仮面ライダートリガー (辰ノ命)
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登場人物

登場人物たちでございます。
簡単な説明ですので、気楽にどうぞご覧ください。


10/1
・ウォンテッド幹部 ウヅキ追加
・その他説明変更
10/12
・ウォンテッド幹部 サツキ追加
10/26
・ウォンテッド幹部 ナガツキ追加
11/23
・ウォンテッド幹部 フミヅキ追加
11/29
・ウォンテッド幹部 ハヅキ追加
12/5
・木的 狩馬 追加
12/7
・ウォンテッドボス テロス追加
12/23
・ウォンテッド幹部 ヤヨイ追加
2/2
・ウォンテッド幹部 ムツキ追加
2/8
・ウォンテッド幹部 シワス・シモツキ・カンナヅキ 追加
2/19
・ウォンテッド幹部 ミナツキ・キサラギ 追加
2/27
・挿絵 追加(メインのみ)


 

【挿絵表示】

←人物イラスト

 

プロフィール

射手園 兆 (いてぞの きざし) 性別:男 年齢:21

職業・身分:お尋ね者(重要指名手配) RIVERS(仮)

 

説明

仮面ライダートリガーの変身者。金目的で彼を狙う輩はいるが、正体が全く分からない為、誰も彼を追うことができない(正体を知ってほしい為、本人から進んで言うが無意味)。

まだまだ変身前も後も謎が多い男。これでも主人公なんだよなぁ。

 

 

プロフィール

上砂 巧也 (かみさご こうや) 性別:男 年齢:28

職業・身分:警視庁「組織犯罪対策部」対ウォンテッド特別制圧課所属(通称:RIVERS) 課長

 

説明

仮面ライダーシェリフの変身者。上記の通り課長。26歳の頃にはすでに課長の座についており、数々の難事件を解決し、その場の状況に応じた判断力や決断力。そして周囲を纏めあげる統率力が評価され、若くしてその地位に就く。戦闘において、同じ警官達の中で右に出るものはいないとか。

父は警視総監という立場で、母は指折りの天才外科医という家庭に生まれた。

 

 

プロフィール

内嶋 永理(うちしま えいり) 性別:女 年齢:21

職業・身分:RIVERS所属 新人

 

説明

名門大学を首席で卒業し、その後すぐに警察学校へ入る。才能を開花させ、学業や訓練においてもトップに立ち続けていた。そんなある日、偶然来ていた巧也が目をつけ、そのままRIVERSへ移動となった。

ただし致命的にアホで、食いしん坊であることから才能を活かしきれない場所も多々ある。

 

 

プロフィール

木的 狩馬(きてき かりま) 性別:男 年齢:30

職業・身分:賞金稼ぎ

 

説明

仮面ライダーハントの変身者。バウンティハンターを生業とし、必要以上に金に執着する一面を見せる。女性がかなり好きらしく、ナンパは勿論の事、ウザ絡みが激しかったりする。そんな彼だが、現在この国で1番の賞金額であるトリガーを捕らえる為、彼と戦える物を開発中とのこと。

彼の金を欲する理由とは……?

 

 

プロフィール

當間 佳苗(とうま かなえ) 性別:女 年齢:27

職業・身分:RIVERS所属 情報処理・収集・管理担当

 

説明

主に事務的な仕事を行っている。情報網の幅が広くネットからあらゆる情報を収集することができ、ウォンテッドの捜索等はお手の物。

 

 

プロフィール

片山 孝四郎(かたやま こうしろう) 性別:男 年齢:30

職業・身分:RIVERS所属 開発担当 元・研究員

 

説明

元・研究員だったが、巧也が彼を見つけスカウトし、RIVERSの1人として加わった。機械関係に強く、武器や防具などを開発している。ただ、ウォンテッドに効くかどうかは別の話で、未だに研究中とのこと。

 

 

プロフィール

マスター 性別:男 年齢:41

職業・身分:BAR TRIGGERの店主

 

説明

マスターはマスターであり、本名やその内を知る者はいない。どうやら兆は彼のバーに住んでるらしいが…?

 

 

プロフィール

ドン・ガンホーレ(本名:ガンホーレ・オーザン) 性別:男 年齢:46

職業・身分:ガンホーレ団 団長

 

説明

ガンホーレ団という組織の団長。BAR TRIGGERによく通い、兆とモメる事が多々あるそう。

 

 

プロフィール

イッシュウ(本名:本間 一周 ほんま いっしゅう) 性別:男 年齢:24

職業・身分:ガンホーレ団 団員

 

説明

ガンホーレの右腕。途轍もなく弱いが、精神力は強い。

 

 

プロフィール

ウヅキ(本名:四鷹 天 したか てん) 性別:男 年齢:28

職業・身分:ウォンテッド 幹部

 

説明

ウォンテッド12幹部が1人、ウヅキ。エリアBを任されている。ウォンテッドの邪魔をするトリガーを殺しにエリアAにやってきた。

 

 

プロフィール

サツキ(本名:小島 ゆり) 性別:女 年齢:31

職業・身分:農家 ウォンテッド 幹部

 

説明

ウォンテッド12幹部が1人、サツキ。エリアDを任されている。あまり覇気を感じられない女性。農家を営んでおり、普段は畑を耕しているが、ボスの命令によりエリアAに出向くことになる。

 

 

プロフィール

ナガツキ(本名:不明) 性別:男 年齢:39

職業・身分:ウォンテッド 幹部

 

説明

ウォンテッド12幹部が1人、ナガツキ。エリアEを任されている。エリアEは年中暗闇に包まれており、日の目を見る事がない。幻術を使用する事ができるが、それが幹部の力なのか自分自身の力なのか、色々と謎の人物。

 

 

プロフィール

フミヅキ(本名:保志 秀平 ほし しゅうへい) 性別:男 年齢:23

職業・身分:ウォンテッド 幹部

 

説明

ウォンテッド12幹部が1人、フミヅキ。エリアGを任されている。殺しに快楽を覚えるサイコパス。ボスの命によりエリアAに移動した。ボスがなにを考えているのかわからず不快に思っている。

 

 

プロフィール

ハヅキ(本名:松田 初男 まつだ はつお) 性別:男 年齢:58

職業・身分:ウォンテッド 幹部

 

説明

ウォンテッド12幹部が1人、ハヅキ。エリアHを任されている。代々から町内の祭り事はこの人が中心で動いている。大の祭り好き。自分の(妻の)幸せの為なら何でもやろうとするが、他人の命までは取らない。

 

 

プロフィール

ヤヨイ(本名:宝舟 実船 ほうぶね みぶね) 性別:男 年齢:43

職業・身分:ウォンテッド 幹部

 

説明

ウォンテッド12幹部が1人、ヤヨイ。エリアIを任されている。人を道具としか思っておらず、金の為なら他人の命を平気で奪う。彼のせいで、エリアIはまるで世紀末のような悲惨な状態になっている。

 

 

プロフィール

ムツキ(本名:不明) 性別:男 年齢:不明

職業・身分:ウォンテッド 幹部

 

説明

ウォンテッド12幹部が1人、ムツキ。エリアAを任せてはいるが、彼自身から記憶を奪うという行為はしない。しかしその強さと仕事の早さからボスの右腕と呼ばれている。マスターとは昔馴染みらしいが…?

 

 

シワス(本名:不明) 性別:男 年齢:不明

職業・身分:ウォンテッド 幹部

 

説明

ウォンテッド12幹部が1人、シワス。エリアLを任せてはいる。幹部の中で最も強く、ムツキとは互角。弟にシモツキがおり、いつかは2人でテロスの両腕呼ばれる事を望んでいる。テロスに気に入られているムツキが気に入らない様子。

 

 

シモツキ(本名:不明) 性別:男 年齢:不明

職業・身分:ウォンテッド 幹部

 

説明

ウォンテッド12幹部が1人、シモツキ。エリアJを任せてはいる。大体は兄のシワスと共におり、命令されればすぐにでも行動する。その強さもシワスには劣るが幹部の中でも2番目に強い。

 

 

カンナヅキ(本名:不明) 性別:男 年齢:不明

職業・身分:ウォンテッド 幹部

 

説明

ウォンテッド12幹部が1人、カンナヅキ。エリアFを任せてはいるが、あまりそこにはいない様子。エリアFがどういう状況なのかも不明である。兆に酷似してはおり、狩馬からは本人と言われていた。実際はどうなのか、何故似ているのかは現在は不明である。

 

 

ミナツキ(本名:上砂 巧玄 かみさご こうげん)性別:男 年齢:60

職業・身分:ウォンテッド 幹部 元・警視総監

 

説明

ウォンテッド12幹部が1人、ミナツキ。エリアKを任されている。元・警視総監であり、巧也の父親。死亡したと思っていたが生きており、そして幹部だったことが判明。

 

 

キサラギ(本名:上砂 栄恵 かみさご さくえ) 性別:女 年齢:53

職業・身分:ウォンテッド 幹部 元・外科医

 

説明

ウォンテッド12幹部が1人、シモツキ。エリアCを任されている。元・天才外科医で巧也の母親。ミナツキと同じで死亡したと思われていた。

 

 

プロフィール

テロス(本名:不明) 性別:(一応)男 年齢:不明

職業・身分:ウォンテッド ボス

 

説明

ウォンテッドのボス。彼についての詳細は全く分からず、幹部ですら正体を一切わかっていない。




ぜひご感想や質問等ありましたらよろしくお願いします!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


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ライダー

こちらライダーとなっております。

それではどうぞご覧ください。

12/7
・仮面ライダーシェリフ テンスジュウ 追加
・ライダー・ウォンテッド・アイテムにそれぞれ分けました。
12/23
・仮面ライダーハント 壱式 追加
1/10
・仮面ライダーハント 弍式・参式追加
・仮面ライダートリガー ネクストイレブン
1/26
・仮面ライダーハント 肆式 追加
2/1
・仮面ライダーシェリフ アフタートゥエルブ
2/8
・仮面ライダーハント 悟式 追加
・仮面ライダープロトトリガー ファーストリボルヴ 追加
2/15
・仮面ライダーハント 陸式 追加
・仮面ライダートリガー アフターネクスト 追加
2/26
・仮面ライダーハント 漆曜式 追加
2/27
・挿絵 追加
3/2
・仮面ライダーテロス 追加
3/6
・仮面ライダートリガー ラストデイズ 追加
3/18
・仮面ライダートリガー フロンティアフォーエバー 追加


 

【挿絵表示】

←トリガー

 

【挿絵表示】

←シェリフ

 

【挿絵表示】

←ハント

 

【挿絵表示】

←ネクスト・アフター

 

【挿絵表示】

←アフターネクスト

 

【挿絵表示】

←漆曜式

 

【挿絵表示】

←テロス

 

【挿絵表示】

←ラストデイズ

 

【挿絵表示】

←プリズン

 

【挿絵表示】

←フロンティアフォーエバー

 

仮面ライダートリガー ファーストリボルヴ

身長 198.1cm

体重 91.1kg

パンチ力 3.1t

キック力 11.2t

ジャンプ力 ひと跳び31.1m

走力 100mを4.1秒

 

フィガンナイフ起動音「ONE」

 

変身音「ファーストガンアクション!!『トリガー!!』リボルヴリボルバー!!」

必殺音「リボルバー!! 『ファイア!!』」

※『』の部分は各フォーム共通。

※フィガンナイフを差し込んだ後の起動音「SET」も共通。

 

説明

仮面ライダートリガーの基本形態に当たる姿。特にこれといって特徴的な能力もない。本人は1番使いやすいらしい。

 

能力

・俺の銃が火を吹くぜ(ないです)

 

 

仮面ライダートリガー セカンドライトニング

※ファーストと同スペックなので割愛。

 

フィガンナイフ起動音「TWO」

 

変身音「セカンドガンアクション!!『トリガー!!』ツインライトニング!!」

必殺音「ライトニング!! 『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダートリガーの基本形態に当たる姿… に酷似しているが、横の数字が変わり、更に専用武器のライトニングウエスタンが追加されている。

 

能力

・ガーツウエスタンとライトニングウエスタンの2丁拳銃で火力が上がった(多少)

 

 

仮面ライダートリガー サードショット

身長 198.3cm

体重 117.3kg

パンチ力 13.1t

キック力 11.3t

ジャンプ力 ひと跳び31.3m

走力 100mを4.3秒

 

フィガンナイフ起動音「THREE」

 

変身音「サードガンアクション!!『トリガー!!』ショットショットショット!!」

必殺音「ショット!! 『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダートリガーがサードガンナイフを使用し変身した姿。パンチ力が強化され、多段攻撃を可能としている。専用ガジェットのサードポンプが追加され、ガーツウエスタンと組み合わせる事で、サードウエスタンとなる。

 

能力

・1発で30発分のパンチを繰り出す、多段ヒット攻撃が可能。ただし、キックに関してはこの能力は反映されない仕様。

 

 

仮面ライダートリガー フォースライフル

身長 198.4cm

体重 94.4kg

パンチ力 3.4t

キック力 14.4t→(44秒後)24.4t

ジャンプ力 ひと跳び31.4m

走力 100mを4.4秒

 

フィガンナイフ起動音「FOUR」

 

変身音「フォースガンアクション!!『トリガー!!』ストレートライフル!!」

必殺音「ライフル!! 『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダートリガーがフォースガンナイフを使用し変身した姿。キック力が強化された。ガーツウエスタンとライトニングウエスタンを組み合わせる事で、フォースの専用武器、フォースウエスタンを使用する。

 

能力

・44秒が経つ度にキック力が跳ね上がる。ただし、44秒以内にキックによる攻撃を行わなければ、圧力に耐えきれず破裂する(この形態はパンチには反映されない)

 

 

仮面ライダートリガー フィフスガトリング

身長 200.5cm

体重 168.3kg

パンチ力 15.5t

キック力 25.5t

ジャンプ力 ひと跳び15.5m

走力 100mを8.5秒

 

フィガンナイフ起動音「FIVE」

 

変身音「フィフスガンアクション!!『トリガー!!』ファランクスガトリング!!」

必殺音「ガトリング!! 『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダートリガーがフィフスガンナイフを使用し変身した姿。全体的にスペックが跳ね上がるが、機動力が著しく低下する。ガーツ、ライトニングウエスタン。サードポンプを全て合体させたフィフスウエスタンを使用する。

 

能力

・変身後、55秒間経たなければまともに動けず、経過後もファーストリボルヴより劣るが、各部位に装着されたパーツによって攻撃力防御力を向上させる。

・先程のパーツで凄まじい耐久力を備えている他に、フィフスウエスタンの射撃速度と威力を上げる機能も付いている。

 

 

仮面ライダートリガー ネクストイレブン

身長 201.1cm

体重 91.1kg

パンチ力 23.1t

キック力 33.1t

ジャンプ力 ひと跳び41.1m

走力 100mを2.1秒→(加速時)1.1秒

 

フィガンナイフ起動音「NEXT」

 

変身音「ネクストガンアクション!!フォローイング!!『トリガー!!』イーハーイレブン!!」

必殺音「ネクスト!! 『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダートリガーがネクストガンナイフを使用し変身した姿。テンスの派生により作られ、リミッターをかける事に成功した(その為、テンスの倍化能力は使えなくなった)スピードでならどのフォームよりも群を抜いて速い。

 

能力

・11秒間高速で移動することができるが、11秒間の待ちがある。

 

 

仮面ライダートリガー アフターネクスト

身長 201.2cm

体重 91.2kg

パンチ力 48.3t→(増加時)55.3t

キック力 68.3t→(増加時)74.3t

ジャンプ力 ひと跳び83.3m

走力 100mを1.3秒→(加速時)0.8秒

 

フィガンナイフ起動音「AFTER NEXT」

※フィガンナイフを挿し込んだ際「OVER SET」に変わる。

 

変身音「アフターネクストガンアクション!! クロッシング『トリガー!!』 イレブン!! トゥエルブ!! ダブルイーハー!!」

必殺音「アフターネクスト!! オーバー『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダートリガーがネクスト・アフターガンナイフを合体させ変身した姿。元々1つであったフィガンナイフを組み合わせた事によりスペックの大幅な上昇、そして2つのフィガンナイフの能力が使用可能になった。

合体させたからと言って、テンスのリミッターを無視する機能はなく、最終調整によって、寧ろ強力で全く新しい能力を手に入れてしまった。

 

能力

・ネクストとアフターの能力を使用可能(23秒間身体能力を飛躍的に上げるが、5秒間の待ちがある)

・5秒間だけ時間を消し飛ばす事ができる(劇中では攻撃が当たった時間を飛ばした)。ただしその時間内を動く事や自分以外には影響をなさない。再度使用するには23秒間の待ちがある。

 

 

仮面ライダートリガー ラストデイズ

身長 200.0cm

体重 100kg

パンチ力 365t

キック力 365t

ジャンプ力 ひと跳び365m

走力 100mを3.65秒

 

フィガンナイフ起動音「LAST DAYS」

※フィガンナイフを挿し込んだ際「FINAL SET」に変わる。

 

変身音「ラストガンアクション!! ディシース『トリガー!!』 スリーシックスティファイブ!! ドゥームズデイ!!」

必殺音「ラスト!! 『ファイア!!』 END」

 

説明

仮面ライダートリガーがラストガンナイフを使用し変身した姿。終焉のトリガーと呼ばれる事はあり、そのスペックは走力以外は各フォームを圧倒的に凌駕する。この姿となると兆自身制御が効かなくなり、ただ暴れて記憶を奪うだけの兵器と化してしまう。

 

能力

・全てのフィガンナイフの能力を使用できる(ただしハントのチケットは不可)。

・他者から奪った記憶を己のエネルギーに変換する事ができる(奪えば奪うほど変換した時の力は増す)

 

 

仮面ライダートリガー フロンティアフォーエバー

身長 201.1cm

体重 111.1kg

パンチ力 182.5t

キック力 182.5t

ジャンプ力 ひと跳び182.5m

走力 100mを0.18秒

 

フィガンナイフ起動音「FRONTIER」

※フィガンナイフを挿し込んだ際「FINAL SET」とラストデイズと同じ。

 

変身音「フロンティアガンアクション!! ピース『トリガー!!』 エブリバディフォーエバー!!」

必殺音「フロンティアフォーエバー!! 『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダートリガーがラストガンナイフにフロンティアガンナイフを合わせて使用し変身した姿。マスターから永理へ永理から兆へと託され、それぞれの想いが具現化したと言える奇跡のフォーム。スペックはラストデイズが半減されてしまったが、そのもう半分のエネルギーは身体中を循環し続けている為、それが結果的に何かしらアクションをすれば、無限に回転する力でありとあらゆるものを受け流し、相手の防御をドリルのようにこじ開けるということも可能となる。そのせいか全てのフィガンナイフの能力は使用できない。

 

能力

・上記の通り防御面ではありとあらゆる攻撃を受け流すことができ、攻撃面ではいかなる防御でもこじ開ける。

・武器にも無限回転の力を与えることができ、その武器からな攻撃は防御が不可能となる。

 

 

仮面ライダーシェリフ シクスオート

身長 198.6cm

体重 96.2kg

パンチ力 3.6t

キック力 12.6t

ジャンプ力 ひと跳び32.6m

走力 100mを4.6秒

 

フィガンナイフ起動音「SIX」

 

変身音「シクスガンアクション!!『シェリフ!!』オートアオート!!」

必殺音「オート!! 『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダーシェリフの基本形態に当たる姿。トリガーはこのフィガンナイフの使用はできないらしい。又、ファーストリボルヴを走力以外は上回っている。

 

能力

・特になし

 

 

仮面ライダーシェリフ セブンスアサルト

身長 198.7cm

体重 97.2kg

パンチ力 7.7t

キック力 17.6t

ジャンプ力 ひと跳び37.6m

走力 100mを4.7秒

 

フィガンナイフ起動音「SEVEN」

 

変身音「セブンスガンアクション!!『シェリフ!!』バーストアサルト!!」

必殺音「アサルト!! 『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダーシェリフがセブンスガンナイフを使用して変身した姿。全体的なスペックが上がり、専用武器のアサルトウエスタンを使用し、多くの敵を一掃できる。

 

能力

・専用武器のアサルトウエスタンの威力を向上させる。

・パンチやキックの際ブースト機能が付いており、隙を与えない連続攻撃を可能とする。

 

 

仮面ライダーシェリフ エイススナイパー

身長 198.8cm

体重 96.8kg

パンチ力 3.8t

キック力 20.8t

ジャンプ力 ひと跳び38m

走力 100mを4.8秒

 

フィガンナイフ起動音「EIGHT」

 

変身音「エイスガンアクション!!『シェリフ!!』ロックオンスナイパー!!」

必殺音「スナイパー!! 『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダーシェリフがエイスガンナイフを使用して変身した姿。遠距離に対応しており、キック力もある為、近距離も対応はできる。専用アイテムのエイススコープとタイムウエスタンを組み合わせたスナイパーウエスタンを使用する。

 

能力

・目の部分に10km遠方の敵を至近距離で見れるほどの倍率する事ができ、スナイパーウエスタンと合わせる事で最大30km先の相手も捉える事が可能。

 

 

仮面ライダーシェリフ ナインスミサイル

身長 199.0cm

体重 99.6kg

パンチ力 19.9t

キック力 29.9t

ジャンプ力 ひと跳び19.6m

走力 100mを8.6秒

 

フィガンナイフ起動音「NINE」

 

変身音「ナインスガンアクション!!『シェリフ!!』エクスプロージョンミサイル!!」

必殺音「ミサイル!! 『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダーシェリフがナインスガンナイフを使用して変身した姿。肩に追尾型ミサイルが計8個付いており、必要に応じて数を指定して撃ち出せる。火力もそうだが、その攻撃範囲もかなりのもの。

 

能力

・パンチやキックの接触と同時に爆発し、相手の装甲を破壊する。

・肩のミサイルは高威力で広範囲を一掃できるが、次の弾を装填するのに90秒の時間が掛かってしまう。

 

 

仮面ライダーシェリフ テンスジュウ

身長 201cm

体重 98.2kg

パンチ力 13.6t

キック力 22.6t

ジャンプ力 ひと跳び42.6m

走力 100mを3.6秒

 

フィガンナイフ起動音「TEN」

 

変身音「テンスガンアクション!!『シェリフ!!』レディーゴージュウ!!」

必殺音「ジュウ!! 『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダーシェリフがテンスガンナイフを使用して変身した姿。見た目はシクスオートとかなら酷似している。セイブドライバーのリミッターを無視してしまう為、フィガンナイフ本来の力を引き出せるが、変身者に大きな負荷をかけてしまう。

 

能力

・最大出力で自身の戦闘力を10倍まで高める事ができる(常人は3倍が限度)。巧也は5倍まで持ち込んだが(この時点でもかなりのもの)数日、入院生活を送ることになる。

 

 

仮面ライダーシェリフ アフタートゥエルブ

身長 201.7cm

体重 96.2kg

パンチ力 25.2t→(増加時)37.2t

キック力 35.2t→(増加時)47.2t

ジャンプ力 ひと跳び42.2m

走力 100mを3.2秒

 

フィガンナイフ起動音「AFTER」

 

変身音「アフターガンアクション!!フォローイング!!『シェリフ!!』イーハートゥエルブ!!」

必殺音「アフター!! 『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダーシェリフがアフターガンナイフを使用し変身した姿。テンスの派生により作られ、リミッターをかける事に成功した(その為、テンスの倍化能力は使えなくなった)その破壊力はどのフォームよりも群を抜いて高い。

 

能力

・12秒間パンチ・キック力を高める事ができるが、12秒間の待ちがある。

 

 

仮面ライダーシェリフ プリズンハンドレッド

身長 202.6cm

体重 106.2kg

パンチ力 110.6t

キック力 110.6t

ジャンプ力 ひと跳び110.6m

走力 100mを1.16秒

 

フィガンナイフ起動音「PRISON HUNDRED」

※フィガンナイフを挿し込んだ際「SET ARREST」に変わる。

 

変身音「プリズンガンアクション!! ポリス・エマージェンシーコール!! ハンドレッドテンス!!」

必殺音「プリズン!! アレスト『ファイア!!』」

 

説明

仮面ライダーシェリフがプリズンガンナイフとテンスガンナイフを合体させて変身した姿。プリズンによりテンスの力を最大限に発揮させ、新たな力も身につけた。

 

能力

・触れたモノはどんなものでも止める事ができる(制限は特にない)

 

 

仮面ライダーハント 壱式

身長 198.8cm

体重 93.5kg

パンチ力 24t

キック力 31.2t

ジャンプ力 ひと跳び38.5m

走力 100mを3秒

 

変身音「壱式!! ギアチェンジ!! ゲツヨウ!!」

必殺音「キカンギアブレイク!!」

※スペックと必殺音と同じ

 

説明

仮面ライダーハントの基本形態。番式ギアナイフと壱月チケットを使う事で変身する。基本的なスペックは高いが、セイブドライバーのようにリミッターがなく、ギアナイフを取り替え過ぎるとオーバーヒートしてしまい変身者に大きな負荷がかかってしまう。週式ギアハンターという専用武器を使う。

 

能力

・特にこれといってない

 

 

仮面ライダーハント 弍式

変身音「弍式!! ギアチェンジ!!カヨウ!!」

 

説明

仮面ライダーハントのフォーム。番式ギアナイフと弍火チケットを使う事で変身する。

 

能力

・自身から炎を巻き上げ自在に操る。相手の装甲をいとも容易く溶かす。

 

 

変身音「参式!!ギアチェンジ!!スイヨウ!!」

 

説明

仮面ライダーハントのフォーム。番式ギアナイフと参水チケットを使う事で変身する。

 

能力

・自身から水を出し、相手の動きを封じることができる。

・相手の身動きを遅延させる事もできる。

 

 

変身音「肆式!!ギアチェンジ!!モクヨウ!!」

 

説明

仮面ライダーハントのフォーム。番式ギアナイフと肆木チケットを使う事で変身する。

 

能力

・周りにある植物を自由に操れる。又、成長を早める事もできる。

 

 

変身音「悟式!!ギアチェンジ!!キンヨウ!!」

 

説明

仮面ライダーハントのフォーム。番式ギアナイフと悟金チケットを使う事で変身する。

 

能力

・身体に黄金を身に纏い、防御力を格段に上昇させる。体重もこのフォームだけ重くなる(体重93.5kg→105.3kg)

 

 

変身音「陸式!!ギアチェンジ!!ドヨウ!!」

 

説明

仮面ライダーハントのフォーム。番式ギアナイフと陸土チケットを使う事で変身する。

 

能力

・砂や土等、地面として成り立っているものであれば自由に操る。なんとコンクリートも動かせる。

 

 

仮面ライダーハント 漆曜式

身長 201.7cm

体重 107.7kg

パンチ力 77.7t

キック力 77.7t

ジャンプ力 ひと跳び77.7m

走力 100mを0.7秒

 

ウィークエンジン起動音「WEEK START」

 

変身音「漆曜式!! ギアチェンジ!! スタート!! ニチ・ゲツ・カ・スイ・モク・キン・ドッ!! オールウィーク!!」

必殺音「オールウィーク!! キカンギアブレイク!!」

 

説明

仮面ライダーハントが番式ギアナイフと漆曜日チケット、そしてウィークエンジンを使う事で変身する最強形態。今迄の形態全ての力を使う事ができ、個々の能力も大幅な強化もしており、ウィークエンジンがリミッターの役割を果たしてオーバーヒートの心配は無くなった。応用が非常に効く為、どんな状況でも対応が可能。

 

能力

・全てのチケットの力を使う事ができる(従来より強化された状態)又、同時に使用する事もできる。

 

 

仮面ライダープロトトリガー ファーストリボルヴ

身長 198.1cm

体重 91.1kg

パンチ力 3.0t

キック力 10t

ジャンプ力 ひと跳び30m

走力 100mを5秒

 

※起動音・変身音はトリガーと同じ

 

説明

仮面ライダープロトトリガーはこのフォームしかない。スペックもファーストリボルヴに劣る。自身から出た膨大なエネルギーを全身に流す機能が付いており、スペックを大幅に上げることができるが、負担が大きく掛かる為、通常は使う事はできない。

 

能力

・必殺技を発動した時に生じられるエネルギーを全身に流す事で格上でも戦うことができる(ハント戦のようなことができる)

 

 

仮面ライダーテロス

身長 206.5cm

体重 143.8kg

パンチ力 100t

キック力 100t

ジャンプ力 ひと跳び100m

走力 100mを0.1秒

 

フィガンナイフ起動音「ZERO」

 

変身音「ゼロスガンアクション!! オールテロス!! ザ・ビギニング・オブ・ジ・エンド!!」

必殺音「ゼロス!! エクスプロージョン!!」

 

説明

ゼロスフィガンナイフとテロスドライバーを使用し、テロス本来の力を引き出した姿でもある。その強さは他ライダーを寄せ付けないほどであり、彼の前では全てが0に帰る。

 

能力

・個々を対象とし、様々な能力を数値化する事で、その内の1つの数値を0にする事ができる(例:パンチ力100t→0 アフターネクストの時飛ばしの時間を0→飛ばした事にならない)

・他にも応用で距離等も0にすることができる。




ご質問受けつけますので、お気軽にどうぞ

(ネタバレになりそうなものは言え)ないです。


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ウォンテッド

こちら仮面ライダートリガーに登場したウォンテッドとなっております。

12/7
・説明変更
・ボスは登場人物の方へ移動
12/23
・ヤヨイ追加
2/15
・シモツキ 追加
2/20
・ミナツキ キサラギ 追加
2/22
・シワス 追加
3/10
・カンナヅキ 追加
3/25
・メーデン テロス 追加


ウォンテッド

 

説明

キラーズガンを用いて変身する事ができる。戦闘兵的な立場である為、特に名前はない。強いてそれぞれの特徴を挙げるとすれば、変身者本人の記憶が色濃く見た目に反映されるという点である。

15年前に現れ、国を滅ぼしかけたやべー奴ら。その時、幹部は24人もいたが、現在は12人のみとなっている。

 

起動音「 ワン・キル 」

変身音「 シ・ザイ・キリング・ ウォンテッド!!」

 

 

ウォンテッド(暴走形態)

 

説明

キラーズガンの副作用で、体が限界を迎えた姿。驚異的な力を発揮するが、この状態になると、自我が保てず、あの手この手を尽くしても助けることは不可能。倒した後は記憶だけ持ち主の元へ戻り、変身者は死んでしまう。

 

 

○○○ウォンテッド(幹部)

 

説明

キラーズガンによって暴走形態にならず、完全に力を我が物とした姿。デリートガンナイフを使用する事で変身できる。名前には幹部のコードネーム(ウヅキなど)が入り、起動音にはその幹部の月が入る。

ただのウォンテッドとは違い、1度に大量の記憶を奪うことが可能であり、又、記憶を奪われた人間をウォンテッドに変えて使役することが可能となる。

 

 

起動音「ワン・キル」「○○○」

変身音「シ・ザイ・キリング・ウォンテッド!!イーディアー!!」

 

 

ウヅキウォンテッド

※変身音は上記参照。

説明・能力

幹部のウヅキが変身した姿。最初に登場した幹部。見た目は幹部の中でも1番シンプルである。

能力は自分の筋力を底上げし、並の攻撃は弾き返してしまうほどマッシブになる。本人の力量にもよるが、限界を超えて筋力を上げる事ができる。

 

 

サツキウォンテッド

 

説明・能力

幹部のサツキが変身した姿。

能力は自分の外殻を堅くし、その防御力はウヅキの能力でさえ突破できない。ただし一点に集中した大きな衝撃には弱い。

 

 

ナガツキウォンテッド

 

説明・能力

幹部のナガツキが変身した姿。

能力は自分と対峙した相手に対して幻覚を見せることが出来る。尚、光に弱いという弱点がある。

 

 

フミヅキウォンテッド

 

説明・能力

幹部のフミヅキが変身した姿。

能力は一定の空間内を思うがままに操ることができる。尚、他に能力を使用していると能力が弱まり、使用していない場合でも、意識をしていないものには能力が発現しないという弱点がある。

 

 

ハヅキウォンテッド

 

説明・能力

幹部のハヅキが変身した姿。

能力はスライムのように体を自由自在に変形させることができる。尚、変形するより速く攻撃を行うものには対応できない。

 

 

ヤヨイウォンテッド

 

説明・能力

幹部のヤヨイが変身した姿。

能力はウォンテッドをその場で大量に作り出すことができる。流石に出し過ぎると多少の疲れは出るものの、それ以外に弱点はない為、非常に厄介。

 

 

シモツキウォンテッド

 

説明・能力

幹部のシモツキが変身した姿。

能力は両腕の剣と超スピードである。ネクストのスピードさえも上回り、更に時間に干渉する事で更なるスピードを有することができる。

 

 

ミナツキウォンテッド

 

説明・能力

幹部のミナツキが変身した姿。

能力はあらゆる銃の弾丸の威力を変更できる。弾速の調整もでき、更に爆発させる事で範囲を広げられる。ただし弾丸を曲げたり、追尾する事ははできない。

 

 

キサラギウォンテッド

 

説明・能力

幹部のキサラギが変身した姿。

能力は自分の体を柔らかくする。ただ柔らかくするだけでなく、伸ばしたり引っ付けたりと応用が効く。ハヅキと似ているが、鋭利な武器や攻撃には弱い点がある。

 

 

シワスウォンテッド

 

説明・能力

幹部のシワスが変身した姿。

能力は片腕を弓のようにし、エネルギーの矢を放つことができる。その矢に触れた者は自分のエネルギーを外部へ弾き飛ばされてしまい弱体化してしまう。矢の威力は防げない程ではないが、軌道を変えたり、破裂させ無数の矢を作り出したり、生物を自由に通り抜けたりすることが可能。

 

 

カンナヅキウォンテッド

 

説明・能力

幹部のカンナヅキが変身した姿。

能力は暴走。キラーズガンによるエネルギーが適応し過ぎている為になる能力。普段使わないのはこの力のせいである。巨大化と単純な力が大幅に増し、口から光線を発射する。

 

 

メーデン・テロス

 

説明・能力

ウォンテッドのボス、テロスが鍵とテロスドライバーを使用して覚醒した状態である。

能力はあらゆるものを0にする力だが、限度を超えており、そのモノ自体をなかったか事にすることまでできる。




ご感想お待ちしております。


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アイテム

こちら仮面ライダートリガーに登場したアイテムとなっております。

12/23
・キカンドライバー
・週曜チケット
・番式ギアナイフ
・週式ギアハンター 追加
2/8
・プロトセイブドライバー 追加
・プロトフィガンナイフ 追加
2/23
・漆曜日チケット
・ウィークエンジン 追加
3/2
・テロスドライバー 追加
・ゼロスガンナイフ 追加
3/10
・プリズンガンナイフ 追加
3/12
・ジャッジメントエンターン 追加
3/13
・ジャッジメントエンターンの音声追加
3/25
・フォーエバーピースメーカー 追加


アイテム

 

セイブドライバー

 

説明

仮面ライダーに変身する為のアイテム。

いつどこで誰により開発されたかは不明。兆自身もわかっていない。

使用条件は特にないが、世界で2つしか存在しないらしい。

 

 

フィガンナイフ

 

説明

仮面ライダーに変身する為のキーアイテム。

これをセイブドライバーに差し込む事でライダーは変身できる。個で示す際は「ファーストガンナイフ」等となる。一応、ナイフなので斬りつける事は可能。

 

 

プリズンガンナイフ

 

説明

仮面ライダーシェリフ専用のパワーアップアイテム。

これにテンスガンナイフを差し込む事でその力を最大限に引き出せる。他のフィガンナイフを差し込むことはできない。

 

 

ガンナイフホルダー

 

説明

フィガンナイフをしまっておく為のホルダー。左右の脚の計4カ所に着いている。

 

 

ウエスタンホルスター

 

説明

トリガーの銃をしまう為の物。右腰につけている。

 

 

キカンドライバー

 

説明

仮面ライダーに変身する為のアイテム。

セイブドライバーとは違いリミッターが存在しない為、変身者に大きな負荷が生じる。狩馬の手によりセイブドライバーを模して作られたもの。

 

 

番式ギアナイフ

 

説明

仮面ライダーに変身する為のキーアイテム。

キカンドライバーの他に週曜チケットを用いることで変身が可能。こちらもナイフなので斬りつけることができる。

 

 

週曜チケット

 

説明

仮面ライダーに変身する為のもう一つのキーアイテム。

番式ギアナイフを差し込む前に、これをキカンドライバーの中央上部に差し込む。全部で6枚存在する。

 

 

漆曜日チケット

 

説明

仮面ライダーハント専用の強化アイテム。

これとウィークエンジンと呼ばれるアイテムを使う事で壱〜陸まで全てのチケットの力を使うことができる。

 

 

ウィークエンジン

 

説明

仮面ライダーハント専用のもう一つの強化アイテム。

これを使用する事で、全てのチケットの力を使うことができる他、今まで以上にパワーアップさせる機能がついている。キカンドライバーのリミッターの役割も果たす。

 

 

プロトセイブドライバー

 

説明

仮面ライダーに変身する為のキーアイテム。

セイブドライバーのプロトタイプであり、完全なる未完成。対応するフィガンナイフもプロトファーストガンナイフしかない。

 

 

プロトフィガンナイフ

 

説明

仮面ライダーに変身する為のもう一つのキーアイテム。

上記同様のプロトタイプであり、プロトフィガンナイフのプロトファーストガンナイフしか存在しない。

 

 

ガーツウエスタン

 

説明

トリガーの愛銃。変身前も腰につけている。

 

必殺音「ワンガーツ!! ジャニュアリーシューティング!!」(ファーストガンナイフの場合)

 

 

ライトニングウエスタン

 

説明

セカンドライトニング時の専用武器。

 

必殺音「ライトニング!! セカンドシューティング!!」(セカンドガンナイフの場合)

 

 

サードポンプ(サードウエスタン)

 

説明

サードショット時の専用ガジェット。ガーツウエスタンと組み合わせる事で、サードウエスタンという武器になる。

 

必殺音はガーツウエスタンと変わらないが、発砲音が派手になる。

 

 

フォースウエスタン

 

説明

フォースライフル専用の武器。ガーツウエスタンとライトニングウエスタンを合体させる事でこれになる。

 

必殺音「ライフルヨンガーツ!! フォースエイプリルシューティング!!」(フォースガンナイフの場合)

 

 

フィフスウエスタン

 

説明

フィフスガトリング専用武器。

ガーツ、ライトニングウエスタン。そしてサードポンプを合体させる事によりこれになる。

 

 

フォーエバーピースメーカー

 

説明

フロンティアフォーエバー専用武器。

フロンティアから流れ続けるエネルギーを弾丸に乗せることができ、あらゆる防御を貫通する力を得る。

 

 

タイムウエスタン

 

説明

仮面ライダーシェリフ専用武器。ガーツウエスタンと違い、こちらは大きく、各フォームに適した変形が可能。

必殺音「ロクジカーン!! シクスターイム!!」(シクスガンナイフの場合)

 

 

アサルトウエスタン

 

説明

セブンスアサルトの専用武器。タイムウエスタンを変形させた物。

必殺音「シチジカーン!! セブンスターイム!! アサルト!!」(セブンスガンナイフの場合)

 

 

エイススコープ(スナイパーウエスタン)

 

説明

エイススナイパーの専用ガジェット。タイムウエスタンと組み合わせる事でスナイパーウエスタンという武器になる。

 

 

ジャッジメントエンターン

 

説明

プリズンハンドレッド専用武器。持ち手以外を回転させることによって銃と剣をそれぞれ使いわけることができる。

必殺音「ジャッジメント!! プリズンバスター!!」(プリズンハンドレッドの場合

 

 

週式ギアハンター

 

説明

仮面ライダーハントの専用武器。かなりの威力だが、反動が大きい。

変身後、背中に装着されている。

 

必殺音「ゲツヨウ!!ハンターバレット!!」(壱月チケットの場合)

 

 

テロスドライバー

 

説明

仮面ライダーテロスに変身する為のキーアイテム。

テロス本来の力を引き出す為のものでもあり、もう一つの専用アイテム。ゼロスガンナイフを用いる事で引き出せる。プロトセイブドライバーはこれを元に作られた未完成版。

 

 

ゼロスガンナイフ

 

説明

仮面ライダーテロスに変身する為のもう一つのキーアイテム。

フィガンナイフではあるが、全てのガンナイフの元となったもの。プロトガンナイフはこれを元で作られた未完成版。

 

 

キラーズガン

 

説明

自分自身に撃ち込むことで、ウォンテッド(怪人)の力が与えられる。ただし、中毒性があり、多用してしまうと、暴走形態となり、破壊の限りを尽くす。

 

 

デリートガンナイフ

 

説明

幹部にのみ使用可能なアイテム。キラーズガンに差し込む事で並みのウォンテッドを越えた力を手に入れることができる。

 

 

バオ(正式名:ブラックキング)

 

説明

兆の愛馬。ただ普通の馬ではなく機械である。兆が移動用として開発し、人工知能を搭載している。彼の愛からバオというニックネームが与えられるが、それを気に入らないのか、そもそも彼が嫌いなのか言う事を聞かない。

 




質問等お待ちしております


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ウォンテッド編
第1劇「今日は俺の誕生日」


皆さんご無沙汰しております。悶絶小説調教師の辰ノ命と申します。

今回調教する小説は「 仮面ライダートリガー 」

本作は前作と比べると真逆の空気です。
一風変わった…? 本作を少しでも楽しんでくれたら嬉しい限りです。

皆さんは私の小説に耐えきる事ができるでしょうか?
新たなライダーが歴史にその名を刻む瞬間を、それではどうぞご覧ください。


「いたぞ!! "ウォンテッド" だッ!!」

 

「撃てッ!!!」

 

 

 真夜中の月の光が射し込み街を照らす。そんな街に銃声と人々の悲鳴が響き渡る。

 銃を構えた大勢の警察、数で言えば確実に不利な状況にも関わらず、ウォンテッドと呼ばれる者はせせら笑う。

 

 

「な、何がおかしい!!」

 

「あ? そりゃ笑うだろ… 死に損ないどもが、わんさかいるんだからよぉ」

 

「き、きさまぁっ!!」

 

 

 声からして男ではあるが、見た目では判断できない。なにせその者は人間とは異なる姿をしているのだから。

 そして男は見たこともない銃を向け、ニタリと笑みを浮かべる。

 

 

「さぁ、記憶を寄越せ──」

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 ここはBAR TRIGGER。

 裏路地にひっそりと経営しており、知っている客は僅かであり、その殆ども常連ばかりである。現在いるのは、このバーのマスター、カウンターにガタイのいい男、それとは対照的にモヤシのような男が隣に座っている。

 そんなバーに帽子をかぶった男が扉を開け、カラカラと音を鳴らし入ってきた。

 

 

「マスター… いつものを頼む」

 

 

 マスターはサッとジョッキにミルクを注ぎ始める。

 帽子の男はカウンターに座っていた、ガタイのいい男の一つ隣の席に座る。

 

 

「いつものだ」

 

 

 目の前に置かれたミルクを、帽子男はそれを一気に飲み干す。その飲みっぷりを見てガタイのいい…… "ガンホーレ" は大笑いする。隣のもやし…… "イッシュウ" も続けて笑う。

 

 

「いい飲みっぷりだな兄ちゃん… マスター、ミルクだ」

【 ガンホーレ団 団長 ドン・ガンホーレ 本名:ガンホーレ・オーザン 】

 

「ここは子供の来るとこじゃないぜぇ?」

【 ガンホーレ団 団員 イッシュウ 本名:本間 一周 】

 

 

 彼らはウォンテッドが現れてから出てきたお尋ね者である。

 ドン・ガンホーレを筆頭に、ガンホーレ団と言われ(自称)、窃盗やら暴力沙汰やらしているそうで。

 と、言ったはいいものの世間では然程、騒がれてなければ大きな問題にもなってない。

 

 

「それに懸賞金もそんなに高くないし、警察もいたら捕まえとけだし、同情しそうになる」

 

「… お前さっきから何言ってるんだ…」

 

 

 おっと、どうやら俺の心の声が出ていたらしい。失礼。

 そうして、ガンホーレの目の前にジョッキが置かれる。それをわざわざ滑らせて、帽子男の前で上手いこと止まらせる。

 

 

「俺の奢りだ」

 

「(え? いいの? 飲んでいいの?… あーではお言葉に甘えて」)

 

 

 すると男はグビッと飲み干す。それを見たガンホーレは馬鹿にするように笑い始めた。否、馬鹿にしている。

 

 

「よし、さすがの飲みっぷりだな。マスター、もう一杯だ」

 

 

 隣でイッシュウがクスクスと笑う。三杯目のジョッキを出されると、わざわざまた滑らせて止める。

 流石に三杯目はこの俺でも腹ん中がパンパンだぜ… いやでも、せっかく奢ってもらってるんだから飲まなきゃな。

 また彼は一気に飲み干す。途中、ウッとなったが耐えた。

 

 

「… マスター、こいつにミルクだ」

 

「あ、あの団長?」

 

「なんだイッシュウ」

 

「あ、いや…」

 

 

 また来た。目の前に来た。

 

 

「遠慮するな。ママのミルクが恋しくなったんだろう?」

 

「……」

 

 

 今度はそれを黙って、滑らせてガンホーレに返す。

 

 

「… すぅー… おかしいな? ミルクが返ってきたように見えたんだが?」

 

「… そのミルクは飲めねぇ。あんたが飲みな(もう限界だから)」

 

「ほう…」

 

「あんたも思い出せよ。ママのミルクの味ってのをな」

 

「なにッ…!!」

 

 

 ガンホーレはカウンターを叩き、乱暴に立ち上がる。イッシュウもそれに続いて立ち上がる。

 

 

「てめぇ、舐めたこと抜かしやがって」

 

「え?」

 

 

 俺はここのミルクは格別で、本当にママを思い出せるぜ?って意味で言ったんだけどな… どうやら彼は相当ミルクが苦手のようだ。

 

 

「表へ出なッ!!」

 

「え、やです」

 

「なにッ!?」

 

「俺は今日、ゆっくりしたいんだよ。疲れてるんだ」

 

「てめぇ… このやろう!!」

 

 

 ガンホーレが振りかぶって殴ってくるが、男は流れるように相手を担ぎ、投げ飛ばす。カウンターに当たり、衝撃でミルクが入ったジョッキが落ち、中身が飛び出し割れてしまう。

 

 

「だ、団長ォォォ!!」

 

「ふっ…」

 

 

 店を出ようとすると、マスターに呼び止められた。

 どうやら俺の活躍を見て、お礼をしたいそうだ。

 

 

「違う。弁償だ」

 

「あ、はい」

 

「… ここはお前の家でもあるんだ。あまり暴れるな」

 

「はい。すみません」

 

「全く… 気をつけて行け。"兆"」

【 BAR TRIGGER マスター】

 

 

 兆と呼ばれるその男は帽子を被り直して、金を置いて店の外へと出る。

 路地裏を出て街中を歩き始め、腰に差していた銃をくるりと回して再び差し込む。

 

 

「… 今日もいい天気だな」

【 射手園 兆 仮面ライダートリガー】

 

 

── これは1人の青年と、その仲間達と、世界の運命を掛けた戦いの物語である。

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>

 

「本日より、"RIVERS" に配属する事になりました!! "内嶋 永理" と申します!!」

【 新人警官 内嶋 永理 】

 

「みんな、彼女が前から伝えていた新人だ。新人だからと言っていびらないようにな」

【 特制課:RIVERS 課長 上砂 巧也 】

 

 

 警視庁「組織犯罪対策部」対ウォンテッド特別制圧課。通称はRIVERSと呼ばれている。

 そしてこの課の課長である巧也は、新人である永理を連れ、仲間に紹介をしている最中である。仲間と言っても部屋には、彼と彼女を合わせて4人しかいない。他の警官達は一階の別部屋で待機しており、ここよりも広い。この部屋はその地下にあり、難関な試験を突破し、実績を積んでいる認められた者しか入ることができない。

 それにここは機密情報を回す場でもあるので、容易に関係者でも立ち入ることは許されないのである。

 

 

「へぇ〜、新人でここに入るなんて。まぁ、資料見る限りだとあの名門を首席で卒業して、それからすぐに警察学校へ、そこで偶然にもいた課長の目に触れてそのままここに配属と… やっぱり凄いわ」

【 RIVERS 担当:情報収集・処理 當間 佳苗 】

 

「ようこそRIVERSへ。わからないことがあればいつでも聞いてください」

【 RIVERS 担当:武器開発 片山 孝四郎 】

 

 

 2人は椅子に座っていたが、立ち上がり永理の元へ行く。

 軽い自己紹介をし、永理は部屋を見回すと、大量の資料と機器がずらりと並び、移動できる場所が殆どないことに気づく。

 

 

「そういうことでだ… 早速だが、本題に移る。永理、お前の席はあそこだ」

 

「はい!! 課長、よろしいでしょうか」

 

「どうした?」

 

「昼食ってここで食べるんですか?」

 

「あ、いや、別にここでなくても構わないが?」

 

「小腹が空いた時、このお菓子の棒を食べてもいいですか?」

 

「あ、あぁ構わない… なぜその質問をする?」

 

「もう少しでお昼だったので、お腹が空いてしまい……」

 

「… そ、そうか…」

 

 

 巧也はわかっていた。彼女には才能があることを。

 だが、彼女はなんでもこなせはするが、致命的に素がアホなのである。天然といったらいいのだろうか、マイペースと言えばいいのか、とにかく大事な部分が抜けているのである。

 

 

「では始めー… その棒を下げろ」

 

「はわっ! つい! すみません!」

 

「… ごほんっ!!…… 今日、RIVERSのメンバーがウォンテッドに襲われたのは知っているな」

 

「はい。確か深夜2時ごろでしたよね」

 

「あぁそうだ。今まで俺たちはウォンテッドを制圧する為に、ありとあらゆる手を尽くした… が、それも今回の事件が起きてからは全て無意味となる」

 

「… というと?」

 

「奴らはなんらかの方法で人の記憶を奪っている。何の為に、何が目的なのかさえもわからない奴らだったが、今回の事件でその方法が明らかとなった」

 

「え?」

 

「ただ1人、そこから生き延びたメンバーが証言した内容から… ありえない話ではあるが、奴らは普通の人間とは違うようだ。まぁ、今更だが記憶を奪うという事をやってのける時点で普通じゃないがな」

 

「人間とは違う? 具体的にどういう事です?」

 

「ウォンテッドが持つ特殊な銃を、自分自身に撃ち込む事で、人間のそれとは全く違う見た目になり、身体能力も向上するようだ。そこにいたRIVERSのメンバーはその1人以外、全員死亡が確認されている……」

 

「…!」

 

「15年前にウォンテッドが現れてから被害は増える一方だったが、その15年後、ある仮面の男によって全てが変わった」

 

「… 重要指名手配 "トリガー" ですね」

 

「あぁ。知っているとは思うが確認の為、話しておく。24人ものウォンテッドの幹部たちはそれぞれエリアを確立し、国を壊滅寸前にまで追いやった。たが、そこにトリガーが現れ12人の幹部を倒し、危機的状況だったこの国は救われた」

 

「はい。トリガーの功績は眼を見張るものがあります… なのに何故重要指名手配犯に?」

 

「…… 奴は罪のない人を殺害している。ウォンテッドと繋がりがある可能性がある」

 

「え…?」

 

「俺はこの目で見た… あの日…… と、すまない。とにかく俺たちRIVERSはまず、トリガーを追い詰め、情報を聞き出す」

 

 

 巧也は机に設置してあるマイクのスイッチを入れると、それに向かって喋り始める。

 

 

「これより本格的に、トリガーの捜索に入る。孝四郎、お前は引き続き開発を頼んだ。佳苗、トリガーについて情報があればすぐに伝えろ。永理、お前は俺と来い。いいか? くれぐれも無茶をするなよ? いいな? では、RIVERS出動だ」

 

「「「了解!!」」」

 

 

 全員、敬礼を行うとすぐさま自分の持ち場へ着き、作業を始める。

 永理は巧也と共に警視庁を出ると、パトカーに乗り、とりあえず街中に行くことにするのであった───。

 

 

─── しばらくして、駐車場に車を止め、聞き込みを開始する。これも幾度となくやったことだが、全くその成果は得られていない。トリガーを見たものはいるが、それ以外の情報がまるで入ってこないのだ。

 先程、エリアという言い方をしたが、この国は現在12人の幹部がA〜Lエリアというものを作っている。そのエリア内においては彼らが絶対であり、逆らう者には容赦がない。

 そして巧也たちがいるここがエリアA。他のエリアとは違い、比較的安全ではある。人々は最初こそ恐れていた者が多かったが、そこは人の慣れという悪い部分が出てくるだろう。皆、次第に慣れて行き、今は普通に人混みができるほどになっている。

 

 

「永理。そろそろ時間も時間だ。悪かったな昼食の時間を忘れ…… ん? 永理?」

 

「…… あぁ! すみまふぇん!! おふれまひた!!」

 

「お前なんか食ってるだろ」

 

「はい!! お腹が空いてしまったので買いに行ってました!!」

 

「いつだ!? さっき俺といたよな!?」

 

「課長が聞き込みをしている際、どさくさに紛れていきました!!」

 

「素直だな!!」

 

 

 ハムスターのような口をして、食べ物を頬張る永理に呆れているわけではないが、先が思いやられそうである。

 

 

「ちなみに聞くが、俺の分は?」

 

「ゴクンッ… あ、忘れてました。食べます?」

 

「これたい焼きか? 食べますー、って尻尾しかないじゃねーか!!」

 

「餡子は入ってますよ?」

 

「そういう問題じゃねぇ!!」

 

 

 さて、聞き込みでは今のところ進展がない。店員に聞いても見たことはあるが、ここに来たはないと言われるだけ。一旦、切り替えるために飯にでもするか。

 

 

「よし、永理。飯に行くぞ… つってもそんな量食えばいらないか?」

 

「いえ、行けますよ!! 消化したので!!」

 

「まだ秒しか経ってないんだが… それじゃ行くとするか」

 

「はい!… あ…!」

 

「とりあえず蕎麦でも行くか? 上手いところ知ってるんだぞーーどこ行ったぁぁぁ!!! 目を離したあの一瞬でどこ行きやがった!! 周りにはいないな… ったく、連絡するか…… ん? これは永理の携帯…… しまった! あの時、借りて返すの忘れた…!! 本人もあれだと気付いてなかったようだし、俺とした事がぁぁ…… どこだ永理ィィィィ!!! ───」

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>

 

 兆は職務質問を受けていた。

 

「あの君ね。いくらこんなご時世とはいえ、銃はまずいでしょ」

 

「いえ、これはおもちゃです」

 

「なら、あれをどう説明するのかね?」

 

 

 警官が指をさした先を見ると、壁に弾丸がめり込んでいる。目撃者もおり、言い逃れはできない。

 しかし、兆は否定する。

 

 

「俺の推測では、そこにある空き缶を銃の名手が撃って、で、その威力で空き缶を貫通して壁に弾が当たってしまったと。で、その犯人は今も逃走していると」

 

「あーいや、犯人は目の前にいるんだけどね」

 

「多分、人違いです」

 

「あんまり抵抗すると、手荒に行くことになるよ? それと罪も重くなるよ?」

 

「警察さん。俺を捕まえるのはやめておいたほうがいいぜ」

 

「え?」

 

「なんてたって俺はあの!! トリガー!!! ンなのだから!!!」

 

「な、なんだってーーー… 逮捕だ」

 

「ちょ、おま、待てよ!!」

 

 

 そう。兆は自分がトリガーだと言い張っているのだが、実際そうなのだが、普段の言動や態度、そして変身時のシークエンスによって正体がまるでわからないのだ。本人はどうしても知ってほしいらしいが、何かと変身後、解除後に何かが起こり、お預けをくらうのだ。

 すると、警官たちの後ろから女性の声が聞こえる。

 

 

「ん?… 君は確かRIVERSの…」

 

「あれ? 同じ課ですか? 初めまして!!本日、配属する事になった内嶋 永理です!!」

 

「おぉ、よろしく。凄い買ったね…」

 

 

 中に食べ物が入った紙袋を抱えている。それもかなりの量である。

 永理は誰かが押さえ込まれているのを見つける。西部劇に出てきそうな見た目をしており、いかにも怪しい。

 

 

「それで… これは一体?」

 

「あぁこいつが…」

 

「あぁ!! そこのお嬢さん!! 俺は無実なんだよ。ホントだからね? だだおもちゃの銃を撃っただけで、怖いおまわりさんが僕を虐めるんです!!」

 

「嘘をつくな!!全く!!」

 

「そ、そんなぁ」

 

 

 するとその時、向こう側で子供の悲鳴声が聞こえる。

 永理はすぐそれに反応し、警察に紙袋を渡すと、その方角へと走る。

 

 

「なっ!? 君っ!! … あ、お前こらっ!!」

 

「あの子が危ないからこれにて失礼!!」

 

 

 兆は警察の拘束を振りほどくと、彼女を追いかける。

 追いつこうとするのだが、見た目に反して、走るのが速すぎる。

 

 

「ちょ、速い速いっ!!」

 

「あ、あなた!! 罪を犯したら償うべきですよ!! なに逃げてきてるんですか!!」

 

「お前が危ないからだよ!! いいか? 何度も言ってるが俺は無実だ!!」

 

「すぐ嘘をつくんです!! 私知ってますよ!! 犯人の俺は無実だは嘘だって!!」

 

「決めつけんじゃねーよ!! ホントにやめといた方がいい!! 銃の音が聞こえねーか!?」

 

 

 その方角から銃声が鳴り響いている。RIVERSのメンバーも来ているのだろうか? 違ったとしたら1人で行くのは確かに危険である。

 

 

「そこに隠れるぞ」

 

「あ、ちょっと!!」

 

 

 兆は永理の腕を引っ張り、ゴミ箱の裏へと隠れる。

 そのすぐ目の前に銃を持った男が、男の子に銃口を向けている。RIVERSも来ているらしいが手を出せていない。

 

 

「あいつ… "キラーズガン" 持ってやがる…」

 

「キラーズガン…?」

 

「あ? 警察なら知ってると思ったけどな… あの銃はそんじょそこらの銃とは違う。使われる前に手を打たないとな」

 

「…… もしかして人間とは別の姿になるとか?」

 

「なんだ知ってるのか」

 

「いえ… ただ、聞いた話によれば、あの銃がもしそれだとしたら、自分に向けて撃つとまるで化け物のような力を手にしてなるとかなんとかで…」

 

「あぁ… その通りだ。だからやばい」

 

 

 そして案の定その男は自分の頭に銃を向ける。ニタァとした笑みをこぼしながら。

 

 

「ようやくお仲間が集まったな」

 

「貴様が例のウォンテッドか!!」

 

「もううんざりなんだよ… こんな理不尽な世の中よ。俺はこの国のせいで職を失った。今じゃそこらで土いじってるのが関の山さ… だからこそ俺は変わる。この銃があればそれは叶う!! さぁて…… 記憶を貰うぞ」

《 キラーズガン 》《 ワン・キル 》

 

「う、うて!!」 「ダメです!!子供がいます!!」

 

 

 引き金を引くと、自分に撃ち込んだ銃弾が体の中を駆け巡る。

 すると、みるみるうちに姿が変わり、恐ろしい怪人へと成り果てる。

 

 

《 シ・ザイ・キリング・ウォンテッド!! 》

「記憶を… よこせッ!!」

 

 

 子供の頭に手をかざすと、白い靄のようなものが現れ、それを吸収し始める。

 

 

「おっと、まずいな… くそ、銃取り返すの忘れてた……」

 

「…っ!!」

 

「あ、おい待て!!」

 

 

 その吸収を始めた瞬間に、ウォンテッドの手前まで来て子供を担ぐと、そのまま全力で走って逃げ始める。

 

 

「こいつ…!!」

 

「今だ!! 撃てェェェ!!!!」

 

「お前ら… その程度で俺に勝てると思うな!!」

 

 

 銃を撃つRIVERSの警官たちに持っていた銃を乱射し、数名に怪我を負わせた後、すぐさま方向を変え、永理を追いかける。

 

 

「… 全く、ウォンテッドはこれだから嫌なんだよ。あの子供も半分くらい取られてるだろうし、あの女警官もまずいことになるな… 急ぐか───」

 

 

─── 街中を走り、やがて大通りに出る。通りは、銃声を聞いたのか周りには人がいない。

 ゼーハーとかなり息を切らせながら、永理は子供の無事を確認する。外見上はなんともないのだが、問題は先ほどの白い靄が、記憶の一部だとして、この子は今までの記憶を失ってしまっている可能性がある。

 

 

「ねぇ、君? 自分の名前わかる?」

 

「… わかんない…」

 

「あ… そっかそっか! じゃ、じゃあ、お母さんとかお父さんの名前はわかるかな?」

 

 

 子供は悲しげな顔をして、静かに首を横に振る。やはり記憶の断片を持ってかれているようだ。

 すると子供は顔を歪ませ始め、泣き始めてしまった。

 

 

「わわわっ!!? ど、どうしたの!? どこかぶつけたの!?」

 

「んーん… 凄く思い出したいのに、凄く大事なことなのにわからないんだ… でも、僕そこに帰りたい… 帰りたいよー!!」

 

「えぇッ!? だ、だだ大丈夫!! お姉ちゃんが君をしっかり送り届けてあげる!! それから君の大っ事な記憶、あいつから奪い返してあげるから!! だから! ほら、もう泣かない」

 

「うん…… あ」

 

「どうしたの …ッ!?」

 

 

 子供が見る方向に、あのウォンテッドが銃を向けて立っていた。

 永理は子供を後ろに隠し、懐にしまっていた銃を取り出す。しかしこれは空砲である。射撃訓練は受けているが、まだ新人ということが相まって実弾の許可をされていないのだ。更に本来であれば、巧也の近くにいなければならなかったが、彼女の悪い部分が出てしまい、状況は最悪のものとなっている。

 

 

「警察はいつもそうだ。俺のものを奪って行く。俺がこんなにも一生懸命に、働いて働いて、やっと手に入れた地位なのによぉ…… お前らはそんな俺から職を奪い、親の脛をかじらせた。お前らのせいだ… お前らの…ッ!!」

 

「動かないでください!! う、撃ちますよっ!!」

 

「今も俺のものを奪っていった。そのガキを渡せ。命だけは助けてやる」

 

「いやと言ったら…?」

 

「そんなチンケな銃で俺を殺せるわけがない。つまり… お前は死で償ってもらう。人のものをとったら泥棒だ」

 

 

 ウォンテッドは永理の手をはたき銃を落とし、そして首を掴むと、そのまま持ち上げる。

 

 

「カハッ…!」

 

「後でゆっくり取ってやるから… 大人しくしてな」

 

「お、お姉ちゃん!!」 「に… 逃げて…!! は、早くッ…!!」

 

「死ね」

 

 

 銃を向けられ、もうダメかと思ったその時、ウォンテッドの頭にどこからか飛んで来た弾丸が当たり、怯んだところを永理は蹴らを入れてなんとか逃げ出す。

 そして、誰かが近づいてきたと思うと、その人は手を差し出す。

 

 

「よう、無事か? 女警官さんよ」

 

「ごほっ!!… あ、あなたは…」

 

「ハハッ、派手にやられたな」

 

 

 その手に捕まり、立ち上がると、目の前にいたのは先ほどのヤバい格好をした男… 兆だった。

 その手には見たことがない銃が握られている。

 

 

「誰がヤバい格好だって!?」

 

「誰に言ってるんですか… って、それよりもすぐにここから離れてください!! ウォンテッドがいます!! その子を連れて逃げてください!!」

 

「で、あんたはどうすんの?」

 

「警官として、あなた方を守ります。す、少しくらいなら時間は稼げると思いますから… 早くッ!!」

 

「………… やだよ」

 

「えっ」

 

「俺は女見捨てるほどダサい男じゃないからな… それにこれは俺の仕事だ。さっさと行きな」

 

 

 肩をポンと叩くと、ウォンテッドに歩み寄る。もちろん永理はそれを許すはずがない。

 

 

「何言ってるんですか!! これは警察の仕事です!! あなたは早く逃げてください!!」

 

「じゃあ、あんたはここに残ってどうするつもりだ?」

 

「あなた方を守る為です!! ここに配属される前から決めていました。いえ、警察になる前からずっと… 人を守るためならこの命に代えてでも救うと!! だから…!!」

 

「自分の命も守れない奴が、誰かを守るとか言うなッ!!!」

 

「…ッ!!」

 

「女警官さん。あんたはその子を連れて逃げな… それにここからは俺がクールに、そして華麗にあいつをぶっ倒すからよ」

 

「一体、何を……」

 

 

 兆は懐から何かを取り出し、腹部に掲げると、自動的に腰にその何かが巻かれる。

 

《 セイブドライバー!! 》

 

 

「な、何をする気だ…」

 

 

 そしてもう一つ懐から、ナイフを取り出す。ただし、それは普通のナイフとは違う。

 それからナイフの手元の部分にあるボタンを押すと、音声が流れらと同時に、ナイフの背面が折ら畳まれる。その折りたたまれた面には "1" と書かれている。

 

《 ONE!! 》

 

 それを先ほどの "セイブドライバー" という物の左側に差し込むと、《 SET!! 》という音声が鳴り、見た目がまるで中のような形状になる。

 それからすぐに右側についている、銃でいうハンマーの部分を起こす。

 

 どこからともなく音楽が鳴り響き、それにノリながら右の人差し指を、ドライバーの引き金に置き、左人差し指、中指、親指を突き立て、他の指は折り込み、左手を前に突き出す。

 

 

「変身ッ!!!」

 

 

 掛け声と共に引き金を引くと、砂嵐が巻き起こり、それと共に現れた鎧が宙に浮かび上がる。一緒に現れた巨大な銃がその鎧にマーキングを付け、一つ一つ撃ち抜いて行くと、徐々にそれらを見にまとって行く。

 

《 ファーストガンアクション!! トリガー!! リボルヴリボルバー!! 》

 

「お前… まさか!!」

 

「これは…」

 

 

 砂嵐が止むと、そこには1人の黒い帽子を被った仮面の男が立っていた。顔の両側面には1と描かれている。

 目の前に扉が現れ、それをバッと開いて通り抜ける。ちなみにこれはなんの意味もない。

 

 

「ト、トリガー!!?」

 

「え、え… あの男の方は何処へ!?」 「え…?」

 

「ほう、あいつを何処へやったかは知らないが、まさかお前と相対することになるとはな」 「ちょ」

 

「なんだかんだ言って結局逃げてるじゃないですか!!」 「ま」

 

「いいだろうトリガー。お前の実力… 試させてもらう!!」 「… なんでいつもこうなの…」

 

 

 兆は変身すると、なぜかは分からないが気づかれないのだ。その理由の一つが砂嵐のせいなのである。単純に見えないだけなのか、錯覚作用があるのか未だにわかっていない。

 

 

「よーし、なら分からせてやる。行くぜウォンテッド…… "今日は俺の誕生日だ"」

 

「だからなんだっ!!」

 

「よっ!」

 

 

 撃ち込んでくるウォンテッドの銃弾を、なんと一瞬のうちに自分が撃った弾で相殺する。

 先程も使っていたこの名は…

 

 

「愛銃の "ガーツウエスタン" だ。イカしてるだろ?」

 

「な、何ッ!?」

 

「そんなもんか? ウォンテッドさんよ!!」

 

 

 永理は2人が戦う隙を見て、子供の手を握り、その場から離れ始める。

 それに気づいたウォンテッドは追いかけようとするが、トリガーに足を引っ掛かかられ豪快に倒れる。

 トリガーはしゃがみ込んで、ニヤニヤと仮面の下で笑う。

 

 

「走ると危ないぜ?」

 

「お、ま、え…ッッ!!!」

 

「尺もないんだ。今からお前にとびきりの必殺技をかまし…」

 

「図に乗るなよッ!! このアホがッ!!」

 

 

 トリガーの両足を掴み思いっきり引っ張ると、ひっくり返って頭を強打する。そして彼女の元へ向かおうと立ち上がるが、膝の裏を蹴り、再び転ばせる。

 

 

「おい!! 俺の賢い脳くんが悲鳴あげてんだろうがこのやろう!!!」

 

「うるせぇ!!! てめぇは黙って寝てろ!!!」

 

「お前こそ寝てろ!!!」

 

「クソッ!… なら仕方ない。本当に眠らせてやる… 永遠になッ!!!」

 

 

 ウォンテッドは銃を、こちらに向け撃ち放つ 。この至近距離で避けられるはずがない。普通の人間であるならば。だが、彼の目の前にいるのはトリガー。

 まず当たる訳がない、だろ?

 

 

「避けただとッ!?」

 

「よーし、見とけ! そこにいる… 誰もいないけど、みんな見てやがれ!! これが俺の必殺技だッ!!!」

 

 

 先ほどのハンマーを起こし、再びトリガー引くと、ウォンテッドに背を向けて一歩。二歩。三歩と歩く。

 

 

「1」

 

「何を背を向けてるんだ?」

 

「2」

 

「ふざけたことを…… そんなに死にたいらしいな!!!」

 

「3」

 

「ここで死ねッ!! トリガー!!!」

 

 

 ウォンテッドが近づいたと同時に、振り向いて相手の腹部をストレートに蹴り飛ばす。まるで銃に撃たれたかのように一瞬でその動作は終わる。

 吹き飛んだウォンテッドは何とかブレーキをかけたが、体が限界を超え、徐々に熱くなってきている。

 

 

「こんな… はずじゃ……ッ!!」

 

「今日の俺も… 勝利の日」

 

「ぐ、ぐわあぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 

 

 しばらく耐えたが、たまらずウォンテッドは爆発し、人間へと姿が戻り、記憶が持ち主のところへ戻って行く。キラーズガンもバラバラに砕け散り、使い物にならなくなる。

 

 

「ふぅ… あの人、大丈夫かな? 子供連れてけとは行ったけど、あの調子じゃ絶対無理だろ」

 

「何が無理なんです?」

 

「はははっ、なんでいるの?」

 

「子供は安全な場所へ避難させました… 後はあなたを署に連行します」

 

「えぇ… ちょっと待ってくださいよ女警官さん。見たでしょ俺のあの活躍!? それで逮捕ってのは… ダメだと… 思うな!」

 

「永理です」

 

「へ?」

 

「RIVERS所属の内嶋 永理です」

 

「え。え、えぇ? ……えぇぇぇっっ!!? あ、あのRIVERSッ!?」

 

「そうです! 凄いでしょう!」

 

「…ってなんだっけなぁ…」

 

「…… とにかく。あなたを署に連行します… 本来であるならば」

 

「ん?逮捕しないって?」

 

「逮捕はします。ただし今回は見逃します」

 

「… 上司にこっぴどく叱られても知らないよ? 責任とらんよ?」

 

「いいんです。なぜか… あなたは違うような気がします」

 

「…… なら、お言葉に甘えさせてもらうか。んじゃ、永理さん…… あ、そうだ」

 

「はい?」

 

「俺は射手園 兆。さっきの男と同一人物だからな? いいな? それじゃあお疲れ」

 

「兆さん、ですか…… ありがとうございました!!」

 

 

 トリガー… 兆は振り向くことなく、手を振りその場を後にする。

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>

 

 あの後、あの永理とかいう警察がどうなったかは知らないけど、変なやつだったなぁ。

 俺はあんなにかっこよく決めてたんだけどな。

 

 

「マスター。いつもの」

 

 

 指を鳴らして、マスターを呼ぶ。だが、一向に来ない。

 

 

「ん? マスター? ちょっとー!!」

 

 

 帰って早々留守かい。やだねぇー… 夜のミルクはいけないってのかい?

 兆は椅子に座っていたが、立ち上がると、奥の扉を開き、自室へ行く。小さいがそれなりのものは揃っている。そこにあるベッドに奉仕を外して寝そべる。

 

 

「今日も疲れたなぁ… そして今日も外れ…か」

 

 

 帽子を手に取り、見つめながらポツリと呟く。

 

 

「俺の記憶は一体どこに行ったんだか…」

 

 

 彼は宿命のトリガーを引く。

 仮面ライダートリガーの伝説がここに始まる。




さぁ、ということで始まりました。
こ、去年の10月頃に腐れ縁のやろうと話しをして、色々ありましたけどやっとできました。
そして第1劇。長いので説明不足等があるかも知れませんが、次の話で回収できればと思います。

感想・質問、待ってます!!
質問は後書きの方に記載するようにしますので、よろしくお願いします!!

次回、第2劇「 二丁拳銃 」


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第2劇「二丁拳銃」

皆さんご無沙汰しております。第2話でございます。

トリガーを逃した罪は重いゾ

すっごい今更なんですけど、行の最初に1マス空けた方が見やすい…? 見にくい…? これもうわかんねーな……(ぶっちゃけ面倒だったのでやって)ないです。
読者兄貴達はどう思います?

とりあえず本編、それではどうぞご覧ください。


「永理」

 

「… はい」

 

「自分がやった事、わかってるな?」

 

「… はい、トリガーを逃がしました…」

 

「なぜ、逃がした」

 

「あ、あの人は子供を助けてくれましたし… それに今回のウォンテッドの件はトリガーがいなければ…」

 

「あいつはそれすら計算のうちだッ!! いいか!? あいつはウォンテッドと繋がりがある筈だ!!! それからお前も俺の元を離れて、危ないところだったんだぞ!!? あのトリガーと接触した時点でお前は…!!」

「落ち着いてください課長!! 永理さんの言う通り、トリガーがいなければ、今回2人はどうなっていたかわからないですし!!」

 

「…… そうだな。すまん永理」

 

「いえ… 申し訳ございません」

 

「…あぁ」

 

 

 険悪なムードが漂うRIVERSの室内。巧也は腕を組み、椅子に深く座る。眉を下げ、悲しげな表情をしながら、永理は椅子に座る。落ち着かせる為に割って入った孝四郎は永理の元へ近づき、耳元で囁く。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「すみません。ご迷惑を…」

 

「いいですよ。課長はトリガーの事になると、いつもああなんです」

 

「… 課長はトリガーと何かあったんですか?」

 

「そうですね… 課長の両親について知ってますよね?」

 

「はい、存じてます… 父は警視総監。母は外科医でしたよね。でも2人は…」

 

「トリガーによって… 射殺されたそうです」

 

「えっ…!!?」

 

 

 永理は思わず声を上げてしまった。全員その場で驚き、彼女に視線が行く。

 

 

「… 孝四郎。お前…」

 

「彼女もRIVERSの仲間です。いずれ知らなければならないかと… それに事情を説明しておいた方が、永理さんも考えを改めるのではないかと思いまして、すみません」

 

「… そうか… そうだな、ありがとう。という事だ永理。親を殺されたからっていうのもあるが、それより奴の考えが分からない以上、下手なことはしたくないんだ。分からないっていうのが何よりも怖い。市民を危険に晒す真似は… 警察として絶対させたくない」

 

 

 巧也がここまでトリガーに対して感情を抱いていたなんて知りもしなかった。しかし、彼の過去を知った上でも、トリガーを悪だと、どうしても永理は思えなかった。昨日の出来事の中で、人間性は決してウォンテッドのそれとは違うと思う。確信してはいない。だから捜査する。

 そして、ふとあの人物を思い出す。昨日の例の男である。見たこともない銃を持ち、戦っていたあの男なら、トリガーについて少しくらい情報を得られるかもしれないとそう思った。

 

 

「課長… わかりました。次はこのような失態がないよう気をつけます… 少し風に当たってきます」

 

「あぁ、行ってこい」

 

 

 永理は部屋を出ると、すぐさま自分の足で調査に向かう。

 しばらく静まり返っていた部屋だったが、佳苗が口を開く。

 

 

「課長。ちょっと言い過ぎたんじゃない?」

 

「… わ、悪かったと思ってる」

 

「ジョーダンよ。それより… エリアAで… まぁここで、トリガーの目撃情報が出てきたわ」

 

「なにッ!?… どこだ」

 

「場所は───」

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 BAR TRIGGER。兆が住み込む場所である。そんな中で、今日も何やら騒がしい様子。

 

 

「ガンホーレさん。そろそろミルクネタやめません?」

 

「ネタでやってるわけじゃねーんだよ!! そろそろ気づきやがれ!!」

 

「……はっ!! まさか金がない俺のために…!!? うぅ… な、なんて優しい人なんだ…」

 

「違うッ!! お前を馬鹿にする為にやってるんだよッ!!」

「え、それ言ってもいいんですか団長」

 

「な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!???」

 

「はははっ!!今更気づいたか!! そうだ、俺はお前を馬鹿にしていた!!」

「なんで団長嬉しそうなんですかね」

 

「ウオォォォォォッッ!!!」

 

「ハハハハハハハハハッッッ!!!」

「何この状況」

 

 

 マスターはそれを薄く微笑みながらグラスを拭いている。これが日常になっているなんて側から見たらヤベーイ奴らの集まりである。現にさっき来た客も引いて帰った。完全に営業妨害だ。

 

 

「あ、そうだマスター」

 

「なんだ?」

 

「ほら、俺って記憶ないじゃん? マスターの所へ来たのだって、あの例の男がここ紹介したからだったし…」

 

「そうだな」

 

「今まで聞かなかったけど、あの人と知り合い?」

 

「… まぁ、多少はな。昔はよく店に来ていたよ」

 

「ホントに俺ってどっから来たんだろうなぁ… マミーとパピーは元気かな…覚えてないけど」

 

「いずれわかるさ。お前は今出来ることを精一杯やれ」

 

「わかってるよ。トリガーの仕事だろ」

 

「違う、家賃だ。冗談はそれを払ってからにしろよ」

 

「… はい」

 

 

 そうし兆はマスターに金を渡し、ガンホーレとイッシュウの2人に酒を1杯ずつ出すように言って、外へと出て行く。

 今日も晴天なり。この太陽は俺にとっちゃスポットライトさ。俺を輝きで包み込み、目立たせてくれている。こんないい天気に変な奴に会いたくないもんだぜ。

 

 

「えっと、ナントカさん」

 

「ん?」

 

「私です」

 

「あー… 永理さんでしたっけ?」

 

「…! 名前を知っていると言うことは、やはりトリガーと繋がりがあるようですね」

 

「いや本人でございます」

 

「ちょっと来てください。拒否権はありません!」

 

「… うわぁもう。変なのに会っちゃったよ……」

 

「何か言いましたか?」

 

「なんでもないでございます」

 

 

 永理に連れられ、ここらでは有名なカフェに入店した。

 昼前にも関わらず、客の人数が多い。一応、座れる場所があり2人はそこの席へ着く。

 

 

「で、なんでございましょうか」

 

「まず名前は?」

 

「前にも言いましたけど、射手園 兆。年齢は21。身長と体重は秘密。職業はトリガーやってます」

 

「名前と職業ふざけてませんか? 年齢は同年代だとは思わなかったです」

 

「え? 永理さん21なの?」

 

「はい。そうですけど…」

 

「…(たった21でRIVERSに配属されるとはな… 流石に驚いた)」

 

「???… さて気を取り直して、本名は言いたくないと?」

 

「いやだから、これが本名なんですって。何度も言ってますけど、俺はトリガーです」

 

「……」

 

「せめて名前だけは信じてよ… その痛い子を見るような目はやめてほしいかな…!!」

 

「… わかりました、信じます」

 

「はい、どうも」

 

「さて、そろそろお腹も空いてきましたし、食事にでもしますか」

 

「は…?」

 

 

 え? 擬似的だけど俺取り調べ最中じゃないの? この人すっごい注文してるんだけど。めちゃくちゃ頼んでるよ!? え、大丈夫なのこれ!?

 

 

「兆さんは何か食べます?」

 

「あ、じゃあコーヒーで」

 

「あと、コーヒー1杯とそれから……」

 

 

 しばらくして注文した品がズラリとテーブルに並ぶ。ちなみにテーブルを埋め尽くす品の中で、コーヒーが1杯ポツンと置かれているが、他全て彼女のものである。

 

 

「い、いただきます」

 

「いただきまーす!!」

 

 

 この人さ。体の中に絶対サイクロンクリーナー搭載してるよ。いや、おかしいって、パスタってあんなに一瞬で消えるものなの? カレーは飲み物って平気な顔していいそうだよ。

 

 

「カレーは飲み物って言いますけど、全くその通りですね。スルスルいけます」

 

 

 言ったよ。ヤバイよ。こんな人と一緒に居ていいの? 俺、食われないよね? まだこんな所で死にたくないんですけど!?

 

 

「ごちそうさまです」

 

「えぇ…」

 

 

 あのテーブルいっぱいにあった食べ物が、綺麗さっぱり無くなっている。

 俺の思考回路を綺麗さっぱり諦めている。

 

 

「さぁて、そろそろ行きましょうかねぇ…」

 

「ん? 何か声聞こえません?」

 

「外からだな」

 

 

 会計を済ませ(奢ってもらった)、外へ飛び出ると、人々が逃げ惑っている。逃げている逆の方向を見ると、胸にマークがあるウォンテッドが暴れており、人の頭を鷲掴みにし、記憶を奪っている。

 

 

「また派手に暴れてるな、おい」

 

「行きましょう!!」

 

「ちょい待て。どないする気じゃ」

 

「とりあえず銃で撃って怯ませて、私に注意を引きます」

 

「危ないからやめときな… 代わりに俺が行く」

 

「危険です! 私に任せてください!」

 

「あんたの方が危険だから、色んな意味で。じゃあ、市民の避難頼むよ」

 

「あ、ちょっと!!」

 

 

 兆は歩きながら、ドライバーを巻き、ファーストガンナイフをドライバーに差し込み。ハンマーを起こす。それから引き金に右人差し指をかけると、左手を銃のような形にして相手を指す。

 

 

「変身ッ!!」

 

《 ファーストガンアクション!! トリガー!! リボルヴリボルバー!! 》

 

 

 変身後、ウォンテッドに向かって走って行き、勢いそのままに顔面に飛び蹴りをかます。吹き飛んだウォンテッドを見ながら着地して、手を銃の形にして指をさす。

 

 

「さっさと逃げろ一般人!! それからウォンテッド。もう少し大人しくできないのか? 大人しくしたら飴玉かミルクをくれてやるぜ! 今日はお前の健康記念日だ!!」

 

「くそっ、トリガーか…… 今なんて言った?」

 

「そうだみんなのヒーロー、トリガーさんだぞ。それ以上暴れてもらうと、みんなが怪我しちまうんでね。早々に終わらせてもらうからな」

 

「やってみろ!!」

 

 

 銃を撃ちながら、ウォンテッドはトリガーに走りながら近づいてくる。また彼も銃を放ち、向かってくる敵と真正面で交戦する。

 至近距離となってからは格闘戦へ持ち込むと、トリガーは放たれる拳をヒラリとかわし、馬跳びをして飛び越え、それと同時に蹴りを入れる。

 

 

「そんなパンチじゃ、俺は倒せんよ」

 

「トリガー!!」

 

「おらよッ!!」

 

 

 それから腰に差していたガーツウエスタンを放ってから回し蹴りを行い、ドライバーのハンマーを起こしからトリガーを引く。

 そしてウォンテッドに背を向けて、数字を言いながら歩く。

 

 

「3」

 

「あ…?」

 

「2」

 

「おい」

 

「いっ…… てぇぇぇぇぇっっっ!!!!?」

 

 

 最後に1と言おうとしたが、それと同時に背中を撃たれる。

 これに対してトリガーは激怒した。

 

 

「おまっ、お前ェェェッ!!!! ここで普通さ、必殺技をかましてグワァァァッッのドカーン…じゃん!? なのに、てめぇ背中撃つなんて卑怯だぞッ!!」

 

「お前が急に背中向けて、数を数えながら歩いてるからよ」

 

「変身最中は攻撃しないんなら、必殺技中もなんかするんじゃないよ!!」

 

「うるせぇ!! こっちは身の危険が迫ってるんだぞ!? バカか!!」

 

 

 すると、キラーズガンを横に振るいながら撃ち、砂埃を立てて、それが消えるとウォンテッドの姿は見えなくなっていた。

 変身を解いた兆は、逃げられたことに腹が立ったのか、背中を撃たれたから腹が立ったのか、定かではないが言葉にならない怒りを地面を蹴って静めている。

 しばらくして、手を振って永理が近づいて来ている。

 

 

「おーい… って、怒ってどうしたんです?」

 

「あの卑怯者が俺の背中を撃ってきたの!! すっごい痛いの!!」

 

「はえぇ〜、まぁこれでも食べて元気出してください」

 

「なんだこれ… ミルク味の飴玉か…… とりあえずあの野郎見つけ出してボッコボコにしてやらねーと気が済まんもごもご」

 

「… そういえば兆さんが何かをした後、トリガーがすり替わるように現れましたね……」

 

「ん?」

 

「つまり兆さんはトリガーと… っ!! まさかっ…!!?」

 

「やっとわかったか。そう俺がァ──」

 

「なんらかの方法でトリガーとすり替わることが可能で、そしてあなたはトリガーの協力者ということですね!!!」

 

「うん。すごく惜しい。いや、やっぱり惜しくはない俺はトリガーだ」

 

「あなたを身代わりに置くとは… なるほどなるほど」

 

「あの〜1人で納得しないでもらえます…?」

 

「全ての謎はわかりましたッ!! これをもし上長に伝えたらあなたは終わりです!!!」

 

「あーーーー…… 多分、信じてくれないと思うな」

 

「知らされたくはないでしょう… ここで私をお口チャックさせる為の条件を出してあげます」

 

「勝手に話進むのね、これ… なんだ? 美味い店おごれか? 警察さんも怖いなぁ〜」

 

「違います… トリガーの居場所を吐いてもらいますよ。それからウォンテッドの捜索も手伝ってもらいます」

 

「目の前です。あなたの瞳の中に映ってるイケメンこそトリガーさんです」

 

「それで、どうなんですか?」

 

「…… あぁ、いいよ。やってやるよもう。ウォンテッドに関しちゃ俺も見過ごす訳にはいかないからな」

 

「決まりですね!! 早速ですけど、あのウォンテッドの元へ向かいましょう」

 

「は? あんた場所知ってるの?」

 

「あのウォンテッドの胸にマークがあったと思いますが、あれはここからすぐ近くの洋服屋のマークなんです。しかも各地に数店舗しかありませんし、このエリアAなら1つのみで、その店の近くに人気の少ない場所があります。怪人の姿であってもそのマークが刻まられるということは、そこにかなりの思い入れがあるか、はたまたそこに関係があることを示しているんじゃないかと思います。少なくとも───」

 

「あーッ!!! わかったわかった!!! 行くよ行くからッ!!!」

 

「なら、行きましょう!」

 

「おっと、その前にちょっと取り行くから待っといて」

 

「何を取り行くんです?」

 

「結構、前に作ったけどそろそろ使ってあげてもいいでしょ」

 

「え、どこ行くんですか!? 待ってくださいよぉ〜!!」

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>

 

 それから兆と永理は目的地である洋服屋まで足を運ぶ。

 ここに来る前にこの警察さんを連れてバーへ行った。住処がバレちまったけど、別に問題はない。ようやくこれで俺がトリガーだとわかる筈だきっと。うん。信じたい。

 

 

「今更なんですが、兆さんはバーに住んでるんですね」

 

「ん? あぁ、俺実は記憶ないんだよ。行く当てもなかった所をなんか男があそこを紹介してくれて…」

 

「… えっ!? ちょっと待ってください。記憶がないんですか!?」

 

「覚えてるのは名前と年齢くらいで、それ以外、全く覚えてない… ウォンテッドから人を守る為でもあるけど、もう1つは俺の記憶を取り戻す為なんだよ」

 

「そうだったんですか… すみません」

 

「なんで謝るの」

 

「だって兆さんはその為にトリガーと協力し合ってるんですよねっ!?」

 

「違いますね… おっ」

 

 

 そんな話をしているうちに、例の洋服屋の前までたどり着いた。見た目はお世辞でも綺麗とは言えないほどボロボロになっており、今にも崩れそうである。人の気配は全くなく、服も適当に積み重ねられているだけだ。

 

 

「こりゃあ… 酷い」

 

「課長には連絡してありますから、あと数分でここへ来ま… あれっ!? 兆さん!?」

 

 

 兆はそのまま店の奥へと入って行く。あたふたしていた永理であったが、洋服屋の前に飴を置いて兆を追いかける。

 中へ入るとこれといって特に何もない。彼は服を適当に掴んでは投げ捨てている。何かを探しているようだが…

 

 

「何を探してるんですか…?」

 

「今、踏んだところの床が柔らかかった」

 

「……?? あっ!」

 

「ビンゴ」

 

 

 服を退けて行くと、人が1人入れる程度の穴があり、その奥には僅かに光が見える。

 

 

「ここからは任せろ。永理は外に居てくれ」

 

「大丈夫なんですか?」

 

「いいから。俺がトリガーだと思うんなら、尚更だぞ」

 

「…… わかりました」

 

「やけに素直だな」

 

「その代わり逃げないでくださいよ」

 

「わかってるよ。じゃ、バイバーイ」

 

 

 永理は彼を見送ったあと、外へ出ると飴玉が消えている。誰かに食べられたと思ったが、その考えはすぐに変わった。近くに巧也が腕を組んで1人で立っていた。まるで永理を待っていたかのように。

 

 

「か、課長」

 

「RIVERSのメンバーはいない。俺だけだ」

 

「なぜですか?」

 

「本来なら来る予定だったんだが、どうやらエリアBで問題が発生した。全部隊はそっちに回している」

 

「それで、課長だけと」

 

「安心しろ。一応、ウォンテッドの動きを一時的に止めておける銃弾がある… まだ試作品段階だがな」

 

「そ、それで大丈夫何ですか…?」

 

「俺の予想なら既にいる筈だ… トリガーがな」

 

「トリガー…」

 

「お前が店の中に入ったのもトリガーらしき人物を目撃したからだろ? なら、話は早い。同時に逮捕するまでだ。ここで待つぞ───」

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「─── さて、と」

 

「来たか…… いやお前誰だ」

 

「トリガーですけど」

 

「ここに早々人は入ってこないはずだ。捜査員か?」

 

「いや、トリガーですけど」

 

「… 調子に乗るなよガキが」

 

 

 兆の入った穴にはやはり男がいた。広い空間が設けられているが、特に物も置いてない。ほぼ洞窟のようなものである。

 そして男は頭にキラーズガンを向ける。その指は震えて、目が血走っている。

 

 

「完全に中毒症状が出てるな。やめとけ。それ以上使えばお前は我が身を保てなくなるぞ」

 

「知ったことかよ… 俺には何もない。この服屋も借金まみれで潰れて、何もかも無くなった。あるとするなら、ほんの少しの金とカビたパン…… そんなクソみたいな生活をしている時、こいつをもらったんだ。これがあれば欲しいものも欲しい時に手に入れることができる。こいつがあれば…!!」

 

「確かにあんたは落ちるとこまで落ちた。だけどあんたは底より更に深く潜っちまった… 後戻りできない所まで」

 

「いいんだよ!! こんな店捨てて、俺は新しいものを手に入れるんだ!!!俺は…!!!」

 

「… の割には、胸のマークはくっきり映るんだな」

 

「なに…!?」

 

「あんたはただ逃げてるだけだ。自分の本当に欲しかった物を自分で手放してる。キラーズガンを捨てろ。またあんたの欲しい物に手が届かないだけだぞ」

 

「ごちゃごちゃごちゃごちゃうるさいんだよ!!! もういい、全員、殺してやるゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!

 

「よせっ!!」

 

 

 すかさずガーツウエスタンを放つが遅かった。自分の頭にキラーズガンを撃ち込むと、怪人態になるが体の周りに電気が走る。

 

 

「な、何だこれ…!!」

 

 

 そのまま骨格が変わって行き、みるみる膨れ上がって行く。それからしばらく変体を繰り返すと、巨大な化け物と化してしまった。

 既にこの状態は自我はなく、ただ本能のままに暴れる獣同然である。

 

 

「… なんて事してんだよ…!! 変身ッ!!!」

 

 

 ドライバーの引き金を引いて、トリガーへと姿を変える。ガーツウエスタンを抜いて、急所を狙って行くが、まるでビクともしない。

 

 

「かたっ!?」

 

「ヴオォォォォォォッッッ!!!!!」

 

「うわっ…!!」

 

 

 巨大な尾が脇腹を捉え、凄まじい威力でトリガーを壁に打ち付ける。

 畜生このやろう… キラーズガンは確かに人間を越える力を与える。だけど、そんな力が簡単に手に入るわけがない。それ相応の代償が付いてくる。あの銃は使い続けるほど中毒になり、やがて投与されるエネルギーについていけず暴走しちまう。こうなるともう、助けることができなくなる……。

 

 

「…… 本当にこの仕事やってると、手を汚す時が必ず来るんだよな… 」

 

 

 そしてトリガーは地面に着地した後、胸に手を置き、今からするべき行為に対して心の底で何度も謝り、悔やむ。それから深呼吸を行い、足首に巻いていた "ガンナイフホルダー" から、1本フィガンナイフを取り出すと、スイッチを押す。

 

 

《 TWO 》

 

 ドライバーからファーストガンナイフを外し、先程取り出したナイフ、"セカンドガンナイフ "を差し込む。

 

《 SET 》

 

「数撃ちゃ当たると言うけど、数多けりゃその分当たるだろ?」

 

 ハンマーを起こし、引き金を引く。

 すると、砂嵐が起こり新たなアーマーが舞う。バラバラに散らばったそれらを、巨大な銃が2つ出現し、マーキングして撃ち抜いて行く。

 

《 セカンドガンアクション!! トリガー!! ツインライトニング!! 》

 

 

 嵐が止み、トリガーが現れると顔の側面の1という数字が2に変わった。

 

 

「ヴゥ……?」

 

「なんだよ」

 

 

 巨大化したウォンテッドは眉間にシワを寄せ、動きを止めた。トリガー本人は分かっていないが、横の数字が変わった以外他は何も変わっていないのだ。

 

 

「悪いが、速攻で終わらせてもらうぜ」

 

「…… ガァァァァァァッ!!!」

 

 

 腰のガーツウエスタンを抜くと、もう一方に実は取り付けられていたセカンドの専用武器 "ライトニングウエスタン" を抜き、二つの銃で脚を何度も撃ち続ける。

 ウォンテッドは爪を立て、トリガーに襲いかかるが、先程とは違いヒラリとかわしながら撃ち込む。

 

 

「グゥゥゥ…… ガッ… !!?」

 

 

 暫く撃ち続けていると、ついにはバランスを崩し、巨大な体がズドンと音を立てて倒れてしまう。

 トリガーはすかさず壁を蹴り、ウォンテッドの頭上よりも高く跳ぶ。それからガーツの方にファーストを、ライトニングの方にセカンドを差し込み、ハンマーを起こす。両銃を凄まじいエネルギーが包み込み、先端をウォンテッドへと向ける。

 

 

「… 今日の俺は勝利というより、敗北の日だな」

 

《 ワンガーツ!! ジャニュアリーシューティング!! 》

《 ライトニング!! セカンドシューティング!! 》

 

「ガアァァァァァァァアッッッ!!!!!」

 

 

 ウォンテッドは口から火の玉を出して攻撃してくるが、両銃から放たれたエネルギー弾は、火をかき消してそのまま怪物を捉える。力に耐え切れず、ウォンテッドは大爆発を起こし、跡形もなく消えてしまう。煙の中から人々の記憶が一斉に飛び出し、持ち主の場所へと帰って行く。

 

 

「はぁ… なんか喜べないな。さて、どーせ外にあの女と数人警察がいるからどうすっかなぁ〜…… よしっ! 正面切って行こう─── 」

 

 

 

─── 巧也達は店の前で、ウォンテッドも出てくる危険性も考えながら、銃を握り店の両端で待ち構える。

 すると男が1人店の中から出てきた。その瞬間に巧也は、相手が抵抗できないよう地面に倒し、素早く頭に銃を向ける。

 

 

「あいでででででででっ!?… 痛い? やっぱりいだいっ!!!」

 

「か、課長!! その人違います!!! ウォンテッドじゃないです!!!」 「な、なんだと…?」

 

「イエス!! 私ウォンテッドじゃないヨ!! ただのトリガーネ!!」

 

「訳わからないこと言ってますけど一般の方です!!」 「え…? あ、あぁ、これは失礼な事を… 大丈夫かい?」

 

「大丈夫じゃないっすよもう… よっこいしょ」

 

 

 巧也は戸惑いながらも、長年の勘なのかこの男を怪しいと感じた。視線を永理に向け、手招きをする。それから近づいてきた永理の耳元で囁く。

 

 

「彼はなんだ? お前知ってるのか? 知っているなら何故ここにいる」

 

「はい。彼は射手園 兆さん。今、捜査のために協力してもらっています」

 

「どういうことだ?」

 

「以前、他の警官の方に職務質問されているところを見かけ、私独断で彼と接触した所、詳しい事は分かりませんがウォンテッドに記憶を奪われているそうで、この場所を見つけたのも彼のおかげです」

 

「記憶を… んー…… なるほど」

 

「課長?」

 

「兆くん… で、いいのかな?」

 

 

 それから巧也は兆に声を掛ける。こちらに向かう彼を兆はきょとんとした顔で見ながら服についた汚れを払う。

 

 

「なんでしょ」

 

「君はウォンテッドに記憶を奪われているらしいね」

 

「まぁ、一応そうだと思いますよ」

 

「思う?… あぁ、そうか。盗られているなら記憶もないか…」

 

「そうですね。ウォンテッドが出たら片っ端から潰してますね」

 

「そうか… さて、君はここにウォンテッドがいることを予め知っていたのかな? 中のウォンテッドと接触はしたかい?」

 

「いや、彼女が教えてくれたっす。それとウォンテッドの方はキラーズガンによって暴走した状態だったので倒しました」

 

「え…?」

 

「あぁなると助けることは不可能ですし、この場合は二次被害も想定した妥当な判断だと思いますよ」

 

「………… 君は一体」

 

「俺はトリガーですから」

 

 

 その言葉を聞いた巧也は顔を険しくし、少々睨むような目つきになる。兆の肩を掴むと、先ほどの優しい話し方から、圧をかけているように話し始めた。

 

 

「奴のような犯罪者を自分だと、ふざけたことを言うのはやめてもらおうか。君はウォンテッドについて何か知っているな?」

 

「そりゃもう、前から」

 

「どこで知った?」

 

「俺がトリガーとして戦っている時からっ──」

 

「── いい加減にしろ!!!」

 

 

 巧也の怒号は辺り一面に響き渡った。永理はあたふたしながら2人の様子を見続ける。しばしの静寂の中、先に口を開いたのは兆だった。

 

 

「それでどうしますか? 俺をこのまま逮捕します?」

 

「…………いや、逮捕はしない」

 

「ほう」

 

「だが……」

 

「ん?」

 

「署まで同行してもらう」

 

「え?」

 

「永理、連れて行くぞ」 「は、はい!!」

 

「え、いや、え?」

 

「詳しい話は署でじっくり聞かせてもらう」

 

「ま、待ってくださいよ〜。お、おい!! 永理!! 話が違うじゃねーか!!」

 

 

 兆が永理の名を呼び、意味深なことを言うと、巧也は何か違和感を覚え彼女に向き直る。

 

 

「ん? 永理?」

 

「はいぃ…」

 

「お前も一緒に話を聞かせてもらおうか???」

 

「うぅ… はい」

 

 

 そうして3人はパトカーに乗り込み、RIVERSへと車を走らせる。

 だが、この時3人は知らなかった。エリアBに向かったRIVERSのメンバーが全員やられてしまっていたことを……

 

 

「さぁてと、向かうとするか… エリアAに──」




次回よりやっと出てきます(何がとは言わない)
そしてトリガーの正体が暴かれる…!?

皆さんにご覧になる度に作者が立ちます(意味深)

それでは皆さん次の話でお会いしましょう。さよなら〜。

次回、第3撃「エリアBより」


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第3劇「エリアBより」

本当に申し訳ナス… ご迷惑おかけしました。
これからも元気にやってくゾ〜

それではどうぞご覧ください


 ここはエリアAの街の、どこにでもありそうなビルの地下室。しかしこの地下室は、普段使っているエレベーターでは行けず、階段を使用してもそこに通じる道はない。それ以前にここに地下がある事や行けそうな道すら誰も知らない。

 ただウォンテッドの幹部たちを除いては……。

 

 

「RIVERSの連中は、まぁ眼中にないとして… トリガーのお陰様でウォンテッドの数は減るばかり」

 

「…… 記憶を収集する効率も悪くなる一方だ」

 

「わ、私はみんなが嫌な事忘れられればそれで…」

 

「まだそんな甘い事言ってんのかッ!? それでも幹部の1人かッ!?」

 

 

 幹部たちの会議は全員参加ではなく、参加については各々の自由である為、4人しかこの場にいない。

 それともう1人、本来滅多に姿を表すことのないウォンテッドの頭が、縦長の机の真正面に座っている。目立つ位置に座っているはずなのだが、暗いせいなのかその姿をはっきり見ることができない。

 

 

「ボスも来てるってのに… 他は何やってるんだか。それで、ボス。俺たちに何の用?」

 

 

 それからボスは机に手をかざすと、机の上にこの街の地形が立体的に映し出される。そしてエリア毎に色分けされている所の1つに指を差す。そこはエリアBであり、何かの白い点がゆっくりエリアAに向かっている。

 

 

「これってまさか……」

 

 

 この点は幹部を表している。他エリアへの侵入は1度ボスに掛け合う必要があるのだが……。

 

 

「こいつ、まーた許可もなくエリア移動かよ」

 

「…… 何をする気だ?」

 

「もしかして… トリガーですかね?」

 

 

 全員、敬語の気が弱そうな女の方へと視線が移る。女は涙目になり、助けを求めようとボスを見る。

 

 

「… ボス、どうするの? このまま放っておいてもいいわけ?」

 

 

 すると、暫く黙っていたボスがようやく口を開いた。

 

 

「全員始まりに備えろ」

 

「始まり…?」

 

「いずれ来る、終焉に───」

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「だから何度も言ってるでしょ。俺はトリガーで、あいつらと戦ってる街のヒーローなんだって」

 

「いい加減にしろ!! トリガーは人々から信頼を得て隠しているだけで、ウォンテッドと裏で繋がりがある!! 奴がヒーローなんて事はない。奴は犯罪者だ!!」

 

「その証拠がどこにあるっていうんですか!? トリガーはこの街に蔓延る悪を倒す超ウルトラスーパーヒーローですぅぅぅぅっ!!!」

 

「何故わからない!! 君はウォンテッドの脅威を知らな過ぎる!! 奴もその1人だ!!」

 

「いーや、違いますぅぅぅ!! 私はあなた方警察よりも詳しいですからぁぁぁ!! ほら見てこれ、これセイブドライバー!! トリガーが着けてるやつ!! もう俺がトリガーで、あいつらに詳しいからこれにて閉廷!! 俺の勝ち!!」

 

「そんなおもちゃを取り出して、俺をからかうのもいい加減にしろ!!」

 

「おもちゃじゃないです!! 本物でございまーす!!!」

 

 

 兆と巧也の怒鳴り声は、RIVERSの室内に響き渡る。現在、その怪しさから兆は、重要参考人としてここに連れてこられた。永理は説教ついでに、今迄の事を全て話し、彼の事を粗方説明はしたのだが、この言動と素ぶりもあり、怪しいのだけれど今ひとつ信用し難いものがある。

 まぁ、当然と言えば当然だ。しかし、今まで一度も捕まったことがないトリガーが目の前にいるなんて誰が信用するのだろうか。それに永理な説明からだと、兆とトリガーは関係はしているが、別の誰かということになっている。

 

 

「ふふっ、賑やかになったわね。さっきまですごく暗かったのに」

 

「そうですね。まぁまぁ課長もその辺で」

 

 

 佳苗と孝四郎はいつもの光景とは違う事を面白く感じていると、巧也は息を荒くしながら椅子に腰掛け、兆も同時にそっぽ向きながらドスッと音を立てて座る。

 

 

「ハァ… ハァ…… さて、そろそろ冗談は抜きで話をしようか」

 

「冗談じゃないっす」

 

「ぐっ… んんっ!! 兆くん。君は記憶を奪われていて、その記憶を奪ったと思われるウォンテッドを探している。それから君は話によれば、トリガーと関係を持ち、何らかの方法で奴と代わり戦っている… で、いいんだね?」

 

「… 一応それでいいです」

 

「この部分どうも信じ難い話だけど、単刀直入に聞こう。君はトリガーとはどういう関係なんだい?」

 

「本人と言ってるんですがね。まぁとりあえず俺はウォンテッドには詳しいですよ。そこの所は信じてもいいと思いますよ」

 

「君はウォンテッドと戦う時、トリガーを呼んでいるのかい?」

 

「いやだから… 仕方ない。斯くなる上は目の前で変身を披露するといたしましょう。スチャっとな」

 

 

 椅子から立ち上がり、ベルトを腰に巻こうとした時、佳苗が突然焦りながら巧也を呼び始めた。どうやら緊急事態のようだ。

 

 

「な、なにっ…!? 全員無事なのか!?」

 

「分からないわ… とにかく連絡が遅れたのも訳がありそうね」

 

「どこの病院だ?」

 

「ここからすぐ近くの… この病院よ」

 

 

 ノートパソコンから場所を特定し、その地図と病院への複数のルートが表示されたものを巧也に見せる。

 

 

「よし、話は後だ。行くぞ永理、と兆も着いてこい」

 

 

 兆はくん付けからいきなり呼び捨てで言われ、少々悲しく思ったが、それと同時にこの緊急事態に嫌な予感がしていた。全員と言っていたのでまずRIVERSの部隊ということは予想できる。それが全滅したとなると、相手はウォンテッドということになるが…

 

 

「なぜ別エリアの幹部がここに───」

 

 

 

─── 病院に着いたはいいものの、見るも無残な姿になったRIVERSのメンバー達がベッドに寝かされている。病室には苦しみ悶える声と心電図モニターからピッピッと音が聞こえるだけで慌ただしくはない。

 すると、巧也はメンバーの1人に話しかけ、何があったのかを問い始めた。

 

 

「大丈夫か? 何があった?」

 

「…… わ、分からない。あんたは?」

 

「ん? 何を言ってるんだ?」

 

「何をって… あんたは一体誰だ? それにここはどこだ?」

 

「ッ…… そうか… ここは病院だ。今はゆっくり休め…」

 

 

 自分の上司の顔も思い出せない状況だったのかと、誰もが思うだろう。いや、違う。そうではない。これが1人だけとは限らない。その他に何人も記憶を失ったもの達が多数を占めるはずだ。

 先程、巧也がぽろっと吐いていたが、相手が幹部となると通常のウォンテッドとは比べ物にならないほどの記憶を奪うことを可能とする。

 

 

「課長。皆さんはすでに…」

 

「わかってる… それにしても別エリアの幹部がどうして……」

 

 

 巧也達は休憩スペースに向かいながら歩いて話していると、着いた途端に今迄黙っていた兆が口を開く。

 

 

「ちょっといいですかい?」

 

「どうした兆?」

 

「もしかしたらエリアBから来たかもしれないっすね」

 

「… それは幹部が、ってことだよな?」

 

「えぇ、はい。もちろん。あそこは… そう "ウヅキ" だ。あいつなら来てもおかしくないと思う」

 

「ウヅキだと?」

 

 

 トリガーとして活動し始め、幹部を12人倒した兆ではあるが、残りの12人はこの幹部達に比べると圧倒的力量差が存在していた。かつて一度戦ったことがあり、戦闘において初の敗北を味わされた事もある。

 

 

「まぁ一度戦ったことありますし…(負けたけど)。どうにか逃げたけど、あいつ強いんだよもぉ…」

 

「またデタラメか…」

 

「信じるか信じないかはもう任せますけど、あいつならエリアBからこのエリアに移動してくるのは、きっとある存在に焚きつけられているからだと」

 

「ある存在…?」

 

「トリガー」

 

「…ッ!」

 

「このドライバーがなければ、幹部クラスの前に立っただけで、漏らした同時に記憶も奪われるんだよ? やっぱり最低だなウォンテッド」

 

 

 セイブドライバーは使用者が記憶を奪われるのを防ぐことができるのだ。これがあるからこそ今迄戦って来れたし、記憶を奪われず済んだ。

 

 

「… お前は本当に… トリガーなの──」

 

「はい」

 

「即答で結構。よし、ならまず相手は何であれ幹部だ。何が起こるかはわからない。場所を突き止めて確保する」

 

「俺も着いてく。もう二度は負けるか」

 

「兆、危険だ。お前はここで待ってろ」

 

「俺が着いてった方が、永理ちゃんの証言が本当かどうか、その目で確かめることができる」

 

「…………」

 

「悪くはないと思うけど? もし、俺がトリガーじゃなかったらそれはそれで悲しいしもう泣くしかないけど、トリガーだった時… あんたは俺を好きなだけ殴れるしあんなことやこんなことまでできる、どう?」

 

「…… はぁ、いいだろう。ただし勝手な行動はよせ」

 

「もちろんっすよ… 巧也さん」

 

「よし、なら出撃だ」

 

 

 3人はウヅキと呼ばれる幹部の1人を追う為、その場を後した。

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>

 

 佳苗の情報から場所を割り出し、着いたはいいものそこは廃墟でも荒地でもなく、なんの変哲も無い子供達がきゃっきゃっと遊んでいる真っ最中の公園である。

 そこに1人の男がベンチに座って何かを見つめていた。

 

 

「… 佳苗って人。場所、間違えたんじゃないの?」

 

「あいつに限ってそんなことはない。情報によれば、ここのベンチに座っている人物が母娘を凝視していて、その母から通報があったらしい。明らかに不審ではあるが、幹部と呼ばれる男がする行為に見えないだろう。ただ… 見ろ。あそこだ。俺たちに気づいて体勢を変えただろ? いつでも逃げるためか、それとも俺たちと戦うかだな」

 

「えーっとまぁ、とりあえず三方向から詰め寄って行けば逃げられんでしょ。さてさて、この前はやられたけど今回の俺は一味も二味もまるで角煮を24時間365日煮まくりにした感じのそういう感じだぜぇ……」

 

「… では、永理、お前はあっちだ。兆、お前は向こうだ。俺はこちらから詰め寄る。それから永理。なぜヨダレを垂らしているかは知らないが、さっさと拭け」

「角煮ぃ……」

 

 

 それぞれが持ち場に着き、ターゲットとの距離を徐々に縮める。近づくたびに犯人が僅かに動いているのがわかる。しかし、結局は何も逃げることはせず、3人が来るのをじっと待ち続けているように見えた。

 

 

「── RIVERS課長の上砂 巧也です。ちょっとお話を伺いたいのですが…」

 

 

 その男は巧也を見ると、何かを見透かしたかのように鼻で笑う。それから首を回して、周りを確認する素振りを見せる。ある程度今の状況を把握したようだ。

 

 

「ほう。あのRIVERSの、しかも課長さんがこれはどうしたもんか」

 

「この公園から通報がありまして、お手数ですが、荷物の方を確認してもよろしいでしょうか?」

 

「…… 断ったら?」

 

「断れませんよ」

 

「そうかい」

 

 

 男は立ち上がり身体検査を行っていると、ポケットに物が入っている。携帯などの必需品ではない。形が明らかに違う。取り出すように指示すると、それはナイフであった。

 

 

「これは…」

 

「ただのおもちゃだよ。おもちゃ」

 

「そう言われると… 確かにそう見えますね」

 

 

 本来のナイフとは明らかに見た目が違い、持ち手の部分が銃口のような形をしている。それを見た永理はトリガーの所持していたナイフを思い出す。見た感じは彼のナイフと似ているような気がした。

 

 

「このナイフ… もしかして──」

 

「おっと…!!」

 

 

 何かを察した男は巧也の手を蹴り上げると、ナイフを取り返して数歩後ろは下がる。

 その時、兆は確信した。

 

 

「久しぶりだな。ウヅキ」

 

「…ったく、まさか通報されてるとは思わなかったぜってお前誰だよ」

 

「あ、そっかぁ…」

 

 

 巧也と永理は銃を構え、兆の前へと立ち塞がる。割って入ろうとするが、すんごい目つきで見られた為、大人しく下がる。

 銃を見た市民たちは、皆一斉に悲鳴を上げて逃げて行く。

 

 

「やはりウォンテッドの幹部か… エリアBの幹部が何故ここにいる!!」

 

「そりゃ… トリガーに用があるからだよ」

 

「トリガーはお前らの仲間だとでも?」

 

「いや、むしろ敵だ。誰のせいでこっちの戦力減らされたと思ってんだ?」

 

 

 それからウヅキは指を鳴らすと、何処からともなくウォンテッド達がワラワラと集まってきた。こんなに大勢の犠牲者が出ているのかと、巧也は思っていたが何やら様子がおかしい。まるで生気を感じられない。ただ操られるだけの人形、感情のないアンドロイドのように見える。

 

 

「幹部レベルにもなると、そこら辺の奴の記憶奪ってこんなこと出来るの。ただ俺の命令だけに従う人型ロボット。いいだろ?」

 

「つまり… 無実の人々を貴様ッ…!!!」

 

「おいおい数じゃこっちの方が勝ってるぜ?RIVERSの面々よ」

 

「くっ…」

「… 兆さんお願いします!!」

 

 

 名前を呼ばれた兆は嬉しそうにドライバーを腰に装着し、ファーストガンナイフを起動しドライバーに差し込む。

 

 

《 ONE 》 《 SET 》

 

「変身!!!」

 

 

 ハンマーを起こして、引き金を引くとアーマーが装着され変身完了となる。

 巧也は目を疑った。自分の目の前に突然トリガーが出現した。しかし残念な事に兆が変身していたシーンは見逃してしまった。

 

 

「やっちゃってください!! トリガーのえっとその、兆もどきさん!!!」

 

「任せてとけ」(決めポーズ)

 

 

 ガーツウエスタンを取り出し、周りのウォンテッドの頭を的確に撃ち抜き。一応殺さないように気をつけながら落として行く。

 数が多いし、相手は人だし、今回はかなり骨が折れそうだな。

 

 

「今日はお前たちの体育の日だ!!」

 

 

 トリガーはウォンテッドの肩に体重を乗せ、ジャンプして撃ちながら、近い敵には蹴りをかまして行く。取りこぼしたウォンテッドを巧也と永理の2人で援護する。巧也としてはかなり屈辱的に感じていたが、この場を凌ぐ為、止むを得ず憎き相手と共に戦う。

 

 

「どうしたウヅキ。せっかくのお前の仲間じゃ俺を止められないぞ?」

 

「くくっ。一度敗北しておいてよく言えたな」

 

「なんだとコラァァァ!!!」

 

「幹部の力。もう一度、味わないとわからないようだな」

 

 

 するとウヅキは先ほどのナイフを人差し指と親指で持って、空中に投げてから手元に戻って来ると、持ち手を握りしめる。

 

 

「" デリートガンナイフ "。幹部にのみ使用できるガンナイフだったか」

 

「よく覚えていたな」

 

「あぁ、さっき見て思い出した」

 

「なら、これが最後になるだろうな」

 

 

 キラーズガンを取り出して、その先端部分にデリートガンナイフを差し込むと、差し込んだと同時に音声が流れ、暗い雰囲気の待機音も流れ始める。

 

 

《 ワン・キル 》《 シガツ 》

 

「転進」

 

 

 ハンマーを起こしてから、合体したキラーズガンをトリガーに向けて撃ち放つと、銃弾がトリガーを捉え、多方向から攻撃を行う。それから帰ってきた弾がウヅキの心臓を貫き、みるみるうちに異形の姿へと変わって行く。

 

 

《 シ・ザイ・キリング・ウォンテッド!! イーディアー!! 》

「ウォンテッド幹部ウヅキ。さて、仕事するか」

 

「あ〜… いつ見てもやりたくなくなる」

 

「ふんっ!!」

 

 

 ただのパンチが飛んでくるがこれがまた重い。トリガーは手をクロスさせて防御するも大きく吹き飛ばされてしまう。

 だから幹部の奴らと戦うの嫌なんだよ。本当に一発一発おかしいんだから。まぁ、負けるつもりはないけどね。

 

 

「でも痛いッ!!!」

 

「痛がってる余裕はない!!」

 

 

 キラーズガンより放たれる弾を避けながら、ガーツウエスタンで応戦する。近づいて来るウヅキの銃を持っている手を足で蹴り払い、顔めがけて放とうとするが、それを読んでいたのか手を掴んで捻って蹴り飛ばす。

 すると永理はトリガーの隙をなくす為、銃でウヅキを撃つ。しかしこの攻撃は全く意味がない。攻撃に意味はないが、やっているその行為には意味があった。何故ならこちらに注意が向いたからだ。

 

 

「永理、無茶は承知の上だな」

 

「もちろんです。このまま棒立ちで終われませんよ課長」

 

「… いいだろう。外すなよ」

 

「了解!!」

 

 

 2人は正確に撃って入るものの怯む素振りを全く見せない。そしてこちらに銃を向けると2人めがけて発砲する。

 とっさに避けたが、巧也は肩を銃弾によって傷を負ってしまう。一歩遅れていれば、肩を失っていたかもしれない。たった一発でこれほどの威力があるのだ。物陰に隠れて一度その様子を伺う。

 

 

「よく避けたな。だが、次はないぞ」

 

 

 再び銃を構えるが、勢いよく飛んできたトリガーのドロップキックにより体勢を崩してしまった。その隙にドライバーの引き金を引き、また下がって助走をつけ、早口で「1、2、3ッッ!!!」と、叫んで飛び上がって蹴りを放つ。すぐさま防御態勢に入るものの、少し出遅れてしまい攻撃を受けてしまった。

 

 

「ハァ… ハァ… ど、どうだこのやろう。涙が出るだろう強すぎて」

 

「…… たかが一発当てたくらいでいい気になるな」

 

「あ、あれ…?」

 

 

 首をコキコキと鳴らし、何事もなかったかのようにトリガーの前にやって来る。

 必殺の蹴りを喰らって平然としている。やっぱりファーストとセカンドじゃ火力不足かもしれない。このウヅキって野郎は意外にも堅いというか、我慢強いというか、このままでは攻撃がまともに通るはずない。

 

 

「これで最後だトリガー!!!」

 

「あぁそうだな!! だが、今回も逃がしてくれ!!」

 

「な、なにっ!?」

 

 

 いつの間にかガーツウエスタンにファーストガンナイフを差し込んでおり、ウヅキの足元に向けて、巨大なエネルギー弾を放つと、辺りは砂埃が立ち全く見えなくなる。砂を払うと、そこにはすでに誰も居なくなっていた。

 デリートガンナイフを引き抜いて、人間態へ戻る。

 

 

「ちっ… 逃げたか。まぁ、このまま好きにさせてもらう。土産なしにエリアBに帰るのも酷だからな──」

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「肩。大丈夫なの? 課長さん」

 

「これくらいなんてことはない… 俺よりもウヅキを早く止めなければ、あの人たちは…」

 

 

 現在RIVERSへと戻り、巧也は治療を受けていた。幸いにも軽傷で済んでいる為、心配することはなさそうである。

 

 

「前より強くなったから行けると思ったけど、とりあえずは奴に対抗できるガンナイフの製作に移らないとなぁ──」

 

「…そうだ。兆」

 

「あ、はい?」

 

「あれがどういうことか説明してもらおうか?」

 

「あれ? あぁ、幹部の力は今までのウォンテッドとは比べ物にならなくて、いや、まさか俺の必殺技まで受け止められるとは…」

 

「違う。お前は本当に何者だ?」

 

「トリガーです」

 

「…………」

 

 

 一部始終を見てはいなかったが、目の前に突然トリガーが姿を現した。兆は隠れていたのか、それとも本当にすり替わったのか。しかし兆の発言で確信を持てた。

 

 

「兆。お前の正体は……」

 

「トリガーでございます」

 

「トリガー───」

 

「トリガーにござる」

 

「── の武器の製作を行っている研究員といったところだな」

 

「……………え?」

 

「通りで色々詳しいと思った。やっと謎が解けたぞ」

 

「解けた所か、全く違うんですが」

 

「本来なら逮捕する所だが… お前は何かと役に立ってくれそうだからな」

 

「ちょっと待って。ちょっと待って」

 

「RIVERSに入れ。その代わりお前を逮捕もしないし、罰することもしない。ここだけでお前の事は穏便に済ます」

 

「え、えぇ…えぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!!????」

 

 

 何言ってんのこの人!? 的外れてるのに勝手に話進んじゃってるけどいいなこれ!? とにかく、今はこれで了承しておかないと俺も自由に動けそうにないし、それに俺にも利点がないわけじゃない。

 

 

「わ、わかりましたよ。わかったよ。わかったんよ。RIVERSに配属されました射手園 兆です。よろしくお願いしまーーす」

 

「おぉ!! まさかの兆さんの正体判明の仲間入りとは!! 熱い展開ですね!!」

 

「僕は熱い涙が出てきそうだよ」

 

「感動ですか?」

 

「違います。悲しくて」

 

 

 佳苗と孝四郎も何故か嬉しそうに笑い、兆を迎え入れた。

 そして巧也はガンナイフの製作という言葉に眉間にしわを寄せる。当然のことながら先程から何の話かよくわからないのだ。

 

 

「兆」

 

「あい」

 

「ガンナイフとは何だ? ウヅキのやつも使っているように言っていたが…」

 

「あぁ、正式にはフィガンナイフって言って、俺が持ってるのはまだ二本しかないけど、それぞれのフィガンナイフに色々能力つけてるの。変身後の姿見たでしょ? あれになるけど、このもう一方もあれと変わらない強さだから、使っても勝てなかったと思う。ウヅキの使ってたのはデリートガンナイフ。幹部だけに託された特別なアイテムって所」

 

「なるほど。つまり奴も奴で能力があると」

 

「まぁそうっすね。だから今からあいつに対抗するために作るの」

 

「… いつまでかかる?」

 

「1日ぶっ通しでやれば終わる。ただその間はウヅキが何するかわからない」

 

「安心しろ。RIVERSがいる。俺たちはウォンテッドを倒す為に作られた組織だ。何かあっても市民は俺たちが守る」

 

「… りょーかい。じゃあ俺は機材取り行くから一旦帰るよ。ここにもあるっぽいけど自分のやつの方がしっくり来そう」

 

 

 帰ろうとする兆を巧也は慌てて止める。このまま放置しておけば逃げる可能性も出てくる。

 

 

「まだお前に自由行動を許可した覚えはない。永理」

 

「はい?」

 

「着いていけ」

 

「わかりました。よろしくお願いしますね兆さん」

「やだよ……」

 

 

 巧也はRIVERS内から出て行く2人を見送ると、深いため息をついて腰を深くして椅子に座る。

 

 

「変な子を入らせたわね」

 

「……かもな」

 

「でも何か見えたんでしょ? 課長が選ぶって事は」

 

「別に選んじゃ─── そうかもしれないな」

 

「ふふふっ。じゃあ私はウヅキの後つけてみるから」

 

「あぁ、頼んだ」

 

 

 辺りはすっかり暗くなっている。巧也は暫く目を瞑っていたが、やがて意識が飛んだかのように眠ってしまった。孝四郎はそっとタオルをかけると、自分も武器の製作に移行する。

 ウォンテッドの幹部ウヅキを倒す為、各々が今、動き出す。




何度も言います。本当に遅れて申し訳ないです!!

復活です!!!

今日からまた楽しく執筆開始しますので、よろしくお願いします!!


さて、次回第4撃「散弾活用」
感想・ご質問等も是非お願いします!!ではまた次回!!


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第4劇「散弾活用」

イズちゃんが可愛いんじゃあぁ^〜

さて、兆たちは幹部ウヅキを倒せるか?
それではどうぞご覧ください。


〜 BAR TRIGGER 〜

 裏路地にひっそりと佇む隠れたバー。経営するマスターはさる事ながらその腕はかなりのもの。雰囲気もゆったりしており、1人で来るには最高の場所。ただ、ここを知る者はごく僅かであり、まさに隠れた名バーと言ったところだ。

 そんなバーでオススメなのが、そう。言わなくてもわかるだろうが…… ミルクだ。まるで赤ちゃんに帰ったような感覚を覚える。あぁ… 最高だ。こんなひと時がずっと続けばいいのに。俺はもう一杯おかわりを求めるのだ───。

 

 

「兆さん。さっきから独り言してどうしたんですか」

 

「俺の朝はこうして始まるのさ…」

 

「もう昼ですよ」

 

「ふっ… 俺からしたら朝なんだよ」

 

「え、だって12時過ぎてますよ?」

 

「うるせぇよ!!! 物の例えってやつだよ!!!」

 

「逮捕(奢らなければ)」

 

「なんでっ!?」

 

 

 現在、お分かりの通りであるが、兆は新たなフィガンナイフ製作の為に機材を取りに来た。もちろん1人ではなく、永理が付いてきた。

 逃げも隠れもしないよトリガーさんはね。と、言うか目の前にいるんだけどさ。

 

 

「で、まぁ、マスター。俺はしばらくRIVERSに囚われの姫になるらしいから」

 

「… そうか。迷惑かけるなよ」

 

「逆に迷惑かけられてるんだよなぁ」

 

 

 すると永理が肘で、兆の脇腹を突いてきた。そろそろ戻るぞ、とでも言いたいのだろう。ため息をついて自室へ向かい、そこで機材を風呂敷に包み込み、部屋から出ると永理がいなくなっていた。

 

 

「……あれ?」

 

「彼女なら外だ」

 

「全く危ないね。俺が逃げるかもとか考えないのか」

 

「それは違うと思うぞ」

 

「え?」

 

「きっと彼女はお前のことを信じているんだろう」

 

「信じる?…… ないない。あの娘に限っちゃないわ」

 

「ふっ。それじゃあ、気をつけて行ってこい」

 

「大丈夫大丈夫。RIVERSに一時入ったってだけで、すぐ戻ってこれるしさ。それに俺の家はここなんだから… ま、じゃねマスター」

 

 

 振り向かず手を振り、ドアを開けると、そのすぐに横で待っていた。なにやらメモを取り出してそれを見ている。

 

 

「よう待ったかい」

 

「… あ、よく逃げませんでしたね。逃げると思ってましたよ」

 

「ほら見ろこれだよ」

 

「もし逃げたとしても、私にかかれば数秒で捕まえてしまいますがね!」

 

「そうですか。で、そっちはなーに見てたの」

 

「ん…? これですか? この近くで美味しいお店が書いてあるだけのメモ帳ですよ。これを見てるだけでお腹がすいてきますよえへへ」

 

「仕事に使おうね!」

 

 

 そんなんこんなで2人はRIVERSに戻るのであった。

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「へぇ〜、これがフィガンナイフですか」

 

「まぁね。さてさてどう仕上げてあげようかな」

 

 

 兆は早速RIVERSの奥の部屋にある研究室で新たなフィガンナイフを製作していた。それに興味を示したのか、研究員としての血が騒ぐのか、孝四郎はまじまじとそれを観察している。

 一方で作業している間に、巧也達はウヅキの動きを追っていた。

 

 

「佳苗。ウヅキに動きは?」

 

「ウヅキかどうかはわからないけど、そこの周辺で記憶を失っている人が多く出ているそうよ。まぁほぼ確定ね」

 

「… これ以上被害を増やすわけにはいかない…」

 

「そうね…」

 

「まさか… 奴を頼る事になるなんてな」

 

「… トリガーのこと?」

 

「あぁ」

 

「あなたにとっては仇だからね」

 

「奴は許さない。必ず捕まえて見せるさ。ただ… 例えこれが奴の狙いだとしても、なにをしてでも守らなければならない。俺は父の正義を、信念を貫く」

 

「ふふっ、あなたらしいわね」

 

 

 それから研究室のドアを誰かが叩いている。このバカっぽい叩き方は永理だとすぐにわかる。

 ほら、やっぱりそうだと思った。お盆にお菓子と湯呑みが置かれている。差し入れは嬉しいのだが、お菓子が不自然に半分無くなっているのが丸わかりである。

 

 

「差し入れに来ましたよ〜」

 

「ありがと」

 

「お菓子半分食べちゃいました」

 

「隠す気ゼロか!?」

 

「私は… 正直者なので!」

 

「そこでドヤられてもなぁ…」

 

「それで、例のブツの進み具合は?」

 

「ま、順調だね。今の所は」

 

「今の所は?」

 

「天才的でカリスマな俺でも、これだけのもん作るときは失敗する可能性だってあるのよ」

 

「へぇ〜… あ、兆さん」

 

「あ?」

 

「セイブドライバー… でしたっけ? あれどこで手に入れたんですか?」

 

「あぁ… あれね。マスターん所に世話になる前から持ってた。使い方とかはまぁ適当にやってたらできたし、んー…… 俺もいつ手に入れたのかって言われるとわからない」

 

「そうですかぁ… その帽子も前からですか?」

 

「これはマスターがくれたの」

 

「…… あれ? 研究員ですよね?」

 

「だから俺は本物ですから」

 

 

 すると、ドアの向こうが騒がしくなり始めた。予想はしていたが、ウヅキに動きがあったことは間違いないだろう。

 それからすぐドアが開けられ、巧也が命令を下す。

 

 

「ウヅキが動き始めた。人手は足りない… が、市民が危険だ。直ちに現場に急行する!! 永理、お前は兆と居ろ」

 

「あ、了解です!!」

 

「兆… 間に合うか?」

 

 

 心配そうな顔で兆を見てくるが、ニヤリと笑い返し、指を銃の形にして帽子をクイッと上げて見せる。ただ、ゆっくり作業はしてられなくなったな。

 巧也は残りのRIVERSをかき集め、その場から離れる。

 

 

「── さて、ここからどうするか、だな」

 

「兆くん」

 

「あ、はい?」

 

「僕にも手伝わせてもらってもいいかい?」

 

「孝四郎さん。気持ちはありがたいけど、これは複雑でそんじょそこらの機械弄るのとは訳が違っ──」

 

「これでいいかい?」

 

「…っ!」

 

 

 普段敬語なのに俺に対しては使わないのか。と、兆は思ったが距離が縮まったようで嬉しいようだ。いやそんなことどうでいい。さっきまでこれに関して全く知らなかった男が、パソコンに映し出されたフィガンナイフのプログラムを理解し、見事接合してみせた。

 

 

「… 孝四郎さん」

 

「なんだい?」

 

「あんた最高だよ」

 

「そう言ってもらえて嬉しいよ… 次はどこだい? ここを回路をこうすればいいのかな?」

 

「えぇ、さすがで」

 

「これでも研究員だったからね。さ、急ごう」

 

 

 それから作業効率はかなり早くなり、みるみるうちにフィガンナイフが形を作られて行く。そしてついに、2人の無駄のない動きで完成した。

 

 

「よっしゃぁぁぁぁぁッッッ!!! 完成したぜっ!!!」

 

「おぉ!! 兆さんも孝四郎さんもお疲れ様です!!」

 

 

 孝四郎は疲れたのか椅子に座ると、グタッとしてそのまま寝てしまった。無理もない。流石の天才といえど、このフィガンナイフの複雑なプログラムを短時間のうちに完成させるには、かなりの集中力を要するのだから。

 

 

「そのフィガンナイフは…?」

 

「これは " サードガンナイフ "。こいつの火力なら、あのウヅキでさえ耐えられないだろうよ」

 

「では、それ持ってサッと行きましょう!」

 

「お、そうだな」

 

 

 2人はRIVERSを出て、パトカーに乗ろうとするが、なんと1台もなくなっている。巧也がこんなミスする筈はないが、何かの手違いが生じてしまったのだろう。

 

 

「え、ど、どうしましょう!? ここから距離ありますし、走って行くなんてとても…!!」

 

「…ふっ。ふふふっ。ふふふふふふふふふふふふふっ」

 

「な、なんですか。その気持ちが悪い笑い方は」

 

「俺はあのトリガーだぜ。数々のエリアを渡るのに、移動できる物を用意していない訳がーーない」

 

「そ、それは一体…!」

 

「ふふふふふふっ。よし、見せてやろう…… スゥゥゥゥ… バオちゃぁぁぁぁぁぁんっ!!!」

 

 

 兆の叫び声は辺りに響き渡り、しばらくすると馬の蹄の音が遠くから聞こえてくる。永理は音がする方向を見てみると、黒い毛並みの馬が一頭こちらに向かってきている。ただ、それは普通の馬ではなく、どうやら機械でできているようだ。

 

 

「よーしよしよしバオよく来てくれたな」

 

「この子は…?」

 

「こいつはバオ。正式にはBLACK KINGって言うんだけど、愛称があった方がなんか良くない?と思ってバオって言ってる」

 

「ほうほう」

 

「んじゃま、お背中失礼…」

 

 

 バオは乗ろうとした兆を振り払うように地面に落とす。そして踏みつける。それから蹴る。踏む。蹴る。

 

 

「もう!! 何すんだよ!!」

 

 ブルルルルゥ…

 

「ブルブルじゃないよ!!」

 

 

 無理やり乗ろうとする兆ではあったが、後ろ足で蹴られ、ゆっくりと踏まれる。

 

 

「バオちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

 

「嫌われてますね」

 

「反抗期なの!!」

 

「もしかして名前が気に入らないとかじゃないんですか?」

 

「んなわけあるか!! バオちゃんはバオって名前が気に入ってるんだよ!! なっ!!」

 

 

 しかし踏まれる。

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「ふざけてないで行きますよ! 課長たちが待ってますから!」

 

「いや、だけどさ。この子機嫌良くないと乗らせてくれないのよねー。全く困った子なんで乗っかれてるんですかねぇ?」

 

「乗っけてくれました」

 

「あ、そうなの」

 

「さぁ、行きますよバオさん!! はいよー!!」

 

「え、ちょ、なんで走るの!? 主人俺だってちょっと待って!!ちょ、待てよっ!!!」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>

 

 状況は最悪だった。

 ただでさえ人がいないにも関わらず、こうまであっさりと全滅させられてしまうなんて。それほどまでに幹部との差は歴然といったところか。

 

 

「RIVERSの課長さん。あんた流石だな。この状況下で全く引こうともしないし、ましてや部下を庇いながら俺とやり合うとはな。敵ながら天晴れだ」

 

「はぁ… はぁ… ウォンテッドに褒められるとは… 素直に喜べないな」

 

「ま、そんな訳でその記憶。そろそろ奪わせてもらおうかな」

 

 

 怪人態となっている今、記憶を奪うのは人が呼吸をするように、至極簡単にできる。巧也の頭に手をかざすと、白い靄が現れ記憶を吸い取り始めた。

 

 

「ウヅキ。お前が俺の記憶を奪ったとしても、奪えないものが一つある」

 

「なに?」

 

「俺の… 正義だっ…!!!」

 

 

 その瞬間、ウヅキの胸に銃を当て撃つ。この至近距離から弾を受けたとしても、通常の銃であるならばウォンテッドに効果はない。ただし、巧也が手にしていた物は彼がいつも使っているよな物でもなく、孝四郎が作ったものでもない。

 

 

「ぐっ… そいつは… トリガーの!!?」

 

「トリガーじゃない。兆から託された。あんたならこれくらい使えるだろうってな」

 

「なるほどな。だが、生身のあんたに一体なにができる? 体力的にも問題あるだろ?」

 

「あぁ… だが、時間稼ぎにはなったようだな」

 

「なんだと?」

 

 

 すると巧也の背後より、銃声が聞こえたかと思うと、ウヅキに弾が命中していた。こちらはライトニングウエスタンであり、兆は痛そうに手を振っている。

 

 

「課長!!」

 

「永理!! 間に合ったんだな…」

 

「はい。遅くなりました。というか、パトカーがなかったんですよ!!」

 

「な、なに!? 全く… 後で言っておくか。幸いこちらはギリギリ死亡者は出ていない」

 

「よ、よかったです…」

 

「…… 遅いぞ、兆」

 

 

 巧也は兆に近づき、肩に手を置きガーツウエスタンを渡す。そして長く戦っていたせいか、傷を負っており、その場で座り込んでしまう。

 

 

「後は任せて」

 

「頼んだ…」

 

「さて、永理。周りの人頼んだぜ。それからバオは好きに使っていいから」

 

 

 セイブドライバーを腰に装着し、ファーストガンナイフを起動させ、左側へ差し込んでハンマーを起こす。

 お決まりのポーズをし、トリガーに指をかける。

 

 

「行くぜ。ウヅキ…… 変身っ!!!」

《 ファーストガンアクション!! トリガー!! リボルヴリボルバー!!》

 

「…… なぜサードじゃないんでしょうか?」

 

「恒例なの!! いきなり新フォームに変身するのはだめってきまりがあるの!!」

 

 

 ウヅキは指を鳴らすと、トリガーに向かって銃を撃たながら走ってくる。それらをかわしながら、ガーツウエスタンで打ち込んで行く。

 

 

「今日はお前の神様に罰当たりの日だ!!!」

 

「意味がわからん!!!」

 

 

 隙のない動き。さすがは幹部だ。ただ、自分の為にここで戦ってくれていた人達の為に、記憶を奪われてしまった人達の為に決して負けるわけにはいかない。

 

 

「はぁっ!! ぉらぁっ!!」

 

「くっ、ふんっ!!」

 

 

 お互い譲らぬ格闘戦。トリガーの方が見た目は優勢に戦っているように見えるが、実際はウヅキにはそこまで効果がないようだ。やはり力技で押し切られ、トリガーは一発もろに食らってしまった。

 

 

「ぐはっ…!!」

 

「無駄だ。いくらお前が力を付けたところで、俺との力の差は見てわかる通りだ。諦めろ」

 

「おいおいさっきの会話聞いてなかった? まるでなんか対抗策作ってきたような感じしなかった?」

 

「対抗策?」

 

「お前をぶっ潰せるだけのとびっきりを… なっ!!!」

 

 

 トリガーはウヅキを蹴り飛ばし、バク転をしながら後ろ下がる。それから脚につけたホルダーからサードガンナイフを取り出し、起動させる。

 

 

「あらよっと!!」

《 THREE 》

 

 

 ファーストガンナイフを抜き、サードガンナイフを差し込む。《SET》の音と共に、ハンマーを起こす。

 

 

「硬い相手には、火力で押し通す!!」

 

 

 引き金を引くと、目の前に新たなアーマーが弾け飛ぶように現れ、それと同時に巨大なショットガンも現れる。ショットガンから放たれた無数の弾丸は、散らばったアーマーを捉え、トリガーに装着されて行く。

 

 

《サードガンアクション!! トリガー!! ショットショットショット!!》

「さ、第2ラウンドと行こうじゃねーか」

 

「肩パッド付いただけじゃ俺には勝てねーぜ!!」

 

「うるせぇ!! 肩パッドは男のロマンやろがぁぁぁぁぁ!!!」

 

「グボァッ…!!!?」

 

 

 たった1発のパンチがウヅキの腹部に入った。しかし妙な感覚を得た。パンチ力もさる事ながら、そのたった1発が重過ぎる。いや、ただ重いわけではない。まるで無数の拳が同じ箇所を何度となく突くように。

 

 

「言っただろ? 肩パッドは男のロマンだとよ」

 

「くそっ…!!」

 

「まだまだ行くぜぇ!!」

 

 

 1は30。2で60。3で90。たった3発のパンチが90発分の重さとなり、ウヅキに襲い掛かる。例え幹部の防御力を持ったとしても、これだけの数量を受け止めきれるはずがない。

 

 

「ただし蹴りは含まれないのだ!!」

 

 

 トリガーの放った蹴りには、サードの効果は無くあくまで腕のみ。ただし、これほどまでの破壊力を全身に設けるとすると、それなりのリスクがかかる。ならいっそのこと、1部位のみに絞ればいいだけのこと。

 

 

「2兎を追うものは1兎も得ずって言うだろ?」

 

「こんなはずじゃ…!!」

 

「更にこいつだ!!」

 

 

 どこからともなく取り出したガジェット。" サードポンプ " を取り出すと、ガーツウエスタンにそれを組み合わせる。するとまるでショットガンの様な形に姿を変えた。

 

 

「その名も" サードウエスタン "ッ!!!」

 

「前と変わらないですね」

 

「うっせーぞ外野!!」

 

 

 するとウヅキは両腕に力を込めると、なんとみるみるうちに太くなり、より一層硬くする。その状態で走って近づいてくるが、冷静にギリギリまで待ち、サードウエスタンを構えて放つと、散弾となってウヅキを大きく吹き飛ばす。

 

 

「こんな… バカなっ!! たった1日でこんな…!!!」

 

「いよいよ幕引きだ… 終わらせるっ!!!」

 

 

 サードウエスタンを投げ捨て、ドライバーのハンマーを起こし引き金を引く。両腕に力を込め、ウヅキに向かって走る。

 

 

「くぅらぁ…えぇぇぇぇ!!!」

 

「畜生がっ!!!」

 

 

 腕をクロスさせ防御態勢を取るが、トリガーの腕から放たれた無数の一撃は、防御を壊してウヅキの懐を直接ぶち抜く。

 

 

《ショット!! ファイア!!》

「はぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 

「グワァァァァッッッ!!!!!」

 

「今日の俺も… あ、勝利の日!!」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>

 

 あれで倒したと言ってもいいのだけれど、爆発したらキラーズガンやら壊れると思ったら全くそんなことはなかった。それで見す見す逃してしまったというわけだ。

 

 

「助かった。ありがとう兆」

 

「いやいや俺もあの時間稼ぎなかったらやられてた。助かったのは俺の方」

 

 

 RIVERSに戻り、一息入れている。孝四郎はまだ寝てるようだし、相当お疲れのようだ。

 

 

「…… だが、トリガーについて忘れたわけじゃない。あいつはいつか必ず逮捕する。このウォンテッドとの戦いが終わるまでの間は一時休戦だ」

 

「… そっすかい」

 

「ウヅキは逃してしまったが、しばらくは動こうとしないだろう…… みんな今日は本当にご苦労」

 

 

 笑い声が響くRIVERS内、しかし外では怪しい影がゆらりと動いていた。その影は巧也を見ている。

 

 

「人の限界は人が思っている以上に底が見えないものだ」

 

 

 影の手には何かが握られている。何処かで見たことがあるような形をしている。

 ただしそれはこの世に2つしか存在し得ない。二つ目のセイブドライバーである。




やる毎に文字数が無くなって行くの草生えますよ。
まぁグダるよりはマシでしょ(開き直り)

はい!では次回、第5劇「畑日和」

宿命のトリガーを引け!!


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第5劇「畑日和」

5話目でございます。
前回ウヅキを取り逃がしてしまったけど、一応倒したから…いいよね!

それではどうぞご覧ください。


「さて、ウヅキ。この結果だけど、どーすんの?」

 

「………」

 

「油断してたーだけじゃ済まないと思うけど──」

 

「黙れ " フミヅキ " ッ!!」

 

「おー怖っ。でも、ボスに何の断りもなくエリアAに乗り込んだ挙句、トリガーに倒されただなんて、こんな醜態晒して俺らに何か言えるの?」

 

「…ッ!!」

 

 

 フミヅキはしてやったりとニヤリと笑い、ウヅキはそれ見て拳を震わせる。悔しいが、これが事実である。他エリアへの侵入は、幹部クラスであろうと許されていない。ボスが無駄な接触とイザコザを防ぐ為にルールを設けているのだ。

 

 

「で、これからどーすんのさ、ボス。もうエリアBは落ちたようなもんでしょ」

 

「── 向かわせる」

 

「えっ?」

 

「サツキを向かわせる」

 

「サツキッ!? だ、大丈夫なの…?」

 

「… すでにエリアA内にいるはずだ… 次のトリガーを引くとする」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 RIVERS内は今日も今日とで騒がしい。

 

 

「兆さん!! 巷で噂のカフェに新しいパフェが加わったんですよ!! 行きましょう行きますよね? 行きます!!」

 

「うるせぇぇぇぇっっ!!! 俺は今な。新しい素晴らしいワンダfoo↑なガンナイフ製作中だ!! それに孝四郎さんにも、教えてるんだよ… 時間空いたら行く」

 

「悪いね、兆くん。あ、じゃあ今度はこっちに特化させてみたらどうかな? で、これをこういう感じで」

 

「ふふっ。相変わらず騒がしいわね。はい、3人ともお茶よ。少しは休んだらどうかしら?」

 

「佳苗。さっき聞いた情報は、どうやらデマの可能性があるな。急いでいたとはいえ、確認を取らなかった、すまん」

 

 

 あれからここも賑やかになった事を、巧也は実感している。この研究員(仮)の兆が入ってきたからとでも言うか。今迄の緊迫した空気は、だいぶなくなっただろう。

 巧也は椅子に座り、パソコンを開くと、メールボックスを確認する。すると、そこに匿名でメールが1通入っていた。大体は悪戯の可能性があり、ウイルスに感染する場合もあるので、不用意に開く必要性はない。

 

 

「そういえば、佳苗。ウヅキに操られていた方達の具合は?」

 

「えぇ。だいぶ調子は良くなってきているそうよ。記憶も一応戻ってるみたいだし、RIVERSのみんなも元気そう」

 

「ふぅ、大事には至らなくて良かった」

 

「そうね。はいお茶」

 

「ありがとう。いつウヅキ以外の幹部たちも来るかはわからない。用心しておくに越した事はないな」

 

「あんまり無茶しないでよ。まともに戦えるのが、例のトリガーしかいないんだから」

 

「…… 皮肉なもんだ」

 

「あなたにとっては… 兎に角今は、猫の手よりも人の手の方が良いものね」

 

「… ったく、こうなる事を誰が予想したか…… ん?」

 

 

 ふとパソコンの方に目をやると、先程の匿名のメールが開いていた。間違えて開いてしまったのか。消そうとしたが、その内容を見ると手が止まった。

 

 

「…………」

 

「あら?」

 

「… 皆を呼んでくれ。そのいつが今日になった」

 

「…え!? わかったわ」

 

 

 巧也はRIVERSのメンバーを集めると、今来たメールの内容を話し始めた。最初は何事かと思ったが、内容を聞くと、彼が怖い顔になるのも無理はない。

 

 

「えっ、また他エリアから幹部きたの」

 

「しかもご丁寧にハッキングしてくれた。佳苗のセキュリティのお陰で、根本の部分までは何とか抑えられてはいたが… それより、新たな幹部がこのエリアAに出現した。早急に手を打つぞ」

 

「今度は予告まだ入れて来やがったよ。悪戯ならともかく、マジなやつかぁ… まだフィガンナイフ完成してないんだけど…」

 

「兆と孝四郎はここに残ってフィガンナイフの製作を続けてくれ。佳苗は何か分かり次第すぐに連絡を、俺と永理は調査に出る」

 

「了解… と言いたいところだけど、フィガンナイフは孝四郎さんに任せるよ。俺もついてく」

 

 

 孝四郎は兆の言葉に驚いた。これを制作する機会や教わる機会はあったが、まだ数日しか経っていない身で、それをじゃあ1人で出来るかと言われると無理だ。

 

 

「き、兆くん。それはいくらなんでも」

 

「いけるよ。孝四郎さんは俺の跡目を継ぐことが出来る人だ。それにほら、もう俺が言わなくても大体はできちゃうでしょ」

 

「で、でも」

 

「最終調整は俺がするよ。途中までやるやらないで違うし。じゃあ頼みますね〜」

 

「ちょっ、兆くん!?」

 

 

 スキップしながら出ていく兆を、ポカンと口を開けて見送る。そんなあいつは巧也と永理の元へ行くと、早速調査に出向く。2人はパトカーで行くそうなので、愛馬のバオを呼んだが無視されてしまい、仕方なく乗車した。

 それから車を走らせ、人が多い場所に向かい、聞き込みを開始する。巧也は単独で動くそうなので、兆と永理が組むことになった。

 

 

「さて、また2人きりになっちゃったな」

 

「そうですね… はぁ…」

 

「なんだ? 腹でも減ったか?」

 

「それもありますけど… パフェ食べたかったなぁ…」

 

「……── 時間空いたら行くって言ったし、今から行くか?」

 

「良いんですかっ!?」

 

「あぁ。ま、閉まってなきゃいいがな」

 

「じゃあ早速行きましょう!!!」

 

「へいへい」

 

 

 しかし、閉まっていた。こういう事は言いたくはないが、控えめに言って畜生めが。永理の目からは滝のような涙が溢れている。兆はそっと肩に手を置き、こういう事もあるさと、励ましてあげた。

 

 

「… 今度からは調べて行こうな」

 

「……………はい」

 

「さてと… ん?」

 

 

 何やら向こうでトラブルが発生しているようだ。男2人と女の声が聞こえてくるが、穏やかではない。

 

 

「あれ、まずいですね。私、行って来ます」

 

「あ、おい!」

 

 

 柄の悪い男たちは、1人の女を取り囲み、お茶でも誘っているようだ。そんな奴本当にいるのかと、内心面白がっている兆であったが、そんな彼らの前に残念な天才が現れた。

 

 

「あ? 警察か?」

「こりゃまた可愛いな。どうだい? 俺らと一緒に遊び行かない?」

 

「いやです。それよりもその女性から離れなさい。でなければ…」

 

「なになに? 殴っちゃう?」

「やめてぇ〜怖い〜」

 

 

 女はアワアワしながら、その光景を見つめる。圧倒的体格差であり、しかも相手は2人。不利だ。

 それから兆はやれやれと、帽子を被り直し、軽い準備運動をして永理を助けようとしたが、彼女の肩に手を触れようとした男が投げ飛ばされ、もう一方の男は何が起こったかわからず、そのまま殴られ蹴られで地面に倒れる。

 

 

「忘れてた。あいつ超が付くほどの天才だった」

 

 

 情けない声を上げ、2人は逃げて行く。逮捕はしないが、これに懲りたら2度はこないだろう。多分。

 逃げて行った2人を余所に、永理は女に怪我がないことを確認し、ホッとしているようだ。

 

 

「あ、ありがとうございました…」

 

「いえいえ、当然の事をしたまでです… お買い物の途中でした?」

 

「あ… はい」

 

 

 よく見ると、その女性は袋を持っている。中身は飲み物に何かの野菜の種。

 ん?種?

 

 

「じ、実は、うち農業を営んでおりまして…」

 

「はえぇ〜農業を、なるほど… あ、またあの輩が現れるか分かりませんので、お家まで送りますね!!」

 

「え、えぇ!?」

 

「安心してください。しっかり送り届けますから」

 

 

 そういう問題なのか? と、少々疑問に思った兆であったが、とりあえず彼女を家に送ることにした。

 

 

「あの〜お名前は?」

 

「わ、私は " 小島 " です…」

 

「小島さんですね。私は内嶋 永理です」

 

「内嶋さん… えっと、あちらの男の方は…」

 

「あれは射手園 兆さんです。私の部下です」

「おい」

 

 

 そんな会話をしながら、電車に乗り、暫くすると殺風景な田舎に着く。エリアAでもかなり上の方だろう。そこから更に歩いて行くと、大きな畑が見えて来た。

 

 

「あれが小島さんの?」

 

「はい。そうです」

 

「すっごい大きいですね。それにお腹が空いて来ました」

 

「え…?」

 

 

 そんなこんなで家に着くと、お礼にと野菜料理を振る舞ってくれた。感謝しながら食べるのはいいが、一切の遠慮がなかったな。

 

 

「兆さん。貰えるものは貰っておくほうが得ですよ」

 

「それもそうだな。まさかお前に最もな事を言われるとは思わなかったよ」

 

「ふっ」

 

「おい、なんだ今のドヤ顔は。すごい腹立つ顔してるぞ」

 

 

 小島はオドオドしながら、2人の食事する風景を眺めていた。何か言いたげではあるけど、何も言わずに顔は笑顔を保ったままだ。

 

 

「あ、あのお味は…」

 

「とってもおいしいです!!!」

 

「…! 良かったです」

 

 

 彼女も嬉しそうに微笑む。しかし兆はここであることに気づく。そう。我々は重要な事を忘れてはいないか。

 

 

「… あっ」

 

「どうしました?」

 

「調査」

 

「………… あぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

「やべぇ… すっかり忘れてたぜ」

 

「ご、ご馳走様です!! 私たちは仕事に戻りますので!! ありがとうございました!!」

 

 

 家を出ようとした時、兆が永理を止めに入る。

 

 

「兆さん!! まだ食べたい気持ちはありますけど、さすがにそろそろ帰らなくては…」

 

「ちげーよ!! 前見ろ!!」

 

「あっ…!!?」

 

 

 家の前にはウォンテッド達が並んでいた。後ろを振り向くと、小島は悲しげな顔をしている。

 

 

「小島さん… まさか──」

 

「そうです。私はウォンテッドの1人です」

 

「……」

 

「あなた達が着いて来てくれたのは予想外でした。私はエリアDの幹部" サツキ "です。ボスの命令により、あなた達を…… 殺します」

 

「そんな…!!」

 

 

 そしてウォンテッド達はサツキの合図とともに一斉に襲いかかって来た。

 兆はドライバーを装着して、ファーストガンナイフを差し込む。

 

 

「小島さん… いや、サツキ。全部罠だったってことか」

 

「………」

 

「…って事にしておかないと、ホイホイついてった俺たちが恥ずかしいじゃんか!! 変身ッ!!!」

《ファーストガンアクション!! トリガー!! リボルヴリボルバー!!》

 

 

 ウォンテッドの群れの中に飛び込み、永理の様子を伺いながら戦う。そんな彼女はサツキと真正面から何か話しているようだ。

 

 

「小島さん… まさかあなたが幹部の1人だったとは…」

 

「だ、騙してごめんなさい。だけど… 私にはこれしかないの」

 

「… 違います」

 

「え?」

 

「あなたは他の幹部… どのウォンテッドとは違う気がします」

 

「…… なぜそう思ったの?」

 

「理由は簡単ですよ… あなたの料理が証拠です!!」

 

「あ、はい?」

 

「あの料理はすごく優しい味がしました。きっと、小島さんの気持ちが現れていたんだと思います。事情がお有りなんですよね?」

 

「………」

 

「大丈夫です!! 私は口が硬いので恥ずかしい事でもなんでもかかってこいですよ!!」

 

「…………… はぁ… 内嶋さんもおバカですね。本当に。だけど… あなたになら話していいかもしれません」

 

「…はい」

 

「私は農家で5人の兄弟と父母と、このエリアAで暮らしていました。もちろん裕福な家庭ではありません。それでも家族で精一杯努力して、やっとの思いで、良い暮らしとは言えませんが、それなりの生活はできるようになって来ました… ですが、ある日…」

 

 

 

*****

 

「ここら一体を買い占めて、テーマパークを作る。もちろん金はたんまりありますよ」

 

「こ、困ります!! この畑は私たちの大切なものです!! いくら金を注ぎ込まれようと、譲るわけにはいきません!!」

 

 

 父ともう1人、ふくよかな男がいたのを覚えています。その男はテーマパークを作ると言って、この土地を譲れと言って来たんです。父は反対しました。私の家族全員も同じように反対でした。

 

 

「でもお宅… そろそろ体にガタが来てるでしょ? 現にお父さん。あなたもう動けてないとか」

 

「よ、余計なお世話です」

 

「知ってますよ。家族には黙ってるだろうけど、借金まみ──」

 

「やめろッッ!!!」

 

 

 そう。父は黙っていたんです。それなりの生活ができていたように見せていただけで、実際は借金まみれだったんです。

 それから私たちはこの畑を売ってしまいました。悔しくて、苦しくて、あいつが許せませんでした。本当に許せなかった…。

 

 

 

*****

 

「そしてその日を境に、私はウォンテッドの力を手にして、あの男を殺して、

 この畑を取り戻しました。それに高い適応力から幹部に成り上がりました」

 

「でも、幹部になって良い事はありました? 許せないのはわかります。けれどあなたがやっている事は犯罪なんですよ!!?」

 

「わかっています!! だけど… だけど、私にはこれしかなかった。父が大切にしていた土地を誰にも譲りたくはなかった…」

 

「… 私も昔、この身を売られたことがありました…」

 

「え?」

 

「売られる前に助かったから良かったですけど、そのままだとどうなっていたか… 許せなかったですし、怒りもありました。けど、私はこの警察という仕事を目指しました。誰かが私と同じ目に合わないようにと。だから、小島さん。もうやめてください。あなたはただ良いように利用されているだけです。今ならまだやり直せますから…!!!」

 

「………」

 

「小島さん…」

 

「…………っ!!」

 

 

 すると、サツキは手を挙げると、ウォンテッド達が一斉に静止した。それを好機と思った兆はセカンドガンナイフに差し替え、再び変身する。

 

 

《セカンドガンアクション!! トリガー!! ツインライトニング!!》

「なんかよくわからないけど、行くぜ!! 今日がお前らの快晴日だ!!」

 

 

 ガーツウエスタンとライトニングウエスタンに、それぞれガンナイフを差し込み、回転しながら的確に相手を撃ち抜く。

 

 

《 ワンガーツ!! ジャニュアリーシューティング!! 》

《 ライトニング!! セカンドシューティング!! 》

 

 

 全員を打ち終えると、指でくるくると銃を回し、腰のホルスターに両銃を収めると、指を銃の形に胸の前に持ってくる。

 

 

「今日の俺も、勝利の日」

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「では、14時15分… 逮捕しますよ」

 

「はい… 申し訳ございません…」

 

「まぁまぁ、でも良かったです。あなたと争いがなくて」

 

「エリアDの家族に、謝っておいてもらっても良いですか?… 私はとんでもない事を…」

 

「それはしっかり反省してください。あなたの帰りをみんな待ってます」

 

「うぅ…」

 

 

 今回は丸く収まって良かったな。ただなんか嫌な予感がする。こんな簡単に終わってしまって良いのだろうかと。別に期待しているわけではないが、妙な気分だ。

 署に向かおうとした時、その予感は的中する。道中に全身黒いコートで覆われ、帽子を被った男が1人彼らの前に立ち塞がった。

 

 

「兆さん…」

 

「久しぶりだな」

 

「えっ、知り合いですか?」

 

「あぁ、あの日と全く変わらねーな」

 

 

 兆はその男を知っていた。かつて、彼がバーに住む前に、そこを紹介した張本人。その男を見るや否や、サツキは血相を変える。

 

 

「あ…… あぁ……っ!!」

 

「こ、小島さん!? 大丈夫ですか!?」

 

 

 サツキの表情を見た兆は何となくだが、察しがついた。どうやらこの男は兆に住む場所を教えてくれた優しい人ではないらしい、いや、優しいどころかど畜生である。兆の予想が正しければ奴は…

 

 

「ウォンテッドの… ボスか」

 

「う、うそ……」

 

 

 そしてこのボスの出現と同時に、現在単独で調査を行う巧也の前に、ウヅキが現れていた。

 

 

「最悪な状況だな…」

 

「トリガーに用があって来たんだが… まぁ、いい。RIVERSの頭を潰せば、こちらとしてはかなりの戦果だ」

 

「…… 潰せると思うか?」

 

「あぁ」

 

「俺も舐められたもんだな。幹部相手だろうと、俺は負けるつもりはない」

 

「生身で何言ってるんだか…」

 

 

 そして、巧也は銃を構える。兆と永理も銃を構えた。

 今まさに、次のトリガーが引かれようとしていた。




最悪な状況下の中で3人はどう戦うのか?
ボスの言う次のトリガーを引くとは?

と言う事で、また次の話でお会いしましょう。

次回、第6劇「2の6」


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第6劇「2の6」

はいどうも辰です。
私Twitterやってますのでね。絵やら何やら小説に関しての事を載っけたりしてます。(関係ないものももちろんあります)
よければご覧くださいませ。

それではどうぞご覧ください


「── それで、ウォンテッドのボスが、わざわざこんな所まで何しに来たんだ? 観光とは違うだろ?」

 

「……」

 

「俺にあそこを紹介した良い人だと思ったんだけどなぁ… まさか全ての元凶さんであるボスだったなんて」

 

「……」

 

「… おい、なんか言ったらどうだ? そろそろ自分の言ってることが正しいのか不安になって来たから。頼むからなんか言って!!」

 

 

 ウォンテッドのボスがわざわざここへ来る筈もないが、何故か確信が持てる。分からないが分かる。この男からは、自分の何かを刺激されるのだ。とても恐ろしい何かが。

 しばらく沈黙は続いたが、ついにその口が開かれる。

 

 

「── トリガーが引かれる」

 

「なに…?」

 

「着々と準備は進んでいる。お前も時期にわかる」

 

「訳がわからねぇ… なにを言ってるんだ?」

 

 

 すると、ボスであろうその人物は、サツキの方に手をかざす。その瞬間、サツキは突然苦しみ出し、地面をのたうち回る。一緒にいた永理は彼女に声をかけているが、その異常な苦しみのあまり、全く反応できない。

 男はそうして場を後にしようと、背を向き歩き始める。

 

 

「待てッ!! 小島さんになにしやがった!!」

 

「……」

 

「おいッ!!!」

 

「… 私はウォンテッドを指揮する者" テロス "… 時が来れば、また会う事になるだろう。トリガー──」

 

 

 テロスと名乗った男に、兆は手を伸ばして捕まえようとしたが、触れたと同時にスッと、その姿を消してしまう。

 自己紹介か、サツキを始末しに来たのか、間違いなく後者だろうが。とにかくサツキの様子を見に行く。

 

 

「小島さん!! しっかりしてください、小島さん!!」

 

「アガッ… ゲッ………ァッ…!!!」

 

 

 暫くの間、彼女は苦痛の声を上げていたが、急にピクリと動かなくなってしまった。そんな彼女を心配して顔を見ようと永理が近づく。

 

 

「小島さん…?」

 

「…ッ!! 離れろ永理ッ!!!」

 

「え…?」

 

「くっ…!!」

 

 

 兆は咄嗟に永理を突き飛ばすと、サツキからの拳が脇腹を捉える。その力に飛ばされ、激痛のあまり腹を抑えて蹲ってしまう。

 

 

「ぐはっ!!」

 

「兆さん!!!… な、何故… 」

 

 

 見ると、サツキの手にはキラーズガンが握られていた。目は弱々しい彼女の目とは思えないほど釣り上がり、息を荒くしながら、懐からデリートガンナイフを取り出してキラーズガンに差し込む。

 

 

「そ、そんな… いきなりどうしたんですか!!」

 

「あ、あのテロスとかいう野郎… 何かしやがったらしいな…」

 

 

 それからサツキは自分の胸部に銃口を突き立て、自分の体を撃ち抜く。姿は変わり始め、恐ろしい化物へと変貌してしまった。

 

 

「あんたとは… やりあいたくなかったんだけどな」

 

「………」

 

「全く、かわいいお顔が台無しですよ。レディー」

 

 

 兆はファーストガンナイフをセイブドライバーに差し込み、トリガーに変身し、サツキに向かって走り出した──。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 一方、巧也はウヅキと一対一で戦っていた。しかし、ただの人間がウォンテッドに、幹部に語るのだろうか。答えは決まっているが、無理である。無謀過ぎる。

 現に、巧也は何もできないまま、街を走り回り、市民に避難を促す事くらいしかできていなかった。

 

 

「どーこだー… 出てこいよ。さっきの威勢はどうした?」

 

「………」

 

 

 物陰に身を潜めて、様子を伺っているが、相手はすぐ近くにいる。見つかれば抵抗するしかない。普通の銃弾はまるで意味がないので省き、対ウォンテッド用に開発した弾が残り3発。全部で6発あったが、その前に3発ほど使用しており、倒せるほどのものではない。上着の内ポケットにも爆弾が入っているが、これも効くかどうか。

 

 

「携帯は…… ダメか」

 

 

 連絡を取ろうにも、ウヅキに破壊されており、繋がらない状態にある。まさに絶望的状況だった。

 

 

「…… 片っ端から撃っていくか」

 

「なっ…!」

 

 

 まだ避難している人々がいる。もしこのまま暴れられでもしたら、要らぬ被害を出してしまうだろう。

 巧也はそうはさせまいと、ウヅキの前に立ち塞がり、銃を構えた。

 

 

「ほぅ。やっぱり出て来たか」

 

「コソコソ隠れていても、いずれお前に見つかるがオチだ。それにいつまでも逃げるのは性に合わない」

 

「それはいいが、俺の前に出て来た所でどうなるんだかな」

 

「なんとかやるさ」

 

 

 そういうと、すかさず膝に撃ち込み一瞬だが、態勢を崩させると走り出し、その勢いのまま飛び蹴りを喰らわせる。

 だが、そんな生身の蹴りが効くはずがない。吹き飛ばす所か足を掴まれ、強めに投げ飛ばされる。なんとか受け身を取るものの、所々に痺れるような痛みを感じる。

 

 

「折れちゃ… いない… よな?」

 

 

 巧也は立ち上がり、残り2発を撃つ隙を伺う。

 何かないか。どこだっていい。あいつに少しでもダメージを負わせられれば。

 

 

「… キラーズガン」

 

 

 真っ先に目がいったのはそこだった。あれを破壊することができれば、奴の力は失われる。ただ、そう簡単には行かないのが事実であり、キラーズガンを破壊しようと試みたものはいたが、あまりの硬さに破壊できずに終わった前例がある。

 

 

「何かないのか…!!」

 

「おいおいどうした? 俺としちゃ、トリガーを潰したい所なんだが… 今はお前で妥協してやってるんだ。さっさと始末させてもらうぜ」

 

「… この2発で決められると思うか?」

 

「なに?」

 

「無理だな。孝四郎には悪いが、これじゃお前を倒す事はできない」

 

「その通りだな」

 

「兆にも前に使わせてもらった武器を持たされちゃいないしな」

 

「だからなにが言いたいんだ」

 

「ははっ… つまり、喧嘩を売っておいてなんだが、今の俺はお前に対抗できる手段がないって事だ」

 

「なるほど。それで少しの時間稼ぎというわけか」

 

「よくわかってるな。その通りだ」

 

「なら、それももう終わりだな」

 

 

 ウヅキが銃を向けた瞬間に、上着の内ポケットから小型の爆弾を取り出し、相手が打つタイミングに合わせて、上手く当たるように銃口の前に投げる。

 これには反応ができず、放たれた弾丸は、爆弾に当たり、そのまま爆発を引き起こす。

 

 

「ぐあっ!!」

 

 

 ウヅキとは至近距離であったが為に、爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされてしまう。ただ巧也も、そこはわかっており、なんとか身を守り、事前に避けられる態勢を作っていた。

 

 

「ゴホッ! ゴホッ!… 対ウォンテッド用の小型爆弾だ。流石にこの距離だと死ぬと思ったが…」

 

 

 巧也の視界を砂埃が遮る。ウヅキがどうなったかはわからないが、この決死の行為は正解であったか。それとも失敗であるのか。

 どちらにせよ、これでやられるわけもない。大袈裟に言って、先程の銃弾によるダメージが蚊に刺された程度とするなら、今のは蜂に刺された程度にはなっているだろう。

 

 

「…っ」

 

 

 とりあえず体を引きずりながら、距離を徐々に取ってはいるが、なにもしてはこない。本当に倒せてしまったんだろうかと、馬鹿な考え方をしてしまう。

 暫くすると砂埃が消え、巧也はそれを見た時、自分の予想が裏切ってくれなかったことに腹が立った。同時に何故裏切って欲しくもあった。何故ならウヅキは、なに食わぬ顔でそこに立っていたからだ。

 

 

「これでもダメか… 傷だけでも負って欲しかったんだがな」

 

「あー… 変な小細工してくれた事には腹が立ったが、流石に簡単に死なせちゃくれないか。だが、お前のネタはもうそこを尽きたろ」

 

「… 完全になくなった」

 

「それじゃあ、くたばりな」

 

 

 巧也はゆっくり目を瞑る。全身に痛みを感じる。先ほどまで死に物狂いでなんとかやっていたが、急に出て来た。諦めるというのはこういう事なんだろうな。

 

 

「くそっ…!!」

 

 

 頭に銃口が当てられる。偉大な父と母の姿が頭を過ぎる。死を覚悟して走馬灯でも見え始めたか。だが、このまま死ぬのであれば、一矢を報いてやろうと目を開けた。

 すると、ウヅキがピタリと動きを止め、後退っている。なにが起きたのかはよくわからないが、目の前に帽子を被った黒いコートの男が立っていた。

 

 

「ボ、ボス…!!?」

 

「ボスだと…?」

 

 

 ウォンテッドのボスであるテロスは、巧也を守るように立ち塞がっていた。巧也は何がなんだか、その光景に整理が追いつかない。

 そして、彼の前にしゃがむと、コートから取り出した何かを手渡した。どこかで見た事がある。あの時、そうトリガー。それから兆が持っていた。

 

 

「セイブドライバー…!!」

 

「知っているか。なら話は早い」

 

「…?」

 

「これをお前に託そう。どう使うかは、お前次第だ」

 

「な、なに…!?」

 

「次のトリガーは引かれる──」

 

 

 そういうと、テロスの姿は消えてしまい、セイブドライバーと、地面にもう一つフィガンナイフが置かれている。

 

 

「一体どういう事だ… 何故ボスが…」

 

「── 何が次のトリガーだ……」

 

 

 セイブドライバーを握りしめ、立ち上がる。そしてそれを腰に巻くと、地面に落ちていたフィガンナイフを拾い、顔の横に掲げる。

 

 

「俺は奴のようにはならない。俺の正義は、俺の信念は。人々の平和を、自由を未来を!! この手で守る事だッ!!」

 

 

 兆のやっている事を思い出しながら、フィガンナイフにあるスイッチを押すと、起動音が鳴る。

 

 

《SIX》

 

 セイブドライバーに差し込み、胸の前に左拳を持って行き、硬く握りしめる。

 

《SET》

「── 変身ッッッ!!!」

 

 

 ドライバーの引き金を引くと、巨大な銃が現れるが、トリガーの物と違い、回転式拳銃ではなく、自動拳銃が現れ、舞い上がったアーマーを撃ち抜いてゆく。

 

 

《シクスガンアクション!! シェリフ!! オートアオート!!》

「これは…… 力が湧き上がってくる」

 

「馬鹿な… ボスは何故こんな事を…」

 

「ウヅキ。お前を捕縛する」

 

 

 腰に装着されていた" タイムウエスタン "という銃を抜き、ウヅキを撃ち抜く。先ほどとは嘘のようにダメージが入る。

 

 

「ぐっ…!! だが… その程度だ!!」

 

「ハァッ!!」

 

 

 巧也、もといシェリフとなった彼のスペックは、トリガーとはほとんど変わる事はない。しかし、彼の元からのセンスが合わさることにより、その数値は上回る。

 ウヅキの攻撃を巧みに躱しながら、タイムウエスタンを撃つ。

 

 

「トリガーに続いて、この俺を…!!」

 

「トリガーと一緒にしないでもらおうか!!!」

 

「じゃあお前はなんだ!!」

 

「俺は…… シェリフ。音声がそう言っていたから、そう呼ぶとしよう」

 

 

 相手のパンチを頬をかすめる所で避ける。全てがギリギリの状態で、ウヅキの猛攻撃を華麗に躱し、たった一瞬の隙を狙って攻撃を繰り出す。

 

 

「こいつちょこまかとッ!!」

 

「遅いぞ。ウヅキ」

 

「ぐわっ!!?」

 

 

 タイムウエスタンの銃口を腹に当て、至近距離で撃つと、ウヅキは腹を抱えて体勢を崩す。

 勝てるとわかって挑んだ相手の前に、自分達のボスが出現して、ただの人間にセイブドライバーを手渡し、見事なまでの攻守逆転。いや、最初から攻守なんてなかったのかも知れない。巧也が攻守を上手く行っていただけで、今は攻撃に転じているだけだ。

 

 

「こんな… はずじゃ…っ!!」

 

「だろうな。俺もまさかこうなるとは思わなかった」

 

「ボスが何故お前に」

 

「何か裏がありそうだが、今は置いておこう。ウヅキ、そろそろ潮時だ」

 

「ふざけるな…!!!!」

 

 

 筋肉を増強させ、シェリフの首に勢いのまま、ラリアットが決まる。衝撃のあまり、目の前が霞んでしまいそうになったが、その腕を軸に回転し、後頭部を蹴り飛ばす。

 そのまま着地をし、セイブドライバーのハンマーを起こし、引き金を引く。

 

 

《オート!! ファイア!!》

「ハァァァァッッッ!!!!!」

 

 

 ウヅキがすかさず放った銃弾を、スライディングをして躱し、右脚を突き出すように前に出し、ウヅキの胸部に喰らわせる。

 

 

「そんな… 馬鹿な…… この俺がッ!!」

 

「任務完了だ」

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!」

 

 

 爆発と共に、キラーズガンとデリートガンナイフは砕け散り、ウヅキの体は人間態へと戻っていく。

 巧也は変身を解くと、散らばった破片を集め始める。

 

 

「後で孝四郎と兆に調べて貰わなきゃな… うぐっ…」

 

 

 先程の戦いの傷が、ようやく効いてきた。瓦礫に腰掛けてると、その痛みに耐える中、ある疑問が浮かんでくる。それは兆の事だ。研究員であるなら、このドライバーは一体何なのかと。トリガーの持つドライバーと巧也の持つドライバーはきっと同じ物である。変身して初めてわかったが、これはキラーズガンと同じような作用があるに違いないと。

 

 

「兆… お前は本当にトリガーなのか…」

 

 

 たった数日の間ではあるが、巧也は兆を信じていた。彼は誰かを殺すような男ではない。トリガーは自分の親を殺したが、実は別の犯人がいるのではないかと思ってしまう。

 

 

「…… これは俺だけで伏せておこう。とりあえず、このドライバーについては聞いてみるか」

 

 

 巧也はウヅキに手錠を掛けると、引きずりながら公衆電話がある場所に移動する。一刻も早く、2人に連絡を取らなければならない。とにかく今は、あの2人が心配だ。

 そして視点は、トリガーとサツキに移行する。




やる度に〜文字数がなくなってゆく〜
何故なんですかねー不思議ですねー(棒

巧也さんはアレと違って、 暴れてくれないから…(震え声

というわけで次回、第7劇「四つ蹴り」
次回もよろしくお願いします!!


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第7劇「四つ蹴り」

ボスの目的は一体…?
暴れるサツキを止められるのか!?

それではどうぞご覧ください。


「ちょ、小島さん!! ストップ!! 止まれ!! 止まってください!!」

 

「アァァァァァァァッッ!!!」

 

「あ、やっぱり無理だぁぁぁっ!!?」

 

 

 サツキの放つ銃弾は、何度も避けようと、トリガーを確実に捉える。彼女の的確な射撃力もあるが、戦いたくないというトリガー自身の心情もあり、避けられるはずの攻撃すら避ける事ができないのだ。

 

 

「こういう時は脚を狙う!!」

 

 

 撃たれた衝撃と共に寝転がり、ガーツウエスタンで脚を必要以上に狙いまくる。本人もこれは卑怯と思っているが、これは勝負だ。勝負だから仕方がないと、両脚を撃つ。

 

 

「グゥゥゥッ…!!!!」

 

「これで一旦倒れてくれ!!」

 

 

 ところがそう上手くはいかない。トリガーの放った銃弾は、彼女の脚に弾かれている。火花が散っており、一見当たっているように見えるのだが、否、当たっているだけ。サツキにはまるで効いていない。

 

 

「あ、あれ…?」

 

「ウガァァァァッッッ!!」

 

「あっぶね!!…… なら、セカンドはどうだッ!?」

《TWO》《SET》

《セカンドガンアクション!! トリガー!! ツインライトニング!!》

 

 セイブドライバーの引き金を引いて、セカンドライトニングの姿となる。あまり変わっていないのだが、二丁拳銃による連射で、一点集中で動きを封じるつもりだ。

 

 

「脚ばっかりでごめんなさいね!! 後で謝りますんで!!」

 

「グゥゥゥ……」

 

「………… え、まるで効いてないんですが…」

 

 

 そう、まるで効いていない。何発もの銃弾は確実に当たり、普通であるならば倒れるか、多少のダメージが入るはずだ。

 ただし、サツキには生半可な攻撃は無意味に終わる。彼女は体を硬化することができる。ウヅキの筋肉倍加とは違い、常時発動で、彼よりも精度と安定性がある。

 

 

「永理!!」

 

「え? あ、はい!」

 

「どうしよう…」

 

「…… 私もどうしたらいいか… あ、来てます来てます!!」

 

「なぬ… ぐわぁっ!?」

 

 

 よそ見をしていたトリガーは後頭部を鷲掴みにされ、そのまま地面に叩きつけられる。それからサツキは馬乗りになり、背後から何度も殴りつけ始めた。

 

 

「いででででででででっ!!!!」

 

「トリガーさん!! このっ…!!」

 

 

 永理は対ウォンテッド用の銃弾で援護射撃をするが、やはりサツキの外殻を崩すことはできない。弾がなくなると、サツキは馬乗りのまま永理に向けて銃口を向ける。

 

 

「…っ!!」

 

「よせッッッ!!!」

 

 

 キラーズガンから放たれた銃弾は永理の頬を掠める。すんでの所でトリガーは渾身の力を振り絞り、銃の軌道をずらしたのだ。

 その行為で永理は助かったものの、サツキの手がバキバキと音を立て、更なる硬化を行い、トリガーの背中を殴り付ける。流石に彼と言えど、今の重い一撃により動けなくなってしまった。

 

 

「そんな……!!」

 

「ウゥゥゥゥ……」

 

「見捨てて逃げるなんてことは──」

 

 

 通常の弾を込めてサツキに向け、何とかトリガーを逃そうと考えたが、初めて兆と会った時の言葉が頭をよぎる。

『自分の命も守れない奴が、誰かを守るとか言うなッ!!!』

 その言葉を思い出した永理は銃を伏せ、走り出す。

 

 

「必ず戻って来ますから… それまで耐えてください!! トリガーさん!!」

 

「ガァァァァァァッ!!!」

 

 

 サツキがトリガーから離れ、永理を追ってくる。その速さは尋常ではない。距離をすぐに近づけてくるが、彼女はただの新人警官ではない。障害物を利用し、攻撃を避けて、逃げ続けること15分で畑の方に出る。

 

 

「ハァ… ハァ… 」

 

「グゥゥゥ…」

 

「小島さん…」

 

 

 サツキは永理に銃を向け始める。畑には何もなく、逃げることは困難だろう。2人は向き合い、そのまま時間が過ぎて行く。

 それもそのはず、彼女は攻撃を仕掛けてこないのだ。だが、永理にはわかる。攻撃をしてこない、できない理由がある。

 

 

「… すみません小島さん… 逃げるにはこれしか考えられなかったんです…」

 

「………」

 

 

 銃をカタカタと揺らし、畑に入った永理を狙い続けるが、引き金を引けない。その隙に作物を踏まないように避けながら、畑の中を走り回り、ようやく森の中へと入り込む。

 サツキはそれと共に銃を放つが、その頃には彼女の姿は見えなくなっていた。そうしてサツキはトリガーの元へと戻って行く。

 

 

「追って来て… ないですね。ふぅ、よかった」

 

 

 そしてすぐさま携帯を取り出し、連絡をしようとすると、それと同時に孝四郎から電話が掛かってきた。

 

 

「は、はい。永理です」

 

『孝四郎です。あれ? なんか息が荒いようですけど、大丈夫ですか?』

 

「はい。今、幹部のサツキとトリガーが戦闘中です。トリガーはサツキに押されてしまっており、戦況は最悪。私だけは逃げることに成功しました」

 

『そうですか… こっちは課長に連絡しても繋がらない状態で、困ってたんですよ。何もなければいいんですがー… って、話が逸れましたね』

 

「はい?」

 

『フィガンナイフが完成したんです』

 

「ほんとですか!?… でも、サツキの硬度をなんとかできればいいんですが…」

 

『ん? 相手は硬いと?』

 

「はい」

 

『はははっ!… なら、このフィガンナイフはその幹部にとって相性最悪ですよ』

 

「は、はい…?」

 

『おっと、すみません。そっちは大変なんでしたね。すぐに持って行きますよ場所は?』

 

「えっと、場所は──」

 

 

── その頃トリガーは腰を叩きながら、何もできないまま、サツキが離れた隙に彼女の家の近くの倉庫に隠れていた。

 

 

「あー暗いなー暗いなー。痛いなー痛いなー… テロスの野郎。小島さんになんて事してくれてんだよ」

 

 

 独り言をしていると、サツキが戻ってきた。辺りを見渡し、トリガーがいないことを確認すると、まるでホラー映画の幽霊のように発狂する。

 本気で怖い。永理が逃げたは良いものの、1人だとホント不安で、早くこの場から逃げたいと思う。

 

 

「いくらトリガーでも、あれは怖いって… 今度サードで試してみるか…? 見る? やる? よし、やろう。頑張れトリガー。負けるなトリガー」

《THREE》《SET》《サードガンアクション!!トリガー!!ショットショットショット!!》

 

 

 倉庫の中だと狭いので、すぐさま外へ出て、サードショットにファームチェンジする。しかし、音声と派手な演出のせいで、彼女に気付かれてしまった。

 目と目が逢う瞬間、好きとかまだそういうのは分からないが、ものすごい勢いでこちらに走ってきた。

 

 

「来たな!!!」

 

「ガァァァァァァッ!!!」

 

「1発もらっとけッ!!!」

 

 

 1発で30発分の衝撃を生む、サードの渾身の一撃がサツキの腹に入る。容赦のないその攻撃に、流石に耐え切れず、体勢はそのままだが後方へ吹き飛ぶ。

 

 

「どうだぁッ!!!」

 

「………」

 

 

 自分で言うのもなんだが、ここまで来ると、そろそろ逃げた方がいいんじゃないかと思ってしまう。

 今の一撃ですら、彼女の防御力を突破することができなかったのである。

 

 

「これでもダメなのか…ッ!!!」

 

 

 相手と大きく距離を離すことは可能だが、それだけである。単純な防御力の高さが、これ程までとは思わなかった。

 

 

「キシャァァァァァァッッッ!!!!!」

 

「うわっ…!!!」

 

 

 その硬さから繰り出されるタックルを、トリガーはガードしたが、それを超えるように重さがのしかかる。

 それを耐え抜き、負けじと何度も殴るが、彼女の外殻を壊さない。今更だが、硬さ以外にも、サードの威力を受け流しているのかもしれない。そうでもなければ、そろそろヒビでもなんでもダメージは通るはずだ。

 

 

「ハァ… ハァ…」

 

「グルルルルルッ!!」

 

「体力が奪われるだけじゃんか…」

 

「ガァァァァァァッ!!!」

 

「だけどまぁ、小島さん… 俺はあんたを絶対助けるぜ」

 

 

 そしてトリガーは再び走り出す。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 孝四郎は急いで現地に向かい、ようやく永理と待ち合わせていた駅に到着した。普段あまり動かない分、本人にはかなり重労働だったらしく、息を荒上げて近くの壁を背にして座り込む。

 

 

「うぅ…」

 

「大丈夫ですか? 飴食べます?」

 

「な、なぜ… それより例の物です」

 

 

 そしてポケットからフィガンナイフを取り出し、永理に渡す。

 

 

「ありがとうございます!」

 

「そ、それと兆くんかトリガーの方に連絡を一つ」

 

「ん?」

 

「ガーツウエスタンとライトニングウエスタンは、どうやら組み合わせができるらしいので。そのフィガンナイフとは相性がいいですよ、きっと」

 

「なるほど。わかりました! それにしても、この短期間でよく覚えられましたね」

 

「やっぱり僕は機械弄ってる方が性に合いますよ。何より楽しいですしね…… あぁそうだ!! 早く彼の元へ行ってあげてください」

 

「そ、そうでした!! ありがとうございました!! 孝四郎さんもお気をつけぇぇぇ!!!」

 

 

 本来の目的を思い出した永理は、トリガーの元へと走り出す。疲れた孝四郎は、しばらく近くのベンチに座ろうと歩き出す。

 すると、持っていた携帯が鳴り始める。公衆電話からであり、嫌な予感を覚え急いで電話に出ると、声からして巧也であった。

 

 

「か、課長!!? 電話しても出なかったから心配してたんですよ!!?」

 

『悪いな。携帯が壊れた』

 

「こ、壊れたって…」

 

『それより今、永理や兆はどうしてる? 2人に連絡をしたんだが、繋がらないんだ」

 

「2人は幹部のサツキと戦闘中らしいです。僕は今、完成したフィガンナイフを永理さんに手渡した所ですよ」

 

『なんだとッ!!?… まぁこっちも、さっき戦闘中だったしな』

 

「戦闘中だったんですか?」

 

『あぁ、ウヅキとな。なんとか捕まえてやったが…』

 

「え、えぇぇぇぇ!!!?? 捕まえたって、いったいどういう事で──」

 

『詳しい話は後だ。それよりすぐそっちに向かう場所を教えてくれ』

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「やっぱり無理じゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

「グオォォォォォォ!!!!」

 

「カッコつけてすみませんでしたぁぁぁっっ!!!!」

 

 

 現在、トリガーは逃げていた。ヒットアンドアウェイで打撃を与えていたが、顔色一つ変えず攻めてくるサツキに焦り、見事にやられていた。あんな事を言っておいて、逃げるという選択をすることが自分自身のプライドが許さず、それでも戦った結果これである。

 

 

「ま、真面目にまずい!! トリガー史上最もやばい気がする!!」

 

「アアァァァァァァッッッ!!!!!」

 

「うあぁあぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!??」

 

 

 そしてサツキから放たれた銃弾が、足元に当たって態勢を崩して転倒してしまう。すぐに立ち上がろうとするが、背中を踏みつけられ身動きが取れない。

 

 

「く、くそっ…!!! 小島さん…!!!」

 

「グゥゥゥッ…」

 

 

 キラーズガンの銃口がトリガーに向けられる。ハンマーを起こし、引き金に指をかける。

 最後まで足掻こうと、渾身の力で地面を叩くと、凄まじい勢いで体が宙に浮かぶ。そしてそのまま引き金を引いて、回転しながら片腕に力を込めて、サツキを殴ると大きく吹き飛ばす。

 

 

「よしっ!!!」

 

「グゥ…ゥゥ……」

 

 

 流石に必殺技は効いたのか、見た感じは変わらないが、多少のダメージは入ったようだ。

 次の攻撃に備えて、構えを取ると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

 

「── さーん!!!」

 

「おっ」

 

「トリガーさーんっ!!!!」

 

「おぉ、永理。怪我はないっぽいか?」

 

「はい、問題ないです!! それよりこれを」

 

「こいつはっ…!!」

 

「新しいフィガンナイフです!! 孝四郎さんが完成させましたよ!! あ、それとガーツとライトニングの2つの銃合体できるらしいです」

 

「え、そうなの!?… まぁでも、やっぱあの人すごいな。これなら行けるッ」

 

「では、トリガーさん」

 

「あぁ、任せろ。小島さ… いや、サツキッ!!! さっきはよくもやってくれたな」

《FOUR》《SET》

 

 

 新たなフィガンナイフ。"フォースガンナイフ"を起動させ、セイブドライバーに差し込み、ハンマーを起こして引き金を引く。

 それから巨大なライフルが現れ、アーマーがトリガーの前に一直線に並び、それら全てを1発で撃ち抜いてから装着されて行く。

 

 

《フォースガンアクション!! トリガー!! ストレートライフル!!》

「今日がお前の豊作日だッ!!!」

 

「グォォォォォォッッッ!!!!」

 

「おらよっ!!!」

 

 

 トリガーにより放たれた蹴りは、サツキの胸部に当たるとヒビは入るが、大したダメージになってはいない。

 

 

「えぇぇぇぇ!!?」

 

「な、何だよどうした」

 

「い、いやぁもっとバキバキバキバキィ… ってなるかと思ってたので…」

 

「まぁ、あとそうだなぁ… 20秒くらい待ってて」

 

「…?」

 

 

 そうしてサツキが飛び付いてくるが、すかさず蹴りを放って距離を遠ざける。それを幾度と繰り返し、トリガーの言う20秒が過ぎると、彼の脚が赤くなっていき、熱を帯びる。

 

 

「見てろよ永理… これがフォースだ!!!!」

 

 

 その状態でサツキを蹴ると、凄まじい衝撃が彼女を襲う。それは彼女の硬い外殻を、防御を貫き、胸部を破壊する。

 

 

「アガッッッッ…!!!!?」

 

「お、おぉ… おぉぉぉぉぉっっっ!!!」

 

 

 喜んで拍手する永理に、右手で銃の形を作り撃ち抜いて見せると、この上なく冷めた顔になり、トリガーはとても傷ついた。

 すると、サツキは何かが切れたように咆哮を行い、トリガーに向けて凄まじいエネルギーを込めた銃弾を放つ。それを避けようと、構えるトリガーであったが、なぜかそれを避けず喰らってしまう。

 

 

「カハッ…!!」

 

「何してるんですかトリガーさん!!」

 

「今のはダメだ……!! 避けちゃッ!!!」

 

「どうして… あ」

 

 

 理由はすぐに分かった。トリガーの後ろに広々と小島の畑がある。彼はそれを分かった瞬間、身を挺して畑を守ったのだ。彼女が大切にしてきたこの畑を何としても。

 

 

「あんなに大切にしてきた畑を、小島さんが壊すはずがない… 今ならまた言えるぜ。俺はあんたを救う。だから決める… サツキッ!!!!」

 

「グワァァァァァァァッッッ!!!!!」

 

「ウォォォォォラァァァァッッッ!!!!!」

《ライフル!! ファイア!!》

 

 

 ちょうどフォースの力が発動できる時間が過ぎており、その状態でセイブドライバーの引き金を引いて必殺の蹴りを放つ。

 大きな爆発音と共に、キラーズガンとデリートガンナイフが宙へと舞う。ドス黒い霧を纏い、ウヅキのものと比べると酷い色をしていた。

 

 

「あれのせいだなぁ… じゃあぶっ壊しますかね。あらよいしょ!!」

 

 

 ガーツウエスタンの後ろに、ライトニングウエスタンを組み合わせると、まるでライフルのような形になる。その状態でライトニングの方にフォースガンナイフを差し込む。

 

 

「ぶっ壊れろッッッ!!!」

《ライフルヨンガーツ!! フォースエイプリルシューティング!!》

 

 

 放たれた一発の銃弾は鋭く大きくなり、それら2つを貫いてついに破壊する。

 

 

「やったぁぁぁ!!!」

 

「──っしゃ!!! 今日の俺も、勝利の日だっ!!!」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 それから小島さんはすぐ警察に出頭した。彼女は自分の身に何が起こったのか覚えてないらしいが、ま、一応全部話したんだけどね。ものすごい勢いで謝ってきたよ。

 彼女の畑はどうなったのかっていうと、難しい話は省いて、今回の騒動もあって、色々と巧也の方でやってくれたらしい。それで権利は両親の方に行ったらしい。らしいだからね。詳しいことは俺にも分からないけど、なんだかんだでこれで良かったと思う。

 

 

「ただ… 俺の今の状況は良くないのか。それとも良くないのか」

 

「なにさっきからブツブツと独り言してるんだ?」

 

「じゃあ話してもらおうか… 兆のそれと、俺がもらったセイブドライバーの事を」

 

 

 RIVERS内にて、俺は事情聴取をされているわけだ。あーあ、これ前に見たことある展開になってきたぞ。

 

 

「まぁもう何度目となりますけど、これでようやくわかったと思うんだけどさ。真実は… 俺がトリガーだ」

 

「… やはりそうなるのか」

 

「はい (また始まるぞ〜。お前は嘘をついているとか、頭大丈夫か〜とか)」

 

「期待していた自分がいたよ。兆なら俺がトリガーだって言うだろうな、と。でも、逆に俺はお前が、トリガーは別のやつだ、って言ってくれれば良かったって思ってる」

 

「あ、え、巧也さん…」

 

「信じるしかないよな。現に俺がこの力を手に入れて、テロスが俺たち2人にセイブドライバーを渡した。お前は違ったか? どっちでもいいが、証拠は揃ってる。まさか、俺の両親を殺した、俺の仇が、俺の生涯の敵が、目の前にいるんだからな…」

 

「………」

 

 

 巧也はここの誰もが見た事がない悲しげな表情を浮かべている。孝四郎や佳苗、永理も黙ってしまうほど、RIVERSは誰も言葉を発さぬまま時間が過ぎて行く。

 それからようやく巧也が口を開いた。

 

 

「── 兆」

 

「はい」

 

「これだけは聞かせてくれ… お前は……… 俺の両親を殺したのか?」

 

「………」

 

「覚えてないなら、それでいい」

 

「─── このトリガーとして、今までやってきたけど、誰かを殺すって言うのは、本当にどうしようもない時だけだった。巧也さんの両親を殺したのかは本当にわからない… ただ、巧也さんの話からすると、あの日の3年前?は俺がちょうど記憶がない状態でウォンテッドと戦ってた頃で………」

 

「どうした?」

 

「すんません。やっぱり記憶にないっす…」

 

「…… そうか」

 

 

 また暫く部屋の中は静かになった。しかし、この静寂の中で、先に口を開いたのは兆である。

 

 

「巧也さん。いいっすか?」

 

「なんだ?」

 

「俺は自分が何者で、何の為にこのドライバーを持っていたのかわからない。もしかしたらウォンテッドの手先かもしれないし、その、言いにくいけど記憶がなくなる以前、巧也さんの両親を殺してしまったのかもしれない」

 

「あぁ…」

 

「本当に自分勝手だと思ってるし、ふざけんなって話だけど… ウォンテッドと戦わせてほしい。人を守る為に。絶対に償えない事をしてるのはわかってるし、とんでもない罪を犯してる。だけど、せめてもの報いとして、奴らと戦わせてほしい。この戦いが終わったら、逮捕だって何だってしてもいい!!」

 

「兆…」

 

 

 兆とは思えないほど真面目な表情を見て、巧也は驚いた。いや、ここにいる全員が驚いた事だろう。

 彼の真剣な眼差しを見た巧也は、立ち上がって兆へ近づいて行く。

 

 

「兆」

 

「……」

 

「俺の答えを言おう──」

 

 

 RIVERSに緊張の糸が張られた。




以上です。

ついにトリガーの正体が判明しました。本人は知られたがっていたけれど、この状況では喜べませんよね…

では次回、第8劇「月夜」

それから感想ありがとうございます!! 他にもなんでも(ん?)コメントしてくれて結構です!!「このキャラをもっと出してほしい」や「このアイテムの説明記載しろや」などなどご質問やご要望も構いません。
それではまた次回お会いしましょう。


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第8劇「月夜」

前回、ついにやっとようやくトリガーの正体が分かり、仇が目の前にいるとわかった巧也が出した答えとは…?

それではどうぞご覧ください。


「兆… 俺の答えは──」

 

「……」

 

「もちろんトリガーは許さないさ。当然だ。それは変わらない」

 

「……あ」

 

「だが、兆。お前は違うだろう?」

 

「え…?」

 

「普通疑うだろうけど、俺はこれでも見る目はあってな。記憶がないのは真実だ。なら、仕方ない。そんな言う必要もないしな」

 

「あ、え?」

 

「まだわからないだろ? お前がトリガーなのかどうかなんて。1人や2人いたっておかしくない。記憶を取られるなんて、馬鹿げた現象が起きてるんだ。トリガーが何人いても今更驚くか?」

 

「巧也さん…」

 

「だから、兆。例えお前が本人だったとしても、テロスが何かを知っている事に変わりはない。お前の記憶が戻るまで、真実に辿り着くまで、俺と… いや、違うな。俺たちRIVERSがお前と共に戦う。それにお前はもうRIVERSのメンバーだからな。仲間が困っているなら手を差し伸べるのが、警察として、人としてのスジってものだろ?」

 

「─── はぁぁぁ… やっぱり課長さんは凄いな。思わず涙袋が破裂するところだったよ」

 

「あぁ、これからもよろしく頼むぞ。兆」

 

「もちろんっすよ。俺で良ければ力になるつもりさ」

 

 

 2人は向かい合って、ガッチリと握手を交わす。その光景を見ていた永理はとんでもないほど号泣していた。

 

 

「お、おいおい永理。なにそんな泣いてるんだよ…」

 

「兆さんの代わりに涙袋が破裂しましたうわぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

「あーあー、美人なお顔がすごい事になってるぞーって、おい!! 鼻水擦りつけるんじゃねーよ!!」

 

 

 再びRIVERS内は明るい雰囲気を取り戻し、皆の笑顔が溢れかえった。

 それから次の日、気持ちを切り替え、永理は今尚泣いているがそれは良しとして、また新たなRIVERSとして会議を始める。

 

 

「では、早速始める。既に幹部は12人のうち2人は俺と兆で落とした。残りの10人を倒し、全てのエリアを一刻も早く奴らから奪還しなければならない。そこで俺と兆は敵陣に踏み込もうと考えている」

 

「他エリアから来る事も考えて、1人は残しておいた方がいいんじゃない?」

 

「あぁ、佳苗の言う通りだ。だが、こうしている間にも人々はウォンテッドに苦しめられている。今、奴らと戦える俺たちが人々を救わなければならない。それに、俺も戦えるようになったとは言えど、まだまだこの力も完全に使いこなせていない」

 

 

 そんな話の最中、永理は何かに気づいた。そうだ。自分が呼ばれていない。思わず涙が引っ込み、すぐに巧也に直談判する。

 

 

「ちょ、ちょっと課長!!!」

 

「ん? どうした永理?」

 

「どうして私の名前が出てこないんですか!!?」

 

「あぁ… 悪いが永理、お前はここを頼みたい」

 

「ここ… って、エリアAですか?」

 

「そうだ。誰か1人残すのならば、お前しかいないと思っていた」

 

「課長…」

 

「頼めるか?」

 

「はい!! もちろんです!!…… なんて言いませんよッ!!! 課長の喋り方おかしいですもん。絶対私が危ないからって残すつもりなんでしょう!?」

 

「うっ… いや、別にそうは言ってないだろう。お前にはここを守ってもらうというな──」

 

「やです!! 私も一緒に戦いたいです!!」

 

「うーん……」

 

「お願いします課長!」

 

「んー…… とりあえず、会議に遅れてる兆を呼んできてくれ。考えておく」

 

「…!! わかりました! すぐに呼んできますね!!」

 

「考えておく! だからなー… って、もう行ったな」

 

 

 まるで風のように永理はその場から消える。巧也は大きなため息をつくと、自分の席へと座り、頭を抱える。静まり返ったRIVERSで、クスクスと微かな佳苗の笑い声が響いていた。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 一方その頃、遅刻している兆はと言うと、ガンホーレ達と共にバーで飲んでいたのである。

 

 

「マスター。人は言うだろうね。遅刻しているのにも関わらず、なぜお前はミルクを飲み続けるのか… と、その答えは簡単だ。そこにミルクがあり続けるからさ」

 

「ゼハーゼハー…… い、いい飲みっぷりだな。マ、マスター。こいつにミルクと俺にビールをくれ」

 

「そろそろやめようぜ、ガンホーレさん。飲み比べは体に触るぜ」

 

「何言ってやがる。今日こそは勝つぞ」

 

「ふっ、上等だぜ… その前におトイレに…」

 

「おっと、なに吐き行こうとしてるんだ? ルール忘れたか?」

 

「覚えているさ。先に吐いた方が負け… この勝負の間、吐く為にトイレに行ったものは即敗北…と」

 

「そうだ。このまま負けでいいのか?」

 

「残念だが、俺は吐くんじゃなくて、色々大きなものを吐き出そうってだけだぜ? ルールは嘔吐はダメなんだろ? なら、どでかいブツを出すんだったらいいとは思わないか?」

 

「ダメに決まってるだろ座れ」

 

「も、もうダメだ。俺はこのままここで出してしまうのか? 俺の人生がスーッとではなく、ズドーンって落ちてしまってもいいのか?」

 

「いいからさっさと席に着きな」

 

「あーもうダメだー。さよなら、おとっつぁんおかっつぁん。オラはもうダメだぁぁぁぁぁぁ……」

 

 

 すると、カランカランと音を立て、バーのドアが開かれる。そこには可愛らしい女性が1人立っていた。

 ガンホーレとイッシュウはそれを見ると、すぐさま取り囲む。

 

 

「よう、ねーちゃん。行けないな。ここはあんたが来るには早過ぎるぜ? だろ? イッシュウ」

「そうですね。それより結構な上玉ですよ団長」

「そうだなぁ… なら、ねーちゃん。俺たちがここでの遊びってのを手取り足取りなんたら教えてやるぞ?」

「団長。なんたらは、いらないですよ」

 

「あぁ、私こう言うものです」

 

「「ん?」」

 

「警視庁組織犯罪(以下省略) RIVERSの内嶋 永理です」

 

「「………け、警察ぅぅぅぅぅっっっ!!?」」

 

「そうです」

 

 

 RIVERSと言う名を聞いて、2人は焦り始めた。まぁ無理もないだろう。ガンホーレ団はほぼ無視はされてはいるが、一応指名手配犯。更にはRIVERSと言う名が出てくると話はまた変わってくるだろう。

 

 

「ま、まずくないですか団長!!?」

 

「な、なんでRIVERSがこんな所に…… ついに俺たちを捕まえにきたのか!!?」

 

 

 そんな2人を無視して兆に近づくと、それに気づいた彼は露骨に目を逸らす。本人は自覚あり。

 

 

「遅刻です」

 

「あい」

 

「何してたんですか」

 

「ミルクを嗜んでおりました」

 

「行きますよ」

 

「あい」

 

 

 トボトボと兆は永理の後をついて行き、マスターに軽く手を振り、金が入った巾着をカウンターに上手いこと投げる。

 

 

「釣りはいらないよマスター」

 

「あぁ、気を付けろよ」

 

「へーい。行ってきまーす」

 

 

 バーを出て街中へ出ると、明らかに永理の元気がないのがわかった。いつもならば、飯だ飯だとうるさい食いしん坊が、今日はとても静かであるからだ。

 

 

「なんだ永理? 元気ないな」

 

「え? あぁ… そう見えました?」

 

「まぁね。いつもなら飯飯うるせーからな」

 

「そんなに言ってませんよ。今日は食べてきましたし」

 

「そういう問題なのか… で、なんかあったの?」

 

「…… 兆さん」

 

「んー?」

 

「私は戦場に必要ですか?」

 

「な、なんだよ急に… 怖いな」

 

「何も出来ず、ただ見守るばかりで私はこれといって役に立った事がありません… 課長にも今回の作戦から私は抜かれてしまっていて…」

 

「なるほどなぁー… 巧也さんもわかってらっしゃる」

 

「そう… ですよね」

 

「まぁでも、俺は永理に近くにいて欲しいけど」

 

「…へ?」

 

「だって俺、何回もお前に助けられたことあったし、それに昨日だって、フォースガンナイフを届けてくれなきゃ、俺どうなってたか分からないしさ」

 

「………」

 

「な、なんだよ急に黙って」

 

「一瞬告白かと思いました」

 

「んな訳あるか!!!」

 

「な訳ないってどういうことですか!!?」

 

「心配した俺がバカだった… まぁいいや。とりあえず巧也さんを説得でもするかな」

 

「ほ、本当ですか!!?」

 

「あぁ、トリガーさんは嘘はつかないぜ」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 2人はRIVERSに戻ってくると、巧也に兆が早速怒られていたが、それはそれで仕方ない。いや、当然だ。

 それから巧也は、もう一度今回の作戦を説明してから、もう一つ永理に向けて何かを決めたような表情で告げる。

 

 

「永理」

 

「は、はい」

 

「兆は1人にしておくと… なんだ。今みたいに遅刻をするからな。永理がこいつの側に付いてやれば、まぁその、大丈夫だと思うんだ」

 

「どういうことですか?」

 

「つまりー… 今回の作戦は俺と兆。それに永理。お前は兆についてやれ。それでこいつのサポートと社会の常識を教えてやれ。以上だ。準備しろ。早速向かうぞ」

 

 

 永理はそれを聞いて飛び跳ね出した。余程嬉しかったのかロッカーにあったパンを全て平らげてしまった。この僅かな時間で。

 巧也は椅子に深く座り、頭を掻く。それを見ていた佳苗は、笑い堪えるの必死なようだ。

 

 

「── 何か言いたげだな」

 

「べ、別にぃ… ふふふっ」

 

「俺も弱いな。まだまだ」

 

「ふふっ、そう見たいね」

 

 

 それから兆たちはパトカーに乗り込むと、エリアAからエリアEへと向かう。佳苗の情報によれば、このエリアEで幹部に動きがあったとのRIVERSのメンバーより連絡が入ったらしい。だが、3人は知らなかった他のエリアは一際違うということを───。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 暫くしてエリアE付近に到着する。見た感じは普通だった。しかし、エリアEに入ったと同時に辺りは暗闇に飲み込まれてしまう。月が顔を出し、まるで一瞬にして数時間経ってしまったかのように、周りは夜になっていた。

 

 

「こ、これは…」

 

「ここの幹部は確か、"ナガツキ"だったかな」

 

「ナガツキか…」

 

「それにしても暗いな。本当にここだけ夜みたいだなぁ… これも幹部の力ってやつ?」

 

「そうだろうな。さ、おしゃべりは終わりだ。任務開始だ」

 

 

 3人はパトカーから降りると、辺りを見渡すが、明らかに人がいない。街灯の明かりだけがこの街を照らしている。とても不気味で恐怖すら感じる。

 事前に持ってきたライトを点けると、やはり前は何もみえない。

 

 

「情報通りの場所だったが、実際に来てみるとかなり気味が悪い」

 

「お、お化けとか出てきませんよね」

 

「出るわけがないだろ。出るとしたらウォンテッドだ」

 

「それはそれで嫌ですね… それにしても、例の情報本当なんでしょうかね?」

 

「あぁ、俺もそう思ってた。敵の罠の可能性がある」

 

「敢えて乗ってやったって訳ですね」

 

「ふっ、その通りだ」

 

 

 そうして暗闇の中を進んで行くと、住宅街に入ったようだ。小さな街灯が明るく夜道を点々と照らしている。奥は何も見えず、やはり人の気配はまるでない。

 

 

「住宅街に出ても人の気配が全くないな…」

 

「巧也さん。一旦、佳苗さんに新しい情報ないか連絡しない? これじゃ真っ暗闇を散歩して終わっちゃうよ」

 

「… そうだな。まぁ、現に罠の可能性が大だ。またあちらから情報が来ているかもしれない」

 

 

 そう言って巧也は、佳苗に連絡を取っていると、シャーンシャーンという、鈴の音が聞こえ始める。ただ、それは永理にしか聞こえていないのか、他2人は辺りに注意はしているが、この音を気にしている様子もない。

 

 

「き、兆さん…」

 

「ん? どったの?」

 

「お、おお音聞こえません?」

 

「音?………… んー、いや別に」

 

「え、えぇ…」

 

 

 シャーンシャーンシャーンシャーン

 音は次第に大きくなりつつある。こちらに近づいてきているようだ。永理は思わず兆にピッタリとくっ付く。少々大袈裟過ぎるその態度と、彼女の怯えた表情から察した兆は、彼女を後ろに隠し、セイブドライバーを予め腰に巻きつける。

 

 

「── あぁ、わかった。切るぞ…… ん? 2人とも何してるんだ…」

 

 

 巧也もその状況を瞬時に把握し、腰にセイブドライバーを巻いて準備する。

 そして永理だけが聞こえていた鈴の音は、最後にシャーンと辺りに響き渡る大きな音を出した後、突然に止まる。

 

 

「止まった…?」

 

「永理。一体どうした」

 

「音が聞こえて……」

 

「音?」

 

 

 突如、兆と巧也の背中にゾッとするような寒気が襲いかかると、それと同時に永理の姿が見当たらなくなってしまった。あの一瞬で何処かへ消えてしまったのだ。

 

 

「永理?… おい、どこだ永理!!? 永理ッ!!!」

 

「兆、構えろ」

 

「え?… 早速お出ましって訳か」

 

 

 前の後ろで、2人を挟み込むようにしてウォンテッド達が現れた。罠ではあったが、これは予想外の展開だ。とりあえず今は、この状況を切り抜ける他はない。

 2人はフィガンナイフを取り出し、起動させると、セイブドライバーに差し込む。

 

 

《ONE》《SIX》

 

《SET》

 

 

 背中合わせとなった2人は、ドライバーのハンマーを起こして掛け声ともに、同時に引き金を引く。

 

 

「「変身ッッッ!!!!!」」

 

《ファーストガンアクション!! トリガー!!リボルヴリボルバー!!》

《シクスガンアクション!! シェリフ!! オートアオート!!》

 

「おぉ、巧也さん。中々かっこいいじゃないっすか… 俺の方がかっこいいけども!!」

 

「言ってろ… やるぞ、兆。全員捕縛する」

 

「よしっ!! 今日はお前らのタッグマッチ日だぁぁぁっっっ!!!!」

 

「どういう意味だそれは!!?」

 

 

 互いに前と後ろに走り出し、それぞれガーツ、タイムウエスタンで一人一人撃ち抜いていく。

 

 

「ハァッ!!!」

 

「あらよっと!!」

 

 

 その場での2人のコンビネーションは、鮮やかなものだった。兆のトリガーとして戦ってきた事で、生み出された天才的センスと長年のキャリアと勘、そして巧也自身の実力が合わさり、ウォンテッドをみるみるうちに倒して行く。

 

 

「キリがないな」

 

「んじゃ、さっさと決めますかね」

《FOUR》

 

「あぁ」

 

 

 トリガーはフォースライフルの姿へと変わり、ガーツとセカンドウエスタンを合体させ、フォースガンナイフを差し込む。シェリフは、タイムウエスタンにシクスガンナイフを差し込み、背中を合わせて構える。

 

 

「全員纏めて散れぇぇぇい!!!」

 

「一応、市民だってことを忘れるな」

 

「もちろん!!!」

 

《ライフルヨンガーツ!! フォースエイプリルシューティング!!》

《ロクジカーン!! シクスターイム!!》

 

 

 フォースウエスタンから放たれた銃弾は、ウォンテッドを貫通し、次々に倒して行き、最後にタイムウエスタンの6発のエネルギー弾が、トドメに相手に当たると周囲を巻き込むように爆発する。

 それから一気に静かになり、怪人となってしまった人たちは元に戻った。

 

 

「… 寝てはいるようだけど、まだ安心できないな。幹部倒さないと、記憶も戻らんっすよ」

 

「そうだな。だが……」

 

「永理はいったいどこへ… って、あの一瞬でどこへ消え失せたんだ?」

 

「あいつにしか聞こえなかった音も不可思議だ。そんな芸当、幹部としか考えられないな」

 

「んー… まぁ、何にもなければいいんだけど…」

 

「あぁ…」

 

「あ、そうだ。そろそろ孝四郎さんが例のブツ作り終わってる頃だな」

 

「なに?」

 

「これから永理救出作戦的なことするなら、シェリフにも攻撃力欲しいと思って。孝四郎さんに作ってもらってたの」

 

 

 トリガーとシェリフは使えないフィガンナイフが存在する。兆の解析によると、シクスガンナイフ等はシェリフのセイブドライバーにしか干渉せず、新たなフィガンナイフを作る度に、どちらかに偏らせないといけないらしい。

 

 

「お前いつそんな事を…」

 

「孝四郎さんに前持って言っておいたんすよ。シクスガンナイフだけじゃこの先やっぱりきつい部分もあると思って」

 

「それはありがたいんだが… いつ取り行く気だ?」

 

「巧也さんが1人で戻って、俺が1人で永理を助けに行く」

 

「なにっ!? そんな危険な事させるわけには──」

 

「まぁまぁまぁ、ウヅキに勝った巧也さんでも、さすがに今回の敵は暗闇の中で、更には幻術のような意味わかんないのも使ってくるしさ。今回の新作は役に立つと思うっすよ」

 

「…… ふっ、なるほど。そういうことか。なら、しばらく任せるぞ」

 

「へーい。あ、倒しても文句言わないでよ」

 

「それならそれでいいんだがな… 作戦開始だ」

 

「もちろん」

 

 

 そして巧也はフィガンナイフを取りに一度戻る事にし、救出は兆が行う事になる。

 一方、永理はある屋敷内の椅子に縛り付けられていた──。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「うぅ……… はっ!!? ここは…」

 

 

 窓から月の光が差し込むだけで、屋敷内に明かりはない。誰かがいるという気配もないが、永理には聞こえる鈴の音が響く。

 

 

「だ、誰かいるんですか!!」

 

 

 その音は永理の目の前に来た時、ピタリと止まった。そして暗闇から、徐々に姿が現れ始める。

 

 

「あなたは… ウォンテッドの幹部ですよね。なにが目的なんですか?」

 

「… お前を捕らえれば、時期にトリガーとシェリフが来る」

 

「そうすれば纏めて始末できる… そういう事ですよね?」

 

「… 当然だ。それ以外にも理由はある」

 

「え…?」

 

「… 奴らがこちらに来ることはすでに把握していた。あの2人がこちらに気を取られている間、私が使役するウォンテッドが奴らの拠点を落とすだろう」

 

「…!!?」

 

「… 何故奴らがまとめてここまで来たかは知らんが、戦力を分散させるとは… 巧也という男、なかなか切れるやつだと思ったが所詮は人か」

 

 

 不気味に笑う幹部、ナガツキだったが、急に何かを察したように、また暗闇の中へと消えて行く。

 それと同時に、帽子を被った変な格好をしている男が屋敷の扉が開いた。




以上です。

もう微妙な終わらせ方ですね。
ナガツキの野郎なんて事を……
あれ?巧也は今帰りましたね〜不思議ですねぇ〜(すっとぼけ

次回、第9劇「早朝」
それではまたお会いしましょう。感想等お待ちしております。


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第9劇「早朝」

前回、ウォンテッド幹部ナガツキに囚われてしまった永理。
ナガツキはエリアAに手駒のウォンテッド達を向かわせたらしいが…?

それではどうぞご覧ください。


 屋敷の扉が音を立てて開かれる。巧也と別れてすぐに、兆が急いでこの屋敷に向かったのだ。ここへは走り回る必要もなく、ちょっと歩いたらそれっぽいのがあったので、覗いてみると明らかに怪しいので入った。

 

 

「ピンポーン。勝手に入りまーす」

 

 

 中へ入ると同時に扉は閉まり、僅かに差し込んだ光を遮断し、館内をまた暗くさせる。

 

 

「おーい誰かいるー!? 永理は腹でも減ってるかー!!? 幹部いるなら出てこいやー!!」

 

 

 しかし返事はない。当然だが、相手は幹部で「はい私はここにいます。私はここです。さぁお上がりなさい」なんて言うはずもないだろう。とりあえず勝手にお邪魔してさっさと永理を救出しよう。

 

 

「さて… 何にも見えねーな。こんな暗い中で本読んだら目が悪くなりそうだぜ。それにお化けが出そうだ… まぁ、怖くないけどねッッッ!!!」

 

 

 兆の独り言とは思えない大きな声が屋敷内に響き渡る。

 壁を伝いながら、正面の長い廊下を歩いて奥へ進む。通路にはまるで明かりがない。扉もない。ただひたすらに果てがない廊下を歩き続けている。

 

 

「── あれ?」

 

 

 先程、果てがない廊下と表現したが、これを見る限り大袈裟ではないようだ。感覚がおかしくなっているかもしれないが、何かがおかしい。

 一旦、向きを変えてもと来た道を戻ることにする。

 

 

「こういう訳わからなくなった時は、元の場所に戻る。これが迷子にならない為の秘訣だ」

 

 

 ポジティブなことを言いながら、幾度となく歩き続けている気がする。次第にネガティブな言葉を吐くようになってきた。まるで元の場所へと帰れないのだ。

 大体察しは付くが、永理が受けた例の音と同じように、ナガツキの策なのかもしれない。奴は幻術のようなものを使えるようだ。

 

 

「… まんまと罠にハマった感じか」

 

 

 すると、遠くから鈴の音が鳴り始める。

 シャーンシャーンシャーン

 けれど遠いのかどうかも、この空間ではわからない。ただその音は段々と近くなってきているようだ。

 

 

「来たな。ナガツキ」

 

 

 そして音が収まったかと思うと、暗闇の中よりナガツキが現れた。手にはキラーズガンとそれにデリートガンナイフが差し込まれている。

 

 

「おいおい、もうやる気かよ」

 

「…… 考え無しに敵陣に乗り込むとは… まだ私の力がどう言ったものかわからないはずだ」

 

「わかるよ、俺。幻術みたいな不思議パワーだけど、結局それ壊せば全部ちゃんちゃんで終わりだからな!」

 

「… これがトリガーか?… どちらにせよ、この館に入った以上、生きては帰さんがな」

《ワン・キル》《ナガツキ》

 

「いや、帰るね。またマスターの所でミルクを嗜まなきゃいけないのよ。あと、こんな真っ暗な所じゃ痴漢に遭いそうで困るしな。さっさとお前倒して、記憶戻して帰るぜ…… 変身ッ!!!」

《ONE》

 

 

 2人は引き金を引くと互いの銃弾が飛び交う。

 

 

《シ・ザイ・キリング・ウォンテッド!!イーディアー!!》

《ファーストガンアクション!! トリガー!! リボルヴリボルバー!!》

 

「……ッ!!!」

 

「よっし!! 今日はお前の朝日が昇る日だッ!!!」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 ウォンテッドの大群がエリアAへと一斉に押し寄せていた。人々は逃げ惑い、悲鳴が辺りに響き渡っている。

 

 

「巧也!? 今どこにいるの!?」

 

『もう少し待ってくれ!! 今向かってる!!』

 

 

 RIVERS内は急遽メンバー達が出動している。ただ、この数では到底対処できるはずがないし、悪く言えば気休めになるかどうか。それほど数は多いのだ。

 佳苗は当然ながら焦っていた。だが、彼女がすぐにこの事態に気づき、巧也に指示を煽った事でRIVERSが動けていた。

 

 

「どうしよう。このままじゃ…」

 

 

 外にはウォンテッドがずらりと並んでいる。しかし何故か隊列を崩すことがない為、被害はあまりない。

 佳苗は眉をひそめる。これだけの数を集め、エリアAに乗り込んだのはいい。ドローンで確認をしていると、進行を邪魔する人などには容赦ないのは勿論だが、それ以外のものには目もくれずにただ真っ直ぐどこかへ向かっている。

 

 

「目の前のものは破壊しているけど、それ以外には全く見向きもしない… 一体どこへ─── ッ!! まさか!!」

 

 

 佳苗はパソコンでウォンテッド達の進行ルートを見てみると、明らかにRIVERSへと向かって来ているのだ。

 

 

「なるほど… やってくれるじゃない」

 

 

 すると、ドローンのカメラはウォンテッドが次々に倒されていく様を捉えた。それを見た佳苗は胸を撫で下ろす。

 

 

「遅くなった!!」

 

『…… はぁ。よかったぁぁぁ…』

 

 

 電話越しに安堵の息を溢す彼女に、シェリフへと変身している巧也は少し笑い、電話を切って戦闘に集中する。

 

 

「しかし本当に数が多いな… ハッ!!!」

 

 

 シェリフは休む暇なく戦い続け、先頭の集団はなんとか倒したものの、更にその後ろにそのまた後ろにと、エリアEから全員来たんじゃないかという多さ。まるで終わる気配がない。

 

 

「ハァ…!!」

 

 

 この量を相手にし、いくら変身しているからと言って、体力が無限なわけではない。次第に動きが鈍くなり、本来当たるはずもない攻撃にも無様にくらってしまう。

 

 

「ぐぅ… 体力が底を尽きる方が早いな…」

 

 

 そんなシェリフが抑えきれないウォンテッド達が進行を続ける。このままでは警視庁が危険であるが、この量を捌く術がない。

 

 

「どうすれば……」

 

 

 途方に暮れるシェリフに電話が掛かり、咄嗟に出てみると孝四郎からであった。

 

 

「孝四郎か? 急ぎで用件を頼む」

 

『今すぐRIVERSに戻って来てください。完成しました』

 

「なに……… こちらを優先してたが、そうだったな。その為に戻って来たんだったな」

 

 

 RIVERSに急いで戻ると、孝四郎が新作のフィガンナイフを持って待っていた。それを受け取り、外へと飛び出す。

 

 

「こっちは俺に任せろ。必ず幹部を倒せ、兆──」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「─── うがぁぁあぁぁぁぁあぁあぁあぁっっっ!!!!!」

 

 

 その頃、兆の怒りは爆発し、腹から出した叫び声が響く。ナガツキによる幻術のせいでまともに攻撃が当てられておらず、更には相手が見えないと言う仕様。

 

 

「逃げんじゃねーよ!! 男ならそんなもん使わないでガッと来い。ガーッと!!!」

 

「… 先ほどはこの力を称賛していたが?」

 

「かっこいいと思ったよ!? すげーと思ったよ!? だけど何回もやられると正直イライラしてくるよね!!」

 

「… 知能が低い輩と話すことはない」

 

「言ってくれるじゃないの…!! 俺もう許さへんよ!!」

 

 

 ここに至るまでに何度も繰り返した手ではあるが、デタラメに銃で周りを撃ちまくる。もちろん当たるはずもなく、背後から銃で撃たれる始末。

 

 

「あ、いったぁ!!? 背中やめろ!!」

 

 

 後ろに警戒はしているものの、やはり見えない敵は厄介であり、分かっていても攻撃をくらってしまう。

 廊下を駆け回り、壁を撃ち、そんなことを繰り返しているうちにトリガーの体力も底を尽きかける。

 

 

「あー… 横っ腹痛い……ん?」

 

 

 すると、目の前にただならぬ気配を感じる。何かがいるのは察しはついたが、それがなんなのかは考えたくなかった。

 何故なら、トリガーよりも遥かに大きくなっているナガツキだったからだ。その大きさは足の指でトリガーを軽く超える。

 

 

「ナガツキさーん!! どーしてそんなに大きくなっちゃったんですかー!?」

 

「………」

 

「あぁ… もういやん」

 

 

 その大きな足がトリガーの頭上へと移動し、一気に下される。走って逃げようとしたが、間に合わず踏み潰されそうになるが、なんとか渾身の力で受け止める。

 

 

「これは幻術だっ!!! 全く重さを感じない!! あーなんて軽いんだろうなぁぁぁぁぁ重いぃぃぃぃっっ!!!!」

 

 

 幻術である事は確かなのだが、完全にその術中にハマってしまっている。見た目通りの重さが直にのしかかっているように感じられてしまっているのだ。

 なんとか受け止めていたが、とうとう膝をついてしまい、腕も限界に近づいていく。

 

 

「ぐぅぅぅぅぉおぉおぉぉぉぉぉ……!!!」

 

 

 その時、急に重さが軽くなり、すぐさま押し上げてバックステップで相手から遠退く。そしてバランスを崩して倒れるナガツキを、指差して笑いながらある事に気付いた。真っ暗闇だった部屋が明るくなっている。

 

 

「これって──」

 

「きーざーしーさーーーん!!!」

 

「ん? おぉ、永理!! 無事だったか!?」

 

「はい、大丈夫です!!」

 

 

 辺りを見回していると天井近くの窓から顔を出した永理がいた。この明かりは彼女が点けたのだとすぐに分かった。

 

 

「なんで明かりでこいつの術を破れると思ったんだ!?」

 

「単純に外も中も明かりがないのなら、光をプレゼントしてみたらどうなるかなと思いやってみました!!」

 

「そうか、大成功だったぜ!! ありがとよ!!… ていうか、おまえどうやって逃げたんだ!!?」

 

「それは私が天才ですから!!」

 

「なんだそりゃ!!? まぁいいや、さっさと決めるぜ!!」

 

「決めてください!!」

 

 

 術が破れたナガツキはヨロヨロと立ち上がり、見た目から怒りが伝わってくる。それもそのはず、捕まえた女は逃げて、更にその女には呆気なく弱点が見つかり、一気に形勢逆転されたのだから。

 

 

「… どうやら、私も堪忍袋が限界らしい」

 

「なら来いよ。こっからは俺の技術を味合わせてやるよ」

 

「… トリガー…!!」

 

「あらよいしょっ!!」

《THREE》

>>>>>>>>>>>>>>>

《SEVEN》

「捕縛する…!!」

 

 

 別々の場所で互いにフィガンナイフをセイブドライバーを差し替える。ハンマーを起こして引き金を引くと、シェリフの近くに巨大なアサルトライフルが現れ、バラバラに飛んだアーマーを連続で撃ち抜いていき装着される。

 

 

《セブンスガンアクション!! シェリフ!! バーストアサルト!!》

>>>>>>>>>>>>>>>

《サードガンアクション!! トリガー!! ショットショットショット!!》

 

 

 ナガツキはフォームチェンジ完了と共に銃弾を放つが、トリガーは華麗にかわしながら、ガーツウエスタンとサードポンプを合体させてサードウエスタンにして近づいて行く。

 

 

「うおぉぉぉぉぉッッッ!!!」

 

「当たらない…!!」

 

「俺は当たる!!」

 

「なっ…!!!」

 

 

 トリガーは既にナガツキの懐に潜り込んでおり、腹部にはサードウエスタンの銃口が向けられていた。

 例え幻術を使われることがあったとしても、この距離であるならば流れる事はできない。

 

 

「兆さんひっさーーつ!!!」

 

「必殺ッッッ!!!」

《スリーガーツ!! マーチシューティング!!》

 

 

 近距離で放たれた本来は拡散するサードのエネルギーは、一点に集中して、爆発的な威力を生み出す。そのエネルギーと共にナガツキは耐えられず吹き飛ばされ、叫び声を上げながら爆発し、キラーズガンとデリートガンナイフは砕け散る。

 

 

「今日の俺も───!!」

 

「勝利の日ッ!!!」

 

「あぁん俺のセリフ!!?」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「ハァァァァッッッ!!!!!」

 

 

 シェリフの専用武器タイムウエスタンを変形させると、まるでアサルトライフルような形となり基、アサルトウエスタンの連射力はかなりの物。みるみるうちに大群を蹴散らして行く。

 

 

「さすが孝四郎だ。これほどの物を作れるとはな…… ありがたい!!」

 

 

 セイブドライバーからセブンスガンナイフを抜いて、アサルトウエスタンに差し込み、ウォンテッドの群れに向かって走り出す。

 

 

「ハァァァァァァ…… ハァッッッ!!!!!」

《シチジカーン!! セブンスターイム!! アサルト!!》

 

 

 ただデタラメに放つのではなく、一人一人を確実に撃ち抜き、みるみるうちに全てのウォンテッドを倒す。

 やがて辺りが静まり返ると、銃を肩に乗せ、空を仰ぎながらボソリと呟く。

 

 

「── 任務完了だ」

 

『そうね』

 

「うおぉっ!?… なんだ佳苗か」

 

 

 ドローンを巧みに操り、煽るようにしてシェリフの周りをぐるぐると回る。

 

 

「なんだ」

 

『それ決め台詞?』

 

「………」

 

『どうなのー?』

 

「こ、孝四郎ッ!!! 佳苗を黙らせて連れてけ!!! 俺は兆に連絡を取る!!!」

 

『ふふっ』

『やれやれ…』

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 あの後ナガツキを倒した瞬間、外に眩しい光が降り注いだ。ぶっちゃけナガツキ自体そこまで強くなかったけど、幻術は結局幹部なのか本人の力なのか全くわかってない。それに当の本人も身元不明。本当になんなんだろうと思う。ちょっと怖いよね。あ、そういう怖いじゃないからね? 決して幻術が怖いとかじゃないんだからね!!?

 ん? なんだ? 永理がうるせーぞ?

 

 

「もしもし兆さん兆さん」

 

「はいはいなんでしょう永理さん永理さん」

 

「課長が来る前に話してたあれって…」

 

「あーあれ…」

 

 

 巧也から連絡が来る前、ナガツキを捕らえた後に永理とお互いに情報交換していた。何があったのかやはり気になるらしい。後半ただの世間話だ。

 

 

「ウォンテッドのボスが懐しい感じがしたって言ってましたけど、何か記憶と関係があるんですかね?」

 

「いやいやね。懐しいって言ったけど、冗談じゃねーよ… だってもしかしたらさ。俺の住んでた村的なのがあって、そこで俺が最後の生き残り── 的な話だったら最悪じゃね?」

 

「確かにそうです。ですけど、気のせいです」

 

「だよな」

 

「兆さんが最後の生き残りに見えないからその説はあり得ません」

 

「え、そっちのそっちッ!!?」

 

 

 そんな2人を見て笑う3人。ただ、孝四郎は手を止めずに、次のフィガンナイフの製作に取り掛かっている。

 

 

「お、孝四郎さん新作?」

 

「あぁ、兆くん。まぁね。戦えない代わりにこれくらいやらなきゃ… それにこれを教えて貰わなきゃ、僕はいつまで経っても役に立ってなかったからさ」

 

「え?」

 

「ごめんごめん。暗くしたかな?」

 

「… あ、いや… 孝四郎さんが役に立ってなかったって、それは冗談でしょ」

 

「本当さ。現に僕の作った物は奴らには通らなかっただろ?」

 

「……… はぁ、孝四郎さん」

 

「なんだい?」

 

「あんたのお陰で巧也さんは助かったし、あんたのお陰で今までウォンテッドと戦ってこれたんじゃないか?」

 

「え?」

 

「… それに俺しか作れないはずのフィガンナイフも簡単に作っちゃうしさ。後さ。効かないなんて冗談やめてくれよホント。あのタイムウエスタンの調整だって孝四郎さんがやった事知ってるぜ? そんな芸当普通できると思うかい?」

 

「兆くん…… ごめんよ。さて、じゃあ気を取り直してフィガンナイフ作るぞ!!」

 

「ははっ!! それでこそだ!!……… ところで、それ俺の?」

 

「シェリフ用だよ」

 

「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」

 

 

── この明るいRIVERS内から一変し、別エリアでは1人また1人と願いを叶えて死ぬという恐ろしい事態が起きている。

 それを知るのはまた次のお話。




1日遅れました。申し訳ございません。
以降気をつけます。

さて次回、第10劇「星に願い」

次回もよろしくお願いします!!


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第10劇「星に願い」

お陰様で10話目です。
フィガンナイフはこれでトリガーとシェリフ合わせて6本。
後何本あるんでしょうかね。

前回、ナガツキを倒して幹部は9人です。まだまだお話が長いよー。今回もまた幹部倒しに行きますよぉ〜行く行く。

それではどうぞご覧下さい。


「おい! それ以上やったらお尻ぺんぺんじゃ済まさねーかんな!!」

 

「僕の邪魔をするな!! トリガー!!」

 

 

静かな街に新たなウォンテッドが現れ、兆たちは現場へと急行した。しかし、すでに記憶を失った被害者たちが数名いる。

 

 

「兆!! こっちの救助は終わったぞ!!」

 

「了解、巧也さん!! さて、大人しくしてもらう!!」

 

 

ウォンテッドが放つ弾丸を避けながら、セイブドライバーの引き金を引き、3つ数えながら近づいて行く。

 

 

「1」

 

「くそっ!! なんで当たんないんだよ!!?」

 

「2」

 

「トリガァァァァァァッッッ!!!」

 

「── 3」

《リボルバー!! ファイア!!》

 

 

相手の渾身の一撃をかわし、カウンターをする形でトリガーの蹴りが決まる。その衝撃により、吹き飛ばされたウォンテッドは爆発し、それと同時に人々の記憶が持ち主の元へと帰って行った。

 

 

「今日の俺も快勝だぜ!!…… んん?」

 

 

トリガーは目の前に起きた事が信じられず首を傾げる。わざとらしく仮面越しに頬を叩いてみるが、ただ痛いだけだった。

目の前にいたはずのウォンテッドが、あの一瞬で消えてしまったのだ。

 

 

「え、お、おお俺まさか、まさまさか… やっちゃった……?」

 

「どうした、兆?」

 

「巧也さん!! オラやってねぇだよ。オラは無実だぁよ!!? いやちょっと強く蹴っちゃったかなぁ… なんて思ったけど、やっぱオラちゃうだぁよッッッ!!!?」

 

「どうしたどうした… 何があった」

 

 

今のことを話すとさすがに信じてはくれたが、あまりに不可思議な事だったので、佳苗に調べてもらう為に一旦RIVERSへと戻る。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「── んー? やっぱりそれはおかしいわよ…」

 

「だろうな。俺もこんな事は初めてのケースだ」

 

「他に何か手掛かりになるようなのは?」

 

「いや… 一瞬の事だったから、その時の状況はよくわからないらしい」

 

「そう…」

 

 

消えたウォンテッドについて調査を行なってはいるが、まるで手がかりも何もない。ただ記憶は戻ってはいるので、倒してはいるはずなのだが、そうなるとやはり兆がやってしまったという事になる。

 

 

「まぁ、あいつに限ってそんな失態があるのかどうかだが…」

 

「偶々運が悪かったとか?」

 

「そんな事がありえるのか?」

 

「ないわね」

 

「ないな… さて、困ったな」

 

「…… あ、そうそう。幸四郎がさっきあなたを探してたわ」

 

「なに?」

 

「もう研究室に戻ったと思うけど… 新作だってよ」

 

「そうか、わかった…… そういえばあの2人はどこだ?」

 

「例のバーに行ってるらしいわよ〜」

 

「なにっ!? 俺の許可はどうした!?」

 

「兆くんは『ホームシックだから』永理ちゃんは『お腹減った』だそうよ」

 

「あの自由人ども……!!! よりにもよって現場に居合わせていた本人がいなくなってどうする!!?」

 

「まぁまぁ、それよりほら、あなたも新作もらいに行きなさいよ」

 

「あぁ… 帰って来たら説教だな」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

やぁ、俺は兆。トリガーとしてこの世に蔓延る悪をばったばったと華麗になぎ倒してきた。そんな俺は今、BAR TRIGGERにてミルクを嗜んでいる。この香りを嗅いだ途端に、俺の心はこいつに撃ち抜かれてしまったぜ。さて、この可愛いミルクちゃんを飲み干してやらないとな。

 

 

「それじゃあ、いただくぜ」

 

「毎回あの語りをやらないといけないんですか?」

 

「そうだよ」

 

 

すると、二人の目の前にミルクが入ったジョッキが2つ流れてくる。兆は一杯目を飲み終えると、流れてきたそれを一気に飲み干す。

 

 

「いい飲みっぷりだ。嬢ちゃんあんたも飲みな」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「マスターまた兆にミルクをくれてやれ」

 

 

ガンホーレがまたタダでミルクを奢ってくれた。さすが優しいおじさんだと兆は思ったわけだが、やはり量が凄い。

 

 

「団長また奢ってやるんですか?」

 

「ふんっ。タダでなんて言ってないだろう?」

 

「まさか団長ミルクに何かを…!?」

 

「そのまさかだ…」

 

 

それから兆はミルクを飲んだ途端に苦しみ出す。ガンホーレに何か仕込まれたようだった。

 

 

「うぅ… ぐっ」

 

「き、兆さん!!?」

 

 

ガンホーレは高らかに笑うと、兆の元へ行き、更に茶色の粉を入れる。ミルクの色がだんだん茶色に変わって行く。

 

 

「がはっはっはっはっはっはっ!!! 見たか!! いつもお前にやれてばかりだからコーヒー豆を粉末にしてぶち込んでおいた!! 更に!! これはかなりの苦さで有名な物を使用した!! 苦しむがいいッッッ!!!!」

 

「だ、団長!!!?」

 

 

だが、兆はそれを飲み干した。そして手を銃の形にして決めポーズまで取って見せた。なんで精神だ!! なんて我慢強さなんだ!!

 

 

「また…… 俺の負けなのか……」

 

「団長!? 最近あなたの基準が俺にはわからないですよ!?」

 

 

イッシュウがガンホーレの肩を掴んで大きく揺さぶり、兆はグロッキーになってカウンターに倒れる。そんなマスターはその光景を楽しんでいるようだ。

永理が笑っているとマスターが彼女に話しかけてきた。

 

 

「永理さん… だったかな」

 

「あ、はい。そうです」

 

「兆は相変わらずかい?」

 

「そうですね… 相変わらずです」

 

「そうか… そういえば君は兆と仲がいいようだね」

 

「そうですかね?」

 

「傍から見ればそう見えるよ… それでいい」

 

「ん?」

 

「まぁ、気にしないでくれ。これからも兆をよろしく頼むよ」

 

「もちろんですよ。ただ私のお菓子を食べたらただじゃ起きませんがね!…… あれ? 電話──」

 

 

気がついた兆は首を鳴らしながら立ち上がると、永理が手をぶんぶん振ってバーの出入り口の扉の前に立っている。なにやら急ぎのようだ。

 

 

「どったの?」

 

「召集がかかりました!! 行きましょう!!」

 

「マジかよ。ウォンテッドか!?」

 

「説教付きで!!」

 

「やだっ!!!」

 

 

2人は急いでRIVERSへと走って帰る姿を、グラスを洗いながらマスターは見送る。

かなり走って来たので、息を荒くしながらRIVERSを扉を開けた途端に説教が始まった。巧也の説教は早めに終わったが、また後でという事だ。

 

 

「── さて、早速悪いが任務だ」

 

「今度はどこへ行くの?」

 

「今回はここだ。皆も話は聞いているだろうが、最近になって人が消える事件が後を経たない。なんでも… 被害者に共通するのは、その誰もが願いを叶えて貰っていたという話だ」

 

「あー例の事件かー…… は? いや、え? 願いを叶えるぅ?」

 

「ある消えた息子の両親が話してくれた事だ。その息子が嘘のように成績が伸びたり、運動神経もかなり良くなって、まるで人が変わったかのようになったらしい」

 

「その子の努力とかじゃないんすか?」

 

「1日だ」

 

「は…?」

 

「たった1日でそれを手に入れたらしい。両親が気づいたのは1週間経った辺りだ。息子から話を聞くと、願いを必ず叶えてくれる神様のような人がいるということを言っていたそうだ。この子以外にも、同じような事を言って消えてしまった方々がいる」

 

「なるほど… ん? ならつまり、この前のウォンテッドももしかしたら…」

 

「あり得なくはないな。可能性としては充分にあり得る」

 

「あぁぁぁぁぁ… よかった」

 

「まだわからないがな。そういう事だ。これより調査に向かう。行くぞ、兆、永理。RIVERS出動だ」

 

「「了解」」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

例のナガツキを倒してから1週間くらい経ち、一旦エリアAの守備に回っていた頃、このエリア内で不可思議な事件が多発しているという。先程も巧也が言っていた被害者の両親の息子もが1週間くらい前、つまりナガツキ戦の時から事件は始まっていたと思われる。

 

 

「巧也さんまた別行動かよ… 俺1人で全然余裕なんですがね」

 

「兆さん。あなたは一応重要指名手配犯で、それに正体を知っているRIVERSメンバーはあそこにいる私含め4人だけです。更にいえば、私は兆さんの担当になったんですから一緒にいるのは当たり前です」

 

「なるほどねー…… いや、待てよ。待ってくれ。担当!? 俺の!? おい。そんな話俺は聞いてねーぞ。いつ決まった!!?」

 

「この前です」

 

「俺聞いてない!!」

 

「そうですよ。だって兆さんがバーに行ってる間の話ですから」

 

「… 後で文句言ってやる」

 

「そんなに不服ですか!!?」

 

「不満があるわけじゃないけど、やっぱり不満です」

 

「むぅっ!!」

 

 

永理がそっぽ向いてしまったが、とりあえず怪しそうな所を勘で探して行くことにした。

願いを叶える。もし自分の思う願い事が本当に叶うのだとしたら、素直に受け入れるだろうか。目の前で奇跡を起こされたのなら信じるかもしれないが、普通は信じる事なんできない。

だが、こんな時代だからこそすがってしまうのかもしれない。少しの希望であっても。

 

 

「兆さん!! そ、空見てください!!」

 

「空ぁ? 急になんだよ。バードウォッチングか?」

 

「いいから、ほら!!」

 

「いでででっっ!!!? 首やめ… な、なんだこれっ!?」

 

 

人間が空を飛んでいる。まるで鳥のように手をひらひらさせて、大空を自由自在に舞っているではないか。

そして兆は決めた。奴を捕まえて事情を聞くと。

 

 

「よし。あいつ捕まえんぞ」

 

「兆さんのフィガンナイフじゃ、どれも飛んでる人には対応してませんよ?」

 

「撃ち落とす」

 

「相手ただの人間なんですよ!?」

 

「撃ち落とす」(2回目)

 

「兆さん聞いてます!?」

 

「撃ち落とす」(揺るがぬ意志)

 

「あほーあほー!!」

 

 

永理の静止を無視し、兆の放った銃弾は彼ではなくビルの角にぶつかり粉塵を撒き散らすと、風の勢いで飛ぶ人間の目に入る。視力を一時失った人はたまらず羽ばたかせるのをやめて、真っ逆さまに落ちて行く。

 

 

「変身ッ!!!」

 

 

その瞬間にファーストリボルヴとなり、その人を救出してから変身を解く。飛んでいたのは男性のようで、目を押さえて痛がっている。

 

 

「はい。終わり」

 

「…(銃の腕前も見事だけど、風の流れまで読んでいるなんて…)」

 

「その前に目洗う?」

 

「そうしましょう」

 

 

─── 公園に行き男性に目を洗って貰った後、事情を聞いた。男性は谷岡といい、前日から、ある男の元で願いを聞いてもらっていたという。その日から嘘のような事が起き始めたらしい。

 

 

「私は会社へいつも歩いて行ってたんだけど、歩くのが面倒になってね。食べるようお願いしたら見事にこれだよ」

 

「怪しいとかは思わなかったんですか?」

 

「そりゃ思ったさ。ただ、私も会社での仕事が厳しくなって来てね。助けて欲しかった。このまま終わるんじゃないかと思ってたら、その日の帰り道のことだ。下がる思いで、彼にあってからたった1日で私の人生は変わった」

 

「それが願いを叶える男…」

 

「まぁその代わりに2つ規則があってね。1つは他言無用。もう1つは願いは7つまで」

 

「他言無用… それ私たちに話しても大丈夫ですか?」

 

「本当はダメだよ。といっても、ネットではかなりの噂になってるし、それに消えたって言うのは他人に話しただけな人に限らないし。別に大丈夫でしょ」

 

「なるほど… 7つまで願いを叶えると、どうなるか聞きたましたか?」

 

「いや特になにも聞いてないよ」

 

「そうですか… 最後にその願いを叶える男がどこにいるかわかりますか?」

 

「警察もやっぱり夢を見たいのかい? それならこの名刺をあげるから行くといいよ」

 

「本当ですか!!ありがとうございます!!」

 

「あぁ、それじゃ私は失礼するよ」

 

「ご協力ありがとうございます。では、行きましょう兆さん!!」

 

 

2人は谷岡に礼を言ってから、名刺に書かれた住所の元へと向かう。

その一瞬、公園から離れようとする彼の姿はまるで消えたようになくなっていた。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「ここが例の」

 

「願男のいる所ですね」

 

「願男ってなんだよ」

 

「名前わからないので仮名です」

 

「えぇ…」

 

 

ビルの二階に上がり、奥の方に古ぼけた扉が一つある。このフロア内のどれよりも、そこだけはまるで雰囲気が違う。如何にもという感じだ。

 

 

「い、行きますよ…」

 

「お、おぉ」

 

 

扉を開けると中は非常に広い。そこだけ別空間のようにビルの大きさと合っていない。この広さであるならビルはかなり歪な形になっているだろう。そんな薄暗い室内のど真ん中に机と2つ椅子があり、机の上に水晶が置かれている。奥の方の椅子に人がポツリと座っている。

 

 

「あんたが願男だな」

 

「…… 知っていたよ」

 

「なに…?」

 

「ここに来ることは初めから…ね?」

 

「なるほど。また罠に引っ掛かった訳だ。ま、そっちから仕掛けてくれる方が何かと都合がいいけど」

 

「とりあえず座りなよ。ほら」

 

 

罠であるのは確かだが、兆と永理は顔を見合わせ、2人は座ることにする。それから男は水晶に手を翳すと、急に不気味に笑い始める。

 

 

「兆。君はトリガーらしいね」

 

「あぁ、そうだありがとう。やっぱりわかっちゃう?」

 

「ふふふっ、もちろんさ。オーラが違うからね」

 

「でへへへへへへへへへへっ」

 

 

ひどい顔になる兆の横っ腹を、永理は膝で突くとハッと我に帰り、何故かキリッとした表情になる。

 

 

「そして永理。君は…… どうやら、過去の記憶がないらしいね」

 

「え?」

 

 

兆は俺じゃないの?と言うが、それを無視し、永理に質問が始まる。

 

 

「君は今、過去の自分がどんな人物だったか言えるかい?」

 

「私は高校を卒業してからそのまま警察学校へ…」

 

「もっと前さ。子供の頃を… ほら」

 

「私は… えっと…」

 

「何故、思い出せないのかな?」

 

「ち、小さい頃だったから思い出せないだけです」

 

「高校生の前でも?」

 

「それは……… あれ? なんで…?」

 

「君の記憶が何故ないのかな? おかしいね?」

 

「私は… 一体……」

 

 

その瞬間、兆は永理を担いで後退する。それから永理の名を叫び続け、彼女も我に帰るとすぐさま立ち上がる。

 

 

「永理の記憶がなんだ知らんけど、それ以上口開くなよ。だが、これではっきりしたぜ。お前、幹部だろ」

 

「…… なんの話かな?」

 

「とぼけんなよ。よくよく考えりゃ願いを叶えるだとか、相手に夢みせるだとかそんな芸当できるの幹部くらいだろうが」

 

「── はぁ… 全く、大人しくしてれば怪我しなくて済んだのになぁー」

《ワン・キル》《フミヅキ》

 

「元から逃すつもりないくせに」

《THREE》

 

「俺はフミヅキ。さぁ、殺し合おうよ」

 

「変身ッ!!!」

 

《シ・ザイ・キリング・ウォンテッド!!イーディアー!!》

《サードガンアクション!! トリガー!! ショットショットショット!!》

 

 

トリガーは扉を殴り壊そうとしたが、まるでびくともしない。扉を使えないのなら壁を壊そうと構えるが、幹部であるフミヅキはそれを静止する。

 

 

「やめた方がいいよ。腕が痛くなるだけだから。ここは俺が作った空間だよ。お前のの好きにできる訳ないじゃん」

 

「完全にヤバイ状態ってわけね」

 

「そういうこと」

 

「なら、お前を倒せばいいってことだよな!! 今日がお前の願い終了日だ!!」

 

「その脳筋思考好きじゃないし嫌いでもないよ」

 

 

サードのパンチ力は破壊力が高いはすだ。しかし、トリガーの放った攻撃はフミヅキをかすめる。いや、当たってすらいない。フミヅキの体を通り抜けると同時に、トリガーは壁に蹴り飛ばされる。

 

 

「ぐわっ…!!?」

 

「兆さん!!」

 

 

フミヅキは永理に向かって歩み寄ってくるが、彼女は銃で的確に急所を狙うが透き通ってまるで当たらない。弾を込め、次に銃を構えると、そこにあったはずの銃がなくなっていた。

 

 

「う、うそでしょ!!?」

 

「あれ? どうしたの? 早く撃ちなよ」

 

「くっ…」

 

 

歩み寄るフミヅキの背中からトリガーが蹴りを入れるが、これも見事にすり抜けてしまう。何度殴ろうと、何度蹴ろうと自分の攻撃は当たらない。

 

 

「一体どうなってやがる…!!」

 

「残念だったね。お前の負けだよ」

 

「なんだと!!!」

 

 

焦るトリガーをフミヅキは掴んでは投げて、殴る蹴るとトリガーに一切の反撃も与えず攻撃をし続ける。

本来なら焦るはずだが、永理はこの状況下で冷静を取り戻しつつあった。辺りを見渡し、フミヅキを観察する。少し前に出ようとすると、カラカラと何かが足にぶつかる。見ると自分の銃が落ちていた。先ほど消えたはずだと思ってたが、床に転がっていただけのようだ。

 

 

「……(消えたはずの銃が何故床に…? それに兆さんが攻撃されてる時、無意識だと思うけど掴む事ができている)…もしかして!!」

 

 

永理は咄嗟に銃を拾うと、トリガーに向かって銃弾を放つ。見事に当たると、反射的に兆の拳がフミヅキの顔面を殴る。先ほどまで当たらなかったはずだったが遂に捉えた。

 

 

「あ、あれ? つーか、永理!! 痛いやん!!」

 

「兆さん!! ここは一旦引きますよ!!」

 

「え? あ、うん… どうやって」

 

「扉に向かって思いっきりパンチしてください!!」

 

「あ? まぁいいや。信じるぜ!!」

《ショット!! ファイア!!》

 

 

びくともしなかった扉はなんと壊れてしまった。訳が分からないトリガーの手を掴み逃げると、不思議と体が軽くなったような気がした。

 

 

「くそっ!! 待てッッッ!!!」

 

「待てっつって誰が待つかよ!! あばよ!!」

 

 

永理を抱えてビルから飛び降りると、そのままRIVERSへと全力で逃げる。

 

 

「永理。お前よくあいつのトリックがわかったな」

 

「でも今のままでは勝てません。何か対策が有ればいいんですが…」

 

「さて、困ったな。とりあえず永理は巧也さんに連絡してくれ。俺は頑張って走るから」

 

「わかりました。お願いします」

 

 

その姿を見ながら、フミヅキは追わずに壊された部分を瞬時に直す。返信を解いてから椅子に座ると、突然目の前に大きな影が現れる。

 

 

「…… ボス。今は話したい気分じゃないんだけど」

 

「警告だ」

 

「は?」

 

「あの女の記憶を辿るな」

 

「ちょっと聞いただけじゃん。何か起きるわけでもない… それにボスさ。前から思ってたけど、あの女がなんだっていうんだよ」

 

「お前が知る必要はない」

 

「いい加減にしてくれない? 俺もそろそろキレてもい…… アガッッ…!!!?」

 

 

フミヅキが作り出した空間は、ただのオフィスになり、彼はあまりの苦しさに床に顔を伏せてしまう。

 

 

「まだその時ではない。時が経つのを待て」

 

「りょ… かい…」

 

 

ボスが消えた途端になにもなかったかのように、全てが元通りになっていた。フミヅキはこの恐怖という感情を久しぶりに思い出した。初めてボスに会った時と同じだった。

 

 

「忘れてた… 本当に逆らったらいけない人物を……ゴホゴホッ!!」

 

 

それから次の日、RIVERSでは、巧也による対フミヅキの作戦会議が始まるのであった。




工事完了です…

新たな敵フミヅキ。ちょっと能力怖いんよ〜
兆たちは一体どう戦うのか!!?

さて次回、第11劇「長距離射撃」

タイトルでバレてるとか言わない。では次回もよろしくお願いします…


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第11劇「長距離射撃」

皆さんこんにちは。私です。

前回、何やらすごい能力持ちのやつが出てきましたね。なんとか逃げたが、果たして兆たちはどうするつもりなのか…?

それではどうぞご覧ください


 兆と永理はフミヅキからなんとか逃げてRIVERSへと戻り、メンバーに詳しい事情を話した。話を聞いた途端に、巧也の怒号が室内に響き渡る。

 

 

「するとフミヅキは記憶だけではなく、用済みになった人々は消滅させるだと? ふざけるな!」

 

「まぁまぁ巧也さん落ち着いて… って、まぁ無理な話か」

 

「これが落ち着いてられるか。兆、お前だってわかるはずだ」

 

「誰しもが願い事をするし、願いが叶える為にはそれ相応の努力や時間をかけなきゃならない。それがただ願うだけで叶う方法があるとするなら… わからないこともないかもしれない」

 

「んー…… さて、この話はここまでにしよう。それで、相手は空間を操る事ができるらしいが、永理に何か名案があるらしいな?」

 

 

 永理の方に向き直ると、彼女は椅子に座って下を向いていた。人の話を聞く態度には見えないが、明らかに何か思い詰めているようだ。

 

 

「永理。聞いてるか?」

 

「── あ! はい!!」

 

「どうした? 何かあったのか?」

 

「い、いえ……」

 

 

 兆にはその原因が分かっていた。フミヅキの所で彼女の記憶について触れられていた時、永理は高校時代の前の記憶を思い出す事ができていなかった。

 フミヅキがホラを吹いているかもしれないが彼女の表情からはとても奴が嘘をついているようには見えない。全て事実を伝えているようだった。

 

 

「えっと、フミヅキは空間を自在に操る事ができます。しかし強大な力にはやはりデメリットがありました。まず1つが、奴が意識を寄せていないものには効果が発揮されないという事。そしてもう1つが、奴が作り出せる空間には制限があるという事です」

 

「制限がある? なぜそう言い切れるんだ?」

 

「はい。理由は私と兆さんが逃げた時、奴は追ってきませんでした。奴なら追える距離で、尚且つ能力を使える余裕もあったと思います。しかしどうやら私達との距離が絶妙に離れており、能力が発動できなかったのではないかと」

 

「なるほど… お前ならまだ他に確信できる部分があったと思うが、聞かないでおこう。なら、作戦はもちろん?」

 

「遠距離からの攻撃です」

 

「ちょうどいい。孝四郎から渡されたフィガンナイフの出番だな」

 

 

 毎度思うのだが、孝四郎は幹部戦になると、タイミング良くフィガンナイフを完成させているなと。ある意味での才能ではないかと兆は思った。

 

 

「じゃ、早速行きますかね… 俺が囮になるよ」

 

「よし、これよりRIVERSはフミヅキの逮捕に出る。俺と兆の2人で奴のところへ行く。他は待機だ」

 

 

 この命令に永理は少々戸惑ったが、今の自分が行っても迷惑をかけるだけだと、何も言わずに素直に応じた。それを察していた巧也は、すれ違い様に彼女の肩に手を置いてからその場を後にする。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 2人はフミヅキがいるビルに着くと、それぞれが持ち場へ着き始める。相手は幹部であるが為、対策を取られている可能性がある。兆はトリガー ファーストリボルヴに変身し、ビルの階段をゆっくり上がって行く。

 トリガーは耳に付けている小型のイヤホンでシェリフと通話をしながら先へ進む。

 

 

「巧也さん。二階だから目的地はすぐよ」

 

『わかってる。だからこそ気を抜くな』

 

「はいはーい… あれ?」

 

 

 そこにはあんな変哲もないオフィスが設けられていた。あのいかにもと言った感じの扉はどこにもない。ゴミ箱の中身を漁ってみたりもしたがやはりどこにもない。

 

 

「おかしいなぁ…」

 

『どうした?』

 

「いやぁね。例の部屋がなくなってる」

 

『…… なるほど。兆、階段を上がれ。奴は上にいる可能性がある』

 

「あーはいはい。上に行けば行くほど俺に逃げ場は無くなってくるからな」

 

『気を付けろよ』

 

「わかってるさ」

 

 

 3階、4階と昇って行き、次が最後の5階になる。腕を回して気合を入れ直し、5階へと進む。

 

 

「さて、着いたぞ…… って、なんだこりゃ!?」

 

 

 部屋はどこにもないが、その代わりに5階自体が1つの部屋となっている。その真ん中にフミヅキが腕を組んで待っていた。

 

 

「随分と余裕そうだな。えぇ?」

 

「… まぁね」

 

「願いを叶えるってのはまぁいいだろう。だけど人を消すってだけは許さんぞ」

 

「それの何がいけないんだ? 俺は叶えてやる代わりの代償としてやってるんだ。ギブアンドテイクってやつ」

 

「理由になってないぞ。あとその服センスないと思うよ。さっき来た時言わなかったけど」

 

「ぐっ…!!…… まぁ、俺は昔からそういう事が好きなんだよ。好きだからやってる。7つも願いが叶うなんて言ったら案の定みんなポンポン使うし… でも、人間ってのはやだね。テレビのリモコンが届かないくらいで無意識に思ってしまう。このリモコンが私の手に飛んでくればいいのに…ってね? 全く馬鹿だと思わないか? それであと1つの願いを使って、はいさよなら。それを見るのが面白くってしょうがない!!」

 

「確かに誰しも叶えたい願いはあるだろうよ。俺だってあるぜ? 例えば自分の記憶を取り戻したいとか、ムフフな事にならないかなとか、透明人間になりたいとか。強風が吹いてこうきゃー的なのとか」

 

「後半のクッソみたいな願いはさておき…… お前にも願いがあるならどうだトリガー? 俺と契約しないか?」

 

「あ?」

 

「俺の能力は作り出した空間内ならなんでもできる。それを応用して契約した奴らに7個分のエネルギーを付与してやる。あいつらだけの空間を作る。ま、そのせいで今空間を作れるのに限度が出てるけど… どう? 願いを叶えられるんだよ? 悪い話じゃないだろ?」

 

「悪い話ではないな。消える以外」

 

「そうだろ? トリガー、お前なら消えるというデメリット無しでも使っていいよ? 今だけ大感謝セールさ」

 

「んー……」

 

「君の記憶も、彼女の記憶も取り戻せるかもしれないよ?」

 

「あー……」

 

「君の所のマスターも何かさ……」

 

「──── わかった」

 

「契約成立って事で……」

 

「きっぱりお断りさせていただきます」

 

「…………… は?」

 

「負担ゼロでセールって言葉に心が惹かれたが、ダメだダメだ。俺が欲しいものは俺自身の実力と根性で取る。確かに叶えるられるのならば叶えたいさ。だけどな。簡単に叶わない人生ってのも、このトリガーの楽しみの1つであり、自分自身に課した試練よ」

 

「……… ホントにお前は馬鹿なのか…? そういう事なら契約は不成立。お前はここで死ね」

《シ・ザイ・キリング・ウォンテッド!!イーディアー!!》

 

「そうだ。俺の願いの1つを教えてやるよ。何故ならそれはもう叶いそうだからな…… お前を倒すって事がよッ!!!」

 

 

 トリガーは走り出し、腹部に蹴りお見舞いしようとするが、その不意打ちには簡単に反応されてしまい反撃を喰らってしまう。

 

 

「ただ突っ込むだけで勝てると思うなよ」

 

「無意識に… 脱力して… そして殴る。今日はお前の願望聞かないデーだッ!!」

 

「ふざけた事をッ!!!」

 

 

 フミヅキの攻撃を躱しながら、隙を見つけて後退し、部屋の中をぐるぐると周る。ガーツウエスタンを放ちながら、ただ単に彼から逃げる。

 しかし、トリガーの放った銃弾はフミヅキにはまるで当たらない。あろう事か当たる気配すらないのだ。

 

 

「どこを撃ってるんだ? あのトリガーが銃の扱いが下手くそだとか笑える展開だね」

 

「確かにな。だけど、この天才イケメントリガー様々は無駄な射撃はしないぜ」

 

「意味があると?」

 

「それは自分の目で確かめて、どうぞ」

 

 

 ただ銃を撃っていたわけでも、フミヅキを狙っていたわけでもない。彼に考えがあるからこその行為。それは放った銃弾が地面を徐々に削り床を削り穴を開けていた。

 意識を完全にトリガーに向けていた為、フミヅキの判断が一瞬遅れた。その瞬間を狙いトリガーは穴の中へ入ると、そのまま下の階へ降り、直ぐさま壁を蹴り壊す。ポッカリと穴が開いたそこから顔を出すと、上からフミヅキが追ってきた。

 

 

「おっと逃がさないよ!!」

 

「うわっ… と!?」

 

 

 フミヅキが手を翳すと4階が全て部屋に変わる。もちろん開けた壁も塞がれてしまった。おまけに先程まで聞こえていたイヤホンもノイズが入り、まともに聞ける状態ではなくなっている。

 

 

「卑怯だな。あんまりそれやられるとイラッと来るかも」

 

「… あーあ、折角逃げようとしたのに壁を塞がれちったぁー トリガー超ショックー」

 

「なんだそれ? なめてんの?」

 

「なめてるよ。だって勝利が確信に変わって行くんだから」

 

「このやろう…!!」

 

 

 トリガーに手を翳すと掃除機のように吸い寄せられ、そのまま近距離で腹に数発撃ち込まれる。これがとてつもなく痛い。そんな事はフミヅキには関係ない。吸い寄せた状態でトリガーを殴り続ける。

 

 

「ぐはっ…!!」

 

「随分なめた態度取ってくれたね? だけどそれももう終わりだよ。だってここは俺の空間、俺の世界だ!! 誰にも邪魔は出来ないしさせない!! お前がここでなにをしようと、それも全て無駄に終わるッ!!!」

 

「そ、そうか… そうだよな… うぐっ!」

 

「どうしたほら!! さっきまでの威勢はどうしたよ!!」

 

 

 フミヅキは手を思いっきり突き出し、トリガーを壁に叩きつけ、そのまま硬い壁に押しつける。強烈な重力が彼を襲い、ミシミシと音を立てて彼の体を圧迫する。

 

 

「こ、これは… きっつい…!!!」

 

「このまま紙のように潰してからサイン書いてやるよ!!」

 

「さ、さて… この位置ならギ、ギリギリかな────」

 

 

─── シェリフはトリガーのいるビルが肉眼でギリギリ確認できる位置に立っていた。そして彼が壁を蹴り壊した事を確認すると、新作のフィガンナイフを取り出し起動させる。

 

 

《EIGHT》

「良くやった兆」

 

 

 エイスガンナイフをセイブドライバーへ差し込み、引き金を引くと、巨大なスナイパーライフルが現れ、少し遠く離れた一直線のアーマーにターゲットし、1発で全て撃ち抜くとシェリフに装着される。

 

 

《エイスガンアクション!! シェリフ!! ロックオンスナイパー!!》

「これでタイムウエスタンを変形させればいいんだな」

 

 

 タイムウエスタンを変形させると、スナイパーライフルのような形に変わる。そこにエイス専用のアイテム、エイススコープを取り付けて、銃口をビルに合わせそれを覗き込む。標準を徐々に調整し、先程穴が開いたであろう場所へ合わせる。

 

 

「…… この作戦を考えたのはお前だ。しっかりやれ」

 

 

 このエイスの放つ銃弾は、トリガーとシェリフのどのフォームを持ってしても防ぐ事ができない破壊力があるが、1発放つだけでもかなりのエネルギーを消費する為、次を放つ為の時間にロスが出る。

 

 

「外せば兆が死ぬか、俺の場所がバレて作戦失敗になるか… 全く無茶を言ってくれるな」

 

 

 しかし、何故かシェリフは落ち着いていた。銃を構え、スコープを覗き込む。イヤホンからはノイズ音が聞こえるだけ。辺りはとても静かだ。

 そしてじっと待つ。兆が穴を開けたのは逃げる為ではなく合図をする為。そしてその合図より10分後に一点の場所を撃つ。フミヅキの高さに合わせた調整。微調整を行い、とうとうその時間が訪れる。

 

 

「……ッ!!!」

 

 

 シェリフが放った1発の銃弾は、風を切りながら4階のビルの壁に向かう。トリガーは銃が放たれた瞬間に、渾身の力で自分の首を曲げると、頬を銃弾がかすめて、そのままフミヅキの胸部を撃ち抜く。

 

 

「あ、ガハッ…!! そ、そんな… これは…… 一体、なんだッ!!?」

 

「さすが巧也さん。タイミングぴったりだぜッッ!!!」

 

 

 トリガーはセイブドライバーの引き金を引いて、弾が当たった胸部を今迄の分をこめて蹴り込む。

 

 

《リボルバー!! ファイア!!》

「これで最後だッ!!」

 

「くそっ… トリガーッ!!!」

 

「うぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁッッッ!!!」

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 

 

 そして爆発すると共にフミヅキの銃を粉々に砕け散った。地面に落ちて行く破片を見ながら、いつも通り手を銃の形にしてからこう叫ぶ。

 

 

「今日の俺も勝利の日ッ!!!」

 

 

 やっと終わったと背伸びをして、元通りになったビルの穴から外を見る。目を凝らすとシェリフが手を振っているのがわかる。トリガーも手を振り返そうとすると、背後に違和感を感じて振り向く。

 フミヅキがボロボロの体で起き上がろうとしていたのだ。

 

 

「おいおい。流石に爆発したらやれてるのが普通でしょ。ていうか、お約束です」

 

「ふっ、ふふふっ…」

 

「何笑ってるんだ?」

 

「ウォンテッドの幹部にはまだまだ上がいる。俺で手こずっているようじゃあいつらには勝てない」

 

「その為に新しいフィガンナイフ作って返り討ちにしてやる」

 

「だろうね。お前もいずれわかるさ… 自分の立場ってやつをね」

 

「なに? 立場だって?」

 

「お前は褒められた男じゃないってことさ。お前はそこに居てそこに居ない。トリガー、それがお前なんだよ」

 

「なんかよくわからないけどわかった」

 

「つまりお前が記憶がない理由はッ─────」

 

 

 何かを言おうとしたフミヅキの体は砂のように崩れ、衣服を残したまま姿が消えてなくなってしまった。

 

 

「逃げた… 訳じゃなさそうだな…」

 

『── 兆、俺だ。そっちは?』

 

「あー巧也さん? フミヅキ消えた」

 

『なにっ!?』

 

「あれは力の使い過ぎか… 或いは消されたか。何か言おうとしてたみたいだけどそれのせいかな?」

 

『そうか… それにしてもよくやった。任務完了だ』

 

「へーい」

 

 

 フミヅキが言いたかった事は気になるし、それにマスターがどうとか言ってたけど何かあるのだろうか?

 とりあえずRIVERSへと帰り、今後について話し合う事にする。




以上です。

マンネリしてますが、まだ序盤やし大丈夫やろ…(震え声)
次からフォームチェンジのラッシュです。
そして兆や永理などの面々の謎についてそろそろ触れて行くつもりです。

では次回、第12劇「五感」
感想、質問等なんでも(ん?)どうぞよろしくお願いします。ではまた次回お会いしましょう。ほいじゃまったのぉ〜


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第12劇「五感」

皆さんご無沙汰しております。

宣言通りラッシュに入りますよ〜。
前回、フミヅキを倒し残りの幹部は後8人。果たして次の幹部は…

それではどうぞご覧下さい。


「孝四郎さぁぁぁぁん! そーろそろ俺にもフィガンナイフ作ってくれてもいいんじゃなぁい???」

 

「別に構わないけど、やっぱり兆くんは自分で製作した方が完成度高いと思うよ?」

 

「僕は孝四郎に作って欲しーの!! で、今誰の作ってるの?」

 

「…………… シェリフ」

 

「そんなぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

 

 最近自分だけ新たなフィガンナイフがない為か、駄々をこねる兆である。孝四郎の考えでは、トリガーとシェリフの戦力差を同じにするべくやっているのだろうけれど、兆はそれをわかっておらずこの有様である。

 

 

「それにそろそろ限界が来てるんだよ」

 

「え?」

 

「兆くんに教えて貰った通り、セイブドライバーのデータを解析して、それに対応するフィガンナイフを製作していたんだけど。それが残り3本って事がわかったんだ」

 

「残り3本… この流れで行くと、俺あと1本で終わり…?」

 

「そうだね。そうなるよ」

 

「マジかぁ… それなら残りは自分で作ろうかな久しぶりに」

 

「いいと思うよ。僕も参考にしたいし」

 

「よしてくれ。孝四郎さんの方ができると思うぜ?」

 

「いやまだまださ…… あ、課長。お疲れ様です」

 

 

 買い出しに行っていた巧也と永理が帰ってきた。明らかに量がおかしい方があるが、それらを空いてる机の上にドズンと置く。音もおかしい。

 2人は椅子に座り一息付くと、佳苗がお茶を持って全員に配る。

 

 

「はい。みんなお疲れ」

 

「あぁ、ありがとう」

 

「こうしてゆっくりするのも久々ね」

 

「確かにな。ここの所、色々あり過ぎた」

 

 

 あれから3日は経つが、特にこれといった情報も入っていない。だが、巧也は次のターゲットを既に決めていた。

 

 

「みんな飲食しながらでいいから聞いてくれ」

 

「ん? もう次っすか?」

 

「あぁ。みんなに休んでもらっている間、俺は単独で調査を行なっていた」

 

「えぇ… 巧也さん体持つのかよ…」

 

「こうしている間も人々はウォンテッドに苦しめられている。ゆっくりとしていられない。そこで今回向かうのはエリアHとエリアIだ」

 

「エリアHはハヅキの所だな。もう一つは行ったことはあるけど、幹部にはあったことないな… それにあそこ随分くたびれていて、まるで人の気配がなかったな」

 

「エリアIに関しては我々でも容易に踏み入れる事ができない… 人を盾にしているからな」

 

 

 以前、エリアIに踏み込んだRIVERSの隊員たちは撤退を余儀なくされた。理由はそこに住う人々を文字通り盾にし行手を阻んだ。先に進めたとしても、人で溢れ返り手を出す事すらできなかったという。

 永理はその話しを聞いて腹を立てた。非人道的な行いは、誰しも許せることなどできるわけがない。

 

 

「許せません。絶対に…!」

 

「俺もそうだ。今、RIVERSの他メンバーはまともに動ける状態じゃない。そこでエリアHは兆と永理。エリアIは俺が向かう」

 

「1人は危険ですよ!!」

 

「確かにそうだが、今回ばかりは1人の方が動きやすい。何かあれば連絡する。撤退も考えている。では各員、準備が出来次第で任務開始だ」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「あーちょっと? ガタガタ道走らないでくれる? 手元が狂っちまうよ」

 

「今やらなくてもいいんじゃないですか? それにさっき準備が出来次第って課長言ってたじゃないですか」

 

「時間は有限だぜ? こうしてた方が効率いいだろ」

 

「どうでしょうねー」

 

 

 車内でフィガンナイフを製作する兆を乗せ、永理はエリアHに向かっている。巧也はこのエリアについて詳しいことを話してはいなかったが、同乗する兆が内部を知っている素振りなので、説明を省いたのだろう。

 永理はバックミラー越しに兆に話しかける。

 

 

「兆さん」

 

「んーー?」

 

「エリアHってどんな所なんですか?」

 

「あ? あぁ、あそこはうるせーぞ。年中祭りが開かれてる」

 

「ま、祭りですか?」

 

「そ、ただ従わない奴は即刻死刑」

 

「え、えぇぇぇぇぇ!? それって酷くないですか!?」

 

「── だけど、死刑はまずされない」

 

「えっと、どうしてですか?」

 

「全員記憶を奪われているからだ。生まれたての赤ちゃんのように何も知らない状態になれば、元がないから元を植えつけてやればいい。そうするとどうなるよ」

 

「… それが普通。過去から現在まであったものとして記憶が上書きされる」

 

「そういうこと」

 

 

 やはり幹部は他とは違う。とてつもない野望や理想を叶えようとして、その力を人のためではなく、自分自身の欲求のためだけに使用する。ただサツキだけは違ったが、共通するのは、ウォンテッドのボスに力を託されていること。記憶を集めて、彼は何をするつもりなのだろうか。

 そんなことを考えながら運転していると、目の前に町が見えてきた。

 

 

「着いたな」

 

「着きましたね」

 

 

 車から降りると、辺りに警戒しながら町へ近づくとすぐに祭囃子が聞こえてきた。兆の言った通り祭りが行われているようだ。

 

 

「さて、ハヅキにも一回負けてるんだよな」

 

「だから色々知ってるんですね」

 

「まぁね。だけど今回は出来立てホヤホヤのこいつがある」

 

 

 兆は先程完成させたフィガンナイフをくるくる回しながら見せつけてくる。それを軽く流し、徐々に音のする方へと向かって行くと、大きな神輿が見えてきた。その1番上に法被を着た男が大声を出して盛り上げている。

 

 

「あれだ」

 

「あれですか」

 

「どう見てもただのおっさんだろ」

 

「そうですね。ただのお祭り大好きのおじさんに見えます」

 

「じゃ、早速行くか」

 

「え、ちょっと兆さん!?」

 

 

 人の間を潜り、神輿の目の前に兆は仁王立ちで現れた。それに気づいた町の人たちは避けるよう言うが、全く動こうとはしない。追いついた永理も一応どっしり構えておく。

 すると、神輿の上から笑い声が聞こえてきた。幹部ハヅキの声だ。

 

 

「ようっ!! トリガーじゃねーか!!? 久しぶりだなぁ!!」

 

「声だけは一丁前にでけーなじじい!!」

 

「ハハハッ!! 久しぶりに会っておいて、挨拶でもなくじじいと来たか!!」

 

「んな事はいいんだよ!! さっさと降りてこい!!」

 

「… ったく、しゃーないの」

 

 

 普通なら飛び降りれば骨折する高さから、なんの迷いもなしに飛び降りると、多少痺れたのか脚をさすり、その後何もなかったかのように立ち上がる。

 

 

「悪いなみんな!! 儂はしばらくこいつらと話して来るぞ!!」

 

「……」

 

 

 随分慕われているようで、皆は笑顔で手を振り彼を見送った。それからハヅキに連れられ、古ぼけた家まで来た。

 

 

「ま、上がって茶でも飲め」

 

 

 永理は今までにない対応に少々戸惑っていたが、一方の兆はなんの素振りも見せず、言われた通りにホイホイと家に上がり込む。

 和室に入って2人が座ると、急須と湯呑みが運ばれてきた。

 

 

「熱いうちに飲みな」

 

「え、あの」

 

「毒でも入ってるんじゃねーかって? 随分警戒してるな」

 

「と、当然です!! ここは敵地で、更にあなたは幹部の1人!! 警戒しないわけありませんよ!!」

 

「そっちの兄ちゃんは何も言わずに飲んでるけどな」

 

「えぇ!?」

 

 

 兆は出された茶を一気に飲み干すと、太ももに膝をついてハヅキを見る。言いたいことを察したハヅキはすぐに本題に入った。

 

 

「… やめろ。と、言いたいんだろ?」

 

「あぁ、その通りだ」

 

「前にも言ったが無理だ」

 

「言うと思った。だけどあんたがやっていることは普通じゃねーよ… 例えこの町の人たちがどれだけ楽しんでいたとしてもだ」

 

「わかってる。わかってはいるんだ…… けれどもう、後戻りはできんよ。儂は罪を侵したんだ」

 

「あんたはまだやり直せるし、それにこんなこと、あんたの奥さんは喜んじゃいねーだろ」

 

 

 2人の会話を聞いていると、因縁があるという風には見えない。寧ろ、親しみのある仲のような印象を永理は覚えた。

 

 

「前も言われたな… わかっとるよ… そこの姉ちゃん」

 

「は、はい」

 

「儂は妻を亡くしてな。あいつが大好きだった祭りをこうして開いてるんだ」

 

「え、ということはこれは全部、奥さんの為…?」

 

「あぁ、しかしな。昔からの祭りをこの町の者たちは拒んだ。うるさいだの古いだのと、その祭りを指揮してる儂らを罵しり、果てはここのお偉いさんまでもが中止しろとまで言い出した」

 

「そんな…ひどい」

 

「抗議に出た儂らだったが、そりゃ聞いてくれるはずもない。ついには家にまで悪戯が出たよ。それが続いて数週間後に妻は死んだ」

 

「警察には相談したんですか?」

 

「いいや。それよりもあの頃の儂は復讐に燃えていた。いつかこいつらを全員地獄に落としてやると… そんなある日、ある男に出会ってから全てが変わった」

 

「ウォンテッドのボスですね」

 

「あぁ、この力でこうして儂はうまくやってる。だからもうこのままでいたい。今が幸せなんだ」

 

「でも… それは人の人生を奪っている行為なんじゃ…!!」

 

「わかってる!!!!!」

 

「…!!」

 

「そんなこと、儂が1番よくわかってる…」

 

「ハヅキさん…」

 

 

 すると兆は立ち上がり、ハヅキの肩を徐に掴む。そして外へ出るように指を銃の形にして誘導し、その後ろを黙ってついて行く。

 外へ出ると、ちょうどいいスペースの広場まで行くと、兆は腰にセイブドライバーを巻きつける。

 

 

「トリガー… やるのか」

 

「やる。あんたがやられた仕打ちに関しちゃ俺も腹が立つし、あんたの言い分もわからないこともない。だけど、人の自由まで奪って幸せと言えるのか? 記憶を上書きして、ただの人形となった人たちを思うように動かしてやる祭りが、あんたの1番したかったことなのかよ!!?」

 

「…… 儂はもう戻れない。ここでお前を殺してでも、儂はこの祭りを続ける」

 

「止めてやるよ。祭りもあんたもな」

《FIVE》《SET》

 

「来い。あの時のように返り討ちにしてやろう」

《ワン・キル》《ハヅキ》

 

「変身ッ!!!!!」

 

 

 セイブドライバーのハンマーを起こし、引き金を引くと、巨大なガトリング砲が現れ、アーマーを片っ端から撃ち抜いて行き、兆に装着されて行く。

 

 

《フィフスガンアクション!! トリガー!! ファランクスガトリング!!》

「── 今日がお前のあの頃の思い日だ」

 

《シ・ザイ・キリング・ウォンテッド!!イーディアー!!》

「相変わらず意味がわからんフレーズだなッ!!!」

 

 

 早速、突っ込んでくるハヅキ。大振りの攻撃にいつもなら避けられるトリガーであったが、その攻撃をまともに食らってしまう。

 

 

「き、兆さん!!? 何してるんですか!!」

 

「いつつ… まだ時間かかりそう」

 

「時間?」

 

 

 その後もゆっくりと動くトリガーに、嵐のように銃弾が飛び続ける。しかし未だに彼は防御を取ることにもやっとのようだ。

 それからハヅキはデリートガンナイフをもう一度押し込み、引き金を引くと、巨大なレーザーがトリガーを襲う。

 

 

「うわぁぁぁぁっっっ!!!」

 

「兆さんッ!!!!」

 

 

 トリガーは大きく吹き飛び地面を転がる。あの攻撃をまともに喰らえばひとたまりもない。ハヅキは勝ちを確信していた。

 しかし、かなりのダメージを与えたはずのトリガーは立ち上がった。よく見ると、痛がってはいるが、装甲にはまるで傷が入っていない。更には先程のようなゆっくりした動きはなくなり、普通に動けている。あくまで先程よりは早くなった程度ではある。

 

 

「あの攻撃を耐えられたというのか!?」

 

「…… よし、55秒経過したな。これでようやく動けるぜ」

 

「だけど、少し速くなった程度だ。それだけで儂には勝てんッ!!!」

 

 

 ハヅキの素早い蹴りがトリガーの脇腹を捉えたが、その瞬間に万力のような力で脚を掴み離さない。そして掴んだままハヅキに1発パンチを入れると、その破壊力に大きく吹き飛んでしまう。

 

 

「グホォッッ…!!!?」

 

「ただ単純な破壊力だけ追求したこのフィフスガトリングにそう簡単には勝てねーよッ!!!」

 

「なるほど… 再戦を持ち込んで来たのはそういうことがあって… だがッ!!!」

 

 

 今度は蹴りを入れようと近づいたトリガーだったが、スルリと避けられ顔面に1発もらってしまう。

 

 

「ぐっ…! な、なんだッ!?」

 

「これが儂の本気だッッ!!!」

 

 

 まるでスライムのように、体を自由自在に変形させてトリガーの攻撃を避け始める。フィフスのスピードでは追いつかないし、逆に相手の攻撃を貰うだけの良い的になり始めていた。

 

 

「儂は勝たなければならん!!! だからここで死んでくれッ!!!!」

 

「悪いけどじじいよ。そいつはできない」

 

「何をッ!!?」

 

「俺はあんたに勝って今日も掴むぜ、勝利をなッ!!!」

 

 

 ガーツ、ライトニングウエスタン。そしてサードポンプを取り出すと、それらを全て組み合わせてガトリング砲のような形へと変形させる。ガトリング砲、改めフィフスウエスタンを構えると、デタラメに自分の周囲を撃ち続ける。その弾の嵐に体の変形が追いつけず、いつしか避けられず何発もその身に当たる。

 

 

「ははっ! どうよこれ!」

 

「どうよじゃありませんよ!!! 危ないじゃないですか!!!」

 

「ちゃんと調整したよホントだよ。トリガー嘘つかない」

 

「絶対嘘です!!!」

 

 

 ゆらゆらと立ち上がるハヅキは再びデリートガンナイフを押し込み構える。トリガーもフィフスウエスタンにフィフスガンナイフを差し込んでから、脚を大きく開いて、力一杯に銃を握りしめる。

 

 

《ガトリングゴガーツ!! フィフスメイシューティング!!》

 

「こんなもの…ッ!!!!」

 

 

 先程ハヅキが放ったレーザーが、更に巨大化しトリガーに放たれる。一方、トリガーの放った無数の銃弾はレーザーとぶつかり少しずつ押して行く。

 

 

「儂の… 儂の… 理想はッッッ!!!!!」

 

「終わらないッ!!!」

 

「なに…ッ!!!?」

 

「祭りは終わらねーよ!!! だってまだあんたがいるだろうが!!!」

 

「儂が……?」

 

「今は罪を償ってくれ!! そしてまたやればいいさ!!」

 

「だが、記憶が戻れば皆は……!!」

 

「拒まれねーよ。いや、させない。この俺がッ!!! あんたの心は俺が守ってやるッッッ!!!」

 

 

 その力強い言葉に押され、手元から一瞬力が抜けてしまい、そうして全ての銃弾を食らって爆発を引き起こす。

 

 

「── 今日の俺も勝利の日」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 ハヅキは罪を償う為、自首をした。聞けば町の人々に死人は出ていなかったらしい。というのも、彼はただ守りたかっただけであり、恨みを持って人を殺すようなことはできなかったらしい。

 そしてその後、町は年に一回祭りが開かれるようになった。まぁ元々やる意見の人達もちらほらいたようで、今回の一件からみんな考えを改めたらしい。なんか微妙な感じだけど、多分あの光景見たら彼は喜ぶと思う。何せ笑顔で溢れかえっていたんだから。

 

 

「ふぅ。いつもの後語り終わりだ」

 

「ここに来るといつも独り言ですね」

 

「まぁいいじゃないの。伝わりやすいじゃん?」

 

「そうですかね… あ、コーヒーのおかわりを」

 

「ついでにミルク」

 

 

 BAR TRIGGERで疲れを癒す彼らは何かを忘れている気がした。そう。何かを。

 

 

「…………あ」

 

「どうしました?」

 

「巧也さんどうなったんだろ」

 

「あ」

 

「特に連絡来てないよな?」

 

「佳苗さんに聞いても、特にないって言ってました」

 

「大丈夫かな…」

 

 

 一方、巧也はエリアIにて3日潜伏し、かなり疲れ切っていた。そこで彼はとある人物と出会う事となる。




はい。今回は新フォーム登場ってだけでした。
しかし次回よりようやく進展あり…?

では次回、第13劇「急がば爆発」

次回もお楽しみにで、それでは皆さんさよならで、ありがとうございました〜


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第13劇「急がば爆発」

皆さんこんにちは。

前回、ハヅキを倒した兆。そして現在、巧也はエリアIで3日間潜伏中であり、かなりくたびれてる模様。しかしそこに怪しい影が…?

それではどうぞご覧ください。


 もう3日も飯を食べていない状態だ。よそ者を見つければ即座に人々が束になって、一斉に襲いかかってくる。逃げ続ける毎日で、特にこれといった情報もないまま途方に暮れていた。

 巧也はある建物内の空の部屋で壁を背に座っている。

 

 

「……(さて、これからどうしたものか。幹部も見つからなければ、それらしい動きもまるで見せない。それとももうこのエリアから移動しているのか?)」

 

 

 そんな事を思い体制を変えようとすると、ドアが開かれる音が聞こえた。巧也はすぐさま視界に隠れジッと待つ。

 鍵は閉めたはず。どうやってここに入ってきた。

 足跡は徐々に近づいてくる。そして巧也は視界に入った瞬間に、その人物を地面に伏せさせた。

 

 

「ちょちょ、待った!! タイムッ!!」

 

「ここの街の奴か? いや、違うな。幹部の手先か?」

 

「違う違う!! 話を聞いてくれって!! 俺はあんたがRIVERSの課長だって知ってるし、それにここに調査に来たことも知ってる!!

 

「……尚更怪しいな」

 

「だーかーらー、話だけでも聞いてくれって!!」

 

 

 彼の必死な姿にため息を吐くと、拘束を解いてまた座り直す。彼は巧也の目の前で胡座をかいて座る。

 

 

「いやぁ、悪いね。もう3日も経つし、そりゃ警戒するわな」

 

「それでお前は誰だ?」

 

「あぁそうだった… 俺は "木的 狩馬" だ。よろしく」

 

「そちらは俺のことをわかっているらしいから省かせてもらうが、なんの目的で俺とコンタクトを取った?」

 

「えっとそれはだな───」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「木的 狩馬。年齢33歳。最近出てきて、懸賞金目当てに犯人を捕まえてくるバウンティハンターね」

 

「いや、佳苗さん。バウンティハンターって実際いるのかね…」

 

「あら、兆くんだって本来超重要指名手配じゃない? それと同じよ」

 

「同じなんすかねぇ…」

 

 

 RIVERSでは、ようやく巧也から連絡が来たという事で、全員集まっていた。すると巧也は現在、エリアIでその狩馬という男と共にいるらしい。最近になって賞金が付く犯人が連れられてくるようになり、警察としては有難い事なのだが、この3日で既に10人は連れてきている。その怪しさ満点の人物といるとのこと。

 

 

「巧也さんそれ大丈夫なのか…?」

 

「とりあえず兆くんは、巧也の援護に向かって。それと孝四郎からフィガンナイフもらって行ってね」

 

「ほーい」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「よし、連絡は完了だ。それで? これからどうするつもりだ?」

 

「…… ま、さっきも言った通り、俺はしばらくこの街にいるから」

 

「妹の為にか」

 

「もちろん。RIVERSのトップのあんたなら色々聞き出せると思ったんだが… なにも情報がないとはね」

 

「悪かったな」

 

「あぁ、変に聞こえたなら謝るよ。別に嫌味で言ったわけじゃない。何となく分かってただけさ」

 

「… しかし人探しとなるなら1人だけだと厳しいだろう? これも何かの縁だ協力しよう」

 

「ははっ、あんたもお人好しだなぁ。さっき会ったばかりの奴を信じていいのかよ?」

 

「まず俺が信じなきゃ先には進めない。困っている誰かがいたら手を差し伸べる。それが警察としての務めだ」

 

「ならお言葉に甘えるとしようかな。とりあえず本拠地は抑えてるぜ」

 

「なに…!!?」

 

 

 巧也が3日滞在して全く情報が手に入らなかったのに対し、狩馬は敵の本拠地を抑えているというのだ。それもそのはずであり、彼はかなりの期間ここにいるらしい。

 早速2人は外へ出ると、裏道を使いながら本拠地へと向かう。

 

 

「このエリアの頭はヤヨイだよ……」

 

 

 その名をいうと、狩馬の顔は怒りも憎しみに満ちている。巧也は特に聞くことはしなかったが、大体は察することはできる。きっと妹の件があるのだろう。

 

 

「あいつは金だけが全ての男だ。民衆から金をむしり取り、そして金を払えない奴らは記憶を奪って殺す…… そして金のためなら何でもする。妹も……!!!!」

 

「……… そうか」

 

「ハァハァ… 悪い悪い。ちょっと火がついちまったよ」

 

「気にしてない」

 

「── あそこだ」

 

 

 そこには何の変哲もない空き地があった。狩馬は空き地にある瓶を持ち上げ、近くのゴミ箱に捨てる。ただゴミを捨てただけなはずもないが、それだけで何かが起こるのか?と、巧也が思っていると、空き地の真ん中に階段が現れる。

 

 

「ど、どうなってるんだこれは…」

 

「さ、降りようぜ」

 

「待て! ウォンテッドがあるかもしれないんだぞ?」

 

「あんたよりここは長いから任せなよ」

 

「あ、あぁ…」

 

 

 そのまま彼について行くと、思った以上に堂々と進んで行っている。警備がかなり手薄なようで多少音を出しても、まるで人が来ない。そもそも人の気配がない。

 

 

「本当にここにいるのか?」

 

「いる… とは確実には言えないけどな」

 

「なに?」

 

「あいつは大体外に出てるんだ。さっきも言った通り人から… な? とりあえずあいつの部屋に行かないと、それはなんとも」

 

「そういう事なら。それにいなかったとしても何か大きな情報も収集できる可能性もあるからな」

 

 

 そして2人は黄金の扉の前に来た。扉を開けて中へ入ると、聞いている話とは裏腹に、中は綺麗に整頓されており、本棚がずらりと部屋の中を覆っている。

 そこにヤヨイの姿はどこにも見当たらない。

 

 

「… いないな」

 

「そうだな。留守らしい」

 

「…… 狩馬」

 

「ん?」

 

「この結果、お前はわかっていただろう」

 

「なんだって? おいおい、勘弁してくれよ。まさか俺を幹部の1人だと思ってんの?」

 

「いや、お前の目的はこの部屋を調べること。その為に俺をここに連れてきた… そうだろ?」

 

「…… どこで確信を?」

 

「言動がさっきから怪し過ぎる。それに矛盾してる部分も多々あったからな。賞金稼ぎは演技が下手らしい」

 

「じゃあ、後ろにいるアレ。任せる」

 

「そのつもりだ」

 

 

 後ろを振り向くと、ウォンテッドの集団が扉からゾロゾロと入ってきた。かなりの数に少々驚くも、すぐにセイブドライバーを装着にセブンスガンナイフを取り出す。

 

 

「課長さん! 礼はするから頑張れよー!!」

 

「危なくなったら言え。すぐに行く」

《SEVEN》《SET》

 

 

「変身!!」という掛け声と共に引き金を引いて、シェリフ セブンスアサルトへと変身する。

 それからタイムウエスタンを変形させ、アサルトウエスタンにし、右から流れるように撃ち抜いて行く。

 

 

「なんかないかなー… お、これは中々金になりそうだな」

 

 

 次から次へと攻め込んでくるウォンテッドたち。その勢いは止まることを知らず、入口が壊れるほどの群れが、雪崩のように部屋に入ってきた。アサルトウエスタンでの連射も次第に追いついて行かなくなりつつある。

 

 

「おい、まだか!!?」

 

「あとちょっと待って…… あ、ここにも」

 

「この数、さっきまでここに居なかったはずだ…!!」

 

 

 今更ながら罠だった事に気づく。狩馬を信じて来たが、その彼自体もまんまと嵌められたらしい。怪しいと気づくべきだったのかもしれないが、巧也の疲労も溜まっている事もあり、正常な判断力が鈍っていた。

 

 

「── よしっ!! いいぜ課長さん。いいもん見つけた!!」

 

「なら外に出ッ───!!?」

 

 

 シェリフがほんの少し目を離した瞬間。ウォンテッドの群れは2人を完全に囲み始めていた。狩馬はその良い物を抱えて、シェリフと背中合わせになる。じりじりとウォンテッドが2人に近づいて行く。

 

 

「妹見つけずにここで死ぬとかごめんだぞ!!」

 

「なにか打開策は……」

 

 

 そしてウォンテッド達が一斉に飛びかかろうとした時、入口から無数の発砲音が聞こえたかと思うと、群れの一部が一気に削られた。

 シェリフは一瞬戸惑ったが、その事を理解すると自然と笑みが溢れた。

 

 

「…… 遅かったな」

 

「ほうほう。これは敵さん大勢で楽しそうですね。今日はお前らの爆散記念日だぜ!!!」

 

 

 兆はエリアIに着くと、人を避けながら隈なく探し、その途中で銃声を聞きつけこの場所を見つけた。

 フィフスガトリングへと変身したトリガーは、ガトリングウエスタンを放ってから、シェリフに向けてフィガンナイフを投げる。

 

 

「さぁ、いっちょ決めちゃいやしょう!!」

 

「あぁ!!」

《NINE》《SET》

 

 

 シェリフはセイブドライバーの引き金を引くと、巨大なミサイルランチャーが現れ、浮遊するアーマーを捉え、爆発を引き起こすと同時に装着される。

 

 

《ナインスガンアクション!! シェリフ!! エクスプロージョンミサイル!!》

 

 

 フォームチェンジをし、肩に装着されたボックスから、ミサイルを計8発発射させると、とてつもない爆発によりウォンテッドの群れが一斉に消し飛ぶ。

 

 

「これで最後だ!!」

 

「決めるぞ!!」

 

 

 2人は同時に引き金を引くと、天高く飛び上がる。そしてエネルギーを纏ったキックを、上空よりウォンテッドの群れに炸裂させると、大爆発すると共に跡形もなく消え去った。

 

 

「あれは… トリガー…!!!」

 

 

 狩馬は急に血相を変えて、トリガーに近づくが、地下内が大きく揺れ始める。先程の爆発の影響で地盤が緩んでしまったのだろう。なにかを言いたそうな彼をシェリフが抱えると、外に急いで出る。

 そして外へ逃げ出した直後に、ガラガラを音を立てて入口が塞がれる。

 

 

「…… なんとか逃げ切れたな」

 

「そっすね」

 

 

 するとトリガーが不意に後ろを振り向いた瞬間、狩馬が懐のナイフを取り出し刺そうとして来た。あまりの急さに変な声を出して避けてしまう。

 

 

「な、ななななんだ!!?」

 

「トリガー。お前に賭けてある金額は知っている。お前を警察に突き出せば、晴れて俺は金持ちになれるってもんだ!!」

 

「あ、そっか。俺、指名手配犯やん」

 

「覚悟しろ!!」

 

 

 ナイフの扱いはうまいが、常人ではトリガーに傷をつける事はできない。軽く避けてから跳躍し、近くの電柱に足を絡めると、手を振ってから走って逃げ出す。

 

 

「あばよ!! 悪いけど俺は消えさせてもらうぜ!!」

 

「くそっ!! 待ちやがれ!!」

 

 

 追いかけようとしたが、もう既にトリガーは彼方へと逃げてしまった。まんまと逃してしまった狩馬は拳を握りしめて怒りを露わにするが、すぐに平常心に戻り、既に変身を解いていた巧也の元へと戻る。

 

 

「大丈夫か?」

 

「あぁ、なんとかな」

 

「…… トリガーとはどんな関係だ?」

 

「あいつは…… 因縁の相手だ。いつか本性を暴く為に見た通りの関係を気づいている」

 

「なるほど。だが、あいつを捕まえんのはあんたじゃないぜ。俺だ。じゃないと、せっかくの金が手に入らないからな」

 

「…… そうか。一度RIVERSに戻るぞ。もちろん約束は守ってもらう」

 

「礼の品でしょ。わかってる」

 

「なら、戻るぞ───」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 RIVERS内に驚きの声が響き渡る。狩馬の持って来た良い物というのは、なんとセイブドライバーとフィガンナイフ資料であったからだ。しばらくざわついた後、巧也達は深呼吸を行い冷静になる。

 

 

「まさか… 奴らのアジトにこんな物が保管されていたなんて…」

 

「セイブドライバーをデータ解析しても出てこなかった情報もあります…… 今、制作している最後の一本が中々上手く行かずに困ってたんですよ」

 

「何故、あいつらの所にこんな物があったんだ? セイブドライバーとフィガンナイフについて何か知っているのか?」

 

 

 現在、巧也と孝四郎と佳苗。そして狩馬がRIVERS内にいるわけだが、一方の彼は佳苗を口説いていた。しかし彼女は軽く受け流しているようだ。

 

 

「佳苗さん、どうだい? この後、僕とカフェでパフェらないかい? もちろん奢るよ?」

 

「もう少し口説き方勉強して来た方がいいわね。それだと0点よ」

 

「え…? 0点…?」

 

「ありきたり過ぎてたまらないってことよ。それよりお茶出してあげるから飲んだら帰りなさい」

 

「まぁそう言わずにさぁ」

 

「興味ないから言ってるだけよ… あ、お二人さんおかえり」

 

 

 兆と永理が買い出しから帰って来た。またも彼女の物はひと回り大きい。それらを机に置いて、袋から出して整理し始める。

 

 

「ただいま戻りました」

 

「全く永理が色々買うもんで遅くなっちまったぜ。そんな食ってよく太らないでいられるな」

 

「あー! 兆さん。女性に対して太るは禁句なんですよ」

 

「いや、にしてもよ。その量見たら誰でもそう思うでしょうが」

 

 

 そんな彼女を見つめる男の目。狩馬はジッと永理な事を見つめる。完全にロックオンしているようだ。それに気づいた永理はビクッとし、兆の後ろに隠れる。

 

 

「な、なんか見てますよ……」

 

「なんか見てるな… 気持ち悪いほど見てるな」

 

「気持ち悪いです」

 

「あぁきもい」

 

 

 そして狩馬はズカズカと永理に近づき、肩に手をかけようとするが、兆はそれを払い、手をひらひらさせて向こうへ行けという仕草を行う。だが、彼は止まらなかった兆を押し除け、彼女両肩をガッチリと掴む。

 

 

「え、あ、な、なんです…?」

 

「………」

 

 

 黙って見つめる狩馬に恐怖で顔を歪める永理。兆はそれを止めさせようとしたが、その表情を見るや否や手が止まる。それから彼が言い放った一言はRIVERS内を暫く静寂が包み込んだ。

 

 

「あ、あのー…」

 

「え、永理……?」

 

「はい?」

 

「やっと見つけたぞ……!!!」

 

「だからどうしたんです──」

 

「─── 妹よ」




狩馬の妹はまさかの…!?
そしてセイブドライバーとフィガンナイフの資料が何故…?

というわけで次回、第14劇「十銃」

次回もよろしくお願いします。


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第14劇「十銃」

皆さんご無沙汰しております。

前回、敵アジトからフィガンナイフの資料が見つかり驚くRIVERS一同であったが、丁度買い出しから戻った永理に対し狩馬の衝撃の一言が…

それではご覧ください。


「い?」

「も?」

「う?」

「とぉぉぉぉっっっ!!!?」

 

 

 RIVERS内に衝撃が走った。木的 狩馬という男はいきなり永理に絡んで来たのかと思ったが、その口から発せられたのは「妹」という単語。彼自身が妹を探しているということは耳にしていたが、今のところ真偽は不明であるのが現状だ。

 永理はいきなりの事に驚いて、目で兆に助けを求めているが、その兆は固まって動けていない。

 

 

「え、えっと、どういう意味ですか…?」

 

「そのままの意味だ。会いたかったぞ…… 我が妹よッ!!!」

 

「きゃあぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

 

 永理に抱き着こうとした狩馬であったが、咄嗟の彼女のビンタが頬を物凄い音で引っ叩くと彼は吹き飛ばされる。

 

 

「兆さん!! この人、痴漢です!!」

 

「そうや逮捕や!! こんな阿呆逮捕や!!」

 

「逮捕です!! 今すぐに逮捕です!!」

 

 

 なんやかんやあり、巧也が一旦全員落ち着かせ、自分達の席へ着くと、狩馬を椅子に座らせそれを囲むように席を配置する。そして軽い自己紹介の後、事情聴取が始まった。

 

 

「── つまり、お前が探していた妹というのが永理って事に間違いは?」

 

「課長さん。それはないない。全くお兄ちゃんの顔を忘れるとか酷いよなぁ」

 

「忘れる以前に、最後にあったのがもう15年も前のことだろ。曖昧な筈にも関わらず急に女性に抱きつくのはどうかと思うがな」

 

「… ま、ごもっともで」

 

「当の本人はそれについては……」

 

 

 巧也は永理と目を合わせると、彼女は何の話だかわからないという風に首を横に振った。

 

 

「覚えてないそうだ」

 

「…… そうか…」

 

「… 15年前と言ったら、丁度この国がウォンテッドに支配されてしまった年だ。聞かないようにしていたが、もういいだろう?」

 

「あぁ、話してやるよ。あれは───」

 

 

 

*****

 

 15年前、俺と永理、それから親の4人家族でそりゃ平和に暮らしていた。親父が仕事から帰ってきたから、俺たち2人は犬かってくらいに駆け寄って抱きついてよ。そんでお袋が台所で飯作ってたけど、玄関でキャンキャンうるせーから聞こえてくる。でも、そんなうるさい声を聞いても笑ってたよ。あの頃はほんとに幸せだった…。

 だが、そんな幸せってのは簡単に崩れ去ったまうもんだ。

 

ドカーンッ

…って外から爆発音が聞こえてきた。しかも最悪な事に俺たちの家のすぐ近くだった。何がなんだかわからない俺と永理は、何がなんだかわからないまま親父達に連れられて裏口から外へ出たんだ。

 しかしまぁ、出た矢先にいたのは大柄な男とウォンテッドの群れ。逃げられる筈もなく、俺たち家族は捕まっちまった。

 

 

「お願いします!! どうかこの子たちだけは見逃してください!!」

 

「私たちはどうなってもいい!! だからこの子たちだけはどうか!!」

 

 

 親父とお袋が土下座して、必死になって俺と永理を守ろうとしてくれてるのがわかった。そんな2人にその男は何言ったと思う?

 

 

「俺に命令するな。この下等生物が…… まぁ、金を払うなら考えてやらんまでもない」

 

 

 その要求額は1億。到底払える額じゃない。

 そうして払えなかった2人は頭に2発。即死だ。俺は目の前に起きた事が信じられず、恐怖と絶望が一気に襲ってきて涙が出なかった。

 

 

「この女は連れて行け。若い奴は金になるからな」

 

 

 そして永理は連れて行かれた。我に帰った俺は男に飛びかかった…… 結果は察しの通りボコボコにされて捨てられたよ。

 

 

「金があれば殺される事もなかったのにな」

 

 

 そんな台詞を吐き捨てて、あいつは永理を連れてどこかへ消えていった───

 

 

*****

 

「それがエリアIの幹部。ヤヨイだ」

 

 

 狩馬の話を聞いて、RIVERS内は静寂に包まれる。永理は今の話が信じられないのか頭を抱えてしまう。

 

 

「…… なるほど。つまり幹部のヤヨイはお前の仇だと言うことか」

 

「そうだな」

 

「それで… なぜ、金が必要なんだ? トリガーの賞金を狙っているようだが、それとなんの関係がある? 妹… 永理を救うとなるなら、彼女はここにいるだろう」

 

「それはあんたらには関係のない話だぜ。課長さん。俺は俺のやり方があって金が必要なんだ」

 

 

 そんな話を横で聞く兆であるが、完全に自分を狙っていると思うと正体がバレる訳にはいかないと思った。これから動き辛くなるのもあり、更に言えば今の状況で動かれたらますます事態が悪化しそうだからである。

 

 

「えーっと、バウンティハンターさん」

 

「なんだ急に。誰だ」

 

「俺は射手園 兆。さっき言わなかった?」

 

「あんな軽い紹介じゃ覚えられなかった。で、なんか質問か?」

 

「あーいや、少しさ。永理を連れて行くけどいい?」

 

「なに?」

 

「んっ」

 

 

 兆が顎を使ってを永理の方を指すと、彼女は頭を抱えて息を荒くしていた。佳苗がそんな彼女の背中をさすってくれている。

 

 

「永理……」

 

「ま、そういう事なんで。急に言われたらそりゃびっくりするわな。よし」

 

 

 それから兆は立ち上がると、永理の肩を軽く叩いて呼ぶ。

 

 

「おーい永理。今からバー行こーぜ。いつもの所」

 

「え…?」

 

「頭良くても、急に言われると情報処理追いつかないだろ? 今日は優しいイケメンが奢ってやるから来いよ」

 

「兆さん… はい」

 

 

 すると兆は彼女を連れていつものバーへと出かけて行ってしまった。それを許す筈がない狩馬はすぐさま追いかけようとするが、巧也が道を遮り首を横に振る。興奮気味ではあったが、数時間経ってようやく落ち着いた。

 

 

「すまない。昔の話をして焦りが出た」

 

「それはいい。しばらくあいつに任せてくれ」

 

「あぁ… あの兆とかいう奴はなんだ? 見た目は到底ここの人間じゃない気がするが…」

 

「あいつは─── まぁ、ムードメーカーみたいなものだ」

 

「……?」

 

 

 そして突然、佳苗が騒ぎ始める。どうやらウォンテッドが現れたらしいが、やけに焦っている。巧也は気になって彼女のパソコンを確認すると、無数のウォンテッドがこちらに向かってきているのがわかった。

 

 

「なんだこれは!!?」

 

「急に現れたの… エリアIの方角からだわ」

 

 

 それを聞いた狩馬は「ヤヨイだ」と言い、走って外へと出て行ってしまった。巧也もそれを追うように出て行こうとしたが、孝四郎に呼び止められる。狩馬の話を聞きながら、ずっとフィガンナイフを製作していたようで、手には新たなフィガンナイフが握られていた。

 

 

「これは…」

 

「資料から作成して、彼の話を聞いている間に仕上げました… これが最後の一本です」

 

「あぁ、ありがとう。佳苗、兆達に連絡を頼む。じゃあ行ってくる」

 

「ちょっと待ってください課長!! 話はまだありまして!!」

 

「なんだ? 急がないと被害が──」

 

「そのフィガンナイフは危険です。何があっても最大出力にしないでください」

 

「なんだと?」

 

「それだけです。課長なら使いこなせるとは思いますが、くれぐれも…」

 

「わかった。忠告は聞いた。行ってくる」

 

 

 そして巧也はウォンテッドの元へと走り出す。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 ここはBAR TRIGGER。俺は今、永理の胃袋のせいで金がみるみるうちに無くなってきている。俺の涙腺もみるみるうちに緩くなっている。

 

 

「永理さん!! 奢るとは言ったけど流石にまずいですよ!!」

 

「ふぁい?」

 

「そんなリスみたいな顔してないで止めましょうよ!!」

 

 ゴクンッ

「兆さんがイイよって言うから遠慮したらいけないと思って」

 

「遠慮してぇぇぇぇぇぇっっ!!!」

 

 

 そして笑いながらガンホーレが近づいてきて、マスターからミルクを貰うと、わざわざ滑らせて兆の所へ送る。

 

 

「そいつは奢りでグッと行きな」

 

「あ、あの〜嬉しいんですけど、これもう5杯目なんですが」

 

「そんなんで根をあげるようじゃ俺のライバルとは言えないな」

 

「じゃあもらう」

 

 

 調子に乗ったガンホーレはガブカブと酒を浴びるように飲み始めた。たまに永理に絡んで来たが、今ではただの仲のいいおじさんだ。部下のイッシュウもベロベロに酔っ払った彼を止めている。これでも一応、ガンホーレ団という窃盗団のボスなんだけど。

 マスターはそんな光景を見て微笑みながら、兆にコーヒーを出した。

 

 

「…… あーマスター。俺はミルクは好きだけど、コーヒーの苦いのはどうも苦手で…」

 

「大人になったな」

 

「な、なんだよ急に」

 

 

 そんなマスターの顔を見ると、微笑みの中に、どこか少しだけ悲しさが混じっているように感じられる。巣立ちしたのがそんな嬉しいのか。それとも友達ができたからか。この人は兆にとっては親のような存在である。ずっとここで暮らしてきたから、気持ちはわからなくもない。

 

 

「今、お前は1人で戦ってるわけじゃないだろ?」

 

「えっと… なんの話?」

 

「お前が何をしているのか。俺は知ってる」

 

「俺は知ってる… って」

 

「いい仲間を持ったな。絶対に無くすなよ。これからお前に何があっても、俺はお前の味方だ」

 

「マスター…… あのさ。結局どういう事なのぉ?」

 

「ふっ、つまり仲間は大事にしろって事だ」

 

「???」

 

 

 すると永理が食べるのをやめて、電話に出て内容を聞いた彼女は、話の最中である兆の肩を思いっきり叩き呼んでいる。

 

 

「いってぇっ!! なにすんだよ!!」

 

「ウ、ウォンテッドが大量に現れたそうです!!」

 

「いくつ?」

 

「手と足だけじゃ数え切れません!!」

 

「マジかよっ!!? さっさと行くぞ。じゃあなマスターまた来るぜ!! ガンホーレのおっさんもイッシュウもまたな!!」

 

 

 別れを告げて、2人は飛び出して行ってしまった。残った3人は静かになったが、その中でガンホーレがゆっくり口を開く。

 

 

「── はっ、今のご時世。ウォンテッドがこの世の頂点。一般市民はそれにへーこらと頭を下げるしかない。どう思うよマスター」

 

「… 良くは思わない。ただ、慣れというのは恐ろしい。このエリアAは他エリアよりも何もなく、比べれば平和と言えるだろう。例えウォンテッドが今現れたとしても、人々は次の日には平然と暮らしている」

 

「そうだな。俺たちは窃盗団をやってはいるが、ウォンテッドの奴らのように人を平気で殺すような真似はしたことがねー。それに、俺たちはこんな世の中だからこそこうして生きる道を選んだ…… しかしまぁ、ガンホーレ団がやっていることは正しいとは言えないがな…」

 

「ふっ、今日はやけに喋る」

 

「さぁな。酔いが回ったのかもな」

 

 

 ジョッキに入った酒を一気に飲み干すと、ガンホーレとイッシュウは勘定を払ってその場を後にした。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 バオに跨り、人々の悲鳴のする方へと走る。そしてすぐにウォンテッドの群れが見えてきた。最近多くのウォンテッドと戦ってきたが、これほどの数は今までになかっただろう。急いで向かっている最中、ふとビルの上を見ると、シェリフがエイススナイパーへと変身しており、そこから狙撃を行なっている。

 

 

「あれじゃあ間に合わないだろ…… あ、なるほど」

 

 

 よく見てみると、逃げ遅れた人の援護射撃であることがわかった。この量を相手に、正確に人々の位置を確認して、幾人を救助しているのはさすがとしか言いようがない。

 ただ1人では限界が来ているようで、その様子がはっきりとわかるほど焦りを見せている。

 

 

「じゃあ俺は注意を向かせるかな… 永理。バオは預けるから巧也さんに俺が囮になるって言っといて」

 

「了解です!! お気をつけて」

 

《FIVE》《SET》

「変身ッ!!!」

《フィフスガンアクション!! トリガー !!ファランクスガトリング!!》

 

 

 フィフスは最初こそ重いが、それでもなんとか動き銃を組み合わせて、フィフスウエスタンに合体させると、群れに向かって撃ち放つ。

 その射撃音は辺りに響き、ウォンテッド達の注意がトリガーへと向けられる。皆、一斉にトリガーの元へと襲いかかってきた。

 

 

「囮になるとは言ったけどさ。これはやばいってぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

 その光景はまるで高波。まともに動けないトリガーはただ撃ち続けるしかなく、やがて波に呑まれてしまった。

 永理から連絡を受けていたシェリフは、救助が終わるとトリガーの元へと降りて行く。彼の声は全くと言っていいほど聞こえない。

 

 

「兆ィ!!!」

 

 

 返事はない。ただその波は次第に一つの塊のようになり、完全にトリガーを囲んでしまった。

 

 

「全く世話が焼けるやつだ…… しかし、この数をどうすれば…」

 

 

 シェリフは脚に付いているホルダーからフィガンナイフを1本取り出す。それは孝四郎から託された物であったが、彼の忠告が頭を過ぎり、今回は使わないようにはしていたがやむを得ない。

 

 

「── どういう力かは知らないが、仲間の為だ」

《TEN》《SET》

 

 

 テンスガンナイフをセイブドライバーに差し込み引き金を引く。シクスオートと同じようではあるが、少々形が違う銃が現れると、アーマーを撃ち抜いて行く。

 

 

《テンスガンアクション!! シェリフ!! レディーゴージュウ!!》

 

 

 そして装着が完了すると、非常にシンプルな姿になった。そう、シェリフの良く使うシクスとほぼ同じなのである。

 

 

「兆の言っていたセカンドと同じような感じか?… それよりも今助けるぞッッ!!!」

 

 

 それから地面を蹴って飛び跳ねると、その塊を軽く越えてしまった。彼自身、驚き戸惑った。試しに思いっきり殴ってみると、面白いようにウォンテッド達が吹き飛んで行く。

 

 

「力が溢れてくる…!!」

 

 

 テンスの圧倒的力で、次第にその数を減らしていくウォンテッド。徐々にトリガー姿が見え始め、状態を確認すると、結構大丈夫そうであった。

 

 

「うへぇ… きんもちわりぃ…」

 

「大丈夫か兆?」

 

「これまた強力なフィガンナイフだこと」

 

「まぁな… もう充分だろ?」

 

「あいさ!!」

 

 

 トリガーを引っ張り出し、そのまま空中に投げ飛ばす。そして2人は同時にセイブドライバーの引き金を引く。

 

 

《ジュウ!!》 《ガトリング!!》

()()()()()()

 

「はぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

 

「お返しだぜ!! おんどりゃぁぁぁッッッ!!!」

 

 

 ダブルキックは凄まじい威力となり、一気にウォンテッド達を殲滅する。テンスの威力に押され、よろけたトリガーであったが体制を立て直す。2人は顔を見合わせ、仮面の下で微笑み合った。

 それから変身を解き、兆は首と腕を回してお疲れのようだったが、バタリと何か倒れる音がした。

 

 

「ん? なんだ───」

 

 

 音のした方を見ると、巧也が地面に倒れていた。兆は血相を変え、丁度駆けつけた永理に救急車に連絡をさせる。そして巧也は、意識のないまま病院へと運ばれて行った───。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 検査の結果、身体に強烈な負荷が掛かったらしい。医師はそれを日常生活どころか、過度な運動を行ったとしてもあり得ないとのことだ。理由は後から来た孝四郎からすぐにRIVERSのメンバーに聞かされた。

 

 

「…… やっぱりこのテンスが原因か」

 

「すみません。テンスガンナイフの力を甘く見過ぎていました…」

 

「いや、まぁ仕方ないって言えばそれだけなんだけど、孝四郎さん。こりゃ一体なんだ? とんでもない力じゃねーかよ」

 

「… 例の資料を見ながら製作したんだ。セイブドライバーに記録されている最後の一本。それがこのテンスガンナイフなんだよ。ただ、データを分析していると、このテンスにはリミッターがないことが判明した」

 

「リミッターがない?」

 

「いや正確にはあるにはあるんだけど… 兆くんなら知ってる話で、変身者に多大な負荷が掛からないように、フィガンナイフの力をセイブドライバーがコントロールしている」

 

「あぁ、だからぶっちゃけセイブドライバーは負荷軽減装置でもあるし、それは逆に本来のフィガンナイフの力を抑えてるってのもある」

 

「うん。でもこのテンスだけは違う。その負荷を超えて最大で10倍の力を引き出すことができる。今回、課長がやったのは5倍。人間がここまでやるなんてまずあり得ない話だけど、そこはさすがとしか言いようがないよ」

 

「なるほど。リミッターがないってのは強ち間違いじゃないな」

 

 

 RIVERSメンバーは巧也が目覚めるまでの間、しばらく佳苗の指示で動くこととなった。

 そしてRIVERSへと戻ると、兆と孝四郎は早速テンスの対策を練ることにし、佳苗と永理は居なくなったまま行方がわからない狩馬の捜索に当たることにする。

 

 

「永理ちゃん」

 

「はい? なんです?」

 

「あのバウンティハンター兄の話なんだけど…」

 

「あっ…」

 

「巧也から一応連絡が来ててね。見つけたらしいんだけど、すぐに何処かへ行ってしまったらしいわ」

 

「そうですか…」

 

「… まぁ急に俺は兄貴だぞーーって言われてもピンと来ないわよね」

 

「はい… それに思い出せないんです」

 

「昔のこと?」

 

「自分の過去がなんなのか… なぜか思い出せないんです。ウォンテッドに襲われたかどうかも、あの人が兄なのかも、家族がいたのかも…… 今までの生活の中でそんな事気にもしませんでした…」

 

 

 そんな永理を佳苗はそっと抱き締める。

 

 

「ごめんね。やっぱり聞いちゃまずかったかしら?」

 

「い、いえ」

 

「ゆっくり思い出しましょ。もしかしたらただの変態の可能性だってあるじゃない」

 

「ふふっ、そうですね」

 

「兆くんも昔の記憶が全くないようだし、お互い様って事でたまには愚痴ってもいいんじゃない? あの子結構聞き上手だったりするし」

 

「そうですね。また今度奢ってもらいます」

 

 

 こうして巧也がいないまま、兆は1人で… 否、RIVERS一同でウォンテッド達に立ち向かって行った。

 ただテンスガンナイフはなんの進歩もなく、2人は頭を抱えていた。それから数日後、巧也が退院して来たが、やはり特にこれといった対策もできず、しばらくテンスは使用不可としてRIVERSの研究室内に置かれる事となった。




終わり!! 閉廷!!

妹を残して狩馬は一体どこへ行ったのか?
そして最後のフィガンナイフはかなり危険!! 果たしてどうなる!?
次回、第15劇「賞金稼ぎ」

ではでは、感想等なんでもどうぞ。それではまた次回お会いしましょう。
ありがとうございました!


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第15劇「賞金稼ぎ」

皆さんご無沙汰しております。

あー前回。狩馬の妹と判明した永理であったが、突然の事に動揺を隠せない。一方、巧也はテンスガンナイフの力により身体に大きなダメージを負ってしまった…

それではどうぞご覧ください。


 あれから数日が経ち、巧也が退院して来た。まだ身体に違和感があるらしく、しばらくの間は前線へは出ない。はずだったが、リハビリという訳のわからない理由で戦うらしい。いつもはしっかりしたみんなの頼れる課長ではあるが、自分の事になると結構適当な部分が出て来たりする。

 

 

「おかえりです課長!!」

 

「病院生活暇だったでしょ」

 

「すみません課長… 僕のせいでこんな事に…」

 

「巧也さんおかえり。祝いのケーキに歳の分、蝋燭刺しといたよ。見た目は最悪だこりゃ、剣山みたい」

 

 

 それぞれ言いたい事はバラバラではあるが、全員が巧也の帰りを待ち望んでいた。そして現状報告と今後について、ケーキを食しながら見た目は緩いが、内容は濃い会議が始まる。

 

 

「さて、まず現状はウォンテッドの動きはいつも通りと、他幹部に動きはない。テンスガンナイフについては今尚、対策が組めていない。そして…… 狩馬の行方はわからないままと」

 

「……」

 

「まぁ、なんだ。とりあえず永理。狩馬の件は俺たちに任せろ。仲間の為ならなんでもするのがRIVERSだ」

 

「あ… はい!!」

 

「よし早速だが、エリアIに向かう」

 

 

 巧也の予想では、狩馬はヤヨイの元へ向かったと思われる。そこで幹部を倒すと共に、彼の安否を確認するという内容だ。幹部と戦闘を行うので、病み上がりの巧也は兆のサポートに回りつつ捜索に当たるつもりである。

 

 

「じゃあ行くぞ、兆。永理は今回、孝四郎の手伝いを頼む。俺がいない間かなり研究に没頭してくれていたからな。無理はさせないようにしてくれ。佳苗は何かあれば連絡をくれ、こたらも何かあればすぐに連絡する。以上だ。RIVERS… 任務開始だ!!」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 兆たちはエリアIに向かう途中のパトカー内で、テンスガンナイフの負荷についての話をしている。それは兆の愚痴から始まった。

 

 

「孝四郎さんと俺はテンスガンナイフをどうするかとあれこれ試行錯誤したんだけど… どうも、うまくいかなくてよ…」

 

「俺はそういった面はよくわからないが、何か引っかかる部分があるのか?」

 

「まぁね。テンスの理不尽負荷掛け能力がどうしても解消できない。巧也さんがやった5倍を上限として、任意で発動できるにはしたいが、その調整がうまくできないんだよ…」

 

「なるほどな… 分けられればいいのにな」

 

「分ける?」

 

「ん? あぁいや、上限が10倍で、今やろうとしてるのが5倍なんだろ? それなら分けて、それぞれ5倍ずつにすれば、俺と兆で共有できるんじゃないかと思ってな。しかし、5倍で俺があの状態だから馬鹿なことを言ったな、ははっ」

 

「……………」

 

「…? どうした兆?」

 

「巧也さん携帯貸して」

 

「誰かに連絡するのか?」

 

「孝四郎さんに電話するの。あ、それと巧也さん大好き愛してる。俺はあんたに一生ついてく」

 

「お、おぉ… そろそろ着くから早めに終わらせろよ」

 

 

 電話を終えると、丁度エリアIに着いた。何が起きるかわからないエリアの為、乗り込む前に変身をし、トリガーとシェリフはと姿を変え、バレないように裏から侵入する。

 一応ヤヨイの根城へと向かう訳だが、前にトリガーとシェリフの高威力な攻撃により、破壊されて今では地面の中に埋まってしまっているはずだ。

 

 

「いやー巧也さんとデートしてる訳だけど、あいつのアジトどうなってるんだろうね」

 

「それは行ってみないとな。ヤヨイも頭は切れる方だろう。敵に知らせるために、同じ場所へわざわざ造る必要はないとは思うが……」

 

 

 シェリフの思った通り、そこは前と同じように地面に埋まったままのアジトがあった。予想通りと言えど、新たなアジトの場所は分からず、また0からのスタートとなってしまった。

 シェリフは腕を組んで、画面の下で眉を潜める。トリガーも何かないかと辺りを捜索するが、特に見つからずに疲れて床に座った。

 

 

「さて、困ったな」

 

「ヤヨイのアジトは今まで通り隠しているはずだ。俺が3日探しても見つからなかった。また探すとなると今度は2人がかりとは言え、いつまでかかるだろうな」

 

「あーあ、こんな時にその道のプロの狩馬兄さんがおればなぁ…」

 

 

 そんな事を呟くと、微かに誰かが呼ぶような声が聞こえた。シェリフに聞いてみたが、何も聞いていないと返ってきた。首を傾げながら、辺りをぶらつこうとすると、また声が聞こえてきた。

 

 

「…………」

 

「… なんだ」

 

「いやー、呼んだかなぁと」

 

「さっきも言ったが呼んでない」

 

 

 すると、今度はシェリフにもその声が聞こえた。声は「北へ行け」と指示を出している。ただそれを信じていいものか疑問に思ったが、他に手段はないのでそれに従い北を目指す。

 次は東へ西へと、蛇のようにぐねぐねとした道を進んで行くと、ある一軒家の前に止まった。声は聞こえなくなってしまい、ここに何かがあるとすぐに2人は確信する。

 

 

「行くぞ」

 

「警戒を怠るなよ」

 

「俺の真似か?」

 

「はい」

 

 

 中へ入ると、人の気配はない。広くもなく、一般的な家ではあるが、ただ何かがあるのは察しが付く。

 

 

「ここにあるかな? いやこっちか? いやいやこっちかな?」

 

「あいつは妙な仕掛けを作る奴だ。隅々まで探せ」

 

「もう爆破してもいいんじゃない?」

 

「何言ってるんだ。ただの民家の可能性だってあるんだぞ? それに狩馬が敵に捕まっている場合もあってだな……」

 

「わ、わかってますよ。トリガーさんの可愛い冗談っすよ〜」

 

 

 そう言って後ろへ下がって壁にもたれかかると、背中に何か違和感を覚える。気になってその違和感に手を添えてみると、明らかに何かがあることがわかり、試しに強く押してみた。

 すると、壁が開いて通路が姿を現した。シェリフは驚いてこちらを見て、トリガーの肩を叩いて褒める。

 

 

「よくやった!」

 

「まぁやろうと思えば簡単なんですよはい」

 

「よし、進むぞ」

 

「後ろは任せて」

 

 

 奥へ進む度に、通路に明かりが付いていく。まるで2人を誘っているかのような感じが伝わってくる。トリガーが後ろに警戒しながら、シェリフは次々に照らされる通路を進むと、二手に別れた道が現れた。

 

 

「出たよこれ。巧也さんどうする?

 

「俺は左へ行こう。何かあれば連絡する」

 

「へいへーい─── あ、そうだ。巧也さん」

 

「なんだ?」

 

「また倒れないように」

 

「…… なるほど。バレバレって訳か」

 

 

 シェリフはテンスガンナイフを取り出して、トリガーと後ろ手振りながらその場から離れる。

 

 

「… ったく、ホント無茶する人だよな。さすがだ」

 

 

 トリガーは通路を歩いて行くと、今度また二手に別れた道があった。当然分からないのでガーツウエスタンを立てて、倒れた方に向かおうとするが、その時足音が聞こえてきた。トリガーから見て左の方だ。奇襲を仕掛けようと壁を背に構える。

 

 

「悪い奴はお仕置きだぜっ!!」

 

 

 そして銃で殴ろうとしたが、目の前にいたのはウォンテッドでもなんでもないただの人間。いや、バウンティハンター。いや、狩馬であった。

 

 

「のあぁぁぁぁぁっっっ!!!??」

 

「うおわぁぁぁぁっっっ!!!??」

 

 

 2人の悲鳴は辺りに小玉し、それからすぐ同時に、お互いの口を抑え合う。トリガーの正体を知らないので、それは言わずに事情を説明すると、理解してくれたのか、特に何もして来ずに案内をしてくれた。

 

 

「はぁ… 絶好な獲物が目の前にいるってのにな」

 

「はははっ、ごめんなさいね」

 

「このまま直でヤヨイの元へ向かうつもりだ。お前もその為に来たんだろ」

 

「えぇまぁ」

 

「そいつの所までは連れてってやるが、ことが済んだら覚えておけよ」

 

「…… へいへい」

 

 

 連れてこられた先は広い空間となっていた。トリガーは辺りをキョロキョロと見回すがヤヨイの姿はない。とても嫌な予感をし、狩馬の方を見るが、彼自身も驚いている様子だった。

 

 

「…… あのーもしかして2人ではめられたとか?」

 

「やっぱり一筋縄じゃ行かない野郎だな。全員集まるようにしていたんだろうぜ。ほら、あっち見てみろよ」

 

 

 トリガーは指を刺した方向を見ると、シェリフも別の道からここまで辿り着いていた。全員が同じ場所へ集まったと同時に、来た道がシャッターで完全に塞がれる。急いで壊そうとするが、何をしようと傷一つ付かない。

 

 

「うわっ! 完全にやられた!?」

 

「き… トリガー!! 狩馬まで…… なるほど。俺も間抜けだったらしい」

 

「男3人で密室とか最悪だよ…… ん? あれは──」

 

 

 天井に近い奥の方の壁が開き男が出てくる。その男は不敵に笑い、3人を見下ろしながら、キラーズガンにデリートガンナイフを差し込む。

 

 

「やった来たか。遅かったな?トリガー、シェリフと…… 誰だ?」

 

「……っ!!」

 

 

 狩馬はグッと拳を握る。今、目の前にいる男こそヤヨイ。彼の両親を殺め、妹の永理を売ろうとした男なのだから。

 それからすぐヤヨイは引き金を引き、みるみるうちに姿を変える。

 

《シ・ザイ・キリング・ウォンテッド!!イーディアー!!》

「お前達はここで終わりだ。俺の力は幹部の中でも上位に入る強さだ」

 

「お前がヤヨイか。狩馬さんもそうだが、ここで生活している人たちの人生も好き勝手しやがってよ!!」

 

「トリガー… まずはお前から消すとしよう」

 

「やれるもんならやってみろ!!」

 

 

 トリガーとシェリフはそれぞれフィガンナイフを取り出し、セイブドライバーに差し込む。

 

《FIVE》《TEN》

《SET》

《フィフスガンアクション!! トリガー!! ファランクスガトリング!!》

《テンスガンアクション!! レディーゴージュウ!!》

 

「無茶しないでね♡」

 

「……… わかってる」

 

「今日はお前らの蜂の巣と蜂の子のオリーブ炒め日だ!!!」

 

 

 ヤヨイが降りてくると同時に、周りの壁からも溢れんばかりのウォンテッドの群れが一斉に襲いかかってきた。トリガーはフィフスウエスタンを取り出し、周りの敵を一掃する。一方のシェリフは流れに乗り、一気にヤヨイの元まで走り抜ける。

 

 

「ハァッ!!!」

 

「来たな… シェリフ!!」

 

 

 テンスから繰り出される一撃は幹部と言えど、かなり重いらしく壁際まで吹き飛ばされてしまう。すかさずヤヨイは銃で応戦するもテンスの速さでそれを軽々と避ける。

 

 

「なんだと…!!?」

 

「グッ…!! たったこれだけで…!!」

 

 

 完治はしていない体での使用。流石のシェリフでも耐えきれないらしく優勢に攻撃を喰らわしていたが、徐々にスピードが落ちていった。

 その隙を逃さずシェリフの首根っこを捕まえ、地面に叩きつける。

 

 

「ぐわっ!!!」

 

「巧也さん!! くそっ!!!」

 

 

 トリガーはウォンテッド達を撃っているうちに気づいた。このヤヨイという幹部の力は兵隊を増やすことであると。確かに前もかなりの多さではあったが、ヤヨイがいるこの場所はまるで数が減る様子がない。それどころか増えてきているのだ。

 

 

「数に物言わせるってか。狩馬さん!! あんた俺の後ろに……!!」

 

「── ふざけやがってよ」

 

「あっ…?」

 

「道具としか思ってねぇ…… 人を… 自分だけが良ければそれでいいかよ!!」

 

「怒るのはわかるが、今大ピンチなんだぜ!?」

 

「……ちっ、予定変更だ。こっから逃げるぞお二人さん」

 

「なんか手が?」

 

「この日の為に時間は掛かったがな…!!」

 

「それは…!!」

 

 

 狩馬が懐から取り出したものはセイブドライバーだった。いや、少しに似ているが、また別のドライバーのようだ。そのドライバーを腰に巻きつける。

 

 

《キカンドライバー》

 

 

 そして彼はフィガンナイフに似たものを取り出し、もう一つ平たい正方形のアイテムを取り出す。

 まず後者… 壱月チケット。をドライバーを真ん中に差し込むと、機関車のような音が流れ始める。それからフィガンナイフ… 改め、番式ギアナイフを前に突き出す。

 

 

「変身ッッッ!!!」

 

 

 セイブドライバーの時と同様に左側差し込むと、巨大な銃が現れて銃弾が放たれると、その銃弾が機関車へと変化し、狩馬の体を通り抜ける。みるみるうちにアーマーが装着されて行く。

 

《壱式!! ギアチェンジ!! ゲツヨウ!!》

 

「んなっ…!!?」

 

「まさか…!!」

 

 

 そして狩馬は背中についている銃─ 週式ギアハンターを取り出し、腰を落として構える。

 

 

「── ハント開始だ」

 

 

 そう言った狩馬─ ハントはその銃で見事な腕前で、ウォンテッドを打ち抜きながらシェリフの元へと向かう。しかし、彼の近くにはもちろんの事ヤヨイがいる。攻撃を仕掛けてくるが、ハントはかわしてギアハンターで即座に撃つ。

 

 

「危なかったな課長さん?」

 

「すまん。助かった…」

 

「ここで休んどきな」

 

 

 シェリフを抱えて壁際へ寄せ、トリガーと共に群れに対し応戦する。ハントの放つ銃弾はかなりの威力で貫通し、ウォンテッド達を撃ち抜く。

 弾はヤヨイにまで届くが、それらを全てウォンテッドの肉壁で防ぐ。

 

 

「人間じゃないにしても気の毒なもんだな…」

 

「狩馬さん… あんた一体…」

 

「お前に話すつもりはないぜ。今はこいつらに集中しろ。さっさとここからトンズラするぞ!!」

 

「えぇ…… ま、いいや。アイアイサー!!」

 

 

 なんとか立ち上がったシェリフはドライバーの引き金を引く。トリガーも同じく引き、ハントはギアナイフをもう一度押し込む。

 

 

「「「ハァァァァァァッッッ!!!!!」」」

 

 

 3人のキックでウォンテッドは一気に消滅し、壁もついでに壊れた。3人はこの瞬間を逃さず即座に駆け込む。ヤヨイはウォンテッドを使って追いかけてくるが、ハントの巧みな銃の扱いにより、その距離を徐々に遠退かせる。

 

 

「とりあえず久々の… 今日の俺も勝利の日!!」

 

「まだ任務完了してないぞ」

 

「それじゃあ、あばよ」

 

 

 こうしてエリアIからなんとか抜け出した一行はRIVERSへと戻る事にした。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

「………」

 

「……… そっか。やっぱり覚えてないか」

 

「すみません」

 

「おいおい。一応だが、俺とお前は兄妹だぜ? 敬語なんか使うなよ」

 

 

 狩馬がRIVERSに帰ってきて、ほんの少しだが永理の笑顔が戻っているような気がする。しかし不思議なことに、この2人の関係はデータベースに一切に載っていないのだ。佳苗により奥の方まで潜り込んだ探してみたらしいが、見つからないということはまずあり得ない。

 

 

「あー全然ダメ! この兄妹について全く記載がないわ」

 

「そんなはずはない… はずなんだけどな。ここまで探して見つからないとなると、ウォンテッドが絡んでいる可能性があるな」

 

「巧也?」

 

「永理の記憶がないのは過去のショックが原因の一つ。もう一つはウォンテッドによって記憶を奪われたか… おそらくどちらもだろう。ヤヨイ以外にフミヅキも何か知っているようだったらしいが、その何かが引っかかる。過去が重要なのか、それとも永理自身が重要なのか」

 

「なるほどね。永理ちゃんに一体何があるっていうのかしら」

 

「それを言うなら、兆もそうだ。なんにせよ全てはウォンテッドの頭が知っている」

 

 

 それから巧也は狩馬に近づき近くにあった椅子に座る。彼も察したようで向き合う形で座り直す。

 

 

「わかってると思うが──」

 

「あれはキカンドライバー」

 

「…っ!!」

 

「そしてそれにこの壱月チケット… 纏めて言うなら週曜チケット。んで、こっちが番式ギアナイフ」

 

「…… 明らかにセイブドライバーと似ているが、機能的な面では少々違うらしいな」

 

「これは全部俺が作った。セイブドライバーを真似てな」

 

「なにっ…!? 一体どうやって…」

 

「前に資料あったろ? あれをちょっともらって行ったまでよ。ほら返すぜ」

 

 

 資料の内容はデータに全てインプットした為、使わずに隅の方へ置いていたおり気づかなかった。いつ盗られていたのかも全くわからない。

 

 

「… まぁいいだろう。よく作れたな」

 

「いや、実際これはセイブドライバーより精度は悪い。リミッターがないもんでギアナイフ取り替え過ぎると、オーバーヒートしてこいつも俺も限界くるのよ。ただその代わりそれよりも力は上にはなってると思うぜ?」

 

「不便なものだな」

 

「だろ? あんたとあのトリガーの物できれば欲しいんだけどな」

 

 

 トリガーの正体は未だに彼な耳には入っていない。追われる前に逃げてRIVERSへと先に戻ったのだ。

 そんな彼は現在、巧也の言った分けるという案をそのままに、孝四郎と共にフィガンナイフを製作していた。

 

 

「分断するとはよく言った物だね… 2つにしてもかなり負担がかかるのは変わらないよ?」

 

「もちろんもちろん、そりゃわかってるよ。だけど孝四郎さん。ウォンテッドの奴らは確実に力をつけているし、それに半分を切ったところから幹部の強さも格段に上がっていると思う。勝つにはもうやるしかない」

 

「…… そうだね。完成させよう」

 

「さぁて、新フィガンナイフだ。気合入れていくぞ!!…… 10の次と後だ!!」

 

 

 そう叫んだ途端、研究室のドアがものすごい音をたてて開かれる。叫びながら悲鳴を上げると、孝四郎もそれに驚き叫ぶ。

 

 

「な、何だよ永理かよ!! 脅かすんじゃねーよ!!…… チビったらどうするんだよ」

 

「た、たたたた…」

 

「た?」

 

「大変です!!!兆さん!! 大変なんです!!!!!」

 

「わ、わかったわかった。落ち着け。で、何が大変なんだ?」

 

「幹部が… 幹部がぁ…!!!」

 

「ウォンテッドのか? それがどうした」

 

「今までに倒したはずの幹部達が再び現れたんです!!!!!」

 

「へぇーなるほど。幹部がね。しかも倒したやつと来たか。ハッハッハッ……… え…? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!!??」




これはいったいどういう…?
そして新たな仮面ライダーハントの登場!!
ここから更に何かが起こる!?

次回、第16劇「復活」

次回もよろしくお願いします!!


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第16劇「復活」

ご無沙汰しております。

前回、幹部復活!という事でしたが一体どういうことなんでしょうか。

それではどうぞご覧ください。


「幹部が現れたってどういうことなの…?」

 

「わかりませんよ! と、とにかく現場へ向かいましょう!!」

 

「お、おぉ! 孝四郎さんあと頼むぜ!!」

 

 

 今まで倒したはずの幹部が再び現れた。にわかには信じがたい話しだが、とりあえず今は急いで真偽を確かめるしかない。

 

 

「…ったく、しゃーねーな。俺も行ってやるよ」

 

「え、狩馬さん兄さんもですか?」

 

「え、永理? まだ疑ってんのか?」

 

「え、はい」

 

「なんでだよ!! お兄ちゃんって呼んでくれてもいいじゃねーかよ!!」

 

「早く現場に向かいましょう!! 狩の兄さん!!」

 

「その呼び方は仮の兄貴に聞こえるからやめて!!」

 

 

 こうして兆、巧也、狩馬、永理の4人は現場へと急行した。街の一部はすでに荒れており、悲惨な有様になっている。永理は逃げ遅れた人たちを誘導し、残りの3人は爆発音が聞こえる方へと歩みを進める。

 

 

「信じたくなかったけど……」

 

「あぁ、兆、狩馬。構えろよ」

 

 

 3人の前にいたのは、倒したはずのウヅキ、サツキ、フミヅキ、ハヅキ、ナガツキの5幹部が破壊の限りを尽くしていた。怪人体であるので中身は不明ではあるが、少なくとも本人ではないだろう。刑務所の方にはすでに確認を取り、5人ともいるという連絡をもらっている。

 

 

「まーったくよー。せっかく汗水色々垂らしてやっつけたっていうのにさ。でも、俺が倒してないやつもいるし、リベンジマッチって事でいいのかな?」

 

「やるぞ。任務開始だ」

 

《FOUR》《NINE》

 

 

 2人はフィガンナイフを差し込み、狩馬は壱月チケットを差し込んで番式ギアナイフを構える。

 

 

「「「変身ッ!!!」」」

 

《フォースガンアクション!! トリガー!! ストレートライフル!!》

《ナインスガンアクション!! シェリフ!! エクスプロージョンミサイル!!》

《壱式!! ギアチェンジ!! ゲツヨウ!!》

 

 

 掛け声と共に引き金を引き、ギアナイフを差し込んで変身する。それに気づいた幹部達は一斉に走ってきた。

 

 

「今日はもう一度ぶっ潰す日だ!!」

 

「ハント開始だ」

 

 

 ハントはまずウヅキを撃った後、すぐさまサツキに蹴りを入れる。するとフォースで破ったサツキの外殻にヒビが入る。どうやら思っていた以上に壱式の力は大きいらしい。

 

 

「す、すげー…」

 

「ま、オーバーフローする前にケリつけねーとな……… ん? あれ?」

 

「ん?」

 

「お前…… 確か兆つったよな」

 

「あ、はい。あっ」

 

「あっ」

 

「やべっ」

 

 

 ここに来てまさかの正体がバレるという凡ミスを犯してしまった。しかし敵の攻撃は激しく、ツッコむ余裕がない。シェリフがミサイルで次々に爆発させ、なんとか塞いではいるものの、1人1人の能力が厄介であり、すぐに次の手をやられてしまう。

 

 

「おいおい!! 獲物が目の前にいたのかよくそっ!!」

 

「巧也さん助けて」

 

 

 シェリフ自身忘れていたのだ。幹部復活という嘘のような話しが出た為、焦りが出てしまったのだろうか。しまったと、ため息をつくがとにかく幹部達をどうにかすることが先決だ。

 

 

「やはり3人で幹部相手はかなり手古摺るな」

 

「なら、これでどうだ?」

 

 

 そういうハントは壱月チケットを外し、もう一枚別のチケットを取り出す。それは弍火チケットというもので、それを交換する形で差し込む。

 

 

《弍式!! ギアチェンジ!! カヨウ!!》

「うぉぉぉぉっっっ!!!!!」

 

 

 ハント自身の見た目は変わらないが、体中から燃え上がり、両手に火の球を作り出す。その火球を幹部達に向かって投げると、凄まじい勢いで炎が包み込む。

 

 

「どうだこのやろう!! これが弍式の力だ!!」

 

「火の力かぁ… 魔法使いみたい」

 

「お前もこうなるから覚えとけよ」

 

「妹さんには優しく接してるから許してほしいんです」

 

 

 シェリフは2人にまだ終わってないぞと喝を入れると、幹部達は火を振り払い姿を現した。外傷が見えるほど大きなダメージを与えている筈なのだが、まるでその動きは最初のようにピンピンとしている。

 

 

「どういうことだ!? こいつら一体…」

 

「巧也さん。言うことがあるとするなら、こいつら中身がないかもしれない」

 

「中身がないだと? 根拠は?」

 

「さっきからフォースの一撃喰らわしてるんだけど、全く手応えを感じない。わたが抜かれたぬいぐるみみたいな。ペラッペラというかさ」

 

「…… 何にせよ。俺と兆の攻撃が効いてないというのは確かだ」

 

 

 先ほどからトリガー達の攻撃より、ハントの攻撃の方が通っている。単純な火力不足だけではない。何か引っかかる。

 その時、幹部達は動きを止め、後ろからヤヨイが姿を現した。ハントはその姿を見るや否や銃を構え、今すぐにでも射撃できる体制を取る。

 

 

「何しに来た…!!」

 

「お?… くくくっ、どうやら困っているらしいな? 俺達の攻撃が効かないなってな」

 

「この幹部は何だ!!!」

 

「お前だな? 前から俺のシマで好き勝手してくれたガキは」

 

「それがどうしたこのゲスやろう。俺の質問に答えろ!!」

 

「荒いやつだ。いいぜ? 教えてやるよ。こいつらは俺の能力で作り出した雑魚1人1人にキラーズガンとデリートガンナイフを渡して使わせた」

 

「なんだと…!!?」

 

「ボスが試しにやるつったらくれるからよ。ま、時間は掛かったが元々の所有者の奴らの記憶を入れたら出来ちまった」

 

「待て!! 記憶を入れるってなんだ」

 

「質問が多いなお前。つまり、俺たち幹部は記憶の出し入れも自由自在って事だ」

 

 

 その事実を聞いた瞬間、彼ら元幹部の確認を取った時、様子がおかしいとの連絡も入っていた。どうやらそれは記憶を失っているからであったのだ。いつどこから盗まれたのかは分からないが、奴らであるなら造作もないのかもしれない。

 

 

「おいおい… ここに来て記憶奪う以外にも与える力とかふざけた事言ってくれるな」

 

「トリガーか。お前も記憶がないんだってな。可哀想な野郎だ」

 

「微塵も思ってもいないこと言っちゃってさ。で、だからと言って俺たちの攻撃が通らないのはおかしいんじゃねーか?」

 

「それもそのはずだ。俺の力はただ増やすだけじゃない」

 

「なに?」

 

「── 記憶から耐性を作る」

 

 

 そういうと止まっていた幹部達は動き出し、トリガーとシェリフの元へと走り出す。意味がわかった狩馬は守ろうとするが、ヤヨイが行手を阻む。

 2人もその言葉の意味は理解していた。2人と戦った記憶から、それぞれがそれに対応した硬さや柔軟さや力を身に付ける。つまり既存のフィガンナイフは幹部達からしたら克服したも同然なのだ。

 

 

「だから狩馬さんの攻撃は通ったって事かよ…くっ!!」

 

「ぐはっ…!! さっきよりも力が増している…!!?」

 

 

 ヤヨイが現れた事で、更に動きが良くなったのか。トリガー達は徐々に追い詰められる。ハントは何とか2人の元へと駆け寄ろうとするが、ヤヨイの嵐のような銃弾が行く事を許さない。

 ハントは銃で応戦しながら、隙を見てギアナイフを押し込み腰を深く落とし、銃を構える。

 

 

「くらえッッ!!!」

《キカンギアブレイク!!》

 

 

 炎を纏った銃弾が放たれると、ヤヨイはすかさず幹部達を盾にする。その瞬間、ハントは2人に合図を送る。逃すために時間を稼ぐつもりだ。

 

 

「狩馬さんあんたはどうするんだ!!?」

 

「俺は後から追いかける!! さっさと行け!!いいか? お前を捕るのは俺だ!!」

 

 

 逃げる彼らを追おうとするが、今度はハントがそれをさせない。再び銃を構え直し、ヤヨイ達を足止めする。

 

 

「いいのか? お前死ぬぞ?」

 

「妹残して誰が死ぬかよ。お前には恨みがあるんだ」

 

「妹だと?」

 

「お前に売られた妹だ。まぁ、何人もいる中でそんなの覚えてもいないだろうけどな」

 

「妹か。ん… お前まさか─── くくくっ…!!」

 

「な、なにがおかしい!!」

 

「巡り合わせというやつか? そういえばいたな。あの時の奴だろ? そうだよな?」

 

「覚えてもいない事を… デタラメを言う気ならやめとけ。頭ぶち抜くぞ」

 

「家族4人」

 

「…っ!!?」

 

「お前はなにも出来ずただ呆然としてるだけだったな。ハーッハハハハハハハハッッッ!!!!」

 

「ヤヨイィィィィィィッッッ!!!!!」

 

 

 怒りに任せて何発もの銃弾を放つが、ヤヨイはウォンテッドを大量に生み出し、その群れの中へと姿を消す。それでも尚、撃ち続けたが、ウォンテッド達がいなくなると、そこにはなにもなくなっていた。

 

 

「はぁ… はぁ……… くそっ…!!!」

 

 

 行き場のない怒りをそのままに、ハントはRIVERSへと戻って行った。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 幹部の復活だけならよかった。よくはないのだが、それに加えてこちらのフィガンナイフが効かないとなると今は手の施しようがない。唯一の頼みはギアナイフだけだ。

 だからこそ兆は研究室で幸四郎と共に頭を抱えながら、新たなフィガンナイフの製作を進めていた。

 

 

「テンスの派生… 2個に分ける。本当にちっちゃい子がやりそうな単純な事なのにさ。何でできないんだろうかねぇ…」

 

「焦る気持ちはわかるけど、やっぱりそう簡単にはいかないのが面白いじゃないか」

 

「さすが研究者。だけど俺は疲れてきたよ」

 

「大丈夫。できた時の喜びで疲れは一瞬で吹っ飛ぶよ」

 

「逆にどっと疲れきそう…」

 

 

 研究室では試行錯誤が繰り返され、一方の佳苗も幹部達の位置情報を何とか探ろうとしていた。しかしその尻尾を掴むことができない。もう何時間もの間、同じ作業の繰り返しで、自然とあくびが出て眠気を誘う。

 

 

「巧也〜? 全然見つからないんだけど…… あれ? 巧也?」

 

「巧也さんなら今、狩馬のお兄と話をしてます。あ、コーヒーです」

 

「ありがと。そっかぁ… 狩馬も大変ね」

 

「兄狩馬さんの方がですか?」

 

「… なんかあの人、永理ちゃん以外にも何か抱えてそうなのよ」

 

「私以外… あの方が兄であるとするなら確かに一つ目の目的は完了していますね」

 

「一つ目? あ、そっか…」

 

「はい。2つ目はヤヨイへの復讐です。ただそれだけじゃなさそうです。未だにわからない事が、金銭への異常な執着心です」

 

「そういえば兆ちゃんの正体バレちゃったんだっけ? ここに着くなり襲おうととしてたけど」

 

 

 狩馬はRIVERSへと戻った後、兆に対し暴力的になった。トリガーの賞金を手にする事ができれば、一生遊んで暮らせる事だろう。ただ、彼にとっては遊ぶ金ではない。もっと別に、やるべき事の為に使おうとしている。

 

 

「……… 私はどうすればいいんでしょうか」

 

「どうすれば、か… 狩馬の方も考えがあるんでしょうけど、今の状況じゃちょっと申し訳ないけど危険ね。兆ちゃんはうちにとってはいなきゃ行けない存在よ。永理ちゃんはできればこちら側でいてほしいわ」

 

「そうですか……よし! 妹(仮)として兄(仮)を止めながら、いつも通り皆さんのサポートができたらと思います!!」

 

「切り替えし早いわね」

 

「兆さんといたからでしょうかね。あはは」

 

「ふふっ、さてと、私も仕事頑張ろっかなぁ─── っ!! 永理ちゃん!!巧也呼んできて!!」

 

「ど、どうしました!?」

 

「幹部が現れたわ!!」

 

 

── またエリアAに幹部の出現が確認された。ヤヨイらしき人物はいないようだが、またいつ現れるかわからない。巧也は急いでRIVERSに指示を出した。

 

 

「俺と狩馬で幹部を抑える。兆と孝四郎はそのままフィガンナイフを、永理は現場で救助活動。佳苗はここに残っていてくれ。RIVERS出動だ」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 それから現場に急行した巧也と狩馬は、幹部達の傷が癒えている事に気づいた。ヤヨイの力は2人が思っている以上の力を発揮しているらしい。

 

 

「なるほど。一筋縄どころの話じゃないな」

 

「乗り掛かった船とは言ったが… 理由は何であれトリガーの賞金は貰うぞ?」

 

「…… あいつをどうする気だ?」

 

「悪いが命の保証はしない。俺には金が必要なんだ」

 

「ヤヨイの復讐だけなら金は必要ないはずだ」

 

「そういう事でもねーんだよ… 来るぞ!!」

 

 

 巧也はセイブドライバーにフィガンナイフをセットし、狩馬は壱月チケットを差し込む。

 

 

「「変身ッ!!」」

 

《シクスガンアクション!! シェリフ!! オートアオート!!》

《壱式!! ギアチェンジ!! ゲツヨウ!!》

 

 

 変身を終えると、それぞれが武器を構え、幹部達に一気に近づく。それと同時に幹部も一斉にこちらに近づいてきた。しかし、5幹部の能力発動により、かなりの苦戦を強いられている。

 

 

「倍加に硬化。それに加えて幻覚に空間操作、液体化か。化物揃いだなッ」

 

「あぁ、俺もそう思う。よくこんなのと戦ってたなあんたら!!」

 

「少し前の俺だったら同じ事を思ってたかもな!!」

 

 

 2人の銃弾が交差し、幹部との戦いが始まった。

 その頃、兆達に不思議な事が起きていた…




終わり!!閉廷!!以上!!

次回、第17劇「次のステージ」

そしてついに!!トリガーがパワーアップの新形態!!

次回もよろしくお願いします。


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第17劇「次のステージ」

どーも皆さん。ご無沙汰しております。そして明けましておめでとうございます。今年も仮面ライダートリガーをよろしくお願いします。

さて前回、ヤヨイの手により幹部が復活し、更にフィガンナイフへの耐性がついていた。こちらの攻撃が効かぬまま幹部達は再び現れる。

それではどうぞご覧ください。


「ハッ!!」

 

「オラッ!!」

 

 

 幹部達の能力に苦戦しながらも、シェリフとハントの連携で劣勢にはなっていない。しかし現状はハントの方を主力とし、シェリフは後ろから応戦するという形になっている。劣勢ではないにしろ、限界が来るのも時間の問題だ。

 

 

「ハァ… 逃げる事はできないし、暗い場所行けば幻覚が見えるし、かと言って攻撃すれば溶けるしかてーし、力つえーし最悪だな!!」

 

「本来なら、俺と兆が協力してやったやつもいる。それに前に交戦した時よりも力が増している」

 

「ナイフ切り替えながらやるしかねーな。課長さん」

 

「そうだな。単調な攻撃は無意味だ」

 

 

 攻撃をかわしながらフィガンナイフとチケットを取り出し、それぞれエイスガンナイフ、参水チケットに交換する。

 

 

《EIGHT》《SET》

《エイスガンアクション!! シェリフ!! ロックオンスナイパー!!》

 

《参式!! ギアチェンジ!! スイヨウ!!》

 

「狩馬!! 前は任せたぞ!!」

 

「最初からそのつもりだッ!!」

 

 

 ハントの両手から水が湧き、それを両腕に纏わせて前へ打ち出す。すると、大量の水が幹部達を取り囲んで動きを鈍らせる。鈍った隙を逃さず、スナイパーウエスタンで遠距離から5人を撃ち抜く。

 

 

「これでどうだ!? 少しは効いたか幹部ども!!」

 

「…… っ!! いや、まだだ!!」

 

「このやろっ…!!!」

 

 

 ジェル状になったハヅキが、水を通ってハントに纏わり付く。完全にホールド状態となり動く事ができない。そして水の包囲網は崩れ去り、幹部達は自由になると、戦略的にも弱い方、シェリフを狙って襲いかかって来た。

 

 

「わかってやっているのか!!」

 

「気をつけろ課長さん!! くそっ!! 離しやがれ!!」

 

 

 シェリフはすぐさまエイスガンナイフを抜き、セブンスガンナイフを差し込む。それから引き金を引いて、現れた銃弾で敵を跳ね除ける。

 

 

《セブンスガンアクション!! シェリフ!! バーストアサルト!!》

「生憎テンスはない。だが… 少しでも時間稼ぐ事はできる!!」

 

 

 アサルトウエスタンに変形させ射撃するが、こちらに集中しているせいもあり、フミヅキの力で銃弾は遅くなり、容易にかわされてしまう。その後、近づいて来たウヅキとサツキによるダブルパンチによる威力で吹き飛ばされる。

 

 

「マジかよ!!? …ちっ!! これで離れろ!!」

《弍式!! ギアチェンジ!! カヨウ!!》

 

 

 ハントは力づくでチケットを交換し、弍火チケットを差し込む。体から炎が燃え上がり、そのままハヅキを剥がすと、他の幹部にも火球をぶつけ怯ませる。それから急いでシェリフの元へ駆けつけた。

 

 

「おいおい冗談抜きで大丈夫か?」

 

「あ、あぁ… ゴホッ!! なんとかな…」

 

「もろに食らってたぞお前。無理すんな。ここで休んでろ」

 

「問題ない。あいつが来るまで時間を稼ぐ」

 

「あいつになんでそこまで賭ける事ができる? 話しに聞きゃお前、トリガーに親殺されてるんじゃねーのか?」

 

「あぁ、そうだ。トリガーは憎い。必ず逮捕するつもりだ… だが、まだあいつが犯人と決まった訳じゃない。それに兆は…… RIVERSの仲間だからな」

 

「……… わっけわかんねぇよ。本当に」

 

「俺もそう思う」

 

 

 シェリフは立ち上がり、セブンスからナインスガンナイフに切り替える。そして幹部達が近づいて来たと同時に引き金を引く。巨大なミサイルが現れ、幹部を弾き飛ばす。

 

 

《ナインスガンアクション!! シェリフ!! エクスプロージョンミサイル!!》

「まだやれるな?」

 

「それはこっちのセリフだぜ?」

 

 

 2人は銃を握り締めると、幹部達へ一斉に駆け出した。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 RIVERSの研究室では、フィガンナイフの製作が終わらず、完全に兆と孝四郎は意気消沈していた。数時間もの作業で疲れもあってか、思うように事が進まず、先程から同じ事を繰り返すようになっている。

 

 

「課長に狩馬さん大丈夫かな……」

 

「大丈夫だろ…… 多分」

 

「さっきから同じ失敗ばかり。このままじゃ終わらないし、課長達の身が心配だよ」

 

「わかってるよー… なんでダメなんだろうなぁ…」

 

 

 試行錯誤を繰り替えながらテンスのデータを、2つのフィガンナイフに移そうとしているが、そもそものデータが両方に送れないのだ。

 兆は椅子に座って回りながら、ずっと天井を見上げている。

 

 

「資料にもそれらしい事は書かれていないし… 兆くん。役に立たなくてごめん」

 

「いやいや、別にあんたのせいって訳じゃ…」

 

「いいんだ。元々、僕は兆くんよりフィガンナイフについては素人同然。少しできたからって調子に乗っていたのかな…?」

 

「孝四郎さん……… あーもう!! こうなりゃ意地でもやってやる!! 無駄にはさせねーぞこらぁ!!!」

 

「ちょ、ちょっと兆くん!!? そんなデタラメにやったら…!!」

 

 

 何かが切れてしまった兆は、フィガンナイフのデータを適当に弄り、無理矢理入れようと試みた。わかっていた事だが、逆効果となってエネルギーが2つのフィガンナイフから溢れて爆発する。

 その音を聞きつけて、佳苗が慌てて研究室に入ってきた。

 

 

「な、なにッ!? どうしたの!?」

 

「あ、あぁ… 佳苗さん。ゲホッゲホッ!! オゥエェッホン!!… やっちゃった……」

 

「はぁ… 全くなにしてるのよ」

 

「へへっ」

 

「笑い事じゃないってば!! それで、やっぱりまだできない?」

 

「もちろんっす」

 

 

 もう半分諦めていた。テンスの強大な力を分けようなんていうのが、そもそもの間違いではなかったのかと。アフロの髪型となった兆はそのまま床に寝転がってゴロゴロとし始める。

 するとその時、RIVERSに永理が帰ってきた。佳苗が迎えると、どうやら救助が終わったらしく、現状報告も兼ねて戻ってきたらしい。

 

 

「兆さん。大丈夫ですか?」

 

「大丈夫に見える?」

 

「見えなくもないです。どうしたんですかその髪型?」

 

「あぁこれ? 爆発した時ように買っておいたの」

 

 

 帽子を外してアフロを取り、再び帽子を被る。ジョークも入れてくる彼であったがいつもの元気はないようだ。

 

 

「… うまくいってないんですか?」

 

「まぁね… 半分諦めてる。もう半分は僅かな希望にしがみ付いてる気力」

 

「…… あの兆さん」

 

「なーに?」

 

「私、兆さんと色んな場所へ行ってわかったんです」

 

「どんな事が?」

 

「本当にお馬鹿な人だなーって」

 

「なんだとこらぁ!!!?」

 

「── だけど」

 

「ん?」

 

「本当に凄い人だなって思いました」

 

「あ、あぁそりゃ、どうも」

 

「だから諦めないでください。私も協力します。私がいれば百人力です! だって毎回そうだったでしょう?」

 

「……… なにを協力するんだか。まーったく、どっかネジ外れてるんだよなぁ永理は」

 

「それは兆さんも同じです」

 

「俺は違うもんね」

 

 

 すると研究室は和やかな雰囲気に変わり、兆と孝四郎の目に正気が戻る。スイッチを切り替え、フィガンナイフの製作を進めた。

 

 

「私が全力で応援しますからね!!」

 

「やかましい」

 

「肩でも揉んであげますよ」

 

「いらん」

 

「まぁまぁ遠慮しないでください!!」

 

「… ったく、仕方ねーな───」

 

 

 永理が兆の方に触れた瞬間。彼の脳にフラッシュバックが起こった。自分の知らなかった何かが見える。ただそれは一瞬で、溢れんばかりの情報量だった。どこかにいる光景。薄暗い部屋の中。そして目の前には男が立っている。

 それが止まると、兆は急に脱力し、椅子から落ちてしまった。

 

 

「き、兆さん!!? どうしました!!?」

 

「い、今のは……」

 

「力加減間違えました…?」

 

「あぁ、いや…… あの光景は一体なんだったんだ…」

 

「あの光景?」

 

「なんでもない。それよりなんか、いい方法が思いついちまったな」

 

 

 そういうと兆は片方のみではあるが、何度もやってできなかったフィガンナイフをあっという間に完成させてしまったのだ。これには孝四郎も目を丸くした。それから兆はもう一つの方のデータを打ち込み。完成したフィガンナイフを持って行く。

 

 

「兆くん… これはどうやって──」

 

「説明は後々。それより早くヒーローが駆けつけねーとな。孝四郎さんそこにデータ打ち込んだいたからもう一つの方頼んだぜ? んじゃ、行ってくる」

 

 

 RIVERSのメンバーに手をふると、バオを呼び出し跨がる。しかし全く動いてくれず、静かに涙すると猛スピードで走り出した。振り回されながらも、バオは目的地へと急行する。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 現場ではシェリフとハントはまさに絶体絶命の危機に陥っていた。両方体力の限界もそうだが、シェリフは万策尽き変身解除に追い込まれ、ハントは過度なフォームチェンジによるオーバーヒート状態になっていた。

 

 

「やべぇ… 一旦変身解除するぞ…!!」

 

 

 ついに限界に到達してしまった狩馬も変身解除してしまう。徐々に近づいてくる幹部達の中には、ヤヨイも来ていた。

 ヤヨイはこの状況を楽しんでいるようで、2人の哀れな姿を見て笑っている。無理だとわかってはいるものの、巧也は銃を構えた。

 

 

「それを構えてどうするつもりだ?」

 

「本能がそうさせた」

 

「くくくっ… そりゃ結構だな。さて、この状況をどうするつもりだ? あ?」

 

「悪いが笑っていられるのも今のうちだ。あいつが来る頃だろうからな」

 

「あいつ? はっ、まさかトリガーを待っているとでも?」

 

「そうだ」

 

「お前の父親と母親を殺したあいつをか?」

 

「そうだ」

 

「馬鹿か。なにを根拠にそう言えるんだ?」

 

「トリガーは… 兆はこういう場面で来るようなどうしようもない奴だからな」

 

「そうかよ。勝手に妄想垂れてろ…… さぁて、そろそろ2人のゴミを始末するか。これで俺の位も上がるだろうよ」

 

 

 ヤヨイと幹部達は一斉に銃を構え、引き金に指がかけられた。

 その時、黒い馬が巧也と狩馬の頭上を跳び、幹部達を蹴り飛ばした。ヤヨイはすぐに体勢を立て直し、こちらを睨み付ける。それから馬から振り落とされ、地面に叩きつけられた男がゆっくりとキメ顔をしながら立ち上がる。

 

 

「遅いぞ── 兆」

 

「巧也さん待った?」

 

「かなりな… できたんだろ?」

 

「もちろんっすよ!」

 

「なら行ってこい。思いっきり暴れろ!!」

 

「そのつもりだぜ」

 

 

 それから兆は幹部の前に立ち塞がる。ヤヨイは笑う。無理もないだろう。この数相手に1人で勝てるはずがないのだから。

 

 

「こっちは6人。お前は1人。雑魚どもならまだしも、俺たちが相手だ。死ぬぞお前」

 

「そりゃブーメランだぜ。俺は勝つからよ」

 

「ほう。どうやって勝つつもりだ?」

 

「見てればわかるさ」

 

 

 兆は懐からフィガンナイフを取り出す。それは完成したばかりの新作であり、この状況を打開できるアイテム。そして顔の横へ持って行き起動させる。

 

 

「トリガーは次に進む。俺は… 進化し続ける!!」

《 NEXT 》

 

 

 そしてフィガンナイフ… ネクストイレブンをセイブドライバーに差し込み、ハンマーを起こし、引き金に指をかける。

 

 

「変身ッ!!!!!」

 

 

 引き金を引くと、巨大な銃が現れ、砂嵐で舞い上がったファーストリボルヴの装甲が装着される。砂嵐が止むと、それから新たな装甲が夕陽が現れると共に宙に舞い、銃がそれらを撃ち抜いて行くと、装甲の上から更に纏うような形で装着される。

 

 

《ネクストガンアクション!! フォローイング!! トリガー!! イーハーイレブン!!》

 

「おいウォンテッド!! よく聞いておけ!! 今日は俺の!! ─── 新たな誕生日だ」

 

 

 変身完了と共に幹部達が近づいてくる。5人の能力が1人の男に集中する。逃げられるわけが無い。逃げようが無い。

 

 

「……(新たなフィガンナイフを作ろうがこの数相手になにもできるはずがない)」

 

「── って思ってそうだな」

 

「な…ッ!!?」

 

 

 ヤヨイは一瞬なにが起こったのかよくわからなかった。何故なら、目の前からトリガーの姿が消えてしまったのだ。辺りを見渡すが全く見えない。気がついた時には幹部全員が吹き飛ばされているということだった。そしてヤヨイの目の前にはいなかったはずのトリガーが出現した。

 

 

「お前… 一体なにをした!!」

 

「見てればわかるっつったろ?」

 

 

 立ち上がったサツキが襲い掛かってきたが、回し蹴りであの硬い装甲を割り、ウヅキが迫ってきた時には、既にトリガーは消えていた。

 

 

「あいつまさか…!!」

 

 

 ウヅキが気づいた時には遅かった。ウヅキとサツキは爆散し、残りの幹部達も無残に立てなくなるほどダメージを与えられていた。

 

 

「消えていない!! 速過ぎるのか!!」

 

 

 そう。トリガーは目にも止まらぬ速さで動いていた。ヤヨイもなんとか抵抗しようとウォンテッドを大量に出すが、一瞬で倒され無意味に終わってしまう。そしてまた見えた時には一気に形勢が逆転している。

 

 

「あれぇ〜おかしいな。どっかの幹部さんは俺を… なにするんだっけ?」

 

「調子に乗るなよガキが…!!」

 

「その言葉。今の状態だと苦しい感じだな?」

 

「ほざいてろッ!!」

 

「それじゃあ… 決めるぜ」

 

 

 引き金を引いてから少し待ち、ヤヨイ達が構えた瞬間に駆け出す。そして残りの幹部をまとめて蹴り上げ、地上に向かって蹴り飛ばす。蹴り飛ばした幹部よりも早く地面に着地し、目の前に来ると同時に突き出すように蹴る。

 

 

《ネクスト!! ファイア!!》

「今日の俺も!!!」

 

「ちっ…!!」

 

「勝利の日ィィィィィィッッッ!!!」

 

 

 凄まじい一撃と共に大爆発を引き起こし、幹部達を一掃した。しかし、なんとか他幹部を盾にしたヤヨイはその場から逃げてしまう。それに気がつかないトリガーはいつもの決めポーズを巧也と狩馬に向けてやっている。

 

 

「狩馬さん。流石に今はやり合えないでしょ?」

 

「……… 何もみてなかったのか」

 

「え?」

 

「ヤヨイは逃げたぞ」

 

「えぇ!? いつ!?」

 

「まぁ…… よかったがな」

 

「んん? なんて?」

 

 

 そして3人は肩を組みながらRIVERSへと帰ろうとするが、兆は後ろから突き刺すような視線を感じ振り向くと、そこには誰もいなかった。気のせいだと思い前を向いて歩き出す。

 

 

「── やっぱり負けたか」

 

「最初から分かってはいたが、こうもあっさり負けるとなるといよいよだな」

 

「どうする兄さん?」

 

「どうするもこうするもない。結局、今のままでは我らには勝てん。ボスの命が出るまで待つ」

 

「そうだね。そうするよ」

 

「…… このエリアAは平和過ぎる。ムツキはなにをしているのか… ボスは何故あいつを気に入っておられるのか…」

 

「兄さん?」

 

「行くぞ。ここにもう用はない…… 我らは他にやるべきことがある」

 

 

 一難去ってまた一難。兆達の知らぬ所で、二つの影が動き出そうとしていた。




年明けちゃっ…たぁ!!

という訳で、今後ともご贔屓に。良いお年を。

次回、第18劇「後のステップ」

次回もよろしくお願いします!!


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第18劇「後のステップ」

皆さんご無沙汰しております。

前回、ついに完成したトリガーの新形態により幹部達を圧倒しましたが、あと一歩の所でヤヨイを逃してしまいました。なんてことを…

それではどうぞご覧ください。


 今、私はBAR TRIGGERに足を運んでいた。酒が弱いので兆さんとミルクを飲んでいるがこれが格別だ。他のミルクを寄せ付けない濃厚で喉をスッ通る。素晴らしい味だ。こんな物がこの世に存在していいものかと、私はそう思いながらもう一口飲むのであった。

 

 

「いやそろそろ返して」

 

「いいじゃないですか。減るものじゃありませんし」

 

「現に減ってるんだよ中身が。お前がプハァーする度に3分の1消えてんだよ」

 

「いいじゃないですか。一杯くらい」

 

「さっき一口つったのに一杯になってるじゃねーかよ!?」

 

「くださいよ!!」

 

「逆ギレ!!?」

 

 

 兆たちはあの一件が終わった後、いつものバーでゆっくりとしていた。永理だけならよかったのだが…。

 

 

「俺の妹がよこせって言ってんだ。さっさとよこせトリガー」

 

「偶にはゆっくりしようかと思ったが… これか」

 

「まぁまぁ賑やかなのはいい事じゃない」

 

「久しぶりに研究所から出ましたよ…」

 

 

 狩馬、巧也、佳苗、孝四郎と兆の跡をつけて来た。で、結果がご覧の通りの有様である。本人は泣きたくて仕方がない。マスターはグラスを拭きながら微笑んでいるが、そうじゃないだろ!?と、兆は心の中で叫んでいた。

 それから隅の方に縮こまっているガンホーレとイッシュウ。警察が来たとなるとでかい顔が出せないのか、見た目があれじゃ猫だ。

 

 

「そうだ。兆」

 

「なんすか巧也さん」

 

「俺のフィガンナイフも完成した。これで戦力にはなるだろう」

 

「元から戦力内なんだよなぁ… ま、それはネクストイレブンと違ってパワー型だから巧也さんにはいいかもねー」

 

「… まるで人が力だけと言っているように感じるな」

 

「いやいや…… あ、やべっ。マスター今の話はその……」

 

 

 兆がトリガーであるという事をマスターには伝えていない。彼は心配させまいと、今まで黙っていたのを忘れており、うっかり口が滑ってしまった。そしてマスターは「知っている」と一言。

 

 

「…… へ?」

 

「お前が何をしているのか。既に把握済みだ」

 

「な、え、なんでぇ!?」

 

「最初から気づいていたが、さっき巧也課長と話しをしてな。それで確信した」

 

「なんでっ!? いつぅ!? 言っちゃったのぉ!!?」

 

 

 そんな彼らの所に連絡が入る。どうやらウォンテッドが出現したようだ。兆、巧也、狩馬の3人はすぐに現場へと向かう。後の3人はお代を置いてRIVERSへと戻る。

 

 

「嵐のように去って行ったな……全く」

 

「最近、相手がいないな」

 

「はぁ!!? 別に兆のやろうがいなくても俺は構わないがな!!」

 

「寂しそうだ」

 

「…………」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 現場には無数のウォンテッドが人々を襲っていた。エリアAにウォンテッドが集中して来ているのは必然的だ。ここには幹部を倒せる者が3人もいる。すぐにでも1人潰したいのだろう。

 

 

「ま、こんな雑魚相手には負ける気しないけどね!!」

 

「早速試してみるか… ん? 連絡?」

 

「巧也さん! RIVERSから?」

 

「──── わかった。どうやらヤヨイが近くにいるらしい。そっち頼めるか?」

 

「お任せ!!」

 

 

 別の場所にてウォンテッドが出現し、それが幹部のヤヨイとなれば狩馬も付いていく。この数相手に勝つか否か、巧也は確信していた。勝利じゃない快勝するという事を。

 そして彼は新たなフィガンナイフ… アフタートゥエルブを取り出し、起動させる。

 

 

《AFTER》

「… 確かに力任せな所はあるかもしれないな。だが、それも悪くないだろう」

《SET》

 

 

 差し込んだ後、巧也は構える。眼前の敵はこちらに気づいて向かって来ており、この雪崩に呑みこまれたら終わりだ。

 

 

「日頃のストレス発散だ…… 変身ッッッ!!!!!」

 

 

 引き金を引くと、巨大な銃が現れて敵を吹き飛ばす。そして砂嵐で舞い上がったシクスオートの装甲が装着される。砂嵐が止むと、それから新たな装甲が夕陽が現れると共に宙に舞い、銃がそれらを撃ち抜いて行くと、装甲の上から更に纏うような形で装着される。

 

 

《アフターガンアクション!! フォローイング!! シェリフ!! イーハートゥエルブ!!》

 

 

 ウォンテッドたちがシェリフの周りをジリジリと囲む。それを見たシェリフは軽く首を横に振り、余裕な態度を見せた。次の瞬間襲いかかって来たウォンテッドだったが、シェリフの一発のパンチで複数の敵を巻き込み吹き飛ばした。

 

 

「… 全員捕縛する」

 

「ガルォォォォォォ!!!!」

 

「ハッ!!」

 

 

 1人1人に強烈な一撃を叩き込んでいく。明らかに、はっきりとわかる。今までのパンチ・キック力とは比べ物にならないほど威力が増している。攻撃を加える度に、巧也自身もその強さを感じ取っていた。

 

 

「すごい… まるで相手にならない」

 

 

 群れで攻撃してくるが、その装甲に傷がつく事をない。攻撃されたということはわかるのだが、痛みや衝撃は感じられないのだ。

 

 

「レベルも数字も違うようだな」

 

 

 全身に力が漲る。その力が最大にまで達した時、巧也のパンチが繰り出されると、辺りに衝撃が走って目の前の敵を全て吹き飛ばした。囲む的には回し蹴りを行うと、面白いように吹き飛んで消滅していく。みるみるうちに数が減り、ヤヨイの能力が追いついていないようだ。

 

 

「さすがに驚いた。ここまでの力を有しているとはな。慣れるとこんなものか」

 

「キシャァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

 群れる敵は恰好の獲物。まとめてやるにはちょうどいい。ウォンテッドの足を掴んで振り回し、思いっきり片手で投げ飛ばすと、まるで爆弾のように着弾点が爆発する。

 

 

「すぐに終わる。足掻くのはこれで最後だ」

《アフター!! ファイア!!》

 

 

 もう一度引き金を引いて、右脚をグッと後ろに下げて力を込める。ウォンテッドが群れた時、それと同時に円を描くように回し蹴りを行うと、凄まじいエネルギーを纏った蹴りが、辺りを巻き込んでえぐるように敵を粉砕する。その衝撃でシェリフの周りに大きな穴が開いた。

 

 

「人が近くにいて使用するのは、よした方が良さそうだ…」

 

 

 RIVERSに連絡をしながら、兆たちの場所へと向かう。佳苗は先ほどから兆たちに連絡しているが、驚いた事に通信が途絶えてしまっているというのだ。嫌な予感を感じつつ現場へと向かう。その陰から何者かが見ていたが、シェリフはそれに気づいていないようだった。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「遅い遅い遅い!!!」

 

「燃えろ!!!」

 

 

 トリガーへと変身し、ネクストイレブンでヤヨイが出すウォンテッドをその圧倒的スピードで片付けていく。一方、ハントの方は弍式の力で敵を炎で包み込み焼失させる。

 2人の強さに完全に押されいるヤヨイは焦りを隠せなかった。明らかに逃げ腰となっている。

 

 

「逃げる気か? 悪いが今の状態なら、鬼ごっこで俺が鬼だったら一息に全員仲間にしちゃうね!!」

 

「それは増え鬼だ!!」

 

「え?」

 

 

 それから2人の必殺技が飛び出し、周りの敵を全て倒すと、残ったヤヨイは逃げようとした。もちろんそれを逃すはずなく、トリガーはヤヨイを持ち上げて地面に叩きつけると銃を頭に突きつける。

 

 

「おーっと、逃さねーよヤヨイ」

 

「これで勝ったと思うなよ…!!」

 

「はっ、それはどの口が言ってるのかね? 状況見てみろよ」

 

「お前ッ…!!」

 

「んじゃま、今日の俺も勝利の日と行きますかね」

 

 

 セイブドライバーの引き金を引こうとした時、ハントがトリガーの腕を掴みそれを阻止する。何をやっているのか当然わからないトリガーは彼に聞く。

 

 

「何すんのさ」

 

「こいつは俺がやる。こいつは…… 俺の仇だ」

 

「別にいいけど… あんたじゃ殺しかねないだろう」

 

「何人も殺ってるお前が言うことか?」

 

「い、痛いところを…… というか、好きでやってるわけじゃ」

 

「いいから、どけ」

 

 

 トリガーを退かすと、ギアハンターの銃口をヤヨイの頭に突きつける。カチリと準備を終え、引き金に指をかける。その光景を見てヤヨイは笑う。何が面白いのか意味がわからないし、そういう状況ですらない。

 

 

「気でも狂ったのか?」

 

「クククッ…ッハハハハハハハハ!!! お前の妹は上出来だなぁ」

 

「は…?」

 

「まさに天性の才能だった。もう少し遊んでいたかったがなぁ?」

 

「おい、何が言いたい…!!!」

 

「売る前に味見でもしときゃよかった」

 

「黙れッ…!!!」

 

「買われた所はどんなだったろうな? 記憶を失うほど遊ばれたかもなぁ?」

 

「黙れぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!!」

 

 

 引き金を引こうとしたその瞬間、ハントの手が痛みを覚える。ギアハンターは彼の手から落ちてしまい、その隙を狙ってヤヨイは拘束から脱出する。

 

 

「だから逃さねーって言ってんだよ!!!」

 

「トリガー… お前は邪魔だ」

 

「うおっと…!!?」

 

 

 溢れんばかりのウォンテッドの大群を出し、トリガーの視界を遮る。一瞬ではあるが成功したヤヨイは、すぐにハントの元へ近づき耳元で何かを言うと、そのまま消えてしまった。

 一気にウォンテッドを片付けたトリガーはハントの元へと駆け寄る。

 

 

「あーくそっ!! 何してんのよ狩馬さん!! 逃げちゃったじゃん!!」

 

「………… 悪かった」

 

「え、急にどうしたの…? あ、えっとー… あいつの話はきっと嘘だ嘘。そんなひでーことされてたら永理も忘れないって!! それにほらあいつ強いし!!」

 

「そうだな…… 俺は用がある。帰ってろ」

 

「どこ行くのよ?」

 

「お前には関係ない」

 

 

 そういったハントはそのまま何処かへ行ってしまった。それより先程のハントの手の痛みは、トリガーは見えてはいたが確信はできていなかった。遠距離から何者かがこちらに攻撃を行っている可能性があるのだが、あまりにも遠過ぎる。すぐに狙った方角を見たが、それらしい人物は見えなかった。

 

 

「狩馬さんが何処いったのかも気になるけど… それを撃った犯人も気になるな。とにかく巧也さん達に話そう」

 

「兆!!」

 

「おぉ、巧也さん。そっちは終わったの?」

 

「あっけなくな。そっちはどうした? 狩馬と一緒じゃないのか?」

 

「ヤヨイは逃げて、狩馬さんはどっか行っちゃって…」

 

「ヤヨイを追いかけた可能性があるな」

 

「やっぱり…?」

 

「他には?」

 

「あっと、あいつ以外に誰かいたっぽい」

 

「新手か?」

 

「わかんない。だけどその確率は高い」

 

「わかった。今は狩馬を追うとしよう。きっとエリアIだ」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「来たか」

 

 

 ここはエリアIの何処かの地下。狭い部屋の中にはヤヨイと狩馬だけで、あとは誰もいない。ヤヨイは部屋の奥で椅子に座り、狩馬はその目の前に立ち、警戒しながら話しをする。

 

 

「さっきのはどういうことだ」

 

「まぁ何…… 前から取引はしていただろう?」

 

「……… それがどうした」

 

「お前の妹に何があったか教えてやるし、あのトリガーの正体を教えてやる」

 

「…… トリガーの過去はどうでもいい。俺は妹に何があったのかを知りたいだけだ」

 

「それなら俺が言った通りの金額集めてこい。トリガーをやりゃすぐ集まるだろ?」

 

「わかってる」

 

「今まであんなに"芝居"やっといてキツかっただろうなぁ? 意外にもあいつらがノってくれて助かったぜ」

 

「遠距離から攻撃してきた奴らか。あいつらの話は聞いてないぞ」

 

「こっちは命かかってんだ舐めるな。早く集めてこい」

 

「…… お前の部下になった覚えはないからな」

 

「おー怖い… まぁなんだ。お前の今まで行いを良しと取り、特別にいいもん見させてやる」

 

「何を見せる気だ?」

 

「この映像だ」

 

 

 部下にノートパソコンを持って来させると、それからファイルを選び映像を出すと、画面を狩馬の方へ向ける。その映像を観た狩馬は絶句し、そして怒りが湧いた。

 

 

「さすがに嘘だろ…?」

 

「いや、これは真実だ。これが正体、これがトリガーなんだよ」

 

 

 その映像にはトリガーが民間人を次々に撃ち殺しているものだった。流石に怪しすぎるが、どこからどう見てもトリガーなのだ。変身を解くと、その素顔がはっきりと兆であることがわかった。

 

 

「いつ、どこで撮った。これで俺を釣ろうってか?」

 

「これはお前が力を手に入れる前のものだ。トリガーは殺人鬼。何故あいつに記憶がないのか。何故あいつはセイブドライバーを託されたのか。何故フィガンナイフを開発できたのか…… その答えはあいつが根っからの殺し屋だからだ。それをボスが読み取ったに違いない。そしてわかるか? あいつは信用を取ってから狙うんだ。次の標的はもちろん… RIVERSだ」

 

「そんなバカな……」

 

「俺を殺したいのはわかるが、大事な妹をあの男に殺されるかもしれない。優先順位はわかるよな? この映像を見せたのはオレの疑いを晴らす為でもある。お前の親を殺った俺が信じられるはずがない。ただ俺は金さえ貰えればそれで構わない。約束は絶対に守る。なぁ?」

 

 

 それを聞いた狩馬はその場を後にしようとするが、ドアを開けてからヤヨイの方を向き睨みつけながら言い放つ。

 

 

「元からお前なんか信じきってない。お前の言う事がいなくなった永理と辻褄があった。それだけだけだ。これが終わったら次はお前だ」

 

 

 ドアがバタリと閉まると、すぐに笑いが込み上げてくる。

 

 

「物騒な男だ。まぁそれでいいがな」

 

 

 そうしてヤヨイは不気味な笑顔を浮かべる。

 暫くしたその頃、エリアIに向かおうとしていた兆たちは途中で狩馬を見つける。しかしそれは戦いの火種が付いた瞬間でもあった…。




終了です……
強化フォームのアフタートゥエルブがサラッと登場しました。力だけならネクストイレブンには負けません。
そして何やら不穏な空気…どうなることやら

次回、第19劇「仇」

それでは次回もよろしくお願いします!


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幹部編
第19劇「仇」


皆さんご無沙汰しております。

前回、またもヤヨイとウォンテッドの出現でしたが、アフタートゥエルブが圧倒。ヤヨイをトリガーとハントで押したが、後一歩のところで取り逃しました…が、それも全てお芝居だった!!?そして出会う3人。果たして…

それではどうぞご覧ください


 当然のことながら、事情を知らなければ互いの勘違いが起こる。それは後に争いにまで発展するかもしれないし、最悪の場合は罪を犯してしまうかもしれない。内容が濃ければ濃いほどそういうリスクが高まる。

 

 

「あ、狩馬さん」

 

「…… トリガー」

 

 

 狩馬はヤヨイから聞いた事は信じきってはいないし、そもそも親を殺した張本人の話をまともに聞くはずもない。それが本当か嘘などどうでもいい。とにかくトリガーを捕まえ金を貰う。そして失ってしまった永理の全てを聞き出す事が今の彼を駆り立てるものだ。

 

 

「トリガー。お前も俺の表情見て察してるだろうが、今から楽しいお喋りなんかしねーぞ」

 

「まぁ、いつかこうなるとは思ったけど。急じゃない?」

 

「俺は金がいるって前に言ったよな? お前を警察に突き出せば一生暮らせる金が手に入る。それさえ手に入れれば、俺は永理を幸せにできる」

 

「あいつ金より食いもんの方が好きよ。お兄さん? それにRIVERSだって警察なんだけど」

 

「RIVERS以外にお前の正体を知る奴はいない。前に課長さんが協力関係にあるって言ったが違うな。完全にお前のことを信じきっている。つまり仲間意識があるって事だ。それにトリガーの件でうるせーはずのRIVERSがいつだかを境に静かになった。これはもうそっちにトリガーの首出しても穏便に済ませちまうだろうよ」

 

「…… そうなの?」

 

 

 兆は巧也の表情を窺うと、いつも通りの顔ではあったものの、頬に汗が伝っているのがわかった。内心は焦っているらしい。

 それから巧也はキカンドライバーを腰に装着すると、壱月チケットとギアナイフを取り出す。それと同時に兆もセイブドライバーを装着し、ファーストガンナイフを取り出した。

 

 

「俺は別にお前に恨みがあるわけじゃない。金の為でもあるが、お前のような奴を世に歩かせておくと、妹の永理まで危険に晒すからな…… 今ここで潰す」

 

「俺はそんな危険な男じゃない。たまーに狼になるが、それはワイルドな俺の演出だから」

 

「訳がわからない事を言うな。人殺しも大概にしろよ」

 

「最悪の場合はそう言う事にもなるけど、俺は……」

 

「ウォンテッドの話じゃねーよ」

 

「じゃあなんだって言うんだよ」

 

「……… もういい。調べれば出てくるだろうぜ」

 

「なんだかよく分からないけど、やるしかないなら!!」

《ONE》《SET》

 

「おいそれと…… 永理が食い物の方が好きなのは知ってるぜ!!」

 

「「変身ッッッ!!!!!」」

 

《ファーストガンアクション!! トリガー!! リボルヴリボルバー!!》

《壱式!! ギアチェンジ!! ゲツヨウ!!》

 

 

 互いに変身最中に駆け出し、互いの硬く握った拳で頬を殴る。バキッという音を立て2人は後退し、銃を構えてほぼ同時に撃ち放つ。

 

 

「ぐっ…!」

 

「くぅ…!」

 

 

 ギアハンターの方が威力が高い為、トリガーが軌道をずらそうと銃弾に向けて放ったが、威力で負けてしまった。そのままトリガーに向かって弾は飛んでいき吹き飛んでしまう。

 

 

「初期とか舐めてんのか? さっさと使えよ… ネクストを!!」

 

「このままじゃ勝てないって思ってる?……俺もそう思う!!」

《NEXT》《SET》

 

「使った所でだがな!!」

 

 

 ハントはチケットを抜き取り、新たに肆木チケットを取り出して差し込む。ギアナイフを押し込んでトリガーよりも早くフォームチェンジを行う。それから地面に手を置くと、そこらに生えたなんの変哲もない雑草が纏まってツルのようになり、トリガーに巻き付く。

 

 

《肆式!! ギアチェンジ!! モクヨウ!!》

「ほらよ!!」

 

「ちょちょちょ!!? 使えって言ったのはあんたでしょうが!!」

 

「待つとは一言も言ってないぜ!!」

 

「待つのが基本なんだよ!! いででででででっ! し、しまるぅ…!!」

 

 

 ネクストガンナイフを持ったまま、何もできずに体が締め付けられていく。ただの雑草の塊のはずなのにも関わらず、その強度が異常だ。力を入れようにも、関節部分を締め付けて力を入れ難くされている。さすがハンターというべきだが、褒めている場合ではない。

 

 

「これで終わりだ。狩ってやる!!」

 

「かっこつけてファーストからやらなきゃよかった…!!」

 

 

 ギアハンターに壱式チケットを差し込んで放とうとする。だが、突如横から強烈な打撃を喰らい、ハントは吹き飛んで、弾は明後日の方向へと飛んでいく。すぐに体制を立て直し、攻撃された方向を確認すると、アフタートゥエルブに変身したシェリフが立っていた。

 

 

「課長さんッ…!! なんで邪魔しやがった!!」

 

「…… ヤヨイに何か吹き込まれたんだろ?」

 

「なに…?」

 

「お前は確かに奴に憎悪を抱いてるに違いない。ただお前もヤヨイもそれをわかって取引をしているんだろう? 狩馬。これ以上奴に従う事はない。真実を話せ」

 

「まるで知ったような口振りだな。それが事実だとして、俺になんの利点があるってんだ? あ?」

 

「内容によってはお前を手助けできる…… それに永理自身がそれを望むのか?」

 

「…… うるせーよ… お前たちにはわからないんだよ。何十年と探してやっと会えた妹なんだよ。ただ何かしなければ永理の記憶は戻らない……!!!!」

 

「なに? 狩馬……!!」

 

「今日はここまでだ!!… トリガー。いつ何時もお前を狙ってるからな」

 

 

 雑草を壁のように変形させ視界を遮り、アフターで破った先には誰もいなくなっていた。ハントが離れると同時に、トリガーを縛っていたツルが弱まって頭から落ちてしまう。

 

 

「い、いったぁ!!!」

 

「…… 兆。聞いたか?」

 

「ん? 聞いたよ。やっぱりというか予報通りというか… 永理絡みでしたかー」

 

「それにしても妙だった。言動にしろ行動にしろ、お前の何かを知っているような感じでもあったな…」

 

「やっぱりそれもヤヨイだろうね。あいつ俺の悪い噂広めて、俺の人気潰そうとでも思ってるのかな」

 

「…… 人気があるかどうかはさておき… やれやれ。永理にどう説明すればいいのやら」

 

「俺に任せてよ!! 永理なんて手のひらのダンゴムシよ!!」

 

「なに?───」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

「えーいーりーちゃーーん」

 

「モグモグ…… 兆さん。気持ち悪いです。パンが不味くなります」

 

「直球でちょっと傷付いたな!! 狩馬の事なんだけどおー…」

 

「多分兄がどうかしました?」

 

「まぁさっきあったことなんだけどさ」

 

「はい?」

 

「……… 狩馬はウォンテッドと手を組んでる」

 

 

 RIVERSに戻り、永理に狩馬の事をど直球なに伝えた。そんな兆に巧也は頭を抱えて、拳を握りしめて殴る準備をする。オブラートに包み込むのかと思ったら全くそんなことはなかった。

 それを聞いた永理はしばらく黙っていたが、ようやく口を開くと、いつも通りの笑顔で兆たちに答えた。

 

 

「私は気にしてませんよ。ただそうであるなら、ヤヨイもきっと兄さんもなんとかしなきゃいけませんね!!」

 

「永理… 大丈夫なのか?」

 

「はい! そんなウォンテッドと手を組むような兄なんか兄にあらず! ……だからこそ助けたいんです」

 

「あっそ。なら、俺も答えは一つだな。協力してヤヨイから狩馬を解放して、ついでに俺たちの記憶のありかも聞いてやる。どーせ知ってるだろ。あいつらなら」

 

「よーし頑張りましょう!! 兆さん!!」

 

「おうっ!!」

 

 

 皆は気づかなかったが、永理の表情は必死に作っている嘘のものだと。未だに信じることができない兄という存在。わからないが、狩馬の顔を見る度に何かが込み上げてくるのだ。それは統一してとても暖かい記憶。

─── それから数日が経過した頃、永理が兆の担当から外れてしまった。その理由は、暫く兄について独自で調べてみたいというものだ。

 

 

「そうか… ま、仕方ねーな」

 

「すみません兆さん。急にこんな事を……」

 

「まぁいいじゃん。俺はお前が外れてくれたおかげで楽できるし、金も減らないし、何より金が減らないし」

 

「………」

 

「なんだよその目は!! お前のせいで俺のマナーは日に日に消えていってるんだよぉ!!」

 

「兆さんが奢ってくれるっていうから……」

 

「そうなんだけどさ!!」

 

「…… 兆さん」

 

「なんだよ」

 

「また落ち着いたら… ゆっくりご飯でも食べましょう」

 

「永理…… また奢らせるつもりだろうが、今度は奢ってもらうからな!!」

 

「いいですよ! ジャンケンに勝ったら!」

 

「なんでだよ!!」

 

 

 そして永理はRIVERSから少し離れる事になった。これは巧也の判断であり、彼女の意思を尊重した。その日からどこか寂しそうな兆をRIVERS一同が心の中でにやけていたのであった。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>>

 

 その頃、狩馬は変身し、1人ウォンテッドと戦っていた。ヤヨイと取引はしているが、市民を危険に晒すという事に関しては違う。奴は人の死、仲間の死に対しては何も思わない。それが自分の利益となるなら話は別だが、それ以外ともなればただの道具に過ぎないのだ。つまりここで狩馬が何をしようと何も言うことはない。

 

 

「どいつもこいつも好き放題しやがって!!」

 

 

 ウォンテッドを積み上げ、ギアハンターを固定して放ったり、それらを壁にしたりと応用しながら敵の数を減らす。記憶が入っているウォンテッドと対峙する事になれば少々苦戦はするだろうが、そうでない空の奴らはただの雑魚。操り人形。躊躇なく倒して行ける。

 

 

「ヤヨイのやろう…… 何こんな数出してくれてんだ」

 

 

 チケットを交換し、参水チケットを差し込む。ギアナイフを押し込むと参式の姿なってから敵を水の力で弾き飛ばす。両手から水を吹き出させ、左右の敵を何体かまとめて取り込んで、そのままハンマー投げをするかのように回転し始める。

 

 

「おーらー……よっっ!!!」

 

 

 回転する事で更に敵が水の中へと入り、それが大きな塊となって、威力も範囲も上がる。全員取り込んだ後に上空へと投げ飛ばす。それからギアナイフを押し込み、両手にエネルギーを集中させて巨大な水の塊を作り出して、それを一気に小さく圧縮して、先ほど投げたウォンテッドの塊に投げつける。

 

 

《キカンギアブレイク!!》

「これで最後だ!!」

 

 

 爆散させるとその破裂した水が雨のように降り注ぐ。一息つこうと、変身を解除しようとしたその時、後ろから何者かに狙撃される。

 

 

「ぐっ…!!?」

 

 

 突然の事に状況が把握できないまま、とりあえず周囲を警戒する。すると遠くの方から1人、こちらに向かって歩いてきている。少々暗がりで見え難かったが、光に照らされていくと、その姿は見覚えがあるデザインをしていた。

 全てが露わになると、ハントは驚いて目を丸くし、そして確信した。

 

 

「── トリガー…!!」

 

「………」

 

「お前がやったのか。どうなんだ?」

 

 

 しかしトリガーは答えない。答えはしないが、銃口をハントに向け、引き金に指をかける。その瞬間ハントは横へ飛ぶとそれと同時に撃ってきた。完全にこちらに敵意があると見ていい。何故急に攻撃してきたのかは謎だが、ここでやられるわけには行かない。

 

 

「そっちがその気なら… いや元からこうなんだよな。お前はよ!!」

 

 

 見た目はファーストリボルヴと全く持って一緒だ。世界に二つしか存在しないとされるセイブドライバーだが、その腰に巻かれているものは見た目は似ていてもカラーリングが違う。

 そしてトリガーはハントに向かって走ってきた。スペックでは完全にハントの方が上である。すぐさま裏に回り込み背中に一発放つ。

 

 

「…… っ!!」

 

「また初期フォームで挑もうってか?…… 死ぬぞお前」

 

 

 だが、なにも答えない。むしろそのまま向かってくる。トリガーは頭部に向かって蹴りを喰らわせようとしてきたが、片手で受け止めて、両腕でその手を掴んで後ろへと投げ飛ばす。それからトリガーに銃口を向ける。

 

 

「お前…… 本当にトリガーなのか…?」

 

「………」

 

「ヤヨイの差し金か?」

 

 

 どう考えても様子がおかしい。兆であるのならとりあえず何かは喋るはずだ。そうでなかったとしたら、ヤヨイの見せた映像の信用が上がる。とにかく今は倒して真実を突き止めるまで。

 トリガーは構えると銃を放つ。何発か被弾するがどうということはない。一気に距離を詰めて腹を殴り、怯んだところに銃を放つ。

 

 

「お前いったい誰だ」

 

「………」

 

「答えないと… よーくわかった。ぶっ潰してから洗いざらい聞かせてもらう!!」

《肆式!! ギアチェンジ!! モクヨウ!!》

 

 

 チケットを変えて肆式へとフォームチェンジを行って、そこらに生えている植物を彼の体に巻きつける。抵抗しようとするがガッチリと掴んで離さない。先ほどのトリガーと同様に全く身動き一つ取れていないようだ。

 

 

「くらえっ!!」

 

 

 ギアナイフを押し込んで、纏まった植物たちがギチギチという音を立ててトリガーを飲み込み、凄まじいエネルギーと共に圧縮する。しばらく締めた後に彼を解放してセイブドライバー?からフィガンナイフを抜こうとしたその時、周りからウォンテッドがどこからともなく現れた。

 

 

「なに? いったいどこから… まさかお前…!!?」

 

 

 振り向くと、トリガーの姿は無くなっていた。そしてまた、ウォンテッドたちに目をやると、その真ん中にトリガーは立っていた。この群れを指揮しているようで、手を挙げると、一斉に後ろへ下がっていく。

 

 

「どういうことだこれは……」

 

「………」

 

「仲間なのか…?」

 

「………」

 

「聞いてんのかトリガーッッ!!!!」

 

 

 それからセイブドライバー?からフィガンナイフを取り出すと、変身が解かれる。ハントはその姿を見て固まった。ヤヨイを信じるつもりはないと思えたが、これは予想外である。見るからにウォンテッドの仲間という事は確実で、現に群れを操れている。それにこれが仲間だとしたら、ヤヨイの言う事柄や映像が本当に事実であって、彼を人殺しと言われれば信じてしまう。

 その真実は直接、目の前の彼に聞くことにしよう。

 

 

「どういうことだ── 兆」




またお休みしました申し訳ないです。
これは兆なのか……?真実は次回明かされるのか…?

それでは次回、第20劇「鏡写し」

次回もよろしくお願いします!!
是非、質問・感想等お待ちしております!!それではまた!!


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第20劇「鏡写し」

20話目に入っ…ちゃっ…たぁ!!!
原作だと大体まだ半分いってないくらいですね。頑張らなければ!

前回、狩馬と一悶着ありましたが、その後トリガーとまた戦いました。ですが何か様子がおかしい。ウォンテッドの指揮をするトリガー。その変身者も兆本人!? これはいったい……。

それではどうぞご覧ください


「一体どういうことだっ!!なんでお前が…… っ!!」

 

「………」

 

 

 ハントの目の前に兆が立っている。それだけなら別に驚く事もない。ただ周りにウォンテッドが並び、兆がそれらを操り、その中心に佇む光景を見ればそうは言えなくなるだろう。

 

 

「なぜ答えない? 俺とは話したかねーってか?」

 

「………」

 

「お前は本当に兆か? 顔変えてるだけとかじゃねーよな? お前もウォンテッドの仲間なのか? それとも元々ウォンテッドって事か?… あーくそっ! 訳がわからない!」

 

 

 頭を抱えるハントを黙って見ていた兆?は、表情を変えず、その口をゆっくり開く。それに気づいたハントは急なアクションだった為、身構える。

 

 

「── そうだ。俺は兆だ。それ以上でもそれ以下でもない」

 

「… 他の質問にも答えろ。お前は何者だ?」

 

「何者? お前が今言った通りの者だが?」

 

「そういう事じゃねぇ!! ふざけんなッ!!」

 

「……… そうかもな。ウォンテッドの仲間かもしれない」

 

「は?」

 

「だけど違う。俺はウォンテッドとは関わりはあるが、ウォンテッドではないという事だ」

 

「いや… 意味がわからない。俺にとってお前の事情はどーでもいい事だが、最後に1つ答えてもらおうか?」

 

「………」

 

「RIVERSをどうするつもりだ?」

 

 

 ハントにとって、狩馬にとってRIVERSには思い入れはない。永理がいるということだけが彼の心配する理由だ。と、本人は思いたかったのか。しかし無意識に彼らを心配している彼がいた。永理を守りたいという気持ちもそうだが、それをRIVERSのメンバーに事実を伝えようと思っての行動だった。狩馬は誰かを犠牲にしてまで下衆には成り下がりたくないのだ。

 

 

「もちろん潰すつもりだ。1人残らずな」

 

「… そうかよ」

 

「これ以上の質問はやめた方がいい。きっと後悔することになるぞ」

 

「後悔ねー… 後悔かー… それならもう何年も味わってきた。だから、俺は後悔しないように目の前の事に当たってみることにするか」

 

 

 そういうハントは銃口を兆に向ける。向けた理由は決まっている。この男からは底知れぬ闇が感じ取れた。このまま野放しにしておけば、被害は市民にまで広がる恐れがある。

 兆はセイブドライバー?にフィガンナイフを差し込んで引き金を引いて変身する。向き合う2人。互いの間に異様な空気が立ち込める。

 

 

「それはセイブドライバーか? それともまた別物か?」

 

「セイブドライバー、フィガンナイフはどちらもプロトタイプ。最初のドライバーであり…… 失敗作だ」

 

「プロトタイプだと…!!?」

 

「性能はセイブドライバーよりも低い…… が、お前にはちょうどいい」

 

「何故プロトタイプを使用しているんだ? いつものセイブドライバーはどうした?」

 

「答える必要はない。何故なら…… 今日はお前の命日だからだ」

 

「言いやがったな!!」

 

 

 トリガーに向かって駆け出すハントだが、急にその脚を止める。今までいたはずのトリガーが自分の目の前から消えている。瞬間移動と思われたが違う。ウォンテッドを使って、見事なまでに自分の姿を隠している。

 

 

「隠れても無駄だ!!」

 

 

 ギアハンターに参水チケットを差し込むと、先端に水のエネルギーが集中する。最大まで溜めて引き金を引くと、レーザーのように凄まじい勢いでウォンテッドを突き抜けていく。

 

 

《スイヨウ!!ハンターバレット!!》

「くらえぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 一直線に放たれた水のレーザーは勢いを徐々に弱める。撃ち終わったが、そこにトリガーの姿はない。流石に避けたな、と思ったその時、首に重い衝撃がやってきた。建物に激突し、何が起こったのかわからないまま蹴られた方向を見るとトリガーがいた。

 

 

「あの一瞬でどうやって…!!?」

 

「隠れただけと思ったのならお前もそれまでだな…… お前がそれを使う前から後ろにいたが?」

 

「なっ…!!」

 

「確かに力の差はあるが、ここを使えばその差は埋まる」

 

 

 トリガーは自分の頭を指先でコンコンと叩く。馬鹿にされているのはわかったが、ハントは深呼吸をし冷静さを保つ。兆は何を考えているかわからない。今ここで怒れば奴の思う壺である。

 そしてプロトセイブドライバーの引き金を引いてトリガーは高く飛び上がる。ハントもそれに合わせてギアナイフを押し込んで飛び上がる。

 

 

「ハァッ!!!!」

 

 

 互いの蹴りがぶつかり合い火花を散らす。明らかにハントの方が優っており、現に押し返している。勝ったと確信していた。そのまま押し切ろうと更に力を込めると、トリガーが急に力を抜き、流れに身を任せてハントの頭上へと移動する。

 

 

「そんな馬鹿なッ!!?」

 

「頭を使え…… 終わりだ」

 

 

 ぐるりと一回転をし、その勢いでかかと落としをハントの脳天に決める。不意の一撃をくらい、そこで糸が切れたように目の前が真っ暗になった。空中から地面に叩きつけられ、それから変身が解除されてしまう。その後からトリガーも着地し、変身を解く。

 

 

「── 今日の俺も勝利の日」

 

 

 それからウォンテッドを引き連れて、兆は何処かへと歩んで行く。その背中を見る事もなく、それから狩馬はしばらくの間、気を失っていた。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 永理は兆の担当から外れ、資料室で調べ物をしていた。調べるというのはもちろん狩馬の事。そろそろ信じてもいいんじゃないかと本人も思っている。ただ例え兄だったとしても、永理自身の過去がわからないままだ。

 

 

「…(佳苗さんがあんなに探してもないというのなら無駄なのかな…)」

 

 

 以前から彼女のことを調べようと、あれこれ佳苗が手を回してくれたが、まるで見つからない。永理自身の出生は載っているのだが、狩馬が兄だったという理由になるものは何処にもない。ここにいても仕方ないのではないかと思った。

 それからかなり長い間探していたので、体も頭も痛くなってきた所、資料室のドアが開かれる。

 

 

「あ、兆さん」

 

「よう永理。久しぶりだな」

 

「RIVERSに出勤した時に何度もあってるじゃないですか」

 

「あー… まぁそうだな」

 

「それでなんですか? 差し入れならありがたく頂きます!」

 

「差し入れなんてねーよ。それと…… 無理に笑わなくてもいいんだぜ?」

 

 

 無理に笑う永理に兆は気づいていた。彼女の気持ちはもちろん分かる。記憶もないのに横からあーだこーだと言われても困るだけ。本当はとても苦しいし、悲しいはず。

 

 

「今から飯行こうぜ。いつものところ」

 

「いいですよ。もちろん…」

 

「… よし! 今日は俺が奢ってやる!」

 

「はいっ!!!!!」

 

「元気だね!!」

 

 

─── それから兆たちはいつものバーに来て食事をする。いつものミルクを注文し、後は永理が大量の食べ物を頼む。いつも通りだ。食べてる時の彼女の顔から少しばかりか本当の笑顔が見えてきた。

 

 

「マスター悪いね」

 

「なんだ急に?」

 

「いやぁ急に来たもんだからーと……」

 

「おかしな奴だな。 RIVERSで世話になって性格が変わったのか?」

 

「いやぁーー……」

 

 

 そんな兆の後ろから、ニヤニヤとしながらガンホーレが近づいてきた。肩を掴んで軽く揉む。とても気持ちが悪い気がする。

 

 

「な、なんだよ」

 

「これはあれだな。俺は分かるぞ?」

 

「何がわかるってんだよおっちゃん」

 

「くくくっ…… まだまだミルクから抜け出せない赤ちゃんにはわからないか?」

 

「え、でもこれうまいよ?」

 

「そういうことじゃねーよ!!…… お前は今、恋をしているんだよ」

 

「は……?」

 

 

 兆を担いでバーの隅の方へと運ぶ。イッシュウに逃げないように囲ませ、またニヤニヤしながら耳元で話す。とても耳が気持ち悪い。

 それを気にせず永理は目の前のものを食べ進める。

 

 

「いいか? 俺にもそういう青春があった。しかしそんな日々はすぐに去っていくものよ…… 後悔しない為に、今すぐ告白してこい!!」

 

「勝手に話が進んでるけどー……」

 

「お前は若い!! やるなら今しかない!! 最低なお前が変われるチャンスだ!!」

 

「それを犯罪者のガンホーレ団の… それも団長さんがいう事なんですかね?」

 

 

 それからキレたガンホーレがガブ飲み対決と評したただの飲み食いに付き合わされた。腹がタプタプになり、気分が悪くなってきた。主にミルクで。

 ちょうど永理も食べ終わり、RIVERSへと帰る事になった。帰り際、永理は兆に頭を下げる。

 

 

「急になんだ?」

 

「ありがとうございました。兆さんには何度もお世話になってますね」

 

「お前は俺がいないとダメだなぁ〜」

 

「どの口が言うんですか」

 

「ちょっと傷付いたな!!」

 

「ふふふっ、お陰でリフレッシュできました。さて、また手掛かりでも探しますか!!」

 

「でもあんだけ探してもないなら、違う方法探さないとな」

 

「そうですね…」

 

 

 2人が悩んでいるとマスターが急に永理を呼ぶ。それからマスターに地図が描かれた紙をもらい、兆を見て頷く。それが何かを察することができない兆は聞いた。

 

 

「マスター? どう言うこと?」

 

「…… かっこがつかないな。ここに行けばきっと彼女の役に立つだろう」

 

「あぁ… だけどなんで?」

 

「ただのマスターの気まぐれだ」

 

「わかったよ…? じゃあ早速行ってみるか。じゃあねマスター!」

 

 

 兆は訳の分からないまま、マスターから渡された紙を頼りに目的の場所へと向かう。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「ここが紙に書かれていた場所か?」

 

「そうみたいですね…」

 

 

 そこはなんの変哲もない廃工場である。マスターから貰った地図であったから特に怪しいという風には思わず、中へと入って探索を始める。

 

 

「マスターもなんでまたこんなところを…」

 

 

 しばらく歩いて広い場所に出てきた。ここは昔使われていたであろう倉庫。今は隅にドラム缶やら置いてあるだけで、他の場所を見ても変わったところはない。

 それからまた地図の確認をしようと、永理の持つ紙を覗こうとする。その時、両側の出入り口から2つの人影が現れた。だが、ただの一般人ではない。人ですらない。

 

 

「ウォンテッド!!?」

 

「な、なんでこんなところに!!?」

 

「永理、下がってろ!!」

《NEXT》《SET》

 

 

 兆はセイブドライバーを装着して、ネクストガンナイフを差し込んでからから引き金を引く。トリガーネクストイレブンへと変身すると共に、ウォンテッドが2体こちらに向かってくる。

 

 

《ネクストガンアクション!! フォローイング!! トリガー!! イーハーイレブン!!》

「1対2なら余裕だ!!…… ハッ!!」

 

 

 ネクストの力を解放し、自身を加速させて一瞬のうちに2体のウォンテッドを蹴り飛ばす。それから1体を掴み、上空は放り投げる。

 

 

「ネクストの力に勝てると思うなよ!!」

 

 

 それからもう1体のウォンテッドが走ってくるが、それに合わせて上空に投げたウォンテッドをオーバーヘッドキックで蹴り飛ばしてぶつける。それぞれが重なるように地面に叩きつけられた。

 

 

「どーよ!」

 

「さすがです! 兆さん!」

 

「まぁ天才ですから! あははっ!!」

 

「あ、来ますよ!!」

 

 

 高笑いしていたトリガーに立ち上がった2体が向かってくる。ガーツウエスタンを取り出して、瞬時に両方とも撃ち抜く。見事な彼自身の銃捌きを行なってから、ネクストガンナイフを抜いて、ガーツウエスタンに差し込む。

 

 

《イレブンガーツ!! ノーベンバーシューティング!!》

「勿論の事! 今日の俺も勝利の日ッ!!」

 

 

 ガーツウエスタンから放たれた弾丸は2つに分かれ、それぞれの胸を一直線に貫く。貫かれたウォンテッドたちは爆散し、跡形もなく消えてしまう。どうやら人間自体を使わない人形タイプのものらしい。

 

 

「…… さて、なんでここにウォンテッドがいたのかは知らないけど」

 

「マスターが少々怪しく感じますね」

 

「あぁ、俺も今言おうとした…… 疑いたくはないが、いや疑った事はないけど… これに関してはどうしようもない。不自然過ぎるぜ」

 

「そうですね…… っ! だ、誰ですか!!」

 

 

 永理がトリガーの後ろへと隠れると、目の前には誰もいなかったはずだが、いつの間にか何者が2人の前にいた。この工場の関係者という見た目はしてないし、そもそもここは廃工場。誰かいるとするなら幽霊やそこらだろう。

 

 

「あんたは?」

 

「ウォンテッドをよく倒した。さすがと言っておこう」

 

「あんたは?」

 

「2体だけじゃお前の手には余ったか? それもそのはずか…」

 

「あんたは?」

 

「あのウォンテッドは俺が連れてきた。テストがしたくてな。まぁ見ていたら間違いなく合格のそれだとわかった」

 

「ちょい! さっきからあんたは? って聞いてるんだから答えてよ!! つーか連れてきただってぇ〜?」

 

「あぁ、悪い。俺は見ての通りウォンテッドだがー…… 幹部の人間だ」

 

「幹部? 幹部ねー…… はぁ!!?」

 

「一応ここのエリアの担当をしている。幹部のムツキだ。マスターとは知り合いで話は聞いている」

 

「ムツキ… マスターと知り合いってのはどういう事だ?」

 

「昔からの馴染みだ。俺も理由があって…… ここはまだ話す時じゃないか」

 

「…… まぁ信じるよ。ここまでの経緯があるからね。じゃあ早速だけど、質問に答えてもらってもいい?」

 

「あぁ… 時間に限りはあるがな」

 

「… 永理の過去を教えてくれ。知っているなら俺の記憶もだ」

 

「わかった。話してやる。よく聞いておけよ──」

 

 

 こうしてムツキの口から彼女の過去が明かされる。それは嘘か真実か。2人はそれを固唾を呑んで聞き始めた──。




終わり!!閉廷!!以上!!
色々あったけど物語も中盤くらいです。

次回、第21劇「上に立つ者」

次回もよろしくお願いします!


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第21劇「上に立つ者」

皆さんご無沙汰しております。

前回、狩馬の前に兆が現れ、勝負の末に負けてしまう。一方自分の記憶を追う永理は兆と共に、マスターから渡された場所へ行くと幹部のムツキが現れ……?

それではどうぞご覧ください。


 ムツキについて気になる事はあるが、それよりもまずは目的である永理の過去が重要だ。そして兆自身の記憶を追うために。

 

 

「まず1つはっきりさせておくのが、狩馬の妹は彼女で間違いはない」

 

「そ、そうですか」

 

「嬉しそうじゃないな?」

 

「あ、いや…… ずっと胸にはまっていた何かがぽろっと取れた感じで… その、あんまり実感がないというか」

 

「それでいい…… これから話すのは彼女にとっては厳しいだろう」

 

「…… 例えそれがどんなことでも聞く覚悟はあります。そのために来たんです!」

 

「わかった」

 

 

 それからムツキは永理について暫し語り始めた。

 あれはまだ彼女が小さな女の子だった頃、ヤヨイに家族を殺され、そのまま何処かへ連れていかれた。ここまでが狩馬が話したことだろう。その後、彼女が連れられて行った場所は暗くて何もない部屋。その中に入れられ数日を過ごした。

 

 

「どうしてそんな場所に…?」

 

「ここは仮だ。新しく入った子を簡易的にしまって置く場所だ」

 

「まるで物みたいな言い方ですね…」

 

「君の言う通り物だ。ヤヨイにとっては金でしかない物だ」

 

「つまり私は…!」

 

「売りに出されたってことだ」

 

「そんな……」

 

「…… 続ける」

 

 

 それから数日が経ったある日、外へと出された。もちろん解放なんかじゃない。人を買うオークションの始まりだった。永理はその後、その場にいた男に買われた。家にまで連れて行かれた。

 

 

「……っ」

 

「だが… ある男が現れ君は逃げることができた。正確には逃げる場所を与えてもらっていた」

 

「どう言うことですか…?」

 

「その男は君を家で保護してくれていた。何年とね」

 

「私の記憶だとそんなこと……」

 

「警察学校の事しか頭にないはずだ」

 

「ど、どうしてですか!!?」

 

「それは君の記憶が抜き取られたからだよ。その大部分が全部。気づいたらそこにいたって感じだろう?」

 

「は、はい……」

 

 

 兆は思った。今の話から察するに、その男は何かの目的があって永理を保護したに違いないと。記憶を抜き取るなんて芸当ができるのはウォンテッドだけだが、と思っているとムツキは淡々と続ける。

 

 

「その男の詳細は話せないが、永理。君はその男にとって重要な鍵なんだ」

 

「え、えっと… 詳細が話せないのは何故ですか? それに私が鍵って… どこかに挿すんですか?」

 

「そういうわけじゃない…… ただ話せないのはこちらの事情もあってだ。今はそういうことにしてくれ。いずれ時が来たら話す。鍵についてだったな。鍵とはその男の目的を達成する為のものだ」

 

 

 辺りは何か言おうとしたが、その横から兆が入るようにムツキに質問を投げかける。話の中で気になる事があるのだ。

 

 

「ちょっといいかムツキさんよ。その男ってのがさ。どーも俺にはウォンテッドの疑惑が浮上してくるんだが? そこら辺はどうなのよ?」

 

「…… 気づいたか。そうだその男はウォンテッドだ」

 

 

 ムツキのこれはバカにしているのかと一瞬思ってしまった。普通は気づくだろう。記憶を抜き取るという人間がこの世にいるか? いや、いるわけがない

 断言できる。このムツキはわざと教えたのかもしれない。

 

 

「話を割って悪かったよ。じゃあ続きお願い」

 

「あぁ… その目的というのが残念ながら教えることはできない」

 

「え? な、なんでここに来てそうなるのよ!」

 

「これでも幹部の人間だ。昔馴染みのマスターから言われたとはいえ、これ以上こちら側のことを話すわけにはいかない」

 

「な、なんだよそれ!!」

 

「ただ言える事があるとすれば、記憶を奪った理由はお前の過去を思い出したままだと、あっちにとって都合が悪かったんだろう。過去の記憶が邪魔になり、事が進まなくなるのがな」

 

 

 それを聞いた永理は別に悲しいだとか、悔しいだとかそう言った感情はなかった。ただどうすればいいのかわからない。そんな感情が頭の中を巡っている。胸に手を当て、表情には出さないがパニックになっている自分を落ち着かせる。

 それからムツキは兆を見た。何を話すのかは察しはつく。兆は覚悟を決め、自分の話を聞く事にする。

 

 

「それから兆。お前の過去についてだが……」

 

「やってきました。さぁ、俺は一体どんな大富豪でどんな女性と結婚してたんだ? あ?」

 

「それに関しては今ここで話すべきじゃないと判断した」

 

「は…? はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!?? どうしてだよ!! なんで俺の過去だけ話してくれないんだよぉ!!?」

 

「これを話す事は本当の真実に触れる事だ。お前にはまだ早すぎる」

 

「よーし!! そっちがその気ならこっちを話してもらうぜ!! お前とマスターの関係は一体なんだ!!? 教えろ! ただの昔馴染みで済むかよこんな話しておいて!」

 

「そこは嫌でも知る事になるさ。知り過ぎるのはお前にとっても、俺にとっても荷が重い」

 

「あ、おい!!」

 

「ただ忠告はする。何があってもお前という存在しているという事だ」

 

 

 その言葉を最後にムツキはゆっくりと影に消えていった。工場に赤い光が差し込む。気がつけばもう夕方になっている。2人は静寂の中、 RIVERSへとこの事実を話す為に戻って行く。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「なるほど…… 兆から聞いた話の内容を纏めると、永理がここに来る事はその男の目的の通りというわけか」

 

「そういう事らしいよ巧也さん。そいつもウォンテッドに絡んでるとなると、今は大丈夫だとして、いずれは永理に何かしてくるだろうね」

 

「あぁ… 永理もあまり考え込むなよ?」

 

 

 そう巧也に言われた永理は無言で頷く。整理がついたから思う事が多く出てきた筈だ。こうなればやる事も必然的に決まる。それから巧也は椅子から立ち上がり、命令を下す。

 

 

「皆、聞いてくれ!! これから狩馬にこの事実を伝え、彼を… 永理の兄をヤヨイから救い出す!! そしてヤヨイを逮捕する!!」

 

「さっすが巧也さん! そうと決まれば早速…!!」

 

「これからと言ったが、今日はもう遅い。明日決行する。それまで十分に体を休めておけ」

 

「あいあいさー!!」

 

 

 こうして狩馬救出作戦が決行されたが、この行動は後に悲劇を生んでしまう事だとはこの時はまだ想像もつかなかった。

 ─── 翌日、メンバーたちはRIVERSへと集まると、準備を終わらせてエリアIへとパトカーで向かっていた。向かったメンバーはもちろん兆と巧也。そして永理である。

 

 

「なぁ永理」

 

「…… あ、はい。なんでしょう?」

 

「狩馬にこの事実話せば掌返して味方してくれるぜ? また兄妹揃うし、戦力が増えるしもう最高だな!!」

 

「そうですね… 必ず兄を救いましょう」

 

「ま、完全にヤヨイの事は端から信じちゃいないだろうし、これ聞けば金が云々なくなるだろうしさ」

 

「はい…」

 

「でもその言葉が届くのは永理しかいないわけじゃん? 俺なんかが言ってみなよ? 頭撃たれて説得どころじゃなくなるぜ?」

 

「…… ふふっ、そうなりそうですね」

 

「そうなっちゃ困るの!」

 

 

 それから一向はエリアIに着くと、今までは裏口からだったが、真正面から入っていく。その様子を監視カメラから見ていたヤヨイは驚いた。そしてこれが挑発だということも、その意味も理解できた。本来市民たちが彼らの邪魔をするのだが、今回ばかりは狩馬を行かせた。

 

 

「兄さん…」

 

「…… やっとそう言ってもらえたか。昔はにぃにだったのになぁ」

 

「聞いて兄さん!! 私たちは事実を伝える為に今日ここにきたの!!」

 

「事実だって?」

 

「私の過去はもう全部わかったし、それに兄さんが私の為に頑張ってくれてた事は知ってる…… でも、もう大丈夫だから。もう頑張らなくていいよ? 帰ってきて兄さん!!」

 

「…… 違うな永理」

 

「別に吹き込まれたとかじゃなくて本当に聞いて…!」

 

「お前は信じるさ。お前のいう事は信じる。もちろんだ。わざわざここに来てそういう事を言うってのは察しがつくからな…… だが、それが真実だとしてもこの男だけは信用できない!!」

 

「どういうこ──」

 

「トリガー…… お前だけはッッッ!!!!」

 

 

 キカンドライバーを装着し、伍金チケットとギアナイフを挿し込む。それに続いて兆と巧也もセイブドライバーを装着し、それぞれネクストとアフターを挿し込んだ。

 

 

「永理。俺は元よりヤヨイを信用しちゃいない。お前の言うそれが本当ならRIVERSに行ってもいいし、ヤヨイをぶっ潰す側に付いてやるさ。だけどな。このトリガーだけは倒さなきゃいけない!!!」

《伍式!! ギアチェンジ!! キンヨウ!!》

 

「「変身ッ!!!」」

《ネクストガンアクション!!フォローイング!! トリガー!! イーハーイレブン!!》

《アフターガンアクション!!フォローイング!! シェリフ!! イーハートゥエルブ!!》

 

 

 先に変身を終えたハントは体が金色に輝き出し、それからトリガーに向かって黄金の拳を振り上げて叩き込む。突然にとてつもない硬さで殴られたトリガーはそのまま後方へ吹き飛ばされる。

 シェリフはハントの動きを止めようと、倍加状態にして羽交い締めにする。

 

 

「待て狩馬ッ!! 一体どうしたんだ!!?」

 

「離せ!! こいつを倒さなきゃRIVERSもやべーんだぞ!?」

 

「何を言って…!!」

 

 

 シェリフは倍加の限界時間に達し、その隙をついてハントは拘束を振り解く。ギアハンターを構えて、トリガーを追うが既に彼の姿は見当たらない。そしてハントが気づいた時には地面に顔面を打ち付けていた。しかしトリガーは脚を痛がる。その黄金の外装は飾りではなく、見た目通りの硬さを持っていた。

 

 

「いててっ… ちょっと荒っぽいけど許してよ。狩馬さん。俺はあんたと争うつもりないし、永理の言う事は正しい。俺がそばにいたんだぜ?」

 

「なんだと…!? 永理に何もしてないだろうな!!? もし何かしてみろこのやろう…… ぶっ潰すだけじゃ済まさねーぞッ!!!」

 

「ど、どうしたのよ。さっきから変だって! 永理の件じゃないな… まるで俺を敵として見ているというか… 一体ヤヨイに何吹き込まれたのさ!」

 

「しらばっくれるなよッ!!」

 

 

 そう言うと倒れた状態から、トリガーの脚を自分の足を絡めて倒し、仰向けにさせてハントがそこは馬乗りになる。それから首を掴み、マスクの下から見えないが想像はできる。凄い形相であり、その中に怒りと失望がある。

 

 

「お前はなんだ!! あの時の事は忘れましたで済ませねーぞこらッ!!」

 

「な、何言ったんだよ狩馬さん!! あの時っていつの話だよ!!? 口が悪かったとかそういうの!!?」

 

「ふざけんなッ!! お前、俺を倒す前に言っていた筈だ!! RIVERSを潰すとなッ!!」

 

「はぁ!?」

 

 

 トリガーはハントを蹴り飛ばし、後退して両手を前に出す。落ち着けと彼に伝える為であると同時に、何の話だかさっぱりわからないという風に敵意を見せない為でもある。

 シェリフも間に割って入り、事情を聞く形になるが、その内容がまるで噛み合わないのだ。

 

 

「そういう事だ課長さん。今話した通り、こいつはとんでもねー奴なんだよ! ウォンテッドの仲間で、裏でRIVERSを潰すつもりなんだよ!!」

 

「待て狩馬ッ!! 意味がわからない。その日の兆はRIVERSにいた筈だ。お前に対しての攻撃は一切していない。それにおかしいと思わないのか? 兆にはその行動理由も証拠もない!!」

 

「証拠も何も俺が見たんだ!! そしてやられた!! この事実があればいいだろうが───ッ!!!?」

 

 

 銃声が聞こえたかと思うとハントは吹き飛ばされていた。当然のこの事態に焦らずシェリフはハントの元へ駆け寄ると変身が解除され、気を失ってしまったようだ。トリガーは永理を後ろに避難させ、銃声が聞こえた方に身構える。

 すると遠くの方から2人、こちらに向かって歩いている。2人ともその見た目が化け物であり、完全にウォンテッドではあるが、今迄の敵と比べると明らかに異様な空気を漂わせていた。

 

 

「ここで誰だって聞くのが正解なんだろうけどよ…… 俺にはわかるぜ? あんたらはウォンテッド。それに幹部クラスだって事が」

 

「よく分かったなトリガー。いや、わからなければならない。我はウォンテッド幹部シワスだ。そしてこの横にいるのが我の弟であり、名をシモツキ。幹部だ」

 

「…… んな事はまぁいいんだよ。うん。それであんたらは何しに来たわけよ。俺たちとお茶しながらお話ししましょって訳じゃないでしょ?」

 

「あぁ、用があってここへ来た。ある事を伝えにな」

 

「ある事だって……なッ…!」

 

 

 トリガーが驚いたのはシワスのその速さである。全く動きがわからなかったのだ。気づいた時にはトリガーを通り過ぎ、その後ろである永理を過ぎ、シェリフの元へと歩んで行く。

 シェリフの前で立ち止まると、倒れたハントを抱えるシェリフを見下ろす。ハントを下ろし、立ち上がってシワスの真正面に移動する。

 

 

「俺に用事のようだな。幹部シワス」

 

「RIVERSの課長… 巧也だったな。ほう、成長したらしい。昔と比べて随分とな」

 

「なに? 俺を知っているのか?」

 

「よく知っている。知り過ぎている。お前の事についてはな。それに今日はお前に用があってきた」

 

「俺に何の用があるっていうんだ?」

 

「…… 3年前。お前の両親がトリガーに殺された」

 

「それがどうした」

 

「ここだけはっきりさせておこう。お前の両親を殺したのはトリガー… 射手園 兆だ」

 

「な…… ッッッ!!!」

 

 

 シワスから発せられたそれは今迄信じようとしなかった事。兆がそんな事する筈がないと思っていたからだ。しかし面と向かって言われ、それは疑惑ではなく、今は確信に変わろうとしてしまった。揺らいでしまったのだ。

 だが、それでもシェリフは事実とは認めようとしない。

 

 

「嘘をつくな。なら何故記憶がない? 推測ならその頃からセイブドライバーは持っていた筈だ。記憶も奪われる事はないし、それにあいつが理由もなしにやる男じゃない!! もしそれがどうしようもない悪だったとしたら話は別になるだろうが…」

 

「そのどうしようもない悪だったらどうする?」

 

「なんだと?」

 

「その父親と母親がどうしようもない悪であったならどうすると言ったんだ」

 

「話が見えないな。お前はさっきから何を言いたいんだ」

 

「エリアCとKが何故ある?」

 

「なに…?」

 

「そこを指揮するのは誰だと思う?」

 

「だからなにを言っている」

 

「そこの幹部キサラギとミナツキは誰だと思う?」

 

「いい加減にしろッ!! それ以上俺の両親に何か言ってみろ。今ここでお前を───」

 

「── お前の両親はウォンテッドの幹部だ」

 

「…… なに…?」




以上です。
流れが変わりましたね!!
まだ21話ですがどんどんぶっ込んで行きますよぉ!!

次回、第22劇「裏切り」

次回もよろしくお願いします!!


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第22劇「裏切り」

皆さんご無沙汰しております。

前回、永理の過去が明らかとなりましたが、鍵とは一体…?狩馬を説得しにエリアIへと向かいますが、なにやら不穏な空気。新たな幹部シワスとシモツキが現れると巧也に衝撃の事実を伝える……

それではどうぞご覧ください。


「俺の父母が…… 幹部だと? そうかわかった。お前達はどうやら俺に嘘を吹き込んで動揺させるつもりだったんだろ? ならそれは失敗だ… 俺は今無性に腹が立っているからな!!」

 

「嘘でわざわざお前の為にここに来るか? 我ならばそんな暇があるなら計画を進めるまでだ」

 

「これほどまで両親を侮辱されたのは初めてだ…!! シワスと言ったな。覚悟はできているんだろうな?」

 

「息子は今まで知らなかった。両親が人を殺めていたウォンテッドの幹部だと。その事実を知っていたトリガーはお前の両親を殺した」

 

「違うッ!!! 父は俺の目標だった。警察になった理由だってそれだ!! 誰よりも強く、誰よりも優しい。そして誰よりも正義に生きた人だった!!! 母だって誇れる外科医だった!!! 今迄に何人もの命をその手で救ってきたッ!!!」

 

「裏では何百人と殺した両親が、表だと随分な功績を見せてるようだ。いっそ清々しいな」

 

「やめろぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!!」

 

 

 アフターの能力を発動し、全身の筋肉を倍加させて、シワスを殺さんとばかりに顔面を殴る。しかしその拳には当たったと言う感触はあるが、捉えたという感じではなかった。何故ならシェリフの拳は片手で押さえられてしまっていたのだ。

 

 

「我が憎いか? それともお前の親か? トリガーか?…… いや、違うな。お前は今、行き場のない怒りを我にただぶつけているだけに過ぎない」

 

「ぐぅっ…!!」

 

「下がっていろ」

 

 

 シワスがグッと力を入れると、あのアフターの力を物ともせず、軽く押しただけで大きく後方へと吹き飛ばされて壁に激突する。その衝撃により変身が解けてしまった。

 この状況は非常にまずい。トリガーはこの後の行動を考える。相手が何を考えているかわからないし、きっとネクストのスピードにも対応してくるだろう。誰をどう助ければいいのか全くわからない。

 

 

「トリガー…」

 

「…っ!…… なんだよ」

 

「あの男の両親を殺したのはお前だ。と、わかったな?」

 

「俺たちを仲間割れさせようって魂胆か? なら、やめておけよ。こんなんで俺たちが喧嘩するとかそんな風に思ってるなら間違いだぜ?」

 

「くくくっ… さて、それはどうか」

 

 

 シワスが腕を横に振るうと、シワスとシモツキの体は霧状となって姿を消す。兆は変身を解くと、永理に狩馬を頼み、自分は巧也の元へと駆け寄る。幸い気を失っているだけのようで、見た感じ異常はなさそうだ。

 巧也の名を呼びながら揺らしていると、唸り声を上げてから目が開く。

 

 

「巧也さん! 大丈夫?」

 

「兆か…… そういう事だったんだな。お前が俺の両親を殺したのか」

 

「… そうらしい。どうする巧也さん… あんたの両親から命を奪った野郎は、あんたと一緒に戦ってきたわけだけど」

 

「俺の両親は共に幹部だった。お前に殺されるくらいどうしようもない人たちだったんだ…… ははっ、俺は一体どこの誰に憧れて警察になったんだろうな」

 

 

 その光景を永理は遠くから見ていた。声は聞こえないが、良き話ではない事はすぐに理解できる。すると膝枕していた狩馬の目が開く。やっと気がついたようだった。

 

 

「あ、兄さん起きた?」

 

「永理…… やっと会えたな。長かったぜほんとに…」

 

「でも、私は聞いただけで全てを思い出してないよ。ただ言える事はお待たせって事かな…?」

 

「…… あぁ、俺は生きててよかったよ… くそっ目がいてーな。ゴミでも入ったか」

 

 

 狩馬の件はこれにて終わったのかもしれない。だが、RIVERSには新たな問題が増えてしまった。それはある者が思い描いた通り、着々と進んでいる証拠なのだ。

 近くにある建物の上から4人を見つめるシワスとシモツキ。ある者とはシワスで、うまく進んだ事に自然に笑いが込み上げてくる。

 

 

「くくくっ… 計画は着実に進んでいる。我々は引いてやったのだ」

 

「これで後は自然に任せてれば、奴らは内部崩壊待ったなし… だよね兄さん?」

 

「弟よ。最高の始まりをする為には下準備を丁寧に終わらせなければならない。つまり後一手間が大事なんだ。そう、後一手間がな──」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 RIVERSに戻った一向はお互いの話を整理し合う事にする。普通ならあのような事実を聞かされたら冷静ではいられないだろう。しかし先ほどまでの怒りは何処へやら、巧也はいつも通りの冷静さを見せていた。ただそれは外見だけの話であり、心情はとても複雑な気持ちである事は確かだ。

 

 

「── 兆がもう1人いるというのか?」

 

「もう1人か…… 本人かもしれないんだがな」

 

 

 狩馬は今までの経緯を巧也に全て話す。その中で特に気になったものが兆という存在。正確に言えば兆がもう1人いる可能性があるというのだ。はっきり言って信じられない事だろうが、シワスから聞いた巧也の両親を殺したとされるトリガーの可能性もある。

 

 

「お前の言う日が正しければ、兆は俺たちの敵になるって事だ。しかし兆は怪しい行動は全くしていない。格好は怪しいがな。偶にいなくなる時はあるが、いつものバーに通っているだけのはずだ」

 

「確かにいつも通りのことなんだろうな。課長さんが言う事は正しい事はわかる。だが! 俺はあの時あいつにやられたんだ! 根拠もなければ証拠もない! ただはっきりしているのは、俺はあいつから、あいつ自身から聞いてるんだよ!!」

 

「… 一体どうなってるんだ。俺たちの知らない兆がいるって事なのか? あいつの記憶と何か関係があるのか?」

 

「…… なぁ、そういえばよ。その原因のあの野郎は何処だよ?」

 

「ん?…… そういえばあいつの姿がないな?」

 

 

 この話し合いが始まってからずっと兆の姿がない。巧也は1人1人に確認を取るが、皆気づいていなかったし、彼が何処へ行ったのか聞いたものもいないらしい。狩馬がほらっ見たか、という顔で巧也を見てきたが、それを流し兆を探しに行く事にした。

 

 

「その本人がいなければ意味がない。俺が探しに行ってくる」

 

「あ、課長! 私も行っていいですか?」

 

「永理もか? 別に構わないが、もっとゆっくりしてていいんだぞ?」

 

「それは私のセリフですよ。課長が怪我をして新人の私がゆっくりしてられませんから!」

 

「ふっ、そうか。なら行くか。狩馬はここで休んでていい。お前が一番体が堪えている筈だ」

 

 

 お言葉に甘えてという風に隅へと移動し、椅子を並べて横になる。そして巧也と永理の2人は兆があるであろう場所へ向かう準備をする。

 2人がドアから出るのを確認した佳苗は、パソコンでいつも通りウォンテッドの反応があるか確認していると、1つ反応が入ってるのに気がついた。

 

 

「ウォンテッドが現れたのかしら?…… でも特に緊急ってわけでもなさそう。というか動きがない? なにこれ… こんな反応初めてかも。でもこの場所って──」

 

 

 パソコン内の反応が出ていた場所。地図が示した場所はBAR TRIGGERであった。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 車を走らせ、巧也たちはバーに辿り着いた。兆がいるとしたら大体この場所である。ここへ来る前にウォンテッドの反応があったと、佳苗から連絡が来ていた為か、永理からしたら兆と来る馴染みの場所がとても禍々しく感じる。ここまでの話の流れからして、相手も何か考えがあって罠を仕掛けている可能性がある。

 巧也と永理は互いに顔を見合わせ、アイコンタクトを行いバーの扉を開ける。中はいつも通り変わらない光景だった。そのカウンターの真ん中に兆が座ってコーヒーを飲んでいる。

 

 

「兆、やっぱりここにいたのか。ちょっと用があるからRIVERSに戻るぞ?」

 

「…… ん? あぁ、巧也さんか。永理も… で、どうしたの?」

 

「急にいなくなるなよ。こっちは話し合いしてたんだぞ? それにお前から色々と話してもらえないといけない事があってな」

 

「あー了解了解。狩馬さんが何か言ってたんだろ? あそこにいるとまた殴られそうだから落ち着いた時いこうと思ってね。じゃあ行こうぜ」

 

「行く前に兆。実はここの周辺からウォンテッドの反応があったらしい。そいつを探してから戻るとするぞ」

 

「…… え? ここから? こんな狭いところの何処にいるんだか…」

 

 

 それから外へと出るが、永理だけはこの異様な雰囲気を感じ取っていた。いやそれは常連には見ればわかることなのだ。何故ならマスターやガンホーレたちの姿はいないし、決定付ける理由としては兆であるならミルクを飲んでいる筈だから。

 車に戻り、エンジンをかけようとすると、急に周りから人々の悲鳴声が響き渡る。車から離れて様子を見に行く。どうやら佳苗の言った通りウォンテッドがいたらしい。

 

 

「永理ッ!! お前は市民を避難させろ!! 俺と兆でこいつらを殲滅する!!」

 

「わかりました!!…… 課長」

 

「どうした?」

 

「気を付けてください。よくわからないんですけど、お昼ご飯を忘れた時のような空腹感というか……その、兆さんに気をつけてください」

 

「その例えは… まぁいい、お前なりに何か感じ取ったんだな。一応だが狩馬にも連絡しておけ。お前に何かあってからじゃ、あいつに合わせる顔がなくなるからな」

 

「わかりました。それでは課長…… お気をつけて」

 

 

 ウォンテッドが道の真ん中を集団で広がって歩く。何処かへ向かっているようだが、巧也はその向かっている先がわかった。明らかに方向が兆と巧也の方である。まるで何かに操られて、いや最初からここへ来るよう仕掛けられていたかのように、迷いなくこちらに向かってきているのだ。

 

 

「んじゃ、早速やろうか巧也さん」

 

「あぁ……なぁ、兆」

 

「なに? さっきの事なら…」

 

「いやなんだ。俺は裏切ってくれるなよ」

 

「…… ふっ、なんだそんな事か。もちろんだ。なんたって俺はRIVERSのメンバーなんだからな!」

 

「そうか。それでいいんだ。それさえ聞ければな…… 行くぞッ!!」

《SIX》《SET》

 

「おう!!」

《ONE》《SET》

 

「「変身ッ!!!」」

 

《シクスガンアクション!! シェリフ!! オートアオート!!》

《ファーストガンアクション!! トリガー!! リボルヴリボルバー!!》

 

 

 変身シークエンスで出た銃でウォンテッドを後退させた後アーマーを纏う。変身完了後、2人は頷き合ってからウォンテッドたちに向かって走り出す。トリガーはシェリフの後ろから発砲し、ある程度のウォンテッドを押し除けると、そのまま真っ直ぐ走ってきたシェリフが残りの敵を全力で殴る。

 

 

「ハァッ!!」

 

「さすが巧也さん! 後方支援は俺に任せて!!」

 

「あぁ!!」

 

 

 シェリフが集団の真ん中に入って1匹ずつ相手にしながら、トリガーはその戦闘に割り込むものが居ればそいつを優先的に撃って近づけさせない。偶に銃で対処できなければ、彼自ら飛び込んでシェリフを助ける。

 

 

「いやぁ、俺たちってホントいいコンビじゃね?」

 

「…… かもな」

 

「はっきり言ってくれよ。お前とは最高のコンビだぜーっとかさ!」

 

「おい、戦闘中だ。気を抜くなよ」

 

「はいはい!」

 

 

 仮面の下で巧也は微笑んでいた。永理には気を付けろとは言われてはいるが、いつも通りの兆であり安心したのだ。あの話を聞いてから本当は怪しく思っていた。両親に裏切られ、絶望しかけていたが、RIVERSのメンバーは裏切ってくれない。自分を信じてくれる。だからこそ今度は自分が兆を信じなくてはならないのだ。

 

 

「決めるぞ兆ッ!!!」

 

「おっけい!!」

 

《オート!!》《リボルバー!!》

《ファイア!!》

 

 

 2人のは天高く跳び上がり、ウォンテッドの集団目掛けて飛び蹴りを行う。エネルギーを纏ったそれは接触すると同時に大爆発を引き起こした。砂埃が薄れてくると、そこにいたウォンテッドは見事に消え去っている。

 シェリフは安堵した。彼にとって憧れだった人は消え、自分の全てを裏切られた。だから信じられる者が、信じてくれる者が今の彼を支えてくれるのだ。こうして共に戦う仲間がいる。

 

 

「兆… 俺はお前を信じられる。記憶がないとか、両親を殺しただとか、そういう事は問題じゃない。ここまで戦ってきてわかった。お前は正しい事をやっているんだと…… 悪い、今更だったかもな」

 

「なぁ、巧也さん。 俺はあんたを裏切っているのかも知れないんだぜ? 前からずっとさー… それなのにあんたは俺を信じるの?」

 

「あぁ、狩馬の言う事は本当だとは思うが… それはお前じゃない。ウォンテッドに絡んでいるのはお前とは別の誰かだ。もしかしたらお前に化けているのかもな…」

 

「………」

 

「テロスも何かを隠しているはずだ。こうなったのも全部計算のうちだろう。シワスの奴らも上から命令されて、内部崩壊を狙ったんだろうが、まぁ無理な話だったな」

 

「なるほど…… ところで巧也さん」

 

「あぁ、なん─────」

 

 

 パーンッと言う音と共に、トリガーの銃口から煙が上がる。発砲していたのだ。誰にか? それはもちろん、近くにいる人物である。無防備だった彼。シェリフは自分に何が起こったのかよくわかっていない。

 

 

「きざ… し……?」

 

「悪いが俺は敵だ。今も昔も変わらない…… トリガーだ」

 

 

 ガーツウエスタンにフィガンナイフを挿し込み、シェリフの腹部に銃口を宛てがう。徐々にエネルギーを収縮して行くそれを眺める彼の姿。トリガーは耳元でシェリフに一言。はっきりとよく聞こえるように。

 

 

「RIVERSは… 俺が潰す」

 

 

 そして引き金を引いて、溜まったエネルギー弾を至近距離で放つと、シェリフは大きく吹き飛んで変身が解ける。トリガーはそれを確認すると、変身を解いてから明後日の方向へと歩んで行く。

 巧也は何処かへ行こうとする兆を止める為、直撃を喰らったにも関わらず大声で静止するように言う。

 

 

「待て兆ッ!!!…… はぁはぁ… なぜだ。何があったんだ。お前は兆じゃないのか!!?」

 

「俺はトリガー… 射手園 兆だ。それ以上でもそれ以下でもない。別人でもなければ似ているわけでもない。俺は兆本人なんだよ」

 

「わからない。わかるはずがない!! どうしてなんだ!!? お前の何がそうさせたんだ!!?」

 

「元からこうさ。ボスの命令のままに動くだけ。ウォンテッドの幹部を減らしたのもそれだ。お前は俺を信じたからこそ、俺に色々と喋ってくれたから本当に助かった。そこだけは感謝しておいてやろう」

 

「兆…… 嘘だろ? 待ってくれッ!!」

 

「それとこれから俺の名は幹部名で呼ぶんだな。『カンナヅキ』と… それじゃあな。次会う時は… その命も記憶も貰うから」

 

「何故だッ……!!! 今までの事は全部演技だったのかッ…!!! 兆ィィィィィィッッッ!!!!!」

 

「カンナヅキだ…… いつも通り、今日の俺も勝利の日」

 

 

 雨が降り、雷も鳴り始める。巧也のどうすることもできない感情は、声に上げても雷の音でかき消されてしまう。何度叫んでも、何度も見てもそれは現実でしかなく嘘ではない。

 兆が闇に消えた所で永理がやってきた。巧也から今迄何があったのか聞いたがまるで答えてはくれない。ただ永理の嫌な予感は的中していた。今はそれで充分なのかもしれない。

 永理は巧也に肩を貸し、亀のようにゆっくりと、ただ足取りは重く、RIVERSへと戻るのであった。




やべーよやべーよ…
完全にぶっ込んで行きましたが、如何だったでしょうか?

次回、第23劇「明後日」

次回もよろしくお願いします!!


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第23劇「明後日」

皆さんご無沙汰しております。

前回、巧也の両親が完全に幹部だとわかり、面には出さないものの心情は苦しくて仕方のない巧也。狩馬がRIVERSに戻ると、兆が敵だという風に話す。それを確かめるべく彼の元へと行く。そこで会ったのは兆だったが、後に幹部のカンナヅキだと判明した……

それではどうぞご覧ください。


 全ての幹部の名が上がった。残りは巧也の両親を除き、5人。倒さなければならない相手が僅かとなり、喜ばしいことではあるのだがそういう気分にはならないだろう。

 RIVERSでは緊急会議が始まっていた。その中で重要視されたのは兆… カンナヅキの事である。あの日から兆とトリガーからの被害が絶えない。皆、彼を非難する声がRIVERSに殺到している。

 

 

「課長。兆さんはどこへ行ったんですか?」

 

「…… あいつはカンナヅキだ。もうどこにいるのかもわからない。次に来るとしたらRIVERSを潰す時だろう」

 

「本当に兆さんだったんですか? 何かの間違いじゃ……」

 

「やめろッ!!… あいつの話はもういい。今はどう対処するかだ。あいつによって街の被害は拡大しているんだ… いいな?」

 

 

 巧也のこの発言に永理は怒りや失望があるとは思わなかった。彼は人が良過ぎる。仲間や市民に対しては強く優しく、本当に誰からも信頼される人。逆に誰かを信じてしまえば決してそれを曲げない。今回の事に関してもまだどこかに思う節があるのだろう。

 

 

「言っただろう課長さん。俺らは騙されてたんだって。まぁ俺はあんたらよりは長くはいないが… 気持ちは分からなくもないぜ」

 

「気遣いすまない狩馬。ただ続けて裏切られると流石の俺も堪える…… 全くなんだろうな。俺はどこで間違えたんだろうか」

 

 

 そんな巧也にRIVERS内は暗い空気が漂う。その空気を横から警報が割り込んでくる。嫌な警報を聞き、すぐさま佳苗はパソコンで原因を調べると、やはりウォンテッドの反応がある。幹部の反応もだ。

 佳苗はその反応した場所を言い、幹部が誰であるのか言おうとしたが、巧也は手を翳してやめさせる。それを察した彼女もそれ以上何も言わなかった。

 

 

「では、RIVERS出動だ」

 

「俺も行くぜ課長さん。誰かは察しがつくが、俺も借りができてるからな」

 

「あぁ、すまない」

 

「謝ってばっかだな… とにかくあんま考え過ぎんなよ」

 

「…… 永理はいつも通り避難を最優先だ」

 

 

 2人が出て行き、それに続いて永理も行こうとするが、孝四郎が出てきて彼女を止めた。そういえば最近ずっと研究室に篭りっぱなしであり、顔をあまり見なかったのを思い出す。

 孝四郎は彼女を手招きし、アフターガンナイフを手渡す。早く届けなければならないと思い、走りだそうするがまたも止められる。

 

 

「ど、どうしたんですか孝四郎さん! 早くしないと課長が行っちゃいますよ!」

 

「これを渡すのは課長ではありません。聞いて欲しいんです… 君になら話してもいいと言われたんです」

 

「…… どういうことですか? 誰から?」

 

「兆くんですよ。永理さん」

 

「兆さんが…?」

 

「場所を教えます。場所は───」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 エリアAの中心から次々に建物を破壊し、人々から記憶を奪い取る姿が見えてきた。巧也と狩馬はようやくたどり着いて、街の有様を見て怒りをあらわにする。

 

 

「兆ィィィィィィッッ!!!!」

 

「── 巧也さん。なんだやっと来たのか」

 

「なんだじゃないだろう!! それ以上はやめろ!! 自分が何をしているのかわかっているのか!!」

 

「わかってるさ。わかっててやってるんだよ。ただここで理由を話した所であんたには決してわからない。俺には俺の事情があるんだ」

 

「兆…… お前ッ!!!」

 

「俺は兆じゃない…… カンナヅキだ」

《ONE》《SET》

 

「力づくでもお前を止めるッ…!!!」

《SEVEN》《SET》

 

 

 向き合う2人は互いにセイブドライバーを装着し、フィガンナイフを挿し込む。それに続いて狩馬もキカンドライバーを巻いて、陸土チケットを挿し込む。3人は「変身ッ!!」の掛け声と共に引き金を引き、ギアナイフをセットする。

 

 

《ファーストガンアクション!! トリガー!! リボルヴリボルバー!!》

《セブンスガンアクション!! シェリフ!! バーストアサルト!!》

《陸式!! ギアチェンジ!! ドヨウ!!》

 

「今日がお前らの命日だ」

 

「お前を捕縛するッ!!」

 

「ハント開始だッ!!」

 

 

 ハントは早速、陸式の力を使って砂嵐を作り出してトリガーを閉じ込める。シェリフはアサルトウエスタンを取り出し、周りのウォンテッドを殲滅していく。まずは先にトリガーを止め、次に周りの雑魚を狩る。そうでもしなければこの状況は抑えられない。

 

 

「司令塔をまず先に潰せば、組織は次に取る手が無くなるだろう? その中に有能な野郎さえいたら話は別だが、お前のところには空のウォンテッドしかいねーだろうよ!!」

 

「………」

 

「黙りやがって… まぁそれもそうか。この砂嵐はただの砂じゃねぇ。そもそもただの砂だったらお前に突破されてるだろうからよ!!」

 

 

 陸式は土や砂といったものなら全て操れる。しかしただ操るだけじゃない。肆式のようにエネルギーを送る事で多少ではあるが力が増しになり、ちょっとやそっとの攻撃ではビクともしない。

 

 

「課長さん!! こっちは大丈夫だ。さっさと蹴散らしてくれよ!!」

 

「そのつもりだ」

 

 

 アサルトウエスタンにセブンスガンナイフを挿し込んでから跳び上がる。上空から下にいるウォンテッドに向け、銃の引き金を引く。その弾丸はまるで雨のようにウォンテッドの群れに襲いかかる。

 

 

《シチジカーン!! セブンスターイム!! アサルト!!》

「ハァァァァァッッッ!!!」

 

 

 ウォンテッドはみるみるうちに消えていき、残す所はトリガーのみとなった。ただ呆気なさ過ぎる。こんなにも早く終わっていいものなのかと。

 シェリフは周囲を警戒しつつ、ハントの元へと近づく。今も変わらず砂嵐の中にトリガーは身動き取れずにいるようだ。

 

 

「前は負けたがもう好きなように行くと思うなよ。こっちは2人だ。いいか? スポーツマンシップ的にはどうかと思うが、こればっかりは違うだろ? さっさとお縄につけよ」

 

「…… 何かがおかしい」

 

「あ? 何がおかしいんだよ。あいつはもうカゴの中の鳥だぜ?」

 

「確かにそうなんだが…… 何も仕掛けずにただこうしてやられているのがおかしいんだ」

 

「そりゃそうだろう。この嵐からは逃れられない。肆式より柔軟性には欠けるが拘束能力ならこっちの方が高い」

 

「違うそうじゃない。まるで何かを待っているような……」

 

 

 その瞬間、砂嵐を何者かの攻撃により真っ二つに斬られてしまい、拘束が解かれてしまった。誰かは分からぬまま、早々にハントは斬られ近くの建物に叩きつけられる。続いてそれはシェリフに近づいてくるが、すぐさまそれに反応し、アサルトウエスタンを盾がわりにして受け止める。

 

 

「さすがシェリフ。よく反応できたね」

 

「お前は… シモツキかッ!!」

 

「ご名答。兄さんからこの状況に乗っかってお前たちを殺してこいって言われたんだ…… あぁ、これ言っちゃダメなやつだった…」

 

「なんだと…!!…… 兆はッ!!?」

 

 

 シモツキの攻撃を受け止めつつ周囲を確認するが、トリガーの姿は見当たらなくなっていた。その隙をつかれ、腹を蹴られると斬撃を叩き込まれる。先ほどから刀や剣を持っているものだと思ったが、手の甲についているアーマーから鋭利な剣を伸ばしているようだ。

 

 

「ぐぅっ…!!」

 

「兄さんと俺は幹部の中で最高位の実力を持っているんだ。もちろん兄さんが1番さ。そんな僕らにそんなおもちゃみたいな銃で勝てると思う?」

 

 

 すぐさまアサルトウエスタンをシモツキに向けて撃ち放つが、片腕の剣でいとも簡単に防がれるてしまう。この距離で間のない連射を受けられるとは、最高位というのはハッタリではないようだ。

 シェリフは立ち上がり、アフターガンナイフを取り出そうとする。だが、どこにも見当たらない。

 

 

「アフターガンナイフがないだとッ…!!?(… そうか! あの時、調整で孝四郎に渡したままだ!!)」

 

「おや? 何かをお探しのようだけど、どうやら見つからないようだね?」

 

「くっ…」

 

 

 戦闘手段がない事を知ったシモツキはシェリフを両腕の剣で切り刻む。為す術なくただのサンドバックと化してしまっている。ちょうどその頃、吹き飛ばされたハントが体勢を立て直し、こちらを助けに来ていた。

 

 

「さっきはよくもまぁやってくれたな!!」

 

「見てれば怪我しなかったのにダメだね」

 

 

 陸式の力を使おうと、地面に手を翳そうとするが、その前にシモツキがハントの懐にすでに回っており、強烈な斬撃を受けてしまった。シェリフはなんとかしようと近づくが流れような刃が彼を右斜めから斬り付ける。

 

 

「ぐわぁっ!!!」

 

「絶対絶命ってこの事を言うよね? どう? 信じていた者から裏切られる気持ちは? 僕はわからないなー… だって裏切られたことがないからね。お前の気持ちはこれっぽっちも全然わからない」

 

「わからなくていい。お前に同情されるくらいなら、いっそ死んだ方がマシかもな…」

 

「なら、ここでやってあげるから安心して」

 

 

 その腕の剣が伸び、頭上に掲げる。真っ二つにする気だ。そうはさせないとハントは走ってくるが、それも無駄に終わってしまう。もう片方の剣をハントに向けて飛ばしてきたのだ。かなりの威力があり当たると同時に倒れてしまう。

 そして再びシェリフに向き直り、その剣を今にも振り下ろさんと構える。だが、急にシモツキはその腕を掲げたまま後ろを振り向く。その方向には兆がいた。永理も一緒である。

 

 

「え、永理に…… 兆だと? どういうことだこれは…」

 

「お前、逃げたんじゃないの? せっかく人が逃してやったのに… 作戦をおかしくするつもり?」

 

 

 その兆の手にはネクストガンナイフと現在、孝四郎の所にあるはずのアフターガンナイフが握られていた。ついにRIVERSに手を出したかと思ってしまった。ただそうなれば永理もなぜ一緒にいるのか。脅されているのか、それとも人質なのか。いやそのどちらも当てはまることはない。

 兆はふっと笑い、手を銃の形に変えてシモツキにそれを向ける。

 

 

「違うね。俺はその兆じゃあないと思うんだけど」

 

「は?」

 

「あー残念だなー。こんなイケメンを判別できないとか巧也さんも狩馬さんも酷いなーーーーー…… あ、別にシモツキとやらにはわかってもらわなくてもいいかなと思う。だってさ。俺はお前の味方じゃねーんだからよ」

 

「お前…… まさかッ!!」

 

「…ったく面倒くさい事してくれちゃってよ。なんとか孝四郎さんに連絡取れてよかったぜ。更には永理が来てくれたから逃げることができたぜ?」

 

 

 兆の言っていることはシェリフはよくわからなかった。ただわかる事は彼は偽者なんかじゃなく、本物であるという事。根拠? それは簡単だ。あのバカさ加減は彼にしかできないのだから。彼であるという証拠なのだから。

 

 

「兆…」

 

「待たせちゃった? 悪いね巧也さん。俺も実は何がどうなってるかさっぱりなんだけどさ。とりあえず色々あっていなくなってたよ。話は後でいいよね?ね?」

 

「まさか…… 俺が疑ってしまうとはな。恥ずかしい事だった。今思えばそうだ、こんな奴は他にいないからな」

 

「それは褒めてるの?」

 

「褒めてはいない」

 

「めっちゃショック」

 

 

 会話を妨げるように、横からシモツキの声が響く。何やら計画が崩れてしまった事を察し、多少お怒りのご様子である。

 兆はそれにはまるで怯まず、一歩二歩と前に出る。それからセイブドライバーを装着する。

 

 

「シモツキ… とか言ったな。人の偽者使っていいようにかき乱してくれちゃってたみたいじゃーん?」

 

「さすがだね。あの状況で電話できるとは思わなかったよ」

 

「トリガー舐めんなよ。あんぐらいどーって事ないね!」

 

「それでどうするつもり? お前は僕には勝てない。兄さんの力を見ただろう? お前たちのネクストもアフターも通用しないんだよ。つまりお前たちにはどうすることもできない。計画は狂ったけど、お前らを始末してしまえば多少違うけど同じ事」

 

「内部崩壊狙ってたんだけど潤滑油付けたみたいな滑りだな! よくもまぁ色々やってくれちゃったなおい。お前はここでぶっ飛ばしてやるよ。このネクストとアフターの力でな!」

 

 

 そう言って、ネクストとアフターガンナイフを掲げる兆をシモツキは笑う。シワスはアフターの倍加の力を受け止め、まるでものともしない。そんなフィガンナイフで勝てるわけがないと思っていた。

 

 

「何度も言わせてもらうけど勝てない。ネクストもアフターもない。僕がここでお前を圧倒的な力でねじ伏せる。その事実は変わる事はない」

 

「…… ネクストもアフターも元は1つのテンスガンナイフから造られた。2つのフィガンナイフは互いに別々の力を持つけれど、元は1つなんだ」

 

「何を言ってるんだ?」

 

「どちらも勝てない? ならどちらも合わせればいい。元に戻してやればいいんだよ。それが本来あるべき姿のネクストとアフターのフィガンナイフッ!!」

 

 

 兆は持っていた2つのフィガンナイフを合体させる。その際、フィガンナイフを繋げた時に電流のようなものが見えた。それは2つのナイフが互いのエネルギーを共有し合っている証拠。元ある力を戻したエネルギーなのだ。

 

 

「最終調整で孝四郎さんに話し合いながらやってもらったんだ。これで本当の力を引き出したって事だぜ!!」

 

「訳の分からないことを… 合わせただけでどうなるというんだッ!!!」

 

「テンスの派生ではあるけど全くの別物だよ…… これからお前が見るのはお前自身の勝利じゃない!! 俺の勝利だッ!!」

《AFTER NEXT》《OVER SET》

 

 

 1つとなったフィガンナイフ。アフターネクストガンナイフをセイブドライバーに挿し、両手を銃の形にして前に突き出す。それから左手は顔の横へ持っていき、右手はハンマーを起こしてから引き金に指をかける。

 

 

「変身ッッッ!!!!!」

 

 

 兆が引き金を引くと、アフターとネクストのそれぞれの巨大な銃が交差し、アーマーが砂嵐と共に舞い上がる。それらを撃ち抜いていき、兆の体にアーマーが纏う。

 

 

《アフターネクストガンアクション!! クロッシングトリガー!! イレブン!! トゥエルブ!! ダブルイーハー!!》

 

「…… これがなんだと言う?」

 

「なんだもこうもそうもない。お前に勝てる力だ」

 

 

 トリガーは両手を銃の形にし、シモツキの方は向ける。そして両手で彼を撃ち抜く真似をして見せ構える。

 

 

「行くぜシモツキ。今日がお前の明後日だ」




という事で帰ってきました本物です多分
新フォームのアフターネクスト登場です!果たしてその力は…!

次回、第24劇「不可思議」

それではまだ次回お会いしましょう〜!


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第24劇「不可思議」

皆さんご無沙汰しております。

前回、カンナヅキの反応があり現場へ向かう巧也と狩馬。だが、あと一歩のところでシモツキが乱入し、シェリフはアフタートゥエルブもなく大ピンチに。そこに本物の兆が現れ、新たな姿アフターネクストへと変身を遂げる……

それではどうぞご覧ください。


「アフターネクストだと? ただ2つのフィガンナイフを合わせたくらいで、この僕、シモツキに勝てると言うのか?」

 

「あー多分だけどさ。このパターンって俺がちょちょいのちょい!と、やっつける事になると思うぜ? 幹部のシモツキさんよ」

 

「ふんっ… 後で土下座して謝らせてやるからよぉ!!」

 

 

 シモツキが消える。まるでネクストのような俊敏な速さである。シモツキの能力であろうが、彼の方が精度も速さも上だろう。そして両腕の鋭い剣がトリガーを斬りつけ始めた。

 

 

「徐々に剥いでやる。そして泣け。お前が今、誰と戦っているのかをよーく理解しろ!!」

 

「え? 幹部の方と対峙しています」

 

「お前─── なっ!!?」

 

 

 その瞬間、シモツキの目に飛び込んできたのはトリガーの拳であった。完全に読まれていた、いや見えていた。避ける事ができるはずなく、その拳を埋め込まれるように殴られて吹き飛んだ。

 

 

「ぐ、ぐわぁぁぁぁっっ……!!! い、いったいどう言う事だ… なんだこの痛みはっ!! ネクストの力だとしても僕のスピードにはついて来れるはずがない!! アフターだったとしても兄さんが片手で止められるくらいのパワーしかないはずだ!!」

 

「確かにそうかもな。だけど単純な足し算って案外馬鹿にできないもんだぜ? この戦闘においてはそれがよーく身に染みてわかるはずだ」

 

「ふざけるなよ… 兄さんに頼まれたんだ。始末してこいって!!」

 

 

 またもトリガーの目の前から消え、高速で移動しながら隙を待つ。だが、シモツキは彼の態度に腹が立った。先ほどまで構えていたくせに、今度はただの棒立ちとなっているのだ。ダラーっとしているわけではない。本当に棒のように立っている。

 

 

「(ふざけた真似をッ!!!)」

 

 

 シモツキには疑うということはなかった。ただのまぐれで攻撃を受けたと思っていたのだ。何故なら自分はシワスの弟で、最強の2番手であると信じているから。

 そして背後に回り込むと両腕をクロスさせ、トリガーに飛び込む。隙だらけだ。確実に当たる。

 

 

「あらら? どうしちゃったのよ〜」

 

「…ッッッ!!!!??」

 

「がら空きの後ろから攻撃とはいいね。ただ今の俺はどこにも隙はないよ?」

 

 

 なんとトリガーは背後に回ったシモツキを完全に捉えており、両腕を掴んで受け止める。そしてシモツキはようやく認める。このアフターネクストは自分のスピードやパワーをも上回っていると。単純な足し算は彼の想像を遥かに超えていた。

 

 

「よくもまぁ俺がいない所で好き放題やってくれちゃったねぇ…… お陰で俺はみんなからクソやろう呼ばわりだよ!! こんのやろぉぉぉっっっ!!!」

 

 

 トリガーは掴んだ状態で回り始める。そしてハンマー投げのようにシモツキを天高く投げ飛ばし、フォースウエスタンに組み替えて、フォースガンナイフを挿し込む。

 

 

「打ち上ーげーはーなーび〜!!!」

《ライフルヨンガーツ!! フォースエイプリルシューティング!!》

 

 

 フォースウエスタンの時よりも、更に強化された弾丸がシモツキに向かって放たれる。さすがのシモツキでもアフターネクストによって強化された弾丸には対応できない。

 その弾丸はシモツキに当たる… はずだったが、それは何もない空を裂いて真っ直ぐと飛んでいってしまう。トリガーは固まった。俺が今の攻撃を外してしまった。これじゃあ格好がつかない、と思っていると突然背中を斬りつけられた。

 

 

「いったッ!!? な、なんだ!!?…… うわぁっ!!!」

 

 

 今度はトリガーにも見えていない。シモツキの真の能力はここからであった。彼は時間に干渉する事で超高速移動ができるのだ。これにはトリガーも対処できずにダメージを受け続ける。

 そんなトリガーを見て、シェリフはなんとかしようと割って入ろうとしてみるが、反撃を喰らってしまい変身が解除される。

 

 

「ぐわぁっ!!!」

 

「な、巧也さんッ!!!… くそっ…!!」

 

「…… 俺の事は心配するな!! 目の前の敵に集中しろ!!!」

 

「う、ぐぅぅぅぅ…っっ!!!」

 

 

 四方八方からシモツキの斬撃が飛ぶ。それ視認する事ができないトリガーは為す術がない。それからは受けの体制に入ってしまい、身動きが取れなくなっていた。

 

 

「や、やばいかも…… 本当に土下座エンドになるかもね…!!」

 

「… 兆、俺はお前を疑ってしまった…… だが、今ならお前が本物だとわかる。お前にとっては俺の言う言葉は身勝手な話だろう。ただ聞いてくれ。もう一度お前を信じたい」

 

「急に何さ巧也さん……ッ!!」

 

「お前はRIVERSの仲間だ。その事実だけは変わらない。この先何があろうと俺はお前を信じるッ!!!」

 

「…… いいねぇ。いいよ巧也さん… 俺もあんたを信じてるからここに来たんだ。俺の悪名が広まっても、あんたなら信じてくれるってなッ!!!」

 

 

 その時、トリガーの頭の中に突然何かの記憶が入り込むと、身体中をアフターネクストのエネルギーが循環し始める。

 明らかに異様な光景を見て察したシモツキは、早々にトドメを刺そうと両腕の剣にエネルギーを纏わせ斬りつけてきた。しかし剣はトリガーの体をすり抜けてしまう。それどころかシモツキの体すらもすり抜けたのだ。

 

 

「す、すり抜けただとッ!!? どういうことだ!!?」

 

「この記憶は…… フィガンナイフの… セイブドライバーの記憶…?」

 

「おい、トリガー!! お前いったいこの僕になにをしたッ!!! どんなトリックを使ったんだ? 僕の真のスピードに追い付けるものは、僕自身か兄さん。ボスしかいないはずだ!!」

 

「── へー、なるほどね。この記憶が正しいのなら、このアフターネクスト。俺の想像していた以上にとんでもない能力じゃあねーかよ?」

 

「意味がわからない……… 認めない。僕は絶対に認めないッッッ!!!」

 

「そろそろケリ着けようぜ。シモツキッ!!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

 

 シモツキは咆哮と共に駆け出し、またも瞬間移動のようなスピードでトリガーを切り裂いた。と、思っていたが、やはり彼の攻撃はすり抜けて全く当たらない。普通に考えておかしい。実態のある者が透けるなんてあり得ない。ましてやこのスピードに追い付いてからなかった奴が急に紙一重で避けたなんて事もない。

 

 

「いったいどういうことなんだッッッ!!!!!」

 

「── お前の時間を消し飛ばした」

 

「………… は、はぁ? い、今お前… なんて言ったッ!!」

 

「聞こえないならもう一度言ってやるよ。お前の攻撃した時間を消し飛ばしたって言ったんだよ」

 

「そんな…… バカな!!?」

 

 

 ここにいる全員がその言葉に驚愕し耳を疑った。本当に意味がわからなかった。時間を消し飛ばすという通常聞くことはおろか、そもそもあり得ない話だろう。時間に干渉して高速で移動するシモツキでさえも、この事実を信じられないでいた。

 

 

「じ、時間を消し飛ばす……? そんな訳の分からない能力があってたまるかよ… そんな力がお前にあってたまるかあぁぁぁぁぁッッッ!!!!! 僕はお前より強い!!! お前に勝って兄さんに感謝されるんだ!!! くそがぁぁぁぁぁぁあッッッ!!!!!」

 

「あんたの今見ているものが現実であり真実なんだよ。ここで終いだ。シモツキッ!!!」

 

 

 トリガーは引き金を引くと大きく飛び跳ねる。それを追いかけるようにシモツキは腕の剣に最大出力のエネルギーを纏わせて、トリガーを4つに切り分けようとばつ印のように斬りつけた。しかし斬撃は当たる事もなく、彼自身はトリガーを見ることもできない。気づいた時には腹部に激しい痛みを感じていた。

 

 

「これが…… アフターネクストの力だ」

 

「こ、こんなぁ… 嫌だ… 嫌だァァァァァァァァァッッッ!!!!!」

 

《アフターネクスト!! オーバーファイア!!》

「ひっさしぶりのぉ!! 今日の俺も勝利の日ィィィッ!!!」

 

 

 シモツキの爆発と共に、トリガーは両手を銃の形にして腕をクロスさせる。この格好が彼にとってこの上なくかっこいいポーズなのだ。彼はそう信じている。その姿を見た巧也は胸を撫で下ろした。いつもの兆がそこにいたから。

 そして兆は変身を解くと、巧也に近づく。永理は狩馬に肩を貸して2人の元へと移動する。

 

 

「巧也さん」

 

「兆… 本当にすまなかったな」

 

「なにも謝る事はないない。だって俺さ。あいつらが好き勝手やってる時よー囚われのお姫様だったんだぜ? 疑うもなにも俺もよくわからないくらいなんだけど」

 

「…… お互い情報交換をした方が良さそうだな」

 

「そうだよ。全く…… あーそうそう。永理、改めてありがとうな。助かったぜ。遅れてたらどうなっていたことやら…」

 

 

 永理は笑顔で親指を立てる。兆もそれに釣られるように親指を立てる。

 それから兆は狩馬を睨みつけた。狩馬も彼の言いたい事がわかって、顔を永理の方に逸らすが、彼女は狩馬の顔を持ってグキッと向き直させる。

 

 

「……… 悪かったよ。疑っちまって」

 

「べっつに〜? 気にしてませんけどぉ〜? あぁ〜〜でもぉ痛いなぁ? あの時受けた傷が痛いなぁーーーーーーーーー???」

 

「て、てめぇ…!!!」

 

「ま、お互い様さ。これからは仲良くできるだろ?」

 

「…… あぁ、それにお前には感謝してる。ありがとう」

 

「いえいえ例には及ばんよ」

 

「… だがな。永理は渡さねーからな!! 俺は知ってるぞ!! お前事あるごとに俺の可愛い妹連れ出して、2人きりのデートに行っていたらしいじゃねーかあぁん!!?」

 

「彼女が行きたいと言ったので連れて行きました。僕イケメンなので」(イケボのつもり)

 

「意味わかんねーよッ!!! あと別にお前はかっこよくもないからな!!!」

 

「はいぃ!!? 巧也さん聞いた!? 永理もよぉ!!? 俺がかっこよくないんだとよぉおッ!!?」

 

 

 こうして4人は現場で記憶を奪われた人々を運んだりと片付けを一通り終えた後、RIVERSへ戻る。

 しかし4人は知らなかった倒したはずのシモツキがまだやられていないということに。彼の姿がなかったのはそれだ。すっかり気が抜けていたので気がつかなかったが、RIVERSに戻り次第に知る事となるだろう。

 

 

「兄さん…… ごめん」

 

「謝る事はない。これには我も想定の範囲外だった」

 

「次は必ず倒すよ… だから安心して兄さん」

 

「お前なら必ずやれるだろう。だが、待て。他の手は考えてある」

 

「さすが兄さん!!…… それって?」

 

「今にわかる。しかしどういう事だ? なぜ奴は逃げ出せた? セイブドライバーもフィガンナイフも奪ったはずなんだが──」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 RIVERSに戻ると、全員が集まって再び話し合いの場が設けられた。特に気になるのが兆だ。あの一瞬で姿を消してしまい、いったいどこへ行っていたのだろうか。巧也は兆に尋ねる。

 

 

「あの時、お前はどこへ行っていたんだ? 途中まで一緒だったはずだ… 囚われていたと言ってたが…」

 

「うん、そうなんだよ。俺も捕まった当初のことは覚えてない。本当に突然だったんだ。気がついたら廃校の教室内にいて、椅子に縛り付けられてた。別に? 別に怖くはなかったんだけど? 震えが止まらなかったね!」

 

「…… そしてまず孝四郎に連絡を入れたと。それを受けた孝四郎は研究室に篭ってネクストガンナイフとアフターガンナイフの最終調整を行なっていたのか…」

 

「連絡を入れられたのは本当に運が良かったよ。何故かは知らないけどセイブドライバーとフィガンナイフは教室の机に置かれてたんだ。それ使って縄を切って外に出たって感じ」

 

「わざわざ置く理由がないだろう。兆に渡せば奴らにはデメリットしかないはずだ」

 

「なんでだろね? まぁそんなこんなで孝四郎さんと連絡を取り合って調整してもらってたの。無闇に動くと相手の意表を突けなくなるからね。いやぁ、まさかあんなびっくり仰天な能力があるとは思わなかったなー」

 

「なるほどな…… ところで、元々アフターとネクストが合体する事を知っていて製作していたのか?」

 

「んまぁね。サプライズって訳じゃないけど、元が1つのテンスから始まったようなものだからね。それを元に戻してやっただけの話さ。ただあそこまでの力を引き出せるとは思わなかったけどね…… ネクストとアフターを造っていた時に見た記憶がまさかこうなるとは…」

 

「お前の記憶も徐々に思い出されてきているのかもしれないな」

 

「それならそれで嬉しい限りよ。俺は昔、どんな生活を送っていたんだろうな…… 俺モテるから可愛い女の子に囲まれてたりして」

 

「相変わらずで安心した──」

 

 

 こうして一通りの問題は解決したかのように思えた。だが、シワスとシモツキは次の一手を準備していた。この一手でまだ巻き返せる余地がある。これは兆に向けてではない。巧也と狩馬に向けて行うのだ。

 

 

「そういう事だ。頼んだぞ」

 

 

 誰も知らないとある場所でシワスは2人の人物を招集させた。これが彼の一手。この2人がRIVERSを掻き乱してくれるはず。そう思っているのだ。




シワスが呼んだ2人とは…?

次回、第25劇「正義とは」

次回もよろしくお願いします!!


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第25劇「正義とは」

あぁ^〜中盤の音ぉ^〜
ご無沙汰しております。悶絶小説調教師の辰ノ命と申します。

前回、新たな力アフターネクストでシモツキをぶっ飛ばしましたが、まさかの逃げてしまいました。本物の兆が帰ってきてみんなハッピーだったのですが、なにやら不穏な空気……

それではどうぞご覧ください。


 あれからRIVERSはいつも通りの日々を過ごしていた。それぞれの問題は解決されたとまではいかないが、ここ数日で落ち着きを取り戻している。狩馬に至っては永理の事もあり、RIVERSの一員として暫く居てくれるようだ。

 しかし狩馬は今、とてつもなく機嫌が悪い。理由はもちろん妹関連である。

 

 

「兆のやろぉ…… また永理連れ出しやがってよ!! なんで誰も止めないんだ!!? 俺の妹があいつに何かされるかもしれないんだぞ!!?」

 

「それはないわね。だってあの子たちいいコンビだけど、そういった感情はないわ。ただの相棒関係ってやつ」

 

「んなもんわかんないだろ!!? 佳苗ちゃんならわかるはずだ。男と女が2人きりで共に時を過ごす。この時間にどれだけの思いが凝縮されていくと思う!!? そんな事したら何もないはずがない…… あぁ… 永理がぁ… 俺の妹がぁ……!!」

 

「大袈裟」

 

「それにあいつ偽物のお陰で表出れないんじゃねーのかよ!!?」

 

「顔隠して変装しているから平気よ」

 

 

 するとガチャリとドアが開く。狩馬は永理が帰ってきたと思って近づいたが、会議で出ていた巧也が帰ってきただけであった。本人はただ仕事してきただけなのに、狩馬の顔は氷のように冷たい表情へと変わる。

 

 

「お前の声が外まで響いていたぞ。なんて声量で叫んでいるんだ」

 

「俺の永理が兆のやろうに誘拐されたんだよ!! だからさー巧也から言ってやってくれよ。俺の妹はお前となんて釣り合わねーよってな!!」

 

「それは俺が言う事じゃない… そもそも2人は元から仲がいい。一緒に出かける事くらい普通だろ」

 

「普通でも嫌なんだよ!! いや普通になってるのがそもそもだろ!!?」

 

「……… はぁ、RIVERSも騒がしくなったな…」

 

 

 巧也は呆れながら椅子に座り資料やらを纏め始める。そうしていると佳苗が急に巧也と狩馬を呼ぶ。その慌てようからすぐに察しはついた。

 

 

「ウォンテッドか? 場所は?」

 

「場所は月日公園付近ね。幹部ではないわ」

 

「よし、すぐに向かうぞ狩馬」

 

「あー待って! この付近なら確か兆くんと永理ちゃんがいるはずよ」

 

「ん? あいつら例の場所に行ったんじゃないのか?」

 

「今日はただのパトロールですって…… まぁ見た目は兆くんが連行されてるみたいだけど、私たちからすればデートよね」

 

 

 最後の言葉はわざと言ったのだろう。完全に狩馬を見ながらそう言ったのだ。巧也はため息をつくと、一応現場へと向かう事にする。もしも暴走や幹部の罠であるならまずい事になりかねないからだ。

 

 

「佳苗。永理に連絡しておいてくれ。俺もすぐに向かうとな」

 

「さぁて文句でも言いに行くかね。あいつ絶対ぶん殴ってやるからな」

 

「お前は来るな」

 

「…………… はぁっ!!!??」

 

「勘違いするな。何もお前が暴れるだとか面倒くさいことになるだとか気持ちが悪いとかそう言う事じゃない… シモツキがやられて、兄の方が黙ってこのまま見ているはずがない。お前ならその気持ちは痛いほど分かるはずだ。ここにもしものことがある。着いていて欲しい」

 

「最初お前の気持ちは言ってたよな…? まぁいい。お前の言う事には一理あるぜ。ここで見張っておいてやるが、その代わり兆は一発殴らせろよな?」

 

「…… 考えておこう。頼んだぞ」

 

「任せろよ」

 

 

 それから巧也は急いで現場へと向かう。

 狩馬はRIVERSに残された後、彼の言葉を思い出す。シモツキがやられて兄が黙っているわけがない。たったそれだけの一文なのだが、今深く考えれば、シワスの強さは自分たちの強さを遥かに超える。もしここへ攻めてくればひとたまりもない。例え自分がいたとしても。

 

 

「…… なんか嫌な予感がするな」

 

「まだ言ってるの? しつこい男は嫌われるわよ?」

 

「違うよ佳苗ちゃん!!?」

 

「じゃあ何よ?」

 

「いやただの胸騒ぎって言うか。何というか…… この何もない時間ってのが1番怖いんだよ。何の変哲もないこの時間がよ…」

 

「言いたい事はまぁ分かるけど、そんなに深く考えなくてもいいんじゃない? あなたも頑張って来たんだし、こういう時くらい肩の力を抜きなさいよ」

 

「あぁ、それはもちろんだぜ…… んーちょっと神経質過ぎたな。ははっ… ところで今度──」

 

「嫌よ」

 

「うぐっ…!!」

 

 

 ただの勘違い。それで止まればいい。しかし狩馬のこの胸騒ぎは現実のものとなってしまうのだ───

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 

「久しぶりの中身ありのウォンテッドッ!! みんなの記憶は返してもらうぜ!!」

 

「くそっ!! トリガーは仲間じゃねーのかよ!!」

 

「ふざけんな!! 仲間な訳ないだろがい!!」

 

 

 トリガー ファーストリボルヴに変身した彼を見るや否や逃走するウォンテッドを追いかける。逃げ足が速く、中々捕まえることができない。

 月日公園に入ると、トリガーはガーツウエスタンを取り出して足元を撃つ。ウォンテッドはバランスを崩し、鉄棒に引っかかり倒れてしまう。それから倒れたウォンテッドに近づいて頭に銃口を当てる。

 

 

「もう逃げられないからなぁ? 大人しくしてれば痛い事はしないよーん?」

 

「こ、こいつッ…!!」

 

「うおっと!!?」

 

 

 追い詰められたウォンテッドが暴れ、その拳がトリガーの顎をかすめる。一瞬だけ引いてしまい、その隙を突かれて突き飛ばされる。

 キラースガンを構えて、トリガーに「動くな」と命令する。

 

 

「いいな? 絶対だぞ?」

 

「…… いやさ。あんたこの後どうすんのよ」

 

「な、なにがだッ!! 動かんじゃねぇ!!」

 

「俺に動くなっつうのはいいんだけどよ… その後、あんたはどう動くの? 逃げるの? 背中向けて? いつまでも銃構えてる訳にはいかないしな」

 

「動くなって言ってんだろ!!?」

 

「素人だね〜… いくら俺が魅力的でも、周りを見ないと対処できなくなるよ」

 

「うるせーんだよッ!!! さっきから説教じみたこと言いやがっ…… てッ!!?」

 

 

 ウォンテッドの銃を持つ手に弾丸が辺り、その衝撃で銃を手放してしまった。その隙を突いて、トリガーはセイブドライバーの引き金を引く。

 

 

「しまっ……!!!!?」

 

「3.2.1…… 今日の俺も勝利の日」

《リボルバー!! ファイア!!》

 

 

 トリガーの渾身の右足での蹴りが炸裂する。その力にたまらずウォンテッドは爆発し、キラーズガンは粉々になり、記憶も本人の元へと帰っていく。

 それから本体の男に永理がすぐさま手錠をかけて取り押さえる。

 

 

「さっきの射撃ナイス」

 

「これでもプロの端くれですからね。これぐらいは当然です!」

 

「さーて、早く変身解かねーと周りの見る目が怖いだよ」

 

 

 フィガンナイフを外そうと手を掛けたその時、背後から何者かが近づいてくるのを感じ、すぐに腰のガーツウエスタンを抜いてその何かに向ける。それからトリガーは永理に男を拘束したまま一歩も動かないよう指示する。

 

 

「なんだよ… 綺麗に終わるかと思ったら横から乱入してくるなんてさ。それであんたらは誰なの? まぁその姿で完全にウォンテッドだってわかるけど」

 

「…… 君はトリガーとして戦い、そして勝ってきた。敵ながら称賛に値するよ」

 

「そりゃどーも… って、そんな話をしにここに来た訳じゃないだろ。久しぶりの人間ウォンテッド相手かと思ったが、これは撒き餌だ。俺らが鯉のようにパクパクしてくるのを待っていた」

 

「そうとも。よくわかったね」

 

「わかる以前の問題だぜ。それで何の用だ?」

 

「まだ君たちと争うつもりはない。もう少し待たなければならないからね」

 

「待つ?」

 

 

 すると誰かが兆の名を呼ぶ声が聞こえる。聞き覚えのあるその声の方を向くと、巧也がこちらに向かって走って来ていた。そして公園まで辿り着くや否や現状をすぐさま把握し、セイブドライバーを腰に巻いて、アフターガンナイフを取り出して変身する準備を行う。

 

 

「相手はただのウォンテッドじゃないぞ、兆」

 

「わかってるよ。俺も嫌な予感しかしないぜ」

 

「あぁ… 永理、お前はRIVERSに戻れ。車のキーは渡しておく」

 

 

 永理はキーをもらうと、拘束していた男を連れて車へと急ぐ。その時に誰かとすれ違うが、その者はトリガーと巧也の元へと向かって行った。

 トリガーたちを前と後ろから挟み込む。2人は互いに背中をくっつけ、新手に対応できるように構える。最初に来たウォンテッドは男で、後から来た仲間であろうウォンテッドは女だと見た目でわかる。

 

 

「おい率直に答えてくれよ。あんたらの目的はなんだ」

 

「簡単だよ。トリガー。君は二の次さ。用があるのはそこの男…… シェリフだ」

 

「巧也さんが? いったい巧也さんに何があるって言うんだよ!」

 

「これ以上、敵に話す事はない…… 安心しなさい。殺しはしないよ」

 

 

 その男がニヤリと笑ったような気がした。その瞬間に背筋がゾッとなる感じトリガーたちを襲う。2人はそれぞれネクストとアフターを挿し込み。引き金を引いて変身する」

 

 

「「変身ッ!!!」」

 

《ネクストガンアクション!!フォローイング!! トリガー!! イーハーイレブン!!》

《アフターガンアクション!!フォローイング!! シェリフ!! イーハーイレブン!!》

 

 

 2人は変身を終えると、それぞれウォンテッドの男女に向かって走り出す。トリガーは女の方を相手にし、シェリフは男の方を相手とする。

 それからシェリフは戦いの最中に男の方の手を見る。そこにはキラーズガンとデリートガンナイフが合体した状態で使用されていた。これはつまり奴らが幹部であると言う証拠である。

 

 

「そうか… お前たちはウォンテッドの幹部か。わざわざ俺たちを始末しに来たと言うわけか?」

 

「さすがだな。血を受け継いでいる事はある」

 

 

 シェリフは倍加させた力で男を投げ飛ばし、脚を掴んで地面へ叩きつける。幹部相手に容赦はしない。もしこちらが少し気を抜けば、状況が一変してしまう可能性がある。

 

 

「ハァッ!!!」

 

 

 そして力を込めた蹴りを脇腹に喰らわせ、胸部をすかさず殴る。幸い力はシェリフの方が優っている為、男は何もできていない。好機ではあるが、攻撃を加える度にシェリフの中で何かが引っかかる。

 

 

「兆… これは敢えて受けているのかもしれない」

 

「え? なんでそんなことする必要があんの? そういう受ける能力があるとか?」

 

「その可能性もあるが違う。こいつらは攻撃すると見せかけて、俺たちに攻撃という攻撃を先程からしてこないだろう?」

 

「確かにそうだけどさ。何の利点もないぜ…… あーそう言われると怪しくなってきたな」

 

 

 トリガーの方も薄々気づいてはいた。ネクストの速さに女は対応できておらず、先程から攻撃を受け続けているのだ。今までの戦いから幹部はもうすでに半分を下回っている。なんの対策もなしに戦いを挑むような無意味な事はして来ないはずだ。

 

 

「…(巧也さんの言う通り攻撃が簡単に通るなんて思えない。対策もないなんて事がおかしいんだ。幹部は残り半分もいないんだぞ? 奴らにはもう後がないはずなんだ………… ん? いや待ておかしい)」

 

「どうした兆? さっきから急に黙っているが……」

 

「… 巧也さん。あんたの言う通りだ」

 

「そうだな。奴らには何か考えがあ──」

 

「違うんだ。そっちの事じゃあないんだよ…」

 

「何が言いたいんだ兆?」

 

「こいつらはキラーズガンとデリートガンナイフを持っている。つまりは幹部って事だよな? これは確定なんだよ。だからこそ幹部だとしたらさ。こいつらいったい─── 誰なんだよッ!!」

 

「……ッ!!!?」

 

 

 そうだ。おかしいんだ。この2つのアイテムを使う事で幹部は力を使う事ができるようになる。そこの話は今はいい。残りの幹部はムツキ・ヤヨイ・カンナヅキ・シモツキ・シワス。この5人だけのはずなのだ。だとするなら、今トリガーたちの目の前にいる敵はいったい誰なのだろうか。

 男の方は「ようやく気づいたか」と言い、不気味に笑う。

 

 

「おいッ!! あんたらいったいどこの誰さんだこらっ!!? 俺と巧也さんが既に7人の幹部を討ち取った。残りは5人で名前も姿も把握済みだ。だからこそわからねーんだよ。あんたらがその銃とナイフ持ってんのがな!!!」

 

「…… わからなくて当然だ。私たちは殺されたのだから」

 

「は…? 殺されたってどう言う事だよ……」

 

「トリガー。お前は覚えていないのか? 私たちを撃ったあの日を…」

 

「待て待て待てよ!! あ、あんたらの言う事が正しいとするなら、俺は今とんでもないものを目の当たりにしているところだぜ。本当に現実的に考えてバカげてるとしか言いようがない事がよ!!」

 

 

 シェリフもトリガーと男の会話を聞いて気分が悪くなった。それは同時に胸を締め付けられるような感覚に襲われる。そしてシェリフはその感情のまま男に飛び込み。地面に叩きつけ、馬乗りになって肩を鷲掴みにして問いただす。

 

 

「お前は誰だッ!!! 答えろォッ!!!」

 

「ふふふふっ… お前というものがわからないなんて事はないだろう? お前は天才だ。そしてそのカリスマ性はとても良く似ている」

 

「だから誰なんだッ!!!!」

 

「ずっと一緒に暮らしていたのにも関わらず忘れたのか? 酷い奴だな…… まぁ今は顔が変わってしまっているからわからないだろうがな」

 

「ハァ… ハァ……!!」

 

「この名を言えばわかるだろう。私はミナツキだ。そして彼女は私の妻のキサラギだ。これでわからない訳がないな? シワスから聞いているはずだ」

 

「あ…ぁ……ッ…!!!」

 

「久しぶりだな巧也。大きくなったな? 私たちが死んでからたくましく育ってくれた… 親として私たちは嬉しい限りだ。今であるなら私たちの側へ付けてやれる。どうだ? 来るか? 悪い話じゃないはずだ」

 

 

 シェリフは仮面の下で今どういう表情をしているのだろうと、トリガーは思った。こんな衝撃的な事が起こって彼とて平然としていられるはずがない。だが、この答えを彼はどう対処するのだろうか。どう返すのだろうか? 言うまでもなくシェリフの答えは決まっている。

 

 

「答えは簡単だ。答える必要がないが、敢えて答えてやろう。あんた達は俺を裏切った。俺はウォンテッドを倒す。それだけの事だッ…!!!」

 

「…… そうか。残念だな。お前は昔から正義感が強いいい子だったからなぁ。しかしな巧也よく聞きなさい。正義とは時に人を守る事が全てじゃないとわかる。例えそれが命を奪う行為だとしても、自分の正義を尊重しなければならない時が必ずある」

 

「そんな正義… あんたに教えてもらった事は一度もない!!!!」

 

「わかっているよ。だからこそもうお前は私たちの元へ戻って来ることはないのだろう? それならやる事は一つなんだ」

 

「やるこ────ッ!!!」

 

 

 その瞬間、銃声が聞こえたかと思うと、シェリフの腹部から血が滴り落ちてきた。ミナツキの手には銃が握られている。そうしてシェリフは崩れ落ちるように倒れた。

 

 

「残念だよ…… お前には失望した」

 

「こッ…… 巧也さぁぁぁぁぁぁぁぁんッッッ!!!!!」

 

 

 公園からトリガーの悲しき叫び声がビルの間を通り抜けるほど辺りに響き渡った──。




ファッ!!?やべーよやべーよ…
幹部のミナツキとキサラギが生きていた。巧也が撃たれた……
次回どうなってしまうのでしょうか?

次回、第26劇「リバーストップ」

次回もお楽しみに〜!!


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計画の始まり編
第26劇「リバーストップ」


皆さんご無沙汰しております。
前回をお話しする前に豆知識です。気づいてる方はいらっしゃると思いますがRIVERSは川だろうがーと。本来は逆転の意味のREVERSEなんですけど、RIVERSの方が字的にカッコ良かったのでこちら方にしました。巧也・佳苗・孝四郎の3人(川)で元は構成してましたからちょっと掛けてます。はい!

という事で前回、まさかのキサラギとミナツキ…巧也の両親が生きていました。そして巧也が撃たれてしまって……

それではどうぞご覧ください。


「こ、巧也さん!! 大丈夫かよ!! なぁっ!!!!?」

 

「うっ……ッ……!! 」

 

「…… ッお前らァァァァァァァァァッッッ!!!!!」

 

 

 トリガーは変身が解除されてしまった巧也の元へ近づき腹部を抑える。撃たれたところからドクドクと血が流れている。すぐに治療をしなければ死んでしまうかもしれない。しかしトリガーはそういう事は思ってはいたのだが、こいつらをぶっ飛ばしたいという気持ちが強かった。

 トリガーはシェリフからアフタートゥエルブを抜き取り、ネクストと組み合わせてセイブドライバーに挿し込んで引き金を引く。

 

 

《アフターネクストガンアクション!! クロッシングトリガー!! イレブン!! トゥエルブ!! ダブルイーハー!!》

「絶対に許さねーからなッ!!! 例えあんたらが巧也さんの親だったとしても、実の子を平気で傷つけるような奴はぶっ飛ばすッ!!!」

 

「シモツキがやられたという姿か。いいだろう。試してみようじゃないか」

 

 

 ミナツキは持っていた銃を放つと、凄まじいエネルギーに回転を纏う。トリガーは反射的に避けると、後ろの建物に当たるとまるでダイナマイトでも仕込んでいたかのように爆発する。

 

 

「…… なるほど。あんたの能力は銃弾の火力を底上げできるって事か」

 

「それだけならいいな」

 

「…っ!!?」

 

 

 またも放たれた弾丸を躱そうとしゃがむと、なんと弾丸はトリガーを追いかけるように突然に曲がる。この近距離で避けられるはずもない。そして着弾… したかに思えたが、何故か弾丸は爆発しない。

 

 

「ど、どういう事なんだ……?」

 

「── なんでだろうな?」

 

「なにっ!!?」

 

 

 ミナツキが気づいた時には、トリガーの筋力が倍加された蹴りを右頬に決まり吹き飛ばされていた。なぜ当たったはずなのにトリガーはなんともなかったのだろうかと、ミナツキは思っているだろう。アフターネクストの時間を消し飛ばすの力により、弾丸はトリガーに当たったという時間を消されてしまったのだ。

 

 

「まぁちょっとしか飛ばせねーからなんとも言えないが…… おっと!?」

 

 

 トリガーの頬スレスレに弾丸が飛んできた。どうやらもう1人の幹部キサラギが攻撃してきたようだ。まだ彼女の能力自体は把握できていない為、用心しなければならない。

 

 

「外れたわね。まぁこれくらいじゃ当たる訳ないか」

 

「あらあら奥さん。あんたも俺とやり合うってか? なら、さっさと終わらせてやるぜ… 巧也さんがやばいんだよ!!」

 

 

 キサラギに思いっきり蹴りを放つが、おかしな事に脚が体に埋め込まれていく。ハヅキのようなスライム状になる能力かと思ったがそうではない。キサラギの体は一気に元に戻ると、トリガーを大きく吹っ飛ばした。そう、彼女はまるでゴムのように柔らかくなったのだ。

 

 

「サツキが確か硬化能力だったかしら? でも硬いだけじゃいけない時もあるのよ?」

 

「こ、これはこれで厄介な能力だな…… いくら消し飛ばせると言っても幹部2人はきついかも」

 

 

 ミナツキが戻ってきてキサラギと共に、トリガーを囲むように立つ。もちろんトリガーはいつ仕掛けて来てもいいように身を低くして構える。しばらくそのまま時間が流れて、先に動き出したのはミナツキの方だった。

 だが、それは攻撃を加える為に動いたのではなく、手を挙げる為に動いたのだ。

 

 

「なんのつもりだッ!!」

 

「勝負はここで終わりだよ。降参じゃない。目的は果たせたからな」

 

「巧也さんを戦闘不能に持っていく… あわよくばこのまま死ねばいいってのが目的なんだろ?」

 

「少し当たっているが、巧也の件は本当に仕方がない事なんだ。もしこちら側に着くと言ってくれたのならこうはならなかった……だが、そうじゃない」

 

「なら、なんだって言うんだこら」

 

「私たちの本当の目的は時間を稼ぐ事さ」

 

「時間を稼ぐ…? 何の?」

 

「………… そういえば永理だったかな? あの子はRIVERSに向かったね」

 

「それがどうし─── っ!!? まさかお前らッ!!?」

 

「RIVERSはどうなっただろうね? それでは私たちは失礼するよ」

 

「待てッ!!…… くそっ!! いや狩馬さんがいるから大丈夫な筈だ。今は巧也さんを病院へ──」

 

 

 巧也を運ぼうとしたトリガーだったが、腕を強く握られたのを感じ巧也の方を見る。すると荒い息を立てながら首を横に振った。

 

 

「RIVERSへ行くぞ…… 兆ッ!!!」

 

「あんた今の状態で戦える訳ないだろ!!? とにかくあんたは治療をしなければならない!! 今すぐにだ!!!」

 

「頼む兆ッ!!!」

 

「巧也さん…?」

 

「RIVERSの課長は… リーダーは俺だ…… ここでくたばっていたら、あいつらにこの先見せる顔がないッ!!! 無理はしないつもりだ!! 頼むッ!!!」

 

「……ッだぁぁぁぁぁぁぁ!!! どーせ言っても聞かねーんだろ!!? あんたという課長はよ!!! 行くぜ巧也さん!!!」

 

「すまない兆… ありがとう!!」

 

「礼ならしっかり生きて、今度バーでミルク奢ってもらうからなッ!!!」

 

 

 バオを呼ぶと早々にトリガーを踏みつける。しかしバオの今回の踏みつけは肩だった。そしてブルルッと首を回すと、早く乗れと言わんばかしに首を自分の背へ向ける。

 

 

「…… へっ、ありがとよ。相棒」

 

「ブルルルルルルッ」

 

「よし、行くぞッ!!!」

 

 

 巧也を乗せて、トリガーは急いでRIVERSへと戻って行くのであった。しかしこれはシワスの予想通りの展開なのだ。この後も彼の思惑ではうまくいく。兆、巧也、狩馬の3人に亀裂を走らせる為のものだと、この時の誰もが思わなかった────。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「おいおい…… 嘘だろ?」

 

「くそっ…… なんて事だ…!!」

 

 

 警視庁は既にほぼ破壊にされており、火の手が上がっている。周りには警察官たちが倒れていた。急いで中へ入り救助を行いながら、RIVERSのドアを開くと狩馬と佳苗、それから孝四郎が倒れていた。中は酷い有様だ。

 

 

「みんな大丈夫か!!? 狩馬さんちょっと起きてッ!!」

 

「佳苗!! 孝四郎!! 返事をしろッ!!!」

 

「とにかく運ばなきゃ…… 巧也さんは無理しないようにね」

 

「わかってる」

 

 

──── それから数時間経ってやっと消化され、幸い死亡者は出なかったが、怪我人が大勢出てしまった。そして多くは記憶を抜き取られてしまっている。RIVERSにいた3人は何とか記憶を奪われずに済んだようだ。警視庁の外で集まったメンバーは今までの経緯を話す。巧也は治療の為、兆が狩馬から聞く事になった。

 

 

「すまねぇ…… シワスとシモツキ、それにヤヨイが攻めてきたんだ。あいつらもガチで来てやがった。俺の力じゃどうすることもできなかった…」

 

「俺たちもごめんな狩馬さん。まさか時間稼ぎされてるとは思わなかった… 巧也さんはあぁなっちゃうし…… それに巧也さんの両親が生きてたし」

 

「なんだとッ!!?…… いやもう今更驚いても仕方ないか… 奴らの作戦にまんまとはめられた俺たちの負けだ」

 

「……… ん? 待ってくれ。永理はどうしたんだよ?」

 

「永理?…… そうだ。あいつはどこに行ったんだ!!? 永理はどこだッ!!?」

 

「落ち着いて狩馬さん!! 今は冷静に物事進めないと!!」

 

「わかってはいるが… まさか攫われたんじゃ──ッ!!!」

 

 

 佳苗はそこで「そうよ」と呟く。そして気を失う前に彼女が連れて行かれる所を見たと語った。それを聞いた狩馬はもちろん黙っているはずがない。すぐにでも行こうとするが、兆が止めに入る。

 

 

「落ち着けってば!! まだ永理が連れ去られただけだ!! あいつらの狙いは俺たちを分断すること!! 下手に動けば奴らの思う壺だぜ!!?」

 

「妹をそのままにしておけって言うのか!!!?」

 

「ちげーよ!!! 1人で乗り込む前にしっかり準備を立ててから行かないと返り討ちにされるって言ったんだよ!!!」

 

「ならお前もついてこい!! アフターネクストの力があれば勝てんだろ!!?」

 

「そういう問題じゃないってば!!! それにもし幹部3人が相手になったら、いくらアフターネクストでも勝てねぇよ!!!」

 

「それならお前がもっと早く来ていればこんな事にはならなかった筈だ!!!」

 

「はぁっ!!? 狩馬さんだって負けてなきゃこんな事にはならかったんじゃないのか!!!?」

 

「なんだとッ!!!!!」

 

 

 2人がヒートアップしてくると、慌てて2人を佳苗と孝四郎が止めに入り、その場はなんとか治った。しかし彼らに亀裂が走ってしまった事は言うまでもない。

 狩馬が何処かへ行くと、兆はコンクリートの地面に座り込み、頭を抱えてため息を吐く。それから数時間後、孝四郎が近づいてきて彼を宥める。

 

 

「…… ごめん孝四郎さん。ありがとう」

 

「いいよ気にしないで」

 

「えっと… 狩馬さんは?」

 

「狩馬さんは佳苗さんが相手してくれているよ… それより落ち着いた?」

 

「あ、うんまぁ……」

 

「大変な事になっちゃったね。研究室もあの有様だし、フィガンナイフの製作はしばらくできそうにないよ」

 

「そっか…… あ、そうだ巧也さんは?」

 

「今さっき治療が終わった所だよ。行ってみれば?」

 

「うん… 行ってみるよ」

 

 

 孝四郎と別れ、病院へと行き、ナースセンターで場所を聞いた後、巧也の病室へと向かう。重症患者が多い為、個室ではなく大部屋となっている。もう既に見舞いに来た人たちが大勢いるようだ。

 するとその中から兆の名を呼ぶ声が微かに聞こえた。声のする先には巧也がベットで寝ていた。

 

 

「よう巧也さん。見舞いというか様子見というか… 手土産は残念ながら持ち合わせてないぜ?」

 

「来てくれただけで充分だ。ありがとう」

 

「いえいえ。これで2度目の入院? するのかわからないけど… 怪我し過ぎだぜ?」

 

「そうだなぁ。人生で2度目になるかもな…… まさかその2度目が親に撃たれて病院送りとは」

 

「あ……」

 

 

 兆は自分で言った冗談をこれほどまでに憎んだ事はない。今かける言葉にしては冗談が過ぎた。巧也は実の父に殺されかけたのだ。

 

 

「ごめん巧也さん。そんなつもりで言った訳じゃないんだ…」

 

「お前の冗談はすぐにわかる。例え数ヶ月でもお前のことはそれなりに理解してるつもりだ」

 

「……」

 

「なぁ、兆。ただの質問なんだがいいか?」

 

「もちろんっすよ。なんでも言ってどうぞ!!」

 

「お前は目標にしたいた人物がウォンテッドの幹部だと知ったら…… お前はどうする?」

 

「……… あっと… その、なんだ。俺は親がいたのかどうかもよくわからないし、それに目標にしたいって人もいないし、だからうまく言えないけどさ。ぶん殴ってると思う」

 

「…… そうか。そうだよな。普通ぶん殴りたいほどムカついてくる… だが俺はそうじゃないんだよ。怒りとか憎しみとかじゃない。悲しみでもないんだ……」

 

「なら、なんだって言うの?」

 

「── わからない。この気持ちをどう表せばその答えが出るのかわからないんだ。今は…… 何も考えていたくない気分なのかもしれない」

 

「オッケー。俺はこれで失礼するよ」

 

「すまないな兆。わざわざ来てもらって変な話に付き合わせてしまったな」

 

「何言ってんの。俺の巧也さんの仲じゃねーか。どんな話でも付き合ってやるぜ」

 

「それともう一ついいか? 狩馬の事なんだが…」

 

「狩馬さん…… が、どうしたの?」

 

「あいつを見張っておいてくれ。佳苗から既に連絡はもらってる。永理を助ける為に乗り込むかもしれない」

 

「…… わかったよ。俺に任せてくれ」

 

「頼んだぞ兆」

 

 

 病院から出ると、警視庁前へと戻る。孝四郎と佳苗、狩馬はいない。兆は2人に近づいて病院に行ってきたことを告げる。巧也の状態は良かったとだけは伝えたが、それ以外は何も伝えなかった。伝えられなかったのだ。

 

 

「そうねー… まぁいいわ。元気そうなら良かった良かった」

 

「…… なぁ佳苗さん」

 

「ん? 狩馬なら気分転換に散歩してくるって。一応携帯は渡してあるから連絡できるわよ」

 

「そっか… あのさ。ただの提案なんだけどさ」

 

「何かしら?」

 

「RIVERSはご覧の有り様だからしばらく拠点がなくなる訳じゃん?」

 

「…… 当てはあるの?」

 

「あぁ、とびっきりの場所がね───」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 そんなこんなでBAR TRIGGERへやってきた兆たちは、マスターに事情を説明するとすぐに迎え入れてくれた。ラジオで現場を把握していてくれたらしく、兆がここに来ることも予想がついていたらしい。

 

 

「マスター本当に助かるよ」

 

「ここなら偽物の兆くらいしか知る奴はいないだろう」

 

「えっ!!? ここに来てたの!!?」

 

「気付かないフリはした。すぐにわかったぞ。お前ならいつもミルクを頼むからな」

 

「そこかよ…」

 

「半分そうだが半分違う」

 

「どういうことだよ!!」

 

「… お二人もゆっくりしていってくれ。ここは安全だと保証しよう」

 

 

 話によればカンナヅキはあれ以降来ていないらしいが、用心はした方がいいだろう。マスターは胸を張って安全だと言うが、こればっかりはさすがに怪しい所である。しかしムツキという知り合いがいるからこその自信もあるのだろうか。

 

 

「よーしちょうどおじさんもいるし、飲みっぷり対決しよーぜ?」

 

「くくくっ… いいだろう。俺が勝ったら奢りにするぞ?」

 

「上等だぜ!!」

 

 

 イッシュウはガンホーレを後ろから応援し、2人でゴクゴクとジョッキに入った飲み物を飲み干していく。もちろん勝敗は、誰かに決めてもらうわけではないので一生終わらないだろう。

 佳苗はそれを見て笑いながら、携帯で狩馬に連絡を入れる。だが、いつまで経っても反応がないのだ。

 それから1時間経っても、何もこないので再度電話をかけようとするとメールが来ていた。開いて内容を確認し、急に佳苗の動きが止まった。そして兆を急いで呼ぶ。

 

 

「な、なになにどうしたの佳苗さん?」

 

「狩馬が……」

 

「狩馬さんがどうしたの?」

 

「あれだけ念押ししたのに!!!」

 

「だからなにさ?」

 

「── 永理ちゃんの所へ行ったわ」

 

「な、なんだってッ…!!?」




どんどん暗くなっていく〜
狩馬が永理の元へ行ってしまった!!?どうなってしまうのか…

次回、第27劇「七曜」

次回もよろしくお願いします!!


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第27劇「七曜」

皆さんご無沙汰しております。

前回、まさかの警視庁が襲われ永理が連れ去られてしまう。そして兆と狩馬に亀裂が入り、巧也も思い詰めてしまい、せっかく直った関係がまたバラバラになってしまった。RIVERSの仮拠点としてBAR TRIGGERでしばらく活動する事になったが、そんな時、狩馬が永理を助けに行ってしまったと佳苗から言われ……

それではどうぞご覧ください。


 兆はバオに跨がりエリアIへ向かう。ヤヨイが支配するここに何故来たのか。簡単な話、狩馬が1番に疑うのはシワスでもシモツキでもなく、ヤヨイを真っ先に疑うはずだ。奴らもそれをわかって待っているに違いない。

 

 

「あいつらの狙いは狩馬さんもそうだが違う。本当の目的は永理だ。例の鍵ってのが関わっているのかも…」

 

 

 エリアIへ着くと、さっそく中へと侵入する。所々建物に大きな風穴や瓦礫が落ちており、既に激しい戦闘があった事が窺える。市民も倒れてはいるが、まだ息はあるようだ。狩馬は妹の為に乗り込んだとは言え、市民を巻き込んでまで助けようだとか思わない。だから最小限に済んでいる。

 

 

「だけど幹部たちと戦った感じじゃないな。もし幹部を相手にとればみんなを巻き込まずに戦闘なんてできないはずだ。さすがだぜ狩馬さん… だからこそ攻めちゃいけないんだ。この罠に乗ってはいけない!!」

 

 

 すると、遠くの方から微かではあるが何か聞こえる。よく耳を澄ませると声だとわかった。叫び声が聞こえてくる。とても苦しそうな声だ。

 

 

「まさかこれって…… やばいやばいやばいッ!!」

 

 

 兆は顔を青ざめさせ、再びバオを呼んで跨がり、急いでその声のする方へと走った。念の為、セイブドライバーを腰に巻きつけて、更にスピードを上げさせ、間に合ってくれと心の中で思いながらその場所へと向かう。

 ── そしてスタジアムのような場所へ辿り着くと狩馬の変身が解けており、見るも無惨にやられてしまっていた。その先にヤヨイが立っており、更に奥には縛られて気絶した永理がスタジアムの客席に寝かされている。

 

 

「狩馬さんッ…!! 永理!!! 」

 

 

 狩馬の元へ駆け寄ると、かなりのダメージを受けており苦痛の表情を浮かべている。しかし狩馬は兆を振り払うと、またキカンドライバーで変身しようとギアナイフを持ち始めた。兆はそれをもちろん止めに為に入る。

 

 

「もう充分だ狩馬さん!! あんたはよくやった。後は俺に任せてくれ」

 

「どけ。邪魔だ兆… 俺は奴を…… この手で仕留め… ぐっ!!」

 

「だからその怪我じゃ無理だ。それと現によ。あんたの力じゃ奴には勝てないから負けたんだろ?」

 

「なん… だとッ!!? もういっぺん言ってみろ兆ッ!! 俺が弱いとでも言いたいのかコラァッ!!!!!?」

 

「弱いから言ってんだよ!!!」

 

「てめぇッ──」

 

「── 今、あんたは生かされてるんだ。あのヤヨイに!! あんたを妹の前で痛めつけてあいつは楽しんでるんだ!! 今のハントの力じゃヤヨイの力には勝てない。リミッターも限界を超えかけているはずだ。これ以上やって死んだら完全敗北になるんだぞッ!!! あんたがこの世で最も許せない野郎に嘲笑われながらな!!!」

 

「…… あぁ、そうだ。わかってるんだよ。だけど俺はこいつをこの手でぶっ潰したい。でも届かない。なんでこんなに遠いんだろうな…… これじゃあ兄として永理に対して恥ずかしい… また同じような過ちを繰り返すのは嫌なんだ。あの日のような事をまたッ!!!」

 

「あんたがあいつぶん殴ってやりたい気持ちは伝わってくる。だけど今は任せてくれ。弱いなんて言って悪かったけど… だけど今のあんたじゃもう1度同じような事をしては勝てない。だからこそ今だけは耐えてくれ。必ずあんたにチャンスが訪れるからよ」

 

「なに…?」

 

 

 意味深な言葉を残してから兆はヤヨイの元へと歩む。ヤヨイは今の一部始終を見て、大きなあくびをして待っていた。それから兆と目が合うと吐くような仕草を行う。挑発のつもりだろうが、それは兆にとっては意味のない事。何故なら既に怒っているからだ。

 

 

「終わったか? つまらない劇場を見て、酒呑みすぎた次の日の朝のような気持ち悪さを感じてた所だ。そんな弱い男に何もしてやることはない。昔のような過ちを繰り返し死んでいくんだよ。そいつはそういう運命だ」

 

「へーそうかい。俺を気持ちが悪いってのは心底腹が立つが、狩馬さんを俺ら以外がとやかく言うのはもっと許せないな」

 

「ふんっ、仲間を思いやるってのが俺は気に入らない。そもそもいるだけ邪魔なんだよ。俺のやりたいように動けない奴らに一体なんの価値がある? だからこそ使い捨ての駒だって思えば気持ちは楽だろう?」

 

「…… どうしようもないクソやろうだな。そんなあんたは痛めつけられなきゃわかってくれないだろうな」

《AFTER NEXT》《OVER SET》

 

 

 セイブドライバーの引き金を引くとアフターとネクストの装甲を纏う。変身を終えると、構える事もなくヤヨイに近づていく。ヤヨイは自分の能力を発動させて、みるみるうちにあらゆる場所からウォンテッドを生み出す。やはりこの男が出す量は尋常じゃないほどであり、スタジアムがウォンテッドで埋まりつつある。

 

 

「そのアフターネクストは既に聞いた。昔の俺の駒どもだったら、例えそれが1つだったとしても負けていた…… だが!! 今の俺は違う!! この駒どもはただのゴミではなくなったのだ!! それは既にそこのハントで証明されている」

 

「喋ってる間に何回攻撃できただろうな」

 

「… そんなに死にたいか」

 

 

 ヤヨイが手を挙げると、それを合図として一斉にウォンテッドが襲いかかってきた。津波のように押し寄せる群れを前に、トリガーは首を回して余裕そうな態度を見せる。この行動をヤヨイは挑発だと見なし、自分の能力を最大限に高めた。

 

 

「ぶっ潰れろッ!! トリガァァァァァッッッ!!!!」

 

「そういう言葉さ─── ぶっ潰した後に言うもんだぜ」

 

 

 そう言ったトリガーをウォンテッドの群れが有無を言わさず押し潰す。さすがのトリガーと言えどこの大群、ましてや強化されてハントさえも手も足も出なかったこれを倒せるはずがない。ヤヨイはそう確信していた。

 だが、ドームのようになっているウォンテッドたちの中心部に光が見えてきた。何かが起こりそうなそれにヤヨイは近づくと、突然、群れが花火のように打ち上げられたのだ。

 

 

「な、な、なにィィィィィィッ!!!?」

 

「お前がいくら強化しようと、お前がいくら手下を増やそうが関係ない!! 俺の時間をお前には止められねーよッ!!!」

 

 

 アフターネクストはそれぞれのフィガンナイフの力を使うことができる。速さと力も個々の時より段違いに上がっているのだ。最大出力でのスペックであるならどんな敵にだろうと負けはしない。

 

 

「そんなバカな…ッ!!?」

 

「喰らえ!! ウォンテッド砲ッ!!!」

 

「なんだそれぐはぁッ!!!?」

 

 

 トリガーはウォンテッドを一体掴むと、筋肉を倍化させた状態で叩きつけるように投げる。その速さは適当に考えた名前とは裏腹に、本当に砲弾のような威力でヤヨイにぶつかってスタジアムの端の壁に打ち付けられた。

 

 

「まさか… 俺が想像していた以上のパワーを…ッ!!」

 

「はははははっ!! どうやらこれでゲームセットのようだな? ヤ・ヨ・イ?」

 

「こ… のガキィィィィィィィ…… ッッッ!!!!!」

 

「てことで、あんたもここで終わりだぜッ!!!」

 

 

 セイブドライバーの引き金を引いて、天高く跳び上がり、ヤヨイに向けて一直線に跳び蹴りを喰らわせようと構えた。向かってくるトリガーを前にヤヨイは諦めたくはなかったが、どう足掻いても完全敗北してしまった事実は変わらない。

 

 

「ハァァァァァッッッ!!!!!……… ん? ぐはぁッ!!?」

 

 

 突如としてトリガーの横からエネルギーを帯びた矢が飛んできた。完全な不意打ちであった為、対処することができずに客席の方へと落ちてしまう。腰をさすりながら、反対側の客席を見るとシワスが腕を弓状に変えて矢を放ってきていたのだ。彼以外にもシモツキ。そして… テロスがいる。

 

 

「あらあら… これはやばいな。冗談言ってる暇なくなるやつかこれ? ちょっと幹部の方々!!? 本気で俺のことやりに来たのかい!!?… まぁそうだよな。そもそもこうしてくる時点で罠だったし、なにが起きても不思議じゃねーか」

 

「1番厄介なお前を潰せば、後はどうにでもなる。だが、そのアフターネクストの力の前に、1人ずつかかれば間違いなくこちらが不利となるだろう。だからこそ幹部の力を今ここに集結させてお前を葬るのだ」

 

「そうかい。やってみろよー…… と、言いたけどさすがにテロス入りだとまずいな…」

 

「ボスにわざわざ出て頂くまでもない…… 奴は我々にお任せください。あなたに相応しい者は我だと証明して見せましょう」

 

 

 それから双方は客席から飛び降り、スタジアムの中心部に歩む。相手は3人。シワスはまだわからないが、他2人の能力だけでも非常に厳しい。アフターネクストの時を消し飛ばす力を最大限に発揮したとして、間に合うかどうか不安になる。

 トリガーはチラリとボスの方を見ると、白い液体が入ったグラスを持ちそれを飲み干している。きっとミルクだと思うが、随分と余裕そうな態度である。この状況であるなら否定はできない…。

 

 

「よそ見をするとは余裕そうだな」

 

「ちょ、ズルッ…!!?」

 

 

 またシワスから同じように矢が飛んできた。体をかすった程度だがとんでもない威力だ。ミナツキの弾丸より威力はなさそうではある。しかしトリガーに考察する時間はない。シモツキが避けた所を狙って斬ってきた。

 

 

「ちっ…!!」

 

「さっきは俺をよくも見下したな? その報いは受けてもらうぞッ!!」

 

 

 ヤヨイの出したウォンテッドが一斉に襲いかかってきたが、また同じことだろうと筋肉を倍化させて殴る。だが、先程よりも吹き飛ばさず残りのウォンテッドが取り囲んできた。

 

 

「な、なんだとっ!!?」

 

「くくくっ… 二回か」

 

「二回…?」

 

「あぁ、そうだ!! お前はシワスの矢を二回喰らった!! 終わったな!!」

 

 

 その言葉の意味は理解できない。二回撃ち込まれていったい何が起こったと言うのだろうか? トリガーは考えようとしたが、シモツキの斬撃を背中に受けてしまった。更に続けてシワスの矢が胸に直撃してしまう。

 

 

「うぐぅ…ッ!!」

 

「三回目だッ!!! 終わったなトリガーッ!!!!」

 

「な、なんだ…!? ち、力がッ……」

 

 

 その時やっとこの能力について理解する。トリガーが受けた矢は確かに威力はあるが、ミナツキの物と比べて威力が低い。これだけならまだ耐え切れるほどなのだが、問題は威力じゃなかった。彼の放つ矢は相手のエネルギーを外部へと弾き飛ばしてしまうのだ。

 しかし既に遅かった。トリガーはシワスの能力にまんまと嵌められ、いつしか抵抗すらままならなくなってしまった。

 

 

「さ、最悪だ… 警戒はしていたが、 この力は予想外だったぜ…」

 

「我々の勝利だなトリガー。最後に言い残す言葉はあるか? お前は今までに何人もの幹部を葬ってきた。その力を称賛して何か述べさせてやろう」

 

「…… 戦いってのは最後まで何があるかわからないぜ?」

 

「ふんっ、最後まで憎たらしい奴だ…… 死ぬがいい」

 

 

 3人の幹部が構え始めたその時、馬が一頭、幹部たちの目の前を通り過ぎ、反射的に後ろへ下がる。その馬はバオであり、体に何か括り付けてあった。トリガーは立ち上がり、その何かを外して思いっきり狩馬の方へとぶん投げる。急だったので、慌てながらだったがなんとか取れた。

 

 

「あぶねーだろ兆ッ!!!」

 

「それがあんたのチャンスだぜ狩馬さん」

 

「なに…… ッ!!? これはまさかッ!!」

 

「それは狩馬さん… ハント専用アイテムだ。ボロボロで悪いんだけどさ。俺ももうバラバラになりそうだから… 手伝ってくれない?」

 

「兆…… あぁ、やってやる。やってやるぜ!!」

 

 

 狩馬はトリガーの元へと駆け寄って頷き合うと、ヤヨイを睨みつける。ヤヨイはその表情を見て、スタジアム内に響く声で大笑いし始めた。

 

 

「なんだその顔は? さっき俺1人にボコされた野郎がまぁそんな決まった顔で睨みつけてくるもんだな?」

 

「うるせー… だがよ。確かに俺は負けたが、これで勝っちまえば話は別のはずだ」

 

「勝つだと? お前如きが俺をどうするって? 夢を見るのも大概にしろ。お前はまた負けるんだよ。何度も何度も、そしてなにも救えず、なにも守れず、最後は妹を連れて行かれてはいさよならだ。これがお前なんだよッ!!」

 

「ふっ、言っとけよ。お前がいくら犬のように吠えようが知った事じゃねぇ。俺は2度と永理を離さない。同じ過ちを繰り返さない。だが、俺1人じゃそれはできない。だから借してもらうぜ兆。お前の力と俺の力で…… こいつをハントしてやる」

 

「やってみろよ!!! やれるもんならなぁッッッ!!!!!」

 

「永理…… 見ててくれ。俺はもう大切なモノを奪われたりはしないッ!!!」

《WEEK START》

 

 

 狩馬はキカンドライバーを装着し、新たなアイテム… ウィークエンジンを起動させてからドライバーの右側に差し込む。そしてもう一つのアイテム漆曜日チケットを挿し込んで、番式ギアナイフを構える。

 

 

「変身ッッッ!!!!!」

 

 

 ギアナイフを挿し込むと、ハントのシークエンスともう一つ、壱〜陸までの文字が狩馬の背中に円のように浮かび上がる。そしてその真ん中に漆の数字が出ると、機関車が狩馬を通り抜けて徐々に装甲を纏って行く。

 

 

《漆曜式!! ギアチェンジ!! スタート!! ニチ・ゲツ・カ・スイ・モク・キン・ドッ!! オールウィーク!!》

「兆。こいつらぶっ倒して、さっさと永理連れて帰るぞッ!!!」

 

「もちろん。やってやろうぜ狩馬さんッ!!!」

 

 

 再び双方は構え、その間に何者も入ることができないほどの圧を放ち合う。

 

 

「今日が俺たちのッ!!」

 

「ハント日だぜッ!!」




ハントの新フォーム漆曜式が爆誕!!!
果たして幹部相手に勝てるのか…!!?

次回、第28劇「大切なモノ」

次回もよろしくお願いします!


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第28劇「大切なモノ」

皆さんご無沙汰しております。

前回、敵陣に乗り込んでしまった狩馬と連れ去られた永理を助ける為、兆が向かいましたが、やはり罠であり、幹部3人を相手にします。当然きつかったので敗北しかけます。しかしハントの新アイテムをバオに持って来させており、ハントは新フォーム漆曜式となります。果たして……

それではどうぞご覧ください。


 ハントは右腕に炎を、左腕に水を纏い、それをビームのように両手を突き出して放つ。その威力はヤヨイが作り出したウォンテッドの壁を簡単に粉砕する。個々の能力も上がっているようで、ヤヨイをいとも容易く巻き込んで爆発を引き起こす。

 

 

「な、なんだこのパワーはッ!! さっきまでとはまるで違うぞ!!?」

 

「さっきまでと違わなかったらパワーアップの意味がねーぜ!!!」

 

「調子に乗るなよこのガキィ!!!」

 

 

 それからヤヨイはウォンテッドを召喚して、ハントの目の前を覆うと、後ろに回り込んで自分から殴りに行く。だが、ヤヨイの拳はバキリと音を立てる。まるで骨が折れたかのように… いや、折れたのだ。

 この硬度は悟式によるものである。先程も言った通り能力は向上しているので、ただの攻撃で壊れることはまずあり得ない。

 

 

「く、くそっ!!?」

 

「どうしたヤヨイ? さっきまでの態度とは違うな?」

 

「… ふっ、ふふふっ…」

 

「なにがおかしい? 絶望的状況過ぎて気でも狂ったか?」

 

「俺は1人じゃねーんだぜ?」

 

 

 するとハントの後ろからシモツキが両腕の剣を構え、今にも斬りかかろうとしていた。もちろんハントはそれには気が付いてはいない。

 シモツキの剣が振り下ろされ、完全に決まった。三枚おろしの完成… と、思われたが、斬るどころかそれ以前に装甲でピタリと止まっている。

 

 

「僕の剣が通らないだと!!?」

 

「お前がシモツキだっけか? 兆に聞いていたより大したことなさそうだな?」

 

「言いやがったな!! こいつ…ッ!!!」

 

 

 またも剣を振り下ろそうとしたが、トリガーのガトリングウエスタンによって何発もその身体に撃ち込まれる。彼もシワスの能力によって力は失ってはいるが、隙をついての攻撃とあれば通る。

 

 

「狩馬さん。俺はシモツキとシワス両方相手するからヤヨイ頼むぜ」

 

「お前1人で大丈夫なのか? さっき力を無くしているようだったが…」

 

「なに言ってるの。あんだけで俺がヨロヨロするかよってんだ!! とにかくヤヨイをやってくれよ。ぶん殴るんだろ?」

 

「…… あぁ!! ならそっちは任せたぞ!!」

 

 

 そしてハントは前に向き直すと、すでにヤヨイはハントの周りにウォンテッドを大量に囲ませていた。当のヤヨイは能力を最大限に発揮させ、いつしかハントは光が差さないドームの中心に呑まれてしまった。

 しかしハントの心はとても落ち着いている。寧ろ次にやることを考えている余裕があるほどだ。

 

 

「こんな小細工がよー……」

 

 

 ドームは弾け飛んだ。中からの強いエネルギーがウォンテッドたちを瞬時に焼いた。ヤヨイは何も言えずに固まり、一歩も動けずにいる。

 そしてゆっくりとハントはヤヨイの元へと歩み寄る。とても静かに、それでいて圧を強く。

 

 

「今の俺に通用するとでも?」

 

「や、やめろッ!!! 命だけは…ッ!!!」

 

「命乞いか? それならもっと前から人を助けるんだったな…… お前のような人を平気で道具とするクズの命乞いなんて聞く意味がねーからな」

 

「金ならある!!! そ、それに高級車だって、でかい家も!!! それからッ──」

 

「そんなもん俺にとってはどうでもいい。ただ俺が今、欲しいものは… お前の魂だ」

 

「ひ、ひぃぃぃぃっっ!!! 許してくれ!!! なんでもやるから許してくれッ!!!」

 

「ん? 今なんでもするって言ったな? 言ったからな。俺はこの両耳で確かに聞いたぞ?」

 

「あ、あぁ…」

 

「なら、お前の命を取っていいってことだよな?」

 

「や、や、やめてくれぇぇぇぇぇッ!!!!」

 

 

 そうしてヤヨイは手で顔を覆う。そしてハントが腕を振り上げた瞬間「なーんてな」と大声で笑い始める。恐怖でおかしくなったのか? と思うハントであったが、次にヤヨイが指を指した方向を見ると、永理の首にウォンテッドが手をかけていた。

 

 

「て、てめぇッ…!!! きたねーぞッ!!!」

 

「汚くて結構だ!! いいか狩馬? 戦場ではいつ何時も気を抜いちゃならねーんだぜぇ!!? 綺麗事抜かしてる暇があんならどんな手を尽くしてでも勝利する!! それが戦いってもんだ!!!」

 

「…… くくくっ」

 

「何がおかしい? お前こそ気が狂ったんじゃねーか? お?」

 

「なーんてね」

 

「は……?」

 

「お前というクズが簡単にへーこらと諦める筈がない。何の対策もなしに永理をそのままにしておくと思うか?」

 

 

 永理の方へと目をやると、首をかけていたウォンテッドが、スタジアムのコンクリートに埋め込まれているではないか。

 そう、ハントは最初からヤヨイを既に警戒をしていた。この男には勝てると確信していたが、負けるとわかれば何をするかわからない。だからすぐに対応ができるようあの戦いの最中、いちいち気にかけていたのだ。

 

 

「なぁ、ヤヨイ」

 

「ひっ!!?」

 

「俺に対して1番やってはいけないことをお前はやってしまった。この意味わかるよな?」

 

「ゆ、許してくれっ!!! 命だけは… 命だけはご勘弁をぉぉぉぉぉッ!!!!」

 

「わかった」

 

「え?」

 

「命だけは助けてやろう」

 

「ほ、本当か!!?(こいつ調子に乗りやがって…… だが、命だけは助かる。いつかこいつに目にもの見せてやろう。へっ、意外とチョロい男で助かっ───)」

 

「── ただし命だけだ。死ぬ寸前まで痛めつけてやるのはありってことだよなぁッッッ!!!!?」

 

「え? えぇ? ちょ、待ッ……!!! やめて…… やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!!」

 

 

 ギアナイフを押し込んでからこれでもかと殴り続けてから跳び上がり、両脚を揃え、全能力を発動させ、ヤヨイへと突っ込んでいく。もちろんヤヨイはウォンテッドを出して抵抗するが、何の意味もなく貫通してヤヨイに全てのエネルギーをぶつける。

 ハントは着地してヤヨイを後ろに手を振る。

 

 

「あばよ。俺の仇。俺の過去」

 

「ちくしょぉぉぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉぉッッッッ!!!!!!」

 

 

 ヤヨイは大爆発をし、キラーズガンとデリートガンナイフは木っ端微塵に壊れてしまう。ヤヨイの本体が倒れた事を確認すると、トリガーの助けに行こうとそちらを見るが、ハントはその光景に驚いた。劣勢してるかと思いきや、トリガーは幹部2人相手に押していたのだ。

 

 

「どうしたシモツキとシワス!!! それじゃあこのトリガーに勝てないよん!!!」

 

「ありえん…… 我の矢に触れ、確実に力を失ったはずだ… なのにどういう事だッ…!!」

 

「お前らには一生わからねーよ。だって俺だってわからないからなッ!!!」

 

 

 困惑するシワスを先ほどから煽るトリガーだが、その後ろにシモツキが近づいていた。兄を馬鹿にする事は決して許さないのだ。

 しかしそんなシモツキも途中から入ったハントによって、トリガーへの不意打ちは阻止されてしまった。

 

 

「狩馬さんそっちは終わったかい?」

 

「こっちはな。だからこいつらはさっさと…」

 

「片付けるとしますか!!!」

 

 

 トリガーはセイブドライバーの引き金を引き、ハントはギアナイフをもう一度押し込み、2人で宙を舞う。シワスは全エネルギーを矢に集中させ、シモツキも同様に剣にエネルギーを溜め込みいつでも放出できるよう構える。

 それから双方の必殺技がぶつかり合い、大きな衝撃波を生み出して、中心部にヒビが入り始める。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 

「「ハァッッッ!!!!!」」

 

 

 2人のキックはシモツキとシワスのそれぞれに当たりスタジアムの端まで吹き飛ばした。かなりの大ダメージにより、2人は立ち上がることもできないようだ。

 トリガーとハントは互いにハイタッチをして称え合う。

 

 

「いやっふぅぅぅ!! 今日の俺も勝利の日ッ!!」

 

「よくやったぜ兆!! 後はあいつらのキラーズガンとデリートガンナイフをぶっ壊すだけだ」

 

「あーそうだった! 大人しくしろよ幹部のお二人さ〜ん」

 

 

 しかし急に2人は背筋がゾッとする感覚に襲われる。すっかり忘れていたのだ。このスタジアムには幹部3人以外にテロスがいるという事を。

 テロスは客席から消え、既に倒れている幹部2人の元へと移動していた。

 

 

「テロス…!!」

 

「兆…… お前がここまで成長してくれている事を私は嬉しく思う。手塩にかけた甲斐があったというものだ」

 

「おい、それってどういうことだ?」

 

「ふふふっ、お前は忘れてしまっているだろうが、いずれ思い出す日が来る。だが、もう少し時間がかかりそうだ」

 

「待てッ!!! 俺の何を知っている? 俺はいったいなんだってんだよ!!!」

 

「── お前は終焉のトリガーとなる」

 

「… は? 終焉のトリガー?」

 

 

 トリガーが聞こうとした瞬間、目の前に闇が現れ、それが消えるとヤヨイを残して誰もいなくなっていた。ハントは慌てて永理を見るが、どうやら彼女はそのままらしい。

 

 

「よかった…… 永理は無事だな」

 

「終焉のトリガー… 嫌なネーミングだぜ。あいつ変なこと言いやがって!!」

 

「またこれでわからなくなってきたな、お前の過去。ただあのテロスが深く関わってる事は間違いない。今はまだ深く考えなくてもいいんじゃねーか?」

 

「それもそだね。よしっ!! 永理を連れてBAR TRIGGERへレリゴー!!!」

 

「ヤヨイも忘れんなよ」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 1ヶ月が経った頃、巧也がやっと退院してきた。警視庁の方もほぼ直った為、バーから離れRIVERSは再び元の場所へと集まる事ができた。しかしまだ終わったわけではない。残る幹部は半分となったが、それよりも別の問題が増えしまっている。

 巧也はこの1ヶ月の間に何が起こったのか兆と話していた。

 

 

「残る幹部は6人。ゴールが見えてきたとはいえ、それよりテロスの言葉が気になるな。終焉のトリガーとは一体なんだ」

 

「まるで俺がこの世界を終わらせるみたいな感じに言ってきやがってよー… 絶対やらないし! というかやる意味ないし! そもそもこの世界滅ぼそうとしてんのはウォンテッドの方だろ!! 記憶とか訳わかんないもん集めやがって!!」

 

「…… やはり兆の記憶も奴が握っているんだろう。全ての答えはそこにありそうだな」

 

「なぁ、巧也さん。俺がもしその終焉のトリガーとかいうのになったらよ。迷わず俺を倒してくれ」

 

「何だ急に? 奴が適当に言っている可能性も…… いや、ここまで来て適当であるはずないか。わかった。その時が来たら俺はお前を倒す」

 

「あーでも痛くしないでね?」

 

 

 ただの冗談なのか。その時の巧也は特に何も考えず答えていた。

 それから兆はバーに行こうとすると、急に視界が塞がれる。多分これはカップルがよくやるだーれだという定番なやつだろうと彼は思った。誰かすぐわかったので名前を言おうとしたが発狂した。まぶたに爪が突き刺さっているのだ。すぐにそれを外し後ろを振り向く。

 

 

「いてーよッッッ!!!!!」

 

「だーれだ」

 

「誰だもこうも一生誰かわからなくなるところだったわい!!!」

 

「いや〜背的な問題が発生してまして… しょうがないですよ」

 

「じゃあやるなよ!!!…… まぁいいや。何の用?」

 

「助けてもらったのでお礼をしたいんです。今からバーに行くんですよね? 奢りますよ?」

 

「え、マジ? じゃあ行こう!」

 

「行きましょう!」

 

 

 2人して出て行こうとした時、警報が鳴り始める。巧也はすぐに佳苗に何があったのか聞くと、エリアAにトリガーが現れて人々を襲っているとの情報が入った。1ヶ月ぶりに幹部が動き出したので、兆・巧也・狩馬の3人は急いで現場へと向かう。

 ── 街は異様なまでに静かだった。それはそれでいいのだが、情報通りであるならこれほどまで静かなはずがない。人の声も街の音も何一つ聞こえないのだ。

 

 

「巧也さん。なんか様子おかしくない?」

 

「はめられた可能性があるな」

 

 

 すると向こう側からトリガーの姿をしたカンナヅキが堂々と歩み寄ってくるのに気がつく。兆は初めてその姿を目にするので、巧也と狩馬に先ほどから何かを訴えている。きっと例の事をまた掘り返してきているのかもしれない。

 そのまま兆は前に出て、自分の偽物と相対する。

 

 

「あんたがカンナヅキか。散々、俺の悪評広めちゃってくれてよ? どう責任取るつもりだこのやろう」

 

「あそこで囚われておけばいいものを… これが俺とはな」

 

「あんたが俺なんだろ? 変なこと言いやがって!!」

 

「違うな。何も間違ってはいない。俺はお前なんだよ」

 

「話が通じないらしいな。いいよ。やりたかないけどその仮面の下のハンサムフェイスに一発入れてやるよ…… 変身ッ!!!」

《ファーストガンアクション!! トリガー!! リボルヴリボルバー!!》

 

 

 トリガーに変身し、自分の全く同じ姿のカンナヅキに飛びかかっていく。

 巧也と狩馬も加勢に入ろうと変身準備を行おうとすると、反対側から何者かの気配を感じる。振り向くと、そこにいたのは既に変身し終えたミナツキとキサラギの姿があった。

 

 

「おい巧也。あれって…」

 

「俺の両親だ…… やるぞ狩馬。もう覚悟はできている…」

 

「… 本当だな? 最悪の場合があるからな」

《WEEK START》

 

「あぁ、大丈夫だ。あれはウォンテッド。俺の親は死んだんだ!!」

《AFTER》

 

「「変身ッッッ!!!!!」」

 

《漆曜式!! ギアチェンジ!! スタート!! ニチ・ゲツ・カ・スイ・モク・キン・ドッ!! オールウィーク!!》

《アフターガンアクション!!フォローイング!! シェリフ!! イーハートゥエルブ!!》

 

 

 2人は変身し終えると、ミナツキとキサラギが近づいてくるのを待つ。シェリフは未だにこの2人が幹部であった事を心の中でずっと否定し続けている。だが、考える度に、否定する度に、過去の記憶で彼らの今までの行動が全て人々を苦しませていたとは思ってしまうのだ。

 ミナツキはシェリフを見ると、まるで息子の退院を喜ぶかの如く優しく手を広げる。

 

 

「巧也。よく生きていてくれた。とても嬉しく思うよ」

 

「お前は父親じゃない。俺の父は誰かを苦しめるような人ではなかった!!」

 

「現実とは非情なものだな… 子供にさえも否定されるとは…」

 

「非情なのはお前だ。今迄の罪を償ってもらうぞ」

 

「お前にやれるのか? この私たちが?」

 

「その為に2人の前に立っているんだ」

 

 

 この戦いで何が変わるのかはわからない。ただそれぞれが前に進む為、銃を握り、戦いに身を投じるしかないのだ。

 今だけは──。




あーもう30話近いんよ〜。
前作よりも書いてるけど苦ではない。読んでくれる方がいるから(喜び)

次回、第29劇「エリアA」

次回もよろしくお願いします!!


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第29劇「エリアA」

皆さんご無沙汰しております。

前回、ヤヨイを倒してから1ヶ月が経ち、巧也が退院できました。しかしそのタイミングで幹部カンナヅキ・ミナツキ・キサラギが出現し……

それではどうぞご覧ください。


「この偽物ッ!! 何が目的だ!!!」

 

 トリガーはカンナヅキに銃を撃ちながら近づく。

 自分に何故似せているのか。自分と何の関係があるのか。彼にとって自分の記憶に近づく為の大きな手掛かりになるかもしれない。

 カンナヅキは弾丸を避け、急にトリガーに向かって走りスライディングを行う。この行動は予想外だったので懐に入られ、腹に一発喰らってしまった。

 

 

「ぐっ…!!」

 

「気になるよな。俺だったら気になる。いや、お前だからお前の気持ちはよくわかる」

 

「お前だから? やっぱりあんたと俺は関係があるのか!!?」

 

「答えを知りたいのなら… 俺を倒してみろ!!」

 

「言ったな? なら… やってやるぜ!!」

《TWO》《SET》

《セカンドガンアクション!! トリガー!! ツインライトニング!!》

 

 

 フォームチェンジを行い、二丁拳銃でカンナヅキに連続射撃を行う。一丁だけならよかったが二丁ともなると、トリガーの巧みな銃捌きにより、避けられずに何十発と当たってしまう。

 

 

「こんなもんか偽物ッ!!!?」

 

「まだ… まだだな。これじゃあ、あの方も喜ばない」

 

「あの方? テロスのことか!!」

 

「教えて欲しければ倒してみろと言ったはずだ!!」

 

「だから今から倒すんだよ!!」

《THREE》《SET》

《サードガンアクション!! トリガー!! ショットショットショット!!》

 

 

 カンナヅキは隙を見て、トリガーの左側から蹴りを放とうとしたが、見切られており、サードのパンチを受けてしまった。

 1発は30発。それが3発もカンナヅキの体に一気に襲いかかる。

 

 

「がはぁっ… !!!?」

 

「まだまだこれだけじゃ終わらねーぞ!!!」

《FOUR》《SET》

《フォースガンアクション!! トリガー!! ストレートライフル!!》

 

 

 今度はフォースでカンナヅキの攻撃を避けつつ44秒間待ち続ける。

 そしてその時が来ると、脚が赤くなり始め、トリガーはその脚でカンナヅキに蹴り浴びせる。能力は相手の防御無視する事。つまり貫通するのだ。

 

 

「お前本当に狩馬さんに勝ったのか…? なんかおかしいぞ?」

 

「くっ… ふふふっ」

 

「なーに笑ってんだ。蹴られ過ぎて頭がおかしくなったか?」

 

「いや、そうじゃない。嬉しいんだよ。お前が俺を蹴る度に、殴る度に、 あの方の予定通りに進んでいると思うとな」

 

「その言い方だと本当にテロス? みたいだな。なら、尚更聞きたくなってきた。お前を倒して絶対に吐いてもらうぜ!!」

 

 

 セイブドライバーの引き金を引くと、脚から蒸気が出て赤くなり始める。

 カンナヅキが顔目掛けて蹴ろうとしたが、トリガーは避けてガラ空きとなった懐に潜り込む。顎に掌底を放って体勢を崩してから、そのまま踏みつけるようにカンナヅキに必殺の一撃を喰らわせる。

 

 

「これで最後だッ!!!」

 

「グワァァァァッッッ!!!?」

 

 

 もう動かないであろうカンナヅキを、トリガーは襟元を両手で掴んで持ち上げる。こいつに約束通り喋ってもらうつもりだ。

 それからトリガーは問う。本当のことを話してみろっとこの静かな街に響く声で怒鳴る。カンナヅキはそんな彼の声に驚く事はなく、仮面の下で不気味に笑いながら、されど冷静に話し始めた。

 

 

「まず事実から教えてやろう…… お前は俺なんだよ。兆」

 

「だからそれがなんだってんだよ。俺がお前ってなんだ? お前は俺のコピーとでも言いたいのか? 何の為に?」

 

「落ち着けよ。コピーってのは確かにそうだ…… だが、間違っている点がある。逆なんだよ。お前が俺のコピーだ」

 

「は…? おい!! どういうことだよ!! お前が俺の? それじゃあお前が俺の偽物じゃなくて、俺がお前の偽物だって言いたいのかッ!!?」

 

「結論から言えばそうなるな。言っただろ? お前は俺なんだと、そう告げていたはずだ。しかしそれも真実じゃない。本当の真実を話すのは俺じゃないからな」

 

「お前よ。話すって言ったよな? 俺はそう聞いていたはずだけど?」

 

「全てを話すなんて一言も言った覚えはないが?」

 

「…… どうやら更に殴られないとわからないみたいだなッ!!!」

 

 

 トリガーが右手の拳を振り上げた。だが、その拳は何者かの手に掴まれて止められてしまう。巧也と狩馬は戦闘中のはずで、その前にこの状況で止めはしないはずだ。

 そして振り向くと、予想もつかなかった者がそこにはいた。その者はウォンテッドのボス。テロスがトリガーの手を掴んでいたのだ──。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 その頃、シェリフとハントはミナツキとキサラギの幹部達とタイマンの形で交戦していた。

 ハントの方はキサラギにかなり優勢なのに対し、一方のシェリフはミナツキに攻撃をまともに与えられていなかった。

 

 

「どうした巧也? お前の今の攻撃は余りにも弱過ぎる。手加減しているのか? この私に対してそれは、私が親だからか?」

 

「て、手加減だと? それをする必要が何故ある!!? お前は俺を裏切った!!」

 

「なら先ほどから防御の方の回数が多いのは何故だ? 私に対しての攻撃回数は実に26回。その内23回は明らかに本気じゃないだろう?」

 

「ち、違うッ…… 俺はただッ!!」

 

「お前は昔から正義感が強かったからな。私に憧れてこの職場に入り、そして今ではその若さでRIVERSの課長という座に着いた。親としてこれほどまで成長してくれたのはとても嬉しい限りだった。だが逆に言えば、私に憧れるお前だからこそ私のこの仕事を受け入れてくれると思っていたんだけどなぁ…」

 

「思うわけがないだろ!!! 俺は父さんに憧れて警察になった。本当に心の底から尊敬して、いつか父さんのようになろうと思ってた…… 実際はどうだ? 罪なき人の記憶を、命を、いとも簡単に奪うような人だった!!! 俺はそんな親を持った事が悔しくてたまらない!!!」

 

「言うな巧也…… 父さんは悲しいぞ。まぁこれではっきりしたな。お前と私は分かり合えない。そしてこれからも敵同士だと。ならやる事は一つだけだ」

 

 

 ミナツキはシェリフの殴りを避け、腕を取ると少しの力で容易く宙に浮かせる。これは合気道だ。

 軽々と宙に浮かされたシェリフは感じ取っていた。このミナツキもそうだが、キサラギも時間を稼ぐ為に敢えてやられたふりをしていたのだ。実際は2人ともかなりの腕であり、そうでもなかったら通常のウォンテッドように、あの時とっくにやられているだろう。

 

 

「巧也、お前に見せてやろう。私の本気をッ!!!」

 

 

 それからミナツキはシェリフの腰に膝を当て、首と脚を掴んでそのまま地面に着地する。腰は折り曲げられ、激痛がシェリフを襲う。

 その後、攻撃はまだ続く。今度もまた宙に打ち上げ銃を構える。あの弾丸をこの距離で喰らったら確実に頭を撃ち抜かれて死んでしまう。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!」

 

「なにっ!!?」

 

 

 放たれた弾丸を、シェリフは空中で体を曲げてなんとか避けた。だが、攻撃は1発だけで終わるはずがない。ミナツキは続けて2発目を撃とうと構える。

 しかしその時、様子を見ていたハントが能力を発動させ、そこらの植物を操り、銃をシェリフから逸らす。お陰で危機は回避したが、その後ろで凄まじい爆発音がこだまする。

 

 

「すまない、狩馬」

 

「いいって事よ!!(やっぱり気にしてるんじゃねーか。このままだと巧也がまずい。俺がこの2人を相手にするしかない)」

 

 

 ハントはそう思い、シェリフに下がるように言おうとするが、彼はこちらを見てそれに気がついていたようで手の平を見せて止める。

 今のシェリフは彼らと戦える状態ではない。親と戦う事、ましてやこれが殺し合いであるなら尚更だ。もし自分が永理と戦うとなれば絶対に攻撃できないとハントは思った。

 

 

「大丈夫だ。狩馬は母さん… キサラギを頼んだ。俺はこの手でミナツキを倒す」

 

「倒すか。どうするつもりなんだ? お前のアフターではこの私には勝てないぞ。それにまともに攻撃もできないお前が何を言う」

 

 

 ミナツキに煽られながらも巧也はアフターガンナイフを抜くと、もう一つのフィガンナイフを取り出す。それは彼が持っているはずがない物で、今は兆の手元にあったはずのネクストガンナイフである。

 そしてその2つのフィガンナイフを合体させ、セイブドライバーに装着する。

 

 

「それはネクストガンナイフ…!!」

 

「兆は俺にもしもの事があったらと渡しておいてくれたんだ。自分の身も危ないってのにな。心配性だと思って初めは抵抗してみたもんだが…… 折れたおかげで助かったぞ」

 

「いいだろう。手間取るだろうがやってやろう。来い!! 巧也ッ!!」

 

「行くぞ…… 父さんッ!!!!」

《アフターネクストガンアクション!! クロッシングトリガー!! イレブン!! トゥエルブ!! ダブルイーハー!!》

 

 

 シェリフはアフターネクストの形態へと変身する。

 そしてネクストの力を使って高速でミナツキに近づき、アフターの力でミナツキを思いっきり殴り抜ける。

 しかし完全に決まったと思い込んでいたのだが、どうしてか当たりがイマイチだった。とても軽い感じである。

 

 

「合気道か…!!!?」

 

 

 合気道を実戦で行える者はほんの一握りだと聞く。しかしこのミナツキは階級としてもトップであるが、戦闘においても右に出る者はいない。まさに最強の警察官だったのだ。

 そしてミナツキは流れのままにシェリフにかかと落としを決める。

 

 

「甘かったな巧ッ…… !!? 消えただと!!?」

 

 

 その瞬間、ミナツキの背後から脚が伸びてくる。背中に軽く押し当てられているのがわかる。わかってはいたが、やはり対処は難しかったアフターネクストの時間飛ばし能力。

 シェリフは足を当てたままセイブドライバーの引き金を引いた。

 

 

「俺の勝ちだ… 父さん」

 

「……… そうだな。お前の成長した姿を見れてよかったよ。あんなに小さかったお前がこんなに大きなって… そして私を超えた。努力したんだな。そこまで上り詰めるのは大変だったろう 」

 

「………」

 

「親としてお前にしてやれる事はなかった。毎日毎日、心配かけさせてごめんな。寂しかっただろう… しかしお前は沢山の仲間たちに出会えた。お前が楽しそうで私は嬉しいよ」

 

「……ッッ」

 

「ありがとう巧也。私はお前のような息子を持って幸せだったよ」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

 

 

 シェリフはエネルギーを纏った脚でミナツキを蹴った。

 しかし彼自身全く気がつかないうちに手加減をしてしまった。ほんの僅かな手加減だ。それがミナツキにとっては計算通りのことだったのだ。

 その時、キサラギの腕が伸び、吹き飛ばされたミナツキを掴むと、ミナツキは地面を蹴ってキサラギの元へと跳んでいく。

 

 

「なッ…!!」

 

「やはり多少力を抑えてくれたか。お陰で助かったぞ巧也。だが──── 次に会う時は殺す」

 

 

 そう言って幹部2人は姿を消してしまった。

 崩れるように膝をついたシェリフに近づいたハントはそっと肩に手を掛ける。その気遣いは嬉しかったが、軽く手で払いゆっくり立ち上がる。

 ハントはそれ以上何もせず、ただ黙ってシェリフの力なき背中を見ていた──。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 トリガーの前に再びテロスが現れた。カンナヅキを助けに来たのかと、最初はそう思ったがどうやら違うらしい。こうなる事を見越して最初から待っていたのだ。何処かでこの戦いを待っていた。

 テロスの手を振り払い、トリガーは構えた。

 

 

「テロスッ!!!」

 

「いったいなんのようだ。と、そう言いたいらしい。しかしお前はわかっている。私が何故ここへ来たのか。その理由をな」

 

「へー、なら答えてもらおうじゃないの。さっきの話の内容もどーせわかってるだろうけど聞いてやるよ。俺は…… 何者なんだよ」

 

「── 終焉のトリガーだ」

 

「その終焉だかなんだか知らないけどよ。これは仮にだ。突拍子もないし、頭お花畑かよって話だけど…… 俺が元あんたらと同じウォンテッドで、その終焉… つまり世界の破壊者で、その昔に力を使い過ぎて記憶を失った… とかな」

 

「…………」

 

「え、マジ? ホントにこれなの?」

 

「全く違う」

 

「違うのかよッ!!! ちょっと恥ずかしいじゃねーか!!!」

 

「お前にとってはな」

 

「俺にとっては…?」

 

「お前の記憶は無くなっている。それは何故なのか考えた事はあるか?」

 

「あるに決まってるだろう。自分の記憶だぞ? マスターに拾われてなきゃ俺はお陀仏よ… それにお前があそこを紹介した。セイブドライバーを渡したのもあんただろ」

 

「そうだったな。私の方が忘れていた…… だが、何故私があの場所を教えたのか考えた事はあるか?」

 

「この間、考えていたさ。何故あんたが俺をバーを紹介してくれたのか。ま、わかるはずねーけどな。ちょうど裏路地で目立たないからとか?」

 

「裏路地でひっそりと営む… ふっ、いかにも奴らしい」

 

「奴? マスターの事か?」

 

「奴とは知り合いでな。快くお前を引き取ってくれた」

 

「…… おい、どういうことだよそれ。まるでマスターは俺が来ることを知っていたかのような口振りだな…」

 

「なるほど。やはり知るはずはないか。何故なら私が口止めをしていたからな」

 

「さっきから何を言っているんだ!! マスターがいったいなんだ!!」

 

「── ウォンテッドの幹部が1人」

 

「え…?」

 

「表ではバーのマスターとして働いているそうだが、しかし実態は違う。私の右腕であり、幹部最高峰の実力者─── ムツキだ」




トンデモ事実が発覚!!?
次の話でまた何かが起こる…?

次回、第30劇「記憶のドライバー」

やる気がムンムン湧いてくるぅ^〜
次回もよろしくお願いします!!


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第30劇「記憶のドライバー」

30話きたぁぁぁぁぁっっっ!!!
もうびっくりです。100話とか書いてる方を尊敬しますわ。大体私20話くらいで疲れてくるんですけど、今回はもうやばいですねもうやばいです(語彙力

では前回、カンナヅキVSトリガーで記憶を教えてもらう為に戦い、そして勝利を納めました。一方でミナツキVSシェリフはアフターネクストを使用し勝利したシェリフでしたが、加減してしまい取り逃がしてしまいました。その頃、トリガーは突然現れたテロスから衝撃の事実を伝えられ……

それではどうぞご覧ください。


 テロスがデタラメを言っているだけだと、兆は最初そう思っていた。

 しかし兆はあの時、何故疑うことをしなかったのだろう。マスターがムツキと昔馴染みなどという普通なら信用できない筈なのに。

 それは簡単な話。兆がマスターを疑いたくはなかったからだ。自分の育て親同然の人なのだから。

 

 

「嘘だ… マスターが幹部…? あのムツキだって言うのかよッ…!!!」

 

「やはり会っていたか… そうだ。奴がムツキだ」

 

「マスターが… そんなっ!! 益々訳わからなくなってきた…… じゃあつまり最初からお前が命令し、俺は幹部に預けられる予定だったと?」

 

「その通りだ」

 

「…… 俺をいったいどうするつもりだったんだ? 何かあるのか!? 終焉のトリガーとはなんなんだッ!!? 俺は何者なんだよッ!!!?」

 

「カンナヅキの言った通りだ。お前はカンナヅキだ」

 

「は、はぁ…?」

 

「お前とこいつのDNAは同じだ。兄弟… と言っておくのが妥当だろう」

 

「意味がわからない… 兄弟? いつからだよ… 俺の記憶は……」

 

「…… カンナヅキ。そろそろ準備に取り掛かるとしよう。ここらで引き上げだ」

 

 

 そう言うとテロスは一瞬のうちにトリガーの目の前から消え、カンナヅキの側へと移動する。

 トリガーはすぐに振り返り、テロスに銃を向け問い詰める。

 

 

「最後に答えろよ。俺はお前にとってなんだ!!!」

 

 

 暫く沈黙が続き、お互い一歩も動く事はない。

 トリガーは引き金に指をかけて、いつでも発砲できるようにテロスの動きに集中する。

 それからゆっくりとテロスの口から言葉が発せられる。

 

 

「お前はこの世界を終わらせる為のトリガーだ」

 

「トリガー……」

 

「もうすぐお前は引く事になる。その時、お前の真実が語られる」

 

「おい待てッ!!! 逃げるなテロスッ!!!」

 

 

 そしてトリガーは何発もの銃弾を放ったが、テロスとカンナヅキの体をすり抜け2人は消えてしまう。

 震える手で銃を下げて、兆は変身を解く。変身を解いた直後、巧也と狩馬が合流した。狩馬は合流するや否や兆の様子がおかしい事に気づく。

 

 

「おいどうした兆?」

 

「あぁ、狩馬さん…… なんでもないさ。ただちょっとカンナヅキを逃しちゃって」

 

「そうかぁ… こっちはミナツキとキサラギを逃し…… いや、今はやめとくか。さて、まずはRIVERSに戻るとしようぜ。まーた襲われでもしたらたまったもんじゃねーからな!」

 

 

 狩馬は明らかにいつもと違う2人に挟まれやるせなさを感じた。自分の為にと行動してくれた2人の役に立てないことが悔しいのだ。恩を貰うだけで自分は返せていないとそう思っていた。

 それぞれの感情に揺さぶられながら、こうして3人はRIVERSへと重い足を動かしながら戻っていった。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 ここは誰も知らない場所。知る者は幹部だけ。

 その場所のある一角で、薄暗い部屋の中、ガチャガチャという何かを弄る音が聞こえてくる。

 

 

「少々時間はかかったけど、これで完成間近だ」

 

 

 独り言を呟くのはカンナヅキ。あの後すぐに何かを造る為にこの部屋に入った。傷を癒すという事はしない。休むこともない。彼はその何かをトリガーが誕生する前からずっと造り続けているのだ。

 それがようやく完成の一歩手前までとなった。

 

 

「くくくっ… 後はテロス様の用意されたプログラムを組み込めばいい」

 

「首尾はどうだ? カンナヅキ」

 

 

 カンナヅキの背後から音も立てずに現れたのはテロスだ。それには驚きもせず、現在製作中の何かについて話す。

 その話を聞いたテロスは笑みを浮かべ、その何かを手に取り観察する。

 

 

「やはり素晴らしい。カンナヅキよ。よくやった」

 

「いえ、これもテロス様のおかげです。あなたに習わなければ何もできませんでしたから」

 

「お前は物覚えがいい。お陰で私は計画を進められた。お前こそ私の左腕に相応しい」

 

「ありがたき幸せです」

 

 

 テロスはその何かを置き、また音もなく消え去った。

 そして陰で、その光景を見ていたシワスは歯軋りをし、拳を震わせる。何故あいつなのだと。何故自分じゃダメなのかと。

 それからシワスはシモツキを連れて外へと出る。

 

 

「に、兄さんどうしたの?」

 

「我は認めん。あの失敗作如きが左腕などと」

 

「兄さん! 聞こえてたらまずいよ! ボスはいつどこで見てるのかもわからないのに……!!」

 

「ならば見ていてくれればいい。我が奴らをこの手で始末するその瞬間をな!!」

 

 

 そんな彼らを後ろから観察するテロスは再び笑みを浮かべた。

 この先の展開が彼にはわかるのだ。カンナヅキの例の何かさえ終われば計画が始まる。

 何故ならそれこそが終焉のトリガーを誕生させる為に必要なものなのだから…。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「永理。今からバー行こ」

 

「あ、はい。いいですけどー……」

 

 

 永理がチラリと狩馬の方向を見る。当然、獣のような眼光で兆を睨みつけている。そんな事をお構いなしに兆は永理を引っ張って連れて行く。

 それを追いかけようとする狩馬だったが、兆の表情を見て引き返す。あんな顔見たこともなかった。

 

 

「おいおいおい。どいつこいつもしょげた顔しやがってよ!!」

 

 

 狩馬は空いている椅子に座り、深いため息を溢す。

 RIVERSはとても静かだ。あれからというもの巧也も隠してはいるのだろうが、声に張りがなかったり、元々笑顔は多い方ではなかったが、今ではすっかり笑ったところを見たことがない。

 すると佳苗が珍しく狩馬に話しかけてきた。

 

 

「意外と空気が読める男だったのね」

 

「…… まぁね。あんな思い詰めた顔されたらよー…」

 

「永理ちゃん帰ってこなかったりして〜」

 

「おいおいジョーダンでもやめてくれよ佳苗ちゃん…… だけど、永理ならあいつの心を癒してくれるんじゃねーかな」

 

「何よ突然」

 

「あーいや… 仲いいからよ。なんつーか…… やっぱり女の子に褒められたら励まされたりすると力が湧いてくるっていうか… 永理は昔から色んな子に好かれる奴さ。兆もだが、巧也も早く笑って欲しいぜ。暗い空気は好きじゃないんだ」

 

「私もよ。そんなに気にかけてくれるなんて見直したわ。ありがとう」

 

「ありがとうって佳苗ちゃんの事じゃないだろう」

 

「仲間なんだから当然よ。私たちはチーム。誰かが嬉しかったら一緒になって笑って。誰かが悲しかったら一緒になって泣いてあげる。それがRIVERSとしてだけじゃなくて仲間として当たり前なことよ」

 

「つまり俺に惚れたな?」

 

「それは絶対にないわ」

 

「…… 目が霞むぜ…」

 

 

 一方その頃、兆と永理はバオに跨りバーへと向かう。

 人が多い場所に入ると、兆のウエスタンな衣装と永理のキッチリとしたスーツ。そしてメカメカしい馬の三点セットにより非常に目立つ。

 しかし残念な事に2人は全く気にしていない。

 

 

「バーへ行くって突然ですね。またミルクでも飲みたくなったんですか?」

 

「ミルクも飲みたいけど、今日はちょっと別の用があってね。マスターに」

 

「用ですか?…… ミルク多めとか?」

 

「だから違うの! 用は用だよ」

 

 

 そしてバーに着くと、バオを帰らせ、扉を開けて中に入る。

 中にはガンホーレとイッシュウ。そしてマスターがいた。いつも通りの3人だ。しかし兆はその見慣れた光景でも心は休まらない。

 扉のカランカランという音でマスターたちは気づいた。

 

 

「兆か。よく来たな。いつものならすぐに用意し──」

 

「マスター。俺と2人きりで話せないか?」

 

 

 ミルクを取り出そうとしたマスターの手が一瞬止まり、再び動いてグラスにミルクを注ぐと、兆がいつも座る席にそれを置く。

 何も言わないが、兆と永理はその席へ座り、マスターと向き合う。

 

 

「ここで構わない」

 

「本当にいいんだなマスター。常連のおっちゃん達が来なくなっても知らないぜ?」

 

 

 永理は兆の言っている事がわからない。マスターに喧嘩を売りに来ているようにしか見えないのだ。

 ガンホーレ達も当然聞こえており、静かに耳を傾ける。

 それからマスターと兆は、お互い目と目をまるで離さず、暫く見つめ合っていると、先に兆の方が開いた。

 

 

「俺は何者なんだマスター。あんたなら知ってるんだろう」

 

「…… 何を言ってるのかがわからない」

 

「とぼけても無駄だぜ。俺はあんたを疑いたくない。だからここではっきりさせたいんだよ。答えてくれ」

 

「兆。お前が何を言っているのか俺にはさっぱり──」

 

「ウォンテッド幹部、ムツキ。それがあんただ」

 

「…………」

 

 

 その場の全員が兆の言葉に凍りついた。無理もないだろう。ここで働くマスターがまさか幹部だとは誰も思わない。

 永理たちは冗談だろと笑ってはいたが、兆とマスターの顔を見るなりまた静まり返った。

 

 

「証拠がないとでも言うんだろう。悪いがあんたの上司のテロスから聞いたぜ。なんの事だとかはなしだ。本当のあんたが知りたいんだ。教えてくれマスター。頼む」

 

「……… いつか話そうと思っていた。まさかこんなに早くバラされるとは…」

 

「信じたくはないけど、マスターがムツキだったのか… なんかいざはっきりとなると驚かないな」

 

「テロスは他に何か話していたか?」

 

「あんたがムツキって事と… 俺がカンナヅキと血の繋がりがあるとか、終焉のトリガーとか……」

 

「終焉のトリガーッ…!!? 確かにそう言ったのか!!?」

 

「あ、あぁおう。そうだよ」

 

 

 あのマスターが急に焦りだし兆は固まった。少し軽く考えていたが、どうやらそんな優しいものではないと、マスターのこの表情から察した。

 そしていつの間にか永理はガンホーレとイッシュウの間に入り、話の整理を行なっていた。さすがに話の内容が凄過ぎてついて行けてないようだ。

 

 

「それで終焉のトリガーって……」

 

「言葉通りの意味だ。トリガーはこの世界を終焉に導く。その言葉が出たのならゆっくりはしていられないな」

 

「ちょっと待ってくれマスター!! 後ろで話し着いて行けてない人らいるけど俺もついて行けてないから!! どういう事なんだよ!!? マスターはテロスの仲間なの!? 敵なの!?」

 

「俺の事は後だ。今は兆、お前が心配だ。テロスは次に自分から出向く筈だ。強力な武器を持ってな……」

 

「強力な武器だって?」

 

「それは───」

 

 

 その時、バーが揺れ始め一同何事かと辺りを見渡す。

 すると永理の携帯が鳴り、それに出て話始める。通話を切ると兆にシモツキとシワスが外で暴れてある事を告げた。

 

 

「な、なんだとッ!!? なら、行くか! 永理は市民の誘導頼む!!」

 

「兆ッ!!」

 

「… 何、マスター?」

 

「これだけは忘れるな。お前は平和のトリガーだ」

 

「…… あぁ!! そんなの最初からわかってるぜ!! 行ってくるッ!!」

 

 

 兆と永理が扉から出て閉まるまで見続ける。そして静かに扉が閉まり、またバー内は静かになった。

 その後、ガンホーレ達は兆が座っていたところに座り、ビールを頼む。

 

 

「なぁ、マスターよ」

 

「なんだ?」

 

「なんか色々話しが多過ぎて理解できなかった。が、これだけはわかった。兆の坊主もマスターのあんたも敵じゃあねーってことだろう?」

 

「…… そうかもしれないな」

 

「その言葉を聞けば充分だ。他に俺たちのような世間のゴミを受け入れてくれるところなんてここしかねーからな……」

 

「ガンホーレ団… と、言っても2人だけだが、やめるという選択肢はないのか?」

 

「あんたが幹部であるように俺もこれを辞めるわけにはいかない。あんたほどの理由は持っちゃいないが、俺には俺のプライドがあるんだよ」

 

 

 そう言ってガンホーレは出されたグラスを一気に飲み干した。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「テロス様。準備は整いました」

 

「ついに完成したか…… フフフフフッ、これで私の計画を始めることができる」

 

 

 テロスとカンナヅキの前には、例の何かが置かれている。

 それは3つのアイテム。1つはドライバーで、もう2つはフィガンナイフだった。とても禍々しく、そして怪しく光を放っている。

 

 

「これで… この世を喰らうことができますね」

 

「あぁ、それもこれさえあれば可能となる。この──

 

──── テロスドライバーがあればな」




デデドン!!(絶望
テロスドライバーとはいったいなんでしょう?
何やら危険な香りが漂います。

次回、第31劇「零」

次回もよろしくお願いします!!


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第31劇「零」

皆さんご無沙汰しております。

前回、マスターが幹部のムツキであるということが発覚する。テロスの言う終焉のトリガーの話をするとマスターは何やら慌しくなり、何か言おうとしたがシワスとシモツキが暴れ始めたと言う連絡を受け、兆と永理はバーを後にして現場へ向かう。その頃、テロスは何かを完成し終えたようで……

それではどうぞご覧ください。


「永理ッ!! そっちは任せたぞ!!」

 

「はい!! 兆さんもお気をつけて!!」

 

 

 兆はそのまま走って現場へ向かうと、シワスとシモツキが街を破壊していた。

 しかしその暴れ方は不自然なものだった。まるで兆たちを誘き寄せる為にやっている様に見える。

 それから巧也と狩馬が合流すると、シワス達はこちらに気がついて近づいてきた。

 

 

「トリガー・シェリフ・ハント。お前たちに会いたかったぞ。ようやく来たな」

 

「もう少し早く来てくれれば手っ取り早かったのにね」

 

 

 やはりそうだった。彼らは兆たちを誘き寄せる為にやっていたのだ。

 その誘いに乗る以前に街を破壊して黙っていることなどするはずがない。それぞれが腰にドライバーを巻き付け、変身の準備を行う。

 

 

「よし、行くぜ。巧也さん! 狩馬さん!」

《AFTER NEXT》《OVER SET》

 

「捕縛するぞ」

《TEN》

 

「さぁて、あいつらは痛めつけてわからせてやらないとな」

《WEEK START》

 

「「「変身ッッッ!!!!!」」」

 

《アフターネクストガンアクション!! クロッシングトリガー!! イレブン!! トゥエルブ!! ダブルイーハー!!》

 

《テンスガンアクション!! シェリフ!! レディーゴージュウ!!》

 

《漆曜式!! ギアチェンジ!! スタート!! ニチ・ゲツ・カ・スイ・モク・キン・ドッ!! オールウィーク!!》

 

 

 3人は同時に変身し、すぐにハントが地面に手をつけ、地面を操って足場を作り出す。その上をトリガーとシェリフで駆け上がって一気にシワスとシモツキの元へ近づく。

 シワスが矢を放つが、アフターネクストで消し飛ばし、テンスのリミッター解除5倍でシワスを蹴り飛ばす。

 

 

「さすが巧也さん。ナイス!」

 

「テンスも5倍までならギリギリ耐えられそうだ… これもアフターネクストのおかげかもな」

 

「作っといてよかったぜ。ま、孝四郎に感謝感謝」

 

 

 それからシモツキがシワスを受け止めた後、凄まじい速さでトリガーの元へ行き、両腕の剣で斬りつけた。それをなんとか受け止めてから剣を掴むと、続けてシェリフが上から殴りつけようとする。

 だが、シワスの矢がなんと三本連続も飛んできて、避けようとしてシモツキを離してしまった。こいつを盾にすればよかったと思ったが、反射的にやってしまう。

 

 

「なんとか避けられ…… ん?」

 

 

 後ろからヒュゥゥゥという音が聞こえてきた。それは先ほどの3本の矢がこちらに向かって飛んで来ているのだ。途中で矢を曲げたのだ。それくらい幹部としては当然と言えるだろう。

 トリガーはシェリフの足場となって、彼をシモツキの方へと飛ばし、自分は3本の矢を最大出力で全て破壊した。しかし急に体の力が抜けて膝をついてしまった。

 

 

「兆ッ!!!」

 

「なるほど… 触れただけでもダメなのね…」

 

 

 更に追撃をしようとシワスは矢を放つが、ハントがそこで植物と土を操り、巨大な壁を作り出す。その力で矢を防ぎ、今度は炎と水を混ぜ合わせて巨大な渦を作り出し、それをシワスの元へと飛ばして渦の中へと閉じ込める。

 シワスは抵抗していたが、その渦は崩れる事はなく彼の周りをぐるぐると回り続け、徐々に体を焼き始める。

 

 

「おぉッ… ぉぉぉぉおおッ…!!!」

 

「どうやら七曜式の力には幹部トップクラスと言えどこの程度かよ!! 思っていた以上に早く終わりそうだ!!」

 

「…… 渦状に作ったという事は必ず目がある。お前は演出にこだわったのかどうか知らないが、それでもこの我の能力に関して渦を選んだのなら失敗だな」

 

 

 シワスは弓を空に向け、先程よりも巨大な矢を放つ。その矢は一直線に渦の流れに逆らって抜けた。シワスの真上に上がった矢は爆散し、周囲に無数の矢となって、雨の様に降り注いだ。

 シェリフはシモツキを矢の方へ蹴り飛ばし、地面へ着地する。

 

 

「この矢の数は避けられないッ…!!」

 

「おい巧也!! 兆!! 俺の所に来い!! 俺の力なら防げるかもしれない!!」

 

 

 それからトリガーとシェリフはハントの元へ行き、集まった瞬間に地面を分厚いドーム状に作り、3人を包み込ませる。

 シワスの矢は降り注ぎ、ドームに直撃する。威力はあるが耐えきれないほどではない。そう思っていた。

 しかし3人が見えていないところでシワスの更なる力が発揮されていた。矢の方へ蹴飛ばされたシモツキが無事なのだ。矢は彼の体を通り抜け、それら全てトリガー達の元へと降る。

 

 

「な、なんか外の様子がおかしいと思うの俺だけ? さっきから音と衝撃が強くなってる気がするんだけど!!?」

 

「シワスのやろう… 全ての矢をこっちに集中させてやがるなッ!!!」

 

 

 ようやく静かになっていき、ドームを解除し周りに注意する。

 シワスとシモツキは構えてトリガー達が出てくるのを待っていた。睨み合いが始まりどちらも一歩も動こうとしない。

 トリガーは前に出て銃を構える。

 

 

「確かにあんたらは強い。幹部の中でも随一だと思うぜ。だけど俺たちの力はお前たちに優っている。これ以上やり合っても終いには俺たちが勝つぜ?」

 

「我らを愚弄する気か? ふざけた事を。ここでお前たちを始末し、我らはボスに認めてもらうのだ。そして右腕は我となるッ!!」

 

「右腕ぇ〜〜〜? シワスさんよ。あんたはそんな場所よりも、刑務所でずっと右腕枕にして寝てた方がお似合いだぜ」

 

「…… 殺してやろう。二度とその口を開かないようにしてやるッ!!」

 

「やってみろよ!! あんたらもそれなりの覚悟があるんだったらな!!!」

 

「いいだろう!! このままお前たちの喉元を貫いてくれッ───!!」

 

 

 弓を引こうとした構えたシワスだったが、慌てて弓を引っ込めた。

 トリガーたちはすぐに銃を構え直し、シワスが見た者に標準を定める。何故なら彼らの間に入るように、カンナヅキと テロスが現れたのだから。

 シワスはテロスが現れた事で、すぐに近づいて膝をつく。

 

 

「ボスッ! もう暫くお待ち下さい! 今すぐ奴らを始末致しますので!!」

 

「…… お前たちは下がれ。ここから先はこの私が直々にやろう」

 

「… わ、我では不服ですか?」

 

「そうではない。ただ私もウォンテッドのボスとして動かねばならないと思ってな。お前たちは別で行動しろ」

 

「…… 御意。行くぞシモツキ… お前たちは終わりだ。ボスの前では何もかもが無力だ」

 

 

 そういうとシワスとシモツキはテロスに一礼した後、すぐに何処かへと消えていった。

 それからテロスは前に出て、トリガー達に近づく。ただ近づいてきているだけの筈なのにも関わらず、その体から出ているオーラはまさに恐怖という塊だ。先程の戦いでは感じられなかった圧がトリガー達を押し潰す。

 

 

「さ、さすがボスだな。一気に空気が変わったぜ。それで何しに来たんだ? また終焉だかなんだかいいに来やがったのか?」

 

「カンナヅキ。あれを渡せ」

 

 

 するとカンナヅキは懐からフィガンナイフを取り出すとそれをトリガーに投げる。トリガーは受け取った後、そのフィガンナイフを見る。アフターネクストのように2つ分くらいある大きさだ。それに何故かとても手に馴染む。

 テロスは彼がフィガンナイフを受け取ったのを確認するとまた話し始める。

 

「そのフィガンナイフの名はラストガンナイフだ。お前の為に開発した」

 

「…… こんな訳のわからないの使うとでも思うか? こんなもんポイッと捨ててやるよ」

 

「あぁ、構わない。破棄してしまって大いに結構」

 

「お、おう。こんなもん捨ててやるぜ!!」

 

「…… だが、お前はそれを使わなければならなくなるぞ? 今まさにその状況だ」

 

「なんだと?」

 

「シワスとシモツキに言っていた筈だ。私がやると… カンナヅキ」

 

 

 するとテロスはカンナヅキからドライバーを手渡される。トリガーたちはそれを見て驚いた。セイブドライバーとよく似ているが色が違う。赤黒く、禍々しい。非常に不気味だ。

 それを腰に巻き付けて、カンナヅキから更にもう一つのフィガンナイフを渡される。それからカンナヅキは用を終えたのか距離を置く。

 

 

《テロスドライバー》

「お前たちに教えてやろう。私の真の力をな」

《ZERO》《SETTING》

 

 

 フィガンナイフ… ゼロスガンナイフを起動させ、そしてテロスドライバーに挿し込むと、禍々しい待機音が辺りに鳴り響く。

 右手でハンマーを起こし、引き金に指をかける。左手を胸前に持って行き、軽く銃の形にする。

 

 

「あの構えはッ…!!」

 

「── 変身」

 

 

 テロスドライバーの引き金を引くと差し込んだゼロスガンナイフが開く。トリガーと同じような巨大な銃が現れ、アーマーを撃ち壊していく。バラバラとなった装甲はテロスの体を包み込んで黒く光る。

 それが終わるとマントをなびかせ、変身したテロスが姿を現す。

 

 

《ゼロスガンアクション!! オールテロス!! ザ・ビギニング・オブ・ジ・エンド!!》

 

「テロスが…… 変身したッ…!!?」

 

「まずは誰からだ? まとめて掛かってこい」

 

 

 テロスがそういうと、ハントが前に出る。

 自分であるならやれるとトリガーとシェリフに伝え、早々に能力を全開放し、 テロスを飲み込むほど巨大なビームを手から放出する。

 

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁどうだぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」

 

「…… 逆に期待通りだったな」

 

「こ、これはッ…!!?」

 

 

 完全に決まったはずの攻撃だったが、テロスが手を振り上げた途端に一瞬にして消えてしまった。なにをしたわけでもない。ただ手を挙げただけのはず。

 ハントは状況を把握できてはいなかったが、すぐに構え直す。そしてテロスが近づいてくると、悟金の力で体を劇的に硬化させる。

 

 

「…… (なんだ。ただのパンチくらいどうってこと……)」

 

「脆い」

 

「は?」

 

 

 バキリと音を立ててハントの腹部にテロスの拳がめり込む。

 仮面の下で血を吐き、吹き飛ばされて変身が解ける。狩馬は腹を抑えて激しい痛みに呻いている。

 その後、トリガーとシェリフが同時に前へ出て同時に蹴りを放つが、まるでびくともしない。軽く手で払われ、シェリフに向かって殴る。ただのパンチのはずだ。どこかなにをしたわけでもないただの拳での攻撃。

 

 

「かはぁ…ッ…!!!!?」

 

「狩馬さんッ!!! 巧也さんッ!!!」

 

 

 その光景はまるで豆腐を殴っているようだった。それに対し、テロスへの攻撃はまるでダイアモンドを素手でぶん殴ってるが如く硬い。

 狩馬と巧也は変身が解けてしまい、再度変身する力もないだろう。そのくらいのダメージをその身に与えられたのだ。ただのパンチで。

 

 

「テロスゥゥゥゥゥッッッ!!!! 」

 

「アフターネクスト如きでは私は倒せん」

 

「それはどうかな!!」

 

 

 テロスが殴ってくると同時に時を消し飛ばし、完全に懐へと入り込む。その瞬間にトリガーはセイブドライバーの引き金を引いて、拳にエネルギーを纏い、渾身の一撃を叩き込む── 流れのはずだった。

 だが、最初の時点で顔面を殴られていた。時を消し飛ばした筈なのにも関わらず、奴はそれを無視して攻撃してきたのだ。こんな事があり得る筈ない。

 兆は変身が解かれ、地面に転がる。

 

 

「ど、どうして…!!? 完全に消しとばした筈なのに…!!」

 

「私の力の前では全てが0へと還る。どれほどの身体能力を持ち合わせようと、どれほどの特殊能力を持っていようと関係はない。例え時を消そうがな。それが私の力だ」

 

「それじゃあよ… なにをしたって無理ってことじゃねーかよ!!」

 

「そうだ。私の力はお前たちとは比べるまでもないほどの差が存在する…… だが、一つだけ方法がある。私の能力から逃れる術が一つだけな」

 

「…… これのことか」

 

 

 兆はポケットからラストガンナイフを取り出す。

 このラストガンナイフは底が知れない。 そもそもテロスから受け取った物なんて確実に裏がある。その為に今日ここへと来たのだから。

 そしてテロスは兆に向かって話し始める。それは彼にとってとても重要な話だ。

 

 

「そのフィガンナイフはお前専用だ。お前しか使えない」

 

「なんで俺にそこまでこだわる… 俺は本当に誰なんだ…… 何者なんだよッ!!!」

 

「…… 兆。お前は考えた事はあるか? もし記憶が元よりなかったとしたら?」

 

「元々記憶がないってか? そんな訳ないだろ。誰しも記憶は存在するぜ」

 

「ほう。だが、お前の記憶がない理由は、記憶を奪われたからではないぞ?」

 

「なんだと? じゃあなんだ。俺の記憶はなかったっていうのか? そんなのありえるかよ」

 

「以前に話しをした筈だ。カンナヅキとお前は兄弟のような関係であると。DNAは同じだと。だからどうしたという話しだろう。率直に言えばカンナヅキは…… 造られたモノだ」

 

「は、ははっ、なんだそりゃ。つまり俺がそいつのクローンとでも言う気か? 馬鹿言うな!! 俺の記憶を変えようとしてるな!! そうはさせねーぞ!!」

 

「しかし真実は違う」

 

「… は?」

 

「お前は私の成功作だ。1000体ものクローンを作り続けた結果、お前と言う存在が誕生した。この時をどれほど待っただろうかと。そしてお前は私の思惑通りにRIVERSへ行き、12本の全てのフィガンナイフを開発した」

 

「お、おい…… どう言う事だよ… なぁ……ッ!!!」

 

「─── お前はその1000体目。私のクローンだ、兆」




以上です。
次回、更に計画の全貌が明らかとなります。

次回、第32劇「真実」

次もよろしくお願いします!!


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第32劇「真実」

皆さんご無沙汰しております。

前回、シワスとシモツキの戦闘の最中テロスが現れる。それからテロスが仮面ライダーテロスへと変身を遂げ、その恐るべき力に全員なす術なく倒されてしまう。そしてテロスは兆に真実を教える……

それではどうぞご覧ください。


「俺がお前の… クローンだと? 言ってる意味がわからない」

 

「自分の記憶がないのは奪われたからだと思っていたんだろうが、現実はそうではない。お前は造られたからこそ記憶がない。私の計画の一部なのだ」

 

「やめろ……」

 

「終焉のトリガーの意味がわかっただろう? 私の為にこの世の全ての記憶を奪い、そして喰らい、終焉を齎すのだ!!」

 

「やめてくれぇぇぇぇッッ!!!」

 

「さぁ、私のクローンよ。成功作よ!! 共に世界を喰らおう…… だが、お前がそれでも私も否定し、倒そうと言うのならばやってみるといい。そのラストガンナイフを操れればの話だがな」

 

「なんだよそれ… 自分が何者なのかと思ったら、何にもないお前の人形だったと? お前の為に動いていただけの存在だって…? ふざけんなよ。ふざけんな!!」

 

「いくら騒ごうとこれが事実だ。変わる事はない。今はここで引き上げるとしよう」

 

「待ちやがれテロスッ!!!」

 

 

 兆はラストガンナイフを起動させようと構える。しかし起動ボタンを押す手前で止まってしまう。押してしまえばテロスの思うツボだ。奴の言う終焉のトリガーへと成り下がる。それだけはやる訳にはいかない。

 兆はラストガンナイフをゆっくりとおろした。

 

 

「やはり使わないか。それもいつまで続くか」

 

「くそっ……!!」

 

「お前の運命は決まっている。いずれ仲間すらもお前の手で死ぬ事になる。変える事はできないぞ」

 

「……ッ……ッッ!!!!!」

 

「あの永理という女も鍵として未だ覚醒してはいない。お前といればいつかは開くとは思ったが…… まぁいい。そのラストガンナイフさえ使えば変わるかも知れないな」

 

「お前は俺と永理を使ってどうするつもりだ…… 世界を喰らうってどう言う事だよ!!!」

 

「それはムツキに聞く事だな。奴なら話すだろう。私の正体も知っている筈だ。その目的も──」

 

 

 テロスはカンナヅキを連れ、闇へと消えていった。

 巧也と狩馬はテロスが消えた後、兆に近づいて声をかけようとした。その背中に手を当てようとした。けれど今それをするのは良い判断ではないと思い、手を引っ込める。

 彼は今なにを思うのだろう。兆の声にならないほどの叫びと共に、ポツリと雨が降り始めた。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 次の日。

 RIVERSに戻った一向だったが、兆と永理はマスターの元へと行ってしまった。テロスの本当の目的を知る為だ。

 残った他のメンバー達は全員で話し合いを行なっている。テロスの絶対に攻略不可能な能力。それに噛み付くことがラストガンナイフだと言う。そんなラストガンナイフは孝四郎が解析中である。

 巧也は頭を抱え、次にどうすればいいのかを考えていた。狩馬もそれに関しては一緒になって考える。

 

 

「…… あの強さは別格だ。今の俺たちのフィガンナイフでは太刀打ちする事はおろか、相手にもされないだろう…」

 

「やっぱりラストガンナイフが必要になってくるな。ただアレ使うととんでもない事になるんだろ?」

 

「あいつが終焉のトリガーとなってしまう… テロスの計画というのが世界の破滅だと思われる。だが、引っかかる点がある。アレほどの力を有しておきながら、何故兆を使う必要があるんだ? そんなに周りくどいことをする必要性がないだろう」

 

「あいつは永理を使うと言っていたが、テロスが何かをするのに必要なんだろう。世界を壊す以上の大きなことを」

 

「世界を壊す以上のこと? それはなんだ?」

 

「あーいやー… 世界を壊す話なんてもんが、そもそも現実的な話しじゃねーんだけどよ。例えば宇宙すら巻き込む感じの……… 悪い。テロスが規格外過ぎて変なことまで考えちまう」

 

「ここもきっと兆たちが聞いてくれる筈だ──」

 

 

── その頃、兆たちはBAR TRIGGERにて、マスターに今までの出来事を全てを話していた。

 話しを聞いた途端にマスターが仕事をやめ、表をCLOSEと書いてある札を貼る。ガンホーレたちもいるが、気にせずにテロスについて話す。

 

 

「兆…… そうか。聞いたのか」

 

「…… あぁ」

 

「お前は操り人形でもテロスの道具でもない。お前は兆だ。1人の人間なんだよ」

 

「…… ありがとう。それでテロスの計画ってのは?」

 

「今なら話せるだろう…… まずテロスは元はこの世界の住人じゃない」

 

「なにっ…!!? テロスがここの住人じゃないとしたら、そのー宇宙人とかってやつか?」

 

「ここから話は壮大になるがよく聞いておけよ?」

 

「お、おう」

 

「テロスの正体はこの世界だけじゃない。全ての並行世界を喰らおうとするとんでもない化け物だ。俺もテロスが最初に生まれた世界から奴を追ってきた。奴の計画を止める為に」

 

「信じられない話だ。並行世界だなんてよ…… それでマスターもここの住人じゃないって訳だ」

 

「そうだ。テロスは世界から膨大な記憶のエネルギーを奪う事で強力な力を手に入れ、その世界を搾りカスのように捨て、次の世界へと渡る。あらとあらゆる世界を喰ってきたあいつだが、ついにはそれだけに飽き足らず、次元にまで手を出そうとしているんだ」

 

「今度は次元だって!!? おいおい話が飛躍し過ぎてる…」

 

「さすがの奴でもそれほどの力はないらしい… が、その為にお前たちの力が必要なんだ」

 

「永理の鍵と俺が?」

 

「永理はどの並行世界を探して、この世界のただ1人。つまり彼女が次元の扉を開く為に特別なものを持っているんだ。そして兆はラストガンナイフを使用する事で膨大な記憶のエネルギーを使うことができる。それは永理の鍵としての覚醒。兆を成功作と言ったのは、唯一お前だけがセイブドライバーを使用することができたからだ。お前はその為の糧なんだ」

 

「へっ、今度は糧かよ…… 俺は所詮そんなもんか」

 

「…… それと巧也もその1人に数えられる」

 

「巧也さんも?」

 

「あぁ… お前がテロスの力の増幅機で、巧也は足りない分のエネルギー… 保険と言ったところだろう」

 

「ひどい言われようだぜ…… それともう一つだけいいか?」

 

「なんだ?」

 

「どうして俺は巧也さんの両親を撃ったのかなんだ。まぁ幹部だったからってのもあると思うが… その時の記憶がないんだ」

 

「それはそうだろう。カンナヅキがやったんだからな」

 

「え、そうなの!!?」

 

「お前が理由もなしに、たとえ相手が幹部だろうと殺めるとまではいかないだろう」

 

「そ、そっか… よかったぜ…」

 

 

 マスターは事実を伝えた。

 現在的ではない。まさにファンタジーのような話の展開に、ここにいる全員黙ってしまった。しかしどう言おうがなにしようがこの事実は変わる事はない。

 すると永理は兆を見ながら、何かを言おうと口をパクパクさせている。

 

 

「…… 鯉の真似か?」

 

「違います!… ただその… 兆さんはあんなテロスとは似てませんし、それにおバカです!! だから元気出してください!!」

 

「え、バカにしてるの? 励ましてるの?」

 

「バ… 励ましてます!!」

 

「今のバってなんだ!!!」

 

「… よかったです。少しは声が出せるようになったんですね」

 

「あ… ごめんな永理。ありがとよ…… お前はすげーな。こんな事実わかっても平然としててよ」

 

「いえいえ、そんな事ないですよ… 本当はすごく怖いです。いつか2人でこの世界を壊しちゃうなんて考えたくもありません。でも、そんな状況でも兆さんなら何とかしそうなんです」

 

「俺が?」

 

「運命に抗えないだか何だか知らないですけど、兆さんならいつもの感じでテロスをボッコボコにして世界を救ってしまいそうな… そんな感じがするんです」

 

「まーた訳がわからない事を…… だけど嬉しいぜ。なんか元気が出てきた」

 

「そうです!! 兆さんはバカ正直に動けばいいんです!!」

 

「やっぱりバカって言ったぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 2人のやりとりを見てマスターは胸を撫で下ろす。いつもの調子に戻ってくれた。

 それから兆は立ち上がり、RIVERSに戻って皆にこの事を話すという。永理は礼をしてバーから出ていく。

 扉が閉まると、マスターの抑えていた声が自然と口から漏れる。

 

 

「すまない兆… 俺のせいだ──」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 それから兆たちはRIVERSにその事を伝えると、皆最初は嘘だろうと疑う。無理もないだろう。いきなり話が大きくなり過ぎているのだから。

 巧也たちの方も、これからについての話し合いをしていたと言う。その話の間にラストガンナイフの解析結果が出たらしいが、結果という結果はまるで出なかった。調べようにも全てエラーという表示が出てどうする事もできないようだった。

 そして巧也はRIVERSのメンバーに今後について述べる。

 

 

「皆、聞いてくれ。今の兆たちの話からムツキはこちらの味方のようだ。それ以外の幹部を最優先に倒すぞ。テロスの方は後回しと言うのもなんだが… 今は対抗手段がない。できる事をやるんだ。俺と狩馬はいつも通り前線へ出る。永理はここで手伝いをしていてくれ。無理に動くのは危険だ。佳苗と孝四郎はいつも通り頼む… 兆はここに残ってくれ。もしもの時がある」

 

 

 巧也はそう告げた後、狩馬と共に他エリアへと足を運ぶ。

 残された兆と永理は暇そうにしていると、佳苗が眉を潜めてパソコンを見ているのに気づく。いつもであったらそんな顔するはずないのだが、とにかくどうしたのかと聞いてみる。

 

 

「佳苗さん。パソコンなんか見つめてどうしたの? なんか気がかりなものでも?」

 

「うーん…… カンナヅキかしら? この反応はそうよね?」

 

「カンナヅキ!!? すぐに行かないとまずいじゃんか!!」

 

「そうなんだけど、この隣にいるのが気になって。これ誰なのかしら?」

 

「カメラとかで見れない?」

 

「ここら辺にはないのよ…… もしかしたらわかっているのかも。兆くんを誘き寄せるための罠の可能性があるわ」

 

「あいつ相手ならどうにでもなるぜ。一応、ネクストだけは持ってる。何かあってもテロスとか来なければ多分大丈夫」

 

「…… わかったわ。気をつけてね。巧也には連絡しておくから」

 

「んじゃ、行ってくる」

 

 

 兆が出て行くと同時に、研究室から慌てて孝四郎が飛び出してきた。

 普段見せない彼の行動に少々驚きつつも、永理は尋ねる。

 

 

「あれ? 孝四郎さんどうかしました?」

 

「な、ないんですよ!!! フィガンナイフがどこにも!!!」

 

「フィガンナイフ?…… それって…」

 

「ラストガンナイフがどこにもないんです!!!」

 

「そ、そんなッ…!!! まさか兆さんが……」

 

「どうしてなんだ… あれだけ使用禁止だと課長に言われていたのに!!」

 

「…… テロスだった場合の事を考えて持って行ったのかもしれません…」

 

「すぐに連れ戻さないと!!」

 

「私が追いかけます!! 行ってきます!!」

 

「ちょ、ちょっと永理さん!!?…… 行ってしまった──」

 

 

 バオに跨って現地まで直行した兆は、バオから降りると反応があった場所に徒歩で向かう。

 そこは古い工場地帯で今日は人がいない。どこかしかも影ができて薄暗い中、進んで行くと話し声が聞こえてきた。

 壁を背に近づくと兆の名を呼んでいるように聞こえる。いや呼んでいる。どうやら本当に罠だったが、それを承知できているので驚く事はない。

 声のする方へ行くと、カンナヅキとテロスがそこにはいた。それだけならよかったが、ガンホーレとイッシュウまでいる。

 

 

「おっちゃんにイッシュウ!!? なんでこんな所にいるんだよ!!?」

 

「逃げろ坊主ッ!! こいつらの狙いはお前だッ!!」

 

 

 カンナヅキはガンホーレの頭を掴み、地面に叩きつける。イッシュウも泣き叫んでいる。よく見ると、2人の体はボロボロになっており、兆が来る前に痛めつけられていたのがわかった。

 そんな光景とガンホーレ達の姿を目撃した兆は、これまでにないほどの怒りを感じる。頭が破裂しそうなほど血が上ってくるのがわかる。

 

 

「お前ら… やってはいけない事をやったなッ…!!!」

 

「やってはいけない事だと? それはなんだ?」

 

「2人にそれ以上手を出してみろ!!! お前らただじゃ済まさねーぞッッッ!!!!!」

 

「なら、やってみるといい。私よ」

《ZERO》《SETTING》

 

「言われなくてもなやってやらぁっ!!!!!」

《NEXT》《SET》

 

「変身」

 

「変身ッッッ!!!」

 

《ゼロスガンアクション!! オールテロス!! ザ・ビギニング・オブ・ジ・エンド!!》

《ネクストガンアクション!! フォローイング!! トリガー!! イーハーイレブン!!》

 

 

 トリガーへと変身すると、感情のままにテロスへと突っ込む。

 しかしどれだけ怒ろうがなにをしようが、テロスにはあらゆる攻撃は一切通用しない。

 ネクストの力で一気に間合いを詰め、人間の急所を全て殴打する。だが、その感触はまるで通ったような感じがない。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」

 

「遅いな」

 

 

 テロスが手を挙げようとし、何かが来ると悟ったトリガーは一旦距離を置く。

 そのはずだったのだが、気づいた時にはテロスの目の前にいるのだ。何が起こったのかわからない。テロスとは20m以上離れていたはずなのに。

 そして重い音と衝撃がトリガーの胸に響く。大きく吹き飛ばされてしまい、怒りで痛みを堪えて、体勢を立て直そうとした。

 

 

「あれ…?」

 

「それでは私に遠く及ばない」

 

「なんでまたッ…!!?」

 

「言っただろう。私の力は…… 全てを0にすると」

 

 

 また気がついた時にはテロスが目の前にいる。頭を掴まれ、一回転して勢いをつけてからトリガーを地面に叩きつけた。

 倒れたトリガーを見下ろしながら、 テロスはあのフィガンナイフの使用を促す。

 

 

「ラストガンナイフを使え。そうする事でお前は力を手に入れ、私と戦う事ができる」

 

「い、いやだッ…!!」

 

「ならこの男共がどうなってもいいと言うのか?」

 

「テロ… スゥ…ッ!!!」

 

「自分から付けてもらわなければ困る。お前の意思で使わなければ意味がない」

 

「お前の言いなりになってたまるかよ!!!」

 

「…… なら、まず1人目だな」

 

「なッ… やめろ!!」

 

「ならば付けろと言っているんだ。そうすれば彼は助かる。それにお前がそれを制御できればいい話だろ?」

 

「ぐぅ……ッ」

 

「やるのか? やらないのか?」

 

「それは……」

 

「…… 時間切れだな。カンナヅキ」

 

「お、おい待てッ!! おいテロスッ!!!!」

 

「決断が遅い。やれ」

 

 

 カンナヅキはガンホーレの頭に銃を突きつけ、引き金に指をかける。

 そしてトリガーは立ち上がってガンホーレの元へと向かおうとするが、テロスに背中を踏みつけられ身動きが取れなくなってしまった。

 

 

「やめろッ!! やめてくれぇッ!!!!!」

 

 

 それからテロスが手を挙げて合図すると、ガンホーレをグッと掴み上げ銃を持つ手に力が入る。

 

 

「やめろぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!!」

 

 

バンッッッ

と、銃声の音が響き、辺りはとても静寂に包まれた。




今回、戦闘描写が無さ過ぎる(戒め
さぁお次はどうなるのでしょうか?

次回、第33劇「引き金」

次回もお楽しみにです!!


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第33劇「引き金」

皆さんご無沙汰しております。
終盤が近づいてきました…長いね!!

前回、テロスの正体。そしてその計画が判明した。そのクローンである兆は悩みながらもウォンテッドを倒す為に戦う。そんな時、佳苗からカンナヅキの反応があると向かった先には、ガンホーレとイッシュウがおり、テロスもそこに来ていた。ラストガンナイフの使用を促すテロスだが、断り続けているとガンホーレが……

それではどうぞご覧ください。


 銃声が響き、ガンホーレは確実に脳天を撃たれて死んでしまったと思っていた。

 しかしよく見ると、ガンホーレは無事であり、特になんともなかった。よかったと胸を撫で下ろしたかったが、なぜ止めたのだろうかと疑問が浮かんできた。

 テロスはトリガーを踏みつけるのはやめてガンホーレに近づく。

 

 

「テロス!! それ以上おっちゃんに手を出すな!!」

 

「せっかく止めてやったのに感謝の一言もないのか?」

 

「あるわけねーだろッ!! なんて事してんだよ!!」

 

「わかっていない。お前は何も理解してはいない。これが最後のチャンスだと言いたいんだ。今の瞬間にお前の心は憎悪と怒りの感情が入り混じっていたはずだ。私をこの手で始末したいと、そう思っていた」

 

「だからなんだって言うんだ…」

 

「そしてもう一つ思ったはずだ。このラストガンナイフさえあればあいつを倒せる… と。その答えは正解だ。非常にいい回答だと思うぞ。しかしだ…… お前は正解を出したにも関わらず、最終的に出した答えは全く違った。この意味がわかるか? 二度目はないと言う事」

 

 

 テロスはガンホーレの首に腕の横から出たブレードを当てる。

 触れただけで彼の首から赤い液体がツーッと流れた。少し力を入れただけでも首が簡単に跳ねられてしまうだろう。

 トリガーは拳で地面を叩き、頭を抱えて必死に考える。答えが出なければ彼は殺されてしまう。でも出せば自分が誰かに危害を加えてしまうかもしれない。

 

 

「(考えろ考えろ考えろ考えろ考えろッ!!!!!)」

 

 

 その時、後ろから女性の声が聞こえる。トリガーは振り返り、聞き覚えのあるその声の主を見る。彼女は永理だ。なぜここにいるのだろうか。

 

 

「あ、兆さ…… テロス!!?」

 

「来るな永理ッ!!! 早く逃げろ!!!」

 

「は、はい!!… きゃっ!!」

 

「永理ィ!!!」

 

 

 カンナヅキがいつの間にかいなくなっており、彼女に肩を回して動けないようにしていた。

 幸いだが、彼女も気づいているだろう。自分という鍵を殺すわけにはいかないから命の保証は確実にあると。きっと邪魔をしないように一時的に捕らえているだけだ。

 今はガンホーレの方が問題なのだ。

 

 

「さぁ、決めろ…… いや、既にお前の運命は決まっている」

 

「畜生…ッ!!!」

 

 

 そしてトリガーは立ち上がり、ラストガンナイフを構える。

 だが、手元が震えてしまい、起動することができない。もう考える時間もないと言うのに。

 

 

「残り5秒だけ待ってやろう」

 

「ハァ……ハァ……」

 

 

 カウントが刻まれていく。1秒が異常なまでに短く感じる。もう3秒だ。早く決めなければ、ガンホーレが殺されてしまう。

 何度も手に力を入れるトリガーだったが、やはり起動ができない。

 

 

「… 1」

 

「兆さんッ!!!」

 

 

 永理が暴れてトリガーの元へ向かおうとすると、カンナヅキが彼女に向かって思いっきり平手打ちをした。地面に倒れ、そのまま気絶してしまった。

 それがトリガーにとって引き金となったのだ。ガンホーレを人質に取られ、頭に上っていた血が今まさに破裂した瞬間だった。

 トリガーの憎悪と怒りの感情が入った咆哮は全体に響き渡る。

 

 

「お前らッ…!!! 絶対に殺してやるッ!!!」

《LAST DAYS》

 

 

 まさに今、終焉へのトリガーが引かれた瞬間であった。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「エリアJって、確かシモツキの野郎が陣取ってるとこだろ?」

 

「あぁ、全く腹立たしい限りだな」

 

 

 これはまだ兆がRIVERSで待機している頃。巧也と狩馬はパトカーに乗り、エリアJの道を進んでいた。現在はエリアH付近を走っている。

 着くまでの間、ただの世間話をして暇を潰す。

 

 

「確かこのエリアはハヅキって幹部がいたんだよな。確か兆がやったんだっけ?」

 

「そうだ。あの時はなかなか大変だったらしいな。スライム状に体を自由自在に操る能力だったらしい」

 

「へぇ〜、キサラギの上位互換っぽいけどな…… あ、悪りぃ」

 

「…… 気にするな」

 

「あー… なぁ、巧也。俺はもう家族は永理だけだからよ。そのまぁ気持ちはわかっているつもりだ。そりゃウォンテッドが親… それも死んでいたはずなのに生き返って、幹部なんて事実知ったら複雑な気持ちにならない方がおかしい。だけどよ? 俺がこの年齢で、しかも変身できるだろう? もしも俺だったらふざけんなって思いっきりぶん殴るけどな」

 

「お前ならやるだろうな」

 

「そ、それどういう意味だよ」

 

「悪い意味で言ったつもりはない。ただお前なら本気になって間違っていると伝えてやるんだろうなって思ったんだ…… だけど俺は違う。未だに迷いが出て前に進めていない。兆は自分が何者だと知っても尚、あぁやって立ち上がって進んでいる。俺よりも悩んでいるはずだろうにな…… これじゃあ課長としての面目丸潰れだな」

 

「……ったく、課長らしくないな。RIVERSメンバーからは優しくも厳しく、そしてクールでナイスガイで自信に満ちていると、聞いたんだがなぁ。お前がそんな感じじゃダメなんじゃないか? 組織は頭が潰れたら終わりだろ? 悩むなら仲間に言えと言ったのはお前だぜ巧也」

 

「あぁ、そうだったな… 忘れてはいけない事を忘れる所だった。すまないな狩馬。まさかお前に説教されるとは思わないかった」

 

「説教ってほどじゃねーよ!…… ま、少し顔つきは良くなっ…どわぁっ!!?」

 

 

 巧也は急にブレーキを踏み、車は急停止した。

 この状況に狩馬は怒ろうとしたが、前を見るとそう言えなくなる。何故なら目の前にシワスとシモツキが立っているのだから。

 2人は車から降りると、シワス達に近づきながらドライバーを装着する。

 

 

「ちょうどお前達に用があってエリアJに向かう予定だったが… そちらから来てくれるなら手間が省けた」

 

「我々もお前達に用があって来たのだ」

 

「それは?」

 

「… こういう事だッ!!!」

 

 

 シワスは矢を放つと、それを見切っていた巧也と狩馬は互いに避け、即座に変身する。

 シェリフはアフターへ、ハントは七曜式へと変わり、2人に向かって走る。

 

 

「ハント開始だ!!」

 

「全員捕縛する!!」

 

 

 向かってくる2人に弓を構えて放ち、それに続くようにシモツキも、両腕から剣を伸ばして飛びかかってきた。

 ハントは水泡を無数に作ってからそれを飛ばす。するとシワスとシモツキは視界が遮られてしまい、更にはいつの間にかシワスの脚がコンクリートで固められている。

 その隙を逃さないシェリフはシモツキを倍化させている腕で顔面を殴り抜け、シワスの元へと吹き飛ばす。

 

 

「兄さんごめん…!!!」

 

「ぐわぁっ!!?」

 

 

 シモツキが吹き飛ばされただけならばよかったが、ハントが追撃で高熱の炎をビームのように両手から出して、さらにシモツキのスピードを加速させた。

 この衝撃はさすがにシワスでもまともにダメージが入ってしまう。

 

 

「何だこの強さは…!!」

 

「兄さん大丈夫!! 兄さんと僕なら勝てるよっ!!」

 

「あぁ、わかっている。こいつらを倒して、我はのし上がるぞ。ボスのお隣に相応しいのはこの我だ!!!」

 

 

 巨大な矢を放ち、シェリフ達の手前で爆散し、無数の矢となって襲い掛かる。シモツキはその一瞬のうちに2人は近づいて真っ二つにしようと、両腕にエネルギーを纏う。

 そうはさせないとハントが盾となり、シモツキの攻撃を受けるとまたシワスの方に吹き飛ばした。だが、二度同じ攻撃は喰らうはずのないシワスは、シモツキを不本意ながら避けてまた弓を構える。

 

 

「なんだとッ…!!」

 

 

 シェリフがシモツキの陰に隠れていた。突然飛び出してきたが、シワスにとって問題はない。

 それからシェリフはセイブドライバーの引き金を引き、左脚でシワスの側頭部を蹴ったのだが、アフターの力では片手で抑えられてしまう。

 そう。シワスは確信していた。ハントが来なければこいつは倒せると。

 しかしシェリフはこの行動を読んでいた。残しておいた右脚を、サッカボールを蹴るが如くシワスの胸部に喰らわせてやった。

 

 

「ば、ばかなッ!!? 貴様ァァァァ!!!!」

 

「ハァァァァァッッッ!!!!!」

 

 

 シワスはその一撃を喰らって吹き飛び地面を転がる。流石の彼でもまともに受ければかなりの痛手のはずだ。

 案の定シワスとシモツキは立ち上がり、しかしこれ以上追撃することはなく武器を下げる。

 

 

「シモツキ。日を改める… 引くぞ」

 

「え、兄さんッ…!!」

 

「来い。これ以上は我々が不利だ。勝つという確信がなくなった今、引く方がこの場合正しい」

 

 

 そして彼らは下がって行き、闇へと消える。

 シェリフとハントは周囲を確認してから変身を解き、2人で終わった事に安堵し、パトカーに戻る。

 

 

「七曜式がなかったらまずかった。アフターでは分が悪いからな」

 

「はっはっはっー。よく言うぜ。そんな不利な状況でもあの切り返しはさすがだ」

 

 

 その時、巧也の携帯が鳴り、電話に出るとその主は永理だった。何やらとても慌てており、周りが非常に騒がしい。

 

 

「どうした永理? それになんだ。周りがやけに騒がしいが…」

 

「課長ッ!! き、兆さんを助けてください!!!」

 

「…っ!! 兆がどうかしたのか!!?」

 

「テロスに脅され… ラストガンナイフを使用してしまいました…」

 

「なんだと!!?…… すぐに行く!!」

 

 

 巧也は今のことを狩馬に伝える。佳苗には連絡をもらっていたので場所はわかり、急いで現場まで急行するのであった──。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

《LAST DAYS》

 

 

 ついに起動したラストガンナイフ。今のトリガーは憎悪と怒りといった感情が殺意に変わってしまった。ただ目の前のものを潰すために。

 それからラストガンナイフをセイブドライバーに挿し込む。

 

 

《FINAL SET》

「テロスゥッッッ!!!!!」

 

 

 そしてセイブドライバーの引き金が引かれる。

 いつもであるなら砂嵐や装甲が辺りに飛び交うが、この時だけは違った。巨大な銃だけが現れ、その標準はトリガーの心臓に向けて放たれる。すると全身の装甲にヒビが入り、腕と肩から鋭利な刺が伸び始める。目は真っ黒く染まり、兆が大事にしていたマスターからの黒い帽子は、その変身の衝撃と共に吹き飛んでどこかへ飛んでいってしまう。

 その時に生じた余波は彼の周りにいる全てを吹き飛ばした。

 

 

《ラストガンアクション!! ディシーストリガー!! スリーシックスティファイブ!! ドゥームズデイ!!》

「…………」

 

 

 変身後のトリガーからは言葉が消え、恐ろしいほど静かになる。何も話さず、ゆっくりと一歩ずつ踏み出す。ただ歩いているだけにも関わらず、人間1人背負っているんじゃないかというくらい、それぞれに重い空気がのしかかる。

 そして光のないその目はテロスを捉えていた。トリガーは走らずに歩み寄る。

 

 

「くくくくっ…… フハハハハッ!!! ついになったな。終焉のトリガー… ラストデイズに!!」

 

「………」

 

「さぁ私の成功作よ。その力を見せてみろ」

 

 

 トリガーは殴られ、少し後退させられたが、痛がったりとかそういう行為はしない。またテロスはもう1発浴びせようと殴りかかってきたが、カウンターで避けて腹部にめり込ませる。

 テロスは吹き飛びすぐに体勢を立て直す。ダメージは通っているようだが、全くと言っていいほど平然としている。

 

 

「さすがはラストデイズだ。素晴らしいぞ兆…… だが、それは私を倒す為のものではない。この世界に終焉をもたらし、全ての人間から記憶を抜き取るのだ」

 

 

 するとトリガーは近くにいたカンナヅキの頭を掴み上げ、白いモヤが出てくるとそれを吸い始めた。 テロスが命令して動いたのではない。自主的に何かをしようとしている。

 そしてカンナヅキからモヤが出なくなると、乱暴に捨て去って、一瞬にしてテロスに近づいて殴り抜ける。

 永理は巧也に連絡を行いながら、トリガーの様子を伺う。伝えた後、電話を切り、兆の名を叫ぶが全く聞く耳を持とうとしない。

 

 

「兆さん!! しっかりしてください!!」

 

「…………」

 

 

 テロスとは五分五分と言っていいだろう。テロスの力は個々を対象として1つを0にする。それは距離だろうと時間だろうと選ばないで発動する。

 しかしこのラストデイズは抜き取ったものの記憶を糧に力を増す。そしてもう一つは──。

 全てのガンナイフをデメリットなしで、更に通常よりも強化された状態で使用できるということ。

 

 

「…… お前の力は見せてもらったぞ。後はこのままにしておけば、すぐにでもこの世の記憶は私のものとなるだろう… 楽しみだ。私の計画が叶うその日がとても……」

 

 

 そうしてテロスはカンナヅキを抱えて、一瞬で闇へと消えていった。

 もう気は済んだ。その強さを認め、トリガーに全てを託したのだ。自分の計画を成功させる為に。

 もうテロスはいない。だが、トリガーは止まらない。全ての記憶を奪い、この世を破壊するまで決して。

 

 

「兆さん……」

 

「……………」

 

 

トリガーは永理に向かって歩み始めた──。




仮面ライダートリガー ラストデイズ。全てを奪うまで止まることはない。
やばいよ永理ちゃんに近づいている!これはまずい!

次回、第34劇「終焉のトリガー」

次回もよろしくお願いします!!


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第34劇「終焉のトリガー」

皆さんご無沙汰しております。

前回、ついに出てしまったトリガーの最強フォーム。その名もラストデイズ。全ての記憶を奪うまで止まらない様はまさに機械のよう。テロスとは五分五分の力を発揮するが、兆は制御どころから意識すらない。そんな狂気の塊と化したトリガーに必死に声を掛ける永理。これによりラストデイズが彼女に狙いを定める……

それではどうぞご覧ください。


「き、兆さん……」

 

「………」

 

 

 永理の声は彼に届かない。反応もない。

 そしてトリガーは永理の前まで来ると、首を掴んで持ち上げる。首を折る程ではないが、それでも呼吸ができないほど締め付けられ、足掻いても全く離そうとしない。

 すると永理から記憶のエネルギーが溢れ出し、徐々に吸収していく。

 

 

「やめて… ください……ッ!!!」

 

「…………」

 

「お願いです… 兆さん!!」

 

「…………」

 

 

 もう気が遠くなり始め、今にも気を失ってしまいそうだ。記憶は吸収され続け、RIVERSに来た頃の記憶は既に失われた。

 このまま全てを抜き取られてしまうのだろうか。そう思うと、永理の体が震え出した。でも今できる事は何もなく、まるで蜘蛛に捕まった虫のようだ。

 

 

「誰か… 助けて……」

 

 

 その時、トリガーの後頭部に何者かが思いっきりスコップを叩きつけた。

 永理の首を離し、その方向を向くと、ガンホーレがそれを持って構えている。

 

 

「ガ、ガンホーレさん!!?」

 

「よう姉ちゃん。全くこいつバカなことしたな…… あんな話し聞いてもやる奴がいるかよ。信じられねー話しで些か怪しかったが、こんなもの見せられたら信じるしかねーだろ」

 

「早く逃げてください!! 殺されてしまいます!!」

 

「男が一度向き合ったら後には引けないぜ。だろ? イッシュウ」

 

「ダメです!! 早く逃げて!!」

 

 

 ガンホーレ達は飛び込んでいくが、その程度の攻撃はびくともしない。当たり前の話しだが無理だ。ただの人間がテロスと互角に渡り合える強さを持っている者に勝てるはずがない。

 それからガンホーレとイッシュウはそれぞれ首を持たれ記憶を吸収されていく。

 

 

「ぐ、おぉぉぉぉっっ…!!!!」

 

「だ、団長ッ…!!!」

 

 

 急いで永理は銃を取り出すと、トリガーの背に発砲する。もちろん意味はないが、注意をそらせるんじゃないかと思ったのだ。

 するとトリガーはイッシュウを突然、永理に投げ飛ばしてきた。余りにも予想外の行動に驚く。もしもこれに当たれば確実にどちらも死んでしまう。

 

 

「ひっ…!!」

 

 

 もうダメかと思い、ぎゅっと目を瞑る。

 しかし、いくら待っても永理には衝撃がこない。それどころか途中どこかで止まってしまっているように、急に風を切る音が聞こえなくなったのだ。

 

 

「え…?」

 

 

 見てみると、永理の目の前にはシェリフとハントが立っていた。

 ギリギリのところでイッシュウを、七曜式で植物をネットのようにし彼を止めたのだ。本当に間一髪の所で2人は息を深く吐く。

 だが、ゆっくりはしていられない。トリガーを止めなければならない。

 

 

「永理。あれが兆なのか……」

 

「はい課長。あれが… 兆さんです…」

 

「…… アフターネクストになろうにも、ネクストガンナイフは兆が持っている。俺で戦力になるかわからないな…」

 

「課長… あのラストデイズにはどうやっても勝てません… 例え兄さんの七曜式があったとしても……」

 

「なに? どういうことだ永理?」

 

「…… テロスと互角に渡り合っている様子をこの目で見ました… それにあのラストデイズは、きっと全てのフィガンナイフの力を使えると思われます…」

 

「なんだとッ…!!?」

 

「課長!! ガンホーレさんは私を助けたが為にまだ捕まっています!! 助けてあげてください!!」

 

「わ、わかった… 任せろ」

 

 

 永理の言葉を聞いたシェリフとハントはしばらく沈黙したが、すぐにトリガーの元へと歩んで行く。

 トリガーを倒す為に向かったわけじゃない。ガンホーレを助けるために向かっているのだ。絶対に勝てないと確信している。ならばもう逃げ腰で救助の方を最優先にするしかない。

 

 

「覚悟はできてるな狩馬? あのテロスと相対していると思った方がいい」

 

「ははっ、テロスの方がマシかもな。あれが兆だってのに恐ろしくて仕方ねーよ」

 

「あれはガンホーレ団の頭だ。本来なら逮捕するが… 今回ばかりはなんとしてでも助けるぞ」

 

「妹を助けてくれたんだ。その分の恩を返してやらねーとな!!」

 

 

 2人は走り出すと、アフターの力で蹴り、七曜式の力で蹴る。バキッという音を立てて装甲にヒビが入った。トリガーにではない。蹴った方がだ。

 トリガーはガンホーレを投げ捨てると、シェリフとハントの方を向き、右手を開くとそこにガトリングウエスタンが出現する。

 

 

「本当に使えるのかもしれないな。全てのフィガンナイフを…」

 

「俺もう早くここから逃げ出したい気分だ…… 逃げないけどな!」

 

 

 ガトリングウエスタンを放つと、無数の弾丸が放出される。

 ハントは全ての能力を使い、壁を作るが着弾するや否や一瞬で崩壊する。そして2人は避けられなかった。間に合わなかったというのと、後ろに永理たちがいるのだ。よければ弾は全て彼女達へと行ってしまう。

 その弾を2人は全て我が身で受けた。

 

 

「ぐあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁっっっ!!!!!」

 

 

 そしてガトリングウエスタンが撃ち終わり、辺りは砂埃が舞う。

 砂埃が消えると、巧也と狩馬は変身が解けて、セイブドライバーとキカンドライバーの両方が完全に破壊されてしまった。2人は血を吐いて倒れてしまう。

 永理は2人の元へ駆け寄り、声をかけるが返事はない。永理の上に影ができ、恐る恐る上を向くと、トリガーが仁王立ちでそこにいた。

 

 

「やめて… やめてください…」

 

「………」

 

「お願いです… 兆さんッ!!!」

 

 

 2つのドライバーは壊れ、これで記憶を奪えるようになった。だが、死にかけの2人は用済みであると言わんばかしに、手刀にした手にエネルギーを纏ってとどめを刺そうとしているのだ。

 

 

「兆さんダメッ!!! やめてくださいッ!!! 兆さんッ!!!!!」

 

 

 どれだけ叫ぼうと彼の耳には入らない。

 永理は2人の前へと立つ。これが無駄だとわかっている。だけど体が勝手に動いていた。彼女は彼らの弱き盾となる。

 

 

「自分を守れないのに他人を守るなんて言うな… 兆さんが言ってました。こんなちっぽけな私にはあなたを止められるだけの力も2人を助ける力もありません。だけどここで行動しなかったら、私は一生後悔することになるから!!!」

 

「…………」

 

「またあなたと一緒にバーに行ったり、出掛けたり、遊んだりしたい…… 兆さんは私にとって大事な人なんです!!! 課長だって兄さんだって、佳苗さんも孝四郎さんもみんなみんなあなたが大事なんです!!! だからもうやめてッ!!! 兆さんッ!!!」

 

 

 永理の必死な説得は彼の動きを一瞬止めた。だが、一瞬だけである。彼の心には何も響いてはいなかったのだ。

 トリガーは両腕の手刀を振り上げる。永理は腰が砕けたように地面に膝をつく。悔しくて悲しくて、永理の頬に涙が伝う。何もできない自分が嫌になってくる。いくら泣いても現実は変わらない。

 そしてトリガーの手刀は振り下ろされた…

 

 

「え……」

 

 

 イッシュウの叫び声が聞こえる。永理は涙を拭いて見上げた。トリガーの手刀は巧也と狩馬、そして永理には届いていなかった。

 何故なら3人の前にはガンホーレが立ち、その手刀をそのまま受けていたのだから。

 

 

「嘘…… ガンホーレ… さん…?」

 

「だんちょぉぉぉおぉぉぉおおぉぉぉおぉッッッ!!!!!」

 

 

 ガンホーレは口から大量の血を吐き、両肩から抜けた手刀は彼の体の中に入っている。体からも大量に出血している。

 しかしガンホーレは倒れない。まだある力を振り絞ってトリガーの手を掴む。

 

 

「ガハッ…!! ぁ…あぁ、なぁ、兆ぃ…… 俺はお前が嫌いだったぜ… だが、ゴホッ! それでも楽しかった… お前と共に飲める日々は…… 俺にとってのいい思い出の一つだ…」

 

「…………」

 

「ハァ… ハァ…… もうお前とは飲めなくなるけどよ… ゴホッゴホッ!!… お前には… まだ飲める奴らがいるだろぉぉ!!! ハァ… 俺に!! 何度も勝っている男がァ!! あんな野郎が作った、クソみたいな道具に負けてんじゃねぇぞッッッ!!!!!」

 

「…………」

 

「お前が… クローンだか何だか知らねーけどよ!!!…ッガ、アァ!! 俺にとってお前は1人の人間で、俺の永遠のライバルだッ!!! だから負けるなよ…… イッシュウの事は… お前に……… 任せ───」

 

「…………ッ」

 

 

 ガンホーレはトリガーの肩を引っ掴んでいたが、最後の言葉で力をなくし、滑るように地面へと倒れた。その言葉は彼の遺言であった。彼はもう目覚める事はない。

 ガンホーレは静かに息を引き取った…。

 

 

「そんなッ……!!!」

 

「団長…嘘だそんなのッ!!!」

 

 

 この光景を見ていたトリガーは急に動きが止まる。動いたとしてもまるで錆びた機械のようにぎこちない動きになっていた。

 永理はその隙にドライバーに両手で掴み、右手でラストガンナイフを抜こうとするが、なんとびくともしない。どれだけ力を入れても抜ける気配がないのだ。

 

 

「お願い抜けて!! ガンホーレさんの為にも!! お願い!!!」

 

 

 トリガーは永理を引き剥がそうとしているのか。手が徐々に彼女の首へと近づいている。

 永理は心の底から願った。ガンホーレの死を無駄にさせたくない一心で強く願う。ラストデイズを止めたいという想いを全て彼のドライバーに込める。

 

 

(お願い!! もうこれ以上やめて!! これ以上… 誰かを犠牲にしないで!!)

 

 

 グッと手に力を込めたその時、不思議なことが起こる。彼女の手から光が出始め、やがてその光はトリガーの体を包み込む。眩い光を放ち続け、セイブドライバーから自然とラストガンナイフが抜けたのだ。

 光が消え、兆は変身が解除されると同時に倒れてしまう。

 

 

「兆さん…!!」

 

 

 どうやら兆は気を失っているだけだ。だが、他はラストデイズにより重体だ。一刻を争う。そして… 1人死亡者も出ている。

 永理は急いで救急車を要請し、イッシュウは巧也と狩馬に救急処置を行う。

 それから暫くして救急車が現場へと来た。その後、全員病院へと送られることとなった──。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 兆は気がつくと病院の天井を見ていた。本人は周りを見て、すぐにそうだと気づいた。兆が窓際でその横に2つベッドがあり、巧也と狩馬が点滴を打ちながら眠っていた。

 それから兆はベッドから降りると、自分の体を確認する。2人がボロボロになっているのに対し、自分はほぼ無傷なのだ。この傷はわかる。テロスにやられたものだ。

 

 

「俺はあの時何をしていたんだ? 確か感情的になってラストッ……… まさかこれは… 俺がやったのか?」

 

 

 それから程なくして永理が病室に来た。お見舞いに来たようだ。兆の帽子も持っている。

 永理は兆が起きていた事に気づき、すぐにベッドへと寝るようにと怒る。ベッドに入るや否や、兆は彼女に何があったのかと尋ねる。

 

 

「永理。俺はいったい… 何をしたんだ? 何があったんだ?」

 

「えっと… あ、これ。兆さんの帽子です」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 

 兆は帽子を受け取ると、自分のベッドの横にある机にそっと置く。暫く、その帽子を見つめ、何かを悟ったようにゆっくりと口を開く。

 

 

「── 俺はいつから寝てた?」

 

「1週間くらいです」

 

「俺はよ永理。マスターからもらったこの帽子を寝る時以外は外した事がないんだ。いつだって被ってたぜ…… だけどさ。俺がこれ外したって事は不意に何かがあったか… 自我を失った時のどっちかだと思うんだ」

 

「…… はい。兆さんはラストデイズを使った後、私の声やみんなの声すら聞こえなくなって敵味方関係なく暴れました」

 

「ラストデイズって言うのか…… そんなになってテロスはどうなったの?」

 

「テロスとラストデイズは互角でした。ですけど、暴走したトリガーの力を見て納得したのかそのまま消えていきました…」

 

「そして俺が暴れまわってテロスより厄介な事になってたと……」

 

「課長と兄さんは兆さんを止める為に戦いましたが… 結果はご覧の通りです。2人ともなんとか一命は取り留めました」

 

「…… そうだ!! おっちゃんは!!? イッシュウは!!?」

 

「あ…… えっと…… イッシュウさんは無事です」

 

「イッシュウは無事…? 待ってくれ。おっちゃんは? ガンホーレはどうしたんだよ!!?」

 

 

 永理は下唇を噛み、自分の胸に手を置く。そしてギュッとそこを掴んで目に込み上げるものを抑えようとした。

 その表情を見た兆は全てを察し、放心状態となり暫く天井を見つめる。

 

 

「言ってくれ永理…… はっきりと。どんな事をしたのか。俺に言ってくれ……」

 

「……… ガンホーレさんは私たちを守る為に、そしてあなたを正気に戻す為に自分の身を犠牲にして命を落としました… 最後まであなたを信じていましたよ」

 

「俺がおっちゃんを……」

 

「兆さんのせいじゃありません。あれはラストガンナイフの──」

 

「俺のせいなんだよ!!!」

 

「兆さん……」

 

「俺があの時、自分の感情だけでラストガンナイフを使って、勝手に暴走して、巧也さんも狩馬さんもみんな俺が傷つけたんだッ!!!…… そして挙げ句の果てにはおっちゃんを殺してしまった!! 俺はどうしようもない馬鹿だ!! 大馬鹿だよ!! 一生償えない事して… 何がヒーローだよ…!! 何がみんなのトリガーだ何が平和のトリガーだよ!!! ただの… 人殺しだ。俺なんかただのテロスの思うがまま動くクローン人形なんだ…」

 

「… それは違いますよ兆さん」

 

「何が違うんだよ!! だって本当のことだろ!!? 最初から俺の人生も運命もあいつの掌で転がってたんだよ…… この気持ちも記憶だって作り物… 俺はなんの為に産まれたんだよ……」

 

「兆さ……」

 

「もう俺のことは放っておけよ!! 永理だってこんな奴の相手する必要ッ──」

 

「馬鹿ッ!!!」

 

 

 永理は兆が言い終わる前に、彼の頬に平手打ちをする。一瞬何が起こったのか理解できない兆はピタリと動きを止めてしまう。

 そして永理は泣きながら兆に言い放つ。

 

 

「兆さんはどうしてそんな事を言えるの!!? ガンホーレさんはあなたの為に戦って!! あなたの為に死んじゃったのよ!! それなのに自分は産まれてこなければ良かったとか、自分はクローンで操り人形だとか言ってなんなんですか!! ガンホーレさんは亡くなる前に言ってました!!お前は一人の人間で俺のライバルだって!! イッシュウの事は任せたぞって!! それなのにあなたはそんな事を平気で言ってふざけないでよ!! このミルク飲みの大馬鹿ッ!!!」

 

 

 そう言い終わると、息を荒くしながら椅子に座り直す。

 兆はその言葉を聞いて、自然と涙が溢れてきた。今迄一度も泣いた事はなく、誰かにこうして面と向かって説教されたのも初めてだった。

 

 

「…… ごめん永理。嫌な思いさせちまったな… こんなんじゃ死んだガンホーレに申し訳ないぜ…」

 

「………」

 

「イッシュウはどこにいる? あいつにまず謝りたい。許してはくれないだろうけど… 俺はガンホーレ以外にも一生償えない過ちを犯している。だが、死んでも償えないなら死ぬまで償えるように何かがしたい。俺が今できる事をやるんだ」

 

「…… ふふっ、なんか久しぶりにかっこよく見えますよ」

 

「何言ってるんだ? 俺はいつも通りかっこいいぜ? それと永理。さっきの大馬鹿は訂正しろ。天才にその言葉は不要なんだよ」

 

「嫌でーす」

 

「なんだとッ!!?」

 

 

 病室から笑い声が漏れており、後に看護師さんから怒られた。

 それから2人は、その日に退院し、早速今やるべき事を実行しようとまずはバーへと向かった。

 2人が病室からいなくなると、巧也と狩馬は寝ながら話しを始める。実は最初から起きており、会話を聞いていたのだ。

 

 

「… 狩馬」

 

「なんだよ。妹と良い感じだったからちょっとイライラしてるんだが」

 

「今回は本当に死にそうになったが…… お前は兆をどう思う?」

 

「どう思うって別に… まぁ、悪い奴じゃないとは思うぜ」

 

「俺はあいつがRIVERSに来てくれて本当に良かったと思っている。あいつならこんな絶望的な状況でもひっくり返せそうな… そんな気がするんだ」

 

「それで?」

 

「そしてあいつは過去を受け入れた。今度は俺が過去に勝利する番だ」

 

「…… そうかよ。いいんじゃねーか? 俺は妹の為ならどんな事をしてでも守るつもりだぜ」

 

「── あれを見てもか?」

 

「絶対認めねぇからな!!!」

 

 

そしてここから動きだす。

テロスの計画は進み始めたのだ。




それぞれが覚悟を決めて進みますよ。
ありがとうガンホーレ。本当に…

次回、第35劇「計画の進行」

次回もよろしくお願いします!!


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第35劇「計画の進行」

皆さんご無沙汰しております。
ついに終盤突入です!!

前回、ラストデイズの暴走を止める為、果敢に立ち向かいましたが、全く歯が立たず、巧也と狩馬は重症に。そして兆の目を覚まさせようとしたガンホーレは犠牲となり命を落としました。それから全てを知った兆は自暴自棄になりかけましたが、永理の言葉によって目が覚めます。そんな状況でもテロスの計画は進んでいた……

それではどうぞご覧ください。


 兆はバーにてイッシュウに謝罪をした。殴られる覚悟で来たのだが、彼はそんな事をするどころか頭を下げてきたのだ。

 

 

「ちょ、ちょっとイッシュウ!!? なんで頭下げるのさ!!?」

 

「俺はお前が憎いとは思ってない。そのラストなんちゃらを見ると腹が立ってくるが…… 本当に腹が立つのはあのテロスだ。あいつさえいなければ団長もあんな事にはならなかった!!」

 

「イッシュウ……」

 

「だから頼む!! 俺にも協力させてくれ。あんまり役に立たないかもしれないが… このまま黙ってみるのはガンホーレ団の団員としての格が落ちちまう!!」

 

「…… ありがとう。本当にごめん… 絶対にあいつを倒すぜ」

 

「あぁ、頼んだぞ。兆」

 

 

 イッシュウにはもし何かあればすぐに連絡をしてくれ、と連絡先を渡した。

 その後、兆はカウンター席に座ると永理も隣の席に座り、マスターと会話し始める。

 

 

「マスター。それでラストデイズの事なんだけど…」

 

「知っている。テロスから聞いた」

 

「それでなんだけど、マスターはなぜテロスにバレないんだ? それともバレてるのにあの態度なのか?」

 

「バレてはいない。言っただろ? 俺はあいつと同じ世界にいた。その頃からあいつの下につき、絶対にの信頼を得ている。奴が唯一、全てを話すのはこの俺くらいだろう」

 

「凄いなマスター…」

 

「俺は塩瀬 睦だ」

 

「え? 何よ急に… それって名前?」

 

「名前だ。俺の本名だ。マスター呼びの方が呼びやすいのならそれで構わない」

 

「ならマスターにするぜ。俺にとっちゃそれが1番いいからよ」

 

「好きにするといい」

 

「… んで、マスターはどうしてそこまで信頼を?」

 

「お前と同じだ。そこまで上り詰める為に色んな過ちをして来ている。そうでもしなければ奴を倒す手段が見つけられないからだ…… そしてようやくこの世界で見つけた。お前という奴に勝てる唯一の存在をな」

 

「…… だけどほぼギャンブルだったろ? 現に俺は例のフィガンナイフを操れていない」

 

「あのラストガンナイフ… いやフィガンナイフ自体が元々テロス自身の力だった。だが、奴はクローンを作る為に力を使い過ぎた。だからセイブドライバーを2つ作り、その中に記憶… フィガンナイフ12本ずつ入れたんだ。失った力を再び取り戻す為にな」

 

「そして俺にアフターネクストまで作らせて… まぁ孝四郎さんがほぼやってくれたけど、俺のセイブドライバーにアフターを通して、残りの6本の記憶を自動的に組み込んだ… うまい具合に全てのフィガンナイフは洗礼されていったと…」

 

「そういう事だ。こうなってくると時間はない。なんとしてでもラストガンナイフを自分のモノとしなければならない」

 

「あぁ、わかってるよ。あいつを倒さなきゃならないしな…… さて、そろそろRIVERSに戻るから。ありがとうマスター」

 

「…… 兆」

 

「なーに?」

 

「強くなったな」

 

「おう! また来るぜ!」

 

 

 兆たちはバーを出ると、RIVERSへと戻る。また孝四郎がラストガンナイフを見てくれているので、その結果も気になるところだ。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 永理と佳苗は幹部たちに動きはないか、あらゆる所から情報を集めていた。テロスに関しては自分から動く時は兆が関連している時のはずだ。それ以外は幹部に任せると思われる。

 

 

「今の所は動きがないですね」

 

「そうねー… 幹部はムツキを抜いて残り5人だけど、きっと5人は記憶を集める為にいずれ全員動き出すはずよ」

 

「テロスが出るまでもないって事ですね。彼が動くのは記憶が充分に集まった後と、兆さんのラストデイズによって集めたエネルギーを奪うだけですから」

 

「邪魔者を消すって事でも動くかもね… 兆くんが言うにはムツキ以外は信じていないようだし」

 

 

 現状で言えば、巧也と狩馬は未だ入院中であり、もし幹部が出てくると兆が1人で対応しなければならない。ラストデイズの力が使えるのなら造作もないだろう。しかしあの危険性を見でも尚、使おうとは彼は思わないはずだ。

 一方、研究室では兆と孝四郎が頭を抱え、ラストガンナイフをどうにかしようと奮闘していた。

 

 

「孝四郎さん。どうよ」

 

「…… ダメだ。ノンストップで色々調べに調べ尽くしたけど、パソコンがエラー起こしてさっき壊れかけたよ。これ以上やっても無駄かもしれない」

 

「やっぱり一筋縄じゃいかねーよな……」

 

 

 結果については察しがついていたが、こうもはっきりと無駄だとわかると辛くなってくる。ただ制御ができなければまたあの悲劇を繰り返してしまう。2人は同時に大きなため息をつく。

 

 

「アフターとネクストもそれぞれ2つ以上作れないから巧也さんと貸し借りしないといけないし…… それに今のところ漆曜式が1番強いのに、狩馬さんは俺のせいで病院へ。挙げ句の果てにはどちらのドライバーもラストデイズで破壊してる…」

 

「新たなフィガンナイフを作ろうにも、セイブドライバーのデータからはファーストからアフターまでの計12本しか対応しない。キカンドライバーはどうにでもなるけど…… しかも壊れてしまったセイブドライバーを直すなんてことできるのかい? これはテロスが作った物だろう?」

 

「…… なぁ、孝四郎さん。今から馬鹿なことを言うだろうけど聞いてくれ」

 

「なんだい?」

 

「その巧也さんの奴は俺のセイブドライバーからデータをコピーして修理する事ができる」

 

「コピー? 完全に壊れてしまっているんだよ?…… そんなことできるわけないよ。もし無傷であったなら話は別だけど」

 

「それは外見上の話しかもしれないぜ?」

 

「…… なんだって?」

 

 

 兆は巧也のセイブドライバーをアダプターやらパソコンに繋いで弄り始める。急に何をし始めたのかと孝四郎は思い、パソコンを見てみると、驚いたことに壊れていたはずのセイブドライバーのデータがそこにズラリと出てきたのだ。

 

 

「な、なんで!!? 僕が調べた時には完全に壊れていたはずなのに!!」

 

「… ラストガンナイフのおかげさ」

 

「ラストガンナイフの?」

 

「実はまだ動いていたんだ。テロスはもしもの事を考えたんだろうな。ドライバーの心臓部だけは壊れない様に頑丈に作られている。流石にラストデイズの力の前では結構壊れて弱くなってたんだと思う。データを読み取れないほどにね。だけどラストガンナイフの記憶を変換してエネルギーに変える力を補助にしてやればこうして動く様になるってわけ」

 

「記憶のエネルギー… それって──」

 

「永理とイッシュウ… それにガンホーレの記憶だ。多分持ち主に返せるだろうけど…… これが制御できない以上無理だよ。今はこの変換した記憶というエネルギーをありがたく使って、奴らに対抗できるフィガンナイフとセイブドライバーを修復をする。もう二度と…… 繰り返さないために」

 

「…… いいね。わかったよ。頑張ろう兆くん!!」

 

「おっしゃ!! じゃあ早速データをインプット──」

 

 

 その時、突然扉が開き永理が入ってきた。その慌てぶりから察するに、どうやら幹部の誰かが現れたらしい。おちおち修理もしてられない。

 永理を連れ、現場へ向かおうとすると、孝四郎がラストガンナイフを渡してきた。

 

 

「孝四郎さん!!? これ渡したら修理できないし、俺は使わないぜ…?」

 

「もう修理できるよ。もうデータはインプットしたから」

 

「え?」

 

「ラストガンナイフはすごいね… もう終わったよ。この有り様だし、もっと時間がかかるはずなのに…」

 

「いやでもよ。このラストガンナイフ使ったらまた…」

 

「もしもの為さ。テロスは何を考えているかわからない…… それにこのフィガンナイフが製作し終われば、ラストデイズに勝てずとも止められる事はできるかもしれないんだ」

 

「根拠はあるの?」

 

「あるよ。僕自身の全ての知識と技術をフル活用させれば絶対にね」

 

「…… ははっ、言うねー。でも孝四郎さんってそんな人だった?」

 

「やらなきゃいけないんだ。今尚病院にいるRIVERSの…… そして課長や佳苗さん。狩馬さん、永理さんや兆くんみんなの為に。だから僕に任せて行ってくれ」

 

「そっか…… じゃあ頼んだぜ。孝四郎さん」

 

 

 それから警視庁を出た兆と永理は現場へと急行する。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「永理。確か今暴れてるやろうが…」

 

「カンナヅキです」

 

「あいつも懲りねーな…… ん? 忘れてたけどあいつラストデイズに記憶吸い取られたんだよな?」

 

「あ、はいそうですよ」

 

「なんで暴れてるんだろうなーって思ってよ。記憶もないのに」

 

「確かにそうですね… テロスがバックアップ取ってたとか」

 

「そんな機械的かなぁ… 何にせよ。現場に着いて確認するしかないな」

 

 

 2人は現場へ着くと、トリガーに変身したカンナヅキが考えもなしに街を破壊しているのを目にする。記憶がないのかこれだけだとまだわからない。永理に民間人の誘導を頼み、セイブドライバーにアフターネクストガンナイフを差し込んで変身する。

 それから暴れるカンナヅキに飛び蹴りをかまして吹き飛ばす。

 

 

「カンナヅキ!! これ以上暴れるとこのトリガーがお尻叩くぞ!!」

 

「………」

 

「おーい聞いてんのか?」

 

 

 カンナヅキに声をかけるが、反応する事はなく、何事もなかったかの様に立ち上がる。記憶がないのか? と一瞬思ったが、急にカンナヅキが笑い始めた。

 

 

「な、なんだよ気持ちわりーな…」

 

「お前が誰だかわからないが… 殺してやるよ。殺してやる!!」

 

「記憶を失ってるのはわかったけど、はぁっ!?」

 

 

 そしてカンナヅキはこちらに向かって走り、助走をつけた状態で殴ってきた。

 トリガーはアフターネクストであるなら、この攻撃であるなら対処できると、ただ腕をクロスして防ごうとした。

 だが、その拳が触れた時、トリガーは象でもなってきたんじゃないかと思うくらいの重さを感じ、そのまま後方へと吹き飛ばされる。

 

 

「こ、このパワーは一体…!!?」

 

「絶対に首をへし折る!!!」

 

「何なんだよこりゃ!!?」

 

 

 そういえばここに来た時からおかしいと薄々感じ取ってはいた。

 以前のカンナヅキであるなら街の被害はこれほど酷い状態ではなかったのだ。所々に大きな割れ目ができているが、きっとこれらは彼の打撃でできたモノだろう。

 トリガーはそれを理解すると、彼の攻撃を1発もまともに当たらない様、注意しながら避ける。

 

 

「避けてばっかりもいられねーからな!!」

 

 

 蹴りを離れたと同時にアフターネクストの能力を発動する。

 カンナヅキの蹴りはトリガーを透けてしまい、まんまと懐に入られてしまう。そのままトリガーはセイブドライバーの引き金を引いて、カンナヅキに必殺技を叩き込む。

 

 

《アフターネクスト!! オーバーファイア!!》

「オラァッ!!!」

 

 

 その蹴りは見事にカンナヅキの腹を捉え、向こうの壁まで吹き飛ばした。

 攻撃こそパワーアップしていたが、思っていたより脅威となる程ではなかった。その為、トリガーは特に怪我を負ったと言うわけでもない。

 それからカンナヅキの様子を見ようと近づいて行く。

 

 

「一体何があったんだ? テロスに何かされたのか?」

 

「グウゥゥゥゥ……」

 

 

 カンナヅキは呻き声を上げながら、キラーズガンとデリートガンナイフを組み合わせ、自分の胸に銃口を当て始めた。

 その行動はトリガーには理解できなかった。だがよくよく考えてみれば、このカンナヅキはウォンテッドとしての姿を見せたことがない。

 まさかと思った時、彼の銃は引かれており、カンナヅキの体はみるみるうちに巨大化していく。それは人型の姿ではなかった。いつか見た暴走形態によく似ている。

 

 

「…… カンナヅキがキラーズガンを使わなかったのは、トリガーになってRIVERSを混乱させる為だけじゃなかったんだ… こいつの能力自体が問題だった!!!」

 

 

 蜘蛛のような見た目をしたそれはトリガーの容姿を残している。

 巨大なウォンテッドとなったカンナヅキは、トリガーに向けて鋭い爪で彼を切り裂いた。時間を消し飛ばそうにも、ここまで短過ぎた為にまだ時間があった。避けられずにまともに喰らってしまう。

 

 

「ぐはぁっ…!!?」

 

 

 トリガーは胸を抑えながら体勢を立て直す。アフターネクストの装甲が貫通されている。それほど強力な攻撃であったと伺える。ただの引っ掻き攻撃だったのはずなのに。

 

 

「なるほどなカンナヅキ…… お前の能力は暴走だな。本来、キラーズガンの副作用でなるモノだが、幹部はそれを克服した、或いは適応した奴らだ。しかしお前の場合、適応したはいいものの勝手にエネルギーが溢れ出すようになってやがる。本人にとってこれほど最悪な能力はないだろう…… でも、こんな時だからこそ、幹部という強さだからこそ、この力は従来のものよりも強力になる」

 

 

 能力はわかったが、そうなると単純なスペックだけではまず勝てない。

 テロスに殺意という記憶だけを埋め込まれたのだろうか。知性がなく、ただ力だけで暴れる奴ほど厄介な奴はいない。

 トリガーは深呼吸をしてから構える。

 

 

「来いよカンナヅキ!!! 今日がお前の命日だ!!!」

 

 

その時、ラストデイズが少し光った様な気がした──。




カンナヅキのウォンテッドとしての姿!
アフターネクストで勝てるのか…?

次回、第36劇「暴走する者達」

次回もよろしくお願いします!!


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第36劇「暴走する者達」

皆さんご無沙汰しております。

前回、壊れたセイブドライバーとキカンドライバーを修理する為、兆のセイブドライバーのコピーを移し、そして新たなフィガンナイフを作成しようとしていた。そんな中、突如現れたカンナヅキの元へ向かう兆だった。アフターネクストの力で圧倒したものの、カンナヅキはウォンテッドとしての力を発揮し、兆を苦しめる…

それではどうぞご覧ください。


 ここで確実に倒さなければ、ここら一帯が更地となるだろう。

 トリガーはカンナヅキの攻撃を避けながら、何とかできないものかと考えている。アフターネクストの力では、単純な肉弾戦は不利だ。

 

 

「あーもう!! どうすりゃいいんだよ!!」

 

 

 ガーツウエスタンにファーストガンナイフを挿して放つ。カンナヅキには当たるが、エネルギー弾はまるでシャボン玉の様に弾けた。当然のことながら全くダメージは入ってない。

 するとカンナヅキの口が大きく開き、その口内が赤い光を見え始める。

 

 

「…… 冗談だろおい」

 

 

 トリガーの嫌な予感と共に、口から高熱のレーザーが放たれると、それは地面をえぐるようにしてトリガーに向かってきた。

 避けるか避けないかという選択を頭の中で考える。だが、答えが出るよりも早くレーザーは彼を包み込んだ。全身に熱湯を浴びている気分になる。

 

 

「あっ…!!! つぅぅぅぅぅ…ッッッ!!!」

 

 

 この熱さはまずい。装甲が溶けかけているのがわかる。

 それからトリガーは時間を消し飛ばし、一気にカンナヅキの元へと走る。近づいたら最大出力で蹴り飛ばしてやる。それが有効打でなかったとしてやるしかない。

 トリガーはセイブドライバーの引き金を引いてから高く飛び上がり、上空からカンナヅキの頭部に一撃をお見舞いする。

 

 

「ぶっ壊れろォォォォォ!!!!!」

 

 

 近くのビルの窓ガラスを割るほど衝撃が発生した。

 こうして本気で蹴ってみるとわかるが凄まじく硬い。突出した能力はない。だが、どの幹部よりも、単純な身体的能力だけは右に出るものはいないだろう。

 それに今、カンナヅキがゆっくりと頭を上を向こうとしているのだ。つまりトリガーの必殺技は返されようとしている。

 

 

「く… そっ…!!!!」

 

「ヴァオオォォォォォォォォォォォォッッッ!!!!!」

 

 

 トリガーの攻撃はついに弾かれてしまい、アフターネクストで時間飛ばしできる時間にもなっていない。

 カンナヅキは口を大きく開いて、何もできないトリガーに狙いを定める。トリガーはガーツウエスタンにフィガンナイフを入れようとするが、もう間に合わない。

 そしてカンナヅキから熱線が放たれてトリガーを包み込んだ。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

 

 

 暫く焼かれた後、熱線が止み、トリガーはドサリと地面に落ちる。ボロボロになりながらも、何とか立ち上がろうとするが、体に力が入らなくなっていた。

 カンナヅキがこちらに近づいてきているのがわかる。暴走状態とはいえ、本能的に仕留めようとしているのだろう。

 

 

「これは本当にやばい……ッ」

 

 

 徐々に近づくカンナヅキから逃げようにもやはり体は動かない。

 必死にどうすればいいのかと考え、ふと頭をよぎったのはラストガンナイフの存在だった。他のフィガンナイフで対抗できない敵に対し、この状況を一気に変えられるとしたらこれしかない。

 

 

「だけどダメだッ!! また暴れたりでもしたら……」

 

 

 ライスデイズに変身して暴れていた時に誰を傷つけ、誰を殺してしまったのかという記憶すらない。これだけはどうあっても使ってはならない。

 トリガーは使わなければならないとは思ったが、そう思ってしまうと恐怖と悲しみで使うことができなかった。

 しかしそれは本人の意思だけの話である。

 

 

「な、なんだ…… これは一体ッ…!!!?」

 

 

 トリガーの持っていたラストガンナイフが赤黒く光を放ったかと思うと、触れてもいないはずのアフターネクストが自動的に引き抜かれてしまう。全く意図しないままにラストガンナイフはセイブドライバーに差し込まれてしまった。

 それを引き抜こうとするが、接着剤でも付けたんじゃないかと思うくらいしっかりとはまってしまっている。

 

 

「待て待て待て待てッ!!! よせッ!!!!!」

 

「オオォォォォォォォォォォォォッッッ!!!!!」

 

「…ッ!! まさかテロス!! これが目的ッ───」

 

 

 カンナヅキが前脚を振り上げ、トリガーをその巨体から為す全体重で踏み潰す。時間は掛かったが時間を飛ばせる事ができるようになったはずだ。普通であるなら避けられた攻撃だった。

 だか、トリガーのアフターネクストガンナイフは地面に落ちており、彼の帽子であろう物が瓦礫の上に飛んでしまっていた。

 その帽子がそこにある時には、すでにカンナヅキが宙へと投げ飛ばされていた。足の下に先ほどまでいたトリガーはもういない。何故ならそれはトリガーではなく終焉をもたらす者なのだから。

 

 

《ラストガンアクション!! ディシーストリガー!! スリーシックスティファイブ!! ドゥームズデイ!!》

「………」

 

 

 空中へと飛ばしたカンナヅキを追い、トリガーも飛び上がると、拳を握り締めて頭がくの字になるほど思いっきり殴る。

 殴られた巨体が殴られて勢いを増して地面に落ちた。それは一種の隕石のようであり、周辺の街が衝撃により崩壊してまう。

 

 

「オォォォォ……ォォ……」

 

「………」

 

 

 知能を失った者と言葉も失った者の決着は一瞬だった。

 セイブドライバーの引き金を引き、頭を踏むと禍々しいエネルギーが、トリガーの脚を包み込んでいく。その脚に力を込めて思いっきりカンナヅキの頭を踏み潰す。

 

 

《ラスト!! ファイア!! END》

 

 

 カンナヅキは強烈な爆発を起こし砂煙が舞う。

 それが止むと、辺りは更地となっており、その中心にいるのがトリガーである。目の奥に闇しか見えない。闇しか存在しないのような、まるでこの世のものとは思えないものが佇んでいる。

 永理は爆発音を聞きつけ兆の元へと来た。カンナヅキを倒したと思っていた。倒した事は倒したが、今度は別の問題が彼女の目の前にいる。

 

 

「使ってしまったんですね…… 兆さん…」

 

 

それからトリガーの真っ黒な瞳は永理を映し出す。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

─ 次の日

 RIVERSの研究室ではセイブドライバーの修復と新たなフィガンナイフの製作が行われていた。孝四郎は昨日から寝ずにずっと作業をしている。

 セイブドライバーの修復はほぼ完成に近い状態だが、問題の新しいフィガンナイフを作ることができない。そもそも元はテロスが作り出したものであり、そこに全く新しいフィガンナイフを組み込むというのは無謀かもしれない。

 

 

「兆くんは作れるとは言ってし、というか僕もやるって言っちゃったし…… でもきっかけもないのにどうやって…」

 

 

 すると、コンコンと研究室の扉を叩く音が聞こえ、「どうぞ」というとお盆を持って永理が入ってきた。お茶が入った湯呑みを孝四郎の近くのテーブルへ置く。

 

 

「あ、ありがとうございます…… ハァ」

 

「まだできそうにないですか?」

 

「そうですね… でも人間があれほどの力を作れるはずがありませんよ…」

 

「いえいえ! 孝四郎さんならできますよ! だってセイブドライバーをこんな短期間で直してしまいましたし、それにほとんどのフィガンナイフを製作したのだって孝四郎さんじゃないですか!」

 

「あれは元があったからで… でも、ありがとうございます…… あ、そういえば兆くんの様子はどうですか?」

 

「兆さんはラストガンナイフと睨めっこしてます。あの出来事がなかったら───」

 

 

 

*****

 

「兆さんやめてください!!」

 

「………」

 

「やっぱり…」

 

 

 永理はラストデイズとなってしまったトリガーから逃げていた。

 トリガーは何故か歩いて近づいてくる為、距離をなんとか保てている。しかし逃げているだけでは意味がない。

 

 

「あの時みたいに私が触ればもしかしたら…!!」

 

 

 そして永理は迷う事なくトリガーに近づいて、セイブドライバーからラストガンナイフを引き抜こうとした。止まって欲しいと願いながら、手にグッと力を込める。

 だが、あの時のような光は起こることはなかった。

 

 

「あれ…? どうしてっ!!?」

 

 

 必死になって外そうとするが、何も起こらず、トリガーの手は彼女の首を掴む。徐々に持ち上げられ、ついに地面から足が離れて首が更に締まる。

 

 

「や、やめて…… 兆さん…!!」

 

 

 その手を引き剥がそうとする事はまず無理だろう。助けを呼ぼうにも声が出ないし周りにはすでに誰もいないし、連絡をしようにもこの状態では不可能である。

 またこのまま記憶を取られるのだろうか、と思っていると首の締まりがなくなってきたのがわかる。永理はそれをなんとか振り払って地面に落ちる。

 

 

「兆さん?」

 

「………ッ」

 

 

 トリガーはラストデイズの呪縛をほんの僅か、ほんの一瞬だったが耐えたのだ。しかし一瞬であるが為、すぐにまた永理に向かって歩き始める。

 また永理はセイブドライバーに手をかける。そして願いながらラストガンナイフを引き抜こうとする。

 

 

「お願い抜けて!!」

 

「………」

 

「兆さんッ!!!!!」

 

「………ッ!!!」

 

 

 永理の手がトリガーに掴まれる。これはまずいと思い、手を払おうとしたが、その掴む手は何故かとても優しい。

 そしてトリガーはラストガンナイフを掴み、方向をあげながら思いっきり引き抜いた。

 変身が解除されて兆はその場で倒れた──。

 

 

 

*****

 

「── あの時、兆さんが意識を取り戻してくれなかったらどうなるかと…」

 

「でもよく耐えましたね… 言っちゃいけないんですけど、やはりテロスの力が少しですけど出てきたのかもしれません」

 

 

 すると扉が閉まる音が聞こえ、RIVERSに誰か入ってきたとわかる。兆だと思い、永理が出ていくとそこにいたのは巧也と狩馬であった。

 どうやら病院に無理言って退院させてもらったようだ。

 

 

「か、課長!!?」

 

「あぁ、悪いな。心配させた」

 

「お身体の具合は?」

 

「完治しているわけじゃないが、おちおち寝てもいられないだろう…… そういえばまたラストガンナイフを使ったんだな。佳苗から連絡をもらった」

 

「はい… ですけど兆さんの意思とは関係なく、ラストガンナイフが勝手に動いてラストデイズへと変身してしまったそうなんです。その時に兆さんは危機的状況下にあったということでした」

 

「…… 兆も気付いている。テロスはこの事をわかっているからこそ敢えて手を出さないようにしているんだろう。しかしこれが徐々に状況関係なく変身するとなれば、話は変わってくるな」

 

 

 ラストデイズという脅威でしかない存在を、巧也はどうすればいいのかと病室でずっと考えていた。答えはもちろん出る事はなく、ただ一刻も早くこうして退院して兆に戦わせないようにする事以外に方法はない。

 巧也が永理からお茶を貰おうとした時、警報がRIVERSに鳴り響く。佳苗に状況を確認すると、どうやら街にミナツキとキサラギが現れたようであった。

 ついに現れた巧也の両親。迷わず彼は現場へ向かおうと、研究室の扉を開き、セイブドライバーを取りに行く。

 

 

「直っているか孝四郎?」

 

「え、えぇ今終わりましたけど… 大丈夫ですか? 相手は2人ですよ?」

 

「アフターとネクストを借りるぞ。勝つも負けるも俺の腕次第だ。そして…… 俺の覚悟が本物か否かだ」

 

「… わかりました。気をつけてください課長」

 

「わかってる」

 

 

 それからすぐにRIVERSから出て、パトカーに乗り込んで、サイレンを鳴らして現場へと向かった。

 残された狩馬はキカンドライバーを自分で直す為、孝四郎と向かい合う形で座って作業に入る。これは孝四郎の負担を減らすという事もあるが、それ以前にキカンドライバーは狩馬自身が1から作成した者であるので、やった本人の方が正確だろう。

 しばらく無言の状態が続き、手を止めた孝四郎が設計図だけでどうしてそこまでできたのかと質問する。

 

 

「あ? そりゃ永理を助けたい一心で色々と勉強したんだよ。この賞金稼ぎって立場になるまでずっとな。やっと三十路でこのくらいはできるようになった…… ってそもそもがよ。それお前が言うか?」

 

「は、はい?」

 

「俺よりも遥かに作り出してるお前の方がすげーよって話しだ。俺の漆曜式だって孝四郎がやってくれたんだろ?」

 

「そうですけど…… 手が止まっています。今までは元があったからできたんです。狩馬さんの物も繋ぎ合わせて調整しただけなんです。だから元のフィガンナイフを強化するしか方法は…… あっ」

 

「ふっ、やり過ぎて頭が硬くなってたようだな天才」

 

 

 それから狩馬はテーブルにあったテンスガンナイフを取ると、くるりと回してから孝四郎に手渡す。

 このテンスガンナイフがあったからこそ、ネクストとアフターを作るきっかけとなったし、その2つを組み合わせることができるように調整したのも孝四郎なのだ。

 

 

「できるだろ?」

 

「…… えぇ、ありがとうございます。課長の為にやってみせます。そして… 兆くんの為にも」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 現場ではミナツキとキサラギが街を破壊し、人々を撃ち殺し、悲惨な状態とへと成り果てていた。

 かつての父と母の面影は全くなかった。警視総監として警視庁のトップであり、誰から信頼され憧れ、まさに警察の鑑であった父。自分が警察になるきっかけとなった父。その存在があったからここまで来れた。

 母も天才外科医として多くの患者を救い、彼女の手にかかれば治せないものはないとまで言われた。まさにゴッドハンドというにふさわしい人だった。とても優しく、厳しかった母。

 それも全て偽り。その2人は今、巧也の目の前で破壊の限りを尽くしている。

 

 

「父さん…!!」

 

「…… やっと来たか巧也。私はお前を待っていたんだ。と、まだ父として呼んでくれるのか? 嬉しいな」

 

「…っ!! ミ、ミナツキ!! お前をこの手で止めに来たぞ!!」

 

「止めにー…か。お前に止められるのか? 私の事を充分に攻撃できなかったお前が?」

 

「俺はその覚悟でここにいる。俺は過去に打ち勝つ!!」

《AFTER NEXT》《OVER SET》

 

「やってみるといい。私の息子よ」

 

「変身ッ!!!」

 

 

 アフターネクストへと変身したシェリフは自分の両親に向かって全力で走る。

 それは人々のためでもあったが、彼の衝動は過去を倒す為、息子として立ち向かう為。血の繋がりあるものとして終わらせる。

 

 

「うおぉぉぉぉッッッ!!!」

 

 

彼の咆哮と共に戦いの火蓋が切られた。




自分の過去は自分で片を付ける!!
そしてRIVERSの為に、人々の為に、孝四郎は自分自身が思う最高傑作となるフィガンナイフを製作する。

次回、第37劇「覚悟の百銃」

それでは次回もよろしくお願いします!!


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第37劇「覚悟の百銃」

皆さんご無沙汰しております。

前回、ラストデイズの力でカンナヅキを撃破したのですが兆は制御できずにまた暴れてしまいました。しかしとんでも精神力で少しの間だけ動き、ラストガンナイフを無理やり外す事に成功しその場は収まった。一方、孝四郎はテロスとラストデイズに対抗する事が可能となるであろうフィガンナイフの開発を進める。そんな中、ミナツキとキサラギが現れ……

それではどうぞご覧ください


 シェリフはアフターネクストの力を使い、時間を飛ばしてミナツキとキサラギに近づくと、ミナツキを蹴った後にキサラギを殴り飛ばす。

 続けてキサラギを殴るが、ぐにゃりと曲がり右腕を丸ごと呑みこまれてしまった。そのまま固定され身動きが出来ず、振り向くとミナツキが銃を構えてシェリフを狙う。

 

 

「そうは… させるかッ!!」

 

 

 右腕に力を入れ、キサラギを持ち上げて盾にしようとしたが、その時に彼女の口から「巧也」と言われる。ただ名前を言われただけの筈なのに、両親との思い出が頭の中にフラッシュバックされてしまい、思わずそのまま別の方向へと向けてしまう。

 それを狙っていたかのように拘束を解いて、振られた勢いのままに後退した瞬間にミナツキの銃から弾丸が放たれる。

 

 

「ごめんね。巧也」

 

「母さ──!!!」

 

 

 シェリフに着弾した瞬間に大きな爆発を引き起こし、彼はゴムまりのように跳ねて壁に激突してめり込んだ。

 ズシャリと地面に落ち、それから拳を地面につけて立ち上がろうとしたが、まだ万全な状態ではない為に、ラストデイズに受けた傷で全身に激痛が広がってまた倒れてしまう。

 

 

「…… 巧也。やはりお前は私たちに攻撃はできないようだな」

 

「なんだとッ!!」

 

「なら何故キサラギを盾にしなかった?」

 

「そ、それは…」

 

「答えは簡単だ。お前は私たちに対しての情がある。それも仕方のない事だろうな… 私たちはお前にとっての憧れであり目標だったんだから」

 

「黙れッ!!!」

 

 

 ミナツキを怒りを糧に何度も殴る。殴る度にこの状況で思い出が頭の中に溢れるのだ。それでもシェリフは震える手を抑え、とにかく殴って自分の情を消そうとする。

 しかし、例え裏切られたからと言って、両親を本気で殴るという事がシェリフにはとても辛く苦しかった。

 

 

「何故だ!! 俺はお前たちに裏切られたというのにッ…… どうしてこんなに苦しい!!!」

 

「それがお前の正義であり優しさなんだ。それを捨てられないようでは───私たちには勝てない」

 

 

 そしてミナツキは銃口をシェリフの腹部へ当てると、すぐに引き金を引いた。

 シェリフはそれをギリギリのところで時間を消し飛ばしてミナツキの背後に回り込む。それと合わせてキサラギがシェリフの腕を取ると地面に叩きつける。

 

 

「ガッ…!!」

 

「あなたは今でも私たちの可愛い息子よ。考え直して? ウォンテッドの仲間になりましょう?」

 

「それだけはなんであろうと絶対にない!! 俺はウォンテッド全てを捕縛する!!!」

 

「そう…」

 

 

 キサラギの優しかった声は氷のように冷たくなり、シェリフの両腕を包み込んでミナツキの方へと向けて、先ほど彼がやろうとした盾をやってみせた。

 それにはまるで情はない。2人の中に情なんて最初からないのだ。このシェリフの答えもわかっていたんだろう。邪魔者はここで排除する。例えそれが血の繋がりがある実の息子だったとしても、2人には関係がないのだ。

 

 

「なるほど… 初めから俺を殺すつもりだったのか…」

 

「それ以外にないわよ。私たちが現れたら、必ずあなたがここへ来ることは既に把握済み。残念よ巧也。あなたならわかってくれると思っていたのに…」

 

 

 そしてミナツキは銃を構えてシェリフに放ち、キサラギは両腕を解放させると彼の背中を蹴り飛ばして、その勢いで後退する。

 もう避ける事ができないシェリフは被弾してしまい、爆発に飲み込まれて吹き飛ばされてしまう。地面を転がり、彼の体に火花が飛び散って、そのまま変身が解除される。

 キサラギは腕を伸ばして巧也を掴んで、自分たちの前へと彼を運ぶ。

 

 

「うっ…ぐぅ……」

 

「これでお終いだ巧也。病み上がりだったのも知っているが、手加減するほど私たちに情なんかないんだ。実の息子であるお前であっても」

 

「父さん……」

 

「さよならだ」

 

 

 巧也の頭に銃口が突きつけられる。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 カタカタカタカタカタカタカタカタッ

 狩馬はお茶を飲もうとしたが、物凄いスピードと気迫でフィガンナイフを開発している孝四郎を見て固まってしまった。

 まさかここまで本気になるとは思わなかったのだ。そこでこの天才の本当の力をこの目で見てしまった気がする。

 

 

「お、おいおい。急ピッチでやるのもいいが… お前昨日から休んでないだろ?」

 

「… いいんですよ。僕ができるのはこれくらいなんです。今だって課長は幹部2人に戦っているんです。僕だけが休んでなんかいられないんですよ」

 

「なるほど… 意味は違えどお前もあいつと共に戦ってるってわけか」

 

 

 それから狩馬はお茶を飲もうとすると、突然、研究室の扉が開かれて兆が入ってきた。どうやら様子を見にきたらしいがノックもせずに入ってきたもので驚いて飲めなかった。

 兆は孝四郎に近づいて横から様子を見る。段々と眉を潜めて彼のパソコンをジーッ見始める。

 

 

「えっと… どうしたんだい兆くん? 何か間違ってるかい?」

 

「あーいやね。テンスの派生って聞いたもんだからどういうのかなーと思ったら…… 何か全然思ってたのと違ってさ」

 

 

 テンス派生と聞かされていた兆は11と12の次辺りの数字と思っていたが、桁を見ると0が1つ多いのだ。

 孝四郎は頭の上にはてなが飛び交う彼に説明しようと、パソコンの隣にあったテンスガンナイフとコの字のフィガンナイフを手に取る。

 

 

「このテンスにこれを差してセイブドライバーにセットするんだ」

 

「派生って… そのままテンスを使うって事だったのか。でも大丈夫なのそれ? テンスって前からやべー代物じゃなかった?」

 

「だからこのフィガンナイフが必要なんだよ。このプリズンハンドレッドがあればテンスの力を最大限に活用できる。そしてそれはプリズンガンナイフの能力をも引き出すためのエネルギーにもなるんだ」

 

「ハンドレッドか…… ははっ!これまた数字が跳ね上がったな!」

 

「数字を裏切らない能力が現れるはずさ… じゃあ、仕上げするから待ってて」

 

「え? 仕上げ?」

 

 

 すると孝四郎はパソコンを睨めっこをし、10分ほど経った所で椅子に深く座って一息つく。そしてテンスガンナイフとプリズンガンナイフを兆に渡す。もう1つ先に開発が終わっていた大きな銃を取り出してそれも渡すと、孝四郎は頷いて力が抜けたようにテーブルに伏せて眠りについてしまった。ずっと寝ずに作業をしていたのだろう。

 兆は狩馬を見てアイコンタクトを取ると、研究室出て巧也の元へ行く前に、永理に孝四郎に毛布をかけるように言う。

 RIVERSから出てバオに跨って急いで巧也の元へと駆け出した。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「何故だ…… 何故撃たなかった!!! ミナツキ!!!」

 

「勘違いするな巧也。私はトリガーを待っているのだよ」

 

「兆を? 何が目的だ…」

 

「どうせ死ぬんだから教えてやろう。トリガーの前でお前を殺せば奴は怒り悲しみ、そして私たちに憎悪する。それが引き金となり、ラストガンナイフを使用させる。これにより終焉のトリガーは再び現れることとなる」

 

「お、お前ら…!!!」

 

 

 巧也はキサラギに拘束された状態で、ミナツキには頭に銃口が当てられている。引き金には指がかかっており、暴れようものならいつでも彼を殺せるように準備は整っていた。

 その時、兆がトリガーに変身した状態でバオに乗って3人の前に現れ、バオから降りると銃も向けずにそのまま無抵抗で歩いていく。

 

 

「ほう。来たか」

 

「来てやったぜパパとママさん」

 

「わざわざ来てもらったんだ。今からやる事をよーく見ていてもらおうか」

 

「巧也さんに銃を向けて何してやがる? 人質でも取ったつもりか?」

 

「この場合は違う。何故なら殺すつもりだからだ。トリガー。お前の目の前でな」

 

 

 銃を巧也の頭に突き立て、今にも発射しそうな勢いである。

 巧也は声を上げてトリガーに「俺は気にするな!! こいつらをやれ!!」というが、全く動こうとはしない。それどころか降参するかのように手を挙げ始めたのだ。

 

 

「何やってるんだ兆!!!」

 

「なぁ巧也さん。俺はあんたと出会えたから、こうして皆と戦ってこれてるわけだ。だからよー… 恩人のあんたを死なす事はまずありえないと思ってもらおうか!!」

 

「…… 兆。俺はこの2人を倒す事はできない。覚悟はあると言ったが、そんなもの言葉だけで、実際はこの通りの有様だ。俺はお前に対して言える立場ではなかったな…」

 

「何言ってるんだよ。俺が知ってる男はそう弱音を吐いたりしないぜ。俺は親がいた事ないから… そもそも作られた存在だったからそういうのはわからないけど… あんたは自分の正義を信じて進んで欲しい。それが例え実の親でも、悪い事したら正すのがあんたたち警察の役割だろ? だから正してやってくれよ。彼らをな。巧也課長」

 

「……ッ」

 

 

 ミナツキはその光景を見てやれやれとため息を吐くと、引き金にかかる指に力を込める。

 それを見たトリガーはガーツウエスタンを即座に抜いてミナツキの銃を撃って軌道を逸らしてから、セイブドライバーの引き金を引いてキサラギを蹴り飛ばす。拘束が解けて巧也は抜けだし、トリガーと共に後退する。

 

 

「そうだな。覚悟以前に… 俺は警察で悪党を取り締まらなきゃいけなかったな。相手が良心だったとしても正してやるのが俺の仕事だ」

 

「その粋だぜ巧也さん。んじゃ、はい」

 

「これは……」

 

「プリズンガンナイフとテンスガンナイフ。そして名前書くの忘れたけど新しい武器。孝四郎さんが急ピッチで仕上げてくれた出来立てホヤホヤの一品だぜ」

 

「ふっ、感謝を伝えるとしよう───」

《TEN》

 

 

 巧也はプリズンガンナイフにテンスガンナイフを差し込むと《PRISON HUNDRED》という音声が鳴る。それをドライバーに差すと《SET ARREST》と鳴り出す。

 それからハンマーを起こすと、ナンバープレートに110と書かれたパトカーと巨大な銃が現れる。

 

 

「この2人を捕縛してな…… 変身ッッッ!!!!!」

 

 

 巨大な銃はパトカーを撃ち抜くとそれらはバラバラとなって、装甲へと変わり、巧也の各部位に装着されていく。

 頭の横に100と書かれたシェリフが新たな装甲を身に纏い、ミナツキとキサラギの前に姿を現した。これがプリズンハンドレッド。

 

 

《プリズンガンアクション!! ポリス・エマージェンシーコール!! ハンドレッドテンス!!》

「俺は今を進む。その為にお前たちを… 過去を越える。憧れだったものを越えてみせる!!」

 

「巧也… 抵抗しなければ痛みはなかっただろうに…… いけない子だ!!」

 

 

 ミナツキが接近して銃を放とうとすると、シェリフは腕を掴み上げる。凄まじい力だが、それでもミナツキは引き金を引く。シェリフに向かって放ったはずだったのだが、当たるどころか弾丸すら出ないのだ。

 

 

「な、なんだと…!!?」

 

「この力は…… ハァッ!!!」

 

 

 シェリフは攻撃できないミナツキを殴り飛ばした。

 プリズンの力はその名の通り監獄。閉じ込める。すなわち拘束するのだ。彼に触れられれば、それが何であろうと止められてしまう。

 

 

「どうやらお前たちは俺に勝つ事は不可能になったようだ」

 

「ふっふっふっ… そうかそうか。キサラギッ!!!」

 

 

 キサラギが自分の腕を伸ばして、シェリフを包み込むほどの大きさに広げて捕らえようとした。

 しかしこれも今の彼にとっては造作もない事で、少し触れた程度でその形のままがっちりと、石像のようにその場で固まってしまう。

 

 

「こ、これはッ… 動けない…ッ!!」

 

「新しい武器を試してみるか」

 

 

 シェリフは新たな武器、ジャッジメントエンターンを取り出す。銃の方をしてはいるが、真ん中に円があり、それを中心に回転させると銃口部分が鋭利な刃物に切り替わる。

 それでミナツキとキサラギを斬りつけ、また回転させて銃にすると、2発の弾丸で2人を撃ち抜く。

 

 

「巧也ッ!! 親にこんな事をしてただで済むと思っているのか!!」

 

「俺は裏切られた今でも2人とも親だと思っているし大切な家族だ……だが、悪を捕まえるのが俺たち警察の仕事。それが例え親であったとしても、正しく導いてやらないとなッ!!!」

 

 

 そしてシェリフはジャッジメントエンターンをトリガーに放り投げた後、セイブドライバーの引き金を引き、2人に向かって走り出す。

 ミナツキは銃を構え、キサラギはゴムのようにグニャグニャになるが関係ない。

 

 

《プリズン!!アレストファイア!!》

「ハァァァァァァ……」

 

 

 ミナツキとキサラギの周りを囲うように縄が出現し、2人を縛り付けて身動きの取れないように固定されてしまう。

 そしてシェリフは跳び上がり、天より必殺の一撃を喰らわせる。

 

 

「ハァッッッ!!!!!」

 

 

 2人は蹴りを放たれ、しばらく胸を押さえた後、シェリフの背中を見て絶叫しながら大爆発した。その衝撃で2人のキラーズガンとデリートガンナイフは木っ端微塵に砕けて、地面にバラバラと落ちた。

 巧也は変身を解いて、倒れた2人に近づき、現時刻を言って手錠を掛ける。

 

 

「これが俺の正義だ。例え父さんと母さんに何を言われようとそれは決して変わる事はない」

 

「…… 終わったな巧也さん」

 

「あぁ、すまなかったな。お陰で警察としてまた一つ成長できた気がする… さ、運ぶのを手伝ってくれ。1人じゃ無理だ」

 

「あーはいはい。よっこらせ」

 

 

 かくして2人はRIVERSへと戻ると、巧也の両親は刑務所に送られる事となった。最後まで巧也に何か言っていたが、そんな事は別に気にする様子もなく、彼にとっては罪を償って欲しいのだろう。何も言わず父と母を見送った。

 一方でRIVERSの研究室では、狩馬がやっとキカンドライバーの修復に成功したようであった。

 

 

「あぁぁぁぁやっと終わったぜ」

 

「お疲れ兄さん。はいバナナ」

 

「ありがとな〜永理〜…… なんでバナナ」

 

「食べて」

 

「あ、おう」

 

 

 永理は先ほどもらってきたバナナをRIVERSメンバーに配っている最中だった。その間に孝四郎はまだ夢の中にいる。だいぶ疲れているのだろうか、狩馬がキカンドライバーをガチャガチャと音を鳴らしていたのにも関わらず全く起きなかった。

 巧也はRIVERSに戻って来ると、早速メンバーを集合させて今後の方針を説明する。

 

 

「今回はみんなご苦労だった。これで残る幹部はムツキを抜いて2人、シワスとシモツキだけとなった。黙って見ているはずがないこの2人に動きがあると見る。きっと近々エリアAに攻め込んでくるだろう。市民は予め避難してもらい、万全な状態で迎え撃つつもりだ。テロスに関しては対抗策がまだない。このプリズンが通じるか否か…… とにかく今は幹部たちを最優先にして事を進める。以上だ」

 

 

 いつものように巧也たちが話を進めている頃、誰も知らないとある場所ではたった3人で会議が始まっていた────。




終わらせ方が微妙…微妙じゃない?
シェリフの最強フォームプリズンハンドレッドが登場!!その能力はまさに強し。これはウォンテッドの方も黙ってない。

次回、第38劇「壊れた魂」

次回もよろしくお願いします!!


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第38劇「壊れた魂」

皆さんご無沙汰してます。

前回、完全に覚悟を決めた巧也が最強フォーム仮面ライダーシェリフ プリズンハンドレッドに変身し、ミナツキとキサラギを撃破しました。流れに乗った RIVERSでしたが、何やら不穏な空気が漂い始める……

それではどうぞご覧ください。


「うぐぅ……」

 

 RIVERS内の一角で壁を背にして兆は眠っていた。気持ちよさそうではなく、とても苦痛な表情を浮かべ、夢を見ている。

 テロスが兆の頭を掴み、偽りの記憶を注ぎ込んで彼の性格や形まで作られ、行動理念までもがテロスによって構築されていく。本当は叫んで誰かに助けを求めたいが、周りには誰もいないし、そもそも声が出ないのだ。

 徐々に化け物のように恐ろしい姿へと変わる自分を見て兆は発狂した。

 

 

「はっ…!!」

 

 

 そこでプツリと夢から覚めて、兆は肩で息をしながら周りを確認する。

 いつも通りのRIVERSで皆、まだここへは来ていないようだ。外を見るとまだ暗く、時計は0時を指しており、大体2時間くらいしか寝ていないのだろう。

 

 

「…ったく、変な夢で俺のねんねタイム妨げやがって…… 0時か。次の日になっただけなのに、今の夢からは嫌な数字だぜ…」

 

 

 夢の内容をハッキリと覚えているほど鮮明に兆の頭に入り込んでくる。

 額に手を当てて必死に忘れようとしたが、これが嫌な所で思い出そうとすればするほど、更に頭の中にくっきりと残ってしまう。

 これでは眠れないだろうと、兆は気分転換にRIVERSから出て、近くの公園まで散歩をする事にした。

 

 

「トリガーさんは最強〜誰にも負けない〜だから〜らららららら〜♪」

 

 

 夜中にテンションを高めにして、これまた酷い歌を唄いながら、スキップをしているじゃないか。周りからすればただの変態にしか見えず、一歩間違えればせっかく出てきた警視庁に逆戻りなんてこともあるだろう。

 それから無事に誰もいない公園まで着くと、ベンチに座って空を見上げる。今日は星が綺麗に見えており、満月でいつもよりも明るく、兆の心はようやく落ち着きを取り戻していた。

 

 

「まぁただ今日が満月か…… なんだろうな。例の夢の後だから素直に喜べないや…」

 

 

 その時、暗闇から何者かの気配がして、座った状態から周囲に警戒を始めた。

 人間のものとは違うこの異様な空気と緊張感は、兆にとっては会いたくないものの1人であり、いつかは倒さなければならない自分の元いた場所。

 その何者かは暗闇からヌッと姿を現したが、全身黒いコートで覆われ、フードで顔が見える事はない。

 

 

「── テロスッ!」

 

「こんな夜更けに散歩か。外は寒いというのに風邪でも引かれたら困る。お前は私の大事なモノなんだからな」

 

「知るかよ! 何が大事なモノだ!…… ちょうどいい、お前には聞きたいことがあるんだよ」

 

「…… 場所を変えよう」

 

 

── 兆たちは誰もいない工場の倉庫へと足を運んだ。人の気配が全くしないため、戦うのならこの場所が最も最適だ。それに一般人を巻き込むこともないし、騒ぎにもならないのなら尚更である。

 

 

「あそこでは人々に迷惑をかけてしまうだろう。せっかくの眠りを妨げては酷だ」

 

「言葉にもないこと言いやがって…… 早速だが聞かせてもらうぞ。例のラストガンナイフは俺の意思とは関係なく、勝手にドライバーに装着された。お前は言ったよな。俺自身が使わなきゃ意味がないと」

 

「確かにお前自身が使おうとする意思がなければ、発現しないようになっている」

 

「なら何故だ!! 俺はあんなもん使いたくもないってのに勝手に動いたんだぞ!!? お前が何かしたんだろ!!?」

 

「お前は大きな間違いをしている。自分の意思とは関係なく? 少なくとも兆、お前自身がラストデイズの力を使いたいと願っていたはずだ」

 

「思ってるわけッ!! ──」

 

「カンナヅキとの戦いの中でラストデイズの事を少しでも考えたのだろう? これさえあればこの状況を一変できると。そう考えたはずだ」

 

「うっ…!!」

 

「図星か? まぁいい。今度は私の用に付き合ってもらうとしよう」

《ZERO》

 

「最初からそのつもりだったんだろ? その前にもう一つ教えろ」

《AFTER NEXT》

 

「言ってみろ」

《SETTING》

 

「お前そのフードの下は俺なんだよな」

《OVER SET》

 

「それ間違いだ。何故ならお前が私なのだからな…… 変身」

 

「その顔ぶん殴って整形させてやるッ!!! 変身ッッッ!!!」

 

 

 お互いに変身すると、トリガーはガーツウエスタンでテロスを撃つ。

 テロスは微動だにせずトリガーの接近を許し、側頭部に倍化させた強烈な蹴りを浴びせられる。

 だが、その攻撃全てはテロスの前では0へと変えり、何もかもが無意味になる。これからトリガーが何をしようが結果が変わる事はない。

 

 

「わかっているだろう。私にアフターネクストの力は通用しない」

 

 

 それでもトリガーは時間を消し飛ばして、テロスの死角から蹴りを放ったり、肩の上に乗って頭に銃弾を何発も撃ち込んだ。

 これだけやってもテロスにはダメージどころか、ほんの少しの傷すら付かない。

 

 

「いくらやっても無駄だ。早く使ったらどうだ? ラストガンナイフを…」

 

「使うわけないだろ!! あんなもん使わなくてもお前を倒す!!」

 

 

 やはりトリガーの攻撃はテロスの前では無力に終わる。

 まるで子供と遊ぶ大人のように、今のテロスとトリガーの戦いは側から見ればそう見えてしまうほど、天と地の差があるのだ。

 そしてテロスは突然ピタリと止まり、それに続いてトリガーも止まる。何故止まったのかはわからないが、彼の視線はセイブドライバーに向けられている。

 

 

「ほう…… にも関わらず、お前のセイブドライバーにラストガンナイフが差してあるんだ?」

 

「何を言って…… なッ!!?」

 

 

 トリガーのセイブドライバーにはラストガンナイフが差してあった。

 あの時のように思ってしまったのもそうだったが、トリガーが1番驚いたのはここにラストガンナイフがある事だったのだ。RIVERSの研究室に置いて来たはずだったが気がつけば差し込まれている。

 

 

「…… 何をしたッ!!」

 

「何もしていない。お前自身がそう願ったからラストガンナイフは応えた」

 

「くそっ…!! か、体が…!!」

 

「もう戻す事はできない。ラストガンナイフは既にお前とリンクしている。お前はこのまま記憶を奪い続けるだけの兵器となる。さぁ、本当の終焉がここに誕生する!!」

 

「ふざけんなよッッ…… なるわけないだろっ!!!!!」

 

「お前の運命は決まっている。それが真のトリガーの姿。お前のあるべき姿なのだ…」

 

 

 そして何もしていないはずのセイブドライバーの引き金が引かれ、トリガーの身体の装甲が割れていく。薄れゆく意識の中で最後に見たのは、テロスが不適に笑いながら闇へと消えていく姿だった。

 

 

「あ────」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「佳苗ッ!!! 兆が暴走していると聞いたが本当か!!?」

 

「え、えぇ… 今日の5時くらいに入ってきてたみたい…」

 

 

 連絡を受けた巧也は急いでRIVERSに駆け込んだ。話を聞けば兆がラストガンナイフを使用して変身し、すでにエリアAの4分の1が記憶を奪われてしまっていたようだった。

 その後、孝四郎と狩馬と永理がRIVERSに入ってきて、巧也は全員来たことを確認してからメンバーに作戦を命じる。

 

 

「これから兆を止めに向かう…… メンバーは俺と狩馬。そして永理で行く」

 

「え? 私ですか?」

 

「永理なら兆をどうにかできるかもしれない。最後の手段として頼みたい。俺と狩馬で戦闘を行うが、シワスとシモツキの幹部が邪魔に入る可能性がある。その時は狩馬に幹部の方の相手をしてもらうつもりだ」

 

「いいぜ。ただし巧也。俺がいない間に永理に傷が1つでもあったら許さねーからな?」

 

「あぁ、心配するな。必ず守る…… RIVERS出動だッ!!!」

 

 

 RIVERSを出た3人はパトカーに乗り込んで現場へと急行する。

 その間に巧也は運転しながら、ラストデイズの行動原理について考えていた。ラストデイズの情報を纏めると、まずこちらから戦意さえ見せなければ攻撃をせず、襲ってくると言っても殺すのではなく記憶だけ奪い取るという事。

 つまり朝まで兆の情報がなかったのは、そういう理由から街に被害が出ていなかった。だからこそ一刻も早く彼を止めなければならない。

 

 

「……っ! おい!! 巧也見ろ!!」

 

 

 パトカー内から街を見ると、街はいつも通りでどこも変わっていないように見えるが、人々はそこら中に倒れて異様な光景となっている。

 その奥には男性の頭を鷲掴みにして、記憶を奪い取っているトリガーの姿が見えた。

 巧也たちはパトカーから降りると、兆の元へと走って行く。するとトリガーはこちらに気づいたのか、或いは戦意を感じ取ったのか。どちらでもいいが、明らかな殺意を放ちながら近づいてきた。

 

 

「ここからが問題だ……」

《PRISON HUNDRED》《SET ARREST》

 

「気合入れて行くしかねーよ。いつも以上にな!!」

《WEEK START》

 

「「変身ッッッ!!!!!」」

 

《プリズンガンアクション!! ポリス・エマージェンシーコール!! ハンドレッドテンス!!》

《漆曜式!! ギアチェンジ!! スタート!! ニチ・ゲツ・カ・スイ・モク・キン・ドッ!! オールウィーク!!》

 

 

 2人は変身し終えるとトリガーに向かって一直線に駆け出す。

 そしてトリガーはシェリフを殴りに行くが、それをギリギリのところで回避して、その場でピタリと止めて見せた。彼も動こうとしているようだが、指先一つ動かせない状態だ。

 

 

「ホントすげーなそれ…」

 

「早くラストガンナイフを抜け!!!…… ぐっ!! 長時間抑えるのは… かなり厳しいッ…!!!」

 

「わかってるよ!!」

 

 

 ハントはラストガンナイフに手を掛けて、力の限りを尽くして抜こうとしたが、ガッチリと嵌まっておりビクともしない。

 それもそのはずである。よく見ると、ラストガンナイフから赤黒いコードが何本も伸びており、セイブドライバーに繋がってほぼ一体化していると言ってもいい状態であった。

 

 

「む、無理だッ!! セイブドライバーと一体化して抜くどころの話しじゃなくなってるぞ!!」

 

「一体化だと!!?」

 

「テロスへの最終手段として壊そうに壊せなかったが…… こうなったら仕方ねぇ!! ぶっ壊すッ!!!」

 

「… わかった!! やれ狩馬ッ!!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

 今までにラストガンナイフを破壊しようと何度も考えたが、結局テロスへの対抗策がこの一本しかなく、こうして持ち越した結果が今回の暴走を招いた。だからこそ今すぐに破壊した方が、こちらとしてはデメリットになってしまうけれど、兆を助けて市民を守るにはこれしか方法がない。

 ハントはギアナイフを押し込んで、拳に全エネルギーを集中させて真っ直ぐに、セイブドライバー諸共ラストガンナイフをぶん殴る。

 

 

「ぶっ壊れろォォォォォォッッッ!!!」

 

 

 その時バキッという音が聞こえ、ついにラストガンナイフは破壊され、トリガーの変身が解除される。そう思っていた。

 しかしシェリフは何かがおかしいことに気づく。何故ならトリガーは一歩も動いておらず、ハントの殴った拳が震えているのだ。流石に硬かったから痛がっているだけのかと思ったが、まさにその思った通りであり予想外の光景があった。

 ハントの拳の装甲にヒビが入り、ラストガンナイフ及びセイブドライバーには全く傷がついていないのだ。

 

 

「うぐっ……!! 嘘だろッ…!!」

 

「狩馬ッ!!!」

 

 

 そしてハントは永理を見ると、手を大きく振って後退しろという合図を送る。もうどうする事もできないと悟ったのだろうか。

 必死に抑えていたシェリフだったが、ついに限界が来てしまい、トリガーがその場から動き出してしまった。トリガーは2人を蹴り飛ばし、ガーツとライトニングウエスタンを構えて発砲しようとする。

 

 

「やはり無理か…… 狩馬!! 永理!! ここは一旦引くぞ!!」

 

「ですが課長ッ…!!」

 

「命令だ!!! 今の状態では危険過ぎる!!! 急げッ!!!」

 

 

 シェリフはセイブドライバーの引き金を引いて蹴りによる一撃を浴びせてトリガーを大きく吹き飛ばす。

 そうした後に狩馬は変身を解いてパトカーに乗り、永理も続いてそれに乗ると同時に走らせる。永理は後ろを振り向いてシェリフの遠く離れていく背中を見守り続けた。

 

 

「まず市民を安全な場所に運ばなければ……」

 

 

 残ったシェリフは市民を抱えて場所を移動し始めたが、すぐにトリガーが起き上がり、彼に向かって銃口を2つ向けてきた。

 手を挙げて抵抗しない意思を見せても、今の彼にとっては関係のない事。だからやるつもりもないし、かと言って逃げるつもりもない。

 

 

「お前は俺に銃を向けるような奴じゃなかっただろ? 兆?」

 

「…………」

 

「… と、言っても今のお前じゃなにも答えてくれないよな。わかってる…… かかってこい」

 

 

 シェリフは腰を深く落として、トリガーの攻撃に備え、ジャッジメントエンターンを取り出して構える。

 それからトリガーが発砲すると共に、シェリフも弾丸を放って相殺しながら彼へと向かって走り出す。トリガーの何を見つめて、何を思っているのかもわからないほど、永遠の闇が見える瞳にシェリフが移ると、目の奥がほんの僅かに赤く光り始める。

 

 

「ここはいったい… どこなんだ……?」

 

 

兆は音も光も見えぬ真っ暗な場所に1人ポツンと佇んでいた──。




ラストガンナイフが兆と一体化…?
そんな彼を止めるためにシェリフは1人立ち向かいます。

次回、第39劇「鍵」

次回もよろしくお願いします!!


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第39劇「鍵」

皆さんご無沙汰しております。

前回、悪夢を見たトリガーは深夜に散歩に出かけ、行き着いた公園でテロスと出会う。そして場所を移して戦うもテロスの圧倒的力を前にラストガンナイフを強く思ってしまった。強制的に変身した後に、現場へと巧也と狩馬が止めに来たのだが、完全にラストガンナイフと一体化してしまった彼をどうすることもできない。そう悟った巧也は1人トリガーに立ち向かう……

それではどうぞご覧ください。


── 声が聞こえる。

 兆は見渡す限りの闇の中で、1人歩く。もうどのくらい歩いてるのかすら忘れるほど、途方もない道をずっと進み続けている。次第に道なんかないんじゃないかと思ってしまうようになってきた。

 

 

「この声は…… 巧也さんか? 」

 

 

 その声は兆を呼んではいるのだが、他にも苦痛の声が聞こえてきた。

 そして自分の身体で感じる。自分が巧也に対して攻撃を行っているんだと、何もない暗闇の中でもはっきりとわかるようになってきている。

 兆がそう認識した時、目の前にシェリフを殴っているトリガーの手が見えた。

 

 

「(な、何だこれはッ…!!!?)」

 

「目を覚ませ兆!!!」

 

 

 トリガーを何度も止め、その度にシェリフは兆の名を叫ぶ。

 名前を呼ばれているから答えようと思うが、声は出ず、自身の攻撃を止めようにも身体が言うことを聞かない。自分の身体であるのに言うことを聞かないというのはおかしいところではあるが、兆からすれば強制的に装着された機械で操られている感覚なのだ。

 兆の意思とは関係なく、シェリフの顔面を捉えた。

 

 

「(こ、巧也さん!!)」

 

 

 しかしシェリフは殴られたは殴られたがそれを受け流し、トリガーの顔面にカウンターで強力な一撃を叩き込んだ。

 予想もしなかったであろう返しをまともに喰らったトリガーは、体勢を崩して片膝を着いた。それも一瞬のことであり、人間で言うのであれば多少立ちくらみがした程度だろう。すぐに立ち上がってネクストの力でシェリフに一瞬にして近づく。

 

 

「来たか」

 

 

 トリガーの蹴りを躱したシェリフは冷静に隙を見つけ、脚に触れてからその場でピタリと止めて見せる。それからシェリフはその手に更に力を込めると、ラストデイズ自体の能力を停止させ、完全に攻撃手段を己の肉体のみにさせたのだ。

 

 

「なるほど。停止させるのは1つだけではなく、触れたものは何であっても無力化するらしいな…… 例えそれがラストデイズであっても!!!」

 

 

 ここに来てプリズンハンドレッドの能力の範囲が出てきたが、いくら停止させようともその圧倒的パワーを抑えているわけではない。

 そうしているうちにトリガーの拘束は解かれ、ガーツウエスタンでシェリフを近距離で撃ち放つ。

 

 

「うぐッ…!!」

 

「(何で意識はあるのに動けない!! テロスはこれを狙っていたってのかよ!!)」

 

 

 トリガーは後退したシェリフに続けてガーツウエスタンを撃ち放ち、シェリフはそれをジャッジメントエンターンを回転させて剣にし、全て斬り捌いて耐えている。

 

 

「(能力を止めているうちにベルトを破壊してくれ!! 巧也さん!!)」

 

 

 兆の想いが通じたのか、シェリフが元々考えていたのか。明らかに後者であることは確実だが、それでもやるべきことに対する気持ちは同じである。

 どちらにせよシェリフはセイブドライバーの引き金を引いてトリガーに向かって走り出す。

 トリガーに縄が巻かれ、身動きを取れなくさせ、シェリフは彼のセイブドライバーに向かって突き出すように蹴りを放つ。

 

 

「これで… 最後だッ!!!」

 

 

 セイブドライバーにシェリフからの強烈な一撃が叩き込まれる。

 バチバチという音を立てて、トリガーのドライバーとラストガンナイフにヒビが入り始める。そのヒビが入った隙間から記憶が抜け出て、トリガー自身も苦しんでいるような素振りを見せている。

 

 

「何て硬さだッ…… しかし、あと少しで壊せる!!!」

 

 

 そしてついにヒビが大きく入り、あと一歩のところまで割っていく。このまま押し切ろうと、更に全身に力を入れ、最後の一撃を喰らわせようとする。

 

 

「(よし!! このまま…… なんだ? あれ……ッ!!!? 巧也さん!! 後ろだ!! 後ろを見ろッ!!!)」

 

 

 その瞬間、シェリフの右側の脇腹に何者かの蹴りがめり込み、防御もできないまま吹き飛んでしまう。

 そしてそれはトリガーのドライバーに触れると、せっかく破壊できる手前まで持っていたのに一瞬にして直ってしまった。

 

 

「テロス…ッ!!!」

 

「そのプリズンハンドレッド…… まさか人間がこれほどまでの力を手に入れようなどとは予想外だった。しかし、この力を破壊されるわけにはいかない」

 

「なら、お前を倒して兆を救うだけだな」

 

「お前という男がそう言うか…… だが、私とトリガーの2人を相手にどうしようと言う?」

 

「お前の言うことは聞かないんじゃなかったか?」

 

「そうだったな… ここまで繋がりが完璧ならば、もう二度と元に戻ることはない。こいつはただの操り人形…… 私の思うがままに動かす事ができる」

 

「なに…? 元に戻らないだと? 今は冗談を聞く気はないぞ!!!」

 

 

 テロスは不敵に笑い、セイブドライバーを掴んだまま、更に手から禍々しいエネルギーを入れていく。トリガーはテロスに攻撃をしようとしていたが、徐々に手が垂れていき、最終的には棒立ちのまま動かなくなってしまった。

 

 

「お前ッ…!!!」

 

「くくくっ… これで終焉のトリガーは完全となった。ラストガンナイフと兆は互いを求めた結果、この姿と力を手に入れたのだ。それが運命。運命に逆らうことは決してできない!! 兆は我が元へと帰った!!」

 

「兆…… なら、無理やりにでもお前の呪縛から解放してやる!!!」

 

 

 そしてシェリフはジャッジメントエンターンを持って2人に向かって駆け出し、テロスはそれに合わせて手を軽く挙げると、トリガーがシェリフに向かって走り出した。

 その光景がはっきりと見えている兆は、幾度となく叫んで必死に抵抗を行った。そんな事は最早意味などなく、シェリフの無謀とも言える戦いが始まる──。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 RIVERSに戻った永理と狩馬はそのまま待機することにした。理由としては前のようにこの状況を使って、警視庁が襲われないかという可能性を考慮したのだ。

 狩馬は机を人差し指でトントン叩き落ち着きがなく、他のメンバーも彼同様に落ち着きがない様子だ。ラストデイズの恐ろしさは皆知っている。巧也がただ1人、あそこに残っているとなれば誰しもがそうなってもおかしくはない。

 

 

「…… 兄さん。課長は大丈夫かな?」

 

「安心しろ永理。あいつは簡単にやられるような奴じゃねーよ」

 

「うん…」

 

「兆が心配なんだろ? マスクの下でどーせ俺たちのこと笑ってる。いずれ飽きて帰ってくる」

 

「…… ごめん。私ちょっと出かける!」

 

「は? おい待て永理!!?」

 

 

 すると、永理は何かを決めたのかRIVERSから出て行ってしまった。

 狩馬はその後を追おうとしたが、佳苗が急いで止めに入る。兆の元へ向かっているはずだから行かせろと言う狩馬に、それは違うから安心しろと佳苗は言う。

 

 

「ならどこへ向かったって言うんだ佳苗ちゃん!!?」

 

「きっとBAR TRIGGERよ。いいからあなたはここにいなさい」

 

「マスターに会いに行ったのか…? 確かにテロスに1番信頼されてるって言ってもよ。それでなにがわかるんだよ」

 

「それはわからないけど… 永理ちゃんは自分なりに何かしたいのよ。鍵と呼ばれ、特別扱いされて、でも何もできない。兆くんに助けてもらってばっかりだから少しの可能性があるなら、それにしがみついたでも彼を助けてあげたい… さすが兄妹って感じ。大切な人のためならすぐ行動しちゃう所」

 

「… そうか。ま、まぁ悪い気はしないがちょっと待て。大切な人ってそれどういう……」

 

「さ、私たちは巧也の帰りを待つわよ。まだ巧也の反応は消えて…… あら? この反応ッ!!?───」

 

 

── それから永理はBAR TRIGGERに足を運んだ。

 この状況をどうにかせねばならない。そう考えていたらもうこの場所にしか対処法をわかる人はいないだろうと、必然的にここへと辿り着いた。

 バーの扉を開けようとしたが、なんとCLOSEという札が掛けてあり、扉を叩いても誰からも返ってこない。運が悪い事にマスターは留守だった。

 

 

「そんな…… 私はどうすればいいの…?」

 

 

 しかし留守であるなら、兆を止めるために巧也の元にいるのかもしれない。

 永理はすぐに切り替えて、次に何をすればいいのかを判断する。確かに危険ではあるが、自分を死なせない為だったらテロスが出てくるだろうと考えた。

 

 

「私だってやらなきゃ」

 

 

 そして永理はバオを呼び出して、兆の元へと走らせた。

 兄は全力で止める事だろう。兄じゃなかったとしても皆止めるはずだ。だけど今やらなければ、大事なものが全て消えてしまいそうに思う。

 永理は更にスピードを上げさせ、まるで操り人形のように、巧みに乗りこなしながら彼らの元への急いだ。

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「お前もできれば殺したくはない。人間として最高の記憶エネルギー源がなくなってしまうからな」

 

「そういえば俺も糧だったな……」

 

「ふっ、後は任せたぞムツキ。殺しはするな。だが、立てないほどには痛めつけておけ」

 

 

 そう言ってテロスは消え、残ったのはトリガーとムツキのみ。

 信頼されているというのは本当らしいが、彼であってもトリガーを止められるのかどうかだ。

 今のトリガーはテロスの命令でシェリフを殺す一歩手前まで痛ぶるつもりだろう。ムツキの方はわからないが、喋りはしないが、とにかくなんとかしようと考えているはずだ。

 

 

「ムツキ…… どうするつもりだ?」

 

「………」

 

 

 シェリフは先ほどからなんとか耐えていたが、やはり2人相手であり、能力を止めてもすぐにテロスが元に戻してしまう為、ずっと苦戦を強いられていた。彼の疲労も限界が来ていることだろう。

 それをわかっているのかムツキはトリガーが飛び出そうとすると、肩を掴んで止めて見せた。それから腕をブレードのような形状へと変化させて、トリガーの前へと突き出し、先へ進ませないようにした。

 

 

「わかっての通り俺もこいつは止められない。巧也もかなりの疲労が来ているはずだ」

 

「マスターだったか? 本名は聞いていないからそう呼ばせてもらう…… 兆をどうしたら助けられる」

 

「ここまで来るとどうすることもできない。兆の意思は完全にラストガンナイフに持っていかれた。つまりこのラストガンナイフこそが兆なんだ」

 

「なんだとっ…!!? そのことが本当なら破壊したら…!!!」

 

「……… 残念だが、破壊すれば彼自身を死ぬ事になる…」

 

「馬鹿なッ!!!」

 

 

 兆は全て聞こえていたし感じ取れていた。だからこそ破壊してくれと強く願った。死にたいというわけではないが、もう方法がそれ一つだけで、元の自分に戻れないのならば、いっその事ここで倒された方がみんなを守ることができるからだ。

 そんなことを思っていたら、遠くの方から兆がよく知る馬が見えてきた。

 すぐにバオだと気づき、その背に跨っているのは永理である。彼女はシェリフたちの元へ着くと、トリガーの前へと立ちはだかる。

 

 

「マスターさん… 私は鍵と言われていますが、その鍵で兆さんを解放してあげられないんですか?」

 

「…… 鍵は鍵でも、お前は次元の扉を開く為の鍵だ。言い方を変えれば器なんだ。器が兆を解放することはできない。だからもう兆は助かる道は…ない…」

 

「なら、器として私が兆さんを受け止めて見せます!! マスターさん!! 何か方法はないんですか!!?」

 

「何度も言うがないんだ。もうどうすることも──」

 

「あなたがこの世界に来た理由はテロスを倒す為…… それなら知っているはずです。いや考えていたはずです。ここまで追いかけてきた成果をあなたは既に持っているんですよね?」

 

「…っ!!…… まさかそれをわかってここへ…… いいだろう。ならこれを君に託す」

 

 

 ムツキは四角いキューブと兆の帽子を取り出し、それを永理に手渡す。

 それからトリガーを押さえつけながら、黒い霧を出し始め、その中にトリガーを入れていく。

 

 

「ここは一旦引く。その帽子は君が持っていてくれ… そしてキューブだが元の世界にいた時からラストデイズの制御装置として開発していたものだ。そのキューブの中のエネルギーは無限に回転し続けている。それをラストガンナイフに内臓しようしたが開発に手間取った結果がこれだ…… もう間に合わないのはわかってはいるが、永理という希望にかけてみる事にする」

 

 

 それからムツキはトリガーを連れて何処かへと姿を消した。

 永理はもらった小さなキューブをポケットにしまい、シェリフの元へと駆け寄る。だいぶ息は荒いが変身を解いた後でも目立った傷は見られない。

 

 

「今のキューブの話は聞いた… 孝四郎に頼んでフィガンナイフ辺りを開発してもらおう」

 

「はい!!…… 絶対に兆さんを助けましょう!!」

 

「永理……」

 

 

 永理の目はとても真っ直ぐしている。そこ知らぬ覚悟を決めたのだろう。今の彼女に不安はない。

 そして永理は兆の帽子を被り、巧也と共にバオに乗ってRIVERSへと戻っていった──。

 

─── その光景を建物の上からジッと見つめていた2人の影がそこにある。

 1人は兄と呼び、もう1人は弟と呼ぶ。そう、幹部のシワスとシモツキだ。

 

 

「兄さん。すごいこと聞いたね」

 

「前からムツキの行動は怪しく思っていたが…… まさか奴らの仲間でボスに歯向かおうとしているとはな」

 

「早速ボスに報告しよう。そしたら奴の信頼はガタ落ちで兄さんが右腕だよ!!」

 

「まぁ待て、まずは奴とトリガーの行方を追う。ついて来いシモツキ」

 

「わかったよ兄さん」

 

 

 そうして2人はムツキの真相を完全なものにする為に、闇へと消えた後を追う。

 一方、RIVERSに到着した永理と巧也は早速、孝四郎にラストデイズの制御装置を開発してもらう事にするが……。

 動き出したそれぞれの思惑。皆、自分のたちが思う正解へと進み始めた───。




終わり!!閉廷!!以上!!
マスターついにバレてしまった!!
兆は元に戻れるのか!!?

次回、第40劇「永遠の理」

次回もよろしくお願いします!!


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第40劇「永遠の理」

皆さんご無沙汰しております。
40話目です。もうすんごい終盤ですよ。

前回、ラストガンナイフを破壊をテロスに阻止されてしまい、兆を救出することができない…… と、思われたが、ムツキから兆はラストガンナイフと一体化しており、破壊すれば兆自身も死んでしまうと聞かされる。永理はそんな彼を救いたいが為にムツキに懇願し制御装置のキューブを手に入れた。その頃、ムツキの裏を知ったシワスとシモツキは彼を追う───

それではどうぞご覧ください。


 誰もが知る街の誰も知らない場所がある。

 そこは広いスペースと椅子が1つあり、他は何もなく、いるとしたらトリガーとムツキのみだ。

 ムツキは永理にキューブを渡した後、トリガーをしばらく閉じ込めておく為にここへと運んできた。勝手に動く心配はないのかという話だが、それについては心配はいらない。

 ここに誰か来るのなら話は別だけれど、テロスからトリガーに課せられたものは記憶を奪うという事と、巧也を痛めつけるという事。そして攻撃されれば反撃をする。だからこうして誰とも会わさず、離しておけばなんら問題はないだろう。

 

 

「大丈夫か兆?…… と言っても反応はできないか。悪く言えば今のお前は人形なんだよな」

 

 

 兆は意識はあり、この全ての光景を見てきたが、どうすることもできずにただ誰かを傷つけ、そして記憶を奪うだけのテロスの人形として動いているのが何よりも悔しかった。

 そんなことを知るはずもないムツキは、椅子に座って優しく兆に語りかける。

 

 

「辛いか? 苦しいか?… 安心しろ。俺がなんとかしてやるからな。俺だけじゃない。市民を守る為というのもそうだが、みんなお前を助けようとそれぞれが必死に考えて行動している」

 

 

 その言葉を聞くと、兆は永理の目を思い出す。彼女の目は真っ直ぐに自分を見つめ、その瞳の奥からは今までにない彼女自身の覚悟を感じた。

 巧也の時もそうだった。トリガーの真っ黒な瞳の中をジッと見つめ、兆という男を闇の中から見ていてくれた。

 

 

「だからもう少しだけ時間をくれ。必ずラストガンナイフから解放してやるか─── 誰だ?」

 

 

 別に音が聞こえたわけではないが、ムツキは何者かの気配を感じ取り、右腕をブレードに変化させて戦闘態勢に入る。

 闇の中から出てきたのは、シワスとシモツキであり、2人とも既に武器を構えている。この状況から既に察しはつくし、2人からは明らかな戦意が感じられる。

 

 

「シワスか。何の用だ?」

 

「わかっているだろう。この裏切り者が… ボスに歯向かい、貴様ただで済むと思うな」

 

「わざわざそれを言いに来たのか? 元々俺は仲間になった覚えはない。いつ死んでもいいと思っている。俺が犠牲にしてきた数に比べれば、俺1人死んだ所で償えるものではない。だが、テロスを倒してお前たち幹部も潰すまでは死ぬわけにはいかない」

 

「貴様ッ…!! 何が右腕だ!! いいだろう。ボスに代わって今、貴様をここで殺してくれる!!」

 

 

 シワスは矢を放って分散させると、それに続いてシモツキが駒のように回転しながらムツキに襲いかかる。

 まずムツキはシモツキの足元を狙って態勢を崩させ、腕のブレードを盾にしながらシワスの矢を受けながら近づき、左腕を槍のように変化させて腹を突く。

 

 

「は、速い…!!?」

 

 

 突きの一撃でシワスは後方へと吹き飛んで壁に激突する。

 それからシモツキは体制を立て直し、高速で駆け寄って、両腕のブレードをクロスさせてムツキの首を撥ねようとした。

 しかしムツキはそれを読んでおり、両手を元の状態に戻し、その刃を指だけの力で抑えた。引き抜こうとするシモツキであったが、指だけの筈なのに、まるでプレス機に挟まれてるんじゃないかと思うくらい硬い。

 

 

「やめておけ。お前たちでは俺には勝てない」

 

「に、兄さんッ!!!」

 

「くっ……!! シモツキィ!! そのままでいい!!そのままそいつを抑えろ!!!」

 

 

 そう言い放ったシワスはムツキに向かって矢を放つ。

 何をするかと思えばと、シモツキを矢の方に投げ飛ばし、右腕を槍にして突による攻撃で挟み込もうとしたが、矢はシモツキの手前で8方向に別れる。

 

 

「詰めが甘いなシワス」

 

「甘いのは貴様の方だ… ムツキ!!!」

 

「なんだとっ……!!? こ、これは…!!」

 

 

 シワスの矢はムツキに向かうのではなく、その後ろへと飛んでいく。ムツキの後ろ… それはトリガーがいる場所。攻撃が当たれば、その攻撃したものへ反撃をしに行く。つまりここで暴走する事により、また外へとトリガーが放たれるという事になる。

 止めようと思ったムツキであったが、矢のスピードに追いつく事はできない。そして思っていた通り、矢はトリガーに命中し、終焉はまた再始動する。

 

 

「しまった…!!」

 

 

 ここまでトリガーを移動させたムツキだったが、移動できたのもシェリフの力のお陰で止められていたというのがあり、能力が解放された今の状態では止める事は不可能に近い。

 シワスとシモツキは最初からこれが狙いだったのか、トリガーが動き出した事を確認すると闇へと消えて行く。

 残されたムツキはトリガーを止めようと、彼を止めようと抑えてみるが無意味。それからトリガーはムツキの肩を掴み、思いっきり壁に投げ飛ばして穴を開ける。

 

 

「ま、待てッ!!! 兆ィ!!!」

 

 

 その時トリガーのセイブドライバーは更に浸食が進み、既にラストガンナイフがドライバーに元から付いていたんじゃないかと思うほど見た目が変わっていた───。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 RIVERSでは孝四郎に頼んで、例のキューブをどうにかできないものかと研究を進めているが、今のところ彼の口からは不可能としか言われない。

 巧也はそう言われる度に額に手を当て、大きなため息を吐く。彼も必死になってやってくれているのだが、これをフィガンナイフに組み込む、もしくは改造する事はできないとの事だった。

 

 

「孝四郎…… やはり無理か?」

 

「何度も言いますけど、こればっかりはどれだけ解析して考えても不可能です。確かにこのキューブは組み込もうと思えば出来ます。ですけど、ラストガンナイフの制御として造られてるものですから、中の回転している強力なエネルギーに耐えられる素材がないんです。このキューブと同じ質の物かラストガンナイフと同じ物じゃないと……」

 

「ぐっ…… どうすればいいんだ!!」

 

 

 巧也は少しの希望が崩れてしまった事に、悔しさで机を殴る。

 その後、研究室から出て自分の席へ着くと狩馬がお茶が入った湯飲みを持ってきた。きっと彼なりの優しさなのだろう。巧也はそれをありがたくもらう。

 

 

「味は期待するなよ。永理みたいにしっかりやってねーからよ」

 

「構わない…」

 

「…… これで打つ手なしか。どうするよ? 俺じゃあラストデイズと正面切ってやり合えねーぞ? お前があいつとタイマンになるしかない…」

 

「もう覚悟はできている。あいつを…… 化物にさせてたまるか……」

 

 

 すると突然、警報がRIVERSに響き渡る。

 巧也は佳苗に確認を取ると、彼女は大きく息を吸ってからトリガーが出現したと伝えた。噂をすればとなるが、それは同時にムツキに何かあったと捉えてもいい。

 彼の方は心配だが、今はトリガーを止めるしかない。

 

 

「俺がトリガーの相手をする。狩馬は周りを頼んだ」

 

「任せろよ!!」

 

 

 2人は急いでRIVERSから出て行くと、その後すぐに永理が入ってきた。

 彼女は特に何も言わず、真っ直ぐに研究室へと向かい、孝四郎の前まで来る。それから永理は孝四郎にキューブを貸してくれと頼み込んだ。

 

 

「キューブを…? 一体どうするつもりなんですか?」

 

「私がそれを持って兆さんに近づきます。そしてセイブドライバーに当ててみようと思うんです」

 

「え、えぇ!!? 何を言ってるんですか!!? そんな危険な事させれるわけないじゃないですか!!」

 

「前に私は兆さんをラストガンナイフから一度だけ解放したことがあります。あの時のようになるのかはわかりませんが、そのキューブでなら何かできそうな気がするんです!!」

 

「で、でも……」

 

 

 孝四郎が困っていると、研究室の扉が開かれて佳苗が入り込んできた。

 そして彼女も永理の意見に賛成だといい、孝四郎からキューブを取り上げると、永理に手渡す。

 永理は礼を言ってから、トリガーの現場へと向かい始める。

 

 

「ど、どうして渡したりなんかしたんですか!! 永理さんが死んでしまうかもしれないんですよ!!」

 

「えぇ、ただの自殺行為だと思うわ……」

 

「なら何故…」

 

「信じてみたいのよ。あの子を… ほんのちょっぴりの希望にね」

 

「まぁそうですね… それしかないですから…… 僕も信じて見ます。例えそれが化学じゃ証明できないものだとしても──」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「兆ッ!!!」

 

「(巧也さん…!!)」

 

 

 現場へ着いた巧也はその光景を見て固まった。

 トリガーを中心にして、街はどこもかしこも崩れ、ビルだったそこは瓦礫の山となり、記憶を取られたであろう人々が転がっている。

 巧也は街を崩壊させたトリガーではなく、ここまでして計画を進めるテロスに底知れぬ怒りが込み上げてきた。

 セイブドライバーへプリズンハンドレッドを差し込んで、トリガーの元へ走りながら引き金を引く。

 

 

《プリズンガンアクション!! ポリス・エマージェンシーコール!! ハンドレッドテンス!!》

「必ず止めてやる!!」

 

「(何で意識だけあるんだ!! 何なんだよこれ!!)」

 

 

 兆は何故か意識だけははっきりとしていた。声も聞こえるし、触られている感覚もある。目だって見える。なのに身体だけは自由に動かせない。この果てしない暗闇からも抜け出せない。

 そして兆の意思とは関係なく、シェリフを蹴り飛ばしてガーツウエスタンで追撃する。

 

 

「ぐはぁッ…!!?」

 

「(こ、巧也さん!!!… なんでだよ!! なんで動かないんだ!!)」

 

 

 それからトリガーはネクストで一気に近づきシェリフの頭を掴み上げ地面に叩きつける。ただやられているわけにはいかない。

 シェリフは地面にもう一度叩きつけられるギリギリで彼の動きを止め、くるりと回って、その勢いのままに側頭部に蹴り放つ。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 無理やり動き出そうとする度に動きを止め、その度に何度も殴り、何度も蹴り飛ばす。だが、そんな事に意味などないのはシェリフ自身が1番よくわかっている。セイブドライバーを破壊すれば兆が死んでしまう。そんな事を考えると破壊しようにもできない。だからこそ意味のない攻撃ばかりしている。

 何度も名前を叫び続けてきたシェリフだったが、やがて疲労が訪れる。

 

 

「ハァ… ハァ……」

 

 

 それでもトリガーは何事もなかったかのように動き始め、再びシェリフへと近づいてきた。覚悟を決めてドライバーを破壊するしかない。

 そう思った時、トリガーの動きがピタリと止まる。急に何故止まったのかと近づこうとしたが、その理由はすぐにわかった。

 トリガーの後ろからスッと変身したテロスが姿を現したのだ。

 

 

「テ、テロスッ…!!」

 

「無駄だと分かっているのに何故こいつを助けようと必死になる? やはり人間はわからない。一体何故だ?」

 

「兆は俺たちの仲間だ。仲間を助けようと必死になるのが人だ。お前には一生わからない事だがな」

 

「対処法もなしに何を根拠に言うのだろうか… まぁいい。このエリアAにもう用はない。次のエリアへ向かうとしよう。そこで記憶を吸収し、その後また別のエリアへ…… 最終的には世界の記憶全てを私の手に収める。そして開くのだ。次元の扉をな!!」

 

「そんな事… させるわけがないだろうッ!!!」

 

「なら、またこの2人を相手に戦うか? いいだろう。今度は私が直々にお前を立ち上がれないほど痛めつけてやる」

 

「やってみろッ!!!!」

 

 

 テロスとシェリフはお互いにドライバーの引き金を引いて、天高く舞い上がる。

 そして2人は脚にエネルギーを纏ってぶつかり合う。その衝撃は地面にクレーターができるほど大きく、シェリフの装甲にヒビが入り始める。

 咆哮をあげながら脚に力を入れるシェリフであったが、テロスも更に力を入れた瞬間、シェリフの脚は弾かれて、腹部に彼のキックがめり込んだ。後方へと大きく吹き飛び、地面をえぐりながら建物にぶつかって停止する。それと同時に変身が解除されてしまう。

 テロスは着地し、トリガーの元へとゆっくり戻っていく。

 

 

「(そ、そんなッ…!!!)」

 

「くくくっ… 私に本気を出させたか。それは褒めてやろう。しかし、私を倒すほどの力はもったいなかったようだがな」

 

「(見てるだけなのか… 俺は……!!!)」

 

「兆よ。次のエリアへ移るぞ。お前はこれから世界に終焉を齎さなければならない…… 本当によくできた私のクローンだ。私に忠実な人形としてよく育ってくれた… 感謝する」

 

「(結局俺は終焉のトリガーだった…… くそっ!!! 永理に約束したのに… ガンホーレのおっちゃんの為にやってやるって言ったのに……!!! ごめんみんな…… やっぱり俺は運命に逆らえなかったんだ───)」

 

 

 そう思う兆に暗闇からも無数の手が伸び始め、彼を包み込み始める。どうやら今まで抵抗する意思が薄れたせいで、ラストガンナイフに完全に取り込まれようとしているようだ。

 すぐに剥がそうとしたが、なぜか身体に力が入らず、徐々に飲み込まれて行く。もうダメなのか… と諦めかけていた。

 すると暗闇の中から声が聞こえる。女性の声だ。とても聞き覚えがあり、懐かしく感じる。

 

 

「兆さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

 

「(この声は…… ッ!! 永理か!!?)」

 

 

 薄れゆく意識の中で永理の姿が見える。彼女はこちらに向かって走ってきていた。

 そしてテロスを横切り、トリガーの元へと一直線にやってきた。それからセイブドライバーにキューブを当てながら、必死に兆の名前を叫ぶ。

 テロスはその行動の意味がわからず、やがて馬鹿らしく思えて笑い始めた。

 

 

「鍵よ。なにをしている? そんな事をしてどうなると言う?」

 

「兆さんなら答えてくれます!! あなたの… ラストガンナイフの呪縛なんて兆さんはすぐにでも打ち砕いて見せます!!」

 

「ハッハッハッハッ!! それはいい。面白い冗談だ…」

 

 

 すると永理はトリガーの胸に頭とキューブを握り締めながら当てて目を瞑る。

 それから不思議なことにトリガーは微動だにしなくなった。テロスの命令で動かないようにはなっているが、それとはまた違い、彼女を見つめている。

 

 

「こ、ここは……」

 

 

 永理がいたのは何もない真っ暗な空間だった。辺りを見渡していると、奥の方に誰かがいることに気づく。

 それから近づいてみると、それが兆である事がわかったが、無数の手に掴まれて、徐々に闇の中へと埋め込まれていっている。

 

 

「き、兆さん!!?」

 

「よう… 永理……」

 

「今剥がしますから待っていてくださいね!!」

 

「無理だ… 俺はこのラストガンナイフに負けた… テロスに負けちまったんだ…… だからもう俺は帰れなくなる」

 

「なにを言ってるんですか!! 諦めないでください!! 私はあなたを連れて帰る為にここに来たんです。一緒に帰れなかったら私泣きますからね!! 女の子泣かせるなんて最低ですよ!!」

 

「…… へっ、トリガーさんが女を泣かせるのは… 確かにダメだな」

 

「なら、早くここから出ましょう!!」

 

「…… わかってる。だけど力が入らないんだよ」

 

 

 更にズブズブと兆の身体は闇の中へと沈んでいっている。

 永理は彼の手を掴んで引っ張り出そうとするが、まるでびくともしない。もう既に下半身は呑み込まれてしまい、残る上半身もズブズブと沈む。

 それでも彼女は手を離さず掴み続ける。

 

 

「これ以上掴んでたら永理まで呑まれるぞ…!!」

 

「絶対離しません!! 私はあなたと帰るんです!!」

 

「…… 世界はもう終わるんだよ… 俺のせいで… お前は早く逃げてくれ。意識がありながらお前を巻き込むのは嫌なんだ!!」

 

「終わらせません!! だって兆さんが守ってくれます!!」

 

「もう俺は守れない!! 俺は終焉のトリガーになる運命なんだ!!」

 

「あなたは平和のトリガーです!!!」

 

「……ッ!!」

 

「言ってたじゃないですか。俺は平和のトリガーになるって…… なら見せてくださいよ!!! 嘘なんかつかないで実現させてください!!! 今日のあなたも勝利の日で終わらさせてください!!!」

 

「なんで…なんでそこまで俺を信じてくれるんだッ───!!」

 

「あなたが好きだからですッ!!! こんな所で負けて欲しくない!!! だから…… だから私と一緒に帰りましょう…… 兆さんッ!!!!!」

 

 

 その言葉を聞き、兆は彼女の手を振り払うと闇の中へと消える。

 それからトリガーは永理を突き飛ばすと、身体のあちこちから赤黒い霧が出始め、急に苦しみ出す。

 テロスはそれを見ると、予想外の光景に少々焦りを見せるが、トリガー頭を掴んで再び落ち着かせようと試みる。

 

 

「なにをしたか知らんが、無駄だったようだな」

 

 

 テロスが手を離すと、トリガーはまた棒立ちの状態となり動かなくなってしまった。それからテロスは永理から余分な記憶を奪い取れと、トリガーに命令を出して彼女に近づかせる。

 トリガーの手は永理の頭に手を掛ける。それは記憶を奪い取る為の行動であり、永理もギュッと目を瞑り、必死に兆を信じて、戻ってくる事を願った。

 それから驚く事に、トリガーは永理が被っていた帽子を外し、自分の頭に被って見せたではないか。

 

 

「ど、どういうことだ…? 私はその命令はしていない筈だ…!!」

 

 

 永理もなにが起こったのかわからないまま、トリガーはテロスに近づいて、地面が割れるほど踏み込んで、渾身の力でテロスの顔面を殴り飛ばした。

 そしてトリガーの変身が解け、ラストガンナイフが自然と抜ける。それをキャッチして、兆は永理の方を向いて手を銃の形にして帽子をクイッと上げた。

 

 

「あ、あぁ……!!」

 

「── 待たせたな永理。随分と怖い思いさせたな」

 

「き、兆さん…… 兆さぁぁぁぁん!!」

 

 

 永理は兆に思いっきり抱きついて大泣きし始めた。かなり怖かったのだろうか、安心した途端、腰が抜けてすぐに地面に座ってしまった。

 そしてテロスはありえない光景を目の当たりにして茫然と立ち尽くす。

 

 

「なにが起こった!! お前たち一体なにをした!!」

 

「何をしたか? さぁな、説明しろと言われたら俺もできないが…… 少なくともお前がわからないほどの奇跡が起こったってことだぜ!!」

 

「バカな… あり得ない!!」

 

「永理…… おかげでほんとに助かったぜ。最後まで俺を信じてくれてありがとな」

 

 

 そうして兆は永理の手を握って、笑顔を見せる。すると、その握った手から光が放たれる。それは永理が持っていたキューブの光だった。

 そのキューブは眩い光を放ちながら形を変えていき、最終的にはフィガンナイフへと変化した。

 

 

「こ、これは……」

 

「… 兆さん、使ってください。これを使ってテロスを倒してください。このフィガンナイフならきっと倒せます!!」

 

「わかってるぜ…… じゃあ、行ってくる。平和のトリガーの… 完全復活だ!!」

 

 

 兆はテロスの前まで歩きながらラストガンナイフを装着する。

 テロスは今まさに訳のわからない、今まで一度だった味わったことがない感情のが一斉に込み上げてきた。目の前に起こった奇跡が信じられず、普段出さない大声で兆に言ってくる。

 

 

「兆ッ!!! この私の力をどうしたというのだ!! 一体化していたはずのお前がどうして無事なのだ!! 何故だ!! 何故なんだ!!!」

 

「わからないよな。お前自身も変な感情がグルグルしてるだろ? だけどこれでテロス。お前は理解するはずだぜ!! これがみんなが起こした奇跡なんだ!! 仲間も何もいないお前には一生どころか死んだ後もわからない!!」

 

「何が奇跡だ!! そんなものがあってたまるか!!!」

 

「…… 俺はクローンなんかじゃない。俺は射手園 兆だ。RIVERSのメンバーだ。誰のモノでもない。俺は俺で、世界に1人。平和の引き金…… トリガーだッ!!!!!」

《FRONTIER》

 

 

 兆は新たなフィガンナイフ… フロンティアガンナイフを起動させ、セイブドライバーの上部に差し込みんでから開いて、最初につけていたラストガンナイフと合体させる。

 それからセイブドライバーのハンマーを起こし、右手で引き金に指をかける。そして左手を銃の形にし、前に突き出して無限を描いて胸持ってくる。

 

 

「変身ッッッ!!!!!」

 

 

 セイブドライバーの引き金を引くと、砂嵐が起こりラストデイズに変身した後、背に∞が現れ巨大な銃も出現する。∞はその銃で撃ち抜かれると、螺旋状にトリガーの身体を包み込み、新たな装甲をその身に纏わせていく。

 それからトリガーは腕を大き振り払い、砂嵐を消したばすと、目の前にスイングする扉が現れ、それを潜り抜ける。この行為に全く意味はない。

 顔の横に1と∞の字と、身体をこれでもかと∞の字が纏われているトリガーの新たなる姿。

 

 

《フロンティアガンアクション!! ピーストリガー!! エブリバディフォーエバー!!》

 

「これはなんだ…!! 私はこの姿のトリガーは知らない…!! 一体… これはッ!!!」

 

 

 トリガーは一歩前に出て、右手を銃の形にしてテロスを撃って見せる。

 そして帽子をクイッと上げていつもの通りのセリフを言い放つ。

 

 

「今日が俺の誕生日だ…… そしてテロス。今日はあんたの永遠の敗北日だぜ!!!」

 

 

平和のトリガーが今、引かれた──。




ついに復活!!
そして新たな奇跡の最強にして最終形態!!仮面ライダートリガー フロンティアフォーエバー爆誕!!!
果たしてその強さは…!!?

次回、第41劇「カウントダウン」

次回もよろしくお願いします!!

最終回まで残り── 5話


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テロス編
第41劇「カウントダウン」


皆さんご無沙汰しております。

前回、暴走する兆を止める為、巧也が奮闘していた所にテロスが乱入。テロスの強さにプリズンハンドレッドも押されてしまった。途中から永理が来て、兆の心に呼びかける。諦めずに願った結果、兆は元に戻り、そしてキューブはフロンティアガンナイフへと姿を変える。それとラストガンナイフを用いて、仮面ライダートリガー フロンティアフォーエバーへと変身し、今最強の力がテロスに炸裂する……

それではご覧ください。


「永遠の敗北だと? 私にそのような言葉はない。少々焦りはしたが、どうということはない。私の前では全てが0へと帰す… と、そのフィガンナイフ。ラストガンナイフの制御でもしているのだろう? ならば力は3分の1…いや、半減しているはずだ。それで勝った気でいるというのは腹立たしい限りだな」

 

「あー…… お喋りになったなぁ? あんたが勝つも負けるも戦わないと結果はわからない。だからよ、決めようぜ。どっちが正しいのかをな!!」

 

「ならば、わからせてやろう… 私の0の力をッ!!」

 

 

 煽ったトリガーだったが、テロスの全てを0にしてしまう力は非常に強力であり、あのラストデイズは身体的力でなら勝てていた。だが、テロスの言う半減が本当であればこの状況は危険過ぎる。

 トリガーは咄嗟に腕をクロスさせて防御の体制を取り、テロスはその防御を貫こうとど真ん中目掛けて殴ってきた。

 

 

「腕ごとへし折って…… なっ…!!?」

 

「な、なんだこれっ…!!?」

 

 

 それはトリガー自身も驚いた。ただ腕をクロスさせただけでそれ以外は何もしていない。右腕と左腕を体の前に持ってきただけの防御。

 だが、その単純な防御はテロスの攻撃を余裕で受け流したのだ。身体に油が塗りたくられているんじゃないかと思うくらいつるりと滑った。

 

 

「これがフロンティアの力……」

 

「どう受け流したか知らないが、2度目はないと思うがいい!!」

 

 

 今度は蹴りでの攻撃だったが、それもトリガーの身体に触れはするが、彼の身体に沿って受け流される。

 このフロンティアフォーエバーは確かに力こそはラストガンナイフに及ばない。何故なら余りあるエネルギーを全身に循環させてしまっているからだ。だが、絶えず無限に身体中を周り続けるそのエネルギーは見えない装甲となり、あらゆる攻撃を受け流してしまう。

 例えそれがテロスの0に変えるという力であっても。

 

 

「あり得ない… 私の力が2度も通用しないなどあり得ないッ!!」

 

「今、目の前にあるのが現実であり得てるんだぜ。どうやらあんたの攻撃は全て効かないってことらしい」

 

「そのような力があるものか!!!」

 

「ハァァァッ!!!」

 

 

 テロスが再び殴ろうとしてきた所を、トリガーが先に殴って腹に拳をめり込ませる。

 そして当たった部位は徐々に捻れていき、強烈な回転を加えられてからテロスは後ろの建物まで吹き飛ばされる。

 そう、無限に回転するエネルギーは防御にもなるが、転じて強力な攻撃にも変わるのだ。テロスは身を持って思い知ったはずだろう。このフロンティアフォーエバーの恐ろしさを。

 トリガーはテロスに近づいていきガーツウエスタンとは別の銃を取り出す。それはフロンティアガンナイフと共に現れた銃。フォーエバーピースメーカーである。

 

 

「いやーアフターの力とかフォースの力を使って1発決めてやろうと思ったんだけどさ。どうやらそれもできないらしいな。ははっ、こりゃ完全な弱体化だな…… まぁ能力は減ったが、今までに以上の力になっているってことに変わりはねーよな?」

 

「兆…!!」

 

「いや、失われていない能力があったな… 記憶をエネルギーに変換する。みんなの思いを力に変える!!」

 

 

 そしてテロスが最大出力で飛びかかって来たところに、フォーエバーピースメーカーを構えて放つ。

 その弾丸を0に帰そうと、拳と拳で挟み込んで止めようとした。しかし、その弾丸は彼の拳の圧を簡単に抜けてしまう。何故ならこの銃はフロンティアの無限回転エネルギーを弾丸にも宿らせることができ、ガーツウエスタンの威力が10段階中2となるなら、この銃は10と言ったところだろう。

 それから弾丸はテロスに炸裂し、今までビクともしなかった装甲を破壊した。

 

 

「これで決めてやるぜッ!! テロスッ!!!」

 

 

 この無限回転は誰であろうと止めることはできない。止める方法は兆自身が死ぬか、変身を解くかの2択のみ。誰であろうとこの渦の中に入る者には敗北という漢字2文字が浮かび上がる。

 トリガーはセイブドライバーの引き金を引いて高く飛び上がり、脚に螺旋のように∞の字を無数に纏い、テロスに飛び蹴りを放つ。

 この蹴りによる凄まじい風圧と衝撃にテロスの身体が吹き飛ばされそうになる。テロスドライバーの引き金を引いて、渾身の蹴りで押し返そうとした。

 

 

《ゼロス!! エクスプロージョン!!》

「き、兆ィィィィィィッッッ…!!!!!」

 

「ハァァァァァァッッッ!!!!!」

《フロンティアフォーエバー!! ファイア!!》

 

 

 フロンティアフォーエバーの無限回転はテロスの蹴りをいとも簡単に粉砕し、凄まじい力と共に後方の瓦礫の山へ一瞬にして吹き飛び、そのまま大爆発を引き起こした。

 トリガーは右手を銃の形にして、それから天へと突き上げる。

 

 

「今日の俺も完全勝利の日!!!」

 

 

 終わったはずなので永理が駆け寄ってくると思ったが、辺りに彼女の姿はない。

 おかしいな、と思いながら辺りを見渡すと、先ほど巧也が吹き飛ばされてできた道から、巧也に肩を貸した永理がトリガーに手を振って向かって来ていた。

 トリガーも安心し、手を振りながら2人に近づく。

 

 

「終わったぜ永理、巧也さん」

 

「兆さん! やりましたね!」

 

「…… 随分と遅かったな。遊び過ぎるのも大概にしておけよ」

 

「えっと……本当にごめん… 他の人たちにも俺は……」

 

「ふっ、お前らしくもない。その件なら安心しろ。幸いな事に全員記憶を取られただけ。後はお前が返すだけでいい」

 

「よかった… いや、よくはないか。まず今までのお詫びと償いしなきゃな── お? 狩馬さん?」

 

 

 すると周りの片づけが終わった狩馬が戻ってきた。

 それからトリガーの姿を見ると、驚きはしたが全てを察してから彼の肩を引っ叩く。

 

 

「やったな。だが、永理はやらないからな?」

 

「なんの話しよ… あ、そう言えば永理が俺を助けてくれる時なんか言ってたな───」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!! ダメです!!!!」

 

「え、永理? 兆てめぇ何しやがった…?」

 

「いやいや何もしてないって!!…… と、忘れちゃいけないテロスはどうなったんだ?」

 

 

 顔を真っ赤にした永理と額に血管が浮かび上がった狩馬を止めながら、先ほど蹴り飛ばしたテロスの方に視線をやる。

 すると瓦礫の山が崩れ砂埃が立ち、体中からバチバチという音を立ててテロスがゆっくりと立ち上がる姿が見える。腕を思いっきり振るうと砂埃は消し飛び、禍々しい気を放った者がトリガー達を睨みつける。

 

 

「どうするテロス。その傷で俺と戦うって言うのなら、お前にもう勝ち目はないぜ?」

 

「……… 記憶だけならよかったんだがな… それも仕方ないこと。お前たちが決めた運命。その運命に抗おうと思うな? 計画の変更を余儀なくされたが、鍵の覚醒を見れたことだ。今回はそれで良しとしよう…」

 

「それでも世界を食えると思うなよ? お前は俺が必ずぶっ飛ばす」

 

「くくくっ… 全ては0となる。その運命からは逃れることはできない。私の力は鍵… そしてお前たちの力を吸収し、更に強力となるだろう。その時がお前たちの最後だ───」

 

 

 テロスは意味深な事を言い、笑いながら闇へと消えた。

 彼らの戦いによって滅茶苦茶になってしまった街であるが、これから被害はこのエリアAだけには止まらなくなってくるだろう。あのテロスがトリガーに手も足も出ず、無様に敗北し何もして来ないはずがない。

 トリガーたちは一度作戦を立てる為、RIVERSへと帰還する──。

 

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>

 

 RIVERSへと戻った一向は早速今後についてを話し合う。と、言っても作戦どころかテロス側は3名。こちらも3名。ムツキを入れれば4名で有利だ。更に今回の一件で手に入れたフロンティアガンナイフは、 テロスにとって圧倒的に有効打である。攻めるなら今だと言いたいのだが、生憎アジトがわからず攻めるも何もないのが現状だ。

 巧也は少し考え、今できる策を言い放つ。

 

 

「下手に出ず奴らが仕掛けてくるのを待つ」

 

「…… まぁだよねー… こっちから仕掛けようにも場所わからないし」

 

「それもあるが、奴の目的は俺たちの力と世界全ての記憶。そして永理だ。何もせずとも仕掛けてくるだろう」

 

「大丈夫だよ巧也さん。あいつ俺の必殺の一撃でズドーンでバーン!!… ってなって今頃は家で大泣きしてるだろうぜ」

 

「あいつは何であろうと0にする… つまり自分の傷だろうと、あいつのベルトを破壊しない限り何度でも蘇るだろう。現にあの時フロンティアの攻撃を喰らっても立ち上がれたのは奴の力のせいだ」

 

「あーそっか… なら、今度はベルトごとテロスを倒さないとな… あいつとの決着はこの手で必ずつけてやる!!…… あ、そう言えばマスターは!!?」

 

「マスター…… あの時、兆を連れて行ってラストデイズを止めてくれていた筈だったと思うが… まさかやられたのか…?」

 

「い、いやわからない… 多分大丈夫だと思うけど……」

 

「彼なら無事だろう。何にせよテロスにずっとついて来た男だ。きっと今は傷を癒しているか、何か策を練っているに違いない」

 

「そうだよな…… あーあ、最後の戦いの前にミルクを飲みたいな───」

 

 

 その時、警視庁全体が大きく揺れて机の上から物が落ち、全員立つことができず倒れてしまう。

 暫く揺れは続くが、佳苗は机に捕まりながら何とか立ち上がって状況をすぐに調べる。地震かと思われたこの揺れの正体が外でウォンテッドが暴れている為だと気づく。

 佳苗は大声で巧也にそれを知らせると、兆と巧也と狩馬の3人は揺れが収まってくると同時にRIVERSから出る───。

 

 

 

── 外へ出ると、3人は街の光景を見て息を呑む。

 何故なら街は先程見た風景が嘘のようにマンションやビルは崩れ、車は粉々となり、辺り一面瓦礫の山と化していたのだ。後ろを振り向くと、警視庁も所々崩れており、崩壊寸前であった。

 

 

「巧也さん……」

 

「あぁ、仕掛けて来たな… それもかなり派手にやってくれた」

 

 

 その瞬間、3人の元へと1本の矢が飛来し、ギリギリのところでかわして、飛んできた方向を見るとシワスが弓を構えてこちらに向かって来ているのがわかる。その隣にシモツキが両腕から剣を出して地面に引きずるように歩いて来ている。

 兆たちはそれぞれ腰にドライバーを巻きつけて、変身の準備を行う。

 

 

「このやろう、シワス。よくもまぁやってくれたじゃねーかよッ!!!」

 

「トリガー… 我は腹が立って仕方がない」

 

「それはこっちの台詞だこらっ!! お前のせいで何人の命が犠牲になったと思って──」

 

「黙れッ!! それをお前が言えた口か? 言える訳がない。ただそんなものどうでもいい。我はお前たちの要らぬ邪魔によってボスの計画が狂わされてしまったことに腹が立っているのだ!!」

 

「なら、ざまぁ見ろってやつだな!! 俺はテロスを倒して変えてやるんだ。この世界に平和のトリガーを引いてやるぜ!!」

 

「…… 平和か。そうだな。くくくっ、出来たらいいな」

 

「ん? 何がおかしいって様子だから言ってやる。何がおかしい!!」

 

「後ろを見てみろ」

 

 

 兆は振り向くと、警視庁の屋上にテロスが立っているのに気がついた。それと同時に狩馬の怒声が聞こえ、よく見てみるとテロスは肩に何かを担いでいるのに気がついた。

 そしてそれが間違いなく永理だと気づき、3人は変身しようと身構える。

 

 

「テロスッ!!! 永理を離せッ!!!」

 

「それは無理な話だ。永理は大切な鍵だからな。これで私は更なる力を手に入れる…… 次元の扉を開く為に」

 

「それには俺たちの記憶のエネルギーも必要なんだろ? 特にお前がラストデイズで集めようとしたやつがよ!!」

 

「あぁ、しかし私は勝率が低い状態では戦おうとは思わない。順序は変わるが、この女の鍵としての力を無理やり引き出させてもらう。既に覚醒済みだ。容易にできる…… 記憶のエネルギーは私自身の力を高め、そして鍵によって生じる力を抑える為だった。だが、その保険もこの状況下に置かれたのなら話は別。すぐにでも開いてやろう…… 0の力の全てを!!」

 

「鍵の力に耐えきれなくてお前自身崩壊するかもしれないぞ?」

 

「ふっ、勝率が低い状態での戦闘は行わない。しかし私は私の力に自信がある。それぐらいは人間のようにやって見せよう。賭けというものはな──」

 

 

 テロスは一瞬にして消えてしまい、3人はシワスとシモツキに向き直る。

 この2人から無理やりにでもテロスの居場所を吐かせるつもりで、3人はそれぞれが準備を終えて変身する。

 シワスとシモツキはトリガーたちに突っ込むと、それに合わせてトリガーたちも駆け出す。

 

 

「かかってこい!! シワス!! シモツキ!!」

 

「ボスの為に勝利をッ!!!」

 

 

 互いの攻撃がぶつかり合い凄まじい衝撃と音を響かせる。

 それが終わりへの始まりのゴングだという事は、この時まだ誰も知るよしもない──。




ついに鍵が開かれようとしていた…

次回、第42劇「全ては零へ」

次回もよろしくお願いします!!

最終回まで残り── 4話


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第42劇「全ては零へ」

皆さんご無沙汰しております。

前回、フロンティアフォーエバーの力でテロスを追い込むが逃げられてしまう。暫く待機していると、急な揺れに襲われて外へ出ると、街はほぼ崩壊寸前であった。そこにはシワスとシモツキがおり、テロスはその隙に永理を抱えて何処かへと消えてしまった……

それではどうぞご覧ください。


 永理は目を覚ますと、自分にあったことをすぐに思い出して辺りを見渡す。

 特にこれといって目立つものはなく、というかそもそも物がないのだから目立つも何もない。そんな何もない部屋の固い地面で1人ポツンと寝ていた。

 それから永理は立ち上がり、扉を見つけて開けようとしてみたが、その扉にはドアノブがなく、体当たりして壊そうとするが、永理の力ではまるで馬鹿ともしない。それどころか先ほどの体当たりで気づいた事があり、扉裏側に何か大きく重い物があるようで、例え壊せても逃げる事はできないだろう。

 

 

「ここに意外に出口は……」

 

 

 そう思い辺りを見るが、どうやらこの扉以外、外に出れそうな所がない。窓もない。あるとしたらこの部屋を照らす電灯があるだけだ。

 すると、突然どこからともなくテロスが永理の前に現れる。

 彼女は逃げようとはしなかった。戦ったところで勝ち目はないし、逃げてもすぐに捕まるだけ。この密室ではどうすることもできない。

 

 

「テ、テロス…… 私をどうするつもりですか」

 

「私はより力をつけなければならない。次元の扉を開くには並行世界でたった1人、お前だけがそれを開ける特別な存在なのだ。扉を開く… 即ち私の力を限界を超えて高める事。その力で私はこの世界の記憶を喰い、そしていずれは全てのありとあらゆる生物から記憶を奪い取る」

 

「でもそれを行うには兆さん達からより強力な記憶のエネルギーを取らなければならないんじゃないですか? だからこそのラストデイズでしょう? もし私を使って開けたとしても、あなたが無事で済むはずがありません!!」

 

「承知の上だ。そうでもしなければ今の私に勝ち目はない。しかし…… 耐えきれるという確信はないが、やれるという自信はある」

 

「や、やめてください…!!」

 

「いつまでもゆっくりとしていられないな。さて、開くがいい… 私の力の限界をッ!!」

 

 

 テロスは永理の額に手を翳すと、そこから眩い光が出始め、銀河系のような唸りのあるものが現れる。そこへ徐に手を突っ込むと、凄まじいエネルギーの流れがテロスの身体の中へと一気に流れ込む。流石の彼もそのエネルギーには苦しみの声を上げた。

 そして唸りは更に大きさを増していき、部屋を突き抜けて破壊し、テロスを中心にして天を突き刺す光の柱が放出される。

 

 

「グオォォォォォォォッッ……!!!!!」

 

 

 空は次第に赤黒い雲に覆われ、テロスから放たれる光の周りを回転し始める。そのエネルギーはどれだけ遠く離れていようと視認できてしまう。

 それから暫く光を放っていたが、突然ぶつりと消えてしまった───。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「な、なんだあの光の柱ッ!!?」

 

「空が…… テロスはあそこか!!」

 

 

 それぞれフロンティア・プリズン・漆曜式に変身し、シワス・シモツキと対峙していたが、その時に遠くの山から光が放たれたのが見え、全員その光の方を向いて立ち止まっていた。

 光が消えると、シワスはその光の意味を察してパチパチと拍手をする。シモツキもそれに続けて拍手をして、トリガー達の方を向いてやれやれと首を振る。

 

 

「残念だったね」

 

「… 何が残念なんだ? まさか永理を…」

 

「成功したんだよ。ついに扉は開かれたんだ!!」

 

「あれが…? なんでわかるんだよ。失敗してテロス自信崩壊してる可能性だってあるだろう」

 

「君たちには感じないのか? ほら…… 来るぞ」

 

 

 瞬間的に全員が押し潰されるような圧をその身で感じる。ただシワスとシモツキだけは別だった。このエネルギーはテロスが、鍵のエネルギーに耐えきれず消滅してできたものではなく、生物的なそういうエネルギーを感じられるのだ。つまりそれは彼が消えずに成功したという証。

 トリガー達にもそれがわかった。同時に嫌な予感と恐ろしい事態を予想できる。

 

 

「ふふふふふははははははははっっ!!! 我々の勝利は決まった!!! 世界はボスに喰われて消えるのだッッッ!!!」

 

「嘘だろ… と、とにかく急がないと!!」

 

「させると思うか!!!」

 

 

 シワスはトリガーに向かって矢を放つ。ただそれは彼を狙ったわけではなかった。フロンティアの力を知っている為、普通に当てただけではなんの意味もないということをわかっている。だからこそトリガーの手前で矢を分散させ、瓦礫を飛ばして目眩しを行い、他の矢は雨のように降らせて更に視界を遮らせる。それに続いてシモツキも瓦礫を細かく切り刻んで砂ようにし、トリガー達の視界を悪くしてしまう。

 

 

「プライドなど最早どうでもいい!!! 全てはボスの為にッッッ!!!」

 

「戦う気ないのかよ!!…… ん? まさかテロスは順応できていないのか? あのエネルギーは流石のあいつでも取り込むのに時間がかかるはずだ」

 

 

 それがわかったトリガー達であるが、砂漠地帯のような砂嵐が続く視界の中では身動きが取れない。フロンティアで吹き飛ばそうと考えたその時、ピタリと砂嵐が止まったかと思うと、それは不規則に動きながらシワスとシモツキを襲った。

 何故そうなったのかはトリガー達はすぐに分かった。ハントの力でこの2人を地面に拘束したのだ。

 ハントはトリガーとシェリフに大声で叫ぶ。

 

 

「この2人は俺に任せろ!! お前達は永理のところへ行け!!!」

 

「か、狩馬さん!!?」

 

「こんな奴ら俺1人で充分だ。それに俺が行ったところで勝てる訳がない。ただ俺は確実だと思う方に賭けるぜ…… だから行って来い!! もし永理に傷付けてみろ!! 末代まで呪ってやる!!!」

 

「…… おう!! 任せろよ!! 助けたら奢ってもらうからな!!!」

 

「なんでも奢ってやらぁ!! さっさと行け!!!」

 

 

 トリガーは光が放たれた方向へと走り出し、シェリフは一度振り向いてハントへ頷くとすぐにトリガーの後を追う。

 

 

「…… 絶対戻って来いよ… 兆… 巧也────」

 

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「── ぅ…… ん? あ、あれ? 私一体…… っ!!! テロスは!!?」

 

 

 目が覚めた永理はすぐに今の状況を確認する。

 まず部屋がなくなっており、完全に外に出ていると言ってもいい状態だ。空は不気味な雲に覆われ、その雲をよく見てみると、何か浮かんでいるのがわかる。

 それは手を広げ、空を見上げている。見た目は変身後のテロスなんだと思っていたが、それが降りてくると永理は凍りついた。

 見た目こそテロスなのだが、それはただの名残であろう。完全に別のモノへ… 異形の怪人へと姿を変えていた。今までは違う禍々しさと、とても冷たい眼差し。生物ではあるが、まるで心のない物のように冷たい。

 

 

「起きたか… 鍵よ」

 

「…… その姿は… なんですか!!」

 

「これが私の求めていたもの… メーデン・テロスとでも名付けさせてもらおう」

 

「で、でも兆さんには勝てませんよ!! そんな力なんてすぐに無駄に終わるだけです!!」

 

「くくくっ… それなら良かったのかもしれないが、私の力の前では全て0となるのだ。0は全ての始まりで終わりである。この世界に零を…!!!」

 

 

 永理はテロスから出る不気味なオーラを受け、兆たちは本当に勝てるのか?と、思わされてしまうほど、彼からは強者特有の余裕さと自信を感じる。

 

 

「永理よ… お前はまだ必要なのだ。最終的に世界の記憶を奪った末に次元の扉を開く。用済みではないから安心するがいい」

 

「けれど結局、物として扱ってるんですね…」

 

「物として? 何を今更。鍵は物ではないのか?」

 

「…っ!!」

 

 

 怒りのままに発言しようとした永理であったが、声が出なくなってしまった。

 テロスは笑い始め、天に向けて手を伸ばす。天は裂け、禍々しい雲の深い闇の間から尋常ではない量のウォンテッドが溢れ出した。

 それだけに留まらず、両手を広げると、どこからともなく今まで倒してきたはずの幹部たちが現れた。それも驚く事に自我を持っている。

 

 

「テロス…… まさかっ…!!」

 

「死んだという事実… そして過去の記憶…… 全てを零にした」

 

「そんな… あり得ない!!」

 

「今、目の前で起きていることが現実だ。不可能を可能にしてしまう力!!これが私の求めていたもの!!」

 

「さぁ、行くがいい…… 私の下部たちよ。まずはトリガーとシェリフを殺してこい」

 

 

 テロスが右手を前に突き出すと、幹部たちは一斉に動き出す。人々の記憶を奪い取る為に、ただそれだけの目的で動く人形。

 その光景は近づいていたトリガーたちも気付いていた───。

 

 

 

─── 幹部たちがトリガーたちに向かって飛び込んできた。合計9人の幹部が彼らの周りを囲み行手を阻む。

 トリガーは構えようとしたが、シェリフは彼を静止しジャッジメントエンターンを取り出して構える。

 

 

「俺がここで幹部の相手をする。お前は先に行け、兆」

 

「巧也さん… 1人で大丈夫なの?」

 

「心配は無用だ。お前のその力は未来を変えられる力だ。決着をつけてこい。平和の引き金… トリガー!!!」

 

「あぁ… 行ってくる。任せたぜ、巧也さん!!」

 

 

 トリガーに群がる幹部をジャッジメントエンターンで撃ち、彼の行く道に立って誰1人とて通らせないように構えた。

 今迄の色々な思い出がシェリフの頭の中を過る。これが最後なんだと改めて実感できる。

 そして息を大きく吸って吐き、覚悟を決めて幹部たちに向かって駆け出す。

 

 

「任せたぞ兆ッ!!!」

 

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 

 トリガーは次々に襲いかかってくるウォンテッドをフォーエバーピースメーカーで殲滅し、テロスがいる場所まで全力で走る。

 そうしてついに山の頂上へと着き、辺りを見渡して永理を探す。そこは本当に何もない場所で隠れるところがまずない。綺麗な円でそこだけがくり抜かれているような感じだ。

 それも全て、その中心部の空からどこからともなく現れたこの男に聞けばいい。

 

 

「来たぜ、テロス」

 

「そのまま大人しくしておけば良かったもの…… 何故ここに来た」

 

「何故だと? そんなもん決まってる。お前という俺を責任持って倒す為だ。この世界を好きにはさせねーぞ…… テロスッ!!!」

 

「ハハハハハハハハハッ!! いずれにしろ、世界は滅びる運命にあり。お前が私を倒す事は決してない。私の力の前ではな!!」

 

 

 そう言ってテロスが腕を振るうと、強烈な風がトリガーを襲う。

 トリガーの後ろにあった木々は一瞬にして吹き飛び、彼のいる場所以外の地面を抉る。

 

 

「やはりそのフロンティアフォーエバー…… この程度ではまるで意味はないか」

 

「そりゃそうだぜ。お前とは違うんだよ。力の求め方もそれを手に入れる方法も全部。だからこそ俺は負けるわけにはいかない…… 行くぞッ!!!」

 

 

 そしてトリガーは一瞬にしてテロスに近づくと、1発殴って見せるが、当たる直後に腕を掴んで固定する。

 テロスはそのまま投げ飛ばすが、すぐにトリガーはフロンティアの力を使って宙へと舞い上がる。回転の力により飛行能力も手に入れているからできる芸当だ。

 

 

「うぉぉぉぉらぁぁぁあッ!!!!」

 

 

 そのままテロスの頭目掛けて蹴りを放つ。

 しかしのその瞬間、テロスは両腕を前に出すと、見えない壁がトリガーの前に現れて近づかせようとしない。更に足に力を込め、フロンティアの回転エネルギーを増幅させる。

 するとその壁は破れてテロスを捉える。余裕そうだったテロスも想定外の結果に驚き、そしてトリガーに蹴られて吹き飛んだ。

 

 

「ば、バカなッ…!!!」

 

 

 テロスはすぐにトリガーとの距離を零にし近づいて殴ろうとすると、トリガーもそれに反応して、互いの頬を殴り抜ける。

 2人は同じ力で同じように吹き飛び、地面に転がるが、すぐに体勢を立て直す。

 

 

「想像以上の力だ…… そのフロンティア… いや、兆。成功作のクローンであるお前こそが1番厄介であったと言うことか…… なんという皮肉だろう」

 

「子供が親を超えてやったぜ… ありがとうよ。俺を産んでくれた事、感謝してるぜ。こうしてお前をぶん殴れるくらい強くなったんだからよ」

 

「非常に腹立たしく、これほどまでに後悔という思いを抱いた事はない。必ずここで仕留める────」

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 その頃ハントはシワスとシモツキ相手に1人で戦っていたが、特に苦戦するという事はなく、前に相対した時と同じように優勢だ。

 シワスは矢を放ち、シモツキは剣で切り裂いて来ようと、ハントに向かって来るのだが、やはりその行為は無駄に終わる。

 

 

「さぁて、さっさと決めて周りのウォンテッドやらねーとな」

 

「…… ふふふっ」

 

「あ? なーに笑ってやがる? 今から負けるのがそんなにおかしいか?」

 

「いや、違うな。我は既に敗北などどうでも良いと思っている。全てはボスの為になればいいと」

 

「何が言いたいんだ…?」

 

「… シモツキよ。ボスの元へ迎え… 我はボスの為に務めを果たす」

 

「に、兄さん一体何を…」

 

 

 シモツキはシワスに近づこうとすると、彼はシモツキに銃を向けて直ぐに行くように促す。

 そしてシモツキが居なくなったことを確認した後、シワスは銃をくるりと回し、銃口を自分の側頭部に当てる。

 

 

「お、おい!! 何しようとしてるんだお前、正気か!!?」

 

「言ったはずだ…… 我は務めを果たすと!!! 全ては… ボスの為にッ!!!!!」

 

 

 それからシワスは何度も引き金を引いて頭を撃ち抜く。

 その異様な光景にハントは茫然と立ち尽くしてしまっていた。明らかに自殺行為としか見れない。

 やはりと言っていいのか、シワスは地面に崩れ、そのままピクリとも動かなくなってしまった。

 

 

「何が…… したかったんだ…? ま、まぁいいか。それよりウォンテッドを…」

 

 

 すぐに大量に現れたウォンテッドをなんとかしようと動き出そうとしたその時、どこからか心臓の音が聞こえた。この騒ぎの中、心臓の音が聞こえるはずないのだが、頭の中に響くような大きな音で鳴っている。

 ハントはまさかとシワスを見ると、その音に釣られたのか呼ばれたのか、次々にウォンテッド達が吸収されていっている。

 

 

「おいおい… おいおいおいおい!!! こんなの聞いてねーぞ!!?」

 

 

 シワスの身体はみるみるうちに、より禍々しい姿へと変貌し、右腕の弓は刃のように鋭くなり、体も少し大きくなっている。見るからに危険な香りを漂わせるその姿からは言葉が発せられる事はない。それがこの姿の代償なのだ。

 

 

「それがお前の忠誠心ってやつか。そうまでしてボスを想うその姿、敬意を評してやるが、俺もここで負けるわけにはいかない。さぁ…… ハント開始だッ!!!」




新たな姿のシワスに勝てるのか…?

次回、第43劇「バウンティハンター」

次回もよろしくお願いします!!

最終回まで残り── 3話


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第43劇「バウンティハンター」

皆さんご無沙汰しております。最後に近づいて参りました。

前回、鍵を開いてメーデン・テロスに進化したテロス。その力はフロンティアと互角。そして今まで幹部を復活させ、シェリフがそれらと対峙し、ハントはシワスとシモツキを相手にしていたが、シワスが何を思ったかシモツキを逃し、自分の頭に銃弾を撃ち込むと、周りのウォンテッドを吸収して更なる力を手に入れてしまった……

それではどうぞご覧ください。


 シワスの手に入れた新たな姿。

 それは言語を話さず、ただ不気味なほど平然としている。心臓部が剥き出しになっており、非常に気持ちが悪い。一体あの行為がなんだったのかはわからないが、ハントは取り敢えずは身構える。

 

 

「まずは様子見だ」

 

 

 ギアハンターを構えたハントはシワスの剥き出しの心臓目掛けて銃弾を放つと、ハントの胸に矢が飛んできた。突然のことでわからなくなりそうだったが、撃った後すぐに矢を放ったのだ。目にも止まらない恐ろしいほどの速さ。

 しかし幸い胸は貫かれなかったが、装甲が少し凹んでいるのがわかる。

 

 

「あ、危ねぇ…!!」

 

 

 装甲を気にしている場合ではない。すぐにまた矢が放たれ、その矢は爆散して無数に分かれる。

 八方向から飛んでくる矢を、ハントは地面に手をついて何重もの壁を作り出した。今迄通りであるならこれでなんとか防げていたが、明らかに何かが砕けている音が聞こえる。

 

 

「これがあいつの攻撃か!!? あの時とまるで違うじゃねーかよ!!… くっ!! 激しくなってきやがった…!!」

 

 

 シワスの矢は壁に当たり、激しい振動と衝撃がハントを襲う。

 同じ場所を重点的に狙い始めたらしく、バリバリと壁を破っていき、ついに何重も貼ったはずの壁が残り1枚にまで矢が届いてしまっていた。

 

 

「仕方ねぇ… 緊急脱出ってやつを…!!」

 

 

 そして大量の矢がハントの作り出した壁を破ってハントを貫いた。

 そう見えたのだが、既にハントは地面に穴を開けて別の場所へ移動していたのだ。その場所はシワスの真後ろであり、拳を硬化し炎を纏ったパンチを後頭部に喰らわせる。

 シワスは体勢を崩し、そのままハントの炎が燃え移って火ダルマとなった。

 

 

「こ、これで…… ん?」

 

 

 風を切る音が聞こえて来る。

 ハントは何処から鳴っているのかと耳を済ませていると、頭上から鳴っていることに気がついた。上を向くといつ放ったのかわからない矢が雨のように降り注ぐ。

 すぐに全身を硬化させ、自分の真上に巨大な水泡を作り出して少しでも威力を下げようと試みた。

 

 

「ぐっ… うぅおぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 しかしその矢は細かくなって威力が減っているはずにもかかわらず、水の中に入ってもその速さは衰えず、防御を破って全ての矢が彼を捉えた。

 本当の雨のように絶え間なくハントを襲い続け、ようやく落ち着いた時には、ハントはかなりのダメージを食らってしまい片膝をついてしまう。

 

 

「今… やっとわかったぜ。なんでこんなにレベルが上がったのかがよー…」

 

 

 元々キラーズガンは自分に撃ち込むことで身体に変化をもたらしウォンテッドになる。やり過ぎると暴走形態となって、2度ともとに戻れなくなるという副作用がある。だが、幹部たちはそれを克服し、より強力な能力を手に入れた。

 コップにギリギリまで水を入れて表面張力という奴で溢れないという状態が幹部だとしよう。そこにコインを1枚だけであるなら溢れる事はない。だが、仮に数枚一気に入れたとしたら溢れて当然のことだ。

 つまりシワスは何発も撃つ事で無理やり暴走状態となってはいるのだが、ギリギリのところで理性を保っているという感じだろう。

 

 

「さすが幹部だな。あの状態でもまだ消えないか。その忠誠心…… そしてもう一つわかった事がある。お前の能力はエネルギーの矢を飛ばす事でも、他者のエネルギーを弾き飛ばすでもない。本当の能力はエネルギーを吸収するという能力だ。矢を作り出したのは周りから取り入れて生成した物。弾き飛ばしたというのは厳密にいえば吸収して体外に吐き出させた… そういう事だろう」

 

 

 シワスの本当の能力がわかったところで状況が変わるわけではない。だが、負けるという選択肢もない。負けるわけにはいかないのだから。

 ハントは気力を振り絞って駆け出す。

 

 

「絶対に負けるかよッ!!!」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 その頃、シモツキはとてつもないスピードで山の頂上まで登っていた。上へ行くたびに激しい爆発音と装甲がぶつかり合う音が響いて来る。

 頂上へ着くと木の影からその様子を伺う。トリガーとテロスが一歩も引かない互角の勝負を繰り広げていた。

 

 

「兄さん大丈夫かなぁ…… と、心配ないよね。兄さんなら… ボスは今どういう状況だろ?」

 

 

 するとシモツキの方にテロスが吹き飛ばされてきた。

 シモツキはテロスに近づいて大丈夫か否かを問おうしたが、手をかざして静止させる。

 

 

「何故ここにいる…… シモツキ」

 

「ボ、ボスの何か役に立てる事はないかと思い──」

 

「邪魔だ。お前はシェリフの元へでも行っていろ。ここはお前如きが来る場所ではない…!!」

 

「も、申し訳ございません!!!」

 

 

 すぐにその場を離れようと、シモツキはシェリフの元へと駆け出したが、進んだはずなのにも関わらず、その場から一歩も動けていなかった。

 シモツキはテロスがやったのだとわかったが、何故やったのかまでは理解できない。

 

 

「こっちへ来い。今、お前がやらなければならないことを見つけた」

 

「なんですか…?」

 

「時間を稼げ」

 

 

 テロスがシモツキの頭を掴むと何かのエネルギーを流し込んだ。そのあまりに強いエネルギーに絶叫しジタバタと暴れる。このまま破裂してしまうんじゃないかというくらい詰めれるだけ詰め込まれている感じだ。

 追ってきたトリガーはその光景を見て、何をしているのか理解できなかったが、嫌な予感がしてすぐに蹴り飛ばそうとした。

 しかし壁を作られてしまい、その攻撃は弾き飛ばされてしまう。

 

 

「── これでいいだろう」

 

「こ…… れは……?」

 

「計画の変更だ。身体が凄まじい早さで馴染んでいる… 思っていた以上にな。このまま各地に撒いたウォンテッドたちを吸収し、そこで手に入れた記憶のエネルギーを使い完全に次元の扉を開く。最終的に兆たちのエネルギーさえ喰らえば、この世の全ての記憶を喰うことができる…… つまり私はやる事ができた。ここは任せる」

 

「ぐ、ぐわぁぁあぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

 

 シモツキが咆哮すると、身体から禍々しく赤黒いオーラが出てきた。

 それを見てからテロスは姿を消すと、壁が消えてトリガーが入れるようになる。入ったはいいのだが、シモツキの様子がおかしい事に気づき身構えた。

 次第に苦しみの声が薄れていき、シモツキの両腕は剣と一体化し、とても長細くなった。

 

 

「テロスの奴… 一体何をしたんだ」

 

「……… ありがとうボス」

 

「…っ!!?」

 

「感じる。この身体にエネルギーが満ちてきたよ…あぁ、最高だ。斬りたくなってきた。斬りたい。お前を。トリガー…!!!!!」

 

「さっさと倒して永理を連れて帰りたいのに… 仕方ない。まずはシモツキ。確実にお前を倒す──」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「どうする…… どうすればいい……」

 

 

 シワスの能力はわかったがそれに対しての対抗手段が思いつかない。追尾するし分裂する。一本一本の威力が高く、ハントの能力を最大限に発揮しても、先ほどのように貫通されて終わる。

 やってやる、と意気込んだのは良かったが、そういうことを考えていなかった。現在はシワスの矢をなんとか避けながらその隙を伺っているのだが、全く隙というものが見つからない。

 

 

「ハァ… ハァ…… やべぇ、さっき受けた矢の影響かこれ…」

 

 

 あの矢を喰らってしまっている為、ハントのエネルギーはかなりの量が体外に出てしまった。走っているだけで息が荒くなり、能力の質も落ちてきているのがわかる。

 それでもシワスの攻撃は止まることはなく、矢が雨の如く降り注ぐ。

 

 

「…ッ!!」

 

 

 ハントは地面や植物を操り、自分の周りに分厚いドームを作り出した。

 その瞬間、ドームに大量の矢がぶつかりまた削り始める。先ほどもやった手であり、相手もそれがわかっているはずだろう。後ろに周り込んだとしても対処されるのが目に見えている。

 ドーム中に響き渡る矢がぶつかる音。段々と近づいてきている。

 このままジッとしている訳にはいかない。ハントは意を決して弾き飛ばした。

 

 

「…… あいつらだけにいい格好させてたまるかよォォォォッ!!!!」

 

 

 全ての矢がハントを捉え、限界まで硬化した装甲と言えどこの量を受ければ一溜まりもない。エネルギーを吸収されて飛ばされる。

 しかしハントはシワスに向かって走り出す。こんな事をすればエネルギーが底をつき、変身が解除されてしまうのは確実だった。

 

 

「ガッ…!! こんなもんッ!!」

 

 

 ハントはギアナイフを押し込むと、シワスの剥き出しの心臓に殴りかかったが、いつ放ったのかわからない矢がハントの拳を弾いて全身に撃ち込まれる。

 そしてぐらりと崩れてそうになったハントに、シワスは刃となった弓で突き刺さそうする。

 しかしその直前でハントは身体を回転させ、頭を蹴り飛ばして体勢を崩させると、シワスの心臓に拳を当ててグッと力を入れる。

 

 

「やっぱりよ。俺の方が強いな…… オォォ… ラアァァァァァァァッッッ!!!!!」

 

 

 全身の力を拳という一点に集中させ心臓を殴り抜ける。

 これが今のハントにできる最大にして最高の一撃だった。もう他に余力は残ってはいない。

 それから変身が解けて地面に座り込んでしまった。

 

 

「…… お前が立ってられたら俺の負けだ。もう変身する体力もないぜ…」

 

「………」

 

 

 シワスはピクリとも動かない。心臓にダメージを与えた筈であったが、全く効かなかったのだろうか。そうであるなら狩馬の負けだ。既にハントへの変身するエネルギーはどこにも残っていない。

 だが、狩馬は負けるとは思ってはないかった。勝ちを確信しているわけではないけれど、何故か勝利したと思えるのだ。

 

 

「── ッッッ!!!」

 

「お前の台詞を借りるならよ、兆…… 今日の俺も勝利の日ってやつか」

 

 

 その瞬間、シワスの心臓に徐々にヒビが入り大きくなっていくと、そこから光が漏れ出す。全身から光が放出された時、シワスは爆散してその場から跡形もなく消え去った。

 狩馬はそれを見届けると深いため息をついてゴロンと寝転び空を見上げる。

 

 

「きったねー空だな… 少し休憩してから行くか。今ウォンテッド来たら対処できねーよ────」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 シェリフは戦いながら幹部達の中にムツキがいないことに気づく。それはマスターが無事であるという事を示している。ホッ一息着きたいところだが、9人という数相手に中々手間取っていた。

 ヤヨイの能力によりただでさえ雑魚が多い状況であるのに更に増やされ、ナガツキの能力で幻覚を見せられている。

 

 

「それにこれがカンナヅキか…… なるほど。ラストデイズを使わざるを得なかったのがよくわかる」

 

 

 この幹部達含めたウォンテッドの数。プリズンハンドレッドと言えどこの数相手に戦えるのだろうか。流石の彼も冷静さを失ってしまうのではないだろうか。

 しかし、そんな心配はいらない。何故ならシェリフはとっくに覚悟を決めている。彼にとって数は問題ではない。やるかやらないか。勝つか負けるか。

 

 

「全員… 捕縛するッ!!!」

 

 

 その光景を建物の上から見る男が1人。

 男は右腕をブレードに変えると、シェリフの方へと飛んでいった────。




あ…(察し)
この男の正体はー!!?

次回、第44劇「RIVERS」

次回もよろしくお願いします!!

最終回まで残り── 2話


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第44劇「RIVERS」

皆さんご無沙汰しております。

前回、ハントが決死の覚悟でパワーアップしたシワスを撃破。逃げたシモツキであったが、テロスの手により強化されトリガーと戦わせ、彼はその場から消え去ってしまった。その頃、シェリフの元には怪しい影が迫っていたが……?

それではご覧ください。


「あ、あなたは…!!」

 

 シェリフが敵に飛び込んでいった瞬間、上空より片腕を剣に変えた異形の存在が降りてきた。ウォンテッドである事は確かだが、前にもよく見たことがある。

 

 

「マスター…… さん? ですよね?」

 

「無理に敬語を使わなくて構わない。それより兆はどこにいる?」

 

 

 その人物はマスター… ムツキであり、どうやら兆を探しているようだった。ラストデイズを連れて行った時の事を聞きたい所ではあるが、この状況下で悠長に話している場合でもない。

 

 

「兆ならテロスの元へ。俺は見ての通りここで幹部と戦っている」

 

「そうか… テロスは鍵を開いた。ただあれはまだ完全ではない。今なら間に合う」

 

「永理に渡したアレであるなら対抗できる…」

 

「アレ…? それならフロンティアガンナイフとなっていたが…」

 

「なにっ… !!?」

 

 

 フロンティアガンナイフという名を聞いてムツキは幹部の攻撃を受け怯んだが、すかさず脚を伸ばして鞭のように幹部たちを薙ぎ払う。

 やはり彼もテロスと同じように予想外だったらしい。その顔からは何を思っているのかわからないが、とても安心しているのだろうか。少し柔らかくなったような感じがする。

 

 

「心配はいらなそうだな… だが、俺は行かなければならない」

 

「… 何か事情がありそうだな」

 

「俺は元々ここの住人じゃない。それに償わなければならない事もたくさんある… 責任を果たさなければ…」

 

「まさかあなた自身も──」

 

「今は幹部を蹴散らそう。さぁ行くぞ!!」

 

 

 ムツキが走り出すと、続けてシェリフもその後を追う。

 しかし驚いたことにシェリフは彼に追いつけない。シェリフが手を出さずとも、ムツキは次々に幹部たちをねじ伏せていく。

 テロスの右腕とは聞いていたが想像以上の実力だ。この実力と普段の冷静さから為させる判断力がテロスの信頼に繋がっていることが頷ける。

 

 

「ハァッ!!」

 

 

 だからと言ってムツキに遅れを取るわけにはいかない。

 シェリフはジャッジメントエンターンを取り出し、回して剣に変えると、幹部たちの動きを止めて無防備な状態にしてから斬りつける。続けてムツキが追い討ちで幹部たちを切り刻んで、右腕をハンマーのような形状に変えて纏めて吹き飛ばした。

 

 

「この能力は……」

 

「ムツキとしての能力。形状変化だ。身体を可能であるならその武器に変えられる」

 

 

 形状変化は今のように己を武器にすることができ、大変応用が効く能力である。近距離武器だけに留まらず、中距離や遠距離も相手にできるよう槍や銃といったものにまだ変化させる。

 その能力使い、暴走状態のカンナヅキを剣で頭から真っ二つ切り裂いた。

 カンナヅキの巨大さ故に爆発も凄まじく、他の幹部たちを纏めて吹き飛ばす事となる。ただそれが狙いであった。

 

 

「巧也ッ!!」

 

「ウォンテッド幹部… これで最後だッ!!!」

 

 

 シェリフは高く飛び上がり、ドライバーの引き金を引き、ジャッジメントエンターンを銃にしてから構え、照準を吹き飛ばされた幹部たちに定める。

 銃口にエネルギーが溜まり始め、充分に溜まった所では放つと、巨大なエネルギー弾は拡散して9人の幹部たち全員に1つの無駄もなく突き刺さった。

 

 

《プリズン!!アレストファイア!!》

 

 

 全員に爆散し、カンナヅキ以外は地面に倒れて気絶している。

 それからシェリフはムツキと共にトリガーの元へと急いだ。兆であるなら心配はいらないとは思うが、やはりテロスが完全覚醒するとなれば状況は一変する可能性が出てくる。

 この可能性が現実のものとならないよう、2人は山を駆け上がる────。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 シェリフとムツキが頂上まで辿り着くと大きな爆発音が聞こえる。道中でもかなりの音が響き渡っていたが、やはりこの距離からだと思っている以上に激しい。

 目の前ではトリガーとシモツキが戦っているが、彼らにはそれが見えていない。正確にはトリガーは見えているのにシモツキの方が見えないのだ。

 

 

「兆しかいない…?」

 

「どうやらシモツキと戦っているようだな」

 

「シモツキだと? 地面を蹴る音や何かを引きずる音…剣か? するくらいだけどな…」

 

「…… テロスによって強化され、風切り音すら聞こえなくなっているようだ。だが、兆は心配はいらないらしい」

 

 

 先ほど戦っていると述べたが、よく見てみれば戦っているかどうかわからなくなる光景がそこにはある。

 トリガーの周りに剣で斬ったと見られる跡があり、何度も斬り付けられてまるで円のようになっていた。明らかに不自然ではあるが、トリガー自体もおかしいのだ。全く微動だにしない。それどころか防御の体制までとっていない。

 しかしシモツキはそれが気に入らず攻撃の手を緩めようとせず、更にトリガーを切り刻もうとしていた。

 

 

「な、何故だッ!!? ボスにもらったこの力がどうして通用しない!!?」

 

「…… あのなぁシモツキよ? 隙も与えないほどの連続攻撃はいいんだけど、それ以外の攻撃方法思いつかないんじゃないの?」

 

「…ッ!! 違う… 僕は更に上がったスピードとパワーでお前を細切れにしてやる!! いずれその不可思議防御を破るくらいまで攻撃を続けてやる!!!」

 

「おーおーそりゃいい。やってみろよ。お前の剣が擦りでもしたらトリガーさん直筆のサインくれてやるぜ!!」

 

「貴様ッッッ!!!」

 

 

 その瞬間、シモツキの身体が地面に叩きつけられた。

 全身を止まる事なく無限に駆け巡るエネルギー。常に回転し続ける無限の流れ。何者であろうとその隙間に侵入することは決してできない。

 これこそがフロンティアフォーエバーの力である。

 

 

「まぁ俺のサインがそう簡単に手に入るかってんだよ。さっさとテロスぶっ飛ばして永理を助けなきゃいけないんだ。ここで立ち止まってられるか」

 

「お前に勝って認めてもらうんだ…!! 僕と言う存在をォ…!!」

 

「…… それじゃあ決めさせてもらうぜ──」

 

「── 兆」

 

「ん?……… あっ!!? マ、マスター!!? よかった無事だったんだな!!?」

 

 

 トリガーがトドメを刺そうとした瞬間にムツキが声を掛けると、反射的にそちら側を向いてしまった。

 その隙を逃さずシモツキが攻撃を加えようとするが、シェリフによって空中で停止させられる。

 

 

「シモツキの世話は俺がしておく。兆、お前はマスターと共にテロスを追え。ここも俺に任せろ」

 

「… って言ってもテロスがどこへ行ったのか…」

 

「それならマスターが案内する。お前は決着をつけてこい」

 

「また任せるね。巧也さん… この戦いが終わったら何してくれる?」

 

「無駄話は後にしろ…… そういう話は無事に帰ってからするものだ」

 

「そっか… じゃあ行ってくるよ。ありがとう巧也さん。狩馬さんにも… それから佳苗さんにも孝四郎さんにも伝えておいてくれ」

 

「そういう言葉を行く前に言うな! 全く… 気を付けろよ」

 

「おう!! このトリガーに任せてくれよ!! それじゃあ行くぜマスター!!」

 

 

 トリガーはムツキに案内されながらその場を後にした。

 それからシェリフは2人をも見届けると、シモツキが停止した状態で殴る。一呼吸もしないうちに数十発ものパンチをその身に浴びせた。

 

 

「ぐはぁッ!!?…ッ動けない…!! なんだよこれっ!!?」

 

「… 俺は自分の信じた正義の為… そう、人を守る為に戦ってきた。この力を手に入れ、いずれ自分は悪魔になるんじゃないか?… と、そう思っていた」

 

「は…? 急に何を言い出すんだ…?」

 

「いくら敵であろうと動けない状態で一方的に痛ぶり、ましてや殺そうなどと言った事は思った事はなかった…… 今まではな」

 

「お、ま、まさか…!!」

 

「お前の察しの通りだ。もうこの場に置いて警察の誇りだとか、人間としての常識などというのはいらないと俺は思う。何故なら…… 目の前で非人道的な奴らに対し、今からやる行為は相応のものだと思うからな」

 

「嘘だ… こんな惨めな敗北があってたまるか…ッ!!!」

 

「覚悟を決めろ。俺は決めた…… RIVERSの課長として引き受けた仕事は必ずやる。だからシモツキ、お前をここで倒す」

 

「ひ、ひぃっ…!!」

 

 

 シモツキは指先だけでもどこか動かせる場所はないかと試みた。

 しかし、そのような行為はただ力むだけで終わり、全く無意味な行為となる。動けないという事実に、彼はこれまでになかった絶望感を与えられる。

 ふと急に我に帰ると、目の前に拳がゆっくりと迫っていた。当然避けられる事はなく、当たると同時に次々に間隔がないほどの拳の連打が全身にめり込み、もう1発喰らわせて空中に打ち上げる。

 

 

「…… ん? い、痛みがない? どういう事──」

 

「それでいい。痛みがわからないままでな」

《プリズン!! アレストファイア!!》

 

 そして落下してくるとタイミングに合わせて、シェリフはドライバーの引き金を引いてから落ちてきたシモツキを連続で蹴りを浴びせる。絶え間なく続く蹴りに身動きが取れずにやられるだけのサンドバックと化したシモツキ。

 シェリフは蹴り終わると、スッと脚を下ろしそのまま振り返らずにその場を後にしようとする。

 

 

「ま、待て!! どこへ行く気だッ!!」

 

「街に溢れた残りのウォンテッドを倒しに行く。もう終わったからな」

 

「終わっただと…? このまま空中に留めておくつもりか!!?」

 

「プリズンハンドレッドはなんでも止められる。例えそれが…… 自らの攻撃だったとしてもな」

 

「つまり… 貴様ッ…ガッ!!… シェェェェリフゥゥゥゥゥッッッ!!!!!」

 

 

 今まで加えた打撃が一気にシモツキを襲う。感覚が麻痺しそうなくらいの連続攻撃が押し寄せ、その身は耐え切れずに爆散した。

 だが、シモツキの人間体は残らず何もかもが跡形もなく塵となった。

 

 

「… やはりテロスの力には耐えきれなかったか… 早く終わらせなければな。信じてるぞ、兆」

 

 

 シモツキが消滅した直後に電話がかかった。出てみると狩馬からであった。

 どうやらシワスの方も終わり、今は大量のウォンテッドを1人で相手にしているようだ。

 

 

「俺も今終わったところだ。山の方から殲滅して行く」

 

『おう、頼むぜ! 俺の方は心配すんなよ! こんな雑魚幹部に比べりゃなんともねーよ!』

 

「ふっ、3人が帰って来るまでに街を綺麗に掃除しておくか」

 

『もちろんそのつもりだ!…… おぉっと! まだ逃げ遅れた人たちがいるようだからじゃあな!──』

 

「…… さて、俺も行くか」

 

 

 ハントはブツリと電話を切ると、シェリフは首を回して街の方へと走り出す───。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「この先にテロスがあるんだよなマスター」

 

「あぁ、元は俺たちウォンテッドの本拠地だった場所だ。点々と場所を移動していたが、鍵を開くとなればあの場所の方が誰にも邪魔されず済むからな」

 

「待ったろ永理… 必ず助けに行くからな!!」

 

「鍵が開けば彼女もただの人となる。そうなった瞬間テロスに記憶を奪われて捨てられるだろう」

 

「搾りカスってところかい?」

 

「そうだな」

 

「ますます腹立ってきたし、それ聞いて安心した。心置きなくぶっ飛ばせるぜ!!」

 

 

 トリガーたちが辿り着いたそこは山の奥にある古い建物だった。

 それほど大きいというわけではなく見た目は豆腐であり、なんの変哲もない場所ではあるが、ここにテロスがいるとなるとまた違った印象を受ける。

 

 

「準備はいいか? 兆?」

 

「あぁ、もちろんだ…… これが本当に最後なんだよな?」

 

「そうだ。お前と俺の最後の戦いだ」

 

「…… よし、決着つけるぜ」

 

 

いざ、メーデン・テロスとの決着を──。




最後近いから早いよ〜…あ"ぁ"い。

次回、第45劇「宿命のトリガー」

次回もよろしくお願いします!!
最終回まで残り── 1話。


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第45劇「宿命のトリガー」

皆さんご無沙汰しております。

前回、無事であったマスターことムツキはシェリフと共に幹部たちを殲滅する。その後トリガーの元へ駆けつけたシェリフはシモツキの相手をし見事に勝利を収める。一方、トリガーとムツキはテロスを倒し、永理を救い出す為に本拠地へと潜り込む……

それではどうぞご覧ください。


 トリガーとムツキは建物内へと侵入し、先の見えない真っ暗な道を進み続けている。どれくらい走っているのだろうか。外観からは想像できないほど広く、とても長い道のりが続き、2人の走る音しか聞こえないほど静かであった。

 

 

「マスター。ここはもう地下… だよな?」

 

「あぁ、そうだ。幹部の数が増えた頃、テロスと俺はトリガーを生み出す為に計画を進めた。全てが始まった場所だ」

 

「…… 幹部たちは捨て駒のようなものだよな。俺と戦わせていたのも、俺を成長させる為。永理の件だって若干外れただろうけど鍵としての機能を果たした。テロスの思い通りにことは進んでるってわけだな」

 

「だからこそ一刻も早く止めなければならない。テロスを必ず仕留める」

 

「言われなくともやってやるさ… お?」

 

 

 とても長い道のりの果てに、トリガーたちは円形の大広間へと出た。周りにはパネルのようなものが敷き詰められ、その一つ一つに2人が映し出されている。

 何の為にここまで大きくする必要があったのだろうかとトリガーは思っていると、ムツキが不意に口を開く。

 

 

「── 本来ならここで鍵を開くはずだった」

 

「本来なら?」

 

「テロスは自身の予想とは違う展開に驚愕したことだろう。あの時、お前に勝てないと判断した奴はリスクを覚悟して半覚醒という状態で鍵を開いた… そしてこの場所は強制的に覚醒させる為に用意した場所。リスクを大幅に軽減し、テロスに更なる力を与える為の装置。周りを見てみればわかると思うがあれら全てがその装置だ」

 

「そんな事ができるのかよ… 強制的にって事は鍵を完全に開く事ができるの? もしそれができるとしたら何故今まで使わなかったんだよ?」

 

「強制的にと言えど永理自身が認知し、成長する必要があった。だからこそ今がその時なんだ。この場所にはそれほどテロスの欲と技術が詰め込まれている」

 

「…… なら、さっさと始めようぜ!! そこに居るのはわかってるんだ!!」

 

 

 大広間にトリガーの声が響き渡ると、部屋の中央の空間が歪み始め、その歪んだ場所からテロスが姿を現した。

 先ほど戦ったトリガーにはわかるが、テロスという化け物を前にしただけで絶望感が一気に押し寄せる。覚悟はしていたムツキでも、この異常なまでの威圧感は今までのテロスとは段違いだとその身で嫌というほど感じ取れた。

 

 

「ムツキよ… 非常に残念だ。お前が私を裏切る事になろうとはな」

 

「俺はお前に付いて行く時から裏切るつもりでいた。いや、裏切るという事がそもそも間違いか… 俺は最初から倒すつもりでいたからな」

 

「その結果が多くの犠牲を生む事にはなったが、お前の作戦は成功していたぞムツキよ」

 

 

 テロスはそういうと目線をトリガーの方に移し、再びフロンティアフォーエバーの姿をじっくりと見る。自分の予想とは違う全く新しい姿。最初の頃は忌々しく思ったが、今は不思議とそんな感情よりも嬉しさが込み上げてきた。

 それからテロスは部屋の中央の天井近くに、永理を瞬間的に出現させると、両腕を鎖のような物で縛り付ける。

 トリガーは声をかけるが永理は気を失っているのかピクリとも動かない。

 

 

「永理… 待ってろよ。必ず助けてやるからな」

 

 

 そう言ったトリガーはフォーエバーピースメーカーを構えながら、一歩ずつテロスに近づき、それに合わせてテロスも上空から地面へとおりる。

 互いに充分な距離まで近づき、足を止めて睨み合う。

 

 

「これが本当のラストバトルってやつだな。トリガーさんがお前を倒して世界を救ってやるよ」

 

「口だけならいくらでも言える。どちらかが勝ったという事実が証明された時こそが真の決着だ」

 

「俺は必ずお前を倒す。ここにいるマスター… RIVERSのみんながいたからこそ俺はこうして生きてこれたし強くなれた。自分という存在についても教えられた。そんな人達の為に俺は勝つ…… 今日がお前の敗北日だぜ、テロス」

 

 

 そして二人の間にしばらく静寂が訪れていたが、先に手を出したのトリガーであった。近距離で銃の引き金を引くが、テロスに避けられ、弾は後ろの壁を貫いていく。

 目の前から消えたテロスは、すでにトリガーの後ろへと回り込んでおり、握った拳で殴ろうとした。

 しかし、そこへムツキが片腕をシールドへと変化させてガードする。

 

 

「お前の能力では私は抑えられん」

 

「ぐぅ…!!」

 

 

 やはり0 テロスの力には、例え幹部最上位の力とされるムツキであろうと攻撃を受け止めることはできない。

 そのままムツキは吹き飛ばされてしまう… と、思われたがシールドをブレードに変化させて地面へと突き刺して耐える。その剣を軸として回り、テロスを勢いのままに蹴り飛ばす。

 

 

「私がただの細い木の枝であるならばよかったな。この程度では怯むこともない」

 

「わかっている。お前に俺の攻撃は通らないと… だから俺は囮として動く」

 

 

 その言葉の意味を瞬時に理解したテロスであったが、ムツキの後ろから弾丸が飛んでくると肩を撃ち抜かれる。

 それはトリガーのフォーエバーピースーメーカーより放たれた弾丸である。

 

 

「やはり私自身が私の障害となるとはなッ…!!」

 

「俺は1人で戦ってる訳じゃない。お前とは違う!! 俺は俺だぜ!!」

 

 

 トリガーはムツキの背に手を当てて、飛び越えてから蹴りを放つ。それに合わせてムツキはブレードですかさずテロスを斬りつけ、そらからトリガーと共に蹴りを放って吹き飛ばした。

 しかしこの程度ではテロスは耐えてしまう。吹き飛ばされた彼は脚を踏ん張り、すぐに2人との距離を0にし一気に近づくと、まずムツキを殴り怯ませる。続いてムツキを掴み上げトリガーに投げつけ、それに合わせて掌から黒い球体を出現させてそれを飛ばす。

 

 

「ぐわあぁぁぁっっ!!?」

 

 

 そして黒い球は大爆発を引き起こし2人を包み込む。テロスは更にトドメと今度は両手で巨大な球を作り出して飛ばしてくるが、トリガーが飛び出してそれを受ける。

 全身に激しい衝撃が来るのはわかるが、トリガー自身にはあまり効果はない。そのまま渾身の力で球体を両手で圧縮し爆散させ、テロスに近づいてその顔を殴り抜ける。

 

 

「いいぞ兆… だが、まだ足りない。私の零に沈むがいいッ!!」

 

「うっ…!! な、なんだ!!?」

 

 

 するとテロスが手を翳すと、トリガーの身体が急に動かなくなってしまう。

 この状態になることはまず有り得ない。フロンティアの能力とメーデン・テロスとしての能力は互いに打ち消し合っており、この程度では普通であるなら動けるのだ。

 しかし、明らかにトリガーはテロスの力によって動きが止められている。

 ムツキはその状態のトリガーを見ると永理の真下であり、そして周りのパネルが徐々に光を放っている事に気づく。

 

 

「身体が動かない…!!」

 

「兆ッ!!…… くっ、テロス。お前まさか── !!」

 

 

 パネルがより一層光を放ち、トリガーと永理の間に紫電が発生し、そのエネルギーはテロスへと吸い込まれていく。

 そう。テロスは既に準備が終わっていたのである。これら全てはテロスの策略のうちであった。

 

 

「うわぁぁぁッッッ!!… ぐぅっ!! テ、テロス…ッッッ!!!」

 

「くくくっ… ふはははははッ!!! 私がただお前達と戦っているだけだと思っていたのか? それは大きな間違いだ。私の目的はお前に勝つことではない。お前と永理の力を喰らい、全てを喰い尽くす力を身につけること…」

 

「これは…!!」

 

「そうだ。お前達がここへ来る以前に罠を仕掛けておいた。おかしいと思わなかったのか? いや、思うはずがないな。ムツキ… お前が裏切った事はシワスから既に耳にしていた。だから私はこの装置に予め細工をしておいた」

 

「なんだと…?」

 

「お前がラストデイズの制御装置を作り出したのなら、私はその逆を作ることにした…… このパネルにはフロンティアとは逆の回転を与える機能がつき、止めている状態。つまりラストデイズは今や暴走状態にある。即ち私の能力は、零の力は通る!! この意味がわかるか?」

 

「バカな… 兆ッ!!」

 

 

 更にテロスへと2人のエネルギーは吸収され、膨大なエネルギーが彼の身体をまるで血管のようにドクドクと流れる。

 このはち切れんばかりのエネルギーの流れは想定の範囲外ではあったが、装置によりテロス自身が耐えられるようになっている。これは彼も確信していた。必ず成功すると。

 だからテロスは両手を広げ、天に向かって笑い始める。確実な勝利をその身で実感し、そして目の当たりにしていたからだ。

 

 

「さぁ!! 開くがいい!! 私の力を更なる高みへと… 全てを零にする為の力を!! 次元の扉をッ!!!!!」

 

 

 そしてテロスの身体から発せられたエネルギーは部屋の天井を貫き、先ほど永理の鍵を開いたように光の柱が天を貫く。

 その光景は巧也と狩馬。孝四郎、佳苗も確認した。いや、地上にいる全ての者はわかるだろう。

 空は大きく割れ、巨大な赤黒い0という数字が浮き出ており、ゴゴゴゴゴゴッという重たい音が鳴り響く。

 暫くしてから光は止み、トリガーと永理は力なく落ちてきた。

 

 

「兆ッ!! 永理ッ!!」

 

 

 ムツキは2人をなんとかキャッチし、ゆっくり地面に下ろす。

 それからテロスの方を向くと、彼の姿は既にライダーとしての名残がなくなってるほど禍々しい怪人へと変わっていた。全体的に鋭利で刺々しい肉体になり、まさにあらゆるものを殺して喰らうという言葉が似合うほど恐ろしい何かへと変貌している。

 

 

「また繰り返してしまうのか… 悲劇が…!!」

 

「── ムツキよ。お前はよくやってくれた。私の元でよく働いてくれた。それには大いに感謝しているぞ… だが、お前も覚悟はしていたはずだ。最初からそれはわかっていた。私を裏切るという事は何を示すか」

 

「テロスッ──!!」

 

 

 ムツキは一瞬にして背後にに現れたテロスに振り向いた瞬間、腹部に何かが入り込んだのがわかった。

 それが何か気づくまで時間がかかった。余りにも一瞬であり、自分の身に何が起こったのか整理がつかぬほどのほんのひと時。

 そしてテロスが自分から離れていく時にわかった。自身の腹部に入り込んだのはテロスの腕であると。引き抜かれたその拳にはムツキの血がべったりとついており、地面にポタポタと落ちている。

 

 

「……ッ」

 

 

 声が出なかった。叫べなかった。痛みもなかった。

 ムツキは力なく倒れた。薄れゆく意識の中で兆の顔が思い浮かぶ。もちろん元の世界に残してきた家族の事も思い出していたが、兆との思い出が彼の脳裏をよぎった。

 

 

「(兆… お前には迷惑をかけたな……)」

 

 

 それからムツキはトリガーの頭を優しく撫でる。

 まるで父親のような目で彼を見つめた。自分には子供はいなかったし、結婚もしていなかった。

 しかし彼と過ごしてきた日々はムツキにとって… マスターにとっては家族と共に過ごしたようなものだったのだ。

 

 

「(… 死ぬ事は覚悟していたが、いざとなると逝きたくないな。お前ともう少しだけ過ごしていたかった…… 俺がこう思うのもおかしいが、お前の良き親でありたかった… それももう無理な話だ。ありがとう、兆。永理も。もう伝える事もできないが… 最後にこれだけは──)」

 

 

 トリガーのベルトに手を掛けると、その手を伝いムツキの全エネルギーをそこへ注ぐ。自分の死がわかっているからという理由ではない。このエネルギーでフロンティアの回転を更に上げ、ここの装置を跳ね除けようとしている。

 それだけでどうこうなる話なのかと言われればそうなのだろうが、彼のエネルギーは確実にベルト内部へと入り込み、超高速で回転し始める。

 全てのエネルギーを送り込むと共に、ムツキの姿は人間態へと戻った。

 

 

「(先にガンホーレの元へ行く。さらばだ、兆…… 我が息子──)」

 

 

 マスターは最後に笑顔のままゆっくり息を引き取った。

 その一部始終に興味はないテロスは、特に気にする事なく空にできた0の元へと行き、そこは手をかざすと更に大きく膨れ上がる。

 これは次元の扉であり、テロスはその扉の中へと入って行った───。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 

 兆は泣きながら、声にならないほど叫び続けている。何度もマスターの名を呼んでいた。だが、非情にもいくら叫ぼうと返事はない。

 マスターの変わり果てた姿を見て、永理も膝から崩れ落ちて泣いていた。

 

 

「わかっていた… わかっていたさ!! 最初から予想だってしていた!! こうなる事くらい初めからわかっていたはずなんだ!!…… けどッ!!!」

 

「マスターさん…!」

 

「こんな終わり方ってあるかよッッッ!!!!!」

 

 

 2人に別れの言葉を言えずにこの世を去ってしまった。

 最初からわかっていた。 テロスを裏切れば命の保証は絶対にないという事くらい。

 この呆気ない終わり方が兆にとってこの上なく苦しく、そして悲しかった。辛かった。

 

 

「── 永理。俺はマスターにさよならも言えてない… ありがとうの言葉だって言ってない」

 

「兆さんの気持ち… 凄くわかります。だけど私が思っている以上に、とても辛いですよね…」

 

「辛過ぎて涙が引っこんだよ。今は… あいつに対しての怒りで胸がいっぱいだ」

 

「…… そのテロスは既に次元の扉へ行きました」

 

「あぁ、わかってる。今から向かうさ… いつまでも悲しんでいられない。いちゃいけない…… この装置を押し除けられたのもマスターのおかげだ… マスターがくれた力で助かった。だから無駄にしちゃいけない。俺はテロスを倒して世界を救う!!」

 

「これが正真正銘… 最後の戦いです」

 

「…… あーあ、やっぱり怖いな〜… あんなパックリ割れたところに入って、やべー野郎とこれから戦うなんてよー……」

 

「私は兆さんが勝つって思ってますよ。いつも通りヘラヘラしながら帰ってくる姿が想像できますもん」

 

「そっか。そりゃいいな…… なぁ、永理」

 

「はい?」

 

「…… いや、また帰ってきたあと言うわ。なんかまた早い気がしたからよ」

 

「えーなんですかそれ!!」

 

「はははっ…… じゃ、行ってくる。みんなに宜しく頼むぜ」

 

「はい… 気をつけて。負けたら承知しませんよ」

 

 

 すると永理は兆を屈ませて頬にキスをし、ニッコリと笑い敬礼を行う。

 兆はそれに笑顔で、手を銃の形にして同じように敬礼のような仕草をしてから、セイブドライバーにラストガンナイフとフロンティアガンナイフをセットして変身する。

 

 

「よっと!」

 

 

 トリガーはフロンティアの力で宙へと浮かび、そのまま次元の扉をこじ開け中へと入って行った。

 それを最後まで見届けた永理には手を胸に当て静かに願う。

 

 

「…… 必ず帰ってきて」

 

 

 

 

 

─── そしてここにトリガーの最後の戦いが幕を開ける…!!




最後の戦い。
果たして訪れるのは平和か終焉か。

次回、最終劇「今日が俺のガンアクション」

最後もよろしくお願いします!!


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最終劇「今日が俺のガンアクション」

皆さんご無沙汰しております。

前回、 テロスが完全に覚醒したことにより、マスターは殺されてしまい、そして次元の扉がついに開かれてしまいました。数々の想いを背負いトリガーはテロスとの最後の戦いに臨みます。

最後のトリガー。
それではどうぞご覧ください。


 世界の記憶を喰らう怪物。それがテロスである。

 記憶というものは生き物に元から備わっており、どんなものでも取り込んでしまう。その中は全て良いものではなく、当然悪いものまで取り込む。思い出したくない過去があっても、ふとした拍子に記憶から瞬時に抜き出して表へと出してしまう。

 しかしそれが教訓となり、人は成長していく。だからこそ大切な記憶が失われという事はまた0からのスタートとなり、謂わば退化してしまうのだ。

 そんな大切な記憶を守る為、トリガーは今、次元の扉の中へと侵入した──。

 

 

「── ここが扉の先か」

 

 

 次元の扉内はまるで宇宙空間のように煌びやかではあるが、美しい風景の中に不気味さも漂わせる。

 既に出口がどこかはわからない。トリガーがここへ入ったと同時に消えてしまった。結局、出入口があったところで同じような風景があるのだからわからなくなってしまうだろう。

 

 

「どこだテロスッ!! ここにいるんだろッ!!」

 

 

 そう叫ぶトリガーの周りからテロスの不気味な笑い声が響き渡る。

 何処からも聞こえるその声に身構えていると、トリガーは背後に気配を感じて振り返った。

 そこにはテロスが禍々しい気を放ちながら立っている。

 

 

「兆よ。私は完全に覚醒することができた。後はこの世界の記憶を全て喰らい、そのエネルギーを用いて私は次元を跨ぐのだ」

 

「散々無理やり奪って手に入れた力で世界を喰らうだか何だか言ってるけどな。そんなのダサいね!! やるんだったら自分の力でやれよ!!」

 

「何を言う? 私は自らの知恵を絞ってこの結果を生んだ。それはつまり私の力があったからこそ成し得た事ではないか?」

 

「へっ、理由は何にせよ。お前を倒して世界を救うことに変わりはない。ここでぶっ倒すぜ!!」

 

 

 トリガーは早速テロスに飛びかかっていくが、テロスを殴る手前で指先1つも動かせなくなってしまった。

 何とか動こうとあらゆる部分に力を入れてみたが、まるで自分だけが時間をとめられたかのようにピクリとも動かない。

 そんなトリガーにテロスは近づき、胸部に軽く手を当てると、凄まじい力で彼を吹き飛ばした。

 

 

「がはぁッ!!?」

 

 

 バキリと嫌な音を立てて空間を転がる。地面がない分、衝撃は和らぐがそれでも身に受けたものだけはどうしようもない。

 そして激しい痛みの中トリガーは驚愕した。あのフロンティアの装甲にヒビが入っているのだ。

 

 

「な、なんだと…!!」

 

「全てを受け流すその力。確かに強力ではあったが、今、神に近き零の力の前ではどうすることもできない」

 

「… んな事があるかよッ!!!」

 

「ならば、その身にわからせてやろう。私の覚醒した零の力をッ!!!」

 

 

 テロスが両手で圧縮するような動作をすると、トリガーの身体は動作に合わせて押し潰される。

 この事態に焦るトリガーだったが、まるで人形のように抵抗すらできず操られるがままにメキメキと音を立てながら装甲を破られていく。

 

 

「あぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁッッッ…!!!」

 

「ふんッ!!」

 

 

 そのままテロスは両手を合わせると、トリガーの身体は爆発してしまう。

 フロンティアフォーエバーが木っ端微塵に砕けたと思っていたが、爆発の中から黒いトリガーが姿を現した。

 

 

「ほう… フロンティアの外装が剥がれても尚、抗おうとするか」

 

「テロ…… スゥ……ッッ!!」

 

 

 テロスの力の前にフロンティアは崩れてしまった。だが、崩れたのはフロンティアの部分だけである。

 トリガーはラストデイズへと変身し、テロスに飛びかかっていたのだ。

 ただし完全に操れているわけではない。少しでも気を緩ませれば理性は吹き飛んでしまうだろう。

 

 

「さすがはラストデイズ。終焉の力…… ほんの少し前であるならどうにかできたであろう。しかし私は進化した。お前如きでは砕けぬほどにな!!!」

 

「うぅ…ぐぅッッッ!!」

 

 

 それからテロスは目にも止まらぬ速さで、トリガーの身体中に拳が雨のように降り注ぐ。

 その連打の後、胸部に手を当て発勁を行い、全身に走る激痛と共に吹き飛ばされ、ラストデイズの変身が解けてしまう。

 

 

「こんなんで終わるかよォォォォォォォ!!!」

 

 

 セイブドライバーにアフターネクストを差し込んで変身し、体制を立て直してテロスの元へと走り出す。

 トリガー自身も無謀であるとわかってはいた。この力ではもうどうすることもできないと悟っていた。

 

 

「無駄だ」

 

「くっ…!!?」

 

 

 既にトリガー自身がテロスに触れる事はできなくなっていた。

 何故ならテロスに向かう途中で謎の壁によって遮られてしまっていたのだ。その壁を破壊する事は今のトリガーでは不可能である。

 必死に壁を壊そうと奮闘する彼を、テロスは呆れて首を横に振る。

 

 

「何故だ。何故そこまで私の元へ向かってくる。既に勝負はついたはずだ…… 最初からわかりきっていた結果であったはず」

 

「…… 実際のところ、俺にもよくわからないんだよ。もうどうする事もできないって状況なんだけどさ。なぜか勝てるつもりでいる」

 

「訳のわからないことを……」

 

 

 そしてテロスは壁を破裂させトリガーを吹き飛ばし、手のひらから黒い球体を出現させ、彼に向かって撃ち放つ。

 空間を飲み込むようなドス黒い球はトリガーを包み込み、テロスが指を弾くと何度も爆発を引き起こす。

 

 

「ガッ…!!」

 

 

 やがて兆の変身は解け、膝から崩れ落ちて倒れる。

 それからテロスは兆に近づき、触れずに彼を持ち上げて見せた。唸る兆だが、テロスの能力から逃げる術はなく、そのまま頬を鷲掴みにされる。

 

 

「勝てるつもりでいる… か。しかしこの状況で同じ事が2度言えるか? 無理だろう。私とお前の差は大きく開いてしまった。あの時、私を殺していればよかったな? 兆」

 

「俺はまだ負けてない」

 

「…… あー… なぜだ。わからない。私にはどうしてもわからない点が1つだけある。何故お前は諦めない?」

 

「そりゃ諦めないだろ? 俺は世界の平和を守る為にここまで来たんだ… まぁでも、確かに絶望的状況で勝つとかなんとか言ってるのはおかしいよな」

 

 

 テロスは兆を放り投げると、頭上に手をかざしてここにいる2人を軽く飲み込むほどの巨大な黒い球を作り出す。

 それを見た兆はゆっくりとではあるが立ち上がる。その目はまだ勝負を捨ててはいない。

 

 

「まだ立ち上がるのか…」

 

「なんだよ。お前のクローンだって言うのにわからないのか? 正義のヒーローは例え目の前に大きな敵がいても何度も立ち上がって戦うもんだぜ。それが無謀だとしても、勝つか負けるかわからなくても」

 

「勝敗は既に決定している。それ以上でもそれ以下でもない」

 

「だがな。勝敗はまだわからない。何故なら俺は生きているし、お前は未だに世界の記憶を喰えてはいないからだ。手を抜いているにしてもおかしくないか? さっさとやればいいのにさ!!」

 

「挑発のつもりか? お前を生かしてやっているのは、お前自身に私の力を教えてやる為だ。いつでも始末は容易く行える…… ならばいいだろう。これが最後だ。その身で絶望を味わわせてやろう」

 

 

 その瞬間テロスは両手を開くと、兆に凄まじい衝撃波が飛び、今にも吹き飛ばされそうになってしまう。

 一歩も前に進めない状態の兆の周りに、空間から100本以上の黒い剣が伸びてきた。

 

 

「消し飛ばすというのは面白くはない終わり方だろう? ならば、お前を串刺しにして殺し、その後ゆっくりと消し炭にしてくれる」

 

「ありがたい話だな… なぁ、俺もこれが最後になるけどいいよな? 遺言ってやつだ。それくらいやっても構わないだろう?」

 

「遺言も何も結局何もかも零に還る。言ったところで意味もない…… しかし許可はしてやろう。ここまで追い詰めた私からの慈悲だ」

 

「そうかい。なら一言だけお前に言わせてもらうぜ」

 

「なに──」

 

「─── 今日は俺の勝利の日だ」

 

 

 兆が言い終わると同時に無数の剣が一斉に彼の元へと降り注ぐ。

 その剣は兆に隙間なく突き刺さった。見た目は毬栗のようだが、無数の剣でできた墓である。

 ようやく全てが終わった。テロスは込み上げる感情を笑いに変えた。何もない空間でテロスの笑い声だけが響き渡る。

 

 

「フハハハハハハハハハッッッ!!!!! これでようやく行けるのだ。その先の世界へ… 私がまだ見ぬ世界へ… 喰らってやろう。全てを喰らう。私こそが世界だッ!!!」

 

 

 瞬間、何故かわからないが、テロスは兆の方を見る。完全に仕留めたと確信したのだから特に何かあるわけでもない。

 しかし、おかしな事に血が一滴たりとも落ちてはいない。この目でしかと確認したはずである。兆は現に剣の中で息絶えているはずなのだ。

 

 

「…… あり得ない…ッ」

 

 

 剣の隙間から光が漏れ始め、何もない空間を照らし始めた。

 全く予想しなかった光景にテロスはただ呆然と立ち尽くしていた。

 

 

「そんな筈はないッ!!!」

 

 

 光は膨れ上がり、無数の剣を弾き飛ばし、その光の中から兆が姿を現した。

 これは何かの間違いだとテロスは思う。こんな奇跡があるはずがないと、そう心の中で思った。

 

 

「テロス。これは奇跡なんかじゃない。フロンティアガンナイフは色んな人たちの想いが重なってできた力。そう簡単に壊されるかよッ!!!」

 

「私の力の前ではフロンティアフォーエバーでさえ無力だった筈… ならば何故今となってそこまでの力が…ッ!!!」

 

「次元の扉の向こうで伝わってくるんだよ。みんなの想いがこのフロンティアを通して…… だから砕ける事はない。俺は1人じゃない… みんなの想いが俺の力だッ!!!」

 

 

 するとフロンティアガンナイフとファーストガンナイフが宙へと浮かび上がり、互いに融合して1つのフィガンナイフへと姿を変える。

 それをセイブドライバーに差し込み、左手を銃の形にしてテロスに向け、右手でハンマーを起こして引き金に指をかける。

 

 

「変身ッッッ!!!!!」

 

《ファーストガンアクション!! トリガー!! リボルヴリボルバー!!》

 

 

 トリガーは変身すると同時に地上に残してきた仲間たちの想いが身体中を駆け巡り、今までのファーストとは違ってその装甲は光り輝いていた。

 それからトリガーは天高く飛び上がり、セイブドライバーの引き金を引いた。それに続けてテロスも天高く飛び上がる。

 互いに凄まじいエネルギーを纏った跳び蹴りが交わり合う。

 

 

「全ては零に還るのだッ!!!」

 

「俺は平和のトリガーだ!! この世界に平和の引き金を引いてやるッ!!! こんな力で負けるかよォォォォォォッッッ!!!!!」

 

「兆ィィィィィィ…ッッッ!!!!!」

 

 

 しかしテロスの力は凄まじく、トリガーの方が若干ながら押されてしまっている。テロスもそれがわかっており、このまま消しとばしてやろうと考えていた。

 だが、力で優っているはずなのに、トリガーは少しも後退しないのだ。

 それどころか徐々にテロスの力は飲み込まれて行く。

 

 

「何故だッ!!! 何故押さぬッ!!!!」

 

「それがお前と俺たちとの想いの差なんだよッ!!!」

 

「ぐおぉぉぉぉぉッッッ!!!!!」

 

「これがッ!!! 平和のォォォォ…… トリガーだぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 

 

 更にセイブドライバーの引き金を引いてエネルギー二重に纏い、テロスのエネルギーを押し除ける。

 それからテロスの身体は一気に力が抜けた感覚に陥る。限界を超えた力は彼の身体に完全には馴染んではいなかった。力は超越したが、生き物の限度には勝てなかった。

 刹那、トリガーの光がテロスを包み込む。

 

 

「私が零にッ……!!! そんな事がァァァァァッ……ッ!!! 兆ィィィイィィィィィィィィィッッッッッッ!!!!!!」

 

「今日の俺も勝利の日ィィィィィィッッッ!!!!!!」

 

 

 光はテロスを焼き、その身体をボロボロに崩す。

 そして空間内を眩い光が満たし、光が消えるとそこにいたのはトリガーただ1人だけであった。

 兆の変身は解けると、糸がプツリと切れたように力が抜け、その場に倒れ込んでしまう。

 

 

「か、身体が重い…!」

 

 

 この戦いの中で、テロスと同じく兆の体は限界を迎えており、今はどこに力を入れようと立つ事ができなくなっていた。

 そんな彼に不幸はまだまだ続いた。急に空間内が揺れ始めたのだ。どうやらこの次元の扉は大元であるテロスがいなくなり、その状態を維持できなくなっているようだった。

 このままでは兆は空間諸共、この世から消されてしまう。

 

 

「なんだよ… 永理に思わせぶりなこと吐いといてここで消えるのか…… いや、みんなには申し訳ないけど、それもいいかもしれないな… 俺は元々テロスの一部だったしよー……」

 

 

 兆の心の中では消えたくないと強い想いがあった。

 しかし、出入口は何処を見渡してもない。彼はここに入った時点で察していたのだ。地上に戻れない確率の方が極めて高いと、最初から覚悟はしていた。

 

 

「… もうそろそろ限界だろうな」

 

 

 空間は崩れ去り、それと同時に兆の身体も崩れようとしていた。

 そして兆はファーストガンナイフを取り出し、天に掲げる。このフィガンナイフから全てが始まり全てが終わった事、数々の出会いと別れがあった事を思い出した。

 

 

「ありがとう、みんな…─────」

 

 

 兆は静かに目を瞑る。

 それから次元の扉はパッと光を放ち、跡形もなく消滅した───。

 

 

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 あれから2年後。

 世界はあの日以来平和を保っていた。平和と言っても犯罪が減ったわけではない。

 今日も今日とで警察は仕事に追われている。

 

 

「永理ッ!! お前はいつまで食べているんだ!! 昼はとっくに過ぎただろう!!」

 

「えーですけど課長。私、食べないと動けないので…」

 

「まぁまぁいいじゃない。永理ちゃん最近頑張ってたんだし」

 

 

 RIVERS内には巧也と永理、香苗の姿があった。

 そこに狩馬と孝四郎の姿はない。狩馬は元・賞金稼ぎとしての技量が相まって今では新人警官として働いている為、RIVERSにはしばらく来てはいない。

 一方の孝四郎は研究室でとある作業をしており、暫く顔は出してはなかった。

 

 

「… さて、言わなくても分かっているだろうが、今回も回収に移る」

 

「キラーズガンですよね… まだまだウォンテッドの脅威が消えたわけではないのが辛いです」

 

「だからこそ、こうしてRIVERSが再び組まれたんだ」

 

 

 2年前の出来事により全てが終わったかに思えたが、どうやらキラーズガンの部品を持っているものがおり、複製しているとの話が出てきたのだ。一度は別れた仲間達であったがこうして再び集まり、RIVERSが再結成されたのである。

 しかし、他の一般兵達は辞めていく者や他の課に移り変わった者が多く、今ではこのメンバーしかいない。

 

 

「そういえば孝四郎さんの研究はどうなったんでしょう…」

 

「…… 気になるなら入って構わないぞ。邪魔にならないようにな」

 

 

 巧也の言葉は何処か優しかった。彼女の内心を察してくれたのだろう。

 そして永理は研究室の扉を開けて中へ入ると、その中では孝四郎が1本のフィガンナイフをあらゆる機械に繋いでいる。

 

 

「孝四郎さん。お久しぶりです」

 

「── ん? あぁ永理さん。数ヶ月ぶりくらいですかね?」

 

「そうですね。えっと……」

 

「このフィガンナイフからは確かに彼が入っています。ただ、この2年何をやってもそこにいるという事がわかるだけで進展はありません…」

 

 

 そのフィガンナイフとはファーストガンナイフの事である。

 それは2年前、兆がテロスを倒し消えてしまったあの日、ちょうど次元の扉の真下に出現したのだ。これを機に警察総出での捜査を行ったのだが、それらしき痕跡も人物も見当たらず断念された。

 それから孝四郎はファーストガンナイフを持ち帰り、数ヶ月の研究の末にこのフィガンナイフの内部に兆のデータがある事を発見した。

 

 

「確実に言えるのはこれが兆くん本人のデータである事。どうにかすれば彼をここから出してあげる事ができるんだ…… ただ今の技術では無理だよ。データを肉体のあるものに変えるなんて芸当できはしない。それにできたとしても彼が彼でいられるかどうか……」

 

「… そうですか。でも私はいつまでも待ってますよ。兆さんなら必ずフラッと出てくるに決まってますから!」

 

「そうですね… では、僕はまた作業に戻りますので」

 

「わかりました。お願いします」

 

 

 研究室から出ると、RIVERS内にちょうど良く狩馬が入ってきた。

 どうやら時間ができたようでここへ来れたらしい。

 

 

「よう永理! 兄さんが来てやったぞ!」

 

「兄さん。警察としての良い話あまり聞かないけどちゃんとやってるの?」

 

「まぁー… ボチボチだな。そ、それより今から回収に行くんだろ? 俺も連れて行けよ」

 

「いいの? だってまだそっちの仕事があるんじゃ──」

 

「いいから! じゃあ行こうぜ巧也! なっ!」

 

 

 巧也は狩馬がサボりたいが為に来たのだろうと察しがついた。呆れながらも今回は何が起こるかわからない為、同行を許可した。

 それから3人はRIVERSから出て行き、佳苗はそれを見送る。

 

 

「さぁて久々に暴れるとするか」

 

「今回は目撃情報が確定しているからと言って出るとは限らない」

 

「わかってる。まぁいたはいたで二度とキラーズガンなんてもん使わねーようにフルボッコにしてやる」

 

「相変わらずネジが外れていてよかった」

 

「あ?… おい待て! それどういう事だよ!!?」

 

 

 そんな2人のやり取りを見て永理は笑う。

 ふと空を見上げると、晴天のようで雲一つなく空に鳥が飛んでいた。何故かはわからないが、永理はそんな光景が何より尊く感じた。

 

 この世にある記憶は様々だ。

 生き物は知恵がある。知恵があるからその小さな脳内に計り知れないほどの情報を入れる事ができる。

 だからこそ忘れてはいけない。本当に大切な記憶というものは心の中に大事にしまっておく事。誰もが思う大切なもの。

 我々の想いを。

 

 

「── 今日の私も笑顔の日」

 

 

永理は手を銃の形にして空を指して撃つ───。

 

 

 

平和の引き金。トリガーは永遠に。

 

仮面ライダートリガー The end




皆様ここまでご覧くださって誠にありがとうございました。
本当によくここまで書いてこれたと自分を褒めたい……えらい(確信)
これにてトリガーは終了です。今までありがとうございましたーーーー

と、言いたい所なのですが、まーだまだ続きます!!
本当の最終回というか続編↓
『仮面ライダーシェリフ』
『仮面ライダートリガー OneDay』を予定しております。
言ってしまえば前編と後編です!

もうしばらく私と仮面ライダートリガーにお付き合いください!!
土曜日になるまでには投稿いたします!!それではよろしくお願いします!!


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特別編
仮面ライダーシェリフ


皆さんご無沙汰しております。

あらすじ
テロスと兆が消滅し、あれから2年経った現在。ウォンテッドの脅威が消えたかに思えたが、キラーズガンの残った部品を用いて量産している場所があるとの情報が入っていた。巧也・狩馬の2人は場所を突き止めそこへ向かうと、そこにはラストガンナイフがあり……

それでは前編どうぞご覧ください。


 研究室では孝四郎が兆のデータが入っているファーストガンナイフを調べていた。生きているのか死んでいるのかさえわからない彼のデータを、徹夜で隅から隅まで調べていたが、特にこれといった情報を得られないまま時間が過ぎていった。

 そして2年が経過した現在でも、兆のデータがあるということだけで他は何もわかってはいない状況である。

 

 

「ね、眠い…… けどこれをどうにかすれば兆くんは帰ってくるんだきっと…きっと……」

 

「── あら? まだやってたの? そろそろ寝たらどう。ずっと調べて疲れてるんでしょ」

 

 

 すると研究室のドアが開かれ、心配した佳苗がお茶を持って入ってきた。

 孝四郎の目の下の隈は真っ黒くなっており、まるで漫画のような見た目になっている。

 そんな状態でも孝四郎は首を横に振り、また作業に移った。

 

 

「仲間の為ですよ…… 僕はフィガンナイフを製作しただけで、それを使って今まで戦ってきたのは彼らです。僕は何もしていない。だから今度はもっと大きなことを成し遂げないと… 兆くんの為だけじゃありません。彼のバディである永理さんの心の底からの笑顔を取り戻してあげなければいけませんからね」

 

「…… 孝四郎の癖にかっこいいこと言っちゃって〜。でーも程々にしておきなさいよ。もし兆くんが帰って来たとして、あなたが過労死なんてことされたらみんな笑えなくなるんだからね? いい? そういう事だから今日一日くらい休みなさいよ。それくらいやってもバチは当たらないわ」

 

 

 その言葉を聞き、ゆっくり頷くと倒れるように眠ってしまった。佳苗は毛布を持って来て孝四郎の上にかけると、静かに研究室から出て行く。

 研究室から出た佳苗は、自分の席に戻ってパソコンを見ていると、携帯が鳴り始める。相手は巧也であり、孝四郎を起こさぬように素早くそれに対応した。

 

 

「はいはい私よ。どうしたの?」

 

『やけにボソボソした喋り方だな。そっちの方も何かあったのか?』

 

「孝四郎がやっと寝たのよ… それで要件は?」

 

『あぁ、今アジトの場所を特定した所だ。これから狩馬と共に乗り込む。永理には一般人が近づかないように手配してあるから、終わったら佳苗の方に連絡するはずだ』

 

「わかったわ。気をつけて」

 

 

 それから電話を切ると、佳苗は研究室から音が漏れていることに気づき、孝四郎が起きてまた作業に入っているのかとドアを開けた。

 しかし、孝四郎は寝たままであり、パソコンが勝手に動いているようだった。奇妙な現象に恐る恐るパソコンの画面を見てみると、佳苗にはわからないデータが流れて画面を埋め尽くしていた。

 

 

「な、なんなの… これ?」

 

 

 その時、ケーブルに繋いでいたファーストガンナイフが眩い光を放ち始めていた──。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 巧也と狩馬はウォンテッドが潜んでいるというアジトを突き止め、現在乗り込んでいる最中である。

 そこは山にある洞窟のようで人目につき難い場所であった。2人はここへ入って行った仲間であろう男を追い、奥へと進んでいくと、大きな壁の前までやってきた。

 それから2人は岩陰に身を隠しながら男の動向を伺う。他に気になるような所はなく一見ただの壁に見えないが、きっとここに何かあるに違いないと巧也は考えた。

 

 

「狩馬。あいつの動きに注意しろ。こちらに既に勘付いていて、わざとここまで誘導してきた可能性がある」

 

「そんくらいわかってるよ。もうこっちは殴る準備万端だぜ」

 

 

 すると男は壁の表面を手で触れる。微かにピッという機械音が聞こえたかと思うと、壁は真ん中から割れて奥に続く道を開いた。

 それから2人は男が中へ入る所を確認し、流れるように後ろへついて行く。

 奥へ奥へと進んで行くと、岩肌に囲まれた広い部屋に出る。その部屋に似合わない機械が部屋を覆い尽くすほど並び、例の男の仲間である研究員が白衣を着て何か作業をしているようだ。

 

 

「様子を伺うか」

 

「攻め込まないのか?」

 

「奴らがキラーズガンを量産しているのは確かだが…… この機械の数。まだ何か裏がありそうだ」

 

「キラーズガン以外にか… あ、おい巧也。あれ見てみろ」

 

 

 巧也は狩馬が指を指した方を見ると、そこにあったのはキラーズガンではなく全く別のものであった。

 1人の研究員がそれをここにある様々な機械の心臓部であろう部分に繋ぎ、モニターを見ながら何やら調整を行なっているようだ。

 

 

「キラーズガンとデリートガンナイフを組み合わせたような…… 幹部たちが使っているあの銃に似ている。見たところあれ一つだけのようだが、一体何をするつもりなんだ」

 

「どっちにしろ調べる必要があるぜ。アレが2年前の幹部が使用してたものだって言うなら嫌な予感しかしない」

 

「あぁ、出るぞ狩馬」

 

「おうよ!」

 

 

 巧也と狩馬が研究員の元へと走って近づいた途端、ただの研究員だと思っていたが、熟練の戦闘員のような身のこなしで素早く2人の周りを囲みキラーズガンを構える。

 それから2人はドライバーを装着して、それぞれ変身準備を行う。

 

 

「… なぜか懐かしく感じるな。あの頃の記憶が蘇ってくる」

《SIX》《SET》

 

「懐かしんでる場合かよ… んじゃ、行くぜ!!」

 

「「変身ッッッ!!!」」

 

《シクスガンアクション!! シェリフ!! オートアオート!!》

《壱式!! ギアチェンジ!! ゲツヨウ!!》

 

「全員、捕縛する」

 

「ハント開始だ!!」

 

 

 キラーズガンから一斉に放たれた弾丸を跳ね飛ばし、シェリフとハントに変身しする。それに続き周りの研究員たちは、キラーズガンを自分に向かって放ちウォンテッドへと姿を変えた。

 シェリフとハントは互いに駆け出し、タイムウエスタンとギアハンターで群がるウォンテッド達を一掃していく。

 

 

「たかがウォンテッドの1匹や2匹ッ… おっと! なんてことないな!!」

 

「なら、時間をかける必要もない…… 早々にケリをつけるぞ!!」

 

「任せろッ!!」

 

 

 シェリフはセイブドライバーの引き金を引き、近くにいるウォンテッドを蹴り飛ばして敵同士にぶつけ、そこへハントがギアナイフを押し込んでギアハンターにエネルギーを溜め始める。

 その動作に合わせ、シェリフは再度ドライバーの引き金を引いてタイムウエスタンを構えた。

 

 

「今だッ!!!」

 

「吹っ飛びなッ!!!」

 

《オート!! ファイア!!》

《キカンギアブレイク!!》

 

 

 そして放たれた2つのエネルギー弾はウォンテッドたちに炸裂し、キラーズガンを破壊した。キラーズガンを破壊されると、研究員たちは元の人間の姿へと戻って気を失ってしまう。

 ただそれに紛れて1人だけコソコソと逃げようとする輩をシェリフは見逃さず、腕を捻り上げて地面に倒す。

 その輩は先程まんまとここへと案内してくれた男である。

 

 

「いたたたたっ!! やめろ!! 離しやがれ!!」

 

「離してはやるが、ここについて話してはもらうぞ? もし嘘をつくようであるならば容赦はしないと思え」

 

「… そうか。あんたらが例の仮面の奴らかよ。なら、警察がそんな暴力的なことしちゃっていいのかな? 俺は確かにあんたらから見たら悪もんだけど一般市民と変わらねーんだぜ? そんな一般市民に警察が手を挙げてもいいのか〜?」

 

 

 そこへハントが近づいて来ると、躊躇なく顔面をぶん殴る。もちろんかなり手加減したのだが、それでも殴られた側はたまった者ではない。あまりの痛みに悶えている。

 そんなハントの行動に流石のシェリフもため息を吐く。

 

 

「お前は手加減というものを知らないのか…」

 

「これくらいやらないと喋らないだろからよ? それに…… こいつはどうやらもう1発喰らいたいらしいからなぁ?」

 

 

 ハントは拳を力強く握って男に見せると、男は堪らず口を開いた。

 どうやら話によれば、ここはキラーズガンを量産してる事に違いないが、それともう一つアイテムを創り出そうしているとのことだ──。

 

 

「─── デッドリーキラーズガン。2年前の幹部たちが使用していた物よりも遥かに性能がいい」

 

「… 数は?」

 

「数か? あれ1個だけだ。それにまだ完成もしてねーよ。例のラストガンナイフの力を完全に埋め込むことができッ──!!」

 

「ラストガンナイフだと…!!!? どういう事だ!!?」

 

「あ、あぁ、いやぁ…… そ、それは……」

 

「…… あそこの機械にあるのか」

 

「ま、待て!! アレに今、触れると爆発するぞ!! いいのか!!?」

 

 

 必死に止めようとする男を無視し、シェリフは心臓部の機械に近づいてみる。

 真ん中がガラスになっており中が見えており、覗いてみると確かにラストガンナイフがそこにはあった。

 

 

「これをいつ手に入れた?」

 

「………」

 

「狩馬」

 

「…ッわ、わかった!! 言うから!!…… 2年前、お前たちがファーストガンナイフを手に入れた場所あるだろ? その近くにそれが落ちてたんだよ」

 

「バカな…! あの時、総出での調査を行っても特に何もなかったはずだ! 真実を話せッ!!」

 

「いやだからホントなんだってば!! あんたらが消えた後、俺たち下っ端がその辺を探してたら見つかったんだって!! 嘘偽りない!! これはホント!! 本当に!!」

 

「その話しではまるで、俺たちの隙を見て誰かが置いたようにしか聞こえない。しかし、一体誰が…… まぁ理由はなんであろうと回収させてもらう」

 

「…ッ!!!? だ、だから取り出そうとしたら爆発するんだってば!!」

 

「その嘘は署で聞いてやる」

 

 

 それからシェリフが力づくでガラスを割り、中から取り出そうと触れた瞬間、光が溢れ出して部屋の中を照らし出す。全員、目を開けていられず手で顔を遮る。

 暫くして光が消え、再び目を開けると、特に何事もなくラストガンナイフが置かれていた。シェリフは警戒しながら取り出してみたが、やはり何もなく、爆発するどころか他に何か支障があったわけでもない。

 

 

「やはり何もなかったか… 全員、署まで連行する」

 

「…… やってしまった… こんなはずじゃなかったのに……」

 

 

 男は先ほどのような表情が消え、一気に青ざめてしまいブツブツと何かを言い始めた。シェリフとハントは特に聞くことはせず、警視庁に連絡し、全員を連行していった───。

 

 

 

 

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 RIVERSへと戻った巧也、狩馬、永理の3人は男に量産されたキラーズガンについての質問を投げかけた。安心したのはキラーズガンは量産されてはいるが、仲間内だけでの話であって、世界に広まっていることはないと言う。

 ただ気がかりなのは、あのラストガンナイフについてだった。爆発こそしなかったが、男のこの怯えようから察するに何かあるに違いないと思ったのだ。

 巧也は男に問う。

 

 

「率直に聞くが、あのラストガンナイフに何があると言うんだ? お前は今、俺たちが想像している以上の何かを知っているんだろう?」

 

「…… ボスがいなくなった今だから俺たち下っ端がこの世界を思い通りにできるんじゃないかって。そう思ってキラーズガンを大量に製作していた… そんなある時、ラストガンナイフを拾ったんだよ。例の場所で──」

 

「そのラストガンナイフを使用して、お前たちはデッドリーキラーズガンを開発した。しかしその力は強大であったが為、開発はできたが完成にまでは至らなかった…… だからこそわからない。アレには何がある? 何を見たんだ?」

 

「俺たちはデッドリーキラーズガンを作る過程で気づいてしまった。見つけてしまったんだ──── ボスのデータを」

 

「なに…? それはつまりテロスという事なのか……? テロスのデータが残っていたというのか…!!?」

 

「あぁ、ボスは…… 生きていたんだ。データとなっても生きていたんだ… ボスは死んでいなかった!!!」

 

 

 RIVERSはその言葉で誰もが静まり返った。信じたくはないが、この怯えようといい先ほどの不思議な現象といい。これが事実だとするならば、一刻の猶予もないという事になる。

 

 

「何故、生きているというのに破壊しなかったんだッ!!! 」

 

「デッドリーキラーズガンに作っている最中だったんだ… まだ完全に力を取り戻していないと推測した俺たちは、完全復活する前にラストガンナイフの力を移そうとしていた。そうなればボスも何らかの作用で復活したとしても力が抑えられると思ったんだよ…… そしてその途中でお前が強制的に装置を止めたせいで装置は暴走し、ボスは解放されてしまった」

 

「…… 俺があんな事をしなければ…!! くそっ!!」

 

 

 巧也は自分の判断によりテロスが再び解き放たれた事を知り、やるせなさに壁を殴る。

 そして狩馬はある事に気付いた。テロスが復活したとなると、その本体はどこへといってしまったのかという事だ。

 

 

「おいお前!! テロスはどこへ消えた!! どこに身を潜めやがったんだ!!」

 

「わからない… だが、必ず近くにいる。あの光が放たれた時、実態を持たないボスは何かを仮の依代にしているはずなんだ… それが物だとしても」

 

「近く…? お、おい。それってまさかよ…… 例のデッドリーキラーズガンでも良かったりするのか…?」

 

「…あ、そ、そんなッ…!! まさかボスッ────プギッ…!!!」

 

 

 突然、RIVERSの研究室のドアが開かれたかと思うと、そこから弾丸が飛んできて男の脳天を貫通する。

 巧也と狩馬は永理の前に立ち、研究室から出てきた者を警戒して銃を構える。ここに1人だけいなかった。彼女だけがここに姿を表さなかった。

 

 

「佳苗…!!」

 

 

 佳苗はデッドリーキラーズガンを構え、1人1人に銃口を向けていく。

 そして不気味に笑い始めるが、その声は女性のものではなく男性の声であった。ここにいる誰しもが聞いたことがある声。2年前のあの日に聞いた。二度と聞くことはないと思っていた。

 

 

「── 久しぶりだな。巧也、狩馬、そして永理よ」

 

「テロスッ!!」

 

「クククッ…… ようやく復活を遂げることができた。部下たちには大いに感謝しなければならないな」

 

「佳苗から離れろ!!!」

 

「それは無理な相談だ…… 既に孝四郎は仕留めた。後はお前たちを消すのみ」

 

「なんだと…? 孝四郎が?……… どうやら、お前をここで潰さないといけないようだッッッ!!! テロスッッ!!!!!」

《PRISON HUNDRED》《SET ARREST》

 

「私の零の力は、今の不完全な状態では発動できない…… だが、お前にはラストデイズの力で充分であろう」

《DISASTER》

 

「変身ッッッ!!!」

《プリズンガンアクション!! ポリス・エマージェンシーコール!! ハンドレッドテンス!!》

 

「── 災身」

《シ・ザイ・キリング・ウォンテッド!! ディザスター!! ディザスター!!ディザスター!!》

 

 

 テロスはデッドリーキラーズガンの銃口部分を押し込み、それから銃口を頭に向けて放つとみるみるうちに姿が変わる。見た目はライダーの時と同様テロスなのだが、背中にはマントのようなものがなく、所々のパーツが欠けている。しかしその禍々しさは流石はテロスというべきか。見た目は違えど、圧倒的な力が感じ取れる。

 

 

「さぁ、かかってくるといい」

 

「許さんぞテロスッ!!! よくも孝四郎をォォォォッ!!!」

 

 

 シェリフはテロスに飛びかかり、その顔面に怒りの拳をぶつけた──。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 警視庁の外に出たシェリフとテロスは、互いに一歩も譲らぬ攻防戦を繰り広げていた。ラストデイズの力を取り込んでいる事もあり、プリズンの力で停止させたとしても力づくでそれを破ってしまう。

 

 

「どうした巧也? 全てのフィガンナイフの力は使えないが、この圧倒的な力の前ではプリズンハンドレッドと言えど厳しいか?…… やはりその程度の人間が作った物など所詮はこの様という訳か」

 

「貴様ッ…!!!」

 

 

 孝四郎の手により作られたプリズンハンドレッドを罵られたシェリフは、更に怒りが込み上げ、ジャッジメントエンターンでテロスの頭を撃ち抜こうとした。

 だが、中身が佳苗であるという事を思い出し、引き金にかけた指を緩めてしまう。その隙を見抜かれて、シェリフは剣で斬り付けられた。

 

 

「ぐはっ…!! な、なんだと…!!? それはシモツキのッ!!」

 

 

 テロスの両腕から伸びている物は鋭い剣。それはまさにシモツキが使用していた武器であった。いや、能力である。

 まさかと思い、シェリフは銃を構えて弾丸を放つと、テロスはそれに合わせてエネルギーの矢を飛ばして相殺させて見せた。

 

 

「お前、その能力はッ!!!」

 

「クククッ…… ふんっ!!」

 

 

 そしてテロスが手を翳すと、シェリフの身体は身動きひとつ取れなくなってしまった。そのままテロスはデッドリーキラーズガンから弾丸を放ち確実にシェリフに命中させる。

 当たった瞬間に凄まじい爆発を引き起こし、巧也は変身が解けて地面に転がる。

 

 

「どうやら勝負はついたようだな」

 

「これは…フミヅキとミナツキのかッ…!!!」

 

「全てのフィガンナイフは使えないとは言ったが、幹部のものは使えないとは言っていない」

 

「何故だ… 一体どうして幹部たちの能力が使える!!」

 

「ラストデイズの能力は記憶を糧にする事。糧にすると言ってもモノにした記憶の特殊能力は使用できない… しかしこのデッドリーキラーズガンを併用する事により、どうやら過去に戦った者の奥底にある記憶… 能力が使えるようになったようだ」

 

「そんな事ができるはずない……」

 

「この2年という時間の中で部下たちはデッドリーキラーズガンを完成させることはできなかった… それもそのはずだ。ラストデイズの力はセイブドライバーであるからこそ扱える。つまり本来の姿は幹部たち全ての能力を扱える事。それこそが完成形だったのだ」

 

 

 それからテロスはデッドリーキラーズガンの銃口を、巧也の頭に当て、引き金に指を掛ける。抵抗したとしてもこの力の前では手も足も出ない。

 しかし巧也はここが最後だとは思わなかった。何故なら自分だけがここにいるわけではないのだから。

 

 

「テロス… 俺を殺す事はまだ叶わないようだ」

 

「どういう意味だ── っ…!!」

 

 

 すると突然、テロスの身体に草が巻きつき、コンクリートの地面が脚を包む込んだ。巧也はこの隙をつき、この発生源である所へと向かう。

 そこにはハントがおり、彼がテロスの動きを止めてくれていた。が、それも束の間であり、やはりラストデイズのスペックを受け継いでいる為直ぐに破られてしまう。

 

 

「おいおい、漆曜式と俺が涙目になるぜ… ったくよ…」

 

「気を付けろ狩馬。奴は全ての幹部の力を使える」

 

「あぁ、見てたぜ。あの化け物スペックと幹部どもの能力持ちとか流石にふざけんなって話だ…… こんな時に兆がいてくれたらどれだけいいことか」

 

 

 完全に分が悪い。このままでは簡単に全滅させられてしまうだろう。

 テロスが動き出すと2人は身構えたが、こちらを振り向かずに明後日の方向へ歩き出した。

 

 

「どこへ行く!!」

 

「さすがにこれ以上は器が持たない… 日を改めよう。当日までには完全に我がものとするつもりだ」

 

「テロスッ!!! 待てっ!!!」

 

 

 そのままテロスは何処かへと消え去ってしまい、佳苗も連れ去られてしまった。巧也は何も言わず、RIVERSへと戻っていく。テロスによって殺されてしまった孝四郎を運ぶ為に──。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「何故だ…… 一体どうして…!!!?」

 

「す、すみません課長。心配をおかけしました」

 

 

 孝四郎は息を吹き返していた。正確には元々殺されてはいなかったのだ。殺し損ねていた。

 彼が生きていることを知った巧也は、一気に肩の力が抜けて研究室にある椅子に座って胸を撫で下ろす。

 

 

「… しかし孝四郎。お前はテロスによって殺されたはずじゃ…」

 

「それがあの時──」

 

 

※※※※※

 

 佳苗は孝四郎の頭にデッドリーキラーズガンの銃口を向けた。突然の事に孝四郎は驚いて、反射的に両手を挙げた。この異常事態に佳苗が本人ではないという事が直ぐに察しがついた。

 

 

「お前は誰だ…」

 

「少しばかり弱々しいが… 順応してしまえば関係ない」

 

「その声… ま、まさかテロスッ!!?」

 

「よくわかったな。褒めてやろう… だが、お前はここで始末させてもらう。フィガンナイフを製作できるものは面倒になるからな」

 

「お前は兆くんによって倒されたはずじゃないのか…!!」

 

「あぁ… だが、私はこの身体が朽ちようとした瞬間、兆の細胞からラストガンナイフと繋ぎ合わせて侵入した… ただ困った事にその状態では次元の扉内で兆と共に消滅してしまう。だからこそ手を打った。ほんの一瞬だけだが、兆の身体を操り、フィガンナイフが入るほどの扉を開けて、ファーストガンナイフの中へと兆の消えゆくその身を繋いだのだ。それを囮に私はラストガンナイフと共に日を跨いだ。そしてついにその日が来た…… 一歩間違えれば消えていたが、さすが私のクローン。最後まで役に立ってくれた」

 

「お前ッ… うっ…!!?」

 

 

 咄嗟に孝四郎は近くにあったファーストガンナイフを掴み、急いで椅子から飛び上がる。ただその行為をしたとしてもこの距離では逃れる術ない。

 テロスは正確に孝四郎の心臓に標準を定め、逃げようとする彼の胸を撃ち抜いた。邪魔をするものはいない。弾丸は真っ直ぐに彼の胸を捉えた… かの様に思われたが、その瞬間に持っていたファーストガンナイフを弾丸に当てて弾いたのだ。

 それは自分の意思ではない。そんな暇はない。

 

 

「うぐぅ…!!」

 

 

 しかし撃ち抜かれたと思った孝四郎はそのまま気を失ってしまい、床にバタリと倒れてしまった。

 部屋が暗がりという事もあり、テロスは彼を仕留めたと思い、研究室から出て行ったのだった───。

 

※※※※※

 

 

「── とまぁこんな感じでして…」

 

「兆… お前が守ってくれたのか…… 何はともあれ生きてて良かった」

 

「課長。テロスですが…」

 

「全ての幹部の力が使える様だ。それにあのスペックはラストデイズそのもの。今の俺たちでは太刀打ちできない」

 

「…… 大丈夫です。僕がなんとかして見せます」

 

「なに? どうするつもりだ?」

 

「実はラストガンナイフなんですけどテロスが持っていってしまったんですが…… そのデータをファーストガンナイフに移したんです」

 

「なんだって!!?」

 

「何故かはわからないんですけど、やってみたらできてしまったんですよ… そこにいなくても彼は僕たちのために戦ってくれているんです。この小さなナイフの中できっと…… このデータを使って新たなフィガンナイフを作ります。そうすれば今のテロスにも勝てるはずです!!」

 

「わかった。頼んだぞ… 俺たちは明日まで休むとしよう」

 

「あ、そうだ課長。プリズンハンドレッドを貸していただけませんか?」

 

「勿論いいが… まさかこれを?」

 

「なんでもやってみます。佳苗さんを助けるためにも!」

 

「あぁ、任せた──」

 

 

 

 

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 次の日、巧也と狩馬の元に永理から緊急連絡が入り、すぐさま現場へと向かった。

 佳苗が不在の為、情報が全く回って来なくなってしまうので代わりとして永理に任せたのだ。彼女はその感じから忘れがちだが天才であり、佳苗の様には行かずともそれ相応の事はして見せた。

 そして2人は現場へ着くと、そこでは災身したテロスが既に周辺を更地へと変えており、まるで円形のリングの様に作り上げていた。

 

 

「随分と派手にやってくれた様だな… テロス」

 

「ほう… たった2人で来たか。これで戦力になるのか?」

 

「安心しろ。今日こそお前の最後の日だ」

 

「いいだろう。ただしこちらも数を用意させてもらおう」

 

 

 するとテロスが両手を広げると、そこら中から溢れんばかりにウォンテッドが這い出てきた。厄介であったヤヨイの力である。

 巧也と狩馬はセイブドライバーを装着して変身する。2人のフォームはそれぞれアフターネクストと漆曜式であるが、この2つの力でどれほど持つか定かではない。

 

 

「…… プリズンハンドレッドはどうした?」

 

「昨日の戦いで壊れたらしい。だが、お前にはアフターネクストで充分だ」

 

「なるほど。よくわかった。そういう事か… 否、私との差は大きく開いているのは事実。ここで始末してくれよう」

 

 

 テロスはハントに向けて手を翳すと、そこへ大量のウォンテッドの群れが彼を飲み込んだ。そのままハントは抵抗もできず見えなくなるほどに遠ざかって行ってしまった。

 どうやら戦力を把握して弱い方から確実に仕留めていくつもりらしい。

 

 

「狩馬ッ!!!」

 

「これでゆっくり掃除ができる」

 

 

 それからシェリフはネクストの力で瞬間的に近づき、アフターで渾身の一撃をテロスに叩き込んだ。が、金属を叩く様な音がなった。殴った拳はヒビが入り、その隙間から血が流れ出ている。

 これはサツキの硬化能力であり、まんまと防がれてしまったシェリフに追い討ちでウヅキの倍加能力で、逆に渾身の一撃をまともに受けてしまった。

 

 

「ガハァッ…!!!」

 

「脆いな」

 

「幹部の力が使えるだけじゃない…… その能力も完全にオリジナルより上回っているというのか…!! 」

 

「フハハハハハハハハハッ!!全てを零にしてやろう… 私に2度の敗北はないッ!!」

 

 

 シェリフに地獄と言っていいほどの打撃の嵐が襲い掛かる──。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「永理さん。それ取ってもらえますか?」

 

「はい! わかりました!」

 

「…… ありがとうございます… 課長、佳苗さんの為にも早く仕上げないと…」

 

「完成しそうですか…?」

 

「あ、はい… ただ時間が足りない……!!」

 

 

 RIVERSの研究室では、新たなフィガンナイフが開発された。孝四郎の手伝いで残った永理はテキパキと働き、もう完成だというところまではいったのだが、そこで最後の問題が発生していた。

 それはラストデイズのデータを、新たに作り出したフィガンナイフが受け止め切れないという事だ。プリズンガンナイフを2個と併用する事で使用可能となる程のデータ量とエネルギー。それを例え最短で作りデータを取り込ませたとしてもセイブドライバーにセットできるのはそのうちの一つである。

 

 

「プリズンガンナイフとテンスを合わせた時よりも性能を大幅に上げたこのフィガンナイフでさえ、ラストデイズを受け止められない…… マスターさんはそれを制御するあの装置を作り出した。だけどそれは長い時間をかけて作り出した物。だから僕がどれだけ頑張っても結局間に合わない…!!」

 

「そんな… このファーストガンナイフは使えないんですか?」

 

「無理ですよ永理さん。これは兆くんのデータの塊。謂わば彼自身なんです。だからこの状態のままでは巧也さんには扱えないんです…」

 

「兆さん自身……… 孝四郎さん。もう一度ファーストガンナイフとこのフィガンナイフを繋いでください」

 

「え? 一体どうするつもりなんだい?」

 

 

 先の見えない孝四郎は言われるがままに、2つのガンナイフを繋ぎ合わせると、永理はファーストガンナイフを手に取り優しく包み込む。

 そして彼女は喋り始める。

 

 

「兆さん。あなたと当初出会ったときは、『なんだこの変質者!!?』と正直思ってしまいましたが… 今では私に取って唯一無二の大切な人です。まぁあなたみたいな人は世界中どこを探しても1人だけでしょうけど…… 私の声が届いているのなら聞いてほしい事があります。この世にテロスが復活して、現在課長と戦闘中です。ですが、戦況は最悪で勝つ見込みがありません。ただこのラストデイズのデータをこのフィガンナイフに送ることさえできれば変わるかもしれない。でもできないんです…… 兆さん。あなたならどうしますか?」

 

 

 返事はない。永理の想いを綴った所で、彼女は既に鍵としての力を失ってしまった。この行為は悪く言えば無駄な行為だ。

 しかし、その無駄かと思われた行為はどうやら彼に届いている様だった。

 

 

「こ、これは…!」

 

 

 ファーストガンナイフをが光を放ち始め、繋いだコードを通って新作のフィガンナイフにエネルギーが送られていく。

 孝四郎は焦り、急いで引き抜こうとしたが、永理はそれを静止して真剣な顔で頷いた。彼女の真っ直ぐな瞳を信じ、孝四郎も再びその様子を伺う事にする。

 

 

「孝四郎さん… これって……」

 

「信じられない。こんな膨大なデータとエネルギーがフィガンナイフの中に入っている…… いや、そうじゃなかったかもしれない」

 

「え?」

 

「僕はまた彼に助けられました。そうですよね…… 僕が作り出したフィガンナイフは完成していたんです。けれどその膨大な量に限界を超えて破裂してしまうんじゃないかと危惧していた…… しかし結果はこの通りでした。やって見なければわからないと口に出していったものの振り切れてなかったようです」

 

「つまりこのフィガンナイフは…!!」

 

「完成です… プリズンガンナイフ… いや、ジェネラルXガンナイフが!!」

 

「やりましたね孝四郎さん!!」

 

「ではこのジェネラルXガンナイフを課長に届けてもらってもいいですか?… 危険なことは承知の上ですが、僕よりも永理さんなら確実だと思います」

 

「任せてください!! では行って来まっ───」

 

「─── おいおい孝四郎さん。女1人を戦地に向かわせるとは見過ごせないぜ? 永理もそう思うよな?」

 

「「え…?」」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「うわぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

 

 

 幻を見せられ攻撃ができず、例え攻撃を当てたとしても身体がスライムのようになり通らない。逆に相手の攻撃は当たる度に力が無くなり、筋力を強化された腕でその身を殴られる。

 シェリフはテロスの絶え間ない攻撃にまともに触れることすらできなくなっていた。このままでは装甲の耐久値も時間の問題だろう。

 

 

「ハァ… ハァ…」

 

「2年前と変わらず、お前のその覚悟は目を見張るものがある。しかし覚悟を決めただけでは何も変わらない… そして今、この女は完全に私の身体の一部となった。もう救い出すことはできない。最もお前はここで死ぬ事になるのだから関係はないか」

 

「…… 佳苗は返してもらう。この世界も救う。あいつが成し遂げた事を今度は俺がして見せる。お前を再びこの世から消し去るッ!!」

 

「言葉だけでは何も変わらない。ならばやってみせろ」

 

「そのつもりだッ!!!」

 

 

 それからシェリフはテロスに向かって走り出す。テロスは両腕を形状変化させ、銃の形へと変えて機関銃のように連続して撃ち出した。

 それをシェリフは紙一重で躱していき、至近距離まで近づくと、殴られる瞬間に時を飛ばしてセイブドライバーの引き金を引く。

 

 

《アフターネクスト!! オーバーファイア!!》

「ハァァァァッッ!!!」

 

 

 アフターネクストの強烈なキックがテロスの腹部に炸裂する。凄まじい衝撃波が発生するが、テロス自身には全くと言っていいほど響いてはいない。

 そしてテロスはシェリフにデッドリーキラーズガンを構えて放つと、その威力に変身が解けてしまう。

 

 

「最後はお前の父、ミナツキの能力により殺してやろう。ここまで耐えた褒美としては素晴らしい事だと思わないか? 私ではなく自らの親に始末されるのだからな」

 

「テロスッ…!!!」

 

 

 流石に二度も助けはない。ここで全てが終わるのかと思われた。

 再び構えたデッドリーキラーズガンの引き金が引かれようとしたその時、テロスの銃に1発の銃弾が放たれ思わず手を離してしまった。

 

 

「くっ… 何者だ!!」

 

「何者だと? お前が1番よくわかってるイケメンだぜ!!」

 

「まさか… あり得ない…!! 何故お前がここにいる!! 兆ッ!!」

 

 

 永理と共に愛馬のバオに跨り銃を構えそこへ現れたのは、消えたはずの兆であった。

 テロスは目の前の光景を信じられなかった。兆には何かを依代とする力はない。だからこの場に現れているのはありえない事だったのだ。

 その隙に巧也は後退すると、兆は後ろに乗る永理からジェネラルXガンナイフを受け取ると、それを巧也に投げる。

 

 

「兆… お前どうして!!?」

 

「その話は後にしようぜ。それより巧也さん! それ使ってやってくれよ! 孝四郎さんが必死になって創り出したジェネラルXガンナイフだ! そいつなら今のテロスを簡単にぶっ飛ばせる!! 佳苗さんも救える!!」

 

「…… ありがとう。兆、永理… 孝四郎!」

 

 

 巧也はジェネラルXガンナイフを構え、テロスに向き直る。

 その目は今までの元とは違った。更に鋭く、それでいて真っ直ぐに彼を見つめる。全てを守る為に今一度、真の覚悟を決めた。

 

 

「お前の言う通り言葉でなく実際にやって見せよう。俺の覚悟がどれ程のモノなのか。テロス、お前のその身にわからせてやる」

 

「そのフィガンナイフは…」

 

「人々の平和は俺たちが守る。それが警察だッ!!!」

《GENERAL HUNDRED》《SET ARREST》

 

 

 セイブドライバーにジェネラルXガンナイフを差し込み右手をドライバーの引き金に指をかけ、左手を胸の前でグッと握って拳を作る。

 

 

「変身ッッッ!!!!!」

 

 

 そして巧也はセイブドライバーの引き金を引くと、巨大な銃が出現し、アーマーが舞い上がる。ラストデイズと同様に全身に装甲を身に纏い、そこへ更に被さるようにアーマーが装着される。

 そして胸に大きなXの字が浮き上がり変身が完了する。

 

 

《ジェネラルガンアクション!! シェリフ!! エマージェンシーコール!! ハンドレッドX!! バースデイ!!》

「── テロス。お前を捕縛する」

 

「プリズンハンドレッドと少し違うがそれだけだろう… 終わる事に変わりはない!!」

 

 

 テロスはエネルギーの矢を飛ばし、シェリフをダイレクトに捉える。それから続け様に何十本もの矢を放ち、辺りは砂埃が立ち込めて彼の姿は見えなくなる。

 所詮はこの程度の力だと思ったテロスは標準を兆たちに向けようとするが、身体が何故か動かせなくなっていた。

 

 

「な、なんだ…!! 身体が動かせない…!!」

 

「この程度で良かったと思うんだな」

 

「貴様ッ…ぐはっ!!?」

 

 

 ジェネラルはラストデイズのスペックを全て受け継いだわけではない。だが、能力だけは全て受け継いでいた。本来使うことができないはずのプリズンでさえも扱うことができる。

 時を飛ばして一瞬で近づき、テロスの動きを停止させ、倍化させた力で思いっきり殴り飛ばした。

 するとその瞬間テロスから佳苗だけが飛ばして地面に倒れそうになった所を受け止める。シェリフは彼女を兆たちの元へ運ぶ。

 

 

「バカな…!!!?」

 

 

 デッドリーキラーズガンを拾い上げ、銃口部分を押し込んむと、先端にエネルギーの塊が作られ始める。それをシェリフに向けて放つと、エネルギーの弾丸は地面を抉りながら真っ直ぐに飛んでいく。

 あの弾丸をまともに喰らえばひとたまりも無い。だが、シェリフはそこから微動だにしなかった。

 

 

「…ッ!!?」

 

 

 次の瞬間。テロスの放った弾丸はシェリフの手前で固定され、その位置で浮かび続けていた。

 シェリフはそれを背中を優しく押すように軽く押すと、 テロスが放ってきた弾速と同様のスピードで本人の元へと帰って行く。

 それに直撃したテロスは吹き飛ばされ、地面を無様に転がる。

 

 

「ぬぐぅ……ッ!!! 私が2度敗北するなど有り得ないッ!!!」

 

「今度はお前が零になる番だ。この世界からなッ!!!」

 

「貴様ァッッッ!!!!!」

 

 

 それからシェリフはセイブドライバーの引き金を引いて天高く飛び上がる。1〜12の数字がテロスに向けて一直線に並び、それら全てを蹴り抜けて行く。

 

 

《ジェネラル!! エックスファイア!!》

 

「全てを喰らう!! 喰らうのだッ!!!」

 

「うおぉおぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!!」

 

 

 そしてシェリフの一撃でテロスの身体を突き抜けると、彼の胸に大きなXの字が浮かび上がり、全身にバチバチと火花が散る。

 

 

「私は… 消えるのか……!!! ぐぅぅ……ッ!!! 巧也ッ!!!」

 

「これで終わりだテロス。次は平和のトリガーとして生まれてくる事だな」

 

「ガッ!!! ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 

「─── 任務完了だ」

 

 

 テロスはチリ一つ残さず、この世から跡形もなく消え去った──。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 あれから1か月。

 全てが終わったこの国はウォンテッドの脅威がなくなり、いつぶりかの日常を取り戻した。これによりRIVERSは解散をせざるを得ない… と、思われたのだが、いつ再び脅威が訪れてもいいように引き続きRIVERSは警視庁に残るらしい。メンバーはその時までしばしの別れ。

 それから日を改めて、時間が合ったメンバー達は、BAR TRIGGERに集まって打ち上げをしている所である。

 

 

「── 兆は生き返ってわけではないということか?」

 

「実態はあるけどない。生きているようで死んでいるって感じ。触れるホログラムみたいな? まぁいずれは自分の身体を取り戻せるようにするけどさ」

 

「理由はなんであれまた再び集まれたんだ。よしとしよう」

 

「良くないッ!!! あのトリガーさんが薄々のハムみたいな状態とか絶対無理ッ!!! 孝四郎さん手伝ってくれるよな!!? この身体を元に戻すのをよぉ!!?」

 

「… ふっ、相変わらずだな」

 

 

 現在のバーはイッシュウが経営している。巧也がなんとか手を回してくれたおかげもあり、このバーだけは引き続き使用できていた。いつか兆が帰ってくるのを信じていたのもあるが、永理の必死の願いを受け止めたというのもある。

 すると兆が永理に近づこうとした瞬間、狩馬が永理を抱き寄せ、兆から遠ざける。

 

 

「おい兆ッ!!! 俺は認めてないからな!!! 否、認めたくない!!!」

 

「なんでだよ… 俺たちはもうこれがこうなってるんだからさぁ… ね? お兄さん?」

 

「お兄さんって言うなァァァァァッ!!!!!」

 

 

 また言い合いをし始めた兆と狩馬を永理がアタフタとしながら止めようとしている。

 そんな光景を見ながら、巧也は酒を飲み干すと、佳苗が空いたグラスに酒を注ぐ。テロスに取り込まれた彼女であったが、特にそれ以降は何事もなく生活できている。巧也は本当に良かったと心底思った。

 

 

「ねぇ巧也?」

 

「なんだ?」

 

「ありがとう」

 

「…… やめろ。小っ恥ずかしい。あれから何回言ったんだ」

 

「いいじゃないの〜。本当に感謝してるんだから… まぁえっと… これからもよろしくって言いたいのよ」

 

「そうだな。俺もよろしく頼む。これからも期待してるぞ」

 

「任せなさいよ。部長さん」

 

 

 世界は再び平和が戻った。

 しかし全ての脅威が無くなったわけではない。バラバラなってしまった彼らは… RIVERSは再び同じ場所へと集まるだろう。何故なら──。

 

 

 

── 次元の扉から這い出てこようとする。この世界を喰らう怪物が現れようとしていたのだから…

 

 

 

仮面ライダーシェリフ The end




以上です!!

次回、本当の最終回!!
「仮面ライダートリガー OneDay」

次回もよろしくお願いします!!

※必殺音追加しました


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仮面ライダートリガー OneDay

皆さんご無沙汰しております。

あらすじ
世界からウォンテッドがいなくなって平和を取り戻した現在。RIVERSは次なる脅威の時まで暫しの解散となっていた。そんなある時、崩壊したはずの次元の扉が再び開き、そこから謎の怪人が出現する。圧倒的なその力で世界を滅ぼそうとする敵に兆たちは……

それでは後編であり、本当に最後のトリガーどうぞご覧ください。


 ここはBAR TRIGGER。

 裏路地にひっそりと経営し、そこを知っている客は僅かであり、その殆ども常連ばかりである。現在いるのは、このバーのマスター… 二代目のな。カウンターにガタイのいい男… もいない。それとは対照的にモヤシのような男がここの二代目ってわけだ。

 そんなバーに帽子を被ったイケメンと胃がブラックホール女が扉を開け、カラカラと音を鳴らし入っていくと同時にイケメンの方が叩かれる。

 

 

「いってぇ!! 何するんだよ永理!!」

 

「兆さん。何故かはわからないんですけどバカにされたような気がして」

 

「きっと気のせいだ」

 

「へぇ〜」

 

 

 あれから更に3ヶ月の時が経った。今の兆は永理のバディとして日々悪党共と戦っている。もちろんその悪党というのはウォンテッドのような怪人ではなく、日常に潜む悪。窃盗や暴力、非人道的な行為をする輩を捕まえる。元々指名手配犯だった兆が、今では警察の仲間である… と言っても、警察になったわけではない。自由にやりたい彼から断っている。

 そんな感じで今日は休暇であり、永理と共にバーへとやって来たわけだ。

 2人は並んでカウンターに座ると、奥からイッシュウが出てきた。

 

 

「いつもの頼むぜ」

 

「お前も暇人だな。最近来たばかりだろ?」

 

「あれは休憩がてらに来たんだよ… べ、別にサボってたわけじゃないからね? ホントだからね?」

 

 

 永理はそういう兆にこれでもかとジト目で見てきた。兆もそちらを見ないよう、そっぽを向いて目線を合わせない。

 それから兆たちの前にグラスが2つ並べられる。2つとも中身はミルクである。

 

 

「…… それで兆。お前の身体はどうなったんだ?」

 

「ん?… あぁ、まだデータの身体さ。今は孝四郎さんと話し合いながら元に戻そうとはしてるが… まぁそう上手く事が進まないよな。それと皮肉な事にこの世に居られるのは、テロスが俺をフィガンナイフに閉じ込めたおかげだ。全く複雑な気持ちだぜ」

 

「いつか治るだろうよ。お前には幸運の女神が付いてるんだからな」

 

「幸運の女神…? あー……」

 

 

 イッシュウにそう言われ、兆は永理の方を見ると既にグラスのミルクは無くなっていた。そして色々な感情が彼の全身を駆け巡り、出した答えはこれである。

 

 

「やっぱり歩くブラックホール搭載掃除機だな」

 

「せいっ」

 

 

 その瞬間、永理による綺麗な正拳突きが横っ腹に突き刺さり、兆は床を転がって悶えている。イッシュウもそれを見るなり自業自得だと、首を横に振り永理のグラスにミルクを注ぐ。

 

 

「お前も苦労してるな」

 

「いつも通りですよ… まぁそこが兆さんのいい所というか…」

 

「ホント変なコンビだなぁお前ら」

 

「私は変じゃありませんよ兆さんが変なんで── あ、すみません電話が… はい内嶋です…… わかりました。兆さん!」

 

 

 床で転がっていた兆てあったが、永理のその表情を見るなり事態を把握した。どうやら事件のようだ。ここはトリガーさんの出番だと早速行こうとする兆であるが、永理はそれを引き止める。

 

 

「ちょっと待ってください兆さん!」

 

「な、なんだよ。どーせあれだろ? 窃盗とかチンケな感じのやつじゃないのか?」

 

「兆さん。今セイブドライバーは持ってますか?」

 

「セイブドライバー? 持ってるわけないだろ。孝四郎さんところに置いて来てるし…」

 

「なら、急いだ取りに戻りましょう!」

 

「だから一体何だって言うんだ? まさかウォンテッドでも出たのか?」

 

「…… はい」

 

「… おいおいジョーダンならその胃袋だけに… わかったよ。すぐに戻ろう。RIVERSメンバー再集結だぜ!!───」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 兆と永理はRIVERSに急いで行くと、既にいつものメンバーたちが揃っていた。全然会ってない訳でもなかったが、何故かとても懐かしく自然と嬉しさが込み上げてくる。

 しかし、そうは言ってられない。ウォンテッドが現れたという予想外の事態。全員席に着くなり巧也が話し始める。

 

 

「皆、まずは久しぶりだな。ここに集まるのももう数ヶ月前となるが… ただ、今は昔話をしている場合じゃなくなった。予想外の事態が起きた。街にウォンテッドが出現したという情報を佳苗からもらった」

 

「えぇ、この反応は信じたくはないけど確実にウォンテッドよ。それも一体だけじゃないの。複数体確認されているわ」

 

「…… どうやら危惧していた脅威というのが来てしまったという訳だ。まずはウォンテッドの殲滅から入る。兆、狩馬はわかっているな? 永理は避難誘導。佳苗は情報が入り次第また連絡をしてくれ。孝四郎は…」

 

「準備できてますよ課長… じゃなかった部長。セイブドライバーとキカンドライバーの調整はバッチリですよ」

 

「よし… RIVERS出動だッ!!!」

 

「「「「了解ッ!!!」」」」「あい」

 

 

 兆たちが出て行った後、残った佳苗と孝四郎はこの異様な事態について少し話しをした。

 ウォンテッドはキラーズガンという道具を用いて強力な力を手に入れる事ができる。例外もあるが、基本的にはキラーズガンを使わなければそうはならない。今回の件で可能性として考えられるのは、あの銃が再び作り出されたという事になる。

 

 

「だけどこんな短期間でキラーズガンを大量生産できると思う? あり得ないわよね?」

 

「仮に技術者がいたとしても、既にこちら側の戦力は把握しているはずです。勝てる確率が低いのに攻めてくる事なんてまずやらない…… デッドリーキラーズガンでさえ2年かけて作り出して破壊されたのに、こんな短期間でそれ以上の物を作り出したというのも考えにくいです」

 

「そうよね。キラーズガンだけで攻めてくる訳ないわよね…… 今回の件、嫌な予感がするわ。何か今まで異常に危険な感じがするの」

 

「僕もです。この地球に何か恐ろしいモノが再び迫っているんじゃないかって…」

 

「…… ん? 何かの反応───ッッッ!!? これってまさか…!!」

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

「この位置と出現場所… 間違いないわ。2年前と同じ!!」

 

「一体何があったんですか…?」

 

「─── 次元の扉が現れたのよ」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「お、おい…… 何だよこれ… ウォンテッドだけじゃねーのかよ!!?」

 

「…… 兆。アレは完全に崩壊したはずだろう? 何故、再び開いているんだッ!!!」

 

「おうよ巧也さん。あの時、確かにぶっ壊れたはずだぜ… だけどこれを見る限りだとそうも言ってられないよな」

 

 

 既に3人は視認していた。佳苗から巧也宛てに連絡が来ているのだが、最早それに対応するどころではない。

 2年前と同様の場所。空は裂けて、周りに禍々しい雲が裂けた中心を囲うように並んでいる。まさにあの時と同じ状況なのである。次元の扉が再び開き始めたのだ。

 

 

「巧也さん。疑うようで悪いんだけどさ。テロスは完全に消えたんだよな? この世のどこにも存在してないんだよね?」

 

「絶対的な自信を持てるくらい確実にあいつを仕留めたと言える。だが、一体なぜ次元の扉が開いた……」

 

「… どうやらその答えはあいつが知ってそうだぜ」

 

 

 兆が次元の扉に指を差し、2人は揃ってそちらを向く。

 扉から街を1つ掴み上げてしまうほどの巨大な手が出現する。手は扉を…基、空の裂け目を更に広げていく。そして広がった中心部から姿を現したのは、巨大な手とは対照的に大人の男性と変わらない大きさの怪人がゆっくりと地上へ降りてきた。巨大な手は怪人が降り立っても尚、裂け目を広げ続けている。

 それから兆たちは、それぞれセイブドライバーとキカンドライバーを装着し、いつでも変身できるよう構える。

 

 

「テロスとは全く違う。あれが同じ生物? でいいのかわからないけど、なんなんだろうこの胸騒ぎ…… すっっっっごいまずい気がするんだけど」

 

「とにかく話し合いで済みそうにない! 行くぞッ!!」

 

《ONE》《SIX》

《SET》

 

「「「変身ッッッ!!!!!」」」

 

《ファーストガンアクション!! トリガー!! リボルヴリボルバー!!》

《シクスガンアクション!! シェリフ!! オートアアート!!》

《壱式!! ギアチェンジ!! ゲツヨウ!!》

 

 

 それぞれ変身終えると、明らかにこちらに近づいて来ている怪人の元へと駆け出す。近づけば近づくほど、近寄られれば寄られるほど、その圧はトリガー達の身体にヒシヒシと伝わってくる。

 怪人まで近づくと、トリガーゆっくり前へと出てコンタクトを取ろうとする。

 

 

「はーい。地球のエリアA内にようこそ〜!…… あ、なに? 冗談通じない人? そう… で、あんたは何しにここへ来たんだ? 観光ってわけでもないだろ」

 

「………」

 

「黙りは女の子に嫌われるぜ。モテる男の秘訣を教えてやろうか? 大丈夫だ。聞かれずとも教えてやろう」

 

 

 いつもの軽い感じのトリガーにシェリフは手が出そうになるが、狩馬が止めに入り後ろへ下がる。

 明らかにふざけている態度ではあるのだが、怪人はまるで虫のように表情がわからない。その容姿は何処かトリガーに似ていなくもない。ただ見た目が悍しく、関節から何までが生物っぽさが出ている。

 

 

「もしもーし、とりあえず何をしに来たのかだけでも教えてくれよ──」

 

「我ハ『ファースト』。コノ世ヲ食ウ」

 

「え? なんて? 今、とんでもないことが聞こえた気がするんだけど…」

 

「全テヲ喰ラウ…!!」

 

 

 次の瞬間、ファーストと名乗った怪人が両手をバッと広げると、凄まじい衝撃波により全員が壁に吹き飛ばされた。

 トリガーたちはすぐに体制を立て直し、銃を構えて一斉に射撃する。

 

 

「… ちぃっ!! 冗談じゃねーぞ!!」

 

「あーもう絶対強いと思ったよ!!」

 

 

 トリガーたちが放った銃弾はファーストの半径1m以内でその場に止まっている。ファーストは人差し指を振るうと、銃弾は全て逆の方向を向き、弾くような仕草をした瞬間、弾は一斉にトリガーたちへと帰ってきた。

 

 

「ぐわぁぁぁっっ…!!!?」

 

「… やっぱり本気でやるしかないっぽいぜこれ!!」

 

 

 やはり只者ではないと悟り、体制を再び立て直すと、それぞれ今ある最強のアイテム。フロンティア、ジェネラル、漆曜式をセットして変身する。

 

 

《フロンティアガンアクション!! ピーストリガー!! エブリバディフォーエバー!!》

《ジェネラルガンアクション!! シェリフ!! エマージェンシーコール!! ハンドレッドX!! バースデイ!!》

《漆曜式!! ギアチェンジ!! スタート!! ニチ・ゲツ・カ・スイ・モク・キン・ドッ!! オールウィーク!!》

 

 

 それから変身を終えた3人はファーストを囲み、シェリフの合図と共に一斉に飛びかかる。圧倒的力を見せるファーストであるが、3人の現最強のフォームでなら手も足も出ないだろう、と誰もがそう思っていた。

 しかし3人の同時攻撃を避けながら、逆に自らの攻撃を確実に当てていく。

 

 

「どうなってるんだこいつ…!!」

 

「俺たちの能力が効いていない… いや、打ち消しているのか?」

 

 

 そしてファーストは手を何かを握るような形に変える。あの形をここにいる3人はすぐに気づく。何故なら銃を握っている仕草なのだから。

 仕草だけであるならばよかったが、そこへ何処からともなく銃が出現する。どう見てもフォーエバーピースメーカー… トリガーの銃である。

 

 

「お、俺のはここにある…… ッ!!? こいつコピーできるのか!!? さっきから動きがおかしいのもそのせいだ… 俺のフロンティアの無限回転エネルギーはどんなものでも突き破るはずなのにさぁ」

 

 

 フロンティアでの攻撃をファーストに行った時、全てを受け流すはずであるのにも関わらず、ファーストからの攻撃を喰らってしまった。フロンティアの力を止めるにはテロスのように零にするか。又は無限回転とは逆の回転をぶつければ良い。この2択だけ。

 その2択の後者を仕掛けてきたのはファーストである。他の2人も同様にコピーされ、簡単に返されてしまったのだ。

 そんな事を考えていると、無限回転が乗った銃弾がファーストより放たれた。当たれば装甲を貫いて最悪の場合即死である。

 

 

「巧也さん!! 狩馬さん!!… くっ!! うおぉぉぉらぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

 

 シェリフとハントが喰らったらの話しだ。トリガー自身が食らえば相殺できる。

 しかし相殺できるからと言って、そのダメージが半減したりするわけではなく、フロンティアの威力が直撃でその身にダメージが入るという事。

 兆は変身が解け、力なく地面に倒れ込む。

 

 

「ガハッ──」

 

「き、兆ィィィィィッッッ!!!!!」

 

「おい巧也ッ!!! ここは一旦引くぞ!!!」

 

「… わかった…… ハッ!!」

 

 

 シェリフは兆を抱え込むと、ジェネラルの能力… ラストデイズの力を使い、一瞬にしてその場から消え去った。ファーストは消えた3人を追う事はせず、また空へと帰って行くと、バリバリと巨大な手で空の裂け目を大きくして行く。

 

 

「全テヲ喰ラウ… 飲ミ込ム────」

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「佳苗。次元の扉の様子はどうだ?」

 

「テロスの時は0という数字が出てきただけでしょ? 本来ならあのまま全ての記憶を吸い込むつもりだったんだろうけど… 今回のこの敵。ファーストは次元の扉を徐々に広げているのよ」

 

「次元の扉を広げている? テロスの場合は記憶を一斉に奪うために…… 待てよ。まさかだとは思うが、こいつは記憶だけでなく、世界そのものを喰らおうとしているのか?」

 

「… 巧也の言う通り、次元の扉から発せられるエネルギーは更に強くなってきているの。もし何も対策しなければ世界は……」

 

「ただファーストに対抗できる手段がない。相手の能力を真似るとなると… 一体どうすれば良いんだ…」

 

 

 一向はRIVERSに一旦戻り、対策を練ろうにも今は何も思いつかない。巧也と佳苗が頭を抱えている最中、研究室でも兆と孝四郎も同じく頭を抱えていた。ファーストに対抗できる新たなフィガンナイフを製作するつもりであったものの、全てコピーされているとなると、全く新しいものでありそれでいてコピーされないような機能をつけなければならない。

 

 

「いや無理だろ!!!?… いたたっ…」

 

「皆のフィガンナイフの力は奴に一瞬でコピーされてしまう… でも、今あるフィガンナイフを超えるアイテムを作るなんて一体いつまでかかるんだ? そんな時間はない。時間をかけたとしてもできるかどうか…」

 

「今回ばかりは励ましの言葉を添えたとしても無理だな。マスターが残してくれた無限回転の装置と永理の奇跡が創り上げたフロンティアフォーエバー。孝四郎さんには悪いがジェネラルハンドレッドXよりは強いと思っている。だからこそなんだ。奇跡とかが起こらなければ、今の俺たちに勝てる道はないと言う事」

 

「全くその通りだよ。その通り過ぎて… 奇跡か。もう神様に縋るしか方法はないのかな…」

 

「いや待てよぉ…… もしかしたらこれなら──」

 

 

 するとRIVERSの扉が突然開き、狩馬と永理が帰って来た。2人は住民への避難や報告を行っており、それが終わって戻ってきたのだが、血相を変えておりただ事ではない様子。

 それと同時にRIVERS内に警報が鳴り始める。

 

 

「何事だッ!!?」

 

「ちょっと待って…… こ、これは…!! 次元の扉が更に開いてる!! 空を覆い尽くすほどの!!」

 

「どうやら一刻の猶予もないようだな… 兆!! 狩馬!!」

 

「あぁ、行くぜ!!… おい兆!! 急げ!!」

 

 

 巧也と狩馬に呼ばれた兆は研究室から出ると、何かを思いついたのか笑顔を見せる。2人もその顔を見ると自然に笑顔が溢れる。何故かはわからないが、勝てそうな気がしてきたのだ。こんな状況でなんの根拠もない。ただやれる気がする。

 3人は外へ出ようとすると、永理が近づいてきて火打ち石のように見える石を持っている。

 

 

「部長!! 兄さん!! 兆さん!!… 頑張ってください!! 今日の皆さんも──!!」

 

「勝利の日ッ!!!… だろ? 行ってくるぜ永理!!!」

 

 

 永理はカンカンと石を叩くと、3人は次元の扉へと向かう──。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 そして兆たちは再び次元の扉へと向かっていた。まだ向かう途中であるが、扉の真下の建物は崩壊し、空の裂け目は街の1つや2つの問題ではないほど大きく広がっていた。全てを飲み込むという言葉通り、真下の街は既に扉の中へと飲み込まれているようだ。

 

 

「… 巧也さん。狩馬さん。敵さんも準備できているようだぜ」

 

 

 すると何処からともなく周りからウォンテッドが溢れ、一瞬にして兆たちを囲む。兆たちもそれに合わせてドライバーにそれぞれフィガンナイフとギアナイフをセットして変身する。

 フロンティア、ジェネラル、漆曜式になった3人は雑魚を倒しながら扉へと急ぐ。

 

 

「そんなんで俺たちを止められると思ったら大間違いだ!!」

 

 

 そしてハントは横から迫る敵をコンクリートを操って叩き潰し、真正面にいる敵をトリガーとシェリフの同時射撃で一掃する。最早この3人の敵ではなく、順調に目的の場所まで向かっていく。

 

 

「おぉっと!!?」

 

「次元の扉へ近づくにつれてウォンテッドの数が増えてきている…!!」

 

 

 先ほどとは比較にならないほどのウォンテッドの群れ。3人は呼び出しているのはファーストであると確信はしているが、もう一つ確信することができたのだ。それはこのウォンテッド達が能力がヤヨイのものであるという事。ヤヨイの能力は見た目の通り雑魚を呼び、強化していくのだ。その特徴によく似ている。

 

 

「巧也さん。狩馬さん。どうやらファーストの能力はコピーじゃない。記憶を再現できるんだ。この光景は俺の記憶の中で見覚えがあるし、やられたこともある」

 

「次元の扉は他の次元へと移動する架け橋であり、世界の記憶を奪うほどのエネルギーを持っている。あの怪物はきっと俺たちの記憶から作られたものだ。根本的な原因のテロスの執念という記憶を元として他の記憶で肉付けしていった。だから奴のやるべき事はただ一つ。世界を喰らうという事のみ」

 

「…… 記憶を再現する力か。全く訳わからない化け物を生み出して散りやがってあの野郎…!!」

 

 

 更に増え続けるウォンテッドたちにシェリフとハントは立ちはだかる。

 そしてトリガーの背中を押して、次元の扉まで行くように告げる。2人はここで残り雑魚を相手するらしい。

 

 

「2人とも…」

 

「ここは俺たちに任せろ。兆、お前は次元の扉へ行け。ここで食い止めなければ、街も吸われる前にこのウォンテッド達によって崩壊させられる」

 

「後は任せたぞ。つーか俺が行ったところで勝てないのわかってるからな。俺は勝つ確率が高い方を選ぶぜ…… 妹が選んだ男だ。きっと上手く行くだろうよ」

 

「帰って来たら妹さんはもらいますので、ではお願いしまーす!!!」

 

「あ、てめぇ!!!…… けっ、負けるなよ」

 

 

 2人はその場に残り2年前と同じように、いやそれ以上のウォンテッドと対峙するのであった───。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「どけどけっ!! 本当にどけぇ!!!」

 

 

 近づく雑魚たちを掻い潜り次元の扉を目指しているトリガーであったが、何故か周りの敵が気付かないうちに別の者に変わっている事に気づいた。

 ウォンテッドかと思われたそれは全くの別物であり、今までに類を見ない怪人である。

 

 

「な、なんだ? こいつら? ウォンテッドじゃない……?」

 

 

 そして謎の怪人が襲いかかって来たが、フロンティアの力で近づく敵を一掃するがすぐにまた新しく増えていく。

 いつまでもループしていたら先へは進めない。

 

 

「あーもう畜生ッ!!! なんなんだお前ら!!?」

 

 

 それからまた謎の敵が飛びかかってくるので、再び構えて受けようとした次の瞬間である。

 何処からともなく謎の音声が聞こえ、目の前にいた敵を全て蹴り抜いていく。トリガーは何が起こったのか分からず、辺りを見回すと目の前に自分とよく似ているようで違う。そんな仮面の戦士がそこにはいた。

 

 

「あんたは一体……」

 

 

 全て倒したはずだったが、やはりまた周りからワラワラと現れ始める。トリガーは謎の敵に対応しようとするが、仮面の戦士は手の平をこちらに向け静止させる。

 そして仮面の戦士は口を開く。

 

 

「えっと… あなたはここの世界の人ってことでいいですか?」

 

「あ? まぁうん。ていうか、あんた誰よ」

 

「僕は仮面ライダーアベンジと言います。ここにいるジェスターは僕に任せて。あなたはやるべきことがあるんでしょう?」

 

「お、おう!! なんだか分からないけど…… 仮面ライダーアベンジか…」

 

「ん? どうしました?」

 

「なら、俺は仮面ライダートリガーだ。あんたとはまた会える気がするぜ」

 

「…… 僕もです。不思議ですね… さ、行ってください!!」

 

「ありがとよ!! 任せたぜアベンジ!!」

 

 

 トリガーが去った後、アベンジと名乗った仮面の戦士はジェスターと呼ばれる怪人たちの方へと向き直る。

 そしてジェスターに人差し指を向けて言い放つ。

 

 

「よしっ!! トリガーさんに変わって── 逆襲だッ!!!」

 

 

 アベンジは走り出し、ジェスターを殴って吹き飛ばすと、迫ってくる他の敵にもパンチやキックで対応する。その間、一切武器を使用しない。いやまず持ってない。

 

 

「なんで僕は武器ないんだろ…… まぁいいや。そろそろお終いにしよう。お互い怪人同士なんだから争うこともないよ」

 

 

 それからアベンジは怪物の口のようなドライバーの上部を叩き、凄まじい脚力で天高く跳び上がる。遥か上空からジェスターの群れに向けて飛び蹴りを放つ。

 

 

《GOODBYE!! アベンジタイム!!》

「ハアァァァ…… ハァァァァァッッッ!!!!!」

 

 

 そのエネルギーは纏った蹴りは全ての怪人を倒すと、アベンジの表情は仮面で見えないが、下を向いて肩を落とす。

 

 

「怪人も人間も関係ない。そんな世界ができたらいいのにな──」

 

 

 そしてアベンジの身体は消え始め、トリガーの向かった方向を見ながら何処かへと消えていった───。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 トリガーは何とか敵の群れを潜り、次元の扉の真下までやってきた。

 それを待っていたかのように、ファーストが扉から出てきてトリガーの前まで降り立った。先程はフロンティアが手も足も出なかったからか、トリガー自身にとてつもない不安が押し寄せる。

 

 

「ただ今回は策があるぜ。お前をぶっ倒すとびきりの策が!!」

 

「全テヲ…… 喰ラウ…!!」

 

「やってみろよ!!!」

 

 

 不安をかき消すような大声を上げるトリガー。そのままファーストへと走り出し、顔面に1発、渾身の力で殴り抜ける。何度も殴り続けるトリガーに対し、ファーストは涼しげな顔でそれを受ける。打ち消しているだけならダメージは負うはずだ。

 

 

「… ぐっ!!」

 

 

 記憶を再現するというファーストの能力は、硬化をさせる事によってそれを無効化しているのだ。

 トリガーはただ殴っているだけ。生身で硬い岩を殴り続けていただけ。だからファーストには全く持って無意味な行為。

 それからトリガーは拳を受け止められ、あらゆる能力を付与したファーストの拳を1発喰らって吹き飛ぶ。たった1発のパンチが重く、鋭く、いとも簡単に装甲に大きなヒビが入った。

 

 

「こんなもんで… 倒れると思うなよッ!!!」

 

 

 そしてトリガーはフォーエバーピースメーカーを取り出し、ファーストの全身に弾丸を撃ち込んだ… ように見えただけであり、やはり途中で止められており全てそれがトリガーへと帰ってきた。

 更に追い討ちでファーストも同様の武器を取り出し、トリガーが立ち上がることができないまでに、まるでマシンガンのように絶え間ない射撃が彼を襲った。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!??─── アッ…ガッ……」

 

 

 全身を余すことなく撃たれた兆は変身が解ける。無様に転がる彼に再び照準を定める。今度は確実に仕留める為に心臓部に銃口を向けた。

 

 

「…… まぁだよな。殺すつもりだよな…… 最初はこれでいい。確かめたかったんだよ。フロンティアが通じないか否かを」

 

 

 兆は今にも倒れそうなくらいフラフラとしながら立ち上がり、それからフロンティアガンナイフとファーストガンナイフを取り出し、その2つを思いっきり打ちつけ合うと、不思議な事に光を放って1つのフィガンナイフへと姿を変えたのだ。

 

 

「フロンティアとファーストはテロスと戦っていた時、奇跡が起きて1つになった。俺はその力で奴を倒す事ができたんだ。だけどこれはただの奇跡じゃない… みんなの想いが重なってできたフィガンナイフ」

 

 

 そのフィガンナイフ… ファーストレイトガンナイフを構え起動させると《BEST ONE》という起動音が流れ、それをセイブドライバーへ《SET》する。

 兆は手を銃の形にし、天に掲げてからゆっくりと下ろしファーストに向ける。

 

 

「俺の名は仮面ライダートリガー。この世界の!! 未来の!! 人々の!! 平和の引き金だッッ!!!── 変身ッッッ!!!!!」

 

 

 そしてセイブドライバーの引き金を引くと、砂嵐と共にファーストの装甲を身に纏い、その後にフロンティアの装飾品が付けられる。この2つと異なるのは煌びやかな銀色になっているという事。

 

 

《ファーストレイトガンアクション!! トリガー!! ザ・ベスト・オブ・トリガー!! イーハー!!》

「── 今日がお前の誕生日だ」

 

「喰ラウッッッ!!!」

 

 

 ファーストが放った弾丸を避けると、トリガーは一瞬にして目の前まで現れ、拳をグッと握り腹部に一撃をかました。だが、ファーストの硬化によりトリガーの拳はやはり通らない。

 

 

「俺は止まらない… お前が俺の前に居続ける限りな!!!」

 

 

 もう1発トリガーの殴打が迫るが、まるで避けようとせずにファーストはそのまま食らった。しかし避けずに受けたファーストは後悔することになる。

 何故ならトリガーの拳は硬化をモノともせずに突き抜け、ファーストの腹部の装甲を粉々にして吹き飛ばしたのだ。

 

 

「まだまだこんなもんじゃ終わらないぜッ!!!」

 

 

 何が起こったのかファーストにもわからない状況であった。思考が追いつかないまま、今度は顔面に回し蹴りを喰らい、そのまま地面に叩きつけられる。

 

 

「記憶って言うのはなんでも詰め込める。なんでもだ。お前と同じだぜ…… お前が記憶を再現するなら、俺は今ある記憶より更に上を行くッ!!!」

 

「喰ラウ… 喰ラウゥゥゥガァァアァァァッッッ!!!!!」

 

 

 ファーストは記憶を再現する。そしてこのファーストレイトは記憶したものが自分よりも上であるなら、その記憶よりも更に上回るようになる。

 ファーストレイト。一流のガンマン。最上には常に1人。彼を追い越すものがあるならば、彼は更にそれを超える。

 そして咆哮を上げながら近づくファーストを次元の扉に目掛けて蹴り飛ばし、セイブドライバーの引き金を引く。

 

 

「これで最後だッ!!! ファーストォォォッッ!!!!」

 

 

 トリガーは飛ばされたファーストに跳び蹴りをし、そのまま次元の扉へとぶつける。巨大な手がトリガーを捕まえようとしてくるが、それさえも突き抜けると、次元の扉に大きなヒビが入っていく。

 

 

《ファーストレイト!! ファイア!!》

「今日の俺もォォォォォォ──── 勝利の日ィィィィィィッッッ!!!!!」

 

 

 空の裂け目はガラスのように割れると、それと同時にあちこちガラスのように割れていく。そして破裂したエネルギーはファーストの元へと瞬間的に集まると、パッと光り、ファーストと共に大爆発を引き起こした。

 

 

「ぬぅッ… ぐぅぅぅ……ッッッ!!!!」

 

 

 凄まじい爆発が終わると、空はいつも通りの青さを取り戻し、全てが何事もなかったかのように消えてしまった。そしてトリガーも何処かへと消えてしまっていた──。

 

 

─── 全てが終わった後、RIVERSメンバーは次元の扉の方まで急いで駆けつける。兆の名を叫ぶが彼の声は聞こえてこない。

 巧也と狩馬はそこら中の瓦礫をどかして呼び続けている。

 

 

「兆ィィィッ!!! 妹を貰うとかバカなこと言っといて消えてんじゃねーぞこらぁ!!!」

 

「何処かだ… 頼む出てきてくれッ… !!!」

 

 

 力仕事が苦手な佳苗と孝四郎だが、この時ばかりはボロボロになりながらも捜索を続けていた。何度叫ぼうと返っては来ない兆の声。

 永理は涙が出そうになりながらも必死に彼を探した。何度も名前を叫び続けた。

 

 

「兆さぁぁぁあん!!! 返事してくださぁぁぁぁい!!!!!」

 

 

 しかし彼女の叫び声は虚しく辺りに響くのみ。狩馬はそんな彼女の元へ近づこうとしたが出来なかった。

 皆が諦めかけ、巧也は警視庁に電話し応援を頼もうとした時、永理は空に大声で彼の名前を呼んだ。

 

 

「兆さぁぁぁあぁぁぁぁぁぁんッッッ!!!!!」

 

「── いってぇ!!!」

 

「え…?」

 

 

 足元の瓦礫から声が聞こえた。永理は巧也たちを呼ぶと、協力して瓦礫をどかしていく。

 するとそこにいたのは紛れもない兆本人が埋まっていた。一同が安心した瞬間、蛇口を思いっきり捻ったかのような涙を出しながら、永理は兆に抱きついた。

 

 

「よがっだぁ!!! よがだでずぅぅぅぅぅぅ!!!!! 死んだのがと思っだァァァァァァ!!!!!」

 

「勝手に殺すんじゃねぇッ!!!… ってかお前鼻水付けんな!!! 後、ついでに鼻もかむなぁっ!!!」

 

「うえぇぇぇぇぇぇん!!!」

 

「俺のお気に入りの服がァァァァァァァ!!!!!」

 

 

 全員、不思議と笑いが込み上げてきた。涙は出ているはずなのに笑顔になった。無事が確認できると、巧也と狩馬は兆に肩を貸し、RIVERSへと戻っていくのであった───。

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

 ── あれからまたいつもの日常が戻った。

 やはりRIVERSは必要と判断した巧也は上へ申し出て、部長から再び課長へと戻り、またここの司令塔として働いている。部署が変わりそうになった佳苗も孝四郎も引き続きRIVERSに残った。狩馬の方もちょうど配属先が決まっていなかったので、RIVERSの一員として配属された。

 … とまぁ、こんな感じでこれからも俺たちはRIVERSとして戦っていくということで。あ? あぁ、そうだった。俺と永理がどうなったかって話だろ? それはもちろん──。

 

 

「── 兆さん。生涯永理さんを守り続け、笑顔を絶やすことなく、幸せにすることを誓いますか?」

 

「佳苗さんそれは当然の事よ。誓うぜ」

 

「永理さん。どのような時も兆さんの支えとなり、生涯愛し続けることを誓いますか?」

 

「はい。誓います」

 

「兆さん。永理さん。お互いの家族を大切にして、幸せを分かち合い、温かい家庭を築くこと… きづ…… うぅ… ごめんなさい。涙が出てきちゃって…」

 

「佳苗さんファイトです!!」

 

「えぇ、ありがとう… お互いの家族を大切にして、幸せを分かち合い、温かい家庭を築くことを誓いますか?」

 

「「はい、誓います」」

 

 

 周りから口笛や拍手の音が聞こえる。兆と永理はあの後、暫くして式を挙げたのだ。RIVERSのメンバーだけではなく、ここ最近で知り合った大勢の人たちに、仲間に見届けられながら2人は唇を合わせる。

 その瞬間、更なる拍手と声が響き渡る。

 

 

「これからも末長くよろしくお願いしますね。兆さん」

 

「任せろ。幸せ過ぎても文句言うなよ永理」

 

「大好きです」

 

「あぁ、俺も好きだぜ」

 

 

仮面ライダートリガー OneDay The end

 

 

 

 

 

 

>>>>>>>>>>>>>>

 

「あ、はいもしもし…?」

 

「………ッ」(手を銃の形にしている)

 

「はい…?」

 

「………ッッッ」(手を銃の形にしている)

 

「あの〜そちらで何かポーズ取られても困るんですけど…」

 

「── 言っただろ?」

 

「え?…… あぁ…… えぇ、まぁ確かにそうでしたね」

 

「いつかまた会える… ってな?」

 

 

仮面ライダートリガー To be continued…




はい!これで本当に「仮面ライダートリガー」は終了です!!
皆さん長い間、本当にありがとうございました!!!
話数に誤りがあったなんて事もありましたがなんとか無事に終わらせられました…
ここまでのご愛読本当にありがとうございました。皆様に圧倒的感謝を!!!
それではまたどこかでお会いしましょう!!さよなら〜〜!!!!!
























ん?また流れが変わったなぁ……
























この世に蔓延る怪人であり悪の組織「ジェスター」

世界にその名を轟かせたジェスターは徐々にその勢力を拡大していった…
しかしそんな彼らに立ち向かった者がいた。


その名は仮面ライダー。


彼との死闘の末に敗北し、組織は壊滅。世界には平和が訪れた………

その数十年後、怪人と人間は友好条約を結ぶことになったが、その内容は怪人には人権がない理不尽な内容だった。もちろんそれを良しと思わぬ過激派は人間に反旗を翻しす。

この物語の主人公「イナゴ / 稲森」は平和な怪人であり争いを好まないが、ひょんな事からアベンジドライバーを手に入れ、「仮面ライダーアベンジ」へと変身してしまう。
今は亡き仮面ライダーの父を持つ現在の「仮面ライダーエース」の「羽畑 陽奈」は反逆する怪人から人々を守る為に戦う。


ある出来事を境に始まったイナゴと陽奈の戦い!! それは同時に怪人と人間の争いの始まりでもあった!!

勝つのは果たして怪人か!! 人間か!!


新連載!!!【 仮面ライダーアベンジ 】!!!


「僕が戦うの…? 嘘でしょ!!?」


来週土曜よりスタート!!! 今後ともよろしくお願いします!!!


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