病気になるけど不老不死 (篠崎零花)
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0話 今までの登場人物

2019/10/11 記載

2020/2/29 更新


名前

篠崎 葵

 

ふりがな

しのざき あおい

 

性別

 

年齢

??(本編1話)→25(本編5話)→54(本篇12話)

??(if1話)→30(if2話)→115(if9話)

 

職業

自宅業(本編、if)

 

 

その他

気がついたら不老不死になっていた主人公。そのため、主に身長などの成長は全体的に遅め

なので、外見年齢である20代にしてはやや低い身長をしている

ただ何故か病気にかかる不思議な人間

遊○王やゲームなどをよくするため、友人は多め

 

 

容姿こそは普通の人にしてはかなりよいが、二次元の美少女の影響で自己評価は低め。服装はシンプルなものを選びがち

髪は黒髪なのだが、原因不明の白髪混じり。髪型は大体肩につくかつかないかの長さを維持している

日焼けするとすぐに赤くなるので、気にしている。肌が白いせいだろうか

 

ifではタバコを1日少なくて1箱、多くて2箱3箱は開けていたりする

お酒もたしなんでいるが、黒霧島辺りを飲めるほど強い。少なくても一升瓶2本あけ、多いとそれ以外もあけたりするのでしばしば橘悠希と病院送りになっていたりする

本編は生ビールを350の缶を1本から3本なので、ifは相当である。因みに本編は多くても生ビール一升瓶を1本か2本

 

 

 

 

名前

篠崎 茜

 

ふりがな

しのざき あかね

 

性別

 

年齢

18歳→23歳(番外編)

 

職業

自宅業(番外編)

 

 

その他

番外編では葵の兄として存在し、彼もまた突然不老不死となる。ただその時からゲーマー気質なのと“なってしまったものは仕方ない”と最終的に考えついた為、やたらと不老不死と便利に扱う方法を探している

特に火を起こせる彼はBBQや焼き芋など日常生活で使っている

ちなみに彼は葵と違い、病気になりにくい代わりに一度病気になると重症化しがち。例えば風邪で2日か3日寝込むなどの体質

 

なんらかの影響で“俺”という一人称が“私”になっているが、素に戻ると一人称が元の“俺”になる

三人称の“君”や“お前”は相手によって使い分けている

 

 

容姿は白混じりの黒い短髪、葵ほどではないものの白い肌と言った感じ

顔も悪くはないものの、オシャレに気を使わないのでもったいながられてたりする

 

 

 

 

 

名前

篠崎 優美

 

ふりがな

しのざき まさみ

 

性別

 

年齢

60(本編1話、if1話)

 

職業

神職(本編、if)

 

 

その他

年齢が60歳になる葵の母親

葵の家から見て右手にある神社にて夫と暮らしている

そこそこ有名な神社の分社なだけあって、収入には困っていない

 

 

容姿は平凡そのもの

髪は濃い褐色だが、歳なため白髪が少し混じっている。手入れが面倒なのか、短いショートヘアを好んでしてもらっている

日焼けはそこまでしていない

 

 

 

 

名前

篠崎 翔也

 

ふりがな

しのざき しょうや

 

性別

男性

 

年齢

63(本編1話、if1話)

 

職業

神職(本編、if)

 

 

その他

年齢が63歳になる葵の父親

葵の家から見て右手にある神社にて妻と暮らしている

そこそこ有名な神社の分社なだけあって、収入には困っていない

巫女のバイトを雇ったりしてるが、葵にも来て欲しいと思っていたりする

 

 

容姿は平凡そのもの

髪は黒髪だが、歳なためか白髪が混じっている

よく外出をしているためなのか、少し日焼けしている

 

 

 

 

名前

四ノ宮 椿

 

ふりがな

しのみや つばき

 

性別

 

年齢

19(本編1話)→20(本編2話)

30(if4話)

 

職業

接待業の会社員(本編)

兼業主婦(if)

 

 

その他

20歳になる19歳の幼なじみ。葵とは椿が中学生の時からのお付き合い

 

葵のことは“見た目があまり老いにくい遺伝子を持った凄い人”という認識があるせいなのか、それとも本人が自身のことを卑下しすぎているせいなのかは分からないが、そういった話題になると葵のことを褒めようとする一面も

 

 

容姿はそこそこよく、一部が葵よりある。服装は可愛いやおしゃれを選びがち

髪は焦げ茶色の肩甲骨付近まで伸びた髪で、よく一つにまとめあげている

 

 

ifだと既に既婚者であり、珍しい婿養子を迎えている

久しぶりに葵と会った段階で子供は1人

 

 

 

 

名前

橘 悠希

 

ふりがな

たちばな ゆうき

 

性別

 

年齢

20(本編1話、if1話)

 

職業

接待業の会社員(本編、if)

 

 

その他

年齢20歳になっている葵のゲーム友達

大体似たようなゲームをしている影響で葵も悠希ほどではないが、一部ゲームにおいておかしな腕前になりつつある

遊○王などもしているので、葵とはよく会っていた

 

 

容姿はまあまあよく、良くも悪くも普通な性格。服装はシンプルなもの選びがち

半年に1回は散髪しているので、とても短いことが多い。ちなみに黒髪

日焼けも友人の影響でそこそこしている

 

ifだと葵が不老不死であることを知っている。なにせ一度葵の死に際にタバコをあげたのがゲーム友達であった彼なのだから

ちなみに彼は前までタバコを吸っており、今はやめている。飲酒は篠崎葵よりも多く、彼は葵と同じか高い度数のお酒を好んでいたりする

本編はifよりもお酒による痛い目を見ない。それでもifの飲酒量に近い飲みっぷりを見せている

 

 

 

名前

一ノ瀬 湊

 

ふりがな

いちのせ みなと

 

性別

 

年齢

20(本編1話、if1話)

 

職業

接待業の会社員(本編、if)

 

 

その他

悠希の親友で年齢は20歳

小学生の頃からの付き合いで、遊○王なども一緒にやっている

色々と常識人よりなので、葵ともども悠希達などにツッコミをしたりしている

 

 

容姿はまあまあよく、イケメンといえばイケメンかもしれない男

比較的よく散髪していて、悠希みたいに短い黒髪を維持している

あまり外に出ないのかどちらかというと肌が白い

 

本編でもifでも彼はお酒に弱い。ビールを中ジョッキで1杯飲むと顔が赤くなるほど

タバコはほとんど吸わない

 

 

 

 

名前

天神 陸

 

ふりがな

あまがみ りく

 

性別

 

年齢

25(本編1話、if1話)

 

職業

医師(本編、if)

 

 

その他

年齢25歳の医師

葵の担当医を引き継いて数年の医師……なのだが、関係性は数十年を思わせるときがあるらしい

 

 

容姿はなかなかの美男なのだが、オタク気質

髪は焦げ茶色で、やや短めの髪を維持している

葵の担当医になってからというものの、休みがとりやすく夏コミ冬コミに行けるのが嬉しすぎたあまり、最近日焼けしてきている

 

彼は少しお酒をたしなんでおり、缶ビールをときおり1本から2本飲んでたりする。タバコは吸わない

 

 

 

 

名前

水瀬 紫苑

 

ふりがな

みずせ しおん

 

性別

 

年齢

28(本編1話、if1話)

 

職業

看護師(本編、if)

 

 

その他

年齢28歳の看護師

基本的には天神陸と一緒に行動していることが多い

 

周囲に篠崎葵本人かその本人のことを知る者しかいなくなると途端にふざけはじめる天神陸という医師に対して、よくツッコミなどをしたりしているある意味苦労人

最近は“そろそろ自重してくれないかしら”と考え始めていたりする

 

彼女は本編でもifでもあまりお酒を飲まない。タバコも吸わない



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本編 病気にもなる不老不死(笑)の日常など
1話 不老不死は友達と


気がついた時には、不老不死だった。

両親は神の加護がどうのこうのといってたけど、そうじゃないと思うんだ。

恐れるなり違和感を感じるなりしてよ。普通の両親から不老不死は常識的に考えて産まれないから、ね?

 

あと、もう一つ。

何故不老不死な僕が風邪とかひけるの?おかしくない?

 

 

おかげさまで2日、3日風邪で寝込んだことあるんだけど。つらいわー。

その時は実家でもある神社から見て左の一軒家に独り暮らしをしてたから余計に……。やはり持つべきは友達である、と思い知った。

 

いや、僕に友達がいないみたいな言い方をしたけど、ちゃんといるよ。友達何人か。

何人いるか忘れたけど。数えてないし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、だからって春は暇だなー。ゲームのイベントはまだしも、リアルのイベントがそんなにやらないからなー」

 

とかいいつつ、ベッドでごろごろ。

気持ちいい!………いやいや、ダメでしょ。うん。二度寝しかねなくなるし。

 

 

「……あ、ラ○ンになんか来てる」

 

とか言いつつ、さっきバイブで震えたスマフォのラ○ンアプリを開いてみた。通知は見てないから内容は知らない。

ええと、女友達の四ノ宮(しのみや)椿(つばき)からだ。なになに?

 

 

“おはよ”

“今日ヒマ?”

 

 

なら、僕は“おはよう。今日は予定あいてるけど、どうしたの?”……と返信。

うわ、来るの早い。

 

 

“よかったら私達と今から遊ばない?”

 

 

こんな朝からなにしてるのやら。ゲーセンだってあと少しだろうに。

というか他にも人がいるのかな。

それなら“分かった。ただ集合場所はどこにする?”にしよう。

送信、っと。

 

 

“駅から徒歩数分の喫茶店にいるよ。待ってるね”

 

 

…なるほど。なら、あそこだろうし、行く準備して行きますか。たぶんそのまま遊ぶことになるだろうし。いや、今日みたいなラ○ンの時はいつもだったのを忘れてた。

早くつく方、どっちだったかなあ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから準備とか移動時間などを含めて数十分。

前についたものの、入りにくい。

ス○バとかそういうやつは友人とかと一緒にはいるから平気なのであって、1人じゃ慣れてないと緊張するんだよ!?

 

でもまぁ、入らないと始まらないからなぁ。

 

 

〜♪

 

「いらっしゃいませー」

 

デスヨネー。

 

 

「あっ、きたきた。こっちだよー!

 

と、この少し大きめな声で呼ぶのは四ノ宮椿かな。ってだいぶ見えやすい位置に…。

あいてすぐに入ったのかってぐらいだね。そうでもないのはまだ空きのある席を見れば分かるけど。

ん、あとはこっちに背後を向けた人が2人…どっちも黒い髪をあそこまで切ってる辺り、男かな。

もう少し近寄れば分かるかな。

 

 

 

 

焦げ茶の髪をポニーテールにしたラフな格好をしている椿の前にいる2人はどちらも黒い短髪…だけど片方が腕、首周りの日焼けした男とほぼ白い男、だね。どっちも春で暖かいだけあって半袖だけど…と。

あれ、この部分日焼けしてる1人に心当たりがあるような

 

「あ、なんだ。椿が呼んだ友達って葵のことか」

 

「あれ?悠希、お前の知り合いだったのか」

 

「まぁな。ゲームで少し…いや、かなりか?それで会って遊んでる相手だからな」

 

(相変わらず白髪混じりの黒髪、か。肩あたりにつくかつかないかでちょうどいいよな。もう少し伸ばしたら遊びがいがありそうなんだが……)

 

なんかすごい髪の毛を見られてるような…。

 

「なるほど、俺達にはよくあることか。椿は違うけど」

 

「ちょっと(みなと)!?幼なじみだからってその扱いは酷くないかな!?」

 

ハハハ、と気にした風もなく笑う日焼けしてない方の男。へぇ、そっちの人の名前は湊っていうのか。

……って待って。幼なじみがいるとか聞いてないんだけど。

 

 

「椿、幼なじみって…いたの?」

 

「ん?あぁ、うん。いたんだよ。いやー、この前まで忘れててさ」

 

(ったく、普通は忘れないよな。数年前まで遊ぶ仲だったんだぞ?)

 

「湊曰く数年前までは会っていたらしいけどな。あとこいつの名前は一ノ瀬(いちのせ)(みなと)だな。んで、俺は(たちばな)悠希(ゆうき)な」

 

あ、なるほど。彼のフルネームはそうと。

それにしてもここの4人の中で2人だけ苗字が一ノ瀬、四ノ宮……これ以上はやめておこう。

 

「そうなると今来た子が篠崎(しのざき)(あおい)さんか。悠希からよく話を聞いてたから知ってたぜ」

 

「ネトゲ友達の中で唯一の常識人だからな。ついでに俺のツッコミ役」

 

「君だけじゃないんだよなぁ…これが」

 

(あー…なんかありえそう。葵ってばなにかとツッコミをいれることが多いし。他の人もやってるけど、単純によくつっこんでいるところを見かけるってのもあるしなぁ)

 

「ほとんどその通りみたいだからなんとも言えないんだよなぁ……。もちろん、俺は話でしか知らなかったけどな」

 

幼なじみがいたこと自体は知ってるんかい。あ、いや。名前を知ってる時点でそれもそうか。

ほんといつの間に知り合ってたんだろうな、この3人は。…やっぱり、ネットか?ネットを多くの人が遊んでるからなのかな?

 

 

ううーん、風邪引いたりとかさえなければ徹夜でもして、ネット友達増やすんだけどねぇ。いや、薬が普通の人みたいに効くからまだマシ…か?

こんなんでも不老不死なんだから我ながら笑えてくる。

 

 

「そればっかりは仕方ないな。湊はそもそも他にも友達がいるからそっちとも遊ばんとだし。だろ?」

 

「まぁな。というかここで話をしてるのもなんだし、移動するか」

 

「あ、それ僕も賛成」

 

(えっ!?遊ぶとは聞いてたけど、どこへ行くの!?)

 

「んじゃあ、そうしようか。葵と悠希は後ろで平気そうか?」

 

「平気だよ」

「あーい」

 

後ろだのどうだのと話してるのはいいけど、車で移動するよってことを椿には教えてないの?

ラ○ンとかなんか教える手段があるはずなんだけど。じゃなきゃ椿からなにを言われても反論はーーー

 

「ねぇ、どっかへ遊びに行くとか聞いてないんだけど?!」

 

ほら、言わんこっちゃない。……と思ったけど、計画たてる人は僕か湊しかいない。運転するのも湊だけど。

今回は確か悠希が誘ってきたような気がするから…あー、うん。目的地があればいいレベルだな。

 

「あー、それはあとで教える。湊、平気そうか?」

 

「あーい。んじゃ、行ってるよ」

 

といって席を立つ湊。ちなみにここは注文して支払いを済ませてから席に座るから無銭飲食とは無縁なんだ。

ーーーというのは皆知ってるし、黙っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

移動して全員車に乗った。4人で集まることが多いせいか車も4人乗りなんだよね。

それでときおり考える。もう僕のことは不老不死じゃなくて、普通の人間扱いでもいいんじゃないかなと。

 

なのに現実はひどいよね。そんなに病気にかかってるわけじゃないけど、かかりつけの病院と“僕担当”の医師までいる。

ちなみに僕の方が寿命がありまくるから、1回担当になった医師は異動するか、仕事を辞めるまで担当になる。

だからってたまに僕で治験しようとするのはやめてほしい。

 

 

 

っと、話がそれた。だいぶ横道にそれた気がするほどに。

んで今は運転手側にいる湊と僕の右横にいる悠希が行き先を教えている。

えーと、確か…どこだったかな。テーマパークだった気がするんだけど。

 

「とりあえず、これから遊園地行くぞー」

 

「こんな暑いのにぃ!?遊園地へ行くの!?」

 

「いやだって水族館だと悠希が飯の話するだろ?動物園だと葵が動物相手に大変だろ?キャンプとか旅行するには準備が足りなさすぎるだろ?……他にもあるが、そこがちょうどいいとしか、な」

 

(まあ、俺は湊が運転するし、楽だからなー。それに椿とか葵といると楽しいからな。あと葵とは色々と遊べるし。いやー、趣味が近いって助かるわー)

 

「あー……それもそうだったね。もしかしたらどの遊園地も混んでそうだけど…」

 

いやぁ、それは仕方ないでしょ。夏だし。あと休みの人もいるんだろうから…うん。家族連れも多そうだなぁ。それを言ったら水族館や動物園もそうなんだろうけどね。全部一緒ってね。

 

「あー、それな。でもたまにゃ遊園地でもいいだろうって湊が」

 

「そりゃあね。ゲーセンとか以外で、かつ皆で楽しめそうって言ったらそこしかないからさ」

 

(あー、確かに。特にゲーセンは私とかあんまり楽しめないしね。遊んでるのが少ないのもあるし。…あとはカードゲームも私がやってないのばかりだし。審判はやってるけど。それ以外だと一生ゲームとかなら楽しいんだけどなー。ま、仕方ないか)

 

「とりあえず、後ろはあんまりふざけるなよ?特に一緒にすると危険な2人なんだからさ」

 

「ふふん、僕なら大丈夫だと思うよ……たぶん

 

とりあえず自信たっぷりに言っておけば…いいよね?

 

「俺も平気だな……きっと

 

(2人共、最後が聞き捨てにならなかったような…。まあ、いいや。出そう)

 

なにかをどこか不安げに考えてそうだった湊が「出るから椿、ちょっと手伝ってね」と言って車のエンジンをかけた。

椿は「分かった」とだけ言うと少し真面目な顔をしたような気がした。…そういや、近くの遊園地か。最近いってなかったし、楽しみだなー。



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2話 不老不死は友人達と共に遊園地で

喫茶店から車を走らせた僕達は途中コンビニよったり、高速道路に乗ったりしてしばらく。

遊園地につきました、まる。

ちなみに運転席が一ノ瀬湊、助っ席が四ノ宮椿、運転席の後ろが橘悠希、助っ席の後ろが僕という感じ。きっと前なのは変なおふざけが見えないように、という配慮?なのか。僕はなにもしないけど。

 

 

途中悠希がふざけそうになって僕もそのふざけにのりそうになりつつなんとか止めたり、湊が僕に渡していたクイズみたいなのを出してみたりといい暇つぶしができた。ありがとう、湊。

僕も少しは提案手伝ったとはいえ、こういう時は助かるよ。

いや、僕の小さめな庭で湊と共にそういうのを作ったりしてるから…どうなんだろ?

 

悠希に気づかれないようにするのが大変だね!

 

 

 

 

「あ、そうだ。チケット発券してくるから待っててね」

それぞれが分かったみたいなことを言うと湊は走っていった。

 

「そういやよくあの移動中、ふざけるの我慢したよな葵」

 

え?そりゃあ…

 

「下ネタとかも混ぜてふざけようにも椿がいるじゃないか。逆に引かれる」

 

(…変なとこ真面目ってどういうことだよ)

 

「でも、なんか後ろで遊園地についたらあれしよう、これしようとか相談してなかった?聞いてる限り、ふざけそうなんだけど」

 

もちろん、といわんばかりに頷いたのは悠希だった。ちょっ、まだ秘密って言ったよね?

 

「えっ?する気満々だよ。計画通りに動かないのが俺だから」

 

(いやいや、自慢げに言うものじゃないよ?ほら、なんか組み合わせると危険だと言われた片割れのはずの葵すら遠い目をしてる。……あ、でも少し気になる)

 

なんか大丈夫かな……下手したら、椿がふざけ要員になりそうな予感がするんだけど。そうなるとあれか。

僕はツッコミ×(かける)不老不死か。

いや、僕の不老不死要素目立たな過ぎない?もうどう見ても、聞いても普通の人間だよ?

 

 

あ、気になるか?じゃあ、ちょっと葵にも内緒で……

 

うん、聞く聞く。私もたまにはふざけてみたいし

 

ちょっと待とうか、君達。小声で話してるつもりだろうけど、聞こえてるからね。

それにこんなとこまで来て悪ふざけとかはさせないからね?

 

 

 

 

 

なんてふざけようとしている2人を止めようとしたりなんてうだうだしてたら、湊が戻ってきた。

 

「あー…うん。やっぱり葵、お前はツッコミ役だけやってればいいんじゃないかな」

 

戻ってきて早々の一言がそれかい。僕は皆のツッコミ役じゃないんだぞ。

僕だってふざける時はふざけるよ。それこそ頭を花畑にでもしてやろうかと。

 

……収集つかなくなりそうだからやめた。

 

 

「ほら、湊がそんなこというからさっきから私達のことを葵が呆れた半目で睨むみたいに見てくるんじゃないの!酷くない!?」

 

「俺達はちょーっとふざけようとしただけなのになー?」

 

「いや、君達がよくするのは度を越したおふざけ。僕がするのは運転とかにも支障をきたさないほどの下ネタとか言葉によるおふざけ」

 

(あー、確かに。悠希よりはふざけないけど、俺ほどふざけるのを我慢しているわけでもない。…もういっそのこと、そのふざけるのをやめてツッコミをしていてほしいね)

 

「あ、でも葵も酒が入るとすごいよね」

 

「言うんじゃない、もうすぐ20歳になる椿よ。それに湊と悠希もそうじゃないか」

 

わざとらしく、そういうと少し笑いをとれたのか笑われた。

いや、今のはそういうつもりじゃないんだよ?なんか違う。

 

「ぷふっ、湊も酷いってよ。ならたまに酒でも飲みあうか?」

 

(ぐっ……否定はしないが、酒は危険なんだよな。俺と唯一のツッコミ役にもなれる葵すらふざけすぎるはめになるし、次の日大変なんだよな)

 

な、なんか湊が気難しそうな顔を…。

とりあえずここは話をそらした方がぶなん、なのかな?

 

「とりあえずさ、湊が皆で事前に払ったチケットを持ってきたんだから入ろうよ。悠希と椿も」

 

「ふーむ…ツッコミが似合う葵に言われたんならしょうがない。ということにしよう」

 

「おお、本来の真面目な葵に……。そうだね、悠希。ちょっと湊のことからかいすぎだし、行こう?」

 

……ホッ、みたいな顔をすると湊が僕の顔を見て“ありがとな”みたいな小さなジェスチャーをしてきた。

はいはい、ふざけるのは後回しにしますよ、と。

そりゃ椿もふざけるとなったら余計に大変そうだしね。まとめの湊、ツッコミの僕でどうにかしていくか。

そう思った僕は急に冷静になった椿を先頭に皆で遊園地の中に入った。

 

 

……あんまり変なおふざけはしないように見とかないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おおー……前にも来たことがあるとはいえ、なかなかに広い遊園地だよなぁ。

 

「さてと、入ったはいいけど最初はどこへ行こうか。俺的にはジェットコースターかお化け屋敷だな」

 

(え、ええー!?どっちも絶叫系じゃん!どうしよ…。コーヒーカップの方が私は楽しめるんだけどなぁ)

 

あれ?なんか椿がどこか嫌そうな顔に……あんまり絶叫系得意じゃないんだっけ?

 

「悠希、そこは定番のジェットコースターとかじゃないか?葵と椿が乗れるかどうかはともかくとして」

(お、お願い葵。葵から私が苦手って言ってもらえるかな)

 

あー…椿の方をまたチラッと見たら、まるでお願いするような…。はいはい、なんとなく察したから話すか。

 

「僕は平気だから乗るけど、椿は絶叫系苦手だから乗らないって。その近くにいればいいよね?」

 

悠希、君はあからさまに残念そうにしないの。まだ時はあるんだから別に平気でしょ?

 

「あー、さすがにジェットコースターは無理させられないしな。ただし、お化け屋敷は同伴な」

 

「そんな〜〜!?」

 

「大丈夫、僕がついてるから」

 

「なんで葵は怖がらないのー?むぅ〜〜……」

 

そんなすねたような顔で言われてもなぁ。死んだり、病気になるよりはなんとも……。それにお化け屋敷って怖がらせるのが目的なわけだし、なんだかなぁ。

 

(そういえば葵ってなにかと落ちついてるんだよなぁ。だからズルい……)

 

「ならとりあえず行こーぜー」という悠希の一言でジェットコースターに向かい始めたけど、すっごい椿から羨望の眼差しが向けられてるような。どーゆーことなんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういうことで、ジェットコースターのところに並んでいる。並ぶ前に椿と皆とで少し話したんだけど、ホント苦手なんだなぁ…と改めて実感した。仕方ないね。

 

「遊園地なだけあって雰囲気あるよな。ふざけたくなるんだが、ダメか?」

 

「仲間うちだけでふざけるとしてもあとでにしないか?他にも行く予定の場所あるし」

 

遊園地遊び尽くすつもりなの!?

と思わずツッコミそうになったけど、口には出てないよね?

 

「こりゃあ椿が聞いたら前々からツッコミに向いてると思ったんだよね、とかって思われそうだな」

 

「へぇ、そうなのか。でも確かにふざける時よりもキレがいいというか、なんというか…。やっぱり葵は面白いな」

 

(なにせツッコミ部分だけ口に出てたもんな。無意識だろうとは分かってるけど、ツッコミ担当してもらおうかなぁ…)

 

この反応…つ、つまり…

 

「……どうしても僕がツッコミの方がいいの?」

 

「だって俺以外に常識あんのお前だけっぽいし」

 

「いや、あるだろ。俺のふざけに対して色々つっこんでくれて楽しいし」

 

あ、はい。確定なんだね。しょうがないね。

と、話してたらいつの間にか乗る番になってる。それで乗る場所は…僕と湊が前から二番目で、悠希が僕達の後ろか。

感想としては結構楽しかった。前の方もありだね。真ん中よりも楽しかったし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出口から出たのはいいけど、椿は……と

「おっ、いたいた。待たせたなー」

 

「お待たせー」

 

「自由落下決めてきたわ」

 

あれは自由落下じゃないだろ、と言いたいが放っておく。

 

(なんの自由落下だし…。むしろそっちの方が怖そうだけど、平気なのかな悠希は)

 

「とりあえずお化け屋敷行こうか。すでに2人共行きたそうにしてるし」

 

それにほぼほぼ同時に頷く僕と悠希。

変なとこでシンクロするのは大体ゲームで共闘したり、やりあったり、邪魔し合ったりしてるせい。悠希の方がうまかったりするけど、別に今はいいか。

 

「え、ええー!?どうしても行くの!?

 

「比較的並ばない今のうちってね。ほら行くよ」

 

(そーいや葵がお化け屋敷のことを知ってるっぽかったけど、黙ってるのか?それともまた進化でもしたから言いにくいのか。……ありえそうだな)

 

ん?今度は悠希がこっちを見てるけど、どうした……?

よくわからないまま、僕達はお化け屋敷へと向かった。見た目は廃屋…というより廃病院だったけど。

 

 

結果を言えば、椿が僕と悠希の片腕をつかみ、歩きにくくなったりした。

湊がもちろん“「怖いなら途中退室してもいいんだよ?」”と聞いていたけど、まさかのプライドで続行。

んで、出てきた頃には号泣。

 

(やりすぎたな…。悠希達とは後日に遊○王とかで埋め合わせするとして、あとは……)

 

なにかを考えた湊によって、あとは普通に楽しんだのち、昼食をとってからいつもの場所へ行って少ない時間をゲーセンとかでついやした。

車で送ってもらえるのをいいことに最後にド○キホーテで健全な子どもに見せられない18なガチャを悠希としようとしたら湊に止められた。

 

ケチ。

 

2人でそんなこと言ってたら僕には軽いデコピンが、悠希には男同士の悪ふざけとも言えることをされていた。

……でもあれ、羽交い締めみたいで痛そうだったけど、いいのかなぁ。まあ、いいんだけど。よくあるらしいし。



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3話 不老不死の友人の誕生日

今回は少し文章が長めです。


まだ春の真っ只中だというのに、僕達は僕の家でトレーディングカードゲームをしていた。

それで、朝食後からさっきまでFPSゲームをしていたのはここだけの話。あとなんか変なものぶん回された。

そういう男が使う18な物は外で振り回さないでよ?と内心思った。

 

 

ちなみに今いるのは一ノ瀬湊、橘悠希。

んで、男が使う18な物は悠希が持ってきた奴らしく、ド○キホーテのガチャで当たったらしい。僕の家に置いていかないでよ、とだけ願っておこう。というかあとで言う。

 

「昨日今日なのに来ていいと言われるとは思わなかったよ。約1名おかしなものを持ってるけど」

 

「いやぁ、確かに自分の家に置いていかれたら困りそうだねぇ」

 

「おー、なら今度湊の車に乗る時でも振り回すわ」

 

「そ、それはやめろ?!」

 

あ、笑ってた湊もさすがに真顔になった。というか対戦してるの君達でしょ。

いくらもう決着つくからってそれは、ねえ。湊が青眼で悠希は機光竜だからってねえ……。いや、僕も調整中を含めれば3つあるけど、湊のとは違って何故か妨害系しか来ないし。機光竜を恐れるのは分かるけど、少しは来てよと。

 

それはいいか。思考を今に戻そう。

「ところで、悠希はバトルフェイズの最中でしょ?忘れてないよね」

 

「忘れてないさ。リミカをあと1枚使うんだからな」

 

さっきも使ったよね、そのリミカ。2枚目だよ?

完全にオーバーキルだよ。なにせ湊に伏せカードは残されてないんだし。一応青眼の精霊龍と青眼の亜白龍がいるし。墓地にもそこそこいる。禁止カードに行って辛いカードもあったらしいけど、仕方ないね。

そもそもなんで遊○王をやってるのか僕も分からない。確かFPSをやった後モ○ハンするとか言ってなかったっけ?

でも想像はできたかもしれない。なにせデッキを持ってきたと最初に言われていたから。

ちなみに新マスタールールだったりする。

 

 

(俺も色々としたのに今回は負けるとかさすがだよ。ほんと、その男が使う18な物さえ持ってこなければな。それのせいでなんか台無しな感じがする)

 

(湊が呆れてる、か。なんとなく察しはつくが、楽しいからやめないんだけどな!)

 

ま、楽しそうだからいいんだけどね。僕も楽しいからいいんだけど。

だからあえて止めない。酷ければ止める。

 

ーーーそういや、それを抜きにしてこの2人は何故僕の家に来たんだろう。遊びに来ただけなのか。

すっかり聞き忘れていた気がする。

 

 

「ねぇ、そういやいつもみたいに用もなく遊びに来たわけじゃないんだよね?」

 

「ん?ああ、よく用もなく遊びに来たことがあるから仕方ないな。…あれ、湊。なんか用あったっけか?」

 

(葵の家に行く途中確認しただろうに……。俺が言うか)

 

「遊びに来たのもあるが、椿が今度20歳になるだろ?その祝いも兼ねて国内旅行はどうか、ってね」

 

小旅行とかそういうやつかな。

 

「あ、それ何泊する予定なんだ?あと時期とか。場合によっては俺も運転できるが?」

 

「スピード出しそうな予感がするからお前はなし」

 

「湾岸とか頭文字とかやってるらしいしね、危なそう」

 

「確かに否定はしないけど、お前ら俺のことをどんな目で見てるんだよ!?」

 

「「スピード狂予備軍」」

 

ハモった。

というか考えること一緒なんだね。

 

 

(そりゃあそうなるよな。普段から“免許をとったら高速道路でスピード出す”とか言ってるし、その悠希の友人は最高130キロ出したとか言ってたし、可能性はなくはないからな)

 

呆れてるのかなんなのかは分からないけど、半目で悠希の方を見てるね。うん、湊。僕もきっとそんな感じで悠希を見てると思うんだ。

性格的にありえそうだからね。死んだら元も子もないんだよ?熱中症で1度死んだことある僕が言えたことではないけど。

 

 

「とりあえず悠希と交代はなしにしない?さすがに危ないというかなんというか……

 

「んだな。さすがにそれでオービスに照らされてもたまったもんじゃない。なにせ俺の車だし」

 

「ひっでー扱いだな、俺。確かに湊と交代するなり借りるならしようかと思ったが」

 

そう思うんなら笑いながら言わんでも…。

まあいいや。元の話に戻そう。その方が早そうだし。

 

 

 

 

「とりあえず椿の誕生日を祝うってことだよね?まだ日にちがある気がするけど…」

 

「あー、まあね。でもほら、早めの方がどこぞの誰かさんを巻き込みやすいからね」

 

悠希をチラチラ見ながら言ってるあたり、もはや隠す気ないよね。

というか計画を立てておいても壊しにかかってくる人をどう巻き込みやすいのやら。

 

(それにふざける奴にも“一応”教えていた方が安全そうだからな。…関係なさそうだとしても、ね。結局ふざけるだろうし。というか葵のその顔、呆れてるのかなんなのか。よく分からんな)

 

「あ、場所ならUFOキャッチャーがたくさんあるあの場所かユニバーサルなスタジオとかいいんじゃね?それかハ○ステ○ボスはどうだ?」

 

え、えぇー……と引いた感じに呟いたら湊とかぶった。だって一つ目は普段行く場所の延長線上でしかない気しかしない。

 

「おいおい、お前なぁ……。なんで葵の家に来たのか分かってるのか?」

 

(あれ、遊びに来たのがメインじゃなかったのか!?これから湊もそうなってくのだとばかり思ってたんだが…違ったのか。こいつが真面目気味だからか?!)

 

驚きの顔をしている悠希に、呆れたように“はぁ……”とため息をつく湊。

案外仲がいいのかもしれない、なんて関係ないことを考える僕はきっと悪くない。

 

あ、そうだ。

「ならさ、前とは違う遊園地とかどうかな」

 

「おっ、それいいね。どこ?」

 

そう聞かれた僕は湊達に調べながら教えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば気がついたら一ノ瀬湊って人と名を呼び捨てにしていた。友人の友人はまた友人って?

どんな理屈だよ。まあ、僕は気にしてないし、相手も流してる感じだから別にいいか。

 

 

 

あれから数週間、椿ともしっかり遊んだりしつつ、ラ○ンでその初めて行く遊園地?の場所を調べた僕達は湊の運転でそこへ向かっている。高速道路も使って、ね。

 

あ、そうだ。まだ向かってる最中だし、少し道が混んでるからあえて僕のこと話しておくかな。

さらっと冗談気味に言えば気づかないでしょ。

 

 

「ねぇ、ちょうど渋滞気味だからいうんだけどさ。僕って不老不死なんだよね」

 

(葵もなかなか変な冗談いうよね。春になる前に2、3日前後も風邪で寝てたっていうのにさ。私が主に手伝ったの忘れてないよね?)

 

いうなり苦笑された。いやいや、そこは笑うって場面でいいんだよ?冗談気味に言った意味がなくなるんだけど!?

 

「葵にしては変わった冗談だよな。湊の幼なじみから春分の前に風邪を引いたって聞いたばかりだぞ」

 

「そうそう、そうなんだよ。葵ったら、なにをどうしたのか風邪を引いてさー。病院に行くから症状が和らぐまでしっかり看病したのにねー」

 

「あぁ…うん、そだね…」と返したものの、我ながらどうしたものかなぁと。

そうか。冗談として笑われるんでなく、苦笑されてるのはほぼ最近に風邪を引いたからか。

まったく、泣けるよ。

 

「そこまで聞くと不老不死なのか、ってレベルの話に感じるが…なにか確認する手立てとかないのか?」

 

「えっ?硫酸プールとかじゃないのか?」

 

「……りゅうさん……」

 

(ちょうど私の後ろにいる葵の顔をバックミラーで見たら呆然とした感じの表情になってる。確かに硫酸とか結構痛そうだもんね…。それ以前に)

 

「それってさ、悠希。プールも溶けちゃいそうだけど…」

 

「いや、椿のつっこむとこはそこじゃないと思うんだが?」

 

「湊もそこじゃない。硫酸プールとかどんな冗談なのかなって。さっきのは冗談に聞こえるようにした確信犯の僕が原因だけどさ」

 

「おふざけなら、そこまでするに決まってるだろ?なんなら崖の上からでも……」

 

「あっ、遠慮いたします」

 

思わず半ば棒読みでそう答えると、他の皆が笑いだした。

いうタイミングでも、悪かったのかな……としか思えない。いや、風邪引いた僕も僕なもんだから余計だね。

 

「……ってあれ?高速道路降りるの?」

 

「うん、そうだよ。んだから結構遠くまできたけどね」

 

そう聞いてるとだいぶ長い間話していたような気もする。…短くも感じる?

いや、たぶん途中からあんな冗談を混ぜた自分のせいだろうけど。やってしまったのなら仕方ないけどねっ。……ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとまず、ワンデーパスを椿を除いた全員で買って中へ入った。想像よりも広い、かもしれない?

いや、無意識にとはいえディ○ニーラ○ドと比べちゃダメだね。

 

「おぉー……ここがよ○う○ランド?」

 

「そうみたいだね。ちょっと僕も年甲斐なくワクワクしてきたよ」

 

「いや、お前いくつだよ…」

 

「せ、精神年齢はやや高めみたいだもんね?仕方ないんじゃないかな」

 

椿が驚き混じりに言ったことに対し、悠希に呆れられた。湊は…うん、その、フォローありがとね。僕自身の見た目の年齢若干忘れてたし。知り合って間もないのに凄いとか、思ってないよ?……はい、思いました。

 

(あぁ、確かそんなこと湊に教えてたっけか?やけに大人びてる時があるとかどうとかって。忘れかけてたわ)

 

「とりあえず、こっちいこ?」

 

その椿の一言に僕以外の誰かが「そうだね、主役もそういうことだし行こうか」ということになって遊んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後。……遊び疲れた。

ほんと何時間遊んだんだろうね。もう分からない。

悠希もさすがに洗濯機の音ゲーか二対二のMSなどの対戦ゲームしか遊べないとか言ってきた。

 

余裕あるじゃない。

 

「んで、高速に乗って戻ってきたわけだけどさ…………葵と悠希はそんなにお酒飲んでるの?確かに夕食で椿を祝おうって話にはなってたけどさ」

 

「え?祝うんなら景気よく、だろ?」

 

「それにどんよりしてるよりはマシだもんねー」

 

(いや、そうなんだけど。そんな2人と1人に祝われて嬉しいって思ったけど。お酒類飲みすぎな気がする。二日酔いするから椿も気をつけるんだよ、と言ったわりに……。これって私に言えないんじゃないの?)

 

「……倒れないでよ?あと二日酔いも気をつけてね。ったく、さっきまで一気飲みはダメだの飲みすぎはいけないだの言ってたのにしょうがない人達だね」

 

「逆にこの2人を反面教師としてさ、お酒はほどほどにするっていうのを覚えたら?…あ、俺はまだお前達……いや、君達を送るのが残ってるから飲まないけど」

 

「ほんとそーゆーとこは律儀だよな。助かるぜ。あ、これ俺の車代な」

 

笑いながら、といっても十分他の人達で賑わっている飲食店で悠希が対面に座る湊に手渡した。あ、僕も渡そ。

椿の分もついでに。

 

「あ、僕もはい。椿の分もあるから」

 

「えっ。いや、自分でだ「今日が誕生日の人は黙って払われてればいいんだよ」」

 

(うん、なるほど。今更というか改めて悠希の知り合いについて考えるとほんと色んな人間がいるなぁ…と思えるよ)

 

「というか葵…お前さ、いつもより飲んでね?平気なの?いや、飲み足りないならまだいくけど」

 

「んー、やめておくよ。これ以上飲んでどっかの担当医に小言を言われたらたまんないからさ」

 

「あぁ…そうか、お前そろそろ健康診断を病院に予約しにいくんだもんな」

 

2年あまり付き合ってる悠希だけは納得したように頷いているけど。

と、おや?湊も納得したように見えるような。

 

「悠希と違ってそんなに飲んでないってことかい?」

 

「俺と違ってってどーゆーことだよ!?」

 

「アハハハッ、確かに湊からよく友人の悠希が酒飲み過ぎてそろそろ肝臓が危なそうだって言ってたもんね」

 

……あー。むしろドクターストップ、もといドクターオーダーされそうだね?

それより本来はドクターオーダーっていうとかよく分からないね。英語は難しいわ。

 

 

 

皆、お腹がだいぶ膨れたということで今回はお開きになった。

最後、椿は優先的に帰してもらい、悠希は僕の家でお泊まりすることになった。というか泊まる宣言された。

確かに椿達よりは家が近いとはいえ…やれやれ、仕方ないな。

 

「まっ、単純に飲み足りないだけなんだけどな。悠希とその幼なじみの椿には内緒な?」

 

それ、家にあがってから言うことか。

あと少し千鳥足気味だよね。大丈夫?お酒だいぶ飲んでたし、仕方ないのかもしれないけどさ。それに僕よりも飲んでたし。

 

「……それはいいけどさ、それ以上飲んでまた病院行きになっても知らないよ?前回もそれで夜中に救急車呼んだんだからね」

 

「あー、あの件は悪かったな。でもうまいのが悪い」

 

(一気飲みして落ち着いてられんのは自分家(じぶんち)か葵の家だけだからな)

 

それを聞いてため息ついてたらもう台所に行ってる。ほんと、僕の家に自分が飲む酒を持ってくるなんて悠希の家じゃないんだからさ。

……あー。とりあえず、明日は二日酔いかなぁ。

 

そんな重い気持ちで、僕は楽しそうにリビングでまた酒を飲み始める悠希の近くへと向かった。



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4話 不老不死は不老不死だった

少し短めです。


初夏の頃、梅雨にもなりそうな時に僕は……いや、僕を含め数人かで病院に来ている。

会社でもう健康診断を受けた人もいるけど、その健康診断に含まれない健康診断も込みでやりに来ているらしい。

 

生真面目な。そう思ってたけど、単純に僕をからかえるから、だそうだ。

訳が分からない。

 

「そんな複雑そうな顔をしない。だからからかわれるんじゃないの?」

 

「……他の友人がからかってくるのは僕が健康診断に来てるからじゃ、ないんだよなぁ」

 

「へっ?」なんて言って困惑した表情をする女友達。この人はからかってこない少数派の人だから普通にね。

あれ、というか前に教えてたような気がするけど。忘れたのかな。

 

「ほら、僕の担当医。その人が健康診断の時も担当になってるんだけど、僕のことをたまに不老不死って呼んじゃうんだよ」

 

不老不死ってのは間違ってはないけど。

 

(あー、そんな感じの話を聞いたことあるような。忘れてたんだっけ。うーん…いっか)

 

「健康診断に来てるのに不老不死って呼ぶなんて変わった担当医だよね。中二病ってやつなのかなー…」

 

彼はさすがに違う。中二病(そっち)じゃない。

とは言えないんだよね。まさか不老不死が、健康診断しに来てるなんて普通は思わないし。

しかも健康診断をする理由が病気の初期発見だからもう。“普通の人間かっ”とかって言われそうだからまだ担当医にも黙って……あ、バレてそう。

 

「……とりあえず、僕はそもそも呼ばれるのがだいぶあとだから一狩りする。たぶん反応にぶくなるかも」

 

「へぇ、そうなんだ。それにしてもゲーム機は持ってないようだけど?」

 

「スマフォでするから」

 

“へぇー…”なんて納得したような声の後

「でも、呼ばれるのが遅いからって一狩りしてて行けないとかないよね?」

 

「…そうだね、それはそれで面倒だから別のゲームにしておくよ」

 

(あ、もう時間決まってるんだね。なら、少し困り顔で笑うのも納得。……それにしてもあおいちゃんも律儀だよねぇ。こうやって毎年健康診断に来てるみたいだし)

 

「んじゃ、また今度ー」

 

「ん。また今度ね」

 

なんか行く前に微笑ましいものを見るような目を向けてきたな。こういう時、心を読める力があったら便利そうなのになー。

あーぁ、なんて考えてたら僕も呼ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呼ばれたと言っても、やることは普通の健康診断と同じなんだけどね。

違うことなんてむしろしないし。たまーにアルコール値?だったかな。それが怪しい数値になるだけで、それ以外は健康そのものだし。

 

「んで、不老不死の篠崎葵さん?最近なんともないよな?」

 

僕の時だけ敬語やめるのはどうしてなんだか。

というか看護師も同伴なのね。他の人だと看護師だけ、とからしいのに。というか3人きり?といっても不老不死とハッキリいうのは危ないんじゃないかと。なにが危ないとかよく分からないけどね!

 

「うん、まあね」

 

「あ、そうだ。水瀬(みずせ)紫苑(しおん)、あれ聞いといて」

 

「…なら天神さんが席を外してから聞きますよ。まがりなりにも殿方っていうのを忘れないでいただきたいですね」

 

あぁ、そういうのを受けますかって話かな。確かに陸さんは男だし、そういった手の話はしづらいわな。

 

……目を、キラキラさせていなければ余計に。

 

「忘れちゃいないさ。でもね、やっぱり医師として興味がわくというかなんというかーーー「はい、それ以上はダメですよー、天神せんせ?」」

 

(俺だって分かってるさ。そういうことぐらい。言い訳にすらならないとはいえ、やっぱり不老不死が病気になるっていうのに興味がつきないんだよな)

 

天神陸って人が奥に渋々行ってから、その質問に対して頷いておくと看護師の水瀬紫苑って人が“とりあえずあとでしっかり(・・・・)伝えておきますので、採血の方へどうぞ。あ、気分悪くしたことありませんか?”とか聞いてきたのでとりあえず“いいえ”とだけ言った。

 

 

……その人、色々と大変そうだなぁ、と他人事ながら思った。

そのあとは何事もなく進み、健康診断の診断待ちとなった。

ただ帰り道、ラ○ンを見たら遊ばないかって感じの誘いが来ていたから暇だし行くことにした。

 

とりあえず家を知ってるらしいから一狩りしてよう。

来たらチャイム鳴らしてね、とか僕も行くよとだけ返してひとまず帰ることにした。いつまでも空腹でかつゲームしないってのは気持ち嫌だ。いや、しないといけないわけじゃないからいいんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モ○スターハ○ター:ワー○ドのア○スボー○で一狩りすみそうな時にチャイムが鳴った。タイミング悪い。今雷顎竜にドクロマーク出たばっかりなのに。

捕獲しよ。

 

……あれ?友人ならまたチャイム鳴らすなりなんなりでそれらしいことしてくるのに。

まさか最近噂の空き巣?テレビとかでやっていたような気がするけど。確か我が家は防犯ガラスだし、窓も二重ロックだからしてある場所が全部だしと……まあ、遊んでやるにはちょうどいいかな?

 

 

僕はこっそりと自室を出ると玄関側に出て、鍵を二つかけた上にチェーンロックもした。開けるのに苦労するだろうなぁ。反応が楽しみだ。

ま、せいぜい不老不死の住む家に不運にも侵入してしまったと後悔するがいいんだ。

 

 

 

 

 

そこまでしてから相手を探したら、2階にいた。

わざと音を立てて近づいたので、驚かれた。

 

なっ!住民いるじゃねーか!

 

「いない時間の方が多かったから分かるわけねーだろ!?」

 

いや、そんなに家あけてないんだけど。確認不足すぎない?それか他の家と間違えたか。不用心な。

あ、相手は男2人だからそうでもない?

 

(な、なんだこいつ。急にニヤつきやがって。まあいい。どうにか縛っておくか)

 

「なあ、こいつどうする?」

 

「どうするもこうもーーー」

 

ふふっアハハアッハッハッハッハッアーッハッハッハッ!

 

うん、普通は突然笑いだしたら“なんだこいつ”にもなるよね。でも知ったこっちゃない。

なんとしてでも我が家から穏便に出てもらおう。

 

 

 

 

その後、何回か殺されかけたり、思わず殺されたりしたけど、狂ったかのように笑い続けていたら向こうの方から逃げ出した。

おまけに「うわぁあぁー!!」なんて情けない声を出しながら。

 

あーぁ、片割れはおもらししてたのに。それのことを最後の最後に教えようとしたのに、今の叫び声で逃げるんだよ。酷くない?

 

 

それでさらに後日、とある男2人組が自首してきたと言うニュースが朝流れた。むしろ拘留所にいたいだとかどうとか。

うーん、僕がしたことといえば、出来る限り素人なりに相手を逃げ出しにくくしながら笑い続けるってだけなんだけどな。そんなに酷くしたっけか。

 

ちなみにそのあと、椿達友人から“あの時の血はどうしたの!?大丈夫!?”とか“空き巣に入られてたとか平気だったの!?”とかと質問攻めにあった。

うん、平気平気。楽しくて悪ノリしただけだから問題ない。



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5話 不老不死と仲の良い人達

少し文章が短めです。


初夏に入りそうな頃、健康診断の結果が来た。うん、問題なし。

でもなんか年齢のところが30にされてる……。僕はまだ25歳なのに、四捨五入されてる。

なにをどうしたらこーなるのやら。というか酷くないか?泣くぞ?泣いちゃうぞ?

 

あ、玉ねぎないと無理か。ってそうじゃなくて。

どうも天神陸って人は僕のことをからかいたいらしい。そんなに不老不死が珍しいのかな?……あ、いや珍しいか。

 

 

 

 

まあ、今日は休みってのもあって衣替えとかを家でしていた。

もう全部をやったけど、たぶん問題ないはず。寒くならなければ、ね!

 

 

それで、外に出たら玄関先に悠希と男友達がいた。

まあ、男友達の外見はどこにでもいるような感じで、4〜5歳の歳の違いがあれど、男の平均値は少し越してるんじゃなかったかな。

 

「どうしたの?君達。僕の家の近くになんて来て」

 

「ガ○プラ作ろうぜって誘おうと思ってな。な、悠希」

 

大きく悠希が頷いた。

それにしては悠希だけちょっと手さげ袋が大きくない?

 

「そうそう。あとついでに作ろうぜってガン○ラを一つ持ってきた」

 

(単純に作らせたくて持ってきたんだけどな。葵は異性の中で比較的そういう手の話の分かる数少ない方だからな)

 

なるほど、作らせるつもりだと。

まだ僕には組み立てると園児か小学生くらいのサイズのある赤いモビ○スー○を作ってる最中だっていうのにさ。

塗装も大変とか泣くぞ。

 

「…今作ってるのが終わったら作ることにするよ」

 

(あー、今作ってるのって前回持っていったらしい“ネ○・ジ○ング”だったもんな。そりゃ苦労もしそうだ)

 

もしかして、悠希は忘れてたり…はしないよね?僕に持ってきたのは悠希だし、男友達は誘われて持ってきてるっぽいし。

まあ、塗装とかその他道具を僕が持ってるからってのもありそう。良い値段するんだよ?あれ。

 

「ん、そうか。それもそうだな。ちなみに今回のは俺の好みだ」

 

「なら自分で作った方がいいと思うけど……」

 

「いやぁ、スト○イクフリー○ムとユ○コーンとで悩んでな。んで両方買ったはいいが、1人じゃ時間が足りない。ならば一番作り方の近いお前が適任ってね」

 

これはひどい。

いやまぁ、ネ○・ジ○ングについては悠希も手伝ってくれてるからいいんだけど。僕にとって時間は有限だし。……無限だろ、と思った人は回れ右。

 

って、誰に言ってるんだろうか。僕は。

 

「共同作業ってか。俺だって最近は上達したろー?」

 

「「そりゃ最近()の家に来てるからでしょ」」

 

「君らさ、ちょっと辛辣すぎない?そんな最近ってほどでもないと思うよ?…そりゃあ、確かに俺は清掃業だし、なかなか休みが取れないしと遅れはとってるけどさぁ…」

 

「休憩時間もあってないようなものだし…」とまで呟き始めた。

少し意地悪しすぎたかな。まあ、僕の方は“気分転換”を兼ねてるし、あまり度が過ぎないようにしないと相手に悪いからね。

 

 

というか僕だって納期とか色々と大変なんだよ?あまり間違いがないようにしないとだし。

 

「趣味のことをする時ぐらいはそういう話なしでしょ?」

 

「そういうお前はたまに口から出てるけどな。(さが)なのか?あれ。いや、お前…いや、葵が自営業みたいなことをしてるのは前にゲーム中教えてもらってたが、そうなるとお前達ってよくBFのあれについてこれたよな」

 

(BF?……あぁ、あれか。あのありえないほどの練習か。篠崎さんは普通に最後まで出来てて凄かった記憶しかもうないな)

 

「僕は特殊な訓練を受けてるからってテンプレを使うとして…君はよく平気だったね」

 

「平気もなにもきつかったけどな!最初辺りから最後しかもう覚えてないよ!?ほんと、あれ以来徹夜はしないと心に決めてたほどだからな」

 

あぁ、それで“有給休暇がなかったら大変だった”って話になるのかな?

……うん、やっぱり僕の感覚が他の人と比べてややおかしくなってるね。感情を押さえ込みすぎてるわけじゃないはずだけど…不老不死だから、かな。

それこそ身体的な病気にならなかったら、気づかぬうちに感覚が麻痺しそうな気もする。

 

「そりゃ普通は大変だからな。俺だってやれたのは学生だからだな。…でもなんだ。巻き込んだのは悪かったな」

 

「全くだよ」と呆れたように言う男友達。ところでそろそろ家に入らないか聞くかな。すっかり話に夢中になってて忘れてたけど。

 

 

「あ、あー…今さらだけど、君達。ガン○ラ作るんならあがってくよね?」

 

すんなり頷いて「おう、今日は休みだからたまには作りたくなってな」と言って玄関に上がる短い階段をあがってきた。

 

「いや、俺は置きに来た。ちゃんとした休みの時にでも作りに来るよ」

 

「あ、そうなの。なら預かっておくね。……ちなみに今日はどうしてきたの?」

 

「そりゃあ…君達と少し話がしたくてね。独り身であんまり遊びに来る人が少ないと寂しくもなるんだぞ?っと、そろそろ帰るな。じゃあ」

 

「うん、またね」と言って別れたあと、僕も自宅へ入った。

玄関から入って前にある扉をあけると悠希がテレビをつけて中間に置いてあるテーブルの方にいた。

いやね?リビングに入ればテーブル、椅子があるのが見えるとはいえ、慣れすぎだと思うんだ。

まあ、悠希自身の塗装分も置いてってくれてるから助かる。マスクとか含めてね。

 

「おう、あいつ帰ったのか」

 

「仕方ないね。たまにはまともに休みたいんでしょ?……んで、今日は時間になったら帰るの?」

 

そう聞くとすぐに首を横に振られた。

え、あの手さげの中にお泊まり用も入ってたの?もしかして、その少し大きめな肩掛けかばんもそうだったりするのかな。泊まる気満々じゃない。

 

「泊まるつもりだ。んなもんで夕食分のある程度は冷蔵庫に入れさせてもらったぞ」

 

「はいはいどーも。とりあえずお昼と明日の朝食用ぐらいは買ってくるよ」

 

「へーい、んじゃ俺は軽く組みたてしてるわ。それかスマフォで遊ぶ」

 

「そうか。ま、ならいつもの通り僕の部屋には入らないでね。2階にある書庫兼寝室とか風呂にトイレならいいから。あと正面に見える部屋も平気だからね」

 

(ふむ、やっぱりダメなのか。……手をヒラヒラさせながら出てったし、時間がかかりそうなら少しだけ、見てもいいかね。一緒に読みたい本があるとか言ってたのに忘れるあいつも悪い。ってなわけで)

 

 

とりあえず、近くのスーパーでいいかな?

そう考えながら家を出た僕だった。



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6話 橘悠希は人の日記を見て

葵が出ていった後、俺はこっそりリビングからあいつの部屋に入った。和室なだけあって畳の匂いが良いね。

 

 

っとあまりリラックスできないんだよな。

んで?右奥に座椅子にパソコンがあって、その手前側に遊ぶ用か。左側の奥が空いててその下段、中段にPS3とPS4を置いてるんだな。……外付けHDDとかマスクとかを空きスペースに置いてるのはすき間を埋めてるのか?

別になんでもいいが。

 

 

左奥は細めのタンスが2つあるだけか。んで、本棚が…あれ?左手前と右手前にあるんだな。左手前の方が大きい本棚だけど、ほとんどライトノベルとかコミックだな。

 

「俺が勧めた本もあるのか。律儀に分かりやすく置いてくれてるとか真面目なやつだな」

 

 

それで、右手前のはスライドする部分もないし、ライトノベルとかっぽくないが…………少し分厚いが、日記か?しかも、何冊はあるのか。

ふむ、あっちから“今度2人で読もう”と約束した本を探すよりはこっち読んだ方が早そうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれどれ、と読んでみた日記だったけど、最初は普通の日記だな。

書き方も片ページってとこか。ま、別にどうしたって話なんだけどな?人それぞれだし。

 

……ん?ここだけ乱雑だな

 

今まで、ひらがなと習いたての少し歪な漢字が続いた日記の中でやけに乱れた文がある。

 

 

 

“○○○○年△月□□日(晴れ)

きょう、お父さんとお母さんとわたしと友だちとで、こうえんにいきました。

お父さんとお母さんの言うとおりに水分とってたのにねっちゅーしょー?っていうのになった。死んだみたいなかんじとか、ものすごくあついようなかんじとかしたって言ったのに友だちのおやといしの人しかまともにきいてくれなかった。ひどい。

それにしてもふじみ?とかふろうふしって……かごでもなんでもないと思う。

お父さんとお母さんはにじげんっていうよく分からないのにむちゅう?になりすぎ。この日ほど“おちついてほしい”っておもった日はないと思う”

 

 

 

あー、うん。なるほど。両親に熱中症の知識は無かったけど、二次元への知識とか子供への愛情はあったと。

何だこの矛盾どころかさすがに他の子供の親に聞けよ、と考えてしまいそうな案件だな。

んで、この後からふざけたりするようになったんだな。確かにふざけるのは楽しいもんな。

 

というか、それで気分転換になるのか。凄いな。……あ、ところどころ風邪ひいたとか書いてある。…ん?ここだけおかしいな

 

 

 

“○○○○年△月□□日(晴れ)

不老不死になってから何年たったか。

高校卒業をしたとはいえ、成長が(いちじる)しく遅くなった気がする。いや、明確に感じたのが卒業した日だったっけ。

それでも誕生年で言えば今年の夏で23歳になるのにな。……まだ見た目がまだ18か19歳みたいに見えるのか。いや、見えてるから違和感なく卒業できたのかもしれないけど。

逆に入学もしかりだろうから、なんとも言えないね。

 

まさかと思い、一人暮らしにさせてもらってから傷をつけてみようと実験した。

結果で言えば背中にもう二度と消えぬ傷跡になった。医師からそう告げられたので、今は消すのに努力している”

 

 

 

 

これで二年前かよ。小学1年生からずっと書いてるとか生真面目だな、おい。

 

……お?これ、最近の方だな

 

 

ああ呟いたはいいが、そろそろ戻ってきそうな気がする。まあ、見たら悪いってのを分かった上で読んでるんだ。

何を今更。ってことで読む!

“○○○○年△月□□日

最近健康診断を受けた。春だからか花粉症の人がちらほらいた。あと少しとはいえ、毎年辛そうだね。

そういえばショックなことが一つあった。

二年前に作ってしまった自業自得の背中にある火傷の跡が消せなかった。

 

あの時実験と称してやらなければよかった。ほんと、なにがいけなかったんだろう…。わけがわからないよ”

 

 

 

消えなかったのかよ!

 

そうだよ、消えなかったんだよ、悪かったね!

 

 

おおっとー……?これはー?

まあ、後ろにいるのは確定だから、そのまま手にしてた少し分厚い日記を戻してー

「おう、おかえり。昼食を先に作るのか?なんなら微妙に手伝うぞ」

 

「うん、その微妙な手伝いに関してツッコミたいけど、そうじゃないよね?」

 

 

(なにせ入ったらダメって行った場所にいるし。…もしかして僕が見つけた面白い本を教えるって言う約束を忘れかけてたのが悪いとか、ないよね?)

 

うん?なんか複雑そうな顔してるけど、ようやく思い出したか?

俺だって知りたかったんだぞ、別の人のお気に入り作品。価値観が違うのは普通だしな。いや、好奇心の方が大きかっただけなんだけどな。

黙ってればバレないべ。たぶん。

 

 

あ、なんかため息つかれた。

 

(やれやれ。ともかく日記を全部読んだと見ていいだろうね。あの時はタイミング的に僕の不老不死は冗談って受け入れられたけど、どうしたものかな)

 

「お、そうだ。葵、ちょうどいいからガン○ラ作る前にお互いのオススメな小説教えあおうぜ。それか決闘(デュエル)しようぜ」

 

「……はい?いや、ここに来たのはプラモを作るためじゃ…」

 

目を少し大きくしてる辺り、驚いてるのか。全く、不老不死だとかなんとかが本当だとしても病気になるとかある意味バグってね?

もう老いないと死なない以外に不老不死要素ないじゃないかよ。ひでーな、そよバグ。直せないんだとしたらたちも悪いな。

 

「ん?あぁ、そうだったな。んでも約束忘れるお前もお前だからな?」

 

「アッハイ」と困ったように笑いながら葵が言った。

いや、人のを勝手に読んだ俺も悪いんだけどな。

 

 

「……まあ、なんだ。葵。お前の日記を勝手に読んで悪かったな」

 

「はいはい、それならいつも通りに接してくれればいいから。というか今回素組みで済ませないよね?」

 

(いつも真面目にやると面倒とか言いつつ、僕の家に本格的な塗装道具を置いていくんだよね。一人暮らしじゃなかったら置く場所少ないんだからね!?……いや、そもそもツッコミどこはそこじゃないような……)

 

 

軽く受け入れられたが、まあいいか。

というか接し方を変えようにも老いないことに目をつぶれば普通の人と一緒だろと。あと変にふざけなければ死なんだろ?と。

お前、瓶ビールすら少なくて一本、多くても二本か三本しかあけないのによく言うわと。……いや、俺は黒霧島とかだから訳が違うか。

というか不老不死ってマジな話なのか?にわかにやっぱり信じがたい。

 

「不老不死を相手にしていつも通りに接するとか二次元でよくいる主人公じゃないんだからふつーは出来ないだろ。まあ、お前の場合、どう見ても不老不死っぽくないから平気だが。あ、ネ○・ジオ○グとかあるし、分かんね。とりあえず作ろうぜ」

 

(うん、普通はこうか。あの両親みたいに“二次元の力が使える”とか“不死鳥だかフェネクスの加護”とか言わないんだね。というか不死鳥とフェネクスって一緒だと思うんだ。むしろ彼みたいに……いや、彼はちょっと流しすぎじゃない?信じられにくいのは分かってたけど)

 

 

ん、なんか考えるような顔しながら部屋から出ていこうとしてるな。せめて一言ぐらい伝えておくかな。

 

「そうそう、葵。お前の不老不死が本当かどうかはともかく、あんな実験するとかどうかと思うぞ」

 

「うん、そうだね。後悔先にたたずとか言う通り、すごく後悔してる。なんで消えないのかは分からないけど、とにかくヤケドさせなきゃよかったと思ってる。もうなにをしても手遅れだけどね」

 

そう言いつつけっこう渋い顔をした彼女は困ったような笑みを浮かべたと思ったら「と、とにかく組み立てようよ、ガ○プラ。ね?」と言って部屋を出ていった。さすがに分かってるのか。信じられにくいことぐらい。

 

 

 

でも一応今は信じておくか。あいつ…というか彼女はそんなに嘘つかないからな。なら、そういうことで嘘はつかんだろ。

ま、嘘だったら嘘で今後そのネタで楽しませてもらうが。

 

本当に不老不死かは後々分かるべ。まだ俺らも若いし。それにまだいくらでも時間はあるしな。まだ頭の片隅に残しておいた方がよさそうだ。

いやぁ、今は組み立てが楽しみだ。ヒャッホイ。



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7話 不老不死の日常

今回はかなり短いです。


梅雨が過ぎて夏が来た。すごく、暑い。ほんと、こういう時期は苦手すぎて半分死んでたい。

 

あ、やっぱり普通の人から外れまくるからなしで。あとそれほぼ無理だし。どうやって半分死んでるつもりなんだと。

考えなしもほどほどにしよう。うん。

 

 

 

〜〜♪〜〜♪

 

…ん、電話?…椿からか

 

出ると、明るく「おー、久しぶりー」と挨拶された。

買い物してるとたまに会うんだから久しぶりもなにもないと思うんだけどね。

 

「この前、買い物してる時に会ってるんだから久しぶりじゃないと思うよ。それで、どうかしたの?」

 

『2人きりの女子会でもど〜う?って思ってさ。だから水族館とか、テーマパークとかに行かない?今からでも、明日にでも』

 

「ん、久しぶりにいいかもね」

 

こういうのはのっておいた方が色々とメリット多いしね。自分は幼なじみと仲良くできて、ネガティブ思考とかを振り払える。

んで、向こうも気の許せる相手と行くなら楽しいんじゃないか、と勝手に思ってる。もちろん、心なんて読めないからねぇ!

さとり妖怪とか異能のさとりとか覚りみたいなことはできないしね!

 

まっ、そもそも相手とはライ○通話で話してるからあったとしても聞こえないだろうね。

 

 

『でしょでしょ?お互い気が許せるし、休みに羽広げるにはいいと思うからこそ行こう!ちなみにどこがいい?私はハ○ステ○ボスかな!』

 

「いつもそれ言ってない……?んー、なら僕は夢の国かな」

 

『あ、そこならシーの方行きたい!いや、女子2人ならランドも捨て難いよね…』

 

 

その後、『どっちもいいし、ハ○ステン○スだっていいだろうし…ううーん…』とか呟き始めた。

そ、そんなに悩まなくても…。ならいっその事2日連続で行けばいいんじゃないかな。

 

「なら夢の国へ2日行って、また今度にハウ○テン○スへ行かない?君がそれで大丈夫ならね」

 

『あ、それの方が早くない!?うんうん、そうしよう!私、今月の□日と□□日に休みとっておくから葵も宜しくね!』

 

 

こういう時はけっこう生き生きしてるよなぁ…。

やっぱり、こういう息抜きがあるからこそ、なのかな?

 

 

「ん、分かったよ。僕もなるべく仕事が貯まらないように、入りにくいようにしておくね」

 

『おお!じゃあ、お願いね。私もなるべくそうするように頑張らないとなー。じゃ、また近くになったら電話するね!またね』

 

「はいはい、分かったよ。んじゃ、またね」

 

 

結構楽しみにしてるんだね。僕もそうだから否定できないけど。ほら、不老不死なこと以外普通の?人間だし。

……暑さ対策もしないとなぁ。

 

じゃないと僕のことを“外見を気にしてる老いにくい人”と勘違いしてそうな椿に心配されるし。

たぶん。きっと。恐らく。そうなのかもしれないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数週間後。夏物、冬物を整理してから、新しい服を買いに出かけている僕。

うん、着ないものを捨てるとさ。新しいの気になったり、買いたくなったりするよね。あ、ブランド物じゃないよ?

少し靴とかはそういうのが混じったりするけど、基本的に服は一般的な値段のものを買う。

 

シャツやズボン、ワンピースなどを買うのに高いのはいらないからね。

 

 

 

……って誰に説明してるんだか

 

っとと。思わず独り言を言っちゃった。

小声だから聞かれてないよね?うん、たぶん平気。

というわけで、買い物買い物っと。

 

 

 

 

 

 

 

そうこうして数十分、衣類を買った僕は喫茶店に入ったなう。

使い方は間違ってないというか誰にも言ってないんだからセーフセーフ。

なんだか虚しい気もするけど。

 

買ったアイスコーヒーを苦い思いしながら一飲みして、僕は今度一緒に遊びに行く相手(つばき)のことを考えていた。

それにしても外は暑い。半袖、ハーフパンツ、半袖ワンピースのどれを着ていこうか悩むなぁ。うーん……。

まあ、その日の前に考えればいいか。今は周りの人と同じ時を過ごせばいいし。

 

……やっぱりブラックは早かったかな」と最後に僕は呟いた。



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8話 不老不死と四ノ宮椿。あと少しの日常

今回もかなり短いです。


夏もある程度すぎた日。僕は最近買ったばかりの半袖ワンピースを着て、駅の付近で待っている。

犬の像が可愛い。写真撮っておこう。1枚だけ。

 

パシャリ

 

うん、他の人も写ったけど、いいか。

それよりも少しオシャレしすぎたような。カジュアル、の加減難しくない…?

 

 

「あー、お待たせー!って葵もそんな可愛く着こなせるんだ。あおいちゃんって呼んでも違和感なさそう…」

 

 

(違和感ないどころか逆にようやくオシャレしたって感じ。下手すればシンプルすぎてもったいないってほどだし。……ほんと、どう二次元を見ればそんなにも自分の容姿に卑屈になれるんだか)

 

 

「まぁね。今回はテーマパークに行くし、オシャレしておこうかと思って」

 

忘れないうちにキャリーケース持っておこう。着替えとか入れたし。

確か以前1泊2日の時に持って行ったら悠希から“他の知人女性より軽いんだな、お前。ま、おかげで他の友人2人とも一緒でも困んないわ”とかって言われたっけ。

 

「なるほど。あ、ちゃんと着替え持ってきたんだ?そりゃあ1泊2日だし、持ってくるのは当たり前だけどさ」

 

 

うん。あの後遅れてラ○ンで“あ、夢の国は1泊2日するよ!”とか来てなかったら持ってきてなかっただろうね。

あとは椿が3日連続になるよう、休みを取ってなければ余計に。

 

「んじゃ、行こー!」

 

「はいはい……」

 

そんなに慌てなくてもゆっくり楽しめるのにね。

そう考えれるのは僕だけなのかな。

とりあえず、ついて行こう。

 

 

 

 

電車などでついた先はまずホテルだった。

というかチェックイン目的なんだ。すぐに出てきたし。

 

「僕の荷物、重くなかった?」

 

 

(いや、少ししか余計なものを入れないのに重いもなにもないからなぁ。葵ってば、もうちょっと羽目を外してもいいだろうに。あ、呼び方を変えてみるのもいいのかな?あと気持ち褒めてみたり)

 

「葵ちゃんのは軽いからね。私のより入ってないって感じだし」

 

そんな得意げな笑みを浮かべながら言われてもなぁ……ってあれ?呼び方違くない?

僕的には気にならないけど、言ってあげた方がいいのかな?さっぱり分からないね。

 

「そ、そっか。ならいいけど」

 

「そー、そー。とりあえず行こ?置くもん置いたし、早く行きたいなーってことでレッツゴー!」

 

ちょっ!手を引っ張らないで!?

少し痛いよ!?

 

早く早くぅー!

 

やれやれ、と思いながら僕は椿と一緒に入口の方へ向かった。

にしてもほんと、椿もなかなかいいよね。僕よりも可愛いから気をつけてあげないとなぁ。……なんてぼんやり考えた。

夢の国でそんなのないの知ってて考えてるんだけどね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後、僕は自宅の布団にダイブした。痛い。

畳だったのを忘れてた。

 

なにせ、初日から朝一で夢の国へ向かったし。色んなところを周りながら、乗ったり食べたり。

二日目も似たりよったりと忙しかったけど、気分転換にもなるし、楽しいしと全然気にしてないんだよね。

 

「交友なしで不老不死人生とか無理でしょ……いや、病気するから怪しいけど、“老いない”と“死なない”の二拍子だしなぁ…」

 

鬱になりかねないよなぁ……1人だと。

先に行かれるからそれもだろって?

 

 

 

 

「ペットでも飼うかな…大変になりそうだけど、独り身よりはマシそう。カメとか?」

 

“いや、あれはあれで面倒くさそうだしなぁ”とかと呟きながら僕は三日ぶりに家の風呂に入り、暖まった。

やっぱり家の風呂はいいね。

 

「そうだ、久しぶりに神社に寄るのも良さそうだね。仕事をやるのも忘れないようにしつつ…だけど、期限は今回長いから…」

 

ま、父さんは63と母さんは60で平気だとは思うけど、最近会ってなかったないし、たまにはね。

それにしても一昨日と昨日は大変だった。もうなにを乗ったのか覚えられないほどに。……覚える気がないともいうけどね。

 

 

「あ、そうだ。お土産くらい持っていこうかな」なんて弾んだような声で呟きながら。



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9話 不老不死の両親への挨拶+‪α

少し短めの文章となっております。


……暑さで目が覚めた午前5時。気持ち明るくなってきてるし、そのまま起きるとしようかな。

 

「…おはよう。一人暮らしだから誰にも返事されないけど」

 

 

ペットでも飼うべきなのかな、と考えつつ居間の方へ向かった。

軽くパンをトースターで焼き、バターを塗ってから食べる。食べた枚数なんて数えない。

 

普通聞かないし、聞かれない。どこの吸血鬼だよと。あと巫女服と吸血鬼のやりとりじゃあないんだからさ。

……普通はどれもないか。

 

 

 

 

 

ひとまず夢の国で買ったお土産を持つと僕は家を出た。ほら、忘れないうちに渡したいからね。

っと、まだ早いしあともう少し家で時間を潰すとしようかな。向こうも朝早く起きてるとは限らないしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前7時になったことだし、そろそろ行くとするかな。

とは言ってもお隣だから、時間なんてかからなかったけど。数分圏内だし。

ん?平日なのに少しいるんだ。まあ、分社だから普通…なのかな?

 

「やっほー、父さん母さん。僕だよー」と声をかけつつ、中へ。

少し人がいたけど、こっちまで来ればやっぱり関係者とかその辺りの人しかいないから気軽にかけれるんだよね。

と、そうやっていたら“巫女装束を来た人”に呼ばれた白髪混じりの男性が僕の方へ近づいてきた。

まあ、その人が父親なんだし、呼んでもらえたっぽいならとても助かる。

 

なら呼ばれたじゃないだろと自分で自分につっこんでしまいそうになる。なにせ自分で呼んだわけじゃないし。

 

 

「おお、あおいか。久々にこっちへ来るなんてどうしたんだい?」

 

「ん、久しぶりに親の顔が見たくなってね」

 

と、忘れないうちに「これ、夢の国へ遊びに行った時のお土産。お菓子もあるから母さんと食べてね」と言って手渡しておこう。

 

「おお、ありがとな。あとでいただくとするよ。…ところで元気にしていたか?加護があるし、家が隣とはいえ心配で心配でな」

 

心配なのは分かるけど、加護って本当なにさ。“不死鳥”とか“十二の試練をこなした人”とか“蓬莱の薬を飲んだ人”以上に“ギアスか!?でも現実にはそんなんないはずだが……”って言っていた人のセリフとは思えない。もはやネタ豊富すぎて、僕のことをどう見てるのか気になるレベル。さとりが羨ましいね。

 

 

「その加護とやらはともかく、僕としては二次元と現実の区別をしてもらいたいと思ってるよ。ああ、そうだ。僕ならとても元気だよ。友人達とよく遊んだりしてるし」

 

「いーや、二次元とかで知ってるからじゃない。お前のそれは加護。譲らないからな?」と先に言ってきた。

違うでしょ。

というか「それに老いにくいし、死ににくい。それってなんか長生きできそうでいいじゃないか」ってまで話してくるなんて。

 

 

「んで、久しぶりに帰ってきたんだ。少しは話していくだろう?」

 

 

(ふぅむ、なにが違うんだろうか。どう見ても加護だろ加護。フェネクスとか朱雀とかそんなんじゃないのか?それかなんかそういう加護。我が娘ながら羨ましいこった)

 

 

まあ、たまにはいいか。

 

「うん、そうだね。母さんにも顔を出したいし、そうさせてもらうよ。それで、母さんはどこに?」

 

「ああ、奥で掃き掃除してるはずだよ。こっちだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なるほど、確かに少し奥にいるね。

手前にも巫女装束を来た人がいたし、掃きたい気分にでもなったのかな?

そう思いつつ、今度は自分から近寄る。

 

「おはよう、母さん。久しぶりだね」

 

あ、手を止めてこっち向いてくれた。

 

「ん?あぁ、おはようあおい。確かに、久しぶりねぇ」

 

 

(25歳だからなのか若いわねぇ。これでもう少し自分に自信があればよいのだけれとも。子供の頃にできてしまった二次元の美少女と自身を比べるクセ、どうにかしてあげたいわね)

 

 

「ん?僕の顔をそんなに見て、なにかついてる?」

 

「あら、そんなに見てたかしら。悪いわねえ。そういえば元気にしてた?」

 

「父さんにも言ったけど、僕は元気だよ。内職とはいえ、友人達のおかげで運動不足にならないし」

 

 

そこまで動かないけど、それは黙っておく。

ものによっては軽い運動みたいなのするからね。例えばアスレチックとかレーザーアスレチックとかそんなん。

 

……あれ、最近行ってなくない?

 

 

「まあ、確か結構友人がいるんだったもんな。母さんも知ってるだろ?ネットの友達がたくさんいるって」

 

母さんが頷いた。やっているゲームをすすめたのは僕だし、ネ友を紹介してるのも僕だから当たり前、か?

いや、たまに紹介されたりしたから案外社交的だよね。

 

……たまに始めてすぐのゲームで変な動きするのはやめて。ビックリするんだから、と言いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、他愛ない会話とかもしていたら時間が結構たっていて驚いた。11時前だよ?

そんなに話したっけ。

 

「あ、そろそろ僕、お昼食べに行くからもう行くね」

 

「ああ、そうかい?あんま無理するなよ?あとたまにはこっちへ顔出してくれ。色々あるとはいえ、心配なんだよ」

 

「あら、酷いわ。私も心配なのよ?まあ、あおいには不死鳥かなんかの加護があるから大丈夫なのかもしれないけどもね」

 

 

うん、不死鳥かなんかの加護とかそういうのないからね?

 

 

「うん、ありがと。分かったよ。んじゃ、また今度ね」

 

「ああ、気をつけるんだよ。加護か能力だかどっちか忘れたけど、信頼しすぎるのもよくないからなー」

 

「怪我とか、病気にも気をつけるのよー」

 

 

加護だけじゃなくて能力って説も出てきたんだ。

……原因不明、としか分からないからなんとも言えないけど、誤解な気がする。主に前者。

 

まあ、この世に能力なんてあるわけないけどね。現実と二次元は別だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう考えつつ、実家兼神社を離れた僕はなんとなくゲーセンやカードショップの方へ遊びに行くことにした。

本当は他にもやることあるんだけどね。たまには息抜きしたくなるじゃない?

なーんて誰にでもなく言い訳してみたり。

 

……そういえば、ある場所にペットショップがあるんだっけ。覗きにでも行こうかな?

んじゃ、目的追加でレッツゴー!



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10話 秋めく日々と不老不死

少し短めです


あれから何度かペットショップに通ったり、友人達と遊んだり、仕事で徹夜したりと色々していたら秋めいてきた。

芋でも小さめな庭で焼いてしまおうかな。

 

 

あ、いや。今は小さな同居人ができたんだっけ。

1年から2年しか生きないけど、お試しならお手頃かな?

 

 

「ね、さくら」

と言って一から部屋などを買ったゴールデンハムスターの方へ振り向いた。

和室のデスクトップパソコンから右へ、PS4などがある場所からは左へ振り向けば見えるんだから楽だよね。

まだ二ヶ月の女の子だから、だいぶ育てられそうかな。

 

「……って、朝だから出てこないか。僕と違って夜行性だもんね」

 

っと、ひとまずやることしておくかな。仕事とかそういうの。

やっておかないと期日に間に合わなくなったりするからなぁ。そう考えるとブロガーとかも大変そうだよね。あとYouTuber(ユーチューバー)とかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事とかそういうのをやっていたら、昼前になっていた。ちょうどいいし、外食にしようかな。

作るの面倒だし、ハムスターの餌や水はやったし。んじゃ、行くかな。

 

 

 

って、出てきたらなんか横断歩道を赤信号で歩く子供がいる件について。

いや、普通に考えて危ないでしょ。

 

 

ってあれは

「ちょっ……!?」

 

 

 

 

 

 

“ソレ”が見えてから子供ーーー女の子かな?ーーーに向けて駆け出し、突き飛ばしたのはまるで他人事のように思えた。

あぁ、「わっ!?」なんて驚いたような声を出して尻もちをつく少女。それにしてもさ…点言い訳、考えてなかった……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ア、ハイ。ひっどい死体だね。目も当てられないね。ヤバいね。

 

「えっ?お、お姉さん…大丈夫なの?」

 

「ん、僕?全然問題ないよ。君こそ大丈夫かい?」

 

 

(ど、どう見てもお姉さんの方が大丈夫じゃないんだけど…!?ううん、むしろ血がたくさん出て死んでる人と同じ姿のお姉さんがいるとかどういうこと!?)

 

 

あ、運転手が降りてきた。男性やったんだ。

 

「え、あ、その。大丈夫ですか?」

 

「えっ?あ、はい。にしてもごめんなさいね、よく出来た死体を投げてしまって。ほら、今度のハロウィンのためにって血のりとか用意してたもんですから…」

 

「そ、それにしてはやけに人を引いた感覚が「ハロウィンのための小道具ですよ?」」

 

「アッ、ハイ」

 

「…………」

 

よし、運転手はまるめこんだ。あ、少女が呆然としてる。

しかもなんか女性っぽいの来た。

 

「あ、すみませんね。お嬢さんを驚かせてしまって。あれ、ハロウィンに使う予定だったよく出来た人形なんで気にしないでください」

 

「あっ、はい…。…い、行くわよ。もう赤信号とか渡ったりしなくていいから…」

 

「……うん」

 

なんで気まずそうに帰ったんだか。

まあ、よく分からないけどいいか!

周りでも“え、ハロウィンの小道具にしては出来すぎというか凄くない?”みたいな話になりつつあるから結果オーライ。

痛い思いしたけど、誤魔化せたことだから全部OK。なにもしなかったことによる後悔もなーし。……ところで本当にハロウィンに使うか悩むな、これ。

臭いとか普通にしそう…。火葬しとこ。

 

 

……あ、どう伝えよう。火葬場の人に慣れてる人がいるといいなあ、なんて考えながら自らの死体を持ち上げて帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数週間後、ある時に見たテレビで“マジックのような出来事!ハロウィン小道具で人助け”みたいなニュースがされてる時は驚いたけど。

またしばらくした時に母親も来て、お礼のあとにやたらと8歳の少女が悟りみたいのをひらいたのはなにかしたの?と聞かれた。いや、してないし。

それを伝えたら何故か諦めたような顔をしていた。

 

どうしてその顔をされたのか分からないから気になってる。なんでなんだろうね?理不尽だよ。

 

 

「なんか葵ちゃんがニュースに出るとか新鮮だね」

 

「……そりゃどうも」

 

 

(うん、あからさまに微妙そうな顔。話を聞けば無理もないような…あるような?でも、葵ちゃんって手品出来たんだなー)

 

それよりも少し疲れたー。精神的にも色々と。

なにせ今月末にハロウィンがなかったら、あれは誤魔化せなかった気がするし。キッツキツだね。というか、椿さ。焼き芋買った帰りに偶然会うとは思わなかったよ?

 

 

「それにしてもあんなの作れたんだねー。でも、捨てちゃったんでしょ?」

 

「ま、まぁ…色々と伝手があったというかなんというか。ん?そりゃあれ…あんなにクオリティ高かったら本物の死体と間違われて仮装どころじゃないでしょ?だからもったいないけど捨てた」

 

「そうなんだ」という割には比較的残念そうな顔をする彼女。

実際に本物の死体なんだから火葬しないとヤバいんだって。なんか面倒事になっても嫌だし。

 

 

 

 

「ところでさ、葵ちゃんは今年のハロウィンも参加するの?」

 

ん?あれ、だいぶ間に椿に“今年のハロウィンも参加するね”ってラ○ンで送ったはずだけど?

まさか、その前に椿の天然とも受け取れるボケをしたせいで忘れてるとか。

“ハロウィン?あぁ、ハローって言いながらお菓子をあげればウィンウィンな関係になれるあれ?”とかよく分からなかったからなぁ。

 

「あー……参加するよ。コスプレ同然だけどね」

 

「ん、分かったー。んじゃ、楽しもうね!」

 

 

そうやって楽しく話せるのはいつまでなのやら、と。

そうやって少し考えてしまう僕もなんだかね。分かってはいるけど、割りきれないし。

別れの方じゃなくて、自身が死んだ時に下手に生き返れないことに。都市伝説にだけはなりたくないよ!?

 

などと関係ないことを考えながら話していたら、いつの間にかゲームで遊んでいた。

二人プレイ出来るやつだし、椿も楽しんでそうな感じだからいっか。

 

 

 

さて、彼女彼達といつまで遊べるのかな?それだけをどこかで考えつつ、椿と夕食まで楽しんだ。話とか人生ゲームで。



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11話 不老不死は連れていかれる

かなり短いです


木枯らしが吹く頃、なんかネ友が“恋人のため”にとマフラーとか編む人が増えた。自分のために編むことのある僕はある意味羨ましく感じる。

 

たまに顔を出し、動くゴールデンハムスターの“さくら”ちゃんには?犬や猫じゃないし、サイズ的に作るの難しいので却下。というか床下ヒーターおけるし、その方が楽。我が家にも欲しくなる……って

それだと床下暖房か

 

室内犬、猫をダメにする床とも言われるしね。まるで人間をダメをするソファーみたいだと思った。

いや、むしろその通りかな?

 

 

っと、そうじゃなくて仕事もやっておかないとね。

一応今後の貯金とかないと困るかもしれないし、嗜好品とかその他もろもろが買えなくなるのは困る。なので、無駄遣いではない。脳内議論終了。

 

…あ、そうだ。仕事でも終わったら遊びにでも行くかな?今回は1人で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、1人遊びに出るとまだクリスマスイブですならないのに気持ち恋人の姿が多く見えた。羨ましいぞ。

 

あ、葵ちゃーん!1人でなにしてるのー!?

 

…うん、この呼び方。椿だね。

というか横を見たら、だいぶ離れてるじゃない。

 

ちょっと遊びも兼ねて出かけに…ってところかなー

 

そのまま返事をする最中もこっちへ来ている彼女。

案外落ち着きがないのかもしれない……?

 

「んじゃさ、一緒に行こ?ちょうど私も色々と買いたいところだったしー」

 

そ、それはいいけど、僕の片腕をしっかり掴んでるのは何故!?

ちょっ、ひっぱらなくてもついていくってば。って待って気持ち強くない!?

 

 

「わ、分かったからゆっくり行こうよ」

 

「買いたいものがあって先に買われるよりはマシってことでゴー!ゴー!」

 

朝からテンション高いなあ……なんて考えながらひっぱられつつ、ついていくことに。

なんか椿の横顔が楽しげだからあんまり止められそうにないな。

 

(久しぶりに2人きりだし、女性同士だから色々とはっちゃけちゃおう。んでもって楽しんじゃおう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に連れてこられた場所は衣類の店だった。

えっ?今買ったら邪魔にならないかな。もしかして、まだ後々行く予定あったり?…ロッカー近くにあったかな。

 

「ねーねー、こういうのいいよね」

 

そう言って椿は僕から見て体の前側にかぶせるようにシャツを見せてきた。

淡いピンク色の…柄は少しあるって感じかな?花柄は選ばないんだね。

……いや、よさそうなのがそれだったのかな。

 

「うん、いいと思うよ。似合ってる」

 

「えー、他に感想は?なんかこう、可愛いね、とか。というか葵ちゃんもなにか選びなよ。たまにはシンプル以外でさ。せっかく買いにきたんだし、オシャレもしたら似合うと思うよ?」

 

 

(普通にオシャレすれば葵だって可愛いだろうにね。そういうオシャレが嫌いじゃないんだし、オシャレするの覚えてほしいなーとか考えてるのになかなか難しいんだよなぁ。しようと思ってくれないし)

 

……どうしたんだろ、持ってたシャツをかごにいれながら僕を見るなんて。

 

「さっ、葵ちゃんにもみつくろってあげるね!私が買ったげるからさ!」

 

「だ、大丈夫だよ?…って行くの早いよ」

 

止めようとしたらもう向かい始めていたのでついて行くことに。

その後は買い物して、着替えてから遊びに行くことになった。というかちょっと遊べばお昼って時間なので、少し時間を遊んでつぶし、食べに行くことに。

 

 

その後は荷物をロッカーに預けて遊んだり、また買い物したり。

途中着せ替え人形のような扱いをうけたけど、なんだったんだろうか。

別れて帰路に着く今でも分からない。



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12話 数十年後、病気などにもなる不老不死は

あれから数十年後。僕は25歳の最後の冬の頃を思い出していた。といっても今はもう54歳なんだけどね。

いやぁ、最後に集まったのがクリスマスパーティーなのだから、ふざけて楽しんだ以外の記憶を思い出すのが大変だった。

お酒、そんなに飲まなかったはずなのに、おかしいなぁ。

 

 

まあ、そうやって思い出していたのは今の僕は病み上がりなのにも関わらず、悠希達3人とその他子供たちとで近くの公園へ遊びに行こうということになってから。

なにも悠希からなにか教えてもらった…というより変な知恵をつけてもらった小学生辺りの子供達がやたらと遊ぼうとしてくるせいで思わず思い出さずにはいられなかった。いやだって、死んだら死んだで痛いし、遊び盛りの子達を3人同時はキツい。

 

不老不死だからってそんな命懸けの遊びを提案してくるんじゃない。

闇のゲームとかじゃないのに。そもそも死ぬ時の感覚、案外残るもんだよ?

特に2人。僕の子と椿の子が影響を受けまくっていて、大変なんだよ。ほんと。

 

 

 

 

「ねーねー、おねばあさん」

 

「お姉さんかどうか分からないんだったら普通に僕の名前を呼んだ方が楽だと教えたはずなんだけど…」

 

「えー、それだとつまらないんだって、お父さんが」

 

「そうそう、僕もさ、僕の父さん母さんの知り合いの橘悠希って人が面白く呼んだ方が退屈しないって教えてくれたんだぜー?」

 

なにを教えてるんだか…。自分らの子供でしょ?

あと我が子にも変な知識を教えるんじゃない。最近我が家でも驚くことされるんだから。

 

例えば“不老不死の確認です”と朝包丁持ってきたり。それはある意味心臓に悪かった。どんなホラーにも勝てるんじゃないかと思うほどに。

ひ○らしの真似をしてこようとしてきた時はもっと焦ったけどね。処理とかどうするつもりだったんだろうか…。やれやれ。

 

 

 

 

「ハハハ、葵。楽しそうだな?」

 

楽しくないよ!?

 

30代か40代になった悠希が楽しそうに笑いながら話してきた。

対岸の火事みたいだと思ってるんだから。ほんと、全く困った人だよ。

でも、退屈するよりはマシ……なのかな?いや、両親が家にいるからそうでもないな。

 

僕のことを“歳を取らないなんてまるでサーヴァントのようだ”という元気な父さんに、その父さんの手に油性ペンの赤色で令呪もどきを書く元気な母さん。

ある意味1人じゃ見きれないので申し訳ないと思いつつネッ友に依頼した。資格もあって車もあるから大丈夫らしいし、そういうのはしっかり支払っているので最近そこまで苦労しない。

 

 

あっ、そうだ!篠崎おねばあさん!

 

「違うよ。お母さんは見た目がお姉さんで中身がおばさんなんだから、お父さんがそういうのをサーヴァントや美魔女っていうんだって教えてくれたんだよ」

 

「え、そうなの!?」

 

いやいやいや。全然違うし、それ以前にフォローになってないよ、と思ったら悠希が笑った。なるほど。君だったのか。

…40、50代になったその体で僕と競走させてやろうかと思った僕は悪くないはず。ちょっとした意地悪扱いされるだけのはずだし。

 

 

(いやぁ、彼女の家族は面白い勘違いみたいなことをしてて退屈しないな。でも、こうやってふざけてた方が楽しいってことぐらい知ってるだろうに。…って、俺も良い歳だからやめようやめようとは思ってたんだけど、やっぱり楽しくてやめられないな!)

 

 

ため息しかでないんだけどなぁ…。

 

「全く……。ほら、あっちで椿お姉さんや湊お兄さんが色々準備してくれたし、突撃したら?」

 

「「「はーい!」」」

 

そう返事した3人の子供は公園の反対側にいた2人にかけていった。

…もしかしてさっきまでの流れに混じらない辺り、1人だけ真面目だったのかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

さて、ふざけだしたら未だに手におえない悠希と僕だけになったことだし、普通に話すか。

 

「全く……最近もふざけてるけど、肩とか大変じゃなかったのかな?」

 

「え?さすがに診てもらった。んでもってどうやれば軽減できるか教えてもらったから楽だな」

 

もしかして四十肩じゃなかったと。

…あれ?じゃあ、ただの肩こり?

 

 

「いやぁ、そんな呆れたような半目で見なくともお前ならなんとなく分かるべ?とにかく大したもんじゃなかったし、マッサージとかはやっぱ受けると楽だよなって話」

 

「あぁ、そう。それはよかったね」

 

原因は子供混じりだったか。なら仕方ないね。……もしかして腕にぶらさげたりしてる?

 

 

「あ、そうだ。子供達がお前に東方projectかなんかのコスプレをしてほしいってよ。確か同じ不老不死の奴を。そんでその格好で遊んでほしいってさ」

 

「えっ?……えぇー……あの人の?確かに今の僕は病気になる点以外は似てるけどさ、ヴィッグつけるの大変なのに」

 

 

(まあ、前は子供相手にヴィッグまでしたコスプレで遊んでたっけか?ただ子供らと遊んでると外れるし、動きにくいと諦めてたんだったな。俺的にはそりゃそうだとしか思わんけど)

 

 

うん、やっぱりコスプレで遊ぶのはやめた方がいいよね、と思うようなスカート類を選ぶ僕が悪いんだろうけどね。仕方ないね。

あ、でも今回の子はもしかしたら……

 

「ま、それはおいおい買えばいいんじゃないか?今はともかくあいつらが安全にふざけるよう近くにいるぞ」

 

「いや、安全にふざけるとかどんなんだし…って行動早いな!?」

 

そうじゃないだろ、と言う前に悠希は5人の元へ少し駆け足で向かった。

僕はそれを見て少し笑みを浮かべながらあとを追った。

 

ああ、この後どのようになるんだろう。

そんな期待を胸に。



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if 病気にもなる不老不死(笑)がもしタバコもやっていたら
if1話 喫煙家の不老不死


僕は病気にもかかる不老不死。それでかつ、自他共に認める愛煙家でもある。

いや、誰に説明してるんだろうなこれ。自分でも分からない。まあいいか。

 

 

なんて思いつつ、ちょっとしたDIYで家の小さめな庭に作った喫煙所で僕はよく吸うセブンスターの箱を開け、1つ手に取った。まだ1つしか吸ってないよ、なんて誰に言うわけでもない言い訳を考えながら火をつけて吸い始める。

 

「……ふぅ。それにしても僕も病気になりやすくなるとかなんの皮肉なんだろうな」

 

 

そう呟くとメールが。なになに?

 

“そろそろ健康診断を受ける頃じゃないか?不老不死ちゃん by天神(あまがみ)(りく)

 

 

この担当医師の言い方よ。僕の名前を知っててわざとこういうんだから意地悪とも思うよね。

ふざけてるから、ってのが真実だけど。でもメールではやめないかい?

 

まあ、健康診断には行くけど。

 

 

 

 

そう考えて、僕は吸っていたタバコを消して灰皿に捨てた。

もちろん、病院に行く準備をするためってのもあるけどね。

やれやれ、不老不死なのに健康診断とは不思議だよね。しかも毎回タバコをやめるようにとあるし。いいじゃないか、タバコはしっかり喫煙所で吸うし。

 

さすがにお酒とタバコ両方を同時にやったことはないけど……と、いい加減健康診断の予約なりなんなりしにいかないとあの担当医からの説教を受。けそうだし、早めに行こう。

 

面倒だけどねぇ…

 

そうぼやきつつ、準備をして比較的近くの病院へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず、何事もなく家についた僕は家の前に来ている2人に思わず笑った。

 

「いやいや、悠希。知り合い連れてくるのはいいけど、事前に教えてくれないと困るよ」

 

「いやぁ、たまにモ○ハンで一緒になるし、気づくかなって思ってな」

 

「それは無理だよ!?」

「気づくのは無理だな」

 

(ふ、2人していう必要はないんじゃないか?でも、俺自身ふざけるのが楽しいからやめないが)

 

とりあえず家にでもあげるか。どうせ僕がよく喫煙する場所は中にはないんだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それで、あげたはいいけどなにをしにきたんだろうか。

 

「悠希、友人なんか連れてきてどうかしたの?」

 

「どうもこうも、久しぶりに遊ばないかと。大丈夫だ、つい最近初心者マークのとれた俺が運転するから」

 

「お前はスピード出しすぎるんだよ。高速道路で110キロ出すバカは普通しないだろ」

 

それを聞いて逆に不安になった。色々と大丈夫?

 

(ほら、言わんこっちゃない。悠希の女友達が心配そうな顔をしてるじゃないか。まあ、俺も運転免許があるから交代できるし、危なそうだったら交代するか…)

 

 

 

っと、そういえば自己紹介まだじゃない?

突然来たのにこれだから忘れそうになった。…忘れてた気もするけど。

 

「そういえばまだ自己紹介してなかったね。僕は篠崎葵だよ。君は?」

 

「あー、そうだったな。なんかこう、悠希の友人ならではの雰囲気があったからつい忘れてたわ。俺は一ノ瀬湊だ。宜しく」

 

「うん、宜しくね」と僕も返した。

比較的真面目そうな人だな。悠希の友人はなにかとゲーム関連でおかしなことになってるから、唯一の普通……なのかな?ゲームの腕前を知らないから分からないけど。

というか朝ごはん食べたの?僕は喫煙前に食べたけどさ。

 

 

「それで、何か用?あと朝食は?」

 

「お前は人の母親か。……俺は食べてきたが、湊は?」

 

「さすがに食べてくるさ。そういう葵さんはどうなんだい?」

 

え?そりゃあ

 

「タバコ吸う前に食べたよ。もちろん吸う場所は小さな庭にある未だに試行錯誤中の喫煙所なんだけどね」

 

「1日で下手したら1箱や2箱あけるくせに律儀だよな。というかその喫煙所、試作何個目だよ」

 

 

(…うん、俺だけじゃないよな、気になるの。んで、聞かれた瞬間すごく面倒くさそうな顔をしたな。やっぱり結構手間かかってんのかね)

 

 

それは……だね。うん、かなり。

数えてないだけでも結構作ったんじゃないかな。最初は怪我もしたし、喫煙所として機能しなかったりと。

 

その時の怪我は酒の一気飲み(じごうじとく)とかの影響でないけど、想像以上に大変だった、とだけにしておいてる。誰だ、家に喫煙スペース作ろうとか考えた奴。

 

 

……僕か。

 

「あ、あー…そこまで大変だったんだな。俺もそういうちょっとした物作りとかをできる範囲でするが、あれは……うん。分からなくはないな」

 

「確かに湊はそういうのも好きみたいだもんな。だから分かるのか」

 

「まぁな」と頷きながら答えるのが聞こえた。

几帳面なのかなぁ、と内心遠い目。いや、僕だって少しは真面目だと思うよ?たぶん。

 

「ま、それはさておき。遊びに来たの?あとアニメの再現とかいい?」

 

「タバコを吸うシーンの方が少なくないか?最初は吸ってないのも知ってるが、あれだとお前死ぬ可能性あるだろ。……あ、お前は平気なんだったな」

 

(はあ?再現で死ぬようなのあったっけか。一応俺もアニメは見てるんだけどなぁ。そもそも葵さんのなにが平気なのやら)

 

あー…そうか。湊さんは知らないけど、僕と悠希はよく僕の家で酒を飲んでは二日酔いになったり、下手すればどちらかが病院へゴーをしている仲だからね。ついでにお互いの家でお泊まりも。

 

確か、そのいつも通りの飲み合いしている時に勢いあまって“僕が病気にかかる不老不死”だと口を滑らしたのがきっかけ。それからは友人の中で悠希とその友人達だけが知っている。

 

 

「ほら、僕って特殊な訓練受けてるから」

 

「それはねーよ」

 

(どういう話をしてるんだか。楽しそうに笑いあってるし、気にしてなさそうだから別にいいんだけどさ。……というか特殊な訓練ってなんだよ)

 

「それよりも遊びに行かないかと誘いに来たんじゃなかったっけか?」

 

あ、忘れてたと言わんばかりの表情を浮かべた悠希。

えっ?悠希のことだからてっきり遊びに来ただけなのかと……。

 

 

「そうだったっけ?」

 

「ちくわ大明神」

 

「そうだよ…って葵さんはなに呟いてるの」

 

「ん?ふざけただけだよ。よくあるでしょ?」

 

湊さんから「そんなのよくあってたまるか」とツッコミをもらった。ナイス。

 

「とりあえずいつもの場所へ遊びに行こうか。またゲーセンとかが多くなりそうだけど」

 

「いつもの…ってよく行く場所でもあるの?」

 

あるとしても、出来れば喫煙スペースが近くにあればいいんだけどね。

いや、ないならないでいいけど。

家に帰れば吸えるし。こだわる必要はない、と心の中でキリッとしてみるけど逆にむなしくなった。やめよう。

 

(そういやこいつのこと、湊にお酒を飲んだりしたことがあるとしかいってなかったな。あとでタバコもやってること教えとくか。んで、葵が不老不死ってのは黙ったままの方が面白そうだな。なにせ病気とかになるし、後々楽しませてもらえそうだ)

 

「ん?あぁ、基本的にゲーセンとかカラオケとかな。スマフォゲームもあるが、あっちは歩きだからなあ」

 

「カラオケはあんまり行かないだろうに。……今日は平気?」

 

そう言いつつ半目で悠希の方をチラ見していた湊が、今度は僕の方を向いて聞いてきた。

んー、灰皿洗ったりするのはあとでいいから平気としか。

 

「そうだね、仕事とかに余裕あるし行くとするよ。ちょっとばかし家にいすぎたような気がするからね」

 

「あれ?不老不死のお前って内職だったっけか」

 

確かに体質的な問題で普通の仕事場にはいつづけられないけどさ。

原因不明のやつらしいしねぇ。

 

「……それはいいから」

 

 

そう、僕が呆れたような声で返すと悠希はハッとした表情になった。

正直いって、嫌な予感しかしない。

 

 

「あ、そうか。お前、吸血鬼だったんだな!」

 

「誰が石仮面つけたっていった!?」

 

ぷっ、という笑いをこらえたような声が聞こえたけど、違うからね!?本当だからね!?

そう思いつつ、湊さんの方を見るも“こうも仲がいい人達の会話を聞いてると面白い”みたいな感じだった。何故だ…!

 

(やっぱり友人がその友人達とふざけているのを見聞きしてると笑いをこらえるのも大変だね。……おっと、もうこんな時間か)

 

「楽しそうにしてるとこ悪いけど、そろそろ行かないか?9時になることだし」

 

「楽しそうって……はいはい」

「へーい」

 

湊さんのその一言に僕達は各々の返事を返すと家を出た。もちろん鍵は僕が閉めるから最後に出たのは僕だけど。

湊さんの車に乗せてもらうと、そのまま目的地へと進み始めた。

やれやれ、何事もなければいいんだけど。



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if2話 この不老不死はもしかしたらヘビースモーカー

少し短めです。


その後、ついてきた場所は僕はたまに来る場所だった。ほら、タバコ買う以外にゲームとかトレーディングカードゲームとかするし、それを買いに来たりしてるからね。

秋○原の方が多いけど、黙っておく。

 

車での移動中、前に座った悠希から「30歳って不老不死のわりには若いよな」と爆弾投下された。いくら僕でも泣くよ?主に年齢の方で。

……いや、僕が“予防接種とかしてるよ”などのまだそこまで話していないことを言ったおかげでどうにかなったけど。

いや、そんなんで否定される不老不死ってすごいーーーと思ったけどそうだ。不老不死っていわば変化がないんだから病気にも、ましてや予防接種もできるかどうか怪しいんだった。

花粉症にもなりかけたこともあるんだからもう不老不死としては悲惨である。いや、今はその春なんだけどね。

 

あと年齢はどうにかうやむやにした。まだ教えるにもそこまで仲良くなったってわけじゃないし。悠希はまあ、友人になってからもう2年だし、別なんだけど。だからって年齢はまだ言うんじゃない。まったく、口の固そうな友人のみって言ったのに。

 

 

「なんか車を駐車場に止めてその近くの店まで来たはいいけどさ、なんか葵さんが遠くを見るような目をしてるのはどうしたのかな」

 

「さぁな。さっきの会話以外に心当たりないから知らね」

 

「それは知ってるというんじゃないかな…」

 

 

なにをひそひそと。そこそこの人が見える範囲にいなかったら、おふざけでアニメの真似事でもしたのに。“なにを見ている!”とかそんな感じの。ポーズまではさすがに知らない。

 

「いんや、なんでもないよ。それで、なんだったっけ?」

 

「これから食べ歩きをしに、だな」

「これからゲーセンを見に行こうかと」

 

 

(かぶったな…)

 

(あぁ、かぶったね…)

 

 

なにこの2人、顔をあわせたと思ったら頷きあったんだけど。友人ならではの意思疎通なのかな。

いや、むしろ今から食べ歩きって入らないんだけど。……なにかされる前に

 

「あー…僕は久しぶりにゲーセン見に行きたいなー?食べ歩きはまた今度かあとでにして、さ」

 

そう思って言ったはいいけど、すごく棒読みになってしまった気がする。

 

 

「そ、そうだな。ゲーセンでも見に行こうか」

 

「んだな。食べ歩きならいつでもできそうだし。なんなら行きながら話でもしないか?な?」

 

「分かった。別の話題ならしてあげるよ。んじゃ、僕と湊さんとで先に行くね」

 

とまでいうと僕の言葉に一瞬固まる湊さんだったけど、「あ、あぁ…そうだね」とだけ返して僕と一緒にその店とは別にあるゲーセンの入口まで歩き始めた。

悠希もさすがに諦めたのかあとを追うようについてきた。ま、ここまですればなんとなく諦めると分かってきたからしたようなもんだけどね。

というか食べ歩きならよくしてるよね。たまにはゲーセンとか入ろうよ。スマホゲームとかはいれないからね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後はメダルゲームやらアーケードゲームやらで遊んだ。合間合間に僕が喫煙所に寄ったのもあるけど、結構長くいた気がする。

もちろんお昼は食べたさ。

 

「あ、そうだ。帰りさ、銀行によってもいいかな」

 

「ん?どうしてだ?」

 

僕は「いやぁ、実はね」と前置きして

「健康診断へ行くし、生活費でもおろそうかと」

と正直に教えた。なぜ悠希は笑うのをこらえるんだろうか。

 

「ぷっ、お前がか?毎年毎年律儀だなー」

 

「いやいや、悠希。そこは笑うとこじゃないだろ。病院に健康診断へ行くとかめっちゃ真面目じゃないか。それを笑う必要は……」

 

いや待てよ、と呟いてそれ以上言わなくなった。どうしたの?湊さん。

 

(そういや車の中で不老不死だのどうだのと言ってたけど…健康診断?毎年?本当に不老不死なのかな、葵さんって人は)

 

 

悠希と顔をあわせる。というか向こうがあわせてくれたというべきなのかな?

…たださ、今見られても渡せるのはほとんどないと思うよ?

 

「いや、湊さんがなにを考えてるのかさっぱりだけどさ…僕にも色々あるってことだから気にしないでよ」

 

(葵の誤魔化し方って下手だったんだな……いや、知らなかったわけでもないんだけどな?なにせこいつ、タバコにハマるわ、お酒は普通にたしなむわ、風邪とか余裕で引くわと誤魔化す必要がなかったみたいだからな)

 

「そ、そうかい?ま、まぁ…そうしておくよ。好奇心は猫をも殺すっていうしね」

 

「葵なら死なんべ。なあ、葵?」

 

いや、それを僕に振るなし。ワ○ピー○のサ○ジの真似事がしにくくなるでしょうが。

んで、僕が黙っていると

 

「死ぬとか死なないとかそういうんじゃ……あぁもういいや。んで、なんの話しだったっけ?」

 

あ、ツッコミ放棄してる。

話は……そもそもなんだっけ?この話題。

 

「……なんだったっけ?」

 

「さあな、俺も忘れた。んじゃ、まだ遊ぶとしようか」

 

「んだねー」

「そうとしようか」

 

 

 

 

 

結局また、ゲーセンで遊んだ。

メダルゲームがさっきは当たらなかったジャックポットに当たってみたり、リーチしてみたりと時間を大幅に使った。湊さんに言われて見た時間がそろそろ夕飯時ってぐらいには。

 

 

「とりあえずなんか食べに行こうか」

 

「そうだね。僕もいい加減お腹すいたし、一服もつきたいし」

 

「一服ならだいぶいったろ。何回喫煙室に向かったよ。腹減ったのは同意するが」

 

湊さんにそう誘われたからついそう言ってしまったけどさ、そんなに僕って喫煙室に向かってたかな。覚えてないんだけど。

いや確かに数回は行った覚えあるよ?ただそんなに行ってはない……はず。

 

「んじゃとりあえず昼食へゴー!」

 

「いや、その前にメダル預けようぜ。お前の奴なんだし、いないと無理なんだからな?」

 

「あっ、はい」

 

(ぷっ、葵さんって悠希といるとこうなのかな?他の友人より抜けてるとか思ったのは俺だけと思いたい)

 

急いで悠希と共にメダルを預けると昼食を取りに、湊さんと悠希と僕とで上の階へエレベーターで向かった。

…まだ、日常の範囲だった。



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if3話 不老不死との約束の代価はタバコ

昼食を食べたあと、僕達はーーーといっても3人なんだけどーーー悠希の知り合いの釣り船に乗っていた。いや、訳が分からない。教えられずについてきたわけだし。

 

「んで、なにしにいくの?沖になんて向かって」

 

「そうだよ。何気に悠希の知り合いが釣りの準備万端だったのが驚きなんだが」

確かに。何を釣るとか話してないわりには漁船で沖まできてるし。

なにをするつもりなんだろう。

 

(あ、まさかあのラ○ンで来た釣りの誘いが来たから行こうぜって……そんなのないよね?)

 

(……あの子、本当に不老不死なのか?どう見ても普通の人間だろ。まあ、悠希のことだ。俺に直接教えきたのには理由があるんだろ)

 

 

「それで結局なにを釣るの?」

 

僕がそう聞くと悠希だけはさも当たり前のような顔をして

「葵を釣り餌にして、サメを釣るつもりだが?」

といった。

 

 

………………

 

…………

 

……

 

はい?今なんて?サメ?サメって言った?

 

「おいおい、悠希。サメを釣るとなると葵さんが死ぬじゃないか。お前それってなくないか?」

 

うーん、と腕を組んで悩んでいた僕をおいて聞く湊さん。気にしてくれてるんだね。ありがとう。

でも、僕なら平気なんだよね。

 

「だったらじょ○○えんでランチメニューね。もちろん君達のおごりで」

 

「あー、だよな。俺も入るか。まあ、釣り以外にも収入が俺にはあるから俺が少し多く出すとするよ」

 

(半信半疑とはいえ、サメはサメで食べれるからな。あ、この話は葵と湊にしてなかったわ)

 

「そういや葵さ、サメって食べてみないか?」

 

(……巻き込まれた俺も払うの前提なのな。やれやれ、今日は知り合いもいるとはいえ…悠希がいつもよりアクティブだからまいったもんだな)

 

「ん?あぁ、食べる。興味あるし。それならおごりってのなしにして、僕も少し払うよ」

 

「おっし、ならその話で行こうか。悠希、篠崎お嬢さんにあれ渡しといて」

 

「はいよ」

 

そう話して僕にナイフを渡してきた。

包丁とは別だよ?

 

 

僕が今からそのナイフで足を軽く切ろうとしたら湊さんが止めてきた。

腕をつかんで。…真剣な顔してどうしたの?

 

「いや、でもやっぱり危ないよ。相手はサメなんだし……」

 

「大丈夫大丈夫。僕ってば特殊な訓練受けてるからサメとこう、格闘できるんだよ」

 

(はあ?いくらなんでも無理があるような。それに喫煙家でお酒も飲んでるらしいし。…悠希曰く“飲みすぎてお互い医者から呆れられてる”ってのもあるからな。まあ、それは関係ないとして。ーーーそれを抜きにしても危ないだろ)

 

ほんと怪訝そうな顔をするね。とりあえず今のうちに切ってしまおう。

……あ、そうだ。たまには違う方法もしてみようかな。前はよく足に噛みつかせて僕がサメのエラを掴み、釣り上げるってしてたわけだし。

 

…普段より痛くなりそうだし、あとでタバコも請求しようかな。メンソールのやつで度数の高いやつでも。

と、そうだ。返しておこう。そう思って酸素ボンベなどと交換で悠希の知人男性とナイフを返した。

 

 

 

 

ニコニコと笑いながら僕は

「ちょっと汚すよー」

といいつつ、酸素ボンベの管を持つ。

 

(汚す?…あぁ、もしかしてそういうことか。ならこっちは針でもたらしとくか)

 

あ、悠希がやっぱりすぐに気づいた。ニヤッて得意げにしだしたし。

あとでたまにしか吸わないメンソールのタバコ要求するけど、いいよね。いいよ。

よっしゃ、一方的に許可をもらったとこでやりますか。

 

(ん?いきなり酸素ボンベの管を片手に葵さんが海に入って……あ、悠希の知り合いの方が呆れ顔になった。いや、俺は俺でよく分からなくなってきたんだけど。誰か説明して欲しい)

 

 

「ってうわぁあ!?なんか口に入れて少ししたら葵さんがなんか死んだぁ!?

うわぁあ!?タイミングミスって投げ入れられた針のところに生き返っちゃった!?

 

え、ええぇ?!

 

「ハハハ!なんか面白いことになってるな!」

 

「やれやれ……僕にとっては面白くもないんだけどなー」

 

さあ大変。僕が酸素ボンベの管を痛みなどガン無視で肺に入れ、そのままサメの撒き餌に化けたタイミングで悠希が悠希の知り合いに見られつつ?一緒にサメを釣るための針を投げ入れていたようで大混乱。主に湊さんが。

僕は単純に失敗したって気分だから入れないでおく。というかサメきたよ?

 

 

おーい、葵ー!頑張ってサメ捕まえてなー!

 

んじゃ、ウエストポーチの中身投げてくれるー?今日実用できるレベルにしたいい道具があるからさー!

 

「ん?あいよー!

 

(ってこれ、ア○スボー○でモ○スターに張り付き攻撃ができるようになったヤツと同じもんじゃないか。…なるほど、こいつは色々と面白そうだっと)

 

おっ、ナイスー!んじゃ、逝ってくるー

 

僕はそう言い残すと顔だけつけようとした。あ、シュノーケルマスク投げられた。

 

(悠希の女友達は少し抜けてるのか?というかあれは下手にサメを呼びそうでこっちも怖いんだが。大丈夫かね)

 

「なあなあ、今の葵さんのいってくるのニュアンス、おかしくなかったか?」

 

「気のせいだろう。な、悠希」

 

「そういうことにしておくよ。とりあえずヒットするまで待つとしようぜ」

 

 

 

 

 

どうしたものかなぁ…なんて考えていたらサメが見えてきた。なんか大きいような?

よし、嫌がらせに1回漁船に当てよう。そうしよう。

 

頭に無理やり張り付き、強引に漁船へと当てつける。水中にいるけど、たぶん彼らは慌てふためいてる。というかサメが僕に狙いを定めてきた。こりゃヤバいかも。

 

 

うわぁっ!?ちょっ、葵さん!?

 

やめろナイスー!

 

おいおい、そうじゃないだろ悠希?!

 

 

船の上はどうなってることやら。

あとでタバコ吸いながらシラでも切ろう。バレてるの前提で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくした後、まーた死んだ僕は今度こそ“なにも無い”漁船の上に蘇った。ってもう港についてるんだ。

 

(あいつ、サメを引き上げるの大変そうだなー)

 

「え、あ!葵さん!?なんかこう、色々と大丈夫だった?」

 

そ、そんなに焦らなくても。相手はサメなわけだし、不老不死と確認のために2回か3回崖の上から突き落とされるよりはマシだと思うよ?

いや…痛み的には突き落としだね、うん。

 

「あの程度の痛みだったら我慢ぐらいできるからねぇ。あ、悠希。あとでタバコ1箱おごりね。ついでにメンソールで宜しく」

 

「えぇー……。ま、じょ○○えんのおごりはここにいる4人全員で分割になってるからいいわけだし、別にいいか。今回はマルボロがいいのか?それともセッター?」

 

(え、そんな冷静に会話するもんなの?俺がおかしいだけ?……ってあれ、あのお兄さんも遠い目をしている。ってことはあの悠希の友人も似たような考えである、と?…むしろそうあってほしい)

 

「いやぁ、今回もお任せするよ。たまに面白いのがあるから楽しみだし。それに僕はお願いする立場だからね」

 

「あいよー」

 

「お前達は自由だな……」

 

「いやぁ、褒めなくても」

 

「褒めてねーよ!?」

 

おお、さすが仲良しなだけある。

ツッコミにキレがいい。

 

「いや、あのな…お前ら、サメを食べないのか?」

 

「「食べるー」」

 

「え、食べれるんだ……というかさばけるの?」

 

うーん、どうなんだろ。

 

「葵さん、だったか?考えなくてもさばけるぞ。俺と悠希とで手本な」

 

「えっ、俺も!?えー」

 

あ、悠希が面倒くさがってる。

 

「えー、じゃない。というか言い出しっぺはお前なんだから責任もてよ」

と言われたかと思うと悠希が連れていかれた。

 

 

「……俺達も行こうか、葵さん」

 

「そ、そうだね。そうしようか、湊さん」

 

お互いの顔を見合わせ、頷きあってあとを追うことに。

サメをさばいたり、食べたりしている時に話し合ったけど、じょ○○えんは今度全員の都合のいい時に行く話でまとまった。

うーん、やっぱりサメは面倒だな、と感じた日だった。




一部表現不足だった為、追記しました。


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if4話 さすがに不老不死は考える

サメ食べたり、加工したり、焼肉したりと色々あった。僕満足。

 

 

 

……さて、今のはさすがに語彙力を下げすぎたね。でもなんかあそこまでやっておいてなんだけど、なんかこう複雑だね。サメに関しては。

帰る時湊さんとかが気まずそうな顔してたし。今度埋め合わせでなにかしてあげようかな、とはなんとなしに思った。

にしてもあの美味しい焼肉。さすが高いだけある。やっぱりじょ○○えんは贅沢だった。

 

え?死んだのによく肉を食べれるなって?ほら、僕自身が死ぬ事には慣れてるから。あと死体もその流れで見慣れた。

 

まあ、いつもの倍払う金額が少なめなんだけどね。ほら、4人で払った上に僕の分は0.5人分だからね。おごられてるのと大差ないんじゃない?

4人で割り勘するときよりも面倒だった。主に計算が。

 

 

 

 

 

 

 

それはいいとして、あれからしばらく。今日はやることが少なくて暇だな。

アニメでもツ○ヤから借りてこようかなぁ……。

そうとなればさっそく○タヤ行くか。

そんなに遠くないし、便利だね。

 

ーーーツタ○に入っていい新作か旧作ないかな、と探していたらかつての同級生がいた。

僕と違い、だいぶ大人びた雰囲気をしているその女性は以前していたポニーテールからショートボブになっている四ノ宮椿がいた。

というかそれを抜いても色々と大人になったなぁ、と。“やっぱり三十路は違うね”って言ったら本人が傷つきそうなのでやめる。

僕も女性だけど、そういう手の話は怒らせる可能性があるから怖いもんだ。

 

「ーーーってあれ?おおい?あおいちゃん?」

 

あ、気づかれた。というか気づかれても不思議じゃないんだけどね。

椿の方を僕は向いてるし、相手(つばき)も偶然こっち向いたし。その相手(つばき)は僕の顔覚えてるっぽいし。いや、覚えてるのか。

 

(あ、あおいが急に固まった。もしかして見た目があまり変わらないことを気にしてる?というかもう美魔女でいいんじゃないかな。美魔女ってなんのことかよく分からないけど)

 

 

 

「久しぶり、あおいちゃん。高校卒業以来会ってなかったけど、元気にしてた?」

 

「あ、あぁ…久しぶり。そうだね、何事もなく元気にやってるよ。椿こそ、どうなの?」

 

「そう?よかった。私も元気にしてたよ。結婚したり、子育てしてたりと色々あったけどね。あ、今は保育園に預けたりして働いててね。忙しいんだ」

 

 

(でも久しぶりに会うなんて驚きだなぁ。というかあんまり姿が変わってないのも驚き。老いにくいって噂はあながち嘘じゃないのかも?)

 

「だいぶ忙しいみたいだね、椿は。僕のところはまだ独り身だからさ、仕事と趣味を両立できてるんだよ」

 

「まあね。でも、あおいちゃんも友人は大切に……ってあおいちゃんはむしろ普通に仲良くしてるから平気かな」

 

 

あれを仲良くしている、といっていいのかどうなのやら。

不老不死というのを確認するために塩酸プール、不老不死だから『貴方が好きだったの』みたいなことを言いつつ崖から突き落とし、こそドロではない本当の強盗にやられるとか。

 

最初の熱中症以外は、特に塩酸プールと突き落としは明らかにひどいと思うんだ。

まあ、それと僕が不老不死なんて教えても普通は“え?あなたは病気になるし、この前だって無理がたたって風邪をひいたんじゃないですか。自宅で働いてるからって気をつけないとダメですよ?”などと言われる始末だから信じないだろうな。

あと冗談扱いを受けるだろうね、しょうがないね。話が話だし。

 

 

「ぼちぼち良くしてるよ。なにせ色々とふざけたりしてるからね。もちろん、僕達以外に迷惑かけてる人はほぼほぼいないよ」

 

「悠希の知人とかを除くけどね」とも付け加える。

事情を知っている医師の天神陸曰く“僕の感覚は不老不死寄りで他の人と比べるとズレてる”らしいからね。気をつけてるつもりではいるけど、前みたいにうまくいかないんだよなぁ……と。

特に目の前にいる幼なじみの椿みたいな事情を知らない人の前じゃね。

 

え?悠希の知人である漁船の人はって?それに湊さんはって?

うん、忘れてた。まあ、いずれなにかしらでフォローするのを忘れないでおこう。

 

 

「ん、ならよかった。あおいちゃんも病気とかに気をつけてね?んじゃ、私はそろそろ行くから」

 

「椿こそ気をつけてね。うん、分かった。また今度」

 

……なんか、前より明るくなったなぁ。

僕もなにかしらで異性と付き合えば分かるのかな?

幼少期の不完全な不老不死だった頃に戻れないのかなー…いや、あれはほぼ不死身なだけな気も…。

 

「な、なにも考えなかったことにしよう。うん、それがいい」

なんて呟いて僕は改めて目当てのアニメなどを探しに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○タヤから出てきた頃には5つほど、アニメをレンタルしていた。

ガ○ダムは前に教えてもらったものを二種類ほど。残りはまた見たくなったアニメが三種類。

 

 

 

うーん、でも今でこそアニメやゲーム、小説とかにハマったりして楽しんでるけど、前はそうじゃなかったからなぁ。

 

なにせ小学生の頃に不完全な不老不死……もう不老不死もどきでいいか。

その不老不死もどきになって以降…というか、中学生の頃が一番荒れに荒れたからなぁ。何度自殺したことやら。

もちろん死ねなかったけど。不老不死もどきだったし。今は完全な不老不死だし、そもそもやろうとは思わないけどね。

 

それを伝えたら、試しにやらせてって悠希に言われたから許したんだっけ。……某アニメの死に戻りとは言わないけど、これって現代にいる?いらないよね、うん

とガン○ム(シード)を見ながら呟いたけど、前に見たHDリマスターとは確かにBGMが違うなぁと感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうやって、○ンダム(シード)からガ○ダム(シード)運命(ディスティニー)や死に戻りする少年の色んな意味での成長する物語の15話とか主人公が苦労人なアニメとか。あと一つ?今度にしようと思った。それだけかな。

 

「ん、この時にラ○ンとか珍しーねー」

 

内容は…“△月□日ってヒマ?”か。

送り主は…うん?グループになってる。いつの間に。

 

“俺はヒマだよ。…って葵さんも入れてるの?”

 

“…入ってるね、完全に”とだけ返した。

あ、“これの方が連絡取り合うの楽だったからな。勝手に入れた”と返してきたのは悠希。それには僕も納得。

っていうかラ○ンしてたんだ、湊さん。お互い聞いてないから知らないのも当たり前なんだけどね?

 

 

 

 

“とりあえず僕も暇だよ。もし悠希もヒマなら遊びに行かない?あ、次の日休みかどうかも教えてくれると考えやすいから出来れば教えてね”

 

“あー、一応ヒマだ。ついでに普通に休みだな。……もしかして、なにかするのか?”

 

“同じく。と、いうか葵さんが考えるのか。悠希と行くよりは楽しくなりそうだな”

 

“た、確かに行き当たりばったりだけどさ!?普通に楽しいだろ?!”

 

 

あー、はいはい。仲良いね。

というか、それを見ていたらタバコをまだ吸ってないことを思い出した。そろそろ一服しよかな。……“はいはい、仲良いね。んで、平気そうなのかい?なら僕が今回君達を普通に楽しませることを考えておくよ”と。

あ、他にも自分のためにちょいとなんか作っておこう。

 

こ、個人用なら平気なはず

 

たぶん。おそらく。きっと。

え、なにかって?

 

ーーーお酒というか梅酒?かタバコ。

と、そうだ。たまに見ておこう。頃合い見て混ざれば彼らにとってもちょうどいいかな。

 

まあ、精神的ケアが素人にどこまで出来るかって話だけど。どうにかするかな。

悠希の知人よりも湊さん……彼が一番僕の死で傷受けてそうだからね。頑張らなきゃ。



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if5話 不老不死の誠意の表し方

少し短めです。


それから梅雨が過ぎて夏になったある日。というか約束の日になったので、駅近くの集合場所に思わず早く来てしまった。

しかも10分ほど。タバコ2本か3本は吸える気がする。

たまにライターじゃなくて、自身の手から火が出たらいいのになーという理想を見る。……出ないけど。

 

 

とりあえず、近くに吸えそうな場所は……

ってないんかい!

 

あ、比較的大きな声だったせいか周りの人の視線ががが。

恥ずかしい。いきなり叫ぶ変な人じゃないか、これでは。

 

 

 

 

 

「おー、葵さんは少し早めの到着なんだね」

 

「あ、湊さん…。おはよう」

 

(俺も人の事を言えないとはいえ、この人も10分早く来たんだ。これを“少し早め”といえなさそうだけど、細かいことは気にしない。というかこの人は準備が早いタイプなのか。ん?どうして気まずそうにしてるんだろう。なにかあったのかな)

 

ふぅむ、この人も早い人なのか。なんならこの際、少し話でもしてみる?

タバコ吸えないのもあるし、そこら辺で適当に吸う訳にもいかないし。

もちろん、周りにそこそこの人通りがいるからしないってわけじゃないよ?うん。

 

 

「ところで湊さん。あの後……お肉とか、平気だった?悠希はある程度耐性あったとはいえ、君ともう1人はないっての忘れてふざけちゃったからさ…」

 

(あぁ……気にしてくれるんだね。確かにあのあと俺、肉系を食べるのにためらいがあったし、魚肉にすらそれが起こりそうだったけど…。どう話したもんかなぁ。素直に話す?)

 

あー、もしかしなくても話しにくいやつだよね。

やっぱりアナザーとかそういう辺りみたいな感じだったろうし。ふむ、気づかないでやるのはアレだな。

 

悠希じゃないんだし、さすがに気にしよう。

 

「いや、話しにくいならいいよ。ともあれ悪かったね。今度、君と悠希の知り合いに詫びの品とお金を送るとするよ」

 

「い、いやっ!?さすがにお金まではいらないよ!?」

 

「んいや、そうはいかないよ。僕の思慮不足だったし、精神的苦痛が伴ったと思う。悠希や悠希の知り合いのように耐性がある人ばっかりじゃないのを失念していた僕なりの謝罪だと思って受け取ってよ。ーーーあ、あの釣り船のお兄さんにもちゃんと送ってるよ。後日来るだろうお詫びの品も含めてね」

 

ふぅ。ここまで言ってようやく受けとってくれたか。

僕は当たり前だけど、悠希はそもそも教えてある上に見たことあるし、悠希の知り合いには何故か“特殊な訓練”で通じるしとよく分からない人が多かったからすっかり忘れてたんだよね。ほんとに。

五百万円(これぐらい)渡した上に国産の黒毛和牛とこれまた国産の高い卵を送ったんだ。これで和らげるといいんだけどなあ。

 

ほら、人間ってなにかを楽しむか美味しいものを食べるかとか色んな方法で気持ちをたてなおすでしょ?

それによく言葉だけじゃダメだっていうし、僕なら多少はどうにかなる。

でも、相手は違うから言葉とそれを出す。うん、我ながら保身的な気がする。

 

 

 

 

 

 

はぁ……とりあえず、貯金のし直しだね。それになるべく病気にならないようにしないと。

 

 

 

(し、渋々受けとったはいいけどさ、これ……なんかやけに分厚いような。いや、あまり本人の前で気にするもんじゃないね。かばんにしまっておいて、帰宅したら確認しよう。それよりも気になることが一つあるんだった)

 

「そうだ、俺の好奇心で悪いんだけどさ。葵さんってどれだけ吸ってるの?」

 

あー、なんだ。それか。

 

「別に構わないよ。それなら。……んー、そうだね。少なくて1箱、多くて2箱か2箱半とかじゃないかな。吸いたい気分の時は3箱いくけどね」

 

 

(え、ええぇ……喫煙所をよく探す人だなとは思ってたけど、それなりの喫煙家だった…。周りを気にしてくれてるだけ、良い人なのは分かるけどさ。…………なんか色々とズレてる。っと、悠希が駅から出てきたのが見えてきたな)

 

「おー!お前ら早いなー?」と言いながら来る人が。

その大声のおかげで相手が悪友こと橘悠希だって分かった。この辺りが集合場所にも選ばれるようなとこじゃなかったら余計に目立ってたよね?

 

 

「うーん、一応俺も5分だか3分前にはつくようにしたんだぞ?なのにもうついてるとか驚きしかないんだが」

 

いやまぁ、僕は誘った本人だし。

そうでなくても遅れるのは申し訳ないしね。

 

「まあ、葵はそういうもんだしな。湊はわからんけど」

 

「お前、俺のことは分かるんじゃないのか?からかうのはほどほどにしてくれー…」

 

 

(たまにはいいじゃないか。ま、俺のいう“たまには”は湊にとって高頻度なんだけどな!)

 

んで、とりあえず連れて行こうかな。

……ここまでに運転免許証をとる必要性が出るとは思わなかったけど、約束の日までに徹夜してでも取ったから大丈夫だね。

いやぁ、徹夜してもリセットできるのはいいねぇ〜。僕限定だけど。

 

「んん。とにかく、駐車場行くよ」

 

「えっ?お前いつ取ったよ」

「免許証とったんだ、葵さん…」

 

 

各々の反応がこれまた分かりやすい……っと悠希は気づいたのかハッとした表情になった。彼は僕のこと、知ってるもんね。

なにせ実証済みだし。

 

「この前にね。だから初心者マークついてたりするけど、我慢してね?」

 

「いや、さすがにお前は安全運転するだろ。なにせ平気なのはお前だけだし。特殊な訓練ところじゃねーぞ」

 

 

(特殊な訓練もなにもない気がするよ……!?と、いうかなんで悠希が葵さんの事情を知ってるの?不思議だよ?!ってああ、悠希と葵さん、普通に行っちゃうし……!)

 

「おーい、湊。置いていかれるぞー」

 

「ちょっ、待ってくれよー!葵さん達ー!」

 

あ、後ろから少しかけ足でついてきた。とりあえず、近くの駐車場までっと。

 

車に乗った僕は後部座席に座った2人をバックミラーで確認してから車を走らせた。



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if6話 愛煙家の不老不死が考えた友人達の気分転換法

少し短めです。


車をしばらく走らせ、目的地の付近にある駐車場に停めた。

 

「安定した走りだよな。最近取ったとは思えないんだが。数ヶ月とかで取れるもんなのか?」

 

「葵ならいけんじゃね?ほら、特殊な訓練受けてるし」

 

 

(いや、だから特殊な訓練ってなんだよってツッコミをしたいんだが。ほんと、なにをしたらそうなるんだか…)

 

 

うん、仲良いなぁ……。

にしても湊さんはなにに悩んでいるのかな?不思議。

 

ま、何はともあれ無事に着いたんだからよしとしようかな。

 

 

 

「んんっ。悠希、湊さん、僕が連れてきたい目的地はこの近くなんだ。5分程度歩けそう?」

 

「別にそれくらい、歩いたに入らないだろ?」

 

(う、うーん…確かにそうなのかもしれないけどさ、どこに連れてきてもらったのか俺的にはめっちゃ気になるんだけどなあ。まだ聞かないけど。そういうのが楽しみだしな)

 

 

あ、そういえば3D酔いは大丈夫なのかな。これから行くのはVRが多いし。

 

(にしてもやっぱりあちーな。移動先が涼しい場所だといいんだが)

 

 

「なあ、ちなみに建物の中だったりするのか?」

 

「え?教えたらつまらんでしょ?それに今回は僕も楽しむつもりでお金持ってきたんだよ。タバコも置いてきたほどなんだよ?」

 

なにせ少し払えば色々と楽しめる屋内アトラクションなどがあるんだよ?

UFOキャッチャーだってそう。

これはもう喫煙所が近くにあったって楽しむしかないだろう!ガム持ってきたけど、それは秘密。

 

「変なとこじゃないことを祈っとくよ」

 

「……いや、葵さんに限ってそれはないだろう。悠希の悪友にしては常識人っぽいし」

 

 

なんだそのイメージ。

 

(あれ、俺の悪友ってそんな変なイメージだったか?否定はしないが、そこまで常識外れはいないはずだぞ?)

 

(悠希の友人らの中で悪友は基本的にふざける時がすっごいからなぁ……。それに反して悪友と称されるこの葵さんはそうでもなさそうに見えるから不思議だよね)

 

 

よく分からないなあ、とひとまず首をかしげたけど、気にしないことにした。知ったところで別になんだって話だから。

 

「とりあえず、こっちだよ」

 

「あいよ」

「分かった」

 

んじゃ、レッツゴー。

予算もそこそこ多めだからやれるもんやれるはず。たぶん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある程度歩いて中へ入ると目的地の名前が見えた。

 

「なあ、まさか連れてきたい場所って…」

 

「…そのまさかだろうね」

 

「うん、ジョ○ポ○スだよ。そこの方が楽しめて色々と忘れられるっかなー……なんて考えなんだけど、無理かい?」

 

ホラーとかあるしね。それ以外もあるけど。

あとやっぱりUFOキャッチャーとか。

 

 

 

 

全員分を払い、悠希と湊さんにチケットを渡した。

一応アトラクション付きでね。

 

「おお、あんがとな。そういやお前、仕事は別としてもさ、ゲームん時あまり食事とってないみたいだけど、ちゃんと取れよ?」

 

 

(いやいやいや、葵さんがそうなんだとしても、悠希だってゲームの時あまり食べてないだろ。“時間が惜しい”なんて言う時はインスタントですませるくせによくいうよ)

 

 

「それを言ったら悠希。お前もだからな?」

 

なんか“ギクッ”っていう擬音が似合いそうなほど図星って顔をしてるね、彼。湊さん、聞いたことか見たことでもあるのかな。

 

そ、それは別だろう!?一応俺はインスタントやおにぎりにサンドイッチとか食べてはいるんだから、ゲームにのめり込んでる時に飲食をほとんどしない葵よりはマシだと思うぜ!?」

 

 

(そういう問題じゃないだろう…。悠希はまだしも、彼女のことなんて俺はまだほとんど知らないんだぞ?)

 

 

まっ、まぁ…この話はもう不毛だからやめようか。とりあえず中へ入ろうよ」

 

「そ、そうだな」

 

なんか呆れられてるような気がする…。

 

「……はいはい、そうだな」

 

 

まあ、その後普通に皆で楽しんだんだけどね。

意外と湊さんにもエイム力があって驚いた。曰く“悠希に鍛えられた結果”とのこと。

……あのほとんどゲームに時間を費やすっていう練習をしたのか。学生の頃にしか出来なさそうな芸当だよなぁ。

 

え?僕?ほら、死ねばリセットだから。そのうち慣れるって。

例えば空腹とかそういった感情に、ね。あと自らの死体とかよく見たし、しょうがないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとしきり頼んしだ頃には夕方になっていた。時間が経つのはやいね。

 

(むぅ、ホラーに連れていかれた時はどうしたものかと思ったよ。葵さんや悠希は平気そうにしてるし、悠希は苦手だったんじゃないのか…!俺が怖がってたから平気ってか!?ぐぬぅ…)

 

 

「楽しかったな、けっこう」

 

「俺はホラーアトラクションに乗せられた時は大変だったよ」

 

ま、まさかあそこまで苦手だとは知らなかったからなぁ…。乗るまで怖いかどうかなんて分からない!とか言ってたし、てっきり平気なのかと思ってた。

うぅむ、苦手ならそれらしいこと言ってくりゃ乗らせんかったのに。

 

「まあ、次からは言ってね。湊さんだけ置いてく、というのも酷いかもしれないけど、楽しめないんじゃよくないからね。あ、なんなら最初に僕が見てこようか」

 

「……ある意味凄いね。男前すぎない?」

 

 

(いや、こいつの慣れはおかしすぎるから別に俺やお前が普通なんだって。俺だって苦手なのを湊は知ってるはずだろ?)

 

んー、そうでもないと思うけど。

それにさ、出てくるのは機械か生身の人間だよ?何を驚く必要があるのやら。

一番怖かったのは死んでも死んでも生き返る僕だっての。ゾンビかなにかか。……訂正。記憶とかもろもろ引き継ぎだからコンテニューできるプレイヤーでいいや。

 

 

「そんなことないよ。ほら、雰囲気が分かれば入りやすいでしょ?」

 

「……た、確かに……」

 

あ、うなりながらだけど納得してくれた。僕にも丸めこみができ「先に注意しておくと、彼女…いや、こいつのホラーへの耐性はハンパないからな。1人で入れても真顔で出てくるレベルだから」

 

「うわ、なにそれスゴイ」

 

 

(うん、想像してたが、棒読みになってるな。そりゃそこまでのホラー耐性持ちって早々近くにいないし。今の湊の気持ちが分かる気がするよ、ほんと)

 

 

「ホラー耐性ハンパないって言うけど、そこまでないからね?ただそこら辺のホラー程度なら一服つけるほどに平気ってだけで」

 

「それを世間一般ではホラー耐性のすごい人っていうんだよ、葵さん…」

 

「葵の場合、無自覚だからしょーがないな」

 

い、一体これのどこが無自覚なんだろう。これが全く分からない。

 

「…そうやって悩む姿を見ると本当に無自覚なのかな、って思えてくるね。本人にとってそうだとかそうじゃないとか関係なく」

 

「はいはい。……ほら、車乗るよ?」

 

「へーい」

「分かった」

 

 

という流れでそれぞれの家に送り届けた僕は家に帰った。

次の日、ラ○ンで“え、あの札束なに!?”なんてきてたけど、そんなに驚くかな?

うーん、あれはお詫びなわけだし、普通に受け取ってくれるようにとお願いした。

…小さめな庭で喫煙中にまた来た。受け取ってってば。

 

 

“そういうのは受け取るんだよ。それでも君にとって申し訳ないって思うんなら宝くじに当たったとでも思ってよ”

 

“う、うーん……わ、分かったよ。受け取る…”と来てから返事が来なくなった。

謝罪の気持ちなんだから、そういうのなしで受け取ってほしかったけど…真面目なのかな?彼。

なんて考えながら僕は2本目のタバコに火をつけた。



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if7話 秋+芋=がしたい愛煙家の不老不死

かなり短めです。


秋が近づいてきたからって小さめな庭で焼き芋を作ろうとしていたら、女性の姿が見えた。

 

という少し年老いたその女性って……か、母さん!?

 

 

「あらぁ?今日は掃除も終わったから暇だし、なんとなく散歩しようとしたらあおいと会うなんて。珍しいこともあるものねぇ」

 

 

珍しすぎるわ。それこそビックリするほどに。

 

 

「それで、落ち葉を集めてるってことは焼き芋でも作るのね?なら、つい先日買ったこの安納芋を使うといいわ」

と言いつつ、母さんがうっすらと紫色の少し太くて長いものが入ってると分かるビニール袋を差し出してきた。

 

「あ、ありがとう……」

 

受け取れ、と言わんばかりの渡し方につい受け取るとニッコリ笑う母さん。

お、同じ女性なのに母親と来るとこうも圧力が違うのか……。なにが違うんだろうな。

 

まあ、いいか。とにかくありがたく焼かせてもらおう。それがいい。

さて、そうとなればアルミホイルでつつみに行こーっと♪一服なんて後回しにしてでも焼き上がるのを待たなきゃな。

あ、ついでに間違えて自分も焼かないように気をつけないとね。前科持ちで、看護師の紫苑(しおん)に注意されてるから。

 

 

「そりゃあ、僕だって眠かったんだからしょうがないさ。それに焚き火が暖かそうな布団みたいなものに見えるのは自然現象だろうに。ケチだよなぁ」

とか呟きながら僕はもらったばかりの芋を手に、せかせかと焼き芋の準備をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチパチ

 

心地よい焚き火の音をバックに……待つのが長く感じるから早く焼けないかな。

いや、確かにさ。早く焼く方法なんて他にあるだろうけどね?やっぱりたまになら落ち葉で焼いて食べたるなるのも分かるよね?ね?

 

「……お前ん家から良い匂いがすると思ったら焼き芋でも作ってるのか?」

 

 

振り向かなくても分かる、悪友の声。

僕の家からさほど遠くないとはいえ、来たのはコンビニでもよろうとしたのか。

 

 

「なんだ、悠希か」

 

「え?悠希違いだろ?」

 

「どこからどう見ても橘悠希でしょ。人違いみたいに言うんじゃないよ」

 

それを聞いてなのか、笑い声がする。

試しに振り返ったら少し日焼けした、黒い短髪の青年。というか悠希(あくゆう)

秋だからかフード付きの長袖を着ている。チラッと見える半袖はキャラシャツか?…まあ、長袖でほぼ見えないからいいとして。

 

 

「え?その方が面白いだろ?ってなわけでふざけた。因みに焼き芋って半分貰ってもいいか?」

 

 

(案外からかいがいがあるしな。やっぱりボケるにはツッコミがいなきゃな。友人らにはツッコミがほとんどいないし、苦労してるだろうがな)

 

 

「え、えぇー……確かにそうだけど、君の友人には君みたいな人が多いじゃないか。むしろツッコミが少なすぎて追いつかないよ。それこそ一服しにくいほどに」

 

「いやぁ、それほどでも」

 

「褒めてないよ!?」と大きな声で言ってから僕はため息をつく。

刹那主義というわけじゃないし、そこまで考える必要はなさそう…というかするの面倒だし。

 

 

っと、そろそろ焼き上がるかなー。

 

「へぇ、火だけ消すって葵もある程度焼いたら余熱で残りに火を通すタイプなんだな」

 

「あー…そうか。悠希もたまに食べるんだったね。今回とかは別だよ。少し良さそうなのを選んで贅沢に焼くだけだし。いつもは買ってるからなんとも」

 

 

(あぁ、なるほど。普段は買うタイプか。あっちもあっちでたまーに美味しいのがあるし、楽だからいいよな)

 

 

ん?そういえば珍しく悠希が肩下げカバン持ってるな。

どこかへ遊びに行く予定だったとか?

 

「んじゃあ、待ってる間遊ばね?」

と言って小さめな庭から入れる居間の方を指さす。

 

「…スマフォとかのゲームじゃダメ?」

 

「ん?別に構わないぞ。ちょうど数十分ほどは時間をつぶせるようなものがいいだろうし」

 

その後20分近くはスマフォゲームとかをしてたんだけどさ。あれ?

僕、一服するの忘れてない?

 

 

……ま、いっか!

その後、悠希と一緒に焼き芋を食べてから湊さんと遊○王をしている今日暇な人を1人呼んで遊んだ。

後半無双してる奴がいたせいで、一服するひまもなかった。というか違うゲームもしたから結局は楽しかった。

ふぅむ、また今度なにかしらでゲームとか仕入れておくか。

 

冬はとある場所にも行くし、資金調達はしておかないとね。

よし、色々とやらかすぞー。



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if8話 不老不死としての日常は

7徹とかやったり、いつも以上の仕事の依頼を受けたおかげでだいぶたまった。

家賃はそもそもないとして、払うもの払ってもかなりの額が手元に残る。

 

理由は簡単。質素すぎる生活をしたから。死ねばリセットなんだから楽だったよ。

…なんだけど、最近妙な感じがしてる。どうしたんだか。

 

 

ま、僕の思い違いかな?

 

「さあな、俺には分からんぞ。…というかそれって分かるものなのか?」

 

ん?あれ?返事がある…………あ、悠希か。

 

「おーい、忘れるには早くないか?31歳。もうすぐで冬眠でもするのかー?」

 

「冬眠なんてしないよ!?」

 

 

(うーん、お泊まりすること増えるってこと言ったが、この感じだともう忘れてそうだな。寝ぼけてたときに教えたのがあだとなったか?まあ、それはそれで仕方ない……ん?こいつ、いつもなら寝ぼけてる最中に言ったことを忘れたことなんてあまりなかったはずだが)

 

 

にしてもなんで悠希がいるんだっけ?

朝方に話をしたような気もするけど、すっごく眠かった以外覚えてないや。

 

まあ、僕が家にあげたぐらいは覚えてるんだし、友人関係なんだから危険ではないでしょ。

 

 

「んでさ、今日なにするか覚えてるか?朝、言った内容のついでに教えておいたはずだが」

 

「え?なにそれ、初耳だよ」

 

「えっ?」

 

僕もそれに対し、「えっ?」としか出ない。あれれー?おっかしいぞー?

……あ、今の恥ずかしいかも。

 

ともかく、なんの話だったっけ?

 

 

「ねえねえ、なんの話だっけ?覚えてないんだけど」

 

 

(わりとマジで覚えてないとか不老不死のこいつにしては珍しいな。記憶力云々はともかく、これじゃあまるで普通の人間だな)

 

 

「とりあえずな、今日と明日俺がいるってのと、○戯王やらモ○ハンやらやろうぜって話だ。ガンプラとかはやりたくなったらって感じだな。んで、料理は少し俺もやらさせてもらうとか話したはずだが?」

 

「いや、それ長いわ。いつもそれを寝起きで聞いて覚えてたとか色々と僕おかしいね」

 

「自分で言うのかよ」

 

そうだよ、言うよ。

なんて考えながら僕は未だ笑う悠希を見る。……でも確かに我ながらおかしなことになってるねぇ。

もしかして皆と一緒に歳をとるとか?まっさかー。

 

そんなの天地がひっくり返ってもないだろうね。…とは思いたいんだけど。なんかそうとは言っていられない気がする。特に自作のお酒飲んでから。

自作のお酒、と言っても梅酒だから作ったとは言いきれないんだけどね。

 

 

「んん、とにかくそういう話だったんだよね?」

 

「そうだな。まあ、今うだうだ話しててもなにもないしな。やろうぜ」

 

「はいはい…」

 

と言って立って準備を始めたのはいいけど、モン○ンってPSPかPS4なのか聞きそびれてしまった。

別にあとでもいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

そのあと、夕方まで決闘したり、人間やめたハンターという名のプレイヤーとして一狩りしたりと楽しく過ごした。途中VRの存在がバレて独占されたりもした。

むう、僕の楽しみなんだぞ?それ。

 

 

「というかいつまでやってるつもりだい?…いやまぁ、譜面覚えられるから別に困らないんだけどさ」

 

「なら別にいいだろ?っていうかこれ以外にもあるのか?」

 

そのゴーグルで見えないだろうけど、頷いておく。「あるよ」とだけ。

 

「へぇ、マジか。明日か今度にでもやらせてくれないか?今度俺もゲームとか持ってくるからさ」

 

「んじゃ、PSPでオススメの宜しくね。君がやってる間の暇つぶしになるような、そんな感じのをね」

 

ん?頷くだけって……あぁ、曲を選んだのか。なら仕方ないか。

というか、だいぶハマったんだね。

 

 

 

 

ちなみにそのあと、僕が「そろそろお昼にしようか」と言うまで休憩もなしにビー○セ○バーを楽しんでいた。

よくもまあ、腕が疲れないもんだ。例えコントローラーが軽いんだとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……お昼にしよう、と言って冷蔵庫にあんまり食材がないのを忘れていた。ついでにインスタントもほとんどない。

しょうがないので、2人で近場のスーパーで適当に買い、作ることになった。

 

悠希が一番面倒なソースを作り、僕は麺を茹でつつ簡単なサラダを作った。

まあ、半分で売られてるキャベツを千切りに、キュウリを乱切りとかそんな感じ。

ミートソース(手抜き)なら、普通に合うよね!みたいな雑に決めてたりするのも手抜きがゆえ。仕方ないね。

 

 

「ふぅ、普通に美味しかったな。やっぱりよく食べるやつの方が失敗しないもんな」

 

「そうだね、よく見るメーカーのを選んでたからね。プロテインだね」

 

「いや、プロテイン関係なくね?!」

 

(って俺がノリツッコミしてどうする!)

 

 

ふふん。いつもボケる側の人間にツッコミをさせると楽しいね。

してやったり、という顔を悠希に向ける。…半目で返してきた。

たーのしー!

 

 

…………なにしてんだ、僕は。

 

「…それは別として。とりあえずまた今度も健康診断するんだろ?そん時に聞いとけばいいんじゃないか?」

 

「あ、すっかり失念してた。そういえばそういう手で確認できたんだったね。ま、なんとかなるでしょ」

 

大丈夫、と楽観視していた僕はそのあとは普通に知り合い呼んだりして遊んだ。

そんな普段通り暮らし、その翌月。僕はある意味重大事実を知ることになった。



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if9話 一度あることは二度ある

健康診断で不老不死でなくなったと聞いてからかなりたった頃。僕は実年齢115歳になりましたありがとうございます。体的には95歳らしいけど、いまいち分からないねぇ。

 

というか年甲斐もなくふざけたりしたから子供や孫達に呆れられたりもした。酷いよね?

両親が亡くなったり、友人らに先立たれたりと辛いことあったんだからさ、気分をあげようとするのは無理もないじゃん?ねえ。

 

 

「まあ、夫も生きてるだけマシかな?」

 

「あっ、お母さん。自室でなにしてるの?」

 

「えっ?かつての相棒を愛でてるだけよ?」

 

 

(…どう見ても遊○王のデッキケース…。いや、お母さんは前からこうだったから今更気にしても負けな気がする)

 

 

今はもうほとんど遊ばないのだからしょうがない、としてもらうとして。

なにせ相手もだいぶなものだし、仕方ないものだからねぇ。逆に僕は最初の頃こそ…いや、今もか。加齢に喜ぶバカだからね、どうしようもないね。

 

「えーと、それはいいとして。お母さん、そろそろ孫が来るんだって。楽しみだね」

 

「あらぁ、そうなの。確かに楽しみね。なんならその時のご飯、はりきっちゃおうかしら」

 

「無理はしないでね?……って言っても体内年齢がほぼ20代のお母さんなら平気か」

 

「ええ、任せてちょうだい!」

 

(…だ、だいぶはりきってるなあ。というか本当に元不老不死だったの?原因不明でなって、それが治るとか夢物語みたいだけど。いや、色々と他の人との相違があるからありえる……の、かな?なにかとおかしいような気がするけど)

 

 

呆れたような眼差しで見られてるような気がするけど、気にしない。

なにせ呆れられる自覚もあるし。

 

そのあと、いつもの通りに料理してみたり、来るであろう孫となにをするか悩んだりしていた。

ただ、病魔はそれを許してはくれなかったみたいだけどね。仕方ないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからしばらくたった。というか数ヶ月とかその辺りじゃない?

入院生活って暇すぎない?

 

「橘さん、退屈なのは分かりますがわざと“徘徊してるのよ”って言うのはやめてください。まぎわらしいですし、貴方のは徘徊でなく散歩って言うんですよ?」

 

「その方が楽しいからよ。ほら、私っておばあちゃんになったわけでしょ?」

 

あれ?なんでこの子、呆れてるのかな。というか半目で見てきてる?

うーん、今のはさすがに分からないぞ。

 

「……な、なにかと違うような気がします。ところで今のところお加減はいかがですか?」

 

「えっ?元気も元気。治ってきてるんじゃなくて完治しましたって言われても今なら信じるほどよ?」

 

「それはよかったですね。ただ…ですね?徘徊でないのに徘徊とおっしゃるのはやめてください。困惑する看護師のがたくさんで私にしょっちゅう聞きに来るんですよ?」

 

 

あ、そうか。水瀬紫苑になにかと僕ののことを教えて貰ってた人だからその分他の人から聞かれるのか。仕方ないね、頑張れ。

たぶん、天神陸から教えて貰ってた人もそうだろうね。こっちも他人事だからこそ頑張れ。

 

なんて思っていられたのは、今日までだった。なにせ夜におぼろげで、もうほとんど覚えてないけど色々あったらしいから。

うぅん、なんか凄いことになったなぁ。いや、他人(ひと)事じゃないんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夫、子供3人、孫2人、友人1人が看取りに来た。

友人は夫が呼んだのかな。そう思うことにしよう。

 

「ねぇ、悠希……最期に煙草、いいかしら?」

 

「ああ……」

と言ってタバコの箱を取り出す彼。医師1人、看護師1人もいるけど止めに来ない。まあ、別にこれぐらいはね?

贅沢させてほしいもの。

 

 

「ったく、悠希。お前だって急ぎでもライター持ってきたんだろう?まあ、俺的には葵さんに色々してもらった礼もあるからするけど」

 

「素直じゃないね、湊さんって方は」

 

そう言われた彼は少し気まずそうに、スネたように頬をふくらませた。

微笑ましくて笑ったら皆も笑った。

 

ああ、これはこれでよかった。

一服をもらい、少し吸ったところで灰皿で消した。贅沢だけど、もういいかな。

 

 

 

 

 

それで、なにか言われたり、見られてる中眠りについた僕はもう二度と目覚めることはなかったーーー

 

ーーーバサリ

 

 

 

 

うおっ!?なんだ!?なんか久しぶりに跳ね起きた気分だよ!?しかもなんか懐かしい感覚!こう、暗闇から這い上がったとかそんな良くわからないやつ!

…ってアレ?横を見たら、普通に皆いるし……うん、ひとまず無かったことにしよう!さあ、やり直しとして布団に入り直そう。たぶん自分の死体が僕の下にあるだろうけど、この際気にしない!

 

「おーい、葵。なんで布団にまた入ろうとする?というかお婆ちゃん…いや、どっちもお前か。ともかく上にいるせいでもりあがってるんだから分かるんだぞー」

 

「お、お母さんが死んだと思ったら若い女の人がでてきた……!?私もなにを言ってるのか分からないけど、なんか凄いことになってる…!」

 

「いや落ち着けって姉ちゃん。きっと夢かなんかだからつねれば覚める」

 

「お姉ちゃんどころかお兄ちゃんも…。あたし達に言ってたじゃん。ねぇ?」

 

孫に同意を求めてどうする。

…え、女の子も男の子2人も真面目に聞いてたの?余計に出ずらいじゃん。

というか悠希と末っ子だけ落ち着きすぎじゃない?

 

 

 

「…不老不死ってまたなるものでしたっけ」

 

「……さあな。俺には全く分からない。というか天神さんも予想はしてなさそうだな…」

 

って悠希に布団めくられたんだけど!?

 

「うん、やっぱりお前だな。というか20代近くの葵を見るのは久々だな…懐かしい」

 

……あー、うん。デスヨネー。

んでもって僕は年寄りだった頃の遺体の上にいると。

どーゆーことなのー!って叫びたいのは僕だけであってほしい。ほんと。

 

あぁ、これからどうなるんだろうな。

心の中で遠い目をするしかないな、と考えた。というかこういう時の反応の答えを急募したい。

そんな僕はとりあえず顔をそむけることにしたのだった。現実逃避ってやつをしたくなったから。仕方ないね。うん。仕方ない。



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番外編
番外編 不老不死達は(篠崎葵視点)


僕こと篠崎葵と篠崎(あかね)は兄妹。

僕は白髪混じりの黒髪を肩より少ししたまでのばしている。日焼けしにくい体質のせいですぐ赤くなるのがネックだと思っている。大体身長は154cmだったはず。

んで、兄さんは身長170cmジャストの着痩せタイプ。手入れが面倒ってだけの理由でおおよそ半年に1回はその黒髪を切ってる。日焼けしても赤くならないのが羨ましい限り。

 

 

 

まあ、それはさておき僕達がある程度育った頃、お互いが不老不死な上にまさかのどちらも一度しょうもない理由で死んだことがきっかけで分かったという、なんだかこの世は理不尽だなと思ってしまった出来事から5年がたった。

僕は17歳から22歳に、兄は18歳から23歳になった。というか見た目変わらないから20代でいいんじゃないかと思う今日この頃。

 

そりゃ僕と兄さんは不老不死だから見た目が変わったらおかしいね。

……うん、当たり前だったわ。

 

 

 

「というわけで僕達は20代と名乗ろうと思います」

 

「いや、実際に私と君は20代だからな。むしろ10代後半でも通じるんじゃないのか?…あとなにが“というわけで”なのやら」

 

すっとぼけた表情をしてふざけたポーズをしてみる。これが返事だっ!

 

「おいおい、お前ん中だけで話をまとめられても困るぞ?むしろ葵。……いや、妹よ。私がいつもツッコミに回るとは思わないことだな」

 

「な、なんだってー!」

 

 

(分かってて言ってるだろ、こいつ。むしろ俺以外でこうふざけるのは友人相手だけだし、しゃーないの…か?)

 

うん、まあ、呆れたような表情になるのも仕方ないね。一応やる相手は僕も考えてるし、セーフセーフ。

 

 

「さて、それはさておき…家の掃除でもするか?」

 

「あー……そうだね、やらないとね」

 

 

2階建ての一軒家。

間取りは1階が玄関より右手に寝室扱いの和室、前にリビング、左手にはトイレ。居間には台所と小さめの庭に行ける少し大きめな窓があるぐらい。

 

階段をあがればすぐ左に洗面所込みの風呂、少し歩いて部屋、正面に部屋がある。ベランダ、ロフトに行けるから便利っちゃ便利かな。…趣味のものが多いのはしょうがない。

 

(ま、主にやるのはベランダとロフト以外なんだけどな。あ、風呂もか)

 

 

「ひとまず私が朝飯適当にちゃちゃっと作っとくからさ、お前は洗濯頼むわ」

 

「はいはい、分かったよー」

と言いつつ手をヒラヒラと振りながら僕は現在いるリビングの出入口付近にある階段から2階へ。洗濯機は2階だからね、仕方ないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全部終わらしたので、僕は兄さんにちょっかいをかけることにした。というか、少しイタズラをした。

しょうもないけど、部屋に入ったら死んだフリをしてるだけ。

 

「ほんと、なにしてんだか」

 

「死んだフリ」

 

(そりゃどう見ても死んだフリなんだ、うけどな。……やれやれ、葵がリストカットやらなんやらしてた頃が懐かしいね。そのせいで左手に縦やら横やらの傷が残ってるけど、もう仕方ないだろう。ま、それはさておき何回かやってるんだ。血のりを片付けるの大変なことぐらい知ってるだろ)

 

 

…いい加減立つか。血のりとか落とすの大変だし、面倒くさいし。

“ならやるな”って言われたけど、たまにやりたくなるから仕方ないね。

 

あ、ため息つかれた。

「……そうか。とりあえず片付けて、朝飯食べるぞ」

 

「分かった」

 

そう言ったあと、頷いた。

ひとまず一番面倒な血のりとかの処理からし始めた。ありがたいことに兄の茜も手伝ってくれたからお礼を伝えたら「へいへい」と軽く流されたけど、優しい。やっぱり兄さんってそのうちモテるんでは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出てきた朝食は白米、たくあん、たまご、みそ汁とシンプル。これは最後にたまごをかけろって意味かな?

 

「朝はこんなんでも足りるだろ」

 

「そうだね。んで、朝から茜は大盛りときた」

 

「ほら、私はちょうど食べ盛りだからな。仕方ないだろ」

 

食べ盛り……なのかな?

いや、確かによく食べる影響かやたらと身長が高いけどさ…。もう僕も君も高くならないんじゃないの?不老不死になっちゃったし。そこのところどうなんでしょ。

 

「……そんな半目で見なくても、だな。意外と成長期がまた来たりするかもしれないって不老不死が期待してもいいだろうが」

 

「はいはい、そうですねー」

 

 

(まったく、こういう時は軽いんだよな。というか楽しみの一つぐらいはいいだろ。というか何故に半目?)

 

 

 

 

とりあえず、ある程度普通に食べ進めた。僕は見て考えてたことをそのまま言った。

 

「食事の呼吸 壱の型 卵がけご飯!」

 

「静かに食べれんのか、お前は」

 

 

(いくらハマったからって影響を受けすぎだろ、こいつ……)

 

とりあえずサムズアップしておこう。

 

「いいんじゃないかな」

 

「いやあのな…………まあ、いいや」

とまで言うとため息をつく兄。

ハマったら影響をすぐに受けると言うのは昨日今日の話じゃないはずなんだけどね。というか兄さんも一人称“俺”から“私”に変えてるし、なんの影響って聞き返したいほどなんだけど。

 

 

「んで?明日遊びに行くんだろ?」

 

「そうだね、兄さんも一緒に行くんだよ」

 

さも当たり前のように答えたら兄さんが目を丸くした。あれ?伝えてなかったっけ?

 

「……いつの間に“俺”も含めた?」

 

「えっと、そうだね。遊びに行こう、という話が出たころには名前があがってたね」

 

(マジかー……。決まってるならしょうがない、か。ま、でもふざける奴が多いからツッコミがいるにこしたことはないだろうし、いいか)

 

呆れたように半目で見てくるけどか、気にしなーい気にしなーい。

家に引きこもるよりはいいし、なによりツッコミに困らない!いや、相手によっては僕もツッコミか。

 

「ま、というわけで兄さんも準備してクレメンス」

 

「さらっと外国語混ぜんな。…あー、はいはい。分かったよ。行けばいいんだろ?」

 

「おー、話のわかる兄さんは好きだぞー?」

 

(…こいつ、現金だな…。むしろ呆れ通り越して感心するよ)

 

 

おーおー、半目で見てくるねぇ。ふざけたりなんなりするのはもう今さらじゃないよ?

ま、兄さんに恋人が出来たら退屈しなさそうだね。もちろん相手が。

 

「とりあえず行くんだろ?なら準備するぞ」と呆れたようにいう兄さん。準備が僕より早いのだからそういうのも当たり前か。

ってか兄さんのことチラ見してたけど準備早!僕も急がないと!

 

 

いつもより急いで出かける準備をした。



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番外編 不死身兄妹達の平穏な日々(篠崎茜視点)

……急いで準備して忘れ物しそうになった自分の妹を見て、急かすんじゃなかったかなと考える俺だった。

 

はい、どうも。とりあえず誰へとでもなく自己紹介しとこうと思う。

俺は篠崎(あかね)。ちょいと名前は女性ともとれる中性的なものだけど、気にしないでくれ。

んでもって、兄妹共に原因不明の不老不死と来た。“うわー、ゲームみたいだなー”とか適当に考えた俺と違い、妹の葵は酷かった。

 

 

……と、関係ないからそれ以上は黙っておくとして。俺は火を出せる。

日常生活でも意外と役に立ってな?俺の知り合いに喫煙者がいるんだが、ライターを忘れた時には火をつけてやれたり、家では食材を少し炙りたい時に使える。便利だぞ、この能力。

 

だからっていつも使えるわけじゃない。今日みたいに葵達と遊びに出かけるといらなくなる。そもそも用途が限られてるからしょうがないとしか言えないけどな。

 

 

「やっほー、悠希と一ノ瀬さーん!」

 

「そこはまだ“おはよう”だろうに……」

 

というかそんなに元気よく右手をふってて葵は疲れないのか?と俺は思ってしまう。

 

んで、今葵が呼んだ1人目の名前は“橘悠希”という男友達だ。

そうだな…だいぶ落ち着いた感じの服ばかり着ている奴で、短い黒髪とかよくいる感じの人間だな。肌がやや日焼けてるが、それはそいつの友人とか俺が原因だな。だが、反省も後悔もしてない。

 

 

2人目は“一ノ瀬湊”という奴だな。こいつも男友達ってとこだ。

基本的にこっちは悠希ほど髪を短くしない。あっちが坊主頭からのベリーショートって言えば湊はショートヘアでいることが多めだ。……とは言ったが、女性のショートヘアよりは短いぞ。うん。

 

こっちは服装はカジュアルなことが多いが、本人曰く“オタクとしてオシャレに!”がモットーなのでもう好きにすればいいんじゃないかな。

 

 

 

「よっす、2人共おはよ」

 

「篠崎さん、茜、おはよう」

 

「おっはー」

 

「おう、おはよう………葵、それキラッてやる時のポーズだろ。挨拶違いだ」

 

うん、何故俺にそのドヤ顔を向ける?

 

「むしろ半年も友人として遊んでんのに見たことのあるポーズが今のマク○スとかル○ーシュとか一部だけだからいいんじゃないか?」

 

「そ、それはどうかと思うぞ?……って茜も茜で頭抱えるよりもその子の人見知りをどうにかしなきゃだろ」

 

 

そう言われてもな。

 

(むぅ…これでも兄さんから“お前にも友達が2人できた。だから大丈夫そうだな”って言われたのにな)

 

 

「大丈夫だろ。というか君達も仲良くなれば私とみたいに話せるさ。葵でもな」

 

「もう猫でいいんじゃないかな……」

 

 

悠希だけじゃなく湊すら呆れたような表情を浮かべている。葵の人見知りが酷いのは教えただろ。

これでも良い方なんだ、諦めてくれ。

 

「っと。そんなことより遊園地行くんだろ?行くぞ」

 

「あれ、教えてもらってるのかい?」

 

「教えてもらってないが、葵のことだ。湊や悠希らを連れていくならゲーセンかその辺りかと思ってな。……むしろ私が頑張らないとだが」

 

「そういやそうだったな。頑張れ」

 

めっちゃ他人事だな、こいつ。

 

「まぁ、今日は平日なんだ。多分空いてるんじゃないかな。ね?篠崎さん」

 

「た、たぶん?…というか湊さんなら僕のことを名前で呼んでいいって言ったはずだけど」

 

そう言われて気まずそうにするのはいいが、“いいから”と“やっぱり苗字の方が”みたいなほぼエンドレスなやり取りはさせんぞ。

 

 

「とにかく、もう移動するぞ。電車が混む」

 

「だな。それにバスも混む時は混むはずだからそれはそれで面倒だ」

 

「あー…それもそうだね。んじゃ、行こうか」

 

うん、とだけ言って頷く葵。俺や悠希も納得したところで移動し始めた。

というか集合場所で数分は話してたのか?凄いなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電車とかバスは思ったよりも混んでいなかった。むしろその方が全員座れて助かるが。バスはなるべく近くに座って移動し、電車は端から葵、俺、悠希、湊の順で座って移動していた。

 

 

 

移動して大体一時間弱ほどたった時に目的地の遊園地“ファンタズムパーク”についた。

それにしても時期的なものもあるのか、朝だというのにそこそこ人がいるな。まだ春休みに入ってた方が多いから……うん、マシか。

 

「兄さん、これであまりいない方とか凄いね…」

 

「むしろ花粉症の人がいないことの方が助かるのだが」

 

そう言ったら湊から「いや、もう俺達の中で“花粉症の人がいない”と言えなくなるんだよ」と言われたあとに

 

「どうしてかって?……俺、スギ花粉になったくさいからだ」

 

「うわぁ、この時期に大変だな。よし、湊。今度ゲーセンでガンダムやりに行こうぜ!」

 

「話聞いてなかった!?」

 

「うん、さすがの僕も頑張れとしか……」

 

………ハハッ

 

(驚いたり、遠い目をしたりと表情が忙しないなぁ…。これからゲーセンで遊ぶ時とか大変そうだね、湊さん)

 

「まあ、楽しい話はさておき私が4人分買ってくるからそろそろいいか?」

 

「俺的には楽しい話じゃないぞ?!」

 

「ハハハ、いいじゃないか。ーーーああ、葵ちゃんなら俺らと一緒なら大丈夫だろ?」

 

いや、お前達相手に心配もないだろ……と内心思った。どうせはぐれたりしないし、まだ気心知れた友人だから一緒にいて落ち着くだろうって話だろう。

 

(確かに僕もこの2人とは仲良くなってきたけどさ……。あ、でも一緒にいた方が分かりやすいみたいだし、いいか)

 

……お?なんで呆れたような顔を葵はしてるんだろうか?ふむ、よく分からないぞ…。とりあえずさっさと買ってくるか。

いい加減チケット売り場に人が並んできたし。並ぶ前に買いたいもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5分後、俺は大人4人分のチケットーーー4人分で2万円したーーーを持って葵達の元へ。

おお、話してるのにこっち向いた。いや、誰かが先に気づけば当たり前か?

 

(俺より数センチ高いだけでも普通に目立つとか探しやすくて楽だな)

 

 

「おーい、買ってきたから渡すぞー?」

 

「あんがと」

「ありがとな」

「ん……ありがと」

 

 

上から悠希、湊、葵の順番に返事をしてきた。まあ、中学生の頃からの友人2人なら流れで大人1人分のを渡してくれるんだな。

葵はー…あとで渡してくるだろ。妹ならありうる。というかこの4人で遊園地とか初めてすぎて分からん。

 

そこそこ人が並んできているチケット売り場を横目に俺達は園内へ向かっていった。……といってもチケットにあるQRコードを読み込ませて入るだけなんだけどな?

しかもちゃんとしたのじゃないと通れないところを聞くと凄いとしか思えない。

 

 

(だいぶ前に来たっきりだったけど、平日とはいえさすが五周年なだけあるなぁ)

 

「ふぅん、五周年記念なんてしてたのか」

 

「みたいだね。というか悠希は来たことないっけ?」

 

「ないが?……ってお前らは来たことあるのか」

 

「うん、1人だったり、友達とだったり…だね」

 

「まあ…うん、あるよ。前は家族で、今は兄さんとたまに来てた」

 

俺も葵につられて頷く。

 

「んだな。私や葵の都合のいい時に気分転換として……ね。ただたまに人が多くて困ったことがあるが」

 

ハハハ…と苦笑された。なんだ、俺だって多少苦手なものはあるもんだよ?

 

 

(あ、そうだ。最初はちょっと“楽しい”アトラクションに皆で行こうかな。たぶん兄さんなら気づけるだろうけど)

 

「……ん」

 

「お、どうした?服なんか引っぱって…ってまさか最初から行くのか?確かに良いかもしれんが…」

 

((こいつ)の歯切れが悪い時は大体この兄妹にとって楽しいことだって俺は知ってるからな?)

 

あ、ちょっ。話もしないうちに葵は行くんじゃない。悠希もノリノリでついてくとか分かってるのか?これからコーヒーカップに行くことを。

 

「え?ちょ、どこ行くねーん」

 

 

今の湊の言葉はある程度時間が経って平日なのに増えてきた人々によってかき消された。ーーーというか俺達が聞き流した。



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番外編 不死身兄妹達の平穏な日々2(篠崎茜視点)

コーヒーカップに乗った俺達は……いや、俺は疲れた。なにせ悠希と葵がやたらと回してくるもんだからやばかった。何回俺たちのとこだけブレーキをかけられたことか。

ちなみにその2人は飲み物を買いに行っていて、この場にはいない。元気だな、あいつら。

 

 

「………あー、湊。大丈夫か?無理そうなら次のアトラクション、休んでてもいいぞ」

 

「ハハ…油断してたわ。物によっては考えとくわ。茜こそ平気かい?」

 

適当に手を振る。久しぶりのせいもあってだいぶ来た。

むしろこの時にしかやれないからこそ俺も羽目を外しすぎたのか。実は俺も勢いかけるのに手を出したのがまずかったのか。もはや分かんねぇ…。

 

(うぅん、遠い目をしてる辺り大丈夫じゃないな。茜も羽目を外すときあるとかめっちゃ珍しいわ。……うん、久しぶりらしいから仕方ないかな?)

 

 

「…まあ、なんだ。次のは落ち着いたのに乗ろうか」

 

コーヒーカップに比べて、というのは黙っておくか。反応が見たいし。

それに面白そうだ。…っと、2人が戻ってきたな。横目で、だがその2人の組み合わせが意外と身長差あるし、分かりやすいんだよな。

 

チラ見してる感じからして葵が爽健美茶2本、悠希がジュース2本持ってるな。

 

 

「…うん、だね。っと、篠崎さんと悠希おかえり」

 

「ん、今戻った」

 

「よう、カルピスか爽健美茶。どっちがいいよ」

 

微笑みを浮かべながらの葵に悠希は…おう、元気そうだな。

というかジュースか。今もコーラはあるのかもしれないが、今は飲みたい気分ではないな。

 

 

「兄さんは強制爽健美茶ってことで」

 

「うぇーい」

 

「なら俺はカルピスで。さっぱりした味が飲みたくなった」

 

「んじゃ、俺もカルピスー。葵は茜と同じでも構わないよな?」

 

(この人なら頷いても分かるから頷いておこっと。コミュニケーションが楽でいいな)

 

 

4人かけの席に葵と悠希も座ったところでひとまずそれぞれの前に置いてもらった飲み物を一口飲むことにした。

値段は…うむ、あとで葵から聞けばいいか。

というか人が増えてきたな。時間がたってきたからか?

 

「ひとまず次はなにに乗る?私的にはジェットコースターがいいんだけど」

 

「待った待った。それって落ち着いてなくないか?わりと激しいと思うんだけど」

 

半目で呆れたように見てくる湊が左横に座っているのをいいことに肩に手を乗せてニヤリと笑う。

 

なにを今更。俺が“落ち着いた”とか言って実際にそうだったのは数少ないだろう?ーーー特に俺が笑みを浮かべたときは相手にとって落ち着いた感じのところを教えなかったはずだが。

 

 

(うわぁ……ふざける時はとことん、ってだけあるわ)

 

 

「あ、じゃあ昼食前にさっさと行こうぜー」

 

「んだねー。昼食後でもよさそうだけど、混んでなさそうな今の方がいいだろうし」

 

「さんせー」

 

「なら12時ぐらいに間に合うよう早く行こ?」

 

 

最後に葵がそういった事でなるべく早く飲み物を飲み、向かうことに。

その時はまだ混んでなかったので、すぐに乗れたな。でもさ……一番前が俺と葵って、聞いてないぞ。

すぐ後ろには悠希と湊。かわれよ、みたいな視線を送ったが無理だった。

 

 

とはいえ、普通に楽しかったんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小落下1回、大落下1回だったジェットコースターから降りた俺達は次に乗るアトラクションを探しつつ、少し広めの園内を歩き始めていた。

いや、十分広いか。ジェットコースター、回るコーヒーカップにライド系とかいくつかあるもんな。

 

「楽しかったから次は“上げて落とす”のお化け屋敷でいい?」

 

「テンションを上げて落とすとかえげつねぇ…」

 

「というかお化け屋敷ってここは2ヶ所あったんじゃないかい?子供も泣かないような短いのと本格的な方。もし行くなら本格的な方に私は行きたいんだが」

 

……何故悠希は一瞬俺を睨んだ?

いや、知らないわけじゃないんだが、湊がいるだろ?この4人組の中でホラーが苦手なの、知ってるだろ?

人が怖がってたらいい、と言ったのはどの口なんだか。

 

ーーーかくいう俺は不老不死になってからというもの、お化け屋敷なんて“程度”のものは怖くなんてないんだよな。もっと怖いものは別にあるし。

よし、いつもの通り無視で。お前達と楽しめるうちに楽しみたいってのもあるから強引な手も使うぜ?

 

 

「うん、全員の意見がまとまったから食べ歩きしながら行こうか」

 

「ちょっ、おま」と言いかけた悠希を尻目に湊も「お、興味ある〜」とか言い出した。これで3対1だな?悠希よ。

 

そう思いながら少しばかりドヤ顔を向けたから、今度なにか対戦系でやられるな。うん。間違いない。

ま、それも楽しいからいいんだけどな。そう考えられる相手だからこそ、ってとこだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出たあとは悠希に少し睨まれたり、湊の反応が面白かったりと入ってみてよかったと思ってしまった。

もちろん、あまり入りたくないと湊からのみ苦情が来たが、悠希も葵も楽しめたってことで流された。ま、頑張れ!

 

 

 

んで、その後も色々と回って、買って楽しみまくった。土産も買った。

今後も遊べるかは分からんけど、今を楽しむしかないしな。まだ考えんとこ。先延ばしだとしても、俺達とこいつらとの時間は別だからな。

 

だって、両親や悠希や湊(こいつら)と俺達兄妹の関係はーーー



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