開拓のマイクラ地上隊(完結) (ハヤモ)
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世界を楽しむ創造主たち。
マイクラ開拓時代


衝動で書いてしまった痴態な怪文……。
荒野が広がる……開拓……クラフターを突っ込んだら楽しいかも的な。

駄文です。 温かな目で見てくれると嬉しいです……。
間違いや不快感を感じるかも……ごめんなさい。

追記:mrMinecraft、スティーブが まさかのスマブラ参戦とか!?
世界を超える創造神。 スゴい。


「人が空から降ってきたぞ!?」

「……幻覚だろ。 真面目に報告しろ」

「いやいやマジだって! ほら!」

「なにを馬鹿な……なんだと!?」

 

輪っか から無造作に放り出されたクラフターたち。 着地の衝撃で野太い声が響く中、ココは何処かと順次 首をグリグリと動かしていく。

彼らは知る事はないだろうし、知らなくてもどうでも良さそうだが、ココは荒野が広がるイジツ世界。 航空機が飛び交い、ドックファイトをする、荒野や点在する町で見ればウェスタン風な部分もある世界。

どういう訳か、例の輪っかにより、クラフターたちの世界とイジツが繋がってしまったようだ。

だがクラフター達の興味は目の前の大地に全力で注がれた。 松明の1本すら刺さっていない大地である。 久し振りに見る未開拓地に歓喜しない理由がない。

開拓だ。 開拓の時間だゴルワァ!

 

「おい。 腰を激しく振り始めたぞ!?」

「首の動きもヤベェよ!?」

 

何も無い不毛の大地に見せかけて、何とも開拓欲の湧く光景か。

畑作よし、巨大建築よし……何にせよ仮拠点の設置からか。 突然過ぎたから何も用意していない。 取り敢えずベッドだ。 辺りに羊はいるだろうか。

むっ。 空が喧しいと思えば、空飛ぶ新種モンスターが見えた。 かなり速い。 今は攻撃してくる様子がないが、逆にコチラの様子を見ているように感じる。 中性なのかも知れない。

それより早くしないと土地がなくなってしまう。

 

「何か光るもんを大量に刺し始めたぞ!」

「松明か!? だけど どっから あんなに大量に出てくんだよ!?」

「儀式か?」

 

クラフターは一片を囲むように松明を撒き始めた。 ナワバリを主張しているのだ。 この中に入ってくれるなという意思表示だ。 他にも土ブロックで主張する者もいた。

負けじと、周りも松明を刺しまくる。 もれなく、周囲は陽より明るいかというくらいの光源で埋め尽くされた。 間隔がデタラメだが、湧き潰しには十分か。

マルチにおいて、問題になるのが土地問題である。 ある分には発想が豊かに実現出来るが、無いと限られた世界で試行錯誤しなければならない。

それもまあ、腕の見せ所なのだが。 無駄にデカい豆腐より、立体感のある過密高性能ハウスが鎮座した時は皆の感動を呼んだ。

 

「今度は建物が建ち始めただと!?」

「地下に沈むヤツもいる!?」

「ヤベェよ! ラハマのヤツらに報告だ!」

 

あっちは既に豆腐建築を始めている。

あっ。 あっちはブランチマイニングか!

運良く資材を持ち、仮拠点を作るもの。 持っていなくても手が先に動く者。

興奮を原動力に、ツルハシを、スコップを振りまくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにこれ!?」

「ユーハング人の仕業か!?」

 

気が付いたら、陽が沈む前には ひとつの町が出来上がっていた。 土や丸石による素朴な豆腐が陳列する粗末な一帯だったが、何故か村人がハァンハァンと群がり始めた。 ウザかった。

殴ろうかと皆は思ったが、生憎と広大な大地の開拓で時間が惜しい。 皆は無視してツルハシを振るった。

それでもユーモア持つ者はいるもので。 誰かが洒落で広場となった地に噴水を製作した。 雰囲気が明るくなる、このクラフターは良い仕事をしたと皆は莞爾として頷いた。 頷きつつバケツでガポガポ汲んだ。 実用性があって良い。

 

「す、すごい……あんなに水が たくさん」

「あいつら、バケツで汲みまくってるが、一向に かさ が変わらないな」

「私たちも 貰っちゃおうよ」

「大丈夫かよ?」

「大丈夫かと。 アイツら、私たちの事を無視しますし」

 

無限水源付きなのはありがたい。 どうもこの世界には水が少なく感じる。 石炭や鉄等もだが。 発見した地下の池から水を汲むしかないかと思っていたので、これはありがたい。

しかし、クラフターは先を見越す。 広大な荒野を開拓するに至り、川が無いと景観的にも水源的にも厳しくね? と。

水は装置や景観で良く使う。 水源くらい自分で用意すれば良いが、川が欲しいと思う。

ぶっちゃけ、開拓の背後で、噴水に群らがる村人を見てウザかったからだ。 ハァンハァンうるさい。 気が散る。 噴水前が繁殖場になっても困る。

どうも、この辺の村人は水に群らがるように感じたクラフターは、分散させる為に川を作り始めた。

土地を長く抉る作業は、多くの近隣トラブルや土地問題を巻き起こすが、それは初期段階だからこそ出来る荒技である。

なんなら、川を地下に追いやり、上に高度限界のビルを造っても良いくらいだ。

 

「今度は何をやってるんだ?」

 

志しを同じくしてか、一部のクラフター同士は手伝い始める。 なんなら水位はひとマスとは言わず、5マスくらいにしよう。 横幅も広げよう。 泳ぐ楽しみを。 ボートレースも出来るよう。 そうだ。 そうしよう。

この協力体制も、ワクワクも マルチだからこそ。 争いが目立つが、本来の美しい姿はこうなのかも知れない。 ナワバリには入らないで欲しいけれど。

そうこうしているうちに、水が流れ、無限水源に出来るようにバケツで穏やかに調整。 立派な川もどきが出来た。 案の定、ハァンハァンの大合唱にクラフターは満足だ。

 

 

「ええ!? 水が!? 水が一気に!?」

「一体どうなってるんだ」

「底が見えるくらい透き通っている」

「…………これは飲める」

 

 

だが手は止められないのがクラフター。 村人を満足させる為に荒野を開拓しているわけではない。 世界と繋がる喜びを。 造る楽しみを味わっているのだから。

寝る間も惜しんで、クラフターはツルハシを振るう。 だが限界とはあるものだ。 歴戦のクラフターでも、空腹には勝てない。 手持ちのベイクドポテトでは限界がある。

そんなクラフターの危機には、別のクラフターが立ち上がる。 食べ物を用意するべく、一部は農業を始めた。

 

「わっ!? わっか から動物が!?」

「ああ! 卵を大量に投げやがって! 食い物を粗末に……って、なんで割れた卵から小さいニワトリが生まれんだよ!?」

「いやいや! それ以上に 凄い勢いで増える動物も怖いだろ!」

「片手とクワだけで、荒野がどんどん畑になってく!」

「小麦が、種から 一気に収穫サイズまで……ワケが分からないよ」

「大木が一瞬で生えた!?」

 

わっか の向こうに わざわざ戻り、牛や豚を連れてきては、卵を投げたり小麦で数を増やしていく。

ある者は、ダイヤ製クワという、何で作ったのか問われそうなツールで荒野を耕す。

大量のクラフター相手には収穫が間に合わないから、骨粉で一気に仕上げて回収。

まだ手動で地上を横に広く使う等、無駄と手間があるが、既に同志がビル型半自動回収の畑と装置を誠意制作中である。 1日にして革命は近い。

植林場は簡単なので、直ぐに出来た。 植木をやって骨粉でホホイのホイだ。

 

「イケスカみたいに、ビルが立ち並んでいくぞ」

「早い。 早すぎる」

「人間の皮を被ったオバケだ!」

「空賊に目をつけられますわよ」

「てか、これ……私たちの航路の邪魔じゃない?」

 

土地問題に再悩むのは避けたいクラフターは、縦に長いビルを造り始めた。

ビルは空飛ぶモンスターが多いとされる報告から、弓矢による応射トーチカを各階に備えている。

角度や被弾率に難があるが、弾幕を形成してカバーする。 ディスペンサーによる ファイヤチャージ 一斉射だ。 勿論、RSによるクロック回路である。 攻撃的でありながら美しき光景を見てみたいから、寧ろ 早く襲って来いとさえ思う。

おや。 遠くから たくさんの飛行体が。 こちらに来ている。 早速ヤるか。

 

「ほら見ろ! 空賊が来たぞ!」

「自警団は!? コトブキ飛行隊は!?」

「アイツらの建物が邪魔で飛べねぇよ!」

 

装置を使おうと思ったクラフターがいる一方で、先に動いたのは地を這うクラフターだ。

エリトラのマントを胴体につけると、空を飛ぶ。 正確には滑空でしかないが、そこは花火で加速して 本当に空を飛ぶ。

向かうはモンスターの群れだ。

 

「ここは荒野から離陸を……ってええ!?」

「団長ぉ! 人が空を飛んでます!」

「もう、考えるのをやめた」

「いやいやダメでしょ! 空賊来ちゃう……なんか、撃墜してってるうぅ!?」

「弓矢だろアレ!? なんで原始的な武器で堕とせるのおおお!?」

 

 

空飛ぶモンスターは、かなり厄介だ。 右手でエンチャント済みの弓矢を絞り、左手で花火加速しながらの空中戦。 相手に何発か矢を当てるも、中々倒れない。 一部は倒せたが……体力が高いようだ。 相手はファイヤチャージのようで、そうではない高速の飛び道具で応戦してくる。 当たるとかなり痛い。 これは強敵だ。

 

「流石のバケモンでも、戦闘機には敵わんか。 やっぱ俺らが……なに!?」

 

 

苦戦を確認したビル内のクラフターが、レバーを操作した。 大量の火の玉……ファイヤチャージが無数に飛んでいく。

その様は ひとつの芸術作品と形容して良い弾幕だった。 上から、下から眺める夜の火の玉は花火とは別の美しさがある。

苦労して集めたファイヤチャージ。 それを一瞬で使い果たす。 だがこの一瞬の為にやってきたのだと、謎の感動と使命感に酔いしれた。

 

「ああ……空賊が火だるまに!」

「なんか……空飛ぶヤツらも燃えてね?」

「仲間ごと燃やすとか……容赦ねえ」

 

 

故に同志討ちは仕方ないね、と妥協を求めるクラフターであった。

ところが、事前に知らされてもない やられた側は たまったものではなく、すぐさま地上に降りて、ビルの下へ向かう。 新天地に来てまで お礼参りをする羽目になろうとは。 マルチとは罪深い。

 

「でも、まだ空賊がいる……なんか飛んでった!?」

 

して、いなくなったのは都合が良いと、対空仕様のTNTキャノンを作ったクラフター達による一斉砲撃。

チュドンチュドンと心地良い爆音の連続と共に夜空へと飛んでいき、やがて。

 

「爆発したー!?」

「対空兵器まで、即席で作るなんて……!」

「あの正確さ……バケモノだ」

「しかも連射!?」

「勝てる気がしない」

 

戦闘空域 きっかりで爆発した。

即席キャノンだが、ベテランクラスによって、なんとフルオートキャノンである。

時限式でしか対応出来ないようで、ちゃんと距離を測ってのリピーター調整……前線の友人と座標を確認し、この短時間で ここまでやり遂げたのだ。

ここまでのクラフターは、そうそういない。 味方である内は万歳だ。 趣味もここまで来ると、立派である。

して、役に立った時の快感は堪らない。 もれなく製作陣は腰振りダンスを披露した。

 

「空賊は……全滅したか」

「ねえ。 この人たち、変だけど悪い人じゃないんじゃない?」

「オウニ商会が、早速色目つけようとしてらあ」

「えー! 私たちの仕事が無くなる危機!?」

「滑走路の上にモノ作られたから、余計にピンチだ、ホントに!」

 

なんだ……もう終わりか。 クラフターはガッカリした。 強敵だったが祭りは続けたかった。 まあ、開拓の途中なんで その作業に戻るだけだが。

 

「なんだか ガッカリしてるよ」

「怒りすぎたか」

「わ、わたくしは悪くありませんわ」

 

なにやら、舗装された場所にいる村人が騒がしい。 そこに置いた資材や建造物、並列している建物に文句があるようだ。

クラフターは いっそうガッカリした。 普段は扉さえあれば満足するハァン集団なのに、ここの村人は知性的にハァンする。

その意図を無視してやるのも良いが、マルチとして様々な問題に対応しなければならない気持ちから、唾棄して跨げないのであった。

 

「今度は何を……えっ?」

「滑走路を作ってるの!?」

 

仕方なし。 クラフターは代用品を開拓済みの場所に作ってやった。 今ある資材や建物は壊したくないからだ。

焼き石で大きめに舗装。 物見櫓もマケといた。

 

「前のより立派じゃない……!」

「綺麗に舗装されてる。 新品だ」

「管制塔まで……ガラス付き」

「滑走路の脇! 誘導灯だ! 夜間でも分かりやすい!」

 

ついでだから、リピーターを大量に脇に置いてやった。 夜間に映える。 それらは物見櫓で入り切りできる。 何気にイス付きだ。

 

「ありがとう! 変な人たち!」

 

村人は嬉しそうにハァンと鳴いた。 後は勝手にやってくれ。 クラフターは不貞腐れながらも、ちょっぴり嬉しかった。 やはり褒められてる気がするのは良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。 ユーハング人なのか分からない謎の超人集団は、戦闘機の襲撃にもものともせず開拓を繰り返し、荒野に清水は流れ、緑に覆われ、大量の穀物と技術により多くの民を潤していった。

石炭や鉄、金やダイヤ、効果の高い道具や薬を 穴の向こうからヤツらは持ってきては、こちら側と取引してくれる。

良質の大粒、それも安価に手に入れられる為、イジツの民や、彼らと最も接触する機会のあったオウニ商会は大変潤ったという。

 

約70年前の再来か。

感謝の笑顔の中、多くの人は言った。

 

だけれど。 彼らはユーハング人ではない。 時に炭鉱夫であり、木こりであり、戦士である。

 

破壊し創造し、その喜びを、自由を、人生を謳歌する者。

 

クラフターなのである。

 




飛行要素や知識が ほとんどないという……。


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マイクラ輸送線

駄文。 衝動で続けてしまったもの……。
違和感や間違いがあったら、すいません……。


 

イジツに水と緑が蘇り、村人との取引で互いの財と心が豊かになった後も穴はガバガバだったから、クラフターは尚も情熱を絶やす事なく開拓を進めていた。

今や既存の都市よりデカい大都市が乱立。 空を削る勢いの摩天楼は発展の象徴群だ。

そのせいなのか稀に空飛ぶモンスターに襲われたり村人が勝手に住み着いたり意味なき土ブロックの浮遊とハァンの大合唱でストレスが溜まったが、それ以上の問題が起きたから構っていられない。

それは遠方への物資輸送手段の問題。

初期スポーン地点から伸びきった開拓地は、資材置き場や採石場等の建材産出地から離れ過ぎたのだ。

結果。 建材が遠方に十分届く事がなく、開拓速度は停滞。 クラフターの手が鈍る。

 

「流石に、ヤツらでもイジツ全てに進出は難しいか」

「まっ。 飛行機もナシに、よくここまでやったもんだぜ」

「いや……見ろ! 何かを地面に伸ばし始めたぞ!」

 

だが歴戦のクラフターは、土壁を破壊するが如く簡単に解決した。

鉄道好き道好きクラフターが立ち上がったのだ。大量物資輸送線───貨物線構築計画だ。

クラフターは鉄と棒と、レッドストーンを組み合わせ、大量に線路とチェスト付きトロッコを生産。 イジツの大地に伸ばしまくった。

そう。 手で運べぬ大量の物資は、乗り物に任せれば良い。 つまり鉄道。

 

「何かが走り始めたぞ!?」

「ありゃ鉄の箱か。 上に箱が載っている」

「動力はなんだ? エンジンは……かまど!?」

「あれ、エンジンじゃなくね!? 厨房にあった かまどじゃね!?」

「というか、どうやって かまど で動くんだ!?」

「鉱物資源の精製に料理も出来る。 全部火加減が自動なんだよな、あれ。 商会が一家に一台って宣伝文句を垂れてたな」

「そういや、コトブキ飛行隊の隼に ヤツらの1人が エンジンの代わりに かまど を突っ込んで空を飛んだとか」

「マジかよ!?」

「商会のナツオ整備班長がヤツら並みに荒ぶったというから、たぶんマジだぜ」

「……ユーハング人、恐ろしいな」

 

動力さえあれば半自動で運用可能である。 当初は友人に頼んだRSの納品が間に合わず、かまど付きトロッコで石炭を浪費する羽目になった。

うーん。 石炭はコストが高い。 RS急いで早く! もう他のクラフト材はあるから!

 

「あれ!? エンジン……じゃなくてかまどを壊しちゃったぞ!」

「して、なんで手のひらサイズになんだよ、毎度」

「それより見ろ! 今度は赤いレールを引いてるぞ!」

「今度は かまど ナシで動いた!?」

 

だが効率的に考えて、後にブーストレールにとって変わった。 やはり、こちらが楽で良い。

ネザーゲートによる長距離移動方法もあるが、村人がハァンハァンうるさかったのでアレは極力避けたい。

だがそれ以上の建材不足のストレスは、誰しもの情熱を確実に削ぎ落としにくる大悪。 誰しもが体験し立ち向かわねばならない壁である。

それは質の悪い建造物や未完成の建造物が生まれる結果に繋がるし、ストレスからの意味のないチャンバラ劇が勃発する。

ならアイテムスロット全てを、スタック限界まで埋め尽くして運べというのは駆け出しの頃までだ。 その非効率思考は とうに捨てた。 到底 発想と夢と作業の前では微々たるものなのだ。

元の世界で開拓歴の長いクラフターは、そのような状況を回避するべく、今回のような解決法……対策を講じたのだった。

やはりか、建築や開拓は障害を乗り越えてこそ。 それを乗り越えた時の達成感。 ストレスから解放され、世界に形として残るモノを造れた感動と喜び。 これらは何事にも勝る。

 

「なあ、あの鉄で出来た箱は車ってヤツか?」

「違うだろ。 決められた道しか進めないようだぜ」

「だがよ、アレでヤツらは大量の物資を遠方へ運べているようだ」

「飛行船ほどの積載量は無いだろ。 見ろよ、箱なんてチビだぜ?」

「それがな、明らかに積載量を超える物資が出てくるって話だ」

「相変わらず意味わかんねえな」

「ユーハングの故郷って、ヤバいトコなんじゃね?」

 

大地を駆ける大量のチェスト付きトロッコ。 仲間が待つ遠方へ線路を引いて、早速ブーストレールで運んでいる。

中身はシュルカーボックスだ。 食料や建材、クラフト材を普通に入れるより、ずっとたくさん運べる。

クラフターの熱意を支えるべく、これが毎日昼夜問わず、荒野を……いや。 草原を駆け抜けた。 今や各地に造られたターミナルや、発見した村に運ばれている。

開拓欲溢れる豊かな草原を、大量のトロッコが列を組んで進む……夕焼けをバックに進むシーンは、多くのクラフターに謎の感動を与えたものだ。

 

「しかし目立つな」

「少し奪ってもバレないんじゃね?」

「いや……それは、今は難しい」

「そうなのか?」

「空賊かどっかの組織が爆撃してな。 それ以降、ヤツらは地下に移したようだ」

 

ただ新たな問題が起きた。 地表面をただ走らせたトロッコは、何故かクリーパーに襲われ始めたのだ。

中々物資が届かない異変に、遠方のクラフターが線路を馬で辿った日がある。 そうしたら、前面にクレーターと大破した線路があった。 アイテムは時間経過のせいか、消えて無くなっていた。 とても がっかりした。 思わず悔し涙で歪んだ空を見たものだ。

以降、クラフターは総力を挙げて地下鉄を建設。 地上の線路は放棄。 いちおう、線路をドーム状に黒曜石で覆う案があったが、時間と効率を優先して地下になった。 中に動物や村人が立ち入り、逆走する事故なんて経験したくないのだ。

取り敢えずクレーターサイズから計算して、そこそこ深い座標でやったから大丈夫だろう。

 

「こりゃ商会も商売あがったりじゃね?」

「いや。 アイツらに箱渡せば、勝手に運ばれる。 タダで。 だから輸送コストは減ったから大丈夫だろ」

「おいおい。 お人好だな」

 

なんだかその代わり、村人がハァンハァンと箱を押し付けてくるもんでウザくなった。 ムカついたから、チェスト付きトロッコに放り込んで見せたら、大人しくなった。 以降、そうしている。

スロットが無駄にとられるが、そこはシュルカーボックスの力で ねじ込む。 村人が黙るなら安いものだ。

 

「ドードー船長たちは?」

「飛行船を使った観光業や偵察業に駆り出されてるよ。 ヤツらのお陰で、空賊は昔より大人しいもんだから、安心してるだろ」

「コトブキ飛行隊は?」

「普通に護衛してる。 戦闘がないぶん、羽を伸ばせて羨ましいぜ。 新しい滑走路とエンジンにもご満悦だったしな」

「…………エンジンって、例の かまど?」

「ああ。 飛行中でも石炭を中に放り込めば燃料補給終わり」

「重量とか、メンテは? 煙は?」

「あれってな、何故か片手で持てるくらい軽いんだぜ? 軽すぎてか空中に浮いた報告すらある」

「何それ怖い」

「メンテも殆どいらない。 燃料残量だけ気を付けないといけない。 煙は多少出るが、四散する。 屋内でも煙突いらずだ」

「ヤベェな」

「機体スペックも、前より良くなる程だ」

「俺、帰ったら かまどを拝めるよ」

 

こうして、目前に感じた物資不足や輸送問題は解消されたのである。

 

クラフターは今日も どこかで開拓し、物を運んでいく。 誰かと繋がる喜び。 送り受け取る時の、あの瞬間の胸の高鳴り。

 

それはこのイジツ世界でも、鳴り響いている。

 



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ケーキモドキと衝撃

稚拙な文章ですが、よろしければ……。


 

すごい。 すごいぞ。 コイツは空を飛んでいる!

 

開拓中に空を移動するそこそこ大きくて白い建造物を発見したから、クラフターは歓喜に包まれた。 新たな発見と探索の予感は、人生の良きスパイスだ。

それも空中浮遊するただの建造物でなし。 移動するのだ。 これにはクラフターの多くが驚いた。

浮遊する建造物ならば、多くのクラフターに建造の経験があるが、これは移動する。 この圧倒的な質量感あるモノを動かす……物理的な見た目とは違う、スケールの大きさにクラフターは感涙した。

それだけでも驚きなのに、中に入って更に驚愕する。

中には いつもの 空飛ぶモンスターが鎮座している他、村人もいたから驚いたものだ。

思えば、この世界の村人は空が身近だ。 空飛ぶモンスターに乗っているのを良く見かける。 だから、こんなトコにいても別段不思議ではないかとも思った。 思ったら途端に興味が失せたので次に進む。

ここの村人はハァンハァンうるさいから、放置に限る。 取引は たまにするけど。

 

「ナツオ整備班長ォ! ヤツらが入って来ましたぜ!?」

「オイコラ誰の断りで入ってんだ! また かまどを機体に積む気か……って、勝手に船内を動き回るなよ!?」

「早く追い出せ!?」

 

探索だ。 探索ひゃっほい。

クラフターは はしゃぎながら、狭きダンジョン内を駆け巡った。 飛び跳ねて天井にゴツンゴツンと頭をぶつけるのも構わずに。

ここがもしダンジョンか村ならば、宝箱がある筈だ。 内容がショボいモノだとしても、見つけて開ける時のドキドキ……あの興奮を味わおう。

探索も含めて、この想いは建築のみでは味わう事が出来ない。

人生に冒険という名のスパイスを。 ここから新たな発見や発想だって生まれる。

やはりか、ひとつの世界に篭ってはいけない。 作業と冒険の数だけ世界がある。 空が同じでも世界は異なる。 見聞きではない、冒険した者でしか感じられない世界が、ココにはあった。

あっ。 チェストはっけーん! なに、ふざけんな、俺にも見せろ俺もだ俺もだ!

 

「アイツら、また好き勝手に漁りやがって!」

「ヤツらの世界じゃ、泥棒という概念がないのかい!?」

「奪い合ってるのか、あれ」

「グワァーッ!」

 

しかし内容はしょっぱかった。 砂糖に ありふれたポーション。 見慣れた食料や求めるモノと違うものにガッカリした。 皆はそっと、閉めた。

まあ、良くある話だ。 それでも、こうなると分かっていても「ひょっとしたら」の気持ちは持ち続けている。 冒険や結果とは、最後まで分からないんだから。

 

「わ、わわっ!? こっち来たよ!」

「私のパンケーキは やらないぞ!!」

 

そう。 このように最後まで分からない……木製のテーブルやカウンターが並ぶ洒落た空間の中で、異色の食べ物が見えたのだから。

丸く、ケーキのようだが表面は白くない。 あんなの、見たことがない。 クラフト出来るのだろうか。

当然、初物に対する探求心から手を伸ばす。 目前の赤い服の村人が美味そうにパクついていたから、きっと美味しいのだろう。

 

「あーッ! ふざけんなパンケーキを返せ!」

「よせってキリエ!?」

 

ケーキモドキを持った刹那、赤い服の村人に殴られた。

 

え……ウソ。 誰もが殴られた頰に手をやり、目を丸くする。

 

まさかの事態だった。 思わず村人を殴ってアイアンゴーレムに殴れる事はあっても、村人から直接殴られる事は無かったからだ。

大したダメージはない。 だが、その事実の衝撃たるや凄まじく、クラフターを震撼させ、理解が追い付かず暫く棒立ちをする程だ。

 

殴ったね!? 今まで村人に殴られた事ないのに!

 

「わーっ! 何してんの!?」

「コイツら怒らせちゃダメだろ!」

「忘れたのか!? コイツらの戦闘力はヤベェのを!」

「うっさい! みんな離せ! おいお前! パンケーキを ちょっとでも口に付けてみろ、ぶっ飛ばすから!」

「パンケーキは新しいの作るから、ね!?」

「許さん!」

 

取り敢えずの習慣で観察を始める。 赤い服の村人は周りの村人に取り囲まれ 揉みくちゃになった。 繁殖が始まりそうだ。

みんな興奮してハァンハァンハァンと発情している。 この赤い村人は随分人気なのだな……どんな子が生まれるのか見てみよう。

満腹値を上げて回復するついで、ケーキモドキを齧りながら観察だ。 おっ。 このケーキモドキは美味いぞ!

 

「あーっ! 食べた! コイツ私のパンケーキ食べたあああ!!」

「煽ってるとしか思えませんわね」

「ぶっ飛ばす!」

 

ハァンハァンと繁殖の傾向を見せながら、一向に増えない。 代わりに動きが激しくなっていく。

頑張って増えようとしているのだとクラフターは予想した。 小麦を与えれば生まれるかも知れない。 ところが、誰も都合良く小麦は持ち歩いていない。

仕方ないから手持ちのケーキモドキを与えてみた。

 

「なに? その半端、返してくれるの?」

「齧っていた筈なのに全く減ってないのですけれど」

「でも食った事に変わりないよね、そういう事で大人しく殴られろ」

「もうやめろっての!?」

 

興奮が少し鎮まったと思ったら、静かに興奮したハァンを鳴き始めた。 この世界の村人は知的に見える一方、摩訶不思議である。 攻撃すらしてくる。

このまま観察していても面白いが、まだ捜索していない場所を思い出したクラフターは、再び駆け出した。

まだ見ぬ部屋へ。 そこには期待を裏切らぬ新たな発見が待っている。 この世界はつくづく面白い───クラフターは見下ろして、くつくつと笑みを浮かべる事になる。

 

「グワァーッ!」

 

見下ろしたところ……ニワトリが1匹ウロウロしているのだ。 いや、これはニワトリに見えてニワトリではない。

ベテランクラフターは、様々な動物を見てきたし観察もした。 した、つもりだ。

ところが、どうだ。 このようにまだ未知の生物がいるではないか!

いやあ、世界とは広大で未知に溢れているなぁ! やはり人生やめられない!

さて、コイツはどういう特性があるのか。 食べ物で懐柔出来るのか。 興味が尽きない。

何やら威嚇しているようにも見えるが、ニワトリに毛を足した大きさだ。 歴戦のクラフターは、警戒はすれど、これくらいでビビらない。

 

「ああ!? 船長がっ!」

「船長逃げて! 超逃げて!?」

 

何をドロップするのだろう。 鶏肉か? 羽か? いや、レアドロップがあるのかも。

何にせよロープも用意していないし、懐柔用のエサもない。 複数いたら試し斬りをしたが、他に見当たらないからやめておく。

駆け出しの頃でなし、見つけた動物を片っ端から葬る事はしたくない。

まあ、諦めも肝心だ。 慌ててはいけない。 直下掘りからの溶岩プールへのダイブのような真似はしない。

クラフターは互いに頷き合い、空飛ぶ建造物を後にした。

 

「す、すげぇ。 ヤツら船長の威厳で逃げたのか」

「すごいぜ船長!」

「グワァーッ!」

 

夕日をバックに、エリトラ滑空で地表に戻りながら思う。

 

村人に学ばされたと。

 

ケーキにアレンジを加えて、また違った味を生み出し、まだまだ謎と生物がいる可能性を示唆してくれた。

世界は有限のようで無限に広がるのだ。 それは物理的な問題ではない。 発想と発見、実行などから世界は続いていく。 新たな世界の扉すら開く。

 

嗚呼。 世界は可能性やワクワクに満ちている!

 

帰ったら早速、ケーキモドキのレシピを模索しなきゃ。 あの動物も懐柔出来るか試したい!

あの赤い服の村人との取引もしてみたい!

それらの可能性と夢を乗せた、あの空飛ぶ建造物の仕組みも知りたい!

 

この広大なイジツ世界……資源は乏しくとも、ワクワクは いっぱい溢れているんだとクラフターは思えた。

 



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マイクラ対空戦闘

対空TNTキャノン。


「ラハマに敵襲ッ! 上がれるヤツは全員上がれーッ!!」

「敵の戦闘機の数……20、30……なおも増えてますッ!?」

「大型爆撃機の編隊を確認!」

「ありゃ富嶽か!?」

「なんで!? 何が目的だよ!?」

「わっかだ! ユーハングの わっか が狙いだ!」

「恩人達に仇で返す気か!?」

「とにかく急げ急げ急げッ!?」

「パイロットはモタつくな走れ!」

「寝てるヤツを叩き起こせ!」

「対空戦闘よーいッ!」

「回せー!」

 

真夜中だというのに初期スポーン地点が騒がしいから、クラフターは ゾンビイベントかと思って剣と弓矢で武装した。

あのイベントは周りを湧き潰しても起きてしまう。 村全部をハーフブロックにして外壁で囲めば効果があるが、少なくとも初期スポーン地点は そこまでの徹底をしていない。 マルチの自由を優先しているからだ。

どちらかというと、場所によって村人は多過ぎる気さえするから、今回の件で減れば良いなとすら考える。

ただ巻き込まれたり、スポーン地点にゾンビが蔓延る風景は気分が悪い。 フルダイヤによる防具と武器で さっさと終わらせよう。

クラフターの一部は そう思って、ダイヤフル装備で状況に備えた。 これらは全てエンチャント済みだ。

ベテランクラフター皆が皆ではないが、エンチャントを施さないダイヤ装備など未完成に等しい。 最高のツールとは、最高の付加をしてこそ真価を発揮する。 なにより耐久が勿体ない。

それを思ったらゾンビ相手に耐久を擦り減らすのは惜しい気がしてきた。 ヤツらの多くは群れだから、どうしても複数斬り付ける。 アンデッド特効であってもだ。 「やり過ぎ」を個体にしたところで効率は上がらない。

 

「夜間でも誘導灯があって分かりやすいな」

「お陰で悩む事もない。 直ぐに展開出来る!」

「管制塔からも、様子が把握しやすい。 助かる」

「新型エンジンで調子が良い。 やってやるさ」

「かまど だけどな。 それ」

「ユーハング人サマ様だな」

「私語は慎め! ガチでやるぞ!」

「他の町から救援の飛行隊が来る! 時間を稼ぐんだ!」

「時間稼ぎ? 全機撃墜だ!」

 

しまったなぁ……トラップタワーを建てときゃ良かった。

 

この世界はモンスターのスポーンシーンはおろか、未だにスポーンブロックだって見つからないから、要らないと思っていた。

だが防衛を考えれば、なるほど。 これは作るべきだったな。 過密化の傾向にある初期スポーン地点での再開発は困難を伴うから、皆と相談しなくちゃなぁ。

取り敢えず堀を作って水流を流してのマグマ落としでどうだろう。

 

「でも数が多過ぎる! 逃げようぜ!」

「バカヤロウ! それでもタマ付いてんのか!?」

「その弾が全機落とせるほど無いだろう!」

「でも、ここで逃げたら わっか が……町が……ユーハング人が……!」

 

建設地点は地下が良い。 地表は過密化が進んで厳しい。 無理に造ってチャンバラ劇に発展して欲しくはない。

せめて、村人に造ってやった大きな道くらいあればなぁ。

そう思って、そちらを見やるクラフターだったが、ちょうど空飛ぶモンスターがブンブンと次から次へと空へと上がるのが見える。

創造した者としては実に嬉しい光景だ。 やはり使われてナンボである。

やり過ぎたり過疎化で廃墟になる町は 元の世界でもコチラの世界でも見かけたが、本来の望む姿はこうなんだろう。

嬉しさにうんうん頷きながら───真夜中に何処へ行くのかしらんと行く先を眺めていると。 その先に沢山の飛行体を確認する。 おや、良く見れば四方八方から来るじゃないか。

 

「ッ! 別方向からも来る!」

「なんだと!?」

「管制塔が確認した!」

 

またか…………クラフターは辟易した。

新種と思われる大型も見える。 何にせよ、襲撃イベントに変わりあるまい。

大体、この手のパターンはソレだと学んだから、取り敢えず迎撃態勢を整える。 無視出来るなら良いが、建造物を破壊するパワーがある連中なので厄介なのだ。

仕方ない。 例によってエリトラ飛行で多くは迎撃に上がり、TNTキャノン職人も状況に備える。 予め村や都市部に造った対空仕様を起動させ、起爆タイミングをそれとなく合わせる。 計算が面倒なので予め設定している起爆空域に入ったら一斉砲撃だ。

そら、入った。 撃って撃って撃ちまくれ。 スイッチレバーを倒せば、フルオートの爆音が鳴り響く。 それは祭りの音。 技術の結晶音。 我がクラフトに一片の悔いなし。

 

「ユーハングが対応してくれるようだ!」

「悔しいが、頼る他なさそうだな」

「残りは俺らが片付ける!」

 

エンダードラゴンみたいに、ゆっくりで時々低空飛行なら弓矢で届くのだが。

手が届かぬ高高度を飛ぶ敵なんて、そう多くは経験が無いクラフターである。 対処するには弓矢の狙撃の腕を上げるか対空兵器を造るか、エリトラ飛行での接近戦に持ち込むしかない。

 

「おお! 善戦しているぜ!」

「人の大きさによる被弾率の低さか」

「急な加速度変化。 道具の力だけじゃない、彼らの操縦技術……じゃなくて飛行技術が高いのだろう」

「そういや前より動きが良い気がする。 有利なポジションにつくあたりな」

「ところでよ……あの背中に着いてるので、どうやって空飛んでんだよ?」

「考えるな」

「ユーハング謎の技術」

 

だがまあ、そんな厄介な敵との巡り合わせも楽しかった。 新たな刺激は怠慢や惰性と偏在の日々を防止する。 して、新たなステップとなる新技術や方法が確立されるのだ。

例えば、ほら。 対空TNTキャノンなんて製造技術はあったとしても、コッチにくるまで その多くは実戦投入されなかった。 大変な割に火薬の大飯食らいでリターンが少ないからだ。

 

「だけど回避行動を取られるぞ!」

「いや、良く見ろ。 砲を何門も並べ立て、弾幕を張っている!」

「散弾式もあるようだ!」

「おお! これなら撃墜可能か!」

 

造るのは ほぼ趣味の域。迎撃対象の少なさも要因だった。 だが、この世界にて脚光を浴びるとは誰が予想出来ただろう。

して、クラフターの豊富な戦闘経験から運用法も確立されてきた。 空飛ぶモンスターは、なんと回避行動を取る知性を見せる。 スケルトンのような間合いによる変化に似た行動を取るのだ。

よってキャノンは散弾式か、沢山製造して辺り一面に撃ちまくる弾幕方式が有効とされる。

簡易キャノンでは出来ぬ、それらの機構を成り立たせる複雑な回路と仕組みを要するTNTキャノン職人は必要とされた。 評価された。 男泣きした。

技術とは その刹那に不要とされても、後に役立つ日が来る事もあるのだと。

クラフターは喜びを抑え切れず、激しく首と腰を振った!

 

嗚呼! 造って良かったと思うワケ!

 

 

「おお……! やったぜ!」

「あんなにいた敵が、もう数える程にしかいない!」

「敵、撤退開始! 深追い無用! 防衛成功だ!」

「やったー!」

「地対空戦闘。 その可能性を教えられたよ」

「航空機の戦闘方法や運用法も根本的に変わる可能性があるな」

「ホント、恐ろしい連中だ。 敵じゃなくて良かったぜ」

 

こうして鶏肋だとしていた対空技術は多くのクラフターに再評価され、このイジツで発展をしていく事になる。

 

再び教えられたな……この世界に。

 



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空飛ぶ荒らしと復讐

違和感あるかも。


 

剥かれた地表。 轟々と燃える美しかった木造の建物。 響くハァンと野太い声。

ネザーもかくや。 クラフターが最近交流を始めた 遠方にあった この村は、ウィザーが複数同時出現したんじゃないかという大惨事に見舞われている。

多くは景観を優先したが為の惨事だと評価を下した。 元から存在した この村は、その美しさや多い子の無邪気さから、防衛の為のツールや壁をクラフトしなかった。

ところが、これだ。 直ぐにでも対空職人を呼び出して総出でクラフトすれば良かった。 過去への後悔先に立たず。

 

「わ〜ん!」

「起きてよ! お母さん! お母さんッ!」

「痛い……痛いよぉ……ッ!」

「パパ! ママ! 死なないでよ! お願い! 言う事聞くから! 良い子にするから……うえええん!!」

 

クラフターは悲鳴と火の海の中、ぐりんと首を動かした。 その先の燃える空を見上げ、悠々と去り行く大怪鳥の群れを睨みつける。

ヤツが通った下。 地表に黒い点……TNTモドキが未だ落下しては、ドカンドカンと派手な音で地表が抉れていた。

それは創造に相対する破壊。 景観と建造物をこれでもかと破壊し尽くす無慈悲な爆発。

クリーパーというレベルではない。 その命を散らしてまで仕事を完遂する美しさが微塵もない。 一方的に努力を消し炭にする理不尽な破壊者だ。 対して全く悪びれる様子すらない。

 

 

上等だぞ、このヤロウ。

 

 

久し振りにキレちまった。

かの大怪鳥は建造物及び付随する景観破壊の現行犯である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「子どもたちは、孤児院に?」

「ええ。 幸い、ユーハングが薬を使ってくれたみたいで怪我も快癒したし。 直ぐにでも……ね」

「ああ……飲むだけで傷が即塞がるヤツか」

「いや、今回は投げつけていた。 浴びたら治った」

「へ?」

「今は、その話は良い」

「……心の傷までは治せない」

「そうね、でも もうこれ以上どうしようもない。 失った命は戻せないもの」

「ユーハングの人がいたんでしょ! なんで守らなかったの!?」

「それは間違いね。 彼らは守ろうとはしてたわ。 でも、相手の方が多かったし武器だって碌に用意出来てなかった」

 

村は同志が元に戻し、対空設備をクラフトしているが、無かった事には出来ない。

ケリがつくまでは、生存した村人を初期スポーンにトロッコで輸送した。 数少ない無事な美しきハァンだ。 これ以上失うワケにはいかない。 スプラッシュポーションをウィッチの如く投げつけて回復もさせた。

エリトラ持ちのクラフターは、怒りに任せて怪鳥……いや、バカ鳥共を叩き落とそうとしたが、ヤツらの持つ飛び道具に撃たれて返り討ちに遭った。

皆はリスポーンする前に撤退し、武装を整える事となる。

 

「深山で複数回攻撃していたみたいだけど……詳細不明」

「目的は?」

「分からない」

「ユーハング人の物資はイジツを潤した。 だが同時に機体生産コストが下がり、量産や開発が進んでいる。 今回は……その結果ならば」

「やったヤツが悪いに決まってんじゃん。 ユーハング人は関係ないよ」

「そうだな……ああ、そうだ。 すまない」

「少し落ち着きましょう。 整理が必要です」

 

この事件は多くのクラフターに、あっという間に伝播した。

イジツ全土に散らばるクラフターは久し振りに初期スポーン地点にあるビルに集結。 弔い合戦の用意を始める。

 

「こんな暗い雰囲気だってのに……アイツら、何やってんだ?」

「あの建物って、ユーハング人が火薬や武器を集めてた所だよな?」

「うん? ああ。 物騒だよな。 鉄扉で施錠しているし」

「施錠、ね……レバーやボタンを後付けして操作したり、終わったら破壊しているだけに見えるんだがな」

「謎の技術だ。 考えるな」

 

このビルは各階に防衛システムを設けている。 最初の頃、初期スポーンが襲撃された際、ファイヤチャージを撃ったビルだ。

そのビルは、防衛好きクラフター達の手によって火薬やフルエンチャントダイヤ装備が蓄えられている。

同時に集会場やリスポーン地点と認知されており、皆、自然とココに集まったのである。

普段バラバラの方向やセンスで行動しているのもあり、防衛組織や上下関係はハッキリしないクラフター達であるが、有事の際の結束は固い。 主に血に飢えているせいで。 離れても心は一緒。 バカ鳥 潰す。 祭りだ。 祭りの用意だ。

以上! 終わり! 解散! 閉廷!

 

「おや。 建物から出て来たぞ」

「武装してるが、何か見つけたのか?」

「進む方向からして深山が飛んで行った方向……まさか」

 

バカ鳥の巣は知れている。 イジツの彼方此方に展開していたクラフター達だ、情報を整理したら既存の某都市部方面にある大きな道路だと分かった。

お礼参りだ。 クラフターの群れのチカラを見せてやる。

空飛ぶモンスターは回避行動をとる知性を見せるから、バカ正直に 一方向では攻めない。 様々な角度から攻撃だ。 特に地表にいるならば、飛び立つ前に倒す。 地表にいるうちなら、動きが かなり 鈍いからだ。

 

「───あれ? 空を飛ばない?」

「地下に潜ってるな」

 

一部は地下道をトロッコで進み、目的地近くまで来ると降車。 貨物線から分岐するように線路を延長。 バカ鳥の巣の地下座標まで あっという間に到達すると直ぐ同志に連絡してTNTトロッコを大量に走らせる。

起爆地点にはちゃんと起爆するようにアクティベーターレールを敷設。

 

「で、こっちは?」

「新手のビルか?」

「いや……爆弾や赤い粉を撒いているから大砲だろう」

「対空兵器とは、また違った形を造ってるな」

「随分デカいしな」

「しかし爆弾で爆弾を飛ばすって……ヤツらの爆弾って誘爆でその場で爆発する事もあるのに、信号で起爆のカウントダウンが始まったものは、なんで爆風を浴びても直ぐに爆発しないんだ?」

「考えるな」

 

一方、TNTキャノン職人は固定座標ならばと長距離キャノンを製造。 もちろん無慈悲にフルオート機構だが、なにぶん弾となるTNTを遠くの標的に正確に飛ばす為に計算やリピーター調整を細かに行い、砲内で爆発させるTNTを圧縮する機構も付けたりと、これまた複雑になった。

だが複雑な程に造った感があって良い。 成功した時の喜びも 一入だ。

よし。 後は撃ちまくるだけ。 遥か遠くから突如として高速で飛んでくるTNTの硝煙弾雨に飛び立つ事叶わず爆散するが良いバカ鳥。 ドロップ? 知らん。

 

「報告! 町を爆撃した連中のアジトと滑走路が判明しました!」

「直ぐにでも、近くの都市に事実確認などを……」

 

来た。 キタキタキタァ!

大量のTNTトロッコが! 初期スポーン地点から遥々行列をなして無事巣の下へ流れ込むのを確認した地下組は、さっさと退避。

間も無くTNTトロッコが巣の直下で着火、地下でドカンドカンと大爆発発生。

地表面が突如として盛り上がり、巣を地下から粉々にしていく。 巣にいたバカ鳥共も爆散だ。

 

「ああ! 再び報告がッ! 突然、滑走路が爆発したとの事!」

「なんですって!?」

「それから、地面に空いた穴から続々と武装したユーハング人が出て来ているそうです!?」

 

続いて、空いた大穴から ダイヤフル装備で殴り込む。 スポーンブロックはないにせよ、大きな巣ならば爆破した場所以外にもバカ鳥はいるハズだからだ。 急いで確認し、初めて制圧となる。 いつもの癖で松明を刺すものすらいた。

して案の定というべきか。 バカ鳥はいた。 別の道路で飛んで逃げようとしている。 しまった。 起爆座標が甘かった。

逃すか。 クラフター達は慌てて火矢で応射。 バカ鳥は火の鳥……焼き鳥になった。

だが倒れない。 燃えながらも飛び道具で やり返してくる。 ダイヤ防具故に直ぐにはリスポーンはしない。 負けじと矢を放つ。

そんな弾幕の最中。 なんと村人が出て来て、なんらかの飛び道具でバカ鳥の援護を始めた。 村人め、お前らもか。

もう許せないぞ。 貴様らも同罪だ。

衝撃を受けつつ両者の間で激しい撃ち合いが始まった。 最早乱戦激闘。 硝煙弾雨の嵐。

 

「両者間で激しい戦闘が発生していますッ!!」

「急いで救援隊を編成! ユーハング人を援護ッ!」

「はい!」

 

マズい。

いくらダイヤ装備とはいえ、ヤツらの飛び道具は かなりのダメージ量だ。 防具なしなら全滅すらありえる程に。

ノックバックもキツい。 強行突破をしようと剣を振るいながら、ジャンプしつつ走り込む仲間も、撃たれるたびに押し戻されている。

だが我らはクラフター。 丸石ブロックとハーフブロックを組み合わせ、即席トーチカを作成。 被弾率を抑えつつ、スリットから狙撃。

固まっている村人を見つけると、スプラッシュのダメージポーションをトーチカ越しに投げつける。 もれなく 纏めて葬った。

 

「深山が飛び立ちます!」

「墜とせ! どこにも行かすな!」

 

バカ鳥が燃えながら、空を飛ぶ。 慌ててエリトラ飛行で追う仲間がいたが、プレートを外してマントに着替えた所為で防御力低下。

空中で撃たれて遺品をばら撒きながら、リスポーンしてしまう。 後で拾って渡してやらなきゃな……。

 

「ユーハング人が撃たれた!」

「生死は!?」

「不明です! て、てか体が消えましたよ!? 遺品はありますが!?」

「あっ、別の町で同じ格好の人物を見たという報告が」

「どういうことなの……」

「ええい! 今は集中!」

 

ピンチである。

だが目の前だけが全てではない…………ヤツらには、それを教えてやる。

そろそろ来る頃だろ……ほら、きた。

 

「うおっ!? 今、風防の横を何か白く点滅するモノが沢山通り過ぎたよ!?」

「前! 前を見て!」

「うおっ!? 標的の滑走路が吹き飛んだー!?」

 

初期スポーン地点側や、各町からの長距離TNTキャノン連続精密砲撃……それが今、弾着し始めたのだ。

ドカンドカンドカンと鳴り止まぬ砲撃により、目の前の村人や道路の一切が消し飛んでいく。 よし。 地表はもう良い。

後は あの逃げたバカ鳥だ。 これ以上、破壊はさせない。

 

「あ、後は任せろー!」

「ここまでしてくれたんだ! 絶対仕留める!」

 

と思ったが。 新手の空飛ぶモンスターが、バカ鳥に集って……飛び道具で仕留めてしまった。 最後は呆気なかった。

取り敢えずの復讐は果たしたクラフター達であったが、刹那の喜びと後に引く虚しさに襲われて…………取り敢えず、偶には焼き鳥を食べようかな。 そう考えるのだった。

 



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防衛と兵器とロマン

妄想やロマン。 駄文


 

今までの騒動と戦闘経験から、防衛拠点の整備と大規模な防衛基地の建造が急務と感じたクラフターは、巨大な敷地を要する施設を造り始めた。 各地に、地表に、地下に、空にだ。

あのバカ鳥にしろ、喧しいゾンビイベントにしろ、敵対する村人にしろ。 この世界は強力な敵だらけである故に。

元の世界での戦闘経験が無駄だとは言わないが、弓矢届かぬ高高度を飛ぶ体力の高い敵と強力無慈悲な飛び道具を前にしては、我々は陸でも空中でも劣勢だ。 悔しいが認めざるを得ない。

だが、それは負けを意味するのか。 否。 始まりなのだ。

危険を伴う闇への切り込み。 開拓と建築に魅入られた者である。 道中の障害なんて しょっちゅうだ。

それらも多くの技術と建築様式で乗り越えて来れた。 今回も乗り越えられる。 寧ろ世界の理不尽を楽しもう。 どんとこい。 それが人生だ。 何もかも上手く行ったらつまらない。

クラフター達はツルハシを振るう。 スコップを振るう。 今度こそ防衛と勝利を。 栄光を。

そんな気迫と勢いだ。 ウィザーをウッカリ召喚した時を思う。 アレも挫折しかけたが、ナントカしたじゃないか。

ベイクドポテトではなく焼き鳥を左手に持って時々食い散らかすのは、験担ぎみたいなものだ。 単に食いたくなった だけなのもあるが。

 

「ねぇ。 地面や地下に建物を造るのは、まだ分かる。 でも空中にどうやって、建物を浮かせてるの!?」

「知らないわよ! 直接聞いて来なさいな!」

「言葉通じるようで通じてない人達だよ? 無理だよ」

「ユーハング謎の技術」

 

待てど暮らせど、闇覆う未開拓地の荒野でモンスターがスポーンしないピースフルな環境に見せかけて、実はハードコアな世界なのだ、ココは。

陸に地下に空。 湧き潰しも意味を成さず、常日頃に都市や村は襲撃される恐れが付き纏う。 安心出来る場所がない。

この世界もまた、残酷を持って道理とする……そこに己の居場所を切り取る……至難の業である。 いざとなれば扉に駈け込めば良いなんて建物に対する妄信でしかないのだ。 畢竟、世界を侮っていると言える。

対して村人は、そんなハードコア世界を生きている。 そう考えると感服いたす。 知性的なハァンを見せるのは、生存戦略から来るものなのかも知れない。

 

「ちょっと赤とんぼで周りを見ようか」

「へ? なんでよ」

「隼が壊れたから。 直るまで乗って良いって、許可は貰ったよ。 操縦も大丈夫」

「ああ……なんで燃料タンクから穀物が出て来るのかしらね」

「ユーハング人の仕業らしいよ」

「相変わらず謎の行いばかりする人たち」

「まっ、取り敢えず見に行こう」

「大丈夫かしら。 遠目から見ても砲台門数が今までの比じゃないのよ?」

 

ぶんぶん聞こえたから、いったん作業を停止。 敵かと見上げれば赤い空飛ぶモンスターが飛んでいる。 今までのより遅く低空だ。 中性なのか攻撃もしてこない。 あれくらいなら脅威ではない。

ふと思う。 そういや空飛ぶモンスターは味方するような動きをするヤツがいると。 この間の騒動でも そうだった。

色や形がバラバラで、敵味方になる条件が分からないのだが。 オオカミみたいだったら分かりやすいのに。

その思考に至り、懐柔出来るかとモンスターに かまどを入れたり石炭入れたり小麦を入れたり砂糖をねじ込んだ。 結果はダメだった。 ダメを通り越して倒してしまった。 そうしたらチビっこい村人に殴られた。 悪い事をしたと反省はしている。

 

「所々紫のような、黒いような壁だね」

「壁伝いに、水を流しているところもあるわ」

「えーと、ユーハングの大砲にも水が使われるけど……耐爆用?」

「そうでしょうね」

「なんで水があると周囲が壊れないんだろうね?」

「考えてはいけないわ」

「それはそうと。 門数からして相当重要な建物なんじゃない?」

「きっと、そう……あら? アレは滑走路じゃない? 昼間だというのに明かりが綺麗……」

「本当だ! 降りてみようよ!」

「ちょ、ちょっと!?」

 

今や昔。 目の前の作業に集中だ。

天空にしろ地表にしろ地下にしろ、共通して使用されたブロックがある。 黒曜石だ。

マグマを冷やすと生まれる、凄まじい硬さのブロックだ。 ダイヤツルハシでしか採掘出来ぬ上に、効率強化のエンチャントを付加していないと掘るのが とんでもなく大変だ。

しかし、大きな利点がある。 TNTで壊れないのだ。 その為に重要な建物や区画、TNTの実験場、偶に心の壁の如く使われる。

だが、ウッカリしていた。 別に耐爆だけなら滝で良いじゃんと。

TNTキャノン砲内で使われる事もあるように、水や水流によってコーティング、あるいは水中にあるTNTは爆発しても周囲の構造物を傷付けない。 耐爆コストも安く済み、大変楽に防げるのだ。

心配だったのは、この世界のTNTモドキにも有効か否かの点だった。 しかし、同志による実験で大丈夫だと証明される。 杞憂で良かった。

して、各施設には豪華に大きな道路が整備される。 これは友好的な空飛ぶモンスターを懐柔出来た時に備えてだ。

松明ではなく、埋め込み式のグロウストーンランプにより、景観を壊す事なく道を美しく照らしている。

初期スポーン地点の村人に人気だった左右のリピーターを始め、物見櫓も完備。

今回、複数の回路群が集結した為に物見櫓は大きめとなった。

リピーターの点灯回路とグロウストーンランプの点灯回路。

簡易対空兵器としてクロック回路で溜めた矢をTNTの爆風で吹き飛ばし、辺り一面に矢の弾幕を張る散弾兵器も大量配備。 それらの操作も物見櫓から操作出来るようにした。 レバーひとつで矢の雨だ。

TNTでは高度や距離感から起爆タイミングを見計らうのが物凄く難しく、一方で矢を直接放つのでは1発やる間に何発も撃たれてしまう。 腕の差もある。 ならばフルオートの矢の散弾兵器を製造しようとなり、このような物が生産された。

昔、この技術を開発したり製造したクラフターは涙した。 ああ、日の目を浴びる時が来たなと。 元の世界じゃ、これまた趣味の域だったから……。

おや。 油断していたら赤い空飛ぶモンスターが道路に降りてきた。 いけない。 友好的か敵対か判断がつかない。 皆は警戒した。

 

「ユーハング人の皆さん! 怪しいものじゃーありません! ちょっと見学させて下さいな」

「重要な建物なら、許されないでしょ! 早く逃げましょうよ!?」

「何言ってんの。 ダメなら今頃は撃墜されてるよ」

「何考えてるか分からない人たちですのよ!?」

 

危うく物見櫓にある自爆スイッチ安全装置解除レバーを倒し、起爆スイッチを押すところだった。

自爆はロマンだとして同志が付けたのが悪い。 クリーパーの発想だろうか。 何にせよ、滑走路が吹き飛ぶ事態は無かった。

因みに。 人工的に造られた浮遊要塞にいるクラフターは、要塞を木っ端微塵にする自爆回路とTNTを詰め込もうとしたが、他の仲間に拒絶された。 回路は超単純で良くても、TNTを搭載するスペースがあまり無かったからだ。 それだけ中までたっぷりのロマンで溢れている。

例えば、ほら。 監視をしつつ村人の後をつけると……そこは大きな空洞スペース。 空飛ぶモンスターを沢山「お座り」させておく場所だ。 何気に回復アイテムも完備。

 

「うおっ!? 収容スペースがっ!?」

「ガラガラですわね」

「で、でもこれだけ広ければ……たくさんの飛行隊が いっぺんに来れるよ! 外の滑走路の大きさも合わせて、空爆機がきたってお釣りがくるんじゃない!?」

「この人達が、それを許せばですがね。 こちらの箱は……あら。 燃料と鉄ですわ」

 

万が一、攻撃を受けた時を想定して壁や天井、床の二層目は黒曜石だ。 一層目でも良かったが、見た目が悪いのでこうなった。 建築家としては実用性だけを求めない。 デザインも考えるのだ。

また、表の大きな道だけが全てではない。 この空洞スペースから複数の大きな道路に抜けられる。 一部は要塞内を走って助走をつけ、要塞外に落ちるように空へ飛ばすのを想定した道もある。 それは空飛ぶ白い建造物を参考にした。

 

「こっちはなんだろう……箱がいっぱい」

「中身は……大量の弓矢!?」

「うわあ。 爆弾に剣に鎧に怪しい薬や金色に輝くりんご……白い液体が入ったバケツ? なんか怖いから閉めとこ」

 

驚く村人を見て、うむうむと満足するクラフター。 良いぞ。 もっと驚け。 もっと褒めろ。

だが防空網は完璧とは言い難い。 どうしても突破される危険性がある。 して、内部に侵入されたらヤバい。 その為にも各場所に武器を置いているのだ。

また、ボタンを押せば粘着ピストンを用いたシャッターで壁を封鎖出来る。 落とし穴もある。 壁に収容しているディスペンサーを通路にピストンで出してフルオートで撃ちまくる所もある。

 

「こんなの造って……この間の騒動の影響だろうね」

「そうかも知れませんわ。 もう二度と、悲劇は繰り返すまいとチカラを蓄えているのでしょう」

「よく分からないけどさ、情のある人達なんだよ」

 

場所によっては毒矢でジワジワ苦しませたり、溶岩浴を味わって貰う。 もう二度と来る気が起きないようにだ。

他にも色々あるが、それは後の楽しみだ。

 

いやぁ、その時が楽しみだなぁ!

 

クラフターはワクワクした。 まるで悪戯を敢行する子どものように。

 



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既存の破壊と再開

何となくの終わりを目指して行きたいところ。


 

戦場。 マルチにおいては互いの承諾を得たバトル会場であったり、集団戦のフィールドもそうであるが……破壊の美学に囚われた、哀れな片手落ちの荒らしとの殴り合いの場も含まれる。

今は……そう。 そんな戦場の中にいる。

効率強化のダイヤスコップで大至急で掘った幅たったひとマス、奥行きは10マスはあるか。 深さは4マス程の塹壕の中。

そんな即席塹壕……蛸壺というには少し豪華か……で、クラフターは いた。

爆発で舞う土柱がすぐ側を跳ねまくる穴蔵、そこで気楽に焼き鳥を食べながら、クラフターはヘラヘラしている。

ただ、まあ、そうやってヘラヘラしているのはクラフターだけである。 そうやってヘラヘラ過ごして来て、残ってるクラフターと物資は僅かとなった。

剣折れ、矢は尽き、それでもまだ生きている。

休憩がてら、塹壕から空を見上げた。 沢山の巨大な怪鳥の群れが これでもかとTNTモドキを落としている。 爆音が止まらない。

時々、小回りの効く空飛ぶモンスターが飛んで来ては、飛び道具で攻撃して来る。 迂闊に動けない。

やれやれ……どうしたものかなぁ。 クラフターはヘラヘラしながら のんびり考えた。

 

開拓中、突然襲われたクラフターたち。

始まった祭りに心躍らせながら、一方でドロドロした想いで考える。

 

 

荒らし共が。

そろそろ飽きたぜコノヤロウ。

 

 

実のところクラフターは笑顔で怒っていた。 幾度とない荒らし被害に辟易しているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「富嶽の大規模な編隊。 いつの間にこんな」

「恐らく護衛につく戦闘機数も」

「これらを隠し通した お偉方も、つるむバカも……よほど わっか の利権を得たいのかしら」

「力尽くって事?」

「そうじゃなかったら、こんな事にならなかったわよ」

「本当にバカばかり。 滅ぼされるわよ、私たち」

 

遠方開拓組が、またも大規模な空飛ぶ荒らし被害に遭っていると聞いたから、他の地にいたクラフターはウンザリした。

原因は知れている。 村人だ。 既存の都市部でハァンハァンと長的なヤツが鳴くと空飛ぶバカデカいモンスターに乗った荒らしが 一斉に空へ上がるのを見たからだ。

既存の建造物を作品として、その美術品を破壊するなんて とんでもないと考えているクラフターだったが、もう考えを改めるしかなさそうだ。

 

「ほら見なさい。 ユーハング人が武装し始めた」

「今のうちに別れの電報を入れた方が良いわよ」

「避難なら済ませたわ」

「でも一方的に攻撃しておいて、反撃されたらコッチの所為にするんでしょ?」

「殴ったら殴り返される。 それが理不尽だなんて、どうして言えるのかしらね」

 

駆け出しの頃。 村を実験台にした愚行の歴史をなぞるようで、凄い嫌だが仕方ない。

このままでは建つモノも建たない。 壊されるのに飽きて黒曜石製や水流を用いた建物を建てる者もいるが、やはり自由にモノを創りたい。

その自由の為に。 時としては心を鬼にしないとならないとクラフターは決意した。

アイテムスロットには大量TNT。 各防衛拠点を稼働させ、座標は某既存都市部。 砲撃するのだ。

 

荒らし許さん慈悲はない。

 

 

「ユーハング人の建てた施設で動きがあるって。 大砲に爆弾を詰め込んでるらしいわ」

「やっぱり」

「結果は知れてる。 それより、避難民は?」

「ユーハングが造った都市に避難した」

「受け入れ態勢は大丈夫なの?」

「彼らが造った都市部は、ガラガラなのよ。 空き家だらけ。 利権者も権力者も、長もいないから好き勝手に使わして貰ってる」

「空賊や離反者の支援法も、それで?」

「ええ。 ユーハングが放棄した都市の管理を手伝わせる。 畑の労働もあるし」

「空賊の支援だって反対していた者は?」

「その都市の利権を手に入れられると考えたのか、手の平を返したわ。 ホント、どいつもこいつも……」

 

バカ鳥の巣と同じやり方だ。 大きな道路を優先して爆破する。 元から地下道はあるから、TNTトロッコを送り込んで都市部を根元から爆破だ。

クラフターは怒りのあまり、笑顔になった。 笑顔でキャノンのレバーを倒した。 トロッコを送りまくった。 吹き飛べ。 怒りと悲しみを思い知れ。

 

「報告! ユーハングの攻撃が始まりました!」

「はぁ……これでバカ共が大人しくなれば良いけど」

「言葉で言っても分からない。 その結果はどうなるか知った方が良い。 現に偉い人は自身は安全だと思い込んでるか、あり得ないと思って都市に残ってるし」

「今まで何を見聞きしてきたのかしら」

「利益しか見えてないのよ」

 

やがて都市部に弾着。 連続して爆音が鳴り響いた。 さぞ苦労して整備しただろう道路やビルの ことごとくは破壊され、見劣りする空中浮遊するブロックのひとつとて許さぬ。

ウィザーなんて生温い威力と爆音が都市に響き続ける。

そうだ。 全て吹き飛んでしまえ。 アイツらがやってきた事を倍にして返すのだ。

 

「都市が砲撃で吹き飛びました!」

「一部で死亡報告や行方不明の報告がっ!」

「ああ、それは大丈夫よ。 それより……ユーハング人を排除しようとする連中を何とかするのを考えなきゃね」

 

岩盤が見えるほどの爆破。 凄い数の投射量を経て、ようやく止まった頃。

そこには何もなかった。 煙と土埃が舞うだけだ。

これで良かった…………クラフターは自身に言い聞かせる。 怒りの後、破壊の衝動と実行の後にはスッキリした感覚があったが、喜びが起きない。 綺麗な青空を見上げれば、虚しさに襲われる。

 

まあ、良いか。

爆破した場所は何を建てようかしらん。

 

直ぐに建築にシフトした。 過去は経験で後悔はあっても、最早昔。

開発が過ぎた土地に突如として空いた地に、期待を寄せて未来へ歩む。

やって終わりでは済まない。 やったからこそ、先がある。 次への原動力が生まれる。

豆腐建築が小粋で魅力溢れる建造物へと進化していったように。

 

クラフターは地上を進む。 今度は純粋な笑顔と共に。 既に場所取り合戦は始まっているのだ。

 



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意見の相違と縄張り

残業や台風の為に都内に泊まったり、人間関係に疲れる日々ですが……楽しみの1つとして、移動や休憩の合間に書いて投稿する駄文。


 

行けども行けども未開拓地は緑なき荒野が続くように見せかけて、クラフターはとうとう見つけた。

大地を割る渓谷を! 聳える山を!

 

おお、我が人生よ!

迎えたる めくるめく創造の世界よ!

 

クラフターは歓喜した。 感動と共に涙を拭うまでに。 現作業内容を放棄してまで、駆け寄ったのだ。

無意味に山頂に登り、無意味に崖に身を投げた。 リスポーンも構わぬ捨て身の行動だ。

バイオームも そうはなく、フラット面の割合を高く感じてきた我々にとって、この変化がどれ程の感動と興味を呼んだことか……仲間の行為から理解して頂けると思う。

 

同時に感動は使命へと変化を遂げ、皆はツルハシとスコップを握る。

 

ここまでは同じだった。 皆、笑顔を向けあって志は同じだと信じていた。

信じていたのだ……。

 

それが勘違いだと気付くのに、10秒も要らない。

 

だって。

片や山を削り崖を埋め始め。

片や山に装飾と建築を始めたのだから。

 

互いに目を合わせた。 互いにハモった。

 

いや、お前。 何してくれてるの?

 

景観維持の観点と共存、対する平坦にするという謎の情熱と勢い。

次には両陣営、フルダイヤ装備で剣先を向けあった。 言葉は最早意味を成さない。 無言の威圧感のままに大きく山と崖で二分された。

 

オフコウ山 縄張り争いの幕開けである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オフコウ山にユーハングが?」

 

渓谷に位置する卓状の山にて。

目と鼻の先で弓矢が飛び交い、ベッドを置いて リスポーン地点を設定してまで醜い縄張り争いを繰り広げる整地厨と建築厨の両陣営。 ダイヤブロック何スタックで土地を譲るかとか、その他の交渉も行われつつ、裏切り者も出しつつの泥沼戦争だ。

 

「ちょっと!? 何を争ってるの!?」

 

その最中。 保持派の山側陣営に空飛ぶモンスターが落ちて来た事で状況一変。

中からは何時ぞやの赤服村人。 ケーキモドキを好んで食す個体だと記憶に残る。 この事で戦闘は中断された。

これが村人単体だったら、容赦無く村人を巻き込んで縄張り争いを続行していた事だろう。 しかし、ここからは別の興味に注意がいく事になる。

 

「ココにもユーハング人がいるなんて……いや、それより今は! 私の隼を直すの手伝ってくれないかな?」

 

空飛ぶモンスターという、クラフターによっては興味が尽きぬ、同時に喉から手が出る程に欲しいブツへ群がって唸りを上げる。 闘争心は既に忘れた。

見たところ、頭の部分が変形しており耐久値が減っている。 だがこれくらいなら適当に鉄インゴットを注ぎ足せば回復するんじゃないか。 ツールと同じように。

やってみた。 出来た。 新品同様になった。

 

「ええ!? 今の一瞬で なんで直るの!? 何をどうしたの!? ……へ? パンケーキ? ありがとう……じゃなくて!」

 

村人が騒がしいからケーキモドキを与えてみた。 今度はダメだった。 コイツらの生態は相変わらず謎である。 下手すると空飛ぶモンスターより謎かも知れない。

兎に角今はモンスターだ。 調べていると 動力と思われる部分の耐久がないのが分かった。 レッドストーン回路を伸ばす時に、出力が足りない状態のようで、完全に死んでいる様にも感じる。

かまど と レッドストーンブロック、リピーターを試しに突っ込んだ。 モンスターは生き返った。 ひとりでに 先端の棒が動く位には元気だ。 分かりやすくて良いと皆は頷く。

 

「いやいやいや!? 相変わらず謎過ぎるよ!? 整備班もビックリだよ……いや、もうしてたか!」

 

オマケで石炭をフルスタック突っ込んどいたから、しばらく大丈夫じゃないか?

なんの保証もナシに そう思うクラフターである。 ネザーでベッドに寝そべって爆発するような……あのような惨事は無いハズ。 たぶん。

 

「よ、よし! 取り敢えずこれで飛べる。 ありがとう!」

 

クラフターが乗り込もうとしたら、先に村人が前を横切ってサドルモドキ部分を奪われた。 思わず殴りそうになった。

耐久を回復させた途端にコレである。 少しくらい乗せてくれても良いのになぁ。 クラフターはブーたれた。

村人相手に荒ぶるのも馬鹿らしいから、それ以上の事はしないが。 直ぐに諦めて行く末を見守り……はしない。

 

「いや、ちょっと。 そこにいられると飛べないんだけど」

 

コレ、譲って欲しい。

 

新たな目的が浮かび上がり、クラフターはモンスターの前にラージチェストを並び立てる。 中はダイヤモンドフルスタックだ。 取引を持ち掛けているのだ。

 

「交換しろって? 無理だよ、隼はあげれないよ。 だからどいて。 退かないと轢くよ?」

 

足りないらしい。 無視して前に進んで来た。

前列にいた交渉クラフターは、それでも逃げない。 寧ろ試しに突撃した。

結果、丸い足や高速で回転する棒に巻き込まれて視界が赤く染まる。 己の失敗を突き付けられる瞬間だ。

遺品を辺りに撒き散らし、背後にいた仲間は戦慄と共に身を震わす。 見た目通りに凶悪であったかと。

 

「あっ!? ちょ、ちょっと嘘……私……人を……ってアレ!? ベッドから生き返ってきたあああ!?」

 

ダメージ測定も兼ねて避けなかったのが災いした。 かなりのダメージ量だ。 遺品回収をしつつ、素早くダイヤ防具を着込む。

ますます気に入った。 モンスターが。 コイツさえあれば空を自由に飛べる。 エリトラより楽かも知れない。

くれないなら創りたい……でも鞍のようにクラフト方法が不明だ。 やはり村人を撲殺し、鹵獲するしかないのだろうか。

だがしかし。 村人の家を間借りする以上の情けない行為に思えて、手が伸びない。 マルチ経験者なのもある。

人様の迷惑になってはいけないと考えると、せめて交渉で、という考え方になってしまうのだ。 利益を追求すると他者が邪魔になるものだが、暴力に訴えると孤立と偏見の牢に囚われる事となる。

 

「ま、まあ無事なら良いか……取り敢えず空だ。 空を飛ぼう。 パイロットは……そう。 機体に寄り添うだけ」

 

アレ。 じゃあ、俺たちは牢に囚われてる囚人やん。

 

ハタと気付いた。 先程まで暴力に訴えていたのは どこの誰かと。 紛れもなく我々ではないか。

己の欲に突き進み、周囲があまりにも見えてなかった。 落ち着いて見渡せば、弓矢による縄張り争いの痕跡が生々しく残っている。

同時に落ち着いてみると。 耐久がゼロに等しいボロボロの空飛ぶモンスターが周囲に転がっているではないか。

何故、欲しいと願っていながら、これらに気が付かなかったのか。

とうに答えは知れている。 不利益な争いを繰り返していたからだ。 文字通り周りが見えてなかった。

 

再び教えられたな、村人に。

 

クラフターは空を仰いだ。 丁度、赤服村人の乗るモンスターが遠く離れて行く様が見えた。

 

自由の空。 自由な地上。

 

クラフター同士は握手した。 縄張り争いは終わりだと互いに頷く。

その意味と有り難みを、ここにいた創造者達は改めて噛み締めるのであった。

 



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初陣と鹵獲

まだまだ暑い日が続く気がしますね……。
早く暑さと職場環境の改善を……。


 

《緊急発進急げ! 離陸可能な機体から空中退避ッ!》

《空襲警報。 敵爆撃機、接近中》

《緊急発進し、迎撃せよ》

《回せー!》

 

某地上防衛拠点にて。 設置した敵襲を知らせる音ブロックを村人が専用回路で鳴らしまくるから、クラフターはベッドを破壊して寝てる仲間を強制起床させた。

既に空は敵だらけで、起きていた実戦経験皆無の仲間がこれに弓矢で応戦している。 が、リード……予測射撃ではなく直接視界の中央に捉えて放っているから当たらない。 絞り切ってから矢を放たないのもある。

間が悪いことに多くのベテランは釣りやブランチマイニングと建築ヒャッハーで出払っており、加えて空からTNTモドキは落ちてくるわ飛び道具で撃たれまくるわ散々な状況だ。

相手がゾンビなら、石剣ぽっきり、防具無しのノーエンチャント弓矢でも ここまで苦労はしないのだが。

 

「整備が途中だ!?」

「何でも良い! 飛行隊を離陸させろ!」

「格納庫にある使えるヤツ全部だ!」

「駐機場のヤツらも協力してくれ! 数は多い方が良い!」

「ユーハングが応戦しているけど、持ちそうにない! 上がるなら今しかないのよ!」

「応援の飛行隊も、そう長くは持たない!」

「モタモタするなぁ!」

「滑走路が狙われてる!」

「維持出来ない! やられたら誰も上がれねぇぞ!?」

 

仲間割れなのか味方なのか。 空のモンスター同士が撃ち合っている。 一部は火の玉になって地表に落ちた。 衝撃がここまできた。

ファイヤチャージも、あれくらいの大きさだったらなぁ。

あっ、でも閉所では使えないかぁ……。

 

《火災発生ッ!》

《消火班! 武器庫への延焼防げ!》

《可燃物を運び出せ! 弾薬もだ!》

 

なんと施設が燃え始めた。 しまった。 景観を求めて一部は木材でヤッてしまったのだ。

次回からネザーレンガで囲っておこう。 アレはコストは安いし、難燃性がある。 耐爆はともかく、燃えると一角が全滅する故に。 見た目は暗めだが、ここは実用性を求める部分か。 デザインとしては難しいところだが、クラフターは反省する。

一方、感心する光景もあった。 村人はハァンハァンと火を見て慌てたのだ。

元の世界なら逃げも隠れもしない呑気なものだったから、それだけでも衝撃だ。

しかもである。 なんと、多くが水バケツを用意して消火作業をしているではないか。 水も撒きまくってるのに水源ドバァな面倒にならない。

それにだ。 チェストから物資を運んで火から遠ざけている。

なんと優秀な村人か。 これなら落雷による火事対処として狼と猫共々、一家に1匹置いておきたい。

 

「ああ、もう! 急いでる時に限って回転数が上がらない!」

「死ぬなら、せめて空が良い」

「弱音を吐くな! ユーハングを、町と私たちの基地を守るんだ!」

「ユーハングが建造した基地と町だけどね」

「しかも、当たり前のように勝手に滑走路や施設を使ってますし」

《進路管制は無視して構わない、最前の機体から空に上がれ!》

《上がったら高度を上げるんだ! 敵にかぶられるんじゃ ないぞ!》

 

げに理解し難きは、ドンパチの最中、お座りしていた空のモンスターが出てくる事だ。

クラフターは溜息した。 わざわざ危険な屋外に出るとは。

せっかく山のヤツを修理出来たと思えば好き勝手に使う連中である。 その辺、豚や牛等の家畜以下かも知れない。 簡単には盗難されないと思って柵で囲ってこなかったが、そろそろ考えておこう。

 

《敵戦闘機、格納庫から出てきます》

《飛び立つ前に地上で仕留めろ。 地べたにいる戦闘機なんぞ、ただの的に過ぎん》

 

何にせよ、ここまで来たら守るしかない。 敵味方の条件不明な存在だから、コイツらは希少な存在である。

取り敢えず、新米染みた行為だが、モンスターが進んでいる大きな道路脇に丸石ブロックで壁を造る。 これで横殴りの攻撃から守れる。

 

《チッ! ユーハングによる防壁ですっ!》

《怯むな。 爆装している機体は、滑走路ごとヤツらを葬れ!》

 

「ユーハングが援護してくれてるっ!」

「ありがとう! 恩に着る!」

 

天井も張りたいところだ。 洞窟探索中を思い出しての事だ。 スケルトンによる高所からの狙撃は可愛い方で、落ちて来たクリーパーとか悪夢以外の何物でもない。

ベテランは高価な防具や反射速度が高速だから被害を軽減するが、それでも瞬殺されるのは別段珍しくない。

空襲。 その恐ろしさが日常に溢れた この世界。

ロクに世界を知らぬ豆腐建築家な新米にして、この世界に来た者は既に その恐怖を知り得ている。 避けられぬ脅威だ。 故に立ち向かわねばならぬ。

クラフターは手を動かした。 壁だけじゃない。 壊された道路も土ブロックで補修しながらだ。 逃げるという選択は今はない。 その辺の残骸……丸石を使って、天井を張る。 横に長い豆腐が出来ていく。

何度かTNTモドキを落とされ破壊されたが、中まで被害は及ばない。

例え見劣りするとしても、抵抗してやる。 荒らしなんかに屈してたまるか。

 

《滑走路を壊せ!?》

《ダメだ! 応急処置が早すぎる!》

《なんだあの修復速度!? バケモノめ!?》

 

「いや、ちょおま。 天井まで張るなって!?」

「守ってるつもりなんでしょうけど、これでは飛べませんわ!?」

「い、いや。 大丈夫だ! 離陸地点で天井は途切れてる! これは そこまでの掩蔽壕みたいなモンだ!」

「成る程。 さすがユーハング!」

《第1波が過ぎた! 反転してくる前に上がれっ!》

 

ヤベェ。 資材切れたわ。

 

持っていた丸石や土を切らしてしまった。 行き当たりばったりの作業や無計画の作業でも良くある話だ。

資材切れは深刻な場合と大丈夫な場合があるが、残念ながら前者だ。 戦闘中であるし。

このままだと、飛んでしまう。 あ、ヤバい飛んだ。 自由の彼方へ。 どんどん上へと上がっていく。 こうなるなら前を塞げば良かった。

冷静さを欠けた中での戦闘や作業は、時として重大な失敗をしてしまうものだ。

いざという時の為の、真下ブロック置きでの緊急退避や、スニークをしないでの高所作業からの墜落死等だ。

これ逃げられたのかな。 それともちゃんと戻ってくるのだろうか。 呆然と見送り……して、ハッとする。 まだ全部を逃した訳じゃないと。

クラフターは屋根付き お座りスポットへ戻る。 すると、あった。 ボロボロでバラバラにされたモンスターが。

 

「あっ! おい、零戦をどうするつもりだ!?」

 

崖に落ちていた瀕死のモンスターだ。 ここに持ってきて修理や研究に使うつもりだった。

修理が出来てなきゃ飛行テストすらしていないが、ぶっつけ本番と行こうじゃないか。

このままでは空を好き勝手にされる。 地上が危ない。 無許可の建造物破壊は許されない。

それから逃げたモンスターを連れ帰る。

どれが懐柔したヤツか、もう考えるのは面倒なので適当に縛いておこう。

兎も角、駆け寄り弄り回す。 ちっこい村人がハァンハァンと煩いが構わない。 スポットに置いてあるチェストから鉄インゴットやリピーター、レッドストーントーチ等を取り出すと素早くモンスターに放り込んでいく。

 

「いやいや、突っ込むだけじゃコイツは直らな……直ったああ!?」

 

折れた翼はスッと伸びた。 動力はワケがワカラナイブロックが入っていたのでサッサと取り除いて かまどやRSブロックを放り込む。

よしよし。 動き出したぞ。 操作方法も ぶっつけ本番だ。

まあ、何とかなるだろう。 エリトラも最初は分からなかったし。 分からないものを楽しむ。 して理解していく。 それもまた、楽しいから。

 

「だが操縦までは……え!? 風防を素手で壊した!? ええ!? 今の一瞬で どうやって乗り込んだ!?」

 

ひび割れたガラスが邪魔なので素手で さっさと壊し、乗り込んだ。

 

「だ、だが操縦桿もスロットルレバーも今は取り外されていて……って、だからなんで動くんだあああ!?」

 

歩くような感覚を持てば、動いていく。 助走をつけてジャンプする感覚を持てば、空を飛んだ。

よしよし。 思ったより上手くいった。 途中で仲間が エンダーパールでひとり飛び乗って来たのは驚いたが。

移動する目標に当てるとは……投球が上手いと褒めてやる。 して、詰めればイケるようだ。

 

しかし、このモンスター。 やはり良いものだ!

 

エリトラみたいに気を遣わなくて良い。 花火もナシに上昇出来る。

それに相乗りが可能。 仕事を分担すればモンスター相手でも何とかなりそうだ!

 

「おい! あの風防の無い零戦はなんだ!?」

「ユーハングがふたり乗ってるぞ!」

「ひとりは瞬間移動したように見えたんだが……気の所為か?」

「良く見ろ! 座席も操縦桿も無いのに飛んでいやがる!?」

「どうなってるんスか!?」

「背後のヤツ、スゲェ首を動かしてる!」

「腰も激しく振ってるぞ!?」

「変態だあああ!?」

「見ちゃいけません!」

 

背後で投球が上手くいった事に歓喜する仲間を乗せつつ、逃げたモンスターを追い掛ける。

アイテムスロットには、ロープと釣竿を用意した。 これで捕獲するのだ。

取り敢えず近寄る。 あっ、逃げられた。 空中で横回転したと思ったら、背後に回られた。 至近距離だ。

 

「理解出来ねぇ飛び方をしていやがるが、動きはトーシロだな!」

「武装もないのか? 1発も撃ってねえな」

「死ね! ユーハング!」

 

向こうから近寄って来るとかラッキーだ。 親切な事にコチラの動きに合わせてくれている。 誘ってるとしか思えない。

クラフターは釣竿を遠慮なく放った。

 

「うおっ!? なんだこのフック……って、ぎゃああああ!?」

「凄い勢いで吸い寄せられていく!?」

 

釣竿で糸を飛ばして引っかけた。 直ぐに引き上げれば、そら。 魚ではなくモンスターを釣り上げた。

直ぐに家畜にする要領でロープを取り付ける。 後は中の村人ごと地上に縛り付ければ良い。

 

「なんでだよ!? ありえねえよ!?」

「というか この距離で、どうやってロープを取り付けやがった!?」

「くそっ、動けねえ!?」

「い、今助けるぞおおおお!」

「ま、待て! 迂闊に近寄るな!」

「「「ぎゃああああ!?」」」

 

おや。 どんどん来た。 同じように片っ端から釣竿を引っ掛けて引き寄せてロープで縛る。 手綱を大量に握っているかのようだ。

いやぁ楽しいなぁ! 次から次へとやって来ては縛られるとは。

余程縛られたいのか! 誘ってるのかそうなのか! 実に縛りがい があって良い!

家畜を大量に引き連れる時とは違う、優越感に浸れてクラフターは満足だ。

地上から見上げる仲間の羨ましそうな顔が浮かび、思わずドヤ顔をした。 反省はしていない。

 

「…………なんスかあれ」

「敵機を鹵獲してんのか?」

「縛られてるヤツら、慌ててるようだが。 身動き取れないのか?」

「どうしてロープ1本で戦闘機を従えられるんだよ!?」

「知るか!」

「いいわ……いいわぁ! あのロープ、手に入れたい……ッ!」

「ヤバい声が聞こえたんだが」

「ありゃあ、ゲキテツ一家の?」

「見ちゃいけません!」

 

問題が起きた。 着陸方法だ。

そろそろ降りたいんだが……エリトラの感覚と違うから分からない。

取り敢えず急降下してみよう。 あ、ヤバい、上昇がエリトラ程間に合わない。

 

「おいおい!? 縛られてるヤツらが地面に叩きつけられたぞ!?」

「胴体着陸も許されないとは」

「いや、零戦は胴体着陸に成功したようだ」

「う、撃たれた方がマシな やられ方だぜ」

 

ああ!? 折角手に入れたモンスターがっ!

 

クラフターの乗るモンスターも地面にぶつかり壊れたが、連れていたモンスターは 原型が辛うじて分かる程度に大破した。

中の村人は無事のようだが、白目を剥いてピクピクしている。

 

…………ふむ。 今の内に追い出して、修理しよう。 あわよくば そのまま手に入れてしまおう。

 

「取り敢えず戦闘機は減った!」

《か、管制塔より全機へ! 今がチャンスだ、爆撃機は撤退を開始しているが、爆装しているからか足が遅い。 迎撃へ向かえ!》

「了解した」

 

空を見上げる。 まだ無事なモンスターがいる。

 

クラフターは もう一度やろうかと思ったが、取り敢えず壊してしまったモンスターを連れ帰る事にしたのだった。

 

今度は柵で囲っておこう。 村人もだ。

逃げられたら困るんです。

 



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渓谷開拓

日々を生きる辛み……。 ああ、悲しみのない自由な空へ行きたいな……。

時系列や知識に突っ込まないで……テキトー感が……(謝


 

オフコウ山以外にも渓谷の地形を見つけたクラフターだったが、そこには既に村人が住んでいた。

空飛ぶモンスターも それなりにいる。 勿論、大きな道路もあった。

とはいえ。 それなりの規模に見せておきながら、まるで開拓されていないと感じた。 谷が くねっているから、或いは開拓が難しかったのかも知れない。

ただ、これくらいで開拓を放棄しているようではクラフターは名乗れまい。

廃村とまで侮辱する気はないが、正直に述べれば味が欲しいところだ。

つまり。

 

開拓するしかないよね☆

 

クラフターはツルハシを振るった!

スコップも振るった!

例によって川を流し地下鉄を走らせ、仮拠点を設置。 緑化も行われ、松明も大量に刺された。 崖に、地面にだ。

あっという間に闇に浮かぶ光の島が出来上がる。 いや、光る谷である。 危うく満足しかけたが、ここまでが いつもの下地だ。

 

「うおおお!? アポなし訪問の上に無断改造だと。 ユーハング人め、止めないか!?」

「社長。 ここは逆に利用すれば良いのですよ。 悪いようにはなりません……たぶん」

 

浮かんだ光る谷の光景は美しい。 これだけでも価値が生まれた。

だがしかし。 向上心を持ち、建築に邁進する者どもだ。 崖や谷が付随するに違和感がない、或いは互いに喧嘩をしない美しき建造物。 それを考え行動しなければならない。

環境がよければ拠点を拡張、あるいは新規に大規模な建築を開始しよう。

違う場所での建造物も地形を活用しながら建てたものだ。 朝日を拝む雄大なバルコニー、日の光を受け止めて爽やかなガラス壁の広間、夕日を正面に見て静かなる山岳、本棚に囲まれ神秘の文言の浮かぶエンチャント部屋……素晴らしき建築物たち。

ウットリとした回想を流しつつ、景観を損なわない程度に階段ブロックや梯子で崖に適当な高度へ。 導線となる溝を掘る。 そのまま内部をくり抜いて崖表面に窓穴を開けていった。 即席ながら味のある部屋が出来あがる。

 

「おお。 あっという間に崖内に道と部屋が!」

「相変わらず謎の技術ですねぇ」

 

技術はいらない。 初心者でも簡単に出来る、してアクセントで味を出せる拠点製作方法だ。 ブロックを削るだけなので、豆腐のような見栄えを気にしない。

各クラフターは、崖の中を蟻の巣製作のように進んでいく。 偶に他のクラフターの導線とぶつかって繋がった。 ポコっと穴が開いたら目と目が合いました。

マルチでは、ブランチマイニング等でもある光景だ。 掘り進んでいると他のクラフターの道に繋がる事がある。

資源掘りが目的だと その伸びた道を見ては やられた、取られた感があるが、今回は開拓メインなので互いに協力する。

オフコウ山のように縄張り争いはしない。

 

あっ。 どうもどうも。 じゃ、私は別の方向に行きますんで。

あっ。 すいません。 私も別方向へ進みますね。

 

「崖を壊されるかと思いましたが、これなら引き続き この場を使えそうですねぇ」

「滑走路を潰されなくて良かった」

 

一方、崖底でも動きを見せる。

洞窟探検では恐怖の闇底だが、今回は多くの仲間がいるから安心だ。 墜落死しても遺品回収してくれる。 それに目的は開拓というのもあって、気持ちは軽い。

そうなれば、崖下は恐怖ではなく期待が込められる。 既存の建物や道路はそのままに、綻びのある部分の補修やデコボコした道路を石ブロックで舗装し直す。 馴染みとなったリピーターも忘れまい。

物見櫓は両サイドが谷であるから見送った。 狭い場所にわざわざ建てる事はない。 そも、周囲が見えない。 意味なきオブジェクトは今回、見送らせて貰おう。

代わりに崖の中をくり抜いて大きなガラス張りの部屋を造った。 これで道路全体が見える。 リピーター回路を持ってきて出力レバーも忘れまい。

 

「立派になるのは構わないが、目立ち過ぎじゃないか?」

「彼らとは意思の疎通が困難ですからねぇ。 望む望まないに関わらず、好き勝手に創っていきます。 それも、楽しそうに」

 

崖上では緑化が行われた。 ハイカラなビル群でも良いが、別の趣向を凝らしても良いと考えたからだ。

苗木を植えまくり、骨粉で急速成長させる。 あっという間に森を作る一方、計画的に植える事で自然な感じに道を作れた。

噴水やかけ流しの温泉風の水汲み場も用意。 威圧感を出さないように石材より木材を主に使用。 ログハウスを拠点とし、周囲に小さな畑を耕す。 木の柵も忘れない。

また、光源として ジャックオランタンと木の柵を縦に伸ばして制作した洒落た街灯を並べ立てた。

これらは総じて実用性を兼ねつつ、景観を重視したものだ。 花壇も作る。 もちろん、囲いは赤煉瓦ブロック。 実に自然な感じに仕上がった。 満足だ。

 

「我が社の周りを観光地にする気か!?」

「まあ、害はないでしょう。 目立ちますが」

「いや、これは駄目な気が」

 

崖上にも大きな道路を造ってみた。 崖下に隠れるようにしていては、分かり辛いからだ。

最近はモンスターや村人の勧誘も視野に入れているクラフターである。 おいでおいで、怖くないよとばかりに、開拓地では道路を造るのが当たり前になってきた。

拡がる開拓地。 地下鉄を利用して移動するのも良いが、やはり自由な空で移動した方が気持ちは明るいから。

 

「町長の雷電を返せーって、うわっ!? なんだこりゃ!?」

「ユーハングの仕業か!」

「緑がいっぱい」

「水もある」

「滑走路もあるよ! 降りてみる!?」

「お前達……遊びに来たんじゃないぞ!?」

 

ほら来た。 ブーンと音を立てるモンスターの群れだ。

こっちだ。 さあ来い。 降りろ。 ココ降りろブーン!

して、開拓地に活気をもたらすのだ。 願わくば鹵獲もする。 村人が降りて持ち主がいないなら、落し物だ。 拾えばクラフターのモノである。 半分以上は冗談だが欲望が出て短絡思考だった。

 

「ほら見ろ。 敵が来たぞ!」

「まあ、これはこれでビジネスチャンスですよ。 この辺を観光地として客を呼ぶのです」

「おお! 成る程! 絵とは方向性は全く変わるが、それも良いな!」

「コトブキ飛行隊の皆さま。 雷電は くれてやります。 ですから、今日は帰りなさい」

「何を偉そうに」

「いや、分かった。 無益な争いは互いにしたくないからな」

 

道路は地上面と崖下で分かれている。 それぞれ勧誘が始まった。

 

チッ! そっちに行くんじゃねぇ!

ほ〜ら。 コッチにはケーキモドキがあるぞ〜。

何を。 コッチはステーキだ!

ふん。 なら上位の金りんごだ。 それからフルダイヤ装備も付けてやる!

何いいいい!? ならコッチはダイヤクワ!

いや。 いらないでしょ(笑)。

やってみなきゃ、分かんねえだろ!

 

ワイワイガヤガヤ……。

 

新人クラフターを勧誘する時のような、縄張り争いとは別のベクトルでの平和的な争いが始まりを迎えたが、それはまた、別の話である……。

 



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勧誘と反応と異文化な食料

にわか故に突っ込みどころもあるとは思いますが……不定期更新中。
相変わらずリアルはしんどい日々ですね……。


 

誘引・勧誘の為に設備を整えねば。

渓谷の上下で分けた かつてない賑わいを妄想するに至ったクラフターは、農業から建築まで様々な様式を取り入れて行く事にした。

川と草木が生えるだけで興味を引く村人だが、それだけで満足は出来ない。 足を止めれば興味は失せ発展は止まり、廃墟への道を辿る事になる。 実例として此方側でも放置された都市は幾度となく存在しているのだ。 場所によっては空襲されて半壊した町もある。

ただ幸か不幸か、この世界の村人は放置した都市や町にも住み着くので、全くの無駄にならないのは良い。

緑化が進む この渓谷は元から村人がいたとはいえ、発展に見合う村人の数は引き込みたいものである。 それが見た目だけだとしても、村人がいると建築した努力が認められたような気がして……クラフターは作業を邁進するのであった。

 

「なんだか巨大な絵を創ってます」

「あっちじゃ、額縁に収まる絵を沢山壁に貼ってます」

「こっちは……旗か。 様々なデザインがあるようだ」

「姐さんの真似か?」

 

新人を陣営に引き込む為に行われるアレコレを実行し、村人の研究を同時進行。

元の世界でも やっていた巨大アートに、額縁や防具立てを並べる。

これらは展示物である一方、自身のクラフターとしての能力を誇示している。 新人によるが、やはり チカラある方に視線は向くものだ。

村人もまた、似たところがあるから やってみたが案の定、興味を引いた。 よしよし。

 

「ええと……こちらの絵は立体感がありますね。 まるで飛び出してるかのよう」

「いや、普通に飛び出してますよ。 というか コレ、持っていた宝石や身につけていた防具だよね!? どうやって はめたの!?」

 

荒らしな村人がいる世界では、盗難被害を思うと鬼気迫る行為である。

特に額縁に入れずに防具立て。 ふとした拍子に奪われたら とんでもない。 飛び道具で厄介な村人であるが、我々が知る武器で武装したとしても それなり以上の脅威となる。

ふと昔を思う。 新人開拓組がジャングルバイオームで仮拠点の建設を余儀なくされた夜、闇濃き木々の間から人影が現れた。 エンチャント済みダイヤ装備を身に纏うゾンビである。 誰かがリスポーンしたのが災いして、拾われたのだ。

勇猛果敢にも石剣で吶喊、挑戦した新人5名死亡、3名重軽傷の激闘だった。

また ある夜も似た事態が発生。 全員が土ブロックを積んで朝を待つ程の激闘だった。

武器と防具は そのままにチカラなのだ。 ネザーにおけるゾンビピッグマン大集団との乱闘も、相手の武装が違えば切り刻まれていたのはクラフターであっただろう。

 

「そんで、こっちの ご馳走は?」

「ユーハング人が大量に用意したものですね」

「パンケーキに蒸したジャガイモに……こりゃなんだ?」

「カボチャパイってヤツらしいです。 こっちはスイカにクッキー。 甘くて美味しいです」

「このスープは?」

「ウサギシチューですね」

「むっ! こりゃ美味い!」

「うさぎ……?」

「はい。 ユーハングが連れて来た、ぴょんぴょん跳ねてる小動物の肉を使ってます。 丸焼きもあります」

「何でも良い。 美味いから」

「イける! 酒とも合わんでもない!」

「むっ……こりゃサカナじゃないかああ!?」

「マジかよ! こんなにもか!?」

「焼かれてはいるが、こりゃサカナだ! 俺は知っている」

「一生に一度、食えるかどうかな高級品がこんなにも……!」

「ユーハング人……感謝しますっ!」

 

用意出来る馴染みの食事からウサギシチュー等の堕落した贅沢品を、フェンスとハーフブロックで組み合わせたテーブルに大量に並び立てた。 置ききれない分はチェストにも用意してやる。

ケーキモドキは赤服が最も興味を持つが、どうも他は違うらしいので。 観察してみよう。

 

「だが無造作に置いても客は喜ばん! 我々エリート興業がカバーするのだ!」

「おー!」

 

驚くべき事が起きた。 村人は食料を運び始めると、同じ種類同士に纏めていく。

これは使える習性かも知れない。 整理整頓も資材が増えていくと管理が面倒だったが、上手いこと使えないだろうか。

思えば火災発生時も資材を移動する。 有用性はありそうだ。

 

「彼らが用意したブツは限定品として、割高に設定しましょうか。 物珍しいでしょうから、買い手は つきますよ」

「おっ、そうだな」

「ですが限定品とは一般的な商品の中に混ざってこそ より目立つものです。 我々も普通に出し物をしなければ」

「姐さんの絵は特別だが……そうだな。 我々も普通の料理を準備しなければ」

「イジツの定番、ケチャップ丼や唐揚げ。 カレーでも良いのです」

 

しかもしかも……我々に触発されたのか、向こうは珍しい品を用意してきた。

変わったボウルに、赤い塗料を入れたようなもの。 なんだアレは……いやまて。 食べている村人を見た事がある。 まさかの食べ物であったか。 何故、今まで気付かなかった!?

片や土埃を塊にしたかのようなモノも出て来た。 アレもまさかの食べ物らしい。 美味いのだろうか!?

そしてそして……おどろおどろしいモノすら出てきた事でクラフターを震撼させる。 それは茶色の塗料を水に近いようにドロドロにし、フラットに近いボウルに入れている。

これすらも食べ物だという。

何という事だ……クラフターは戦慄と共に身を震わせた。

 

塗料を食うのか、この村人どもは!

 

まさかの事態だった。 塗料を食うとかニワトリやブタとは まるで違う。 というか、先ず その発想に至らない。

塗料はあくまで染色材であり、食うとか 有り得ないのが常識だった。

だが確かに……建造物の見栄えを良くする為に色に色々とこだわりを持つように、食料の見た目にもこだわるということか。

クラフターは思わず歯軋りした。 握り拳を震わせ、悔し涙と感動で視界が滲んだ。 流れぬ様に空を見上げる。 不思議だな……青空で雨でもないのに、顔が濡れていくよ。

何故、我々は建築ばかりに興味がいったのか。 今まで食事とは腹を満たす為にするだけの行為であり、効率や利便性のみを考えてきた。 偶に山頂や牧草地の中心とか、食べる風景を変える事はあったが、食事そのものに変化を与える発想に至らなかった。

 

またも教えられたな……村人に。

 

「な、なんかユーハング人が震えてますが」

「あれだけ建築の仕事で腕を振り回したんだ。 腹が減ったんだろ」

「なら我々の食事を与えてみますか」

 

そんな中。 スッと静かに前に出される染色された食料群。

 

食え……さすれば分かる。

 

そう語られたかの様に感じたクラフターは、恐る恐る手を伸ばし……取り敢えず赤いヤツを食べた。

して、全クラフターは刮目する!

 

美味い……ッ! 美味すぎる……ッ!

 

感動の嵐だった。 千切れんばかりの腕振りと首振り、腰振りが止まらない!

赤い塗料は強い酸味がある中に、僅かに甘味を感じる気がする。 それを中和するかのように自然な甘味を出してくる下に隠された白い塗料群。

見た目は簡素ながら酸味と甘味のバランスが素晴らしい。 原点にして頂点かのような食料である。

まさか この様な食べ物があろうとは!

一方で、土埃のような茶色いモノも食べる。 ひとつひとつが小さく、群を成して ひとつの食料としているようだ。

 

して、これもっ! 美味い!!

 

鶏肉だ。 これは鶏肉である!

 

ジュワッとした肉汁と柔らかな弾力、牛肉と異なるアッサリとした感じ……。

して、肉を覆う茶色の部分はパリッとして、脂身と別の味を感じさせる。

野生的に皮を裂き、肉を喰らう。 して味わえる脂身と柔らかな肉。 丸焼きとは似て異なる、このワイルドに美味いモノに何故今まで気が付かなかったのだろうか。

そしてラストに、茶色のドロドロを食す。 1番食欲が湧かないモノだったがしかし、口に入れた瞬間に概念はひっくり返された!

 

美味い。 美味いじゃないか……ッ!

 

衝撃だった。 着色による見た目の良し悪しはあるが、全ては見た目だけではない……またも教えられてしまう。

濃くも赤いヤツとは異なる味だ。 辛味、甘味、酸味、旨味……様々なモノを贅沢に取り入れていながら喧嘩をしない見事なハーモーニーであり、全ての食料を研究して到達したのではないかと思わずにはいられない。

この完全と完璧を追求しようとしたかのような食料。 ウサギシチューより贅沢な品かもしれない。 実際、何らかの肉やジャガイモ、人参なんじゃねと思われる感触がある。

して、それなりに腹も膨れる。

これは贅を極めた高級品なんじゃないだろうか。 金りんごなんて目じゃない。

それを村人は日常的にパクついていたというのか……?

 

素晴らしい。 素晴らしき この世界。

 

して足元に気が付かなかった己が悔しい。 以後、コレを研究し、ケーキモドキのようにレシピを発見しなければならない。

 

「なんか、皆して空を見上げてますよ?」

「彼らは時々こうなるようです。 よく分からない生態ですねぇ」

「食事に感動してるとか?」

「ユーハングの世界からの文化なら、こういうのは ある気がするんですがね……イジツで大分アレンジが加わったのでしょうか?」

 

よし。 村人研究と勧誘を続行しつつ、料理のレシピも開拓しなければ。

取り敢えず村人に礼をしておこう。 マルチの経験から、何か資源の供給や建築の手伝い等の施しを受けた場合、何か対価を支払わねばとも考える。

新たな発見と目的を与えてくれたのだ。 そうだな、村人の交渉で使われる定番のエメラルドを渡そう。

 

「うん? なんだ、デカい箱なんか置いて……うおっ!? これ中身、全部宝石じゃないか!?」

「緑色に輝く宝石……! 全部綺麗に同じ形……しかも大きい!」

「な、なんポンドするんだ!?」

「くっくっくっ。 彼らは意味不明ですが、有益な存在ですねぇ」

 

村人の甲高いハァンを聞きつつ、クラフターは作業台へ向き直る。

この世界は建築のみならず、美味い食事への興味も持たせてくれる。

 

勧誘されているのは、かくして どちらなのかな。

 

クラフターは自傷気味にくっくっと笑う。 世界は まだまだ発見と謎、驚きで楽しめる。 そう思えるのであった。

 



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地下と罠と爆発

またもガバガバ襲撃の話。 どうなってるの……ツッコミは許してぇ(殴

日々の疲労感を感じつつ。 強く……生きなきゃ(負けそう


 

恐怖とは。

それは危機に際して備えなき時の感情。

例えば直下掘りという愚行の末の溶岩プールダイビングであり、宝欲しさに落下した先の感圧板を踏み抜いてのTNT大爆発であり、たとえば振り向いた時にいたクリーパーであったり、スポーン地点を黒曜石で覆われる悪戯であり。

直近の例としては空飛ぶブーンの群れによる大規模空襲である。

夾雑物として青空を覆い、全面を埋め尽くす敵の数。 繁殖に失敗した村人や トラップタワーで敵を溜め過ぎた時とレベルが違う。 現在進行形のそれに クラフターは慄き固まるよりなかった。

 

「な、なんだよ あの数」

「ひっ……!」

「迎撃は無理だ! 避難を優先!」

「みんな、ユーハングが造ってくれた地下の退避壕へ!」

 

殺られる。

己の失敗を突き付けられる視界の赤みが、間も無く訪れるだろうことを予測したクラフターは静かに目を閉じた。

死因は知れている。 ブーンに爆破されてしまった、である。

思えば何度もその危機はあった。 この荒涼広がる世界を開拓中の時、エリトラ飛行でドンパチしていた時。 辛うじてリスキルを回避して、多少荒らされても地上を奪われる事なく こられたのはクラフターの技術や行動の結果ではない。

全て この世界の裁量だ。 クラフターには どうすることもできなかった。

認めざるを得まい。 この世界に生かされてきたのだ、と。

 

「格納庫に整備中の機体がッ!」

「もう良い構うな! 命の方が大切だろ!」

「上がるのは自殺行為だ! 足の差もある!」

「おめおめ逃げろって言うの!?」

 

粛々と、死のう。 ああも大群だと既存の対空設備では間に合わない。 新規製造出来る資源と時間もない。

 

「堂々と、で良いのよ。 寧ろ誇りなさい。 アレだけの戦力を持ち込ませるくらいにユーハングと私達は手こずらせているのだから」

「そうだぞ。 それに空賊含めた襲撃なんてユーハングが来てからも珍しくないじゃないか。 今は耐える時だよ。 キミたちパイロットを死なすワケにはいかないんだ」

「ユーハングを見習え。 空も飛ぶが、畑仕事もするし建築もするし採掘や料理もするだろ。 空だけが全てじゃない。 整備士や酒場の人たちの気持ちも汲んでくれ」

「生きていれば儲け物」

「それは……生き返る謎の集団と比べて良いのか分からないんだけど」

 

しまった。 大変な事を忘れていた。 クラフターは刮目して お座りスポットに目を向けた。 空飛ぶブーン達だ。 ダイヤ装備と地表建造物のロストは甘んじて受け入れるとしても、アレらは駄目だ。 絶対にクラフターのモノである。

昨晩眠ったベッドは緑化進行中の崖の上のログハウスだ。 真っ先にココの基地に戻って来なくては。 待機状態に不安があるのだ。 現にこの間の初フライト時、手懐けた筈のブーン達に逃げられている。 やはり飛べると勝手が違うらしい。

 

「ユーハング人は?」

「ボーッとしてる」

「やっぱ、彼らでも迎撃は無理なんだよ」

「ショックだろうな……楽しそうに努力して、見せてくれた立派な建物が壊されるんだから」

「可哀想だけど、命大事」

「悔しい気持ちは分かる。 でも、私たちと地下に逃げよう?」

「チカだけに」

「殴られたいか?」

 

クラフターは首を振った。 残された時間で出来る事といえば、モスボール状態にしてやる事か。

 

「あー、ユーハング人を殴りたいワケじゃないぞ」

「え? 格納庫に向かってるけど」

「まさか出撃する気か!?」

「おいよせっ! 戻って来い!?」

 

思い立ったら吉日。 クラフターは改造中、研究中、修理中のブーンに駆け寄った。

素早く黒曜石で覆い尽くす。 地面も黒曜石にするのを忘れない。 これで先ず壊される事はなくなった。

中身をアイテム化するのは可能だが、研究段階の資料は なるべく弄りたくないのだ。 参考にする建物のように。 マルチで下手に弄るとチャンバラ劇に発展するように、ココでは白い帽子の ちびっ子村人に どつき回される。 余計な面倒は勘弁だ。

 

「なんだ。 出るワケじゃないのか」

「あの黒っぽいのは?」

「とにかく硬いのは知ってる。 たぶん、どんな爆撃にも耐えられる」

「えぇ」

 

荒らし群勢を少しでも減らすべく四方八方にある対空設備を起動。 もれなく周囲は発射時の爆音に包まれる。

例によって回避行動を見せた荒らしだが、流石にあの数だ。 下手なキャノン砲、数撃ちゃ当たるとばかりに発砲を続けた。 いくつかは倒した。

 

「流石に倒し切れないか」

「距離もある。 発砲炎を見て回避される」

 

どうせ使っているキャノン砲は壊される。 敵にヤらせるくらいなら1発くらい……いや、撃ち尽くしておいた方が良い。

逆にだ……とクラフターは不敵に笑った。 寧ろ誘い込むのだ。

地表面の焦土化は免れないが、何も地上のみが全てではないのである。 所詮、空のある地表を攻撃するしかないブーンだ。 地下ならある程度安全だ。

そも、この世界に張り巡らせている地下鉄だって、ブーン等による攻撃から輸送路を守る為に そうしている節がある。 未だ地表より地下に鉄道を引くのが好まれるのは、何も景観のみではないのだ。

して、各基地の要は地下にある。 空中要塞は無理だが、そういうことである。

クラフターは地面と水平設置されたトラップドア(ハッチ)を開けると、その穴に飛び込んだ。 梯子でどんどん地下へ潜る。

 

「あっ。 地下に行ったよ」

「いけない。 後に続かねば」

「うわっ! 戦闘機が先行してくるよっ!」

「さっさと飛び込め!」

 

降りてると、上から村人がペチペチと落下してはハァンハァンと地下に鳴き声を木霊させた。 喧しかった。

だが同時に、地表が焦土化するのを分かっての避難行動に見える。 クラフターは頷いた。 やはり この世界の村人は知性を感じさせる。 そのうち知識の共有くらいは出来るんじゃ無いだろうか。 ブロック設置とか。

 

「いてて」

「死ぬより良い」

「しかしまあ、地下も広いな」

 

降りた先。 竣工前の寂寥感のある空間。 見慣れた資材のチェスト置き場。 沢山のラージチェストが所狭しと並んでおり、整理整頓もされているのは勿論、ベッドや かまど、作業台の基本も完備。

利便性から鉄道も引いている。 別に珍しくない光景だが、今や最前線。 ここから何とかして反撃の手段を考えねば。 鉄道から逃走するのは容易だが、このままではブーンも土地も奪われる。 それはいけない。

取り敢えず村人が煩いので、トロッコに押し込んで発車させる。 さらば村人。 行き先は初期スポーン地点だ。 同志によろしく。

 

「うわあ!?」

「なんでトロッコに触れただけで、しっかり乗らされてるの!?」

「ぎゃー!? どこに連れてかれるんだ!?」

「どこの町に行くんだコレ!?」

 

コレで良い。 騒ぐハァンの声を背中で受けつつ、クラフト開始。

うっかりウィザーを召喚したり、長期潜伏型の荒らしによってスポブロでも置かれたが如しの大量召喚された時のように、対策も出来ない事態は仕方がない。 大切なのは その後なのだ。

クラフターはシェルカーボックスに大急ぎで、資材置き場の荷物を無造作に詰めまくっては次から次へとトロッコを走らせた。

 

 

───陣地一時放棄だ。

 

 

ただの逃走ではない。 ただで土地をくれてやる気もない。 比較的安全な空から一方的に痛めつけて、土地を掠奪出来ると勘違いしている荒らしには、恐怖を知って貰う事にしよう。

それはかつて、クラフターの多くが身を震わした恐怖。 欲に走った愚者の末路。 奴らにそれを味わせる。

肉を切らせて骨を断つ。

地上から伝わる爆音と、落ちてくる砂埃。 それが理性の糸を切らせたかのように、クラフターはココにきて悪魔な嘲笑を地下に響かせた。

愚者を罠に嵌めまくると考えただけで、ゾクゾクしちゃったからね。 仕方ないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───よし。 制圧部隊を送らせろ!」

「ユーハングの使える技術が残っていたら奪え!」

 

やれやれ、とは透明化のポーションを使用して透明化したクラフターである。

見事に焦土化してしまった土地に潜伏していたら、案の定村人が来た。 かなりの数だ。 敵として確認出来る数なら過去最高だと思う。

例によって強力な飛び道具を所持している。 まともに殴り合ったら、瞬殺されそうだ。 まともならば。

 

「地下への入り口を確認」

「突入しろ」

 

地下への入り口を見つけたか。 村人がワラワラと降りていく。 一応、分担があるのか地上には相当数残っているが、まあ、その方が都合が良いか。

更なる増援は確認出来ない。 クラフターは合図として花火を打ち上げた。 ドドーンと火薬量は気にしない、とても目立つ大花だ。

 

「な、なんだ!? 突然!」

「周囲を警戒!」

「何もありません」

 

周囲をキョロキョロしてくるから、流石にドキドキする。 この隠れんぼの緊張感もまた、堪らない。

して、次に起こるであろう祭りと相手の反応が楽しみだ。

 

「残存物が引火したんだろう。 引き続き周囲の警戒……を……全員逃げろぉ!?」

「えっ?」

 

四方八方からTNTキャノンが発射されてきた。 いつもの長距離TNTキャノンだ。

こんな事もあろうかと、各拠点の座標や既存のキャノンを利用した調整数値は隣近所の拠点にある本と羽ペンにメモしてある。

それを見た職人やクラフターが砲撃要請を確認後、調整して発射したのだ。

もれなく、ズドンズドンと基地のあった土地に着弾。 爆発。 相変わらずの砲撃技術。 流石だと褒めてやりたいところだ。

 

「うわああああ!?」

「砲撃だと!?」

「罠だ! 罠だったんだぁ!」

「何処に逃げれば良いんだぁ!?」

 

別に荒らしの攻撃で建造物は吹き飛んでいる。 今更、砲撃されたところで大した被害は無い。 精々土地が更にデコボコになるだけだ。 後は黒曜石で覆われたブーンが残っているか。

ああ、いや。 荒らしもいたな(笑)。

 

「地下だ! 地下に逃げろぉ!」

 

我先にと、たった ひとマスで繋がる地下への道へ群がる村人。 自分だけは助かろうと必死である。

順番を守った方が早いだろう光景に、容赦なく砲弾は落ちて……爆風で多くは消し飛んだ。 仕方ないね。

それでも何人かは地下へ逃げ込めた様子だが、まあ地下にも対策はある。 鉄道が走ってるんだから、やる事はアレである。

それはまあ、少し時間が掛かるだろうから置いておこう。

 

「くそっ! 飛行隊に連絡しろ! 砲兵陣地を探させて潰すんだ!」

 

知性があって、群れを成す。 厄介な村人であるが、逆に考えるであろう事を先読みしていれば、対策出来る。

例えば荒らしのブーンは、突然空に湧きやしない。 どこかの地上にある大きな道路からやってくる。

して、それは既に知れている。 イジツ全土に開拓範囲を広げるクラフターだ。 既存の都市部や道中で飛び立つブーンの目撃情報から、荒らしが使用する道路は割れた。

既に同志が絶賛砲撃中。 荒らし許さん慈悲はない。 当たり前だよなぁ?

 

「ダメですっ!? 飛行隊の使用する滑走路が砲撃されたとの事で……!」

「ええい! ならば空中で旋回している飛燕だけで!」

「機銃しかないんですよ!? 燃料だって持たない!」

「構わん! 気をそらす事くらい出来る!」

 

それから……居残っている空中を旋回する荒らしのブーンだが。

同じ高度でぐるぐるしているので、砲撃して堕として貰った。 同じ場所に留まり、変則起動をされなきゃブーンは怖くないのである。

もっとも砲撃手の腕が良くないと、こんな曲芸は無理だが。 味方が有能だと大変助かるものだ。 くっくっくっ。

 

「ああ!? 撃墜されました!」

「くそっ! 何か脱出する手は……!」

「奥に続く道があります。 どこに繋がってるか分かりませんが」

「行くしかあるまい。 他に道はない」

 

さて。 そろそろ到着する頃だろう。

まあ、その前にアレの音が聞こえるか。

 

「うわっ!」

「どうした!?」

「い、いえ……糸に躓いて」

「しまっ……!」

 

ドカーン。

地下から響く爆音にしめしめと暗黒微笑するクラフター。 ワイヤートラップだ。 連動先は床下に隠したTNT。

引っかかるとは思わなかったが……冷静さを掛けて脱出ばかりに気を取られたか。

仕掛けた罠に嵌る音……なんと快感か。 この嵌めた時のゾクゾクは良い人生のスパイスだね。

 

「ぐはっ……!」

「しっかりしろ……何か使える物は……おいっ! あの箱の中を探ってくれ! 何か使えるモノがあるかも知れん!」

「はいっ!」

 

そういえば、罠は他にもあったなぁ。

トラップチェスト。 連動先は同じく床下のTNT。 欲深いヤツらだろうから、引っかかるだろうな。 アレ。

 

「あっ! 中に薬が」

 

ドーン。

またも地下から爆音が。 あーあ。 開けちまったか……くっくっ。

一応、中に侮辱を込めて、或いは誤飲の可能性から毒薬をひと瓶入れてみた。 アレでまたも自爆するなら面白いのだが。

 

「ぐっ……もう、俺とお前だけか……!」

「お、俺は助からん……お前が薬を飲め」

「ダメだ。 お前が飲め」

「ゴプッ……!? ゲホッ!? グポッ……カハッ…………」

「お、おい!? どうした!? しっかりしろ!? おい!? ああ……そんな……」

 

普通に冷静だったら、毒か薬かも分からないモノを口にしないかも知れない。

しても、瀕死の時にしないだろう。 或いは牛乳バケツで中和の用意はする。 これは狙い過ぎたと思う。

何にせよ、トドメは例のアレ。

 

「……あっ、奥から何か……大量の爆弾か。 ハハハッ……アハハハハハハッ!!」

 

チュドーンッ!

今度は地面が盛り上がる程の大爆発。 いつものオシオキのアレ、TNTトロッコのプレゼントだ。 同志に送って貰った。

これで荒らしは殲滅したと見て良いだろう。 後は再興しなければな。 折角ゼロからやり直すようなものだ、今度は更に立派なモノを造ろうかしらん?

 

終始笑顔のクラフターによる作業が再開されたところで終了した襲撃事件。

 

初期スポーン地点に送られていた村人は、地下鉄道で響いて来た声を聞く。

それは絶望に染まったとも、可笑しすぎて堪らないといったような声だったとか。

どちらにせよ狂った笑い声。 それは共通している話だ。

 

これ以降、襲撃は少しの間 大人しくなるが、戦闘は この程度で終わらない。

所詮、犠牲になるのは末端だけなのだから…………。

 



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スポブロ制圧とレシピ

駄文不定期更新中。


大きな道路からブーンが離着陸するのは最早周知の話だったが、どこでどのように生まれるのか、今の今まで不明であった。

荒らし被害に辟易しているクラフターは、スポーン地点を制圧したいのが正直な話だ。

ブーン研究組の考察だと、複数のアイテムやブロックからなる構造から、クラフターのように どこかでクラフトしている可能性が示唆されている。

ともなれば、制圧は困難なんじゃね?

イジツの様々な場所にいる村人のクラフト能力は不明だ。 だがもし、ひとりひとりがクラフト出来るならば……これは収集がつかない。 諦観するしかない。 常に隣近所に荒らしがいるようなものだからだ。 それはクラフターも同じであるかと自傷気味な笑いすら起きる。

完膚なきまでに地表を耕して村人を殺戮する案すら上がったが、それは直ぐに却下。 それは荒らしと同義である故に。

既に多くの努力によって発展したイジツを無に帰す事が、どうして出来ようか。

破壊に美学を感じる者であるが、それ以上に創造に、建築に魅せられた者である。 全てを葬る行為は容認出来るモノではない。

取り敢えず、巨大な怪鳥がスポーンしている施設なら発見した。 他には確認出来ないそうだから、取り敢えず この施設及び周囲の制圧を試みる。 それから様子を見よう。 いつもの癖で松明を生やしまくる。

 

「富嶽生産工場がユーハングに制圧されましたあああ!?」

「な、なんか松明だらけにされてるんだけど! 新手の手品かい!?」

「彼らの儀式ですな」

 

ほぼ施設もクラフター側も無傷で制圧出来たのは僥倖だった。 スポブロ制圧の要領でやったのが或いは良かったのかも知れない。

マルチならではの取り囲みから、スポブロのある空間の外側……床に対してひとマス掘り下げてからの壁に穴を開けての覗き穴。

敵の足元しか見えぬ視界から一方的に剣やら弓矢を射る。 場合によっては溶岩バケツをひっくり返して流し込む。

クラフターによっては、スポブロ座標に真下まで掘り進み、そこからの破壊及び制圧を行う。 勿論、武装にモノを言わせて強行突入法もある。

今回のシメとなったのは突入班である。 相手の能力が不明なので慎重に、かつ大胆に行われた。 突入班のダイヤフルエンチャント装備は当然として、効率強化のエンチャントを施したダイヤツルハシによる高速堀りからの地下から施設内への突入は敵の意表を突いた結果となった。

包囲班が敵の注意を外に向けさせてくれていたのもある。 取り敢えず、様々な連帯によってクラフターは大怪鳥のスポーン地点及び周囲を制圧したのであった。

 

「悔しいけど、工場は放棄だね。 幸い被害は少ないし」

「多くの部品や設計図の写しが残っておりますぞ」

 

して、制圧したからには宝箱だ。 宝箱ひゃっほい。

 

残存する村人を追い出したクラフターは大はしゃぎで異文化漁りと洒落込む。 どっちが荒らしか分かったものではないが、この際は置いておこう。 そも、先に仕掛けて来たのはアッチだし。

スポブロ地点には大体、チェストがあるものだ。 ハズレもあるが鞍のようなレアアイテムがあるかも知れない。 そう考えるだけでワクワクする!

この世界にはこの世界の素晴らしき新アイテムがある。 習性がある。 建造物がある。 何故、その新世界に立ち入らずに自らの価値観で全てを決めてきたのか。 その偏見と無知とも取れる存在でイジツ全土を開拓してきた我々は畢竟、世界を侮っている極め付けの愚か者ではないか?

今の我々は その殻を破り捨て、新境地開拓へと漕ぎ着けた。 気付いてからも遅くはない。 このウキウキを原動力に、世界を楽しもうではないか。

 

「えーと。 工場と周囲に残ってたのは?」

「富嶽の図面と、解析していない飛行機の図面ですな」

「なんてこった! でも諦めも肝心、か。 彼らには勝てないからね。 空中戦で なんとか、ってところか」

「作業速度や戦闘能力に謎の技術。 高度に関わらず、防寒着もなしで飛び回れる程に超越した者達ですぞ? 孰れ我々の手に負えなくなります」

「既に負えない気もするけどね。 こりゃ、上手いこと共存の道を探らなきゃかなぁ」

「意思の疎通は困難です。 道のりは長そうですな」

 

何だこれは。

 

箱を開けると、研究段階のブーンの部品と地図のようなモノが出て来た。

見てみればブーンの絵だと分かる。 初めは何だか分からなかったクラフターだが、物作りのエキスパートとしてビビッときた。

これはクラフトする為のレシピのメモであると。

まさか絵や線で表すとは。 画期的な考え方ではないか。 して、何とか解読出来そうだ。 帰ったら早速クラフトである。

ココに創りかけの巨大怪鳥なブーンも合わせて弄ろう。 スポブロは見当たらないからトラップタワーは無理そうだが、これはこれで大きな収穫だ。

いやぁ。 やはり この世界は楽しいなぁ!

 

「わっか を手に入れるのは、今は諦めよう。 この前の《どこかによるどこか》の地上制圧も失敗に終わったみたいだしねぇ。 でもいつかは彼らのチカラで世界を牛耳って、支配者に……!」

 

このブーンを造れれば、もっと世界を楽しめるかしらん?

 

片や野心で奇怪に笑い、片や好奇心で陽の下で笑う。 この温度差から生まれるのは、果たして喜びか悲しみか───。

 



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楽しいブーン造り

駄文更新中。 何となくの終わりを目指したいところ。


 

胸踊る施設散策から一転、クラフターは心爽やかに新たなクラフトへと身を乗り出した。

場所は大きな草原地帯だ。 風に靡き草の擦れる音に、興奮を冷まされながらもソレは行われた。 造るモノがデカいと細かな部分に綻びを生じてしまう時があるが、今回はそうはいかない。 何せ建造物は建物というより乗物だからだ。 些細なミスで飛ばないのでは困る。

 

荒らし施設にて手に入れた巨大なブーンのクラフトレシピと、何だかよく分からない、ブーンのようで違うブーンを造るにあたり、多くの鉄及びRS回路に関わるアイテムが集められた。 何というか、レシピの解読が難しいから我々の知る材料で代用しようというのだ。

 

え? 些細なミスどころか根本的に違ってくる? 別物になっちゃう?

知らんな。 かまどやRSブロックを放り込めば何とかなる。 たぶん。

 

「アイツら、今度は何を造ってるんだ?」

「シルエット的に……富嶽か。 スゲーの造ってるなオイ」

「翼の材質はなんだ? なんだかフカフカしてそうだけど」

「緑に染色した動物の毛玉」

「ファッ!?」

 

外装は色のバリエーションに富んだ羊毛が使用された。 何だか新緑の中にいると緑が使いたくなったので緑にした。 黄緑は具合が悪いので、普通に濃い緑。 見栄えは中々に良い。 陽の光で輝いて見える。

だが材質的に1番輝いているのは操縦席部分か。 ガラスブロックが使用されているから。

 

「いやいや飛ばないだろ!」

「だ、だよなー。 いくらなんでも飛びやしないだろ」

「きっと模型か何かさ」

 

動力は、レシピ的には6つ以上あるように感じるので それっぽくやってみる。RSで。

後はモノを落とすような機構がある気がするが、操縦席からRS回路でのTNT自由落下にしてみた。 シンプルである。

でも何かが足りぬ……多くの兵器開発や建造をしてきた身として、手を加えたくなる。 僭越ながら工夫を凝らそう。

折角翼がデカいのだ。 いろいろ搭載してみたいではないか。

何となくで か ん が え たサイキョーのブーン。 翼にフルオートTNTキャノン及びディスペンサーをズラリと並べてのファイヤーチャージフルオート機構を搭載。

自由落下のみではツマラナイので、起爆タイミングを1発だけズラしての一斉投下からの、下方限定散弾空爆機構。

上方にも対処出来るよう、搭乗クラフターが迎撃できるようにスリット穴も完備。

して、爆風で上方に矢をばら撒くタイプの自己防衛用の散弾兵器も搭載。

ブーンは背後に回ってくる癖があるから、背後にもファイヤーチャージを撃てるようにしてある。 脱出用エンダーパールも完備。 色々他にも詰め込んだ。

ああ、いや。 何だか不恰好になった。 スマートではない。 だがロマンは大切だ。 強そうであるし。

 

「両翼にデカい大砲つけたあああ!?」

「原型がどこかいった!?」

「よく分からない塊」

「奇妙過ぎる……ッ!」

「やっぱ、飛ばす目的じゃないだろ!?」

 

さて飛ばそう。

このまま鎮座していては、いつものオブジェクト製作で終わる。 やはり空を飛ばしてナンボだ。

操縦席の、床に側面に天井に、所狭しと並ぶスイッチ群のひとつを倒した。 6つ全ての棒が動いて巨体が動き出した。 ブーンの名に恥じぬ音に万歳だ!

 

「発動機が動いたあああ!?」

「機体も動き始めたぞ!」

「ま、まさか飛ぶのか!?」

「嘘でしょ……?」

 

飛べ! 飛べブーン!

そう搭乗員皆が念じれば、ブーンは存分に助走すると草原から足を離した。 ぐんぐん上がった。

 

「「飛んだあああああああッ!!?」」

 

村人からも拍手喝采大喝采ッ!

クラフターは首をグルングルン動かして、腕を闇雲に振りまくり、ガクガク腰を動かす。 喜びの舞。

造って良かった…………感涙に視界が歪む中、クラフターは絶頂の達成感に酔い痴れた。 エリトラ飛行とは別の感動がココにある。

自らが飛ぶのではなく、造ったもので空を飛ぶ。 しかも、滑空ではない。 ちゃんと飛んでいるのだ。

この達成と感動の値打ちはダイヤモンドフルスタックのラージチェスト何個分とか、換算出来るものでナシ。

クラフト人生で ここまでの感動が未だ嘗てあっただろうか。 いや、ない。

 

「どうなってんの!? 翼面荷重は!?」

「ユーハング謎の技術」

「まさかユーハングの世界じゃ、こんな芸当が当たり前なのか……?」

 

さて。 テストフライトだ。

雲の合間を縫って、空の旅を楽しむクラフターであるが実験をしなければならない。

搭載した兵器の使用にあたり、自爆しては笑えない。 エリトラ飛行もそうだったが、着地や空中機動に慣れなかった頃は良く首から高速で着地しての即死や、ビルに衝突等は良くやらかした話だ。

ブーンはエリトラより機動が悪い。 今搭乗しているのは巨体故か旋回能力が劣悪に感じる。 色々積んだ所為もあるだろうが、これによる事故の危険性を感じてならない。 マイナス点だと評価を下した。

 

「あれ、前に戦った富嶽より強いんじゃ?」

「でしょうね。 旋回機銃の数も……いや、弓矢の数的に」

「仕組みは相変わらず分からないけど、敵に回したくないね」

「でも動物の毛なんだろ? 燃えるんじゃね?」

「やってみなさいよ。 アンタが燃やされるわよ」

 

何にせよ、実験だ。 イジツ全土を開拓しているクラフターだ、爆撃が許された空き地を見つけるのに苦労する。

RSブロックを動力にしているので、石炭や溶岩、ブレイズロッドを使用した燃料切れの心配はないだろうが……どうしたものか。 このまま空を放浪するのは勿体ない。

そんな悩みの中。 既存の都市部に差し掛かった時に、それは突如として解決した。

都市部上空でブーン同士が争っていたのだ。 そして、初期スポーン地点で見た ネザーゲートやエンドポータルの様な役割を担う わっか を確認する。

 

クラフターはモノを言わず、ブーンの頭をそちらへ向けた。 高度も下げていく。 当然、実験をする為にだ。

 



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もうひとつのゲートと大動乱

不定期更新。 これで終わろうかなー、とも考えていたり……。


「イケスカ上空で戦闘!?」

「あれは……わっかを巡っての戦い!?」

「ラハマで見たようなヤツか!」

 

出来たばかりの大怪鳥なブーンが雲間を行く。 そんなテストフライトをクラフターがしていたら、既存の大都市で大騒ぎが起きた。

最初こそクラフターの所為かと思ったが、どうも違うようだと搭乗する仲間が伝えた。

言われるがままに他も見下ろすように低空を見やれば空が騒がしい。 ブーンがたくさんいて、互いを攻撃し合っている。

まあ、それは規模こそ大きいものの想像し得る範疇として……クラフターが食い入るように観察するのは別にあった。

 

「見えるか!? わっかだ! 火薬を満載させた羽衣丸を わっかに突入させて、消滅させる!」

「飛行隊は羽衣丸を守るんだ!」

「イサオの思い通りにさせるな!」

「ユーハングに任せれば?」

「気紛れ過ぎてアテに出来ない!」

「だよね〜!」

 

見覚えのある 空に浮かぶ わっか だ。 初期スポーン地点と同じものと見て良い。

クラフターは溜息した。 ゲート類とは どうも、村人を興奮させて荒らしを生ませている気がしてならないからだ。 ネザーゲートを造らないのも、この辺が理由だ。

初期スポーンの わっか を黒曜石で覆う案が出ているのも、こういう荒らし行為があるからだ。 見ろ。 耐久がなくなったブーンが火の玉となって地上に激突した。

舗装された地面は砕け、小火が起きた。 それが彼方此方で起きている。 既存の都市がデコボコになっていく。 荒れていく様は見ていて悲しい光景だ。 補修が大変そうだ。 クリーパーと どっちが良いのだろう。

 

「むっ!? 富嶽接近、総員……って、なんじゃありゃああ!?」

「どうした……って、なんだアレはああああ!?」

「戦闘中にナニを……って、うおおおお!?」

「富嶽にユーハングの武装が付きまくってるうううう!?」

「富嶽に付いてるというより、武装に富嶽が付いてんじゃね? というか、どうして飛べるのおおおお!?」

「飛行機というより塊が動いてるように見えるよ!?」

 

忌まわしくも疎ましい光景を払拭せん。

青空の下にいながら自由と創造を束縛する荒らしがいる場所は晴れても闇の世界だ。

だが臆する事はない。 眠りに就き自らも闇へ沈むには至らない。 出くわしたモノが悪夢ならば、それこそTNTで消しとばしてしまえ。

そうして楽しい夢にしよう。 いや、悪夢すらも楽しもう。 寧ろ大義名分で動けて実験も行えて面白いのだから。

 

「いけない! 富嶽に敵の飛行隊がッ!」

「いくらユーハングでも、単騎では!」

「しかもマトがデカいんだ。 これじゃ直ぐに撃墜され……なんかスゴい撃ち始めたぞ!?」

 

実験体がワラワラとやって来た。 一直線ではなく、散り散りに様々な方向から攻めて来ようとしている。

四方八方、上下全角度。 ある者は太陽を背に。 ある者は迎撃困難な斜め方向、直上や直下に近い角度で突入。 ゾンビのような単純行動ではない。 包囲殲滅、迎撃され難いようにしてくる。 実に厄介な荒らしブーンどもだ。

だが操縦席のクラフターは慌てず、全てのレバーを倒して武装を起動。 前方と後方にTNTキャノンとファイヤーチャージ。 上は弓矢散弾砲と対空TNTキャノン。 下は自由落下TNTで弾幕を形成。

死角は大勢搭乗していたクラフターが弓矢で応戦。 その光景は空飛ぶ要塞。

ドッカンドッカンと激しい爆音が都市部上空にて鳴り響く。 祭りだ。 祭りだひゃっほい。

都市部も巻き添えにしてしまったが、まあ必要な犠牲だ。 そも、クラフターには関係ない集落である。 有名度が下がっても痛くも痒くもないので気にしない。

 

「うおお!? なんかスゴいぞ! 敵の飛行隊を返り討ちにしている!」

「イケスカも破壊してるけど!?」

「避難はしているけどさ……やり過ぎ」

「でもどうせ、直ぐにユーハングに直される」

「全部、アイツらだけで良いんじゃないかな?」

「いや見ろ! 流石に対処しきれない!」

「ああ!? ロケット弾を喰らったあ!?」

 

まさかの新手の攻撃を喰らってしまった。 爆発する飛翔体だ。 ファイヤーチャージのようで、そうではないものだ。 ガストの攻撃に似て非なるものだ。

運が悪い事にキャノンのTNTに引火、そのまま爆発して翼がもげた。 ブーンの底にも穴が空き、一部同志が地表へ落下してしまう。

しかも本体の大半の材料は引火性のある羊毛だ。 燃えてしまい、いつかのバカ鳥のように焼き鳥となってしまう。

 

「ああ!? 翼がもげたー!」

「ユーハング人も何人か落ちていくぞ!」

「燃えていく……!」

「でも機体は堕ちない……何故!?」

 

迫る地表にも慌てず、エンダーパールをブーンへ投げつける。 ノックバック効果のある弓矢を放ち、自らを射るようにもする。

して、高速で移動。 ブーンの狭き起立可能部分に着地しては間髪入れずに常時携行している土ブロックで修復開始。 直ぐに穴を塞いで、火を殴って消化していく。

 

「何か瞬間移動したー!?」

「空中にいながら機体を修復していくだと!?」

「というか、補修に使ってるのって……土じゃね!? なんでアレでイケるんだあああッ!?」

「殴ると鎮火出来るのも謎だろッ!?」

 

複雑なキャノン及び回路は放棄。 ディスペンサーだけの回路を直す。

やはり戦闘中のクラフトは至難の業だ。 簡単な防壁を作ってブーンの攻撃を凌ぎながら作業する。 回路が翼面に露出配線しているのも悪い。 これでは簡単に被弾、破壊されてしまう。 翼内部に隠蔽配線するか、防壁で守るべきだ。 それから焼き鳥はダメだ。 材質は固焼き粘土に変えるべきだ。

コストやロマンではない。 ドンパチして実験して初めて発覚する問題もある。 やはり やって良かったと思う。

まあ、完膚無きまでに破壊されても また造れば良いワケだが。 造り直す時は更に強いヤツが良い。 それもまた、楽しいから。

 

「羽入丸が わっか に突入する!」

「ドードー船長は!? 副センのサネアツは!?」

「赤とんぼで脱出したよ!」

「確認した!」

「総員、わっか から離れろっ!」

 

驚くべき事が起きた。 わっか に いつか見た、白い大型建造物が突入……次には大爆発した。 雷に打たれたクリーパー何体分かも分からぬ大爆発である。 して、その影響か わっか が閉じていくではないか。

その様から、ネザーの日を思い出す。 初めてで勝手が分からなかった頃の苦い思い出である。

黒曜石で火打石で造られたゲートを潜ってネザーの地に降り立った直後、空飛ぶ浮遊クラゲなガストに火の玉をお見舞いされた時。

攻撃そのものにも衝撃を受けたが、まさかゲートが破壊されようとは。 黒曜石製だと油断していた。 ロストを防ぐ為に火打石を置いていたのもある。 黒曜石自体は壊れないのだが、稼働状態を表す毒々しい紫の膜が消えてしまった。 帰れなくなった。

仕方ないからベッドに寝ようとして……今度はベッドが爆発した。 時計が狂っているからどうなるかと思っての結果でもある。 好奇心と新世界を前に安直な行動に出てしまったのだ。

結局、リスポーンして元の世界に帰還した。 ロストした品も決して安くはない。 今となっては勉強になった良い思い出だが、当時は落ち込んだものだ。

だが無知故に やってみる。 そして学ぶ。 過ぎた過去に対して後悔や別の方法が無かったのか考える事はナンセンスかも知れない。 そも、最初から知れていたらツマラナイ。 やらなきゃ始まらない。

きっと村人も、あれだけ大きいゲートだから通れるだろうと思って 試したのだろう。 そうしたらベッドみたいに爆発したと見る。

 

いいんだ……いいんだよ、それで。

失敗は成功の元。

 

やらなきゃ分からない。 始まらない。 終わりもまた、ない。 発展もない。

 

棒が背後に付いた、奇妙なブーンが閉じていく穴へと吸い込まれるように入っていくのが見える。 諦め切れないのか。

 

「あっ……震電……イサオが」

「……ヤツの選んだ道だ」

 

クラフターは頷いた。 それもまた、ひとつの考えだ。 否定はしない。

して、これもまた過ぎた事だ。 荒らしに同情はしないが、過去に囚われるつもりもない。

 

やがて消える わっか と 消えた ひとつの変なブーン。 あの向こうは、元の世界なのか別世界なのか興味はあった。

そこも楽しそうだ。 また、見かける事があれば飛び込んでみようとも思う。 なんにせよ、今は消えてしまったのだから別の事をしよう。

 

ブーンは わっかが消えたからか散り散りになっていく。 クラフターも倣うように、エンダーパールで一部は地表にワープした。

壊した都市の再建築。 それを楽しむ為に。

 



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動乱後
空とクラフターな村人


ハルカゼ飛行隊……は、出ず。
アニメのその後らしい、小説の冒頭辺りを参考に。
時系列は許してぇ(殴


イサオ率いる自由博愛連合を退けた反イケスカ連合とクラフター。

その犠牲もまた少なくはなかった。オウニ商会は羽衣丸を失い、統率を失ったならず者たちは散り散りになって各地で空を脅やかしている……事は少ない。

クラフターによって進む開拓や提供される良質な物資と緑化による観光地化や環境改善により、就職先や新規立ち上げの会社も珍しくなく。 ならず者は無理に掠奪等の犯罪行為に走らずに済み、更生する者が多く出た。

そんな好景気な状況にしているなんて つい知らず。 相変わらずクラフターは開拓に建築に忙しくも楽しんでいたのである……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鼻を擽る新築の匂い。 地上は遊び切れない開拓地。 轟轟と聞こえるブーンの爆音。 耳だけではなく、身体全体が開拓と冒険と建築ひゃっほいと唸りを上げている。

眼下に広がるは日差しを受けて輝きを放つ緑と透き通る川。 それらの景観を壊さない美しき建築物たち。 加わる草木の調和は地平線の向こうまで潤った大地の上に続いている。 その上に広がっているのは真っ青で自由な空だ。

夾雑物が一切含まれていないかのように澄み渡り、吸い込まれそうなほど深く、尊く美しい。 遥か頭上に輝く太陽からは燦々と陽光が降り注ぎ、やはりこの世界でもジリジリとクラフターの身を焼いていく……が、構わず冒険を続けるくらいには熱中している。

 

『ひま、ひまひまひまひーまー!』

 

 ああ、忙しい。 だというのに、ノイズ交じりの騒がしい声が聞こえてきた。

 

「チカ、うっさい。 なに叫んでるの?」

 

撃墜してやろうか。 クラフターは弓を手に持ち、横のガラスを殴り割って左へと顔を向ける。 少し離れて横を飛んでいる斑ら模様のブーン。 そのガラスの内側で小柄の村人がハァンと叫んでいた。 その奥のブーンには見知った赤服村人だ。

 

『ひまだって言ってんの! 空賊に襲われるから護衛を頼むなんて言われたのに何もないじゃん! もうすぐ着いちゃうし!』

「なら反対側を飛んでるユーハングを見れば?」

『はぁ? ただ一緒に飛んでるだけ……はぁ!?』

「風防を素手で壊して弓矢持ってるよ。 黙れって言いたいんじゃない?」

「先ず素手で壊せるのが凄いよね。 そして、弓矢で戦闘機と戦えるのも凄いよね」

 

視界の横を飛んでいるのは見慣れた空飛ぶ乗り物ブーン2体と少し離れて小型の空飛ぶ建築物だ。 気になって付いていったら、2体に寄り添われた。 危害を加えてこないが煩いのは嫌である。

どういう理屈でブーンの中にいる村人の声がコチラのブーンまで聞こえるのか不明だが、何にせよ射抜くか。 あ、静かになった。 良きかな良きかな。 ガラスブロックを嵌めて側を直しておく。

 

───イジツ。 多くの村人とクラフターたちが暮らすこの世界では、かつて地表の大部分を荒涼とした大地が占めていた。 当時は陸路は分断されており、街間を車で行き来することは不可能に近い。 主な交通経路としては空路が用いられたが、その輸送船を狙う悪質な空賊も多かった。

だから、キリエたちの所属するコトブキ飛行隊のような用心棒に出番が回ってくる…………のだが、最近は平和だ。 クラフターの所為である。 ウェスタン風な町のラハマ近郊に突如として現れてからというものの、イジツは僅か数週間やそこらで緑に覆われ、清水は流れ、豊富で良質な資源が提供され、鉄道が引かれて渡れぬ谷に立派な橋がかかり、登坂困難な山ならば横穴をブチ抜いてトンネル工事。 主な地表面は天高く聳える摩天楼を建ち並ばせた。

何度かドンパチはあって、破壊された土地もあったが直ぐに修復された。 それら開拓や建築は今なお続けられており、ツルハシとスコップによる快進は破竹の勢い。

ちょっぴり先行きが暗いかもな世界に差し込んだ救いの光のようでもある。 感謝の気持ちはあるものの、意思の疎通が難しいしクラフターは理解不能な行動ばかりに出るから、珍妙な光景と驚愕の声は彼方此方から上がっているのであった。

 

『大体さぁ、なんでユーハングと一緒なの?』

「知らないよ。 直接聞けば良いじゃん」

『まともに会話が出来ないでしょ』

 

鹵獲出来ないかな、アレ。

村人の操るブーンは各拠点にあるから珍しくないが、空を移動する建築物は未だにクラフト出来ない。

ただし。 同志が建造している現場を見つけたというので、お邪魔して研究中。 だいぶ前に爆発四散した、別の空飛ぶ大きな建築物と似ているとか。 上手くいけば沢山製造し、空を移動する拠点兼、町を作れる。 ロマンだ。

 

「良いじゃん。 守ってもらいなよ」

『私一人で十分だって! キリエこそ守ってもらえば〜?』

「それはこっちの台詞!」

『なにーっ!』

 

そうだ。 先を見据えて、空飛ぶ建築物の離着陸の広場も確保しなければ。 ビルの上でも良いが、狭い。 やはり皆が見れて目立つ様な場所が良い。 補修や建造もしやすい。

そういえばブーンの補修作業をしている村人がいたと思い出す。 白帽の子ども村人だ。 いつもブーンを弄ってるのを見つかると殴ってくるから厄介だと感じていたが、成る程。 自分の建築物やブーンを触られて怒っていたという事か。 あの村人もまた、同志であったと。 どんな腕前か、帰ったら見てみよう。

 

「…………ん?」

 

 と、クラフターは随伴するブーンより遥か向こうへと目を向ける。 自分たちより高いところにたなびいている白雲。 その上に一瞬だけ、光が見えた。 クラフターは目を細める。 再び雲の上で光。 光源は6つ。 ブーンの頭に付く回転する棒が太陽の光を照り返しているからだと経験から分かる。

 

「チカ! 3時方向!」

『3時がどうしたんだよ!』

 

村人も気付いたが、先に動いたのはクラフターだ。

直ぐに戦闘態勢に入る。 この手のブーンは大抵荒らしだ。 迎撃しないと建築物等を破壊される。 無視出来ない。

だが単に撃墜するのではツマラナイ。 ブーンの操縦は慣れてきたが、故に実験したい事は多い。 今回は両翼に付けたディスペンサーに毒矢を入れてある。 ブーンに果たして毒が効くのか試してみよう。

 

『きたぁ―――――――――――――っ!』

 

村人の快哉が響いた。先ほどまでのハァンより甲高くて喧しい。 やっぱ射抜こうとしたら、そのブーンは身体を揺らして右旋回をして離脱していく。

もう一体は後を追うように左旋回をして離れた。

あの六機以外にブーンは見えない。 接近してくる荒らしを目がけ、クラフターは上昇していく。 いつもの癖で敵の姿をじっくりと見つめる。 先頭は違う種類だ。 後は同じか。 横並びに飛んでいる。この近辺で最近目撃されている荒らしが使用しているブーンだと考察する。

 

『私が前ね! キリエは後ろから支援!』

「はぁ? なんでそうなるの!?」

『だってこの仕事、先に引き受けたの私だもんね! 早いもの順!』

「ユーハングが先に向かってるけど」

『ああ!? 増槽を捨てて早く追いかけなきゃ!』

 

後方で騒がしい村人達のブーンが、お腹にぶら下げていた丸みを帯びたパーツを落とした。 やったぞ。 拾えばクラフターのものだ。

仲間に連絡して回収して貰おう。 取り敢えず今は、荒らしに向かってぐんぐん加速だ。

 

「ったくもう、なんでユーハングのは増槽ナシで長距離飛べるし早いの! 航続距離は?」

『ユーハングだからでしょ!』

「答えになってない!」

 

先端で回る棒の回転数が増し、身体全体に伝わってくる振動がさらに強くなった。 臭いといい、気候といい、耳をつんざく爆音といい、空は地上と比べればはるかに苦痛な環境だ。 常に落下死の恐れがある。 それにもかかわらずクラフターは この感覚も好きだった。 空に浮かばせた建造物……広大な空にぽっかり浮かぶ浮島。 ブーンもだが壮大な空と地上の両方を贅沢に堪能出来るコレはエリトラの感動や空に建造した時の感動に似ている。

それらを邪魔する荒らしはマジ許さん。 殲滅態勢に入る。 クラフターが駆るブーンは6体の荒らしブーンの群れへ勢いよく突っ込んでいった。 実験も忘れまい。

きっと自分たちは一生開拓と開発、建築や冒険三昧と世界を楽しみ続けるのだろうなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんのアホンダラが!」

 

初期スポーン近くの既存の村。 そこにあるブーンをお座りさせるスポットに帰ってきたらハァンが響いた。

皆で着陸したブーンから顔を出したクラフターを出迎えたのは、白帽の子ども村人の拳。 ノックバックも起きた。 相変わらず良い拳だ。 ハァンと鳴きたいのは此方である。

 

「班長、ユーハング相手にも容赦ない」

「そりゃそうだ! 勝手に格納庫から零戦を飛び立たせて帰って来たと思えば この有様! 修理したばっかなのにもうぼろぼろじゃねえか! というか、なんで土で補修してんだよ!? そして何故飛べる!?」

「いや、この人らに言葉通じないから」

 

白帽はお座りしているブーンを指差した。 先ほどまで乗っていたブーンは、主翼や尾翼に荒らしの攻撃を大きく受けて土ブロックで補修されている。 見劣りするから、怒っているのか。

クラフターは首を横に振った。 クリーパーに景観を破壊されたようなソレを指摘されて悔しさを感じているのだ。

次はこんな事を起こさないという意思表示をする為に、松明を刺しまくった。 ブーンとお座りスポットは明るくなったが、自身の気持ちは暗い。

 

「なんで松明を機体に刺しまくるんだ!?」

「儀式だよ、ユーハングの」

「供養か!? いや、最悪は私が直すからやめてくれ頼むから!」

 

元に戻そう。 いや、どうせなら強化しようか。 毒矢はブーンには効かない感じであったから、取り敢えず矢を交換だ。

 

「ったく。 今でこそ機体も弾も物資は手に入れやすくなったが、コイツらの技術はよく分からないしな」

 

───イサオ率いる自由博愛連合との戦いから、既に半年近くが経過。 イケスカ上空の穴を塞ぐために、オウニ商会は羽衣丸を失った。 とはいえそのまま黙っているマダム・ルゥルゥではない。 完成はまだ少し先になるが「第二羽衣丸」を建造中。 なんかクラフターが混ざって設計に無い事を色々されているようだが……。

羽衣丸を使っての仕事こそできないが、オウニ商会自体は営業中。 キリエとチカが引き受けていたのは、ガドール行きの輸送船を往復で護衛する任務。 往路は何事もなかったが、復路では空賊が襲来。

最近ラハマ近辺で目撃が多発していたアナグマ団とかいう空賊で、疾風1機に零戦二一型5機の6機編成。 クラフターがほぼ単騎で全機撃墜し、輸送船への被害もキリエやチカへの被害も皆無。

任務は達成されたが、クラフターの機体(無断使用)はぼろぼろだった。

 

「うぅ〜! 結局1機も墜とせなかった!」

「チカが私の前で変な飛び方しなきゃ、私は墜としてたから!」

「なにー!」

 

ハァンハァンと争う村人。 未だにコイツらの生態を把握し切れていない。 実験兼観察場となる町や子どもメインの施設を見ていても、よく分からない。 だが毎日が面白い。 次は何をするのか興味が尽きない生き物だ。

観察していると、今度は白帽がハァンハァンと大声を発する。 ここまでくると喧しさに慣れてくる。 寧ろ楽しくなってきた。

 

「静かにしろお前ら! とにかく! 当分の間、コイツを修理に回す!」

「ついでに、ユーハングの頭も直せば?」

「その前に、お前の頭を直してやるよ。 取り敢えずケツにイナーシャハンドルを突っ込んで掻き回してやろうか?」

「遠慮します」

 

落ち着いてくると、赤服と子ども村人は何処かへ行った。 残されたのはブーンと白帽。

よし。 予定通り白帽を観察しよう。 学べるものがあるかも知れない。 見て盗むというヤツだ。

 

「はぁ。 いつもは1週間くらいで修理するんだがな、お前らの技術は謎だらけで手に負えない。 少なくとも今は真似は出来そうにないから、今までの通りにするぞ。 文句言うなよ」

 

何事かハァンと鳴いては、ブーンに寄っていく。 周りを見れば仲間と思われる村人が、いつのまにか集まり始めてお座りしているブーンを弄り始めた。

どうやらクラフトが始まるらしい。 しかと見届けねばならない。 時には立ち止まろう。 手や足が先に動いて失敗したり発見を見逃す事もある。 ココは良く観察しよう。 新たな発見が楽しみだ。

 

「イケスカの騒動があって、ユーハング産の資源も高騰してるんだ。 民間もお前らが造った建造物に対応するために需要が増えてるしな。 私もなるべく早く修理できるよう努力はするが……当分は大人しくしてるんだな。 って、お前らは全部やれちまうのか。 それも一瞬で」

 

ハァンハァンと鳴き声を上げながら作業とは器用だなぁ……と感心していたら。

あろう事か改造したブーンをバラし始めた。 補修で使われた土ブロックを棒状のナニかのツールで破壊され、翼は捥がれ、中身も出されていく。 バラバラだ。 中に仕込んだRSやディスペンサーまで取られた。

 

「班長ッ!? 中身の多くは赤い砂や塊で、発動機等が見当たりませんぜ!?」

「この武装、どういう仕組みなんスか! 取り扱いが分かりません!」

「ええい! 私だって分からん! そこにいるユーハングに直接聞け!?」

「言葉通じません!」

「全部取り替えだ! いつものにしろ! いつもの!」

 

そしてハァンの大合唱。 思わず殴りそうになった。 村人相手に荒ぶるのも馬鹿らしいと落ち着いて考えれば、どうやら使い方が分からない様子。 なら仕方ないと納得する。

見慣れたり使い慣れた物品ほど、他の人が扱えない光景を見て首を傾げる者がいる。 簡単なのになぁ、どうして分からないのかなぁと。 だが仕方ないのだ。 初めてなら尚更に、自分だってそうだ。 乳搾りをしようとして、牛をバケツで殴った事もある。 ハサミで毛刈りをしようとして羊を殴った事もある。 昔は湧き潰しが分からず寝込みを何度も襲われた。

こういう時は知識や技術ある者が教えるべきだ。 勿論、自力で答えに辿り着けば快感だし為になる。 だが危険な時や時間が惜しい時はいけない。 それに、早い段階で知る事が出来れば後の時間を有効に使える。

 

「うん? おい、変な事はするなよ……なんだ?」

「地面に赤い砂撒き始めた?」

 

説明しよう。

バラされたRSやディスペンサー、その他パーツブロックを素早く回収。

RSの動力の入切方法、ディスペンサー等の負荷側の起動動作を見せるべく簡単に地面に回路を構成して、やって見せた。 ハァンが響いた。

 

「レバーを倒したら、赤い砂が光ったぞ!」

「光った先、射出装置が動いた!」

「バカな。 発動機ナシで……スイッチがそのまま動力なのか!?」

 

感動を呼んでいる。 クラフターは頷いた。 理解はこれからしていけば良い。 して、その感動は 我々も かつて味わったものだ。

過ぎた事は当たり前となり、感動は薄れて忘れてしまう。 だが、こうして当時を再現したかのような喜びの声を見る事が出来ただけでも……見えた甲斐があったと、クラフターは莞爾として頷いたのであった。

 



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新しい風の匂いと餌付け

日曜も出勤が続く中ですが、駄文更新。
ああ……作者も楽しい世界に行きたい。 美味いもの食べたい……悲しみのない世界へ……(殴


 

腹が減っては開拓出来ぬ。

クラフターは村人が食事をする施設へと足を踏み入れた。 ここでは取引によって美味い食料を手に入れる事が出来る場所である。

ここに在住する村人は何を渡しても成立するから良い。 宝石やら石炭やらツールを渡すと色々と出て来るから、今日も そのつもりだ。

食事を通り越してレート調査場でもある。 渡すモノによって出てくる量や物が変わるからだ。

金塊1個ならシチュー系とかケーキモドキとか「カラーゲ」なるちょっとした量と大きさが並ぶ。 インゴット1個ならステーキが何枚も来たり、金塊の倍を超える量が来る。 9倍を超えるので損はしない。 寧ろ特だ。

何が出ても美味いが毎度食い切れないのでテイクアウトだ。 勢い余ってテイクオフをする時もあるくらい。

因みに土や丸石等の建材系はあまり成立しない。 やはりその辺で取れるから安価過ぎる、或いは無価値という事か。 ちっ。

 

「ひーふーみーよー、ひーふーみーよー」

 

何にせよ、食事だ。 先客が7名いて、うち後方にいる1名は知っている赤服村人だ。 例によってケーキモドキを食している。

クラフターは既にレシピを知り得ているから、取引してまで食う気はない。 それより「カラーゲ」なる物が欲しい。

外はパリッと。 中はジューシーな鳥肉を用いた食料。 未だにクラフト出来ぬから取引して食うしかない。 でも、いつかはクラフトしたい。

 

「はい、おつかれさまー」

 

残り6名は若いな……。

長年の感覚から、それが分かる。 背丈ではない。 若草の匂いや雰囲気。 新人クラフター独特の雰囲気に似ている。

ひとり、妙に大きく耳が垂れ下がる帽子を被った金色チビは、可愛くも何処と無く放置出来ぬ気持ちになる。 新人にある突っ走り行為をしそうな一方、問題に巻き込まれそうな危険を孕む。 他の仲間がいるから大丈夫かも知れないけれども。

 

「とほほ」

「どうしたの、ダリア」

 

その仲間……空色っぽい髪で背の高い村人はグッタリして元気が無い。 恐らく慣れぬ冒険で失敗でもしたのだ。 地下渓谷でスケルトンに射抜かれた反動のまま奈落の底に落下したとか。

或いはハイセンスな建造物と新人にありがちな自身の豆腐建築を見比べて落ち込んだとか。 つまるところ若造である。

ああいや、村人に建築が出来るとは思えぬから、別の話か。 だがそれらは経験と時間が解決する。 焦らなくて良い。

取り敢えず食事だ。 今日は金ではなく取引で馴染みあるエメラルドで試した。 相変わらずギョッとしたような歓喜したような反応と共に受け取られたから何かしらは出て来るか。

 

「あんなに頑張ったのに、分け分けしたらこれだけ」

「仕方ないよ。 機体の修理代や燃料代もあるし」

「毎日の食費もバカに出来ないしね」

 

食料が出て来たら分けてあげよう。 物資もな。

どうしてか、この若造達をある種の危険の中に放置する気になれない。 何故とは考えない。 故にと動く。 衝動に突き動かされるままに邁進する。 励ましと勧誘目的もある。

 

「イケスカ動乱があって、仕事が増えてると思ったのになー」

「イサオって人もいなくなったんでしょ?」

「工事はあちこちでやってるのにな」

「空賊が減ってるらしいですし、逆に仕事は減ってるのかも」

「ユーハングの影響?」

「でしょうね」

「でも飛行船護衛は引き続きあるハズで」

「なんでないのかなー」

「そ、それは…………ウチらがペーペーだから?」

「あー! あー! 聞こえなーい!」

 

ヨシヨシ食料が来た。 「カラーゲ」とケーキモドキとステーキが何枚も来た。 卵料理である「おむらいす」なるモノも来た。 総じて美味い。 湯気を立て、食欲を唆る匂いを建物に充満させる。 収穫して直ぐに食うスイカや生人参のような効率重視を捨てて、敢えて食を楽しむ為に求められた嗜好品……様々な創意工夫の努力と旨み。

 

もうね。 コレ美学。

 

効率のみを求めて来たクラフターほど、物資や技術を得たけれど、そういったワクワクやドキドキに欠けていたのではないか。 何にせよ、最近になってソレを学べたのは僥倖に至り。 そういった意味では、我々も若造かとクフクフと笑う。

しかし……たった1個でこれだけ来るのも感動ものだ。 元の世界の村人もこれくらいだったら良いのに。

ハァン合唱が喧しいのは共通しているが、それはそれ。 これはこれ。 楽しめるものは楽しもう。

ああ、そうだ。 お福分けしよう。 揃いも揃って物欲しげであるし。 共に世界を楽しもうではないか。

 

「あっ、あの人……あんなに肉を」

「唐揚げ……オムライス……食べたい」

「虚しくなるから。 余計にお腹空くから言わない見ない」

「でも匂いは防げない」

「うぅ」

「……あまりじろじろ見ないの……あれ!? 食べ物がどんどん消えていく!?」

「ユーハング人か!」

「う、噂の謎の技術……ッ!」

「余裕の笑み……羨ましいなぁ」

 

各種をアイテムスロットに入れていく。 ステーキ同様1スタック64個で纏められるから良い。

 

「こっち来たよ!」

「どーしよ!?」

「大丈夫。 悪い事はしないハズ」

「で、でも怖いよぉ」

「万が一は逃げる用意を」

 

何でか此方を見て怯えてる若造。 可哀想に、冒険の最中で先輩に騙されての決められた建築の強制労働や全ロスト、荒らし被害に遭ったか。 自身は そんな事はしないけどなぁ。

だが臆するな。 それで楽しい事に溢れる世界から身を消したら悲しい。 これから先、それ以上の苦難もあるだろうが、同時に楽しい事もあるのだから。

ますます同情の念に駆られたクラフターは、相手のテーブルに食料を設置した。 好みが分からないのと、どうせ食い切れないので置きまくる。

 

「わっ!? 今度は突然、消えた料理が目の前に!」

「えっ? くれるの?」

「そうみたい」

「やったー! オムライスー!」

 

さあ。 たんと食え。 元気を付けろ。

空腹は駄目だ。 走れないし体力が回復しなくなるばかりか、下手するとダメージを喰らって瀕死状態だ。 そんな状態では冒険出来ない。 仲良く分けあって食するが良い。 班の結束も固まる。

 

「唐揚げもくれるって!」

「良い人じゃん!」

「ありがとうございます。 この恩は いつか返します」

「唐揚げ! 唐揚げ!」

「ちょっと待って。 何でソースをかけようと?」

「え? 醤油しょっぱいよ?」

「私はどっちでも良いけど、ソースはちょっとーって感じぃ?」

「ソース!」

「醤油!」

「マヨ……」

「「なんか言った?」」

「ひぇっ!? な、なんでもありません!?」

 

おかしい。 何故か「カラーゲ」を巡って争いのハァンが響いた。

醜い。 先程までの同情から一変、欲深い連中だとゲンナリしてしまう。

クラフターは「カラーゲ」を 1個かじって眺める。 たくさんあるんだから仲良く分け分けすれば良いのになぁと。

マルチにあるあるな土地や物資の奪い合いも、客観的に見ると虚しいがコレもまた虚しかった。 堕落の食がこういった美醜を生み出す。 それを見て考えて食う「カラーゲ」もまた美味かった。 食とは奥深い。

 

「この人、そのまま食べてるよ」

「こっちを見ながら、美味しそうに」

「食い散らかして行儀悪いけど……とても美味しそうに食べるわね」

「仲良くしろって事か」

「そうね……小皿で分けて食べましょうか」

「みんな違って、みんな良い」

 

おや。 パタリと大人しくなって食べ始めたぞ。 なにか黒っぽい液体やドロドロした白い謎の液体を組み合わせて。

そういえば、自分のテーブルにも置いてある。 クラフトして食する。

 

美味い!? 美味いぞ! 美味すぎる!!

 

なんだコレは! 普通に食うだけで美味いのに、組み合わせる事で味に更なる深みが出た!

液体は3種類ある。 性質の異なる黒が2つと白がひとつ。

どれも美味い!

美味い!

美味いぞぉッ!!

クラフターはパクつきまくる。 喜びが頂点に達した今、満腹値の限界を超えてもなお食える。 素晴らしい。 素晴らしきかなこの世界!

 

「あ、あの人。 醤油もソースもマヨネーズもかけて食べまくってるよ」

「相変わらず行儀が悪いけど、どれも美味しそうに食べてる」

「……たまには、醤油かけようかな」

「私も たまにはソースかけようかな」

「マヨネーズも」

 

再び教えられたな、村人に。

 

未知の世界は身近にも広がる。 生きるとは感動の連続だ。

クラフターは涙ぐみながらも、美味しそうにパクついたのであった。

 



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牛な村人と家畜

不定期更新中。
自由と休みが欲しい……。


駆け出し、ルーキー、新米、若造。

新人をどう表現するかはさておき、若い子を見ると開拓や新築にしろ、新たな息吹を感じてならないクラフター。

それはここ、イジツ世界の各地でも見受けられる。 食料取引所にいた6人組も、他の町にいる若人も。 それが我々と異なる村人であってもだ。 この世界は生きとし生きる者の世界であり、これからも そうやって未来は続いていくのだと皆は莞爾として頷くのであった。

 

「シャーッ!?」

 

それはそうと猫が欲しい。

生きとし生きるものだ。 拠点に連れ帰り、クリーパー避けにする。 空飛ぶブーンの中にはクリーパーのように景観や建造物を爆破してくるヤツがいる。 なら猫を置いておけば効果があるかも知れないと思って、猫を追い掛けた。

別に元の世界から連れて来れば良いのだが、初期スポーンまで戻るのが面倒だ。 ゲートは彼処にしか無いのだ。

クラフターは魚を持つ側の腕を無闇に振り回しながら、イヅルマなる既存の町にしては綺麗で明るい方の町中を走り回る。

見つけた気品のある猫を懐柔しようとしているのだ。 素早く逃げるから魚を食べさせられない。 元の世界でも少し面倒だったが、今回も面倒だ。 だがそれ故に価値が生まれる。

 

「ユーハングが魚を振り回しながら、走り回ってる!?」

「時々、建物や地面に叩きつけてます!?」

「妙なことを」

「猫を追い掛けているみたいです」

「猫に魚を食わそうと?」

「そんな、高級な食材を猫に食わそうとは」

「ユーハングからしたら、直ぐに手に入る食材なのかも」

「……とって食おうと?」

「困りますっ! 私たちの手柄がー!」

 

困ったヤツだなコイツぅ〜。

ペチンペチンと魚を地面や建物の壁に叩きつけながら追い掛けて……ああ、路地裏で見失った。

だが近くにいる。 僅かに視線を感じる。 ギラリとしたものだ。

これみよがしに生魚を食する。 1匹食べた。

マズくはないが焼いた方が良い。 満腹値の意味でもだ。 もっと言えば食料取引所にあるフリー素材「ショーユ」なるモノと組み合わせると美味いかも知れない。

取り敢えずもう1匹を取り出して生魚を振り回す。 旨みよ飛び散れ。 どうだ食べたかろうと。

出てこない。 出てこないか猫。 しかし本番はココからだ。

クラフターは近くの壁に近寄った。 そして……打つ。 壁を打つ。 魚で。 ベチィンベチィンッと旨みが音に乗る。 勢い余って壁を1ブロック分壊してしまった。 エンダーマンに抜かれた箇所みたいに。 仕方ないから丸石で補修して再度打ち始める。

 

「魚で壁が壊れましたああああ!?」

「ど、どうして魚で?」

 

どうした猫よ。

獣染みた視線を隠せて無いぞ? 更にギラギラさせて、どこまで耐えようというのかね?

そぉら、またも壊してしまった。 もう一度補修して壊せば……はて、どうなるというのか。 クラフターは首を傾げる。 猫が寄って来るなら良いが、この行為そのものに意味があるのだろうか。 興奮のあまり、何か大切なモノを失っていたようだ。

 

「あっ! 猫がユーハングの魚に!」

「だめえええ!? 食べられちゃう!?」

 

かと思えば、目当ての猫が寄って来た。 ギラギラと物欲しげに魚を見つめるから、与えてみた。 どことなく嬉しそうである。 この世界でも猫は猫だった。

悄然としたクラフターは、せめて本来の目的を果たそうと魚を与えていく。 食べていく姿に癒されていたら、ふと気付いた。

 

「あれ。 食べるわけじゃない?」

「太らせて食べる気なんじゃ?」

「さ、流石にユーハングが謎だらけでもそこまでは……し、しないよね!?」

「とにかく確保です、お姉さま!」

 

飼い猫じゃん、この猫。

何故気品がある違和感ですぐに気が付かなかったのだろう。 そも、山猫じゃないじゃん。 ここジャングルバイオームじゃないじゃん。 普通に既存の町中じゃん。

恐らくこの地に住まう村人の猫だと予想した。 己の失敗を恥じていると、案の定というべきか、白い服をした村人集団がやって来たと思えば猫を掬い上げて走り去っていく。 風のようだった。

クラフターは追い掛けるでもなく天を仰ぐ。 目的が失われたから。

この切なく胸を刺す思い。 目的や行動の意味を失い、無気力になる悲しさ。 世界に対して嘘と偽り、誤魔化しをしてしまったような辛さ。 リスポーンとは違う、何かをロストした苦しみ。

周りを見る。 陽に照らされて輝く美しき町だ。 その中を子ども村人がハァンハァンと元気良く走りまわる。 空は稀にブーンが飛び去る。 大きな空飛ぶ建築物もいる。 いつもの光景だった。

それでも地面の舗装具合や湧き潰し、防衛設備の少なさに問題を感じるから、その改善を僭越ながら行おう。 何かの罪滅ぼしだ。

 

「すいませんが」

 

そう気持ちを切り替えたら。

猫を連れ去った白服のひとりが声を掛けてきた。 髪の毛は赤色。 何かね赤毛の白服よ。 これ以上、何を奪おうというのだね。

 

「カナリア自警団、団長のアコです。 迷い猫の確保協力に感謝します。 ですが、その、すいませんが器物破損の現行犯で、貴方も本部まで同行願います」

 

何事かハァンと鳴いたら、リードを取り出して……なんとクラフターを繋いだ!

なんという事だ……戦慄と共に身を震わせる。

 

家畜にする気だ、この赤頭!

 

まさかの事態だ。 クラフターはクラフターであって、家畜ではない。 育て増やして、肉や革を得る側だ。 まさか、この白服は我々を取って食おうというのか。

食えずとも、全ロストした時点でパクられるモノはある。 困る。 それは荒らし行為のソレだ。 逃げなければ。

 

「あっ、こら! 暴れちゃ駄目です!」

 

駄目だ。 ああ、リードからは逃げられない!

飛び跳ねて足をジタバタしてみる。 駄目だった。 間に土ブロックを設置して解除を試みる。 駄目だ、リードがブロックに連動して上に上がる。 首が締まる。 窒息ダメージが入ったから直ぐに土を壊した。

 

「何をしてるんです!? というか、何で突然土壁が出来たり壊れたりするんですか!?」

 

ツルハシとスコップがあれば穴を掘ったが、生憎と持って来ていない。 拠点に置いて来てしまった。

かくなる上は、村人を殺すしかない。 植林と伐採作業用のダイヤ斧しかないが、十分だ。 赤頭をカチ割ろう。

淡々と次から次へと対策方法が出て来ては行動をしていくクラフターだったが、次の瞬間には白服の仲間が戻って来たので中断する事になった。

 

「団長……首になんで縄?」

「アコ、私の知らない そういう趣味が?」

「ち、違います! 手首に縛った筈なのに首に勝手に縛り直されていて……!」

「い、いや……理屈が分かりません」

「お姉さまは、決して そんな事をしません!」

 

クラフターは斧の代わりに魚を出して齧る。 満腹値で窒息ダメージを回復しつつ、癖で村人を観察する。

緑髪は、眠そうな顔をしている。 胸部が牛みたいだ。 上位金りんごみたいな希少性の輝きを放つ金髪も牛みたいな胸をしている。 バケツを持ってきたら、ミルクが取れるかも知れない。

オレンジ色ぽい村人は、農業を営むクラフターか。 心得がある雰囲気を感じる。 ダイヤクワを持ってるのかも知れない。

紫髪は猛者の雰囲気がある。 ダイヤフルエンチャント装備で挑まねば返り討ちにあいそうだ。

 

「きゃっ!?」

「なんか、こっち見ながら生魚を食べ散らかしてます!?」

「気味が悪い」

「ユーハングは謎に満ちてるわ」

「お姉さまは、私が お守りします!」

 

ひとつの結論に到達する。

 

コイツら、農業を営む作業員と赤髪の家畜なんだと。

 

赤髪が長で、緑と金色は牛である。 オレンジ色は畑系の作業員。 紫色は家畜を捕獲したりシめる役割か。

クラフターは改めて戦慄と共に身を震わした。 この世界の村人は謎に満ちている。 見た目は村人なのに、まさかミルクが取れる可能性を考えていなかった。

暴力を振るわれる経験はあるが、まさかまさか……。

 

「とりゃっ!」

 

ドスリッ。

紫色に拳を叩き込まれた。 またも暴力である。 違うのは威力と異常状態の効果だ。 ワンパンで暗転して身動きが取れなくなる。

 

いやぁ、この世界は広いなぁ。

 

ズルズルと引き摺られる感覚を僅かに感じながら、クラフターは何処かに連れられて行く。

 

木柵に囲まれるのだろう。 ジャンプでは越えられない、1.5ブロックくらいの大きさの。

最悪、素手でも柵を壊して脱柵しよう。 家畜はやはり、勘弁だ。 自由万歳。

 



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改修と内装

不定期更新中。 休日なしの残業時間と連続出勤更新中。 ツライさん……。

時系列は突っ込まないで(殴


『私が飛行隊の隊長に!?』

『近年、我が街の自警団は保守的なイメージから若者の入隊希望者は減少している。 その対策として自警団初の女性だけの飛行隊を新しく発足する事にしたのだ』

『ですが私は自警団学校を卒業したばかりです』

『君の父親は伝説的なパイロットだと聞いている。 その娘が団長になれば世間の注目度も高い。 何も問題はない』

『分かりました。 父が愛した自警団を守る為に、何でもします!』

『うん? 今なんでもって言ったね?』

『へ?』

『早速、この衣装に着替えて欲しい』

『何ですかコレ!? スカートも凄く短くてスケスケじゃないですか!?』

『世間の注目を浴びる為だ、これくらいの露出は普通だよ。 君にはもっと恥ずかしい仕事をさせるからね、ほらほらほらぁ』

 

「いやあああ!?」

 

喧しいハァンで目覚めると、机や椅子が並ぶ部屋にいたから、クラフターはまんざらでもなかった。 統一されている内装の評価は高い。 唯一、理解出来ぬのは隅の黄色い置物だ。 たくさん並んでいる。 羊毛に似た材質を用いているようだ。 知っている知識では僅かに鶏のシルエットに似ている。 かなり不気味ではあるが。 何にせよ謎の生物を模している事に違いはない。

相変わらず謎に溢れる世界だ。 未だ見ぬ生物がいる予感がしてクラフターはワクワクした。

 

「アコ、大丈夫? 魘されていたけど」

「すいません……夢を見ていたようです」

「汗が凄いですよ」

「何の夢?」

「い、いえ。 大丈夫です。 あっ、ユーハングの方も起きたみたいですね。 取り調べをしなくちゃ!」

「大丈夫かしら」

 

赤毛が近寄ってきた。 周りには牛的村人と農家がいる。 しまった。 拉致されたのを思い出した。

柵で囲まれていないし、赤毛はハサミもバケツも剣も持っていない。 狩られる心配はないか。 いやしかし、アイテムスロットにナニを仕込んでるか分かったものではない。

 

「怖がらないで、少し話を聞くだけです」

 

話は通じない。

村人との取引は出来ても、それ以上の複雑は難しい。 その生態を理解しきれていないのが証拠だ。 まさか拉致されるとは考えもしなかったワケだし。

 

「うわっ、首をグリグリし始めましたよ!」

「うっ!?」

「気持ち悪い」

「お姉さま! この人は危険です! 離れましょう!」

 

どうしようかとクリーパーと対峙した時のように後退りながら周囲を見る。 統一された部屋からヒントを得ようとしての事だ。

そこでふと気付く。 この部屋は「遊び」が足りないと。

統一されてこそいる。 テーブルと椅子。 それらの明るさと配置。 綺麗だが悪く言えば味がない。 「楽しさ」が少ない。

松明を5マスや3マスおきにひたすら設置して並んでいるだけのスーパーフラットとは言わない。

 

だが真面目で質素。

 

そう評価を下したクラフターは首を横に振った。 振りつつ少ない手持ちと周囲を確認して……ダイヤ斧を手に持つ。 もう思考は建築家サイドに堕ちている。 仕方ないね。

 

「突然、手に斧が!?」

「コレは何事かね!?」

「ああ部長! 捕まえたユーハングが武装しまして!」

「なんで取り上げなかったんだい!?」

「と、突然にどこからともなく取り出しました!」

「危険です、下がりましょう!」

 

もっと遊んで良い。

僭越ながら内装改修をさせてもらう。 建造物とは、つい外装に拘りがちだが内装あってこその建物である。 細かながら、奥が深い。 利便性のみならず魅せ方もある。 ひとつの階段ブロックの位置でガラリと印象が変わるのだ。 その点、慎重を要し皮となる建築物より考え悩む事も珍しく無い。

それ故に面白い。 クラフターはこの困難をつくづく愛した。 だから真面目かつ面白みが少ない部屋に改善の余地有りと判断した今、愛故に改装をやろうと思う。 思う前に腕が動いていたが。

 

「あああ!? 本部が壊されていく!」

「危険です! 離れて!」

「シラサギ自警団を呼んできてくれ!」

 

斧を振って、既存物を破壊。 さっさと内装をサラにしてフラット面へ。 白紙に戻してイチから造り変えた。

少ない手持ちは、内部の要らない家具類を破壊して再利用して補う。 湧き潰しを埋めるだけでなく様々な模様替えと工夫をこなして……村人に邪魔されながらも完成した頃には夕焼けである。 ちょっとのつもりが実にクラフター好みに仕上がった。 ご機嫌だ。 その場で思わずジャンプする。

 

「結局は止められず……って、何よ、この窓際。 夕日に照らされて……綺麗」

 

いつの間にか乱入していた艶のある灰色髪の村人が、ウットリと夕陽の差し込む窓際を見ている。

そこは石ハーフブロックで壁際をカウンター風に仕立て上げたものだ。 窓際には余りのレンガで植木鉢をクラフトしてたんぽぽを生けている。 風で靡く一輪の花が、ほのぼのとした日常と平和を演出している。

 

「これは、シャンデリア? キラキラと輝いて綺麗ですわ」

 

金色髪が褒めそやす。

それはシャンデリア風にしたグロウストーンである。 松明を挿しまくるだけでは見た目が気になる。 かといって光源が無いのでは暗い。 そこで実用と見た目を考えた一品がソレという事だ。

 

「これは周辺の地図! 上空からの図のようですけれど、色付きで分かりやすいし正確です!」

 

紫髪が褒めている。

それは、この辺の地図を額縁にて貼り付けたものだ。 実用と事務的な部屋であると同時に遊び心を忘れまいという意思表示でもある。 インテリアのひとつとしての機能もあり、実用性も高い。 クラフターも良くやっている。 拠点に貼る事で世界を感じ、思いを馳せ、冒険の日々を送ったり考える。 それは とても素敵だ。

 

「うぅ〜! こんなの飾りよ! 飾りだけど……羨ましくなんてないんだからー!」

「勝手に改装されたけど、良いと思う」

「ユーハング人は謎だらけ。 止めることも叶わないですが……害は無いかと。 たぶん」

「全ての自由と楽しめる心が羨ましいですっ!」

「農業に料理に開拓に建築に外装に戦闘に……様々な分野で活躍してるのは本当なんだなって思いました」

「全部、この人たちで良いんじゃない?」

 

ハァンと褒めそやす灰色髪たち。

いやぁ、照れるな。 こだわりや遊び心って個人差はあるけどさ?

クラフターは満足気にウムウムと頷き、舞い上がる興奮を原動力に、再び世界と対峙していくのだった。

 



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村と拡張

 

クラフターの数だけ考えがあってテーマがある。 ビル群を主な建築物としているクラフターもいれば、丸石製造機やトラップタワー、半自動回収畑等の工業系専門クラフターもいる。 巨大地上絵のようなアートに走る者もいる。 軍事系に吶喊する者もいる。

それらは総じて素晴らしいモノであり、決して批難されるような趣味ではない。

 

土地問題は別として。

 

マルチである以上、嫌でもついて回る問題のひとつだ。 考えがバラバラなら反りが合わない。 単に土地不足の場合もある。 そうして奪い合い追い出し合い、宝石類での取引や裏切りの果て……剣で肉を切り、矢で相手を針山にするという醜い争いが発生するのだ。 オフコウ山みたいに。

ここ、イジツ世界……タネガシなる街及び周辺の土地も例外ではない。 クラフターが来てからというものの、現地にいるマフィア『ゲキテツ一家』そっちのけで行われる厳しい創造の争いは激化するのであった。

 

「ユーハング人め! ゲキテツのシマを蹂躙しやがって!」

「選挙どころじゃないぞ!」

「ゲキテツ一家の名折れだ」

 

仁義なき創造の争い。

それは如何に自身のテーマが素晴らしいかを村人の数で決めようという事だ。

今回は暴力ではない。 村人から様々を学んだクラフターは、その名の通りに創造において勝負する。 素晴らしい街を造れば村人の数も多い。 分かりやすい『票』で勝負しようというのだ。

既存の街及び周辺の空き地を用いる。 どうしてか初心者染みた屋根を階段ブロックで貼り直し、デコボコした土ブロックをハーフブロックで平坦にし、割れたガラスはさっさと壊して新しい板ガラスを嵌め、水溜まりなのか分からない道の溝にある半端は水バケツで用水路にする。 例によって湧き潰しがなってないので松明を刺しまくって明るくした。

 

「スラム街が、あっという間に」

「年寄りも歩きやすく、飲み水に足る清水が流れ、夜を照らす街並みに廃屋の1件もない、か」

「良いんじゃないっすかね」

「住民は良くても、勝手にシマをやられて止められないのはメンツがない!」

「まあまあ。 人が来るぶん、みかじめも多くなると思えば」

 

ここまでが雛形。 初心者講習とも言うべき行為。 腕はここから必要になってくる。 ここからは空き地と周囲の土地を利用した拡張工事だ。

豆腐の大量生産をしたところで村人は喜ばない。 それは前の世界でもそうだった。

 

「なんだ? 急に辛そうにして」

「貧困街に何か思い入れでも?」

「…………どうすっかね。 この人らは何を考えてるか分からないっすから」

 

苦い思い出だ。

実はクラフターも元の世界で村を街にしようと試みた事がある。 建物を増やして拡張し、そうなる筈だった。

ゴーレムを見上げる子どもに癒されたり、穴に落ちてきた村人を殺したり、ハァンハァン煩い村人を丸石で殴ったり、どうしてかゾンビ化した村人にダイヤ剣をお見舞いしているうちに……ある日突然、飽きた。 村など どうでも良くなったのだ。

それでも惰性と偏在で作業を続けていたら ある事に気が付いた。 コイツら建物なんてどうでも良いのだと。 扉さえあれば満足する集団だと。

馬鹿馬鹿しくなって、丸石の壁に大量に扉を並べ立てた。 村人は嬉しそうにハァンと鳴いた。 クラフターは村を捨てた。

それでも作業を続けるべきだった。 そうするのが己の美学だったじゃんと思い返して、村に戻ってみればゾンビパニックだった。 群れを成して襲って来た。 子どもゾンビがニワトリに跨っている……チキンジョッキーも来た。 クラフターはダイヤ剣をお見舞いした。

そうして無人になった村を見て虚しい気持ちになる。 見ながら食べた腐った肉は……まあ、いつも通り腐っていた。 空腹の異常状態が いつもより虚しかった。

 

「レミの情報網的には? コイツらの経歴とか」

「調べた事はあるっすけどね。 ラハマの近くに空いた穴から突然現れて、イジツ中に拡散して主に開拓と建築をしているっす。 殆どは理解出来ない技術っすけど、危ない連中ではないっす」

「都市が吹き飛んだ事もあるって聞いたが?」

「そりゃ手を出したからっす。 そっとしておく分には、有益な方っすよ。 勝手にやられるっすけど」

 

過ぎた事は仕方なし。

今の風景を悪化させる事はしない。 クラフターは内装含めて作業に没頭。 グロウストーンと木柵を組み合わせた街灯を並べたり、土ブロックをハッチで囲ったプランターや観葉植物を置いてみたり、階段ブロックと看板を組み合わせた椅子を置いてみたり。

カーペットも敷いて、暗い街から明るい街へと改修及び拡張していく。

 

嗚呼。 素晴らしき建築物たち。

 

この世界、大きく良い点がある。 村人が扉だけでなく建築物そのものや内装を誉めそやしてくれる事だ。 そして使用してくれる。

創造主としては これ程に嬉しい事はない。 やはり使われてこそ価値がある。 更に造る気力が湧くというもの。

 

「戦闘機や爆撃機を造るとも聞くけれど」

「中身は私たちの知らない部品っすけどね。 スペックも本来のものより高くなってるっす」

「ユーハングが来た話から70年経ってるんだ。 向こうも技術が上がったって事じゃないか?」

「その事なんすけど。 彼らはユーハングじゃない可能性があるっす」

「というと?」

「70年経ってるにしても、こうもガラリと部品の形状や原型って変わるモノなんすかね?」

「うーん。 どうだろう。 考えた事がない」

「まっ。 想像の範疇から抜けないっすけど」

 

創造の世界は素晴らしい。

クラフターは互いに本来の目的を忘れて改築、改修、拡張を続けていく。

夢中になれるもの。 褒めてくれるもの。 それらは人生を豊かにするものだ。

直接世界を動かすものではない。 だが原動力だ。 それは必要である。 我々はRS回路やピストンのような無機物ではない。

して、無機物でないからこそ思考や気持ちを汲み取れる。 村人もそうだ。

効率だけを考えて生きる事は世界を狭める退屈な人生だ。 趣味を持て。 開拓し、建築し、邁進せよ。

 

クラフターは笑顔で進撃する。 ツルハシとスコップの腕は、これからも止まる事を知らない。

 



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世界と村人

駄文更新。 終わりを考えねば……。

違和感あったらごめんなさい……。


「ユーハング人は凄いよね。 何事にも縛られず、広い世界を冒険し続けて」

 

食料を物欲しげにする若造を餌付けながら、クラフターは改修工事に励んでいた。

対象は おすわりスポットのブーン小屋と、表の大きな道路だ。 初期スポーン地点から近い場所なのもあり、新規開拓は難しい。 やる事といったら、物質輸送の手続きや荷造り、こうした改修やレイアウト変更。

ふむ。 実に面白い。 発展し尽くした様に見せかけて、幾らでも手を付けられる。 つまるところ何度でも楽しめる。

そんな世界と生活。 繰り返すは最高の日々。

クラフト人生万歳。

 

「イジツ中にいるんだろ?」

「そうね。 見ない日はないわ」

「凄い勢いで開拓するよね。 建設も」

「物資も潤沢に なったわ」

「食べ物くれるから好き」

 

ブーン小屋の隅々を徘徊して、土ブロックで足場を作り蜘蛛の巣をハサミで収集。 糸をスタックしていく。 後で釣竿を作る。 魚釣り以外に戦闘やブーンを鹵獲するのにも使う。

 

「高い所の掃除までしてくれて、ありがとうございます」

 

ピンク髪が下でハァンと鳴いている。 恐らく蜘蛛の巣の活用方法を知らないのだ。 或いは羊毛作りに使用するのかと思考されて非効率だと感じているのか。

だが、トラップワイヤーだとかツール系を思えば必要な行いだ。 素材になる。 シルクタッチで そのまま得られれば、トラップに そのまま使える。 巣に絡まって動けなくなったところをボコボコにしてやるのだ。

 

「ひょえー。 表の滑走路がピカピカしてるよ」

「誘導灯ね。 それとビルのは……航空障害灯かしら」

「ユーハングは、平気で雲より高い建物を建てまくるからね。 あった方が多少は安全かな」

「あの赤いの、どういう仕組みなんだろう」

「電気じゃないみたい」

 

背の高い村人と仲間が、外の仲間や改修工事に関心を持ち感嘆の声を上げている。

大きな道路の両脇に並ぶリピーターは、まあ いつも通りとして……加えているのは周辺のビル壁にRSトーチを刺している事だ。 一部は屋内に設けたクロック回路で点滅する。

どうもブーンが ぶつかりそうになる事が頻発しているから、この様にしたのである。

松明や屋内の明かりがあるから分かるやんとも考えたが、夜間エリトラ飛行をしていた某仲間が明かりのない角に頭部を強打してリスポーンした事例がある。 明かりがないから無という認識はアウトなのを改めて思い知らされたのであった。

ならグロウストーンや松明でも良いじゃんとも思う訳だが。 点滅させたいとかコストを考えていたら、トーチが選ばれた。 照度はボンヤリでも見えれば十分。 結局は遊び心。 しかし実用性も兼ね備えているから文句は言えまい。

 

「普通なら苦行な工事も、全部楽しくやれるのね」

「世界と人生が楽しくて仕方ないんだよ」

 

いけない。 防衛用の対空TNTキャノンの改修と増築も行わないと。 旧式の単発式と新型のフルオートキャノンが混ざったままだ。

世界を相手取るクラフターは、常に在住しているわけではない。 村人だけでも威力と防衛力を維持する為には、少しでも良いものにしなければ。 村人に我々と同様のクラフト能力が有れば良いのだが。 ああ忙しい。

 

「世界、か。 私たちは空を飛ぶけど、あの人たちは主に地上を行くんだよね」

「見える世界は別々。 でも、見ていると不思議と元気が出て来るよ」

「その姿勢から学べるものも、多いだろうね」

「そうだよ! 今は予備隊だけど、あの姿勢を見習って いつかコトブキ飛行隊みたいになるっ!」

「おー!」

 

白帽たちのクラフト能力も、また興味深いのだが……どうしてか赤砂も まけないし、丸石ブロック ひとつ壊すのに 凄い苦労している。 努力は認める。 ご苦労。

クラフターは空を仰いだ。 同じ空の下でも、やはり同じ生き方や建築は無理なのだと。 そも、世界が違うのだ。 種類からして異なる。

ただそれでも、元の世界より不思議な生態をしていて面白い。 して知性的である。 建物や開拓を褒めてくれる。

 

世界は同じようで違う。 だがまあそれでも。 そんな世界の『不平等』もクラフターは愛した。

 

「よし。 そうとなれば訓練だ!」

「ええ!? 今から!?」

「ひょえー!」

「為せばなーる! 為さねばならなーい!」

 

騒がしくて振り返れば、若造が騒いでいる。 そうだ。 それで良い。 クラフターは頷いた。

振り返れば村人。 起きれば村人。 開拓すれば村人。

身近な村人には元気でいて欲しい。 此方も元気になるから。

 

クラフターは微笑みながら、作業に戻る。 この世界の空と地上は広い。

 



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展覧会と経歴

駄文更新。
日付が変わる頃に帰宅する……なおも休みはなく。
早く……解放されたい……自由が欲しい……。


 

「ここだよ! 魚類展覧会!」

 

若造が騒いで移動するから、釣られてやってきたのは既存の建物だった。

中々良いデザインをしているが、内装は如何なものかと入っていくと。

 

「アロワナモドキ!」

 

ガラスの囲いに水を入れて、中に見たことがない魚が1匹泳いでいる。 横に長い。 豚のように どこ見てるかも分からない。 周囲には看板が何枚も確認出来た。

 

「…………これだけ?」

 

興味深いな。 先ず出た感想がソレだ。

 

クラフターは首をグリグリと動かし、中腰になって観察する。

薄暗く、内装という内装は敢えて無くしているではないか。

 

成る程。 クラフターは頷く。

 

注目点、集中点を絞る手法だ。 このやり方は、クラフターも経験がある。 己の歴史や功績を形として強調し、表せるから良い。

 

「これだけで お金を取られるのも」

「ユーハングが払ってくれたじゃない」

「えっと。 金で出来た大きな箱?」

「受付のお姉さん は硬直してたね」

「なんポンドするのよアレ」

「そんなモノを渡したユーハングは暫く棒立ちしたと思ったら、ガッカリしてた」

「相変わらず、よく分からないよ」

「価値観が違うのよ」

 

金ブロック1個の価値はあるかは微妙だが。

最初は村人が取引を持ち掛けてきて、応じないと奥へ進めそうになかった。 仕方なく金ブロックを設置、取引をしようとしたら それ以上の動きがなかった。 溜息が出た。

取引が成立する場合としない場合の見極めが難しい。 下手すると今回のように損失が大きくなる。 やはりか、信頼出来るのは食料取引所くらいか。

 

「魚ねぇ。 生きているのを初めて見たけども……どこを見てるのか分からない。 怖いよぉ」

 

過ぎた事より魚だ。

魚は見たところ新種である。 この新種を発見、皆に存在する証拠として、この建造物では内装を簡略化して展示しているのだ。 看板は恐らく説明文。 解読出来ないのが悔しい。 満腹値や味の感想、料理する為のクラフト方法が 書いてあるのだろう。

或いは釣り方か。 釣竿にもエンチャントが施せる。 何か その点で条件があるのか。 それとも釣った場所か。

 

「狭い場所に ひとりぼっち。 可哀想」

「そして、焼かれたり……場合によっては生きたまま食べられるという」

「ヒィッ!?」

 

似たような事なら、元の世界でも経験しているが魚を展示した事はなかったな。

此方の世界でもやってみよう。 この魚の味や満腹値は気になるが、新たな衝動が勝る。 早速行動だ。

 

「あっ! ユーハングがジャンプしながら外に出て行く!」

「ユーハングの世界って、みんなこうなの?」

「その事なんだけど……彼らはユーハングじゃない可能性があるんだ」

「そうなんですか?」

「あなたは?」

「ぼくは───」

 

沸き起こった衝動に駆られるがままに突き進む。

展示だ。 久し振りに造ろう。 我々の歴史書となる作品を。 村人に内装やクラフトの物品類を理解出来るかは不明だが、確かに我々がこの世界に存在した資料を残したい。

建造物こそ多く、万事万物に繋がる開拓と建築行為を行う我々は畢竟、世界と繋がっているといえる。 それは常なる晴れ舞台を生きているという事だ。

満喫していた。 だが見えない一部始終の物品を世界中にいるハァン集団に見せずして良いものか。 否。 見せるのだ。

共感をして欲しい訳じゃない。 理解をしろとも言わない。 だけど、願わくば。 ロマンを感じて欲しい。 クラフトを。 世界を。 この世は楽しいのだと。

 

「うわぁ。 また何かを建て始めた」

「少し大掛かりなんだな」

「ありゃあ、魚類展覧会の建物と似ているな」

 

空き地を見つけたクラフターは、凄い勢いで建造を開始する。 モデルは魚を展示していた建物だ。 石レンガを主に使う。 村人にも分かりやすくする為だ。

内装は魚のみならず、各種の鉱石ブロックや9個でクラフト出来るブロックを展示。

額縁で様々を貼りまくりもする。

して同志の計らいでなんと、エンダードラゴンの卵も展示した。 タッチされたらワープしてしまうので、ガラスブロックで囲い込む。

 

こうしていると、郷愁にも似た何かが湧いてくる。 あの頃が懐かしい。

エンダードラゴンを討伐して、かくして どれ位の年月の間が空いたのだろうかと。

 

ジ・エンド。

 

闇に浮かぶ島と、その世界に巣食うエンダードラゴンを倒すと皆で決意したあの日から、多くを切磋琢磨して、数多の犠牲と労力を払いながら、協力してポータルを発見、起動、闇の世界に突入して倒した。

最後に漆黒の身体の内側から光を放ち、四散した刹那、クラフターは歓喜に包まれた。 苦労が報われた達成感で愉快な腰振りダンスや首振り、腕を闇雲に振り回した。

その後、残された卵の回収方法が分からなくて苦労したが、なんやかんやで松明に落とすようにしたらアイテム化したので回収。

生まれたゲートに飛び込んで元の青空広がる世界へ帰還。

後に引くは、反動による虚無感。 ああ、さて次はどうしようと悩んだな。 結局はいつも通り世界の開拓と建築の日々に戻ったが。

そうこうしている中、この世界に繋がるゲートを発見して今に至る。 生きていると様々な発見があって良い。 感動の連続と冒険、開拓し切れない毎日だ。 果報者である。

 

「うん? おお! こっちは鉱石を展示しているのか!」

「鉄鉱石に石炭に……金とダイヤ鉱石か!」

「この巨大な塊は全部純金か!?」

「これが無限の動力源を生み出す赤い石……禍々しいのだ」

「なんで魚や肉が額縁に収まってるんだよ!?」

「他にも色々あるぞ!?」

「……注目がこっちに集まっているうちに、展覧会の魚を放流しましょう」

「ええ!? もう少し かまどや赤い石を見ていたいのだ……ああー! 引っ張らないで欲しいのだ〜!」

 

例によって建造した建物に勝手に入ってきた村人達が、驚愕のハァンを上げていく。

クラフターは笑顔で頷く。 こうして反応してくれるのは素直に嬉しい。 造った甲斐がある。

 

なにより我々が生きてきた、価値ある存在の証明な気がしたのだ。

 



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村人観察と逃走

早く……解放されたい……自由が欲しい。


数多の星が瞬く闇の中にボンヤリと浮かんでいるイヅルマという街。 その空き地に例の大きな道路を敷設して、物見櫓からクラフターは世界と向き合っていた。

見下ろせばポツポツと灯る複数の窓と、川のように光を束ねる街灯の道。 少し離れた所を見やれば、同志が造った池か湖かという噴水広場が浮かび上がる。 更に街外れでは開墾した段々畑が、まるでそこだけは日中であるかのように暗黒を寄せ付けない。

ここは星空を奉じた街だったのだろうか。

あの宝石を散りばめた空のように、幽玄さを目指した街並みだったのかも知れない。

しかし、それを認める事は出来ないから、地平へと目をやった。 空と地の境界線を視界に収めれば はたして影に飲み込まれてるのは地の方だ。 それが現実だ。 理想の空は美しくも遠い。 主に足を地に付けて行動するクラフターは、ブーンに跨り空駆ける天馬の如く自由に飛ぶ村人を羨ましく思う。

だからこそ、創造主たるクラフターは影の側にいて陰より迫る脅威を打ち払いながら、ブーンを鹵獲したり製造して村人の真似事を行った。 だがやはり先人には敵わない。 それでも感動と経験は生きていく。 それは、これからも、きっと。

 

「この街もユーハングの毒刃が」

「いいんじゃないかしら。 整備された道に、夜も昼の如く照らす消えない松明。 年寄りや子どもも安心して歩けて、飲み水に足る噴水広場は皆の憩いの場所よ」

 

ハァンが薄ら聞こえたから、首をグリグリ動かして探してみる。

いた。

金髪チビと……もう1匹は親兄弟なのか、大きい金髪だ。 別の街にも金髪はいたが、少し服装は違う。 この世界の村人は髪色や服を見ても職業の判断が困難だ。 またそれも面白いと思うのだが。 飽きないし。

 

「…………アイツらは勝手が過ぎるけどさ、時々遠くを見てるよな。 何かに焦がれるように……期待して、夢中になって」

「突然どうしたの?」

「いや、何でもない。 らしくない事を言うもんじゃないな」

 

問題は突然に殴られる事だ。

理不尽である。 此方は村人との共生と笑顔と自身の利益が矛盾しない創造をしているつもりなのに。 まあ、そんな理不尽も愛そう。 どんとこい。 何もかも上手くいったらつまらない。 その分、世界は広く まだまだ楽しめる。

 

「あの人たちは ひとつ所に縛られるような存在じゃないのよ。 山越え谷越え、世界を越えて。 冒険して開拓して建築して……そうやって生きていくの。 楽しそうに、誇らしげに…………嘘偽りなく」

 

殴られるといえば、あの白帽だ。

クラフターに近いようだが、同じようにブロック設置やクラフトが出来ない。 代わりに我々の知らないアイテムを扱う。 世界が変われば勝手も変わるというものか。 アレも中々に興味深い。

 

「何だよ、お前まで」

「さあ? どうしてかしらね」

「あー、なんだ……この店で間違いないのか?」

「ええ。 タレコミによればね」

 

おや。 金色が建物に入っていく。 食料取引所だ。 どこか古くも活気がある場所で、高い評価をしている。

内部にて行われるのは食事だけではない。 面によって黒斑点の数が異なる極小のブロックを2個転がす遊戯が行われている。 アレのナニが面白いのか理解が出来ないが、訪れる村人には人気のようだ。 皆ではないが。

 

「しまらねぇ話だ。 天下のゲキテツ一家が、貸し付けた金を持ち逃げされるなんてよ」

 

見に行くか。

クラフターは思い立ち、その衝動のまま物見櫓を飛び降りた。 野太い声を街に響かせつつ、ベイクドポテトを齧って落下ダメージを満腹値にて回復させる。

エンダーパールを持っていれば、直接ダイブ出来たが仕方なし。 今は さっさと建物へ。

 

「おい。 何か聞こえなかったか?」

「ええ。 外から……ユーハングが来たわ」

「……もう 酒場にいようが空にいようが驚かねえぞ」

 

取引所に入ると、刹那的に注目されるが慣れた。 最近は それでも無視する村人も多くなってきたが、どちらにせよ驚かない。 どこにでもいるので、一々気にしていたら進めない。 此方も無視する。

ただし、今回は少し注目したい村人がいるので、遠目に取引所内を観察しよう。 金色もそうだが、所内に若造が3人いたのだ。 それから白帽もいた。 特に利益が生まれるわけでもないのに、その偶然は嬉々として村人観察の衝動へ繋がる。 何が起きるというのだね。

 

「なんだ、お前か。 お前も丁半博打を……って、そんなワケないか」

「あら。 お知り合いですか?」

「まあ、何人かは。 コイツは格納庫の戦闘機を勝手に弄るから迷惑してんだ。 悪気はないんだろうがな」

「良い人たちだよ? 食べ物くれるし、色々造ってくれる」

 

白帽と若造がハァンハァンと互いに唸りあった。 似た光景は よく見るが、どこかしんみりしている気もする。 悪い事のようでそうではなさそうだから、心配せずに観察を続行する。

 

「……毒にも薬にもなる連中さ。 お前らも気を付けろよ。 市営駐機場に止めてるヤツらとか」

「おっとヤベッ! 弄られたらたまんねー、先帰るわ!」

「あーっ!? アイツ、金を貸し付けたヤツじゃねぇか!」

「ちぃっ!? バレたか!」

「逃げんなゴルワァッ!」

「耳揃えて返して貰いましょうか!」

 

今度は金髪と、ブロックを転がしていた村人が甲高いハァンで鳴いて追いかけっこを始めて……そのまま所外に出て行った。 戻ってこなかった。 湧き潰しをしたとはいえ、危険な夜には違いない。 なのに屋外に出るとは。 勇者なのか愚者なのか。

 

「カナリア自警団ですっ! 食い逃げ犯がいると通報を受けて来ました! 全員動かないで……って、ユーハング人!? まさか、日頃の奇妙な行いのひとつとして無賃飲食を!?」

 

今度は別の街で見た、農家な赤毛がやって来た。 いけない。 またリードを付けられてしまう。 逃げねば。

 

「あっ! コラ待てー!?」

「やれやれ。 ユーハングがいるところ、何かしらは騒がしいな。 楽しいけどよ」

 

笑顔で逃げながら思う。 毎日が刺激的で楽しいと。

トラブルや困難を愛そう。 世界は複雑な冒険で溢れている。

 



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『おわり。』へ向けて

疲労と精神疾患系を患い、この先どうしようと思いながらの駄文投稿。

何となくの終わりを模索中。


 

「偵察の お仕事で、燃料が許す限りの地上観察!」

「長距離飛行……疲れるよー!」

「そんなこと言わない。 戦う事を前提としていない分、安全な任務なんだから」

 

若造が開拓地までブーンで出張って来たから、余計な事をされないように見張っておく。 エリトラによる滑空や花火消費が勿体ないので、同じブーンを使用する。

 

「で、でも襲われでもしたら……!」

「大丈夫だって! どうしてかユーハングも一緒に飛んでくれてるし!」

 

若造は放っておくと何をしでかすか分からない。 悪意がない分、荒らしより厄介だ。

テーマに沿わない豆腐建築をするのは百歩譲って許せるが、素材収集場所が分からずに観賞用の木を伐採してしまう事もある。 他者の土地の下をブランチマイニングしてしまい、地下室に大穴を空ける場合もある。 それは景観や建造物破壊だ。 重罪である。

この村人たちに、そこまでの行動を起こせるか微妙ではあるが。 警戒するに越したことはない。

 

「えっと……地上の開拓地はここら辺までなのかな?」

「パッと見、ここらで止まってるわね」

「はぁ〜。 やっと偵察も終わりか」

「何日かかったのよ」

「この先はユーハングも知らない世界なのかな?」

「余計な事を考えないように」

 

しかしまあ、どこまで開拓してきたのだろう。

この先にもまだ見ぬ世界が広がっている。 ひたすらに冒険をして開拓して建築して。 どこに何があるかの把握は最早難しい。 それでも足を止めずにツルハシとスコップを振るい続ける。 まだ見ぬ世界が我々を待っている限り。

 

ふと、郷愁にも似た想いがクラフターをよぎった。

 

地上に生えるビル群や生い茂る草木の上……ブーンやエリトラで飛ぶ時とは違う、静かな高所の光景である。 空の青さが近しい一方で、見渡せるが故に地上の果ては却って遠い。

 

行かねば。

 

切なく胸を刺す想いに、クラフターは意味もなしにブーンを空中回転させた。 しかし、直ぐに止める。 別の衝動があるからだ。

クラフターは行かねばならない。

『果て』の風景を見なければ。 そこに巣食う『終わり』の象徴と対決しなければ。

誰に命じられた訳でもなく、それで何かを得られるという目算もなしに、ただクラフターは確信しているのだ。

そうしないでは我々の冒険が意味を失うと。開拓してきた全てが嘘になると。 地と空、全ての世界に対して……何かを誤魔化してしまうと。

 

「あっ! ユーハングが一斉に未開拓地に行くよ!」

「新しい開拓でも始めるんだよ」

「そうやって、アイツらは世界を相手取って楽しむか……羨ましいな」

「彼らの冒険に終わりって、あるのかな?」

「……あれ? 離陸してくるユーハングも多いね」

 

同志も何かを感じてか。 一斉に未開拓地の向こうへと歩みを進めた。 ブーンに跨り、空路で行く者もいた。

その先に何が待ち構えていようと、我々は正々堂々と対峙する。 元の世界でいうエンド世界に挑む時に似ている。 或いはウィザーか。 それは不安ではない。 終わるかも知れないという心配や切なさではない。

胸が高鳴り、期待と希望に満ちたものだ。 恐れる事は何もない。

 

「…………ッ!? ま、前!!」

「アレは……わっか!?」

「大変よ!」

「ウッズ社長に報告を……いや! みんなに、全員に!」

 

行こう。

 

全クラフターは、開いていく新たなゲートに立ち向かう。 中からはウィザーやらゾンビやらスケルトンやらが溢れ出ていく。 無数にだ。

 

確信する。 アレは元の世界に繋がっていると。 して、荒らし集団がけしかけたモンスターの大群であると。

 

クラフターは首を激しく振る。 腕を闇雲に振り回す。 激しい腰振りダンスで互いを鼓舞する。

 

さあ、諸君。 我々は開拓者であり建築家であり創造主である。 して、世界を楽しめる者を望んでいる。 それに相対する荒らしに出会う時、全力で立ち向かってきた。 闇を打ち払って、それすらも楽しんだ。

今回も、規模こそ違えど その時だ。 祭りの時間だ。

 

諸君。 クラフター諸君。

己の持ち得る能力、クラフトをぶつけよ。

 



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荒らしとゲートと猛突進用意

駄文更新。 名前は伏せてますが、不謹慎な部分があるかも知れません。 もしそうでしたら、すいません……。


 

始まりは突如として現れた わっか。 そこから異界のバケモノが大量に溢れ落ちて来た。 特に夜になると、その数は凄まじい数となる。

そんな異変に気付いたクラフターは地上にて、凄まじい速度で塹壕や防壁を構築。 遠方から砲撃やら弓矢で応戦し、空からはブーンによる爆撃で数を減らしていく。

後はだいぶ前に あったように わっか をTNT等で塞いでしまえば一件落着……かと思われたが、そう簡単には問屋が卸さない。

 

わっか からは、真の荒らし……我々と同様のクラフターが現れたからだ。

 

今まではブーンだとか村人を相手にして来たが、今回は勝手が違う。 我々と同じ、或いはそれ以上の脅威と対峙しなければならないからだ。

何故仲間が? とは考えない。 元の世界でもこの手の者はいた。 珍しくも何ともない連中だ。 破壊に快感と美学を求める片手落ちの下衆だ。 さっさとリスポーンしてもらおう。 能力が同等以上なのは厄介だが、この戦力比ならば恐るるに足らぬ。

 

ところが。

 

「ユーハング同士が砲撃戦をしているぞ!?」

「おい! お前らハルカゼ予備隊の言っていた事よりヤバい状況じゃねーかよ!」

「前からいた連中の方が押されてないか!?」

「わ、分からないよ! 突然始まったんだもん!」

「いかん。 応援の飛行隊を直ぐに呼べ!」

 

なんと少数派であるハズの荒らし側の戦闘展開速度が凄まじ過ぎた。

元々作業速度や陣地構築速度が人外のクラフターだが、此方が1門のキャノン砲を製作している間に10門のフルオートキャノンを製造されて、TNT投射量も天と地の差があるならば……結果は どうだろうか。

 

「ああっ!? 開拓地がボロボロだ!」

「陣地も壊滅したぞ!」

 

撃ち合いになったのは、僅か数秒。 後は一方的に砲撃されて防衛陣地はボロボロにされてしまう。

モンスター用の簡易防壁のことごとくは爆散し、即席キャノンはバラバラ。 操作員及び装填手は爆発の中に消えていった。

生き残りは止むを得ず増援が到達するまで退避壕に飛び込み、防衛戦に移行する羽目になった。

非情なる砲撃音と、脇で土埃が跳ねまくる穴蔵。 鼓膜を圧死させんがばかりの着弾音が轟く。

最早、無数に降りかかる砲弾の脅威からは逃れられない。 だから大地に幾重にも刻み込まれた塹壕の中で、クラフターたちは猫のようにうずくまる。

まるで寒さを凌ぐように互いの体を密着させながら、いつ来るか分からない仲間を待ち続ける。 待ち続けながら、座標を味方に伝達、アウトレンジによる長距離砲撃支援を要請したのだが、

 

「遠方からの砲撃がっ!」

「くそっ! 敵さんが空中に張った壁に阻まれたか!」

 

敵もソレを想定し、ゲートをドーム状に丸石で覆う。 表面は水流を流して耐爆仕様。 それに阻まれて形勢逆転に至らず。

寧ろ、発射音や発砲煙から、なんと砲撃陣地を逆算されて反撃された。 たった1度の砲撃で陣地が全滅した。 恐ろしく正確な砲撃である。

アイツらただの荒らしじゃねぇ……多くのクラフターは戦慄と共に身を震わせた。

 

「ど、どうする!?」

「どうするって言ってもよ……アイツらバケモノクラスだぞ!?」

「此方側のユーハングが押されてるなんて……!」

「ひぃっ!? 攻撃して来た!?」

 

地面の中から攻撃する方法もあるが、それをやると相手に侵攻ルートを与えるようなものだ。 レベル差が激しい。

我々が反撃の手立てに困っていると、暇を持て余したのか、今度はブーンを攻撃し始めた。 原始的に弓矢のみだが、まだ狙いが甘い。

ふむ、とココで気付く。

 

敵は対空能力が低いのでは?

 

対地能力は やたら高いが、空への対応は甘い。 いや、耐爆ドームをクラフトして舐めているのもある。 対空キャノンの技術もないのではないか。

試しに、ブーンに乗っていた仲間が近寄った。 弓矢による応射を喰らうが……やはり。 高高度まで攻撃は届かない。 だからといってキャノンを使わない。 ブーンも飛ばさない。

元の世界での知識や能力を高めただけなのだ。

 

これは……いける。

 

勝機を見出したクラフターは、ブーン側面にTNTを取り付けては火打ち石で直接投下、空爆していく。 壁を壊せなくても、クラフターには爆風ダメージが通じるので。

この世界の村人はお腹にぶら下げたTNTモドキを投下したら、それっきりなようだが、クラフターはアイテムスロットにTNTと火打ち石があれば空中で投下出来るから良い。 いちいちRSやスイッチを用意する必要がない。 村人もやれば良いのに。

 

「い、いや……相手は対空戦闘が荒い!」

「俺たちでもやれる……?」

「爆撃隊を編成して、地上だけでも……!」

 

しかし困った。 ブーンによる攻撃も限界がある。 相手もただで殺させてはくれない。

煽るように左右に避けたり丸石による防壁で防がれる。 ダイヤ防具なのもある。 耐爆のエンチャントでもつけているのだろうか。 厄介だ。

何とか荒らしを引き剥がし、ドームを破壊、ゲートを閉じなければ。 その為にはブーンの援護の中、エンダーパールによる強行突入からの近接戦闘に持ち込む必要がある。

 

「こちらコトブキ飛行隊、隊長のレオナだ。 状況は?」

「おお! オウニ商会の用心棒か!」

「こ、こここ、コトブキ飛行隊ッ!? お会いできて光栄ですっ!」

「挨拶は良い。 また例の わっか が現れてユーハングが揉めていると聞いたが」

「はい! その、わっか からバケモノの大群が出てきて……それは此方側にいたユーハングが倒したんですが、わっか から新たに出てきたユーハング人が戦闘を仕掛けてきまして……現在交戦状態です」

「よく分からないが、いつもの喧嘩じゃないのは分かる───応戦する!」

 

塹壕からそぅっと様子を伺う。 空駆けるブーンが増えてきた。 よしよし。 数に比例して荒らしはマトを絞れずにいる。 矢が適当な撃ち方になってきた。 今の内に攻勢に出よう。

砲兵陣地は復旧作業中。 即射等の支援砲撃は望むべくもない。

クラフターは俊敏のポーションを飲むと、空き瓶を放って塹壕から飛び出した。 ブロックで荒らしが陣取るドームに登るような真似はしない。 バレたら突き落とされるしかないからだ。

ここはエンダーパールの投擲範囲に到達したら直接「上陸」する。 その方が手っ取り早く安全だ。 残りは弓矢による援護。 突撃部隊が上陸次第、後続も続く。

 

「えぇ!? なんかユーハングがワープしなかった!?」

「何を寝ぼけた事を…………今更、何をしても驚きませんの」

「驚いてたよね、沈黙からして」

「喋ってないで援護だ援護ッ!」

 

ブーンが時々横殴りに 荒らしを攻撃してくれる。 たまに爆発する飛翔物を飛ばしてドームを壊そうとしてくれているがやはり、直接ツルハシで壊す他なさそうだ。

上陸した頃き、相手はようやく気づいており、してやったりと思ったが……強い。 格闘戦の話だ。 間合いや飛び斬りのタイミングが完璧だ。 読まれている。 挙句に毒スプラッシュのポーションを投げて来る。 状態異常は防具じゃ防げない。 して、戦闘中の牛乳バケツ一気飲みは不可能だ。 何人かは毒刃に倒れてしまった。 ノックバックでドームから押し出せれば良いだなんて、甘い考えだった。 逆に斬られて押し出されそうだ。 その都度、足を空中でジタバタさせて後退する。

反省しよう。 取り敢えず丸石で防壁を造って時間を稼ぐ。 この間にドームを破壊するのだ。 効率強化のダイヤツルハシを振るい、一斉に破壊作業をする。 砲弾がゲート内に入るように穴をこじ開ける。 水流で作業が難しいが構わず手を止めずに。

 

「わっかを壊すにも、まず表面の殻を割らなきゃ話にならんか」

「前のように、飛行船を突撃させても駄目だろうね」

「悔しいが爆撃は効かない。 殻はユーハングに任せるしかない」

 

今度は此方が壊したドーム壁を修復してきた。 互いに そうはさせないと牽制の攻撃を与え合う。 ダイヤ防具による攻防とは決着がつきにくい。 だがこれが相手の狙いでもあった。 こんな事をしていてはドームに砲弾を撃ち込めるほどの隙間がいつまで経っても出来ないからだ。

 

「うわぁ!? なんだあれ!?」

「緑の斑ら模様の、棒状の生物……ッ!?」

「気味悪ッ!」

 

そうこうしている内に、地上を後回しにしていた分、モンスターが拡散していく。 いけない。 クリーパーの比率がどういうわけか多い。 そういや昼である、自然と生き残るのはそういう魑魅魍魎だ。 アンデッド系は太陽光で燃え尽きる。 蜘蛛は中性になる。 敵性を維持している一般の敵といえばクリーパー。 そういうことである。 このままではイジツ中で爆発テロが起きてしまう。 それはいけない。 阻止だ。 でも人手が足りぬ。

 

「放置は出来ん! 撃て! 何処へも行かすな!」

「うりゃあ!」

「爆撃でも機銃でも旋回機銃でもレンガでも何でも構わん! あのバケモノ共を1匹残らず倒すんだ!」

 

と、思っていたら。 なんと村人と そのブーンがクリーパーを倒し始めたではないか。 空を飛んでいるので反撃される心配もない。 一方的に倒している。 よしよし。 またひとつ、ブーンの優位性を理解出来た。

しかし、決着が付かない。 耐久やTNT、物資が持たない。 ブーンだって改造してなきゃ燃料やファイヤーチャージモドキナシに戦えない。 空いた穴に、クラフターが直接乗り込む方法があるが、中は大きな空洞で、ゲートにたどり着く前に射殺された。 重力に逆らえないので足場を作りながらだとそうなる。 ブーンや砲弾が入れれば良いのに。 ままならないものだ。

 

マズい。 このままでは戦略的に負ける。

早期決着を。

 

こうなったらアレを使うしかない。 この世界の巨大怪鳥をスポーンさせていたダンジョン周辺で手に入れた設計図にあった「アレ」だ。

 

アレはブーンというより「空飛ぶクリーパー」である。 適当に「スカイ・クリーパー」とでも名付けておく。

少し変わった形で、何より「自爆」するような設計だからだ。

ブーンみたいに飛び、して砲弾としての役割を担う「アレ」。 リスポーンを前提とした捨て身の攻撃は、破壊の美学に囚われた者の仕業か哀しみの果ての産物か。 それは分からない。 だが今回、役に立って貰う。

 

何故なら今まで見てきたどんなブーンより速い。 その速さに賭けるからだ!

 

クラフターは地上に散らばった、クリーパーのドロップ品……大量の火薬を搔き集めると、貴重品類と一緒にエンダーチェストに放り込み、TNTゼロ距離自爆でリスポーンした。 やる事は決まった。 邁進するのみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同志が奮戦する中、遠く離れた初期スポーン地点。

リスポーンして戻ってきた何人ものクラフターは、直ぐに滑走路に向かう。 そこには、そこそこ大きな怪鳥が。 テストフライトすらしていないが、母体として使うものだ。

 

「あっ! おい、前線はヤバいんだって? 零戦乗ってくか? お前に変わって整備は万全だ…………あ、乗らないの? そうか……まあ、お前らの自由だ」

 

脇でしょげてる白帽を無視して、さっさと母体下に作業台とエンダーチェストを置いてスカイ・クリーパーをクラフトして取り付ける。 レシピはクラフターに分かりやすく翻訳されているが、とにかく大量の火薬やTNT、RSブロック3基分以上……なんとスタック単位で消費する。 だが、それだけ強力だと期待する。 威力はクリーパーの名に恥じぬモノになるだろう。

 

「うん……? おい、ソイツはなんだ? 見たこともないぞ。 上の一式陸攻自体、お前らが造るまで知らなかったが……照準器は付いても武装なんて無いじゃないか、ソレ。 ロケットのようだけど。 震電改……じゃないよな」

 

よし出来た。

時間が惜しい。 出撃だ。

武装なんて取り付けている暇がないので、母体の防衛は現地任せと、搭乗員の弓矢任せだ。 よし。 テイク・オフ。

 

「まるで爆弾みたいにお腹にぶら下げ…………おい待て待て、まさかソイツは!?」

 

ブーンが重いらしく、地上を離れるまで時間が少し掛かった。 だが構わず飛行する。

戦場となっている開拓地は遠い。 到着まで同志が持てば良いのだが……急げ。 急げブーン!

 

「おいよせ戻れ! 戻るんだぁ!! 私はまだ、お前らに教わりたいことがッ! 見たい技術が! 世界が! お前らと……まだ! まだ居たい理由があるんだァッ!!」

 

忌まわしくも疎ましいゲートを叩き潰してくれる。

 

破壊の為のクラフト。 TNTキャノンや即席地雷とは方向が少し違うモノ。

 

戻る事は無いだろう地上をガラスブロック越しに見る。 白帽が半泣きしてハァンハァンと叫んで追いかけてきているが、ただでさえ小さな身体が どんどん小さくなっていく。

それが何だか可笑しくて……クラフターは少し微笑んだ。

 

それは白帽にも伝わって。 格好付けてお別れだと言われたみたいで。

 

彼女は小さな身体を滑走路の末端で崩れ落とした。

 




白帽が、どうして「用途」に気付いたのか。 それは技術を扱う者、整備する者だったからかも知れない……。


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援護と猛突進エンドロールとリスポーン

駄文。 終わりへ向けて。


 

「屠龍が来たのか」

「航続距離の問題や、状況の問題からだろう。 単発の戦闘機を大量に投入すれば良い状態じゃないだろうし」

「だな。 既に何機もの戦闘機が燃料不足で帰還した」

「統制の問題もある」

 

リスポーンした仲間が「スカイ・クリーパー」を用意して飛び立ち、到着するまで前線を維持。 地上のクラフターは必死の抵抗を続けている。

援護してくれていたブーンの数も燃料不足からか逃げてしまい、代わりに多少大型のブーンがやって来た。 やって来ただけで、状況は改善しない。 やはりクラフターで何とかするしかないようだ。

 

「おい! ありゃなんだ!?」

「屠龍……いや、ユーハングの新兵器か!」

「最近、ユーハングが発掘して製造したとかいう、一式陸上攻撃機じゃない?」

「ああ、ラハマの滑走路で造ってたヤツか」

「腹にぶら下げてるのは何だ? ロケット弾か!?」

「それにしちゃ風防があるぞ。 照準器もある」

「航続距離が無いから、ぶら下げてるんじゃないの?」

「妙な運用法ですわね」

 

逃げていくブーンと「スカイ・クリーパー」が空ですれ違う。 ガラスブロックの中からジロジロと見てくるが、気にせず進む。

今回は村人には関係ない話だ。 クラフターの不始末は、クラフターで拭う。 いつも通りだ。 ただ、こんなシチュエーションは初めてだから心踊る。 早く飛びたい。

そんな想いと、成功させるという決意と共に「スカイ・クリーパー」に搭乗する ひとりのクラフター。 防具なんて付けない。 アイテムスロットも「空」だ。 遺品の回収は困難だからだ。 このブーンも、用途故か内装は簡易的だ。

それはそうと目の前が赤くなり、死亡メッセージが出された時……どうなるのだろう。 なんて出るのか。 気になる。 いつもは己の失敗を突き付けられる表示も、今回は、それが正しい成功なのだと思うと妙な気持ちだ。

 

「まさか」

「どうしたの?」

「ロケット弾……命中率を上げる為に人が直接誘導するモノだったら?」

「まさか!」

「キリエ。 彼らは死なないんだよな?」

「へ? ああ、うん。 見間違いじゃなければ」

「やりかねないぞ、自爆」

 

早く見えないだろうか、ドーム。 オラ、ワクワクすっぞ!

実のところ、RSブロックを用いている為に燃料切れというのは無い。 ところが、加速が止まらない可能性がある。 操縦性も、どこまで悪くなるか分からない。 すると障害物となるゲートにぶつからず、明後日の方向へサヨナラしてしまうかも知れない。 それが思わぬ災害に繋がったら困る。

故に確実に行くべく、こうして視認出来る所まで飛行する。 遠方程に座標計算も困難だ。 現地の地上隊がこじ開けた穴の位置も常にコロコロ変わるのであるし。

 

「むっ!」

 

などと、多少楽観していたバチだろうか。

ソイツは現れた。

 

首が3つ、全身は漆黒。 どんな生物とも似ても似つかぬ裏ボス的存在。

火の玉と圧倒的な体力と特殊能力、攻撃力で地上を無に帰す荒らしを具現化したような負の存在……。

 

ウィザーである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「強過ぎるって!」

「バケモノめ!」

「何とか気を引くんだ!」

 

ウィザーに目を付けられてから、どれくらいの時間が経ったか。

母体の怪鳥から、必死に搭乗員やすれ違ったブーンで応戦するも、やがては効かなくなり、またも焼き鳥にされてしまった。

大翼を燃やし、黒煙を空に撒き散らす。 それでもまだ飛んでいる。 操縦士が左右に回避行動を取りつつ空中で消火作業、修復しながらも応戦。 衰弱の状態異常を受けながらも動き回る。 忙しい。

 

「燃料持たない!」

「不時着覚悟だ! ここでユーハングを見捨てられるか!?」

「出来ない」

「出来ないよね〜!」

「出来ませんわね」

 

ブーンがウィザーの周りをブンブン飛ぶ。 その小回りのおかげで被弾を避けている。 やりおる。 クラフターは見習わなきゃなと思いつつ、前を向く。 そうだ。 全ては ある目的の為に……!

 

 

見えた。

 

 

ゲートだ! ゲートが見えた!

 

身もブーンもボロボロにしながら、ソレを見た。 下の景色、全ての元凶にして善とも悪ともなるソレを。 潰すと覚悟し決意した目標物を。

もう良い。 ここまで来れば空いた穴を視認出来る。 後は吶喊するのみ。

 

「バケモノがユーハングに!」

 

だというのにウィザーが、此方にやって来た。 畜生。 破壊されたブーンの残材からの即席クラフトで制作した鉄剣をブンブンと振り回して追い払う。 無理か。 離れ過ぎだ。 ジャンプすれば届きそうだが体力がもう無い。

防具なしでここまでよくやったと思う。 せめて一太刀浴びせたい。

 

仲間に振り返る。 互いに頷き合う。

ああ、行って来い。

ああ。 後の世を生き残る事があったら伝えてくれ。 不器用にクラフトするしかなかったクラフターの生き様を……!

 

「ああ!?」

 

意を決して、瀕死の搭乗員は、ブーンから飛び立ちジャンプ斬りを喰らわした。 成功した。 満足したとばかりに良い笑顔を浮かべて彼らは大地へと落ちていく。 流れ雲で地上までは見えなかった。

 

「くそー! バケモノめ!」

「お、おい! うしろ! 零戦が突っ込んでくるぞ!」

「まさか!」

 

それでもウィザーは生きていたが……どこからともなくブーンがやって来た。 初期スポーン地点にあったブーンだ。 別のクラフターが搭乗している。

そのまま全力でウィザーに体当たりして……爆発四散した。 今度こそウィザーは倒れた。 大量のブーンのクラフト材と共に、ネザースターも地上へと消えていく。 後で回収案件だ。

 

「あああ……!」

「くそっー! 結局私たちは無力か!」

「行け! 行けユーハング!」

 

ありがとう同志たちよ。

ありがとう、ブーンと村人よ。

 

高度を維持出来ず、操縦不能となった母体に残っていた操縦手はスカイ・クリーパーを切り離す。 刹那。

後尾から全力の青白い炎を出し、凄まじい速度で降下。 ゲートの高度で水平飛行に戻す。

 

穴の隙間は僅か。 でも十分だ。

 

地上隊が必死に荒らしを食い止めている中───。

 

スカイクリーパーはドーム内のゲートに突入。

 

大爆発を起こし。

 

ドームごとゲートを消し飛ばしてしまった。

そのクラフターの身体もろとも。

 

 

死亡メッセージは「スカイクリーパーで自爆した」だった。

そのままだったから、少しガッカリした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どういうわけか、エンド世界を攻略して飛び込んだゲートの時のように、よく分からない字が下から上へと流れていき、気が付いたら初期スポーン地点だった。 いつもの光景だった。

 

「うっうう……死んじゃ意味ねーじゃねーかよ」

 

唯一違うのは、白帽がメソメソとして、背中を小さくしている事か。 またクラフトにでも失敗したのだろう。 まあ、よくある事だ。

肩を叩いて励ましてやる。

 

「へ………………生き返ったああああああ!!?」

 

デカいハァンを鳴かれたから、全力で後退。 いけない。 クリーパーみたいな起爆動作かも知れない。

 

「無茶しやがって!」

 

次には駆け寄られ、壁際に追い込まれ、顔を打撃され、細くも強力な腕に体を拘束され、小柄ながら恐るべき攻撃力を秘める白帽に密着されたクラフターは もはや為す術なく身を強張らせていた。 伝わってくる振動に全てを悟り、瞑目する。

もう駄目だ。 どうか初期スポーンの中心で大爆発が起きませんように。

 

「忘れるなよ。 お前らだけじゃないんだ。 私たちも心配するし、教えて欲しい事も……礼を言いたい事が山程ある。 それを言わせずに去るなんて許さねえからな!」

 

クラフターは、ふと思った。

もう間も無く爆発か即死の類が起きるが、村人はどうなるのだろうか。

 

クラフター以外の諸々は死ねば消滅するのが世界の法則である。 それでも世界にはそれら諸々は存在し続ける。 生き物もモンスターもスポーンするからだ。 村人だけは注意が必要だが、世界は広く、番を見つければ増やすことは可能である。

今まではそれでよかった。 何の疑問もなかった。 スポナーの発見と確保に血眼になったのも素材収集が目的であって、クリーパーのスポナーがないことへの憤懣も火薬需要を原因としていたに過ぎない。

 しかし、今、スカイ・クリーパーにより自爆してリスポーンしたクラフターは世界を問い質したい気持ちに駆られた。

 

 白帽は? 赤服達村人はリスポーンするのか?

 

 リスポーンするのであれば別にいい。 どこで目覚めようともクラフターは元の村人を見つけ出すだろう。 根拠もなしにそんな確信がある。 どこか誇らしい確信だ。

 もしもリスポーンしないなら……クリーパーなどと同じくただのスポーンであったなら、はたしてそれは『村人』だろうか。白帽や赤服をしていれば同じものであると認められるだろうか。

 眩いばかりの生を見せつける村人は……この素晴らしき個体群は……特別な、唯一無二の存在なのではあるまいか。

 あるいは、リスポーンもスポーンもしないとしたら。

 クラフターの生きる世界から村人が永遠に失われてしまうのだとしたら。

 

「え……?」

 

 使い慣れた右手と、ぎこちない左手とで、クラフターは白帽を挟んだ。 膨張させまいとしたのだ。 そうすることで爆発を止めたかった。 或いは感情を抑え込みたかった。

その成果だろうか、白帽の震えは止まった。 しかし、今度はクラフターが震えていた。 どうしてかは分からない。 分からないが、願わくば二度とあのような自爆物は造るまい。 そう想ったのである。

 

「おーい! わっか は消えたぞ! だけどユーハングが……生き返ってるううううう!?」

「おやおや? 何やら良い雰囲気だね班長さーん?」

「ちげーよ!? そんなんじゃねー!」

 

またも甲高いハァンが響いて、どうしようもない。

まあとりあえず。 皆が笑顔のようだから、クラフターは食事をする事にした。 安心したら腹が減ったのだ。

 



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『おわり。』の先。

これで、一応の終わりに。


 

ウィザーを倒して、ゲートを潰し、ひとつの「終焉」へ到達したクラフターであったが、尚も世界は広がっている。

荒らしによって、ボコボコになった開拓地は復旧され、前より良い状態へと相成った。

終焉とは全ての最果てではないのだと思う。 遠い空を見ながら、そう考えた。 あくまでも、ひとつの区切りなのだと。 その先に行くか、その時点で満足するかはクラフターに委ねられている。

 

「あんな事があったのに、まだ開拓地を広げてるよ」

「光の柱なんて造っちゃって。 サーチライトってヤツ?」

「彼らを止める事は出来ないのだろうね」

「止める必要は無い。 いつだって、みんな自由」

 

勿論、アレで満足する気はない。 ネザースターを回収、ガラスブロックと黒曜石でビーコンをクラフト。

鉄ブロック等で4段ピラミッドを製作、その上にビーコンを置く。 パワーアップの状態になって開拓地を勢い良く拡げていく。 まだ見ぬ世界が待っている限り、ツルハシとスコップの手は止まることを知らない。

整地だ。 建築だ。 ブラマイだひゃっほい。

 

「しかし、なんで わっか がまた出たんだ?」

「さあ」

「まさかイサオが?」

「どうかな……分かっているのは、彼らがわっかを塞いで勝って……イジツをまた開拓している事かな」

「いつも通りって言えばいいじゃん」

 

やりたい事が山程ある。 ウィザーによって破壊された土地の整地作業、殺風景な土地の緑化。 壊れ具合の見聞。 今後の戦闘の参考になる。 それから建造物についても。

 

「アイツらがいれば、何が起きても 何とかしてくれる……そんな気がする」

「そうだな。 だが、いつか いなくなった時。 我々だけの力で イジツを守らねばならないんだ」

「それが いつなのか 分かんないけどさ。 今は今でいいじゃん。 ユーハングがいて、イジツは またも平和になりましたー、めでたしめでたしって」

「ははっ、そうだな」

 

元の世界でも、こちらほどではないが開拓は進んでいる。 彼方も一応の『おわり。』を迎えているが、世界は続いている。 此方もだ。 始まりと終わりとは、感じ方次第である。

最果ての光景はココにあるけれど、それはいつもの開拓地の光景。 区切りでしかなかった。 この先がある。 そこに歩みを進めるかはクラフターの判断次第だ。

 

しかし、まあ……何か面白い事が起きないかな?

 

そんな矢先。 元の世界で、新たな生物や世界が現れたと報告が。

 

なんでも雪みたいに白くてズングリした生物だとか、水中を泳ぐ新手の生物だとか。

 

して、ジ・エンド。 あの世界にも新たな道が開けたという。 町だそうだ。

 

 

ほらね? 終わり(END)の先も楽しめるだろう?

 

 

クラフターは嬉々として わっか を出入りする。 今日もまた、イジツとクラフターの世界は騒がしいのであった。

 




読んでくれた方々、ありがとうございました!


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