蛇王龍、海賊になる。 (初音ゆず)
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序章①

思い立ってしまったので投稿。
いつまで続くかわがんね。
アイスボーンにダラ・アマデュラが出てくれる事を祈って……。実際、あのグラフィックだと超映えると思うんですよねー。

テンポよくサクサク進めます。


 偉大なる航路を挟む魔境、凪の帯。

 超大型の海王類が多く棲むこの海に、古のとある冒険家が「千剣山」と名付けた巨大な山が佇む島があった。

 

 そこに潜むは余所ではお目にかかれない、とても珍しい……しかし非常に凶悪で、海王類から逃れるように稀に漂着してくる人間全てを食い散らかす、大勢のモンスターたち。

 

 そんな凶悪なモンスターたちも、何故だか「千剣山」には決して足を踏み入れない。

 その理由は──。

 

 

 

 

 

 

 オオォオォオォッ!!

 

 

 

 

 ──おぞましい咆哮が響き、島を、そして空を揺らす。

 不運にもたまたま上空を通りかかっていた哀れなニュース・クーがその命を散らし、新聞を咥えたままぼとりと落ちた。

 

 ただの咆哮で命を奪うという規格外の存在。

 その存在こそが「千剣山」の主であり、島に棲む猛獣たちが決して足を踏み入れない理由である。

 

 

 そんな、千剣山の頂きにて。

 

 

「やったぜ、新聞ゲット。えーと、なになに……? ふんふむ、ふむふむ。あ、新しい手配書。保管しておかなくちゃ」

 

 

 もしもこの光景を人間が見れば、誰もが「ありえない」と目を疑うだろう。

 おぞましい怪物が住まうはずの天剣山の頂きで、事もあろうにとても可愛らしい女の子が鼻歌を奏でながらニュース・クーの死骸を漁り、盗んだ新聞を読んでいるのだから。

 

 おまけに、新聞を読んだ後は口から青白い光線のような極太の何かを吐き出し、新聞もろともニュース・クーの死骸をこんがりと焼いてしまった。

 たまたま通りかかっただけなのに、底無しに不運なニュース・クーである。

 

 

「焼き鳥ンめえ」

 

 

 

 彼女の名は、マデュラ。

 偉大なる航路の外では実在を疑われている海の秘宝、「悪魔の実」を口にした動物系の能力者である。

 

 ヘビヘビの実、幻獣種。

 モデル、“ダラ・アマデュラ”。

 

 

 かつてこの島に上陸し、マデュラが記憶する限りは唯一生きて島から出る事ができた老人が言うには、そういう名前の悪魔の実だったらしい。

 

 

 シルバーズ・レイリー。

 基本的に人間を見るのは死体がデフォであるマデュラにとって、唯一といってもいい「友人」であり、同時にこの世界の様々な知識を授けてくれた「恩人」でもある。

 というのも、彼女はこの島に来るまでの記憶が無く、ふと目を覚ませばこの千剣山の頂きにポツンと一人で横になっていたのだ。尚、その時には既に悪魔の実の能力者となった後であり、マデュラ自身何故か能力の使い方が分かっていた。

 こればかりはさしものレイリーも首を傾げていたが、彼が言うには何らかのショックで記憶を失っているのだろう、とのこと。まあ、両親だのなんだのと今更言われても、知識としては知っていても実感は全く無いので、記憶を取り戻そうなどとは欠片も思っていない。

 

 

 ……さて。

 哀れな焼き鳥を食べ終わったマデュラは、何を思ったかトコトコと歩いて千剣山を下っていくではないか。

 先も述べた通り、この島は非常に凶悪な猛獣たちで溢れ返っている。

 

 

 いくら悪魔の実の能力者と言えど、見た目からして十代に入るか入らないか……どうあがいても十代前半程の歳だろうマデュラでは、千剣山を下るのは自殺行為と思える。

 

 

 が、しかし。

 

 

 

「じー」

「キャウ!? キャウンキャウン!!」

「……撫でたかっただけなのに、逃げられちゃった」

 

 

 

 早速遭遇した巨大な狼のような猛獣をマデュラがじっと見つめると、猛獣は犬っころのような悲鳴を上げ、尻尾を巻いて逃げていった。まんま犬である。

 

 

 わんこを撫でたかったマデュラは、思わずしょんぼりと肩を落とす。

 

 

 このように、どうやら猛獣たちはマデュラを“ダラ・アマデュラそのもの”として認識しているらしく、例え巨大な「獣型」に変身していなくても、マデュラを見ると一目散に逃げていくのだ。

 

 非常に小柄で可愛らしい少女を見て、巨大な猛獣たちがマッハで逃げていく姿はいっそシュールですらある。

 

 

 まあ、食糧に困るという意味では笑っている場合ではないのだが。

 獣型に変身すれば、マデュラから逃げられる者など存在しないので問題ない。

 マデュラ本人は知らないが、実は海賊王の右腕であったあのレイリーですらも、年老いたとはいえ、獣型に変身したマデュラと対峙すれば死を悟った程だ。

 

 

 ちなみに、生き延びるために必死だったレイリーからのトレーニングを数年に渡って受けた甲斐あって、今のマデュラは完全にダラ・アマデュラの力を制御下に置いている。

 

 更に、本来は偉大なる航路の後半でやっと身につけるはずの力、“覇気”もレイリーから教わっており、ものっそ硬くなる上こちらの位置をすぐに察知してくるダラ・アマデュラ、という本家ダラ・アマデュラを知るものが聞けば「ふざけんな!!」と絶叫したくなる事ウケアイな、理不尽の権化と化していたりする。

 

 

 

 さて、そんな彼女だがいったいどこへ向かっているのか?

 バッフフーン♪ と機嫌良さそうに鼻歌を奏でながら歩く猛獣たちにマッハで逃げられ、その度にしょんぼりし。時折獣型に変身して鬱憤を晴らしながら進む先。

 

 

 そこにあったのは──。

 

 

「よーし、今日で完成させちゃうぞー」

 

 

 無表情でふんすと鼻息を荒らげるマデュラ。

 視線の先には、今にも動き出しそうな「船」が浮かんでいた。

 

 

 そう。

 彼女は海に向かっていたのだ。

 

 そして、ここにある船こそが、かつてレイリーが乗ってきた物であり、寝ぼけて変身してしまったマデュラにうっかり叩き潰された物なのである。

 

 レイリーは能力者のマデュラがこの島を出られるようにとあえてこの船を修復はせず、逐一航海術や海賊船についてレクチャーしながらイカダを作り、島から出ていったのだ。五秒後には早速海王類に粉砕されていたが。

 

 残されたマデュラは、レイリーの教えを反芻しながら船の残骸を修復していき、今日。ようやっと修理が終わる目処が立った。

 それ即ち、彼女がもはや故郷ともいえるこの島を出て、広大な大海原に飛び出す日がやってきたという事を意味する。

 

 

 ──同時に、世界中の人々がダラ・アマデュラの脅威に晒される事をも意味するのだが、それはとりあえず置いておこう。物語が始まらなくなる。

 

 

 

 

 数時間後……。

 

 

 

 お昼時の空腹に耐えかねて変身し、哀れにも近くにいた適当な猛獣をもぐもぐと食べながら、マデュラは目を輝かせていた。バカでかいダラ・アマデュラ姿のままで。

 当たり前だが、このナリでもあくまで能力によるものなので喋れるし知能もある。ちょっぴり凶暴にはなるし、宇宙から凶星が降ってきたりはするが。

 

 

「やったぜ私。おつかれ私」

 

 

 

 あまりにも巨大なその姿から見ると、あまりにも頼りない……というかもはや豆粒大な船だが、人型に戻れば充分すぎるほど広い。

 

 苦節一年。

 時折うっかり粉砕してしまうため、なかなか時間がかかったが、遂に彼女はやり遂げたのだ。

 

 

 尚、仮に海の上で変身しようものなら、問答無用で海にドボンである。

 ダラ・アマデュラの体重に耐えられる船があってたまるか。

 

 

「……そう考えると、私って海賊志望なのに海上戦向いてないかも」

 

 

 シュルシュルと人型に戻りながら、一人呟く。

 人獣型ならば問題は無いのだが、獣型はあまりにも巨大すぎて変身できる場所が限られる。

 海上とかどうあがいても無理である。

 

 

 その事をしっかりと脳に刻み、いざ大海原へーとハイテンションに漕ぎ出すマデュラ。

 尚、いつの間にか表情筋が死んでいたのでハイテンションと言いつつ無表情、かつ小さめな声だ。

 

 

 初めて会う人間には「儚げな美少女、もしくは美幼女」として認識される事だろう。レイリーが聞けば大爆笑間違いなしである。

 

 

 

「あばー」

 

 

 

 せっかく修復した船でワクワクしながら海に出たマデュラだったが、かつてのレイリーのように五秒後には海王類に船を粉砕されてしまった。

 

 

 

 そして──。

 

 

 

 

「お、お、お頭ぁー!! ……なんか可愛い幼女が釣れたぁー!!」

「はぁ? あぁ、マジだな」

 

 

 

 

 船を壊された怒りでうっかり獣型に変身したマデュラは、極大のブレスで憎き海王類を抹殺し、そのまま重力に従って海に落ちていった。

 そして人型に戻って流れ流され、運良く(?)“最弱の海”とも言われる東の海に入り、そこを根城にしていたとある海賊団……シャンクス一味の幹部、ヤソップによって釣り上げられた、という次第である。

 

 

 

 目覚めたマデュラからそれを聞いたシャンクスたちは……。

 

 

 

「「ぶわっはっはっはっ!!」」

「む。笑うな」

「いやいや、悪い悪い。だってよお前、そりゃねえだろう!!」

「そうそう! おめーみてえなちんちくりんが凪の帯にある島に住んでて、船作って旅に出たァ!? 笑い話にしかならねえよそんな作り話!」

「……本当なのに。レイリーに聞けばわかるよ」

「あ? レイリー?」

 

 

 

 見た目だけなら非常に愛らしいマデュラだ。

 そんな彼女がそんな修羅の島を支配し、住んでいたなどとは、さすがのシャンクスたちも信じられるわけがなかった。

 

 しかし、レイリーの名を聞いた途端、シャンクスの目の色が変わる。

 

 

「待て。レイリーって、シルバーズ・レイリーの事か? どうしてお前が副船長の事を知ってる」

「友達だから。あ、どこか広い島に降ろしてくれれば変身してみせるけど?」

「……ふむ」

 

 

 内心では「ふくせんちょう??」と首を傾げるマデュラだが、それをおくびにも出さず、信用してもらうために変身してみせる事を提案する。

 

 

 

 そして……。

 シャンクスはそれを受けた。

 

 

 受けて、しまった。

 

 

 

 とある無人島に停泊し、ニヤニヤと笑う船員たちが見守る中、マデュラが変身する──。

 

 

 

 

「「………………」」

 

 

「どう? 信じてもらえた?」

 

 

 

 

 

 圧倒的、圧倒的巨体。

 口をぽかんと開ける赤髪海賊団一同。

 

 対して、異常な巨体に似合わぬ可愛い声で返事を求めるマデュラ。

 

 

 

「「すいませんでした」」

 

 

 

 赤髪海賊団、渾身の土下座。

 こんな化け物を笑っていたとか、いくら歴戦の大海賊たる彼らと言えど、肝が冷えるものがある。

 

 

 

 そんな感じでシャンクスたちと仲良くなったマデュラは、とりあえず彼らの船に乗せてもらって偉大なる航路に入り、適当な島に降りてまずはしっかりとした船を買うための資金を集める事となった。

 

 

 

 要するに。

 

 

 

「頼むぞマデュラいやマジで俺たちだけは狙わないでくれお願いします」

「当たり前。友達でしょ」

「「ほっ……」」

 

 

 

 四皇の一角にして意外と庶民的な感覚を持つシャンクス、および赤髪海賊団。

 蛇王龍との敵対ルートを回避。

 

 

 マデュラは、シャンクスの右腕であるベックマンの提案に従い、しばらく賞金首を潰し回って海賊活動のための資金集めを開始する事に。

 

 

 

 賞金稼ぎ“蛇王龍”爆誕の瞬間である。

 尚、活動開始当初は賞金稼ぎと認識されなかったせいで、海軍からなかなか賞金を受け取れず(懸賞金の代理受け取りは許可できない、と言って突き返された)、致し方なく海軍本部に出向き変身してみせる事でようやく認められた。

 

 まあ、人型の時は可憐な幼女なので当然の反応だが。

 幼女がR指定なグチャグチャ死体と化した凶悪な賞金首を突きつけながら「お金ちょうだい」と言ってきたからと言って、「ああこの子は賞金稼ぎなんだな」と正しく認識できる人間がこの世にどれ程いるというのか。

 

 小さな女の子にあこぎな事をさせている悪質な賞金稼ぎが居る、と考えるのが自然だろう。

 

 

 

 そして、九年後──。

 

 




シャンクスたちはちびルフィと別れて新世界に戻る最中に主人公と出会った感じです。
どうやらシャンクスはあの時点で既に四皇だったようなので、ダラ・アマデュラとも戦えそうな気がしますが、何せ武装色の覇気で硬くなる巨体の化け物という無理ゲーなので、ビビっても仕方ない。

主人公の悪魔の実は、リュウリュウの実と迷ったんですがダラちゃんはどうみてもヘビなので、ヘビヘビの実にしました。


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序章②

テンポよく行くぜ。
次話から原作入ります。
読者の皆に一言……本作はプロットもクソもない、その場その場での思いつきで書いてるから、深く考えてはいけない。ノリで楽しめ。


 

 

 赤髪海賊団と出会い、かの船の副船長、ベン・ベックマンからの勧めで賞金稼ぎになった“蛇王龍”マデュラ。

 

 

 偉大なる航路の折り返し地点であるシャボンディ諸島を根城に、数多の億越え賞金首をも潰れたトマトのようにしてきた彼女の名声は、今や全世界に轟いていた。

 尚、シャボンディ諸島に拠点を置いている理由は、海軍本部に近くて引渡しが楽に済むからである。

 

 割とずぼらなマデュラは、仕留めた賞金首のストックを大量に溜め込んでから換金に行くので、支部だと金が足りなくなったりした、という事もある。

 

 ついでに、友人であるレイリーも居るし。

 

 

 

 そんなこんなで人生を謳歌していたマデュラだったが、いつものように身の程知らずな自称“大型ルーキー”を仕留めた帰りに、「シャッキーのぼったくりバー」に立ち寄り、酒を飲み交わしていたレイリーにふと質問された事で我に返る。

 

 

「マデュラ。君はいつまで賞金稼ぎをしているつもりなんだ?」

「うん? いつまでって?」

「いやいや、あくまで資金集めが目的のはずだ。もう軽く100億ベリーはたまっただろう? それだけあれば充分すぎると思うが。まあ、自ら進んでお尋ね者になる必要はないと言われたらそこまでなのだがね」

「……あ」

「…………なるほど、察したよ」

 

 

 すっと目を逸らすマデュラを見て、彼女は何のために賞金稼ぎになったのかを忘れていたらしい、と察したレイリー。

 カウンターの奥で静かにグラスを拭いていたシャッキーもまた、そんなマデュラを見て苦笑いする。

 

 それもそのはず、偉大なる航路の後半、“新世界”を支配する海の皇帝たち……“四皇”の一味を除くと世界最高クラスの懸賞金がかかっていた大物賞金首すらも仕留めた事があるマデュラは、今や世界最強の賞金稼ぎとまで呼ばれ、その美しい容姿から世界中にファンを持つ程の有名人なのだ。

 こいつは本当に海賊になる気があるのか? とレイリーやシャッキーが疑うのも無理はない。だと言うのに、なんと本人がその事を忘れていたのである。

 

 笑うしかないとはまさにこの事であろう。

 

 

 ちなみに。

 赤髪海賊団と出会ってから九年も経った事から、ちんちくりんの幼女だったマデュラは、誰もが目を奪われる程の美女に成長している。

 背は低めだが、この世界の美女の例に漏れずスタイル抜群で、腰のあたりまで伸びた長い銀髪と、本人が好んでドレスタイプの服を着る事から、まるでどこぞのお姫様のようだ、と評判である。

 

 

 

 ただ、そんな見た目とお淑やかな仕草に反して大食いで、尚且つずぼらというダメ人間だったりするのが実情なのだが。

 

 

「ふ、船はきちんと発注してあるから……」

「賞金稼ぎのための、だろう。その上一人じゃとても動かせないような超大型船と見た」

「うっ」

「マデュちゃんの事だから、適当に人を雇って船を動かして、空いた部屋に捕まえた賞金首を放り投げておこう、という魂胆ではないかしら」

「ううっ」

 

 

 レイリーとシャッキーから鋭い指摘を受け、思わずたじろぐマデュラ。

 完全に二人が言った通りであり、特に仲間集めなどもしていなかったマデュラ一人では、近いうちにできる超大型船は絶対に動かせない。

 

 

「うう……助けてレイえもん……」

「レイえもん……? まったく、仕方のない子だ。まずは仲間集めから始めてはどうかね? 君ほどの名声があれば、ついて行きたがる者はすぐに見つかるだろう」

「いっそずっと賞金稼ぎとしてやっていくのもいいのではないかしら? 海賊になれば当然、海軍から追われるようになるわよ。マデュちゃんなら、初頭手配からいきなり10億ベリーとかついてもおかしくないし」

「まあ、そうだろうな。どうなんだ、そこのところは」

「うーん……まあ正直世界政府のお役人やら天竜人やらで嫌気が差してきた頃だし、やっぱり海賊になって自由に動き回る方が楽しそうかな」

「ふむ、そうか」

 

 

 ならばやはり仲間を集めねばな。

 ニッコリとレイリーからそう告げられたマデュラは、ぐう、と呻きながらもバーを出ていった。

 そして停泊していた海軍の軍艦をヒッチハイクし、賞金首を引き渡すから、という名目で海軍本部へ。

 

 辿り着いた海軍本部できちんと賞金首を引き渡した後は、賞金稼ぎをしているうちにできた伝手を辿って水夫を雇い、知人から大型船を半ば無理やりレンタルして新世界へ。

 

 

 そして──。

 

 

 

「私と海賊やりたい人、この指止まれ」

「「!?」」

 

 

 

 新世界の島々でそんな事を宣うマデュラに、激震する人々。

 当たり前だが新聞社の者にも聞かれていたりしたので、彼女の海賊宣言はあっという間に世界中に知れ渡った。

 

 

 それはさておき、レイリーが言った通り仲間はすぐに集まった。

 何せこの大海賊時代においては、腕に自信のある豪傑などはそこら中に居るのだ。

 世界的な有名人であるマデュラが募れば、海賊団を結成する程度の事は朝飯前なのである。

 

 

 そしてタイミング良く、発注していた超大型ガレオン船が完成し、業者から電伝虫で連絡が。

 マデュラは機嫌よく鼻歌を奏でながら新たな部下たちに命じて船を受け取りに行き、そこで「人質」という名目でこき使っていた水夫たち(新世界へ渡るために雇った人々である)とそれまで乗っていた船を解放。

 

 

 ピカピカの新品である超大型ガレオン船に乗り込み、ご機嫌なマデュラは……何を思ったか、凪の帯に侵入して偉大なる航路を逆走するという暴挙に出る。

 

 これには新しく仲間に加わった部下たちもびっくりである。

 

 

「ちょ、マデュラさん!? なんで逆走を!? そのまま新世界を航海していけばよかったじゃないすか!」

「だって、なんかズルいでしょ。ちゃんと偉大なる航路の外から活動を始めた海賊団に申し訳ない」

「ええ!? ていうか凪の帯はまずいですって! 海王類に狙われますよ!? そうなりゃいくらこのバカでかいガレオン船でも……」

「だいじょうぶ。私にビビって海王類は手を出してこないから。小船で確認済み」

「「えー……あ、ほんとに出てこない……」」

 

 

 マデュラ曰く、ズルはいけないとのこと。

 まあ、新たな仲間たちと苦難を共にして絆を深めたい、という思いが多分に含まれてはいるのだろうが。

 

 そんなこんなで凪の帯を突っ切り、偉大なる航路の前半へと戻ってきたマデュラ一味。

 ここから、彼女たちの物語が始まる。

 

 

「マデュラさん! 前方の島に海軍の船が大量に停泊してやすぜ! どうしやすか!?」

「お、全部潰して教えてあげよう。私が海賊になったんだって事を」

「「了解ッ!!」」

 

 

 

 尚、マデュラの摩訶不思議な動きを完全に見切っていたセンゴク元帥の采配により、海軍の艦隊との戦闘がいきなり勃発した模様。

 バスターコールもびっくりな、数多の中将を筆頭とした大艦隊ではあったが、島に上陸してしまったマデュラが変身し、あっという間に叩き潰された。

 

 

 軍艦も一つ残らず海の藻屑となり、被害額は相当なものとなった。

 これを聞いたセンゴク元帥は頭を抱え、すぐさま将校たちを招集して会議を開く。

 

 

 そして──。

 

 

 

「来た来た! 来ましたよマデュラさん! 新しい手配書の束っす!」

「お頭と呼べばかやろー。どれどれ……あった」

 

 

 世界最強の賞金稼ぎと名高かったマデュラが、突然まさかの海賊へ転身。

 堂々とニュースの一面を飾るその記事と共に、配られた手配書に書いてあったのは……。

 

 

 

 “蛇王龍”マデュラ、懸賞金8億ベリー。

 

 

 初頭手配とあって、マデュラの名声と実力に反してかなり低い金額だが、それでも世界的に異例な超高額の懸賞金である。

 センゴクとしては、最低でも10億はかけたかったのだが、海賊になったばかりのマデュラが仕出かした悪行と言えば、海軍の大艦隊を一瞬で海の藻屑にしたぐらいである。

 それ故に、この金額にまで抑えられる事となったのだ。

 

 

「おおおおお!! すげー! いきなり8億!」

「……むう、低い。たった8億ぽっちか」

 

 

 部下たちはいきなりの偉業……偉業? に騒いでいるが、当のマデュラ本人はものすごく不満げな顔である。

 賞金稼ぎとして100億ベリー以上も稼いできたマデュラは、少し金銭感覚が浮世離れしているのだ。

 

 

 そして、レイリーも頭を抱える問題児マデュラは、自らの懸賞金を引き上げるために、とんでもない大事件を起こす。

 

 

 

 この世の癌が蔓延る、聖地マリージョア。

 そこに巣食う寄生虫、天竜人を片っ端から捕らえて磔にし、見世物として世間にお出ししたのだ。

 尚、後日。見世物にされた天竜人は全員が首を切られて世界政府のトップである五老星の元に送り付けられた。

 

 まさに、天をも恐れぬ悪行。

 これには世界政府も重い腰を上げ、直属の諜報機関であるサイファーポール……通称“CP”を派遣し、海軍本部にも命じて海軍大将や王下七武海、および無数の将校たちを出させる。

 

 

 しかし。

 それこそがマデュラの本当の狙いであり、彼女率いる「蛇王海賊団」と「世界政府軍」が激突した大戦争……とは名ばかりの蹂躙は、後に“世界最後の日”とまで恐れられ、“蛇王龍”マデュラとその一味である「蛇王海賊団」の悪名は全世界に轟く。

 

 

 

 何故ならば。

 圧倒的な大軍勢を誇る世界政府軍が、実質マデュラたった一人に敗北したからだ。

 もっとも、天竜人を嫌う海軍大将たちや王下七武海の面々がまともに戦わなかったせいでもあるのだが。

 

 

 

 この一件の結果、マデュラの懸賞金はすぐさま大幅に引き上げられた。

 

 

 

 “蛇王龍”マデュラ、懸賞金──

 

 

 

 

 ──28億ベリー。

 

 

 

 かの海の皇帝、四皇に匹敵する程の超高額である。

 

 

 

「やったぜ。シャンクスに追いつけたかなあ?」

 

「お頭って可愛い顔してとんでもない事しますね」

「倫理観ってもんがぶっ飛んでらぁ」

「根っからの海賊なんだな」

 

 

 部下たちは地味に顔を引き攣らせているが、そもそも超存在である蛇王龍の化身たるマデュラは、人並みの倫理観なんてものはハナから持ち合わせていない。

 

 彼女からすると、他者は餌か友人かの二択しか存在しないのである。

 天竜人だろうが世界政府だろうが等しくただの餌であり、彼女の糧となるべきもの、としか思っていないというわけだ。

 

 

 

 そして、一年後。

 Dの名を持つ一人の青年が海に出た所から、時代は大きく動き出す。

 ついでに、マデュラも動き出す。世界逃げて。

 

 




懸賞金が馬鹿みたいに上がった理由:無数の天竜人を殺したので、天竜人の生き残りが「金ならいくらでも払うからどうにかするんだえ!」と泣き叫んだから。


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アラバスタ王国①

古龍軍団登場。
当然ですがオリキャラばかりです。


 

 

 偉大なる航路の後半、新世界のとある島にて。

 

 

「おい、見つかったか!?」

「いや、いねえ!!」

「おまけに“モンスターズ”の奴らもいねえ!!」

「……あの人はまた、何も告げずに……はぁ」

 

 

 今や四皇に匹敵する大海賊として知られる、蛇王海賊団。

 四皇と比較すると規模が小さいため、海賊団としては一歩格が下がるが、こと船長の戦闘力だけを見るならば充分世界最強クラスではある。

 

 そんな彼らだが、肝心の船長……“蛇王龍”マデュラが突然姿を消した事から、縄張りの島同士で連絡を取り合い、必死に船長の姿を探していた。

 しかし、見つからない。

 

 それもそのはず、マデュラは直属の精鋭集団“モンスターズ”の面々を連れて縄張りを出ており、既に部下たちの手が届かない所へと行ってしまっているのだ。

 

 

 あらぬ方向を指すマデュラのビブルカードが、その事を物語っている。

 

 

「どうする?」

「どうするたってなあ。お頭の事だから、また凪の帯を突っ切って偉大なる航路を逆走してんだろ。俺らじゃ追っても海王類の餌になっちまうよ」

「だよなあ。仕方ねえ、帰ってくるまで適当に縄張りでも広げとくか」

「だな。おもしれえ奴がいたら勧誘しておこうぜ」

「おう」

 

 

 必死にマデュラの姿を探す部下たちだが、船長が仕出かす無茶には最早慣れたもの。

 早々に捜索を諦め、独自の判断で動く事に決め、四皇の縄張りに手を出さないように注意しつつ、自分たちの領域を広げて帰りを待つ事に。

 

 

 さて、ではマデュラは何をしているかというと──。

 

 

 

 

 偉大なる航路の前半、“楽園”の海にて。

 

 

「へえ、白ひげんとこの隊長が?」

「はい。偉大なる航路を逆走し、何かを探しているようです。どうやら、白ひげの船から脱走者が出たとかで……」

「隊長がわざわざ逆走までしてるとなると、鉄の掟でも破ったのかな。隊長さんが今どこにいるか分かる?」

「砂の王国、アラバスタの近辺ではないかと」

「よっし、行こう。面白そうだし。もしかしたら白ひげと遊べるかもしれない」

「了解です。お前たち、船長命令だ! 我々はアラバスタ王国に向かい、白ひげ海賊団の二番隊隊長、ポートガス・D・エースを捜索する!」

「「イエッサー!!」」

 

 

 モンスターズ。

 蛇王海賊団の中でも動物系能力者……それも、希少な幻獣種の者ばかりを集めた精鋭部隊であり、中でもマデュラと会話していた総隊長のガロアは、ダラ・アマデュラ程の規格外ではないがかなりの巨体となる能力者である。

 彼らが一斉に変身すると世紀末な怪物大戦争と化すあたり、もはや笑うしかない。

 

 何はともあれ、かつて敵対していた海賊団から奪ったガレオン船に乗って、彼らは海を行く。

 目指すは砂の国、アラバスタ。

 現在、大規模な反乱が起きていると噂のかの王国ではあるが、そんな事など蛇王海賊団にとっては些事に過ぎない。

 

 

 マデュラが行きたいと言っているのだから行く。

 それでいいのだ。

 

 

 特に、その特異な能力からアウトローに堕ちざるを得なかったモンスターズの面々は、自分たちを救ってくれたマデュラに対し盲信とも言えるほどの忠誠心を持っている。

 つまり、蛇王海賊団の中でも生粋の問題児集団というわけである。

 

 

 そして──。

 

 

「船長。アラバスタ王国が見えてきました。港に船を着けますか?」

「ん。入り切る? 結構大きいよ、この船」

「ご安心を。地形を変えてでも着けてみせます」

「そう、ならいいか」

 

 

 良くねえよ! と、常識的な船員が聞けば叫びそうなやり取りをしつつ、本当に無理やり港に侵入するガレオン船。

 当然、町の人々は大パニックである。

 

 

 

「か、か、海賊だぁーー!!」

「あ、あの海賊旗……蛇王海賊団!? なんで、あんな大海賊がこんなところに……」

「じゅ、10億越えの大海賊……あんなのが相手じゃ、いくらクロコダイルさんでも……」

「に、逃げろぉー!!」

 

 

 ご覧のように、蜘蛛の子を散らすように逃げていく町の人々。

 これを見てひたすら困惑する一団がいた。

 

「あり?? なんか誰もいなくなったぞ」

「ほ、本当だ。な、なんだ? 何がどうなってんだよぉ!? お、おいルフィ! 俺達も逃げた方がいいんじゃねえか!? 今“大海賊”って聞こえたしよぉ!」

「大海賊?? 誰か来たんか?」

 

 とある目的のため、アラバスタ王国の港町ナノハナに上陸した大型ルーキー、麦わらの一味と……。

 

 

「スモーカーさん、あの海賊旗って……!!」

「……蛇王……海賊団……だと!? なんだってこんなところに来てやがる!! この国にいったい何が起きてんだ!?」

「ど、どうしましょう!?」

「……チィ、さっさと麦わらをとっ捕まえて本部に報告するぞ!」

「りょ、了解です! スモーカーさん!!」

 

 

 麦わらの一味を追って本来の担当地域である東の海を離れ、アラバスタ王国にやってきていた本部の海兵、スモーカー大佐とその部下、たしぎ曹長である。

 

 

 その様子を“見聞色の覇気”で「聴いて」いたマデュラたちは……。

 

 

 

「蛇王海賊団……!? オヤジから気ぃつけろって言われた奴らか……!! やべえ、ルフィを狙ったりしねえだろうな!?」

 

 

「見っけ」

「ええ、確認しました。どうされますか? 海軍の問題児、スモーカーもいるようですが。おまけに雑魚海賊も、ですね」

「目当ては白ひげんとこの隊長くんだけだよ。とりあえず会ってみたいな」

「了解、二番隊隊長の捕獲に移ります」

 

 

 とある目的のためにこの町にやってきていた、白ひげ海賊団の二番隊隊長、ポートガス・D・エースの姿を確認し、彼を捕獲するために動き出す。

 

 

 ここで、モンスターズの総隊長、ガロアの手配書をチェックしてみよう。ついでにマデュラも。

 

 

 

 “骸龍”ガロア、懸賞金7億ベリー。

 

 

 “蛇王龍”マデュラ、懸賞金32億5000万ベリー。

 

 

 

 ちなみに、四皇の一人“白ひげ”の幹部であるエースの懸賞金は、5億5000万である。

 そして、麦わらのルフィの懸賞金はわずか3000万。

 

 

 額がイコール強さ、というわけではないのだが、それでも絶望的な差がある。

 

 

「……クソッタレ!! たしぎィ!! 蛇王海賊団の奴らが上陸してきやがったぞ! 戦闘準備!!」

「は、はいっ!!」

 

 

「お? ケムリンがどっか行くぞ」

「い、いまのうちに逃げようぜ!! な! な!?」

「んー。どんな奴が来たのか気になるな。見に行っちゃダメか?」

「ダメに決まってんだろボケェ!! とにかく早く皆と合流しようぜ!」

 

「やばい、これはマジでやばい!! ルフィ、頼むから蛇王海賊団に喧嘩なんて売ってくれるなよ……!!」

 

 

 変身をしていない人型のまま、モンスターズがナノハナの町に侵入し、迎撃のため立ちはだかるスモーカーたちと激突する。

 しかし、本部所属とはいえ所詮大佐が率いる部隊。

 四皇クラスの戦力である蛇王海賊団に太刀打ちできるはずもなく、次々に倒されていく。

 

 

 そして。

 

 

「ぐは……クソ……!! 覇気使いか……!」

「当然だ。我々をそこらの雑魚海賊と一緒にしてくれるなよ。我ら蛇王海賊団こそが世界最強なのだ」

「スモーカーさんッ!! きゃっ……」

「うるさい小娘ね。総隊長、こいつら燃やしても構わないかしら?」

「待て待てナナ。こんな奴らに時間を使ってる場合じゃないだろ」

 

 

 “炎妃龍”ナナ、懸賞金4億3000万ベリー。

 “炎王龍”テオ、懸賞金4億ベリー。

 

 

 ガロアに連れられ、モンスターズの賞金首夫婦のうち、嫁の方……ナナがたしぎを取り押さえ、海兵たちを燃やそうとするナナを夫のテオが宥める。

 

「テオの言う通りだろ。船長命令を忘れたか? つーか俺が飛んで探した方が早いんじゃない?」

「ふむ、よかろう。ダオラ、行け」

「あいあい、了解」

 

 

 “鋼龍”ダオラ、懸賞金3億8000万ベリー。

 

 

 テオの後ろから現れた男、ダオラが龍に変身し、空高く飛び上がっていく。

 そして見聞色の覇気を使ってエースの位置を探りつつ、空から見渡し……。

 

 

「お、いた。つーかナズチの奴の近くじゃん」

 

 

「ぐっ!? なんだ、壁!?」

「おー……悪いけどこっから先は一方通行なんだなぁ」

「……カメレオン? いや、龍なのか……?」

「これでも一応龍らしいぞぅ」

 

 

 逃走する麦わらの一味と合流するべく、走っていたエースだったが、透明な“何か”にぶつかり、思わず尻もちをつく。

 見上げた先にいたのは、奇怪な姿をした生物。

 

 

 “霞龍”ナズチ、懸賞金3億5000万ベリー。

 

 

 目の前の相手を蛇王海賊団の一員と認識したエースは、すぐに体勢を立て直して戦闘態勢に入る。

 しかし──。

 

 

「うわっ!?」

「おぉっとぉ!! スピードが足りねえぜ!!」

「おぉー、ファル君~」

「くそっ、離しやがれ!」

 

 

 “天彗龍”ファルク、懸賞金4億5000万ベリー。

 

 

 凄まじいスピードで飛来した銀色の龍に捕まり、身動きが取れなくなってしまったエース。

 自然系能力者のエースは、普通ならばこうして拘束される事などなくすり抜ける。

 しかし、ファルクを含めたモンスターズの面々はいずれも覇気の使い手なのである。

 

 

 焦りを露わにするエースだが、落ち着いた声の持ち主が歩いてきた事で冷静さを取り戻していく。

 

 

「手荒な真似をして済まない、エース君。しかし、船長命令でね。マデュラ様が君と話がしたいそうだ」

「なんだと……? あの“蛇王龍”がこんな所に来てるってのか!?」

「あっ、副隊長~」

「わかったか!? さあ火拳! はいかイエスで答えな! ハリー! ハリィー!!」

 

 

 “老山龍”シャンロン、懸賞金6億ベリー。

 

 

 シャンロン。

 彼こそがモンスターズの副隊長であり、マデュラから任命された総隊長の座をガロアに譲った穏やかな老人だ。

 

「……ちょっと待ってくれ。弟が近くにいてな。挨拶だけでもしていきてえ」

「ほう、君に弟が。そういう事ならば構わんよ。ただ、逃げてしまわないように後を追わせてはもらうがね」

「へっ、逃げやしねえよ。オヤジの名に傷が付く」

 

 

 こうして、エースはひとまず解放され、既に海に出ていた麦わらの一味を追って行った。

 シャンロンたちモンスターズの面々もまた、一旦マデュラの元に戻って事情を説明し、スモーカーたちを放置して麦わら一味の船を追う。

 

 

 残されたスモーカーとたしぎは、自分たちの無力さに歯軋りするしかできなかった──。

 

 




古龍だけでもかなりの数いるからなぁ……。
副船長はどのモンスターにしようか。
ミラボレアス系はさすがにアウトとして。

とりあえずルフィ逃げて。

あ、評価ありがとうございます。


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アラバスタ王国②

評価バー伸びるの早いな!?
皆ありがとう!・:*+.(( °ω° ))/.:+
あ、展開的に無理がありそうなので麦わらアンチタグは外しました。
※ヤマが空島のデブと名前被るので若干修正しました。

前回のあらすじ:なんか古龍いっぱい出てきた



 

 突如襲来した蛇王海賊団の脅威から逃れ、混乱に紛れてなんとか海に出た麦わらの一味。

 そんな彼らの船にやってきた、“火拳のエース”。

 話を聞けば、なんと世界最強の大海賊として知られる白ひげ一味の幹部である彼は、麦わらの一味の船長である“麦わらのルフィ”の兄だという。

 

 

 多大な迷惑をかけられつつもルフィを慕う船員たちは、ルフィの兄とは思えない程礼儀正しいエースを快く歓迎し、宴が始ま……りそうだったのだが──。

 

 

「──はっ!! そうだ、こんな事してる場合じゃねえ!」

「ん? なんだよエースゥ! ノリが悪くなったんじゃねえか?」

「それどころじゃねえんだよ!! いいかルフィ、仲間の皆さんも! すぐに遠くへ逃げろ!! できるだけ遠くへだ!」

「……? どういう事だ」

 

 

 蛇王海賊団の存在を思い出したエースが突然慌てだし、ルフィたちは呆気にとられる。

 そして、まるでそれを合図にしたかのように奴らが現れる。

 

 最初に気付いたのは、なんとなく双眼鏡で海を眺めていた非常食……もとい、最近加わったばかりの“船医”にして、悪魔の実を食べたトナカイ。トニートニー・チョッパーであった。

 

 

 

「ん……? へ?? な、なんだアレェ~~!?」

「な、なんだ? どうしたチョッパー!?」

「う、ウソップ!! ヤベー奴らが来たぞぉ!! やべーよぉ、おれたち食われちゃうのかなぁ!?」

「お、おう? ……んな、なんじゃありゃぁ~~!? おいビビ!! 砂漠には……ドラゴンの大群が住んでるのかァ!? 聞いてねえぞぉ!!」

「え?? 何のこと?」

「へ? いやだって、あれ……」

 

 

 この騒ぎにより、船に乗っていた全員の視線がチョッパーが指を差す方角に向き、そこにあった凄まじい光景に全員の目が飛び出る。

 

 

「「「な、なんじゃこりゃあ~~!?」」」

「やばい、本当に追ってきやがったのか……!!」

 

 

 彼らの視線の先。

 そこには──。

 

 

 巨大なタコのような何かに釣り上げられ、空を飛ぶガレオン船と、その周囲を守るように飛行する無数のドラゴンたちがいた。

 一部、ドラゴンというよりデカイ鳥っぽい奴もいるが。

 

 当然、麦わら一味は大パニックである。

 

 

「お、おいおいおいなんだよあれ!! この世の終わりかァ!? おれぁまだ死にたくねえよぉ!!」

「え~ッ!! おれたち死ぬのかあ!?」

「何よあの生き物……ガレオン船が空を飛ぶなんて、聞いた事ないわよぉ!!」

「すんげぇ~!! やっぱ海は広ェなァー! あんなのがいるなんて思わなかったぞ!!」

「……まさか、あれって……!!」

「タコだよな、どう見ても。なんで空飛んでんだ。何にせよ、揚げたら美味くなりそうだな」

「おいルフィの兄貴。お前、アレが何か知ってんのか?」

 

 

 冷静なのは、麦わらの一味の“三強”の二人、サンジとゾロのみ。

 他は泣き叫ぶばかりである。

 まあ、ルフィだけはベクトルが違う騒ぎ方をしているが。

 

 そして、ゾロに問われたエースは、こくりと頷いて真面目な顔で説明を始める。

 

「……いいか、よく聞けお前ら。アレは……一年前、突然現れた海賊、蛇王海賊団の船だ。何のつもりかは知らねえが、事もあろうに船長の“蛇王龍”マデュラまで来てやがるらしい。その懸賞金は──」

 

 

 神妙な顔で語るエースを前に、騒いでいたルフィたちも静かになり、ごくりと生唾を飲む。

 蛇王海賊団の名を聞いた航海士のナミはまた騒ぎそうになったが。

 

 

「──32億5000万。とてもお前らが敵う相手じゃねえし、おれだって蛇王龍相手じゃ何もできねえ。いいか、絶対に機嫌を損ねるような真似はするな!!」

「「「さ、32億ゥ!?」」」

「……えーと、おれの何倍だ??」

「わかったな、ルフィ!!」

「お、おう! わかった!!」

 

 

 まさに桁違いの懸賞金額を聞かされた麦わらの一味は、全員が驚きのあまり絶叫した。

 それもそのはず、彼らはまだ32億どころか1億に届くか届かないか、というラインで「懸賞金バカ高ェ!!」と騒ぐレベルなのだから。

 

 

 

 そんなこんなをしているうちに、ガレオン船が麦わらの一味の船……ゴーイングメリー号の上空に到達。

 あまりにも巨大な影にすっぽりと埋まり、まるで夜のように暗くなる。

 

 

 そして──。

 

 

「ヒャッホゥ!! 一番乗りだァ!!」

「んー。ファル君はせっかちなんだなぁ」

「まったくよ。こういう時だけはナズチを見習って欲しいわね」

「まぁまぁ、そう言うなよナナ。なあ、ダオラ」

「嫁に勝てねーからって俺に同意を求めんなよ」

「お前たち、もう少し落ち着きたまえよ。ただでさえ狭いこの船がより狭く感じるだろう」

「やかましいぞ貴様ら。さっさとマデュラ様をお出迎えする準備をしろ。先生、お願いします」

 

「「な、なんかいっぱい来たァーー!!」」

 

 

 蛇王海賊団のガレオン船を取り巻いていたドラゴンたちの一部が人型に変化し、空から降ってきた。

 中には船から直接飛び降りてきた者もいるが。

 

 

 ちなみに。

 ガレオン船を掴みながら浮かんでいる巨大なタコも、蛇王海賊団のモンスターズに所属する海賊である。

 

 

 “浮岳龍”ヤマツ、懸賞金5億3000万ベリー。

 

 

 呆気にとられる麦わらの一味+エースを余所に、何やら整列して王を迎える騎士のように跪くモンスターズ。

 

 直後、ドラゴンというよりでっかい鳥、と表現した方が似合うピンク色の……謎生物が、メリー号のド真ん中に舞い降りた。

 

 

 “大怪鳥”クック、懸賞金8000万ベリー。

 

 

 

「敬礼ッ!!」

「「はっ!!」」

 

「…………えっと、なんだこのノリ?」

「静かにしてろ、ルフィ。たぶん、こいつらにとっては大切な事なんだろ」

 

 

 お前ら本当に海賊か? と思わず聞きたくなる謎の展開に、思わずルフィが問いかけるも、何がなんでもトラブルを回避したいエースが咎める。

 もっとも、そんなエース本人も内心困惑しているが。

 

 

 ──しかし。

 直後、船中が……いや、この海域一帯が強烈な威圧感に包まれた事で、彼らは一様に身を固くした。

 

 

 

「──ご苦労様」

「はっ!! ご命令通り、麦わらの船に到着でございます! マデュラ船長!!」

「先生も、ありがとう」

「なんのなんの。いくらでも足に使ってくれ、マデュラちゃん」

 

 

 大怪鳥が先生と呼ばれている事に若干笑ってしまいそうになるルフィたちだが、ぐっと堪える。

 なんか、今笑ったら命がやべー気がする。

 

 

 ふわりと舞い降りた女性は、とても海賊とは思えぬ程に優雅な装いの美女で、一見すると虫も殺せないような淑女に思える。

 しかし、その身から放たれる威圧感はモンスターズの面々ですらも比べ物にならず、ルフィたちは一歩も動く事ができずにいた。

 

 

 そんな麦わらの一味を一旦捨ておき、エースが前に出る。

 船が沈められていないあたり、戦闘の意思は無いはずだ、と考えながら。

 

 

「あんたが、“蛇王龍”マデュラか。こうして直接会うのは初めてだな」

「ん。初めまして、“火拳のエース”。弟くんへの挨拶は済んだ?」

「……ああ。おれと話がしたいと聞いたが」

「うん」

 

 

 直接話してみると、意外なほどに平和的というか、どこぞのビッグマムのように丸っきり話が通じない怪物、というわけではないらしい。

 エースは内心胸をなで下ろした。

 

「何か面白い話はないかなーってこっちの海に来てみたら、君が偉大なる航路を逆走してるって聞いたから。それは何のために?」

「ああ、そんな事か。部外者に話すような事じゃないんだが、それじゃあんたは納得しねえよな」

「そりゃね」

 

 戦闘になる事だけは避けたいが、かといって媚びを売るような態度をとってしまっては“白ひげ”の名に傷が付く。

 細心の注意を払いつつも、あえてエースは対等な立場である、という事を態度と言葉で示す。

 

 

「……つまらねえ話さ。ウチの隊から、裏切り者が出た。“黒ひげ”つってな、決して犯しちゃならねえ鉄の掟……“仲間殺し”をして、あの野郎は船を降りた。だから、隊長であるおれが落とし前を付けなきゃならねえ。それだけの事だ」

「……ふーん。なんだ、思ったよりつまらない話。ガロア、その“黒ひげ”って奴は知ってる?」

「いえ。ですが、赤髪がそのような名前を口走っていたかと」

「あー、シャンクスが。そう言えば……」

 

「シャンクス!?」

「あ、おいルフィ!!」

 

 

 黙って話を聞いていたルフィだったが、彼の恩人たるシャンクスの名が出た事に深い興味を示し、制止するエースを無視してマデュラに食ってかかる。

 

「おいお前!! シャンクスの事を知ってるのか!?」

「なんだ貴様。雑魚海賊風情がマデュラ様に話しかけるな。身の程を知れ。貴様とマデュラ様では住む世界そのものが違うのだ」

「んだとこんにゃろー!! やんのかお前!」

 

 しかし、マデュラの隣に立っていたガロアに阻まれ、彼の言葉にキレたルフィはターゲットを移す。

 当然、エースや麦わらの仲間たちは大慌てである。

 

 

「馬鹿野郎、下がれルフィ!! 死ぬぞ!!」

「お、おいルフィ!! 何やってんだよぉ!!」

「うるせー離せお前ら!! ぶっ飛ばしてやる!」

 

 

 マデュラが全く自身を見ていない事も、ルフィのプライドを傷付けた。

 何せ、彼は海賊として旗揚げして以来、順調に勝利を重ねてきた。

 海軍本部のスモーカー大佐には完封されたが、それはそれ、これはこれ、である。

 

 

「……マデュラ様。この猿を黙らせる許可を」

「いいんじゃない、勝手にやれば。ただ、一応火拳の顔を立てて、命だけは勘弁してやって」

「承知しました」

「お、おい蛇王龍! ちょっと待ってくれ!! こいつに悪気はないんだ!!」

「知らない。そっちが勝手に喧嘩売ってきたんじゃない。ほら、適当なところに船を着けて。さっさとしないと船ごと潰して帰っちゃうよ」

「……くそっ!!」

 

 

 思わぬ展開に、ガン、と壁を殴りつけるエース。

 しかし逆に考えると、世界の広さを知らないルフィにはいい薬かもしれない。

 

 今回は命だけは取られないようだが、今後もこうなるとは限らない。

 大海賊に喧嘩を売ってしまい、ルフィが殺される可能性もあるのだから。

 

 

 何より、エース自身、かつて無謀にも白ひげに挑み、負けて彼の部下となった過去がある。

 この兄にしてこの弟あり、といったところか。

 

 

 

 こうして、蛇王海賊団モンスターズ総隊長ガロア対、麦わら海賊団船長モンキー・D・ルフィの、一対一の勝負が実現する事となった。

 

 

 まあ、残念ながら結果は見えている。

 事故でルフィが殺されてしまわない事だけを祈る、エースなのだった。

 

 




いつの間にかルフィがガロアと戦う事になってた。
でもこの時期のルフィはスモーカー戦を除けば無敗だから、挑発されたらすぐ乗りそうな気がするんですよね。


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アラバスタ王国③

ルフィ対ガロアはぶっちゃけ戦いにすらならないのでカットします。
各自、妄想力を働かせるんだ……!
だってよー、この時点でカタクリ兄貴と戦うようなもんよ? 無理ゲーに決まってるでしょう。

前回のあらすじ:ルフィパイセン、蛇王海賊団の幹部に喧嘩を売る


「く……か……!」

「…………ふん、タフネスだけは褒めてやる。だが、喧嘩を売る相手は選んだ方がいいぞ、小僧」

 

 

 

 一面に広がる砂漠に倒れるルフィ。

 ガロアが殺してしまわないようにものすごく手加減した甲斐あって、意識だけは辛うじて残っているものの、指一本すら動かせない程に衰弱しており、一刻も早く治療しなければ命に関わる程の重傷を負っていた。

 

 

「う、ウソ……! いくらなんでも、あのルフィが手も足も出ないなんて……! しかもあいつ、船長でもなんでもないんでしょ!?」

「そだよー。ま、ガロアは一応ウチの幹部だけどね。あ、これおいしい。クック先生も食べてみ」

「ふむ。確かに、なかなかに美味だね。これは君が作ったのかい? コックくん」

「あ、ああ。お褒めに預かり光栄です……って、そうじゃない! 早くルフィを助けねえと!」

 

 

 そんなルフィを余所に、モンスターズの面々に命じて天候を変え、快適な気温で優雅にオヤツをつまむマデュラ。

 よほど気に入ったのか、背を預けていた“大怪鳥”クックにもそのオヤツを直接与えるほどだ。

 

 ちなみにこれを作ったのは麦わら海賊団が誇る“海のコック”、サンジである。

 マデュラはちょっとサンジの事が欲しくなった。

 

 

 そんなサンジは、自分たちの船長が今にも死んでしまいそうな程の傷を負って倒れている事に動転し、いつものラブコックぶりを発揮しないほど慌てている。

 

 

「おいチョッパー!! 何ボーッとしてやがる! 早く行け!!」

「……あっ!! ご、ごめん!!」

 

 

 当然、ルフィを慕って海に出た船医のチョッパーも例外ではなく、自身が医者だという事すら忘れてしばらく呆然としていた。

 しかし、ゾロに怒鳴られた事で慌ててルフィの元に走っていく。

 

 ……何故かマデュラもトコトコとついてきた。

 

 

「……酷い傷だ。こ、ここまでする事ないだろ!!」

「知るか。こいつが弱いのが悪い。む、どうされました? マデュラ船長」

「へー、これでも一応意識だけはあるんだね。たしかにタフネスだけは一流かも」

「……か……か……!!」

「しゃ、喋っちゃダメだよルフィ!! ……ちょっと治療するから退いてくれ!」

「ああ、ごめんごめん。喋るトナカイかあ、面白いね」

 

 

 まだ海賊として未熟であるチョッパーは、兄のように慕っているルフィが半殺しにされた事に怒り、見ている方がハラハラする態度でマデュラを──正しくは彼女の背後に立つガロアを──睨みながら、人型に変身してルフィを抱きかかえ、船に戻ろうとした。

 

 しかし。

 

 

「──どうせならデービーバックファイトにすればよかったかな?」

 

 

「……ひっ!?」

 

 

 

 おぞましい“蛇の眼”に変化したマデュラに睨み返された事で、思わず失禁してしまう。

 

 

「今から申し込みますか?」

「ううん、いいや。火拳に怒られそうだし。ほら、早く行かないとそいつ死んじゃうよ? ガロアの爆破アタック食らったんだし」

「……あ、ああ。うん……」

 

 

 格の違いを思い知らされ、とぼとぼと歩いてゾロたちの元へ戻っていくチョッパー。

 そんな彼を見て、マデュラはくすりと笑った。

 

 

「? どうされました?」

「ううん、可愛いなって思って。美味しそう」

「ご命令とあらば奪ってきますが」

「いやいや、今はいいって。火拳に悪いでしょ。目の前で弟の仲間が丸呑みにされたら怒るよ普通」

「御意に。しかし、準備はしておきます」

「うん、お願い」

 

 

 美女のマデュラが言うとアレだが、“物理的に”美味しそう、という意味である。

 決して性的な方ではない。

 残念ながら、チョッパーは食糧としてしか見られていなかった。

 

 

 そんなマデュラに近付く影が一つ。

 

 

「おい、蛇王龍」

「ん? どうしたの、火拳」

「もう満足しただろう? これ以上弟に手ェ出すな!」

 

 

 海賊である以上、いつ死ぬかもわからないし、ルフィが自分自身の判断で死んだのならば、所詮そこまでの男だったというだけの話。

 

 そう割り切れればよかったのだが、エースは大事な弟を目の前で傷付けられて黙っていられるような性分ではなかった。

 瞳に炎を灯しながら、マデュラを強く睨みつける。

 

 

 

「……白ひげと戦争するのも面白そうだけど、どうせなら他の四皇とか海軍の奴らも巻き込みたいから。今はやめとく。その方が楽しいでしょう?」

「……そうかよ」

「おい火拳。マデュラ船長を睨みつけるとはいい度胸だな。次は貴様が相手になるか?」

「なんだとぉ……?」

 

 

 正直に言うと、あの白ひげを何の脅威とも認識していない様子のマデュラに、エースは得体の知れないモノを見ているような不気味さを覚えた。

 

 もしかしたらこいつは、この世界すらも遊びで壊すようなイカれた奴かもしれない、と。

 

 

 そして、挑発してきたガロアを睨み返すが──。

 

 

 

「──おい、ガロア」

「……!! も、申し訳ありません!!」

「ふん。そういえばさ、あいつらはなんで失踪したはずのこの国の王女を連れてるの?」

「……さあな、ルフィの仲間に聞けよ。少なくともおれは知らねえ」

 

 

 盲信するマデュラに叱られ、しょぼーんと落ち込むガロアを余所に、いきなり別の話題に飛んでいく。

 そして、「そっか」と一つ呟いたマデュラは、エースの言葉通り麦わらの一味の元へと向かっていく。

 

 

 あのマデュラがアラバスタ王国の王女の顔を知っている事を意外に思うかもしれないが、彼女は元賞金稼ぎである。故に、各国の王族ぐらいはきちんと記憶しているのだ。その割に天竜人については全く覚えていないが。

 

 どうでもいい相手や嫌いな相手に関しては極めてドライなのだ。

 

 

 

 そして、表情を強ばらせたままの麦わらの一味から無理やり話を聞き出し、クロコダイルの暗躍を知ったマデュラは──。

 

 

 

「ふーん……。クロコダイルって誰だっけ。クック先生、知ってる?」

「本当に話を聞いていたのかい? 王下七武海の一人だって言っていただろう。しかし、国の英雄と名高いあのクロコダイルが、まさか国盗りなんて事をねえ」

「しちぶかい……ああ、あの。へー、そうなんだ。どうして?」

「え? ど、どうしてって……」

 

 

 話を聞いていなかったのか、肝心のクロコダイルについてピンと来ていない様子のマデュラに、再び彼女の背もたれと化したクックが目を細めて呆れる。しかしきちんと教えてあげるあたり、さすがは先生。

 

 

 しかし、いきなり質問されたビビは、答えに詰まる。

 どうしてクロコダイルはアラバスタ王国を陥れようとしているのか……。

 

 そんな事は分からないのだ。答えようがない。

 

 

「……分からないんです。ただ、あの男はかなり昔から周到に準備していた事ぐらいしか……」

「なんで?」

「な、なんでって……?」

「なんで分からないの? クロコダイルが国盗りをするのはついででしょ? 海賊が王様になって、余は満足じゃ~で終わると思う? その先に彼の目的があって、国盗りはあくまでそのための手段でしょう」

「……それは……」

 

 

 

 思わずハッとするビビ。

 言われてみればその通りだ。

 大体、クロコダイルは巨大なカジノをも経営している事から金銭に困っているわけがなく、憎たらしい事に国民からの信頼も得ている。

 今更国王になって何がしたいのか。

 

 

 理想国家を作る、というのが彼が支配する犯罪会社バロックワークスの最終目的とされているが、ではその「理想」とは何なのか?

 

 

「…………クロコダイルの、目的……」

「なんだ、本当に知らないんだね。じゃあこっちで調べてみようかな。この国は結構広いから私も皆も伸び伸びできそうだし」

「は、はぁ……そうですか……」

 

 

 この人、大規模な反乱が起きているこの国をリゾート地か何かと勘違いしてらっしゃる?

 ビビはこんらんした。

 

 

 

 そして。

 本当に、蛇王海賊団は何処かへと去っていった。

 

 ルフィを完膚なきまでに叩きのめしたり、かと思えば目を輝かせてルンルン気分になったり。

 大海賊“蛇王龍”って、怖いところもあるけどいまいち掴みどころがない人だなぁ。

 

 

 ビビは、素直にそう思った。

 

 

 尚、数時間後に起こった大地震が、まさかその“蛇王龍”が引き起こしたものだとは思いもよらない。

 アラバスタ王国が物理的に消滅してしまわない事を祈るばかりである。

 

 

 

 山の一つや二つは普通に消えて無くなるだろうが、国そのものが無くなるよりはマシだ。

 

 




どうしよう、医者っぽいモンスターがいない……!!
だ、誰かいたっけ……?
※いたァーーー!!
 タマミツネ、船 医 決 定


妙な時間の投稿となったのは明日……というか日付が変わったので今日? 夜勤だからです。

蛇王海賊団まめちしき:
ガロアはどこかの不思議猛獣を仕留めてその骨を奪って触腕に装備しており、爆発させたり雷を生み出したり炎を操ったりできる。
要は原作のオストガロアと同じ。


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アラバスタ王国④

そろそろアラバスタ王国編を終わらせようかな。
広さがあるので一度マデュラを大暴れさせたいところですが、そうなるとアラバスタ王国が滅んでしまう……。


 

 

 秘密犯罪会社「バロックワークス」。

 アラバスタ王国の英雄にして“世界政府公認の海賊”、王下七武海の一人。

 サー・クロコダイルが密かに運営する裏組織だ。

 

 

 そんなバロックワークスのアジトは、“ギャンブルの町”レインベースでも最大級の超人気カジノ、レインディナーズの地下に存在する。

 

 そこで、現在──。

 

 

 

「……ふざけんな……!! 蛇王海賊団だと!? なんでここまで来てあの化け物軍団が新世界から来てやがるんだ!! しかも蛇王龍までだと!? まったくもってふざけてやがる!」

「踏んだり蹴ったりだけど、連絡を絶った“ビリオンズ”は最後に“龍の群れが近付いてくる”と残しているわ。十中八九蛇王海賊団に沈められたのでしょうね」

「クソが!! あの女、何考えてやがるかさっぱり読めねえ! 四皇に匹敵する大海賊サマが、今更こんな所まで来て何をしようってんだ!?」

 

 

 蛇王海賊団がこのアラバスタ王国に現れた事を知った社長、Mr.0こと、クロコダイルが荒れに荒れていた。

 Mr.3が仕留めたと報告してきた麦わらの一味に続き、またまた邪魔者が現れたのかと思えば、なんとその正体は今や世界最悪の大海賊と名高いあの蛇王龍だという。

 

 大将なんぞ知らんとばかりに天竜人を虐殺したり、海軍基地を潰して回ったり、世界政府の役人を踊り食いしたり……。

 イカれたエピソードに事欠かない蛇王龍だが、そういうイカれた奴らに目をつけられないように、偉大なる航路の前半で活動している自分には関係ないとタカをくくっていたらこのザマだ。

 

 一緒にいるパートナーのミス・オールサンデー……いや、ニコ・ロビンが妙に冷静なのも癪に障る。

 大方、万が一の時は一人だけ逃げようというのだろうが、そうはいかない。

 

 

「……それで? どうするの、ボス?」

「はー、はー……。あァ、クソッタレ……。不幸中の幸いというべきか、蛇王龍が王下七武海をぶっ倒したって話は聞いた事がねえ。実際欠員も出てねえしな。奴が何を求めてここに来たのかさえ分かれば、交渉の余地はあるはずだ」

「なるほど。そうなると、残った社員を一般人に紛れ込ませて探らせる?」

「いざとなりゃ金なんざいくらでもかけていい。とにかく、蛇王龍とだけは敵対しちゃいけねえ。アレは正真正銘のバケモノさ」

「随分と詳しいのね? 面識があるの?」

「馬鹿野郎。あっという間に四皇クラスにまで懸賞金を引き上げた怪物だぞ? 徹底的に調べあげるのが当然だろうが。それに、いつぞやの戦争で遠巻きにだが見た事もある」

「ふふ、そう」

(……ケッ。いけ好かねえ女だ)

 

 

 内心でそう吐き捨てつつ、今後の算段をつけるクロコダイル。

 年単位で周到に進めてきたアラバスタ王国乗っ取り計画だが、蛇王龍などという怪物中の怪物が現れてしまったからには、その計画をも捨てて逃げる事すら選択肢に入る。

 

 目的さえ達成できれば、蛇王龍にも対抗できるかもしれないが……。

 古代兵器などという眉唾物の存在が、そう簡単に見つかるとも思えない。目の前のニコ・ロビンも、約束を放り捨てて逃げる事を考えているはずなので当てにはならないというのも大きい。

 

 

「何にせよ、迅速に蛇王龍との交渉に入る。分かってるだろうが、てめーも道連れだ。ニコ・ロビン」

「その名は呼ばない約束では? とにかく、早急に手配するわ。私だってまだ死にたくないもの」

「ハッ、逃げようとしてるくせにほざきやがるぜ」

「あら、酷い人ね。あなたも同じでしょう?」

「……ケッ」

 

 

 蛇王龍は敵対者に一切容赦しない事でも有名である。

 その規格外の能力も相俟って、彼女と敵対して服従せずに生き残れた者は存在しないと言ってもいい。

 例外があるとすれば、かの“世界最後の日”でまともに戦わなかった海軍大将たちと、クロコダイルを含めた王下七武海の面々ぐらいだろうか。

 

 アレは酷い光景だった。

 今思い返しても、クロコダイルですら身震いしてしまう程だ。

 

 王下七武海で一人だけ不参加だった“鷹の目”さえいれば、と政府関係者は負け惜しみを言うが、果たして人間一人増えたところで何ができるのか。

 

 

 

 そんな時、クロコダイルの電伝虫に着信が。

 カジノ関係者からの連絡用として使っているものだ。

 

 

 こんな時にトラブルかよ、と溜め息を吐く。

 

 

「おれだ。どうした?」

『お、オーナー!! クロコダイルオーナー!! 大変です、あの蛇王海賊団がぞろぞろとカジノに現れて!』

「……は?」

 

 

 嘘やん。

 クロコダイルはしばし考えるのをやめた。

 まさかの展開に、地味に盗み聞きしていたロビンもびっくりである。

 

 

 何はともあれ、クロコダイルは逃げようとするロビンをがっしりと捕獲し、共にカジノへ。

 

 

 

 

 二人がそこで見たのは──。

 

 

 

「なはは。ガロア、よわいね」

「も、申し訳ございません……。情けないことに、もう手持ちの金が……」

「ちょっと総隊長。何してんの? それ、マデュラ様に献上するはずのお金よね」

「はー、使えねーなァ総隊長殿は。どれ! 俺が最速でばーっと元に戻してやらぁ!!」

「ファル君は絶対ギャンブルに向いてないんだなぁ」

「そりゃ言えてる。もう一回、もう一回だ! とか言ってどんどん負ける姿が目に浮かぶもんな」

「あの、ナナ? 俺もやりたいんだけど……」

「は? テオ、何か言った?」

「なんでもないです」

「……ふむ。このスロットというものはなかなか面白いな。どうだね、クック。君もやってみないか?」

「うーん、そうだね。やってみようかな」

 

 

 広いカジノの中を占拠し、盛大に遊んでいる蛇王海賊団の姿であった。

 何故か一般客が一人もいないが……。

 

 ああ、だから呼んだんだな、と察するクロコダイル。

 

 

「あ、クロコダイルオーナー!!」

「あー……こりゃどういう状況だ?」

「それが──」

 

 

 何でも、ドラゴンの群れがカジノの入口を破壊しながら現れたと思えばその正体は蛇王海賊団で、それを見た一般客が猛ダッシュで悲鳴と共に逃走してしまったらしい。

 このままでは商売あがったりだ、と喚きながら、何とかしてくれと頼まれるクロコダイル。

 

 

 ……無茶言うな。

 それが正直なところである。

 

 

 どうでもいいが、あの大海賊の一団を相手にしてなお、きちんとカジノが成り立っているあたり、給料を上げてやるか、と考えざるを得ない。

 まあ、逃げたらそれはそれで何をされるか分からないので無理もないのだが。

 

 

 だが、これはチャンスだ。

 うまく交渉すれば、敵対は避けられるかもしれない。

 

 意を決し、何やら青っぽい狼のような巨体を椅子にして座って楽しげにしている“蛇王龍”マデュラの元へと近付いていくクロコダイル。

 当然、ロビンは逃がさない。

 

 

 “雷狼竜”ジン、懸賞金1億3000万ベリー。

 地味にデカくて邪魔だ。

 

 

「あ、あー……すいませんがお客様……」

「あ。マデュラちゃん、それがクロコダイルだよ」

「ん?」

(この野郎、おれの顔を覚えていないだと!? しかも“それ”呼ばわり!!)

 

 

 驚愕の事実。

 微妙に離れたところで座ってスロットを楽しんでいた“大怪鳥”に教えられるまで、マデュラはクロコダイルの正体に気付いていなかったらしい。

 

 慣れない敬語を使って損した気分である。

 

 

「へー。話は、えーっと……」

「麦わらのルフィです、マデュラ船長」

「ああ、それそれ。麦わらのなんちゃらから話は聞いてるよ。なんか大掛かりな事やってるんだって?」

(何っ!? 麦わらはMr.3が仕留めたんじゃなかったのか!? あの野郎、ウソの報告をしやがったな!)

 

 

 更に驚愕の事実。

 散々邪魔をしてくれた挙句、厄介なビビ王女を連れていたという“麦わらの一味”はなんと生きているらしい。

 

 実際にはマデュラはルフィではなく、麦わらの一味から話を聞いたのだが、細かい事はどうでもいいのだ。

 ルフィが一応生きている事には変わりないし。

 

 

「……VIPルームに招待しよう。こんなところで話をするのもなんだろう?」

「ん、そうだね。じゃあ皆……誰がついてくるか、ジャンケンで決めて」

「「はっ!!」」

「絶対に負けられねえ……!!」

「マデュラ様のお供をするのはボクなんだなぁ!」

「いいから、さっさとやるわよ!!」

「そうだな、ナナ!! 今回ばかりは嫁にも負けん!」

「おー、やる気だなぁテオ。ま、俺もだけどォ!!」

「今回は若いのに譲ろうかな」

「ふむ。では私もクックに倣って見送ろうか」

(ジャンケンて。いいからはよ決めろ)

(変な海賊団ね……すごく楽しそう)

 

 

 蛇王海賊団の意味不明なノリに置いていかれるクロコダイルとロビン。

 しかし、当の本人たちは至って真剣である。

 

 

 そして──。

 

 

 

「「ジャンケン……ポン!!」」

 

 

 

 数分に及ぶ熱戦の末、一人のモンスターがマデュラのお供をする権利を勝ち取った。

 果たして、それは……。

 

 

 

 

 

「ふははは!! やったのである! ワガハイの硬い守りは誰にも突き崩せんぞ!」

「「クソァ!!!」」

「……おお、珍しいね」

「……チッ。よりによってガオレンの奴か」

「まあまあ、落ち着いてシャンロン」

「私は落ち着いている!!」

「落ち着いてないよ……」

 

 

 

 “砦蟹”ガオレン、懸賞金6億ベリー。

 

 

 昔、シャンロンと喧嘩になり、彼に頭突きをかまして昏倒させて以来犬猿の仲が続いている老人、ガオレンであった。

 

 

 

「じゃあ、行こうかクロコなんとか」

「クロコダイルだ!」

「ガオレン、行くよー」

「了解なのであるッ!!」

 

 

 

 こうして、クロコダイルはマデュラwithガオレンとの交渉のため、VIPルームと称して地下の秘密アジトへと戻っていった。

 

 最終手段として水攻めも考慮してはいるが、それをした瞬間部下たちに殺されそうなので恐らく使わないだろう。

 というか、アジトが水で埋まる前にマデュラが変身すれば普通に地上に顔を出せそうだし……。

 

 




というわけでシェンガオレン登場。
簡単に言うと、あのラオシャンロンの頭骨を背負う程の超巨大モンスター。しばらくモンハンシリーズに出ていないはずなので知らない人も多いかも?

ただし古龍でもなんでもなく、蟹。
イカだけど古龍なオストガロアとは異なり、古龍級の危険生物ではあるけど、正真正銘の甲殻種です。
足が赤くなって、とても美味しそう。


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蛇王海賊団紹介 船長&最高幹部編

蛇王海賊団の船員を紹介するだけのページです。
本編だけ読みたいって方は飛ばしてください。
中二病? 今更やろ。
本編未登場のキャラも普通に出てきます。

また、年齢は原作開始時のものになります。


〈船長〉

 

“蛇王龍”マデュラ ??歳(見た目は二十歳前後)

能力:ダラ・アマデュラ

モンハンでの初登場作品:4

古龍種

人型時の外見:どちらかというとナミに似た可愛い系の美女で、白いドレスをよく着ている。

また、銀色に輝く髪は腰の辺りまで伸びている。

背はワンピース世界にしては珍しい程に低い。

懸賞金:32億5000万ベリー

 

 本作の主人公。

 気付いた時には千剣山の頂きで横になっていた。

 それ以前の記憶が無いため両親を知らないが、実は両親はマデュラ自身が食い殺している。本編で触れる予定は(たぶん)無いのでここで明かしておく。

 

 能力であるダラ・アマデュラは、モンスターハンター4でラスボスとして初登場し、その規格外の巨体で多くのハンターを驚かせた。

 そのサイズは、公式で全長44039.7cm。

 専用フィールド、千剣山のどこを見ても体が見える程に巨大。

 なんと亜種が存在するが、設定上は原種と同一個体らしい。つまり……?

 加えて、モンスターハンターワールドにて登場した、とあるフィールドに存在する古代ダラ・アマデュラの死骸は、現代のダラちゃんよりも遥かに巨大、らしい。

 

 巨体を活かした圧倒的規模の攻撃だけでなく、宇宙に存在する謎の隕石(凶星と呼ばれる)をも自在に操り、フィールドに絶え間なく降らせてくる。

 もちろん極悪威力のブレスも撃てる。

 

 尚、設定上は動くだけで天変地異が発生するようだ。

 

 

 

〈副船長兼最高幹部“四龍王”筆頭〉

 

“熾凍龍”フィロア 46歳

能力:ディスフィロア

モンハンでの初登場作品:フロンティア

古龍種

人型時の外見:白と赤が混ざった面白い色の髪を首の辺りまで伸ばした巨体の男性。

顔立ちそのものは割とカタクリ似。

懸賞金:12億ベリー

 

 本編未登場。アラバスタ編終わったら出ます。

 マデュラが勧誘に最も苦労した男にして、マデュラが最も信頼する親友。その戦闘能力は極めて高く、マデュラにダメージを与えた数少ない存在。

 人が一切近寄れない氷と炎の島(当たり前だがパンクハザードではない)にポツンと孤独に住んでいた。

 能力を初めて使った日に故郷を滅ぼしてしまった過去があり、住んでいた島がその跡地。

 

 能力であるディスフィロアは、実装当時「真のG級最強」というキャッチコピーが使われていた程の極悪モンスター。エフェクト派手すぎて画面見えねえ。

 火属性と氷属性を同時に操るが、どちらかというと氷属性の方が印象としては強いか。

 ワンピース的に言うと赤犬と青キジの能力を同時に使える、ような感じ。エースと青キジの方が近い?

 

 

 

〈最高幹部“四龍王”〉

 

“熔山龍”ゾラ 53歳

能力:ゾラ・マグダラオス

モンハンでの初登場作品:ワールド

古龍種

人型時の外見:赤黒い髪を短く切った巨体の男性。右目付近に酷い傷の跡があり、左目しか見えていない。

懸賞金:8億ベリー

 

 本編未登場。マダオ。アラバスタ(ry

 とてものんびりとした性格で、大抵船の上で寝ているため蛇王海賊団本船の護衛を任されている。ゾロか。

 変身してとある島を横断中、目を輝かせたマデュラ(ダラ・アマデュラ状態)にタックルされ、紆余曲折を経てなんか仲間にされた。怪獣大戦争すぎて人々は震えた。

 

 能力であるゾラ・マグダラオスは、モンスターハンターワールドにて非常に重要な位置にあり、いわば物語の始まりのきっかけとなった存在。

 なんといってもその巨大さが特徴で、公式サイズで全長25764.59cmもある。おまけに、ダラ・アマデュラが可愛く見えるレベルで縦にも横にもデカく、体積ならば間違いなくモンハン史上最大。

 

 

〈最高幹部“四龍王”〉

 

“大巌竜”ラヴィ 18歳

能力:ラヴィエンテ

モンハンでの初登場作品:フロンティア

分類不明

人型時の外見:赤い髪を腰の辺りまで伸ばした美少女。顔はつり目がちなお嬢様系。はいはいツンデレツンデレ。背はナミと同じぐらい。その胸には夢が詰まっている。

懸賞金:11億ベリー

 

 本編未登場。ア(ry

 自身と似た形態に変身するマデュラに対抗心を燃やし、ことある事に突っかかっていた元天竜人のお嬢様。クズ揃いな家族を殺したいほど嫌っていたが、マデュラによる聖地襲撃事件で本当に家族が全滅。

 しかし、ラヴィ本人は悲しむどころかむしろ喜び、マデュラと仲良くなって仲間に加わった。

 尚、女性天竜人特有の「~アマス」という言葉遣いではない。「~だえ」でもない。

 

 能力であるラヴィエンテは、凄まじい程の巨体が特徴的で、尚且つオンラインゲームであるフロンティアという事で、最大32人ものハンターが協力して討伐にあたる、という類を見ない規模のクエストにて出現する。

 その全長はダラ・アマデュラをも超えるとされ、モンスターではなくフィールドと見紛う程。

 

 

〈最高幹部“四龍王”兼精鋭部隊“モンスターズ”総隊長〉

 

“骸龍”ガロア 32歳

能力:オストガロア

モンハンでの初登場作品:クロス

古龍種

人型時の外見:スキンヘッドの巨体が特徴的な男性。両目をライダーゴーグルで覆っている。自身の変身時から得た素材を元にして作られたホネホネした鎧を着用。

懸賞金:7億ベリー

 

 本編登場済み。しかし、彼でも蛇王海賊団の最高幹部、“四龍王”の中では末席。というか他のメンツが怪物すぎて無理。その分他の四龍王よりも親しみやすいとして船員には人気らしい。

 ただ、めちゃくちゃ強面なので子供には泣いて逃げられるのが悩み。海賊やってる時点で今更である。

 

 能力であるオストガロアは、モンスターハンタークロス(X)にてラスボスとして登場するものの、下位と上位の二回戦う事となる上、真の姿を見せるのは上位のみ。

 なんとも珍しい双頭の龍かと思いきや、その正体はまさかの イ カ であった。龍じゃねえじゃん!

 なかなかイロモノっぽい彼だが、そのブレスの威力はさすがラスボスと言わざるを得ない程に高く、派手。




 すごい長さになりそうなので分けます。
 小分けにして少しずつ投下していこうかな?


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アラバスタ王国⑤

お待たせしました。
アイスボーンを昨日クリアしたので更新です。

今回は麦わらサイドを書いてみようかと思います。

あ。そういえば私はアニメや映画はほとんど見てないので、そちらのオリジナルキャラはたぶん出ません。

ただ、シキの映画は見たし、原作世界にも名前が出ているので、登場するかも。


 

 

 世界的な大海賊、蛇王海賊団にまさかの遭遇を果たし、最高幹部の一人である“モンスターズ総隊長”ガロアに対して喧嘩を売ってしまった麦わらのルフィ。

 

 その結果、手も足も出ずに敗北した彼は瀕死の重傷を負い、船医であるチョッパーが必死の治療を続け、なんとか会話ぐらいはできるまでに回復。

 ルフィは自らのやらかしで大幅に時間をロスしてしまった事をビビに詫び、遅れを取り戻そうと歩こうとした。

 

 しかし、未だダメージが残る身体では満足に歩く事すらままならず、すぐに倒れてドクターストップを食らってしまう。

 それでも尚、這ってでも進もうとするルフィを見かねてか、ゾロが彼を背負って歩く事を提案。船員たちやビビもそれを承諾し、現在砂漠を進んでいる。

 

 裏切り者の“黒ひげ”を追うエースもまた、そんな弟を放って行く事などできず、ルフィが回復するまでは旅に同行する事となり、共に砂漠を歩いている最中である。

 

 

「なぁ、ルフィの兄貴」

「どうしたコックさん? あと、おれの事はエースでいい。いつまでもそれだと呼びづらいだろ?」

「ん、そうか。それもそうだな。じゃあ、エース。あいつらはいったいなんだったんだ?」

「……蛇王海賊団の事か」

「ああ」

 

 

 律儀に“ルフィの兄”呼びを続けている麦わらの一味に軽く笑みを零しつつ、呼び捨てで構わないと親しげにお願いするエース。

 そんな彼に質問を投げかけたのは、麦わらの一味が誇る“海のコック”、サンジであった。

 

 他の船員たちやビビも気になるのか、エースの事をちらりと眺めている。

 

 ちょうどいい機会なので、説明する事にした。

 

「あいつら……蛇王海賊団は、一年前に船長の“蛇王龍”が突然旗揚げし、当時この偉大なる航路を大きく騒がせた」

「たしか、あの銀髪の美女が“蛇王龍”って奴なんだよな? 見た目は弱そうだが、威圧感が半端じゃなかった。あいつは何者なんだ」

「元々あの女は賞金稼ぎをやっててな。稼いだ額が尋常じゃなくて、“世界最強の賞金稼ぎ”なんて呼ばれてたほどだ。そんなのが海賊になったっつー大ニュースが飛び込んできたら、大騒ぎになるのも無理はねえ」

「賞金稼ぎ……!? それがなんで海賊なんかになったのよ?」

「さあ。そこまでは知らねえよ。おれも直接会うのは初めてだったしな」

 

 

 自身も海賊なのに、心底わからない、といった顔をするナミ。まあ、金が絡まなければ常識人である彼女らしい反応ではある。

 

 

「じゃ、じゃあよ。つまりあの女はたった一年であんなドラゴン軍団を作り上げたって事か!?」

「まぁ、そうなるんじゃないか? 懸賞金が馬鹿みたいに高ェのは、“天竜人”っていう世界最高峰の権力者たちを虐殺したからだが、蛇王龍の実力は本物だ。海軍大将すらも恐れないあの女は、“世界最悪の海賊”として有名でな。正直、あいつの部下と敵対してよく生き残れたと思うぞ、ルフィ」

「ヒェッ……ぎゃ、虐殺なんてしたのかァ!? やっぱりコエー!!」

「……うん」

 

 

 麦わら海賊団の狙撃手、ウソップからの問いに答え、自分がどれだけ凄まじい相手に喧嘩を売ったのかをルフィに言い聞かせるエース。

 しかし、当のルフィ本人はどこか元気がない。

 ダメージが残っている事を差し引いても、戦いが終わって起きればすぐ騒ぐ彼らしくもない姿に、エースやビビを含めた全員が不思議なものを見る目になった。

 

 

「どうしたルフィ。お前らしくもねェ」

「……ゾロ。お前も、“鷹の目”に負けた後はこんな気持ちだったのか?」

「……ああ、そういうことか」

「? どういう事だ」

 

 

 そんな視線を受けるルフィは、しかしそれらを意に介さず自分を背負って歩くゾロに問いかける。

 東の海に居た頃、サンジを仲間にした“海上レストラン”バラティエにて、ドン・クリークという海賊を追って現れた“世界最強の剣士”鷹の目のミホークと戦い、手も足も出ずに敗北したゾロ。

 

 つまり、彼は今回のルフィに先んじて、世界の広さというものを思い知らされているのだ。

 それを知らないエースはチンプンカンプンだが、まあ何かあったんだろうなと勝手に納得した。

 

 

「世界は広い。そんなモン分かりきっていた事だ。が、まあ直接思い知らされりゃ、これほど屈辱的な事はねえ。だが、お前は船長だろ。きちんと前を向け」

「…………ああ、そうだな。おれは、負けねえ。誰にも負けねえぐらい強くなって、そしてあのガロアって奴もぶっ飛ばしてやる!」

 

「……いいコンビだ。あいつ、いい仲間と会えたんだな。これで安心したよ」

「へへ、そうかい」

 

 

 同じ痛みを知るゾロに諭され、決意を新たにするルフィ。

 そんな弟を見て微笑むエース。

 いい仲間と評されて気を良くするサンジ。

 

 

 しかし、ガロアはルフィとの戦いで能力をほとんど使ってはいない。

 素の身体能力のみであしらい、いつまで経っても倒れないルフィに業を煮やして最後の一発だけ使ったぐらいなのである。

 

 

 が。

 

 

「な、なぁ。蛇王海賊団……だっけ? あいつら、やっぱり普段は偉大なる航路の後半に居るんだろ?」

「ああ、そうだな。奴らの拠点は当然ここから遠く離れた先にある。それがどうした、狙撃手さん?」

「……どうやって赤い土の大陸を超えてきたんだ? あのでっかいタコみたいな奴で船ごと飛んでか?」

「あー……。あいつらな、噂だと凪の帯を横断して移動してるんだと。だから、偉大なる航路の前半だろうが後半だろうが、外だろうが中だろうが、どこにでも現れるぞ。蛇王龍が面白半分で北の海や他の海に現れて、ルーキー海賊団や海軍支部を潰して帰って行った、なんて話もよく聞く」

「「エェェエェ~~ッ!?」」

 

 

 蛇王海賊団のとんでもない厄介さを聞き、全員が目を剥く。

 特に、偉大なる航路に入る以前、うっかり凪の帯に侵入してしまいえらい目にあったメンバーの驚きは尋常ではない。

 

 

「う、嘘でしょう!? どうやって海王類の群れから逃れて横断を!?」

「それがな。どうも蛇王龍は海王類にさえも本能レベルで恐れられているのか、襲われないらしい。さすがに小舟に乗っていたら襲われた、なんて話をとある伝手から聞いた事もあるが、それも本当なのか怪しいもんだ」

「……ルフィ、諦めた方がいいんじゃねえかな。相手が悪すぎて勝つとか無理だぞ人間には」

「う、うるせえ! おれは勝つぞバカヤローお前!」

 

 

 話を聞けば聞くほど、同じ人間なのか疑わしくなってくる。

 蛇王龍のあまりの理不尽さに、ウソップは早々に白旗を上げ、腕を磨いてリベンジしたいらしいルフィを必死に説得する。

 

 さすがのルフィも相手のでたらめ具合にビビっているが、完全に眼中に無し、といった感じだった蛇王龍の視線を思い出し、ムカーっと闘志を燃やしていく。

 

 ただ、できれば再会するのはしばらく先でお願いしたい、とは思っているが。

 

 

 まあそんなこんなで。

 

 

「い、今はとにかくクロコダイルよ!」

「そ、そうだな! この国の反乱を止めて、そしてクロコダイルもどうにかする! だろ、ビビ!」

「……ええ、そうね。どうにかして蛇王海賊団の力も借りられたらいいのだけど……」

「何言ってんだお前!?」

「だって、あれだけ凄まじい海賊団が味方になってくれたら、クロコダイルだって裸足で逃げ出すと思わない? そうしたらこの国は平和になるわ」

「無理無理無理、無理だ無理!! アレは触れちゃいけないヤツだって! ほら見ろ、おれの“なにかがヤベーセンサー”がバシバシ反応してやがる!」

 

 

 とりあえず蛇王海賊団の話題から逸らそうとするナミとウソップだが、この国の王女であるビビがよりにもよって話を戻してしまった。

 たしかに仰る通りだとは思うが、相手が悪すぎる。ウソップは必死にビビを説得する。

 

 

「クロコダイル……王下七武海の一人だったか。たしかに逃げ出すかもしれねえが、蛇王海賊団の危険性を舐めてるぞ、あんた。国ごと潰すぐらい平気でやらかすからな、あの女。それがカンタンにできる力もある」

「そう、でしょうか。エースさん」

「ああ。しかも今回は最高幹部がガロア一人しか来ていないみたいだったからな。蛇王龍のストッパーが不在となると、暴走して何をやらかすか分かったもんじゃねえ。飽きて国を出ていく事を祈った方がいい」

「なるほど……」

 

 

 人を人とも思っていなそうなのが蛇王龍という海賊だ。

 反乱が起きている真っ最中のこの国だろうが、万が一彼女の機嫌を損ねるような事があれば間違いなく国ごと消滅する。

 盲信者の群れであるモンスターズばかりがついてきていた様子の今回ならば尚更である。

 

 

 そう考えると、むしろ天竜人よりもタチが悪いかもしれない。

 まあ、実際は意外と蛇王龍ことマデュラは温厚なので、天竜人のようにポンポン悪行を重ねたりはしないのだが。

 

 カジノの入口を破壊した? あの程度ならば挨拶のようなものなのでノーカンである。

 

 




マデュラに対するエースの印象:
いつ爆発するか分からない危なすぎる爆弾な上、一度爆発してしまうと国の一つや二つは軽く消える危険人物

わりとだいたいあってる。


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アラバスタ王国⑥ 完

いつまでもアラバスタ王国でグダるのもアレなので巻いていきます。


 レインベースと首都アルバーナを結ぶ位置の上空。

 そこに、蛇王海賊団のガレオン船がふわふわと浮いていた。

 無論、「大きいタコ」こと“浮岳龍”ヤマツに掴まれて飛んでいるのである。

 

 

 バロックワークスのアジトであるレインディナーズの地下で、クロコダイルから彼の目的を聞かされたマデュラは、この国に眠っているという“古代兵器”について考えていた。

 

 

「一発撃てば島一つ消し飛ぶ、か。そんなものが本当にあるなら、いくら私たちでもそう楽観視もしていられないかも」

「ご命令とあらば即座に国中を探して参りますが」

「んー。でもなー、ニコ・ロビンだっけ? あの人、素直にクロコダイルに情報を渡すような人間には見えなかったよ。彼女の目的を果たしたらケロッとした顔でそのままどっかに消えそう」

「ニコ・ロビンと言えば……オハラの悪魔。その生き残り、ですね。たしか、世界政府から二十年も逃げ続けているのだとか」

「オハラのあくま?」

「ええ」

 

 

 聞きなれない言葉に首を傾げるマデュラ。

 その愛らしさに思わずほっこりするガロアだが、即座に気を取り直し、「オハラの悪魔」について説明していく。

 

「遠い昔の事を記しているという“歴史の本文”。世界政府は古代兵器復活の可能性を理由にコレの探索、および解読を固く禁じていますが、今は亡きオハラの学者たちはこれを破り、歴史の本文を研究していたとか。そのため、バスターコールで全て焼き払われたのです。しかし、ただ一人生き残りがいた。それがニコ・ロビンというわけですね」

 

 妙に詳しい様子のガロアに内心首を傾げつつ、真面目に話を聞くマデュラ。

 自分から聞いておいてスルーするほど、マデュラは外道ではないのだ。

 

 

「ふーん。世界政府が考えそうな事だね。そういえば、レイリーがラフテルに行くには“ロードポーネグリフ”とやらが必要だって言ってたっけ」

「集めますか?」

「んー……どうしようかなあ。ラフテルがただの島なら、飛んで適当に探してるだけで見つかりそうだけどね。やっぱりただの島じゃあないのかな」

「それは、海賊王の元船員のみが知る事でしょうね。あるいは、五老星あたりも知っているかもしれませんが」

「ありそう。そっかー、もしかしたらラフテルに辿り着く事が世界政府への嫌がらせになるかもしれないね。面白そう。集めよっか」

「了解しました。すぐに各員へ伝えます」

 

 

 五老星が聞けば「おいバカやめろ」と言いそうな事を軽いノリで決めてしまうマデュラ。

 そして、この瞬間蛇王海賊団が本格的に四皇へ挑む事が確定した。

 何故なら、マデュラが求める事にした“ロードポーネグリフ”は、一つが四皇のビッグ・マムが。もう一つは同じく四皇のカイドウが所有しているからである。

 

「ラフテルに辿り着くために必要って事は、四皇も欲しがってるのかな?」

「有り得ますね。赤髪ならば知っているのでは?」

「んーん。欲しがってそうって事が分かればいいや。ちょうどいいし、四皇に喧嘩売りに行こうかなあ」

「それならば、巨大な船が必要になります。いくら我々とて、海に落とされてしまえばそれで終わりですから」

「たしかに。候補は?」

「そうですね……ウォーターセブンに拠点を構える造船会社、ガレーラカンパニーのアイスバーグ社長に依頼するのが一番良いのではないでしょうか」

「ふむ。じゃあそこ行こう。どうせだから皆も集めようか。来れるかなぁ?」

「副船長たちがいれば海王類も手を出しては来ないかと」

「それもそうだね。じゃ、連絡よろしく」

「畏まりました。この国はどうします?」

「んー」

 

 

 もしもこのやり取りをアイスバーグが聞けば、軽く絶望しそうである。

 マデュラだけでも島消滅の危機だというのに、揃いも揃って化け物ばかりである蛇王海賊団の総員がウォーターセブンに集結する事となってしまったのだから。

 

 それはさておき、現在いるアラバスタ王国の今後について話を戻すガロア。

 地味に、この後マデュラが何を言うかでこの国の命運が決まる。

 

 よっし、古代兵器って奴が面倒だし消しちゃおうか、とか言われたらアウトである。

 

 

「放っておいていいんじゃない? やっぱりニコ・ロビンがクロコダイルの言う事を最後まで聞き続けるとは思えないし。仮に国の乗っ取りが上手くいっても、絶対途中でどっか行くよ。そういう目をしてた」

「なるほど。では、火拳は?」

「今回はパスかな。弟くんとの心温まる団欒を邪魔しちゃ悪い」

「承知しました」

 

 

 エース、セーフ。

 いや、エース的にはルフィが既にボコボコにされてる時点でアウトなのかもしれないが……。

 

 

 こうして、自由気ままに暴れ回った蛇王海賊団は、最後まで自分勝手なままアラバスタ王国を去っていった。

 それを確認したクロコダイルはさぞかしホッとした事だろう。

 

 

 しかし結局、バロックワークスは麦わらの一味にまさかの敗北を喫し、クロコダイルの野望は潰えた。

 仲間たちと合流するため、のんびりと海を船で進んでいた道中にニュース・クーでそれを知ったマデュラは、まさかの王下七武海陥落という結末に腹を抱えて笑ったという。

 

 

 そして──。

 

 

 プルルル、と電伝虫が鳴る。

 

「ガチャ」

「はい、マデュラだけど」

『おいマデュラ! お前たしか、アラバスタ王国に行くって言ってたよな!? 麦わら帽子を被ったルフィっていう海賊に会わなかったか?』

「会ったよ? ボコボコにしたけど。ガロアが」

『遅かったか……! 殺してないだろうな。あいつ、おれの友達なんだよ』

「言うのが遅いよ。まあ、懸賞金が1億に上がってるって事はクロコダイルに勝ったんでしょう? だったら生きてるよ」

『そうか……』

 

 

 電話の主は、マデュラの数少ない友人である大海賊、赤髪のシャンクスであった。

 どうやら、彼は麦わらのルフィとも友人であるらしく、歩く大災厄であるマデュラとばったり出会してやしないかと心配していたらしい。普通に手遅れである。

 

 

「随分麦わらに入れ込んでるんだね」

『馬鹿言え。いつくたばるかも分からない海賊って言っても、お前みたいな歩く理不尽と出会して冒険が終わる、なんてのは哀れすぎるだろう』

「その時はまあ運がなかったとしか」

『ノリが軽い!! まあ、無事ならいいや。ところでお前、今どこにいるんだ? 新世界に帰ってくるのか?』

「いや。四皇に喧嘩を売るための準備をしにウォーターセブンへ向かってる」

『おれも四皇なんですけど!?』

「あ。そういえば」

『忘れてたなお前!?』

 

 

 気を取り直して世間話をするシャンクスだが、マデュラの口から平然と飛び出した死刑宣告に飛び上がる。

 電伝虫が飛び上がったので間違いない。

 

 まあ、どうあがいても世紀末な大戦争になる事が分かりきっている喧嘩を売られると知って、「面白い」と笑っていられるのは頭のネジが飛んだ大物か、マデュラの恐怖を知らない羨ましい奴ぐらいであろう。

 

 

「シャンクスは友達だから狙わないよ。ビッグ・マムとカイドウ、どっちが面白いと思う?」

『究極の二択すぎないかそれ。どっちでも世界が大混乱に陥る事間違いなしだぞ』

「そう?」

『そうだよ。というか何で急にそんな話になったんだ』

「ロードポーネグリフだっけ。アレを持ってそうなのって言えばやっぱり四皇かなって」

『そりゃたしかにあの二人は持ってるが……だからと言ってそんな気軽に喧嘩を売ろうとするのはお前ぐらいだよ。ただ、そうなるとしばらくウォーターセブンに滞在するのか?』

「そこは追い追いかな。でも、幹部も含めた全員でお邪魔する予定だから、しばらく新世界には帰らないかも」

『頼むから島を沈めたりはするなよ? ガレーラカンパニーほどの造船会社が無くなるとおれも困る』

「はーい。じゃあまたね」

『本当に分かってるんだろうな……? ああ、またな』

 

 

 平和的に電伝虫を切った向こう側、シャンクスは頭を抱えた。

 ビッグ・マムにしろカイドウにしろ、マデュラに対抗しうる数少ない存在であり、そんなのと蛇王海賊団が激突すれば、下手をすれば世界中を巻き込んだ大戦争に発展しかねない。

 

 そうなれば悠々と世界中を航海している赤髪海賊団にも当然多大な影響が出る。

 万が一白ひげまで参戦するような事態になれば、間違いなく海軍本部や世界政府も、海の平和を守るために動き出すだろう。

 

 

 時代が大きく動く。

 その事をヒシヒシと感じ、自分たちの今後について真面目に考えるシャンクス。

 

 

 友人がそんな風に悩んでいる事など露知らず、大混乱を巻き起こす主犯となるだろうマデュラは、のんきに船の上でスヤスヤと昼寝を始めていた。

 

 ガロアは既に新世界にいる蛇王海賊団の最高幹部たちと連絡を取った後であり、話を聞いた副船長のフィロアは蛇王海賊団の本船を含む全ての船を動かし、船長と合流するべく凪の帯に突入。

 

 四皇には及ばないものの、かなりの規模を誇る蛇王海賊団の大艦隊が、偉大なる航路の前半に存在する“水の都”ウォーターセブンにやがて集結する──。

 

 

 とんでもない混乱に陥る事が確定したウォーターセブンの人々には、強く生きて欲しい。

 

 




というわけで次は飛んでウォーターセブンです。
マデュラはウォーターセブンを含む様々な島の永久指針を所有している(当然のように略奪品)ので、副船長のフィロアたちは彼女のビブルカードに向かって進む事で結果的にウォーターセブンで合流する流れとなります。


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幕間 元帥さんと七武海

要望が割と多かった事と、ワンピースの原作で一つの章が終わるごとに世界情勢の話みたいなのが挟まるのが好きなので、書いてみました。
原作で言うとくまとドフラミンゴが初登場する話です。
センゴクさんもだっけ?


 

 世界で最も尊い場所、聖地マリージョア(修復中)。

 一年前に起きた“蛇王龍”による襲撃事件の傷痕が未だ深く残るこの地にて、海軍のトップであるセンゴク元帥をはじめとする数多の“正義の勢力”が集結し、世界政府に認められた海賊である“王下七武海”の面々までが集まっていた──。

 

 

「フッフッフ……! おーおー、あの“聖地”がこうも無残に破壊されたまんまとはなァ。“正義”が聞いて泣くぞ、センゴク元帥!」

「黙れドフラミンゴ。これでもかなりマシになった方だ。一年前は本当に何もかも無くなっていたからな」

「……だが、的を射ている。蛇王龍、か。今回も彼女に関連する議題だと聞いたが」

「おれは蛇王龍よりもこの麦わらという海賊に興味があって来たんだ。さっさと本題に入らんのなら帰って寝るぞ」

「待てぃ鷹の目。一度来たからには最後まで居るのがスジっちゅうもんじゃ」

「……蛇王龍……か。わらわも今回ばかりは最後まで居てやろうと思うておる。ありがたく思え」

 

 

 ドンキホーテ・ドフラミンゴ。

 バーソロミュー・くま。

 ジュラキュール・ミホーク。

 ジンベエ。

 ボア・ハンコック。

 

 アラバスタ王国での一件により地位を剥奪されたクロコダイルと、ウォーターセブンにほど近いとある海域にこもっているゲッコー・モリアを除き、自分勝手な連中ばかりで召集になどほとんど応じない王下七武海が、まさかのほぼ全員揃っているというこの状況。

 

 明日は槍でも降るのか、と思うかもしれないが、これは今回の議題が蛇王海賊団に関するものだからである。

 ミホークだけはおまけとして触れられる“麦わらの一味”に興味があるから来たのだが、まあ置いておこう。

 

 

 個性派揃いの王下七武海をまとめて相手にする事になったセンゴク元帥には、強く生きて欲しい。

 

 

「では、貴様らが勝手に消え失せないうちに始めよう。まず、アラバスタでの一件で王下七武海の地位を剥奪されたクロコダイルの後任についてだが──」

 

 

 

 と、ここでエースが追っている“黒ひげ海賊団”の一員であるラフィットという男が侵入し、自身の船長を王下七武海の後任として推す、という事があったのだがとりあえず省略させて頂く。

 

 尚、ラフィットは言いたい事だけを言い切るとすぐに消え失せた。

 王下七武海がほぼ揃っているという予想外の状況に少しビビったのかもしれない。

 

 

 

「……なんじゃったんじゃ、あやつは」

「ふふ、麦わらの一味か……」

「待て鷹の目。勝手に帰ろうとするな。ここからが本題なのだから」

「ちっ」

 

 

 急に現れてさっさと消えていったラフィットをジンベエが訝しむ一方で、用は済んだとばかりに退散しようとするミホーク。

 しかし、センゴクが素早く彼の肩をがっしりと掴んだ事によりこの場に留まる事となった。

 無論、振りほどいて帰る事もできたのだが、そうなると本気のセンゴク元帥と一戦交える事になりかねない。その方が面倒だ、とミホークなりに判断したのだろう。

 

 

 ──そして。

 センゴク元帥の言う通り、ここからが本題であり、大半の七武海がわざわざ聖地に足を運んだ理由でもある。

 

 

 

「次は蛇王海賊団について、だ」

「フッフッフ!! 待ちかねたぞ! さあ、今回は何をやらかしてくれたんだ?」

「随分と楽しそうじゃな、ドフラミンゴ。わらわの記憶では一時期は蛇王海賊団に大事な取引先を潰されて荒れていたと思うたが?」

「うるせえぞ、“女帝”。そんな昔の事はもう忘れたのさ」

「センゴク元帥。さっさと話を進めろ。おれは蛇王龍の話など聞き飽きているのでな」

「また国の一つや二つでも消えたか? この聖地といい、あやつはやりすぎおる」

「……だが、極力民間人には危害を加えないように配慮しているようには見える。恐らくな」

 

 

 それまで退屈そうに話を聞いていた王下七武海の面々が、わっと賑やかになった。

 ミホークだけは別だが、彼は親交があるシャンクスから飽きるほど話を聞かされているので無理もない。

 

 さて、そんな海賊たちを前に、センゴク元帥が返した言葉は……。

 

 

「蛇王龍がアラバスタ王国に出現した事は貴様らも既に承知だろうと思うが、今度は“水の都”ウォーターセブンの近海に向けて新世界から蛇王海賊団の艦隊が集結しつつある、という報せを受けた。あそこは海軍本部に近い……。考えたくはないが、今度は海軍に戦争を仕掛けてくる可能性がある」

「「!!」」

 

 

 実質的に四皇と同格か、あるいはそれ以上の戦力を誇るとされる蛇王海賊団の艦隊が、海軍本部の近くに集まってきている。

 なるほど、とんでもない大ニュースである。

 

 

「おいおいおい、センゴク元帥。まさかおれたちを蛇王海賊団とぶつけようってんじゃないだろうな。フッフッフ……!」

「ふん。貴様らにも協力はしてもらうが、主戦力はもちろん我々海軍だ。既に、全世界の精鋭海兵を招集するよう命令もしてある」

「なるほどのう。つまり、海軍とわしらを合わせた総力で蛇王海賊団に対抗しようという事か」

「ああ、その通りだジンベエ。ハンコック、鷹の目。当然貴様らもだぞ」

「ふん、わらわは却下じゃ。マデュラには多大な恩がある。何なら七武海を脱退してもかまわぬぞ」

「……ちぃ」

「あいつにおれの剣が通じるか試すのは面白そうだが、はっきり言って勝ち目が無い戦いに参加するほど暇ではないな。四皇とも手を結ばない限り蛇王海賊団は止められんぞ」

「鷹の目、貴様まで……!!」

 

 

 

 ミホークが弱気な事を意外に思うかもしれないが、彼はシャンクスのライバル兼友人であり、その伝手でマデュラとも実は親交がある。

 それをさておいても、蛇王海賊団はこと戦闘力だけを見るならば世界最強とも言われており、「海軍本部、王下七武海、四皇からなる“三大勢力”」という均衡に単独で加わるほどにデタラメな強さを誇る。

 

 つまり、今は“三大勢力”ではなく「海軍本部、王下七武海、四皇、蛇王海賊団からなる四大勢力」なのである。

 特に、蛇王海賊団の船長であるマデュラは一度本気で暴れ出すと止められる者はこの世に存在しないとまで噂される程の強さなのだ。

 

 

 そして、“海賊女帝”ボア・ハンコック。

 王下七武海にまで成り上がった彼女は、その実、天竜人の奴隷だったという過去を持っている。

 

 ここで、一年前にマデュラが起こした事件を思い出して欲しい。

 

 

 そう。

 この聖地マリージョアが未だに修復中である原因、マデュラによる天竜人大虐殺事件だ。

 

 かつてのハンコックを奴隷としていた天竜人を磔にして殺していったマデュラは、ハンコックにとっての英雄であり、友人であり、憧れなのである。

 

 そんな存在と戦えるわけがない。

 というかそもそも戦いになんかなったら確実に死ぬ。

 

 蛇王龍は敵対者に容赦しない。

 子供でも知っているこの世の真理である。

 

 

 

 まあそんな感じで、海軍大将に次ぐ重要な戦力である王下七武海の二人……特に世界最強の剣士でもあるミホークの協力を得られないというのはセンゴク元帥にとって大いなる誤算であった。

 

 

「フフ……フッフッフ!! さあどうするセンゴク元帥!! 頼みの“鷹の目”がまさかの離脱ときたぞ!」

「ええい、黙れドフラミンゴ!! 鷹の目、ハンコック!! どうしても参加しないつもりか!?」

「くどい。おれは自殺しにいく趣味など無い」

「わらわもじゃ。マデュラは敵対者に一切の容赦をしない。そんなもの常識であろう? それに、政府の庇護なんぞ無くなったところでそれこそマデュラに“アマゾン・リリー”を縄張りにしてもらえばよいだけの話。もはやわらわに王下七武海の地位は必要ない」

「ちい、貴様ら……!!」

 

 

 

 センゴク元帥の胃が、限界を迎えそうである。

 三大将を全員集め、英雄ガープやセンゴク元帥自身も戦闘に参加したとしても、恐らく蛇王海賊団には敵わないだろう。

 というか戦闘が始まった瞬間、蛇王海賊団の総攻撃……あるいは蛇王龍の一撃で海軍本部が潰される可能性が非常に高い。

 

 そう考えると、戦場を本部から離れたところにする必要があるのだが、それはそれで四皇に狙われると対応できなくなってしまう。

 

 

「ああ、胃が痛い……」

「フフ、フッフッフ!! わかるぞセンゴク元帥! おれも取引先を根こそぎ潰された時は今のあんたのようになった!」

「う、うるさい!! 貴様なんぞに共感されたくはないわ!!」

 

 

 センゴク元帥、ドフラミンゴとまさかの共鳴。

 それを見て、くまが一言。

 

 

「……混沌としている」

「……うむ。さて、わしはどうしたものか。勝ち目がないというのは同意せざるを得んが」

 

 こっくりと静かに頷くジンベエ。

 尚、何も蛇王海賊団が海軍本部に襲来すると確定したわけではない。無いのだが、確かに可能性は高い。ものすごく高い。

 理由? そこに海軍がいるから、で充分である。マデュラはちょろちょろと鬱陶しく自身を追ってくる海軍や世界政府の事が大嫌いなので。 

 

「では、おれは帰って寝る。後はそちらでどうにかしろ。蛇王海賊団とは戦うつもりはない」

「わらわも帰るとしよう。いや、せっかくだしマデュラに会いに行こうか? うむ、それがいいな!」

 

 

 

 胃を抑えて呻くセンゴク元帥と、それを面白がるドフラミンゴ。更にそれを見守るくまとジンベエを放置し、ミホークとハンコックはマジで帰っていった。

 

 




おかしい。
いつの間にかドフラミンゴがギャグキャラに……!
……あれ、元からか?


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ウォーターセブン①

タグをすこし増やしました。
キャラ崩壊注意 と 原作キャラ死亡 です。

スパンダ……。


 

 世界政府御用達の造船会社、ガレーラカンパニー。

 その社長にして、“水の都”ウォーターセブンの市長でもある英雄アイスバーグ。

 

 彼の部屋に、かつてないほど切羽詰まった表情の「大工職職長」、カクが訪れた。

 彼曰く……。

 

 

「アイスバーグさん、大変じゃ!! あの“蛇王海賊団”の艦隊がこのウォーターセブンに突っ込んで来おった!!」

「……はい?」

 

 

 朝っぱらから意味不明すぎる言葉をもらい、思わずアホのように聞き返すアイスバーグ。

 蛇王海賊団と言えば一年前、当時“世界最強の賞金稼ぎ”と謳われた女性、マデュラが突然結成した問題児軍団であり、その戦力はこの世界に存在する全ての勢力を上回るとすら噂されている程だ。

 実際のところは分からないが、とにかく間違ってもこんな所に現れるべき海賊団ではない。

 

 しかもカクの言葉が正しければ“突っ込んで”来たというではないか。

 そんな事になれば当然……。

 

「あのアホゥどもめ、二十隻ほどの艦隊で揃って街の入口に押し寄せてきおって……おかげで大変な有様じゃ! アイスバーグさん!!」

「ンマー……マジか。なんて無茶をしやがる」

 

 まあ、そうなる。

 動揺しすぎるあまり一周して冷静になったアイスバーグは、改めてカクを宥めてから話を聞いてみた。

 

 どうやら、つい先刻突然蛇王海賊団の海賊旗を掲げた艦隊が海に現れ、スピードを一切緩めることなく街に突撃してきたらしい。

 そのせいで街の入口は全壊し、艦隊は無数の建造物を破壊し続けた事で勢いが弱まり、やがて停止したとか。

 

 

「そんな事をすりゃ船の方もタダじゃ済まねえだろう。乗ってる奴らはどうなった?」

「いや、それが……。不思議なことに、全ての船がピンピンしておってのう……。ほら、今も空の上をドラゴンが飛んでおる」

「………………は?」

 

 

 とんでもなく無謀な侵入を果たした事から、蛇王海賊団の艦隊にも被害が出ているだろうと予想していたアイスバーグだったが、信じ難い事に一切の被害が無いとのこと。

 そんなわけあるか、とカクが開けた窓から外を眺めてみると……。

 

 

「……ンマー」

「どうします、社長?」

「いや、どうしますってお前」

 

 

 カクさん冷静すぎじゃね? と首を傾げるアイスバーグだったが、人間驚きすぎると逆に冷静になってしまうものである。

 かくいうアイスバーグ自身がまさにそれだ。

 

 とにかく。

 確かに、ドラゴンの群れがウォーターセブンの上空を我が物顔で飛び回っている。

 噂が正しいのならば、これら全てが蛇王海賊団のクルーのはずである。

 

 

 アイスバーグは無性に不貞寝したくなった。

 ンマー。なんてひでぇ悪夢だ、と呟きながら。

 

 

 しかし残念、これは現実である。

 

 

「あ。そういえばすぐそこに蛇王龍が来とります」

「はよ言えッ!!」

 

 

 呆然としていたアイスバーグだったが、カクが突然心臓に悪すぎるボケをかました事で我に返る。

 なんと、10億を超える賞金首であるあの蛇王龍が自ら訪問してきているというではないか。

 

 蛇王龍と言えば、この世で絶対に怒らせてはいけない人物だ、というのがこの世界の共通認識である。

 何しろ、圧倒的なカリスマで化け物軍団を率いているかの魔王の機嫌を損ねてしまうと、街の一つや二つどころか島が、あるいは国が、かなりの高確率で丸ごと消滅するというのだ。

 

 

 そんなこんなで慌てて身嗜みを整え、秘書のカリファも連れて、カクの案内で蛇王龍が待つ場所まで移動してみると──。

 

 

「いや、だからそんな無理難題はさすがにそう簡単には請け負えないんですって! もうすぐ社長が来ますから!! 勘弁してくださいよ!!」

「ほんの少し、ほんの少し待つだけでいいんです。クルッポー」

「えー。さっきからずっとそればっかりじゃん。ねえ、フィロア?」

「……ああ。これ以上マデュラを待たせるならこの島ごと氷漬けにして帰るぞ」

「そ、そんな!? あ!? あ、アイスバーグさん! お、お待たせしましたお客様! 彼が社長にして最高の船大工、アイスバーグです!」

「「ん?」」

 

 

 

(うわ、すっごい帰りたい)

(パウリーとルッチの奴、今にもマジ泣きしそうじゃのう……。ジャンケンで勝ててよかったわい……)

 

 

 何故かそこら中が凍りついている1番ドックで、艤装・マスト職職長のパウリーと、木びき・木釘職職長のロブ・ルッチが二人がかりで、真っ白い美女と威圧感が半端じゃない白と赤の髪が特徴的な巨漢のコンビを宥めていた。

 

 あの美女こそが、かの“蛇王龍”であり、彼女が背を預けている巨漢は蛇王海賊団の副船長である“熾凍龍”フィロアで間違いない。

 

 

 “熾凍龍”フィロア、懸賞金12億ベリー。

 

 

 

 今にも爆発しそうな爆弾を幻視し、正直ものすごく近付きたくないアイスバーグ。

 しかし、ここで逃げたところで待っているのはウォーターセブンが島ごと滅びるというバッドエンドである。

 

 いくらガレーラカンパニーが世界政府御用達と言っても、そもそも蛇王海賊団は肝心の世界政府を一切恐れていない事から、躊躇する可能性は皆無だし。

 

 

 何より、どんな無茶苦茶な奴らであろうと客は客である。

 お客様は神様、なんてふざけた事は言わないが、応対しないわけにはいかない。

 それが船大工というものだ。

 

 

「ンマー、待たせたな。おれがこのガレーラカンパニーの社長にしてこの街の市長。アイスバーグだ」

「秘書のカリファです」

「ここで船大工をやっとる、カクっちゅうもんじゃ。以後お見知りおきを、じゃな」

 

 

 まずはご挨拶。

 丁寧に頭を下げ、相手の出方を窺う。

 尚、世界政府が相手だろうとここまで丁寧に対応する事は無い。

 相手が世界最悪の海賊だからこそである。

 

 

「待ちくたびれたよ。私は蛇王海賊団の船長をやってる、マデュラっていうんだ。よろしくね」

「副船長のフィロアだ。さっさと商談に入ろうか。もうマデュラのおやつの時間が近い」

((子供かっ!!))

 

 

 強面のフィロアが放った言葉に内心でツッコミを入れるアイスバーグたち。

 間違っても口に出してはいけない。

 限界ギリギリの勝負なのである。

 

 

 絶対に笑ってはいけない造船会社。

 ……笑うと島が滅びる。ひでえ話だ。

 

 

「そこのパウリー曰く、なかなかの無理難題らしいな」

「んー、そうかなあ? あのね、準備ができたら四皇に喧嘩売ろうと思ってるんだ。だから、私たちが変身して暴れても壊れないようなおっきい船作って。最低でもこの島ぐらいの広さはほしいな」

「ンマー! 予想以上に無茶な事言うな!!」

「なんだと? 最高の船大工が聞いて呆れる」

 

 

 とにもかくにも商談に入った。

 入ったはいいが、いくらなんでも注文がふざけすぎである。

 要は島サイズの船を作れというのだ。

 しかも、上空を飛んでいるドラゴンたちを見るに、相当なデカさがないとダメなやつだ。

 

 

 いやいやいや、無茶おっしゃる。

 というかあっさり言ったが四皇に喧嘩売るとかマジかお前、と頭を抱えるアイスバーグ。

 世界が大混乱に陥る事間違いなしである。

 

 今でさえ蛇王海賊団の艦隊がこんなところに集結している事から海軍を刺激しているだろうに、それがバカでかい船を得て四皇の縄張りに向かうなんて事になれば、下手をすれば海軍、四皇、そして蛇王海賊団による世界大戦が勃発してしまう。

 

 

「……上に浮いてるガレオン船はお前のか?」

「そだよ。あ、ちょっと無理しちゃったからついでに修理してもらおうかな」

「ンマー、その程度ならおやすい御用だ」

「そう? ならウチの船全部お願いね」

「全部!?」

「おやすい御用なんだろう? せめてその程度の事はやってみせろ、最高の船大工よ」

 

 

 ああ、無理をしたという自覚はあるんだな、と妙な安心感を覚えるガレーラカンパニー。

 しかし、艦隊全てを修理しろという依頼に仰天。

 船がどいつもこいつもデカいので、正直会社のドックが足りるかどうか怪しい。

 

 まあ、他の客の分をよければ何とか……。

 既に頭が猛烈に痛い。

 アイスバーグはやっぱり不貞寝したくなった。

 

 しかもさっきから副船長のフィロアが怖い。

 船長を待たせたのがそんなに気に食わなかったのだろうか。

 

 

「で、どうなの? 巨大船」

「……ンマー、おれの誇りにかけて、何とかしてやる。だからこれ以上街を破壊するのはやめてくれ。それが約束できないのなら船は作らん」

「なんだと貴様」

「…………」

 

 

 散々ビビり倒してきたアイスバーグだが、彼にも船大工としての意地がある。

 人としての矜恃がある。

 

 今日に至るまで、街の人々に危害を加えるような輩は客として扱わず追い払ってきた。

 たとえ相手が蛇王海賊団だろうと、それは譲れない。

 

 

 ギラリと睨むフィロアを余所に、じっと見つめ合うアイスバーグとマデュラ。

 

 

 さりげなく遠くに避難していたカクやパウリーたちが固唾を飲んで見守る中、美女の答えは……。

 

 

 

 

「わかった。最高の船大工っていうのは間違いないみたいだね」

「む、いいのか。マデュラ」

「うん。こっちがお願いする立場だしね」

「……そうか。お前がそう言うのならば従おう」

「ん。じゃあよろしくね、アイスバーグ“さん”」

「ンマー、任せておけ。くれぐれも頼むぞ。お前たちが暴れたらこの島なんてひとたまりもない」

「わかったってば。みんなー! この島で暴れたら地の果てまでぶっ飛ばすからねー!!」

 

 

 

 ニッコリと笑い、マデュラはそう答えた。

 英雄アイスバーグは、暴虐の化身たる蛇王龍に認められたのだ。

 

 

 尚、上空を好き放題に飛び回っていたドラゴンたちは、マデュラが大声で呼びかけた瞬間、器用に空中でピタリと静止し、嘘のようにゆっくりと降下していった。

 

 それを少し不思議に思ったパウリーがこっそりとフィロアに問う。

 

「……なぁ、あのドラゴンたちは何で止まったんだ?」

「命令を破れば本当に言葉通り地の果てまで殴り飛ばされるからだ。即死するか、辛うじて生き延びるも二度と帰ってこられなくなるかのどちらかだな」

「…………そ、そうか……」

 

 

 平然とした顔で宣う副船長に戦慄し、そっと隠れるように逃げていくパウリー。

 

 

 何はともあれ、とりあえず平和は守られた。

 尚、建物の一つや二つ吹き飛ぶ程度は「暴れた」うちに入らないらしい。

 

 




こうしてアイスバーグさんは島サイズという馬鹿げた規模の巨大船を作るべく設計図を描き始めましたとさ。
尚、蛇王海賊団は普通に騒動を巻き起こし続けます。


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ウォーターセブン②


久しぶりにチャリ乗ったら足がパンパンになってやばかったです。運動不足すぎた。


 

 水の都ウォーターセブンに現れた蛇王海賊団。

 この街が誇る造船会社、ガレーラカンパニーになかなか無茶な依頼をした彼女たちは、当初こそ街の人々に恐れられていたものの……。

 

「おっ! マデュラさん、今日もどうだい? 当店自慢の水水肉は! お安くしとくよ!」

「ん。ラヴィ、あれ買って」

「はいはい。まったくアンタは、人に任せっきりにしないでたまには自分で買いなさいよね。お使いとかできないんじゃないの?」

「う……そ、そんなことないよ?」

「どうだか。おばさま、水水肉をお二つくださる?」

「あいよー!」

 

 ──このように、ものすごく馴染んでいた。

 ちなみに、今マデュラと共に“ヤガラブル”に乗って街を回っている少女は、蛇王海賊団の最高幹部“四龍王”の一人である。

 

 

 “大巌竜”ラヴィ、懸賞金11億ベリー。

 

 

 とんでもない額の懸賞金とは裏腹に可憐な容姿を誇る彼女は、なんと一年前まで天竜人であったという過去を持つ。

 しかし、だえだのアマスだのと鳴いて暴虐の限りを尽くす家族の事は蛇蝎のごとく嫌っており、マデュラが起こした天竜人大虐殺事件の際も万歳三唱して喜んだ程であった。そして仲間に加わったのである。

 

 マデュラにとってもラヴィは貴重な同年代の(マデュラの実年齢は不明なので恐らく、が付くが)友人であるため、海賊団の中でも特に仲良しだ。

 加えて、能力によって変身する形態の巨大さも二人はほぼ互角であり、その意味でも気が合うのだろう。暇さえあればこうして街を回る事は日常茶飯事である。

 

 

「そういえば、アイスバーグ氏には納期を指定したりは?」

「してない。どれぐらい時間かかるかなんて私わかんないもん」

「威張るなアホ。まあ、島サイズの船なんてそうそうないものね」

「ん? 全く無いってわけじゃないの?」

「……アンタ、そんな事も知らずに注文したわけ? ほんっと世間知らずよね」

「元お嬢様のラヴィには言われたくない」

「アタシはきちんと下々民……じゃなかった。世界の人達について学んでいるもの。アンタとは違うわ」

「家族を嫌ってる割には、ちょいちょい天竜人らしい言葉が飛び出すよね、ラヴィって」

「し、仕方ないでしょ! まだ慣れないのよ!」

「骨の髄まで天竜人……哀れな」

「ぶん殴るぞお前ェ!!」

「なはは」

 

 

 一旦ヤガラブルを止めて水水肉を二人仲良く食べた後、再び街を回りながらそんな事を話す。

 ラヴィをからかいつつもしっかりと彼女の話を聞いているマデュラは、気になるワードについて改めて質問してみる事にした。

 

 

「で、島サイズの船って他にあるの?」

「……ある、らしいわ。昔お付きのCP0から聞いたんだけど、王下七武海に“ゲッコー・モリア”っていう海賊がいるのね。で、そいつの船が世界最大の海賊船って言われているらしくて。島ぐらいの大きさなんだそうよ」

「へー。それ奪えばいいんじゃない? そのゲッコーなんとかはどこにいるの?」

「知らないわよそんなこと。当時は王下七武海に興味なんて無かったもの」

「なんだ、使えないなぁ」

「うるさいわねっ!!」

 

 

 王下七武海の一人、ゲッコー・モリア。

 巨大船を求めている時に、都合よく“世界最大の海賊船”なんてものを所有している人物の情報を知る事ができたというのは、もうそういう運命なんじゃね? とワルイ顔で企むマデュラ。

 幸い、目の前の友人兼仲間は元天竜人とあって様々な世界の情報を深く知っている。彼女のアドバイスを元にすれば、モリアの場所を探し当てるのは、そう難しい事ではない。

 

 

「そいつはどんな海賊なの?」

「モリアのこと? そうねえ……なんでも、昔は四皇のカイドウと争っていた程の男で、彼に敗北して仲間を失ってから王下七武海に加わったそうよ。恐らく、復讐の機会を窺っているんじゃないかしらね」

「ふーん、そうなんだ。となると、カイドウに目をつけられない場所で戦力を増やしているのかな」

「有り得るわね。案外この近くにいるんじゃないかしら。新世界にいたら四皇にはすぐ嗅ぎつけられるでしょうし」

「だよね。よっし、影を走らせようか」

「ああ、またあの過労死部隊を使うのね……」

「し、仕方ないじゃん。便利なんだもん」

「まあそうだけど。あんまりこき使って愛想を尽かされないように気をつけなさいよ。海賊なんだから、裏切りなんて十二分に有り得るわ」

「うー、わかってるよ……」

 

 

 ラヴィからのお小言に縮こまりつつ、指笛で“影”を呼ぶ。

 すると、どこからともなく黒装束に身を包んだ人間が目の前に現れた。

 

 

「お呼びで、マデュラ様」

「ん。王下七武海の一人、ゲッコー……ゲッコー……なんだっけ?」

「モリアよ。ゲッコー・モリア」

「そうそれ。そのモリヤとかいう海賊がどこにいるか探してきて」

「承知」

「モリアだっつってんだろこの鳥頭」

 

 

 地味に名前を間違えているにも関わらず、黒装束の人物……諜報部隊隊長、ナルガは頷いてまたどこかへと去っていった。

 

 

 “迅竜”ナルガ、懸賞金9000万ベリー。

 あまり人目につかないため懸賞金は低めである。

 

「……ナルガの奴も大変ね。こんなおバカの無茶な我儘に振り回されて」

「もー!! さっきからネチネチネチネチうるさいなぁ!! ぶっ飛ばすぞお前!」

「正論しか言っていないと思うのだけど? 今回だって大変だったんだから。わざわざ新世界からこんなところまで来るハメになったアタシたちの身にもなってみなさいよ」

「う……ごめんなさい」

「“冥王”やシャッキーにも叱られていたでしょ。たまには船長らしくどっしりと奥で構えていなさいよね。フットワークが軽すぎるのよアンタは」

「うぅ……誰か助けてェ……」

「な、泣き真似したってダメなんだからね!」

 

 

 じわり、と目の端に涙を浮かべるマデュラ。

 それを見て、内心であわあわと大慌てなラヴィ。

 まるで妹を叱る姉のように説教をしていた彼女だが、何もマデュラをいじめたくてネチっているわけではない。

 むしろ、船長としてもっと立派になって欲しくて、心を鬼にして言っているのだ。

 

 

 そして……。

 

「わ、悪かったわよ。言いすぎたわ」

「……ニヤリ」

「今笑ったな!? 笑ったよなお前!!」

「えーん、ラヴィがいじめるぅ! フィロアー!!」

「ちょ!? 副船長を呼ぶのはシャレにならな──」

 

「呼んだ、か……!? どうしたマデュラ!!」

「げげっ! アンタどっから!?」

「またお前か!! ラヴィ!」

 

 

 計画通り、とばかりに悪い笑みを浮かべるマデュラに気付き、騙したなお前!? と憤慨するラヴィだったが、さいごのきりふだ「副船長召喚」を切ったマデュラの前に屈し、どこからともなく現れた副船長のフィロアに延々と説教されるハメに。

 

 

 凍りつくウォーターセブン。

 無事に生き残っていたマデュラが乗るヤガラブルを脱出し、ガチで逃走するラヴィ。

 鬼の形相でそれを追うフィロア。

 

 

「待てェ!! 今日という今日は逃がさんぞ!!」

「話を聞きなさいよこのマデュラオタク!! アンタがそんなんだからあの子がダメなままなのよ!!」

「なんだと貴様ー!!」

 

「ヤガラちゃん、これ食べる?」

「ニー!」

 

 

 ラヴィが残していった食べかけの水水肉を、さらっとヤガラブルに与えるマデュラ。

 もちろん自分は笑顔で水水肉を食べる。

 退屈しのぎに嘘泣きしただけであり、実際は別に怒っても悲しんでもいない。

 

 ラヴィの言う通り、船長として締めるところは締めるつもりだが、今のところそんな機会は無いのだ。

 

 

 そして、ニコニコと笑うマデュラの視線の先で……。

 

 

「あ、炎が落ちてきた。さすがにやりすぎ」

 

 

 とうとうフィロアが龍に変身したらしく、凍りついたウォーターセブンに炎が隕石のごとく落ちてきた。

 あまりやりすぎるとアイスバーグに船を作って貰えなくなるため、止めに行くことに。

 

 というか、ラヴィがキレて変身したら、普通に街が潰れてしまう。

 

 ヤガラブルをひとまず止めておき、ガチで激突しているフィロアとラヴィの間に割って入る。

 

 

「おーい、フィロアー。もういいよー」

「……なんだ、いいのか」

「はー……はー……マデュラ!! アンタ、いくら暇だからって嘘泣きして副船長をアタシにぶつけるな! 街が消滅したら船作って貰えなくなるじゃない!! それじゃアタシも困るのよ! 今の船だと窮屈だし!」

「う、嘘泣きだと……?」

「……てへっ」

 

 

 ガーンと背後に雷が走ったかのごとくショックを受けるフィロア。

 よろよろとよためき、彼はまずラヴィに詫びる。

 

 

 そしてマデュラは……。

 

 

 

 呆れたフィロアと、ぷんぷんモードなラヴィの二人がかりで説教される事となった。

 

 

「そのうち、皆で決闘大会とか開くのも面白そうだなぁ。最強決定戦、みたいな?」

「ちょっと副船長! こいつ反省してないわよ!」

「ああ……。ちょっと来い、マデュラ。クック先生に事情を話して説教をしてもらおう」

「うえっ!? せ、先生からの説教はやだぁ!!」

 

 

 

 じたばたと暴れるマデュラは、抵抗も虚しく本船へと連行され、話を聞いて呆れ返ったクックに一日中説教されるハメに。

 

 

「……ニー?」

「マデュラなら帰ってこないわ。ヤガラちゃん、迷惑かけてごめんなさいね。アイスバーグ氏にも謝りに行かなくちゃ」

 

 

 ラヴィもラヴィで、「ンマー。街がえらい騒ぎになったんだが、どうしてくれるんだ?」と静かに怒るアイスバーグにひたすら謝り倒す事に。とばっちりもいいところである。

 

 

 

 そして、後日。

 諜報部隊がモリアの情報を引っさげて帰還した。





これで最高幹部の中で出てないのはゾラだけに。
たぶん次話で出るかな?


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ウォーターセブン③

最近忙しくてなかなか書く時間が……。
アウ!


 ウォーターセブンの裏社会を取り纏める男、フランキー。

 彼は現在、裏町の海岸にある本拠地、フランキーハウスで身を震わせていた。

 

 

「アウ!! 本当かお前らァ!? 本当に、あの蛇王海賊団が来てんのか!?」

「間違いないです、フランキーの兄貴!! ガレーラんところに行って、アイスバーグに“島サイズの船”を注文してました!」

「……がははははっ!! そいつぁすげぇ! やっぱりあの人はスケールが違ェなァ!」

 

 

 彼がボスを務める解体屋兼賞金稼ぎ、“フランキー一家”の中でも、フランキーに次ぐ地位にある男、ザンバイからの報告を聞き、かの“蛇王海賊団”がこの島に来ていると知ったからだ。

 

 しかし安心して欲しい。

 さすがのフランキーも怪物軍団に挑むほどアホではない。

 むしろ、フランキーやその手下たちにとって、蛇王海賊団……というか“蛇王龍”は憧れの人なのである。

 

 

 それは何故か?

 忘れている方も多いかもしれないが、蛇王龍ことマデュラは元々フランキー一家と同じ賞金稼ぎである。

 しかも、世界最強の賞金稼ぎとまで謳われた、一種のカリスマ的存在なのだ。

 

 同業という事でマデュラに興味を持ったフランキーたちは彼女の事を調べ、記事を集め、無数のグッズを作るぐらいには大ファンだったりするというわけだ。

 

 

 しかし、そうなると……。

 

「よっしゃあ! お前ら、船の場所は!?」

「もちろん調べてあります!」

「上出来だァ! グッズ持って会いに行くぞォ!!」

「「おおう!!」」

 

「き、緊張するわいな」

「門前払いされたらどうするわいな?」

「……なんとかなるわいな!」

 

 

 テンションが最高潮に達したフランキーたちは、リズムに乗って踊りながら、蛇王海賊団の艦隊が停泊しているという、街の真正面にある海岸へ向かって突き進んでいく。

 どいつもこいつも変態チックな格好をしているので、はっきり言ってとても気持ち悪い。

 

 

 当たり前だが、道中で街の人々にも普通に目撃されている。しかし、フランキー一家の奇行は割といつもの事なので誰もが見て見ぬふりである。

 

 

 

 そして──。

 

 

 

 

 蛇王海賊団本船にて……。

 

 

 船長のマデュラを含む大半の船員が出払い、がらんとした空間が広がるガレオン船の甲板で、短めの赤黒い髪と、右目のあたりに走る傷が特徴的な巨漢がのんびりと昼寝していた。

 

 彼の名はゾラ。

 こう見えて蛇王海賊団の最高幹部“四龍王”の一人であり、いつも船の上で寝ている事から船番を任されている程の実力者である。

 

 

 “熔山龍”ゾラ、懸賞金8億ベリー。

 

 

 同じ“四龍王”の一人であるラヴィや副船長のフィロアと比べると懸賞金は低めだが、彼もまた規格外の巨体に変身できる能力者であり、最高幹部に相応しい圧倒的な戦闘力を誇る。

 

 

 そんな彼が、ふと目覚めた。

 

 

「……んぁ? あー、よく寝た。船長たちはまだ帰ってきてねーのか。参ったな、やる事がねえ。暇だ」

 

 

 起きたはいいが、船に残った者がほとんどいない事に気付き、ボリボリと頭をかくゾラ。

 ラヴィを筆頭に、女性クルーがいたら喜んでセクハラをかますのだが。

 

 

 尚、完全に思考がセクハラ親父のそれであるゾラとて、命は惜しいのでマデュラにだけは絶対にセクハラをしないと決めている。だって、した瞬間冗談抜きでお空の星にされてしまうもの。

 あの美貌は素晴らしいのだが、いかんせん強さが浮世離れしすぎている。

 

 彼女と初めて出会った時、“ゾラ・マグダラオス”に変身していたゾラは、巨大な蛇王龍に変身していたマデュラにいきなり何故かタックルされ、やたらと瞳がキラキラしている彼女に半殺しにされて捕獲された。

 薄れ行く意識の中で見た満面の笑みがトラウマとなってゾラの記憶に深く刻まれており、マデュラに逆らってはいけない、と本能レベルで察したのである。

 

 

「うー、苦い思い出だ。ま、今は楽しいからいいが」

 

 

 あまりに暇すぎてぽつりと独り言を漏らす。

 当然、言葉を返してくれる者はいない。

 

 

 いっそ街に繰り出したいところだが、船番を任されている以上はそうもいかない。

 マデュラは話せば理解してくれるだろうが、他がダメだ。特に、モンスターズの問題児たちには絶対に却下される。

 

 ゾラは、一応最高幹部なのにやたらと立場が弱い己の不運を嘆いた。

 

 

「──あんたらもそう思うだろ?」

「うぉっ!? き、気付いてたのか!」

 

 

 声の主は、下半身が海水パンツ一丁、上半身がアロハシャツを羽織っただけ、というあまりにも変態的すぎてとても船長には見せられないド変態であった。

 更にド変態の後ろにも奇妙な格好をした変態どもがゾロゾロとおり、ゾラは思わず眉を顰めた。

 

 

 船をただじーっと眺めていた事から、敵意は無いと判断し、放置しておいたが。

 あまりにも暇なのでとりあえず話し掛けてみたわけなのだが、こんなものをマデュラの視界に入れるわけにはいかない。

 

 マデュラから乙女的悲鳴と共に極大のブレスが放たれ、ウォーターセブンが塵と化す未来しか見えない。

 

 

「とりあえずあんた、下に何か穿けよ。そんな格好を船長に見られてみろ。ウォーターセブンと一緒に海の藻屑と化すぞ」

「い!? そ、それは困る! だがアロハと海水パンツは俺の魂! これを覆すわけには……!」

「いやマジで頼むわ。俺まで攻撃されたらどうしてくれんのよ」

「くっ……!! 男フランキー、選択の時……!」

「兄貴……!」

 

 

 海岸で悩むド変態と、それを心配そうに見守る変態たち。

 それらを船上から眺めながら、首を傾げるゾラ。

 

 

「そもそもお宅ら誰よ」

「アウ!! よくぞ聞いてくれた! 俺たちゃ泣く子も黙る解体屋、“フランキー一家”! そして何を隠そうこの俺様が! ウォーターセブンの裏の顔!! ンン……フランキィィー!!」

「へー、そう。裏社会のボスってところか。そんな奴がウチに何の用だい?」

「あ、反応薄い……」

 

 

 奇妙なポーズをキメるド変態の自己紹介をさらっと聞き流し、マデュラが帰ってこないうちに用事を済ませて帰そうとするゾラ。

 外面は非常にのんびりとしている彼だが、その実内心ではものすごく焦っていたりする。

 

 

 万が一ここにマデュラが現れたら、冗談でもなんでもなく本当に大惨事になりかねないからだ。

 恐らく二十歳前後と思われる彼女だが、孤島育ち故か変態への耐性が低く、セクハラされたり気持ち悪い格好の輩を見るのがマジのガチで大嫌いなのである。

 

 極端な話、フランキーを見ただけで激怒しかねない。

 そうなればこの程度の島など一瞬で消え去ってしまう。アイスバーグとの約束なんぞも空の彼方へ飛び去ってしまうので意味が無い。

 

 

「おれたちゃこう見えて副業として賞金稼ぎをやっててなァ。お宅の船長はかつて同業で、しかも世界的な有名人だっただろう? だから、まあ簡単に言うと憧れてんのよ。それでこうしてグッズを片手にサインでも、と思って来たんだが……」

「なるほどねえ。御生憎様、今船長はお友達兼仲間の、ウチの最高幹部の一人とデートでもしてんじゃねーかな。女の子同士でキャッキャウフフとよ。はー、おれも交ざりたいわ……」

「最高幹部……ああ、“大巌竜”か? たしか、元々はかなりの権力を持つお偉いさんだったらしいが」

「そうだよ。お宅、よく知ってんな」

「うはは! 言ったろ、ファンだってな!」

 

 

 大切な船長を慕っていると言われれば、まあ悪い気はしない。話している限りではこのフランキーという男はなかなかウチのクルーと気が合いそうだ、と考えるゾラ。

 しかし、やっぱり格好が大問題である。

 

 ただでさえ、マデュラはつい昨日クックに一日中説教を食らったばかりであり、今朝ようやく解放され、再びラヴィと街へ遊びに出かけたのだ。

 そんな時にこんな不快な格好の男を見れば、上々だった機嫌は急転直下。街もろとも島は消滅、一週間はものすごく機嫌が悪い船長に怯えるクルー……なんて事になりかねない。

 

 更に言うなら十中八九ゾラも巻き添えを食らう。

 そんなの断固ノーサンキューである。

 

「まあ、そういうわけでよ。ウチの船長、お宅みたいなド変態が大嫌いなのよ。死にたくなければ絶対に会わないようにするか、その格好をなんとかしな」

「うぐ……。結局そこに戻るのか……」

「そんなに悩む事かい」

「アウ! 悩む事だ!」

 

 

 そんなやり取りを繰り返し、フランキーは手下たちを連れてうーうー唸りながら一旦帰っていった。

 下に何か穿くか穿かないか、真剣に検討してみるとのことだ。

 

 

 

 尚、笑顔を浮かべてゴキゲンなまま帰ってきたマデュラにフランキーの事を話してみると、変態は嫌いだけど話が通じる変態なら許容範囲だ、という意外な答えが返ってきた。

 どうやら、マデュラが大嫌いなのは、こちらの言い分を無視してハァハァと息を荒らげながら近付いてくるタイプの変態らしい。

 これには珍しくラヴィも同調し、曰く「天竜人を思い起こしてしまうから嫌なのではないか」との事。

 

 

 なるほど、もっともだ。

 と、妙に納得したゾラなのであった。

 

 

 ちなみに。

 後日改めてやってきたフランキーは、ものすごくそわそわしながらもズボンを穿いていた。

 これには対面したマデュラもニッコリであり、快くサインと撮影に応じた。

 




モリアさんとこに行く前にウォーターセブンで遊び尽くす蛇王海賊団。
次回:「CP9です」


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ウォーターセブン④

皆さん、蛇王海賊団の怒りを買うのはどうせスパンダムだ、と思ったでしょう?



 

 ウォーターセブン中心街の一角に、とある酒場がある。

 ブルーノという店主が営むこの店は本日休業しており、誰もいない……はずなのだが──。

 

 

「……それで、長官はなんと?」

「“計画に変更はない”そうだ。まあたしかに、蛇王海賊団がこの件にしゃしゃり出てくる理由など無いからな」

「そうか。しかし、注文を受けたんだろう」

「ふん。船大工などいくらでもいる。なんならベガパンクにでも作らせればいい。それで奴らとコネができるのなら万々歳……とでも考えているんじゃないか、あの長官(バカ)は」

「なるほどな。なんにせよ、我々は指令に従うだけだ。そうだろう?」

「……ああ。どの道、海軍がニコ・ロビンの居所を捉えた以上、敷かれたレールを走らざるを得ない」

「了解した。さて、“ドアドア”の能力で送るぞ」

「頼む」

 

 

 存在しないはずの諜報機関、“CP9”。

 彼らの正体こそがソレである。

 世界政府の“闇”として、CP9は実在するのだ。

 

「──蛇王海賊団、か。どうも血が疼いて仕方ない」

「……妙な気を起こすなよ。おれたちはあの“世界最後の日”に立ち会ったわけじゃないが、それでも奴の……蛇王龍の強さは本物だ」

「分かっている。実際に会って感じたからな。だが、だからこそ試してみたくはないか?」

「まったく、戦闘狂が……」

 

 

 CP9の最高傑作、ロブ・ルッチ。

 彼はこれまでに幾度もの任務を成功させてきた。

 それ故に、本当の恐怖というものを知らない。

 

 

 悪い癖が出ている同僚に呆れつつ、CP9の大男……ブルーノは能力を発動。

 空気にドアを作り、誰もいない場所へとルッチを送る。

 あまりにも暗殺向きすぎるこの能力を持つが故に、ブルーノは世界政府にとって決して手放せない優秀な手駒として扱われている。

 

 

 同僚を無事に送り、誰もいない一角で呟く。

 

 

「……さて、そろそろ奴らが着く頃か。さっさと仮装しなければな」

 

 

 そして、翌日。

 ウォーターセブンに、“麦わらの一味”が到着した。

 この街で動く闇の存在を知らないニコ・ロビンを乗せて──。

 

 

 

 

 水の都ウォーターセブンの、とある街角にて。

 

 

「うーん、すげェけど歩くと不便だなぁ。おれたちみたいな能力者には過ごしにくいかも。な、ロビン!」

「ふふ、そうかもしれないわね。あ、船医さん。あれ、書店ではないかしら。医学に関する本もあるんじゃない?」

「あ、ほんとだ!! ロビン! 寄っていいか!?」

「……もちろん」

 

 

 麦わらの一味の船医、トニートニー・チョッパーと、同じく麦わらの一味の一員である美女、ニコ・ロビン。

 

 外見ではとても海賊をやるようには見えない二人組が、ウォーターセブンを歩く。

 そして書店を見つけたチョッパーは、一応聞いてはいるが入る気満々で素早く店の前に陣取る。

 

 それを見たロビンは、呆れるやら微笑ましいやらで、なんとも言えない表情をしながらついて行く。

 

 

 

 

 が。

 

 

「CP──」

 

「お、ニコ・ロビン。奇遇じゃの」

「……!?」

 

 

 

 仮装したブルーノが声をかける前に、何ともごつくてデカい老人が先にロビンへと話しかけた。

 その姿を確認し、思わず固まるロビン。

 

 

「蛇王……海賊団……!?」

「いかにも。お主のような優秀な考古学者に顔を覚えられておるとは光栄じゃな」

「……当たり前でしょう。あのクローバー博士から直々に教えを受けた、私の“兄弟子”だもの。それでなくとも、かの“峯山龍”の名を知らないわけないわ」

「ほほほ、懐かしい名じゃ。師は最期まで師のままじゃったか?」

「……ええ」

 

 

 “峯山龍”ジエン、懸賞金5億8000万ベリー。

 

 

 彼はかつて、能力者になる前にオハラに滞在し、そこで偉大な考古学者、クローバー博士に師事していた。

 そして、オハラを出たジエンはシャンロンとガオレン、そしてクックという化け物たちと知り合い、自身が考古学者だという事を隠しつつ世界中を旅していたのである。

 

 彼自身が能力者になってしまったのはその旅の途中だが、そのおかげで今はこうして蛇王龍という最強の守護神を得る事ができたので結果オーライだと思っているらしい。

 

 

 

 まあ、それはさておき。

 穏やかに話す二人に対し、地味に盗み聞きする事になってしまったブルーノの心中は全然まったく穏やかではない。

 

 

(冗談じゃないぞ……!! ニコ・ロビンと峯山龍にそんな繋がりが!? まさか、麦わらの一味ならともかく、あの蛇王龍まで古代兵器を復活させる鍵を握っているのか!?)

 

 

 CP9の長官、スパンダムが五老星に対し「古代兵器という強大な戦力は政府が切り札として握っておくべき」とプレゼンし、“古代兵器プルトンの設計図をアイスバーグから強奪する”という計画を難なく立てる事ができたのは、偏に蛇王海賊団というあまりにも大きい脅威が悠々と世界中を走り回っているからである。

 

 しかし、その蛇王海賊団が古代兵器を復活させる事ができるかもしれない、となると話が変わってくる。

 

 

 下手を打てば、アイスバーグが握っているだろうプルトンの設計図という、飛びっきりの爆弾の存在が蛇王龍に知られてしまう恐れがあるからだ。

 そうなれば設計図は即刻燃やしてしまうべきだろう。

 あの蛇王海賊団が本気になれば、奪えないものなどこの世に存在しない。

 

 たとえ世界政府であろうと、強奪した設計図を守りきる事は不可能だろうから。

 

 

(ここは引いて指示を仰ぐべきか……? いや、あの長官に深く考えるだけの知能はない。ルッチに……いやダメだ。あの戦闘狂もこういう時には役に立たん!)

 

 

 仮装したまま一人混乱するブルーノ。

 大男が何やら呻く様は、傍から見るとはっきり言って気持ち悪い。

 

 

 そして、残念ながら。

 

 

 

 

 

 時間切れだ。

 

 

 

「やあ。そんなに焦ってどこへ行くんだい?」

「……!?」

 

 

 

 慌てて飛び退くブルーノ。

 ざわめく民衆。

 ジエンと親しげに会話していたロビンも気付き、鋭い視線を送る。

 

 騒ぎを聞きつけたチョッパーも、ようやく店から出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 再度言うが、時間切れである。

 

 

 

「“大怪鳥”……!!」

「うんうん。君の心の中が手に取るようにわかるよ。大方、ここからどのように逃げるかの算段を立てているのだろう?」

「……」

「でも、無駄なんだ。君たちはね、行動するのが遅すぎたのさ」

 

 

 

「放っておいてもいいの?」

「ああ。クックならば心配はいらぬよ。CP9ごときに遅れをとるような軟弱者ではないわ」

「……! CP9!?」

「ん? 気付いとらんかったんか? この街、4人もCP9が潜り込んでおるぞ」

「!?」

 

 

 

 蛇王海賊団がこの街に滞在して、もうそれなりの日数が経っている。

 世界政府から敵視されている立場である彼らが、その間本当にただ遊んでいるだけだろうか?

 

 マデュラが気に入ったアイスバーグという人物の事情を、何も調べずに放置しておく程のマヌケ集団に見えるだろうか?

 

 

 答えは否である。

 

 

 

 既に、CP9の計画は蛇王海賊団の知るところにある。

 

 

「ドアド……あ゙ッ!?」

「まあ待ちたまえ。我らが姫はね、君たち世界政府の人間が死ぬほど嫌いなんだ。逃がすわけがないだろう?」

 

 

 

 そして、蛇王海賊団は“世界最悪の海賊団”だ。

 

 

 

「それにね──」

「あの子が気に入ったアイスバーグ氏を暗殺しようなんていう輩は、生かしておけないの。お分かりかしら」

「んー。まあ、そういうこったな。お宅ら、ちっとばかし身の程を知った方がいい」

「貴様らごとき、マデュラ様の手を煩わせるまでもない。思い上がるなよ、たかが諜報員風情が」

「覚えておけ。我らのマデュラが気に入った相手という事は、我らにとっても守るべき人間だという事をな」

 

 

「あれは……“四龍王”!?」

「そうじゃ。奴らは龍の逆鱗に触れた。我らが船長が薄汚い計画を知ってしまう前に片付けねばの。この島どころか一帯の海が消し飛んでしまうわい」

「な、なあ。ロビン。これっていったい……」

 

 

 

 このままでは殺される!!

 そう確信したブルーノは、ドアドアの能力を使って逃げようとしたが、基本的にいつも人獣型(獣といってもまんま二足歩行する鳥だが)でいるクックの翼を食らって昏倒し、そのまま足で体を押さえつけられた。

 

 

 おまけに何故か街の人々までブルーノを親の仇のように睨みつけており、いつの間にか現れていたラヴィ、ゾラ、ガロア、フィロア……四龍王や、クックをまるで止めようとする素振りを見せない。

 

 それもそのはず、“アイスバーグ暗殺”というCP9の薄汚い計画は、ナルガ率いる蛇王海賊団の諜報部隊によってとうに暴かれており、潜入しているCP9以外の、この街に住む全ての人間の知るところとなっているのだ。

 

 

 

「これ、は……!」

「始まる前から君たちの負けだ、CP9。ところで、ブルーノくん。君はぼくたちがどうして怒っているのかわかるかい?」

「……?」

 

 

 

 CP9という、世界政府の諜報機関に属する自分たちが欺かれていた事に気付き、驚愕するブルーノ。

 しかし、彼は投げかけられた質問に疑問符を浮かべた。

 

 どうしても何も、蛇王龍が気に入ったというアイスバーグを始末しようとしているからではないのか、と。

 

 

「分からないか。ナズチくん」

「はーいなんだな。おまえの仲間が、ほざいていたのをボクが聞いていたんだなぁ」

「……!!」

 

 

 ここで、ブルーノは全てを察した。

 

 

 

 

 “だからこそ、試してみたくはないか?”

 昨晩ルッチが口にした言葉だ。

 

 

 

 あの戦闘狂めぇ!! と、内心で激しく憤るブルーノ。

 意外なことに、破滅の引き金を引いたのはCP9の頼れるエース、ルッチであったのだ。

 

 

 

 ぐえっ。

 

 

 

 ここで、ブルーノを踏みつけて拘束しているクックの力がめっちゃ強くなった。潰れる。潰れちゃう。

 

 

 

 

「分かるかい? 分かったよな? いくらおまえたちがバカなサルでも、分かったよな!? おまえらみたいなザコが、“おれ”たちの船長を試す!? ……ふざけるなよ!! いいか、世界政府なんてのはいつでも潰せるんだ!! ただ、マデュラちゃんがその気になっていないから潰していないだけなんだぞ!!」

「ぐぇえぇ……!?」

「それをなんだ!? 試すだとォ!? 世界政府のクソ犬風情が調子に乗りやがって!!」

 

 

 

 みるみるうちに口調が荒くなっていくと共に、人獣型から完全な獣型(やっぱり鳥だが)へと変化していくクック。

 更に、武装色の覇気を使っているのか、全身が黒く染まっていく。

 

 

 冷や汗を流しながら、峯山龍やチョッパーと共にそれを見ていたロビンは、その姿を見てある事に気付く。

 尚、チョッパーはあまりにも恐ろしい光景に震えており、街の人々も全員気絶している。

 

 

 

「あれはまさか……!! 伝説の賞金首、“黒狼鳥”では!?」

「うん? ああ、今更気付いたのか? まあクックの奴は基本的に穏やかな上に、船長のお気に入りじゃから滅多に前線に出る事もないし、無理もないかのう」

 

 

 

 “大怪鳥”クック改め、“黒狼鳥”ガルルガ。

 本名、クック・ガルルガ。

 

 

 ──懸賞金、15億ベリー。

 世界政府が双方を別人と認識しているため、二つの懸賞金がかかっているという稀有な存在こそが、先生と呼ばれる彼なのである。

 

 

「はー……はー……」

「先生、その辺に。それ以上はソイツが死んでしまいます」

「ちッ……これだからザコは嫌ェなんだよおれは!」

 

 

 

 鋭いクチバシでブルーノの頭……のすぐ横を何度もつついた上、とうに気を失っているブルーノをゲシッと蹴り飛ばすクック・ガルルガ。

 

 

 そしてブルーノの体はガロアがキャッチし、ズルズルと引き摺っていく。

 

 

「……聞くのが怖いのだけど、彼をどこへ?」

「宣戦布告じゃな。船長に気付かれぬうちに済ませておかねばならんからの」

「何故、蛇王龍には秘密なの?」

「わからんか? マデュラ船長はお気に入りに手を出されるのが大嫌いなんじゃ。その上、世界政府の事も死ぬほど嫌いじゃ。アイスバーグ暗殺計画、なんてものを知れば、彼女は激怒して暴れ回るじゃろう。そうなればもう誰にも止められん。たとえクックであろうとな」

「……なるほど」

 

 

 峯山龍の言葉に納得し、思わずCP9の冥福を祈ってしまうロビン。

 震えっぱなしのチョッパーも、なんだかわからないけどすごくヤバイ事が起きているという事だけは理解できた。

 

 

 

 そして、ロビンとチョッパーはある事に気が付く。

 

 

 

 

 あれ?

 今、ルフィたちがガレーラの造船所に行っているよね? と。

 

 

 

 

 “D”は必ず嵐を呼ぶ。

 ウォーターセブンがどうなってしまうのか、それは誰にもわからない。

 

 

 

「……蛇王龍は、今どこに?」

「寝ているはずじゃが。それがどうかしたかの?」

「い、いえ。なんでもないの」

 

 

 

 なんだか嫌な予感がする、ロビンなのだった。




そんなわけで、爆弾を点火してしまったのはルッチでした。
彼、確かエニエス・ロビーで麦わらの一味が乗り込んでくる時、獰猛に笑っていたと思うんですよ。

それを見て私は思ったのです。
こいつ、戦闘狂じゃね? と。


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蛇王海賊団紹介 モンスターズ編①

数が半端ないので分けます。
作者の備忘録も兼ねて……。
最高幹部編と比べてモンスターの紹介は簡単にします。でないと私が死ぬ。
少し修正しました。


 

〈総隊長〉

 

“骸龍”ガロア 32歳

詳細は最高幹部編を参照。

 

 

 

〈副隊長〉

 

“老山龍”シャンロン 76歳

能力:ラオシャンロン

モンハンでの初登場作品:初代

古龍種

人型時の外見:色黒で赤黒い髪をオールバックにしている老人。ちょっとチャイナっぽい服を好んで着る。

懸賞金:6億ベリー

 

 本編登場済み。

 海賊王ゴール・D・ロジャーや“金獅子”のシキらが海を荒らし回っていた時代から、クックらと共に世界中を旅していた。

 比較的性格は温厚だが、同じく蛇王海賊団に所属するガオレンとは昔から犬猿の仲。麦わらの一味で言うゾロとサンジぐらいには仲が悪い。

 人に恐れられる事を嫌い、無人島で仲間と暮らしていたところにマデュラが現れ、孫のように可愛がっているうちに仲間にされた。本人は「まあかわいいからいいや」と思っているらしい。

 実は先代モンスターズ総隊長。任期は短かったが。

 

 能力であるラオシャンロンは、ミラボレアスと共に初代から登場するモンハンの名物モンスター。

 歩いているだけで災害をもたらすほどの巨体が特徴的だが、後々に自身を遥かに超える巨大なモンスターが続々と登場したため、現在ではそれほどインパクトは無いかもしれない。

 尚、ラオシャンロンは覚醒したミラボレアスから逃げているという噂があり、モンハン世界の砦を破壊してでも横断しようとするのもそのせいだとか。

 

 

 

〈特別顧問〉

 

“大怪鳥”クック/“黒狼鳥”ガルルガ 75歳

能力:イャンクック

モンハンでの初登場作品:

 イャンクック=初代

 イャンガルルガ=モンハンポータブル(初代P)

両方とも鳥竜種

人型時の外見:常時人獣型(たまに獣型)なので不明。なお、獣といいつつ見た目は完全に鳥である。

懸賞金:クック=8000万 ガルルガ=15億

 

 本編登場済み。

 今でこそ穏やかだが、大昔は手のつけられない暴れん坊として世界中を破壊しまわっていた問題児だった。

 海賊王ゴール・D・ロジャーや“金獅子”のシキといった大海賊、及び海軍のセンゴク元帥や英雄ガープ中将と言った錚々たるメンツとも戦った事があり、いずれも決着はつかなかった。

 当時は常にガルルガ形態だったため、懸賞金も“黒狼鳥”としてかけられている。今はクック形態がメインなので、ガープやセンゴク以外には正体はそうそうバレない。

 

 シャンロンたちと隠居していた無人島にふらっと現れたマデュラを孫のように可愛がり、マデュラからも気に入られ、かつては不吉の象徴として人々に恐れられた人獣型、および獣型を「可愛いから好き」とマデュラに褒められた事に感激し、生涯現役を誓い、命ある限りマデュラを守り抜くと決めている。実はモンスターズでも随一のマデュラバカ。

 尚、クック本人よりマデュラの方が遥かに強い。

 また、マデュラの事を「ちゃん」付けで呼ぶ事を許されているのは、海賊団の中でも(きっと)クックだけである。他の者が呼ぼうとすると、激怒して黒狼鳥と化したガルルガにめっちゃつっつかれて殺されるだろう。一部例外もいるかもしれないが。

 

 能力であるイャンクックは、初代から度々出演しているモンハンの名物キャラ。イャンガルルガもまた、初代ポータブルから出演している古株である。

 イャンクックの方はその愛らしい姿からマスコットとして親しまれており、同時にモンハンでの狩りの基本を教えてくれる“先生”として敬われている。

 

 ガルルガの方は、魔物である。

 特に、尋常ではない強化が施された「100レベル狂竜化イャンガルルガ」が登場する4では、古龍勢を押しのけて作中最強モンスターとして名高い。

 しかし、世界観的には狩りが下手なようで、イャンクックに襲いかかるイャンガルルガが、結局イャンクックに逃げられてしまう姿も見られるとか。

 

 

 

〈モンスターズ特攻隊長〉

 

“砦蟹”ガオレン 76歳

能力:シェンガオレン

モンハンでの初登場作品:2

甲殻種

人型時の外見:いかにも仙人といった感じの老人。若干ドン・チンジャオ似。ただ目はばっちり開いている。

シャンロン同様、チャイナっぽい服が好み。若い頃は今にもライディングデュエルしそうなヘアースタイルだったそうな。

懸賞金:6億ベリー

 

 本編登場済み。

 若い頃はカクのような喋り方で、一人称もワシだったのだが、いつの間にかワガハイに変わっていた。シャンロン曰くエセ紳士。

 歳の割にお調子者だが、キレて変身すると酸をばら撒きまくるので実の所蛇王海賊団のジジィ組の中で一番厄介。人間がこの酸をまともに浴びると溶けてしまい、痛みにのたうち回りながらショック死する。

 

 能力であるシェンガオレンは、ラオシャンロンに匹敵する程の巨体ながら戦う機会が少なく、非常に影が薄い。また、その巨大さから古龍種かと思いきや、普通に甲殻種。要は紛うことなき カ ニ という事。

 ラオシャンロンの頭骨をヤド代わりに背負っており、モンハン世界でもラオシャンロンと因縁がある。まあ、直接戦って頭骨を奪ったわけではないだろうが。

 

 

 

〈モンスターズ参謀長兼蛇王海賊団考古学班隊長〉

 

“峯山龍”ジエン 73歳

能力:ジエン・モーラン

モンハンでの初登場作品:3

古龍種

人型時の外見:頭のてっぺんがハゲたザビエルヘアーのごつくてデカい老人。大体七武海のくまと同じぐらいの身長。

懸賞金:5億8000万ベリー

 

 本編登場済み。

 出生地は不明だが、若い頃にオハラへと辿り着き、そこで考古学の権威であるクローバー博士に師事し、ポーネグリフの解読が可能な程の能力を身につけた。

 しかしポーネグリフの秘密を解き明かす事は重罪であるため、考古学者である事を隠して各地を旅する。やがてクックたちと出会い、彼らと共に世界中のポーネグリフを解読して回った。

 実は全ての古代兵器のありかを知っているが、マデュラが聞いてこない限りは明かさないつもりである。

 理屈が通じないガープの事が苦手で、逆に話は通じるセンゴクに対しては割と友好的。無論、戦いとなれば手は抜かないが。

 

 能力であるジエン・モーランは、ラオシャンロンをも優に超える馬鹿でかさで当時のハンターたちを仰天させた。

 その巨大さに反して運動能力は高く、クエストにおいてハンターたちが乗る撃龍船を体ごと飛び越える事すらできる。ゲーム的にもラオシャンロンなどで問題視された作業感がかなり薄くなっており、戦っていて楽しい。

 ちなみに、サイズは公式で11161.9cm。

 ダラ・アマデュラやラヴィエンテと比べると小さいが、相手が悪すぎるので仕方がない。そもそもジエンの時点で並のモンスターが可愛く思える程の巨体である。




あれ、結局長くなったな……。
モンハンのモンスターには思い入れがあるのでどうしても書いてるうちに乗ってきちゃうね。


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ウォーターセブン⑤

アノ人が参戦します。


 

 ウォーターセブンに潜入していたブルーノが、とんだとばっちりを受けてガレーラカンパニーの造船所に連行される、少し前。

 

 実は、蛇王海賊団の本船でこんな事が起きていた。

 

 

 

 ──蛇の装飾が施された、無駄に煌びやかな一室。

 

 ここはマデュラの寝室であり、無駄に頑丈なガレオン船の中でも群を抜いて頑丈に作られている。

 何故ならば、そうでもしないと寝相の悪いマデュラによって船ごと床がぶち抜かれてしまい、そのまま海の藻屑となってしまうからである。

 

 

 そんな空間に、プルルル、と電伝虫の呼出音が響く。

 

 

 

「ガチャ」

「……んぅ。マデュラだけどぉ……?」

『む、すまぬ。寝ておったか? わらわじゃ、ハンコックじゃ』

「ハンコックぅ……? おはよぉ……」

『うむ。おはよう』

 

 

 王下七武海の一人、ボア・ハンコック。

 彼女からの連絡である。

 

 友人の声を聞いたマデュラは、あー、うー、と呻きながら起き上がり、しばらくの間ボーッとした。

 ハンコックもまた、友人の機嫌を損ねないようにマデュラが落ち着くまでじっと黙る。

 

 

 そして……。

 

 

「よし、起きた。どしたの?」

『うむ、すまんかった。早速なんじゃが、今そなたはどこにおる? やはり船の自室か?』

「ん。ウォーターセブンに停泊してるよ」

『おお、そうか! 実はの、わらわもウォーターセブンに来ておるのじゃ! ついさっき到着したばかりなんじゃがの』

「え、そうなの? 今どこ?」

『えーと、そうじゃな……。なんという名じゃ?』

『ガレーラカンパニーよ、姉様』

『おお、それじゃ。ガレーラカンパニーの造船所におる!』

「へー、そうなんだ。じゃあ私も行こっと」

『うむ!! 待っておるぞ!』

 

 

 

 クックたちをも含めたウォーターセブン中の大誤算。

 ──蛇王龍マデュラ、造船所に行ってた。

 

 

 

 そんなわけで現在──。

 

 

 

「あれ、皆どうしたの? その死にかけのデカい人は何者??」

((なんでここにいるんだーッ!?))

 

 

 

 四龍王やクックたちがブルーノを引き摺って造船所に到着すると、そこには何故かハンコックと仲良く戯れるマデュラの姿が。

 

 

「…………ンマー。これ、まずいんじゃねェか?」

「!? あいつ……蛇王海賊団か!! おいおっさん! なんでここにあいつらがいるんだよ!」

「なんでってお前。普通に客だ。散々騒動を巻き起こしてくれているがな」

「客ぅ!?」

 

 

 世界政府の諜報機関、CP9が潜入している事と、その正体を既に教えられているアイスバーグは、クックたちが危惧していた「CP9の正体を暴くこの場に、マデュラが居合わせる事」がバッチリ起きてしまい、そう呟く。

 

 

 客としてやってきた海賊小僧、“麦わらのルフィ”が何やら騒いでいるが、とても相手をしている場合ではない。

 なんとか上手く立ち回らないと、ウォーターセブンが島ごと消滅してしまうのだ。

 

 

 とりあえず、目でクックに問いかける。

 

 

(おい、どうするんだこれ。島ごと消滅だけはゴメンだぞ)

(…………しかし、ここでCP9を取り逃がせば君の命が危ないよ、アイスバーグくん)

(ンマー……そうだろうな。言っとくが、俺が殺されるような事になれば船も作れなくなるぞ)

(それは困る!! ぼくたちがマデュラちゃんに殺されてしまうよ!!)

(いや、そんな事言われても)

 

 

 ダメだ、この鳥役に立たねえ。

 内心でケッ、と唾を吐きかけてやった。

 

 

 

 そうこうしているうちに、時間切れとなってしまった。

 

 

「……ねえ、聞いてるんだけど。その死にかけの人は何者? 私に隠れて何をしてるのかな?」

「え、ええっと…………」

 

 

「ンマー。お前ら、今のうちに逃げる準備をしとけ」

「え!? し、しかしアイスバーグさん!! まだルッチたちが本当に暗殺者なのか──」

「ば、バカ! パウリー!!」

 

 

「……暗殺者?」

 

 

 野生の勘だろうか。

 知らないうちに何かが起こっている事を察知したマデュラがみるみる不機嫌になってしまい、それに怯えるかのように空が曇っていく。

 

 ビビるクック。

 打開策を考えるラヴィ。

 なんだか眠たくなってきたゾラ。

 

 身の危険を感じ、スススッと避難していくハンコックたち。

 

 

 そして、ウォーターセブンが本当に消滅してしまう可能性が高くなってきた事を察し、部下たちを逃がそうとするアイスバーグに対し、ルッチたちがアイスバーグの暗殺を計画していると未だ信じ切っていないパウリーがそれに異論を唱え、口を滑らせてしまった。

 慌てて口を塞ぐルルだが、時すでに遅し。

 

 

 

 

 ゴロゴロゴロ!! と、雷が落ちた。

 

 

 同時にマデュラが蛇の眼になり、状況を理解したのか殺気を纏っていく。

 

 

 

「──お前ら、全部吐け」

 

 

 

 

 あ、はい。

 その場にいた全員が頷いた。

 

 

 

 そして──。

 

 

 

 

「…………へー、そう。アイスバーグさんを殺そうとしたんだ。私が船を発注した事を知っていながら。殺そうとしちゃったんだ?」

 

(え、そっちなのか。おれの身を案じたりはしてくれないのか)

(シッ。アイスバーグくん、気持ちは分かるけど黙っていてくれ)

 

 

 

 

 静かに怒るマデュラの、そのあまりの迫力に、ルッチたちCP9のメンバーやルフィたち麦わらの一味も含めた全員が正座し、全てを明かしたところ。

 蛇王龍の殺気は、収まるどころかどんどん大きくなっている。

 

 

 これは、マジでまずい。

 蛇王海賊団の面々は汗がダラダラである。

 

 

「ッ!? て、“鉄か”──」

「「ルッチィィィ!?」」

 

 

 

 マデュラが「目にも映らぬ動き」でルッチの目と鼻の先に移動し、デコピンで彼を吹き飛ばした。

 もはや素性を隠すどころではなく、本気で“死”を覚悟したルッチは特異な体技“六式”の一つ、“鉄塊”でそれを防ごうとしたが……。

 

 

「ああッ!? 一番ドックがッ!!」

「ンマー……必要経費だ。後で請求する。おれたちがなんとか生きてたらな……」

 

 

 

 当たり前のように防ぎきれず、光のごときスピードで吹き飛ばされたルッチは、ガレーラカンパニーの一番ドックが誇る巨大クレーンに激突し、積み木のように崩落した一番ドック(故)の下敷きとなった。

 

 

「あ、あいつ無茶苦茶するなァ……」

「お願いだから黙っててルフィ!! こっちに飛び火してきたらマジで殺されるわよ!?」

「……あれ、ウソップは?」

「え??」

 

 

 麦わらの一味のクルー、ウソップが地味に消えていた事にようやく気付いたルフィとナミ。犯人は、ウソップが抱えていた2億ベリーを狙ったフランキー一家なのだが、とりあえずそれは置いておこう。

 尚、ウソップを誘拐したフランキー一家はマデュラが到着してすぐに消えたため、この造船所が現在修羅場になっている事を知らない。

 

 それが、後にまた事態をややこしくするのだ──。

 

 

 

「先生、証拠は」

「ぶっ飛ばした後で聞くの……? もちろんあるよ。ナズチくんが空島の“音貝”で会話を記録してる」

「CP9の拠点は」

「……エニエス・ロビーあたりじゃない? 近いし」

「わかった」

 

 

 

 そんな会話をしながら、“彼”に近付いていくマデュラ。

 彼女が歩く度に、まるで地面が悲鳴を上げているかのように大きく揺れ、雷鳴が轟く。

 

 一応明言しておくが、まだ変身はしていない。

 

 

「……もう無理じゃ!! カリファ、逃げるぞ!!」

「る、ルッチは!?」

「放っておけぃ!! そもそもあのバカのせいなんじゃからな!!」

 

 

 ガレーラカンパニーの職長にして、CP9の一人。

 カク。

 

 彼はマデュラが少しずつ自身に近付いてきている事に気付き、もはやどう足掻いても任務の続行は不可能だと判断。

 同僚であるカリファと共に逃走を開始した。

 

 

 しかし、また言うが、時すでに遅し。

 

 

「地の利はこちらにあ── え?」

「遅い」

 

 

「カクぅッ!! ……くそっ!!」

 

 

 

 船大工として仕事をしている時のように絶壁を飛び降りようとしたカクだったが、いつの間にか先回りしていたマデュラに額を「トン」っと押され、ルッチのように吹き飛ばされた。

 ご丁寧に飛んで行った先もルッチと全く同じ、崩落した一番ドック(故)である。

 どうやらマデュラはCP9を一箇所にまとめておくつもりらしい。

 

 それを察したラヴィは、放置されていたブルーノを担ぎ、ポイッとルッチとカクが倒れている場所へ放り投げた。

 

 

「ンマー、これで確定だな。あいつらが政府の人間……暗殺者じゃないってんなら、おれたちを放り捨てて逃げるわけがねえ」

「……くそっ!! なんでだよ、ルッチ! カク!! カリファ!!」

「あいつら……本当に、おれたちを騙してやがったのか……! 許せねえ!!」

「うおお!! アイスバーグさんを殺そうとしやがった奴らだ!! もう仲間でもなんでもねえッ!!」

 

 

 遠くから見守っていたアイスバーグたちも、一連の流れによってルッチたちの正体が本当に暗殺者なのだと確信し、悲痛に顔を歪ませる。

 

 彼らとて、蛇王海賊団の言う事を鵜呑みにしていたわけではなく、むしろルッチたちを信じていたのだ。

 

 

 

 そして──。

 

 

「ばあ」

「ひ……っ!!」

 

 

 

 最後まで逃げ惑っていたカリファも、あっという間にマデュラに捕まり、容赦なく気絶させられた上でポイッと“仲間たち”の元へと捨てられた。

 

 

 これにて、ウォーターセブンに潜入していたCP9は壊滅したのである。

 残るは、エニエス・ロビー。

 

 

「のう、ラヴィや」

「何かしら、ハンコック」

「……わらわ、もしかしてすっごくタイミング悪かったか?」

「……正直に言うと、そうね。でも、あの子が島を消し飛ばさなかったから良しとしましょう」

「そ、そうじゃな……」

 

 

 

 尚、ルッチたちの生死はマデュラの気分次第である。

 と言っても、現在の機嫌の悪さから既にお察しかもしれないが……。




マデュラちゃん、怒る。
さらばCP9!!


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エニエス・ロビー①

舞台が一旦エニエス・ロビーに移るので、サブタイトルもそちらに。
まあすぐに無くなるんですけどね(鼻ホジ)

あと、注意。残酷な描写があります。


 

 

 世界政府が誇る“司法の島”、エニエス・ロビー。

 創設以来の800年間も不落……どころか、ただ一人の侵入者も許した事がないというここは、存在しないはずの諜報機関こと、CP9が拠点として使っており、その不落伝説も彼らあってこそのものである。

 

 しかし、今日。

 

 

 

 その伝説が、あっさりと破られた。

 

 

 

「おい長官っ!! 聞いたか!? 侵入者が──」

「あちぃッ!! 畜生、コーヒーこぼしたァ!! ああ? 侵入者ァ!? このエニエス・ロビーにか!?」

「知らねえのかよッ! 呑気にコーヒー飲んでる場合じゃねえぞ!」

「よーしわかった。ジャブラ、お前らで侵入者をぶっ殺してこい! どうせここに入った時点でソイツは犯罪者、死刑確定だ!」

 

 

 エニエス・ロビーの中でも、CP9のテリトリーである“司法の塔”で優雅にコーヒーを飲んでいたCP9司令長官スパンダムは、自らの栄光を汚すまさかの知らせに驚き、飲んでいたコーヒーを盛大にこぼしつつ冷静に指令を下す。

 新世界ならともかく、楽園とも呼ばれるこちらの海で、六式を体得した“超人”たるCP9(スパンダム自身は除く)に敵う者などいるはずもない。

 

 単純にそう考えているからこその余裕なのだが、目の前にいる超人……CP9の主戦力の一人であるジャブラの様子がおかしい。

 

 

 普段ならば、合法的に殺しができると聞いて喜び勇んで飛んでいくはずなのに、全く動かないのだ。

 それを不思議に思ったスパンダムは、当然ジャブラを問いただす。

 

「おい、どうした? 指令だっつってんだろ!! まさかお前の知り合いだから殺せません、なんて言うんじゃねえだろうな?」

「……いや、そういうわけじゃねえんだけどよ……」

「だったらなんだってんだ!!」

 

 

 やはり様子がおかしい。

 CP9きっての武闘派オオカミたる彼らしくない。

 

 なんだかイライラしてきたスパンダムだが、できる上司である彼は無闇矢鱈に怒鳴り散らしたりはしないのだ。

 熱いコーヒーを飲み、気持ちを落ち着かせて再度聞く。

 

 

「……いいか? ゆっくりとで構わねえ。状況を簡潔に説明しろ。まず、侵入者ってーのは何者だ?」

「──海賊団」

「ああ? 海賊ゥ? ……で?」

「……だから!! 蛇王海賊団のメンバーが来てんだよォ!! あの“天彗龍”が!!」

 

 

「…………は??」

 

 

 

 思わぬ凶報に、スパンダムは停止した。

 いやだって世界最悪と名高い蛇王海賊団が来てるとか意味わかんないもん。

 

 

 停止したスパンダムの手から、ごろんと落ちるコーヒーカップ。

 こぼれるコーヒー。足が熱い。

 

 

 そして、どうにか再起動を果たしたスパンダムは、ただ一言を絞り出す。

 

 

「なんでぇ??」

 

 

「おれが知るかよォ……不幸中の幸いというべきか、まだ天彗龍だけしか来てないみたいだけどな……」

「おまえ、勝てる?」

「…………」

「おい目をそらすな」

 

 

 思わずジャブラに詰め寄るスパンダムだが、いくらなんでも相手が悪すぎる。

 不幸中の幸いとは言うが、そもそも天彗龍の時点で4億5000万ベリーの賞金首である。

 

 普通に現王下七武海より額が上だ。鷹の目は色々と例外なので除くとして。

 

 

 そして、そんなこんなをしているうちに──。

 

 

「よっとォ!! 邪魔するぜ!」

「ひぃーッ!? 出たァー!! おいジャブラ、なんとかしろォ!!」

「……クソァ!! やってやるぜ畜生がッ!!」

 

 

 空がキラリと光ったと思えば、次の瞬間には銀色の龍が司法の塔の壁を破壊しながら侵入してきた。

 慌ててジャブラに迎撃するよう指令を下し、自身はそそくさと逃げようとするスパンダム。しかし、腰が抜けて立てない。

 頼みの綱とも言えるペット兼武器である“象剣”ファンクフリードも、生物として格が桁違いすぎる天彗龍に恐れをなしているのか、震えっぱなしだ。

 

 役立たずが!! と、思わず吐き捨てるスパンダム。

 

 

「おいおい、待てよ。おれァマデュラ様の命令で“コイツ”をお届けに上がっただけだぜ?」

「「は??」」

 

 

 しかし、悪魔の実の能力でオオカミの人獣型に変身し、構えをとるジャブラを前にして、天彗龍は器用にも両翼を腕のように上げて首を振り、そんな事を宣った。

 

 続いて“何か”がゴロリと転がる。

 

 

 

 ジャブラとスパンダムが恐る恐る“それ”を確認すると──。

 

 

「ヒィィィッ!?」

「お、おい……嘘だろ……!」

 

 

 

 果たして“それ”の正体は……。

 

 

 

 

 

 

 

「ルッチ……」

「あ、あわわわ……な、なんでだ……畜生……!! おれ様が何をしたってんだよぉ……!!」

 

 

 

 

 ウォーターセブンにて潜入任務に当たっていた、CP9の頼れるエースであり、ジャブラのライバル。

 ──ルッチの、変わり果てた姿であった。

 

 

 正確には、首だけとなった彼の死体である。

 どこぞの道化じゃあるまいし、この状態で生きているはずがない。

 

 

 突然の展開に怯えるスパンダムと、放心するジャブラ。

 そんな二人を、天彗龍はまるでゴミでも眺めるかのような目で見下しながら淡々と告げる。

 

 

 

「そいつはよォ、マデュラ様の怒りを買ったのさ。あの方のお気に入りをぶっ殺そうとしやがった挙句、あの方を舐め腐った発言までしやがった。だからよォ、ウチの始末屋に食わせてやったのよ!! 始末屋の名前は“ジョー”っていうんだが……ああ、“恐暴竜”って言った方が分かりやすいか?」

「……てめェ、よくもルッチをォォ!!」

「ば、馬鹿野郎!! やめろジャブラッ!!」

 

 

 喧嘩ばかりしている間柄とは言え、ルッチはジャブラにとって大切な仲間の一人である。

 それを“食い殺されて”黙っていられるほど、ジャブラは薄情ではない。

 

 

「くらいやがれェ!! “鉄塊拳法”!!」

「あァ、うるせえな。こちとら勝手にお前らを殺すわけにはいかねえんだ。向かってくるんじゃねえ」

「ふざけんなァ!!」

 

 

 まるで羽虫を追い払うかのような仕草を見せる天彗龍に対し、渾身の一撃をぶつける。

 

 

 

 しかし、“龍”とは災害そのものであり、ちょっと常人を超えただけのジャブラが太刀打ちできるような存在ではない。

 

 

「かた──!?」

「……ああ、やっちまった。死んでねえだろうな? 頼むぞおい。勝手な事をしたらマデュラ様に何て言われるか……」

「あ、ああ……そんな、ジャブラが……!」

 

 

 渾身の一撃は天彗龍の硬い甲殻を貫く事すらできず、逆に翼で払われて吹き飛び、ジャブラはそのまま動かなくなった。

 あまりに絶望的な状況に、ガタガタと震える事しかできないスパンダム。

 

 そんな彼に追い討ちをかけるように、司法の塔が……いや、エニエス・ロビーが、島ごと大きく揺れた。

 

 

「ひ、ヒィ!? 今度はなんだよ!?」

「お。アトラの姐さん、派手にやってんな。おいあんた、あそこ見てみろよ」

「え……? んな、なんじゃありゃぁ!?」

 

 

 

 天彗龍が器用に翼で示す先を見ると、そこには“機械の龍”とでも表現するのが相応しい異様な物体があった。

 口ぶりから察するに、蛇王海賊団の誰かではあるようだが……。

 

 

 とにかく、デカい。

 人など容易く踏み潰されてしまうだろう。

 

 

 必死に頭を回すスパンダムは、すぐにその正体に気が付いた。

 もしやあれが噂の──。

 

 

「か、“閣螳螂”かァ!?」

「おお、知ってんのか! その通りだ!」

 

 

 

 蛇王海賊団船大工兼技術開発室長(四龍王候補)。

 “閣螳螂”アトラ、懸賞金6億8000万ベリー。

 変身さえしていなければ非常に妖艶な美女である。

 

 

「な、何してんだ……?」

「あー……マデュラ様が島サイズの船をアイスバーグに注文して以来、アトラの姐さんったら負けん気を発揮しちまってな。奴さんより先に巨大船を作るつもりらしい。んで、ああして色々ぶっ壊しまくって材料を集めてんのさ。放っておいたらこの島丸ごと持っていこうとするんじゃねえかな」

「……えぇー……」

 

 

 ちょっとそれは困るんですけど、と内心でひたすら困惑するスパンダムだが、今はそれどころではない。

 危うく自分が命の危機に陥っている事を忘れてしまいそうになった。

 

 

「……はあ、仕方ねえ。マデュラ様が来る前にこの島をぶっ壊されちゃ困るんだよ。とっととアトラの姐さんを連れて帰るかね……」

「い!? こ、ここに蛇王龍が来るのか!?」

「当たりめェだろ。マデュラ様曰く、“部下の失態は上司の責任だよね!”だそうだ。首洗って待っておきな」

「ひ、ヒィ……しょ、しょんなぁ……!!」

 

 

 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃに歪めるスパンダムだが、天彗龍はそんな事は知らんとばかりに飛び去り、閣螳螂が作ったという例の巨大な機械の龍のような何かの元へと、恐らくは向かっていった。

 常人であるスパンダムの目では、遠すぎてよく見えないのである。

 涙で視界が滲んでいるせいもあるが。

 

 

 

 しばらく放心し、体育座りして空を眺めるスパンダム。

 天彗龍が破壊していったせいで、司法の塔がものすごく見渡しが良くなった。

 

 

 地味に、閣螳螂のアレが未だ鎮座しているところを見るに、まだ奴らは島に居るようだ。

 

 

 

「……バスターコール……コレでどうにかなるか? ……ハハッ、なるわけねえだろクソがァ!! もう知るか!! めちゃくちゃ押してやるぅぅぅ!!」

 

 

 

 ニコ・ロビンの件を確実に終わらせるため、海軍大将青キジから借り受けたゴールデン電伝虫。

 そのボタンを連打しようと決意する、スパンダムなのだった。

 もちろん、肝心の蛇王龍が来る前に島が焼かれては元も子もないので、まだ押さないが。




ルッチ死す。
それと地味にアトラル・カ&アトラル・ネセト登場。
エニエス・ロビーの兵たちは、彼女にそれこそ虫のように蹴散らされています。


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ウォーターセブン⑥

一旦またウォーターセブンに戻って、エニエス・ロビーへと繋ぐお話です。


前回のあらすじ:ルッチのお墓を建てるウラ……


 蛇王海賊団によって正体を暴かれたCP9。

 彼らのリーダー格であるロブ・ルッチは怒れるマデュラによって“恐暴竜”の餌にされ、ギリギリ残った首だけをエニエス・ロビーへと送り届けられた。

 

 あまりにショッキングすぎる光景に、アイスバーグをはじめ多くの人々が体調を崩してしまい、残ったCP9のメンバーたちの処分は翌日に持ち越しとなったのだが──。

 

 尚、マデュラに命じられたのは“天彗龍”ことファルクだけだったのだが、船の材料を求める“閣螳螂”アトラが何故かゴネてしまい、結果的に彼女も共にエニエス・ロビーへと向かっていった。

 巨大な龍の形をした“巣”であるネセトも持っていったため、それを運ぶ羽目になったファルクは、普段の彼からは考えられない程鈍足になり、エニエス・ロビーにたどり着くまでに一日もの時間を要していたりする。

 

 

 

 とりあえずそんなこんなで再び造船所にて。

 

 

「ンマー、本当にいいのか?」

「いや、それはこっちのセリフなのだけど。アイスバーグ氏、あなたの命を狙っていた輩よ? 本当に殺さなくていいの?」

「構わねェよ。既にこいつらの心は折れてる。今更政府の命令になんて従わねェさ。それに、あんな惨い光景を見るのはもうたくさんだ……」

「ふーん……そういうものかしら。コラ、マデュラ。いつまで不貞腐れてるのよ」

「……べつに不貞腐れてないもん!」

「嘘つけ」

 

 

 なんと、ルッチ以外の三人……カク、カリファ、ブルーノは、危うく彼らに暗殺されるところだったアイスバーグによって助命を嘆願され、渋るマデュラに繰り出した必殺の「じゃあ船は作らねェ」という一言によって呆気なく許されたのである。

 

 これには蛇王海賊団の面々どころか、ガレーラカンパニーを含めたウォーターセブン中の人々もびっくり。

 

 

 カクは職長を解任され、下っ端からやり直し。

 カリファは秘書からただの一般市民に。

 ブルーノに至っては店も金も無いという状況ではあるが、それでも命を取られるよりはマシであろう。

 

 

 まぁそれはさておき、アイスバーグは荒れてきた海を一瞥すると、わざとらしく咳払いをした。

 この話はもう終わりだ、と言うことだろう。

 

 

 

「ところで、お前らは知らねえだろうが、今夜はアクア・ラグナっつー高潮がこの島に押し寄せる。いくらなんでも船でエニエス・ロビーに向かうのは無茶だぞ」

「高潮?」

「ああ。造船所までは来ねえはずだが、それでも街が浸かっちまう程のモンだ」

「へえ、そうなのね。だそうだけど、どうするの? マデュラ」

「……それが何か?」

「言うと思った……」

「いやいや、それが何か? じゃねェよ。お前ら、揃いも揃って能力者ばかりだろうが」

 

 

 アクア・ラグナ。

 ウォーターセブンの風物詩とも言える災害で、アイスバーグが言う通り街が浸かってしまうほど大規模な高潮である。

 それを聞いて、「何か問題でも?」とばかりに不思議そうな顔をするマデュラに呆れるアイスバーグと、頭を抱えるラヴィ。

 

 災害そのものと言える“龍”たちを従えるマデュラにとって、天災の一つや二つ、あってないようなものなのである。

 その気になれば天候なんていくらでも変えられるし。

 

 

 まあそんなわけなので。

 

 

「エニエス・ロビー行ってくる」

「ンマー!! 話聞いてたか!?」

「……無駄よアイスバーグ氏。今のコイツに言葉なんて通じやしないわ……。下手に刺激して暴れられたら困るでしょう? 放っておく方が賢明よ」

「おいおい……」

 

「ま、待つのじゃマデュラ! わらわも行く!」

 

 

 アイスバーグの説得も虚しく、マデュラは部下たちを引き連れて船へと戻っていった。

 何故かハンコックも一緒に行動しているが、王下七武海としてそれでいいのだろうか。

 

 最後に残されたラヴィも、優雅に一礼して去っていく。

 アイスバーグたちは、それを「ンマー……」と呟きながら見送るしかできなかった。

 

 

 

 そして、それぞれの船に戻った蛇王海賊団は──。

 

 

 

「そんじゃ、エニエス・ロビーへ。全速前進ー。線路に沿って行けば着くでしょ」

「「了解、船長!」」

「マデュラ、少し話があるのじゃが」

「ん? どしたのハンコック」

 

 

 荒れ狂う大海原に漕ぎ出し、艦隊は世界政府が誇る“司法の島”エニエス・ロビーを滅するために走る。

 その最中、待ち時間を利用してハンコックが何やら話したいことがあるらしい。

 

 

 友人の頼みとあって、マデュラは船の指揮を一旦副船長のフィロアに任せ、ハンコックを連れて自室へと引っ込んでいく。

 穏やかに見えて怒っているマデュラが爆発しないように、ラヴィもそれについて行った。

 

 

 

「それで、話って?」

「お茶ぐらい出しなさいよ。気が利かない奴ね」

「お。ありがとうラヴィ」

「む。すまぬな、ラヴィ」

「まったく。なんでアタシがメイドみたいな事してんのかしら……」

「メイド服着てみたら? 似合うよきっと」

「うっさいわね」

 

 

 やたらと豪華な一室で、ラヴィを使用人代わりにこき使いながら対面するマデュラとハンコック。

 ちなみに、ハンコックの妹たちは自分たちの船をアクア・ラグナから守るために避難させている。

 

 さて、ハンコックの話とは──。

 

 

 

「アウ!! アウアーウ!!」

「「ん??」」

 

 

 

 ──ハンコックがいざ口を開こうとした、その瞬間。

 微妙に聞き覚えのある声が響いた。

 

 

 

「聞いたぜマデュラさん! 世界政府のクソ野郎どもをぶっ飛ばしに行くんだろ!?」

「……なんじゃこの変なやつは」

「あ、フランキー」

「おお、名前を覚えてくれてるたァ嬉しいねェ!! そう! おれ様こそがウォーターセブンの裏の顔! ンン~~、フランキィィー様だ!!」

「……アンタ、いつの間に?」

「ゾラさんに頼んで乗せてもらってたのよォ!!」

「何やってんのよあのオッサン……」

 

 

 

 大胆にもマデュラの私室のドアを開けて入ってきた大男。

 そう、フランキーである。

 

 彼は麦わらの一味から2億ベリーを奪って買い物に行き、今日帰ってきたばかりなのだ。

 まあ、自宅であるフランキーハウスに戻ってみれば、なんと無惨に吹き飛んでいたりもしたのだが。

 

 

 それを見たフランキーは怒り狂い、麦わらのルフィに報復し返すべく彼を探していたのだが、しかしボロボロの部下……ザンバイたちから「蛇王海賊団がエニエス・ロビーをぶっ壊しに行くらしい」と聞き、麦わらへの報復か、昔からの因縁がある世界政府への“お礼参り”に行くべきか、悩みに悩んだ。

 その末に、ザンバイたちからの後押しもあってこうして世界政府へのお礼参りを選んだ、というわけだ。

 

 

 

 麦わらの一味が、崩壊前のフランキーハウスに飾ってあった「蛇王海賊団の海賊旗(サイン入り)」を見て、フランキー一家が蛇王海賊団の下部組織だと誤解している、という事も知らずに……。

 

 

 

「──とまあそういうわけでな! おれも世界政府には恨みがあるんだ。だから、連れて行っちゃもらえねェか!?」

「いいよ」

「──決して足手まといにゃ……え? 今なんて?」

「ん。だから、来ていいよ。恨みがあるんでしょ?」

「……そうか……そうか!! ありがてェ!! すまねえ、恩に着る!」

 

 

 

 マデュラに不快感を与えないようにズボンを穿いた上で、土下座して頼み込むフランキーだが、あまりにもあっさりと許されたのでポカンとした表情を浮かべた。

 しかし、すぐに状況を理解し、再度勢いよく頭を下げる。

 

 

 そんなわけで。

 フランキーの参戦が決定した。

 ぶっちゃけ居ても意味などないのだが。

 

 

 

「で、ハンコック。話って?」

「お、おお。そうじゃったな」

「何事も無かったかのように話を戻したわね。えっと、フランキーだっけ? アンタ邪魔だからどっか行ってなさい」

「おう、わかったぜ!! いやー、しかし立派な船だなァ!! さぞかし高名な船大工が作ったに違いねェ!」

「え? アンタわかるの?」

「おうよ! こう見えて昔は船大工を……っと、いけねえいけねえ。邪魔になるか。そんじゃマデュラさん! また後でな!」

「はーい」

 

 

 微妙に気になる言葉を残しつつ、フランキーはそそくさと去っていった。

 マデュラの機嫌を損ねないように、と配慮したのだろう。

 ああ見えて彼は大人なのである。

 

 

 ──さて、ハンコックの話とは……。

 

 

 

「単刀直入に言うぞ。マデュラ、我がアマゾン・リリーを、そなたのナワバリに加えて欲しいのじゃ! このまま王下七武海をやっていては、そなたらと戦う羽目になりそうなのでな」

「ん?」

「ちょっとハンコック、どういう事よ?」

「実はな──」

 

 

 

 まぁそういうわけである。

 海軍が蛇王海賊団を警戒し、臨戦態勢を取っているという事実は、あっさりと知られてしまった。

 

 

 それを聞いたマデュラは……。

 

 

 

「…………」

「マ、マデュラ?」

「……やばい。ハンコック、逃げなさい!! 死ぬわよッ!!」

「え?? どういうこ──!?」

 

 

 

 

 みるみるうちに殺気が部屋に満ちていき、無駄に豪華な装飾の数々が、ピシリ、ピシリと割れていく。

 

 

 

 ラヴィは慌ててハンコックを連れて退散し、甲板で叫ぶ。

 

 

 

「総員、すぐにこの船から離れなさい!! マデュラがキレるわッ!!」

「「いいいい!?」」

「な、なんでじゃ!? わらわ、何かしたか!?」

「安心しなさい、アンタは何も悪くないから!」

 

 

 

 一見穏やかだったマデュラだが、ルッチのせいで一度激怒しているという事を忘れてはいけない。

 爆発寸前の状態になり、逆に冷静になっていたというだけなのだ。

 ちょっとしたきっかけがあれば、すぐにキレる。

 

 

 

「……そう、そうなんだ。私はただ皆と一緒に遊んでるだけなのに……海軍はそれを邪魔しようって言うんだね……」

 

 

 

 ビシビシビシ、と、船中に亀裂が広がっていく。

 慌てて艦隊の船へと飛び移り、離れていく蛇王海賊団のクルーたち。

 

 

「ラヴィ!! なんであやつは怒ったんじゃ!?」

「海軍が徒党を組んで向かってくると考えたからよ! アイツ、“遊び”を邪魔されるのが大嫌いなの!」

「無茶苦茶すぎぬか!?」

「そういう奴なのよ!! 副船長、居る!?」

「無論。凍らせるか?」

「ええ、そうね……そうし……あれ?」

 

 

 既にスタンバイしていたフィロアに声をかけ、海を凍らせてもらってから変身しようとしたラヴィだが、マデュラの殺気が収まっていっている事に気付き、首を傾げる。

 

 

「……なんで?? いつものあの子ならもうキレて変身してる頃なのに」

「た、助かったのか……?」

「……マデュラに何があったんだ……?」

「こっちが聞きたいわよ……」

 

 

 

 ラヴィはフィロアと目を合わせて共に頷き、マデュラの私室に戻ってみた。

 すると──。

 

 

 

「見ろ、ケンタウロスだぜ!」

「あはは、逆だー」

「「…………」」

「うはは! 苦情は受け付けねえよ!」

 

 

 

 ──なんと、フランキーが変形……いや、“変体”してマデュラをあやしていた。

 まさかのフランキー大活躍である。

 

 

「ん? おう、“大巌竜”に“熾凍龍”! てめェらの船長の機嫌ぐらいてめェらでなおしやがれ! “世界最悪”が聞いて呆れるぜ!?」

「……や、やるわねアンタ……」

「ただの変態ではなかったのか……」

「ねー、フランキー! 他にはないのー?」

「ん、そうだなァ。おれァ自分で自分を改造したサイボーグなんだが、背中には手が届かなくてよ! 背中は生身なんだ!」

「なはは、面白ーい!」

 

 

 

 ウォーターセブンの裏の顔、フランキー。

 数多の無法者たちを舎弟にしてきた面倒見の良さは、伊達ではない。

 

 

 これを見たラヴィとフィロアは決意した。

 フランキーの言う通り、船長の機嫌ぐらいすぐになおせるようになろう、と。

 

 

 というかそうしないと世界が滅びる。

 

 

 

 そして、何とか陣形を立て直した蛇王海賊団の艦隊は、再びエニエス・ロビーへと向かう。

 フランキーのおかげでマデュラは満面の笑みを浮かべており、道中で問題が起きる事は無さそうである──。

 

 

 

「お前ら、よく今まで航海を続けていられたな……?」

「うぐ、返す言葉もない……」

「マデュラの奴も、さすがに仲間を殺しはしないからね。適度に暴れさせて定期的にストレスを発散させてきたのよ。その度に島がいくつか消えたけど」

「おいおい……」

 

 

 尚、ラヴィたちは船長を全く制御できていない現状をフランキーに呆れられるという屈辱に見舞われた。

 世界最悪の海賊団と言っても、現実はこんなものなのである。

 

 四皇の一角であるビッグ・マム海賊団も、船長が暴れ出すと誰も止められないのだから、似たようなものだったりするが……。




そんな感じで、結成一年という蛇王海賊団の“若さ”を描写してみました。
麦わらの一味も、ルフィを制御できてないので似たようなものな気がします。


というか書いてるうちに何故かマデュラがキレかけてました(:3_ヽ)_


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エニエス・ロビー②

ウォーターセブンとエニエス・ロビーの間から始まると、サブタイトルどうするか非常に悩む。



 

 ゲストとしてフランキーを迎え、エニエス・ロビーへと向かう蛇王海賊団。

 危うくマデュラが暴走しかけるというハプニングこそあったものの、まさかのフランキー大活躍で事なきを得た彼らは……。

 

 

「おーい、副船長。アレが例のアクア・ラグナって奴じゃあねえのかい?」

「む。なるほど、あのウォーターセブンの街を飲み込む程の規模、というのもあながち間違いでは無さそうだな。我らには何の関係も無いが」

「ま、そらな。ところで船長は?」

「部屋で寝ている。着いたら起こして、との事だ」

「そうかいそうかい。ま、いつものこったな」

 

 

 ウォーターセブンの風物詩、アクア・ラグナという高潮を前に、のんびりとそんな会話をしていた。

 しかし、いくら彼らでも船が飲み込まれると溺れてしまうので、しっかりと対処はする。

 

 

 おお~、と呑気にアクア・ラグナを眺めているクルーたちを集め、揃って「うがっ」と口を大きく開けるフィロアたち。

 

 

 そして──。

 

 

「発射」

「「ガァッ!!」」

 

 

 人獣型に変身して放たれたモンスター軍団の一斉ブレスにより、アクア・ラグナは呆気なく消し飛んだ。

 普通にオーバーキルであり、わざわざ並んで撃たなくても充分だったのだが、万が一があってはいけない。

 

 能力者が非常に多い海賊団なので、こういった水害は地味に厄介なのだ。

 

 

「……やっぱりすげェな。災害もなんのそのってか」

「今更じゃな。災害だろうが人間だろうが、こやつらを止められる存在などあるものか」

 

 

 愛するウォーターセブンを悩ませてきたアクア・ラグナの脅威をよく知るフランキーは、息を吐くように突破する蛇王海賊団のトンデモぶりを、改めて実感した。

 そんな彼を見てハンコックが呆れているが、海賊女帝として世界を知る彼女と、所詮一つの島の裏を牛耳るチンピラでしかないフランキーでは、住んでいる世界が違うので仕方がない。

 

 

 そんなこんなで快適な船旅が続き、ゆらゆらと海を進むことしばらく。

 常に真昼が続いているという“不夜島”にして、世界政府の玄関とも呼ばれる司法の島、エニエス・ロビーがその姿を現した。

 

 

 士気を上げる蛇王海賊団と、静かに島を眺めるフランキー。

 マデュラの私室がある方向をチラチラと見ながら髪をいじるハンコック。

 

 

 

「ん? おい、もうすっかり荒れ果ててるじゃねえか」

「む、そうじゃな。天彗龍が暴れ回ったのか?」

「否だ。ファルクは命じられた以上の事はしない。大方、アトラの奴が船の材料を漁っていったのだろう」

「ああ……“閣螳螂”か。なるほどなァ。ホント、何から何までスケールがデケェ海賊団だ……」

 

 

 静かに闘志を燃やすフランキーだが、肝心のエニエス・ロビーが既にボロボロであり、明らかに荒らされた後であった。

 ハンコックもそれを見て首を傾げるが、二人に近付いてきたガロアによって答えが明かされる。

 

 

 半ば無理やり先行していった“閣螳螂”アトラこそがこの惨状の犯人であり、「宣戦布告」しに行った天彗龍では彼女を止められなかったのだろう、とも。

 

 

 まるで平原のように何もないエニエス・ロビーを見て、なんとも言えない気持ちになるフランキー。

 勝手な事をしたらまたマデュラが怒るのではないか、と心配になるハンコック。

 

 

 そんな二人を余所に、一人の青年が寝ぼけ眼のマデュラを背負って現れた。

 

 

 

「おーい、ガロアさんよ。船長の奴、全っ然起きやしねえんだけど」

「ネルか。心配いらん、じきに起きる」

 

 

 

 “滅尽龍”ネル、懸賞金4億8000万ベリー。

 元賞金稼ぎで、天竜人大虐殺事件により跳ね上がったマデュラの懸賞金を狙って戦いを挑むも、呆気なく返り討ちにされたという過去を持つ。

 しかし、やたらとタフで回復も異常に早い事に興味を持ったマデュラにスカウトされ、仲間に加わった。

 

 

 ──ガロアとネルがそんなやり取りをしていると、まるでそれを聞いていたかのようなタイミングでマデュラが目を覚ました。

 

 

「……んぅ。おはよぉ」

「おはようございます、マデュラ様。御覧の通り、無事エニエス・ロビーに到着しました」

「おはよう、マデュラさん。先行してった“閣螳螂”が派手に暴れちまったみてェだが、いいのか?」

「んー……」

 

 

 ヨボヨボとネルの背中から降りたマデュラは、目をごしごしと擦って眠気を覚まし、エニエス・ロビーの惨状を確認する。

 

 

「……わぁ、建物が何もないや。でも、奥にある司法の塔? アレは残ってるしいいんじゃない」

「あ、いいのか」

「ほっ……」

 

 

 怒り出す事は無さそうで、ホッと息を吐くフランキーとハンコック。

 そんな二人をサラッとスルーし、ネルが問う。

 

 

「さて、船長。オーダーは?」

「アトラとファルクを回収して、CP9の長官さんを皆で探してきて。あと、映像電伝虫で撮ろうか。レイリーに頼んでシャボンディ諸島で放映する予定だから」

「了解! 鬼ごっこだな!」

「承知しました。モンスターズを総動員して捜索にあたります。冥王への連絡は?」

「予めしてあるから、もうあっちは準備できてると思うよー」

「ハッ!! では、行ってまいります」

 

 

 

 スパンダムが聞けば間違いなく悲鳴を上げるだろう、地獄の鬼ごっこが始まった瞬間である。

 部下であるルッチが殺された以上、その上司であるスパンダムもそうなる可能性が非常に高いし。

 

 

「CP9……道中で聞いたが、アイスバーグの野郎を殺そうとしやがった奴ららしいな」

「世界政府が密かに保有する諜報機関じゃな。存在するはずの無い九番目のサイファーポール、とかいう」

「そうそう。たしか、今の長官さんは“スパンダム”っていう名前だってジエンが言ってたよ」

「ああ!? スパンダムゥ!?」

「ん? フランキー、知ってるの?」

「知ってるも何も、おれの恩人を……トムさんを連れていきやがった野郎だ!! クソが……アイツ、まだ諦めてなかったのか!!」

「…………へえ、そう」

 

 

 スパンダムにとって更に不幸なことに、過去に因縁があるフランキーが、アイスバーグと同様マデュラに気に入られてしまい、死亡率が格段に跳ね上がってしまった。

 まあ、彼の自業自得と言えばそこまでなのだが。

 

 

「こうしちゃいられねえ!! マデュラさん、スパンダの野郎だけはおれがこの手でとっ捕まえてェ!」

「……ん、煮るなり焼くなりお好きなように。居るとしたらたぶんあの塔じゃない?」

「おう、すまねェ!! 行ってくるぜ!」

 

 敵の正体を知るや否や、フランキーは船を飛び出して行った。

 エニエス・ロビーはそこそこ広いので、歩きだとモンスター軍団にはまず追いつけないだろうが、まぁファルクあたりが気を利かせてくれるだろう。

 

 

 四龍王を含め、蛇王海賊団の大半が島に侵入していったため、極端に人気が少なくなった船上。

 とりあえず、暇なマデュラはクック先生を呼んだ。

 

 

「おーい、先生ー」

「呼んだかい?」

「ぬおっ!? そなた、どこから!?」

「あ、びっくりさせたかな? ごめんね、ハンコックちゃん」

「ハンコックちゃん……」

 

 

 どこからともなく現れたクックに驚くハンコック。

 彼は基本的に前線には出向かないため、こういう時はだいたい船のどこかに居るのである。

 

 まあそれはさておき。

 

 

「ねえねえ、先生」

「はいはい。なんだい、マデュラちゃん」

「あのおっきな扉? アレなに?」

「ああ、向こうに見えているアレじゃな」

「アレはね、“正義の門”さ。エニエス・ロビー、インペルダウン、海軍本部……世界政府の三大機関にそれぞれ一つずつあって、アレを開閉する事で政府は海流をコントロールしているんだ」

「ああ、なんかそんな話を聞いた事あるかも」

「うん、前に話したからね」

「そうだっけ」

 

 

 どうやら、マデュラはエニエス・ロビーの背後にそびえる巨大な“正義の門”に興味を示したらしい。

 しかし、クックが言う通り、アレに関してマデュラは何度も同じ事を聞いていたりする。

 

 これだからラヴィに鳥頭と言われてしまうのだ。

 

 

「アレを壊したら、世界政府は困る? あ、映像電伝虫つけておこ」

「そうだね。とても困ると思うよ。やるかい?」

「サラッととんでもない事言いおるな、そなたら」

 

 

 致し方なくツッコミに回るハンコック。

 マデュラもクックもどちらかと言うとボケ役なのだ。

 

 

 そして──。

 

 

 

「えーと、テステス。ねえねえ、聞こえてる?」

『こちらレイリー。聞こえているよ。そっちは今、エニエス・ロビーか? 見事に破壊されているが』

「うん。えっとね、私のお気に入りに手を出してくれたCP9の長官を捕まえたら、あの“正義の門”とかいうヤツをぶっ壊そうと思うの」

『……ハハハ、そうなれば政府も黙っていないだろうな。戦争でも起こすつもりか?』

「それもいいなぁ。あ、せっかくだし政府の“三大機関”ってやつ、全部潰しちゃおうかな。インペルダウンは確か凪の帯にあるみたいだし、久しぶりに里帰りもできそう」

『……本気か? 言われた通り、こちらで映像を映し出しているが、既に凄まじい反響だぞ。当然、海軍も君の動きを確認しているだろう』

「ハンコック曰く、とっくに私の邪魔をしようと集まってるみたいだし、どうでもいいよ」

『ふむ、そうか』

 

 

 エニエス・ロビーの様子をシャボンディ諸島にて映像電伝虫を流しつつ、軽く語るマデュラ。

 レイリーが言う通りこれを察知している海軍は、その実ものすごく頭を抱えていたりする。

 

 

 何故ならば、王下七武海への加入を望む“黒ひげ”が、自身がかつて所属していた白ひげ海賊団の二番隊隊長、ポートガス・D・エースを捕まえると断言したからだ。

 仮にそれが実現してしまえば、海軍は世界最強の海賊と名高い四皇“白ひげ”と、世界最悪の海賊と名高い“蛇王龍”の二人を同時に相手にする羽目になりかねない。

 

 

 老衰と病により激しく弱体化している白ひげ単体ならばまだ海軍にも勝機はある。

 “不死鳥マルコ”や、“ダイヤモンド・ジョズ”を含む隊長格を大将二人で抑え、残った一人の大将を白ひげにぶつければ、策を講じれば十分に対処できるだろう。

 

 

 しかし、蛇王海賊団はダメだ。

 英雄ガープとセンゴク元帥……伝説の海兵二人が全盛期であったならば、何とかできたかもしれないが、老いによって力を落としている現在では勝ち目はほぼ無いと言ってもいい。

 

 

 白ひげ海賊団と蛇王海賊団を同時に、となると尚更無理である。

 実質三つ巴の戦いとなる可能性が高いが、それでも最終的に勝つのは十中八九、蛇王海賊団だろう。

 

 

 

 ここで更に海軍を悩ませる出来事が。

 

 

「うおぉぉ!! おれァまだ死にたくねえェェ!!」

 

 

 蛇王海賊団によるエニエス・ロビー襲撃という悪夢に見舞われたCP9司令長官スパンダムが錯乱し、青キジから借り受けたゴールデン電伝虫を連打したのである。

 

 ビイィィ!! と鳴り響く、海軍本部のシルバー電伝虫。

 頭と胃が痛むセンゴク元帥。

 

 

 

 

「……見つけたぜ、スパンダァ!!」

「ヒィッ!?」

 

 

 

 ついでに。

 事情を聞いた天彗龍ファルクによって司法の塔に送り届けられたフランキーが、狂ったようにゴールデン電伝虫を連打するスパンダムを捕捉した。

 

 

 CP9の生き残りはどうしているのか?

 それはもちろん、龍の軍団に追いかけられて半泣き状態である。




原作と微妙に異なる点。
黒ひげがルフィではなくエースを狙っている。
(原作ではルフィを仕留めに行こうとしたところをエースに見つかり、そのまま“バナロ島の決闘”が起きた)

仮にあのままエースに見つからずにルフィを仕留められていたら、黒ひげはどう動くつもりだったんですかね。
インペルダウンの囚人たちを連れて白ひげと戦争?


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エニエス・ロビー③

某祖龍さんの小説が復活していたので更新。
ワンピースに限らず、モンハンクロスオーバーSSがもっと増えたら嬉しいな。
ヒロアカも割といけそうですよね。私はよく知らないので書けませんけど。


 

 

 蛇王海賊団によるエニエス・ロビー襲撃。

 その様子を映像電伝虫で放映するという酷い悪夢に見舞われた海軍本部のセンゴク元帥は、遂に心労のあまり倒れてしまった。

 

 これにはさすがの三大将も合掌。

 特に、スパンダムにバスターコールの発動権限を貸し与えた青キジは、尋常ではない居心地の悪さを覚えた。

 

 何せ、センゴク元帥が倒れる決定打となったのが、エニエス・ロビーで発動してしまったバスターコールなのだ。

 

 

 傍若無人に暴れ回る蛇王海賊団。

 そこに中将五人を含めた軍艦十隻などを突っ込めばどうなるか。

 

 答えは簡単。

 どう足掻いても無駄死にである。

 蛇王海賊団は軍艦をちょろっと派遣した程度でどうにかできるような相手ではないのだ。

 

 しかし、バスターコールが発動してしまった事は間違いなく、これを無視するというのはまずい。

 エニエス・ロビーがあくまで世界政府に所属する機関だという事も問題だ。

 

 かの地を見捨てたとなると、海軍と世界政府の間で軋轢が生じ、今後の活動に多大な影響が出る恐れがある。

 

 

 うなされるセンゴク元帥と、頭を抱える海軍上層部。

 彼らの選択は──。

 

 

 

 

 ここで、視点をエニエス・ロビーへ戻そう。

 

 

 先行した閣螳螂により破壊し尽くされたこの地は、生き残った役人や衛兵たちが必死に蛇王海賊団の怪物たちから逃げ続ける地獄と化し、司法の塔に立て籠っていたCP9司令長官スパンダムもまた、ゴールデン電伝虫を連打しているうちにフランキーに捕まった。

 

 

 世界政府の旗もとっくに燃やされており、エニエス・ロビーはもはや完全にその機能を失ったと言っていいだろう。

 

 

 

「そういうわけで、私たちの勝ちでーす。いえーい」

「たかだか諜報機関と役人ごときに、ぼくたちが負けるはずもない。それでも、ここまで呆気ないといささかつまらないね」

「だねえ、先生。もっと悪あがきしてくれるかと期待してたのに」

 

 

 映像電伝虫を構えつつ、そんな事を宣うマデュラ。

 しかし、世界政府の玄関とも言われるこの地に、まさか攻め入る海賊がいる、などとは誰も思わない。

 完全に弱いものいじめをしておいて、よく言いよるわこやつ……と、ちょっと呆れるハンコックなのだった。

 

 

 そして、いつまでも船の上から映像を流していたのではつまらない、と判断したマデュラがテクテクと歩いて船を出ていき、燃え盛るエニエス・ロビーの各所を回り始めた。

 クックとハンコックもそれに帯同し、マデュラが飽きてしまわないように話を繋げる。

 

 シャボンディ諸島でそれを見せられた人々は一様に絶望し、一つの時代の終焉を予感していたりするのだが、今は関係の無い話だ。

 

 

 そんなマデュラたちの前に、何やら気を失っている二人の巨人を運ぶ蛇王海賊団の下っ端たちが現れた。

 一応言っておくが、彼らは皆、非能力者である。

 いくら蛇王海賊団でも、全員が能力者というわけではないのだ。

 しかし、主にモンスターズから提供される「龍の素材」から作られる武具で武装しており、そんじょそこらの賞金首が相手ならば普通に戦えてしまうぐらいには強かったりする。

 

 

「船長。この巨人ども、どうやら元海賊らしく。ドリーとブロギーという船長二人を牢獄から助けるために世界政府と取引した、との事で。五十年も前からここで戦っているそうです」

「へえ、そうなんだ」

「……ん? ドリーとブロギー? 五十年前……?」

「む? どうしたのじゃクック。知っておるのか?」

 

 

 オイモとカーシー。

 世界政府と取引をし、尊敬する二人の船長を助けるために戦ってきたのだが、実は騙されているという哀れな戦士コンビである。

 

 マデュラはそんな二人に対し興味無さげだが、どうやらクックはそうでもないらしく。

 ドリーとブロギーという名に覚えがあるのか、しきりに首を傾げている。

 

 

「……いや。たしか、リトルガーデンという島に二人の屈強な巨人が居てね。彼らの名前が、ドリーとブロギー……だったはずなのだけど」

「ふむ。ならば、こやつらは騙されておるのではないか? 卑劣な世界政府の事じゃ、それぐらいは平気でするであろう」

「その可能性はあるね。どうだろう、マデュラちゃん。この二人は殺さずに解放してやってくれないか」

「ん。先生が言うならそれでいいよ。とりあえずウォーターセブンに連れていこうか。お前ら、そいつらを船に乗せておいて」

「「了解、船長!」」

 

 

 クック先生、見事なファインプレー。

 危うく島と一緒に消し飛ぶところだったオイモとカーシーは、なんとか命拾いした。

 

 

 

 それからもマデュラはクックとハンコックを連れて島を回っていき、時に逃げる役人を六式で仕留めて遊んだり、瓦礫の山を積み木のように組み立てて遊んでみたりした。

 ミニチュア蛇王龍の完成である。ただしミニチュアと言いつつ普通にデカい。

 

 尚、マデュラが六式を使える理由は、彼女がまだ賞金稼ぎをしていた頃にノリで「本部海兵百人組手」というものをやり、その時に当たった本部中将が使っていたものを“見て盗んだ”からである。

 

 

 あの頃はまだセンゴク元帥も元気だったのだが……。

 

 

 マデュラ曰く、空中を自在に移動出来る“月歩”や、刃物が不要となる“嵐脚”、拳銃の代わりになる“飛ぶ指銃・撥”は特に便利だとの事で、なかなかのお気に入りらしい。

 

 

 そんなこんなでのんびりと進む彼女らも、とうとう司法の塔に到着。

 エニエス・ロビー本島と司法の塔を結ぶ跳ね橋は下ろされていないが、“閣螳螂”アトラが瓦礫を集めて橋を作っていたので、特に問題は無かった。

 フィロアがやったのか、塔の周囲を流れる滝は凍っており、足場としては十分だ。

 

 

「おう、マデュラさん。遅かったな」

「や、フランキー。それが長官さん?」

「その通りだ。まったく、この野郎……ずっと泣きわめいてばかりで話がまるで通じやしねえ。しかも、厄介な事に軍艦を呼び寄せやがったらしい」

「ふむ。ゴールデン電伝虫じゃな。理由はわからんが、大将からバスターコールの発動権限を与えられておったのか」

「お? 軍艦来るの? どれぐらい? たくさん来る? 楽しめる?」

「……すげェワクワクしてんな、マデュラさん。そこは普通、焦るところだろうに」

 

 

 最上階では、涙なのか鼻水なのかよくわからない液体で顔をぐしゃぐしゃに汚したスパンダムが面白い体勢でノビており、気が晴れたのかフランキーが自室のように寛いでいた。

 

 しかし、何やら軍艦が大量に来るらしい。

 普通ならばそれを聞けば急いで引き返すところなのだが、逃げるどころか迎え撃つ気満々なのがマデュラという人物である。

 そんな彼女を見て、フランキーもまた、仕方ねえなとため息を吐くばかりで、特に焦った様子はない。

 

 

「よーし、なら軍艦が来る前に“正義の門”って奴をぶっ壊そうかー」

「は? あの馬鹿でけえ門をか!?」

「そうらしいぞ。フランキー、避難しておいた方が良いかもしれん」

「お、おう!」

「ぼくも逃げておかなくちゃね。マデュラちゃんに潰されてしまう。映像電伝虫も持っていくよ?」

「うんー」

 

 

 しかし、アホみたいに巨大な“正義の門”を壊すという発言には、さすがのフランキーもびっくり。

 とても人間が壊せるような物には見えないが、あのマデュラが言うからには壊せてしまうのだろう。

 

 フランキーは慌ててハンコックを連れて退散し、気絶しているスパンダムをクックが持ち去る。

 

 

 

 クルーたちが巻き込まれないようにしばらく時間を置いてから──。

 

 

 

「うぅ……シャアァァ!!」

 

 

 

 マデュラが変身した。

 当然のように崩落する塔。

 

 

 ちょっと狭いので島を囲むように身体を動かしてとぐろを巻き、凍った滝をも大地として活用する。

 こうでもしないと蛇王龍の身体は収まりきらないのだ。

 

 

 映像電伝虫の向こうで「世界の終わりだ……」と絶望する人々。

 バスターコールが発動したエニエス・ロビーへと向かう道中で、ターゲットの正体が蛇王龍だと聞かされ、撤退を具申する中将ズ。無理もない。

 

 

 そんな混乱が起こっている事など露知らず、蛇王龍は無慈悲に深呼吸。

 

 

 

 そして──。

 

 

 

「ガァッ!!」

 

 

 

 青白い閃光が放たれ、“正義の門”に着弾、大爆発。

 あまりにも巨大な門は、しかしブレスの一撃で大穴が開き、バランスを失った事でガラガラと崩れ落ちた。

 

 

 ブレスの余波である衝撃がエニエス・ロビーを襲い、巨大な台風に見舞われているかのような暴風が吹き荒れた。

 フランキーの大事な海パンと、対マデュラ用に穿いているズボンがどこかに飛んでしまわない事を祈るのみである。

 

 

 

「よっし。さあ、海軍どもー。来るならこーい!」

 

 

 

 バスターコールによりそこそこの規模の喧嘩ができそうと聞いて、ワクワクが止まらないマデュラ。

 果たして、どう足掻いても絶望しかないこの地に、中将ズ率いる十隻の軍艦は、来るのだろうか……。




シャボンディ諸島の人々
「もうダメだぁ……おしまいだぁ……!」


シャボンディ諸島の記者たち
「特報、特報です!! エニエス・ロビーが……いや、正義の門が! 蛇王海賊団に破壊されました!」

元気だなお前ら。


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エニエス・ロビー④ 完

思ったけど、エニエス・ロビーも含めたらウォーターセブン編案の定クソ長いな。
そろそろ終わらせないと。

今回かなりギャグ風味です。


 

 

 エニエス・ロビーにて発動されたバスターコール。

 これに対応するため、十隻の軍艦と選りすぐりの海兵たちを率いて五人の中将が本部を発った。

 

 が、彼らは今。

 凄まじい混乱の最中にあった。

 

 

「本部、応答願う!! 相手があの蛇王龍というのは間違いないのか!?」

『……間違いない。シャボンディ諸島で放映されている映像電伝虫を見た者からの報告では、正義の門も蛇王龍によって破壊されたらしい』

「んなァ!? そ、そんな馬鹿な!!」

「ちゅ、中将殿!! 正義の門があるはずの場所に大量の瓦礫が散乱しています!!」

「……て、撤退だ!! 本部、撤退の許可を!!」

『それは……あっ、赤犬さん!?』

「えっ」

 

 

 ご覧の有様である。

 バスターコールが発令されたからには、心を鬼にして攻撃目標を砲撃しまくり、全てを灰と化すのが本部中将であるモモンガの役目。

 しかし、相手が蛇王龍となると話は別だ。

 

 

 アレに砲撃なんぞ効きやしないし、むしろ彼女の怒りを買う恐れがある。

 そうなれば間違いなく生きては帰れない。

 

 

 正直に言うと……命がも゛ったいだい!!

 

 

 十隻の軍艦に乗っている海兵一人一人に彼らの帰りを待つ家族がおり、海兵たちはそんな家族を養うために日々の任務に励んでいるのだ。

 蛇王龍が相手では確実に死んでしまう上、たった十隻の軍艦ごときでは焼け石に水でしかない。

 

 無駄死にという言葉がこれ以上似合う状況は、そうそう無いだろう。

 

 

 

 そんなモモンガに迫る、電伝虫越しの大将“赤犬”。

 もう嫌な予感しかしない。

 

 

『おどれェ……海賊相手に尻尾巻いて逃げるっちゅうんか!! あァ!? それでも中将か貴様ァ!!』

「し、しかしサカズキ大将!! たった十隻の軍艦と、私を含めても僅か五人の中将では、とても……!」

『おいおい待ちなさいよバカズキ。中将の言う通りだ。今更エニエス・ロビーに行ったって何ができる?』

『横から割り込んでくるな、クザン!! だぁれがバカズキじゃァ!!』

「クザン大将まで!?」

 

 

 案の定、大将“赤犬”ことサカズキに怒鳴られてしまったモモンガだが、割り込んできた大将“青キジ”ことクザンのおかげで何とか無茶振りを回避できた……かもしれない。

 

 しかし、元はと言えばクザンがスパンダムにゴールデン電伝虫を貸し与えてしまったのが元凶である。

 

『大体、偉そうに言うちょるが……貴様が役人なんぞに権限を与えた結果がこの有様じゃろうが!!』

『いやー、それに関してはホント悪い事したわ。でも、まさか蛇王龍が来るなんて思わないでしょ』

『開き直るなァ!!』

『お~~……こんなところで喧嘩をしても仕方がないでしょうに。まあ、わっしはクザンの言う通りだとは思うがねェ。相手が悪すぎるよォ~』

『ぬ……ボルサリーノ、貴様まで!!』

「あの……申し上げにくいのですが、三大将勢揃いで口喧嘩しないで頂けませんか……」

『『『…………』』』

 

 

 向こうも混乱しているのだろうか。

 サカズキとクザンだけでなく、遂に三大将最後の一人である“黄猿”ことボルサリーノまで話に加わってきた。

 

 彼らが集まって電伝虫を取り合っている様を想像すると、なんだか少し笑える。

 

 

「ところで、センゴク元帥は……? やはり、最終的な判断は元帥に──」

『あー……センゴクさんな、心労で倒れたんだわ』

「え!?」

『……蛇が、蛇が来る……とうなされちょる』

「えェー……それでは、私たちはどうすれば……」

『そうだねェ~。とりあえず、現場で判断するしかないでしょう。時に中将。正義の門が破壊されたと聞いているけどォ~、通れるのかい~?』

「あ……それが……」

 

 

 なんだかんだ言ってやはり三大将は頼りになる。

 というか、こういう時はボルサリーノの冷静な判断がとても助かる。

 ちょっと何を考えているのか分からないのが難点だが、彼は私情を持ち込まないのでどんな時でも大体正しい判断を下してくれるのだ。

 

 

 言われた通り、正義の門の残骸を見るモモンガ。

 先程部下も報告してきたが、大量の瓦礫で道が塞がってしまっており、巨大な軍艦が通れる程のスペースは無い。

 

 ……思わずガッツポーズ。

 

 

「瓦礫が邪魔で、通れません!」

『……貴様、心なしか元気になっちょらんか?』

「い、いえ!! まさか!!」

『まー、そういう事なら引き返す他ないでしょ。大丈夫、政府にはうまーく報告しておく』

「は……ハッ!!」

 

 

 やったぜ。

 蛇王龍との戦闘を回避できる事になり、笑顔をこぼすモモンガ。

 

 しかし、頼りになるはずのボルサリーノが、いらん事を言い出す。

 

 

『蛇王龍が怒りそうだねェ~。あの子の事だ、軍艦と戦えると思って、今頃ワクワクして待ってるんじゃないのかい~?』

「……へ」

『そいつは……有り得るな』

『しかもエニエス・ロビーはこっち……海軍本部にかなり近い。怒った勢いで攻めてくる、なんて事は──』

「え、え?」

『……ありそうじゃのォ』

 

 

 サー……と、顔を青くするモモンガ。

 鮮明に想像できてしまったからだ。

 

 何を隠そう、“蛇王龍”マデュラは元賞金稼ぎ。

 何度も換金をしに本部を訪れていた彼女とは、三大将もモモンガも、他の中将たちも、全員面識がある。

 

 

 蛇王龍の暴走列車っぷりは、彼らもよく知っている。

 あの勢いで本部に攻めてこられたら……。

 

 

『……中将。健闘を祈るッ!!』

「えーッ!?」

『悪いけどねぇ~。そういう事だよォ~』

「そ、そんな!? 待ってください黄猿さん!」

『安心せい。骨は拾ってやる』

「見捨てる気満々じゃないですか赤犬さん!!」

 

 

 全力で抗議するモモンガ。

 しかし、三大将はバスターコールに参加してしまった不運な中将全員を見捨てる気満々である。

 無論、モモンガ自身も例外ではない。

 

 

「大体、軍艦が通れな──」

『ガチャ。ツー……ツー……』

「切られたッ!?」

 

 

 悲しいけれど、そういう事になった。

 

 

 もうこうなったら、絶対に生き延びて大将たち全員ぶん殴ってやる!!

 モモンガは誓った。

 ……ヤケになったとも言う。

 

 

 

 その後、彼らはせこせこと正義の門だった瓦礫を撤去し、充分なスペースを確保してから航行を再開。

 殺される前に避難するため、予め救命ボートをしこたま用意してから、エニエス・ロビーへ向けて砲撃を開始した。

 

 

 

 ──が。

 

 

 

 

 オオォオオォッ!!

 

 

 

「えーッ!?」

 

 

 軍艦からでも普通に見えてしまっている蛇王龍の巨体が何やら仰け反ったかと思えば、すぐさま放たれた爆音の咆哮によって、撃った砲弾が全て落とされた。

 

 まさかの声だけで砲撃無力化。

 

 

 

 ──化け物すぎる。

 五人の中将たちを含めた、全ての海兵たちの心が一つになった瞬間である。

 

 

 

 

 そして……。

 

 

「あっ、しぬ。た、たたた……退避ーーッ!!」

 

 

 

 蛇王龍の巨大な尻尾でなぎ払われ、木の葉のようにすっぱり斬れる軍艦。

 どうやらあのバカでかい胴体……胴体? で、六式の“嵐脚”を放ったらしい。

 

 

(どこまでが胴体でどこからが尻尾だ……)

 

 

 哀れ、軍艦は玩具のように爆発四散。

 小人のように吹き飛ばされ、ザブーンと頭から海にダイブするモモンガは、そんな果てしなくどうでもいい事を考えながら、沈んでいく……。

 

 

 

 息を必死に止めながら、彼は見た。

 蛇王龍っぽいシルエットが縮んでいき、人型になってどこかへ歩き去っていく姿を。水が目に入って痛い。

 

 

 

「ぶはぁ!? やばい死ぬ!!」

「ちゅ、中将殿!? ご無事で!」

「ああ!! 総員、急いで逃げろ!! 泳いでとにかく遠くへッ!! エニエス・ロビーが、吹き飛ぶぞ!! 能力者には手を貸してやれ!」

 

 

 

 燃え盛るエニエス・ロビーの向こうで、無数の何かがキラリと光る。

 蛇王海賊団と言えば、龍の軍団。

 即ち、あの光は奴らのブレス攻撃の前兆に違いない。

 

 

 モモンガたち海兵は、必死の思いで泳いで逃げる。

 こんなところで無駄死になんてしてたまるか、と。

 

 

「「ぬおおおおおッ!!」」

 

 

 

 カッ、と光る背後。

 振り向きません、死ぬまでは。

 

 

「「ぬわーーーー!!」」

 

 

 

 蛇王海賊団の一斉ブレスにより、島ごと吹き飛ぶエニエス・ロビー。

 人型に戻っていると思われる蛇王龍と、蛇王龍に匹敵する巨体を誇る大巌竜、そして熔山龍が変身していない事だけは幸いだった……。

 だって変身してたら遠くからでも見えるし。

 

 

 

 こうして、世界政府が誇る三大機関の一つ。

 エニエス・ロビーは、蛇王海賊団によって、島ごと消滅するという結末を迎えたのである──。

 

 

 

 尚、スパンダムのペットである“象剣ファンクフリード”は、珍獣好きなマデュラに玩具兼非常食として気に入られ、蛇王海賊団の旗艦たる巨大ガレオン船で震えている。

 果たして、彼は幸か不幸か……。

 

 

 まあ、蛇王海賊団にも剣士は居るので、マデュラがその人物にファンクフリードを贈与する可能性はある。

 普通にオヤツ代わりに食われる可能性もあるが。




そんなに書くことが無いので、エニエス・ロビーの最後はかなりあっさりになりました。
次話からウォーターセブンに戻り、麦わらとか麦わらとか麦わらとかと一悶着起こしつつウォーターセブン編も終わる予定です。


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ウォーターセブン⑦

CP9がロビンと接触する前に潰されたので、当然ロビンは麦わらの一味と終始行動を共にしています。
ルフィとウソップの決闘も見届けました。


 水の都ウォーターセブンに到着し、大切な“仲間”とも言える愛船、ゴーイングメリー号を修理してもらうためガレーラカンパニーの造船所へ向かったルフィたち。

 しかしそこで「もうメリー号は直せない」と船大工たちから言われてしまい、おまけに2億ベリーという大金を運んでいたクルー、ウソップが攫われてしまった。

 

 

 まあそんな感じで色々あり、ウソップを散々に痛めつけたフランキー一家を強襲したルフィたちは、そこでなんとあの蛇王海賊団の海賊旗を発見してしまう。

 

 

 待て、その海賊旗にだけは絶対に手を出すな!! と必死になって止めにかかるフランキー一家。

 それを見たルフィたちは、とんでもない勘違いをしてしまう……。

 

 

 

「……蛇王海賊団の奴ら、まだ帰ってこねェのか」

「フランキーって野郎だけを連れていったって事は、そいつも海賊団の幹部なのか?」

「おれが知るかよクソマリモ。おいチョッパー、お前いつまでへこんでんだ」

「だって、ウソップは酷い怪我してるんだぞ!? 一味を抜けたって言っても、やっぱりおれは医者として……」

「……ウソップの事に関しては諦めろ。一味を抜けるって言っちまった以上、お前の施しは絶対に受けねえよ、あいつは。おれたちゃ遊びで海賊やってるわけじゃねェんだ。こういう事も、ある……」

「サンジ……」

 

 

 海賊旗を堂々とアジトに飾っていたフランキー一家が、蛇王海賊団の下部組織だと誤解しているのだ。現在進行形で。

 つまり、彼らは「蛇王海賊団が自分たちに喧嘩を売ってきた」と認識しているのである。

 

 尚、今まで乗ってきた船であるメリー号が航行不可能だと判断された事から、悩みに悩み抜いた末、船を乗り換える事をルフィが決定したのだが、それに異を唱えるウソップと喧嘩になり、最終的にウソップは一味を抜けてしまい、沈みかけのメリー号もまた、彼に譲られた。

 故に、帰るべき船を持たない今のルフィたちは、街のとある宿を拠点としている。

 

 

 船がない海賊団とか、マヌケだな。とマデュラに笑われそうである。というか絶対笑う。

 

 

 そんなこんなでどこか沈んだ雰囲気の彼らだが、街に出かけていたナミとロビンが持ち帰ってきた情報を聞き、気を取り直す。

 

 

 

「ルフィ!! 見て、この新聞!」

「どうしたナミ。ん、これは……」

「蛇王海賊団がエニエス・ロビーへ向かったらしい、というのは皆も知っての通りだけど、続報が入ったみたい。どうやら、蛇王龍が正義の門諸共エニエス・ロビーを破壊したらしいわね」

「その正義の門ってのは何だい、ロビンちゃん」

「とてつもなく巨大な門よ。世界政府の三大機関……海軍本部、大監獄インペルダウン。そして、司法の島エニエス・ロビー……それらの奥に一つずつあって、これを開閉する事で“世界政府専用の海流”をコントロールしているの」

「ははァ……つまりそいつが壊されたって事は……」

「ええ。世界政府にとって決して無視出来ない程のダメージとなる。そもそも、正義の門は人間が壊せるような大きさではないのだけど……さすが蛇王龍、といったところかしら」

「へェ、そんなにデケェのか?」

「見た方が早いけれど……巨人族が豆粒に見えるほど、と言えば分かりやすいかしら?」

「「デカっ!?」」

 

 

 記事にデカデカと書かれたビッグニュース。

 それを見て、蛇王海賊団と自分たちのスケールの違いを思い知るルフィたち。

 しかし、ウソップをボコボコにされた借りがある……と、彼らは思っている。

 

 実際はフランキー一家がただのファンだと知れば、どんな反応をするのだろうか。

 

 

「世界政府がどうとか、そんなもんはどうでもいいよ。とにかく、帰ってくるんだな?」

「……うん、そうだと思う」

「どうするんだ、ルフィ」

「決まってんだろ。売られた喧嘩は買う。仲間をボロボロにされて、黙っていられるか!」

「……正直に言えば、勝ち目は無いわよ。ルフィ」

「ロビンちゃん……」

 

 

 かつてアラバスタ王国で起きたガロアとのバトルが、ルフィの脳裏を過ぎる。

 あの時は、船長どころか幹部にすら手も足も出ず、まるで子供のようにあしらわれてしまった。

 

 

 しかし、だからこそルフィは必死になって考えてきた。

 仲間を誰も失わないように、誰も遠くへ行ってしまわないように、自分が強くなる……その方法を。

 

 

 そして、このウォーターセブンで“海列車”の存在を知り、アレの蒸気機関をヒントにして、遂に“ギア”という新たな技が完成したのだ。

 

 

「海岸に行くぞ。試してェ技もあんだ」

「「了解、船長」」

「……私はここで待ってる。1億ベリーを置きっぱなしにしておくわけにもいかないし」

「チョッパー、お前もここにいろ。船医が前線に出ちゃ助けられる命も助けらんねえだろ」

「ゾロ……でも、おれだって戦えるぞ!!」

「珍しくマリモの言う通りだ。ここで待っててくれよ、ドクター」

「サンジ……でも、でも……!! んんーー……!! わがっだ!!」

「ふふ……」

「あんたたち……絶対、絶対に生きて帰ってきなさいよ!! 死んだら許さないから!」

 

 

 思わず涙をこぼすナミとチョッパーを見て、ニッと笑顔を見せるルフィたち。

 どう考えても死亡フラグなのだが、彼らも薄々分かっているのかもしれない。

 

 

 蛇王海賊団と戦って、生きて帰れるわけがない、と。

 

 

 そして──。

 

 

「お前ら、行くぞォ!!」

「「おう!!」」

 

 

 

 右腕を空に突き上げ、彼らは歩き出す。

 落とし前を、つけるために。

 

 

 

 尚、重ね重ね言うが……勘違いである。

 フランキーがエニエス・ロビーに参戦した事で、無駄に下部組織っぽさが上がってしまっているが。

 

 

 奇しくも、ちょうどルフィたちが海岸に着いた頃に、蛇王海賊団の艦隊が水平線の彼方から姿を見せた。

 その数──

 

 ──21隻。地味に1隻増えてる。

 スパンダムを含めたCP9の面々と世界政府の役人たちを運ぶため、エニエス・ロビーとウォーターセブンの間を航行していた不運な海賊船を襲い、奪ったのである。

 

 思わぬところで旅が終わった顔も知れない海賊団は泣いていい。

 

 

「蛇王海賊団の海賊旗……」

「来たか」

「さすが“世界最悪の海賊団”ってか。ザコの数も相当なもんだろうな」

「怖気付いたのか、アホコック」

「バーカ。そんなんじゃねェよ」

 

 

 麦わらの一味は、人並み程度には蛇王海賊団に詳しいロビンから話を聞いており、何も知らなかったアラバスタの頃とは違うのだ。

 なのに喧嘩をしようと言うのだから、彼らの無鉄砲さは底無しと言えるかもしれない。

 

 

 こちらから見えているという事は当然あちらからも見えているわけで、ルフィたちは船上で慌ただしく動く無数の人影を遠目に確認した。

 

 やがて艦隊が海岸に到着し、ゆっくりと止まる。

 

 そして、数人が船から降りてきた。

 

 

「お前たち、ウォーターセブンの者ではないな? こんなところで待ち構えているとは、何のつもりだ。小僧ども」

 

 蛇王海賊団精鋭部隊“モンスターズ”隊員。

 “斬竜”バルド、懸賞金1億6500万ベリー。

 

「キレーなねーちゃんまで居っけど、歓迎しようっていう雰囲気じゃねえよな」

 

 同じく、“モンスターズ”隊員。

 “電竜”ゼクス、懸賞金1億6000万ベリー。

 

「こっちは腹減ってるだァ。邪魔しようってんなら踏みつぶすぞォ」

 

 同じく、“モンスターズ”隊員。

 “巨獣”ムート、懸賞金1億5800万ベリー。

 

「なんでボクまで……。まーた敵の治療をさせられるのかなぁ……」

 

 蛇王海賊団船医。

 “泡狐竜”ミツネ、懸賞金1億5000万ベリー。

 

 四人揃って自称“四天王”。

 尚、ミツネは勝手に数に加えられているだけである。

 

 

 最後に──。

 

 

「……貴様は、麦わらだったか? そうか。航海はなんとか続けられているようだな」

 

 

 ──モンスターズ総隊長、ガロア。

 

 

「お前……ガロアッ!!」

「あん時ルフィをボコボコにした奴まで一緒か」

「蛇王龍は……出てこないのね」

 

 かつて大敗を喫した強敵、ガロアの登場に、思わず叫ぶルフィ。

 アラバスタで鮮明なインパクトを残していった事もあり、しっかりとガロアの事を覚えていたサンジ。

 出てきた面々を確認し、蛇王龍がいない事に内心ホッとしているロビン。

 

 

(……あの野郎、できる)

 

 

 そして、腰に刀剣を佩いている“斬竜”バルドと視線をぶつけ、彼の強さをその身で感じる、ゾロ。

 

「生憎だが、マデュラ様は今お食事中でね。用件があるなら我々が聞こう」

「用件……? そんなもんじゃねェ。おれたちは、大事な仲間を痛めつけたお前らを、蛇王龍を! ぶっ飛ばしに来たんだ!!」

「「……なんだと?」」

 

 

 ルフィ、勘違いしたまま逆鱗に触れる。

 明らかにガロアたちの雰囲気が変わり、今にも戦闘が始まってしまいそうである。

 




麦わらの一味のお墓を建てるウラ……。
なんて事にならなければいいですね。(鼻ホジ)

ミツネはガンナー用のミツネシリーズ(タマミツネ素材の防具一式)を着た美人(♂)。
ご丁寧に胸に詰め物をしていますが、男の子です。

ついでに、ルフィは六式を見ていないので“剃”を使えず、原作よりも弱いです。一応ギアセカンドとギアサードは使えますが、ギアセカンドはホントに身体能力を上げるだけ。


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ウォーターセブン⑧ 完

結構麦わらの一味壊滅を期待する声が。
まあ是非もないね!

あ、本日二話目です。


 外で麦わらの一味とガロアたちが戦っているとは露知らず、のんびりと食事を楽しむマデュラ。

 最初はフランキーも居たのだが、「食べ方が汚い」としてラヴィとハンコックに追い出された。

 故に、マデュラと席を共にしているのも彼女たちのみである。

 

 クック? 彼は遠慮しました。

 ちなみに料理は全てラヴィのお手製だ。

 

 

「あぐあぐ。なんか、外がうるさいね」

「もう、マデュラ。口が汚れてるじゃない。幾つか知らない“声”も聞こえるし、どこかのバカが暴れているんでしょ。ガロアに任せておけば大丈夫よ」

「わらわが見てこようか?」

「……ごくん。いや、いいや。もう食べ終わるから自分で見てくる」

 

 食べ方が汚いとしてフランキーを追い出した割に、肝心のマデュラも充分いろいろと汚しまくっているが、それに対して突っ込む勇者はいない。

 蛇王海賊団はマデュラ至上主義なのである。

 

 

「そういえば、フランキーって昔船大工だったんだってね」

「らしいわね。それが?」

「船作り、アイスバーグさんに協力するように頼んでおいた。で、船が完成したらウチのクルーになりたいんだってさ」

「ほう。良かったな、マデュラ。そなた、あやつの事を随分と気に入っているようじゃし」

「んふふ、まあねー」

「そ、そう。あいつ、仲間になるのね……。それまでにマデュラをあやせるようになっておかないと……」

「ラヴィ、何か言った?」

「ううん、なんでもないわ」

 

 

 フランキー、サラッと蛇王海賊団への加入が決定していた。

 まあ、船が完成するのは相当先になるだろうが。

 

 

 ……数分後、むふーと満足げに息を吐きながら、甲板に出るマデュラ。

 当然のようにラヴィとハンコックも一緒。

 

 

「……ありゃ、もう終わってる」

「んー? 最近、手配書で見たような気がするわね……誰だったかしら、あいつ」

 

 

 彼女たちが見たのは、何やら蒸気のような煙を噴き上げながら倒れている、麦わら帽子を被った男。

 その周囲にもマリモのような頭をした男と、金髪と黒いスーツが特徴的な男、そしてニコ・ロビンが、それぞれ倒れて……。

 

「あ。思い出した」

「む、知り合いか?」

「あんな奴ら居たっけ?」

「ラヴィもハンコックもいなかったから。アラバスタでばったり出会した、麦わらのルフィっていう海賊だよ」

「ああ、クロコダイルを倒したっていう。新聞じゃ海軍が倒した事になってたけど」

「……ああ、そういえばそんな事もあったか。そのせいで招集されたんじゃった」

 

 

 ポン、と両手を合わせるマデュラ。

 彼女から話を聞いたラヴィとハンコックも、ようやくルフィたちの事を思い出した様子。

 

 まあそれはさておき。

 

「なんかガロアたち随分と怒ってんね」

「勝手に殺しそうな勢いね、たしかに」

「いいのか?」

「んー。あの麦わら小僧、シャンクスの友達らしいんだよね。殺すなって言われてるんだよなぁ」

「うーん……とりあえず話を聞いてみたら? ただ喧嘩を売られたってだけじゃなさそうよ」

「そだね」

 

 

 ラヴィ曰く「鳥頭」なマデュラが、ルフィの事を覚えていた理由。

 それは単純に、シャンクスの友人だと聞かされていたからである。

 でなければ、そこら中にいる若い海賊の内の一人の事なんぞ覚えているわけが無い。

 

 

 とりあえず、たーんと船を飛び降り、着地。

 今にも死にそうなルフィが、まるで親の仇でも見るかのような目で必死に睨みつけてくるが、まるで意味がわからない。

 

 

「! マデュラ様!」

 

 ラヴィとハンコックを伴って現れたマデュラに気付いたガロアと自称“四天王”たちが、すぐさま跪く。

 そろそろ新しいパターンが欲しい頃だ。

 

「蛇王……龍……!!」

「貴様は黙っていろ」

「ごふっ!? えほっ、げほっ!! くそ……」

 

 

 余程のことがあったのか、何とか口を開いたルフィを容赦なく蹴りつけるガロア。

 気絶するルフィ。

 それを見て、マデュラは思った。

 

 この子、なんでこんな怒ってんの? と。

 

 

「ねえねえ。何があったの?」

「アンタらがこんなに怒るなんてよっぽどよね」

「食事をしていたマデュラの部屋にまで騒音が届いておったぞ」

「それは──」

 

 

 ガロア曰く、理由はよく分からないが、海岸で麦わらの一味が待ち構えていたらしく、「仲間をボロボロにしたマデュラをぶっ飛ばしに来た」と、ドストレートに喧嘩を売ってきたらしい。

 

 それを聞いて、マデュラは思った。

 

 

 ……何の話?? と。

 マデュラはこんらんした。

 

 

 尚。

 

「……はぁ? ガロア。アンタ、なんでさっさとコイツら殺さないわけ? 舐めてんの?」

「お、落ち着くのじゃラヴィ!!」

「うっさいハンコック!! 落ち着いていられるわけないでしょ!!」

「……こ、これから殺そうと思っていたところだ」

「遅いつってんのよ木偶の坊! そんなんだからアンタはいつまで経っても四龍王の末席なのよ!」 

「ストレートに酷いな、そなた」

 

 

 グチグチと日々お説教をしつつも、マデュラの事が大好きなラヴィが激怒し、行動が遅い! とガロアの事をボロクソに言い始めた。

 あまりの剣幕に、自称“四天王”たちがズリズリとこっそり逃げている。飛び火してきたら何をされるかわかったものではないのだ。

 

 普段は暴走しがちなクルーたちを抑えに回るラヴィだが、それだけに、彼女が怒った時の危険性は半端ではない。

 マデュラに匹敵する巨体に変身するとあって、破壊の規模が凄まじいのだ。

 

 

「まあまあ、落ち着いてよラヴィ。可愛い顔にシワができちゃうよ」

「う、うるさいわね!! 大体、なんで肝心のアンタがそんなに冷静なのよ、マデュラ!! 喧嘩売られてんのよ!?」

「こんな小猿に喧嘩売られたぐらいで怒ってどうするのさ。今日の私は紳士的なんだ、運が良かったな」

「……軍艦を蹴散らして、正義の門を破壊したのが余程爽快だったんじゃな……」

 

 

 可愛いと言われて、ちょっと機嫌を良くするラヴィ。

 

 そして、非常に珍しい事に今日は紳士的らしいマデュラ。明日にはきっとワガママ姫に戻っている、というのは言わないが吉である。

 

 

「でも──」

「「ん??」」

「海賊なんだし、ケジメはつけなくちゃね。シャンクスはまあどうにかこうにか説得する」

「では……?」

「ガロア。そいつ、殺していいよ」

「……承知しました、マデュラ様!」

「ちっ。なんでアタシじゃなくてガロアなのよ」

 

 

 船長から直々に許可が出たことにより、ボロクソに貶されて正直へこんでいたガロアが復活。

 イキイキとした顔で、気絶しているルフィに狙いを定めた。

 

 そして──。

 

 

「ま、まて……待ってくれ……」

「「ん?」」

 

 

 ガロアが、ルフィの頭を踏み潰す……その寸前。

 何者かに制止され、とりあえずピタリとガロアの足が止まった。

 

 声の主の正体は、倒れていたはずのマリモであった。

 

 

「おれたちが負けちまった以上、船長であるルフィの命を取るってのは分かる。だが、どうかここは……おれの命で勘弁してもらいてェ……!!」

「…………」

「何を世迷いごとを。安心しろ、貴様もすぐに後を追う事になる」

「都合の良すぎる話よね。アンタ自身もそう思うでしょ、えーと……刀三本の人」

 

 

 この人の名前、なんだっけ……。

 必死に思い出すマデュラ。

 印象が薄すぎて全く覚えていない。

 

「お前、名前は?」

「おれは……ロロノア・ゾロ……。いずれ、世界最強の大剣豪になる男の首を取れるんだ。悪い話じゃ、ねェはずだ……!」

「へえ、ミホークに勝つつもりなの? あいつ、たぶんガロアよりも強いよ?」

「マデュラ様っ!?」

「マデュラの言う通りでしょ。あの人、四皇並みに強いし」

 

 

 ロロノア・ゾロ。

 その名を確かに刻むマデュラ。

 こういう、覚悟の決まった男は嫌いではない。

 

 地味にガロアが「ミホークより弱い」という言葉にショックを受けているが、華麗にスルー。

 

 

「おれは大剣豪になる男だ……それは、絶対に曲げねえ!!」

「……ふーん。ま、この麦わら小僧みたいなのは、自分が死ぬより仲間を失う方がキツイだろうし、ちょうどいいかな」

「……!! じゃあ……!」

 

 

 パァッと顔を明るくするゾロ。

 自分が死ぬというのにこんな顔ができるあたり、どうやら本気らしい。

 

「分かった。お前に免じてこいつらの命だけは勘弁してあげる。でも、もう心が折れてそうだけどね」

「すまねェ……恩に着る……!!」

「よろしいのですか、マデュラ様?」

「うん。ここまで言われて、そんな事知るかっていうのはちょっとね」

「……はぁ。まったく、この子の悪い癖が……」

「まあ、良いではないか。こやつのこういうところは、わらわは割と好きじゃぞ」

 

 

 驚きのあまり固まるガロア。

 やれやれだわ、と肩を竦めるラヴィ。

 静かに微笑むハンコック。

 

 ふらふらの身体で勢いよく頭を下げるゾロ。

 

 

 

 が。

 マデュラが次に放った言葉で全員が固まる。

 

 

「じゃ、お前は私のものって事で。ゾロ、ウチのクルーになれ」

「「は??」」

 

 

 まさかの勧誘である。

 まさかの、勧誘である……!

 

 

「嫌なら全員殺して行くよ」

「はァ!? なんだそりゃ!! 悪魔かてめェ!!」

「マデュラ様……」

「ああ、諦めなさいゾロとやら……。こうなったらもう誰にも止められないわ……」

「余程気に入ったようじゃな……」

 

 混乱するゾロ。

 思わず遠い目をするラヴィたち。

 ゾロの暴言を咎める余裕すらない。

 

 

「ミホークが剣士に負けるところ見てみたいし」

「それが本音かァ!!」

 

「さーて、出航の準備しなきゃね。フランキーを送り届けて、アイスバーグ氏にも挨拶しておかなくちゃ」

「……そうだな。ところでハンコック。お前、いつまで付いてくるつもりだ?」

「む? ああ、言っていなかったか。わらわも蛇王海賊団に加入する事になったのじゃ」

「何、そうなのか?」

「うむ。妹たちは傘下として、アマゾン・リリーの守りに回ってもらう。蛇王海賊団のナワバリに手を出すバカはおらんじゃろうが、念の為な」

「なるほど。では、これからよろしく頼む」

「こちらこそ」

 

 

 ゾロを放置し、この場から離れていくラヴィたち。

 ハンコックも、妹たちに事情を説明するためガロアを連れて去っていく。

 

 誰も、ゾロが拒否するとは思っていない。

 彼が拒否できないと分かっているからだ。

 

 

「よろしくね、ゾロ」

「待て!! ルフィの元から離れるんなら、海賊をやる理由はねェんだよ、おれは!」

「そんなん知らんもん。お前は私の部下になると私が決めたんだから」

「暴君かお前!?」

 

 

 結局、「嫌なら麦わら小僧たち殺すよ?」と笑顔で脅してくるマデュラに屈し、ゾロも蛇王海賊団に加入する事となった。

 一応身分的には捕虜扱いではあるのだが、たとえルフィが殴り込んできても返す気などさらさらないだろう。

 

 

 そして、何やら緊張している様子のフランキーをアイスバーグに押し付け、呆けた顔の彼らを放置して蛇王海賊団はウォーターセブンを後にした。

 

 海賊船、よろしくね! と念押しする事も忘れずに。

 電伝虫を通じて連絡を取り合えるようになっており、船が完成したらアイスバーグからマデュラに連絡が来る手筈である。

 

 

「ンマー……何の因果か、またお前と船を作る事になっちまったな、バカンキー」

「へっ、うるせェよ。それより、マデュラさん直々の注文なんだ。下手なモン作ったらおれたち死ぬぞ?」

「……分かってる。あいつが言うには、“魔の三角地帯”に島サイズの海賊船があるらしいな。そいつを奪って持ってくるから、参考にして……だとよ」

「らしいなァ。どこの誰が作ったのかは知らねえが、おれたちも負けてらんねえだろ、バカバーグ。いっちょドデカい船を作ってマデュラさんを驚かせてやろうぜ! ……実はおれがあの“宝樹アダム”を持ってるって言やァどうするよ?」

「ンマー! 本当か!?」

「がっはっはっは! おうよ!!」

 

 

 

 アイスバーグとフランキーが、仲良くこんなやり取りをしていたとか、いないとか。

 

 

 ここは水の都、ウォーターセブン。

 世界政府御用達の造船会社、ガレーラカンパニーが拠点を構える「造船の島」である──。

 

 

 

 ──全くの余談だが、造船所に高々と掲げられた蛇王海賊団の海賊旗の恩恵か、島に侵入する不埒な輩が激減したらしい。




そんなわけで、ルフィにとっては死ぬより辛いであろう「相棒ゾロを奪われる」という結末になりました。

サニー号の材料である宝樹アダムもマデュラの船に使われるので、サニー号フラグも自動的に消滅。
麦わらの一味は壊滅こそしませんでしたが、実質海賊としてはやっていけない状態。
少なくとも当面の間は復帰できないでしょう。


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幕間 革命軍のドラゴンさん

前話での反響がなかなか……。
結構感想への返信が大変になってきた。


 

 偉大なる航路にある白土の島、バルティゴ。

 世界政府と直接敵対する「革命軍」がこの島を本拠地としており、蛇王海賊団が引き起こした大事件がきっかけで、慌ただしく動き回っていた。

 

 

「ドラゴンさん、聞きましたか!? あのエニエス・ロビーが消滅したって話!!」

「……サボか。ああ、もちろん聞いている。蛇王海賊団……相変わらずとんでもない事をしでかすものだ」

 

 

 風に当たっていた革命軍総司令官ドラゴンの元に、組織のNo.2である記憶喪失の青年、サボが現れた。

 若くしてその地位にあるサボは、世界政府が突然受けた大ダメージの影響で混乱する各地の仲間たちから、それはもう凄まじい数の報告を受けており、眠る暇もないほど忙しいらしい。

 

 なのに肝心の総司令官がこんなにのんびりしていては、少しイラッと来るのも無理はない。

 

 

「呑気にしてないで、指示を出してくださいよ! 蛇王海賊団がこれで止まるとは思えないし、絶対近いうちにまた何かやらかしますよ!? おれたちが世界をひっくり返す前に、世界政府が無くなってしまう!」

「落ち着け。確かに、お前の言う通り蛇王龍はまだまだ暴れるだろう。恐らく、インペルダウンと海軍本部も消し飛ばしに行くはずだ」

「だったら!」

「……だが、今は時期が悪い。分かっているだろう? 世界を動かすには、“世界会議(レヴェリー)”が必要だ!」

「……二年後の……それは、そうですけど……。でも、このままじゃその前に世界政府が……」

「心配はいらんさ。“奴”が世界を破壊する前に、おれが直接話をつけてくる」

「え!?」

 

 

 革命軍の目的は、世界政府を……いや、世界政府を支配する“天竜人”を倒し、この世界に“革命”を起こす事。しかし、それを起こす前に肝心の世界政府が蛇王龍に倒されてしまっては、革命軍はただの犯罪者集団で終わってしまう。

 よって、サボが慌てるのも無理はないのだが、ドラゴン曰くなんと総司令官たる彼自身が直接交渉しに行くというではないか。

 

 これには色んな意味でびっくりである。

 

 

「ダメですよ!! 危険すぎます! 蛇王龍の強さは、はっきり言って次元が違う!! いくらドラゴンさんでも、死にに行くようなものだ! 革命軍の参謀総長として、そんなの認められない!!」

「……ふう。気持ちは痛いほど分かるがな。落ち着けと言っただろう? それぐらいおれも分かっているさ。奴は、この世界そのものを敵に回しても笑って全てを蹂躙できるだけの力を持っている。おれが、無策でそんな怪物と交渉しに行くような馬鹿に見えるか?」

「それじゃあ……?」

 

 

 ドラゴンから紅茶を差し出され、言われた通り気持ちを落ち着かせるためにグイッと飲むサボ。

 それを見て獰猛に笑い、“覇気”を滾らせるドラゴン。

 

 

 

「──おれは、蛇王龍が絶対に興味を示すとっておきの切り札を持っている。それを出せば、奴は必ず食いつくだろう。そう、必ずな……」

「そ、それはいったい……?」

「ククッ、秘密だ。今は獄中にいるイワや、“向こう”にいるくまにさえも話した事がない程のモノだからな」

「ええ!? 尚更気になりますよ!」

「上手くいけば、蛇王龍をこちら側に引き入れる事すらできるかもしれん。そこはおれ次第と言ったところだが。はあ、責任重大だな……」

「う、嘘でしょう!? 蛇王龍が我々の仲間に!? それが実現したら……もうおれたちの勝ちじゃないですか!?」

「だろうな。奴はそれぐらい強い」

「…………時期が来たら教えてくれますか?」

「ああ。時期が来たらな」

「……分かりました。だったらこの事はおれの胸の内に秘めておきます」

「すまん。ありがとう」

「いえ」

 

 

 ドラゴンが言い放ったとんでもない言葉に飛び上がるサボ。

 なんと、あの蛇王龍を革命軍の仲間に引き入れる可能性が出てくる程の“切り札”とやらを持っているとのことだ。

 

 いつの間にそんなものを……? と訝しむが、ドラゴンという男はこの状況で嘘を言うような人物ではない。

 

 

 本当に、蛇王龍が仲間になったら……!! と、ワクワクするサボ。

 しかし、ドラゴンがそんな彼に水を差す。

 

 

「ニヤついているところを悪いが、本当に上手くいけばの話だぞ? 可能性としては限りなく低い。お前も知っての通り、蛇王龍は誰かの下に付くような女じゃあないからな」

「ちょ、期待させるだけさせておいて!」

 

 

 強気なのか、弱気なのか。

 無駄に人を振り回すのはやめて欲しい。

 まるで〇〇ィの──。

 

 

「あ、あれ……? 今、何か……」

「ん? どうした?」

「いえ。今、とても大切な事を──!」

 

 

 その瞬間。

 サボの頭を、かけがえのない“きょうだい”と過ごしたかつての日々が過ぎる。

 

 

(──これで、おれたちは今日から“兄弟”だ!!)

 

 

 

 東の海。

 故郷。

 貴族。

 クソ親父。

 天竜人。

 

 ダダン。

 ガープ。

 マキノ。

 

 

 そして……。

 

 

「…………エース……ルフィ……!」

「……何? 思い出したのか!? おい、サボ!!」

「そうだ、おれたちは……きょう……だ……」

 

 

 

 しかし、サボは糸が切れたかのように倒れてしまう。

 突然失った記憶を取り戻したために、熱を出したのだ。

 

 

 慌てて、部下を呼ぶドラゴン。

 そして倒れたサボを抱き上げ、ベッドまで運んでいく。

 

 

「ド、ドラゴンさん! サボ君にいったい何が!?」

「コアラか。きっかけはよくわからんが、記憶を取り戻したらしい。とにかく、今はゆっくり休ませてやれ」

「記憶が!?」

 

 

 突然運び込まれたサボを心配し、大勢の革命軍メンバーたちが集まってくる。

 その中でも、サボと親交の深い女性、コアラが大慌てでドラゴンに聞いてきた。

 そして、「サボが記憶を取り戻した」と知ると、その場の全員がざわついていく。

 

 

「……悪いが、おれはすぐにここを出なければならない。コアラ、ハック。サボをよろしく頼む」

「え!? どこに行くんですか!?」

「蛇王龍と話をつけにいく。このままでは我々が世界を変える前に、肝心の世界政府が滅びてしまうからな」

「な……!? 危険です、総司令!! 我々も──」

「ダメだ。下手に大勢で行くと蛇王龍を刺激してしまう。そう心配せずとも、殺されるつもりはない。安心しろ。詳しくは話せんが、とっておきも用意してある」

「し、しかし……そうだ! サボが起きてから、彼と一緒に行けば──」

「いや。サボにはやってもらいたい事が山ほどある。それでなくても、すぐに出発しないと間に合わない可能性があるからな」

 

 

 革命軍のトップであり、決して替えがきかない存在であるドラゴンが、“世界最悪の海賊”と恐れられる蛇王龍の元へと単騎で出向く。

 そう聞かされ、はいそうですか、となるわけがない。当然、反対の嵐である。

 

 彼らから見た蛇王龍マデュラは、一言で表すと“世界を破壊しかねない怪物”である。

 世界政府を目の敵にしているという点では革命軍に通じるものがあるのだが、とにかく彼女は破壊の規模が大きすぎる。

 

 度々“世界政府を倒した後、蛇王龍をどうするか”と議論されている程に注目しており、結局いつも「世界政府を倒して満足してくれる事を祈る」という果てしなくネガティブな結論に至ってしまう程、アレは人間にはどうしようもない存在なのだ。

 

 

「だいたい、蛇王龍がどこに居るのかわかっているんですか!? それが分からない事にはどうしようも──」

「分かっている。つい先程、くまから情報を受け取ったからな」

「え!? ……しかし、やはり危険すぎます!」

「……理解してくれ。今回ばかりは絶対におれが行かねばならないんだ。お前たちも分かっているだろう? 遅かれ早かれ、蛇王龍に対して何らかの対策を講じる必要があると」

「ぐぅ、それは……! 何も、あなたが行く必要は!」

「重要な話をするというのに、部下を派遣されて納得すると思うか? 少なくとも、おれが蛇王龍なら納得などしない」

「ぐぐぅ……!」

 

 

 うめく部下たち。

 悠然と諭すドラゴン。

 

 残念ながら、分はドラゴンにあった。

 

 

 そもそも、ドラゴンは事実しか言っていないのだ。

 このまま蛇王龍を放置して無事に世界政府を倒せたとして、新たな統治機構を樹立する前に蛇王龍に潰されない保証など無い。

 今のうちに彼女と盟約を結ぶなりなんなりしておかないと、革命軍は動きようが無いのである。

 

 

 そして遂にメンバーたちが折れ、「絶対に生還する事」を条件に、ドラゴンがその身一つで蛇王龍との交渉に出向く事が許された。

 

 

 

 英雄ガープの息子にして、海賊麦わらのルフィの父親、モンキー・D・ドラゴン。

 王下七武海の一人、ゲッコー・モリアが支配する“世界最大の海賊船”スリラーバークへの参戦、決定──。

 

 

 

 尚、息子がその蛇王龍に酷い目に遭わされたという事を、ドラゴンは知らない……。




というわけで。
サボが早々に記憶を取り戻し、ドラゴンがマデュラと交渉しに行く流れとなりました。
果たして、「世界最悪の犯罪者」ことドラゴンが持つ切り札とは……。


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スリラーバーク①

サブタイトルの割にまだ到着しません。
いや、だって「海上①」とか微妙な気がして……。

あ、感想にはきちんと目を通してますよ。
いつもありがとうございます。


 

 

 蛇王海賊団がウォーターセブンを出航する直前に起きた、麦わらの一味との戦いで得た“戦利品”として半ば無理やり蛇王海賊団に加入した剣士、ロロノア・ゾロ。

 

 経緯が経緯なだけに、クルーとの雰囲気は険悪かと思いきや、そんな事も無く。

 強いて言うなら、フランキー一家が蛇王海賊団の下部組織だ、というのがただの勘違いだったと知ったゾロが激しく取り乱した不幸な事故があったぐらいである。

 

 

 

「……嘘だろ。おれが負けたあの“斬竜”が、一味の中じゃ弱い方だってのか?」

「そだよー。えーとね、まず私の海賊団について説明するとね、船長……つまり私が頂点にいるでしょ」

「こう見えてぶっちぎりの最強よ、コイツ。なんとか戦いと呼べるものになるのは、層が厚いウチでもアタシと副船長……あとクック先生ぐらい。同じ最高幹部でも、ガロアとゾラじゃマデュラには歯が立たないわ」

「こ、この脳天気な奴がか……」

「む、酷いなー。ぶっ飛ばすぞお前」

「やめい。新人をいびるなバカ」

 

 

 マデュラが認めたのなら、とクルーたちは非常に好意的にゾロと接しており、モンスターズあたりが苦言を呈しそうな言葉遣いに関しても、「あくまで捕虜であって正式なクルーではないから問題ない」との事だ。

 

 まあ、万が一マデュラを怒らせたら当然死ぬが。

 それは誰もが同じなので。

 

 

 今も、マデュラ自らゾロに対して蛇王海賊団に関する説明をしてあげているぐらいだ。

 尚、ラヴィは団内でも数少ないツッコミ役としてこの場にいる。

 ついでに、場所が旗艦の甲板なので、周りに無数のクルーたちも普通にいたりする。そっちはそっちで賑やかに楽しんでいるようだが。

 

 

「で、私の下にラヴィやフィロアたち……最高幹部である“四龍王”がいるの。たぶんこの子たちだけでも四皇に勝てると思うよ」

「……その四皇ってのはなんだ?」

「あー……そうか、アンタもバカなのね……」

「んだとコラァ!?」

「そう言われても仕方がない一般常識だってーの。四皇は、偉大なる航路の後半……俗に“新世界”と呼ばれる海を支配する四人の大海賊たち。アンタの元船長が友達だっていう“赤髪のシャンクス”もその一人よ」

「へェ、そんなのがいるのか。じゃあよ。蛇王龍、お前もその四皇って奴なのか?」

「んーん。私は四皇とは別枠。四皇相手じゃ支配してるナワバリの広さで負けてるしねー。でも、戦えば負けないと思うけど。あ、シャンクスとは私も友達なんだ!」

「ふーん……そういうモンなのか。つまり、お前らと戦えるような奴が、最低でも四人は居ると。当たり前だが、世界は広いな……」

 

 

 本来の仲間であるルフィたちを差し置いて“新世界”の情報を得るゾロ。

 世界の広さを知り、彼は何を思うのだろうか。

 

 

「でね、その四龍王の下に更に色々な部隊があって、お前や麦わらたちをけちょんけちょんにしたバルドたちも所属しているのが、ウチの精鋭部隊である“モンスターズ”っていうの。そこの一番上がガロアね」

「ルフィを無傷で倒したアイツか」

「ええ、そうね。でも、あのバカは四龍王でもダントツで最弱だから。そこんところ勘違いしないでよね!」

「……アイツが、最弱……」

 

 

 ゾロが認めた男である海賊、麦わらのルフィを歯牙にもかけない強さを見せたガロアが四龍王最弱と聞かされ、戦慄。

 そして、ふとラヴィに視線を送る。

 視線を受けた彼女は、とても大きくご立派な胸を、甲板の上に用意されたテーブルに乗せながら首を傾げた。

 サンジあたりが見たらこれだけで鼻血を吹きそうである。

 

 

「何よ? アタシの顔に何かついてる?」

「……いや。お前、そんなに強そうに見えねェからよ。まあ、蛇王龍も同じなんだが」

「ああ。よく言われるわ」

「んふふ、ラヴィはかぁいいからねー。でも、ホントに強いんだよ。ゾロなんて指一本でぶっ殺されるよ」

「さすがにそれは堪えるな」

「や、やめなさいよマデュラ。照れるじゃない」

 

 

 そう言いつつ満更でもなさそうなラヴィ。

 ゾロもなんとなく分かってきたが、マデュラは基本的に嘘をつかない。

 故に、彼女が「指一本で充分」と言うからには本当にそうなのだろう。

 

 

 世界最強の剣士は、未だ遥か遠い。

 

 ここで、ゾロの頭にふと疑問が湧いた。

 

 

「ラヴィって言ったな。お前と鷹の目じゃどっちの方が強いんだ?」

「ラヴィに決まってるだろ。バカかお前」

「アタシよ」

「……そ、そうか」

 

 

 二人とも即答であった。

 特に、マデュラはそれまで浮かべていた笑顔をふっと消し、完全に真顔になっていて怖い。

 

 ゾロは聞いた事を後悔した。

 

 

「ラヴィもフィロアも、私の大切な親友だから。あんまり疑うようなら、ぶっ殺すぞお前」

「わ、悪かった。おれが悪かったよ!」

「……マデュラ、そんなに怒ることないでしょ。コイツや麦わら小僧の無知ぶりはよーく理解できてる事じゃない。でなきゃアタシたちに喧嘩なんて売ってこないわよ」

「……ふん。ラヴィがいいんなら別にいいけどさ」

 

 

 どうやらマデュラの地雷だったらしい。

 名前を挙げた二人は、彼女にとって特別な存在なのだろう。

 

 気付けば、つい先程まで周囲でワイワイと盛り上がっていたはずのクルーたちまで、「マジかお前」と言わんばかりの目でゾロを見ている。

 

 

 ついでに。

 マデュラが「ぶっ殺すぞ」と言い放った場合、実は殺される一歩手前までキている。

 そこからほんの少しでも前進すれば、最終的に首が胴体とお別れする事になるので、気をつけるべきだ。

 ゾロ、学んだ。

 

 

「もう、私寝る。ゾロ、とにかくお前、今のままだったら弱すぎてウチじゃ役に立たないから、戦った縁でバルドにでも色々教わってこい。これ船長命令ね」

「……ああ、分かった」

「バルドならあっちの船に居るはずよ、ゾロ。せっかくだしアタシもついていってあげる」

「頼む」

 

 

 すっかり気分が萎えた、とでも言わんばかりに去っていくマデュラ。本当に寝るらしい。

 次の目的地であるスリラーバークが漂っているという“魔の三角地帯”まではそう時間もかからないのだが、ああなってしまっては、たとえラヴィであっても簡単には止められないし、放置しておく方が賢明である。

 

 

 そんな感じで、ゾロはなんだかちょっと呆れ顔のラヴィに連れられてバルドを探しに移動していく。

 

 

「しかしすげェ数の船だな……全部デケェし……。こっちはあっちの旗艦とどう違うんだ?」

「ん、そうね……一言でいうなら、ここは鍛錬場といったところかしら。部屋が少なめでしょう?」

「言われてみれば……確かにそうだな」

「バルドやアタシ、それにマデュラもそうだけど。ウチは動物系の能力者が多いから、普通の船じゃトレーニングで色んな部屋を壊しちゃうのよ。だからこの船は障害物を少なくしてあるの」

「なるほどね……おっかねェ話だ」

「ふふっ、そう? 直に慣れるわよ」

 

 

 ラヴィ曰く“鍛錬場”だというガレオン船を歩く事しばらく。

 上半身裸というハレンチな姿で、気合の入った掛け声と共に“黒い刀”を振るバルドを発見した。

 

 

「アレは……黒刀か? おれとやった時は使ってなかったはずだが……」

「……ああ、そっか。アンタ、“覇気”を知らないのね」

「ハキ? なんだそりゃあ」

「後で教えるわ。おーい、バルドー!」

 

 

 ここまでレベルが違うと無理もないと知りつつ、真剣勝負のはずが手を抜かれていたのかと内心で憤るゾロ。

 それを一旦捨ておき、悪いと思いつつもバルドを呼び寄せるラヴィ。船長命令なので仕方がない。

 

 

 すると、バルドは裂帛の気合と共に振っていた黒刀を鞘に戻し、すぐにやってきた。

 そして、ゾロを一瞬見遣りつつ、正座。

 

 

「ラヴィ様、何か御用でも?」

「えっと、アタシじゃなくてコイツがね」

「左様か。ならばそう改まる必要も無い」

「…………よォ、そいつがお前の本来の得物かよ?」

「む? 何を言っている。コレの切れ味をもう忘れたのか?」

「あァ? お前こそ何言ってやがる。そんな黒刀、おれは知らねェぞ」

 

 

 用があるのがラヴィではなくゾロだと知るや否や、即座に立ち上がり腕を組むバルド。

 いっそ清々しい程に切り替えが早い。

 

 

「まぁまぁ待ちなさいアンタたち。マデュラじゃあるまいし、なんで一触即発になってんのよ。ゾロ、コイツは本当にこの刀だけしか持っていないわ。他にも何本かあったんだけど、勧誘した時にマデュラが全部食べちゃったから」

「…………は??」

 

 

 徐々に険悪になっていく雰囲気を見かねて、ラヴィが割って入る。

 それはいい。

 それよりも、彼女がサラッと放った言葉に、ゾロは思わず停止した。

 

 

「……大業物21工が一振り、名を“燼滅”。おれが持っていた刀の中で唯一、マデュラ様に褒めていただいた逸品だ。貴様も剣士ならば分かるだろうが、コレこそ我が魂よ」

「いや、それは分かる。大業物だってのもなんとなく察した。だがそれより何より……蛇王龍が刀を食ったってどういう事だよッ!?」

「……あー。そうか、それが普通の反応だったわね……慣れすぎて忘れてたわ……」

「いや忘れるなよ!?」

「まあ……おれも当時は驚いたからな。無理もない」

 

 

 

 バルドが誇る大業物、“燼滅”。

 かなり身長が高いバルドを更に上回る程に長く、“斬竜”へと変身した時もこれを口に咥え、鋭利な尻尾との二刀流で戦うのが彼の戦闘スタイルだ。

 我が魂というだけはある。

 

 

 まあ、それはさておき。

 蛇王龍が刀を食べた、という衝撃の言葉に突っ込まずにはいられないゾロ。

 さすがにそれは人間を辞めすぎだろう、と。

 

 

「言葉そのままよ。マデュラの奴、おやつ代わりとか言って刀をぱくぱく食べちゃったの」

「バケモンかアイツは!?」

「今更だな。マデュラ様は人を超越した存在だぞ」

「もっと疑問を持てよてめェ!! 普通に考えて口が切れるだろ!? で! 仮に飲み込んだとしても胃に刺さるだろ!」

「消化しちゃったんだから仕方ないでしょ。あの子はもう人間じゃなくて、マデュラっていう新種の生物なのよ。アンタもさっさと開き直りなさい。ビックリしすぎて体がもたなくなるわ」

「んなアホな……」

 

 

 

 この後、ゾロはバルドとラヴィから三種類の“覇気”という概念がこの世に存在する事を教えられた。

 特に、“覇王色の覇気”というものはそれなりに貴重らしく、バルドは使えないらしい。

 

 

 ラヴィは当然のように使用でき、それどころか彼女が放った“覇王色の覇気”で気絶させられた程には強い。

 ゾロの脳内に、そんな流れで苦い記憶として深く刻まれた、とだけ言っておこう。

 

 

「武装色は使えるようになれば自然系相手でも戦えるし、何かと便利だから絶対に習得した方がいいわよ。というかこれを使えないようじゃアンタ、うちの雑兵にしかなれないわ」

「……雑兵だと……このおれが……。ふん、絶対に習得してやるよ」

「己の魂を黒刀にもできない小童が、よく吠える。もっと腕を磨いて、精々マデュラ様の役に立つがいい」

「言われなくても分かってる。おれは、大剣豪になる男だからな」

「ふん」

 

 

 バルドからの発破にそう応え、ゾロにとっての“己の魂”と言える刀、和道一文字を眺める。

 武装色の覇気を習得し、これを必ず黒刀にしてみせる──。

 

 

 

 そんなこんなでゾロが頑張り、マデュラが爆睡する中、蛇王海賊団の艦隊はいよいよ“魔の三角地帯”へと突入する……。

 

 

 

 果たして、モリアは生き残れるのか。




そんな感じで、今回はゾロがどんな扱いを受けているかを書いてみました。
割と待遇は良いようです。
なんか、気付いたらラヴィがゾロのお姉ちゃんみたいになってんな……。

ゾロってやたら美女と縁があるんですよね……。

ちなみに、覇気を使えないクルーは漏れなく雑兵扱いされ、マデュラに名前も顔も覚えて貰えません。
ハンター擬きたちがソレですね。
ただ、非能力者の高額賞金首も一名ほど在籍していますので、そいつはもちろん覚えられています。


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スリラーバーク②

懸賞金低すぎでは、という声が多いけどもね?
こいつらまだ結成一年なんで……。
ラヴィは元天竜人だから前科あってもノーカン、フィロアは孤島に住んでただけなので懸賞金無かった……
ってな感じなわけです。
あと、マデュラがいいとこ持ってくので彼ら彼女らはなかなか活躍の場がない、という事情も。


 

 世界最大の海賊船、スリラーバーク。

 王下七武海の一人、ゲッコー・モリアが支配するというその船が漂う“魔の三角地帯”。

 

 この海をおよそ50年間も漂流し続けた、一人の男がいた。

 名を、ブルック。

 ヨミヨミの実を食べ、その能力によって一度死んでから再びこの世に蘇ったアフロ骸骨という珍生物である。

 

 かつては今は亡き同志たちと共に“ルンバー海賊団”で活躍していた音楽家兼剣士で、蛇王龍と比べればミジンコのようなものだが、賞金首として指名手配されている身でもある。

 

 

 

 そんな彼は、今──。

 

 

 

「こら、ジーヴァ!! ダメでしょ、人骨なんて食べちゃ! ぺっしなさい、ぺっ!」

「あっ、ラヴィちゃま。うん~……ぺっ」

(し、死んだかと思ったァァァ!!? なんなんですかこの人たち! ドラゴンに変身するとか超コワイ!! 助けてください海兵さーん!! ……あ、私も海賊なので捕まっちゃいますね。ヨホホホホー!!)

 

 

 

 ──幼くも巨大な“龍”に食べられてしまい、危うく二度目の死を迎えそうになっていた。

 ブルックが悲劇に見舞われた理由。

 それは単純に、幼くして賞金首として指名手配されている少女、“冥灯龍”ジーヴァが霧の向こうにボロボロの海賊船を見つけ、たまたま目と目が合った船上のブルックに興味を示してしまったから、である。

 そしてぴょんと跳んでブルックの幽霊船にジーヴァが侵入し、会話をする間もなく食われたと、そういう訳だ。

 

 

 “冥灯龍”ジーヴァ、懸賞金8000万ベリー。

 能力者が幼いので、政府側からは戦力としてカウントされておらず、額はかなり低い。

 

 

 今彼らがいるのも幽霊船の上であり、ジーヴァがいない事に気が付いたラヴィが大慌てで追いかけてきたのである。

 

 

 まぁそれはそれとして。

 

 

「ヨホホホー!! そこのお嬢さん、実にンビューティフォー!! ……パンツ、見せて貰ってもよろしいですか?」

「あ、しゃべった」

「きゃああああ!? じ、人骨……しゃべッ……!? いやぁぁぁぁぁ!!」

「ヨホホホー! 驚かせてしまい申し訳……エェェェェェ!?」

 

 

 死んでいるとばかり思っていた人骨……ブルックが、普通に立って喋り始めた事に驚き、悲鳴を上げるラヴィ。

 陽気に謝りかけるも、みるみるうちに“人獣化”していくラヴィを見て驚愕するブルック。

 

 

 相変わらずブルックに興味津々な幼女、ジーヴァ。

 

 

 場が、混沌に包まれた。

 

 

 

 

 ついでに。

 ブルックの思い出がたくさん詰まった幽霊船は、人獣化したラヴィが放った尾の一撃で粉砕された。

 

 

 

「……私の……私たちの、船が……」

「ラヴィちゃま、あやまって」

「う……わ、悪かったわよ……」

「…………いいえ、いいのです。元より、私たちの航海はとうの昔に終わったのですから……」

「がいこつしゃんも、昔かいぞくだった?」

「ヨホホホ、そうですよ。やはり、あなた方も海賊でしたか。先程の変身は驚きましたよ。私、目は……無いんですけどーーッ!! ヨホホホー!」

「うっさいわ!!」

「マデュラちゃまが気に入りそう、このひと」

「えー……いや、たしかに……えぇ、マジかぁ……」

 

 

 木片となって散乱する元幽霊船。

 その中でも何とか人が数人は乗れるだけのスペースがある物を足場にする事で、ブルックたちは溺れずに済んだ。

 

 

 さすがに罪悪感を覚えたラヴィは、彼を自分たちの旗艦に招待する事に。

 ブルックもまたそれを快諾し、変身したジーヴァに乗ってラヴィと共に移動していく。

 

 

 

「これは、すごい……!! あなた方、本来はもっと先の海を根城にしている大海賊なのでは!?」

「あら、分かる?」

「がいこつしゃん、おめがたかい」

「こら、余所見しちゃダメよジーヴァ。あなたはまだ飛ぶのがヘタクソなんだから」

「むー……はぁい」

 

 

 霧のせいで幽霊船(故)からは全容が見えなかったのだが、近付いてみれば凄まじい数のガレオン船からなる大艦隊だという事がハッキリと分かった。

 これを見て、ラヴィたちを「そこらにいるザコ海賊」と一緒にする程、ブルックは無知ではない。

 

 そんなブルックを見て気を良くしたのか、ラヴィがドヤ顔になって説明を始めた。

 

 

「私たちは“蛇王龍”と呼ばれる35億5000万ベリーの賞金首、大海賊マデュラを船長とする“蛇王海賊団”の者よ。アタシはそこの最高幹部の一人で、ラヴィって言うの」

「さんっ……!?」

「わたしはいちクルーのジーヴァ。いちおう賞金首。よろしく、がいこつしゃん」

「こんな小さい子まで賞金首なんですか……! いや、今はおっきい龍になってますけど」

「ついでにアタシは11億……あ、違うわ。最近上がって14億の首よ」

「じゅっ……!? 何やらかしたんですか!!」

 

 

 霧の海に浮かぶ幽霊船には、世界の情報は届かない。

 自分たちの事を知らない相手というのは、なかなか新鮮である。

 

 当たり前だが、自分たちの実力を過信し、情報収集を怠っていた麦わらの一味とは違い、こんなところでは情報を仕入れようがないので、自分たちの事を知らないからと怒ったりはしない。

 

 

 おまけに。

 サラッと言ったが、蛇王海賊団の面々は元々懸賞金がかけられていたメンバーに限り、全員ググッと上がった。エニエス・ロビーの件の影響だろう。

 

 幼女だからか、ジーヴァは上がらなかったのだが、その他は一律で3億アップである。

 ゾロはまだ加入が政府に知られていないので6000万ベリーのままだ。

 幼女に負ける未来の大剣豪。

 

 

 そんなわけで、旗艦に到着。

 ジーヴァはテクテクとマデュラの私室まで歩いていった。一緒に寝るらしい。

 

 

 そして、化け物揃いな蛇王海賊団のメンバーたちに囲まれつつ、事情を話していくブルック。

 

 そこで明らかとなるモリアの能力。

 

 

 なんと、彼は他者の“影”を奪って自分の戦力とする事ができるとのこと。

 

 

 それを聞いたラヴィは──。

 

 

 

「……へェ、面白いじゃない。決めたわ」

「どうした、ラヴィ……ああ、そういえば今日はお前が“船長代理”の日だったか……」

 

 

 ニヤリと悪戯に笑うラヴィを見て、眉を顰めるフィロア。

 蛇王海賊団では、航海中は寝てばかりなマデュラの代わりに、副船長であるフィロアと、彼に次ぐ額の賞金首であるラヴィが交互に“船長代理”を務めており、余程の事が無い限りは遵守される「船長命令」を発する事ができるのだ。

 クック先生は先生なので除外。

 

 

「ブルック、だったわね」

「……はい、そうですが?」

「アンタ、影を奪い返したいんでしょう? だったらアタシたちが手を貸してあげるわ。ちょうどこっちもモリアの……“スリラーバーク”っていう世界最大の海賊船とやらが欲しくて来たのよ」

「!? 本当ですか!!」

「ついでに──」

「はい?」

 

 

 

 ニィィッと口角を上げるラヴィ。

 ため息を吐くフィロア。

 珍しく起きているゾラ。

 

 

 旗艦から近い“鍛錬場の船”にて、全力のゾロを片手で軽くいなしている姿が見えるバルド。

 

 

 マデュラの私室の前を警備するガロア。

 その周囲を囲むモンスターズの面々。

 

 

 

 モリアにとっての“悪夢”が、幕を開ける──。

 

 

「奪うわよ。モリアの、“カゲカゲの実”。幸い、うちにもまだ能力者になっていない賞金首がいるし」

「へ?」

「やはり、そう来たか……。む、先生」

「ま、モリアが降伏するっていうならうちに入れてあげるだけで済む話なんだけどね。っと、先生じゃない」

「うん? ああ、話を続けてくれて構わないよ。モリアと言えば、かつては四皇のカイドウと戦った事もあるという程の男だ。舐めてかかってはいけない」

「らしいわね。たしかに、まだマデュラもしばらく起きないだろうし……皆、とりあえずパーティーの開催は待ちなさい。まずは何人かで先行偵察よ」

「「了解、船長代理!!」」

 

 

 

 え? え?? と右往左往するブルック。

 彼をスルーして盛り上がる蛇王海賊団。

 そんな彼らを、油断大敵だと諌めるクック。

 

 頷くラヴィ船長代理と四龍王。

 

 

 

 ……なんだか、本来の船長であるマデュラが起きている時よりもまともな集団になっているような……。

 

 

「そうだ。ラヴィ、いい機会ではないか? 例の新入りを行かせてみよう」

「ゾロね。うん、いいんじゃない? 他は……クック先生──」

「ぼくはダメだよ。マデュラちゃんが怒る。それにぼく自身、こういう事は若人に譲りたいしね」

「──ですよねー。冗談よ、冗談。そうなると、監視役としてアタシと……」

「船長代理。おれも……行きたい……“涼しいニオイ”がする……」

「……マジ? そういう系かぁ……」

 

 

 ここで自ら手を挙げたのは、“屍套龍”ハザク。

 非常にえげつない能力の持ち主であり、墓場が大好きという変わった男だ。

 

 “屍套龍”ハザク、懸賞金7億4000万ベリー。

 もちろん彼もエニエス・ロビーの件で懸賞金が上がったので、この金額である。

 

 

 そして──。

 

 

「ガハハ!! モリアの拠点とあらば、破壊が必要であろう!? ワガハイも行ってやろう!」

「……この蟹野郎が行くのであれば、私も行こう。破壊が必要という点にだけは同意するしな」

「……ガオレンにシャンロンまで? アンタら、島ごと踏み砕いたりしないでよ? マデュラに殺されるわ」

「「君にだけは言われたくない」のである」

「なにおう!?」

「落ち着けラヴィ。お前が暴れるとシャレにならん」

 

 

 “砦蟹”ガオレンと、“老山龍”シャンロンまで参戦し、早くもモリアの冥福を祈ってしまうフィロアとクック。

 

 

 なんと言っても、ラヴィ、ゾロ、ハザク、ガオレン、シャンロンと、僅か5人しかいないというのにこれだけで総合懸賞金が40億ベリーである。

 

 金額だけならばマデュラ一人を超えている。

 

 

 

 その後、一行は変身したファルクに乗ってモリアの海賊船……スリラーバークを空から捜索し、やがて発見してしまい飛び降りていった。

 

 

 

 モリア逃げて。超逃げて。

 

 

 

「……あ、あのー。私も連れて行って頂けませんか?」

「む? お前はマデュラが……うちの船長が気に入りそうだからな。奴が起きるまでここで待て」

「あっはい」

「紅茶でもどうだい、ブルックくん」

「あっ、頂きます」

 

 

 明らかに献上品扱いされ、フィロアたちと一緒に旗艦でお留守番する事になったブルック。

 果たして彼は自分の影を取り戻せるのか。

 

 

 何かの間違いで、スリラーバークにいるあのゾンビが影ごと消滅、とかしてしまわないといいね。




蛇王海賊団、遂にスリラーバークへ上陸。

モリア終了のお知らせ。
実際カゲカゲの能力はモリアには勿体ない……。


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スリラーバーク③

ワンピース全く関係ないんですけど、ディスガイア5をやってて遅くなりました。
修羅次元入ったはいいけど、育てるの大変だこれ……。


 

 世界最大の海賊船、スリラーバーク。

 そこに空からダイナミック不法侵入を果たしたラヴィたち蛇王海賊団の先行偵察隊は、後々自分たちが乗ることになるだろうこの船を歩いて見て回っていた。

 

 が。

 

 

「ガハハハ!! なんとも面妖な地であるな! そこかしこに、あやかしもかくやといわんばかりにおかしな生き物が彷徨いておるわ!」

「やかましい、ギャーギャー騒ぐな蟹野郎。そんな事より、この気色悪い船をどう過ごしやすく改造するか考えた方が遥かに有益だろう」

「そんな小難しい事は知らぬ! クックあたりがいかようにでもするだろう!」

「……これだから頭にカニ味噌が詰まった馬鹿は困る。破壊だけしか能がないのだからな」

「そう褒めてくれるな! 照れるであろう!」

「全く褒めてないぞ」

 

「おい、いいのか。放っておいても」

「言っても聞かないもの。まったく、あのジジィどもはホントいつまで経っても喧嘩してばかりで……」

 

「ジメジメとしたこの空気……しっとりとした土……ここは最高だ……」

 

「あいつもあいつで何か一人で盛り上がってるが」

「……放っておきなさい。ああ、ハザクの奴が立候補した時点で嫌な予感がしたのよねえ……。アタシ、こういうホラーな雰囲気って苦手なのよ……! ゾロ、絶対に離れないでね? 絶対よ?」

「分かったから手を離せ。腕を掴むな。歩きにくいだろうが」

「うー……マデュラが起きてから来ればよかったぁ……あの子がいたら何にも怖くないのに……」

「めそめそするなよ、みっともねェ。それでも10億超えの大海賊か」

「それとこれとは話が別なのっ!」

 

 

 こんな感じで、非常にカオスな空間が生まれていた。

 

 

 やたら上機嫌に歩くガオレンと、不機嫌になりながらも、彼に抜かれるのは癪だからと早歩きで張り合うシャンロン。

 ボロボロの黒いフードを被っているので顔は見えないが、恍惚としているだろう事が声から容易に分かるハザク。

 

 年頃の乙女らしく、とってもホラーなスリラーバークを恐れ、一緒に歩くゾロの腕を拘束しているラヴィ。

 

 

 ここだけ見れば、世界的に有名な蛇王海賊団のクルーたちだとはとても思えない。

 

 

 しかしまぁ、仕事はきちんとしないと怒られてしまうわけで。

 特に、クック先生に叱られるのは嫌なのだ。

 何せお説教が長い上に怖い。

 

 

「うー……モリアの奴、カゲカゲの能力を変な風に使うんじゃないわよぉ……! 何よあの奇妙な生き物たちは! ライオンとかなんか顎が完全に人間のそれだったし!」

「あん? アレはああいう生き物ってわけじゃねェのか」

「そんなわけないでしょ! たぶん、腐乱した死体を修復できるだけの腕を持った外科医が配下にいるのよ。奪った影を入れる“器”を作るためにね。ああ、自分で言ってて気持ち悪くなってきた……」

「へェ……よくそんな事わかるな、お前」

「まあ、世界最高峰の家庭教師から授業を受けていたからね。頭を使った仕事はアタシの得意分野……って、こらハザク! どこ行くのよ!?」

「墓場だ!! 墓場があった!! ラヴィ船長代理! 墓場はそのまま残しておいてくれ! おれの住処にする!」

「アンタのその趣味は本当に理解できないわ」

 

 

 怖がりつつもゾロと会話をしていたラヴィだったが、ふと目を離した隙に、ハザクがふらふらとどこかへ歩いていっている事に気が付く。

 どうやら、彼が大好きな墓場を発見したらしい。

 

 余程気に入ったのか、住処にするとまで言い切った彼を、得体の知れないものを見る目になって呆れるラヴィ。ゾロも「なにいってんだこいつ」と言いたげな顔をしている。

 

 

 墓場……と来れば、死体。

 死体と来れば、ゾンビだ。

 

 これまでに見た奇怪な動物たちと、カゲカゲの実の能力者であるモリアという存在がある事から、ラヴィの優れたおつむは未来予測に近い予想を弾き出した。

 

 

 この先、ゾンビが出るぞ、と。

 

 

「……ガオレン、シャンロン!! ハザクと一緒に墓場の掃除をしてきなさい! 十中八九、敵が出るわ!」

「承知したのである!」

「ふむ、すぐに済ませてこよう」

「墓場……ふふふ、おれの墓場……」

 

 

 気色悪いゾンビの相手は野郎どもの仕事なのである。

 うら若き乙女であるラヴィは、さながら女王のごとく待つのみ。

 お供は未だ貧弱な三刀流の剣士のみだが、いないよりはマシである。

 ひとりぼっちでこんなところに置いていかれるとか冗談ではない。

 

 

「はあ……マデュラならゾンビが相手でも気に入りそうで怖いのよね……」

「いや、さすがにねェだろそりゃあ」

「いいや、あるわ。あの子の無敵メンタルを舐めちゃいけないわよ。なんならゾンビを食べようとするんじゃないかしら」

「えー……」

 

 

 この船の気持ち悪さはひとまず置いておいて、この場にマデュラがいない事に感謝。

 腐乱死体なんぞを食べたら、彼女の口臭がすごい事になりそうだし。

 そうなったら、いくらラヴィとてちょっと距離をとる事を考えざるを得ない。

 

 

「蛇王龍に苦手なものとかはねェのかよ」

「無いんじゃない? あの子、基本的に食べるか友達になるかのどちらかしか考えてないし。育ちが育ちだからか、価値観がものすごく変わってるのよ」

「……なんというか、その、あれだな」

 

 

 

 ラヴィを怒らせないよう、言葉を選んでいる様子のゾロ。

 しかし、彼はそういう細かい事は苦手である。

 結局、上手く言葉が出ずに沈黙してしまった。

 

 それを見て苦笑いをこぼす。

 

 

「動物みたいだって?」

「う……まぁ、そんなところだ」

 

 

 図星だったのだろう、ゾロは呻いた。

 しかしまあ、特に怒るようなことでは無い。

 少なからずマデュラと交流した者は、大体がそういう印象を受けるのだし。

 

 

「そこがあの子の可愛いところなの。良くも悪くも純粋というか。まあ、その分本気で怒ったら世界一怖いんだけどね……。怒れるマデュラの前に立てば、人間なら誰もが死を覚悟する。根本的に生物としての格が違うのよ、あの子は」

「……その割に結構怒りやすくねェか、あいつ」

「いつものはただ不機嫌になっているだけ。本気で怒っているわけじゃないわ」

「そういうもんか?」

「そういうものよ。あの子が本当に怒りっぽかったら、この世界なんてとうの昔に滅んでるわ」

「…………」

 

 

 そうこうしているうちに、ガオレンたちが帰ってきた。

 轟音が幾度か聞こえたので、やはり戦闘があったのだと思われる。

 

 

「うーむ、動く死体とはなんとも。しかし、強者が死した後もその肉体を利用できるというのはなかなか面白い能力であるな!」

「ラヴィ船長代理。墓場にはゾンビが埋められていて、彼らが侵入者を撃退する兵士となっているようだよ。所詮は雑兵だったが、奥に行けば精鋭も居るのではないかな」

「なかなか素晴らしい能力だ……。モリアとはうまい酒が飲めそうだな……」

「やっぱりね。となると、大昔の猛者とかが出てきても不思議ではないわ。たしか、世界各地の有名な英雄や悪党の遺体が盗まれた事件が何度もあったはずだし」

 

 

 案の定である。

 完全にラヴィの推理が当たっていると知ったゾロは、思わず目を見開いて彼女を見た。

 

 この島というか、船に侵入し、歩き出してからまだそこまで時間は経っていない。

 なんとなしに歩いていた自身と会話しながらも、冷静に敵の戦力を分析していたというのか、この女は。

 

 

 なるほど、若くして“世界最悪の海賊団”の最高幹部を任されているだけの事はある。

 

 

「ゾンビというからには、日光……というか熱に弱かったりするのかしら? それに、真っ向から来るのではなく、奇襲してくるタイプと考えた方が自然よね……。となると、向こうが本格的に動くのは、夜?」

「出てきたゾンビどもはとりあえず埋め直しておいたが、まだ息があるようであったぞ。既に死んでいるのだから、おかしな表現になってしまうがな!」

「なるほどね。しぶとく食い下がって相手の体力を奪っていくタイプか。なら、あまり時間を与えるのは得策ではなさそう。よし、もっと奥に進みましょうか。ブルックも連れてくればよかったかしら」

「ふむ、マデュラ様がお休みになっていたのだから仕方がない。彼自身も来たがっていたようだがね」

「まあね。ゾロ、次はアンタが戦いなさい。どんな相手が来るのかは分からないけど。とりあえずあのこれ見よがしに存在感を放っている館に行ってみるわよ」

「ああ、わかった。歯応えのある奴が相手だと嬉しいんだがな」

 

 

 そんな感じで、一行は進む。

 それを隠れて見ていた“ゴースト”を通して、モリアの部下である少女、ペローナが侵入者の正体を知ってしまい、絶望的な展開を想像して青い顔になっていたりもしつつ……。

 

 

 

(おいおいあれ……蛇王海賊団じゃねェか……! ど、どうしよう!? モリア様はまだ寝てるし、仮に起きたとしても、そもそも私たちだけでどうにかできる相手じゃねェし! あ、でも蛇王龍って人型の時はすっげェ可愛いんだよなァ……あそこにいる大巌竜も可愛いし、ちょっと友達になりたい気も……いやいやいや、命あっての物種だって! 何考えてんだ私!! ああああ、本当にどうしよう!? と、とりあえずアブサロムとホグバックに相談しなきゃ!)

 

 

 ゴーストプリンセス、ペローナ。

 その特異な能力により、スリラーバークの近辺、及び内部の偵察、監視を担う優秀な人物である。

 それ故に蛇王海賊団がやってきた事をいち早く知ってしまい、パニックに陥る羽目になったのだ。




ペローナってやっぱり能力の特性上武装色の覇気も効かないんですかね。
幽体はあくまで幽体であって、本体じゃないですもんね。

そう考えるとめっちゃ強いな、ホロホロの実。


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スリラーバーク④

なんかこう、スリラーバークって話を広げにくいですね……(:3_ヽ)_
巻きでいきますかねえ。


 

 

 墓場からゾンビが出てきたり、森に奇妙な生物が出没したりと、果てしなく不気味な島……というか船、スリラーバーク。

 そこにぽつんと存在する館に入った蛇王海賊団の先行偵察隊は……。

 

 

「……誰もいないわね」

「しかし生活感はあるぞ! 恐らく我らの存在を察知して慌てて逃亡したのであろうな!」

「蟹野郎にしては鋭いな。いや、野生の勘か」

「……壁に絵画のようなものが立て掛けてあるが……おれにはわかる。あれらは全部ゾンビだ……」

「まあたしかに、絵にしちゃ悪趣味すぎる。全部斬るか?」

「んー……どの道リフォームしなきゃいけないし、この機会に一斉掃除しちゃいましょうか。気味が悪いし」

「「了解」」

 

((なんか腐れヤベー奴ら来たんですけどーー!? 助けてご主人様ー!!))

 

 

 館の出入口である大きなドアを蹴破って侵入した挙句、絵画や剥製などに偽装したびっくりゾンビたちをシバキ倒して回るラヴィたち。

 どう見ても野蛮人だが、海賊船に居座る連中を相手にお行儀よくしても意味が無い、との事。

 

 尚、ラヴィだけはやっぱり戦わない。

 下手に彼女が暴れると、スリラーバークそのものが沈没しかねないので仕方ないのだが。

 

 

 ……一分後。

 

 

「腐れ痛ェ……心が痛ェ……」

「ふむ。ゾンビというだけあってなかなかタフな奴らじゃないか」

「と言っても、もう動けないようであるがな! どうにかして影を抜かない限りは、また復活しかねんぞ!」

「とりあえず……一箇所にまとめておこう……」

「能力によるものだってんなら、海に捨てりゃいいんじゃねェか?」

「そうかもしれないな。なかなか冴えてるじゃないか、ゾロくん」

「ふん。海は能力者全てに共通する弱点だろうが」

「違いない。さて、ラヴィ船長代理。これからどうする?」

「ん、皆お疲れ様。そうねえ……とにかくモリアを見つけないといけないし……」

 

 

 いきなりボコボコにされた上に海に捨てられるとか、腐れひでェ!! おれたちが何をしたと!? と、内心で叫ぶびっくりゾンビたちだが、相手が悪かったとしか言いようがない。

 強いて言うなら、こんな時に限ってのんきに寝ているモリアが悪いのだ。無能な主人を持った己の不幸を呪うがいい。

 マデュラも寝てるじゃん、というツッコミは無粋である。

 

 

 それはさておき、“見聞色の覇気”でスリラーバーク全体の“声”を探すラヴィ。

 すると、すぐにお目当ての存在が見つかった。

 

 

「いた」

「あん? 何がだ」

「モリア。上の方で寝てるみたい。そのすぐ近くにも三人いるわね。幹部かしら?」

「ふむ、見聞色の覇気であるな! 船長代理の覇気は相変わらず異常なのである!」

「へェ……戦闘時だけじゃなく、そういう使い方もできるのか。覇気ってのは」

「勉強になるだろう、ゾロくん。マデュラ様はもちろん、総隊長以外の四龍王は覇気の扱いも群を抜いて上手いからね」

 

 

 マデュラが色々と規格外なので霞んでしまうが、ラヴィは生まれつき覇気を扱えた程の天才であり、その練度はかなりのものなのだ。

 尚、ナチュラルにハブられているガロアも、決して覇気の扱いが下手なわけではない。ちょっと劣るだけなのである。

 

 

「……登ってモリアを探すか?」

「そうね。モリアも部下に起こされるだろうし、準備万端で待ち受けてそうだけど」

「障害など叩き潰して進むだけなのである!」

「そうだな。恐らく、マデュラ様もそろそろ目覚める頃だろうし。今のうちに働いておかないと、すぐに終わってしまう」

「しかし、階段がありそうには見えねェぞ。隠し通路でもあるのか?」

「かもしれないわね。まずは怪しいところを適当に探してみましょうか。早くしないとマジでマデュラが起きてこっちに来ちゃうわ。その前にひと仕事終えないと、先生あたりに叱られちゃう」

 

 

 そんな感じで、びっくりゾンビたちを拘束した上で置き去りにし、館の捜索を始めたラヴィたち。

 一応中をぐるっと見て回るも、やはり階段はすぐに分かるような場所には無かった。

 

 ゾロが言った通り、どこかに隠し通路か何かがあり、重要なものはそちらにあるのだろう。

 

 

 瞬く間に一周して最初の広間へと戻り、首を傾げる一行。

 隠しというだけあって、なかなか見つからない。

 

 

 が、ハザクがある事に気が付く。

 

 

「……風が……こっちか?」

「ん、暖炉? まさかそんなベタな場所に隠し通路なんて……」

 

 

 

 ガコン、と動く暖炉の壁。

 ぬるりと壁の奥に消えるハザク。

 

 

「……あったわね」

「ベタな場所に、な」

「うるさいわねマリモ!! はっ倒すわよ!?」

「誰がマリモだコラァ!?」

「まあまあ二人とも落ち着くのである! そんな事よりさっさと進もうではないか!」

「その通りだよ。私は先に行くとしようかな」

 

 

 口喧嘩を始めようとするラヴィとゾロ。

 豪快に笑いながらも、それを宥めるガオレン。

 さっさと隠し通路へと消えるシャンロン。

 

 尚、ラヴィにはっ倒されたら、いかにタフなゾロと言えど普通に死ぬ。

 彼は綱渡りをして命のやり取りを楽しむ趣味でもあるのだろうか。

 ゾロ、ドM疑惑。

 

 

「うむ、ワガハイも先に行っているのである!! マデュラ様に怒られても知らぬからな! ガハハッ!」

「「サラッと恐ろしい事言っていくな!」」

 

 

 ギャーギャー騒いでいたラヴィとゾロだが、ガオレンが隠し通路に消えながらも言い放った言葉に我に返る。

 喧嘩に夢中でモリアを見つけられませんでした、と報告してみろ。温厚で仲間想い(笑)だと名高いマデュラちゃんもぷんぷんして怒りの鉄拳を繰り出す事は間違いない。

 

 そうなったらラヴィでも死ぬかもしれないし、ゾロに至っては粉々になりかねない。

 

 

 結果、二人も慌てて仲良く隠し通路に消えていった。

 

 

 

 それを最後まで見ていたびっくりゾンビたちは……。

 

 

「ご主人様たち、大丈夫かなあ」

「いやいや普通に腐れヤベーから。ああ、おれたち浄化されちまうのかなあ……」

「でもまだあいつらゾンビの弱点を……」

「海に捨てるとか言ってたじゃん。塩とかもう腐れ関係ねェじゃん」

「だよなぁ。とりあえず寝とくか」

「……そうだな」

 

 

 完全に人生……いや、ゾンビ生を諦め、殉教者のような面持ちで安らかに眠りについた。

 もしもモリアではなく善人がカゲカゲの能力者だったなら、表社会で懸命に奉仕するゾンビたち、という平和な光景も見られたのかもしれない──。

 

 

 

 ──そして、蛇王海賊艦隊、旗艦にて。

 

 

 

「んぁ? あー、よく寝た」

「……あ、マデュラちゃま。おきた?」

「うん、起きた。ちょっと退いてくれる?」

「はーい」

 

 

 

 遂に、マデュラが目覚めた。

 奇しくも全く同じタイミングで、スリラーバークでもモリアが目覚めていたりするが、それは置いておく。

 

 

 ガチャリと私室のドアが開き、ジーヴァに引っ付かれながらマデュラが起きてきた事に気が付くクルーたち。

 すぐさまほぼ全員が跪き、挨拶する。

 

 

「「おはようございます、マデュラ船長!!」」

「ん、おはよぉ。なんか暗いけど、どういう状況?」

「……起きたか、マデュラ。現在我が艦隊は“魔の三角地帯”にいる。で、ラヴィたちは先んじて──」

「ふむ、ふむふむ」

 

 

 フィロアの説明を受け、理解する。

 そしてマデュラは大きな欠伸を一つこぼし……。

 

 

「ところでそのイカした骸骨は何者?」

 

(いいな、ブルック! 何度も言った通り、死にたくなければマデュラ様には絶対にセクハラするな! この海域ごと吹き飛ばされるぞ!!)

(わ、わかりましたぁ!!)

 

 

 凄まじい存在感を放つノッポのアフロ骸骨、ブルックに目を遣った。

 

 

 セクハラしないように釘を刺すガロアと、まだ死にたくないので激しく頷くブルック。

 どうでもいいけど早く返事しないと機嫌損ねるぞ。

 

 

「ヨホホホホ!! 申し遅れました、私死んで骨だけブルックと申します! あ、この姿は“ヨミヨミの実”で死んで白骨化した後に蘇ったからでして」

「ふーん。で、なんで私の船に上がり込んでるの?」

「あ、そ、それはですね……えーと……」

 

 

 

 ヒィィィ!!

 なんかこの人、すごい可愛いけど威圧感もすごくてコワイィィ!! と怯えるブルック。

 それはマデュラが寝起きだからである。

 普段はもう少し愛想がいいのだ。

 

 

「なんで言い淀むのかな? ねえ」

「ま、待てマデュラ。ブルックが怯えている」

「黙ってろフィロア。本人の口から聞きたい」

「ぐぬ……そうか……」

 

 

 慌ててフィロアが割って入るも、秒殺された。

 役に立たない奴だ。

 

 

 あわあわ言いながらも。

 男ブルック、腹を括る。

 

 

 

「ラヴィさんとジーヴァちゃんに気に入られまして。モリアに奪われた私の影を取り戻してくれる、と約束して下さったのです。当然私も共に行きたかったのですが、あなたが気に入りそうだからお前留守な、と言い渡された次第で……」

「……ふーん。ジーヴァ、本当?」

「あい。ラヴィちゃまはこわがってたけど、おはなししてるうちにがいこつしゃんをきにいったみたい」

「ふーん」

 

 

 

 あれ、なんか反応薄い。

 ブルック自身を含め、クルーたちの背中に冷たい汗が流れる。

 もっとこう、「動く骸骨!? 面白ーい!」と食いつくのでは、と思っていたのだが。

 

 

「……ねえ」

「は、はい?」

「なんで、アフロなの?」

 

「…………はい??」

((ん??))

 

 

 

 マデュラちゃん、真顔でどうでもいい質問を放つ。

 

 

 思わず固まるブルックたち。

 幼女のジーヴァまで首を傾げて停止している。

 

 

 

 しかしまあ、その問いに対する答えは一つである。

 

 

「毛根強かったんです」

 

 

 

 キッパリと。

 ブルックは、そう断言した。

 

 

 

「…………」

「…………」

 

 

 

 真顔のまま黙るマデュラ。

 なんとか言葉を探すブルック。

 固唾を呑んで見守るクルーたち。ジーヴァも含む。

 

 

 

 

 

 しばらく沈黙が続き……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷっ……あはははっ!! そう、毛根が強かったからアフロなんだ!? あはは、面白ーい! うん! 気に入った! このままウチにいていいよー」

「……あ、ありがとうございます……」

 

 

 

 打って変わって大笑いするマデュラ。

 力が抜けてしまい、床にへばりつくブルック。

 

 周囲を見れば、クルーたちもホッと息を吐いている。

 

 

 

 一時はどうなる事かと思われたが、なんとかブルックは無事マデュラに気に入られたのであった。

 

 

 後にブルックは語る。

 

 

 あの圧迫面接は二度としたくない。本気で殺されてしまうんじゃないかと思いました、と。




次回か次々回ぐらいでスリラーバーク編終わるかもしれません。
オーズ出せないかも……。


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スリラーバーク⑤

忙しすぎて遅れました。
あ、ラージャンなんですが、インペルダウンで出します。
ラギアクルスとナバルデウスも、たぶん魚人島あたりで出てくると思いますよー。

そういえば、オーズが約40メートルと意外に小さいのに対して、黒ひげ海賊団のでかいヤツ……サンファン・ウルフが“最大で”180メートルらしいですね。
……ゾラ・マグダラオスの方が余裕でデカいんだよなぁ……。


 

 他人の力で海賊王になる男、ゲッコー・モリア。

 スリラーバークを支配する彼は、起きて早々に知らせを受けた「蛇王海賊団の襲撃」という大事件に対処するため、必死に頭を働かせていた。

 

 

 それにしても、その能力がカイドウを彷彿とさせる上に、戦闘力ならば四皇すら上回るとも言われる蛇王“龍”が襲ってくるとは、何たる因果だろうか。

 

 もしかして自分は龍に呪われているのでは、と若干現実逃避もしつつ。

 

 

「……オーズを……畜生、ダメか。影がねェ。それに、いくら伝説の大悪党とは言っても、変身した蛇王龍と比べりゃオーズなんてチビもいいところだ。相手になるとは思えねえ……クソッタレ!!」

 

 

 幹部格である三人……ホグバックとアブサロム、そしてペローナは既にこの場にはいない。

 とりあえず先行して侵入した蛇王海賊団のクルーたちをどうにか足止めするように指示を出したからだ。

 

 

 まあそれはともかく。

 

 

 やはり、どう考えても勝てない。

 いずれカイドウにリベンジマッチを仕掛けるつもりだったモリアではあるが、それは今よりも遥かに強力な影を手に入れてからするつもりだったのだ。

 現時点で保有する戦力では、蛇王龍はおろか四龍王ですらも倒せる見込みがない。

 

 しかし、だからと言って尻尾を巻いて逃げるというのはモリアのプライドが許さない。

 全てを失って命からがら逃げ延びるなんてのは、あの日……カイドウのクソ野郎に負けた、あの一回だけで十分だ。

 

 

 ふと、肥太った自らの肉体を眺める。

 かつてはもっとスリムな体型であり、戦闘力も高かった。

 少なくとも、モリア自身はそう思っている。

 

 

「……おれは他人の力で海賊王になる男……それが間違ってたってのか……? いや! そんなはずはねェ! 仲間を失って、自分で導き出したこの結論が、間違っているはずがねェんだ!!」

 

 

 思わず弱気になってしまった自分をぶん殴り、気持ちを入れ替える。

 そう、手段がどんなに情けなくとも……モリアは必ず海賊王になる男なのだ。

 この程度の苦境を、潜り抜けられないはずがない!

 

 

 ──でなければ、この海に散っていった、かけがえのないかつての仲間たちに申し訳が立たない。

 

 

 

 しかし、現実は非情である。

 

 

 

 モリアがいるメインマスト。

 その屋根が突如として吹き飛び、“あるモノ”とばっちり目が合ってしまう。

 

 

 

「──見~つけた♡」

「……!?」

 

 

 

 この世の物とは思えない程の巨体。

 恐ろしいという言葉では全く足りない、巨大な眼。

 

 

「……“大巌竜”……!! てめェ、おれのかわいい部下たちはどうしたァ!!」

「さあ。今頃アタシの仲間が片付けているんじゃないかしら?」

 

 

 蛇王海賊団、最高幹部……“四龍王”が一人。

 ラヴィその人が、巨大な蛇のような怪物に変身して建物そのものに巻き付き、屋根を破壊して空からモリアを捕捉したのである。

 

 

 

 脳内に走る、かつての記憶。

 一人、また一人と倒れていく仲間たち。

 船長である自分だけが生き残ってしまい、情けなく逃亡したあの日。

 

 

 龍。

 

 

 

 

 またか……。

 また、おれは!!

 

 

 

「ふざけんじゃねェ!! なんだ、なんなんだ!? てめェら“龍”に、二度も仲間を奪われてたまるかァ!!」

「何を一人で怒ってんのか知らないけど。この船にいる全ての人間は皆殺しよ。当然、アンタもね」

「バカ言ってんじゃねェよ……! 小娘が、もうこのおれに勝ったつもりでいやがる!! おれさまを誰だと思ってんだ!?」

「知らないわよ。アタシたちにとっては、アンタもそこらの雑魚と変わらないもの。ちゃっちゃと死んでちょうだい。マデュラから命令が来ちゃったから」

「……野郎ォ……!!」

 

 

 

 完全に舐められている。

 そう感じ、怒りのあまりプルプルと震え、青筋を立てるモリア。

 

 

 しかし、彼の部下はかなり特殊な能力を持っており、そう簡単に殺されるとは思っていない。

 引き際も心得ているし、いざとなればモリアを見捨ててでも逃げ延びるだろう。

 

 

 命さえあれば、たとえ何年かかろうと必ずまた合流し、再起できる。

 だから、モリアは仮に既に自分が見捨てられていたとしても、怒るつもりは無い。

 

 

 自ら戦うのは少し癪だが……。

 せめて、仲間たちが逃げ延びる時間ぐらいは稼ぐ!

 

 

「くらいやがれェ!! 影法師(ドッペルマン)……。“角刀影(ツノトカゲ)”ェ!!」

 

 

 モリアの影がひとりでに動き、槍のようにラヴィの巨体へと伸びていく。

 しかし彼女はそれを見ても何のアクションも起こさず、ただじっとするのみだ。

 

 

 そして……。

 

 

 

 

「……な……!?」

 

 

 

 先端にトカゲを象った影は、何もしていないはずのラヴィに、ガキンと呆気なく弾き返された。

 

 

 

「ば……バカな……!!」

「バカはアンタよ。変身したアタシの身体に、その程度の攻撃が通じるわけないでしょ」

「ぐ……!! “大角刀影(オオツノトカゲ)”ッ!!」

 

 

 ならばこれならどうだ。

 その傲慢、必ず突き崩してみせる。

 

 

 モリアの影が先程よりも巨大な槍となり、再びラヴィを貫こうと空へ走る。

 

 

 

「無駄だって言ってんでしょ。学習しないお猿ね」

「…………!?」

 

 

 

 が、駄目ッ……!!

 圧倒的、圧倒的硬さ……!!

 

 まるで、ボロボロのピッケルで無理やり鉱物を採掘しているかのようだ。

 

 

 

「ありえねえ……! “魔人”だろうと容赦なく突き貫く槍だぞ!? たかが鱗ごときに……!」

「魔人? そんなものを貫けたかといってどうだと言うの? アタシは最強クラスの龍よ。らっきょうみたいなその身体で、どうやって龍に勝とうと言うのかしら」

「らっきょうだとォ!?」

「ま、いいわ。残念だけど、アンタと遊んであげる時間はないの。あの子が来る前に終わらせなくちゃ、怒られちゃうわ」

 

 

 

 どこまでも傲慢な龍の言葉に、完全にキレた。

 もうゾンビがどうだの、細かい事はどうでもいい。

 

 何より。

 仲間たちのために、負けられないのだ。

 

 

 

「後悔しやがれ……“影の”(シャドーズ)──」

「フッ」

「ごあっ!?」

 

 

 

 切り札を切ろうとしたモリアだが、ラヴィがサラッと吐き出した息がまるで巨大な台風のように襲いかかり、それに耐えられず吹き飛ばされ、壁に激突した。

 

 すぐに体勢を立て直し、ぶるぶると頭を振る。

 

 

「ふ、ざけんな……!! てめェ、戦う気はあんのか!? あァ!?」

「無駄に元気ねえ……。仕方ないでしょうが。アタシが暴れるとこの船ごと壊しちゃうんだもの。ココはマデュラの物になるんだから、慎重に扱わないといけないの」

「んだとォ!? ここは……スリラーバークはおれのもんだ! おれたちのもんだ!! てめェらなんざにゃ絶対に渡さねェ!!」

「でしょうね。だからアンタを殺しに来たの。いいからそのまま適当にしていてちょうだい。今、どうやってこの船を壊さずにアンタを殺すか考えてるのよ」

「どこまでも舐めやがってェ……!!」

 

 

 ふぅ、とため息を吐くラヴィ。

 ただのため息が、暴風となってモリアを襲う。

 今度はしっかりと踏ん張り、ギリギリ耐えた。

 

 

 ──正直に言うと、力の次元が桁違いすぎる。

 モリアはかつてカイドウと対峙した時に匹敵する程真剣に戦っているというのに、あちらはまるで子供と戯れているかのようだ。

 

 それでいて、一切突破口が見えてこない。

 

 

 

 ……ペローナたちは、なんとか脱出できただろうか?

 

 

 

 ふと気になり、ラヴィに細心の注意を払いながらもちらりと外を見回す。

 

 

 

 マリモのような頭をした剣士に、ワノ国から掘り起こしてきたとっておきの将軍ゾンビ……“剣豪リューマ”が斬られている姿が目に入った。

 まあ、それはいい。どうせ死んでいる駒だ。

 

 

 かわいい部下たちは、無事だろうか。

 

 

 

 モリアが、そんな事を考えていた、まさにその時。

 

 

 

「ホロホロホロホロ……!」

「ん? ナニコレ」

(ゴースト!! ペローナか! 馬鹿野郎、とっとと逃げやがれってんだ!!)

 

 

 モリアが娘のように可愛がってきた“ゴーストプリンセス”、ペローナ。

 彼女の能力である“ホロホロの実”によって生み出されたネガティブゴーストが、乱入してきた。

 

 

 そして、巨大な眼をくりっと丸くしている大巌竜に飛び込み……スゥーと身体を通り抜けていく。

 

 

 ちなみに、ペローナ本体の姿は見当たらないので、どこかに隠れながらゴーストを飛ばしてきたのだと思われる。

 

 

「…………」

「モリア様、早く逃げて!!」

「やったのか……? ペローナの能力が効かない奴なんざ、いるわけがねェ!!」

 

 

 

 ネガティブゴーストに身体を潜り抜けられた者は、たとえ誰であろうとネガティブになる。

 直接的な殺傷力こそ低いが、それでも極めて強力な能力である。

 

 

 思わず内心でガッツポーズを決めるが──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今の何?」

「へ??」

「馬鹿な!? ネガティブゴーストが……!!」

 

 

 

 

 

 ──無敵の能力が、効いていない。

 まさかの結果に、驚愕するモリア。

 

 

 しかし、ペローナが操っているゴーストが、原因をすぐに解明した。

 

 

 

 

「そ、そうか!! 獣型に変身した大巌竜は巨人が可愛く見えるレベルの巨体……! ただのネガティブゴーストじゃ、小さすぎて何の効果も出せないんだ……!! うぇーん、モリア様ー!! 役立たずでごべんなざいーー!!」

「クソッタレ……そういう事かよ……!! もういい、ペローナ! ホグバックとアブサロムを連れてこの船から逃げろ!! 殿(しんがり)はおれが引き受ける!」

「そ、そんな!? モリア様を置いて逃げるなんて!」

「なんだかよく分からないけど……無駄よ。この海域はアタシたち蛇王海賊団が目を光らせてる。逃げたところですぐに見つけて沈めるわ」

「ぐっ……!!」

 

 

 

 

 万事休すか……!?

 徐々に諦めがモリアの心を支配する。

 

 

 

 各所にいるゾンビたちが、次々と無理やり浄化されている事もまた、モリアの焦りを加速させる。

 恐らく、侵入した蛇王海賊団のメンバーがゾンビを海に放り捨てているのだろう。

 カゲカゲの実という悪魔の実に由来する存在なだけに、ゾンビは海が弱点なのだ。

 

 

 消えていく“影”の中には、貴重な戦力である将軍ゾンビたちですらも含まれている。

 このままでは、全てが水の泡だ。

 

 

 

 

 

 ──今度こそ、邪魔はさせねェ!!

 また吹き飛ばされないように踏ん張り、気合を入れるモリア。

 

 

 

「いいからとっとと逃げやがれ、ペローナァ!! “影の集合地”(シャドーズ・アスガルド)ッ!!」

「モリア様……!! くっ……ちくしょおォォ!! 蛇王海賊団!! てめェら、絶対に許さねェからなァァァ……!!!」

 

 

 

 浄化されてしまった影は……100や200ではきかないが……。

 

 

 

 それでも、この島に残っている700体分の影が、モリアの身体に入る事になる。

 普通ならば、これで勝てる!! と確信するところなのだが……。

 恐らく、これでも負けてしまうだろう。

 

 

 薄らとだが、殺されると分かってはいる。

 しかし、モリアがやらねばならないのだ。

 

 

 

(アブサロム……ホグバック……そして……ペローナ。悪ィな……おれ、死んだ。キッシッシッシ……!! 仲間を逃がすために死ぬなんざ、似合わねェと思っていたんだがなァ……)

 

 

 

 

 ──カイドウに、リベンジしたかったなぁ……。

 

 

 

 

 みるみるうちに巨大化していき、大巌竜が巻き付いていたメインマストを破壊するモリア。

 しかし、それでも尚。

 大巌竜の方が大きい。

 

 まったく、規格外にも程がある。

 

 

 

(もう少しだけ待ってろ、あの世のお前ら。もうすぐおれもそっちに逝く)

 

 

 

 

「キシシ……おれが奪った影は、体内に取り入れる事でおれ自身の戦闘力を飛躍的に強化できる……!! これがカゲカゲの奥義だ!!」

「…………そう。悪いけど、奪わせてもらうわよ。アンタの全てを、アタシのマデュラに捧げなさい!!」

 

 

 

 

 ──スリラーバークの影、700体分を取り込んだモリア対大巌竜ラヴィの決闘が、始まった……。

 

 

 

 ちなみに。

 ペローナはその能力をいかんなく発揮し、モリアの元に辿り着くまでにラヴィ以外のメンツを全員ネガティブ状態にさせていたりする。

 結局、彼らは上空から戦況を見張っていたファルクとヤマツによって叩き起こされたので無事だったが。




ハザク「カビになりたい……最低だ、死のう……」
シャンロン「ガオレン……いつも済まない……」
ガオレン「カニですみません……」
ゾロ「ルフィのとこにいるよりこっちの方が合ってるんじゃないかとか思ってごめんなさい……」


見聞色の覇気で聞いていたマデュラたん、爆笑──。

地味に書いてますが、ブルックの影が入っているゾンビ、リューマは原作通りゾロに倒されています。
秋水はマデュラへの献上品として回収されたようです。


あと、変身さえしていなければ、ラヴィにもネガティブゴーストはしっかり効きます。まず当たりませんけど。
マデュラにも当たる確率ゼロですが、当たりさえすれば効く……のかなあ?
あの子がネガティブになっている姿はちょっと想像できませんね。


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スリラーバーク⑥

 G★???クエスト「極み滾る大巌竜」
・メインターゲット:ラヴィエンテの撃退
・受注条件:なし
・失敗条件:ハンターが力尽きる

 備考:ラヴィエンテのくせにめちゃくちゃ素早く動き回る特殊個体で固定&通常種よりもデカイ

 モリアさんの現状をモンハン風にするとこんな感じ。
 尚、万が一成功してしまうと黄金に輝く激昂したダラ・アマデュラ超強化個体が乱入してくる模様。



 

 

 ゴーストプリンセスペローナの能力によってネガティブにされてしまい、醜態を晒してしまったゾロたち。

 上空から飛来したファルクとヤマツによって文字通り叩き起された彼らは、今。

 

 

 巨大化したモリアが、必死に抗う様子を観戦していた。

 

 

 

「なんだ……ありゃあ……!?」

「うん? どうしたのかね、ゾロくん」

「モリアって奴がデカくなったのはこの際置いておくとして、そのモリアより更にクソデケェあの化け物はなんなんだ!?」

「そうか、お主は初見であったな! 神々しさすら感じさせるあの巨体こそが、ラヴィ様がその能力によって変身したお姿である!!」

「……いつ見ても……圧倒される……」

「あの女が、変身……!」

 

 

 おおおォ!! と叫びなから、痛烈なパンチを“大巌竜”の巨体に叩き込むモリア。

 しかし巨竜はそれを全く意に介さず、ただじっと眺めるのみだ。

 

 そんな怪獣大戦争を目の当たりにしたゾロは、思わず自分の目を疑わずにはいられなかった。

 聞けばなんと、あの巨竜はラヴィが変身したものだというではないか。

 

 決して自らは戦おうとせず、時折ビビってゾロの腕にしがみついたりしていた、あのラヴィが。

 

 

「しかし、ラヴィ様もなかなか困っているようだね。この船はマデュラ様に献上すると確定している以上、彼女は下手に暴れる事ができないから」

「……どういう事だ」

「単純な話であるぞ! 彼女が暴れると、特別な補強を施していないこの船では耐えられんのだ! 攻撃を叩きつけたが最後、木っ端微塵となって海を漂う粗大ゴミと化すであろうな!」

「なっ……この船がか!? そりゃいくらなんでも──」

「事実だ、新入り……。しかし、どうする? 我々も援護に行くべきか……?」

「ハザク。君はおかしな事を言うな。あの巨体に轢き潰されに行こうというのか?」

「むう……」

 

 

 あまりにもスケールが違いすぎる。

 自らの眼前で繰り広げられる戦いとも呼べぬ代物を前にして、ゾロはただ呆然と立ち尽くす事しかできない。

 

 

 

(これが、四龍王……これが、蛇王海賊団か……!!)

 

 

 圧倒的強者であるシャンロンたちですらも、共闘が叶わない程の“デカさ”。

 それこそが四龍王であり、蛇王龍はそれを更に上回る化け物だ。

 

 こんなもの、とても人の手に負える相手ではない。

 

 

 それが、ゾロの正直な感想である。

 

 

 

 ──そんなこんなを考えながら観戦を続けていると、戦いに動きがあった。

 戦いというか、モリアが必死になって攻撃しているだけで、肝心のラヴィはアレを戦いとは思っていなそうだが。

 

 

 

「なんだ!?」

「「なるほど、そう来たか」」

 

 

 シャンロンたちが頷く横で、一人だけ驚愕するゾロ。

 それもそのはず、ただじっとモリアを眺めているだけだったラヴィの身体が、突然爆発したのである。

 

 

 攻撃を続けていたモリアもそれに巻き込まれ、痛ましい悲鳴がスリラーバーク中に響き渡る。

 

 

「おい! 今、何が起こったんだ!?」

 

 

 

 当然、展開についていけないゾロが誰ともなしに問うが、それに答えたのは予想外の人物であった。

 

 

 

「んーとねー。変身したラヴィはああやって自由に爆発を起こせるんだよねー。それで、船を巻き込まないようにモリアだけを攻撃したわけ」

「!? 蛇王龍!!」

「「マデュラ様ッ!?」」

 

 

 慌てて跪くシャンロンたち。

 何故ここに、と目を剥くゾロ。

 

 

「わらわもおるぞ」

「ぼくもね。全く、君たち遅いじゃないか。マデュラちゃんが起きてご飯を食べ終わるまでには片付いているだろう、と思っていたのに」

「クック……!! それに、ハンコックくんまで!」

「ぬ? あの骨っ子はおらんのか」

「ブルック、だったか? あやつならば、影が戻った事に感激して船で歌っておる」

「そうか……どのゾンビだったのかは分からんが……よかったな……」

 

 

 新入りであるハンコックはともかく、クックまでもが来ている事に思わず「うげっ」と声を漏らすシャンロンたち。

 幸いクックの機嫌は悪くないようなので、長々としたお説教は回避できるかもしれない。

 

 

 しかし、問題はマデュラがどう出るかだ。

 ラヴィの勇姿を拝めたからか機嫌は良いようだが、ふとした何かがきっかけでむくれるぐらいは有り得る。

 

 

 

 まあ、それはさておき。

 

 

「あ、ラヴィがモリアの腹に頭突きした。あはは、余程対処に困ったんだねー。ブレスで消し飛ばせば手っ取り早いのに」

「さて、“悪魔”を乗り移らせるための果物はここに用意してあるが……上手くいくかの?」

「たぶん大丈夫じゃないかな。ほら、マデュラちゃん。そろそろ近付いた方がいいんじゃないかい?」

「ん、そだねー。モリアが影を吐き出し始めたし」

 

 

 スリラーバークそのものを破壊してしまわないように物凄く手加減した、ラヴィの頭突きがモリアにヒットし、らっきょうボディがすぱこーんと吹き飛んだ。

 余程ダメージが入ったらしく、何とか立ち上がった彼は息も絶え絶えで、唾液のように影を吐き出している。

 

 

 それを必死に手で抑えるモリアだが、まぁそんな事しても無駄である。

 空気砲のように吐き出されたラヴィの息を食らい、再びすぱこーんと勢いよく吹き飛んだ。

 まるでボーリングのピンである。ちょっと形も似ている気がするし。

 

 

 とにかく。

 そろそろモリアが死にそうなので、予め用意してあった果物をハンコックから受け取り、人型のままマデュラが飛んでいく。

 

 

 それを見て黙っていられないのがゾロである。

 いくらなんでも、あの中に人間が割り込むのは無茶だろう、と判断したためだ。

 

 

「お、おい! 蛇王龍!! てめェ何してんだ!」

「何って、乱入? ほら、何かと便利そうなモリアの能力は奪っておきたいし」

「能力を奪うって、どうやって……ってそうじゃねェよ! あんな災害みたいな戦いのド真ん中に割り込むなんて無茶だろうが!」

「だいじょうぶだいじょうぶ」

「いや、大丈夫ってお前……!!」

 

 

 

 が、蛇王龍は止まらない止められない。

 せめてお前も変身しろよ、と最後に残すゾロだったが、華麗にスルーされた。

 

 

 

 

 一方その頃、逃げ出したペローナは──。

 

 

 

 

「あ、ああ……ざっけんな……!! ……いったいなんなんだよ、今日は……!? 厄日にも程があんだろちくしょぉ……!」

「──旅行するなら、どこへ行きたい?」

 

 

 

 なんと。

 運がいいのか悪いのか、とある用事でスリラーバークにやって来ていた王下七武海の一人、バーソロミュー・くまと出会していた。

 

 

 共に行動していた仲間、アブサロムとホグバックは既にくまの手で“消されて”おり、残るのは最早ペローナのみだ。

 

 

 というか、さっきから何度も旅行旅行うるさいぞこのくま。

 

 

「旅行……!? こんな時に世間話とか、ふざけた野郎だ!! でも、そうだな……しばらく何もかも忘れて、怨念渦巻く古城のほとりで呪いの歌を口ずさみなが──」

 

 

 

 ぱっ!!

 

 

 

「……さて。ひとまずはこれでいいか……」

 

 

 

 思わず乗ってしまったペローナは、台詞の途中で無慈悲にも“消されて”しまった。

 とはいえ、恐ろしい表現に反して、実は殺されたわけではなく、ただくまの能力によって遥か遠方に“弾き飛ばされた”だけである。

 

 

 ニキュニキュの実を食べた肉球人間。

 それが、バーソロミュー・くまなのだ。

 

 

「──任務、完了だ」

『すまん、助かる。そろそろおれも着きそうだ』

「了解した。どうする、おれはさっさと消えておいた方がいいか? 個人的には、あんたの警護役として残りたいところだが」

『どうせ蛇王龍にはおまえの存在もバレている。今更隠れたところで意味はなかろう』

「まぁ、それもそうだな。この霧の海ならば、政府の目も届くまい」

『ああ。こちらとしても都合がいい場所で、ありがたい限りだよ』

 

 

 

 “王下七武海”改め、“革命軍幹部”。

 実はそれが、バーソロミュー・くまの本当の姿である。

 彼は政府に潜り込んだ革命軍のスパイだったりする。

 

 

 

 となると、彼が懐の電伝虫を通して会話している相手は──。

 

 

 

 

 スリラーバークが浮かぶ、“魔の三角地帯”に程近い海上を、嵐と共に一匹の巨大な龍が飛んでいく。

 細長いスタイリッシュなその姿は、仮にモリアが見れば、あるいはカイドウと見間違えるかもしれない。

 

 

 

 しかしてその正体は、革命軍の総司令官。

 世界最悪の犯罪者こと、モンキー・D・ドラゴンその人である。

 

 

 

「海賊か……それもいい──」

『? 何か言ったか、ドラゴン』

「いや、なんでもない。それより、数分もすればそちらに着く。それまで上手く立ち回ってくれよ、くま。下手をすれば蛇王海賊団に追いかけ回されるぞ」

『サラッと恐ろしい事を言うな』

 

 

 

 

 “革命軍総司令官”

 “世界最悪の犯罪者”

 

 

 

 

 モンキー・D・ドラゴン。

 彼が口にした悪魔の実の名は──。

 

 

 

 

 リュウリュウの実、幻獣種。

 

 

 

 

 ──モデル、“アマツマガツチ”。

 

 

 

 

 龍を統べる者にして、海賊であるマデュラ。

 嵐を統べる龍にして、革命家であるドラゴン。

 

 

 

 二人の出会いは、世界に何をもたらすのか。

 まだ、答えを知るものはいない。

 

 

 

 ……今は、まだ。




というわけで、独自設定ですね。
ドラゴンパパンには龍になっていただきました。

次回、恐らくスリラーバーク編完結。
と同時に驚愕の事実が……?


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スリラーバーク⑦ 

ドラゴンの懸賞金って、実際いくらなんだろう。
四皇と同じくらいなんですかね?
でもなんか、革命軍ってあんまり強いイメージが無いというか……。


 

 

 

 影をゲ……もとい頭文字“G”の如く吐き出すモリア。

 あまりにも巨大な怪物、ラヴィに対して必死の抵抗を見せていた彼も、とうとう限界を迎えたのだ。

 

 仲間のため、男らしく奮闘したモリアだが、肝心のペローナたちが既にくまによって消されていると知れば、どう思うのだろうか。

 

 

 そして、遂に──。

 

 

「これで、ラストッ!!」

「ぐぅ……ち、ちくしょう……!!」

 

 

 ぐいん、と頭を引き絞られた矢のように構え、トドメの一撃をお見舞いしようとするラヴィ。

 苦しみながらも、悔しげにそれを見ているしかできないモリア。

 

 

 ここに、そう長くはない決闘の幕が下りようとした、その瞬間。

 

 

 

 バリバリバリバリィ!! と、まるで雷が落ちたかのような轟音が響いた。

 

 

 

 無論、落雷ではない。

 

 

 

 落雷ではなく、“覇王色の覇気”が激突した証である。

 

 

 

 空を見上げれば、天が割れている様が目に入っただろうが、驚愕し目を見開くラヴィとモリアに、そんな余裕はない。

 

 

 ラヴィの強烈な一撃を防いだのは、他の誰でもない。

 蛇王海賊団船長、マデュラその人であった。

 しかも、彼女は人型のまま、何てことの無い表情でラヴィの攻撃を受け止めている。

 

 

「やっ、おつかれ」

「……あ、お、おつかれ? ってそうじゃないわよ! どうして止めたの、マデュラ!」

「やや、一応勧誘をね」

「はぁ!?」

「あァ……!? 何を……言って、やがんだ……てめェ……! 勝手に人様の船に上がり込んで暴れ回った挙句、勧誘だとォ……!?」

 

 

 抑えられた頭を懸命に動かそうとするラヴィだが、ビクともしない。

 なんという怪力。

 これには遠くで見守っていたゾロもビックリだ。

 

 

 やがて、観念したラヴィは大人しく変身を解き、美しい人型に戻ってため息を吐いた。

 船長がそう望むのであれば仕方がない。

 

「頭離しなさいよ、バカマデュラ」

「んぅ? やだ。自力で抜け出してみろー」

「なにおぅ!? ……ぐぎぎ……ま、マジで全っ然動かせないし……!! ちょ、痛い痛いイタタタ!? 頭が潰れるぅーーー!!」

「なはは」

「笑ってないで離してェ!! 潰れる!! タマゴみたいにパキャッといっちゃうー!!」

「ほい」

「……ふおぉ~……!! めっちゃ痛ぁい!!」

 

 

 何とか解放されたものの、あまりの激痛に頭を両手で抱えてのたうち回るラヴィ。

 冗談抜きで死ぬかと思った。

 

 

 そんなラヴィを放置し、下手人たるマデュラは改めてモリアに向き直る。

 影をすっかり吐き出したらっきょうはすっかり縮んで元のサイズに戻ってはいるが、それでもマデュラよりも遥かにデカいので、必然的にマデュラがモリアを見上げる形となる。

 

 

「…………蛇王龍、てめェ」

「さて、モリ……モリ……らっきょうさん」

「諦めんな! モリアだッ!!」

「そうそれ。らっきょうさん」

「……野郎ォ……!」

 

 

 どうやらマデュラはモリアの名前を忘れてしまったらしい。

 モリ、から先が出てこないようで、何度も可愛らしく小首を傾げていた。

 

 しかし、本人から名前を教えられても「らっきょう」呼ばわりなので、もしかしたら挑発しているのかもしれないし、ただの天然なのかもしれない。

 当然、頭にきたモリアは、ぜぇぜぇと息を切らしながらもプルプルと震える。

 

 

「らっきょうさん。私の仲間にならない?」

「ふざけた事抜かすんじゃねェよ!! 断るッ!!」

「なんで? 断るなら殺しちゃうよ?」

「ハッ……! 真の海賊にゃ“死”でさえも脅しにゃならねえ!! よーく覚えとけ、小娘ェ!!」

「ふーん……じゃあいいや。別に君自体はそんなに欲しいわけじゃないし」

「チッ、どこまでもふざけた野郎だ……」

 

 

 悪態をつきながらも、観念し、それでもマデュラを睨みつける事だけはやめない。

 そんなモリアをろくに見もせず、その辺に転がっていた小さな石ころを拾い出すマデュラ。

 

 そして、ジャラジャラと音を立てる小石たちを、軽く……軽~く、モリアに向かって投げた。

 

 

「がっは……!?」

「果物果物っと。ラヴィ、いつまでものたうち回ってないでこっちおいでよ」

「誰のせいだと思ってんのよ!? あいたた……」

 

 

 

 小石が、散弾銃もびっくりの超スピードでモリアの全身を貫き、彼の身体中に穴を開けた。

 

 マデュラにとっての「石ころ遊び」が、常人にとっては凶悪極まりない兵器となる。

 要は、海軍の英雄ガープ中将が生身で砲弾を撃つようなものだ。

 

 

 

 王下七武海の一人にして、かつては四皇の一人“カイドウ”と競い合った事もあるという大海賊ゲッコー・モリアは、こうして呆気なくこの世から去ったのだった。

 

 

 

 そして、モリアが死んだ事により、彼の身に宿っていた“悪魔”が抜け出し、マデュラがどこからともなく取り出した果物に取り憑く。

 

 新たな“カゲカゲの実”の誕生である。

 

 

「うーん……何度見ても不思議よねえ、悪魔の実って」

「だねえ。いつから存在して、どこから来たんだろう。ねえ、お前は知ってる?」

 

 

 

 マデュラが言葉を投げかけた先で、影が動く。

 尚、影と言ってもカゲカゲ的な意味ではない。

 

 

 暗い闇からぬっと姿を現したのは──。

 

 

「やはり、バレていたか」

「うん」

「そりゃね。えっと、王下七武海の……バーソロミュー・くま、よね?」

「そうだ。蛇王龍に、大巌竜。初めに言っておくが、おれはお前たちと戦いに来たわけではない。そもそも、王下七武海というのはおれにとって仮の身分に過ぎないからな」

「ふーん」

「……仮? というと、本命は別って事よね。一番怪しいのは、革命軍が送り込んだスパイって所かしら」

「……よく分かったな。その通りだ」

「なんだ。何の面白みも無いわね」

「ねー。実は白ひげんとこの隊長でしたー! って方が面白かったのに」

「そ、そうか」

 

 

 

 王下七武海という仮初の地位に座る、革命軍幹部。

 バーソロミュー・くまであった。

 

 おまけにあっさりとラヴィに正体がバレた。

 

 

 王下七武海の一角が実は革命軍の幹部だった! というのは結構驚くべき事実のはずだが、蛇王龍と大巌竜は全く驚いた様子がない。

 それどころか、あからさまにガッカリしている。

 

 

 しかし、一応話を聞いてくれるようなので、一安心である。

 この二人に問答無用で襲いかかって来られたら、いくらくまでも死ぬしかない。

 

 内心で、とんでもない役目を押し付けてきたドラゴンに恨み言を呟く、くま。

 自由奔放な蛇王海賊団を数分とはいえ足止めしておけとか、明日の天気を告げるような態度で命令するべきではないだろう。

 

 

「で、革命軍のくまさんが何の用?」

「まぁ待て。こちらにおれたちのトップ、革命軍総司令官ドラゴンが向かっている。もうじき着くはずだ。話は彼から聞いてほしい」

「ドラゴン……世界政府ですら大した情報を掴めていないという“謎の男”ね」

「わかった。三分間待ってやる。それまでに来なかったら、くまさん罰ゲームね」

 

「!?」

 

 

 

 早く来いドラゴン!!

 間に合わなくなってもしらんぞーーッ!!

 

 

 それが、くまの嘘偽りない本音である。

 蛇王龍からの罰ゲームとか命が危ない気しかしないので、かなり切実なお願いだ。

 ドラゴン、早くきて。

 

 

 

 その後、くまの手に“肉球”がある事に気付いたマデュラが大変興味を示したおかげで、何とか地獄の三分間を乗り切ることができた。

 

 

 瞳を輝かせたマデュラに、ひたすら肉球をぷにぷにされるという、くまの身を切った時間稼ぎが功を奏したのだ。

 

 

 あまりにも馬鹿力すぎて、普通に痛かった──。

 

 

「ふぇへへ、肉球……ぷにぷにだぁ……!」

 

「…………」

「やめて、困り果てた顔でこっち見ないで。それよりなんか、“嵐”が近付いてきてるみたいなんだけど……?」

「む、来たか。それは恐らく、ドラゴンが能力を使って移動しているせいだ」

「……へえ。嵐を操る男って噂、マジだったのね」

 

 

 ひたすらぷにるマデュラ。

 ひたすらぷにられるくま。

 目を逸らすラヴィ。

 

 

 

 そんな三人の元に、“嵐”が舞い降りる……。

 

 

 

 ちなみに、カゲカゲの実と化した果物は、マデュラが夢中でぷにっている間に現れたクックが回収し、艦隊の旗艦へと既に運ばれている。

 ついでに、ラヴィの指示によってスリラーバーク全体を多くのクルーたちが改めて調査しており、蛇王海賊団はマデュラとラヴィ以外割と大忙しである。

 

 

 

「──龍の気配がする」

「! 分かるのか……!?」

「ラヴィ」

「ん。なかなか面白い事になってきたわね」

 

 

 夢中でぷにっていたマデュラが突如として顔を上げ、真剣な表情で空を見上げる。

 くまはそれに驚愕し、ラヴィも同様に空を見上げている。

 

 

 

「カッコイイ……! あの龍、欲しい!!」

「!? いや、それは困る!!」

「ふーん……これは驚いたわね。革命軍の総司令官殿が、まさか龍の能力者だったなんて」

 

 

 

 マデュラちゃん、おおはしゃぎ。

 彼女が口走った事に驚き、思わず二度見するくま。

 

 ……“蛇王龍”マデュラは、それはもうキラッキラの笑顔を貼り付けており、とてつもなくウキウキしていると、くっきりはっきり分かる。

 

 

 そして。

 

 

「なっ……待て!!」

「あ、行っちゃった」

 

 

 

 

 空へ、ぴょーん!!

 と叫びながら。

 

 

 マデュラは、嵐を司る龍こと、革命軍総司令官モンキー・D・ドラゴン(アマツマガツチ形態)の元へと飛び上がっていった。

 

 

 

 慌てるくま。

 おー、と呑気に腕を組んでいるラヴィ。

 

 

 

 ちょっ、いきなり蛇王龍が飛んでくるとか聞いてないんですけど!? とばかりに仰け反るドラゴン。

 

 

 

「ふぉー!! カッコイイ、カッコイイ!! ねえねえ、あなたはどんな事ができるの!? ちょっと私に見せてよ!!」

「待て! おれは革命軍総司令官、モンキー・D・ドラゴン! お前と少し話をしに来ただけだ! 戦闘の意思はない!!」

「まずは力を見せてくれないとー!! ダメなの!」

 

 

 マデュラちゃん、テンションがキマりすぎて蛇王龍へと変身。

 マジかよお前、と慌てるくま&ドラゴン。

 ドラゴンに至っては「くまが何かやらかしたんじゃないだろうな!?」と疑い始めた。

 

 

 蛇王龍の巨体が「ごっすぅんッ!!」と着地。

 揺れるスリラーバーク。

 船の各地で目を丸くする蛇王海賊団クルー。

 

 

 

 一瞬にして場がカオスと化した。

 

 

 

 

「げっ、あのバカ!! この船を海域ごと消し飛ばすつもりじゃないでしょうね!?」

「まずいことになった……! まさか、ドラゴンが蛇王龍と戦闘になるとは……!! 大巌竜、彼女をなんとか止められないのか?」

「言われなくても止めるわよ!! この船はもうアタシたちの物だってのに、あの子に沈められちゃたまらないわ!!」

 

 

 そんな感じで、マデュラを止めるためラヴィも変身。

 その巨体を旗艦から確認したフィロアもまた、マデュラの暴走が始まった事を察し、変身。大急ぎで現場に急行中だ。

 

 

 

「うがーー!! 邪魔するな、ラヴィ!!」

「お黙りなさいバカキング!! せっかく奪った船が消えてなくなっちゃうでしょ!!」

「でもあの龍の力見たいんだもん!!」

「ぬぐぐ……相変わらずの馬鹿力めぇ……!! ちょっと、ドラゴンとやら! 死にたくなければアンタも手伝いなさい!!」

「わ、わかった!」

 

 

 激突する蛇王龍と大巌竜。

 人間の中ではかなりの巨体であるくまが豆粒に見える程の巨体が、凄まじい轟音を立ててぶつかり、力負けしたラヴィがものすごい勢いで押されていく。

 

 ついでにスリラーバーク中が大地震に見舞われる。

 

 

 空高く飛び上がった嵐龍……革命軍の方のドラゴンもまた、死にたくないので必死にラヴィを援護する。

 蛇王龍がこれほどまでの暴走列車だったのは、ドラゴンにとっても誤算である。

 

 というかまさか自分の龍形態を見て我を失う程ハイテンションになるとは思わなかった。

 

 

 

「なるほど、なるほど!! 嵐を司る龍の力で、超高圧の水流をまるで刃物みたいに自在に操る!! 面白い、とても面白いね!! もっと、もっと見せてよ!!」

「うぐぐぐぅ……!! アタシだけじゃ、きっつ!」

「なんなのだ、この硬さは!? ブレスが全く効いている感じがしないぞ!」

「そういう、奴なのよっ!! ガァッ!!」

 

 

 

 ゴリゴリゴリッと、地面を削りながら押されていくラヴィは、起死回生のブレスを放つ。

 まるで太陽を思わせる超高温の巨大な球体が飛び、ハイテンションに空を見上げるマデュラに近付いて行く。

 

 くまも地味にさっきからずっと、地震の揺れに耐えながらも“つっぱり圧力砲”という技でマデュラを攻撃しているが、焼け石に水である。

 

 

 

「あはは、ラヴィもやっぱり強いよねー! カッ!」

「うおぉ、あぶねええええ!?」

 

 

 

 が。

 

 

 

 マデュラが放った青く巨大なブレスによって球体はかき消され、必殺の一撃がそのままラヴィに向かって飛んでくる。

 慌てて変身を解除し、ブレスを回避。

 ブレスはそのままどこかへ消え去り、たまたま同じ方角に存在した不運な島をすぱーんと消し飛ばし、その島周辺の海水が「じゅっ!」と蒸発した。

 きっと世界全体の水位も少し下がった事だろう。

 

 

 食らっていれば、いくらラヴィでも普通に即死である。

 

 

 文句を言おうとマデュラを見上げるラヴィ。

 そして、彼女はそのまま停止した。

 だらだらと、冷や汗を滝のように流しながら。

 

 

 何故ならば──。

 

 

 

「降りてきなさいドラゴン!! 死ぬわよッ!!」

「!? なっ──」

 

 

 

 凄まじい数の隕石……正しくは、マデュラが操る“凶星”の大群が、空から降ってきていたからである。

 

 

 

 

 やべぇ、これ死んだかも。

 

 思わず笑顔になるラヴィ。

 慌てて地面に降りてきたドラゴン。

 

 

 

「……“魂鎖の氷獄”」

 

 

 

 

 

 パキン、と。

 

 

 

 全ての凶星が凍り、続いて空を覆った煉獄の炎により、それらの凶星全てが消滅した。

 

 

 

 

「……まったく、マデュラの奴め……悪い癖だな」

「ふ……ふくせんちょぉぉ!!」

「……アレが、蛇王海賊団の……」

 

 

 

 蛇王海賊団副船長、フィロア(龍形態)。

 “蛇王龍”マデュラの暴走を止めるため、ようやく参戦。

 ──おせーよ、とちょっと文句を言いたくなったラヴィなのだった。





おかしいな……ドラゴンとの大事なお話に突入する前に、マデュラが暴走しちゃったぞ……。

くまとドラゴンはとんだとばっちり。

……今こそ、巨大船スリラーバークの耐久力が試される時……!!


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スリラーバーク⑧ 完

待 た せ た な ッ !!
少し早いクリスマスだ!
ポケモンやったりしててすごく遅れました。

年末年始も休み無しなんで、書けるうちに書いとかないと更新がどんどん遠のいちゃうんですよね……。
年中通して連休も存在しないし、なかなか辛い。
クリスマス? 当然仕事です。


 

 

 今は亡き大海賊、ゲッコー・モリアが誇った世界一巨大な海賊船、スリラーバーク。

 そこで何故か巻き起こった怪獣大戦争は、しかしあまりにも突然に終わりを迎えた。

 

 

 革命軍最高司令官、ドラゴンが龍の能力者だった事が判明し、その力を確かめる為に暴れ始めた“蛇王龍”が、自らの右腕であるフィロアまでもが自身を止めに来たのを見て、あっさりと動きを止めたのである。

 

 

「止ま……った……?」

「みたい、ね……ふぅぅぅ……死ぬかと思ったぁ」

「それはこちらのセリフだ……。ドラゴン、よくもこんな任務に駆り出してくれたな」

「すまん、くま。おれも予想外だった」

「うちのバカ船長が迷惑をかけたな。代わりに謝罪させて欲しい」

「……ああ」

 

 しゅるるる、と縮んでいく蛇王龍。

 それを確認し、人型に戻って深くため息を吐くドラゴンたち。

 

 と見せかけて奇襲!!

 

 

 

 なんて事をする程、マデュラもアホではないだろう。

 たぶん、きっと。

 

 

 

 その場に座り込むドラゴンたちの元に、腹が立つ程ゴキゲンに笑うマデュラが近付いてくる。

 無論、彼女も既に能力を完全に解いており、いつもの可愛らしい人間形態だ。

 

 

 

「やー、まさかこんなところで同胞に出会えるなんて思ってもみなかった! えっと、バラガン?」

「ドラゴンだ。誰だその老人臭い名前は」

「そうそう、ドラゴン!! ねえ、あの龍のことなんて呼んでるの?」

「……アマツマガツチ。大昔にそう名付けた者が居たらしい。かつての能力者あたりだろうがな」

「ふーん、カッコイイ名前だね! お前、うちに入らない?」

「すまんが断る。おれにはやるべき事があるんだ」

「えー」

「えーじゃない。早速、それに関連する話をしたいんだが、いいか?」

「わかったー! んふふ、今の私はとっても機嫌がいいんだ! 何でも話してみるがいいよ!」

 

 

 疲労のあまりすっかり老け込んだドラゴンに対して、散々暴れ回ったはずのマデュラはやけに元気であり、心做しか肌もツヤツヤしているように見える。

 龍の能力者を見つけた事がそんなに嬉しいのだろうか。

 

 

 何はともあれ、これでようやく本題に入れる。

 

 

 

 ……なんでちょっと話し合いするだけなのにこんなに苦労しているんだろう? と、ドラゴンやくまが思ってしまうのも無理はない。

 

 

 

「単刀直入に言う。おれたち革命軍の準備が整い、然るべき舞台である“世界会議(レヴェリー)”が開催される二年後まで、世界政府を滅ぼさないでくれ」

 

 

 ズバッと簡潔に。

 とんでもない気分屋であるマデュラの機嫌を損ねない内に、ドラゴンは言い放った。

 

 その言葉を聞き、咀嚼し、首を傾げるマデュラ。

 地べたに座り、だらーんと足を投げ出していたラヴィや、マデュラがまた暴れてもすぐに対応できるように目を光らせていたフィロアも、同じように首を傾げている。

 

 

「……なんで?」

「確かに世界政府はいずれ倒さなくてはならない。だが、それは今ではないんだ。我々が世界中の国々に撒いた“種”が芽吹き、民衆が立ち上がったその時になってからじゃないとな」

「ふーん。断る。私、そういう何かに縛られるのって大嫌いなんだよね。それだけ?」

「……いや。話はまだ終わりではない」

「ふーん?」

 

 

 言葉を尽くして説得するドラゴンだったが、マデュラから返ってきたのはあまりにも無慈悲なお断りの一言。しかし、そう来るのは予想通りである。

 

 

 ここからが、本番だ。

 全てはここで決まる。

 

 

 

 深呼吸し、気持ちを落ち着かせるドラゴン。

 そして、彼は語り始める。

 

 

 マデュラならば絶対に興味を示すであろう、とっておきの切り札を。

 

 

「蛇王龍。世界政府の頂点が誰か、知っているか?」

「ん? えーと、確か昔海軍の元帥をやってた人が今は世界政府の全軍総帥とかいうのをやってて、更にその上に“五老星”ってのがいる……だっけ。ねえ、ラヴィ?」

「ええ、そうね。実は不老不死だっていう噂もあるぐらい、得体の知れない老人たちよ」

「……だが、五老星すらも従える真の支配者と言える存在が居る。そいつが世界政府の頂点だ」

「……へえ?」

 

 

 

 やはり、食いついた。

 

 

 

 マデュラの目の色が変わった事を察し、ニヤリと口角を上げるドラゴン。

 しかし、本当の“とっておき”はここからである。

 

 

 

「だが、そいつがどこに居るのかは五老星しか知らない。そして、五老星の連中は、たとえ拷問されても決して口を割らないだろう」

「…………続けて」

「だからこそ、世界中の民衆を導いて“革命”を起こし、そいつを表舞台に引っ張り出す必要があるんだ」

「…………」

 

 

 まだ、まだ弱い。

 この程度ではまだ足りない。

 

 

「そいつを無視して世界政府をぶっ壊しちゃえばいいじゃん」

「……黒龍」

 

 

 

「!?」

 

「「?」」

 

 

 

 ここで、初めてマデュラが目に見えて驚愕した。

 大胆不敵にして傍若無人な、あのマデュラがだ。

 

 

 

 黒龍という、その言葉。

 

 

「やはり、お前は知っているんだな。黒龍伝説を」

「……数多の飛竜を駆逐せし時、伝説は蘇らん。

数多の肉を裂き、骨を砕き、血を啜った時。

彼の者はあらわれん──。

……私が育った島に、石碑があった」

「その続きはどうだ?」

「知ってる」

「それが龍の始祖だという事は?」

「……知ってる」

「龍の始祖!?」

「そんな存在が……!!」

 

 

 二人の邪魔にならないように黙っていたラヴィとフィロアが、驚きのあまり声を出した。

 あのマデュラが、これまでに見たこともないような表情をしている事もまた、驚きを強くする。

 

 

「今その話をしたって事は……」

「──ああ」

 

 

 

 

 マデュラは、ラヴィですらも思わず悲鳴を上げてしまう程に、恐ろしい笑みを浮かべていた。

 

 

 

 それ即ち、この上ない歓喜。

 伝説への挑戦という、最高の大冒険。

 

 

 

 

 

 

「──世界政府の頂点は、黒龍伝説で謳われている存在の中でも最上級の龍。“祖龍”ミラボレアスだ」

「……!!」

 

 

 

数多の飛竜を駆逐せし時

伝説は蘇らん

数多の肉を裂き 骨を砕き 血を啜った時

彼の者はあらわれん

土を焼く者

鉄を溶かす者

水を煮立たす者

風を起こす者

木を薙ぐ者

炎を生み出す者

その者の名は ミラボレアス

その者の名は 宿命の戦い

その者の名は 避けられぬ死

喉あらば叫べ

耳あらば聞け

心あらば祈れ

ミラボレアス

天と地とを覆い尽くす

彼の者の名を

天と地とを覆い尽くす

彼の者の名を

彼の者の名を

 

 

 

  御伽噺 『黒龍伝説』より

 

 

 

 

 ──そして、蛇王龍マデュラは二年後の来るべき時まで世界政府そのものを滅ぼす事だけはしない、と確約するに至った。

 

 ……世界政府の3大機関を破壊しないとは言っていないが。

 

 

 それだけでなく──。

 

 

 

「気に入った。ドラゴン、お前ら革命軍と同盟を組んでやろー。力が必要な時はいつでも呼べ」

「それは助かるが……くれぐれも暴走はしないでくれよ。こちらにも段取りというものがあるのでな」

「わかった。その代わり、絶対、ぜぇーったい! ミラボレアスと戦わせろよ? 実は世界政府のトップが普通の人間でした! なんて事があれば、許さないぞ」

「あ、ああ。もちろんだ……」

 

 

「……おい、ドラゴン。大丈夫なのか……?」

「…………たぶん」

「おい」

 

 

「あははははッ!! 二年後、二年後かぁー! 楽しみだなぁ! 伝説の龍……どれぐらい強いんだろう!?」

「そうだな……最低でも世界を滅ぼす程度の力は持っていてもらわないと、張り合いがない」

「ええ、そうね! これはますます、アイスバーグ氏とフランキーには船作り頑張ってもらわないと!!」

「そうだね! 私たちが本気で暴れてもビクともしないような、そんな夢の船を注文しちゃうぞー!!」

 

 

 

 めちゃくちゃはしゃぐマデュラたち。

 それを見て、ちょっと顔を青くするドラゴン。

 万が一自分の言葉が間違っていた場合、何が起こってしまうのか、わかったものではない。

 

 

 

 

 ついでに。

 後日スリラーバークに乗ってウォーターセブンに現れたマデュラたちからの無茶苦茶すぎる注文に、アイスバーグたちガレーラカンパニーや、フランキーたちが顔を真っ青にしてぶっ倒れそうになったとか。

 

 

 果たして彼らは、二年という納期に間に合わせる事ができるのだろうか……。




そういうわけで、グダらないように巻きでスリラーバーク編完結。

ラスボスはミラルーツ(イム様)となりました。
世界大丈夫? ぶっ壊れない?


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幕間 ソードマスターヤマト


 新年明けましておめでとうございます。(遅)
 まあ正月休みとか存在しないお仕事なので、むしろ普段より忙しくなるクソ喰らえな時期なんですわ。だから更新が遅れても仕方ないんです、ええ。

 連休って、都市伝説ですよね。


 今回短いですが、モンハンワールドのあの人……っぽい人が登場します。


 

 

 

 蛇王海賊団がエニエス・ロビーでかっぱらった……もとい手に入れた戦利品、象剣ファンクフリード。

 悪魔の実の力で得たものとはいえ、剣であると同時に象でもある彼は、周囲を化け物たちに囲まれ、最初はガタガタと震えていた。

 

 ほんの遊びで殺される(壊される)のではないか、あるいはじゅぅっと焼かれて食われるのではないか、と妄想しながら。

 まあ、元々剣だった物が能力で象の姿を得ただけなので、ファンクフリードが死ねば当然ただの剣に戻ってしまうため、少なくとも食べられる事は無いのだが。

 

 

 しかし、待てども待てども乱暴に扱われる気配はなく。

 むしろ、キレイなお姉さんになでなでされたり、楽しそうに象剣(自分)を振ってもらえたりと、予想に反していい事尽くめであった。

 

 

 

 そして、ファンクフリードは察する。

 

 

 

 あれ? むしろ前の小汚いご主人様(スパンダムの事である)の所にいるよりも、今の生活の方が百倍良くね? と。

 

 

 

 真理に至ったファンクフリードは、船のどこに居ても全く緊張しなくなり、マイペースにエサを貪り、新しいご主人様(マデュラの事である)が早く遊びに来てくれないかな、と待つようになった。

 

 この象剣、ノリノリである。

 

 

 

 そんなファンクフリードの元に、待ち望んだ人物が現れた。

 

 

「パオちゃんパオちゃん、今日は遂にお前を与える相手に会いに行くよー」

「パオン?(えっ? 与える……?)」

 

 

 

 新しいご主人様は、実はファンクフリードの正しい名前を一度も呼んでくれた事がない。

 代わりに、パオちゃんと呼ぶ。

 曰く、パオパオ鳴くからパオちゃん、とのこと。

 

 

 

 ファンクフリードは絶望した。

 自分を与える相手に会いに行くという事は、新しいご主人様の手から離れるという事だろう。

 

 

 

「パオッ!! パオン!!」

「んー? どうしたの? 柱にしがみついたりして。ほら、さっさと行くよー」

「パオパオ、パオン!!」

 

 

 やだやだ、捨てないで。

 絶対役に立つから、ずっと一緒にいて!!

 

 

 部屋にあった柱にしがみつき、必死に首を振るファンクフリード。

 彼は今の生活が大好きなのだ。

 

 

 

 しかし──。

 

 

 

「さっさとしろ、折るぞ」

「パオン(アッハイ)」

 

 

 

 現実は非情である。

 新しいご主人様ことマデュラは、とてもキレイでカワイイが、それ以上に、コワイ。

 折るぞ、という言葉ははったりでも何でもなく、逆らえば本当に実行するぞ、という宣言でしかないのだ。

 

 

 ファンクフリードはまだ死にたくなかった。

 あっさりと柱から離れ、萎れた表情を浮かべて、さながら処刑台に向かう死刑囚のように歩いていった。

 

 

 

 

 そして──。

 

 

 

 

 

 蛇王海賊艦隊に属する船のうちの一つ。

 マッチョな男たちが主に利用する“鍛錬場”である船にて、ファンクフリードは出会う。

 

 

 

「おぅい、マスター!!」

「パオン?」

「ん? ああ、マスターっていうのはもちろんあだ名だよ。ソードマスターって呼ばれてるから、マスター!」

「パオ……」

 

 

 ソードマスター。

 

 

 

 化け物だらけなこの海賊団にあって、何とも強気な二つ名である。

 象である前に剣であるファンクフリードは、ソードマスターと呼ばれているらしい次のご主人様(予定)に、興味を持った。

 

 

「ぬぅ? どうされた、姫。某に用事でも?」

 

 

 

 すぐに現れたその男は、何やらトゲトゲした鎧に身を包み、顔すらも兜で覆い隠していた。

 何かと巨漢ばかりなこの海賊団のクルーとしては珍しく、身長は例のマリモヘッドの新入り……ロロノア・ゾロとそう変わらない程度だろう。

 

 

 

 “ソードマスター”ヤマト、懸賞金8億ベリー。

 能力者だらけな蛇王海賊団にあって、非能力者の身でありながら賞金首にまで成り上がった偉大な男である。

 

 

「……象?」

「うん、ファンクフリードって言うの!」

「パオ!?(今なんて!?)」

「ほう」

「この子ね、実は悪魔の実の能力者でさ。剣になれる……じゃないや、象になれる剣なんだ!」

「ほほう、それはまた面妖な。もしや……?」

 

 

 

 ご主人様に初めて正しい名前を呼ばれた事に驚き、思わず二度見するファンクフリード。

 そんな彼をスルーし、話は進んでいく。

 

 

「マスター、カゲカゲの実は食べたくないんでしょ? だから代わりにこいつあげる! 上手く使ってね!」

「おお……! かたじけない、大切に使わせて頂く」

「うん! さて、残っちゃったカゲカゲの実はどうしようかなぁ? 誰か食べたい人とかいないかなぁ」

「パオ!! パオーン!!(まって!! ご主人様の方がいい!!)」

「おお、本当に悪魔の実とは奇怪なものよ。丸っきりただの象にしか見えん」

 

 

 得体の知れない鎧姿のオッサンに贈られると知り、イヤイヤと首を振って断固拒否するファンクフリード。

 しかし、ご主人様ことマデュラはそんな事知らんとばかりにファンクフリードの首を掴み──。

 

 

 

「マスターがお前の主だ、オーケー?」

「パオン(アッハイ)」

「うん、いい子! じゃあよろしくねー」

「承知。次の戦ではこやつと共に暴れてみせよう!」

 

 

 

 まあそんな感じで。

 蛇の眼で睨まれ、承諾させられたファンクフリード。普通に殺気まで出されては逆らえるわけがなかった。

 

 

「さて、ファンクフリード……と言ったか。突然某のような男に預けられたとあっては、貴公もそうそう納得できぬだろう。故に、気の済むまで語り合うとしようではないか。生憎、某は口下手ではあるが」

「……パオ」

「あからさまに元気が無くなったな……分かりやすい奴だ。なぁに、某と共に戦っておれば、姫がまた貴公を求める事もあるであろうさ」

「パオン?」

 

 

 

 不服ではあるが、ファンクフリードが今更駄々をこねたところで時間の無駄でしかない。

 それどころか、騒音に気を悪くしたご主人様(マデュラ)が怒り顔で現れ、ファンクフリードをへし折ってしまうかもしれない。

 

 故に。

 

 

 とりあえず、ソードマスターとやらのお言葉に甘えて、たっぷりと愚痴を聞いてもらうとしよう。

 

 

 

 

 

 

 ──翌日。

 すっかりソードマスターに懐き、彼の横でエサを貪るファンクフリードの姿があったとか。





“ソードマスター”ヤマト
モンスターハンターワールドにて登場するNPC、ソードマスターが元ネタ。
名前はギャグ漫画日和のアレから。
ちょいちょい触れられていた、“蛇王海賊団に所属する非能力者の賞金首”が彼です。


次話からシャボンディ諸島編に入ります。サックリ終わると思いますが。
そしてインペルダウン+頂上戦争へ……。


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シャボンディ諸島①

睡眠時間を生贄に、執筆時間を召喚ッ!!
……興味本位でドラゴンブーストっていうエナドリ飲んだら、寝れなくなりました。
効き目スゲェ!! 社畜の皆さんにオススメ。


 

 

 偉大なる航路の後半、“新世界”へと挑まんとする大型ルーキーたちが集まる場所、シャボンディ諸島。

 

 その13番GR(グローブ)に、“シャッキー'sぼったくりバー”という小さな酒場がある。

 その怪しすぎる名前はともかく、一見してなんの変哲もないこの建物は、その実、この大海賊時代を築き上げた生ける伝説の一人が拠点としている場所でもある。

 

 

 海賊王ゴール・D・ロジャーの右腕、“冥王”シルバーズ・レイリー。

 

 

 住民たちから気軽に“レイさん”と呼ばれ、親しまれている彼は、珍しくその放浪癖を発揮する事無く、真剣な表情を浮かべて酒を飲んでいた。

 

 

「どうしたの、レイさん。随分と浮かない顔をしているじゃない?」

「……ん、そうか? いかんいかん、気付かん内に顔に出ていたか」

「ええ。厄介事が起きた、と顔に書いてあるわ」

「ハハ、そうか。やはり君には敵わんな、シャッキー」

「ふふ。長い付き合いだもの」

 

 

 酒場の店主であり、レイリーのパートナーでもある妙齢の女性、シャッキーことシャクヤクがレイリーに問う。

 尤も、彼女以外ならば気付かない程度の変化ではあったのだが。

 

 

「……実はな、マデュラが帰ってくるらしい」

「……この時期に?」

「ああ、この時期に。どうだ、私の気持ちが分かっただろう?」

「ええ……よく、分かったわ……」

 

 

 そして、レイリーから返ってきた言葉を聞き、そんなシャクヤクもまた同様に真剣な表情へと変わった。

 しかし、無理もない話だ。

 

 

 

 何せ、二人が独自に築き上げている情報網に引っかかったピースをはめていくと、ちょうどマデュラが到着するだろう時期に、よりにもよって我が強い億超えの超大型ルーキーたち……“超新星”がこのシャボンディ諸島に勢揃いする事になるからだ。

 

 

 下手をしなくても諸島ごと消滅しかねない。

 あえて何がとは言わないが。

 

 

「不味いことになったわね……」

「ああ。あの子の事だ、この店がある13番GRだけは残してくれるだろうが、他は全て消し飛ばしてもおかしくはない」

「さすがにそれは困るわ。仕入れるのが大変になっちゃうもの」

「……いや、そこではないのだが……まぁいいか」

 

 

 どうか超新星が龍の尾を踏まないように、と祈りながら、もっと頭を悩ませている問題に思考を移す。

 

 

 レイリーはため息を吐きながら手元の新聞を見た。

 そこには、“火拳のエースを処刑する”という衝撃の記事が書かれている。

 何でも、黒ひげと名乗る海賊があの火拳のエースを捕らえ、海軍に引き渡したらしい。

 

 

 白ひげは仲間の死を許さない。

 間違いなく、処刑を阻止するために海軍本部へ襲撃をかけるだろう。

 そうなれば当然海軍も黙っている筈がなく、センゴク元帥をはじめとする上層部の面々も白ひげと戦争するつもりなのだという事が分かる。

 

 

 レイリーは思った。

 

 

(とうとうボケたか、センゴク。こんなニュースを知れば、マデュラがどう動くかなど分かりきっているだろうに)

 

 

 そう。

 “世界最強の海賊”白ひげと、海軍による頂上戦争などというものが起こると知って、あのマデュラが何もしないわけがないのだ。

 

 

 断言出来る。

 必ず乱入すると。

 

 

「ああ、それね。間違いなく嬉々として乱入するわよね、あの子なら」

「やはりそう思うか? 私も同意見だよ。まったく、智将が聞いて呆れる。センゴクは何を考えているんだ? 良くて海軍が消滅……最悪の場合は世界が終わるぞ」

「それだけ、海賊王の血は政府にとって無視できないという事じゃない?」

「……まぁ、そうだな。そういう事なんだろう」

 

 

 

 未だ公にはなっていないが、実は火拳のエースは海賊王ゴール・D・ロジャーの実子であり、政府にとっては必ず絶やさねばならない鬼の子である。

 

 まさかこんな愚行を犯す程とは、と。

 レイリーは再び深いため息を吐いた。

 

 

「私たちで諌めるしかないんじゃない?」

「いい人生だった」

「悟った顔で言うことじゃないわね」

「……マデュラが聞くと思うのか? 何かを“強制”されるのが死ぬほど嫌いなんだぞ、あいつは」

「知ってる」

「機嫌が悪ければ、たとえ私であっても殺されかねん」

「それも知ってる。まあ、私も付き合うから。元気出しなさいな」

「…………はぁ…………とんだ貧乏くじだ……」

 

 

 

 深く、深ぁ~く。

 レイリーは、ため息を吐いた。

 

 

 

 とはいえ、「頂上戦争に参戦するのはいいが、あまり暴れすぎないようにしろ」としっかりマデュラに忠告しておかないと、最悪の場合そのまま世界が滅びる恐れがある。

 

 白ひげがマデュラに仲間を殺され、激怒などしようものなら間違いなく世界滅亡一直線である。

 なお、万が一そうなると真っ先に消し飛ぶのは海軍本部という事になるわけだが、それはセンゴク元帥の自業自得なので気にしない。

 

 

 

 

 と、そんな時。

 

 

 

 

 

 バタァン!! と、凄まじい勢いで酒場の扉が開いた。

 何事だ、と目を見開くレイリーとシャクヤク。

 

 

 

「た、たたた大変だレイさんにシャッキー!! じゃ、じゃじゃ……蛇王海賊団が来たぞぉぉ!! 早く逃げるんだ!! 奴ら、まずはご挨拶とばかりにマングローブを一本消し飛ばしやがった!!」

 

 

 

 あっ、もう来たのね。

 レイリーはちょっと逃げたくなった。

 

 

「消えたのはどこだね?」

「えっ? 67番GRだが……って、のんきに話してる場合じゃねえんだって!! 早く避難しろよ、いいな!?」

「……あー……」

 

 

 

 何やってんだ海軍!!

 ドタドタと去っていく住民の男を見送るため外に出ながら、思わず内心で絶叫するレイリー。

 さりげなくシャクヤクも店から出てきた。

 

 大方、普段通りルーキーが来たと勘違いしたアホな海兵が蛇王海賊団の船に攻撃したのだろう。

 たまにだが、蛇王海賊団の艦隊は買い出しなどの雑用で一隻だけ先行してくる事があるのだ。

 ……まさか、艦隊に向かってぶっぱなしたわけではない、と思いたい。

 

 

 触らぬ神……いや、触らぬマデュラに祟りなしだというのに。

 間違って蛇王海賊団の海賊船に攻撃してしまった海兵は、正体に気付いた後で顔を青くしたに違いない。

 

 

 マデュラにとって、蛇王海賊団に所属する全ての船が己の財産であり、財宝なのである。

 そして、彼女は己の財宝に手を出す愚か者を決して許さない。

 ある意味では白ひげに似ているところがあるのだ。

 

 

 

「なあシャッキー。あいつ、話聞くと思うか?」

「……無理そうね」

「ハハハ……はぁ」

 

 

 

 そこそこの付き合いとなっているレイリーには分かる。

 マデュラ、今頃絶対怒ってる。

 賭けてもいい。

 

 

 ほら、その証拠に天気が荒れてきた。

 酷い雷雨だ。

 

 

 

「あ、レイさん。今あっちのマングローブが燃えたわよ」

「やめろ。実況するな。分かってる、徐々に近付いてきていると、分かっているさ」

 

 

 

 見聞色の覇気を使うまでもない。

 このシャボンディ諸島に駐留していた海軍はあっという間に全滅した事だろう。

 

 

 

 蛇王龍は敵対者に容赦しない。

 子供でも知っているこの世の真理である。

 

 

 

 そして──。

 

 

 

 

 《千剣ッ!!》

 

 

 

 非常に聞き覚えのある声が諸島中に響いた直後。

 

 

「おお、今のは揺れたな……」

「あの子ったら、営業妨害も甚だしいわ」

「この光景を見てそんな事を宣う余裕がある君に感心するよ、シャッキー」

 

 

 

 

 

 

 

 ──シャボンディ諸島が、真っ二つに割れた。

 

 ……レイリーとシャクヤクはそっと店の中に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして数分後……。

 

 

 

 

「あー! イライラするッ!! レイリー、シャッキー、ただいまッ!!」

「……おかえり、マデュラ。随分と暴れたようだが?」

「おかえりなさい。何か飲む?」

「いつもの!! 聞いてレイリー! 実はね──」

 

 

 

 レイリーの頭を悩ませる問題児、マデュラがご来店した。

 案の定ものすごく怒っており、酒場の扉を吹っ飛ばしながら現れた彼女。

 

 珍しくお供がいないが、彼女の部下たちはどうやら諸島中で未だに暴れ回っているらしい。

 オーバーキルにも程があるだろやめて差し上げろ。

 

 

 

 

 はてさて、何があったのか……?

 

 





 最初に結末を持ってくるという新たな手法に挑戦してみました。
 フラッシュフォワードという奴ですね。
 こういうやり方で合ってるのかな?


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