ジョジョの奇妙な冒険×獄都事変ネタ (蜜柑ブタ)
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空条家のおかしな弟

お試し前編。

原作前です。





 

 

 

 空条承太郎には、弟がいる。

 

 名を、空条煉(くうじょうれん)。

 

 だが、普通ではなかった。

 

 まず、生まれてこの方、一言も言葉を喋ったことが無い。

 

 目は物を映すし、耳も聞こえ、きちんと立って歩けるし、物も持つことも出来る。

 

 だが、その身体は、おかしかった。

 

 両目の色が違う。

 

 両手の大きさが違う。

 

 両足の大きさが違う。

 

 両耳の形が違う。

 

 それ以外にも、生まれた時、弟の誕生の日に産婦人科に行き、煉が産声さえ上げなかった異常事態に、医者や看護婦達がドタバタと忙しなくしていたのを、幼いながら鮮明に覚えていた。

 

 様々な検査の末に、産声をあげなかったにか関わらず、健康体だという判断がされ、母・ホリィは、ただただ安堵して泣いて煉を抱きしめていた。

 

 連絡を受けて駆けつけた祖父・ジョセフは、別のことで顔しかめていた。

 

 それは、ホリィと承太郎にもある、肩にある星の痣が、煉になかったことだった。

 

 身体のあちこちが違うことに気づいたのは、成長の過程で気づいたことだ。

 

 母・ホリィは、そんなことを気にせず、ただ生まれてきた我が子が生きていてくれることが嬉しいらしかった。

 

 承太郎自身も、弟の煉が人と違うことは気づいていたものの、弟であることには変わりないと思っていたし、言葉を一言も喋れないうえに、身体のあちこちが違うことをからかう同年代の子供らを懲らしめたことは何度かあった。

 

 言葉が喋れない弊害か、感情すらも欠けているのか、表現する力があまりないのか、それはよく分からないが、煉は、表情がほとんどなく、やられれば、やられっぱなしで、まるで人形のようだと形容されたことさえあった。

 

 だが、普通の人なりには動くし、伝えたいことがあれば言葉ではなく、手話や字などで伝えてくる。

 

 承太郎は、そんな弟を邪険に扱ったこともないし、気味が悪いとも思ったこともない。煉という存在が生まれた時からそうだったのなら、煉はそういう存在だと思っていた。

 

 だが、17歳を迎え、いわゆる反抗期…というか、不良になった承太郎は、いつ頃からか、煉の周りに、6つの人影のようなものを見るようなった。

 

 最初は見間違いかと思ったが、夜に煉の部屋の前を通り過ぎたとき。

 

 

『……いよいよか?』

『もうすぐだろうね。』

『あー、長かった。待ちくたびれたー!』

『やれやれ、やっとか…。』

『……だるぃ。』

『何はともあれ…。』

 

 

 ヒソヒソと知らない若い男達の声が聞こえ、慌てて連の部屋に入った時。

 

 深夜だというに、煉は、布団の上に座っており、周りに煉を取り囲むように6つの白い人影のようなものが立っていた。

 

 薄らぼんやりとだが、その格好は、どこか時代を感じさせる軍服のように見えた。体格の違う6人の男達が同じ格好で……。(ひとりはコートを纏っている)

 

 煉!っと、声をかけた直後、6つの影がこちらに気づいてビックリしたように反応して消えていった。

 

 

 その日からだった。

 承太郎自身にも異変が起こった。

 

 

 背後に…、誰かがいる。それを感じた。

 

 あの6つの白い人影のようなものが取り憑いたのかと思ったが、気配からして違うようだった。

 

 承太郎は、ソレを悪霊だと思った。

 

 悪霊は、承太郎が欲しがる物を勝手に持って来たり、喧嘩を売ってきた不良達をズダボロにした。

 

 しかもトドメまで刺そうとしたため、承太郎はやめろ!っと制止させようとしたが…、暴走している悪霊は聞かない。

 

 ソレを止めたのは、煉だった。いや、正確には、あの時、承太郎が見た、煉の周りにいた6つの影だった。

 

 ゴツい、まるで昔話の鬼が手にしているような金棒を手にした、ソイツが、倒れた不良に振り下ろされようとした拳を金棒で止めた。

 

 

『凶暴だな…。』

 

 

 紫色の目をしたソイツが、悪霊の拳を弾き、戦い慣れた様子で構えた。

 

『待て、谷裂(たにざき)。』

 

 刀を持つ、青い目の奴が言った。

 

『彼のアレを傷つけたら、彼まで傷ついちゃう。それだけはダメだ。』

 

 ひとりコートをまとっている空色の目の奴がそう言った。

 

『えー! つまんねぇの! 俺、力比べしたかったのに!』

『やめろ、平腹(ひらはら)、めんどくせぇ。』

 

 シャベルを持つ黄色い目の奴と、ツルハシを持った橙色の目の奴がそう言っていた。

 

『まあまあ、それより、この状況をなんとかした方がよくないかな?』

 

 大斧を手にしている翡翠色の目の奴がそう言って朗らかに笑った。

 

 

 やがて、騒ぎに気づいた近隣住民がパトカーを呼んだのか、サイレンの音が聞こえてきた。

 

 

 煉がへたり込んでいる承太郎に手を差し伸べた。

 

 

「………じょうたろう…。」

 

 

 少し喋り慣れない声変わりを始めたくらいの少年の声が、承太郎の名を口にした。

 

 それが、空条煉の最初の声だったと。承太郎はハッキリと理解した。

 

 

 これは、正史にはなかった、獄都とよばれるあの世の世界の鬼達と。

 その肉と骨から作られ、スタンドとして鬼達が活動するための仮初めの本体として送り込まれた改造鬼と、星の一族の物語となる。

 

 

 

 

 




原作開始の時の、承太郎が牢屋行きになった時のアレって、暴走状態のスタープラチナがやったんでしょうか?


DIOの復活時期と、斬島達がやられた時期が合わないのは、次に投稿する、設定で理由を書きます。


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設定など

オリキャラ、空条煉の設定や、斬島達の設定など。


●獄都事変クロス

◇名前

・空条煉(くうじょう れん)

 

 

◇ネタでの立場

・承太郎の弟。13歳。

・その正体は、斬島達6人の獄卒の体をくっつけて作られた改造鬼で、斬島達がスタンドとして活動するための仮の本体とするためにホリィの子宮を通して産まされた存在。

・DIOを倒し地獄に連行するためだけに作られたためか、あと体型が違う6人の獄卒を掛け合わせたため目の色が両方で違ったり、手足の大きさが異なるなどのおかしい部分があったり、本編が始まるまで言葉を発することができないなど色々欠けている。

・また、あくまでもホリィの子宮を借りて生まれてきたため、肩に星が無い。

・あと、顔立ちが誰にも似ていない。(どちらかというと可愛い顔?)

 

・DIOの魂の回収のために挑んだ斬島達だったが、ザ・ワールドの前に敗北したため、禁術を使って煉の素体を母胎となるホリィに、本編開始13年前の時期へ飛ばしている。

 

 

 

◇スタンド

・斬島、佐疫、田噛、平腹、谷裂、木舌の6人の獄卒(鬼)からなる群体型スタンド。

・同じ制服をまとっているがそれぞれ見た目、人格が異なり、武器も違う。

・本体の命令で動くのではなく、それぞれが状況に合わせて出現、行動する。

・斬島→刀。佐疫→銃火器。田噛→ツルハシ。平腹→シャベル。谷裂→金棒。木舌→大斧。

 

※本来は6人の獄卒(鬼)だったが、DIO捕獲の任務で失敗し一度再起不能に。

 DIOのザ・ワールドに対抗するための策として獄卒のスタンド化が提案され、DIOにバラバラにされた斬島達の体を流用してスタンド化した斬島達の仮の本体となる煉が製作され、運命占いから空条家に嫁いだホリィの子宮に送り込まれ承太郎の弟として生まれ、承太郎達のスタンド覚醒と共にスタンドとして活動を開始する。

 

 

・死んでも再生する獄卒から作られたため、煉自身も、身体が欠損しても死なず、くっつければ治るし、再生力も高い。

 

 

 

◇性格など

・煉自身にも自我はあるものの表情は乏しく、言葉を発することもほとんどない。旅が始まるまで言葉が喋れなかった。

・その代わり、スタンドになっている獄卒達がよく喋る。(7人目のスタンド使いのスペシャルズみたい?)

・自らが斬島達の仮初の本体であることは自覚しており、自分自身を省みない行動をすることが多い。

 

 

 

※獄都事変とは?

 

・フリーゲーム。

・ビックリ系があるホラーゲーム。

・簡単に言うと、死んだ亡者を捕えるため獄都から派遣された獄卒である斬島が主人公として謎解き、お使いなどをするゲーム。

 

 

 

 

 

・・・思い付いたりしたら、増えたり減ったりします。




最初、1000文字なくて、それで苦労しました。


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スタンドと、平腹の暴走

警察署の檻編?


承太郎と煉(斬島達)の会話と、ジョセフとアヴドゥル。



後半は、平腹暴走。


 

 ここは、警察署。

 しかも、檻の中と外。

 

 承太郎は、中。

 煉は、外。

 

 

「つまり? なんだぁ? お前らは、悪霊じゃなく……獄卒って鬼か?」

 

『ざっくりとまとめると、そういうことだ。』

 

 煉の周りにいる、軍服のような制服を纏った者達。

 彼らは、承太郎の悪霊と同様に普通の人には見えない。

 そして、何者なのかと聞いたところ、自分達は獄卒だと名乗った。

 

 獄卒。

 

 それは、日本の地獄の話に描かれる、罪人を罰する鬼の総称のようなものとして承太郎は認識している。

 

 昔話の鬼退治の鬼と違い、悪者ではなく、あくまでも罪を犯した悪人を裁く側だ。

 

 しかし…。

 

「どう見ても、鬼には見えねぇな。」

 そう、彼らは、目の色こそ変わっているが、外見は完全に人間なのだ。

『だろうね。だって、僕ら、元は人間ですから。』

 空色の目の獄卒が答えた。

「人間だと?」

『死んだ亡者が獄卒になる場合もあるってことさ。みんな死んだ時期や、死因も違うけど、色々とあったんだよ。』

 翡翠の目の獄卒がそう言って穏やかに微笑む。

 承太郎はそれを聞いて納得はした。

 元の人間の鬼ならば、角がなくても不思議ではない気がしたからだ。

「……なぜ、煉にお前らが憑いている?」

『それは…。』

 

 

「見てください! さっきから、ず~~~~っと、見えない誰かと喋ってるみたいで!」

 

 

 警官がそう焦っている声が聞こえた。

 

 

「承太郎。煉。」

 

 そこへやってきたのは、祖父・ジョセフだった。

 

「……そこにいる君達は、誰かね?」

 

「見えんのか?」

 

『おっと、お邪魔?』

 獄卒達が、ジョセフの前からどく。

「……お…じぃちゃ…。」

「! 煉。お前…。」

「驚いたか? 喋りだしたのはつい最近だぜ?」

「むぅ…、やはり、奴の影響か?」

『さて? それはどうかな?』

「…自我があるのか?」

 ジョセフが聞くと、獄卒達は、それぞれ反応を返す。

「……まあ君らのことはあとで聞こうと。それよりも承太郎。出ろ! わしと帰るぞ。」

「お呼びじゃねぇんだよ。わざわざニューヨークから来てくれたようだが、なにができるってんだ?」

 すると承太郎が、いつの間にか、ジョセフの左手の義手の小指を持っていた。

「見えたか? 気づいたか? これが俺の悪霊だ。」

「……それは、悪霊ではないんじゃよ。」

「なに?」

「アヴドゥル、君の出番だ。煉、こっちに来なさい。危ないから。」

『なになになに? 面白いこと?』

『っるせぇな…。』

 黄色い目の獄卒・平腹が目をキラキラさせ、橙色の目の獄卒が面倒くさそうに立ち上がった。

 煉が移動し、それに続いて獄卒達も移動する。

 そして、アヴドゥルという異国の衣装を纏った男がやってきた。

 アヴドゥルは、ジョセフに多少手荒になることについて了承を得ると、不思議な構えを取った。

 そして、背後から、鳥の頭を持つ人型の悪霊が飛び出す。

 

「これは、お前の言う悪霊を、アヴドゥルも持っている! アヴドゥルの意志で自在に動く悪霊! 『マジシャンズ・レッド(魔術師の赤)』!」

 

 マジシャンズ・レッドという悪霊が口から火を吐くと、その火は、牢屋の中にいる承太郎を張り付けにした。

 ホリィには見えているらしく、困惑と焦りの声をあげる。

 

「ぐぅう!?」

『おっ? おおお!? 来た来た来たー!』

 平腹が承太郎の背後から飛び出してくる存在を見て興奮する。

 

 

 それは、たくましく、そして強靱な意志力の塊。

 

 それを名付けるのだとしたら、傍に立つモノ。

 

 その者の生命エネルギーのビジョン(像)。

 

 スタンド(幽波紋)。っと。

 

 

 承太郎の背後から現れたソレ…、スタンドは、ついに檻をへし曲げ、檻の一部をねじ切って武器として手にした。

 すると、アヴドゥルは、自らのスタンドであるマジシャンズ・レッドを引っ込めた。

 

「ジョースターさん。見ての通り、彼を檻から出しました。」

 

 承太郎は気がつけば、檻の外に一歩ほど足を出していた。

 相手の戦意が無くなったのを感じたのか、承太郎のスタンドが引っ込み、鉄の棒を落とした。

 

「……俺がこの鉄の棒を投げるのをやめなかったら、どうするつもりだった?」

「俺の能力…、マジシャンズ・レッドは、その程度の鉄棒なら、空中でとかすのはわけは…。」

 

『ヒャッハーーーーー!!』

 

「!?」

 

 直後、アヴドゥルに向かって、平腹のシャベルが振り下ろされようとし、アヴドゥルは、咄嗟に転がって避けると、アヴドゥルがいた場所を大きく平腹のシャベルが抉った。

『おんもしれーーー! なあなあなあ! 俺も混ぜろよ!!』

『平腹! やめるんだ!』

「煉! 何をやっておる!?」

「……。」

 しかし煉は無反応。

 その間にも、凄まじい勢いとスピードで周りが壊れるのも気にせず平腹が暴れ、アヴドゥルを追い詰める。

『……やめろと言っているのが…、分かんねぇのか、この猪突猛進馬鹿が!!』

『ギャッ!』

 近くにあった消化器を掴み、橙色の目の獄卒が、平腹の頭にぶん投げた。

 バタッと倒れる平腹の足を掴み、青い目の獄卒が、煉の方へ引きずって戻してきた。

「煉? なぜあんなことを?」

「ありゃ、煉の意志じゃねぇ。」

「なんじゃと?」

「ちぃとばっかし、煉の場合は、事情が違うみたいだぜ、お爺ちゃん。」

 承太郎が、歩いてきながら言った。

 

「そういや…、名前…、まだ聞いてなかったな?」

 

『俺は、斬島(きりしま)だ。』

『僕は、佐疫(さえき)。』

『谷裂(たにざき)だ。』

『俺は、木舌(きのした)。で、こっちに倒れているのが、平腹(ひらはら)で、それを踏みつけているのが…。』

『……田噛(たがみ)だ。』

 

 

 ジョセフも、アヴドゥルも、ハッキリと自我意識をそれぞれ持つ者達に、驚いていた。

 

 

 




スタンドが発現する時期まで、大人しくしなきゃならなかったので、平腹メチャクチャ暴れたくて仕方ないのです。

今後も、敵味方問わず襲いかかる可能性があるかも。


次回は、DIOのことやらなんやらかな?

あと、煉の事情も。


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煉と獄卒達の事情

煉と獄卒達の事情説明。


難しかったです…。早く旅を始めたい。


 

 承太郎が出所(強制)したあと、ホリィも入れてとある喫茶店で話をすることになった。

 

 まず、煉の出自についてだ。

 

 そこで信じがたい話が出る。

 

 それは、煉は、獄卒と名乗る6人のスタンド達の血肉から作られた改造鬼であり、禁術を使ってあの世の世界である獄都からホリィの子宮に送り込まれて生まれた存在だということだった。

 

 あくまでも、ホリィの子宮を借りただけなので、そのため血縁関係上は、ホリィや、彼女の夫の空条貞夫(くうじょうさだお)との血の繋がりもなく、だから肩に星のアザがないのだという。

 

 それに怒ったのは、ホリィの父であるジョセフだった。

 

 当然だ。一人娘の身体を勝手に利用されたのだから。

 

「……なぜそんなことを?」

『すべては、DIOという吸血鬼のせいさ。』

 承太郎が聞くと、獄卒達は、語り出す。

 

 DIOを討伐し、その魂をあの世へ連れて行くはずが、全員でかかっても敗北したことを。

 

 その際に、バラバラにされた遺体は別の獄卒達に回収され、一件を案じた獄都のお偉いさん達の策により、斬島達をスタンドとして動けるようにするため、仮初めの本体として、斬島達の血肉から作られたのが煉であることを。

 

「ちょっと待ってくれないか?」

 アヴドゥルが待ったをかけた。

「DIOが復活したのは、4年前だ。だが煉は、13歳だと聞いている。時期が合わない。」

『それは、時を渡る禁術を用いたからだ。過去を変えるのは、本来ならば禁忌中の禁忌だが、事態が事態だ。』

「つまり…、お前達が動くための人形として煉を作って、ホリィに生ませたということか!?」

『……非常に遺憾なことだろうが、早い話がそうだ。』

「貴様らぁ!!」

「パパ、やめて!」

「しかし、ホリィ!」

「例え、血のつながりがなくっても、煉は、私の子供! 大切な我が子だから!」

「…ホリィ。」

「………ありがと…、母さん…。」

「煉!」

 少したどたどしい言葉で喋った煉を、ホリィが抱きしめた。

「煉には、お前達とは違う意識があるのか?」

『かれこれ、13年は人間として生きてきたんだ。独自の自我が芽生えているよ。』

『ま、これだけ時間かかっちゃったのは、僕ら6人分の精神をひとりの身体に馴染ませるためだったんだけどね。』

『そのせいか、言語を喋れないなどの弊害はあったな。』

「なるほど…。煉が喋れなかったのは、そのせいか。」

『うぅ~。』

「…ところで、さっきからあの黄色い目の…、平腹と言ったか? 田噛というのに尻に敷かれているようだが?」

『ほっとけ。13年以上もまともに身動きが取れなくてやっと動けるようなって、ウズウズしてるだけだ。』

『田噛が押えてないと、またあなたに襲いかかるかも知れませんよ?』

「それは困るな。」

『いいじゃねーーかよーー! ずっと暇だったんだし!』

『るせぇ。』

『いでぇ! 田噛~!』

『それはそうと、大事な話があるのでは? 承太郎のお爺さん。』

「むっ…そうじゃったな。」

 

 それからジョセフは、自らのスタンド、ハーミットパープルで、カメラを使って念写を行い、そこに写ったDIOを承太郎らに見せた。

 ハッキリと写し出されたソレには、DIOの肩にジョースター家の血筋にのみあるという星のアザがハッキリとあった。

 それは、DIOがジョナサン・ジョースターの肉体を奪ったという証であった。

 

 ジョセフが1年前にスタンドに目覚めたこと、そして最近になって覚醒した承太郎のスタンドも。

 すべては、ジョナサンの肉体を得たDIOの影響だろうと考えられた。

 

 煉は、ジッとDIOの写真を見つめていた。

「……勝たなきゃ…いけない。」

「煉?」

「…俺…そのために、作られた…から。」

「煉…、おまえ。」

 承太郎は確信を持つ。

 煉は、自分が獄卒達の仮初めの本体として作られたことを自覚しており、そのために動こうとしていることを。

「お前達は、自分達がどれほどに悲劇的なことをしたのか分かっているのだろうな?」

 ジョセフが獄卒達を睨む。

『すべては、……閻魔庁もそれに同意しています。』

「えんま? 地獄がか?」

『……許されざる者には罰を。獄卒の名にかけて。』

『DIOを討伐し、その魂を捕える。我々の目的はただそれだけです。』

「…その後…、煉はどうなる?」

『……おそらく獄都に連れ戻されるでしょう。あなた方から記憶を消して…。』

「ふざけんな。」

『鬼と人では、寿命も違う。俺達はこうは見えてもあなた方より長生きしてる。桁が違う。』

「そんな…。」

「……ちっ。」

 いずれ煉が獄都という世界に連れ戻されると聞き、ホリィは、口を手で押え、承太郎は舌打ちした。

 

 

 その後、カフェをあとにしたあと、空条家に帰った。

 ジョセフは、しばらく日本に滞在すると言った。

「煉。」

「……。」

「お前は…それでいいのか?」

 承太郎は煉に聞いた。

 仮初めの本体として、そして最終的には共に育った家族から離れて獄都へ連れ戻される運命にあることに納得しているのかと。

「……分かってる。……生まれる前から…決まってたこと。」

「……そうかよ。」

「…でも。」

「?」

「……別れは…寂しい。」

「………そうか。」

 承太郎は、煉の頭をクシャリとなで回した。

 

 

 




煉には、独自の自我意識はあり、承太郎と兄弟として育ったことも理解しているし、代理母として産ませてしまったとはいえ、ホリィを母だと認識している。
DIOを倒し、捕まえれば別れが来ることも分かっており、その悲しみも寂しさも感じています。

次回は、花京院戦かな?


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花京院

花京院戦。


6対1じゃ、一方的ですよね……。


 

 

 

 警察署の檻から出された承太郎は、翌日から学校に戻った。

 いつものように、彼に言い寄ってくる女子達。

 承太郎の威圧感につい道を開ける男子生徒。

 それは、彼にとっていつもの光景だった。

 キャアキャアと集まってくる女子生徒達の声も、耳に入らず、承太郎は考えていた。

 

 スタンド。

 DIO。

 獄卒。

 そして……、弟の煉。

 

 煉の正体が、あの世の者達が作り上げたツギハギの鬼であり、DIOの討伐とその魂の回収が終われば、煉はあの世へ連れて行かれる。

 家族としてともに過ごした承太郎達から記憶を消して……。

 

 承太郎は、煉をずっと実の弟だと思っていたし、普通じゃないと分かっていても邪険に思ったことなど一度も無い。

 

 だが、スタンドとして現世へやってきた獄卒達が、それを否定した。

 

 母・ホリィの子宮を借りただけに過ぎず、血のつながりは一切無いという。

 

 あの獄卒達の血と肉から作られた鬼であるため、同じ時を過ごすことはもうできないのだ。

 

 煉自身も、そのことを産まれる前から理解しており、いずれ来る別れの時を惜しんでいる。

 

 

 そして、考え事をしながら承太郎が階段にさしかかったとき。

 

 突然、彼の左足が切れた。

 

 その拍子にバランスを崩した承太郎は、真っ逆さまに階段から転落。

 しかし、咄嗟の判断で、スタンドの手を出して木の枝を掴み、下に落ちるのを免れた。

 傷は、浅いが、出血をしていた。

 そこへ、見ない顔の男子生徒がやってきて、ハンカチを差し出してきた。

「君…、足を切ったようだが。このハンカチで応急処置をするといい。」

「……見ない顔だな。」

「…花京院、典明。昨日転校してきたばかりだ。よろしく。」

 優等生風のその花京院という男子生徒は、そういうと、去って行った。

 

 承太郎は、受け取ったハンカチをそのままに、医務室へ向かうことにした。

 

 

 

 

 

『……どう思う?』

『黒だ、黒。あの目は、まともな奴の目じゃない。』

『えっ? じゃあ、戦う? 戦う!?』

『興奮しすぎ。平腹。』

『ぶっ飛ばしていい?』

『機を見て助けに入ろう。』

「……。」

『煉。分かっているな? 早速だが実戦だ。』

『だりぃ…。』

『田噛。行こう。』

『…チッ。』

 6人の獄卒が消え、煉は、立ち上がり、移動した。

 

 

 

 

 

 一方の、承太郎は、保険医から治療を受けるためにズボンを脱ごうとして、ポケットから落とした花京院のハンカチが開けて、そこに書かれていた内容にギョッとしていた。

 

『空条承太郎  本日中 貴様を殺す  私の幽波紋で!   花京院典明』

 

 っと、書かれてあったのだ。

 その時、医務室にいた他の男子生徒達が悲鳴を上げた。

 見ると、保険医が万年筆を振り回していた。

 その顔はハッキリ言って正気のソレではない。そして口から泡を吹いていた。

 そして、終いには万年筆で生徒の目を突き刺した。

 

「フヒャホ、フヒィフヒィ! フヒィー! ジョジョ…、あなた、まさか万年筆に見えるなんて…、言わないわよねーーー!」

 

 保険医が引き抜いた万年筆を承太郎に向けた。

 承太郎は咄嗟にその手を掴んで止める。

 だが、女性のソレじゃない圧倒的な力に、万年筆の先端が顔に食い込む。

 

「フフフ…。」

 

「て、てめーは!」

 

「その女医には、私のスタンドが取り憑いて操っている。私のスタンドを攻撃することは、その女医を傷つけることになるぞ、ジョジョ。」

「き、貴様何者だ!?」

「私のスタンド名は、ハイエロファントグリーン(法皇の緑)。お前のところの、アヴドゥルと同じタイプのスタンドよ。私は人間だが、ある方に忠誠を誓った。だから! 貴様を殺…。」

 

 その直後、花京院が操る操り人形を持つ手を、黒い鎖が絡み取った。

「なっ!?」

『……ふん。』

 離れた箇所から手首から鎖を伸ばす、橙色の目の青年に、花京院は驚愕した。

『スタンドって、要するに本体さえ抑えられれば簡単って事だよね?』

 花京院の背後に、チャキッと銃口が押しつけられた。

「お、お前達は…!」

『さあ、降参するか。あの女医の人からスタンドを出すかしないと、君…死ぬよ?』

「くっ!」

「なんでお前らがここに? 煉が来ているのか?」

『うん、そうだよ。あーあ、整った顔が台無しだ。ホリィさん泣いちゃうよ?』

 木舌が承太郎に変わって女医を抑えながら穏やかに言う。

 すると、ヌルッ!と女医の口からスタンド・ハイエロファントグリーンが飛び出してきた。

 そして、両手から緑色の液体をボタボタと出す。

「ハッ! 花京院! 妙な真似をするな!」

 

「エメラルド・スプラッシュ!!」

 

 ハイエロファントグリーンの手から放たれた翡翠色の宝石の形をしたエネルギー弾が医務室内を飛び交う。

 外にまで飛んできたエメラルド・スプラッシュにより、佐疫と、田噛もその場から飛び退いた。

 至近距離にいた承太郎を庇った人間がいた。

 煉だった。

 承太郎を庇った煉の背中に、エメラルド・スプラッシュが着弾する。

「煉!」

「……。」

「チッ。弟の方か。」

 背中から血を流す煉だったが、すぐにバランスを整え、花京院を見た。その顔にはひとつも苦痛のくの字もなかった。

「…なに?」

 ハッキリ言って、軽い怪我では無い。それは誰が見ても分かるほどの大怪我だった。だが煉は、まるで痛みを感じていないようだ。

「まあいい、いずれにせよ、貴様らは始末する予定だったのだからな! トドメだ! もう一度くらえ!」

『フッ!』

 再び発射されたエメラルド・スプラッシュを、間に割って入った斬島が刀で全て弾き飛ばした。

「なっ!?」

『ヒャッホーーー!』

「また!? まさか、貴様らは…!」

『煉のスタンドだよーーーん!!』

 医務室を破壊しながら襲いかかってくる平腹に、花京院はハイエロファントグリーンもろとも壁際に追い詰められた。

『後ろががら空きだ。』

「ハッ! ぐぁ!?」

 谷裂が金棒の柄の部分で、花京院の後ろ首を殴り、気絶させた。

「……ろ、6人…だと?」

 意識を失う間際、花京院は、そのことに驚きながら意識を失った。

『ちぇー、もう終わり? つまんねぇ!!』

 平腹がブーブー文句を言う。

『で? どうするつもりだ? この男。』

『この男の子…、忠誠を誓ったって言ったけど、正確には違うね。』

 気絶している花京院を仰向けにして、佐疫がそう言った。

「どういうことだ?」

『家に連れて帰ってから、お爺さん達と話を聞けば良いよ。』

「煉…、だいじょうぶか?」

「…へーき…。」

「お前…まさか痛みが…。」

「痛い…けど、我慢。」

「やせ我慢かよ。」

 出血は止まっていて、もうかさぶただが、承太郎は、ペシンッと煉の頭を叩いた。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして、花京院を空条家に持ち帰り。

 ホリィには、びっくりされたが、とりあえず無視して(でも顔色が悪いが、元気かと承太郎は言っていた)、茶室にいるジョセフとアヴドゥルのところへ。

「……ダメだなこりゃあ。手遅れじゃ。コイツはあと数日の内に死ぬ。」

「……。」

「承太郎、煉。お前達のせいじゃない。コレを見ろ。こやつがなぜDIOに忠誠を誓い、そしてお前を殺しに来た理由じゃ!」

 ジョセフが花京院の額にかかっていた髪をどかす。

 そこには、芽のような肉がヒクヒクと動いていた。

『肉の芽…ですね?』

「なんじゃ、知っていたのか?」

『ええ。こちらに来る前に色々と調べ物はしましたので。』

 佐疫がそう言って微笑んだ。

 それは、肉の芽という、DIOの細胞から作られた物であり、植え付けられた者の脳に働きかけ、強制的に忠誠を誓わせるという凶悪な代物だ。

 しかも肉の芽は、脳に刺さっており、現在医学の手術では取り除けないのだという。

 そんな中、アヴドゥルが4ヶ月ほど前に、エジプトでDIOに接触し、危うく肉の芽を植え付けられかけた話をした。

 咄嗟に逃げたものの、判断を誤っていれば、数年の内に花京院のように脳を食い尽くされて死んでいたと語る。

「死んでいた? ちょいと待ちな。花京院はまだ死んじゃいないぜ!」

「やめろ、承太郎! 優れた外科医でも肉の芽を取り除けないのは、脳がデリケートなだけじゃない! なぜ肉の芽が額から飛び出しているのか! それは…。」

 自らのスタンドの正確性の高い動きで肉の芽を引っこ抜こうとする承太郎にジョセフが叫ぶ。

 肉の芽を摘まんだ途端、肉の芽から触手が伸びて承太郎の腕に突き刺さった。

「摘出しようとする者の脳に侵入してこようとするんじゃ!!」

「ぬうう!」

「な、なんということじゃ…! なんて孫じゃ…。体内に侵入されておるというのに…、震えひとつおこしておらん! スタンドも!!」

 そして、機械を越える正確性で引き抜かれた肉の芽を承太郎のスタンドが触手もろとも承太郎から抜き取り、トドメにジョセフが波紋を流して肉の芽を灰にした。

「……なぜ? 命に危険を犯してまで私を助けた?」

 目を覚ました花京院が、心底不思議そうに聞いた。

「さあな…。そこんとこだが、俺もようわからん。」

『やれやれ…、素直じゃ無いんだから。ね? 煉。』

「承太郎は、素直じゃない。」

「おい、煉に変なことを言わせるな。」

『やーい、照れてやんの。』

『めんどくせぇ奴だ。』

「…お前ら、そこに直れ。」

「待て待て待て! 承太郎! コイツらは仮にも煉のスタンドじゃ! スタンドが傷つけば、本体も傷つくんじゃぞ!」

「……ちっ!」

「殴る? 俺…殴る?」

「いや…、お前は殴らねぇよ。煉。」

 首を傾げて聞いてくる煉の頭を、承太郎は、ハア~っとため息を吐きながら撫でた。

 

 

 

 




花京院…ごめんよ。

うーん、これだと、ポルナレフ戦どうすっかな?
平腹をぶつける?


煉は、獄卒達の血肉で出来ているので、傷の治りが速いです。


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旅立ちへ

旅立ちへ。



この世界の未来は……。


 

 DIOと、ジョースター家の因縁。

 

 それは、決して切り離すことができない運命。

 

 だからこそ、選ばれた。母胎として選んだのだ。

 

 共に行くために選んだのだ。

 

 

 花京院を救った翌日。

 ホリィが倒れた。

 おっとりした性格のホリィは、DIOの呪縛、そして自らに覚醒したスタンドを制御する力が無かった。

 そのためスタンドが害となり、身体を蝕んだ。

 高熱により意識を失い、やがてスタンドが命を奪う有様に。

 

 しかし希望はあった。

 

 アヴドゥルは、スタンドが害悪になる例を見たことがあるが、ホリィの場合は、50日という期限があり、なおかつスタンドを暴走させている原因であるDIOを倒せばそれを止めることができるということだった。

 幸いにも、DIOの居場所は、ジョセフが念写した写真に写っていたハエを承太郎が見つけ、そのハエの種類から、エジプトにいることが分かった。

 花京院が共に行く言い出し、旅立ちの準備の最中……。

 

「ひとつ教えな。」

『なにかな?』

 承太郎が木舌に聞いた。

「お前達は…、DIOをぶっ殺すのが任務だったんだろ? 過去を変えてまで煉を送り出してんだ。お前らが最初の任務で失敗してるってことはだ…、俺達のことを知ってるのか?」

「ハッ!? まさか承太郎!」

『………言霊を、甘く見ると酷い目に遭うよ?』

「構わねぇよ。教えな。」

『…分かった……。承太郎、君達は……、DIOに負けてる。それが俺達が知っている未来だ。』

「なっ…!」

 ジョセフ達は、その答えに絶句した。承太郎は、黙っていた。

「なるほど…、そうか。」

「承太郎…。」

「なら、変えればいいだけだ。」

『……そうだね。』

『だからこそ、お前達を閻魔庁が選んだ。旅立つお前達と共に行けば必ずDIOに届くからこそ。…結果的には、ジョースターの血筋を利用する形ではあるが。』

「……期待しないでいるぜ。」

『まあまあ、そう言わず。』

「…死なさない。」

「煉?」

「絶対に…勝つ。それしか、ない。」

『うん…。そうだね。そのために俺達は来た。お前も生み出されたんだ、煉。』

 木舌が、煉の頭を撫でると、煉は、コクリッと頷いた。

 

『それはそうと。ひとつ提案があるんだ。』

『なんだ? 佐疫?』

『僕らが一度に6人出ると、どうも煉の動きが悪くなる。それってたぶん、煉の精神エネルギー量が6人分に全部回されてるからだと思うんだ。花京院との戦いで分かったことなんだけどね。』

『なるほど…、道理で身体がギクシャクしたわけだ。』

『そこでなんだけど、戦いのたびに、1人とか、2人とかにして、エネルギーを温存していこうと思うんだ。どう?』

『えーー! それじゃあ、俺戦えないかもしれないじゃーん!』

『敵によっては、お前がひとりで遠慮無く戦えば良い。もちろん、順番だ。』

『やったー!』

『それに、スタンドの性質の事前勉強で、距離が近ければ近いほどパワーが強くなるらしいし。僕らは極力、煉から離れず戦おう。僕らの本体の肉体は、獄都にあるんだ。精神だけここにあって、本体を煉ってことにして、繋いでいるんだからね。』

『もちろん、田噛。お前も、戦いには参加して貰うぞ?』

『……だりぃ。』

『ダメだよ、田噛。』

『チッ…。』

 6人の中では、一番の頭脳派だが、その頭脳は、常にサボることに使っている田噛である。

 

 

 

 

 そして、煉は、6人の獄卒と共に、ジョースター一行の一員として旅立つ。

 

 DIOに敗北したという、最悪の未来を変えるため……。

 

 




このネタは、EOHみたいに、DIOに敗北した世界の可能性があった世界です。

やっと、旅立ち…、長かった……。


そして、煉と、スタンドとして存在している6人の獄卒ですが。
スタンドタイプで言うと、近距離パワーの群体型かも。(佐疫を除いて接近武器が多いので)
7人目のスタンド使いのスペシャルズみたいな感じですかね。


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クワガタムシ(?)を迎撃しろ!

タワーオブグレー編。


田噛が花京院と協力。


 

 田噛は、眠っていた。

『田噛、田噛。』

『…っるせぇな。』

『敵が来た。』

『ああ?』

 

 ブーンっと、羽音が聞こえた。

 

「気をつけろ。早くも敵の刺客が来たかも知れない!」

 承太郎達も羽音に気づき警戒する。

「承太郎、後ろだ!」

「ハッ!」

 大きなクワガタムシだった。明らかに普通で無いことは確かだ。大きすぎる。

 そのうえ、口からグジュルグジュルと歯を開けて、針のようだが節のある尖った物を伸ばす。よく見ると先端が口のようになっており、その口の中に鋭い針がある。

「きもちわりぃな。ここは、俺に任せろ。」

「気をつけろ、人の舌を好んで抜き取るスタンド使いがいると聞いている!」

「オラァ!」

 だが、弾丸をも掴む承太郎のスタンド・スタープラチナの拳を、簡単にクワガタムシは避けた。

「や、やはりスタンドだ! 使い手はどこにいる!?」

 そしてクワガタムシが口の物を伸ばしてとてつもない速さでスタープラチナの口を狙ってきた。

 咄嗟に手でガードするも、スタープラチナの手を突き抜け、口に迫る。

 それを横からきた煉の手がガードし、握りしめた。

「煉!」

『よし、そのまま押さえつけていろ。』

 斬島がチャキッと刀に手を置き、居合抜きをした。

 しかし、敵は咄嗟に握られている針の先端だけを切り離したらしく、羽部分が少し切れただけで終わった。

『チッ! だがこの機内でそんな獲物(刀)は振り回せまい!』

『……田噛。』

『ああ?』

『出番だ。』

『……チッ。』

 斬島が消え、代わりに田噛が面倒くさそうに出てきた。

『さっきより、ひょろくてチビだな! ソイツが…何を?』

『…うるせぇ。俺は、眠いんだよ。』

 田噛が右手を、スッと上げた。

『花京院。』

「えっ? 僕?」

『見てるだけのために旅に来たわけじゃねぇだろ?』

「あ、ああ…。」

『何をするかは、煉に聞け。』

「えっ?」

『何コソコソ話してんだ? ヒヒヒ!』

『てめぇは、黙れ。』

 田噛の手首から、無数の鎖が飛び出してきた。

『遅い遅い!』

 しかし田噛は、表情ひとつ変えず、鎖を操る。

 鎖が飛び交い、まるでクモの巣のように機内に張り巡らされていく。

『俺の行動範囲を狭める気か? 無駄だ、無駄! 至近距離でもこのタワーオブグレーを…。』

『鎖はただの誘導だ。』

『はっ?』

『仕留める率は高ければ高いほど良いだろ?』

「そうだね。面倒くさがりの君にはずいぶんな労働をさせたけども。」

『なっ…、ぐぇ!?』

 狭まった範囲の中で、周囲の席の中に潜んでいたハイエロファントグリーンの触手が四方八方からタワーオブグレーを捕えた。

 そして、ブチブチとタワーオブグレーを引きちぎった。

 

「ぎゃああああああああああああ!!」

 

『本体か。汚ねぇ声上げやがって…。』

 鎖を解除して血まみれで倒れ込んだ本体の元へ行き、イライラしている田噛は、本体を踏みつけた。

『…金目当てで仲間になった口か。コイツは。』

「肉の芽がないのか?」

「タワーオブグレー…、噂が本当ならば、塔の暗示を持つスタンド使い。金品を狙って大規模な事故を起こす悪党だ。金で雇われたというのは、ほぼ間違いないだろう。」

「……飛行機…傾いてる。」

「煉?」

「いや、待て…。この揺れは…、機体が傾いているのか! まさか!」

 ジョセフは、承太郎と共に急いで操縦席へ向かった。

 スチュワーデスをどけて、操縦席に行くと、すでにパイロット達は死んでいた。舌を抜かれて。

「いかん! 自動操縦も破壊されている! この機は墜落するぞ!」

「ジジイ、操縦しろ。海に不時着させるんだ。」

 

「ブワハハハハ、ベロッロオオオオン! お前らはDIO様のもとへは行けん! 例え、この機の墜落から助かったとて…、エジプトまで1万キロ! その間、DIO様に忠誠を誓った者共が四六時中、貴様らを付け狙うだろぅ!! 世界中には貴様らが知らん、想像を超えたスタンドが存在するぅ!! DIO様は…。」

 

『んなこたぁ、知ってる! いちいちうるせぇんだよ! 小物が!!』

 田噛が、タワーオブグレーの本体に怒鳴った。

「こ、…こものぉ? わしが…。」

 心外だったのかタワーオブグレーの本体は、そう言い残してついに息絶えた。

「やっぱり、小物だぜ。田噛の言葉にいちいち反応しているようじゃな。」

「…う~む。プロペラ機なら経験はあるが…、しかしのう、承太郎、煉。わしゃあこれで3回目じゃ、人生で3回も墜落を経験する奴なんざいるか?」

「そこにいる。お爺ちゃん。」

「こりゃ、煉。」

「……二度とてめーとは、飛行機に乗らねぇぜ。」

 

 

 そして、海に不時着した飛行機。

 すぐにSOS信号を受けた救助隊が来て、一行は香港に上陸することになった。

 

 

 

 

 

 




一応頭脳派の田噛は、タワーオブグレーのスピードで機内での戦いが不利だとすぐに判断。そこで花京院に協力を仰ぐ。

佐疫の弾丸でも撃ち落とせないないだろうし、これ以外に展開が思い付きませんでした。


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騎士道と、バカ

ポルナレフ戦。


平腹が戦います。


 

 飛行機でのエジプト入りは断念。

 タワーオブグレーの襲撃で、他の人間を巻き込み大惨事になる可能性を危惧したためだ。

 

 しかし、承太郎達は、50日以内に、DIOを倒さないいけない理由がある。

 だからこそ、ひとっ飛びでの飛行機をまず選んだのだが、そんなことは向こうにも筒抜けであり、だからこそ敵が襲ってきたのだ。

 嘆いていても仕方ないということで、香港の飲食店でひとまずくつろいでいると。

 

「すみません。ちょっといいですか?」

 

 銀髪を高く立たせた独特の髪型の若い男性がやってきて、メニューが分からないから助けてくれと助けを求めてきた。

 承太郎は、あっちへ行けと邪険に扱うが、ジョセフは、そんな承太郎をなだめ、自分が注文してあげることにした。

 ところが……。

 

 

 カエルの丸焼き

 

 おかゆ

 

 貝料理

 

 魚の煮た物

 

 

「……お爺ちゃん。全然、ダメ。」

「ったく…。ヤレヤレだぜ。」

「わ、わははははは! ま、いいじゃないか! みんなで食べよう! わしの奢りじゃ! 何を注文しても結構美味いものよ、わははははは!」

「いや~、手間暇かけてこさえてありますなぁ。ほら、このニンジンの形……、星(スター)の形…、どこかで見覚えがあるな~~~?」

 銀髪の男の言葉に、緊張が走った。

「そうそう…、私の知り合いに…首筋にこれと同じ形のアザをもっていたな……。」

「ジョースターさん! 危ない!」

 ジョセフの前にあったおかゆから針剣が飛び出し、ジョセフを狙った。

 だがその攻撃を…。

 大振りなシャベルが防いだ。

「平腹!」

『もーーー、我慢できねぇ!』

 黄色い目を血走らせた平腹が、そのまま銀髪の男に襲いかかる。

 おかゆから飛び出していた針剣が、銀髪の男の方へ行き、銀色の騎士が現れ、そして男が軽やかに飛び退いた。男が飛び退いたあとの椅子を平腹が一撃で破壊した。

「ほう? 血の気が多いスタンドだな? 6人いるとは聞いたが、そのうちのひとりか。たったひとりでこの戦車のカードを持つ、シルバー・チャリオッツに…。」

 しかし、男が名乗り上げる前に、平腹が襲いかかる。

「煉! 平腹を抑えろ!」

『場所を考えろ! 馬鹿者が!』

『グゲッ!?』

 谷裂が飛び出し、平腹に背中に金棒をぶん投げた。

 平腹は、ヨロヨロと起き上がり、ギロッと谷裂を睨んだ。

『谷裂~~…、てめぇぶっ殺すぞ!』

『店の中じゃんなく、外で戦えば良いんだよ、平腹。』

『関係ない人間を巻き込むな。』

『う~~~。』

 フーフーっと平腹が荒い呼吸をする。

「ほう? 完全に自立したスタンドか。珍しい。だがそんなことは関係ないな。平腹と言ったか? お前がまず最初にこの俺に殺されたいと見た。外に出ろ! 一人一人順番に切り裂いてやる!」

 銀髪の男が外へ出て行く、承太郎達も煉も獄卒達もその後を追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 移動した場所は、タイガーバームガーデン。

 

「名乗らせて貰おう。我が名は、ジャン(J)・ピエール(P)・ポルナレフ! そちらの平腹というスタンドの使い手も名乗るがいい。」

「…煉。空条、煉。」

『おい! まだかぁ!?』

 獄卒5名に押さえつけられている平腹が叫ぶ。

「…まったくこらえ性の無いスタンドだ。いつでもかかってこい。」

『行け。平腹。』

『おおおおおおおおおおお!!』

 パッと放された瞬間、平腹がシャベルを手にして、ポルナレフに襲いかかった。

「ふっ、考えも無しに突進してくるとはな。ホラホラホラホラホラ~~~!!」

 針剣が凄まじ速さで突き出される。

 平腹は、凄まじスピードで、それをシャベルでいなし、凄まじいパワーで振り上げたシャベルで、針剣の刃を弾き上げた。

「!?」

 そしてシャベルを突き出す。顔に向かって突き出されたソレを、ポルナレフは、すんでのところで横に避け、顔の頬部分が僅かに抉れた。

「くっ! 貴様、パワーだけじゃないか!」

『ギャハハハハ!』

 ベロを出し、涎を撒き散らしながら平腹が飛び上がり、シャベルを振り下ろす。

 ポルナレフが後ろへ跳んだ直後、振り下ろされたシャベルがタイガーバームガーデンの地面に当たり、大きく抉れ、土が舞い上がった。

「うう…、なんてパワーだ!」

「獄卒…、これほどとは…!」

 平腹の暴れっぷりに味方であるアヴドゥルも花京院もゾッとしていた。

「平腹は、君達の中で一番強いのか?」

『そういうわけじゃねぇよ。』

「だが、あれだけの剣術を操る相手に…。」

『ありゃ、本能だ。アイツは、強いって言うよりは、…単純にバカなだけだ。』

 田噛はそう言って、タイガーバームガーデンの置物のひとつに背中を預けて寝た。

「くぅ!」

『おおおおおおおおおおおおお!!』

 周りを見境なく破壊しながらポルナレフを追い詰めていく平腹。

 そこで、ポルナレフは、奥の手に出る。

 シルバー・チャリオッツが、突如首から下の鎧を外した。

「見るがいい! 甲冑を外したシルバー・チャリオッツの戦いを!」

 だが構わず襲いかかってくる平腹。

 直後、シルバー・チャリオッツが何人にも分身し、今まで以上のスピードで針剣を突き出してきた。

 さすがに捌ききれず、平腹の体中に穴が空く。

 手にも穴が空き、シャベルが落ちた。

「フフフ! 本能でのみ戦っていたようだが…、さすがにこれには驚いただろう? 見えたか? 見えなか…。」

 見えなかっただろう? と言いかけた、ポルナレフの身体が吹っ飛んだ。シルバー・チャリオッツもろとも。

 シルバー・チャリオッツの腹部には、くっきりと平腹の拳の跡が残っていた。

 ボタボタと血を流していた平腹の左手には、シルバー・チャリオッツの針剣が握りしめられていて、シルバー・チャリオッツの手から離れていた。

 

『アイツ…、バカだから、騎士道精神とか云々は、何一つ分かっちゃいないんだよ。』

 

 ポルナレフは、騎士道精神により隙を見せたのが敗因となった。

 

 

「相手が悪かったな…。しかし、敵でありながら、礼儀を忘れぬあの精神…、死なせるには惜しい。承太郎。」

「ああ、抜くぜ!」

 そして、倒れたポルナレフの肉の芽を引っこ抜きということになった。

 しかし、引っこ抜いたものの、ポルナレフは、大量の血を吐いた。

 どうやら平腹の最後の一撃で内臓をやってしまったらしい。

「こりゃいかん! このままじゃ…。」

「……。」

「煉?」

 すると煉が、グッと拳を握りしめ、血を流すと、その血をポルナレフの口に流し入れた。

 ポルナレフは、ゴホゴホと咳き込むが、やがてハッと目を開け、起き上がった。

「…これは…?」

「……うまくいった。」

「俺を…助けてくれたのか?」

「煉…お前…。」

「俺は…、改造鬼だ。不死身の血なら…、回復も早い。っと、思った。」

「人体には影響は無いのかい?」

『んー…、たぶん大丈夫じゃない?』

『吸血鬼じゃないんだしね。』

 意外と適当な獄卒達に、ジョセフ達は、絶句した。

 

 

 煉の血が、怪我の治りを早めることが判明。

 

 




なんとなく、平腹は、鍛錬などで鍛えたセンスというよりは、本能で戦うタイプじゃないかと思って。
そして、基本バカだから騎士道精神とか関係なし。考えてないから。

3部は、怪我の割に回復手段がないようなので…、無理矢理に煉の血で怪我の治りを早めるという捏造設定を入れました。


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フランケンシュタインの怪物

ポルナレフ仲間入り。


フランケンってよく言いますけど、本来の呼び名は、フランケンシュタイン(博士)の怪物だったような?


 

 

「ムッシュ・ジョースター。実に奇妙なことを質問するが…、あなたのその左手は、『右手』ではあるまいな?」

「左が右? 確かに奇妙な質問じゃ。」

 そしてジョセフは、手袋を嵌めている左手から手袋を外して見せた。

「…50年前の戦いによる名誉の負傷じゃ。」

「…失礼な詮索であった。許してくれ。」

 

 そしてポルナレフは、語り出す。

 3年前から最愛の妹を辱めたうえに殺した仇を探しているのだと。

 相手は、スタンド使いと思しき能力を持ち、そしてその男の最大の特徴は、左手が右手であることらしい。

 その仇を見つけるため、DIOが自身の能力でもってその仇を見つけてやると言われたので、あえてDIOの肉の芽を受けることにしたのだという。

 

「我が妹の魂の尊厳とやすらぎは、そいつの死でもって償わなければ取り戻せん! 俺のスタンドが然るべき報いを与えてやる!!」

 

『あっれ~? 俺ソイツ見たことあるかも?』

「なにぃ!? どこでだ!」

『つっても、地獄で見たんだけどさ。』

「なっ…。」

「それは、つまり…すでに死んでいると?」

『ちげーよ。俺らがDIOに負ける前。そん時は、承太郎達が負けた後だったしよ。』

『つまり、まだ生きているということですよ。平腹が見たのは、たぶん裁定を与えられる時に連行される時だろうね。』

「……顔は?」

『ほへ?』

「顔を見たのかって聞いてんだ!」

『えーと…、顔、穴だらけでグチャグチャで分かんなかった。』

「背格好は!?」

『身体もなんか穴だらけだったかな? あんまし覚えてね~。』

「おい、真面目に答えろ!」

『え~~? だって、地獄って罪人ばっか来るからいちいち覚えてられねぇもん。』

『俺達は、罰する側だ。罰する側がいちいち、罪人一人一人を気にかけてたらもたん。俺達は、言われたことを実行する側だ。』

「……見れば…。」

「?」

「もし本人を見れば、分かると思う。」

「分かるのか? 煉。」

「平腹が見たなら…、一緒に行けば、見つけられるかも。」

「DIOのことだ。タワーオブグレーの例もあることだし、すでに仲間に入れている可能性が高い。」

「そうか…。なら、決めたぜ。俺は、あんた達と共に行かせてもらう。……助けてもらった恩もあるしな。」

『ま、その怪我も平腹のせいなんだけどね…。』

『ほっ? 俺なんかしたっけ?』

「…やれやれ、想像以上のバカっぽいな。」

 承太郎は、平腹に少し呆れた。

 

 こうして、ポルナレフの同行が決まった。

 

 

「ところで、煉。」

「ん…?」

「お前、右手が左手になってるぞ?」

「はあ!?」

「あ…、再生失敗。」

「おい、どういうことだ?」

 煉の身体の異常に、ポルナレフが訝しんだ。

「俺…、人間じゃ無い。だからたまに失敗する。」

『13年間、ここまで大怪我したこと無かったもんね。』

 平腹が受けた傷が、スタンドと本体のダメージのフィードバック効果で反映されてしまったのだ。

 右手に受けた傷が大きく、再生の過程で変なことになったらしい。

「人間じゃ無いって、どう見ても人間にしか…。」

「俺…、6人の鬼の身体から作られた。だから、両手足の大きさが違う。」

「耳の大きさもな。目も違うしよ。」

「うお、ほんとだ。」

 よく見たら靴のサイズが両足で違ったり、左手化した右手も、本当の右手と大きさが違った。しかもよく見たら、骨の作りも、爪の質感も違う。

 そこで、煉の事情説明。

 自分達が、元々は、6人の地獄の獄卒という鬼であり、DIOを倒しその魂を回収するため現世へ派遣されるも、失敗に終わり、身体をバラバラにされ、その身体をあの世でつなぎ合わせて作られたのが煉であること。

「つなぎ合わせったって…、んなフランケンシュタインの怪物じゃあるまいし…。」

「うん…。俺、実際にそう。」

 自分が閻魔庁公認の鬼の身体から作られた怪物であることは、煉は自覚していた。

 ポルナレフは、そんな煉の様子に言葉を失う。

 自分が作られた存在だと理解し、DIOの討伐という任務のためだけにここにいるのを煉自身が自覚しているのだと理解したからだ。

 だが、煉はとくにそれを悲観している様子もないし、まるで最初からそれが運命だと受け入れているようだ。表情は乏しいが、なんとなく雰囲気でそう感じ取れた。

 ポルナレフは、気がつけばなんとなく、煉の頭に手を伸ばし、ワシワシとその頭を撫でていた。

「おい…、なにやってんだ?」

「ん? ああ、なんとなく。…睨むなよ。」

 一応、煉の兄である承太郎が、ギロッと睨んできたので、ポルナレフは、降参だと手を上げた。

 

 そして、一行は、チャーターした船に乗った。

 

 

 




平腹が、死後のJ・ガイルを見ていたというのは完全捏造です。
死後の姿については、色んな作品で諸説ありますが、ここでは、死んだ直後とか、よっぽど絶望して死んだとかの影響で地獄での裁定の際にその姿で現れるということにしました。
そのため、平腹は、原作でポルナレフに針串刺しの刑で死んだあとのJ・ガイルしか見ていない。
けど、生きている本人を見ればその人物だと分かる程度には覚えている。


次回は、ダーク・ブルー・ムーン。


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人(?)を見かけで判断してはいけません

ダーク・ブルー・ムーン戦。


敵には、まだ煉のことが知られていないということにしています。


 

 煉は、ボーッと船の甲板から海を眺めていた。

 潮風が気持ちいいなぁ…っと、ぼんやり考えていた。

「おーい、煉。海眺めるのもいいが、泳がねぇ?」

 ポルナレフに声をかけられたが、煉は、そちらを見ただけで、何も言わずまた海を眺め始めた。

「おーい、聞いてる? …なんか俺嫌われてるか?」

「煉は、喋れるようなったのは最近じゃからのう。それにああ見えて海を眺めるのが好きみたいじゃから。海や川行っても、景色を眺めてばかりじゃなからの。」

「なんだ? 泳げねぇの、実は?」

「…そういえば、泳いどるところ、見たことがないのう。」

 言われて見れば、煉が泳いでいる姿を見たことがないとジョセフは、気づいた。

「煉。お前…、まさかと思うが、カナヅチか?」

「……悪い?」

「そうじゃったの!? 知らんかったぞ、わしゃあ。」

「別に…言うことでもないと思ったから…。」

 煉はそう言い、プイッとそっぽを向いた。

 ようは言いたくなかったし、聞かれたくもなかったらしい。

「じゃあ、俺が教えてやるよ。」

「煉は、泳ぐのが嫌いなんだぜ。」

「イデェ!」

 ポルナレフの後ろから、承太郎がどついた。

「嫌なことは他人するなって、親に教わらなかったかよ?」

「不良のお前の台詞じゃねぇ! なんだかんだで、承太郎おまえブラコンだよな? 可愛い弟なのは分かるけどよぉ。」

「やかましい。」

 フンッと承太郎は、そっぽを向いてタバコを吸い始めた。

 やっぱり、ブラコンだ…っとポルナレフや、聞いてたアヴドゥルも花京院も思った。

 その時。

 

「はなしやがれ~~!!」

 

 子供の声が聞こえた。

「おいおい、何の騒ぎじゃ?」

「密航ですよ。船倉に隠れてやがりまして。」

「密航?」

 子供を連れて来た船員の横には、木舌がいた。

 船に乗ってから6人の鬼達が姿を見せないと思ったら、船内にいたらしい。

 船員が警察に突き出すと言うと、騒いでいた子供は、慌てたように勘弁して欲しい、お父さんに会いに行くためだったんだと泣き言を言い出す。

 しかし、ダーメっと言われ、船員の腕に噛みつき、その手から逃げ出して、海に飛び込んだ。

「おお~、やるな~?」

「ま、マズいっすよ! この海域はサメの巣窟で!」

「なにーーー!?」

「あ、煉!」

 すると煉が浮き輪を手に海へ飛び込み、子供に迫ったサメの鼻先を殴って撃退した。

「煉!」

「おーい、誰かハシゴを出してくれ!」

「泳げねぇのに、助けるために飛び込むなんて…、勇敢っつーか、無謀っつーか…。」

「あれ? あの子供…、女の子か…。」

 煉が飛び込んだ際にあがった海水で、子供が被っていた帽子が取れ、長い髪の毛が出ていた。

「これ…。」

 煉が浮き輪を子供…少女に渡すようにした。

「あ、わりぃな…。」

「おい! 煉! 早く上がれ!」

 その時、先ほど撃退したサメが何かに真っ二つにされ、ソレが煉の下へ迫ってきていた。

「この距離なら…、ハイエロファントグリーン!」

 花京院がハイエロファントグリーンで、二人を引っ張り上げた。

 引っ張り上げられた、煉の左足が思いっきり切れていて、千切れかけているような状態だった。

「煉! サメにやられたのか!?」

「いや、これはサメのものじゃない。おそらく先ほどの…。」

「お、おい、だいじょうぶかよ? …? なんだよ?」

 煉以外の面々が少女を見たので、少女はビクッとなった。

「まさか、この子が?」

「いや、そうと決まったわけじゃないが…、我々以外に敵が紛れ込んだとしたら…。」

「な、何言ってんだよ!? それより、ソイツ、そいつの怪我の方が大事だろ!」

「ううむ…。演技とは思えんが…。」

「……くっついた。」

「はっ? もう!?」

「えっ、えっ?」

「さすがに治りが早いな。」

 さっきまで千切れかけていた足が、いつの間にかくっついていて、出血も止まっていて少女はびっくりした。

 少女は、煉のことを知らないようだ。だが、それが演技である可能性もある。

 それをモンモンと悩んでいると、船長のテニールがやってきた。

「この子かね、密航者とは。」

「ひゃっ!」

 テニールが少女を捕まえた。

「私は密航者には厳しい質でね、下の船室で軟禁させてもらうよ。」

「ひいい…。」

『あまり乱暴はしないでやってくださいよ。女の子ですよ?』

「そういうわけにはいかんよ。」

 

「あっ!」

 

 煉と木舌以外の一行が一斉に声を揃えた。

「て、テニール船長…あんた…。」

「? どうしたのです?」

『まさか、こんな簡単なことに引っかかるなんてね。』

「なにを……、ハッ!?」

 苦笑している木舌が、煉に重なるように消えるのを見て、テニールは、気づいた。

 木舌が、外見こそ人間のソレだが、スタンドであったことに。

「し、しまったーーー!」

「フン…、間抜けが見つかったぜ。よくやったな、煉。」

 承太郎がタバコを携帯灰皿で消し、立ち上がった煉の頭を撫でた。

 大汗をかき、焦った偽の船長は、スタンドを出した。

 半漁人のスタンドが、少女を捕えた。

「きゃああああああ!」

「水とトラブル! 嘘と裏切り! 未知の世界への恐怖を暗示する、月のカード、ダーク・ブルー・ムーン(暗青の月)! てめーらと、6対1じゃ、さすがの俺も骨が折れるから、正体を隠し、ひとりひとり始末してやろーと思ったが……、まさか完全な人間型のスタンド使いがいたとはなぁ!」

「……谷裂。」

 煉の身から、谷裂が飛び出し、偽の船長に襲いかかろうとする。

「待て! 谷裂! 人質が!」

『知っている!』

「ほう? 複数のスタンドの姿を持つのか、だが海に飛び込んでこの俺に…。」

『その必要はない!』

 谷裂は、手にしている金棒を振るフリをして、拳ひとつで偽の船長にアッパーカットをして吹っ飛ばした。

「オラオラオラオラオラ!」

 さらにダメ押しで、承太郎がスタープラチナを出し、ダーク・ブルー・ムーンを殴りまくって少女を奪い返した。

 スタンドが吹っ飛ばされ、ダメージのフィードバックで、偽の船長も吹っ飛んでいき、海に落ちた。

「隙だらけ…。」

「たいしたことねぇな。」

「アイツ沈んじまたったな…。」

「結局スタンドの能力も分からないままか…。…谷裂?」

『……くっ…!』

「うわわわ! 見ろ! 谷裂の右手にフジツボが!」

「ち、畜生…、俺もだ…。あの偽の船長…、まだ戦う気だ…!」

「煉! 谷裂を! 承太郎もスタンドを引っ込めろ!」

「……無理。」

「それができねぇから…嫌な汗をかいてんだ…。」

『水中戦だと…、佐疫! お前も来い!』

『分かった。』

「ぐっ、くうう!」

「承太郎!」

 谷裂と承太郎が海に引っ張り込まれ、佐疫がそれを追って海に飛び込んだ。

「なんで、佐疫なんだよ!? あの一番ヒョロッちい感じの!」

「……外見で、判断しちゃダメ。」

「煉?」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

『よ~こそ、よ~こそ、海の中へ。』

 スタンドを使ったテレパシーで、水中で待ち構えていた偽の船長が笑って言う。

『てめぇらは、こう考えている? 自分の限界は2分てとこだが、自分より長く潜っていられるだろうか? クククク…! 答えてやるよ、俺の肺活量は、常人の3倍! そして訓練されている。自己ベストは6分と12秒よ! この数字を聞いただけで、意識が遠くなるだろう?』

『俺は、問題ないが…。』

 谷裂が承太郎を見る。

 フジツボの攻撃でスタンドパワーを奪われ、身動きがほとんど取れないのだ。

『そっちの兄ちゃんは、金棒なんて水中じゃ不利すぎる武器なんざ持ってる! 俺のダーク・ブルー・ムーンの水かきは、スクリューよりシャープに動き、切り裂く! そして! てめぇらに付けたフジツボは、てめぇらのスタンドパワーを吸ってどんどん増える!』

 

『さてと…。』

 

『フンッ、馬鹿な奴がもう一人来たぜ! ヒョロッちいうえに、そんなガバガバな格好じゃ…。』

『フフフフ…。』

『なにがおかしい?』

『外見で人を判断しちゃいけないよ? それは、戦いにおいてもっとも注意すべき事だと思うけど?』

 コートの下から、水中銃を出した佐疫。

 偽の船長は、ギョッとした。

 佐疫は、笑顔で水中銃を発射した。

 偽の船長は、ダーク・ブルー・ムーンの水かきで防ぐ。

『なるほど…、そういう奴もいるのか…。複数のスタンド持ちとはな…。だが…、甘く見てもらっちゃ困るぜ!』

 するとダーク・ブルー・ムーンが、水かきを使い、水中をかき回して渦を作り出した。

 承太郎、谷裂、佐疫が渦に飲まれ、かき回される。

 けれど、承太郎は、佐疫を見る。

 佐疫は、ニッコリと笑うことで返事をした。

『フフ…、そうやって何かに集中して動かなくなるのを待ってたんだ。』

『なにぃ!?』

『気がついてないの? 水中銃は、ただの囮だよ。』

『自分の横を見な。』

『えっ…? ハッ!! これは…!!』

 横を見て偽の船長は、絶望の顔をした。

 そこには、爆雷が三つ。偽の船長を囲むように沈んできていた。

『飛び込んだときに一緒に落としたんだ。さて…この起爆スイッチを押せば…。』

『まっ…。』

『待たないよ。本物の船長を殺したことを、地獄で裁いてもらえばいい。』

 そして佐疫は、爆雷の起爆スイッチを押した。

 そして爆雷が爆発した。

 

 

「……佐疫って…、実は、一番おっかないのかい?」

『アイツは、優等生タイプなだけだ。』

「優等生が…、武器庫ってありかよ…。」

 船の上で、佐疫が銃火器を使う獄卒だと説明を受けて、人(※鬼)は見かけによらない…っと、ジョースター一行はゾッとしたのだった。

 

 

 

 




漫画版だと、表紙裏で、対戦車用機関銃を出してるので、爆雷ぐらい持ってそう…っという勝手な想像です。
あのコートの下は、ドラ●モン顔負けの四次元ぶりという捏造設定。


次回は、力の暗示、ストレングス。


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猿退治

力の暗示編。


獄都事変の獄卒達は、割と自分が傷つくことに躊躇が無いのかな?

目が抉られてても冷静だし。


 

 結局、海路での旅は失敗に終わった。

 シンガポールを目指していた船は、あのダーク・ブルー・ムーンを操るスタンド使いが爆弾を仕掛けていたため、船が爆破し、救助用のボートに全員が避難する羽目になったのだ。

「なにがなんだが分かんないけど…、あんた達…何者?」

「君と同じに、旅を急ぐ者じゃよ。もっとも君はお父さんに会いに…、わしは娘のためじゃがの。」

「ふーん…。ねえ、煉って言ったっけ? あんた。」

「ん…?」

「ホントに足…、だいじょうぶなの?」

「見る?」

 そう言って煉は、ダーク・ブルー・ムーンにやられた方の足を見せた。

 うっすらと傷跡らしき赤い部分は残っているが、完治している。

「ええー、どうなってんの? あんな…千切れそうな状態だったのに?」

「治りが…速い…。」

「おまえ、もしかして不死身とか? まさかね~?」

 少女が冗談めかして言う。

 だが、場がシーンとなり、あれっ?と少女は首を傾げた。

『子供って、やっぱり勘がいいな。亡者の捕獲や討伐の時も、よく見つかることがあるんだよね。』

 木舌がそう言った。

『おい…。あれ…。』

 田噛が指差した。

 霧がかかった先に、その霧をかき分けるように大型タンカーが現れた。

「おお! タンカーか! いつの間に!」

「タラップが降りてるぞ! 救助信号を受けてくれたのか!」

「……怪しい。」

「お前もそう思うか? 煉。」

「どうしたんじゃ?」

「タラップが降りてきているのに、誰も顔を出してねぇ。」

「!」

「ここまで救助に来たんだ、誰も乗ってないわけねぇだろ!」

「食料も水も少ない。怪しいのは確かだが、行くしかないのでは?」

「……分かった。」

「ほら、煉。」

 タラップに上がる際、承太郎が煉に手を差し伸べ、その手を煉が掴んでボートから引っ張り上げられた。

「なーなー、仲良いな? どういう関係?」

「…兄弟。」

「弟だ。」

「えー、全然似てない。」

「似てない兄弟もいるものじゃよ。」

 ジョセフがそう言った。

 煉の事情を話しても仕方が無いので、そういうことにした。(※承太郎は、煉をちゃんと弟だと思ってます)

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 タンカーに全員があがったはいいが、どこにも人はいなかった。

 だが、甲板にある、個室の一室に、不気味なオラウータンが檻の中にいただけだった。

 花京院がハイエロファントグリーンを隙間に潜らせ、船内を調べだす。

「なあ、煉。来てくれよ。」

「ん?」

「シャワー浴びたいんだ。見張りしてくれね?」

「……分かった。」

「ホント? なんなら背中洗ってやろうか?」

「……。」

「ジョーダンだって。マジにした?」

『けっ…、しょんべ臭いガキに手ぇ出すかよ。』

『聞こえてないよ。』

 煉は、少女に手を引かれ、船内に入った。

 そして、他の船員達が色々と会議などをしている傍ら、少女がシャワールームに入り、その出入り口のところに煉は座り込んだ。

『なー、煉、れーん?』

「…ん。」

『なあ、なあ、絶対、あの女の子、煉のこと好きなんじゃね?』

『それは早合点じゃないのかい? 平腹。』

『え~? マジだと思うけどさ?』

『たぶん、見た目の年齢が近いから、それで気安くしてるだけじゃないかな?』

「……それどころじゃない。」

『あ?』

『……そうみたいだね。』

 

 ふと気がつけば、船員達が消えていた。

 

 濃厚な血の匂いがし、そして、強烈な獣臭が近づいてくる。

 煉が座り込んだまま、そちらを見ると、檻の中にいたはずのオラウータンがやってきた。

「…どうした、煉?」

「…出てくるな。」

「えっ?」

 シャワールームの向こうにいる少女にそう言い、開かないよう扉に手を置きながら煉は立ち上がった。

 オラウータンが、飛びかかってきた。

『どうやら、俺達はコイツの術中にまんまと入り込んだみたいだね。』

「!」

 オラウータンの背後から、木舌のハイキックが頭部に決まり、オラウータンが横へ転がった。

『これだけのパワー…、つまり、力(ストレングス)の暗示と言ったところか…。俺が相手だよ。お猿さん。』

「ギャオオオオオオオオオ!!」

 力の暗示のスタンド使いであるオラウータンが、近くにあるテーブルを掴んで木舌に投げてきた。

 それを木舌は、大斧で真っ二つに叩き切る。

 直後、木舌の背後から消火用のホースが伸びてきたが、それを斬島が刀で切断した。

『油断するな。』

『じゃあ、後ろは任せた。』

 木舌が斬島にそう言い、斧を構え直した。

 オラウータンは、二人の出現に驚いた顔をしつつ、後ろの壁に逃れていく。

『逃がさないよ。』

 木舌が大斧を手に、オラウータンを追う。

 そしてオラウータンが、壁に吸い込まれるように入り込み消えた。

『おや? 敵前逃亡…ってわけじゃ…なさそうだね。』

 木舌が煉の方を見ると、煉の足下からオラウータンが出てきて、煉の足を掴み宙づりにした。

「…気にするな。」

『……気が引けるんだけど…。それに承太郎にも怒られるだろうし。』

 煉は、自分ごと切れと目で訴えているので、木舌が躊躇すると、オラウータンは、雄叫びを上げ、煉を振り回し、床にたたきつけた。

 掴まれている足があらぬ方向に曲がり、骨が露出。そしてオラウータン自身の怪力で、煉の身体のあちこちが傷ついたり、折れるなどした。

「キャアアアア! 煉!」

 煉がいなくなったことで扉が開き、その隙間から煉がやられたのを見て少女が悲鳴を上げた。

 まだ息がある煉を、もう一度持ち上げ、オラウータンは、再び叩き付けようと腕を上げようとした。

 その直後、オラウータンの頭に、檻の錠前が投げつけられた。

「…承太郎…。」

「助けがいるなら声ぐらい上げろ。」

「ごめん…。」

 眉間にしわを寄せている承太郎に、煉は血だらけで謝罪した。

 オラウータンは、ギッと承太郎を睨み、だが煉を放さない。

「人質のつもりか?」

 承太郎が、人を殺しそうなほどの睨みを利かせた。

「お前……、バカ。」

 煉は、下からオラウータンを見上げ、そう言った。

「俺のスタンド…消えてるのに気づいてない。」

「!」

 次の瞬間、煉の身から飛び出してきた斬島の刀が、煉の足を掴んでいるオラウータンの腕を切断した。

 オラウータンが、悲痛な悲鳴を上げ、血を撒き散らしながら転がる。

『もう壁の中には、もう逃がさないよ。』

 壁際まで転がっていくオラウータンを、木舌が踏みつけて止めた。

 ヒイイイイイ!っと、オラウータンが悲鳴を上げ、腹を見せた。

「降伏した動物は、腹を見せるか? ……だが、お前は、動物としての範疇を超えちまった。」

 承太郎は、チラリッと船員達の死体を見た。

「ダメだね。」

 直後、スタープラチナが飛び出し、凄まじい拳のラッシュをオラウータンに決めた。

「煉…、煉! だいじょうぶ!?」

 少女が裸の身体をタオルで巻いた状態で飛び出してきて、倒れている煉を助け起こした。

「…だいじょうぶ。俺…死なないから。」

「やっぱり不死身なのか?」

「おい、船が崩れ始めた。着替えを持ってさっさと逃げるぞ。」

 船のスタンドを使っていたオラウータンが死んだことで、船が形状を失い始めた。

 生き残った一行は、急いでボートに飛び乗り、脱出した。

 巨大なタンカーは、やがて、ボロくて小さな船になり、沈んでいった。

「信じられない…! あんな小さくて、ボロい船がさっきまでいたタンカーだったなんて…。」

「あの猿は、自身のスタンドで海を渡ってきたのか! 我々は完全に圧倒されていた…。煉と承太郎が勝たなければ、全滅していた。」

「この先も、あれほどのスタンド使いが刺客としてくるのか…。」

「…ヤレヤレ、また漂流か。」

「……。」

「あっ、もう治ったのかい?」

「うん…。」

「ハー、マジで不死身なんだな? 鬼ってすげー。」

「おに? 煉って…、鬼? でも角ないよ?」

「角の無い鬼もいる…。」

「じゃあ…そっちの…。」

「血の…繋がりはない。」

「そ…そう…。」

 兄である承太郎も鬼かと疑いかけた少女に、煉がそう言い少女は納得した。

 少女は、ジッと煉を見る。

「なに…?」

「えっと…、血…ついてるよ? 拭くから動かないで。」

「ん…。」

『やっぱ好きなんじゃね?』

『吊り橋効果かな?』

 煉の血で汚れてしまった煉の頬や手などを、少女が塗らしたハンカチで拭いている様子を見て、平腹と木舌がそう言っていた。

 

 




すぐ再生するため、傷つくことに恐れが無く、そのため煉も自分がどれだけ傷ついても怒らないし、気にしてない。むしろ自分ごと攻撃しろと言わんばかり。
周りがどう思おうと気にしてない……。


家出少女、煉に気がある様子。


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鬼vs悪魔

エボニーデビル編。


原作と展開が違います。


グロ注意。


あと、斬島の刀・カナキリの捏造。


 

 運良く航行していた船に救助され、一行はシンガポールに上陸した。

 目的のシンガポールに着いてからも、自分達に着いてくる少女。

 本人は、5日後に落ち合う予定だと言うが本当かどうか謎だ。

『やっぱ、煉のこと好きなんじゃねーの?』

『ま、視線は感じるよね。』

「だが、このまま我々と着いてきたら、危険じゃ。」

「お金も無いようだし、ホテル代くらい恵みましょう。」

「おい、貧乏なんだろ? ホテル代恵んでやるから、来な。」

「ほんと? 俺、煉と一緒がいい。」

「ふざけんな。」

「承太郎って、ブラコンなのね。」

 キャハハっと笑われ、承太郎は、ムスッとした様子で帽子のツバに手で触れていた。

 

 

 そして一行は、ホテルに。

 

 煉は、承太郎と一緒の部屋に。

 しかし、煉はしきりに何か気にしていた。

「どうした?」

「……俺達の…動きは全部…読まれてる。」

「…何かいるのか?」

「行ってくる。」

「待て、ひとりで行かせないぜ。」

 すると、部屋の扉が外から叩かれた。

 承太郎が前に出て、スタープラチナをいつでも出せるよう警戒しながら、ドアに手をかけて開けた。

「れーん。マーライオン見に行こうぜ!」

 あの少女だった。

「それどころじゃ…ない。」

「えっ?」

 煉は、承太郎と少女の横を通り過ぎ、部屋から出て行った。

 承太郎も続き、戸惑った少女は、慌ててその後を追っていった。

 

 そして、煉は、ポルナレフに割り振られた部屋に来た。

 

「ポルナレフに用か?」

「……血のにおいがする。」

「!」

「平腹。」

『ほっ。』

 平腹が飛び出し、扉をシャベルで破壊した。

 そして開いた扉の向こうから、ムワッと濃厚な血のにおいがした。

 まず見えたのは、顔をそぎ落とされて死んだホテルのボーイの姿だった。

 

「来るなー!! 殺されるぞーーー!」

 

「ポルナレフ! どこだ?」

「うっ…。」

 少女が口を押え、その場にへたり込む。

 煉と承太郎が部屋に駆け込むと、割れた瓶の欠片が投げつけられた。

 承太郎はソレをスタープラチナで防ぐ。

 

『ケケケケ! ちくしょー、てめぇらが来るとはな!』

 

「人形?」

『俺様は、タロットカードの悪魔を暗示持つ、エボニーデビル! 邪魔しやがったからには、生かしちゃ帰さねぇぜぇぇぇ!!』

 カミソリの刃と、尖った棒きれを手にしている不気味な人形が、足が壊れたベッドの上にいた。

『ポルナレフは、そこのベッドの下だ。』

「斬島。」

『ああ。』

『ウケケケケケケ!!』

「オラァ!」

『トロいぜ!』

 スタープラチナの1発目の攻撃を、エボニーデビルは、軽々と避け、さらにその腕を一部カミソリの刃で切り裂いた。

「くっ…、コイツ…。」

『エボニーデビルは、そいつを恨めば恨むほど強くなるんだぜ~~~! ポルナレフをぶっ殺すチャンスを消したてめぇらをう・ら・む・ぜ~~~!』

『……。』

『おい、お前…、突っ立ってないで、来いよ? そんなナマクラ刀で、俺を切れるもんならな。』

『恨みか…。なるほど、その者の精神の具現であるスタンドらしい能力だ。だが…。』

 次の瞬間、シュッと何かが切れた音がした。

『俺の刀……、カナキリは、妖刀だ。無念を残し金切り声をあげる魑魅魍魎を切り裂き続けた刀だ。』

『…ぐ、…げ?』

 エボニーデビルの胴体部分が、ゆっくりとずれていき、ベッドの上に転がった。

『げ、ゲゲゲ!』

「…うぅ…。おい、デーボ…。ちっと聞きたいことがある。」

 ベッドの下から這い出てきたポルナレフが、バタバタと上半身をばたつかせるエボニーデビルに聞いた。

「両手とも右手の男を知っているのか? もし知っているなら、そいつのスタンドを教えな。」

 シルバー・チャリオッツを出し、エボニーデビルの頭に突きつけた。

『ば、かか…、殺し屋がほいほいと自分のスタンドを教えるかよ…! スタンドを知るときは…、そいつが死ぬか、相手が死ぬかだ!』

「…そうかよ。」

『グケケケ…、てめぇらは…、四六時中…DIO…さまに…見張られている…ぜ……。安息なんか…ねぇよ…。』

 不気味に笑ったエボニーデビルは、そのまま息絶えた。

 

 

 すると別の場所の方から、大きな悲鳴が聞こえた。

 どうやら本体が死体で見つかったらしい。

 ダメージのフィードバックで、おそらくは胴体が上下で切断されているのだろう。

 ボーイ殺しの件でその場にいた煉達も警察の聴取を受けることになったが、そこは旅を急ぐため、SPW財団の力で強引に解放してもらった。

 

 

 

 

 

 




展開としては、7人目のスタンド使いをイメージ。

鍵がかかっているので、まさか敵に襲われている!?と、主人公が鍵を壊して入ってエボニーデビルとの戦闘に入るシーンですね。


なお、原作の獄都事変では、斬島の武器であるカナキリについては言及されてません。
妖刀というのも捏造です。


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お怒り、お兄ちゃん

イエロー・テンパランス編。


花京院じゃなく、煉に化けてます。

その結果……。


『煉。煉。朝だ、起きろ!』

「…ん?」

 煉は、谷裂に起こされ目を覚ました。

『まったく、だらしない! 時差ボケもあるだろうが、情けないぞ貴様!』

『まあまあ、谷裂。そんなに怒らないように。』

 ブツブツ説教する谷裂を、木舌がなだめた。

 煉は、キョロキョロと周りを見回した。

 同室の承太郎がいない。

『承太郎なら、先に起きて行っちゃったよ。さ、煉も支度して追いかけよう。』

 今日は、インドに向かうための列車のチケットを買う予定になっている。

 それで、承太郎、花京院、煉が行くことになっていたのだが……。

『承太郎って、煉に甘いから無理に起こしたくなかったなんだろうね。』

『ブラコンだー、ブラコン!』

『っるせぇな。』

『ところで、田噛。お前は、ひとりで外に出ていたが、何か見つけたのか?』

『……煉を見ていた奴がいた。そいつを追ってたが、途中で射程距離外になって、諦めた。』

『特徴は?』

『さあな。男だったってことだけぐらいか?』

『お前を見たのか?』

『……追ってる途中で、人混みに紛れ込もうとしやがったからな…。恐らくはな。』

『新たな刺客か。』

『つい昨日、襲ってきて、もうかよ!』

『どんだけ警戒してんだか…。』

「…準備…できた。」

 斬島達が話し合っている間に準備を整えた煉。

「…急ぐ……。」

『よっしゃ、行こうぜ!』

『…無事なら、いいが。』

『確か、ケーブルカーで、行くって言ってなかったっけ?』

『待ちくたびれて先に行ってる可能性もある。……まあその可能性は、低いだろうが。』

『承太郎が煉を置いて先に先にってありえねーよな?』

 

 

 煉は、斬島達を身体へ戻し、ケーブルカー乗り場へ急いだ。

 

 

 

 そこで見たのは……。

 

 

 

「……俺?」

 

「チッ! 本物のご登場か。」

 煉に顔と格好は似ているが、似ても似つかない口調と表情をした何者かが承太郎と花京院と対峙していた。

 承太郎は、煉と偽の煉を見比べ、偽の方を見た。

「それじゃ、本物も来たことだし、ハンサム顔をお見せするかな~。」

 そう言ってブワッと肉が割れ、別人の顔がその下から現れた。

「オラァ!」

「ゲブッ!」

 その瞬間のスピードは、音速超えたんじゃね?ってレベルのスタープラチナのパンチであったと…、花京院、そして煉達は語り継ぐ。

「じょ、承太郎…。もしかして最初から…?」

「ああ…。」

「もしかして、煉の顔をしてたから殴れなかったとか?」

「……。」

 花京院からの言葉に、承太郎はだんまりだ。答えないということは、肯定だ。

「そ…それなら…、そうと言えよ~。」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 そこからは、もう相手が防御する暇も無く、超スピードのラッシュ。

 呆気にとられる花京院と、煉達。

「……よっぽど…、ご立腹だったんだね。大事な煉に化けられたことが…。」

『ブラコンだー、ブラコン!』

 そう茶化す平腹に、誰も承太郎をフォローできなかった……。

 

 そして、ピクピクと痙攣しているDIOの刺客に、煉が血を垂らす。

 瞬く間に傷が癒え、ガバッと起き上がったが、承太郎達に囲まれビクッとしていた。

「教えて貰おうか。あと何人のスタンド使いがいる?」

「そ、それは、言えねぇ…。プライドがあるからな…。」

「ほう? なら…。」

「お、思い出したーーー! 『女帝』、『死神』、『皇帝』、『吊られた男』がいるぜ!」

『なるほど。で、その能力は?』

「し、知らねぇ…、それは本当に知らねぇ! スタンドを見せるってことは弱点を晒すって事だ! だ、だが…、DIOにスタンドを教えた魔女がいる。そいつの息子が、『吊られた男』だ。鏡だ。鏡を使うらしい……。ポルナレフの仇なんだろ? 負けるぜ?」

『『吊られた男』……ハングドマンか。』

『ポルナレフに教えてやるか。』

「………今だ!」

 座り込んでいたDIOの刺客の足下から、ニュルルルっと、スタンドが現れ、煉の足に絡みつき、そして首に巻き付いた。

「煉!」

「ハハハハ! 大事な弟くんを助けたかったらよぉ! 承太郎くんよー、そっちの花京院をぶっ殺しな!」

「なっ!?」

「そいで、最後に自分で自殺したら放してやるよ!」

「……。」

 すると煉は、斬島からカナキリを奪い取り、刃を首に当てた。

「お、おい!? てめ、なにを…。まさか!?」

「……首ぐらいじゃ…死なない。」

「んな!? そんなわけ…。」

「エメラルド・スプラッシュ!」

「ゲブゥ!?」

 煉がマジなことに焦ったDIOの刺客の隙を突いて、花京院がハイエロファントグリーンからエメラルド・スプラッシュを発射し吹っ飛ばした。

「あひー、あひー、死ぬぅ…、死にたくなぃい…お、俺はただ、金で雇われたんだよ~~。」

「……未遂とは言え…、煉を自殺させるほど追い詰めたんだ…。てめぇも俺らに挑むんなら……。相応の覚悟があるのか?」

「ひっ!」

「やれやれだぜ…。」

 そこからは、もう……言葉に出来ない状況に。

 

「……煉には、絶対に手を出すべからず…か。」

 

 花京院が、そう呟いたのだった。

 

 

 

 こうして、節制のカードの暗示を持つ、イエロー・テンパランスの使い手は、名乗る前に再起不能にされたのだった……。

 

 

 




承太郎、ブラコン決定。

大事な煉に化けられたあげく、人質にしたため、承太郎の地雷踏みまくった結果、名乗る暇もなく、敗北。


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平腹&ポルナレフvs吊られた男 その1

久しぶりの更新。やっと書けた……。



ほんとは、一話で終わらせたかったけど、分けた。


 

 カオス…。

 一言で言うならそんな感じだ。

 

 イエロー・テンパランス(※名乗ってすらいない)を退けたジョースター一行は、列車でインドに入国した。

 駅から降りてそうそう彼らが見たのは、上記の言葉通りのものすごい場所だった。

 そこら辺を闊歩する牛、物売り、乞食、混雑した車と舞い上がる埃と排気ガス……etc。

 言ってたらキリが無いとはこのことだろう。

 インド入国で食らったこのインパクトのことは、たぶん忘れない…だろう。

『いや~、イメージ通りでいっそ清々しいね。ここまでだと。』

『俺も~。』

『…だりぃ。』

『入国しただけで疲れたな。』

 現在は、スタンド体であるため、もむくちゃにされることはなかったが、煉を通して息苦しさや、自分達の目で見たインパクトの影響を感じたらしい獄卒達はそれぞれぐったりしていた。

「……美味しい。」

「美味いか? 煉。」

『煉はのんびり屋だよね。』

 神経が図太いのか、単に鈍いだけなのかは不明だが、インド式ミルクティー・チャイを飲んで和んでいる煉であった。なお、隣に座っている承太郎はというと、そんな煉を見て密かに和んでいた。もう、ブラコン確定なので誰もツッコまない。

「んぎゃあああああああああああ!」

『ポル~? どしたの?』

 トイレの方からポルナレフの悲鳴が聞こえたので平腹が行くと、チャックとベルトを外したズボンを掴んでるポルナレフがちょっと涙目でトイレを指差す。

『ほっ? ブタだ~。ブタ洗浄トイレ?』

「ほ、ホテルまで我慢するわ、俺。」

『煉が行かなくてよかったぜ。じゃないと、店の店長承太郎にぶっ殺された?』

「…あり得るな……。」

 ポルナレフがあり得そうな事態を想像してしまい青ざめながら手洗い場の鏡を見た。

「ん?」

『どったの?』

「今…、気のせいか?」

『ん~~~?』

 平腹が鏡をのぞき込む。

 すると、そこに窓から入り込む…包帯男のような姿が…。

「み、見えたか!?」

 慌てて振り返るが、鏡に映る窓には誰もいない。しかし、鏡の方を見ると、手首から伸ばした刃をポルナレフに…。

『うりゃあ!』

 平腹が鏡を拳でたたき割った。

「平腹! 今の奴は…、まさか…!?」

『ウガー! 手応え無かったーー!』

「どこだ!? 見てねぇのかよ!?」

『んぁ? なんだっけ?』

「お前が見たことがあるって言ったんだろうが! 吊るされた男…、俺の妹を殺したクソッタレの顔をよ!」

『あっ! そっか、今の奴が鏡使うって言ってた『吊るされた男(ハングドマン)』かぁ! じゃあ、煉連れて行こうぜー!』

「なんで煉なんだよ!?」

『俺、煉のスタンドー。』

「あっ、…そうか。」

 つまり、J・ガイルを目撃したことがある平腹を連れて行くには、煉の同行が不可欠なのだ。

 なのだが…、まずは……。

 

「ダメだ。」

 

 速攻で却下するのは、承太郎。

「承太郎…、お前の気持ちはよ~~く分かる。煉が大事なのがよ~~く分かる。」

 ジョセフが言う。

「ポルナレフが、この旅に同行してくれたのは、そもそも妹さんの仇討ちのためじゃった。それは分かったうえじゃったはずじゃ。そこに、偶然にも平腹が仇の顔を見たという情報があったんじゃからのぅ。」

「承太郎……、平気。」

「煉。」

「やるのは…、ポルナレフ。俺じゃない。」

「誓って良いぜ、承太郎。煉には絶対に手は出させねぇ。これは、俺の戦いなんだからな。」

「敵は、こちらを分断させて各個撃破を狙っている可能性がある。賛成はできん。」

 アヴドゥルが待ったをかけた。

「説教なんかいらねぇぜ、むしろ向こうから現れてくれたんだ、こりゃミイラ取りがミイラになる、だぜ。」

「おまえな! DIOは、最初からJ・ガイルを仲間に入れていたうえで、お前を騙して肉の芽を植えた可能性があるのだぞ! すべての元凶はDIOだ!」

「例えそうだったとしてもだ!」

「ポルナレフ!」

「落ち着いてください、アヴドゥルさん。」

「……もう勝手にしろ。だが、煉になにかあった場合は……。」

「ああ。煮るなり焼くなりしな。」

「言ったな。しっかりと覚えたぞ。」

 ポルナレフとアヴドゥルが睨み合う。

 承太郎は、ジッと煉を見ている。恐らくついていこうとでも言いたげだ。

「承太郎。だいじょうぶ。俺……は、戦わない。」

「……ヤバかったらすぐに逃げろ。いいな?」

「うん…。」

 煉は頷いた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 市場の間の路上を歩いていると……。

『んあ?』

「どうした? いたのか?」

『あれ? あれれ?』

 ポルナレフの隣を歩いていた平腹が、目を擦った。

『今…、両手とも右手がいたような気がしたんだけどよ~。』

「なに!? どこだ!?」

『いなくなっちまった。人混みに逃げたっぽい。』

「どっち行った!?」

『落ち着けよ~。さっき攻撃してきたってことは、向こうは絶対こっちのこと殺す満々ってことだって。だから、また絶対来るな!』

「笑い事じゃねぇんだよ! 真面目に探せ!」

『だいじょうぶだって、向こうから来るってば。ほら。』

「あ?」

 

「ふふふ…。そっちの古くさい軍服の兄ちゃんの方が案外冷静じゃねぇか。」

 

 そこへやってきたのは、カウボーイのような格好をした男だった。

「なんだ、てめぇ?」

『アイツの横に、両手右手の奴いた~。』

「なんだと!?」

「ほー、情報じゃ、J・ガイルの旦那の顔を知ってる奴がジョースター一向にいるとは聞いたが、兄ちゃんか。」

『そだよー。俺、だよ。俺! 地獄で見たもんね!』

「……地獄から直々にDIO様をとっ捕まえに来た連中がいるとは聞いてたが…、マジな話だったのか…?」

『そだよー! 俺、絶対DIOぶっ潰してバラバラのグシャグシャにしてやって! そんで地獄に引きずって行くぜ!』

「そいつは…、無理な話だぜ。なぜなら…。」

 男が右手をかざし、その手に拳銃型のスタンドを出した。

「この、皇帝の暗示! エンペラーの使い手、ホル・ホースが、お前らをぶっ殺すからな!」

「おい、てめー! J・ガイルはどこだ!?」

『だいじょーぶだって、ポルポル!』

「止めるな、コラ!」

『だって、ここでビビって逃げたりなんてしてみろって、ぜ~~~ったい、お仕置きで殺されるって! だから絶対近くにいるに決まってるって!』

「あ、兄ちゃん…。」

 ホル・ホースが口元をひくつかせた。どうやら図星だったらしい。

「なるほどな…、なら遠慮無く……。」

「あっ! J・ガイルの旦那!」

「なにぃ!?」

 ホル・ホースがポルナレフの後ろを指差したため、反射的に反応してしまったポルナレフ。

「アホぉ! 油断大敵ってな!」

 直後に、ホル・ホースが拳銃型のスタンド・エンペラーを撃った。

「しまっ…。」

 

「馬鹿か、ポルナレフ!」

 

 直後、ポルナレフを突き飛ばして銃撃から庇った人影がいた。

 アヴドゥルだった。

「大口叩いておいて、なんだその様は! 心配で追って来てみれば…、まったく!」

「アヴドゥルてめぇ! こんな時に説教垂れるな! 誰が助けてくれって言った!?」

「いいか! そんな様だから、お前は…。」

 ガーガー怒っていたアヴドゥルだったが、突然ビクンッとのけぞった。

「えっ?」

 アヴドゥルの異変に気づいた直後、方向転換してきたホル・ホースの弾丸がアヴドゥルの額に命中した。

「あ…アヴドゥル!?」

「へへーんだ。スタンドが銃なら、弾丸もスタンドなんだぜ?」

 

『ククク…、コイツは良い。運が良いなぁ。背中を取れたぜ。お前らの中じゃ、一番の天敵だったからよぉ、アヴドゥルはよぉ。』

 

 近くに置かれていた鏡に、包帯男のような姿が映った。その手首から伸びている刃に血がついていた。

「煉! 早くアヴドゥルを!」

「ん…。」

 倒れてしまったアヴドゥルに、煉が駆け寄り、身体に触れた。

「おい…? なにやってんだ? 早く…血で……。」

「……ダメ…。」

「はっ?」

「……もう…、無理…。」

 そう言って、煉は首を横に振った。

「ほっほ~。なるほど、治癒力のある血でも、死んじまったもんはどうにもならないか? こいつは、よかった!」

「……ばか…やろう…。これだから、俺の回りで動かれちゃイヤだったんだ…。偉そうに説教垂れて…、そんな様になってるのはどっちだよ…。」

 ポルナレフは、ギリギリと拳を握りしめ血を垂らしながら、ホル・ホースの方の振り返る。その目からは大粒の涙が流れていた。

「カモ~~~ン、ポルナレフく~~ん!」

『ふーーーん? 弾丸もスタンドか…。』

 すると佐疫が出てきた。

「おう? 今度は女みてぇなのが出てきたな? ま、俺らのコンビネーションの前じゃ…。」

『じゃあ、俺も銃(?)で、応戦するのが筋だよね?』

 そう言って佐疫がマントから出したのは。

 

 対戦車用、大型機関銃。

 

「……………へっ?」

 ホル・ホースが、間抜けなお顔をして声を漏らした直後、佐疫が笑顔で機関銃の引き金を引いた。

「ぎゃあああああああああああああああああ!?」

 あっという間に横へ転がり銃撃を避け、そのまま逃げ出すホル・ホース。他の銃火器を手に追いかける佐疫。

『ポルナレフさん。平腹と煉と一緒にJ・ガイルを。平腹、頼むね。』

『おう!』

 横を通り過ぎる間際に、佐疫がそう言い、ホル・ホースを追って行った。

「…おっかねー……。」

 さすがのポルナレフも、佐疫の容赦のなさに戦慄した。

『いたいたいたいたーーーー!』

「いてぇよ! 平腹!」

 背中をバシバシ叩かれ顔を歪めるポルナレフ。平腹は、ある方角を指差していた。

『J・ガイル、いたーーー!』

「間違いないのか!?」

『グチャグチャじゃないけど、アイツだーーー! 分かったもんね!』

「追いかけるぞ! 煉!」

「…うん。」

 煉は立ち上がり、二人と共に走り出した。

 煉は、先を行く二人を追いかけながら1回だけ後ろを振り返る。

 倒れているアヴドゥルに、承太郎達が駆け寄っているのを見てから、二人を追った。

 

 




J・ガイルの顔を知っている平腹がいるため、オリジナル展開です。
ホル・ホースとJ・ガイルの言えること……。
それは、佐疫の武装の火力をなめてたこと。

なお、ある程度距離を取ったら力が出せないので、佐疫はあくまでもホル・ホースを追い払うために出てきました。なので、ホル・ホースは、佐疫が消えた後、だいぶ経ってから慌ててJ・ガイルの所へ戻りますが……?


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平腹&ポルナレフvs吊られた男 その2

皇帝&吊るされた男編、終わり。



平腹が加勢しているので、オリジナル展開です。


 J・ガイルは、人混みの中を必死に走っていた。

「待ちやがれーーー!!」

『ギャハハハハ! 鬼ごっこ鬼ごっこ!』

 

 復讐者と、ガチの鬼(※元人間)が追いかけてくるから。

 しかも、鬼の方は、黄色い目を血走らせ、シャベルを手に、舌を出してツバを撒き散らしながら狂気の笑い顔で追いかけてくるのだ。

 メッチャ怖い。

 DIOにスタンドを教えた魔女の息子で、なおかつ本人自身も自他共に認める屑野郎のJ・ガイルですら恐怖していた。

 ならば!っと、考えたJ・ガイルは……。

「た、助けて!」

「どうしたんだね? 君。」

「変な奴に追われていて…。」

 警察を利用することにした。

『おりゃーーーー!』

「ぎゃあああ!? おまっ…、警察を巻き込む気か!?」

『俺のこと見えてないもんね~~!!』

「? 君、誰と喋ってるんだい?」

「ハッ!」

 見るとポルナレフを煉が止めていて、その間に平腹が遠慮無く攻撃をしてきていた。

 平腹の遠慮の無い攻撃を避ける姿は、スタンドが見えない普通の人間には奇行にしか見えない。

『アハハハハハ! ポルの分残しとくけど、お前地獄行き確定だもんな! アヒャハハハハハ!』

「た、助け…。」

「君、幻覚剤でもやってるのか?」

「ひっ…、ひいいいいいい!」

 警察に逆に怪しまれ、周りの不信がる目にも気づいたJ・ガイルは、悲鳴を上げ、必死に逃げ出した。

「ホル・ホース! ホル・ホース! どこだ! 早く戻ってこい!」

 その頃、ホル・ホースは、銃火器を手にした佐疫に追い回されていてまったく駆けつけられない状況だったりする。

 体力じゃまったく勝ち目が無いJ・ガイルは、逃げながら頭を使う。

 なんとかして平腹をどうにかしなければと。後に残るポルナレフはどうにでもなるが、平腹はマズいと。

 疲れてだんだん足がヤバくなってきて、後ろから追いかけてくる平腹が振り回しているシャベルの先端が背中をかする。

 その瞬間、よろけた直後に横を見たとき、咄嗟の判断で、スタンド・ハングドマンを使い横を走っていたトラックの運転手を攻撃した。

 トラックのハンドルがあらぬ方向に向き、トラックは、後方を走っていた煉に……。トラックに轢かれ吹っ飛ぶ煉。同時にダメージフィードバックで平腹に6分の1のダメージが入る。

「煉!」

 血を撒き散らしながら地面を何度もバウンドして倒れた煉にポルナレフが駆け寄る。

『ぐっ…。』

 平腹がシャベルを手にしていた両腕を垂らして項垂れる。

 だが、ここは異国のインド。事故があっても他の車は爆走している。それを利用し、J・ガイルは、更に運転手を攻撃して車の方向をポルナレフと煉の方へ。

 勝った!っとJ・ガイルが確信したとき針剣が飛んできてJ・ガイルの右目に突き刺さった。

「い…ぎああああああああああああ!?」

 右目を抑えてのたうつJ・ガイル。

 見ると、谷裂が迫ってきた車を止め、ポルナレフが今まさにシルバー・チャリオッツに剣を投げさせた体勢でいた。

「ポル…ナレフ…、いま…!」

 回復しつつある煉がポルナレフに言った。

「サンキュ…、煉…! この時を待ってたぜ!」

「ひ…ぎゃああああああああああああああ!?」

 シルバー・チャリオッツを出したままのポルナレフが迫ってきて、J・ガイルは這ってでも逃げようとしたがシルバー・チャリオッツに掴まれ正面を向かされた直後、目の針剣を引っこ抜かれ、全身を凄まじ速さで針剣で貫かれ、全身穴だらけになって近くの柵に足が引っかかり逆さづりのような状態になって死んだ。

「これが、ホントの吊るされた男(ハングドマン)か……。あとは、予定通り地獄で裁かれな。」

「…ポルナレフ。終わった…。」

「ああ…、ありがとよ。煉。お前のおかげだぜ。」

『俺がいたおかげだろ~?』

「ああ、わりぃわりぃ、平腹、サンキューな。」

 

「J・ガイルの旦那! あっ……。」

 

『およ~? 遅かったな?』

 そこに駆けつけてきたのはホル・ホースだった。ホル・ホースは、J・ガイルの死体を見て青ざめた。

「アヴドゥルの仇だからよぉ…。逃がすわけにゃいかねぇなぁ?」

「ま…、待ってくれよ…。ちょっと話し合おうぜ? なっ?」

「…佐疫に追いかけられて…、ヘトヘト…。」

「そいつは好都合だぜ。」

「ひ…ひいいいいいい!」

 ホル・ホースが慌てふためく。

 直後。

「ホル・ホースさま! どうかお逃げください!」

 馬を連れてきた褐色の美少女が間に入ってきた。

「な、なんだこの女!?」

「……あっ、逃げられた。」

「なにぃ~~~!」

 褐色の美少女が持って来た馬に乗ってホル・ホースは、あっという間に逃げていったのだった。

 

 ポルナレフが地団駄を踏んでいると、承太郎達が来て、アヴドゥルの遺体を簡素ではあるが埋葬したことを告げた。

 悔しがり、悲しみに泣くポルナレフに、煉は、無表情で見つめる。

 

 本当は……、生きているのだけれど……。それは秘密である。(アヴドゥルが撃たれた後、血で治療している)

 

 ホル・ホースをぶっ殺すっと行って今更追いかけようとするポルナレフに、褐色の美少女がしがみつき止めようとする。その際に美少女が怪我をしたのだが、それをジョセフが簡易の布を破って血を止めてやり、その血がジョセフの腕に付着した。

 

 あと、煉がボロボロになっていたので、どういうことか…っと承太郎がポルナレフに怖い声で聞いて、ハッとしたポルナレフが恐る恐る承太郎を見た。

 そのちょっと後で、インドの街中に、ポルナレフの悲鳴が木霊したのだった。

 

 




顔見られてるから、原作のように誤魔化すこともできない。
地獄のガチ鬼(※元人間)、メッチャ怖い。
ホル・ホースは、佐疫に追い回されていて加勢できず。
そんなこんなで、追い詰められて敗北したJ・ガイルでした。


次回から、女帝編。


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煉の観察眼

やっと書けました。


今回は、エンプレス(女帝)編。


でも、オリジナル展開のようで、7人目のスタンド使いのカオスモードでの変動イベントを参考にしています。


知っている方は分かるでしょうが、7人目がジョセフの付き添いで病院に行ったというカオスモードで一定確率で起こるIF展開を参考にしました。



微グロ注意!!


 

 

 妹の仇討ちをしたポルナレフは、ここまで来たらDIO討伐の旅に着いていくと言い今後も同行することとなった。

「なんじゃ? 煉。わしの腕をそんな穴が空きそうなほどジーーーーと見て?」

「……。」

 移動中のバスの中、ポルナレフはホル・ホースを逃がした美少女を口説いてる。一方、煉は、ずっとジョセフの右腕を見ていた。

「どうした? 煉。」

 隣にいる承太郎がさすがに聞いた。

 このバスの中には、獄卒達は出てきていない。

「煉? むっ? なにかでき物ができとるのう? これが気になっとるのか?」

 ジョセフは、右腕にできた虫刺されのようなでき物を見つけて煉に聞くと、煉は頷いた。

「ハハハ、ただの虫刺されじゃよ。そんな心配せんでもだいじょうぶじゃ。」

「違う…。」

「?」

 煉がポツリと呟いた否定の言葉はジョセフには聞こえなかった。

「…煉。気になるなら、そのまま挙動を見張ってろ。」

「うん。」

「おいおい、どうしたんじゃ? きょどう? わしを監視しても何も出んぞ?」

「何かあっても煉を連れていけ、ジジイ。」

「なんじゃ? 変な孫達じゃのう?」

「ジョースターさん、虫刺されが大きくなってきていますよ。」

「むっ? おお、こりゃいかんな。インドの変な虫にやられたか?」

「薬塗っとけよ。ん? どうした、ネーナ?」

「……。」

 ポルナレフが虫刺され用の薬を渡していると、ネーナという美少女が煉を見ていた。

 やがてバスは、ベナレスへ。

 そこでジープを買う予定になっており、一旦ホテルのレストランに入った。

「ううむ…。腫れが酷くなってきた…。」

「病院に行けよ。ん~? なんか人の顔っぽく見えね、これ?」

「こりゃ! ポルナレフ余計なこと言うな!」

「煉。ついていけ。」

「うん。」

「お、おおい! わしゃ、まだ病院に行くとは…。」

「そのままほっとくのか? それとも病院がイヤだってのか? いい歳のジジイが。」

「ぬ~…。分かったわい。行く。」

 そしてホテルから離れた大きな病院で診察を受けた。

 寝台で寝かされたジョセフに、医者は告げる。これは切らないといけないと。

 ジョセフは嫌がった。

 付き添いの煉は、ジッと腫れ物を見ていた。

 医者が麻酔をし、腫れ物にメスを突き刺そうとしたが…。

「ありゃりゃ? 刃が通らないぞ?」

「はあ? どういうことじゃ?」

「おっかしいですね~?」

「ヤブ医者か! 煉、帰るぞ!」

「あー、お爺さん!」

 医者の制止も聞かず、ジョセフは煉と一緒に病院を出た。

「で? 結局なんだったわけ?」

「分からん…。」

「おかしいですね。メスが刺さらないというのは。」

「まさか、スタンドとかってオチじゃないだろ~な?」

 

『チュ…チュミミ~ン』

 

「? なんか聞こえたか?」

「聞こえたような…。」

 甲高い変な鳴き声が聞こえた方を見ると、そこにはネーナ。

 次の瞬間、何かがきらめいた。そして、ネーナの腹部辺りのチャドルが切れて舞い上がった。

「なっ!?」

「斬島!?」

『コイツは…ただの人間じゃない。見ろ。』

 居合いで抜いたカナキリを収めた斬島が指差した。

 ネーナの腹部には別の顔があった。醜い…背の低い女が。

「どういうことだ!? まさか…。」

 

「ど…どちくしょうおおおおおおおおおお!!」

 

 ネーナが来ているチャドルの下から醜い女が飛び出し、出入り口に向かって走って逃げだそうとした。だが、足に絡まった鎖により転んだ。

『煉。血をぶっかけろ。』

 鎖を握っている田噛が言った。

「うん…。」

 煉は、ジョセフの腕の腫れ物に自らの血をかけた。

 すると、ジュシュッと焼ける音がして悲鳴じみた鳴き声が上がり腫れ物が蠢いた。

「こ、これがアイツのスタンドか!」

 そして腫れ物はグズグズに溶けながらジョセフの腕から剥がれ落ちた。

「本体は…。うっ。」

「……見れたものじゃないぜ。」

「ど……どうして…気づいた…?」

 スタンドと同様にグズグズになってしまったネーナが聞く。

「勘。」

「…うそ……。」

 ガクッとネーナは力尽きて息絶えた。

 その際にチャドルの布の隙間から女帝のカードが出てきたことで、彼女が女帝…エンプレスの使い手だったことが分かった。

「危ないところだったな、ジジイ。あのまま放っておけばスタンドに全身を喰われて死んでただろうぜ。」

「オーノー…。」

「ポルナレフも、もっと女性を見る目を養うべきだね。」

「うっせぇよ。」

 ネーナの変装にダマされていただけにポルナレフは、それ以上は言えなかった。

 

 

 

 




7人目のスタンド使いのカオスモードの一定確率イベでのエンプレス戦は、ホテルの夜にジョセフがひとりで戦うことになります。

煉は、早々にエンプレスがジョセフに引っ付いていることに気づいたことと、承太郎も煉の様子のおかしさに怪しんだことで煉が病院の付き添いに。
そしてホテルに帰ってから獄卒達によりネーナの正体が暴かれ、煉の血でエンプレスを排除。ネーナはダメージフィードバックで身体が崩れて死ぬ。


次回は、運命の車輪編かな。


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最悪の未来を変えるためにやってきた

やっと書けたー!


家出少女の名前は、OVA版?の家出少女の名前、『アン』にしています。


 女帝のカードの暗示を持つエンプレスを撃破し、ジョースター一行は四輪駆動車を買って陸路を進んでいた。

 アスファルトなどで舗装されていない凹凸が時折ある荒れた道をひた走る。

 インドを離れ、インドについてそれぞれの印象を語っていると、運転しているとポルナレフは、アヴドゥルの墓参りのためまた来ると言っていた。

 本当は生きているのだが…、言えるわけがない。アヴドゥルには重要な任務を任せているのだから、口が軽く感情的なポルナレフに話すわけにはいかないのだ。

 そんな中で、煉は会話に参加せず、ボーッと窓の外を見ていた。

「しっかし、思ったんだけどよぉ…。煉? お前、ぼんやりしすぎだぜ。」

「煉は昔からこうだ。」

「あんましよー。ボーッと生きてっと楽しいことが逃げっぞ?」

「……趣味…。」

「へっ?」

「煉は、ボーッとするのが趣味だって言ってんだよ。」

「変わってんなぁ…。」

 喋るのも面倒臭そうな煉に変わって、承太郎がポルナレフに答えていった。

 やがて前方にトロトロとゆっくりと走るボロ車が。先を急ぐため、追い越したのだが、ポルナレフはかなり荒っぽい運転で追い越す。

 そして小石がボロ車に当たっていた。ジョセフがトラブルは避けたいと怒っていた。

 ところがである。

「なっ!?」

 急に驚いたポルナレフが急ブレーキ。

「おい、どうした?」

「し、信じられねぇ! あ、あれ見ろ!」

 ポルナレフが指差す先には、どこかで見覚えがある少年……否、少女がいた。帽子で長い髪を隠していることとボーイッシュな格好のため男の子にしか見えないが、見覚えがある。

 そう、シンガポールで別れた船に密航していた少女だ。どうやらヒッチハイクをしていたらしい。

「よっ!」

 こちらに気づいた少女は、こちらに走ってきた。

「おい、お前! 父親に会うんじゃなかったのかよ!?」

「ちげーよ! わたしゃただの家出少女さ! 煉、久しぶり!」

「……。」

 図々しく車に進入してきた少女は、承太郎の隣にいる煉との間に割り込んできた。

 煉がチラッと少女を見ると、少女は満面の笑顔を浮かべる。

 しかし、煉はプイッとまた窓の方に顔を向けたのだった。

「煉?」

「煉は、お前には興味ないってよ。」

「えー!?」

 家出少女は信じられないと、承太郎を見た。

「降りなさい! わしらに着いてきちゃいかん!」

「やだやだー! せっかく煉に会えたのに!」

「ダメ! ダメじゃ、ダメ!」

「……うるさい。」

「うおとしいぜ! てめーら! 静かにしろ!」

 煉のポツリと言った言葉を即座に聞き取った承太郎による怒声が響く。

 少しして、家出少女が、ヒッグえぐと泣き出した。

「おいおい、泣くこたぁないだろ?」

「だって、だって、あたし、ただ、嬉しかっただけなのに…。煉にもう会えないかもって、せめて連絡先とか教えて貰えば良かったって後悔してたんだ。」

「……名前…。」

「………へっ?」

「名前…聞いてない。」

 煉は、肘を窓辺に置いたまま顔を少女の方へ向けた。

「……アン。あたしの、名前…。」

「アン…。分かった。けど、着いてきちゃ…ダメ。」

「どうして?」

「危ない。」

「し、知ってるわよ! でも…。」

「アンが死んだら……、悲しい…。」

「うっ。」

 そう言われてアンという少女は堪えた。

「お爺ちゃん…。」

「なんじゃ?」

「アンを……、香港に…。」

「仕方ないのー、片道切符ぐらいは出してやろう。」

「ね、ねえ!」

「……なに…?」

「れ、連絡先…、せめて教えてよ。手紙ぐらい…。」

「それは、できない…。」

「どうしてぇ? 私のことそんなに嫌い?」

「違う…。俺は…近いうちに…ココからいなくなる…。」

「?」

「それに、俺は…人間じゃない。」

「それは知ってるよ! でも…、なんでいなくなるの?」

「……先を急ぐ…。」

「そうじゃな。」

「ポルナレフ、車を出せ。」

「えっ? ちょっと、理由ぐらい教えてくれって!」

「空港まで送ってやるんだ、それ以上とやかく言うとほっぽり出す。」

「ねえってば! どうして教えてくれないの?」

「俺が…、あの世の鬼だからだ。」

 なおしつこく聞こうとするアンに、煉がハッキリとそう言った。

 煉は、走る車の中でアンに丁寧に説明した。自分が、あの世の鬼達の体から作られ、現世に送り出されて基になった鬼達の本体として活動していること。旅が終われば本来いるべきあの世へ帰ること前提であること。

「どうして、そこまでしてあの世へ帰りたいの?」

「……時間は…残酷だ。俺は…、鬼だ。そして体が馴染んだ今…、俺の体の時間はもう…人間とは違う。あの世は何年経っても変わらない。時間の流れが違う。人間は…すぐ死ぬ。」

「そんな…。」

「ここ(現世)に残っていても…、周りが次々に…老いて死んだら…辛い…。俺が…この世へ生まれた理由はひとつだけだ…。」

 煉は、少し間を置いた。

「最悪の、未来を変えること。それだけだ。」

 それを聞いていた承太郎は、帽子のツバを摘まみ目元を隠すように動かした。

 

 

 

 




煉に気がある家出少女だが、煉は突っぱねなければならない理由がある。
けど、嫌ってはいませんよ。


煉の体の時間の流れは、もう斬島達と同じになっています。
獄卒達の時間の流れがどうなってるか分かりませんが、少なくとも外見=年齢ではないと思って。

次回は、ホイールオブフォーチュンかな。


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煉のワガママ(?)

煉、ちょいとワガママをする?


あと、フリーゲーム『7人目のスタンド使い』のカオスモードの描写が一部あります。


 空港までの道中だが、アンは、ずっと煉の腕にしなだれかかっていた。

『煉。イヤだったら拒否しろよ?』

「……イヤでは無い。」

「ホント?」

「…ん。」

「おい、お前…、煉が嫌がらねーからって馴れ馴れしくしすぎんなよ?」

「あれ~? 嫉妬ぉ? クールぶってて案外弟大好きなんだね?」

「…デコピンするぞ?」

「いや~ん、煉、煉のお兄ちゃんが私に酷いコトしようとしてるよ~。助けて~。」

「…承太郎。」

「……分かった分かった。なにもしねーよ。」

 承太郎がムスッとしてそう言うと、アンは、勝った!とばかりにニヤついていた。

『まあまあ、承太郎。煉もそれなりに思うところがあるんだよ。』

「……。」

 木舌が出てきて承太郎を宥めるように言う。承太郎はムスッとしていた。

『少しぐらいワガママ聞いてあげてくれるかい?』

「ワガママか…。今まで1回もなかったぜ。」

『じゃあ、初ワガママだね。喜ばしいことじゃないか。』

「……うっせーよ。」

『煉を…弟を取られて悔しいかい?』

「黙れ。」

『もー、素直じゃないんだから。』

「うるせー、それ以上言うとぶっ飛ばすぞ。」

『俺をぶっ飛ばしたら、煉も傷つくよ?』

「…っ。」

『まあ、それはそうと、余り良くないことが起こりそうだね。』

「?」

 木舌が、バックミラーを指差す。

 ポルナレフが荒い運転で追い越したあのボロ車が走ってきていた。

 すぐ後ろに着いてきたボロ車に、ポルナレフは自然とスピードを上げる。徐々に徐々に。

「おい、ポルナレフ、道を譲ってやれ。」

「分かってますって。」

 窓を開けて前に行くようハンドサインを出す。するとボロ車は、前へと行った。だが今度はスピードを落としてきた。

「な、なんだ?」

「さっき追い越したときに、小石でもぶつかってそれで怒ってるのかもしれんぞ。」

「…敵……。」

「それは考えすぎだろう。」

「……警戒はしておけ。」

「お前なぁ、承太郎…。いくらなんでも考えすぎ…。お? 前に行けってよ。ほら、だいじょうぶ…。」

「まっ…。」

 煉が止めようとした直後、ポルナレフが前のボロ車を抜こうとした。すると反対車線から大型トラックが。

「うわああああああああ!!」

「スタープラチナ!!」

 ぶつかる直後に承太郎が、スタープラチナを出し、トラックを殴って弾いた。その反動でこちらの車も道路の外へ。

「あっぶねぇぇぇ!」

『やっぱりね。なんかやな予感がしてたんだ。』

「それならそうと早く言えよ!」

『考えすぎって言ってたじゃないか。』

「揚げ足取るな!」

「煉、だいじょうぶか?」

「…平気……。」

「煉、ごめんね…。私を庇ってくれて。」

「今のをどう思う? 敵だと思うか?」

「敵に決まってんだろーが! 死ぬところだっただろうが!」

「単なる逆恨みをしている狂人という可能性もある。だが、用心していこう。」

「それより、トラックは? 先ほど承太郎が殴ってメチャクチャですよ?」

「放っておけ。」

「…一応…救急車…。」

「無線で呼んどけ。」

「お前…煉が言うとすぐコロッと変わるな…。」

「っるせーよ。」

 そして救急車を呼ぶよう無線で連絡してから、その場から車を発進させて立ち去った。

 パキスタンへの山道の道中に、茶屋を見つけ、そこで一旦休憩することに。

 サトウキビジュースを頼んだり、紅茶を頼んだりと、それぞれ飲み物を頼む。

 その時だった。

 あのボロ車が茶屋の敷地にある気の木陰に停車されていた。

「おい! 店の親父! あの車、いつからいたんだ!?」

「さ、さあ…?」

「って、ことは、この店にいる人間が運転手?」

「どいつだ…?」

『うんにゃ、そもそも降りてねーんじゃね?』

「へっ?」

 平腹がそう言ったのでアン以外の視線が集まる。

『こっちの様子見てるぜ。』

「ほー…? 花京院。」

「そうだね。エメラルド・スプラッシュ!!」

 

『ギャヒィ!?』

 

 ボロ車にエメラルド・スプラッシュが当たると、表面がボコボコになり、運転手らしき者の悲鳴が一瞬聞こえたと同時にボロ車は一目散に走って逃げていった。

『…今の反応ってどう思います?』

 佐疫が聞いた。

「もしかして…、エメラルド・スプラッシュが見えたのか?」

「当たった途端に、悲鳴上げて逃げたってことはよぉ…。もしかしてダメージフィードバック? ってことは、スタンド使いか!?」

「オラウータンがタンカーを小舟に被せて海を渡ったように、車のスタンドがおっても不思議じゃないのう。」

『どーするんの? 追いかけっか~?』

「敵で間違いないだろ! 追いかけるぜ!」

 平腹の言葉で一行は立ち上がり、自分達の車に乗ってボロ車を追った。

 

 

 




どこがカオスモードの描写かというと、花京院に車を攻撃させたところです。
フリーゲームのプレイヤーキャラのスタンドが遠距離型だと援護射撃もしますよ。
なお、このイベントが発生するとホイールオブフォーチュンのHPが減ります。


煉なりに、ワガママをしています。体の形の都合や言葉が喋れなかったため、アン(家出少女)のように、自分を好いてくれる子に中々会えなかったと思うので。


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運命は変えるモノ

やっと書けた……。
遅くなって申し訳ない。(見てる人いるのかな?)




vsホイールオブフォーチュンだけど、あっさりです。


 

 四輪駆動車で、とにかく敵(?)の車を追いかける。

 ガタガタ道を前を走るボロ車がすごいスピードで走るため、こちらも見失わないよう走るが追いつける気配がない。

「おい、平腹。野郎は、敵で間違いないか?」

『ん~、分かんねぇ。でも殺気はあったぜ?』

「お前の野性的な勘を頼るぜ。」

「くっそ~! あのボロ車に追いつけねーぜ!」

「おかしいな? この道はパキスタンに通じる道路のハズだが…。」

「ん? おおぅ!?」

 ポルナレフが急ブレーキをかけ車を止めた。その道の先は崖になっていた。

「ば、馬鹿な! 野郎はどこへ!?」

「…後ろ。」

「へ?」

 煉がポツッと行った瞬間だった。後ろからあのボロ車が突っ込んできてこちらの車を崖へと押し出そうとする。

 ボロ車だというのに、凄まじい馬力である。

「おい、承太郎! スタープラチナで!」

「いや、ダメだ。これで相手をぶん殴ったら、反動でこっちも吹っ飛ぶぜ。」

「もうダメだ! 全員車から逃げろ!」

「おい! ポルナレフ! 運転手が真っ先に…。」

「あっ…。ご、ごめ~ん。」

 ブレーキをかけて耐えていた者がいなくなり、あっという間に車が崖へと落ちていく。

 すると花京院がハイエロファントグリーンで、ランクルを敵の車に引っかけた。

「今だ、承太郎!」

「オラァ!」

 承太郎がスタープラチナのパワーで車を引っ張り上げ、引っ張り上げる際に、相手の車を殴ったついでにランクルを外し、相手を崖へと落とした。

「……この高さじゃ無事じゃすむまい。」

「……。」

「煉?」

「逃げよう…。来る。」

「おい、全員車から逃げろ!」

 

『逃がさん!』

 

 車のラジオから声が聞こえ、直後車の下からあのボロ車が岩を掘って現れ全員が脱出した車をはね飛ばして破壊した。

「車がスタンドか!」

『その通りだ! この運命の暗示! ホイールオブフォーチュンが相手になってやるぜ!』

「ああ! 車が変形していくぞ!?」

『このスパイクタイヤで引き裂いてやるぜ!』

 不良も真っ青になりそうなほど凶悪な外見になったホイールオブフォーチュンが承太郎達の前に現れた。そして突撃してきた。

「オラァ!」

「谷裂、平腹。」

『フンッ!』

『オリャアアアア!』

 真っ正面からスタープラチナと、谷裂と平腹が各々の武器を構えてホイールオブフォーチュンとぶつかった。

『ほっほ~? たいしたパワーだな? だがこの俺の馬力には勝てまい!』

『うおおおお!? 押される押される!』

『くっ!』

「スタープラチナ!」

『やらせんぞ! ホレホレ~!』

 スタープラチナでがら空きの横を殴ろうとした承太郎に、光る何かが飛び体に当たって傷を負わせた。

「なに!?」

「承太郎!」

『でもって、スパーク!』

「!」

 ホイールオブフォーチュンがバチッと前方から電気を放ったとき、承太郎の体が横へ吹っ飛ばされた。煉が突き飛ばしたのだ。

『チッ! 外したか!』

「これは、ガソリン…。」

『チッ! タネまでバレちまってたか! けどバレたからって、てめーらの進む先は…運命は決まってんだよ! あの世ってなぁ!』

 

 ズキューン!

 

『…………へっ?』

『横の給油口ががら空きだよ?』

『ゲッ! ぎ、ギャアアアアアアアアアアア!!』

 横から開きっぱなしのガソリンの給油口に弾丸を突っ込んだ佐疫が微笑み、ガソリンに銃の火が引火して、ホイールオブフォーチュンは内側から爆発した。

 炎に包まれたホイールオブフォーチュンから、誰かが転がり出る。

 必死に転がって火を消した男は、腕だけがモリモリマッチョで、それ以外はガリガリというヘンテコな体型だった。

「おりょりょ…、スタンドが解けてみれば、こーんな小さな車じゃったとはのう。」

 ホイールオブフォーチュンが解除されると、小さな車が姿を現わしたのでジョセフがおかしいとばかりに笑った。

「だいじょうぶ…?」

「ああ。チッ。制服にガソリンが染み付いちまったな。」

「クリーニング…。」

「そうだな。」

「ひ、ひいいいいい! 俺は雇われただけなんだ! 命だけはお助けを~~!」

「どうするんだよ、コイツ?」

「決まってるだろ。」

 

 そして…。

 

「ウグググ!」

「『聖なる苦行をしています。話しかけないでください』…。」

「念のためパスポートも奪っておこう。もう追っては来ないだろうが念には念だ。」

「クリーニング代も寄越せ。」

「わー、えげつな~い。」

「でもって…、あとは君を香港に帰すだけだ。」

「えー! 私も連れてってよ~!」

「やかましい! 足手纏いになってるのが分からんのかー! 飛行機代を恵んでやるだけ有り難く思え!」

「だってぇ、ここで別れちゃったら、煉と二度と…。」

「煉。」

「……ごめんね。」

「煉…。うぅ…。」

 アンがボロボロと泣く。

 しかし、少ししてゴシゴシと袖で涙を拭い、キッと表情を引き締め。

「これが、あたしの気持ち!」

「……!」

 アンは、煉にしがみつき、ブチューッとキスをした。

「おいおい…。」

「積極的な子だな…。」

「じょ、承太郎…。」

「……チッ。」

 恐る恐る承太郎を見るジョセフ達だったが、承太郎は仕方ないとばかりに帽子を被り直していた。

 

 その後、破壊された四輪駆動車に代わり、ホイールオブフォーチュンだった車を奪って国境の空港へ。

 そこでアンに飛行機代を渡し、置いていったのだった。

「……。」

『名残惜しい? 煉。』

 木舌が煉に聞く。

 しかし、煉は、飛行場が見えなくなると前を向いた。

「運命は…必ず、変える…。」

 煉はまるで決意を新たにするように、そう独り言を呟いた。

 

 

 

 




アンとの別れで、自分の使命を再認識する煉。


次回は、エンヤ戦かな。


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