔をほころばせてくれた。
「もしかして、あなたもサッカーをやられるんですか?」
「ああ、いくらか心得はあるつもりだ。(普通のサッカーなら)ストライカーを任されたこともある」
「そうなんですか!もしよかったら、あなたのシュートも見せてもらえませんか?」
「あっああ、かまわないとも」
つまり、必殺シュートを見せてほしいということか。盛り上がる雑談の熱に反して、内心冷や汗が止まらない。考えようによっては彼の力を引き出すともとれるが。
二日後の練習終わりに再び訪れることを取り決め、その場を辞したあと、降ってわいた難題に頭を悩ませつつ帰路についた。
//////////
二日後の夕刻。彼に余計な気を遣わせないように、一般的な動きやすい服装に着替えた私はサッカーコートに足を踏み入れた。西日に染まるフィールドには立向居君の他にも彼のチームメイトらしき人影が練習を続けていたが、私に気づいた一人が立向居君に声をかけ、数分後にはすっかりPK戦の様相に切り替わっていた。
どうやらギャラリーとなるらしい彼らの一人から、礼を言ってボールを受け取りポジションにつく。
「では僭越ながら、この私がキッカーを務めさせてもらおう。よろしく頼むよ」
「はい!こっちも準備は出来ています!」
――――異界とはいえ相手は魔王、相応の礼儀を持って臨ませていただく
目を閉じ、静かに息を吐き出す。つられるように体中の闘気が勢いを増していく。
「……何だ、この気配は?」
あふれ出る闘気は、キーパー以外の観客にも感じ取れるほどその濃密さを増していく。
――――さすがに、たった一日で習得するのには骨を折ったが、
見る間にウォズの背後から黒い渦となって顕現した闘気が、ウォズの背丈を超える守護霊とでも言うべき巨像を形作る。上半身だけで現れた銀色の光沢をきらめかせる虚像はしかし、「ライダー」と書かれた二本の触角つきの奇妙な仮面から、正面に立っているだけで気圧されるような視線を確かに放っていた。
――――我が魔王のためならば、この程度苦でもない!
「なっ、何なんだあれはっ!」
「解らん。だが、初めて見る必殺技である事は確かだ」
にわかにギャラリーが騒然とし始める。しかし、この技はここで終わりではない。
「未来の導き手ウォズ……アームドッ!」
その名を宣言すると同時に巨影が形を崩し、いくつかのパーツに分解されると同時に飛翔。舞い戻るように再びウォズのもとに集まった光弾は、再形成され今度は等身大の、だが先程の巨影と同じ形相を持つ鎧を作り出す。
直ちにギャラリーは混沌のるつぼと化した。唖然とする者。感嘆する者。模倣を考える者。陰謀を疑う者。記憶をたぐる者。何処かへ駆け出す者。etc…… いずれにせよ、彼らはまた遙かな高みへ食らいつくための切っ掛けを得たことになるだろう。
しかし、そんな些細なことは今のウォズの知ったことではない。
「では行くぞ、立向居君!」
「っ、はい!」
声をかけると、呆然としていた立向居君の目に闘志が戻る。そうだ、それでこそ魔王の名を担う者だ!
<ビヨンド ザ タイム!>
解放されたレバーを押し込み、構えを取る。するとどこからか放たれたいくつもの光帯が、ボールとゴールの間で折り重なって立方体をかたどり、同時に鎧の周囲を旋回するように「キック」という文字が躍る。
「タイム……エクスプロージョン!」
猛然と踏み込んだウォズの蹴撃、そして旋回するように躍る「キック」という文字がボールに重なり合い、放たれたシュートはまず空中に浮かぶ立方体に突き刺さり、その中に侵入する。
そしてそのまま立方体を押し込むように直進した。なおもランダムな回転を続ける立方体の内部では、ボールに込められたエネルギーが今にも爆発せんとその光量を増していく。
騒然とするフィールドの中、必殺の一撃が向かう先にいる少年は揺らがず足を踏みしめ、こちらも絶対の気合いを自らに纏う。
紫闇色の闘気が背後に立ち上がり、魔神を超えた魔王の姿を作り出す。
「おお、これが、」
「魔王!」
咆哮とともに覇者の気配が吹き荒れ、周囲に漂っていた気配を塗り替える。
「ザ・ハンド!」
飛来した立方体に両の掌を叩きつけ、その暴威を無に帰そうと拮抗する。周囲に荒れ狂う暴雨の中、魔王の拳と膨張したエネルギーの猛威に耐えきれなくなった立方体が、突如として爆散する。
白煙に包まれるゴール前。ギャラリーが固唾を呑んで見守る中、私は確信していた。
魔王を試すため放った一撃が、本気の魔王に届くはずが無い。
やがて煙が晴れたゴール前。そこには息を切らしながらも、確かにボールも受け止めた立向居君が立っていた。
//////////
ややしばらくたった後。
「急なお願いを聞いてくれてありがとう。君の『魔王・ザ・ハンド』、素晴らしい気迫だった」
「こちらこそ、すごいシュートでした!あんなシュート、見たこと無いです!」
まあ、そうだろう。このシュートは昨日生まれたのだから。
「そうか、この技は遠い所にいる私の特別な人から教えてもらったものだ。この世には、君たちの知らない世界がある。そんな世界での君たちのの大いなる挑戦を、私も応援させてもらおう」
怪しまれないよう、事前に考えておいた文句を並べ立てていく。嘘は言っていない。
「申し訳ないが、次の予定が押しているので失礼する。最後にもう一度、立向居君、君に大いなる感謝を」
「はい、ありがとうございました!」
見送りを受けながら、そそくさとその場を去った。
//////////
日も落ち始めた頃。私はとある裏路地で立ち止まる。
「ここならいいだろう、出てくると良い」
声を上げながら振り返ると、一つ先の角から苦々しげな表情をした少年が姿を現す。
「何のご用かな?私は早急に帰らなくてはならないのだが」
「お前は何者だ?化身アームドはこの時代には存在しない、身分証も不自然だ。何が目的だ?」
お前を逃がさないと、暗に告げる少年を前に私は首元を緩める。
「私はウォズ。今は魔王を学ぶ者。君の心配してるようなことにはならないよ、フェイ君」
「ッ!?」
一瞬、彼の体がこわばると同時に解かれた帯が、私を包み込みその場から姿を消した。
もう1話だけつづくんじゃ。(最終回に間に合わなそうなのでこっち先に投稿した。)
次回、「新銀河帝国の魔王」。
これ以降ネタ切れとか言うひどいオチを見届けろ!
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新銀河帝国の魔王
――――宇宙は星の海とも称される。
普段我々が生息する地球の外側には、広大な宇宙空間が広がっている。単純に大きさだけで判断するならば、むしろ広大な宇宙空間のたまたま一部分に地球が存在しているといった方が正しく、その膨大な未探査領域は謎と神秘に満ちている。平成仮面ライダーの歴史においては、カブトやフォーゼとの関連が有名だろう。仮面ライダーウォズの最終形態「ギンガファイナリー」及び、その元となった仮面ライダーギンガの力も宇宙からもたらされたものだ。
一方で本来惑星上の環境に適応した生物は、宇宙空間で活動・生存するのが非常に困難である。詳しく調べればきりが無いが、こと地球の生物においては大気の存在が挙げられるだろう。宇宙線を遮断し、酸素と熱をやりとりする重要な存在は、宇宙においてその代用を余儀なくされる。宇宙服とマルチツールを兼用し、宇宙から供給されるエネルギーで稼働するフォーゼは高機能だが貴重品でもある。やはり、生身で宇宙に飛び出せるようなことがあれば、宇宙開発も一気に進むのだろうか。
そんなことを、私は思い浮かべた気がする。
//////////
宇宙船の窓から星々を眺めながら、私はしばし回想にふけっていた。
――――異世界との常識の違いがまさかここまでとは
まず最初に訪れたのはキノコ王国。キノコを国の名前に掲げるこの国は、国の特産品や成り立ちの逸話にキノコが関わっているわけでは無く、住民がキノコっぽい国だった。他にも二足歩行するカメやモグラが存在し、魔法も一般に存在する技術として認知されている。個人的には、あちらこちらに存在する土管を利用した通路が目にとまった。暗いところが特別好きと言うようには見えないが何故だろうか。
鳴滝氏の手により私の姿に違和感を抱かないための細工が施されているらしく、すんなりと溶け込むことが出来た。
町の中心部の巨大なクレーターを横目に、魔王についての調査を開始した私は、紆余曲折の後宇宙船に乗っていた。
「つきましたよ、ウォズさん」
「ありがとう、隊長君」
声をかけられた方に向き直ると、そこには見慣れた……見慣れてしまったキノコヘッドの人物、隊長がいた。相変わらずの二頭身だが、ヘッドライトとリュックサックを身につけた彼は、言われてみれば隊長のようにも見えなくも無い。
「でも良いんですか?こんな何も無いところで。僕らは気にしませんが、あのクッパ大魔王の勢力圏にも近いですよ?」
「ああ、ここで構わない。実は待ち合わせをしていてね。場所はここで合っているはずだ」
そう言いながら、宇宙船の外に踏み出す。
生身で。
しかし、死ぬことは無い。この世界の人間(?)には、どうやら生身で宇宙空間で活動出来る者がいたり、それを可能にする魔法が一般に知られていた。全く、とんでもないところに来てしまったものだ。
彼らの宇宙船が飛び立った後、待つことしばし。不意に感じた気配に背後を振り返ると、ローブを纏いメガネをかけ、二足歩行しそうなカメがほうきにまたがって浮かんでいた。
「お前がウォズで間違いないか?」
「いかにも」
「大魔王様がお待ちだ。ついてこい」
//////////
この世界に存在する「クッパ大魔王」の話を聞いた私は、何とか末端に接触し、謁見を申し入れた。
正直、成功率は低いとみていたが、返答はまさかの許可。そのため、たまたま帰還していた宇宙船を探し、使者と接触する運びとなった。そしていま。
「ほう、貴様がウォズとやらか」
私は、圧倒的な威圧感を放つカメ族の大魔王の前で頭を垂れていた。
「いかにも。私は魔王にして時の王者、オーマジオウに仕えるウォズ」
「時の王者か、このワシの前で大きくでたな!」
そう言ってガハハと笑う王は、正しく私の思い描く王の形の一つであった。
「まあいい。それで、その時の王者のしもべとやらがワガハイになんのようだ?」
そう言ってジリとこちらを睨みつけてくる。
「実は、クッパ大魔王の治世を見せていただきたく参上した次第です」
「ふむ?良いだろう。カメック!案内してやれ!」
意外と寛容なのか、意見が通りやすいのは助かるが。
「ありがたき幸せでございます。じっくり拝見させていただきます」
「タダでは無いぞ。まあ、楽しみにしておけ」
カメックにせかされ、玉座の間を辞す。聞かされた話では、これまで謁見を求めてきた者などいなかったので、これまでに無く気分が良いらしい。それにしても何をやらされることやら。
//////////
「少し、ワシの為に働いてもらうぞ」
領内の視察を終えた後そう言われた私は、とある銀河の小さな人工星の上にたたずんでいた。透明なバリアが三重に張られ、星形の射出装置を拘束している。
そこに飛来する、一つの影。
「君がマリオ君で間違いないかな?」
<ギンガ アクション!>
眼前に捉えた赤い帽子に青いオーバーオール、小さな黄色の生物らしき者を連れ、口元には立派なひげをたくわえた人物が首肯するのを認め、自らの口上を告げる。
「初めまして、私はウォズ。最低最悪の魔王にして偉大なる時の王者、オーマジオウに仕える者」
<投影!ファイナリータイム!>
満天の星空の下、油断なく構えをとって警戒する目の前で、自らの力を解放させていく。
「今現在は君もよく知るクッパ大魔王のもとを訪問していたのだが、そこで少々頼まれ事をされてしまってね」
<ギンギンギラギラギャラクシー!宇宙の彼方のファンタジー! ウォズギンガファイナリー!ファイナリー!>
両者の間に流れていた空気が、一気に張り詰めたものに切り替わる。
「と言うわけで、お相手願おうか。勿論、君がこの先に進むのを諦めると言うなら、その限りではないのだろうが」
――――そんなことはあり得ない。
とばかりに初手、一直線に突進してくるマリオに対して、ウォズは警戒しつつもその場で待ち構える。事前に聞き及んだ情報通りなら、今の姿はそこまで突飛な能力を持たないいわばスタンダード型。ならば、こちらも素の力がどこまで通用するのか試しておくべきだろう。
間合いに入るやいなや、たたき込まれたストレートをピュアパワーのエネルギーを纏わせた手で受け止める。元が配管工だったとはにわかには信じがたい速度だ。その衝撃もなかなかのもので、防御を崩すには至らないものの、十分に踏ん張る必要性を感じさせるものだった。
――――やはり、私の力が弱体化しているのか?
予想よりも強い手応えに以前からの疑いをより深める。入れ替えるように放たれたもう片方の拳を受け止めつつ、今度はそのままエネルギーによる拘束を試みる。体勢を戻そうとしたマリオの表情に驚きが混じる。そのままさらに体勢を崩そうとしたところで、
突然、マリオが猛烈な横回転を行い、なんとエネルギーによる拘束が振り払われた。そのまま一歩踏み込んできた事による攻撃をとっさに再度ピュアパワーで受け止める。
回転するマリオによりすぐさまエネルギーの防御は剥ぎ取られてしまうが、即座にエネルギーの再収束を行いつつ、攻撃を受け流すことに特化させることで防御を抜かれることは避けた。
これだけの攻め手では足りないと感じたか、回転が終わると同時に一旦距離をとろうとするマリオ。目前にいる相手を逃すわけ無いと再び拘束を試みる。が、新たに迫ってきた弾丸にそれは阻まれる。
こちらの死角から放たれた弾丸……スターピースが私に直撃し、ひるんだ隙に背面跳びからのドロップキックを食らう。
吹き飛ばされ、叩きつけられた先ははバリアの発生装置。小さな爆発音とともに光を放ちだしたそれを見て、彼はすぐさま退避していく。私が建て直して防御態勢を取ると同時に、装置ごとバリア前面が爆散し、一つ下の階層に足場が移る。
「なるほど。では、これではどうかな?」
<水金地火木土天海!宇宙にゃこんなにあるんかい!>
このままでは面白くないと、属性を切り替える。
<ワクワク!ワクセイ!ギンガワクセイ!>
構えると同時に放たれたスターピースを、エナジープラネットで迎撃する。しばし、星の弾丸が両者の間を飛び交い、色とりどりの爆発が戦場を彩る。
こちらのフォームも性能が低下しているらしく、エナジープラネットの耐久性と操作性が低下していたが、威力には概ね問題は無い。
何度かエナジープラネットの補充の隙などを狙ってこちらをすりぬけようとしてきたが、格闘で十二分に対応できている。
じりじりと戦況を押し込んでいく。スターピースの連射力には負けるが、エナジープラネットの単発火力と同時展開力で圧倒できているため問題ない。最も、迂回させたり打ち合いを抜けて彼に到達したエナジープラネットも、スピンではじかれてしまうため有効だが無いのが現状だが。
そして、戦況が動く。エナジープラネットがスターピースによって勢いを削がれた所に彼が踏み込み、爆発する前に打ち返してきた!
こちらも別のエナジープラネットをぶつけて相殺するが、展開されたエナジープラネットは九つ。最後の一つが迎撃しきれずに直撃し、隙をさらしてしまう。
そこは直掩に入っていたのもありバリアの発生装置付近。再び強打を食らい、装置を破壊されてしまう。足場が崩壊し、最後の層に落ちる。
「なかなかの実力のようだね。では、これで勝負といこうか」
<灼熱バーニング!激熱ファイティング!ヘイヨー!タイヨウ!ギンガタイヨウ!>
三つ目の姿に変身し、今度はこちらから弾丸を放つ。
応じるように彼もスターピースを放ち、先程と同じように激突し、エナジープラネットが一方的に打ち勝つ。わずかな拮抗も見せず、一瞬でスターピースを溶かすように消し飛ばした。
これはまずいと感じたのか、回避行動を取った彼のいた場所に弾丸が着弾し、大爆発を巻き起こす。余波の熱が駆け抜け、バリアも一瞬揺らいだ。威力には気をつけねば。
星の中心の射出装置のエネルギーが漏れ出しているのか、あちらこちらに水晶の柱が乱立する戦場で、彼に向かって爆撃を続ける。
時折スターピースの射撃や彼自身が突撃してくるが、火炎放射やマスクからの熱線照射で応戦する。一応有効打は入っているはずだが、見た目に変化は無い。これも魔法のなせる技だろうか?
何故か水晶の柱が復活し続ける戦場で、ともにスピンや弾丸で柱を壊しながら戦闘を続ける中、再び彼が接近してくる。
スターピースを火炎で焼失させ、やや後退した彼に熱線を放つ。バック宙で避けた彼に本命の弾丸を放とうとして、
耳障りな音とともに、外れたはずの熱線が私に直撃した。
ぐらつく視界の中、センサーが水晶によって熱線の軌道が変わったことを突き止める。すぐさま放たれたスマッシュにて、私はバリアの発生装置に激突させられ、決着はついた。
//////////
――――あれほどの宿敵がいるとは、クッパ大魔王も成長途中と言うことなのかもしれない。
あの後、上手く脱出した私はクッパ大魔王に感謝を捧げ、その星を離れていた。
元々頼まれた要件は足止め。大魔王は貴様ごときにマリオが倒せるはずが無いと言い、拠点の破壊を怒りもしなかった。いつかお前の魔王にも会わせろと言われたが、そんな機会は訪れるのだろうか。
さて、情報によるとそろそろのはず。さすがにまだ情報は出回っていないはずだが……
「あれ、ウォズさん!ご無事でしたか!」
「やあ、隊長君。この通り、五体満足で用事も片づいたよ。帰りもご一緒して構わないかな?」
「勿論です!こちらへどうぞ!」
探索を終え、帰還途中の彼らの宇宙船に同乗して、私は宇宙を後にした。
一旦終わり。(ネタ切れ)
よほど良いネタとノリがあれば続くかも知れませんが、基本的には他の人の書いたの見てみたいなーのまま放置する予定です。
ウォズさんカルチャーショックなところが結構書いてて楽しかった。
「youtube クッパ 悪事」で検索してみて。
(最終回感想)
ウォズさんが映画ムーブをクリティカルにやればそれだけでオーマジオウになるんじゃ無いかな。(暴論)
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