阿多曼帝国降臨記 (SAWA χTERU)
しおりを挟む

第0節 設定
其ノ零ノ壱 本作のオスマン帝国についての設定·一部兵器紹介-1


国家紹介と年表だけでこんなに伸びてしもうた·····



追記)文章のおかしくなっていた部分の修正、大
中華民国とオスマン帝国の対立の理由の加筆等を
行いました。(2019/10/1、23:24)

追記2)文章(ry、アジア大州にクルド小州を追加
   しました。(2019/10/10、23:42)

追記3)文sy(ry 今までの全部のやつ当てはまる
   んじゃねーかな·····
(2019/12/28、0:09)


地球の主要国家紹介

 

●オスマン帝国

 

面積 約1755万平方キロメートル

 

人口 約11億人

 

1936年に復活した後数多くの戦争に勝利し世界一

の大国となった大帝国。

数多くの民族を内包する多民族国家で史実のアメ

リカに変わって「人種のるつぼ」と呼ばれる。

政治·経済·軍事の全てにおいて世界の最先端若し

くは頂点に立っている。

尚帝政復古を求めたクーデターの決行日の9月3日

は再興祭と呼ばれ帝国臣民全体の祝日であり、20

06年は丁度70周年とあって例年を大きく上回る人

が集まった。

1965年に制定されたオスマン帝国憲法によって統

治される立憲君主制国家(一応スルタンによる親

政も可能だが総議員の9割の賛成→国民の7割の賛

成が必要な為、ほぼ不可能 · · · · · · · だと思わ

れていたが10数年前「スレイマン大帝の再来」と

呼ばれる賢帝アブデュルメジト5世によって実現

された。ただ殆どの議題は通常通り議会を通す必

要があるのでそこまでスルタンに権力がある訳で

はない)

 

アジア·クリミア大州、バルカン大州、アフリカ

大州の3大州とそれを構成する小州によって統

治される。

 

◯アジア·クリミア大州

 帝都イスタンブルを擁する3大州の中心。

 土地の殆どは工業化されている。

 イスタンブル以外にも国際施設の多いアンカラ

 や黒海の要所であるセヴァストポリ等重要都市

 が多数存在しオスマン帝国の人口の半数近くが

 当州に住んでいる。

 

◯バルカン大州

 バルカン半島諸国や中欧、地中海の島々を統治

 する。

 アジア·クリミア大州に比べると農業も比率高め

 だが山脈が多い事もあって生産量は多くない。

 アルバニアを除くとキリスト教圏。

 

◯アフリカ大州

 アフリカ州のオスマン帝国領。

 草原地帯を中心とした地域は農業が主力だった

 が、近年は工業化が進んでいる。

 3大州の中で最も広範な領域を統治する。

 過去に民族問題があったが、周辺国家との国境

 緩和等で現在は概ね終息した。

 

それぞれの小州

◯アジア·クリミア大州

 トルコ小州、イラク小州、イラン小州(イラン

 西部)、クルド小州、サウジアラビア小州、イ

 エメン小州、オマーン小州、アラブ小州、バー

 レーン小州、クウェート小州、カタール小州、

 レバノン小州、ヨルダン小州、シリア小州、キ

 プロス小州、コーカサス小州、エルサレム特別

 小州、ロシア小州(スターリングラード辺りま

 で)、ウクライナ小州(ウクライナ南部)、モ

 ルドバ小州

 

◯バルカン大州

 ギリシャ小州、ユーゴスラビア小州(内部で他

 の小州より細かく区分されている)、アルバニ

 ア小州、ブルガリア小州、ルーマニア小州、ハ

 ンガリー小州、シチリア小州、コルシカ·サル

 デーニャ小州、ジブラルタル特別管理都市

 

◯アフリカ大州

 エジプト小州、リビア小州、アルジェリア小州

 、チュニジア小州、モロッコ小州、サハラ小州

 、北スーダン小州、南スーダン小州、エリトリ

 ア小州、ジブチ小州、エチオピア小州、ソマリ

 ア小州、セーシェル小州

 

 

 

●ペルシャ帝国

 

面積 約590万平方キロメートル

 

人口 約2億5000万人

 

1960年締結されたオスマン帝国傀儡国·植民地独

立条約によって独立。

オスマン中央連邦とイスラーム条約機構に所属し

ている。

政情不安な土地が多かった為度々オスマン帝国軍

を呼んでいたが現在は安定している。

又1970年代初頭に領有するペルシャ湾から油田が

次々発見(しかも史実でサウジアラビア等の陸地

にあった油田も多数ペルシャ湾で発見)され、一

気に世界有数の産油国となった。

帝国の名を冠するが実際は共和制。(オスマン帝

国に合わせている)

 

◯構成国

 イラン(オスマン帝国領のイラン西部を除く)

 、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、ト

 ルクメニスタン、ウズベキスタン、アフガニス

 タン

 

●第二後ウマイヤ王国

 

面積 約60万平方キロメートル

 

人口 約7500万人

 

1960年締結されたオスマン帝国傀儡国·植民地独

立条約によって(ry

オスマン中央連邦随一の農産国家でオスマン帝国

の農産物主要輸入国の一つ(他にはフランス等が

ある)。

最近は首都マドリードを中心に工業地帯が出来始

めている。

オスマン中央連邦の中で唯一国教がキリスト教で

ある。立憲君主制。

 

◯構成国

 スペイン、ポルトガル

 

●マジャパヒト帝国

 

面積 約274万平方キロメートル

 

人口 約3億5000万人

 

1960年締結されたオスマン帝国傀儡国·植民地独

立条約(ry

オスマン帝国を除くとオスマン中央連邦屈指の多

民族国家で最も独立色が強い。

天然ゴムをはじめとした豊富な資源輸出国で近年

その資金を元手に大規模な工業化を進めている。

イスラム教が国教だがキリスト教や固有の民族宗

教等他の宗教も多い。民主制。

 

◯構成国

 インドネシア、パプアニューギニア、マレーシ

 ア、ブルネイ、シンガポール

 

●アメリカ合衆国

 

1960年締結された(ry

条約締結と共に民主制を取り戻し国名もアメリカ

「合衆国」に戻るが、同時にアラスカ·ハワイ·プ

エルトリコ等々数多くの領地を失う(それぞれア

ラスカはロシア帝国領に編入、ハワイとプエルト

リコは独立し敵対陣営に加入。オスマン=日本戦争

時にでしゃばって獲得した太平洋諸島も日本や独

立した太平洋諸島の島国達に併合された)。

これによって反オスマン感情を募らせ、似た立場

の大中華民国や朝鮮国と反オスマン三国同盟を結

び冷戦を繰り広げた。

多くの領地を失いながら未だに国力で世界二位を

誇るが、ゴム等一部資源が不足気味。後最近中国

の影響か心なしか共産化しかけているような···

 

●日本国(大日本帝国とも呼ばれる)

 

第三次世界大戦後予定より早く沖縄·台湾が返還

され独立条約の際大陸領を朝鮮国と満州帝国とし

て独立させる代わりに北マリアナ諸島やウェーク

島を獲得し、アジア諸国と経済的協力を目的とし

た大東亜共栄圏を発足した(尚大中華民国と朝鮮

国が加入を拒否し敵視して来た為次第に軍事的協

力も行う様になった。又パキスタンとバングラデ

シュも加入拒否したがこちらは敵対していない)。

オスマン帝国へ海軍技術を供与する代わりに多額

の経済援助を引き出し、史実より遅かったが遥か

に長期間の経済成長を成し遂げた。又朝鮮国等と

のいざこざが多かった為史実とは違い「国防軍」

という形ではあるが軍備を有している。

 

●ロシア帝国

 

1960年締結(ry

こちらは条約後も国名が変わっていない。

条約によってスターリングラード辺りまでの南部

領やウクライナ南部領、北樺太等を失陥したが代

わりにアラスカの再獲得に成功した。

大オスマン経済連邦には所属していないがオスマ

ン帝国との繋がりは強く、オスマン帝国にとって

も主要貿易国の一つ。

 

●ドイツ帝国

 

モスクワ条約後復活した帝国。

旧帝国の最大領土と同等クラスの領地を持つ。

ヨーロッパ大同盟盟主。

尚世界でも医学薬学は多方面でトップ。

我がドイツの医学薬学は世界一ィィィィィ!

 

世界各地の連合·協力関係

 

●オスマン中央連邦

 旧オスマン帝国領土や重要植民地である東南ア

 ジアの独立国から成る。

 オスマン帝国や四大列強に準ずる国力を誇る。

 

盟主国:オスマン帝国

加入国:ペルシャ帝国、第二後ウマイヤ王国、マジ

   ャパヒト帝国

 

●大オスマン経済連邦

 過去にオスマン帝国が設立したオスマン中央同

 盟国の後継的存在。

 経済的協力が主だが反オスマン三国同盟との対

 立から軍事的協力も度々行われている。

 

盟主国:オスマン帝国

加入国:オスマン中央連邦の残り三国、大英帝国、

   オーストラリア、ニュージーランド、カナ

   ダ、ベトナム、インド帝国、西アフリカ独

   立国、中南部アフリカ民主主義共和国、マ

   ダガスカル、統合主義ブラジル、ギアナ

 

●大東亜共栄圏

 日本を盟主とする東·東南·南アジアと太平洋諸

 島の諸国による連合。

 当初ペルシャ帝国以東のアジア諸国全体に加入

 を呼び掛けたが大中華民国と朝鮮国が拒否し敵

 視した事から期せずして対中朝包囲網になって

 いる。

 

盟主国:日本国

加入国:満州帝国、シャム王国、パラオ、モンゴル

   、ベトナム、ビルマ、ブータン、ネパール

   、インド帝国、フィリピン、ミクロネシア

   、マーシャル諸島、ソロモン諸島、ツバル

   、バヌアツ、キリバス、フィジー、サモア

   、トンガ、ニウエ、クック諸島、ハワイ王

   国、マジャパヒト帝国

 

●米中朝反オスマン三国同盟

 名前通り反オスマンを掲げる米中朝三国の経済

 ·軍事的協力を目的とした同盟。

 アジアでは台湾や竹島、新疆ウイグル付近、ア

 メリカ周辺ではカナダやメキシコ、ハワイ王国

 等で小競り合いが度々行われている。

 

盟主国:アメリカ合衆国

加入国:大中華民国、朝鮮国

 

●ヨーロッパ大同盟

 ドイツ帝国を盟主に担ぐ史実で言う所のEU。

 経済力は合計すればオスマン帝国の三分の二程

 に達する。

 尚現在は米中朝の過激派によるテロ等に悩まさ

 れている。

 

盟主国:ドイツ帝国

加入国:フランス共和国、イタリア王国、オランダ

   、ベルギー、ルクセンブルク、オーストリ

   ア、ポーランド、チェコ、スロバキア、リ

   トアニア、ラトビア、エストニア

 

●北欧連盟

 北欧諸国やバルト三国等の連合。

 地政学的に見ると大英帝国包囲網にも見えるが

 別にそこまで仲が悪い訳ではない。

 

盟主国:大フィンランド

加入国:スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、

   アイルランド、アイスランド、グリーンラ

   ンド自由国、エストニア、ラトビア、リト

   アニア

 

●イスラーム条約機構

 イスラム教国家連合(尚このイスラーム条約機

 構含めオスマン中央連邦の国々が他の連合の盟

 主でないのは自主規制なので悪しからず)。

 バングラデシュの天然ガスやペルシャ帝国の原

 油、そして農産物が主要輸出品目である。

 

盟主国:パキスタン

加入国:バングラデシュ、ペルシャ帝国

 

●アフリカ連合

 アフリカ大陸各国が参加する。

 経済的協力というよりかは民族間の共存の補助

 が目的となっている。

 

盟主国:ムタパ王国

加入国:西アフリカ独立国、中南部アフリカ民主主

   義共和国、東アフリカ共和国、マダガスカ

   ル、オスマン帝国アフリカ大州

 

●中央アメリカ協商

 中央アメリカ諸国とカリブ海の島国達による連

 合。

 アメリカ合衆国への対抗を主目的とする。

 

盟主国:中央アメリカ連邦共和国

加入国:メキシコ、キューバ、ジャマイカ、ドミニ

   カ共和国、プエルトリコ共和国、カリブ諸

   島連合国、トリニダード·トバゴ

 

●南米評議会

 南米諸国の連合。

 過去ではブラジルへの警戒から珍しく不仲に近

 い状態だったが、現在はブラジルの態度軟化か

 ら改善されている。

 

盟主国:統合主義ブラジル

加入国:グラン·コロンビア、ペルー·ボリビア連合

   、スリナム、ギアナ、パラグアイ、ウルグ

   アイ、チリ、アルゼンチン

 

●旧英連邦

 大英帝国元主要植民地(インドを除く)による

 連合。

 盟主国の大英帝国含め全加入国が大オスマン経

 済連邦に属しているがより経済協力を深めるの

 が目的。

 

盟主国:大英帝国

加入国:カナダ、オーストラリア、ニュージーラン

   ド

 

 

 

地球での転移までの歴史

 

1936.9.3 トルコ共和国にてクーデターが勃発。

     新政権がオスマン帝国の再興を宣言す

     るが、英仏は否定。

 

1937.6.9 阿希戦争·第三次バルカン戦争

~1938.5.31 (ギリシャ·ユーゴスラビアを併合)

 

1938.11.3 日中戦争に日本が勝利

 

1939.5.8 オスマン帝国が枢軸国に加入

 

1939.8.24 ドイツがポーランドに宣戦布告(第二

      次戦争大戦勃発)

 

1939.9.11 ポーランド降伏

 

1939.10.27 フランス降伏

 

1940.8月頃 英仏連合成立

 

1940.9.30 アメリカが連合国として参戦

 

1941.6.11 独ソ戦勃発

 

1941.10.2 大日本帝国が枢軸国側で参戦

 

1942.1.27 北アフリカ戦線で枢軸国側が勝利

 

1942.4.22 オスマン帝国が独ソ戦に介入

 

1942.7.2 スペインが枢軸国側で参戦

 

1942.7.21 ソ連軍が大規模攻勢(バグラチオン攻

      勢)を行うが失敗、独ソ戦が枢軸国

      軍優勢に

 

1942.8.30 東南アジア連合国資源地帯制圧作戦(

      侵星作戦)開始

 

1942.年末年始 オスマン帝国軍がスターリングラ

        ード、セヴァストポリを占領

 

1943.2.20 ドイツ軍が大規模攻勢(バルバロッサ

      作戦)を開始し、キエフを占領

 

1943.3.17 オスマン帝国軍がマレー半島に到達

 

1943.5.7 オスマン帝国軍がモスクワに到達、数

     日後占領

 

1943.7.27 ソ連降伏、独ソ戦が枢軸国の勝利で終

      結(スターリンは一週間前に自殺)

 

1943.12.20 グレートブリテン島攻略作戦開始

 

1943.12.28 オスマン帝国軍がロンドンを占領

 

1944.1.3 英仏連合降伏

 

1944.1.5 ドーバー海峡海戦が多大な損害を受け

     つつオスマン帝国の大勝に終わる

 

1945.5.8 アメリカ合衆国攻略作戦開始

 

1945.8.14 三度に渡る攻勢の結果、ワシントン

      D.C.陥落

 

1946.1.14 アメリカ合衆国降伏。

      同時に連合国主要国が全て降伏し、

      第二次世界大戦に枢軸国が勝利

 

1946.1.15 イスタンブル条約締結(連合国の処遇

      決定)

 

1946.2.12 ドイツ軍が原爆の開発に成功、サマリ

~1946.2.15 ンダとバンジャルマシンにて使用

      (尚、使用前にドイツ軍は五回に渡

      って避難勧告を出していたため、死

      者は総勢数万人程に収まり、世界的

      に激しい批判を受ける事を免れた)

 

1946.2月中旬 オスマン帝国が枢軸国を脱退し、

       オスマン中央同盟国の設立を宣言

 

1946.9.3 オスマン帝国が大日本帝国に宣戦布告

     当初三ヶ月程の早期決着を想定したが

     、日本軍の奮戦により泥沼化

 

1947.3.21 オスマン帝国海軍が第二次日本海海戦

      を挑むも、戦艦大和等の活躍により

      大敗する。しかし目的だった青森へ

      の上陸に成功し、陸戦での優勢が決

      定的に

 

1947.4.21 大日本帝国降伏

 

1949.10.17 オスマン帝国がドイツに宣戦布告(

      第三次世界大戦の勃発)

 

1950.1.16 イタリア降伏

 

1950.4.18 イベリア半島戦線が崩壊し、スペイン

      大撤退を実行するが、軍の大半を失

      う大敗を喫する

 

1950.7月頃 北アフリカ戦線にてオスマン中央同

      盟国側が勝利

 

1950.8月初め バトル·オブ·アドリアにオスマン

       帝国空軍が勝利

 

1950.11.25 スペイン降伏

 

1952.2.2 ベルリン陥落

 

1952.2.5 米軍がハイデルベルクに原爆を投下(

     しかしこの時事前通告なしに投下し多

     数の民間人の犠牲者を出した為国内外

     から非難を浴びる事になる。というか

     当時ベルリンが陥落した辺りでナチス

     陣営も降伏を想定し始めており、はっ

     きり言って無駄だった。これが戦後米

     独間の対立の近因となる)

 

1952.2.23 ドイツ降伏

 

以下ダイジェスト

 

1952年 モスクワ条約(枢軸国の処遇決定。アメ

     リカがドイツ領の一部領有権を要求し

     たが却下された。ドイツ帝国誕生。)

 

1953年 国際核兵器禁止条約締結。アメリカ合衆

    国は批准を拒否。

 

    又オスマン帝国·アメリカ自由帝国·ロシ

    ア帝国を常任理事国、日本国·ドイツ帝

    国·大英帝国·フランス·イタリアを初代

    非常任理事国とする国際連合を設立。

 

1954年 オスマン帝国が戦場化した各国への経済

    援助を提案。露·日·独·英·仏·伊、他多

    数の国はこれを受諾したが、米·中はこ

    れを拒否した。

 

1955年 オスマン帝国が五年後に現傀儡国·植民

    地の処遇を改めて決定すると発表。

 

1957年 中華帝国にてクーデターが発生し蒋介石

    が中国共産党員に暗殺される。

 

    又ロシア帝国が原爆を保有。

 

1959年 中華帝国にて中国共産党が政権を掌握し

    大中華民国を名乗る(尚後世にて中国共

    産党へアメリカの共産主義者が援助して

    いた事や中国共産党による他政党への弾

    圧が発覚した)

 

1960年 イスタンブルにてオスマン帝国傀儡国·

    植民地独立条約が締結される。

 

本条約による各国·各州への影響

オスマン帝国:ウクライナ南部やロシア南部を獲得

      し、イラン西部や中央アジアを領土

      とするペルシャ帝国、イベリア半島

      を領土とする第二後ウマイヤ王国、

      東南アジアを領土とするマジャパヒ

      ト帝国を成立させる。他多数の傀儡

      国·植民地を独立させた。

 

ロシア帝国:ウクライナ南部やロシア南部等を失陥

     するが、アラスカを獲得。

 

日本国:北樺太を獲得し、沖縄と台湾の早期返還に

   成功。北マリアナ諸島やウェーク島を併合

   し太平洋諸島の島国と友好関係を結ぶ。

   又大陸領が満州帝国と朝鮮国として独立し

   た。

 

アメリカ自由帝国:ルイジアナ州までの西海岸領土

        を取り戻したが、アラスカやハ

        ワイ等を失陥。民主制に戻り「

        合衆国」となるが、反オスマン

        路線を歩み始める。

 

大英帝国:イングランドを取り戻すも、バミューダ

    諸島等のグレートブリテン島近辺の極僅

    かな島を除きほぼ全ての植民地を失陥。

 

ドイツ帝国·フランス:エルザス·ロートリンゲン(

          アルザス·ロレーヌ)がド

          イツ帝国有利の共同管理区

          域となる。

 

アジア州:シャム·ラオス·カンボジアを領土とする

    シャム王国が誕生。

    パキスタンやバングラデシュ、太平洋諸

    島の島国が独立。

    又アクサイチン等の史実の紛争地域がパ

    キスタンやインド帝国に併合されたり、

    チベット·ウイグル等の少数民族の保護

    問題事で対立した事から大中華民国とオ

    スマン帝国が対立し始める。

 

アフリカ州:南アフリカ·ジンバブエ·モザンビーク

     等を領土とするムタパ王国が成立。

     アフリカ州の民族問題が複雑な事を鑑

     み、正確な国境画定は先延ばしに。

 

北アメリカ州:中央アメリカ連邦共和国が成立。

      又プエルトリコ以南からトリニダー

      ド·トバゴ以北の島国がカリブ諸島

      連合国として纏まった。

      更にグリーンランドがグリーンラン

      ド自由国として独立した。

 

南アメリカ州:統合主義ブラジルに対抗する為グラ

      ン·コロンビア、ペルー·ボリビア連

      合が成立。

結果としてアメリカと中国の反オスマン感情がい

よいよ決定的となった。

 

1962年 オスマン帝国の仲介の下日本国が大東亜

    共栄圏を設立。

    大小23の国家が加入するが大中華民国と

    朝鮮国は加入を拒否した。(尚パキスタ

    ンとバングラデシュも独自陣営の設立を

    理由に拒否している)

 

    又アメリカ合衆国が国際連合の脱退を表

    明した。

 

1963年 アメリカ合衆国·大中華民国·朝鮮国の三

    国が反オスマン三国同盟を締結。(冷戦

    の開始)

 

    又カイロでアフリカ州の領土の画定を決

    定するアフリカ会議が行われ、西サハラ

    からソマリアまでがオスマン帝国アフリ

    カ大州として成立し、西アフリカ独立国

    、中南部アフリカ民主主義共和国、東ア

    フリカ共和国が誕生した。

 

1964年 アフガニスタン動乱(アフガニスタンに

    て大中華民国やアメリカ合衆国の正規軍

    が義勇軍としてアフガニスタンのキリス

    ト教徒のクーデター政権保護を名分にア

    フガニスタンに侵攻し、これにアフガニ

    スタン政府がペルシャ帝国とオスマン帝

    国へ救援要請を発したのを受け入れ、双

    方が小規模な衝突を起こした。この時ア

    フガニスタン政府はペルシャ帝国への編

    入を願い出て、アフガニスタン国民もこ

    れに賛同、アフガニスタンはペルシャ帝

    国特別小州に編入され、3年後義勇軍は

    引き上げた。その後クーデター政権は打

    倒されたが、反オスマン同盟側とオスマ

    ン連邦側との初の軍事衝突となり、世界

    に波紋を呼んだ)

 

1965年 オスマン帝国政府がオスマン帝国憲法の

    施行を宣言。その後連邦各国の憲法制定·

    改定にも協力を始める。

 

1967年 アフリカ合衆国政府が水爆の開発成功を

    発表。オスマン帝国もこれを受けて核対

    策技術開発の予算増加を示唆した。

 

1969年 大オスマン経済連邦·ヨーロッパ大同盟

    ·イスラーム条約機構·北欧連盟·南米評

    議会が成立。

 

1971年 ここから数年間各国で憲法の制定·改定

    が行われる。

 

1973年 オスマン中央連邦·旧英連邦·中央アメ

    リカ協商が成立。

 

1975年 大英帝国·ドイツ帝国·日本国が原爆を

    保有、ロシア帝国が水爆を保有。

 

1979年 アフリカ各地で民族問題が続出。オス

    マン帝国軍が調停軍として各地に出動

    する事態に。

 

1982年 トリポリにてアフリカ民族条約が締結

    され、国境の緩和が決定。

 

1983年 アフリカ連合が成立。

 

1989年 世界各国の軍事費増加による経済停滞

    を理由にオスマン帝国がアメリカ合衆

    国に冷戦の終結を提案するが拒否され

    る。

 

1992年 アブデュルメジト5世がオスマン帝国

    憲法施行後初の親政を開始する。

 

1993年 オスマン帝国海軍が日本·英国海軍の協

    力の下「巨船計画」を発動。

    世界最大の戦艦の建造を開始する。

 

1995年 アメリカ合衆国が冷戦終結に合意し、一

    応の終結を迎える。

 

1998年 オスマン帝国海軍が世界最大の戦艦の建

    造に成功。

    公募の結果艦名が「エルトゥールル」に

    決定する。

 

2001年 アメリカ合衆国で新大統領が当選。

    オスマン帝国との対立·アメリカ第一主

    義を掲げ、再度アメリカ·オスマン間の

    関係が悪化し始める。

 

2006年 異世界転移

 

 

 

 

 




尚途中紹介されていた四大列強とはドイツ帝国·日本国·ロシア帝国·アメリカ合衆国の事を指します。

次回兵器紹介してその後本編となるかと思われます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

其ノ零ノ弐 本作品のオスマン帝国についての設定·一部兵器紹介-2

作者に兵器の知識なんて無かったんや(白目)

多分(というか確実に)物理的に有り得んてぃーな代物が出て来ると思われますので兵器に詳しい方でその気になって下されば何か設定とかコメントにて情報提供して頂けると有り難いです。


陸軍 150万人

 

規模·戦力共に世界最高水準を誇る巨大陸軍。

最近は力を入れられている海軍の影に隠れがちだ

がしっかりと戦車を中心とした陸戦兵器の更新が

行われている。

 

主要兵器

 

◯98式歩兵小銃

陸軍歩兵全体に配られている基本小銃。

連射力·取り回しの良さから兵からも長らく改修

されつつ愛用されている。

現在鋭意新型開発中。

 

◯四式軽戦車「コーカサス」

陸軍機甲師団の最小兼最速戦力。

装甲自体は薄めだが優れた傾斜装甲等の設計と一

線を画す機動力でかなりしぶとい。

 

◯三式中戦車「アラビア」

陸軍機甲師団主力の一つ。

他の戦車に比べて悪路に強く、対応戦域の広さか

ら多面的な活躍が期待されている。

 

◯五式重戦車「サハラ」

オスマン帝国陸軍の最新鋭戦車で機甲師団最強の

鉾と言える存在。

史実のレオパルト2A7+やM1A2エイブラムスを相

手にして圧勝できる程の性能を持つ。

 

◯グリル35

オスマン帝国陸軍伝統の重自走砲にして「阿国面

の体現」とでも言うべき存在。

アメリカ合衆国攻略作戦や日本=オスマン戦争で

猛威を振るったグリル21の系列の最新型。

サハラ等より遥かに運用箇所が限定されるがその

圧倒的火力から高い信頼を得ている。

 

◯02式装甲車「IZM-カルパチア」

陸軍機甲師団の兵員輸送車。

武装こそ貧弱だが対TNT、地雷、戦車等あらゆる

攻撃に十二分に耐える事が可能な装甲、砂漠、山

岳地帯等の悪路でも70㎞/hを叩き出しパンクを始

めとする事故にも強い機動力で高い評価を得て、

オスマン中央連邦各国等を中心とする幅広い国家

で運用されている。

 

◯00式対地攻撃機「KDY-パミール」

()()A-10サンダーボルトⅢの後継機(この世界線で

はオスマン帝国が開発していた)。

基本的コンセプトはそのままに、「より速く、よ

り強く、より(性能比的に)安く」を実現した。

 

◯01式戦闘ヘリ「TRZ-メソポタミア」

史実のAH-64Dアパッチ·ロングボウに程近いポジ

ションだが、搭載可ミサイル数や最高速度、対戦

闘機性能で大きくそれを上回る。

 

海軍 100万人

   所属艦艇 戦艦   15隻

        空母   50隻

        駆逐艦  500隻

        巡洋艦  350隻

        潜水艦  130隻

        補助艦艇 255隻

 

        総数 1300隻

 

近年最も力を入れられている軍。

第二次世界大戦時以来のアウトレンジ戦法の影響

で大型艦は火力と装甲、小型艦は生産性と退艦時

の救員性が重視され、共に速度を生かした戦闘を

主流としている。

尚某海軍的組織の如くピラウの拘りが凄い

 

◯イスタンブル級戦艦

  イスタンブル

  コンスタンティノープル

  コンスタンティニーエ

基準排水量:85000t

全長:317.2m

全幅:45.8m

機関:99式ガスタービン10基

乗員:3750名

最高速度:41.0㏏

武装:51㎝連装砲 5基

   20.3㎝三連装速射砲 5基

   対空誘導弾垂直発射装置(以後VLSと表記)

   1基8セル 全10基80セル

   32.4㎝対潜4連装短魚雷発射菅 3基

   25㎜3連装対空機関砲 10基

   多目的30㎜近接防御火器システム(以後CIWS

  と表記) 5基

艦載機:00式偵察ヘリ「TRZ-ムラト」 7機

 

大和型戦艦とアイオワ級戦艦をメインベースとし

て建造された高速超弩級戦艦。

近年建造されたエルトゥールルに艦隊総旗艦の座

を譲ったが、今も艦隊主力の一角として高い人気

を誇る。

 

◯プルサ級空母

  プルサ

  エディルネ

基準排水量:117000t

全長:370m

全幅:53.2m

機関:94式ガスタービン7基

乗員:3450名

最高速度:37.5㏏

武装:多目的誘導弾VLS 1基8セル全5基40セル

   対空25㎜CIWS 6基

艦載機:97式艦上戦闘機「KDY-スレイマン」

    45機

    98式艦上爆撃機「KDY-バヤズィト」

   25機

    99式艦上攻撃機「KDY-メフメト」

   30機

    95式対潜哨戒ヘリ「TRZ-オスマン·ベイ」

    15機

    00式偵察ヘリ「TRZ-ムラト」

    5機

   計120機

 

1960年代直前から40年以上に渡って運用され続け

ているオスマン帝国海軍初の本格的正規空母。

就役後も度重なる改修を受け、オスマン帝国海上

航空戦力の要として活躍している。

 

◯ロードス級駆逐艦

  ロードス

  カルパトス

  クレタ

  マルタ

  シチリア等多数

基準排水量:11000t

全長:190m

全幅:17m

機関:92式ガスタービン2基

乗員:330名

最高速度:43.5㏏

武装:12.7㎝連装速射砲1基

  25㎜連装機銃 2基

   対空25㎜CIWS 3基

   32.4㎝対潜3連装短魚雷発射菅 3基

 

対空·対潜を主任務とした駆逐艦。

武装の貧弱さと引き換えに圧倒的生産性を誇り、

大体一ヶ月に7隻程建造可能。

尚運用方法故に消耗しやすい為コストや安全性へ

の考慮からガスタービンを採用している。

 

◯トラブゾン級ミサイル巡洋艦

  トラブゾン

  チョルフ

  リオニ

  リュクス

  クズルウルマク等多数

基準排水量:22000t

全長:207.3m

全幅:29.8m

機関:03式小型原子炉3基

   (トラブゾンのみ01式ガスタービン7基)

乗員:437名

最高速度:42.1㏏

武装:20.3㎝連装砲 2基

   25㎜三連装機銃 4基

   対空30㎜CIWS 5基

   32.4㎝対潜五連装短魚雷発射菅 1基

   対空·対艦VLS 1基6セル 全15基90セル

 

対空戦闘を主任務とするミサイル巡洋艦。

戦艦や空母のエアカバーを担当する。

対極に位置していると言えるイズミル級と比べる

と生産性で劣るが総合的戦力で勝る。

 

◯イズミル級対潜巡洋艦

  イズミル

  ヴァン

  トゥズ

  アクシェヒル

  ハザール等多数

基準排水量:13700t

全長:186.2m

全幅:23.8m

機関:98式小型原子炉2基

   (イズミルのみ00式ガスタービン5基)

乗員:384名

最高速度:40.6㏏

武装:14㎝連装速射砲 3基

   25㎜機銃 2基

  対空20㎜CIWS 3基

  32.4㎝対潜六連装短魚雷発射菅 6基

   対空·対艦VLS 1基8セル 全5基40セル

 

対潜戦闘を主任務とする巡洋艦。

トラブゾン級に比べて小型に作られており、機関

の脆弱性から機動力等も劣るが生産性で勝る。

主砲の口径の小ささから小型艦の掃討も兼ねる。

 

◯ボスポラス級原子力空母

  ボスポラス

  チャナッカレ

  ケルチ

  ジブラルタル

  ダーダネルス等多数

基準排水量:137000t

全長:410.7m

全幅:52.8m

機関:04式大型原子炉3基

乗員:7120名

最高速度:39.3㏏

武装:多目的誘導弾VLS 1基8セル 全10基80セル

  対空30㎜CIWS 12基

艦載機:01式艦上戦闘機「KDY-オルハン」

    55機

   98式艦上爆撃機「KDY-バヤズィト」

   40機

   99式艦上攻撃機「KDY-メフメト」

   45機

    04対潜哨戒ヘリ「TRZ-セリム」

   15機

    00式偵察ヘリ「TRZ-ムラト」

   10機

   計165機

 

並の中小国を一隻で蹴散らすと恐れられたオスマ

ン帝国最新の原子力空母。

原子炉が改良され、就役から退役まで原子炉交換

無しで行動できる様になった。

 

◯マルマラ級戦艦

  マルマラ

  エーゲ

  アドリア

  ティレニア

  アゾフ等全8隻

基準排水量:72000t

全長:284.9m

全幅:42.1m

機関:96式大型原子炉2基

乗員:3290名

最高速度:42.5㏏

武装:48㎝三連装砲 3基

  15.2㎝連装速射砲 2基

  対空VLS 1基8セル 全7基56セル

  20㎜対空機関砲 6基

  多目的25㎜CIWS 6基

艦載機:00式偵察ヘリ「TRZ-ムラト」 5機

 

艦隊付随戦艦として建造された高速戦艦。イスタ

ンブル級にこそ劣るが絶大な威力を誇る48㎝三連

装砲で様々な海域を守護していた。

 

◯カラ·デニズ級戦艦

  カラ·デニズ

  アク·デニズ

  クズル·デニズ

基準排水量:71000t

全長:287.2m

全幅:39.6m

機関:02式大型原子炉1基

乗員:3480名

最高速度:33.6㏏

武装:46㎝電磁加速単装砲 3基

  対空VLS 1基8セル 全5基40セル

  多目的25㎜CIWS 4基

艦載機:00式偵察ヘリ「TRZ-ムラト」 3機

 

最新兵器である電磁加速砲を搭載した最新戦艦。

不安定さ故に武装があまり搭載できず、速力も不

十分だったが圧倒的射程·火力を誇る。

 

◯スエズ級原子力潜水艦

  スエズ

  ハリチュ

  ヴォルガ·ドン

  クマ=マヌィチ

  コリントス等多数

基準排水量:水上3510t

      水中4260t

全長:103.6m

全幅:8.6m

機関:99式小型原子炉1基

乗員:124名

最高速度:水上24.6㏏

    水中23.8㏏

武装:53.3㎝魚雷発射菅(魚雷25発)

   対艦VLS 1基4セル 全3基12セル

 

旧式化しつつあった潜水艦の新モデルとして開発

された原潜。

外洋航行能力もある程度備えており、広範な海域

で活動可能。

 

 

 

◯“超戦艦”エルトゥールル

基準排水量:196000t

全長:498.9m

全幅:78.2m

機関:06式ガスタービン11基

   04式大型原子炉 4基

乗員:8240名

最高速度:31.9㏏

武装:53㎝三連装砲 3基

   21.0㎝三連装速射砲 2基

   多目的VLS 1基8セル 全15基90セル

   32.4㎝対潜六連装短魚雷発射菅 6基

   対空30㎜CIWS 14基

艦載機:01式艦上戦闘機「KDY-オルハン」

    40機

   05式艦上爆撃機「KDY-アブデュルメジト」

    25機

    03式艦上攻撃機「KDY-ムスタファ」

    30機

   04式対潜哨戒ヘリ「TRZ-セリム」

    10機

   00式偵察ヘリ「TRZ-ムラト」

    15機

   計120機

 

1993年から日本·大英帝国両海軍の技術支援及び協力を受けつつ5年の歳月を懸け1998年に進水·就役した世界最大にして最強の“超”戦艦。

その異常とすら言える巨大さ、資源消費量は他国首脳からも「狂気の産物」と称され、一部政治家からしきりに「金と燃料のゴミ箱」と言われ、その糞高い建造費·維持費を稼ぐ為に、海軍が艦艇を見学させる事で観光資源化を図るという新たな「阿国面」を発症させる近因と化し···

と国内外問わず余りに大きな影響を与える事になった現オスマン帝国国防の象徴海軍代表。

(尚この建造費·維持費目当てで始まった艦艇見学ツアーはオスマン帝国の海軍力を見せつける事による冷戦終結やその後の短いながらの世界平和の一助となったりと、完全に予想外な展開につながって行ったのは別の話)

 

空軍 30万人

   (内陸上27万人、海上3万人)

 

1万機以上の航空兵力を備え、年間300時間近く飛行している装備·練度共に世界最高峰の空軍。

陸上戦力の約3割、海上戦力の殆どはそれぞれ陸軍·海軍と共同管理しており、それ以外は空軍が独自で管理している状態。

 

空軍独自航空機

 

無人戦闘機「IZM-ウルバン」

近年試験運用が開始されたコンピューター制御式

の戦闘機。電子戦能力も高い。

現在150機が生産され領空中央部にて実用化に向

けた研究と試験運用が行われている。

 

無人偵察ヘリ「IZM-クタス」

ウルバンより一足早く実用化に漕ぎ着けた。

無人兵器である事からより多様な戦場へ投入が可

能と期待されている。




いよいよ次回から本編となります。


果たしてオスマン帝国は異世界で生き残れるのか!?

まずそんなに見てくれる人いるのか!?

そもそもエタらずに完結できるのか!?



前回共々、気に入って頂ければ是非お待ち下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1節 異世界転移!ロデニウス大陸編(異世界側)
其ノ壱 公国と帝国と遭遇


早くも原作改変ー。

以下主な改変点

◯カナタさん女体化(ついでにエルフ化)。



···以上。

因みにこんなとち狂った設定になったのは私が読
み専だった時代に某日本国召喚二次創作で何故か
カナタさん=女性で読み進めていて後に気付いた
けど「あれ?違和感無くね?」とか考えたからで
す。だったらエルフにしとけばロウリアの亜人根
絶主義と絶対対立するしありじゃね?などと考え
た次第です。尚クイラ王国の国王もドワーフの設
定ですのでこちらもロウリアの主義と対立してま
す。

追記)タイトルを変更しました。
   没のやつのままだった·····


中央暦1639年1月24日午前8時

クワ·トイネ公国軍第六飛竜隊

 

その日は雲一つ無い快晴であった。

ワイバーンと呼ばれる飛竜に跨がり、竜騎士のマ

ールパティマは公国北東部の上空哨戒任務につい

ていた。

 

公国の北東方向には国は存在しない。

東に行っても何処までも海が続くだけで、本来任

務とは無縁そうに見えるマールパティマが哨戒任

務を行っているのは、隣国のロウリア王国が原因

だった。

 

クワ·トイネ公国が存在するロデニウス大陸には

三つの国が存在した。

 

◯豊かな土地を持ち、豊富な食料を産出する農業

 立国クワ·トイネ公国

 

◯険しい山脈に囲まれ、不毛な土地にドワーフや

 獣人等が暮らすクイラ王国

 

◯人間至上主義を掲げ、ロデニウス大陸からの亜

 人の撲滅を宣言するロウリア王国

 

亜人を多数国民として抱えているクワ·トイネや

クイラと亜人撲滅を掲げるロウリアはどうやって

も相容れない関係であり、尚且つ3800万人もの人

口を擁するロウリア王国に比べてクワ·トイネ公

国とクイラ王国の人口は合計しても1000万人にも

満たない上、領土面積でもロウリア王国が優位だ

った。

 

故にクワ·トイネ公国とクイラ王国は互いに力を

合わせる事でロウリア王国に長年対抗していたの

だが、ここ数ヶ月、ロウリア王国が盛んに軍事行

動を起こそうとする気配を醸し出していた。

 

その為、万が一ロウリア王国が宣戦布告と同時

に軍船による迂回及び奇襲が行った場合、これ

をいち早く察知·迎撃するべく、彼は相棒のワイ

バーンを公国北東部へ飛ばしていた。

 

「あーあ、何処まで行っても海、海、海。こん

 な任務に何の意味·····ん?」

 

竜騎士の主任務に上空からの偵察がある事からも

分かる様に、竜騎士は大概目が良く、マールパテ

ィマもその例外では無かった。

 

彼が前方に何かを見つけたのと、彼の耳に聞き覚

えのない甲高い音が響いて来たのはほぼ同時だっ

た。

 

彼は最初友軍のワイバーンかと思ったが、任務前

に自分以外にこちらで任務につく予定の者はおら

ず、非常事態であれば魔信という通信手段がある

以上、連絡の一つでもあって良さそうなものだ。

ならばロウリア王国軍のワイバーンかとも考えた

が距離が遠すぎるし、第三文明圏で運用されてい

ると言われる竜母等なら可能なようだが文明圏か

ら遠く離れたこの場所に来る筈がない。

そして、段々と大きくなっているこの甲高い音を

彼は聞いた記憶がない。

 

「何なんだあれは·····」

 

最初粒の様にしか見えなかったその飛行物体は、

響かせる音を増しつつこちらに近づいていた。

それが近づくにつれて、彼はワイバーンでない事

を確信するのに十分な情報を得た。

 

「羽ばたいていないのか?」

 

彼は気を落ち着かせて通信用魔信具を取り出して

司令部へ報告した。

 

「我、未確認騎を確認す。これより交差した後追

 従し、要撃·確認を行う。我現在地···」

 

通信を行いつつも彼は相棒を操り未確認騎に接近

を続けていた。未確認騎との高度差が殆ど無かっ

た為、一度すれ違った後、距離を詰めようと考え

ていた。

 

すれ違った未確認騎は、彼の常識からすると途轍

も無く大きかった。羽ばたいていないのでどうや

って飛んでいるのか不明であったが、翼に付いて

いた何かが4つグルグルと回転していた。どうや

らこれで飛んでいるらしい。

 

その機体は白く、胴体には赤色の長方形に白い三

日月と一つ星が描かれていた。

 

「大きいな·····」

 

彼は反転し、相棒の翼をはためかせて、未確認騎

を追おうとした。だが、追い付けない。

ワイバーンの最高速度の235㎞/hで追従しようと

したが追い付ける気配がない。それどころかこち

らが追おうとしているのに気づいたらしく、更に

速度を上げ始めた。これまた第三文明圏にはワイ

バーンの上位種がいるらしいが、だとしても生物

の中でほぼ最速を誇る空の覇者がまるで追い付け

ないのは異常だろう。おそらくその上位種とやら

でも追い付けないのではなかろうか。

 

「くそっ···!司令部!司令部!我未確認騎追従

 を試みるが速度が違いすぎる、追い付けない!

 未確認騎は本土マイハーク方面へ進行中、繰り

 返す、未確認騎はマイハーク方面へ進行中!」

 

報告を受けた司令部は蜂の巣でもつついた様な騒

ぎになっていた。何せどの国の所属かも分からな

い未確認騎が経済の中枢都市たるマイハークへ進

んで来ていると言うし、もし本当なら速度から逆

算して既に公国の領空にも侵入している可能性が

高い。

 

もし攻撃など受けようものなら軍の威信·士気に

大きく関わる。

 

魔信から指示が流れる。

 

「第六飛竜隊は全騎発進せよ、未確認騎がマイハ

 ークへ進行中、攻撃を受ければ軍の沽券に関わ

 るぞ!」

 

司令部の命令を受け、滑走路から第六飛竜隊全12

騎が次々と飛び立って行く。待機中だったワイバ

ーン全騎という全力出撃だ。彼らは透き通る様な

青空にその翼を広げ上空へ舞い上がって行った。

 

 

 

第六飛竜隊の面々は運良く未確認騎の正面に相対

する事に成功した。どうやら報告通りかなり速度

が高いらしく、最初ゴマ粒程度にしか見えなかっ

た未確認騎はみるみる内に姿を大きくしていた。

相手が速すぎる場合、チャンスはすれ違う一瞬の

み。幸い未確認騎との間にはかなりの距離があっ

た為、導力火炎弾を準備し、発射するまでの時間

猶予があった。

 

「馬鹿みたいに早ぇが、これだけの導力火炎弾を

 食らえば落ちねえ飛竜···は·····な、何!?」

 

彼らに更なる衝撃が走った。

口の中に徐々に火球が生成されていたその時、未

確認騎が突如上昇を始めた。それもワイバーンの

限界高度の4000mを越えてである。未確認騎は凄

まじい勢いで高度を増していき、第六飛竜隊は導

力火炎弾の射程に未確認騎を捉える事無く引き離

されていった。

 

「我未確認騎を発見、攻撃態勢に入るが未確認騎

 は上昇、超高々度でマイハーク方面へ進行。繰

 り返す·······」

 

マイハーク防衛騎士団の団長イーネは第六飛竜隊

の報告を受け、上空を見上げ、部下達に指示を飛

ばす。彼女はマイハーク城の片隅に位置する棟の

上から未確認騎がやって来ると予想される方角を

睨んだ。基本的にワイバーンの対地攻撃手段は口

から発射する導力火炎弾である。だが単発だし、

矢や投石等も過去の検討結果から考えても1騎な

らそれ程の被害になるとは思わない。恐らく敵の

目的は偵察と考えられる。だが何の為に?

それにワイバーンでも追い付けないものとは一体

何なのか。その疑問はすぐに氷解する事となる。

 

遠方からブーンという聞き慣れない音が聞こえ始

めた。暫くして奇妙な飛行物体が見えてきた。

大きく白い機体、羽ばたかない一対の翼、怪奇な

音、翼と胴体に赤の長方形に白い三日月と一つ星

が描かれている。

明らかな領空侵犯。ただ未確認騎は何をするでも

なく、暫く上空を飛び回った後、満足したのか北

東の方向へと飛び去って行った。

 

「速いな·····」

 

報告通りワイバーンを遥かに上回る速度で、ワイ

バーンがたどり着けない超高々度を飛んでいた。

 

「何故だろう、歴史が動く予感がする」

 

不意に口から出たその言葉が現実のものとなる事

を、当時の彼女は知るよしもなかった。

 

 

 

未確認騎飛来の翌日 クワ·トイネ公国 政治部会

 

クワ·トイネ公国の行く末を決めるこの会議で、

首相カナタ以下国の代表達は悩んでいた。

昨日、クワ·トイネ公国の国防·軍務を担当する軍

務卿から国籍不明の飛行物体がマイハークに空か

ら侵入し、町上空を旋回し、去って行ったという

報告があったのだ。

その飛行物体には赤色の長方形に白い三日月と一

つ星が描かれていたそうだが、そんな国旗を持つ

国などこの世界には存在しない。

西方のロウリア王国で手一杯というこの状況で降

って湧いて来たこの問題に政府首脳は大弱りだっ

た。

首相カナタが発言する。

 

「皆さん、この度の報告について、どのように思

 い、どのように解釈するか、忌憚無く意見を言

 って下さい」

 

情報分析部長が挙手し、発言する。

 

「情報分析部によりますと、同物体は三大文明圏

 の一角である西方第二文明圏の列強、ムー国が

 開発·運用している飛行機械に酷似していると

 のことです。しかし、ムーにて運用されている

 飛行機械は最新の物でも最高速度は350㎞/h程

 度との事。今回の飛行物体は最低でも600㎞/h

 を越えています」

 

政治部会の面々に緊張が走る。それではその飛行

物体がムー国の所属でなかった場合、端的にでも

ムーを超える国力を持つ国家が存在する事になっ

てしまう。

 

「ただ···」

 

「ただ、何です?」

 

「はい、どうやらムーから更に西方に第八帝国と

 名乗る新興国家が誕生し、付近の国を攻撃し、

 暴れ回っているという報告があります。彼らは

 第二文明圏のもう一つの列強であるレイフォル

 とパガンダ王国を始めとするレイフォル属国群

 へ宣戦布告を通達しており、このまま行けば第

 二文明圏の大陸国家群連合の全国に対して同様

 の行動をとると、昨日諜報部から情報が入って

 います。尚彼らの武器については全くもって不

 明です」

 

会場に静かながら笑いが巻き起こる。文明圏から

外れたぽっと出の新興国家が三大文明圏五大列強

国の一角たるレイフォルとその属国群全てに対し

て宣戦布告しこのままなら第二文明圏の全てに対

しその愚行を行うという事実。

誰がどう見たって無謀以外の何物でもない。

 

「だがその第八帝国とやらはムーより遥か西に位

 置しているのでしょう?ムーから我が国の距離

 ですら、既に2万㎞以上離れている。なら今回

 の飛行物体がそれの所属だとは考え難いわ。何

 よりレイフォルらと戦争中ならわざわざこちら

 に足を伸ばしている余裕も必要性も無い」

 

カナタの正論で再び会議は振り出しに戻る。

結局さっぱり分からないのだ。

だが、味方であれば普通に接触すれば良いのに領

空侵犯という敵対行為に出た以上、敵である可能

性が高い。只でさえロウリア王国とのいざこざで

準有事体制だというのに頭の痛くなって来るこの

情報は首脳部を悩ませた。

 

その時、政治部会に外交部の若手幹部が、息を切

らして入り込んで来た。

 

「何事か!まさか、このタイミングでロウリアが

 動いたのか!?」

 

外務卿が声を張り上げる。

 

「報告します!!!」

 

外務卿のそれに勝るとも劣らぬ声で若手幹部が応

答し、報告を始める。

要約すると、下記の様な内容が判明した。

 

本日早朝、公国北方海上にて、全長250mクラス

の超大型船が現れた。付近を航行中だった第二艦

隊所属の軍船ピーマの艦長ミドリが臨検を行った

ところ、オスマン帝国と名乗る国の特使がおり、

敵対の意思は無いという旨を伝えて来たという。

又、捜査及び本人達の申し立てにより更に以下の

事項が新たに判明した。

 

◯オスマン帝国という国は、突如としてこの世界

 に転移して来た転移国家である。

 

◯旧世界との全てが断絶された為、哨戒機を用い

 て付近の地理的情報分析や哨戒を行っていた。

 その際、陸地がある事を確認した。

 尚哨戒活動の一環として貴国に進入し、領空を

 侵犯した事については深く謝罪すると共に、貴

 国の希望·規模によっては賠償も検討する。

 

◯クワ·トイネ公国と会談を行いたい。

 

あまりに突拍子もない話に、政治部会の誰もが信

じられない思いだった。

しかし、昨日マイハーク上空にあっさり進入され

たのは事実であり、250mという信じ難い大きさ

の船も飛行物体もそのオスマン帝国に所属する物

だとすればそれ程の国力があると辻褄が合う。

国ごと転移などとはムーの神話ぐらいで現実には

有り得ないとは思われるが、そのオスマン帝国と

いう国の国力は確かだと予想され、クワ·トイネ

政治部会はオスマン帝国特使と会う事にした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

其ノ弐 同盟と新技術と侵攻

追記)文章の改行ミスを修正しました。
(2019/12/28、7:52)


中央暦1639年7月22日午前 公都クワ·トイネ

 

オスマン帝国とクワ·トイネ公国が国交を締結し

てから半年が経とうとしていた。

この半年はクワ·トイネ公国と同じく国交を締結

したクイラ王国にとって建国以来最も変化した半

年となった。

 

オスマン帝国から要求された食糧買い付け量は年

間で約7000万tという途轍もない規模の受注だっ

たが、大地の神に祝福され家畜ですら美味い飯を

供する事が出来るクワ·トイネ公国は、この受注

に対し一部不可能であった部分もあったがほぼ全

てに答える事が出来た。

又クイラ王国は作物の育たない不毛の土地とされ

ていたが、オスマン帝国によると地下資源の宝庫

らしく、何でもオスマン帝国で急に採れなくなっ

たらしい鉱物や原油等の資源をオスマン帝国へと

輸出し始めていた。

 

一方オスマン帝国はこれらの対価としてインフラ

や各設備を輸出していた。クワ·トイネやクイラ

側に輸出物を沿岸部まで輸送する設備、特にクイ

ラ王国はそもそも原油とやらの掘削手段すら不十

分だった為、オスマン帝国はこれらの設備を提供

し、各種輸入品の対価とした。

 

大都市間を結ぶ、石畳を進化させた様な継ぎ目が

ない道路、更に鉄道と呼ばれる大規模流通システ

ムが構築されようとしていた。これが完成する事

で各地各国の流通が大幅に活性化し、今までの比

にならない発展を遂げるだろうという試算が経済

部から上がって来ている。

 

各種最新技術の提供も求めたが、どうやらオスマ

ン帝国では新たに「新世界技術流出防止法」と呼

ばれる法律が可決されたらしく、各最新技術の入

手は失敗に終わった。

 

それでもオスマン帝国からもたらされた技術は彼

らの生活水準を根底から一変させる程のものばか

りだった。

何時何処でも清潔な水を飲めるようになる水道技

術(元々水道技術は存在したが、真水ではとても飲

めるものではなかった)、夜でも昼の如く明るく出

来て、更に各種動力となる電気技術、手元を捻れ

ば簡単に火を起こし、かつ一瞬で温かいお湯を出

す事が出来るプロパンガス。この三つだけでも生

活は途轍もなく楽になる。まだ半年しか経ってい

ない為普及しているとまでは言えないが、それら

のサンプルを見た経済部の担当者は驚愕のあまり

放心状態になったという。

 

「国が途轍もなく豊かになる···」と。

 

「凄まじいものですね、オスマン帝国という国は

 ···。明らかに三大文明圏を超えています。もし

 かしたら、我が国も生活水準において、三大文

 明圏を超えられるかもしれませんね」

 

クワ·トイネ公国首相のカナタが秘書に語りかけ

る。

まだ見ぬ国の劇的発展を彼女は見据えていた。

 

「はい、それに、生活水準だけでなく、国として

 も超えられるかもしれません」

 

秘書がカナタの手元に「オスマン帝国軍主宰クワ

·トイネ軍·クイラ王国軍三軍合同演習計画書」と

書かれた報告書を置いた。

 

オスマン帝国はロウリア王国の圧力を受けるクワ

·トイネ公国とクイラ王国の立場を鑑み、2月上旬

からクワ·トイネ公国及びクイラ王国へ第一次世

界大戦∼戦間期時の武器·兵器を輸出を開始し、オ

スマン帝国軍の指導の下、クワ·トイネ公国軍と

クイラ王国軍は急速に近代化を進めていた。

 

陸軍は37式歩兵小銃を装備した歩兵連隊や32式軽

戦車を運用する第一戦車連隊が創設され、火薬の

概念が伝えられ弾薬等を生産する軍需工場の建設

が急ピッチで進んでいた。

 

海軍の旧帆船は順次標的船となり、39年式駆逐艦

や40年式巡洋戦艦、48年式海防艦(海軍に関して

はオスマン帝国海軍が本格的に形成されたのが第

二次世界大戦期だった為例外的にこの時代のもの

が輸出された)が輸出され、これらを建造する造船

所も急速に建設されていた。

 

空の覇者として君臨していたワイバーンは主力の

座を退く事になり、新たにオスマン帝国から輸出

された35式戦闘機やそのコピー機体のK-1戦闘機

「アトモット」が運用される事となった。

尚ワイバーンは対地支援用に育成される事になっ

たが当面は戦闘機の数が足りない為安全帯や専用

の鎧兜が輸出され、暫くの間は対空戦闘も行う事

になる。ただそれでも安全帯の存在によりこれま

で不可能だったマニューバ等の戦闘機の動きが行

える様になった為、戦闘力は数段上がっている。

 

ただこれらの兵器の多くはすぐ運用·戦力化でき

るものではなかった。当初輸出できたのは過去の

大戦時に作り過ぎて捨て切れずモスボール状態で

保存されていたもので全く数が足りず、僅か2週

間足らずで輸出可能な分は底をついてしまった。

オスマン帝国側も数十年前の武器をいきなり作れ

と言われても製造方法等が違い過ぎて苦戦し、安

定して輸出できる様になったのは1ヵ月後の事とな

った。

 

加えてクワ·トイネ·クイラ側にも重大な問題があ

った。何せ火薬の概念すら無かったのである。

兵士達に教える分には概念等知らずとも運用方法

さえ分かれば何とかなるのでさほど苦労する事は

なかったが、製造する為に概念から知っておかね

ばならない技術者達への教育は悪戦苦闘を極める

事となった。

 

だが、クワ·トイネやクイラの技術者達は新技術

へ貪欲に、それこそ寝食を惜しんでまで挑み、僅

か2ヵ月程でその多くを理解し、習得した。その

習得の早さはオスマン帝国側の教育担当者の想像

を絶し、技術者達の貪欲さ·熱心さに舌を巻いてい

たという。丁度その頃工場の建設も概ね完了し、

オスマン帝国から一部工場従業員を雇いつつ工場

は稼働を開始し、つい先週、アトモットの製造機

数は300機を突破し、造船所では初の国産甲鉄艦

である巡洋艦「イオノン」が進水を完了した。

 

「蛮国と蔑まれた辺境国家が列強をも凌駕する大

 国に成り上がる·····こう言っては何ですがと

 ても面白いですね、年甲斐もなくワクワクして

 しまいます」

 

「ええ、それに彼らが覇権主義でなかった事が助

 かります、彼らの技術と国力で覇を唱えられた

 らと思うとぞっとします···。彼らにかかれば

 神聖ミリシアル帝国も為す術もなく蹴散らされ

 てしまうでしょうから」

 

美しい夕陽が穀倉地帯広がるクワ·トイネの大地

へと沈んで行く。そして、沈む先にはロウリア王

国があった。

 

「現在の公国軍の近代化進捗度はおおよそ40%程

 といったところ·····

 ロウリアが何時来るか···」

 

夕陽の中カナタが呟いたか細い声は、迫り来る宵

闇に溶け込んでいった。

 

 

 

ロウリア王国 王都ジン·ハーク ハーク城

 

御前会議

 

美しい下弦の月が光り輝く夏の夜、ロウリア王国

が誇る王都ジン·ハークの王城ハーク城の一室で

ロデニウス大陸の命運を一変させる事になる王を

前にしての御前会議が行われていた。

 

ロウリア王国国王のハーク·ロウリア34世を筆頭

に、宰相マオス、王国防衛騎士団将軍パタジン、

三大将軍たるパンドール、ミミネル、スマーク、

王宮主席魔導士ヤミレイ、その他王国の重臣の殆

どが参加していた。

 

今回の侵攻作戦の総責任者のパタジンが自信満々

に作戦を説明し始める。

 

「陛下、これより作戦を説明致します。

 作戦に参加する総兵力は50万人で、クワ·トイ

 ネ公国及びクイラ王国へ進撃する兵力を40万、

 本国防衛用の兵力を10万に分割します。

 先ずクワ·トイネについては国境に程近い人口

 10万人のギムを強襲制圧し、占領します。

 尚、兵站については彼の国では何処もかしこも

 畑で家畜すら美味い飯が食える様な国の為、現

 地調達で対応致します。

 ギムを制圧した後は、クワ·トイネの城塞都市

 エジェイをある程度の兵力で包囲して放置し、

 ギムの東250㎞に位置する首都クワ·トイネを物

 量の差を生かし一気に制圧します。

 彼らの航空戦力は、我らのワイバーンが数·質

 共に上回っており問題なく撃滅可能である判断

 します。

 又、宣戦布告に平行して海から海将シャークン

 率いる4400隻の大艦隊がマイハーク港へ強襲上

 陸し、経済都市マイハークを占領します。

 クワ·トイネ公国とて、首都と経済都市を失っ

 た上城塞都市が機能しなくなれば降伏は必至。

 食糧供給をクワ·トイネに依存しているクイラ

 などは、クワ·トイネからの食糧を断てば、あ

 やつらの国土を踏む事もなく降伏すると思われ

 ます」

 

パタジンの説明を聞き終えたロウリア王は満足そ

うに頷き、野心的な笑みを浮かべた。

 

「うむ、見事な作戦であった。だが二国を同時に

 相手取って勝てるか?此度の戦、万が一にも敗

 北してはならぬ」

 

「問題ありませぬ、国王。

 所詮一国は農民、いや農業しか出来ぬ農奴の集

 まりであり、もう一国は不毛の地に住む貧民共

 です。おまけにどちらも惰弱な亜人の比率の高

 い国、我が国が負ける道理はありませぬ」

 

パタジンの確固たる自信にロウリア王は笑みを深

めた。

 

「成る程、では宰相よ、数ヶ月前接触して来たオ

 スマン帝国とやらはどうだ?あの国には亜人が

 いないという。絶滅させたというのなら有効な

 方法をご教授願いたいものだ」

 

オスマン帝国はクワ·トイネとの国交樹立の折に

ロウリア王国の存在を知りこちらにも国交を結ぼ

うと働きかけたが、ロウリア王国は仮想敵国のク

ワ·トイネ公国とクイラ王国と国交を結んだオス

マン帝国を敵対勢力と判断し、門前払いを続けて

いた。

 

「彼の国は自国の面積が約1800万㎢あり、最も近

 い場所からなら我が国から300㎞程に位置する

 と言っていましたが、あの方向にそんな広大な

 土地があったとは考えられず、常識的に考えれ

 ば最低でも1000㎞以上は離れていると思われ、

 軍事的に直接干渉されるとは思えません。

 又、彼の国の外交官は我が部隊のワイバーンを

 見て、「初めて見た」「架空の存在だと思って

 いた」と驚愕していたと聞きます。

 ぽっと出の竜騎士も知らぬ新興の蛮国。

 これが現在の情報から予想されるオスマン帝国

 とやらです。恐れる必要性はなく、クワ·トイネ

 とクイラを制圧した後、船団を向かわせ占領す

 る予定です」

 

ワイバーンの存在しない軍隊はその航空支援を受

けられない為弱い。無論空爆だけで陸軍が全滅す

る事はないが常に導力火炎弾の脅威に晒され続け

ていれば間違いなく精神力が持たない。

 

「そうか、そうか·····しかし、この余の代でロ

 デニウス大陸が統一され、忌まわしき亜人ども

 を根絶やしに出来ると思うと、心が踊るな」

 

「大王様、統一の暁には、例の約束もお忘れ無き

 よう、クックック」

 

真っ黒のローブを頭から被った男が慇懃無礼の手

本の様な口調と気持ちの悪い声音でロウリア王に

囁く。

 

「解っておるわ!!!」

 

王は怒気を孕んだ声で言い返す。

 

(ちっ、第三文明圏外の蛮国と馬鹿にしおって。ロ

 デニウス大陸を統一した後には、貴様らのフィ

 ルアデス大陸にも攻め込んでくれてやるわ)

 

「「「「「国王陛下、戦争許可のご指示を。陛下

     のたった一つの御指示で、ロデニウス

     大陸は統一され、亜人どもはこの大陸

     より姿を消します」」」」」

 

部下達の声で調子を取り戻したロウリア王は、再

び野心的な笑みを浮かべ、命令を下す。

 

「そうか···フフフ、フハハハ、ハーッハッハッ

 ハッ!!!今宵は余の人生で最良の日だ!余は

 クワ·トイネ公国とクイラ王国に対する戦争を

 許可する!亜人どもと彼奴らを匿う愚か者共を

 根絶やしにしてやるのだ!!!」

 

「「「「「オオーーーッ!!!」」」」」

 

王城は喧騒に包まれ、ロウリア王国は戦争へと向

かって行く。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーその決断が王国を崩壊に向かわせ

る事も知らずに。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

其ノ参 ワイバーンとアトモットと機関銃

ハヤクトウコウスルッテナンダッタンダロウナー(白目)

という訳でまた一ヶ月近く遅れてしまいました···
こんなクソ投稿速度ですが見てやんよという方は
どうぞよろしくお願い致します。





追記)改行をミスっていた部分を直しました。
(2019/12/26、0:59頃)←時間付けるの忘れてまし
た···


中央暦8月11日午前 ロウリア王国·クワ·トイネ

          公国国境付近

ロウリア王国東方征伐軍 本陣

 

クワ·トイネ公国外務部から幾度となく国境から

の撤兵要求が魔信による連絡があったが、その全

てを無視する。最早戦争は決定事項なのだ。

 

「明日、ギムを落とす」

 

Bクラス将軍パンドールは、東方征伐軍全15万の

内、ギムへと攻め込む先遣隊約7万の指揮権を委

ねられていた。歩兵5万、重装歩兵7千、騎兵6千

(内軽騎兵4千、重装騎兵2千)、特化兵(攻城兵器

や投射機等、特殊任務に従事する兵)2500、遊撃

兵3千、魔獣使い750、魔導士300、そして竜騎士

450である。

 

この先遣隊だけで既にクワ·トイネ公国軍の1.5倍

近い兵力だが、この部隊の何よりの力は、たった

1部隊(10騎)で歩兵1万を足止め出来る空の覇者た

るワイバーンを450騎も備えている事である。

 

本来ワイバーンは非常に高価な兵器であり、ロウ

リア王国の国力であれば、国の総力を以てかき集

めても200騎程度がせいぜいである。

 

しかし今回の対クワ·トイネ公国戦では、総勢12

00騎ものワイバーンが投入されている。

 

噂では第三文明圏·フィルアデス大陸の列強であ

るパーパルディア皇国から大規模な軍事物資の支

援があったとされている。最も、それが本当かど

うかは不明だが。

 

兎に角、先遣隊に450騎という明らかに過剰かつ

圧倒的な戦力を得て、パンドールは満足げに部

隊に目をやり、不気味な笑みを浮かべた。

 

「パンドール様!ギムでの亜人ども(戦利品)はどう致しま

 しょうか?」

 

副将のアデムが問いかける。彼はロウリア王国軍

の中でも指折りの冷酷な騎士であり、ロウリア王

国が近辺の小国を次々併合した時代から占領地で

の語るに耐えぬ程の残虐性で名を馳せていた。

 

周りの諸将の顔が引き攣る。この男の残虐性は味

方にすら例外ではなく、彼の非人道的命令に反対

した何人かの部下が軍令違反を大義名分に上意討

ちに遭った程だ。

 

「副将アデムよ、お前に任せる」

 

「了解致しました」

 

アデムは将軍に一礼すると、後ろを振り返り、直

ぐ様部下へ命じる。

 

「ギムでは、如何なる略奪も咎めない。好きなだ

 け奪い尽くせ。女も同様に嬲って良いが、使い

 終わったら必ず処分するよう徹底せよ。絶対に

 一人たりとて生きて帰すなと全軍に知らせよ」

 

「はっ!!!」

 

アデムの命を受けた部下は直ぐ様天幕を出ようと

する。それをアデムが呼び止めた。

 

「いや、待て!やはり100人程適当に逃がせ。そ

 いつらによって恐怖を伝染させるのだ。

 それと·····敵騎士団の家族がいた場合殺さず

 に私の元に連れて来る様に。私自らより残虐に

 処分する」

 

人を人とも思わぬ恐怖の命令。

このアデムの心は人のものではない。

そう思いながら部下は天幕を飛び出し、その命令

を一切の相違なく伝えた。

 

(何という命令だ···だが、ある意味幸運とも言え

 るな、容赦等ということを考えずに済む)

 

命令を耳にした一人の雑兵は顔色を変えぬよう努

力しつつ静かに去って行った。

彼がオスマン帝国の放った諜報部の構成員である

事に気付いた者は居なかった。

 

 

 

中央暦1639年8月11日午後

クワ·トイネ公国西部 国境より20㎞の町 ギム

 

「遂にロウリア軍が来るか!!!」

 

クワ·トイネ公国軍西方軍集団軍団長のモイジは

予測していた報告を受け、体を震わせた。

 

西方軍集団の兵力は、歩兵4500、弓兵1000、重

装歩兵100、騎兵1200(全て軽騎兵)、竜騎士60、

航空機兵(アトモットを運用)110、魔導士30。

 

その総勢7000。準有事態勢であり総兵力が5万の

クワ·トイネから考えれば中々の兵力。だが国境

に張り付くロウリア軍の総兵力はこちらの20倍を

超え、諜報員によって判明した先遣隊だけでも我

が軍の10倍の兵力を有している。

加えて、こちらからの一切の通信を、ロウリア側

は無視していた。

 

多少の兵力差は作戦次第で十分補う事が出来る。

寧ろ、そういう時こそ軍師の腕の見せ所だろう。

だが、今回は10倍20倍という圧倒的な差がある。

本来なら、今のモイジの震えは、そういった絶望

的な戦力差を前に敗北を予想した事による震えだ

っただろう。

 

しかし、モイジの震えはその様な類いのものでは

なかった。

()()()戦力の上で強敵と戦う事に対する武者震い

だ。

 

オスマン帝国と接触してから早半年。対ロウリア

の最前線であるギムは城塞都市エジェイを除けば

最も大規模な軍事改革を受けた都市と言える。

 

歩兵には次々と鉛玉を撃ち込む小銃が行き渡り、

ワイバーンには安全帯が備え付けられワイバーン

に代わる新たな空の覇者としてアトモットが配備

された。他にも重装歩兵には機関銃という小銃が

比べ物にならない程の速度で弾丸を放つ化け物が

与えられ、弓兵にもオスマン帝国製の強力な弓が

支給された。

 

又、ギム市民の万が一を考えての疎開も順調だ。

その時、モイジ達がいる部屋のドアがノックされ

て、「失礼します」という声が聞こえた。

 

「ようこそいらっしゃいました。ギム市民の疎開

 活動の支援、感謝します」

 

「いえ、非戦闘員の保護は重要な義務であり、兵

 力の少ない我々が現状行える最善の行動です。

 私としても、何とかロウリア軍の侵攻前に完了

 した事にほっとしています」

 

ロウリア王国のクワ·トイネ公国侵攻計画が発覚

した8月14日に、オスマン帝国は同盟国の危機の

救援を大義名分に陸軍及び海軍の援軍派遣を決定

しており、クワ·トイネ国内に有事に備え駐屯し

ていたIZM-カルパチアを有する第五師団属第六旅

団2500名が先行派遣されていた。

 

無論火器すら保有していないロウリア軍とオスマ

ン帝国軍では戦力には比べてはならない程の差が

あるが、圧倒的な物量戦を仕掛けられると死者が

出る可能性も考慮され、第六旅団の任務はギム市

民の疎開の補助、ギム前方の塹壕の設営、そして

西方軍集団の戦術的撤退時の殿軍とされた。

 

因みに現在第六旅団の旅団長のアリ·フアト·ジェ

バソンはかつての初代オスマン帝国の全盛期であ

る16世紀中盤の軍服を着込んでいる。

これは少し前に行われた三軍合同の演習の際オス

マン帝国の軍服の人気が芳しくなく、時代を合わ

せた方がクワ·トイネやクイラの民達に親近感が

湧くのではと考えられた(実際は初めて見た迷彩服

の異様さが恐怖·畏怖を買っていただけで別に問

題ではなかったが)事が理由である。

尚、これによってオスマン帝国軍人内で旧軍服ブ

ームが起こって平時やプライベートで旧軍服を着

る様になる者がいたのは別の話。

 

ジェバソンの服装を見たモイジが思う。

(我が国を容易く滅ぼせる国力を持ちながら、それ

 を驕らずこちらを配慮して下さる器の大きさ。

 これが一流国というものか···!)

 

モイジとジェバソンの間で対ロウリア軍の作戦が

練られていく。

 

◯戦闘はギム前方数キロ地点に張り巡らされた塹

 壕地帯を主戦場に戦う。

 

◯翌日早朝にギム西方国境より魔信が入り次第ワ

 イバーン50騎とアトモット80機を対空戦闘及び

 制空権確保を目的とする航空部隊を出撃させ、

 魔信がなかった場合は偵察用のワイバーン5騎

 とアトモット10機の索敵が完了次第航空部隊出

 撃とする。

 

◯重装歩兵は25式軽機関銃(マドセン機関銃の改

 造品)を装備し、塹壕地帯から前方500mに掘ら

 れた坂を登り切った所で射撃、400m近くまで

 迫ったら37式歩兵小銃を装備した歩兵も射撃を

 開始する。弓兵も同様に射程に合わせ射撃。

 

◯敵の攻撃で味方に必要以上の被害が出ると予想

 された場合、敵の攻勢が止んだ隙を見計らい、

 第六旅団を殿軍としてエジェイまで退却する。

 

7000対70000。それも敵は空の覇者たるワイバー

ンを450騎も揃えている。

普通なら間違いなく勝てない戦争だろう。

だが、必ず勝てるはずだ。

先日の合同演習にてオスマン帝国軍の圧倒的な力

と、クワ·トイネ軍とクイラ軍の飛躍的な戦力上

昇を確信していたモイジは恐れを振り払い、明日

のロウリア軍来襲の報を待った。

 

 

 

中央暦1639年8月12日早朝 ギム西方の国境上空

 

ロウリア王国東方討伐軍先遣隊 飛竜第一攻撃隊

総勢90騎

 

飛竜隊を統率する竜騎士団長アルデバランは絶対

的な自信を持ってクワ·トイネ領空を突破した。

 

地上から突如として赤い煙が上がったのを見た部

下数名が導力火炎弾を発射し、煙近くの小さな小

屋が炎に包まれ崩落する。中にいたと思われる者

は即死だろうが何も思う事はない。既に戦争は始

まり、愚かしき亜人がこの大陸に住まう事が許さ

れる時代は終わりを告げたのだ。

 

「団長!クワ·トイネの飛竜隊を発見しました!」

 

部下の報告とほぼ同時に彼も飛竜隊とおぼしき多

数の点を視界に捕らえた。

 

(ざっと70···いや80か?随分な数を揃えたものだ

 な。だが言い換えればこの一戦でクワ·トイネ

 のワイバーンを一掃する好機でもある)

 

「導力火炎弾による空間制圧射撃を実施する」

 

彼は一気にケリをつけようと決断した。

90騎ものワイバーンが一斉に導力火炎弾の準備に

掛かる。

 

面内側の導力火炎弾は回転による推進力で通常よ

り射程が伸びる。高々数十メートル、だがその差

はクワ·トイネの飛竜隊の射撃の機先を制し戦力

を大幅に削ぐ事が出来る。

 

「発射5秒前、4、3、2、1、発射!!!」

 

全部で90個の導力火炎弾がクワ·トイネの飛竜隊

を目掛けて飛翔する。彼はクワ·トイネのワイバ

ーンがバタバタと墜ちていく様を幻想する。

 

だが、彼らはその直後に二つの誤算を悟った。

 

一つ目は彼らが導力火炎弾の制圧射撃に速やかに

対応しこれをかわした事。

 

そして二つ目は···

 

「だ、団長!奴等、わ、ワイバーンに乗っていま

 せん!」

 

クワ·トイネの飛竜隊と思っていた連中が、鉄製

のトンボの様な奇妙な物体に乗っていた事だ。

 

(な、何なんだあれは!?ワイバーンではない!

 しかも導力火炎弾の制圧射撃をあっさりとかわ

 した!?明らかにワイバーンより速い!)

 

動揺しつつも彼は次の指示を出そうとした。

だが、それは僅かに遅きに失した。

鉄竜の先頭にあり、先程の制圧射撃を急降下でか

わした鉄竜が二対の翼の下部分を赤く光らせた。

 

(何だ!?奴は何をし)

 

それが何なのかを知る事もなく、彼は良く分から

ない何かから発射された良く分からない何かによ

ってこの世を去った。

 

 

 

「よし!!!いける、いけるぞ!!!」

 

クワ·トイネ公国軍第三航空隊所属としてアトモ

ットのパイロットとなったマールパティマは自信

を確信に変え、一人叫んだ。

 

数分前にロウリア軍のワイバーンの空間制圧射撃

によって始まったこの空戦は今やクワ·トイネ軍

の一方的優勢となっていた。

 

アトモットの装備された12.7㎜機関銃はワイバー

ンの強固な鱗を容易く砕きロウリアの飛竜を次々

と撃墜していた。

 

無論ロウリアの飛竜隊も反撃するが単発の導力火

炎弾で尚且つ150㎞/h以上の速度差が命中を許さ

ない。たまにかする機体もあるが、金属製で対導

力火炎弾の特殊加工を施した翼がいつまでも燃え

続ける事はなく被撃墜機は一機たりとも出ていな

い。

 

アトモットに遅れる形で上空から飛来した30騎の

ワイバーン部隊も順調だ。アトモット部隊の機銃

掃射から逃れようと散り散りになったロウリアの

ワイバーンを導力火炎弾で狙い撃ち、生き残りを

6騎一組で殲滅する。クワ·トイネ軍は練度でロウ

リア軍に劣るが、機先を制し物量差で押し潰すク

ワ·トイネ軍はほぼ被害のないままロウリアの飛

竜隊を各個撃破していく。

 

空戦が勃発して十数分後、ロウリアの飛竜隊全

90騎が撃墜された。対するクワ·トイネ軍の被害

はアトモットの要修理機が7機とワイバーンの損

失が8騎(搭乗員は脱出し負傷者合計11名に留ま

った)の大勝であった。

 

「ギム司令部へ報告!我が空軍ロウリア軍の飛竜

 隊と交戦しこれを全騎撃墜!制空権の確保を認

 める!繰り返す!制空権の確保を認める!」

 

 

 

「航空部隊がやってくれたか!」

 

モイジが歓喜の声を上げる。

彼とてアトモットの性能は頭で理解していたが、

それでも圧倒的な戦力を擁するロウリア軍に立ち

向かう事に不安がない訳ではなかった。

 

いける、勝てる!

 

彼は己の迸る感情のまま、兵士達を激励する。

 

「栄光あるクワ·トイネ公国軍の諸君!遂にロウ

 リア軍が我らがギムに魔の手を向けて来た!敵

 は我々の十倍の兵力であり、諸君らも経験した

 事のない大合戦となるだろう。だが我らに先駆

 け、勇敢なる航空部隊は90騎ものワイバーンを

 撃破する事に成功した!我々も続け!ロウリア

 軍の鼻っ柱をへし折ってやれ!!!」

 

「「「「「「「オオーーーーーーーッッ

       !!!!!」」」」」」」

 

「全軍、前へ!」

 

クワ·トイネ軍は鬨の声を上げ、ロウリア軍との

決戦に臨む。

 

 

 

「何イイイッ!!!???ワイバーンが全騎撃墜

 されたダトオオオッ!?」

 

第一攻撃隊全騎撃墜の報を聞いたアデムが冷や汗

をかきつつ吼える。

伝令員が震えた声で詳細を報告した。

 

「だ、第一攻撃隊はギム前方上空にてクワ·トイ

 ネ軍のワイバーンを確認し、これに空間制圧射

 撃を実施したものの、クワ·トイネ軍は鉄製の

 トンボの如き飛行物体80機とワイバーン30騎で

 これに応戦。飛行物体の飛行速度はワイバーン

 を大幅に上回っていたらしく、波状攻撃をかけ

 られ、全滅した模様です」

 

その時、事態を察したパンドールがアデムの元に

訪れた。

 

「アデム君、第一攻撃隊が撃破された様だな」

 

「はっ、それについてですがパンドール様、その

 原因と思われる飛行物体について、私に少々気

 になる所が」

 

パンドールは「君もかね、アデム君」と驚くと、

再び口を開いた。

 

「飛行物体と呼んでいたが、全滅前の魔信による

 と、その物体は鉄の翼を持ちその翼から橙色の

 光と聞き慣れない音が出た次の瞬間に遥か前方

 のワイバーンが墜ちて行ったと言っていた。こ

 れが私が以前耳にした列強国のムーが運用する

 飛行機械の特徴と一致するのだ。これを考慮す

 るともしかするとクワ·トイネは·····ムーかそ

 の属国の支援を受けているのかもしれない」

 

アデムの冷や汗の量が更に増える。もし本当にク

ワ·トイネの連中がムーの支援を受けているとし

たらクワ·トイネの討伐難易度は想定を大幅に上

回る事になる。飛行機械を輸入していたとすれば

歩兵装備も輸入していない訳がないだろう。今の

戦力で勝てるか?援軍を待つべきではないか?そ

んな思いがアデムの胸の内を去来する。

 

だが、しかし。

 

「パンドール様、攻撃しましょう。いくらクワ·

 トイネ軍が装備で我々に勝ったところで兵力は

 たかが10分の1。我らの物量で押してしまえば

 少なからず損害は出ますが勝てるでしょう。そ

 れに列強の支援を受けた軍を撃破したと喧伝す

 れば我が軍の威信は飛躍的に高まります」

 

無論理屈もあったが、何より、目の前に殺せる

亜人達がいる以上、アデムにこの機を逃すとい

う選択はなかった。

 

「分かった。君に任せると言った以上、今回のギ

 ム攻撃の指揮権は君にある。君の思う様にやり

 たまえ」

 

アデムは「はっ!!!」とパンドールへ一礼する

と、歩兵部隊へ指示を飛ばす。

 

「ロウリアの諸君!クワ·トイネの亜人どもはあ

 ろう事か文明国の支援を受けている。だが我ら

 の物量をもってすれば恐れるに足らず!愚かし

 き亜人どもに絶望と死をくれてやれ!!!」

 

「「「「「ウオオオオオォォォォォォォ

     !!!!!」」」」」

 

ロウリア軍7万人が一体の巨獣の如く、一斉に進

撃を開始した。

 

後世において、ロデニウス大陸、ひいてはこの世

界初の現代戦闘として歴史を変えた一戦と評され

た「第一次ギム攻防戦」開幕の瞬間であった。

 

 

 

「「「突撃ィィィ!!!」」」

 

ロウリア東方征伐軍第一歩兵攻撃隊3万が全速力

で突撃する。敵兵力は詳細こそ不明だが恐らく1

万もいないだろう、6年に渡って文明圏式の訓練

を施された我が軍が負ける筈がない!

 

「ん、何だ·····?塹壕?にしては随分浅いが

 ···」

 

見渡す限り半円形に掘られた塹壕と呼ぶには浅過

ぎる穴にロウリアの歩兵が首を傾げる。何の為に

クワ·トイネ軍はこんなものを?

 

(まるで意図が読めない···だが飛竜隊を全滅さ

 せて来た相手だ、警戒するに越した事はない)

 

そう思いながら斜面を登り切った瞬間、彼らの戦

争の常識は音を立てて崩れ落ちた。

 

一瞬の出来事だった。

 

斜面を登った500m先にクワ·トイネ軍がやや深い

塹壕に身を隠し、鉄製とおぼしき妙な何かを向け

たと思うと、聞き慣れない轟音が響き、自分の周

りの兵が次々と斃れていったのだ。

 

「な、何が起こって」

 

そして彼が口に出来た言葉もそこまでだった。

 

「ぎゃっ!!!」

「が·······!」

「ぐわっ!?」

「い···痛い!助けてくれ!!!たす···」

 

蜂の巣にされ鋭い悲鳴を上げ死ぬ者。眉間や心臓

を撃たれ声も出せず即死する者。四肢を撃ち抜か

れ死への恐怖に絶叫しながら死んでいく者。ただ

死だけが平等にロウリア軍へと襲いかかる。

 

それでもロウリア軍は突撃続行を選んだ。

―これ程の攻撃魔法が長時間展開し続けられる訳

 がない、魔力が尽きたところを反撃すれば必ず

 勝てる―と。

 

しかし、400m程まで接近したところでロウリア

軍はある勘違いに気付いた、いや気付かされた。

 

それがどうしようもない程甘い考えだった事に。

 

「歩兵部隊、一斉に射撃開始!!!ギムを、クワ

 ·トイネ公国を護るのだ!!!」

 

攻撃魔法は一向に止まず、寧ろ更に増加した。

足の遅い重装歩兵が多かった事も災いし、当初は

3万を数えた第一歩兵攻撃隊は今や2万強にまで数

を減らしていた。

 

それでもまだだ、あと少しとロウリア軍は無謀と

半分理解しつつ進撃する。

何せ指揮官があの(· ·)アデムなのだ。下手に撤退など

しようものならどのような処罰を受けるか分かっ

たものではない。その恐怖と亜人への優越感やプ

ライドが無謀な攻撃を続けさせた。

 

だが、頑なに続けていたロウリア軍の突撃は200

m程まで接近したところで起こった二つの攻撃で

唐突に異常を来たした。

 

一つはクワ·トイネ軍のワイバーン部隊に加え、

自軍のワイバーン部隊を全滅させたという鉄竜

が姿を現した事。

そしてもう一つは、クワ·トイネ軍の矢がこの距

離でロウリア軍に襲いかかって来た事だ。

 

空の覇者たるワイバーンを90騎も墜とした鉄竜も

さる事ながら、200m先から届く矢はロウリア軍

に決定的な衝撃を与えた。

 

自分達の知らない謎の攻撃であれば、文明国の力

と断じる事で認めずに済んだ。

だが、クワ·トイネ軍は弓矢の様な同格の技術に

おいても自分達を圧倒しているという事実は、ロ

ウリア軍に残っていた僅かな自信を打ち砕くには

十分なものだった。

 

何処からか歩兵の一人がクワ·トイネ軍に背を向

けて逃亡を図る。

 

それが波及し、ロウリア軍は遂に壊走状態に陥っ

た。

 

元が大軍であるが故に、一度崩れるとその混乱ぶ

りは酷いものになった。励まし合いつつ前進して

いた歩兵達が我先にと罵り合い、押し退け合いつ

つ逃げようとする。

 

だが、ロウリア軍の非人道的命令を知り憤激し、

一度戦闘を開始したこの時のクワ·トイネ軍にロ

ウリア軍への“情け”等というものは存在しない。

これ以上のロウリア軍の前進がない事を確信した

モイジは塹壕を打って出ての追撃を決定し、軽騎

兵隊の突撃に銃の着剣を済ませた歩兵が続く。

 

これまでの強引な突撃で騎兵の殆どが死傷した上

混乱状態に陥っていたロウリア軍は一気に距離を

詰められ、ろくに迎撃体制も整わないままクワ·

トイネ軍の猛攻を受け、瞬く間に死傷者の数を膨

れ上がらせた。

 

ロウリア軍歩兵の主兵装の長槍は距離を詰められ

れば小回りの利かない棒でしかなく、ロウリアの

歩兵は次々とクワ·トイネ歩兵の銃剣の刺突を受

けて屍を晒して行った。

 

騎兵の戦いは更に一方的だ。

対抗出来る騎兵が死に絶えた所を襲われたロウリ

ア軍はまともな抵抗も出来ずに騎兵隊の一閃に吹

き飛ばされていく。

尚この時のクワ·トイネ軍の騎兵達は桁外れの戦

果を叩き出し、50人切りを達成した者が数名出た

他、中には100人切りをこなした猛者もいたと言

われる。

 

無論ロウリア軍とて全くの無抵抗ではなく、反撃

を受け戦死した者もいた。

後にクワ·トイネ軍にて装甲車師団が創設された

際に、「クワ·トイネを護りし英雄達への供養と

する」として、この第一次ギム攻防戦にて戦死し

た騎兵や乗馬の名が引用される事となるが、それ

はまた別の話。

 

銃剣と長槍が交錯し、無数の絶叫が戦場を木霊し

た。だが、終わらない物語がない様に、終わらな

い戦闘もない。

 

中央暦1639年8月12日午後5:50、陽も深く沈み行

く頃、動くロウリア軍の兵の姿はなく、そこでは

クワ·トイネの兵達の鬨の声が鳴り響いた。

 

ロウリア王国東方征伐軍第一攻撃隊3万の内、本

陣へと帰還出来た兵は僅か7千。残りの2万3千の

全員が戦死·降伏·逃亡の何れかの道を辿った。

一方でクワ·トイネ軍の損失は竜騎士3名の出血多

量による衰弱死と追撃戦での死者37名、負傷者

100名足らずに収まった。

 

こうして第一次ギム攻防戦はクワ·トイネ公国軍

の大勝利に終わった。

 

 

 

「モイジ閣下、この度は戦勝おめでとうござい

 ます」

 

「いえいえ、この度の勝利はオスマンのお力添え

 あってのことです、貴国の軍事改革無しには、

 我が軍はロウリア軍に勝利はおろか一矢を報い

 る事すら出来なかった」

 

「いいえ、我が国の軍事改革も使いこなせてこそ

 のものです、貴方方の銃や航空機への順応能力

 は我々の予想を遥かに超えていた···ロウリア

 軍もこれ程の損害を受ければ現有戦力では今回

 程の軍事行動は取れないでしょう」

 

「では、予定通り、ですかな?」

 

「はい、退路はお任せを。クワ·トイネ軍の絶対

 的な安全を保証しましょう、又我らに朗報があ

 ります」

 

「朗報?それは一体···」

 

「帝国議会にて派遣が決定されていた第一機甲師

 団と第十八歩兵師団がエジェイへと到着間近と

 の事です」

 

「おお、それは心強い!彼らの力は私達も演習で

 特に圧倒的だったと感じました。必ずやギムを

 取り戻せるでしょう」

 

「エジェイに到着した後、作戦立案し直ちに実行

 の用意ありとの事です。モイジ閣下も兵達に伝

 えておいて下さい、「帰郷の準備をしろ」と」

 

その後、クワ·トイネ公国西方軍集団は戦勝祝い

もそこそこに城塞都市エジェイへ向け日付の変わ

る直前にギムを粛々と出発。日の昇る頃には殿軍

の第六旅団含む全ての者がギムを後にしていた。

 

 

 

中央暦1639年8月12日深夜

ロウリア王国東方征伐軍本陣

 

「クソがあああああああ!!!!!」

 

死人の様に顔を青ざめさせ平伏する第一攻撃隊隊

長の腹を蹴り上げつつアデムが激昂する。その激

情のまま隊長を切り捨てようとするアデムを必死

に部下が宥めていた。

 

「何故止めるのですかぁ?」

 

「アデム様、落ち着きなさいませ!聞くところに

 よると、クワ·トイネ軍はやはり文明国の兵器

 を運用していた模様です。今回の戦闘では多く

 の将が戦死しております、これ以上将を失えば

 幾ら兵がいてもそれを束ねる者がおらず、我ら

 の強みである兵力差を生かす事が不可能となり

 ます、今一度ご再考を!」

 

「ぬううう·····!!!ならば貴様ぁ!一体奴等

 はどのように我が軍と戦った!!貴重な兵を2

 万以上消費したのだ、分からなかったとは言わ

 さんぞぉ!!!」

 

元々青い顔をしていた隊長は恐怖で更に青ざめつ

つも顔を起こすと、ぽつぽつと語り始めた。

 

「て、敵は自陣に塹壕を掘っており、前方500m

 地点にも浅い塹壕を半円形に掘っていました。

 そしてその塹壕を登り切った所でクワ·トイネ

 軍は鉄の装置の様なもので我々に遠距離攻撃を

 仕掛けて来ました。正体については当初不明で

 したが、私の記憶から察するに、ムー国での研

 修時に目にした機関銃かと思われます。又、敵

 は一般歩兵にも銃を行き渡らせていた様で、ワ

 イバーンの導力火炎弾による対地攻撃と重ねて

 この時点で我が軍は1万近い損害を受けていま

 した。そして200m地点にて、敵軍の航空戦力

 に我が方のワイバーン部隊を撃墜したと思われ

 る鉄竜が現れると同時に、その距離で矢が降っ

 て来たのです!ここで我が軍は壊走し、追撃を

 受け」

 

「黙りなさい」

 

アデムが言い終わらぬ内に隊長を切り捨てる。部

下が恐怖で居竦むが気にもせず口を開く。

 

「何を驚いているのですかぁ?亜人どもが7000も

 の文明国の兵器を揃えている?200mも飛ぶ弓

 矢を所持しているぅ?あり得ません。頭のイカ

 れた指揮官など不要。···違いますかぁ?」

 

部下達は「しかし撃退されているのは事実ですか

らねぇ、どのようにして動くべきか···」と思案

するアデムにおずおずと献策する。

 

「あ、アデム様、再びギムにワイバーンで偵察を

 行っては如何でしょうか?それも300騎を動員

 してです。幾ら敵の航空戦力が強かろうと物量

 では我々に確実に利があります。3万の軍で大敗

 した以上、我々も全軍を以てして敵軍にあたる

 必要があるかと」

 

「ほう·····成る程、では翌日の明朝、300騎を

 ギムに差し向けましょう。今度こそ確実に、徹

 底的に亜人どもを殺す為にねぇ·····!!!」

 

何故この方はここまで亜人を敵視するのだろうと

思いつつ、部下達は翌日の作戦の準備に入った。




K-1戦闘機「アトモット」
最高速度:380㎞/h
到達限界高度:11100m
航続距離:880m
武装:12.7㎜機関銃×2
   7.7㎜旋回機銃×1

オスマン帝国がクワ·トイネ公国に輸出した35式
戦闘機をベースにクワ·トイネ公国軍新兵器開発
部が初めて開発した兵器。
7.7㎜機銃を12.7㎜機関銃に変更した事とエンジン
を生産性重視の物に変更した結果、最高速度の低
下と引き換えに高い生産性とワイバーンの鱗をも
容易く砕く高火力を手に入れた。

現在オスマン帝国の援助を受けつつ500機以上生
産されており、又オスマン帝国の資料を元に単葉
機の開発に乗り出している。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

其ノ四 海戦と対空戦闘とCIWS

まーた1ヶ月以上かかってるってウッソだろぉ
お前ぇ!?(小並感)



てな訳で又1ヶ月以上かかってしまいました···
大体これ位の頻度での投稿になると思われますの
でひつこい様ですがそれでもおkという方はお楽
しみ頂ければと思います。



追記)改行のミス部分を修正しました。
   せめてミスがない様にしたい···
(2019/12/26、1:03)

追記2)文章の細かい部分を変更しました。
    恐らく大きな影響はないと思います。
(2019/12/27、11:27)


中央暦1639年8月27日 マイハーク港

 

ロウリア王国海軍が4000隻以上の大艦隊を出向さ

せた旨を諜報員から伝えられ、ここマイハーク港

を本拠地とする新生クワ·トイネ海軍第一艦隊は

抜錨·出撃した。

 

この第一艦隊はオスマン帝国の支援の下に完成し

た、クワ·トイネ海軍で初めて大砲による砲撃を

主要攻撃手段とし、動力を用いた航行を可能とし

た軍艦を擁する艦隊である。

 

軽巡洋艦7隻、駆逐艦18隻の計25隻(内軽巡1隻、

駆逐艦6隻が自国建造)と数こそ以前の半数だがそ

の戦力は以前の数千倍にまで跳ね上がっているだ

ろう。

 

艦隊の軽巡唯一の自国建造艦にして第一艦隊旗艦

であるイオノンの艦橋でクワ·トイネ艦隊司令官

のパンカーレは艦隊を見やりつつ呟く。

 

「壮観な光景だな」

 

「ロウリア海軍は4000隻を超える大艦隊との事。

 我が艦隊も物量で押し破られるかもしれませ

 ん」

 

「幸い敵海軍に火砲は存在しない故に弾薬は限界

 まで積めるからな、一隻でも多く沈めるぞ。そ

 う言えばオスマン帝国海軍の支援艦隊との合流

 が近い筈だ、見張員に注視するよう伝えろ」

 

暫くしてパンカーレの下に報告が届く。

 

「艦長、右舷1000mにて艦影見ゆ!オスマン帝国

 海軍です!!!」

 

「陣容を報告しろ」

 

「巡洋艦3隻、駆逐艦7隻、計10隻です!」

 

「オスマン帝国海軍より通信です!」

 

「こちらオスマン帝国海軍クワ·トイネ海軍支援

 艦隊司令、ホルティ·ミハーイ。オスマン帝国

 より参戦する。ワイバーンとの対空戦闘は任

 せて貰いたい」

 

「援軍を感謝する。我が艦隊はロウリア艦隊を攻

 撃する!」

 

「了解した。パンカーレ殿、この戦、勝ちましょ

 うぞ!」

 

「無論。全艦機関全速!目標はロウリア艦隊。繰

 り返す、目標はロウリア艦隊!!!」

 

ロウリア王国東方征伐海軍  海将シャークン

 

「いい、実にいい景色だ。美しい」

 

大海原を幾つもの帆船がマストに力強くも爽やか

な潮風を受け一本の巨大な銛の如く進む。その総

数4400隻が大量の水夫と揚陸部隊を乗せ、クワ·

トイネ公国の経済都市のマイハークへ向かってい

た。見渡す限り船ばかりで海面すら見えやしない

程だ。

 

シャークンは今回の海戦に圧勝する確信を持って

いた。6年もの準備期間をかけ、パーパルディア

皇国からの軍事援助を受けて完成したこの大艦隊

を防ぐ手立てはこのロデニウス大陸には存在しな

い。それどころか、パーパルディア皇国すら制圧

出来そうな気さえする。

 

(いや、パーパルディア皇国には砲艦という船ごと

 破壊可能な兵器があるらしいな·····)

 

彼は一瞬燃え上がった野心の炎を直ぐ様理性で打

ち消す。第三文明圈の列強国に今挑むのはやはり

リスクが高すぎる。

 

彼が東の海を見据えると同時に、見張員の報告が

入る。

 

「前方にて敵船団発見、船数25隻!」

 

「25隻だと?随分少ないな···二手に分けている

 のか?一応警戒を怠るなと伝えろ」

 

向かって来た船は右舷側で1㎞程の距離を置きつ

つ並走を開始した。

 

「·····大きいな」

 

シャークンは一人呟く。

この4400隻の大艦隊はその殆どが全長50mもない

小舟で占められており、最も大きい船で100mをギ

リギリ超える程度だ。

それに引き換え、あの船団は数の多い小さめの船

ですら100mを優に超え、大きめの船に至っては

間違いなく150mを超えているだろう。

加えて、マストもなく、オールも見えないのに我

らの船達より確実に速いという事も彼を驚かせて

いた。

 

「ロウリア艦隊と思われし艦隊に告ぐ!この先は

 クワ·トイネ公国の領海であり、即時撤退を要

 求する!繰り返す―――」

 

こちらから1㎞は離れているにも関わらず、クワ·

トイネの船団はまるで目の前で叫んでいる様な大

音量でこちらに警告を送っている。

 

シャークンは暫く迷った。だが、幾ら敵の船が強

かろうと所詮25隻。圧倒的な物量差で押し潰して

しまえば負ける筈がないと結論を出したシャーク

ンは攻撃を命令した。

 

「大きいな···」

ロウリア海軍の帆船4400隻が次々と旋回してクワ

·トイネの船団との距離を詰めにかかる。

軍船長の指示で船員達は油の壷に矢を浸け、松明

で火を灯し弓を構えた。

 

敵船との距離が200mを切った。

「放てェ!!!」

近くにいた軍船数十隻から火矢が放物線を描いて

敵船に殺到する。その場のロウリア海軍の全員が

敵船に火矢が突き刺さり炎上する様を幻想した。

―――そうなる筈だった。

 

カカンッカンカンッ!

クワ·トイネ海軍の駆逐艦に降り注いで来た火矢

は外壁に命中すると無機質な金属音を響かせ、塗

られた塗料を傷付ける。これを受けてクワ·トイ

ネ海軍の艦隊が一斉に遠ざかり、約5㎞程距離を

置きつつ旋回した。

 

「ヒャッハハハハハァ!!!逃げやがった!」

水夫達が距離を取るクワ·トイネ船団を馬鹿にし

て聞こえないと知ってか知らずか野次を放つ。

一方でシャークンや攻撃を仕掛けた軍船の船長は

敵船が全くの無傷である事と船足があまりに速い

事を再確認した事で驚愕と不安で胸中が満たされ

ていた。

 

「船が燃えぬ···それにあの金属音、やはり船体

 は金属か?どうやって浮かんでいるのだ·····

 しかしまあ幾ら大きかろうと25隻ではこちらの

 勝ちは揺るぎまい」

 

 

 

クワ·トイネ海軍の駆逐艦が攻撃を受けた事で、

クワ·トイネ海軍も反撃を開始する。

「第二駆逐隊所属の駆逐艦8号艦が攻撃を受けた

 為、攻撃を開始する。尚今回は敵船が密集して

 いる為、初撃から斉射する。全艦主砲用意!」

 

駆逐艦の12㎝単装砲が、軽巡洋艦の14㎝単装砲が

一斉にロウリア艦隊に砲口を向ける。

 

「全艦主砲、一斉射!!!テーーーーーッ!」

 

クワ·トイネ海軍第一艦隊25隻が備える全約140門

が轟音と共に一撃を打ち込んだ。

 

 

 

目の良いシャークンは敵船の変化に気付いた。

敵船25隻の全てに備わっていた黒い巨大な筒の様

なものが少しずつこちらを向いて来ていた。

 

次の瞬間、その筒から膨大な量の黒煙が吐き出さ

れた。

 

「何だ?勝手に燃え始めでもしたのか···?」

 

シャークンがそう呟いた刹那、前方を航行してい

た軍船を“何か”が襲い、軍船が木端微塵に砕け散

った。それも次々と、何回も。

 

爆散した軍船の木片や部品、乗っていた船員だっ

たとおぼしきものがあちこちで舞い上がり周囲の

味方の船上に降り注ぐ。少し遅れて、敵船の方角

から何かが爆ぜる様な轟音が聞こえた。

 

経験した事のない攻撃に無事だった軍船の船員全

員が「何が起こった!?」「敵の攻撃かよ!?」

「あんな遠くから当てやがるってのか!?」と狼

狽える。

 

「不味いな···ただ、ワイバーンの届く距離だっ

 たのは不幸中の幸いと言うべきか。通信士!司

 令部に航空支援を要請しろ!『敵主力船団と交

 戦中』とな」

 

 

 

ロウリア王国 王都防衛騎士団 総司令部

 

「ロウリア王国東方征伐海軍より魔信です。『現

 在敵主力船団とおぼしき船団と交戦中。敵船は

 巨大かつ高威力の魔導兵器らしき兵器を搭載。

 既に敵の攻撃によって当艦隊の軍船十数隻が撃

 沈されており、反撃の為に可及的速やかな航空

 支援を要請する』·····との事です」

 

「ほう、敵主力か·····よろしい、500騎全騎を

 差し向けよ」

 

報告を聞いたパタジンは暫し考え込むと魔力通信

士へ口元を歪めつつ指示を出した。

 

「ご、500騎ですか?ですがパタジン様、既に先

 遣隊に450騎が分けられており、王都防衛用の

 ワイバーンが250騎と決定されている以上、本

 隊から攻撃用ワイバーンがいなくなりますが

 ···それに先日、先遣隊からもワイバーンの補

 充要請が来ています」

 

「聞こえなかったか?全騎だ。敵主力なら大戦果

 となろう。先遣隊には帰還した者で傷の浅い者

 を見繕ってやれば良い。戦力の逐次投入は下策

 だ。·····なに、所詮奴等に王都までたどり着

 く戦力などあるわけなかろう」

 

「···了解しました。飛竜隊に告ぐ。マイハーク

 西方の東方征伐海軍より入電。東方征伐海軍は

 敵主力と交戦中、待機騎は全騎発進し海軍の支

 援に当たれ!繰り返す―――」

 

出番を今か今かと待ちわびていた竜騎士達が歓声

を上げた。司令部に待機していたワイバーン500

騎が緊急発進し次々と大空で風を掴んで行く。

 

 

 

マイハーク北方海上 オスマン帝国海軍支援艦隊

旗艦 ミサイル巡洋艦トラブゾン

 

トラブゾンのCICは既に『それ』の姿を捉えてい

た。

 

「対空レーダーに感あり。ワイバーンと思われし

 飛行物体約500、当艦隊に接近中」

 

500という数に誰かが息を飲んでいた。

しかしオスマン帝国が誇る大海の猛者としての矜

持が次の瞬間には臨戦態勢を整えていた。

 

「出番だな·····クワ·トイネ第一艦隊へ通信!ワ

 イバーンを探知。退避されたし」

 

 

 

「オスマン帝国支援艦隊から通信です。当方ワイ

 バーンを探知、退避されたしとの事です」

 

「成程、了解した。各艦退避開始せよ」

 

 

 

「離れて行く?」

 

傍に立つ部下の一人がそう呟いたのをシャークン

は聞いた。

 

敵船団の良く分からない攻撃によってロウリア艦

隊は一時間余りでその数を3500隻強にまで減らし

ていた。

 

しかし味方ワイバーン部隊の到着も後僅かで、さ

あ反撃だという所でこの退避である。

 

(もしかしたらワイバーン部隊の来襲を掴んでいる

 のかもしれんな)

 

聞いた所によると文明圏には魔力を探知できる装

置なるものが存在するらしい。クワ·トイネ如き

がその様なものを保有しているとは思えないが将

たるもの最悪の事態も想定して動く必要がある。

もしその様な装置があるのであればワイバーン部

隊の来襲に対抗しようとするのもおかしくない。

 

(とは言え、好機な事は間違いない)

 

幾らクワ·トイネの軍船が強力であろうとワイバー

ンの航空攻撃には少なからずダメージを受けるだ

ろうし、そこで肉薄攻撃を仕掛ければ必ずや仕留

められる筈だ。

 

(見ているか散った同胞達よ。お前達の仇、必ず取

 って見せる)

 

「全艦に通達!これより我が艦隊は迫りつつある

 ワイバーン部隊と共に敵船団に肉薄攻撃を仕掛

 け、船団を撃滅する!全艦、前へ!!!」

 

 

 

クワ·トイネ北方海域上空

 

500騎のワイバーンが咆哮を上げつつクワ·トイネ

の船団を滅せんと迫る。

王国建国以来最大の500騎による作戦行動、その

勇姿は地上から見る者を圧倒する。

 

竜騎士団長アグラメウスは、既に圧勝を確信して

いた。

魔信の報告で敵主力と交戦との事で出撃したが、

クワ·トイネ海軍の主力はせいぜいが50隻程度、

多くとも100隻もありはしないだろう。

 

海軍だけでも十分滅する事は可能と思われるが、

恐らくシャークン海将は我が王国の武威を誇示さ

せるつもりなのだろう。

 

1回の作戦行動としてこれだけのワイバーンを動

員するのは初めての事で、これ程の部隊であれば

伝説の魔帝軍すらも打ち破れるだろう。

ましてやクワ·トイネ海軍如きに我らを止められ

る筈がない。

 

アグラメウスだけでなく、竜騎士の誰もがそう考

えていた。

 

「ん?あれは一体···」

 

目のいい者がまず気付いた。

 

「―――!!!」

 

突如として現れた幾つかの黒点は、一瞬にして竜

騎士達と距離を詰めて来た。

 

「光の―――矢!?」

 

彼が言い終わるか言い終わらないかという瞬間、

隊列を組織していたワイバーン部隊の前方が轟音

と爆炎が包み込む。

一瞬で23騎分の残骸が爆散し、大小の塊が次々と

海に落下していく。生者も死者も何が起こったか

も分からぬまま、更に十数秒後には13騎が2発目

の光の矢に屠られる。全員が事態を把握した数秒

後も19騎と、次々と墜とされる。

 

流星の様な光の尾を引いたそれは、ある者を避け

る間も与えずに撃墜し、又ある者が類稀なる動体

視力を以て回避行動を取るのを嘲笑う様に意思を

持っているかの如く追尾する軌道を描き撃ち落と

す。加えて高威力の爆炎が周囲を飲み込む為、直

撃を避けても仲間の爆死に巻き込まれ道連れに遭

う者もいた。

 

「何だ!?一体何が起きているんだ!」

 

恐怖に駆られたアグラメウスが絶叫するが、答え

られる者は居ない。何が起きているかも分からな

いまま、苦楽を共にした仲間が、戦友が、そして

世界最強の戦力である筈のワイバーンが、血も涙

もなく効率的に殺処分されていく。

 

この様な事は、ロデニウス大陸の歴史上、ただの

一度もない。

 

『バカな!そんな···!!!』『何故!何故追っ

て来るんだ!?うわっ···』魔信器が数々の悲鳴

を奏でる。

 

一通りの嵐が過ぎ去った頃にはワイバーン部隊は

その数を500騎から250騎と半減させていた。

部隊は混乱状態に陥っていたが、やっとロウリア

王国海軍の艦隊が視界に入り、隊列の再編にかか

った。

 

そしてその時、彼らは眼前に敵船団を発見した。

数こそ40隻にも満たないが、一隻一隻が我が王国

の最も大きな軍船よりも大きい。 

 

そしてその中でも一際大きい灰色の巨船が7隻、

次々と光の矢を再度上昇し始めていたワイバーン

部隊に発射した。

 

「あいつか·····!あいつかぁーーーッ!!!」

 

アグラメウスが吼える時も竜騎士達は一騎、また

一騎と墜とされていく。光の矢が発射されて暫く

すると、巨船達についている鉄の棒から何かが光

の矢と共に発射され始めた。それらも一発当たり

一騎を確実に射貫いていき、竜騎士達の全滅を加

速させていく。

 

味方が、それも最強である筈の竜騎士達が、まる

で雨の様に墜ちる様を見ていたロウリア水夫達の

士気は崩壊し、彼らは既に戦意を喪失していた。

 

アグラメウス達竜騎士達が大体艦隊直上付近であ

る3㎞まで近づいた頃には、竜騎士達は70騎を割

っていた。

 

「魔導が切れた様だな·····仲間の仇を討ってや

 る!」

 

500騎もの大編隊を壊滅させられ、既に70騎も残

っていない。このままおめおめと引き下がる事な

ど出来る筈がない。王国に戻ったとしても無能の

烙印を押される事が確定している以上、アグラメ

ウスの頭の中に一矢を報いる以外の選択肢は無か

った。

 

アグラメウスの号令でワイバーン達があぎとを開

き、導力火炎弾の発射準備にかかる。

 

 

 

アグラメウス達が必死にミサイルから逃げる頃、

対空ミサイル巡洋艦トラブゾンのCICでは500騎の

ワイバーン部隊が見る見る内にその数を減らして

いく状況をレーダーが映していた。

 

表立っての大戦争が無くなった時代に生を受けた

この艦にとってもこれ程の量の航空戦力との攻防

は未知数であったが、レーダー監視員は落ち着い

て行動していた。「帝国が誇る大空の盾」と讃え

られたこの艦を信じていたのである。

 

導力火炎弾の発射まで後僅かというその瞬間、近

接火器システムCIWSである対空30㎜機関砲が一

斉に作動する。毎分3000発に達するタングステン

弾の嵐が70騎のワイバーン部隊残党に殺到し、そ

の数を50騎、16騎、7騎、3騎、2騎と急速に減ら

していく。

 

「あがっ―――」

 

そして最後の一騎も直ぐに仲間の後を追った。

 

 

 

大海原を静寂が包み込んでいた。

「···············」

その場にいた誰もが眼前の事態を信じる事が出来

ず、声を出す事も叶わなかった。

 

ロデニウス大陸の歴史上において、ワイバーンは

最強の兵器であった。

同じワイバーンで対抗出来なければ撃破は困難を

極め、まして海上では一騎墜とすのも至難の技で

ある。

 

しかし、敵はそのワイバーンを直接見えただけで

も400騎以上―――そう、400騎以上の精鋭ワイバ

ーン部隊を蚊トンボでも叩き落とすかの様に血の

雨を降らせ、墜としていった。

 

初めて見たその軍船―――いや軍艦は途方もなく

巨大であった。奴等は次々と光の尾を引いた何か

が轟音を伴いつつ飛ばしていくのを見て、何のこ

けおどしだと驚いていたが、それらは瞬く間にワ

イバーンを撃ち墜としていき、遂にワイバーン部

隊は全滅してしまった。

 

だが、だからと言ってシャークン達海上部隊を見

逃してくれる程オスマン帝国海軍は甘くはなかっ

た。先程ワイバーン部隊を蹴散らした化け物の様

な巨艦がもう2隻、一回り小さいがそれでも大き

いものが7隻、彼らの眼前に姿を現した。

 

その全てが灰色の船体で、クワ·トイネ海軍が猛

威を振るった長大な魔導兵器を有していた。

 

眼前に奴等が現れてから僅か数秒後、軍船やワイ

バーンを易々と消し飛ばした兵器がクワ·トイネ

海軍のそれよりも遥かに正確に、そして冷酷にロ

ウリア艦隊に襲いかかった。

 

 

 

そこからの戦いは短いながらも、余りにも一方的

で、無惨な戦いであった。

 

帝国海軍の艦船の砲撃の数だけロウリア艦隊の軍

船は破砕され、着実に沈められていく。

 

元々砲弾の数が乏しかった駆逐艦や、それまでの

戦いで弾切れが近く、遂に起こしたクワ·トイネ

海軍の艦船達はよりロウリア艦隊に接近すると備

え付けられた機銃を打ち込み、一隻一隻沈黙させ

ていく。最早実戦演習とでも言うべき状態であっ

た。

 

 

 

戦況は最悪等という生易しい言葉で言い表せる状

態になく、むしろ勝手な撤退が起こっていない事

自体奇跡とすら言えた。

 

「·······駄目か」

 

海将シャークンは既に絶望を超越し、諦観の域に

あった。どう足掻いても勝ち目がない。

 

このままズルズルと戦い続けた所で、部下が徒に

死んでいくのは確実だ。だがもし降伏して捕虜に

でもなれば、ギムで大虐殺を行った筈のロウリア

人が許される筈がない。

 

彼に残された選択肢は、撤退以外になかった。

 

ロデニウス大陸史上最大の艦隊の半数以上を失っ

ての大敗に加え敵前撤退。国に帰れば死刑は免れ

ず、歴史書にこれ以上ない愚将として名を遺す事

だろう。

 

だとしても彼にこれ以上部下を死なせるつもりは

なかった。

 

『全軍撤退せよ。繰り返す、全軍撤退せよ』

 

魔信から撤退命令を残存する全艦に下す。

シャークンが搭乗する旗艦も撤退するべく回頭を

開始したその瞬間、砲弾が直撃する。

爆発の衝撃で吹き飛んだ部下にぶち当たり、シャ

ークンは海に投げ出されていた。何とか海に浮か

び上がった彼が見上げた光景は、自分が搭乗して

いた軍船が真っ二つにへし折れ、瞬く間に轟沈す

る様であった。

 

 

 

「敵軍、撤退を開始しました」

「全艦、撃ち方やめ!」

ホルティの鋭い命令が飛んだ。

「総員、海上の生存者を捜索し救助せよ。各々が

 出来る事を全力で成せ!」

 

 

 

こうして後にロデニウス沖大海戦と呼ばれる事と

なった一大海戦の幕が下ろされた。

尚海将シャークンは彼の搭乗艦唯一の生き残りと

して帝国海軍に救助された。

 

 

 

「艦長、ロウリア艦隊は撤退を開始。オスマン帝

 国海軍は生存者の救助に移るとの事です」

 

通信員の報告で第一艦隊の面々に驚愕と歓喜が押

し寄せた。

 

幾度となく図面演習を繰り返し、負ける筈がない

と頭では理解していたが、それでも不安を拭い切

る事は出来なかった。

 

だが、本当に勝つ事が出来た。予感は確信に変わ

り、自信が彼らを満たしていた。

 

一方で、彼らは帝国海軍がロウリア海軍の生存者

の救助を行った事にも驚いていた。たとえ自分達

を滅ぼそうとしていた国の兵であっても命を助け

ようとする姿勢に、パンカーレは我々もまだまだ

なのだなと笑っていた。

 

「燃料に余裕のある艦はオスマン帝国海軍が救助

 した兵を乗せて帰港せよ。我が艦に続け!」

 

この後、クワ·トイネ海軍は世界有数の海軍とし

て大成長を遂げ、8月27日は海軍記念日として国

の祝日となる。

 

 

 

ロウリア王国東方征伐艦隊 

ロデニウス沖大海戦後のとある軍船

 

パーパルディア皇国の観戦武官ヴァルハルは、ロ

ウリア海軍に与えられた自室で震えていた。

 

この軍船は運良く撃沈を免れたが、周囲の何隻も

の軍船がいとも容易く撃沈させられていく様を直

に目の当たりにしたからだ。

 

ロウリアの4400隻に及ぶ大編隊がどの様にクワ·

トイネ公国を蹂躙するかの経緯を記録する事が彼

の任務の筈だった。

蛮族に相応しい大型弩弓に火矢、そして切り込み

による白兵戦という原始的な戦法でもこれ程の数

を揃えればどうなるのか。彼自身の個人的興味も

あって彼はこの任務に期待していた。

 

だが、戦場に現れた敵艦は、彼の常識すらも凌駕

するものだった。

 

まず、彼にとって民間船·軍船問わず船と言えば

帆船であり、船の速さは船の帆が受ける風を人工

的に増やし増速させる「風神の涙」の有無及びそ

の純度が大きく影響する筈だった。なのに、敵艦

はそれを使った形跡はおろか帆と呼べるものすら

ないのにも関わらず、船足が恐ろしく速かった。

 

又、その艦の殆どが80門級戦列艦より、そして一

部の艦は100門級戦列艦すら超える船体の巨艦で

あるにも関わらず、巨大な·······長身かつ細身

ではあったが、紛れもなく大砲だった。それが多

くても5門も積んでいなかったのを見て、彼は何

の冗談かと暫し理解に苦しんだ。蛮地にない筈の

大砲があった事には少々驚いたが、大砲はそう易

々と当たるものではない。1発2発では当たらない

が故に、数打ちゃ当たる理論で100門級戦列艦等

が存在するのである。なのに、彼らはあろう事か

3㎞も離れた距離から、たった2、3発、後述の国

籍不明艦達に至ってはただの1発で命中させた。

加えて極めて高威力で、密集していた際には爆発

の衝撃で周囲の艦が数十隻単位で破壊され、爆発

の際に発生した高波を被って転覆し、沈む艦すら

あった程だ。

 

そして、彼を最も驚愕させたのが、ワイバーンの

波状攻撃を防いだ事。もし我が軍であれば竜母を

運用し、ワイバーンにはワイバーンで対抗する。

我が軍のワイバーンは上位種は言うまでもなく、

その上位種と訓練している原種のワイバーンも蛮

地で生産される個体よりも遥かに性能で勝る為、

同数であれば確実に勝てるし、上位種が万全の状

態で戦えれば半数でも十分勝ち目があるだろう。

だが、件の国籍不明艦はワイバーンはおろか、火

食い鳥等を含む一切の航空戦力を用いずこれを殲

滅して見せた。

 

もし我が軍が同様に航空戦力を持ち得ない状況で

蛮地のそれとはいえあれ程の規模のワイバーン部

隊に襲撃されればどうなるだろうか?

恐らく、全滅はしなくても浅からぬ被害を被る事

は想像に難くない。

だが、あの国籍不明艦は被害以前に傷一つ付かぬ

ままにワイバーン部隊を蹴散らしてしまった。

 

そもそも、点攻撃である砲撃が空中を高速で飛び

回るワイバーンに当たる筈がない。それが常識で

あった。しかし、あの国籍不明艦は、そのワイバ

ーンさえも一発で命中させて見せた。最早人間業

とは思えない。

 

奴等の存在を無視して事を進めると、パーパルデ

ィア皇国すらも脅かすかもしれない。

ヴァルハルは魔信を通じ、海戦の一部始終を見た

まま、ありのままに本国へと伝えた。




クワ·トイネ海軍第一艦隊初代旗艦
軽巡洋艦「イオノン」

基準排水量:6360t
全長:162.0m
全幅:16.4m
機関:39式ボイラー6基
   39式タービン4基
乗員:690名
最高速度:37.3㏏
武装:14㎝単装砲3基3門
   8㎝連装高角砲2基
   20㎜機銃3基
  53㎝三連装魚雷発射管2基6門(魚雷20本)
   40式機雷38個
(魚雷·機雷はロウリア戦後に搭載)

オスマン帝国海軍が提供した軽巡洋艦の技術を基
にクワ·トイネ公国海軍が初めて建造·就役させた
国産軽巡洋艦。
ワイバーンが普及している事から対空武装を重視
した設計かつ、鋼鉄製の軍艦がほぼ存在しない為
やや装甲を削って速度を出せる様にしている。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

其ノ伍 狼と東部諸侯団と燃料気化爆弾

ロウリア王国降伏まで書こうとしたけど長くなり
そうなので分割。
ピロズヴェスティキ···ギリシャ語で火球。
読み方間違ってるかもしれんがすまぬ


中央暦1639年8月29日

クワ·トイネ公国 政治部会

 

先日の27日、クワ·トイネ·オスマン連合艦隊がロ

ウリア王国海軍を撃破したロデニウス沖海戦の模

様が、オスマン帝国海軍の観戦武官として派遣さ

れたブルーアイの口からこの日報告されていた。

 

「―――以上が、ロデニウス沖大海戦の戦果報告

 となります」

 

政治部会の面々の手元には、オスマン帝国の技術

によりいち早く普及に成功した良質な紙を用いた

報告書が配られている。

 

「オスマン帝国海軍や演習で実感していたとは思

 っていたが実戦でこれ程の戦果を上げるとはな

 ···」「まったくだ。つい半年前までの我々で

 は考えられん」「圧倒的ではないか我らが公国

 軍は!」

政治部会の面々が驚愕混じりに歓喜している中、

その様子を黙って傍観していた首相カナタは慎重

に口を開いた。

 

「皆さん、喜びたい気持ちもあるでしょうがそれ

 は本題の解決後になさって下さい。一先ず、今

 回の海戦の勝利でロウリア王国海軍の行動力は

 大幅に低下したものとして考えます。軍務卿、

 陸の情勢の説明を」

 

「はっ、現在ロウリア側地上部隊は、ギム周辺の

 陣地構築にかかっております。海側の侵攻作戦

 の失敗を受け、ギムの防備を万全にしてからの

 再度進撃を図っていると思われます。電撃作戦

 は完全に頓挫したものと見ていいでしょう」

軍務卿は手元に用意していた、諜報部及びエジェ

イへと戦略的撤退していた元ギム防衛軍を吸収し

た西方軍集団の偵察隊からの報告を読みつつ返答

する。

 

「しかし、ギムは撤退時に貯蓄していた食糧を住

 民と共にギリギリまで持って行った為、恐らく

 遠からぬ内に再度進撃して来るものかと」

 

「オスマン帝国の動向ですが、既にエジェイに援

 軍の第一機甲師団と第十八歩兵師団が到着し、

 またクイラ王国のロウリア国境に第一機甲師団

 所属の第三戦車旅団がクイラ王国の戦車旅団と

 共に到着しています」

 

軍務卿が、大陸共通言語で書かれた作戦書をカナ

タへと渡す。既にクワ·トイネ·クイラ·オスマン

帝国の陸軍とオスマン帝国()()及びクイラ王国の

マーニアル国王とオスマン帝国のアブデュルメジ

ト5世のサインが書き込まれており、後はカナタ

のそれを残すのみだった。

 

「四正面対ロウリア電撃作戦···狼作戦ですね」

 

先日アブデュルメジト5世との電話会談で仄めか

された作戦名をカナタは口にしていた。

 

狼が群れを成して役割を分担して獲物を狩る様に

喩え、この作戦では全部で4方向からの攻撃が行

われる。

 

まず1匹目のクイラ·オスマン帝国連合軍が2個戦

車旅団から成る1個混成機甲師団がロウリア南部

に侵攻し、注意を南方に反らす。

次に2匹目のクワ·トイネ陸軍の第一戦車連隊とそ

の補佐としてクワ·トイネ陸軍とオスマン帝国陸

軍の第十八歩兵師団がビーズルへ計15000の兵力

でギムを奪還しつつ侵攻。こちらは空軍の援護と

共にロウリア軍の前線兵力をギリギリまで減らす

のが目的となる。

更に3匹目としてオスマン帝国陸軍の第一機甲師

団の残存戦力がエジェイから王都ジン·ハークに

侵攻。この軍勢が本命の侵攻と思わせる。

そして、本命の4匹目となる部隊であるオスマン

帝国空軍の第七空挺師団所属の第一一七中隊がハ

ーク城へと侵入し、ロウリア国王を確保する、と

いう作戦だ。

 

作戦動員兵力は三国合計で55000強と単純な数だ

けで言えばロウリア軍の10分の1程度しかいない

が、戦車という列強にすらないであろう兵器やオ

スマン帝国軍による大規模軍制改革を施された敵

を上回っている確信がカナタにはあった。

また、クワ·トイネやクイラにも花を持たせてく

れる姿勢もありがたかった。

クワ·トイネ公国首相カナタは意を決して作戦書

へのサインのために筆を取った。

 

 

 

8月30日 ロウリア王国東方征伐軍前線司令部

 

アデムは悩んでいた。

あのギム攻防戦の後、全滅覚悟で偵察隊を出して

見ると「ギムがもぬけの殻となっている」という

報告を受けたためギムへと進んでみると、本当に

ギムが無人都市となっていたのでロウリア軍は首

を傾げつつもギムの占領に成功した。だが、占領

から1日も経たぬ内に、ロウリア軍はクワ·トイネ

軍の術中に嵌まった事を理解した。

 

まず食糧が足りない。

元々「家畜ですら旨い飯が食える」とも言われる

敵国の事情から兵站は現地で調達する手筈だった

のだが、敵は撤退時に持てる限りの食糧を持って

行ったらしく、ギム内に十数個ある兵糧庫の内の

幾つかは小麦粉一袋すら見当たらなかった。

流石に全部の兵糧を持って行く事は出来なかった

らしく残っていた小麦粉で兵士がパンを焼いてい

るが、それでも予想されていた量を遥かに下回っ

ており、このままでは餓死する兵が出て来る恐れ

がある為、本隊に兵糧の輸送を要請する必要があ

るだろう。

これは先遣隊のみによる完璧な勝利を目論んでい

たアデムにとっては大変な屈辱だった。

 

加えて、謎のトラップも士気の低下に拍車を掛け

ていた。

実は撤退直前にオスマン帝国軍によってギム内に

は多数のブービートラップが仕掛けられており、

これに引っ掛かって死傷する兵士が無視出来ない

数現れたのだ。これらはピアノ線に引っ掛かると

爆弾が作動してドカン!等のかなり単純なものが

多かったのだが、ピアノ線なんて存在しないロウ

リア軍にはワイヤートラップの発想が存在せず、

原因不明のまま被害者は増加する一方だった。

 

そして、それでも進撃するべしと唱えていたアデ

ム含む強硬派の勢いを完全に止めた、ロデニウス

沖大海戦の記録的大敗。前線の士気低下が懸念さ

れ、兵士や中下級の将校にまで詳細な情報は遮蔽

されていて、耳にしていたのはパンドールやアデ

ム等の極一部の高級幹部のみだったが、ギム攻防

戦といい、ロデニウス沖大海戦といい、一向に敵

に大損害を与えられずにいるのはロウリア軍幹部

達に多大な精神的ダメージを与えていた。

 

(分からん·····本当に分からん。ギム攻防戦で2

万を超える兵を失い、ロデニウス沖では半数以上

の軍船が沈められたと言う···我々が戦っている

のは本当にあの亜人どもなのか?)

 

座ってもいられず、辺りを歩き回りながら黙考し

ていたアデムだったが、ある人物が彼の部屋に入

って来た事を認めると、直ぐ様頭を垂れていた。

 

「パンドール将軍···」

 

「失礼するよ、アデム君。どうやら君も悩んでい

 る様だね?」

 

「はっ、あの亜人のゴミクズども相手としては余

 りにも先日の戦いで多くの兵を消耗させられま

 したので·····加えて、兵糧不足やギム中に仕

 掛けられている罠も気になります」

 

苛烈な性格の彼らしく苛立ちを上官の自分に隠そ

うともしないアデムの発言に内心苦笑しつつ、パ

ンドールはアデムを宥める様に言う。

 

「まあ怒鳴った所で仕方あるまい。出来る事をす

 るまでだ。後どれ程兵糧は持つかね?」

 

アデムに怒鳴られ続けているのか、顔色の悪い作

戦参謀がはっとしてパンドールの質問に答える。

 

「現在、残存する兵全員にこれまで通りの量の食

 糧を与えるとなると、恐らく持って1週間、統

 制しても2週間持つかも危うい状態です。敵の防

 衛最重要拠点のエジェイを陥落させられれば、

 食糧問題も解決するかと思われますが·····」

 

「ギム攻防戦の結果を考えれば、エジェイには更

 に強力な防衛体制が敷かれている可能性が極め

 て高い、か」

 

作戦参謀の「その通りでございます」という返答

に、パンドールの表情も曇った。

 

「パンドール様、やはり私はエジェイ侵攻を進言

 致します」

 

彼にしては珍しく、神妙な顔でアデムが言う。

 

「敵軍のエジェイの防衛がギムよりも厳しい事は

 確実ですが、さりとてこのまま座して待ってい

 れば遠からず餓死者が出る危険性もあります。

 それに、現在も未だにワイバーン300騎が健在

 である以上、これを一気に投入すれば、制空権

 の確保も可能かと存じます」

 

パンドールは暫し考え込む。

ギム攻防戦やロデニウス沖大海戦から進撃停止に

舵を切った先遣隊であったが、アデムの意見も筋

が通っており、又このままギムで留まり続けてい

ては自身の降格もあり得た。

 

「分かった。翌日からジューンフィルア伯爵を大

 将とする東部諸侯団を組織し、エジェイ侵攻を

 開始する。東部諸侯団にはアデム君の直接指揮

 下に入ってもらう。又騎馬隊の残存兵を纏めて

 30名1組の騎馬隊を50組組織し、偵察任務に従

 事させよ」

 

「「「ハハッ!!!」」」

 

アデムだけでなくその場にいた作戦参謀やその他

の部下が一斉に平伏する。

 

作戦の決定を見たパンドールが部屋を去ろうとす

ると、アデムが意外な策を具申して来た。

 

「将軍、ギムでの交戦の結果を考慮すれば、現在

 の手勢の47000では足りなくなる恐れがありま

 す。そこで、私は一度ハーク城へ出頭し、戦況

 報告と援軍の要請に上がろうかと」

 

腹立たしそうではあったが、彼にしては保守的な

策に、パンドールは内心驚いていた。常に攻撃を

主張していた彼が守りに入るのは初なのではと思

った程だ。

 

「ふぅむ、確かに今の状況を考えれば伝令兵には

 ちと荷が重いか·····アデム、頼めるかね?」

 

「御意にございます!」

 

こうして、9月7日を目安にロウリア軍はクワ·ト

イネ軍最重要拠点エジェイの攻略を決定。

まずジューンフィルア伯爵を大将とする東部諸侯

団27000が先鋒としてギムを出撃。

パンドール将軍麾下の2万のギム防衛隊を除く全

兵力がエジェイを目指し進撃を開始した。

 

 

 

中央暦1639年9月1日深夜

ギムよりハーク城への道中

 

アデムは数名の腹心と共に馬を駆り、ジン·ハー

クのハーク城へと出発していた。

彼の顔には終始苦渋と憤怒の色が滲んでいた。

 

(おのれっ···おのれっ!!!この攻略作戦は失敗

だ!恐らく先遣隊は遠からず全滅するだろう···

早急にあの方と()()せねば)

 

 

 

中央暦1639年9月3日 エジェイ

クワ·トイネ·オスマン帝国連合軍前線司令部

 

「それにしても恐ろしいな···オスマン帝国軍っ

 てのは」

「全くだ。敵に回したらクワ·トイネとクイラが

 100個ずつあったって勝てそうにない」

2万超の大規模侵攻部隊出撃の報は各地に散開し

ていた騎兵を中心とする偵察隊やアトモットを改

装したK-1-a偵察機「アモット」によって1日と経

たずに連合軍の知るところとなり、オスマン帝国

を中心に迅速な迎撃準備が整えられた。

 

クワ·トイネ初の爆撃機であるK-2爆撃機「グラン

トペッグ」に吊るされた2本の筒の様な爆弾を見

やりつつ、兵士の一人が再び口を開く。

 

「それで、この筒みてぇのがその特殊な爆弾なん

 だろ?」

「ああ、何でも普段うちで使ってる爆弾のざっと

 10倍以上は威力があるらしい」

 

その威力に聞いた兵士は自分の顔が引き攣ってい

るのを感じていた。威力の凄まじさに少々引いて

いたのだ。

 

燃料気化爆弾。

酸化プロピレン等の液体燃料と空気中の酸素を用

いて強力な衝撃波を発生させ、半径数百メートル

の地上の敵を圧殺·窒息死させる兵器である。

炸裂時に巨大な火球が発生する点や、燃料の酸化

プロピレン等が地面に染み込み、環境被害をもた

らす点、制作方法·費用の制約が(性能の度外視の

是非を問わず)非常に低い事から、元の世界では

「貧者の核兵器」とも呼ばれた代物だ。

 

元の世界では環境被害への懸念やクラスター爆弾

等の方が兵器として有用だった事等から、ギリシ

ャ小州で世界初の実用化に漕ぎ着けながらも500

個に満たない少数生産が行われただけだったが、

異世界転移後に事態が急変した。

 

クワ·トイネ公国やクイラ王国との国交樹立後、

オスマン帝国軍は魔法の研究を開始し、魔法の軍

用転換を図っている。

 

そして、その中でもオスマン帝国空軍が真っ先に

注目したのが土系魔法の一つの、大地の浄化·豊

穣化魔法であった。浄化作用を利用すれば、どう

やっても不発弾が出るクラスター爆弾よりも燃料

気化爆弾の方がより完全な後始末が出来るのでは

と予想された為、急遽クワ·トイネ空軍からグラ

ントペッグを一機貸し出してもらい、試作燃料気

化爆弾の「ピロズヴェスティキ」を搭載出来る様

改修した後、地上部隊の爆撃を主任務として今回

の作戦に予備含め170本余りが投入された。

 

因みにクイラ王国の魔導師曰く、クワ·トイネ公

国の国土にはこの魔法をより強くした様な効果が

満遍なく満ちているらしく、クワ·トイネ公国に

おいて肥沃なのに雑草が余り生えず、作物がこれ

といった手入れもなしにどんどん生え、害虫すら

皆無という超常現象が起こっているのだという。

 

クワ·トイネやクイラにとってオスマン帝国は雲

の上の国に見えているのかもしれないが、オスマ

ン上層部からすればクワ·トイネらも十分色々と

おかしい国だったと言えよう(時のスルタンのア

ブデュルメジト5世はその調査結果を知った際、

非公式に「我が国の10分の1程の面積で3倍弱の

生産量なんてどんなファンタジーだ···」という

コメントを残したと伝えられる)。

 

 

 

中央暦1639年9月4日 夕食時

ギムからエジェイへの道中の平原地帯

ロウリア王国東部諸侯団 野営地

 

ジューンフィルアは総勢27000の兵が寝起きする

野営地を小高い丘の上から見つつ、気分を落ち着

かせるために深呼吸した。

 

心配されていた兵糧は今のところ順調だった。

この野営地の直前までの道は森を切り開いて造ら

れたものだったが、森の中には食べられる野草や

キノコ、更には猪等の獣も大量に存在しており、

ギムから持ち込んで来た小麦粉によるパンと共に

27000の兵が飢えないだけの食糧配分が維持出来

ていた。

 

ギムを出撃した時は低かった士気も、敵襲に遭う

事もなく不満のない食事にありつける日々が続く

内に回復し、現在では士気旺盛だった。

 

もしこの進撃がクワ·トイネ軍だけを相手にする

ものであったら、彼には自信しかなかった事だろ

う。

 

だが、彼にはただ一点の不安要素があった。

―――オスマン帝国。

つい半年程前に国交樹立を願い出て来たクワ·ト

イネやクイラと国交を結ぶ潜在敵対国。

しかし、ワイバーンすら知らない蛮国であり、両

国の征伐が終了した後でも占領·対応も容易···

これが開戦当初のロウリア王国側のオスマン帝国

の認識であり、ジューンフィルア自身もその様に

認識していた。

 

だが、クワ·トイネ侵攻が始まると、その認識は

疑惑のものへと変化し、日が経つにつれてその疑

心は大きくなるばかりだった。

 

まずクワ·トイネの国境都市ギムの制空権を得る

べく出撃したワイバーン90騎が逆に撃墜された。

そしてその報を聞いた騎兵4500を含む3万の軍勢

が壊滅させられ、その理由がオスマン帝国による

ものなのではないかという噂が流れ始めた。

 

ワイバーン部隊の攻防を見ていた兵士の生き残り

によると、羽ばたかない金属の飛竜がワイバーン

部隊に襲い掛かって来て、ワイバーンを遥かに上

回る速度で攻撃して来て、全滅してしまったのだ

という。そして3万の軍勢に対しては、塹壕と思

われる一線を越えた途端に謎の轟音と共に何らか

の攻撃魔法を仕掛けられ、3万の軍勢は7千にまで

壊滅させられたと同様に生き残りの兵達が呟いて

いたのをこの耳で聞いた。

 

極めつけに、つい前日の諸侯団首脳会議の中で、

魔導師ワッシューナが近頃魔導師の間で噂されて

いるという恐るべき情報を聞いた。

クワ·トイネ最大の経済都市マイハークを目指し

た東方征伐海軍の大船団が半数以上を失い壊滅、

そしてその救援へと向かっていたワイバーン部隊

500騎までもが文字通り全滅し、マイハーク侵攻

作戦は完全な失敗に終わったというのだ。

 

当然ながらこの情報は管轄外という事もあって、

戦闘報告等が一切無かった諸侯達にとって青天の

霹靂となった。

数々の戦争を生き抜いて来たジューンフィルア自

身、余りに現実離れし過ぎていて、信じる事が出

来なかった。

 

そもそも今回の派遣船団とワイバーン部隊は本来

陸軍無しでも十分クワ·トイネ公国とクイラ王国

を制圧出来る程の大部隊だったという。もしあの

戦力がパーパルディア皇国に攻め入っても、彼ら

の艦隊や陸上部隊に勝利とまでは行かずとも上陸

位ならば夢ではない戦力だと。

 

しかし、征伐軍のワイバーンから100騎の本陣へ

の帰還命令も、話が真実で全滅した航空戦力の穴

埋めとしての再配備であれば辻褄が合う。

 

ジューンフィルアはふと、夜空を見上げていた。

 

今から侵攻しようとしているエジェイは国境都市

ギムや道中の村々とは防御力の次元が違う城塞都

市である。もしそんな場所に、ギムで3万の軍勢

を壊滅させたという件の兵器や金属の飛竜等が多

数配備されていたら―――ジューンフィルアの首

筋に冷や汗が走った。

 

この様な状況の中ジューンフィルアが撤退の判断

が下せないのには無論理由がある。

 

悪魔とも悪鬼とも比喩される恐怖の副将アデムの

存在である。

指令書には威力偵察の実施とあるが、報告内容次

第では司令官から最も戦死率の高い突撃隊の隊長

にまで蹴落とされる可能性が高い。ギム攻防戦の

折に攻撃隊の総司令官が粛清されたとも聞く。恐

らく家族すら惨殺を免れ得ないだろう。

 

(兵達を犠牲にしてでも、進むしかない、か)

 

ジューンフィルアが侵攻の決意を固め直したその

時だった。微かに東の空から、グォォォンという

様な空気を震わせる音が響いていた。その音源は

次第に大きさを増し、複数の音源がある事が理解

出来た。

 

「!?何だあれは!」「新種のワイバーンか?」

「いや、もしや噂の鉄竜じゃ···」夕食時で人心

地ついていた兵達も、何事かと空を見上げ、野営

地は俄に騒然とし始めた。

 

幾つもの音源の正体は、総勢50機の飛行機械と思

われる物体だった。その何れもが翼と思われる部

分に妙な筒を2本抱えている。そして、都合100本

の筒の正体である燃料気化爆弾「ピロズヴェステ

ィキ」が東部諸侯団野営地の上空から次々と投下

された。

 

―――!?

ジューンフィルアの頭は急速に冴えていた。波一

つ経っていない広大な湖にたった一滴の水滴が落

ち、その波紋がすぅっと広がっていくのに似た名

状し難い感覚が彼の脳を支配し、今まで感じた事

のない様な強力な痺れをもたらした。

 

(何だ、何をする気だ!この感覚は何だ、確実な死

の予感がする。これは一体何なんだ)

 

その答えは、彼を含む東部諸侯団の破滅と共に出

た。突如として、野営地の各地から幾つもの巨大

な火球が形成され、一瞬で空を覆い尽くしたと思

うと、次の瞬間には周囲にいた兵達の無惨な死体

があちこちに転がっていた。

 

突然の事態に硬直していた生き残りの兵達は、そ

の惨状を脳が認めると共に蜂の巣を突いた様な騒

ぎになりながらも逃げ出そうとしたが、夕食の為

固まっていた事が災いし、結局第一撃の討ち漏ら

しの周囲の殆どは続く第二撃でこの世を去った。

 

空に次々と立ち上る火球と轟音に野営地周辺の偵

察任務に出ていた騎兵隊や警備に出払っていた歩

兵隊などが何事かと野営地に戻って来たが、それ

すらも敵軍は一笑に付すかの様に容赦なく火球の

餌食にしていた。

 

「バ·····バ·····ババ、馬鹿なぁッ!!!」

ジューンフィルアは、彼の常識から酷く逸脱した

その現実に絶望し、ただうちひしがれていた。

今まで共に戦って来た戦友が、百戦錬磨の兵が、

優秀な将軍が、家族ぐるみで付き合っていた上級

騎士達が、強くなる為に共に訓練に励み合った仲

間達が―――

すべてが·····虚しくなる程、泣きたくなる程、

余りにもあっさりと、容赦なく、効率的に殺され

ていく。

 

次々と数百人、数千人単位で死に行く部下達に、

胸中でただただ謝罪を繰り返していたジューンフ

ィルアだったが、総勢50の死神達は彼だけを逃す

程甘くはなかった。

 

眼前で何かが光った様な景色の直後に凄まじい力

による圧力を感じる。その圧力が自分の体内に深

く入り込んで来るのを感じた刹那、彼は永遠に意

識を失った。

 

あちこちで燻る煙と化学薬品の異臭の残る大地。

その数十分後、20機の第二波と共にやって来た観

測機の入念な検査の後、ジューンフィルア伯爵や

魔導師ワッシューナをはじめとする諸侯の面々か

ら一兵卒に至るまで、ロウリア王国東部諸侯団総

勢27000の全滅が確認された。

 

こうして、オスマン·クワ·トイネ·クイラ連合軍

は航空部隊のみによる東部諸侯団の撃滅に成功し

たが、これはその後の戦闘経過と比べれば、ほん

の序曲に過ぎないものだった。

 

東部諸侯団の壊滅と時を同じくして、オスマン·

クイラ連合機甲部隊と、クワ·トイネ公国軍の大

規模部隊がそれぞれの目標に向け進軍を開始して

いた·····

 

 

 

     ロウリア王国の破滅は近い。    




K-1-a偵察機「アモット」
最高速度:437㎞/h
到達限界高度:11100m
航続距離:1000m
武装:7.7㎜機銃×1
爆弾:50㎏爆弾×1

K-1戦闘機「アトモット」を改造して偵察機に変
換した物。
武装を軽くした分速度を重視し、航続距離も長く
なっている。

K-2爆撃機「グラントペッグ」
最高速度:260㎞/h
到達限界高度:12400m
航続距離:1300㎞
武装:7.7㎜旋回機銃×1
爆弾:500~700㎏

オスマン帝国から技術提供を受けつつ初めてクワ
·トイネ公国軍新兵器開発部が設計·開発した爆撃
機。
予算の都合上エンジン等の性能不足で速度·武装·
爆弾搭載量他多くの面でオスマン帝国から輸出さ
れた37式爆撃機に比べて性能低下を余儀なくされ
たが、ワイバーン相手や制空権の取れている状態
なら十分な性能と判断された。

燃料気化爆弾「ピロズヴェスティキ」
オスマン帝国属ギリシャ小州で開発された新型爆
弾(と言っても二十年程前だが)。
東部諸侯団への爆撃に使われたのは小型の250㎏
爆弾だったが、それでも従来のTNT爆薬の10倍以
上の威力を誇る。
燃料の酸化エチレンや酸化プロピレン等の環境被
害を理由に国際禁止条約が地球では締結され、オ
スマン帝国も使用を自粛していたが、クワ·トイ
ネとの国交樹立後に本文中の理由から運用が決定
された。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

其ノ六 戦車とエジェイと電撃戦

今までと比べ、随分長くなってしまいました。
この小説、主の気分次第の為、これからもかなー
り遅くなることがあるかと思いますが「付き合っ
てやんよ」という方は、今後ともよろしくお願い
します。

追記:サブタイトルが誤っていた為、修正しまし
   た。こんな最初から···(2020/5/2、8:10)


東部諸侯団全滅の翌日 ロウリア王国東方征伐軍

ギム司令部

 

「東部諸侯団とはまだ連絡が取れないか?」

 

パンドール将軍が何度目かの問い掛けを行う。

そしてその返答も又、

 

「魔導師から魔信を送っていますが、依然として

 返事はありません」

 

という何度も聞いたものだった。

先遣隊の一部隊と言えども2万を超える大軍だ。

戦況報告も送れずに全滅するとは考え難かった。

パンドールは上空支援ついでの偵察用に、ワイバ

ーン20騎をエジェイへ向け放っていた。

 

「飛竜偵察隊の方はどうかね」

「間もなく東部諸侯団が消息を絶った付近の上空

 に到着します」

「頼むぞ·····」

 

 

 

ロウリア王国 竜騎士団所属

東方征伐軍飛竜小隊隊員 竜騎士ムーラ

 

「いよいよ·····だな」

 

エジェイ近郊に到着した飛竜偵察隊20騎は、先日

東部諸侯団所属の騎馬偵察隊が消息を絶ったとい

う地点で散開していた。その中でムーラは、東部

諸侯団が最後に野営した付近の担当を割り当てら

れていた。

 

彼に与えられた任務は東部諸侯団の現状確認だ。

もし、彼らが発見出来なかった場合は、そのまま

捜索に移る事になる。

 

「ん···?な···!?な、何だ、これは·····!」

 

彼が真っ先に感じたのは鼻を刺す様な強烈な異臭

だった。又、鳥程ではないものの、竜騎士は人間

の中では非常に目がいい。地表に倒れ伏した人の

様な何かを見た気がしたムーラは、異臭に苦しみ

つつもワイバーンを反転させ、高度を下げた。

 

そこにあったのは、彼の常識からひどくかけ離れ

た異形の惨状であった。

綺麗な状態で横たわっている人馬だったものと思

われる残骸が辺りに散乱している。あちこちの地

表に土を抉った様な傷跡があった。

極僅かではあったが、バラバラになった人馬の一

部が、同様に原型を留めていない鎧兜と共にごち

ゃ混ぜになっていたところもあった。

そして、その死体の多くは酷く焼け焦げており、

ロウリア王国で『悪魔の象徴』と伝わる漆黒の鳥

がそれらの肉を啄んでいた。

 

彼は肉片の転がっていない場所を探して、着陸し

た。何処を見渡しても、動く人間も馬も全く存在

しなかった。落ちていた鎧を幾つか確認したが、

何れも間違いなくロウリア軍が使っているものだ

った。

 

否定したかった。

しかし、忘れ難い現実が期待や妄想を塗り潰し、

彼は理解を余儀なくされた。

 

「全··········滅··········?

 ―――バカな、そんなバカな!!!」

 

何に、どのようにして。その正体がまるで分から

ない恐怖に、ムーラは身震いした。

 

―――グワァッ!グワァッ!

相棒のワイバーンが発した警戒の鳴き声に、ムー

ラは意識を覚醒させる。

 

ワイバーンが視線を送る東の空を注視し、耳を澄

ましたムーラは、やがて僅かに空気を叩く様な音

と芥子粒の様に小さな黒点を認めた。

 

竜···?

いや、竜なら羽ばたいていないとおかしい。

 

「―――!!!」

突如としてその竜が煙を吹き上げ、小さな炎が音

を超える速さで自分に向かって来た。

 

「導力火炎弾か!」

相手は竜騎士の自分が僅かに見える程に遠いが、

弾速は恐らく導力火炎弾のそれより速い。

それに、撃ったということは何らかの儀式でもな

ければ射程圏内なのだろう。ワイバーンの導力火

炎弾よりも遥かに射程が長い様だ。

下手すればパーパルディア皇国が有するワイバー

ンロードをも凌駕しているかもしれない。

 

(しかし·····)

ムーラは慌てる事なく飛び立った。どんなに射程

距離が長く速い攻撃とて、これ程距離があって気

づいていれば十分避けられる。このような攻撃は

不意打ちでこそ真価を発揮するだろうに、敵の目

は悪いのだろうか?

 

そこまで考えたところで、彼は違和感を感じ、そ

の理由を悟った。

 

「·····!? ついて来る!?」

 

避けたと思っていた火炎弾が空中で幾度となく軌

道を変え、自分たちに迫って来るのだ。

乗騎に全力飛翔を指示しながら、ジグザグ飛行で

回避を試みるが、火炎弾はその都度向きを修正し

こちらを追って来る。こんな攻撃、聞いたことが

ない。

 

「導力火炎弾が―――ついて来る!!!」

ムーラは魔信の送話器に向かって、悲鳴の様に叫

んだ。

 

「ち···ちくしょう·····!」

顔に叩きつけられる合成風、死の予感、脳の中を

幾つもの思考と記憶が去来する。

 

―――戦に行く朝の妻の笑顔、笑顔で抱きついて

来る1歳になったばかりの娘、今も腰に着けてい

る軽い金属で出来た何か―――

 

「―――死んでッ···たまるかァァァッ!!!」

その思いは、この戦場に一つの奇跡を起こした。

 

彼が腰に着けていたお守りが全力の急降下中だっ

た彼の元を離れた。

火炎弾の着弾が秒読み段階に入り、ムーラもワイ

バーンも死を覚悟した、その瞬間―――

 

―――グアアアンッッッ!!!

ムーラの後方で、落雷を思い起こさせる轟音と共

に火炎弾が炸裂した。

 

 

 

オスマン帝国空軍がクワ·トイネ公国への支援の

一環としてエジェイ周辺の哨戒任務に就いていた

無人偵察ヘリ「IZM-クタス」は、単騎行動中であ

ったロウリア軍所属のワイバーンを発見。

約2㎞地点まで距離を詰めた後、自衛戦闘用の近

距離空対空誘導弾を発射したが、追尾中に敵騎か

ら剥離した金属片が誘導弾に直撃したため空中爆

発が発生し、爆煙が収まるまでに敵騎は防空空域

を脱出、加えてクタスのレーダーに支障を来した

ためクタスは敵騎の反応を見逃し、ムーラは追撃

の回避に成功した。

 

 

 

一命を取り留めたムーラは、ギムへと進路を取り

飛行した。助かった理由は不明だが、妻からもら

ったお守りが気づかぬ内になくなっていた。

 

「もしかしたら···あれが守ってくれたのかな」

家族にまた会えるかと思うと、今ある生にこの上

ない喜びを感じた。

 

魔信が壊れてしまったため、本隊への連絡も叶わ

ない。一先ず合流地点付近で身を隠そうと低空飛

行を続けていると、いきなり強い悪寒を感じ、見

つけた林の中に緊急着陸を試みる。

だが、それは僅かに遅かった。

 

頭上の雲間から何騎かの竜、いや鉄竜を視認し、

その鉄竜の両翼から短く閃光が発される。

すると、ムーラの乗っていたワイバーンの表皮に

幾つもの大穴が開き、ワイバーンが悲鳴の様な断

末魔を上げて急に失速、墜落した。

 

幸いムーラは被弾する事がなかったが、力無く墜

落したワイバーンから放り出され、体中を強かに

打ちつつ地面を転げ回った。

 

「う、うぅ·····!···!?あれは!?」

ワイバーンの墜落によって土煙が背後で上がる最

中、彼が目にしたのは、黒煙が立ち上ぼり、所々

に火の手が上がるギムの姿だった。

 

クワ·トイネ·オスマン連合軍 ギム近郊

 

ムーラ達の偵察地到着から僅かに遡る頃、クワ·

トイネ公国陸軍及びオスマン帝国陸軍派遣部隊の

連合軍はギムとその先にあるロウリア屈指の工業

都市ビーズルを目指しエジェイを出撃した。

 

既にクイラ·オスマン連合軍は越境しロウリア南

部の攻略を開始しており、少数の国境警備部隊を

蹴散らしつつ、順調に占領地を広げている。

又同じタイミングでオスマン帝国陸軍第一機甲師

団の選抜部隊がビーズル南方から回り込む形で王

都ジン·ハークに攻め掛かる。

 

全ては本命の空挺部隊の任務成功を確固たるもの

にするため。

 

オスマン帝国に与えられた鋼鉄の地竜と共に、連

合軍はギム奪還を誓い進軍した。

 

「モイジ将軍、ギム·ビーズル方面軍、ギムに駐

 屯する敵部隊への攻撃準備が完了しました。い

 つでも問題なしとの事です」

 

「·····よし。全軍、一斉に攻撃開始。ギムをロ

 ウリア軍より奪還する。我々の力を奴等に刻み

 込んでやれ!!!」

 

「了解!全軍、攻撃開始!」

今ここに、第二次ギム攻防戦が始まった。

 

 

 

ロウリア東方征伐軍 先遣隊 ギム司令部

 

「遂に来たか·····」

パンドールは東の方を睨んで呟く。

 

東部諸侯団の通信が途絶えた時点で、既に東部諸

侯団は壊滅しているという予想はしていた。

どうやらその予想は当たっていたらしく、敵はギ

ムを取り戻さんと進撃して来た。

偵察に放っていた騎兵は帰って来る気配がない事

から察するに、全滅してしまった様だ。

 

パンドールだけでなく、部下達の顔色も良いとは

言えない。最後の飛竜偵察隊員が悲鳴を最後に通

信を途絶させたからだ。度重なる前線の兵士の失

踪に、本陣司令部の士気は完全に低迷していた。

『導力火炎弾がついて来る』とは、どういう意味

なのか。

 

「前の攻防戦における大敗の原因、導力火炎弾が

 ついて来るという報告の真相究明、どちらも間

 に合わなかったか」

 

「はい、攻防戦についてはそもそも部隊に残った

 生き残りの兵士自体が少なく、またその生き残

 りも精神に支障を来した者が殆どで具体的な情

 報は皆無に等しく、導力火炎弾の件に関しては

 全くもって不明です」

顔色の優れない作戦参謀が、パンドールの問いか

けに返答する。

 

「本陣の護衛は?」

 

「ワイバーンが90騎、既に直衛に就いています。

 残りは竜舎で休ませていましたが、現在出撃用

 意に入っております」

 

「90か·····多いか?」

 

「いえ、前の攻防戦で90騎のワイバーンが容易く

 全滅させられた事を考えれば、これでも少ない

 かと。無論出撃準備中のワイバーンの内60騎を

 加えますが、敵の攻撃力は未知数です」

 

「そうか···」

作戦参謀の言葉に、拭い去れぬ不安に苛まれてい

たパンドールは、その不安をより強め、周囲の部

下に悟られぬ様に嘆息した。

 

しかし、その不安は、次の瞬間に現実と化し、本

陣司令部はいよいよ混乱を極めた。

 

猛烈な地鳴り。鋼鉄の地竜の唸りがギムに響く。

後のクワ·トイネ公国陸軍にて、竜騎士に代わっ

て精鋭の象徴となる第一機甲旅団の鮮烈なデビュ

ー戦であった。

 

ロウリア軍は瞬く間に壊乱状態に陥った。

ロウリア軍の目には、連合軍が繰り出した数十両

の戦車は、いわゆる攻城兵器の類に見えた。

故にその運用方法に困惑した。

ロウリア軍での主な攻城兵器は破城槌だが、歩兵

の攻撃で無力化されるのを防ぐ為に護衛の兵をつ

けるのが常道だ。護衛の兵が存在しない攻城兵器

など、脅威になる筈がない。

 

先遣隊が持ち込んでいた大型弩弓(バリスタ)が、敵の攻城兵

器の内の一台に狙いを定める。敵の侵入を食い止

める重装歩兵や、その後方で防衛を支援する弓兵

も配置されていた。

 

脅威になる筈がない攻城兵器だったが、それを見

た兵たちは緊張を走らせる。

まず、自分たちが知る攻城兵器より遥かに速い。

加えて見たところ、全面を金属で覆われている様

だった。

 

「全身を金属で覆いながら、ああも速く動けると

 は···」

ギム防衛の最前線を担っていた指揮官は、敵攻城

兵器を竜の一種と判断した。

噂に聞く列強国·パーパルディア皇国陸軍が誇る

地竜、リントヴルムの様な―――

 

「第4から17、発射用意!」

全部で25台の既に矢を装填されている大型弩弓の

内13台が敵に向けられた。

比較的突出していた目標の敵は既に守備陣地から

100m前後まで接近しており、有効射程圏内に入

っていた。

 

「撃てぇ―――――ッ!」

矢羽が起こす風切り音と共に、計13本の大型の矢

が、次々と射出される。

 

金属で覆われているとなれば致命傷は与えられな

いかもしれないが、何かしらの反応は返って来る

だろう―――

 

ロウリア兵の多くはそう予想し、敵の反応に身構

えた。

 

だが、敵の反応は、彼らの予想を遥かに上回るも

のだった。

 

結局13本の内10本の矢は、敵の予想以上の速度に

よって偏差射撃に失敗し、地面に突き刺さるだけ

で終わった。

そして、残った3本は敵攻城兵器の捕捉に成功し

た、が―――

 

―――ガンッガンッガンッ!―――

当たった端から、その全てが鋼鉄の鎧に阻まれ、

跳ね返されてしまう。

 

(3本も矢が当たって悲鳴の一つも上げないとは、

 良く訓練されている)

竜の一種と判断していた指揮官はその練度の高さ

に感心した。

 

しかし、次の瞬間。

 

轟音。それも、複数箇所より。

敵攻城兵器、「戦車」に搭載された、37㎜戦車砲

の咆哮だった。

 

!?

それが何かという誰何の時間すら与えられないま

ま、指揮官の意識は強制的に消滅した。

 

「何だ!?何が起こった!?」

戦車の轟音に取り乱した作戦参謀が半ば恐慌状態

に陥りつつ叫ぶ。

その間、パンドールは「誰か護衛に続け!」とだ

け言うと、我先にと司令部から飛び出した。

 

そこにあったのは、一方的極まりない狩場であっ

た。無論、ロウリア軍が狩られる側の。

 

戦車の砲撃で重装歩兵や弓兵らを叩きのめされた

ロウリア軍の残党に、クワ·トイネ歩兵の銃撃に

よるアウトレンジからの猛追撃が加えられた。

また時折、ロウリア軍の重要な防衛箇所に、何か

が降って来る様な音の直後、原因不明の爆発が襲

い掛かった。オスマン帝国陸軍第十八歩兵師団の

支援砲撃だったが、ロウリア軍に知る由もなかっ

た。何だと思った次の瞬間には死んでしまうのだ

から。

 

そして、これらよりも遥かにロウリア軍の心に決

定的な一撃となったのは―――

 

「おい!あれを見ろ!!!」

ロウリア兵の一人がワイバーンが守る上空を指差

す。

 

すると突然、ギム上空を飛行していたワイバーン

の内29騎が、煙に包まれた直後、バラバラに寸断

される。続けて12騎、23騎、17騎と、ある者は避

ける暇もなく、ある者は避けても追尾され―――

 

「あ·····!あぁ···!!!」

「何で、何で」

「嘘だッ!」

 

次々と四散するワイバーンたちを見た兵たちは絶

望し、恐怖し、戦意を根こそぎ奪われていく。

今まで、ワイバーンの所有数はこの世界において

非常に正確な軍事力の指標の一つであった。

まさしく軍の強さの代名詞だった。

空において並ぶものなき絶対王者であり続けた。

 

そのワイバーンを実にあっさりと蹴散らした()()

は、ワイバーンなど及びも付かぬ程の速度でギム

上空を飛び回る。一瞬で自分たちの上を過ぎ去っ

たかと思うと、少々遅れてギム全体を覆うかの様

な爆音が木霊し、ロウリア兵たちに更なる恐怖を

植え付ける。

 

「は、速え!速すぎる!」

「ワイバーンなんて目じゃねえ!何なんだありゃ

 あ!!!」

ロウリア兵たちには少々気の毒だが、彼らの悪夢

はまだまだ終わらない。

 

飛び去って行った鉄竜は再び旋回して襲撃し、光

弾をワイバーンたちに撃ち込み、また11騎を墜落

させた。

 

最低でも100騎のワイバーンがいれば、炎神竜に

すら勝てると彼らは思っていた。

そして、彼らは出撃時には、400騎を超えるワイ

バーンを従えていた。

 

それが、いや、それなのに―――まるで既に趨勢

が決したテーブルゲームの様に、一方的に彼らの

自信の源は破壊されていた。撃墜された竜騎士と

ワイバーンの血肉が、真っ赤な雨となってギムの

町に降り注ぐ。

 

「そん、な···」

血の雨によって体を朱に染められたパンドールは

絶望し、呆然としていた。

かつての東部諸侯団のジューンフィルアを知る者

がいれば、「彼に瓜二つだ」と言っていた事だろ

う。そしてその最期も、彼にそっくりだった。

 

散々に暴れ回り、遂にワイバーンを全滅させた鉄

竜たちが去ったかと思うと、今度は東の空から新

たな鉄竜たちが襲来した。先ほどの鉄竜たちに比

べれば遥かに遅いが、それでもワイバーンよりも

速い。

そんな感想をおぼろ気に浮かべていると、その鉄

竜の腹が開き、筒の様な何かが多数投下された。

 

誰かが何だと声を上げた

ゆっくりと、生の終わりが、死が迫って来るのを

感じる

うっすらと見えていた先遣隊殲滅の幻視が、はっ

きりと、鮮明に

パンドールは、叫んだ

「間違いない、これは、古の―――」

言い終わらない内に、辺りに光が満ちる。

目を開けられない程の閃光が、人が到底耐えられ

ない灼熱の業火が、爆弾から発せられる鉄片の嵐

が、地上のロウリア兵たちを襲う。

 

第二次ギム攻防戦は、第一次のそれを上回る一方

的な戦闘に終始した。

本戦闘において、クワ·トイネ陸軍が満を持して

投入した最新鋭部隊、第一機甲旅団はオスマン陸

軍の支援砲撃に助けられつつ、戦車に抗する術を

持たないロウリア軍を次々と粉砕。

虎の子と言えたワイバーン全90騎も、オスマン空

軍の支援部隊機に傷一つ付けられぬまま全滅し、

制空権確保直後にロウリア軍本陣司令部をグラン

トペッグの爆撃部隊が襲撃。将軍パンドールはこ

の爆撃に巻き込まれ、この世から去って行った。

この爆撃はロウリア軍の指揮官の生き残りの殆ど

を消滅させてしまい、ロウリア軍は軍隊としての

体を成せなくなった。

爆撃から30分後、ロウリア軍の生き残りは連合軍

への降伏を申し出て、連合軍はこれを受諾。

 

こうして、第二次ギム攻防戦は戦術的·戦略的双

方において、クワ·トイネ公国の完勝で幕を下ろ

した。

 

しかし、連合軍にとっては第二次ギム攻防戦はこ

れからの作戦行動の一部分でしかなく、ギム奪取

から僅か2日後、治安維持目的にクワ·トイネ陸軍

から2個大隊1000を残しつつ、ロウリア有数の工

業都市ビーズルに向け進撃を再開した。

 

 

 

中央暦1639年9月11日 早朝 ロウリア王国

工業都市ビーズル

 

ロウリア軍は混乱の渦中にあった。

つい昨日ギムにいた先遣隊が壊滅したと聞いたと

思ったら、自分たちの間近まで敵軍が迫って来て

いるのだ。

敵軍が操る攻城兵器は、凄まじい速さで進撃して

来る上に、それに付いた筒の様な何かから轟音を

発したと思うと、その先にあった味方の陣地が爆

発を起こし、味方の混乱はより深まっていく。

加えて、敵軍の歩兵が持っている弓よりも長い射

程から自分たちを絶命させてくる武器や時折起き

る原因不明の爆発(恐らく敵の攻撃だろうが)によ

る被害も深刻だ。

 

「も、もう無理だ!俺は敵に降るぞ!」

横で敵の攻撃から身を隠していた味方兵がすぐ横

に降って来た謎の爆発に根を上げ、突然叫んだ。

 

「何を言っている!ここを失えば、我が国の継戦

 能力も失う。第一、敵軍は先遣隊が出した命令

 を知って激怒しているらしいじゃないか。今更

 敵に降っても、生かされるとは思えない」

「そうだ!それに国王陛下は亜人たちの殲滅を望

 まれている。俺たちが亜人相手に降伏するもの

 か!」

「俺だってそう思ったさ!だが、敵は強すぎる!

 もし今ここに王国軍が50万いたとして、勝てる

 と思うか?」

「···それは·····」

 

そうこうしている内に、先ほどからロウリア軍の

ワイバーンたちを蹴散らして我が物顔で空を飛ん

でいた敵軍の鉄竜が本陣司令部を旋回していたと

思うと、本陣司令部が一際大きな爆発に巻き込ま

れた。恐らく、上官たちは生きていないだろう。

 

「ロウリア軍の兵士たちよ、降伏せよ。

 我々は諸君らか抵抗しない限り、諸君らの命を

 保障しよう」

 

敵軍から人のものと思えない大音声で降伏の要求

が響いて来る。

本陣司令部の爆発に呆気を取られたロウリア兵達

に、その大音声はより強く響いた。

 

「·····もう一度言う。俺は降伏するぞ」

先ほど降伏を叫んでいた味方兵が武器を捨て、降

伏の準備を始めた。

既に周囲の味方兵に、彼の行動を罵り、止めよう

とする者はいなかった。

 

9月11日の早朝から始まったビーズル攻防戦は、

10万という先遣隊全体すら超える規模のロウリア

軍を相手に連合軍が終始圧倒。

正午直前に行われた弾着観測砲撃によって第二次

ギム攻防戦同様将官を失ったロウリア軍残党は最

終的に75000が降伏し、ビーズルを失ったロウリ

ア王国は気付けば陸軍全体の3割以上と海軍の半

数以上、ワイバーンに至っては作戦参加数の6割

以上が失われ、これらの再建の為の手段も失うと

いう、文字通り耐え難い損失を与えられていた。

 

 

 

機械化された戦闘部隊の圧倒的速度優位を以て空

陸一体の一撃を与え、敵を殲滅する。

異世界(地球)で生まれ、幾つもの歴史的勝利を造り出し

た電撃戦ドクトリンは、この世界においても、輝

かしい栄光を刻んだのだった。




K-1号戦車「パオット」
全長:5.6m
全幅:1.86m
全高:2.25m
重量:7.8t
速度:30㎞/h(整地)
   13㎞/h(非整地)
行動距離:85㎞
武装:37㎜戦車砲
装甲:最大27㎜
エンジン:55馬力
乗員:3名(車長兼砲手·操縦手·通信手)

クワ·トイネ陸軍が開発した軽戦車。
地球のルノーFT-17軽戦車をモチーフに設計された
が他兵器同様エンジンや魔信の為巨大化·高性能化
している。魔信によって各戦車間で連携を取る事
が可能。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。