リプレイヤーは稼ぎたい (クリスチーネ小林)
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美しき悪魔との邂逅

ふと思いついたので投稿させて頂きました。


ああ、最悪だ、最低な人生だ⋅⋅⋅

両親に捨てられ、高校中退、バカにされ、パワハラされ、倒産して、騙されて詐欺にあい、最後は癌で苦しみながら人生を終えるなんて⋅⋅⋅

 

嫌だ嫌だ嫌だ⋅⋅⋅やり直せれるなら幸せな人生を送りたい。恨みを晴らしたい。復讐をしたい⋅⋅⋅⋅

 

 

「なら、私と契約を結ばない?」

 

突然意識が途絶える瞬間奇妙な空間に俺は居た⋅⋅⋅そして目の前には年端の行かない少女が居た。

 

少女は何とも目のやり場に困る様なセクシーな衣装に身を包み妖艶な雰囲気を醸し出している。長い黒髪に翼を付けて佇んでいる姿はまるで悪魔の様に見える。

 

美しい⋅⋅⋅⋅⋅俺は目の前の女の子?イヤ、女性?に目を離す事が出来ずにいた。

 

「君⋅⋅⋅いや、貴女様は一体?」

 

つい敬語になってしまう。

 

「私は悪魔⋅⋅⋅そう、悪魔ほむらよ。貴方とても絶望しているわね⋅⋅⋅人生をやり直したいでしょ?なら私と契約を、取引をしてみないかしら?」 

 

あ、悪魔⋅⋅⋅訳が分からない等と悠長な事はしていられない。このチャンスを逃したら俺は本当に惨めな人生のまま終わってしまう。

 

「分かりました。内容をお聞かせ下さい」

 

「フフッ⋅⋅⋅敬語は不要でいいわ⋅⋅⋅」

 

「⋅⋅⋅ああ、わかったよ。で、取引の内容は?」

 

「至極簡単よ。満月の日に次元を突き破って進撃してくる魔獣がいるの。いえ、むしろ害獣かしら?でっ、ソイツらを倒すか、一定時間持ちこたえるかのどちらでもいいから凌いで欲しの。」

 

魔獣⋅⋅⋅!?まるで俺の好きだったゲームやアニメ、漫画のような設定だ⋅⋅⋅⋅?

 

「受けてくれるなら、もう一度人生をやり直しできるわ⋅⋅⋅そう、リプレイを」

 

 

俺は足りない頭を捻り、激しく回転させた。人生のやり直しがしたい、復讐を果たしたい、幸福で豊かな人生を送りたい。だが、相手は悪魔⋅⋅⋅これがネット小説のセオリーなら神様や女神様が土下座してチートな能力を授けてくれるのだが⋅⋅⋅安易な契約は不味い。

 

「幾つか質問いいか?」 

 

「いいわよ」

 

「その魔獣との戦いは満月の日だけでいいんだな?」

 

「そうよ」

 

「魔獣とはどうやって戦かえばいいんだ?」

 

「単純な重火器の類いでも戦えるわ」

 

「何で俺なんだ?」

 

「貴方は魔力的適性があったからよ。それとは別に貴方の負の精神エネルギーが、絶望感がとても好ましく思えたからよ」

 

大きなお世話だよ⋅⋅⋅⋅

 

「その魔力適性ってのは?」

 

「満月の晩に異空間に干渉して魔獣の姿を視認できる力よ」

 

適性ね⋅⋅⋅鵜呑みにするのはどうかと思うが、今は確かめる術は無い。

 

「リプレイされたらどの年齢の時点でやり直しが出来るんだ?」

 

「自分が最もやり直しを始めたいと思っている時間からよ」

 

そうか⋅⋅⋅⋅なら絶望の始まりの日の高校生からだな⋅⋅⋅

 

 

「すまないがもう一つ願いを希望したい」

 

「何故かしら?」 

 

「あんたの条件を呑んでリプレイしても結局、運、実力、才能で人生が摘んでしまう。何より魔獣との戦いも満足に出来そうにない。リプレイしても戦いで命を落としたら意味がない。何か特典が欲しい」 

 

「魔獣との戦いや人生のやり直しにはあるサポートを着けるのだけれど⋅⋅⋅⋅まあ、いいわ。言うだけ言ってみなさい」

 

悪魔と称してはいるが、意外にもこちらの言葉に耳を傾けてくれる。なら遠慮は無しだ。

 

「ならドラえもんの秘密道具が欲しい!」

 

俺は酷い目に合う度によくドラえもんの秘密道具があればと夢想したものだ。恥ずかしいがそれは42歳の現在でも変わらない。

 

 

「⋅⋅⋅⋅⋅まあ、多分大丈夫。いいわよ。但し時空や宇宙の法則を乱しかねない道具はこちらで使えない様にするし、何かしらの条件と制限を設けるけど良いかしら?」

 

「⋅⋅⋅⋅⋅ああ、わかった、それでいい。」

 

どっちみち俺には条件を、呑むしかないのだ。だが、思ったより本当にこちらの条件を呑んでくれるものだ。

 

「じゃあリプレイするわね。サポートに着くモノも一緒に送るから」

 

「ああ、頼む」

 

「では良き二週目を⋅⋅⋅⋅リプレイヤー⋅⋅⋅」

 

 

その言葉を聞いて自分の意識は闇に落ちた⋅⋅⋅⋅

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

突然眩しい光が目に飛び込んでくる。

ゆっくりと瞼を開くとそこは懐かしくも忌々しいかつての我が家の部屋だった⋅⋅⋅⋅⋅

 

本当にリプレイしたんだな。俺は洗面所に行き鏡を見ると高校生に戻っていた。だが喜びは無い⋅⋅⋅何故なら契約で魔獣とやらと満月の日にやりあわなければならない。復讐を成し遂げて自分の心にしこりを落としたい。そして幸福の絶頂を味わいたい。必ずだ!

 

部屋に戻ると見慣れぬ小さな箱が置いてあるのに今さら気づいた。恐らくコレの中に悪魔ほむらの言っていたサポートするモノがあるんだな。

 

俺は恐る恐る箱を開けると⋅⋅⋅⋅

 

「ふい~狭かったですよ!あっ、初めまして我がマスター、ワタクシは悪魔ほむら様から貴方様をあらゆる面でサポートするよう仰せつかった杖のムカイと申します。以後よしなに⋅⋅⋅⋅」

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅思考が停止してしまった⋅⋅⋅⋅⋅⋅

何故なら小さな箱から出て来たのは自分を「杖」と言っているビニールボールの様に丸い姿をしていたからだ!

 

丸い頭にして体に目と口だけがついていて、声は少女の様であり、妙齢の女性の様な印象でもある。

 

 

つーか、何処が「杖」なんだ!?自分の培ってきた常識が否定された気分だ。

 

 

「いやはや、マスターワタクシはこんな姿形ですがしっかりと務めは果たしますのでご安心下さいませ」

 

何だろう軽く頭痛がしてきたぞ⋅⋅⋅イヤ、頭痛を起こしている暇は無い。先ずは今どんな状況なのか確認作業をしなくては!

 

「あっ、マスター現状確認ならワタクシ把握しておりますので何なりとお聞き下さい」

 

「⋅⋅⋅⋅あ~そ、そうか⋅⋅⋅⋅?なら頼むよ⋅⋅⋅⋅⋅」

 

「はい!え~とですねっ、マスターの現在の年齢は15歳の高校一年です。ご両親様達は夫婦揃って失踪した直後です。原因は単純に現状の生活に、人生に疲れたからだと判明しております。え~その⋅⋅⋅⋅お互いに自由が欲しくなったからと言った実に身勝手な理由ですね⋅⋅⋅⋅⋅」

 

 

ははは⋅⋅⋅⋅何だよ⋅⋅⋅⋅アッサリと長年何故居なくなったかの理由が判明しちまったよ⋅⋅⋅⋅⋅クソ親どもが⋅⋅⋅⋅絶対に幸せになってやる!!

 

「ま、マスター⋅⋅⋅⋅」

 

「あ、イヤ気にすんなよ。お陰で長年の謎がわかったんだからさ⋅⋅⋅えっ、とムカイさん?」

 

「さん付け等と恐れ多いです。ムカイとお呼び下さい!」

 

「ん~でも単純にムカイさんと呼んだほうがしっくり来るからさん付けなっ!」

 

「ははっ分かりました!マスター!」

 

「んじゃ早速だけど⋅⋅⋅そのドラえもんの秘密道具を出してくんないかな~っと」

 

「あっ、はいこちらに」

 

空中に浮かんでいるムカイさんは同じく空中からドラえもんの【四次元ポケット】を出現させた!

 

や、やった!ドラえもんの秘密道具さえあればこれから起こるであろう如何なる障害を突破して絶頂を得る事が出来るぞう♥ザマーミロだ!!

 

俺はワクワクドキドキしながらポケットの中をまさぐった。

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅んっ?あれ?あれあれ!?中身が無い!?何にも入ってないぞっ!?

どういう事だよ?

 

焦り、驚愕している俺の横にいるムカイさんが突然喋りだした。

 

「マスター!ほむら様から通信が入りました。お伝えしますが今よろしいでしょうか?」

 

「あ、ああ!た、頼むよ!!」

 

俺は冷や汗をかきながらムカイさんに指示する。

 

 

「ガガーッ、ピピッ⋅⋅⋅⋅どうやら繋がったようね。悪魔ほむらよ」

 

ムカイさんの声から悪魔ほむらへと切り替わった。俺は焦り激しく悪魔ほむらに言葉を投げかけた!!

 

「おっ、オイ悪魔ほむらさんよ!俺はドラえもんの秘密道具を希望しただろ?ポケットの中、何にも入ってないぞっどういう事だよこれは!!」

 

「あらっ、言わなかったかしら?秘密道具は何かしらの条件と制約を付けるって⋅⋅⋅まずは何でも無限に収納出来る四次元ポケットよ。それはまあ、無害だから最初にあげるわ⋅⋅⋅⋅他の道具が欲しければムカイさんを経由してお金を出して購入する事ね。更に詳しく細かい事はムカイさんに聞きなさい。それじゃ⋅⋅⋅ガチャ!」

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅何じゃそりゃ~~~~!!??

結局何から何まで金かよ!秘密道具でイージーでチートな人生がぁぁぁ⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅

 

はっ!待てよ?今家にある金はどれぐらいだ!?ムカイさん調べてくれ!

 

「マスター⋅⋅⋅⋅今この家にある現金は両親様がせめてもの手切れ金として残していった30万円だけです⋅⋅⋅⋅⋅」

 

「はあ~!!たったの30万円~!?」

 

30万円結構な金額だと思われるがこの先の生活費に高校生に戻った今、学費、修学旅行費用、その他諸々⋅⋅⋅⋅足りないー!!!秘密道具だって購入せにゃならんのだぞ~!!

 

「マスター⋅⋅⋅」

 

ムカイさんが心配するように呟いた⋅⋅⋅⋅

 

 

 

 

 

 

 



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秘密道具をレンタルしよう

見てくださる方々に感謝を。


悪魔ほむらと取引をし、契約を結んだ俺はうずくまっていた。

 

取引条件としてドラえもんの秘密道具を希望したがポケットの中は何も入っておらず先程の通信で金で購入するとの事だった⋅⋅⋅⋅

 

じぐぢょおォォォー!!!

家にある金、全財産は30万円ズボンに入っていた自分の財布からは2千円のみ⋅⋅⋅⋅こんなんでどうしろと言うんだ。

 

 

「マスター⋅⋅⋅⋅」

 

自らを杖と紹するこのサポートしてくれる奇妙な生物(?)はムカイさんと言って俺の心中を察してくれている。

 

あーもーっ黄昏れてても仕方がない、少なくとも全くゼロって訳ではないしな。

 

 

「大丈夫だムカイさん。え⋅⋅⋅と、とにかく今ある現金で当面の活動をしなくちゃならない。秘密道具の購入がしたいんだがどうすればいい?」

 

「は、はい!マスター。先ずこのスマホをご覧下さい。ズロロロ」

 

⋅⋅⋅⋅⋅ムカイさんの口からスマホが出てきた⋅⋅⋅⋅⋅さっき四次元ポケット出した時、空中から出したのに何で口から出るんだ?唾液はついて無いみたいだが⋅⋅⋅⋅

 

俺は色々言いたい事はあるがそれは後にしてスマホを受け取った。スマホを見ると秘密道具通販サイトアプリが載っていた。

 

「そのアプリから秘密道具の一覧と値段が確認できます」

 

俺はアプリに指先で触れめて画面を出す。するとスマホ画面に見覚えのある秘密道具が簡単な説明文と値段を表示されていた。

 

俺は生活に必要な衣食住の食に関する秘密道具を検索した。

 

【グルメテーブルかけ】お値段⋅⋅⋅⋅

一、十、百、千、万、十万、百万⋅⋅⋅⋅500万円ー!!!???

 

 

高過ぎるだろがー!!確か自分の記憶間違いないがなければ結構安くドラえもんが小遣い貯めれば少しの無理で買えたはずだぞ!?

 

他の道具を見ても何とも結構なお値段だった。悪魔ほむらの言っていた道り、時空や宇宙の法則を乱しかねない道具はいくら検索しても見当たらない。条件や制限を設けるとか言っていたが値段設定が悪魔すぎる⋅⋅⋅⋅

 

俺は再び絶望のオーラを発した⋅⋅⋅⋅駄目だ⋅⋅⋅どうする事も出来ない⋅⋅⋅⋅

 

「ああ⋅⋅⋅そうだムカイさん⋅⋅⋅満月の日は今日から後どれぐらいかな⋅⋅⋅⋅⋅」

 

「はいマスター⋅⋅⋅後10日と9時間27分です⋅⋅⋅」

 

はは⋅⋅⋅マジ終わったよ⋅⋅⋅今からバイトしたとしても無駄だな⋅⋅⋅空気砲やら、ジャンボガン、熱線銃等破壊力のある秘密道具に至っては一千万円越えてるからな⋅⋅⋅⋅短いリプレイ人生だったな⋅⋅⋅⋅

 

せめて金属バットでも購入して魔獣とやらに対抗するか⋅⋅⋅⋅⋅?

次の満月が命日か⋅⋅⋅何処までもツイてない、運が無い⋅⋅⋅んっ⋅⋅⋅⋅?

 

 

イヤ、待てよ!確か運⋅⋅⋅月⋅⋅⋅ツキ⋅⋅⋅何か何か引っ掛かる⋅⋅⋅思い出せ!!

俺は足りない頭のスミからスミ迄必死で探索した。

 

そうだ!確か【ツキの月】という秘密道具があったじゃないか!俺は必死で祈る様に検索する。すると画面から映しされたツキの月に俺は密かに歓喜した⋅⋅⋅⋅が、一瞬で僅かな希望は打ち砕かれた⋅⋅⋅⋅お値段⋅⋅⋅⋅1億円⋅⋅⋅⋅⋅!!??

 

 

首でも吊るか⋅⋅⋅⋅⋅

 

「マスター!!画面の下の方までご覧下さい」

 

突然、杖のムカイさんが諦めないでと言わんばかりの語気でアドバイスしてくれた。

 

俺はムカイさんの言うとうり画面下の方までスライドする。すると画面からはレンタル及び試供品、一回限りで効果を弱めてあるサンプルも有ります⋅⋅⋅と表示されていた。

 

 

うっしゃあぁぁぁーー!!!

 

何とか首の皮一枚繋がったぞー!!

そういや原作のドラえもんでも未来デパートが無理矢理サンプルとかお試し品とか送ってたもんな!それにドラえもんの道具の大半がレンタル品だったけ⋅⋅⋅⋅

 

俺は息を思いっきり吐き、ムカイさんに礼を言った。

 

「ムカイさん、ありがとう!本当にありがとう!あんたがアドバイスしてくれなきゃ気づかずにバカみたいに時間を浪費してた何処だよ!」

 

「いえいえワタクシなぞに礼は不要です!ワタクシはマスターのサポートをする為に存在しておりますので⋅⋅⋅⋅」

 

「それでも皮一枚繋がったんだよ!これなら何とかなりそうだ!」

 

俺は再び希望を胸に抱いて画面を凝視する。

 

【ツキの月】お値段1億円

無料お試し品お一人様三回迄、持続効果時間は3分間のみ 

 

3分間⋅⋅⋅この、道具の本来の効果時間は3時間だがお試し品なだけに効果も著しく短くしてある。でも十分だ!

 

 

早速画面の無料お試し品希望にポチっとした。するとムカイさんが⋅⋅⋅⋅

 

「それではお出しします。ズロロロ」

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅何で四次元ポケットを除いて口から出すんだ⋅⋅⋅⋅⋅?だが今や些細な事だ。何しろ俺の命運が掛かっているからな。

俺はムカイさんからツキの月を受け取り思わずガッツポーズをしてしまった。

 

そうだ生きる上で必要不可欠な食事⋅⋅⋅⋅

グルメテーブルかけのページにも目をやる。

 

【グルメテーブルかけ】

お値段500万円 レンタル品有り サンプルも有ります。

 

レンタル品、サンプル品のページに目をやるとサンプル品は三回のみの仕様。お一人様一回限り。レンタル品は1ヶ月間のレンタル契約で月、何と5万円という結構なお値段だ。

 

だが考えてみれば一度購入してしまえば破れたりして破損しない限りは何度でも仕様でき、世界各国の様々な料理を楽しめるのだからそう考えればかなりお得でお安いのかも⋅⋅⋅

 

俺は取り敢えず一回限りで三回仕様出来るサンプル品の項目タッチした。

 

「お出ししますね。ズロロロ」

 

⋅⋅⋅⋅⋅やっぱりまたムカイさんは口から秘密道具を出してくれた。

 

 

よし、当面の予定を俺はムカイさんに語った。まずツキの月。この道具は飲めば信じられない幸運が訪れる。特に普段ツイていない人間ほど効果が高くなるといったモノだ。

 

本来なら三時間だが試供品な為、効果は3分間のみだ。俺はツイていない人間だから効果は抜群なはず、これを利用して宝くじ売り場で飲んでクジを購入し宝くじで当てた金で諸々の活動費用を賄おうという訳だ!

 

とは言えそこまで信用できるかは正直五分五分だ。

 

何しろあの悪魔は嘘は言ってはいないが、やはり信用するのは危険すぎる。まあ、契約を希望したのは自分だから自己責任と言えばそのとうりだ。何より他に選択肢等なかったからな⋅⋅⋅⋅⋅⋅

 

では、宝くじを購入しに行こうか!

俺は自転車に股がり近くにあるデパートの宝くじ売り場にやって来た。

 

「マスター御武運を⋅⋅⋅⋅」

 

ああ、ありがとうムカイさん。俺はツキの月を飲み干して宝くじを購入した。クジはサッカークジを三千円分、数字選択式のクジをこれまた三千円分購入した。ここは道具の力を信じて一口だけでもよかったが、つい前世での癖で同じ様な金額で購入した。

 

家に戻った俺は宝くじを机の引き出しにしまい祈った⋅⋅⋅⋅いや、今さら神様に祈っても正直あれだ。前世で一周目ではどんなに祈って努力してもどうにも為らなかったんだ⋅⋅⋅⋅⋅

 

だから祈るのは何とも背徳的だが、あの美しいと感じてしまった漆黒の女神⋅⋅⋅悪魔ほむらに祈りを俺は捧げた⋅⋅⋅

 

聖職者の人から観れば理解し難い諸行だろな。だが俺はもうほむらと契約してしまった。なら、それを全うする為にも今回の件の成功を祈るしか無いだろう⋅⋅⋅?

 

因みにムカイさんにクジの当選発表は丁度明日との事だ。高額当選する、しないで今後の活動が著しく変化する。

 

今さらあれこれ考え過ぎても疲れるだけなのでひとまず食事にする事にした。

 

 

「ムカイさんは何か食べれるのかい?」

 

俺だけ食事するのも何だか気まずいのでムカイさんも食事できるのか一応聞いてみた。

 

「いえマスターワタクシは特に食事を必要とはしません。何しろサポート道具の『杖』ですので⋅⋅⋅⋅ですがもしよろしければ甘味モノを希望したいかな⋅⋅⋅と⋅⋅⋅⋅」

 

甘い物か⋅⋅⋅なら丁度帰りのついでにスーパーで購入したどら焼きでも出すか⋅⋅⋅

 

俺はテーブルにグルメテーブルかけを拡げ前祝い(願望)と称して和食御膳を注文した。すると目の前には豪華な旅館で食べる様な料理が並んだ。

 

俺は自分とムカイさんの分のお茶を煎れ食べ始めた。頂きます!

 

 

「うんめ~!!」

 

正直試供品の道具なので余り期待しないでいたのだがそれは杞憂に終わった。本当に美味しい⋅⋅⋅⋅

 

かつて家族と囲んで食事したテーブルは今や一人⋅⋅⋅⋅孤独と言えばそうだが実際の年齢は42歳。アラフォーだ。今さら寂しがるような歳でもない。

 

 

「う~ん!このどら焼きとても美味しいですよ!マスター♫」

 

ムシャムシャと実に至福と言った表情でどら焼きを頬張るムカイさんの頬っぺたには食べかすがついている。

 

 

俺は思わず苦笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ドラえもんの道具って余りにチートなので本作品はこんな形の設定にしてみました。


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ツキの月で一攫千金

食事を終えた俺は早々に布団に潜り込んだ。

 

「そんじゃお休みムカイさん」

 

「はいマスターお休みなさいませ」

 

色々とあれこれ足りない頭を使って疲れたからな⋅⋅⋅そのまま深く眠りについた。

 

「⋅⋅⋅マスター⋅⋅⋅よい夢を⋅⋅⋅」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

「ふう⋅⋅⋅今日のまどかも可愛かったわ⋅⋅⋅♥美樹さやか⋅⋅⋅彼女は相変わらずうざかったけど⋅⋅⋅取り敢えず魔獣の件は彼らに任せればいいわね⋅⋅⋅それにしても彼の絶望のエネルギーは実に甘美だわ⋅⋅⋅けどあの魔力の質は些か気になるわね⋅⋅⋅後は情報統合思念体の動向も気にかかるし⋅⋅⋅⋅そうね久々に介入してみましょう⋅⋅⋅⋅」

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「ん~⋅⋅⋅⋅しっかり眠れた⋅⋅⋅⋅」

 

「おはよございますマスター」

 

「ああ、おはようムカイさん」

 

俺はグルメテーブルかけ(サンプル)の使用回数節約の為、昨日スーパーで購入しおいたパンをかじりながら色々と考えていた。

 

かつて中退してしまった高校生活で青春を取り戻す事、満月の日に襲来するであろう魔獣を退ける事、宝くじの金で秘密道具をわんさか購入して今度こそ幸福な未来を築き上げつつ、前世で俺に対して悪行を行った奴らに復讐をする事⋅⋅⋅⋅

 

あれこれ考えていると杖のムカイさんが興奮気味に話りかけてきた。

 

「マスター!宝くじの抽選結果をお伝えします!」

 

「お、おう!」

 

俺はドギマガしながらムカイさんの言葉を待った。

 

「ロック5クジ、Jドリームカップクジ⋅⋅⋅⋅どちらも見事一等当選です!おめでとうございますマスター!!」

 

 

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅うおっしゃ~~~!!!

 

 

俺は歓喜に震え大声で喜びを噛みしめた!!

 

よーしよーしいいぞ⋅⋅⋅これで計画が滞りなく⋅⋅⋅⋅「あ、あの⋅⋅⋅⋅マスター⋅⋅⋅⋅⋅」

浮かれている俺にムカイさんがとても申し訳なさそうに声をかけてきた。

 

 

「当たりクジの当選金額を調べたのですが⋅⋅⋅⋅今回は当選者が多数居られるので金額が大幅に下がっております⋅⋅⋅」

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅へっ?

 

 

思わず間抜けた声を発した⋅⋅⋅

 

「ち、因みに一等当選金はいくらかな?」

 

「はっ、はい⋅⋅⋅⋅まずJドリームカップクジは今回キャリーオーバー無しで一等当選者13人の為、当選金額200万円です⋅⋅⋅ロック5クジはキャリーオーバーは有ったのですが一等当選者が20人の為当選金額800万円です⋅⋅⋅⋅」

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅一等当選なのに少ねえ~!!!

 

 

い、イヤ待て、落ち着けよ俺。お試し品とはいえ秘密道具の効果で一等当選を果たしたんだ。確かに億単位の金は手に入らなかったが少なくとも合計一千万円という金額が懐に入るんだ!

 

お試し品だから効果持続時間だけでなく効果そのものも小さく設定してあったんだろう⋅⋅⋅⋅多分。

 

 

よし!ここは素直に喜んで感謝しよう!

 

 

「大丈夫だ、問題ないよムカイさん。それでも合計一千万円だ!生活費に学費に秘密道具のレンタル等⋅⋅⋅余裕が出てきたよ。ありがとう!」

 

「マスター⋅⋅⋅⋅⋅!」

 

さぁーて銀行で換金手続き⋅⋅⋅⋅⋅いや待てよ?確か高額当選金は換金されるまでに1~2ヵ月かかるんだったー!!

それ以前に今日は日曜日だから銀行しまっているしー!!

 

 

ど、どうしょう⋅⋅⋅⋅?

 

 

「マスター!!大丈夫です!ワタクシにお任せを!当たりクジを持って来て下さい。ワタクシが換金させて頂きます」

 

「えっ?マジ!?そんな事までできるの?スゲー!!わかった!ちょっと待ってて」

 

俺は急いで机の引き出しかはクジを取り、ムカイさんの前に持ってきた。

 

 

「それでは換金させて頂きますね。ズロロロ⋅⋅⋅⋅」

 

⋅⋅⋅⋅ムカイさんは当たりクジを口に飲み込みモゴモゴし始めた⋅⋅⋅突っ込むべきだろうか?

 

「ジャキーン!換金無事終わりました!よろしければ現金をお出ししましょうか?」

 

「ああ、お願い!」

 

「ムロロロ⋅⋅⋅⋅⋅」

 

あっ⋅⋅⋅やっぱりお金も口から出すのね⋅⋅⋅

 

そして一千万円の大金を俺は目の当たりにするのだった!

 

う~ん⋅⋅⋅こうやって現物を見ると意外と一千万円て少なく感じるのね⋅⋅⋅⋅これだけの金額を働いて稼ぎ出すのは途方もない労力と時間が掛かるんだけどね⋅⋅⋅

 

「マスター。差し支えなければこのお金をスマホにチャージしますがよろしいですか?」

 

「え、そんな事もできるの?じゃ、それで」

 

「はい!ズロロロ⋅⋅⋅⋅」

 

スマホで確認すると一千万円という数字が刻みこまれていた。

 

ふう⋅⋅⋅これで当面の生活費、学費、秘密道具購入、雑費と余裕ができたぞ!

 

この状況に甘んじる事なくバイトも始めよう!あ、そういや魔獣について話し聞いてないな⋅⋅⋅ムカイさんに詳しく聞かないと。

 

 

「なあ、ムカイさん。俺がこれから始末しなきゃならない魔獣ってのはそもそもどんなモンなんだ?」

 

「はい!お答えします。魔獣とはほむら様曰く、人間の負のエネルギーを糧にする一種の宇宙怪獣的存在との事です。有史以前から存在し人類達の天敵として常に戦ってきたみたいです。大きさは人間タイプの小さなもので1㍍から3㍍。怪獣タイプで全長10㍍から数百㍍。あとは奇妙な形態のものや幾何学的な形態等と様々です。ただ、いずれも通常の武器、弾薬といった重火器で対処可能です。」

 

何だか色々不安になってきたぞ⋅⋅⋅⋅重火器で対処可能とは、ほむらも自分で言っていたがよく考えるとそんなもんどこで入手すれはいいんだ?

 

仮に手に入れたとしてもマトモに扱えそうにないし⋅⋅⋅⋅

 

「あと、ほむら様の救済措置として魔獣の対抗策として武器や兵器等をガチャで入手可能です」

 

なに?ガチャだと?そんなんで入手できるのか!でもせっかくドラえもんの秘密道具をレンタルとはいえ運用できるしな⋅⋅⋅⋅

 

 

「はっ!マスター!ほむら様から通信が入りました!お繋ぎしましょうか?」

 

なんと!丁度良い。ムカイさん頼む。

 

「はい!ガガーッ、ピピッ⋅⋅⋅調子はどうかしら?悪魔ほむらよ⋅⋅⋅」

 

「はは⋅⋅⋅どうもお陰さんでまあ、何とかやってるよ⋅⋅⋅ポケットの中に秘密道具があればもっと良かったがな⋅⋅⋅」

 

俺は軽くイヤミを込めた。

 

「あら、秘密道具をお金で購入しなくちゃならない事に対して不満かしら?最初に言ったでしょ?制限と条件を付けると⋅⋅⋅⋅この世はすべからく『等価交換』よ⋅⋅⋅⋅しっかり励む事ね⋅⋅⋅⋅」

 

そう言われたらグウの音も出ない。

 

「わかったよ⋅⋅⋅で、今回はどんな用件だ?」

 

「ガチャの仕様についての補足説明よ⋅⋅⋅タイムリーでしょ?」

 

もしかしてこの悪魔は逐一観察でもしてるのか?

 

「貴方専用にガチャを調整したわ⋅⋅⋅まず通常の武器、弾薬は一回500円で使用可能よ。次に秘密道具のガチャ⋅⋅⋅これは一回10万円で引けるわ⋅⋅⋅」

 

 

イヤイヤ!値段の高低差が酷すぎるだろぉー!!

 

 

どちくしょうめ!どこまでいっても金と運か!!搾取が酷すぎる。世知辛い⋅⋅⋅

 

 

「⋅⋅⋅まあ、それと一応、ついでに貴方の希望も聞いてあげるわ」

 

「え、そう?じゃ、秘密道具の値段をもう少し安く⋅⋅⋅⋅」 「却下よ」

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅も少し考えてくれよ!!

 

「ん~なら、このガチャの値段差が激しいからもう少し中間ぐらいのを⋅⋅⋅⋅あ、そうだ!魔獣ってバカデカイのもいるだろう?だから~そのロボット⋅⋅⋅そう、ガンダム!MSを引ける中間の値段のガチャを~出来ないでしょうか⋅⋅⋅⋅?」

 

「⋅⋅⋅ガンダム⋅⋅⋅RX78やV、G、W、X、∀、種に種運命。更に00あたりで良いかしら?」

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅何でこの悪魔はこんなにも詳しいんだ⋅⋅⋅?

 

「昔入院中に⋅⋅⋅⋅いえ、何でもないわ」

 

え、何だって?今、入院中って聞こえたぞ?悪魔も入院するようなケガや病気するのか?

 

「コホンッ!貴方の希望のガチャを創るわ⋅⋅⋅」

 

よし!ヤッパ男ならロボットに⋅⋅⋅ガンダムに乗って操縦したいってのが夢でロマンだからな~♪

 

「ガチャを引く値段はそうね⋅⋅⋅⋅大サービスの一万円からよ⋅⋅⋅」

 

望みを聞いてくれたのは嬉しいが、やはりトンでもない値段設定だよな⋅⋅⋅まあ、物が物だからしょうがないか。

 

 

「これだけお膳立てしたのだからしっかり魔獣の対処は任せたわよ⋅⋅⋅それと明日から待望の高校生活のリスタートでしょ?忘れ物のないようになさい⋅⋅⋅それと素敵な出会いがあるかもよ⋅⋅⋅?」

 

何か妙に優しくない?急にお袋みたいな事言い出したぞ⋅⋅⋅?

 

まあ言われなくとも明日から夢の高校生活だ!!

 

前世では約1ヶ月で中退せざる負えなかったからな⋅⋅⋅⋅出会いも沢山あるでしょ!そこは素直に感謝せねば。懐も暖かくて余裕もあるしな。

 

「ああ、わかったよ。ありがとう⋅⋅⋅ほむら⋅⋅⋅様?」

 

「⋅⋅⋅⋅何で疑問形なのかしら⋅⋅⋅そんなに気を使わなくてもいいわよ⋅⋅⋅⋅えと⋅⋅⋅そういえばまだ名前聞いてなかったわね⋅⋅⋅」

 

「本当に今さらだな⋅⋅⋅⋅俺の名前は

小林信一(こばやししんいち)小さいの小に林はそのまま、信一は信じるの信で一は漢字の1だ」

 

「そう⋅⋅⋅⋅今度から信ちゃんって呼ぼうかしら?」

 

「いや!マジやめてその呼び名⋅⋅⋅⋅!」

 

「ふふ⋅⋅⋅それじゃ⋅⋅⋅ブッ⋅⋅⋅」

 

 

「通信終わりました」

 

お疲れさん。んじゃ明日の準備しないとな~♬制服に鞄、靴、上履き、筆記用具、教科書⋅⋅⋅⋅それとバイトを探さないと。履歴書の用意もしなくちゃな!

 

 

 

 

 

この時の俺は能天気に構え過ぎていた事を後に大いに反省する等、夢にも思わなかったんだ⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

 

 

 

 




すいません主人公の名前変えました。


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転校生は悪魔!?

今日は連休あけの月曜日、普通の人達には憂鬱な幕開けなのだろう。

 

だが俺、小林信一にとって実に念願の本当の意味での新しい1日目だ。

 

 

学校の校門前に来ると感動で身震いまでしてくる。ドキドキする鼓動を必死で抑えて自分のクラスの戸を開く。

 

ソコには懐かしいヤツの顔が見えた!

 

「あ、おはよう小林君久しぶり!」

 

「あ、ああ嶋田君⋅⋅⋅⋅!おはよう!超久しぶり~!!」

 

 

朝の挨拶をかわしたのは前世においていち早く友人になった嶋田仁(しまだひとし)だ。前世においてこいつと一緒なら楽しい学校生活が楽しめると思った矢先に両親揃って蒸発の憂き目に合い、連休明けを待たずして高校中退したからな⋅⋅⋅

 

だからこそ又、こうして会えて俺超嬉しい!!

 

「なに、どうしたの?たかが七日間の連休ぶりなのに大げさ過ぎないかい?」

 

 

俺にとっては実に27年ぶりなんだよ⋅⋅⋅

思わず目頭が熱くなるが、グッと堪えて辛抱した。

 

さて、俺の席は⋅⋅⋅何処だっけ?流石にそこまでは覚えていなかった⋅⋅⋅⋅⋅(汗)

 

「あ~俺の席って何処だっけ?」

 

「オイオイ休みボケにも程があるでしょ⋅⋅⋅そっちの扉の一番前じゃないか⋅⋅⋅」

 

「あっ、そっかそっか~(汗)ど忘れしちまってたわ!あんがと!」

 

 

踵を返して、教えもらった席につくと俺の隣の席に静かに佇み、読書をしている可愛らしい女子クラスメイトがやけに目についた。

 

ひたすら読書に没頭しているメガネを掛けたショートカットの女の子だ。

 

 

あ、ヤバい名前が思い出せない⋅⋅⋅

 

 

つーか、そもそも嶋田君以外のクラスメイトの顔と名前も正直把握していない。だって前世だと1ヶ月足らずで中退したから親交を深める以前の問題なんだよな⋅⋅⋅まあ、しょうがない⋅⋅⋅

 

話しをするキッカケすら掴めず何だか微妙に気まずい感じになる。まあ、向こうは読書してるから特にそんな感じにはならないが⋅⋅⋅⋅

 

あれこれ考えている内に先生が来て朝のホームルームが始まった⋅⋅⋅⋅

 

 

ああ⋅⋅⋅今、本当に高校生なんだな⋅⋅⋅⋅この当たり前が、普段の日常がどれだけ貴重で尊いモノなのか⋅⋅⋅このクラスでは恐らく一番身に染みているのは俺何だろうな⋅⋅⋅⋅

 

 

「それと今日は時期ハズレの転校生が来る予定だ。長い間心臓の病気で入院していたので最後の検査で遅れて2時限目に来るとの事だ。みんなで色々教えてあげるように。以上だ」

 

 

朝のホームルームが終わり、休憩時間になった。勿論嶋田君の所にいって久しぶりのフレンドトークに花を咲かせるつもりだ。

 

現役高校生だとそれぐらいで⋅⋅⋅と大袈裟と思われるだろうが無理やり社会人に成らざる負えなかった自分には気兼ねなく出来るフレンドトークは正に宝なのだ。

 

頭の中にある微かな記憶を頼りに現代の今の時代の流行りの音楽やゲームの話しをして大いに俺は楽しんだ!!

 

正直記憶違いの部分もあるのでかなり焦った(汗)

 

「そういや俺の隣の女子って名前何だっけ?」

 

さりげなく隣の席のメガネ文学美少女の名前を聞いた。自分でも不思議と気になったからだ。奇妙な存在感を感じる。

 

 

「小林君⋅⋅⋅休みボケが本当に酷すぎないかい?隣の席の子は長門有希さん⋅⋅⋅連休前に同じ図書委員になったじゃないか?本当に覚えてないの?」

 

うわ⋅⋅⋅⋅⋅全然記憶が無いぞ⋅⋅⋅⋅

 

「い、いや~連休中はやりかけのゲームに夢中で⋅⋅⋅⋅ははっ参ったな⋅⋅⋅⋅(棒読み)」

 

 

友人の嶋田君曰く、メガネを掛けたクールな文学美少女として既にクラスメイトの何人かが密かに想いを寄せてるらしい。

 

俺自身も何故かやたらと目が離せずにいた⋅⋅⋅そういや昨日、悪魔ほむらが素敵な出会いが待ってるかもとか言ってたな⋅⋅⋅嶋田君とは言うなれば再会だからもしかしてと密かにワクワクしてしまう。

 

 

やがてチャイムが鳴り2時限目が始まろうとする。確か転校生が来るとか言ってたな⋅⋅⋅この時期に転校生ってどんな人何だろう?これも素敵な出会いの内の一つ何だろうか?

 

先生が教室に入り、皆が席に座る。

 

「では転校生を紹介する。さあ入りなさい」 「はい」

 

静かに教室の扉が開き、聞き覚えのある声で返事をして、見覚えのある美少女が教室に入った⋅⋅⋅⋅⋅

 

その少女は長くツヤのある滑らで美しい黒髪を靡かせ颯爽と歩き教室の空気を変えた⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

えっ、えっえっえっえーーー!!??

 

あっあっ悪魔ほむらぁ~!?

 

 

「皆さん初めまして暁美ほむらと言います。長い間心臓の病気で入院生活を送っていたので色々と教えて下さい。よろしくお願いします」

 

言い終わるのと同時にクールな出で立ちから人懐こい笑顔を振りまいた。

 

 

その瞬間クラスの空間が一気に色めき立つ⋅⋅⋅⋅⋅!!

 

 

「な、なんて可憐なんだ⋅⋅⋅⋅⋅」

「く、悔しいけど完敗だわ⋅⋅⋅」

「こ、こんなに美しい女性が存在するなんて⋅⋅⋅⋅」

「ふん!ナニさ⋅⋅⋅⋅⋅可愛いじゃない⋅⋅⋅⋅!」

「後でメールアドレスを聞かなければ」

「僕は長門さん一筋⋅⋅⋅⋅い、いや何でもない⋅⋅⋅⋅」

 

 

 

まるで教室全体が魔法に掛かったかのような熱気に包まれる⋅⋅⋅⋅⋅!

 

(な、何であの悪魔がここにぃ~!?スッゲー嫌な予感しかしねぇ~素敵な出会いってお前のことかい~)

 

 

先生が席を示す前にその「暁美ほむら」は俺に視線を集中し、スタスタとこちらに笑顔で近づいて来た⋅⋅⋅⋅ 

 

お、お願いほっといてくんさい!

 

そんな俺の願い虚しく俺の左手を両手で包み⋅⋅⋅

 

「キャー!小林君久しぶり~!!会いたかったわ~♥また一緒に色々頑張ろうね♥」

 

や、やりやがったよ、このアマ~!!

この悪魔ァァー!!

 

その瞬間、一気に視線が俺に集中する。まさに針のムシロだ

 

感覚的だが好奇心からの視線1割、残りの9割の視線は嫉妬、妬み、僻みといったモノを感じる。

 

 

胃が⋅⋅⋅胃が痛む⋅⋅⋅

 

 

俺はほんの数秒で心身共にダメージを喰らい気がつくと保健室のベッドに寝ていた。

 

あかん⋅⋅⋅記憶がとんでる⋅⋅⋅

 

「あら⋅⋅⋅気がついたのね⋅⋅⋅貴方意外と繊細というか、脆弱というか⋅⋅⋅」

 

ベッドの横に椅子に座ってこちらの様子に呆れて果てている悪魔⋅⋅⋅⋅「暁美ほむら」が居た。

 

「何で此処にいるんだ⋅⋅⋅⋅」

 

怨嗟を込めて言葉を捻り出した。

 

「貴方覚えていないのかしら?口と鼻と目から血を垂れ流して保健室に運ばれたのよ。教室は大騒ぎだったわ」

 

いや、教室が大騒ぎなのは半分貴女が原因だから!それにそう言う意味で言ったんじゃない!!

 

「そうじゃなくて何で人間の世界に⋅⋅⋅⋅しかもよりによって俺のクラスに⋅⋅⋅」

 

「半分は貴方の行動を間近に観察する為よ⋅⋅⋅何しろ必死で足掻いてアタフタする様子がとても面白くて気に入ったわ」

 

 

こ、この悪魔め⋅⋅⋅⋅

 

 

「⋅⋅⋅じゃ、後の半分はなに?」

 

「⋅⋅⋅⋅⋅貴方の隣の席にいた長門有希という女子⋅⋅⋅あの子が目的よ。接触して行動の牽制と監視の為にわざわざこのアバターでこちらに来たのよ」

 

 

えっ?どゆこと?長門有希さん⋅⋅⋅⋅パッと見た限り静かに一人で読書に没頭している文学メガネ美少女で奇妙な存在感を感じさせる。けどそれ以外は普通そうに見えたけど⋅⋅⋅⋅?

 

「何だってそんな事を⋅⋅⋅それにアバター?」

 

「アバター⋅⋅⋅⋅この身体⋅⋅⋅いえ今、目の前にいる『暁美ほむら』という存在は本体の人格と記憶と力の一部分のみを付けた仮の存在⋅⋅⋅本体と繋がっていて常に情報を共有しているわ⋅⋅⋅⋅長門有希もまた今の私同様に人間じゃないわ」

 

「ええっ!えと、じゃあ、何か?長門さんも悪魔!?もしくば宇宙人!?」

 

 

我ながら突拍子のない事をいってしまった⋅⋅⋅⋅

 

「あらっ⋅⋅⋅頭は足りないみたいだけど、なかなか良い勘してるじゃない、誉めてあげるわ。正解よ⋅⋅⋅長門有希は宇宙人⋅⋅⋅正確には情報統合思念体という肉体を持たない宇宙人達によって創られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース(TFEI)まあ、早い話しがアンドロイドみたいなモノよ⋅⋅⋅⋅」

 

まさか本当に宇宙人だったとは⋅⋅⋅まあ正確には有機アンドロイドと呼べる存在らしい。

 

「何だってそんなのが此処にいるんだ?」

 

「鈍いわね。貴方の監視に決まっているじゃない?」

 

「へっ!?何で俺?」

 

「流石にそこまでは私でも分からないわ。今、全力でムカイさんを始めとする端末達に負けじと情報収集させてる最中よ⋅⋅⋅⋅⋅後でムカイさんに聞いたら何か判るかもね」

 

や、やべえ⋅⋅⋅⋅どんどん話しがデカクなってきたぞ⋅⋅⋅⋅後でムカイさんにより詳しく聞こう。

 

「まあ、そんな訳で暫くは彼女と貴方の観察と監視で此方の世界に留まるわ⋅⋅⋅⋅」

 

 

こうして悪魔ほむらは転校生「暁美ほむら」として俺のクラスメイトとなった。

しかし長門有希さんが俺の監視とは⋅⋅⋅⋅正直向こうから話しかけられたらどうしよう⋅⋅⋅⋅無視するのもアレだしな⋅⋅⋅⋅

 

 

秘密道具で宝クジを当て、久々の学校生活にウキウキしたのもつかの間⋅⋅⋅厄介で面倒な事になった。また胃とそれに頭まで痛くなってきた⋅⋅⋅⋅

 

 

 

 

 

 

 



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転校生悪魔と文学宇宙人

悪魔⋅⋅⋅いや、暁美ほむらから事情を聞いた俺は頭を抱えつつ、とりあえず教室に戻った⋅⋅⋅

 

教室に戻ると皆が一斉に何とも居心地の悪い視線を浴びてしまう。

 

「小林君、大丈夫かい?さっき目と鼻と口から血を吹き出していたけど⋅⋅⋅!?」

 

我がハートフレンド(心の友)の心配してくれる声に俺は心底安心感に包まれる。

 

「ああ、嶋田君心配ないさ!ちょっと血が滾っただけだから!」

 

「いやいや、あれは滾ったと言うには無理があると思うけど⋅⋅⋅⋅」

 

「まあ本当大丈夫だからさ、次の授業始まるからそろそろ席につこう」

 

 

無理やり嶋田君を納得させて自分の席につくと遅れてほむらが教室に入り俺の隣の席にいる長門有希さんを一瞥すると静かに自分の席についた⋅⋅⋅

 

 

さっき保健室で長門さんの正体を知ってしまった俺は隣をメチャクチャ意識してしまう。

 

この娘が有機アンドロイドとはいわれなければ本当に只の読書好きの女の子にしか見えないよな⋅⋅⋅

 

授業が始まるもやたらと隣が気になって集中出来ずにいた。(それ抜きにしても久しぶりの授業の内容はちんぷんかんぷんだった)

 

 

やがて昼休みになるとクラスの半分は謎(?)の美少女転校生、暁美ほむらに群がり色々と質問をぶつける。

 

そしてもう半分は俺の周りに集まり転校生とどんな関係なのかと質問責めに合うのだった⋅⋅⋅⋅

 

 

「ねえねえ暁美さん、え~と彼⋅⋅⋅小林君とはどんな関係なの?」

「二人ってもしかして付き合ってるの?」

「出会いはいつ、何処で?」

「小林君って、その⋅⋅⋅⋅どんな人ですか⋅⋅⋅?」

「言っちゃ悪いけどもう少し選り好みした方がいいよ」

「どっ、何処まで進んだのでしょうか⋅⋅⋅⋅?」

 

 

「え⋅⋅⋅⋅とっ、そのすみません⋅⋅⋅私と彼は⋅⋅⋅⋅きゃっ♥恥ずかしい♥詳しい事は秘密です♥でも、どうしても知りたいというなら彼に⋅⋅⋅小林君に⋅⋅⋅ねっ!」

 

 

あ、あのアマァァァー!!

 

 

可愛くウィンクしてこっちに全部丸投げしやがったー!!

んなもん、どう答えりゃいいんだよ!?

 

 

「えと、小林だっけ?あ、暁美さんとはやはり彼氏彼女の関係なのかい?」

「くっそ~!!お前羨ましいにも程があるぞ!!」

「連休明け早々にあんな正統派黒髪ロングヘアーの美人と⋅⋅⋅男として負けた⋅⋅⋅」

「どうやって知り合ったんだ?どうやって彼女にしたんだっ!?教えくれよ!」

「羨ましい⋅⋅⋅!だが僕は長門さん⋅⋅⋅いや、何でもない⋅⋅⋅」

「小林⋅⋅⋅⋅俺はお前を認めねぇ⋅⋅⋅⋅くっ、悔しくなんかないんだからねっ!」

「小林ー!!まだだ!高校生活は始まったばかり!負けんぞぉー!!」

 

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅胃が⋅⋅⋅⋅⋅胃が痛む⋅⋅⋅⋅ハハイ!!

 

 

 

⋅⋅⋅⋅そして⋅⋅⋅気がつくと俺はまた保健室の天井を見つめていた⋅⋅⋅⋅

 

 

また記憶がとんでる⋅⋅⋅に、してもあの悪魔めぇぇぇ~!!なんて事してくれたんだ!俺はただ、平凡でいいから失われた青春を味わいたかっただけなのにー!!

 

気がつくとベッドのカーテン越しに人影が見えた。

暁美ほむらか?絶対文句をつけてやる!!そう思い、勢いよくカーテンを開き、

 

「オイ!暁美⋅⋅⋅⋅てっ?あ、あれ?長門さん!?」

 

そこにはあの悪魔から有機アンドロイドと知らされた長門有希さんが無表情で此方を見つめていた⋅⋅⋅⋅!?

 

確か俺の監視の為と言っていたな⋅⋅⋅だけど余りにダイレクト過ぎやしないか?そんな疑問をよそに長門さんはジッと真っ直ぐに俺を見つめ口を開く⋅⋅⋅

 

 

「小林信一⋅⋅⋅あなたに話しがある⋅⋅⋅」

 

そう告げると何か、奇妙な感覚が俺⋅⋅⋅いや、保健室全体を包んだように感じた。

 

「この保健室の空間情報を通常の空間から一時的に切り離した⋅⋅⋅私とあなただけがこの保健室内で誰にも知られず会話が出来る」

 

 

な、なんちゅう事出来るんだ⋅⋅⋅⋅!?

俺は驚愕しつつもまあ、あの悪魔もやろうとすれば出来るんだろうな~と考え妙に冷静に構えた。

 

 

「⋅⋅⋅⋅変に騒がないので情報を伝えるのに好ましい⋅⋅⋅私はこの宇宙⋅⋅⋅銀河に存在する肉体をもたず情報のみで存在する情報統合思念体というあなたの認識でいうところの宇宙人⋅⋅⋅その宇宙人達が有機生命体である人間にコンタクトを取るべく造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース⋅⋅⋅それが私⋅⋅⋅⋅長門有希」

 

 

ここまではほむらから聞いていたとうりだ。

 

 

「小林信一⋅⋅⋅あなたを監視し、いざとなればあなたの行動を助けたり、妨害する役目を担っている⋅⋅⋅」

 

 

なんですと!?

 

 

「数年前⋅⋅⋅この時空の宇宙において凄まじい時空間干渉エネルギーの渦が観測された。それに伴い高いレベルの時空変容も頻繁に起こった。これの影響により平行世界のあなたは神を自称する存在から有機生命体でいう人智や摂理すら操れる道具を所持する事を許される。その道具を使い平行世界のあなたはもう一人の私を造りだし××××して愛しあっている⋅⋅⋅⋅⋅」

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅てっ、ちょっと待ていぃぃー!!

 

 

はっ、話しの筋は昔読んだ漫画やゲーム、ネット小説のおかげで大体理解は出来る⋅⋅⋅だけど平行世界の俺ー!!

何やらかしてんだよ!?はっ、恥ずかし過ぎるー!!なんだろう、気のせいか俺を蔑み侮蔑しているみたいに俺を見つめていない?

 

 

「⋅⋅⋅⋅⋅平行世界のあなたとそれに造られた私は似て非なる存在⋅⋅⋅そこまで気にする必要性は皆無⋅⋅⋅⋅」

 

 

いや、あんな事聞かされて今さら無理でしょ⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

「こちら側の平行世界のあなたはそのような道具を所持する事もなく不幸で陰鬱な人生を送り、絶望のままその生命活動を終えた⋅⋅⋅⋅だが何故か確認された観測情報からとは異なる状況に陥っている。言うなれば極めて特異なイレギュラー状態が続いている⋅⋅⋅⋅」

 

 

あ~、多分それはあの悪魔と契約して二週目の人生⋅⋅⋅リプレイヤーをやっているからだと⋅⋅⋅⋅こんなんどう説明せよと⋅⋅⋅

 

 

「この状態に強く危機意識を感じた上は特定人物(涼宮ハルヒ)の観測任務を終えた私に新たな任務としてこの世界であなたのクラスメイトとして紛れ監視する任務を与えられ今に至る⋅⋅⋅以上が私から公開できる限定管理情報⋅⋅⋅これ以上の情報の開示は認められていない為、質問を受け付ける事は出来ない⋅⋅⋅⋅」 

 

 

言うだけいってこっちの質問はなしかよ⋅⋅⋅と心の中で軽くボヤくと、突然凄まじい圧力が保健室全体に及んだ!!

 

「なっ!これはまさか!」

 

 

ドギャーーーン!!

 

 

強い衝撃音に思わず耳をふさぎ身を縮めた。⋅⋅⋅⋅そしてゆっくりと瞼を開くとそこには強烈な黒いオーラを放っている暁美⋅⋅⋅⋅いや、悪魔ほむらが居た⋅⋅⋅!!

 

 

「空間を切り離してこそこそ内緒で何をしてたのかしらぁ⋅⋅⋅⋅?」

 

「別になんもしてなねえよっ!向こうから話しをしてきたから聞いてただけだよ!」

 

目の前のほむらはかつて自分が奇妙な空間で対峙した時のセクシーかつ危うい魅力を打ち出し、美しい翼を広げ此方を見ている。

 

 

「⋅⋅⋅冗談よ⋅⋅⋅長門有希⋅⋅⋅⋅静かに監視するだけでなく、直接干渉までするなんてインターフェースも随分とはしたないのね⋅⋅⋅」

 

「監視任務を円滑にこなす為、独自の判断により開示が認められている情報を知らせて好ましい関係を築こうとしただけ⋅⋅⋅⋅特に(やま)しい意図は皆無⋅⋅⋅」

 

「あらぁ?それを鵜呑みにするほど私は寛容ではないわよ⋅⋅⋅コレ(・・)は私の駒で大事なオモチャよ⋅⋅⋅」

 

 

はっきりと駒とオモチャとか抜かしやがって⋅⋅⋅ぐぬぬ⋅⋅⋅

 

 

「こちらも監視して静観を決め込もうかと思っていたけどもう⋅⋅⋅いいわ⋅⋅⋅この場であなたを破壊するわ⋅⋅⋅」

 

 

二人は対峙し何かしらの力が空間を被いつくす⋅⋅⋅気のせいか身体にまとわりつく空気がひどく重い。ぶつかり合うのか?と思った瞬間⋅⋅⋅ 

 

 

ビーッビーッ!!突然ほむらの周辺から警戒音が鳴り響き珍しく驚愕した顔を見せる。長門さんの方に視線をやると何やら虚空に向かって何かしゃべっている。もしかして情報統合思念体というのと交信しているのか?

 

ほむらは耳に手をあてて何かやり取りをしているみたいだ。⋅⋅⋅⋅何なのこの状況は⋅⋅⋅⋅

 

「小林⋅⋅⋅悪いけど予定が変わったわ⋅⋅⋅緊急事態よ!!魔獣達が次元を突き破って進撃してきたわ⋅⋅⋅⋅!!」

 

 

へっ⋅⋅⋅⋅何だってぇぇ!?

 

俺は焦ってほむらに問い詰めた。

 

 

「な、何でだよ!満月にはまだ約8日以上もあるぞ!!」

 

「裏でインキュベータどもがやってくれたわ⋅⋅⋅⋅私としたことが⋅⋅⋅とにかく覚悟を決めなさい。予定が前倒しになっただけと思えば大した事ではないわ⋅⋅⋅!」

 

「んな事言われても⋅⋅⋅⋅!」

 

パキーン⋅⋅⋅⋅!!突然渇いた音がして保健室を覆っていた違和感がなくなった。

 

「緊急召集⋅⋅⋅⋅上からの呼び出しを受けた⋅⋅⋅今回の件は一時的保留とさせて貰うのが好ましい⋅⋅⋅」

 

そう言って長門さんは部屋から出て行った。

 

「なんなんだ⋅⋅⋅⋅」

 

まだ頭が追いつかず軽くパニックになっていると窓の方からコンコンと音がする?振り向くと窓には杖のムカイさんが居た!?

 

「マスター!!開けて下さい!緊急事態が起こりました!あっ、ほむら様!!」

 

「いいタイミングよムカイさん⋅⋅⋅これから魔獣の討伐、もしくば進行を一定時間防いでもらうわ⋅⋅⋅!」 

 

 

 

俺のリプレイヤーとしての新たな生活は波乱の幕開けとなってしまった。

 

 

 

 

 



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ガチャは世知辛い

詳しい事はわからないが何やらインキュベータ?とか言うのが裏で暗躍して予定の日にちを前倒しで魔獣達の相手をしなくてはならなくなった。

 

 

「本来の予定なら魔獣との戦闘シミュレーションを何度か体験させてから魔獣に立ち向かってもらうはずだったのに⋅⋅⋅全く忌々しいわね⋅⋅⋅インキュベータ!」

 

酷くイラつき、ぼやきながら掌から黒い塊をひねり出しそれが奇妙な穴を作り出した。

 

 

「悪いけどぶっつけ本番よ⋅⋅⋅怨むならインキュベータと己の運の無さを恨むのね⋅⋅⋅詳しい事はムカイさんに訪ねなさい。私も別空間から急いで行かなきゃならないから!」

 

「おっ、オイ待てよインキュベータって何だよ?」

 

「鬱陶しい奴らよ⋅⋅⋅それじゃ、生き残ったら特別に何か望みを叶えてあげるわ⋅⋅⋅⋅最後まで足掻きなさい⋅⋅⋅!」 

 

悪魔らしからぬ事を言い捨てて黒い穴へと入り姿を消した⋅⋅⋅ 

  

 

「なあ、ムカイさん、インキュベータってどんな奴らなんだ?名前からして宇宙人っぽいけど?」 

 

「はいマスター、インキュベータとは地球外知的生命体でウサギのような姿をしており、ほむら様の天敵です!」

 

「あの悪魔の天敵⋅⋅⋅ね⋅⋅⋅」

 

正直無敵の存在に思える彼女にもそんな厄介な敵がいるとは思いもよらなかったな。

 

「マスター!!今から魔獣との決戦空間へとお連れ致します。時間に余り余裕がありませんのでお急ぎを!」

 

「ああ!わかった!ムカイさんよろしく頼むぜ!」 「はい!」

 

 

ムカイさんは例によって口から何か光を放った。そしたら人が通れそうな空間が開けた!

 

「さっ、マスター!お急ぎ下さい」

「わかった。行こう!」

 

ムカイさんを伴い空間に入るとエスカレーターみたいに移動した。

 

 

「でっ、今回はイレギュラーで日数を前倒しで初陣となる訳だが、ムカイさん俺の戦う魔獣はどんなタイプなんだ?出来れば初心者なんでお手柔らかに願いたいんだが⋅⋅⋅⋅」

 

「⋅⋅⋅⋅申し訳ありませんマスター⋅⋅⋅インキュベータの情報妨害により探索が打ち切られてしまいお伝えする情報が手に入りませんでした⋅⋅⋅⋅」

 

インキュベータ⋅⋅⋅抜け目の無い奴みたいだ。

 

まあ、でもガチャで武器やらMS(モビルスーツ)やら出してしまえば何とかなるだろ。最初に聞いた話しだと重火器で対処可能と言ってたし、ガチャの資金も秘密道具で今は豊富だ。何とかなるなる!

 

 

気楽に考えていると出口が見えてきた。そして出口から出るとそこは広い森林地帯だった⋅⋅⋅⋅

 

 

うはー!空が澄みきっていて星空が綺麗に輝いて俺は能天気に深呼吸して景色を堪能した。あれ?でも今の時間はまだ夕暮れにもなっていない筈⋅⋅⋅まあ別空間だからだな!と結論付けた。

 

 

「マスター!お早くガチャを引いて準備をなさって下さい!」

 

「おう!悪い悪い!」

 

そう答えるとムカイさんは口からスマホを出してくれた。よし!気合い入れて回すぞ!

 

 

まずは武器、弾薬のガチャからだ。一回500円とモノを考えれば非常にリーズナブルだ。よーし! パンパンッ!

 

頬を軽く叩いて気合いを入れてスマホのガチャを引いた!良いの出ろー!!

 

ガチャ!⋅⋅⋅画面に出てきたのは暁美ほむらお手製爆弾と表示されたモノだった⋅⋅⋅⋅てかっ、悪魔が自分で爆弾を自作するの?

 

まあいい⋅⋅⋅武器には違いない。よーし!一気に回すぜっ!!

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

⋅⋅⋅⋅結果を言おう⋅⋅⋅⋅100回分⋅⋅⋅⋅つまり計5万円費やして出てきたのは全てほむらお手製爆弾だけだった⋅⋅⋅⋅

 

何なのコレ?アイツもしかして作り過ぎた在庫の処分でやってるんじゃないのか!?

 

 

どちくしょおぉぉぉー!!!

 

 

丸腰よりはマシだけどよぉ⋅⋅⋅コレ本当に効果あるの?手投げタイプだから敵に向かって投げなきゃならないし。

 

俺そんなに肩に自信無いんだがなぁ⋅⋅⋅野球は投げるより打つほうが得意だし。せめて金属バットでも出てくれれば⋅⋅⋅⋅

 

 

「マスター。ほむら様のお手製の爆弾の威力はワタクシめが保証します!何しろほむら様の手作りですから!」

 

ほむらの事は今一信用できんがムカイさんがそう言うなら信じよう。でもそんな強力なら投げ損じたら危ないな⋅⋅⋅⋅

 

 

「とりあえずこの四次元ポケットに獲得したほむら様お手製爆弾を収納しておきました。ポケットを装着して何時でも使えるようになさって下さい」

 

「ああ、ありがとう、ムカイさん」 

 

俺は言われたとうりすぐ取り出せる様にポケットを腹にくっつけた。少々見た目はアレだが⋅⋅⋅⋅

 

 

はぁぁ~⋅⋅⋅⋅もう武器のガチャはここまでだ⋅⋅⋅気分を変えてMSのガチャをやろう!

 

 

ガチャの画面をMSのガチャに切り替える。画面には1万円、5万円、10万円と3つの値段のガチャが出てきた。俺はムカイさんに値段でどんなのが出て来るのか聞いた。

 

 

「はい。1万円のガチャですと悪くてボール、良くてジムとかの紙装甲の量産機及び、それらの武装。5万円で少し武器の強いMS、MA。10万円のものならば主役機やエース的機体が手に入ります!ですが5万円と10万円の確率はかなり厳しい確率設定になっております。何卒ご了承下さい」

 

 

よーし、わかった!まず残りの予算を確認だ。まず秘密道具で当てた一千万円は出来ればこのままにしておきたい。今後の生活費、学費、秘密道具(レンタル品)その他に費やさなくてはならない。

 

月のツキ。あれは本体価格1億円はとてもじゃないが手が出せない。効果時間を短くした試供品は後二回しか使えない。一回を来週また宝くじで使い、残りの一回はもしもの為にとっておきたい。

 

となると使える資金はクズ両親が残していった金⋅⋅⋅

 

宝くじ、食料品、武器ガチャ(一回500円)で使った分を差し引いて残り24万円ちょい。4万円は生活費、光熱費等に使わないとならない。

 

となると残りの使える予算は20万円となる。安いからと武器ガチャをやり過ぎた。しまったなぁ⋅⋅⋅

 

MSガチャは安いので1万円、中間が5万円、高いのが10万円⋅⋅⋅⋅あ~どう振り分けるかな~。

 

 

「なあ、ムカイさんはどう振り分けるのがベストだと思う?」

 

ムカイさんに相談するとムカイさんは⋅⋅⋅

 

「マスター!!魔獣達がやって来ます!!」

 

そう叫んだ瞬間⋅⋅⋅⋅遥か遠方の方でガラスの割れるような音と共に無数の黒い集団が来訪してきた⋅⋅⋅⋅

 

 

「な、何だよあの数⋅⋅⋅⋅それにデカイ⋅⋅⋅!?」

 

魔獣達とはかなりの距離が離れているがそれでもデカイと目視確認で認識できる。ここから見てデカイと感じるなら間近ならもっとデカイ⋅⋅⋅!!

 

それに数は30⋅⋅⋅⋅50⋅⋅⋅⋅嘘だろぉ!?まだ増えてくぞ!!

                

 

一番デカイやつの姿がハッキリと分かってきた。何と言うか生物の筈なのだが何処か無機質で感情的なものは感じられず只、ひたすら此方に真っ直ぐゆっくりと行進してくる。形は山羊のような顔立ちで頭にデカイく禍々しい2本の角があり、筋肉?なのかはわからないが隆々とした体格で足は羊のような蹄で踵がなく器用に二足歩行でやってくる。色は全体に黒く、総合的に見て正に『悪魔』(デーモン)と言うに相応しい⋅⋅⋅⋅⋅!!

 

コイツらを見たら暁美ほむらは悪魔というより堕天使と言った方が似合う。

 

 

「むっ、ムカイさん⋅⋅⋅ヤツらを本当に俺が相手しなきゃならないのか⋅⋅⋅⋅?」

 

「⋅⋅⋅⋅マスター!覚悟を決めて下さい。ワタクシめも出来うる限りのサポートをさせて頂きます⋅⋅⋅!」

 

い、いくら何でも初心者相手にアレは無いだろう?

 

だあっー!もうこうなったら20万円の内10万円を1万円のMSガチャを引いてジムを手に入れてやる!

 

俺は焦る気持ちを必死で抑えながらスマホ画面をタッチして1万円のMSガチャを10回引いた。

 

「ジム出ろジム出ろ⋅⋅⋅!!」

 

だが、結果はボールだった⋅⋅⋅⋅

半ばヤケになって残り9回のガチャを連続で回した。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

現実は何処までも非情で結果は全てボールオンリーだった⋅⋅⋅⋅

 

 

ドチクショオォォォー!!

 

 

「⋅⋅⋅⋅マスターとにかく引き当てたボールを出して置きます」

 

ムカイさんは何も無い空中から引き当てたボール計10体を取り出した⋅⋅⋅⋅(流石に口からは出さなかった)

 

目の前に並んだボール達だが、俺の記憶の片隅にある公式設定の大きさより明らかに小さい。

 

確か公式だと12.8㍍だった筈⋅⋅⋅なのに目の前にあるボールは全てが4~5㍍位しかない。

 

当然唯一の武装であるキャノン砲も本体が小さい為それに合わせて小さい⋅⋅⋅⋅

 

 

こんな貧弱なのでどうしろってんだよ!?完全にアレは丸い棺桶じゃないかっ!

 

こうなったら武器タイプの秘密道具を使ってやる!俺はスマホ画面をドラえもんの秘密道具購入画面に切り替える。

 

画面をスライドさせると劇中に出てきた【熱線銃】、【ジャンボガン】が表示される。

 

そして劇場版ではお馴染みの【ショックガン】に【空気砲】もある。本体価格は軒並み一千万円を越えている。

 

 

武器タイプの秘密道具は威力に比例して値段がべらぼうに高い。試供品も有るには有るが一回限りで、三発分のみとなっている。

 

アレだけの数相手には足りなさすぎる。だが、無いよりマシと判断して試供品を全てムカイさんに出してもらった。それをポケットにしまい、魔獣達の方に視線をやると更に増えていた⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

俺は能天気でお気楽気分だった自分を激しく嫌悪し後悔した。

 

 

俺は魔獣と戦うと聞いてもボンヤリとゲーム感覚に捉えていた⋅⋅⋅⋅それにもし死んでもまた、ほむらにリプレイさせて貰えると心の何処かで甘く考えていたのを自覚する。そんな事して貰える保証も契約も話し合いもしてないのに⋅⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

魔獣達の総数は確実に200体は越えている。

 

 

俺は地面にひざをついてへこたれるのだった⋅⋅⋅⋅

 

  

   

 

 



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魔獣との戦い

魔獣との戦いの為、決戦空間へとやって来たがガチャの引きの悪さと魔獣達の数に俺は心が折れ掛けていた⋅⋅⋅⋅

 

 

あ、あんな数とこんな貧弱なので勝てる訳無いだろうが⋅⋅⋅⋅

 

「戦いは数だよ、兄貴」そんな言葉が心中に何度も何度も去来する。

 

 

くそ、くそ、クソ、クソ、糞がぁぁぁー!!!!!!!!!!!!!!

 

 

せっかくリプレイで二週目の人生を得たのに結局コレかよっ?

 

フダケンなよ!?インキュベータとやらの暗躍で迷惑掛けられて⋅⋅⋅⋅⋅頭にきた⋅⋅⋅⋅!!

 

 

どいつもコイツも腹立たしい⋅⋅⋅!

俺をバカにして見下した奴ら⋅⋅⋅

俺にパワハラして愉悦に浸った奴ら⋅⋅⋅

精神が弱っている時につけこみ騙し、詐欺で無けなしの金を奪った奴ら⋅⋅⋅

診察ミスで俺の癌の発見を送らせ、その事を隠蔽した奴ら⋅⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

奴らの下卑た面と声が次々と頭を駆け巡り腹の中に熱が籠る。

 

 

クソーがぁぁぁー!!!

 

 

負けてたまるかぁぁぁー!!!

死んでたまるかぁぁぁー!!!

 

 

何がなんでも勝利して生き残ってやる⋅⋅⋅!奴らに復讐して屈辱を返してやる!!

 

 

怒りがエネルギーとなり、萎えかけた精神が堅くなり、熱く吠え滾る⋅⋅⋅⋅!!

 

「まっ、マスター⋅⋅⋅!?」

 

「すまないムカイさん⋅⋅⋅驚かせちまったな⋅⋅⋅⋅俺は負けたくない⋅⋅⋅戦って勝利して生き残ってやる!協力してくれ」

 

 

「はい!マスター!」

 

 

軽く深呼吸して俺は魔獣達を見据える。ヤツらの侵入ゲートは塞がり、ようやく侵入は終わりヤツらの総数は約300程になっていた。

 

数こそ驚異的だが幸いな事にヤツらは全員足並みを揃え、特に速くもなくゆっくりと今の所はただひたすら直進してくるのが救いだった。だが、それゆえに不気味さに拍車をかけていた。

 

こちらの存在は確実にわかっている筈なのに特に強襲する訳でもなくビームの類いを放つ訳でもなく、ひたすらゆっくりと歩調を合わせて進むだけだった⋅⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

「マスター!後ろに離れた赤いラインが在ります。アレを越えられたらアウトです!」

 

「越えられたらどうなるんだ?」

 

「マスターの住まわれる世界へと次元侵入し、様々な疫災をもたらします。魔獣は普通の人間には認識できず、事故、天災といった形で世界に負の力を撒き散らかす非常に厄介な相手です」

 

本気(マジ)かよ⋅⋅⋅

 

「ですが、逆にあのラインに踏み入れさせずに倒しきるか、一定の時間魔獣どもの進行を鈍らせればこの空間も消え去り勝利出来ます!マスター、踏ん張りましょう!」

 

「ちなみに一定の時間ってどれぐらいなの?」

 

「通常なら短くて1時間程、長くて3時間程になります。今回は稀にみる強さと数なのでこちらで確実に分かる時間は20分と認識出来ます!」

 

⋅⋅⋅20分⋅⋅⋅楽しい事してたら直ぐに過ぎ去る時間だが、こんな状況では恐ろしく長い⋅⋅⋅⋅

 

だが、ヤってやる!

 

俺は気合いを入れてハッチを開き、ボールに乗り込んだ。コックピットの中は簡素で椅子に座り操縦席を見渡すとそこはレバーとボタンだけが備えて付けられていた。

 

ちなみにレバーはグリップが取り付けられた本格的なモノでボタンだけがゲームの様に安っぽい造りだった⋅⋅⋅

 

まあ、ボールはマニピュレーター以外は空中を移動して備え付けられているキャノン砲をひたすら撃つだけだからな⋅⋅⋅⋅⋅

 

「え~と、マニュアル本は無いのか?」

 

「単純過ぎてないようです。ワタクシが案内させて頂きます。まず、右下のボタンを押して起動してみて下さい」

 

言われたとうり右下のボタンを押してみる。するとアニメで聞いた事のある起動音が静かに鳴り響いた。

 

こんな状況でなければ感激している所だが、今はそんな余裕は無い。

 

 

「次にレバーを手前に引きますと浮かび上がります。足下の右ペダルで速く移動し、左のペダルでブレーキが掛かります。レバーの隣のボタンがキャノン砲の発射ボタンです。照準は発射ボタンの下のボタンで定めますがこちらはワタクシめにおまかせ下さい」

 

ムカイさんの説明で理解した俺は実際に動かしてみる。レバーを手前に引くと浮かび上がり右ペダルを踏んでスピードを出す。左のペダルを踏み、減速する。本当に単純だ。

 

 

「極めて単純な移動ならオートにする事も可能です。そしてキャノン砲の弾数は10発です。射程距離は機体自体が小さい為、距離も短くなり約100㍍となります」

 

キャノン砲の射程距離約100㍍⋅⋅⋅⋅全力で走る分には長いが砲弾の距離としては些か短い。

 

 

だが、やるしかない!

 

 

俺は僅かに慣らし運転を終え、覚悟を決めて射程距離約100㍍迄ヤツらに近づいた。

 

ま、間近に迫るとやはりデカイ⋅⋅⋅!

ジムよりデカくないか?こっちが近ずいても一切表情を変えず黙々と歩いてくる。やはり不気味だ⋅⋅⋅⋅

 

 

「マスター標準合わせ完了です!何時でも行けます!」

 

「ありがとうムカイさん!」

 

俺は発射ボタンを押し、キャノン砲を撃った!!

   

    

    ドオーン!!

 

 

⋅⋅⋅ムカイさんのお陰で顔面に直撃した。だが、あの悪魔(デーモン)もどきには傷一つ付いていなかった⋅⋅⋅

 

 

やっぱっ、ムリゲーのクソゲーじゃねえかっ!!!

 

 

ヤケクソになって残りの砲弾を叩き込んだがやはり傷といったモノは見られなかった⋅⋅⋅⋅弾はアッサリと尽き果て残るはこの丸い棺桶だけだった⋅⋅⋅

 

 

はは⋅⋅⋅何だよ⋅⋅⋅やっぱり気合いや根性だけじゃダメじゃねえかよ⋅⋅⋅

 

 

前世の記憶にあるパワハラ野郎の口癖である根性と気合いのフレーズが俺の心をイラつかせ、ささくれて行く⋅⋅⋅

 

根性と気合い⋅⋅⋅それ自体は否定しないし、必要だと考えるが、それだけでどうにもならないんだよ!クソがっ!

 

 

残りのボールのキャノン砲を叩き込んでも足止めにもなりゃしないだろう。

いっそうの事コレをぶつけるか?

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅ハッ!待てよ俺には腹に付けてるポケットの中に無駄に多いほむらお手製爆弾がある。試してみるか⋅⋅⋅!

 

 

ムカイさんの説明では単純な移動ならオートにできる。なら爆弾を置いてオートモードにしてヤツらにぶつけてみる!

 

 

「ムカイさん作戦⋅⋅⋅⋅と言う程じゃないが策を思いついた。ほむらお手製爆弾をボールに置いてオート操縦でアイツらにぶつけてみようと思うんだ。だから爆弾の取り扱いを聞かせてくれ!」

 

「はい!マスター。ほむら様の爆弾は3つのボタンがあり、一番上のボタンを押すと10秒後に作動し、真ん中のボタンで7秒、一番下のボタンで3秒後に爆発します。威力は高いので5発分座席に置いてぶつけてみましょう!」

 

 

よし!俺は一旦、残りのボールが置いてある場所まで戻り、順番にコックピットに爆弾の一番上のボタンを押してムカイさんにオートで最高速度で直進させてデーモンもどきに突撃させた。

 

 

「よろしくムカイさん!」

 

「おまかせを!」

 

 

直撃まで後4、3、2、1⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

 

ドバァァァァーーーンンンン!!!!

 

 

 

今迄にない爆発音にかなりの距離で木々に隠れていた俺の全身にも空気の振動が伝わり思わず冷や汗が流れた⋅⋅⋅

 

煙が辺り一面を覆っており、数秒後煙が晴れると前面にいたデーモンもどき数体は体中に亀裂が入り、やがて身体が朽ち果て塵芥となった⋅⋅⋅⋅⋅!!

 

「やりました!マスター!!」

 

「あ、ああ⋅⋅⋅⋅!」

 

素直に喜びたいのだが、アレだけの数は全滅はさせられない⋅⋅⋅何体かは道連れには出来ても微々たるダメージだ⋅⋅⋅⋅

 

 

それにしてもボールのキャノン砲にビクともしなかったのに爆弾で粉微塵に吹き飛ぶとは⋅⋅⋅⋅とんでもないモンをポケットに所持してるよな俺⋅⋅⋅⋅震えが今になってやって来やがった。

 

そしてヤツらは感情が無いらしく仲間が何体かヤラれても相変わらず行進ペースは変わらず、時間稼ぎも難しい。

 

 

それでも何もしないよりは圧倒的にマシなので残りも時間差で特攻させてぶつけ続けた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

全10機中9機を魔獣にぶつけた結果約4分の1は倒せた⋅⋅⋅⋅この一機で全ての爆弾を載せても良くて10体位しか仕留められないだろう⋅⋅⋅

 

後は秘密道具でやるしか⋅⋅⋅⋅んっ?

 

魔獣の群れを確認すると一体だけ角の形が違うのがいるぞ!?

 

 

前面の魔獣がやられた事でハッキリと目視で確認できる。他の個体の角は後ろ向きに曲線に曲がっているのにあの一体だけの角は前向きで曲がりくねって生えている。もしかしてアレがボスで、ヤツだけ仕留めればこの進撃も止まるんじゃないか?

 

俺はムカイさんに相談する。

 

「残念ながらワタクシから確証出来る情報を検索出来ませんがヤってみる価値は有ると判断致します」

 

よしっ!ヤってみるか!

 

俺は最後のボールを操縦してボスとおぼしき個体に近づく。

 

ポケットから試供品の秘密道具【熱線銃】を取り出し構えた。どれぐらいの射程距離があるのか分からないのでムカイさんにオートモードでなるべく近づいてもらった。

 

 

距離は約20㍍⋅⋅⋅⋅ぐは~⋅⋅⋅⋅⋅メチャクチャ怖えェェ⋅⋅⋅⋅⋅別個体に顔の高さから真っ正面に向き合うのは少し躊躇したが必ず勝利し、復讐を果たし、至高の絶頂を得る為、覚悟を決めて俺は対峙した!!

 

 

照準を定めて⋅⋅⋅⋅俺は撃った!!

 

 

チュドォォーーーーーンンン!!!!

 

 

 

やっ、やった当たった!!ヤツの、ボスと思われる個体の角は粉砕された!!

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅だがっ、その直後⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

 

グガアアアアァァァーーー!!!!!

 

 

 

 

仲間がやられても静観していたその個体は突如、凄まじい雄叫びを放ち、荒々しく右腕を振り回して初めて明確に、そして初めて感情的に攻撃をしてきた!!??

 

「かっ、回避間に合いませ⋅⋅⋅」

「うわあああぁぁぁー!!!」

 

 

ヤツの右腕は俺の搭乗しているボールに直撃して凄まじい勢いで吹き飛ばされた⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

 

 

 

 

 



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ガンダムヘビーアームズ大地に立つ!

ボスと思った個体に熱線銃を顔面に浴びせたが完全に裏目に出てしまった。

 

 

それまで感情らしいモノを見せなかった魔獣は凄まじい雄叫びを放ち初めて攻撃を仕掛けられた。

 

至近距離に浮かんでいた為、回避が間に合わず直撃して吹き飛ばされ強い衝撃に目を回しながらも必死で助かる方法を模索する。

 

このままでは機体が地面に激突して確実に死ぬ⋅⋅⋅⋅⋅!!

 

時間にして僅か2秒足らずだが、咄嗟に閃いた俺はムカイさんを抱えて必死で飛び降り、腹にくっ付けてある四次元ポケットを外してポケットの中へと逃げ込んだ!!

 

 

 

ドギャァァァーーーンンン!!!

 

 

 

ボールが地面に激突し、爆発した音が四次元空間内にも響いてきた。

 

 

⋅⋅⋅⋅もう、そろそろ良いかな?

 

 

俺はポケットの出入り口から顔を覗かせて周囲を確認した。

幸いポケットは木々の枝に引っ掛かりもせず地面に落ちていた。

 

ボールは地面にぶつかりグチャグチャに変形し、火が燃え盛っていた。

 

 

「マスター!!素晴らしいご判断です!助かりました!」

 

「はっ、はは⋅⋅⋅⋅⋅ま、まあね⋅⋅⋅⋅⋅」

 

ホッとした瞬間身体中から脂汗が滴り、ガクガクワナワナと震えが止まらなくなった⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

う、上手く行って良かった~!!!

もう一度ヤレ!と言われても上手くやれる気が全くしないぞっ!

 

す、少しでも出遅れてたら多分身体がグチャグチャになって誰にも知られずに死んでいた⋅⋅⋅⋅⋅

 

それにほんの少しだけ運があった。まずボールは文字道り球形状の為、衝撃が分散された事、軽量で浮かんでいた為、これまた衝撃が流れた事、熱線銃を撃つ為ハッチは開きっぱなしだった為、脱出が迅速に行えた事⋅⋅⋅⋅

 

 

って、そもそもアレを攻撃しなければよかったんだよな⋅⋅⋅⋅自分のゲーム知識が仇になってしまった。完全に判断ミスだ⋅⋅⋅まさか行動の変化の引き金になるなんて思いもよらなかった。

 

「マスター⋅⋅⋅⋅申し訳御座いません⋅⋅⋅ワタクシの判断が⋅⋅⋅⋅⋅」 

 

「ムカイさんが謝る事じゃないよ!言い出して判断して実行したのは俺なんだ。それよりも残りの魔獣をどうするか⋅⋅⋅⋅⋅」

 

 

さっき角を粉砕された魔獣は怒り狂い、他の魔獣どもも一斉になって吠え狂いヤバい感じだ。攻撃性が表に現れてる。ポケットに爆弾は残っているがどうにも倒せるとは思えない。何より至近距離で爆弾を投げるのは危険過ぎる。

 

アレコレ考えてるとドスンドスンと速い勢いでさっきのボスと勘違いして角を粉砕した魔獣が迫ってきた!!

 

ちきしょう!!さっき迄ゆっくり足並み揃えて進行してたのに⋅⋅⋅⋅

 

 

「ゴギャァァァー!!!」

 

 

森林を薙ぎ倒しながら迫ってきた!!

最後の手段でアレを⋅⋅⋅⋅

 

【月のツキ】を使って、残りの10万円でMSを引き当てるしかない!

 

お、俺は必死に走りながらスマホの画面に月のツキの試供品提供の欄をクリックする。ムカイさんが口から品物を出してくれたので一気に飲み干しスマホ画面のMSガチャを回した!!

 

出ろー!出ろー!出ろー!

強いMS出ろー!!

 

 

「ゴギャァァァー!!!」

 

 

ちょこまかと逃げる俺たちにイラついた魔獣は全力で腕をスイングしてきた!!や、やべー!!あんなもん喰らったら全身の骨が砕ける⋅⋅⋅⋅

 

恐怖しながらもスマホ画面を見ると⋅⋅⋅⋅な、なんと!

【ガンダムヘビーアームズ】が出てくれた!!

 

 

や、やったぞー!!

 

 

「ムカイさん!強いMSが出た!早く出してくれー!!」

 

「は、はいマスター!」

 

すると空中からガンダムヘビーアームズが落ちてきた!

 

  

   ドゴォ~ンンン⋅⋅⋅⋅

 

 

ガンダムヘビーアームズ⋅⋅⋅⋅この機体は全身にミサイル等の火器を詰め込まれた瞬時殲滅戦を得意とするガンダムだ! 

 

ヘビーアームズの姿を見た魔獣達は本能的に危険を感じたのか、一斉にこちらに向かってきた!!ゆっくりでいいっつーの!

 

デカイ分だけ歩幅が広くもう間近に迫ってきた。駄目だ!間に合わない!?

 

「マスター!ここはワタクシにお任せを!時間を稼ぎます!」

 

「えっ?ムカイさん何を?」

 

ムカイさんは俺の腹に付けた四次元ポケットに突っ込み口をモゴモゴしながら魔獣達の方に向かっていった!?

 

ムカイさんは口から爆弾を吹き矢みたいに勢い良く噴出させ爆弾を魔獣達に浴びせた!

 

 

「ギャオオオー!!!」

 

(今の内です。マスター!)

 

 

 

上手い具合に魔獣の目や口に浴びせたのでさしもの魔獣達も一時的に動きが鈍くなった!ありがとうムカイさん⋅⋅⋅!

 

俺は仰向けになっているガンダムによじ登り何とかハッチのスイッチを押して開き乗り込んだ⋅⋅⋅⋅⋅⋅

 

だが、動かし方がさっぱり分からん!

ま、マニュアル!マニュアル!

 

 

だが何処にもマニュアルが見当たらない!それによく考えたら例えマニュアルがあってもこのヘビーアームズをまともに動かすのは不可能に近い⋅⋅⋅⋅

 

何故ならヘビーアームズは左腕に装着してあるシールドと一体化させてあるガトリングガン⋅⋅⋅⋅これが原因で常に左半身に偏っている不安定な重心を正確に捉えて姿勢制御をしなければならない。

 

劇中ではパイロットであるトロワは類い希なセンスと経験と技量で体に重心バランスを覚え込ませて見事に操っていた。

 

正直、マニュアルがあったとしても短時間で出来るハズがない!

 

 

ど、ど、どうすりゃいいんだよ⋅⋅⋅⋅

ボールみたいな単純な構造じゃないんだぞっ!そんなのわかってただろ!

まだゲームみたいな感覚に酔いしれてたのか俺はっ⋅⋅⋅⋅⋅

 

マニュアル読んでもアムロみたいに出来る訳がない!!

 

 

気がつくと爆弾のけたたましい炸裂音が鳴り止み⋅⋅⋅魔獣達の咆哮が鳴り響いた⋅⋅⋅⋅⋅

 

あ、ああ⋅⋅⋅⋅⋅恐らく口に抱えて込んだ爆弾が全部無くなったんだ⋅⋅⋅⋅⋅こ、このままじゃ、ムカイさんが⋅⋅⋅⋅

 

ちくしょう!考えろ!考えろ!足りない頭を絞りだせ!捻りだせ!

 

 

開いているハッチから魔獣の顔が見えてきた。ヤギのような悪魔の顔⋅⋅⋅死ぬ⋅⋅⋅⋅俺はまたミジメに死ぬ⋅⋅⋅⋅

 

頭の中で前世の記憶が勢いよく流れ⋅⋅⋅⋅そして何故かドラえもん・のび太の鉄人兵団のザンダクロスの姿が出てきた⋅⋅⋅⋅は、ははは⋅⋅⋅こんな時迄俺って奴は⋅⋅⋅⋅

 

 

    ・・・・・・

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅アレだー!!!俺はスマホ画面を秘密道具購入画面に切り替え必死で検索した。

 

あったぞー!!!

 

【サイコントローラー】!!!

 

この秘密道具は手に握って考えるだけで脳波がロボットに伝わりイメージのままに動かせるチートな秘密道具だ!

 

画面を読むと⋅⋅⋅⋅試供品無し⋅⋅⋅

れ、レンタル品⋅⋅⋅⋅無し。

限定10個限りの品物でお値段⋅⋅⋅⋅

 

   

   一千万円⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

あのクソアマァァァー!!! 

悪魔めぇぇぇーーー!!!

 

 

  ヂギジョオオオ~~!!

 

 

生きてこそだ⋅⋅⋅死んだらもう⋅⋅⋅次はあるかもしれんが厳しい条件をつけられるかもしれん⋅⋅⋅⋅何よりまた苦しんで屈辱を味わうのはもう⋅⋅⋅

ゴメンだ!!

 

震える指先で購入画面を押す⋅⋅⋅⋅

 

さようなら俺の一千万円⋅⋅⋅⋅(涙)

 

表示される残高がゼロになり俺は叫んだ。

 

 

「ムカイさぁぁぁーーん!!!」

 

 

するとガンダムヘビーアームズが起動して立ち上がり右手首に備えてあるアーミーナイフで目前に迫った魔獣を切り裂いた⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅!

 

 

ガンダムヘビーアームズ大地に立つ!

 

 

 

「マスター!遅くなり申し訳ありません!」

 

少し汚れてボロボロなムカイさんはハッチの中に勢いよく飛び込んできた。

こんなになるまで頑張ってくれたんだな⋅⋅⋅⋅

 

「いや!大丈夫だ。いいタイミングだよ。それよりもムカイさん無茶して⋅⋅⋅⋅でもありがとう⋅⋅⋅⋅⋅!」

 

「いえ!マスターのお役に立つのがワタクシめの存在理由です。さあマスター⋅⋅⋅⋅!」

 

「ああ⋅⋅⋅わかってるよ⋅⋅⋅!ここから⋅⋅⋅⋅殲滅じゃぁぁー!!!」

   

 

ムカイさんの口からサイコントローラーを渡してもらい、しっかりと握りしめ⋅⋅⋅⋅ヘビーアームズを操った!!

 

 

俺無双の始まりじゃぁぁ!!!

 

 

先ずはバルカンで魔獣どもの目を集中的に狙い動きを鈍らせ必殺のビームガトリングガンでヤツらの体に風穴を開けてやった!!

 

俺達を追い回して雄叫びを叫んでいた同じ魔獣とは思えない程、情けなく悲壮感めいた断末魔の声を張り上げ塵芥となった⋅⋅⋅⋅⋅!

 

焦った魔獣どもは低姿勢で集団で突進してきた。俺はイメージして全門を開き、ヘビーアームズの最大火力のフルバーストをお見舞いしてやった!!

  

 

「これでも喰らってイキさらせー!!」

 

 

「ギョワァァァーー!!!」

 

 

例の角のヤツを含め、まとめて粉砕してやったぜっ!

 

 

はっきり言って強過ぎて物足りない⋅⋅⋅⋅⋅残っていた250体以上いた魔獣どもはモノの1、2分でガンダムの火力であっさりと殲滅し、跡形もなく塵になった。

 

 

ハ、ハハハハ⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅流石ドラえもんの秘密道具とガンダムだな~(大涙)

 

何しろ貴重な月のツキと10万円で出したヘビーアームズだしぃ⋅⋅⋅⋅

一千万円した秘密道具だしぃ⋅⋅⋅

 

 

いっ、一文無しになっちまった~(悲哀)

 

 

「マスター⋅⋅⋅⋅お気を確かに⋅⋅⋅⋅」

 

 

はあ~ヘビーアームズは手に入ったけど弾薬の補充はどうしよう⋅⋅⋅⋅⋅

 

今月は、ギリギリ何とかなるけどこれからの生活費に学費⋅⋅⋅⋅まあ、後一回分だけ試供品の月のツキがあるからいいかな⋅⋅⋅⋅また宝くじで⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

   パキィーン⋅⋅⋅⋅

 

 

んっ?なに、この嫌な感じは⋅⋅⋅まさか!?

 

遥か遠く、空高く空間が割れて新たな魔獣が出現しやがった!!

 

 

フダけんなー!!どしょっぱつから何でこんなにベリーハードなんだよ(怒)

 

 

新たにやって来た魔獣の形態は殲滅した魔獣同様にヤギの顔つきで角はよりでかく禍々しい雰囲気を纏い、背中からは蝙蝠状の翼が生えている。明らかに今までのとは各が違う⋅⋅⋅⋅⋅

 

そう言えばもう流石に20分は迎えようとしている筈⋅⋅⋅⋅?ムカイさん?

 

「ま、マスター⋅⋅⋅⋅こ、この魔獣は今までのとは違い過ぎます⋅⋅⋅⋅こいつはこの空間の消滅時間を停止させています⋅⋅⋅⋅」

 

「え、なっ?そ、それってつまり時間稼ぎは無意味でコイツを倒さなきゃ俺の世界がメチャクチャになるって事だよね⋅⋅⋅⋅⋅」

 

「はい⋅⋅⋅⋅⋅」

 

 

ヘビーアームズの弾薬の残りはどれぐらいだ?金がないから追加は不可能⋅⋅⋅⋅

 

 

どうしろってんだよぉぉー!!

 

 

 

 

 

 

   



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決着

なけなしの10万円とツキの月(試供品)で出したガンダムと切り札である貯金一千万円でサイコントローラーを手にして魔獣どもの殲滅をした矢先に新たな魔獣が出現しやがった!

 

 

ムカイさんによるとコイツはこの空間の消滅時間を停止させているので時間一杯使っての逃げ切りも出来なくなった。

 

 

大量の魔獣の群れの殲滅にほとんど弾薬を失ってしまった俺はイレギュラーな魔獣を睨んでいる。

 

何で最後の最後でこんな強そうで厄介な能力持ちが来るんだよ!!

 

 

心の中で愚痴っていると眼を血走らせてこちらに向かってきやがった!

俺は出し惜しみしても意味が無いと判断してビームガトリングガンを始めとする弾薬を全てヤツにぶつけた。

 

  

   ズガガガガガッッッ!!!

 

 

硝煙が舞い散り目を凝らして確認すると魔獣(ボス)は多少の手傷を負っただけで大したダメージはなく雄叫びを放ちながら機体に突進してきた!

 

「くっ!もうこのアーミーナイフで対抗するしかっ!」

 

俺はヘビーアームズの右手に備え付けてあるアーミーナイフを展開して切り裂こうとしたが魔獣はナイフを強靭な顎で咥え簡単に噛み砕きやがった!!

 

「どんな顎の力してんだよっ!?」

 

俺はつい、反射的に離れようとするがヤツはヘビーアームズの右腕を掴みそのまま機体を投げ飛ばした!?

 

「うわああぁぁぁー!!?」

 

サイコントローラーを必死で握り込みイメージを強くして、何とか姿勢制御するも無様に地面に叩きつけられた。

ヤツに投げられた際、右腕は無惨にも千切れダメージを負ってしまった。

 

 

最後の武器が⋅⋅⋅⋅こうなったらこのビームガトリングガンの砲身を棍棒がわりにして叩きつけるしかない!

 

そう決心して挑もうとして身構えた瞬間、魔獣は口からお約束と言わんばかりのビームを放ってきたっ!?

 

俺はビームガトリングガンと一体になっているシールドで辛くも防いだが、その代わりに左腕を失ってしまった⋅⋅⋅⋅

 

「駄目だ⋅⋅⋅⋅もう武器も無い⋅⋅⋅あとは蹴りでも⋅⋅⋅⋅」

 

「まっ、マスター!左腕の付け根をご覧下さい!」

 

ムカイさんに言われて見るとソコにはビームサーベルとおぼしきモノが備え付けてあった!!

 

そういや劇中でもトロワがヒイロの為に密かに備えていたな⋅⋅⋅ただあれの時と違い、直接そのままビームサーベルを展開できるように整備されていた。

 

 

よっしゃー!!左の前腕の分だけリーチは少し短いがこれならいけるかもっ!?俺はビームサーベルを展開して魔獣(ボス)に斬撃を喰らわしてやった!!

 

凶悪な爪でこちらに攻撃してきたヤツの右腕はキレイに体からオサラバした。

 

「ギィョワァァァー!!!??」

 

聴きに耐え難い悲鳴をあげた魔獣は左腕から鎌のようなモノを生み出して狂気で吠えながら向かってきた。俺はリーチの差を利用して突きでヤツの身体のど真ん中を貫いた!!

 

 

「このまま切り裂いて終わりだー!!」

 

だが、魔獣のヤツは目と口と身体から出血しながらもそのまま更に身体を進ませて機体に取りつきやがった!?

 

「なっ!?くそ!離せっ!」

 

ジタバタと機体を動かすが片手は無く、もう片方のビームサーベルは深くヤツの身体に飲み込まれマトモに動きゃしない!!

 

 

片腕ながらも凄まじいパワーで機体に密着した魔獣は口を大きく開いてヘビーアームズの顔面を噛み砕きやがった!

 

「だあぁぁぁー!!俺のヘビーアームズがぁぁぁー」

 

野郎!俺のガンダムを⋅⋅⋅⋅!だがっ、こっからどうすればいいっ?

 

魔獣は尚も強く機体を抱き込み一向に離そうとせず遂に至近距離から口ビームを放つ準備をしている。

   

 

「マスター!脱出なさって下さい!」

 

ムカイさんは俺の身を案じて脱出するよう促す⋅⋅⋅⋅がっ俺は⋅⋅⋅

 

「いや⋅⋅⋅ムカイさん⋅⋅⋅脱出する前に最後の手段があるのを思い出したよ⋅⋅⋅⋅!」

 

「えっ!?」

 

そう、最後の手段⋅⋅⋅⋅この機体⋅⋅⋅ガンダムヘビーアームズは【新機動戦記ガンダムW】のガンダムモデルは、みな爆弾を搭載して自爆が可能なのだ!

 

 

しかし俺の記憶が確かなら、このヘビーアームズは主役ガンダム5機の内、唯一自爆や敵の攻撃から破壊されなかった機体なのだ⋅⋅⋅⋅なのに何の皮肉か俺自身の手で自爆させるハメになろうとは⋅⋅⋅⋅チキショー⋅⋅⋅⋅俺の⋅⋅⋅僕のヘビーアームズ⋅⋅⋅ゴメンよう⋅⋅⋅⋅

 

 

俺は自爆の効果を少しでも高める為、四次元ポケットに入っている残りのほむらお手製の爆弾を置いて自爆装置を作動した! 

 

「もうこれが正真正銘最後の手段だ⋅⋅⋅⋅ムカイさん!俺のポケットの中に!」

 

「はい、マスター」

 

ボールの時と同じ要領で飛び降り、途中で取り外した四次元ポケットの中に緊急避難した。

 

危ないと思いつつ、ポケットから顔だけ出して上手く行くか確認をする。

 

 

魔獣がビームを放つとほぼ同時にヘビーアームズも自爆した!!

ほむらお手製爆弾の力も相まって凄まじい爆発となり、俺はポケットに顔を引っ込めた。

 

四次元ポケットの中からも伝わってくる爆発の衝撃音と魔獣の断末魔の叫び⋅⋅⋅空気の振動がようやくなくなったのを見計らってポケットから出た。

 

 

自爆は上手くいって魔獣は目の前で塵芥となった⋅⋅⋅⋅残っていたのは無惨にもバラバラになって大地に僅かに残っている機体の欠片だけだった⋅⋅⋅⋅

 

俺は直立して敬礼した⋅⋅⋅⋅

 

ありがとう⋅⋅⋅僕のヘビーアームズ⋅⋅⋅

 

「⋅⋅⋅⋅マスター何はともあれ無事に生き残れた事を喜びましょう⋅⋅⋅⋅⋅」

 

「ああ、勿論さ!ムカイさんもお疲れ様!本当にありがとう!」

 

 

俺はムカイさんに礼を言うとその場でへたりこんだ⋅⋅⋅⋅つっ、疲れた~!!

何とか上手くいって良かった⋅⋅⋅⋅⋅ようやく一安心して緊張の糸が切れ、俺は生き残った喜びと資金ほぼゼロの状況に頭を悩ませた⋅⋅⋅⋅

 

「マスター⋅⋅⋅この空間もじきに消滅します⋅⋅⋅⋅お疲れでしょうがワタクシがゲートを開きますのでお戻り下さい⋅⋅⋅」

 

「うん、わかったよ。よろしくムカイさん」

 

こうして俺の記念(?)すべき魔獣との戦いはギリギリだが何とか初勝利を収めたのだった⋅⋅⋅⋅失ったモノは色々大きいけどな⋅⋅⋅⋅⋅(泣)

 

ゲートから元の世界に戻ると静かな保健室は誰も居らず俺はそのままベッドに横たわった⋅⋅⋅⋅

 

 

ハァー( ´Д`)⋅⋅⋅⋅⋅最初っから期日前倒しのベリーハードモードってどんなブラックだよっ!!

 

今後もこれなら身も心も持ちそうにない⋅⋅⋅⋅いや、その前にカネが、資金が⋅⋅⋅⋅俺ってやっぱ、運が足りない⋅⋅⋅⋅

 

 

 

 

しばらく保健室のベッドの柔らかさに身を任せていると黒い空間が現れ、悪魔⋅⋅⋅いや、暁美ほむらも無事帰ってきた。

 

「あっ~え~と⋅⋅⋅⋅取り敢えずお疲れ様⋅⋅⋅で良かったかな?」   

 

「ふぅ⋅⋅⋅そんなに気を使わなくてもいいわ⋅⋅⋅でも⋅⋅⋅⋅ありがとう⋅⋅⋅」

 

「お帰りなさいませ!ほむら様」

 

「ありがとう⋅⋅⋅ムカイさん⋅⋅⋅」

 

はー⋅⋅⋅⋅とっ、息を吐き暁美ほむらに恐る恐る訪ねる。

 

「なあ、暁美ほむら⋅⋅⋅その、今回はイレギュラーでスッゲー大変だったんだけど⋅⋅⋅⋅流石に今回だけ⋅⋅⋅⋅何だよね⋅⋅⋅⋅?」

 

「いちいちフルネームで呼ばなくていいわ。ほむらで構わない⋅⋅⋅それと残念だけど今回だけとは限らなくなってしまったわ⋅⋅⋅」

 

黒くツヤのある髪をかき分けてほむらは何とも言えない表情をする。

 

「それって例のインキュベータとやらが原因?」

 

「ええ⋅⋅⋅そうよ⋅⋅⋅⋅よりにもよってヤツは管理システムを乗っ取り、ウイルスを仕込んで都合のいい様に操っていたわ⋅⋅⋅

本当に忌々しい存在ね⋅⋅⋅⋅!」

 

ほむらは苦虫を潰した様な顔をしてしきりに髪を弄っていた。

 

 

管理システム⋅⋅⋅⋅何の事だ?

 

 

「あの⋅⋅⋅ここでは何ですので一旦マスターの家で情報を整理してからゆっくり休まれては如何でしょうか⋅⋅⋅?ワタクシはそう具申いたします」

 

「そうね⋅⋅⋅⋅貴方が良かったら⋅⋅⋅だけど⋅⋅⋅」

 

どうせ家にはもう誰も居ない⋅⋅⋅⋅だから俺はムカイさんの提案に賛同した。

 

「ああ、俺は構わないよ⋅⋅⋅⋅って学校を早退か⋅⋅⋅⋅高校生活初日からこれとは⋅⋅⋅⋅トホホ⋅⋅⋅(;つД`)」

 

「教師には適当に言っておくから先に帰りなさい⋅⋅⋅」

 

そう言われて俺は一人まだ日も高い内に自宅へと帰るのだった⋅⋅⋅⋅

 

 

自転車で何とか疲れた身体に鞭打って漕ぐ。はーっ、これを機会に身体を鍛えないとな⋅⋅⋅とぼんやりと考えながら自宅に近づくと玄関前で長門有希さんが一人静かに佇んでいた⋅⋅⋅⋅!?

 

「えっえっ!?長門さん!?何だって家に⋅⋅⋅⋅あ、えとそっちも厄介事は片付いたんだね?」

 

驚きながらもそう訪ねると長門さんは静かに頷き⋅⋅⋅

 

「⋅⋅⋅⋅上からの指示で貴方の帰りを待っていた⋅⋅⋅話したい事がある為、待っていた⋅⋅⋅」

 

話って何だろう?また厄介事になる予感を感じながら家に招き入れた。

 

 

居間に案内して座って待ってもらい俺はお茶の準備をする。タイミングよく空間からほむらが出てきた⋅⋅⋅⋅って、この状況に慣れてしまっている自分に思わずツッコミを入れたくなった⋅⋅⋅⋅

 

「あの~せめて普通に玄関から来てくれない?」

 

「あら、悪かったわね⋅⋅⋅つい⋅⋅⋅⋅⋅何故長門有希が居るのかしら⋅⋅⋅?二人きりで⋅⋅⋅」

 

「別にやましい事はしてないよ。それにムカイさんも居るし⋅⋅⋅」

 

「それもそうね⋅⋅⋅⋅まあ良いわ⋅⋅⋅⋅どっちにしろ都合がいいし⋅⋅⋅あとこれ、貴方のカバンよ」

 

「あ、ありがとう」

 

悪魔らしからぬ気配りで俺にカバンを渡してほむらは長門さんのいる居間に向かった。

 

 

四人分のお茶と菓子を運び居間に入ると二人は向かい合って一言も交わさずに無言で座っていた⋅⋅⋅⋅なんか⋅⋅⋅⋅怖い。

 

「えー、えっと⋅⋅⋅お茶が入りましたよ⋅⋅⋅⋅」

 

っと恐る恐る、お茶と菓子を置く。何だって自分の家でこんなに気を使わなくっちゃならないんだ⋅⋅⋅?

 

 

 

しばしの間をおいてほむらがようやく口を開いた。

 

 

「まずは小林信一⋅⋅⋅⋅貴方には悪いとは思っているわ⋅⋅⋅ムカイさんの記録映像を確認したけど流石にあれは初心者にはキツすぎたわね⋅⋅⋅⋅⋅よくやったわ⋅⋅⋅褒めてあげる⋅⋅⋅ムカイさんもお疲れ様⋅⋅⋅⋅」

 

イチイチ上から目線なのがちょっと気になるが⋅⋅⋅まあ、褒められて悪い気はしない。俺はその言葉を素直に受け取った。

 

「それとさっき約束したとうり、願い事を叶えてあげるわ⋅⋅⋅」

 

おおーっ!!やった!やった!やったぞー!!色々苦労したからなぁ⋅⋅⋅⋅まあ半分はムカイさんのおかげだから後で好物の甘い物を買ってこなくちゃな!

ぐふふ~勿論願い事はアレしかない!

 

 

「えっとそれじゃあ~⋅⋅⋅♪この四次元ポケットにぃ、秘密道具を全部⋅⋅⋅⋅」

 

 ドガッ!!ぐへっ!?

 

言い終わる前にほむらは何故かドロップキックを俺に放ちその流れで俺の右腕にプロレス技の腕ひしぎ十字固めを極めた!?

 

「余り調子に乗らない事ね⋅⋅⋅⋅⋅」

 

ギリギリと腕に完璧に極められている!?ぐう~あっ、腕に太ももとお胸の感触が⋅⋅⋅⋅ピキピキ⋅⋅⋅⋅ってそれどころじゃねえ~!?

 

 

「No~!No~!ギブ、ギブ!!スンマせん、スンマせん!!」

 

 

⋅⋅⋅⋅ひたすら謝り倒してようやく解放された⋅⋅⋅⋅⋅うっ、腕が⋅⋅⋅⋅つーか何故プロレス技?

 

「あら、知らないの?プロレスは淑女の嗜みよ」

 

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅そんなん聞いた事ないわい!

 

 

 

 

 

 

 



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交渉と異世界と宇宙

暁美ほむらが願い事を叶えてくれるので俺は調子ぶっこいて空の四次元ポケットに全ての秘密道具を望んだら言い終わる前にプロレス技でシメられてしまった⋅⋅⋅⋅

 

「腕がぁ~、腕がぁ~!」

 

「調子にのるからよ小林⋅⋅⋅」

 

いや、だってさ⋅⋅⋅秘密道具高いし⋅⋅⋅資金無くなったし⋅⋅⋅イジケている俺を見てほむらは軽くため息をして、

 

「イレギュラーな件は契約違反みたいな物だから、それに関しては悪いと思っているわ⋅⋅⋅⋅でも全部はダメよ」

 

「⋅⋅⋅⋅んじゃさ、幾つ位ならいいわけ?」

 

「⋅⋅⋅⋅そうね⋅⋅⋅3つ位なら⋅⋅⋅」

 

「イヤイヤ!死にかけたし、資産全て失ったしソコは10個位は⋅⋅⋅⋅」

 

  ドバキィ!ぐほっ!?

 

またも言い終わる前に今度は水平チョップで喉を打ち、体勢が崩れたタイミングを狙ってバックドロップをきめられた⋅⋅⋅⋅!

 

「うぎゅう~⋅⋅⋅⋅いい加減にしろ!パ、パワハラで訴えて勝つぞ!」

 

「どうやって訴えるのよ⋅⋅⋅全く⋅⋅⋅」

 

腕を組んで呆れ果てた顔になったほむらに対して俺は尚も交渉を重ねた。

 

「な、なら責めて8個で⋅⋅⋅⋅」

 

 ギュムッ!?にょぱっ~!?

 

またまた、言い終わる前に今度はアイアンクローをかまされた!

 

「顔面が~!顔面が~!食い込む~!!」

 

小さな手で何という握力!正に悪魔的だ!⋅⋅⋅⋅⋅⋅ってそういや悪魔だった!

そしてそのままサソリ固めで俺の足と背中がミキミキいったー!!

 

  ぎゃぴ~!!?

 

「いい加減になさい⋅⋅⋅⋅これ以上は無意味よ」

 

「まだだ⋅⋅⋅5個⋅⋅⋅5個でぇ~⋅⋅⋅」

 

俺は諦めきれずに尚も粘る⋅⋅⋅がっ、ヤッパ身体が限界だ⋅⋅⋅⋅するとそこへ、ムカイさんが助け船を出してくれた。

 

 

「ほむら様⋅⋅⋅ワタクシからもお願い致します。マスターはイレギュラーな初めての魔獣戦を本当にギリギリ限界迄挑んで勝利なされたのです。何卒ご配慮の程を⋅⋅⋅⋅」

 

む、ムカイさん⋅⋅⋅⋅⋅ヤッパ君は最高だよっ!! ムギュッ!?

 

技を解いて俺とムカイさんを一瞥すると、

 

「ハァッ⋅⋅⋅⋅痛い所を突くわね⋅⋅⋅わかったわ。ムカイさんに免じて大サービスの5個の秘密道具をあげるわ⋅⋅⋅感謝する事ね」

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅いやったー!!!バンザーイ・バンザーイ!!俺は身体の痛みを忘れて無邪気に喜んだ!これが中身が42歳のリプレイヤーである⋅⋅⋅⋅⋅(汗)

 

「ありがとう!ムカイさん!ありがとう!ほむほむ!!」

 

思わずアダ名めいた呼び方をしてしまった俺は今度はフライング・ニールキックを顔面にかまされるのだった⋅⋅⋅⋅

 

 

でもほむほむって呼び方結構よくない?

だが、ようやくこれで秘密道具無双に、野望に一歩近づいたな⋅⋅⋅⋅

 

 

ウキウキしていると静かな声で長門さんが、

「小林⋅⋅⋅次は私の話しを聞いて欲しい⋅⋅⋅」

と明確な意思を示してきた。

 

 

「あ、ゴメン長門さん。長門さんの話しはなに?」

 

テーブルの前に座ると長門さんは、

 

「⋅⋅⋅本日、この宇宙に数年前同様に強い時空間干渉エネルギーの観測を確認。

それに伴った高いレベルの時空変容の影響を最も強く受けてるイレギュラーな人間⋅⋅⋅⋅すなわち貴方⋅⋅⋅小林信一をより間近での監視と観測及び、独自の判断による行動の干渉が情報統合思念体の会議で決まった。

私⋅⋅⋅⋅ヒューマノイド・インターフェースの長門有希が対象者と共に生活活動をするように命令が下った⋅⋅⋅⋅」

 

 

「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅え、えっとつまり長門さんが俺の家で一緒に暮らすと⋅⋅⋅⋅それってつまり同棲するって⋅⋅⋅⋅事なんだよね⋅⋅⋅⋅?」

 

「その認識で問題ない⋅⋅⋅⋅⋅」

 

 

「なんじゃそりゃー!!?」

 

 

オイオイ何なんだよこの一昔前のラノベかっ!?急にそんな事言われても問題が多い。

 

それに生活費用とかどうすんの?正直自分自身、来月の生計をどうするか迷っているのに⋅⋅⋅

 

 

「有機生命体の生命活動に必要となるモノ⋅⋅⋅⋅経済活動の要となる貨幣については問題ない⋅⋅⋅⋅観測対象の生命活動の補助としてこの世界、この時代、この国の金銭にして毎月100万円が支給される⋅⋅⋅⋅」

  

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅ひゃっ、100万円~!?それも毎月!?マジ!?だが俺としてはどうにも迷う。

 

 

何故なら俺にもチンケだがプライドと信念がある。宇宙人とはいえ女の子のくれるお金をアテにするのはどうにも抵抗がある。何よりヒモみたいで嫌だ。

 

面倒くさいヤツと思われるが俺の男としてのささやか意地なのだ。それに女の子と一緒に住むのはなんか、その⋅⋅⋅上手く言えないが照れがある⋅⋅⋅⋅

 

 

「え~と、長門さんちょっとだけ考えさせて。いきなりの事だから少し時間が欲しい」

 

 

長門さんは一切表情を変えずに静かに頷いた。

 

 

俺と長門さんの会話を聞いていたほむらは髪をかきあげ、小さなため息をつくと⋅⋅⋅

 

「認めたくないけど、情報統合思念体も同じ事を考えていたのね。小林⋅⋅⋅私も此処に一緒に住まわせてもらうわ⋅⋅⋅因みに拒否権は無いから⋅⋅⋅」 

 

 

ハァッ!?この悪魔、なに勝手に決めてんのっ!?情報ナンチャラに対抗意識でも燃やしてるの?

 

 

「対抗意識?そうね⋅⋅⋅私の知らない所で好き勝手にやられるのは好ましく思わないわね⋅⋅⋅でもちゃんとした理由はあるのよ?」

 

 

いやいや、その前に俺の意思は⋅⋅⋅?完全に無視ですかっ?何なのこの急展開⋅⋅⋅⋅

 

心身共に疲れが押し寄せてくるのを感じていると、突然⋅⋅⋅⋅

 

 

 

ゴゴゴゴゴ・・・・ズシンッッ!!!

 

 

 

地震が起きた!?だが直ぐに治まり俺はホッとした。

 

「マスター⋅⋅⋅⋅お知らせします。この地震は只の地震ではありません。この家だけで起こった次元震の一種です」

 

 

次元震!?確かドラえもんでもその単語が出てきたな⋅⋅⋅⋅

 

 

「⋅⋅⋅⋅異なる次元空間の安定結合の成功を確認⋅⋅⋅⋅⋅」

 

「どうやらお互い無事成功したようね⋅⋅⋅まあ、円環の理の力においては微々たるモノだけど⋅⋅⋅」

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅二人共何を言ってるの?

 

 

「悪いわね⋅⋅⋅説明がまだだったわ⋅⋅⋅ムカイさん代わりにお願いできる?」

 

「はい!お任せを。マスター⋅⋅⋅⋅落ち着いてお聞きになって下さい。本日においてインキュベーターの暗躍により、宇宙の次元空間の管理システムはハッキングを受け、ウィルスによる重大なバグが発生しました。その際、幾つかの平行世界の境界線が極めて不安定になり、やむを得ず誠に勝手ながらマスターの家にお繋ぎし、安定化を計りました。結果はみごと成功。その為この家の特定の場所に平行世界へ行き来できる状態となりました」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

何やってんのぉ!?勝手に人ん家で好き勝手すんなっぁぁぁ!!!

 

 

「イレギュラーと認識された貴方が長年住んでいたこの家⋅⋅⋅変異空間座礁の特異点の要になっていた。故に次元空間結合がしやすいと判断され、利用させて貰った⋅⋅⋅」

 

 

⋅⋅⋅⋅駄目だ⋅⋅⋅⋅今日1日でアレコレ起きて頭が働かない⋅⋅⋅⋅

 

「ゴメン⋅⋅⋅⋅疲れて上手く理解が追いつかないから休ませてくれる?つーかっ、もう限界⋅⋅⋅身体もアチコチ痛いし⋅⋅⋅」

 

 

そう言って俺は自分の部屋に入り布団を取り出す為クローゼットを開けると⋅⋅⋅⋅⋅未知の異世界に繋がっていた⋅⋅⋅⋅

 

 

あの⋅⋅⋅⋅俺の布団は⋅⋅⋅⋅⋅?

 

 

「予想よりも綺麗に繋がってるわね。流石は本体の私⋅⋅⋅⋅いい仕事してるわ⋅⋅⋅」

 

そう言って暁美ほむらは誇らし気に自画自賛した⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

ってか、布団で寝ることすら出来んのかっ、俺は!!

 

 

「マスター布団等の寝具と季節物の服はワタクシめが保管しております。ご安心を。ズロロロ」

 

そう言ってムカイさんはお約束どうりに口から俺の布団を吐き出した⋅⋅⋅⋅⋅⋅

 

「あ、ありがと⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

とにかく今は全てホッポリ出して眠りたい⋅⋅⋅⋅⋅!

 

「あっ!マスター足元にご注意下さい!その畳が扉となって宇宙船の内部と繋がっているのを確認しました!」

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅へっ?足元?畳?俺はしゃがみこんで畳を撫でた。すると奇妙な違和感を感じて畳の(へり)を掴み力任せに持ち上げるとアニメや映画で見たことのある宇宙船とおぼしき通路が繋がっていた⋅⋅⋅⋅

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅【のび太の宇宙開拓史】かっ!!

つーかっ、自分の部屋で寝るのも出来んのかっ!!

 

 

「次元空間結合は素晴らしく安定している⋅⋅⋅」

 

いつの間にか隣にいた長門さんは無表情ながらも眼鏡を光らせ、親指をビシッと立てて心なしか得意気になっているみたいだ⋅⋅⋅⋅

 

あかん、本当にもう限界⋅⋅⋅⋅俺はその場で倒れこんで夢の世界へと強制ダイブするのだった⋅⋅⋅⋅

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

「フフッ⋅⋅⋅普段はマヌケ面を晒してるけど寝顔は案外かわいいものね⋅⋅⋅」

 

「⋅⋅⋅⋅今日の彼の観測情報を確認した。インキュベーターの行動により彼も貴女も私も対応に追われた1日だった⋅⋅⋅」

 

「そうね⋅⋅⋅取り敢えず貴女とは一時休戦ということで良いのかしら?」

 

 

「この宇宙の支配権を持つ貴女と無駄に争う理由はない⋅⋅⋅ほんの少しの行き違いで誤解が生じただけに過ぎない⋅⋅⋅⋅私の直接の上も争う意思は無い⋅⋅⋅」

 

「お互いに奇しくもインキュベーターの行動に振り回されているみたいだしね⋅⋅⋅」

 

 

「貴女は小林信一に何をし、何をさせようとしている?」

 

「何って、単純に巨大な絶望のエネルギーを抱えて死ぬ直前の彼と契約してもう一度人生をやり直すチャンスを与えただけよ⋅⋅⋅⋅最も此方の都合のよい駒でオモチャで、エネルギー原としても重宝しているわ⋅⋅⋅⋅」

 

「⋅⋅⋅それは本当に本音⋅⋅⋅⋅?」

 

「⋅⋅⋅どうゆう意味かしら⋅⋅⋅⋅?」

 

「以前、私は平行世界の小林信一の観測を行った⋅⋅⋅⋅その結果、有機生命体の心理の矛盾を少し学んだ⋅⋅⋅⋅愛して大事にしようとする反面、取り返しのつかない程壊してしまいたいという衝動⋅⋅⋅⋅相反する矛盾に満ちた精神と肉体のエネルギー⋅⋅⋅私の複製体や他の平行世界の住人の複製体とその人物は何度も何度も愛し合う行為を繰り返している⋅⋅⋅⋅我欲を満たす為とも言える行為を⋅⋅⋅」

 

 

「⋅⋅⋅⋅⋅⋅私の行動に矛盾があると?」

 

「⋅⋅⋅⋅⋅有機生命体特有の心理エラーが重なっているように見える⋅⋅⋅⋅⋅⋅」

 

「⋅⋅⋅⋅ヒューマノイド・インターフェースはカウンセラー機能も兼ねているのかしら⋅⋅⋅⋅?」

 

「私は貴女が苦しんでいる感情を感知している⋅⋅⋅⋅⋅」

 

「はぁ⋅⋅⋅⋅やっぱり貴女とはソリが合わないわね⋅⋅⋅美樹さやかよりは幾分マシだけど⋅⋅⋅⋅ふぅ⋅⋅⋅もうこの話しはヤメにしましょう⋅⋅⋅互いに不毛だわ⋅⋅⋅⋅⋅それより小林の観測を貴女はいつまで続けるのかしら?」

 

「以前昔、ある人物の観測は彼女の生命活動が終焉を迎える迄続けられた」

 

「そう⋅⋅⋅じゃ、今回も彼の二度目の人生が終わる迄続けるのかも知れないわね⋅⋅⋅⋅まあ、私達からしてみればほんの瞬き程度の時間⋅⋅⋅⋅無駄に争うのもあれだし⋅⋅⋅今はこの状況を楽しみましょう⋅⋅⋅リプレイヤーである彼の行動を⋅⋅⋅」

 

 

「⋅⋅⋅承認した⋅⋅⋅」

 

 

 

 

 



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ガチャ変更と魔獣再び

ん、んん⋅⋅⋅⋅⋅ふあぁぁ~深く眠れたな⋅⋅⋅⋅昨日は1日で色々と急展開だったからな⋅⋅⋅⋅はっ!

 

⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅記憶にないがしっかりとパジャマで布団に入って、寝て起きた俺の両端に暁美ほむらと長門有希さんが正座して無表情で静かに佇んでいた⋅⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

き、君たち不気味で怖いよ⋅⋅⋅⋅

 

 

「あら、お目覚めのようねリプレイヤー小林⋅⋅⋅⋅」

 

「おはよう小林⋅⋅⋅⋅今朝のバイタル、脈拍には異常はない⋅⋅⋅」

 

 

「おっ、おはようございます⋅⋅⋅⋅」

 

 

ふ、普通なら器量の良い美少女二人に囲まれてハッピー・ラッキー♥っな展開のはずなのにちっとも喜ばしくねぇ~!!なんかヤダ!

 

 

「おはようございます、マスター!」

 

「おはよう!!まともなのはムカイさんだけだな⋅⋅⋅」

 

「いきなり失礼な物言いね⋅⋅⋅⋅」

 

ほむらは奇妙で不自然な角度で首をひねり、身体を(ひるがえ)しながら言った⋅⋅⋅⋅何なのそのポージング⋅⋅⋅

 

「昨夜は貴方の体力及び精神が限界領域に達した為、その場で強制睡眠へと移行。そのままでは有機生命体は良質な回復は低いと判断し、此方で環境を整えた⋅⋅⋅⋅」

 

 

「⋅⋅⋅⋅よ、要するに長門さんが着替えさせてくれたと⋅⋅⋅⋅そう言う事⋅⋅⋅かな⋅⋅⋅?」

 

「肯定する」

 

 

⋅⋅⋅⋅イヤ~見られたぁ~!!?俺の⋅⋅⋅⋅きゃあぁぁ~!!

 

「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅""」

 

き、気のせいか、長門さんはほんの少しだけ顔を赤らめた気がした⋅⋅⋅⋅?

 

「⋅⋅⋅⋅バカな事してないでまずは顔を洗って来なさい」

 

「あ、はい⋅⋅⋅⋅」

 

お袋さんみたいな物言いいのほむらに俺は何となく素直に返事してしまった。何か恥ずかしい⋅⋅⋅⋅

 

 

洗面所に向かうと窓からはまだ月灯りが照らしている。今、何時だ?

 

「昨日はお早く床に着かれた為、只今の時刻は深夜4時です」

 

あちゃーこれまた変な時間に起きちまったもんだ。まあ、いいさ。じっくりとこの時間を利用して、ほむらから貰う秘密道具を何にするか考えよう。

 

 

ぐうぅぅぅ~っと腹から元気の良い音が鳴る。その前に何か食べよう。考えたら昨日から何も口にしていないからな。そういや、あの二人ってちゃんと食事出来るのかな?聞いてみよう。二人にじっと無言で見られながら食事するのは正直キツイからな⋅⋅⋅⋅

 

 

「二人共、普通に食事とかは出来るの?

 

「そうね⋅⋅⋅特に必要と言うわけではないけどせっかくだから頂こうかしら?」

 

「隣に同意する」

 

しっかりと食事は出来ると確認したのでさっと顔洗って頭をスッキリさせて台所へと二人を案内した。

 

テーブルにお試し品のグルメテーブルかけを敷き俺はサンドイッチと珈琲を注文し、ほむらと長門さんも同じモノを頼んだ。後はムカイさんの為にケーキも注文した。

 

 

「マスターありがとうございます♬」

 

ムカイさんは上機嫌でケーキを平らげてゆく。

 

⋅⋅⋅⋅少し前までは家族3人で食卓を囲んでいたテーブルは今、奇妙な美少女と杖のムカイさんの四人で囲んでいる⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

何とも言えない気分だ。

 

 

残りの珈琲を飲んでいるとほむらが訪ねる。

 

「⋅⋅⋅⋅ご馳走さま⋅⋅⋅でっ、小林⋅⋅⋅道具は何にするか決まったのかしら?」

 

「今考え中もう少し待って」

 

何しろ5個だけだからな⋅⋅⋅⋅慎重に決めないとな。俺はアレコレ、ウンウン唸って考えてようやくまとめた。それがコレ。

 

 

1 グルメテーブルかけ

2 タイムふろしき

3 どこでもドア

4 フエルミラー

5⋅⋅⋅⋅⋅一旦保留! 

  

 

生きる上で食事は大切だ。一応1人暮らしは長かったので最低限自炊は出来るがやはりグルメテーブルかけは外せない。食材費用に各種調味料も結構馬鹿にならないし、何より調理と片付けの手間が省けるのは実にいい!

丁度お試し品も打ち止めだからな。

 

 

そしてタイムふろしき!これはもう説明不要でしょう?前回の戦いでガンダムヘビーアームズは大破してしまった。次回もMSを引いて損傷を負っても修復できるからな。

 

 

そしてこれまた説明不要のどこでもドア!これがあれば移動の手間を省けて時間短縮にもなるしな。

 

 

フエルミラー!これさえあれば残り一つの試供品であるツキの月を増やしてガチャを一発で良いものを引けるし、何よりまた宝くじで⋅⋅⋅⋅グフフ♥

 

 

最後はまあ、かなり悩んで結局保留の形にした。しっかりと吟味しないとな。

 

 

「了解したわ⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅ポケットの中を確認なさい⋅⋅⋅」

 

おっ!早いね~♪俺はポケットの中をまさぐりポケットを広げて確認した。

いやったー!!しっかりと中身があるぞ!

 

「残り一つも早く決める事ね⋅⋅⋅何が起こるかはインキュベータのせいで私にも予測がつかなくなってしまったから」

 

腕を組んで苦々しくほむらは忠告してくれた。

 

インキュベータ⋅⋅⋅⋅間接的に俺にまで迷惑をかけやがって⋅⋅⋅⋅⋅ソイツも俺の復讐対象に含めておこう。

 

 

「⋅⋅⋅ああ、そう言えば言い忘れていたわ⋅⋅⋅MSガチャだけど、一部変更になったから」

 

へっ?何で、どうして?

 

「インキュベータが管理システムにウィルスを仕込んでバグを起こした所は話したわね?そのバグのせいで色々調整しなくちゃ成らなくなったのよ」

 

「ぐっ、具体的にはどんな感じになるの?」

 

「まず、1万円のガチャはそのままで5万円のガチャは無くなり、10万円のガチャは使用変更してガチャではなく、本体買い取りとなったわ」

 

「ほ、本体ってMSそのものがっ?ち、因みに安いのでおいくら万円なんざましょ⋅⋅⋅⋅?」

 

お、俺は恐る恐る聞く⋅⋅⋅

 

「そうね⋅⋅⋅⋅主役機体であるRX-78なら、大サービス特価でなんとたったの100億円よ⋅⋅⋅⋅」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

何じゃその値段はぁぁー!!??

ひ、酷すぎるぅぅー!!

この悪魔ぁぁぁー!!

 

 

「あら、悪魔ですが何か?」

 

シレっと言い切りやがッたよコイツ⋅⋅⋅

 

「別に貴方に対する嫌がらせなんかじゃないわ⋅⋅⋅⋅そもそもエースクラスのMSの値段が根本的に高値なのよ⋅⋅⋅それに本来ならこの値段の数十倍から数百倍なんだから寧ろ感謝するべきね⋅⋅⋅」

 

 

確かによく考えてみたらネットでもガンダムやジムの値段はどれくらい?という予想プログでも数十億単位だもんな⋅⋅⋅

 

まあ、要するにインキュベーターが全部悪い!インキュベーター許すまじだ!!

 

インキュベーターへの敵意を募らせていると⋅⋅⋅

 

「ま、マスター!!ほむら様!!魔獣の次元進行を確認しました!!」

 

ムカイさんが大慌てで魔獣の襲来を知らせに来てくれた!!

何だよ!間隔が短くない?

 

 

「全く、噂をすれば直ぐこれとは⋅⋅⋅⋅小林⋅⋅⋅色々気の毒だと思うけど⋅⋅⋅せいぜいあがきなさい⋅⋅⋅私は先に行かせて貰う」

 

ほむらは保健室の時同様に黒い空間を生み出し、その中へ入っていった。

 

 

残された俺に長門さんは⋅⋅⋅

 

「⋅⋅⋅丁度上からの指示で小林のサポートに回る要に命令された⋅⋅⋅私も同行させて貰う⋅⋅⋅」

 

長門さんの上司の命令で俺の手助けをしてくれるらしい。正直大丈夫だろうか?

 

 

「マスターその⋅⋅⋅申し上げ難いのですがガチャを回す資金が⋅⋅⋅その⋅⋅⋅⋅些か心もとないかと⋅⋅⋅」

 

「⋅⋅⋅⋅あ~!!そうだった!残りは生活費分しか無いじゃん!?」

 

焦る俺に長門さんは無表情な顔で俺に

 

「小林⋅⋅⋅有機生命体の生活活動の為の貨幣は用意してあると睡眠状態になる前に私は説明した⋅⋅⋅どうか役立て欲しい⋅⋅⋅」

 

⋅⋅⋅⋅今は緊急事態だ⋅⋅⋅自分の小さな意地を張ってる暇はない⋅⋅⋅⋅!!

 

「わかったよ長門さん。その100万円直ぐに出せる?」

 

すると長門さんはお腹をまさぐって服の中から現金100万円を差し出してくれた⋅⋅⋅⋅あっ、ほんのり暖かい⋅⋅⋅って何処から出すのさ!?

 

ついツッコミつつ、現金を俺はムカイさんに飲み込んで貰い、スマホ画面を確認する。入金確認バッチリだ!

 

更に俺は四次元ポケットからフエルミラーを取り出し、ムカイさんに試供品のツキの月を出して貰う。

 

早速俺はフエルミラーでツキの月を増やしまくった!

 

1個が2個、2個が4個、4個が8個!途中で両手で持ちきれなくなったので箱に入れて倍々に増やした!

 

時間に余り余裕がないので取り敢えず計128個増やしてポケットに収納した。よしっ!これで武装を整えられるぞっ!

 

 

「やりましたね、マスター!これで前回に比べて楽に戦えますね!では決戦空間へとお連れします」

 

ありがとうムカイさん。前回同様に口から光を吐き出して空間が現れる。

 

「あ、えっ~それじゃあ行こうか?長門さん⋅⋅⋅?」

 

長門さんは無言で頷き一緒に空間へと入った。

 

 

 

空間を抜けると前回とは違って何故か都会の高層ビルが立ち並ぶ世界だった⋅⋅⋅

 

「最初の時は森林地帯だったのに今回はデカいビルが立ち並ぶステージか⋅⋅⋅⋅」

 

「マスター⋅⋅⋅決戦空間はランダムに決められるので残念ながら此方に有利な時と不利な時があります。どうかご容赦下さい⋅⋅⋅」

 

なーに、今の俺は大量にツキの月もあるし、何とかなるさ!

 

俺はポケットからツキの月を取り出して飲み、スマホの武器ガチャを3千円分引いた。結果⋅⋅⋅ライフル銃にバズーカ砲、等の頼もしい武器を引いた⋅⋅⋅がっ、よく考えたら使い方が分からないのもあるし、何より上手く扱える自信が無い⋅⋅⋅⋅

 

「大丈夫⋅⋅⋅小林。私に任せて欲しい⋅⋅⋅」

 

それまでジッと沈黙していた長門さんが積極的に志願してくれた。

 

「え、結構これとかかなり重いけ⋅⋅⋅」

 

俺がいい終えるよりも軽々とバズーカ砲とライフル銃を持ち上げた⋅⋅⋅

小柄な女の子とは思えない程力持ちだな⋅⋅⋅もしかして俺より腕力有るかも⋅⋅⋅?

 

そういや宇宙人⋅⋅⋅イヤ、アンドロイドだったな⋅⋅⋅武器は長門さんに任せて俺は今度はMSガチャを引いた。

  

勿論ツキの月(試供品)を飲んで引いたので一発で量産機を引いたぜっ!!

 

 

引いたのは【Vガンダム】に出てきた量産機で俺もお気に入りの【ガンイージ】だ!!量産機と侮るなかれ、この機体は出力だけなら主役機体のVガンダムと互角なのだ!

 

カーキグリーンが鮮やかにきらめき、なんて美しいんだ⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

 

「やったー!!やったぞー!!僕のガンイージが出たぞー!!」

 

 

「マスターおめでとうございます。そろそろ魔獣が次元の壁を破壊して此方へ向かって来ます。数は3体で姿は鎧姿の騎士のような風貌です。次元空間消滅迄の時間は1時間です。前回と比べれば幾分楽でしょうが何卒油断なきように!」

 

 

鎧姿の騎士みたいな姿ってもうそれ魔獣じゃないじゃん!ムカイさんに軽くツッコミを入れると空間が音を立ててひび割れ騎士姿の魔獣が現れた!

 

 

3体の騎士風の魔獣は全身鎧姿で分厚い盾にゴツくてデカイ剣を持ち、それどれ赤、青、緑と昔やっていたアニメ番組に出てきた様なカラーリングをしている。何だか姿といい、カラーリングといい別の意味で戦いづらいぞ⋅⋅⋅⋅

 

大きさは大体18~から20㍍位と俺のガンイージよりもデカくどうにも人が扱う通常の重火器では有効なダメージが入るとは思えない。

 

 

「長門さん悪いけどアイツら相手にライフル銃やバズーカ砲では有効とは思えない。狭いけど今回は俺と一緒にコックピットに乗ってくれる?」

 

「⋅⋅⋅⋅了解した」

 

 

 

 

一緒にムカイさんとコックピットに乗り込み⋅⋅⋅さあ戦闘準備OKだ!

 

 

 

 

 

 

 



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魔獣との攻防戦

ガチャで見事ガンイージを当てた俺、小林は長門さんとムカイさんを一緒にコックピットに乗せ、ポケットから一千万円もしたサイコントローラー(泣)を握りしめて起動した。

 

 

騎士タイプの魔獣三体はそれぞれカラフルで赤、青、緑とはっきり言って正義の味方風のカラーリングで、比べるとどう考えても此方側は無駄にやられる雑魚モブにしか見えない。

 

 

因みに赤色の特徴はやたらとバカデカい大剣を所持し、青色は背中から竜を思わせる様な立派な翼を持ち、緑色は分厚くゴツい盾を所持している。

 

 

向こうはガンイージと比べるとデカイので正面からはやり合うのは不利なので今は隙を伺いながらビルの合間を移動してる最中だ。

 

 

「3対1で向こうはデカくて硬さそうだな⋅⋅⋅何とか装甲の隙間にピンポイントで当てないと、最悪再度ガチャを引いてもう少しマシな武器を出したい所だな」

 

「マスターは攻撃に意識を集中なさって下さい。魔獣達のスキをつくタイミングはワタクシめにお任せを!」

 

ムカイさんは俺の負担を軽くする為に頑張ってくれてる。本当に君が居てくれて助かるよ。

 

 

騎士タイプの魔獣の内、緑色のヤツが此方の様子を探る様にビルの合間を飛びゆっくりと移動している。青色はかなり離れた上空を高速で旋回している。赤色のヤツは飛ばずにズシズシとビルの合間の道路を移動してバカデカい大剣を背負って攻撃する気満々と言った感じだ。

 

 

ビルの物影に潜んでからどれくらいの時間がたっただろう?恐らくまだモノの5分も立っていないんだろうな⋅⋅⋅

 

くそ~ゲームの時は時間が過ぎるのは早いのにこんなに緊張を強いられる時は酷く長く感じるぜ⋅⋅⋅

 

「マスター向こうのビルに移動しましょう。飛ばずに地面を歩いて移動している赤い魔獣なら飛んでいる他の2体よりもスキを突きやすいと判断します」

 

 

確かに飛んでいる他の2体に比べればヤりやすい。このガンイージは飛べる事は飛べるのだが特にバーニヤとかロケットとかの類いは付いていない為、高速起動する分には些か不安があるからな。

 

よし!決まりだ!俺は長門さんにしっかり捕まっててと、言うと相変わらず無表情で静かに頷いた。

 

 

緑色の騎士魔獣に見つからない様にビルからビルへと移動し赤色の騎士魔獣に接近する。

 

様子を伺い俺はピンポイントでビームサーベルを突きやすい部分を凝視する。それにしても本当にデカい大剣だな⋅⋅⋅あんなの喰らったら一溜まりもないぞ。何せ此方とら装甲の薄い量産機だからな⋅⋅⋅ビームシールドでも防げるかどうか⋅⋅⋅?

 

 

少しネガティブな考えに陥ってるのに気づき、俺は気持ちを入れ替え攻撃する意識を高めた。

 

 

「マスター!ヤツは大剣を持つ右側に意識を集中してます。ヤツの意識の薄い左後方の方からの攻撃を推奨します!」

 

ムカイさんのアドバイスに頷いた俺はビルの物陰に潜み赤色のヤツが右側に意識を向けた瞬間を狙った!!

 

 

   ザシュ!!

 

 

俺のガンイージは見事赤色ヤツの左後方から後頭部を狙い斬りつけた!

 

よし!このまま真っ二つにしてやる!

 

サイコントローラーを強く握りしめイメージを流し込む。徐々にビームサーベルがヤツの頭に深く食い込んだが、

そこで動きが止まってしまう。

 

「なっ!?硬い!これ以上斬り裂けない?」

 

ビームサーベルがヤツの兜に少し食い込んだだけでそこからは全く動けない!!

 

「グガアァァァー!!!」

 

凄まじい咆哮を上げながら赤色の騎士魔獣は身体を激しく振り回してきた!

当然俺のガンイージもビームサーベルを握りしめてるので一緒に振り回される。

 

「くっ!一本しかないビームサーベルを失う訳にはいかない!」

 

俺はビームサーベルのボタンを押してビームの刃を消して何とか逃れる。

離れ際にビームサーベルでつけた傷に俺はせっかくなのでビームライフルを放ってダメ押しした。

 

 

予想よりも硬い為、真っ二つには出来なかったが頭部に何とかダメージを与える事には成功!その証拠にヤツの頭部の装甲は破壊されて⋅⋅⋅

 

「なっ、なんじゃありゃ?き、キモいぞ⋅⋅⋅」

 

破壊された装甲の中から黒い何やらモゾモゾした触手の様なものが飛び出し蠢き、眼球らしきものがコチラを睨んでいるみたいだ。

 

 

「グルガァァァー!!!」

 

 

明らかに怒気を伴って大剣を振りかぶって突進してきた!

 

「くっ!」

 

俺は機体を飛ばし回避運動を行ったが横から青色の騎士魔獣が突っ込んできた!すかさずビームシールドを展開して防ぎつつ、回転して受け流してギリギリ回避に成功⋅⋅⋅と思いきや今度は緑のヤツ迄盾を全面に押し出して突進してきた!!

 

サイコントローラーで通常よりもスムーズな動きが出来るとはいえ三体の連携の前には為す術なく緑色の突進をマトモに喰らってしまった!

 

 

「どわあぁぁぁー!!?」

 

 

凄まじい衝撃に録に姿勢制御が出来ずビルに突っ込み建物が崩れ去った⋅⋅⋅

 

 

 

「⋅⋅⋅ぐうぅっ⋅⋅⋅二人共大丈夫かい⋅⋅⋅?」

 

俺は二人の安否を確認する。 

 

   

   プニュッ!

 

 

⋅⋅⋅んっ?何やら俺の顔の横に柔らかいモノがあるぞ⋅⋅⋅?

 

「まっ、マスター⋅⋅⋅!あ、あの⋅⋅⋅」

 

よく見ると俺は長門さんの胸元に顔を押し付けていた!!?

 

 

「あっ、柔らかい!暖かい!⋅⋅⋅⋅⋅ってどわあ~!?ご、ご、ゴメン、ゴメンなさい!な、長門さん!!」

 

おっ、俺は長門さんに平謝りした!!

それにしても長門さんの胸元良い匂いが⋅⋅⋅って、こんな時に、何考えてんだ俺はっ!

 

あたふたして謝る俺に対して長門さんはプイッと顔をそむけて静かに一言⋅⋅⋅

 

 

「問題ない⋅⋅⋅」っと答えた⋅⋅⋅⋅

 

 

あ"あ"ぁぁ~やっちまったよぉ!コレ、完全にセクハラだよぉぉ⋅⋅⋅やっちまったよ⋅⋅⋅見た目15、6歳の女の子に⋅⋅⋅イヤ、宇宙人⋅⋅⋅もといアンドロイドだけどぉ⋅⋅⋅俺実年齢42歳なのにぃ~!!

 

 

「マスター!気持ちを切り替えて下さい!騎士魔獣達が追撃してきます!」

 

ムカイさんの一言で何とか気持ちを切り替えモニターを見ると赤色のヤツが大剣を振りかぶってきた!!

 

「くうっ!は、速い!!」

 

崩れたビルの中で寝そべっている態勢な為回避が間に合わない!?

 

 

堪らず左腕のビームシールドを展開して受け止めた⋅⋅⋅だが受け止めたのは一瞬だけで、そこから猛烈な重さの一撃が降りかかる!

 

 

  ドバァーン!!

 

 

赤色騎士魔獣の一撃でビルの残骸が粉々になり、大地がえぐれ深い裂け目が出来上がった!!

 

 

「な、なんて剣撃してんだよ⋅⋅⋅?」

 

 

俺のガンイージは直撃を喰らう寸前に咄嗟に胴体を捻り、本体部分は掠めた程度に留めた。

 

だが、ガンイージの左腕は斬り裂かれ片腕になっちまった!!

 

「くっそー!!」

 

ビームシールドのお陰で胴体へのダメージは浅く済んだが左腕を失っちまった!!

 

 

後ろへ距離を取り飛行し、お返しとばかりにビームライフルを連射しつつ右肩に備え付けてある2連装マルチランチャーを撃ち放った!

 

「くたばれりやがれー!!」

 

威勢よく放ったが、横からすかさず緑色の騎士魔獣がゴツい盾で難なく防ぎやがった!!クソがっー!

 

更に上空から高速で飛来してきた青色の騎士魔獣がレイピアらしき剣で斬りつけに来やがった!

 

苦し紛れにビームライフルを放つが当たらない⋅⋅⋅!は、速すぎるだろがっ!

 

一瞬で間合いに入られて青色がレイピアで突きを放ち、俺はギリギリでビームライフルで防ぐも結果ビームライフルに穴が開き、爆発しそうだったのですかさずエネルギーユニットのバレルを切り離した!!

 

 

俺は爆発の衝撃に紛れて何とかビルの物陰に逃げ込んだ⋅⋅⋅

 

「ハアッ、ハアッ⋅⋅⋅また、片腕に⋅⋅⋅しかもライフルを失ってビームピストルだけになっちまった⋅⋅⋅」

 

思わず愚痴ってしまう⋅⋅⋅

 

とにかくヤツらの連携は厄介すぎるぞ。それと赤いのが恐らく力。緑が守り。青が速さ⋅⋅⋅それどれが突出した能力を持ち手強い⋅⋅⋅空間消滅の時間迄はとても持ちそうにない。

 

 

どうする?どうする?ガチャを引いても量産型しか出ないし、兵器もどれだけのモンが出るか分からないし⋅⋅⋅

だあぁぁー!!どうすりゃいいんだ?

 

 

考えに煮詰まっていると横から長門さんが袖を引っ張り、俺に話し掛けてきた。

 

「な、なに?長門さん?今、色々考えてる最中なんだけど⋅⋅⋅⋅」

 

「小林⋅⋅⋅私は貴方のサポートをする為此処にいる。私に考えがある⋅⋅⋅スマホを貸して欲しい⋅⋅⋅」

 

 

長門さんの綺麗な瞳に俺はドキッとした。あ、イヤイヤこんな時に何を⋅⋅⋅さっきの事もあったので俺はつい顔を赤らめてしまった。何とか平静を保って長門さんの頼みを聞きスマホを渡す。

 

「それで、どうするの?」

 

訪ねると長門さんは虚空に向かってナニやら奇妙な単語?呪文の様な言葉を早口で言い放った⋅⋅⋅⋅!?

 

 

「な、長門さん?ムカイさん、コレって一体⋅⋅⋅?」

 

「恐らく長門様は情報統合思念体になんらかのアクセスをしているものと思われます!」

 

俺は固唾を飲んで見守っていると今度はスマホをその白く細い指先で弄っている⋅⋅⋅?

 

「⋅⋅⋅上からの承認を得て強力なMSを引き出す事に成功⋅⋅⋅」

 

えっ?MS?んっ?

 

長門さんの発言に驚いてると空間が割れ⋅⋅⋅なんと!ガンダムらしき機体が降りてきた!?

 

 

目を凝らしてよく見るとその機体は、【起動新世紀ガンダムX】に出てきた最強の機体⋅⋅⋅

【ガンダムDX(ダブルエックス)】だった!!

 

 

おおぉぉー⋅⋅⋅!!スゲー!!強いぞー!!カッコいいぞー!!そして美しい⋅⋅⋅って、感動してる暇は無い!

 

 

俺は恐る恐る長門さんに訪ねると⋅⋅⋅

 

「な、長門さんこの機体は⋅⋅⋅?」

 

「上から有機生命体の生活活動の資金を

3000年分前借りしてこの機体を購入した⋅⋅⋅」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

へっ⋅⋅⋅?えっ?資金前借り⋅⋅⋅3000年分⋅⋅⋅?た、確か長門さんは俺と行動を共にする為の資金が毎月100万円支給されると言っていた⋅⋅⋅

 

 

え~とっ、月100万Х12ヶ月=1200万円で更にХ3000年は⋅⋅⋅⋅360億円⋅⋅⋅⋅360億円ー!!??

 

 

ゴハァァッ⋅⋅⋅⋅!!

 

 

お、俺は思わず、目、鼻、口から吐血した⋅⋅⋅⋅

 

「マスター!!気を、お気を確かにー!!」

 

ムカイさんが心配してくれるが⋅⋅⋅お、俺の心と身体は大ダメージを喰らった⋅⋅⋅

 

「小林⋅⋅⋅貴方が気に病む必要はない⋅⋅⋅私が私自身の判断で行動しただけ⋅⋅⋅この機体で私が活路を開く⋅⋅⋅!!」

 

 

⋅⋅⋅な、何やら長門さんはどうやらあの機体に乗り込み何とかしてくれるらしい。もう長門「さん」だなんて呼べない⋅⋅⋅

長門大明神⋅⋅⋅いや、女神長門有希様⋅⋅⋅いや、長門えもん?いや、

有希えもんか?

 

 

 

俺の思考を読んだのか、何かを感じ取ったのか長門さんは無言で俺にチョップをかました⋅⋅⋅

 

 

 

 

 

 



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長門有希の決意

長門さんが俺の為に資金を前借りしてガンダムDXを召喚してくれた。

 

長門さんは俺に

「ツインサテライトキャノンを放つのにエネルギーチャージが必要。1分間の間どうか時間稼ぎをお願いしたい」と言った。

 

 

原作アニメだと月からのマイクロウェーブからのエネルギー供給だがやはり色々と違うらしい。俺は了承して時間稼ぎする事にした。

 

 

その前にタイムふろしきでガンイージを再生する。3秒後に見事再生したガンイージを見上げ、更にガチャを引いて武装の強化に務める。

 

月のツキを飲んでガチャを引く。

 

「良いの出ろ、出ろ!」

 

結果見事ガンイージ専用のビームバズーカを引けた!やったぞー!!

 

ムカイさんに頼んで空間からビームバズーカを出してもらいガンイージの肩に背負う。

 

「よぉーし行くぜ!」

 

気合いを入れて俺は再生したガンイージで騎士魔獣に向かっていった。

 

 

「マスター後45秒間足止め出来れば長門様のツインサテライトキャノンで魔獣たちを一網打尽に出来ます。踏ん張って下さい!」

 

ムカイさんの応援を受けて俺は赤色騎士魔獣の頭部目掛けてビームバズーカを放った⋅⋅⋅が、案の定緑色のヤツがしっかりと盾で身代わりになって受け止める。

 

「くそー!ヤッパ連携が厄介過ぎる!」

 

俺は愚痴を吐きながら何発もダメ元で時間まで粘る。

 

 

唯一頭部にダメージを受けている赤色のヤツに届かない。青色のヤツに至っては当たりそうにもない。

 

とにかく手数優先で機体と一緒に再生したビームライフルも撃って撃ちまくりヤツらの足を止める事に専念する。

 

「小林、チャージは完了した。魔獣から離れて⋅⋅⋅」

 

待ってました!俺は指示どうりに魔獣達から離れる⋅⋅⋅がっ、青色の魔獣騎士だけが執拗に後ろから追いかけて来やがった!

 

 

「くっ!やっぱ速い!!」

 

ガンイージの出力も量産機の中ではトップクラスだが、青色騎士魔獣のスピードは脅威的で振り切れそうにない。

 

ビームライフルを撃っても牽制にすらならない。なら一か八か、引き付けて接近した所をカウンターで迎え撃つしかない!

 

俺はガンイージを空中で静止させ何時でもビームサーベルを出せる準備をする。静止した機体を見て青色のヤツは急加速してきた。

 

「マスター⋅⋅⋅⋅」

 

ムカイさんは心配そうな声をあげる。

最悪相討ちでもいい。そん時はまた機体から飛び降りるだけだ。

 

「マスター!!此方に向かって来ます!」

 

青色騎士魔獣は竜のごとき二対の翼を羽ばたかせハイスピードでレイピアを向け突進してきた!!

 

(落ち着け⋅⋅⋅タイミングと射程距離を見謝るな⋅⋅⋅)

 

来た、今だっ!!

 

俺は微かに機体を揺らして何処まで有効かは分からないがフェイントを入れ魔獣を誘う。

 

 

その結果⋅⋅⋅魔獣のレイピアは機体の肩の付け根の部分に刺さり、ガンイージのビームサーベルもヤツの肩に突き刺さった!!

 

「ぎっ、ギリギリ相討ち成功!!」

 

ビームサーベルを引っこ抜き、空いてる左手でビームライフルをヤツの顔面に放ってやった!!

 

「ギィルガァァァー!?」

 

思わぬダメージを受けた青色騎士魔獣は顔面を手で押さえワナワナと震えている。その隙を逃さず俺は背中に回って蹴りをかましてやった!

 

 

魔獣は録に体勢を整える事も出来ず上手い具合に他の2体にぶつかった。

 

「っしゃあーっ!!我ながら上出来だ!!長門さん、後はヨロシク!!」

 

俺は長門さんに通信で伝えてすぐにその場から離脱する。

 

 

「ありがとう小林⋅⋅⋅目標補足完了⋅⋅⋅ツインサテライトキャノン⋅⋅⋅発射⋅⋅⋅⋅!」

 

 

 

 

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅僅かな静寂の後⋅⋅⋅巨大な二対のエネルギーの閃光が直線上に走り、騎士魔獣三体を包み込んだ⋅⋅⋅⋅!!

 

 

「・・・・・!?」

 

 

魔獣達の咆哮らしき声すらかき消され、無慈悲なまでに光輝くエネルギーの奔流にヤツらは飲み込まれた⋅⋅⋅⋅

 

 

凄まじい突風に煽られながら何とか残っているビルの影に避難して様子を伺うとさっきまで多数の巨大なビル群が跡形もなく消し飛び、ツインサテライトキャノンの閃光の通った後が大地に生々しく刻み込まれていた⋅⋅⋅!!

 

 

劇中でも凄まじい威力の描写が成されていたが、実際に本物の⋅⋅⋅リアルのツインサテライトキャノンの威力を間近に見ると背中に冷たい汗が吹き出してくる。

 

 

「てっ、敵じゃなくて、味方側で良かったよ⋅⋅⋅まあ、これで何とかミッション完りょ⋅⋅⋅」

「マスター!!魔獣の生命反応感知しました!!」

 

ほっとした俺にムカイさんは大きな声で注意を促してくれた。

 

「なっ、嘘だろう!?アレを喰らって⋅⋅⋅」

 

ビルの隙間から覗くと草一本生えてない荒野の状態になった大地から緑色の騎士魔獣が全身ズタボロとなって這い出してきた。

 

 

所持していた盾は殆ど原形を留めておらず、本体も鎧が大きく損傷してひび割れして隙間からは赤色のヤツと同様に黒いナニかが這い出している。

 

後ろから赤色と青色も這い出てきたが、緑色程の耐久力は無かったらしく腕や足等を失い、今にもくたばりそうな程にフラフラしている。

 

「生き残っているとは正直驚いたけどアレならすぐに息の音を止められる!」

 

俺はトドメをさすべくビームバズーカを構えようとするが、ヤツらの行動に固まってしまった⋅⋅⋅⋅

 

「ゲエッ!アイツら共食いを始めやがった⋅⋅⋅⋅!?」

 

三体のボロボロの騎士魔獣どもは互いを押さえつけて喰らい合いを始めた⋅⋅⋅おっ、おぞましい過ぎる⋅⋅⋅⋅

 

嫌な音を立てながら喰らい合う姿に吐き気迄してきた⋅⋅⋅

 

「ハッ!マスター気をつけて下さい!!魔獣達の生命エネルギーが急激に高まっています!!」

 

「なっ、何ですとー!?」

 

魔獣達の様子を見ると血管らしきモノが見え、激しく脈打ちみるみる内に三体は交わり融合し姿を変える。

 

 

激しい脈動が収まるとそこには黒い騎士の姿の魔獣が佇んでいた⋅⋅⋅⋅!

 

その姿は何処かのゲームの暗黒騎士風でツヤのある漆黒の色合いで重厚な気配を漂わせている。

 

「でっ、デカい⋅⋅⋅」

 

大きさは三体の魔獣の二倍の約40㍍程で雄々しい3本の角のついた兜に背中には悪魔を連想させる2つの翼を拡げ、右手には禍々しい雰囲気の巨大な剣を持ち左手には緑色の盾が可愛く思える程の重々しい盾を所持していた⋅⋅⋅

 

「まっ、マスター⋅⋅⋅あ、あの魔獣のエネルギーは先程の魔獣の五倍以上です⋅⋅⋅」

 

それを聞いた俺は直ぐ様、長門さんに通信した。

 

「長門さん!!ツインサテライトキャノンはもう一度撃てる?」

 

「⋅⋅⋅エネルギーチャージはもう始めている。次の発射までは後2分掛かる⋅⋅⋅」

 

気のせいだろうか?長門さんの声からは微かに焦りの感情が滲み出ている様に感じる。

 

「⋅⋅⋅わかったよ長門さん!2分間何とかまた、時間稼ぎをしてみせるよ!」

 

俺はガンイージを起動してバズーカを構えて黒い騎士魔獣に向かっていった!!

 

 

⋅⋅⋅がっ、目の前の騎士魔獣は姿を消した!!きっ、消えた!?

 

 

「マスター!!後ろですー!?」

「なっ、えぇっ!?」

 

 

⋅⋅⋅目の前にいた筈の魔獣は一瞬で背後に周り巨大な剣を振り下ろしてきた!!

 

「どわあぁぁぁーーー!!??」

 

俺は必死でサイコントローラーを握り回避した⋅⋅⋅がっ、ヤツの剣圧の衝撃により機体の斜め半身が切り裂かれてしまった!!

 

 

「なあぁぁー!?掠ってもいないのにー!?」

 

凄まじい剣圧の衝撃に吹き飛ばされ荒野と化した地面に無様に墜落した。

 

 

「ぐうぅっ⋅⋅⋅」「マスターしっかり!」

 

ムカイさんは俺に必死で呼び掛けてくれるが、心の中は絶望のドス黒い感情が支配していた⋅⋅⋅

 

 

こ、こんな⋅⋅⋅時間稼ぎすら出来ないなんて⋅⋅⋅⋅だ、ダメだ今度こそもう⋅⋅⋅

 

「マスター長門様がっ!」

 

ムカイさんの声に振り向くとガンダムDXがチャージ状態からビームライフルやバルカンを射ちまくり黒い騎士魔獣の気を引いていた。

 

「なっ、長門さん⋅⋅⋅!ダメだチャージ中に無理に動くと⋅⋅⋅!」

 

原作アニメと違い、外部からのエネルギー供給ではなく内部のエネルギーチャージしている状態で無理に動くと暴発の恐れがあると何となく直感で感じた俺は長門さんに通信で止める様に呼び掛ける。

 

 

「⋅⋅⋅大丈夫。今の内に小林はどうにかしてこの空間から抜け出して欲しい⋅⋅⋅」

 

「でもそれじゃあ長門さんがっ!!」

 

「問題ない⋅⋅⋅私は対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース⋅⋅⋅代わりは幾らでもいる⋅⋅⋅」

 

「⋅⋅⋅そんな問題じゃない!!長門さんは長門さんだけだ!」

 

「⋅⋅⋅⋅⋅」

 

通信を続けて止めさせ様とするも、長門さんの攻撃に防ごうともせず佇んでいた黒い騎士魔獣は長門さんの機体に振り向き右手に携えた剣を振りかぶった!

 

 

ザシュッ!!

 

 

剣圧の衝撃波が走り、ガンイージ同様に斜め半身が切り裂かれ爆発した!!

 

 

 

「長門さーん!!!」

 

 

 

俺は力の限り叫び⋅⋅⋅歯をくいしばって

スマホのガチャを回した。

 

月のツキを敢えて飲まずに回し捲り、ほむらお手製の爆弾を100個引き、そのままMSガチャを回して10機のボールを出した。

 

 

ムカイさんに頼んでボールの中に爆弾をそれどれ10個搭載させて⋅⋅⋅⋅俺は覚悟を決めた。

 

「ムカイさん⋅⋅⋅ボールをオート操縦でいいからヤツらの足止めをお願い⋅⋅⋅俺はタイムふろしきでガンイージを再生して長門さんの所に駆け寄って何とか同じ様に再生してみるから⋅⋅⋅」

 

「⋅⋅⋅はい!任せて下さい。必ず足止めを成功させて見せます」

 

ニッコリと笑って俺の無茶ぶりに答えようとしてくれる。

 

「ゴメンな⋅⋅⋅他に何にも思いつかないんだ⋅⋅⋅」

 

「ワタクシはマスターのサポートするために存在しております。心のままに命じて下されば良いのです」

 

「本当にありがとう⋅⋅⋅⋅帰ったら高級スイーツのフルコースと洒落こもうぜっ!」

 

「はい!楽しみにしております!」

 

 

そう言ってムカイさんはボールをオート操縦するために乗り込んだ。

 

俺は両頬を叩き気合いを入れてガンイージを秘密道具で再生した。

 

再生したガンイージに乗り込みタイミングを計る⋅⋅⋅⋅

 

 

ムカイさんがまず一つ目のオート操縦のボールを突進させたのを確認して長門さんの機体に近づいた。

 

黒い騎士魔獣はボールを難なく捕らえ握りしめる。その瞬間凄まじい爆発が起こるが騎士魔獣にはダメージが入った様子は無い⋅⋅⋅

 

 

「くっ、耐久力はヤギの魔獣より上かよ⋅⋅⋅」

 

焦りながら何とかガンダムに近づく事に成功してコックピットから降りてガンダムの損傷を確認する。

 

どうやら幸いにもコックピットには損傷はない。恐らく手にしていたライフルの爆発が派手に見えた様で俺は少しほっとする。

 

 

機体にタイムふろしきを被せて再生し、ハッチのボタンを探す。

 

「あった!多分これを押して⋅⋅⋅」

ハッチが開いて行く。

 

「長門さん!!」

 

俺はコクピットの中を覗き込んで祈る様に叫んだ。

 

コクピットの中には長門さんが額から血を流してうなだれていた。眼鏡も痛々しくひび割れている。長門さんは俺に気がついて絞り出すかの様に声を出す。

 

 

「ん⋅⋅⋅こ、小林⋅⋅⋅私は貴方に逃げてと言った⋅⋅⋅筈⋅⋅⋅」

 

「バカな事言わないで!!女の子を置いて逃げるなんて出来る訳ないでしょ!!それと、自分の代わりは幾らでもいる?いくら宇宙人⋅⋅⋅いや、アンドロイドでもそんな考えは俺は認めない!!長門さん⋅⋅⋅⋅長門有希は此処に一人だけだ!!」

 

「小林⋅⋅⋅⋅」

 

後方から何度も爆発音と衝撃音がこだまする⋅⋅⋅⋅

 

 

「さっ、長門さん席を代わって。元々これは俺が契約を結んで俺がやらなくちゃならない仕事なんだ。君は関係ないから⋅⋅⋅⋅」

 

手を差し出すと長門さんは俺の手を握り返しコクピットから出て立ち上がり、俺を見つめながらひび割れた眼鏡を外した。⋅⋅⋅何だか格好いい⋅⋅⋅

 

 

「関係なくはない⋅⋅⋅貴方を観測する様に言われたが、貴方をサポートする様に決めたのは私自身の意思でもある⋅⋅⋅私は上の派閥の力関係を考慮して自らの能力を極力使わない様にしていた。でも⋅⋅⋅私は私の判断に基づき能力を行使する⋅⋅⋅貴方を守る為に⋅⋅⋅!」

 

 

長門さんは虚空に向かって、またも聞き取れない呪文の様な言葉を発した。

 

すると、周囲の空間が歪み、空気が振動する⋅⋅⋅?

 

「小林⋅⋅⋅そこから一歩も動かないで欲しい⋅⋅⋅私が全てを終わらす⋅⋅⋅⋅!」

 

妙な迫力を感じてたじろいた俺は素直に頷いた。

 

 

尚もムカイさんがボールをオート操縦でぶつけて爆発させているが無情にも魔獣には全く効いてなかった。

 

「ムカイさーん!!もういいから!君もソコから離脱してー!!」

 

長門さんがナニかを仕掛けると予感して出来る限りの大声でムカイさんに伝えた。

 

最後のボールが魔獣に向かっていくのと同時に小さく丸い物体が此方に向かってきた。ムカイさんだ!

 

 

全力で駆け寄ってきたムカイさんを俺は両手でキャッチした。

 

「マスタースミマセン⋅⋅⋅全く歯が立ちませんでした⋅⋅⋅」

 

「そんなのムカイさんが謝る事じゃないよ!足止め本当にお疲れ様⋅⋅⋅後は長門さんがどうにかしてくれるらしい⋅⋅⋅とにかくここから動かない様にしておこう」

 

「⋅⋅⋅はい」

 

ムカイさんを労いつつ、念押しして長門さんの姿を見逃さないように目を見開く。

 

 

更にこの空間全体が軋み、振動が激しくなってきた⋅⋅⋅!

 

「こっ、この特殊空間に干渉するなんて⋅⋅⋅どれ程の情報改竄能力を有しているのでしょうか?」

 

ムカイさんはその丸い体を震わせて驚愕している。

 

 

暗黒騎士魔獣が空間の異変に一切狼狽えずに此方に瞬間移動のごときスピードで近づきその巨大で禍々しい剣を振りかぶった。

 

俺はムカイさんを懐に抱き締めて魔獣を見据える。

 

 

「空間干渉及び改変完了⋅⋅⋅貴方はもう⋅⋅⋅消滅する⋅⋅⋅⋅」

 

 

キシィーン・・・

 

 

ナニかの扉を閉めた様な音が鳴り響き⋅⋅⋅

暗黒騎士魔獣の全身が震えたと思ったらうめき声すらあげず、瞬時に霧散して消滅した⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅えっ?」

 

余りにも呆気なく魔獣が滅びたので俺は暫く放心してしまった⋅⋅⋅⋅

 

 

「あ、あんなに強力な魔獣を⋅⋅⋅は⋅⋅⋅ハハハッ⋅⋅⋅⋅」

 

ついつい乾いた笑い声を出しつつ、何とか精神を現実に向かい合わす努力に努めた⋅⋅⋅

 

人間、余りに自分の常識や経験から逸脱した局面に晒されると現実を認識しずらくなるものだと痛感させられた。

 

「⋅⋅⋅⋅ま、マスターと、とにもかくにも我々の勝利です!」

 

「あ、ああそうだな⋅⋅⋅!」

 

ムカイさんも若干震え声だが、おかげで落ち着けた。そうだ、長門さんにお礼を言わなくちゃ!

 

 

「長門さんありがとう!おかげで助かったよ!」

 

礼を述べると長門さんは静かに振り向き⋅⋅⋅小さく微笑むと⋅⋅⋅やがてゆっくりと倒れた⋅⋅⋅⋅

 

 

  長門さーん!!?

 

 

 

 

 

 



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