魔王の妖精聖母は迷宮の奥底へ (迷走中)
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プロローグ

TSロリ物に挑戦しました。


※ 先に同人エロRPG【妖精王女 ~白濁の泉に沈む】は、存在しません。
主人公の容姿の元ネタ。プレイ内容の元ネタなどはあります。
誤解を生む書き方をして、すみませんでした( ノ;_ _)ノ


神ヘスティアが、ソレに気づいたのは偶然が重なった結果だった。

 

アルバイト先の店長が風邪で仕事を休むことになり、人手が減り、その日共にシフトに入っていたアルバイトが腹痛で動けなくなり、ヘスティアが見かねて後片付けを「今日は僕に任せろ」と告げて一人で行った。

ヘスティアがアルバイト先の露店の片付けを終えた時には周りはすっかり暗くなっていた。

 

ヘスティアは、速く家に帰るために普段は使わない近道を使った。

そして、声が聞こえた。

 

「誰だい?」

 

ヘスティアは、立ち止まり周囲を見渡して、細い路地の暗がりから見える虹色に輝く何かを見つけ近づき、

 

「――ッ」

 

声にならない悲鳴をあげた。

そこに倒れていたのは、鎖で全身を拘束され、酷い暴行を受けたことが一目で分かる虹色の髪の幼いエルフの少女だった。

 

「し、しっかりしろ、君!!」

 

ヘスティアは慌てて少女に近づき、汚されきった少女を自分が汚れることを厭わず、しっかりと抱き締めると我慢していた涙が溢れ出た。

 

光を失った瞳、人形のように動かない少女、辛うじて呼吸をしている。

更に少女に抱き抱えて分かったことがあった。

 

「こ、この子……っ」

 

少女の腹部が萎んだ風船のようだったのだ。

処女神であるヘスティアの乏しい性知識でもそれの意味することは分かった。

周囲を見渡して、自分達以外に誰かいないか確認するが、誰もいない。いや、何もなかった。

 

「だっ、―――ッ」

 

咄嗟に助けを呼ぼうとして、ヘスティアは奥歯を噛み締めた。

この状況で人を呼べば、この子が晒し者になる。

ヘスティアは少女を抱き抱えて、その場から走り出した。

 

信頼できる神友の下へ。

 

 

▼△▼△

 

 

「終わったぞヘスティア」

「ミアハ、あの子の容態は?」

「命に別状はない。平均的なエルフの肉体に比べればかなり肉体が頑丈だ」

「そ、そうか」

 

神ミアハの言葉に、ヘスティアは安堵の息を漏らした。

 

「身体の傷の方は問題ない。だが、やはりあの少女は出産した形跡がある」

「―――ッ、そうかやっぱり」

「……赤ん坊は近くに居なかったのだな?」

「あ、あぁ、そのはずだ。薄暗かったけど。な、泣き声も聞こえなかった」

 

ヘスティアの言葉にミアハは念のためだと呟き、治療を手伝ってもらっていた眷属に声をかける。

 

「ナァーザ」

「はい」

「ヘスティアを着替えさせたら、確認に行ってくれ」

「分かりました」

「ヘスティアは案内を頼む。それと着替えを貸す。その格好では誤解を招く」

 

ミアハの言葉に、ヘスティアは自分の姿がかなり酷いことになっていることに気づいた。

 

「分かった。着替えありがとう。それと治療費用だけど」

「状況が状況だ。待つさ」

「ミアハ様」

「他人事ではない。治安のよい地区で発見されたのだ。何処からか彼女を運んで放置されたとしても、確実にギルドの案件だ。治安に関わっているガネーシャにも教えなければならない。第二の被害者が出る可能性がある」

 

眷属の責める声に、ミアハは冷静に答えた。

こうして、虹色の髪を持つエルフはヘスティアとミアハに救われた。

 

翌日、報告を聞いたガネーシャとガネーシャ・ファミリアの団長シャクティ・ヴァルマは事情を聞き、憤りを露にした。

 

そして、五日後。

 

「ここは?」

 

本来、この世界に存在しないはずの少女の肉体に宿った彼が目を覚ました。

 

 

 



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目を覚ましたら、ドハマリしたドエロ同人RPGの主人公のロリエルフの身体になっていた。

本日、二回目。


 

目が覚めたら、何故か好きなラノベ。ダンまちの世界にいた。

 

 

 

更に自分の身体がドハマリしたドエロ同人RPG【妖精王女 ~白濁の泉に沈む】の主人公、アルディス・リーマ・アルフヘイムになっていた。

 

 

 

俺が目を覚ましたとき、たまたま様子を見に来てベッドの近くにいたヘスティア様は号泣し、ミアハ様とナァーザさんはホッとした表情だった。

 

 

 

俺はどういう状況? と首を捻ると、どうやら俺はあられもない状態で発見されたらしい。

 

はい? とは思ったが、うっすらと思い出した。

 

俺は【妖精王女 ~白濁の泉に沈む】のアペンドが発売されて、新しい√を攻略。なかなか楽しかったが、気分的に一番気に入っている、魔王の聖母√をクリアしたところまで覚えている。

 

 

 

なので、あられもない姿でと聞いて、あのエンドは最後はボテ腹だったよな? と何気無しに腹を見て「あれ?」と、口にするとミアハ様とナァーザさんは沈痛な表情をして、ヘスティア様は俯きながら「ごめん、ごめん」と呟き、俺を抱き締めたまま頭を優しく撫ではじめる。

 

 

 

うん、これは迂闊なことを言わない方が良いな!!

 

 

 

それから、二日後。

 

ミアハ・ファミリアで入院していた俺は退院した。

 

その間に、神ガネーシャと団長のシャクティさんが来たのは驚いた。

 

 

 

俺に会いに来た、名目は事情聴取。

 

 

 

神ガネーシャは俺と顔をあわせて即座に頭を下げた。

 

最初は意味がわからなかったが、治安に関わるガネーシャ・ファミリアが、外から密輸して運ばれた俺には気づかなかったこと、オラリオ内で俺が性的暴行を受けたこと、何より俺とお腹の子供を助けられなかったことなどを謝られた。

 

 

 

気にしないで下さい。と明るく伝えると神ガネーシャはひたすら謝っていた。

 

そこから、俺のことやここへ来る経緯を聞かれた。

 

神に嘘はつけない。

 

なので、オラリオ内部にどうやって入ったか、誰に連れてこられたか? などは、素直に分からない、と答えた。

 

 

 

二人は今後しばらく、見回りを強化すると言って去った。

 

 

 

俺の予想に反して直ぐに落ち着いたので、ヘスティア様とミアハ様と、俺の今後の話になり、身寄りがないなら、エルフのコミュニティに行くか? と聞かれたので、俺は。

 

 

 

「ヘスティア様」

 

「なんだい?」

 

「わたしをヘスティア様の眷族にしてください! 恩を返したいんです!」

 

 

 

この身体なら、冒険者になれるはずだ。

 

なので、俺はヘスティア様に眷族にしてほしいと頼んだ。

 

助けてもらった恩返しもかねてな!

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

ヘスティア様の眷族になることをヘスティア様は喜んでくれた。

 

 

 

けど、俺の儚げロリ外見と年齢(ゲームの設定だと○0歳だ)が原因で、冒険者になるのは反対された。

 

なので、「なら、娼婦に」と言いかけて、ヘスティア様に怒られた。

 

 

 

いや、自然と口に出たんだよね。

 

というか、身体が。うん、これもしかしなくても、ゲームの性経験値引き継いでる。

 

身体と子宮がちょっと疼く。

 

 

 

とりあえず、そこからヘスティア様を説得した。

 

ミアハ様に前の団員が残していった木刀を借りて庭で軽く素振りをするとその動きに、ヘスティア様もミアハ様、ナァーザさんも、驚いていた。

 

ま、俺も驚いたよ。

 

身体が覚えている感じはしたけど、まさかここまでとは。

 

でも、おかしなことではない、と俺は思った。

 

 

 

この身体は、六周ゲームをクリアしている。

 

魔王と配下の四天王、他にもボスモンスターを討伐している。

 

 

 

で、俺の動きを見て、ミアハ様とナァーザさんのお墨付きがでて、ヘスティア様も折れた。

 

 

 

現在、ヘスティア・ファミリアのホームの地下室のベッドで恩恵を貰ったのだけど。

 

 

 

「…………アル君」

 

「は、はい、何でしょう? ヘスティア様」

 

「つ、辛かったね」

 

「え?」

 

 

 

そのまま、ヘスティア様は俺を後ろから抱き締めて泣いた。

 

で、ヘスティア様が泣き止んだ後、見せてもらった俺のステータスがこれだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルディス・リーマ・アルフヘイム

 

 

 

Lv.1

 

 

 

 力:I0

 

 

 

 耐久:I0

 

 

 

 器用:I0

 

 

 

 敏捷:I0

 

 

 

 魔力:I0

 

 

 

 

 

《魔法》

 

 

 

【セイント・ランス】

 

 

 

・武器魔法

 

・速攻魔法

 

・神聖属性

 

・破壊または投擲することで消滅

 

 

 

《スキル》

 

 

 

【アイテムボックス】

 

 

 

・アイテムの収納

 

・収納した物の時を停止

 

・容量はレベルに比例

 

 

 

【妖精賢者図書館の鍵】

 

 

 

・魔法スロット数の無効化

 

・魔法による被ダメージの軽減

 

 

 

【妖精王女の風格】

 

 

 

・妖精族に敬意を持たれやすくなる

 

・妖精族に好意を持たれやすくなる

 

・妖精族に守ってもらいやすくなる

 

 

 

【雌妖精の香り】

 

・雄を魅了する

 

・雄を狂化する

 

・任意発動

 

 

 

【マゾ妖精王女】

 

・受けたダメージの一部をマインドに変換、マインドを回復する

 

・一定確率で攻撃者が魅了・狂化する

 

 

 

【肉○姫】

 

・性行為時に経験値獲得

 

・一度に大勢と激しく性行為を行うことで、獲得経験値超域補正。

 

・獲得金銭高域補正

 

 

 

 

 

 

 

「あー……」

 

 

 

思わず、声が出た。これは酷いな。

 

特に最後のスキルは確実に死にスキルだ。

 

 

 

使える魔法とスキルもある。使用頻度が高くなる【セイント・ランス】はゲームの隠し特殊魔法だ。

 

 

 

物語の途中で、敵の罠に嵌まり崖から落ちて武器なしで行動している時に、隠しダンジョンで手に入る特殊な魔法だ。

 

 

 

ゲームでは敵の武器外し(武器を落とす)を食らっても、使用すれば槍を投げない限り武器として使えた。

 

落とした武器を拾うと1ターンかかり、更に敵の速度が速いと妨害で追加ダメージを受ける可能性がある。

 

ゲームでは武器外しをするモンスターと戦う時は重宝した。

 

【アイテムボックス】は感覚的に庭にあるようなちょっと大きめの物置小屋サイズかな?

 

そして、中身が空っぽ! おい、使わなかった高級アイテムどこ行った!?

 

 

 

「あの、ヘスティア様」

 

「なんだい?」

 

 

 

目の赤いヘスティア様に俺は確認を取る。

 

 

 

「わたし、冒険者になっても良いですか?」

 

「あぁ、ただ、ギルドに報告するステータスは魔法だけにした方が良い。スキルのことは誰にも言ってはいけないよ」

 

「はい、ヘスティア様。それと速攻魔法と神聖属性も隠してください、わたしも神の玩具になるのは嫌です」

 

 

 

俺の何気ない一言で、またヘスティア様が泣いた。

 

うん、厄介すぎるぞ。この身体の経歴。

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

前世の自分の記憶がない。

 

地球の日本人で、隠れオタクだったのは覚えている。

 

数少ない友人達の顔も名前も覚えている。

 

家族は顔は覚えているけど、家族の名前と自分の顔と名前は思いだせない。

 

 

 

そもそも、何故俺はこの世界に来た?

 

しかも、この色んな意味で危ない身体で……。

 

しばらく考えて、答えが出ないと分かり、俺は考えるのは一度棚上げした。

 

 

 

そうそう、冒険者になって数日が経った。

 

担当者はエイナさんだった。

 

 

 

ヘスティア様と朝イチでギルドに行って、エイナさんに顔と顔を会わせたら、即座に畏まられた。

 

エイナさんも自分でも不思議がっていたが、俺が冗談めかしに「もしかしたら、わたしの亡くなった両親は嘘か本当か分かりませんが、王族だったらしいので、それが影響しているのかもしれませんね」とか言ったら後日、大変な目に遭うことになった。

 

 

 

「ただいま、ヘスティア様」

 

「お帰り、アル君」

 

 

 

ベル君はまだヘスティア・ファミリアには居なかった。

 

けれど、後五ヶ月ほどでモンスターフィリアだ。

 

その数週間前にベルが来ると思う。

 

時期が近付いたら、即座に確保する。

 

 

 

だから、気合い入れて準備をしよう。

 

そう思って、数日後。

 

何時ものようにダンジョンで狩りをして、ギルドから購入した装備の借金の残りが半分になり、ちょっとウキウキ気分な俺の前に、

 

 

 

「すまない、君がアルディス・リーマ・アルフヘイムか?」

 

「え?」

 

 

 

ロキファミリアの幹部であり、エルフの本物の王族。

 

リヴェリア・リヨス・アールヴが立っていた。

 

しかも、彼女の後ろには、取り巻きを引き連れている。

 

取り巻きの彼女達は、困惑した表情だ。

 

 

 

「そ、そうですが、何か?」

 

「間違いないな」

 

「え?」

 

「君がハイエルフだということだが」

 

 

 

え、なに言ってんのこの人? いや、確かにゲームではハイエルフという設定だったけどさ!

 

 

 

「……わ、分かるのですか!?」

 

「あぁ、これでも私もハイエルフだからな。それにハイエルフはいくつか見分ける特徴がある」

 

「そ、そうですか」

 

「それで、出来るなら、少し話がしたい。時間をもらえないか?」

 

 

 

断れるわけがない。

 

と言うか、取り巻きのエルフのお姉さん達の目がギラギラしてる。

 

邪気は感じない。何となく、お世話したいと言っている感じだな。

 

 

 

それから、リヴェリアさんと取り巻きと共にカフェに移動した。

 

 

 

「突然、私の知らない王族のハイエルフが現れた。と、聞いて驚いたよ」

 

「そ、そうですか」

 

「それで、アルディスは何か困っていることはないか?」

 

「お気遣いありがとうございます。ですが、わたしはこの街のエルフのコミュニティに参加していません。ですから、お気になさらずに」

 

「故郷を飛び出した私が言えたことではないが、君も王族だ。色々と気を付けた方が良い。それに」

 

「それに?」

 

「君はまだ○0歳だ。大人をもう少し頼りなさい」

 

 

 

その言葉を聞いた取り巻きのエルフ達が驚きの声をあげた。

 

幼い外見だとは思っていたけど、本当に幼いとは思わなかったらしい。

 

ま、そうだろうな。子供というか、エルフの感覚だと幼児だからな、今の俺は。

 

 

 

「ありがとうございます」

 

「気にするな。昔、手のかかる子供が居たからな」

 

 

 

そこから、俺の過去を聞かれたが、リヴェリアさんの様子から、暴くと言うよりも仲良くしたくて質問をした感じだ。

 

 

 

けど、答えられないので困った俺は神ガネーシャかシャクティさんに聞いてもらうように言って、ボロが出る前にその場を離れた。リヴェリアさん達は不思議そうな顔をしていた。

 

 

 

その二日後、俺がダンジョンで探索をしていると、不意に何者かの視線を感じた。

 

気になって周囲を見渡すが、誰もいない。

不思議に思っていたけど、直ぐに俺への視線が何なのか俺は知った。

 

それは、モンスターとの戦いの途中。

 

「しまっ?!」

 

俺はダンジョンの窪みに足を取られ転倒。

モンスターの重い攻撃が俺を襲い、咄嗟に剣でモンスターの攻撃を防ごうとした瞬間。

 

 

「ウオオオオオオッ!!」

 

鬼の形相で、片手剣を持ったエルフの女性冒険者が、俺を攻撃しようとしたモンスターに突撃し、一撃でモンスターの首を切り飛ばした。

 

「え?」

「御無事でしたか!?」

 

首を切り飛ばされて、灰になるモンスターに驚きながらも、助けてくれたエルフの女性冒険者にお礼を伝えると。

 

「あ、ありがとう」

「いえ、それでは私はこれで」

 

俺が慌てて、彼女の名前を問いかけると彼女は「名乗るほどの者ではありません」と、告げて足早に去っていった。

 

それから、俺はダンジョンや街中で視線を感じ、視線を感じる方向へ視線を向けると、何故かエルフ達が俺を見ていて、俺に見つかるか、声をかけようとすると即座に逃げ出した。

 

俺は彼等彼女等の行動に「な、何なんだ一体……」と、首を傾げることになった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

更に数日後、朝イチで冒険者ギルドで何かクエストがあるかと、確認していると。

 

 

 

「アルディス様」

 

「エイナさん? 別にさ……」

 

 

 

様は要らないですよ。と言いかけて、エイナさんの後ろにリヴェリアさんが立っていた。

 

 

 

「ええっと、何か用事でしょうか?」

 

「ああ、少し良いか?」

 

「はい」

 

 

 

リヴェリアさんの後に俺は付いて行く。

 

別室に移動して、向かいあってソファに座ると、リヴェリアさんが申し訳なさそうに頭を軽く下げた。

 

今部屋に居るのは、俺とリヴェリアさんだけだ。

 

 

 

「シャクティから、話は聞いた」

 

「そうですか」

 

「それと、君のことだが、恐らくだが森を魔剣で焼かれ、混乱していた時期に行方不明になった、王族の孫の可能性がある。あの一件で行方不明になった者も多いからな」

 

「そうなのですか? 両親は普通の生活をしていましたから、実感がありません」

 

「そうか。それと、最近アルディスの周りに、同胞達が居ると思うが」

 

「あ、はい。アレは?」

 

「エルフにとって、ハイエルフは敬うもの。ただ、私はロキ・ファミリアであること、あまり世話されるのが煩わしくてな。人を遠ざけている」

 

「……あぁ、それで、ロキ・ファミリア以外のエルフ達が、近付きやすいわたしの所へ?」

 

「ああ、ただ、君が、オラリオに連れてこられ、どのような目に逢ったのかは限られた者しか知らない。

 

けれど、君が両親が居らず、犯罪に巻き込まれて、このオラリオに来たのは、調べれば察することが出来る。ハイエルフは目立つからな」

 

 

 

あー、両親の居ない幼児とも言える年齢のハイエルフ。

 

しかも、ガネーシャ・ファミリアが俺が来た時期に、オラリオ内で活発に活動していた。

 

怪しいわな。

 

 

 

「それで、リヴェリアさんは」

 

「ロキ・ファミリアに所属している以上、力になれることは限られているが、話くらいは聞ける。それと同胞達がやり過ぎたら私に言え」

 

 

 

叱り飛ばしてやるから。

 

と、リヴェリアさんは言って帰った。

 

 

 

この日を境に視線を感じない日も出てきて、魔法。セイント・ランスをダンジョン内でも、使えるようになった。

 

速攻魔法だから、周りに速攻魔法だと分からないように、それっぽい詠唱を小声で唱えてから、素早く投げつけていた。

 

お陰で速攻魔法とは、バレてはいないみたいだ。

 

 

 

と言うわけで、この日は俺はかなりダンジョンに籠り、経験値稼ぎを行った。

 

 

 

その結果、ホームへの帰還が普段より遅くなり、薄暗い夜道を歩くことになり。

 

 

 

「誰ですか?」

 

「お嬢ちゃん、ハイエルフなんだって?」

 

 

 

気配があからさま過ぎて、素人の俺でも隠れている男達の気配に気づいた。

 

 

 

 

 

「それが?」

 

「俺達と一緒にきてくれねぇかな!!」

 

 

 

男四人組に襲われた。

 

俺は咄嗟に腰に吊るしていたショートソードを抜いて、突進してきた男の手を切りつけた。

 

けれど、

 

 

 

「驚いたな! 手首無くなるかと思ったぜ、流石はハイエルフだ!」

 

「ははっ、けど残念だったな、俺達はレベルは2だ」

 

「お嬢ちゃんのレベルとなまくらな武器、力のアビィリティじゃあ無理だぞ」

 

「さぁ、何処まで頑張れるかな?」

 

 

 

ゲームの記憶、いや?アルディスの記憶? ゲームでは部位破壊はなかった。

 

けど、今の一撃を入れた直後、男の手を切り落とす幻覚を見た。

 

けれど、駄目だった。

 

 

 

「まだよ!」

 

 

 

俺は状況に内心舌打ちをする。男が俺に掴みかかってきた。

 

タイミングを図って、男の顔面にセイント・ランスを叩き込む。

 

 

 

「ぎゃあああああ!!」

 

「馬鹿な!?」

 

「詠唱も無しに?!」

 

「予め唱えておいただけだ!」

 

 

 

意味があるか分からないが、速攻魔法を誤魔化すためにそんなことを叫びながら、俺はその場から逃げ出す。

 

 

 

ヒィヒィ言いながら、時折男達にセイント・ランスを投げつけて、もう少しでギルドと言うところで、

 

 

 

「通行禁止だぜ! この、クソガキ」

 

「きゃっ!」

 

 

 

通路の前と後ろ、挟み撃ちに合い、どちらに魔法を叩き込むか一瞬迷ったのが悪かった。

 

 

 

「手間かけさせやがって」

 

「さぁ、こっちに来い、売り手は決まってるんだ」

 

「そうすれば、こんな街とはおさらばだ」

 

 

 

後ろから羽交い締めにされ、そのまま首を絞められる。

 

苦しい!

 

俺は何とか抜け出そうとして、もがくが。

 

 

 

「暴れるなこのガキ!!」

 

 

 

男に更に首を絞め上げられ。ぶんぶんと左右に振り回されて一気に気が遠くなる、と同時に。あ、マズイ。と俺が思った時には遅かった。

 

俺の下半身が緩み蛇口が開けられた。

 

 

 

――チョロロロッ。

 

 

 

「あっ、このガキ漏らしやがった!」

 

「馬鹿、お前が首を絞めすぎなんだよ」

 

「きったねぇな。お前が運べよ」

 

「いいから、早く行こうぜ」

 

 

 

ヤバイ意識、朦朧としてきた。このまま気を失うのは本当にヤバイ。

 

何とか魔法を放とうと腕を動かそうとした時だった。

 

 

 

「何処へ行くつもりだ? ゴミ共」

 

「あ゛あ゛ん?」

 

 

 

第三者の声が聞こえ、俺を羽交い締めにしている男が声の方へ身体を向けると、そこに立っていたのは月明かりに照らされた白! と見惚れるほど美しい黒髪のエルフ。

 

 

 

――フィルヴィスさんだああぁぁぁ!!!!

 

 

 

「なんだてめぇ、あっちに」

「お、おい、こいつは!」

「黒髪に白い装備品! コイツ、パーティー殺しの【死妖精】だ!」

「なんだと!? あの呪われているって言う!?」

「お、おい、アイツはヤバイ、逃げるぞ!」

 

 

 

男達がそう叫んだときには遅かった。

 

 

 

「『ディオ・ティルソス』」

 

 

 

超短文詠唱により、男の一人が吹き飛んだ。地面に転がった男はまだ生きてはいた。

男達は仲間が一撃でやられるのを見て、即座に仲間を見捨てて逃げることを選んだ。

 

だが、既にその判断は遅かった。

 

 

 

「フィルヴィスに先を越されましたね」

 

 

 

ちょっとゴージャスと言うか、プライドが高そうな感じのエルフは、確か。デュオニュソス・ファミリアの副団長のアウラさん?

 

 

 

「て、てめぇは!」

 

「挟まれた?!」

 

「夜にあれだけ、派手に音をたてれば誰でも気づきますわよ」

 

 

 

大人しく寝ていなさい。

 

自身に近寄った男を杖で殴り飛ばす光景を最後に、俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目を覚ますと、俺は見慣れない部屋にいた。

 

周りを見渡すと、一人のエルフと目があった。

 

 

 

「良かった、目を覚ましましたたのですね、 アルディス様」

 

「えっと、貴女は確かアウラ・モーリエルさん?」

 

「名前を覚えてくださり。光栄ですわ」

 

「わたしはハイエルフらしいですが、リヴェリア様のように由緒正しい訳ではありませんよ」

 

「いえ、お顔を拝見して、貴女様は我らの守るべき尊い御方だと一目で分かりましたわ」

 

 

 

目を覚まして、王族扱いにビビる。

 

あ、そういえば。

 

 

 

「アウラさん、そう言えばフィルヴィスという方は? 出来れば、彼女にも御礼を言いたいのですが」

 

 

 

俺の言葉に渋い表情を作り、「少々お待ちを」と告げて、部屋を出ていった。

 

それから、しばらくして。部屋がノックされ、黒い髪のエルフ。フィルヴィスさん入ってきた。

 

直ぐ後には、アウラと神ディオ二ュソスが後に続く。

 

 

 

「初めまして、フィルヴィスさん。神ディオ二ュソス」

 

「御逢いできて光栄ですよ、アルディス・リーマ・アルフヘイム殿」

 

「わたしはハイエルフですが、畏まる必要はないですよ。神ディオ二ュソス」

 

 

 

原作を知らなかったら、確実に騙されていたな。

 

神酒で自己暗示かけているから、どう見ても善神にしか見えない。

 

 

 

「そして、フィルヴィスさん」

 

「はい」

 

「助けていただき、本当にありがとうございました。アウラさんとフィルヴィスさんには何と御礼を言ったら良いか」

 

 

 

俺が頭を下げると、フィルヴィスさんは「お気になさらず」と一言を言って直ぐに部屋から逃げるように出ていった。

 

 

 

その態度にアウラさんは、不機嫌そうな顔で見送り、ディオ二ュソスは、フィルヴィスさんのフォローに入る。

 

うん、どちらかと言えば。俺も中身はディオ二ュソスと似たようなものだ。

 

 

 

女の子の泣き叫ぶ姿、絶望する表情は大好きだ。

 

でなければ、【妖精王女 ~白濁の泉に沈む】みたいなハードなエロ同人RPGにハマらない。

 

 

 

けど、フィルヴィスさんも、レフィーヤも…

 

レフィ×フィルも好きなんだよね。

 

ゲームのあの魔法が使えれば……。

 

 

 

うん、ちょっと頑張ろうかな。

 

 

 

この日、俺はディオ二ュソス・ファミリアに泊まることになった。

 

 

 

「と、ところで、アウラさん。ちょっとお聞きしたいことが」

 

「何でしょうか?」

 

 

 

俺は耳をと呟き、アウラが俺に耳を寄せてきたので小声で問う。

 

 

 

「わたしの着替えは、誰が?」

 

「わたくしが行いました、御安心を」

 

「御手数をお掛けしました」

 

 

 

いえいえ、とニコニコと微笑むアウラ。

 

うん、かなり恥ずかしいな、これは。

 

 

 

▼△▼△▼

 

 

 

 

 

あれから、数日が経った。

翌朝、俺がホーム帰ると出迎えてくれたヘスティア様がギャン泣きした。

 

で、俺を誘拐しようとしていた奴等の依頼主は、ラキア王国の貴族だと分かった。

 

奴等の依頼は美形のエルフの少女。

 

初めから俺を狙っていた訳ではなかったらしい。

 

けれど、ハイエルフの少女が現れたと聞いて、俺に狙いをつけたようだ。

 

 

 

まあ、どの道エルフを狙っていたのは変わらない。

 

エルフの皆様がマジ切れ中。

 

ただでさえ、ラキア王国に魔剣で森を焼かれて、多くの同胞が犠牲になったのだ。

 

奇跡のように行方不明になったと思われるハイエルフの娘か孫が、オラリオにたどり着いた。

そのハイエルフの少女を奴隷として誘拐しようとしたのだ。

 

同族意識が強くなくても、自分達の王族がそんな目に会えばキレるだろう。

 

 

まあ、だからと言って、何か出来るわけではない。

 

レベルの高い冒険者はオラリオの貴重な人材だ、外に出るにも手続きが必要だしね。

 

不満を漏らしていたエルフ達だったが、直ぐに機嫌がよくなった。なぜ? と思っていたら「そろそろラキアが来る可能性がある。その時に思う存分に殺れ」とギルドのお偉いさんが、エルフ達に言ったとか言わないとか。

 

しばらくの間、エルフ達がギラついていた。

特に冒険者や元冒険者は武器の整備をしたり、気合いを入れて鍛練したりしていた。

 

スキルの力で俺への好感度がブーストしていたとしても、エルフ達の同族意識にちょっとビビることになった一件でだった。

 

 

 

「朝の体操は終わりっと」

 

「アル君、ご飯出来たよ」

 

「はーい、今行きます」

 

 

 

モグモグとジャガ丸君サンドを食べながら、今日の予定について話し合う。

 

 

 

「今日は臨時でパーティーを組む日かい?」

 

「はい、先日アウラさん達と臨時のパーティーを組んだら、他のレベル1のエルフの方達から誘われたんですよ」

 

 

 

神と俺の二人だけのファミリア。

 

俺の身の安全を考えて、他のエルフ達からかなり心配された。

 

 

 

中堅のエルフが多いファミリアから、改宗を勧められたけど、恩神に恩を返していない。それに、わたしはヘスティア様が大好きなんです。と、断ったらヘスティア様が嬉し泣きしていた。

 

 

 

うん、俺はヘスティア様を泣かせてばかりだな。

 

まあ、そんな感じで日々が過ぎていった。

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

「おはようございます。フィルヴィスさん」

 

「お、おはようございます」

 

「というわけで、パーティーを組みましょう」

 

「お、お戯れを」

 

 

 

汗をかきながら、顔を強張らせるフィルヴィスさん。

 

ちなみに、既に数回パーティーに誘っている。

 

理由は、フィルヴィスさんを救済するためだ。

 

 

 

まあ、現状は不可能に近い。けど、あの怪物になったフィルヴィスさんを助けられる可能性がある魔法が一つだけある。

 

 

 

それは、浄化の魔法だ!

 

 

 

処女のトゥルーエンドより、こっちがトゥルーじゃね? と思うような魔王浄化エンドで必要な魔法だ。

 

 

 

正直、覚えられる可能性はかなり低い。

 

低いが、それでもフィルヴィスさん大好きだから、頑張るのだ!!

 

 

 

「前にも言いましたが、方向性は違いますが」

 

 

 

俺はフィルヴィスさんの耳元で囁く。

 

 

 

「身体が穢れているわたしなら、パーティーを組んでも大丈夫だと思いますよ」

 

「と、兎に角ダメです!」

 

 

 

そう言って、走り去るフィルヴィスさん。

 

デュオニュソス・ファミリアで泊まった日に、俺はフィルヴィスさんを初めてパーティーに誘った時に、フィルヴィスさんには即座に断られた。

 

 

 

「また、会いましょうね!!」

 

 

 

だから俺は何故と聞いたら、自分は穢れているとフィルヴィスさんは言ったので、アウラさんも居たけど、この身体が既に男達に穢されていることを教え、笑顔で「方向性は違うけれど、同じ穢れ同士だからパーティーを組んでも、わたしは死なないわ。だから、フィルヴィスさん、わたしとパーティーを組んで」と、言ったらアウラさんとフィルヴィスさん二人に抱き締められた。

 

 

 

どうやら俺の説明が進むにつれ、俺の顔色はかなり悪くなっていき、最後には死人みたいな顔色で笑顔で「パーティーを組んで」は、アウラさんとフィルヴィスさんの心にクリティカルが入ったらしい。

 

 

 

深い溝がある二人が息ピッタリに、

 

 

 

「貴女様は穢れてなど御座いませんわ!」

 

「アウラのいう通りです。私の為に秘すべきことを明かしてくれた心優しい貴女様は穢れていません!」

 

 

 

と言う、二人の励ましが止まったところで、俺がフィルヴィスに「なら、パーティー組んでくれますね!」と笑顔で追撃かけたら、フィルヴィスさんが凄い困った顔をしながら、アウラさんに助けを求め、アウラさんが深い溜め息を吐きながら、俺に「無理強いは駄目ですわ。アルディス様」と言われてその場は引いた。

 

 

 

とりあえず、これで俺とフィルヴィスさんに接点ができた。

 

 

 

うまくいけば、救済出来れば、レフィ×フィルだけではなく。

 

ベル×フィルもいけるかもしれない。

 

 

 

うん、やる気出てきた。

 

あ、そろそろ夕方か、なら上の階層でラストスパートだ。

 

 

 

 

 

「セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランスセイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランス、セイント・ランスセイント・ランス、セイント・ランス」

 

 

 

 

 

ソロの時は、魔力アビリティ上げにひたすらセイント・ランスを投げ続ける。

 

で、魔力が、なくなってきたな。と思ったら。

 

 

 

「こふっ!!」

 

 

 

耐久上げもかねて、弱いモンスターにワザと殴られて、魔力回復。

 

まあ、魔法を使いまくるのは、帰る直前だけにしてるけどね。

 

 

 

ゲームやっていた人間だから、どうしてもソロの時は効率を求めてしまう。

 

それと、ベル君の成長速度って、やはり異常だわ。

 

この身体はスタミナと恩恵があるので、長時間戦っていても平気だけど、効率を高めても限界がある。

 

 

 

普通の経験値上昇スキルがほしい。

 

アレは死にスキルになったし。

 

 

 

地道に鍛えるしかないか。

 

 

 

▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

さて、ベル君が合流する前に、俺は自分の立ち位置をある程度考えることにした。

 

 

 

遊撃とアタッカーのベル君。指揮とアイテム管理のサポーターのリリ。鍛冶師兼戦士のヴェルフ。避け前衛の命《みこと》。支援の春姫。恐らく後半で合流すると思う魔法戦士のリュー。

 

 

 

後はダフネとカサンドラ、アイシャともパーティーを組むだろう。タケミカヅチ・ファミリアの桜花と千草も。

 

 

 

役割的に盾が足りないのかな? 桜花は盾と両手斧を使い分けるから、一人くらい盾を常に装備している方が良いだろう。

それにダフネとカサンドラ、アイシャ、桜花と千草は常にパーティーを組むわけではない。

 

 

 

ベル君はトラブルに見舞われ過ぎなところを考えると、足の遅くなる重い装備はあまり良くないかな。

 

 

ベル君はジョブ的に軽戦士、リューは軽魔法戦士。と言えるだろう。

 

 

ゲームではアルディスのクラスチェンジが出来た。

 

ダンサーなどの特殊な職業もあるが結局は、戦士、魔法使い、魔法戦士の三つから選ぶことになる。

 

√によって敵の弱点が偏るからだ。

 

 

 

「やはり、目指すなら魔法戦士系かな」

 

 

 

ゲームの魔法戦士の最終装備のデザインは戦乙女だったなぁ、可愛いからオーダーメイドの装備品はあんな感じにするか。

 

浄化の魔法も憶える予定だし、見栄えは良いはず。

実際に浄化魔法が覚えらるのかは分からないけど。

 

ちなみに、処女√だとアルディスの最終装備は色気の欠片もないヘビィプレートで、デカイ盾と破邪のメイスで魔王とひたすら殴り合いを行うことになる。

 

しっかりレベルを上げていれば勝てるのだが、脳筋な必殺技の応酬なので、初見では変な笑いが出てしまった。

 

 

 

「ちょっと重めの鎧兜、盾か」

 

 

重すぎる装備は駄目。

けれど、重りとなる装備を身に付けて走り回れば力や耐久、俊敏も上がりやすくなるだろう。

その防具をどうするか。

 

鍛冶師で直ぐに思い浮かぶのは、ヴェルフだ。

でも、ヴェルフとの接触はまだしない方が良い。

ハイエルフがクロッゾと仲良くするのは問題がある。

 

もう一人知っている鍛冶師は、ヴェルフの所属しているヘファイストス・ファミリアの団長の椿だが。

 

ないな。駆け出しに武具作るわけがないし、それに金もない。

 

 

 

となると、俺と同じく駆け出しの鍛冶師を見つける必要がある訳だけど。

 

オーダーメイドのことを考えると女性鍛冶師が良いな。

 

ヘスティア様に経由で、紹介してもらえるか聞いてみよう。

 

 

 

「僕に任せたまえ!」

 

 

俺が聞いてみると、自信満々にヘスティア様は答えた。

ちょっと不安だったけど、ほしい武具のスケッチ(美術はかなり得意)を渡して数日後。

 

「あ、あのはじめまして、エクレアと申します!」

 

鍛冶師と言うよりは、店の看板娘みたいな、鎚を振るえるの? と首を傾げたくなる美少女を紹介してもらった。

 

神ヘファイストスの話だと、才能はあるが容姿と大人しめの性格、それと作る作品のデザインが原因で、肩身の狭い思いをしているらしい。

 

「アルディスです。アルディス・リーマ・アルフヘイム」

 

「あ、あの、このスケッチ。アルディスちゃ、さんが描いたのですか?」

 

「えぇ、飾りのない質実剛健な武具も好きですが、デザインがある方が好きなので」

 

「凄く綺麗な鎧ですね」

 

「ありがとうございます。けど、こんなデザインを作ってと言ったら普通は怒られそうで」

 

「たぶん、それを見越してヘファイストス様は私を紹介したのかもしれません」

 

「それは」

 

 

 

どういう、と聞く前にエクレアは俺にスケッチを差し出した。

 

 

 

「こ、これは?!」

 

「とある女神様が教えてくれた水着を参考に作った、ヒューマン向けの軽鎧、ビキニアーマーです!!」

 

 

 

俺が驚いていると、悲しげにエクレアは語った。

 

 

 

「でも、可愛いのに、誰も買ってくれないんです」

 

「ま、まあ、肌が丸見え……、ん!?」

 

俺はビキニアーマーを再確認する。

このビキニアーマーは、重要箇所は守られている。

盾持ちとして、耐久を上げたい。盾の練習もしたい。ダメージを受けるとマインド回復するスキルがある。

 

「……エクレアさん」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「この鎧いくらですか?」

 

「えぇっ!?」

 

 

 

この日、ビキニアーマーを着たロリハイエルフが爆誕した。

 

 



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効率重視でベル君を待つ。

妖精→幼生→ようせい→幼児→ロリ!!

無理矢理過ぎるかな?

駆け出し鍛冶師のエクレアさんの元ネタは世界な樹木の道具屋さんの看板娘からです。

あ、ちょっと捏造設定が入ります。


ビキニアーマーで、ダンジョンに行き、帰ってきたらエイナさんに怒られた翌日。

俺は朝イチでギルドへ向かうと、リヴェリアさんが待ち構えていた。

 

「早起きは感心だ」

 

ニコリともせず、真顔で腕を組んで待っていたリヴェリアさんを見て逃げたくなったが、逃げれば苦行が倍になると分かっていたので、大人しくギルドの個室に連行された。

 

そこから、やれ肌を出すな。無防備過ぎる。ポーションがあるからと言ってソロでモンスターの攻撃をワザと食らって耐久を上げるな。等々。

お説教が終わった時にはグッタリすることになった。

で、最後にハイエルフの見分け方について、教えてもらった。

 

「ハイエルフを見分けるには、いくつかの方法がある。まず耳が他より尖っていたり、大きかったりする。次に髪の色だ。白妖精の王族の祖の髪は私より鮮やかな翡翠色だったそうだ。後は瞳の色だな。そして、魔力の質だ。王族だけが持つとされるエルフ達にこの方が我々の王族である、と思わせる呪いとも言える魔力の質がハイエルフ最大の特徴だ。髪、耳、瞳の色は普通のエルフでも持つ可能性がある。だから、ハイエルフだと一番分かりやすいのは、魔力の質。アルディス、君の場合は他の白妖精の王族にはない特徴がある」

「それは?」

「その虹色の髪だ」

 

実はわたしは異世界のハイエルフです。と言いたかったけど、言えるわけがない。

だって、リヴェリアさん。なんか自信満々でちょっとドヤ顔だし、恥かかせるわけにはいかないだろ。

 

「今は滅多に見ないが、黒妖精族の王族の祖の髪は白銀、光が当たると虹色に輝くと言い伝えられている」

 

まさか、本当に虹色に輝く髪を見れるとは驚いた。とリヴェリアさんは言った。

 

ちなみに、今の黒妖精族の王族は銀髪が多いらしい。

 

「過去に白妖精と黒妖精の王族同士で婚姻をしていたこともある。アルディスの髪はその証だ。だからこそ、気を付けてくれ」

 

幼き同胞よ。と言ってリヴェリアさんは帰った。

 

うーん、やはり面倒な政治とか思想があるみたいだな。

利用されない為に、アビリティを上げてレベル上げしないと。

 

まずは、クエスト探してからだな。

そんなことを考えながら、ギルドのクエスト掲示板の所に移動しようとして、

 

「お待ちしてましたわ、アルディス様」

 

今日は時間があるので、良ければパーティーを組みませんか? とアウラさん達が怒りマークを頭に張り付けて待ち構えていた。

 

結果、リヴェリアさん程ではないが、肌を出すな! と怒られた。

ちなみにビキニアーマーロリハイエルフは、アマゾネス達に「エルフもやるじゃない」と、俺が切っ掛けで興味を持たれたらしく、ビキニアーマーはそこそこ売れることになった。

 

後、一部の特殊な性癖の神々から、俺のビキニアーマー姿は好評で、かなり騒いでいたが。

その話は直ぐに周りに知れわたり、その神々への評価が凄まじく下がったらしい。

ロリコン死すべし。

 

兎も角、今日も頑張って戦った。

アウラさんたちから見ると、かなりハイペースらしいが苦ではない。

 

「弱いままは嫌だから」

 

それに強くならないとヤバイ。

だから大丈夫だよ。と告げると、何故か痛ましいものを見る目で見られた。

この時、俺は忘れていたけど。この身体の年齢は○0歳なんだよね。

辛い経験をしてきたから、人並み以上に強くなろうとする。

うん、大人から見れば「無茶するな」と言いたいし、見ていて心苦しいのだろう。

 

でも、俺は気付かず戦い続ける。

 

それとアウラさん達が、俺に更に優しくする切っ掛けがあった。

それは、ダンジョンでトイレ休憩の時のことだ。

 

「終わりましたよ」

「あ、はい」

「どうかしましたか?」

「い、いえ、その平気ですか?」

「トイレですか? ええ、女性だけのパーティーですし、それに」

「それに?」

 

―――人前でするのは慣れてますから。

 

自然と口から出た一言。

自覚は無かったが俺の顔色が一時的に、かなり悪くなったらしい。

しばらくの間、俺の過去を想像して、憤りを隠せないアウラさん達によるモンスターの虐殺が行われた。

 

その気迫はたまたま近くを通りかかった、冒険者のパーティーがドン引きするほどだった。

 

うん、俺も正直、怖かったよ。

俺が色々あってこの街にたどり着いたの何となく察しているから余計に想像力を駆り立てられるみたいだ。

 

▼△▼△▼△

 

ロキ・ファミリアのホーム、個室が並ぶエリアにロキ・ファミリアの神、ロキが訪れ自室から出てきたリヴェリアに声をかけた。

 

「おー、リヴェリア。例のハイエルフのロリっ子はどないや? 何でもビキニアーマーで街を歩いたらしいやんか」

 

見たかったわー、くねくね体を動かすロキにリヴェリアは溜め息をつく。

 

「無茶もしていたのでな。良く言い聞かせた。あれが中堅ファミリアなら、なにも言わないが……」

「あのドチビのファミリアやもんな。大人がいないしなー。あ、なんならウチで引き取るか? なかなか将来有望みたいやし」

「いや、止めておけ。神ヘスティアに恩がある以上、此方へは来ないだろう。それにハイエルフを二人も抱えるとやっかみを受けるぞ」

 

やっかみなら今更やん、と笑う神。

 

「でも、そろそろ大型ルーキーが欲しいとは思うねん」

 

何処かに落ちてへんかな。と呟くロキに落ちてる訳がなかろう、とリヴェリアに窘められるロキ。

 

「今度、連れてきて!」

「断る」

 

本人は平気そうに振る舞っているが、ロキがアルディスにセクハラして、トラウマがよみがえって倒れられでもしたら、何と詫びれば良いのか、リヴェリアには分からなかった。

 

ハイエルフだからこそ教えてもらった発見時のアルディスの状態は同じ女性として、普段クールな彼女も憤りを隠せなかった。

 

普通なら心が壊れてもおかしくない。けれど、アルディスは何事も無かったかのような様子だ。

 

そして、しばらくして情報を集めて分かったのは、アルディスにとって、あのようなことが日常になるほど行われていたようだったことだ。

 

事情を知るヘスティア、ミアハ、ガネーシャ、ナァーザ、リヴェリア、フィルヴィス、アウラ、シャクティが一度集まり、話し合ったほど。

 

アルディスの精神状態は危ういと、大人達は考えていた。

 

まあ、実際は記憶や身体が覚えているが、中身。心には負担は0なのだが。

 

「だが、レフィーヤには会わせた方が良いか」

「なんでや?」

「アルディスは既に理想の戦闘スタイルを持ち、それを目指してダンジョンへ挑んでいる。更に戦っている姿を見たが、あの年であそこまで流れるように動けるのは異常だ。レフィーヤの良い刺激になるかもしれない」

 

更にリヴェリアは、才能はアイズ以上かもしれない。とロキに告げた。

それを聞いたロキは悔しそうにしていた。

 

「今は小さいが、ヘスティア・ファミリアが大きくなった時の為に、縁を結んでおけば損はないだろう」

 

フレイヤ・ファミリアとは、睨みあっている現状。

不要な敵を作るつもりはない。

あのハイエルフの少女は、自分達の居る場所まで上がってくる可能性は高い。

その時にフレイヤ・ファミリアと睨み合っている横から殴られる可能性は少しでも減らしておきたい。

幼い同胞が放っておけないのもあるが。

 

「ロキ」

「なんや~」

「神ヘスティアと喧嘩は良いが、抗争は止めてくれよ」

「せーへん、せーへんよ」

 

弱いものイジメはすきやないしな。そう言ってロキはその場を去った。

 

リヴェリアはロキを見送り、一瞬これが神々の言うフラグというやつなのだろうか? と考えて縁起でもないと忘れることにした。

 

▼△▼△▼△

 

 

「ふぅ、終わった」

 

今日はソロの日。

ダンジョンでモンスターの攻撃を受けながら、盾の練習をする。

それと平行して、セイント・ランスの検証を続けている。

改めて、セイント・ランスの特性だ。

 

【セイント・ランス】

 

・武器魔法

・速攻魔法

・神聖属性

・破壊または投擲することで消滅

 

武器魔法は、呼び出してそのまま槍として攻撃、防御にも使える。

速攻魔法はベル君のファイアボルトのように詠唱をしないで発動出来る。

神聖属性だが、火や雷はあるのは知っていた。

けど属性の特徴が分からなかったので調べた結果、この神聖属性が凶悪だった。

試しにゴブリンをうつ伏せに引き倒して、背中を踏みつけた状態で、ゴブリンにセイント・ランスを近づけたのだが、近づけただけでゴブリンが苦しみ出した。

ゲームでは破邪の魔法とも言われていたので、モンスターへの特攻の魔法のようだ。

ゴブリンに穂先を押し当てるだけで、ゴブリンが焼けたようにダメージを受けていた。

最後の破壊または投擲することで消滅だけど。

武器として使う場合は優秀な槍だ。

アウラさん達曰く、レベル1が使う分にはかなり良い武器だと言われた。

予想だけど、レベルか魔力。或いは両方が上がれば更に強くなる気がする。

 

ただ、ゲームではこのセイント・ランスはどちらかと言えば補助的なものだった。

使い方次第では強力な魔法ではあるけど。

 

だから、この魔法が強くなると信じて、俺は使い続ける。

 

「そろそろ、来る時期だ」

 

ベル君がミノタウロスを倒すまでに、俺もレベル2になれるアビリティでないと、ウォーゲームで足手まといになる。

 

頑張れ、俺!!

 

▼△▼△▼△

 

 

その日、ベル・クラネルはオラリオの街に入った。

ダンジョンに出会いを求めてやって来たハーレム願望のある少年は、街に入ってそうそう視線を感じていた。

何だろう? とベルが宿を探しながら街を歩いていると

 

「君、もしかしてベル・クラネルか?」

「え、あ、はい。そうですけど」

 

エルフの青年に声をかけられ、更に名前まで呼ばれて驚くベル。

だが、次の瞬間か、ベルは更に驚くことになる。

 

「かーくほーっ!!」

「ええええええええええええええ!!」

 

突然、エルフの青年に抱き締められたのだ。ベルは咄嗟に叫んだ。

 

「出会いを求めているけど、男性は嫌です!!」

「ば、馬鹿な勘違いするな!」

 

そして、ぞろぞろ集まってくるエルフ達。

ベルは突然のことに驚くが、まとめ役のような老エルフの男性が事情を話してくれた。

何でもハイエルフの王女が自分を探しているらしい。

初めは同性同名かと思ったベルだったが、渡された似顔絵がそっくりだったので、首を傾げながらも案内されたヘスティア・ファミリアのホームへと向かった。

 

「では、ワシはこれで」

「あ、ありがとうございました」

 

ボロボロな教会を見て、人が住んでいるのかと不安になるが、ベルは教会の扉をノックすると直ぐに扉は開けられ。

 

「あ、あの」

「ベル、クラネル?」

 

教会の扉を開けて出てきたのは、輝く虹色の髪を持つ見惚れるほどに美しい、エルフの幼い少女だった。

 

「入って」

「え?」

「入って、わたしはずっと貴方を待っていました」

 

まるで物語の一場面のような状況に、ベルは胸を高鳴らせた。

 

二人はそのままホーム地下室へ入り、ベルはアルディスと名乗った少女に、

 

「お願いです、何でもしますから、ヘスティア・ファミリアに入って下さい!」

「え、ええええええええええええええ!! 何で服を脱脱ぐのっ!?」

 

スタイリッシュに全裸土下座を決められた。

 

「ファミリアに入ってくれないなら悲鳴を上げますよ!!」

「止めてぇっ!!」

 

 

 

 

で、その日の夕方。

 

「それでは、二人目の団員。ベルさんにカンパーイ!!!」

「カンパーイ!」

「か、かんぱーい」

 

二人目の団員と言うことで、仲良くしているデメテル様からもらった野菜を使って鍋にしてみた。ちなみに肉入り、まあ、安い挽き肉で作った肉団子だけど。

 

「さぁ、遠慮しないで食べてくれよ、ベル君。アル君の料理は最高だからな」

「大袈裟ですよヘスティア様。あ、ベルさん、神タケミカヅチからもらった調味料で味付けをしているので、極東風ですが平気ですか?」

「あ、大丈夫だよ、アルディス」

 

和やかな歓迎会を終えて、翌日ベル・クラネルは冒険者になった。

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

ベルきゅんが、冒険者になって数日。

 

ベルきゅんがトマト野郎になって帰ってきた。

狙い通りにアイズさんに一目惚れしたようだ。

よしよし、これで【憧憬一途】が発現しなかったら、歓楽街の素敵なお兄さんズの店にベルきゅんを叩き込んで、ヘスティア様とこのオラリオから脱出するかな。

強いベルきゅんが居ないと七体目を倒せないしね。

 

あ、それと俺もロリだけど、一応は監督責任で怒られたが。

まあ、知ってて一人で行動させたから、甘んじて受けよう。

 

で、ギルドからの帰り道。

 

「ベルさん」

「ん、なに? アルディス」

「アイズさん、凄かったですか?」

「うん! 凄かったよ!! まず」

 

ベルきゅんの語りが止まらなかった。

で、その日の夕方、ベルきゅんがステイタス更新したのだが。

 

「ですよねー」

 

と言いながら、部屋を出てきたベルきゅんの後に、俺がヘスティア様に、小声で問いかける。

 

「スキル発現しましたか?」

「なっ」

 

俺の問いに驚きながらも、「何故、分かったんだい?」と聞かれたので、「ベルさん真っ直ぐで、目標を見つけたので」と、答えるとヘスティア様は微妙な表情をしながら、他言無用と言ってから教えてくれた。

原作通りのスキル【憧憬一途】だった。

 

「ベルさんには内緒ですね。下手すれば増長してスキルの効果が無くなります。それに狙われるでしょうね」

「あぁ、そうだね。僕もそう思うよ」

 

明日からが本番だ。

 

 

翌日、俺はベルきゅんにしっかりと用意していた防具を着せて、ダンジョンに送り出した。

ここ数日、ちゃんとアドバイスもして、上層なら問題ない筈だ。

 

俺? 俺はエクレアに武具の整備を頼んでいるから今日は休み。

 

で、その夕刻。

 

「……えっ」

 

ベルきゅんの驚く声が聞こえたので、ステイタス更新しているヘスティア様に近づく。

 

「か、神様、これ書き写すの間違ってたりしませんか……?」

「どれどれ? ちょっと見せて」

 

俺はベルきゅんが見ているステイタスの写しを見てみる。

凄い伸びてるね! 羨ましい!

 

「あぁ、成長期ですね」

「「え?」」

 

ヘスティア様とベルきゅんが揃って声を出した。

 

「明確な目標、憧憬が出来るとモチベーションが上がりますから、たまにあるみたいですよ。成長期」

「そ、そうなんだ」

 

とりあえず、納得したベルを置いといて、俺はヘスティアにサムズアップしておいた。

ヘスティア様も助かったと口パクで答えた。

 

「そうだ。二人とも今日はアルバイトの打ち上げがあるんだ。悪いけど夕食は二人で食べてくれ」

「あ、それは残念ですね」

「僕も残念だよ。じゃ、行ってくるね!」

 

そう言って、ヘスティア様はホームを出た。

 

「さて、ベルさん夕食は何が食べたいですか?」

「あ、それなんですけど、今日約束が……」

 

申し訳なさそうなベルきゅんに、俺は分かっていたけど、聞いてみた。

 

 

 

 

 

「ここ、だよね?」

「えぇ、ここですよ」

 

店の前で圧倒されているベルきゅん。

そこに現れたのは、

 

「ベルさんっ、あら?」

「はじめまして、アルディスと言います。ベルさんのお目付け役です」

「はじめまして、シルです」

 

で、俺達はカウンター席に通される。

 

「アンタがシルのお客さんかい? ははっ、冒険者のくせに可愛い顔してるねえ! そっちの嬢ちゃんもね!」

 

可愛い顔と言われて、暗い顔をするベルきゅんに、俺はフォローを入れておく。

 

「ありがとうございます。それとベルさん」

「なに? アルディス」

「わたしは、キスするならオークみたいな男臭い顔より、ベルさんみたいな可愛い顔が良いです。ねっ、シルさん!!」

 

俺はベルきゅんの背後に立っていたシルさんにキラーパスをすると、やや、焦った感じでシルさんは「男臭いよりはベルさんかな」と目を逸らしながら言った。

お互いに顔を赤らめはじめたベルきゅんとシルさんを放っておいて、俺は注文をすることにした。

 

「注文良いですか?」

「投げておいて、二人を放置するなんて、なかなか酷い嬢ちゃんだね」

「ちょっとした仕返しです。本日のオススメをお願いします。あ、今日はお酒は要りませんよ」

「ガキに飲ませる酒は無いよ! 坊主酒は」

「あ、えっと、遠慮します」

「あいよ!」

 

ドン! と醸造酒を置かれて固まるベルきゅん。

何で聞いたんだよ。って顔をしているので、

 

俺が「大丈夫? 飲めるから、わたしが飲もうか?」と聞くと「大丈夫だよアルディス、」と一気に飲み干して、「良い飲みっぷりだ!」と、ミア母さんが追加の醸造酒をベルきゅんのテーブルの前に置いた。

固まる俺とベルきゅん。

うん、本当にごめん、ベルきゅん。

 

帰り道のこともあるから、チビチビ醸造酒を飲むようにベルきゅんに言い、店員さんに水を追加で注文してそれとなくベルきゅんに飲ませる。

 

大分食事が進んだところで、シルさんが合流。

シルさんの邪魔をしないように、ゲームの時を思い出して気配をゆっくり消した。

 

で、ちょっと時間が流れて、ロキ・ファミリアがやって来た。

ベルきゅんがソワソワし始め、ついにあの場面がきた。

 

「そうだ、アイズ! お前あの話を聞かせてやれよ!」

「あの話……?」

 

震えはじめるベルきゅん。

精神を研ぎ澄ませ、準備をする俺。

 

「それにだぜ? そのトマト野郎、叫びながらどっか行っちまってっ……ぶくくっ! うちのお姫様助けた相手に逃げられてやんのおっ!」

 

顔色が悪くなり、強く両手を握りしめるベルきゅん。

うん、悔しそうな表情だけど、男の子だ。

そして、あのセリフが聞こえてきた。

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

 

ベルは椅子を飛ばして、立ち上がり店から飛び出して言った。

さて、俺も鶏冠に来ている。

一発くらい噛ましてやるか。

 

「女将さん」

「なんだい?」

「明日、本人が頭を下げに来るのでそれまで待ってください。わたしが払うと無粋なので」

 

不機嫌なミア母さんにそう言うと「分かった」と頷いた。

 

そして、俺はロキ・ファミリアの下へゆっくり近づく。

 

「アルディス?」

「リヴェリアさんこんばんわ。そちらの団員さんに、一言良いですか?」

「ああん? なんだガキ?」

「はじめまして、酒に酔わないと女を口説けないタマナシ野郎」

 

その瞬間、その場が凍りついた。

アイズさんだけは、「タマナシ?」と首を傾げていた。

 

「このメスガキ!」

 

怒気を滲ませて立ち上がるベート。

慌てて周りが止めに入ろうとする。

その前に俺は行動にでる。

好きなキャラでもあるベートではあるが、流石に鶏冠にきているので、言い返してやる。

 

まず、全てを見透かすように、じっとベートの眼を見つめて、次に「はっ」と、嘲笑ってやる。

 

「あぁ、やっぱり見てわかりました。貴方は守りきれなかったんですね」

「あ゛あ゛ん?」

「雌を守りきれなかった負け犬はやっぱり、吠えるしかできないんですね!」

 

最後に誰がとは言いませんが、可哀相に。と付け加えると。次の瞬間、顔面に凄まじい衝撃を受けて、宙を舞い、俺の見ている世界がスローモーションになった。

 

あ、これヤバい。流石に死ぬかも。

 

そして、恐らくカウンターに叩きつけられて、俺は気を失った。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

「口で喧嘩を売られたので、口で返したら、いきなり顔を殴られました。レベル差がなくても酷くないですか!?」

「本当にすまない。ベートにはよく言い聞かせておく」

「でも、結果としてロキ・ファミリアが、怪物進呈紛いのことを行い、それを使って他のファミリアを侮辱するとは思いませんでしたよ。リヴェリアさん」

「重ねて、すまない」

 

本当に申し訳なさそうにしているリヴェリアさんに「冗談です。気にしないでください」と告げる。

とりあえず、あの騒ぎから一夜が開けた。

俺は豊穣の女主人に怪我の治療で一晩泊めてもらった。

まあ、気を失ったままだった訳だが。

 

で、先ほどベルきゅんがミア母さんに金を支払ってそのあと俺に顔を見せてから、ダンジョンへ向かった。

 

怪我は治ったが、俺がベートと口喧嘩をして、ぶっ飛ばされたことを聞いたらしく。悔しそうに「ごめん」と謝っていた。

 

ちなみにヘスティア様にはシルさんが連絡を入れているから問題ない。

 

「これはロキからの詫びの品だ。受け取ってくれ」

「ファミリアから、ということですか?」

「ああ、ミノタウロスの一件と昨日の一件含めてだ」

「受け取りましょう。わたしもまた芋虫の夢などを見ましたら、教えますね」

「……ああ、出来れば頼む。アルディスの夢のお陰で被害は最小限だった」

「いえ、偶然です」

 

ベルきゅんがトマト野郎になるイベントの前の遠征。

見送りの時に「夢を見たんです」「夢?」「はい、芋虫には近づかないで下さい。溶かされてしまいます」と伝えたところ。リヴェリアは「分かった」と笑って遠征に向かったのだが。

俺の夢の通りに芋虫によって被害と遠征が事実上の失敗したことで、スキルによる未来予知が出来ると思われているようだ。

 

「確認だが、夢とはスキルか?」

「お答えできません。ですが、これからも夢を見ることがあればご協力します。ですから」

 

ロキ・ファミリアとは仲良くしたいですね。と微笑むと、リヴェリアさんは真剣な表情で頷いた。

 

 

 

 

 

 

「流石はレベル5。手加減していただろうけど、耐久の上がりが凄かった」

 

前にフィルヴィスさん、アウラさんにそれとなくアビリティの上昇数を聞いてみたが、ベルきゅんほどではないが。俺もハイペースでアビリティが上がっているらしい。

 

ちなみに、ベートに殴られた一件は、ヘスティア様がロキに怒っていたが、ロキがファミリアとして詫びを入れたので、ヘスティア様も渋々受け入れた。

 

非はロキ・ファミリアにあるし、ロキ・ファミリアとしても、レベル1のロリハイエルフを殴ったことで、ロキ・ファミリアへの評判が必要以上に悪くなる前に謝って、この件を終わらせたいのだろう。

 

まあ、エルフ達には物凄い勢いで噂が広まって、翌日街を歩いたときにエルフ達から花やら薬やらを見舞いの品として渡された。

ヘスティア様もバイト中に俺へと色々差し入れを貰ったらしい。

うーん、罪悪感が……。

ポーションで既に怪我はないのだけど。

 

 

「四十八……、四十九……、五十……っ、ふう、終わり」

「お疲れ様、アル君。相変わらず君の筋力トレーニングは凄いけど無理しちゃ駄目だぜ」

「大丈夫ですよ。重りも恩恵を考えて使ってますから」

 

 

俺はエクレアに作ってもった冒険者用の大型ダンベルでトレーニングを続けた。

 

そろそろモンスターフィリアか。

うーん、レフィーヤとも顔を合わせたいし、モンスターフィリアは、レフィーヤを探そう。

そんなことを考えながら、俺はトレーニングを続けた。

 

 

 




誤字指摘、ありがとうございます( ノ;_ _)ノ

次はモンスターフィリアまでに起こった日常回です。



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日常

評判、感想、誤字指摘、本当にありがとうございます。

想像以上に感想がきて驚いています。
ありがとうございます。



ベルきゅんが冒険者になって直ぐのこと。

ベルきゅんをスパルタなエイナさんの座学にぶち込んで、その間に俺はナァーザさんの下へ移動。

ベルきゅんは人が善すぎるので、その辺をちょっと鍛えないと駄目だと思う。

全裸土下座で即落ちしたからね。

 

「分かった。新人冒険者に都会の厳しさを教える」

「お願いします。ベルさんは、女性に甘い部分がありますから、思い切りやってください」

「楽しみ、幾らになるかな?」

 

ふふふっ、と笑うナァーザさんに別れを告げて店を出る。次に向かったのは、エクレアの所だ。

アニメのヴェルフのファミリアから貸してもらっている工房と同じように質素な工房だ。

作業場は鍛冶師らしいが、休憩する小部屋には少女らしい小物が置いてあり。

被服も行っているらしく、裁縫道具と胴体の木製のマネキンなどもある。

職人として、将来が楽しみだ。

 

「アルディス、いらっしゃい。今日はどうしたの?」

「アレは出来た?」

「アレ? えぇ、頼まれたから作ったけれど。こんなの武器にもならないわよ」

「問題ない、練習用だから」

「練習用?」

 

俺はエクレアに後は内緒と、言ってその場を後にする。

それから街で色々と調べてから、冒険者ギルドにベルきゅんを迎えに行くと、グッタリしているベルきゅんを発見。

 

「お疲れ様、ベルさん」

「あはは、冒険者って覚えることが沢山あるんですね」

「まあ、そうですね。知らないと大変なことになりますから」

 

モンスターの特徴、ドロップアイテムの効果と価値、階層の地形。他の冒険者パーティーと揉め事が起きた時の対処法。

 

「少しずつ覚えていけば大丈夫です」

 

さ、帰りましょう。そう言って俺達は家に帰る。

ファミリアのホームに戻ると、直ぐに俺は「あ、いけない。明日のポーションと夕飯の食材が無い」と言って、ベルきゅんに手伝いを頼んだ。

 

「えっと、ミアハ・ファミリアのお店でポーションを十本買ってくれば良いんだね」

「ええ、地図はこれです。あとでお金は払いますから、金額を確認してから、引き換えの紙にベルさんとヘスティア・ファミリアの名前を書いてくださいね。ファミリアとしての買い物ですから」

 

相場で購入出来れば合格。相場より安く買えれば花丸でご褒美。相場より高く買ってきたら、内容によって重いお仕置き。

 

「分かった。行ってくるよ」

「はい、わたしも直ぐに食材を買ってきますから」

 

二人でホームを出て、俺は食材を買ってからホームに戻ると、先に戻ってきたベルきゅんは、ちょっと鼻の下を伸ばしていた。

 

「ただいま戻りました。ベルさんの方はどうでしたか?」

「あ、買ってきたよ。予備も含めて二十本」

「…………え?」

 

この時点で、ベルきゅんお仕置き確定した。

 

「……引き換えの紙を」

「え、あ、はい……」

 

俺が無表情になり、雰囲気がガラリと変わったことに気づいたベルきゅんは、今更ヤバイと気づいたのか汗を流しはじめた。

 

「………………ベルさん」

「は、はい」

「相場って、ご存じですか?」

 

 

 

 

この日、ボロボロ教会の入り口近くで、新人眷族を簀巻きにし、ムチで折檻しようとするロリハイエルフとそれを必死に止めようとするロリ巨乳女神が目撃された。

 

翌日。

 

「相場の三倍の値段で二十本はふっかけ過ぎでは?」

「ベルが弱すぎる。実はもう十本はいけた」

「……女に弱すぎですね。たまにナァーザさんの所に買いに行かせます。鍛えてあげて下さい。多少ならボッても良いですよ。まあ、流石に次は平気でしょうが」

 

後日、買ってきたポーションは相場の二倍の値段だった。

 

「…………数の計算も出来ないのですか? ベルさんは」

「ち、違います! ナァーザさんが困っていて、泣いてもいて!」

 

俺はベルをムチで割と本気でひっぱたいた。

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

それは、初めてベルきゅんがダンジョンに入る日のこと。

 

「おはようございます、アルディス様。その方が?」

「おはようございます、アウラさん。この人が新しい眷族のベルさんです」

 

冒険者ギルドで、アウラさん達と会い、挨拶を交わす。

 

「は、はじめまして! べ、ベル・クラネルと申します!」

「ええ、よろしくね。ディオニュソス・ファミリアの副団長のアウラ・モーリエルです。アウラとお呼び下さい」

「は、はい、アウラさん」

 

ベルきゅんは緊張しながらもしっかりと丁寧に、アウラさん達と挨拶をしていくが、エルフの美人なお姉さん達を前に、初心な男の子丸出しである。

頬を紅く染めていて、アウラさんは内心は分からないが表向きは普通だ。

けれど、潔癖なエルフお姉さんは冷たい眼差し。

年下が好きなエルフさんは、あらあらと舌なめずりをした。

 

ヤバい、ベルきゅんが童貞好きに食われないように、俺も気をつけておかないと。

 

「アルディス様、よろしければ途中まで、一緒に行きませんか?」

「良いのですか?」

「ええ、二階層の入り口までですが。彼にアドバイスくらいは」

「ありがとうございます。わたしだけだと、教えられるか不安でしたから」

「いえ、お気になさらずに」

「あ、あの、ありがとうございます。アウラさん!」

 

礼儀正しく頭を下げるベルきゅんに、アウラさん達からも好感を持っているようだ。

荒くれ者が多い冒険者にしては、ベルきゅんは外見も性格が素直で、女性冒険者的には親しみ易いだろう。

アマゾネスや荒々しい男が好みの女性冒険者は別だろうけど。

 

それから、二階の入り口までベルきゅんだけで戦わせてみた。

一回目は酷かった。けれど、アウラさん達のアドバイスとベルきゅんの素直な性格もあって、二階の入り口までの間の短い時間で、ベルきゅんが一人で戦う姿は、なかなか様になっていた。

 

「ありがとうございました!」

「頑張って下さいね」

 

ベルきゅんにアウラさんはそう言った後、素早くアウラさんはベルきゅんの耳元に唇を寄せて、

 

「は、はい! 大丈夫です! ありえません! はい、大丈夫! 誤解です!!」

 

何か脅すようなことを言って離れた。

アウラさんは、一度こちらを見て、釘を刺しましたよ。と微笑んだ。

 

「ベルさん、大丈夫でしたか?」

「あ、うん、大丈夫だよ」

 

ちょっとビクビクしているベルきゅんに、俺はいたずら心が湧いたので。

 

「じゃあ、次に行きましょうか。まだまだ、覚えてもらうことがあります」

「分かったよ、アルディス。次は何を教えてくれるの?」

 

ベルきゅんの問いに、俺は笑顔で答えた。

 

「次はダンジョン内でのトイレのやり方です!」

 

俺が少し大きめの声で答えると、アウラさん達が物凄い勢いで戻って来た。

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

「すまない。待たせた」

「いや、大丈夫だよ。どうだった。彼女の様子は」

 

ロキ・ファミリアホーム。その会議室に集まったのは、ロキ・ファミリアの幹部である三人。

 

ロキ・ファミリアの団長である、小人族のフィン・ディムナ。

ロキ・ファミリアの副団長のハイエルフのリヴェリア・リヨス・アールヴ。

古参のドワーフの老兵、ガレス・ランドロック。

 

三人が集まった理由は、前回の遠征で現れた新種のモンスターと、

 

「彼女、アルディスから話は聞けたかい? リヴェリア」

「ああ、ベートの一件は、正直不安だったが、彼女はこれからもロキ・ファミリアとは仲良くしたい。と言っていたよ」

「そうか、不確かではあるが。情報があると無いとでは違うからね」

 

出鱈目ではなく、既に一度予知夢と言えることを的中させている。

次も必ず当たるか分からないが、危険な夢なら警戒するべきだろう。

 

「しかし、夢か。スキルだとしたら、間違いなくレアスキルだな」

 

未来が分かる。

これだけでも、ヘスティア・ファミリアからロキ・ファミリアに強引に改宗させたいところだが、

 

「そうだな。アルディスの過去を考えれば、そのようなスキルが発現していてもおかしくはない」

 

リヴェリアは二人にアルディスの過去は教えてはいない。

だが、二人はある程度察している。それが自分達の考えている以上だということも理解している。

 

そんな幼い少女が、やっとたどり着いた居場所から、強引に連れ去る考えは二人には無かった。

強引なことは、ファミリアとしてもデメリットしかない。

ベートが幼いハイエルフのアルディスを殴ったことで、ファミリアの評価が少なからず下がったのも理由だ。

特にエルフのベートへの評判は、凄まじいことになっている。

 

「次の遠征の時も出来れば当たる夢を教えてくれると嬉しいね」

「フィンが不確かなモノに期待するとはな」

「スキルの可能性があるからね」

 

使えるなら、教えてくれるなら、活用させてもらうよ。とフィンは言った。

 

リヴェリアは、幼いアルディスを甘く見ているようなフィンに警告をしようかと思ったが、アルディスならフィン個人に痛い目を遭わせても、ロキ・ファミリアに被害は出さないだろう、と考えて黙ることにした。

 

「む、これがフラグか?」

「何の話だ? リヴェリア」

「いや、なんでもないガレス」

 

そして、三人は次の遠征について話し合った。

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

今俺はエルフの一般的な女の子向けの長袖とロングスカートの服を着ながら街を歩いているのだが。

 

「うーん、やっぱり慣れない」

 

男だったこと、ゲームでこの身体が着ていたエルフの服が露出が多い服だったこともあり。

この普段着に慣れない日々を過ごしている。

 

「ある程度は必要な物は買いましたね」

 

この日、俺は一人で行動していた。

ベルきゅんが、【憧憬一途】を発現したので、ソロの方がベルきゅんの経験値稼ぎには丁度良い。

と言うわけで、ベルきゅんには役割分担と伝えて、今日は街に買い物に来ている。

ナァーザさんのお陰で資金がかなり削られたし、ベルきゅんも責任を感じて、かなりダンジョンで頑張っている。

それに俺も休まないと集中力が削られ、ダンジョン内で不覚をとる可能性がある。

特に俺は長時間ダンジョンに入る。

それを考えると休める時に休まないと駄目だ。

 

ちなみに俺とベルきゅんのスタミナを比べると、何故か俺の方が遥かに高い。

 

恩恵のお陰でベルきゅんもスタミナは上がっているはずだけど。

俊敏のアビリティ鍛えるために、俺とベルきゅんがどれだけ全力疾走し続けられるか? を街の防壁の上をぐるりと周回してみると、俺が圧倒的に上だった。

 

最初は俊敏の差かと思ったが、最近確認で試したときは、俊敏のアビリティの数値の差はそこまであるわけではない。

 

ステイタスはベルきゅんに抜かれ始めている。

 

スタミナの差は恐らくだが、ゲームでの経験が原因だろう。

ゴブリンの巣、オークの集落、盗賊のアジト、触手の洞窟、辺境の蛮族村、貴族の砦、王宮の地下。

 

敗北監禁凌辱で、不眠不休は当たり前だった。

目を閉じてその時のことを思い出そうとすると、自分は画面で見ていた筈なのに、まるで自分が凌辱されたかのように、体にその時の感触が戻ってくる。

痛みも臭いも快楽も。

 

「っ、危ない、発情するところだった」

 

深呼吸して、身体を落ち着かせ、気持ちを落ち着かせる。今日は久し振りの休みだ。

お金も少しは余裕がある。

 

……前世では、服を買うことは殆どなかったが、ゲームでは違った。

MMORPGなどは、頑張って服を買っていた。

女の子はお洒落するべきだと思う。

 

うん、折角だから、ちょっとくらいはお洒落するか。

 

そう思って、俺は服が売られている。

北のメインストリートへ向かった。

気に入る服を探して、ウロウロしていると、良い店を見つけた。

 

「うーん、やはりサイズが無いですか」

「そうねぇ、普通はお嬢ちゃんがこのお店にくること自体が珍しいからね。たまに背伸びしたアマゾネスの子供が来るけれど、直ぐに追い出すし」

「わたしは追い出さないのですか?」

「お嬢ちゃんは気合いが入っているからね。それに、こういう服、着慣れているでしょう?」

「あ、分かりますか?」

「流行りではなく、自分が着たくて、似合うのをチョイスしたのは分かったわ。それで、慣れていると、ね」

 

服を見回り、ビビッと来る服が見つからず、北メインストリートの裏側を歩いていると、紫を基調とした看板と入り口から見えた、セクシーな衣装を見て、俺は懐かしい気分になったので、店に入るとこの店はアマゾネスの衣類を専門に扱っている店だった。

 

最初は俺を見て、眉を顰めたアマゾネスの店員だったが。

幾つか気に入った服があったので、サイズがあるかと堂々と聞くと、「もしかして、ビキニアーマーを着たハイエルフかい?」と聞かれて頷くと。店員もとい店長に「面白いじゃないか」と、俺の身体のサイズを測られた。

 

「ええ、正直、こっちの方が楽ですね」

「ふふふっ、いいね。気に入ったよ。今度、一緒に歓楽街に行かないか?」

「リヴェリアさんが怖いので遠慮します」

「おおっ、流石にそれはアタシも怖いわ。っと、いらっしゃいませ! ちょっと失礼しますよ」

「ええ、お客さんの方へ行って下さいね。今日は注文だけですから」

 

そう言って、改めてざっと店内を見て帰ろうかと思っていたのだが。

 

「あれはアイズさん? 他の三人も間違いない」

 

レズエルフと言われるレフィーヤ。洗濯板のティオナ。暴走乙女ティオネ。

いつの間に。あ、そう言えば、服を買いに行くイベントがあったな。

よし、折角だから、挨拶をしよう。

 

「あ「だっ―――駄目ですっ!!」」

 

声をかけようとしたら、レフィーヤが大声を上げた。

急になんだ? と思っていると。

 

「こんな、こんなみだらな服をアイズさんに着せるなんて、私が許しません!? アイズさんはもっと、もっともっと清く美しく慎み深い格好をしなくては! そうっ、エルフの私達のような!!」

 

ばんっと自分の胸を手で叩き、真っ赤な顔でまくし立てる小娘(レフィーヤ)。

 

ほほぅ、みだらな服か。この処女(小娘)。言ってくれるじゃないか。

今の言い方には俺もちょっと鶏冠に来たので、介入することにした。

 

「随分な言い方ですね。レフィーヤ・ウィリディス」

「え?」

 

後ろをから声をかけられ、振り返ったレフィーヤは身長が原因で、一瞬俺に気づかなかったが、直ぐにこの目立つ虹色の髪に気づき、固まった。

他の三人も俺の容姿に驚いたのか一瞬固まっていた。

 

「あ、あの、貴女、いえ、貴女様はもしや」

「初めまして、わたしはアルディス・リーマ・アルフヘイム。リヴェリアさんにお世話になっていますから、お声をかけたのですが……」

 

ここで声のトーン少し下げて、じっとレフィーヤの眼を見つめる。

威圧タイム、と言っても数秒だが。

 

「レフィーヤさん、とお呼びしても?」

「は、はい」

 

相手はハイエルフ、しかもベートがぶっ飛ばした相手。

遠慮もあるのだろう。好機だ! 勢いに任せて行くぜ!

 

「このスケッチを見て下さい」

 

俺は腰のポーチから出したように、アイテムボックスから一枚のスケッチを取り出し、レフィーヤに手渡す。

書かれているのは、緑を基調とした日本のエロフが着ていそうな、半袖、ヘソだし、パンツが見えるミニスカ、編み上げサンダルのエルフである。

 

渡したスケッチを横からアイズさん達も確認する。

 

「な、何ですか!? このハレンチな服は?!」

「わたしの故郷の女性エルフの一般的な衣服です」

「え゛?!」

 

固まるレフィーヤ。頬を染めながら驚くアイズさん。

格好いい、とスケッチを見るティオナさん。へー、良いデザインね。と笑うティオネさん。

 

「レフィーヤさん」

「は、はいっ」

 

俺にじっと見据えられて、汗をかきはじめるレフィーヤ。

故郷の一般的な衣服をハレンチと言ったのだ。緊張もするだろう。

 

「貴女はアマゾネスやわたしの故郷のような形式の服を着て、生活したことがあるのですか?」

「え、あ、えっと……」

 

俺が怒っているのが分かったのだろう。アワアワし始めるレフィーヤに、俺は言った。

 

「衣類と言う文化には種族の歴史が詰まっています。アマゾネスの祖となる人々は、亜熱帯の森で暮らしていました。気温だけではなく、湿度が高く。布の面積が多い衣類を纏うには衣服の素材などで問題があったようです」

 

ここまでは良いですか? とレフィーヤを見ると「は、はい」と力なく頷く。

スキルの効果もあるのだろう。どこまで、効果があるか分からないけど。

 

「それが長い年月をかけ、形になった衣服を、着てもいないのに、みだらなどと切って捨てる。多くの種族が暮らしているオラリオで暮らし、千の妖精と呼ばれるほどの貴女が、そんな視野の狭いことを言うなんてっ!」

 

わたしは悲しいです。と目をうるうるさせレフィーヤを上目遣いで見詰める。

 

「うぅ゛っ!」

「……レフィーヤさん」

「は、はい」

「わたしは先ほどこのお店で服を注文しました」

「ええ!?」

 

驚くレフィーヤ達に、俺は畳み掛ける。

 

「ですので、レフィーヤさんも、このお店の服を試着して、レッツ異文化交流しましょう!!」

「えっ、あ、あの?!」

 

慌てるレフィーヤに、俺は悲しげな表情で語りかける。

 

「わたしの故郷の衣服は淫らなんですか?」

「い、いえっ! そ、そんなことはありません!」

 

即答したレフィーヤに、俺は即座に選んでいた衣装を勧める。

 

「あ、これなんて比較的大人しいデザインですよ」

「えぇっ!」

「どうですか?」

「あ、あのっ」

「どうですか!?」

 

反論は許さん。黙って着ろ。と言わんばかりにニコニコしながら、試着を勧めた。

で、結局。

 

「し、試着だけですからね!」

「はい、着て生活するのは、ある程度慣れが必要ですから」

 

レフィーヤに、何とか試着させることに成功した。

で、次はアイズさんだ。レフィーヤが着替えている間に。

 

 

「改めまして、お三方。アルディス・リーマ・アルフヘイムと申します」

「アイズ・ヴァレンシュタイン、です」

「ティオネ・ヒリュテよ。やるわね」

「ティオナ・ヒリュテだよ。よろしく! でも、凄いね! 髪が虹色だよ!アイズ !」

「うん、綺麗」

「ありがとうございます。ところでアイズさん」

「なに?」

 

俺はここで少しだけ真面目な表情で、アイズさんに話しかける。

 

「やはり、アイズさんの普段の戦闘時のあの装備は、羞恥心を減らすための装備なのですか?」

「え?」

 

俺が尊敬します。と言うと、アマゾネス姉妹も何を言ってるの? て顔をしたが、話を進める。

試着室からうーん、うーんと小娘(レフィーヤ)の声が聞こえる。

もうちょっと時間はある。

 

「わたしは故あって、オラリオの外で恩恵なしでモンスターや人と戦い続けました」

 

俺の言葉に驚く三人。嘘ではないと俺は堂々と話を続ける。

 

「か弱い身体を補うために武具に頼ることになりましたが、その時にわたしが手にいれた第一級武装にも劣らない防具のいくつかが、アマゾネスの衣装のようでした」

「……え?」

 

困惑するアイズさんに、追撃する。

 

「アイズさん、今後強い装備がセクシーだった時のために、衣装の試着をしてみませんか? ちなみに、わたしが海のモンスターと戦っていた装備がこれです。セイレーンローブです」

 

腰のポーチもといアイテムボックスから、取り出した紙には、ゲームで装備していたセイレーンローブを描いてエクレアに見せたものだ。

青いビキニの上に、薄衣のようなローブは、水に透けてそのフェチの者には堪らないだろう。

 

「水に濡れると張り付き、スケスケでしたが、強力な装備でした。アイズさん、モンスターを倒すためにこういった装備を今の貴女は着れますか?」

 

俺の言葉を聞いて、顔を赤らめるアイズさん。

 

「なら、練習しましょう。それにお友だちのティオナさん達とたまにはお揃いの服も悪くはないと思いますよ!」

「そうだよ、アイズ。一緒に着ようよ!!」

 

ちなみに、ティオネさんは、面白そうな表情で静観している。

 

「アイズ、これとかどうかな!?」

「あ、う、うん……」

 

ティオナさんの協力もあり、レフィーヤとアイズさんがアマゾネスの衣装を試着した。

 

「なっ、なななな、何でアイズさんもし、試着をっ?!」

「アイズさんには、この衣装は似合いませんか? レフィーヤさん」

「いいえ、凄く素敵です!!」

「あ、レフィーヤ、鼻血!」

「え、きゃあっ!!」

 

レフィーヤが着た衣装は、胸の部分はティオナの服のようなタイプだ。

でも、下は前から見ると膝まで長いスカートだが、後ろから見るとパンツ(下着ではない、アンスコみたいの)がなにもしなくても、見えそうなミニスカだ。

 

アイズさんはティオナが選んだ、ティオナとよく似た衣装だ。

色は髪の色と合わせて、黄色を基調としている。

 

「レフィーヤさん、アイズさん、もじもじしてると余計に恥ずかしくなりますよ。胸を張ってください!」

「う、ううっ」

「は、恥ずかしい」

「レフィーヤさん、どうですか? 動きやすいでしょう?」

「え、ええ、まあ。でも、この布地の少なさなら当然で」

「装飾品と動きの邪魔をしないですよね? つまりマジックアイテムを多めに付けられると言うことです」

「「―――っ!?」」

 

俺の言葉にレフィーヤとアイズさんが、雷に打たれたような顔をする。

うん、多少は、なるほど。みたいな反応を期待したけどさ。

そこまで、驚くとは。

 

「防御力の低さを装飾品で補うのも悪くないかと」

「……なるほど」

「か、考えられたデザインだったんですね」

 

アイズさんとレフィーヤが納得しているけど。適当にそれっぽいことを言ってるだけです。

ティオナさんが二人に余計なことを言おうとするのを、ティオネさんが止めている。ありがとう! 付き合ってくれて。

 

「少しでもレフィーヤさんの偏見を失くせたのなら、アイズさんの役にたったなら幸いです」

 

それでは、と俺はその場から去ろうとして、最後にレフィーヤに教えておくことにした。

 

「あ、そうだ。レフィーヤさん、忘れてました」

「は、はい」

「リヴェリア様にお伝え下さい。――巨大な花に魔法を不用意に使ってはいけません」

「え?」

「夢です。そうお伝え下さい」

 

それだけ、伝えると俺はその場を去った。

さて、怪物祭(モンスターフィリア)は、やはりベルきゅん達ではなくて、オラトリアの方に介入しよう。

あ、バベルにアマゾネス姉妹とアイズさんに貸す即席の武器買いにいこう。

後は大型の盾も。

介入した時は、新人用に買ったお試し武器とでも言えば良いだろう。

 

あの食人花のモンスターにセイント・ランスが効くかも知りたいしね。

 

出来るなら、途中まででも、ロキ・ファミリアの遠征に付いていければ良いけど。

無理だろうな。

ま、少しでもロキ・ファミリアの利益になる者だと思わせられれば、メリットもある。

 

「どこまで、やれるかな?」

 

経験値上昇スキルが事実上使えない。

ヘスティア様が泣くからやらない。というか、多分精神的に平気だと思うけど、やりたくはない。

これでも、元は男だ。

 

でも、仕方がないとは言え、辛いな。

 

それとベートも気になる。

原作のあのロキ・ファミリアの敗北があったから、ベートはロキ・ファミリアの団員達と仲良くなれた。

 

けれど俺がベートの心に土足で踏み込んで、俺を殴ったことでベートとロキ・ファミリアの団員との溝は深まった。特にエルフとの。

 

うーん、リヴェリアさん経由で、しっかりと頭を下げよう。

出来れば、個室で。

個室でないとベートの性格上、団員達の前だと必要以上に悪態つくだろう。

 

たぶん、ベートは「はっ、うぜぇ」くらい言いそうだけどね。

 

 

 

 

で、後日。

 

「はっ、謝るくらいなら、はじめから言うなよ、うぜぇっ」

「ベート!」

「うるせぇ、ババア!」

 

ロキ・ファミリアの個室で、俺とリヴェリアさん、ベートの三人で会ったのだが。

流れはほぼ、予想通りだった。

 

「それでも」

「あぁん?」

「頭に血が上っていたとしても、貴方の心に土足で踏み込んだことは、貴方がわたしを許さなくても、頭を下げなくてはいけないことです」

 

俺はベートの眼をしっかりと見て、

 

「本当にごめんなさい。貴方の過去を踏みにじって」

 

そう言って数秒ベートと見つめ合い、ベートがつまらなさそうに顔を窓の方に背けたので、俺が部屋から出ようとしたとき。

 

「ちっ、おい!」

「はい? ――っ、これは……?」

「要らなきゃ捨てろ」

 

ベートに投げ渡された手のひらサイズの緑色の小さな包み。

ベートを見ると忌々しそうに、窓の外を見ながら口を開いた。

 

「俺はっ、自分より弱ぇやつをいたぶる雑魚になりさがるのは、ごめんだ!」

 

俺と立ち会ったリヴェリアさんは驚き。

ベートの横顔を見た俺は……。

 

――ドアを開けて、廊下を走りながら大声で叫んだ!

 

「み、皆さーん! ロキ様ー! ベートさん、やっぱりツンデレでしたぁーっ!!」

 

神ロキと他の団員達が集まっている場所にダッシュして、貰った緑色の包みを見せると、ロキ様筆頭にその場にいた全員にベートはからかわれ、元凶の俺と何故かラウルがベートから膝蹴りを食らうはめになった。

 

ラウルは完璧にとばっちり、ごめんね!

あ、後、耐久がかなり上がったから、もう少しからかうべきだったかもしれないな。

 

 



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すみません、舐めてました。

ランキングとか本当にビックリしてます。
ありがとうございます。

それと、ちょっとだけ、セクシー? 描写が。




運良く怪物祭までにロキ・ファミリアの主力であるアイズさん達と出会えた。

意味深なことをレフィーヤに伝えたから、夢についてリヴェリアさんをはじめ幹部達は色々考えているだろう。

 

まあ、初戦はリヴェリアさん達ではなく、レフィーヤ達だ。

警告を覚えていて、注意すれば、レフィーヤは重傷を負わないだろう。

 

怪物祭の食人花との初戦、俺はフル装備で参戦する。

目標はセイント・ランスが効果があるか確かめること。

レフィーヤが重傷を負っていたら、応急手当てをする。

物足りないかもしれないが、アマゾネス姉妹に武器を貸す。あまり武器は役にたたないだろうけど、武器を貸した事実があれば、多少は貸しになるだろう。

 

それと、ヘスティア・ナイフのフラグをへし折らない為に、ベートにぶっ飛ばされた翌朝。

ホームに帰って、ヘスティア様とベルきゅんについて話し合った。

やはり、頑張っているベルきゅんの為にヘファイストス様に武器を作って貰えるように頼むつもりだった。

さらに、俺の武器まで頼もうとしていたので、全力で止めた。

 

初めは作って貰う! と、意気込んでいたが、「数千万、場合によっては数億ヴァリスの武器を一つならローンを組んで作ってもらえるかもしれませんが、二つは無理です! それに、わたしがヘファイストス様の武器を使えば悪目立ちします」と言うと、渋々引き下がった。

 

「ヘスティア様とベルさん。二人も家族が出来たんです。わたしは今幸せです。だから、ヘスティア様が必要以上にローンを組む必要はありません」

 

今優先すべきは、【憧憬一途】を持っているベルさんをファミリアで集中的に育てることです。

と、俺は言った。

ベルきゅんが弱いままだと、本気で不味いからね。

 

リップサービスと言うわけではないけど、本当にヘスティア様が大好きです。と、ヘスティア様に笑いかけたら、何故かよしよしされた。

しかも涙ぐみながら。

え、今のどこに泣く要素が?

 

今にも消えてしまいそう? いやいや、消えないからね。

 

「何があっても(ダンジョンで)、わたしは必ず帰ってきます。ヘスティア様の居るところが、わたしの帰る場所ですから」

 

って、言ったらヘスティア様が、「ボクが、君を守ってみせる!」と涙ぐんでいたけど。止めてください。

ヘスティア様にダンジョンに入られると、冒険者ギルドからペナルティを貰うので!

 

 

と言うわけで、あっという間に怪物祭当日。

 

「ベルさん、わたし今日は用事がありますから、怪物祭は一緒に回れません」

「あ、そうなの?」

「はい、でも、せっかくのお祭りですから、ベルさんも楽しんでくださいね。あ、これお小遣いです」

「あ、うん、ありがとう。アルディス……」

 

ベルきゅんは、街の物の相場を覚えてきたけど、ヘスティア様の意見もあって、ファミリアのお金は俺が管理している。

なので、○0歳からお小遣いを貰うベルきゅんは恥ずかしそうに金を受けとる。

 

「それでは、行ってきますね。ベルさん」

「うん、行ってらっしゃい。アルディス」

「はい、ベルさんも、気をつけてくださいね」

 

それから、俺は足早に街の大通りを走っていると。

 

突然、背筋が――ゾワッと悪寒が走った。

 

反射的に視線を感じた方へ首を動かして、俺はその行動に後悔した。

視線を感じた方向は、白亜の巨塔。バベルの最上階。

 

しまった! と後悔しても遅い。

 

友好的か非友好的か分からないが、あの女神に見られていた。

そして、俺が女神に気づいたこともバレた。

友好的でも非友好的でも、面倒なのは間違いない。

だが、非友好的だった場合、何をされるか分からない。

故に俺は咄嗟の判断で、女神にアピール、媚びを売ることにした。

 

俺の眼ではあの女神は見えない。

けど、ゲーム内で鍛えられた感覚が、魂に警鐘を鳴らしている。

お前はまだ、見られているぞ、と。

 

俺はあの女神に向かって、スカートの端を持ち、優雅にお辞儀した。

周りから、何をしているの? という視線が飛んで来るが、無視だ。

数秒の間の後、俺から女神の視線が外れたので、俺は出来るだけ早歩きでその場から逃げ出した。

 

正直、あの女神のことは忘れていた。

未来のことを考えるなら、あの女神には出来るだけ関わらない方向でいかないと駄目だ。

だが、あの女神は何故、俺を見た?

それだけが、気になる。

 

 

 

 

エクレアの工房にたどり着くと、俺はホッと一息つけた。

そして、エクレアに頼んでおいたフルプレートを受け取り、身につける。

今回の為だけに、奮発して購入したフルプレートだ。

お財布が痛い。

ちなみに、ベルきゅんの装備も更新するために、既にエイナさんに話を通してあるので、怪物祭が終わったら原作の通りにベルきゅんはエイナさんとデートだ。

「可愛くない」

「うん、わたしもそう思う」

 

仕方がない。俺も今回はデザインよりも防御力重視だ。

 

「でも、その分もう一つの方。中身は拘ったわ! アルディスから聞いた極東のタイマニン? という女ニンジャーのクロースアーマー(布製の防護服)を参考にして作った旧すくーる水着? という水着のような斬新なデザインにしてみました!!」

「ええ、部屋にスクール水着があって、わたしもビックリしました」

「ふふっ、頑張りましたよ。従来のモコモコしたクロースアーマーも昔に比べれば、大分薄くはなりましたが、それでも、戦いが長引くと暑い。と言われてました。それを水着近くまで薄くした物の試作品が今着てもらっている物です!!」

 

前からあやふやなイメージはあったらしい。

けど、素材の量の関係で大人用は作れない。更に鎧を着る小人や身長の低い女性ヒューマンは殆どおらず、作れなかったが。

俺が鎧の下に着るクロースアーマーのイメージを持ってきたので、今回作ることになった。

アイディア料もあるので、値段は思ったより安かった。

 

「でも、今日は怪物祭だけど、本当にそれを着て帰るの?」

「ええ、輸送費も高いし、力と俊敏のアビリティ上げにもなるから」

「そっか、ちょっと残念」

「ん、何が?」

「ううん、何でもない。気を付けてね。アルディスさん」

 

俺を笑顔で見送るエクレアに首を傾げながら、俺はエクレアの工房をあとにした。

さて、後は上手く介入出来るかな? 一応、ギルド経由で手紙を送り保険をかけたけど。

大丈夫かな? 下手すると、レフィーヤに悪影響なんだよね。

まあ、成長イベントが潰れたら、無理やり作れるように頑張ろう。

 

さて、レフィーヤ達を探さないと。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

うん、正直、舐めてた。食人花の一撃を。

実は運良く、食人花とレフィーヤ、アマゾネス姉妹の戦闘が始まって、このままレフィーヤが食人花の一撃を食らうか、確認するまで隠れていようと思ったんだけど。

 

「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」

 

 

レフィーヤが魔法を発動する瞬間、俺は天秤にかけた。

怪我をしたレフィーヤの怪我を治すのと、俺が身体を張って、食人花からレフィーヤを守る。どちらが、メリットが多いか。

 

うん、まあ、本当はそれは言い訳だ。

実はさ、レフィーヤが呪文を詠唱し始めたとき、自分が問いかけてきたんだ。

 

お前(わたし)は、本当にこのまま、何もしないのか? と。

 

そして、俺の身体は動いていた。レフィーヤを助けるために。

 

「駄目です、レフィーヤさんっ!!」

「―――ッ」

 

全力疾走で俺はレフィーヤの右隣前に出て、俺は自身を壁になるようにして、食人花の触手の一撃を咄嗟にラウンドシールドで防ぎながら、レフィーヤを背中で後ろに押し出しながら、自身も後退しようとしたが。

 

防御行動が全て、焼け石に水だった。

構えたラウンドシールド。両腕。鎧がスローモーションで押し潰れていくのが見えた。

 

衝撃、喉の奥から込み上げてくる血反吐。

視界がブレる。背中に衝撃が走り、俺とレフィーヤは壁に派手に叩きつけられ、その場に受け身もとれずに俺はベチャリと音をたてて地面に落ちた。

 

最後に俺が見た光景は、食人花が花を咲かせ。

大量の触手を振り回している姿だった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「アルディスに会ったのか? レフィーヤ」

「はい、リヴェリア様、買い物の途中で。それで、そのリヴェリア様に伝言があります」

「ほぉ」

 

アルディスと、買い物の途中で出逢った日の夕方。

ホームに戻ってきたレフィーヤ達四人はアルディスの伝言をリヴェリアに伝える為にリヴェリアの部屋を訪れていた。

 

「――巨大な花に魔法を不用意に使ってはいけません。か、アルディスはそう言ったのか?」

「夢とも言っていました。どういう意味何でしょうか? リヴェリア様」

「……そうだな。ファミリアは分からないが、個人で付き合うこともあるだろう」

 

他言無用だぞ。と、レフィーヤ、アイズ、ティオネ、ティオナの四人に釘を刺し、全員が頷く。

 

「不確かではあるが、アルディスは予知夢を見られるらしい」

「予知夢?! すごいね!」

 

はしゃぐティオナと驚く三人に、リヴェリアは肯定し、告げた。

 

「前の遠征の出発の時にも、夢を見たと言われて、私はそこまで信じてはいなかった。頭の片隅には置いておいたが」

「遠征前にも何か言われたの?」

「ああ、芋虫に近づくな、溶かされるから、と」

 

アイズの問いに、リヴェリアは答え、その答えを聞いて、レフィーヤ達四人の身体が強張った。

 

「ちょっと待ってよ。それって」

「ああ、新種の芋虫のことだ。あの警告のお陰で被害を最小限に抑えられた」

「それが本当だとしたら、凄いわね。レアスキルかしら?」

 

ティオネの言葉に、リヴェリアは恐らくと告げた。

 

「今回の夢も念のために、頭の片隅に置いておくことにしよう。まだ、次の遠征まで間があるが。その間に、軽くダンジョンに入ることもある」

「夢が本当なら、その時に出会うってこと?」

「分からん。夢ならあやふやなものだろう。無理に聞き出そうとしてもデメリットしかない」

 

リヴェリアの言葉に、ティオネは頷く。

 

「でも、未来のことが分かるなんて凄いね」

「ああ、スキルの発現の理由は、彼女が特殊な環境にいたからだろう。出来れば、仲良くしてやってくれ」

 

慈愛の籠った瞳のリヴェリアを見て、レフィーヤは首を傾げながらも頷いた。

 

 

「―――ゲホッ」

「レフィーヤ!」

「アルディス!」

 

 

レフィーヤが少量血を吐き、目を覚ますとティオネとティオナの声が聞こえ、状況を確認しようとして、目の前にある紅いものに気がつく。

 

「レフィーヤ! ポーションを!!」

「…………っ!?」

 

ティオネの声に、辛うじて悲鳴を飲み込むレフィーヤ。

それと同時に、視界に入る巨大な花のモンスター。

 

あ、ああっ!! 何故自分は気付かなかった!?

そのまま、レフィーヤは自分を責めそうになり。

 

「レフィーヤ、早く治療を!」

 

焦った声のティオナの声に、ようやく我に返る。

そして、床に割れているポーションの試験管を見つけ、アルディスの腰に身に付けたポーチから見えていたポーションを慌ててアルディスに使う。

エリクサーではないが、そのポーションはアルディスがいざというときの為に貯めていた資金で買ったハイポーションだった。

 

今にも死にそうだったアルディスは、複数のハイポーションを使用したお陰で、応急処置は間に合った。

このまま、後方で治療を受けさせれば。

レフィーヤがそう考えたときだった。

 

「コイツ、何なのさっきから!」

「何で、レフィーヤ達の方に!」

「え?」

 

レフィーヤが気がついた時には、新種の花のモンスターは、触手をレフィーヤ達の方へ伸ばしてくる。

それも、執拗に。

 

「レフィーヤ! アルディスを連れて逃げなさい!」

「は、はい!」

 

ティオネの言葉に、レフィーヤはアルディスを抱き抱えようとした時だった。

 

触手をアマゾネス姉妹に何度も弾かれ、苛立ったように花のモンスターは叫び声を上げると、触手の一本を地面に突き刺し、

 

「レフィーヤ!!」

「え? きゃあああああっ!」

 

花のモンスターは、触手を地面に突き刺し地下を通して、レフィーヤを攻撃。

更に、

 

「アルディスっ!」

「くそっ、離せ!」

 

レフィーヤを触手で吹き飛ばした後、グッタリとしたアルディスに触手を巻き付けて、自分の下へと引き寄せる。

もちろん、アマゾネス姉妹はアルディスを救助しようとするが、他の多数の触手に邪魔をされる。

 

「ぐぅっ……」

「レフィーヤ、無事なの?!」

「だ、大丈夫です」

「こっのー!」

 

ティオネの声に、何とか立ち上がるレフィーヤ。

顔を上げたレフィーヤの目に。

三人の目に信じられない光景が広がった。

 

花のモンスターは、複数の触手を器用に使い、アルディスの鎧を脱がし始めたのだ。

 

「…………え?」

「…………は?」

「…………ええっ!?」

 

固まった三人なんて、眼中にないと言わんばかりに、ゆっくりと、見方によっては優しくアルディスの鎧を脱がす花のモンスター。

 

「なにやってんじゃあぁっ!!」

 

最初に正気に戻ったのは、愛する団長の為に身に付けた、その手の知識が多いティオネだった。

これ以上はまずい!! 全力でアルディスを助けるため、アルディスが触手で吹き飛ばされた時に、腰に吊るしていていて、弾き飛ばされたロングソードを拾い、花のモンスターに突撃した。

 

次はティオナだった。

物語が好きな彼女は過去に、神が悪ふざけで作った薄い本を読んでしまったことがあり、現状を理解した。

 

「アルディスを離せぇっ」

 

意味が分からないのは、レフィーヤだった。

何故鎧を脱がした? 金属が食べる時に邪魔だから? けれど、何でそんなにネットリと触手が動いていて。

 

そうレフィーヤが思った時だった。

花のモンスターが口を広げ、そのまま自身の口元に近づけると透明な液体を、クロースアーマーだけになったアルディスに大量にかけた。

 

「なっ!?」

 

更にそこから、三本くらいの触手の先端でアルディスを撫で回し始めた。

あまりの非現実な光景に固まるレフィーヤ。

そして、幼い妖精の口から、

 

「ぁっ……、はぁっ!」

 

メチャクチャ色っぽい声が漏れ出して、レフィーヤは声にならない悲鳴を上げて、

 

「く、くくくくっ、くじょっ! その花は駆除しますうぅぅっっ!!!」

「ま、待ちなさい! アルディスと街を焼き払うつもり!?」

 

顔を真っ赤にしながら、レア・ラーヴァテインの詠唱を始めるレフィーヤ。

三人は花のモンスターが、アルディスのスキルによって魅了・狂化にかかり、狂化が運良く直ぐに解けたことを知らない。

更に魅了によって、本来の魔力に反応する特性よりも、アルディスの魅了に取りつかれているので、レフィーヤが詠唱をはじめようと魔力を高めても、レフィーヤに反応しなかった。

 

「こうなったら、全部触手を切り落とすわよ! ティオナ、アルディスが抱えていて捨てた大剣使いなさい!」

「分かった!」

 

アルディスが人質になっている。魔法は使えない。

 

自分は何も出来ない。

 

レフィーヤが、歯を噛み締めたその時に、金と銀の光が走り抜けた。

 

アルディスを拘束していた花のモンスターにとって完全な不意打ち。

 

触手から解放されたアルディスはしっかりと増援のアイズの左腕に抱き抱えられていた。

 

「アイズ!」

「ナイス、アイズ!」

「アイズさん!!」

 

やった!三人が思った直後、地面が再び隆起する。

 

「うっそぉっ!!」

「まだ、居たの!?」

 

更に二体の花のモンスターが現れた。

二体はアイズの魔法に反応して、アルディスに魅了されている個体はアルディスを奪い返す為に、アイズに襲いかかる。

 

「くっ」

 

アイズが迫り来る触手を切り捨てた直後。

ピキッと前触れもなく、手にしていたレイピアが破損した。

 

「―――」

「なっ――」

「ちょっ――」

「そんなっ―――」

 

花のモンスターが蠢く。

三匹いっぺんに襲いかかってきた相手に、アイズは跳躍で回避した。

 

「やっぱり、こっちに見向きもしない!」

 

ティオネとティオナはアイズの支援に回る。

だが、アルディスが持ってきていた武器では、無いよりマシレベルだった。

 

「アルディスの言った通り、魔法に反応しているの?!」

 

アルディスを抱えたまま、アイズは魔法を撃てないレフィーヤから遠ざけるように、回避を続ける。

一度、エアリアルを解除することも考えたが、一体の個体が他の二体を押し退けて、腕の中にいるアルディスを奪い返そうとする姿を見て、エアリアルの解除は危険と判断した。

けれど、アルディスの容態が悪化している。

このまま、ではまずい。アイズには打つ手がない。

戦いが膠着状態になったその時だった。

 

「ヌウオオオオオオッッ!!」

 

野太い声と共に、黒い塊が物凄い勢いで花のモンスターを吹き飛ばした。

 

「え?」

「あっ」

 

驚くアイズ達に、それは溜め息をつきながら、近くにいたもう一体の花のモンスターを吹き飛ばす。

 

「やれやれ、椿に戦鎚のテストを任されてホームに戻れば、血相をかえたリヴェリアが街で強力なモンスターが現れるというから、半信半疑で来たのだが」

 

もう一体の花のモンスターの触手の一撃を戦鎚で力任せに弾き返すのは、ドワーフの老兵。ガレスだった。

 

「このモンスターと、戦鎚の相性最悪ではないか!!」

 

参った! と言わんばかりに豪快に笑うガレスは、アイズの名前を呼ぶ。

 

「話は聞いている。今のうちに魔法を解除して、その子を後ろに下げて治療してやれ!」

 

アイズは頷き、魔法を解除し、その場から離れる。

一体だけ、アルディスを追いかけようとして、

 

「お主の相手はこのワシだ!!」

 

老兵が妖精に魅了された哀れな花に、立ちはだかった。

 

この後、恩人である幼い同胞に、いかがわしいことをしたモンスターに怒りを覚えた若い妖精が、原作を超える魔力を込めた魔法をぶっぱして、師匠と冒険者ギルドから厳重注意を受けることになった。

 

 

 

 

余談だが、この時、逃げ遅れた獣人の少女がおり、この後に無事救助された。

 

で、後日、少女は退院した幼い妖精のホームに来て、深刻な表情で、幼い妖精と女神に触手に関係する質問を投げ掛け、幼い妖精と女神の二人を本気で頭を抱えさせ。

 

少女は後年、漫画家になった。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

恩を売ろうとしたら、恩を売られた感じがする。

まあ、ロキ・ファミリアからは、感謝ばかり伝えられたけど。

 

怪物祭が終わってその日の夕方に目が覚めた。

で、目の前には、ディアンケヒト・ファミリアのアミッド・テアサナーレさんがいた。

 

面識は一度しかない。

ミアハ・ファミリアに、借金の取り立てに来たディアンケヒトにアミッドさんが付いてきていたのだが。

 

ディアンケヒトがミアハ様の店のドアを蹴り破るように入って来たので、俺(身体が勝手に動いた)がディアンケヒトの横っ面をひっぱたいて説教したのが出会いだ。

 

「い、いきなり、何を「幼い少女に叱られるようなことをしたのは貴方様ですよ。神! ディアンケヒト!」」

 

真顔でじっと圧力をかけて、ディアンケヒトの眼を見詰めると直ぐにディアンケヒトが引いた。

借金の取り立てとはいえ、恥ずかしい態度をとっている自覚があったのだろう。

あれ以来、普通にドアを開けるようになったらしい。

 

「気分はどうですか?」

「問題ありません。聖女様」

「アミッド、とお呼びください」

「分かりました。アミッドさん。ところで、手紙のほうは?」

「送りましたよ。リヴェリアさんが受け取ったと」

「ありがとうございます」

 

ここでの入院生活は短かったけど、アミッドさんに気に入られた。

理由は単純に、医者の言うことを聞いて、大人しくしていたからだ。

リヴェリアさんと同じように、アミッドさんも怒らせると怖いのは原作で知っている。

だから、怪我の治療に専念していたのだが。

 

「むぐーっ、がぅーっ!」

「この方は、そのまま奥へ運んで下さい。注意三回目ですので」

「「はっ」」

 

時々、冷たい表情で、うるさい患者を拘束して、奥の病室へ運ぶ指示を出すアミッドさんが、メチャクチャ怖かった。

 

俺の怒らせてはいけないランキングで、アミッドさんが堂々一位になった。

 

 

 




クロスオーバータグが付いていたのに気づきませんでした。
指摘ありがとうございます( ノ;_ _)ノ



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リリ登場

アルディスのスキルの魅了とダンまちに登場する女神達の魅了は中身が違います。
アルディスのスキルの魅了は、エロゲ的な魅了です。



「本当に規格外」

 

現在、俺とベルきゅんは七階層に降りてきて、狩りをしている。アビリティ的に俺もベルきゅんは問題ない。

俺の場合は半年の貯金があって助かった。

 

ヘスティア・ナイフの力も加わり、ベルきゅんはかなりのペースで、新米殺しのキラーアントの首を撥ね飛ばしている。

「アルディス、後ろに!」

「問題ないですよ」

 

溝に隠れて、俺に飛び付くように奇襲してきたキラーアントの頭部を、俺はセイント・ランスの矛先で突き刺す。

 

頑丈な甲殻をアッサリではないが、セイント・ランスはしっかりとキラーアントに突き刺さる。

 

うーん、やはり神聖属性はモンスター特効か、モンスターの防御力を下げる効果があるのかもしれない。

 

俺がベルきゅんが来るまで、臨時のパーティーを組まない日に、ソロで活動出来た理由の一つが、この武器魔法のおかげだ。

 

後は、身体に染み付いた戦闘技能。

文字通り、激戦を戦い抜いた体でもある。

 

負ければ凌辱されるコロシアムとか、数にものを言わせるゴブリン、オークの群れとか。

 

ゲームの主人公は良く心が壊れなかったな。

まあ、そういうゲームだから、アルディスの心は壊れなかったのだろう。

 

下手に記憶を思い出すと身体が発情するので、気持ちを切り替えて近くのキラーアントを突き殺す。

 

あ、それとベルきゅんは、最近ナイフだけではなくちょっとだけ蹴りを使い始めた。

 

理由は俺が槍と組み合わせて、回し蹴りなどの足技でモンスターを流れるように倒すのを見てからだ。

 

ベルきゅんが子供みたいに「凄い、凄いカッコ良いよ」と言っていて、ちょっと照れくさい。

 

俺がスタイリッシュな動きをしたら、ベルきゅんも真似したのだが、身体の柔らかさが足りずに失敗したので、今はベルきゅんには柔軟体操させている。

 

「ベルさん、せっかくですから、今日はギリギリまで狩りましょう」

「うん、そうしよう!」

 

こうして、俺とベルきゅんは、ギリギリまで七階層でひたすらキラーアントを倒し続けた。

 

 

「それじゃあ、ベルさん。一人で大変かもしれませんが、魔石とエイナさんへの報告と挨拶お願いします。わたしは先に戻って夕飯を作ります」

 

これで、エイナさんとベルきゅんがバベルでデートへ行く筈だ。

 

俺は夕飯の支度をして、送られてきた手紙を再確認する。

 

レフィーヤを庇った一件とその後に送った手紙についてだ。

現在、ロキ・ファミリアに残っているのはガレスさんや二軍だけ。

 

既にアイズさん達は個々の借金返済のためにダンジョンに向かった。

例によって原作知識で警告をしている。

 

頭の無い遺体。宝玉。破壊されるわたしが見たことの無い町。赤い髪の女。

 

とりあえず、宝玉は気持ち悪さを感じたので破壊。赤い髪の女には気をつけて下さい。と書いたので、後はフィンとリヴェリアさん次第だ。

 

それと、食人花に破壊された盾と鎧、乱入するために大量に持ち込んで消費したハイポーション全部と、アマゾネス姉妹に貸すつもりで俺が持ってきた武器(やっぱり壊れた)の代金も支払ってくれた。

 

治療費、武具とポーション代金はロキ・ファミリアとして。

食人花の情報は、リヴェリアさんの個人的なポケットマネーでかなりの高額な金銭で支払ってもらえた。

 

リヴェリアさんのポケットマネーで俺に情報料を支払った理由は、ファミリアで大金を動かすと冒険者ギルドに痛くない腹を探られる可能性があるからだ。

特に冒険者ギルドのギルド長は金の亡者だ。

俺も出来るだけ、関わりたくない。

 

まあ、情報料はチートみたいな物なので、別に対価は要らないのだが、リヴェリアさんに「こちらが貰ってばかりでは駄目だ」と言われて受け取った。

 

まあ、貰った高額の情報料金は黒いゴライアス戦までに、全部物品に換えて、アイテムにしてアイテムボックスに入れておくか。

 

ファミリアの帳簿に記載せず、俺の個人的なお小遣いノートに記載しておいて、ファミリアのお金ではないので、ペナルティ(罰金)回避をするか。

うん、悩むな。お小遣いノートにリヴェリアの名前を書いておけば、ギルドから強引に奪われることもないかな?

 

物品にするとアイテムボックスが圧迫される。

金のままだと、後の黒いゴライアス戦のペナルティが怖いな。

 

まあ、まだ時間はあるから、後回しでも良いかな?

 

「さて、夕飯を作らないと」

 

俺はヘスティア様とベルきゅんの為に、ホームに急いだ。

 

 

 

翌日。

 

「ベルさん、デート頑張ってくださいね!」

「で、デートじゃないよ! アルディス!」

「エイナさんが勇気を出して誘ったのに、そんなこと言ったら可哀想ですよ」

 

俺が小首を傾げると、ベルきゅんは「そ、それは」と、言葉に詰まった。

ごめんね、ベルきゅん、実はエイナさんと事前に打ち合わせしてました。

とは、言えないので、黙っておく。

 

「と、ともかく、行ってきます!」

「行ってらっしゃい」

 

ベルきゅんを見送り、俺もロキ・ファミリアに行くために着替える。

一般的なエルフの少女が着る服へと。

 

「さて、行きますかね」

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

ロキ・ファミリアにきた俺は事前に話が通っていたので、すんなり客室へと通され、ソファに座りながら待っていると。

対応してくれたのは、やはりガレスさんだった。

 

「良くきたな、小さいの。リヴェリアよりは頭が柔らかそうだ」

 

テーブルを挟んで、俺の向かい側に座るガレスさんの冗談に俺は「リヴェリアさんに怒られますよ」と、言ってから、改めて先日のお礼を告げる。

 

「先日は助けていただき、ありがとうございます。ガレス様」

「様は要らん。寧ろ頭を下げるのはこちらだ。レフィーヤを庇って怪我をしたからな。食人花だったか、奴の特性を考えれば、レフィーヤは死んでいたかもしれん」

 

そうですね。と俺もそれは同意する。

まあ、原作では、死んでないけど。

軽い挨拶が終わり、ガレスさんが俺の手にしている大きめの箱に注目のする。

 

「それで、その木箱は何だ?」

「ガレスさんへのちょっとしたお礼です。どうぞ。口に合うと良いのですが」

 

手にしていた大きめの木箱を、テーブルの上に置き。

木箱をガレスさんの方へ押すと。

 

「ほぉ、小さいの。いや、アルディスと言ったな。お主分かっておるの」

「昔、ドワーフの方にお世話になりましたから」

 

ガレスが丁寧に木箱を開けると、中から出てきたのは、蒸留酒。ドワーフが作るアルコール度数の高く、香りも良いとされる上物だ。

 

初めは、ガレスさんへのお礼は神酒(ソーマ)にしようかと思ったのだが、アレは失敗作な上に値段の幅も広い。

 

なら安定した美味しさで、しっかりとした職人が心を込めて手間暇かけている酒の方が、御礼としては相応しいかな? と思って選んだ酒だ。

 

「後で楽しませてもらおう。では、本題に入ろうかの」

「えぇ、お願いします」

 

今回、俺とガレスさんが話し合ったことは。

今後俺がロキ・ファミリアに有益な夢(ロキ・ファミリアはスキルだと思っている)を見たら、それを教える。

ロキ・ファミリアは、夢の内容に見合う対価を支払う。

 

まあ、今回の話し合いは密約だな。

今日、俺がここに来た表向きの理由は、ガレスさんへのお礼だ。

 

夢の情報料の支払いはロキ・ファミリアではなく。リヴェリアさんのポケットマネーということにして、取引の金銭などが表には出ないようにする。

 

冒険者ギルドの介入は、俺も本当に困る。

 

仮に冒険者ギルドに夢のスキルの内容を教えろと、権力を盾に何らかの形で神の前で吐かされれば、スキルではないのに、未来の情報を得たことがバレる。

 

未来の情報。夢がスキルではないのがバレれば、ロキなどは俺が都市の破壊者側の人間と思うかもしれない。

正直、洒落にならない事態だ。

フィルヴィスを助ける算段もない状態で、それは避けなければならない。

 

「これからも、仲良くしてください」

「ああ、互いのファミリアの不利益にならない程度にな」

 

俺はガレスと握手をして、俺はロキ・ファミリアを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「エルフの、しかもハイエルフにしては変わっている。いや、変わりすぎている。ドワーフ好みの手土産に加えて、ほぼ初対面の相手と自然に握手をするとはな」

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

ロキ・ファミリアを出た俺が次に向かったのは、ヘファイストス・ファミリアだ。

これもヘスティア様にお願いして、事前に話を通していたので、神ヘファイストスの執務室に直ぐに案内してもらった。

 

「御会いできて光栄です。神ヘファイストス」

「貴女が噂のハイエルフね。それで、今日は何のようかしら?」

「この度ヘスティア様が神ヘファイストスにかなり我が儘を言ったようだったので、それについての話です」

 

ヘファイストス様が目を細める。

変な勘違いされていそう。

ヘファイストス様は、俺に続きを促す。

 

「ヘスティア・ナイフの代金。二億ヴァリスですが、書面にて、二億ヴァリスは神ヘスティア個人が支払うものであり、支払いにはヘスティア・ファミリアが関わる必要はない。と、記載してほしいのです」

 

俺の言葉にヘファイストス様の目がつり上がった。

あ、うん。これは怒ってる。

 

「理由を聞かせてもらえるかしら?」

 

やはり、神友なんだな。答え次第では許さない。とヘファイストス様が俺を睨み付けてくる。

いや、ヘファイストス様はファミリアに支払わせるつもりはないだろう。

けれど、主神を見捨てるような発言には憤りを感じているのかもしれない。

 

それに、ヘスティア様は俺の武具の製作依頼はなかった。

ヘスティア様とそこは話し合ったが、ヘファイストス様はそれについて、俺に思うところがあるのか気になるのかもしれない。

 

「ヘスティア様、ヘファイストス様、ヘスティア・ファミリア、ヘファイストス・ファミリアの四者の利益のためです」

「どういう意味かしら?」

「ヘスティア様はぐーたら女神様です。休みの日はお腹と口を開けてよだれ垂らして、時には昼近くまで寝ます」

 

俺の言葉に、ヘファイストス様が別の意味で目を吊り上げた。

後で説教ね。と言う声が聞こえた。

 

「ですが、神格者です。そして、小さなヘスティア・ファミリアが結果を出せれば、入団希望者は出てきます。その時に、高額な借金があると分かれば入団希望者は確実に居なくなります」

「……そうね。確かにその通りだわ」

「もちろん、ヘファイストス様がヘスティア様の借金はヘスティア・ファミリアとは支払いが別と世間に伝えても、尻込みする方は出るでしょうが、その程度で入団を止めるのであれば、こちらも仕方がないと諦めもつきます。ですので、ふるい落としの意味もかねて、借金の支払いを明確にすることは必要なことです。それに」

 

俺はヘファイストス様の目を見ながら、自分の考えを伝える。

 

「このまま、ヘスティア・ファミリアが小さいままでは、わたしがヘファイストス・ファミリアのエクレアさんに頼める仕事の規模は小さいまま。ヘスティア・ファミリアの規模は大きくなれば、繋がりのあるヘファイストス・ファミリアに仕事を頼むことも多くなります。もちろん、ヘスティア様個人に借金はあるので、それを不安に思い入団希望者はそれなりに減るでしょうが、借金の支払いの内容が明確な方が、まだ入団希望者は現れる筈です」

 

俺の言葉を聞いて、ヘファイストス様はしばらく黙り込み。「なるほどね」と呟く。

 

「つまり、貴女はヘスティアの借金の支払いには手を出さないと?」

「ファミリアとしては出しません。個人的には別です。正直なことを言いますと、わたしがその気になれば、ヘスティア様の借金は恐らく三年くらい? で返せると思いますよ」

 

もちろん、横槍が入らなければ、と断る。

俺の言葉を聞いて、どういうことだ? と視線を送ってくるヘファイストス様に、俺は見せつけるように自分の右手の人指し指と中指をネットリと舐め、音をたてて吸う。

 

そのまま、5秒ほど指を舐めながら、ヘファイストス様を誘うように見詰める。

 

俺の突然の淫靡な行動にヘファイストス様の頬が思わず紅くなったところで、俺は笑みを浮かべながら言った。

 

「わたしは、元高級娼婦でしたから」

 

娼婦としての営業スマイルをヘファイストス様に向けると、ヘファイストス様は頬を完全に赤らめてしばらく動かなかった。

 

「まあ、今はそういうことはやりません。ヘスティア様が本気で泣くので」

「え、えぇ、私も貴女が身体を売ったお金では、ヘスティア・ナイフの支払いはしてほしくないわね。あくまでもあのナイフは、私とヘスティアの取引だから」

「ありがとうございます」

 

ヘファイストス様は俺のお願いを聞いてくれた。

ヘスティア様は周りに、ヘファイストス様に個人的な借金はあるが、支払いはヘスティア・ファミリアは関係ない。という話を少しずつ広めてくれている。

 

完全には無理だろうが、多少はヘスティア・ファミリアの未来の評価はマシになるだろう。

 

 

 

 

 

「ヘスティア」

「ん、なんだい? ヘファイストス」

「アルディスって子供は、本当にエルフの○0歳児なの?」

「本当だよ、小さいけどしっかりした、とても良い子なんだ!! ボクもベルくんもアルくんのお陰で助かってるんだよ!」

「…………そうね、アンタが主神じゃ、しっかりもするわね」

 

邪気のない、悪く言えば能天気なヘスティアの笑顔にヘファイストスは溜め息をついた。

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

「え、しばらく別行動?」

「ええ、ベルさんは成長期です。この機を逃すわけにはいきません。ですので、わたしは六階層。ベルさんは七階層で狩りをした方が良いです」

 

ホームに帰り、夕食が終わった後のミーティング。

俺はリリのことを考えて別行動を提案した。

 

「もちろん、一人では危ないので、ベルさんには自分の目でサポーターを見つけてもらうことになりますが」

「うーん」

「それに、アビリティの面で、七階層は少し辛いのです」

「それなら、僕が六階層に」

「ベルさんの成長期を逃す訳にはいきません!」

「わ、分かりました!」

 

俺がちょっと睨みながら、却下するとベルきゅんは即座に頷いた。

女の子に弱いなベルきゅん。

 

 

さて、俺はまず防具を買ってからだな。

 

 

 

「はぁ、レベル2の後半の冒険者が身につけるフルプレートを無理して買ったと思ったら、その日のうちに街中で破壊されるほどの重傷を負ったのに、直ぐにダンジョンですか? アルディスさん」

 

エクレアの工房に顔を出し、武具の発注するとエクレアは呆れた表情をした。

 

 

「あはは、怒ってる?」

「ビキニアーマー同盟の同士が死にかけたんですよ? 心配くらいしますよ。それで、今回お求めの物は?」

「ウォーシャドウとデートするから、丈夫な防具を」

「さらっと新米殺し狙いとか。何度か臨時でパーティーを組んでるから、アルディスさんの実力は知ってますけど、気をつけて下さいね」

「分かってます。わたしも考えがありますから」

「考え?」

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 

「今日は付き合ってくれて、ありがとうございます。フィルヴィスさん」

「いえ……」

 

俺は困った表情のフィルヴィスさんと共に現在六階層にいる。

どうやってフィルヴィスさんとペアでパーティーを組んだかと言うと。

 

実はダメ元でディオニュソスに、デメテル様の所のワインを持って、「フィルヴィスさんに教えを乞いたく!」と、お願いしたのだ。

道のど真ん中で。

 

いや、ディオニュソス・ファミリアのホームの場所は知っている。

けれど、葡萄酒(神酒)が怖くて行きたくないので、わざわざ街を歩いているところを捕まえてお願いした。

 

結果的に、ディオニュソスの許可を貰って、二人で六階層に来たわけだ。

 

表向きにはディオニュソスは「人と関わるべき」とか言っていたけど。

 

あの野郎的にはフィルヴィスさんに俺との幸せな思い出を作らせて、幸福にさせてから、フィルヴィスに俺を殺させて、狂乱させるのが目的だろう。

 

「私は必要なのでしょうか?」

「はい、本当に勉強になりますよ? 先ほど運悪く五体ウォーシャドウが出てきた時は、フィルヴィスさんが居なかったら逃げるしかありませんでしたし」

 

ロングソードを振るい、時にはセイント・ランスで、モンスターを撃破していると、フィルヴィスさんがそんなことを言い出した。

 

「時間をかければ、アルディスさ、……殿なら勝てたと思います。逃げながらの戦いにも慣れている気がしました」

「畏まらなくても良いのに。けれど、追加でモンスターが現れたら危ないですし」

「まあ、それはそうですが」

「あ、背中をお願いしますね。フィルヴィスさん」

 

こうして、フィルヴィスさんとの時間は過ぎていき。

 

「はい、換金が終わりました。フィルヴィスさんの分です」

「いえ、私は……」

「あー、急にわたし、フィルヴィスさんと手を繋いで歩きたくなってきたなー。チラッ」

 

ギルド内で、唯でさえ目立っているのに、俺が騒ぎ出すと周りからの視線も増える。

 

「わ、分かりました。いただきます」

「はい、それでは、また明日も、よろしくお願いしますね!」

 

え? という顔のフィルヴィスさんと俺はこのあと、途中まで帰った。

残念ながら、手を繋いでは帰れなかった。

けれど、その途中で。

 

「あれ?」

「どうしました?」

 

ヘスティア・ナイフを無くして、リューさんが変身したリリからヘスティア・ナイフを回収、ベルきゅんは感激のあまりリューさんの手を握って騒いでいる。

 

「いえ、ファミリアの仲間が見えただけです」

 

行きましょう。とフィルヴィスさんを促すと「ファミリアの仲間と合流した方が」と言ってきたので。

 

「今はフィルヴィスさんと居たいです」

 

と、ゲームの娼婦の仕事をしていた時のことを思い出して、流し目でフィルヴィスさんと仲良くしようとする。

ちょっと頬が紅くはなったが、それだけだった。

 

うん、フィルヴィスさんはやはりガード固い。

ちょっとずつ、切り崩さないと。

 

この後、俺はフィルヴィスさんと明日も臨時のパーティーを組むことを約束して(泣き落としでさせた)、ホームに帰った。

 

 

 

 

翌朝。

 

「貴女がリリルカ・アーデさんですか?」

「あ、あのリリのことは、呼び捨てでお願いします。アルディス様」

 

フィルヴィスさんと合流する前に、俺はリリと初めて顔を合わせた。

 

なんか、微妙にリリがビクついている気が。

緊張しているエルフの子供とかに様子が似ている気がする。何でだ?

まあ、いいや。とりあえず、言いたいことを伝えよう。

 

「ベルさんは、お人好しで世間知らずだから、色々教えて上げて下さいね」

「ちょっ、アルディス、何を言ってるの!?」

「未だにナァーザさんに、割高でポーションを買わされているクセに」

「ちょっ、それは」

 

焦るベルきゅんを放置して、俺はリリを手招きして、耳元で囁く。

 

「それと、気をつけてね。リリさん、ベルさんはああ見えて」

 

――天然女殺しだから。

 

え? と言う顔をするリリと、ちょっと怒ってるベルきゅんと別れて、俺はフィルヴィスさんと六階層へ向かった。

 

そして、俺は戦いながら、フィルヴィスさんにアドバイスを貰う。

時折、六階層で採れるダンジョン産の採取物を採集して、お昼には。

 

「はい、フィルヴィスさん。あーん」

「いや、アルディス殿。一人で食べられる」

「ダンジョン内では、何があるか分かりません。手を塞ぐと危ないですから、わたしがフィルヴィスさんに食べさせて差し上げますね」

「い、いえ、それなら一人ずつ食べれば」

「わたしの作ったサンドイッチ、食べてくれないのですか?」

 

悲しげに俯くと、なんか葛藤しながら、「い、いただきます」と、言ってくれたので、優しくフィルヴィスさんの口にサンドイッチを入れる。

 

「――っ、こ、これは」

「どうですか?」

「お、美味しいです」

 

ふっ、前世で俺は料理にはそこそこ自信があった。

祖母が幼い頃から、料理の基礎を俺に教えてくれたのだ。

今のフィルヴィスさんの顔を見ると祖母には本当に感謝だ。

 

「次はタコさんウインナーです」

「た、たこ?」

「オクトパスの形に切ったウインナーです」

 

俺の言葉に「あぁ」とフィルヴィスさんは頷いた。

 

「アルディス殿は、料理が上手ですね。誰に教わったのですか?」

 

フィルヴィスさんの質問に、俺と【ゲームのわたし】が答えてしまった。

 

「祖母と先輩娼婦達ですね」

 

俺は反射的に手で口を押さえるが、持っていたサンドイッチを離してしまい。半分ほど残ったサンドイッチは地面に落ちてしまう。

 

いや、確かに娼婦イベントで、料理を教えて貰うイベントはあるけど、何故今の俺はそれを言った?!

 

「すまない。アルディス殿っ」

 

ほら、フィルヴィスさんも自身も特大な地雷原なのに、私、地雷踏んだ! みたいな顔をしているし!!

 

「ご、ごめんなさい、わたしも無神経で」

「違います。貴女様は何も悪くない」

「皆さん、良い人達でしたから大丈夫ですよ!」

 

俺が元気、元気! と笑顔でそう言うと、フィルヴィスさんは「なら、良いのですが」と、納得はしてくれた。

 

とりあえず、フィルヴィスさんにもしっかりサンドイッチを食べさせて、俺もサンドイッチを食べて。

ダンジョンの探索を再開した。

 

で、その日の夜。

ヘスティア様が酔っぱらって帰ってきて、俺はヘスティア様を連れてきたミアハ様に飲み代を支払う。

 

ミアハ様は要らない。と言ったが、受け取らないなら、夜遅いですがナァーザさんに渡しますね。と伝えると、ナァーザさんに怒られるのは嫌なのか、ミアハ様は素直に受け取ってくれた。

 

実はポーション配り歩いているミアハ様を本気で叱り飛ばして、「このままだと、ホームや、場合によってはナァーザさんが娼館に売り飛ばされるかもしれないんですよ! 危機感持って下さい!!」と、言ってから、ミアハ様は大分お金や物を大事にし始めた。

 

それとナァーザさんも娼館は考えてなかったらしく、ミアハ様が馬鹿なことをしたら、前よりしっかり叱るようになった。

 

「はぁ、ベルさん。先に夕食を食べましょう。ヘスティア様には、明日の朝は二日酔いでしょうから、お粥を作っておきます」

「あ、うん、分かった」

「それと、明日はベルさんがヘスティア様を見ていて上げてください。最近、ヘスティア様と話をしていないようですし」

「え? そんなことは……?」

「ありますよ。そうですね。今日は無理でも今度デート誘ってあげてください」

「で、デートって! 神様相手だよっ」

「神とか関係ありません。ヘスティア様は女の子ですよ」

 

俺がそう言うと、少し考えていたようだが、ベルきゅんも納得したようだ。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

さて、あれから数日。

流石にフィルヴィスさんも、毎日俺に付き合う訳にはいかない。

 

エクレアと六階層でペアを組んだり、アウラさん達に連れられて、十階層の見学をさせてもらえた。

セイント・ランスの威力はやはり高く、攻撃面や装備面では問題なかった。

 

それと技量も問題ない。

 

何より【オーク】と戦う姿はアウラさん達に「何年もオークと戦ってきた貫禄を感じました」と言われた。

 

うん、まあ、オークは経験値、性経験値、ドロップアイテムが美味しかったから、かなりの数を倒したからな。

 

ただ、やはり全体的にアビリティが足りないと感じた。

耐久だけは他のアビリティに比べて地味に上がっていくので、心配ないけど。

頑張って他のアビリティも上げなくては。

くぅっ、ベルきゅんが羨ましい。

そんなことを思う。今日この頃。

 

 

 

 

 

「ただいま、戻りま「ええええええええええっ!?」し「へぶにゅ!?」た……?」

 

ホームに帰るとベルきゅんの驚く声とヘスティア様の変な声が聞こえた。

あ、もしかして、ファイアボルトか?

 

「大丈夫ですか、ヘスティア様。それと何があったんですか、ベルさん」

「え、あ、アルディス」

 

俺がヘスティア様を起こして、話を聞くとやはり魔法が使えるようになったようだ。

で、怒るヘスティア様と謝るベルきゅんを宥めて、ベルきゅんのステイタスを見せてもらい。

 

よし! まだ、耐久は抜かされていない。

まあ、直ぐに抜かされるだろうけどね!!

 

「ファイアボルト。速攻魔法ですか。レア魔法ですね」

「確か、速攻魔法は詠唱を必要としない魔法だよね? アルディスの【セイント・ランス】みたいに」

「はい、ですからベルさん。不用意に魔法の名前を言わないようにしてくださいね。わたしも【セイント・ランス】の能力の考察中にうっかり【セイント・ランス】と呟いて、そこの壁に穴を開けましたから」

「えっ、その穴はそれが原因だったのかい?!」

 

驚くヘスティア様を無視して、俺はベルきゅんに言う。

 

「今日は遅いですし、魔法は明日にしましょう。ベルさん」

「あ、うん」

「ヘスティア様は先に寝てください」

 

で、俺がささっとシャワーを浴びて、ヘスティア様の寝ているベッドの隣に入って、ちょっとすると。

人の動く気配がして、小さくパタンとドアの閉じる音がした。

 

「念のため後を追いますかね」

 

手早く防具を着て、俺は全速力でベルきゅんの後を追った。

 

 

 

 

結果的に、原作の通りにベルきゅんはアイズさんに膝枕をしてもらった。

で、俺はリヴェリアさんと、地上に一緒に帰る途中で。

 

「団員が迷惑をおかけして」

「いや、気にするな。それよりも」

「はい」

「普通、逆ではないかな? 年齢的にも」

 

魔法に興奮して夜にこっそりダンジョンに向かう新人団員、その団員をこっそり見守る先輩団員。

年齢が逆だな完全に。

 

リヴェリアさんの言葉に、俺は苦笑いを浮かべる。

 

「あ、そうだ。夢は役に立ちましたか?」

「ん? ああ、役に立った。先に知っているのと知らないのでは、心構えが出来るぶん、かなり助かった」

「それは良かったです」

 

本当に助かったと、溜め息をつく。

 

「宝玉に食人花。調教師(テイマー)。黒い肉の蜘蛛のような穢らわしい新種のモンスター。分からないことだらけだ」

「…………え?」

 

リヴェリアさんの言葉の最後の言葉に、俺は思わず立ち止まる。

リヴェリアさんも、立ち止まり俺を見る。

 

「今なんて言いました?」

「ん? 宝玉に食人花。調教師(テイマー)。黒い肉の蜘蛛のような新種のモンスター「それっ!!」」

 

俺が声を上げるとリヴェリアさんは困惑した表情になる。

 

「リヴェリアさん、その黒い肉の蜘蛛のようなモンスターについて、詳しく!!」

 

俺はリヴェリアさんにすがり付くように、リヴェリアさん達が遭遇した、その新種のモンスターについて、詳しく聞いた。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 

【しがみつく肉】それが、リヴェリアさん達が遭遇した黒い肉の蜘蛛のようなモンスターの名前だ。

 

【妖精王女 ~白濁の泉に沈む】に序盤から、何処にでも出てくる雑魚敵だ。

 

強さはゴブリン以下ではあるが、このモンスターはなかなか面倒くさい。

 

なぜなら、相手に飛び付いて動きを封じてくるからだ。

 

神聖装備を身につけていれば飛び付いて来なくなるが、神聖装備が無い序盤に出会うと、運が悪ければ処女を奪われる。

 

リヴェリアさんの話だと、今までモンスターに性的被害を受けていなかっただけに、原作通りに戦場になった十八階層のリヴィラの街にいた女性冒険者はかなり混乱したらしい。

しかも、三十匹以上現れたそうだ。

それと気になるのは、小さいが魔石があったこと。

 

ゲームには魔石なんてものはない。

似ているアイテムはあるが、鉱山で手にはいる鉱物だ。

 

どっから出てきた? 何故産まれた? 【しがみつく肉】は魔王が直接産み出したモンスターの筈だ。

 

魔王がこちらに来ている? だとしたら、世界規模で異変が、起こる筈だ。

流石に世界が滅ぶ可能性があるなら、神々は動くはず。

 

「…………分からない」

 

気がつけば朝だった。

まあ、考えてもしょうがない。気持ちを切り替えよう。

今やるべきことをしよう。

 

 

 

で、朝食を食べて、気がついたらベルきゅんとヘスティア様が言い争い、ベルきゅんはそのまま使い終わったグリモアを持って出ていった。

 

「あぁ、ベルくん! 君は純粋過ぎる!!」

「大丈夫ですよ。ヘスティア様」

「何が大丈夫なんだい!? このままだと、また借金が!!」

「増えませんよ。あの本は豊穣の女主人で借りたみたいですし」

「何故、大丈夫だと言えるんだい、そんなこと!」

「女将さんなら、本を忘れた人がベルさんに弁償しろと言っても黙らせるかと」

 

忘れたお前が悪い。とね。

だから、大丈夫です。とヘスティア様を宥めてから。

俺はナァーザさんの下へ向かった。

 

「ナァーザさん。頼んでいたものは?」

「届いたよ。臭い消しと合成毒」

「ありがとうございます」

「…………アルディス、そんなに沢山臭い消しと合成毒必要なの?」

 

今まで使いもしなかったアイテムを注文したことで、ナァーザさんは、何かを感じ取ったようだ。

 

「ええ、今のうちに倒しておきたい冒険者(モンスター)がいるんです」

 

俺がナァーザさんにお代を支払うと、

 

「こんなには要らない」

「貰って下さい。ミアハ様の為にもなりますし」

「……分かった」

 

悩んだようだが、ナァーザさんは色をつけた代金を受け取ってくれた。

そして、店を出るとき。

 

「アルディス」

「なんでしょうか?」

 

俺が振り返ると、ナァーザさんは心配そうな表情でこう言った。

 

「また来てね。常連客が居なくなると潰れてしまう」

「ええ、また直ぐに来ますよ」

 

俺は笑顔で店を出た。

 

次に向かったのは、エクレアの工房だ。

 

「出来合いを作り直しただけだから、革鎧は直ぐに出来たけど。斥候でもするつもりなんですか?」

「まあ、そんな感じです」

「それに頼まれた、顔を全部隠すサラマンダーウールを使ったマスクとフードつきマントだけど、ダンジョンでも凄く怪しいですよ」

「マスクは見られれば怪しいですが、フード付きのマントは珍しくはありませんから」

 

俺の言葉に溜め息をつくエクレア。

そして、少し躊躇しながらも、箱を俺に差し出してくる。

 

「それと、頼まれていた投げナイフです。素材と今の私の技術だとこれが限界です。でも、レベル 3相当のモンスターにも、ダメージは分かりませんが刺さる筈です。それと毒を塗るとのことでしたので、毒が付着しやすいように、溝などをちゃんと付けてますよ」

「ふふっ、ありがとう、助かります。エクレアさん」

 

俺が微笑むとエクレアさんは、不安げに俺を見た。

 

「……何をするのか、知らないけど。気をつけてくださいね」

「ええ、大丈夫ですよ」

 

また来ます。

そう告げて、俺はエクレアの工房を後にした。

 

 

▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

ゲームでは、ステルスのミニゲームがあった。

盗賊のアジトに侵入。脱出。

思い出せるのは、背後からナイフで相手の首をかっ切る感触。

 

「てっ、てめぇっ、何者だ!」

 

血を流す右肩を押さえながら、最初に背後から襲った中年の冒険者を改めて見る。

中年のオッサンの獣耳。どこに需要があるのか考えて、即座に止める。

 

目の前にいる三人はベルきゅんを罠にかけたリリを待ち伏せして、アイテムを強奪したならず者だ。

まあ、団員のパーティーメンバーからアイテムを強奪したのだから、殺してもかまわないだろう。

 

どのみちコイツ等は、ミノタウロスに殺される。……はずだ。

 

とはいえ、俺は十階層にソロで行くのは無理だ。

運も味方すれば、出来るかもしれないが。

 

利益のことを考えれば、そこまでする必要はない。

だから六階層で待ち伏せして、チャンスがあれば殺すつもりだったけど。

 

待ち伏せは運良く成功。最初の毒付きの投げナイフは、狙った中年獣耳男は野生の勘ともいえる動きで回避行動。

ナイフをうなじ部分ではなく、右肩にずれてしまったが当たったので問題ない。

 

驚き固まる取り巻きの二人にも投げナイフを連続でお見舞い、それぞれ二本ずつ毒の投げナイフを投げて、見事に突き刺さる。

 

本当に運が良いことに、周りには誰もいない。誰か居たのなら、奇襲はすっぱり諦めるつもりだった。

 

あぁ、とても良い気分だ。歌でも歌いたい。

あ、駄目だ。歌はモンスターを引き寄せる。

って、ゲーム作品が違うか。

 

「た、助けっ」

 

毒が廻り、助けを求める取り巻きの冒険者に、俺は左手に装備していたロングソードで首を切り、トドメを刺す。

その隙にリーダー各の中年ケモミミ男が仲間を捨てて逃げようとしたので、右手でナイフを投げる。

 

「ゲハッ」

 

俺が思っていた以上に、コイツ等は毒には弱いみたいだ。

もう一人の取り巻きは今死んだ。

 

「な、何なんだよっ、お前は!」

 

血を吐きながら、地面を這う男に俺は再度周囲を確認し、誰も居ないことを確認。

アイテムボックスから投げ槍を取り出して、中年獣人の男に投げつけ、トドメを刺した。

 

カヌゥだったか? コイツはリリから奪った火の魔剣を持っていた筈だ。

 

奇襲直後は男も混乱して、使ってこないかもしれないが、立ち直れば形振り構わず魔剣を使ってくるかもしれない。

だから、念のためにサラマンダーウールを使った防具を装備をしたけれど。

 

「本当に運が良かった。六階層の正規のルートで待ち伏せして、奇襲するときに他の冒険者が来なくて」

 

俺は空にしたアイテムボックスに三人の男達の死体を入れて、その場を後にした。

 

 

「ノーム金庫の中にある宝石は、戦争遊戯の後で返してあげましょう。リリスケ」

 

俺は上機嫌で、ホームに帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、合流したリリスケは、俺にこっそり耳元で囁いた。

 

「あの人は本当に天然女殺しです」

 

ほんのり頬が紅かったけど、何したのベルきゅん?

 

 

 



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家族会議

ダンまちアニメ、来週が楽しみです。




かなりおんぼろな教会が、我らのヘスティア・ファミリアのホームだ。

彼方此方傷んでるが、暮らすには問題はない。

ハイエルフの俺がここに住んでいると聞いて、引退した大工の老エルフの夫婦と関係者が、惨状を見かねて善意で修繕してくれたので、原作よりも快適な家だと思う。

 

もちろん、後でお金を支払った。せめて材料だけでも、と。それから、交流を持ち。老エルフ達には冒険者をしているので、心配はされながらも、孫娘のように可愛がってもらっている。

 

で、今日はその教会にリリルカ・アーデがヘスティア様と俺に頭を下げに来た。

 

「神様、お待たせしました。この子が」

「リ、リリルカ・アーデです。は、初めましてっ、神様」

 

ベルきゅんがリリスケを連れて教会の扉から入ってきた。

最初はヘスティア様とリリスケを話をさせる為に、俺は素早くベルきゅんを教会の外に連れ出す。

 

「ベルさん、こっちへ」

「あ、アルディス、何を?」

「大人の話をするので、ベルさんは席を外してください」

「いや、大人って」

 

リリスケを心配するベルきゅんに、俺は「ヘスティア様の立場も考えてあげて下さい。主神として言わなければならないことがあります」と、言うと戸惑いながらも、俺と共に教会の外へ移動。

事前にヘスティア様と話していたので、ヘスティア様もこちらを見て頷いた。

 

まあ、二人の話はあまり時間は掛からなかった。

ヘスティア様とリリスケの話は終わったので、次は俺の番だ。

教会の中に入り、リリスケと向き合う俺

 

「お久しぶりですね、リリさん」

「はい、あのアルディス様「ベルさんが悪いです」え?」

「もちろん、騙す方が遥かに悪いですが」

「アルディス」

 

ベルきゅんが心配そうに見ているが、ベルきゅん、大丈夫だよ。

 

「けれど、リリさんは優秀なサポーターらしいですね?」

「うん、そうだよ! モンスターから魔石の回収は早いし、戦い易い環境を作ってくれる」

「ベルさん、落ち着いてください。分かっていますから」

「あ、ごめん」

 

興奮するベルきゅん。宥めて、リリスケを見る。

 

「ある程度、貴女の状況は聞いています。ソーマ・ファミリアのリリさんは、これからどうするつもりですか?」

「しばらくすれば、リリは死んだことになる筈です」

 

それから、お金を貯めて脱退すると言うリリスケ。

原作のように、ヘスティア様とベルきゅんが脱退について少し話しているが。

期待通りの回答ありがとう。リリスケ。

 

「甘いですね」

 

俺の言葉に、ヘスティア様、ベルきゅん。リリスケも驚いた顔をする。

リリスケを襲った四人のうち三人は殺して口封じをしたが、残り一人の安否はまだ分からない。

最後の一人が、殺した三人からリリスケの変身魔法のことを聞いている可能性はかなり少ないとは思うが、聞いている可能性がある。

まあ、殺した三人がリリスケの変身魔法を知っている可能性も低いが。

 

だが、あの四人が生きていて、リリスケから金を奪ったと騒げば、ソーマ・ファミリアの団長ザニスがリリスケが死んだかどうか、念のためにソーマに聞くかもしれない。

ま、現時点でザニスがリリスケの変身魔法のことを知っているかは分からないが。

出来れば、このままリリスケはソーマファミリアから、フェードアウトさせたい。

 

「いえ、痕跡は既に消して」

「ヘスティア様」

「なんだい?」

「恩恵を受けた人間が死んだかどうか、神は調べられますね」

「うん、出来るよ。ボクは二人だけだから、恩恵が消えれば直ぐに分かるね」

 

ヘスティア様の答えを聞いて、リリスケは声をあげる。

 

「で、でも、ソーマ様はリリの安否なんて確認しませんよ! だって、ソーマ様は」

「酒作り以外興味がない」

「はい、そうです。だから」

「ソーマ・ファミリアの団長の名前はザニスという名前でしたか?」

 

その名前を出して、リリスケは固まる。

アイツは確か、密売とかやってたような気がする。

ゼノスだけではなく色々。ヤバイなこの辺曖昧だ。

原作知識を後で、纏めてメモしておかないと。

 

「リリさん、貴女は変装、いえ。変身魔法が使えますね?」

 

リリがベルきゅんを見た。

ベルきゅんは、即座に首を横に振り、驚きを露にしながら、俺の顔を見る。

 

「ハイエルフに協力的な方がいるんです。その方に手癖の悪い小人族がいると聞いて、色々調べたんです」

 

その小人族は一度も捕まっていない。不自然な程に。

そこから、変身魔法の可能性を考えました。と告げると、ヘスティア様達三人は更に驚いていた。

 

「ザニスが現時点でその魔法を知っているか分かりませんが、利用価値が高いですからね。行方不明なら必ず居場所を探す筈です。ですから、リリさん」

「は、はい」

「今はまだ。ヘスティア・ファミリアにソーマ・ファミリアとことを構えるつもりはありません」

「はい…………」

「ですので、正体がバレないように、徹底的に変身と変装をしてもらいます」

「え?」

「それが、今後ベルさんとパーティーを組む為の、わたしからの条件です」

 

呑めますか? と聞くとリリスケは、俺の言葉に直ぐに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

「い、嫌です! き、着られませんよ、こんな服!! 何でアマゾネスの服なんですか!?」

「リリさんがこの前、わたしと会った時と同じ服で来るからでしょう! 本当に正体隠す気あるんですか!? それと、バックパックも此方で用意したのを使ってください」

「で、ですがっ」

「早く着替えなさい!」

「べ、ベル様~っ!」

 

ベルきゅんに助けを求めるが、ベルきゅんには「ソーマ・ファミリアは過去に嫌がらせで人の家に押し入り強盗紛いのことをした」とベルきゅんに教え、下手すればヘスティア様が害される可能性を考慮するべきだとベルきゅんを説得して黙らせている。

ちなみに、ベルきゅんは頬を紅くしてリリから顔を背けて、リリの姿を見ないようにしている。

 

「ごめん、リリ……」

「そんな! あ、へ、ヘスティア様!」

「ごめん、ボクも今回は口が出せないんだ」

「何故ですか!?」

「神友との取引で苦労かけてしまってね。でも、アルくん。あまりハレンチな格好でベルくんの隣にサポーターくんを置きたくないはないんだが……」

「……分かりました。下着がふんどしタイプでスリットが入ったのは止めます。もう少し大人しいズボンタイプにしましょう。」

 

ヘスティア様の要望で、リリスケの服はかなり大人しいアマゾネスの服になり、リリスケはアマゾネスとエルフ、獣人の三タイプの衣服(普段着)と防具を揃えた。

 

アマゾネスの時も、エルフの時も俺が用意したのをそれぞれのデザインの違うフード付きのコートを着て、ベルきゅんお気に入りの獣人の衣服(普段着)や防具も、前のリリスケの好みではなく、

俺が選んだものにした。

 

こうして、ベルきゅんと二人きりなら、ベルきゅん一押し獣人姿。

あまり機会は無いが、俺とペアならエルフの姿で。

俺とベルきゅんの三人なら、アマゾネスの三つの姿を使い分けて、リリスケと俺とベルきゅんはパーティーを組むことにした。

 

その結果。

 

 

 

「クラネルさん……」

「あ、リューさん。どうしたんですか?」

 

ある日の帰り道、深刻そうな表情のリューさんがベルきゅんに話しかけてきた。

 

「今、一人ですか?」

「え、ええ」

「実は、クラネルさんの噂を聞きまして」

「噂?」

 

どんな噂だろう? とベルきゅんが首を傾げる。

すると、リューさんは思い詰めた表情で、

 

「はい、クラネルさんが幼い少女達を取っ替え引っ替え連れ廻していると聞きました。本当ですか?」

 

そう告げた。

その右手には、いつの間にか訓練用ではあるが木刀が握られていた

 

「……え、えええええええええええええっ!!」

「もしも、本当なら、貴方の性根を叩き直さねば!!」

 

ベルきゅんが「違います。リューさん、誤解です!」 と、どうにかベルきゅんは誤解を解いたのだが。

 

 

後日、俺まで一緒にベルきゅんとエイナさんに呼び出されて、似たような質問をされて、身の潔白を信じてもらうまで、かなり時間がかかった。

 

リリスケのことを言うわけにはいかないので、やましいことは、ありません。と俺とベルきゅんは黙秘を貫き、どうにか乗りきることに成功したが、噂は完全には消せなかった。

 

ごめん、ベルきゅん!!

 

あれ? 結果的に余計に目立ってる?

 

 




誤字指摘、本当にありがとうございます( ノ;_ _)ノ



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俺、わたし

誤字の指摘ありがとうございます。


俺は気がついたら、夜の深い森の中にある、泉のほとりに立っていた。

 

何故、こんな所にいるのか分からない、俺は周囲を見渡して、この泉を見たことがあることに気づいた。

 

そうだ。ここは確か【妖精王女 ~白濁の泉に沈む】の主人公アルディスの一族のハイエルフしか入れない聖域にある泉だ。

 

魔王に敗北したり、悪堕ちすると白濁の泉となり、魔の者達に穢される場所。

 

――アルディス。

 

少女の声が聞こえたような気がした。

聞いたことのない声だ。けれど、俺は何故か声の主が分かった。

 

振り返ると、そこに立っていたのは焦げ茶色の髪に、ソバカスのあるちょっと地味な顔の少女。

 

彼女の名前は、ノーラ。

 

種族による差別をせず、

ゲームの序盤で、疲れきっていたエルフのアルディスに、暖かなスープを分け与えたパン屋の娘。

住んでいる街が魔王達に襲われ、亡き両親から幼い弟を託され、娼婦になった少女。

ゲームではボイスは無かったけど、こんな声をしてるんだな。

 

…………いや待てよ。

設定では、この聖域にはエルフ以外が入る為には、エルフが作った聖域の結界を破壊しないと入れない。

 

それ以前にノーラが聖域に来るイベントは無い。

それにノーラは犯され、殺された。

 

そう認識した直後に頭を殴られるような衝撃と痛みが走った。

何故、ゲームでのイベント画面で記憶が思い出せない? まるで実際に起こった出来事みたいに、リアルに思い出す?

なんだこれ? 気持ち悪い……。

 

――アルディス。

 

また、名前を呼ばれた気がした。

俺がノーラを見ると、彼女は何事が呟き、泣き笑いを浮かべていた。

その表情は、安堵しているようにも見えた。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

「……ノーラか」

 

目を覚ましたベッドの上で、俺は隣で眠っているヘスティア様を起こさないように、ベッドから降りて、呟いた。

 

ゲームの後半で発生する街防衛戦で主人公であるアルディスが敗北すると、アルディスと一緒に襲われ、その後の戦いの勝敗によって、死亡する。

悪堕ち√だと、堕ちたアルディスのお願いに、一緒に堕ちて侍女として一生側にいる優しい少女だ。

 

確か、俺が最後にプレイした魔王の聖母√では、ノーラは死なせている筈だ。

確か、広場でアルディスの目の前で、

 

「っ、頭が痛む」

 

ゲームの記憶を思い出そうとすると、ゲームをしていた時のモニターの画面越しの映像ではなくて、まるで自分が体験したかのように、その時のことを思い出してしまう。

 

この身体の記憶は、思い出すと発情するから厄介なのに。

 

何故、そっちで思い出す? 戦いの記憶などはモニター越しのゲームをしていた俺の記憶よりも、アルディスの身体の記憶の方が有益だ。

 

けれどここ最近、ゲームの記憶とアルディスの身体の記憶を間違えて思い出してしまう。

これから、間違えないようにしないと。

 

「……朝食作らないと」

 

気持ちを切り替えよう、ヘスティア様やベルきゅんの為に、今日も頑張ろう。

 

▼△▼△▼△

 

 

リリスケが合流した後も、俺はベルきゅんとリリスケと毎日パーティーを組んでいる訳ではない。

 

いや、リリスケのイベントが終わったから、パーティーを組む頻度は上げているよ?

 

「これを下さい」

 

その日、俺はベルきゅん達とは、ダンジョンへ行かずにとあるエルフが経営する裏通りの雑貨屋に来ていた。

中年の女性エルフの店員がいるカウンターに雑貨を置くと店員が話しかけてきた。

 

「アルディス様、調査を依頼されていた例の四人ですが、三人は七階層で遺体が見つかったようです。遺体はキラーアントにかなり荒らされていましたが、本人確認は出来たそうです」

「そうですか……、ベルさんのサポーターの周りを付きまとっていたので、気になっていましたが」

 

俺は殺した三人の死を悼むように答える。

あの三人の遺体は、少々手間ではあったけど、必要な物だけ回収して、七階層に捨ててきた。

短時間であれば、七階層でも俺は十分戦える。

セイント・ランスと戦闘技能のお陰で。

 

「残りの一人は、行方不明期間から死亡したものと思われます」

「ありがとうございます」

 

そう言って、俺は雑貨の購入代金と一緒に情報料を支払う。

 

「いえ、それと」

「はい」

「アルディス様と同じファミリアに所属しているヒューマンの少年ですが」

「ええ」

「複数の幼い少女をダンジョンに連れていっていると噂が」

「あ、それはやましいことはないので、違うと話を流してください」

 

噂を流す料金を追加で払い、俺は店を後にした。

中年の女性エルフから、情報屋だと言われて、自分を売り込んで来た時は驚いたけど、やはり情報は大事だな。

 

「それでは」

 

俺は雑貨屋を後にする。

人を殺したことは、ナァーザさんは確実に察している。

エクレアも薄々。ヘスティア様も様子がおかしいとは思っているみたいだ。

ベルきゅんはリリスケに集中してたから、全く気づいていない。

普段なら怪しまれただろうけれど。

 

「次はミノタウロスか」

 

アイズさんとの特訓が始まれば、またベルきゅんとは別行動かな。

出来るだけベルきゅんに経験値を稼がせないと、万が一があ……る。

 

「しまった……」

 

あの四人、いや殺した三人はミノタウロスに殺される。

偶然殺されるんじゃない。

忘れてた! あいつ等オッタルがイシュタル・ファミリアのアマゾネスと戦っている時に、オッタルからミノタウロスの入ったカーゴ奪って、開けて殺されるんだ。

 

アニメ版の印象が強くなってて、すっかり忘れてた!!

少しでもリリスケをソーマ・ファミリアに死んだと思わせるようにした結果がコレか!!

 

ってか、あの獣耳中年オッサン冒険者、リリスケの魔剣でミノタウロスを攻撃してたよな?

ミノタウロスには、ダメージが無いように見えたけど、実際はどれだけダメージを与えられた?

 

「…………ヤバい」

 

ロキ・ファミリアへの情報を渡すことに成功していたから、調子に乗ってた。

ベルきゅんのミノタウロス戦はギリギリの勝利だった。

そもそも、九階層でベルきゅんがミノタウロスと戦うかも怪しくなってきた。

 

ヤバい、ヤバい、ヤバい!

どうする? 魔剣のダメージが無いなら問題はない。

けれど、少しでもダメージがあったなら?

戦いがどうなるかわからない!

 

一度、深呼吸をする。

あの魔剣は俺の手元にある。なら、それならば!

俺がやらかしたんだ。

やることは、決まっている。

けれど、俺一人では可能性が低い。

 

「……交流は、あまりないけど」

 

身体が震える。

良かれと思って余計なことをした。

頼むのは情けない! 恥知らずなことだけど!

 

「……彼女なら、この未来の情報に飛び付く筈だ」

 

彼女に少し、力を借りよう。

後は……。

 

「準備をしないと……」

 

胸を拳で一度強く叩いて、俺はエクレアの工房へ向かった。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

「はい、採寸は終わりましたよ」

「ありがとうございます、エクレアさん」

「ありがとうございます。僕の為にわざわざ」

「いえ、私としてもお仕事はありがたいですよ。それじゃあ、私はこれで材料はあるので早めに持ってきます」

 

夕方、わざわざホームに来てもらい、ベルきゅんの鎧の下に着る黒いクロースアーマーを注文した。

デザインは原作に近い服のデザインだ。

 

ベルきゅんは最初はお金はないよ! と慌てて、俺が払うと伝えると、悪いよ! と言っていたが。

稼ぎ頭があまり防具を着けないのは恐ろしいです! と反論して、納得させた。

値段を聞いて来たが、二万ヴァリスと言ったらベルきゅんが高い! と叫んだが、納得はしたようだ。

 

実際、クロースアーマーにそこまでの防御力はない。

素材にもよるだろうが。

けれど、動きを阻害せず、防御力をあげるとなると、これくらいしかない。

 

後は時間を見つけて、耐久を上げる為に、ベルきゅんを叩くことも考えたけど。

 

「特訓?」

「うん、実は今日、アイズさんに」

 

アイズさんとの特訓に悪影響が出る可能性がある。

今はなにもしない方が良いな。

 

「なるほど、是非やるべきです」

「でも、神様に怒られないかな?」

「内緒にしましょう」

「え?」

「内緒にしましょう。ベルさんが強くなるチャンスを失う訳にはいきません」

「い、いいのかな?」

「ベルさんが強くなれば、それだけヘスティア様を楽にさせてあげられるので、問題ありません。大っぴらにしては駄目ですよ?」

「うん、分かったよ、アルディス」

 

 

俺はヘスティア様が帰ってくる前にこの話を終わらせ、 翌朝、行動を開始する。

 

「ふぁー、あれ? アルくん?」

「神様、おはようございます」

「あ、おはよう、ベルくん。アルくんは?」

「ちょっと早いけど、冒険者ギルドに向かいましたよ。アウラさん達としばらくパーティーを組むとかで」

「ふーん、あ、これはアルくんの作った朝食かい?」

「はい、今日はアルディスの番ですから。あ、僕も行かないと」

「行ってらっしゃ~い。……うぅっ、朝食冷めてる。アルくん、かなり早起きした?」

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 

神ヘスティアが、冷めた朝食を食べることになった日の夜明け直後。

 

「ふっ、はっ」

 

木刀を振るい、鍛練する妖精のもとに幼い妖精が訪ねて来た。

 

「……こんな朝早くから、どうしたのですか? アルディス様」

「様は要りません。貴女にお願いがあって来ました。リューさん」

「私に、願い?」

「はい」

 

アルディスはその場にゆっくりと両膝を突いて、勢いよく頭を叩きつけるように地に付けた。

 

「わたしの冒険者依頼を受けてください!! リューさん!!」

 

この日、オラリオに来て、二度目のロリハイエルフの土下座が炸裂した。

 

 

 

 




やらかしたので、帳尻合わせに奔走する主人公(自業自得)、でも力が足りないので、リューさんの力を借りる。



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説明中

誤字指摘ありがとうございます。




 

早朝にリューさんに土下座をすると、リューさんは慌てて周りを確認し、物凄い勢いで彼女が暮らす【豊穣の女主人】の従業員が暮らす離れに連れていかれた。

 

「あのようなことをしないでください。心臓に悪すぎる」

「すみません。リューさん。けれど、貴女しか頼れる強い方は居なかったのです」

 

少し頭を下げながら、俺がそう言うと、リューさんは一瞬表情が揺れたが、普段のクールな表情で言った。

 

「私はただ店の従業員ですよ」

「ごめんなさい。リューさん。わたしは貴女が昔、【疾風】と呼ばれていたことを知っています」

「な、何故、それを」

 

驚くリューさんに、俺は調べた結果です、とだけ伝える。

 

「……仮に私は疾風だとして、貴女様は私に何をさせたいのですか?」

 

警戒するように、俺を見据えるリューさん。

自業自得だけど、好感度が下がってるね!

……泣いて良いかな?

 

「わたしに稽古をつけてほしいんです」

「稽古を?」

「はい、気絶させたり、骨にヒビを入れない程度の力でお願いしたいのです」

 

俺の言葉に、リューさんが困った顔をする。

 

「わ、私はいつも、その……やり過ぎてしまう、ので」

「はい、それも知っていますが、リューさんしか頼れないのです」

 

リューさんの遠回しな手加減が苦手アピールに、俺は微笑む。

 

「わたしはどうやら、力と耐久。次に魔力が凄く上がり易いみたいで」

 

たぶん、アイズ並み? 身体のことを考えれば、不思議ではないけど。

 

耐久は食人花。ベート。あとはソロの時、頭の悪い殴り合いをモンスターとしているのが原因だろう。

試しにウォーシャドウと拳で語り合っていたら、通りかかった冒険者が引いてた。

やはり、血塗れで殴り合いは外聞が悪かったらしい。

ポーション使う暇がななかっただけなんだけど。

 

「特に耐久の上がりが早いのです。ですが、モンスター相手に耐久を上げようとすると」

「危険が伴いますね」

「はい、そこで冒険者にお願いしようと思いました。ですが、わたしより遥かに強く、わたしの耐久を上げる効果が期待出来る攻撃を繰り出せる冒険者は、限られてます」

「…………」

 

リューさんが、難しい顔をしている。

 

「どうか、お願いです。わたしと定期的に模擬戦をしてほしいのです」

 

しばらくリューさんは、考えていたが。

観念したように、分かりました、と。頷いてくれた。

 

「ありがとうございます。それと依頼はもう一つあります」

「はい、教えてください」

 

俺は軽く咳払いをして、気持ちを切り替えると、リューさんも察して、真面目な空気が部屋に流れる。

 

「次のロキ・ファミリアが遠征に出発する日の、夜が明ける前、わたしと最大で17階層まで降りて、とある人物を探してください」

「とある人物?」

「はい、その方が、ベルさんの命運を握っています」

 

意味が分からないという顔をするリューさんに、俺は今後のベルさんの為だと伝える。

 

「それと、この依頼を受けてくれるなら、一つだけお願いがあります」

「それは?」

「わたしを信じなくても良いです。けれど、ベルさんだけは、何があっても信じて見守ってあげてください」

 

「……どういう意味ですか?」

 

「今回の依頼は、リューさんがベルさんを信じて見守ることが、重要です」

 

 

 

もしも、貴女が動けば、多くの人が不幸になる。と告げるとリューさんはどういうことだ? と俺を見つめる。

 

リューさんは少し考えて、俺に問いかけてきた。

 

「貴女の目的は?」

「ヘスティア様を守ること、オラリオの平和。ベルさんを出来るだけ側で見守ることです」

 

十数秒、俺とリューさんは見つめ合い、リューさんは小さく溜め息をついて、

 

「分かりました。その依頼を受けましょう。ですが、ミア母さんを説得しなければ」

「それについては、考えがあります」

 

ミア母さんの説得は、すっげーっ、怖いけどな!! でも、説得する材料はある。

 

「どのような考えかは分かりませんが、ミア母さんを説得出来るなら、問題はありません」

「ありがとうございます。それと、報酬ですが」

「いえ、報酬は」

 

俺はリューさんを、タダ働きさせる気はない。

後で、ベルきゅんがどう頑張ってもやらかすからな!!

 

「金銭だけでも、受け取って下さい。それと」

「それと?」

「ベルさんがランクアップしたときは、ここでお祝いをしますから、期待してください」

 

俺の言葉に、リューさんはくしゃりと笑い。

 

「随分と気の長い話だ」

 

と、笑ったが、リューさん。

ベルきゅんのランクアップは目前だよ。

 

 

 

 

 

ベルきゅんが、負けなければ……。

 

 

 

 



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レフィーヤとお茶

 

レフィーヤ。

レズとか百合とか言われるけれど、ベル×レフィも個人的には好きだ。

ベルきゅんのヒロインになってもおかしくない感じがするし。

 

そんな、レフィーヤと俺は、今二人で街のカフェの外の席でちょっと休憩している。

 

「レフィーヤさん、今日はありがとうございます」

「いえ、私で良ければ何時でも手伝いますよ。アルディスさん」

「はい、また買い物に行きたいですね。レフィーヤさん」

 

テーブルの上に置いてある掌サイズほどのお洒落な小箱は、フィルヴィスさんやアウラさん達へのプレゼントだ。

少し、懐に余裕があるので、日頃の感謝を込めて贈ることにしたのだが、どれが良いか迷ってしまい。

店を見て回っている時に偶然、レフィーヤと出会い。少し、相談したらそのまま二人で買い物をすることになった。

 

「そう言えば、フィルヴィスさんはどうでしたか?」

「あ、はい、仲良くなれたと思います」

「それなら、良かった。フィルヴィスさんは、今も苦しんでますから」

 

アイズさん、ベート、レフィーヤが居なければ、ヘルメス・ファミリアが下手したら全滅していたかもしれない激戦。

 

まあ、事前にリヴェリアさんに手紙を送りつけていたので、多少は闇派閥もといタナトスの眷族の自爆攻撃での死者は減ったと思う。

 

終わったあと、アイズさんがリヴェリアさん達に滅茶苦茶怒られたと聞いた。

 

あとで聞いたレフィーヤの話だと、ロキ・ファミリアで24階層を調べようとした矢先に、24階層で戦闘になることを聞いていたアイズさんが、 フェルズからの依頼を受けて原作通り突撃したらしい。

 

あぶねぇ、危うく原作大きく変える所だった。

次は渡す情報を気をつけないと。

それと、確認しないと。

 

「アルディスさんは、フィルヴィスさんとは最近は?」

「会えてません。だから、これを持って会いに行くつもりです」

 

ミノタウロスに魔剣を叩き込む時に死ぬかもしれないし。

その前にオッタルに排除される可能性があるかもしれない。

 

まあ、仮に魔剣を叩き込んだとしても、ベルきゅんが負けたら、俺はこのオラリオからヘスティア様を連れて逃げる。

最低? ははは、俺もそう思うよ。

 

「あ、あのアルディスさん」

「何でしょうか?」

「その、アルディスさんも……、何か」

 

抱えているのか? と、レフィーヤが俺を心配に見詰めてくる。

だから、俺は笑ってレフィーヤに言う。

 

「わたしは大丈夫です。これでも、経験豊富ですから。それに誰でも、多かれ少なかれ、何かを抱えていると思いますよ」

「そんな辛そうな顔で……」

「え?」

 

レフィーヤが何かを呟いた気がしたけど、聞こえなかった。

今、何て言った?

 

「レフィーヤさん、今なんて?」

「いえ! あのアルディスさんは、フィルヴィスさんをどう思っていますか?」

 

レフィーヤの質問に俺は直ぐに答えられるので、直ぐに答えた。

 

「とても、綺麗でずっと見つめていたい人です。そして、恩人です。」

 

俺は普通にこう答えた。答えたつもりだった。

 

「だから、助けたいです。フィルヴィスさんは、穢れていない。それをわたしは証明したい」

 

まあ、可能な限り恩は返したい。

ベルきゅんがミノタウロスを倒したら、原作通りに進む。

その間に、どうにかして浄化魔法を手に入れられれば。

俺は黙りこんでしまい、レフィーヤが心配そうに、俺を見詰めてくる。

 

「あ、あの、アルディスさん?」

「い、いえ、その……今日はありがとうございました。レフィーヤさん。では、わたしはそろそろ、これを渡してきます。あ、明日は約束通りリヴェリアさんの元に行くとお伝え下さい」

「は、はい、分かりました」

 

フィルヴィスさんとアウラさん達へのプレゼントを腰のポーチに入れて、俺はフィルヴィスさん達の元へ向かった。

 

 





これから、忙しくなるので、更新がガクッと減ります。
感想も返せなくなります。


宝くじでも、当たらないかな・゜・(つД`)・゜・


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アルディスの所持&使用装備品 武器編 ①


フィルヴィスとの話を書いてたら、そういえばアルディスの武器について、殆んど書いてないな。と思って設定を確認したら、結構な量が有ったので、ミノタウロス戦までのアルディスの所持&使用装備品を上げることにしました。

本編ではなくて、すみません( ノ;_ _)ノ




アルディスの所持&使用、装備品 武器編

 

 

・ショートソード

冒険者ギルドの支給品

他にも短刀や短弓などがあり、多少悩んでこれにした。

借金して購入。初日から身体の技量を全開にして効率重視でモンスターを狩りまくった為、数日で借金を完済した。

能力は全てが底辺だが、大事に使った上に、愛着が湧いて、今も大事にヘスティア・ファミリアのホーム倉庫に仕舞ってある。

アルディスは一度、ベルに使わせようとしたが、ヘスティア・ナイフを使う前にショートソードを使わせて変なクセが付くかもしれないと考えて、アルディスはベルにショートソードを貸すのを止めた。

 

 

※ベルきゅん合流以降の主な武器↓

 

・スピア 銘は無し。

エクレア作

エクレアが練習の為に作った物を、アルディスが購入し朝の槍の練習用に使用している。

セイント・ランスがあるので、戦闘用の槍を購入するつもりは今のところアルディスにはない。

お値段は9600ヴァリス

 

・ナイフ 銘は無し。

作者不明の中古品。

なかなかの品で、戦闘にも使えるが、基本的には魔石回収用に使っている。

お値段は5000ヴァリス。

 

・ウィングソード

エクレア作

アルディスの初めてのオーダーメイド。

分類はロングソード、投擲が得意なアルディスに「いざというときに、投げられる剣が欲しい」と頼まれて作った物。

軽量化と耐久性のバランスにエクレアは苦労した。

投げることを考慮された鍔の部分が羽を広げた鳥のような飾りとなっている。

刀身はエクレアが、「お化粧」として特殊素材を混ぜ、白く輝いている。アルディスも色が気に入り、これ以降、アルディスの使用武器は刀身が白い物が多くなる。

攻撃力が低めで値段が高いが、刀身の長さや柄の掴みやすさ、投げ易いので、アルディスは気に入っている。

現在はサブ・ウェポン

お値段は24000ヴァリス

 

 

・虹の薔薇の棘

エクレア作

原作とアニメの知識がゴッチャになり、更にこれから仲間になるリリに手を出したゴロツキを感情に任せて始末するために注文した品物。

平均的な投げナイフに比べて細身。

毒を塗り投げることが前提なので、専用のグローブも付属。

エクレアの技量不足により、LV.3相当のモンスターに突き刺さる威力はあるが、耐久性に問題があり、硬いモンスターだと1回で壊れる可能性がある。

十本と専用のグローブセットで160000ヴァリス

殆んどダメージを期待出来ない使い捨ての状態異常専用の武器としては高額。

リヴェリアからの夢(原作知識)の報酬から支払われている。

 

・シュガーロッド

エクレア作

エクレアがブラックマーケットで購入した砂糖石という珍しい石は魔力と相性が良く、他にも魔力との相性の良い鉱物を使い、作った合金製のロッド。

同じ値段の杖に比べて魔法の威力と制御率上昇の性能は低いが、武器自体の耐久性と物理攻撃力は高い。

名前の通り、上白糖のような白い色をしている。

冒険者になったばかりの頃のアルディスは、セイント・ランスを右手に持ち、左手にシュガーロッドを持つことで、二刀流を考えていたが、セイント・ランスの特性を推察し、このロッドを装備していても威力があまり上がらないことに気づき、現在はヘスティア・ファミリアのホームの倉庫にしまっている。

通常の魔法戦士が使うなら悪くない武器。

素材が希少で、お値段80000ヴァリス。

注文した時はお金がなく、ローンを組んだが、殆んど未使用な為に、かなり無駄になった。

アルディスは一瞬、春姫にと思ったが、両手でも重いロッドを持てずに、転ける春姫の姿想像してしまい、ヘスティア・ファミリアのホームの倉庫の肥やしになっている。

 

・フェアリーファイターソード

エクレア作

力が上昇したので、重めのソロ用装備として注文。

現在のメイン・ウェポンの一つ。

分類はロングソード。

これを使う時は、盾を軽くて小さい物(サイズで言うとSサイズ)に替えてひたすらキリング・マシーンと化す。

幼い時のアイズみたいに悪い噂が流れないのは、手助けしてくれるエルフ達と、当人が前世のMMORPG感覚で、他の冒険者に「こんにちは」「お疲れ様」「手を貸しましょうか?」「ポーション要りますか?」など会話するから。

刀身はアルディスの要望で長めで、肉厚にしてあり耐久性をあげている。

この剣で戦っている姿を見た、顔見知りのエルフではないとある冒険者は「見た目はエルフ、華麗に戦う姿もエルフ。でも、使う武器と物理攻撃力がどう見てもドワーフ」と言っていた。

切れ味、重量、耐久性のバランスが良く、扱いやすい武器。お値段は164000ヴァリス。

アルディスの為に作りはじめたフェアリーシリーズ第一段。

 

・フェアリーナイトソード

エクレア作

パーティー用の剣。

切れ味より耐久性に主眼をおいたロングソード。

鍔はアルディスの注文通りに、半御椀型で大きめに作られているため、アルディスが敵の攻撃を受け流しやすくなっている。

重量と耐久性が高く、その分の使用する素材が多く、お値段は190000ヴァリス

フェアリーシリーズの第二段。

 

・お仕置きムチ

エクレア作

威力を落として当たった場所に、いい感じの痛みを与えるネタ武器。

ゲームでのアルディスは、特殊な性癖の貴族達をこれでしばいていた。

本来の購入の目的は、ヘルメスをしばくためのもの。

現在は半ばベルくんお仕置き専用になっている

お値段7000ヴァリス。

 

 

 

 




次こそはフィルヴィスと!


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原作に沿いながら、ベル×フィルなども目指す


突然ですが皆さん。
ダンまち15巻の折り畳まれているカラーイラストをめくらずにエイナさんを見てください。
エイナさんがあるものを咥えています。

エイナさんが、何を咥えているか、分かりますよね? 知ってますよね?

リボン以外に見えたら、あなたの負けです。



あ、今回は捏造設定ちょっとだけ入ります。



ベルきゅんとアイズさんが、訓練した防壁とは違う防壁の上で、俺はフィルヴィスさんと会っていた。

レジャーシートを敷いて、お弁当を広げた状態で俺がフィルヴィスさんを待っていると、階段を上がってきたフィルヴィスさんが一瞬、ビクッとして逃げたそうにしながら、観念したように俺の座っているレジャーシートの所まで来た。

 

「お久し振りです。フィルヴィスさん。24階層の一件はお疲れ様でした」

「っ、ロキ・ファミリアから聞いたのか? いや、ですか?」

「丁寧に話さなくても平気ですよ。なんちゃって王族ですから」

「いえ、そういうわけには」

 

今日、俺がここにフィルヴィスさんを呼んだのは、フィルヴィスさんの為だ。

悪い意味で、フィルヴィスさんは有名だから。俺と一緒にいると、他のエルフが嫉妬する。

ましてや、手作りのお弁当持参だと、一部のエルフがフィルヴィスさんを刺しに行きそう。

 

「まあ、今はちょっとお腹空いているんです。フィルヴィスさんもどうぞ!」

「いえ、私は」

「どうぞ!」(*´▽`*)

「い、いえ、わた」

「はい、あ~ん」(*´▽`*)

 

サンドイッチが入ったお弁当箱から、サンドイッチを取り出して、立ち上がりなから、フィルヴィスさんに、笑顔で差し出す。

 

すると、数秒フィルヴィスさんは葛藤していたが、パクリとサンドイッチを口にした。

 

「美味しいですか?」

「あ、はい。美味しいです。ん、でも、これは前に食べた魚のフレークとマヨネーズのサンドイッチ……?」

「良かった。頑張って作ったかいがありましたね」

 

俺は胸を張りながら、何のサンドイッチか首を傾げるフィルヴィスさんを眺めながら、フィルヴィスさんに何のサンドイッチか教える。

 

「ユニコーンの角粉末を入れたサンドイッチ」

「――ぶふっ!?」

 

ゲホゲホむせるフィルヴィスさんに、「冗談ですよ。フィルヴィスさん」と言いながら、お茶の入ったマグカップを手渡す。

 

「二重の意味で、心臓に悪いです。薬に少量入れたりすることもある、と聞いているので食べられるのでしょうが、そんな希少で高価な物を使ったのかと驚きました」

「ふふっ、流石にわたしでもユニコーンの角は使いませんよ」

 

それから気を取り直して、作ってきたサンドイッチを食べながら、24階層やレフィーヤの話をした。

 

「楽しい時間はあっという間ですね」

「そう、ですね……」

「フィルヴィスさん、今日は渡したい物があるんです」

 

そして、わたしは用意していた袋から、手のひらサイズの小箱を取り出した。

 

「これは?」

「アウラさん達にもお礼を贈ったのですが、フィルヴィスさんだけ、捕まらなくて、最後になってしまいましたが」

 

すると、フィルヴィスさんが「だから、アウラがアルディス殿を見かけたら声をかけろと言ったのか」とぼやいていた。

 

そういえば、俺がアウラさん達に、「フィルヴィスさんに24階層のお礼を謂いたい」と言うと「その話、詳しくお話を聞かせて下さい」と言われ、死線を潜り抜けたフィルヴィスさんに、アウラさん達は悔しそうな顔をしていた。

 

何より、「この事は、副団長のアウラさんとそのパーティーメンバーですから、最低限お伝えしました。この話は他言無用。これ以上の話は神ディオニュソスからお聞きください」と伝えると、アウラさん達は溜め息をつきながら、頷いてくれた。

認めたくはない。けれど認めるしかない。そんな雰囲気だった。

 

「……これは、セーナの花が掘られた白い石? のペンダント」

「はい、花言葉は、【産まれてきてくれて、ありがとう】」

「…………」

 

セーナの花は、この世界の大昔のエルフの王女が自分の娘に贈った花だ。

愛する青年と駆け落ちをして、その先で娘を出産。

逃亡生活で困窮していた二人は、娘の祝いに贈る、御守りすら用意出来なかった。

そんな時に見つけたのが、セーナの花だ。

見たことのない、白くて綺麗な花が沢山咲き誇っていて、駆け落ちした王女は、セーナの花を一輪摘み取り。

娘に握らせた。

 

『産まれてきてくれて、ありがとう』

 

王女は娘に心からの祝福を贈った。

この二人この話は、エルフに限らず有名な恋愛の物語だ。

セーナの花言葉は、この話が切っ掛けだ。

 

「ありがとうございます。フィルヴィスさん。貴女が産まれてきてくれたおかげで、わたしは今日もフィルヴィスさんやレフィーヤ。ヘスティア様にベルさん。大勢の皆さんと幸せに生きています」

 

改めて、俺はお礼を伝える。

 

「わたしを助けてくれて、ありがとうございます。今度はわたしがフィルヴィスさんを助けますね!」

 

俺がフィルヴィスさんに、伝えるとフィルヴィスさんは、左手でぎゅっと胸を掴んで俯いた。

数秒後、フィルヴィスさんは、顔を上げて「ありがとうございます。大事にします」とぎこちなく笑みを見せてくれた。

 

 

 

 

 

 

「それと、最後にフィルヴィスさん」

 

帰り道、途中まで一緒にフィルヴィスさんと、裏路地を歩いている時に、言い忘れていたことを伝える。

 

「ロキ・ファミリアの遠征当日。第一陣が出発するよりも早くに、9階層にいると面白いモノが見えますよ」

「ん? どういう」

「ですが、決まりがあります」

「き、決まり?」

 

俺は頷き、フィルヴィスさんに伝える。

 

「ミノタウロスを見つけても殺しては駄目です」

「ま、まってくれ、9階層にミノタウロスは」

「フレイヤ・ファミリアが本気で敵になります」

 

俺の言葉にフィルヴィスさんは混乱する。その混乱するフィルヴィスさんに質問をする。

 

「冒険者の冒険を見ることが出来ます」

「…………え?」

「損はさせません。出来るだけ隠れながら、9階層へ来てください、場合によっては」

 

その日が、わたしと会える最後の日になる可能性がありますから。

と伝えると、フィルヴィスさんが、心配そうに俺を見てきたので、俺は笑顔でフィルヴィスさんと別れた。

 

 

……フィルヴィスさんが、ベルきゅんの冒険を見て、ベルきゅんに胸きゅんしたら嬉しいな!

上手くいけば、本当にベルきゅんハーレムに、レフィーヤとフィルヴィスさんが加わる可能性がある。

 

 

 

 

ま、とりあえず、ベルきゅん負けたときの為に、逃げる準備をしておこう。

とは言え、ベルきゅんが負けたら、折角買ったユニコーンの角はどうしようかな。

今日の様子を見る限り、効果や影響は無さそうだけど、これからも食べさせ続けたいな、フィルヴィスさんを助けるために。

ま、悪足掻きでも、やれることをやろう。

助けられる可能性があるのは、今のところ俺だけだから。

 

 

 

 

 

さーて、次はリヴェリアさん達、ロキ・ファミリアとのお話だな。

あの【しがみつく肉】についても、詳しく聞きたいけど。

嫌な予感がするんだよね。

 

 

 

 

 





ダンまち15巻は、私は書店でページをめくったら勘違いして、度肝を抜かれました。
まあ、直ぐにあり得ないと考え、落ち着きました。

アニメは次回、ベルきゅんの男気を見せてほしいです。
戦争遊戯はあっさり終わったので、楽しみです!

後、原作七巻の裏のキャラですが、フリュネだったんですね!
ずっと、これ誰だ?? と思っていたので、やっとスッキリしましたよ。


……フリュネ、個人的にはもっと凄いのを想像してましていたので(^_^;)



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結果として好感度アップ


最後はちょっとバブみっぽいのがあります。
苦手な方は気をつけて下さい。



早朝にリューさんにボコられてから、ミア母さんにリューさんを護衛として借りると説得したら、メチャクチャ苦い顔をしていた。

 

やはり女神フレイヤが、ベルきゅんへの試練の為にオッタルがミノタウロスを鍛えていることは、ミア母さんも驚き、疲れた表情をしていた。

 

ミア母さんは、遠い目をした後、凄まじく長く深い溜め息をついて、「坊主を必ず生きて連れて帰ってきなよ」と言った。

 

俺は「勿論です」と答えて、豊穣の女主人を後にする。

そのあとは、ロキ・ファミリアでリヴェリアさんと話がある。

遠征の知識を伝えるためだ。

 

「手ぶらは止めておいた方が良いよね」

 

と言うわけで、エルフに好まれるお菓子ショップで、高級…………ではなくて、手頃な値段のお菓子を多めに購入。

高級お菓子も買えなくはない。

けれど、リヴェリアさんが「菓子か? そうだな、高級菓子よりも、一般的な菓子の方が好きだな」と前に言っていたので、高いのは買わない。

ヘスティア様も、高いお菓子は美味しいけど、なんか違う。と微妙な顔をして食べていた。

 

で、ロキ・ファミリアへ移動して、直ぐにリヴェリアさんと、話し合いかと思ったら。

 

「リヴェリア様は、現在冒険者ギルドからの急な呼び出しに対応しておりまして」

 

申し訳なさそうに頭を下げるのは、エルフの団員のアリシアさんだった。

なので、出直そうとしたのだが、アリシアさん達にお茶に誘われたので、せっかくだから受けることにした。

 

したのだが、

 

「アルディス様、こちらの色のネックレスが」「髪飾りはこちらを」「え、この色の方が」「やーん、髪さらさら」「肌がスベスベしてますぅ」「アルディス様……」(;´Д`)ハァハァ「貴女は少し落ち着きなさい!」

 

途中から、俺は着せ替え人形と化した。というか、一人だけ危ないエルフが……。

 

 

 

おかしいな、最初は談話室で他の種族の団員もいて、そこで世間話をしていたが、徐々にエルフの団員が集まりはじめて、気がつけば別室に移動して、俺のファッションショーになった。

 

いや、確かに俺が「服ですか? 良く分からないので、似合いそうなのを」と言って、アリシアに「どのようなお召し物ですか?」と聞かれたので、普段服を買っているアマゾネス専門店とヒューマン専門店の名前を出したら、目の色が変わった。

普段エルフ系の服を着ないのか? という質問に反射的に頷いてしまい。

アリシアさんに「エルフには、やはりエルフ専門店の服が一番似合いますわ!」となって、「な、なら、今度買ってみますね」と逃げようとしたが、「いえ、こんなこともあろうかと、いくつか買ってあります!!」と、続いて、俺は不利を悟り大人しく従った。

 

「アルディス様、今度はこのドレスを!」「いえ、今度はこのフリルスカートなんてどうでしょうか?!」「神々が生み出した、ゴスロリというものを!」「ならば、私は極東の巫女服を!」「いいえ、古き良きエルフの聖衣はどうですか!?」

 

「あははは……」

 

途中から暴走しているのは、分かったが止められそうにないので、大人しく従っておくことにした。

下手に逆らって顰蹙はかいたくない。

 

「そういえば、アルディス様の下着は地味ですね」

「っ?! いや、それは」

 

一人のエルフの女性団員の一言で、空気が変わる。

地味にしている理由は、単純にヘスティア様に怒られるからだ。

 

この後、リヴェリアさんが来るまで、俺はエルフの少女らしい、下着についてアリシアさん達に教わることになった。

 

まあ、エルフの下着は清楚なのが中心だが、男の目線から言えば、清楚なエロスもあった……とだけ。

 

 

▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

ーーロキ・ファミリア 会議室

 

 

 

「ズルいわぁ! 自分達だけで楽しむなんてっ!」

「ロキ、煩いぞ」

「あははは……」

 

リヴェリアさんと共に冒険者ギルドに向かっていたロキ様は、俺が女性エルフ達のファッションショーをしていたことを知ると血涙流さんばかりに悔しがった。

リヴェリアさんは、ロキ様と俺を会わせないようにするために、ソーマを餌に冒険者ギルドに連れていったみたいだ。

 

「ロキは放っておくぞ。それで、アルディス。この新種のいかがわしいモンスターについて、何か知っているか?」

 

差し出された、紙に書かれた絵を眺めて、俺は頷く。

黒い色に、肉のような質感に蜘蛛のような脚。さらに牙や歯がない大きな人の唇のような口と蜘蛛腹の部分に当たる場所にある大きな男根。

まあ、男根の部分はモザイクというか、黒く塗りつぶしてあるけど。

 

「えぇ、やはりコレはわたしの故郷にいたモンスターですね」

 

俺の言葉にリヴェリアさんが、ロキ様を見て、ロキ様は頷いた。

嘘はない、と。

 

「【しがみつく肉】と言われていて、多くの女性が被害に遭いました。兵士もこれにしがみつかれて、身動きがとれずに、別のモンスターに襲われて死んだ者も多いです」

「アルディス、他にもこういったモンスターを知っているか?」

「はい、知っていますが」

 

俺の言葉に、リヴェリアさんとロキさんは難しい顔をしながら、俺に問いかけた。

 

「アルディスがこのモンスターに出会ったのはいつ頃だ?」

「オラリオに来る前、一年前くらいでしょうか」

 

リヴェリアさんの質問に答えると、真剣な表情のロキ様から質問が来る。

 

「なぁ、自分の故郷はどこや? こんなふざけたモンスターが一年前から、存在しとるなんて聞いたことないで」

「……遠いところです」

「地名は?」

 

目は閉じてはいるが、俺の故郷の地名を教えろと告げてくるロキ様。

まあ、怪しいからな。

でも、正直に言うとこの世界にはない地名だ。

そこから、俺が異世界から来たことがバレる可能性がある。

だから、悩んだ末に、俺は方言とか遠い国だと誤魔化す為に、あえて日本語で答えた。

 

『【ユグドラシル】』

「何やて?」

「アルディス?」

「やはり、この言語は分かりませんでしたか」

 

事前にヘスティア様経由で、タケミカヅチ様に日本語が分かるか、確認を取って正解だったな。

怪しまれるかもしれないけど、謎の場所から来たという言い訳にはなるだろう。なってくれたら良いな。

 

「……何処の言葉や? 極東に近い気がするが、別もんみたいやし」

 

探るような視線を送ってくるロキ様に、俺はとりあえずこれだけは、言っておく。

 

「ロキ様、わたしはロキ・ファミリアとオラリオの敵ではありません。24階層での戦いで現れた敵とも関係ありません。今後もロキ・ファミリアとは仲良くしていきたいと思ってもいます」

 

だから、余計な詮索をするな。と、俺はロキ様を見据える。

もちろん、それでは足りないだろう。

 

現に俺の言葉を聞いて、腕を組み少し何事か考えて、俺に何かを聞こうとするロキ様に、俺は質問を投げる。

 

「【アリア】とは、何ですか?」

 

俺の言葉に二人は固まる。

なぜ、知っている? と探る視線を向けてくる。

俺の知らない情報は、夢ということにしているので、夢で見た。と言い訳がつく、押し通すことも出来なくはない。

もちろん、ロキ様がいなければ!

だから、詮索を防ぐために、力業その1だ。

 

「情報には対価が必要です。【アリア】のことを1から10まで、教えてくれるなら、わたしのことも教えます」

 

 

二人は一度、目配せし合い。

ロキ様が一歩後ろに下がり、リヴェリアさんが口を開いた。

 

「【しがみつく肉】の情報。それと、この手のモンスターは他にもいるのか? 知っているなら教えてくれ」

 

少なくとも敵ではない、と分かったからか、ロキ様は引き下がった。

納得はしていない。けれど、下手に踏み込むと俺を怒らせると思ったのだろう。

ここで、怪しくても情報提供者を失うことは、ロキ・ファミリアにとって、デメリットだと判断したのだろう。

 

もちろん、無理やり聞き出すことも考えただろうが、ファミリアや団員の危機でもない限りは、リヴェリアさんが確実に止めるだろう。

正義を掲げているわけではないが、オラリオではロキ・ファミリアは善よりのファミリアだ。

悪評に繋がることは出来るだけ避けたいだろう。

 

「それなりの種類がいたはずです。知る限りは教えますが、この種のモンスターがダンジョンに現れるか分かりません。わたしに支払う情報料が無駄になるかも知れませんよ?」

「構わない。出てくることを前提に備えをしておきたい。モンスターの被害に遭う可能性を少しでも減らす為にも」

「分かりました」

 

この後、俺はスケベモンスターの情報を時間の許す限り教えたのだが。

 

「リヴェリア、落ち着きぃ」

「分かっている……」

 

話している途中で、何度もリヴェリアさんが怒りの意味で、顔を赤くしていた。

 

えぇ、まあ、実体験しないと分からないような、情報もあったからな。

俺も話の途中で顔色を悪くしていたみたいで、休憩を挟みながら情報を伝え終えると、結構な時間になっていた。

 

「アルディス、神ヘスティアに連絡をする。今夜は泊まっていきなさい」

「え、しかし」

「ん~、そやな。流石にその顔色の自分を一人で帰らせる訳にはいかんなぁ」

 

二人から純粋に心配している感じがしたので、俺は迷ったが、今夜はロキ・ファミリアに泊まることにした。

 

「あ、でも、着替え」

「おっしゃっ! 着替えは任せときっ」

「ロキ、また変なものを」

「だーいじょぶやって。あ、それと、アルディス」

「はい、何でしょうか?」

 

軽い感じから、真剣な表情になったロキに少し緊張していると。

 

「アルディスって、呼び方が固い感じがするねん。アルたんって、呼んでええか?」

 

転けそうになった。まあ、問題はない。

 

「ええ、大丈夫ですよ」

「ほんまか~、ありがとうな」

 

笑顔で俺に近づき、握手してくるロキ様に笑顔で答えると、リヴェリアさんは仕方がない、という顔で小さく溜め息をついた。

 

「では、アルディス。そろそろ夕飯だ。食堂に案内する」

「はい」

 

俺は頷き、リヴェリアさんと共に部屋を出る。

 

「ウチは資料かたしてから、行くわ」

「分かっている」

「ロキ様、また後で」

「ほななー」

 

 

 

 

 

 

 

パタンと部屋のドアが閉まり、ロキは目をうっすらと開けて、先ほどハイエルフの美少女が口にした言語を思い出す。

 

「あの言葉、何故、懐かしい気持ちになったんやろ」

 

聞き覚えない言語。だが、どこか懐かしい。

不思議な気持ちではあるが、

 

「ま、アルたんが敵やない。ということが分かっただけでも、収穫はあったわ。もちろん、今のところはやけど」

 

ロキはアルディスへの警戒を少しだけ下げることにした。

冒険者ギルドとは違う意味で、謎があり、怪しいハイエルフの少女。

新しい観察対象を見つけて、ロキは笑みをこぼす。

 

「さーて、今夜のアルたんのパジャマを用意せんとな! アイズたんのお古もあるけど、前にアイズたんの時みたいに、小さい子が加入したときの為に買ったのがあったなぁ、どこしまったかな、探さんと~」

 

夕食後、アルディスとリヴェリアが入浴しているところに乱入しようとするロキと、それを全力で阻止しようとする女性エルフ達の激しい攻防が繰り広げられ。最後は入浴を終えたリヴェリアが、ロキにゲンコツを叩き込んでロキを沈めた。

 

 

 

▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

翌朝、俺は普段とは違う感触で目を覚ました。

なんか、ズキンズキンと頭痛がする。なんだこれ?

 

兎も角、起きようとして、右手を動かすと右手のひらに柔らかい感触が伝わってくる。

何だ? と思った直後、口の中にも柔らかい物が入っていることに気づいた。

まだ寝ぼけていて、目がまだ開かない俺が口をモゴモゴと動かすと、

 

「くぅっ……、あ、アルディスッ、起きたのか?!」

「…………」

 

なんか、ヘスティア様以外の女性のしかもハイエルフっぽい声がした。

背中から、ぶわっと嫌な汗が吹き出てきて、ゆっくりと目を開けると、

 

「お、おはよう、アルディス。出来れば、そろそろ離れてくれると嬉しい」

 

ほんのり頬を紅くして、俺の顔を覗き込むリヴェリアさんが目の前にいた。

 

「…………」

 

俺はゆっくりと身体をリヴェリアさんから、離す。

今更だけど、このベッドかなり質が良いなぁ。

どこで買ったか聞くか~、あはは……。

 

離れることで、見えてくるリヴェリアさんの肌色と桜色。

頭が真っ白になる。

 

「リヴェリアさん」

「待て、アルディス落ち着け」

 

顔が熱い。火を吹きそうなくらいだ。

なぜ、こんな状況になっている?! 意味が分からない。

分からないが、今俺がやることは一つ!!

 

 

「すみませんでしたっ!!」

 

 

俺はベッドから、身体能力をフルに使った、後方二回宙返り一回ひねり。

通称、月面宙返りを行い。

 

そのまま、土下座で床に着地。

 

 

オラリオに来て、三度目の土下座の相手はリヴェリアさんだった。

 

 

 

▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

事情をリヴェリアさんに聞いた。

どうやら、昨日の夜、眠る前にリヴェリアさんと共に談話室で温かいもの、俺はホットミルクをもらい、リヴェリアさんは紅茶を飲んでいた。

そこに現れたのが、ソーマとグラスを持ったロキ様だった。

 

俺の座っているソファの隣にロキ様が立ち、三人で軽く話し、ロキ様は挨拶だけで直ぐに自分の部屋に行くつもりだったらしいのだが、悲劇はロキ様が別れ際にグラスにソーマをなみなみと注いだ直後だった。

ティオナさんを怒らせて、逃げてきたティオネさんが前を見ずに、ロキ様に体当たりをぶちかまし、なみなみとソーマが入ったグラスがちょうど、ロキ様にしゃべりかけようと口を開けた俺の口を覆うように中身をぶちまけたのがそもそもの原因だ。

 

この時、俺は口に入ったソーマを反射的に多量に飲んだそうだ。

飲んだ時点では問題がなかった。

この後、リヴェリアさんがティオネさんにゲンコツを入れて、俺は再び風呂へ。

ここまでは、言われてみれば、俺も何となく覚えている。

 

だが、風呂から上がった後はまったく覚えてはいない。

そもそも、前世では酒に強かった。

もしかして、この身体になったから、酒に弱くなっている?

確かにゲームでは、アルディスは酒に強くはなかったが。

 

「風呂から上がり、着替えて私の部屋に行き、そのまま寝ようとしたのだが」

「……だが?」

「いきなり、私をママと呼び始めた」

 

そこまで聞いて、俺は顔を上げた土下座体勢から、全力で頭を床に何度も叩きつけた。

 

「アルディス! 止めろ、アルディス!!」

「おおおおおっ!!!! ころせぇっっっっ!!!! いっそ殺せぇえええええっっ!!!!!」

 

ものすごい音を立てながら、叫ぶリヴェリアさんと俺。

慌てて駆けつけるエルフの女性団員。

 

恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にさせながら、顔を両手で覆い、床をゴロゴロと転がり、錯乱する俺を止めに入るエルフの女性団員。

 

俺が落ち着くのに、一時間くらいかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、リヴェリアさんとエルフの女性団員達と何とか朝食をいただき、帰ることになった。

 

 

「御迷惑をおかけしました」

「いや、少量だったから、大丈夫だと判断はして、水を飲ませなかった私の落ち度だ。水を飲んでいれば、あそこまでにはならなかっただろう。アイズの前例があったのに、直ぐに酔わなかったから、平気だと判断したのは間違いだった」

「ご、御迷惑をおかけしました」

 

うん、忘れよう。バブみしたことを忘れよう。

下手しなくてもヘスティア様が拗ねる。

 

「なーなー、アルたん。なんなら、本当にリヴェリアママの娘になるかぁ?」

 

茶化してくるロキ様の頭頂部にリヴェリアさんのゲンコツが叩き込まれた。

物凄い音と共にロキ様が沈む。

 

「んんっ、アルディス」

「あ、はい」

 

シューっと、頭から煙を出すロキ様。

無表情のリヴェリアさんが怖いので大人しく話を聞く。

 

「モンスターの情報と遠征先で唱えられる超長文詠唱の情報料だが」

「遠征が終わって、こちらが要請してから支払いをお願いします。それと振込先は前と同じように、わたしの個人の冒険者ギルドの口座にお願いしますね」

「ああ、分かった」

 

俺は改めて、リヴェリアさんやロキ様、エルフの団員達に軽く頭を下げて、ヘスティア・ファミリアのホームに帰った。

 

 

▼△▼△▼△▼△▼△

 

ーーリヴェリアの私室

 

 

 

「ふぅっ」

 

午後、書類仕事が終わり、紅茶を飲んでリヴェリアは一息つきながら、昨晩のことを思いだし、ポツリと呟いた。

 

「ママ……か」

 

酔ったとはいえ、ママと呼ばれてリヴェリアは驚き戸惑ったが、同時に納得もした。

アルディスはまだ幼い。大人びてはいるが、本来の姿はあれなのだろう。

 

他の同胞、特にエルフのコミュニティは、普段のアルディスを見て、これからも大人のハイエルフとして扱うだろう。

 

だが、それは本当に正しいことなのか? 酔ったアルディスの姿が本来のアルディスの姿なのではないか?

 

アルディスを抱きしめながら、一晩眠った結果。リヴェリアはアルディスのスキルの影響もあり、本格的に母性に目覚めるのだった。

 

「ここへ、来たときくらいは、アルディスを甘やかしてやろう」

 

母性に目覚めたリヴェリアは、アルディスの今後の為に色々と準備を始めた。

 

 




誤字修正、本当にありがとうございます。


リヴェリアが本格的に母性に目覚めました。
リヴェリアママは、ちょこちょこ出したいなと。

男のオリ主だと、怪しい感じがするかもしれませんが、外見は女の子なので問題ないよ……ね。

年齢部分を修正。



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ミノタウロス

ロキ・ファミリアが59階層を目指す日、ダンまちの物語の主人公、ベル・クラネルが最初の冒険をする運命の日でもある。

 

 

 

俺は朝日が昇る前に、リューさんと共に迷宮に潜った。

 

そして、オッタルと出会う前に、薄暗いダンジョンを走りながら、俺はリューさんには言わなかった、今回の目的を告げた。

 

ベルきゅんがミノタウロスと一騎討ちをすると。

 

 

 

「ミノタウロス? 一対一で撃破?」

 

「はい、ミノタウロスとベルさんは戦い、ベルさんが勝利する運命のはずでした。けれど、今その運命は狂い始めています。ベルさんがミノタウロスと戦う前に、ミノタウロスに魔剣でダメージを与えた男は死亡。その男が手に入れる筈だった魔剣はわたしの元へきました。……運命が、ベルさんが負ける可能性があります」

 

「…………貴女は、何を言ってるんだ?」

 

 

 

リューさんが立ち止まり、俺も立ち止まりリューさんを見る。リューさんの表情は困惑と憤りが浮かび上がっていた。

 

 

 

「LV.1のクラネルさんが、一対一でミノタウロスを倒せる訳がない!」

 

「リューさん、わたしは言いましたよね。わたしを信じなくても良いです。でも、ベルさんを信じて下さい」

 

「信じる以前の問題だ! ミノタウロスがどれだけ強いのか、貴女は知らない」

 

「はい、知りません。けれど、わたしが原因で運命を変えてしまった。わたしはその責任を取らなければなりません」

 

「……それは、どういう」

 

「リューさん、ここまで護衛ありがとうございます」

 

 

 

俺はそう言って、走り出す。

 

仕方がない、ここからは一人で行こう。

 

馬鹿なことをしている自覚はある。

 

ミノタウロスには、魔剣のダメージが無いような感じだった。

 

命をかける必要はない。そう自分でも思ってしまう。

 

けれども、だ!

 

やらなくちゃならない。運命をねじ曲がる可能性を作った俺自身が。

 

 

 

「仕方のない人だ」

 

「リューさん?」

 

 

 

リューさんが、いつの間にか俺の隣を並走する。

 

 

 

「手伝ってくれるのですか……?」

 

「ええ、報酬は貰っています。それで、これから、どうするのですか?」

 

「まず、ミノタウロスを運んでいる、オッタルさんを探します」

 

「え?」

 

 

 

俺の言葉に走りながら、珍しくポカンとした表情を浮かべるリューさん。

 

そのリューさんに、俺は言葉を続ける。

 

 

 

「オッタルさんは、ミノタウロスを入れたカーゴを運んでいます。本来の運命では、ベルさんは9階層でミノタウロスを倒します。ですがベルさんとミノタウロスが戦う前に、カーゴはイシュタル・ファミリアとの戦闘中、ならず者達に奪われます。本来、わたしの持っている魔剣はその男が所持し、ミノタウロスに使うはずでした。

 

魔剣は壊れるまでミノタウロスを攻撃して砕けます。その時にミノタウロスへダメージがあったか分かりませんが……。ですが、あった場合、僅かでもそれがベルさんの勝利に繋がります。だからオッタルさんにミノタウロスは9階層でカーゴを解放、更にこの持ってきた魔剣でダメージを与える許可をいただきます」

 

「許可、ですか?」

 

「はい、無理かもしれませんが、騙し討ちはヘスティア様に不利益が生じます」

 

 

 

お願いを無視されても、敵意がないことを伝えられる。

 

駄目なら、ベルきゅんが戦う直前に乱入して魔剣を使い、ベルきゅんが立て直す時間を稼ぐ。

 

 

 

あとでリリスケに魔剣を持っている説明を求められるだろうけど。

 

 

 

「それと、ミノタウロスにはリューさんは、絶対手を出しては駄目ですよ。オッタルさんが、フレイヤ・ファミリアが敵になります」

 

「……分かりました」

 

 

 

驚きっぱなしのリューさんに俺は謝る。

 

 

 

「巻き込んでごめんなさい」

 

「いえ、自分で決めて、私はここにいる」

 

 

 

大丈夫です、と。言うリューさんに、俺は頭を下げる。

 

 

 

「リューさんにお願いしたいのは、わたしが魔剣を使ったあと。もしも、ミノタウロスの攻撃を受けて、動けなくなったとき、わたしを抱えて逃げてほしいのです」

 

「分かりました。ですが……」

 

「はい」

 

「本当にクラネルさんは」

 

「わたしの未来の情報は、ロキ・ファミリアも購入しています」

 

 

 

だから、ミノタウロスには手を出さないで、と再度お願いした。

 

それから、俺とリューさんはそれから階層を降りていった。

 

九階層から更に下へ降りていく。

 

 

 

 

 

 

 

「オッタルさん、ですね?」

 

 

 

まさしく、武人といったオーラを出す、猪人。

 

オラリオ最強の冒険者。

 

 

 

「………」

 

 

 

正規ルートの14階層から、13階層に上がる階段から、大型のカーゴを背負いながら姿を現す。

 

 

 

こちらを一瞥して、こちらに戦闘の意思がないことが分かったのか、無視して歩き出す。

 

 

 

「カーゴの中身は、9階層で開けてください。ベル・クラネルはそこで戦います」

 

「……」

 

 

 

その瞬間、物凄い圧力が俺とリューさんを襲う。

 

何故、目的を知っている? と圧力で問いかけてくる。

 

 

 

ゲームのわたしの記憶がなければ、無様に腰を抜かすだろう。でも、魔王を筆頭に化物と戦ってきたこの身体を舐めるな。

 

 

 

ま、この男にとっては軽く意識を向けただけだろうけど。

 

 

 

「そして、お願いがあります」

 

「…………」

 

 

 

俺は腰から、魔剣を取り出す。

 

 

 

「本来、そのカーゴはイシュタル・ファミリアのアマゾネス達の襲撃の時に、ならず者に奪われる筈でした」

 

 

 

ここで、オッタルの表情が少しだけ動いた。

 

襲撃されたことを知っていることに疑問を持ったのだろう。

 

 

 

「そして、9階層でならず者がカーゴを開け、ミノタウロスから逃げる為に、この魔剣でミノタウロスを魔法剣が壊れるまで攻撃します」

 

 

 

この様子から、イシュタル・ファミリアのアマゾネス達の襲撃から間はおかれてないみたいだ。

 

 

 

「ですので、9階層でカーゴを開けたあと、わたしにこの魔剣でミノタウロスを攻撃させてほしいのです。ベル・クラネルがミノタウロスと戦う前に」

 

 

 

俺の言葉を聞いたオッタルは、魔剣を眺め。

 

俺に興味を無くしたかのように俺から視線を外す。

 

 

 

「余計な手出しをするな」

 

 

 

それだけを言って、カーゴを背負い歩いていく。

 

その背中からは、これ以上何も喋るな、と伝えてくる。

 

見逃してやる。とも、最後の慈悲も感じた。

 

 

 

「アルディスさん」

 

「……」

 

 

 

俺は考える。

 

オッタルは恐らく、ベルくんの近くでカーゴを開けて姿を消す。

 

女神フレイヤのことを考えてまだ、ベルきゅんの前には大っぴらには現れない筈だ。

 

 

 

けれど、その場合は俺は戦いに介入出来ない。

 

それならば、

 

 

 

「ベル・クラネルが敗死しても、本来ならば問題はないのでしょう」

 

 

 

オッタルが歩みを止めた。臨戦態勢に入ったわ。

 

あー、死んだかな俺。

 

 

 

「ベル・クラネルは勝利する! 本来の運命は冒険を乗り越える。だが、運命は少しだけ変わった! このままでは、」

 

 

 

オッタルがこちらをゆっくりと振り返る。

 

俯いている彼の表情は分からない。

 

ただ、邪魔者を排除すると決めたようだ。

 

 

 

ビリビリと俺の肌にオッタルの気とも言える見えない何かが突き刺さる。

 

けれど、引いたらベルきゅんが負けるかもしれない。

 

死んだ場合、ベルきゅんの魂がずっとフレイヤに束縛されるかもしれない。

 

人形を飾るようにな!!

 

だから、それを回避する為に、お前しか知らない筈の言葉を送ろう。

 

 

 

「風の還る空っ! 風の焦がれる空になる可能性がある男を今! 死なせるのは、女神フレイヤの大きな不利益になる!! 」

 

 

 

俺の言葉にピタリと、オッタルは動きを止めた。

 

圧力が下がり、オッタルが俺の瞳をじっと見つめてくる。

 

オッタルは俺を確かに認識した。

しないでください! 本当にさ!!

 

 

 

「運命を元に戻すだけです。どうか、許可をいただきたい」

 

 

 

逃げる訳には行かない。俺はオッタルを強く見つめ返した。

 

 

 

オッタルはゆっくりと俺を見据えながら近づいてくる。

 

リューさんが俺を守る為に、動く気配がしたので、俺は左手で制す。

 

 

 

オッタルが俺の直ぐ目の前まで来て、俺を見下ろす。

 

俺はオッタルから目を背けない。

 

 

 

長い沈黙のあと、オッタルは俺に問いかけてきた。

 

 

 

「……9階層だな?」

 

「はい、そこが、ベル・クラネルの初めての冒険をする場所です!」

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

「貴女は、本当に無茶をする」

 

「え、……あっ、いっ! リュ、リューさん?」

 

「覚えてませんか?」

 

 

気がついたら、リューさんの綺麗な顔が目の前にあった。

ここは? 俺は確かオッタルと顔をあわせて、ミノタウロスと。

そうだ。思い出した。

 

9階層の手頃な広間で、オッタルはカーゴを解放した。

 

そして、距離を取り、俺はミノタウロスの前に立ち、そこから、ゲームのわたしの記憶と身体の力を使い。

 

全力で回避しながら、魔剣を使い続けた。

 

 

 

そして、魔剣が壊れ、予定通り逃げながら、ベルきゅんの元にミノタウロスを引っ張って行こうとした時、足を床の窪みに引っ掻けて、バランスを崩して死にかけた。

 

ミノタウロスがそのミスを突く一撃を回避したのだが……。

 

 

 

あの牛! 両手で握った剣の柄から左手を離して、裏拳を俺に叩きつけてきた。

 

ギリギリで回避したと思ったが。

 

側頭部にかすたったようで、頭がガンガンする。

 

 

 

「いつっ、あぁ、最後の裏拳避けそこなったんでした。って、ベルさんは?」

 

「あそこです」

 

 

 

俺が目を向けると、通路の先の広間で、戦うベルきゅんが居た。

 

リューさんの話だと、怪我をした俺を回収して離脱。

 

怪我の治療をしている間に、ミノタウロスが歩き回り、慌てて俺を抱えて探している間に、ミノタウロスとベルきゅんと遭遇した。

 

 

 

「ロ、ロキ・ファミリアは?」

 

「クラネルさんは、【剣姫】の介入を拒みました」

 

 

 

その言葉にホッとする。良かった。原作通りだ。

 

 

 

「見つからないように、けれどもっと近くへ」

 

「分かりました。ですが」

 

「わっ」

 

「私が運びます」

 

「……お願いします」

 

 

 

正直、かなりふらついているので、ありがたいが。

 

お姫様抱っこ。微妙な気分だ。嬉しいような、悲しいような。

 

 

 

そして、通路の陰から、俺はベルきゅんを、いやベル・クラネルを見守り続ける。

 

 

 

激しい攻防、雄と雄の命のぶつかり合い。

 

その光景は前世で男だった俺の心を鷲掴みにする。

 

ベルが叫び、ミノタウロスも負けじと叫ぶ。

 

 

ずっと見ていたい光景、でも、戦いは終わりに向かう。

 

 

何度も読み返した原作。何度も見返したアニメの名シーン。

 

構えるベルとミノタウロス。

 

 

ミノタウロスの最後の突撃と、ベル・クラネルの突撃からの急激な超ブレーキ。

 

突撃からの第二撃を繋げて、ヘスティア・ナイフがミノタウロスの巨躯の右脇下に叩き込まれて、天然の鎧を貫通する。

 

 

 

「ファイアボルト!」

 

 

 

何度もアニメで見返した内側からのファイアボルト。

 

 

 

「ファイアボルトォッ!」

 

 

 

本物のベル・クラネルの戦う横顔。

 

胸の奥と下腹部、ヘソの下の奥が熱くなる。

 

 

 

「ファイアボルトォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

 

ミノタウロスが爆散した。

 

 

 

自然と涙が出てくる。

 

初めての原作を読んだときの感動が蘇る。

 

 

 

あぁ、良かった。本当に良かった。

 

原作通りに進んだ。

 

けれど、それ以上にベル・クラネルの冒険を見ることが出来た。

 

うっすらと思い出してしまった前世の俺の記憶。

 

何も出来なかった。踏み出せなかった。

 

悔しかった筈なのに、諦めることに慣れて、俺は負け犬になった。

 

 

 

「あぁ、素敵です、ベルさん……」

 

 

 

精神枯渇で立ったまま気絶しているベル・クラネル。

 

俺はしばらくの間、ベル・クラネルの漢の背中を眺め、

 

 

 

「そこに居るのは誰だい?」

 

 

 

フィンの声で、俺は我に返る。

 

 

 

「顔を出さないように、――わたしです!」

 

 

 

俺は気持ちを切り替えて、声を上げた。

 

ロキ・ファミリアのフィンに答え、リューさんの腕から降りようとすると、

 

 

 

「いえ、駄目です。運びます」

 

「え、でも」

 

「声は出しません。全てお願いします」

 

「分かりました」

 

 

 

通路から、俺がフードを被った人物に運ばれて出てくると、リヴェリアさんやアイズさんは驚きと強めの警戒心を持っていたようだ。

 

 

 

「アルディス!」

 

「アルディス様!?」

 

 

 

リヴェリアさんだけではなく、リリスケの驚いている声も聞こえる。

 

えっと、ともかく。

 

 

 

「怪しい者ではありませんよ。この方は」

 

「……アルディスがそう言うならば、信じるが。ここで、何をしていた? それにその傷は」

 

「個人的な夢を見まして、その為に行動をしただけです。お気になさらずに」

 

 

 

俺がそう言うと、アイズさんやティオナは何か聞きたそうにしていたが。

 

 

 

「リヴェリアさん、お願いがあります」

 

「何だ?」

 

「ベルさんの、今のアビリティを教えてください」

 

 

 

その言葉に、ロキ・ファミリアとリリスケは驚きの声をあげる。

 

 

 

「アルディス様!!」

 

「待て、アルディス! それは」

 

「その代わり!」

 

 

 

リヴェリアさんの言葉を俺は遮る。

 

 

 

「ベルさんとリリを、地上まで送ってください」

 

「っ!?」

 

「…………いいんだな?」

 

「はい、アビリティだけ、お願いします」

 

 

 

リリスケが俺を見た。リリスケは、レベル1でありながら、ミノタウロスを撃破する偉業を成し遂げたベル・クラネルの情報を出すことで、ベルと自分の安全な帰還を購入した。と、思っているのかもしれない。

 

 

 

まあ、原作だとアイズさんとリヴェリアさんの善意で地上まで送られるけど、それだとロキ・ファミリア幹部への貸しになる。

 

それを念のために回避するためだ。

 

どのみち、ステイタスは見られていたのだ。問題はない。

 

 

 

 

 

そして、ベル・クラネルの背中を見た、リヴェリアさんは。

 

 

 

「……くっ、ふふ、はははっ」

 

「な、なんだよ、ババア!? 早く言え!!」

 

 

 

笑うリヴェリアさんに、苛立つベート。

 

 

 

「……S」

 

「……はっ?」

 

「全アビリティ、オールS」

 

『オールS!?』

 

 

 

ほぼ、全員が驚くなか、フィンが俺に問いかけた。

 

 

 

「彼の名前は?」

 

「「ベル」」

 

 

 

俺とほぼ同時にアイズさんが、声を出した。

 

なので、俺は譲った。

 

 

 

真っ直ぐベル・クラネルに意識を馳せるアイズさんに。

 

 

 

「ベル・クラネル」

 

 

 

これが、ベル・クラネルの英雄譚の始まり。

 

そして、本来の英雄譚とは違う英雄譚が始まってしまっていた。

 

 




ミノタウロス戦の前に、ヘスティア様とアルディスの交流と悩みをヘスティア様に聞いてもらう話を上げるか迷いましたが、先にミノタウロス戦を行い、その後にミノタウロス戦までの間の話を上げることにしました。



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ヘスティア様との休日(日常)

ベルが加入して、リリと出会ったくらいの日常のお話。



日がのぼり、俺は何時ものように身支度を整え、毎日一緒のベッドで眠っている恩神に近づく。

うん、可愛らしい寝顔だ。

そして、そろそろ寝言を言うかな?

と思っていると、ヘスティア様は寝返りをうって、寝言を呟いた。

 

「う~ん、アルく~ん、……ベルく~ん、グヘヘ」

 

普段バイトがある時は俺とベルが起きる時間帯に、ヘスティア様も頑張って起きるが、バイトがない日は惰眠を貪る駄女神だ。

 

「ヘスティア様、朝ですよ」

「うぅ、あとじゅっぷ……ん~」

「もぅ、仕方がないですね」

 

また、そんなところが可愛いのだけど。

と言うわけで、今日はベル君はダンジョンへ。

俺はダンジョン探索はお休みだから、ヘスティア様のお世話をするつもりだ。

まあ、ダンジョンへ行くための消耗品を買いにいくつもりではあるけど。

 

「あ、ヘスティア様。朝食は何が良いですか?」

 

再び眠りについたヘスティア様に俺が問いかけると「おさかな~」と、寝言のような返事がきた。

俺はメレンから、入ってきた白身魚の切り身をアイテムボックスから取り出し、ムニエルを作るために下処理をする。

 

塩を振って馴染ませている間に、昨日作ったオニオンスープを温める。

白身魚の切り身に小麦粉を纏わせて、オリーブオイルとバターを引いたフライパンでじっくりと焼き上げ。

デメテル・ファミリア産の野菜でサラダを作り、ロキ・ファミリアのアリシアさんから教わったサラダドレッシングを作る。

買い置きの保存性の高い大きめの丸パンをスライスして、食パンみたいに食べやすくして、俺は白身魚のムニエルを皿に移して、朝食をテーブルに運ぶ。

 

「ヘスティア様、朝ごはんが出来ました。冷めないうちに起きてください」

「ぁあ~……、良い匂いがぁ゛あ゛あ゛~っ」

「メレン産の高い白身魚のムニエルですよ。食べませんか?」

「た、食べる~」

「なら、起きてください。早くしないとわたしが食べてしまいますよ」

 

俺がそう言うと、ヘスティア様は目を軽く擦りながら、身体を起こして、「起きる!」と叫んで、無理やり立ち上がり洗面台へと向かった。

 

「やっぱりアルくんの作るごはんは最高だね!」

「ありがとうございますヘスティア様。あ、口にソースが」

 

モグモグと白身魚を切り分けて、頬張るヘスティア様。

口元にソースが付いてしまっていたので、すかさずハンカチでヘスティア様の口元についたソースを拭う。

 

「ありがとう、アルくん」

「いえいえ」

 

ヤバい、ヘスティア様可愛い。

妹がいたらこんな感じだろうか?

 

「ヘスティア様、スープをどうぞ。あ~ん」

「ありがとうアルくん。あ~ん」

「美味しいですか?」

「美味しいよ、アルくん。ボクは幸せだよぉ」

 

それから、ヘファイストス様のところから追い出される話が始まった。

バイトの疲れが溜まると、愚痴を言うのでヘスティア様の為に聞いてあげる。

この時のヘスティア様はアドバイスがほしい訳ではなく、慰めてほしがっている。

だから、俺はヘスティア様を優しく慰める。

 

普通の人間なら、自分に非がある事柄を不用意に慰めると人に甘えて精神的に堕落する可能性があるけど 、ヘスティア様は神だ。

精神が完成している。

グータラ女神様だけど、精神的に大丈夫だ。

……多分。

 

「今日は消耗品を買いに出掛けますけど、ヘスティア様はどうしますか?」

「んー、ゴロゴロしていたいけれど、アルくんに任せきりなのも悪いから買い物に付き合うぜ!」

「ありがとうございます、ヘスティア様」

 

朝食後、俺は着替えてヘスティア様と買い物に出掛けた。

買うのは主に食糧品だ。

生物はアイテムボックスに多少は入れて保存出来るが、ダンジョンに行くことを考えるとあまり多くは買えない。

外で大っぴらにアイテムボックスを使うわけにはいかないので、ヘスティア様が荷物を持ってくれるのは助かる。

 

恩恵のお陰で、重さは問題ないけど、やはりかさ張ると一人では運べない。

一度、原作のリリ程ではないけど、デカイリュックを背負って歩いていたら、たまたま休憩で昼食を食べに店へ移動していたヘスティア様とジャガ丸くんを売っているお店のおばちゃんに驚かれ、小さいのに無理するなと怒られた。

 

それ以来、平気なのに一度に運べる荷物の量が制限されてしまった。

 

まあ、◯0歳の女の子が大型冷蔵庫サイズのリュック(中身あり)を背負って街で歩いていたら、普通に心配するわな。

 

「さて、準備出来ました。買い物に行きましょうヘスティア様。今日は多めに買い物しますから、覚悟してくださいね」

「おっけー、任せてくれよ。アルくん!」

 

久し振りに俺はヘスティア様と買い物に出掛けた。

 

 

▼△▼△▼△

 

ヘスティア様のせっかくの休みなので、必要な買い物だけをするのではなく、ちょっとブラブラすることにした。

 

まずは、軽く服を見に行くことにした。

今後、ヘスティア様が神会へ行っても恥ずかしくない格好をさせてあげたい。

後は普段着も少し買っておこうかな。

 

というわけで、神様専門店(お高いお店)とヒューマン専門店へ。

ちなみに、神様専門店は利用する神様達には好評だが、眷属達には不評だ。

理由は単純でそう言った店では、神々が散財することが多いからだ。

 

ヘスティア様は性格が良いが、中にはヘルメスのように眷属に苦労をわざと吹っ掛けてくる神もいる。

だから、たまに。

 

「ほら、帰るぞ! 腐れ神!!」

「えー、良いじゃん! ちょっとスーツ作るだけだぜ~」

「趣味の悪い、百万ヴァリス以上のスーツなんざ、これ以上いるかっ!!」

「ほら、帰りますわよ! ……抵抗するなら足折りますから!」

 

今も眷属に隠れて、ファミリアの金で趣味でスーツを作ろうとした男性神が、眷属達にロープでぐるぐる巻きにされて担がれていく。

 

「あー、アルくん。このお店は少し高いんじゃないかな?」

「大丈夫ですよ、そこまで高い物は買いません。わたし達のファミリア規模であまり高い物を買うと神々から、無理すんなと笑われてしまいますから」

 

ファミリアの規模やランクに見合わない物を購入すると、良くも悪くも目を付けられる。

団員二人の弱小ファミリアのことを考えると、この店の下から二番目くらいの値段の物が良いだろう。

 

というわけで、ヘスティア様にドレスを注文した。

選んだのは白地に青いラインの全体的に布地が多い物にした。

処女神で家庭の神様でもあるから、ちょっと夫人っぽいデザインなのだが、見た目が幼いから、ドレスを着た姿は貴族の幼妻みたいな感じになって、背徳感が……。

とりあえず、製作を頼んでお金を払った。

 

「ありがとうアルくん、ボクは今感動しているよ」

「ドレス一つで大袈裟な」

「いいや、大袈裟じゃないよ! ボクは決めたぞ! アルくんが二つ名を決める時は必ず、無難な名前をもらってくるから!」

 

うん、二つ名に関しては出来ればそうしてほしい。

只でさえ、ネタが盛り沢山な身体だ。

どんな二つ名になるのか、今からちょっと怖い。

 

この後は、店でアクセサリーも見せてもらい、ヘスティア様にネックレスを一つ購入して店を出た。

 

「次は普段着を買いに行きましょう、ヘスティア様」

「ボクのより、アルくんの服を増やした方がよいんじゃないかな? エルフ君達も君の普段着を見て、なん着か献上してきたし」

「普段着ですか、個人的にはヘスティア様が優先ですが、うーん……献上された服ばかり着ていると次の献上品を催促しているように思われるかもしれませんし、そうですね。買いますか」

 

二人で露店を眺めながら、ヒューマン専門店(デザインという意味で、ヒューマン以外はお断りという訳ではない)へ。

 

その途中、知り合いに出会った。

ヘスティア様の親友で、長い付き合いになる予定の鍛冶の神様だ。

 

「あら、ヘスティア。それとアルディス」

「やあ、ヘファイストス」

「こんにちは、ヘファイストス様」

 

ちょこちょこヘファイストス様と顔を会わせていた。

そのお陰で、俺はヘスティア様の眷属ということもあり、何度かヘスティア様と三人で食事をしたことがある。

 

「ヘスティア、ちゃんと仕事してるの、まさかサボり?」

「違うぞ、ヘファイストス! 今日はジャガ丸くんの店員の仕事は休みなだけだ!」

「冗談よ、怒らないで」

「まったくもう」

 

二人が冗談を言い合う姿は、なんかしっくりきた。

やはり、仲が良いんだな。

前世では、こういう友達は居なかったな。と思い出してしまった。

やべぇ、鬱だ。

 

「ところで、新しく入った子は?」

「あ、今日はダンジョンです。わたしとヘスティア様は休みが被ったので」

「なるほど、ナイフのことを聞きたかったけど、またにするわ」

 

それじゃね。と、手を振って去っていくヘファイストス様。

ヘスティア様もまたね。と手を振った。

俺は頭を軽く下げて見送り、ヘスティア様と買い物に戻る。

 

ヘスティア様と俺の普段着を購入した後は、ヘスティア様に似合いそうなリボンを見つけて、プレゼントしたり、露店を甘いものを購入して食べ歩き。

男女ならデートのような感じだった。

 

 

「アルくん」

「何でしょうか? ヘスティア様」

「今、君は幸せかい?」

「? ええ、もちろんです。ヘスティア様、ベルさん、エクレアさん、エイナさんやミアハ様にナァーザさんとも出会えましたし、冒険者家業も順調です」

「なら、良いんだ。けど、何かあったら必ず言ってくれ」

 

――ボク、君の主神だからね。

 

そう言って、俺に微笑むヘスティア様は聖母のように微笑んだ。

 

「ええ、何かあったら相談しますね」

「それじゃ、家に帰ろう。ベル君の為に夕御飯を作らないとね」

「そうですね。今日はヘスティア様が作りますか?」

「うん、任せてくれたまえ。二人にとびきり美味しい物を作ってあげるからね!」

「それじゃあ、食材を買いに行きましょう」

「うん、って、アルくん、そっちにお店は無いぞ?」

「え? ありますよ、デメテル・ファミリアとニョルズ・ファミリアの商品が売られている」

「あそこは高級店じゃないか!? 駄目だぞ! 家にはそんなお金はない!!」

 

驚愕から信じられないという表情で、俺の両肩を掴んでくるヘスティア様。

いや、確かにベルきゅんだけなら、高級店になるか。

けれど、あのお店は平均的な店だ。

物によっては、お得な店だ。

 

「いえ、稼いでいますから、大丈夫ですよ」

「でも出来るだけ節約するべ「今日はキャベツ二つ玉で二百ヴァリス、ドドバス(サイズL)の半身が六百五十ヴァリスです」思ったより安いね、早く買いに行こう!」

 

この後、無事に買い物を終えて、夕御飯はベルきゅんとヘスティアと俺の三人で仲良く食べた。

メインはドドバスのロールキャベツ。

ヘスティア様がお店でちょっと無理を言って、お店からドドバスのあらを安く売ってもらったお陰で、良い出汁が取れた。

 

まあ、臭みを取るのがちょっと大変だったけど、ベルきゅんが美味しそうにドドバスのロールキャベツを食べていたので、苦労が報われた。

頑張って灰汁を取り続けたヘスティア様も満足そうにしていた。

 

その日の夜。

 

「お休みなさいヘスティア様」

「お休み、アルくん」

 

ヘスティア様と同じベッドで眠り、直ぐにヘスティア様の抱き枕になる。

すっかり、これに慣れてしまった。

 

「アルくん、ありがとう」

「わたしこそ、ありがとうございます。ヘスティア様」

 

ヘスティア様が強く俺を抱き締めてくる。

結果的に俺の顔面がおっぱいに埋もれる。

 

「………………」

 

前世でも、俺はヘスティア様には性的な魅力を感じてなかったけど、元男としてこのおっぱいに何も感じないのは、駄目な気がする。

 

そんな事を考えながら、俺はいつものように眠りについた。

 

 



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歯痒い

「アルディスはどう思う?」

 

 ミノタウルス戦の翌日、俺がダンジョンからホームに戻ってくると、ランクアップが可能になったベルさんから、発展アビリティについて相談を受けた。

 

 選べるのは三つ、耐異常と狩人と幸運。原作通りで内心ホッとしながら、ベルさんとヘスティア様から説明を受ける。

 まあ、原作を知っている人間からすれば、選択肢は一つだ。

 

「わたしは幸運のアビリティですね」

「お、アルくんもか!」

「うーん……」

 

 俺の言葉に喜ぶヘスティア様。悩むベルさん。

 なので、俺は助け船を出す。

 

「とは言え、今後の冒険者としてどう言うプレイスタイルを目指すのか、それ決めるのはベルさんです。アドバイザーのエイナさんにも相談した方が良いかと思いますよ?」

「あ、そっか」

 

 俺の言葉にどこか納得したベルさん。

 そして、ヘスティア様が首を傾げながら、俺に問いかけてきた。

 

「アルくんプレイスタイルって、なんだい?」

「え、あ、ああ、ええっと。どう言う風に戦っていくか、理想ですね。わたしの場合は力と耐久のアビリティの伸びが高いので、最終的にはロキファミリアのガレスさんに近い形になるかと」

「アルくん、エルフなのに……」

 

 だぁー、涙を流し始めるヘスティア様。

 いや、仕方が無いじゃないですか。俊敏のアビリティが伸びなくなってきたんですから。

 最初はバランスの良い魔法戦士を目指すつもりだったけど。

 力=耐久>器用=魔力>俊敏の順番になったのだから。

 

「あ、そうだ。アルディス」

「はい、何でしょう?」

「リリはどうだった?」

「ええ、今日も元気でしたよ。ペアでウォーシャドウ狩りをしていました」

 

 キラーアントでも良いけれど、あれはハンマー系でないと武器の消耗が大きい。

 関節部分を切り落とすのは問題ないけれど、数が多いからリリがいることを考えると、数が少ないウォーシャドウの方が安全で効率が良い。リリを怪我させる訳にはいかないし。

 

 最近では俺は新米殺しキラーとか呼ばれ始めた。最初の頃は他の冒険者から少し引かれていたけれど、俺が見慣れてきたのか、普通にすれ違った時に「お疲れ」とか「よっ」とか挨拶されるようになった。

 

 地道に挨拶とか手助けしてきたお陰だね。もちろん、誰でも助けているわけではない。

 MMORPGのように危なそうな時は「手伝おうか?」と声をかけて助けを求められた時だけ、手助けしているし、助けた後に文句を言ってくる冒険者も居る。そういうのは見かけたら距離を取る様にしている。

 マナーは大事。

 

「復帰するまでは、わたしがリリと組みますから、安心して下さい」

「ごめんね。アルディス」

「いいえ、わたしとしても、腕の良いサポーターが居ると心強いですから」

 

 ベルさんは今は休暇だ。格上のミノタウロス撃破したたばかりで疲労もあるだろうし、装備もない。冒険は暫くお休みだ。で、ベルさんが休みなら、リリは世話になっているノームさんの所で手伝いをすることになるのだが。

 

 それはそれで問題は無い。ノームさん良い人だし。

でも、今後のことを考えるとやっぱり、少しでもアビリティを上げた方が良い。と言う訳で、リリは俺とダンジョンへ、それと別れる最後の三十分ほど。お互いに金属盾を持って、お互いにぶつかり稽古をした。

 リリのことを考えると耐久と俊敏、器用なら上げることが出来るかもしれない。

 

 その中で、俺が手伝えるのは耐久だろう。リリと話し合い、弱いなりにアビリティを上げることを提案した。ベルさんの成長速度を考えると、焼け石に水でもアビリティを上げておかないと、中層以降はサポーターとして連れていけなくなると俺が告げると、リリもランクアップをしていないが、ベルさんの強さを知っているので、俺の提案を受けた。

 

 ただ、アビリティの更新については、金が貯まり次第。交渉をして脱退する。ということになった。現状はそれ以外に方法が無いし。原作を考えれば暫くは放置だ。

 

 とリリに関してはしばらくアビリティ訓練をするだけにしておく。

 盾でのド突き合い。それと眠る前にはひたすら魔法を使う様に言っておいた。

 俺が帰りに無意味なほど連続でセイント・ランスを使っているのは魔力上げだとリリも知っている。

 微々たるものでも毎日使って合計すれば、結構な数値になるからね。

 

「しばらくは、ベルさんは休んで下さい」

「うん、本当にごめんね。アルディス」

「お気になさらずに」

 

 俺はそう言って、装備を脱いで。シャワーを浴びた。

 

 

 

△▼△▼

 

 

 さて、今日はアウラさん達とリリ(狼人姿)の六人でダンジョンへ。

 あ、ちなみにメンバーは、前衛は俺と盾持ち片手剣戦士の潔癖エルフさん。両手剣戦士のクールエルフさん。後衛は魔法使いの年下好きなおっとりエルフさん。ヒーラーのアウラさん。サポーターのリリだ。

 

 アウラさん達は常に三、四人で行動している。

 ちなみに遠征(ギルドのノルマ)は終わったばかりなので、精神的に余裕があるそうだ。

 

「ハードアーマードを一撃ですか、流石ですね」

「いえ、これは武器のお陰ですよ」

 

 ダンジョンの11階層。最初の戦闘で出てきたモンスターの群れの最後の一匹、ハードアーマードを鎚で叩き潰すと、アウラさんがちょっと呆れた様子でそう言った。

 ガチャガチャと色気の欠片もない白い重鎧を着た俺はちょっと苦笑い気味に、持っている鎚を掲げた。

 見た目はモンスターハンターに出てきそうなデザインの金属製の両手で持つタイプの大ぶりなハンマーだ。

 

 流石にモンハンに出てくるような大きさは無いが、それでも俺の○0歳が持っていると不釣り合いな大きさだ。

 恩恵と力のアビリティが無かったら、まず持つことは出来ないだろう。

 俺が戦いで振り回せる重さにしている。

 

「どんどんエルフっぽくなくなってきますね。アルディス様」

「うん、実用性重視ってことで」

 

 リリに言われて、俺がそう言うと皆苦笑いを浮かべた。

 動きは遅いが、ゲームの時の経験のお陰で最小限の効率の良い戦いで、アウラさん達から「相変わらず隙のない戦いですわね」と称賛された。

 地味にゲームの経験って、チートだよね。

 

 そして、黙々と戦闘を続け、少し休憩しようということになった。安全地帯に移動すると、ふとアウラさんが何かを思い出したかのように呟いた。

 

「そういえば、そろそろ神会でしたね」

「ああ、そう言えば、今回はどんなすごい二つ名が生まれるのかしら?」

 

 潔癖さんとアウラさんがそんなことを言った。

 安全地帯でもモンスターが来る時もあるから、実は油断できないけれど、アウラさん達は話ながら、周囲をしっかりと警戒している。

 

「前回も素敵な二つ名が沢山ありました。【闇夜の聖歌】や【氷結の触れ得ざる堕天使】など」

 

 俺は意図的に情報を仕入れなかった前回の神会の二つ名を聞いて戦慄していた。

 神会でヘスティア様がロキにせっつかれて、面倒なことになるはずだ。

 もちろん、原作通りに神フレイヤが介入してこなかった時の為の対応策を紙に書いて渡しておいた。だから、問題はないと思う。

 神フレイヤが俺という存在がある状態で、どう動くか分からないけど。

 たぶん、大丈夫だとは思う。

 

「アルディス様は、どう思いますか?」

「え、えっ?」

「二つ名ですわ、アルディス様はハイエルフです。きっと素敵な二つ名が送られる筈ですわ」

 

 アウラさんに、話を振られて、内心焦る。ああ、それは考えないようにしていたのに!!

 要らないよ。二つ名なんて! と言えたらどれだけ楽か。

 

「そ、そうですね。その時になってみないと分かりませんが、わたしは無難なモノでいいですね」

 

 ぎこちなく俺は笑う。

 どうすっかな、二つ名。Lv.4くらいなら、根回しとか敵に回したら恐ろしい。と言えるけれど、俺がLv.2になった直後では、根回しや脅しは意味が無い。

……今は耐えておくか。

 

「あ、少し何か食べましょう」

「はい、アルディス様」

 

 狼人に変身しているリリに言って、俺は軽食を出してもらう。

 ま、今から悩んでもしょうがない。今は、戦って経験値を習得して強くなる為に頑張るだけだ。チートスキルは歓楽街にでも行かないと使えないし。

 使う訳にもいかない。

 けれど、本当に歯痒いな。

 

 

 




お久し振りです。

ループモノの主人公みたいな気分です。

何回やっても、何回やっても、フィルヴィスさんが!!・゜・(つД`)・゜・

なので、アルディスにはベル君以上に……?

それと、アルディスの二つ名も…………


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17話

 

 

今日は神会。

 

 アウラさん達も発表される二つ名が気になっているらしく、少し早めにダンジョンを後にした。

 ま、俺はベルさんのランクアップのお祝いをする為なんだけれど。

 リリと共に『豊穣の女主人』へ移動する。

 

「あ、アルディスさん。いらっしゃい」

「シルさん、こんにちは」

 

 シルさんに案内されて、俺とリリは先に席に着く。

 しばらくすると疲れた表情のベルさんが来た。ああ、やっぱり神々に追い回されたか。

 助けに行こうかと思ったけれど、下手に神々にちょっかいをかけると目をつけられる可能性がある。

 なので、今回はベルさんには助け舟を出さなかった。

 

「はい、ではベルさんのランクアップを祝して、カンパーイ」

「「「カンパーイ」」」

「か、カンパーイ」

 

 それから、色々と話をして、ベルさんが買い物に行く話になり、シルさんが女将さんに怒られ、ベルさんが一人で買い物に行くことが決まった。

 

「装備を整えた後、どうするつもりなのか、そう聞いています」

 

 そこからリューさんの説明が入り、あれやこれや話が始まる。

 簡単に言えば、パーティを増やそうという話なのだが。

 

「でも、アルディス様がいるので大丈夫」

「いえ、わたしはしばらく、中層へは行けませんよ」

「「え?」」

 

 リリは俺がパーティに入り、中層へ行くと思っていたようだ。

 だが、原作のことを考えて、中層へ行くのはゴライアス戦の後。

 

「な、何故ですか?」

「わたしにも付き合いがあります。帰りが遅くなる中層は、しばらく無理ですね。それに本当に中層へ行くつもりなら、もう一人欲しいですね。浅いところでもアウラさん達の話を聞いてしまうと」

「そうですね。万全を期すべきです。貴方達は後一人仲間を見つけるべきだ」

 

 うん、ベルさん明日頑張ってヴェルフを見つけてきて下さいね! 駄目なら、俺が紹介するから。

 

「はっはっ、パーティでお困りかぁっ、【リトル・ルーキー】!?」

 

 とか思っていると、煩い声が聞こえてきた。ああ、モルドだったか。

 

とりあえず、俺は無視。

 

モルドがひとしきり騒いで、リューさんが怒って、原作通りクロエさんとアーニャさんがモルドの仲間を椅子でぶん殴って気絶させ。最後はミア母さんがブチ切れて、モルド達を追い出して終了。

 

 あーあ、カウンターが壊れた。

 ま、騒ぎの原因だし、金もあるからお詫びの意味も込めて注文を増やすか。

 

「ミア母さん! 本日のお勧め五人前、それと騒ぎを起こしたベルさんにエールをサイズは特大で」

「あいよっ!!!」

 

 怒りの形相から、即座に営業スマイルになったミア母さん。

 

 ベルさんが「アルディス!?」と驚いていたが、俺はジト目で「ベルさんがあの人達をどうにかするべきでしたよ。男なんですから」と叱っておいた。

 男なんですから、と言われてベルさんが落ち込んでいたので、シルさんとリリに慰めるように目配せをしたら、二人は即座にベルさんを慰め始めた。

 

「ところで」

「はい?」

 

 ベルさん達三人を眺めながら、本日のお勧めをパクついていると、リューさんが俺に小声で話かけてきた。

 

「何故、あまりクラネルさんとパーティを組まないのですか?」

「理由はいくつかありますが、ベルさんの成長の為ですね」

「成長」

「ミノタウロスを単独撃破、この事を考えればベルさんが特殊だと分かるのでは?」

「…………」

 

 俺はそれ以降何も言わなかった。

 リューさんも何も言わなかった。ただ、少しだけ、俺を非難する様な視線を感じた。

 

 これはリューさんの好感度を下げたかもしれない。

 

けど、俺が参加すると経験値効率が下がる。

 

ベルさんの為には必要なことだ。

 

「ベルさん」

「何? アルディス」

「何度でも立ち上がって下さいね。これから、大変ですよ。レコードホルダーになったのですから」

「え? あ、うん」

 

さて、ヘルメスを捕まえる為の道具と賠償の内容を考えておこうかな。

 

 



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