美醜はあべこべ (誰出茂内)
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美醜はあべこべ

それは唐突に訪れた。目覚めると美醜はあべこべになっていた。

 

 ある朝、いつものようにテレビを見ると、不細工な女がアナウンサーをやっていた。これはテレビに出すべき人物じゃないだろう。思わずチャンネルを変える。

 しかし、どのチャンネルにしても登場してくる人物がみな醜いのである。バカバカしい、いつからテレビは魑魅魍魎(ちみもうりょう)跋扈(ばっこ)するところになったのだ。

俺は思わずテレビを消すと、学校へ行った。

 

 教室へ入ってみると、キモいといじめていた男がクラスカーストの上位にいた。

逆にイケメンと評判だった俺は、キモいと言われ、罵詈雑言を吐かれたのだ。

いつものように話しかけただけだというのに。

 

 おかしい、いつから世界はおかしくなったのだ。下校中にコンビニへ寄って、ファッション雑誌を見る。それは自分がいつも買っていたものだった。内容は酷いものであった、嫌悪感を覚えるほどの容姿が表紙を飾っている。しかも、これがアイドルだそうだ。おかしい、今月号は既に買っていたはず、そのときは普通だったはずなのに!

 

 家に帰って、雑誌を見ると同じ表紙であった。つまるところブサイク目白押しである。ネットでイケメンと検索する。ブ男の画像がわんさかヒットする。では、ブサイクでは?そこにあったのは、かつての美男美女であった。

 

 母親が帰宅したので、自分の容貌を尋ねると、怪訝そうな顔をして、あまり良いとは言えないという言葉が返ってきた。ああ、以前だったら、俺の容貌を誇らしげにしていたのに!

 

 これは自分の容姿に甘んじていた俺への罰なのか?なんであれ、以前の暮らしに慣れきっていた俺には地獄であった。ああ、ブサイクブサイクとからかっていた相手はこのような思いをしていたんだな。そう思うと自惚れていた自分が憎たらしい。

 

 ああ、これは夢なのだろうか。そうであるなら覚めてくれ、こんな悪夢を見たくはない。

 

 この世界が夢であることを願いつつ、寝た。起きても変わらなかった。あいも変わらず、テレビでは不器量な男女が喋っている。学校へ行く。誰にも話しかけられずに授業が終わる。カノジョだったはずの女性を見ると、露骨に嫌な顔をされた。ああ、俺は顔が良いだけの男だったのか!

 

 家に帰って、鏡を見る。猪首、団子っ鼻、細い目、毛深く、脂ぎった顔。縮れた髪の毛。以前とは何も変わっていないのに!

 

 もしかすると以前が夢で、これが現実なのかもしれない。胡蝶の夢、その言葉が脳裏をよぎる。だが、俺にとってはアレが現実だったのだ!

 

「なんで俺がブサイクって言われるんだ!」

 



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