愛和創造シンフォギア・ビルド (幻在)
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無印・永遠の巫女編
羽ばたくは剣、創るはビルド!


忠告!作者はシンフォギア初心者です!
まだ無印しか見ていません!
それでもOKな人は見てください!OKじゃなくても見てほしいです!


―――一つの戦いがあった。

 

「―――勝利の法則は決まった!」

 

愛と平和を愛した四人の戦士―――その最後の生き残りは、星を殺す超生物を倒すために最後の力を振り絞る。

 

ボルテックアタックッ!』

 

最期の一撃が、自らの最大の敵に直撃する。

 

「これで最後だッ!」

 

「この俺が滅びるだと・・・!?そんな事があってたまるか!人間如きにぃぃぃいい!!!」

 

星を殺す怪物は、最後まで悲鳴を上げ、されど、愛と平和の為に戦う戦士の前に敗れ去る。

 

 

想いは力と変わり、彼の者の力と成りて、前に進む礎とならん。

 

 

「うぉぉぉぉおおぉぉぉおぁぁぁぁああぁぁぁあああぁああ!!!」

 

 

絶叫する戦士は、ただ一人の相棒の名を叫ぶ。

 

 

「万丈ぉぉぉぉおぉぉおぉおぉおおおおおお!!」

 

 

そして、聞いた――――

 

 

 

 

 

 

天に羽ばたく、双翼の歌(ツヴァイウィング)を―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――新世界は、成された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そよ風に吹かれ、緑の匂いが鼻孔をくすぐる。

「――――い」

(誰だ・・・)

沈んでいた意識が、だんだんと浮上していく。

「―――さい」

まだ、微睡んでいたい。そんな欲求が体を支配している上に、そもそも体が休息を欲している。

だが、それでも、起きなければならない。

「お――さい」

誰かに呼ばれている。だから、起きなければ――――

 

 

――――新世界を、見なければ。

 

 

 

「おきなさい」

「・・・・」

桐生(きりゅう)戦兎(せんと)』が目を覚ます。すると、寝転がる彼の視界に、これまた綺麗な美少女が立っていた。

どこかのものであろう黒い制服。白鳥の翼のように白い肌。艶やかな青い髪。

このような絶世の美少女を、他に見た事があろうか。

「ここで何をしているの?」

だが、その少女の眼つきは鋭かった。

「く・・・つぅ・・・ここは・・・」

どうにか体を起こして、痛む頭を抑えつつ、戦兎は起き上がる。

「・・・・スカイウォール」

「え?」

だが、ここで戦兎はある事を思い出し、急いで立ち上がっては少女を押し退け、周りを見る。

 

 

そこに、国を隔てた壁(スカイウォール)は存在しなかった。

 

 

「スカイウォールが・・・ない・・・」

日本を三つに隔てた壁『スカイウォール』。それが綺麗さっぱり、跡形もなくなくなっていたのだ。

「ここは・・・俺が創造した新世界なのか・・・・?」

そう呟いた時、

「貴方、聞いているんですか?」

「ん?」

そこで、戦兎は初めて少女の事を認識した。

「ここで何をしているのですか?」

「え?何って・・・」

さてどう答えたものか。

ここで寝ていた。いや、それ以前に、何故この少女は寝ていた自分を起こしたのか。

もしここが公共の場であるならば、そんな無粋な事をする必要はない筈だ。

であるならば、ここは――――

「そんな事よりも聞きたい事があるんだけど」

「質問をしているのはこちらなんですが」

「ここって・・・どこ?」

「どこって・・・ここは私立リディアン音楽院です」

「がくいん・・・って事はここは・・・」

周囲を見回してみる。

どうにも視線が殺到していると思ったら、少女と同じ格好をした少女たちのほとんどがこちらを興味深そう、あるいは訝しそうに見ていた。

そして、ここにいる者全員が――――年端も行かない少女たち・・・・

「・・・・」

それを認識した途端、戦兎の全身から冷や汗が流れる。

「・・・まさか、女子高?」

「それ以外に何に見えるんですか?」

現実は非常である。

「最っ悪だ・・・」

戦兎はその場にうな垂れた。

「まさか・・・知らなかったんですか?」

「いやー・・・実は記憶が朧気で、気付いたらここにいたって感じで・・・」

まあ嘘は言っていない。偶然目覚めた場所がここだったし、昨日、というかさっきまで命懸けの戦いをしていて疲れていたのもある。

とにかく、決してわざとこの男子禁制の地に足を踏み入れた訳ではない。そう、決してだ。

「はあ・・・まあとにかく、警備員には突き出しますので大人しくしててください」

「げっ」

(おいおい目覚めて早々こんな展開ってないだろ!?)

このままでは女子校に侵入した変態というレッテルが張られかねない。

そうなれば、あの馬鹿にそのネタでどこまで笑われるか分かったものじゃない。

(ならば仕方がない・・・・)

戦兎は、自分のコートに、()()()()()がある事を確認して、

「悪い!悪気はないんだ!」

そう言って踵を返した瞬間、

「はっ?」

いつの間にか世界が反転していた。

否、この浮遊感に加えて、風になびかれる感じは――――

「ふげぁ!?」

「やはりやましい事があったか」

 

―――投げだった。

 

少女が、自分よりもでかい体格の戦兎を、なんの苦も無く投げ飛ばしたのだ。

「マジかよ・・・」

少女が近付いてくる。

「いっつつ・・・」

「覚悟しろ」

先ほどとは打って変わって言動がきつくなっている。

だが、ここで大人しくやられる程、天才物理学者は甘くない。

「悪いな」

「まだ起き上がれるのか」

戦兎は、起き上がると同時にポケットから()()()()()()()()()()()()()()()を取り出すと、それをシャカシャカと振り始める。

「ッ!何をするつもりだ?」

警戒する少女。

「何、お前らに危害は加えないよ」

次の瞬間、飛んだ戦兎は、常人にはありえないスピードっで一気に逃げ出した。

「なっ!?」

「悪い!縁があったらまた会おう!」

(もう会いたくないけどな!)

そんな事を思いつつ、戦兎はさっさと逃げていった。

「逃げられたか・・・しかし、あの身体能力・・・」

少女は逃げられた事に歯噛みしつつ、また戦兎の身体能力に関心を抱いていた。

そんな少女の視界の片隅に、何か、光るものがあった。

「ん?これは・・・」

それは、不死鳥の柄が入ったボトルだった。

「あの男の持ち物か?」

そう思いつつ、とりあえずは没収しておこうという事で、少女はそれをポケットに入れた。

 

 

 

それが、仮面ライダービルドこと桐生戦兎と、シンフォギア『天羽々斬』奏者の風鳴翼のある意味最悪の出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

どうにか私立リディアン音楽院から脱出した戦兎は、その街並みを見て回っていた。

「本当にここは・・・スカイウォールの無い、俺が創った『新世界』なのか?」

星を殺してまわった宇宙最悪の地球外生命体『エボルト』。そいつを消滅させ、新たな世界を創造する事。

父である葛城忍、戦兎の仲間、()と、桐生戦兎の悲願。

その結果が、目の前にある街並みか。

街は賑わいを見せ、人々は日常を生きるままに右往左往に行き来し、子供たちは無邪気に遊び、そして、平和―――

まさしく、平和そのものだ。

「本当に、上手くいったのか・・・?父さんの夢見た新世界が・・・・」

その街並みを見て、戦兎が一人、そう呟いた時、

 

《―――そうみたいだね》

 

聞き覚えのある声が、頭の中で響いた。

その声に、戦兎は嬉しそうに呟いた。

「ああ・・・本当に、実現したんだ・・・」

新世界創造は―――成功した。

見事エボルトを消滅させ、新たな世界を作り出す事に成功したのだ。

 

しかし、そこに一つのイレギュラーを残して。

 

戦兎の自らの中にいるもう一人の自分、あるいは、本来の自分ともいうべき存在『葛城巧』が言う。

 

《―――だが、新世界にいる彼らは、前とは違う十年を過ごした事になる。君の知っている彼らじゃない》

 

そのイレギュラーとは、戦兎自身。

この世界で、唯一戦兎だけが、もう一つの記憶を保持したまま、ここに存在している事。

 

即ち、彼だけが、『特別』なのだ。

 

葛城巧という天才科学者に、佐藤太郎という売れないバンドのメンバーに顔を与えて生まれた存在。あの世界で、エボルトがいたからこそ、誕生した存在。

 

唯一無二、それが桐生戦兎。

 

《―――本来なら『桐生戦兎』は新世界に存在しない。こうして創造主として生き残っても、君を知る者は誰もいないだろう》

 

葛城は、ただ淡々と、事実を述べる。

戦兎が、特殊な存在であるが故に。

戦兎はその事実に、ただ目を伏せるだけだった。

 

《―――そろそろお別れだ》

 

その言葉が脳内に響いた。途端、葛城の存在が、戦兎の頭の中から消えていく感覚があった。

おそらく、エボルトを倒すという目的を達成したために、幽霊的に言って未練が無い為に成仏する、といった所だろうか。

つまり、これから先は戦兎だけの体として生きていくことになる。

葛城巧は、桐生戦兎の中から消える。

 

《―――楽しかったよ・・・》

 

その言葉を最後に、葛城巧という存在は、戦兎の中から消えていなくなった。

それっきり、葛城の声は聞こえなくなった。

「・・・・」

正直、寂しくないと言えば嘘になる。だが、後悔はない。

こうして、エボルトを倒し、新世界を創造した。

達成感はあれど、そこに後悔はない。

 

そして、戦いの中で死んでいった、仲間たちも、きっと復活している事だろう。

 

 

仮面ライダーグリスこと、『猿渡(さわたり)一海(かずみ)

 

忠告を無視して、ブリザードナックルを使った変身を行い、心火を燃やして自らエボルトの擬態を殲滅せしめた男。

 

仮面ライダーローグこと、『氷室(ひむろ)幻徳(げんとく)

 

自ら悪役となり、そして、仲間の為に、その身を賭してエボルトのエボルトリガーを破壊してみせた、最後には英雄となった男。

 

そして、仮面ライダークローズこと、『万丈(ばんじょう)龍我(りゅうが)

 

唯一無二の友にして相棒、エボルトとの戦いを、最後のその時まで、自分と共にあった、最高の相棒だった男。

 

 

自分の目の前で消えていった者たち。仮令、自分の事を忘れていても、生きていてくれるなら、それでいい。

 

「生きていてくれたなら・・・・それでいい」

 

一杯の嬉しさの中に、ほんの少しの寂しさを込めて、戦兎はそう呟いた。

 

それで良いと、思ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――だったのだが。

 

 

 

 

 

「最っ悪だ・・・」

しばらくして分かった事があった。

 

―――ここは新世界じゃないかもしれない。

 

「ノイズってなんだ・・・特異災害対策機動部ってなんだ・・・」

自分の知らない用語が、どういう訳かこの世界では一般的だという事だ。

簡潔に説明すると、ノイズとは、人類共通の脅威、人類を脅かす特定特異災害だという事。

人のみを狙って襲い、そして触れた瞬間、その人間を自分ごと炭素の塊に変えるという。また、時間経過でも勝手に炭化し、自壊するらしい。

しかし通常の兵器などは一切通用せず、基本的な対応策としては、シェルターに逃げ込んでそいつらが自壊するまで待つというものだ。

そして、特異災害対策機動部とは、そのノイズに対して対策を講じている自衛隊組織であり、日々ノイズに対しての研究だとか対策を練っているという話らしい。

一応、この国の首相や首相秘書は氷室親子だ。

ついでに難波の名前もある。

そこは、前の世界と同じだ。

だが、全く違う世界である事には変わりはない。

「まさか、二つの世界が融合した際、ほぼ崩壊しかけていたこっちの世界の歴史が消滅して、逆にこっちの世界の歴史として構築されたって事か?」

自分たちとは違う十年を歩んだ世界。であるならば、自分たちの世界とは違う脅威があり、歴史があっても可笑しくはない。

「つまり、この世界は――――」

新世界である事には違いない。だが、戦兎の知る歴史を辿った訳じゃない世界、という事だろうか。

当然、この世界の住人は、世界が融合した事なんて気付く訳が無い。

戦兎の手には負えない、全く新しい世界という事だ。

「最っ悪だ・・・」

戦兎は、もう一度その言葉を口にして、その場に項垂れた。

こうなってくると、戦兎の手には負えないかもしれない。

あまりにも、自分たちの世界とは勝手が違い過ぎる。

 

――――しかし、

 

「ノイズ・・・か・・・」

人類を脅かす、驚異。

平和を乱す者。人類の天敵。

倒す手段も無い。守る手段も無い――――だが、戦兎の持つ、ライダーシステムなら、あるいは――――

「ま、見過ごせる訳もないしな」

戦兎は立ち上がる。

「いっちょ、この世界でも愛と平和のヒーローやりますか!」

見返りなど求めない。

それが彼の正義のモットーだ。

 

 

 

 

 

しかし、この世界でも正義のヒーローをやるといっても、拠点がなければどうしようもない。

「いくつか壊れてたのもあるから修理もしないとなぁ・・・かずみんとかに渡してたボトルもないし、今はあるだけのボトルだけでどうにかするしかないか。まあ、ドライバーとビルドフォンが生きてただけ幸いか」

そんな事を呟きながら、戦兎は街中を歩いていく。

丁度いい拠点を見つけなければ、最悪ホームレス生活なんてのもあり得る。

「さぁて、どうしようか・・・」

なんて、思っていたら――――

 

「ノイズだぁぁあああッ!」

 

「ッ!?」

誰かの叫びと同時に、場が一気に混乱へと陥る。

皆、一斉に走り出す。

悲鳴を上げ、生きるために全速力で走る。

その最中、戦兎は一人、その騒ぎの中心を睨みつける。

そこには、半透明の異形がいた。

全て、それぞれ何かしらの生物の形をとっており、人間型だったりカエル型だったりする。

「あれがノイズか・・・」

実際に対峙してみると、スマッシュとは違うものを感じる。

スマッシュは、元が人間なだけあって、人間らしい荒々しさが感じられたが、あれはどちらかと言うとただ人を殲滅する事を目的とした兵器という淡々とした感じがする。

「どちらにしろ、どうにかしないとな・・・」

その時だった。

「うわぁぁあああ!!」

一人の青年が転び、そこを狙ってノイズの一体がその男に絡みついた。

すると、ノイズは青年と共に、一気に炭化、塵となって消えた。

「なっ・・・!?」

そのスピードは凄まじく、触れられただけでも一瞬にして人を炭に変えてしまった。

「確かに人間を構成する物質の一部として炭素があるけど、いくらなんでも早すぎんだろ!」

()()している場合じゃない。

戦兎はポケットからウサギの柄が入ったボトル―――ラビットフルボトルを取り出すと、それを一気に振る。

「きゃぁぁああ!!」

一人の少女がノイズに襲われる。ノイズは、そのまま少女に覆いかぶさろうとするが、その寸前で少女が何者かにかっさらわれる。

「え・・・」

「大丈夫か?」

見ればいつの間にか戦兎が少女を抱き抱えて立っていた。

「早く逃げろ!」

「は、はい!」

戦兎は少女を降ろすなりそう叫び、少女が逃げた事を確認した所でノイズに向き直る。

「ったく、なんて数だよ・・・」

ノイズは数えるが億劫な程いる。

気付けば、住民のほとんどが逃げ切ったようで、その場にいるのは戦兎とノイズだけだった。

「よし、全員逃げたな・・・」

その時だった。

どこからともなくバイクのエンジン音が聞こえた。

「なっ・・・!?」

見れば、なんとノイズを押し退けて突っ込んでくる者がいた。

「何してんだ!?」

思わず怒鳴ってしまう戦兎。

だが、バイクに乗っている者は一群を突破した所で高く飛び上がった。

よく見ればヘルメットを被っていない上に、その少女には見覚えがあった。

「あいつは・・・!?」

それは、戦兎が目覚めて最初にあった少女だった。

そして少女―――風鳴翼は、一つ、歌を口ずさんだ。

 

「――――Imyuteus amenohabakiri tron――」

 

その瞬間、翼を眩い光が包み込み、そしてその姿を、全く違う者へと変化させる。

 

それは、鎧だった。

 

最も、戦兎から見れば、鎧と呼べるかどうか怪しいものだったが、それは間違いなく鎧だった。

翼がその鎧を纏った瞬間、周囲に何かのフィールドが展開され、その鎧を纏った翼は、その手に持つ刀で、戦兎の前に立つノイズを一掃する。

「何をしている!?」

そして翼は戦兎に向かって怒鳴る。

「何故避難しない!死にたいのか!?」

それを受けた戦兎の反応は――――

「すげえ!」

「は?」

だった。騒然翼は間抜けな反応を返す。

「一体全体どうなってんだそれ!?一体どうやって変身したんだ!?どんな技術なんだ!?どうしてなんか言葉を言うだけで変身出来るんだ!?なあなあな―――」

「ああ!鬱陶しい!」

無理矢理強制終了させ、翼はノイズに向き合う。

「とにかくお前は避難していろ!」

そう言って、翼はノイズの大群に向かって走る。

その時、戦兎の耳に、どこからともなく謎の音楽が流れてきた。

その音楽は、目の前の翼から聞こえてきているのだと、戦兎はすぐさま理解した。

そして、翼は歌を歌い、ノイズと戦う。

剣一本、見事に操り、敵を蹂躙する。

その剣は、様々な形へと変化し、時には巨大に、時には細く、時には分裂して驟雨の如く振らせる。

その風の猛威とも言える翼の猛攻に、ノイズはたちまちその数を減らしていく。

「すっげぇ・・・」

その戦いを見て―――というよりは、翼の操る刀の明らかに質量保存の法則を超えた変形に戦兎は目を奪われていた。

一体どのような仕組みなのか。材料はなんなのか。それら全てが戦兎の常識を超えていた。

そして、何十というノイズが屠られた所で、さらに巨大なノイズが出現する。

呼称は、強襲型(ギガノイズ)

「でかっ!?」

だが翼は引くことなくそのノイズに突貫する。

それに対してギガノイズが、翼を迎撃するべく小型のノイズを吐き出す。

しかし、翼はそれをものともしないで飛び上がり、その刀を巨大化、一気に振り下ろし、エネルギー刃を放ち、一気に両断する。

 

―――蒼ノ一閃

 

「このまま―――」

殲滅する。そう思い、次なる敵へ狙いを定めようとした、その時。

「きゃあ!」

「ッ!?」

まだ幼い少女の声が聞こえ、そちらに振り向けば、そこには、今にもノイズに襲われそうになっている少女がいた。

(そんな!?逃げ遅れたのか!?)

翼の予想通り、その少女は今まさに逃げ遅れたのだ。

まだ年端もいかない幼い少女。

その少女が、壁際に追い詰められ、今まさにノイズに襲われそうになっていた。

「くっ!」

翼はすぐさまその少女を助けるべく飛ぶ。だが、その間に別のノイズが割って入るもの。しかし、そのようなノイズは翼の敵ではない。

軽くあしらわれるだけだ。だが―――それでも間に合わない。

(ダメ・・・!)

間に合わない。そのような言葉が脳裏を過る。

そして、別の手段を思いつく前に、少女がノイズに覆い被らされる―――寸前、

 

何者かが少女をかっさらって、ノイズの攻撃から助けた。

 

「ッ!?」

その何者かが移動した先に翼は目を向ける。

そこには、今まさに一人の少女を抱えた男が、そこに立っていた。

「大丈夫か?」

「う・・・うん・・・」

少女はまだ怖いのか、震えていた。

「大丈夫」

そんな少女に、男は笑いかける。

少女を降ろし、そして、優しくその頭を撫でる。

「この正義のヒーローが今すぐ助けてやるからな。だから、安心してここで大人しくしてるんだぞ」

「・・・うん!」

少女は、頷く。

「よし!」

男が、立ち上がる。

振り返れば、そこには大量のノイズが今まさに男と少女に近付いてきていた。

そんなノイズと男の間に、翼が割って入る。

「無駄な威勢はよせ!あれはただの人間には倒せん!だから早く逃げろ!」

そう促す翼だが、男は、それを拒否する。

「逃げる?冗談はよしてくれよ」

「何?」

「この正義のヒーローが逃げるなんて、ありえないだろ」

「何を言っている?戯れはやめろ」

翼は、男の言葉に苛立ちを見せる。だが、男は―――戦兎はそんな事知った事かと言うように、懐からとある機械を取り出した。

手回し式のレバーに、円盤型のパーツの付いた、謎の機械。

それを、戦兎は腰に宛がう。

すると、腰に黄色いベルト――――『アジャストバインド』が巻かれ、その装置を腰に固定する。

それは―――ベルト。

桐生戦兎が、仮面の戦士に変身するための重要なアイテム。

 

その名も、『ビルドドライバー』。

 

ビルドドライバーが腰に取り付けられた所で、戦兎はポケットから二本の小さなボトルを取り出す。

赤いウサギの柄が入ったボトルと、青い戦車の柄が入ったボトルだ。

「何をするつもりだ?」

翼が、尋ねる。

「まあまあそこで見てなさいって」

戦兎はそう答え、そして、一度、手の中のボトルを見て、すぐにノイズの方を見た。

 

「――――さあ、実験を始めようか」

 

お決まりのセリフと共に、戦兎は、二つのボトル―――ラビットフルボトルとタンクフルボトルを振る。

そうする事で、ボトルの中にあるトランジェルソリッドを増大、活性化させる。

十分に振り、活性化させた所で、ふたの部分にあたる、シールディングキャップをボトルの正面に固定する。

そして、それを、ビルドドライバーのツインフルボトルスロットに差し込む。

 

ラビット!タンク!

 

ベストマッチ!』

 

ベルトから、その様なテンションの高い声が響く。

「らびっと?たんく?べすとまっち?なんだそれは・・・?」

一方の翼は混乱するばかり。

だが、構わず戦兎はビルドドライバーに取り付けられたレバー、『ボルテックレバー』を回す。

するとドライバーの円盤型パーツ『ボルテックチャージャー』が回転、装置内部の『ニトロダイナモ』が高速稼働。そして、ドライバーから透明なパイプのようなものが伸び、それが戦兎の周囲を囲う。

それに巻き込まれそうになった翼は距離を取る。

その間にも、透明なパイプ―――『スナップライドビルダー』という高速ファクトリーが展開され、その管を、赤と青の液体が流れ、そして、戦兎の前後にそれぞれ、形を形成していく。

 

ウサギと戦車。全く関係性のない二つの成分。それが今、戦兎を最強の超人へと変える『装甲(アーマー)』を象られる。

 

それが今、ベストマッチする―――

 

 

 

 

Are You Ready?

 

 

 

 

覚悟は良いか。そう問いかけてくる。

 

それに対する答えは、決まっている。

 

今までだってそうだ。そして、これからだってそうだ。

 

―――何故なら俺は、仮面ライダーなのだから!

 

 

「変身!」

 

 

ファイティングポーズと共に、そう叫び、そして、アーマーを形成したスナップライドビルダーが戦兎を挟む。

形成されたアーマーが戦兎の体を着装され、そして白い蒸気を噴き上げながら、赤と青の装甲を身に纏った戦士が誕生する。

 

鋼のムーンサルトラビットタンク!イェーイ!』

 

ちゃっかり決めポーズまで取って、戦兎は―――仮面ライダービルドは、今ここに参上した。

「なんなんだ・・・」

翼は呆然とし、少女は目をキラキラを輝かせて、その赤と青の戦士を見つめた。

 

「勝利の法則は、決まった!」

 

融合した、もう一つの世界―――その世界でまた、愛と平和を胸に戦い続けた戦士が、人々の平和の為に戦う――――

 




次回!愛和創造シンフォギア・ビルド!

「ちょーっと待って」

仮面ライダーとなり、ノイズを蹴散らす戦兎。

「貴方をこのまま返す訳にはいきません」

「なんで?」

そして問答無用で手錠を掛けられる戦兎。

そんな戦兎を待ち構えるものとは?


次回『兎と剣のムーンサルト』


「貴方の戦う理由は何?」



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兎と剣のムーンサルト

戦「天っ才(てぇんさぁい)物理学者の桐生戦兎は、見事エボルトを倒し、新世界を創る事に成功した。だが、その世界ではノイズという脅威が人々を脅かしていたのでした」

翼「おいなんだこれは!?聞いてないぞこんなの!」

戦「こっちじゃ当たり前なあらすじ紹介ってやつだよ。察しろ」

翼「察しろってお前、私たちはこれでも初対面だぞ?」

戦「そんなの関係ないよ細かい奴だな。とにかく、この世界でも愛と平和を愛する正義のヒーロー『仮面ライダービルド』として戦う事を決意した俺は、前回にしてついに変身するのであった!」

翼「そして私の事については何も触れないのか・・・」

戦「この物語の主人公は俺だからな」

翼「はあ・・・もういい。えーっと・・・・」←台本読中

戦「そんなわけでど―――」

翼「どうなる第二話!」

戦「―――って俺のセリフを取られた!?」

翼「はっ!」




作者「前回のタイトルとか変えました」


――――少女の歌には、血が流れている。

 

 

 

 

戦兎が仮面ライダービルドに変身した時、特異災害対策機動部二課では、今まさに、正体不明の戦士の登場に混乱していた。

「なんだ奴は!?」

そこの司令官である『風鳴(かざなり)弦十郎(げんじゅうろう)』は、すぐさまビルドの正体を探ろうと指示を飛ばす。

「分かりません!」

「対象からのエネルギー検出量は確認出来ず!」

「アウフヴァッヘン波形も検知出来ず、全くもって未知なる存在です!」

「正体不明の謎の戦士だとでもいうのか・・・!?」

そして今、モニターの前で、正体不明の謎の戦士、仮面ライダービルドが動き出す。

 

 

 

 

「お前は・・・一体・・・・」

翼が、目の前で変身した戦兎―――仮面ライダービルドに問いかける。

その問いかけに、ビルドは快く答える。

「仮面ライダービルド。作る、形成するって意味のbuild(ビルド)だ。以後、お見知りおきを」

そう名乗った時、ノイズが一斉にビルドに襲い掛かる。

「ッ!」

すぐさまノイズを迎撃しようとする翼。しかし、その前にビルドが立ち塞がる。

「だからそこで見てなさいって」

そう言うと、ビルドは一度腰を落としてから、左足で一気に踏み出す。すると、ほぼ一瞬にしてノイズとの距離を詰め、そのまま一気に殴る。

すると殴られたノイズは吹き飛び、一瞬にしてその体を炭素の塊へと返す。

「お、やっぱ効くじゃねえか!」

一方のビルドの体に異常はない。これなら、問題なく戦える。

さらなるノイズが襲い掛かる。しかしそれをビルドは何の苦もなく躱し、さらに反撃で一撃二撃と殴り飛ばす。

さらに人型(ヒューマノイド)ノイズが背後から襲い掛かるが、突如としてビルドドライバーから再びスナップライドビルダーが展開されたかと思うと、それが一つの武器を形成する。

あの戦いで唯一壊れておらず、そして一番使い慣れたビルドの武器『ドリルクラッシャー』だ。

それを片手に一薙ぎ一閃。範囲内にいたノイズが纏めて消滅する。

さらにノイズがビルドに襲い掛かるも、ビルドは一切慌てた様子もなしにノイズを蹴散らしていく。

「すごい・・・」

その戦いぶりに、翼は呆気にとられる。

「数が多いな・・・」

一方のビルドは、その数の多さに少し鬱陶しさを感じていた。

「これでいくか」

それで取り出したのは、ハリネズミの柄が入ったフルボトルだ。

「今は武器がないから、これで我慢してくれよっと」

 

ハリネズミ!』

 

それをラビットフルボトルと入れ替え、ボルテックレバーを回す。

ボルテックチャージャーが回転し、スナップライドビルダーがすぐさま展開し、そのパイプの中を、白い液体が流れ、新たなアーマーを形成する。

 

『Are You Ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

白い装甲が、赤い装甲の上に重なるようにビルドに装着される。

白い装甲が重なると同時に赤い装甲は粒子となって消え、そして白い装甲がビルドの新たな装甲となって合着する。

それは、ベストマッチとは違う、いわゆる『トライアルフォーム』と呼ばれるものだった。

 

その名も、『仮面ライダービルド・ハリネズミタンクフォーム』

 

しかしそれでもノイズはなおもビルドを攻撃する。だが、襲い掛かってきた大量のノイズに対して、ビルドがやった行動は、()()()()()()()()()()

そのままノイズの集団がビルドにある範囲まで近づいた瞬間―――

 

右手を包むグローブの棘が突如として伸び、襲ってきたノイズを全て串刺しにする。

 

「な・・・・!?」

その鋭さと範囲の広さは凄まじく、一瞬にしてそのノイズたちを炭素へと変える。

すぐさま針は元に戻り、ビルドは、一気にノイズを殲滅するべくノイズの集団に向かって行く。

「うぉぉぉぉぉお!!」

肩と手の棘を利用しての突撃(チャージ)で、ノイズを一気に蹴散らす。

その最中で、強襲型のノイズが戦兎を踏み潰さんとその巨大な足を上げる。

「うおっと!」

そのノイズの踏み潰しを躱し、戦兎は、新たに二つのフルボトルを取り出す。

「お前にはこいつだ!」

シャカシャカと振り、宝石の柄の入ったフルボトルと、ゴリラの柄の入ったフルボトルをスロットに差し込んだ。

 

ゴリラ!』ダイヤモンド!』

 

ベストマッチ!』

 

更なるベストマッチ。

それが意味する事は、ビルドの新たな力のお披露目。

ボルテックレバーを回し、そして、スナップライドビルダーを再展開する。

 

『Are You Ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

スナップライドビルダーが、ビルドを挟み込む。

 

輝きのデストロイヤーゴリラモンド!イェイ・・・!』

 

纏われたのは茶色と水色の装甲。

右腕には、見るも巨大な剛腕が形作られ、一方の左側は眩い宝石の光を放っていた。

「今度はダイヤとゴリラだと!?一体何の関係がある!?」

すかさず翼のツッコミが炸裂する。

「俺だって知らないよ!?まあいい!」

ビルドはノイズと向き合う。その間にも、ノイズは今にもビルドを踏み潰そうとしていた。

だが、ビルドは敢えてよけず、その足をまさかの()()()()()()()()()()

するとどうだ?剛腕から放たれた一撃は、淡くもノイズの足を押し返すどころか見事に粉砕してみせた。

その怪力に、さしもの翼も唖然とする。

そして―――ビルドはボルテックレバーを回す。

何回か回した所で、ビルドは手頃なノイズの元へ向かう。

 

Ready Go!』

 

ビルドは、手頃なノイズに触れると、その瞬間、そのノイズが宝石に包まれる。

そして、右の剛腕を引き絞って―――

 

ボルテックフィニッシュ!』

 

その塊を砕いて、宝石を―――ダイヤモンドを散弾銃の如く散らばらせ、ノイズを一気に殲滅する。

しかし、それほどの広範囲攻撃をしたにも関わらず、ノイズはまだ残っていた。

「やれやれ、しつこい男は嫌われるぞ。あれ?こいつらに性別なんてあったっけ?」

なんてことをぼやいていると。

「ん?」

どこからともなく、聞き覚えのある曲が流れてきたかと思うと、

 

「―――去りなさい!無想に猛る炎、神楽の風に滅し散華せよ!」

 

そして、聞き覚えのある声で、その歌が聞こえた来た瞬間、ビルドの目の前のノイズが一瞬にして一層される。

 

千ノ落涙

 

「うお!?」

そして、目の前に、一人の少女が降り立つ。

この場において、ビルド以外にノイズを殲滅せしめる力を持つのは、ただ一人。

 

風鳴翼だ。

 

翼は、歌を歌いながら、背後のビルドを見る。

「やれやれ、見てろって言ってたんだけどな」

仕方がないとでも言うように、ビルドは翼の隣に立つ。

「仕方がない。一緒に戦うぞ」

その言葉に翼はただ頷くのみ。

 

鋼のムーンサルトラビットタンク!イェーイ!』

 

ビルドは再びラビットタンクフォームに戻り、取り出したドリルクラッシャーをガンモードに変形、ハリネズミボトルを差し込んでノイズを迎え撃つ。

そして、その前に翼が出て、接近して敵を叩く。

ビルドの放つ針状の光弾がノイズを叩きつつ、翼がその刃を振るい、ノイズを一気に殲滅する。

翼が逆立ちし、その足を大きく広げて回転しだせば、脚部のブレードで一気に敵を薙ぎ払う。

 

逆羅刹

 

そのまま敵を一気に殲滅していく中で、またもや強襲型が姿を現す。最後の一体だ。

(このまま・・・)

「おっと!止めはこの天っ才に任せな」

「な!?」

そのまま一気に倒そうとした翼を止め、ビルドはボルテックレバーを回す。

「ちょーっと待って」

(は?)

次の瞬間、ビルドはそのノイズから背を向けて走り出す。

「何をしてるんだ!?」

思わず怒鳴る翼だが、ビルドは何も無意味な行為をしている訳ではない。

何歩か走った所で、ビルドは思いっきり地面を踏む。するとその地面が抜け、ビルドは一気に地中に沈む。

その間に、どこからともなく白いグラフが現れ、そのX軸がそのノイズを挟み込み、拘束する。

「これは・・・!?」

それが、ビルドの必殺技の前兆だと、翼は知る由もない。

 

Ready Go!』

 

そして、ビルドが穴から飛び出し、Y軸上へ飛ぶ。そして、展開された放物線に沿うように、ビルドはノイズに向かって蹴りをぶっ放す。

 

ボルテックフィニッシュ!イェーイ!』

 

放たれた必殺の一撃。右脚の裏にある『タンクローラーシューズ』の無限軌道装置(キャタピラ)が、敵の皮表面を一気に削り取り、貫く。

そして、その必殺の蹴撃を喰らったノイズは、炭素の塊となり、消滅した。

その様子を見て、戦兎は振り返る。

「よし、終わり!」

見れば周囲には、翼とビルド、そして逃げ遅れた女の子のみ以外、炭素の塊しかなかった―――

 

 

 

 

 

数十分後――――

自衛隊であろう組織が現場にやってきて、『立入禁止』と書かれたバリケードを設置。

事態の収拾を行っていた。

その最中で、戦兎はこっそりノイズの炭素を回収しようとしていた。

「よーし」

無事、余っていた空のフルボトルの中にノイズの炭素を入れる事に成功した戦兎。

やはり科学者、探求心と好奇心は留まるところを知らない。

誰にも見られていない事を良い事に好き勝手したい放題である。

そんな中で、戦兎は現場の様子を見渡した。

「しっかし、仕事が速いな・・・」

その場にいる者たちは、それぞれのエキスパートなのか、役割を分担し、炭素の回収や侵入者が入らないように警備をし、保護した少女の面倒もしっかりと見ている。

何度もこういう事を経験していなければ出来ない迅速な行動だ。

「何度もあるんだな・・・こういう事」

ふと、戦兎は新世界を創造する前の事を思い出す。

 

そういえば、自分も戦う事が日常茶飯事だったな。

 

(あの時は自分探しとかで色々やってたけど、あの戦いがあったから今の俺があるんだよなぁ・・・)

宿敵に、生まれてくるべきではなかったと言われた。

だけど、今の『桐生戦兎』と『仮面ライダービルド』を創ったのは、仲間の存在があったからだ。

この胸に『愛と平和(ラブ&ピース)』を掲げられるのも、その仲間たちがいたからだ。

「今どうしてんだろうな・・・」

かつての仲間たちは、この世界で、一体どうしているだろうか。

会いたいとは思う。だが、彼らはきっと、桐生戦兎の事など覚えてはいないだろう。

それでも、会いたい事には変わりない。

「はあ・・・」

「お母さん!」

ふと、あの女の子の嬉しそうな声が聞こえた。

どうやら、母親と再会できたようだ。

「お母さん・・・!」

「ああ、良かった・・・」

その様子を見て、戦兎は思わず顔を()()()()としてしまう。

「良かったな」

「あ、おじさん・・・!」

「おじっ・・・まあいい。ちゃんとお母さんに会えてよかったな」

「うん・・・!」

「あの、もしかして貴方が・・・」

母親が、戦兎を見る。

その問いかけに、戦兎は立ち上がって高らかに言った。

「ええ!この天才物理学者にして自意識過剰な正義のヒーロー桐生戦兎がお助けしました!」

そんな完全にイキっている名乗りをする戦兎に、母親は呆然とするが、

「本当だよ。おじさんが助けてくれた・・・」

「そう・・・・ありがとうございました。娘を助けていただいて」

「いえいえ」

深々と頭を下げる母親に、戦兎は当然の事のように謙遜する。

「あの、お礼は必ず」

「ああ、いいっていいって、そういうのの為に助けてる訳じゃないから」

「ですが」

「大丈夫!もし、何かお礼がしたいなら、そのお礼を娘さんの為に使ってやってください」

「しかし・・・」

「俺はいつだって無償で人を助ける正義のヒーローですので」

そう言って、戦兎は最後までお礼を受け取ろうとはしなかった。

そんな中で、一人のスーツを着た女性が話に割り込んできた。

「お取込み中すみません。この同意書に目を通した後、サインをして頂けますでしょうか?」

そう言って、女性は母親に何やらタブレットを見せた。

「本件は国家特別機密事項に該当するため、情報漏洩の防止という観点から、貴方の言動、及び、言行には今後、一部の制限が加えられる事になります。それと―――」

「えーっと・・・結構あるな・・・・」

とりあえず、ある程度の挨拶をした後にその場を離れ、その親子が無事に帰っていく所を見届けて、戦兎は、先ほどからこちらを監視していたあの少女を見た。

戦兎の視線に気付いた少女は、すぐさま戦兎に近寄る。

「さっきはありがとうな」

「別に、当然の事をしたまでです」

「そっか・・・あ、そういやお前のあの鎧ってなんなんだよ?」

「まだ引きずるか!?」

「科学者として探求したいのは当然だ!」

そう言って、物欲丸出しで翼に歩み寄ろうとする戦兎。

その戦兎をどうにか押しとどめて、翼は戦兎に告げた。

「とにかく、貴方をこのまま帰す訳にはいきません」

「はあ?」

「特異災害対策機動部二課まで、同行して頂きます」

「ああ、別にいいけど―――」

 

ガチャン

 

問答無用で手錠を掛けられる。

「・・・なんで?」

「すみませんね。貴方の身柄を、拘束させていただきます」

「ッ!?」

戦兎が気付かない間に、彼のすぐ傍に、所謂優男的な男が立っていた。

その気配を、一切気付かせないで。

(いつの間に・・・!?)

なんて思っている間に車に押し込まれ――――

 

 

 

「・・・ここって・・・確か女子校だったよな?」

そうして連れてこられたのは、戦兎がこの世界で最初に目を覚ました『私立リディアン音楽院』だった。

だがそれに答えてくれる者はおらず、そのまま手錠を掛けられたまま廊下を歩く。

「ほえー・・・」

とりあえず道順を覚えるべく、廊下を見回す。

随分と綺麗に掃除されており、設備から見ても、名門だという事も窺い知れた。

そんなこんなで中央棟に案内され、そこのエレベーターに乗る事になる。

男がエレベーター内のある装置に端末を掲げると、扉が閉じると同時に何故か隔壁のようなものが閉まり、さらに床から取っ手のようなものが出現した。

「どーなってんだこれ!?」

当然食いつく戦兎。

「下に設置されてたのか?だとするならば格納する必要がある筈だ。おそらく折り畳み式でさっきの端末を掲げる事で何かのスイッチが起動してそれで―――」

「あのー、危ないので掴まってください」

男に促されつつ、その取っ手に掴まる戦兎。

はて、何故このような取っ手に掴まる必要があるのか。

なんて思っていると、

 

突然、エレベーターが落ちた。

 

「うぉぉぁぁぁぁああぁああぁぁあああぁぁあああ!?」

凄まじい絶叫が戦兎の口から吐き出される。

「び、びびったぁ・・・どうなってんだこりゃ・・・」

どうやら凄まじい速度で降りているようだ。

一体、この下になりがあるというのか。

そうしてしばらくすると、突如として視界が開け、そこで見えたのは、様々な模様の描かれた壁が円柱状に描かれている光景だった。

「どうなってんだこりゃ・・・」

もう一度、同じ言葉を言う戦兎。

一体、どれほどの時間をかけてこのような空間を作ったというのだろうか。

戦兎は最初から最後まで興味深々であった。

そんな戦兎の様子を、翼はじっと観察していた。

そうして、エレベーターが止まり、そしてさらに案内された先で――――

 

突如としてクラッカーの音が炸裂した。

 

「ようこそ!人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へ!」

やけにガタイの良い男が、そう言い、その周囲ではここの職員と思われる者たちが拍手で戦兎を出迎えていた。

その上の横断幕では、『熱烈歓迎!仮面ライダービルド様』と書かれていた。

その様子に翼は頭を抱え、側にいた優男は苦笑するだけだった。

「は、はは・・・最っ高だ!」

そんでもってなぜか戦兎は嬉しそうだった。

 

 

 

 

「では改めて自己紹介だ。俺は風鳴弦十郎。ここの責任者をしている」

「そして私は出来る女と評判の櫻井了子。よろしくね」

ある程度落ち着き、手錠を外してもらった所で、自己紹介を始める弦十郎と了子。

「天っ才物理学者の桐生戦兎です!よろしく」

そして戦兎はここぞとばかりに名乗る。

「天才・・・?」

それでもって翼は首を傾げるだけだった。

「君をここへ呼んだのは他でもない。協力を要請したい事があるからだ」

「あのノイズとかいう化け物の事だろ?もちろんいいぜ」

即答する戦兎。

「それもある・・・が、我々が真っ先に知りたいのは、君が変身した、あの『仮面ライダービルド』という姿と力についてだ」

まあ、そうだろう。

あれは彼らにとっては未知の力だ。

地球外生命体エボルトを倒す為に、戦兎の父親の葛城忍が設計し、そして戦兎そのものである葛城巧が創り上げた究極の防衛システムにして兵器だ。

そう易々と教える訳にはいかない。

故に、

「それについては、俺から条件がある」

「なんだ?言ってみろ」

「そこの女の子が使ってた鎧について教えてくれ。それが、俺の持つ仮面ライダーという情報への対価だ」

科学はいつだって等価交換。特に、ライダーシステムだけは絶対に秘匿しなければならない力だ。

それ相応の対価がなければ、話せない。

「ふむ・・・いいだろう。その代わり、こちらが話したら、お前も『仮面ライダー』について教えてくれ」

「よし、交渉成立」

そうして、手頃な部屋にて、あの鎧の事について説明を受ける事となった。

 

 

その部屋にて。

座って向かい合う戦兎と弦十郎。その弦十郎が、後ろに控える翼に視線で合図を送る。

それに、翼は服の下に入れていたネックレス―――その先にある、宝石を取り出す。

「『天羽々斬(あめのはばきり)』、翼の持つ第一号聖遺物だ」

「聖遺物・・・遺跡だとかから発掘された、古代の遺産だとかなんかか?」

「厳密にいえば、世界各地に存在する伝承に登場する、現代の技術では製造不可能な異端技術の結晶の事。多くは遺跡から発見されるんだけど、経年による破損が著しくって、かつての力を秘めたものは本当に希少なの」

「へえ・・・つまり、そこの奴が持ってる宝石みたいなものも、本来のもののほんの一部って事なのか。んでもって力を開放する為には歌を・・・いや、特定の波長をもった声じゃないとダメなのか」

「お、天才と名乗るだけはあるわね。そう、かけらにほんの少しでも残った力を増幅して、解き放つ鍵が、特定振幅の波動なの」

「なるほどなるほど・・・となると・・・」

頭をフルに回転させて、戦兎は一つの結論を導き出す。

「その活性化した聖遺物を一度還元して鎧として身に纏ったのが、あの鎧って事か・・・」

「それが、翼ちゃんの纏うアンチノイズプロテクター『シンフォギア』なの」

「シンフォギア・・・」

自分の知らない、未知の力。よもや、歴史や伝承の産物が実在し、その力を利用する技術を開発してみせるとは。

世界とは広いものだ。

「だからと言って、誰でも纏えるわけではない。聖遺物を起動させ、シンフォギアを纏える歌を歌える僅かな人間を我々は、適合者と呼んでいる」

「それが、そこの女の子という訳か」

などと返事を返していると、ふと周囲の視線が何やら奇妙なものでも見るような視線であることい気が付いた。

「・・・あれ?俺何かまずい事でも言った?」

「・・・君、風鳴翼を知らないの?」

「風鳴翼?そこの女の子の事か?」

その返しに、周囲は酷く驚いたような表情になる。

戦兎は、ますます訳が分からなくなり、首を傾げるだけ。

「この国民的トップアーティストの風鳴翼を知らない人間がいるなんて・・・」

「どんだけ世間知らずなんだ・・・・」

「・・・え?何?俺何か悪い事をした!?」

その場に居合わせている男女二人組の物言いにさしもの戦兎も混乱する。

「落ち着きたまえ戦兎君。そうだな・・・こいつの名前は風鳴翼。俺の姪に当たる奴で、この日本じゃ知らぬものはいないと言われる程の大人気歌手だ」

「日本で知らぬものはいないって・・・すごいなそりゃ」

「・・・どうも」

翼はそっけなく返す。

「まあ、翼ちゃんの紹介はこのぐらいにして、どうかしら?シンフォギアについては少しは理解できたかしら?」

「まあな。俺の知らない技術があるとは、やはり世界は広いものだ」

戦兎はうんうんと頷く。

「それじゃあ、今度は君の番だ」

「っと、そうだったな」

そこで戦兎は少し考え、そして、説明するための文章を脳内で構築。

それを速攻で組み立てて、戦兎は懐からビルドドライバーを取り出して、それを目の前の机の上に置いた。

「これは・・・」

「ビルドドライバー。この俺の発・明・品!にして、仮面ライダーに変身するための必須アイテムだ」

そして、二つの小さなボトル『ラビットフルボトル』と『タンクフルボトル』を取り出し、それをビルドドライバーの横に置く。

「そんでもって、これはフルボトルと言って、特殊な成分が入った特別なボトルだ」

それらを並べて、戦兎は話す。

「この二つを使って、変身する――――」

 

 

 

 

 

 

「―――と、いう訳だ」

戦兎は、仮面ライダーの事を隅々まで話した。

流石に新世界創造だとかエボルトだとかの事とかは伏せ、自分は父親の設計したものを完成させたとか適当な事(嘘は言ってない)を抜かしつつ、重大な部分だとかはぼかして説明した。

ボトルの成分だとか、このスカイウォールの無い世界では、というかエボルトがいなければ製造されていなかった代物であるが故に、既に作られていて、そしてそれを創った父親は死んでいるという事にしておいた。

こういう理由なら、複製しようなんて考える者もいないだろう。

「なるほどな」

ビルドに事について話しきると、弦十郎は腕を組んで頷く。

「にわかに信じられんが、あの姿と強さも見れば、それもうなずける」

「この小さなボトルが、ねえ・・・」

「・・・」

(あの驚異的な身体能力は、あのボトルの所為だったのか・・・)

了子がラビットフルボトルを片手に、信じられないとでも言うように呟き、一方の翼は、戦兎が見せた身体能力について、合点がいったという顔をしていた。

そこで試しに了子がラビットフルボトルを振り、移動して見せると。

「うわっと!?」

凄まじい速度で部屋を駆け巡った。危うく壁にぶつかりそうになるも、ギリギリの所で止まる。

「すっごぉい!本当なのね!振ればボトルの力を使えるのって!」

了子が興奮している傍ら、弦十郎は真剣な眼つきで戦兎に尋ねる。

「戦兎君。そのビルドドライバーは誰でも扱えるのか?」

それは、おそらく、戦えない者故の問いかけだろう。

あんな、年端もいかない少女に、人類守護の要を任せる。それが、大人にとってどれほど悔しい事か。

しかし、戦兎は首を横に振る。

「いや、使えるのは、ある条件を満たしている人間のみだ」

「その条件とは?」

「・・・・ハザードレベル。いわゆる、ベルトを使うための能力値って奴か・・・」

かいつまんで説明してみる。

 

ハザードレベル。

それは、かつてのスカイウォールから抽出される『ネビュラガス』に対する耐性を意味する。

普通の人間では、注入した時点で消滅、あるいは『スマッシュ』と呼ばれる怪人へと変異してしまう。

だが、極稀にネビュラガスを注入されてもスマッシュにならないケースの人間が存在し、そういった人間のみ、ライダーになる事が出来る。

 

戦兎は、その水準がどれくらいのものかというものを伏せて、あくまで仮面ライダーになれる基準として弦十郎に説明する。

「そうか・・・」

弦十郎は、非常に残念そうにそう返事を返した。

その様子を見かねた戦兎は、立ち上がって言う。

「大丈夫だって!この正義のヒーローの桐生戦兎が、ノイズの脅威から人々を守りますから!」

「自分からヒーローだというか。変わってるな君は」

「ヒーローですから」

なんの恥ずかし気もなく言ってのける戦兎に、弦十郎は笑う。

一応、調子を取り戻したのか、弦十郎は立ち上がって戦兎に問いかける。

「では、協力してくれるって事でいいかな?」

「ああ。人々の平和を守るのも、仮面ライダーの仕事だからな」

「なら歓迎しよう、桐生戦兎君。君を正式に二課の職員として認める。今後の活躍を期待している」

「こちらこそ、よろしく」

そう言って、握手を交わす二人。

だがそこで、今まで沈黙を貫いていた翼が、口を挟んだ。

「司令、少しよろしいでしょうか」

「ん?どうした翼」

弦十郎の問いかけに、翼は、戦兎と向き合った。

「何故、ヒーローであることに固執する?」

「え」

「それは生半可な覚悟で口にしていい言葉ではない。ましてや、我々が相手にしているのはノイズ。普通の人間では、太刀打ちする事すら出来ない、人類の天敵だ。そんな脅威を前にして、貴方は果たして、その信念を貫けるの?」

「・・・・」

翼は、問いただす。

「貴方の戦う理由は何?」

その、翼の鋭い視線と問いかけに、戦兎は、答える。

 

「―――『愛と平和(ラブ&ピース)』」

 

それは、即答だった。

何の躊躇いもなく、惜しげもなく、するりと戦兎の口から出てきた。

しかし、それは戦兎にとってはあまりにも当たり前な言葉。

彼の、信念を体現したかのような言葉だ。

「・・・愛と平和の為と言うか」

「一つ教えといてやる。くしゃっとなるんだよ」

「くしゃ・・・?」

戦兎の言葉に、訳が分からず翼は首を傾げる。

「誰かの力になれたら、心の底から嬉しくなって、くしゃっとなるんだよ。俺の顔」

それは、あの時、小さな女の子が母親と再会できた時に戦兎が見せた笑顔。

誰かの力になれた。誰かの為になれた。そう思うだけで、戦兎は心の底から嬉しくなって、その笑顔を見せる。

愛と平和(この言葉)が、この現実でどれだけ弱く脆い言葉かなんて、分かってる。それでも俺は謳うんだ。愛と平和は俺がもたらすものじゃない。一人一人がその思いを胸に生きていける世界を創る・・・その為に、俺は戦う」

確固たる意思をもって、戦兎は翼に言い切って見せる。

愛と平和を胸に生きる、桐生戦兎だからこそ言える、彼の捻じ曲がる事の無い信念。

「・・・それは、決して容易い道じゃない」

「知ってる。だけど俺はその為に科学者になったんだ。どれだけ時間がかかってもいい。俺は、そんな世界を目指したい」

生半可な覚悟などではない。

戦兎は、ことこの事に関しては本気も本気だ。

「・・・・そうか」

それを改めて理解した翼は、手を差し出す。

「私は風鳴翼。第一聖遺物『天羽々斬』のシンフォギア奏者にして、防人だ」

それに、戦兎は答えるように、その手を握り返す。

「俺は桐生戦兎。仮面ライダービルドで天才物理学者だ。よろしくな」

 

 

愛と平和を胸に戦う正義の兎と過去を引きずりなおも戦う比翼の剣―――相反する二つの性質を持つ二人。

 

それが、新たなベストマッチ(シンフォニー)を生み出すとは知らずに。

 

しかし、彼らは知る由もない。

 

 

 

 

 

 

今、この瞬間、強大な魔の手が迫ってきている事に――――

 

 

 




次回の愛和創造シンフォギア・ビルドは!

「天才物理学者の桐生戦兎です」

まさかの教師に就職する戦兎。

「何故これとこれがベストマッチとかなんだ?」

「すごいでしょ?最っ高でしょ?天っ才でしょ?」

ビルドについて興味津々な翼。

「ノイズです!」

そしてまた出現するノイズ。その渦中に、戦兎は、相棒の姿を目にする。

次回『覚醒!完封!クローズ&ガングニール!』

「ば、万丈・・・!?」


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覚醒!完封!クローズ&ガングニール!

戦「天才物理学者にして仮面ライダービルドこと桐生戦兎は、この世界でノイズとやらと戦う特異災害対策機動部二課の一員として今日もノイズと戦って・・・」
翼「だから私を忘れるなといっているだろう!?」
戦「うるさいな!この物語の主人公は俺だぞ!?」
翼「そう思っているのは今の内だがな・・・まあとにかく、同じく特異災害対策機動部の者にしてシンフォギア奏者である風鳴翼は、今日も仮面ライダービルドと共にノイズと戦う日々を送るはめとなった。まあ私はまだ信用はしていないがな」
戦「何気に酷いなお前・・・」
万「なあ、俺の出番まだか?」
戦「お前はまだ出てないんだからここに出てくんなよ。馬鹿なの?」
万「馬鹿じゃねえ!筋肉つけろ筋肉を!」
響「ツッコむ所そこじゃないと思いますけど・・・あ、どうなる第三話!」
戦「ぽっと出にセリフとられた!?」



この国の首相は氷室さんじゃないとか言ってましたが編集して氷室さんにしました。
確認をお願いします!

戦「そうなるぐらいなら始めにそうしとけ!」

仰る通りでございます・・・


戦兎が無事、二課の一員として活動する事が決まった所で、ふと弦十郎が思い出したかのように戦兎にある事を言った。

「そういえば、お前の戸籍がなかったんだが・・・」

「あ」

それで戦兎も重大な事を思い出す。

そう、戦兎には戸籍がないのだ。

この世界の創造主ではあるがゆえに、その存在はこの世界にとっては異端だ。

故に、戦兎の存在はこの世のどの記録にも残っていない。

「あー、それは・・・」

「何か問題があるようなら、こちらで作ってやらん事もないぞ」

「マジか!?」

弦十郎の提案に、戦兎は食いつく。

「ああ。ただし、それなりの職業にはついてもらうからな。いわゆる、表向きの顔という奴だ」

「そういえば戦兎君、物理学者って言ってたわよね?」

「ええ、()()物理学者です」

了子の言葉に何の恥ずかし気もなく肯定する戦兎。

「だったら、ぴったりの職業があるわよ」

 

 

 

 

 

翌日――――

「今日から物理学の講師をしてくださる、桐生戦兎先生です」

「天才物理学者の桐生戦兎です。よろしく」

翼の目の前で、わくわくした様子で自己紹介している戦兎の姿があった。

 

了子が提案した職業とは、教師である。

 

戦兎の天才的頭脳は、超難関の物理試験で百点を取る程だ。

その頭脳をもってすれば、誰かに教える事も出来るだろう。

ついでに二課の本部の真上はリディアン音楽院という学校だ。

であるならば、二課のすぐ傍で働けるというメリットも存在する。

だからこうして、教師となった戦兎。

「天才って自分で言っちゃってるよ・・・」

「自分で天才って言っておいて、実はそんなにすごくないって事よくあるよね」

「私これからあんな人に物理教わるのかな」

始めの印象はこれだ。

翼も、自分で天才で言っている男が他人にまともに教えられるのかと思っていたのだが―――

「―――と、いう訳で、力はこのように釣り合うのです」

 

その質は、凄まじかった。

 

物事の例え方、生徒への質問に対する対応、教科書に囚われない独自の授業方法。

その全てが、彼の教えを受ける全ての生徒の心を掴み、次第に惹かれていった。

 

 

そして数日、桐生戦兎という物理教師の噂は瞬く間に広がり、そして学園中で彼の授業を受けたいという生徒が殺到した。

 

 

 

 

「―――正直に言って、舐めていた」

学校が終わり、二課の一室にて翼は頭を抱えていた。

「物理学者としての実力、教師としての技術、キャラによる人気の獲得、何をとっても一流。さらに人当りも良いから生徒からの人気もすさまじい・・・正直ここまで大騒ぎになるなんて思ってもみなかったぞ!」

「それはまた」

その翼の愚痴を聞いているのは、彼女のアーティストとしてのマネージャーである緒川慎次である。

彼もこの二課の職員であり、翼に最も近い存在だ。

そんな彼を前に、翼は戦兎に対する自分の評価を恥じていた。

完全に彼の事を舐めていた翼にとっては目から鱗である。

「私は最初はそれほど凄い男とは思っていなかった。だが、よくよく考えてみたらシンフォギアに対しての理解力が速い上に、あのビルドドライバーという装置を組み立てた技術力に加えて、その理論を組み立てる頭脳もあったんだ。だからその時点で気付いておくべきだった。あの男は科学者としては一流だと言う事を・・・人間としてはどうかと思うが・・・!」

「まあまあ落ち着いてください。そんなに思い詰めても仕方がありませんよ」

「ふう・・・そうですね」

一旦落ち着きを取り戻した翼に、緒川は飲み物を渡す。

「そういえば、このごろ桐生を見かけませんが、何かあったのですか?」

「ああ、彼なら、自室にて武器の修理を行っているそうですよ」

「武器・・・?」

「ビルドとしての武装ですよ。何やら、ある戦いで全て壊れてしまったようでして、今、自室にこもってそれの修理をしているようです」

「そうですか・・・」

そこで翼はふと考える。

(もしかしたら、ビルドの事について色々と聞き出せるかもしれない・・・)

この時、翼は自分でも自覚してない程に、仮面ライダービルドに興味を惹かれていた。

 

 

 

 

 

一方、学校が終わり、徹夜覚悟で武器の修復を行っている戦兎は、様々な道具を駆使して修理を行っていた。

やはりその技術力は凄まじく、何時間も掛かりそうな配線の手直しも数秒で終わらせるほどだ。

「ふう・・・これでホークガトリンガーも修理完了っと」

そう言いつつ、戦兎は回転式機関銃のホークガトリンガーを傍らに置き、軽く伸びをする。

「ちょっと休憩するか」

「桐生」

ふと、そこでドアの方から声が聞こえた。

「翼か?」

「入ってもいいか?」

「ああ、良いよ」

戦兎の返事を聞き、翼が入ってくる。

「よっ。どうした?」

「いや、ビルドについて聞きたい事があってな」

翼は、意外と整理されている戦兎の自室を見渡す。

机の上には、いくつもの武装が置かれており、別の机の上にはいくつものフルボトルが置かれていた。

翼は、今戦兎が傍らに置いてあるホークガトリンガーに目を向ける。

「それは?」

「ん?これか。これはホークガトリンガー。俺の発・明・品だ」

「何故誇張して言うのかは知らんが、それもビルドとしての武器なのか?」

「その通り!これはガトリングフルボトルの成分を使って創り上げた武器でな、ガトリングフルボトルを使えばどんなフォームでも使える武器でな。これの最大の特徴はロックオンした相手の位置情報を元に弾速や発射角度の微調整を行う事でな、さらに使用者の手癖を記録分析する事で―――」

「分かった!分かったから少し落ち着け!」

興奮気味に自分の発明品を自慢しだす戦兎を抑えつつ、翼はホークガトリンガーに施された鷹の意匠に注意する。

「何故、鷹の意匠を?」

「ああ、ガトリングとのベストマッチがタカだからだよ」

それを聞いて、翼は机に置いてあるフルボトルのうち、タカの柄の入ったボトルとガトリングの柄が入ったボトルを手に取る。

「何故、これとこれがベストマッチとかなんだ?」

「あー、それは・・・」

どう説明したものか。

 

ベストマッチとは、かつての戦兎の仲間であった石動美空の父親、石動惣一に憑依したエボルトが、惣一の記憶を元に作ったフルボトルの組み合わせの事であり、そのベストマッチの起源は、『思いついた動物を殺せる武器や兵器の組み合わせ』だ。

途中、コミックだとか時計だとか訳の分からないものもあるが、その理由は、父親の娘の愛故だ。

思い浮かべた動物のほとんどは、幼少の美空との思い出から浮かべた事であり、その思い出を汚されたくなかった惣一は、途中から訳の分からないものを思い浮かべたのだろう。

 

故に――――

「実は俺にもよくわかんないんだよな」

誤魔化す事にした。

彼らにエボルトの事は言っていない。だから、馬鹿正直に話せば、エボルトを倒すためにライダーシステムを作った父親に悪い印象を持たれてしまう可能性があったからだ。

だから、これが最適解・・・の、筈だ。

「そうか・・・」

その答えに、翼は短く答え、また別の道具に手を伸ばす。

「これはフルボトルか?見たところ、缶のように見えるんだが・・・」

それは、『ラビットタンクスパークリング』。ビルドの強化アイテムである。

「それはビルドの強化アイテムだ。今は成分が抜けてて使えないけど、それも後で直すつもりだよ」

「他の違う形状のものも使えないのか?」

「ああ。どれもこれもどういう訳かボトルの成分が抜けててな。ラビットタンクスパークリングとか、今もってるボトルと同じ成分の奴ならどうにかなるんだが、全部のボトルがないと使えないものは今のところ修理は絶望的だ」

「これだけあるのに、まだ他にもあるのか?」

「ああ」

これで全部ではない。それに翼は驚きを隠せない。

「全部で何本あるんだ?」

「まあ特殊な奴もあるからなんとも言えないんだが、まあざっと言って六十本って所かな」

総勢六十。なんという数なのだろうか。

確か、ビルドは二つのボトルの組み合わせによって変身する。

それを考えると、その組み合わせはざっと三千六百通り。

かなりのバリエーションが見込める。

「ちなみに、大まかに分けると生物と道具で三十本づつだ」

「ほう・・・」

「そして!そのベストマッチとなるボトルを見つける事の出来る機能を搭載したこのビルドドライバーなら、こうやってベストマッチ発見機にもなるのだ!」

 

ラビット!』『タンク!』

 

ベストマッチ!』

 

「すごいでしょ?最っ高でしょ?天っ才でしょ?」

「分かった。分かったから」

もはや戦兎の異常なテンションに慣れてきた翼。

「他のボトルはどうしたんだ?」

「ああ、仲間に預けてある」

「仲間・・・?仲間がいるのか?」

「ああ。今は・・・離れているけどな」

「それは、何故・・・?」

「まあ色々あって」

そう言って戦兎は新たな武器の修理に取り掛かる。

「うっわ、これは酷いな・・・」

「・・・」

何か、上手く誤魔化された気がする。

その時、翼は、今自分のポケットに入っている、机の上に置かれているフルボトルと同じフルボトル―――『不死鳥フルボトル』をポケットの中で握りしめる。

真っ赤な紅蓮のボトル。

その紅蓮の色が、自分とは相反する色であるのにも関わらず、手放す気になれないでいた。

あのように自己紹介をして、名乗りあったにも関わらず、翼は、戦兎の事を信じられないでいた。

 

この男には、謎が多すぎる。

 

隠し事がある事はすでに気付いている。

その隠している事が一体なんなのか、それまでは分からない。

だが、その隠し事を聞き出せない限り、翼は、戦兎の事を信じる気にはなれないでいた。

 

その時、手の中にある不死鳥フルボトルが、ほんのわずかに温かくなった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は、深夜。

自衛隊が、その大火力を使い、ノイズの集団を迎え撃っていた。

だが、弾丸や砲弾、ミサイルは全てノイズの体を透過し、まるで効いている様子はなかった。

「くそ!やはり通常の兵器ではノイズに太刀打ちできんか!」

隊長格である自衛隊員がそう吐き捨てる。

 

ノイズには、通常の兵器は効かない。

 

その理由は、位相差障壁と呼ばれる、現実世界への存在比率を自在にコントロールできる事にあり、いわば彼らは半幽霊状態でこの世に存在しているようなものなのである。

故に、全ての武器は透過、貫通し、ノイズに一切の攻撃が通用しないようになっている。

 

たった一つ―――否、二つの例外を除いて。

「―――Imyuteus amenohabakiri tron――――」

 

タカ!』『ガトリング!』

 

ベストマッチ!』

 

どこからともなく、歌と声が聞こえ、上空を通ったヘリが、ノイズへと向かう。

そのヘリから、二人の人影が空中に躍り出る。

 

『Are You Ready?』

 

「変身!」

 

天空の暴れん坊ホークガトリング!イェイ・・・!』

 

空中で展開されたスナップライドビルダーに挟まれ、人影の一人―――桐生戦兎は仮面ライダービルド・ホークガトリングフォームに変身する。

それと同時に、翼は天羽々斬を纏い、ノイズの大群の前に降り立つ。

一方のビルドは、ホークガトリングの能力である飛行能力によって空中にとどまる。

その時、マスクの下のインカムから通信が入る。

『翼、戦兎君。まずは一課と連携しつつ、相手の出方を・・・』

「いえ、私一人で問題ありません」

『翼!』

無線の向こうの弦十郎の言葉を無視して、翼は天羽々斬を抜く。

 

「―――去りなさい!無想に猛る炎、神楽の風に滅し散華せよ!」

 

「本気で一人でおっぱじめやがった・・・」

『すまない。翼のフォローを任せられるか?』

「問題ない。勝利の法則は既に決まっている」

右手を右のアンテナで滑らせ、ぱっと開く動作をして、戦兎は―――ビルドはその手に持つホークガトリンガーを翼が暴れ回る場所のノイズに向かって銃口を向ける。

「翼、俺が雑魚を一掃する。お前は大物を頼んだ」

 

警告は、した。

 

次の瞬間、引き金を引いた瞬間、凄まじい連射性で翼の周囲のノイズを一掃する。

一発も外さず、全てだ。

『ついでだ。空からも来ているぞ!』

「OK!」

見れば、飛行型のノイズがビルドに向かって襲い掛かってきていた。

その突進を軽く躱して、ビルドはホークガトリンガーのリボルマガジンを手動回転させる。

 

『Ten!』

 

しかし、それは一回だけにとどまらず、

 

『Twenty! Thirty! Forty! Fifty! Sixty! Seventy! Eighty! Ninety!』

 

その数、十回。

 

One Hundred! FULL BULLET!』

 

最大弾数にまで達すると同時に、今空中にいる全てのノイズを球状の空間に閉じ込める。

「オォォアァアア!!」

その全てのノイズに向かって、ビルドはホークガトリンガーの弾丸を全て一気にぶっ放す。

タカの唸り声が響いたかと思うと、ほぼ一瞬にして全てのノイズを縦横無尽に蹂躙し、銃弾の餌食にする。

それと同時に、下にいる翼が巨大ノイズを一刀の元、両断する。

 

蒼ノ一閃

 

翼が着地すると同時に、ノイズが爆散する。

これで、ここら一帯のノイズは全て倒した。

「よ、お疲れ!」

翼の元へ降り立つビルド。

しかし、翼は何も答えず、その脇を通り過ぎていく。

「あれ?」

何やら素っ気ない彼女の様子に、ビルドは首を傾げる事しか出来ない。

「あいつ・・・なんかあったのか?」

『そういえば、君は知らないんだったな』

「どういう事だ?」

『二年前、ライブ会場の惨劇と呼ばれる事件が起きた。その事件で、翼は唯一無二の相棒を失ったんだ』

「相棒を・・・」

『それから二年、アイツはずっと一人で戦い続けていた。おそらく、戦兎君が戦いに加わった事で戸惑いを感じているのだろう。だからあまり責めないでやってくれ』

「・・・」

それを聞いて、ビルドは思う。

 

(俺、翼の事なんも知らないんだな・・・・)

 

一人孤独に戦い続ける少女の事を、ビルドは何も知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、どうすっかなぁ・・・」

翌日の学校にて、戦兎は職員室で一人そう呟く。

「桐生先生、何か悩み事ですか?」

「ん?まあ、そんな所かなぁ・・・」

向かいの女性教師の言葉にそう返事を返しつつ、戦兎は考える。

どうしたら、翼ともっと親密な関係になれるのか。

これから共に戦う仲間として、信頼度は上げておきたい。

とりあえず、互いの健闘をたたえ合えるぐらいには。

「相談に乗りましょうか?」

「ん~・・・いや、大丈夫」

女性教師の提案を拒否しつつ、戦兎は立ち上がる。

「次の授業がありますから」

「そうですか、頑張ってください」

「どうも」

そうして職員室を出る戦兎。

(しっかし、どうすっかなぁ・・・)

「あ、見て、戦兎先生よ」

「ほんとだ!」

(翼は結構頑固そうだし、ちょっとやそっとじゃ心を開いてくれそうにないんだよなぁ)

「戦兎先生、頭良いし格好良くて素敵よね」

「うんうん、さらに運動も出来るみたいだし、いつも乗ってくるバイクは自作なんだって」

「すごぉい!」

(まあ、出会って数日の俺なんかに心を開いてくれる訳がないけど・・・でも二年前の事件か・・・それを調べてみるってのも手かもな。そうすれば地雷を踏まずにすむかもしれない)

「あの顔、何か悩んでいるのかしら?」

「ああ!出来る事なら相談に乗ってあげたい!」

「ちょっと!抜け駆けは許さないわよ!」

(でも気を使いすぎるとかえって不審がられるかもなぁ・・・万丈ならどうしたんだろうな・・・結構何も考えずにずばずばいってそうだが・・・)

「ええ~、いいじゃないそれぐらい」

「私だって戦兎先生と話したいの!」

「だったら一緒に聞けばいいじゃない」

「「ダメ!私だけで戦兎先生と話すの!」」

「ちょっと!そっちも抜け駆けしようとしてるじゃない!」

「そういうアンタだって!」

(いや、万丈を手本にするのはやめよう。あの馬鹿のやり方でどうにかなるのは同じ馬鹿だけだ)

「ていうかそこ、なんか喧嘩してるようだけどここ学校だからやめなさい」

「は、はい!」

「すみません!」

 

戦兎は知る由もない。

 

「きゃー!戦兎先生に話しかけられちゃった!」

「ちょっと!先生は私に話かけてくれたのよ!」

「なんですって!?」

「あーもう喧嘩しない!」

 

 

既に学校内で自分にファンクラブが出来てしまっている事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、戦兎が考えに考えた結果は、

「お前って昔デュエット組んでたんだな」

馬鹿正直な直球勝負だった。

「・・・それがどうかしたのか?」

「いや、ちょっと気になってな」

「はあ・・・」

溜息をつかれた。完全に悪い印象を持たれた。

「二年前の記事は見たのでしょう?」

「ああ、あれね。胸糞悪かったよ」

二年前、『ライブ会場の惨劇』と呼ばれる事件があった。

それは、風鳴翼と天羽(あもう)(かなで)という二人の歌手のユニット『ツヴァイウィング』のライブの最中に起きた最悪の事件。

空を埋め尽くすほどのノイズがライブ会場に出現し、何百人という人たちが死んでいった。

そして、あの事件の後、心無いメディアによって、ノイズの襲撃を生き残った者や、その遺族は、世間からの凄まじいまでのバッシングを受けた。

理由は、逃げる際の被害者たちへの誤解。

事件によって死んだ人間のほとんどはノイズによる炭化が原因だ。だが、それ以外で死んだ人間の事をメディアは挙げ、結果、自分が生き残りたいがために他者を犠牲にしたクズとして世間に広まり、凄まじい非難を浴びる事となったのだ。

それによって自殺する者が出たり、あるいは蒸発する者が出たり、たかが生き残っただけで、何十人もの人間が不幸な目にあった。

全ては、メディアの持つ、情報のもたらす利益故に。

その、人間の腐った部分に、戦兎は怒りとやるせなさを感じていた。

「それを見て、お前はなおも愛と平和を掲げるのか?」

「ああ。確かに、人間には醜い部分がある。世界中に生きる全ての人間が良い奴だなんて思わない。それでも俺は愛と平和の為に戦う。仮令どれほど罵倒されようとも、きっと誰もが『愛と平和』を胸に掲げて生きていける日を、俺は創っていきたい」

即答だった。

どこまで行っても、桐生戦兎は、その覚悟を曲げるつもりはないらしい。

その戦兎の真っ直ぐな目が、翼には輝いて見えた。

「天羽奏だっけ?」

「・・・・ええ」

それは、翼の唯一無二の親友にして、ツヴァイウィングの片翼の名前。

「その事件で、命を落としたそうだな」

「その様子じゃ、奏の最期まで・・・・」

「絶唱、だったか」

己の全てを捧げて歌う、最後の一撃にして、下手を打てば自爆技となる、諸刃の剣『絶唱』。

本来、『絶唱』はシンフォギアとの適合率が高ければ高い程、そのバックファイアの影響は少なくなる。

だが、天羽奏は本当はシンフォギアの適合者にはなれない筈だった。

それを、無理な投薬によって適合率を無理矢理引き上げて使っていた為に、そのバックファイアは凄まじいものとなり、天羽奏は、その身を一かけらも残すことなく塵となって消滅した。

そして、それ以来翼は、己の身を『剣』として研ぎ澄まし、ノイズとの戦いに没頭した。

「俺も昔、相棒を助けるために捨て身の戦法を取った事があった」

「え?」

予想外な言葉が、戦兎の口から出た。

「そいつ諸共消滅する事で、体乗っ取られたそいつを助け出そうとしたんだが、力を奪う事には成功したんだが、逆に体を乗っ取られてな。ほんっと、あの時は最っ悪だったよ」

「そう・・・だったの・・・」

でも、今彼はそこにいる。きっと、彼の仲間が、彼を助けたのだろう。

だけど、自分は大切な人を助ける事が出来なかった。

 

彼とは、違う。

 

「それに、最後の戦いじゃあ一緒に戦ってくれた仲間も死んじまった」

「っ!?」

また、衝撃の事実が戦兎の口から出る。

「一人は俺の忠告を無視して勝手に強化アイテム使って死んじまうし、もう一人は敵の強化アイテム壊すだけ壊して死んじまうし、色々と大変だったぜ」

だけど、と戦兎は続ける。

「託されたものあったんだ」

愛と平和の為に。ただ一つの信念の元に戦った仲間たち。

その仲間を失い、戦兎は、一人ここに立っている。

 

そう、―――戦兎は今、独りだ。

 

「・・・」

それは、独り戦い続けてきた翼と、どこか似た感覚があった。

その期間は、天と地ほどの差があるものかもしれない。

しかし、戦兎は自分たちには話せない秘密を隠し持っている。

だが、その秘密を独り抱え続けている。共有できる相手もいなければ、その事を知っている者もいない。

だから、彼は今、どうしようもなく独りだ。

例えるならば、突然、知らない場所に放り込まれた子供そのもの。

それでも、彼は、笑って戦うのだろう。

愛と平和の為に。揺るがぬ信念のままに。

 

その身が、滅んだとしても。

 

そう思うと、翼は胸がきゅうっ、と締め付けられるような感覚を感じた。

(あれ、なんで私、胸が・・・)

その理由が分からない翼。

しかし、そんな翼の様子に気付かず、戦兎は続ける。

「だからさ、お前も奏から何かを託されたんじゃないかと思うんだ。俺が何か言えた義理じゃないけど、それでもその想いを継いでいく事は出来ると思う」

戦兎は、手を差し出す。

「だからさ、もう少し連携が取れるようにならないか?そうすりゃ、少しは肩の荷が下りるかもしれないし」

その差し出された手を見て、翼は、戸惑う。

「私は・・・」

この手を、取ってもいいのだろうか。

 

 

 

その時、二人の通信機に、通信が入る。

 

 

 

翼はそれを反射的に取り出して耳に押し当てる。

「どうしたんですか?」

『ノイズだ!すぐに二課にまで来てくれ!』

「分かりました」

ノイズ―――それが出現したのなら、自分たちの出番だ。

「ノイズよ」

「分かった。いこう!」

二人同時に駆け出し、二課本部まで一気に向かう。

 

 

 

 

二課に到着した翼と戦兎。

「状況を教えてください!」

「おいどーなってんだ!?」

翼と戦兎の言葉に、オペレーターの一人が答える。

「現在、反応を絞り込み、位置の特定を最優先としています」

モニターを見れば、この街の地図といつくもの点を中心に円形の力場を示す表示が映し出されていた。

まだ、位置は分からないようだ。

「く・・・!」

「現場の監視カメラとか見れないのか?」

戦兎がオペレーターの一人が使う端末に駆け寄る。

「出来るには出来ますが・・・」

「やってくれ。俺が全部見る」

戦兎の指示に、オペレーターが応じる。

映し出されたのは、ノイズが出現したと思われるあらかたの場所全ての監視カメラのリアルタイム映像。

その無数の映像を、戦兎は頭を高速回転させて全て確認する。

その最中で、戦兎は、ある映像に目を奪われる。

「ッ・・・!?」

「どうかしましたか?」

戦兎の異変に、そのモニターを使っていたオペレーターが訪ねる。

「このモニター、ちょいと巻き戻してくれ」

「分かりました」

戦兎が指差した監視カメラの映像を巻き戻す。

「ここだ!」

映像が止まる。そこに映っていたのは――――

 

「ば、万丈・・・!?」

 

戦兎の相棒である、万丈龍我だった。

 

 

そして、異変は、起きる――――

 

 

「反応を絞り込めました!位置特定!」

「ノイズとは異なる、高出力エネルギーを検知!」

「波形の照合急いで!」

「まさかこれって・・・アウフヴァッヘン波形!?」

動揺が、広がる。

「それって確か、聖遺物から検出されるエネルギー波・・・まさか、シンフォギアか!?」

戦兎の予想は的中し、その名がモニターに映し出される。

 

[code:GUNGNIR]

 

GUNGNIR(グングニル)・・・?」

GUNGNIR(ガングニール)だとォ!?」

「え!?読み方そっち!?」

どうでも良い所で驚いているが、とにかく戦兎は、その場所の映像を映し出すように指示を出す。

そして、そこに映し出されているのは――――青い装甲を身に纏った戦士。

「あれは、まさか・・・」

「もう一人の仮面ライダーだとォ!?」

その名を、戦兎はつぶやく。

「・・・・クローズ」




次回の愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「なんだろう。これ・・・」

謎の青いボトルを拾った立花響。

「ん?あ!?ちょ、おま、出てくんな!」

女子高生に飯を奢られる万丈龍我。

邂逅する二人。

「わあ可愛い」

何故かクローズドラゴンに懐かれる小日向未来。

そして、新たに出現するノイズ。

「こっちだ!」

「生きるのを諦めないで!」

その最中で、響の胸の奥に秘められた力が開放される。

そして、もう一人の仮面ライダーが、その姿を現す。

『Wake Up Burning!』

『Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

次回『復活の槍撃!目覚めろドラゴン』

「見せてやるよ・・・俺の変身をなァ!」


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復活の槍撃!目覚めろドラゴン

戦「仮面ライダービルドこと桐生戦兎は、今日も今日とて、ノイズを倒す日々に明け暮れていたのでした」
翼「物理教師という二面性生活を送る桐生戦兎。しかし今回の主役はそんな桐生戦兎ではなく、彼の相棒である万丈龍我である」
万「やっと俺の出番か」
戦「んな訳ないでしょーが、この物語の主人公にして主役は俺。OK?」
翼「残念だがこの物語の主人公であったとしても、今回の主役ではないからな?」
響「あ、なんだか戦兎先生と翼さんの出番ほんの少しみたいですよ」
戦「しかーし!この物語の主人子は俺!桐生戦兎だからな!」
万「なんでそんな必死なんだよ?」
翼「この際見苦しいな」
響「えーっと、では、私、立花響と龍我さんが変身―――」
戦「――しない仮面ライダービルドが活躍―――」
翼「―――しないしちゃんと二人が変身する第四話をどうぞ」
戦「俺の出番がぁぁああ!」


OP『Be The One(By Tsubasa Kazanari〈CV.Nana Mizuki〉)』


戦「自分の願望書いてんじゃないよ・・・まあ俺も聞きたいけど」
翼「そ、そうか・・・」


作「水樹奈々さんBe The One歌ってくんねーかな~」(願望)


―――立花(たちばな)(ひびき)、十五歳、誕生日九月十三日、血液型はO型、彼氏いない歴=年齢、趣味は人助け。

 

何故いきなり彼女の事を話したのか。理由は、彼女がガングニールの装者なのだが、何故彼女が装者として覚醒したのかは、事の始まりを昨日の夕方にまで遡る必要がある。

 

 

事の始まりは昨日の帰りに拾った謎のボトルだった。

「なんだろう。これ・・・」

青い竜の柄が入った小さなボトル。

一見、ただの玩具にしか見えないのだが、シャカシャカと振ると意外に楽しい。

「もう響ったら、誰かの落とし物かもしれないよ」

「分かってるよ。後で交番に届けるって」

そんな彼女を咎めるのは、響の通う私立リディアン音楽院の寮と同部屋であり、小さな時からの親友である、『小日向(こひなた)未来(みく)』である。

しかし、やはりこのシャカシャカという音と感触は心地良くて楽しい。

「でも、こんな玩具って売られてたっけ?」

そこでふと疑問に思った事がそれだった。

「それもそうだね。玩具売り場でこんなもの売ってなかったと思うけど」

「もしかして、実はすごいアイテムで、振れば振る程パワーが上がる、とかなんかだったりして」

「もう、そんな事あるわけないでしょ?」

「えー、そうかな―――」

なんて、右手でボトルを持ったまま拳を前方へ突き出した瞬間、

 

 

―――目の前の大気が吹き飛んだ。

 

 

「「・・・・」」

幸い、目の前に人がいなかったら良かったものの、もしこれが誰かに当たっていたりしていたら大惨事である。

たかだか振っていただけで大気が吹き飛ぶレベルの威力。

その光景を目の当たりにした顔を見合わせた二人が取った行動は―――その場からすぐにでも逃げ出す事だった。

 

 

 

 

 

 

「はぁー、びっくりしたぁ・・・」

離れた公園にて、響と未来は肩で息をしながらベンチに座っていた。

あのボトルは響のポケットの中である。

「なんでこんなものが・・・」

「まさか、どこかの秘密結社が製造して、世界征服を企んでるのかも!」

「ノイズの出るこのご時世に?」

「だよね・・・」

触れただけで体が炭化するというのに、たかがパンチ力を引き上げるだけのボトルを作って一体何になるというのか。

「でも、実際にこれがあるんだよね」

試しに数回振った後に、それを持ったまま拳を振るってみる。

すると、凄まじい風切り音が鳴り、先ほどとは打って変わった弱いパンチが放たれる。だがそれは、年頃の少女が放っていい威力の拳ではなかった。

「交番に届けるのやめた方がいいかも・・・・」

「確かに、これを悪い事に利用しようとする人がいたら、大変だもんね・・・」

ボトルをポケットにしまい、項垂れる響。

「はあ、私って呪われてるかも・・・」

「そんな事ないよ。まあ、こんなボトル拾っちゃったのは災難かもしれないけど・・・」

「だよねぇ・・・まあ、家に置いておくだけなら大丈夫だよね」

一見はただの玩具だ。誰にも怪しまれないだろう。

発信機とかもついているかもしれないが、そんな日常とは無縁の彼女たちには、そんな考えは思い浮かばないのだが。

「へいき、へっちゃら!」

と、いつものおまじないの言葉を響が口にした瞬間、

 

 

―――目の前で人が倒れた。

 

 

「え、えぇぇええ!?」

「だ、大丈夫ですか!?」

突然の事にテンパる二人。

だが、響は慣れているのか意外と冷静だった。

「大丈夫ですか!?しっかりしてください!」

見た目は素行の悪そうな男だが、容姿は良い方で、茶髪で筋肉質。

そんな男が目の前で倒れたとあっては、未来はともかく響は黙っていられなかった。

「う・・・」

「あ、よかった。気が付いた・・・」

意識がある事にほっとした響と未来。

「・・・た」

「はい?」

ふと、その男が何かを言ったかと思い、耳を近付けてみると、

「・・・腹、減った」

「あー・・・」

 

どうやら、空腹だっただけらしい。

 

 

 

 

「いやー悪いな奢ってもらってよ」

駅前のお好み焼き屋『ふらわー』にて、見事復活を果たした男に礼を言われる。

「そんな事はありませんよ」

「響のいつものお節介ですので心配しないでください」

「酷いな~、人助けと言ってよ」

「響の場合は度が過ぎてるの」

親友の辛辣な言葉が突き刺さるも、それでもめげない響。

「ふ~ん・・・あ、ばあさん水くれ」

「あいよ。それにしてもアンタ、食べるねぇ」

「まあこの一週間なにも食べてなかったからな」

「一週間!?」

これには驚きを隠せない二人。

「いやー、いきなり知らない場所に投げ出されるわ、俺のもってる金は使えないわ、ついでにチンピラどもに難癖付けられてボコっても今度は警察のお世話になりそうで逃げだすわでもう散々でさー」

「わ、わーお、壮絶・・・」

「ついでに俺、馬鹿だから何すればいいのかわかんなくてよ」

「はあ・・・」

よく分からない人だ、と未来は思った。

嘘を言っているようには見えないし、彼の言うように、頭もそこまで良い訳ではないのだろう。

だが、悪い人ではないとはなんとなく分かる。

なんというか、馬鹿でお人好し、という感じがする。

「あ、そういえばまだ名前言ってなかったな。俺は万丈龍我だ。よろしくな」

「あ、立花響です」

「小日向未来と言います」

「ていうか響、お前なんかアイツに似てるな」

「え?似てるって誰にですか?」

「俺の知り合い。あいつも結構なお人好しでな。困ってる奴がいたらどこにいても駆けつけるような奴でさ。自分の事より他人の事を優先させちまうんだよ」

「そうなんですか・・・私も会ってみたいです」

「ぜってぇ気があうと思うぜ」

何やら和気藹々としている。

それが、なんか、微妙に面白くない。何故だろうか。

「ん?あ!?ちょ、おま、出てくんな!」

と、突然、龍我がジャケットの中に手を突っ込んだかと思うと、そこから何かが飛び出し、未来の方へ向かう。

「え?わっ!?」

「キュルッキュイーン!」

それは未来の頭にこつんと当たると、未来の差し出した手の上に降り立った。

「わあ、可愛い」

それは、四角い胴体をもった機械の動物だった。

「龍我さん、これは?」

「あー・・・俺の知り合いが作ったもんでな。クローズドラゴンっていうんだ」

「じゃあクロだね」

「ネコかよ・・・」

そんな万丈のツッコミなど無視して未来や響はクローズドラゴンを愛でる。

が、よくよく見てみると、どういう訳かドラゴンは未来にかなり懐いているようだ。

(戦兎の奴そんな機能つけたか?)

軽く火を噴いたり毒を吸い出したりは出来る。だがあんな風に人に懐くようにあの男は設定するだろうか。

あくまで、万丈のお目付け役という事で作られたものだというのに。

 

まあそんな事万丈に分かる筈がないのだが。

 

しかし、特定の相手にのみこれほどまでに懐くだろうか。

訳が分からなくなる。

結局、何もわからず仕舞いのまま、万丈はそのまま夕飯をご馳走になった。

 

 

 

 

「悪かったな。奢ってもらってよ」

「いえ、人助けは私の趣味なので」

「もう、響ったら」

響の発言に呆れる未来。

「ていうかお前、いつまソイツに引っ付いてるつもりだよ」

「キュルル!」

それでもって、未来から離れようとしないドラゴン。

「未来の事が気に入ったのかな」

「機械の動物に好かれてもね・・・」

「とにかく行くぞ」

「キュル!?」

無理矢理ドラゴンをひっつかむ万丈。

「キュルッキュイーン!キューン!キュルルルル!」

「あ、こら!暴れんな!」

それでもって暴れるドラゴン。どうやら相当未来の側にいたいらしい。

そんなドラゴンに、未来は優しく声をかける。

「ごめんね。もう少し一緒にいてあげたいけど、貴方の主人はこの人でしょ?」

「キュル・・・」

「また機会があったら、もう一度遊ぼうね」

「・・・キュィーン!」

どうやら納得したらしく、ドラゴンは万丈の懐に戻る。

「なんか納得いかねえ・・・」

「乱暴過ぎるんですよ龍我さんは」

「そういうもんかぁ?」

いまいち良くわからない様子の万丈。

「まあいっか、そんじゃ、またな」

「はい!」

そう言って、万丈は去っていく。

「なんだか、不思議な人だったね」

「うん。機械の動物もってて、それで何日も食べてなかったなんて。あんなに良い服着てるのに」

おそらく、何かしら事情があるのだろう。

しかし、それにしては落ち込んだ様子も無く、意気揚々としていた。

そんな、掴みどころの無い人。

「なんだか、すぐに会える気がする」

「私も、なんだかそう思うよ」

響と未来は、そんな予感がしていた。

 

 

 

 

 

 

 

その夜、戦兎と翼がノイズと戦ってた事なんて露知らず、翌日の昼休み時。

 

 

 

 

「自衛隊、特異災害対策機動部による避難誘導は完了しており、被害は最小限に抑えられた、だって」

自分の携帯の液晶画面を見ながら、未来はそのように呟く。

それは、昨晩おきた、ノイズに関するニュースだ。

「ここから、そう離れていないね」

「うん・・・」

ご飯を食べつつ、そう返事を返す響。

しかしその心象は、いつにもましてぼーっとしていた。

理由は昨日の万丈との邂逅―――などではなく、この学園へ入学した目的だった。

 

立花響は、風鳴翼に会うためにこのリディアン音楽院に入学した。

 

二年前、ライブ会場の惨劇の渦中に、響はいた。

その最中、ツヴァイウィングの二人が戦う姿を響は目撃し、そしてその戦いに巻き込まれて、胸に傷を負った。

その時の傷―――どういう訳か楽譜の記号で使われる(フォルテ)の形についてしまったのだが―――は今でも残っている。

響が知りたいのは、あの日戦っていたツヴァイウィングの事と、あの日何が起きていたのかという事だ。

それを翼から聞けば、何か、分かるような気がする。

だから、響は、翼に会いにリディアンに入ったのだ。

 

その事を考えながら、昼食を食べていた響だが、

「ねえ、見て。風鳴翼よ」

「ほんとだ!」

「ッ・・・!」

生徒の一人が、そうひそひそと話す声が聞こえた。

「芸能人オーラ出まくりで、近寄りがたさが凄い・・・」

「孤高の歌姫といった所ね」

それを聞いた途端、響はすぐさま立ち上がって翼の元へ行こうとする―――が、翼は目の前にいた。

それも超至近距離、文字通り目と鼻の先だ。

長く綺麗な青髪。整った綺麗な顔。

いつも写真や映像で見ているものじゃない、生の顔だ。

だが、それが問題だった。

いざ対峙すると体が固まり、動けなくなる。

聞きたい事があったのに、口が強張って上手く話せない。

周囲からは色々とひそひそと声がする。

「あ・・・あの・・・」

いつまでも口ごもっていると、翼は何故か、自分自身の頬を指差した。

それに、響は同じ様に自分の頬に触れてみると、そこにはご飯粒がついていた。

「・・・・」

それだけ言って満足したのか、翼は横を通り過ぎていってしまう。

「・・・・」

(あ、結構ダメージ受けてる)

目に見えてやってしまったという感情が滲んでいるのが分かる。

響は何も言わずに席に戻ると、すっかり落ち込んだ様子でもくもくとご飯を食べ始める。

その様子に、未来は苦笑するだけだったのだが。

「あ!見て!戦兎先生よ!」

「ほんとだほんとだ!」

明らかに翼の時よりテンション高めな黄色い声が聞こえてきて、今度は未来がそちらを見ると、そこにはトレンチコートを着て、悠々と食堂に入ってくる、このリディアンに一週間前に勤務し始めた男性教師、桐生戦兎がいた。

その授業は、この学園では凄まじい評判を受けており、どこのクラスも彼の授業を受けたいと躍起になる程だ。

噂では、勤務一週間にして既にファンクラブが出来ているとか。

「戦兎先生、ナルシストで自意識過剰だけど、授業はとっても面白いよね」

「うんうん、あの授業一回で今度の物理のテスト百点はとれる気がする!」

「それに顔も良いし。ああ、一度でいいから個別授業受けてみたいな~」

「ちょっと!抜け駆けは許さないわよ!」

「私だって受けたいんだからね!」

「何よ!ぽっとでのモブの癖に!」

「「それは貴方も同じでしょ!」」

・・・何やら、人気があり過ぎるというのも問題な気がするが。

そんな戦兎が、響の横を通った。

その時、戦兎の視界に落ち込んでいる響が入る。

「おい、どうした?」

そしてすぐさま声をかけてきたのである。

「せ、戦兎先生が自分から声をかけたー!?」

「羨ましすぎるぅ!」

「ずっるーい!」

「・・・」

もはやこの際無視しようと決め込む未来。

一方、戦兎に声を掛けられた響は、

「あー、大丈夫ですよ。自分の意気地なさにショック受けてるだけですので」

「それはそれで大丈夫じゃないと思うんだが・・・」

戦兎は響の方へ向き直ると、

「まあなんだ。何で落ち込んでるのかは知らないが・・・諦めずに、またチャレンジすればいいだろ。科学者の俺に言わせれば、失敗は成功の元だ」

「戦兎先生・・・・」

事情も何も聞いていないのにこの的確な指示。

自称天才と言うだけの事はあるというのだろうか。

「失敗は成功の元・・・はい、そうですね!私、頑張ってみます!」

「元気になってよかったよ。そんじゃ、俺は忙しいんで」

「ありがとうございました!」

そう言って、去っていく戦兎を、響と未来は見送った。

 

 

 

 

「はぁ・・・」

だが結局は落ち込むのであった。

「翼さんに完璧可笑しな子だと思われた・・・」

「間違ってないんだからいいんじゃない」

そして親友の辛辣な一言。

「・・・それ、もう少しかかりそう?」

響は未来がノートに書いているものを見て、そう尋ねる。

「うん。・・・ん?ああ、今日は翼さんのCD発売だったね」

風鳴翼は日本が誇るトップアーティスト。そのCDの発売日が今日なのだ。

「でも、今時CD?」

「うるっさいな~初回特典の充実度が違うんだよ~CDは」

これでも翼の大ファンである響は、今日という日を待ちわびていたのだ。

故に、

「だとしたらもう売り切れちゃうんじゃない?」

「ッ!?」

当然、行動は早かった。

 

 

 

 

 

 

「あぁ~・・・腹減った」

万丈龍我は、一人ベンチに座って項垂れていた。

「金は使えねえし、変な奴らには絡まれるし、危うく警察に掴まりそうになるし、もう散々だ・・・」

「キュルッキュイ」

「お前はいいよなぁ、そんな能天気でよぉ・・・・」

万丈の上空を自由気ままに飛び回るドラゴン。

しかし、そんな事を呟く龍我の心情は、かなり弱っていた。

(今頃どうしてんだろなぁ・・・戦兎たちはよ)

あの戦い―――新世界を創るためにエボルトと死闘を繰り広げた。

その戦いの最中で、多くの仲間が死んでいった。

一海、幻徳、その他にも、大勢の人たちが死んでいった。

そして、自分は今、一人死に損なっている。

この世界で、たった一人、生き残ってしまっている。

まさか、一人だという事がここまで堪えるとは思わなかった。

「もう一度会いてぇな・・・」

「キュィ・・・」

「ん?なんだよ。慰めてくれてんのか?」

万丈の膝の上に乗って心配そうに見上げるドラゴン。

そんなドラゴンの気遣いなのかどうかも分からない行動に、少し心が軽くなる。

「よし!うだうだ考えてても仕方がねえ!もう少し歩いてみっか!」

「キュイ!」

そんな訳で街中を歩く万丈。

「しっかし、ここは俺の知ってる街とは色々と違うところがあるよなぁ・・・・」

宙吊りの列車、空中に映し出される映像、謎の警報。

ここ一週間、この街の様々なものを見てきたが、ほとんどが万丈が知らない事ばかりだ。

警報が鳴った時はよくわからずその場で立ち往生して、そのまま一週間が過ぎてしまったが、よくよく考えてみれば、あれは何かの襲来をしていたのではないだろうか。

「だとしたらあんな所で棒立ちになってるわけにはいかねえよな・・・」

なんて思いつつ、万丈は曲がり角を曲がった。

そしてふと立ち止まって、異常に気付いた。

「・・・・」

目の前―――の、足元にあったのは、黒い、砂の小さな山。

他にも、道路の上や、店の中。至る所に黒い砂があった。

 

万丈にとっては、それが人間とその天敵がなった炭素の塊とは知らない。

 

だけど、それが、あまりにも異常な事態だという事だけは、本能で理解できた。

「なん・・・だよ・・・これ・・・・」

 

「いやぁぁぁあぁあ!!」

 

「ッ!?」

小さな、子供の悲鳴が聞こえた。

「今のは・・・!」

「キュルッキュイー!」

「あ!おい!」

万丈が、突然飛び出したドラゴンの後を追う。

 

 

それが、全ての始まりだったのかもしれない。

 

 

「キュル!」

「あそこか・・・ってなんじゃありゃあ!?」

辿り着けば、そこには小さな女の子が何か半透明の化け物に襲われていた。

「だれかぁ!たすけてぇ!」

「って呆けてる場合じゃねえ!今すぐ助けて・・・あれ?」

ポケットに手を突っ込むが、何故かそこには何もない。

「ない!?ない!?ボトルがない!?」

ジャケットのポケットやズボンのポケット。あのボトルを入れられそうな場所をくまなく探したが、結局見つからず。

それで万丈は、ある結論に行きついた。

「・・・ボトルを落とした」

「キュルル!?」

何故かドラゴンが驚いた。

しかし、そうしている間にも化け物は女の子に近付く。

「って、ボトルがあろうがなかろうが関係ねえ!今はアイツを助けねえと・・・!」

だが、万丈からの距離じゃ間に合わない。

このままでは女の子は化け物の攻撃を受ける。

「間に合え・・・!」

だが、無常にも化け物は女の子に襲い掛かり――――

 

「やぁああ!!」

 

間一髪で、一人の少女が女の子を救い出す。

その少女は―――響だった。

「響!?」

「え!?龍我さん!?」

響は真っ直ぐこちらに走ってくる。

「何してるんですか!?今すぐ逃げましょう!」

「いや、お前らは先に行け、ここは俺がどうにかする!」

「なに言ってるんですか!?触れたら死んじゃうんですよ!?」

「は!?触ったら死ぬのか!?」

「なんでノイズの事を知らないんですか!?」

「ノイズ?なんだそりゃ・・・ってあぶねえ!」

「きゃあ!?」

化け物が―――ノイズが一斉に万丈たちに襲い掛かる。

間一髪で躱す事が出来たが、それでもノイズは追いかけてくる。

「キュルッキュイーン!」

「ドラゴン!?」

その最中、ドラゴンが先導するように飛び出す。

「行きましょう!走れる?」

「う、うん・・・!」

「よし、行こう!」

「あ!?おい!」

 

三人は、走る。

 

響が女の子の手を引き、万丈は後ろからいつでも襲い掛かられてもいいように走る。

だが、ノイズは先回りしていたのか、路地裏の川の両方の道に待ち構えていた。

「嘘・・・」

「おねえちゃん!」

女の子が響に抱き着く。

「大丈夫、お姉ちゃんがいるから・・・」

「くそ!殴る事が出来れば良かったんだがなァ!」

「え!?万丈さん何をぉぉぉお!?」

万丈が二人を担ぐなり、向こう岸へ一気に投げ飛ばす。

その後を追うように、万丈は川に飛び込む。

「うわっと・・・龍我さん!」

「俺に構うな!行け!」

「・・・はい!」

想像以上のスピードで川を泳ぎ切ってくれた万丈を背に、響は走る。

途中、女の子が疲れて走れなくなり、そんな女の子を追いついた万丈が背負って走る。

それでもノイズは追いかけてくる。

「はあっはあっはあっ!シェルターから、離れ、ちゃった・・・!」

「シェルター!?マジかよ!」

まだ余裕のある万丈の後ろを、息を切らせながらも必死に走る響。

それでもなおもノイズは追いかけてくる。

「くそ!まだ追いかけてきやがる!」

「きゃあ!」

「ッ!?響!」

響が転んだ。

倒れた響は、酸素を求めるように必死に呼吸をしている。

「無理すんな!」

万丈は、響すらも担いで走る。

その最中で、響は、後ろからまだ追いかけてくるノイズの群れを見て、ふと二年前の事を思い出す。

 

『生きる事を諦めるな!』

 

その言葉を思い出すと、不思議と力が湧いてくる。

生きようって、思えてくる。

「大丈夫です・・・まだ走れます!」

万丈の腕から降りて、自分の足で走る。

 

―――二年前のあの日、あの時、あの瞬間、間違いなく、私はあの人に助けられた。

 

工場の中を走り、逃げて、逃げ続けて。

 

―――私を救ってくれたあの人は、とても優しくて、力強い歌を歌っていた。

 

女の子をジャケットで縛り、離れないようにして、気が遠くなるほど高くて長い梯子を上る。

 

「―――っはぁ!はあ・・・はあ・・・」

「おい、大丈夫か?」

女の子を降ろした万丈は、疲れ切った様子の響に声をかける。

「ァ・・・はぃ・・・だいじょ・・・ぶです・・・!」

どうにか答える響だが、明らかに疲弊しきってるのは明らかだ。

「くそ、ドラゴンフルボトルさえあれば・・・!」

そう悪態を吐く万丈。

「死んじゃうの・・・?」

ふと、少女の小さな弱音が聞こえた。

そんな少女の言葉に、万丈は勇気づける。

「大丈夫だ!俺がいる!この・・・えーっと・・・そうだ!『プロテインの貴公子』―――バサッ!(自分で言っている)―――万丈龍我様がいるからな!」

苦し紛れのジョークなのか、自分でジャケットを靡かせて、天を指差す万丈。

そんな万丈の言葉に、二人は、思わず吹き出す。

「「あ、アハハハハ!」」

「な、なんだよ・・・」

「ご、ごめんなさい!でも、面白くって」

「たくよう・・・」

いじける万丈。

「キュイ!」

だが、ドラゴンが鋭い声を発してそちらを向けば――――ノイズの大群が、目の前に立っていた。

「「ッ!?」」

女の子が、響に抱き着く。万丈が、そんな二人の前に立って、ノイズと対峙する。

「キュルル・・・!」

ドラゴンが、ノイズたちを威嚇するように唸る。

それでも、ノイズたちはじりじりと近付いてくる。

「くそ!ボトルさえあれば!」

「ボトル・・・?」

先から万丈が言っている『ボトル』という言葉。

 

―――何か、私に出来る事・・・!

 

運命が、動き出す―――

 

―――私に出来る事が、何かある筈だ・・・!

 

少女は、自然と二年前に言われた言葉を叫ぶ。

 

「生きるのを諦めないで!」

 

その胸に、秘められた希望が、今、歌と共に輝く。

 

「―――Balwisyall Nescell gungnir tron―――」

 

光が、迸る。

黄色く、黄金の光が、その場に拡散する。

「なんだ!?」

「キュイ!?」

これには、万丈も驚く。

 

だが、万丈が驚いている間にも、響の体の中ではある変化が起きていた。

 

細胞の一つ一つが書き換えられていくかのような激痛が体を駆け巡り、細胞の全てが侵食され、流れる血を構成するヘモグロビンすらも変わり、人ならざる者へと変り果てる。

されど、彼女は、人の形を保つ。

「う――っあ!あぁぁぁああぁぁあぁああぁあああッ!!!」

四つん這いになって絶叫する。

背中から、何かしらの機械のようなものが飛び出したり引っ込んだりする度に、響の体に、白い鎧が纏われていく。

「響!?」

完全に着装が済んだと同時に、鎧の隙間から蒸気が吹き出す。

その姿は、まさしく、戦士そのもの。

万丈にとっては、それは戦士と呼ぶに相応しいものなのかと思うものだが、それは間違いなく、立花響の戦士としての装束だった。

そして、響は、自分の変化を改めて認識した。

「え?うぇえ!?なんで!?私、何がどうなっちゃってるの!?」

明らかに混乱している様子の響。

「おねえちゃん・・・格好いい!」

「え?」

女の子が、きらきらした目で響を見上げていた。

「だぁくっそ!お前変身できたのかよ!」

「へん・・・しん・・・?」

「ああ?お前仮面ライダー・・・な訳ないか。くそっ、俺にもボトルがあれば・・・」

「あ、あの!龍我さん!」

響は、懐から、寮の部屋から持ってきていた青い竜の柄が入った小さなボトルを取り出した。

「ボトルってこれですか?」

「な!?お前が持ってたのかよ!?」

「じ、実は昨日拾ってて・・・」

「何でもっと早く言わねえんだよ!?・・・まあいい」

万丈はボトルを受け取ると、ノイズの方を見る。

「まあ丁度いい機会だ。やっとこいつらを殴れる気がするからなぁ!」

万丈は、懐から、謎の機械―――ビルドドライバーを取り出す。

それを腰にあてがえば、アジャストバインドが腰に巻き付いて固定される。

「キュィィキュゥッルルッルル!」

そして空中を取りまわっていたクローズドラゴンを掴み取ると、響から受け取った青いボトル―――ドラゴンフルボトルを思いっきり振る。

「見せてやるよ・・・俺の変身をなァ!」

そして、クローズドラゴンに振る事でトランジェルソリッドを十分活性化させたドラゴンフルボトルをセットする。

そして、クローズドラゴンの頭部と尻尾を折りたたむと、本体の赤いボタンを押す。

 

Wake UP!』

 

そして、そのままビルドドライバーにセットする。

 

CROSS-Z DRAGON!』

 

クローズドラゴンをセットしたビルドドライバー。そのボルテックレバーを一気に回す。

回して回して、ドライバーから伸びるスナップライドビルダーに、ドラゴンフルボトルの成分で構成された鎧が構成される。

「え?なにこれ?なにこれぇ!?」

その範囲から逃れつつ、響は驚きを重ねる。

そして、あの言葉がドライバーから発せられる。

 

『Are You Ready?』

 

その答えは、あの日からいつも決まっている。

 

自分が信じた人間の為に。

 

その身を賭して、今、変身する。

 

「変身!」

 

『Wake UP Burning!』

 

『Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

 

スナップライドビルダーに構成された装甲が万丈を挟み、そして、その装甲の上に『ドラゴライブレイザー』が纏われる。

それはまるで、炎を纏いし、炎龍の如く。

「え、ええぇぇええ!?」

「わあ!」

響は驚き、女の子は目を輝かせて、変身した万丈を見上げた。

 

それこそが、仮面ライダービルドの最高の相棒の『仮面ライダークローズ』だった。

 

「さあ行くぜぇぇえ!!」

万丈―――クローズは再誕を祝うが如く雄叫びを上げた。




次回の愛和創造シンフォギア・ビルドは!

ついに変身した仮面ライダークローズと立花響!

「いくぜぇ!」

「―――絶対に離さない、この繋いだ手は」

クローズがノイズたちを蹴散らす中で、ビルドたちもやってくる。

「戦兎先生ぃ!?」

正体がばれる戦兎。

「おい!?なんだよこれ!?」

問答無用で掛けられる手錠。

果たしてどうなるのか!(分かり切った事を)

次回『再開のナイトバトル』

(私は・・・一人だ・・・)


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再開のナイトバトル

戦「ごく普通の高校生である立花響は、シンフォギア『ガングニール』の装者となりて、ノイズと戦う運命にあった・・・って誰だ台本変えたの!?」
了「私よ♪」
戦「なんて事してくれてんすか・・・」
了「いいじゃない。どうせ本編でいっぱい活躍するんだから」
万「おいこら今回は俺の活躍回だろ!?なのになんで俺の名前が出てこねえんだよ!?」
戦「うるっさいよこっちはそんなに暇じゃないんだからさ。えーっと、本当の台本は・・・」
了「ああ、それならさっき翼ちゃんがシュレッダーのようにみじん切りにしてたわよ」
戦「なんだと!?」
万「なんか変な事書いてたんじゃねえの?」
戦「いやアイツが恥ずかしがるようなこと書いた覚えはないんだが・・・」
了「まあそれはともかく、はい、響ちゃん」
響「あ、はい!ではどうなる第五話!」




ちなみに翼が台本をみじん切りにした理由。

翼「いや、少しコーヒーを零してしまってな・・・」

証・拠・隠・滅!


仮面ライダークローズ。

その出現が確認されたと同時に、戦兎は弦十郎に言う。

「風鳴!俺は出るぞ!」

「分かった。翼も行ってくれ!」

「・・・分かりました」

翼は、モニターに映る新たなガングニール奏者を見る、というよりは睨みつけており、返事を返すと同時に走り出す。

「あそこまでは距離がある。バイクで行くぞ」

「分かった!」

二課から出て、二人は翼がバイクを置いている場所に行く。

「後ろに乗れ」

「いや、その必要はない」

「はあ・・・?」

翼が戦兎の返事に首を傾げていると、戦兎はライオンフルボトルを取り出すなり、それをビルドフォンのスロットに差す。

「見よ!俺の発・明・品!」

 

『Build Change!』

 

そしてビルドフォンを投げれば、一瞬にしてバイクへと変化する。

「・・・・」

それを見て、翼は唖然とするしかなかった。

(いや・・・いくらなんでも質量保存の法則を超えてるだろ・・・)

「よし!行くぞ!」

「あ、ああ・・・」

そうして二人はバイクを駆り、すぐさまノイズが出現した現場に向かった。

 

 

 

 

 

そして、まさにその現場では、新たな仮面ライダー『クローズ』が爆誕していた。

「龍我さん・・・その姿は・・・」

その姿に、響は驚きを隠せない。

そんな響に、万丈は―――クローズは高らかに名乗る。

「仮面ライダー。仮面ライダークローズだ」

「仮面・・・ライダー・・・」

「かっこいい!」

女の子が、クローズを見て、そう呟く。

「へへっ、そうだろ?」

その女の子の純粋な言葉に嬉しさがこみ上げつつ、クローズはノイズたちと対峙する。

「響、そいつを頼むぜ」

「わ、分かりました―――」

その時、響は、口から自然と、歌を歌っていた。

 

「―――絶対に離さない、この繋いだ手は」

 

すると、どういう訳か響の体から力が湧き上がってくる。

 

―――そうだ。なんか良くわからないけど、確かなのは、私がこの子を助けなきゃいけない事だよね・・・

 

それだけが、響の中の唯一の確信。

 

「行くぜぇ!」

クローズがノイズの集団に突っ込む。

(龍我さん!?)

その行為に、響は目をむく。何故触れば炭素の塊と化してしまう危険性のあるノイズに自ら突っ込むのか理解できないからだ。

だが、そんな心配は杞憂であり、

「オラァ!」

クローズの拳がノイズの一体にめり込んだ瞬間、蒼炎が迸り、ノイズだけが炭素の塊となって消えた。

(倒した・・・!?)

「はっ!なんだこの程度か?だったら負ける気がしねぇ!」

クローズが次々とノイズを蹴散らしていく。

(すごい・・・)

しかし、だからと言って響たちの方にノイズが来ない訳ではない。

「―――ッ!」

女の子を抱き抱え、響はノイズから後ずさる。

「オラァ!」

「龍我さん!」

「逃げろ!」

そこへクローズが割り込んでノイズを蹴散らす。

その格闘能力は、素人の響から見てもすさまじく、洗練されていた。

何か格闘技をやっていなければ出来ない動きだ。

そして響は、クローズの言葉に従い、上った高台の上から踊り出る。

「う―――わぁあぁああ!?」

だが、想像以上に高く飛んだらしく、慌てる響。

 

身体能力が、想像を超えて強化されている。

 

その事実が、響をますます混乱させる。

(なんか変な格好になっちゃうし、龍我さんはなんか変なのに変身しちゃうし、訳分かんないよぉ!)

そのまま一気に落下していくが、

(でも!)

すぐさま切り替えて態勢を立て直し、両足で地面に着地する。

コンクリートの地面を踏み砕き、響は己の身体能力が大幅に強化されている事を改めて実感する。

それでもなお、響は歌を紡ぐ。

見上げれば、先ほどまで響達がいた高台から大量のノイズが落ちてくる。

それをタイミングを見て横に飛び、地面を跳ねながらも躱す。

「お前らの相手は俺だろうが!」

 

『BEAT CROSS-ZER!』

 

ドライバーからクローズ専用武器である『ビートクローザー』を取り出し、クローズはノイズの集団に向かって振り下ろす。

着地と同時に剣の射線上にいたノイズは一刀両断され、地面を踏み砕いて着地したクローズはビートクローザーの柄部分のレバーを引っ張る。

 

『ヒッパレー!』

 

そしてすぐさまグリップ部分のトリガーを引く。

 

『スマッシュヒット!』

 

「ウオリャァァァアア!!」

一気に薙ぎ払い、クローズの周囲にいたノイズが全て消滅する。

「すごい・・・!」

その威力に、響は感嘆する。

だが、そこへひときわ大きな足音が聞こえる。

「でかっ!?」

巨大な強襲型ノイズだ。

そのノイズが、クローズ―――ではなく響の方へ拳を振り下ろしてくる。

「え!?うわわわわわ!?」

響は、その拳から逃れる度に後ろに飛ぶ。

 

だが、また飛び過ぎる。

 

「うわぁぁああ!?」

その飛び具合に慣れず、そのまま建物に激突。落ちそうになるところを建物の壁に設置されていたパイプを掴む事で落ちるのを防ぐ。

「危なかったぁ・・・!?」

だが、安心するそんな響の元へ、もう一体の強襲型ノイズが襲い掛かる。

「くっ!」

やっと慣れてきた身体能力で、その拳を躱し、響はどうにか着地する。

しかしまだまだノイズは響と少女を狙って襲い掛かってくる。

そのうち、一匹のカエル型ノイズが、響に襲い掛かる。

「―――ッ!」

だが、それでも響の口からは自然と歌が流れ出て、しつこいノイズにほんのちょっと怒りを込めて、拳を握って―――

 

そのノイズをぶん殴った。

 

するとどうだ。響に殴られたノイズは、響に殴られた所から一気に炭化し、消滅する。

(え?私がやっつけたの?)

「テメェら・・・」

ふと、クローズの何やら怒りに震えた声が聞こえたかと思うと。

「お前らの相手は俺だろうがァ!!」

ボルテックレバーを思いっきり回し、クローズは、己の必殺技を発動する。

 

『Ready Go!』

 

するとどこからともなく『クローズドラゴン・ブレイズ』という名の龍が現れる。

それが、飛び上がったクローズの動きをブーストするかのように炎を吐き出し、その炎に乗ったクローズは、目の前の巨大ノイズに向かって、ボレーキックを放つ。

 

ドラゴニックフィニッシュ!』

 

その一撃は、まるで竜の爪の如く。一体のみならず、その後ろの二体目すらも穿って殲滅する。

その威力の凄まじさに、響は唖然とするほかなかった。

「すごぉい・・・ん?」

ふと後ろから何かのエンジンが聞こえてきた。

 

『Are You Ready?』

 

「変身!」

 

「――――Imyuteus amenohabakiri tron――」

 

レスキュー剣山ファイヤーヘッジホッグ!イェイ・・・!』

 

光が迸り、変な叫び声が聞こえたかと思えば、迫ってきたバイクから何かが躍り出る。

「ん?誰だ?」

響の側に降り立った二つの影。

「あ・・・!?」

一人は、風鳴翼。日本が誇るトップアーティストにして歌手。その翼が、今、自分と似たような青い装束を身に纏ってそこに立っていた。

そしてもう一人は、クローズと同じ、全身を装甲に身を包んだ男。

ただ違うとすれば、その装甲は赤と白の二つだという事。

ふと、翼の方から声を掛けられる。

「呆けない、死ぬわよ」

「え?」

「貴方はここでその子を守ってなさい」

駆け出す翼。

「やれやれ、もう少し丸まった言い方は出来ねえのかアイツは・・・」

一方の赤と白の装甲の男はそう呟く。

「あ、あの・・・」

そんな男に、響はおずおずと声を掛けようとする。

そんな響に男は気付き、快く名乗る。

「ビルド」

「え?」

「仮面ライダービルドだ。よろしくな」

「あ、はい。よろしくお願いします・・・」

そこでクローズの怒鳴り声が聞こえる。

「お前!?生きてたんなら言えよ!?」

「うるっさいな。こっちもこっちで大変だったんだからしょうがないでしょうが」

ノイズが襲い掛かってくるも、男―――ビルドの左腕に取り付けられたウインチ型武装『マルチデリュージガン』から放出された高圧の水を喰らい一気に吹き飛ぶ。

吹き飛んだ所でビルドは右手のグローブの棘を伸ばし、その棘でノイズを一気に串刺しにしていく。

「龍我さんの知り合い・・・?」

何やらクローズを知っている風のビルドの言動に響は首を傾げる。

「まあそんな所だ!」

そこへノイズを殴りつつクローズが戻ってくる。

「あいつは味方だから安心しろ!」

「分かりました!龍我さんがそういうなら・・・」

そう話している間にも、翼とビルドは瞬く間にノイズを殲滅していく。

ウインチから放たれるのは水だけではなく、炎も噴出し、ノイズを一気に焼き尽くしていく。

一方の翼は刀を変形させて大剣とし、それを用いて『蒼ノ一閃』で巨大な強襲型ノイズを叩き切り、続く小型ノイズの集団は『千ノ落涙』による殲滅攻撃で一気に片付けていく。

「俺も負けてらんねぇ!」

さらにクローズすらも飛び出し、ビートクローザーによる斬撃だけでなく、徒手格闘による炎を纏った一撃一撃でノイズを打ち倒していく。

「すごぉい・・・ビルドさんも龍我さんも凄いけど・・・やっぱり翼さんは・・・」

「あ・・・!」

降ろした女の子で、響は後ろを見る。

そこには、まだいたのか強襲型ノイズが今、響たちに襲い掛かろうとしていた。

 

だが―――突如として天から巨大な剣が落下し、それが強襲型ノイズを貫く。

 

天ノ逆鱗

 

その巨大な剣の上に、翼が一人、佇んでいた。

その様子を、響は呆然と見上げ、そんな彼女を、翼は見定めるように見下ろしていた。

「終わったな」

そこへビルドがやってくる。

「怪我はないか?」

「え?あ、はい。大丈夫です」

「お前も、どこか痛い所はないか?」

「ううん、だいじょうぶ。おねえちゃんがまもってくれたから」

「そっか、良かったな」

そう言ってビルドは女の子の頭を撫でる。

立ち上がるビルド。そこへ、クローズがビルドに詰め寄る。

「せぇ~ん~とぉ~」

「うお!?なんだよ!?」

「なんだよじゃねえよ!お前いままでどこにいたんだよ!?こちとら一週間飲まず食わずで危うく死にかけたんだぞ!?」

「知らないよそんな事!?ていうかどうやったら死にかけるんだよ!?お前力あるんだからバイトすりゃあ良かっただろ!?」

「バイト・・・あ!」

「何、その手があったか!みたいな顔してんだ!?いつにも増して馬鹿の度合いがあがってんじゃないのか!?」

「馬鹿って言うな!せめて筋肉付けろ筋肉を!」

何やら言い争っているビルドとクローズ。

その中で、響は気になる言葉を聞いた。

「せんと・・・?」

どこかで聞いたことのある名前だ。

聞き間違いか、などと思っていると、

「まあいい。話はあとで聞くから、今は大人しくしていろ」

そう言って、ビルドはクローズのものと同じビルドドライバーから二つのボトルを抜き取る。

そして装甲が粒子となって消え、その中から現れたのは―――

「え・・・えぇぇええぇぇええ!?」

「ん?」

「戦兎先生ぃ!?」

―――リディアン物理教師の桐生戦兎だった。

 

 

 

 

 

その後、自衛隊が駆け付けてバリケードを設置したり炭化したノイズを回収したりと(せわ)しなく多くの人々が動いていた。

その最中で、戦兎は改めて万丈と対峙していた。

「んで?お前いつからここに来てたんだよ?」

「それはこっちのセリフだ・・・なあ、ここは本当に新世界なのか?」

「ああ、氷室首相や幻さんの名前や、かずみんが経営してると思われる農場に、『nascita』もネット上のマップに出てた。ついでに難波重工の名前もあった。ただ違うのは、この世界にはスカイウォールがない事と、ノイズという世界共通の災厄、そして、シンフォギアっていう対抗手段があるだけだ」

「マジか・・・」

それを聞いて項垂れる万丈。だが、ふと思い出して、万丈は戦兎に尋ねる。

「エボルトはいないんだよな?」

「ああ、いないよ。そして、俺たちが戦って言う事も、スカイウォールがあったっていう事も、誰も覚えていない。もちろん、俺たちの事もな」

「マジか・・・」

「ついでに言うとお前、この世界じゃ結構名の通った格闘家だぞ?まあ世界に名を馳せるようじゃないけどな」

「マジかよ!?」

「黒髪だけど」

「黒髪!?俺は茶髪だ!」

「こっちの万丈はだよ!」

馬鹿さ加減は相変わらずである。

「ていうか万丈、これは一体どういう事だよ?」

「ん?ああ、それは俺にも分からん」

戦兎が指摘しているのは、クローズドラゴンの事だ。

「どうやったらこんな普通の動物みたいになるんだよ!?」

「知るか作ったのはお前だろ!?」

そこには万丈を側を暇そうに飛び回っているクローズドラゴンの姿があった。しかもご丁寧にあくびまでかましている。

明らかに機械の範疇を超えた行動だ。まるで本物の動物だ。

「俺こんな機能付けたか?なんでこんなどこにでもいる動物っぽい動きをするようになったんだ・・・新世界を作った影響で、何か問題でも・・・」

「キュル!?キュルッキュイーン!」

「ああこら暴れんな!?ていうかなんで暴れるんだこいつ!?」

危うく分解されそうになった所をまるで嫌がるように暴れるクローズドラゴン。

「戦兎さん」

「ん?ああ緒川か」

「キュルイ!」

そこへ、一人の好青年がやってくる。

二課のエージェントである緒川慎次である。

その緒川が割り込んできた事で出来た戦兎の隙をついてクローズドラゴンは脱出、すぐさま響の元へ飛んで行った。

「誰だこいつ?」

「ああ、この人は・・・」

向こうで響の可愛らしい悲鳴が聞こえたが気にしない。

「緒川慎次。戦兎さんのサポートをしている『特異災害対策機動部二課』の者です」

「そのとくいなんちゃらがなんなのかは知らねえが、まあいい奴って事はなんとなくわかったわ」

「ありがとうございます・・・しかし、まさか格闘家の万丈龍我さんが戦兎さんのお仲間だとは思いもよりませんでした」

この世界では、万丈龍我はそれなりに名の通った格闘家だ。

そして、その万丈とこの万丈は同一人物。

 

おそらく、エボルトの遺伝子を持っているがゆえに、戦兎と同じく『存在してはいけない人間』としてこの世界に生き残ってしまったのだろう。

 

よって、この世界には、二人の万丈が存在している事になる。

「しかし、髪を染めたんですか?」

「え?あー、それは・・・」

「緒川、こいつは別人だ。名前は同じだけど別人だ」

「そうなのですか・・・」

戦兎が万丈の事について誤魔化そうとするが、何故か緒川はそれほど驚いた様子ではなく、

()()()()()()()()()()()()、彼は万丈龍我と同一人物だと思いますが?」

「「―――!?」」

話を、聞かれていた。

その事実が、思わず万丈を身構えさせるが、そんな万丈の肩を戦兎が掴む。

「落ち着け」

「でもよ・・・」

「俺がなんとかする」

戦兎は、どうにか万丈を留まらせ、緒川に近付く。そして、緒川のすぐ傍で立ち止まると、緒川に一つ、耳打ちした。

「頼む。その事は二課には内緒にしておいてくれ。余計な混乱は招きたくない」

「新世界・・・その言葉が何を意味をするのか分かりませんが、貴方がたが悪い人間ではない事は分かっています。幸い、この事を聞いているのは僕だけです。ですが、隠し事は関心しませんね」

「ああ、分かっている。だけど黙っていてくれ。いつか、必ず話すから」

「・・・ええ、いつか、必ずですよ」

緒川は、そう言い残して戦兎たちから離れていく。

「・・・なんとかなったのか?」

「ああ。・・・万丈」

戦兎は、万丈に新世界の事は黙っておくようにと伝える。

「まあお前の判断なら」

「頼んだぞ」

「おう」

「桐生」

ふと、そこへ翼がやってくる。

「そこにいるのが、お前の仲間なのか?」

「ああ。万丈龍我。馬鹿だけど、頼りになるぜ」

「馬鹿っていうな。筋肉をつけろ筋肉を」

いつもの論点がずれた言い合いに、それを知らない翼はそこじゃないだろうと呆れる。

「まあいい。とりあえず来てくれ」

翼に言われて、戦兎と万丈は翼についていく。

向かう先、そこには、未だ変身したままの響がいた。

そんな響が、ココアを飲んで温まっていると、突然、その変身が解除される。

どうやら気を抜くと解けるようだ。

だが、それに驚いた響は態勢を崩し、ココアを落としてしまう。

そのまま制服姿に戻って、後ろに倒れようとした時、翼が響を抱える。

「あ、ありがとうございま・・・・」

慌てて振り返って、お礼をいようとして顔を上げると、おそらく翼だった事に気が付いて改めて頭を下げる。

「ありがとうございます!」

しかし翼は一度彼女に背を向けて距離を取ろうとする。

「あ、あの!」

だが、そんな翼に、響は声をかけて。

「翼さんに助けられたのは、これで二回目なんです!」

「二回目?」

その言葉に、翼は立ち止まる。

「にひひ」

一方の響は片手をピースサインにして嬉しそうに笑っていた。

「二回目・・・?」

「どういうこった?」

「キュル?」

一方、訳の分からない二人は首を傾げるばかり。

「ママ!」

だが、そこで、あの女の子の声が聞こえ、見てみると、そこには母親に抱かれる女の子の姿があった。

どうやら、無事に会えたようだ。

その様子に、戦兎はいつものようにくしゃっと笑い、万丈も思わず笑みを浮かべる。もちろん、響も同じだった。

だが、その傍にいたスーツの女性―――戦兎にとっては一度見た顔だが―――が、機密事項に関する書類を差し出していた。

その様子に、万丈は唖然としつつ、響は翼に帰るという事を伝える。

「じゃあ私もそろそろ・・・・」

―――が、目の前にはスーツの集団が横一列に並んでおり、翼はその後ろに控えていた。

完全に取り囲まれている。

「貴方がたをこのまま帰す訳にはいきません」

「悪いな、万丈」

「え?どういう事だよ?」

戦兎が万丈から離れる。

「ええ!?なんでですか!?」

「特異災害対策機動部二課まで、同行していただきます」

そして、問答無用でかなり頑丈な手錠を掛けられる響と万丈。

「え・・・あ、あの・・・・」

「キュイーン!?」

「おい!?なんだよこれ!?」

「すみませんね。貴方がたの身柄を拘束させてもらいます」

その傍らにはいつの間にか緒川が立っており、戦兎は片手で謝罪のジェスチャーをしていた。

「安心しろ。俺もやられたから」

「はあ!?」

「なぁぁぁんでぇぇぇえぇえええ!?」

そして問答無用で車に乗せられ、連れていかれた。

 

 

 

 

 

そうして着いたのは、お馴染みのリディアンだった。

「どうしてリディアンに・・・?」

響はどこに連れていかれるのか心配で、一番話しかけられそうだった戦兎に声を掛けられる。

「まあ付いてくれば分かる」

「そんなぁ・・・」

「おい戦兎、一体どういう事なんだよ?」

「だから大人しくついてきなさいって。それぐらい出来るだろ」

そうしてリディアンの中央棟の中にあるエレベーターに乗って―――

 

「どぉぉぉぉぁぁぁぁあぁああぁぁぁああああ!?」

「ぎゃぁぁあああぁあぁああぁぁぁあああぁあ!?」

 

エレベーター(という名の絶叫マシン)に乗せられて―――

 

「ようこそ!人類守護の砦!特異災害対策機動部二課へ!」

 

そして『熱烈歓迎!立花響様・万丈龍我様』という横断幕と共に、歓迎会が開かれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どういう事なんだよ戦兎?」

戦兎の自室にて(自室にしてはかなり広い)万丈は戦兎に尋ねていた。

「言ったろ。俺は今は学校の先生なの。そんでもってここ特異災害対策機動部二課、略して特機部二(とっきぶつ)でノイズを倒しながら正義のヒーローやってるって」

カイゾクハッシャーを修理しながら、戦兎は万丈の質問に答える。

「なんか知らねえが戸籍まで作ってもらってよ。この、とっきぶつ?だっけか?一体どう言った組織なんだよ?」

「簡単に言えば、ノイズっていう化け物から人々を守るための正義の組織って所」

「へえ・・・んで、お前は一週間ここで働いていたと・・・」

「そうだが」

「俺に内緒で・・・上手いもんも毎日食ってたんだろォなぁ・・・」

「ああ・・・ん?万丈?」

「テメェ一人だけずりぃぞゴラァ!」

「うぉぉ!?ちょ、まて!今はんだ使ってるから掴み掛かんな!火傷するから!」

「知るかぁ!こっちは今の今までホームレス生活だったんだぞぉ!」

「それは悪かったって!あ、やめろ、ドラゴンフルボトル使って殴るのはやめろ!頼むからアーッ!」

 

―――やけに部屋の中が騒がしい。

 

翼は、戦兎の部屋の前に立っていた。

(桐生は、仲間は死んだといっていた・・・おそらく、万丈は生き残った方の仲間・・・だけど・・・)

あの時、万丈の姿を見た時の戦兎は、震えていた。

まるで、死んだ人間の幽霊に出会ったかのような反応だった。

死んだ筈の相棒が、目の前にいるかのような反応だった。

(私とは・・・違う・・・)

自分は奏を失ったのに。何故、彼の相棒は生きているのか。

それが、どうしても納得がいかない。

 

一体、何を隠しているというのか。

 

(お前は何を隠しているんだ・・・桐生・・・)

一人という寂しさが、今更ながらに込み上げてくる。

そして、もう一つ―――

(あれは・・・あのシンフォギアは・・・奏の・・・)

立花響が纏っていたシンフォギア。

あれは、間違いなく、天羽奏の使っていた『ガングニール』だ。

 

ガングニール。またの名をグングニル。

北欧神話における主神『オーディン』が使っていたとされる聖遺物。

絶対貫通にして必中。投げれば必ず当たるという伝説を持つ、神の槍。

そして―――死んだ奏が使っていたものだ。

 

それを、あんな、戦いを知らない人間の手に渡っている。

 

(あれは・・・奏のガングニールだ・・・!)

大切な友にして片翼を失った後悔と戦いへの執着。

だからこそ、納得できない。

 

だからこそ、理解してしまう。

 

(私は・・・一人だ・・・)

 

 




次回の愛和創造シンフォギア・ビルドは!

二課に招かれ、シンフォギアの説明を受ける響と万丈。

「なるほど。わからん」

「私も分かりません」

明かされる響のシンフォギアの正体。

「奏ちゃんの置き土産ね」

響が抱く決意。

「私の力で、誰かを守れるんですよね?」

葛藤する翼。

「ああいうタイプはどんだけ言っても止まらねえと思うからな」

そして出現するノイズ。その戦いの最中で―――

次回『ミスマッチな二人』

「貴方と私、戦いましょうか」

「え?」


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ミスマッチな二人

戦「天才物理学者の桐生戦兎とトップアーティストの風鳴翼は、ノイズと戦っていた万丈龍我と立花響を助け、見事二課へと連行するのに成功するのだった!」
万「おい!連行って言うな!」
響「私まだ成人もしてないのにー!」
翼「落ち着いて。実際に警察に突き出したわけじゃないから」
戦「いくら警察に捕まったっていうトラウマがあるからって騒ぐ程の事じゃないでしょ?」
響「え?龍我さん掴まった事があったんですか・・・?」
万「冤罪だ!冤罪で捕ったんだ!」
戦「そして優しい俺が万丈の冤罪を晴らしてあげたのでした。はいめでたしめでたし・・・」
翼「勝手に終わらせるな!?」
響「冤罪だったんですね。良かったぁ・・・」
万「ああ・・・だーもう話は終わりだ!どうなる第六話!」


「―――それが、翼ちゃんが響ちゃんの纏うアンチノイズプロテクター『シンフォギア』なの」

「なるほど。分からん」

「キュル!」

万丈の一言で戦兎以外のその場にいるものがズッコケる。ちなみに、響の頭の上に乗っかっているクローズドラゴンも同意するように鳴いた。

「だろうね」

「だろうとも」

「いや、こいつの場合は一から十まで理解してないから」

「あのー」

「はい何かしら?」

「私も分かりません」

「いやお前は分かれよ」

 

ここは、二課にある部屋の一つ。

昨日、シンフォギア奏者として目覚めた立花響と仮面ライダークローズこと、万丈龍我にシンフォギアの事を説明しているのだ。

 

だが、当然のように万丈にそれは理解出来ず、それに納得しているオペレーターの二人『藤尭朔也』と『友里あおい』は納得している様子だが、万丈の馬鹿さを知っている戦兎はとりあえずフォローになってないフォローを入れるのだった。

「いきなりは難しすぎちゃいましたねー」

「いや、万丈に限ってはたとえどんなに説明したとしても分からないから」

「おい!」

「え?龍我さんってそんなに頭悪いんですか?」

「最強、無敵ぐらいの漢字しか分からないぞ」

「ええ・・・」

「おい!いくらなんでもそれは言いすぎだろ!俺だって足し算ぐらい出来るわ!」

「その年で足し算しか出来ない時点はお前は馬鹿確定なんだよ!」

「馬鹿ってなんだ!せめて筋肉をつけろ!」

「論点違うと思うんだが・・・」

「キュウ・・・」

弦十郎が二人の言い争いの呆れる傍らで、了子が口を挟む。

「だとしたら、聖遺物からシンフォギアを創れる唯一の技術『櫻井理論』の提唱者が、この(わたくし)である事だけは、覚えておいてくださいね」

「はあ・・・」

「結局どういう事だよ?」

「ようするに、あの化け物を倒せる装備を作ったのがこの人って事」

「マジかよ!すげえな!」

ようやく理解出来たのか興奮気味の万丈。

「でも、私はその聖遺物?なんてもの持ってません。なのに何故・・・・」

すると、その疑問に答えるかの如く、部屋のスクリーンに新たな画像が映し出される。

それは、響のX線写真、レントゲンだ。

その心臓部分にあたる部分に、何か、欠片のようなものが散りばめられていた。

「これがなんなのか、君には分かる筈だ」

「はい。二年前の怪我です。あそこに私もいたんです」

そう答える響。

「二年前ってどういう事だ?」

「二年前、ライブ会場の惨劇っていう事件があってな。そん時にコイツも現場にいたんだよ」

「それってスカイウォールの惨劇と似たようなもんか?」

「んな訳ないでしょ。あれに比べたら安いものだが・・・まあ、大量のノイズが襲ってきて、その現場にコイツもいたってことだ」

「マジかよ・・・」

そして、戦兎は推察する。

(二年前・・・天羽奏の死と、今コイツが使っているシンフォギアの事から考えて、これは・・・)

その間にも、了子がその破片について話し出す。

「心臓付近に複雑に食い込んでいるため、手術でも摘出不可能な無数の破片。調査の結果、この破片はかつて奏ちゃんが身に纏っていた第三号聖遺物『ガングニール』の砕けた破片であることが、判明しました」

その事実に、翼は衝撃に打ちのめされる。

「ん?翼?」

その異変に気付く戦兎。

「奏ちゃんの置き土産ね」

即ち、響の纏うガングニールは、奏のガングニールそのもの。

あの日、消滅した筈のガングニールは、響の中で、ずっと残り続けていたのだ。

その事実に、翼はふらつき、思わず近くの台に手を付く。

相当、衝撃が大きかったのだろう。

何せ、奏が持っていたものと同じなのだから。

翼はおぼつかない足取りで部屋を出ていく。

「大丈夫かアイツ?」

「・・・・」

その後ろ姿を見て、戦兎は万丈に言う。

「悪い万丈、ちょいと行ってくる」

「お?おう」

万丈は始めは戸惑ったが、やがて意図を汲んでくれたのか、止める事はしない。それに少し安心して、翼を追いかけるように部屋を出ていく戦兎。

そして部屋には、弦十郎、了子、万丈、友里、藤尭、響しかいなくなった。

「・・・あの」

ふと、響が声を挙げる。

「どうした?」

「この力のこと、やっぱり誰かに話しちゃいけない事なのでしょうか?」

立ち上がって、そう言う響に、弦十郎は静かに答える。

「君がシンフォギアの力を持っている事を何者かに知られた場合、君の家族や友人、周りの人間に危害が及びかねない。『命』に関わる危険すらある」

「命に・・・関わる・・・?」

その時、響の脳裏に、未来の顔が浮かぶ。

もし、未来に危ない目にあったら、自分は―――

「・・・」

それを思うと、響は思わず俯いてしまう。

「俺たちが守りたいのは機密などではない。人の命だ。その為にも、この力の事を、隠し通してもらえないだろうか?」

「貴方の秘められた力は、それほど大きなものだという事を、分かってほしいの」

いきなり、実感が湧いてきたのか、響は言葉を失う。

そんな、大きなものだという事を、一般人である響には、あまり理解出来なかったのだ。

「・・・まあ、あれだ。シンフォギアは兵器じゃないって事だな」

そこで、万丈が口を挟んだ。

「ノイズを倒せるたった一つの方法で、とんでもねえ力がある。それをどっかの馬鹿が軍事利用しないように、黙ってろって事だろ」

「軍事利用・・・」

万丈は、ポケットからドラゴンフルボトルを取り出す。

「でも、それは使う奴によって変わってくるみたいだ」

「使う奴によって・・・?」

「シンフォギアも仮面ライダーも結局の所は何も変わらねえ。使い方次第で兵器にもなるし、誰かを守るための力になる。俺は、この力を愛と平和の為に使う。それが、俺の信じた仮面ライダーだからな」

「キュル!」

万丈は、響にその言葉を送り、そして尋ねる。

「お前はどうしたい?」

「・・・」

その問いかけに、響は、

「あの、私の力で、誰かを助けられるんですよね?」

その言葉に、弦十郎と了子は頷く。

「分かりました!」

それが、響の答えだった。

 

 

 

 

 

 

一方、部屋で出ていった翼の方では。

「・・・」

未だ、信じられないとでも言うように、その場に立ち尽くし、考える翼。

(奏の置き土産・・・それがアイツだとでも言うのか。信じられない・・・だが、もしそうだとしたら、私はどうすればいい?奴を受け入れる事が出来るのか?この私に。一体、どうやって」

「おい桐生・・・勝手に私の心境をナレーションするな!」

「ありゃ」

翼からの怒りのツッコミを受けつつ、戦兎は笑みを浮かべて歩み寄る。

「悪いな。お前結構からかいがいあるし」

「お前にからかわれるほど、私は間抜けではない」

「いや実際にからかわれてただろ?」

ぬぐっ、と口ごもる翼。

(真面目ちゃんめ)

「それで、一体何の用だ」

誤魔化すように戦兎にここに来た理由を尋ねる翼。

「まあ、アイツは確かに戦いに関しては素人だし、あんたの大切な人が使っていたシンフォギアを使っていて、気に食わないのは分かる。でも、遅かれ早かれ結局はお前と同じ戦場で戦う事になるんだ。信頼はしなくても信用はしてもいいんじゃないのか?」

翼を諭すように言う戦兎。

しかし翼は、納得できないとでもいうように反論する。

「私は、この身を剣として戦い生きてきた・・・奴は、ただの一般人。そんな人間が戦場(いくさば)に立つべきではない・・・」

「まあ、俺も一般人が戦うのには反対だけど・・・なんというか、アイツには、底知れない危険があるような気がするんだよな」

「底知れない危険?」

「ああ・・・なんというか・・・自殺願望というか・・・」

自殺願望?あのどこにでもいそうな少女に?

その言葉に疑問を抱く翼だが、すぐさま言葉を紡いだ。

「なら猶更戦わせるべきではない。そんな人間は早死にするだけだ」

「もちろんそうはさせないさ。だけど、アイツは必ず戦場に立つ。だから俺たちが死なせないようにしなくちゃいけないんだ」

「死なせない・・・?」

その言葉に、翼は首を傾げる。

「ああ、アイツが戦場に出るっていうなら、俺はアイツが死なないように戦う。ああいうタイプはどんだけ言っても止まらねえと思うからな」

その言葉には、何か、強い意志を感じられた。

「もう二度と、何も失いたくないから」

「・・・ッ!?」

その顔には、これまでにないほど覚悟がこもっていた。

「お前が、あいつにどんな思いを抱いているのか、本当の所わからないけど、少なくともアイツがまともに戦えるようになるまで守ってやることぐらいはやってくれ。少なくとも、これは俺からの願いだ」

「・・・・」

戦兎の頼み事に、翼は、すぐに返事を返せなかった。

(桐生は・・・何も失っていない訳じゃないのか・・・?)

相棒が生きていた。それでも、彼にとっては、まだ多くのものを失っていることに変わりないというのか。

多くのものを失って、それで残ったのが、戦うための力と、たった一人の相棒だとでもいうのか。

そんな男に、自分はどんな返事を返せばいいのか。

(奏・・・私は・・・)

そこで、電動スライド式の扉が開く音が聞こえ、振り返ってみれば、そこから響が駆け出て、その後ろを万丈がついてきていた。

そんな響は、翼の前に立つ。

「私、戦います!」

そしていきなりそう言いだした。

「慣れない身ではありますが、頑張ります!一緒に戦えればと思います」

そう言って、響は翼に手を差し出す。

「万丈」

「ま、そういうこった」

「キュィールルルル!」

戦兎の予感は的中していた。

「やっぱり・・・」

「・・・・」

一方の翼は、その手をしばし見つめた後、やがて、納得いかないとでもいうように目をそらした。

「・・・あの・・・一緒に戦えれば・・・と・・・」

その時、二課の施設内にけたたましく警報が鳴り響く。

「なんだぁ!?」

「ノイズだ!行くぞ!」

 

 

 

 

「ノイズの出現確認!」

「本件は我々二課で預かることを一課に通達!」

作戦本部にて、弦十郎が職員たちに指示を飛ばしていた。

「出現地特定!座標でます!」

そうして映し出された場所は、リディアンのすぐ側だった。

「リディアンより距離二百!」

「近いな・・・」

「迎え撃ちます!」

翼がすぐさま駆け出す。

「俺たちも行くぞ万丈!」

「おう!」

「・・・!」

戦兎と万丈も追いかけ、その後を響もついていこうとする。

「! 待て!君はまだ・・・」

そこを弦十郎に止められる。

「私の力が誰かの助けになるんですよね?シンフォギアの力でないと、ノイズと戦うことは出来ないんですよね?だったら行きます!」

響は、そのまま翼のあとを追う。

「・・・」

「安心しろ風鳴」

そこで、立ち止まっていた戦兎が弦十郎に言う。

「しばらくは俺がアイツを守るから」

「・・・頼んだぞ」

弦十郎の言葉に戦兎はうなずき、そして走り出す。

「危険を承知を誰かの為だなんて、あの子、良い子ですね」

「・・・果たして本当にそうだろうか?」

「え?」

弦十郎は、静かに言う。

「翼のように、幼いころから鍛錬を積んできた訳ではない。ついこの間まで、日常の中に身を置いていた少女が、誰かの助けになるというだけで、命を懸けた戦いに赴けるというのは、それは、歪な事ではないだろうか?」

「つまりあの子もまた私たちと同じ、こちら側ということね・・・」

四人が去った指令室には、重い空気が漂っていた。

 

 

 

 

『日本政府『特異災害対策機動部』よりお知らせします。先ほど、特別避難報が発令されました。速やかに最寄りのシェルター、待避所へと避難してください』

そのような放送が街中に響き渡る中で、風鳴翼と万丈龍我は、何十体ものノイズの前に立っていた。

「戦兎の奴おっせぇな・・・」

「キュルル」

「無駄口は叩くな」

「へーい・・・」

「キュウ・・・」

そんな中で、ノイズがいきなり溶けだしたかと思うと、一気に集まっていき、やがて、巨大なノイズへと変貌する。

「マジかよ・・・」

その事を知らない万丈にとっては、それはまさしく異常な事であり、その変貌ぶりに愕然とする。

だが、すでに慣れた翼は、静かに聖遺物の起動聖唱を行う。

 

「――――Imyuteus amenohabakiri tron――」

 

次の瞬間、胸のペンダントが輝き出し、翼に蒼銀の装甲を纏わせる。

「やるっきゃねえか」

 

Wake UP

 

一方の万丈もクローズドラゴンにドラゴンフルボトルをセットし、ボタンを押してビルドドライバーにセットする。

 

CROSS-Z DRAGON!』

 

そしてボルテックレバーを回して、スナップライドビルダーを展開する。

 

『Are You Ready?』

 

「変身!」

 

『Wake UP Burning!』

 

『Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

 

「しゃあ!」

変身したクローズはそうガッツポーズをとってそう気合を入れる。が、その横ですぐさま駆け出す翼。その口は、歌を歌っていた。

「あ!?おい!」

その翼を迎撃するようにノイズが体についていた羽を全て飛ばす。

しかし、翼はそれをアクロバティックに躱す。しかし躱した筈の羽はブーメランの如く巻き戻っていき、されど翼は足のブレードを展開して一瞬にして全て叩き切る。

「すっげぇ・・・」

その華麗さにクローズはその場で呆ける。

そのまま翼はノイズの背後を取り、その手に持つ刀を巨大な大刀に変形させ、振り返ったノイズに向かって振るおうとする。

「このまま片足を真っ直ぐ突き出して片足の膝は胸につけるつもりで引き絞ってあとはこのまま鉄の棒の如く動かない!」

「はい!」

「ッ!?」

聞き覚えのある声が聞こえたかと思いきや、ノイズの側面から変身した響とラビットタンクフォーム・ビルドが同時に飛び蹴りをノイズに叩き込んでいた。

それを喰らったノイズは態勢を崩す。

「翼さん!」

「余計のお世話かもしんねえけど後頼んだ!」

「くっ・・・!」

絶好の機会、それを作った響とビルドに、翼はなぜか歯噛みしつつ飛び上がり、その巨大化した刃をノイズに叩きつけた。

 

蒼ノ一閃

 

ズバンッ!という擬音が聞こえそうな程綺麗に入ったその一撃は、一瞬にしてノイズを炭化させ、消滅させる。

「・・・あれ?俺出番なくね!?」

「そうだな。まあどんまい」

「どんまいじゃねえよ!これじゃあ変身シーン見せた意味が無ぇじゃねえかよ!?」

「無駄に変身シーン使ってんじゃないよ。ていうかうるさいな。少しは黙ってろ」

「黙ってろってなんだ!?俺の出番返せよゴラァ!」

「だーもううるさいって!」

何やら言い争いをするビルドとクローズを他所に、響は翼に駆け寄っていた。

「翼さーん!」

「・・・」

「私、今は足手纏いかもしれないけど、一生懸命頑張ります!だから、私と一緒に戦ってください!」

しばしの、沈黙。否、先ほどからビルドとクローズがうるさいが、この際無視するとしよう。

「・・・・そうね」

ふと、返ってきた翼の言葉に、響はさらに嬉しさを込み上げさせる。だが―――

「貴方と私、戦いましょうか」

「え・・・」

次の言葉で、それは困惑へと変わった。

今、翼はなんといったのか。

 

戦いましょうか、と言ったのか。

 

その言葉を、響が理解する前に、翼は、その手の刀を響に突き付ける。

「は?」

「ん?」

その異変に、取っ組み合っていたビルドとクローズも気付く。

「え、あの、そういう意味じゃありません。私は、翼さんと力を合わせようと・・・」

「分かっているわそんなの事」

「だ、だったらどうして・・・」

「私が貴方と戦いたいからよ」

「え・・・」

翼の言葉に、響は増々困惑する。

「なあ・・・なんかやばい事になってきてないか?」

「ああ・・・」

戦兎は、ドリルクラッシャーとゴリラフルボトルを取り出しつつ、そう答える。

その行為に、クローズもいつでもボルテックレバーを回せるように用意する。

「私は貴方を受け入れられない。力を合わせ、貴方と共に戦う事など、風鳴翼が許せるはずがない」

(そう、許せるはずがない・・・)

彼女が使っているのは奏のシンフォギア。されどそのシンフォギアを使っているのは戦いを知らない、何も知らないド素人。

そんな相手と共に、戦う事なんて出来やしない。

それが、ただの意地だとしても。

「貴方もアームドギアを構えなさい」

アームドギア・・・それは、シンフォギアに存在する固有武装。

ガングニールの別名はグングニルであり、その名が意味する事は、北欧神話における主神オーディンが使っていた神槍。それを、かつては奏も使っていた。

それに対して翼は刀。天羽々斬は、十束剣と呼ばれる刀剣の一種であり、かつてスサノオが八岐大蛇退治に使ったとされる神剣である。

しかし、目の前の少女、立花響はそのアームドギアを展開していない。

彼女はここに来るまで、完全に徒手空拳―――否、ただ殴って蹴っていただけだった。

「それは、常在戦場の意思の体現。貴方が、何をもおも貫き通す無双の一振り、ガングニールのシンフォギアを纏うのであれば、胸の覚悟を構えて御覧なさい!」

そう言い放つ翼。シンフォギアを纏うのであれば、それはまさしく戦う意思の象徴だ。

それを展開していない、響はというと。

「か、覚悟とかそんな・・・私、アームドギアなんて分かりません・・・分かってないのに構えろなんて、それこそ全然分かりません!」

まだシンフォギアについて理解出来ていない響にとって、それは未知なるもの。

そんなものをいきなり理解し、使えなどとは、戦兎でもなければ無理な話だ。

その言葉に、翼は刃を降ろし、そして背中を向けて歩き出す。

だが、まだ油断は出来なかった。

響は響で、不安そうに翼の背中を見つめている。

「覚悟を持たずに、のこのこと戦場(いくさば)に立つ貴方が、奏の―――」

ある程度の距離が開いた。そこで、翼は響に言い放つ。

 

「―――奏の何を受け継いでいるというの!?」

 

「―――ッ!?」

その言葉が、響に衝撃を与える。

そして次の瞬間、翼は飛び上がり、刀を響に向かって投げる。

それが、一気に巨大化し、見るも巨大な大剣けと変化する。

その柄頭を、ブレード部分のブースターで加速した翼は蹴り込み、一気に響に叩きつけようとする。

 

天ノ逆鱗

 

「「ッ!」」

それを見たビルドとクローズがすぐさま動く。

ビルドは手に持ったドリルクラッシャーのソケットにゴリラフルボトルを装填し、クローズはボルテックレバーを一気に回す。

 

『ボルテックブレイク!』

 

ドラゴニックフィニッシュ!』

 

巨大な腕型のエネルギーを纏わせたドリルクラッシャーとクローズドラゴン・ブレイズを拳に纏わせて翼の『天の逆鱗』の迎撃を図ろうとするビルドとクローズ。

しかし、その二人の間を、何かが物凄い勢いで通り過ぎたかと思うと―――

 

「コラァ!」

 

見た事のあるワインレッドのシャツをなびかせ、拳で『天ノ逆鱗』を真正面から打ち返した。

その人物は―――弦十郎だ。

「「えぇぇええぇぇええぇええぇええ!?」」

明らかに人が受け止めるべきものではない翼の一撃を、あの巨漢は、拳一発で受け止めていた。

しかもよく見れば拳は剣の切っ先に当たっていない。僅かに空間が出来、その間で止められていた。

否―――そのままその巨大な大剣を消滅させてしまったのだ。

「「えぇぇえええぇぇえええぇぇえぇぇえええぇええ!?」」

「おじさま・・・!?」

さらにそれだけに留まらず、

「おぉぉぉお――――たぁっ!!」

弦十郎が声を発すると共に、足元の道路が一気に崩れ吹き飛ぶ。

「嘘だろぉぉぉぉおおおぉぉおおおぉお!?」

「何ぃぃぃいいぃぃぃいいぃいいぃいい!?」

その威力は、本当に人間が放っていいものではなかった。

たかだが震脚で道路を吹き飛ばすなど、間違いなく人間技ではない。

「なあ、あの人ってエボルトの親戚か何かじゃねえの!?」

「知らないよ!まさかあんな化け物が存在するなんて俺も思わなかったよ・・・って翼!」

どうにか発動してしまった必殺技を叩きつける事で吹き飛ばされる事は防いだが、ビルドとクローズは弦十郎の規格外さに驚いたままだ。

だが、ビルドの視界に落下してくる翼が見えた時、ビルドは思わず走り出していた。

「うおっと!」

間一髪で受け止める事に成功するビルド。

そして、下水道管をやったのか、割れたアスファルトの隙間から水道水が噴水の如く溢れ出す。

それと同時に、響と翼の変身は解除される。

「大丈夫か?」

「・・・!は、離せ!」

「うお!?」

翼はビルドの腕から逃れ、その場にへたり込む。

「あーあーこんなにしちまって。何をやってんだお前たちは。この靴、高かったんだぞ?」

「いやそこかよ」

「ご、ごめんなさい・・・」

「一体何本の映画が借りられると思ってんだよ」

見れば、弦十郎の靴は見るに堪えない程無残、というか原型も残さないような有様だった。

(というか何故に映画?)

その事に疑問を抱いてしまう戦兎だが、とりあえずビルドドライバーからフルボトルを抜いて変身を解除する。

クローズも同様に、クローズドラゴンを抜いて変身を解除する。

「キュルル・・・」

ベルトから抜かれたクローズドラゴンは、そう小さく鳴いて、万丈のすぐ傍で飛び留まる。

「らしくないな、翼。ろくに狙いもつけずにぶっ放したのか、それとも・・・」

そこで、弦十郎はある事に気付いた。

「お前、泣いて・・・」

「泣いてなんかいません!」

その言葉を、翼は否定する。

「涙なんて、流していません・・・」

念を押すように、悟られぬように、翼は否定する。

「風鳴翼は、その身を、剣と鍛えた戦士です。だから・・・」

「・・・」

その言葉は、まるで、自分を守るために作った殻のようなものだった。

その言葉に、弦十郎はそれ以上追及はせず、そっと翼を立ち上がらせる。

「翼さん・・・」

「・・・」

その様子に、響は心配そうに呟き、事情を知らない万丈だが、何かしら重大な事があるのだろうと思い、何も言わない。

「私、自分がダメダメなのは分かっています」

それでも、響は何か言いたかった。

「だから、これから一生懸命頑張って」

それは、響にとっては慰めのつもりだったのだろうか。

 

()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

その言葉が、風鳴翼の地雷だと知らずに。

 

 

 

 

次の瞬間、乾いた破裂音がその場に響き――――風鳴翼は泣いていた。




次回の愛和創造シンフォギア・ビルドは!

「このままじゃまともに戦えないぞ」

未だぎくしゃくした翼と響。

「ん、いっぱいですね」

この街のノイズの発生。

「まさかこの件、米国政府が糸を引いているなんて事は・・・」

ノイズ以外の脅威と、地下に隠された、デュランダルの存在。

「全て、私の弱さが招いた事だ・・・」

自らの至らなさを悔いる翼。

「俺が人であるように、お前も人なんだからさ」

そして、戦兎はその言葉を否定し、

「私にだって、守りたいものがあるんです!」

運命が、彼女の前に立ちはだかる。

次回『約束のシューティングスター』

「・・・ネフシュタンの鎧・・・」


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約束のシューティングスター

戦「いや、いくらなんでも早すぎやしないか!?」
弦「なんでも書き貯めたものが以外に多く溜まったから、たまにはサービスで一日二連続投稿に乗り出したらしい」
戦「一日に二回なんて結構ハードなんだけど!?これじゃあタグ詐欺じゃねえか!?」
弦「まあ、気まぐれ投稿らしいからな。途中飽きたりネタが思い浮かばなくなったらしばらく投稿できなくなるから、そういう警告の意味もあるんだろう」
戦「おいなんでそんな冷静なんだよお前熱血系キャラなのになんでそんな冷血に物事判断してるんだ!?」
弦「はっはっは!歳の功というものさ!」
藤「存在するだけで憲法に抵触する程の戦闘力もってる人間だからこそなにか説得力ありますね・・・」
翼「そんな事よりさっさと始めるぞ。今回は特別に万丈や立花に参加してもらってないんだから」
戦「その為の穴埋め要因としてこいつらが呼ばれちゃったんでしょうか・・・まあいいや」
弦「では、今回は響君が意外に活躍する話だ。はい戦兎君」
戦「お、おう・・・ではどうなる第七話!」


―――仮面ライダービルドこと、桐生戦兎は、自室にて、自分の発明品の修理に当たっていた。

 

「それ、直りそうか?」

そう聞いてくるのは、ダンベルを使って筋トレをしている万丈だ。

「ああ、どうにかなりそうだ」

黙々と作業を続ける戦兎。

 

あれから一ヶ月。

 

シミュレーターなどを使い、ノイズに対しての連携訓練を行ってきた戦兎、万丈、翼、響の四人ではあったが、まず響が戦いの素人であること、翼が独断で戦う事、それでもってその二人に振り回される戦兎と万丈という全く持って噛み合わない状態に、現場の者たちはともかく、弦十郎たちには完全に呆れられていた。

 

「しっかし、どうすんだよ。このままじゃまともに戦えねえぞ」

「響はお前がどうにかしろ。戦い方ぐらい教えられるだろ」

「まあそれはそうだけどよ・・・問題なのは翼の方だろ?」

「まあ、そうだな・・・」

未だ、響や戦兎たちに心を開こうとしない翼。学校でもツンツンとした態度は健在で、やはり、周囲の生徒からは近づきがたい印象を与えていた。

元々トップアーティストという立場もある。

表でも結構忙しい筈なのに、ノイズを倒すこともしているというのは、かなり忙しいはずだろう。

響はともかく、ノイズを倒せる仮面ライダーという存在が増えたのだ。少しぐらいは休んでもいいと思うのだが。

「でも、大切な人を失ったっていうのは、アイツの心にまだ傷を残してると思うんだ」

「・・・そうだな」

翼だけではない。二人とも、大切な人を失っている。

万丈は恋人を、戦兎は父親を、それぞれ失っている。

新世界創造によって、彼らは復活しているだろう。しかし、それは自分たちの知っている相手ではない。

スカイウォールの存在していた自分たちの世界とは違う世界の歴史に生きる人間だ。

だから、彼らは自分たちの事を知らない。

そして翼は、自身の片翼とでもいうべき親友を失っている。

その傷は、そう簡単に治るものではないだろう。

その事を、良く知っている二人は、あえてその事を翼には言っていない。

人を失う気持ちは、誰よりも、痛い程理解しているのに。

「だぁーくっそ!どうにもなんねえのかよ!」

「お前はやる事ないからいいでしょ。俺は仮面ライダーとしても学校の先生としても頑張らなくちゃいけないんだからさ。そんなに暇なら風鳴さんに稽古つけてもらったらどうだよ?」

「お、それいいかもな」

戦兎の提案をあっさり受け入れる万丈。

「しっかしお前が先生ねえ。しかも女子校なんだろ?」

「うるっさいな。いいでしょ別に。お前は働いてないんだからさ」

「さぞ女にはモテてんだろうな。なあ?戦兎先生?」

「気持ち悪いからやめなさい」

「気持ち悪いっていうな」

ふと、そこで扉が開く。

「ようお前たち」

「風鳴さん」

「風鳴のおっさん、どうしたんだよ?」

入ってきたのは弦十郎だった。

「何、今何してるのか気になってな」

「あっそう・・・あ、そうだ風鳴さん。万丈暇そうだから稽古つけてやってくれよ」

「そういえば龍我君は元格闘家なのだったな」

「まあな・・・」

その事に関しては万丈は苦い思い出ある。

かつて八百長試合に手を出したのだ。

それに手を出した自分の事を、彼自身も『クズ』だと認識しているのも事実だ。

だが、それでも彼が誰かを守りたいという気持ちは本物だ。

「だったら俺の家の来るか?サンドバックもあるし、強くなる事間違いなしだぞ」

「へっ、上等だ。どうせ暇なんだ。しっかりと強くしてもらうぜ」

(んでもってコイツがどうやって強くなったのか、その秘訣を聞き出してやる・・・!)

などと考えている万丈。

「あ、そういえば風鳴さんはどうやってあれほどの力を?」

戦兎が直接弦十郎に聞く。

それに弦十郎は自慢するかのように言った。

「男の鍛錬は食事と映画鑑賞と睡眠だけで十分だ!」

「「は?」」

それだけ?

「え?何?それだけ?」

「映画の鍛錬法は確かに効果はあるぞ」

「映画の鍛錬法を実践してんのかよ!?」

ただそれだけであれほどの力を手に入れたというのか。

本物の化け物かこの男は。

「なあ戦兎」

「なんだ万丈」

「俺、マグマになってもこの人に勝てる気がしねぇんだけど・・・」

「奇遇だな。俺もハザードでも勝てそうにない気がする」

改めて、弦十郎の規格外さに驚嘆する二人だった。

 

 

 

 

 

それでもって夜。

「遅くなりました!」

響が作戦本部にやってくる。

「すみません」

頭を下げて謝罪する響。

「では、全員揃った所で、仲良しミーティングを始めましょう」

了子がそう言う傍らで、響と翼の間には、形容しがたい空気が流れていた。

その様子を、戦兎は横眼で見つつ、会議を始める。

まず、モニターにここら一帯の地図が映し出される。

そして、一つの点を中心として広がる円も表示された。

その数はかなり多い。

「どう思う?」

弦十郎が響に問いかける。

「ん、いっぱいですね」

「っはは、全くその通りだ」

その返しに、弦十郎は笑い、一方の翼は顔をしかめていた。

「これは、ここ一ヶ月のノイズの発生地点だ」

「確か人間がノイズに出会う確率っていうのは、通り魔と出会う確率を下回るんだよな」

「その通りだ。そういえば響君は、ノイズについて知っている事は?」

「テレビのニュースや学校で教えてもらった程度ですが、まず無感情で、機械的に人間だけを襲う事、そして、襲われた人間が炭化してしまうこと、時と場所を選ばずに突然現れて被害を及ぼす、特異災害として認定されている事」

「意外と詳しいな」

「今纏めてるレポートの題材なんです」

褒められて照れたのか頭を掻く響。

「そうね。ノイズの発生が国連での議題にあがったのが十三年前だけど、観測そのものはもーっと前からあったわ。それこそ、世界中の太古の昔から」

「そんなに前なのか」

「世界各地に存在する神話や伝承の数々に登場する異形は、ノイズに由来するものが多いだろうな」

「だから聖遺物・・・」

神話の時代から存在するというのなら、それに対抗するために作られたものが今響や翼の使うシンフォギアの核である聖遺物なのだろう。

「さっき戦兎君が言ってくれたように、ノイズの発生率は決して高くないの。誰の眼から見ても明らかに異常事態。だとすると、そこになんらかの作意が働いていると考えるべきでしょうね」

「作意?てことは、誰かの手によるものという事ですか?」

「そう考えるのが妥当だろうな」

「一体誰がなんの目的でやるんだよ?」

「それは分からん」

「中心点はここ、私立リディアン音楽院高等科。我々の真上です。サクリスト-D『デュランダル』を狙って、なんらかの意思が、この地に向けられている証左となります」

翼が、そう指摘する。

「デュランダル・・・?」

「・・・ってなんですか?」

当然、そんな事を知らない戦兎、万丈、響は首を傾げるだけだ。

一応、戦兎はその名前を知っているが。

その疑問に、友里が答える。

「ここよりも更に下層、『アビス(深淵)』と呼ばれる最深部に保管され、日本政府の管理下によって我々が研究している、ほぼ完全状態の聖遺物。それがデュランダルよ」

「翼さんの天羽々斬や、響ちゃんの胸のガングニールの欠片は歌を歌って、シンフォギアとして再構築させないと、その力を発揮出来ないけれど、完全状態の聖遺物は一度起動した後は、百パーセントの力を常時発揮し、さらには、装者以外の人間も使用可能と、研究の結果が出ているんだ」

藤尭が捕捉を加える。

「結局どういう事だよ?」

「響や翼の使うシンフォギアよりも強力な武器がここよりも下にあるってことだよ」

万丈のぶれなさに呆れつつ、軽く説明する戦兎。

「それが、私の提唱した櫻井理論。だけど完全聖遺物の起動には、相応のフォニックゲイン値が必要なのよね」

「んん~?」

まあ響はあまり理解出来ていないようだが。

「フォニックゲインってなんだ?」

「歌で発生するエネルギーの事だよ。ボトルを振れば成分が活性化するのと同じ理論だ」

「なるほど」

「あれから二年。今の翼の歌であれば、あるいは・・・」

弦十郎の言葉に、翼は顔をしかめる。

「そもそも、起動実験に必要な日本政府からの許可って下りるんですか?」

「いや、それ以前の話だよ。安保を糧に、アメリカが再三のデュランダル引き渡しを要求してきてるらしいじゃないか。起動実験どころか、扱い自体に慎重にならざるを得ない。下手打てば国際問題だ」

「アメリカか・・・」

戦兎や万丈にとっては馴染みのない言葉だが、国同士のいざこざはなんとなく分かる。

かつてパンドラボックスを巡って戦争をした程だ。

「まさかこの件、米国政府が糸を引いているという事は・・・」

「調査部からの報告によると、ここの数か月における本部コンピューターへのハッキングを試みた痕跡が数万回に及んで認められているそうだ」

傍らでは翼は手に持っていた紙コップを握りつぶし、その様子に響は目をそらす事しか出来ない。

「結局はどういう事だよ?」

「お前な・・・ライダーシステムで例えると、俺たち仮面ライダーの使う技術を盗もうとしているってことだよ。パソコンだとかそういうのにアクセスして、データを盗もうとすること。まあ分かりやすく言えば、紗羽さんが難波重工にデータを渡してたのと同じだな」

「ああ、ああいう感じか」

「流石に、アクセスの出所は不明。それらを、短絡的に米国政府の仕業とは断定できない」

「なんでだよ」

「証拠が足りないからだよ馬鹿」

「馬鹿っていうな!」

「おほん、もちろん痕跡は辿らせている。本来こういうのこそ、俺たちの本業だからな」

そこで、緒川が話に割り込んでいた。

「風鳴司令」

「そうか。そろそろか」

「こんばんは。これからアルバムの打ち合わせが入っています」

「はえ?」

「どういう事だよ」

「ああ。俺が教師をやってるように、アンタもそういう職業についてるのか」

「ええ。表の顔では、アーティスト風鳴翼のマネージャーをやっています」

そう言って、緒川は名刺を差し出す。

「おお!名刺貰うなんて初めてです。これまた結構なものをどうも」

「なあなあ俺も作れないのかこれ?」

「お前まともな職業についてないのにどうして名刺なんか作るんだよ」

そうして、翼と緒川は仕事の為に指令室を出ていく。

その様子を見送りつつ、響は弦十郎に尋ねる。

「私たちを取り囲む脅威って、ノイズだけじゃないんですね」

それに、その場にいる者たち全員がうなずく。

「どこかの誰かがここを狙っているなんて、あまり考えたくありません」

「大丈夫よ」

「え?」

「何故ならここは、テレビや雑誌で有名の天才考古学者櫻井了子が設計した、人類守護の砦よ」

「―――ッ!」

「お前の事じゃねーから」

ガタッと立ち上がりかけた戦兎を制する万丈。

「先端にして異端のテクノロジーが、悪い奴らなんて寄せ付けないんだから」

「よろしくお願いします」

「んん」

そんな中で、戦兎は考える。

(確かにデュランダルだとかの聖遺物は、使い方次第では本国を守るための防衛手段にもなるし、逆に敵国を滅ぼす為の兵器にもなる・・・だが、なんかそんな国単位の話じゃないような気もするんだよな・・・・)

何故この街にノイズが集中するのか。一体どういう目的があるのか。

本当に、デュランダルだけが目的なのか。狙っているのはアメリカなのか。

何か、強大な陰謀が隠れているようにも思える。

(エボルトと同じように、この世界を滅ぼそうとする奴がいたりするのか・・・?だとしたら・・・)

ポケットのラビットフルボトルを握りしめて、戦兎は決意を新たにする。

(その野望を俺たちが阻止してみせる・・・!)

 

 

 

 

 

 

 

 

それでもって翌日。

黒板にベクトルの図を描きつつ、戦兎は教科書を見ず、自らの言葉でそれを説明していた。

「あ~、やっぱり戦兎先生ってかっこいいなぁ」

「あんな風にさわやかな笑みを浮かべながら授業が出来るなんて、すごいよねぇ」

「はいそこ。ここの仕組み分かりますか~?」

一人の生徒を指名して、答えてる最中、戦兎は奥の席に座る翼を見上げる。

その表情は、未だ何かを考えている様だった。

「・・・」

その様子に、戦兎は溜息とともに肩を落とすのだった。

 

 

 

 

授業が終わり、放課後。

「よっ」

「桐生・・・」

いつも通り一人の翼に、戦兎は声をかける。

「ちょっと付き合ってくれ」

そうして、二人は学園の屋上へとやってくる。

下を見下ろせば、何人もの生徒たちがグラウンドで走っていたり、遊んでいたりしていた。

「それで、何か用か?」

「ああ。お前、どうしてそこまで一人で戦おうとするんだ?」

その問いかけは、戦兎の疑問の一つだった。

「いや、どうしてそこまでして戦おうとする?アイツはともかく、ノイズに対抗できる仮面ライダーが二人もいるんだ。たまには休む事も考えた方がいいんじゃないのか?」

「何を馬鹿な事を・・・私はこの身を『剣』として鍛えた身。そのような行為は必要ない」

「天才でも休みは必要だぞ?結構なハードスケジュールだろ?」

「お前には関係ない事。気にすることでもないだろう」

「関係なくねえよ。仲間だろ?」

仲間。その言葉が、翼の心に突き刺さる。

「・・・・お前に・・・奏を失った私の気持ちなんて・・・」

「分かるさ」

「何をだ?私はあの日、『絶唱』を使う奏を止められなかった。もっと私が強ければ、奏は死ぬ事は無かった・・・!失い事はなかった・・・全て、私の弱さが招いた事だ・・・」

「だから、自分一人だけで戦う、と・・・はあ・・・」

翼の言葉に、戦兎はこれまでにないほど大きなため息をつく。

「・・・何?」

「いや、お前がこれまでにないくらい馬鹿でどーしようもない奴だって分かってさ」

「馬鹿だと・・・?それは一体―――」

思わず食って掛かろうとした翼を、戦兎は次の言葉で止める。

「俺たち全員自分一人で戦ってる訳じゃねえんだよ。俺だってな、万丈や仲間たちがいなくちゃ、本当は何もできないただの人間なんだよ。でも、仲間がいたからこそ、今の俺が、ビルドがある。お前だって同じだ。風鳴翼っていう一人の人間は、天羽奏や風鳴さん、二課の奴らがいたから今のお前がいるんだろ。その事忘れて戦っている奴を、馬鹿と呼んで何が悪い」

「それでも私は、この身を剣として鍛えてきた!私の歌は、戦う為のものだ・・・」

「歌はそういうものじゃないだろ。確かにお前たち装者は歌を歌いながら戦っているかもしれないけど、その歌は、誰かに生きる希望を与えてくれるものじゃないのか?お前の歌は、本当に戦うためだけにあるのか?少なくとも俺から見ればお前の歌は、誰かに生きる為の勇気を与えてくれていると思う」

「・・・!」

その言葉に、翼は息を詰まらせる。

誰かに生きる為の勇気を与えてくれている―――誰かの為に歌を歌う。

(わた・・・しは・・・・)

この身は、『剣』として鍛えてきた。決して折れる事の無い一本の『剣』として鍛え、この国を守る『防人』として、今までの人生を捧げてきた。

そんな中で、自分が唯一楽しいと思えたものが、歌だった。

例え、戦う為に覚えたものであっても、自分は、歌が好きだった。

だけど、今の自分は――――

「翼」

戦兎が、言う。

「自分の事を『剣』だなんて言うなよ。俺が人であるように、お前も人なんだからさ」

「・・・・」

夕焼けに染まる空を見上げて、戦兎は語る。

「剣っていうのは、人を傷つける為の道具だ。だけどお前は、その力を誰かを守るために使ってる。そんな人間が、剣だなんて言えるか?」

「それ・・・は・・・・」

「結局、お前もただの人間なだけだ。歌を歌うのが好きな、ただの人間だ」

戦兎の真っ直ぐな言葉が、翼の耳に届く。

「だからま、あんま無理すんなよ。お前の歌を待ってる奴って、結構いるんだからさ。ちなみに俺もファンだったりする」

「な!?聞いているのか?」

「ああ、響から勧められてな。今じゃ作業している時は毎日聞いてるよ」

「そ、そうか・・・」

ポケットから新品のウォークマンを取り出して、戦兎は言う。

「こんな風に、誰かを元気づけられる歌が歌えるんだ。お前は剣なんかじゃない。一人の女の子だよ」

「・・・・」

なんだか、初めて言われた気がする。

人生で、一人の女の子などという言葉を、初めて言われた。

その言葉に、翼がフリーズする―――その時だった。

通信機から、連絡が入る。

「ん?どうした?」

『ノイズだ!すぐに出てくれ!』

どうやら、問答はここまでのようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方で―――

「キュイーン!」

「こっちか!」

通信機に入ったノイズ出現の報を聞き、すぐに現場に向かっていた万丈。

持ち前の体力で、ほぼ息切れなしに現場の地下鉄入口に辿り着く。

そこには、すでに響がいた。その手には、携帯が握られており誰かと電話をしている風だった。

「響か・・・?」

「・・・ごめん、急な用事が入っちゃった・・・・今晩の流れ星、一緒に見られないかも・・・」

その会話を聞き、万丈は察する。

 

(何か、約束があったのか・・・・)

 

「キュイ・・・」

電話をしている響を、クローズドラゴンは心配そうに鳴いていた。

「ありがとう・・・ごめんね・・・」

そうして、通話を切る響。

そして、その携帯をポケットの中にしまった瞬間、勢いよく振り向いて今地下鉄から出てきようとしていたノイズたちを睨みつける。

「キューッルルッルルッルル!」

その隣に万丈もたつ。

「龍我さん・・・」

「付き合うぜ」

「・・・ありがとうございます」

十分に振ったドラゴンフルボトルを、クローズドラゴンに装填し、ビルドドライバーに装填する。

 

Wake UP

CROSS-Z DRAGON!』

 

そしてボルテックレバーを回して、スナップライドビルダーを展開する。

 

『Are You Ready?』

 

「変身!」

 

『Wake UP Burning!』

 

『Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

 

それと同時に、響もガングニールの起動聖唱を唱える。

 

「―――Balwisyall Nescell gungnir tron――――」

 

その身を夕焼け色のスーツと白銀のプロテクターで覆い、ノイズを倒すための力をその身に宿す。

その瞬間、ノイズを現実世界に引きずり出す力場が発生、そして、響はその胸の内から歌を紡ぐ。

「っしゃあ!行くぜぇえ!!」

そして、二人は目の前のノイズに飛び掛かった。

その最中で、弦十郎から通信が入る。

『小型の中に、一回り大きな反応が見られる。まもなく翼と戦兎君も到着するから、それまで持ちこたえるんだ。くれぐれも無茶はするな』

「は!こんな奴ら、俺たちだけで充分だ!」

ビートクローザーで数体のノイズを薙ぎ払い、クローズはさらに奥へ進む。その後を響もついていく。

改札の前まで行くと、そこには、まるでブドウの房を背負っているようなノイズに出くわす。

おそらく、あれが反応が強いノイズだろう。

「分かってます!私は、私に出来る事をやるだけです!」

そう言い、響は改札を飛び越して、ノイズに殴り掛かる。

それは、まさしく素人の喧嘩そのものだった。だが、それでも、シンフォギアの見せる対ノイズ性能は健在であり、ただ殴ったり蹴ったりするだけでも、ノイズは炭素の塊となって消える。

その最中、ブドウ型ノイズが体に付けた球をいくるか落とし、響たちの方へ転がしたかと思うと、突如として爆発。

「え!?」

「な!?」

その爆発に巻き込まれる響とクローズ。

天井が崩れ、その下敷きとなっている間に、ブドウノイズは階段を飛び降りて逃げていく。

そして、その下敷きになった二人は、

「―――いってぇなオイ!」

クローズはすぐさま瓦礫から這い出て健在だという事を示した。

「響!大丈夫か!?」

だが、響は起き上がってこず、その姿を探すクローズ。

「・・・見たかった」

「ん?」

その時、声が聞こえたかと思いきや、瓦礫が吹き飛んでその中から響が怒りの形相で目の前のノイズの集団に殴り掛かる。

「流れ星見たかった!」

動きは素人。だが、その拳に込められた感情は、まさしく本物。

とてつもない怒りが、響を突き動かし、ノイズを殴り飛ばす。

「未来と一緒に―――」

背後のノイズすらも吹き飛ばして、

「―――流れ星見たかった!」

振り向き様に蹴りを叩き込んでまたノイズの一体を炭素の塊へと変える。

「うお・・・」

その迫力は万丈ですら後ずさる程だった。

「うぉぉぉあぁぁぁぁああぁぁあああぁああああ!!」

その暴れ様はすさまじく、何体ものノイズを一重に吹き飛ばしていた。

その一方で、地下鉄のホームにて、ブドウノイズは房の球を回復させ、なおも逃走を図る。

それを見て、響はホームの壁を意味も無く殴る。

(やべえなんか知らねえがめっちゃ怒ってやがる!?)

まだ十五歳の少女が出せるはずもない迫力にクローズはその後ろを見るだけでも後ずさった。

「アンタたちが、誰かの約束を侵し・・・!」

ブドウノイズが球を切り離して新たなノイズを呼び出す。

「嘘の無い言葉を・・・争いの無い世界を・・・なんでもない日常を・・・!」

そこで、クローズは響の異変に気付く。

 

黒い

 

何か、響の姿が黒くなって見える。

その黒は、まるで――――

(ハザード・・・?)

―――かつて、ビルドが変身した、黒いビルド。

それに、似ている気がする。

「おい、響―――」

「―――剥奪すると、言うのなら―――ッ!!」

より狂暴性の増した攻撃で、響はノイズを片っ端から叩き伏せていく。

 

これは、まずい。

 

クローズは本能的にそれを察知し、すぐさま呼びかける。

「おい響!それ以上進んだら戻れなくなるかもしれねえぞ!」

だが響は止まらない。

「がぁぁあぁああ!!」

おそらく、元々あった怒りに加えて、なんらかの要因で暴走しているのだと思われる。

「おい!響!」

まるで獣だ。

黒いビルド―――ビルド・ハザードフォームは、暴走した場合、目の前の敵を徹底的に破壊する為に、全ての思考を廃し、ただ目に映る全てのものを壊す事しか考えられなくなる。

だが響の場合は、怒りによって敵を蹂躙したいという感情が現れている。

ハザードとは、どこか違う暴走状態。

そこへ、あのブドウノイズが放ったと思わしき球が転がってくる。

「あぶねえ!」

「え」

響の襟首を掴んで後ろに投げ飛ばし、代わりにその爆発を受けるクローズ。

「うごあ!?」

「龍我さん!?」

「つぅ・・・大丈夫だ!」

だが、ダメージはそれほどでもなく、クローズはその視界に逃げるブドウノイズを捕捉する。

「な!?待ちやがれ!」

「待ちなさい!」

そのノイズを追いかけようとする響とクローズだが、突如としてノイズは天井をその球の爆弾で爆破、地上への穴を作り出し、そこから駆け上がって地上に出ていった。

「やろぉ・・・」

「・・・あ」

ふと、その穴から見える夜空を、一条の閃光が迸っていた。

「流れ星・・・・?」

否―――それは、風鳴翼の纏う光だった。

 

『各駅電車ー!急行電車ー!快速電車ー!』

 

そして、そのすぐ傍ではビルド・カイゾクレッシャーフォームがその手の弓武器『カイゾクハッシャー』のビルドアロー号をエネルギー供給ユニット『トレインホームチャージャー』まで引き絞る。

 

海賊電車!』

 

次の瞬間、カイゾクハッシャーからエネルギー体のビルドアロー号とビルドオーシャン号が発射される。

 

『発射ッ!』

 

蒼ノ一閃

 

特大の斬撃と電車型の矢がノイズを襲う。その一撃は叩き込まれ、一瞬にしてノイズを消し飛ばす。

「いや・・・やりすぎだろ」

その様子を、万丈はそう言いながら見ていた。

そんな中で、翼とビルドが着地する。

そんな二人に響とクローズが駆け寄る。

ふと、後ろ姿を見せる翼に、響は言う。

「私だって、守りたいものがあるんです!」

しかし、翼は響を見ようともしない。

「だから・・・・!」

しかし、その先の言葉が続かない。

そんな二人の様子に、ビルドとクローズは呆れていた。

 

「―――だから?んでどうすんだよ?」

 

どこからともなく、声が聞こえてきた。

「ッ!誰だ!」

その声に、ビルドは叫ぶ。

 

雲に隠れていた月が、姿を見せ、月光がその正体を照らす。

 

そこから現れたのは――――白い鎧を纏った少女だった。

「誰だ・・・アイツ?」

クローズ、ビルド、響の三人は何なのか分からず、唯一、翼だけは、その少女の纏う『鎧』を知っていた。

「・・・『ネフシュタンの鎧』・・・・」

 

 

少女の運命が、動き出す――――




次回、愛和創造シンフォギア・ビルド!

「ネフシュタン・・・青銅の蛇・・・?」

目の前に立ちはだかる、かつて奪われた鎧『ネフシュタン』。

「ここでふんわり考え事たあ、ちょせぇ!」

それを駆る、謎の少女。

「繰り返すものかと・・・私は誓った・・・!」

「出て来い!アームドギアぁ!」

その圧倒的戦闘力の前に、自分の無力さに打ちひしがれる響。

「防人の生き様!覚悟を見せてあげる!」

そして、翼はついに『禁じ手』を開放する。


次回『覚悟のレクイエム』


「―――――っふっざけんなぁぁああぁぁああぁぁあああ!!!!」


剣の為に、兎は飛ぶ。


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覚悟のレクイエム

弦「さて今回はメインの者たちが戦闘に入っててあらすじ紹介が出来ないために我々二課が説明しよう」
了「天才物理学者にして仮面ライダービルドこと桐生戦兎、同じく仮面ライダーであり『プロテインの貴公子』万丈龍我らは、天羽々斬のシンフォギア装者の風鳴翼と同じくガングニールの装者である立花響のぎくしゃくした関係に呆れていたのでした」
友「一ヶ月たっても噛み合いませんでしたよね・・・」
藤「ですが、戦兎さんが二課に入ってからは、翼さん少し丸くなったように感じるんですよね」
弦「それは俺も思った。いやー、剣剣と言っていたアイツが、まさか兎一匹に変えられるとはな」
了「今後が楽しみねー」
藤友「ですね」
弦「では、何やら不穏な空気漂うネフシュタンとの戦いが繰り広げられる第八話をどうぞ!」



一方戦場にて

戦「なんか、どっかで俺と翼の事に関するよからぬ噂をされたような気がする・・・」
翼「私もだ・・・」
万「気のせいじゃねえの?」
響「えーっと、ごめんねこっちで色々話し進めちゃって」
ク「別に寂しくなんてねーしバーカ!」




―――もし、偶然や、奇跡というものが存在するというのなら、彼女は、その偶然を否定し、必然という結果を勝ち取った者であるだろう。

 

 

 

偶然、シンフォギアに選ばれた翼と違い、奏は自らの力でシンフォギアの力を勝ち取った。

 

その動機は、復讐。

 

長野県水上山聖遺物発掘所の発掘現場に、休日であるという事で父親に連れてこられた奏は、そこを狙われてノイズに襲われた。

そして、家族全員をノイズによって奪われた。

二課が存在する事を知り、そしてノイズを倒せる―――殺せる力を持っている事を知り、奏はその力を求めた。

文字通り、血反吐を吐くような訓練と薬物投与をやり、まだ十四歳の体を限界にまでズタボロにした末に、ついにシンフォギアを手にすることに成功した。

それが、今、響が使っているシンフォギアであり、第三聖遺物『ガングニール』であった。

 

ただ復讐の為だけに歌い戦う少女。

 

だが、そんな彼女が戦い、そして、人々から感謝される事で、心に変化が起きた。

 

それは、『自分達の歌が誰かを勇気付け、救う事が出来る』という事を悟ったからだ。

 

そして、彼女は復讐の為だけでなく、誰かを守る為にも歌う事を決意し、そして―――

 

 

翼と『ツヴァイウィング』を結成した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出会いから、五年―――あの日から、二年―――

 

 

 

少女は、運命と邂逅する。

 

 

「ネフシュタンの・・・鎧・・・」

翼が、その鎧の名を呼んだ。

「ネフシュタン・・・青銅の蛇・・・?」

カイゾクレッシャーフォームのビルドが、そう呟く。

「お、おい、なんだよあれ・・・?」

『ネフシュタンの鎧、二年前、ライブ会場の惨劇の日に奪われた完全聖遺物の一つよ』

クローズの言葉に、了子が答える。

「二年前・・・そうか、その日のライブは、相応のシンフォニックゲインを獲得するためのものだったのか」

ビルドの推察は的中しており、そして、ネフシュタンの鎧を纏う少女も答える。

「へえ、って事はあんた。この鎧の出自を知ってんだ?」

顔はバイザーで分からない。だが、先ほど了子が言った言葉で、ビルドはある程度警戒する。

 

おそらく、あの鎧は危ないものだ。

 

「二年前・・・私の不始末で奪われた物を忘れるものか。何より、私の不手際で失われた命を忘れるものか!」

大剣を構えて、翼はその切っ先を少女に向ける。

ビルドもカイゾクハッシャーを構える。

それに対して、少女も鎧から出る刃の鞭と謎の杖を取り出す。

 

奏を失う事になった事件の原因、そして、奏が残したガングニールの破片。

 

(その二つが同時に揃うなんて、一体どういう巡り合わせだよ)

そして、その巡り合わせの中に、翼がいる。

どんな偶然が起きればこんな事になるのか。

(とにかく今はコイツをどうにかして・・・・)

「やめてください!」

「ぬぐあ!?」

が、突如として響に後ろから抱き着かれる。

「な!?響!?」

「相手は人です!同じ人間です!」

「え!?いや、まあ、そうなんだけど・・・」

「「戦場で何を馬鹿な事を!」」

(見事に被ったな)

少女と翼の言葉が見事に被った事を頭の片隅に追いやる。

「むしろ、貴方と気が合いそうね」

「だったら仲良くじゃれ合うかい!?」

少女が刃の鞭を振るう。

「あーもう!」

「え!?きゃ!」

ビルドは響を抱き抱えて距離を取り、一方の翼は空に飛ぶ。

「万丈!頼んだ!」

「おう!?」

「ふんぎゃ!?」

そして響を万丈に向かって投げつつ、ビルドアロー号を引く。

 

『各駅電車!急行電車!快速電車!海賊電車

 

『発射!』

 

それと同時に、上空の翼から蒼の一閃が放たれる。

打ち放たれたエネルギー弾とエネルギーの刃。

双方から襲い掛かる高威力の一撃を、少女はその手に持つ刃の鞭で二つとも弾き飛ばす。

「なっ!?」

「最大まで溜め込んだ一撃を弾いた!?」

しかし、翼はすぐさま上空から少女に斬りかかる。

だが、最初の振り下ろしは躱され、続く数撃すらも最小限の動きで躱し、大きく踏み込んだ薙ぎ払いを刃の鞭で受け止める。

そして、その大剣を弾かれ、追撃の鞭の薙ぎ払いを躱したと思い気や、その腹に深い蹴りを貰う。

(あの翼が・・・!?)

蹴り飛ばされて、地面に倒れる翼。

「これが完全聖遺物か・・・!」

「ネフシュタンの力だと思わないでくれよな」

ビルドは、新たに二本のボトルを取り出す。

「まずは弱点を見つける・・・!」

 

忍者!』『コミック!』

 

ベストマッチ!』

 

『Are You Ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

忍びのエンターテイナーニンニンコミック!イェイ・・・!』

 

機動性に優れたフォーム、ニンニンコミックフォームへとチェンジしたビルド。

そしてすぐさま少女の鎧の解析を始める。

だが、そのまま黙っている少女ではなく、刃の鞭をビルドに叩きつける。

しかしその機動性をもって躱し、忍者らしい機動性で一気に少女に肉薄する。

 

『四コマ忍法刀!』

 

ニンニンコミックにおける専用武器『四コマ忍法刀』を取り出しその刃をもって少女に斬りかかる。

ニンニンコミックの機動性と柔軟性をもってして、反撃してくる少女の攻撃をかわしつつ、ビルドは忍法刀を振るう。

だが、戦闘力は少女の方が上らしく、鞭の一撃を受けてしまう。

「ぐぅ!?」

距離を取らされる。

「はっ!どうした?その程度かよ!」

挑発する少女に対して、ビルドは右腕をしならせ、何かを投げる。

「ッ!?」

暗い中、微かに見えたそれは―――手裏剣。

「チィ!」

それを少女が叩き落している間に、ビルドは忍法刀のトリガーを引く。

 

『風遁の術・・・・竜巻斬り!』

 

刃から竜巻が発生し、それをビルドは少女に叩きつける。

「ちょせぇ!」

だが、少女はあろうことか真正面からその竜巻を刃の鞭によってねじ伏せる。

「嘘だろ・・・!?」

「ほらほら行くぜぇ!」

伸びた刃の鞭を、ビルドに叩きつけようとする。

それをビルドは巧みに躱していく。

さらに、少女はもう一つの鞭を使って翼をも攻撃する。

「くっ!」

「翼さん!戦兎先生!」

「戦兎ぉ!」

響と万丈が声をあげる。

「お呼びじゃないんだよ。こいつらとでも遊んでな」

そこで少女は杖を取り出して、中心の宝石部分から光の弾丸を放出する。

その光が地面に着弾すると、そこからいきなりノイズが現れる。

「な!?」

「ノイズが・・・操られている・・・」

まるでダチョウのようなノイズ。

そのノイズの視線が、響たちに向く。

「やろぉ!」

クローズはそのノイズ共に向かって行く。

「あ、万丈さん!」

ノイズがくちばしから何かを吐き出す。それをクローズは躱して、その胴体に拳の一撃を叩き込む。すると一瞬にして炭化して吹き飛ぶ。

「まだまだぁ!」

そのまま次々とノイズを殴り飛ばしていくクローズだったが。

「うわあ!?」

「!?」

背後から声が聞こえたかと思いきや、振り返ればそこにはノイズの吐き出した液体に掴まっている響がいた。

「響!?」

「そんなぁ・・・うそぉ・・・」

それは粘着性のある液体。いわゆるトリモチだ。

駝鳥(ダチョウ)だけに、()()モチだ。

「上手い事言ってる場合か!?うお!?」

「龍我さん!?」

「へぶ!?」

すぐさま助けようと駆け出すクローズだが、先ほど避けたトリモチに引っかかって無様に転ぶクローズ。顔面から落下したので仮面がなければ相当痛かっただろう。

「ぐぉぉお・・・」

「大丈夫ですか!?」

「ああ、大丈夫・・・」

 

『ビートクローザー』

 

そしてビートクローザーを取り出すなり、それのスロットにロックフルボトルを装填する。

 

『Special Tune!』

 

そして、柄の『グリップエンド』を二回引っ張る。

 

『ヒッパレー!ヒッパレー!』

 

「喰らいやがれ!」

そしてすぐ近くにいるノイズに向かってビートクローザーを振るう。

 

『ミリオンスラッシュ!』

 

その刀身から蒼い炎の火炎弾を飛ばし、二体のノイズを狙い撃つ。

だが、それでは粘着質のあるトリモチは消えない。

「くそ!別腹かよ!」

「あぅ、もう!」

必至に拘束から逃れようともがく響だが、相当粘着性が強いのか、シンフォギアの強化された身体能力をもってしても逃げる事が出来ない。

 

その一方で、翼が再度少女に斬りかかる。

「その子たちにかまけて、私を忘れたか!」

着地すると見せかけて片足で少女の片足を払い、態勢を崩した所で足のブレードで斬りかかる。

だが、一回目を躱され、追撃の二回目を防がれる。

「お高くとまるな!」

「ッ!?」

そのまま足を掴まれ、そのまま地面に叩きつけられる。

「ぐあぁぁああ!?」

地面を抉りながら転がる翼。その翼に追いついてその頭を踏みつける。

「のぼせ上がるな人気者、誰もかれもが構ってくれるなんて思うんじゃねえ!」

 

『火遁の術―――』

 

「ッ!?」

 

『―――火炎斬り!』

 

「ハア!」

そこへビルドの火炎斬りが炸裂。しかし躱され、距離を取られる。

「大丈夫か?」

「ああ・・・」

「ハッ!他人の心配している暇があるのかよ!」

刃の鞭がビルドを襲う。

ビルドは、翼を抱えると四コマ忍法刀のトリガーを引く。

 

『分身の術』

 

次の瞬間、ビルドの前に三人のビルドが出現、連続して襲い掛かってくる鞭を叩き落す。

「な!?」

「分身の術・・・!?どうして・・・」

「俺の発明品のお陰さ!」

分身ビルド三人が少女に向かう。

「チッ!三人に増えた所で、何も変わんねえんだよ!」

三対一。そんな不利な状況でも少女は油断せず、三人のビルドを相手取る。

「今の内だ。下がって・・・」

「まだ戦える・・・!」

「だけど・・・!?」

分身が全て倒される。

「なるほど、流石完全聖遺物・・・」

「小手先の技が通じるかよ!」

「だったらこれはどうだ!」

 

オクトパスライト!』

 

ベストマッチ!』

 

『Are You Ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

稲妻テクニシャンオクトパスライト!イエイ!』

 

新たなフォーム、オクトパスライトとなって、ビルドは少女と対峙する。

「今度はタコと電球?なんの組み合わせだよそりゃあ」

(それは思った)

少女の言葉に頷く翼。

「目を閉じてろ」

「え?何をいって・・・・」

次の瞬間、網膜が焼かれる程の光がビルドから発せられる。

「ッ!?なんだ!?」

「ハア!」

次の瞬間、ビルドが少女を殴り飛ばした。

「ぐあ!?」

吹き飛んで態勢を崩した所で、ビルドは今度は右肩のタコ足『フューリーオクトパス』を操り、少女を縛り上げて地面に叩きつける。

「ぐあぁあ!?」

「捉えたぞ・・・!」

そのまま縛り上げて拘束するビルド。

「くっそ・・・この程度で勝ったと思ってんじゃねえよ!」

「なに!?」

しかし、とてつもない力で拘束を逃れられ、次の瞬間、鞭の先にエネルギー球が出現。

「やばっ・・・!?」

「喰らいなぁ!」

 

『NIRVANA GEDON』

 

投擲されるエネルギー弾。

「戦兎先生!」

「戦兎ぉ!」

「桐生!」

「くっ!」

砲弾が、ビルドに直撃する。

凄まじい爆発が巻き起こり、閃光があたりを一瞬だけでも照らす。

巻き起こる黒煙の中、そこから何かが飛び出す。

それは、赤と青の装甲を纏った者だった。

 

鋼のムーンサルトラビットタンク!イェーイ!』

 

ビルドの初期フォーム、ラビットタンク。

ラビットの跳躍力を使ってどうにか逃れたのだ。

だが、

「ぐっ・・・」

「はっ、爆発の衝撃までは逃れなかったか」

その場に膝をつくビルド。爆発そのものは避けられても、衝撃までは逃れられなかったのだ。

「丁度いい。おい、お前の持ってるボトルって奴全部寄越しな」

「何・・・・!?」

「アタシの狙いは最初(はな)っから、お前の持ってるボトルとそこで掴まってるソイツを掻っ攫うことさ」

「なっ!?」

つまり、彼女がこちらを狙ったのは、響を攫う事と戦兎と万丈の持つボトルを全て奪う事か。

「なんでボトルの事を・・・」

「誰が教えるかよバーカ!さあ、さっさと渡して―――ッ!?」

だがその時、空から無数の刃が雨の如く降ってくる。

翼の『千ノ落涙』だ。

「チィッ!」

「繰り返すものかと・・・私は誓った・・・!」

翼が、立ち上がる。

「だから!ここでお前を仕留める!」

「ハッ!やってみろ!」

「おぉぉぉおおお!!」

翼と少女がぶつかる。

いくつもの金属音と激しい爆発が巻き起こる。

その様子を、響はただ見ている事しかできない。

「くっそ!どうやったら取れるんだよこれ!」

クローズはクローズで焼くなり斬るなり、足に引っ付いたトリモチを取ろうと躍起になっている。

「はやく・・・いかねえと・・・」

ビルドは、ダメージが深いのか、無理して立ち上がろうとしている。

今、翼を手助けに行けるものは誰もいない。

「・・・そうだ、アームドギア・・・!」

そこで、響は自分に残された唯一の可能性『アームドギア』の展開を試みる。

(奏さんの代わりになるには、私にもアームドギアが必要なんだ・・・それさえあれば・・・!)

響は、必死にもがいて、アームドギアをその手に呼び出そうとする。

 

だが、出ない。

 

「来い!出て来い!アームドギア!」

だけど、出ない。響の手に、彼女の戦いの意思そのものであるアームドギアが現れない。

「なんでだよ・・・どうすればいいのか分かんないよぉ・・・!」

今すぐにでも翼を助けに行きたい。だけど、どうにも出来ない。

これほどまでに、自分の無力さに打ちのめされた事が、他にあっただろうか。

少なくとも、彼女の人生において、一切無い。

その間にも、戦いは激化していく。

剣と鞭の鍔迫り合いの中、翼は改めて実感する。

「鎧に振り回されている訳ではない・・・この強さは本物・・・!?」

「ここでふんわり考え事たあ、ちょせぇ!」

「くっ!」

弾かれ蹴りをバク転で躱す。しかし追撃なのかノイズを召喚され、そのノイズに襲い掛かられる。

「くぅ!」

『逆羅刹』『千ノ落涙』『蒼ノ一閃』自らの持つ技全てをもってノイズを殲滅しようとする。

その最中で放った『蒼ノ一閃』それが複数のノイズを斬り裂いて少女に向かって一直線に飛んでいく。

しかし、躱され、反撃に放たれた鞭の一撃を放ち、また激しく打ち合う。

斬撃を振り下ろし、蹴りを繰り出し、拳を薙いで、互いに攻撃を叩きつけ合う。

その最中、翼は短剣を何本か投げる。

「ちょせぇ!」

しかしそれを全て弾かれた上に、先ほどビルドに放たれたあの黒い砲弾を作り出す。

「らあ!」

 

『NIRVANA GEDON』

 

それを避ける事が出来ず、翼は、それを諸に喰らってしまう。

「翼さん!」

「翼ぁ!」

大剣で受け止めるも、抑えきれず、爆発に吹き飛ばされる。

なんども地面を激しく跳ね、地面に倒れ伏す翼。

「ふん、まるで出来損ない」

そんな翼を、少女は嘲笑する。

「・・・確かに、私は出来損ないだ・・・」

「ああ?」

「この身を一振りの剣と鍛えてきた筈なのに、あの日、無様に生き残ってしまった・・・!」

忘れもしない、あの日の屈辱と後悔。

「出来損ないの剣として・・・恥を晒してきた・・・!」

その日から、風鳴翼の人生は変わった。奏を失い、それでもなお戦い続けた。

歌を戦う事に使い、毎日の鍛錬も欠かさず、ただただノイズを屠る事だけを考えて戦ってきた。

だからこそ、今、ここで―――

「だが、それも今日までの事・・・!奪われたネフシュタンを取り戻す事で、この身の汚名を雪がせてもらう・・・!」

刀を杖にして、翼は立ち上がる。

「そうかい、脱がせるものなら脱がして・・・っ!?何!?」

少女は、ふらふらの翼に攻撃を加えようとした所で止まる。

何故か、体が動かないのだ。

振り返ってみれば、そこには――――ただ短剣が突き刺さっていただけ。

しかもそれは、先ほど翼が投げた短剣の一本。これがどうして、少女の動きを止められようか。

 

その理由は、影。

 

少女の影に、短剣が突き刺さっているのだ。

 

 

影縫い

 

 

影を刀剣の類で縫い付ける事で、敵の動きを封じる技だ。

「チッ!こんなもので、アタシの動きを―――」

そこで、少女は気付く。

「まさか・・・お前・・・」

それを悟った少女の顔は、一気に青ざめ強張る。

 

「―――月が覗いている内に、決着をつけましょう」

 

月を見上げる翼の顔は、どこか、覚悟を決めたかのように清々しかった。

「―――まさか」

そして、ビルドは気付く。

「詠うのか―――『絶唱』を」

それは、自らの全てを燃やし尽くして歌う、シンフォギアの奥の手にして、諸刃の剣、そして、最終手段にして、下手をすれば心中技と言わしめる、自爆技。

「翼さん!」

その翼に、響は叫ぶ。

「防人の生き様!覚悟を見せてあげる!」

翼は、響に叫び告げる。

「貴方の胸に、焼き付けなさい!」

「やめろ翼ァ!」

ビルドが叫ぶ。だが、それで止まる程、翼の覚悟は生半可なものではない。

「くそ!やらせるかよぉ!好きに、勝手にぃ・・・!?」

どうにか逃れようともがく少女。しかし、翼は月に向かって、その刀を掲げた。

その姿は、ある意味、幻想的だった。

 

「―――Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl―――」

 

それは、静かな歌だった。

何の騒音も無い、メロディも無い、テンポだってありゃしない。ただただ告げるだけの歌。

その歌の最中で、翼は、少女に歩み寄る。

少女は、なおも抗おうと、腰の杖を手に取り、新たなノイズを出現させるが、すでに、翼は少女の目の前にまで来ていた。

 

 

「―――Gatrandis babel ziggurat edenal―――」

 

その翼の行動に、誰もが動けなかった。その覚悟は、あまりにも本気であり、そして、止める事が出来ない状況に立たされているからだ。

 

 

―――ただ一人を除いて。

 

 

「―――――っふっざけんなぁぁああぁぁああぁぁあああ!!!!」

ビルドが―――桐生戦兎がダメージの残る体を酷使して、全身に迸る痛みを無視して、翼の方へ全力疾走を開始していた。

「やらせねえ!絶対にやらせねえ!そんな事、この俺が許せると思うなぁぁああ!!!」

雄叫び上げ、戦兎は、足のホップスプリンガーを限界にまで縮め、そして一気にその反動で飛ぶ。

既に絶唱はその歌詞の四分の一まで歌い終わっている。

(間に合え・・・!)

翼の元まであと数秒。しかし翼が歌い終わるまでには―――間に合わない。

 

「―――Emustolronzen fine el zizzl―――」

 

―――詠唱が、終わった。

 

それでも、戦兎は手を伸ばす。

「翼ぁぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁああぁぁぁああぁあ!!!!」

その時、翼が戦兎の方を向いた。

その口端からは既に一筋の血を流れていた。

(頼む、間に合ってくれ・・・・!)

もう間に合わないと分かっていても、戦兎は、翼へ手を伸ばす事をやめない。

 

その手を引っ込めてしまえば、もう二度と、『ヒーロー』を名乗れない気がしたから。

 

そんな中で、走馬灯を見るが如く、思考が加速し、全てがスローに見えてくる。

それによって、翼の変化が、目に見えてわかる。

やがて、口からでなく、目からも血を流し始める翼。

(翼・・・!)

そんな翼に、戦兎はなおも手を伸ばす。

その時、戦兎は、翼の口が動いたのを見た。

その動きから、紡がれた言葉は――――

 

 

―――ばか

 

 

まるで、仕方がないとでも言うように、その表情は、笑っていた。

その顔に、一瞬、思考がフリーズしてしまった瞬間――――

 

 

 

 

全てが吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ぐ・・・あ・・・」

その爆心地から数メートル離れた場所で、戦兎は、変身が解けた状態でそこに倒れていた。

「ぐ・・・く・・・」

タンクフルボトルの強化で無理矢理立ち上がり、ボロボロの体に鞭を打って歩き出す。

「つば・・・さ・・・」

彼女は、どうなった。

絶唱は、確かに強力だが、その分バックファイアが凄まじいと聞く。

かつて絶唱を使った奏は、その体が欠片も残らなかったと聞く。

(急がねえと・・・!)

そうして、クレーターの出来た場所へ辿り着いて、戦兎が目にしたものは―――

「―――ッ!?」

その姿に、戦兎は、絶句する。

「翼さぁん!」

「おい!大丈夫か!?」

そこへ、響と変身解除した万丈がやってくる。

「うわ!?」

「んな!?―――そげぶ!?」

しかし途中で響がこけて、そのこけた響の腕につまずいて顔面から地面に倒れる万丈。今度は仮面は被ってないのでダイレクトだ。

そしてさらに、車に乗った弦十郎と了子までやってくる。

「無事か!?翼!」

車から降りた弦十郎が、背中を見せる翼にそう声をかける。

「・・・私とて・・・人類守護の務めを果たす・・・防人・・・」

掠れた声で、翼は、振り返る。

その姿は、あまりにも酷くて、惨かった。

 

両目から血を垂れ流し、口からも血を吐き、鼻穴、耳と穴という穴から血を流していた。

その血が滴り、彼女の足元を赤く染めていっていた。

 

その姿に、響と万丈は言葉を失い、戦兎は、翼の後ろで、その手を握りしめて歯を食いしばっていた。

「こんな所で、折れる剣じゃありません・・・・」

それだけを言い残した途端、翼の体が傾いた。

「ッ!」

それに気付いた戦兎はラビットフルボトルを振って駆け出す。

その時、足が凄まじい痛みを訴えたが、それを歯を食いしばって耐え、倒れ行く翼の元へ向かう。

「翼!」

翼を抱き留めて、ついに限界が来た足が崩れ、その場に座り込む。

「翼さぁぁぁぁぁあああぁぁああああぁぁあぁあん!!」

そして、響の絶叫が迸る。

「おい!しっかりしろ!翼!」

「う・・・き・・・りゅう・・・・」

「しゃべるな!おい!今すぐ救急車を」

「分かっている!」

弦十郎にそう言い、戦兎は戦兎で翼の延命措置をしようとする。

「・・・な・・・ぜ・・・」

「ああ!?」

「な・・・ぜ・・・・きた・・・の・・・」

今持ち合わせているフルボトルで、どうにかしようとポケットを探る戦兎に、翼はそう尋ねる。

その質問に、戦兎は怒鳴り返す。

「だったらお前はなんで絶唱を使った!?お前、こんな重傷になって、悲しまない奴がいないと思ってんのかッ!?」

「それ・・・は・・・・」

「少なくとも、俺は悲しいッ!」

「・・・!」

ハリネズミフルボトルを振り、そしてそれを翼の体に押し当てる。

(針治療の要領だが、とりあえずこれで痛みを緩和、それでライトで心臓マッサージをしつつ、フェニックスで傷そのものを・・・!?)

そこで、戦兎は気付く。

「フェニックスが・・・・!?」

フェニックスフルボトルが、無かった。

「冗談だろ!?なんでこういう時にねえんだよ!」

「どうした!?」

「フェニックスがねえ!それさえあればある程度傷を治す事が出来るのに!」

どこで落とした?一体、どこであれを落とした!?

翼の体は今はボロボロだ。それは、外側からではなく内部の事。

絶唱のバックファイアで、翼は体内をボロボロにしている。

であるならば、外から傷を治すには、治癒力と生命力を強化するフェニックスが一番最適だ。

ハリネズミはただ痛みを和らげるだけ、ライトは心臓を動かして延命するだけだ。

「くそっ!なんでこんな時に!」

肝心な時に、どうしてこうなるのだろうか。

このままでは、翼は死んでしまう。

フェニックスさえあれば、重症を和らげ、救急車が辿り着くまでに命を持たせる事が出来る。

何もできない現実に打ちのめされ、戦兎は俯く。しかし、それでも尚戦兎は、思考をやめてはいなかった。

フェニックスがないのなら、ないなりに、どうにかするしかない。

「・・・ほ・・・と・・・・」

ふと、翼が、何かを呟く。

「・・・・ば・・・か・・・・・」

その言葉が、紡がれ、耳に入った時、

「・・・うるさい。お前にだけは言われたくねえよ!」

顔を上げた戦兎の顔から、僅かな雫が落ちる。

(こうなりゃ、忍者とコミックで応急処置をするかねえ。忍者の精密性ならある程度の医療技術だって問題なく出来るはずだ・・・!)

忍者フルボトルとコミックフルボトルを取り出し、それを振る。

そして、それをビルドドライバーに装填しようとした時、ふと翼の懐が()()()事に気付いた。

それを見て、戦兎は、その場所を探る。

 

そこから出てきたのは――――フェニックスフルボトルだった。

 

「・・・なんだよ」

戦兎は、すっかり毒気が抜かれたような表情になり、

「お前が持ってたのかよ」

そう呟き、そして、すぐにボトルを振って、それを翼に押し当てた。

 

 

その時、翼の体が、ほんの少し光ったように見えた。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

絶唱を使い、反動で昏睡する翼。

「翼さんが自ら望み、歌ったのですから」

自分の不甲斐なさを悔やむ響。

「奏って奴の代わりになる必要はないんじゃないか?」

自室に引きこもる戦兎。

「無理してるんだもの」

そうして響が得た答えとは。

次回『決意のプレリュード』

「たのもー!」


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決意のプレリュード

緒「日本が誇るトップアーティストにしてシンフォギア『天羽々斬』奏者である風鳴翼は、戦いの最中絶唱を使い、意識不明の重体に陥ってしまう」
ク「なんでアタシがこんなところに・・・」
黒グニール「仕方がないでしょう。なんでも桐生戦兎と風鳴翼が出られないという事で代役として呼ばれちゃったんだから」
ク「待て。なんで無印では絶対に登場しないお前が出てんだ!?」
黒グニール「うろたえるな!」
ク「やかましい!」
緒「まあまあ二人とも落ち着いて。元敵同士、仲良くしましょうよ」
ク「そういうアンタは落ち着き過ぎだ!」
黒グニール「実言うと『今忙しいから代わりにお願い』って頼まれたのよ」
ク「忙しいからって絶対に出てきちゃいけない奴だすか普通!?」
響「まあまあ落ち着いて」
ク「そういうお前はなんでそんな落ち着いてんだよ!?」
響「え?だって本編じゃないし、これろくお―――」
ク「あーあー!分かった分かったから超重大シークレット発言はやめろー!」
万「大丈夫なのかこんなんで・・・」
緒「アハハ・・・まあそんなわけで」
黒グニール「どうなる第九話!」
ク「テメエが言ってんじゃねーよ!」


リディアンのすぐ隣にある、総合病院。そこに、絶唱を使い、大幅なダメージを負った翼は搬送されていた。

 

 

 

「かろうじて一命は取り留めました。ですが、容態が安定するまでは絶対安静。予断の許されない状況です」

「よろしくお願いします」

引き連れた部下ともども、弦十郎は医師に頭を下げる。

「俺たちは、鎧の行方を追跡する。どんな手掛かりも見落とすな!」

そしてすぐさま行動に移る。その場で立ち止まっていては、何もできないからだ。

その一方で、響、万丈の二人は病院内に設立された休憩所にて待っていた。響の肩には、クローズドラゴンが乗っている。

「貴方がたが気に病む必要はありませんよ」

そこへ、緒川がやってくる。

「あ・・・」

「翼さんが自ら望み、歌ったのですから」

「緒川さん・・・」

自販機の飲み物を買いながら、緒川は続ける。

「響さんはご存知と思いますが、以前、翼さんはアーティストユニットを組んでいまして」

「ツヴァイウィング・・・ですよね・・・」

「そうだったのか」

この世界の事を何も知らない万丈にとっては、それは新鮮な情報だ。

「その時のパートナーが、天羽奏さん。今は貴方の胸に残る、ガングニールのシンフォギア装者でした」

 

二年前のあの日、奏は、ノイズによる被害を最小限に抑えるために、絶唱を使った。

元々、適合係数が低く、薬品『LiNKER』によって無理矢理使っていた状態で、彼女は、自らの全てを燃やしてシンフォギアの最大出力を解き放つ絶唱を使ったのだ。

そして、奏は跡形も残さず死んだ。

 

奏の殉職とツヴァイウィングの解散。

そうして一人となった翼は、奏がいなくなった事で出来た穴を埋めるべく、我武者羅に戦ってきた。

一人の少女が当たり前に経験する恋愛や遊びなど一切やらず、ただ敵を斬る剣として戦ってきた。

自分を殺して、奏を奪ったノイズを倒すために。

 

 

「そして今日、剣としての使命を果たすため、死ぬ事すら覚悟して絶唱を使いました」

緒川は、静かにそう言った。

「不器用ですよね。でもそれが、風鳴翼の生き方なんです」

「・・・」

万丈は、何も言わない。

だが、響は―――泣いていた。

「そんなの・・・酷過ぎます・・・」

「キュル・・・」

「そして私は・・・翼さんの事・・・・何にも知らずに・・・・一緒に戦いたいだなんて・・・奏さんの代わりになるだなんて・・・!」

あまりにも、無神経過ぎた。

そんな事を言った自分が、響は憎かった。

「・・・正直、良く分かんねえけどよ・・・」

ふと、万丈が話し出す。

「お前が、その、奏って奴の代わりになる必要はないんじゃないか?」

「僕も、貴方に奏さんの代わりになってもらいたいだなんて思ってません。そんな事、誰も望んでなんていません」

誰かの代わりになんて、誰も出来ない。それこそ、同じ人間が存在しない、この世界共通の法則だ。

傍にいてくれる人間がいなくなって、そこに別の人間が入っても、その空虚さが埋まらないのと同じように。

「ねえ響さん、龍我さん。僕からのお願いを聞いてもらえますか?」

「ん・・・?」

「なんだよ?」

響が涙をぬぐい、緒川の顔を見た。

「翼さんの事、嫌いにならないでください」

それは、緒川のささやかな願い。

「翼さんを、世界に独りぼっちになんてさせないでください」

その、穏やかで、懇願するような視線に、響は静かに答え、万丈は当たり前のように答える。

「はい」

「おう、任せろ」

そう返事をした時、ふと緒川はある事に気付く。

「そういえば、戦兎さんが見当たりませんけど・・・」

「ああ、アイツなら自室にこもってるぞ」

「え?なんでですか?」

万丈は、日の出の見える空に向かって呟く。

「・・・・もう誰も、あんな目には合わせない為、だってよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――落ちる、落ちていく。どこまでも、深淵の如く。

 

終わりの無い落下と浮遊感。逆さまに落ちていっているのが、風の流れでなんとなく分かる。

 

そして、この現実感の無い場所で、彼女は思う。

 

 

―――ああ、自分は、死ぬのか・・・?

 

 

そう思うと、ふと、最後に見た彼の顔を思い出す。

 

 

―――泣いてたな。

 

 

ほんの少しの涙を流して、彼は必至そうにこちらを見ていた。

 

まるで、兎のように怯えた目だった。

 

彼の名前にあるような。そんな顔だ。

 

 

 

ふと、その時、自分のすぐ傍を何かが通り過ぎる。

 

 

 

その気配は―――視界に映った赤髪は―――

 

 

 

気付けば、彼女は深く広い、遠くまで見えない水の中に入っていた。

 

そして、その中で、彼女を見つけた。

 

その彼女に、彼女は叫んだ。

 

 

―――片翼だけでも飛んで見せる!どこまでも飛んで見せる!

 

 

―――だから笑ってよ、奏・・・!

 

 

しかし、名を呼んだ彼女の顔に笑顔は無く、彼女は深い水の中を沈んでいく。

 

暗い、深海の中を、ただただ落ちていく。

 

 

―――どうして、どうして笑ってくれないの、奏・・・

 

 

彼女は、必死に叫ぶ。それでも目に映る彼女は遠のいていく。

 

どんどん沈んで離れていってしまう。

 

どれだけ水をかいても上がる事が出来ない。まるで何かに引きずられていくかのように。

 

 

―――いや、いや・・・!まだ、まだ飛んでない・・・私は、まだ・・・

 

 

どれだけ、必死にもがいても、沈んでいく。

 

真っ暗になっていく。やがて、伸ばしていた自分の手が見えなくなっていく。

 

 

―――怖い

 

 

体が冷たい、何も見えない、何も感じない―――それが、堪らなく怖い。

 

 

―――怖い、怖いよ・・・

 

 

体を丸めていないと、今にもこの不安と恐怖に押しつぶされてしまいそうだった。

 

かつて、奏が言った事を思い出す。

 

弱虫で、泣き虫だ、と。

 

確かに、その通りかもしれない。

 

自分は、一人になるだけで、こんなにも弱くなる。

 

ずっと、一人で戦ってきた筈なのに、今にも、泣きそうだ。

 

 

―――たすけて

 

 

もう耐え切れなくなって、その言葉を言った、その時――――頭に何かが当たった。

 

見上げてみれば、そこには―――赤い兎がいた。

 

 

―――うさ・・・ぎ・・・・?

 

 

その兎は、彼女がこちらに気付くと、その体を翼に摺り寄せる。

 

温かい――――

 

その温もりが、とても嬉しくて、とても安心して、心が安らいでいく。

 

 

赤い兎。どこか見覚えのある、小さな赤い兎。その体を抱きしめて、翼は、その意識を闇に投じていく―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病室の集中治療室にいる、翼の手には―――ラビットフルボトルが握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――戦兎君はまだ出てこないのか?」

弦十郎の言葉に、万丈が答える。

「ああなったアイツは梃でも動かねえよ。特に、誰かを守るためだったらなおさらな」

腹筋をしながら、万丈は答える。

現在戦兎の部屋の扉には『出入禁止』と物凄く気合の入った文字で書かれた紙が張ってあり、それ以来戦兎はその部屋から出てきていない。

その最中で何度も爆発音が響いており、本当に大丈夫なのかという心配も出てきていた。

「ていうか、あの鎧のガキの事はなんかわかったのかよ?」

「まだ何も分かっていませんよ」

藤尭が答える。

「捜索は続けていますが、これと言って、手掛かりとなりそうなものは何も・・・」

「つまり、お手上げって事だな・・・」

プロの彼らで見つけられないのなら、彼らより頭が圧倒的に悪い万丈には探すなんてことさら無理な話だ。

「そういえば龍我さん、監視カメラにドラゴンが飛んでいく所を確認したのですが、大丈夫なんですか?」

「ああ?あー、もうアイツの勝手にさせようかな、って思ってよ・・・」

腹筋から腕立てに切り替えて、万丈はそう答える。

「そこまで自由に行動出来るなんて、戦兎君ってすごいのね」

「いや、前まではあんな事なかったんだけどな・・・」

「なかったってことは、あれは当たり前の事じゃないのか?」

「ああ。戦兎曰く、俺のお目付け役だとかなんとか言ってたけど、あんな風に感情豊かに飛び回ったり鳴いたりなんてしなかったぞ?」

「じゃあ、何かあったのか?」

「ああ、たぶんしんs・・・」

万丈は慌てて口を閉じる。

(あっぶねえ。そういや戦兎には新世界の事はしゃべるなって言われてたっけ)

「どうかしたのか?」

「い、いやなんでもねえよ・・・まあ、なんだ、戦兎も分かんねえらしい」

実際の所、戦兎は新世界創造の影響でどこかの機能がイカれて本当に動物らしくなったという見解らしい。

実際の所、どうなのかは分からないが。

「そうなのか?」

「ああ。科学はアイツの専門だからな。俺にはなんも分かんねえ」

 

否、分かる事は一つだけある。

 

(あいつ・・・なんか寂しそうな眼してたな・・・)

万丈は一人、あの鎧を纏っていた少女の事を思い出していた。

「あ、そういえば龍我君」

ふと、スクワットしながらあの少女の事を考えていた万丈に了子が声をかける。

「ん?なんだよ?」

「チャック開いてるわよ」

「へ?」

みれば、万丈のズボンのチャックは全開だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方で―――

未来は響がいるであろう屋上に向かっていた。

最近の響は、よく一人になる事が多くなってきたから、そんな響を未来は探していた。

と、そこへ、

「キュールールルッルルッ!」

「ん?」

聞き覚えのある泣き声が聞こえたかと思い、見上げてみれば、そこからクローズドラゴンが降りてきていた。

「クロ・・・!?」

「キュル!」

ドラゴンは未来の周りを一回転すると、未来の差し出した手の上に乗り、一鳴きする。

「どうしたの?」

「キュルル!」

当然、言葉は伝わらないが、なんとなく分かる事はある。

 

ただ会いに来ただけなのだろう。

 

「しょうがないなぁ・・・でも、まずは響を探してからね」

「キュル!」

未来の言葉に、ドラゴンは了承したように鳴き、また飛んで今度は未来の側を浮遊する。

その様子に微笑みつつ、未来は響の元へ行く。

案の定、響はリディアンの屋上のベンチにいた。

その表情は、どこか沈んでいた。

「ひーびき」

そんな響に、未来は声をかける。

「未来・・・それにクロまで・・・」

「最近一人でいる事が多くなったんじゃない?」

「キュール!」

それは、未来から見ての指摘。そしてそれは的中していて、響は一人、この間の事について考えていた。

 

翼は入院し意識不明の重体、戦兎は自室に籠り爆発音の響く何かの実験をしている。

万丈は弦十郎の所で何か稽古をつけてもらっているようで、翼があんな風になってから、一層強く打ち込んでいる様だった。

 

それに対して、自分は何が出来るのか。

 

その事を考えていた。

「そうかな?そうでもないよ。私、一人じゃ何にもできないし・・・あほら、この学校にだって、未来が進学するから私も一緒にって決めた訳だし・・・あいや、なんていうか、ここって学費がびっくりするぐらい安いじゃない?だったら、お母さんとおばあちゃんには負担掛けずに済むかなーってあはははは・・・・」

よく一回目も噛まずに言えたと思える言い訳。その言い訳を遮って、響の隣に座った未来は、響の手を取る。

ドラゴンは、そんな未来の膝の上に休むように乗る。

「あ・・・」

その行為に、響はそれ以上何も言えなくなる。

「・・・やっぱり、未来には隠し事出来ないね・・・」

彼女の事を良く知る響だからこそ、未来のその行為の意味を理解する。

「だって響、無理してるんだもの」

「うん・・・」

しかし、いくら幼い事からの親友だとしても、言えない事はある。

「でもごめん、もう少し一人で考えさせて。これは、私が考えなきゃいけない事なんだ」

もちろん、二課から言われた機密の事もある。だけど、こればかりは自分の心の問題であり、他者に頼るような事ではない。

自分で、どうにかしなければならない。

「分かった」

そして、それを未来は了承する。

「ありがとう、未来・・・」

沈黙が流れる。

「キュルル・・・」

その沈黙に、ドラゴンが力なく鳴いてみせる。

その時、未来が立ち上がる。

「あのね、響」

そして、空を見上げながら、未来は響に言う。

「どんなに悩んで考えて、出した答えで一歩前進したとしても、響は響のままでいてね」

「私のまま・・・?」

「そ、変わってしまうんじゃなく、響のまま成長するんだったら、私も応援する。だって響の代わりはどこにもいないんだもの」

「キュル!」

未来の言葉に同意するようにドラゴンが鳴く。

「いなくなって欲しくない」

その言葉が、響の心に響く。

それでも、響は悩む。

「私・・・私のままでいていいのかな・・・?」

その言葉に、未来は迷いなく答える。

「響は響じゃなきゃ嫌だよ」

その言葉に、響は、この前、会議で言った言葉を思い出す。

 

『私にだって守りたいものがあるんです!だから・・・!』

 

あの時、続かなかった言葉。

その先の言葉。

響は立ち上がって、向こうに見える、翼の入院する病院の方を見た。

そして、その拳を、ぎゅっと握ってみる。

(私は、私のままで・・・)

―――強くなる。

思い出してみれば、戦兎も、自分のまま強くなるために、自分のスキルを十分に生かして、誰かを守れる力を手に入れようとしている。

それを思うと、響は、自然と気持ちが固まっていくのが分かった。

「ありがとう未来。私、私のまま歩いて行けそうな気がする」

その言葉に、未来は嬉しそうに頷く。

「そうだ」

そこで未来はある事を思い出す。

「こと座流星群見る?動画で撮っておいた」

「ほんと!?」

「キュル?」

響は目を輝かせ、ドラゴンは何のことか分からず首を傾げる。

そうして見せられた動画には―――何も映ってなかった。

「んん?なんにも見えないんだけ、ど・・・」

「うん・・・光量不足だって」

「ダメじゃん!?」

そんな言葉が出てしまう。だけど、自然と笑いがこみ上げてしまう。

「おっかしいなあ。涙が止まらないよ」

頬を伝う涙を拭い、響は笑う。

「今度こそは一緒に見よう」

「約束。次こそは約束だからね」

「キュルル!」

「あ、クロも一緒に見たい?」

「キュル!」

「しょうがないなぁ」

ドラゴンと楽しく話す未来を見て、響は一つの決心を固める。

 

私にだって、守りたいものがある。

 

守れるものといったら、小さな約束や、なんでもない日常だけなのかもしれない。

 

それでも、守りたいものを守れるように、私は、私のまま強くなりたい。

 

その為には――――

 

 

 

 

 

「たのもー!」

 

 

風鳴家の扉を叩いた。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「朝からハード過ぎますよ」

弦十郎に弟子入りした響と、それに付き合う万丈。

「そうもいかないんだよね」

明かされる日本政府の現状

「名付けて、『天下の往来独り占め』作戦!」

決行される、完全聖遺物の輸送。

その最中で、かの天才が新たな力をもってやってくる。


次回『スパークリングした天才がやってくる!』


「さあ、実験を始めようか」




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スパークリングした天才がやってくる!

農具「ついにワタシにも出番がきたデ・・・農具ってなんデスか!?」
工具「私も工具になってる・・・」
無性「なんでも正体バレを避けるためというらしいですけど・・・無性ってなんですか!?確かにボクに性別はないですけど!」
農具「こうしたの誰ですか!?」
工具「確か、戦兎先生が書いてたと思う・・・」
農具「よーし今すぐ切り刻みにいくデス」
無性「ま、まあまあ今はとにかくあらすじ紹介をしましょう!」
工具「そうだね。こほん、天才(笑)物理学者の兎ちゃん(悪意)は新世界創造を成し遂げたのでしたがなんと残念な事にノイズという脅威が世界を脅かしていました~」
農具「ぐぬぬ・・・分かった、ワタシもやるデース!それで合流した龍我さんと二課の人たちと一緒に、ノイズを倒していたいたのデスが、その最中で翼さんが大怪我を負ってしまうんデース!」
無性「それを受けた桐生戦兎は、失われた強化アイテムの修理の為に部屋に引きこも・・・え?何真面目にあらすじ紹介してんだ?ですか?」
農具「外野は引っ込んでろデース!」
工具「刻むよ?」
農場主「みーたん!?」
農具「関係ない奴は出てくるなデース!」
工具「はあ・・・とにかく、第十話をどうぞ」



工具「それじゃあ、行こうか」
農具「はいデース!」
無性「お、お手柔らかにお願いします・・・ね・・・」(南無三です戦兎さん・・・)


東京近郊の森に、一つの豪邸があった。

 

 

『《ソロモンの杖・・・我々が譲渡した聖遺物の起動実験はどうなっている?》』

そこには、一人の女性のみがいて、その女性は、どこかと連絡を取っていた。

「《報告の通り、完全聖遺物の起動には相応レベルのフォニックゲインが必要になってくるの。簡単にはいかないわ》」

流暢な英語が、女性の口から話し出される。

『《ブラックアート・・・失われた先史文明の技術を解明し、ぜひとも我々の占有物としたい》』

ここは彼女の家であり、隠れ家。とある組織から身を隠すための拠点にして起点。

でなければ、誰もが彼女の姿に目を奪われていた事だろう。

長い金髪は言いとして、問題なのは、そのグラマラスな体が完全にさらされているという事だ。

着ているのは精々ハイヒールの靴に黒いニーソに黒のアームカバーのみ。

「《ギブ&テイクね。貴方の祖国からの支援には感謝しているわ。今日の鴨撃ちも首尾よく頼むわね》」

『《あくまでも便利に使う腹か。ならば見合った動きを見せてもらいたいものだ》』

「《もちろん理解しているつもりよ。従順な犬ほど長生きするというしね》」

その言葉を最後に、彼女は通話を切る。

「・・・野卑で下劣、生まれた国の品格さのままで辟易する・・・そんな男に、()()()()()()()()()()()()()()()事を教える道理はないわよね?」

その全身素っ裸の女性が、椅子から立ち上がって歩み寄り、巨大な食堂で話かけるのは、ある装置に拘束された服装をボンデージにされている銀髪の少女。

「クリス」

その少女―――クリスの頬を撫でれば、クリスは目を開ける。

「う・・・あ・・・」

「苦しい?可哀そうなクリス。貴方がぐずぐず戸惑うからよ。誘い出されたあの子をここまで連れてくればいいだけだったのに、手間取ったどころか空手で戻ってくるなんて」

顎を持ち上げ、女性は見下すようにクリスに言う。

 

このクリスこそが、この間戦兎たちを襲ったネフシュタンの鎧の正体である。

 

何故、彼女がその女性と行動を共にするのか。

「これで・・・いいんだよな・・・?」

ふと、クリスが弱々しく尋ねる。

「何?」

「あたしの望みを叶えるには、お前に従っていればいいんだよな・・・?」

「そうよ。だから、貴方は私の全てを受け入れなさい」

クリスから離れ、とあるレバーに手をかける。

「でないと嫌いになっちゃうわよ」

そのレバーを降ろした瞬間、クリスにすさまじい程の電流が流れ出す。

「うあぁぁあぁあぁぁあああぁぁあああ!!!」

悲鳴が響く。

発生した電気がクリスの体を迸り、筋肉を痙攣させ、激痛を与える。

「可愛いわよクリス。私だけが貴方を愛してあげられる」

数秒の後、女性は電流を止める。

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・!?」

密着する女性。

「覚えておいてねクリス。痛みだけが人の心を繋いで結ぶ、世界の真実だと言う事を」

その言葉を、あの男が聞けばなんと言うだろうか。

「さあ、一緒に食事をしましょう?」

その言葉に、クリスは、僅かにでも安心して――――

 

 

 

次の瞬間には、また電流を流されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――響が弦十郎に弟子入りしてから数日。

 

「オラァ!」

「くっ!」

万丈の蹴りが容赦なく響の顔面を狙うも、それを紙一重で躱す。

立て続けに右ジャブ二回の左フックと裏拳の二連撃が繰り出され、それを響は手ですべてそらしていく。だが、一発、頬を掠め、とにかく距離を取ろうと下がる下がる。

しかしその響に対して万丈は容赦無く距離を詰め、さらに追撃を重ねる。

「どうしたどうした!?逃げてばかりかァ!?」

「こっのぉ・・・!」

万丈の激しすぎるラッシュに響は防戦一方。万丈の繰り出すストレートやロ―キックなどが次々に響へと迫り、それらが掲げられた腕に炸裂する。

(流石元格闘家・・・強い・・・!)

しかしそのラッシュの最中で、響は万丈に出来る隙を見る。

左脇腹、そこが大きく開いている。

(ここっ!)

万丈が左拳を引いた所で、響はその脇腹へ向かって大きく踏み込み、そして右ショベルフックを繰り出す。だが、

「あめぇよ」

「あ!?」

だが、それはいとも容易くはたき落とされた。

(嘘、目はずっとこっちを見てるのに・・・!?)

正確無比に、渾身の一撃をいとも容易くはたき落とされた。その視線は常に響を見ており、決して響の拳を見ていた訳ではない。

「自分の部位と相手の狙いが分かれば、防ぐのは簡単なんだよ!」

そして、響の腹に万丈の蹴りが炸裂する。

「げぼ・・・」

おおよそ年頃の少女が出してはいけない声を発して響は蹴り飛ばされ、そして地面に倒れる。

「くぅっ!?・・・げほっ・・・ごほっ・・・・!」

「あ、やべ、やり過ぎた」

腹を抑えて悶える響に万丈はやってしまったという顔になる。

「おい大丈夫か?」

「あ・・・いえ・・・だいじょ・・ぶです・・・・」

余程効いたのか悶絶している響。

「うむ、二人とも、良い感じだったぞ」

そこへ弦十郎が近寄ってくる。

「ていうか風鳴のおっさん。なんで俺は女子高生とやりあってるんですかね?」

「戦場に歳の上下もないだろう。いつ何時だってどんな相手とも戦えなければ意味はないからな」

「それもそうか」

深くは考えない万丈。

「よし!龍我さん!もう一本お願いします!」

「お前まだやんのかよ!?」

「もちろん!」

 

響が弦十郎に弟子入りしてから数日、アクション映画の鍛錬法やそれなりの筋トレ、さらには拳法やら格闘技術からをある程度習得してきた所で、本場の格闘家である万丈と戦わせてみようという弦十郎の提案で、今まさにその模擬戦が行われていた。

 

「やぁあああ!!」

響のラッシュが万丈を襲うも、それらをいとも容易く躱して見せる万丈。

回し蹴り、正拳突き、ロ―キック、アッパー、踵落としなどなど、様々な攻撃を繰り出してはいるが、一向に当たる気配がない。

「ダメだ!そんなものじゃ当たらないぞ!稲妻を喰らい、雷を握りつぶすように打て!」

「言ってる事全然分かりません!でもやってみます!」

両足をしっかりと地面につけ、響は万丈をその双眸で見据える。

(来る・・・!)

そして、先ほどとは打って変わった一撃が来ると悟った万丈も構える。

一瞬の静寂。しかし、響は自らの心臓が大きく跳ねた事を感じると、地面を踏み砕く踏み込みで、万丈に接近し、右拳を引き絞って、一気に万丈に叩きつける。

それに対して万丈が放ったのは掌底。

響の一撃に合わせて放った来たのだ。

響の渾身の一撃と万丈の迎撃の一撃。それが、双方から直撃する。

衝突した拳と掌。それは、構図から見れば万丈が響の一撃を受け止めたように見える。

実際、それはその通りであり、万丈が二ッと笑ったと思った瞬間、手を掴まれた響は引っ張られ前のめりにつんのめる。

「う、うわわわわ・・・!?」

「おーらよっと!」

「うわぁあ!?」

転ばないように前に出そうとした足を引っかけられ、その引っ掛けられた足で下半身を跳ね上げられ、見事に投げられる。

「あうぅ・・・」

「今の良い一撃だったぜ」

元々鍛えてきた万丈と鍛えて数日の響ではその筋量に差が出るのは当然。

それでも木に括りつけられたサンドバックをぶっ飛ばす程の威力はあったであろう響の先の一撃は、見事なものだった。

お陰で、実は万丈の手は結構痺れている。

「よし、そろそろこちらもスイッチを入れるとするか」

そしてさらに、弦十郎まで乱入してくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁー、朝からハードすぎますよ」

「ハア・・・ハア・・・おい、なんで俺ばっかりこんなに疲れてんだ・・・!?」

あの後、弦十郎の扱きを受けた万丈と響。

何故万丈の方が疲れているのかというと、理由としては響はまだ未熟、しかし万丈はプロだという事で察してほしい。

「頼んだぞ、明日のチャンピオン」

「はい、これご苦労様」

「あ!すいません!」

「すまねえな・・・」

友里からスポーツドリンクを受け取る響と万丈。

「んぐ・・・っぷはぁ!あの、自分でやると決めた癖に申し訳ないんですけど、何もうら若き女子高生に頼まなくとも、ノイズと戦える武器って、ライダーシステム以外にないんですか?外国とか・・・」

藪から棒に、響はそんな質問を上げる。

「公式にはないな。日本だって、シンフォギアを最重要機密事項として、完全非公開だ。ついで、ライダーシステムに関する情報も全てシャットアウトしている」

「ええー、私、あまり気にしないで結構やらかしてるかも・・・」

「情報封鎖も二課の仕事だから」

「仮面ライダーなら、顔バレしないで済むんだけどな」

シンフォギアとライダーシステムは、その身を鎧に包むという点では同じだが、ライダーシステムは全身を鎧で包み込むものに対して、シンフォギアは一部のプロテクターと生地は薄いが強靭なぴっちりボディスーツのみで顔が出ているといったデザインだ。

だから、顔が見られれば一発アウト、という事もあり得る。

「だけど、時々無理を通すから、今や、我々の事を良く思ってない閣僚や省庁だらけだ。特異災害対策機動部二課を縮め、『(とっ)()部二(ぶつ)』と揶揄されてる」

「情報秘匿は、政府上層部の指示だってのにね。やりきれない」

「んなもん無視すりゃあいいだろ・・・」

「そうもいかないんだよね」

万丈の言葉を否定する藤尭。

「それに、いずれシンフォギアの有利な外交カードにしようと目論んでいるんだろう。まあ最も、首相、それも首相補佐官がそれを許さないだろうけどね」

「EUや米国は、いつだって回転の機会を伺っている。シンフォギアの開発は、既知の系統とは全く異なる所から突然発生した理論と技術で成り立っているわ。日本以外の国では到底真似できないから、猶更欲しいのでしょうね」

「結局やっぱり、色々とややこしいってことですよね」

「あーだめだ。そういうのは全部任せるわ。俺にはなんも分からん」

もはや理解を超えた事態にすでに思考を放棄した響と万丈。

「あれ?師匠、そういえば了子さんは?」

「永田町さ」

「永田町?」

「政府のお偉いさんに呼び出されてね。本部の安全性、及び防衛システムについて、関係閣僚に説明義務を果たしにいっている。仕方の無い事さ」

「本当、何もかもがややこしいんですね・・・」

「とにかく、大変ってことだな」

「ルールをややこしくするのはいつも、責任を取らずに立ち回りたい連中なんだが、その点、広木防衛大臣と氷室首相、そして、氷室幻徳首相補佐官は・・・・了子君の戻りが遅れているようだな」

「・・・・」

弦十郎がそう言う傍らで、万丈は思わず笑みを浮かべる。

(そうか、あの野郎ちゃんとやってんじゃねえか)

かつての戦友の事を思いながら、万丈は、自室にて修理に没頭している相棒の事を思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い、海の底のように暗い場所で―――彼女は―――翼は一人、沈んでいた。

 

―――私・・・生きてる・・・?違う、死に損なっただけ・・・

 

どうしてか、生きているという実感があった。理由は、腹のあたりにあるこの温かさ。

あの赤い兎が、自分のお腹の上で、丸まってそこに座っていた。

その温かさが、なんとも心地が良い。

その温かさを感じながら、翼は思った。

 

―――奏は、何のために生きて、何のために死んだのだろう・・・

 

お腹の兎の頭を撫でながら、そう考える。

その時、どこからか、聞き覚えのある声がした。

 

「真面目が過ぎるぞ、翼」

 

――――ッ!?

 

それは、聞き間違えるはずのない、大切な人の声。

 

「あんまりガチガチだと、そのうちぽっきり行っちゃいそうだ」

 

間違いなく、奏の声だ。

 

―――一人になって私は、一層の研鑽を積んできた。数えきれない程のノイズを倒し、死線を乗り越え、そこに意味など求めず、ただひたすらに戦い続けてきた。そして、気付いたんだ。

 

お腹の赤い兎を抱き上げて、そして優しく抱きしめて、翼は、想いを吐き出す。

 

―――私の命にも、意味や価値がないって事に・・・!?

 

その時、腕に抱く兎が、怒ったように翼の顔をぱしぱしと叩く。

 

―――え?何?なんなの・・・?

 

その行為の意味がいまいちわからない。

 

「・・・戦いの裏側とか、その向こうには、また違ったものがあるんじゃないかな?」

 

兎に叩かれ続ける翼に、奏は言う。

 

「あたしはそう考えてきたし、そいつを見てきた」

 

―――っ・・・それは何?・・・痛い、痛いよ・・・!

 

なおも叩いてくる兎を制しつつ、翼は聞き返す。

 

「自分で見つけるものじゃないかな?」

 

―――奏は私にいじわるだ・・・

 

やっと大人しくなってくれた兎をそのままにして、翼は頬を膨らませてみる。

 

―――だけど、私にいじわるな奏は、もういないんだよね・・・

 

もう一度、兎を抱きしめて、そう呟いた。

 

「そいつは結構な事じゃないか」

 

―――私は嫌だ!奏に側にいて欲しいんだよ・・・

 

今にも泣きそうな翼。そんな翼を、赤い兎は心配そうに見上げる。

 

「・・・あたしが傍にいるか遠くにいるかは、翼が決める事さ」

 

―――私が・・・?

 

その言葉は、翼の胸に響く。そしていつの間にか、赤い兎は離れていっていた―――

 

 

 

―――そうだ。お前が決める事なんだよ。

 

 

 

―――そして、奏の物とは違う、聞き覚えのある声が、聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、翼の意識は覚醒する。

(ここ・・・は・・・)

「先生!患者の意識が・・・」

「各部のメディカルチェックだ。急げ!」

視界に、見覚えの無い白い服を着た人々が見える。

少し見渡せば、様々な機材がそこに置かれていて、脈拍を測るもの、点滴の管、何かのレントゲン写真といった様々なものが確認出来た。

そして、耳に微かに届く、聞き覚えのある歌。

視線を向ければ、そのガラス窓からリディアンが見えた。

(・・・不思議な感覚。まるで世界から切り抜かれて、私の時間だけゆっくり流れてるよう・・・・)

そして、思い出す。

仕事でも任務でもないのに、学校を休んだのは、これが初めてなのだ、と。

(皆勤賞は絶望的か・・・)

などと思いつつ、翼は、もういない奏に向かって言う。

(心配しないで、奏。私、貴方が言う程真面目じゃないから、ぽっきり折れたりしない。だからこうして、今日も無様に生き恥を晒している・・・)

ふと、自分の手に何かが握られている事に気付き、まだ重い腕を、無理矢理動かして、その手に握られているものが何なのかを見る。

 

それは、あの男と同じ名前の入った、赤いフルボトルだった。

 

「・・・・もう」

それを見て、一度目を見開いた後、それを握ったまま、胸に当てた。

「ばか・・・」

そして、短くそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその日の夕方――――広木防衛大臣が殺害された――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その報告を受けて、二課では、その事件の犯人について捜索していた。

だが、一向に正体は掴めず、手をこまねく状況となっている。

ただ、了子の方は通信機が壊れてただけで、連絡が取れなかったという事以外、何に問題も無かった。

 

そして、上層部の命により、二課はサクリスト-D『デュランダル』を輸送する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、作戦当日―――

「防衛大臣殺害犯を検挙する名目で、検問を配備!『記憶の遺跡』まで一気に駆け抜ける」

「名付けて、『天下の往来独り占め』作戦!」

その作戦名はどうなんだ、と万丈と響は思った。

 

作戦の内容は、まず、輸送対象であるデュランダルを乗せた了子の車を、四台の護衛車で囲う。そして、その上から弦十郎の乗るヘリが周囲を索敵する。

そして、デュランダルを乗せた車両に、ノイズが現れた時の為に響と万丈、そして戦兎を同乗させる。

そのまま、一気に『記憶の遺跡』と呼ばれる場所まで逃げる。

簡潔に説明するとこんな感じだ。

 

だが―――

「戦兎先生は、やっぱりまだ・・・」

「あともう少しだって言ってたし、たぶん大丈夫だろ」

まだ、強化アイテムの修復が出来ていなかったのだ。

なんでも、パンドラボックスの成分がないとかで苦戦していたらしいが。

車に乗りつつ、万丈と響はそう言い合う。

「大丈夫でしょ。何せ、仮面ライダーとシンフォギア装者が一人ずついるんだから」

了子がそう言うも、響は、少し心配だった。

「大丈夫だ」

そんな響の肩を、万丈が掴む。

「あいつは必ず来る」

「龍我さん・・・」

万丈の戦兎に向ける絶対的な信頼。

(龍我さんが信じるなら・・・)

「分かりました。私、信じてみます!」

「おう!そんじゃ、出発進行と行こうか!」

「「おー!」」

その掛け声に了子も乗り、そして、作戦が始まる。

 

 

 

 

 

 

前後左右に護衛車がついていき、その上から弦十郎の乗るヘリが上空から異変がないかを探す。

響も響で、窓から顔を出し、周囲を探る。

万丈も万丈で響同様に周囲を探っていた。

やがて、車両群が長い橋に入った。

ふと、響が前を向いた時―――

 

道路が崩れているのを見た。

 

「了子さん!」

「ッ!」

了子がハンドルを切る。崩れた場所は大きくも、片側に移動すれば避けられるほどの損壊。

しかし、一番端にいた車両だけは避け切れず、そのまま空中に飛び出し、反対の崩れた場所に激突し、爆発する。

「ああ・・・」

「マジかよ・・・・」

その惨状に、響と万丈は言葉を失う。

「しっかり掴まっててね・・・」

「え?」

「は?」

「私のドラテク(ドライブテクニックの略)は狂暴よ」

車両群が加速する。

『敵襲だ。まだ姿は確認出来ていないがノイズだろう』

「この展開、想定していたより早いかも」

次の瞬間、マンホールが吹き飛び、響たちの乗る車両のすぐ後ろの車両が空高くぶっ飛ぶ。

「ひぃ・・・」

その様子に響は思わず悲鳴を上げる。

『下水道だ!ノイズは下水道を使って攻撃してきている!』

弦十郎からの連絡が入った瞬間、今度は目の前の護送車が吹っ飛び、こちらに向かって落ちてくる。

「うわぁぁぁああ!?ぶつかるぅぅぅぅうう!!」

「よ、避けろぉぉぉおお!!」

響と万丈の絶叫が車両内に轟き、了子はすぐさまハンドルを切って落ちてくる黒い護送車を躱す。だが、思いっきりハンドルを切り過ぎたのか歩道に突っ込んでごみ箱などを弾き飛ばす。

「ちゃんと運転しろよ!」

「運転もしてないのに文句言わない!」

万丈からの怒鳴りにそう返しつつ、了子は弦十郎に連絡を入れる。

「弦十郎君、ちょっとやばいんじゃない?この先の薬品工場で爆発でも起きたらデュランダルは・・・」

『分かっている!さっきから護衛車を的確に狙い撃ちしてくるのは、ノイズがデュランダルを損壊させないよう、制御されているように見える!』

実際にも、了子の乗る車以外をあまりにも正確に破壊している。こんな事をただのノイズがするとは思えない。

だとすれば―――

「チッ」

―――万丈は、了子が舌打ちしたのを見逃さなかった。

(こいつ・・・なんで舌打ちを・・・・)

『狙いがデュランダルの確保なら、あえて危険な地域に滑り込み、攻め手を封じるって寸断だ!』

「勝算は?」

『思いつきを数字で語れるものかよ!』

その弦十郎の判断に従い、残った二両は薬品工場へと突っ込む。

すると目の前のマンホールが吹き飛び、そこからノイズが飛び出し、前方の護衛車を襲う。

視界を塞がれた車両をすぐさま乗員は乗り捨て、一方の車は建物の一つに突っ込んで爆発する。

その中で、ノイズがまるで躊躇うかのように動きが鈍る。

「狙い通りです!」

響が喜ぶも束の間、何かに乗り上げたのか、車が一気に転倒する。

「うわぁぁあぁああ!?」

「うぉあぁぁあぁあ!?」

盛大にひっくり返り、スピンを繰り返してようやく止まる了子の車。

「南無三!」

その様子を弦十郎は見ていた。

そして車から響、万丈、了子の三人が出てくる。

「くっそ・・・もっとちゃんと運転しろよゴラァ!」

「うるさいわね!こっちだって必死だったのよ!?」

「あ、あの!ノイズが・・・!」

気付けば、周囲を大量のノイズに囲まれていた。

しかもその数は増えている。

「了子さん・・・これ、重い・・・!」

「だったら、いっそここに置いて私たちは逃げましょ?」

「そんなのダメです!」

「そりゃそうよね・・・」

「んな事言い合ってないでさっさと行くぞ!」

万丈が響からデュランダルの入ったケースを取り上げてせかす。それと同時にノイズが弾丸の如く飛んでくる。

そのノイズたちから逃げるように走る三人だが、ノイズに貫かれた車が背後で爆発、その爆風で万丈はケースを落としてしまう。

「しまった!?」

そして次の瞬間、ノイズが一斉に万丈たちに襲い掛かってくる。

(やられる・・・!)

変身している暇が、ない。クローズドラゴンをセットする時間がない。

これでは、死ぬ―――

 

だが、ノイズが万丈たちに攻撃を入れる事はなかった。

 

突如として、了子がノイズの前に出て、右手を掲げた。

すると、何かしらのバリアが張られ、ノイズがそれに触れた途端、一瞬にして炭素の塊を化してしまう。

「了子・・・さん・・・?」

「おい、なんだよそれ・・・」

まるで人間技ではない。

弦十郎とは違う、人間離れした能力。

ノイズの攻撃を防ぐ度に、髪が解け、眼鏡が飛ぶも、了子は不敵な笑みを崩さない。

「しょうがないわね。貴方のやりたいことを、やりたいようにやりなさい」

その言葉を受けて、響は立ち上がる。

「私、歌います!」

そして、万丈は了子を怪訝そうに見ながら、クローズドラゴンのドラゴンフルボトルをセットする。

 

Wake UP!』

 

CROSS-Z DRAGON!』

 

『Are You Ready?』

 

「変身!」

 

「―――Balwisyall Nescell gungnir tron――――」

 

『Wake UP Burning!』

 

『Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

 

その身を蒼炎の鎧で包み込み、万丈は仮面ライダークローズへと変身して、響は神々の槍の名を持つ鎧を纏う。

「行くぜぇ!」

「はい!」

駆け出すクローズと響―――が、響は足元のパイプに足を引っかけて盛大に転ぶ。

慣れないヒールを履いているからだ。

「大丈夫か!?」

思わずクローズが立ち止まり、その間にノイズが周囲を囲む。

「チッ!」

短く舌打ちをして、クローズは響を守るようにノイズと向き合う。

その一方で、響も立ち上がる。

(ヒールが邪魔だ・・・!)

そう思った響は、迷いなく踵のヒールを破壊して、いつも履いている靴と同じようにする。

そして、独特な構えでノイズと向き合う。

いざ、戦いが始まろうとしたその時、

 

「てーんーさーいーがー!」

 

「「ッ!?」」

 

「展開を予測してここにいたぁぁぁああ!!!」

 

見上げれば、工場の塔のような建物の上に、天を指差して立つ一人の男がいた。

擬音があればバァァァンッ!なんていう音が出てきそうな程に、その男は背を反らして天を指差していた。

その男は―――

「戦兎!?何やってんだ!?」

「戦兎先生!?」

その一方で、

「何やってんだアイツ・・・」

クリスもその場に来ていた。当然、ノイズを操っているのは彼女である。

そしてその戦兎は、顔を真っ黒にしたままでトレンチコートの下に着ている服もどこもかしこも黒ずんでいた。

「ヴァーハハハハハ!!この天才の手にかかればこの程度の展開を予測してここにあらかじめ来ることなど造作もない!さあ俺を崇めよ!神と称えよヴァハハハハハ!!」

「なんか・・・キャラ崩壊してませんか?しかもボロボロ・・・」

「たぶん何日も徹夜続きだったからテンションが可笑しくなってるんだろ」

完全にどこか壊れている戦兎の様子にドン引きの二人。

「ヴァハハハハハ・・・はぁー」

やっと落ち着いたのか、息を吐く戦兎だったが、次の瞬間、左手を前に突き出した。

それは、ビルドの複眼が描かれた、缶だった。

「なんですかあれ?炭酸飲料?」

「やっと出来たのか・・・」

それに響は首を傾げ、クローズは安心するように呟く。

「ここ数日、失敗に失敗を重ね、抜けてしまったパンドラボックスの成分を再現するために何度も爆発を喰らい、ボロボロになりながらも、翼の為を思って根性を見せて直したビルドのパワーアップアイテム・・・その名も『ラビットタンクスパークリング』ぅ!すごいでしょぉ!?最っ高でしょぉ!天っっ才でしょぉぉぉおお!?ヴァハハハハハ!!!」

またキャラ崩壊を引き起こす戦兎。

しかし、それもほんの少しの事。

 

「さあ、実験を始めようか」

 

やがて、いつもの眼差し、戦いを前にする戦士の眼に戻ると、戦兎は、突き出したラビットタンクスパークリングを振る。

 

シュワシュワシュワ

 

まるで炭酸飲料から泡が吹き出すのと同じ音が響き、戦兎は、プルタブパーツを開ける。

爽快な音が鳴り、戦兎は起動したラビットタンクスパークリングを掲げる。

そして、それを腰に装着したらビルドドライバーにセットした。

 

ラビットタンクスパークリング!』

 

そんな音が響き渡り、戦兎は、ボルテックレバーを回す。

(もう二度と・・・・)

今までとは違うスナップライドビルダーが展開され、戦兎の前後に展開される。

その最中で、戦兎は思い出す。

 

翼が、絶唱を使ったあの夜の事を。

 

(翼を、あんな目にさせない為に・・・!)

 

その為に、この力を取り戻したのだ。

 

『Are You Ready?』

 

覚悟は、良いか?

 

そのいつもの問いかけが、戦兎に告げられる。

(ああ―――)

そういえば、と戦兎は思い出す。

 

彼女の笑顔を、見た事ないな、と。

 

だったら、見よう。彼女の笑顔を。

戦兎の想う、最っ高の笑顔を、創ってみせよう!

 

(―――出来てるぜ)

 

両腕を広げた後、ファイティングポーズをとって、戦兎は叫ぶ。

 

「―――変身!」

 

シュワッと弾けるラビットタンクスパークリング!イェイイェーイ!』

 

赤と青、そして、白というトリコロールの装甲を身に纏い、ビルド・ラビットタンクスパークリングが、新世界に誕生する。

 

「勝利の法則は、決まった!」

 




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「あれが・・・戦兎先生の新しい力・・・」

ついにその姿を現すラビットタンクスパークリング!

「アタシのもんだ!」

そして繰り広げられるデュランダル争奪戦。

「渡すものかぁぁぁ!!」

それを手にした響に変化が起こり――――

「俺が?何故に?」

どういう訳か、戦兎と響が翼の見舞いに―――

次回『病床のディーヴァ』

「えーっと・・・」



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病床のディーヴァ

戦「天才物理学者の桐生戦兎は!その天才的な頭脳を駆使してラビットタンクスパークリングを復活させたのでしたァ!」
翼「やっと私も復帰だ!」
響「なんだかテンション高いですね二人とも」
万「久々の登場だからだろ」
翼「本編で絶唱使ってしばらく倒れていたからな。やっと復活出来たぞ」
ク「はいはいお疲れお疲れごくろーさまでした」
万「今回はお前と戦兎の戦いから始まるんだっけか」
戦「メタい話してんじゃないよ。ま、この天才がやっとの事で活躍出来るんだから、問題はないんだけどな」
響「そして今回はなんと!翼さんのあの秘密g」
翼「・・・」(無言で響の首筋を木刀で叩く)
未「ひ、響ー!」
ク「おいお前ここでの最初のセリフがそこでいいのか!?」
戦「お前も万丈と変わらないな」
万「おいそれどういう意味だ!?」
ク「馬鹿にすんなよ!これで成績は良い方d」
戦「はいはいじゃあさっさと俺が活躍する第十一話に行こうか」





翼「そういえば、この間暁と月読が恐ろしい笑顔でお前の部屋に入った後に凄まじい騒音が聞こえたのだが、あれは一体・・・」
戦「この世には知らぬが仏ということわざがあるんだ。だからその事は聞くな」
翼「はあ・・・」


赤と青、そして白のトリコロールの装甲。ややギザギザのついたその姿は、何か、キレのある印象を与えていた。

 

「あれが・・・戦兎先生の新しい力・・・・」

その姿を、響は見上げた。

一方のビルドは、戦場を見渡し、ある程度敵の位置を覚えると、すぐさま自分が立っていた塔のような建物から身を投げ出す。

そして、縁に足を引っかけ、そして踏み出した瞬間、足の裏で発生した『泡』が炸裂、恐ろしい速度で地面に落下した。

そして、ノイズの間を凄まじい速度で駆け抜ける。

「「速い!?」」

その速さに、響どころかクリスすらも驚く。

 

ラビットタンクスパークリングの能力は、『泡』による各種能力の向上。

足の裏で泡を破裂させればその衝撃で高速移動が可能であり、拳に乗せれば泡の破裂で敵を粉砕する。

 

そのスピードを活かして、戦兎はノイズたちを蹂躙する。

「よっしゃあ!俺たちも行くぜ!」

「はい!」

さらにはクローズや響も参加する。

ビルドが超高速移動で敵を蹂躙している間に、クローズの拳から発せられる蒼炎によって敵を圧倒し、その一方で響も今までの特訓の成果が出て、以前のような素人の戦いではなく、まさしく格闘家のそれに匹敵する格闘術をもってノイズを殲滅していた。

「こいつ・・・戦えるようになっているのか・・・?」

万丈に散々殴られ、弦十郎に鍛え上げられたからこその、響の力だ。

背中を叩きつけたり、肘鉄を叩き込んだり、時には両の手の掌打で叩き飛ばす。

もう、素人なんて言わせないとでも言うような迫力だ。

そして、ビルドもまた、今までとは比較にならない程の強さでノイズを倒していた。

『泡』とは意外と馬鹿にならないものだ。高速移動によってノイズが何か行動を起こす前に全て叩きつぶしているのだから。

「オォオ!」

右腕の『Rスパークリングブレード』によって複数のノイズを斬り裂きつつ、立て続けに右脚の蹴りで周囲を薙ぎ払う。

しかしノイズはまだ存在しており、また新たに襲い掛かってくるだろうと思ったその時、上空から刃の鞭が叩きつけられる。

「うお!?」

「今日こそはボトルを渡してもらうぜ!」

クリスの蹴りがビルドの顔面に突き刺さる。否、ギリギリの所で止められていた。

「なっ!?」

「生憎と俺の持ってるボトルはそんなに安くはない!」

空中で地面に向かって投げ飛ばす。どうにか着地したクリスに、空中で泡を炸裂させて加速したビルドの一撃が襲う。

ギリギリの所で躱し、ビルドは地面を叩き砕くも、更なる追撃がクリスを襲う。

(こいつ、この間とは比べ物にならないぐらいに・・・!?)

「おぉぉおお!!」

ビルドの拳がクリスに叩きつけられる。どうにか刃の鞭で防いだが、直後に炸裂した泡で吹き飛ばされる。

「ぐぅっ!?舐めるなぁ!」

だが、そのまま一方的にやられる程、彼女は甘くない。

振るわれる鞭。それを躱すビルドだが、続く二撃目三撃目と、躱し、接近しようとするが、意外に攻撃の圧が高く、なかなか近付けない。

されどビルドはその攻撃の網を潜り抜け、すぐさまクリスに一撃見舞おうとしたが、躱され、反撃の蹴りを防ぎ、今度は蹴りを腹に叩き込もうとするもしゃがんで躱され、真上から鞭が振り下ろされるも、それを紙一重で躱してと一進一退の攻防を繰り広げる。

(スパークリングでやっと互角か!)

(うぜえ、なんだよこいつ!)

激しく打ち合うビルドとクリス。

その一方で、響とクローズはノイズの殲滅に当たっていた。

響の動きは、もはや素人ではない程洗練され、敵を屠っていた。

その最中で―――了子のすぐ傍のケースのランプが点滅しだす。

「この反応・・・まさか・・・!?」

それはデュランダルに何があった時のサイン。

そして了子は、その異変を引き起こしたであろう人物を見る。

「やあ!」

膝蹴りがノイズの一体を粉々に粉砕する。

立て続けにノイズの放つ触手攻撃が襲い掛かるも、それを落ち着いた動きで巧みに躱し、そしてそのノイズに正拳突きをかまして粉砕する。

「行ける・・・このまま・・・!」

 

『ミリオンスラッシュ!』

 

「へ?ひゃうわ!?」

すかさずクローズのビートクローザーから発射された一撃を頭を下げる事で躱す響。

「龍我さん危ないじゃないですか!」

「いやーすまんすまん。あの戦兎見てたら張り切っちまってな」

「もう・・・!」

ふとクローズはビルドと殴り合うクリスの方を見る。

その顔には、何か焦りのようなものが見えた。

(あいつ・・・)

一体、何に焦っているのだろうか。

彼女に残された時間が。それとも、何か別の理由があるのか。

その時、ケースから何かが突き破って出てくる。

それは、剣。石色の剣だ。

そして、相当古いものだという事も伺える。

「あれは・・・」

「こいつがデュランダル・・・!」

それが、空中で静止し、なおかつ黄金の光を放ち始めていた。

その剣に向かって、クリスが飛び上がる。

「アタシのもんだ!」

「しまった!」

ビルドはクリスが呼んだノイズに邪魔されている。片付けるのは一瞬だがその一瞬でクリスはあの剣を―――デュランダルを手に入れるだろう。

そのクリスが、デュランダルに手を伸ばし、掴み取ろうとする、その寸前――――

「させるかよ!」

「な!?」

クローズが飛び掛かり、一気に引きずり下ろす。

「テメェ・・・!?」

「そう簡単に渡すかってんだよ!」

「離せ!この・・・」

そのまま落下するクリスとクローズ。そして、落ちていく二人の代わりに、響がデュランダルを手に取る。

「渡すものかぁぁぁ!!」

 

そして、響がその剣を手にしたその時―――何かが、破綻した。

 

「うごあ!?」

「うわぁ!?」

見事に絡み合って落下したクローズとクリス。

「い・・・つつ・・・ん?」

四つん這いになるクリスの上に覆いかぶさるような形になったクローズ。

だがその時、手に何か、柔らかい感触のものがあった。

「なんだ・・・これ・・・」

それは、まるでマシュマロのように柔らかく、しかし弾力はありもっちりとし、手袋越しでも分かるほどやわらかいこれは一体――――

「ど、どこ触ってんだ変態ィ――――!!」

「ぐおあ!?」

クリスの強烈な肘鉄がクローズの顔面に炸裂し、吹き飛ばす。

「ぐ・・ご・・・なにすんd・・・!?」

そのまま壁に激突して、頭をさすりながら見た先には、どういう訳か腕を胸の前で交差させて隠し、それでもってクローズを涙目で睨むクリスの姿があった。

「んん?・・・・あ!?」

胸を隠すような動作。そして先ほど自分が触った感触と、殴られた理由を考えると・・・

「やーい変態」

「うるせえ!」

ビルドの揶揄いに怒鳴り返すクローズ。

「まあそんな事より」

「そんな事よりってなんだ!?」

「逃げるぞ」

「は?」

突然のビルドの逃亡宣言。それにクローズは思わず呆けてしまうが、次に聞こえた()()()で気付く。

 

響の様子が変であることに。

 

「う・・・ゥウゥ・・・!」

唸り声を発する響。その手には、あのデュランダルが握られており、デュランダルが放つ光は、先ほどよりも一層強く輝いていた。

「ゥウ・・・ゥウゥゥゥゥゥウウウゥウウウ・・・!!!」

そして次の瞬間、黄金の光が天を貫くように迸る。

「なんだァ!?」

「これがデュランダルの力か!」

光が迸る。それは、完全聖遺物サクリスト-D『デュランダル』の起動を意味していた。

立花響という少女が、たった一人で起動させたのだ。

そして、その光の中で、剣が形を変え、一本の黄金の大剣へと変わる。

それと同時に、響の姿も禍々しく、黒く変わっていた。

「あれは・・・あの時の・・・!?」

以前、地下鉄で見た響の黒化。それと、とても酷似しているが、今の彼女は、おそらく完全に理性を失っている。

「おぉオぉぉおォォォオオォォオオォォオオ!!!」

おおよそ人の物とは思えない咆哮を上げて、彼女は剣を掲げる。

「コイツ・・・何をしやがった・・・・!?」

ふとクリスは、すぐ傍にいる了子の方を、何故か向いた。

その了子の顔は、とても恍惚そうにその光を眺めていた。

まるで、待ちに待った奇跡に出会えたかのように。

「チッ・・・」

その姿に舌打ちし、クリスはその手に『ソロモンの杖』を響に向け、咆える。

「そんな力を見せびらかすなァ!」

そうして召喚されたノイズに反応した響は、視線をそのノイズに向ける。その眼を見た瞬間、クリスは、少し後ずさってしまう。

「ひっ・・・」

「ウゥゥウウゥゥウウ・・・・!!」

そして響は、剣から放たれる黄金の光を、一気にそのノイズに、そして、その後ろにいるクリスにまで向けて振り下ろした。

「あ・・・・ああ・・・」

その圧倒的光景を前にクリスは棒立ちになり、

「あぶねえ!」

そこへクローズが横からクリスを掻っ攫う。

そして光の砲撃は、薬品工場を穿ち、やがて―――凄まじい爆発を引き起こした。

 

ドラゴニックフィニッシュ

 

そして、迸った衝撃に向かって、クローズはクローズドラゴン・ブレイズを叩きつけた。

「ぐおぁぁぁああぁぁああ!?」

「お前、なんで・・・・!?」

割れる衝撃。クリスは、クローズの腕の中でその光景を見ていた。

「たとえ敵でもなぁ・・・お前のような奴は、放っておけねえんだよぉぉぉぉおお!!」

ブレイズが、その衝撃に耐えきれないとでも言うように消えていく。

しかし、クローズが絶叫を上げ、その姿を保たせ、クリスを必死に守るかのように拳を突き出し続ける。

そして、次の瞬間には、二人は光に飲み込まれていた――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・これがデュランダル・・・完全聖遺物の力・・・・」

工場の惨状を見て、戦兎はそう呟いた。

「こんなもんが、やばい奴らに渡ったりすれば・・・」

工場は半壊。地面は削り取られ、建物の殆どが崩れ去り、瓦礫と化し、崩れ去っていた。

「っとそうだ。万丈はどこだ・・・」

あの少女を助けるために、戦兎とは逆の方向へ走った万丈を探す。

「あの方向からこういったから、あの馬鹿なら真っ直ぐ飛んで・・・・」

あの状況での万丈の行動を計算し、どこに飛んで行ったのかを予測。

そうして辿り着いた場所に、彼は倒れていた。

仰向けで、意外と無傷な状態でそこに寝転がっていた。

「おい、起きろ馬鹿」

「ん・・・ぐぅ・・・」

一度顔をしかめて目を開ける万丈。

「せん・・・と・・・」

「よう」

「・・・!そうだ!あいつは・・・!?」

「お前が助けようとした奴か?さっき逃げたって言ってたぞ」

「そうか・・・アイツ、無事なのか・・・良かった・・・」

ほっと息を吐く万丈。そんな万丈に戦兎は笑いつつ、手を差し出す。

その手を万丈は取り、立ち上がる。

「今度会えばいい」

「そうだな」

万丈の肩を叩いてそう言う戦兎に、万丈は頷く。

 

 

 

作戦は中止。起動してしまったデュランダルは、また二課のアビスに保管される事なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全聖遺物の起動には、相応のフォニックゲインが必要になる。

ソロモンの杖の起動に、クリスが半年かかったのに対して、響はほんの一瞬で起動してみせた。

それだけに留まらず、その力をいとも容易く解き放って見せた。

まだシンフォギアに目覚めて数日の人間が、あんなにも容易く、完全聖遺物を起動した。

その事実が、クリスに突き付けられる。

「化け物め・・・!」

歯を食いしばり、クリスはそう呟く。

今彼女が立っているのは、拠点としている屋敷のすぐ傍にある桟橋の先だ。

呟くのと同時に、あの力を解き放たれた時に自分を庇ってくれた仮面の戦士の事を思い出す。

(なんで、あの時・・・)

自分達は、敵だった筈だ。それなのに、何故、彼は自分を守ったのか。

自分が死ぬかもしれない。そんな状況で、何故、

 

『たとえ敵でもなあ・・・お前のような奴は放っておけねえんだよぉぉぉぉおお!』

 

「ッ!」

手に持つソロモンの杖を握りしめる。

「くそ!ふざけやがって!」

大人とは、醜いものだ。彼女は、それを嫌という程思い知らされてきた。

あの地獄で、散々、ずっと―――

「なんで・・・その大人が・・・!」

 

敵なんて庇っているんだ。

 

訳が分からない。あの青い戦士の事を考えると無性にイライラする。

どうせ奴も力を振りかざして威張りたいだけの人間なのに。どうして―――

「ちくしょう!」

やはり、離れない。あの男の事が、頭から離れようとしない。

顔も知らない、あの男を――――

そこでクリスは頭を振って別の事を考え始める。それも声に出す事で、より意識を反らす為に。

「このアタシに身柄の確保をさせるぐらい、『フィーネ』はアイツにご執心という訳かよ」

立花響。ガングニールの破片をその身に宿すもの。そして、デュランダルを一人で覚醒させえた、自分を超える存在―――

それと同時に、あの凄惨な過去を思い出す。

「・・・そしてまた、アタシは一人ぼっちになる訳だ・・・・」

そよ風が吹く中で、クリスはそう呟く。

太陽が山の影から姿を見せ、クリスは、背後に立つ女性に気付く。

それは、彼女の雇い主、あるいは、飼い主。

「・・・分かっている。自分に課せられた事くらいは」

その時、また彼の事が脳裏によぎる。

それを振り払うように、クリスは女性に向かってソロモンの杖を投げる。

「こんなものに頼らなくとも、アンタの言う事ぐらいやってやらあ!」

それを女性は受け取り、その女性にクリスは言う。

「アイツよりも、アタシの方が優秀だって事を見せてやる!アタシ以外に力を持つ奴は、全部この手でブチのめしてくれる!」

シンフォギア奏者も、仮面ライダーも全て、この手で叩き潰す。

「それが、アタシの目的だからな・・・!」

 

全ては、この世から争いをなくすために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弦十郎と戦兎が、喪服姿で二課に入ってくる。

「亡くなられた広木防衛大臣の繰り上げ法要でしたわね」

「お疲れ」

「ああ、ぶつかる事もあったが、それも俺たちを庇ってくれての事だ。心強い後ろ盾を失ってしまったな・・・」

何故、戦兎も喪服を着ているのか。

理由は、葬儀に総理大臣とその補佐官が来ると聞いたからだ。

「で?どうだったんだよ戦兎」

こそこそとしつつ、万丈は戦兎に尋ねる。ちなみにクローズドラゴンは今日も未来の所に向かっている。そろそろ怒られるかもしれない。

「ああ、新世界でも総理は総理だったし、幻さんも変わりなくて安心したよ」

「そうか」

その言葉に、万丈も安心する。

「こちらの進行はどうなっている?」

「予定よりプラス十七パーセント」

進行とは、基地の強化作業の事である。

「デュランダル移送計画が頓挫して、正直安心しましたよ」

「そのついでに防衛システム、本部の強度アップまで行う事になるとは」

「ここは設計段階から、限定解除でグレードアップしやすいように織り込んでいたの。それに、この案は随分と昔から政府に提出してあったのよ」

「でも確か、当たりの厳しい議員連に反対されていたと・・・・」

それなのに何故、その案が通ったのか。

「その反対派筆頭が、広木防衛大臣だった」

それが理由だ。

「非公開の存在に血税の大量投入や、無制限の超法規措置は、許されないってな」

一つ、ため息を吐く弦十郎。

「大臣が反対していたのは、俺たちに法令を遵守させることで、余計な横槍が入ってこないよう、取り計らっていたからだ」

重い空気が、場に広がる。その間でも、戦兎はいつも通りのシャツとボロボロのジーンズ、そしてトレンチコートを着る。

「司令、広木防衛大臣の後任は?」

「副大臣がスライドだ。今回の本部改造計画を後押ししてくれた、立役者でもある」

「だけどその大臣はいわゆる親米派でな。つまり、日本の国防政策に対して、アメリカの意向が通りやすくなっちまったって訳だ」

「それが何か悪いのか?」

やはり、と言った具合に万丈が訪ねる。それに呆れつつ戦兎が答える。

「あのな?この間デュランダルの引き渡しをガンガン要求してきてるアメリカが、こっちの事情に口出ししやすくなったんだよ。最悪対ノイズ戦の武装であるシンフォギアだとかライダーシステムが向こうに流出しちまう可能性があるって事だよ」

「やばいんじゃねえのかそれ・・・!?」

流石にこれは万丈でも理解できたようだ。

「まさか、今回の防衛大臣暗殺の件も、米国政府が・・・」

そこで、突如として警報が鳴る。

モニターを見れば、数人の職員が消火器をもって火元の消化を行っていた。

「たーいへん。トラブル発生みたい。ちょっと見てきますわね」

そう言って部屋を出ていく了子。

「さて、向こうのトラブルは了子君に任せておいて、戦兎君、君に翼の見舞いに行ってきてもらいたいんだが」

「俺が?何故に?」

「今緒川はある任務に行っていてな。響君もと言っていたから、二人で言ってきてくれないか?戦兎君は今日も学校を休んで一日暇な訳だし」

想定外の提案に戸惑うものの、断る理由はない。

「はあ・・・分かりました。不肖、この天才物理学者桐生戦兎、風鳴翼の見舞いに行ってまいります」

「まあ俺も暇だからな」

「ああいや龍我君はここで待機しててくれ」

「へ?」

何故か止められる万丈。

「一応君もノイズに対抗できる唯一の人材であることには変わりはない。だから念のため、君にはノイズ出現に備えて待機してもらいたいのだ」

「ああ、そういう事か・・・でもなんで戦兎なんだ?」

「それは察しろ」

「察しろって・・・はっは~ん」

弦十郎の意味深な笑みに万丈もにやついた顔で戦兎を見る。

「・・・・なんだよ?」

「いやー、モテる男は辛いねえ」

「いや一体何の話だよ?」

「べっつにー、いずれ分かる事だよ」

「はあ?おい、この馬鹿何言って・・・なんでお前らも笑ってんの?」

「いや、なんでも・・・くくく」

「すみませ・・・ふふふ」

何故か藤尭と友里まで笑っていた。

その場に何故か控えめな笑い声が響く中、戦兎一人だけが取り残されているこの状況。

「え・・・あ・・・ちょ・・・あーもう!なんなんだよお前らぁ!?」

謎の笑みの意味も分からず、戦兎は叫ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、なんなんだよあいつら・・・」

病院の玄関扉の前で待つ戦兎。

そこへ、響が慌てた様子で入ってきていた。

「すみませーん!遅れましたー!」

「おう遅いぞ」

「ハア・・・ハア・・・実は、花を買うのに時間がかかってしまって・・・」

「花?ああ、見舞いの」

「先生は何を?」

「適当に腹減ってるだろうからリンゴ買ってきた」

戦兎が持ち上げた袋には、リンゴが三つ程入っていた。

「それで、あれから体調の方はどうですか?」

体調、というのは、戦兎はスパークリングを直す為にかなり長期間徹夜続きの作業をしていたため、ベッドに倒れた後はそのまま丸一日起きなかった上に起きたとしても作業の疲労が溜まっていてしばらく動けず、学校をさらに休む事になってしまったのだ。

まあ、パンドラボックスの成分を再現する為に相当苦労したのだから、当然といえば当然だが。

「あれから結構休んだし、明日からはいつも通りやれるよ」

「いいなあ、私も一度戦兎先生の授業受けてみたいです」

「だったら今度、個別授業でもやるか?」

「本当ですか!?いやー、私勉強全然でして、戦兎先生が教えてくれるならきっと成績アップも間違いなしです!」

そんな他愛もない話をしながら、二人は翼の待つ402号室の前に立つ。

(あれ?そういえば翼って確か女だったよな?それもまだ現役の高校生。いくらトップアーティストと言えども学校では生徒と教師の関係だし、ついでに十歳近く歳離れてる訳だから、あ、なんかいきなり緊張してきた。やばいやばいやばいやばいマジでどうするそうだ公式を頭の中で唱えて心を落ち着かせよう!)

頭の中でヤベーイ!だとかブルァァァアア!!とかヤヤヤヤベーイ!!!だとかの音声が流れて内心パニくり始めた戦兎。

「戦兎先生?」

「はい!?」

「どうしたんですか?」

「べ、べべべつに何も!この天才に怖いものなんてないぜ!フハハハハハ・・・・」

「何か変ですよ・・・?」

ジト目で戦兎を見上げる響。

(よし、とりあえず落ち着け、落ち着くんだ桐生戦兎。お前は天才物理学者なんだ。この程度の事態で騒いだりしない)

脳内で鋼のムーンサルト!などという音声が流れると同時に戦兎は覚悟を決める。

「よぉーし、開けるぞ」

「は、はい!」

ついに覚悟を決めた戦兎は、ついに、風鳴翼の待つ病室の扉を開ける。

そこで見たものは―――

「「・・・・!?」」

響が、鞄を落とす。

戦兎が、後ずさる。

「こ、これは・・・」

「まさか・・・そんな・・・」

目の前の光景を見て、二人は、絶句し、目を見開く。

何故なら、その部屋があまりにも――――

「何をしているの?」

ふと、後ろから声を掛けられる。聞き覚えのある声だ。

その声を聞いた途端、響―――ではなく戦兎が背後にいる人物の肩を掴んだ。

「翼!?怪我はないか!?」

「きゃあ!?い、いきなり何!?」

「翼さん!ほんとに無事なんですか!?」

「え、ちょ、入院患者に無事を聞くって、というか、今私怪我をして・・・」

「何もされてないよな!?どこも、変な事とかされてないよな!?」

「お、落ち着いて、一体何の話を・・・」

「これの事だよ!」

戦兎が指差す先、そこは、翼の病室だった。

その中は――――凄まじい程の散らかっていた。

コーヒーが入っているであろうカップはひっくり返し中身がこぼれ、服は散らかり何かの薬品も机の上にぶちまけられ、花はしおれて枯れているのもあれば、何故かトイレットペーパーが地面を転がって紙のシルクロードを作り、週刊誌や雑誌などが床に散乱し、その惨状はあまりにも惨かった。

「てっきり何かに襲われたのかと思ったぞ!?こんな怪我をしている状態でストーカーだとかに襲われてたら洒落にならんぞ!お前何かと頑固なとこあるし、もしかしたらやせ我慢とかしてるんじゃないかって・・・」

マシンガンのごとく矢継ぎ早に言葉を叩き出し続ける戦兎。

しかし、その一方で翼は顔を赤くしていた。

それはなぜかって?

 

この部屋の惨状を見られたからだ。

 

「み、見ないでぇぇぇぇぇええ!!」

「ぐへあ!?」

強烈な平手打ちが戦兎の頬に炸裂し、まさしく横に吹っ飛ぶ戦兎。

「えぇぇええ!?」

その予想外の行動に、響は驚き、戦兎は訳が分からないまま廊下の床に倒れる。

「・・・あ」

「い、いきなりなにすんだ!?」

すぐさま起き上がって抗議する戦兎。

だが、翼の顔がなぜか赤くなっているのに気付く。

「ご、ごめんなさい・・・・」

そして、戦兎と響は気付く。

「あ、あー・・・」

「えーっと・・・」

二人は、なんて言えばいいのか分からなくなった。

 




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!

翼のまさかの散らかった部屋を片付ける戦兎と響。

「もう、そんなのいいから・・・」

そして、改めて響の覚悟を聞く翼。

「守りたいものがあるんです」

一方の万丈は、街中を歩いている中、あの少女を見つける。

「お前・・・家族いないだろ?」

「黙れぇぇええ!」

始まる戦闘。

「なんだか、敵わないわね」

それを知らぬ、翼と戦兎。

「ごめん」

ついに未来に隠し事がバレてしまう響。

様々な想いが錯綜する中で、万丈は少女と対峙する。

次回『馬鹿と復讐者とファンタジスタ』

「今の俺は、負ける気がしねぇ!」


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馬鹿と復讐者とファンタジスタ

緒「今回は連日投稿ですか」
頭「なんでも書き溜めが思いのほか溜まったから消化という形で張り切ってるらしい」
万「おいまだ出てきてねえのになんでお前が出てんだよ・・・ってあれ?なんで電気が消えて」
絶望センス「やあ、待たせたね」キャァァア!
黒グニール「こ、これは・・・!?」
農具「想像の斜め上をいく破壊力デス・・・!?」
工具「正直に言ってダサい・・・」
絶望センス「お前たちも俺のセンスが分からないのか・・・!?」
万「誰もお前のセンスなんて理解出来ねーよ!」
緒「誰か一人ぐらいあらすじ紹介しましょうよ!?」
黒グニール「お願いちょっと待って・・・そ、その服は一体どこで・・・」
絶望センス「全てオーダーメイドだ。羨ましいのか?」
農具「やっばいデス。本人分かってないパターンデス・・・」
戦「お前らいい加減にしろ!いつになったらあらすじ紹介始めるんだ!?」
未「もう私が読み上げます・・・こほん、天才物理学者にして仮面ライダービルドこと桐生戦兎は、私の親友、立花響と一緒に風鳴翼さんのお見舞いにいくのでした」
戦「お前らコイツを見習え。何絶望センスの服の話題で盛り上がってんだよ」
絶望センス「俺は絶望センスなどではない俺はひ」
響「あぁぁあネタバレは控えてください!」
ク「だーもう!今回はアタシと龍我がぶつかる話だ!どうなる第十二話!」



あの後、戦兎と響は散らかっていた翼の病室を掃除していた。

「もう、そんなのいいから・・・」

「そういう訳に行かないでしょうが」

「私、緒川さんからお見舞いを頼まれたんです。だからお片付けさせてくださいね」

そう言って、響は翼の服をまた一枚重ねた。

「それにしても意外でした。戦兎先生って科学者ですから片付けられないってイメージがありました」

「俺かよ!?まあ、これでも結構几帳面なんだぞ?ある程度発明が出来るだけのスペースは確保するために常に整理整頓はしてるんだが、それがいつの間にか部屋全体に広がってな・・・」

未だ頬に赤い手形のついた戦兎は散らかった薬などを片付けていた。

「もちろん、翼さんの事も意外でした。いつもは完璧なイメージがあるのに、こんな一面があったなんて」

「真実は逆ね。私は戦う事しか知らないのよ」

「いや、お前歌唄ってるだろ」

誰にでも呟くでもなく放った言葉が、どういう訳か戦兎には届いた。

兎故の地獄耳というものか。

「はい!おしまいです!」

ただ、その会話は響には届いてなかったらしく、そう両手を広げて言う響。

「あ、すまないわね。いつもは緒川さんがやってくれてるんだけど・・・」

「おまっ・・・まだ年頃の女の子なんだからそれはどうなんだ!?」

「男の人に片付けさせてるんですか!?」

その言葉で、翼は気付く。

「ッ!?た、確かに考えてみれば色々と問題はありそうだけど・・・・」

「ありそうじゃなくてあるから。めっちゃあるから」

「そ、それでも、散らかしっぱなしにしているのも、よくないから・・・つい・・・」

随分としおらしい態度の彼女に、響は戸惑いを隠せず、一方の戦兎はなぜか笑いをこらえていた。

(可愛すぎだろこの自称防人・・・っ)

言っておくがときめいている訳ではない。・・・本人曰く、だが。

「今はこんな状態だけど、報告書は読ませてもらっているわ」

「へ?」

「私の抜けた穴を、貴方がよく埋めているという事もね」

予想外の賞賛に、響は思わず謙遜する。

「そんな事全然ありません!いつも二課の皆に助けられっぱなしです・・・」

「そんな事ないって。この間の戦闘なんて、見間違えるような動きしてたじゃねえか」

バンッ、と響の背中を叩く戦兎。

「うわ!?」

「自信を持て」

「あ、ありがとうございます・・・・でも、嬉しいです」

響が、照れたように頬を掻く。

「翼さんにそんな事言ってもらえるなんて」

「でも、だからこそ聞かせて欲しいの」

翼は、響を真っ直ぐに見据える。

「貴方の戦う理由を」

「え・・・」

「ノイズとの戦いは遊びではない。それは、今日まで死線を超えてきた貴方なら分かる筈」

ノイズは、人類共通の世界災厄。そんな存在を、二課は相手取ってきた。

その危険性を、響は確かに十分理解している。

「よく、分かりません・・・」

されど響は、そう答える。

「私、人助けが趣味みたいなものだから・・・それで・・・」

「それで?それだけで?」

戦兎なら、それだけ、と答えるだろう。元より、他人の為に戦う人間だ。

ならば、響はどうなのか。

「だって、勉強とかスポーツとか、誰かと競い合って結果を出すしかないけど、人助けって誰かと競わなくていいじゃないですか。私には、特技とか人に誇れるものなんてないから、せめて、自分の出来る事で、皆の役に立てればいいかなーって・・あははは・・」

ふと、響の言葉が途切れる。誤魔化しきれない、と思ったのだろうか。

「・・・・きっかけは」

「ん・・・」

「きっかけは、やっぱり、あの事件かもしれません。私を救う為に、奏さんが命を燃やした、二年前のライブ・・・」

その日から、響の運命は変わった。

「奏さんだけじゃありません。あの日、沢山の人がそこで亡くなりました。でも、私は生き残って、今日も笑って、ご飯を食べたりしています。だからせめて、誰かの役に立ちたいんです。明日もまた笑ったり、ご飯食べたりしたいから、人助けをしたいんです」

その言葉に、戦兎は笑って頷く。

その正体が、数多くの人間を人体実験へと使い、多くの犠牲者を出した悪魔の科学者だからこそ、それ以上に多くの人々を助けたい、戦兎だからこそ。

「貴方らしいポジティブな理由ね」

そんな響の理由に、そう返す翼。

「だけど、その想いは前向きな自殺衝動なのかもしれない」

「じ、自殺衝動!?」

「誰かの為に自分を犠牲にすることで、古傷の痛みから救われたいという、自己断罪の現れなのかも」

それは、戦兎にも言える事だ。そして、響にも言える事。

「あの・・・私、変な事言っちゃいましたか・・・?」

「いや、大丈夫だろ」

そんな理由で翼は言ったのではないだろう。それは戦兎も自然と分かる。

そして、翼は心外とでも言うように呆けていた。

「あは、アハハハ・・・」

「・・・ふ」

そんな様子に、翼も笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

場所は変わって屋上。

一部に緑があるこの場所は中々に、居心地の良い場所だ。風も中々に気持ちが良い。

「変かどうかは、私が決める事ではないわ。自分で考え、自分で決める事ね」

「・・・考えても考えても、分からない事だらけなんです」

「分からない事、ね・・・」

「デュランダルに触れて、暗闇に呑まれ掛けました。気が付いたら、人に向かってあの力を・・・私がアームドギアを上手く使えていたら、あんな事にもならずに・・・」

「力の使い方を知るという事は、即ち戦士になるという事」

翼が、即座に答えた。

「・・・戦士?」

「それだけ、人としての生き方から離れるって事だろ」

戦兎が響の頭に手を置く。

「貴方に、その覚悟はあるのかしら?」

その問いかけに、響は、答える。

「―――守りたいものがあるんです」

ただ真っ直ぐに、自分の胸の中にある、明確な想いを伝える。

「それは、なんでもない、ただの日常。そんな日常を大切にしたいと、強く思っているんです。だけど、思うばっかりで、空回りして・・・」

「戦いの中、貴方が思っている事は?」

「ノイズに襲われている人がいるなら、一秒でも早く救い出したいです。最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に駆け付けたい!そして・・・」

響の脳裏に、あの少女の事が思い浮かぶ。

あの日襲ってきた、白鎧の少女。

「もし相手が、ノイズではなく、誰かなら・・・」

ノイズではなく、言葉の通じる相手なら、彼女は。

「『どうしても戦わなくちゃいけないのか』っていう胸の疑問を、私の想いを、届けたいと思います」

それが、響の戦う理由。彼女自身の答え。

その答えを、翼は尊重する。

「今貴方の胸にあるものを、出来るだけ強くはっきりと思い浮かべなさい。それが貴方の戦う力、立花響のアームドギアに他ならないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

万丈は、街中を歩いていた。

「暇だから街に出てみたが、なんか都合よく暇をつぶせる場所ねーかな。ジムとかそういう」

「キュル」

ドラゴンはそんな事しらんとでもいうように鳴く。

「マイペースな奴め・・・」

しかし、そう思っていても暇な事には変わりはない。

「あー、なんか変わった事ねーかな・・・」

なんて呟いていると、ふと上空を何かが通り過ぎた。

「今のは・・・・!?」

その何かに、万丈は見覚えがあった。

それを見た途端、万丈は走り出す。

「おい!待てゴラ!」

「ああ?」

追いかけて、万丈は叫ぶ。

その声を聞いた何か――――ネフシュタンを纏った少女、クリスが街灯の上に降り立つ。

「なんだお前?」

追いかけてきた万丈を見て、首を傾げるクリス。だが、万丈のすぐ傍を飛ぶドラゴンを見て、合点がいく。

「ああ、この間の青い奴か」

「何しにきやがった!?」

「知ってるだろ?アイツとお前らの持ってるボトルを取りに来たんだよ」

「結局それが目的かよ!」

万丈は懐からドラゴンフルボトル―――ではなく、金色の、フルボトルとは全く形状の違うボトルを取り出した。

「丁度いい。今ここでお前のボトルを貰っておこうかぁ」

「いいぜやってやるよ・・・だけどその前に!」

ビッと指を突き出す万丈は、

「お前、なんで戦ってんだ?」

「はっ、教える義理があるかよ!」

クリスが刃の鞭を振るう。

振るわれた刃の鞭は万丈めがけて振り下ろされ、それを万丈は避ける。そして、刃の鞭が穿った場所は抉れ吹き飛び、それを見た周囲の人々は一斉に逃げ出す。

阿鼻叫喚のままに、周囲の人間が逃げ惑う中、万丈は未だ上にいる少女を見る。

「本当に戦うしかねえのか?」

「何言ってやがる?」

「お前・・・家族いないだろ?」

「ッ・・・!?」

万丈のその言葉に、クリスは狼狽える。図星だ。

そして、図星を付かれた事で、クリスは逆上する。

「―――黙れぇぇええ!!」

振るわれる鞭。それを躱す万丈へ、今度はクリス自身が殴りかかる。

「うお!?」

「お前に何が分かる!?戦争でパパとママを殺されたアタシの何が分かる!?お前ら大人が力を振りかざすから、戦争がなくならない!力がある奴は必ず誰かを傷つける!そんな世の中を終わらせる為にアタシは力を手に入れたんだ!アタシ以外に力を持つ奴をこの世から消し去って、戦争をなくしてやるんだ!」

「それが理由かよ!?」

「そうだ!お前はどうなんだ!?お前もその力で誰かを傷つけて力を見せつけて支配するんだろ!?だったらアタシが潰してやる!お前も、あの男も、その力を使ってるやつ、全員――――」

次の瞬間、

「オラァ!!」

万丈が、クリスに向かって拳を突き出した。

その一撃が、クリスの掲げられた腕に直撃した瞬間、

「な―――ッ!?」

予想外の力が掛かり、クリスは吹き飛ばされる。

「馬鹿な・・・あの力を纏ってないのに・・・・」

「・・・分からねえ」

「は?」

「分からねえよ。お前、本当にそれが正しいって思ってんのかよ」

万丈が、静かに問いかける。

「お前、何を言って・・・」

「桐生戦兎・・・アイツはな、常に誰かの為に何かをしたがる大馬鹿野郎だ。前に、人助けの仮面ライダーと自分の過去の事どっちが大事かって聞いたらな、アイツは全然迷わねえで人助けって言いやがった。そんなアイツの口癖は『愛と平和』、『ラブ&ピース』だぜ?」

「ッ・・・!?」

「馬鹿みてえだよな。そういう事、恥ずかし気もなく言ってのけるんだからよ。でも、だからこそアイツは『仮面ライダー』なんだよ。誰かの為に、正義の為に、ただそれだけしか考えてねえ」

クローズドラゴンをその手に持つ。

「アイツは『ヒーロー』なんだよ。他の誰でもねえ桐生戦兎だからこそ、アイツは自意識過剰でナルシストの正義のヒーローなんだよ」

金色のボトルを、クローズドラゴンに差し込む。すると、その体の色が突如として変化。暗い赤と青の装飾の施されたドラゴンへと変化する。

「ヒーロー?ヒーローだと?」

クリスは、握りしめた手を震わせる。

「ふざけんなよ!?何がヒーローだ!?寝言は寝ていえクソがァ!」

「アイツは寝言じゃ絶対にそんな事言わねえよ。いつだって本気だ」

「良い大人が夢なんか見てんじゃあねえよぉぉぉおお!!」

クリスが、あのエネルギー弾を生成する。

「―――それが夢かどうかなんて、お前が決める事じゃねえよ」

ボタン『ウェイクアップスターター』を、押す。

 

覚醒ィッ!!』

 

「だけど、これだけは言わせてもらうぜ」

 

 

グレェートクロォーズドラゴンッ!!!』

 

 

 

 

「―――俺も親はいねえよ」

 

 

 

 

『Are You Ready?』

 

 

 

 

目の前の少女と戦う――――己の正義の証明の為に。

 

 

「変身ッ!!」

 

 

次の瞬間、万丈が立っていた場所に、『NIRVANA GEDON』が炸裂する。

凄まじい爆発が巻き起こり、ただの人間であれば、一瞬で消し炭にされているだろう。

クリスも、万丈は消し炭になっただろうと、仕留めた事を確認するために爆発によって巻き起こった煙をじっと見ていた。

だが、その煙は、突然吹き飛ぶ事になる。

「ッ!?」

 

 

『ウェイク アップ クロォォォズッッ!!』

 

『ゲットゥ グレェイト ドゥラァゴンッ!!!』

 

イェェェエイッッ!!』

 

 

そんなハイテンションな声と共に、吹き飛んだ煙の中から、一人の戦士が現れる。

形は、クローズに酷似している。だが、色合いが違う。

金色の炎の装飾が赤い装飾へと変わり、頭部の龍の装飾も紅蒼の龍へと変わり、その姿は、どこか、危険すらも匂わせる。

 

それが、仮面ライダークローズの進化系である『グレートクローズ』である。

 

「行くぜ」

クローズが腰を落とし、そして駆け出す。その速さは、クローズの時よりも早く、素早くクリスとの距離を詰めると、その拳を叩きつける。

「うぐ!?」

(重い・・・!?)

その重さに、クリスはどうにか踏ん張る。

「オラオラオラ!」

「く・・・っそ!調子に、乗るなぁぁ!!」

パワーアップしたクローズに押され、クリスは、刃の鞭を振るう―――

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ん?」

戦兎は、何かに気付いたようにフェンスの方を見る。

「どうかしたの?」

「いや、気のせいだ」

先ほど、響はお好み焼き屋『ふらわー』に行ってしまい、現在戦兎と翼の二人きりになってしまっている。

「そういえば・・・」

そこで、翼は思い出したかのように懐に手を入れる。

「これ、返すわ」

それは、戦兎のラビットフルボトルだ。

「ああ、そういやそうだったな」

それを受け取る戦兎。

「あの時はありがとう。あんな事言った手前、あそこで死ぬかもしれないと思ってたから・・・」

「次からはやたらむやみに絶唱を使おうとするんじゃねえぞ。あれはあくまで応急処置まがいのその場凌ぎだ。次は無理かもしれない」

「でも、貴方がいたから、私は絶唱を心置きなく歌えた」

「おいやめろ、洒落にならんからやめろ」

顔を青くする戦兎の様子がおかしく、少し吹き出してしまう翼。

「以前貴方は言ったわね。私は剣じゃないって」

「ん?ああ、言ったな。ライダーシステム使ってる俺が兵器じゃないように、お前も剣じゃない、一人の女の子だってな」

「ええ。貴方はそう言った・・・」

翼は、夕焼けに染まる空を仰ぎ見る。

「父に認められたい一心で、己を鍛え続けてきた。一本の剣として、護国の防人として、この人生を己の鍛錬にのみ使いこんできた。そんな中で奏に出会って、何かが変わった。奏に出会ったから、私は、今の自分があるのだと思った。だけど、その奏を失って、戦う理由を見失いかけた。依存していた。だけど、そんな奏は、もういない」

「・・・・」

死んだ人間は、二度と戻ってこない。それは、どれだけ科学が発達しようと実現不可能な真実だ。

例え、全てを破壊する事の出来るライダーシステムであっても、何かを生み出す事は出来ない。

だから、戦兎はこの力を愛と平和の為に使うと決めた。

「立花が奏のガングニールを体内に宿してるって知った時は、正直、認められなかった。あんな覚悟の無い人間に、ガングニールの装者は務まらないと、そう思い込んでいた。だけど、改めて見てみると、彼女は誰よりもひたむきで真っ直ぐで、それでいて誰よりも優しくて、その実、自分はどうなっても良いって思ってる」

「正直、目を放してられないって所か?」

「そう捉えてもらって構わないわ。そして、戦士としての覚悟も、ちゃんと持ってた。だから、もう意地を張るのをやめようと思うわ」

立ち上がって、翼は、戦兎の前に立つ。

「実は、イギリスのレコーディング会社からオファー来てるの」

「イギリスの?すげーじゃねえか」

「ええ。桐生、もし、世界中の全てのノイズを駆逐する事が出来たなら、その時、私は―――」

空を見上げて、翼は戦兎に告げる。

「―――世界を舞台に歌いたい」

「いいんじゃないか」

その言葉に、戦兎は頷く。

「決めるのはお前だ。お前が決めるんだよ。俺は、ただお前の選んだ答えを応援するだけだ」

「正直、不安なの・・・戦う為だけに歌を唄い続けてきた私に、果たして世界で歌う資格はあるのだろうかって・・・」

相方を失い、ずっと、戦うためだけに歌を唄ってきた。楽しむ、誰かの為の歌を失った。

そんな自分が、果たして世界で歌っても良いのか。

その不安が、翼にはあった。

「別にいいんじゃねえか?」

「え?」

「話は変わるが、見返りを求めたら、それは正義って言わねえぞ。お前は、何かの見返りの為に歌を唄ってるのか?」

「・・・・」

確かに、そうだ。

自分はただ、誰かの為に剣を振るい、そして歌を唄ってきた。

それは、決して見返りを求めての事ではない。

誰かの為に、誰かの笑顔の為に、自分の歌で、誰かに勇気を与え、誰かを幸せに出来ると想って、奏と共に歌を唄い続けてきた。

それは、今でも変わらない。

「・・・私、世界で歌ってもいいのかな?」

「いいんじゃねえの?というか、それをしたのは他の誰でもないお前だろ?何言ってんだ?」

「そうね。何言ってるのかしら、私」

不思議な感覚だ。彼と話していると、こんなにも胸の内を曝け出せて、幸せな気持ちになる。

まるで、奏と一緒にいる時のようだ。

いつもは天才天才と自分を誇示していて、頼りなさそうに見えるけど、本当は誰かの為に何かをできる強い人間なのだ。

優秀であるからこそ、自分を誇示する。されど彼は、その力を、誰かの為だけに使う。

彼の掲げる『愛と平和』の為に。それを、本気で叶える為に。

「なんだか、敵わないわね・・・」

「ん?なんか言ったか?」

「なんでもない」

そう言いつつ、翼は、こっそりとあの言葉を呟いてみる。

「愛と平和・・・ラブ&ピース・・・」

その言葉は、脆く儚いものだ。だけど、彼が言うと、そんな言葉は、硬くて確かな、そして、強い意志が宿っている。

そんな、気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――龍我さん、ネフシュタンの鎧の少女と交戦を開始しました!」

一方二課本部では、クローズとクリスの戦いの幕が上がった事を確認していた。

「龍我君に近隣の森へ移動するように通達!そして、響君と戦兎君への連絡だ!」

その手腕を見事に発揮し、弦十郎は指示を出す。

 

 

「はい!分かりました!すぐに向かいます!」

その連絡を受けた響はすぐさまクローズが移動するであろう森に向かっていた。

その向かい側から、親友がやってきているとも知らずに。

 

 

 

 

 

凄まじい衝撃と粉塵が巻き起こる中で、クローズはクリスと互角以上に戦っていた。

「ウオリャ!」

蹴り薙ぎを紙一重で躱し、刃の鞭を振るうも、クローズはそれを必要最小限の動きで躱し、また反撃に出る。

しかし、振るわれた刃の鞭は意外にしなり、クローズの足を払う。

「うお!?」

「オラァ!」

「ぐぅ!?」

足を払われ、態勢を崩したクローズへすかさず蹴りを叩き込むクリス。

蹴り飛ばされたクローズはそのまま地面を転がり、態勢を立て直した。

「これでも喰らいやがれ!」

「ッ!?」

すかさずクリスはクローズに向かってエネルギー弾を投擲、それを少女を中心に弧を描くように走り出す事で躱すクローズだが、続く鞭の攻撃がクローズを襲う。

(距離を取られると厄介だ・・・!)

生憎と万丈は射撃はそこまで得意ではない。ビートクローザーの炎射出を使っても、この距離で当てられるとも思っていない。

彼に出来るのは、あくまで近接格闘のみ。それは彼を本物の格闘家と位置付けるには十分な要素だ。

とにかく、このまま一方的にやられる訳にはいかない。

今はこの砲弾の刃の鞭の攻撃を掻い潜り、クリスへと攻撃を加えなければ―――

「――――は?」

「・・・・え」

気付いたら、どういう訳か歩道に出ていた。

(は?なんでこんな所に歩道が?てかここ森の中だったよな?なんでこんな所に・・・)

そして、横を見てみれば、そこには、未来がいた。

「未来!?」

「え、なんで私の名前を・・・」

一方の未来は戸惑うばかりだ。

「龍我さん!」

そしてさらには、響までやってくる始末。

「あ、響!」

「ッ!?未来!?」

響はともかく、全くの一般人である未来がこの場に居合わせるのはまずい。

「喰らいやがれッ!」

「ッ!?」

何故なら、クリスがクローズに絶賛攻撃中だからだ。

「あぶねえ!」

「きゃあ!?」

クローズは思わず未来の方へ飛び出す。

すかさずクローズのいた場所に鞭が叩き込まれ、凄まじい衝撃波が迸るのと同時に、クローズは未来を抱えて地面を転がる。

「ッ!?しまった、他にも・・・!」

そして、最悪な事に、

「大丈夫か!?」

「あ、はい・・・あ!?」

「ッ!?」

 

――――車が吹っ飛んできていた。

 

(やばい、間に合わねえ!)

迎撃が、間に合わない。避ける事は可能だが、それでは未来が車の下敷きになってしまう。

無茶を覚悟で迎え撃つしかない。

そう思い、拳を握った時――――

 

 

「―――Balwisyall nescell gungnir tron―――」

 

 

その歌が、聞こえた瞬間、目の前にはすでに響が立っており、その車を殴り飛ばした。

「響・・・!?」

「響・・・?」

「・・・ごめん」

響は、未来に向かってそう一言呟くと、すぐさまクリスに向かって飛んでいく。

「あの野郎・・・」

「あ、あの・・・!」

立ち上がったクローズを、未来が引き留める。

「一体何が・・・響は、一体どうなって・・・!」

「悪いが説明してる時間はねえ。今はあいつをどうにかしねえといけねえんだ」

「でも・・・!」

なおも食い下がろうとする未来を、クローズは振り払うように走り出す。

「あとでいくらでも話してやる!だからそこで待ってろ!」

その時、未来の耳に、聞き覚えのある鳴き声が聞こえた。

 

「―――キュイー!」

 

「・・・クロ?」

未来は、茫然としたまま、クローズの後ろ姿をただ見つめた。

 

 

『現在、響ちゃんは市街地を避けて移動してる!爆音を頼りに追いかけるんだ!』

「分かった!」

クローズは、絶賛粉塵の巻き起こりまくっている場所へ走っていた。

ようやく辿り着いた場所で、響はどういう訳かクリスに自己紹介をしていた。

「私は立花響、十五歳!九月の十三日で、血液型はO型!身長は、こないだの測定では百五十七センチ!体重は、もう少し仲良くなったら教えてあげる!」

「何言ってんだアイツ・・・」

その行動に思わず開いた口が塞がらないクローズ。

「趣味は人助けで、好きなものはご飯&ご飯!あとは・・・彼氏いない歴は年齢と同じ!」

「な、なにをとち狂ってんだお前・・・」

「私たちは、ノイズと違って言葉が通じるんだから、ちゃんと話し合いたい!」

それで、クローズは響の意図を悟る。

「まさかアイツ・・・」

「なんて悠長!この後に及んで!」

クリスが刃の鞭を振るう。

鞭は、先の方へ進めば進む程、その速さが目には捉えられない程凄まじい速度を発揮し、また威力を高める。

その高速の一撃を、響は躱して見せる。

(こいつ・・・!?)

次々と来る鞭の攻撃、それら全てを、響は躱していた。

(何か変わった・・・覚悟か!?)

「話し合おうよ!私たちは戦っちゃいけないんだ!」

なおも響はクリスに話しかける。

「だって、言葉が通じていれば人間は―――」

「うるせえ!」

突如としてクリスが叫ぶ。

「分かりあえるものかよ人間が。そんな風に出来ているものか!」

響の言葉を真っ向から否定して、クリスは叫ぶ。

「気に入らねえ気に入らねえ気に入らねえ気に入らねえ!わかっちゃいけえことをべらべらと口にするお前がぁぁああ!!!」

「分かりあえるさ」

だが、そんなクリスの言葉を否定する者がいた。

クローズだ。

「俺はそれを見た!例え敵だったとしても、ちゃんと理解してやれば分かりあえるんだ!例え仲間を殺した相手でも、許せなくても、気持ちが同じなら必ず通じ合える。俺はそれを見てきたッ!」

クローズはクリスに向かって指を突き付ける。

「俺の名前は万丈龍我!仮面ライダークローズ、そして『プロテインの貴公子』だ!そんで、今からお前を止める男だ!覚えとけ!」

「龍我さん・・・!」

胸を張ってそう名乗り出すクローズ。

「ふざけんなよ・・・何がアタシを止めるだ!そんならお望み通り、テメェから潰してやらぁ!アタシの全てを使ってでも、お前の全てを踏みにじってやる!」

クリスが飛ぶ。

それと同時にクローズがボルテックレバーを回す。

「吹っ飛べッ!」

放たれる強力なエネルギー弾。

 

『NIRVANA GEDON』

 

グレートドラゴニックフィニッシュ!』

 

黒弾と龍がぶつかる。

クローズドラゴン・ブレイズを纏った拳で、黒弾を迎え撃つも、思った以上に強力で拮抗してしまう。

「もってけダブルだ!」

「なッ!?」

すかさず、クリスが次の黒弾を叩きつけてくる。

一発だけでもきついというのに、二発連続となると、負荷は恐ろしいものになる。

だが、それでもクローズは――――

「いいぜ・・・来いやぁぁああ!!」

受け止めている黒弾の後ろからもう一発の黒弾が炸裂する。

「ぬ、ぐぉぉぉおお・・・!?」

次の瞬間、その黒弾が炸裂し、クローズの後ろにいた響諸共爆発する。

凄まじい爆風が迸り、周囲を吹き飛ばす。

「はあ・・・はあ・・・お前らなんかがいるから・・・アタシはまた・・・」

巻き起こる土煙。しかしその中に、クローズと響は倒れていない。

「な・・・!?」

「ハァァァア・・・・!!」

いるのは、両掌の間で何かを生成しようとしている響の姿と、またボルテックレバーを回しているクローズの姿だ。

「うわぁあ!?」

だが、響が生成していた何かのエネルギーは爆発、響は吹き飛ばされる。

(やっぱりだめだ・・・翼さんのように、ギアのエネルギーを固定できない・・・・!)

彼女が行っているのは、アームドギアの生成。

「まさか、この短期間でアームドギアまで手にしようというのか・・・!?」

「おい響、なにも武器ってのは剣とかそういうものじゃないんだぜ?」

クローズドラゴン・ブレイズがどこからともなくとんでくる。

「時には、この拳が武器になる事だってあるんだぜ?」

「! そうか!」

響は、その言葉で何か答えを得たのか、掌で生成していたエネルギーを握りしめる。

すると、手首のギミックが駆動する。

「させるかよ!」

すかさず、クリスの刃の鞭が飛んでくる。

それをクローズが掴む。

 

『Ready Go!』

 

左拳を握りしめて、クローズは言う。

「お前に、何があったかなんて、俺には分からないけどな・・・!」

その左拳に、クローズドラゴン・ブレイズが纏われる。

「お前が、その力を何の為に使っているのか分からないけどなぁ・・・!」

「は、離せ・・・!」

クローズは、手の中にある刃の鞭を、思いっきり引っ張る。

「せめてこの拳に乗せた思いだけは受け取っとけや!」

クリスが引っ張られる。それと同時に、響とクローズが飛び出す。

響は腰のブースターで加速し、クローズはドラゴンの放つブレスに乗って、

(最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に―――!)

「今の俺は―――」

(この胸の想いを、伝える為にぃぃぃいいいッ!!)

「―――負ける気がしねぇぇぇえぇえええ!!!」

「あ、あぁぁぁぁああ!?」

 

グレートドラゴニックフィニッシュ!』

 

二人の渾身の一撃が、クリスに叩きつけられる。

その瞬間、鎧の拳が叩きつけられた部分に、明確なひびが入り、龍の一撃が体を抜きぬける。

(馬鹿な・・・ネフシュタンの鎧が・・・)

炸裂した破壊力はそのまま吹き飛ぶ力へ。クリスは一気に石垣に叩きつけられる。

「がぁ・・・あ・・・・」

意識が飛びそうになるほどの強力な一撃。

エネルギーをパイルバンカー方式で拳をぶつけるのと同時に打ち込む事で、事実上の二段攻撃を実現させている。

その破壊力は馬鹿にならず、その一撃は、かつての翼の絶唱に匹敵する程だ。

(なんて無理筋な力の使い方しやがる・・・あの女の絶唱に匹敵しかねない・・・)

その時、体が凄まじい痛みを訴える。

ネフシュタンの鎧が再生している所からだ。

いや、そもそもな話、()()()()()()()()

(食い破られるまでに、カタをつけなければ・・・!)

そうしてクリスが見た先では、響は腕を降ろし、臨戦態勢を解いていた。

まさしく、戦う意思がない事を示すように。

一方のクローズも、同じようにその場で佇んでいた。

「お前・・・馬鹿にしてんのか!?」

そんな二人の行動を、クリスは怒る。

「アタシを・・・雪音クリスを!」

「やっと名乗ってくれたな」

その言葉を待ってたと言わんばかりにクローズは答える。

「ッ!?」

「そっか、クリスちゃんって言うんだ」

そして響からも想定外の言葉が出てくる。

「ねえクリスちゃん、こんな戦い、もうやめようよ。ノイズと違って私たちは言葉を交わす事が出来る。ちゃんと話をすれば、きっと分かりあえる筈!だって私たち、同じ人間だよ?」

それは、紛れもない響の本心だ。

「・・・むなくせんだよ・・・」

だけど、クリスはそれを否定する。

「嘘くせぇ・・・青臭え・・・!」

その言葉にさらに怒りを掻き立てられ、クリスは響に殴りかかる。

それを、クローズが防ぐ。

「龍我さん!」

「こんなに言ってもまだ分かんねえのかよ!」

「信じられるかよ!」

クリスの猛攻がクローズを襲う。それをクローズは後退しながら防ぐ。

激しく叩きつけられる猛攻を、クローズは冷静に対処していく。

「オラァ!」

「ぐっ!?」

横に蹴り飛ばされる。

その最中、クリスは、鎧が徐々に再生する様子を見る。

(くそ、これ以上は・・・)

「クリスちゃん・・・」

そこで響が、クリスに向かって手を伸ばす。

(まだ、そんな絵空事を・・・)

その響の行動に、クリスはついに――――

「―――吹っ飛べよ!」

 

―――奥の手を取り出した。

 

「―――装甲分解(アーマーパージ)だ!」

次の瞬間、周囲に鉛玉の入った手榴弾の如く、パージされた鎧が飛び散る。

「うおあ!?」

「きゃあ!?」

周囲の木々が吹っ飛んでいく最中、二人は聞いた。

 

「―――Killter Ichaival tron―――」

 

「―――ッ!?」

「これって・・・」

それは―――聖唱――――

 

 

―――ドクン―――

 

 

(なんだ・・・今のは・・・)

その歌が聞こえた瞬間、クローズの―――万丈の中で、何かが起きる。

 

「―――見せてやる、『イチイバル』の力だ」

 

クリスがそう答えた瞬間、クリスを、真っ赤な装甲が装着される。

それはまるで、鮮血のようであり、彼女の心を現しているのかもしれない。

「ぐぉ・・・ぁ・・・!?」

クローズは身の内で暴れ出す力の奔流を感じていた。

(なんだよこの力・・・制御出来ねえって訳じゃねえが、アイツの歌を聞いた途端、力が湧きあがってきやがった・・・!?)

その理由がさっぱり分からず、その間にもクリスは自らのアームドギアを展開していた。

「歌わせたな・・・」

「え?」

「アタシに歌を唄わせたな!」

クリスが響に向かって叫ぶ。

「教えてやる・・・アタシは歌が大っ嫌いだ!」

「歌が、嫌い・・・?」

クリスが構えるアームドギアは『ボウガン』

見ての通り、遠距離武器だ。

 

「――――傷ごとエグれば忘れられるってコトだろ?」

 

歌が、始まった瞬間、クリスのボウガンから一斉に複数の光の矢が射出される。

「うっわ・・・!?」

それを躱す為に走り出す響。

だが、クローズは動いていない。

「龍我さん!?」

それに驚く響。

そのまま矢の何本かが、クローズに殺到する―――かと思われた時、

「―――嘘つくんじゃねえよ」

次の瞬間、クローズは拳を振りぬいていた。

その拳が振るわれた瞬間、突風が舞い、矢はまとめて逸れてクローズに直撃せずに後方で炸裂する。

「な・・・!?」

「こんなにすごい歌唄えんのに歌が嫌いだぁ?冗談じゃねえ・・・!」

 

―――力が漲る。魂が、震える―――

 

突き出した拳を握りしめたまま、クローズはクリスに向かって咆える。

「こんなに力が漲る歌を、魂が震える歌を、嫌いだと?んな訳ねえ・・・」

「テメェ、何を言って・・・」

「こんなにも魂籠った歌を唄える奴が、歌を嫌いな訳がねえ!」

愛と平和の為にライダーシステムを創った戦兎のように、それを設計した戦兎の父親のように、創り上げたものには、そうあってほしいという願いがあった。魂が、込められていた。

彼女の歌は、それと同じくらい、魂がこもっていた。

 

例え、それに込められた想いが、何かに対する憎しみだったとしても。

 

「それを俺が証明してやる・・・!」

クローズが大地を踏みしめ、クリスを睨みつける。

「今の俺は、負ける気がしねぇ!」




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!

「筋肉をつけろ筋肉を!」
「じゃあ筋肉馬鹿!」

ぶつかり合うクローズとクリス。

「ふざけんなぁ!」

戦火の如き歌を唄い、銃を乱射するクリス。

「それがお前の戦う理由かよ!」

青い龍を轟かせて、拳を叩きつけるクローズ。

「もう貴方に用はないわ」

そして、その最中に姿を見せる、謎の女性は――――

次回『終わりの名を持つアンノウン』

「待てよ・・・フィーネ!」







ちょっとした余談。

響「いいですか?服は私がやるので、戦兎先生は雑誌とかを片付けてください」
戦「へーい」
~掃除中~
戦「ん?なんだこれ・・・こ、これは・・・!?」
翼「ッ!?そ、それだけは見るなぁぁああ!!」
戦「ぐぼあ!?」同じ場所にびんた炸裂。
響「え!?うわぁ!?・・・ん?何々?数量限定風鳴翼セクシーグラビア写真集・・・!?」
翼「わざわざ読み上げるな!」
響「あうち!?」松葉杖で小突かれる
戦「想像以上にエロかった・・・」
翼「言い残す事はそれだけか?」
戦「ごめんなさい許してください」
翼「誰が許すかぁ!」
戦「アー!」



一応有名人で女性なんだからこういうのもありえると思うんDA☆




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終わりの名を持つアンノウン

ク「仮面ライダークローズこと万丈龍我と、アタシ、シンフォギア『イチイバル』の装者である雪音クリスは、互いの意志のままにぶつかりあったのでした」
響「ちょっと待ってクリスちゃん!?なんで私が入ってないの!?」
ク「お前前回あんまり活躍してないだろ?」
響「酷い!?クリスちゃんに自己紹介したり龍我さんと一緒にクリスちゃん殴り飛ばしたのに!」
ク「それはアタシへの当てこすりのつもりか?」イチイバルを構える
響「あぁああ!?ごめんなさい!」
翼「落ち着け雪音。立花も悪気があっていった訳じゃないんだ。許してやってくれ」
ク「まあ先輩がそう言うなら・・・」
戦「そして!この天才物理学者にしt」
万「お前もそんなに活躍してないだろ」
戦「主役なのに!?」
未「まあ仕方がないですよ。私も登場ほんのちょっとだったんですから」
ク「まあいい。今回はついにフィーネがこいつらの前に姿を現すぞ」
戦「こんな所でネタバレすんじゃないよ!さあどうなる第十三話!」


「ウォリヤァァァアア!!」

雄叫びを上げて、クローズはクリスに向かって走る。

「馬鹿正直に突っ込んでくるとは馬鹿か!」

「馬鹿じゃねえ!筋肉をつけろ筋肉を!」

「じゃあ筋肉馬鹿!」

クリスの放つボウガンから矢が射出される。

それらが一気にクローズに殺到し、直撃する。だが、クローズは止まらない。

「な!?」

「オラァ!」

クローズの拳がクリスに叩きつけられる、かと思いきや紙一重で躱し、その脇腹にボウガンの一撃を叩き込む。

「ぐ・・・おぉぉお!」

しかし怯む事なくクローズはすかさず、蹴りを振るうも、それをバク転で躱される。

距離を取ったクリスは、すかさずボウガンを変形する。

 

その形は―――二門三連ガトリングが一つずつ。

 

「んなッ!?」

 

BILLION MAIDEN

 

放たれる弾丸の嵐。それをクローズは両腕を交差させる事で真っ向から受ける。

「ぐぅ・・・この程度で、俺が止まると思うなぁ!!」

またしてもクローズは弾丸の嵐を突っ切ってくる。

(無茶苦茶かよ!?)

明らかにネフシュタンの鎧の時よりも強く感じる。

振るわれる拳、顔面を狙ったその一撃を、クリスはどうにか躱し、だが、続く蹴りは避け切れず、蹴り飛ばされる。

「ぐぅ・・・!?」

一瞬、顔をしかめる。だが、すぐに気を持ち直したクリスは、飛んで追撃してくるクローズに腰部アーマーから展開した小型ミサイルを解き放つ――――

 

CUT IN CUT OUT

 

追尾性があるのか、小型ミサイルはクローズに殺到する。

「ぐぉぁぁああ!?」

ミサイルは全て直撃する。爆炎をまき散らし、直接喰らったクローズはそのまま落ちていく―――筈だった。

「ま・・・だ、まだぁぁぁああ!!」

「なっ!?」

なんと、ミサイルを喰らってもなお、クローズの勢いは衰える事なくクリスへと向かっていた。

「くそ!」

ガトリングガンをすぐさまハンドガンへと変形。クローズを迎え撃つ。

クローズの拳が顔面のすぐ横を掠め、その胸に拳銃の銃口を押し当て、トリガーを引く。

フルオートで射出される弾丸が何発もクローズの胸部に叩き込まれる。

しかし、それではクローズの装甲を貫く事は出来ず、すかさず放たれた蹴りが脇腹に直撃し、地面に向かって落とす。

「がっは・・・!?」

「おぉぉおお!!」

クローズが落下しながら、クリスを追撃する。だが、クリスはすでにその手にライフルを構えており、そこから放たれる必殺の一撃がクローズの腹を穿つ。

「があ!?」

直撃はやや右より、しかし直撃した事によって回転、吹き飛び、クリスから数メートル離れたところに落ちる。

「ぐ・・・くぅ・・・」

「こん・・・の・・・」

よろよろと立ち上がるクローズとクリス。

「なんだよ・・・なんなんだよさっきから!」

すかさずガトリングの乱射が始まる。

クローズはそれを横に走りながら躱す。

「くそ!」

それを銃口を向けながら追いかけ、そして小型ミサイルをまた放つ。

何度も炸裂する小型ミサイルを躱しながら、クローズは何かを投げる。

「ッ!?」

それをガトリングガンをかざす事で防ぐ。それは―――石だ。

「石・・・!?・・・はっ!?」

その一瞬の隙で、クローズはクリスに接近する。

飛び上がってボレーキックを放つも、しゃがんで躱される。しかし次の空中回転後ろ回し蹴りは当たり、吹き飛ばされる中、反撃に放ったガトリングがクローズに殺到する。

「ぐぅ・・・!?」

銃弾の雨を受け、膝をつくクローズ。

「ハア・・・ハア・・・中々やるじゃねえか・・・!」

(なんなんだよ、さっきから・・・!)

何故、この男はこんなにも楽しそうなのだろうか。

「もっと聞かせてくれよ。お前の歌をよ・・・」

(こいつまさか・・・アタシの歌で強く・・・!?)

まさか、と思う。

この歌に、そんな力があるとは思えない。

 

壊す事しかできない、自分の歌になんて。

 

「―――ッ!!」

ガトリングを乱射する。

それをクローズは掻い潜る。ある程度近付かれた所でガトリングからボウガンに変形。

拳が振るわれる。躱してボウガンを撃つ。今度は躱される。

蹴りが迫る。下がって躱す。続く二撃目をさらに下がって躱して見せる。

距離が、出来る。

「「―――ッ!!」」

クローズがボルテックレバーを回す。クリスが巨大ミサイルを二基展開する。

 

グレートドラゴニックフィニッシュ!』

 

MEGA DETH FUGA

 

クローズが拳に乗せて放ったクローズドラゴン・ブレイズがクリスに、クリスの放った巨大ミサイル二基がクローズに、衝突する事なく、互いに直撃する。

「「ぐあぁぁああぁあ!?」」

凄まじい爆発が巻き起こる。

「龍我さん・・・クリスちゃん・・・どうして・・・・」

そして、その激しさに響は立ち入れないでいた。

「あーあー、あの馬鹿。派手にやりまくりやがって」

「え・・・」

聞き覚えのある声がしたと思うと、そこにはホークガトリングフォームのビルドがいた。

「戦兎先生!」

「遅れて悪いな。話は風鳴さんから聞いてる。もう一つのシンフォギアだろ?」

「はい。イチイバルっていうらしいです」

「みたいだな」

ビルドは鷹の眼の能力で戦況を見ていた。

「あの、戦兎先生・・・」

「止めたい、だろ?大丈夫だ。あの馬鹿はそもそも倒すためだけに戦っている訳じゃない。万丈には万丈なりのやり方って奴があるんだよ」

その言葉の意味を、響は理解できず首を傾げる。

だが、その言葉の意味を響はすぐに理解する事になる。

 

互いの大技を喰らったクローズとクリスは、その身をボロボロにして向かい合っていた。

「くそ・・・なんなんだよ、さっきから・・・!」

こうもボロボロにされて、同じようにボロボロにされているクローズを見て、クリスは悪態を吐く。

「なんで・・・倒れないんだよ・・・!」

「なんで?決まってんだろ」

クローズは、よろよろとクリスに向かって指を差す。

「テメェを止めるためだよ」

「アタシを・・・止めるだと?」

「そうだ」

「ハッ!何を言うかと思えば、お前もアイツと同じ甘ちゃんかよ。いいか、アタシは大人が大っ嫌いだ!力を振りかざして弱者を蹴落とす!いつも自分の事しか考えてねえ!お前だってそうだ!お前だって自分の力振りかざして見せつけて、力を見せびらかしたいろくでなしなんだろ!?なあ!?」

クローズを責め立てるように、クリスは怒鳴り散らす。

だが、それにクローズは静かに答える。

「・・・確かに俺はろくでなしだ。八百長に手を出して、()()を死なせちまって、馬鹿で間抜けで、冤罪で捕まって・・・一人じゃなんにも出来ねえ馬鹿野郎だ。けどな、そんな俺でも、誰かの役に立ちたいって思うんだよ!」

拳を胸に当てて、クローズは叫ぶ。

「愛と平和を胸に生きて、俺は戦えねえ奴の為に戦う!そんでもってお前を止める!」

桐生戦兎という男を見てきた。その男が掲げる信念をいつも間近で見てきた。

だからこそ、彼も掲げる愛と平和。

 

何故なら、『仮面ライダー』とは、そのためにあるのだから。

 

「愛と平和だと・・・?」

その一方で、クリスは肩を震わせていた。

「ふざけんなぁ!」

「ッ!?」

クリスがガトリングを乱射する。

「何が愛だ!何が平和だ!そんな寝言は寝てから言えよ!そんな事言って、お前もまたアタシを独りにさせるんだろうがぁぁぁあ!」

ガトリングから大量の弾丸が吐き出され、それがクローズに殺到する。

さらにダメ押しで小型ミサイルを乱射。追尾性のあるそれらが一気にクローズを襲いまくる。

「ちくしょう!そんな事言う奴から死んでいくんだ!パパもママも死んじまうんだ!皆、皆アタシを独りにする・・・アタシから遠ざかっていく!だからもう、誰も、こんな思いをしないように、アタシは力を持つ奴全員ぶっ潰すんだぁぁあああ!!」

 

「―――それがお前の戦う理由かよ」

 

「ッ!?」

気付けば、クローズはクリスの背後に回り込んでいた。

「くっ―――!?」

すぐさま振り返ってガトリングで薙ぎ払おうとしたが、それよりも早くクローズがクリスのガトリングを持つ手を掴んで懐に踏み込んだ。

「くそ!離せよ・・・!」

「離さねえ」

「離せよ!」

()()()()()の手を離せるかよ!」

「―――ッ!?」

クローズが言った事で、クリスは、自分が泣いている事に気付いた。

頬を伝う、熱い液体。それが、彼女の興奮して赤く染まった白い肌を滴っていた。

「う・・・うるさい!」

クリスは、振り払うように腕に力を込める。だが、クローズの力が予想以上に強く、動かす事は出来ない。

(なんなんだよ・・・なんなんだよこいつは・・・!)

何故ここまで踏み込んでくる。何故ここまで近づいてくる。何故ここまで、全力でぶつかってくる。

分からない分からない。

この男の行動全てが分からない。

「なんなんだよ、お前は―――」

「俺の名前は万丈龍我!そして、愛と平和の戦う『仮面ライダー』だ!二度も言わせんな!」

そう名乗るクローズ。その迫力に、クリスは思わず動きを止めてしまう。

複眼越しから、彼の真っ直ぐな視線を感じる。

その想いを感じてしまう。

そのまま硬直し、二人の視線が交じり合う。

 

その時―――

 

「避けてください!」

「ッ!?」

突如聞こえた響の声に、クローズは慌ててクリスを抱えて前に飛ぶ。

次の瞬間、先ほどまで二人がいた場所に飛行型ノイズが落下してきて、その地面を抉り飛ばした。

「なんだ!?」

「あれは・・・ノイズ・・・?」

気付けば、空中には大量のノイズが空を埋め尽くすほどに出現していた。

「んだよあの数!?」

「万丈!そいつは任せた!」

クリスを抱えるクローズの前に、ビルドと響が立つ。

「あの数、一体どこから・・・・」

響がそう呟いた時――――

 

「――――命じた事も出来ないなんて、貴方はどこまで私を失望させるのかしら?」

 

どこからか聞こえた声。それに、彼らは一層警戒を強める。

「あそこだ!」

ビルドが見つけた先に、それはいた。

海が見える海岸の手摺。そこに、一人、黒いコートと蝶の飾りがついた帽子を被り、金色の長髪を靡かせる女性がいた。

その手には、以前クリスが持っていた杖『ソロモンの杖』が握られていた。

「フィーネ・・・」

クリスが、その女性の名を呼ぶ。

「フィーネ?なんじゃそりゃ?」

「フィーネ・・・確か、音楽でいう所の終止記号の名前だったような・・・」

「フィーネ・・・終わり・・・」

四人の視線が、女性―――フィーネに向けられる。

だが、クリスは一度クローズを見ると、その腕から逃れ、フィーネに向かって叫ぶ。

「こんな奴がいなくたって、戦争の火種くらいアタシ一人で消してやる!そうすれば、アンタの言うように、人は呪いから解放されて、バラバラになった世界は元に戻るんだろ!?」

「呪い?なんだそれは・・・」

物理学者であるビルド―――戦兎に、呪いなどのオカルトはよくわからない。

もちろん、クローズと響にも分からない。

「――――はあ」

ふと、フィーネが溜息を零した。

「もう貴方に用はないわ」

「え・・・」

その言葉に、クリスは言葉を失う。

「な、なんだよそれ・・・!?」

しかしフィーネは答える事なく、片手を掲げた。

すると、周囲に散らばったネフシュタンの鎧が粒子化、フィーネの掲げられた手に集まっていき、やがて消えていく。

そして、杖を掲げると、上空のノイズが一斉に襲い掛かってくる。

「うわ!?」

「チッ!」

響は慌てて避け、ビルドはホークガトリンガーで応戦。

「待てよ・・・フィーネ!」

「あ、おい!」

その間に、クリスが走り出す。

その後を、クローズが追いかける。

「あ、クリスちゃ・・・」

「アイツの事は万丈に任せて、とにかく俺たちはノイズを片付けるぞ!」

ビルドがホークガトリンガーを乱射しながら響にそう叫ぶ。

「わ、分かりました!」

響もビルドの言葉に頷くも、一度クリスとクローズが行ってしまった方を見る。

(クリスちゃんの事、よろしくお願いします!)

「あ、馬鹿!余所見すんな!」

「え・・・」

だが、見てしまった事が命取りだった。

飛翔型がその身を槍状にして襲い掛かってきたのだ。

その距離と態勢では、迎撃するのは難しい。

(しまった・・・!?)

ノイズが、響に直撃する―――粉塵が巻き起こり、凄まじい衝撃が迸る。

「響ぃ!」

ビルドが叫ぶ。

舞い上がる粉塵。その中で、見たものは―――何かの壁だった。

「壁・・・?」

「―――剣だ」

「ッ!?」

上から声が聞こえ、見上げれば、そこには、巨大な剣の上に佇む風鳴翼の姿があった。

「おまっ―――遅いんだよ!」

「それについては申し訳ない。ただ抜け出すのに時間がかかってしまった」

謝罪する翼。

「ったく、無理すんじゃねーぞ」

「分かっている」

「翼さん・・・」

「気付いたか、立花。だが私も十全ではない。―――力を貸してほしい」

翼から、初めて頼られる。それが、響にとってどれだけ嬉しい事か。

「はい!」

響からの心地良い返事をもらった所で、翼はあの二人が走っていった方を見る。

(あの少女、イチイバルの事もあるが、今はノイズの殲滅が優先・・・そっちは任せたぞ、万丈)

すかさずノイズが翼に向かって突貫。しかし、翼は巨大な剣から飛びなり足のブレードを使ってそのノイズらを切り刻む。

 

「―――去りなさい。無想に猛る炎」

 

次の瞬間、空から無数の剣が降り注ぎ、それよりも下にいたノイズらを一掃する。

 

千ノ落涙

 

落下する翼と入れ替わるようにビルドが飛び立ち、周囲に球状のフィールドを展開する。

 

ONE HUNDRED! FULL BULLET!

 

そして空間内に入ったノイズに向かって銃弾を乱射。一匹残らず、百発の弾丸の元に一層する。

「やぁあ!」

一方、地面に振ってきたノイズに対して、響は真正面から迎え撃っていた。

腕のガジェットをパイルバンカーのように打ち込む事によって拳の威力を高め、敵を粉砕していく。

その威力は、まさしく一撃必殺、雷を打ち込むが如くの威力であり、初めてギアを纏ったときとは見間違えるような動きでどんどんノイズを粉砕していく。

「良い動きだ。見間違えるようだぞ」

「ありがとうございます!風鳴師匠のお陰です!」

「おじさまが鍛えたのなら納得だ!」

まだぎこちない連携だが、以前より遥かに噛み合った動きで翼と響はノイズを倒していく。

「勝利の法則は、決まった!」

ビルドがビルドドライバーのボルテックレバーを回す。

 

『Ready Go!』

 

ボルテックフィニッシュ!』

 

「ハァァアアア!!!」

空中で加速したビルドが放つ飛び蹴り。それは一条の槍となりて、直線状のノイズを全て殲滅する。

「翼さん!」

「ッ!」

翼の背後からノイズが襲い掛かる。

その攻撃を翼は飛んで躱し、響の上空を飛び越えた時、

「立花!」

「っ!はい!」

開いたガジェットをさらに引っ張り、肘にまで伸ばすと、響は脚部のパワージャッキを伸ばし、それを地面に叩きつける事で加速、拳を引き絞り、そのノイズに向かって渾身の一撃を叩き込む。

その一撃を叩き込まれたノイズはたちまち木端微塵になり、炭となって消える。

『全てのノイズの消失を確認しました』

「万丈たちの行方は?」

『すみません。先ほどロストしてしまいました・・・』

「いいや、大丈夫。あの馬鹿の事だ」

友里の申し訳なさそうな声にそう返しつつ、ビルドは、クローズが置いていったであろう通信機を拾う。

「それなりに考えて行動してるはずだ」

戦いが終わり、残ったのはこの森の惨状。

そして、万丈の通信機。

(あの少女の事は万丈に任せるとして・・・俺は俺で、やれる事をやっておくか・・・)

視界に映る、響と翼。

駆け寄る響と笑いかける翼の二人に、仮面の下で顔を()()()()としつつ、戦兎はあのフィーネという女性の事を考える。

(あの女、どこかで・・・)

言いようのない既視感(デジャヴ)を感じながら、ビルドは、思考を巡らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――イチイバル・・・北欧の神ウルの弓にして、第二号聖遺物、か・・・」

資料を読み漁り、戦兎はそう呟く。

「あの少女・・・雪音クリス、だっけ?一体どんな奴なんだよ?」

指令室にて、戦兎はそう尋ねる。

「雪音クリス・・・二年前行方知れずとなった、ギア装着候補の一人だ。そして、バルベルデ共和国にて、内戦で両親を殺害された戦争孤児だ」

「戦争・・・」

その言葉に、戦兎は苦い顔をする。

かつて、戦争の火種となったライダーシステムを作った本人であるがゆえに、戦争という言葉は戦兎の心に強く響く。

「まさか、イチイバルまで敵の手に・・・」

「二年前か・・・ライブ会場の惨劇といい、なんで二年前の物が出てくるんだよ・・・ああ、最っ悪だ」

「何かの因縁か、誰かの策略かは分からんが、とにかく放っておく事は出来ない」

「しかし、聖遺物を力に変えて戦う事において、我々の優位性は完全に失われてしまいました」

「敵の正体・・・フィーネの目的は・・・」

「その手の資料があればな。当然ネットには出てねえと思うし」

「そういえば龍我君、通信機置いてあの少女の事を追いかけてるんでしょうけど、大丈夫かな・・・」

「あの馬鹿なら何の問題もねえよ」

「だといいのだけれど・・・」

そこで、扉が開いて響と翼のメディカルチェックをしていた了子が戻ってくる。

「深刻になるのは分かるけど、シンフォギアの装者は二人とも健在、さらに仮面ライダーもいるんだから、頭を抱えるにはまだ早すぎるわよ」

そう言う通り、響も翼、戦兎も無事だ。行方が分からなくなった万丈は怪我をしていてもあの程度でくたばるような根性なしではない。

だから、そこまで心配する事はでない。心配事があるとすれば、あの少女の事だろう。

「翼、全く、無茶しやがって」

弦十郎の言い分は、まだ入院している必要のある翼に対する咎だろう。

「独断については謝ります。ですが、仲間の危機に伏せっている事など出来ませんでした。立花は未熟な戦士です。半人前ではありますが、戦士に相違ないと、確信しています」

「翼さん・・・」

思ってもみなかった翼からの言葉に、響は驚く。

「完璧には程遠いが、立花の援護ぐらいは出来るかもな」

体の調子を確かめつつ、翼は響にそう言う。

「・・・私、頑張ります!」

そして期待に応えるという意気込みをするかのように、響はそう返した。

「響君のメディカルチェックも気になる所だが・・・」

「ご飯を食べて、ぐっすり眠れば、元気回復です!」

「どんな理論だそりゃ・・・」

呆れる戦兎。だが、その思考は別の事に回っていた。

(雪音クリスのシンフォギア・・・二年前のライブ・・・ライブの目的は、確かネフシュタンの鎧の起動実験であり、その時にイチイバルも盗まれた・・・その事は、おそらく日本政府でも一部の人間しかしらず、アメリカ政府も知る由もない筈だ・・・だとすれば、この一連の事件の犯人はおそらく――――)

「にょわぁぁああなんて事をぉぉおお!?」

突然、響が悲鳴を上げるものだから強制的に思考が中断させられる。

「なんだ!?」

「いや、単純に櫻井女史が立花に悪戯しただけだ。気にするな」

「あ、そう・・・」

(その程度の事で思考中断させられたのか俺はぁぁあ!?)

まさかの展開にダメージを受ける戦兎。

「響ちゃんの心臓にあるガングニールの破片は、前より体組織と融合しているみたいなの。驚異的なエネルギーと回復力は、そのせいかもね」

「融合・・・ですか・・・?」

「「―――!」」

その発言で、戦兎と翼は同時に了子を見た。

(融合・・・?それってかなりやばいんじゃないのか・・・なのになんでコイツはこんな平然としている?)

実際に経験した事はない。だが、人体において本来ありえないものとの融合は、かなり危険の筈。

それが、果たして未知の産物である聖遺物と融合して、果たして無事でいられるのだろうか。

(了子さん・・・貴方は一体・・・?)

戦兎は、了子の事を、じっと見ていた。

 

 

 

 

 

その一方で、

「ハア・・・ハア・・・」

クリスは、走っていた。逃げる為に、あの、化け物から逃げる為。

「くそ!なんだってこんな事に・・・!」

どれだけ走っても走っても追いかけてくる。まるで体力が無尽蔵であるかのように。

ギアは解除され、あとは自らの力で走るしかない。

走って逃げて逃げ続けて、それで曲がる路地。すぐに傍の物陰に隠れて、追手をやり過ごそうとする。

音が聞こえる。その音が一度止まり、また動き出すような音が聞こえ、遠ざかっていく。

「・・・・・ほっ」

どうやら行ったようだ。

「やっと巻いた・・・」

疲れを知らないのかという程で追いかけてくるものだからすっかり疲れてしまった。

だが、ここで立ち止まる訳にはいかない。

「すぐに、フィーネの所に行かねえと・・・」

「キュイ!」

「うわぁ!?」

目の前に、ソイツはいた。

小さくて青い、四角い胴体を持った小さな竜。

自らの主人の、自分の居場所を知らせる化け物。

「くそ!なんなんだよぉ!」

その小さな化け物から逃げるように走り出したクリスだが、

「やっと捕まえた」

「ッ!?」

駆け抜けようとした途端に何者かに捕まる。

その何者かとは言うまでもない。

 

―――万丈だ。

 

「しばらくドラゴンが追いかけてくれっから、飯買ってきておいてやったぞ」

「キュルッキュイ!」

「は、はあ!?」

こちらが必至になって逃げている間に、そんな悠長な事をやっていたのか。そしてなぜかドラゴンは誇らし気だ。

「お前、どこまでアタシの事を馬鹿にするつもりだ!?」

「馬鹿じゃねえよ筋肉をつけろ」

「お前の事じゃねえよ!?」

ダメだ。こいつはすさまじいまでに頭が悪い。

そんな事を考えていると、目の前に何かが突き出される。

 

あんパンだ。

 

「・・・」

「腹減ってるだろ?」

「ば、馬鹿にすん――――」

 

ぐぎゅるるる・・・・

 

「・・・」

「ほら見ろ。食っとけよ」

「キューイ!」

バナナを食べながら、万丈はクリスにあんパンを押し付ける。

だが、クリスは尚も万丈を睨みつける。

「別に毒とか入ってねーぞ?すぐそこのコンビニで買ってきたんだからよ」

「信用できるか!敵の与える食いもんなんて!」

走り出すクリス。

「あ、おい!」

その後を万丈はバナナを食いながら走り出す。

(くそ!なんで振り切れないんだ!)

万丈はなおもバナナを食いながら追いかけてくる。バナナを食いながらである。

だというのスピードが一切衰える事なく追いかけてくる。

「ちくしょぉぉぉおお!!ついてくんな変態ー!」

「変態じゃねえよ!?何言ってんだ!?」

幸か不幸か、おまわりさんはこなかった。

 

 

 

「ハア・・・ハア・・・」

「大丈夫か?牛乳飲むか?飲みかけだけど」

「・・・!」

それを聞いてすぐさま万丈から牛乳を奪い取って飲み干す。

「お、なんだ飲みたかったんじゃねえか」

「勘違いすんな。これに毒が入ってないから飲んだだけだ」

「コンビニで買ってきたもんにどうやって毒入れんだよ・・・」

もちろん、万丈にそんな頭はないのだが、それをクリスが知る由もないのは当然の事である。

それと、さっきからクリスの頭の上を飛び回っているクローズドラゴンはあの赤色の姿から青色に戻っている。

(どーなってんだこりゃ・・・)

以前までは普通のクローズで戦っていた。だがそれでは勝てないと思い、グレートクローズでクリスと戦ったわけだが、どういう訳か変身を解除した途端、金色だったグレートドラゴンエボルボトルが黒く変色してしまったのだ。

まるで力を失ったかのように。

とにかく、これでグレートへの変身は出来なくなった。

今後はいつも通り、通常のクローズで戦う事になるだろう。

「・・・ってか、お前食いかけなら食べるのかよ」

「毒が入ってるかもしれないからな。もしくは睡眠薬でアタシを監禁するかもしれねえし」

「しねーよそんな事。てか、食いかけ食うってハイエナか」

「アタシは死肉を漁ってんじゃねーよ!?」

万丈は仕方がなくあんパンを一つ開けて人齧りしてからクリスに渡す。

それを奪い取るようにクリスはそれを受け取り、一気に口に頬張る。

「言っておくが、礼は言わねえからな」

「分かってるっつーのんな事。もともと礼言われる為に買ってきたんじゃないんだからよ」

「はっ!どーだか」

鼻で笑うクリス。未だ、万丈に対する信頼はないようだ。

ふと、そこでどこからともなく泣き声が聞こえた。

「ん?」

「なんだ?」

そちらに向かってみると、そこにはベンチに腰掛けて泣く女の子と、そのすぐ傍には男の子が困っているような様子でそこに立っていた。

「泣くなよ!泣いたってどうしようもないんだぞ」

「だって・・・だってぇ・・・!」

それを見て二人が思った事はこうだ。

「おいこら、弱いものを虐めるな」

「何してんだよ」

そう言って二人は彼らに近付く。

「虐めてなんかないよ。妹が・・・」

「うわぁあん!」

声を泣き出す少女。それを見たクリスは腕を振り上げる。

「虐めるなって言ってんだろ!」

「うわ!?」

思わず頭を庇う少年。その腕が振り下ろされる、その前に、何故か少女―――妹が兄とクリスの間に立る。

「おにいちゃんをいじめるな!」

「はあ・・・?」

思わず首を傾げるクリス。

「お前が兄ちゃんに虐められてたんじゃねえのか?」

「違う!」

万丈が聞けばそう言い返してくる。訳が分からず首を傾げていると、兄が説明する。

「父ちゃんがいなくなったんだ。一緒に探してたんだけど、妹がもう歩けないって言ったからそれで・・・」

「迷子かよ・・・だったらハナッからそう言えよな」

「いやお前が早とちりしたんだろ?」

「自分の事を棚に上げて言うな!」

ごもっともである。

「だって・・・だってぇ・・・」

さらにぐずる少女。

「おい、こら泣くなって!」

「おい待て、そこまで言ったら―――」

次の瞬間にはすでに兄の方が妹とクリスの間に入ってきていた。

「妹を泣かせたな」

「あーあー」

「うるっさい!あーもーめんどくせえ!一緒に探してやるから大人しくしやがれ!」

そうしてクリスと万丈による小さな兄妹の親探しが始まる事になった。

 

 

 

 

 

色とりどりの光が輝く街中を歩く万丈とクリス、そして迷子の兄妹。

妹の方は万丈に肩車をしてもらっており、これなら高い視線から親を探しやすいだろう。が、クローズドラゴンに夢中でその手段はすでにアウトになっている。だってドラゴンに視線が行ってるから。

馬鹿ながらに良い発想である。

「~♪」

そんな中で、クリスは一人鼻歌を歌っていた。

「なんだ。歌好きなんじゃねえか」

「は?」

いきなり万丈からそんな風に言われる。

「何言ってんだ。歌なんて大っ嫌いだ。知ってんだろ」

「歩きながら歌を唄ってる奴が、なんで嫌いなんて言えるんだよ」

「うるせえ・・・ママがいつも歌ってたから、それを覚えてただけだ」

「なんだ?お前の母ちゃん歌手かなんかだったのか?」

「まあ、そんな所だ・・・馬鹿やらかして死んじまったがな・・・」

「馬鹿・・・?」

その意味が分からずにいると、

「あ、父ちゃん!」

「ん?」

「あ!」

どうやら、父親が見つかったようであり、交番から出てきた男に駆け寄る。

万丈は妹を降ろし、父親の元に向かわせる。

「お前たち、どこに行ってたんだ?」

「おねえちゃんとおにいちゃんがいっしょにまいごになってくれた!」

「おい」

「違うだろ。一緒に父ちゃんを探してくれたんだ」

「すみません。ご迷惑をおかけしました」

父親が頭を下げて謝罪する。

「いや、なりゆきだからそんな・・・」

「人を助けんのは当たり前の事だ」

その謝罪にそう返すクリスと万丈。

「ほら、二人にお礼は言ったのか?」

「「ありがとう」」

礼儀正しく、頭を下げる兄妹。

「仲良いんだな・・・そうだ。どうすればそんなに仲良くなれんのか教えてくれよ」

そう尋ねると、妹は兄の腕に抱き着き、兄が代わりに答える。

「そんなの分からないよ。いつも喧嘩しちゃうし」

「喧嘩しちゃうけど、仲直りするから仲良し!」

その返事に、クリスはただ黙る。

「理屈じゃねえんだよそういうのは」

隣の万丈がクリスにそういう。

「俺だって戦兎と喧嘩する事はある。だけど、その度に互いの事が知れて、んでもって喧嘩する前より信頼できるようになる・・・あー、なんというか、まあそんなもんだ」

「なんじゃそりゃ・・・馬鹿かお前は」

「馬鹿じゃねえよ筋肉つけろ筋肉を」

「そこじゃないだろ・・・・」

論点が違う万丈の返しに、クリスはやはり呆れる。

「じゃあねー!」

あの後、あの兄妹と別れて、またあの公園に戻る。

「一体いつまでついてくる気だよ・・・」

「実を言うと帰り方が分かんねえだわ」

「キュルッキュ!」

「はあ!?」

ハッハッハ、と笑う万丈に今度こそ驚くクリス。

「お前・・・通信機とかそういうのあるだろ?」

「いやー実は携帯とかその手の奴全部置いて来てさ」

「なんでだよ!?」

本当に馬鹿なのか。

「どうしてそういう大事なもん全部おいてこれるんだよ!?」

「あれがあったらお前の居場所すぐに分かっちまうだろ?」

「はあ?何言ってんだお前・・・」

「なんか良くは分からねえけどよ、お前にはやりたい事があって、んでもって今捕まるのは都合が悪い・・・違うか?」

鋭い指摘。万丈曰くの第六感か。

「それでお前に一体なんのメリットがあるんだよ?」

「メリット?んなもん考えてねえよ」

「はあ!?」

ばっさりという万丈に、クリスは開いた口が塞がらない。

「ななな何も考えてねえてお前馬鹿なのか!?やっぱ馬鹿なのか!?」

「そんな馬鹿馬鹿言うな!」

「いーや馬鹿だ!お前大人の癖に天性の大馬鹿野郎だ!」

よもやこの様な人間がいるだなんて。

自分が今まで見てきた人間の常識が覆るような男がこの世に存在するだなんて。

(いや、これも演技かもしれねえ。アタシの油断を誘って、体よくは裏切って・・・)

「そういやお前なんでボトルなんて狙ってんだよ?」

「誰が教えるか!いいか?アタシとお前は敵同士だ!そんなアタシたちが仲良く情報交換なんてするか?しないだろ?敵だった奴が味方になるだなんてありえねえんだよ」

「いやありえるぞ。実際そうだったし」

「はあ!?何言って・・・」

「いやー、あの時は大変だった。街は壊れるわ敵攻め込んでくるわでさー・・・」

ふと、万丈の顔に影が差す。

「・・・ほんと、色々あった」

「・・・」

その雰囲気に、クリスは、なんとも言えなくなる。

(こいつ・・・何かあったのか・・・?)

憂いのある、万丈の顔に、クリスは自分に近いものを感じた。

「・・・あー、もう!」

ふと、クリスは苛立ちを抑えるように頭を掻き出す。

「しょうがねえ。ついてくるなら勝手にしろ!」

「お、いいのか?」

「お前がどこまでも付いてきそうだからな・・・だけど、付いてきて後悔するんじゃねえぞ」

「はっ、逃げて後悔するより立ち向かって後悔した方が何倍もマシだ」

「そうかよ・・・」

「そんじゃ、改めてよろしくな、()()()

そう言って、万丈は手を差し出す。

「・・・よろしくってどういう事だよ?」

「え?今のそういう意味じゃねえの?」

「どこをどうとったらそうなるんだ!?」

ダメだ。この馬鹿さ加減にはいい加減なれるしかない。

クリスはそう諦めて、踵を返して歩き出した。

その後を、万丈は追いかけていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――装着した適合者の身体機能を引き上げると同時に、体表面をバリアコーティングする事で、ノイズの侵食を保護する機能、更には、別世界にまたがったノイズの在り方を、インパクトによる固有振動にて調律、強制的にこちら側の世界の物理法則下に固着させ、位相差障壁を無効化する力こそ、シンフォギアの特性である。同時に、それが人とシンフォギアの限界であった。

 

シンフォギアから解放されるエネルギーの負荷は、容赦なく装者を蝕み、傷つけていく。

 

その最たるものが、『絶唱』―――人とシンフォギアを構成する聖遺物とに、隔たりがある限り、負荷の軽減はおよそ見込めるものではない。

 

それは、了子自身が定説した櫻井理論でも結論付けられている。

 

 

そんな了子のいる部屋には、どういう訳か、響の映る写真ばかりが飾られていた。

 

 

―――唯一理を覆る可能性があるならば、それは立花響。人と聖遺物の融合体第一号。

 

 

天羽奏と風鳴翼のライブ形式を模した起動実験で、オーディエンスから引き出され、さらに引き上げられたゲインにより、ネフシュタンの起動は一応の成功を収めたのだが、立花響は、それに相当する完全聖遺物『デュランダル』をただ一人の力で起動させる事に成功する―――

 

 

そんな了子が使っているマグカップには、紫の蝶の絵柄―――

 

 

―――人と聖遺物が一つになる事で、さらなるパラダイムシフトが引き起こされようとしているのは、疑うべくもないだろう。

人が負荷なく絶唱を口にし、聖遺物に秘められた力を自在に使いこなす事が出来るのであれば、それはあるけき過去に施されし、()()()()()()()()()()から解き放たれた証。

 

真なる言の葉で語り合い、()()()()()()が自らの手で未来を築く時代の到来。

 

過去からの超越――――だが――――

 

 

ただし、その部屋には、二枚、響ではない人物の写真があった。

 

 

―――突如現れた、聖遺物以外の方法でノイズと戦う者たち、桐生戦兎と万丈龍我。この私ですら知らない超技術をもって、本来触れられない筈のノイズに触れ、そして打ち倒す、シンフォギアに匹敵する力を持つ『ライダーシステム』を持つ者たち―――

 

それを思うと、了子は、握った拳に力を込めた。

 

―――聖遺物ではない未知の物質、()()()の知らないものを駆使して戦う仮面の戦士。

完全なるイレギュラー。

まるで、()()()からやってきた、異界の戦士。

果たして彼らはどこから現れたのか――――

 

「こことは、違う世界からやってきた・・・もしくは、()()()()()か・・・」

 

どちらにしろ、不確定要素である事には変わりはない。

あのボトルの使い方は、彼らの専売特許。しかし、ボトルさえ奪えば――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――二課にある、戦兎の自室―――の前を偶然通りかかった翼は、ふと戦兎の部屋の前で立ち止まった。

(そういえば、雪音を見て何かのアイディアが浮かんだと言っていたが・・・)

一体なんだろう。と思っていたら、

「完っ成だ!」

「うわ!?」

突然の叫び声が聞こえ、翼は思わず驚く。

「か、完成・・・?」

恐る恐る扉を開けてみると、そこには、丁度椅子から立ち上がった戦兎の姿が見えた。

その頭からは、まるで兎の耳のようなくせ毛が飛び出していた。

「クリスの変形する銃器を見て思いついた武器・・・その名も『ブラストモービル』!」

「ぶ、ブラストモービル・・・?」

そう声を漏らした瞬間、戦兎の眼が翼に向いてギラリと光る。

「ひっ」

その眼光は百戦錬磨の翼すらも竦み上げさせる程の威力で、さらには一瞬にして翼との距離を詰め、眼前で矢継ぎ早に赤い長方形の装置―――ブラストモービルについて説明しだす。

ちなみに翼の背後はすでに閉じた扉で塞がっている為逃げられない。

「このブラストモービルの凄い所はな、変形機構『マルチギミックサック』による変形でな、拳銃だけどとんでもない威力の弾丸を連射出来る『ブラストシューター』、グリップ部分を倒して銃口とは反対側からビームソードを出す『ブラストブレード』、二つくっつけて双身刀にする『ブラストデュアルソード』の三段階!凄いでしょ?最っ高でしょ?天っ才でしょ?」

「そ、そうか、それは凄いな・・・アハハ・・・」

もはや狂気染みた戦兎の説明に翼はどうにかしてこの状況から逃れる方法を模索していた。

だが、翼は知らない。

 

戦兎の本当の恐ろしさは、これからだと言う事を。

 

「試したい・・・」

「は?」

折りたたんでいたグリップを起こす戦兎。翼は一瞬何を言っているのか分からなかったが、戦兎が徐々に翼に銃口を向けようとしている事で気が付く。

「まて・・・・待て待て待て!?いくら出来たばっかで気持ちが昂るのは分かるがいくらなんでも人に向ける奴があるか!?」

「科学に犠牲はつきものだ・・・」

「愛と平和を愛する科学者とは思えない発言!?い、いや、待って!お願い!お願いだからそれを向けないで!シンフォギアも纏ってないから!」

恐ろしい笑みを浮かべて涙目の翼に銃口を向ける戦兎。

だが、すぐに笑みを引っ込めて銃口を上に挙げた。

「ま、これを使うにはそれに見合うボトルの成分が必要なんだけどな」

「ほっ・・・」

安堵する翼。

「ボトルの成分というと、何が必要なんだ?」

「ドラゴンともう一つ」

「万丈のボトルと・・・もう一つ?なんだそれは?」

「いやー実は後先考えずに作っちまって、一つはドラゴンなのは分かってんだけど、問題はもう一つ。ベストマッチであるロックフルボトルじゃない何かのボトルが必要なんだが、今持ち合わせてるボトルのどれにも当てはまらないんだよな・・・」

「どれにも当てはまらない?それじゃあどうするんだ?」

「ん・・・諦めるかな?」

「おい」

思わず叩いてツッコミを入れてしまうが、これではせっかくの発明品もお蔵入りだ。

(どうにかならないだろうか・・・・)

隣で悩んでいる戦兎と一緒に考える翼。

だが、考えても思いつく訳がなく、ただ時間が過ぎていくだけだった。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!

フィーネの屋敷にどうにか戻るクリス。

「毛ほどの役に立たないなんて」

しかしそこでフィーネに斬り捨てられる。

「テメェぇぇええ!!!」

そこへ、クローズが乱入する。

「ダメですね・・・」

その一方で、響は未来とすれ違いを起こしていた。

「今のままでもいいんじゃないかな?」

そして鳴り響く警報。

その戦いの最中で、黒くなったクローズのボトルが輝き出す。

次回『激唱!紅のクローズドラゴン!』

激唱戦場!』

「負ける気がしねぇ・・・!」


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激唱!紅のクローズドラゴン!

翼「この間は酷い目にあった・・・」
響「大丈夫ですか翼さん?」
戦「タメシタイ・・・タメシタイ・・・」
ク「お、おいどうしたんだこの馬鹿は・・・なんでこんなゾンビみてえな顔でいるんだよ!?」
万「ああ、新しい発明品が出来たからそれを今すぐにでも試したいんだろ。いつもの事だ」
響「いつもの事なんですか!?」
了「流石にこれはないわね・・・・」
弦「何かあったら俺が対処しよう」
万「任せた」
戦「という訳で、この本によればごく普通の高校生の立花響は、シンフォギア『ガングニール』を纏い、ノイズと戦う運命にあ・・・おい待てこれ別の時空の台本じゃねえか!?」
友「あ、すみませんそれ私が書いた台本です」
戦「アンタかよ!?ていうかそんな時間あったのかよ!?」
友「実は私もちょっとやってみたくて・・・」
戦「本当の台本はどこだよ・・・」
響「あ、それならさっきしr・・・こ、工具ちゃんと農具ちゃんがシュレッダーにかけてたましたけど・・・」
戦「まだ根に持ってんのかよめんどくせえ・・・」
ク「はあ・・・今回は龍我の新フォーム登場回だ」
戦「待てクリス。まだ始めるには早い。なんかこう・・・インパクトというか・・・」
未「えーそれなら私が一発芸を・・・オッスわr」
一同『それは言わせねえよ!?』
未「(´・ω・`)」
響「で、では、第十四話をどうぞ!」


「―――《確かにこちらからの依頼ではあるけれど、仕事が杜撰(ずさん)すぎると言っているの」

かつての豪邸にて、フィーネは電話越しの相手にそう言う。

「《足がつけばこちらの身動きが取れなくなるわ。まさか、それもあなたたちの思惑というのなら・・・》」

『《神ならざる者が全てに干渉るうなど不可能。お前自身が一番分かっているのではないか》」

電話越しに、そのような返事が返ってきた直後、大部屋の扉が勢いよく開く。

「アタシが用済みってなんだよ!?」

クリスだ。

「もういらないって事かよ!?あんたも物のように扱うのかよ!」

そんなクリスをフィーネは冷めた目で見ていた。

「頭の中ぐちゃぐちゃだ・・・何が正しくて何が間違ってるのか分かんねえんだよ!」

それとフィーネは、受話器を電話に置き、通話を切る。

「・・・どーして誰も、私の思い通りに動いてくれないのかしら?」

振り向き様に、フィーネはソロモンの杖を発動。ノイズを呼び出す。

その行為に、クリスは狼狽する。

「潮時かしら?」

「え・・・」

「そうね。貴方のやり方じゃ、争いを無くす事なんて出来やしないわ。せいぜい一つ潰して、新たな火種を二つにばら撒く事くらいかしら?」

「アンタが言ったんじゃないか・・・!」

クリスは、泣きそうな声でフィーネに言う。

「痛みもギアも、アンタがアタシにくれたものでだけが―――」

「私の与えたシンフォギアを纏いながらも、毛ほどの役に立たないなんて」

それは、クリスの全てを否定する言葉。

「そろそろ幕を引きましょっか」

次の瞬間――――扉のすぐ横の壁が吹き飛ぶ。

「テメェぇぇええ!!!」

蒼い装甲の仮面ライダー、クローズだ。

クローズが凄まじい勢いでノイズを消し飛ばし、フィーネに突っ込む。

「お前!?」

「ウオリャァァアア!!!」

クローズの渾身の拳の一撃がフィーネに叩きつけられる。

しかし、その一撃はフィーネに触れる寸前で止められる。

障壁だ。

「これが、どうしたぁあ!!」

もう一方の拳を振り上げて、その障壁を叩き割ろうとする。

「うるさいハエが紛れ込んでいたものね・・・まあどちらにしろ、私の敵ではないが」

「ッ!?」

次の瞬間、クローズの腹に、()()()が叩きつけられていた。

「がっ―――!?」

上空に弾き飛ばされたクローズは、そのままクリスの元まで落ちる。

「おい・・・!」

「ぐ・・・今のは・・・」

気付いた時には、フィーネは、黄金の鎧を身に纏っていた。

「私も、この鎧も永遠に不滅・・・未来は永遠に続いていくのよ」

それはクリスが纏っていたものと細部は違うが、間違いなく『ネフシュタンの鎧』。

青銅の蛇の名を冠する、完全聖遺物。

「『カ・ディンギル』は完成しているも同然・・・もう貴方の力に固執する理由はないわ」

「カ・ディンギル・・・?そいつは・・・」

聞き慣れない言葉。

「カ・ディンギルだか、カードローンだか知らないが、どちらにしろテメエはぶっ倒す!」

クローズは懐から『クローズマグマナックル』を取り出し、すかさずドラゴンフルボトルを装填してドラゴニックイグナイターを長押しする。

 

だが、何も起きなかった。

 

「・・・あれ?」

もう二、三回バンバンと叩いてみるが、やはり何も起きない。

「あれ?あれ?なんでだ!?」

「おい!?どうした!?」

うんともすんとも言わないマグマナックル。

だが、何度かイグナイターを押した所で気付く。

「・・・壊れてたんだった」

「はあ!?」

「やっべえ!?」

完全に失念していたクローズ。

そういえば新世界創造の際に、多くの戦兎の発明品が修理しないと使い物にならない状態になっていたのをすっかり忘れていた。

「ふふ、何をするつもりだったのか知らないけど、貴方たちは知り過ぎてしまったわ・・・」

フィーネがソロモンを向ける。

「くそ!逃げるぞ!」

「え・・・!?」

クリスを抱えて走り出すクローズ。すかさずノイズが二人を攻撃する。

「うぉあぁあ!?」

粉塵が巻き起こり、壁が粉砕される。

どうにか外に転がり出る事は出来たが、クリスは、その最中で見たフィーネの嘲笑うような顔を見て、とうとう、自分は見捨てられたのだと悟った。

「ちくしょう・・・」

さらにノイズが襲い掛かる。

「うぉぉぉおお!?」

それをクリスを抱えたクローズが躱す。

夕焼けにそまる空、その空に、一人の少女の叫びが響く。

「ちくしょぉぉぉぉぉおおおお!!」

 

 

 

 

 

 

 

「あー、ダメだ・・・ブラストモービルに合うボトルの成分がねえ・・・」

一応、ジーニアスフルボトルで調べてみたが、六十本のボトルの成分のどれもが、ブラストモービルに使える成分じゃなかった。

 

補足しておくと、ジーニアスフルボトルは原因不明の故障でビルドアップスターターを押しても一切起動しなかった。

 

あの手この手でどうにかしようと考えたが、結局分からず仕舞いでお蔵入りとなっている。

 

一応、ジーニアスにある浄化能力は備わっているのだが、変身には使えないという状況だ。

 

 

 

「どうしたもんかねえ・・・ああ、最っ悪だ・・・」

彼がそうぼやく理由は、何もブラストモービルの事だけではなかった。

 

雨である。

 

「色々とジメジメするし、湿気は強いし、テンションは下がるし、嫌な事思い出すし、ああ、最っ悪だ」

一つ謎なのは、彼がどういう訳か街に出ているという事だ。

彼は二課の一室を貰い受けてそこで生活したり開発したりしている。

二課はリディアンの真下。教師である彼が街に出る必要はない。

が、それは教師という立場だけの話だ。

 

彼は、教師であると同時に物理学者であり、仮面ライダーだ。

 

だから、発明品に必要なアイテムを作るために、部品を買いに出ているのだ。

「目的の物は買ったし、今日はこのまま・・・ん?」

ふと、戦兎の視界に見覚えのある横顔が見えた。

「アイツは確か・・・」

思い立ったが吉日か、戦兎はその人物に声をかける。

「よっ、早いな」

「戦兎先生・・・」

その人物とは、小日向未来。先日、クリスと響、クローズの戦いに巻き込まれた少女だ。

だが、その表情は浮かなかった。

「小日向未来だったよな?どうした?何か悩みか?」

「いえ、大した事では・・・」

「そうは見えないんだけどな」

「・・・」

黙り込んでしまう未来。

「・・・もしかして、響の事か?」

「響の事を知ってるんですか!?」

「まあな」

戦兎は、ポケットから一本のボトルを取り出す。ラビットフルボトルだ。

「それは、龍我さんと同じ・・・もしかして・・・」

「ま、そういう事だ」

それをしまって、戦兎は改めて聞く。

「一応、響と職場を同じにする人間だ。ついで今は教師。教師なら、生徒の悩みを聞くことも役割の一つなんじゃないかと思うんだが?」

「・・・」

その言葉に、未来は少し考えて――――

突然、目の前で何かが倒れる。

「ッ!?」

「何!?」

思わず性分故か戦兎が未来を庇うように前に出てしまう。

倒れたのは、ごみ箱だ。そしてそれを倒したのは―――青い装甲を纏った仮面の男。

「万丈!?」

「戦兎か!?」

思わぬ形で再会を果たす二人。

「お前今までどこに・・・」

「そうだ戦兎!どこでも良いからコイツを匿ってくれ!ただし二課はダメな!」

そんなクローズの腕の中には、気絶してぐったりとしているクリスの姿があった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・く・・・・はっ・・!?」

飛び起きるクリス。

そんな彼女の視界に最初に映ったのは、知らない部屋だった。

「ここは・・・」

「キュイー!」

「うわ!?」

目の前でドラゴンが鳴く。

「良かった。目が覚めたのね」

そして、呟く一人の少女。

「びしょ濡れだったから、着替えさせてもらったわ」

気付けば、今の自分の服は誰かの体操着だった。まあ、クリスが体操着というものを知っているかどうかは疑わしいが。

「か、勝手な事を!」

だが、一方のクリスは好き勝手された事に気が付いて声を挙げて立ち上がる。

が、問題は立ち上がった時にあった。

「あ・・・」

「キュイ?」

突如として目の前の少女が顔を赤くする。まあドラゴンは何のことだが分かっていないが。

そして、その反応に疑問を持ったクリスは、すぐに自分が着ているのが上半身のもの()()というのに気が付いた。

「な、なんでだ!?」

「さ、流石に下着の替えまではもってなかったから・・・・」

すぐさま布団にくるまるクリス。

(あれ?そういやあいつは・・・)

「未来ちゃん」

そこで更なる人物の介入。中年の女性だ。

その後ろから、洗濯籠をもって着いてきている万丈の姿も。

「どう?お友達の具合は?」

「目が覚めた所です」

「キュイ!」

「ありがとうおばちゃん。布団まで貸してもらっちゃって」

「気にしないでいいんだよ。あ、お洋服、洗濯しておいたから」

「あ、私手伝います。龍我さんはこの子の面倒を」

「分かった」

「キューイ!」

「あ、クロも手伝ってくれるの?」

「悪いわね~」

「いえ」

なんだか一気に話が進んでしまった。

「よ、具合はどうだ?」

「どこなんだよここは・・・!?」

「未来の行きつけのお好み焼き屋のばあさんの家。いやー良かったぜ。こういう所があってさ」

「・・・」

クリスのすぐ傍に座り、万丈は改めて尋ねる。

「で?具合はどうなんだ?」

「それはお前の方だろ?お前の方がノイズからの攻撃喰らいまくってたし・・・」

「舐めるな。プロテインの貴公子万丈龍我様を舐めんな」

「なんだよそれ・・・」

そろそろ万丈の馬鹿さ加減に慣れてきたクリスは、ふっと笑ってしまう。

「そういや、アイツは・・・」

「ああ、小日向未来って言ってな。まあ、一般人だ」

「一般人・・・ね・・・」

知り合いと言えばいいのに。と思うクリス。

ふと、ベランダで服を干している未来と、その近くで洗濯ばさみを挟む事で手伝っているクローズドラゴンを見る。

「・・・随分と懐いてるんだな」

「ん?ああ、どういう訳か未来にはあんなに懐くんだよ。なんでか知らんけど」

「そうなのか・・・・」

不思議な事もあるものだ。

機械なのに、あんな普通の動物っぽく振舞えるとは。どんな技術なのか。

しばらくすると、服を干し終えたのか、未来たちが戻ってくる。

「それじゃあ、体を拭こうか」

「拭く?」

「体、汚いでしょ?だからね」

どこからともなく桶とタオルを持ってくる未来。

「ほらほら男の人は出てって出てって」

「分かった。分かってるから押すな!」

「クロも」

「キュイ!?」

一人と一匹まとめて追い出される、ふすまを閉められる。

「はあ・・・」

「キュイ・・・」

ドラゴンはかなり落ち込んでいる。未来と一緒にいられないのがそれほど悲しいのだろうか。

だが、そんな中で万丈の腹の虫が鳴る。

「げっ」

「アハハ、お腹が空いてるんだね」

そこでお好み焼き屋のおばさんがやってくる。

「ついてきなさい。今からご飯、作ってあげるから」

「本当か!?悪いな!」

「いいよ。食べなきゃいざって時に力が出ないからね」

そう言っておばさんは階段を下りていき、万丈は嬉々としてその後をついていく。

 

 

だが万丈は知る由もない。

 

 

おばさんには、クリスが万丈の女だと思われている事に――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、どーにか間に合ってよかった」

「何かあったの?」

珍しく疲れた様子で脇に教材を抱えて歩く戦兎とその隣を歩く翼。

「見て、戦兎先生よ」

「それと・・・え!?風鳴翼!?」

「どうして二人が一緒に・・・」

「もしかして、教師と生徒で禁断の・・・」

「待って待って!翼さんは日本が誇るトップアーティストよ!もしそんな事になったら・・・」

「そうよ。それを戦兎先生が弁えていない筈はないわ!」

「でも、距離が近い・・・」

「やめて!そんな事実は知りたくない!」

「「・・・」」

今回は会話が入り込んで二人ともいたたまれなくなってしまう。

「なんか・・・悪いな」

「いや、どっちかっていうとそっちの方だと思うのだが・・・」

「え?」

「え?」

無自覚と無知。

「とりあえず、響でも探すか・・・」

「そうだな」

それについては同意する二人。

そんな訳でやってきた屋上にて、響はいた。

「よ、響」

「戦兎先生・・・翼さん・・・」

響の顔は、やはり暗かった。

朝の未来の事もあり、もしかしたらと思ったのだが、どうやら予想は的中しているようだ。

「・・・私、自分なりに覚悟を決めたつもりでした」

ベンチに座り、響はそう話し出す。

ちなみに戦兎はベンチの腰掛に座っている。

「守りたいものを守るため、シンフォギアの戦士になるんだって。でもダメですね・・・小さな事に気持ちが乱されて、何も手につきません。私、もっと強くならなきゃいけないのに・・・変わりたいのに・・・」

先日、未来は響の秘密を知ってしまった。

二課から、絶対に話してはならない機密情報として、シンフォギア装者となってノイズと戦っている事を隠し続けていた。

だけど、それがバレてしまい、そして、そのせいで関係が拗れてしまったのだ。

それも、かなり深刻な形で。

「その小さなものが、立花の本当に守りたいものなのだとしたら、今のままでもいいんじゃないかな」

ふと、翼がそう答えた。

「立花は、きっと立花のままで強くなれる」

「翼さん・・・」

そして、今度は戦兎からも声をかけられる。

「ま、誰かと喧嘩したっていうんなら、俺も万丈とよく当たってたりしてたな。意見の食い違いだとかで、よくぶつかったりしてた」

空を見上げる戦兎。

「だけど、その度に俺たちは一歩ずつ分かりあえた。お前たちの在り方とは違うけど、それでも、何度もぶつかったから、俺はアイツの事を最高の相棒だって思えるんだ。だからま、何かのすれ違い程度なら、大丈夫だろ?もしダメなら、互いの意見をぶつけ合えばいい」

「戦兎先生・・・」

そう笑って言って見せる戦兎。

「戦兎や奏のように、人を元気づけるのは、難しいな」

ふと、翼がそんな事を言う。

「いえ、そんな事ありません」

その言葉に、響は首を横に振る。

「前にもここで、同じような言葉で親友に励まされたんです。それでも私は、また落ち込んじゃいました。ダメですよね」

なんて言って空を見上げる響。

その様子に、翼と戦兎は、その頬を綻ばせる。

「翼さん、まだ痛むんですか?」

「大事をとっているだけ。気にする程ではない」

「そっか。良かったです」

翼は、未だ杖を使って生活している。まだ、この間の怪我が響いているのだろう。

「絶唱による肉体への負荷は、極大・・・」

自らの全てを燃やし、自分も他者も、それ以外の全てを滅ぼす事の出来る、まさしく滅びの歌と呼ぶに相応しい、心中技。

「その代償と思えば、これくらい安いもの」

ふと、翼は戦兎の方を見た。戦兎は見られた事できょとんとしているが、翼にとっては、思う所があるのだ。

「絶唱・・・滅びの歌・・・でも、でもですね、翼さん!」

響は、立ち上がって翼に言った。

「二年前、私が辛いリハビリを乗り越えられたのは、翼さんの歌に励まされたからです!翼さんの歌が、滅びの歌だけじゃないって事、聞く人に、元気をくれる歌だって事、私は知っています」

「ああ、実際、お前の歌を聞いてると修理や発明がすっげえ捗る。お前の歌は、戦うだけのものじゃないって」

「立花・・・桐生・・・」

「だから早く元気になってください。私、翼さんの歌が大好きです」

そう、自信満々に言ってのける響に、翼は、ふっと笑ってしまう。

「私が励まされてるみたいだな」

「え?あれ?」

「確かにそうだな」

小さな笑い声が、その場に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

一方、お好み焼き屋ふらわー―――の上の階のおばさんの家にて。

「喧嘩かぁ・・・」

万丈が部屋の隅でパッケージに入れられたお好み焼きを食っているのを他所に、いつもの赤いドレス姿に着替えたクリスはそう呟く。

「アタシにはよくわからない事だな」

「俺は色々あったな」

「キュル・・・」

食いながらそう答える万丈と感慨に浸るドラゴン。

「そうなのか?」

「まあな。そういうお前は無かったのかよ。喧嘩する友達とかよ」

「・・・・友達いないんだ」

「え・・・?」

未来が、茫然とそう呟く。

「地球の裏側でパパとママを殺されたアタシは、ずっと一人で生きてきたからな。友達どころじゃなかった」

忘れもしない、あの日の事を。

「そんな・・・」

「たった一人、理解してくれると思った人も、アタシを道具のように扱うばかりだった。誰もまともに相手にしてくれなかったのさ」

憎々し気に、クリスはあの頃の事を思い出す。

「大人は、どいつもこいつもクズ揃いだ。痛いと言っても聞いてくれなかった。やめてと言っても聞いてくれなかった。アタシの話なんて、これっぽっちも聞いてくれなかった・・・!」

泣き喚けば叩かれた。泣くことすら許されなかった。

それは、まだ幼かったクリスにとっては、地獄以外の何者でもなかった。

クリスにとっては、そのころの記憶が全てだった。

「・・・・戦争、か・・・」

「なんだ?まさかお前の気持ち分かるぜ?なんていうつもりか?」

「まあ、俺もそういうのに巻き込まれて、いろんな奴死んでいくのを見たからな」

この腕の中で、大切な人が消えていくのを、見た事があるから。

そして、そんな様子の万丈に、クリスはただ舌打ちする事しか出来ず、その空気に、未来はいたたまれない様子になる。

「・・・なあ」

ふと、クリスが口を開ける。

「お前、その喧嘩の相手ぶっ飛ばしちまいな」

「え?」

「どっちが強ぇのかはっきりさせたらそこで終了。とっとと仲直り。それでいいだろ?」

「大雑把だな」

「うるせえ」

万丈に突っ込まれて口を尖らせるクリス。

「・・・出来ないよ。そんな事・・・」

一方の未来は、顔を曇らせてうつむく。

「ふん、わっかんねーな」

「でも、ありがとう」

「ああ?アタシは何もしてねーぞ?」

未来の言葉が、いささか理解出来ないクリス。

それに、未来は首を振る。

「ううん。本当に、ありがとう。気遣ってくれて」

「キュル!」

「あ、えーっと・・・」

ふと、未来はそこで戸惑う。

未来は、クリスの名前を知らないからだ。

「・・・クリス。雪音クリスだ」

「優しいんだね。クリスは」

未来の言葉が予想外だったのか、クリスは驚き、やがて未来に背中を向ける。

「・・・そうか」

「お前照れてんのか?」

「うるせえ!」

万丈からの茶々が入り、クリスがそれに怒鳴るも、未来は笑う。

「私は小日向未来。もしもクリスがいいのなら・・・」

未来は、クリスの手を取る。

「私は、クリスの友達になりたい」

「・・・・」

その言葉に、クリスは思わず未来を見返してしまう。

だが、クリスはその手を振り切って、部屋を出ていこうとする。だが、ふと立ち止まり、口を開く。

「アタシは・・・お前たちに酷い事をしたんだぞ・・・?」

「え?」

その意味が理解出来ていないのか、首を傾げる未来。

 

だが、その時、けたたましく警報が鳴り響いた。

 

 

―――ノイズだ。

 

 

 

 

 

 

「翼です。立花も桐生も一緒にいます」

『ノイズを検知した。相当な数だ。おそらくは、未明に検知されていたノイズと関連がある筈だ』

「了解しました。現場に急行します!」

『ダメだ』

弦十郎から、何故か止められる。

『メディカルチェックの結果が出ていない者を、出す訳にはいかない』

「ですが・・・」

「大丈夫だ。この天才の手にかかれば、ノイズなんてちょちょいと片付けてやりますって」

戦兎が、翼の肩に手を置いてそういう。

「翼さんは皆を守ってください。だったら私、前だけを向いていられます」

響は、翼に自信満々にそう言ってのけた。

 

 

 

 

 

 

街はまさしく混乱の最中にあった。

「おい、なんの騒ぎだ・・・」

「何って、ノイズが現れたのよ」

「ッ!?」

「警戒警報しらないの?」

今までフィーネと行動を共にしていたからか、クリスにはそんな事知る由もない。

「行くぞドラゴン!」

「キュル!」

「あ、龍我さん・・・!」

当然、万丈はドラゴンを伴って、人が逃げていく方向とは逆方向に走り出す。

「ッ・・・!」

「クリス!?」

さらにはクリスまでもが追いかけるように走り出す。

(馬鹿な・・・アタシってば、何やらかしてんだ・・・!)

視界の隅、小さなぬいぐるみが踏みつけられるのを見た。

(くそったれ・・・・!)

万丈を追いかけて走っていると、すっかり人のいなくなった場所に辿り着く。

「どこにいやがるんだ!」

「ハア・・・ハア・・・」

ノイズを探す万丈と膝に手をついて、呼吸を整えるクリス。

「アタシの所為で関係の無い奴らまで・・・」

それが、無性に申し訳なくて、悔しくて、クリスは空に向かって叫ぶ。

その様子に、万丈は何も言わない。

やがて、クリスは膝をついて、残酷なまでに青い空を見上げた。

「アタシのしたかった事はこんな事じゃない・・・いつだってアタシのやる事は・・・いつもいつもいつも・・・・!う・・うわあ・・ぁぁあ・・・・!!」

「クリス・・・」

泣いて蹲るクリス。

「キュル!」

「ッ!?」

ドラゴンの叫び声で、万丈はノイズが現れた事に気付く。

「クリス!」

万丈が叫ぶ。

「上手くいかない時もある!失敗する時もある!だけど、お前のやってる事全部が間違いな訳じゃねえ!」

ノイズが迫る中、万丈は蹲るクリスを庇うように立つ。

「昨日だって、迷子になってたガキ二人の親探してやってたじゃねえか!それが間違いな訳がない!お前の想っている事も、間違いなんかじゃねえ!」

「お前・・・」

ドラゴンフルボトルを振り、成分を活性化させる。

「これから償っていけばいい。生きてなきゃ、償いなんて絶対に出来ねえんだからよ!」

そのフルボトルを、クローズドラゴンに差し込む。

 

Wake Up!』

 

「戦争を止めるって想いも間違いじゃねえ。それで悔しがるのも悪い事じゃねえ!だけど、戦争を止めようと今まで必死に頑張ってきたんだろ!そう思って戦ってきたのは、他の誰でもねえ!」

 

CROSS-Z DRAGON!』

 

「雪音クリスただ一人だろうが!」

 

「・・・アタシ・・・だけ・・・」

その言葉は、クリスの心に強く響く。

やがて、クリスは涙を拭い、決心のついた表情で立ち上がる。

「アタシはここだ・・・だから、関係ないの奴らの所になんて行くんじゃねえ!」

それと同時に、ノイズが襲い掛かる。

「Killter Ichiva・・・げほっ、ごほっ・・・!?」

「うおあ!?」

聖詠を唱えようとした途端、まだ呼吸が整ってないからかむせるクリス。一方の万丈は意外にもノイズの攻撃が激しく、レバーを回す事が出来ない。

その最中で、上空からノイズが強襲してくる。

「・・・!?」

「あぶねえ!」

上空から襲い掛かるノイズに、万丈はクリスを庇うように抱える。

「あ・・・」

上空から槍のように襲い掛かるノイズ。それに背を向け、万丈は胸にクリスを抱えて、そのノイズの攻撃から庇おうとする。

「りゅ――――」

 

「ふんっ!」

 

次の瞬間、突如としてアスファルトがせり上がり、それが盾となってノイズの攻撃を阻止。

「はっ!」

すかさずそのアスファルトが砕け散り、散弾の如くノイズに浴びせられる。

それをやった者の正体は―――

「風鳴のおっさん・・・!?」

風鳴弦十郎だ。

アスファルトは震脚でめくり取り、砕くのはただの拳打。

それだけでも、彼が人間離れしているのは窺い知れる。

「あいっ変わらずの化け物ぶりだな・・・」

なんてぼやく万丈を他所に、ノイズが再度三人に向かって攻撃をしかける。

それを震脚でめくり上がらせたアスファルトで防ぎ、弦十郎は万丈とクリスの二人を抱えて建物の屋上へ向かう。

「大丈夫か?」

「ああ、一応な」

「・・・・」

弦十郎の人間離れした所業に未だ茫然としているクリス。

「それと・・・いつまで抱き合ってるつもりだ?」

「「は・・・?」」

何やら言いにくい様子でそう言ってくる現状に指摘されて、二人は改めて、互いに抱き合っている事に気付く。

「な――離れろ馬鹿!?」

「ぐべ!?」

何故か鉄拳が万丈の顔面に炸裂した。

「何すんだ!?」

「うっさい!」

何故殴られたのか分からない万丈と顔を真っ赤にしてそっぽを向くクリス。

そこで、飛行型のノイズが三人を追いかけるように飛び上がってきた。

それを見て、万丈はボルテックレバーを回す。

 

『Are You Ready?』

 

「―――Killter Ichaival tron(銃爪にかけた指で夢をなぞる)―――」

 

「変身!」

 

『Wake UP Burning!』

 

『Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

 

万丈はクローズへと変身し、クリスはイチイバルを纏う。

赤と青。奇しくも戦兎の基本フォームと同じ色合いだ。

「でやぁ!」

 

『ヒッパレー!ヒッパレー!』

 

「ウオリヤ!」

 

『ミリオンヒット!』

 

クリスのボウガンからは何本もの矢が放たれ、万丈のビートクローザーからは波形状のエネルギー刃が飛び、視界に映るノイズを一掃する。

「御覧の通りさ!」

クリスは弦十郎に向かって言う。

「アタシ・・・らの事はいいから、他の奴らの救助に向かいな」

「だが・・・」

「ノイズを倒せんのは俺たちだけだ。だから安心して行っとけ!」

クローズとクリスは屋上から踊り出る。

「ついて来いクズども!」

 

BILLION MAIDEN

 

ガトリングガンの乱射が、ノイズを一掃する。

その最中で、クローズがビートクローザーで全てを叩き切っていく。

(そういや・・・)

ふとクローズは、あの時戦兎から渡されたものの事を思い出す。

それは、戦兎が作ったブラストモービル。

赤黒いカラーリングに、何かのケースのようにコンパクトなデザイン。

試しに、グリップ部分のトリガーを引いてみるが、何も起きない。

(確か、ドラゴンともう一つ・・・だったか・・・)

二つの成分。ドラゴンはまだ良いとして、問題なのはそのもう一つ。

六十本のボトルのどれでもないのだというのなら、一体何が・・・

だが、クローズは考えても分からないという結論に至り、思考を放棄。今はただ目の前のノイズを一掃する事に集中する。

近付いてきた敵も遠くの敵も、全てクリスが打ち抜く中で、クローズは自ら赴いて敵を薙ぎ払い続ける。

だが、数があまりにも多すぎる。

「チッ!なんかのバーゲンセールかよ!」

そう悪態を吐くクローズの傍らで、クリスは歌を唄い、ノイズを片付けていく。

そしてやはりと思う。

(やっぱコイツが歌を唄っている間は、力が漲る!)

これは一体どういう事なのか、万丈には分からない。

だが、実際に強くなっているのだから、その勢いに乗った方が得策だろうというのは本能で理解していた。

「オラオラオラァ!」

人のいない街中で、銃声が轟き続ける。

しかし、その数は着実に増えていっていた。

その度に倒していくも、やはり、ノイズは増える一方だ。

正直、どちらか片方だけだったのなら、その勢いに飲み込まれていた事だろう。

「くそ!どんだけいるんだこいつら・・・!」

「アタシが知るかよ・・・!」

クリスの歌が響く中で、背中合わせて二人は自分たちを囲むノイズを睨む。

(一か八か、必殺技で・・・!)

そう思い、ボルテックレバーに手を伸ばしかける。

 

その時だった。

 

「ん?・・・なんだ!?」

「なッ!?」

突如として、ボトルホルダーにセットしてあった、黒くなったグレートドラゴンエボルボトルが赤く輝き出す。

クローズは、それを恐る恐るホルダーから取り外してみると、その光は収束していき、そこにあったのは、エボルボトルではない、真っ赤なボトルが握られていた。

弓を携える何者かの柄が入ったそのボトル。

「なんだこれ・・・?」

そう呟いた直後、クローズドラゴンが勝手にドライバーから飛び出す。

「うお!?なんだよいきなり!?」

「キュールールルッルルッ!」

まるで急かすように、ドラゴンは自らに装填されていたドラゴンフルボトルを輩出した。

「これを入れろってことか・・・?」

「おい!なんでもいいからさっさとしてくれ!」

じりじりと近付いてくるノイズの群れ。

「だーもう!やりゃあいいんだろやりゃあ!」

そう叫んで、クローズはその赤いボトルをクローズドラゴンへと装填した。すると、クローズドラゴンが、烈火の如く真っ赤に染まる。

そして、起動ボタンを押す。

 

激唱ゥ!』

 

そして、すぐさまビルドドライバーに装填した。

 

クロォーズイチイバルッ!!!』

 

「え?イチイバル?」

その音声に、クリスは思わず驚く。しかし、その間にもクローズはボルテックレバーを回していた。

やがて、クローズの周りに、四方向に展開されるスナップライドビルダーが形成されたかと思うと、前後には装甲、右にはライザーと何かの防具、左には同じく防具のみで展開される。

 

『Are You Ready!?』

 

覚悟は良いか。

もう何度も聞いた言葉だ。

この、未知の変身を前にして、果たして準備は出来ているのか。それを、聞いているのだろう。

だが、クローズは――――万丈は不思議と悪い気はしていなかった。

だから、叫ぶ。

 

「いくぜ!」

 

四方のスナップライドビルダーがクローズを挟み込む。

 

激唱戦場クロォーズイチイバルッ!!!』

 

イェェエイッ!!ドッカァァァァアンッ!!!』

 

真っ赤な装甲を纏いし龍―――赤い装甲を纏ったクローズ。

 

 

その名も、『クローズイチイバル』

 

 

新たなクローズが、この新世界に誕生した瞬間である。

 

「負ける気がしねえ・・・!」




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!

ついにその姿を見せるクローズイチイバル!

「これでも喰らってろ!」

その圧倒的強さと共に戦うクリス!

「やっさいもっさい!」

その一方で現場へ向かう戦兎と響は、最大の危機に陥っている未来と再会する。

「私、響に酷い事をした」

その最中で、未来が取った行動とは――――

「未来を・・・私の大切な人をお願いします!」

次回『私という音響き・ラビットの足は疾風の如く』

「準主役なりに意地張らせてもらうぜ!」


















ちょっとやってみたかった奴(注意/本編全く関係ないです。ただやってみたかったというだけです。ですのであまり期待しないでください。それとオリジナルライダーがいたりします。嫌だって人はここでブラウザバック!いい人はこのままビルドアップ!)




いくつも存在する可能性の世界『並行世界』―――


ギャラルホルンという聖遺物が示す並行世界の異常―――


異常が起こる事で繋がった二つの世界―――


それの解決の為、装者と仮面ライダーたちは、その平行世界へと旅立つ。


その先で出会った者は―――




「―――ここが、シンフォギア・ビルドの世界か」



『KAMENRIDE!DECADE(ディケイド)!』



突如として装者と仮面ライダーの前に現れる謎の『仮面ライダー』。



「何故桐生の力を・・・!?」
「お前は一体、誰なんだ・・・!?」

「俺か?―――通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」

その名を、門矢(かどや)(つかさ)

「やあ、君の持つ聖遺物というお宝を頂きに来たよ」



『KAMENRIDE!DEENDE(ディエンド)!』


トレジャーハンターと名乗る『仮面ライダー』の登場。


「それを返せ!」
「お願い、大切なものなんです!」

「それは無理な相談だな」


その名は、『海東(かいとう)大樹(だいき)


次々と繋がっていく世界―――様々な世界が一つになり、また新たな混沌が生まれる時―――


「―――祝え!」


魔王が降臨する。


「全てのライダーの力を持つ、魔王だってさ」


『RIDER TIME!KAMEN RIDER!ZI-O(ジオウ)!』



仮面ライダージオウ―――常盤ソウゴ。



今、様々な世界が錯綜し、そして―――全てを混沌に陥れようとする者に、仮面ライダーが立ち向かう。


「さあ、終焉を始めよう」


『殺戮・絶滅・壊滅!崩壊ノ道ヲ辿レ!ワールドブレイク・イン・スルト!』



今、全ての世界が交錯し、全ての世界を守る戦いが始まる。



「翼に手を出すなぁああ!!」

「歌うのを諦めないで!」

「響は私が助ける!」

「私に構わないで」

「今のアタシたちは負ける気がしねぇ!!」

「マリア姉さん?」

「私の計画の達成の為に・・・」

「俺の刃をその身に刻め」

「ここでお前を喰らい尽くす・・・ッ!」

「心火を燃やして」「ぶっ潰すデース!」

「大義の為の犠牲となれ・・・!」

「オォォオオ!」

「この世界を破壊する・・・その前にお前を破壊してやる」

「流石にお宝の横取りは黙っておけないね」

「もう二度と失ってなるものかよ!」

「遅い!でも間に合ったから許す!」

「貴様如きにあの男が倒せるかよ。チャオ」

「あの男は俺の友達だ・・・だからお前を倒す!」

「祝え!全ライダーの力を受け継ぎ、過去と未来をしろしめす時の王者――――」

「なんか、いける気がする!」

「だとしても!」


「何故そこまでして俺に歯向かう?」


「俺たちが仮面ライダーだから」




愛和創造シンフォギア・ビルド―――ギャラルホルン編


『創造の果てに』



「さあ―――最後の実験を始めようか」
「今の俺たちは―――誰にも負けねえ」

「戦兎ぉぉぉぉおお!!!」
「龍我ぁぁぁぁああ!!!」










連載はしない!(今だけで精一杯!そしてなんかおかしいと思っても無理にツッコまないでください!)


では次回も楽しみに!


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私という音響き・ラビットの足は疾風の如く

翼「見てみろ!もうこの小説のお気に入り登録者が450を突破したぞ!」
戦「これも全て、俺の活躍のお陰だな」
緒「どっちかと言いますと、少女キャラの萌え萌えな反応からじゃないでしょうか?」
了「そうよねぇ、特に翼ちゃんとクリスちゃんなんか、良い反応してるし」
戦「そこは俺の活躍と言ってほしかった・・・」
万「諦めろ」
響「そんなに言われてない私って呪われてるかも・・・」
未「ほら元気出して、本編じゃ響は私を助けてくれたじゃない」
響「だけど前回は龍我さんの新フォームに全部持ってかれたじゃん・・・」
ク「元気出せっての。ほら、あんぱんやるからよ」
響「あんぱんで喜ぶのはクリスちゃんぐらいだよ」
ク「あ゛あ゛?」
響「わーいあんぱんだ嬉しいなー!」
戦「まあそれはともかく!天才物理学者にして仮面ライダービルドの桐生戦兎は、ノイズが出現した為に、動けない翼の代わりに―――」
響「ここだ!私!立花響と共に街へと向かうのでした!」
戦「勝手に割り込むんじゃないよ!」
響「いひゃいいひゃいでふへんほへんへい(痛い痛いです戦兎先生)!」
翼「その一方で、万丈龍我が変身する仮面ライダークローズに新たな形態が生まれる」
ク「その名もクローズイチイバル!いやー、アタシのギアの名前が使われてるのってなんか嬉しいなぁ」
万「そんなに喜ぶ事か?」
ク「あたぼうよ!なんてたってアタシは―――」
工具「そんなわけで」
黒グニール「私たち次回作からじゃないと出てこれない装者三人組は出てこないシンフォギア・ビルド、第十五話を」
農具「どうぞデース!」
頭「・・・・みーたんが出てきてないのになんでこんな人気がでるんだふざけんな!」
絶望センス「お前はすっこんでろ!」
戦「お前もだよ!」




作者「本当にありがとうございます!今後ともこの小説をよろしくお願いいたします!」


真っ赤な装甲を身に纏い、クローズイチイバルがそこに立つ。

「なんだよこれ・・・力が漲ってくる!」

ノイズが襲い掛かる。

 

『Blast Mobile!』

 

すかさずクローズはドライバーからブラストモービルを取り出す。

何故彼がそれを持っているのか、それはクリスをふらわーのおばさんの所で匿う際に、戦兎から渡されていたからだ。

ドラゴンフルボトルを持っているのは、クローズだけだから。

 

『Set Up!Blast Blade!』

 

モービルが変形し、エネルギーの刃が飛び出す。

それを使い、クローズは二刀流で襲い掛かる敵を薙ぎ払っていく。

「おぉぁぁああ!!」

襲い掛かってくるノイズを一気に片付けていく。

「これでも喰らってろ!」

すかさずクリスが遠くの敵に対してガトリングを乱射。

一気にその数を減らしていく。

だが、その数がやはり数が多い。

であるならば、

「いっくぜ―――っておぉぉおお!?」

接近し、薙ぎ払えばよい。と思ったクローズだったが、足に取り付けられたタイヤ『CZIクイックダッシュホイール』によって、まるで滑るかのように走行しだす。

「お、おぉぉ・・・よし!」

始めは戸惑うものの、すぐに慣れ、滑らかに戦場を駆け巡る。

「オラァ!!」

そして、敵陣に自ら突っ込んで、両の手の双剣を持って敵を一気に薙ぎ払う。

「行くぜ行くぜ行くぜぇぇえええ!!」

ホイールによる滑らかな移動と双剣の斬撃。

その突破力のある移動攻撃が、ノイズの大群を一気に減らしていく。

「ちょせぇ!」

クローズが地上の敵を一掃している間に、クリスは小型ミサイルを撃ちまくって遠場の敵を倒していく。

 

『Set Up!Blast Shooter!』

 

グリップ部分を立ち上がらせ、引き金を引いて光弾を撃ちまくる。

タイヤが逆回転すれば滑りながらの回転も可能であり、回りながら撃ちまくる事も可能だ。

貫通力のある光弾が、直線状のノイズを一気に炭素へと帰していく。

クリスに近付こうとしていたノイズも寸分狂いもなく打ち抜く。

(すげえ、これがイチイバルの力・・・!)

元々、長距離広範囲攻撃を特性とするシンフォギアであるイチイバル。

それが何故、接近戦特化であるクローズの強化となりえたのか。

それは未だ謎だが、ただ分かる事がある。

 

ホイールは移動能力を拡張し、視界は以前よりも広くなり、パワーも圧倒的に強くなっている。

 

それは、クリスの扱う大火力を、クローズの近接戦闘能力をブーストしている表れなのかもしれない。

 

『Set Up!Blast Dual Sword!』

 

二つのブラストモービルを合体させて、双身刀へと変形させる。

掌で回転させて、その勢いのまま敵を薙ぎ払う。

右から来るノイズを突き刺し、そのまま薙ぎ払っては数体を一気に斬り裂き、背後から襲い掛かる敵を反対の刃で脇から突き出して刺し殺す。

「やっさいもっさい!」

「ん?」

ふと横眼でクリスを見てみると、やはりノイズはクリスを集中的に狙っている。

(野郎、寄ってたかって一人相手に・・・!)

しかし、この距離ではブラストシューターは当たらない。

何か、別の方法がないものか。

(ちょっと待てよ・・・)

そこでふと思い出す。

(シンフォギアっていろんな形状があったよな・・・?)

翼は、刃の形を自由に変えられるのに対して、クリスはボウガンを様々な銃器に変形させる事が出来る。

であるならば―――

(その力を使ってる今なら・・・!)

クローズは、イメージする。

今、この距離でクリスを援護出来るような武器を。

もし、この力がシンフォギアと同等であるならば、このブラストモービルも―――

 

『Set Up!Blast Impact Bow!』

 

突如としてブレード部分が湾曲し、その切っ先から細長い光の糸が伸び、双方を結んだ。

そして、柄の部分すらも変形して、二つのグリップの間に持ち手があるような形になる。

「これなら―――!」

クローズは弓弦を引く。

すると、光の矢が形成され、それをクリスに襲い掛かろうとしているノイズに向かって放つ。

光の矢は目にもとまらぬ速さで飛んでいき、そのノイズを穿ち、それだけに終わらず、そのまま一直線に飛んでいき、そのノイズの後ろにいたノイズを全て撃ち貫いた。ついで、その後ろの建物まで軒並み破壊して。

「うそぉん・・・」

その意外な威力にクローズは思わず茫然とする。

一方のクリスは思わず援護射撃にクローズの方を見る。

一方のクローズは戸惑ったのかとりあえずピースサインを送る。

その様子に、クリスは歯噛みしてそっぽを向いて更なる敵を撃ちに行く。

放っておけば色々と突っ走りそうだ。

(だから俺がなんとかしてやんねーとな)

 

『Set Up!Blast Shooter!』

 

すぐさまブラストシューターに切り替えて、クローズは走る。

「行くぜオラァァアァ!!」

そのまま、ノイズの大群に向かって行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、戦兎と響は、マシンビルダーに乗ってノイズのいる場所へ向かっていた。

その最中、どこかへと飛んでいくノイズを見て止まる戦兎。

「どこに向かってんだ・・・?」

なんて呟いた直後、

 

「きゃぁぁあああ!」

 

「「ッ!?」」

どこからともなく悲鳴が聞こえ、二人はマシンビルダーを下りるなり、そこへ向かって走り出す。

そこは、ボロボロになった建設途中の建物。

そこへ入るなり、響は声を挙げる。

「誰か!誰かいま――――」

突然、真上から声が聞こえてきたと思って上を見てみたら、何かが落ちてきていた。

「「ッ!?」」

それを見た響と戦兎は、響は手摺を飛び越え、一方の戦兎は後ろに飛んですぐ近くの柱に隠れる。

「あれは・・・」

上を見てみれば、タコのようなノイズがビルの上を陣取っていた。

「野郎・・・」

戦兎は何かする前に下を見る。

するとそこには、口を塞がれている響と塞いで人差し指を手に当てている未来の姿があった。

その行為で、戦兎はある程度察する。

(音に反応するって事か・・・)

ビルドドライバーでは、ボトルを装填した際に識別音声が流れる。

ついで、ボトルを振る時も音が鳴るため、下手に成分を活性化させられない。

(くそ・・・)

もう一度下を見る。そこからでは、響と未来の姿しか見えないが、二人の視線から、もう一人の存在が伺いしれる。

さらには携帯を使って会話をしている。おそらく、メモ機能だろう。

あれなら、音を出さずに会話できる。

(さて、俺はアイツをどうにかしないとな・・・)

ここで下手に動けば、響はともかく、未来やもう一人に危険が及ぶ。

一か八かで狙撃するのも手だが、あのサイズとなると、一撃で仕留められるかどうか怪しい。

ゴリラモンドならいけるだろうか。いや、変身する以前に生身で触るのは即死に繋がる。

科学で言う所のトライ&エラーが使えない。つまり、失敗すれば即アウト。

(どうする・・・?)

今使える手段は、やはり―――

「う・・ぅ・・・」

もう一人の呻き声で、ノイズが動き出す。

(考えてる暇はないか!)

戦兎はポケットからラビットフルボトルを取り出す。

その際、僅かでも振れたためか、兎特有の聴覚が発動する。

「―――私、響に酷いことをした」

未来の声だ。

「今更許してもらおうなんて思ってない。それでも、一緒にいたい。私だって戦いたいんだ」

「・・・・ダメだよ、未来・・・」

「どう思われようと関係ない。響一人に、背負わせたくないんだ・・・・」

戦兎の視界で、未来が立ち上がる。

(アイツ、何を――――)

「私―――もう迷わない!」

 

未来が、声を挙げる。

 

「なっ!?」

その行為に、戦兎は思わず戦慄する。

次の瞬間、未来は走り出し、ノイズは未来に向かって触手をぶつける。

ジグザグに走る事で、ノイズの攻撃を掻い潜り、そのまま外に出る。

「あの馬鹿!」

戦兎はその場から飛び降りる。

そこで、倒れている女性を見つけ、その女性に響が駆け寄っているのを見る。

「その人は任せた!」

その声に、響は振り返り、

「未来を・・・私の大切な人をお願いします!」

その声に頷き、戦兎は駆ける。

 

シュワシュワシュワ

 

プルタブスイッチを入れて、ラビットタンクスパークリングを起動する。

それをビルドドライバーに装填して、ボルテックレバーを回し、そして叫ぶ。

 

「変身!」

 

シュワッと弾けるラビットタンクスパークリング!イェイイェーイ!』

 

泡の力で、加速する。

その最中で、他のノイズが襲い掛かる。

「邪魔だぁぁああ!!」

両腕の刃や泡の勢いを利用して粉砕し、ビルドは加速する。

(絶対に死なせない。この身をかけても、絶対にッ!!)

加速するビルド。その視界の先では、必死にノイズから逃げる未来の姿を捉える。

ノイズの触手が未来を狙い、一気に迫る。

(させるか!)

この距離では間に合わないと判断したのかドリルクラッシャーをガンモードにしてぶっ放す。

放たれた弾丸は、そのノイズの触手を吹き飛ばす。

「え・・・」

「止まるな!走れぇ!」

「ッ!」

ビルドが叫び、未来はさらに走る。だがノイズは諦めずに未来を狙う。

「おいコラタコ野郎」

ビルドは飛び上がる。

「女子高生だけ狙うとか同人誌の魔物かなんかかァ!?」

泡で加速し、渾身の飛び蹴りを叩き込んでぶっ飛ばす。

すぐさまそのノイズは炭化する―――だが、

「きゃあ!?」

「ッ!?」

未来の方に、もう一体のタコ型のノイズが迫っていた。

「もう一体!?」

ビルドはすぐさま駆け出す。

だが、その進路を大量のノイズが妨害する。

「だから邪魔だっつってんだろォがァ!」

一気に加速して、ビルドはドリルクラッシャーを使ってノイズの大群を突破する。

その間にも未来は片側が崖の下り坂に向かって走る。

(もう・・・走れないよ・・・)

走って走って、疲れ果てて、未来はとうとうその場に崩れる。

その背後から、タコ型ノイズが迫る。

(ここで、終わりなのかな・・・)

迫るノイズを見て、未来はそう思う。

(仕方ないよね・・・響・・・)

ノイズが飛び上がる。

その場面へ、ビルドが全速力で駆け付ける。

「未来――――!!」

ビルドが絶叫する。それと同時に、特大の泡の破裂で加速する。

(だけど――――)

ノイズが、落下してくる。

ビルドが、駆け抜ける。

未来が――――立ち上がる。

(だけど―――)

理由は、単純だ。

 

(―――まだ響と流れ星を見ていない!)

 

果たしていない、約束があるから―――!

 

眼を見開いて、未来は走り出す。

そこへノイズが落下し、アスファルトを砕く。

砕けた事で道路が崩れ落ち、未来は、すぐ傍の崖を真っ逆さまに落ちる。

「うぉぁぁぁあ!!」

絶叫し、ビルドも飛び降りる。

そのビルドの視界に、一つの影が飛び込む。

「響ッ・・・!」

すでに右手のガジェットを引き、撃ち込む準備が完了している。

「ああ、くっそ・・・!」

その響の顔を見て、ビルドは悔しがる。

「今日の主役はお前だ、響」

響の拳がノイズを穿つ。拳はノイズを貫き、一気に炭化させる。

その間にも未来は落下していく。その未来に向かって、響はもう一度拳を炸裂させて未来に向かって飛ぶ。

そして、未来に追いつき、抱き抱えるのと同時に―――ビルドが二人を抱える。

「戦兎先生・・・!?」

「なーに今回の主役はお前だが、準主役なりに意地張らせてもらうぜ!」

 

『ボルテックブレイク!』

 

ドリルクラッシャーをガンモードにして、ロケットフルボトルを装填。そして銃口から発射されるジェット噴射によって落下スピードを殺し、そのままロケットゆっくりと着地する―――と思いきや、何故か思いっきり足を滑らせる。

「あ」

「え」

「は」

見事に足を滑らせたビルドがそり替わりになって一気に坂を真っ逆さまに滑り落ちる。

「ぎゃぁぁああ!?」

悲鳴が聞こえ、やっと止まった時には、上に乗っかっていた響と未来は宙へ放り出されて、そのまますぐ傍の川の横に倒れる。

その場で手をつき、過呼吸をする未来と響。

落下の衝撃か、変身が解除されてしまっている。

「いったぁい・・・」

「いたた・・・」

腰に手を当てて痛がっていると互いに顔を見合わせて、思わず笑ってしまう。

「随分と派手に転んじゃったなぁ」

「あっちこっち痛くて、でも、生きてるって気がする。ありがとう。響なら絶対に助けに来てくれるって信じてた」

「ありがと、未来なら最後まで諦めないって信じてた」

そう言い合う二人。

「だって、私の友達だもん」

「っ・・・」

その言葉に、未来は胸を痛め、顔を歪める。

やがて涙を流し、ついには響に抱き着く。

「ぐえっ!?」

そのまま後ろに倒れてしまい、響の元で、未来の泣き声が聞こえた。

「怖かった・・・怖かったの・・・」

「私も・・・すっごく怖かった・・・」

その言葉に、響も目尻に涙を浮かべる。

「私、響が黙っていたことに腹を立ててたんじゃないの・・・!誰かの役に立ちたいと思ってるのは、いつもの響だから・・・でも、最近は辛い事苦しい事、全部背負い込もうとしていたじゃない。私はそれが堪らなく嫌だった。また響が大怪我するんじゃないかって心配してた・・・」

二年前のライブの時のように、目を覚まさないかもしれない。

「だけど、それは響を失いたくない私の我儘だ・・・そんな気持ちに気付いたのに、今までと同じようにだなんて・・・出来なかった・・・」

「未来・・・」

響は、一度未来を離すと、面と向かい合う。

「それでも未来は私の・・・っ・・・」

「え?何・・・?」

突然、何かをこらえる響。だが、突如として響は声を挙げて笑い出す。

「だ、だってさ・・・髪の毛ぼさぼさ涙でぐちゃぐちゃ、なのにシリアスな事言ってるし!」

「もう!響だって似たようなものじゃない!」

「んえ!?嘘!?未来、鏡貸して―――」

そう頼んだ時だった。

「おい・・・お前ら・・・・」

どこからか聞き覚えのある声が聞こえたかと思えば、自分たちが腰を落としている場所がもぞもぞと動く。

「そこをどいてくれ!女子高生二人が上で暴れんのは流石にきつい!」

「あ!?ごめんなさい!」

「すみません!」

慌てて戦兎の上から立ち退く二人。

「あー、やっと解放された・・・」

「なんだかすみません・・・」

「全くだ・・・でもま、仲直りは出来たみたいだな」

ビルドフォンのシャッターを押す戦兎。

「「え」」

「ほら、これが今のお前らの顔だ」

「え?うぉ、凄い事になってる!?これは呪われたレベルだ・・・」

「私も想像以上だった・・・」

再び、笑い合う。

その様子に、戦兎も顔をくしゃっとする。

その場には、少女二人の笑い声が響いていた――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し過ぎて、全てのノイズが殲滅された商店街にて。

「はい、ふらわーさんから回収しておきました」

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

緒川から通学鞄を受け取っている未来を他所に、戦兎は周囲を観察していた。

(しっかし、今日はどうしてあんなに大量のノイズが・・・この辺りのノイズ出現率があまりにも高いとはいえ、いくらなんでも多すぎる・・・)

道端にある炭を一つまみして、指先で擦ってみる。

(大体は、万丈と雪音クリスがやってくれたから良いものの・・・それにしてもこんだけやる必要はあったか・・・)

ふと、何やら乱暴な運転故の車のタイヤが擦れる音が聞こえてきたと思ったら、了子の運転する車だった。

(一番怪しいのは・・・)

戦兎は了子を睨む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わり、万丈は相変わらずクリスと一緒に行動していた。

「お前・・・一体いつまでついてくる気だ」

「俺の気のすむまで」

「キュル!」

あっさりと言ってのける万丈(馬鹿)にもはや呆れるしかないクリス。

「アタシはお前たちに酷い事したんだぞ・・・?」

「だからなんだ。俺がお前を放っておけないからこうしてついていってんだろうが」

「放っておけないって、おせっかいのつもりかよ」

「まあな」

「・・・」

どこまで行っても付いてくるこの男。

いっそストーカーとでも言って巻くか。

そう思ったがやめて、クリスは改めて理由を聞いた。

「・・・なあ、なんでお前はそんなにアタシに構うんだよ」

「・・・」

その問いかけに万丈はしばし黙り、やがて話し出す。

「戦争の重さは知ってる。家族を失う苦しみも知ってる。大切な人間が、目の前で消えちまう事も知ってる・・・だから放っておけねえんだよ。戦争を無くしたい。んでもってその為に戦うお前をな」

「・・・・はっ」

そんな事を言う万丈にしばし黙ってしまうも、誤魔化すように鼻で笑う。

「まるで戦争を体験したような口ぶりだな。お前のそのお粗末な頭じゃ海外でまともにやっていけねえし、生憎と日本は世界一治安が良い国って事で評判だぜ?そんな国で、どうやって戦争を理解するってんだよ?そう映画とか見た訳じゃあるまいし―――」

「マジだ」

「は?」

「実際に戦争は見た事あるし、それで戦った」

万丈の眼に、嘘はなかった。

目は口程に物を言うと言うが、今の万丈の眼差しは、まさにそれだった。

この平和な国で育ってきたであろう男がする目ではなかった。

 

まさしく、戦争を体験してきたような、そんな表情だった。

 

「・・・お前は、一体」

「・・・上手く説明できるか分かんねえけどよ・・・」

川の縁に作られた歩道の手摺に手をついて、万丈は語り出す。

「ぱらりらだかパラレルだとか、確かそんな感じに、何個かの世界があって、そのうちの二つが合体する・・・なんて話があったらお前は信じるか?」

「世界が・・・合体・・・?」

なんだその現実感の無い話は。

一体、この男は何を伝えようとしているのか。

だが、世界、と言ったか。

そう考えてみると、ありえないような、そんな現実感の無い答えが浮かび上がってくる。

 

この世界の人間じゃない、という可能性が。

 

「・・・・あー、だめだ。やっぱり上手く説明出来ねえ。忘れてくれ」

万丈は歩き出す。

「ほら、行くぞ」

「お、おう・・・」

さっさと歩いていく万丈の後ろ姿を、クリスはただ見つめる事しか出来ない。

「キュル」

「ん?」

ふと、視界のやや上をドラゴンが飛び回る。

その様子にほんの少し微笑みつつ、クリスも万丈についていくように歩き出す。

(まあ、いっか・・・)

この男の事はよくわからない。

深く考えてない事もよくわかる。

何せこの男は正真正銘の『馬鹿』だからだ。

それでいて、自分と真正面からぶつかってくれる。

(ちょっとは、信じてもいいかもな・・・)

そう思い、クリスは、万丈を追いかけた。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!

「学園の真下にこんなシェルターや地下施設が・・・」

リディアンの真下にて、邂逅する未来と装者、そして仮面ライダー。

「デートしましょう!」

突然の響の発言。

「アタシは『大人』が嫌いだ!」

雨の中叫ぶクリスと対峙する万丈。

「それじゃあ、行ってくるわ」

そして、戦兎が向かった先には―――

次回『変わり果てたニューワールド』

「はい。お待ちどう」


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変わり果てたニューワールド

農具「天才物理学者にして仮面ライダービルドこと桐生戦兎は、響センパイの頼みで決死の思いで未来さんを助けに向かい、見事に響センパイに手柄をかっさわれたのデース!」
戦「何楽し気にそんな事言ってんだああ!?」
農具「い、痛い痛い!痛いデスよ!頬を引っ張らないでくださいデス!」
黒グニール「あれ?そういえばいつものメンバーは?」
戦「なんか知らんが用事があるとかで全員欠席だよ」
黒グニール「とすると私たち三人だけなのね!」
戦「言っておくが、お前さっき高級な牛タン食ってイキってる事知ってるんだからな」
黒グニール「な、何故それを・・・!?」
農具「〇〇〇のメンタルはいつも食事で決まるんデス!」
黒グニール「はいそこの農具すこし口をチャックしましょうね~?」
農具「あぁぁあ!?だからって針と糸を本当に出さないでほしいデス!」
戦「しかもチャックじゃねえし・・・まあいい」
未「はあ・・・はあ・・・お、遅くなりました・・・・」
黒グニール「あら?あの子はどうしたの?」
未「ああ、さっきクロのいたずらの餌食になってしまいその所為で伸びてます」
一同『一体何があったし』
未「ゴルフボールが一杯入ったバケツをひっくり返してしまいまして・・・」
翼「な、なんでここにゴルフボールアーッ!」
黒グニール「今の翼の声よね!?」
農具「急いで片付けないと―――」
工具「え?ま、まって、どうしてここにゴルフボールキャァァア!!」
弦「ぬお!?何故ここにゴルフボールぐあー!」
無性「へぶし」拳が当たった
ク「あべし」拳に吹っ飛ばされる
万「ふむぐ!?」クリスの胸が直撃
黒グニール「もう既に大惨事!?」
戦「だーもう!どうしてこうなるんだ!?もういいから本編第十六話をどうぞ!」
黒グニール「あ、待って私もゴルフボールヘアッ!?」前方に向かって空中回転
農具「ごふっ!?」思わぬ逆サマーソルトキックを喰らう
未「ああ、さっきよりも大惨事n・・・」
クロ「キュル!」未来の足裏にゴルフボールを仕掛ける
未「えっ、なんでここにもゴルフボールいやぁぁあ!!」
戦「ああもういい加減にしろよお前r」
クロ「キュル!」戦兎の足裏にゴルフボールを仕掛ける
戦「クロてめぇぇぇぇええ!」スッテーン


―――彼女は、バイクを弄るのが趣味だ。暇な時は、いつも自分の愛車をいじくってる。

 

その様子を遠目でみつつ、こっそりと近付いてみる。

すると、彼女からささやかな鼻歌が聞こえてくる。

それも自分とのデュエット曲だ。それが無性に嬉しくて、思わず自分も重ねて歌ってしまう。

肩越しにその様子を覗いてみると、彼女は恥ずかしがるように驚いた。

「か、奏!?」

その反応が面白く、思わず笑ってしまう。

「ご機嫌ですな」

「今日は非番だから、バイクで少し遠出に・・・」

「特別に免許貰ったばかりだもんな。それにしても、任務以外でも翼が歌を唄ってるのは初めてだ」

「っ・・・奏・・・」

恥ずかしいのか俯く翼。

「そういうの、なんか良いよな」

そう言って、その額を小突く。

「また鼻歌聞かせてくれよな~」

「~~~っ!奏!鼻歌は、誰かに聞かせるものじゃないから!」

それは彼女の精一杯の抗議なのだろう。

不器用な彼女らしい、反論だ。

「分かってるって、じゃ、行ってきな」

そう言い残して、自分は立ち去る――――

 

 

 

 

「・・・なんだ、今のは・・・」

自室のベッドにて、戦兎は目を覚ます。

時計を見れば、丁度いい時間であった。

「ふ、あぁあ・・・」

軽くあくびをしつつ、戦兎はベッドから立ち上がり、作業机の方へ向かう。

ふと、自分の手の中に、ある物が握られている事に気が付く。

「ん?・・・フェニックスフルボトル?」

何故かラビットと同じくらい赤いフェニックスフルボトルが握られていた。

「なんでこれが・・・」

 

―――アンタも行って来たらどうだい?

 

「・・・・!?」

どこからか、聞き覚えの無い声が聞こえてきた。

思わず振り返って、目に入ったのはビルドフォンだった。

「・・・・」

それを手に取って、何思ったのか写真アプリを開いて、そこにある写真を見た。

 

それは、旧世界での思い出。

 

仲間たちと取った、一年間の戦いと日常の記録。

 

自分が、旧世界で生きてきた証。

 

「・・・そうだな」

ビルドフォンを一旦切り、戦兎はつぶやく。

「行った方がいいかもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

リディアンの地下深く。そこに存在する特異災害対策機動部二課の施設にて、先日組織の外部協力者として登録された未来を伴い、響は二課にやってきていた。

「わあ・・・学校の真下にこんなシェルターや地下基地が・・・」

「あ!翼さーん!」

ふと、響は目の前に翼がいる事に気付く。さらに緒川や藤尭、それと戦兎もそこにいた。

「立花か。そちらは確か、協力者の・・・」

「こんにちは、小日向未来です」

「えっへん、私の一番の親友です」

未来がお辞儀をする傍らで、胸を張って自慢する響。

「立花はこういう性格故、色々面倒を掛けるだろうが、支えてやってほしい」

「見ていて危なっかしい所あるからな」

「あ、先生酷い」

「いえ、響は残念な子ですので、ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」

「お前も何気に酷いな・・・」

「ええ!?何!?どういう事ぉ?」

「響さんを介して、お二人が意気投合しているという事ですよ」

「んーはぐらかされた気がする・・・」

ふくれっ面になる響。

その様子に、未来と戦兎、そして翼が笑う。

その翼の様子に気付いて、戦兎は微笑む。

(ちゃんと変わったな・・・)

その事に一安心しつつ、響が口を開く。

「でも未来と一緒にここにいるのは、なんかこそばゆいですよ」

「小日向を外部協力者として、二課に移植登録させたのは、司令が手を回してくれた結果だ。それでも、不都合を強いるかもしれないが・・・」

「説明は聞きました。自分でも理解しているつもりです。不都合だなんて、そんな」

「あー、そういえば師匠は・・・」

「ああ、私たちも探しているのだが・・・」

「どこに行ったんやら」

何やら外出中らしい。

万丈もクリスと同行している為いないが、流石に司令官がいなくなるのはまずいだろう。

「あ~ら良いわね」

そこへ、了子がやってくる。

「ガールズトーク?」

「どこから突っ込むべきか迷いますが、とりあえず僕を無視しないでください」

「おい俺も忘れんな。この天才物理学者を忘れるなコラ」

溜息を吐く緒川と青筋を浮かべる戦兎。

しかしそんな二人を他所に、響どころか未来が了子に対して興味津々だった。

「了子さんもそういうの興味あるんですか?」

「もちのろん!私の恋バナ百物語聞いたら、夜眠れなくなるわよ」

「まるで怪談みたいですね・・・」

「了子さんの恋バナ!?きっとうっとりメロメロ乙女で大人な銀座の恋の物語ぃ~!」

響、やはり女子か。そういう話には腹をすかした犬の如く食いついてきた。

その一方で翼は頭を抑えるばかり。

了子の眼鏡がきらりと光る。

「そうね・・・遠い昔の話になるわね。こう見えても呆れちゃうくらい一途なんだから・・・」

何やら本格的な話が出てきそうである。

「「おぉぉおおー!」」

その感覚で未来と響が目を光らせる。

「意外でした・・・櫻井女史は、恋という研究一筋であると・・・」

翼は意外と言った風な口ぶりだった。

「命短し恋せよ乙女と言うじゃない。それに女の子の恋するパワーってすごいんだから」

「女の子?その年で?」

戦兎の心無い言葉が吐き出される。その直後、了子の鉄拳が顔面に炸裂する。

「ぐべあ・・・」

「戦兎さん!?」

倒れる戦兎。しかしそんな事知った事かという風に話を続ける了子。

「私が聖遺物の研究を始めたのも、そもそも・・・」

そこで、了子は止まる。

「「うんうん、それで・・・!?」」

完全にガールズトークにのめり込む女子と化した響と未来。

その仕草は何やら餌を前にした子犬のように可愛い。

「あ・・・ま、まあ!私も忙しいから、ここで油売ってられないわ」

「自分から割り込んだんだろテメェ・・・そげぶ!?」

「戦兎さぁぁん!?」

「桐生ぅぅうう!?」

今度は了子の蹴りが炸裂する。

「ヒールが、ヒールがぁぁああ・・・!!」

「とにもかくにも、出来る女の条件は、どれだけ良い恋してるかに尽きるのよ」

「大丈夫ですか?」

「うわっ、ヒールが完全に突き刺さってましたねこれは・・・」

「だ、大丈夫か桐生!?しっかり、しっかりしてぇ!」

「ガールズ達も、いつかどこかで良い恋なさいね」

そう言って、了子は手を振ってさっていく。

「それじゃ、ばっはは~い」

「聞きそびれちゃったね~」

「ん~、ガードは硬いかぁ・・・でもいつか、了子さんのロマンスを聞き出してみせる!」

戦兎が沈み、それを看病する翼を他所に、響はそうガッツポーズをとるのであった。

 

 

 

 

 

 

「司令、まだ戻ってきませんね」

「メディカルチェックの結果を報告しなければならないのに・・・」

この間のメディカルチェックにて、もう以前のように動けるという診断を受けた報告をしたいのだが、生憎とその司令は留守。

さらには通信機も置いていっているらしく、連絡も取れない。

これでは、報告なんて不可能だろう。

「次のスケジュールが迫ってきましたね」

「もうお仕事入れてるんですか!?」

「少しづつよ。今はまだ、慣らし運転のつもり」

「じゃあ、以前のような、過密スケジュールじゃないんですよね?」

「ん?」

「だったら翼さん!デートしましょう!」

「ぶおっふぉ!?」

戦兎は、思わずむせてしまった。

「大丈夫ですか?」

「げほっ、ごほっ・・・いや、なんか想像も及ばない言葉が出てきて驚いただけだ。気にすんな・・・」

激しく咳込みつつ、戦兎は気を取り直す。

「それで、デートってどういう・・・」

「そのままの意味ですよ?お出かけです」

「だよな・・・あー、びっくりした・・・」

安心して肩を落としつつ、戦兎はコーヒーを飲む。

「良かったら、戦兎先生も行きませんか?」

ふと、未来がそのように提案する。

だが、戦兎は首を横に振る。

「悪い。少し予定があってな」

「そうなのか・・・うむ、そうなのか・・・」

((あ、意外と落ち込んでる))

翼が沈んでるのをなんとなく察してしまう女子二人。

ただし緒川と戦兎にはバレていないようだ。

「何か予定があるんですか?」

「ああ、バイクでちょっと遠出にな」

「バイク・・・」

その言葉に、翼は僅かに反応する。

「どこに出かけるんですか?」

「ああ、ちょっと里帰り的なことをな」

(里帰り・・・?)

その言葉に、翼は首をかしげるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨の降る中――――

「んじゃ、ちょいと食いもん買ってくるからドラゴンと待ってろ」

「いいのかよ。こいつを置いて行って」

「なんか知らねえがノイズが出たらすぐに飛んできてくれるから大丈夫だって。それに、何か起きたときの為の合図にもなるだろ」

「キュル!」

まるで任せろと言わんばかりに首を持ち上げるドラゴン。

「そうか・・・」

「安心しろ。いざって時はぶん殴ってどうにかするからよ」

「頼むから出来るだけ暴力沙汰は避けてくれよ・・・あとノイズに触れたらただじゃすまないんだからな?」

ハハハとなぜか洒落にならないことで笑う万丈にあきれつつ、クリスは万丈を見送る。

「あ・・・」

「ん?」

「その・・・気を付けて・・・」

「おう?わかってるよ」

傘を片手に、万丈は出ていく。

それでもって家に一人となるクリス。否、一人と一匹になるクリスとドラゴン。

(しばらくは待つしかないか・・・)

クリスは、これから退屈になりそうな気がした。

 

 

 

 

 

 

雨の降る中、万丈はコンビニから出る。

「ありがとうございました」

店員の挨拶を背中に、万丈はコンビニから出た所で、見覚えのある人物に気付く。

「風鳴のおっさん・・・」

「よう。少しいいか?」

近場で雨宿りしつつ、万丈と弦十郎は並び立つ。

「雪音クリスの様子はどうだ?」

「すこぶる元気だよ」

「そうか・・・なら良かった」

弦十郎は、心底安心した様子でそう呟く。

「それで、何しに来たんだよ?」

「・・・大人の務めを果たしにな」

「大人・・・ね・・・」

短く呟く万丈。

「ヴァイオリン奏者、雪音雅律(まさのり)と、その妻、声楽家、ソネット・M・ユキネが、難民救済のNGO活動中に、戦火に巻き込まれて死亡したのが八年前。残った一人娘も行方不明となった」

「それがクリスか・・・」

「そうだ。その後、国連軍のバルベルデ介入によって、事態は急転する。現地の組織に囚われていた娘は、発見され保護。日本に移送される事となった。当時の俺たちは、適合者を探すために、音楽会のサラブレットに注目していてね」

「イチイバルの適合の事か・・・」

「ああ。だが日本への帰国途中に突然、行方不明となり、俺たちは慌てた。二課からも相当数の捜査員が駆り出されたが、この件に関わった者の多くが死亡・・・あるいは、行方不明という最悪の結末で幕を引くことになった」

「マジかよ・・・」

その事実に、万丈はただただ驚く。

そこで万丈は気付く。

「そうか・・・全部フィーネって野郎の仕業か・・・!?」

「その線が濃いだろうな。だが、だとしても我々が彼女の正体を掴めていないのは事実だ。居場所も分からない以上、下手に動くことは出来ない」

「くそっ・・・」

雨の中、悔しがる万丈。

「そこでだ、龍我君」

「ん?」

「彼女をこちらで保護したい。この間の一件から、彼女がフィーネに狙われているのは明白。であるならば、二課で保護した方が安全だと思うのだがどうだろうか?」

確かに、その方が安全だろう。二課なら、響や翼というシンフォギア装者がいるだけでなく、戦兎―――仮面ライダービルドという心強い味方がいる。

このような布陣がいる場でなら、クリスも安全だろう。

しかし―――万丈は首を横に振った。

「いや、ダメだ」

「それは何故だ?」

「アイツには、アイツの戦いがあるからだ」

万丈は、真っ直ぐ弦十郎を見る。

「さっきの話聞いて、アイツが戦争を止めたいって気持ちは分かった。あんたらが、クリスを保護したいってのも分かる・・・でもダメなんだ。アイツには、アイツの戦いがある。それを、邪魔させる訳にはいかねえ」

拳を握りしめる。

「俺はそれを支えてやりてえ。アイツが、途中でくじけないように傍にいてやりてえ。俺は馬鹿だから、上手く言えねえし、なんかの気遣いなんて出来ねえけどよ。それでもアイツを支えてやる事ぐらいは出来る気がするんだ。まだ、アイツの事なんにも知らねえし、なんか怒らせちまう事もあるかもしれねえけど、それでも、俺はアイツの傍にいてやりたい」

そう、はっきりと口にする万丈。

「・・・そうか」

その言葉に、弦十郎はふっと笑う。

その時だった。

「キュールルールルールルールルッ!」

「うわ!?おい、やめろ!」

ふと、物陰から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「クリスか?」

「う・・・」

万丈が呼びかけると、物陰から、気まずそうな顔をしたクリスと、陽気に鳴くクローズドラゴンが出てくる。

「いたのかよ」

「いや・・・ちょっと、気になってな・・・」

「気にするって何をだよ?」

「な、なんでもいいだろ!」

顔を真っ赤にして怒鳴るクリス。

そんな中で、弦十郎の笑い声が響く。

「おっさん?」

「いや、すまない。やはり戦兎君の言った通りだったな」

「戦兎が?」

「ああ。君は、理屈じゃなく誰かの為にで動くような男だと聞かされていたからな。その分なら、彼女を保護する必要はなさそうだ」

「そうか?」

「ああ」

弦十郎がうなずく。だが、そこでクリスは口を挟んだ。

「待てよ」

その言葉で、二人の視線がクリスに向く。

「なんで、そんな簡単に敵だったアタシの為にそこまで出来るんだよ・・・」

「なんでって・・・なんでだ?」

「アタシに聞くな!いいか!?アタシは『大人』が嫌いだ!大っ嫌いだ!死んだパパとママも大っ嫌いだ!とんだ夢想家で臆病者!アタシはあいつらとは違う!被戦地で難民救済?歌で世界を救う?愛と平和?良い大人が夢なんか見てんじゃねえよ!」

「大人が夢を、ね・・・」

クリスはなおも言葉を続ける。

「本当に戦争を無くしたいのなら、戦う意志と力を持つ奴らを片っ端からぶっ潰していけばいい!それが一番合理的で現実的だ!」

必至に、自分の想いを()()()()()とするクリス。

「・・・お前が、一体どんな気持ちでこの人生、どうしてきたのか知らねえけどよ・・・俺の知る限り、その方法じゃ戦争はなくならないと思うぞ?」

「なんだと・・・」

「だってそうだろ?もし、ソイツに家族とかいたら、そいつらがお前に恨みをもって、力を手に入れようとする。それでまた潰してもまた別の奴がお前を倒そうとする。それじゃあ終わりが見えねえじゃねえか。そんな方法で、お前は本当に争いを無くせると思ってんのか?」

「そ、それは・・・」

反論できず、言葉が詰まるクリス。

「・・・良い大人は、夢を見ないと言ったな」

ふと、弦十郎が口を挟む。

「そうじゃない。大人だからこそ、夢を見るんだ。大人になったら背も伸びるし力も強くなる。財布の中の小遣いもちっとは増える。子供の頃は、ただ見るだけだった夢も、大人になったら叶えるチャンスも大きくなる。夢を見る意味も大きくなる。お前の親は、ただ夢を見に戦場に行ったのか?」

「・・・・」

何も言い返せず、黙り込む。

「違うな・・・『歌で世界を平和にする』って夢を叶えるため、自ら望んで、この世の地獄に踏み込んだんじゃないのか?」

弦十郎の言葉が、雨音に交じってクリスに伝わる。

「なんで・・・そんな事・・・」

「夢は必ず叶うって事をお前に見せたかったんだろ?」

万丈が、答える。答えて見せた。

「歌で世界を平和にする、か・・・戦兎と変わらねえぐらいの大馬鹿野郎だな。でも、そんな夢を抱けるなんてすげえじゃねえか。お前は、そんな親を嫌いだなんて言ったけどさ、世界を平和にしたいって願うお前の親がお前の事が嫌いな訳がねえ。誰よりも、お前の事を大切に思ってただろうな」

「ッ・・・」

クリスに目尻に涙を浮かぶ。必死に、溢れ出るものを抑えている。

そんなクリスの頭に、万丈は手を置いた。

「・・・!」

「上手く言えねえけどさ・・・頑張ったな」

「―――ッ!」

 

そこが限界だった。

 

クリスは、万丈に抱き着くと、声を挙げて泣いた。

雨の降る中、雪色の少女の泣き声が雨音の中響き渡る。

万丈は、突然抱き着かれた事に動揺し、どうしようかと迷うが、無理に引き剥がすなんて事は出来ず、

(すまん、香澄・・・!)

なんて事を言って、胸に顔をうずめて泣くクリスを抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日――――

まだ日が昇ったばかりの頃、戦兎はリディアンの前の道路に姿を現していた。

 

『Build Change!』

 

ビルドフォンにライオンフルボトルを差し、マシンビルダーに変形させる。

「さて・・・」

「こんな朝早くからお出かけとは、随分と今日の事を楽しみにしてたいたようで」

ふと聞こえた声に振り向けば、そこには緒川が立っていた。

「緒川か・・・」

「すみません。尾行するような真似をしてしまい」

「いや、いいよ。これから昔馴染みの所に行くんだからよ」

「昔馴染み・・・ですか・・・」

「分かってんだろ」

戦兎の顔は、言葉とは裏腹に、どこか憂鬱そうだった。

「・・・新世界。それは、一体どういう意味なのでしょうか?」

「・・・ここだけの話、お前、並行世界って信じるか?」

戦兎は、マシンビルダーに腰掛けて、そう尋ねる。

「可能性の世界・・・今ある世界とは違う道を辿った世界が他にも存在し、それが無数に存在するという話ですね」

「ああ。それで、その中に世界Aと世界Bがあるとする。その二つを合体にさせて、新たな世界Cを創る・・・それが、新世界創造の方法だ」

その言葉に緒川の表情は驚愕に染まる。

「では、この世界は、その世界Cだとでもいうんですか?」

「ああ。だけど、誰もその事を覚えていない。世界が融合しただなんて事は、誰の記憶にもない。ただ、俺と万丈を除いては、な」

創造主である戦兎と、エボルトの遺伝子を持つ万丈。

その二人だけが、旧世界の記憶を保持したまま、この世界に取り残されてしまった。

「しかし、そんな事が可能とは・・・一体、何の目的でそんな事を・・・」

「詳しくは、時間がないから言えねえけど・・・ただ言える事は、世界を救う為にやった・・・て事だけだな」

マシンビルダーに跨り、ヘルメットを被る。

「新世界を創るための力はもうない。この世界は、平和であるのが一番だ」

朝焼けの空を見て、戦兎はつぶやく。

「・・・ノイズさえいなければ、最高だったんだけどな」

「・・・・」

その言葉に、緒川は、何も言えなかった。

やがて、戦兎は誤魔化すように笑い、エンジンをかける。

「それじゃあ、行ってくるわ。もし風鳴さんが帰ってきたら言っといてくれ」

「分かりました。お気をつけて」

「ああ」

バイザーを降ろし、戦兎は走り出す。

その彼を見送りつつ、緒川は考察する。

(新世界を創造する・・・それは並大抵の力では絶対に不可能な所業・・・この世に現存するどの聖遺物を率いても、既存の物理法則を超越しない限りは、そもそも出来ない事だ・・・それを、彼はやってのけた。彼のいた世界に、それを成しえる聖遺物があったとしたならば・・・それは、決して見過ごせるものじゃない)

一人、その危険性を感じつつ、緒川は戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦兎が最初に向かったのは、『nascita』と呼ばれる喫茶店だった。

記憶とナビを頼りに、移動し、そうして辿り着いた場所がそこだった。

「・・・」

かつての旧世界で、自らの拠点とした喫茶店『nascita』。

この新世界では、一体どうなっているのか。

戦兎は、一度深呼吸をしてから、扉を開ける。

「いらっしゃいませー」

聞き覚えのある声が、聞こえた。

扉を開けて、入った先に、彼女は、いた。

「・・・美空」

石動美空。かつて、旧世界にて、戦兎たち仮面ライダーをサポートしてくれていた少女。

そんな彼女が、目の前に立っていた。

「お一人様ですか?」

「あ、ああ・・・」

だけど、彼女は彼の事を覚えていない。

この新世界で、仮面ライダー・・・旧世界に関わる全ての事は、この世界に生きる人々の記憶から消えているのだから。

「では、こちらへ・・・」

「あ、あの・・・」

戦兎は、美空を呼び止めた。

「何か?」

「いや・・・なんでもない」

「そうですか・・・ああ、では、こちらに」

カウンター席に案内される。そこで戦兎は、コーヒーを一つ頼んだ。

ふと、目の前を見れば、そこには美空の父親、石動惣一が、手慣れた手つきでコーヒーを作っている。

ふと気付けば、いつも誰もいなかった時とは違い、店は、それなりに繁盛していた。

壁には、風鳴翼・・・ではなくどこかのかなり綺麗な外国人の女性のポスターが飾られていた。

(マリア・カデンツァヴナ・イヴ・・・)

どこかの有名人だろうか。

「・・・」

「はい。お待ちどう」

「あ、ありがとう・・・ございます」

危うくため口で返事する所を寸での所で誤魔化し、戦兎はコーヒーを飲んだ。

「・・・美味い・・・」

かつてはまさしく泥水と形容出来る程まずかったマスターのコーヒーが、美味かった。

(そうか。あの時はエボルトに乗っ取られてたから・・・)

異星人と地球人の味覚は違うという事なのだろう。

「いいだろう?」

「へ?」

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ、君がさっき見ていたポスターの人だよ」

「ああ」

それで合点がいく。それほどまでに有名なのか。

「デビューから僅か二ヶ月で全米ヒットチャートの頂点に上り詰めた気鋭の歌姫!ミステリアスにして力強い歌声は国境を越え、世界中に熱狂的なファンまで多数獲得する程の世界の歌姫!彼女のCDが出た時はすぐさま買いに行ってるんだよ~」

「買いに行ってるのは私だけどね」

そこで美空が戻ってくる。

「注文だよ」

「あいよ」

そう言って惣一は美空から受け取った表を見てすぐさま作業に取り掛かる。

「ごめんなさい。お父さん、マリアさんの事になると興奮しちゃって」

「ああ、別に・・・」

「ちなみに私も大ファンだったりするんです」

あの父にしてこの娘ありか、何やら興奮気味だ。

 

旧世界とは、違う。

 

ふと、惣一が美空から注文を受けた時に、店にある冷蔵庫を開ける。

「あ・・・」

思わず声を挙げ、目を見張るも、冷蔵庫に手を突っ込んだ惣一が取り出したのは何の変哲もない食材だ。

(ああ、秘密基地もないのか・・・)

よくよく考えてみれば、エボルトがいなければあの秘密基地は創られなかったし、そもそもスカイウォールがなくなっている時点で、エボルトがいないのは明白。

であるならば、石動惣一がエボルトに憑依されていない道理も通る。

(あーくっそ、改めて実感するときついなぁ・・・)

コーヒーを飲んで、戦兎は、そう心の中で呟いた。

その視界の中で、美空が楽しく接客している様子を眺めた。

 

 

 

 

 

nascitaを出て、次に向かったのは、猿渡ファームと呼ばれる農場だった。

何人もの農家が、畑を耕し、実った作物を採集していた。

その様子を、戦兎は遠くから眺めていた。

「おうおう」

ふと、見覚えのある顔に声をかけられる。

何やら、カツアゲみたいな感じで。

「ん?」

「お前、ここに一体何の用だぁ?」

見覚えのある赤いバンダナを頭に巻いている男だ。

かつて、北都と呼ばれる街の軍隊の筆頭を務めていたとある男の部下。

三羽ガラスの赤羽と呼ばれていた大山勝だ。

そして、旧世界では、自分の目の前で死んだ男。

「いや、この辺りを通った時にこの農場があるって事を思い出してな。だから、ちょいと見に来ただけだ」

「本当かぁ?なんか別の農場で商売敵に畑荒らされたっていう話持ちあがってるからお前もその手の奴なんじゃねえのかぁ?」

「なんで俺がそんな事しなくちゃいけないんだよ・・・」

短気なのは相変わらずか。

「その辺にしておけ」

ふと、そんな赤羽を止める者がいた。

「あ、カシラ」

「・・・」

(一海・・・)

猿渡一海―――仮面ライダーグリス。

北都唯一の仮面ライダーにして、この農場の主。

誰よりも農場の事を大切に思い、そこに生きる農家たちの為に戦っていた戦士。

そして、自分の忠告を無視して禁断のアイテムを使い、そして死んだ男。

「悪かったな。うちのもんが」

「いや、大丈夫だ」

「ていうかお前、その話はもうずっと前の話だろうが。いつまで引きずってんだ」

「す、すんません・・・」

「まあいい。さっさと戻れ」

一海に言われて、自分の仕事に戻る赤羽。

「ま、好きに見ていってくれや」

「いや、もう充分に見させてもらった。良い場所だな」

「ああ、そうだろ?」

笑って自慢してみせる一海。

その様子を見て、戦兎は、心底安心するのであった。

 

 

 

 

 

それからも、戦兎はバイクを走らせ、自分の知る限りの場所を走り回った。

難波重工の工場『難波機械製作所』では、内海成彰が難波スティックと呼ばれる鉄の棒を折ろうとしていたりして、それに周りの無反応さにドン引きしてしまったり、続く政府官邸では氷室幻徳が父親の仕事をしっかりサポートしていたり、街中で見かけた滝川紗羽はジャーナリストとして奔走していたりと、自分の知る彼らとは、全く違う人生を歩んでいた。

 

スカイウォールの存在しない世界―――パンドラボックスが発見されなかった世界。

 

それだけで、こうも変わるものなのだろうか。

いや、おそらくノイズがいるというだけでも、大きく変わっている筈だ。

ただ、自分たちの知る十年―――否、歴史そのものが違うのがこの世界だ。

シンフォギア、ノイズ、特異災害対策機動部二課、聖遺物――――

あの世界では、絶対にありえなかったものばかりだ。

だけど、ライダーシステムとシンフォギアは、似て非なるものではあるが、誰かを守るために作られたという事には変わりはない。

だけど―――

「・・・・」

夕焼けに染まる空を見上げて、戦兎は、思う。

(この世界に、果たして『俺』は必要なのだろうか・・・)

なんて、思ってしまう戦兎。

自分の掌を見て、この世界における自分の異物感を改めて実感してしまう。

だが、すぐに頭を振ってその考えを振り払う。

(何考えてんだ。ノイズがいるんだ。俺が生きるのを諦めてどうすんだっての)

「はあ・・・」

思わずため息をついてしまう戦兎。

「ああー、だめだ。色々と考えちまう・・・」

なんて、呟いた時。

 

―――あんまり難しく考えてると、そのうちぽっきりいっちゃうぞ。

 

「・・・ッ!?」

また、知らない声が頭の中で響く。

その瞬間、視界が真っ白に染まる。その真っ白な視界に、戦兎は覚えがあった。

「ここは・・・」

そこは、もう一人の自分である葛城巧との対話の場である、白い世界。

いくつもの数式が上空を通り過ぎ、いくつもの扉から、これまでの記憶が流れる、真っ白な世界。

「どういう事だ・・・巧はもういない筈なのに・・・」

 

《―――へえ、ここがアンタの心の中かぁ・・・なんというか、数字がいっぱいだな》

 

「誰だ・・・?」

振り返れば、そこにはまるで羽毛のような赤毛の長髪を持つ少女がいた。

その少女を、戦兎は思わず警戒してしまう。

《警戒しても無駄だと思うよ。なんだか知らないけど、アタシも気付いたらここにいたからさ》

「気付いたら?ってか、お前は誰だよ」

《アタシ?アタシは・・・っと、なんか知らないけど時間切れみたいだぞ》

「時間切れ・・・あ」

少女の体が、消えかけている。

いや、それだけじゃない。視界が暗くなってきている―――というよりは、別の景色が―――自分が本来見ているべき景色が見えてきた。

《まあ、アタシが誰かだって事はまた今度という事で》

「おい!とりあえず名前だけは―――」

戦兎は、少女に手を伸ばす。

その少女は、ふっと笑みを浮かべると、言葉を紡いだ。

 

 

 

《―――生きるのを諦めるな》

 

 

 

「―――ッ!?」

気付けば、戦兎は、先ほどまでいた公園に立っていた。

あの白い世界には、もう入れない。

「なんだったんだ・・・」

訳が分からない。あの世界には、本来なら自分と巧しか存在しない筈だ。

そして巧は、この世界の巧の元へ戻っていった。きっと、スカイウォールの事も忘れているだろうけども。

だから、もうあの白い世界は創られないはずだった。

だというのに、あの少女が、白い世界に突然―――

「訳分かんねえ・・・」

流石にこればかりは戦兎には分からなかった。

あの少女が一体誰なのか。一体どうやってあの白い世界にやってきたのか。

分からない事は多い。だけど、彼女が最後に残した言葉は、不思議と胸の中に残っていた。

 

―――生きるのを諦めるな

 

「・・・そうだな」

戦兎は、ふっと笑う。

「正義のヒーローが諦めたら、まずいもんな」

すっかり日の沈んだ空を見上げて、戦兎は、そう呟いた。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!

「実は、これを渡したくてな」

翼からライブに招待される戦兎。

「もう大丈夫なのか?」

そのステージは、かつてのツヴァイウィングの最後の舞台。

「そんで、これからどうるすんだ?」

一方、クリスと行動を共にする万丈たち。

「運が悪かったな」

そこへ現れるものとは―――

次回『歌女のナイトフェスティバル』

「負ける気がしねえ!」


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歌女のナイトフェスティバル

未「ノイズが蔓延る新世界で、仮面ライダービルドこと桐生戦兎は、同じく仮面ライダークローズである万丈龍我、シンフォギア装者にして私の親友立花響、そして、同じくシンフォギア装者であり日本が誇るトップアーティストである風鳴翼と共に、ノイズと戦う日々を送っていた」
黒グニール「そして、そんな桐生戦兎だけど・・・ちょっと待ってなんで私まだ黒グ―――」
戦「ちょーっと野暮用で里帰りをしていたのでしたー!」
黒グニール「待って、お願いだから私の話を」
万「んでもってその前日にはクリスはやっと心を開いてくれたのでした」
黒グニール「待て待てお願いちょっと待てどうして私のはな」
ク「う、うるさい!いいか!あの時のは色々と溜め込んでたものがあったからついうち抱き着いちまっただけで」
黒グニール「いやだから話w」
響「もークリスちゃんったら恥ずかしがっちゃって~」
ク「うっさい!」
黒グニール「ねえ、はn」
翼「はあ、バイクで行くなら私もツーリングしたかったな・・・」
黒グニール「あn」
ク「ハッ、どーせ後で行ったんだろうっていうオチになるんだろ?」
黒グニール「・・・」
農具「まあバイクの免許持ってるのは翼さんとライダー全員デスからね」
工具「いずれ行けるから安心」
黒グニール「・・・私泣いていいかしら!?」
戦「と、いう訳で」
黒グニール「無視!?」
戦「第十七話を」
黒グニール「泣く!泣くわよ!?泣くからね!?いいのね!?」
戦「どうぞ!」
黒グニール「うわぁぁああぁぁあああん!!」(号泣&逃亡
農具工具セット「「先に○○が出た報い」デス」
無性「なお、意味のないネタバレ隠しによるアドリブです」


戦「あ、そういや前回に対する感想の数が十を超えたぞ!」
翼「読者の皆様には感謝しかありません。是非とも今後ともこの小説をよろしくお願いいたします」
作者「ありがとうございます!」


――――翌日――――

 

 

「桐生」

「ん?」

ふと、戦兎の研究室にて、翼が戦兎に話しかけてくる。

「どうかしたのか?」

「実は、これを渡したくてな」

そう言って渡されたのは、一枚のチケット。

「これは・・・ライブのチケットか?」

「出来れば万丈にも渡したかったんだが、今は雪音の事で手一杯なんだろう」

「もう大丈夫なのか?」

「ああ。アーティストフェスが十日後に開催されるのだが、そこに急遽、ねじ込んでもらったんだ」

「倒れて中止になったライブの代わりって事か・・・」

あの日、絶唱を使わなければ、予定通り行われていた筈のライブ。

その代わりと思えば、安いものか。

「それで、会場は・・・」

場所を確認すると、そこは、二年前、ツヴァイウィング解散の原因となったライブ会場だった。

「お前・・・」

「過去は、いつか乗り越えていかなければならない。この会場が、私の新しい第一歩なんだ」

翼は、戦兎を見上げる。

「それを、桐生にも見届けて欲しい」

確かな覚悟の籠った眼差しと、自分は大丈夫だと言う笑顔。

その決意の固さに、戦兎も答える。

「分かった。見に行くよ、ライブ」

「ありがとう。貴方が来るのを、楽しみにしてる」

それは、とても小さな約束なのかもしれない。

だけど二人にとっては、とても大切な約束だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方で、

「はむ・・・んぐんぐ・・・」

アンパンを片手に頬張りつつ、クリスと万丈、そしてドラゴンは公園のベンチにて休息をとっていた。

「そんで、これからどうするんだ?」

「もう一度フィーネの所に戻る。んでもって叩き潰す」

「こういうのって、色々と協力してもらった方がいいんじゃねえか?」

「したければ好きにしろ」

万丈の片手と、クリスのポケットには、弦十郎から渡された通信機が入っている。

彼曰く、いつでもこちらからサポートできるように、だそうだ。

ただし、

『いいか。一応アタシが信じてんのは龍我だけだ!まだ全ての大人を信用した訳じゃないから、そこの所は間違えるなよ!』

と、クリスは言っていた。

ようは照れ隠しである。

「アタシは、アタシが信じた奴の為に戦う。争う理由もないんだろうけど、争わねえ理由もねえ。そこの所は間違えんなよ」

「頑固過ぎんだろお前・・・」

「キュル・・・」

相変わらずつっけんどんなクリスに呆れる万丈とドラゴン。

それはまあいいとして。

「とにかく、あの野郎の屋敷に乗り込むのは良いが、問題なのはアイツをどうやって倒すかだろ?なんか良くわからねえバリア張るし、あのネフ・・・なんとかの鎧とか着て結構強ぇし、どうするんだよ?」

「ネフシュタンの鎧な・・・あの鎧には自己修復機能があって、どんなに傷つけてもあっと言う間に治っちまう。ついでに使用者の体を食いつくして融合しちまう性質も持ち合わせてる。下手すりゃ鎧に殺されかねない」

「じゃあ自滅を待てば・・・」

「あの女が何の対策もしてねえ筈ねえだろ。きっと、なんらかの方法でどうにかしてるはずだ」

「うーん・・・」

本格的に考え出す万丈。そんな万丈にクリスは溜息を一つつく。

「お前馬鹿なんだからそんな難しく考えるなよ」

「馬鹿っていうな。せめて」

「筋肉をつけろ、だろ?はいはい分かってますよ筋肉馬鹿」

「ぬぐ・・・」

何やら、揶揄われているようで面白くないと思ってしまう万丈。

だけど、不思議と悪い気はしていなかった。

それが証拠に、ふっとクリスが吹き出すと万丈も笑い、また反響するようにクリスは小さく笑いだし、万丈も笑う。

「そういや、今日はあそこがやけに明るいな」

「ん?そうだな・・・なんでだ?」

当然、翼のライブだからである。

しかしそんな事を知らないのは当然であり、二人は首を傾げるばかりだった。

「さて、そろそろ暗くなってくるし、今夜寝る場所探すか」

「だな」

そう言って立ち上がった万丈とクリス。

 

―――だが、そこでなんの偶然か転がってきたビンをクリスが踏んでしまう。

 

「は・・・?」

「え」

当然、ビンで足を滑らせたクリスは、そのまま倒れていき、

「あぶねえ!」

寸での所で万丈がその手を掴み、一気に引き戻す。

「うわ!?」

その反動でクリスは今度はつんのめり、そのまま万丈の体に抱き着く形で寄り掛か手しまう。

そして、クリスのその豊満な胸が、思いっきり万丈の胸板に押し付けられる。

「「~~~~!?」」

当然、異性同士である二人にはそれは溜まったものじゃない。

ばっと離れて互いにそっぽを向いてしまう。

「な、なんかすまん・・・」

「あ、アタシの方こそ・・・」

どうにも気まずい空気になってしまう。

ただ、ここで二人の差を解説しておくと、まず万丈は年頃の女性、それもかなり良い部類に入る美少女に抱き着かれ、さらには学生にしては巨大すぎる乳房を押し付けられた為にどこぞの中学生男子のように照れている。

だが、クリスは違った。

先ほどから心臓がバクバクと破裂するんじゃないかと激しく脈打っており、その顔はリンゴのように真っ赤になっており、さらに体は沸騰するんじゃないかと煮え滾っていた。

頭からは湯気が出ている始末だ。

なんだか知らないが、あの一件以来、どうにも万丈が気になってしまう。

それは、まあ不可抗力とは言え、万丈の腕の中で泣いてしまったが、あれはあくまで自分を慰めてくれたのであって、決して何か他意があった訳ではない。

それは彼の性格から考えると、そんなに深くは考えていない筈だ。

だが当然、こっちにだって何か邪な考えがあった訳でもない。

そう、だから自分がこれほど動揺する理由はないのだ。

ない、筈なのだが・・・

(なんでこんなに体が熱いんだよ・・・!)

訳が分からないからこうなっているのである。

しかし、そんな時間はすぐに終わりを告げて、突如として唸り出したクローズドラゴンに二人は思わず身構える。

「「ッ!?」」

身構えれば、影から出てくるのはノイズ、ノイズ、ノイズ。

「へっ、こんな時にお出ましとは、運が悪かったな」

しかし、大量のノイズを前にしても、クリスは怖気づくことなく、むしろ不敵な笑みを浮かべてペンダントを取り出す。

「今のアタシは、すこぶる調子が良い!」

それと同時に、万丈もビルドドライバーを腰に巻く。

「そりゃよかった。俺も心置きなくやれるってもんだ!」

「キュールルールルールルールルッ!」

ドラゴンが万丈の手の中に納まり、万丈は、この間出来てしまった真っ赤なボトル―――名づけるなら『イチイバルレリックフルボトル』をクローズドラゴンに差し込む。

すると、青かったクローズドラゴンのボディが鮮血の如く真っ赤に染まる。

そのウェイクアップスターターを押して、起動する。

 

激唱ゥッ!』

 

クロォーズイチイバルッ!!!』

 

ボルテックレバーを回し、四方向にスナップライドビルダーを展開させる。

 

『Are You Ready!?』

 

「変身!」

 

「―――Killter Ichaival tron―――」

 

激唱戦場クロォーズイチイバルッ!!!』

 

イェェエイッ!!ドッカァァァァアンッ!!!』

 

 

目の前に立つノイズと、二人の真っ赤な戦士。

「行くぜクリス!」

「オッケー龍我!」

「「負ける気がしねえ!」」

そう言い、二人はノイズに向かって駆け出していく。

 

 

 

 

 

 

 

その一方、戦いが始まっているとは露知らずの戦兎は、ライブ会場に訪れていた。

「これが噂に聞くペンライトって奴か・・・」

若干、ライブというものが新鮮でわくわくしている天才物理学者。

それが証拠に彼の両掌には同じ色で発行するタイプのペンライトが一本ずつ握られていた。

「そういや、翼の歌、ノイズとの戦い以外で生で聞くのはこれが初めてだな・・・」

そう思い出し、やがて戦兎は頬に笑みを浮かべる。

「よし、今日は脇目も振らずに思いっきり楽しみますか!」

会場に入る前のブースにて、戦兎は腕を突き上げてそう言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ろくに照明も付つけず、真っ暗なライブ会場―――

そこへ突如として照明がつき、音楽が流れれば、会場にいる観客は一斉にペンライトをつけ、歓声を上げた。

そして、ステージの端から歩み出てくるのは、日本が誇るアーティストにして歌姫、風鳴翼。

その姿を、青を基調とした衣装で着飾り、ただゆっくりと、ステージの中央に立って見せる。

巻き起こるの歓声の中、翼は、歌を紡ぐ。

 

「―――Deja-vuみたいなカンカク、制裁みたいなプラトニック―――」

 

 

 

同時刻―――

 

「オラァ!」

ブラストブレードをもってクリスに近寄るノイズを切り払うクローズ。

クリスはガトリングガンをもって遠くの敵を一掃する。

白のようなノイズが砲撃する。

「ッ!?」

 

『Set Up!Blast Shooter!』

 

その砲弾をクローズが打ち抜く。

「クリスには一切近付けさせねえ・・・!」

しかしそれでも、他の雑魚ノイズは迫ってくる。

そのノイズをクリスがガトリングで一薙ぎするも、上空に飛び上がったノイズだけは仕留められず、そのまま上空から強襲を受ける―――

「やあ!」

寸前で響が飛び蹴りを放って直線状のノイズ全てを一掃する。

「響!」

「遅くなりました!」

すぐさまノイズと向き合う響は、腕のガジェットを引いてスタンバイし、一気にノイズの群れの中を駆け巡る。

放たれた必殺の拳はノイズの群れを一気に薙ぎ払う。

そこへ、城型ノイズの砲撃が響を襲う。しかし、その砲弾にクリスが銃弾を浴びせる。

「貸し借りは無しだ!」

クリスはそう叫び、さらなる敵へその銃口を向ける。

「うん!」

それが無性に嬉しくて、響は元気よく返事を返す。

響の打撃がノイズを吹き飛ばす。クローズの斬撃がノイズを斬り捨てる。クリスの銃撃がノイズを薙ぎ払う。

 

 

 

サビに、入る―――

 

 

 

その瞬間、会場のボルテージは一気に引きあがり、歓声が轟く。

 

 

 

拳を振り上げた響が、地面に向かってその拳を振り落とす。

衝撃が前方へ一直線に進み、遠くの地面を砕いて城型ノイズを沈める。

その間にクリスが周囲のノイズを掃討し、そしてクローズは、ボルテックレバーを回しながら城型ノイズに迫っていた。

 

『Set Up!Blast Break Gun!』

 

その最中、変形したブラストモービルがクローズの右脚に着装される。

 

『Ready Go!』

 

飛び上がったクローズの右脚が赤い光の粒子が迸る。

それらが形を成し、やがて一本のライフルを生成。

 

 

「行くぜぇぇえええ!!」

次の瞬間、ライフルの撃鉄が降ろされ、クローズがノイズに向かって打ち出される。

 

ブラステックフィニッシュ!』

 

叩きつけられた一撃。貫く衝撃。だがそれだけに留まらず、足の装着されたブラストモービル・ブラストブレイクガンから、高密度のエネルギー弾が叩き込まれる。

それが止めとなり、ノイズを貫通し、一気に破壊する。

破壊されたノイズは一気に炭素の塊となり、崩れ去っていく。

 

 

 

 

 

 

それと同時に、翼の歌は終わり、歓声が会場に響き渡る。

 

 

 

 

 

その歓声の中で、翼は、話し出す。

「ありがとう皆!」

始めに、感謝。

「今日は思いっきり歌を唄って、気持ちよかった!」

そして、まっさらな本音を言う。そこで一旦、深呼吸をしてから、翼は、意を決して言う。

「こんな思いは久しぶり。忘れていた」

その言葉に、会場は静まり返り、そこには、翼の言葉のみ流れ出す。

「でも思い出した。私は、こんなにも歌が好きだったんだ」

忘れていた事、思い出した事。

「聞いてくれる皆の前で歌うのが、大好きなんだ」

響と出会い、万丈と出会い、そして、戦兎と出会って、思い出した事。

「もう知ってるかもしれないけど、海の向こうで歌ってみないかって、オファーが来ている。自分が何のために歌うのか、ずっと迷ってたんだけど、今の私は、もっと沢山の人に歌を聞いてもらいたいと思っているの。言葉は通じなくても、歌で伝えられる事があるならば、世界中の人たちに、私の歌を聞いてもらいたい」

ずっと悩んできた事。そして、やっと決心した事。

「私の歌が、誰かの助けになると信じて、皆に向けて歌い続けてきた。だけどこれからは、皆の中に、自分も加えて歌っていきたい」

全てが変わってしまったあの日。だけど、また変わってしまった、あの出会いがあった。

「だって私は、こんなにも歌が好きなのだから」

あの頃から変わらない、本当の自分の気持ち。

「たった一つの我儘だから、聞いてほしい・・・」

ただ一人の、少女の想い。

「―――許してほしい」

 

その少女の想いに――――

 

 

《―――許すさ、当たり前だろ?》

 

 

「―――ッ!」

耳に届いた、友の声。

次の瞬間、会場に、止めどない歓声が上がった。

そのどれもが、「頑張れ」や「いいよ」と言う、翼を元気づけてくれる言葉ばかりだ。

そして、その中に、ただ一人、片手を上げてピースサインを送る男の姿もあった。

その声に、翼は、涙を流して、一言だけ呟いた。

「・・・・ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クリスちゃーん!」

「ふん」

抱き着こうとする響を躱し、クリスはさっさと立ち去る。

「ああ!待って!」

そんなクリスを呼び止めようとする響だが、クリスはびっと響を指差す。

「いいか!今回は助けてやったがアタシはお前らと慣れ合うつもりはねえ」

「龍我さんとは一緒にいるのに?」

「不可抗力だ!でだ、確かにアタシたちに争う理由なんてねえのかもしれねえが、争わねえ理由もねえ。人間がそんな簡単に手を取り合え―――」

が、そんなクリスの言葉を遮って響はクリスの手を取る。

「なっ!?」

「出来るよ。誰とだって仲良くなれる」

「そ、そんな簡単に・・・」

「どうして私にアームドギアがないんだろうって思ってた。半人前は嫌だなって思ってた。だけど、今は思わない。だって、こうしてクリスちゃんの手を握りしめられるんだから」

「・・・・」

戸惑うクリス。しかし、そんなクリスの頭にがっと万丈が手を置く。

「うわ!?」

「ま、そう言うこった。大人しく認めちまえ、こいつは俺以上の馬鹿だってな!」

「あ!龍我さん酷い!」

「どっちかって言うと龍我の方が馬鹿だろ!」

「馬鹿って言うな」

「筋肉付けろだろ筋肉馬鹿!」

「あ、そういえばクリスちゃん龍我さんの事はちゃんと名前で呼んでるんだ!」

「ッ!?(ギク)べ、別にいいだろお前には関係ない」

「私の事も名前で呼んで~」

「だぁあ!鬱陶しい!」

響に詰め寄られて、クリスの叫びが夜空に広がる―――

 

 

 

 

 

 

ライブが終わり、観客が口々に今日のライブの事を話しながら去っていく。その様子を、戦兎は入口から離れた所で見ていた。

 

《―――久々に、翼が歌ってるのを見れた》

 

また、あの白い世界に意識が飛ぶ。

 

「久々・・・」

《ああ、アタシがアイツの隣にいないってのが、なんか凄く悔しいな》

「・・・」

目の前に座り込む彼女は、泣いていた。

「・・・お前は、もしかして・・・」

《ごめん、また時間切れみたいだ》

視界がホワイトアウトする。

《もう少し、時間が取れると良かったんだけどな。流石にここで一人でいるのは結構退屈だからさ》

そして、視界がライブ会場に戻る。

「・・・・出来る限りの努力はする」

「戦兎先生!」

そこで、未来がやってくる。

「未来?響も一緒だと聞いたんだが・・・」

「響はノイズが現れたからそれの対処に・・・」

「なぬ・・・!?」

ノイズだと?そんな事一度も聞いていないぞ。

「おい本部!」

『いやーすまん。響君が君と翼には言わないでくれって言っててな。ついつい意見を受け入れてしまった』

「ふっざけんな!?その様子じゃ上手くいったから良かったものの、もしアイツに何かあったら・・・」

『一応、現場に龍我君やクリス君もいた。だから、対処は無事滞りなく終わったよ』

「お、俺のヒーローとしての活躍の場が・・・」

その場にがっくりと膝をつく戦兎。

「あ、アハハ・・・」

それに未来は苦笑するしかなかった。

「・・・・だ」

「はい?」

「やけ食いだァ!」

「うわ!?」

いきなり起き上がってそう叫んだかと思うと、未来の方を見る。

「万丈から聞いたぞ!なんかすごく美味いお好み焼き屋があるんだってな!?」

「は、はい、ありますけど・・・」

(あれ?この間行った筈だよね?もしかして覚えてない・・・?)

「よし、そこでやけ食いするぞ!案内しろ!」

「ええ!?わ、私これから寮に戻って晩御飯の支度を・・・」

「じゃあ場所だけでも教えてくれ!あーくっそぉ!俺の出番がぁぁあぁああ!!!」

その場に、戦兎の悲痛な叫び声が響いた。

 

 

 

 

 

翼が決意を示したライブの夜―――物語は、着々と進んでいた。

 

 

 

 

 

そして、戦兎は気付かなかった。

 

 

 

ポケットの中にあるラビットフルボトルが、ほんの微かに青くなった事を。

そして、その青がすぐに溶けるように消えてしまった事を―――

 

 

 

 

 

決戦は―――近い―――




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!

「なんだよ・・・これ・・・」

フィーネの屋敷に再度突入した万丈とクリス。しかしそこにあったのは何人もの武装したアメリカ人の遺体だった。

「カ・ディンギル」

その言葉の意味とはなんなのか。

「現れやがったか・・・!」

そして現れる巨大ノイズ。

「変身!」

その脅威に今、仮面ライダーとシンフォギア装者が立ち向かう。

次回『リンクした手だけが紡ぐもの』

「「「「―――託したッ!」」」」













一つ、思いついたネタ(残酷注意)




ノイズによって文明が破壊された日本。
生き残った人々はただ、今日の食糧を求め、明日へとその命を繋ぐためにただ生きる。
されどノイズは際限なく溢れ出し、人々はただ、ノイズに怯え暮らす。
その地獄で、少女がただ一人、戦い続ける。
されど少女は自らを『人』とは思わない。
見た目が『少女』であろうとも、彼女は決して自らを『人』としない。

あの日、親友を食べたことを思い出せる。

あの日、怪物を止めようとした少女を食べた事を思い出せる。

あの日、その少女の姉にして自分の姉のような存在だった少女を食べた事を思い出せる。

あの日、恩人を自ら食べてしまった事を思い出せる。

故に彼女は自らを人としない。
その身は人ではなく、人の形をした怪物と例える。
なれば彼女は一体何者か――――


そしてその世界にも、異世界の装者が降り立つ。


「―――別の並行世界のあたしデスか」

「・・・あた・・・し・・・?」



―――少女は、怪物(じぶん)と邂逅する―――



戦姫絶唱シンフォギアXDU―――『偽物の神刃』



「あたしは――――ネフィリム」





―――結局の所・・・いわゆる『ネフィリム切歌』です。


やる気はないし、誰かに書いてほしいなって思ったネタ。(誰か書いてくれてもいいんやで?)


丁寧に設定並べると(変更OK)

ネフィリム切歌

暴走したネフィリムがF.I.Sの研究所にて切歌を捕食、そのまま調、マリア、セレナすら捕食した所でとある聖遺物を取り込み、その姿と記憶を『暁切歌』として引き継いで変化させた。
しかし、暴走時、ついでネフィリムだったころの記憶がその時完全に抜け落ちており、自分が調たちを食べてしまった事は知らなかった。
ナスターシャが意図して隠し、また調たちを失った事で切歌がグレ状態になってしまい、憎悪の対象であるネフィリム(自分だとは知らない)もいない上、ナスターシャが切歌に恨まれかねない教育をし続けた事により(真意は切歌に自分がネフィリムを悟らせないため、あえて自分に憎しみの矛先を向けさせていた)、かなり陰気な生活を送る(いわゆる文スト中島敦状態)。七年後のある事件を経てネフィリムとして覚醒して暴走してしまい、ナスターシャを殺害、死に際の一言で自分がネフィリムだと知る。
その後、自身のギアである『イガリマ』を捨てる、というか食べる事によって体内に保管し、二度と使わない事を決意、偽物である事を刻み付けるために左目を斬り潰す。
以降、F.I.Sに追撃されながらも世界を流れ、ルナアタックによって世界唯一のノイズへの対抗手段と成り果てる。
それから、色々あって世紀末状態となった日本に住み着き、残った住民を守るために日々『偽物』としてノイズや錬金術師と戦っている。

外見
切歌本来のお気楽な性格は完全に死に、愛想笑いや力のない言動を見せる。渾身のジョークもガチに笑えないブラックジョーク。
手入れをしていない為に髪はありえない程ぼさぼさで伸び放題になっている。もはや手遅れレベルである。
せめて偽物らしく暗い緑を基調とした服装を身に纏う。
眼が死んでいる。
痩せてはいない。

スペック
イガリマを捨て、代わりに()()()()()()ゲイ・ボルグを扱う(なんでかって?ネフィリムは神話によれは半神半人だからさ)
今までに食べた聖遺物の能力を引き出し、自在に操る事が可能。しかしマリアのガングニール、セレナのアガートラーム、調のシュルシャガナは食べてしまっているが、罪悪感故にあえて使わない。
今までに捕食した聖遺物の特性と名前を全て記憶する事、さらに一度見た聖遺物の解析と理解が可能(ある聖遺物の特性)
さらに、食べた聖遺物をアームドギアとして顕現させる事が出来、一度に顕現させられる数は彼女自身が捕捉出来る限り、際限はない上、触れずに浮かせて遠隔操作も可能。
また、ギャラルホルンすら捕食した事がある為、並行世界の観測を任意でする事が出来る。
戦闘能力は素の状態で装者と互角、それ以上となる。
ギアを纏えばXDと同等以上の力を発揮する(捕食した聖遺物の多さと特性故に)

未だ暴走して本来の姿に戻る可能性があり、どういう訳か煙草を吸っているとネフィリム化を抑える事が出来る。
ちなみにネフィリム化すると、しばらく暴れ続け、やがて元に戻るという謎仕様。
暴走時は制御は出来ないが記憶は残る。

ネフィリムであって切歌本人ではないため、並行世界の切歌に影響を与える事はない。


以上、出来れば誰か書いて(叶いもしない願い

では次回も楽しみに!


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リンクした手だけが紡ぐもの

戦「人々を脅かす特異災害『ノイズ』の存在する新世界にて、仮面ライダービルドこと桐生戦兎は、通称『特機部二』と呼ばれる組織と協力し、ノイズと戦う日々を送っていた」
万「おお、なんか今日は真面目だな」
戦「最近カオスな内容が多かったからな。たまにま真面目にやってもばちは当たらないだろ」
ク「普通にネタがなくなったって言えばいいだろ」
響「ああだめだよクリスちゃんネタバレは」
未「そうだよ。そんな傷ごと抉るようなこと」
作「ぐふっ・・・」
翼「ああ、作者が倒れた・・・だが問題はないか」ムジヒ
戦「はいはいディスんのはそこまでにして、さてどうなるd―――」
黒グニール「ちょぉっと待ったぁ!」
戦「うお!?なんだよ黒グニーr」
黒グニール「私は黒グニールなどでない!」
万「まだ引きずってんのかよ・・・」
黒グニール「せっかく、折角本編で名前が出てきたのに、どうしてまだ私の名前が黒グニールなの!?おかしいでしょ!?」半泣き
戦「あーもううるさいな。だったら『タヤマ』に改名してやるから、それでいいだろ?」
タヤマ「何よタヤマって!?・・・ってもう名前が変わってる・・・?」
戦「ちなみにこれは『ただの やらしい マ〇〇』の略だ」
タヤマ「何気に酷くない!?ていうか私のどこにやらしい要素があるのよ!?」
響「うーん、何気に装者の中で一番スタイルいいからじゃないですか?」
ク「ついでにあの訓練服や水着はかなりの色気抜群だったよなぁ?」
タヤマ「うわぁぁん!皆がいじめるぅぅぅう!」逃走
翼「と、いう訳で、第十八話をどうぞ!・・・あれ?あらすじ紹介、今回も出来てなくないか?」


「じゃあ、またあとで」

そう言って、翼は走り去っていく。仕事に行くようで、その前に一度こちらに声をかけておきたかったらしい。

「・・・・有名人と仲良くなるとは、俺も随分と俗世に染められたもので」

あの頃は、仮面ライダーとして、あまり多くと関わっていく時間は無かった。

しかし、それでも多くの人々と関われたとは思っている。

敵でも味方でも、はたまた関係ない人間でも。

「・・・」

ふと、思った。

 

人は、誰かと関わらずには生きていけない。

 

誰かと関わり合う事でしか、相手の事を理解出来ず、ただ自分を認識する事も出来ずに生きていく事になる。

 

例え、争い憎み合う事になっても。

 

 

「・・・・それでも」

戦兎の本質は変わらない。

「俺の『愛と平和』は、絶対に揺らがない」

ただ、それだけを信じて、戦兎は今日も生きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異変を感じたのは、フィーネの館の扉をくぐった時だった。

「「ッ!?」」

二人は思わず鼻の奥を突いた匂いに気付いた。

その匂いに、二人は覚えがあった。

それを認識した途端、二人は走り出し、あの日フィーネが待ち構えていた場所へと駆け込む。

そこには―――

「なんだよ・・・これ・・・」

何人もの武装した男たちが、急所から血を流して倒れ、絶命していた。

クリスや万丈にとっては、見慣れた光景だ。

「何が、どうなって・・・」

部屋に入り込み、探索しようとすると、もう一人の気配を感じ、二人は思わずそちらを向く。

そこには、弦十郎がいた。

「ち、ちが―――」

「クリスは何もやってねえ!」

万丈がクリスを庇うように二人の間に割って入る。

「龍我・・・」

次の瞬間、扉から武装した黒スーツの男達が入ってきて、思わず身構える万丈だったが、黒スーツの男たちは二人を素通り、遺体の確認を始める。

「誰もお前たちがやったなどと、疑ってはいない。全ては、君や俺たちの傍にいた、()()の仕業だ」

「彼女・・・誰だよソイツは―――」

「風鳴司令」

ふと、黒スーツの一人が弦十郎を呼ぶ。

弦十郎がそちらに向かえば、そこには一人の遺体と、その上には一枚のメッセージが掛かれた紙が置いてあった。

それは、赤い―――おそらく口紅などで書いた―――文字でこう書かれていた。

 

『―――I LoVE YoU SAYoNARA―――』

 

「これは・・・」

「・・・なんて書いてあるんだ?」

その場にいる者たちがずっこける。

「おま、これも読めねえのかよ!?」

「仕方ないだろ分かんないだから!」

勝手に言い争うクリスと万丈に呆れる弦十郎含む黒スーツ一同。

そんな中で、その死体を見ていた黒スーツの男がその紙を拾い上げた、その瞬間、

「キュルー!」

ドラゴンが叫び、突如として部屋が爆発する。

「ッ―――!!」

その爆発をいち早く勘で察知した万丈をクリスを抱き寄せると、ポケットのドラゴンフルボトルを取り出す。

爆炎が舞う中、天井が崩れ、これまた巨大な瓦礫が降ってくる。

これに踏み潰されれば、確実に死ぬ。

であるならば迎撃あるのみだが、仮面ライダーに変身する時間が惜しいのも事実。

かと言ってドラゴンフルボトルを使って殴っても振り足りなさから質量に負けて圧し潰される。さらに、今万丈の腕の中にはクリスがいる。

だから、一歩間違えれば、即死―――

だが、万丈は―――

(今の俺なら―――!!)

 

ハザードレベル7――――ボトルの進化が可能な数値

 

握りしめたドラゴンフルボトルに、自分の力が収束するようにイメージする。

念じた瞬間、手の中のドラゴンフルボトルが銀色に輝き出す。

そして、その輝きを、一気に振ってきた瓦礫に叩きつけて―――粉砕した。

「ウォリヤァァアア!!」

振り上げられた拳は岩を穿ち、破壊する。

やがて爆炎が収まり、弦十郎はともかく、他の黒スーツも無事だった。

「二人とも、無事か!?」

「ああ、どうにかな」

「・・・」

万丈は本能的に銀色に輝くドラゴンフルボトルを隠すようにポケットに入れて、そう返事を返す。

だが、クリスは呆然としたままだった。

「・・・・ん?どうしたクリス」

「・・・え、あ、ああ・・・アタシも大丈夫だ」

「それなら良かった」

弦十郎は周囲を見る。

「中々、味な真似をしてくれる」

「何がどうなってるんだよ・・・」

「なんとも言えん・・・が、今はとにかく、急いだ方が良さそうだ」

「そうか・・・」

「うむ・・・それで、いつまでくっついているつもりだ?」

「え?」

「は?」

そこで二人は、爆発が起こった際にぴったりくっついたままの状態である事に今更気付く。

「「ッ!?」」

思わずバッと離れる二人。

正確には、クリスが万丈の腕から逃れるように暴れたのだが。

「とにかく、俺たちはこれから本部に戻る・・・が、お前たちはまだ」

「ああ、一緒にはいけない」

やや赤くなった顔を向けつつ、クリスはそう答える。

「そうか。ただ、お前は、お前が思っている程独りぼっちじゃない。実際に龍我君が傍にいるし、お前が一人道を行くとしても、その道は遠からず、俺たちの道と交わる」

「今まで戦ってきた者同士が、一緒になれるというのか?世慣れた大人が、そんな綺麗事言えるのかよ?」

「言ってるな。アイツは」

万丈がなんの悪びれもせずに断言する。

そのすまし顔が無性に気に入らないクリス。

「アイツって誰だよ・・・」

「戦兎だよ。ほら、あの赤と青の仮面ライダーの」

「ああアイツ・・・あんま関わった事ねえから良く分かんねえな」

「会ってみれば分かる。彼は筋金入りの平和主義者だ」

「はっ、筋金入りねぇ・・・だったら会いたくなってくるな。いつまでそんな世迷言言ってんだって言ってやりたくなるぜ」

「お前も筋金入りのひねくれ者だな・・・」

クリスの物言いにがっくりとする万丈。

「ふっ、その分なら問題はないだろう。ノイズが出たら追って連絡する」

「分かった。そん時は任せとけ」

「やるとは言ってねーよ勝手に決めんな!」

怒鳴るクリスだが万丈はものともしない。

「それじゃあ俺たちは撤収する。何か分かったら教えて―――」

「―――カ・ディンギル」

「・・・何?」

クリスの言葉に、弦十郎が止まる。

「フィーネが言ってたんだ。カ・ディンギルって。それが何なのか分かんないけど、そいつは、もう完成しているみたいな事を・・・」

「ああ、そういやそんな事も言っていたな」

あの時、フィーネは確かにカ・ディンギルは完成していると言っていた。

それが一体何を意味するものなのかは分からないが、とにかく、ろくでもないものであることは確かだ。

「カ・ディンギル・・・」

弦十郎が、咀嚼するようにその言葉を口にする。

「後手に回るのは仕舞いだ。こちらから打って出てやる・・・!」

弦十郎はそう呟き、そして立ち去って行った。

その後ろ姿を、万丈とクリスは、ただ見送った。

 

 

 

 

 

 

二課本部から連絡が入り、戦兎と翼は通話を繋いだ。

『はい、翼です』

『響です』

「戦兎でーす」

おそらく、検討のついた敵についての調査の報告だろう。

『収穫があった』

どうやら、何かしらの情報を手に入れたようだ。

『了子君は?』

『まだ出勤してません。朝から連絡不通でして・・・』

(連絡不通だぁ?)

顎に手を当てる戦兎。

『そうか・・・』

『了子さんならきっと大丈夫です。何が来たって、私を守ってくれた時のように、ドカーンとやってくれます』

そんな事を言う響に、すぐさま翼が否定を入れる。

『いや、戦闘訓練をろくに受講していない櫻井女史に、そのような事は・・・』

「ありゃ俺と違って根っからの研究者だからな」

(ただの、で済めばいいんだが)

そう思う戦兎。

『ほえ?師匠とか了子さんって、人間離れした特技とか、持ってるんじゃないんですか?』

「んだそりゃ・・・」

弦十郎は分かる。何せ拳一つで翼の一撃を粉砕する程だ。

だが、了子もは、とは一体どういう事なのか。

戦兎は、了子のあの力を目の当たりにはしていないから当然なのではあるが。

ふと、そこで新たに通信が入る。

『ん?』

『お?』

「おう?」

『やぁっと繋がったぁ』

了子だ。

『ごめんね、寝坊しちゃったんだけど、通信機の調子が良く無くて』

(通信機の調子が・・・?)

この間壊れていたと言っていたが、修理した影響なのだろうか。

だが、どうにもそれが真実とは思えなかった。

『無事か了子君、そっちに何も問題は?』

『寝坊してゴミは出せなかったけど、何かあったの?』

『良かったぁ』

響は安心している。だが戦兎は、どうにも拭いきれない疑心のまま、その会話に耳を傾ける。

『ならば良い。それより、聞きたい事がある』

『せっかちね。何かしら?』

『・・・・カ・ディンギル』

(カ・ディンギル?それって確か・・・・)

『この言葉が意味する事は?』

弦十郎が了子に尋ねる。

『・・・カ・ディンギルとは、古代シュメールの言葉で『高みの存在』。転じて、天を仰ぐ程の塔を意味しているわね』

『何者かがそんな塔を建造していたとして、何故俺たちは見過ごしてきたのだ?』

「いや、カ・ディンギルは別名『バ―――」

戦兎は、それを言おうとして、途端に口を紡ぐ。

『確かに、そう言われちゃうと・・・』

幸い、響が口を挟んでくれたおかげで気にはされなかった。

『だが、ようやく掴んだ敵の尻尾。このまま情報を集めれば、勝利も同然。相手の隙に、こちらの全力を叩き込むんだ。最終決戦、仕掛けるからには仕損じるな』

『了解です!』

『了解』

「分かった」

そして、通話を終える。

「・・・・」

通話を切った後で、戦兎は思考する。

(カ・ディンギル・・・別名『バベルの塔』。人が天に向かって建てた文字通りの巨大な塔・・・敵は、それを使って何をする気なんだ・・・?)

あの場では言わなかった。

戦兎の持つ『葛城巧の記憶』から、一時期オカルトに興味を持った時の記憶が役に立つとは思わなかったが、しかし相手は、そのバベルの塔で一体何をしようと言うのか。

そして、あの場で言わなかった理由は、二課の中にスパイがいると踏んだからだ。

雪音クリス、ネフシュタンの鎧、イチイバル・・・どれも二課に関わりのあるものばかりであり、先のデュランダル輸送の件では情報が洩れているかのように狙われた。

であるならば、その一連の事件に関わっているのは――――

 

 

 

 

その一方で、

「些末な事でも構わん、カ・ディンギルに関する情報を搔き集めろ」

二課では『カ・ディンギル』なる塔の事について、職員全員が全力で情報を搔き集めていた。

だが、突如として警報が鳴り響く。

「どうした!?」

「飛行タイプのノイズが超大型ノイズが一度に三体・・・いえ、もう一体出現!」

 

 

 

 

 

 

 

街中では、まさしく大パニックが起きていた。

人々は上空に現れたノイズに逃げ惑い、我武者羅に走っていた。

「現れやがったか・・・!」

その様子を、万丈とクリスは見上げていた。

 

 

 

「合計四体・・・すぐに向かいます」

通信機片手にジャケットを着込み、そう返事を返しつつ走り出し、緒川からヘルメットを貰って走り出す翼。

 

 

「今は人を襲うというよりも、ただ移動していると」

そして響もまた、連絡を貰っていた。

「はい・・・はい」

「響・・・」

響が通話を終え、未来と向き合う。

「平気、私と翼さんと戦兎先生でなんとかするから。だから未来は学校に戻って」

「リディアンに?」

「いざとなったら、地下のシェルターを開放してこの辺の人たちを避難させないといけない。未来にはそれを手伝ってもらいたいんだ」

「う、うん・・・分かった・・・」

未来は、心配そうに答える。

「ごめんね。未来を巻き込んじゃって」

「ううん。巻き込まれたなんて思っていないよ。私がリディアンに戻るのは、響がどんなに遠くに行ったとしても、ちゃんと戻ってこられるように、響の居場所、帰る場所を守ってあげる事でもあるんだから」

「私の、帰る場所・・・」

響は意表を突かれたかのように呆気にとられる。

「そう、だから行って。私も響のように、大切なものを守れるくらいに強くなるから」

そう微笑む未来。そんな未来をしばし見つめて、響はふと、歩み寄ってその手を取った。

「あ」

「小日向未来は、私にとっての『ひだまり』なの。未来が一番あったかい所で、私が絶対帰ってくる所。これまでもそうだし、これからもそう!」

そう、自信満々で言いきって見せる響。

そこへ、

「おい響!何してんだ・・・って未来もいたのか」

戦兎が走ってきた。

「戦兎先生!」

「すぐに行くぞ。まだ被害が出ていないとはいえ、そんな悠長にしていられないからな」

「分かりました・・・未来、私は絶対に帰ってくる」

「響・・・」

「それに、一緒に流れ星を見る約束、まだだしね」

まだ果たしていない、約束があるから。

「・・・・うん!」

それに、未来がうなずくと同時に、

 

『Build change!』

 

戦兎がビルドフォンをマシンビルダーに変えていた。

「乗れ!」

「はい!それじゃ未来、行ってくるよ」

戦兎からヘルメットを受け取り、その後ろに乗る響。

バイクはそのまま走り出し、その後ろ姿は、途端に遠ざかっていった。

 

 

 

 

 

戦兎がバイクを走らせている中で、本部から連絡が入る。

「おう」

『ノイズ進行経路に関する、最新情報だ』

道行く車の間を掻い潜りながら、戦兎と響は耳を傾ける。

『第四一区域に発生したノイズは、第三三区域を経由しつつ、第二八区域方面へ進行中。同様に、第一八区域と第一七区域のノイズも、第二四区域方面へと移動している。そして・・・』

『司令、これは・・・』

『それぞれのノイズの進行経路の先に、東京スカイタワーがあります!』

「東京スカイタワー・・・?」

「あれです!」

響が指差す先、そこにそびえ立つ一本の塔。あれが東京スカイタワーなのか。

だが―――

(低い・・・あんなものがバベルの塔な訳があるか!?)

神話級のものであるならば、あれはあまりにも低すぎる。

であるならば、おそらく別の―――

『カ・ディンギルが塔を意味するのであれば、スカイタワーはまさに、そのものじゃないでしょうか?』

『スカイタワーには、俺たち二課が活動時に使用している映像や交信と言った電波情報を統括・制御する役割も備わっている・・・』

「それをなんで狙うんだっての!カ・ディンギル完成してんならなんでそれを狙うんだっての!ていうかまた二課が関わってんのか!?ネフシュタンといいイチイバルといい、どれもこれも二課関係のものばっかじゃねえか!?」

『お前の疑問も最もだ。だが向かってくれ!頼む』

「ああもう分かった分かりましたよ!ノイズは放っておけないからな・・・!」

通話を切る。

「ですが、ここからじゃスカイタワーは・・・!」

「ああ、遠い!」

ここから急いで間に合うだろうか。なんて思っていると、ふと上空からけたたましい風切り音が聞こえてきた。

見上げれ見れば、そこには―――

「ヘリ!?」

『なんともならない事をなんとかするのが、俺たちの仕事だ』

もはやこれからする事は明白だった。

 

 

 

 

 

 

超大型の飛行ノイズが、そのジェット機構のような部分からノイズをばらまき始める。

さらには小型の飛行型すらも吐き出してくるしまつ。その数は、数えるのも億劫な程多かった。

その様子を、戦兎と響はヘリから見下ろしていた。

「行くぞ!」

「はい!」

丁度、大型の一体が眼下になった所で、二人は、空中へその身を投げ出した。

 

タカ!』『ガトリング!』

 

ベストマッチ!』

 

落下しながら、戦兎はボルテックレバーを全力で回し、響は、空を仰ぎ見ながら聖詠を唄う。

 

『Are You Ready?』

 

「―――Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)―――」

 

「変身!」

 

天空の暴れん坊ホークガトリング!イェイ・・・!』

 

ビルドへと変身し、響もガングニールを身に纏う。

そのまま響は落下、ビルドはソレスタルウィングを折りたたみ、一気に落下していく。

さらに響は右腕のガジェットを肩まで引き上げて、スタンバイし、ビルドは左足のスカイクローシューズから鍵爪を展開、一気に落下していき、そのまま眼下のノイズに叩きつけた。

叩き込まれた一撃はそのノイズに風穴を開け、一気に粉砕する。

その一方で、現場の目下に到着した翼はすぐさま天羽々斬を纏い、直後に『蒼ノ一閃』をぶっ放す。

しかし、蒼ノ一閃は上空の巨大ノイズに直撃する前に、他のノイズによって威力を削がれ、やがて消滅する。

「くっ・・・相手に頭上を取られる事が、こうも立ち回りにくいとは・・・!」

見上げれば、ビルドがソレスタルウィングで飛び回りつつホークガトリンガーで狙い撃とうとしているが、他のノイズが邪魔で攻撃を叩き込めないでいる。

そこへ、無事に着地してきた響がやってくる。

「ヘリを使って、私たちも空から・・・!?」

だが、その前にヘリがノイズに群がられ、落とされる。

「そんな・・・」

「よくも!」

すぐさま他のノイズが槍の如く落ちてくる。

それを躱し、続く敵を拳で粉砕し、刀で切り払うも、上空のノイズがさらに小型ノイズを吐き出す。

それをビルドが撃ち落とすも、やはり数が多すぎて叩き切れない。

「空飛ぶノイズ・・・どうすれば・・・」

「臆するな立花。防人が後ずされば、それだけ戦線が後退するという事だ」

しかし、数の多さに加えて、上空の敵への攻撃は出来ないのが現状だ。

大量のノイズが二人に向かって落下していく。その大群をビルドが打ち下ろそうとするも、やはり数が多く仕留めきれない。

落ちてくるノイズに身構えていると、どこからともなく銃弾の嵐が吹き荒れ、一瞬にして上空のノイズが消し飛ぶ。

その銃弾が飛んできた方向を見れば、見慣れた少女と赤い仮面の戦士がそこにいた。

「待たせたな!」

「わあ!」

それに響は思わず嬉しさがこみ上げ、対して翼は身構えてしまう。

「チッ、こいつがピーチクパーチクうるさいからちょっと出張ってきただけ。それに勘違いするなよ。お前たちの助っ人になったつもりはねえ!」

「助っ人だから安心しろ」

「うぐ・・・」

すぐさまクローズに否定されて赤くなるクリス。

「助っ人?」

『そういう事だ』

翼が首を傾げるが、弦十郎がフォローを入れる。

『第二号聖遺物『イチイバル』を纏う戦士、雪音クリスだ』

そう弦十郎が告げると同時に、響はクリスに抱き着く。

「クリスちゃーん!ありがとー!」

「こ、この馬鹿!アタシの話を聞いてねえのかよ!?」

抱き着かれて驚くクリスを他所に、飛んでいたビルドはクローズの元へ。

「万丈!」

「おう戦兎!」

「お前なんだよその姿は。俺の知らねえ姿に見事に変身しやがって」

「知らねえよ俺でも良くわかってねえんだから」

「でもま、無事にそれは使いこなせてるみたいだな」

ビルドは、クローズの手の中にあるマグナムに変形したブラストモービルを見やる。

「おう」

「よし、ここからは連携して・・・」

「ッ!勝手にやらせてもらう!邪魔だけはすんなよな!」

ふと響の腕から逃れたクリスはそう言うなり、アームドギアを展開する。

ボウガンから放たれた必殺の矢は上空のノイズを一気に撃ち落としていく。

「戦兎、空の敵は俺とクリスでやる。お前らは地上のノイズを!」

「分かった!」

 

ラビットタンクスパークリング!イェイイェーイ!』

 

ビルドはすぐさまラビットタンクスパークリングに変身し、地上に降り立ったノイズに向かう。

それに翼と響も続く。

ビルドが泡の破裂による高速移動で道を切り開き、討ち漏らした個体は翼と響が各個撃破。

その一方で、ガトリングガンで上空の敵を薙ぎ払うクリスとスケート走行で突っ走りながらブラストシューターで撃ち抜いていくクローズ。

クリスとクローズが上空の敵の相手をしてくれるからか、瞬く間にノイズはその数を減らしていく。

だがしかし―――

「うわ!?」

「あ!?」

一旦退いて態勢を立て直そうとした翼の背中に、同じく敵をより多く捕捉するために下がっていたクリスの背中が当たる。

「何しやがる!すっこんでな!」

「貴方こそいい加減にして。一人で戦ってるつもり?」

「アタシはいつだって一人だ」

「万丈がいるのに?」

「あ、アイツは別だ!とにかく、これまで仲間と慣れ合った事はこれっぽっちもねえよ!」

顔を赤くして否定するも、クリスは言葉を続ける。

「確かにアタシたちが争う理由なんてないのかもな。だからって、争わない理由もあるものかよ」

「それ昨日も言ってなかったかー!?」

「うるさい!お前はお前でノイズやってろ!」

(なんだろう。言われてる事は癪に障るのだけれど、意外に可愛い・・・)

万丈の割り込みに怒鳴るクリスの様子に、ついつい毒気を抜かれる翼。

「なんだよ・・・」

「いや、なんか、イメージと違うなと思って・・・」

「ハア!?何言ってんだ!?」

そろそろ限界値を超えそうなクリスの怒り。

が、とにかく落ち着いて自分の言いたい事を言おうとする。

「アタシらはこの間までやりあってたんだぞ。そう簡単に、人と人が・・・」

だが、そこでやはり割り込むのは響だった。

「出来るよ。きっと」

「またお前かよ・・・」

「残念俺もいる」

そこへビルドまでやってくる。

「確かに、そう簡単に人は仲良くなれねえよ。だけど、仲良くなれない道理はないだろ?実際、ぎくしゃくしていた響と翼だって、今じゃこんなに仲良くなってる」

「それはそっちの理屈だろ・・・」

「万丈と一緒に行動しといてよく言うぜ」

「あ、あれはあっちが勝手に・・・」

「そうだよ。クリスちゃんだって龍我さんと仲良くなれたんだもん。私たちとだって、きっと仲良くなれる!」

そう言って、響はクリスの手を取り、そして、翼の手も取る。

「私にはアームドギアはない。だけどそれはきっと、こうして誰かと手を繋ぎ合う為にあるんだって、今は思う。だって今、こうして二人と手を繋ぎ合えてるんだから」

「立花・・・」

そう笑顔で言う響を、翼はしばし見つめ、やがてその手の剣を地面に突き立てる。

そして、突き立てる事で空いた手を、クリスに伸ばす。

それに、クリスは戸惑う。

しかし、翼は頑固なのか、せがむように手を伸ばす。

その頑固さに、クリスも諦めたのか、恐る恐る手を伸ばす。が、どうにもじれったいのかばっと掴んでしまい、クリスはそれに驚いて手を引っ込めてしまう。

「こ、この馬鹿に当てられたのか!?」

「そうだと思う」

あっさり肯定。

「そして、貴方もきっと」

それでもって指摘。

「・・・冗談だろ・・・」

「ハハッ」

白い頬を赤くしながら、消え入るような声で悪態を吐き、そんな様子にビルドは笑い声を上げる。

「おい!そんな事より、さっさと上の敵どうにかしてくれ!」

その一方で、形状を弓にしたブラストモービルを振り回しているクローズが叫ぶ。

「おい万丈今良い所・・・なんだその形態!?一体全体どうやった!?」

「知らねえよ!?なんか念じたらこうなってた!」

「そのフォームって武器にも何かしらの作用及ぼすのかよ・・・」

もはや呆れかえっているビルド。

「とにかく!俺の攻撃じゃあ当てる前に威力が殺されて届かねえ!クリス、お前がどうにかしてくれ!」

「ああ。分かってる」

クリスがうなずく。

「でもどうやるの?」

「アタシのイチイバルの特性は超射程広域攻撃。派手にぶっ放してやる!」

「まさか、絶唱を・・・」

「馬鹿、アタシの命は安物じゃねえ」

「ならば、どうやって・・・」

「そんなの簡単だろ。ようは溜め攻撃だろ?」

ビルドの指摘に、クリスは胸を張って肯定する。

「ああ、ギアの出力を引き上げつつも、放出を抑える。行き場の無くなったエネルギーを臨界まで溜め込み一気に解き放ってやる!」

「だが充電(チャージ)中は、丸裸も同然。これだけの数を相手にする状況では危険過ぎる」

「そうですね。だけど、私たちがクリスちゃんを守ればいいだけの事!」

ノイズが群がる。

「ん?なんだこれ?」

「これは・・・数式?」

ふと気付けば、彼女たちの周りに、まるで立体化した計算式やら法則やらが出現していた。

「これが、俺たちの勝利の法則だ」

ビルドが、彼女たちに言う。

「さあ、実験を始めようか!」

「ああ!」

「はい!」

三人が、群がるノイズに向かって飛び上がる。

(頼まれてもいない事を・・・)

そんな彼らに、クリスは思わず笑ってしまう。

(アタシも引き下がれないじゃねえか!)

 

 

「―――なんでだろう心が、ぐしゃぐしゃだったのに」

 

 

「―――ッ!?」

 

 

 

ドクンッ!

 

 

 

強く、はっきりと感じた。

クリスが歌い始めた瞬間、クローズの体の中で、何かが大きく鼓動する。

そして、それを境に、力が漲ってくる。

(やっぱりだ・・・クリスの歌を聞いてると、心がめっちゃ震えて、力が漲ってくる・・・!)

ホイールを加速させて、道路上にはびこるノイズを一気に蹴散らす。

「力が漲る、魂が震える・・・アイツの歌が、迸るッ!!」

 

『Set Up!Blast double Jamadhar!』

 

ブラストモービルがさらに変形する。ブレードモードの状態から変形し、銃身の半分のそのまた半分が割れ、さらに太くなるかのようになり、その割れた部分から新たな光の小さな刃が飛び出す。

それは、カタールと呼ばれる武器だが、見た目は完全なメリケンサックである。

だが、格闘家の万丈にとってはこれほどありがたい武器は無い。

ホイールの作り出す加速に合わせて、クローズは拳を突き出し、目の前のノイズを粉砕、そのまま次々をノイズを蹂躙していく。

「もう誰にも止められねェ!!」

クローズの快進撃は止まらない。

「ハアッ!」

その一方で、ビルドもすさまじい戦いぶりを見せる。

スパークリングの『泡』の力は移動にも攻撃にも使える。

(かつて敵だった男がいた。だけど、気付いたら仲間になっていた)

腕のブレードで竜巻のように回転して群がるノイズを巻き上げ粉砕する。

(国の為に、悪を貫いた男がいた。だけど、いつかは正義の為に一緒に戦ってくれた)

着地して、クリスに向かおうとするノイズを捕捉し、一瞬でその距離を詰めてまとめて粉砕する。

(そうだ。敵だからって、全員が悪い奴な訳じゃない。ちゃんと分かりあえる事が出来る。アイツの言うように、人は繋がる事が出来る)

ビルドは、飛ぶ。

「それが俺の目指す、『愛と平和』・・・ラブ&ピースだ!」

そう叫び、ライダーキックが炸裂した。

(誰もが繋ぎ繋がる手を持っている・・・!)

また一方で、群がるノイズを得意の徒手空拳で粉砕していく響。

(私の戦いは、誰かと手を繋ぐこと!)

この拳で、全てを守るため、彼女は、

「最短で最速で真っ直ぐに一直線に、この想いを拳に乗せる!」

パイルバンカー式の鉄拳が、直線状のノイズを一掃する。

(砕いて壊すも、束ねて繋ぐも力・・・)

さらに襲い掛かるノイズを己が手の刀をもって斬り捨てていく翼。

(フッ、立花らしいアームドギアだ!)

であるならば自分は何をするべきか。

「決まっている。この剣をもって、その想いに答える!」

蒼ノ一閃が迸り、薙ぎ払う。

そしてついに、クリスのイチイバルが臨界を突破する―――ッ!!

 

「光が・・・力が・・・魂を―――ぶっ放せッ!!」

 

(今、アタシが出来る最善をォ――――!!)

クリスのシンフォギアが変形する。

三連四門のガトリング砲、小型ミサイルポッド、四基の巨大ロケットミサイル―――明らかに敵をオーバーキルするつもりの完全武装をもって、クリスはその身に溜め込んだエネルギーを解き放つつもりなのだ。

そんな彼女に向かって、彼らが言う事は一つ。

 

「「「「―――託したッ!!」」」」

 

それが、クリスの最大火力の必殺技―――!!!

 

 

MEGA DETH QUARTET

 

 

放たれる大火力。

放たれた四基のミサイルは、一基は小型ノイズのほとんどを薙ぎ払い、さらに放たれた小型ミサイルからもさらに小型のミサイルが放たれノイズの殆どを一基に殲滅。残った個体すらもガトリング砲の餌食となり、塵芥と成り果て、消し飛んでいく。

撃って撃って撃ちまくって、それで粉砕して、上空のノイズ全てを消し飛ばす。

その間に、地上の敵も全て、四人の活躍によって駆逐された。

「やった・・・のか?」

「ったりめえだ!」

「わあ・・・!」

「おっしゃあ!」

「よし」

黒い塵が降り注ぐ。

空にはもうノイズはおらず、ただ真っ青な空が広がっており、地上にはあちらこちらにノイズの炭化した成れの果てが転がっていた。

「これで殲滅したな」

「あー、つっかれた」

変身を解除して、合流する戦兎と万丈。

「んで、お前あの時会った時は言わなかったけど、そのボトルはなんだよ?」

「これか?いや俺にもよくわからなくてな」

「キュル」

ボトルを輩出したクローズドラゴンは元の青い姿に戻る。

「ちょっと見せてみろ」

「おう。一応、あのエボルボトルが変化した奴なんだが・・・」

「エボルボトルが・・・?」

とてもそうには思えない。というかエボルボトルだったころの原型が既にない。

何か、弓を携えた射手といった柄が入った完全に普通のものと同じフルボトルだ。

一体全体何がどうなってこうなったのか。

いや、そもそもな話、『クローズイチイバル』という名前の時点で察しは付く。

おそらくはクリスの歌。そして、クリスの発するフォニックゲインによって、このボトルは変化したのだろう。

であるならば、他のボトルは一体どうなるのか。

特定のボトル―――フルボトルを『聖遺物』と仮定するならば、彼女たちの歌で変化する事はあり得る。

しかし、ボトルを進化させるという形でならば、それはこちらで言う所の『ハザードレベル7』に相当する所業だ。

とてもではないが、ネビュラガスを注入されていない、ましてやハザードレベルの概念そのものがない世界で、『歌』程度でボトルが変わるとは思えない。

果たして、これは一体どういう事なのか。

(そもそもこのボトルは万丈がエボルトのエボルボトルを自らの力で変化させたボトルだ・・・だからクリスの歌はあくまで()()()()()()()()()()()に反応して、それに呼応する形で変化したという事で片付けられるが・・・どうにもそれだけで終わる気がないんだよな・・・)

なんて考えていると、先ほどまでクリスとじゃれていた響の通信端末に連絡が入る。

「はい」

『響!?』

聞こえてきたのは、未来の声だった。それも、かなり()()()()()()

『学校が、リディアンがノイズに襲われ――――』

 

 

ブツンッ――――

 

 

その声を最後に、通信は途切れた。

「・・・・え」

次に聞こえたのは、響の茫然と漏らした声だけだった。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「避難してください!」

ノイズに襲われるリディアン!

『カ・ディンギルの正体が、判明しました』

そして明かされる、カ・ディンギルの正体。

「上手くいなせていたと思ったのだが・・・」

襲来するフィーネ。

「待ちな」

立ち塞がる弦十郎―――

「リディアンが・・・」

そして、ようやく辿り着いたリディアンの惨状を目の当たりにして、彼女たちは何をするのか――――

次回『月を穿つ/夢を守る』

(―――アタシの歌は―――その為に――――!)


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月を穿つ/夢を守る

響「無事、東京スカイタワーに接近していたノイズを倒す事に成功した、私立花響と、風鳴翼と、雪音クリス、そして、仮面ライダーである桐生戦兎と万丈龍我であったが、未来からの連絡によって、その余韻は絶望へ叩き込まれる事となる・・・」
翼「今日はいつになく真面目だな」
響「最近カオスな事が多かったですからねぇ、マr・・・黒グニールさんが色々と不憫な事になってましたから・・・」
ク「ああ、なんか三日三晩泣き続けてたらしいな」
翼「どうせGから出番が増えるんだ。それまで我慢してもらった方がいいだろう」
(それをいう資格がお前にあるかー!)
ク「なんか、どっかから怨霊染みた声が聞こえた気がしたんだが・・・」
響「き、気のせいじゃないかな~?」
戦「まあなにはともあれ、問題ないだろ。てなわけで、ついにカ・ディンギルがその姿を現すぞ!」
麗人「それはいいのだが、先ほどタヤマが血の涙を流したって連絡が来たぞ」
万「はあ!?なんでだよ・・・」
農具「それが〇〇〇デース!」
戦「だから名前出すなァ!!」
無性「規制音が間に合ってよかったです・・・」
ク「てかお前も登場するのまだ先なんだから出てくんなよ!?」
麗人「では、リディアンが襲われる所から始まる第十九話を見ろ」
ク「無視かよ!?」


戦兎たちが、街に出たノイズを対処している間に、リディアンはノイズの襲撃を受けていた。

そのノイズに自衛隊が対応しているが、通常兵器ではノイズに一切効かないどころか干渉自体出来ないため、ただ無駄に弾を消費する事しかできない。

ただ出来る事と言えば、リディアンにいる生徒たちを、とにかく逃がす事だけ。

その避難誘導に、未来は先陣切って行っていた。

「落ち着いてシェルターに避難してください!」

自衛隊員に誘導を任せ、生徒をなだめつつ、未来はそう声を挙げる。

「落ち着いてね・・・」

「ヒナ・・・」

そんな中で、未来に話しかける者がいた。

黒鉄色のショートカットが特徴的な『安藤(あんどう)創世(くりよ)』。

長い金髪が特徴的なお嬢様の『寺島(てらしま)詩織(しおり)』。

そして髪の毛をツインテールにした『板場(いたば)弓美(ゆみ)』。

いつも未来や響と一緒にいる同級生の少女たちだ。

「皆・・・」

「どうなってる訳?学校が襲われるなんてアニメじゃないんだから・・・」

いつも比喩にアニメを使う弓美らしい言い方だが、確かにその通りだ。

街でノイズが出ても、学園で出る事なんて今までになかったのだから。

「皆も早く避難を・・・」

「小日向さんも一緒に・・・」

詩織がそう言ってくるも、未来は首を横に振る。

「先に行ってて。私、他に人がいないか見てくる!」

「ヒナ!」

よく変なあだ名をつけて呼ぶ創世が呼び止めるも、未来は行ってしまう。

「君たち!」

そこへ、避難誘導に当たっていた自衛隊員の一人が走ってくる。

「早くシェルターに向かってください!()()()()()()()()()―――」

その次の瞬間、一瞬の事。

 

その自衛隊員が、ノイズに貫かれる。

 

そして、一秒もたたずして炭素の塊となり、崩れていく。

「――――いやぁぁぁあぁぁああぁあああ!!」

弓美の悲鳴が、響き渡った。

 

 

 

 

 

 

学園の中で、生存者がいないか走り回る未来。

流石に元陸上部故か、その体力はまだ衰えていない。

「誰かー!残ってる人はいませんか・・・・きゃ!?」

地面が揺れて、未来は思わず小さく悲鳴を上げる。窓の外を見てみれば、巨大なノイズが、リディアンを力の限り破壊し尽くしていた。

自衛隊などまるで歯が立っていない。

「学校が・・・響の帰ってくるところが・・・」

その惨状を目にして立ち尽くす未来。しかし、それを許さないかの如く、ノイズが窓から飛び込んでくる。

壁に張り付いたノイズが、そのまま砲弾の如く襲い掛かってくる。

それに未来は反応できずノイズに衝突される―――事にはならず、寸での所で緒川が未来を押し倒して危機を脱する。

「うう・・・あ、緒川さん・・・!?」

「ギリギリでした。次、上手くやれる自信はないですよ」

緒川は面を上げ、通り過ぎていったノイズの方を見る。

すでに、次の攻撃態勢に入っている。

「走ります!」

「うぇえ!?」

未来の手を取り、駆け出す緒川。

「三十六計逃げるに如かず、と言います!」

すぐさまエレベーターに駆け込み、通信機を使って扉を閉める。

そのままノイズは入ってこれないかと思ったが、現実と異次元との実体率を操作する事の出来るノイズ。物体への透過は可能だ。

しかし、二人に触れるには一歩届かず、超高速で落ちるエレベーターが動き出し、そのままノイズはエレベーターから追い出された。

「・・・・ほ」

思わず安堵の息を漏らす未来。

その後、緒川は通信機を使い、本部に連絡する。

「はい、リディアンの破壊は、依然拡大中です。ですが、未来さんたちのお陰で、被害は最小限に抑えられています」

人的被害はかなり進んでいた為、おそらく生徒の犠牲者はいないだろう。

自衛隊はその限りではないが。

「これから未来さんを、シェルターまで案内します」

 

 

 

二課本部―――

「分かった。気を付けろよ」

弦十郎がそう返事を返す。そのまま切ろうとした時、緒川から声が上がる。

『それよりも司令』

「ん?」

『カ・ディンギルの正体が、判明しました』

「なんだと!?」

驚く弦十郎。

『物証はありません。ですが、カ・ディンギルとはおそらく―――ッ!?』

次の瞬間、緒川が息を飲む声が聞こえ、そして立て続けに何かが粉砕される音と、

『きゃぁぁあぁああ!!』

未来の悲鳴が無線越しに聞こえてきた。

「どうした!?緒川!」

呼びかけるも返事はなく、ただ向こうの通信機が破壊された時に聞こえる砂嵐の音しか聞こえなくなった――――

 

 

 

 

その一方で、緒川と未来の方では――――

「ぐ・・ぁ・・・」

「こうも早く悟られるとは、何がきっかけだ?」

そう問いかけるのは、黄金のネフシュタンの鎧をその身に纏うフィーネだった。

何故彼女がここにいるのか。まあ単純な話、このノイズ襲撃は全てこの女の所為なのだが。

「っ・・・塔なんて目立つものを、誰にも知られる事なく建造するには、地下へと伸ばすしかありません・・・」

上ではなく下。下に向かって塔を建造するというのなら、誰にも悟られることなく、建てられる事は容易だ。

「そんな事が行われているとすれば・・・特異災害対策機動部二課本部・・・そのエレベーターシャフトこそ、カ・ディンギル・・・・そして、それを可能とするのは―――」

「漏洩した情報を逆手に、上手くいなせたと思っていたのだが・・・」

そこで、エレベーターが最下層に到達。緒川の背後の扉が開く。

それで拘束を逃れた緒川は身軽な動きで距離を取って飛び上がると同時に脇のホルスターから拳銃を抜き出し発砲。その数、三。

それら全てがフィーネに直撃するが、突き刺さった弾丸がまるで削り取られたかのように落ちていき、一方のフィーネの体には傷一つついていなかった。

「ネフシュタン・・・!?」

返答の代わりか、ネフシュタンの肩にある刃の鞭を操り、緒川を一瞬で拘束し、持ち上げる。

「緒川さん!」

「ぐぁぁあぁあ!?」

締め上げられ、絶叫する緒川。

「ぐぅ・・・あぁ・・・・未来・・・さん・・・逃げ・・・て・・・」

今自分が危ない状況であるのに、他人を逃げるように促す緒川。

しかし未来はそのまま棒立ち―――()()()()()()()()()()()()()()()()()

だが、あまり効果はないのかフィーネはぶつかってきた未来へと肩越しに視線を向ける。

その視線に、未来は思わず後ずさる。

「ひっ・・・」

振り返ったフィーネは、緒川から拘束を外し、未来と向き合う。

そして、その顎に手を当てる。

「麗しいな。お前たちを利用してきた者たちを守ろうというのか?」

「利用・・・?」

訳が分からない未来。

「何故二課本部がリディアンの地下にあるのか。聖遺物に関する歌や音楽のデータを、お前たち被験者から集めていたのだ。その点、風鳴翼という偶像は、生徒を集めるのによく役立ったよ」

そう言って、嘲笑い、未来から離れて歩き出すフィーネ。

その後ろ姿を見る未来。

だが―――

「―――嘘を吐いても、本当の事が言えなくても、誰かの命を守るために自分の命を危険に晒している人がいます!」

先ほどの緒川がそうであったように。あの日の響が自分を守ってくれたように。

「私は、その人を・・・そんな人たちを信じてる!」

まさかの啖呵。響や翼のようにシンフォギアを纏えない、戦兎や万丈のようにライダーシステムを使えない、戦いもしらないただ一人の少女が、おそらく百戦錬磨であろう存在に、ちっぽけな勇気を振りかざしていた。

「―――ッ!」

それが癪に障ったのか、フィーネは未来の頬に一発平手打ちをすると、すかさずその胸倉を掴んでもう一度引っ叩いた。

未来はそのまま崩れ落ちる。

「まるで興が冷める・・・!」

忌々し気に呟き、フィーネは、そのままデュランダルが保管されている場所へ向かう。

そして、どこで手に入れたのか二課の通信機を取り出し、認証パネルにかざそうとした寸前でどこからか飛んできた弾丸によって通信機が破壊される。

「デュランダルの元にはいかせません・・・!」

振り返れば、そこには拳銃を構える緒川の姿があった。

「この命に代えてもです!」

銃を投げ捨てて格闘戦を挑もうとする緒川。

しかしフィーネはまるで冷めた目で緒川を見据え、ネフシュタンの鞭の刃を振るおうとする。

 

「―――待ちな、()()

 

しかし、突然どこからともなく声が聞こえたかと思いきや、突然天井が粉砕され瓦礫が落ちてくる。

そこから現れた者は―――

「―――私をまだ、その名で呼ぶか」

「女に手を挙げるのは気が引けるが、二人に手を出せば、お前をぶっ倒す!」

―――二課司令、風鳴弦十郎だった。

かなりの硬い筈の鋼鉄の壁をぶち抜いてここまでやってきたのだろう。

というか、どうやったら人間の力でその壁を突破できるのだろうか。

「司令・・・」

緒川はともかく、未来は完全に茫然としている始末である。

「調査部だって無能じゃない。米国政府のご丁寧な道案内で、お前の行動にはとっくに行き着いていた。後はいぶり出すため、あえてお前の策に乗り、シンフォギア装者と仮面ライダーを全員、動かしてみせたのさ」

「陽動に陽動をぶつけたか。食えない男だ。だが、この私を止められるとでも――――」

「おうとも。一汗掻いた後で、話を聞かせてもらおうか!」

なんの迷いもなくというか戸惑いもなく答えて見せる弦十郎。

すかさず地面を蹴り砕いて前に出る弦十郎。その進行を阻止すべく刃の鞭を振るうも当たらず、二撃目も飛んで躱されては天井の出っ張りを掴み、そしてそのまま体を持ち上げて天井に足を付けたと思ったら一気に落下。

そしてそのまま拳を振り下ろしてくる弦十郎にフィーネはギリギリの所で避けるも僅かに掠ったのか鎧にひびが入った。

ていうか掠っただけでこれである。

「何・・・!?」

思わず驚いて距離を取るフィーネ。

鎧はすぐさま修復するが、フィーネは未だ険しい顔で弦十郎を睨む。

「肉を削いでくれる!」

そしてすかさず刃の鞭を弦十郎に叩きつけようとするもいとも容易く掴み取られて引っ張られて、さらに鎧によって重量が増している筈のフィーネを軽々を引っ張り出し、そのままどてっぱらに渾身の一撃を叩き込んだ。

 

言っておくが、生身の人間が、である。

 

そのまま弦十郎の背後に落下するフィーネ。

「が・・・ぐあ・・・」

思わず呻き声をあげるフィーネ。

「完全聖遺物を退ける・・・!?どういう事だ・・・!?」

まさしくその通り。しかし弦十郎は言ってのける。

「しらいでか!飯食って映画見て寝る!男の鍛錬は、ソイツで充分よ!」

なお、一人の少女もそれで鍛えられた模様。

「なれど人の身である限りは・・・!」

立ち上がったフィーネはすぐさまソロモンの杖を取り出し向ける。

「させるか!」

すかさず弦十郎が床を踏み砕いて飛び散った破片を蹴り飛ばす。

「甘いわ!」

しかしフィーネはそれを躱し、ノイズを複数体召喚してしまう。

「どうだ!人の身である貴様に、ノイズは倒せ――――」

 

『ボトルビューン!』

 

突如として聞こえた、電子音声。

「ぬぅぅう・・・」

見れば、弦十郎の手には、見慣れない()()()()()()()()()()()()が握られており―――

 

テンペスティックナックルビュバーンッ!!』

 

次の瞬間、凄まじい風が吹き荒れ、フィーネが呼び出したノイズがまとめて消し飛ばされる。

「ば、馬鹿な・・・・!?」

「戦兎君の部屋から勝手に持ち出した発明品だ・・・が、どうやら試作品だったようだな」

吹き荒れた暴風の最中、弦十郎が握っていたナックルがバラバラにぶっ壊れる。

元々未完成だったのもあるが、弦十郎の全力の一撃に耐え兼ね粉砕してしまった事が大きい。

最も、万丈のマグマナックルほっぽって別のナックル作ろうとしていた戦兎も戦兎だが。

「く、それならもう一度・・・!」

「それをさせると思うか!」

が、動揺したフィーネに向かってすかさず瓦礫を蹴り飛ばす弦十郎。今度は直撃し、ソロモンの杖が天井に突き刺さる。

「く・・・ッ!?」

そしてすかさず、弦十郎が飛び上がって拳を握りしめた。

「ノイズさえ出てこないのなら―――!」

振り下ろされる拳、このままいけば、直撃は免れ―――

 

「―――弦十郎君!」

 

一瞬、フィーネの顔が了子のものになる。

「―――ッ!?」

それを見た瞬間、弦十郎の動きが完全に止まった。

 

次の瞬間、真っ直ぐ硬化した刃の鞭が、弦十郎の腹を貫いた―――

 

「司令・・・!」

緒川が声を漏らす。

腹を貫かれた弦十郎はそのまま血を吐いてはまき散らし、そのまま地面に倒れる。

「いやぁぁぁああぁああああ!!!」

未来の叫びが響き渡り、弦十郎の体を中心に、血溜まりが広がる。

「抗うも、覆せないのが運命(さだめ)なのだ・・・!」

弦十郎のポケットから通信機を奪い取り、ソロモンの杖を回収する。

「殺しはしない。お前たちにそのような救済など施すものか」

そう言って、フィーネはデュランダルが保管されているアビスへと続く道を開ける。

そしてそのまま、扉の向こうに消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

司令部にて、装者と仮面ライダーたちの戦いを見守る二課職員たち。

その最中で、司令部の扉が開いたと思いきや、ぐったりとした状態で緒川と未来に運ばれる弦十郎がいた。

「司令!?」

「応急処置をお願いします!」

緒川の指示で応急処置を行う友里。

「本部内に侵入者です」

代わりに緒川が端末を操作、そして、事あらましを簡潔に述べる。

「狙いはディランダル、敵の正体は―――櫻井了子」

「な・・・!?」

「そんな・・・!?」

更なる動揺が司令部に広がる。

しかしその間も緒川はコンソールを操作し、響たちに回線を繋げる。

「響さんたちに回線を繋げました」

それを聞いた未来は、すぐさま呼びかける。

「響?学校が、リディアンがノイズに襲われてるの!―――あ・・・!?」

しかし突如として周囲の照明が落ちる。

「なんだ!?」

「本部内からのハッキングです!」

「こちらかの操作を受け付けません!」

あっと言う間に彼らの扱う機器が使用不能となっていく。

「こんな事・・・了子さんしか・・・」

藤尭がそう呟く中で、未来はただ茫然と、その様子を見ている事しか出来なかった。

「響・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が沈み、月が空に昇ったころ、戦兎たちはリディアンに到着した。

「これは・・・」

その惨状を見て、全員茫然とする。

学園の校舎は崩れ去り、グラウンドは荒れ、破壊された戦車が置き去りにされており、気配は一人もいない。

「未来ー!皆ー!」

響が呼びかけても返事はなく、ただその場に膝を付く事しか出来ない。

「リディアンが・・・」

翼が茫然と呟く中、見上げた先の校舎の端に一人の女性が立っているのに気付く。

「櫻井女史・・・!?」

その女性は、櫻井了子だった。

「フィーネ・・・お前の仕業か!?」

「やはりアンタなのか!?了子さん!」

クリスの叫びに、戦兎も叫ぶ。

「ふふ・・・ハハハハハハ!!!」

それを聞いて高笑いをする了子。

「そうなのか・・・その笑いが答えなのか!?櫻井女史!?」

「嘘だろ・・・!?」

信じられないとでも言いたげな翼と万丈。

「アイツが、アタシが決着をつけなきゃいけないくそったれ・・・フィーネだ!」

クリスがそう叫んだ瞬間、眼鏡を外し、髪を解いた了子が光に包まれる。

そして、その光が収まるころにそこに立っていたのは、先日万丈が見た、あの金髪の女性だった。

「嘘・・・」

響が茫然と呟く中で、ネフシュタンを纏った了子は―――フィーネはその場に佇んでいた。

「野郎・・・ずっと俺たちをだましてたのか!?」

「ていうかお前はこの前会ったんだから気付かなきゃ可笑しいだろ!?」

「仕方ない。馬鹿だから」

「馬鹿っていうな。せめて・・・」

「筋肉をつけろだろ!?分かってるよ筋肉馬鹿!」

ふと、響が口を開いた。

「・・・嘘ですよね。そんなの嘘ですよね?」

未だに信じられないとでも言うように尋ねる響。

「だって了子さん、私や龍我さんを守ってくれました」

「あれは単純にデュランダルを守っただけだ。お前たちはおまけだったんだよ。何せ、貴重な完全聖遺物だからな、あれは」

しかし、それを否定するのは戦兎だった。

「嘘ですよ・・・了子さんがフィーネと言うのなら、じゃあ、本当の了子さんは?」

「櫻井了子の肉体は、先だって食いつくされた・・・いや、意識は十二年前に死んだと言って良い」

「どういう事だ?」

戦兎が訪ねる。

「超先史文明期の巫女『フィーネ』は、遺伝子に己が意識を刻印し、自身の血を引くものが、アウフヴァッヘン波形に接触した際、その身に、フィーネとしての記憶、能力が再起動する仕組みを施していたのだ」

「遺伝子に自分の意識を投影したっていうのか・・・そんなの、現代科学じゃ到底不可能だ・・・!?」

戦兎は信じられないとでも言うように呟く。

「当たり前だ。現代じゃ到底及ばない力を秘めているのが先史文明の科学力だ。そして十二年前、風鳴翼が偶然引き起こした天羽々斬の覚醒は、同時に、実験に立ち会った櫻井了子の内に眠る意識を目覚めさせた。その目覚めし意識こそが、『フィーネ(わたし)』なのだ」

それが、今目の前に立つ、フィーネの正体。

「貴方が、了子さんを塗り潰して・・・」

「まるで、過去から甦る亡霊・・・!」

「・・・・・」

茫然とする響、顔を険しくする翼、そして、黙ったままの万丈。

「フハハ・・・『フィーネ』として覚醒したのは私一人ではない。歴史に記される偉人、英雄、世界中に散った()()()は、パラダイムシフトと呼ばれる技術の大きな転換期にいつも立ち会ってきた・・・」

「その一つがシンフォギアシステムか・・・!?」

「そのような玩具、為政者からコストを捻出するための副次品に過ぎぬ」

「お前の戯れに、奏は命を散らせたのか・・・!?」

「たかだかお前の計画の為だけに、多くの人間を殺してきたっていうのか!?」

「アタシを拾ったり、アメリカの連中とつるんでいたのも、そいつが理由かよ!?」

「そう!全てはカ・ディンギルの為!」

フィーネが、なんの悪びれもなく肯定し、そしてそう答えた瞬間、突如として地面が揺れる。

「うおあ!?」

「な、なんだァ!?」

「これは・・・!?」

大きく揺れる中で、リディアンの真下から、何かが地面を突き破って出てくる。

それは、見るも巨大な塔。

あの日、二課のエレベーターシャフトから見えていた壁画のような飾りが施されており、その巨大さは、まさしく天を見上げる程。

「カ・ディンギル・・・別名、『バベルの塔』・・・!」

「バベルの塔!?それは確か・・・」

「ああ、大昔に、人が天に手を伸ばそうとして建てた超巨大な塔だ。だけど、あれから何度もエレベーターを見ている内に、あのシャフトの構造に気付いた・・・」

戦兎は、答える。

「あれは、強大なエネルギーを打ち出すように作られていた・・・つまり、このカ・ディンギルは巨大な砲塔!()()()()()だ!」

「「「「ッ!?」」」」

その言葉に、全員、息を飲んだ。

「そう!これこそが、地より屹立(きつりつ)し、天にも届く一撃を放つ、荷電粒子砲『カ・ディンギル』!」

(そび)え立つは、星をも穿つ巨大兵器だった。

「カ・ディンギル・・・こいつで、バラバラになった世界が一つになると!?」

「呪詛だ」

すかさず戦兎が口を挟む。

「人々はかつて、相互理解が可能な言語を使っていた。だけど、塔を築いている途中、神は人々から相互理解の為の言語を奪い、混乱を招いて建造を中止させた・・・お前の目的は、その呪詛を解く事だな!?」

「ああ、今宵の月を穿つことによってな」

「月を・・・・!?」

「穿つと言ったのか・・・!?」

「なんでさ!?」

その時、フィーネの顔が、今までにないくらい切実なものへと変わった。

「・・・私はただ、あのお方と並びたかった・・・その為に、あのお方へと届く塔を、シンアルの野に建てようとした・・・だがあのお方は、人の身が同じ高みに至る事を許しはしなかった・・・」

切実に、そして恋焦がれるように、フィーネは語る。

「あのお方の怒りを買い、雷帝に塔が砕かれたばかりか、人類は交わす言葉まで砕かれる・・・果てしなき罰、バラルの呪詛を掛けられてしまったのだ」

それが神話の真実か。

「月が何故古来より『不和』の象徴と伝えられてきたか・・・それは、月こそがバラルの呪詛の源だからだ!人類の相互理解を妨げるこの呪いを、月を破壊する事で解いてくれる!そして再び、世界を一つに束ねる・・・!」

そう月に向かって伸ばした手を握りしめるフィーネ。

それと同時に、カ・ディンギルに変化が訪れる。

突如として光だし、やがて稼働するかのような音が鳴り響き、その砲塔の中ではエネルギーが充填されていく。

このままチャージが終われば、すぐさま月は破壊されてしまうだろう―――と、その時だった。

「―――だぁぁああああぁぁああぁあああ!!!」

万丈の絶叫がその場に鳴り響いた。

「さっきからお前の言ってる事が何一つわかんねえよ!バラルの呪詛?それを解く?もう何もかもが分からねえけどな!これだけは言わせてもらう!」

ビッとフィーネを指差して言い放つ。

「お前は間違っている」

馬鹿故の馬鹿らしい真っ直ぐな言葉。

「ふん、雑頭には少々難しすぎたか」

「確かに、誰かに会いたい。その為に何かを成そうとするのは間違いじゃない」

そこへ、戦兎が進み出る。

その手には、ビルドドライバーが握られていた。

「だけど、その為に大勢の人々の命を危険に晒し、何の意味もなく消し去るなんて事は、科学者として絶対に容認できない・・・何より・・・」

それを腰にあてがい、アジャストバインドを巻き付ける。

「俺の信念が、それを許さない!」

「ふん、永遠を生きる私が余人に歩みを止められる事などありえない」

「止めてやるよ。何が何でもな・・・!」

ラビットフルボトルとタンクフルボトルを取り出し、それを振る。

万丈もドラゴンフルボトルを取り出してそれを振り、折りたたんだクローズドラゴンをその手に収める。

 

ラビット!』『タンク!』『ベストマッチ!』

 

Wake UP!』『CROSS-Z DRAGON!』

 

戦兎たちがボルテックレバーを回し、スナップライドビルダーを展開すると同時に、装者三人が聖詠を唄う。

 

『Are You Ready?』

 

「―――Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)―――」

 

「―――Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)――」

 

「―――Killter Ichaival tron(銃爪にかけた指で夢をなぞる)―――」

 

「「―――変身!」」

 

 

全員の姿が、変身する。

 

 

鋼のムーンサルトラビットタンク!イェーイ!』

 

『Wake UP Burning!』

 

『Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

 

 

五人が、並び立つ。

「行くぞォ!」

ビルドの掛け声に、全員が駆け出す。

先陣を切ったのはビルド。

左足のホップスプリングで一気に接近し、ドリルクラッシャーを叩きつける。

しかし、躱され、それでも追撃でもう一度振り下ろすも躱される。そこでもう一度ビルドが飛び上がったかと思うとビルドの後ろから響が飛び出し拳を叩きつけるもそらされ、弾き飛ばされる。

「うぉあぁあぁああ!!」

そこへクリスが小型ミサイルをばら撒く。

 

MEGA DETH PRATY

 

放たれる数の暴力。それをフィーネは鞭の一閃で全て破壊する。

黒煙がまき散らされる中、クリスは他の者に向かって視線を向ける。

その視線を受けて、仲間は意図を直接聞く事もなく動き出す。

「ウォォォオ!!」

クローズが飛び出し、拳の連撃を加え、すかさず響が一歩下がったクローズとフィーネの間に入り込み回し蹴りの連打。

そのまま応戦する最中で飛び上がり、背後から翼が斬りかかり、フィーネの側面からビルドがガンモードに変形したドリルクラッシャーを向ける。

「チッ」

小さく舌打ちの後に、ビルドが発砲。その弾丸をフィーネは叩き落し、すかさず鞭の形を剣状にして翼を迎え撃つ。

そのまま鍔迫り合いに持ち込むも、ビルドが再び発砲。だが、フィーネは刃の鞭で三角形の陣を形成すると、そこからバリアが発生し、ビルドの放った弾丸を阻む。

「何!?」

そしてすぐさま鞭の硬化を解除しては翼の刀を絡めとり、奪い取った。

武器を奪われ、無防備と思われた瞬間、その体制を逆さまにし、恐ろしいほどの超回転で足のブレードを連続で叩きつける。

それに対して、フィーネは鞭を振り回して回転し、翼の高速回転に対抗する。

そこへビルドが飛び込んで飛び蹴りを放つ。

それをフィーネは防ぐも、ビルドが叩きつけたのは、青い右脚。その足裏には―――無限軌道帯。

「づあ!?」

その無限軌道が回転し、鎧を削り取り、その下の肉すらも削ぎ降ろす。

それを見たフィーネはすぐさまビルドを跳ねのけ翼から距離を取る。

(どうせすぐに治るんだろ・・・でも、その隙さえできれば―――!)

本命は別。

その本命とは―――クリスの巨大ミサイル。

放たれたミサイル。それをフィーネは躱すも、どういう訳か軌道を変えてフィーネをしつこく追い回す。

 

標的捕捉(Lock-On) 能・動・追・尾(Active)

 

フィーネがミサイルに追い回されている間に、続けざまにもう一つのミサイルをカ・ディンギルに向ける。

 

標的捕捉(Lock-On) 狙・撃・制・御(Snipe)

 

意図に気付いたフィーネはすぐさま態勢を立て直す。

そして、クリスの必殺の一撃が放たれる。

 

標的捕捉(Lock-On) 対・象・破・壊(Destroy)

 

撃ち放たれたもう一つのミサイルは真っ直ぐカ・ディンギルへと突っ込んでいく。

「させるかぁぁぁああ!!」

すかさずフィーネが刃の鞭を使ってそのミサイルを両断する。両断されたミサイルは、いとも容易く爆発するも、しかしもう一発、フィーネを追っていたミサイルが迫ってきていなかった。

「もう一発は・・・!?」

そこで、フィーネは空を見上げた。

そこには、天に向かって突き進むミサイルに乗るクリスの姿があった。

「クリスちゃん!?」

「何のつもりだ!?」

「何してんだよアイツ!?」

「・・・・まさか、カ・ディンギルを真正面から迎え撃つつもりか!?」

戦兎の予想、それは的中していた。

クリスは、自らカ・ディンギルの前に立ち、その砲撃を迎え撃つつもりなのだ。

だが、敵は月を穿つ程の威力を備えた、荷電粒子砲。

「足掻いたところで所詮は玩具!カ・ディンギルの発射を止める事など・・・」

カ・ディンギルの砲門の先に、月が重なった時――――

 

 

「――――Gatrandis babel ziggurat edenal――――」

 

 

聞こえてきた、その歌の名は―――

「この歌・・・まさか!?」

「絶唱・・・・!?」

 

 

ミサイルから飛び降りて、カ・ディンギルの前に出る。

 

 

「――――Emustolronzen fine el baral zizzl――――」

 

 

腰のプロテクターから無数のエネルギーリフレクターを展開し、取り出した二つのハンドガンから、それぞれ一発ずつのエネルギー弾を発射。

 

 

「――――Gatrandis babel ziggurat edenal――――」

 

 

放たれたエネルギー弾は、リフレクターに反射されると同時に増幅され、それが無数に引き起こされて行き、ほぼ無限に力が増幅されていく。

そのエネルギー弾が反射する度に、光は強さを増していき、やがて、その形が蝶の羽を象っていく。

 

 

「――――Emustolronzen fine el zizzl――――」

 

 

 

その最中で、手に持ったハンドガンを前方のカ・ディンギルに向け、そしてその手にバスターキャノンを形成した。

 

 

「――――やめろぉぉぉぉおおおお!!!」

 

万丈の絶叫が迸るのと同時に―――カ・ディンギルが発射された。

 

そして迎え撃つ、クリス渾身の砲撃は真正面から衝突する。

 

衝突によって、眩い光が迸り、周囲を照らしていく。

 

 

そしてクリスの砲撃は、確かにカ・ディンギルを食い止めていた。

 

 

「一点集束・・・!?押し留めているだと・・・!?」

フィーネは信じられないと、そう叫ぶ。

 

しかし、それも長くは続かない――――

 

 

(―――ずっとアタシは、パパやママの事が、大好きだった)

 

 

バスターキャノンはひび割れていき、エネルギーは尽きていく。

 

 

(―――だから、二人の夢を引き継ぐんだ)

 

 

ギアにすらひびが入っていく。その口元からは血を垂れ流し、絶唱のバックファイアが彼女の体を蝕んでいく。

 

 

(―――パパとママの代わりに、歌で平和を掴んで見せる・・・)

 

 

僅かな、一瞬。ただ一瞬、押し留めて――――

 

 

(―――アタシの歌は―――その為に――――!)

 

 

――――光に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・あ」

それは、誰が漏らしたか。

カ・ディンギルの一撃を受けた月は―――その一部を欠けさせるにとどまった。

「し損ねた・・・!?僅かに逸らされたのか!?」

フィーネが、驚愕に目を見開く。

そして、小さな光を巻き散らして、落ちてくる少女が、一人―――

「・・・おい、ふざけんなよ・・・」

クローズが、そう呟く。

「あ・・・ああ・・・」

「・・・・」

翼は、そう声を漏らす事しか出来ず、響はただ、言葉を失う。

「ふざけんなよぉぉぉぉぉおおぉぉお!!!クリスぅ――――――――ッ!!」

クローズの悲痛な叫びと共に、クリスは、森の中に堕ちた。

 

 

堕ちて―――いった。

 

 

「――――あぁぁあああぁぁぁぁぁあああああぁぁあぁぁぁあぁああああ!!!!」

響の悲鳴が、響いた。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

月の完全破壊を阻止し、墜落したクリス。

「嫌だよ・・・」

崩れ落ちる響。

「見た夢も叶えられないとは、とんだ愚図だなぁ」

嘲笑うフィーネ。

「無駄と笑ったのか!?」

咆える翼とビルド。そして―――

「ガァァァァァアァアアアア!!」

響は、黒く暴走する――――

「・・・お前を止めるぞ、響・・・」

「どこまでも『剣』といくか」

「―――お前がいるから、私は、心置きなく歌える・・・」

「―――翼ぁぁぁあああ!!!飛べぇぇぇええぇえええええ!!!」


次回『双翼と兎のライジングサルト』


「――――立花ぁぁぁああああぁぁぁああぁぁあああ!!!」




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双翼と兎のライジングサルト

罪「どうも、この小説のオリキャラ一号の仮称『罪』です。名前はGからになると思います」(CV.堀内賢雄)
ガキ「オリキャラ二号の仮称『ガキ』です・・・ってかなんで俺こんな不名誉極まりない名前なの!?確かに俺の年齢はしr・・・工具と同じだけれども・・・」(CV.松岡禎丞)
罪「それ以外にいい名前が見つからなかったんだろう。それはともかく、おい、桐生戦兎」
戦「おうなんだ?」
罪「実は先ほどからタヤマから『セレナぁぁぁああぁぁあぁあああ!!』・・・と、いう訳なんだが」
戦「オーケー今ので大体状況は分かった」
妹「アハハ・・・すみません今すぐ黙らせてきます」
ガキ「頼んだ・・・っで、今までかなりカオスな事な内容やってましたけど、俺たちもやんなきゃいけないのかな・・・?」
戦「別に、そこまで気負う必要はないと思うぞ。今までが問題なだけだったから・・・」
罪「おい、お前ちょっと来い」
農具「なんデスか?」
戦「おいまでお前ら今から何をするk」
罪「やれ」
ガキ「だが断る!この〇白が最も好きな事の一つは」
ガキ・農具「「自分で強いと思ってるやつに『NO』と言ってやることだ!」」
戦「おいコラいくらCV(中の人)がそういう繋がり多いからってそのネタぶっこむな!?ていうかなんでネタ!?ただの三重パロディだよな!?」
罪「作者がやりたかったから?」
戦「何作者の心境代弁してんだよ。確かに農具のCV茅野さんだけれども、確かに松岡さんと接点多いけどー!」
農具「次はこのネタやってみたいデース!」
ガキ「お、それなら今からでも・・・」
麗人「いきなり割り込んで悪いがこれ以上はネタバレになりかねん。だからそれくらいにしておけ」
農具「はいデース!・・・って何故敵のお前が!?」
ガキ「馬鹿前回も出てただろ」
麗人「あの二人にはずるいずるいと言われて、とりあえず許可を取りによったのだが・・・」
戦「もうバッチリ音入ってるよ。ああもう、それじゃあ波瀾の二十話をどうぞ!」
ガキ「スターバーストストリーム!」
農具「リリース・リコレクションデース!」
戦「だからやめろぉ!!」


作「あ、セレナ誕生日おめでとうです」(遅い
タヤマ「セレナぁぁああぁぁぁああああ!!!」(血涙疾走
作「ぐべぁ!?」(轢かれる


―――リディアンの地下。そこにある一室に、未来たちはいた。

 

あの後、フィーネによって二課の施設の機能を全て殺された後、重傷を負った弦十郎を抱え移動。そのままリディアンの電力施設のすぐ傍にある部屋にて、藤尭の情報処理能力によって、どうにか監視カメラなどの映像を見る事が出来ていた。

そして、そこには未来の友人たちもいた。どうやら逃げ遅れてここに急いで避難したらしい。

そして―――クリスが堕ちるところも、彼女たちが戦っているところも、全て、見ていた。

(さよならを言えずに別れて、それっきりだったのよ・・・・なのにどうして・・・・?)

そのクリスの生き様を見て、未来はただ言葉を失っていた。

(お前の夢・・・そこにあったのか?そうまでしてお前がまだ夢の途中というのなら、俺たちはどこまで無力なんだ・・・!?)

そして弦十郎は、ただただ悔しがる事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

泣き崩れる響。

「そんな・・・せっかく仲良くなれたのに・・・」

「夢が見つかったって言ってたじゃねえかよ・・・それなのに・・・馬鹿野郎・・・!」

クローズは拳を握りしめる。

「こんなの・・・嫌だよ・・・嘘だよ・・・」

ただ目の前にある現実を直視できず、響はその場に手をついて、ただ、己の無力さに打ちひしがれる。

「もっと沢山話したかった・・・話さなかったら、喧嘩することも・・・もっと仲良くなることも出来ないんだよ・・・!」

そんな響に、翼とビルドは何も言わない。

「クリスちゃん・・・夢があるって・・・でも、私まだ聞けてないままだよ・・・」

そんな中で、フィーネの冷徹な言葉が発せられる。

「自分を殺して月への直撃を阻止したか・・・・ハッ、無駄な事を」

嘲笑った。

「見た夢も叶えられないとは、とんだ愚図だなぁ」

フィーネは、クリスの所業を嘲笑う。

「・・・笑ったか?」

翼が、呟く。

「大切なものを守り抜く・・・そんな、誰にでも出来ないような事をやってのけたアイツを・・・無駄と笑ったのか!?」

ビルドが、咆える。

翼の脳裏に映るのは、二年前、絶唱を使い、その身を滅ぼした奏の姿。

ビルドの脳裏に映るのは、決死の行動で最強の敵の力を封じ、そして消えていった氷室幻徳の雄姿。

その行為を、今、無駄と称して嘲笑った。それは、彼らにとっては到底受け入れがたい言動だ。

翼は剣を向け、ビルドは構える。

その時だった。

 

「――――それガ」

 

「「「―――ッ!?」」」

突如として聞こえた、おぞましい歪んだ声。

そして、その歪んだ声を発したのは――――その体を真っ黒に変え、獣のように成り果てた――――響だった。

「夢ト命ヲ握リシメタ奴ガ言ウ事カァァアァァアアアアァァアアア!!?」

獣のような方向が、その場に轟いた。

その変化に、フィーネの口元が歪んだ。

「おい、立花・・・!?」

その変化に、戸惑う翼。

「あれは、あの時と同じ・・・!?」

かつて地下鉄で見た響の黒い姿。

今の響は、その姿を完全に真っ黒に染め上げて、獣のように咆哮を挙げていた。

「融合したガングニールの欠片が暴走しているのだ。制御出来ない力に、やがて意識が塗り固められていく・・・」

「やはり実験か!?」

ビルドが叫ぶ。

「お前はその事を知っていて、響を実験に使っていたんだな!?」

記憶になくとも、かつて自分も同じ事をしていた戦兎だからこそ言える事だった。

「実験を行っていたのは立花だけではない」

その問いに、フィーネは答える。

「見てみたいとは思わんか?ガングニールの翻弄されて、人としての機能が損なわれていく様を・・・」

「くそったれが・・・!」

「お前はそのつもりで立花を・・・奏を・・・!」

その時、響が地面に手をついて四つん這いとなり、そのままフィーネに向かって飛ぶ。

「ッ!?立花!」

翼が叫ぶも、響は止まらない。そのまま響は、フィーネに襲い掛かる。

 

 

―――その寸前、クローズが響を殴り飛ばした。

 

 

「ガァァア!?」

そのまま横に吹っ飛び、瓦礫に激突する。

「万丈!?」

翼はクローズの行動に驚く。

「・・・なんのつもりだ?」

フィーネが、クローズに問いかける。だが、クローズは何も答えない。

代わりに、ビルドたちの方を見た。

しばり交わる、クローズとビルドの視線。

「・・・・分かった」

ビルドは、新たにボトルを二本取り出す。

「響は任せたぞ」

「おう」

 

パンダ!』『ロケット!』『ベストマッチ!』

 

「桐生・・・万丈・・・?」

「響はアイツに任せて、俺たちはフィーネをやるぞ」

 

『Are You Ready?』

 

「・・・分かった」

刀を構える翼。

 

「ビルドアップ!」

 

ぶっ飛びモノトーンロケットパンダ!イェイ!』

 

ロケットとパンダ。文明の繁栄の象徴と絶滅危惧種の相反するフォーム『ロケットパンダフォーム』。

「任せたぞ。万丈」

「・・・おう」

ビルドと翼が、フィーネの前に立つ。

「・・・カ・ディンギルの動力はデュランダルだな」

ふと、ビルドが問いかける。

「いかにも」

それをフィーネは肯定する。

「いかに月を破壊する事の出来る兵器だとしても、それがただの一発だけの消耗品であれば本末転倒・・・失敗した時の為に、もう一発、いや、何度でも撃てるように設計するのが大砲の構造だ。そして、あの馬鹿げた砲撃を撃つには、それ相応のエネルギー源が必要だ。あの時、クリスにデュランダルを狙わせたのも、カ・ディンギルの力の供給源を確保する為だな」

「その通り。エネルギー炉心に不滅の刃『デュランダル』を取り付けてある。それは尽きる事の無い無限の心臓なのだ・・・・」

「だが、お前を倒せば、カ・ディンギルを動かすものはいなくなる・・・!」

翼が刃を向ける。

「やれるものならやってみろ」

「ああ、やってやるよ!」

ビルドがそう叫ぶ傍らで、クローズは暴走する響と対峙する。

「・・・」

「ガァァァアァァアアァァアアア!!!」

咆哮を挙げる響。

それを見て、万丈は、かつて戦兎が暴走した時の事を思い出し、そして、自分が暴走した時の事を思い出す。

 

そして、その結果生み出された惨劇を、脳裏に思い浮かべて。

 

「・・・・お前を止めるぞ、響・・・!」

「グガァァアアァアアァァァァアアアアァアアアアァァァァァアアアアァァアアアアアァアア!!」

響が絶叫を挙げて、クローズに襲い掛かった。

 

 

 

「どうしちゃったの響・・・!?」

クローズに襲い掛かる響を見て、未来は声を挙げる。が、その響はいとも容易くクローズに殴り飛ばされる。

しかしそれでも立ち上がり、ただ本能のままにクローズに襲い掛かる。それを再び、クローズが殴り、今度は地面に叩きつけた。

「元に戻って!」

そう声を挙げるも、ここから聞こえる筈がなく、画面の向こうの響はクローズと壮絶な戦いを繰り広げていた。

「もう終わりだよ・・・私たち・・・」

そこで板場が、そのような声を挙げる。

「学院がめちゃめちゃになって・・・響もおかしくなって・・・」

突然の非日常に放り込まれて、完全に弱気になっているのだ。無理もない。

「終わりじゃない。響だって、私たちの為に―――」

「あれが私たちを守る姿なの!?」

未来の反論を真っ向から否定するように、板場が泣きながら怒鳴る。

それと同時に、響の拳がクローズを吹き飛ばし、すぐさま追いついては頭を掴み、そのまま地面に叩きつけるように投げた。

『ぐあ・・・』

『グルァァァアアァアア!!』

咆哮を挙げて、地面に倒れたクローズに跨り何度もその拳を叩きつける。

その様子に、安藤も寺島も恐ろし気に見ていた。

それでも、未来は言う。

「私は響を信じてる」

その響の姿から、目をそらさず、真っ直ぐに。

「・・・私だって響を信じたいよ・・・この状況はなんとかなるって信じたい・・・でも・・・でも・・・!」

それでも板場は、泣き崩れる。

「板場さん・・・」

「もうやだよ・・・誰かなんとかしてよ・・・!怖いよ・・・死にたくないよぉ・・・!」

頭を抱えて泣き喚く。現実に耐え切れずに、ただただそこに蹲る。

「助けてよぉ・・・響ぃぃい・・・・!!!」

そう、泣き叫んだ時だった。

『――――いい加減にしろぉぉぉおお!!』

クローズが、叫んだ。

それと同時に、青い龍がクローズの拳から放たれ、響を吹っ飛ばしてそのまま地面に叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

一方で、

「おぉぉお!!」

ロケットの勢いで飛び、右手の鉤爪を振り下ろす。その先にはすでに刃の鞭。

鍵爪と刃の鎖が直撃―――だが拮抗せずにいとも容易く刃の鎖が両断される。

「何ッ!?」

「オラァ!」

すかさず懐に飛び込んで左足で後ろ蹴り(ソバット)を叩き込む。

「ぐぅ・・・!?」

「ハァァア!!」

そこへ翼の上空から巨大化した剣による『蒼ノ一閃』を放つ。

それを寸前で躱す。

「調子に乗るなァ!」

すかさずフィーネは刃の鎖を振るい、ビルドに叩きつけようとするも、ビルドは肩の噴出口で飛び上がり、逃げる。

「これでも喰らってろ・・・・!」

そして左手を向けるなり、左手を覆うグローブからいきなりレーザーが発射される。

それをフィーネは鞭で陣を作り出し、それによって出来た盾でそのレーザーを防ぐ。

 

ASGARD

 

「んだと・・・!?」

「ふんっ!」

防がれた事に動揺するビルドに、フィーネはすかさず刃の鞭を飛ばし、その足に絡みつかせる。

「しまっ・・・・」

そのまま一気に地面に叩き落とされる。

「桐生!」

「余所見をしている場合か!?」

「ッ!?」

すかさずフィーネが刃を鞭を振るい、翼に叩きつける。

「ぐあ!?」

直撃を貰い、吹き飛ばされるかと思いきや、その腕に刃の鞭が絡み、引っ張られ、そしてすかさずその顔面に拳の一発を貰う。

「かはっ――――」

そのまま吹き飛ばされ、地面を滑る。

しかしそこへ、ビルドが叩きつけられた場所の土煙の中から何かが凄まじい勢いで飛んできて、それがフィーネに直撃、吹っ飛ばす。

それは、フィーネを吹き飛ばした後に、引き返していき、やがて、左拳を突き出したビルドの左腕に戻り、その体を分解させ各部パーツとして装着された。

「ハア・・・ハア・・・どうだ、俺のロケットパンチのお味は・・・!」

ビルド・ロケットパンダフォームの固有武装であるコスモビルダーである。

しかし、吹き飛ばされたフィーネは、何事の無かったかのように立ち上がる。

その右肩の鎧が吹き飛び、中が粉砕骨折しているにも関わらず、だ。

「この程度の傷、ネフシュタンの前では無意味だ」

そうフィーネが言うと、彼女の体からパキパキという音が聞こえたかと思うと、歪んでいた肩が元に戻り、さらには鎧すらも修復してしまう。

「なんだと・・・!?」

「私と一つになったネフシュタンの再生能力だ。おもしろかろう?」

「人の在り方を捨て去ったか・・・!」

頬を赤く腫れさせて立ち上がる翼がそう呟く。

その時、カ・ディンギルに変化が起こる。

「なんだ!?」

「まさか、もうチャージが始まったのか・・・!?」

「その通り。さあどうする?急がなければカ・ディンギルは再び発射されるぞ?」

フィーネが挑発する。

「・・・・桐生」

ふと、翼が隣のビルドに話しかける。

「なんだ?」

「・・・私がどうにかする。だから・・・」

ビルドは思わず翼の方を見た。そんなビルドを見返す翼の眼を見た瞬間、ビルドは何も言えなくなり、ただ、絞り出すように答えた。

「・・・分かった」

「・・・ありがとう」

翼は、短くそう呟いた。

その時、青い龍が、響を上空へ吹き飛ばし、地面に叩きつけた。

 

 

 

 

「いい加減にしろよ・・・お前・・・」

クローズドラゴン・ブレイズによる攻撃を浴びてもなお立ち上がる響に、クローズは言う。

「その拳は、一体なんの為の拳だ」

響が飛び掛かる。その響の突き出された拳を掴んで、頭をひっつかんで、そのまま背負い投げの要領で背後に叩きつける。

「ガァッ!?」

「誰かを壊すだけの拳なのか!?誰かを悲しませるものなのか!?ただ流されるままに暴れて、その先に一体何があるんだってんだよ!?」

クローズの抑えつけを逃れ、響は踵落としをクローズの脳天に叩きつける。

クローズの足元が大きく陥没する。

「・・・・違うだろ」

しかし、クローズは耐えきった。

「お前のその手は、誰かと手を繋ぐためのものだろ!?」

その足を掴んで、もう一度地面に叩きつける。

「束ねて繋げる力の筈だろ!?」

その響の顔面に、拳を叩きつける。

「受け継いだ力なんだろ・・・・」

もう一度叩きつける。

「テメェの恩人から貰った、大事な力なんだろ!?」

もう一度、叩きつける。

 

クローズのドラゴンフルボトルが、最愛の人の形見であるように―――

 

「ガァァアアァアア!!!」

響が立ち上がり、クローズを蹴り飛ばす。

靴底を擦り減らしながら、後退したクローズ。そして響は、右手のバンカーを叩き起こす。

それに対して、クローズはボルテックレバーを回す。

「その力を、そんな事の為に使ってんじゃねえよ!!!」

 

『Ready Go!』

 

「グガァアァァァアアアアアァァァアアアァァァアアアア!!!」

「ウオリャァァァアアアアァァアアアアアァァアァアアア!!!」

 

 

ドラゴニックフィニッシュ!!!』

 

 

二人の拳が、相手に叩きつけら、凄まじい衝撃を巻き散らす。

交錯した二人の一撃は、どうなったのか。

「・・・違うだろ」

響の拳は、クローズの鳩尾に決まり―――

「その力は、こんな事の為に使うもんじゃねえだろ」

クローズの拳は、響の顔面に直撃する寸前で止まっていた。否、止めていた。

鳩尾に突き刺さっている拳を、クローズは反対の手で掴む。

「誰かから貰ったその力を、誰かを壊すために使うな。それじゃあ、ソイツの想いを裏切る事になるんだぞ」

「・・・・」

その拳をそっと引き離し、クローズは、こつん、と響の額に拳を当てた。

「だからもう、戻って来い」

「・・・・・ぁ」

次の瞬間、響の黒が、消えていった。

クローズの当てた拳の所から、一気に、引いていくように消えていく。

その姿はシンフォギアを纏っておらず、いつもの制服姿に戻っており、その両目からは、涙を流し、やがて膝をついた。

「・・・ご・・・め・・・なさい・・・・ごめん・・・なさい・・・!!」

体を震わせて、響は、クローズに握りしめられた拳を、もう一方の手で掴んだ。

「わた・・・わたし・・・わたし・・・!」

「分かってる。お前は何も悪くない。誰も死んじゃいない。だから泣くな」

「でも・・でもぉ・・・わた、しの・・・手は・・・誰かと・・・手、繋ぐため・・・に・・・あるのに・・・わた・・・りゅう・・・がさんを・・・!!」

まるで、小さく怯える子供のように、響は泣きじゃくる。

「分かってる。俺はなんともない。だから泣くな」

そう言いながら、クローズは響の頭を撫でて、響を慰める。

ただぐずり泣く響と慰めるクローズ。

その時だった――――

 

「立花ァぁぁああぁぁあああああ!!!」

 

翼の叫びが、響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――お前がいるから、私は、心置きなく歌える・・・」

「だから、それは洒落にならねえって言ってるだろうが・・・」

「分かっている。でも、こんな気持ちは初めてなんだ」

フィーネに向かって歩きながら、翼はビルドに向かってそう言う。

「奏と一緒に歌う時とは違う安心感。奏が隣にいてくれる時とは違う高揚感。お前が聞いてくれているというだけで、私は、安心して天高く舞い上がれそうな気がするんだ」

フィーネの前に立ち、翼は、キッ、とフィーネを睨みつけた。

「どこまでも『剣』といくか」

「今日に、折れて死んでも、明日に人として歌うために。風鳴翼が歌うのは、戦場ばかりでないと知れ!」

そう言い放つ翼。

「人の世界が剣を受け入れる事などありはしない!」

まるで蛇のように唸った刃の鞭が、翼に襲い掛かる。

「いいや、受け入れるさ」

その刃の鎖を、ビルドが弾き飛ばす。

「コイツがただの『剣』じゃなく、『風鳴翼』という一人の人間である限りッ!」

ビルドがコスモビルダーを放つと同時に、翼が飛び上がる。

コスモビルダーは真っ直ぐフィーネの方へ飛んでいき、それをフィーネは躱す。その上空から翼が飛び掛かるもすかさず刃の鞭を叩きつけようとする。

しかしその刃の鞭による攻撃を、翼は脚部のブレードで迎撃、弾いたところで、剣を巨大化させて『蒼ノ一閃』の一閃を放つ。

その一撃をフィーネは刃の鞭の切っ先を叩きつける事で相殺。その直後、コスモビルダーがフィーネの眼前に接近、さらにビルドも接近して右手のジャイアントスクラッチャーで交差時に強烈な斬撃を与え、コスモビルダーが直撃する。

「ぐあぁぁあぁああ!?」

吹き飛ばされるフィーネは、そのままカ・ディンギルの外壁に激突し、落下する。

「翼ァ!」

 

「――――去りなさい!無想に猛る炎!」

 

飛び上がり、刀を空中へ投げ、凄まじく巨大な大剣へと変形させて、その柄頭を蹴ってフィーネに向かって叩きつける。

 

天ノ逆鱗

 

天ノ逆鱗が、フィーネに向かって突き進む。

それに対して、フィーネはASGARDを三重に展開。そのASGARDに、翼の天ノ逆鱗が叩きつけられる。

凄まじい衝撃が迸り、周囲一帯に暴風が吹き荒れる。

翼の天ノ逆鱗はASGARDを貫く事はなく、その姿勢を一気に直立させる。

そのまま巨大な大剣は()()()()()()()()()()()()倒れていき、その上に乗る翼は二本の刀を携えて飛ぶ。

そして、その双剣から赤い炎を迸らせ、翼はカ・ディンギルに向かって飛ぶ。

 

炎鳥極翔斬

 

そう、翼とビルドの狙いは初めから―――

「初めから狙いはカ・ディンギルか!?」

「その通りだよ!」

 

ウルフ!』『スマホ!』『ベストマッチ!』

 

すぐさま翼を撃ち落とそうとするフィーネの前に、ビルドが飛び出す。

 

『Are You Ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

繋がる一匹狼スマホウルフ!イェーイ・・・!!』

 

灰色とシアンのスマホウルフフォーム。その姿へと再び変身したビルドは、すぐさまボルテックレバーを回す。

 

『Ready Go!』

 

翼へと迫る鎖の鞭。それを、ビルドは、展開した円状に展開したアプリアイコンの上を走る狼に噛ませ、捕まえる。

「何!?」

「翼の邪魔はさせねえ・・・・!」

 

ボルテックフィニッシュ!』

 

がっちりと刃の鞭を噛み込む影色の狼。

「チィッ!」

それにフィーネは舌打ちするも、しかし次なる手段は打っていた。

「だが、これならどうだ!」

次の瞬間、影の狼が加え込むネフシュタンの鎧の刃の鞭の切っ先から、突如として黒いエネルギー弾が生成される。

「これは・・・クリスの・・・!?」

かつて、クリスが放った、破壊の一撃――――

 

NIRVANA GEDON

 

「堕ちろぉぉぉぉぉおお!!!」

「しまったっ・・・避けろ翼ぁぁぁああ!!」

黒い砲弾が、空を駆け上がる翼に迫る。

「くっ・・・!」

だが、気付いた時にはすでに目の前に迫っていて―――

「ぐあぁぁああぁぁあぁああ!!!」

 

砲弾は翼に直撃した――――

 

 

 

(やはり、私では・・・)

意識が、闇に沈みかける。あの砲撃の威力は身をもって知っている。

だから、もう一度飛び上がる事は出来ないだろう。

そう、諦めかけた時――――

 

《―――何弱気な事言ってんだ》

 

懐かしい声が、聞こえた。

 

(・・・奏?)

目の前に立つのは、見間違うはずのない、唯一無二の片翼――――

 

《翼》

 

奏は、翼に手を差し伸べる。

 

《あたしとあんた。両翼揃ったツヴァイウィングなら、どこまでも遠くへ飛んでいける》

 

その手を、翼は掴み取る―――そして、思い出す。

 

(そう・・・両翼揃ったツヴァイウィングなら―――そして―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

《―――そして、勝利への方程式を導いてくれる、あの男が背中を押してくれるなら―――》

 

 

 

 

 

 

「―――翼ぁぁぁあああ!!!飛べぇぇぇええぇえええええ!!!」

 

 

眼を見開く。その目の前には、彼が作り出した、勝利への方程式。

 

(桐生が、背中を押してくれるなら―――!!)

 

カ・ディンギルに存在する足場を踏み、飛び上がって、翼は、飛ぶ。

 

(どんなものだって、超えて見せる―――!)

 

「―――勝利の法則は、決まった・・・!!」

その炎を蒼炎へと変えて、翼は、火の鳥の如く舞い上がる。

「させるかぁぁああ!!」

「それはこっちのセリフだぁぁぁああ!!!」

なおも妨害しようとするフィーネの攻撃を、ビルドは体を張って止める。

左腕のスマホは粉砕され、右手の鉤爪は折られ、肩の装甲が削れ、腹に直撃し、顔面に叩きつけられようとも、翼の邪魔をさせまいと、ビルドは全力でフィーネの攻撃を防ぐ。

そして翼は、天高く舞い上がる。

(立花、見ろ。これが、私の生き様だ!!!)

 

「――――立花ぁぁぁああああぁぁぁああぁぁあああ!!!」

 

親友の力を受け継ぐ少女の名を、翼は咆え――――そして、カ・ディンギルにその一撃を叩き込んだ。

「ああ・・・!!!」

フィーネは目を見開く。

「翼さん・・・!?」

「翼・・・!?」

そして、それを目撃したクローズと響。

「・・・・カ・ディンギル」

そして、散々フィーネからの攻撃を受けてボロボロになったビルドは、翼が突撃したカ・ディンギルを見上げて、仮面の奥でほくそ笑んだ。

 

「―――破壊だ。ざまーみろ」

 

 

 

次の瞬間、カ・ディンギルが爆発した―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の想いは・・・またも・・・!!」

もはや修復不可能なまでに破壊されたカ・ディンギルを見上げて、フィーネは呆然と呟く。

「ハア・・・ハア・・・畜生・・・やってやったぞ・・・くそったれがぁ・・・・!!」

地面に倒れ込み、ビルドは、破壊されたカ・ディンギルを見上げて、そう呟く。

だが、その声に歓喜はなく―――

「・・・くそったれがぁぁぁあ・・・・・!!!!」

ただただ、後悔しかなかった。

「そん・・・な・・・・翼・・・さん・・・・・」

そして響は、翼が消えたカ・ディンギルを見上げて、一人絶望し、膝をついて。

「畜生・・・畜生ッ!!!」

クローズはすぐ傍の瓦礫を殴り砕いて、悪態を吐く。

 

 

 

 

「・・・天羽々斬・・・・反応、途絶・・・」

藤尭が、絞り出すようにそう告げる。

その現実に、友里は思わず涙を流して目をそらし、弦十郎は、拳から血が滲みそうな程に握りしめる。

「身命を賭して、カ・ディンギルを破壊したか・・・翼・・・お前の歌・・・世界に届いたぞ・・・世界を守り切ったぞ・・・!!」

そして、実際にその手からは血が滲みだしていた。

「・・・分かんないよ」

そんな中で、板場が呟く。

「分かんないよ!どうして皆戦うの!?痛い思いして、怖い思いして、死ぬために戦ってるの!?」

涙を流し、理解できないと喚き散らす。

「分からないの?」

そんな板場に、未来は言う。未来もまた、涙を流して。

そんな彼女は、板場に歩み寄り、その肩を掴んで引き寄せる。そして、真っ直ぐに板場を見据えて、もう一度言う。

「分からないの?」

アニメという、非現実的なものを見ている、彼女なら、分かる筈なのだ。

 

ただ、誰かの為に。

 

やがて、板場の泣き声が、その部屋に響いた。

 

 

 

 

 

 

「―――どこまでも忌々しい!!」

フィーネが、刃の鞭を地面に叩きつける。

「月の破壊は、バラルの呪詛を解くと同時に、重力崩壊を引き起こす惑星規模の天変地異に人類は恐怖し、狼狽え、そして聖遺物を振るう私の元に基準する筈であった・・・!!痛みだけが、人の心を繋ぐ『絆』!たった一つの真実なのに・・・!!」

そう喚き散らすフィーネ。そんなフィーネに、叫ぶ者がいた。

「―――――フィィィィィネェェェエエエェエエエエエッ!!!!」

 

ビルド―――桐生戦兎だ。

 

ビルドは、フィーネを指差して叫ぶ。

「次へテメェだ!テメェをぶっ倒して、全部終わらせてやるッ!!!」

その手に、ラビットタンクスパークリングをもって、

「二年前のライブも、クリスを誘拐したことも、学校を破壊し、大勢の人間を騙し、そして、クリスと翼の事も、その全てに決着をつけてやるッ!!!」

その叫びに、フィーネは恐ろしい眼つきでビルドを睨み返す。

「私を、倒すだと・・・?」

ゆらりと怒りの感情を迸らせながら、フィーネはビルドと向き合う。

「私は、数千年もかけて、バラルの呪詛を解き放つ為に、一人抗ってきたのだ・・・かつて唯一創造主と語り合える統一言語を取り戻し、この胸の内の想いを届けるために・・・!それなのに、お前たちは・・・!!」

「その為に、大勢の人間を巻き込んだのかよ・・・」

クローズが、ビルドと挟み込むようにフィーネの背後に立つ。

「いったいその想いの為にどれだけの人間が死んだ・・・お前の為に、どれほどの奴が犠牲になった!?」

「是非を問うだと!?恋心も知らぬお前たちが!」

怒鳴るフィーネに、クローズは動じず、ただその手に『イチイバルレリックフルボトル』を取り出し、それをクローズドラゴンに装填する。

「恋心ぐらい分かる・・・だからこそ」

「お前を止める・・・!!」

 

激唱ゥ!』『クロォーズイチイバルッ!!!』

 

ラビットタンクスパークリング!』

 

フィーネが刃の鞭を振るう。その鞭が、展開されたスナップライドビルダーに阻まれる。

 

『Are You Ready?』

 

「ビルドアップ!」

「行くぜ!」

 

激唱戦場クロォーズイチイバルッ!!!』

 

イェェエイッ!!ドッカァァァァアンッ!!!』

 

シュワッと弾けるラビットタンクスパークリング!イェイイェーイ!』

 

「行くぞォ!」

「来い・・・仮面ライダーァァア!!」

「うぉぉぉおおぉおおお!!!」

フィーネとビルド、そしてクローズが今、ぶつかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「クリスちゃん・・・・翼さん・・・」

そして響は、ただそこで膝を付き、絶望していた。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

激突する仮面ライダーとフィーネ。

「痛みだけが、人を繋げる絆だと・・・ふざけてんじゃねえよ・・・!!!」

フィーネの言葉を否定し、彼らは戦う。

「二人とももういない・・・」

その最中で絶望する響。

「いくらなんでも無茶だ・・・!!」

その様子を、シェルターから見守る者たち。

「じゃあ一緒に応援しよう!」

そして、今まさに、敗北しそうな彼らに、奇跡が宿る。


次回『夜明けのシンフォギア』


シンフォニックマッチ!!』



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夜明けのシンフォギア

戦「ノイズが蔓延る新世界にて、仮面ライダービルドこと桐生戦兎は、相棒の万丈、特異災害対策機動部二課の面子、そしてノイズへの唯一の対抗手段であるシンフォギア装者、翼と響、そしてクリスと共に、全ての黒幕フィーネとの最終決戦に挑むのであった」
万「ついにここまで来たんだな」
ク「っていうか、まだ最終回じゃねえんだからそんな最終回っぽいナレーションする必要ねえだろ?」
響「いいじゃん雰囲気があって」
弦「うむ、何事も気持ちから入らないとな!」
藤「気持ちってなんですか気持ちって・・・」
友「しかし黒幕の正体が了子さんだったなんて・・・」
戦「感傷に浸っててもしょうがないでしょうが。過ぎちまったものはしょうがない」
了「そうよぉ?もうあとの祭りなんだから、あとは成り行きに任せないと」
ク「おい、何猫被ってんだよフィーネ。もうその必要はねえだろ」
フィ「ふっ、そう言われては仕方がない。まあ正体もバレているんだ。ここまで上っ面を被る必要はないか」
翼「随分と素直だな・・・まあいいか」
フィ「ちなみに、私の中の人は仮面ライダーと関係があったり」
戦「ここでいきないCVネタもってくんな!?ビビるわ!」
フィ「黙りやがれデス」
農具・ガキ「ケモミミ!」
戦「別のキャラの感性に引っ張られてんじゃねえよ!?」
罪「まあ、それはともかくさっさと本編に移ろう。こんなクソネタ出されて読者もうんざりしている頃だろうし」
作「何気に酷くない・・・?」
戦「それもそうだな」
作「無視!?」
未「では、ついに響があのパワーアップした姿になる第二一話をどうぞ!」
クロ「キュル!」


「うぉぉぉおお!!」

高速回転するドリルクラッシャーをフィーネに叩きつけるビルド。

しかし、その一撃は躱され、すかさず蹴りが迫るも紙一重で躱す。

「ウオリャァアア!!」

すかさずクローズが飛び込み、ブラストブレイドで斬りかかるも、硬質化した刃の鞭に防がれる。しかし、防がれてもすぐさま引き、もう一度横薙ぎに振るい、フィーネの脇腹を浅く斬る。

しかし、すぐさまもう一本の刃の鞭が飛んできて、クローズはそれをホイールによる機動力で躱す。

そこへ泡によって加速したビルドのボレーキックが迫る。

それと同時に距離を取ったクローズのブラストモービル・ブラストシューターによる射撃が重なる。

それに対して、まずビルドの一撃を受け止め、すかさず刃の鞭で光弾をある程度撃ち落とし、そしてビルドの足を掴んでクローズの方へ投げる。

「なっ!?」

反応出来なかったクローズはそのまま突っ込んできたビルドとぶつかり転がる。

そこへフィーネが黒弾を形成、二人に向かって投擲する。

「ッ!?」

それを見たビルドはすぐさま泡で横に飛び、続いてクローズも反対方向にホイールを回転させて躱す。外した黒弾は先ほどまでビルドたちがいた地面に直撃し、凄まじい爆発を引き起こすも、すかさずビルドとクローズがフィーネに接近する。

ビルドはドリルクラッシャーと四コマ忍法刀、クローズは双身刀モードのブラストモービル・ブラストデュアルソードでフィーネに向かう。

それを迎撃するようにフィーネは動き、刃の鞭がそれぞれ二人に向かう。

しかし、ビルドはそれを受けるとドリルクラッシャーで一気に巻き取り、一方のクローズは躱してそのままフィーネに接近する。

「ぐっ!?」

片方を封じられ顔を歪めるフィーネだが、すぐさまクローズに対応。

振り下ろされる双身刀をもう一方の刃の鞭で受け止め、すかさず反対の刃で斬り上げられる。先ほどより深い傷がフィーネの体を抉るが、それも決定打にはならない。

ネフシュタンの鎧の再生が、彼女をどうやっても生かす。

 

『ボルテックブレイク!』

 

そこへ刃の鎖を絡めたまま飛び出てくるビルドが、ドリルクラッシャーに青い角のようなエネルギーを纏わせてそのままフィーネの体を貫く。

「ぐふぅ・・・!?」

「おぉぉぁあぁぁあ!!」

そのままドリルクラッシャーを回転させて、貫いた場所から一気に中身をかき回す。

血が飛び散り、臓腑がスクランブルエッグになる。

そしてそのまま引き抜き、中の臓腑を抉り出す。

飛び散る血、巻き散らされる内臓。

だが、そのどれもが決定打にはなりえない。

ネフシュタンの再生は、ビルドたちの攻撃を上回る。

「どれほど攻撃しても無駄だ。私には決して届かんよ」

「だったら届くまで攻撃するだけだ!」

すかさずクローズがブラストモービルの形状を双身刀から弓『ブラストインパクトボウ』へ変形させ、矢を引き絞る。

「喰らいやがれ!」

「それをおちおち喰らうと思ったか!?」

しかし、それよりも早く地面に忍ばせていた鎖の刃がクローズを襲い、そして上空へ打ち上げる。

「ぐあぁああ!?」

「万丈!」

打ち上げられたクローズ。そこへフィーネの放つ黒弾が迫る。

「こなくそ・・・!」

すかさず矢を放って迎撃するクローズ。矢は寸分違わず黒弾を撃ち抜き破壊する。

しかし未だ空中で身動きの出来ないクローズに更なる追撃を加えようとするフィーネに、ビルドはすぐさま接近。その拳を叩きつける。

「オラァ!!」

「ぐぅ!」

拳を叩きつけられたフィーネはその一撃を止める。

そのまま力比べが始まるかと思いきや、すぐさま拳の中で泡が炸裂、フィーネを吹き飛ばし、すかさずそのフィーネに泡による加速で追いつき、蹴りを叩き込む。

吹っ飛ばされたフィーネはそのまま瓦礫に激突し粉塵を巻き散らし、そしてそこへクローズの矢が炸裂する。

「どうだ・・・!」

未だ巻き起こる粉塵。

そのまま警戒するビルドだが、次の瞬間、背後からクローズの悲鳴と爆発音が響いた。

「な!?」

振り返れば、何故かこちら側に吹っ飛んでいるクローズの姿があった。

視線をずらせば、そこにはネフシュタンの刃の鎖が―――

「まさか、死角から攻撃を!?」

おそらくあの黒弾の直撃を受けたであろうクローズはそのまま変身解除されてしまう。

「万丈!?」

「余所見をしている場合か!」

すかさずフィーネが黒弾を放つ。

「くそ!」

それを見てビルドはドリルクラッシャーで迎撃するも、威力に耐え切れず吹っ飛ばされる。

そこへ刃の鎖が足に絡みつき、そして持ち上げられて、一気に地面へと思いっきり叩きつけられる。

「がはっ・・・!?」

「止めだァ!!」

そして、もう一本の刃の鞭の切っ先がビルドに叩きつけられる。

「ぐあぁぁああ!?」

止めの一撃を受けて、ビルドすらも変身解除される。

「ぐぅ・・・あ・・・・」

「が・・・くぅ・・・・」

痛みに悶える戦兎と万丈。

「もはやネフシュタンと一体化した私に、お前たち程度が勝てる道理はない。そもそも立花響という生体と聖遺物の融合症例。奴という先例がいたからこそ、私は己が身をネフシュタンと同化させる事が出来たのだからなぁ・・・」

倒れ伏す二人を見下すフィーネ。

「痛みこそが、人を繋げる唯一の真実にして絆だ・・・それなのに、お前たちは・・・!!」

「・・・・違う」

戦兎が、手を付いて立ち上がる。

「痛みだけが、人を繋げる絆だと・・・ふざけてんじゃねえよ・・・!!!」

ふらつきながらも、戦兎は立ち上がる。

「痛みが刻み付けるのは恐怖だけだ!そんなものが絆である筈がねえ!それは、ただ支配したいというだけのお前の身勝手な思い込みだ!絆ってのはな、相手を信じる心なんだよ!痛みじゃない、ただひたすらに相手を信じられる事こそが本当の絆だ!」

「黙れ!相手を信じるだと?ふざけた事を抜かすな!バラルの呪詛がある限り、人は決して分かり合えぬ!月を破壊し、バラルの呪詛を解き放たない限り、人が繋がる事はありえないのだ!」

「それこそありえねえよ・・・!!」

万丈が、立ち上がる。

「だったらどうして俺と戦兎は互いを信じあえる!?クリスと分かり合う事が出来た!?翼を助けたいと思えた!?響がクリスに向かって手を伸ばせた!?全部、お前の言う痛みなんかじゃない、相手を思いやる心から出来たことばっかだ!バラルの呪詛程度で、人が繋がれないだと?これを見てまだそんな事が言えんのかよ!?」

「黙れ・・・黙れ黙れ!お前たちは何も知らない。ただあのお方と並び立ちたかった私の気持ちを、その年月を、その苦しみを!何も分かっちゃいない!そんなお前たちが、『絆』を語るなァ!!」

「「語ってやる!!」」

フィーネの叫びを、真っ向から返す。

「どんだけお前が俺たちの絆って奴を否定してもな、俺たちは絶対にそれを曲げねえ!」

「人と人とが手を繋ぎ合う世界、それを創り上げる為に、俺たちは戦っている!」

その手に、それぞれのボトルを握りしめる。

「だから俺たちは、絶対に諦めねえ」

「倒れない」

「くじけない」

「「負けられない!!」」

その胸には、いつだって一つの信念があるのだから。

 

「愛と―――」

 

「平和の―――」

 

「「為にぃぃぃいいいぃぃいッ!!!」」

 

そう叫び、二人は走り出す。

「愛と・・・平和だと・・・?」

駆け出す二人の、その言葉を聞いて、フィーネは怒鳴り散らす。

「そんな世迷言、すぐに消し飛ばしてくれるわァ!!」

次の瞬間、ネフシュタンの刃の鞭が、二人を襲った――――

 

 

 

 

「・・・翼さん・・・クリスちゃん・・・」

その最中で、響は一人、そこで項垂れる。

「二人とももういない・・・・」

その瞳に光は無く、ただあるのは、胸中に広がる絶望のみ。

「学校も壊れて・・・」

掠れた声で、ただ目の前の現実を、絶望に染まった心で認識する。

「みんないなくなって・・・」

遠くで、戦兎と万丈がフィーネに生身で立ち向かっているが、今の響には遠い場所の騒音程度にしか聞こえていない。

「わたし・・・わたしはなんのために・・・なんのために戦ってる・・・?」

自分が戦う意味を見失って、響はただ一人、そこで蹲る。

「みんな・・・」

 

 

 

 

 

その一方で、

「いくらなんでも無茶だ・・・!!」

生身でフィーネと戦う戦兎と万丈を見て、藤尭がそう声を挙げる。

その言葉の通り、戦兎と万丈は、ネフシュタンと完全に融合したフィーネに終始圧倒され続けている。

「聖遺物相手に、生身で立ち向かうなど・・・!」

弦十郎の場合はお前が言うな、と言いたい所だが実際は憲法に抵触する戦闘力を有するためにあまり強くは言えない。

『うぉぁぁぁあああ!!!』

『がぁぁあぁぁああ!!!』

しかし、どれほど叩きのめされても、どれほど吹き飛ばされても、戦兎と万丈は立ち上がり、フィーネに向かって行く。

「戦兎先生・・・」

「龍我さん・・・」

その無茶苦茶な戦いように、学生である四人は呆然とする。

その最中、どこからかいくつもの足音が聞こえてきた。

振り向けば、扉の方から、幾人もの民間人がいた。

「司令、周辺区画のシェルターにて、生存者、発見しました」

どうやら、他のシェルターにいた生存者のようだ。

「そうか!良かった・・・」

それに弦十郎は心底安心する。

その最中で、

「・・・あ」

黒髪の少女が、藤尭の前にあるモニターを見て声をあげる。

「あの時のおじさん・・・」

「あ、ちょっと!」

その黒髪の少女が、モニターに近付いて顔を覗き込む。

「やっぱり・・・」

「すみません、うちの娘が・・・」

「戦兎先生の事を知ってるんですか?」

「え、ええ・・・あの人に、娘をノイズから助けてもらって・・・」

『ぐあぁぁあああ!!』

戦兎の悲鳴が響く。

画面を見れば、地面に叩きつけられた戦兎が仰向けになって地面に倒れていた。

「おじさん・・・!」

黒髪の少女は、思わず声を挙げる。

しかし、おそらく常人が喰らえば死ぬような攻撃を受けても、戦兎は立ち上がる。

『まだ・・・まだぁぁああ!!!』

「がんばれ・・・!」

もう、何度も殴られては叩き伏せられている。それでも戦兎は立ち上がり、戦っている。

その戦兎を、黒髪の少女は応援する。

そう、その少女は、かつて戦兎が助けた女の子なのだ。

「どういう事だ・・・」

その戦兎と万丈の戦いに、藤尭は声を漏らす。

確かに、普通の人間が、聖遺物を纏った相手にあそこまでやれるなんて事は、本来ありえない。

よほど体が頑丈じゃなければ、風に吹かれるが如く死んでいる筈だ。

それなのに、二人は生身で戦い続けていた。

それは一体どういう事なのか。

その最中で、ふと、もう一人のツインテールの少女が声を挙げる。

「あ!かっこいいおねえちゃんとおにいちゃんだ!」

「あ、ちょっと!待ちなさい!」

その少女は、進んでモニターに近付く。

『ぐおあ!?』

『ええい、鬱陶しい!』

『これぐらいで・・・終わると思ってんじゃねえぞぉぉぉおお!!』

その最中で、万丈はなおもフィーネに殴り掛かる。

しかし、その画面の奥で、響は一人、蹲っていた。

「すみません・・・」

「ビッキーの事、知ってるんですか?」

安藤が、その子の母親に尋ねる。

「え・・・・」

その母親は、しばし考える素振りを見せて、やがて答えた。

「詳しくは言えませんが、うちの子が、あの人たちに助けていただいたんです」

その少女は、かつて万丈と響が、体を張って助けた少女だった。

「自分の危険を顧みず、助けてくれたんです。きっと、他にもそう言う人たちが・・・」

「響の・・・人助け・・・」

それは、彼女が趣味としている事だった。それが、今、どういう訳かこの状況を巡り合わせた。

『ぐおあ!?』

『がはっ!?』

その間にも、戦兎と万丈はボロボロになっていく。

「ねえ?カッコいいお姉ちゃんたちを助けられないの?」

「助けたい・・・」

二人の少女が、皆に聞く。

その答えに、彼女たちは口ごもる。

「・・・助けようと思ってもどうしようもないんです。私たちには何もできないですし・・・」

そう、寺島が言ったとき、

「じゃあ一緒に応援しよう!」

ツインテールの少女が、そう言いだす。

「ねえ?ここから話しかけられないの?」

少女が藤尭にそう尋ねる。

「う、うん・・・出来ないんだよ・・・」

「出来ると思う・・・」

藤尭がそう答えた瞬間、予想外な所から肯定する声が上がった。

それは、黒髪の少女だった。

「学校の設備がまだ大丈夫なら、電力を復旧させて、スピーカーとかを使って声を届けられると思う・・・」

「分かるのか?」

「お父さんが、でんきこうじし」

「父の影響で・・・」

ピース、と無表情にながらもどこか誇らしげなドヤ顔で、黒髪の少女はそういう。

「確かに、学校の設備が無事なら、リンクしてここから声を届ける事は可能です」

「それなら!」

未来の瞳に希望がともる。

「応援、やろう・・・!」

黒髪の少女が、そういった。

やる事は、決まった。

 

 

 

 

 

 

その一方で、戦場では。

「なぜだ・・・」

フィーネは、なおも立ち上がる戦兎たちから後ずさる。

「何故、そこまでして立ち上がる・・・何がお前たちを奮い立たせる・・・!?」

理解できない。フィーネは、そう顔を振った。

「どうして、そこまで他人の為に戦える!?」

「そんなの・・・決まってんだろ・・・!」

その手にラビットフルボトルをもって、戦兎は叫ぶ。

 

「俺たちは・・・仮面ライダーだからだ!」

 

そう言って、戦兎はフィーネに向かって走る。

ラビットフルボトルを握りしめて、その拳をフィーネに叩きつけようとする。

しかし、その拳はフィーネの顔面のすぐを通り過ぎ、そして次の瞬間、腹に重い一撃が入る。

「カハッ・・・!?」

「もういい・・・沈め」

冷めきった眼で、フィーネは腹を殴った戦兎を見下す。

「どれほど足掻こうと、お前たちが私に勝つことなどありえないのだ。その仮面を纏えないお前たちに、信念を貫き通す事など出来ないのだ」

そのまま、戦兎はその場に倒れ込む・・・そう、思った瞬間、戦兎の手が、殴ったフィーネの手首を掴む。

「!?」

「それ・・・でも・・・!」

その顔を挙げて、フィーネを見上げる。

「俺たちは・・・戦い続ける・・・・!!」

その瞳には、決して折れぬ信念が揺らめき、戦兎の体から、黄金の光が揺らめき出る。

「誰かの為に・・・誰かの笑顔の為に・・・!!」

そして、降ろした右手の中のラビットフルボトルが変化する。

 

ハザードレベル7による、フルボトルの進化――――

 

「俺たちは、戦い続けるんだぁぁああ!!!」

黄金に輝くラビットフルボトルを握りしめて、戦兎は拳を振り上げて、フィーネの顔面を打ち据えた。

「がっ!?」

「おぉぉぁぁあ!!」

すかさずその殴った顔面を蹴り上げ、仰け反らす。

「うぉぉぉおお!!」

そこへ万丈も飛び込んでくる。その万丈も、白銀の光をその体から発しながら、銀色の輝くドラゴンフルボトルを握りしめて、拳を引き絞った戦兎と同時に、フィーネを殴り飛ばす。

「ぐぁぁぁああ!?」

想定外の威力に、フィーネは驚く間もなく殴り飛ばされ、地面に倒される。

「ぐ・・・あ・・・馬鹿な・・・ネフシュタンと完全に融合した私が押されているだと・・・!?」

ありえない。ただの人間に、このような芸当が出来る訳がない。

「お前たちは・・・一体・・・!?」

「何度も言わせるんじゃないよ亡霊女」

その手のフルボトルを握りしめて、戦兎は、万丈は、答える。

 

「「―――愛と平和の戦士、仮面ライダーだ」」

 

そう、はっきりと言ってのける二人。

「愛と・・・平和だと・・・!?」

その言葉に、フィーネは怒りに顔を歪める。

「その言葉が、どれほど幼稚で浅はかな言葉なのか、お前たちは理解しているのか!?」

「知ってるよ。痛いくらいに知っている。愛と平和が、どれほど脆い言葉かなんて、俺が一番良く知ってる・・・だからこそ謳うんだよ。愛と平和を、それを、一人一人が胸に抱いて生きていける世界を、俺は、この手で創り上げ(ビルドす)る」

 

 

 

 

その姿は、黒髪の少女に、どのように映っただろうか。

 

 

 

 

そして、それと同時に、彼らの耳に、何かが聞こえた。

 

 

 

そしてそれは、戦兎と響にとっては、とても聞き慣れた歌だった。

 

 

 

――――仰ぎ見よ太陽を よろずの愛を学べ

 

 

 

「これは・・・」

「・・・リディアンの、校歌」

それは、リディアンという学校で歌われてきた、伝統の校歌。

「なんだ・・・この耳障りな・・・何が聞こえている・・・!?」

フィーネは、何がなんだか分からない。

 

 

――――朝な夕なに声高く 調べと共に強く生きよ

 

 

そして、その歌声は、響にも聞こえていた。

「ぅぁ・・・・」

その声の中には、大切な親友の声もあった。

「なんだ・・・これは・・・」

その意図が、なんなのか分からないフィーネ。

 

 

―――遥かな未来の果て 例え涙をしても

 

 

 

その歌は、未来たちが、決死の想いで繋げた意志。そして、メッセージ。

 

(響、戦兎先生、龍我さん・・・私たちは無事だよ。皆が帰ってくるのを待っている。だから、負けないで)

 

 

―――誉れ胸を張る乙女よ 信ず夢を唄にして

 

 

その声は、確かに聞こえた。聞こえていた。

 

 

 

「どこから聞こえてくる・・・この、不快な歌・・・!?」

そこで、フィーネは気付く。

「―――ハハハハハ!!」

そこで、万丈の笑い声が上がった。

「そうか、アイツら生きてんのか」

「ああ、だったら、余計な事に気を遣わないで済みそうだ」

二人は、心底嬉しそうに、学園のスピーカーから聞こえてくる歌を聞いていた。

そして、聞いた。

「聞こえるだろ?皆の声が・・・皆の歌が、お前によ」

 

 

 

「・・・・うん、聞こえる」

 

 

 

その言葉に、答える声。

「皆の声が・・・聞こえる・・・・」

夜明けの日差しが降り注ぐ。

「――――良かった」

その声に、響は、心の底から安心する。

「私を支えてくれる皆は、いつだって側にいる・・・!!」

そして、振り絞る。

「皆が歌ってるんだ・・・だから・・・!」

 

 

 

その、胸の中の歌を、解き放つ――――!!!

 

 

 

「まだ歌える―――頑張れる―――戦えるッ!!」

 

 

 

 

――――希望が、起動する。

 

 

 

 

突如として放たれた(うた)を纏い、響は立ち上がる。

 

 

 

「まだ戦えるだと・・・!?」

その事実に、フィーネは驚きを隠せない。

「ああ、戦える」

それと同時に、戦兎の握るボトルと万丈の持つボトルにも変化が起こる。

黄金に輝いていたラビットフルボトルは、蒼く染まり、銀色に輝いていたドラゴンフルボトルは紅く染まる。

そして、もう一本――――

それを、ポケットの中から取り出す。

 

それは、紅蓮から夕焼け色に染まった、フェニックスフルボトルだった。

 

「馬鹿な・・・何を支えに立ち上がる!?何を握って力と変える!?鳴り渡る不快な音の仕業か・・・?」

フィーネにとっては、何もかもが予想外の事過ぎて、頭の整理が追い付いていなかった。

だけど、これだけは言えた。

 

奇跡は―――起きたのだ。

 

「そうだ・・・お前が纏っているものはなんだ・・・?お前たちの手の中にあるものはなんだ・・・!?・・・何を纏っている?何を握っている!?それは私が作ったものか!?それは私の知っているものか!?お前が纏うそれは一体なんだ!?お前たちが握るそれはなんなのだ!?」

その問いかけに答えるように、響は顔を挙げた。

「なんなのかって?そんなの、決まってんだろ」

その問いかけに答えるように、戦兎は口を開いた。

 

次の瞬間、三つの光が、天を突いた。

 

 

一つは、蒼。蒼天色の、風鳴翼の放つ光。

 

一つは、紅。紅蓮色の、雪音クリスの放つ光。

 

一つは、黄。黄金色の、立花響の放つ光。

 

 

 

そして―――

 

 

 

絶唱ゥ!!!』

 

 

 

万丈が、赤く染まったドラゴンフルボトル―――『イチイバルドラゴンソングフルボトル』をクローズドラゴンに装填。するとクローズドラゴンが、紅と白の塗装を施されたような姿に変わる。

「行くぜ、戦兎」

「分かってるよ、万丈」

万丈は、そのクローズドラゴンをドライバーに装填する。そして戦兎は、蒼く染まったラビットフルボトル『天羽々斬兎ソングボトル』と夕焼け色に染まったフェニックスフルボトル『ガングニールフェニックスソングボトル』を装填する。

 

 

天羽々斬兎(アメノハバキリウサギ)!』『ガングニールフェニックス!』

 

シンフォニックマッチ!!』

 

クロォーズイチイバルヘルトラヴァースッ!!』

 

 

ボルテックレバーを回し、スナップライドビルダーを展開する。

戦兎には、蒼と夕焼け色の装甲が、万丈には、紅と白の装甲がそれぞれ展開される。

戦兎のビルダーの展開の仕方は、どこかのライブステージを思わせるようであり、一方の万丈のビルダーは四方だけでなく、頭上にまで展開されていた。

 

そして――――

 

 

 

『Are You Ready?』

 

 

 

覚悟は良いか?と、お決まりの問いかけをしてくる。

 

それは、巨大な敵へ立ち向かう事への確認と、その力を使う事に対する問いかけ。

 

だけどその答えは、いつだって決まっている。

 

 

その視線を一度、響に向けると、響は、力強くうなずいた。

 

 

そして―――

 

 

「「変身ッ!!」」

 

「シンフォギアァァァァアアァァァアアアァァア!!!」

 

声が重なり、戦兎、万丈、響、翼、クリスは、変身する。

 

 

 

天に羽撃くダブルシンガー!』

ビルドツヴァイウィング!』

イェーイチョウスゲェーイ!!』

 

激唱(ゲキショウ)激強(ゲキツヨ)マッスルゥブァレットパーティ!』

クロォーズイチイバルヘルトラヴァァァアス!!』

『オラオラオラオラオラオラァァァァアア!!!』

 

 

五つの光が飛翔する。

白き純白の装束と翼を羽撃(はばた)かせ、響、クリス、翼は飛ぶ。

そして、ビルドとクローズも、その姿を今までにない新たな姿で飛び立った。

 

ビルドは、蒼と夕焼け、二つの空の色を纏い、その複眼は、左が兎の顔でその耳の部分は刀となり、一方の右側は不死鳥と槍といった姿となり、その手首には響の物と酷似したアームドが装備され、その背中からは『ZWソレスタルブレイブウィング』が展開されていた。

 

その名も『ビルド・ツヴァイウィングフォーム』。

 

二つの力を組み合わせるビルドだからこそ成しえる形態―――

 

 

一方、クローズは全身を赤くクリムゾンの如く染め上げ、その各部から白熱するラインを体中に走らせ、全体的に少しごつくなると同時に、龍としての威厳がさらに出ているような姿。

その背中には二本の飛行ユニット『トラヴァースフライター』が開き、そこからラインと同じ光を発して空を飛んでいた。

 

その名も『クローズイチイバル・ヘルトラヴァース』

 

地獄を乗り越え、そして天に羽撃く為のクローズの新形態―――

 

 

 

そして、三人のシンフォギア装者が成したのは、ありったけの歌の力『フォニックゲイン』によってシンフォギアに施された三〇一六五五七二二のリミッターを全てアンロックする事で成しえる、最終決戦形態。

 

その名も―――『XD(エクスドライブ)

 

 

 

 

 

歌と科学、その二つが交錯し、そして最高のベストマッチとなって、奇跡は引き起こされた。

 

 

 

 

「――――さあ」

 

数式と楽譜を展開して、ビルドは告げた。

 

実験(ステージ)を始めようか」

 

 

フィーネを上空から見下ろし、今、最終決戦が始まる―――




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「高レベルのフォニックゲイン・・・こいつは二年前の意趣返し・・・?」

新たな姿、新たな力を手に入れた響、翼、クリス、ビルド、クローズたち。

その力をもって、フィーネの呼び出すノイズを蹴散らしていく。

「来たれ・・・デュランダル!!」

しかし、未だフィーネは諦めず、彼らは、最後の決戦へと向かう。


次回/無印編最終回『ソングが奏でる明日』


「生きるの、諦めんなよ」




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ソングが奏でる明日

作「祝え!ついにこの小説のお気に入り登録者数が七〇〇人を突破したぞ!」
翼「この小説を読んでくれる皆様には感謝以外の言葉もありません」
戦「という訳で!」
響「全ての事件の黒幕であったフィーネを前に大ピンチに陥っていた仮面ライダーとシンフォギア装者たち」
万「しかし絶体絶命の中、硬い心でフィーネと戦っていた俺たちだった」
ク「そこへ生き残っていた奴らからの歌が聞こえ、最高の奇跡を引き起こす」
翼「その名も『エクスドライブ』『ビルド・ツヴァイウィングフォーム』『クローズイチイバル・ヘルトラヴァース』!」
未「その力が今、開放される時!」
クロ「キュルル!」
ガキ「俺たちにもそういうフォームあるのかな?」
工具「きっとある。だから待とう」
頭「それまで心火を燃やして」
農具「待つのデース!」
罪「まあ、それまでかなり長い時間がかかるだろうけどな」
タヤマ「うう、セレナーセレナー・・・」
妹「まだ引きずってる・・・」
元詐欺師「まああーしたちの出番はまだ先だけど」
けん玉「ここいらで登場させてもらうワケだ」
麗人「いや、ここで勝手に登場させてすまない・・・」
響「ああ、貴方が謝る事じゃないですよー!」
万「てかなんでお前らとっくに出てんだよ!?」
ク「ああ、またカオスな事に・・・」
弦「ハッハッハ!まあいいではないか!賑やかで」
緒「ツッコミが追い付かなくなるんですよ・・・」
無性「確かに今のツッコミはクリスさんと龍我さんと戦兎さんだけですから・・・あと原型」
原型「おい確かにパヴァリアが出てきたからと言ってオレも出すな。そして原型ってなんだ!?この体もスペアだ!」
藤「ここにきてほぼ全員集合・・・」
友「これは色々とややこしくなりそうね・・・」
妹「これ本部の食堂の予算足りるでしょうか・・・主に出演料で・・・」
弦「あ、考えてなかった・・・」
戦「だーもう!こうなったららちが明かない!」
元詐欺師「待って!まだあーしたち一言しか喋ってないわ!」
けん玉「あと武器は確かにけん玉っぽいがこの名前は納得いかないワケだ!」
麗人「落ち着きなさい貴方たち。出させてもらってるだけありがたいと思いなさい」
戦「という訳で!最終回の第二二話をどうぞ!」
クロ「キュールルールルールルールルッ!!」


ビルド・ツヴァイウィングフォーム

 

クローズイチイバル・ヘルトラヴァース

 

シンフォギア・エクスドライブ

 

 

その三つが揃い、天に羽ばたき、彼らは空に立つ。

 

 

 

「皆の歌声がくれたギアが、私に負けない力を与えてくれる・・・クリスちゃんや翼さんに、もう一度立ち上がる力を与えてくれる・・・戦兎先生や龍我さんに、誰かを守る力を与えてくれる・・・歌は、戦う力だけじゃない―――命なんだ」

響が、その力に、そう呟く。

「高レベルのフォニックゲイン・・・こいつは二年前の意趣返し・・・?」

 

《―――んなこたどうでもいいんだよ!》

 

突如として頭の中に響くクリスの声。

《うお!?なんだこれ!?頭の中に声が直接響いてくる!?》

《どういう原理なのかめっちゃ気になる!》

《お前はぶれないな!?》

「念話までも・・・限定解除されたギアを纏って、すっかりその気か!?」

フィーネがソロモンの杖を使い、ノイズを召喚する。

《いい加減芸が乏しいんだよ!》

《世界に尽きぬノイズの災禍は、全てお前の仕業なのか!?》

翼の問いかけにフィーネは念話をもって答える。

《ノイズとは、バラルの呪詛にて、相互理解を失った人類が、同じ人類のみを殺戮するために創り上げた自立兵器・・・》

《人が、人を殺すために・・・》

《ノイズには建物を透過する能力がある・・・建物を壊さず人だけを炭化させるだけのものがノイズか》

その言葉に響は面食らい、ビルドは仮面の奥で苦い顔をする。

《バビロニアの宝物庫は、扉が開け放たれたままでな、そこからまろびいずる十年一度の偶然を、私は必然へと変え、純粋に力と使役しているだけの事》

《また訳の分かんねえ事を・・・》

《ようはノイズの発生源の扉が開いたままで、それをあの杖で自由に開閉できるって事か・・・》

《なんだ、簡単な話じゃねえか》

クローズが拳を鳴らす。

《ようはあの杖奪っちまえばこっちのもんじゃねえか!》

《出来るものならな!》

次の瞬間、ノイズが弾丸の如くビルドたちに遅いかかかる。

しかし、それを躱すのは容易、かすりもしない。

だが、そのおかげで、ほんのわずかに時間が出来る。

「満ちよ―――!!」

フィーネが、ソロモンの杖を掲げる。

ソロモンの杖から発せられる光が、天へと昇り、そして眩く拡散する。

そして、その拡散した光が着弾した瞬間、おぞましい数のノイズが、街中に出現しだす。

小型も大型も、そして空にも、街全体を埋め尽くすほどの大量のノイズが、この街に跋扈する。

それは、一種の災害ともいえる光景だった。

「あっちこっちから・・・!」

「おっしゃあ!どいつもこいつもまとめてぶちのめしてくれる!!」

そう言って、クリスは一足先に飛んでいく。

「よし、それじゃあ俺も・・・」

「あの、龍我さん・・・」

「ん?」

クリスに続こうとしていたクローズを呼び止める響。

「どうした?」

「その、私・・・龍我さんに・・・」

「ん?・・・ああ、これね」

そう言って、クローズは自分の鳩尾に手を当てる。

「確かに結構効いたが・・・別にどうでもいいだろ?」

「え?」

「お前は俺の呼びかけに答えてくれた。ちゃんと戻ってきてくれた。だったらそれでいいじゃねえか。切欠を作ったのは俺だが、戻ったのはお前の力だ。お前はその強さを誇っていいんだよ」

「龍我さん・・・うわ!?」

ぽん、と響の頭に手をおくクローズ。

「一緒にやるぞ。響」

「・・・はい!」

それに響がうなずく。

その一方で、ビルドと翼は・・・

「お前生きてたんなら早く復活しろ」

「し、仕方ないだろう!先ほどまで本当に死んでいた気がするんだから・・・・」

確かに、臨界にまでエネルギーを溜め込んだカ・ディンギルに突っ込んだのだ。

あれで無事という方が信じられない話である。

「それと・・・桐生」

「ん?なんだ・・・って本当になんだ!?」

ふと、翼はビルドの夕焼け色の装甲に触れた。

「・・・・そこにいるんだね、奏」

「・・・・」

その言葉に、ビルドは何も言い返せず、

 

《―――やっぱ翼にはバレちゃうか》

 

ビルドの中の奏が、そう答える。

「桐生の中にいるんだったら、早く言ってよ」

《いやー、なんかあたし、表に出られないみたいでさ。あくまでこいつの頭の中にいる存在って感じで。こうして翼と話せるのも、きっとその限定解除(エクスドライブ)状態だから出来る事なんだと思う》

「じゃあ、奏と直接話が出来るのは、こういう時だけなんだね・・・」

《まあそうなるな》

何か気まずい。

翼自身自覚はないのだろうが、絵面的に見れば、翼がぴったりとビルドに引っ付いているような光景だ。

当然、奏の声は翼とビルドにしか聞こえておらず、傍から見れば恋人同時の逢引きである。

だけど、ビルドにそんな事を突っ込む余裕はなかった。

 

翼が、泣いていたから。

 

「奏、私はもっと、貴方と話がしたい・・・」

《ああ、あたしもだよ・・・でも、今は・・・》

「うん、分かってる・・・・だから、桐生の力になってあげて」

《おう!あたし達ツヴァイウィングの名前を使っているんだ!生半可な事はさせねえよ!》

「あー・・・そろそろいいか?」

時間的にもそろそろなんとかしなければならない。

「あ、ごめんなさい・・・」

《それとだな翼》

「え?何、奏」

《さっきの様子だと、完全に恋人同士が抱き合ってるみたいだったゾ☆》

「――――ッ!?」

奏に指摘されて、一気に顔を赤くする翼。

それを見てビルドも顔を抑えていたたまれなくなる。

「わ・・・忘れて・・・・」

「お、おう・・・」

本当に消え入りそうな声でそういう翼に、ビルドはとにかく頷く事しか出来なかった。

《そんじゃあ、いっちょやってやろうじゃねーか!》

ビルドが両手を合わせ、腕のアームドをアームドギアに変形させる。

それは、かつて奏が使っていた槍だ。

「これがアームドギアか・・・毎度思うが一体どんな仕組みなんだ?」

「奏のアームドギアを使うんだ。情けない戦いをしたら即斬るからな」

「おおこわ。分かってるよ!」

《さあ、実験を始めようか!》

「俺のセリフをとってんじゃないよ!」

五つの光が、街のノイズたちの元へ飛んでいく。

 

それぞれの翼を羽撃かせて、彼らは敵の方へ飛んでいく。

 

装者三人の歌声が空に響く中、まず一番槍を手にしたのはクローズ。

手甲から二本の光り輝く爪『エクスティンクションクロー』を展開させ、その切れ味に物を言わせて地面すれすれで滑空。その先にいるノイズを恐ろしい機動力で一気に切り刻んでいく。

その上にいる巨大ノイズは、続く響のパイルバンカーナックルによる一撃が貫通し、直線状にいた巨大ノイズが纏めて消し飛ぶ。

その上空へ、クリスはその身に飛行ユニットのようなアームドギアを展開、そのアームドギアから追尾性のあるレーザーを乱射し、一切外すことも無く上空のノイズを一網打尽にしていく。

《やっさいもっさい!》

 

MEGA DETH PARTY

 

ノイズがその数を一気に減らしていく。

《すごい!乱れ撃ちだ!》

《全部狙い撃ってんだ!》

《だったら私が乱れ撃ちだぁぁあああ!!》

腕のギアのバンカーを拳に叩きつける事によって、アームドギアのエネルギーを前方に拡散、地上にいるノイズに散弾銃の如く叩きつける。が――――

《うぉぁぁぁあぁあああ!?》

《あ、ごめんなさい》

《気を付けろやァ!?》

クローズも巻き込んでいた模様。

その一方で、上空へ飛び上がった翼はその大剣を掲げて、二体の飛行型超大型ノイズに向かって蒼い斬光を放つ。

 

蒼ノ一閃

 

それが重なっていた二体の超大型ノイズをそのまままとめて両断する。

《お前の槍の穂先ってドリルクラッシャーよりも速く回転するんだな》

一方のビルドは、翼たちよりもはるかに高い場所から奏の槍を見てそう呟く。

《ん?ああ、そうだな》

《実は天才科学者の俺にもやってみたかった事があるんだ》

《それはなんだ・・・ってそれかぁ、そういやアタシもやってみたいなとは思ってたんだよ》

《子供大人関係なく熱中した、あの必殺技・・・・》

槍を掲げ、柄の部分すらも穂先の拡張に使い、そして槍の根本に作った穴の部分に手を突っ込む。

すると、ビルドの右手に巨大な槍の穂先が装着されたような見た目になる。

しかし、それだけに留まらす、槍は巨大化し、やがて巨大な槍へと変化して――――

「行くぜ・・・!!」

そのまま超速回転したかと思うと、一気にノイズの大群に向かって突進、凄まじい回転に加えて、その槍―――否、ドリルからジェット噴射の如き勢いでエネルギーが放出され、恐ろしい速度でノイズの大群を貫く、その技の名は――――

「ギガァ―――」

《ドリルぅ―――》

 

「《ブレイクゥゥゥゥウウゥゥウウゥウウウ!!!!」》

 

実際の名前は『LAST∞METEOR』の突撃バージョンなのだが、男のロマンか(奏は女だけど)やってみたかったのかすさまじい勢いで敵を殲滅していく。

《ぎ、ギガドリルブレイクだぁ!》

《おいこら!戦いに集中しろぉ!》

そして、弦十郎の影響を諸に受けている響にとってはこれほど目を輝かせられない事は無い。

そのまま、装者と仮面ライダーたちはたちまちノイズをその力をもって一気に消し炭にしていく。

クローズの爪が、響の拳が、クリスの銃が、翼の剣が、ビルドの槍が、ノイズを一匹残らず殲滅せんと振るわれる。

クローズの持つブラストモービルの弓による狙撃も、恐ろしい威力を発揮して直前上のノイズを撃ち貫く。

クリスの飛行ユニットに乗る響が、クリスの一斉砲火と共に腕のアームドギアから放たれる拳の一撃が放たれ、何十ともいえるノイズを消し飛ばす。

翼の大剣が放つ斬撃とビルドの槍が巻き起こす竜巻が重なり、上空のノイズを一気に蹴散らす。

全てが灰に帰すほどの激しい暴力の嵐が巻き起こり、ノイズはたちまちにその数を減らしていった。

「どんだけでようが、今更ノイズ・・・!」

ほぼ全てのノイズを殲滅したあたりで、クリスがそう呟いた時、フィーネが動いた。

なんと、ソロモンの杖を自分の腹に向けているのだ。

「何をする気だ!?」

次の瞬間、フィーネをソロモンの杖で自分を貫いた。

「じ、自殺・・・?」

「いや、あの執念深さだ。何かが・・・起きる・・・!」

ビルドがそう予測した通り、突き刺されたフィーネの体から、彼女の体の一部が伸びた。

それがソロモンの杖に引っ付き、浸食する。

すると次の瞬間、街中に残っていたノイズが、一斉にフィーネの元へ集まり、その体を融合させていく。

それだけに留まらず、さらにノイズを呼び込み、自分に向かってどんどん集めさせていく。

「ノイズに、取り込まれて・・・」

「そうじゃねえ・・・アイツがノイズを取り込んでんだ!」

《了子さん・・・何を・・・!?》

クリスの言葉通りなのか、集合したノイズがビルドたちに向かってその体を伸ばす。

「来たれ・・・デュランダル!!」

そう叫んだ瞬間、カ・ディンギルの最奥にあるデュランダルを取り込んでどろどろの液体となった体で取り込み、そして、その体を巨大な化け物に変容させる。

 

それは、ヨハネの黙示録に登場する怪物。赤き竜。

『緋色の女』または『大淫婦』とも呼ばれた女『ベイバロン』に使役された滅びの獣。

 

 

即ち、混沌の獣。滅びの聖母の力―――

 

 

 

黙示録の赤き竜がその口元から光線を吐く。

その光線が迸った瞬間、街は焼かれ、凄まじい熱気と衝撃を巻き散らした。

「街が・・・!」

「なんて威力だよ・・・」

下手すれば、この国などあっという間に焼け野原である。

《―――逆さ鱗に触れたのだ》

フィーネが、呟く。

《相応の覚悟が出来ておろうな?》

次の瞬間、竜がブレスを吐く。

それを躱そうと三人は回避行動に移る―――だが、

「「うぉぉぉぉおおぉぉおお!!」」

《え!?ちょ、まぁぁああ!?》

ビルドとクローズだけは真正面から迎え撃った。

「な!?」

「龍我さん!?戦兎先生!?」

「何して――――」

次の瞬間、ビルドとクローズに直撃した砲撃は拡散した。

真正面から迎え撃ち、尚且つ後ろに受け流しているのだ。

そして、凌ぎ切った。

「何・・・!?」

「・・・はっ、この程度かよ」

クローズが鼻で笑う。

「こんなもの、エボルトのブラックホールに比べたら屁でもない」

 

何故なら、奴は一人で星を殺す事の出来る存在なのだから。

 

《ははっ、やっぱすげーな・・・!》

奏の感心した声が挙がる。

「調子に乗るな・・・!!」

ひれを展開し、そこからクリスと似たようなレーザーを発射する。

「それが―――どうしたァ!!!」

クローズが飛び出す。

腕の爪を使い、レーザーを真正面から撃ち落としていく。

「龍我!後ろ!」

「は?ぐおあ!?」

だが死角から飛んできたレーザーまでは防ぎきれず撃ち抜かれる。

「何やってんだよ!?」

「ハア!!」

翼が蒼ノ一閃を放つ。それが竜の頬らしき部分に直撃し、その装甲を削るが、たちまちにその傷は回復していく。

「このぉ!」

すかさずクリスが砲撃するが、首あたりにいたフィーネの部分の外壁が閉じ、砲撃を阻んでしまう。

「なんだと・・・!?」

すかさず反撃の砲撃。

「うわ―――ぁぁあぁあ!!」

直撃を貰い、よろめく。

「うぉぉおおぉお!!」

響の拳が竜を撃ち抜くも、はやりすぐさま修復し、無かった事にされたかのように傷は修復されてしまう。

「ダメ、すぐに治っちゃう・・・!」

「どうすりゃいいんだよ・・・」

「・・・」

響とクローズがそう声を挙げる中、ビルドは黙って黙示録の赤き竜を観察する。

《いくら限定解除(エクスドライブ)されたギアであっても、所詮は聖遺物の欠片から作られた玩具。完全聖遺物に対抗できるなどと思うてくれるな》

そう、フィーネが絶望を突きつけるかのように言った。

「・・・・言ったな」

ビルドが、そう呟く。

《聞いたか?》

「チャンネルをオフにしろ」

「え?なにが?」

「馬鹿は馬鹿らしく馬鹿やればいいんだよ」

「馬鹿じゃねえよ筋肉つけろ!」

「論点そこじゃないよ」

クローズの事には呆れつつ、ビルドは続ける。

「とにかく、それをやるためには・・・」

ビルド、翼、クリスの三人は響の方を見る。

「お前に体張ってもらうぞ。いいな?」

「あ、えっと・・・その・・・」

実際、彼女自身は何も分かっていないだろう。

だけど、何かをしなければいけないというのは分かっているのだ。

だからこそ、彼女は頷く。

「・・・やってみます!」

力強いその答えに、彼らは頼もしく思い、笑みを零す。

そこで竜から砲撃が轟く。

それを躱しながら、クリス、翼、クローズが前に出る。

そしてビルドは、右手を掲げ、右の複眼のアンテナで指を滑らせて、いつもの決め台詞を言う。

「勝利の法則は、決まった!」

突っ込む三人、

「ええい、ままよ!」

「私と雪音と万丈で露を払う!」

「手加減無しだぜ!」

「分かっている!」

「おっしゃあ!負ける気がしねぇ!」

クリスと万丈が突っ込み、その後方にて、翼は己が持つ剣に意識を集中させる。

エクスドライブによって解放された力であるならば、さらなる力を発揮できる―――

想いは、現実となり、翼の大剣はさらに巨大となる。

「ハァァァ―――ァァアッ!!!」

そして、そこから放たれるは蒼ノ一閃に非ず――――

 

蒼ノ一閃・滅破

 

全てを断ち切る必殺の一撃が竜に直撃、その装甲を吹き飛ばし、中のフィーネを曝け出す。

しかし傷はすぐに修復される。だが、そこへクリスとクローズが飛び込む。

傷が修復される前に侵入に成功、それにフィーネは驚きを隠せない。

そしてクリスが密閉された空間の中で砲火しまくって黒煙を巻き散らす。

それを振り払い、フィーネは周囲を警戒する。

(クローズはどこだ!?)

そう思った瞬間、すぐ真下からクローズが急上昇、そのままフィーネの右手にあったデュランダルを殴り、フィーネの手から離れさせる。それと同時に外から翼の斬撃が炸裂し、さらに穴が開く。

「ウオリャアァァァアアアァアアアアア!!!!」

そして、その開いた穴に向かって、クローズはデュランダルをオーバーヘッドキックで蹴り飛ばす。

その蹴り飛ばした先には、響がいる。

「そいつが切り札だ!」

翼が叫ぶ。

「勝機を零すな!掴み取れ!」

失速して落ちかけるデュランダルがまた跳ね、落ちそうになったらまた跳ねる。

「ちょっせえ!」

クリスが拳銃で撃ち飛ばしているのだ。

「それが勝利の法則の最後の鍵だ!絶対に取りこぼすんじゃねえぞ!」

遠くからタイミングを見計らっていたビルドもそう叫びながらボルテックレバーに手をかける。

そして、飛んできたデュランダルを、響は掴み取る。

 

―――そして、意識が、強烈な破壊衝動に塗り潰され掛ける。

 

「ガ・・ぁ・・・ァ・・・!!?」

闇が、体を、意識を塗り潰す。

(だ・・め・・・!!)

その闇を、響は己が全力をもって抑え込む。

デュランダルの放つ重圧が大気を震わせる。

「グ・・ぅゥ・・・ぅうゥ・・・!!」

(おさえ・・・こまなきゃ・・・・!!!)

飲み込まれ掛ける意識、塗り潰そうとする破壊衝動、心を食いつぶそうとする闇。

その全てに、響が全力で抗う。

しかし、少しでも油断すれば一気に飲み込まれてしまう程凄まじい衝動だ。

それを抑え込むのは、簡単な事じゃない。

しかし、このままでは、フィーネに――――

 

「―――正念場だ!踏ん張り処だろうがッ!!!」

 

聞き覚えのある声が、響の耳に届く。

弦十郎だ。

「強く自分を意識してください!」

「昨日までの自分を!」

「これからなりたい自分を!」

(昨日・・・まで・・・これから・・・なりたい・・・・)

緒川、藤尭、友里の叫びが聞こえる。

「屈するな立花」

翼とクリスが寄り添う。

「お前が構えた胸の覚悟、私に見せてくれ!」

「お前を信じ、お前に全部賭けてんだ!お前が自分を信じなくてどうすんだよ!」

「わたし・・・の・・・かくご・・・わたしを・・・しんじる・・・!!)

翼とクリスの叫びが聞こえる。

「貴方のおせっかいを!」

「アンタの人助けを!」

「今日は、あたしたちが!」

友の声が、聞こえる。

「姦しい!!」

フィーネが怒鳴り、黙示録の赤き竜がその触手を伸ばす。

「黙らせてやる!」

その触手が、響たちを狙う。

しかし、それをクローズが全て叩き落す。

「お前の手は束ねる手、誰かと手を繋ぐための手・・・それは俺たちの目指すものと同じだ!それを守るのが俺たち『仮面ライダー』の役目だ!だから信じろ!お前だけの力を!!」

クローズの叫びが聞こえる。

「お前がいままでやってきたことはなんだ。お前が信じてきたものはなんだ。それは、お前という一人の人間を創り上げてきた全ての筈だ。それを思い出せ。そうすれば、お前は絶対に、その闇に打ち勝てる!」

ビルドの叫びが聞こえる。

(信じる・・・思い・・・だす・・・・)

意識が、遠のく。全て、塗り潰される。

 

破壊衝動が―――彼女を塗り潰――――

 

 

 

「―――響ぃぃぃぃいいいぃぃいいいいぃいいいい!!!」

 

未来の叫びが、響の胸に響く。

(そうだ・・・今の私は、私だけの力じゃない・・・!)

「うぉぉぁぁぁあぁあああ!!」

襲い掛かる触手の攻撃、その全てを、クローズが叩き落して見せる。

「おぉぉぉぉおおぉお・・・・!!!」

ボルテックレバーを全力で回し、その機会を伺うビルド。

「ビッキー!」

「響!」

「立花さん!」

「・・・」

響の力を信じ、その名を呼ぶ友と、そしてただひたすらに信じて見守る親友。

(そうだ・・・この衝動に、塗り潰されてなるものかァ!!!)

 

その破壊衝動を―――抑え込め!!

 

 

闇が、消える。

 

 

「――――今だぁぁああぁぁああぁああ!!!」

 

 

Ready Go!

 

 

デュランダルから黄金の光が迸り、響はその光の翼を広げ、翼とクリスと共に不滅の大剣を掲げる。

 

ビルドの槍が変形し、それが右脚に装着されると同時に、その両翼を広げる。そして、蒼と夕焼けの二重螺旋の光がビルドの右脚に収束される。

 

「その力・・・何を束ねた・・・!?」

その光景にフィーネは目を見開く。

それに響は叫ぶ。

「響き合う皆の歌声がくれた―――シンフォギアでぇぇええぇえええ!!!」

《―――いけぇええぇええ!!!戦兎ぉぉぉおおぉお!!!》

奏の叫びとともに、ビルドが、飛ぶ。

 

 

Synchrogazer

 

 

シンフォニックフィニッシュ!!!』

 

 

蒼と夕焼けの二重螺旋を描くビルドのライダーキックをブーストするように、デュランダルの光がビルドの背中から炸裂する。

その光すら螺旋に巻き込んで、三重の螺旋を描きながら、その翼を羽撃かせ、黙示録の赤き竜に直撃する。

「おぉぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉおおお!!」

その一撃は、いともたやすく赤き竜の頭部を穿つ。それで終わりかと思われた瞬間、ビルドの軌道が変わり、背中から竜の背中を撃ち貫く。そのまま、何度も軌道を変え、何度も何度も赤き竜を完膚なきまでに消し去るべく突撃を繰り返し、ライダーキックを叩き込み続ける。

(完全聖遺物同士の対消滅・・・いや、これは、それ以上の・・・!?)

「おぉぉぉぉあぁぁああぁぁぁあぁぁぁあぁああああ!!!」

螺旋を描くビルドのライダーキック。それが、デュランダルの力をさらに強め、一方的な消滅を促す破壊の一撃へ昇華していた。

 

まるで、響が束ねた歌の力だけでなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()まとめて放っているとでもいうように。

 

「おぉぉおぉぉお―――――ッ!!!」

 

 

全ての力が、一つになる(Be The One)―――

 

 

(――――天羽、奏・・・!?)

ビルドの面影に、今までに見た事のない、純白のギアを纏った天羽奏の姿を見た。

「誰かを悲しませる何もかも――――」

《誰かを苦しめるもの全て―――》

ビルドが、上空へ飛び上がる。そして、そのまま赤き竜を貫くように落下していく。

「《―――全部砕けろぉぉぉぉぉおおおおぉぉおお!!」》

その一撃が、竜に激突し――――

「どうしたネフシュタン!?再生だ!」

フィーネが叫ぶ。

「この身、砕けてなるものかぁぁぁあああぁぁああぁぁぁぁああぁぁあああ!!!」

 

 

――――赤き竜は、消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街は破壊され、いわゆる廃墟と化していた。

夕焼け色に染まる空の下、激戦を繰り広げた跡地にて、ビルドはフィーネに肩を貸して、仲間たちの元へ戻ってくる。

「お前・・・何を、馬鹿な事を・・・」

「別に、ただのおせっかいだよおせっかい」

そう返して、ビルドは近くの岩に彼女を腰掛ける。

「全く、お人好しかよ」

「ま、自意識過剰でナルシストな正義のヒーローですから」

「自分でいいますか?それ」

小さな笑いが漏れる中、響はフィーネに歩み寄る。

「もう終わりにしましょう、了子さん」

「私は・・・フィーネだ・・・」

「でも、了子さんは了子さんですから」

「俺たちが知ってる櫻井了子は、あんた以外にいないからな。少なくとも元の櫻井了子を俺たちは知らねえよ」

「・・・・」

フィーネは何も答えない。そんなフィーネに、響は続けて言う。

「きっと私たち、分かり合えます」

「・・・・」

ふと、フィーネは立ち上がった。

「ノイズを創り出したのは、先史文明期の人間・・・統一言語を失った我々は、手を繋ぐ事よりも相手を殺す事を求めた・・・そんな人間が分かり合えるものか」

フィーネは、最後まで否定をする。

「人が、ノイズを・・・」

「だから私は、この道しか選べなかったのだ・・・・!」

刃の鎖を握り締めて、フィーネは、辛そうにそう告げた。

「おい・・・」

思わず突っかかりそうになったクリスを翼が手で制し、クローズは、ただ黙ってそれを見守る。

「・・・結局の所」

ビルドが、口を挟む。

「科学っていうのは、使う人間によって悪にも正義にも変わる。それが、人を殺す目的で作られたとしても、もっと別の用途を見つける事は可能だった筈だ」

ビルドにとって、科学に善悪はない。ただ、使う人間や環境によってそれが決まる。

科学の発展に、悪い事しかないことは無いのだから。

「人は分かり合えない・・・だけど、誰か一人だけでも、誰かに向かって諦めずにその手を伸ばして、掴む事が出来れば、きっと分かり合う事が出来る筈だ。だって人間は、元々そんな風に出来ているんだろ?アンタという存在が、統一言語っていう証拠を持ってきてくれたんだからよ」

ビルドは、背中を見せるフィーネを真っ直ぐに見据えた。

ふと、フィーネがほうっと息を吐くのを感じだ。

そして―――振り向き様に刃の鞭を振るった事も、

「ハァァ!!」

その顔は狂気に歪み、笑っていた。その一撃を響とビルドは躱し、響は前に出てフィーネの懐に入り込み、その拳を寸止めで止める。

そこで止まるかと思われた。

「私の勝ちだァ!」

「!?」

しかしフィーネはその笑みを崩さない。

刃の鞭は、天に向かって伸びていた。

「まさか――――!?」

「てぇやぁぁぁあぁあぁああ!!」

次の瞬間、まるで何かを引っ張るかのように、振り向き様に刃の鞭を引っ張る。

地面が砕け、雄叫びを挙げて、ネフシュタンを砕きながらもフィーネは何かを引っ張る。

そして、勝利を確信したような顔で、その行為の真意を明かす。

「月の欠片を落とすッ!!」

「「「なッ!?」」」

見上げれば、確かに欠けた月の欠片がどことなく大きく感じる。

間違いなく、落ちてきているのは明白だ。

「私の悲願を邪魔する禍根は、ここでまとめて叩いて砕く!この身はここで果てようと、魂までは絶えやしないのだからな!」

その体は、すでにボロボロだった。

「聖遺物の発するアウフヴァッヘン波形がある限り、私は何度だって世界に黄泉返る!」

《了子さん・・・》

ビルドの中の奏が、悲しそうに呟く。

「どこかの場所!いつかの時代!今度こそ世界を束ねる為に・・・!!」

とてつもない執念。この場にあるもの全てを破壊しようとも、彼女は、決して諦める事はないのだろう。

「アハハ!私は永遠の刹那に存在し続ける巫女!フィーネなのだぁぁぁ――――」

その時だった。

 

響が、その拳を胸に当てたのは。

 

小さな風が、吹いた。

「・・・うん、そうですよね」

響は、頷いて、拳を引く。

「どこかの場所、いつかの時代、蘇る度何度でも、私の代わりに皆に伝えてください」

その顔は、いつも通りの彼女の笑顔だった。

「世界を一つにするのに、力なんて必要ないって事を。言葉を超えて、私たちは一つになれるって事を。私たちは、未来に手を繋げられるって事を。私には伝えられないから、了子さんにしか、出来ないから」

「お前、まさか・・・」

フィーネの言葉は、続かなかった。

《・・・アイツが、あたしのガングニールを受け継いでくれて良かった》

「そうか?」

《ああ。アイツがあの日を生き残って、そして、今、こうして立派になってくれたんなら、悔いはないよ》

「そっか・・・・」

その光景を、ビルドは、奏と共に見届ける。

「了子さんに未来を託すためにも、私が今を、守ってみせますね!」

はっきりと、確固たる決意をもって、響はそう宣言した。

その言葉に、フィーネは呆れかえり、やがて、ふっと笑った。

「本当にもう、ほうっておけない子なんだから」

その表情は、彼女たちが今までに見てきた、櫻井了子の顔だった。

フィーネは、響の胸に指を当てる。

 

「―――胸の歌を、信じなさい」

 

その言葉を最後に、フィーネは塵となって消えていった。

その最後に、弦十郎はぐっと堪え、クリスは涙を流し、クローズはそんなクリスの頭に手を乗せ、翼も涙をこらえて、その光景を見送った。

 

 

 

「―――軌道計算、出ました」

藤尭が、そう告げる。

「直撃は避けられません・・・」

「あんなものがここに落ちたら・・・」

「全部まとめて吹っ飛ぶな」

ふと、そう軽い口調でビルドは呟いた。

「安心しろ。俺が全部片づけてやっから。ヒーローは俺だからな」

「あの、戦兎先生・・・」

そう言って飛び立とうとするビルドを、響が呼び止めるも、その前にビルドが響たちに向かって指を差す。

「こういうのは『仮面ライダー』の仕事だ。誰かの夢守れなくてどうする?それに、お前には今だけじゃなく、フィーネと同じようにこれから先の未来の事も任せたい」

「戦兎先生・・・?」

そして、すぐにその指を二本に変えて、ビルドは、仮面の奥で()()()()とする。

「『愛と平和(ラブ&ピース)』だ。そんじゃ、いっちょ行ってくる」

そう言ってビルドは、クローズを掴む。

「え?」

「お前も行くんだよ。ほら、来い」

「え!?な!?ちょ!?まだ心の準備が」

「今の状況で心の準備が出来ると思ってんのか」

「うぉ!?うぉぉぉぁおぉぉおぉおおおぉおお!?」

飛翔するビルドとクローズ。

「ん?ああ、分かった」

その最中でビルドはふと止まり、また振り返って言う。

「生きるの、諦めんなよ」

「あ―――」

答えを聞かず、二人は空に向かって飛んで行った。

 

 

 

 

 

大気圏を突破し、ビルドとクローズは、落下してくる月の欠片に向かって飛ぶ。

《・・・なあ、戦兎》

真空の宇宙空間だから声が届く事はない。しかし、この状態でなら、念話で会話する事は可能だ。

《どうした?》

《本当にいいのか?あれ、いくらこのフォームでも、ただじゃ済まねえぞ?》

《分かってる》

その言葉に、ビルドは頷く。

《だったら・・・!》

《この新世界に、『仮面ライダー』は必要ない》

《・・・!?》

予想外の言葉が、ビルドから吐き出される。

《お前・・・》

《ノイズに対抗するだけなら、シンフォギアシステムだけで十分だ。それに、俺たちという異物がこの新しい世界に紛れ込んでいたら、きっと、何か悪い事が起きる》

ライダーシステムは、正義の為に作られた力だ。だが、結局は兵器利用され、多くの人々を傷つけた。

《ライダーシステムは、その気になれば誰でも扱える兵器だ。対してシンフォギアシステムはそれに見合った適合者がいなければ、誰もが使える代物じゃない分、安全だ。だから、ライダーシステムを、()()()()()()()()

《おいそれ俺も巻き込んでねえか?》

《あくまで保険だ。俺が先に突っ込んで失敗したらそん時は頼む》

なんて、軽いノリで言っているビルドだが、

《・・・そんな体震わせてんじゃ、なんの説得力もねえよ》

《ッ・・・》

ビルドの手は、握り締められたまま震えていた。

《だから、一緒に突っ込んでやる》

《万丈・・・》

クローズが、ビルドと並び飛ぶ。

《どんな時も一蓮托生だ》

《・・・あー、最っ悪だ。お前も新世界で記憶なくしてたら良かったのに》

がっくりと項垂れるビルド。

そんな時だった。

 

 

《――――存在ごと消すなんて、そんな悲しい事言わないでください》

 

 

《!?》

二人は、思わず後ろを見た。

そこには、三つの翼を広げる光があった。

《お前ら!?》

響、翼、クリスの三人だ。

《そんなにヒーローになりたいのか?》

《こんな大舞台で挽歌を唄う事になるとはな。桐生や万丈には驚かされっぱなしだ》

《お前ら・・・なんで来た!?》

ビルドは思わず怒鳴る。

しかし、そんなビルドの怒鳴りを無視して、響は言う。

《だって、勝手に二人だけに片付けさせるわけにはいきませんでしたから》

《奏も連れていくなら、その片翼である私が赴かない訳にはいかないからな》

《ま、一生分の歌を唄うには、いい機会だからな》

《お前ら・・・!》

クローズが嬉しそうに声を挙げる中、ビルドは一人茫然とする。

《ま、そういうこった》

奏が、話しかけてくる。

《ほかの二人はともかく、翼は結構頑固だぞ?》

《・・・・ああ、最っ悪だ・・・》

頭を抱える戦兎。

《今日と言う日を俺は、きっと後悔する・・・》

だけど、その声は、どこか嬉しそうだった。

《何言ってるんですか》

響が、手を差し伸べる。

《私たちの未来は、これからですよ》

《ああ、そうだな》

五人、手を繋ぎ、改めて飛ぶ。

 

 

「―――不思議だね、静かな空」

 

 

響の歌声が、真空の世界に響き渡る。

 

 

 

「―――本当の剣になれた」

 

 

 

翼の歌声が、森羅の世界を包み込む。

 

 

 

「―――悪くない時を貰った」

 

 

 

クリスの歌声が、万象の世界に鳴り響く。

 

 

 

手と手を繋ぎ合わせ、五人は飛翔する。

 

 

 

《―――それでも私は、立花と雪音ともっと歌いたかった。戦兎や万丈に、歌を聞いてもらいたかった》

《なんか、すまん・・・》

《バーカ、そういう時はそうじゃねえだろ》

《そうだぞ。辛気臭くちゃ、せっかくの歌が台無しだろ?》

《・・・そうだな、ありがとうな。皆》

 

 

 

ブースターを点火、飛翔能力促進、加速する。

 

 

 

《解放全開!いっちゃえ!(ハート)の全部で!》

 

響の叫びと共に、一気に月へ突っ込んでいく。

 

《皆が皆、夢を叶えられないのは分かっている。だけど、夢を叶える為の未来は、皆に等しくなくちゃいけないんだ》

 

《皆、色んなもん抱えてんのは知ってる。それを、誰かに任せたくないのも分かる。だからこそ、そんな誰かの助けになりたい。誰かの為に戦う事が、俺の戦いだ》

 

《命は、尽きて終わりじゃない。尽きた命が、残したものを受け止め、次代に託していく事こそが、人の営み。だからこそ、剣が守る意味がある》

 

《この新世界で、多くの事を学んだ。シンフォギアの事、二年前のライブの事、皆が抱えている事・・・愛と平和がどれほど脆い言葉かなんて知っているし、散々その事を言われてきた。だけどそれでも俺は謳い続ける。俺は、その為に科学者になったのだから》

 

《例え声が枯れたって、この胸の歌だけは絶やさない。夜明けを告げる鐘の音奏で、鳴り響き渡れ!》

 

光が、五つに分かれる。

 

《これが私たちの絶唱だァ――――――――ッ!!!》

 

響、翼、クリス、ビルド、クローズが、それぞれの力を爆発させる。

 

翼は、その手に山をも断ち切る巨大な刀を。

 

クリスは、全てを殲滅せしめる大量の大型ミサイルを。

 

響は、両手足のガジェットを限界にまで引き絞る絶対破壊の拳を。

 

ビルドは、螺旋を描くあらゆるものを穿つ蹴りを。

 

クローズは、全てを焼き払う巨大な砲門を。

 

 

『Set Up!Blast Grand Cannon!』

 

『Ready Go!』

 

 

 

シンフォニックフィニッシュ!!!』

 

トラヴァースフィニッシュ!!!』

 

 

 

 

そして、月の欠片は――――跡形もなく消滅した――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――よっ」

「・・・」

気が付けば、そこはあの真っ白な空間。

「・・・・ああそうか、俺死んだのか」

「勝手に死んだ判定するんじゃないよ」

なんて言い合って、二人は向き合う。

「まあ、なんだ・・・一応、楽しかったって言っておくよ」

「・・・もう、行くのか?」

戦兎の問いかけに、奏は悲しく笑う。

「きっと、未練がましかったんだろうな。アタシの所為で大怪我を負ったあの子は大丈夫だったか。翼はあの後、いじけてないか。きっと、心配だったんだろうな」

「・・・・」

だけど、それはもう杞憂だったと知れた。だから、もう残る理由はない。

「死人は死人らしく、天国に行くとするよ」

そう笑いかける奏。

「ちょっと待て」

そんな奏を、戦兎は呼び止める。

「一つ、俺の方である仮説を立ててみた」

「仮説?」

「ああ」

戦兎は説明を始める。

「新世界を創造する時、俺は、エボルトとの戦いで、本当は消滅しかけていた。異物が異物らしく、排除されるようにな。だけど、そうはならなかった」

その理由は、言うだけなら至極簡単な事だった。

 

「―――俺とお前の体が融合したんだ」

 

特定の世界での時間の流れが違うのと同じように、戦兎たちが新世界を創造したのは、本当は二年前、あのライブの日だったのだ。

その時、奏が絶唱を使い、その身を塵へと変える瞬間、世界は融合した。

そしてその時、世界が融合する際に消滅しかけていた戦兎の体と、同じく塵となり消滅しかけていた奏が、『消滅』という概念を、融合する事で対消滅させたのだ。

即ち、今の戦兎の体は、同時に奏の体でもあるのだ。

しかし、物理的に確実に死んでいた奏の体は崩壊しかけていた為に、ただ存在が消えかけていただけの戦兎の補強を行っただけだった。

だから、見た目と記憶は戦兎のまま、この世界に落ちたのだ。

「俺は、お前に助けられた。それが、今の俺だ」

ただ、目覚めたのが二年後というのは気になる所だが。

まあ、それぞれの世界で時間の流れが違うという事もある。

体を構成するのにそれほどの時間がかかったという事なのだろう。

万丈の場合はエボルトの遺伝子で存在の崩壊には至らなかったのだろうが、それでもこの世界に適応するのにそれなりの時間を要したのだろう。

「そっか・・・あたしは、知らずにアンタも助けていたって事か・・・」

それが、無性に嬉しいのか、奏は笑った。

「そっか、そっかぁ・・・だったら、安心だな」

「何がだよ?」

「アタシの体が、アンタの中にあるんだったら、心配はいらないってことさ。だってアンタは、正真正銘の正義のヒーローなんだからさ」

誰かの為に戦える、誰かの為に勇気を振り絞れる。

そんな男の体に、自分の体が一部となっているというのなら、それほど誇らしい事は無い。

「ヒーローは、どんな時だって誰かの為に戦わなくちゃいけない。確かにシンフォギアがあるから大丈夫だとは思うけど、それでもほんの少しの手助けが必要な時だってある」

「そうだな」

「アタシは消えてしまうかもしれないけど、アタシの魂は、アンタの心の中で生き続ける」

「非現実的だな」

「でも悪くないだろ?」

「ああ、悪くない」

「だからさ」

「ん?」

奏は、ほんの少し、困ったような、それでいて一つの確信を込めた表情で、戦兎に言った。

 

「―――翼の事、頼んだ」

 

「・・・・ああ、任せろ」

その答えに、奏は満足したのか微笑んで、その姿を消した。

 

《―――じゃあな・・・桐生、戦兎―――》

 

「・・・じゃあな、天羽奏」

そして、全てがホワイトアウトしていき、戦兎の意識は、現実に引き戻される――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――」

そうして、目を開けて最初に映ったのは、見慣れた青い空だった。

「・・・・」

見慣れた青い空。それが意味する事は、ここは地上のどこかであるという事。

 

そして、自分は今、生きているという事の証だ。

 

「・・・・あー、最っ悪だ。結局生き残っちまった」

清々しいまでに青い空。いっそ憎らしい程青い空だ。

しかし、いつまでもその空を見上げている訳にはいかない。

とりあえず体を起こそうと身動ぎしてみると、ふと自分の左腕に何かが乗っかっている事に気付く。

すぐに左を見てみるとそこには―――

「ん・・・んぅ・・・・」

 

これまた可愛らしい寝顔の風鳴翼がいた。

 

「――――」

瞬間、息が止まった。

全ての時間が停止したかに思えた。

まず、翼が横にいる事には確かに驚いた。

しかも自分の腕を枕にして、憎たらしい程の寝顔で寝ている事にも。

だが、フリーズした理由はそこではない。

超眼前に、いつもは毅然と振舞う少女の普段からは考えられない可愛らしい寝顔があったのだ。

見慣れた顔とは言え、このいわゆるギャップ萌えというものに、戦兎は間違いなくやられていた。

(ど、どうする・・・?)

どうにかしなければ。下手に起こせば、逆に拳を喰らう事になるかもしれない。

だからと言ってこのままでいるのもまずい。

彼女は日本が誇るトップアーティスト風鳴翼。こんな所で見知らぬ男と寝ているなんて知れたら、スキャンダルで彼女の芸能生命は絶たれてしまう。

それだけはどうにか阻止しなければ。

 

しかし、そんな思考は無駄だというかのように、翼が目を覚ました。

 

「ん・・・んん・・・ん?」

うっすらと眼を開けて、翼は、眼前の戦兎を見つめた。

「よ、よお・・・おはよう?」

「き・・・りゅう?」

誰なのかは認識しているようだ。

そうして待つ事数十秒。改めて目の前にいる人物が桐生戦兎だという事を認識し、徐々に自分が置かれている状況を理解したのか、たちまちその顔を真っ赤に染め上げていき――――

「きりゅ―――!?」

「ふぎゅ!?」

思わず飛び退いた翼だったが、その先で腰を地面についた途端、何やら悲鳴のような声が聞こえた。

見てみれば、そこには青い顔をして悶えている響の姿があった。

「た、立花!?」

「う・・・うぐ・・・な、なんでご飯食べてただけなのに、机の下からぱんちんぐましーんがお腹に渾身のボディーブローを・・・!?」

慌てて立ち退くも、余程の大ダメージだったのかしばらく腹を抑えて悶える響。

「「・・・・」」

もはや哀れとしか言いようがない。

そこで、ふと戦兎は背後に気配を感じて後ろを振り返ってみれば、今度はそこには芝生の上に大の字になって寝る万丈とその上ですやすやと眠るクリスの姿があった。

こちらは響とは違って随分と微笑ましい。

その様子に苦笑しつつ、戦兎は立ち上がる。

そうして立ち上がって見たものは、見知った街並み、されど以前のようなものではない、みすぼらしい姿と成り果てた街だった。

「・・・」

「・・・私たちは、生き残ったんだな」

隣で、翼がそう呟く。

「ああ。死に損なった」

「そっか・・・私は、まだ歌えるんだな」

「ああ」

翼の呟きに、戦兎は確信をもって頷く。

「そっか・・・そうなんだ・・・私は、まだ・・・」

言葉は、長くは続かなかった。

「う・・・ひっぐ・・・・生きて・・・る・・・みんな・・・生きて・・・うう・・・!」

泣いていた。震える体を必死に抑えつけるように体を抱きしめ、嗚咽を漏らして、翼は泣いていた。

 

『―――翼の事、頼んだ』

 

その様子を見て、戦兎は、奏からの言葉を思い出し、そっと、その頭を撫でた。

「ああ、生きてる。皆、生きてる」

「う・・・ぅぅ・・・ぅぁぁぁああぁあああ・・・・!!!」

二年前、大切な片翼を失ってしまった。守れなかった。

だけど、今回は守り切った。そして、生き残った。

それが、嬉しいから、泣くのだ。

 

 

 

 

 

 

やがて、響が復活して起き上がり、その一方で先に起きたクリスが誰の上で寝ているのかに気付いて顔を真っ赤にして万丈を殴り飛ばし、万丈は何故殴られたのか首を傾げる。

その様子に一通り、こちらの生体反応を嗅ぎ付けてきたのか、ヘリコプターで弦十郎たちが駆け付けてきてくれた。

そうして実感する。

 

 

戦いは、終わったのだ、と――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――それで、奏はもういないんだな」

「ああ、未練はもうないってさ」

「そうか・・・」

「寂しいのか?」

「ああ・・・すごく」

「そうか・・・」

「でも、ほんの一時とはいえ、奏と再び一緒に戦えたのは嬉しかった」

「それは良かった」

「だから、今度こそ前を向いて、夢を追いかけてみようと思う」

「夢・・・世界を舞台に歌う事か」

「ああ。全てのノイズを駆逐した暁に・・・それで、だな・・・」

「ん?どうした?」

「・・・その夢を叶えるのを、手伝ってくれないか?」

「ん?手伝うもなにも、俺は初めからそのつもりだが?」

「ふふ、そうか。そうだったな。貴方は、そういう人だったな」

「おう。俺は―――」

「「自意識過剰でナルシストな正義のヒーローだからな」」

「ははっ」

「ふふっ」

「あ!翼さんと戦兎先生見つけたー!」

「こんな所で何してんだよ」

「そんな所でイチャコラしてんじゃねえよ」

「い、イチャコラなんてしていない!」

「ほーうそんな反応するってことはそういう事なんじゃねえのぉ?」

「~~っ!雪音ぇ!!」

「そう怒んなって」

「それで、どんな話をしていたんですか?」

「ん?そうだな―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかの場所、いつかの時代、彼らはいつだって、正義の仮面を被り戦う。

そんな彼らはいつだって、誰かのヒーローであり続ける。

どれほど強大な敵が立ちはだかろうとも、どれほど傷付いても、どれほど裏切られても、どれほど苦しんでも、彼らは決して、諦める事は無い。

そう、何故なら彼らは―――

 

 

 

 

 

『仮面ライダー』なのだから――――

 

 

 

 

 

 

 

「―――次の実験(ステージ)は何にしようかって話してた」

 

 

 

 

 

愛和創造シンフォギア・ビルド『無印・永遠の巫女編』―――完―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次章――――愛和創造シンフォギア・ビルド『G・天翔ける大舟編』―――

 

 

 




次回は『創造しないシンフォギア・ビルド!』

内容はお楽しみに!



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創造しないシンフォギア・ビルド!

作「さぁてやってきたよ完全ギャグ回」
戦「変に駄作になってなきゃいいんだけどな」
作「そんな事いわんでください・・・」
響「ま、まあまあ、本編の『絶唱しない』からだけじゃなく、この作品ならではの話もありますし、きっと楽しんでもらえますって」
作「そう言ってくれるのは君だけだよ・・・」
ク「ま、これでも精一杯頑張って作ったんだろ」
翼「うちの作者は基本書き溜めしていく主義だからな。これまでも定期的に更新出来たのは、それなりのストックがあったからだしな」
作「感想も多くてほんと驚いてるよ。まさかあんなに感想を貰う事になろうとは思ってなかったし」
戦「そんでもってあのお気に入り登録者数・・・全て俺のお陰だな!」
万「お前はただのキャラの一人に過ぎねーだろ調子乗んな」
戦「馬鹿は黙ってろ」
万「馬鹿っていうな!?馬鹿って言う方が馬鹿なんだよバーカ!」
未「アハハ・・・では、そろそろ本編の方へ行きましょうか」
クロ「キュル!」
響「じゃあ皆で一緒に!」
響翼ク未「創造しないシンフォギア・ビルドをどうぞ!」
クロ「キュールルールルールルールルッ!」
戦万「しまった!?」



作「あ、今回オリキャラの名前が出るので」
タヤマ「私たちの出番は?」
作「Gからに決まってるでしょう・・・」
工具「それまで待とうか」
農具「では本編をどうぞデス!」


―――ナックルの行方―――

 

「―――風鳴」

「お、おう・・・」

「俺がまだ開発途中だった『ストームナックル』が突如としてどこかに行っててな」

「うむ」

「それで、アンタが了子さんにぶっ刺された現場に、その残骸があった訳なんだが、ありゃ一体どういう事だ?」

「な、なんのこt」

「それと緒川から、なんか了子さんが召喚したノイズ相手に、緑色のナックルを使ったと供述を貰った」

「・・・・」

「・・・あんたが使ったな?んでぶっ壊したな?それも完膚なきまでに」

「・・・・すまん☆」てへっ

「―――じゃねぇぇよぉぉお!!!そしておっさんのてへぺろなんて需要ねぇわぁあぁああ!!」

 

 

 

 

 

―――OTONA―――

 

「クリスちゃん、私思った事があるんだよね」

「ああ?なんだよ藪から棒に」

「実は最近知ったんだけどさ、緒川さんって忍者なんだよね」

「へえ・・・ってハア!?あ、あの人忍者だったのか!?」

「本当だぞ。緒川さんは私の実家に代々使える忍びの一族の次男坊なんだからな」

「そ、そうだったのかよ・・・」

「それでね、二課の人たちの事をある程度思い出してみたんだけどね。まず藤尭さん」

「ああ、あの冴えなさそうな奴な」

「あの人、ああ見えてすっごい情報処理能力ってのを持っていて、月の軌道計算も、本当は一人でやってたみたいだよ」

「マジかよ・・・」

「いわゆる、『情報処理チート』って奴だな」

「それで、友里さんは、銃も扱えて、どんな仕事も冷静で真面目にこなせるいわゆる『仕事チート』な人」

「言われてみれば確かに・・・」

「それで、師匠は誰が見ても分かる『武力チート』で、緒川さんは『忍術チート』でしょ?」

「そんじゃあ龍我は『体力チート』でも言いたいのか?」

「あ、言われちゃった・・・」

「それを言うなら、桐生も『科学チート』じゃないか」

「はい。それで私、思ったんですよね」

「「なにをだ?」」

「二課の大人の人たちって・・・『チート』持ちばっかりだって事に」

「「・・・・」」

「・・・あれ?反応薄くない?」

「いや、それは・・・うん・・・」

「特機部二にまともな奴がいないのは今に始まったことじゃないだろ?」

「ええー、そんなぁ・・・」

「ていうか、それを言ったらお前は『大食いチート』に分類されるんじゃねえか?」

「確かにご飯は大好きだけど、そこまでじゃないかな~」

「ならば私は『防人チート』だな」

「一体どういったチートだよ・・・」

「防人としての気構えの強さだ」

「はっ」嘲笑

「な、なんだその顔は!?」

「べっつに~」

「まあクリスちゃんは、『可愛さチート』だけどね」

「は、はあ!?アタシの一体どこが可愛いんだよ!?」

「そういう所かな?」

「どういう意味だそれはぁ!」

 

 

 

 

 

 

―――雪音クリスの悩み―――

 

(なりゆき任せで手を繋いぢまったが、アタシはこいつらのように笑えない・・・)

「ふっほっほ」腕立て伏せ

(でも、アタシはアタシがしでかしたことから逃げちゃいけない。これはアタシの罪なんだ)

「ふんぬっ!ぬぅぐっ!」懸垂

(・・・この身は、常に鉄火場にあってこそ・・・)

「うぉりやぁぁあ!!」ダンベル上げ

「だぁぁああ!!」

「うごあ!?」ダンベルの棒が胸に直撃し倒れる

「さっきからお前は何やってんだ!?」

「何って筋トレだよ・・・おーいてて・・・」ダンベルどかし

「なんでこういう時まで筋トレなんてやってんだよ・・・」

「これしかやる事ねえからだよ・・・あ、プロテイン飲むか?」

「いらねえよ。てかなんでプロテインしか置いてないんだよこの部屋・・・てかどこからもってきたこのプロテイン」

「何って、外出れねえから緒川の奴に頼んだんだよ」

「ぜってー引いてる気がする・・・ってかほんとに特機部二にはまともな奴はいねえのかよ・・・」

「ふん!俺を他の奴らと一緒にしてもらっちゃ困るぜ!何故なら俺は『プロテインの貴公子』―――ばさっ―――万丈龍我だからな!」天井指差し

「ぷっ、なんだよそれ」

「・・・・やっと笑ってくれたな」

「え・・・?」

「なんかここに来てから全然笑ってないと思ったからよ」

「そ、そうか・・・?」

(まあ大体はあの馬鹿のせいだと思うが・・・)

「だから安心したぜ。ここの生活が窮屈に思ってないか心配だったんだ」

「そ、そうか・・・」

(ったく、なんでこいつはこういうのに鋭いんだっての・・・)

「その、ありがとな、龍我・・・」

「おう!」

「・・・で、今さっきアタシの眼にはカップラーメンにプロテインを思いっきり入れる光景が目に見えたんだが・・・」

「は?カップラーメンとプロテインは最高のベストマッチだろ?」

「そう思ってんのはお前だけだこの馬鹿!!」

「馬鹿ってなんだ!?せめて筋肉つけろ筋肉を!」

「あーもう馬鹿馬鹿筋肉馬鹿ー!さっきまでの感動を返せー!」

「感動ってなんだ!?」

 

 

 

 

 

―――歓迎会―――

 

「という訳で、改めての紹介だ。雪音クリス、第二号聖遺物『イチイバル』の装者にして、心強い仲間だ」

「ど、どうも・・・よろしく・・・」

そう言って、クリスはやや不安ながらも答える。

「さらに、装者三人、ライダー二人の行動制限も解除となる」

「師匠、それってつまり・・・!」

「そうだ!君たちも日常に帰れるのだー!」

そう言って、弦十郎は拳を握りしめて見せる。

「やったー!やっと未来に会える!」

そう言って響は他の者たちより明らかにはしゃぎ出す。

「クリス君や龍我君、そして戦兎君の住まいも手配済みだぞ」

「一応聞くが、そこって広い場所なんだろうな?」

「ああ。要望通り、新設されたリディアンの近くにある倉庫地帯の一個を買っておいたぞ」

「よし」

「何故に倉庫・・・?」

翼は首を傾げるしかなかった。

「あ、あたしにいいのか?」

「もちろんだ。装者の任務以外での自由やプライバシーは保証する」

それにクリスは思わず目を輝かせる。

が、そこで泣きかけた事に気付いたのか、涙を拭う。

が、それで翼は何を勘違いしたのか、ある鍵を取り出して話しかける。

「案ずるな雪音、合鍵は持っている。いつでも遊びに行けるぞ!」

「はあ!?」

当然驚く。

「私ももってるばかりかなーんと!未来の分までー!」

「自由とプライバシーなんてどっこにもねーじゃねぇかぁああ!!」

「ああ、それとお前の部屋万丈の隣だぞ」

そこで戦兎が爆弾発言。

「・・・は?」

「おう、よろしくな!」

万丈はにかっと笑って答える。

それを理解するのに数秒―――

「は、はぁぁぁああぁぁぁああ!?」

クリスの絶叫が部屋に轟いた。

 

 

なお、この後すぐにノイズ出現の警報がなり、彼らは駆り出され、未来と再会する事になる。

 

 

 

 

―――デュランダル―――

 

 

「そういえば師匠」

「ん?どうした?」

「あの時のデュランダルはどうしたんですか?」

「ああ、何せ完全聖遺物同士の対消滅を免れたとはいえ、完全聖遺物としては健在。下手をすれば街一つ、いや、国を滅ぼす程の威力を秘めている。その為、管理特区『深淵の竜宮』に保管する事にしたんだ」

「深淵の竜宮?」

「聖遺物の中でも、特に危険な物やそれに類する危険物、未解析品などを集積、隔離・保管する目的で建造された管理特区の事よ」

「はえー、そんな所があるんですね・・・」

「ん?それじゃあソロモンの杖は?」

「あれは上手く利用すれば、ノイズの発生を抑える事が可能かもしれないと言う事で国の研究機関に回される事になった。誰かが悪用しなければ、実質無害な代物だからな」

「そうか・・・」

「まあ、デュランダルについては響が使えばほぼ問題はないんだけどな」

「へ?なんでですか?」

「なんでって、あれを制御できるのはお前以外に誰もいないだろ?」

「ええ!?いやいやあれは皆がいてくれたからこそ出来たのであって、私一人じゃ何にも出来ませんでしたよ」

「まあそうだろうな。お前一人であれを制御できるとは思ってなかったし」

「ええー!?先生酷い!」

「事実だろこの馬鹿」

「あう」

「まあそんな気にするな。ところで万丈はどこに・・・」

「ああ、それなら先ほど訳が分からないから部屋に戻って筋トレするって言って出ていきましたよ」

「いつでもどこでも筋トレだなアイツは・・・」

「まあ、馬鹿だからな」

 

 

 

 

 

―――新居―――

 

「まあ、リディアンの校舎が新しくなるにつれて、俺も二課本部の一室からこの倉庫街に引っ越ししてきた訳だが」

「やはり綺麗に整頓されているな」

翼が、片付けられた部屋の様子を見てそう呟く。

「お前の方はいいのか?」

「ああ。もうすでに荷物は運んでおいた」

「どーせすぐに散らかすんだろーけど」

「う、うるさい!」

顔を赤くしてそう叫ぶ翼をいなしつつ、戦兎は作業机の椅子に腰かける。

そして、ある道具を机の上に置く。

「ん?それは・・・ドライバーか?」

「ああ、『スクラッシュドライバー』っていうんだ」

レンチのようなレバー、薬品を入れるような筒、そして両側から押し込むタイプのプレス装置。

一見して、ビルドドライバーとは違うというのは明白だ。

「万丈の為のものでな。これも壊れてるから修理しねえと・・・・」

「ほう・・・ビルドドライバーを使うのとで、何か違うのか?」

「まあな。ビルドドライバーの変身に必要なハザードレベルは3。それに対してスクラッシュドライバーに必要なレベルは4だ。戦闘力も通常のビルドやクローズを凌駕する程で、持ち主のハザードレベルに応じて能力は向上する・・・ただ・・・」

「ただ・・・なんだ?」

しばし考えこんでから、戦兎は答える。

「アドレナリンを過剰に分泌するために闘争本能を上昇させる。さらに身体に大きな負荷が掛かる上に、常に戦いを求めるようになるんだ」

「それは・・・大丈夫なのか?」

「ああ。アイツはすでに克服してる。だから問題はない」

戦兎は自信満々に答える。それに、翼はほっと胸を撫でおろす。

「そうか、なら安心だな」

「比較的損傷も少ないから、すぐに実戦に出せる」

「なら、万丈の新しい姿にも期待だな」

そう軽く言い合った所で、少しの間、沈黙がよぎる。

「・・・・お前たちは、私たちなんかよりも、ずっとずっと強大な敵と戦い続けてきたんだな・・・」

「まあな」

新世界が成されたとはいえ、その間に、多くの大切な人たちを失った。

仲間を、家族を、友を。そして、関係のない多くの市民を死なせてしまった。

その過程で、何度も絶望に叩き落された。

それでも、彼らは立ち上がり、強大な敵と戦い続けてきた。

「私たちより、余程強いわけだ」

「それは違うぞ」

翼の呟きを、戦兎はすぐに否定する。

「お前は、この二年間、ずっと一人で戦い続けてきた。それが、奏を死なせてしまった負い目からだったとしても、お前は確かに、その二年間を戦い抜いてきた。そして、今まで受け入れられなかった響の事や、クリスの事だって受け入れた。響の事はともかく、敵だったクリスを受け入れるのは、それなりの勇気がいる。俺は、そんなお前が弱いだなんて思わねえよ」

「桐生・・・」

戦兎は、手を止めて、自分の胸に手を当てる。

「俺の中にはもう奏はいない。だけど、俺もお前も、奏から託されたものは確かにあるんだ。それを忘れなきゃ大丈夫だろ」

「・・・うん、そうだな」

翼は、静かにそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

―――クリスの仏壇―――

 

「知らなかった・・・特機部二のシンフォギア装者やってると、小遣いもらえるんだな・・・」

通帳を眺めながら、クリスはそう呟く。

立花響(あの馬鹿)はきっと『ごはん&ごはん!』とか言って、食費にとかしてそうだし、風鳴翼(あっちはあっち)で『常在戦場』とか言って、乗り捨て用のバイクを何台も買い集めてそうなイメージがあるなぁ。桐生戦兎(あの天才)は『はっつめいひ~ん』とかなんとか言って、ビルド強化用のアイテムの部品とか買ってるんだろうなぁ・・・んで龍我は・・・馬鹿だからなんも買わねえだろうな・・・いや勝手な想像だけれども)

と、ふけりつつ、もう一度通帳に記載された金額を見る。

(っで、アタシはどうしたもんかなぁ・・・)

そうして思い至った事は、龍我を連れ出してあるところに行くことだった。

「おい、なんか買い物に付き合えなんて言うが、一体何を買いに行くんだよ?戦兎とかはどうなんだよ?」

「あの三人じゃだめなんだよ」

そうして連れてこられたのは―――

「ぶ、仏具店・・・!?」

まさかの仏具店だった。

「へへっ、いっちばんかっこいい仏壇を買いに来たぜ」

「なんで仏壇なんだよ・・・」

あまりにも予想外過ぎて呆れかえるしかない。

「というか、どうやって運ぶんだよ仏壇なんて」

「その為にお前を呼んだんじゃねえか」

「荷物持ちかよ!?」

「当然だろ?」

「こういうのは風鳴のおっさんに頼めばよかっただろ・・・流石の俺でも骨が折れるぞ仏壇は・・・」

「べ、別にいいだろ。真っ先に思い浮かんだのがお前なんだからよ・・・」

と、顔を赤くして顔を反らすクリス。

それに特に追及しない万丈だった。

「ほら、行くぞ!」

「お、おう・・・」

もはや張り切り過ぎているクリスを呼び止める事も出来ず、万丈は成り行きに任せ、仏具店に入っていった。

 

そうして、どうにかクリスの家に仏壇を運び込む事に成功した万丈。

「な、七回もサツに捕まった・・・」

「わりーな。でかい荷物を運ばせちまって。お陰で助かった」

「全くだ・・・」

げんなりしているのも当然。まさか剥き出しで背負わされるなんて思ってもみなかったからだ。

「そういや、どうして仏壇なんか部屋に置いてんだよ」

「ああ、アタシばっか帰る場所が出来ちゃ、パパとママに申し訳ねえだろ?」

「・・・!」

それで万丈は気付く。

クリスは、戦争で両親を失っている。そして、何年も両親の墓やらどういうのをやってこなかった。だから、なんでもいいから両親の冥福を祈りたかったのだろう。

(なんだ。そういう事ならサツに捕まったかいはあったって事だな)

万丈は、ほっと息をついた。

 

 

 

 

 

―――未来とクロ―――

 

 

ルナアタック事変から二ヶ月近くの月日が経った。

その最中、未来は一人、新生リディアンの廊下を一人で歩いていた。

そんな時だった。

「キュールルールルールルールル!」

「あ、クロ」

最近になってこちらに来る事の多くなったクローズドラゴンことクロ。

戦兎も万丈も、もう面倒くさいからとその名前で呼ぶようになってしばらくたつ。

「今日はどうしたの?」

「キュー!」

当然、言葉は分からない。

だけど、なんとなく伝えたい事は分かる。

「そっか・・・戦兎先生がまた発明品を直せたんだね」

「キュル!」

「今回はどんなものなの?」

「キュル!ルルル、ルーキュッ!」

「へえ、フルボトルバスターっていうんだ」

そんな、他愛もない話をする一人と一匹。

「キュルル・・・」

「でも、まだジーニアスは直ってないんだね」

未だ、起動する様子の無いジーニアスフルボトル。

一体何が原因で、どうして起動しないのか。それは謎であり、戦兎がいくら調べても分からないのだった。

「直るといいね」

「キュル」

ふと、未来の顔が翳る。

そして、窓の外の空を眺める。

 

今、響は、出現したノイズの対処に向かっている。

 

そんな響を、自分はただ、待って、見守る事しか出来ない。

それが、彼女にとって、どれほど歯がゆい事か。

「・・・・私も、一緒に戦う事が出来たらな・・・」

そう、呟いた時、クロが一鳴きして飛び立つ。

「キュル!」

「ん?」

そうして、その顔を未来の頬に擦りつける。

まるで、元気づけてくれているようだ。

「もう、くすぐったいよ。でも、ありがとう」

その何気ない行為がほんの少し嬉しくて、未来は微笑む。

「じゃあ、私と一緒に、響たちの帰りを待とうか」

「キュル!」

未来は、そう話しかけて、クロと共に歩き出した。

 

 

 

 

 

―――バラエティ―――

 

 

「バラエティ?」

「はい。今度、出演予定のクイズ番組に、翼さんが出る事になったんです」

「アイツにクイズが出来るとは思えないが・・・」

「一応、ニューシングルの告知も出来ると・・・」

「まあ、いいんじゃね・・・ていうか、アイツがクイズバラエティに参加するとは思えないんだが・・・何やった緒川?」

「ただお話しただけですよ?試しにクイズを出してみたら、見事に正解してましたから大丈夫かと思いまして」

「ちなみにその内容は?」

「万葉集にもうたわれた、九州防衛のために設置された兵士をなんというか」

「防人だろ」

「長岡藩の藩是であり、かの連合艦隊司令官である山本五十六の座右の銘でもあった、四字熟語は?」

「常在戦場・・・」

「辻褄の合わない事を意味する『矛盾』とは、何をも跳ね返す盾と、もう一つは何?」

「矛・・・ってこれ翼なら答えられる奴ばっかじゃねえか!?」

「すごいじゃないですか。全問正解です」

「無視かよ・・・」

「ああそうだ。ついでと言ってはなんですが、戦兎さんに問題です」

「え」

「問題、第一に惑星は太陽を一つの焦点とする楕円上を運動する」

「ケプラーの法則」

「問題、1500年代において、数学的な記述・分析を重視する手法を率いた『天文学の父』と呼ばれた」

「ガリレオ・ガリレイ」

「問題、同じ種類のボース粒子が干渉しあう事で、多数の粒子が単一の状態へと集中する現象を」

「ボース・アインシュタイン凝縮」

「すごい!全て正解です」

「ま、天っ才ですから」

「これなら、翼さんと一緒に番組に参加させても良さそうですね」

「そうかそうか・・・・ん?」

「では、そういう事でお邪魔しました」シュバッ

「待てェ腹黒忍者ァ!!」ニンニンコミック

 

 

 

 

 

 

 

 

―――旧世界―――

 

 

「―――と、いう訳だ」

「ふぅむ・・・エボルトという星を殺す地球外生命体と、パンドラボックスという世界を滅ぼしかねない力を秘めた箱・・・こちら風に言うなら超強力な完全聖遺物といった所か」

「まさか、そんな戦いがあったなんて・・・」

「想像も出来ないわね・・・」

「・・・・」

「ん?どうしたクリス?」

「いや・・・なんでもねえ・・・」

「・・・」

「そんで響はどうしたんだ?」

「いえ・・・話し合いたくても、話し合えそうにない人だっているんだなって思って・・・」

「「・・・・」」

「あ、えっと、その、だからといって許すとかそういう訳じゃないんですよ!?ただもう少し別に道があったんじゃないかなって・・・・」

「立花らしいな」

「そこが響の良い所なんだが・・・エボルトについては諦めろ。アイツはどう足掻いても無理だから」

「そう・・・ですよね・・・」

「まあ、お前のその心意気は尊敬するよ」

「しかし、新世界が創造された今、パンドラボックスは見つかっていないという事になっているのよね?」

「ああ、あるいは、元々なかったって事になっているか、だな」

「詳しく調べてみない事には分からんが、俺の知る限り、火星にロケットを飛ばしたという事は聞いたことはないな・・・」

「そうなのか・・・そこが決定的な所だな・・・」

「それは良く分かんねえけど、まあエボルトは倒したから安心しろ」

「そうか・・・もしノイズ以外でそんな奴が現れたらただじゃ済みそうにないからな」

「司令ならなんとかできそうですけどね」

「乗っ取られなきゃいいんだけどな」

「やめろ。それを想像しただけで寒気が止まらなくなる」

「・・・・あの、戦兎先生、龍我さん」

「ん?どうした響」

「辛くはなかったですか?仲間に忘れられて」

「・・・・」

「・・・・まあ、辛くはなかったと言えば嘘になる」

「・・・」

「でも、今はお前たちがいる。今は、お前たちが俺たちの仲間だ」

「戦兎先生・・・」

「やせ我慢じゃないのか?」

「お前はどうしてそこで台無しにするのかな?」

「はっ、お生憎様アタシはひねてるらしいので」

「ただ素直じゃないだけだろ」

「うっさい!」

「ほらほら落ち着け雪音」

「だからって頭を撫でるなぁ!」

「っ・・・っはは!本っ当に最っ高だなお前ら!」

「それは桐生もだろう?」

「違いない」

「否定しないのかよ」

「だって本当の事だし」

「何が本当なんだよ俺に内緒で美空んとこ行きやがって」

「あんときクリスにひっついてたお前が悪い。どうせホテル連れ込んであーんなことやこーんなことしてきたんだろ?」

「俺はそんな変態野郎じゃねえ!!」

「な、ななななに言ってんだお前はぁ!!」

(・・・・と、こんな感じに、私たちは日常を謳歌しています!)

 

 

 

 

 

 

―――ベストマッチ―――

 

「そういえば前々から気になってたんですが、ビルドドライバー『鋼のムーンサルト』とか『輝きのデストロイヤー』とか言ってますが、あれは一体どういう事なんですか?」

「ああ、あれか?・・・なんでだ?」

「知らないんですか?」

「設計したのは父さんだったからな・・・」

「ああ、私も気になっていたんだが、桐生のお父様は、どうしてそんな機能を?」

「エボルドライバーを元に作ってたからな・・・元々、ベストマッチ発見機能は俺が後からつけたものだが、その後の音声は父さんがやったものだったな・・・」

「まさかエボルドライバーも変な事言い出すのかよ?」

「普通に言ってたな。なあ万丈」

「ああ。エボルコブラとかエボルドラゴンとか、すっげえ言ってたな」

「その上ブラックホールか・・・・あの時の言葉の意味が分かった気がする」

「戦兎先生たちって本当に了子さんたちより強い相手と戦ってたんですね・・・」

「あ、クロを使ってた時も『Wake Up!』とか言ってましたよね?」

「発音上手ッ!?ま、まああれは・・・・俺の趣味だ」

「キュル!?」

「お前の趣味かよ!?」

「いやだってこういっときゃ父さんと引けをとらない科学技術が俺にもあるんだってことを誇示できるし・・・」

「むしろお前の馬鹿さ度合いがあがった感じだよ・・・」

「まあ何はともあれ。一応これであの音声については分かっただろ」

「何も分かってねーしなんにも説明出来てねーよ」

「じゃあそういう訳でバーイ!」

「あ!逃げんなコラァ!」

「キュルル!!」

「逃げないでください戦兎先生!」

「敵前逃亡は重罪だぞ!」

「粛清の対象だぞオラァ!」

「あ、えーっと、じゃあ私が捕まえるね!」

「うお速っ!?」

「流石元陸上部・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――アメリカ――――

 

 

 

 

人の近寄らない森の奥に存在する、とある研究所の一室にて。

二つの人間が入りそうな棺桶のような装置の前に、一人の男が立っていた。

「・・・そろそろか」

そう呟いて、そう呟いて、男は装置を停止させる。

すると、控えていた研究員が装置を開ける。

「う・・・ぐ・・・」

まず、片方からぐったりとした様子で出てきたのは、おおよそ中学生か高校生かと思われる少年だった。金髪で紺色の瞳を持つ少年だった。

その少年が、研究員に肩を貸されながら部屋を出ていく。

もう一つの装置からは、何事もなかったかのように立ち上がる、一人の青年。

白髪で色白、瞳の色も灰色と、何から何まで白に近い男だった。

「『涼月(りょうげつ)慧介(けいすけ)』、ハザードレベル4.0。『シン・トルスタヤ』、ハザードレベル4.2か・・・地道にごく少量の()()()()()()を投与し続ければこうなるか・・・まあ、重畳だな」

男はくっくと笑いながらそう呟く。

「よくここまで耐えたなぁ」

「お世辞はいい。これで、二人とも規定値は超えたぞ」

「ああ、分かっている」

くっくと男は笑いながら、男はシンと呼ばれた男にアタッシュケースを一つ差し出す。

「まだ未完成品でノイズとの戦闘は出来ないが、向こうの仮面ライダーとの戦闘に支障はないだろう。ただ()()()()()()()()()()さえ奪えばこれは完成する・・・ただ、極秘裏に作ったためにこれ一つしか作れなかった。もう一つはそうだな・・・万丈龍我の持つスクラッシュドライバーを奪えばいい。その時にこのリストに記載されているボトルのうち一本だけでも奪ってきてくれると助かる」

三ヶ月前に諜報機関よりもたらされた、仮面ライダーの記述。

日本政府より提示された櫻井理論とは全く異なる系列の技術。

(ククク・・・()()()にあの()()()を見つけなければ、私は仮面ライダーの存在に気付く事はなかった・・・だからこそ、覚悟しろ。万丈龍我、桐生戦兎・・・!)

忘れもしない。あの男の所為で、自分は人生を狂わされた。

(悪魔の科学者、葛城巧。そして葛城忍!私は貴様らの人体実験の所為で死んだ・・・故にこれは復讐だ。私のライダーシステムに加え、お