メスオークの逃避行 (詠むひと)
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メスオークの逃避行
オーク×ショタ
くっ殺しません、全年齢向けの健全オークちゃんです。
私はオークである、名前は無い。
少々自分語りをしよう。
私には前世の記憶がある、日本人として生き仕事中に死んでしまったとあるサラリーマンの男としての記憶が。
死後の私の前に現れ、全てを忘れ生まれ変わるか記憶を持ったままで異世界に行くかと選択を迫られた。
よくある異世界転生ものを夢見てしまった私は、異世界に行くことを望んだ。
だが、行く直前になって神らしき存在は自らを混沌と名乗り私に世界に混乱と恐怖を撒き散らせと呪いを掛けた。
私は人間としてその世界に行くはずが、この様である。
私はオークだ。メスオークである。オーク集落にて騎士に就いている、オークナイトだ。
これまで私は前世の記憶など、これっぽっちも思い出せず。オークの本能に従い集落に迷い込んだオスを捕らえて連行する役目を果たしてきた。
だが、私は出会ってしまった。これはきっと運命だ。
メスオークとして、このか弱きオスを味見するのは私の役得である。だがしかし、彼を見た私はまるで頭を殴られたような衝撃を受けた。
そして前世を思い出した。
正直、世界の混沌なんてどうでもいい。
今、私が優先すべきはこの奇跡の様なショタだ。
私は前世から、ロリもショタもいけるし女装少年はもちろん性転換などは大好物。3次元の女装やゲイ物にも手を出していた変態だ。
この目の前のショタは、一見少女にしか見えないが私には分かる。この芳しき薫りはオス、それも童貞であるのは間違い無い。
本来なら味見した後は集落に連行しなければならないが、そんな事をすればこの少年は間違いなく死ぬ。
私は死なせたくないと思う。でも逃がす気も無い。
では、どうするのか?幸い彼には私の顔はまだ見られていない。
それに私の容姿もある。
オスオークが絶滅してから、数多の種族のオスの子種を入れ続けた我等オークはキメラとなった。
様々なモンスターや亜人などの特徴を持つ同胞達の中で、私は人に近い容姿を持って産まれた事は大きな武器である。
この容姿で人間を油断させ、集落に連れ込む事が私の主な仕事だった。
この容姿なら、言わなければバレないだろう。
ならば、これからやるべき事は。
愛の逃避行だ。
来るもの拒まずのアクシズ教団なら、私と彼の愛もきっと受け入れてくれるだろう。
まずは彼が目を覚ます前に距離を稼ごう。同胞や彼の仲間から離れなくては!
もうすぐ日が暮れる。どこか休める場所を探さなくては。
しかし、彼は未だに目を覚まさない。少々不安になるが、呼吸は安定しているし顔色も悪くない。
「たすけて」
何処からか少女の声が聞こえた。こんな所に居るのは安楽少女くらいだろうが、あの実はオヤツになる。
私は声の方に向かう。
そこには包帯を巻き痛々しい姿をした少女に見える植物が生えていた。血が滲む様子まで再現するとはなかなか凝っているな。
「もし、旅人さん。こっちへ来てくれませんか?」
彼を抱き抱えたままで、私は近付く。
「辛くて寂しいんです、少しの間で良いから傍に居て?」
もしもこれが、ショタっ子であれば私は引っ掛かっていた可能性はある。だが、安楽少女であると知っている私にはただの雑音だ。
さっさと目当ての物を貰うか奪おう。
私は言った、擬態なのは知ってるから実を寄越せ。私はオークナイトであると。
「ッチ、なーんだオークかぁ。獣人みたいな見た目してるから分かんないっての。」
集落との契約は知ってるな?なら実を寄越せ。
安楽少女の実はほぼカロリーゼロで栄養も無いが、甘くて瑞々しいスイーツだ。依存性にさえ気を付ければ良いので、オークの間ではオヤツとして人気がある。
安楽少女達とはある契約を結んでいる。我等が欲しいのはオスだけだ、余ったメスの死体を養分として渡す事になっている。
不要品を渡すだけで極上の甘味が手に入るのだ。利用しない手はない。
「はいはい。ほら、持ってきなさいよ。」
うむ、有り難くいただこう。
「ねえ、その子女の子でしょ?要らないんなら頂戴よ。」
ダメだ。この子は私のだ。それにこの子はオスだ。
「どっからどう見ても女の子なんだけどなぁ。まあオークのあんたが言うならそうなんでしょ。じゃ、女が居たら私に頂戴よ。」
私は安楽少女から離れ、草を掻き分け道なき道を進む。
大きな木を見つけた。この下で休むとしよう。
!彼が小さく呻いた。目覚めるか?
じっと見ていると、彼の瞼が開かれる。
「ここは?お姉さんはだぁれ?」
彼の吐息を感じる。声変わり前の高い声だ。少女のものにも聞こえるが間違いなく少年である。
「ワタシは旅の戦士ダ。草原でキミが倒れているのをミツケタ。」
嘘は言ってない、私が背後から襲い昏倒させただけだ。
「そう、なんだ。ここはどこ?」
実際問題、ここがどこかはわからない。闇雲に集落から離れただけである。
「スマナイ、ワタシも迷ってしまったのダ。」
「そうなんだ。えーっとじゃあ明日日が上ったら太陽を見よう。それでだいたい方角が分かるし。」
曇ってしまえと心から願う。まだ見付かる訳にはいかない。
「ソウカ。腹はヘッテないカ?少しなら果物があるゾ。」
「うん。少しお腹減ったや。」
私は安楽少女の実を渡す。あの実には栄養は無いが豊富な水分と不安を和らげ心を安定させる効果がある。腹が満たされ精神も安定すれば会話も出来るだろう。
「甘くて美味しいね。ありがとうお姉さん。」
彼は10歳くらいだろうか。この歳で草原に居たのは何故か?冒険者でも無いだろうと思う。
「キミは何故、草原にイタ?この辺りはモンスターも出るキケンな場所ダゾ。」
彼はしょげている。
「あのね、僕のお姉ちゃんが冒険者をやってるんだ。お姉ちゃんは幼なじみ達と冒険者をしててさ、今回は無理に着いて来たんだ。」
彼が言うには姉と近所の少年少女でパーティーを組んで冒険者をしている。近所のお兄ちゃんお姉ちゃんが仕事で居なくて寂しくなったから無理を言って着いて来させて貰ったと。
姉達のパーティーは駆け出しを脱したのだろう、それで実力を過信しお荷物を連れてきた。
その結果、お荷物こと弟がはぐれてしまった。
「(愚かな。)」
「僕のせいなんだ。僕が無理言って着いてきて、お姉ちゃんが怪我して、モンスターのせいで離れ離れになっちゃった。僕が悪いんだ……。」
私は無言で彼を抱き締める。
「キミは確かに我が儘を言っタ。でもそれを受け入れたのハ、キミのアネ達ダ。キミは反省している。キミは悪い子ジャナイ。」
抱き締めながら頭を撫でる。
何この子可愛い過ぎ。例え姉と再会してしまっても、何とかして一緒に居たい。
「日も暮れタ。早めに寝よウ。」
「ありがとうお姉さん。」
彼は小声で言ったが、私の耳は聞き逃さない。
私は彼を抱き締めたままで眠った。
私は苦しい。
この腕の中で眠るショタを見ていると本能が疼く。メスである本能が彼を貪れと喚き立てる。
だがしかし、彼はきっとまだ精通もしていない子供だ。子種は得られない、と理性で抑え込む。
彼の安らかな寝息は私の母性を擽り護りたいと、私のメスとしての本能は彼を蹂躙したいと。
襲い掛かりたい。彼の幼い肢体を貪りたい。
幼くもオスである彼を。
この腕で眠る幼い子を守護べきだ。容易く折れてしまいそうな細腕が少女にも見えるあどけない顔が愛しい。
息が荒くなりそうなのを抑え、彼を起こしてしまわない様に鎮める。
私の目は夜目が効きすぎる。この暗闇でも彼の寝顔が堪能出来る。
夜よもっと続けと思う心と早く朝よ来てくれ。と願いながら瞼を閉じる。
狂おしい、でも愛しい。私の自分勝手な心を醜く思うが、この温もりを手放す気にもなれない。
ああ、いっそ。時よ止まってくれ……。
夜が開けた。なんのかんの言いつつぐっすり眠れた。この腕の中の温もりが……温もりが?あれ?居ない?まさか逃げられたのか?
目が覚め、慌てて見回した。彼は柔軟体操の様な事をしていた。
軽く汗ばんだ彼からは私を惑わすような芳香が放たれ、上気した肌に釘付けとなる。
「あっ、お姉さん起きたんだ。」
彼は体操をやめて私の方に歩いて来る。
クラクラするほどの芳香に包まれ、理性が蒸発しそうになるのを必死に留める。
「おはよウ。早起きナンだナ。」
「うん。いつも日の出と一緒に起きてたからね。」
彼は日の出の方向も確認していて方角が分かってしまった。ッチ!なんてことだ。
姉のパーティーは紅魔の里に向かったらしい。私は絶対に近寄りたくない。なんとかして別の方角に行かなければ。
「コウマの里の周りはキケンだ。ワタシだけではキミを護れナイ。」
あの辺はグリフォンとか出没するから守りながらだと少々キツイ。
鍛え抜かれたこの身から繰り出す一撃はグリフォンの息の根も止められる。だが、私は一人だし腕も2本しかない。守りながら戦うなんて器用な事は出来ない。
それに紅魔族に見付かれば何をされるか分かった物じゃない。同胞達を幾人も面白半分に殺害した危険な種族だ。
「うん……。」
悲しげに曇る表情に、私に残された罪悪感が刺激される。
「別の町へ向かウ。そこで、キミを保護して貰ウ。」
出来ればアルカンレティアがいい。確かそんなに遠くじゃ無いはず、たぶん。アクシズ教に入信して保護して貰うだけだ。
「うん。分かった。」
暗い顔で頷く彼の頭を優しく撫でる。
笑顔が見たい。でも私にそんな事を願う資格は無い。
だって私は曇らせた元凶の一人だからだ。
その後は、持っていた保存食を食べ歩き出した。安楽少女の実は人間が食べ続けるのは危険だからだ。
道なき道を進む。今日は彼も普通に歩いている。私の体力なら抱き上げて進むのも苦では無いのだが、彼が自ら歩くと言って聞かない。
非常に残念だ。もっと温もりを感じたい。
彼は歩くのに専念していて会話をする余裕も無い。私達は無言で歩む。
昼が近づいて来た、何か獲物を捕らえた方が良いな。
私の耳は遠くから聞こえるが息使いを捉える。
おそらく狼かそれに類するモンスターだろう。この辺りの狼は肉は固く味もあまり良くないが、噛み応えがよく食感は好きだ。
「狼が近クに居ル。ソコで待って居て。倒して来ル。」
「えっ。う、うん。分かった。」
彼が頷くのを見て、私はクラウチングスタートの体勢を取る。
狼もこちらに気付いたようだ。先手必勝とばかりに私は駆け出す。
ただの狼ごときが草原の覇者たるオークに勝てるモノか。
私は肉薄すると同時に剣を抜き放ち、すれ違い様に切り付ける。
私の持つシミターの様な曲刀は狼の毛皮を易々と切り裂き、血を撒き散らす。
狼は怯み怯えているが、逃がす気はない。
次の一振りで、殺す。
大地を踏み、急制動を掛け身体を捻り無理矢理方向転換する。
右腕を左肩まで振りかぶり遠心力を乗せ、身体の捻りに併せ振り抜く。
鋭く重い一太刀は狼の首をハネる。
後は血抜きをすればいい。私の知る手順は正規の物では無いがやらないよりマシだろう。
腹を裂き内臓を掻き出し木に吊るす。
前世も今も内臓系は好きじゃないし捨ててしまおう。
彼に声を掛けた。もうこっちへ来てもいいと。
彼は私の声を頼りに近付いて来た。草を抜け、私の前に来ると顔を真っ青にし踞った。
何かあっただろうか?
彼は肉にする作業を見慣れていないようだ。だが肉を食べる以上は知っておいた方が良い、私達は命を奪いその命を貪り生きているのだ。
彼は顔を真っ青にしつつも私の言葉を聞き、恐々と私のしている事を観察する。
「生きル事は命を奪ウ事だ。自分が生きル為には動物や植物の命を奪い続けていク。奪ウのが嫌なら死ヌしか無い。でも生きルのを諦めルのは、それまでに奪っタ命を無駄にすルのと同じダ。」
だから生きろ、いつかやってくるその時まで。
私が集落で教わった事だ。私達は生きているし、子孫を残さねばならない。オスを拐うのも生きる為だ、生きて次代に命を繋ぐのだと。
しばく休憩しつつお互いの事を話す。
まあ、私が明かせる事は当たり障りの無い事だけだがな!
「お姉さんはどうして旅に出たの?」
「どうしテだろうナ。私は現状に満足していなかっタからかナ。」
記憶を思い出す前もどこか満たされ無かった。物心着く頃から剣を振り、牙と爪を使う格闘術を学んだ。
そのうち同年代の同胞の中では一番の戦士となった。
初めて人型のモンスターを殺した時、手が震えた。分かり合えなくても言葉を交わせる相手を殺してしまった。
敵だから仕方ない。そう言い聞かせ、気が付けばこの手は幾人もの命を奪った。
集落を守る為に戦い、殺して来た。
敵に情けは掛けない。でも命乞いされて迷う時もあった。それで逃がした時は敵は仲間を増やして襲い掛かって来た。そのせいで幼い同胞が幾人も死んだ。
私の甘さのせいで殺されたんだ。
甘さを捨てて戦い、生きる為守る為に強くなった。
でも、そんな生活は苦しかった。ほんとは殺して殺される様な生活なんてしたくない。
ゆっくり花でも育ててのんびりしたい。いつか素敵な出会いをして、お嫁さんになりたいな。ってね。
似合わないでしょ?この手はこんなにも血に汚れてるのにね……。
というのを色々ボカして語った。
流石にオークだなんて言えないし、襲って来たのが仲間を取り戻そうとしたり討伐しに来た人間や獣人だなんて言えないよねー。
えっ、そんな事無いって?
うふふ、お世辞でも嬉しいよ。ありがとね。
ああ、素直で純粋な良い子だなぁ。こんな子を騙して誘拐した私は極悪人だよね……。
ねえ、今度はキミの事を聞かせて?キミの日常とかそんな感じの事をね。
まだまだ日にちは掛かると思うんだ。だからゆっくりとお互いの事を知っていこうよ。
これからゆっくり、キミの事を教えて?
所々カタカナなのは仕様です。
発音がやや怪しく片言で喋ってると思って貰えれば。
禁断の愛とか言ってるけど、現状は片思いで誘拐犯です。
味見とか言ってるけど、まだ未経験の処女オークです。
剣ばっかり振ってて耳年増の見た目はオークに見えないオーク少女です。
一体どこ向けの需要なのかって?
私向けの需要です。
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