幻想終焉譚 (ゼロヴェルテ)
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1話 [終わりの始まり]

誘うは世界、導くは太陽。世界はそれを忌み嫌い、世界はそれを受け入れた。終わりをここに、始まりをここに。全ては絶望に包まれ、全ては希望に満ちる。

ちゃんとバトスピ要素入ってます。


雨だ。天気予報では晴れるはずだった。しかし、そんなことはお構い無しに滴は突然として地面を叩きつける。どうと言う事は無い。私は太陽にすら嫌われている。それだけの話だ。

迎えが来ている人やたまたま傘を持っていた人、友達と雨宿りをしてる人。それらは全て私とは無縁の生き物だ。ここに来てから人の温もりを感じた記憶はあまり無い。

両親が亡くなってもう二年が経つ。久しぶりに二人だけでドライブに行く。そう言って車に乗り込んだ両親を次に見たのはピクリとも動かなくなってからだ。事故の原因は対向車のスピード違反とよそ見。丁度カーブを曲がった所で正面衝突、即死だったそうだ。

その後の私はというと、父方の祖父母は既に介護が必要な状態、母方の祖父母は三年程前にどちらもなくなっている。そうなった時必然的に母の妹の奈々子さんに引き取られた。

奈々子さんは言い方を悪くすれば母に借りがあり、断るに断れない状態だったのも大きいと思う。奈々子さんは既に結婚、今年で中学一年生の香苗ちゃんもいる。そんな平和な家庭で私と言う存在はただの邪魔者でしかなかった。

食卓を囲む事は勿論許されない。食事は一応は作ってもらっているのでそれを部屋に持っていき一人で食べるとこになる。食器は全員ぶん私が洗うように決まっていて、その他の雑用も全て私だ。年下の香苗ちゃんも私の事は奴隷か何かだと思っているらしく、よく蹴ったり殴ったりとされる。旦那さんは良くも悪くも無関心。

最初はよく泣いていたけど、最近は慣れてしまったのか涙も出ない。救いがあるだけシンデレラの方がまだましだ。私はいつまでこの生活を続ければ良いんだろう?

こんな世界なら私は……。

消えて…無くなりたい

それが叶うならどれだけ良かっただろう?そんなことを考えていたらいつの間にか家に着いていた。なんせ雨に打たれてたんだからずぶ濡れ。はやく着替えて制服を乾かしたい。どうせこの時間は誰もいないんだしシャワーも浴びようかな。

そうやって扉を開けて家に入る。ただいまと言う相手がいない家に──

入ったはずだった。目の前に広がっているのは見たことのない神社。誰かがいる感じはしない。辺りを見渡しても、やっぱり私の知る景色じゃ無かった。

そんな時、後ろから話し声が聞こえる。声からして若い女性二人。恐る恐る後ろを振り向こうとすると、それよりも先に少し驚いた声が聞こえてきた。

「あら、こんな所に人がいるなんて珍しい。明日は雨かしら」

少し意地悪そうに頬笑むメイドさんと、それに対して少し怒りっぽく返している紅白色の…巫女さん?

「あの…ここは?私、さっき家に入った筈なんですけど…ここはどこですか?」

「どこって言われてもねぇ…博麗神社よ。見た感じ幻想郷の住人って感じしないけど。アンタ外来人ね?」

「幻…想郷?それがここの名前なら、はい。私は外来人になるんですかね…。でも、なんで」

「まぁ、その話は追々しましょう。立ち話もなんだし。はやく入りましょう」

「アンタの家じゃないっての…」

メイドさんに続いて巫女さんが神社の方へ歩きだした。未だに信じられないけれど目の前には人がいて、私は地面に足をついている。

「ほら、そんな所で突っ立ってないで。アンタもはやく来なさい」

急に話しかけられたからか思わず大きな声で返事をしてしまった。思えば誰かに呼ばれる事なんてここ数年はほぼ無かった事だ。

「とりあえず荷物はその辺に置いておくわよ?」

「その辺過ぎるわよ。ちゃんと置いておきなさい。はぁ、じゃあお茶準備してくるからその間その子の相手頼んだわよ」

そう言うと巫女さんは奥の方へ行ってしまった。つまりここには私と、メイドさんだけになったのだ。

「自己紹介がまだだったわね。私は十六夜 咲夜。あなたは?」

「わ、私は幕引 心結(まき ここな)って言います」

「心結ちゃん、ね。かわいい名前じゃない」

「ありがとうございます…」

優しそうな人だ。いつしか目の前の人全てが私の事を良く思っていない。そんな風に考えるようになっていた。私は、私が人間だって事を忘れてたみたいだ。

「心結って言うのね。私は博麗 霊夢、ここの巫女をしているわ。よろしく」

「よろしくお願いします…」

「まぁ突然こんな場所に来て色々あると思うけど今はゆっくりしてる暇が無いのよね」

「何かあるんですか?」

「今日は宴会なのよ。だから色んなやつが来るし私達は今からちょっと準備をね」

なにやら大変な日に来ちゃったみたいだ。

「と言ってもテーブル出して少し料理つくるだけだけどね」

「あ、それなら私も手伝いますよ」

長年の癖、という訳じゃないけど目の前に仕事があるとどうしても飛び付いてしまう。一通りの家事をこなせるという意味では感謝こそしてはいるけども。

「そんな、悪いわよ急に…」

「あら良いじゃない霊夢。せっかく手伝ってくれるって言うなら手伝って貰いましょう」

そう言って咲夜さんは奥の方へ行ってしまった。霊夢さんが呆れた感じで何かを呟いたのが聞こえたのか聞こえてないのか、少しこっちを向いて 手を振っていった。

「……じゃあ手伝い、お願いするわね」

「はい!任せてください!」

これが私のこの世界ではじめての仕事だった。

 

「よう霊夢!昨日ぶりだな!ってか誰だコイツ」

黄色い髪の毛の人だ。他にも色々な髪の人がいるから多分この世界では髪の色は沢山あるんだろう。

「あぁ、紹介するわね。コイツは霧雨 魔理沙。趣味はコソ泥よ」

「よろしくお願いします。幕引 心結です。………その、人の物を盗むのは良くないですよ」

「あれはコソ泥じゃない。借りてるだけだ」

けっこう真面目な顔なので冗談とかではないと思う。どの程度なのか私は知らないけど少なくとも霊夢さんを見る感じ借りているでは済まない気がする。

「初対面の人に言われたらおしまいですって魔理沙さん。あ、はじめまして。私は稗田阿求です」

「よろしくお願いします…」

短時間に様々な人物と接してきた心結の頭はパンク寸前だった。一度にここまで多くの名前と顔を記憶する事になる事はそう多くはないだろう。ちなみに現在はどっちの吸血鬼が姉だったかすら怪しい。

「あの、後ろの方は?」

「はじめまして。私、八雲 紫と申しますわ。以後お見知りおきを」

胡散臭い。取り繕った笑顔に口調。何一つ信じて良い要素が彼女からは感じられなかった。しかし同時に圧のようなものも感じられる。

「所で貴方、何者かしら?見た感じ特別な力は無いようで貴方の中には秘められた何かがある」

「私はそんな怪しい者じゃ無いですよ…?その秘められた力っていうのも私にはなんの事だか」

「本当に?」

言葉には表せられない圧のような物を正面から受け言葉が出ない心結は首を縦に降る。

「そ。まぁ良いわ。さて、もう少し飲んでこようかしらね」

「あ、気にしなくて良いですからね。ただ酔ってるだけなので」

「先に言いなさいよ。完全に最後怖がってたじゃないの」

「あはは…。それにしても凄い人数ですね。今日はなんの宴会なんですか?」

「あれ、聞かされて無かったんですか。今日はバトスピの大会会場の設営が終わった記念です」

はじめて聞く単語に魔法か何かをイメージする心結とさも当然のように言った阿求。二人の間で認識の違いがあったのは言うまでもない。

ちなみに補足だが心結の世界にもバトスピは存在している。単に心結が知らなかっただけである。

「端的に説明すればカードゲームというやつですね」

「カードゲームなんですか…」

そこまで説明されれば心結もなんとなくわかる。たまにコンビニとかで見かけるあれだ。

「昔は弾幕ごっこというのが流行ってたというか殆どそれしかなかったんですけど、人里でやると危ないという事でだんだんバトスピが広がったんです」

「なんか、凄い事やってたのはわかりました…」

「幻想郷に住むならバトスピはやれた方が良いぜ?」

いつの間にかいなくなっていた魔理沙が片手に串に刺さった何かを持ちながらそう言った。

「そうですね。少し難しいかもしれませんけど住むならできた方が良いです」

そうだ。と手を叩きながら阿求は自分が経営を任されているカードショップに今から行くことを提案する。

「任されてるというより、押し付けられてるんですけどね?」

あの後少し話をした後、心結、阿求、魔理沙、霊夢は宴会を抜け出した。予定と違うのは一人白髪の女性がついてきてる事位だ。

「あの、誰なんですか!?いい加減誰か名前くらい教えてくれても良いじゃないですか!」

もうすぐ目的地につくのだが、面白がって誰も彼女の名前を心結に教えない。後に阿求はつい、かわいくて。と語るが、他三人はなんとなくやってるだけである。

「そうだな。そろそろ名乗っておくか。藤原妹紅だ。よろしくな」

「あ、幕引 心結です。…じゃなくて!なんで名前教えてくれなかったんですか」

「んー?なんとなくだな」

「なんとなくって……」

「ハハハ、悪かったって。少しは緊張も解けたか?」

「え……?」

無自覚ではあるが心結は相当は顔も体も強張っていた。長年の生活のせいもあるだろう。しかし見ず知らずの世界に見ず知らずの人々を前にして最初から打ち解けれる程柔軟な人間は少ない。

「さて、お話の途中で申し訳ありませんが、着きましたよ。憎たらしくも愛らしい第二の我が家、イエローマーリンへようこそいらっしゃいました」

想像の二倍は大きいその建物に心結は驚きを隠せないでいた。周りの家は和風建築の平屋のような家が多かったのだが少し外れた場所にあるとは言え、近未来的で大きな建物は違和感の塊である。

「ビックリしました?これが河童の技術をフル活用した人里唯一のカード専門店です」

「お、おっきいですね……」

阿求は得意気になりながら鍵を開け、中に入るよう促しす。そして駆け足でどこかへ行ったと思えば店中の電気がついた。

「わ、凄い。ちゃんと電気だ」

「なんだと思ってるのよアンタは…」

「ささ、座って座って。とりあえずは基本事項から説明しますから」

説明そのものには然程時間は掛からないのだが右も左もわからない心結に一から教えるとなると様々な疑問にぶつかる事になる。

フラッシュタイミングとはなんなのか、軽減シンボルという概念、バーストとは何なのか等々やっている側からしたら知っていて当然の事ではあるがそれをわからないのが初心者と言うものだ。

それを阿求は一つ一つ順を追って説明する。教えるのが上手いというのもこの店を任された理由の一つである。

「な、なんとなく……?わかりました。多分」

「最初から全部を覚える必要はありませんよ。少しずつ覚えていけば良いんです」

説明している間三人は何をしていたかと言うと、霊夢と妹紅は二人でバトルを、魔理沙はまたもやどこかに行っていた。

「では早速ですけど心結さんのデッキを作りましょうか」

「つくるってどうやってですか…?」

「そりゃ勿論うちのカード使ってですよ?」

「私お金持ってませんよ…?」

「あー良いんです、良いんです。無理矢理押し付けられたみたいなものです。たまには経営者の権限で自由にしてやりますよ…」

見えはしないが阿求から黒いオーラが出ている気がした心結は掛ける言葉が見つから無かったのかとりあえずの苦笑いで返す。

「さて、とりあえずカードでも見ましょうか。何色が好みでした?」

「好み…というかなんというか。なんとなくですけど、赤を使わなきゃいけない気がするんです」

「なるほど…。赤コーナーはこっちです、ついてきてください」

少し考える素振りの後、阿求は笑顔で赤のカードを置いている場所まで心結を案内した。

「ここがいわゆるXレアが置いてある場所ですね。気になるカードはあります?」

想像以上のカード量に心結は心を奪われているため、気になるカードを探す余裕はあまり無い。しかし運命なのか定めなのか。心結はとあるカードの元へ無意識に歩きだす。

本人にとってはなんて事はないただの移動だ。沢山カードがあるからちょっと場所を変えただけ。そんな何気ない行動は心結だけでなく幻想郷の運命を背負うものとなる。

「これ……この子。私、この子が良いです」

「どれどれ…?あぁ、太陽神星龍アポロヴルムですか。丁度昨日3枚入ってきたんですよ。それじゃあ、記念にプレゼントしちゃいます」

「本当に良いんですか?その、お店とか…」

やはり申し訳なさそうにしている心結に阿求は微笑んでこう返す。

「良いんですよ。何度も言ってますがなんだかんだ私のお店ですから、権限は私にあります。それに…」

それに、何かを新しく始める人の背中くらい押してあげたいじゃないですか。阿求はそう言いながら慣れた手つきでショーウィンドウ、幻想郷では陳列窓と呼ばれるそれの鍵を開けてアポロヴルムを取り出した。

「さて、キーカードはこれで良いとして、デッキはこれだけじゃ無理ですから。他のカードを探しましょう」

そう言って歩き出した阿求に心結は慌ててついていく。その先には同じく赤のカードが展示されていた。

「ここはマスターレアやレアのカード、もしくはコモンカードでも評価が高いカードなんかを置いてる場所ですね」

「す、すごい量ですね……」

「裏表同じ色のがあと二つありますよ」

「そんなにあるんですか!?」

「えぇ、まぁ…色々あるんですよ、色々」

阿求の乾いた目を直視することができない心結とそれに気付いて少し恥ずかしそうに話を戻す阿求。一瞬忘れかけていたが今は心結のデッキを作ってる所だ。

「さて、それじゃあデッキに入れるカードを見ていきますか。えっと、アポロヴルムは星竜でしたっけね」

「あ、系統ってやつですか?」

授業で知ってる単語が出てきた学生のように少しはしゃぎ気味に心結は反応する。

「はい、正解。このアポロヴルムの煌臨条件にも星竜って書いてるでしょう?他にも系統を固めるメリットはありますけどそれはまた今度」

難しい話は慣れてから、一度に多くを教えない。阿求が決めている事だ。

「とりあえず星竜ならこの辺りのカードでも持っていきますかね…。あ、なんか気になるカードとかあったら言ってくださいね」

「あ、はい。でもあまり他のカードはわからないんですよね。どうしてアポロヴルムがピンと来たのかもわからないし」

「直感ってやつですかね。それなら最初の所に戻りましょうか。あの辺に高額つけられないカードまとめて置いてる場所あるので」

阿求は一つ気掛かりな事があった。それは心結が想定よりこの世界に馴染んでいる事だ。多少の緊張はあったが大体の外来人は妖怪が存在している事に驚きを見せた。それ以外にも話を聞く限りでは心結はこの世界に不自然に馴染みすぎている。

まぁ、悪意は感じられないからそこまで気にする事でもないかな。

そんなふうに思考を巡らせていたらいつの間にか目的の場所についていた。

「お、戻ってきた」

「あら、バトル終わってたんですか」

流石に終わるだろ。そう言いたげな目線を向けられてる事は阿求も知っているが特に気にしていない様子だ。

「あ、霊夢さん赤のストレージ右から三番目取ってください」

「てことは赤を使うのか。赤は良いぞ~」

「妹紅さんも赤色を使うんですか?」

「そうですよ~。燃え盛るを射手座に愛でられたのが彼女です」

「はい、持ってきたわよ。で、なんでこの箱なのよ」

「ありがとうございます。この箱に星竜のカード入れてるんですよ」

見たものを忘れない。阿求がここを任せられているもう一つの理由だ。

「へぇ、星竜使うのか」

「はい。この子…アポロヴルムが使いたくて」

「へぇ、良いわね。そうやって使いたいカードがあると楽しいわよ」

「はいできましたよ」

二人が話をしていたわずかな時間で心結用のデッキを作ったという。信じられないという顔で霊夢はデッキを見てみる。

「うそ、本当にちゃんとなってる…」

「私なんだと思われてたんですか…」

「お、デッキできてる!心結のやつか?これ」

今までどこに行っててどこから戻ってきたのかわからないがタイミング良く魔理沙が戻ってきた。

「デッキができたらやっぱバトルだよな!心結!阿求とやってみたらどうだ?」

「私は嫌ですよ。自分で組んだデッキと戦うのも味気ないですし」

「んだよノリわりぃな。私も今デッキ弄ってる最中なんだよな…」

「じゃあ私が相手になろうじゃない」

霊夢が名乗りを上げた。それに反対するものは勿論いない。

「それじゃあ早速始めましょうか。まずはデッキをシャッフル、そのあとにここに置いて」

霊夢はまだまだおろおろとした手つきの心結に説明するように準備を進める。

「よし、準備できたわね。先攻、後攻どっちが良い?」

「せ、先攻で!」

「おっけー。そうだ、バトスピには最初に言う合言葉があるのよ」

「合言葉…ですか?」

「そう。それはね────って言うの。わかった?一緒に言うわよ?せーのっ」

ゲートオープン界放!その声が全ての始まりだった。

 

「それじゃあ、スタートステップ。えっと、コアステップは無くて…ドローステップ、そしてメインステップ」

まだ慣れていない手つきにその場のほぼ全員が懐かしさを覚え和んだ事は言うまでもない。勿論、プレイしている本人を覗いてだが。

「えーとまずは煌星竜スター・ブレイドラを召喚、電岩竜ダイナモドラゴンのアクセル…?を使って一枚ドロー。ターンエンドです」

 

スター・ブレイドラLv1

L5 H4 R2 T1

 

「それじゃ、私のターンね。まず、はっと。コレオンを召喚、十二神皇の社を配置。ついでにリボルコレオンのアクセルを使うわ」

 

エグゼシード・ビレフト、幻魔神、コレオン

 

「ビレフトと幻魔神を手札に加えてターンエンド」

 

コレオンLv2

L5 H4 R0 T3

 

「私のターンですね。えーと、彗星竜サングレーザーを召喚、ネクサス星の砂漠を配置です。そのままサングレーザーでアタック、BP3000以下のスピリット破壊なのでコレオンを破壊して1枚ドローします」

「仕方ないわね。ライフで受ける」

「やった!初ライフです!」

何事も、初めてというのは特別なものだ。バトスピも例外ではない。そのままターンエンド宣言をし霊夢へターンが回る。

 

スター・ブレイドラLv1 サングレーザーLv1

L5 H4 R0 T2

 

「改めて、コレオン召喚、手元にあるリボルコレオンを召喚、リボルコレオンの召喚時効果で幻魔神を左合体、ダイナバーストを使って2枚ドロー、バーストをセットしてリボルコレオンでアタック」

「あー、えっとライフで受けます」

「合体してるからダブルシンボルよ」

 

コレオンLv2

L5 H3 R0 T4

 

「私のターンですね。えーとコアも足りるね。よし、太陽龍ジーク・アポロドラゴンXをLv2で召喚です」

「お、良いカード出てきたな。入れてやったのか?」

「まぁ、おまけってやつです」

少し口角を上げながら答えた阿求はおもむろに立ち上がる。向かう先は勿論心結の元だ。

「えっと、バーストはどれ…?これ?いや違う…?」

「バーストはこれですよ。このマークがあるやつだけセットできるんです」

後ろからそっと阿求が声を掛ける。座ってプレイしている心結に立っている阿求が声を掛けるので勿論阿求は屈む事になるのだが、そのせいで顔と顔が近くなってることに心結が内心動揺していることはここだけの話である。

「こ、これ、ですね?バーストセットします!アポロドラゴンXでアタックします、えっと、まずはコレオンに指定アタック、そしてLv2の効果でリボルコレオンを破壊します」

「残念、リボルコレオンは合体してるから超装甲 赤を持ってるわ」

「超装甲…、なんですか?それ」

「簡単に言うと指定された色のカードの効果を受けないやつですね。今回は赤なのでこちらの効果は無効になります」

「強くないですか!?それ」

「ふふ、そんなもんよ。コレオンでブロック」

「うう、サングレーザーでアタック、1枚ドローします」

「じゃあライフで受けるわ。そしてバースト発動、爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼルを召喚」

「うう、タ、ターンエンドです」

 

スター・ブレイドラLv1、サングレーザーLv1、ジークアポロドラゴンXLv2

L3 H3 R0 T3

 

「はい、私のターンね。エグゼシード・ビレフトをLv2で召喚。ビレフトを幻魔神と左合体。バーストもセットして、バゼルでアタックよ」

「おーおー、容赦ねぇなぁ霊夢、こりゃ大会に向けて温まってるな」

「大会に向けて気合いが入ってるのは皆同じだろ?」

確かに霊夢は大会が近いこともあって最近はやる気に満ちている。と言うのも前回の優勝者が霊夢なので周りからの期待も大きい。それなりに緊張もしているのだろう。

「うるさいっての。バゼルの効果でこのバトル終了時に相手のライフを2つリザーブに置くわ」

「うぐ、えっと…バースト発動、絶甲氷盾です。ボイドからライフにコアを1個置いて、フラッシュ効果を使ってターンを終わらせます」

ちなみにこの処理は阿求が後ろからある程度教えながらやったものだ。

「ターンエンドね」

 

エグゼシード・バゼルLv2、エグゼシード・ビレフトLv2

L3 H2 R0 T2

 

「うう、これはすごくキツイやつなのでは……」

「あら、でも良いの引きましたね」

「ほ、ほんとだ…。太陽神星龍アポロヴルムをLv2で召喚です」

満を持して心結のキーカードが現れる。はじめてキーカードを召喚したためか心結の瞳は驚くほど輝いている。

「あと、砲竜バル・ガンナーをアポロヴルムを合体してアタックです。アポロヴルムのアタック時効果でエグゼシード・バゼルを破壊、バル・ガンナーの効果でリボルコレオンを破壊して1枚ドローです」

「お、こりゃ心結の勝ちか?」

「霊夢が何を持ってるかにもよるけどな」

霊夢は何か言いたげに魔理沙の方を見るのだが、伝わるはずもなく妹紅との話は盛り上がる一方だ。

「それと、界放を使ってアポロヴルムをLv3にして回復します」

「まぁ、そう簡単には終わらないわよね。こちらもフラッシュタイミング、エグゼフレイムでスター・ブレイドラとサングレーザーを破壊。それはライフよ」

「よし、じゃあ続けてアタックです。バル・ガンナーの効果で1枚ドロー、界放で回復します」

「じゃあフラッシュタイミング。ビレフトに超神星の神皇エグゼシード・ノヴァを煌臨。ノヴァの効果でエグゼが付くカードに煌臨したのでライフを5になるようにボイドからコアを置くわ」

「うぐ、また何か出てきた…」

「そのアタックもライフで受けるわ。そしてバースト発動、絶甲氷盾。フラッシュ効果でアタックステップを終了させる」

「ターンエンドです」

アポロヴルムLv3

L3 H4 R0 T2

「さーて、一応情熱サーキットをLv2に、ダイナバーストでドローしてっと、エグゼシード・ノヴァでアポロヴルムにアタック。フラッシュはある?」

「えっと…無いです」

「じゃあそのままアポロヴルム破壊。効果でライフをリザーブに置いて私の勝ちね」

 

「負けたぁ…霊夢さん強いですね」

心結の笑顔を見て霊夢は安堵する。本人も少しやり過ぎたかなと反省はしていたので心結の反応は少し心配だったのだ。

「心結も凄かったわよ?」

「えへへ、阿求さんのお陰です」

「それじゃあ、神社に戻りましょうか?」

ここに、新たなバトラーが生まれた。それだけで良い。今はそれ以上はいらないのである。ただ、それだけで。




誘うは紅き夜。迎えるは夜の鬼。七つの星は羽を休め、太陽は降りる。

できるだけ早めに次回も更新したい……!!頑張れいつかの俺


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2話[紅き夜と太陽]

前回までのあらすじ
降り注ぐ雨の中、絶望に暮れる少女は突如として幻想郷の大地を踏みしめる。バトルスピリッツ、通称バトスピが流行するこの世界で少女の生活は始まるのであった。

追記:前回、超神星の神皇エクゼシード・ノヴァを本来であれば自分のアタックステップ中にしか煌臨させられない所、相手のアタックステップで煌臨させてしまいました。 ごめんね


夢を見た、どんな夢かはわからない。ただ夢を見たという事実だけが残る。ただ一つわかることと言えば誰かに呼ばれた気がした。

「んん、朝……か」

幻想郷に来て数日、心結は阿求が準備した人間の里の家に住んでいる。あのあとすぐに用意をしていたらしく心結はいつの間にかこの家に迎えられる状況だった。

そんな愛すべき我が家の異変に気付いたのは起床から二分程経った頃だ。

「なに…これ。バトスピカード?」

それは突如どこからともなく現れた。先程まで自分が寝ていた枕元には一枚のカードが綺麗に置いてある。

「えーと、銀河…なにこれ。本当に見たこと無いんだけど」

知らないカードに困惑する心結。残念な事に今日は阿求を頼ろうにもイエローマーリンはたまたま休みである。こんなとき、頼るのは一人しかいない。

 

いない…が、そこへ辿り着けるかどうかは別の話である。歩き慣れていないせいか、道には迷い、へとへとになった挙げ句に階段を登るという、別段運動をしていた訳ではない女子高生には拷問に近しいだろう。

「はぁ、はぁ。つら…もーっ、無理っ、死んじゃう!」

「随分と珍しい客人ね。どう?こっちにはもう慣れた?」

「あ…はい、おかげさまで。あはは…」

素っ気ないがどこか優しい霊夢の声に思わず笑みが溢れる。

「そ。そんなとこでばててないでさっさと歩きなさい。なんか用あるんでしょ?お茶くらいなら出すわよ」

その通りだ。道に迷った辺りから忘れていたが心結は確かに霊夢に用がある。

慌てて疲労しきった足を動かし、着いた頃には既に茶は準備されていた。おそらく普段から出し慣れているのだろう、そう思わせる程の手際だ。

「それで?用ってなに?」

「はい、これなんですが…」

心結は今朝気付いたら枕元にあったカードの事を話した。そのカードは霊夢も見たことがないらしく、しばらくカード効果を読む時間が設けられた。

一通り話終わると、霊夢は少し嬉しそうに心結の肩をぽんっと触る。

「おめでとう。そいつはあんたを選んだのよ」

「選んだ…って、どう言うことですか…?」

霊夢が話すには今朝心結が体験した事は霊夢の周りの人物にはよくあることらしく、時にはカードが語りかけてくる事もあるらしい。そして、そういったカードは決まって神格に似たものを宿しており、そのカードに関連するものは決まってその選ばれた者の元に集まるらしい。そのカード達を使い続ける者もいれば使うのを完全に止め全く別のデッキを使う者もいる。

「私はこのカード、午の十二神皇エグゼシードが最初に私の所に来たの。それ以来こいつの別シリーズを使ってるって訳」

「そうだったんですね。それじゃあ、すごく大切なカード達なんですね」

不思議と、その話を聞いていると心がぽかぽかとした気分になる。これがなんなのかを心結はまだ知らない。正確には忘れているのだ。

「そうね、大切なカードになると思うわよ。私も彼の事は大切に思ってるわ」

青いカードを見せながら咲夜はにっこりと微笑む。それがよほど意外だったのか霊夢は少し驚いた表情を見せる。

「ちょ、あんた…仕事は?なんでここにいるのよ」

「実は人を探しててね。自宅を見てみたのだけどいなかったから、その辺を歩き回ってたの」

そう言う割には息は上がっていないし汗一つかいていない。このときの心結はまだ知らないが咲夜とはそういう人なのだ。

「それで?その探し人は見つかった?」

「えぇ、勿論。では改めて幕引 心結さん、お嬢様が改めてお会いしたいと仰っております。紅魔館に決て頂けますか?」

前回会った時とは全く違った様子に心結は驚きを隠せない。

「あ、えっと…い、行きます!」

 

 

妖怪の山を少し歩いた辺り、心結は一つの疑問を投げ掛けた。

「あの、お嬢様…?はなんで私に会いたいって言っていたんですか?」

「宴会の時、覚えてる?」

忘れるはずもない。あれほどの人数と触れあうことはそうそう無いのだから記憶に焼き付くのは当然であろう。

「あのときにお嬢様があなたの事を大変気に入ったらしくてね。是非会いたいと」

やや後で黙って聞いていた霊夢は心結がやや不憫に思えてきた所だ。紅魔館の主、レミリア・スカーレットと言えば、魚座の使い手として知られる手練だ。

あいつが誰かを招くなんて、何か企んでるかバトスピするかのどっちかなのよね。そう心の中で毒づく霊夢だが、今の心結にそれを伝えても意味はないだろう。それを察してか霊夢はあえて黙って見ていた。

少し開けた場所が見える。もうすぐ到着なのかと既に疲労でいっぱいの両足を持ち上げながら期待する。

ようやく休める。そんな期待は、半分正解で半分不正解というのが正しい答えだろう。突然妖精らしきものが飛んできたのだ。飛んできた、という表現は適切ではない。何者かに吹き飛ばされてきたというのが適切だろう。

「ヒィッなにっ?なんか小さいのが飛んできたっ」

「安心して。妖精はあのくらいじゃ死なないし死んでも生き返るわ。それより、ここが紅魔館よ」

その大きさは心結の想像を遥かに越えていた。そして何より先程妖精を飛ばした犯人であろう門番らしき人物に心結の意識は集中していた。

「今戻ったわ。ちゃんと仕事してるようで何より」

「寝てるイメージついてますけど、別に常に寝てる訳じゃ無いんですよ?」

「はいはい。それより、前話した心結ちゃんよ。挨拶して」

咲夜の言葉で気付いたのかやや慌てた様子で心結の方を向きなおし、改めて微笑みながら赤髪の女性は挨拶をした。先程少し感じられた何かは今は微塵も感じられない。

悪い人ではなさそう…かな。ちょっと怖いけど

「さて、それじゃあお嬢様の元へ行きましょうか」

何事も無いように案内される館に心結は言葉にできない不安を感じる。殺気や敵意とは違い、妖怪や妖精からは感じられない何か。それでいて霊夢と咲夜からは感じられる強い何か。とても、とても暗いそれと、近付きがたい気配は館に近付くにつれて着実に大きくなる。

でもなんでだろう。空…からも似たような、それでいて絶対に違う何かが…。気の…せい?

考えるだけ損というのはこういうときだと結論付け心結は目の前で起こることのみに集中する事にした。そしていよいよ館の扉がゆっくりと開いていく。

「ようこそ、紅魔館へ。改めて、私は紅魔館の主レミリア・スカーレット。会えて嬉しいわ。幕引 心結」

「お、お久しぶりです……。こちらこそお会いできて光栄です」

「あー、そんな緊張しなくていいわよ」

見かねた霊夢が割って入る。心結の緊張具合は例えるなら天敵が目の前にいる小動物と言った所か。そこまで緊張されるのはレミリア本人ですら本意ではない。

「そうよ、確かに完全に溶けられても困るけど、そこまで緊張しなくたって良いのよ。同じ幻想郷の外から来た者同士仲良くしましょう?」

「あ、はい…ありがとうございます……?」

「それに、呼んだのはこっちでしょう?立ち話もなんだし奥でゆっくりとお話しましょう?…咲夜」

いつの間にか主人の横にいた咲夜がその一言で二人を奥の部屋へと誘導する。霊夢は行き先を知っているのかあまり咲夜の話を聞いていない様子だ。

 

「それよりも霊夢、貴方神社は?そんな気楽に開けて良いものでもないでしょう?」

「あ?良いのよ、どうせ人来ないし。それに今回は代理の巫女が丁度よく来たから」

「あらかわいそうに」

楽しそうに雑談をする二人と未だにガチガチな心結にそれを先導する咲夜。四人はようやく目的の部屋にたどり着く。

「はい、着きましたよ。こちらへどうぞ」

「あ、ありがとうございます」

案内された部屋は洋風なテーブルと椅子が用意されていた。

「さ、座って座って。紅茶で良いかしら?」

小さく頷き同意を示すと咲夜が手際よく人数分の紅茶を準備する。

「さて、貴方とは改めて話したかったのよ。特に元いた世界の話、興味があるわ」

「そんなに面白いものじゃないですよ?私たちの世界なんて…」

「あら、そうでも無いわよ?何せ知らない世界の話なんだから」

それからしばらくは心結のいた世界の話をした。できるだけ核心には迫らず、それでいて面白いを話を選んだつもりだ。その甲斐あってかレミリアは心結のする話一つ一つに興味を示しているように霊夢は見ていた。

「ほら、やっぱり面白い世界じゃない」

この話は全てがはじめて聞く内容というわけではない。似たような話をする少女をレミリアは知っているからだ。しかし、それでも心結のする話には興味を抱かずにはいられない。不思議と好奇心をくすぐられるのだ。

「そうね…お礼に占いでもしてあげましょうか」

「占い…ですか?」

「そう、占い。私は運命を操る事ができるのだけどね、そんなものをいじってもつまらないでしょう?だから基本的には使わないのだけど少し応用的に使えば誰かの運命を覗き見する事ができるのよ」

あり得ない話だ、と今更言える世界では無いだろう。この世界では心結にとってのあり得ないは存在しない。

「…………ふぅん、貴方今すぐ外に行ってきなさい。そしてすぐ戻ってきて」

「どんな指示よ。もっと具体的に…って、行っちゃった」

「そう、それで良いのよ。貴方は呼ばれている、であれば行動は一つよね?」

 

 

何故かはわからない。わからないが足が動いた。あのときと同じように、このカードと同じように自分を求める何かが聞こえた。広い館内を走る、走り続ける。こんな場所では駄目な気がした。空を見上げてみればそこにはいつもそれがある。駆け抜けた先の扉を開きそして空を見上げる。すると突如空が光輝き、そして心結の元へそれは降りてきた。

その光景に言葉を失う。それは絶望と呼ぶにはあまりにも綺麗で、そしてあまりにも輝いていた。

「………。よろしくね、私の…私のカード達」

そっと包み込むようにそれを抱き少女は言う。それはきっと焼けるような炎なのだろう。それはきっと眩しすぎるのだろう。それでも、少女は太陽と歩むことを選ぶのだ。

心結が戻ってきたのはそれから少し時間が経ってからだ。

「あら、ようやく戻ってきたのね。どうだった?」

「はい、空からこのカードが…」

心結は三人に先程のカードを見せる。見覚えは無いがそれがどんなものか三人には覚えがある。

「創界神…。凄いじゃない、本当に凄い」

「創界神アポローン…良いカードね。大切にしなさい」

少女は笑顔で返事をする。満面の笑みとはまさにこの事だろう。

「そういえば、朝言ってたカードあったわよね?」

「はい、このカードですか?」

銀河星剣グランシャリオ、そのカードはやはりどこか特別な気配を感じる。無論、それは心結を覗く三人にしかわからないものではあるがこれは本物だろう。

「なるほど…ね?面白そうね」

不敵に笑いながら、レミリアは心結を真っ直ぐに見つめる。

「心結、貴方にバトルを申し込むわ。そのカードを使って私を倒してみなさい」

「ちょ、レミリア?心結はまだ日も浅いしデッキもそれに合わせたやつじゃないのよ?」

「わかってるわよ。でもアポローンの対象は星竜、効果は発動するでしょう?」

いつどこで心結のデッキを知ったのかはわからないが確かに心結は星竜を中心にしたデッキを使う。問題は無いと言えばそうなる。

「それと、勿論ハンデは用意するわよ。私は最初からライフを一つ削られた状態でスタートする。ライフは4でリザーブに5つ。これでどう?」

ふと、阿求の言っていた事を思い出す。阿求にバトスピを習いに行くといつも言っていた事だ。

「できるだけ色々な人とバトルをしてください。その数だけ自分の経験値に繋がりますので」

それを信じるのであれば、断る理由はどこにも無い。

「はい。バトル、お願いします」

「そうね、そう来なくちゃね?先攻、後攻どっちが良いかしら?」

「先攻でお願いします」

ゲートオープン界放、いつ如何なる時もこの言葉が合言葉になる。

 

「それでは、スタートステップ、ドローステップ、メインステップ、電岩竜ダイナモドラゴンのアクセルを使います。お、これは…」

ずいぶんと慣れた手付きで進める心結を見て少し感動をする霊夢。なるほどこれが親の気持ちかと微妙にずれのある納得を一人でしている様子だ。

「創界神アポローンを配置します。配置時効果、神託発揮します。デッキから3枚トラッシュに置きます、その中の星竜/界使/化身 を持つスピリットの数だけこのネクサスにコアを一つ置きます」

 

太陽竜ジーク・アポロドラゴンⅩ ヴルムシューター 彗星竜サングレーザー

 

「コアを2つ置いて、ターンエンドです」

 

L5 R0 H4

 

「私のターンね。スタートステップ、コアステップ、メインステップ。それじゃあ、私もこのカードを見せようかしらね?創界神ヘラを配置よ。効果は大体一緒よ」

 

ゴッドシーカー司書ドール†レナ† スネークビジョン 鬼刃剣士ディル・ザイガー

 

「スネークビジョンの効果で手札に加えつつコアをヘラに置くわ、合計で2個ね。それじゃあNo.3ロックハンドをLv2で配置、バーストをセットしてターンエンド」

 

L4 R0 H3

 

「ネクサススタート…ですか。なら、スターブレイドラを召喚、彗星竜サングレーザーをLv2で召喚。そのままサングレーザーでアタックです」

レミリアはハンデとしてライフが一つ少ない。それにも関わらずレミリアはネクサスを配置するだけでターンを終えた。これ好機と見た心結はそのままスターブレイドラもアタックをさせる。

「ライフよ。だけどね?あまり攻めすぎると後が痛いのよ?

バースト発動、魔界七将ベルゼビート。トラッシュの系統、呪鬼を持つスピリットを最大13コストまで召喚が可能。私はディル・ザイガーとレナを召喚するわ」

そのままゴッドシーカー司書ドール†レナ†の召喚時効果を発動させる。オープンしたのは No.3ロックハンド ヤンオーガ 鬼刃皇デス・ザイアだ。

「デス・ザイアを手札に加えるわ。そして、この効果で2体召喚したのでサングレーザーからコアを2個リザーブに置くわね。そしてベルゼビートを召喚」

「ぐ、ターンエンドです」

 

スターブレイドラLv1 彗星竜サングレーザーLv1

L5 R2 H4

 

「さて、私もそろそろ動こうかしらね。ドローステップに入ると同時にロックハンドの効果、手札のデス・ザイアを破棄してデッキから2枚ドロー。そしてこの子の出番よ。

双魚賊神ピスケガレオンⅩをLv2で召喚。召喚時効果発揮、スターブレイドラ、サングレーザーからコアを2個ずつリザーブへ移動させるわ。そして消滅した数だけ創界神のコアを3つボイドを移動」

「そんな……」

予想外の攻撃に言葉を失う心結とは対照的に、ここからだと言うかのようにするレミリア。こうなった彼女を止めるのは至難の技だ。

「レナを消滅させて大神剣アラマンディーをヘラに合体、ベルゼビートでアタックよ」

防ぐ手段が無い心結はライフで受けるしか手が無い。それはレミリアも理解していた。

「ディル・ザイガーでアタックよ。アタック時効果で1枚ドロー、そしてトラッシュのデス・ザイアを回復状態でディル・ザイガーと入れ替えてターンエンド」

 

魔界七将ベルゼビートLv1 双魚賊神ピスケガレオンⅩLv2 鬼刃皇デス・ザイアLv1

L2 R0 H4

 

実際問題、やりたいことの半分も心結はやれていない状態だ。相手の術中にはまりそのまま抜け出す所か奥深くまで引きずり込まれている。

「スターブレイドラ、手元の電岩竜ダイナモドラゴン召喚。そのまま太陽神星竜アポロヴルムを煌臨。コアをスターブレイドラから確保です」

ここで決める気なのだろう。続けて銀河星剣グランシャリオをアポロヴルムに合体させる。

「アポロヴルムでアタック、界放発揮です。トラッシュからコアを2個このスピリットに置いて回復です」

「あら、厄介な効果ね」

「まだまだ続きますよ。アポロヴルムのアタック時効果、BPが最も高いスピリットを破壊します」

「ピスケガレオンⅩでブロックするわ。フラッシュは?」

「ありませんのでそのまま破壊します続けて…」

「残念、ピスケガレオンⅩの破壊時効果よ。星界放の効果で6色の創界神からコアを自分のスピリットに置くことで相手の手札2枚を見ずに破棄するわ」

6色の創界神なんてない。そう言おうとした心結だがそれは間違いだった。大神剣アラマンディーの創界神との合体時効果はそのネクサスのシンボルの色を六色全てとして扱うものだ。つまり、創界神ヘラは今6色のなのだ。

「それじゃあ、それとそれを破棄して頂戴」

 

煌星第一使徒アスガルディア 砲竜バルガンナー

 

「まだまだっ!アポロヴルムでアタックです。魔界七将ベルゼビートを破壊します。さらに回復」

「怖いわねぇ。フラッシュタイミング、白晶防壁を使用。アポロヴルムを手札に戻すわ。残ったグランシャリオの攻撃はライフよ」

「ターンエンド…です」

ほぼ無限に回復のできるアポロヴルムと言えど手札に戻されては人溜まりもない。

 

銀河星剣グランシャリオLv1

L2 R8 H4

 

「さて、ここで決めたいわね。ロックハンドの効果で黒嫁ドール†ザンシア†を破棄して3枚ドロー。このままデス・ザイアをLv2で召喚、女王魔神を合体させるわ。召喚時効果で1枚ドロー」

先程の心結と同じくレミリアもここで決める気なのだろう。煌星第一使徒アスガルディアを破棄したのも大きいだろう。

「そのままアタックよ。1枚ドローした後トラッシュのデス・ザイアと交代。行きなさい、鬼刃皇デス・ザイア。そのままデス・ザイアの効果を使うわ。手札のゴッドシーカー司書ドール†レナ†をゲームから除外してデス・ザイアを回復」

「ライフです…」

「再度アタック。フラッシュは?」

頼みの綱だったフラッシュは先程双魚賊神ピスケガレオンⅩに破棄されている。そうなれば答えは一つだ。

「ラ、ライフです」

 

 

「はい、お疲れさま。どうだったかしら?私のピスケは」

「つ、強かったです……」

「そう…。今度は、ちゃんとデッキを組み直してまたいらっしゃい。いつでも相手になってあげるわ」

レミリアは満足そうに笑みを浮かべる。後日咲夜が語るにはあそこまで嬉しそうなレミリアは珍しいとのことだ。




見定めるは姫君 終焉の理を知る者
ぶつかる大いなる力は白き幸福と夜の住人

うちのレミリアはポンコツってほどではない感じのやつです……!


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3話[三賢者]

前回までのあらすじ
創界神を得た心結はレミリアとバトル。二人はまた再戦を誓ったのだった。


よく晴れた日の事だ。神社で他愛のない話をしている二人の少女がいた。もう少しすればお調子者の魔法使いも合流する予定である。

「それからのあいつらときたらほんと…。大変だったのよ」

霊夢の話す内容の多くはチルノと妖夢という少女達と魔理沙の話大部分を占めている。

「とても、仲が良いんですね。その三人のお話してるとき少し楽しそうですよ、霊夢さん」

「べ、別に特別仲が良いって訳じゃ…。チルノは誰にでも大体あんな感じだし妖夢も……」

照れくさそうにしている霊夢を心結はにこやかにみつめている。胸に秘める暖かさを感じながら心結はこれからの自分について考える。

私も、友達できると良いな。せめてこっちでは最後まで幸せでいたい。

「そ、そんなことより魔理沙遅いわねぇ。また寝坊したのかしらっ」

明らかに話題を反らした霊夢には朗報か悲報か、待ち人ではない二人組がふわふわと階段を上がってくる。

「れ~む~、元気かぁ?」

「って、チルノ。あんたルーミア達は?」

「あ、ルーミアちゃんたちはお店の準備を手伝ってて…」

「みすちーのとこは今日混むらしいぞ!」

「それは何より、そしてこのままの流れで紹介するわね。心結よ」

「あ、えっと…幕引 心結です。えーと、チルノちゃんと…」

「だいちゃんよ。皆そう呼んでるわ」

「改めてチルノちゃんとだいちゃん、よろしくね」

そう笑顔で手を差し出した。本来であれば快くその手を取るだろう。そう、本来であればだ。

「近づかないでっ!」

必死な表情で、それでいてやや怯えたようにチルノは叫んだ。勿論他の誰にもなぜなのかはわからない。ただチルノだけがそう叫んだのだ。

「ちょ 、チルノ?どうしたのよ急に」

「そうだよチルノちゃん。どうしたの?」

困惑と心配が混ざったように問いかける二人。その間で何が起きているのか全くわからない心結が立ち尽くす。

「と、とにかく…近づかないで。アタイ、あんたの事嫌い…」

そう言い残してチルノは大急ぎで去っていった。それはまるで何かから逃げるかのように。

「す、すみません。普段はあんなんじゃないんですけど…と、とにかく私も失礼しますっ」

「………まぁ、悪いやつじゃないのよ。柄にもなく人見知りとかかしらね……ほんと、ごめん」

なんとも言えないこの気持ちをどう表して、何にぶつければ良いのか、その疑問に答えてくれる者はいない。心結の表情を見て霊夢は心を締め付けられるような気さえした。

「だ、大丈夫ですよ。誰だってそういうときありますから」

それは霊夢に向けた言葉なのか、それともチルノに向けた言葉なのか、はたまた自分への言葉なのか。自分でも心の中で反響し、反射し合う大丈夫という言葉を心結は口にした。

この世界であれば、きっとまじないも意味があるものになるだろうとある種の願いなのかもしれない。

何も言えない空気の中、それを壊すのはいつも彼女だ。良い意味で空気の読まない彼女の存在に救われた者は少なくは無い。

「ようお前ら。待ったか?」

「…………はぁ、待ったか?じゃないわよ。待ったに決まってんでしょ」

そんな言葉も魔理沙は笑って誤魔化すのだ。暗い空気をその誤魔化しが払ってくれる。

「そうですよ。結構待ちましたからね?」

「わりぃわりぃ。今度なんかしてやるから」

「コイツのなんか、は当てにしない方が良いわよ」

そんなやり取りに思わず笑みが溢れる。この気持ちはなんだったか、記憶と心の奥底に埋められた感情を心結はまだ思い出せずにいた。

「それじゃあ、行きましょうか。流石に待たせ過ぎも悪いし」

「ですね。行きましょう」

 

 

三人がなぜ集まったかというと、霊夢の元に届いた誘いだ。

「今度の大会で使うスタジアムのテストの見学と協力なんて…霊夢さんってやっぱり凄い人なんですね」

「そりゃあ、博麗の巫女っつたら幻想郷では知らないやつはいないからな」

やや照れくさそうな霊夢をからかいながら進んで行くと、小さな兎耳の少女と大きな傘の少女。そしてカメラ片手に手を振る少女が見えた。

「あれ、迎えに行こうと思ってたのに」

「魔理沙が間に合ってる事にびっくりだよ」

「あ、あなたが先日、幻想郷に来たという心結さんですね?以後よろしくお願いします。早速なんですが…」

止まりそうにないカメラの少女を心結を除く四人が一斉に止めにはいる。

「こら、そうやってすぐ取材しようとする。せめて今は我慢して」

「そもそも、私たち自己紹介してないからね?一方的に知ってるだけだから…」

明らかに幼い見た目の兎耳の少女になだめられたカメラの少女は笑って誤魔化しながらも心結に改めて身体を向ける。

「これは失礼。私、文々。新聞 の射命丸 文と申します、以後お見知りおきを」

「私は 多々良 小傘だよ、よろしくね」

「私は 因幡 てゐ。よろしく」

三人と握手を交わし少し会話をすると小傘が本題を切り出す。

「それで、今日招待したのはここにいるメンバーは全員?」

「そう、ね。阿求も誘ったんだっけ?」

「はい。でも用事があるから店もその時間はお店も閉めるって」

「へぇ、じゃあ行こうか」

てゐは、にやつき顔のままそう言うと三人を先導し始めた。それに続いて何故か吹き出して過呼吸気味の小傘と至って普通の文が三人の前を行く。

「あの、お三方の名前はわかりましたけどその、どういった人達なんですか?」

「あー、あいつらはあれよ、三賢者って呼ばれてるバトラーよ」

「名ばかりの賢者だけどね?」

小傘が振り返りながら補足を入れる。名ばかりという点について残りの二人は訂正をする素振りをみせない。

「三賢者…ですか?」

「おうよ、バトラーの中でも特別強い三人、それが三賢者だ」

何故か得意気な魔理沙は前方を歩く三人に指を指しながらそう言うが、等の本人達は無反応、もしくは否定を貫く。

「だから名ばかりだって。私達はたまたま大流行する前からバトスピをやっていて、たまたまその時強かった三人ってだけ。里の人の中には神のように崇める人もいるけどそんなんじゃないよ?」

「強いのは事実だろ?」

「どうだろうね?殿堂入り扱いだから図る方法が無いよね」

悪巧みをする子供のような表情をしながらてゐが振り返る。

 

しばらく歩くと、人里からやや離れた開けた場所に出る。その先の気持ち程度舗装された道の先に目当てのものは存在した。

「えへへ、びっくりした?ここが!幻想郷が誇るバトルスタジアムだよ!」

すごい、という言葉の他に出てくるのだろうか。少なくとも心結は他にこの気持ちを表せる言葉を知らない。

「うんうん、ごちそうさま。良い驚きだよ」

 

その後も入り口前でしばらく話していると、スタジアム内から出てきた呆れ顔の阿求がぼやく。

「いつまで入り口前で突っ立てるんですか!そろそろ来るかなぁって中で待機してた私の気持ち考えてくださいよ!」

「あー、ごめんごめん。じゃあ入りましょうか」

中に入っていく霊夢達に続き心結も入ろうとしたとき、小傘がそっと心結の耳元でこう呟いた。

「ごちそうさま。その気持ち、大切にしてね」

それだけ言うと小傘は中に入っていってしまった。今の心結にはこの言葉の意味はわからないが、嫌な感じはしない。何か、大切なものにすら感じられた。

「さて心結さん。こちらでの生活…もといバトスピはどうですか?」

「それについては阿求さんにお世話になってますから、少しは慣れてきました」

「凄いのよ?この前なんて創界神も降りてきてね」

自分の事かのように話す霊夢と、その言葉に驚きを隠せないその他。当の本人はこの状況をよく理解していない様子だ。

「はぁ!?お前まじかよ!」

「え、えっとー…はい。それともう一枚なんか在りますけど……どうしたんですか?皆してそんな驚いて」

「ごめんちょっと詳しく。理解が追い付かない」

心結はあの日の朝の事、レミリアの元に行ったときの事を全員に説明した。それについて信じられないという素振りを見せていた者も実物のカードを見ると信じるしかなかった。

「なるほど…なるほどなるほど!良いですね」

興奮した様子の文が心結の肩を掴み、まっすぐと瞳を見ながら告げたそれはこの場にいるほぼ全ての意見そのものだろう。

「記者として、なにより大会運営メンバーとして、幕引 心結さん。あなたの大会エントリーを強く望みます」

「え…って、えぇ!?私ですか?」

他に誰がいるのか。そういった視線を向けられていることに疑問を抱かずにはいられなかった。

「だ、だって私全然強くないし、大会なんてそんな…」

「強い人しかバトスピをやったら駄目なんて決まりある?無いんだなぁ、これが」

「てゐちゃんの言う通りだよ。それに、最高の先生がいるじゃない?」

そう言った小傘の視点は完全に一人の少女に向けられていた。それに気付いた少女はやや困惑した様子で再度確認する。

「え…私ですか?いやまぁ、やりますけど…」

「さっすがあっきゅん。わちきは信じていたぞぉ」

ただし、やるからには徹底的に鍛え上げる。それが阿求が心結に提示した条件だ。心結がこれを了承した自分を呪いたくなる事を今はまだ知らない。

「それではエントリー手続きは私がやっておくとして、本題に入りますか」

「バトルフィールドのリニューアルに伴い、その試運転!今回はそれの見学と協力をしてもらう予定だった訳だけども」

「悪いけど実はまだメンテナンスが終わってなくてね。できる事とできない事の説明もめんどくさいし私と小傘でやらせてもらうよ」

「おいおい…まだ終わってないのかよ。というか、終わってないのにテストするのか?」

「作業途中の細かなテストは大切ですよ。全て終わってから大きな不具合が見つかっても遅いんです。今日はその細かな作業の中でも特に色々と試す日なだけです」

実際、作業に大きな遅れがあるという訳ではない。かなり詰めた日程を組んでいる都合上、現場で動く河童達は大忙しだ。場合によっては大会の日程を遅らせる事も視野に入れたいわゆる無茶ぶりを、河童達は見事にこなしている。これには現場監督の河童も、どや顔を隠す様子が無い程だ。

「そしてここがバトルフィールド。当日では事前にくじで決められた二人が実況卓としてここに呼ばれてバトルするんだよ」

「実況…卓、ですか」

「はい。私とてゐさんか小傘さんのどちらか、もしくは両方で実況、解説をしながら客席の皆さんに見てもらう場所です」

「まだ見せてないけどここを出た場所に普通に机でやるスペースもあるから回転率も良いんだよ」

「それじゃあ、私たちは客席まで行きましょうか」

文に連れられてバトルをしない他のメンバーは客席に座る。今から何が起こるかわからない心結はなぜここまで大きなセットが準備されているのか不思議でたまらない様子だ。

「あぁ、そう言えばバトルフィールドは初めてですっけ。凄いですよ?スピリット達が実際にここに出てくるんですから」

「スピリット達が実際に?」

「えぇ。まぁ見ればわかります」

 

そんなギャラリーはお構い無しに二人の世界に入り込もうとしている者達がいた。

「どうせなら公式戦が良かったんだけどね」

「まぁ、仕方ないんじゃない?」

そうやって小悪魔的な笑みを浮かべながら、てゐは答える。つい先ほどまで見せていた落ち着いた雰囲気とは違って今はどこか掴みがたいものを心結は感じた。

「それじゃあ、スタートステップ」

その一言でバトルが幕を開けた。再度確認しておくがこれは本番でトラブルが起きない為のテストである。

「ツクヨミの陰陽神殿を配置してターンエンド」

 

L0 R0 H4 T4

 

「それじゃあ、創界神クリシュナを配置かな」

 

甲竜戦艦エンタープラスイズ クリシュナーガ・アルターリース アルテミックシールド

 

「アルテミックシールドは手札に加えて、クリシュナの月冠神殿を配置してターンエンド」

 

L5 R0 H4 T5

 

「ネクサススタート…か。スタートステップ、コアステップ、リフレッシュステップ………あれ、リフレッシュステップ!」

「どうかしたの?」

「コアがトラッシュから戻ってこないみたい。手でやれば使えるけど一昨日までなんともなかったしトラブルかなぁ」

本来、コアの移動やスピリットの回復に伴うカードの回転というのは自動で行われるように設定されている。例外としてアタック宣言だけは自分で横向きにすることもできるが、基本プレイヤーは盤面に触れることはない。にも関わらずコアが戻らないというのは明らかなシステムエラーだろう。

「文ちゃーーん、にとり呼んでおいてー!トラブルかもーー」

「もうにとりさん居ますけどね?」

「動作確認に作った責任者いなかったら凄い事だからね?」

「あれ、いつの間に…。まぁ良いやすぐ終わらせるね」

しかしバトルは続けるらしい。彼女なりのポリシーかなにかなのか、バトラーなら全員のその道を選ぶのか。

「創界神ツクヨミを配置するよ」

十式戦鬼・闇弁慶 おんみょ~フーリン とおせんぼウォール

「続けて十式戦鬼・死鬼若丸を召喚、召喚時効果でライフをトラッシュに置いておんみょ~フーリンをトラッシュから召喚。連鎖を発揮してトラッシュからライフにコアを置くよ」

「相変わらず止まらないねぇ、そのデッキ…」

「まね。おんみょ~フーリンの召喚時効果でデッキを3枚オープン」

 

座敷ガール 月魄鬼神スメラギンガ ツクヨミの陰陽神殿

 

「スメラギンガを手札に加えるね」

「クリシュナの月冠神殿の効果で1枚ドローするよ」

「鎧魂を2体召喚、鎧魂でアタック!」

「ライフかな」

「お、今日は攻め込むな小傘のやつ」

いつもを知っている魔理沙が言うのだからそうなのだろう。無論、心結にそれを図る手立てはない。

 

「アタックした鎧魂を消滅させて、妖戒帝エンオウを召喚。エンオウでアタックするよ。天界放発揮してブロックできなくする」

「ライフで受けるよ…」

「おんみょ~フーリンでアタック」

「フラッシュタイミング、アルテミックシールド」

「あ…忘れてた」

「とりあえずライフかな」

「むう、ターンエンド」

L5 R0 H2 T1

「いやいやいや、忘れてたって」

「アホなのかあいつは…」

文字通り絶句して見せているのはにとりと魔理沙だ。仮にもトッププレイヤーと呼ばれる三賢者の一角がそんな初歩的なミスをするのか。当然と言えば当然の言い分だ。

 

「ドン引きされてるみたいだけど?」

「まぁそんな日もあるよね」

「そ、スタートステップ」

悪戯っ子のような微笑みを浮かべる二人だったがそれは突如として終わりを迎える。

 

「それじゃあ、神撃甲龍ジャガンナートを召喚。そして白魔神を直接合体、効果で陰陽神殿をデッキの一番下に送るよ」

「げ、始まった…」

「まだまだこんな物じゃ終わらないよ?Lv2に上げてアタック、界放を使ってLv3に。そのままエンオウ、牛若丸、おんみょ~フーリンには帰ってもらうかな」

三賢者が一人因幡てゐ、彼女のバトルの持ち味はこの戦い方そのものにある。本人の悪戯っ子のような性格や気性の荒らさを表したような猛攻、それでいて白属性特有の守りとのバランスが取れている点が彼女をここまで引き上げた要因となる。

 

「ジャガンナートの効果はまだ終らないからね?クリシュナにボイドからコアを置く。そして、クリシュナの神技を発動、ジャガンナートを回復させる」

 

「ジャガンナートの効果で増えた分と白魔神と合体した分。合計で4つシンボルがあるスピリットが回復までしたのか…」

これには外野も冷や汗をかく程だ。実在化したジャガンナートの迫力は凄まじく、対峙していなくとも恐怖の対象としては充分であった。

 

「さぁ、このアタックは?」

「仕方ない、ライフで受けるよ」

ジャガンナートは容赦なく子傘のライフを抉り取る。その一撃に子傘は思わず苦悶の表情を浮かべる。

「最後!ジャガンナート再びアタックッ!」

「ライフで…受けるっ」

 

 

「あー、まだ痛いんだけど…」

「仕方ない。で、どうだった?これが今後戦うかもしれない舞台だよ」

「私が…あそこで…」

先程のバトルを見せられて今後自分が戦うとなったとき、何を最初に想像するだろうか。多くの者は先程の子傘と未来の自分を重ねるだろう。そして恐怖を覚えるだろう。しかし心結は違った。

「私も、私もはやくあそこで戦いたい。楽しみです」

「あれ、そこは普通怖がるとこなんだけどな…」

どうしてだろうか、心結に恐怖は無かった。それよりも目の前で繰り広げられた戦いに胸が踊るような、そんな感覚を得ていた。自分の相棒とでも呼ぶべきスピリット達が躍動する、そんな姿を心結は本気で楽しみにしている。

無論痛みに対する恐怖が全くないという訳ではないだろう。単純な足し引きの話だ。恐怖より楽しみが勝ったというだけ。これを一人は戦闘狂と言うだろうか。これを一人は変わってると言うだろうか。しかしそんな事は関係ない。




ついに始まる最強を決める祭典
かなたへの旅路は始まったばかりだろう
のぼる気持ちを抑え星々は大地へと終わりを迎え行く
間語りにはできすぎたそれは
のぞんだ結末を運ぶ
幸あらん事を。これは君にとって最高の
せかいのげんそうなのだから


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