ポピパinゾンビシティ (作者アアアア)
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プロローグ

ジュマンジ、地上波で放送しないかな……


 質屋の流星堂、そこの蔵では一人の少女がいた。

「はぁ~、相変わらずよく分かんねー物ばっかだな……」

 金髪のツインテールを揺らし愚痴をこぼしながら、段ボールの箱を運んでいる。

「最近、練習ばっかで整理してなかったからな。溜まりに溜まってるな……」

 独り言を漏らしつつ作業を進めていたが、床に置かれた段ボール箱に足が当たりそれが原因で足がもつれてしまう。

「うおっ⁉」

 箱から手を離して、前に豪快に倒れてしまい。更に、箱が開かれ中身も飛び散ってしまった。

「いてて……」

 服に付いた埃を払いつつ立ち上がり、飛び散ってしまった中身を拾おうと何かのディスクを手に取る。

「ん? これは……」

 

 

 

「有咲、これ何?」

「ゲームソフト、蔵の整理をしていたら見つかったんだよ」

 後日、ポッピンパーティの拠点である蔵の地下で一つのゲームソフトが置かれたテーブルを中心に五人の少女が取り囲んでいた。

「分かった! 有咲、皆と遊びたいんだ!」

「ちげーよ!」

「またまた~、素直じゃないんだから」

「ちげーつってんだろ!」

 その内の一人、本人は星を模したと自称するが、ツノにしか見えない髪型の少女、香澄がツインテールの有咲をからかい彼女はそれにツッコむ。

「それで、皆このゲームについて何か知らないか?」

 有咲は話を切り替えてこの謎のゲームについて聞き出す。

「うーん……ゲームはちょっと……」

「私も、あまり詳しくないかな」

 茶髪ポニーテール少女の沙綾、黒く艶めくロングヘアの少女、たえの順番で答えるも成果は出ない。

「ねえ、有咲ちゃん」

「りみ、どうした?」

 その中で一人の黒髪の少女、りみが有咲に質問をぶつける。

「このゲームの対応機種って何?」

「機種……? ああ、遊べる機器って事か……そこなんだよ分からないのは」

「分からない?」

 りみは、有咲の回答に疑問を浮かべる。

「ああ、まずこれはディスクの形をしてるだろ」

 言いつつ有咲はテーブルに手を伸ばし、問題のゲームソフトを持ち皆に見せつける。

「だから、ディスクで反応するゲーム機全部に入れてみたんだ」

「それで、どうだったの?」

「……全部に反応した」

「全部?」

「えっと、有咲りみりん、話がよく分からないけど……」

 有咲とりみの会話に置いてかれている三人。香澄が二人の間に入り聞き出す。

「えっとね、香澄ちゃん。ゲームソフトっていうのは○○専用って動かせるものが決まってるの」

「うん」

「けれどこれは、どれに入れても動いたから、怪しいって有咲ちゃんが言ってるの」

「お、おう、りみ、説明ありがとな」

 りみの分かりやすい説明に納得した三人を見て有咲は感謝の言葉を言う。

「とにかく、遊んでみようよ!」

「おまっ! 話聞いてたのかよ!」

 だが香澄はそんな事よりと、言わんばかりに危険な提案を出す。

「香澄……ゲーム機ぶっ壊れたら、マジで弁償させるからな……!」

 有咲は言いだしっぺの香澄に恨み節を放ちつつ立ち上がり、ゲーム機を取りに行こうとした。

「私も手伝うよ」

「ああ、ありがとな」

 彼女の後を追って沙綾も立ち上がり、二人は地下から出て行った。

 数分後、ブラウン管テレビと旧型のゲーム機を持って地下に戻ってくる。

 電源コードを挿す、機器とテレビをつなげる、ソフトを入れる、必要な動作を終え、テレビ前に座る有咲が後ろを振り向て四人に聞く。

「じゃあ、動かすぞ」

 機器の起動ボタンを押すと、ブォンと一回鳴ると、テレビ画面に五つの絵が表示された。それを見たりみは早速聞き出す。

「ここから先はやった事ないの?」

「ああ」

 有咲はりみの質問を答え、一行は五つの絵をまじまじと見つめる。

「にしても色々あるな」

 有咲は十字キーを押して、カーソルが指したものを音読していく。

「刃ISSEN、アニマルファンタジー、喧道、バイオパニック……」

「え!? バイパニがあるの!?」

「え……あれあるの……」

 うち一つのゲームに目の色を変えるりみに対して顔を引きつらせる香澄。

「めっちゃいい! 有咲ちゃん、先にこれやっていい⁉」

「お、おう……」

 りみの豹変に若干引きつつ、有咲はりみにコントローラーを渡した。

「ありがとう! それじゃあ最初は私が遊ぶね!」

 コントローラーを手にしたりみは早速、決定ボタンを押し、画面を進める。

『参加人数を選んで下さい』

「皆も遊ぶ?」

 画面の指示に対し、りみは皆に声を掛ける。

「私は見てるだけでいいかな」

「ゴメンりみりん、私はパス!」

「私も、最初は見てるだけ」

 沙綾、香澄、たえの反応を見て、りみは有咲に声を掛ける。

「有咲ちゃんは?」

「私もパス、プレステの様子を見ないといけないからな……」

「そっか……」

 りみは少し寂しそうに一人を選んだ。

『ジョブを選んでください』

 画面には次の指示と、その文章の下には八人の人影が並んでいる。

「ジョブ?」

「職業の事だよ」

「それでりみ、ジョブはどれにするんだ?」

「うーん……この一般人にしようかな?」

 りみの思わぬ選択に三人が、それぞれ意見を出す。 

「一般人? 警察官が絶対に頼もしいよ!」

「災害が起きた場所が舞台でしょ? だったら、医師がいいじゃないかな?」

「りみ、配管工だよ配管工」

「でも、ここに書かれている特性っていうのが気になって……」

「けれど、性能がね……」

 沙綾が不安そうにしているが、りみは一般人を選んだ。

『これで、よろしいですか?』

 だが、たえはある事に納得がいかず食い下がる。

「りみ、やっぱり今から配管工に選び直したほうが……」

「おめーはどんだけ配管工を推すんだよ!」

 たえの熱い配管工推しについに叫ぶ有咲。

「あはは……配管工は今度にしようかな……」

 りみは笑いながら、やんわり断り決定ボタンを押した。

「うわぁ!」

 次の瞬間、テレビから閃光が放たれ、思わず五人は目を伏せる。

「え⁉」

 その時、りみの体が指先から粒子化し始めていた。

「な、何これ⁉ 皆!」

「りみりん!」

「た、助け……」

 最後の一文字が出る前に頭から足までが粒子となってテレビの中へと吸い込まれていった。



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プロローグ2

今、バンドリの映画がやっているらしいけれど普通に見るか、応援上映にするか、あえて観ないか。
どれが良いと思いますか?


「ゲームに吸い込まれちゃった……」

「り、りみりーん!」

「最近のゲームって凄いね」

「違うだろ!!」

沙綾は言葉を失い、香澄が叫んでいる中、たえの平常運転に有咲がツッコむ。

「つーかどうすんだ⁉ りみがゲームの中に入っちまうなんて……」

「……」

続けて叫ぶ有咲に対し、香澄は何も言わず俯く。

香澄は、自分が言い出した事が原因でりみを危険に晒してしまった事で言葉を失っていた。

「私が助けに行く!」

責任を感じた彼女は叫ぶ。

「香澄⁉」

コントローラーを手に取る香澄の手首を掴んで有咲は、操作を阻止する。

「止めろって! 戻れなくなったらどうするんだ⁉」

「でも! りみりんを放っておけないよ!」

「……確かにそうだけど……」

 

「香澄を一人で行かせる訳ないでしょ?」

「さ、さーやぁ……」

泣く香澄に沙綾が有咲に視線を移して言う。

「ね? 有咲?」

「お、おう! 香澄を一人にしたらロクな事ならなさそうだしな」

「だから、私達もね」

「二人共、ありがとう……」

「四人で遊ぶを選んでおいたよ」

「おたえ!」

三人が会議をしている内にたえが大体の準備を終えており、後は三人が選ぶだけの状態になっていた。

「私は勿論、配管工」

「おたえ……本当配管工好きだな」

有咲は呆れつつも、コントローラーをたえから受け取り画面を見つめる。

「二人はもう決めているのか?」

「うん! 私は警察官!」

「私は医師ね」

「後は私だけか……」

香澄ら二人は問題無く、有咲は残っているジョブと睨めっこし始めた。

「ハッカー、学者、犯罪者、マスコミ……」

口に拳を当て思考を動かし、答えを出した。

「……よし、私はハッカーだ」

そう言って、有咲はハッカーを選んで、決定を押す。

『以上でよろしいですか?』

「準備はいいか……?」

「出来てるよ……!」

有咲は決定ボタンを押すと四人の体に異変が起き始めた。

「来た……!」

香澄は粒子化し始めた自分の両手を見つめて、直ぐに周りを見る。

三人もまた、体が粒子化し始めていた。

「いよいよだね……」

「な、何か変な感覚だな……」

沙綾と有咲が呟く。

そして、四つの粒子の塊はテレビの中へと吸い込まれていった。

 

 

 

「……」

カウンターテーブルに顔を伏せて眠る香澄。

「……」

「……み……すみ!」

その香澄の肩を誰かが叩く。

「んん……」

「香澄! 香澄!」

微かな仲間の声と叩かれている事で意識を取り戻し、瞼を擦りながら周囲を見渡す。

長く伸びているカウンターテーブルの端で寝ていた香澄は、質素な丸椅子から立ち上がり有咲と正面向く。

「……有咲?」

「ああ、やっと起きたか」

「そうだ皆は⁉」

「いるぞ、りみも一緒だ」

「本当!」

「香澄ちゃん!」

二人が騒いでいるのが聞こえたのか、りみ、沙綾、たえの三人が駆け寄る。

「りみりん!」

「香澄で最後みたいだね」

りみの後ろにいる沙綾がそう言つつ、香澄はりみに涙ながらに謝る。

「りみりん、ごめんね……私のせいで……」

「いいよ、気にしないで。それに沙綾ちゃんから聞いたよ。助けに行こうって提案してくれたのは香澄ちゃんだって」

そう言って続けてりみは笑顔で言った。

「だから、皆が来てくれただけでも嬉しいよ」

「り、りみり~ん!」

香澄は感極まってりみに抱き付き、三人は全員が揃った事もあってか安堵をするのだった。

 

 

 

「そろそろ私からも気になっている事、聞いていいかな?」

「何?」

「皆の服装、変わってない?」

そう言われ香澄は視線を下に落とし、服装を確認する。

紺のズボンに水色のシャツ、その上に防弾チョッキを装備し腰に拳銃ぶら下げていた。

「ほ、ホントだ!」

「香澄、頭」

「頭?」

たえに言われ、頭に手を伸ばすと、何かが乗っているのに気づき手に取る。

「帽子?」

香澄は赤色の星のピンバッチが付いた警帽をじっくりと見つめた。

「もしかして、私達が選んだジョブに合わせた格好になったのかな?」

ジーパンにピンクのシャツ、背中にリュックを背負ったりみが自身の予想を声に出す。

「ああ、かもな」

有咲は首にヘッドフォンを掛け、紫と白のスカジャン、肩下げ鞄をぶら下げており、りみの予想に賛同した。

「だとしたら、私は医師でおたえは配管工になるって事になるね」

黄色のタイが目立つ白のナース服の上に白衣を着た沙綾が話に入る。

「これが配管工?」

青のつなぎを着たたえが一言。

「何か違う……」

「なんだよ、あれだけ推しといて不満なのか?」

「オーバーオールを着れると思ったんだけどな……」

恰好に不服だったのか有咲に提案をする。

「そうだ有咲。服を交換しよう」

「ざっけんな!」

「レタスも付けるから」

「私は兎か⁉」

勿論、キレた。

「皆さん!」

突然、誰かの声が聞こえ、五人はその方向を一斉に向く。

「もうすぐここは、奴らに破られます!」

紳士服の男性がカウンターのバーテンダー側に立ち叫んだ。



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酒場

先日、バンドリfilmliveの応援上映を観に行きました。

館内が揺れる位に一曲一曲で盛り上がり、熱くなれて、特にパスパレとハロハピの盛り上がり具合が半端無かった。
ファンを名乗る資格を失いましたが、正にライブ感を味わえる一作でした!


「何だアイツ?」

 有咲が呟くと、男は五人を指差し叫ぶ。

「そこの人達、プレイヤーですね?」

「プレイヤー?」

「ゲームで遊んでいる人の事だよ」

 香澄の疑問にりみが教える。

「ああ成る程! はい、そうです!」

「ちょ、おま」

 香澄が迷わず答えると男が急に生き生きとしだした。

「貴方達の目的は、生きてこの街を脱出する事です! 道中、様々なアクシデントに巻き込まれるかもしれませんが、そこは腕前で突破していって下さい!」

「え⁉」

「手始めに後数分で壊滅する予定のこの酒場から脱出してもらいます!」

「あ、あの!」

「攻略法は人の数だけ! 全てを上手く使いこなして行きましょう!」

「おい、話を……!」

「では皆さん、グッドラック!」

 五人の言葉にちっとも耳を貸さず男は、目の前で光となって消えた。

「消えちゃった……」

「アイツ何なんだ⁉」

「もしかして、案内人的な?」

「じゃあこれは、チュートリアル?」

 香澄ら四人は男の正体を考察している中、たえは棚に酒場内をうろつき一本の酒瓶を持ってきた。

「皆、こんなのがあったよ」

「これ、酒か?」

「うん、見てこれ1500年物だよ」

「分かるのか?」

「何か1500年物って感じがしない?」

「勘かよ! しねーよ!」

 バンッ! 

 木の板を激しく叩く音が酒場に響き、五人は一斉に音源に目を向ける。そこにあるのは南京錠が掛けられた木製のドアが一枚。

 この酒場には三つの窓があり、りみは音源を見ようとした時、窓の一つを見てしまう。

「あ……あ゛あ゛あ゛あ゛……」

「皆! あれ!」

 灰色の肌に白目、身体の所々から血を流す人型のモンスター、ゾンビが中に入れろと言わんばかりに窓を叩いていた。

「ひぃ!」

「ま……マジかよ……」

 怯える香澄と沙綾、言葉を失う有咲。だが、そんな事を知らないゾンビは容赦なく窓やドアを叩く。

 そして、ドアから金属の錠前が落ちる音が発せられると、ギィィと軋んだ音を発しつつドアが開かれていく。

「入って来る!」

「閉めろ! 閉めろ!」

 有咲の台詞にたえが迷わず走り出し、開きかかったドアにタックルを打ち完全に閉めると、ドアを押しだした。

「う、うぅ……」

 外からはまだバンバンと力づくで入ろうとする輩がおり破られるのも時間の問題だ。

「そ、そうだ! 窓も塞がねーと! 香澄! 沙綾!」

 有咲は、怯える二人に思い切り声を掛ける。

「ご、ごめん……少しビビってたみたい……」

 

 

「三人共! テーブルにこれが!」

 りみが木の板を数枚、釘と二本の金槌を両手に抱きか抱えて走って来た。

「りみりん! それは?」

「有咲ちゃんと沙綾ちゃんは、これで窓を封鎖して! 香澄ちゃんは私と一緒におたえちゃんを手伝って!」

「お、おう!」

 りみの逞しい指示に三人は驚きつつもそれに答える為に、それぞれ行動を始める。

「おたえ! 来たよ!」

「香澄!」

 たえの元へ真っ先に駆け付けた香澄は迷わずたえと協力してドアを押す。

「えーっと……」

 その一歩後ろにいたりみは二人の周りを見てドア横にある棚を見つけると二人に叫ぶ。

「二人共、ここは私に任せて、あの棚を!」

 押しつつりみの方を見た二人はりみが指を指す方を見ると、押さなければ動かせないほど大きな棚が壁際に佇んでいた。

「あれを持ってこればいいんだね! 任せて!」

 香澄とたえはりみに任せ、棚へ向かいドアへ向けて押し始める。

「う……うぅぅぅ……!」

 だが一般人一人で抑えられる訳もなく。

「きゃあ⁉」

 こじ開けられたドアに吹き飛ばされてしまった。相手も守りがなくなったと思ったのかドアの隙間から腕を伸ばす。

「駄目!」

 それをみたりみはすぐに起き上がりドアにタックルを放ち再び閉める。

「これで!」

 それに気づいたたえは迷わず、さっき拾った酒瓶で隙間から伸びる手を迷わず叩き付ける。

 三発ほど殴ると手が引っ込み、その隙にりみがドアを再び閉めた。

「香澄!」

「まかせて!」

 すかさず香澄は棚をドアの前にまで押し、一時しのぎだが封鎖する事が出来た。

「はぁ~よかった……」

 安堵の息を漏らしていたその時

 ガッシャアアアアン! 

 ガラスの割れる音が三人の耳を貫き続いて聞こえたのは

「きゃあああああああああああ!!」

「沙綾!」

 沙綾の断末魔だった。

 りみの指示を聞いて窓の封鎖を始めた二人、渡された道具を使って一つ一つを入れないように窓を板で覆い、窓枠を釘で打ち付け一時しのぎをしていく。

 三人がドアの前で格闘をしている内に、二つを封鎖して三つ目に取り掛かろうとしたその時、窓が割られそこから伸びる十本の腕に一番近くにいた沙綾が捕まってしまったのだ。

 

 

 

「さーや? さーやあああああああ!」

 香澄が慟哭を叫ぶがそれでもお構いなしに奴らは侵入を始める。

 だが突然、襲われたはずの沙綾が引きずり込まれた窓から飛んできて、床に叩き付けられる。

「さーや?」

 香澄は迷わず倒れている沙綾に近づく。

 人喰いの怪物に襲われたとは思えないほどに綺麗な遺体と化した沙綾は動かない。

「さーや! ねぇ! お願い! 目を覚ましてよ!」

 五体のゾンビと交戦をする三人を傍に沙綾を抱きかかえ叫んだ。

「クソッ! 私が封鎖する! りみ、おたえ!」

「うん!」

「分かった」

 有咲の提案にたえは腕を振ってゾンビを三体おびき寄せ、りみは近くにあった椅子を両手で持つと一体のゾンビに向けて振り回す。

 残った一体は有咲を捕まえようと腕を伸ばす。

「止めろ!」

 それを突き飛ばし、窓に向かうと釘を打ち付け始めた。

 

 

 

『あれ、私……?』

 沙綾は気が付くと店内に戻っていた。視線を自分に向ける。

『何これ⁉ 体が!』

 沙綾の体が半透明になっていたのだ。

「さーや! ねぇ! お願い! 目を覚ましてよ!」

 その時、香澄の慟哭が聞こえその姿を見る。

『私? いや!』

 自分を揺する香澄に動揺するが、沙綾は声を変える。

『香澄! 私はここだって!』

 だが気づかない。

『香澄!』

 肩を叩こうとしたが、その手がすり抜けてしまった。

『嘘でしょ……⁉』

 目を見開き、自分の遺体と透けた手を見比べているとあるものに気づく。

『これは……カウントダウン?』

 香澄は気づいていないが沙綾の頭に30の数字が浮かんでいた。



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