艦これ【贋】 私は艦これの世界に来たと喜んでいたが。どうやらだいぶ違ったようだ (ヅダ神様)
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■章
転生しました。地獄ですかここは?


 見渡す限り一面に広がる青い海と転々と雲が浮かぶ、透き通るような青い空。

 

「私は本当に転生したのか」

と見たことも無いこの青い空を見ながら、私は感慨深げに零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そもそも私はちょっと前まで少し社会生活が送りづらい程度の一般人だった。普通に仕事をして、そして普通に趣味(ゲーム・サブカルチャー全般)に没頭するだけの人間であった。

 

 転生する前に前世で最後に覚えている事はコミケに行く途中で電車の脱線事故に巻き込まれて死んでしまったことだ。自分でも初めて知った事だが、人間は死ぬと空にゆっくりと上りながら自分が死んだ場所を見下ろす事が出来るらしい。なんて事を思っていたら瞼が急に重くなり、気が付くと真っ黒な世界になっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

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「で? 気が付いたらこれと…」

浜辺で仁王立ちした状態の白い軍服に身を包んだ男。私は1人でこの理解不明な現状を前に早々に理解する事を放棄し、現実逃避気味に海を眺めていた。

 

「しかも、俺刀も銃も撃った事無いんだけど‥…」

と、愚痴りながら左右の鞘に納められた軍刀らしきものとホルスターの拳銃らしきものを鞘とホルスター越しに軽く揺らしながらそう愚痴る。どちらも今まで触れた事のあるレプリカなどとは違い、ずっしりとくる重みから本物なんだろうと私の思わせてくれた

 

「………」

何となしにホルスターから拳銃を引き抜く。出て来たのは回転式拳銃ではなく自動拳銃であるブローニングM1910だ。何となく今来ている軍服からすると少しおかしくないか? と思いたくもなるが、今はグッと堪えた方が良いだろうと思い、口には出さずにグリップ下部からマガジンを取り出し弾薬を確認。グリップに戻してスライドを引き、正常に動作した事を確認してからこめかみに銃を当てる

 

「……」

静かな波の音だけに包まれたこの砂浜と、照り返す夏のように暑い日差しにさらされながら、私は引き金に掛けたこの指を引く事無くこめかみから離すと、銃口を見つめながら

 

「まだ死ぬにはちと速いな…」

と、そう言って振り返ると、私は森の中へ向かって歩いていくのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あっつい…」

あれから鬱蒼とした南米のジャングルを連想してしまうような森の中を突き進むこと体感4時間。軍刀で邪魔な草を切り払いながら進んでいたが、初めは地獄であった。

 

何せ自分が今来ているのは白の軍服。第二種軍装とか呼ばれる奴で、履いてる靴も革靴何でこんなジャングルの道を歩けるわけないので早々に足は痛みで感覚が無くなるわ、歩きづらいわ軍刀は片手で振るおうとしたら思ったよりも重いしなガイシでバランス崩しそうになって何度自分を切りかけたか分からないので四苦八苦しながらも両手で振るいながら歩き続け

 

「ん? 道か…?」

そしてようやくジャングルにしては不自然に道がならされた場所に着いた。良く良く見ると猫の指一本分程度の小ささの足跡が無数にある。それもこの道を往復しているのか大量にだ

 

「こりゃどっちかついて行けば何かに会えそうだな」

と、一筋の子妙を見出した私は、とりあえず軍刀をしまい、ブローニングをホルスターから抜き、両手でしっかりと構えながら進む事体感さらに1時間半。ようやく森を抜け。目の前が大きく広がる

 

「……えぇ?」

目の前に広がったのは軍港と、それに続く下り坂の道が見える。今度はジャングルの中とは違いきちんと草などが向かれて踏み固められた地面がむき出しの道である。そして軍港には6隻ものイージス艦が停泊しており。その姿はさぞやすごかったのだろう…

 

そのイージス艦は6隻全てが艦橋あたりから下が海面に沈んでおり、中には船体がへし折れたのか船尾が海面から斜めに突き出ているものもいたうえ、イージス艦は全て海面から出ている部分は抉り取られたかのように船体が一部無いうえ、破損している部分の周辺羽湯で融解していたり内側に大きくまがっていた。そして皆とも鉄塊のような巨大なガン取りクレーンなどの港湾施設はすべて破壊されており、港の倉庫やドックなどの各施設はもはや瓦礫の山と化し、アスファルトで舗装された道路やコンクリートにより舗装された地面は全てクレーター状にえぐれており、最早軍港の面影など欠片も無いただの廃墟と化していた。

 

「…の割に死体は観えないんだなぁ……」

これだけボロボロになっている上に艦隊は出向する暇すらなく殲滅されている(艦は全て軍港側を向いたまま沈んでいた)ようなので、どう考えても軍港にはまだ相当数の人間がいた状態で戦闘が行われているはずなのに、遺体どころか血痕すらも無いのだ

 

「妙だな…」

そう呟いた私は、ブローニングを先ほどよりも強く握りしめ、ゆっくりと軍港へと続くくだり坂の道を進む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「本当に誰もいないな…」

あの後夕焼けにまで日が傾くまで軍港内を探して回ったが、やはり死体や血痕などは一つも無く、これでもしここは遊園地のアトラクションです、とか言われたら信じてしまうくらいに【()】と言うものが感じられない。流石に瓦礫は重くて中まで調べていないが、もし本当に合った時の事を考えると無理してひっくり返そうと言う気にはならない

 

「ま、収穫はあったな」

と、私は袋に入ったレーションを手の上で投げながら言った。まさか比較的損傷の無いコンテナの中に軍用のレーションが詰まれているとは思わなかった。後は水があれば味さえ気にしなければだいぶ先まで持つぞ。なんてことを考えながら比較的無事だった軍港の司令部らしき建物に向かっていたその時

 

「ん?」

()()()()()()()()()()()()()…まるで死体のように白い肌をした、女性と思われる人型の何か。それは最小限の真っ黒な布のような物で胸と股間を隠しており、素足で瓦礫まみれの地面に立ち、両腕には()()()()()()クジラの前側をやや尖らしたうえで歯を人間のような物に変えた歪な何かを装備し、それが背中から出たチューブとその何かの後部が連結しており、顎から背中のチューブが接続された辺りまで何かの装甲のような物に覆われ、頭髪もその装甲のような何かと遜色ない光沢のある黒色(頭頂部付近は薄く銀色っぽい)で、海のように青い炎を瞳に宿したそれが。私と視線を合わせた

 

「ッ」

瞬間。全身がきしみ上がり、肉体が呼吸と言う行為を忘れて止まる。まるで蛇に睨まれた蛙のように動かなくなる私は、目の前のそれを瞬きすらも忘れて見つめ続けながら、全身から冷や汗を拭き立たせる

 

(何だあれ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!? 何だあれ何だあれ何だあれッ!?)

思考が加速し、混乱に拍車がかかる私に、目の前のそれはとても嬉しそうに目を閉じて満面の笑みを浮かべた。まるで獣が獲物を見つけた時のような、である

 

「」

瞬間。私の心が打ち砕かれ蹂躙された。体が四肢の端から粉々に崩れ落ちて行くかのような得体のしれない何かに支配されながらも、私は倒れれば死ぬと言う生存本能の身で立ち続ける。そして目の前のそれが悪意が形となったかのような笑みを浮かべると、ゆっくりとした足取りでこちらに近づいてくる

 

「はぁッ…! はぁッ! はぁッ!?」

そして近づいて来るにつれ、私の心臓が痛いほどに脈動し、私の生存本能が逃げろと叫び続けている。しかし私の体は動かない。動けない…

 

な…に…?

私の眼前にまで近づいたそれが何かを言った瞬間。私は意識を手放しその場に倒れた



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第2話

暗い暗い闇の底、私は無数の人の亡骸が横たわる墓場のような場所に立っていた

 

「…」

右を向いても左を向いても巨大な砲塔や魚雷の発射装置を取り付けた金属製の何かを纏った女性や少女達と、魚雷を彷彿とさせるデザインの黒光りする鉄の化け物や死人のように白い、または灰色のボディースーツのようなものをつけた女性や少女達が、あるものは首から上をなくし、あるものは右腕から肩、右胸、腹部の真ん中あたりから鎖骨にかけて大きく食いちぎられたかのように無くなっており、その顔はその傷を負った際の心境を表すかのように目を大きく見開き。口を裂けんばかりに開いたままでいた。他にも左腕を無くし、腹部に大きな穴を穿たれた女性の死体や、体の凹凸からかろうじて女性とわかる…それ以外は一切わからない焼死体など、ありとあらゆる死に方をした死体が横たわっていた

 

「………」

そんな墓場の中に立っているのに。なんの匂いもしないし、少しも気分が悪くならない事に不思議そうに私が首を傾けたその時、背後から気配を感じ取った私は後ろに振り替えった

 

振り返ると、そこには純白のドレスに身を包んだ短髪の少女が、その場に座り、両手を合わせて祈りを支げていた。しかしそのドレスは赤い血と深海のように深く黒い水色の血によって染められ。ほとんど白い箇所はなかった。そして少女自身も顔や髪にべったりと血が付いていた

 

「あ、あの…君?」

私は、何故か彼女に声をかけた。理由はわからないが、声をかけた

 

「…? ッ!!」

振り返った少女の瞳には成果は感じられず虚ろで、まるで廃人のようであったが、私を見るや否やみるみるその瞳には怒りと哀しみの感情が混ざりあい、みるみる目に涙を溜めながら立ち上がり

 

………まえ

ワナワナと肩を震わせながらうつむき、ボロボロと涙をこぼしながら何かを呟く。しかしその言葉が聞こえなかった私は、突如として動き出した目の前の少女が自分はぶつけてくる激情を前に気圧される

 

 

 

 

「おまぇぇぇぇえええええ!!」

 

 

 

 

少女は凄まじい剣幕で私に襲いかかり。胸ぐらを掴み上げると乱雑に揺らしながらこう罵ってきた

 

「今更ッ!! どのツラを下げて帰ってきたんですガァ!? アンタが! アンタがもっと早く帰ってきてればッ!! こんな…っ!…こ、こんな結果になんて…!!」

まるで今まで溜めに溜めた思いを叩きつけるかのようにぶつけ続けた少女は、やがて言葉を話せないほどに大きく泣きながら、しかし私の服を引きちぎらんばかりに握りしめ。そして私の胸に顔を埋め。見上げてきた

 

「っ!?」

そして見上げた顔は。私に対する。……いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()と、それを裏切られたのだろう。何故と訴えかける涙に濡れた瞳が切実に訴えかけていた。そして彼女はあらん限りの声を込めてこう叫んだ

 

 

「人殺しぃぃぃいいいいいいい!?」

 

 

 

そして、その少女の叫びを最後に。私の意識は急速に薄れ。そして

 

「ん〜…んん?」

目が覚めると、世界はとても薄暗く。辛うじて1m先のコンクリート片が見える程度の明るさしかない。さらに言えば西に沈み始めていた夕日が東に登り始めていた

 

「……朝?」

ゆっくりと起き上がり、右手で頭を軽く掻きながら起き上がる。そしてあたりを見渡そうとしていた私に、背後から声がかけられた

 

「ウ、ダ…イジョ…ブ?」

後ろからまるで金属を引き裂いているかのような不協和音と言う言葉すら表現し足りないほどの酷い声が聞こえてくる。その声に金縛りにあったかのように私の体が固まり、全身から血の気が引いていき。それと反比例に大量の朝が吹き出し。私はべったりと張り付く軍服と下のシャツの気持ち悪さなどかけら巻きにする余裕はなく。私はゆっくりと、まるで錆び付いた人形のようにギギィと言う擬音が聞こえてそうなほどにぎこちない動きで後ろを振り返ると、そこには正座したそれがいた。

 

「ッッッッ______―――――――――!?」

越えにならない悲鳴を上げる私に、不思議そうに首をかしげながら

 

「? 何デ、驚ク…の?」

と、そう私に話しかけてくる。そして私は気付いた、それと初めて会った時に感じたあの恐怖はなく。自分は至って平静でいることに

 

「ッ!? ッ!?」

慌てて自分の身体をまさぐり、すぐ近くにあった水たまりで顔を確認する。そこには自分の顔が映っており、着なれていないのが一目でわかる泥や砂、ほこりなどで汚れた白い軍服と軍帽を見につけた私の顔があった。良かった…どうやらそれの仲間にはなっていないらしい(実はなってるけど、私支店では普通の人間に見える某Rシューティングゲーみたいになってる可能性は考慮しないものとする)

 

「どうしたの? 何か失くしたの?」

そして普通の人間と同じ、やや高めの若い女性の声が其れの口から聞こえてくる。私は真面目にさっきの某シューティングゲーの可能性を考慮しつつ

 

「あぁ~…いや、大丈夫」

と、応えると、それは安心したようでよかった、と言って胸をなでおろしていた。その光景を前に嫌悪感や恐怖を含めて何も感じなかったことに対して背筋を嫌な予感が走る

 

「…所で、まだお互いに名乗ってなかったね、私は……あぁ~」

背筋に感じた予感を振り払い。とにかく事態を好転させるためにまずはお互いの情報を交換する事から始めようと自己紹介をしようとして。本名を名乗るかどうかで詰まってしまった。何故詰まったのかと言われたらこう答えるしかない

 

「これ、本名言う意味ある?」

せっかくの異世界転生である。どうせなら新しい自分を演じるのも悪くないのではないか。そう考えてしまったのが理由だ。しかし目の前のそれは私が言いよどんだことに対して首をかしげており。私は

 

「ミー! 私の名前はミーだよ!!」

と、慌てて私が良くゲームで使う(リアルガチ)名前を出す。それに目の前のそれは少し黙ってうつむいたまま何かを考え込む仕草をして

 

「……変な名前」

と、心無い感想を浴びせられ顔が真っ赤に熱くなって行く感覚を覚えながら思わず

 

「好きで貰った名前じゃないやい!!」

と、怒る私に、それは片手で口元を押さえながら軽く笑いつつ、こう言った。

 

「ふふふ、ごめんなさい。私は重巡リ級、エリートでもフラグシップでもないけど。並の深海棲艦よりも戦えるわ、よろしくね、人間」

そして握手を求めてくるリ級に応じつつ

 

「人間じゃなくミーと呼びたまえ。私も君の事をリ級と呼ぼう」

と、そう言った私に対して、リ級は軽く笑うと

 

「分かったよ、ミー」

と、素直に私の名前(偽名)を呼んでくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…さて、日も出た事だし、これから探索に向かいたいんだが…リ級。君はこの島についてどの程度知っている?」

すっかり朝日も昇り、本格的に活動が出来るようになってからそうリ級に問いかける。それにリ級は右手を腰に当てながら話してくれた

 

「この島は私たちが人類に初めて攻撃した場所よ。攻略後は徹底的に人類を根絶やしにしてから島を放棄し進軍。一時はこの島を前線基地にする案もあったみたいだけど、主戦場から遠すぎるうえ、島が小さすぎたせいでお蔵入りになっちゃったの」

 

「小さすぎた?」

 

「そ、小さすぎたの。前線基地には人類の基地があった島をそのまま深海棲艦に作り替えるの。港湾棲鬼とか飛行場鬼みたいにね。だから結局放棄されて破壊されたままずっと今まで放置されてたの」

そう軽々と言ってのけたリ級の発言衣装章度肝を抜かれながら廃墟と化した軍港をぐるりと見渡したあと

 

「一つ聞きたい。君は何故ここに居たんだ?」

私の問いかけに、リ級はこちらを見る目を細めた後、すぐに目を開き

 

「貴方にも同じ事が聴きたいのだけれど…まぁいいわ、私は敵に殺された。はずなのになぜか気が付くとここに立っていた」

と、そう応えるリ級に、私もこう答えた

 

「君と同じだ。私も死んで、気がつけばここに居た」

 

「あら、私たち、案外共通点が多いのかもしれないわね」

と、私の答えにそう言って怪しげな笑みを浮かべたリ級。その後私はゆっくりと深呼吸をして今後の方針をリ級と共に話しあった

 

結果として、まず深海棲艦は通常の艦船と同じように燃料…要は重油などで動き、人間のような生理的活動は存在しない(道楽として人間のご飯を食べることはできるが、消化できないので吐き出す事になるそうだ)。後は修復の際、鋼材などの必要物資は経口摂取のみ可能。弾薬は艤装(両腕の奴)に直接食わせることで補充できるとの事。因みに軍艦で使用される砲弾であれば何でも代用可能なうえ、大きければ大きい程必要な弾薬量が少なく済むとの事、そして一番大事な事だが艤装が不調らしく沖への航海が出来ないらしい。

 

以上の事を踏まえ、とりあえずリ級が擬装を使い、軍港跡周辺の木々を破壊し、更簡易的だが土嚢(土を盛り上げて固めただけの物)を作る事で即席のバリケードとし。その間に私が安全に調べられる範囲で軍港内の探索。食料などの日用品に武器など使える物を探索する。夜間になれば私はそのまま就寝し、リ級がイージス艦から燃料弾薬を最優先に、イージス艦内の使えそうなものを回収しつつ夜間警戒に当たると言うことで決定。早速探索しようとまずは司令部らしい5階建ての廃墟に入る

 

中は相当劣化が進んでいるのか木製の床は腐食し、コンクリートの壁や柱は仲の鉄骨がむき出しになっていたり今にも崩れそうなくらいひび割れているし何ならぶっ壊れて外の景色や隣の部屋を見せている始末で。おまけにほとんどの物が腐食で読めない食えない持ち出せないと早々に探索を止めたくなったが、司令艦の執務室らしき腐敗し過ぎて元の赤色がほとんど見えない絨毯が敷かれた広い部屋の、執務室の中に置かれた金庫(腐食していたので軍刀で簡単に破壊できた(これが凄いのか俺が化け物なのか…)。そしてなかには結構いい状態で保管された日記帳が3冊とアンプルみたいなものが入った注射針が10本収められたケースが3つ入っており。フォルダーの表紙には「麗文島における特一号生命体の観察日記」と言うタイトルで、せっかくなので見て見ようと思い、No.1のファイルを開いた

 

2004年 12/15日

「この麗文島でのみ存在が確認された。呼称特一号生命体は大凡20センチほどの小人で、食事排泄など人間と同じような生理的な行動が存在せず。人間に非常に友好的である」

 

「本国にこの生命体をサンプルとして送ったところ。この生命体には何処からともなく資源を供給してくれる能力が判明し、この生命体とのコミュニケーションの確立、及び生態の解明のために学術的調査団が組織されるまでの間、暫定的にだが私がこの生命体に関する全権を委任される」

 

2005年 1/15日

「特一号生命体…呼称「妖精」の学術的調査団が本島にやってきた。彼らは早速妖精を調べ始めており。全権は未だ私にあるが、彼らは私の命令を無視し、妖精拒否しても実験や診察などを繰り返していた。本国に抜き打ちでの査察団派遣を要請しするよう申請。来月には査察団が到着するとのことだったので、部下に命じて秘密裏に彼らの実験の様子を撮影させたり、彼らの会話を録音させた」

 

2005年 2/4日

「月に一度訪れる連絡船とともに査察団が到着。実態を調査した結果、確認できただけで14名の妖精が解剖等非人道的な実験や研究のために殺害されていることが判明した。査察団は有事の際の逮捕権等の権限を与えられており。要請を受け保安部を動かし。調査団員25名全員を拘束した」

 

「拘束、尋問中に一人の研究員が自供した情報を元に、持ち込まれた研究室を調査したところ。確認できた殺害された妖精の数の3倍近い量の妖精のホルマリン漬けが発見された」

 

「妖精は私を除いてこの島にいる軍人以外の人間に対する恐怖と敵意を向けてきており。私は政府に調査の一時中断を進言。状況を鑑みて(マスコミの格好の標的となり兼ねない非人道的実験の事実を揉消すため)政府は調査の無期限休止と調査団の本国への送還、そして私に彼ら彼女らの生態調査を行うように命令した」

 

それ以降は特に代わり映えの無い何時に彼らがこんな行動をしていたとかの報告書ばかりだったのでNo.2のファイルを開けた

 

2006年3/4日

「妖精が私について来いと袖を引っ張ってきた。仕方なく彼らに先導されるまま軍港裏のジャングルに入ると、そこには戦前陸軍が敷設したトーチカ跡があり、そこに入れと言われてはいると。中には下へと続く階段があるだけで。そのまま彼らに先導されるまま階段を下りると、そこにはこの島よりもはるかに巨大なドックが存在しており。その中には第2次大戦時に活躍した我が国の軍艦が勢ぞろいしていた。その数は100を超えていただろう」

 

「彼らは言った。何時かこれらの船が必ず必要になる日が来ると。そして魂の無い彼女らを、動かすに足る人間が現れる事を」

 

「私は今日この時から、このドックを守り、いつか来る日に備え続けることを心に誓った。もうこの日記を書く事も無いだろう」

 

そこでNo.2は終わり、最後のNo.3を開く

 

2013年 8/13日

「今私は生涯最後となる日記を記している。先ほど我が麗文島鎮守府は何者かの攻撃を受け壊滅した。同島に駐留していた第1艦隊は出向前に全滅。軍港としての機能も完全に破壊され。沖には深海のように黒い青色の塗装が施された2次大戦時の軍艦で構成された艦隊がこちらに接近している様子が目視で確認出来た。もはや我々の命も永くはない。私は生き残りに島の反対側にある脱出艇が用意された船着き場に逃げるよう指示した」

 

「最後を妖精たちが看取ってくれる。彼らに金庫にこれを収めるようお願いた。最後にこれを読んでいるであろう君が、彼らが待ち望んだ存在であることを切に願い。トーチ化の場所を書き記す。どうか彼女らを呼び覚まし、我々の仇を討ってほしい」

 

「日本国国防海軍。麗文島鎮守府司令神沼雄之少将」

ここで日記は終わっていた。私は大きく息を吸い、吐いた後日記を元の金庫に戻し。執務室の机に黙祷を捧げた後。外で土嚢を作成していたリ級を呼び。日記から地下に隠された()()()があると言う嘘を伝えてトーチカへと向かう。

 

トーチカは完全に木々と草によって覆われており。注意して見なければトーチカでは無くちょっと高い岡みたいなものに見れない事も無かったほどだ。そしてリ級にお願いしてトーチカの替えを破壊してもらうと、中は埃も無く、地下への下り階段だけが中央にあった

 

「これが兵器庫に繋がる階段?」

両腕の艤装を階段に向けながらそう尋ねてくるリ級に頷いて、私は地下へと進む。会談は照明が壁に埋め込まれており、しばらく下り階段を進んでいると、階段の終わりにとても分厚い鋼鉄の扉が見える。押してみても引いてみてもびくともしない。どうしたものかと唸っていると、後ろにいたリ級が変われと言い渾身の力を込めて左手を振りかぶり、扉をぶんなぐる。凄まじい轟音が階段内を反響し、私はたまらず耳を塞いで目を瞑り顔をそむける。そして音が消えてからまだ耳鳴りが続く耳から手を放し、目を開いて扉をの方を見る

 

「こんなものね。どう? 私もなかなかやるでしょ」

と、右手を腰に置いたリ級が上半身を捻って私にそう話しかけてくる。それに私は引きつった笑を浮かべながら

 

「頼もし過ぎて怖いくらいだよ…」

と、震えながらも頼もしさと興奮が入り混じった声で私がそう答えた直後、目の前でリ級の後頭部が盛り上がり、白目を剥いで口から泡を吹き出す

 

「は?」

余りの事態に処理能力を超えた私の口から反射的に呆けた声が漏れ。そして彼女の頭が吹き飛んだ。辺り一面をあの夢と同じように海のような水色を深海のように暗い黒色に混ぜ込んだかのような血と、肉片と灰色のプルプルとした何かと鉄編らしきものが飛び散り。それは私の身体にもまるで破片手榴弾のように襲い掛かり、私の身体をずたずたに引き裂き。床、壁、天井に幾つもの傷を作る

 

「っ」

そのまま私だった肉体は床に倒れ。リ級もまた、頭部が弾け飛び、首から鮮血を噴水のように拭き立たせながらその場に倒れる。そして私たちが倒れた場所に、奇妙な銃…らしき金属製の筒を抱えた2頭身の、整備員ら式作業着とヘルメットに身を包んだもの、水兵らしきセーラー服に身を包んだもの、旧式のレシプロ戦闘機の時代を彷彿とさせるパイロットスーツに身を包んだものなど、様々な衣装を身に着けた小人たちが恐る恐ると言った様子で近づいてくる。

 

「やっときた…」

1人が呟き、その呟きは瞬く間にその場にいた小人たちに波及して行く。そしてリ級の遺体を踏み越え、私の死体を小人たちは抱える。引き裂かれた際の肉片なども丁寧に回収して、ドックの奥へと走っていった



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第3話

「・‥…は!?」

意識が戻り、私はまず真っ先に自分の顔を両手で触り、次に全身をくまなくまさぐる。そして体に傷一つない…と言うか来ていた服が新品同然の白さを取り戻している事に気づき。言いようのない恐怖に駆られる

 

「っ! ここは!?」

そして自分がいまいる場所を確かめようと周囲を確認しつつ、両腰の武器を確認しようと腰に手を当てる。武器は腰には無く、部屋は先程の階段では無く、何処かの船室らしい4畳半ほどの空間があり、まず天井、床、壁は金属でできており。正面中央の壁には出入口らしき金属製の扉、そして扉の対面側の壁にはカーテンと窓があり、扉から見て窓側の壁にくっつけた状態で左端の位置にベッドがあり、私はその上で上体を起こした状態にある。そして左側の壁、ベッドにくっつけるようにして木製の机とイスが置かれており。私の軍刀とブローニングは机の上に置かれていた(ブローニングはホルスターごと置かれている)

 

「……生きてるのか?」

訳も分からぬまま死んだはずの私が生きている。なろうおなじみの不死身属性でもついているのか? と考えながらベッドの右側に座った私は隣の机から軍刀とブローニングが収められたホルスターを手に取り、両腰につけるとブローニングを引き抜き、本体とマガジンに弾薬がある事を確認してからスライドを引いて安全装置を解除し、両手に構えてゆっくりと扉に向かって歩き出し…始めたタイミングで扉が開いた

 

「っ!?」

慌てて後ろに下がり、ブローニングを構える。すると扉が半分ほど開いても扉を開けた主の姿は銃口の先には見えず。私が困惑したその時

 

「下、見て下さい」

と、突如として声が聞こえ、慌てて下を見ると。そこにはようやく見慣れはじめていた存在。妖精さん(紫セーラー服ber)が私の盆の裾を引っ張っていた。私は思わず驚いて妖精さんを振りほどこうと足を振り上げてしまい。掴んでいた妖精さんはその勢いのまま飛ばされる形となり、扉に激突して床に落下する

 

「あっ、しまった!? すみません大丈夫ですか!?」

咄嗟にブローニングをホルスターにしまい、妖精さんに駆け寄る。すると倒れていた妖精さんはその場で飛び上がり。けろりとした様子で私を指さしながら

 

「貴方、もう少し優しく扱う、です」

と、ジト目でそう言ってくる妖精さんにごめんなさいと頭を下げる。妖精さんは咳払いをしてから私背を向け

 

「ついて、来て」

と、頭だけ振り返ってそう言った後部屋を出て行く。私は油断なくブローニングを構えたまま妖精さんの後に続いて扉を潜る。扉を出ると部屋と同じく全て金属でできた通路が広がっていた。壁には等間隔で金属製の扉が設置され、壁には幾つものパイプが壁伝いから、床から天井へと縦に伸びており、天上には照明などの各種配線用のケーブルがむき出しとなっており。細長い筒状の電灯が通路を照らしてくれている。そんな道を進みながら。私はリ級の事を思い出すと、両ひざをついて妖精さんの両肩をつかみ

 

「リ級は!? 私と一緒に深海棲艦が来ていたはずだ!? 彼女はどうなった!?」

と、妖精さんを揺らしながらそう尋ねる私に、眉ひとつ動かすことなくこう答えた

 

「殺しましたよ。敵でしたから」

その答えに私は絶句して手を離し。妖精さんは私が掴んだことでできた服の皺を伸ばしながら

 

「むしろ何故貴方が敵とともにこの方に足を踏み入れたのか。そちらの方が我々にとっては疑問なのですが」

と、鋭い眼光で私を睨む妖精さんに私はまるで責められている意味がわからないのに罪悪感からか変な声を上げる…そして

 

「…非常に言いにくいのだが、お前たちは一体誰と勘違いしている?」

そろそろ誰かに間違わられた状態でいることが耐えられないので、妖精さんにそう尋ねる。すると妖精さんは大きく目を見開き、激しく視線が揺れた後

 

「なっ…!? ゆ、豊宗吾(ゆかたそうご)様ですよね!?」

と、今までの余裕のある平静な態度から一変。明らかに余裕のない声で私にそう詰め寄って来る妖精さんに

 

「いいや、私の名前はミーだ。その豊とか言う人間ではない」

と、大きくため息とともにそう答える。それに妖精さんは2、3歩後ろに後ずさり、信じられない物を見る目で私を見つめた後。取り繕うように咳払いをして

 

「コホン。ど…どうやら我々の勘違いだったようですね、それでミー殿、貴方はこの島にどうやって来られたのですか?」

と、再び歩き出しながらそう尋ねてくる妖精さんの後に続いて歩き出し。私は

 

「本当に何故かはわからないが気付いたらこの島に居たんだ。そしてこの島に来る前の最後の記憶は日本の東京で、電車の脱線事故に巻き込まれて死ぬまでしかない。…まぁ信じてもらう気も無いし。こんな与太話を信じる方がどうか…」

と、完全に自分のペースで語っていた私は、ふと妖精さんの様子が気になりちらりと横目で見ると。彼女が何故か得心の言った表情で侮蔑やまるで異常者を見るかのような視線を向けることなく、まるでこちらの話を信じているかのように真剣な表情でこちらを見ていた

 

「して…いる……え? 本気で?」

と、思わず訪ねてしまった私に、妖精さんはゆっくりと頷き。

「先ほど話した豊様も、貴方と同じように死んでこの世界に来ました…前例があるのです。軽々しく全否定と言う訳には行きません…それに」

 

「それに?」

彼女はすらすらと言葉を紡ぎながら顎に左手を置いて考え込むような態度を取り。私が言葉尻を取っておうむ返しをすると

 

「貴方がミーと言う別人で、豊様ではないと言う事はこの一連のやりとりで十分理解出来ました。貴方の事は以後ミーとお呼びします。よろしくお願いします、ミー提督」

と、敬礼と共にそう言ってくる妖精さんの言葉に何か含みのような物を感じつつ、私は何となく敬礼で返し

 

「こちらこそ。よろしく頼みます…あぁ~名前なんて言ったかな?」

と、今の今まで自己紹介すらしていなかったことをいまさら思い出し、失礼な事をしたと内心反省する私に、妖精さんは

 

「我々に個体を識別する様なものはありません。 …ですが豊様は一人一人に名をつけていたので、ミー提督も同じようにされてはいかがでしょうか?」

と、少し考える素振りをした後そう言ってくるので、何となく

 

「じゃあ一ちゃん(いっちゃん)で」

と、言うと。妖精さんは露骨に嫌そうな顔をした後

 

「…本当に豊様では無いですね」

と、罵倒とも取れる言葉を言われた。それに私が怒ると

 

「別に、特に意図はありませんよ。それではミー提督。こちらにどうぞ」

と、ミーは私の怒りを無視して再び通路を歩き始め。私はしぶしぶ矛を収めて一ちゃんの後を追いかけるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ここが艦橋です。ミー提督」

エレベーターが開くと、そこには人間サイズの舵輪や羅針盤に伝声管、そして非常に原始的な箱型ディスプレイにレーダーと思われる半球状型のディスプレイに半透明なボードが幾つも置かれており。その隣に妖精さん用と思われるミニチュアサイズの物が置かれている

 

「…写真とかで見たやつとは違うな…」

現代のイージス艦などの艦橋とはどこか違う艦橋に若干ワクワクしている私をしり目に、一ちゃんが舵輪を握る水兵服姿の妖精さんのすぐ右斜め後ろに立つ蘭色の軍服に身を包み、軍帽を深くかぶった妖精さんの元まで歩くと

 

「艦長、出航準備は整いましたか?」

と、尋ねる。艦長と呼ばれた妖精さんは深くかぶった帽子から僅かに覗かせるまるで刃物のように鋭い眼光を放つ左目を一ちゃんへと向け

 

「…できてる。ただ炉心が反応しない、やはり提督が必要だ」

と、できてるの後はシャッターのようなものが降りた艦橋の窓を見ながらそう答える。それに一ちゃんはそうですか、と言うと

 

「ミー提督、早速ですがあなたの初仕事です。この舵輪に触れて下さい」

と、振り返って舵輪を手で指しながらそう私に言ってくる一ちゃん。するとその場にいた妖精さん全員が凄い複雑そうな表情で私を見つめてくる。艦長だけは何もせずにずっと窓を見ている

 

「……とりあえず触ったら俺の質問に答えてもらうぞ」

私はそう言いながら舵輪へと向かって歩き出し。その様子を見ながら一ちゃんは

 

「はい、応える事の出来る範囲ですべてお答えします」

と、私に初めて笑顔を向ける。極めて打算的な笑みだが無表情よりましだな、等と考えながら舵輪に触れようとして

 

「…アンタが豊じゃないってんなら。何で今更来やがった」

と、艦長が私にそう言葉をぶつけた。その言葉には責めると言うよりも、自分に何かを理解させるために、絞り出したかのような印象を受けた。事実艦長の表情は見えないがその肩は小さく震えていた

 

「…私は、来たくてこの世界に来たわけじゃない……。望んで、この世界に来たわけじゃあない…選んで、来た訳じゃあない」

と、艦長の方を横目で見ながら。私は正直に艦長から私に向けてぶつけられた思いに答える。それに艦長は少しだけ頭を上げた後、こちらを見ようとして、然し帽子を深くかぶり直しながら俯き、肩を震わせこう言った

 

「……あぁ、分かってたさ。すまん……」

と、そう謝罪の言葉を口にした艦長に、私は答えることなく両手で舵輪を握った。すると舵輪が青白く光り。そして舵輪から船全体へとその光が波紋のように駆け巡り

 

「成功だ!! 炉心に火がついたぞ!?」

と、伝声管から何とも男らしい声が聞こえてくる。それに続いて

 

「艦内全域へのエネルギー回路を開け!」

と艦長が命令し、一気に艦橋内が慌ただしくなる

 

「炉心内圧力上昇中、荒魂エンジン起動シーケンスオールクリア。荒魂エンジン、始動」

 

「エンジン始動を確認。エネルギー生産効率。想定値より32%高い」

 

「エンジン内温度3200度。想定値の約72%で、内壁の融解等ありません」

 

「エンジンから艦内各所へのエネルギー回路開きます、回路解放」

 

「主砲並びに副砲へのエネルギー充填開始。発射点まで後5分」

 

「対空砲前門エネルギー注入完了。回路封鎖」

 

「エネルギー回路通過時の損失は毎秒1Mごとに訳0.0002%。想定の230分の1です」

 

「主推進機関へのエネルギー注入を終了。点火可能です」

ディスプレイに向き合い、凄まじい速度でタイピングしながら報告して行く妖精さん達。そして最後の報告がはいると同時に艦長が

 

「Mk.Ⅱ.点火ァ!」

と命令。その直後妖精さんが命令を復唱した直後。艦が僅かに振動し

 

「Mk.Ⅱの点火成功しました」

 

「主砲及び副砲全門エネルギー充填完了。カートリッジへの供給に移行します」

 

「ミー提督。出航準備が完了しました。出撃の号令を…」

と、いつのまにか私の隣にあるレーダーの席に座っていた一ちゃんからの要請に。私は両手と首を横に振りながら

 

「いやいやいや!? 俺なんも知らないってか分かんないし。そもそもこの艦の事すら知らないのに言っちゃだ…」

 

「「未来」です、提督」

と、私の言葉を遮るように艦の名前を教えてくれた艦長。その説明の裏に早く言えという無言の圧力を感じた私は、大きくため息を吐いて大きく肩を落とし。しかし直ぐに軍帽を被り直してまっすぐに正面を見ながら

 

「未来、抜錨! 出航せよ!!」

と、号令を出す。それに操舵手の妖精さんが

 

「抜錨〜!!」

と、復唱しながら舵輪の左右にある七色のバーの内の1つである赤色のバーを降ろす。

 

「投影開始」

次にディスプレイを操作している妖精さんのうちの一人がそう言った直後。シャッターによって何も見えない窓が中心から綺麗に横に割れ。内側から外側に細かいブロックになり、巻かれるようにして消えていき、それに合わせてドック内の様子が見れるようになる

 

窓からは自分が乗る艦の左右に大小様々な艦艇に合わせて造られたのだろう。サイズの違うドックが遠すぎて見えなくなるくらい左右に伸びており。さらに正面には何処までも灰色の天井を支える巨大な柱と、波一つない静かな海が広がっていた。ちなみに果ては見えない

 

「こいつは…すげぇや」

と、私が簡単なため息とともにそう興奮気味に呟き。続いて操舵手が

 

「微速前進ヨーソロー!」

と、言って黄色のバーを肩から自分の腕を下ろした際、丁度膝のあたりまで降ろす。すると艦がゆっくりと進み出す

 

「両側前進ヨーソロー!」

そしてドックを出た瞬間一気に黄色のバーを降ろす。するとがくん、と艦が大きく揺れた後。先程までの比ではない速度で艦が進み始める。

 

「うぉぉぉおおおお!?」

揺れに耐えきれず倒れそうになった私は、咄嗟に倒れこみながら前にあった舵輪に抱き着く。しかし舵輪は固定されているのか少しも回る事はなく。倒れずに済んだことに私が安堵した直後

 

「第142ゲート解放」

と、そう一ちゃんが言った直後。突如として進行方向の天井がファスナーを開けるように大きく左右に広がるようにして裂け。大量の海水が降り注いでくる。私はこの時初めて明確に知覚できる氏としというものを感じ取った



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第4話

「第142ゲート解放」

一ちゃんがそう言った直後。突如として進行方向の天井がファスナーを開けるように大きく左右に広がるようにして裂け。大量の海水が降り注いでくる

 

「」

私は突如として暗くなったことに疑問を抱き。次の瞬間には上から降り注いだ大量の海水により絶句し

 

「うわぁぁぁああああああああああああああああ!?」

と、情けない声を上げて舵輪にさらに力を込めて抱きつく私

 

「水流操作システム起動」

左斜め後ろに座る妖精さんがそう言った直後、艦に降り注いでいた水が突然指向性を持ち、まるでこの艦を引き上げようとする無数の縄のように指向性を持って艦を覆い尽くす。

 

「艦体上部に水防被膜を展開」

次に真ん中の妖精さんがそう言うと、先ほどまで水の中で何も見えなかった窓から急に水が消える。よくよく見れば甲板から少し下の辺りから上側だけ、まるで空気の膜が出来ているかのように水がくっついていなかったのだ

 

「水流操作完了。ゲートを通過します」

再び左斜め後ろの妖精さんがそう言った直後。艦体が大きく揺れると、からだが少し床下に引っ張られる感覚を覚えると共に、艦が上昇を始め。海中に突入。そのままゲートと呼ばれていた裂け目は閉じられ。艦はそのままぐんぐん速度を上げて浮上し続け

 

「海上まで後500M、秒読みに入ります…10、9、8…」

と、右斜め後ろの妖精さんが秒読みを始め。そして遂に太陽の光が差し込む海上付近にまで浮上し

 

「0」

そして勢いよく船首からほぼ垂直に未来が海上に飛び出す

 

「ぬぅおおおおおおおおおおおおお!?」

後ろに落ちない用全力で舵輪につかまり。雄たけびを上げる私。そして未来は重力に従い船底から海上へと倒れる

 

「ぐぺっ!?」

倒れ、海面に着水した際の衝撃で床に叩き付けられた私はなさけない悲鳴を上げ。痛む体をさすりながら外を見て見る

 

「……」

何処までも広がる雷雲によって薄暗い空と。まるで嵐のように荒ぶる海があった

 

「痛ててて……」

打ち付けた体をさすりつつ舵輪を支えに立ち上がった私は。悪天候な海を突き進む未来の船体に初めて目がいった

 

「」

痛みすらも忘れて窓まで歩いて行くと。両手をついて食い入るように窓から見える未来の選手から主砲塔までを眺める

 

 

船首から艦橋までで目測は400M、甲板の左端から右端までで最大50Mほどとかなりの巨体があり、船首からやや左右に大きく広がるようにした甲板にはCIWSらしき対空砲が等間隔に設置され、その後ろにCIWSとは互い違いになるようにミサイルコンテナが配置されている。船首のすぐ後ろ側の甲板上には写真で見た大和型のものよりも巨大な、三連装砲があり、そこから30メートルほど後ろにはVLSの発射管らしき装甲板が横一列に20基、それが縦に7列で140基。その100メートルほど後ろには船首の主砲よりは一回りも大きな主砲の連装砲が2つ段々にあり。その二番目の主砲の左右に船首のものと同じ主砲、その上下には船首のものよりひとまわり小さな4連装副砲を備え、三連装砲は上下の副砲よりも高い位置にある。そして副砲と主砲の上にもCIWSが副砲は2基、主砲には4基置かれている

 

「すげぇ………」

自分の知識にはないそのあまりにも巨大すぎる威容を前に感嘆の声を上げ、少し恐怖から引き腰となる私に艦長が

 

「進路そのままァ! 第1戦速を維持せよ!! ‥‥‥‥当たり前だ。この艦は勝利の為に造られたんだからな」

と、そうだ主に命令した後心なしか胸を張り、声にも誇らしさと嬉しさが少し混じり合った声で私の声にそう返してきた。そして一ちゃんが新しく来た水兵服の妖精さんに席を替わり、私にこう言って来た

 

「ミー提督、敵がいつ襲ってくるかもわかりません。貴方の質問に時間の許す限り答えたいので、早く私について来て下さい」

と言ってくるので、私は艦長の方を見ながら

 

「…私がいなくなっても不都合はない?」

と、尋ねると、艦長は水平線をじっと見つめながら一言

 

「ない」

と言ってくれたので控えめな声で失礼しま~す、と言って一ちゃんと共にエレベーターに乗り、艦橋を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一ちゃんに誘われるままに入室したその部屋は、今まで見てきた無骨な鉄の部屋では無く、壁の上半分は白色の壁紙、下半分は木材で、床は全面紺色の絨毯が敷かれており、天上も壁と同じ壁紙が張られていて、照明はシャンデリア型の電球が置かれている

 

「……さて、私に何を聞きますか? 提督」

と、何時の間にか先に座っていた一ちゃんが手で座るように促しながら私にそう話しかけてくる。席には一ちゃん用の小さな受け皿に乗った小さなコーヒーカップと、対面の席に置かれた普通の人間サイズの受け皿とコーヒーカップが置かれていた。私はとりあえず一ちゃんの対面に座り、一ちゃんは左手で受け皿を取り、右手でカップを持って一口コーヒーを飲んだ後

 

「さて、何から質問します?」

と、私に尋ねてくる。それに私は

 

「………じゃあ、まずはこの艦は何処に行こうとしているのか。そして君達は何をしようとしているのかを教えてほしいな」

と答える。それに一ちゃんは受け皿にカップを置き、その受け皿を両手で持つと、少し目を伏せて静かに話し始めた

 

「我々は現在小笠原諸島にある日本国防海軍が保有する母島港に向かって移動中です。目的は友軍との合流です」

 

「私の安否は?」

 

「貴方の安否は確実に保障されます。この未来が動き続ける為にあなたは絶対に必要な存在ですから」

そう言ってもう一口コーヒーに口をつける一ちゃんに、私はさらにこう尋ねた

 

「舵輪を握った時から思ったんだが、何故私が触ってから艦が動き出したんだ?」

 

「貴方方異世界人は、我々が建造する軍艦に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であるからです。原理は分かりません、我々も自身の能力を()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので、我々は貴方の身の安全しか現状保障できません」

 

「…分かったその話はもういい。次に私…いや、私たち提督呼ばれる異世界人と、君達妖精の能力について知り得る限りの情報をすべて出してくれ」

思わず頭を抱えた私は、そのまま何とか出しました、といった感じに喋り。一ちゃんはたんたんと話し出す

 

「我々は深海棲艦に対抗できる存在「()()」を生み出すこと。そして人類を支え、彼らと共に深海棲艦に勝利するために生まれました。誰が生み出したのかはわかりません」

 

「我々は無から艦娘を建造するために必要な資源を生産する力をもち、艦娘を生産するために必要な設備を建造することが出来ます」

と、両手を横に広げる一ちゃん。すると両手からまばゆい光が現れ、彼女が座るソファーの両側から唐突に緑色に塗られたドラム缶や鋼材、アルミニウムらしき金属で出来た延べ棒やら大量の資材が現れる。その光景に思わず目を見開いたまま一ちゃんと左右の資材とを3度見してしまった後。とりあえず衝撃を飲み込もうと必死の形相になりつつ続きを離すよう手で促す。それに一ちゃん微笑みながらコーヒーに口をつけると続きを話しだす

 

「一方で貴方方異世界人はこちらの世界では「()()」となれます。提督はわれわれが建造した艦娘の下となる空船(からふね)に触れる事で空船に魂を宿らせることが出来ます。この行為を艦降ろしの儀といいます。この儀式により艦娘が生み出されます」

 

「また、艦娘は提督との間に契約を行うことで主従関係となり、提督は契約の対価として指揮下の艦娘を強化することが出来ます」

 

「そして艦娘を率いて深海棲艦を絶滅させ、人類を勝利に導く……。それが貴方方提督の役目です」

そう言って、コーヒーカップの中にわずかに残ったコーヒーを飲み干し、一ちゃんは受け皿に載せたコーヒーカップを静かにテーブルに置くと

 

「…以上が私が貴方に答えることの出来る情報の全てです」

と、私の目を真っ直ぐに見ながらそう言いきる一ちゃんに、私は続けて

 

「この艦は何だ?」

とたずねる。それに一チャンはおもむろにソファーの上に立ちあがると、ポケットから一枚の丸めた髪を取り出し、それを無造作に広げながらテーブルの中央に投げる。すると紙がひとりでに開きながらこの1mはあろうテーブルが埋まるほどの大きさにまで巨大化する

 

「っ? …っうぉぉおお!?」

突如立ち上がり、紙をポケットから出したことに首をかしげ、続いて突如として広がった紙に驚きの声を上げてソファーから飛び上がる。良く見れば巨大な軍艦の設計図らしい青写真で、右上にはこの軍艦のコンセプトと名前が書かれていた。私は何故かそれを読み上げた

 

「…対深海棲艦用戦略級移動式海上決戦要塞 「未来」」

その図面に書かれていた船体は艦橋で見た船の前側と全く同じで、艦橋周辺、つまり船体中央部は甲板部分に4連装副砲が片側に6基あり、その間にはVLSが縦に3つ一列が横に3つで9つ置かれている。そして艦橋の下側周辺にハリネズミのように置かれた対空用の連装速射砲とCIWSが両側あわせて40基ずつおかれている。更に船体後部には艦橋のすぐ後ろから上に20、横に120M、縦450Mの巨大な格納庫(船内にも2層分の格納庫があり計3層の格納庫がリフトなどで繋がっている)があり、その後ろには横120M、縦400Mの離着陸用のメインカタパルトがあり、格納庫から出てすぐのあたりから一段下、普段は厚さ1Mの防護壁に護られた艦内第1格納庫から左右に伸びる横60M、縦330Mの発艦専用カタパルトがある。またカタパルト部分には船首と同じ主砲が甲板上の第1格納庫の左右に4基ずつ(砲塔旋回時の空間確保用に格納庫の一部分を意図的に凹ましてある)備え、カタパルトには1M感覚で対空用の連装速射砲と、速射砲の上部にCIWSを1基備えている他。第一格納庫の左右の壁面や高さ5Mのシャッターの上側にはドーム型のCIWSをハリネズミのように敷き詰められている上、屋上には通常のCIWSにプラスしてさらに連装速射砲も70基配置されている

 

全長1.6㎞。装甲厚最大750㎜、最低430㎜。総排水量は計画時点の予想で約20万t。文字通り人類がこれまで見たことも無い巨大戦艦…いや要塞と言えるものが載っていた

 

「……」

私は天を見上げるようにして大きく息を吐いた後、彼女に向き合い

 

「…これが、未来?」

と尋ねる。その顔にはヤバいと言う感情と妖精さん、ひいてはこの建造を承認した国に対する恐怖と困惑とが混ざり合った大変奇妙な顔だった。それを見た一ちゃんもまた、呆れたように口角を少し上げて笑い

 

「えぇ。未来です」

と、楽しげに答える一ちゃんに絶句しながらも、私は続けて

 

「こんな小学生でも考えつかなさそうなアホみたいな軍艦を造ることそのものがもうやばいとしか言えないが。1つ疑問がある。何でこんな馬鹿でかい「決戦」なんて大層な名前をつけた代物を麗文島なんて辺鄙なところで造ってたんだ?」

と尋ねる。それに一ちゃんは右手で体を抱きながら左手を掌を上にして斜め前に出しながらこう答えた

 

「麗文島には我々が建造したものの中で最も大きな造船所がありました。この未来を建造できるほど設備と空間を確保できるものはあそこにしかありませんでしたから」

 

「じゃあ次に聞くが、現状の世界情勢はどんな感じなんだ?」

その問いに一ちゃんはポケットから黒色の六角形の装置を取り出し、テーブルに放り投げる。するとそれは私の掌に収まる程度の大きさとなり、その中心が開いてカメラのレンズみたいなものが現れる。そしてそれが青白い光で形作られた地球の映像を映し出す

 

「っうおぉぉ…!?」

まるでアニメのような超技術を前に驚きと興奮、そして感嘆が入り混じった声を上げ。一ちゃんがレーザーポインターみたいなもので地球の映像を差しながら説明を始める

 

「現状世界の海はその8割が深海棲艦の手により支配されています。この支配域での船舶の航行は不可能であり、衛星からも支配域内を観ることはできません。」

一ちゃんの口頭での説明に合わせて地球の海が赤く染まって行く

 

「そして現在ユーラシアでは東は旧ベトナムと中国との国境線の辺りと小笠原諸島付近よりも太平洋、東南アジア側に人類の生存権はなく。欧州もイギリスがリバプールとキングストン・アポン・ハル以北とアイルランドを喪い。ドーバー海峡をユーロ連合空海軍による物量作戦で無理矢理確保している状態です。またスペイン半島はギリギリ死守できていますが地中海の制海権は日増しに奪われつつあり。アフリカ大陸は全方位からの深海棲艦の攻勢を前にスエズを始めとした中東との交易ルート以外の全ての沿岸部を放棄しての地上戦でかろうじて踏みとどまり。インドも国土の半分を喪い。中東では沿岸部の全ての国が崩壊したところで構成は終わりましたが、発生した難民は何処も時刻を維持するので精一杯で受け入れ先も無く沿岸部の自国内で深海棲艦に怯えながら生活するか内陸部の中東国家に密入国するしかない状況下で内乱状態となり収拾がつけられなくなっています。ロシアはシベリア方面ですら深海棲艦の襲撃は少なく北極海からは現在前一度も襲撃を受けておりません。唯一バルト海のみ深海棲艦の激しい攻勢を受けているため、欧州各国海軍と共に全力での国土防衛を行っています、現状最も被害の少ない国家です。次にアメリカ大陸は南は陥落しました。しかし重要な資源地帯を中心にアメリカ陸軍主導での防衛作戦を行い、世界各国に貴重な資源を供給しています。北は全世界から即時引き上げを行ったアメリカ軍による徹底した自国及び欧州との交易ルートの全力防衛によりその維持に成功。しかし莫大な戦費にそろそろ経済面での限界を迎えつつあるようです」

と、ルナティックどころかHELLくらいはありそうな難易度の世界情勢に軽く絶句した私。それに対し一ちゃんはただ一言

 

「…しかし、未来があれな事態は好転できます。少なくとも日本周辺海域に存在する深海棲艦を殲滅し太平洋における深海棲艦の最大拠点であるハワイの攻略が出来ます。そうすれば太平洋におけるパワーバランスを一挙にこちらに引き寄せる事が出来ます」

まだ、勝てます…。と、一ちゃんは己の言葉を信じて疑わないと言わんばかりの表情でそう言い切る。その言葉に私は

 

「まだ正直、状況を飲みこめてないし。この艦1隻で本当にできんのかって言う思いは今でもある」

と、俯いたまま両手を膝の上に乗せ、両手を握り、指をあそばせながら自分の想いを話して行く。それを一ちゃんはただ黙って来ている

 

「でも、今俺はあんたらがいないと死ぬ未来しかないし。アンタらも俺が必要っぽい…だから」

そう言って私は覚悟を決めて立ち上がると、一ちゃんを左手を突きだして指差しながら

 

「だから契約だ!! アンタらは維持でも俺を守って生活を保障する!! 俺は対価としてアンタらのして欲しい事に全部応える!!」

結ぶか!? この契約を!! と叫ぶように突きつける私に、一ちゃんはソファーの上に立ち上がり。ジャンプでテーブルの上に乗ると、右手を私に伸ばして

 

「結びましょう。その契約を」

と、こちらをしっかりと見ながら、目だけで覚悟のほどを語る一ちゃんに、私は左手で一ちゃんの手を握り握手する

 

「これからよろしく頼む。一ちゃん」

と、私が言い

 

「えぇ、こちらこそよろしくお願いします。ミー提督」

と、一ちゃんが笑顔で返す。その直後に艦内を真っ赤に染め上げるアラートと、戦闘配備の号令。そして私と一ちゃんにすぐに艦橋に上がるよう艦長からの艦内放送が行われ、私たちは同時に部屋を飛び出した



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解説編
未来の解説編その1


「対深海棲艦用戦略級移動式海上決戦要塞 「未来」」

 

「日本国国防海軍が■■■■■■■■■■■作戦後に考案された未来計画に基づき開発された決戦要塞。そのコンセプトは太平洋に存在する深海棲艦を単艦で殲滅する事であり。2年と言う歳月をかけて麗文島地下造船所にて建造された日本国の決選兵器であり、最後の希望である(以降の情報は非公開とされている」

 

 

 

「搭載兵装」

 

「対要塞専用決戦砲「草薙の剣」 未来が誇る艦載砲の中では最大最長の砲。使用する砲弾は横3M、縦15Mの実弾と、荒霊エンジンから直接供給されるエネルギーを放つエネルギー段の2種類があり。使用される実弾は主に11式徹甲弾と11式対艦用燃夷散弾、そして対陣地用の11式対地榴散弾と、トーチカ及び地下施設用の11式地中貫通弾頭爆裂弾の4種類であり。エネルギー弾は一発討つ為に電力換算で約1200憶ギガワットが必要であり。それを利用して放たれるエネルギー弾は設計者の妖精さん曰く「貫けぬものも消滅させられぬものも存在しない究極の兵器」との事。またエネルギー弾は砲門1つに付最大5発充電可能なカートリッジを装填している。また一発撃つごとに砲身を強制冷却させる必要がある為。甲板に格納されている専用の放水装置を使用する」

 

「対艦用3連装砲 船首や草薙の剣に格納庫の左右に設置された主砲の事。主に91式徹甲弾改と3式弾改を使用する」

 

「対艦用4連装大型速射副砲 横一列に4本に砲塔があるわけではなく、縦2本の横2列で上下の列で段差があります」

 

「対空用20㎜CIWS 皆さんご存知の物で、FCSに最新の赤外線センサーなどを内蔵した半ドーム状の本体に、砲身を直接取り付けたタイプであり。これにより360度あらゆる方向に対して射撃が可能」

 

「対空用120㎜連装速射砲 こちらの連装速射砲は箱型の連装砲塔であり、メインとしては対空防御用の物であるが、近距離での砲撃戦では対艦用兵装として使用される」

 

「新型艦上要撃機侍 形状は震電の後部のプロペラをジェットエンジンに変えて機体をやや長身にしつつエンジンの入る機体後部を大型長身化させ、機首付近の前翼を外し、代わりに機首に2門の20ミリガトリング砲を装備し、コクピット部分も長身化する機体に合わせてやや後方に伸びるような形状をしている。そして両翼を少し厚くしつつさらに長大化させ、×時の固定器に4つ固定された赤外線誘導方式を採用した小型誘導ミサイルと同じく赤外線誘導方式の中型誘導ミサイルを小型は固定器を片翼に1つずつ、中型は片翼に3つで最大14発のミサイルを装備できる。尚色合いは黄緑を基調に機体下部や翼の上下を黒色に塗っている。搭載機数は最も多く40~80機」

 

「新型艦上攻撃機雷光 形状は全体的な細身で、丸みを帯びた機体と先頭には機体後部のジェットエンジン1機の冷却用の吸気口と排気口が両側に挟まれる形でコーン上に尖った機首を持つのが特徴。それに反比例するように分厚いデルタ翼と言うアンバランスな機体である。垂直翼はそこまで大きくはなく、搭載しているのは対艦用の中型ミサイルを片翼で6ずつ。またそれを打ち切った後にデルタ翼内に搭載した小型ミサイルを片翼2ずつの計16発撃てる。また機首には対艦用に装填数の少ない40㎜機関砲(榴弾)を装備しているが、こちらは敵艦の艦橋や機関部などの急所を破壊する前提のもの。色は黒一色で、搭載機数は大凡40~60機」

 

「戦略爆撃機富岳改 富岳をさらに大型化させたうえで翼のエンジンを大型のジェットエンジン6機に変え、機体色を黒一式に変えたもの。主な用途は陸上型深海棲艦や要塞などに対する爆撃。使用するのは主にナパームと200Kgと1t爆弾、後はバンカーバスターがメインとなる。因みに最大積載量は約5t こちらは搭載機数が最も少なく僅か3機となっている」

 

「戦術戦闘機兼高高度迎撃機鴉 形状は逆テーバー翼に限界まで小型化、軽量化された小さく細身で、空気抵抗を無くすために可能な限り凹凸を削った流線的ボディが特徴的な機体。因みにコクピットは機首の少し手前上部にあり。メインは機体後部上下に設置された大型ジェットエンジンで、その上部のエンジンに垂直翼がある。また機首はやや大型化しており、横から見ると横に倒したフラスコにも似た形状となっていて、機首の左右に30㎜機関砲、両翼に20㎜機銃を備えており。翼には片側ずつ中型誘導ミサイルを3発ずつ計6発装備しており、両翼と機体の中央から後部にかけての大半は燃料タンクとしての機能を持ち、下部のエンジンと機首との間の空間に増槽を付けることも可能 搭載機数は10~20機」

 

「1試自立型自在装甲戦闘戦術人形 形状は身長185センチのAIを搭載した人形に専用の水上戦闘用強化外骨格を纏わせることで洋上での対「本体」戦闘時の主力防衛戦力として運用される。強化外骨格は電源と各種兵装の弾薬ボックスを兼ねた大型のバックパックを背中に装備し、全身を強固な装甲で覆い、関節など装甲が施せない位置はプロテクターのようにした装甲で守り、それでも守れない場合は黒色の特殊繊維製の首から下全てを覆えるパイロットスーツを切る事で代用すると共に、保護用の特殊繊維に合成樹脂などを使って作った骨格の関節防御用のカバーの二段構えでの守りとなる。頭部はフルフェイスタイプのヘルメットで顔は全て表からは仲が見えないマジックミラータイプの特殊強化プラスチック製のバイザーで、ヘルメットには戦術データリンクシステム(MAP等はバイザーに投影される)に無線機能や戦闘補助用のAIが搭載されている。装備は両腕の装甲に内蔵された近接戦闘用大型熱単分子鎖鋸と左肩の40㎜機関砲と右肩の20㎜ガトリング砲となっており。また臀部のハードポイントに装着可能なP-90や81式小銃をモデルにした手持ち武器にジャベリンなどをモデルにした強襲上陸戦用のロケットランチャーに、対潜用の音波追尾魚雷を8発放てる専用のランチャーなどもある。こちらの搭載機数は50機」

 

未来は最大搭載可能数は300機ほどだが、整備面の問題等により現在は213機の艦載機が存在する。

 

 




何か質問等があれば遠慮なく聞いて下さい


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第5話

「はっ…! はっ…! はっ…!」

呼び出しを受け、一ちゃんを肩に乗せ艦橋に向かって走り続ける私。艦内では一度も妖精さんに会う事は無く、艦内を真っ赤に染める警報と「総員第1種戦闘配備、非戦闘員は所定の区画に退避せよ」と言う命令が繰り返し放送されていた

 

「次の角を左に曲がって下さい。後は道なりにまっすぐ進めば環境への直通エレベーターがある筈です」

急いでください、後5分で隔壁が閉まりますから、と大変ありがたい情報をぽろっとこぼす一ちゃんに盛大に悪態をつきながらとにかく走り続ける私。そしてふと疑問に思った事を一ちゃんに尋ねた

 

「なぁ一ちゃん」

 

「何でしょう?」

 

「艦娘は、今どこで何をしている?」

その言葉にぴくりと肩をふるわせた後。一ちゃんは

 

「後でお話しします。とにかく今は艦橋に向かう事を優先して下さい」

と、少しこわばった表情と強い口調で私にそういった。私は今は聴くべきことではないな、とその様子から判断し、とにかく全速力で艦橋へと向かった

 

「対潜! 対空警戒を厳となせ!!」

艦橋に着くと。発進時よりも更に慌ただしくなっており。その喧騒の中で艦長の命令が聞こえてきた。そして一ちゃんがほっぺを突いて私におりたいとアピールしてくるので掌に乗ってもらい、片膝をついて床まで降ろす。一ちゃんはぴょん、と掌から床に降り立つとすぐさま艦長の元まで早歩きで移動しながら

 

「艦長。副長一ちゃん並びにミー提督。現着しました」

と、報告を入れてくれる。それに艦長は振り返らずに

 

「来たか、間も無く戦闘になるから持ち場につけ」

と、激しい雷雨と荒れ狂う海しか見えない外の景色をじっと睨みながらそう命令した艦長に了解しました。と敬礼で返し。どこに着けばいいか分からない俺は艦橋内をきょろきょろしていると

 

「…提督は舵輪の前に立ってて下さい。それは使わない飾りなので…」

と呆れが半分は混ざっていると何となく感じてしまうくらい深いため息に続いて若干猫背っぽくうなだれた艦長がそう言ってくる。それに私は分かった。と言ってとりあえず舵輪の前に立つ

 

「…本艦の北北東約74㎞に駆逐イ級3隻、軽巡ト級2隻、雷巡チ級1隻の艦隊を捕捉しました」

一ちゃんが席に座り、防音用のイヤーマフを装着してレーダーを見ながらそう艦長に報告し

 

「…数に変わりはなし…全艦超長距離砲撃戦用意」

と、艦長は小さく命令を下し。その言葉と共に未来が動き出す

 

「全艦超長距離砲撃戦用意。草薙の剣一番、二番砲門解放」

私の左斜め後ろの妖精さんがそう言うと。艦橋正面前にある4門の巨大な砲塔の砲口を守る防護板が解放され、敵へとその巨砲が向けられる

 

「初弾、11式対艦用燃夷散弾。次弾は11式徹甲弾を装填」

艦長の指示を復唱した後、少しして装填完了との報告が上がり。艦長は頷きとともにこう命令した

 

「総員対防音装備着用! 対ショック防御!」

と、その命令に私は慌てて左側の肘おき外側のフックにかけられたイヤーマフを装着し、艦橋用員の妖精さんたちもイヤーマフがきちんとつけられているかの確認を行う。そして

 

「草薙。撃ち方初めェいッ!!」

と、艦長が命令すると同時に草薙の剣の砲口が噴火した。イヤーマフ越しにでも耳鳴りを生じさせる凄まじい爆音と席にしがみついていなければ振り落されるのではないかと思えるほどの揺れに襲われながら、激しく揺れる中で艦橋正面が見えなくなるほどの煙を見ながらにそんな事を考えてしまった。しかしこの状況の中イヤーマフもつけずに仁王立ちのままでいられる艦長のヤバさが際立っている気がするな、と考えていると

 

「副長、どうだ?」

と、艦長が一ちゃんの方を見ながらそう聞くと、一ちゃんは心なしか少ししんどそうな表情で

 

「着弾まで後15秒…目標着弾5秒前。4…3…2…1…0。目標への損害を確認、なれど撃沈は無し」

と、淡々と戦果報告を行い。続いて艦長が

 

「最大戦速!! 敵艦隊を一挙に仕留める!! 全艦対艦、対潜、対空戦闘用意!!」

その号令に艦橋内の空気がピリピリと張り付く

 

「最大戦速! ヨ~ソロ~!」

まず操舵手が命令を復唱して黄色のレバーを全開にまで降ろした後オレンジ色のレバーを一番上にまで引き上げる。すると大きな揺れと共に未来に打ち付ける波の勢いが一段と激しさを持ち、窓にかかる水滴が先ほどとは比べものにならないほどに速くなる。そして妖精さん達がそれぞれ割り振られている各種兵装等の稼働状況を口頭で報告していく

 

「全CIWS起動、データ-リンク中、メインサーバーの冷却機能を戦闘時にまで引き上げ」

 

「主砲には徹甲弾を装填、副砲同じく」

 

「速射砲起動。砲身を砲撃位置まで移動させます、全門初弾装填完了」

 

「非戦闘員の非難区画への退避開始」

 

「鴉、雷光、侍全機出撃準備を整え待機だ、何時でも出られるようにしておけ」

次々と艦が戦闘準備を整えて行く中、艦長がそう命令を下し、私の真後ろの妖精さんが了解と答え

 

「格納庫に伝達。侍、雷光は直ちに出撃準備を整え、待機せよ」

その命令と共に格納庫内に出撃を告げる警報がなら響き、酸素マスクと一体化したヘルメット(目の部分は上にスライドできるバイザータイプの物)を片手に持ち、整備班(妖精さん)たちから敬礼とともに見送られるパイロット服に身を包んだ妖精さん達が、人間サイズの侍と雷光に次々と乗り込み、然し乗り込んだ瞬間には妖精さんサイズにまで縮む

 

「VLS防護板のロックを解除します。防護板解放…」

と、後ろの妖精さんが報告するのに合わせてVLSの装甲版が一列ずつ上から順に開いて行く

 

「未来、戦闘形態に移行しました。間もなく主砲の有効射程距離に敵を捉えます」

最後に一ちゃんが報告し、艦長は一ちゃんの方に頭だけを振り返らせながら

 

「敵艦隊の被害状況を確認出来るか?」

と尋ねると、一ちゃんはレーダーを見ながら画面を操作する。すると敵艦1隻1隻のアイコンの上に何かのウィンドウが表示され

 

「駆逐艦は2隻炎上中、1隻は健在。軽巡は1隻が撃沈、もう1隻が炎上中の上左舷に傾斜しつつあり。雷巡は火災を沈下させた模様、小破判定です」

と報告する。それに頷いた艦長後ろに振り返りながらこう言った

 

「主砲第1目標を雷巡および軽巡とする。その後は各砲座ごとに好きな目標を狙わせろ」

と、私の後ろにいる妖精さん達にそう言った後、初めて私の右隣にいる妖精さんに話しかけた

 

「通信手、本土との連絡はつかないか?」

 

「深海棲艦によるジャミングの影響で「小笠原要塞群」司令部との通信すら繋がりません」

と、通信手は答え、艦長は左手で顎を触りながら

 

「副長、本艦の現在位置は」

と、一ちゃんに聞き

 

「小笠原諸島最南端の姉島から南に約100㎞の地点に位置しています」

と返す。それに頷いた艦長は続いてこう聞いた

 

「正面の敵艦隊の予測進路は?」

 

「…小笠原諸島と推定できます」

そして一ちゃんが一瞬言葉に詰まった後そう報告し、艦長はすぐさま

 

「このまま的艦隊をせん滅しつつ突破、全速で小笠原諸島へ向かう。面舵50」

 

「おもぉかぁじ50、ヨーソロー!」

復唱した操舵手がやや大きく舵輪を右に傾ける。それに従って艦も右に進路を変える。そしてこの豪雨の中、海の向こう、視界の左端のあたりが急に明るくなり始めた

 

「主砲目標変更。左舷全砲門で敵艦隊を一気に叩く」

 

「主砲の射程圏内に入りました。各砲塔データリンク開始。自動追尾開始」

後ろの妖精さんがそういうと、草薙の剣以外の各砲塔がゆっくりと左へ動き始め。砲門がゆっくりと上を向いていく

 

「目標への標準固定完了。各砲塔は現在も目標を自動追尾中」

妖精さんの報告に私は座席の肘お気を両手でしっかりと握りなおし。艦長は命令を下す

 

「主砲。撃ち方始め」

艦長の命令からワンテンポ遅れて、全訪問が一斉に火を噴く。艦を揺らす振動とイヤーマフ越しに鼓膜を震わせる轟音に、思わずつぶった目にチカチカとした光がささり、耳鳴りが起こる

 

そして放たれた砲弾はなだらかな弧を描きながら敵艦隊へと吸い込まれ。そして明るくなっていた海の一角を、巨大な水しぶき・・嫌水柱と爆炎によって塗りつぶされる

 

「軽巡、雷巡共に全艦撃沈を確認。また駆逐艦2隻撃沈。一隻が中波です」

 

「取り舵55! 進路を戻せ! 2番砲塔で残敵を掃討する!」

一ちゃんの報告に、艦長は振り返ることなくそう命令する。それに後ろの妖精さんたちが了解と答え、今だ砲門から煙を上げる主砲のうち、草薙の剣一番の左横にある砲塔が敵の要る方角へと向き、ほかは全て砲塔を船首、あるいは船尾へと戻し、砲門を甲板に対して垂直になるまで降ろす

 

「とぉりかぁじ55! ヨーソロー!」

操舵手が副賞と共に舵輪を左に傾ける

 

「2番砲塔射撃準備よろし、敵駆逐艦との距離は約40㎞。目標への自動追尾は継続中」

後ろから要請さんの報告が入り、それに続いて一ちゃんからも報告が入る

 

「目標艦首をこちらに向け移動を開始。補足されたものと思われます」

 

「直ちに主砲攻撃始め、撃てぇい!」

一ちゃんのそれにやや早口ながらも攻撃を明示。2番砲塔が再び噴火のごとき勢いで火を噴く。そして放たれた弾丸は先ほどと同じような軌道で敵へと飛んでいき。そして先ほどよりもさらに大きな爆炎と水柱を上げる

 

「目標撃沈。敵をせん滅しました」

一ちゃんがそう報告し、ブリッジ内の空気が少しだけ緩む。

 

「第2種戦闘配備に移行! 機関そのまま! 最短コースで小笠原諸島へ向かう!」

艦長は少しだけ声量を大きく、また声質を少し強めにしてこう命令を下した。それにブリッジの空気は再び張り詰め、一ちゃんが艦内放送で第2種戦闘配備への切り替えを伝える

 

「…どうだった。初めて傍観する殺し合いは?」

艦長が皮肉気にそう言って私に笑いかけてくる。それに私はこう返した

 

「全く現実感はなかったですね。主砲を撃つ時の轟音と揺れには肝を冷やしましたけどね」

と、若干震えた声質でそう答える私に、艦長は笑いながらこう言った

 

「だろうな…まぁ時期にそうも言ってられなくなる。今のうちに心構えだけでもしておけ」

それだけ言って、艦長は再び前に向き直る。私は艦長からの言葉に少しだけ背筋が寒くなる感覚を覚えながら、仕事も何もせず、ただ座っているという状況に居心地の悪さを感じずにはいられない私であった

 



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