LoveLive! Anotherstory (神崎あやめ)
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Prologue

「…ちゃん!ごめん…次の世界では絶対に私達が…ちゃんを守るから」

 

私が最後に聞いたのは大事な戦友(とも)の声だった。あぁ私はここで終わりなんだ。でも、こんな私だけど最後くらいはみんなの力になれたかな…?

けれどもし、もしも私に来世が訪れるならまたこのみんなで平和な時代に生まれて楽しく過ごしたいな………

 

「私の騎士団に入ってくれませんか?」

 

私は最初、彼女の騎士団に入るつもりはなかった。けれど彼女との勝負に負けてこの騎士団、通称『Aqours』へと入った。それから私と…ちゃんは他のみんなよりも深い絆で結ばれたと思う。それなのに、私は彼女が助けを求めていたのに側にいてあげられなかった。その後なんとか合流に成功したものの彼女は命尽きてしまった。こんな悲しみをもう味わうわけにはいかないの。私にとって…ちゃんはかけがえのない光なのだから。

 

「やっぱり…ちゃんはすごいな〜私ってこんなことしてるけど普通だからさ」

 

…はいつも自分のことを普通だって言ってた。でもね、貴女が普通なんだったら私達を集めてあの世界最強と名高い騎士団である『μ's』に匹敵する力を持つことなんてできなかったんだよ。なのに私達に何も言わずに先にいなくなるなんてそんなの無しだよ!だから私達がまた絶対に…を見つけるから!その時まで待ってて…

 

「…さん。いつも迷惑ばかりかけてごめんね。でもこんな私についてきてくれてありがとう」

 

貴女はいつも私に謝ってばかりでしたわよね。ですが一番大変な思いをしていたのは貴女だったと私はわかっていました。それなのに私は、いえ私達は貴女を助けきることができませんでした。今更後悔しても貴女には届かないのですが…。でも来世では貴女を一人にはしませんから。安心してください。

 

「やっぱり…ちゃんは自分の武器で戦ったほうがいい!私に合わせるんじゃなくて一からやり直したほうがいい!…ちゃんと私の二人だけの技を!」

 

…ちゃんは私が力をセーブして戦っていたのにもすぐに気づいてくれたよね。まあ同じように私も…ちゃんが隠してたことに気づいていたけど。でも私は…ちゃんにちゃんと言葉にして伝えてあげられなかったんだ。大丈夫だよって、その一言を言えなかったんだ。だから私はもうこんな過ちは犯さないよ。次こそ…ちゃんと一緒にみんなであいつら(・・・・)を倒すんだから。

 

「…ちゃんはそのままでいいんだよ!自分が一番好きな姿で戦うんだよ!」

 

…さんはこの世界では忌避される存在であった堕天使である私すらも受け入れてくれたわよね。あの言葉があったから私は今まで頑張ってこれたの。それなのに私は貴女が抱えていたものの重さに気づけていなかった。そしてあなたを失ってしまった。でもこれで終わりじゃないわ。だって私は堕天使だから。絶対にまたあなたと巡り合うからその時までせめて安らかに…

 

「一番大切なのはできるかどうかじゃない、やりたいかどうかだよ!」

 

…ちゃんはおらにそう言ってくれたずらね。あの時…ちゃんが言ってくれなかったらおらは『Aqours』に入ることもなくひっそりと暮らしてたのかな…。また一緒に笑いあいたいずら。…ちゃん、…たちの力でみんなで未来へ行くずら。だから…ちゃんも一緒に行こうね……

 

「もしも私がいなくなったら次のリーダーは…ちゃんに任せようと思ってるんだ」

 

…ちゃんは前にそう言ってたよね。あの時…は冗談だと思って笑っていたけどこういうことだったんだね……。でもね…ちゃん、…達は…ちゃんのいない『Aqours』なんて考えられないよ。それだけ…ちゃんの存在は大きかったんだよ。

 

これはそんな私達Aqoursの物語……



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Chapter1-1

すみません…梨子ちゃんのキャラが1番崩壊しています。進むにつれていつもの梨子ちゃんになるとは思うのですが、他のメンバーもところどころおかしいです…


私の名前は高海千歌!カントーエリアの沼津に住む16歳。今日は沼津にあるカントーエリア管轄の浦の星騎士学院第二課程の始業式のために学院に来ています。周りを見るとたくさんの同級生が…ということもなく、わずか50人ほどしかいないんですが……。とはいえ、この学院にいる生徒には皆それぞれ目指している目標があります。それは現日本最強の呼び声高い騎士団、『μ's』の面々です。団長であり、『太陽(サンシャイン)』の異名を持つ高坂穂乃果さんを筆頭に、全9人の団員全員が一般騎士換算で100人分ともいわれる力を持っています。さらには全員に一つ以上の異能があり、魔術師としても第一線級という桁外れの騎士団なのです。かくいう私も穂乃果さんに憧れて騎士を目指し、ここに入学しているわけなんだけど……

 

「進級試験の時に晴れてたらな〜。というかよりによって実技が屋内だなんて〜」

 

「そうだね。もし晴れてる屋外で実技をやったら千歌ちゃんが圧倒的だったよ!」

 

そう、私は自分の持つ異能によって力を制限していたので進級試験で思うような結果が出せなかったのです。そんな私を励ましてくれているのが、

 

「でも曜ちゃんはすごいや!首席で進級したもんね!」

 

「まあ本気を出してない千歌ちゃんに勝っても全然嬉しくないんだけどね…」

 

そう言って謙遜しているけど本気で戦っても多分負けるであろう私の幼馴染の渡辺曜ちゃん。曜ちゃんはμ'sの中では南ことりさんを目指しているそうなんだけど、私の中では曜ちゃんは園田海未さんみたいに強いからそっちに近くなりそうだななんて思ってみたり。

 

「そういえば今年は遂に擬似騎士団の結成ができるようになるんだよね!」

 

「そうだね。でも曜ちゃんはもう決まってるんでしょ?」

 

「何が?」

 

「一緒に組む人だよ!」

 

「え?千歌ちゃんと一緒に組むんじゃないの?」

 

「でも曜ちゃん、色んな人から誘われてたじゃん!」

 

「あ〜、全部断ってるよ?だって私の夢は千歌ちゃんと一緒に何かを成し遂げること、つまり千歌ちゃんと同じ騎士団で活躍することだもん!」

 

「曜ちゃん!…でも他のみんなはもうグループを作っちゃってるよね…」

 

「うん、最低でも3人は必要だもんね。後1人どうしようか?」

 

そう。カントーエリアでは、騎士学院の第二課程から一団3人以上の条件で擬似騎士団を作ることが認められているのです。騎士団を作ることによって、学外からの依頼にも一部出動できるようになるなどメリットも大きいこの制度なので、皆進級前に既にグループが固まってしまい、私達2人だけが取り残されてる状況だったのです。しかし、そんな私達のピンチに救世主が現れようとしていました。

 

「え〜、なかなかに珍しいのだが、転校生が1名入ることになった。音ノ木坂学院からだ。自己紹介を」

 

「はい。東京の音ノ木坂学院から来ました。桜内梨子です。よろしくお願いします」

 

その急な紹介にクラス内はざわつき始めた。それもそうだろう。転校生というだけでも珍しいのに、あのμ'sを輩出した音ノ木坂学院からだというのだから。でもみんなのざわつきとは裏腹に私の中ではチャンスだという思いしかなかった。

 

「キセキだよ〜!!ねぇ桜内さん、わたしの騎士団に入ってくれませんか?」

 

「ごめんなさい!私、あなたとは一緒に出来ない」

 

「そんな〜!?」

 

私の勧誘に対する桜内さんの答えは拒否だった。少しの逡巡もない拒絶とも取れる反応に、私は特に何も思わなかった、いや思えなかったけど、曜ちゃんは反応していた。

 

「桜内さん、いくらなんでもその言い方は酷いんじゃないかな?」

 

「渡辺曜さんだったかな?首席のあなたが口を出すことではないんじゃないの?」

 

「いや、私にも関係はある!だって私は千歌ちゃんの騎士団の団員なんだから!」

 

「へ〜、あなたがこんな普通の力しかないような子の下につくんだ。少しは楽しめるかと思ったけれど、つまらないわね。そんな仲良しこよししかしないような弱者の集まりなんて」

 

「なんだと!」

 

曜ちゃんが怒りを露わにしていたけれど、その怒りは私を見てすぐに鎮まっていた。

 

「桜内さん。私に色々言うのは構わないよ?でも、他のみんなを傷つけるのは許さない!だから、私はあなたに決闘を挑みます」

 

「千歌ちゃん!?」

 

「ふ〜ん。まあいいけど、私とあなたじゃ勝負にならないでしょうからあなたが戦う場所を決めていいわ」

 

「わかった。じゃあ屋外闘技場で」

 

「外でいいの?」 

 

「外がいいの」

 

「わかったわ。でもそうね。せっかくやるんだから勝負の勝ち負けで何か賭けましょうか。私は受けてあげる側なんだもの、それくらいはいいでしょう?」

 

「わかった。じゃあ私が勝ったらさっきの発言は撤回して桜内さんも私の騎士団に入って」

 

「千歌ちゃんいいの?」

 

「うん、私、桜内さんは悪い人じゃないと思うから…」

 

「わかったわ。じゃあ私が勝ったらこの第二課程の生徒はみんな私の傘下ね」

 

「いいよ、その条件で。ではすみませんが先生、今日は顔合わせだけなはずなので、これが終わったら審判をお願いしてもいいですか?」

 

「わかった」

 

「じゃあ桜内さん、私は負けないから」

 

「ふふっ、その自信がどこから来るのかわからないけれど、一撃で仕留めるわ」

 

そう言うと、桜内さんは教室を去っていった。その直後、私と曜ちゃんは同級生達から詰め寄られることとなった。

 

「高海さん!そんな不平等なルールを受けてどうするの!」

 

「そうだよ!あの子はエリートしか行けないあの音ノ木坂学院の生徒なんだよ!勝てっこないじゃん!」

 

「みんなはさ、千歌ちゃんの能力を見たことがある?」

 

「無いけど、高海さんって異能は持ってないんでしょ?私達と同じで」

 

「あれ?千歌ちゃんってあれ見せたことないの?」

 

「あ〜、そういえば私この学院に入ってからずっと黒髪(・・)のままだ」

 

「そっか。じゃあみんなは心配する必要はないよ!」

 

「どうして?」

 

「だって今日は晴れてるから!」

 

曜ちゃんが嬉しそうに話しているのを聞きながら、私は手鏡で自分の髪を確認していた。私の今の髪色は黒だ(・・・・・・・・・)。そして、桜内さんとの決闘が始まろうとしていた……



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Chapter1-2

今回から時々第三者視点が入ります。


桜内梨子は教室での一件のあと、一人別室に移動していた。そこで彼女は自分の憧れであり、ここへと連れてきた師匠でもある人物と通信を始めた。

 

「真姫さん、少し面倒なことになってしまいました…」

 

「どうしたの?」

 

「普通に挨拶をしたのですが、1人高海千歌さんという生徒が私を第二課程より組むことのできる擬似騎士団に勧誘してきたため断ったところ、今年度首席の渡辺曜さんが私の断り方が気に入らなかったようで最終的に決闘することになりました」

 

「もう!本当に面倒なことになってるじゃない。まああなたは私の直弟子だからまず負けることはないと思うけれど」

 

「もちろんです!この決闘では賭けをしているので。私が勝てば私が編入した学級の生徒全員が私の傘下として属し、相手が勝てば私が高海さんの騎士団の団員となる条件となりました」

 

「それはまただいぶ相手が不利な条件ね。ということは相手は渡辺曜さんということかしら?」

 

「いえ、最初はそういう雰囲気でしたが結局相手は高海千歌さんです」

 

「そう、それは不思議ね。高海さんに何か気になる点はあった?」

 

「いえ、特にはありませんでした。強いて言うなら、彼女が決闘場所を屋外にしたということくらいでしょうか」

 

「屋外ね。なんだかうちの穂乃果みたいなことをしてるわね……!?ねえ梨子、その高海さんはもしかして黒髪じゃない?」

 

「そうでしたけど」

 

「そう、なら気をつけなさい。レベルはわからないけれどもしも私の予想が正しければあなたと互角になるかもしれない」

 

「?わかりました。警戒だけしておきます」

 

「ええ、それがいいわ」

 

そう言って通信相手である『μ's』の西木野真姫のほうから通信を切った。

 

しかしその時はまだ梨子は千歌の本当の力を想像することもできていなかった…

 

 

そして放課後になり、屋外闘技場にて

 

「逃げずに来たようね、高海さん」

 

「うん、もちろん!あなたに言われたことを許せないっていうのもあるけど、タイミングと相手がなかなかいなくて、この学院に入ってからずっと力を出したことが無かったから久々に本気で戦えることが嬉しくって!」

 

「そう、あなたの本気がどの程度なのか知らないけど私が負けることはないから」

 

「うん!でも買っても負けても恨みっこなしだからね!じゃあ先生始めよう!」

 

そう千歌が言ったタイミングで一人の観客が声をあげた。

 

「ちょっと待ってもらってもいいかな?」

 

「曜ちゃん?」

 

「先生に伝えておかないといけないことがあるから」

 

「わかった」

 

「先生、すみませんがちょっとこっちに来てもらってもいいですか?」

 

「え、えぇ」

 

そう言って曜は先生を連れ出した。そこで観客席と闘技場内は少し離れているため、千歌が梨子に語り出した。

 

「ねぇ桜内さん」

 

「何?」

 

「曜ちゃんがごめんね」

 

「なんのことかしら?」

 

「私わかってた。桜内さん私を卑下して断ったんじゃなくて何か理由があって断ったんだって」

 

「そうだとしたら?」

 

「もしよかったらなんだけど、その理由教えてもらえないかな?」

 

「あなたに教える必要はないわ。でもそうね、もし勝つことができたならそれも教えてあげる。それとヒントだけならあげるわ」

 

「なになに?」

 

「それはね、μ'sよ」

 

「……そっか。それなら理由はなんとなくわかったよ。なおさら私の騎士団に入ってほしいな!」

 

「それは私に勝てたらの話よ?」

 

そうこうしていると、曜と先生が帰ってきていよいよ決闘が始まろうとしていた。

 

「それでは始めたいと思います。2人とも武器の準備を」

 

その声に応じ先に武器を出したのは梨子だった。

 

「咲き誇る櫻のように舞え!桜杖ブルームフロージア!」

 

梨子の武器は桜色をした長い杖だった。

 

「桜内さんは魔術師系の騎士なんだね。真姫さんみたい」

 

「そうよ!私はあの人に憧れて騎士を目指してるんだから!そういう高海さんは武器は出さないの?」

 

「うん、出さないというよりは今は出せない(・・・・・・)んだ。これは始まってから使わないと不公平なものだから」

 

「ふ~ん?まさか手加減してるとも思えないけど出さないならそれでいいわ!」

 

「よし、準備ができたようだな。それでは開始だ!」

 

こうして先生の掛け声により千歌と梨子の決闘が始まるのであった。



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Chapter1-3

今回はμ'sの面々の会話になります


浦の星騎士学院にて高海千歌と桜内梨子の決闘が始まろうとしていたのと同じ頃、μ'sの本拠、秋葉原の音ノ木坂騎士学院内の砦では、μ'sの面々が揃って会議をしていた。

 

「みんな、私達に次ぐ新たな騎士団のために音ノ木にいる私達の直弟子の子たちを各地に転入させてみたけどとりあえず今日1日で何か進展がありそうなところはあった?」

 

「私達の直弟子といっても送ったのは私と凛と花陽の3人だけ、後は送ってないでしょ?」

 

「そうだったね…う〜ん、でもみんなを見る感じ特に何も無かったのかな?」

 

「凛のところは特になかったにゃ」

 

「わ、私のところもです!」

 

「そっか〜、…あれ?真姫ちゃん?」

 

「私のところはちょっと大きめの問題が起こってるみたい」

 

「真姫ちゃんのところだと梨子ちゃんだね?確か静岡エリアの沼津、浦の星騎士学院に行ってもらったんだよね。でもあそこの第二課程は特にめぼしい子はいなかったと思うけど…」

 

「めぼしいかどうかは別として、あの子、初日なのにクラスの子と揉めて今日決闘をするらしいのよ」

 

「あちゃ〜、またそれはそれは。相手もかわいそうだね〜真姫ちゃんの力を受け継いでる梨子ちゃんに勝てっこないのにね。それで戦うのは首席の子?」

 

「いえ、進級試験でも普通の成績だった子らしいわよ?」

 

「余計に無謀じゃん!?……あれ?そういえば、浦の星の今年の首席って誰だっけ?」

 

穂乃果かがそうつぶやいたのとほぼ同時に海未が口をひらいた。

 

「大変ですよ穂乃果!」

 

「どうしたの海未ちゃん?」

 

「浦の星の今年の首席ですが、曜なんですよ!」

 

その言葉に、凛、花陽、真姫はなんの反応も示さなかったが、それ以外の団員は驚きを隠せなかった。

 

「ねぇ、穂乃果。その曜って首席は何かあるの?」

 

「そういえば、真姫ちゃん達が入団する前のことだったかな。曜、渡辺曜ちゃんっていう子はね、海未ちゃんとことりちゃんの愛弟子なんだよ」

 

「な!?でもどうしてそんな沼津なんてところにいるのよ」

 

「曜ちゃんとね、もう1人、これは私の愛弟子だった子がいたんだけどその子は幼馴染みで沼津の子でね。騎士学院入学前に私達の教えられることは教えきっちゃったから、地元に帰してあげたの」

 

「そうなのね。でも今回の相手はその曜って子じゃないわ」

 

「ならいけるでしょう」

 

海未はそう言ったが、穂乃果には1つ予感があった。

 

「もしかしてだけど、私が覚えてるあの2人の性格的になんだけど曜ちゃんが絡んで、別の子が決闘っていう流れだったりする?」

 

「ええ、私のところに来た連絡ではある生徒が梨子を擬似騎士団に誘ったそうなの。それを梨子が断ったところ、その曜って子が断り方に対して怒ってもめたらしくて、最終的にその梨子を騎士団に誘った子と梨子との決闘になったそうよ」

 

「あ〜……それじゃあもしかしてその相手の名前って高海千歌っていう名前だったりする?」

 

「そうよ?……まさか!?」

 

「うん、千歌ちゃんは私の弟子だよ」

 

「そう、なら梨子も苦戦するかしらね」

 

「戦う場所にもよるかな。ねえ真姫ちゃん、梨子ちゃんはどこでやるって言ってた?」 

 

「確か屋外闘技場って言ってたわ」

 

「屋外……だったら私達が出ないと危ないかもしれない」

 

「それってどういう…「穂乃果ちゃん!」」

 

真姫の疑問を遮ったのはことりだった。

 

「ことりちゃん?」

 

「今浦の星騎士学院からの要請が入ったよ!」

 

「こっちにつないで!」

 

「うん………えっと穂乃果さんですか?」

 

「曜ちゃん!」

「曜!」

 

「あっ海未さんもいるんですね。あの申し訳ないんですが浦の星にμ'sから何人か、最悪全員派遣してもらえますかね?」

 

「確か決闘をするんだったよね?詳しい情報を教えてもらえるかな?」

 

「あれ?決闘の話なんて……あぁ、そういうことだったのか。とりあえず状況を簡潔に説明すると千歌ちゃんなんですが、この1年一度もあれ(・・)を解放していません。そのレベルで蓄積した状態で今日は解放させるようなのでかなりマズいんじゃないかと…」

 

「あれ?でも進級試験の時は?」

 

「進級試験の時も屋内だったとはいえストックを出せたはずなのですが使っていません」

 

「ってことはこの1年間武器無し(・・・・)で修練して進級試験も中間くらいの順位で抜けたってことだね?」

 

「そうなりますね」

 

「そっか……わかった。なんとかするよ!」

 

「ありがとうございます。それではそろそろ戻らないと怪しまれるかもしれないので」

 

「何かしてるの?」

 

「いえ、まあ監督役の先生への事情説明くらいですかね」

 

「そっか。じゃあとりあえず曜ちゃんは戻ってね。もし私達が着くよりも先に危ない状況になったら」

 

「私、園田海未と「私、南ことり」の名において、園田流と南流の奥義使用を許可します!」

 

「それなら多少持たせられるかもしれないですね。とにかく早急にお願いします」

 

そう言い残し、浦の星からの緊急要請連絡が途切れた。

 

「ぅ絵里ちゃん!申し訳ないんだけど今日1日団長代理を任せてもいいかな?」

 

「ええ、ということは穂乃果が出るのね?」

 

「うん、この件は私と海未ちゃん、ことりちゃん、真姫ちゃんの4人で向かうよ」

 

「わかったわ、留守は任せて!」

 

「それじゃ、海未ちゃん、ことりちゃん、真姫ちゃん、行こうか」

 

「わかりました」

 

「うん」

 

「…ちょっと待って!」

 

「どうしたの真姫ちゃん?」

 

「たかだかいち第二課程生の決闘にいくら私達の系譜とはいえこんなに人員を割く必要があるの?」

 

「そうだった、真姫ちゃんは知らないんだよね。あのね、千歌ちゃんは私と同じ異能の持ち主なの」

 

「それって…」

 

「そう、まあ私の場合は常時発動してるけど、千歌ちゃんは基本使わなくてもいいから蓄積(チャージ)モードで黒髪の状態で過ごしてるの。その間も太陽光を浴びれば浴びるほど力を蓄えてるんだけど。そして今回は1年間も蓄積してる上におそらく曜ちゃんや他の同級生を傷つけるようなことを言われたことによる怒りもあるはずだから」

 

「でもそんなこと梨子は一言も」

 

「まあそうだと思うけど千歌ちゃんが力を使うのは基本他人のためだから、多分私の想像があってるなら私達でも1人では抑えきれないかもしれない」

 

「それほどの力なのね」

 

「だって私が全て教え込んだからね!次の『太陽(サンシャイン)』の名主は千歌ちゃんだと思ってるよ!」

 

「そう、なら梨子ではまず敵わないわね……長話させてごめんなさい。移動しましょう」

 

「うん!それじゃあぅ絵里ちゃん任せるね!」

 

こうして浦の星騎士学院に最強の戦力が出動したことをまだ梨子と千歌は知らない………

 



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Chapter1-4

決闘が始まると両者はしばらくにらみ合っていた。

 

「桜内さん、何もしてこないの?」

 

「そういうそっちこそ始まっても何もしないなんて何を考えてるの?」

 

「まぁそれを言われちゃうとそうなんだけど…さっきも言ったけど私が本気で戦うのって1年か1年半ぶりだからね、多分だけど今曜ちゃんが準備してるんじゃないかな?」

 

「準備?それって…」

 

「そうだよね!曜ちゃん?」

 

「そうだよ。まあ私のでも長時間は持たないから最終手段も使わせてもらってるけどね」

 

「そっか!じゃあもうそろそろいいかな?」

 

「うん、発動しておくね!」

「蒼弓アズールサファイア・白矢ヴァイスミラージュ!」

 

曜が顕現させた武器に驚きを隠せなかったのは梨子だった。

 

「な、なぜあなたがそれを!?」

 

「…それは多分桜内さんがここに来たのとも関係あるとは思うけど、とりあえず今は千歌ちゃんに集中したほうがいいと思うよ?私はこのフィールドを守るので精一杯だから…」

「園田流奥義・南流奥義同時発動!世界を護る盾となれ!『無限の神盾(インフィニットイージス)』!」

 

曜の発動した合技によりフィールド全体が透明な壁で覆われた。

 

「これでいけると思うよ?」

 

「ありがとう曜ちゃん!それじゃあ桜内さん、あなたがいつまでも攻撃してこないから私ももう我慢できないや。ここから先は私自身でも加減が難しいから気を付けてね?」

 

 

その頃、秋葉原から浦の星へと向かっていたμ'sの団員たちもその圧倒的な力を感じ取っていた。

 

「海未ちゃん、ことりちゃん」

 

「はい、この気配は曜の技ですね」

 

「でも私達の技を1人で使ってるみたいだよ?」

 

「無限の神盾ですか…ということはアズールとヴァイスですね。まあ守護系統ならばそれしかないですからね」

 

「そうだね。曜ちゃんの本来の武器は基本攻撃特化型だからね」

 

「そうなの?」

 

「はい、ですが千歌のほうが攻撃力が上回ることが多いので、曜は防御よりの攻防一体型である私達と同型の武器を用いているのです」

 

「そう、でもさすがに無限の神盾を使ったのならしばらくは持つんじゃないの?」

 

「それはわからないよ…千歌ちゃんがどれだけの出力を出すかわからないから。ただ、もし千歌ちゃんが神格を使ったならかなりまずいことになるよ」

 

「そうですね」

 

「蓄積してる力の量から推定すると私達が間に合わずに発動をさせちゃったら最悪静岡エリア全体が何かしらの被害を受けるんじゃないかな?」

 

「なっ!?」

 

「まあ曜ちゃんがこの技を使ったのは今から千歌ちゃんが開放するよっていう合図のはずだから。私の全力で向かうよ!」

「神格開放 モードホルス・ブレイブバード」

 

そう唱えた穂乃果の背中からは燃え上がるような紅い翼が顕れていた。

 

「穂乃果ちゃん一人じゃ大変でしょ?ことりもいくよ!」

 

「天格開放 モードガブリエル・ホーリーバード」

 

そしてことりの背中からは汚れ一つない純白の翼が顕れた。

 

「ありがとうことりちゃん!それじゃあ海未ちゃんは私が、真姫ちゃんはことりちゃんで運ぶよ!」

 

こうして4人は横浜のあたりから高速移動を開始した。

 

 

一方浦の星では

 

「私だって負けられないの!」

 

「なら桜内さんも本気でかかってきてよ!」

 

「言われなくても!」

「武装変形!神槍 桜花ロンゴミニアド」

 

「へ〜!桜内さんの武器って槍だったんだね!」

 

「そうよ!これを使うのはいつぶりかしら。大体の相手はブルームの状態で勝てたからわからないけれど、これを出したからにはあなたに勝ちの目はないわよ?」

 

「そっか〜!私ワクワクしてきちゃった!じゃあ私もいくよ!」

「天に煌めけ!バーストモード展開」

『バーストモード開放 承認』

 

千歌の発動したバーストモードに闘技場全体が息を呑んだ。千歌の髪色はためこんだ太陽の力でオレンジ色に変化し、その姿はあのμ'sの穂乃果のようだった。しかし、千歌の異能はここでは終わらなかった。

 

「リミッター解除!神格開放 天照大神(アマテラス)

 

「そんな…なぜこんなところに海未さん、ことりさんだけでなく穂乃果さんの継承者まで…」

 

「さすがにこれは私の守りじゃ焼け石に水かも…」

 

ここから先の戦いは一方的なものとなる……




なかなかバトルシーンにはいらずすみません。次話より数話はバトルシーンになります。(ほぼ千歌対μ's)


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Chapter1-5

「さあ、やろうか?」

 

千歌は満面の笑みでそう梨子に告ぐが、梨子はそれどころではなかった。それもそのはず、梨子は真姫の直弟子ではあるが異能を受け継ぐにはまだ至っておらず、自分の異能しか無かったのである。そして千歌の変化は曜や他の同級生にとっても想定外だった。

 

「渡辺さん、高海さんのあれは何?」

 

「正直私も直に見るのは初めてだけど…あれが千歌ちゃんの本気、神格開放だよ。あの状態になったら穂乃果さんと同格くらいだったと思う。でもそれも2年前の話だから…」

 

「だから?」

 

「おそらく現時点の千歌ちゃんは穂乃果さん単体では止めきれないと思う」

 

「そんな…じゃあ私達も逃げないと危ないんじゃ!?」

 

「そうだね。みんなは逃げたほうがいいよ。でも私はあの桜内さんが残っているのに逃げるわけにはいかないから。それにもうすぐ援軍も来るし」

 

「わかった。私達も残るよ」

 

「でも…」

 

「これは第二課程全体の問題でしょ?それに私達も桜内さんと同じで高海さんのことを過小評価しすぎていたから。高海さんの本気をこの目で観ていたい」

 

「わかったよ。ならみんなは私の近くにいて」

 

「わかったわ」

 

 

「穂乃果!」

 

「間に合わなかったか…千歌ちゃんが神格を開放したね」

 

「穂乃果ちゃん…」

 

「ごめんことりちゃん、海未ちゃんも一緒に連れてきてもらっていいかな?」

 

「それはいいけど、穂乃果ちゃんは?」

 

「先に行って時間を稼いでくるよ!」

 

「……わかった」

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

「真姫ちゃん?」

 

「私も行くわ!」

 

「でも移動方法が…」

 

「私を誰だと思っているの?私もあれを使えば一緒に飛べるんだから」

 

「……そうだね。じゃあお願いするよ」

 

「それでいいのよ」

「天格開放 モードアズリエル・ソニックウィング」

 

「神格開放 モードアポロン・インフェルノ」

 

真姫が天格を、そして穂乃果が新しい神格を開放し、先行していった。

 

「海未ちゃん、ことりたちも急ごう!」

 

「ええ」

 

 

「なぜ高海さんが穂乃果さんの異能を使えるの!?」

 

「それを戦ってる最中に聞く?多分理由はもうすぐ聞けるんだから早く戦おう?」

 

「くっ、そうね。まだ負けたと決まったわけではないもの!」

「西木野流槍術 流星乱舞(メテオライトスマッシュ)!」

 

梨子は気持ちを切り替え槍による上空からの連撃を使ったが、

 

「すごいね梨子ちゃん!」

「全てを切り裂く刃 双刀ゼパル!」

 

千歌の顕現させた武器によりその悉くを打ち破られていた。

 

「まだまだそんなものじゃないでしょ?今度はこっちからいくよ!それに、次の相手も来たみたいだから!」

「討ち滅ぼすは聖なる剣 烈火双刃」

 

「だめ、防ぎきれない!」

 

「無限の神盾でも止められないよ!?」

 

千歌の放った二振りの攻撃が守りを破ったのと同時だった。

 

「アポロン・フレイムヴェール」

 

「アズリエル・レーヴァテイン」

 

千歌の攻撃を相殺したのは先行していた穂乃果と真姫の攻撃だった。

 

「ふ〜、間に合ってよかった。千歌ちゃんの力を感知した時点でギリギリのタイミングだったから」

 

「そうね。まさかここまでの力とは思ってなかったけど、確かに穂乃果の力と同じものね」

 

そう真姫が気付けたのは千歌の髪色である。解放前は黒髪だった千歌は現在はオレンジ色に変化していたのだ。

 

「この戦いはもう終わりでって言いたいところだけど、千歌ちゃんが全然解放しきれてないよね?」

 

「はい!だってさっきのが初撃ですよ?」

 

「あはは、そうなんだ…じゃあここからは選手交代、私と真姫ちゃんで相手するからそれでいい?」

 

「はい!穂乃果ちゃんと本気でやりあうのは2年ぶりだから楽しみです!真姫さんもよろしくお願いします!」

 

「ええ。……それじゃあ梨子、後は私達がやるから、よく見ておきなさい?」

 

「わ、わかりました…」

 

こうして次なる戦いが始まるのである……



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Chapter1-5.5

設定

日本では外敵である災厄獣(ビースト)に対抗するための機関として、騎士団が作られた。そして、μ'sと呼ばれる現最強の騎士団が設立された頃より、μ'sを筆頭として異能と呼ばれる特殊能力が顕現し始めた。その異能は4つのランクに分かれており、人格、魔格、天格、神格となり、神格が最高ランクとなる。それとは別に、魔導協会も存在する。

騎士団は、剣や槍などの武器と異能を組み合わせて戦い、魔術師は魔法と異能を組み合わせて戦う。ちなみに魔導協会のトップはA-RISEである。

 

μ's

日本における現最強の騎士団。団長の高坂穂乃果を筆頭に、メンバー全員が天格以上の異能を有している。普段は秋葉原の音ノ木坂騎士学院近くにあるμ's専用の砦に駐屯している。

 

高坂穂乃果

μ'sの団長であり、世間からは《太陽(サンシャイン)》という異名で呼ばれている。6年ほど前にこの物語の主人公である高海千歌を1年間ほど直弟子として指導した。火を用いる系統の異能を複数所持している。武器はまだ物語の現時点では顕現していない。また、穂乃果には特殊能力《光合成(サンシャインバースト)》と呼ばれるものが備わっており、その能力としては発動すると髪色がオレンジになる、オレンジの状態(蓄積(チャージ)無し)の状態で通常時の能力の2倍、また未発動の黒髪の状態で太陽光を浴びると1日につき0.1倍ずつ蓄積され、次回発動するまで蓄積され続ける。しかし、穂乃果は基本常時発動状態なので、2倍の力となる。

〈神格 モードホルス〉

基本的な戦闘や移動時に用いる神格。数多の神格の中ではバランスタイプであり、そこまで強くもない。穂乃果は基本的にはホルスを移動用として使用する。

〈モードホルス・ブレイブバード〉

ホルスの状態での最速の移動方法。発動すると、背中から炎の翼が顕現し、高速移動を可能としている。

〈神格 モードアポロン〉

穂乃果が使用する異能の中でも現在確認されているすべての異能の中においても、火属性としては最上級の能力を持つ異能だが、強大すぎる力のため、ほぼ使われることはない。

〈モードアポロン・インフェルノ〉

アポロン使用時の移動形態。全身に炎の鎧を纏う。最速で進行するとそのスピードは音速と同等となる。

〈モードアポロン・フレイムヴェール〉

千歌の攻撃から闘技場を守るために使用した技。自身が指定した範囲上に炎の幕をはる。この幕はアポロン使用時の穂乃果の能力以下の攻撃をすべて遮断するため生半可な攻撃ではこの守りを突破することはできない。

 

園田海未

μ'sの団員で穂乃果の幼馴染。家庭での指導により、弓を用いた戦闘を得意とする。異能、武器ともに現時点では不明。

 

南ことり

μ'sの団員で海未、穂乃果とは幼馴染。基本的に戦闘においては前線ではなく、回復やバフなどの後方支援がメインである。

〈天格 モードガブリエル〉

ことりのメインの異能で、天格の中では最上級である四大天使の中の一柱。後方支援に特化しており、なかでも回復スキルは日本最高クラス。

〈モードガブリエル・ホーリーバード〉

ガブリエルの移動時の形態。発動すると背中から純白の翼が顕現する。その飛行スピードは穂乃果のホルス使用時のブレイブバードと同じ。

 

海未とことりの2人は6年前に高海千歌の幼馴染である渡辺曜を直弟子としていた。

 

西木野真姫

μ'sの団員で穂乃果達とは音ノ木坂騎士学院の一期後輩。自分の実力に絶対の自信を持っており、実際前線での戦闘力では、穂乃果に次ぐ力を持つ。直弟子に桜内梨子がいる。

〈天格 モードアズリエル〉

真姫が使う異能。真姫が使う異能の中では2番目の力を持っているが、真姫自身はこの異能をあまり使いたがらない。

〈モードアズリエル・ソニックウィング〉

アズリエルの飛行形態。穂乃果のホルス、ことりのガブリエルが顕現させる翼が1対なのに対し、ソニックウィングで顕現する翼は2対である。そのため、飛行スピードはアポロンのインフェルノに匹敵する。しかし消耗が激しいため多用はできない。

〈モードアズリエル・レーヴァテイン〉

アズリエル使用時にのみ使うことのできる専用武器の槍、レーヴァテインを投擲する技。しかしレーヴァテインは武器の中でも神器に分類される武器のためただの投擲でもその威力は絶大で、天格以上を使えない騎士や災厄獣がこの攻撃を受けると一撃必殺となる。しかし、今回は千歌の足止めのために使用した。

 

高海千歌

本作の主人公。浦の星騎士学院第二課程に通い始めたばかり。しかし、穂乃果からの指導を受けその後も鍛錬を続けた結果、異能も自分の特殊能力も使わずに素手で魔格レベルと互角に戦える人外な能力を手にした。しかし、千歌自身は自分のことを普通だと思っている。そして、穂乃果と同じ特殊能力《光合成》を持っているが、穂乃果と違い千歌は基本使わずに蓄積させている。千歌も異能は火を用いる系統のものだが、ほとんどの異能は光合成を発動させないと使用できない。

〈バーストモード〉

千歌の光合成発動状態のこと。千歌の場合は自分の力を制御するためにリミッターシステムを持っている。そのシステムがバーストモードの発動を承認した場合に発動できる。発動すると千歌の髪色もオレンジになり、好戦的となる。だが根は変わらないので、敵または本気を出しても問題ない相手でない限りこの状態でもリミッターは一部かかっている。それでも能力的には天格クラスの異能を使用した状態のμ'sのメンバーと同等以上。

〈リミッター解除 神格 天照大神(アマテラス)

千歌が最終リミッターを解除した時にのみ発動できる異能。神格の中でも最高クラスであるが、穂乃果ですら千歌が発動できることを知らなかった。この異能を発動すると、千歌の服装は巫女のような装束になる。また、天照大神の能力でさらに能力が2倍となる。この状態だとアポロン使用時の穂乃果を超える計算になる。

〈双刀ゼパル〉

千歌が使用するオリジナル武器。二振りの剣ではあるが繋げて一刀にすることもできる。

〈烈火双刃〉

天照大神の炎の力を纏わせた2連撃。千歌の能力の蓄積量により威力が変わる。

 

渡辺曜

千歌の幼馴染であり、ことりと海未の直弟子でもある。2人の異能を受け継いでいるかは現時点では不明だが、2人が編み出した流派は完全に会得している。現在使っている武器は千歌の動きに合わせて攻防一体型だが、本来は超攻撃的なスタイルで武器も変わる。まだ異能を使用していないが、使えないわけではない。

 

桜内梨子

音ノ木坂騎士学院より浦の星騎士学院に来た転入生。その実はμ'sの指示により派遣された次代の候補生。西木野真姫の直弟子であるが、まだ異能も西木野流槍術の奥義も習得しきれていない。千歌や曜の時期とは異なる時期に弟子入りしていたためお互いに存在を知らなかった。



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Chapter1-6

真姫、穂乃果と代わり観客席の方へと移動した梨子は、曜に対し質問をし始めた。

 

「どうして高海さんとあなたは能力を使えるの?」

 

「真姫さんから聞かなかったんだね?私と千歌ちゃんは、ここに入学する前に1年くらいかな、私は海未さんとことりさんに、そして千歌ちゃんは穂乃果さんに指導を受けてたんだ。それでここに入学するために3人のもとを離れたんだけど、その後も私達は鍛錬を続けてた。その結果がこれだね。まあ千歌ちゃんのあの力に関しては私も想定外なんだけどね…」

 

「そんなことが…でもどうして高海さんが首席じゃないの?」

 

「多分さっきの千歌ちゃんの言ってたことからして、2年前に最後に穂乃果さんと模擬戦してから一度も異能を使わなかったからだね。異能も使わずに平均あたりにいられる時点で規格外もいいところなんだけど」

 

「?その異能を使わない理由は?」

 

「千歌ちゃんはあまり力を使いたがらないんだ。自分の力の持つ強さと使うことによる被害がわかってるから」

 

「でも今回は使った…」

 

「そうだね。千歌ちゃん、自分のことは何も気にしないふうにしてるけど、自分に関わる人のことになるとすぐ熱くなるから。桜内さんの言葉が悪かったんじゃないかな?」

 

「そうね、売り言葉に買い言葉。私も熱くなりすぎてた」

 

「それに私も桜内さんが千歌ちゃんの勧誘を断った理由がわかったからこっちも申し訳ないなって思ってるよ」

 

「そう。私がちゃんと理由を説明しなかったから渡辺さんが怒るのも無理はなかったわ。それに、もう断る理由も無くなったもの、この戦いが終われば私もあなた達の仲間として戦わせてもらうわ。よろしくね」

 

「こちらこそ、よろしくね。でも今はあの3人の戦いを見ていよう」

 

「ええ、おそらくこの国で最高峰の戦いだもの」

 

こうして千歌の知らないところで曜と梨子の仲が直っていた。

 

その頃、μ'sの残りの面々がいる砦に緊急通信が入った。

 

「こちらμ's。どうしたの?」

 

「大変です!駿河湾の南約80キロ地点にて災厄獣(ビースト)が発生。クラスはSです!」

 

「このタイミングで…さて誰を出しましょうか」

 

団長代理をしている絵里が思案しているとμ's内の個人回線から連絡が入った。

 

「もしもし、絵里ですか?」

 

「海未?どうしたの?」

 

「そちらに情報がいったと思いますが、Sクラスは私達に任せていただいてもいいでしょうか?」

 

「でも千歌のことはどうするの?」

 

「千歌のもとには穂乃果と真姫が到着しています。千歌の能力は離れた場所にいる私達ですら感知できるほど強いですが、穂乃果も本気でやるでしょうから真姫1人でも十分対処できるかと。それに私はことりとともに行動しています。それなら1番近い私達が向かうべきだと思います」

 

「…わかったわ。くれぐれも無理しないでね」

 

「ええ、もちろん。私達も千歌と曜の成長はこの目で見たいところなので、最短で決めてきます」

 

こうして2ヶ所において熾烈な戦闘が始まることとなった……

 

 



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Chapter1-7 Side海未&ことり 1

海未とことりは絵里への連絡を済ませると、駿河湾へと向かおうとしていた。

 

「海未ちゃん、ここから私のホーリーバードで連れて行くにしてもちょっと時間がかかり過ぎちゃう」

 

「大丈夫ですよことり。あれ(・・)を使いますから」

 

「でもあれは後々の反動が…」

 

「今はそんなことを気にしている場合ではありません!」

 

「わかったよ…でも無理しちゃだめだよ?」

 

「わかっています。それになんでしょう、曜のことを考えていると今回は大丈夫な気がします!」

 

「そっか。なら私も全力でやるね」

 

「助かります。いつもことりに助けてもらってばかりですね」

 

「ううん、私こそだよ」

 

そう二人で言い合うと、海未とことりは一度地面へと降り立った。

 

「今ここに顕現せよ。神々をも滅す浄化の耀(ひかり)持ちし天の使徒。憑依(トランス)戦乙女(ワルキューレ) ブリュンヒルデ!」

 

海未が顕現したのは数ある異能の中でわずか数種しかない憑依型の異能である。

異能は、神格、天格、魔格、人格に関わらず発動すると武装となる。しかし、憑依型はその異能自体に意思があり発動者と融合することにより、基本不可能である異能のニ格同時発動(ダブルキャスト)を可能とすることができるのだ。すなわち一度に一つでも強力な異能を二つ使えるというチートである。しかし自分の身に人外の規格外の力を宿して戦うため、肉体的負担が大きく、あまり使われることはない。しかし今回は相手がSクラスの災厄獣である。普通にやっても海未とことりなら倒すことも可能だが、かなりの時間を要してしまう。そうすると曜と千歌を見ることができなるため、海未は奥の手である憑依型異能を使ったのである。

 

「更に神格解放!モードクロノス!」

 

「海未ちゃんクロノスを使うの!?」

 

「ええ、出し惜しみするつもりはありませんからね」

 

海未が顕現した二格目の『神格 クロノス』は、基本五属性の枠外である無属性異能の最高格である。その名で知られている通り時を司る異能である。その能力の派生として一部空間操作も可能である。その能力の強さゆえ、海未はこちらもほぼ使うことはない。それ以前に能力が強すぎて憑依型天格、ブリュンヒルデを憑依させた状態でないとそもそも顕現させられないのである。しかしそれすらも顕現させた今の海未は、穂乃果達と同じレベルに位置しうる力を持つ世界最高戦力の一つなのだ。そして二格同時発動を終えた海未、そしてことりは行動を開始した。



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Chapter1-7 Side千歌VS穂乃果&真姫

海未達が駿河湾に出現したSクラス災厄獣へと向かった頃浦の星騎士学院闘技場では、千歌達が戦いを始めようとしていた。

 

「まさか千歌ちゃんが神格を使えるようになってるなんてね」

 

「これ自体はあの頃から使えてはいたんですけどね。ここまでは(・・・・・)ですけど…」

 

千歌の含みを持った言葉に、真姫が反応した。

 

「ここまではってどういう意味?」

 

「この異能には3つの形態があるんですよ真姫さん。そして今の私はまだ第1形態でしかないんです」

 

その言葉に真姫は言葉を失ったが穂乃果のほうはまるでそう言うことが分かっていたかのように冷静だった。

 

「やっぱり千歌ちゃんもそうなんだね」

 

「ということは穂乃果さんもですか?まあ最高神クラスの神格異能だったら複数形態持ちでもおかしくないか。ということは穂乃果さんもこれまで本気でやったことがなかったんですね」

 

「そうだね。騎士としている時は無いね。唯一私が海未ちゃん、ことりちゃんと模擬戦をした時に使っただけだね」

 

「あの2人相手に使って2人は大丈夫だったんですか?」

 

「海未ちゃんとことりちゃんもどちらかといえばこっち側の人間だからね。まあ千歌ちゃんも知ってるはずだけど、第2形態は体への反動が大きいから使いたくなかったんだけどね」

 

「だからといってこんな不完全燃焼で終わりたくは無いですよね?」

 

「それもそうだね。真姫ちゃん、全力で行くよ!」

 

穂乃果と千歌の会話を聞きながら自分では役不足だと思いながらも真姫も普段本気を出しきっていない1人だったので、新たな異能を解放した。

 

「全く、ここでこれは使わないと思ってたのに。あなた達の力を見てたら使わないと邪魔になりそうだもの」

「神格開放 モードヘル」

 

真姫がそう呟くと真姫の姿は、天使のような白い羽から、悪魔のような黒い羽へと変化。見た目は完全に魔王のようだった。

 

「真姫ちゃんがそれを使うのも珍しいよね。まあここから先は天格くらいじゃどうしようもないからね」

 

「それじゃ先に私からいきますよ!」

「今ここに顕現せよ。日ノ本に宿りし八百万を統べし紅焔の神女(かみ)憑依(トランス) 太陽神天照大神(アマテラス)

 

千歌は穂乃果たちの予想通り憑依型と化した天照大神を憑依した。しかし、穂乃果たちの予想とは違う点があった。

 

「千歌ちゃんは憑依させても姿はそのままなんだね」

 

「そうね、穂乃果や海未は異能と混ざったような姿になるのに…」

 

その疑問に答えたのは千歌であり千歌でない存在であった。

 

「そうじゃな。妾と他の者たちでは憑依の仕方が違うからの」

 

「「だ、誰!?」」

 

「妾か?単刀直入に言わせてもらえば、天照大神本体じゃな」

 

「な!?」

 

「憑依型は本来意思はあれど、主人格は使用者になるはずだよ?何をしたの?」

 

「穂乃果と言ったかや、さっきから妾は言っておろう?妾と他の者たちでは憑依の仕方が違うと。お主の言う本来のとは異能の一部が融合することにより起こる外見の変化、それに伴う基礎能力の大幅な向上を指すのじゃろ?しかし妾と千歌は、憑依形態使用前から既に一部は融合しておる。じゃから第1形態で姿は変わっておったのじゃ。そして第2形態になったことにより妾は完全に融合した。とはいえ1対1で融合しておるゆえどちらの人格も出られるのじゃ。今回は妾が出ただけで千歌が消えたわけではないからの、安心しておくのじゃ」

 

「そんな事ありえるのね。でも融合しているのに神格開放していない時はどうしているの?」

 

「それは簡単な話じゃ。妾の声に聞き覚えはないかえ?」

 

千歌(アマテラス)の声に反応したのは穂乃果でも真姫でもなく観客席にいた曜と梨子であった。

 

「その声ってもしかして千歌ちゃんがリミッターを解除するときに聞こえてた声?」

 

「おお、よくわかったの?……ん?そなたは渡辺の人間か?」

 

「確かに名字は渡辺だけど…」

 

「そうか、この時代にもまだおったのか。まあそのあたりのことは追々わかるはずじゃからいいがの。そこの者が言ったとおり、普段はリミッターシステム『アマテラス』として活動しておるのじゃ」

 

「へ〜!すごいね」

 

千歌と千歌の異能の関係性に穂乃果は驚きを見せていた。だからといってこれからすべきことに変わりはないので穂乃果も次形態の開放を始めた。

 

「顕現せよ。遍く世界に光もたらす聖神。憑依(トランス)光明神アポロン!」

 

穂乃果が第2形態を解放すると身体を光輝く鎧が包んだ。そして手には今まで持っていなかった穂乃果の武装があった。

 

「私がこの武器を使うことはそうそう無いんだけどね。じきに海未ちゃんとことりちゃんが来るはずだからいいかなって」

 

こうして3人とも準備が終わったところで第2ラウンドが幕を開けようとしていた…



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