生ける王女のためのパヴァーヌ (天馬要)
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#1「死せる王女のためのパヴァーヌ」

 極東の島国ジャポンは、領土全体が島であり、地続きの国境は存在しない。東西に伸びる本州と南北に大小様々な離島が存在している。その地理的条件下で形成された独自の文化は、世界的に見ても歴史的背景・閉鎖的な環境を擁する国である。

 その中でも、海峡によって列島と分断された北に位置する比較的大きな島は、飛行船か船かまたは海底トンネルでしか行き来できない。

 

 1982年 7月27日 木曜日

 神辺小瑠璃(かんべこるり)は、鮮やかな瑠璃色の夏鳥に因んだ命名をもらい、神辺家の長女として、この世に生を受けた。

 

 県庁所在地にして、首位都市(プライメイトシティ)サツポロ市

 高いビルが建ち並ぶ大都市の中央部に、ポツンと存在する小さな探偵事務所。その一室で、紙吹雪が派手に舞う。20代後半らしき男性は、ばら撒いてしまった書類を慌てて搔き集めた。

 

「大丈夫?」

 

 奥の部屋から、幼児を抱っこした女性が顏を覗かせる。

 

「ああ、ちょっと考え事をしてたから……注意散漫になってたよ」

 

 苦笑いをしながらクルリと右手を捻ると、こぶし大の竜巻が発生し、落としたファイルと書類を器用に拾い上げ、瞬く間に本棚に収納させた。

 

「……それ、埃も舞い上がらせるんだから、やめてって言ったわよね?」

「あ……」

 

 妻からのお小言に、返す言葉を失くす。

 タイミングよく小瑠璃がくしゃみをしたものだから、さらに居たたまれない。

 

「もう。しょうがないパパなんですから。ね、コルリ」

「しょうがないねぇ」

 

 愛する妻と2歳になったばかりの娘から追い打ちをされ、頭を掻いて誤魔化し笑いを浮かべる。

 絵に描いたような家庭円満の光景。親子3人、慎ましくも満ち足りた生活を送っていた。

 しかし、そんな家族団欒を壊そうとする悪意に染まった魔の手が迫る。

 

 ♢♦♢♦♢

 

 小瑠璃がベビーベッドで寝息を立て始めた頃、雪加(せっか)はリビングに戻って思案顔の夫に問いかけた。

 

「ジェイ。貴方、このところずっと悩んでるみたいだけど……一体どうしたの?」

 

 月9のオープニングがテレビから流れ出す。ジェイが漂わせている重苦しい雰囲気は、ポップなメロディーとは正反対だった。

 

「……近々、引っ越すことになるかもしれない。最悪、夜逃げだ」

 

 思いがけない夫の言葉に、雪加は息をのんだ。

 

「……狙われているのね、私たち」

 

 こくり。首を縦に振って肯定を示す。

 

「……ハンターをやっていると、自然と情報通になるものさ。どうやら、昔やんちゃしたのが、今になって響いてきたみたいだ」

 

 すまない、とジェイは謝罪の意を述べた。

 

「セッカさんやコルリを巻き込んでしまって」

「今更でしょう? そんなの。私はハンターでこそないけれど、あなたの伴侶よ。地獄へだって着いていくわ」

 

 凛として言い切った雪加に、ジェイは涙ぐんでしまった。自分には勿体無いくらいの女房だと。

 

「……ありがとう」

「それで? いつここを発つ? なんなら今すぐでも構わないわよ」

「行き先を訊かないのかい?」

「あなたが行くところならどこへでも」

 

 ジェイは笑みをこぼしながら、引っ越し先を口にしようとする。

 

「それは──」

 

 刹那、寝室の窓に垂れ下がる分厚い遮光カーテンが不自然に膨らんだ。もちろん、窓なんて開けていない。背中に氷柱を突っ込まれたような心地がした。

 

「っ! コルリ──ッ!」

 

 ビシャ。壁に赤い血筋が掛かった。

 わずか6畳の寝室に2枚の布団とベビーベッドを並べて「なんだか可笑しな川の字だね」と夫婦で笑い合った思い出がジェイの脳裏を過ぎり、手の届かない過去へと去っていった。

 

「いやあああああああ!」

 

 絶叫した雪加が半狂乱になって寝室へと駆け出す。そこに襲撃者が待ち構えているにも関わらず。なんて愚行。しかしながら、彼女は愛する我が子を置いて逃げる親ではなかったのだ。

 

(すみません、セッカさん!)

 

 雪加の心情を理解しながらも、一ツ星(シングル)ハンターがそれを阻止した。瞬時に風の太刀を抜き放つ。綺麗な縦回転をしながら、風の刃は液晶画面・ビデオデッキ・テレビ台を真っ二つに斬り裂いた。

 

 鎌鼬が進路を横切った拍子に、雪加は立ち止まり正気を取り戻す。ジェイはそれを内心でほっとし、暗闇の向こうから近づいてくる襲撃者を睨みつけた。相手もまた、青く冷たい瞳で照準を定めるように視線を向ける。

 

(コルリ……!)

 

 血の匂いにむせ返りそうになる。愛娘の亡骸は、未だベビーベッドの上。だが、ジェイには秘策があった。

 

(まだ……まだ蘇生が可能な範囲だ)

 

 大量出血なら、死亡までには僅かに猶予がある。

 術を施せば、命を繋ぎとめられる。

 ──だがそのためには、まずこの怨敵を撃退しなければなるまい!

 

 リビングの電灯に照らし出されたのは、古代の剣闘士(グラディエーター)を思わせる屈強そうな大男であった。

 胸部から二の腕にかけての筋肉の盛り上がりは、丸太のように太くはち切れんばかり。大腿部は大地にそびえ立つ一枚岩(モノリス)を思わせる。極限まで鍛え上げられた筋肉は、全身に鋼鉄の鎧を装備させていた。

 そしてなにより、纏うオーラが洗練されている。

 覚悟はしていたつもりだったが、これほどの大物が襲来するとは思わなかった。

 

「……貴方が来るとは思いませんでした、シルバさん」

 

 威圧感に押されてか、一歩後退するジェイ。

 

「妻とは同郷のよしみだそうだな。──許せ」

 

 右手を前方に突き出し、縦に風の刃を放つ。最後まで戦うという姿勢を示したのだ。

 

(愚かな)

 

 身体を傾けて、これを難なく回避。

 

「許せ……? それは、こっちの台詞ですよ」

 

 ──ザシュッ! 

 

 シルバの腹部が裂け、鮮血が舞う。同時に、全身に火がついたような熱を知覚した。

 

(斬られた……!?)

 

 何故。その答えは──

 先程、雪加を足止めさせた鎌鼬が楕円を描いて天井の隅まで飛んだ後、ブーメランのように進行方向を切り替えて背後から横一線に掻っ捌いたのだ。

 普段ならば、この程度の小細工の不意打ちなんぞ食らう人物ではない。だが、そもそも風とは目に見える形を取るものではない。紙一枚にも満たない極薄の刃は大気を振るわさない。故に無音にして不可視化された斬撃だった。

 

「正しく『神風(カミカゼ)』か……二つ名に恥じぬ強さだ」

 

 有効打には届かないものの、オープニングヒットを制したジェイに、シルバは素直に称賛の言葉を述べる。

 直後、次は自分の手番だと言わんばかりにオーラを両手に収束させた。五指を真っ直ぐ伸ばして手刀を形作る。人差し指から小指までを使用した四本貫手が、ジェイの鳩尾に迫る。

 シルバが前傾姿勢になって駆け出したところを、彼は見逃さなかった。

 

 足元に竜巻を発生させ、シルバを床から引っこ抜く。

 しかし暗殺者は冷静だった。

 それがどうしたという台詞の代わりに、特大の念弾を射出してジェイを押し潰さんとする。

 有効打どころか決定打になり得る攻撃。早くも首を取りにきたシルバに、ジェイは防御に回らざるを得なくなる。大質量の念弾に対して、風圧の壁を重ねて形成。

 

 しかしその判断は、悪手と言えよう。

 シルバは質量を変化させる戦闘スタイルを有している。なら、ここは護りではなく、回避に転じるべきだったのだ。

 隕石が墜落してくるような衝撃を一身に受け、顔が歪む。

 背後にあった窓ガラスと曇りガラス戸の食器棚が破損し、床に散らばる。

 

「~~~ッ!!」

 

 判断ミスを犯したジェイは、両足を踏ん張って耐える。だけどそれも、すぐに限界が訪れた。

 床に蜘蛛の巣状に皹が入り、亀裂が生じる。片膝をつき、倒れる寸前──彼の視界の端で、奇跡の誕生を目の当たりにした。

 寝室に、太陽にも匹敵する強い光が出現したのだ。

 その光源の正体は、ベビーベッドの上に浮かんでいる一糸も纏わない少女。

 生まれたままの姿は、可視化できるほどに高まり、光を帯びた生命エネルギーに包まれている。否、発しているのは光だけではなかった。

 

「熱ッ!」

 

 オーラの上からでも産毛を焦がす程の熱量がシルバとジェイを照らす。

 異常事態と判断し撤退を試みたシルバだったが、足が床に縫い付けられたように動かない。びくともしない。

 割れて散らばった硝子の破片が熱で融解し、シルバの足を捕らえていたのだ。

 

「──!」

 

 絶体絶命。強まっていく光は、遂に超新星爆発の如く、爆ぜた! 

 それは、非戦闘系の念能力者である雪加を筆頭に、シルバとジェイの意識を根こそぎ刈り取った。

 探偵事務所の2階部分の居住スペースは、衝撃波で壁も屋根も調度品も悉く吹き飛ばされ、全壊。

 道路に転がった蓄音器に上手いことスイッチが入ったらしく、ラヴェルの名盤「亡き王女のためのパヴァーヌ」が流れ出す。

 優雅なクラシックが奏でられる中──

 

 光を纏いし少女は、ここがある創作物の世界だということを思い出した。

 作者は冨樫義博。週刊少年ジャンプという漫画雑誌に掲載されている人気作品。その名も『HUNTER×HUNTER』──

 何故、この世界に転生してきたのかは不明だが、いま自分が為すべきことは理解していた。

 両親を護る。シルバ=ゾルディックを撃退する。

 

「だから貴方を呼んだ。そして来てくれた。──ありがとう、シャルル」

「こちらこそ。私を覚えていてくださったなんて……感謝の言葉もございません」

 

 男性特有の低音ながら男性声優顔負けの美声が応える。

 目の前には、『魔法の杖』としか形容し難いステッキが浮いていた。

 ハートを模した赤い宝石を鳥かごのように囲い込むは、薄い黄金色の湾曲したプレート。筒状の接合部から4本ずつ放射状に並び、杖の頭部を飾る。

 柄は黒く塗装され、柄頭は菱形の形で装飾されている。

 

 神器(じんぎ)魔杖(まじょう)シャルル】

 それは、あらゆるものを破壊する力を秘めたメイス。

 神の力を宿したこの武器は、使い手に飛行能力と一振りで千の兵をなぎ倒すパワーを授け、元々備わっている対話機能を用いて知恵と戦術を提供。さらに、無制限に炎と毒を放出するのだ。

 

 文句なしの戦闘力を手に入れた訳だが──

 このままでは戦えない。何せ急成長したこの肉体にフィットする衣服がないからだ。

 

「というわけで今回は、誠に勝手ながらこちらでデザインした戦闘服(コンバット・ドレス)を装備させて頂きました」

「おぉ~」

 

 神器が持つ基本性能の一つ。使用者に防護服を装備させて、防御力アップを図る仕様になっている。そのため、今の小瑠璃は魔法少女じみた衣装を着用している。

 白を基調とし、部分的にピンクや茶色を取り入れてクラシカルな雰囲気に仕上げられていた。

 膝丈のスカートはアンダースカートによって裾をふんわりと広げ、日焼けを知らぬ素肌は白のニーソックスと茶色のアンクルストラップシューズが足元を飾る。

 クロスホルターネックのトップスは華奢な肩を露出。鈴蘭の花弁状のアームカバーが両腕に通され、相対領域を演出。

 

「kawaii!」

 

 今日日、世界共通語となったジャポン語を口にし、手放しで彼のセンスを褒めちぎる。

 

「さっすがシャルル! いやー、オールヌードじゃ流石に放送事故だろって心配してたんだよね」

 

 彼女の視界の隅で、一時はブラックアウトさせられたシルバが覚醒とともに起き上がった。巻き起こされた爆風でガラス製の足枷も砕けている。

 対して、雪加とジェイは未だにのびていた。

 

「お前は……何者だ?」

「あなたがさっき殺した、幼児ですよ」

 

 シルバ=ゾルディックが侵入と同時に殺害したのは、一人娘の小瑠璃だ。

 

「……死後に強まる念か」

大当たり(ジャックポット)!」

 

 ──小瑠璃には、父親譲りにしてファンタジー職業でお馴染みの「召喚士」の才能があった。

 

 死亡後、運命に背中を押された才能が開花する。

 小瑠璃は自分の魂を媒介にして、見事に異世界から神器を召喚させることに成功したのだ。

 その結果、こうして蘇生と一時的な急成長を遂げたというわけである。

 力が漲っているのを確認していると……

 雲間から差し込む月の光がスポットライトとなって少女に降り注いだ。白いはずの月光に、淡い色を感じて月を見上げる。

 

「……ああ」

 

 少女の口から、溜息にも似た感嘆の声が漏れる。

 

 月が青い。

 

 闇夜に浮かぶのは、宝玉にも等しい神秘的な輝きを放っていた。

 月が青く見えるのは、大気に浮遊している塵が影響しているという。

 紅い月は偶に見えるが、蒼い月は珍しい。

 ブルームーン。まるで神の降臨を祝福しているようじゃないか。

 

 小瑠璃は招かれざる客に向き直ると、スカートの裾をつまんで持ち上げつつ、左足を内側に斜め後ろへ引き右足を軽く曲げて挨拶をした。優雅さや上品さを感じさせる「カーテシー」と呼ばれるお辞儀だ。レディーの基本である笑顔も忘れない。

 おおよそ、自らの首を取りに来た相手にする仕草ではない。

 これにはシルバも当惑の眉をひそめる。

 

「今宵は遠路はるばるようこそいらっしゃいました。ここからは、父に代わりまして私がお相手いたします。

 ──さあ、この蒼き月の下で名勝負(パヴァーヌ)を」

 

 手のひらを差し出す代わりに、メイスを突き出す。

 

(……この娘は、自分が何を言っているのか分かっているのか?)

 

 まるで、自分たちがダンスパーティーの会場にいて、たまたま視界に入った相手をダンスに誘うような。そんなお気楽さがあった。

 元より、異常事態が起こった時から任務の中断を決めて撤退を試みていた身。ならば、応手はひとつ。

 瞬間、巨体が瓦礫の上から掻き消えた。

 シルバは疾風のごとき速さでその場から立ち去る。

 だがその選択を、彼女は許さなかった。

 

灼熱の炎舞(ヘルファイア)

 

 三日月状に練った念弾に炎を付与させ、薙ぎ払われた。背後から飛来してくる光の太刀を、シルバは振り向きもしないで跳躍して躱す。

 第二射、第三射、縦に斜めにシャルルを振り回して火炎弾を乱れ撃つ小瑠璃。

 

(このままじゃ逃げられる……)

 

 逃がしても別に構わなかったが、カッコつけた手前、一発くらい当ててやりたいのだ。

 

(叩き起こしてくれたお礼参りをしないとね!)

 

 小瑠璃は空中に飛び上って、シルバの後を追う。

 

「お待ちくださいな、まだお茶もお出ししてませんのに」

「結構だ」

「まあそうおっしゃらずに!」

 

 回避された火炎弾は、民家の植木鉢や店先の看板、電信柱にまで着弾し燃え広がっていく。

 

(あ、これはまずい)

 

 すぐさま斬撃から散弾銃へと攻撃のイメージを切り替え、上空からシャルルを振り下ろす。

 すると、先端の飾りから水撒きホースのように辺り一帯に散水された!

 まるで天気雨そのものだ。全身に降りかかったものの、これといったダメージはない。気が付けばあちこちで起きていた火事が収まり、灰色の煙を昇らせているではないか。

 

(近隣住民を慮っての消化活動のためか?)

 

 またしても意図が読み取れないアクションだったが、いくら地面が塗れようとも足を鈍らすことはできなかったようだ。

 次は白い雪を雨霰と降らせてくる。時折、こぶし大の氷塊が堕ちてくるもオーラに包まれていない攻撃など、“纏”のみでガード可能であった。瞬く間に地面に積もっていき、足首まで到達する。

 

 ──何を企んでいる? 

 

 長年の勘が働いたのか、訝しむシルバ。嫌な予感は的中し、巨大な影がかかる。頭上では、都市を丸ごと飲み込むような大波が渦巻いていた。

 再び水が撒かれた。今度は雨などという天からの恵みという優しいものとは程遠い、ダムの放水を思わせる圧倒的な水量で。

 念弾で向かい打とうとしたが、水の塊に叩きつけられ、あっけなく消滅。技を潰された後は、冠水した道路から河川へと押し流されるだけ。

 自らの手で撃退したという満足感を得たのか、小瑠璃は追撃を仕掛けることはなかった。

 

 ……最後に一発、派手にぶちかましたせいか、大量にオーラを消費した小瑠璃は元の幼子の状態に戻っていた。

 変身も解けてしまったため、ゴミ捨て場からフリーサイズの黒い半袖のTシャツを引っ張り出してきて、袖を通す。ダボダボだけどこの際気にしてはいられない。

 そして、この大洪水が引くか父親が迎えに来るまでの間、2階建て賃貸アパートの屋根の上に避難する。

 

「ふぅ。何はともあれ、初戦お疲れ~」

「お疲れ様でした。……ひとつご確認したいことがあるのですが」

「なに?」

「どうして砂糖や水を出すことができたのですか?」

 

 シャルルが放出できるのは、飽くまでも炎か毒だけ。その大前提を崩したというのか。

 

「ああ、だって水も砂糖も過剰に摂取すれば、人体には毒になるでしょ?」

「……はぁ」

 

 つまり、自分が抱くイメージを捻り出すことによって強引に放出させたのだという。それを聞き、シャルルは驚き半分呆れ半分といった心境であった。なんにせよ、作中人物でも強敵を撃退したことは紛れもない事実。

 

「それに、お茶もお出しできなかったんだもの。せめてお菓子のお土産をお持ち帰りいただかないとね♪」

 

 と、小瑠璃は悪戯っぽく舌をぺろりと出して微笑んだ。

 

 ──その日の夜、サッポロ市では局所的な大雨洪水警報が発令されたこと以外、変わったことはなかったという。

 ……()()()()

 

「水飴でございましょう」

「水飴? 菓子のか?」

「左様でございます」

 

 最終的に海まで流されたシルバを、ゾルディック家の執事であるツボネとゴトーが迎えに行き、一旦ククルーマウンテンへ帰宅することになった。

 シルバは、小瑠璃が降らせた水+砂糖(雪だと判断していたもの)=水飴でかき混ぜられ、全身を甘くコーティングされて、ケーキに乗っているような砂糖菓子の人形(メレンゲドール)みたくなってしまったのである。

 なお、帰宅した際、長男と次男から「なんでそんなんなってんの」と質問攻めにあったとかなんとか。



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#2「呪われし者どもを罰し」

 気が付くと、暗い闇の中にいた。

 右も左も、上も下もない、黒一色の世界。水面に揺蕩う木の葉のように、ただそこに一人きりで浮かんでいた。闇だけが広がる永遠の空間で膝を抱える。

 

(死後の世界だとしたら、()()()()

 

 そんな吞気な感想を抱くと、頭の上からふわりと羽根が一枚、舞い落ちてきた。それは光だった。

 暗闇の中、仄かに光る羽根に手を伸ばす。

 すると羽根は、瞬く間に変化し──背に一対の銀翼を生やしたホワイトライオンの姿になる。妙な既視感を覚え、それを手繰り寄せていくと……思い出した。

 自筆の作品に登場させた神の武器、その名も神器(じんぎ)魔杖(まじょう)シャルル】の存在を。そして『HUNTER×HUNTER』という作品のエピソードを──

 

(……このまま大人しく、死んでやるもんか)

 

 曖昧になった生と死の境界。残された「死」の力、すなわち死後に強まる念という概念の可能性にすべてを賭けて“(シャルル)”に呼びかけた。

 

夢か現か幻か(ユメウツツ)──来て、シャルル!」

 

 右手を高々と上げて叫ぶと、手の甲に五芒星を中心にルーン文字と幾何学模様で構成された魔法陣が浮かび上がる。それは魂を目印にこちら側に対象を呼び寄せる聖痕(スティグマ―タ)。聖痕は異界と繋がる扉の役目を果たす。

 聖痕から飛び出た光は『魔法の杖』へと形態を変える。優しい光を浴びて、ある種の懐かしさを感じながら、シャルルに手を伸ばした。

 

反魂星(ハンゴンボシ)

 

 結果、蘇生の術は大成功だった。

 シルバ=ゾルディックによって抉じ開けられた胸骨が塞がっていき、流し過ぎた血を補うべく、骨髄が血液を作り出し、再び生命活動が始められる。

 ──こうして、彼女は蘇ったのだ。

 

 神辺小瑠璃(かんべこるり)は転生者だ。しかしながら、自分が死んだという記憶がないため「転生した」としても、いまいち現実味が湧かないというのが正直な感想であった。

 現に「神辺小瑠璃」として生まれてくる前の記憶もおぼろげで「振り袖の柄や会場は覚えてないけど、成人式は挙げたはず」というレベル。

 それでも、例外的に『HUNTER×HUNTER』に関する記憶を思い出すことができたのは、彼女が筋金入りのアニメオタクだったからという理由に他ならない。

 

 1999年 1月4日

 クカンユ王国 最東端の港町

 海に面しているだけあり、主な産業は漁業である。派手なリゾート地でこそないものの、訪れた人間を穏やかな気持ちにさせてくれる街であった。

 港町は、クカンユ王国でも有数の名家の出自であるライアン=アディーヌ伯爵が治める領地であった。

 

 地形形成営力によって風雨と海水が低丘陵地帯の地表の土壌を侵食し、削り出された白亜の岩肌が一際目を引く。高さ120メートルに達する「白い崖」と呼ばれる断崖は、昔から他国からの侵略に対する防壁の役割を果たしていた。

 そんな断崖絶壁の上に建つ──ロマネスク様式で建築された豪邸。ボックスウッドの生け垣に囲われた邸宅で、今宵も年若い女性の悲鳴が響く。

 

「──いやああああああ! 旦那様! おやめください!」

 

 ベルベットの絨毯が敷かれた一室は、霜で満ちていた。眼鏡をかけたハウスメイドが両目いっぱいに涙を溜めて懇願するも、目の前にいる主人公は反応を示さない。

 がくがくと震えるだけだった両の脚。両手は握り拳に固められて動かすことができない。自由に使えるのは目と口のみ。

 踝から足首へ、膝から大腿部へ。臀部から腰へ、胸から首へ。突如として出現した水の蛇が、彼女の身体を伝って凍らせていったのである。氷像と化した身体がシャンデリアに照らされて煌めいた。

 チロチロと細長い舌が頬を擽り、精神を追い詰められていく。

 

「いやあッ」

 

 文字通り、血管が凍る思いを味わいながら、留学生の山田百合──ユリ=ヤマダは刻々と迫る死に恐怖していた。パキン、パキン……零れ落ちた涙すら氷結され、氷が張られる範囲が徐々に広がっていく。

 ライアンは、その様子をワイングラスを傾けながら実に愉快そうに眺めていた。赤ワインもそこそこに、ソファーに腰掛けてアンティーク風の電話で誰かとお喋りを始める。よほど親しい仲なのか、口角を上げて会話を楽しんでいる。

 

「……ええ、そうなんです。実はコレクションが増えまして。ジャポネーズの女子大生です。ええ、是非いらしてください。今度またお見せいたしますとも。ええ、楽しみにしております。ツェリードニヒ王子」

 

 電話の相手も、その誘いに快く応じたその瞬間──ボッ! 

 

「!?」

 

 目の前で電話線に火が着き、それが導火線のように伝って電話機に燃え移り、最終的にはボンと火花を散らして爆発する。当然ながら通話も強制遮断された。

 ライアンは目を剥きながらソファーから立ち上がった。

 

「な、なんだ!?」

 

 電気機器の故障による火事、などではない。気が動転しかけているところに、停電というさらなる追い討ちが。数回の明滅の後、室内の灯りが消え、辺りは暗闇に飲まれる。

 人間の視細胞には錐体と桿体の2種類があり、明るい場所では錐体が。暗い場所では桿体が働くように出来ている。

 光源を奪われ、強制的に明所から暗所へと環境を変化された結果、ライアンは暗順応によって周りの様子が全く見えない状態に陥った。暗順応は桿体が完全に機能するまで30分以上かかる。そう、彼は王手を掛けられたのだ。

 

「こんばんは旦那様。月が綺麗な夜ですね」

 

 タイミングよく、雲間から月が顔を覗かせたことで第三者の存在が明らかになる。

 カツン、とブーツを鳴らして現れたのは、風呂敷包みを背負った小柄な少女であった。オブジェのアクアウォールが鏡となって姿を映し出す。

 白地に桃色の小花がアクセントになった振り袖。筒状のスカートは赤色の袴。膝丈ほどの長さで和洋折衷な装いで華やかさと愛らしさを演出している。

 

「なんなんだ、お前は!?」

 

 大正時代の女学生を思わせる和風ロリィタファッションの珍妙な侵入者は、スカートの裾を摘まんでルーティンとなったカーテシーのご挨拶を優雅にして見せた。

 

「名乗るほどの者ではありませんわ。私はただの通りすがりですから」

 

 侵入経路も正体も不明な人物に、ライアンが取った行動は、ソファーのクッションの下に隠しておいた拳銃を向けるという愚かな行為だった。

 

「……住居不法侵入だ。よってこれは正当防衛になる──!」

 

 言うが否や、トリガーを引き絞って出鱈目に連射する。ベレッタ・モデル92から放たれた9×19㎜パラベラム弾は全部で15発。いずれも肩、腹部、胸を正確に狙って飛んでくる。弾丸の射撃線から予想するに、銃の腕も悪くないのだろう。

 

 オーラをメイスに纏わせて強化し、風車みたく高速回転させることで盾を作って応手。危なげなく弾き飛ばし、跳弾した銃弾は彼の真横を通り過ぎて本棚に風穴を開けた。その反動か、仕掛けられた本棚の絡繰りが作動。機械音を立てて横にスライドし──……

 

 隠し部屋の存在が明らかにされた。その奥には数十体もの女の子が恐怖に染まった表情のまま氷漬けにされて保管されていたのである。よく見ると、どの女性も十代後半から二十代前半程度の年齢層だと伺える。よくもまあこれだけ集めたものだ。

 

「わぁ、これはこれは。略取・誘拐罪。監禁罪も含まれるんでしょうか? 懲役何年になるんでしょうねぇ」

「くッ」

「そんな歪んだ性癖の持ち主だから、43歳になっても結婚できないんですよ」

「黙れ!」

 

 弾倉の用意を怠り、次弾を供給する手段が無いライアンは怒り狂いながらベレッタを投げつける。シャルルをラケットのように一振りし、テニスボールでも打ち返すように拳銃を弾き返した。

 

「ぐあッ!?」

 

 見事に額にクリーンヒット。ライアンは後ろに仰け反って背中から床に倒れる。気絶したのか、メイドに巻き付いていた水の蛇もパシャンッとシャボン玉が割れるように消滅する。

 一応顔を覗き込んで怪我の具合を確認したが、打撲痕が赤く痕を残しているだけで、あとは無傷だった。

 

「…………」

(もういいよね)

 

 呆れ返って、棒のように突っ立ってしまう小瑠璃。

 ここまで雑魚だと、逆に何していいのか思いつかないのである。

 

(“発”までできる念能力者なのに、“周”はできてなかったし。ま、いっか。さっさと通報しよう。……と、その前に)

 

 氷像にされかけているメイドに近寄り、シャルルの先端に火を灯す。トーチみたくそれを彼女の頭上に掲げてやると、温かな光が呪氷をたちどころに溶かしていく。

 

「お怪我はありませんか? もう大丈夫ですからね」

 

 ユリには、少女が救世主のように思えた。

 はい、と頷きかけた時、地獄の底から響くような呪詛が小瑠璃の背後から掛けられる。

 

「……ガキが……舐めるんじゃねぇぞ!」

「!」

 

 ──ガシャーン! 

 見た目よりもタフな男だ。意識を取り戻したライアンは絨毯に転がったベレッタを、銃底でインテリアとして飾られていたアクアウォールを破壊。天井から流れ落ちる滝は書斎を水浸しにする。

 

(しまった)

 

 相手は恐らく操作系。対象は水。つまり水使いだ。アクアウォールから水脈を手に入れたところで、ライアンは切り札を切ったのだ。

 古来より、蛇は竜とも言われてきた。それはつまり……

 

「まぁこうなるよね」

 

 細長い身体は鱗に覆われ、爬虫類を連想させる。鬣や髭などの体毛は神々しく、鋭利な3本の爪を有する複数の手足。頭には一対の角がそそり立つ。水によって形作られた東洋龍が見下ろしていた。

 

「……なるほどね。評価を改めましょう。貴方、とっても面白そう」

 

 水龍は長い尻尾を撓らせ、鞭のように打ち据えようとする。が、その攻撃はあと一歩及ばず。

 バースデーキャンドルの火を吹き消すかのように小瑠璃が炎に息を吹きかけると、炎の中からピンク色と水色に発光する蝶々が現れ、乱舞する。次の瞬間、群れを成して四方八方から水龍に襲いかかったのだ。

 

胡蝶之舞(ユメミドリ)

 

 舞い踊る蝶は、一匹一匹が手榴弾に匹敵する火力を保持している。優に100を超える軍勢が水龍に特攻したことで、みるみるうちにボディーが蒸発された東洋龍は姿を維持できずに崩れて水に沈む。しかし、すぐに新たな水龍が水面から頭をもたげた。今度は3つの頭部を持っている。

「増えましたね」と、シャルルは淡々と実況する。

 

「面倒くさいな……。やっぱり一気に決めないとダメか」

(そう、この部屋に満ちる水全部を気化させるくらいの)

 

 それほどの決定打でなければ、このいたちごっこは終わらないだろう。そう結論付けた小瑠璃は、シャルルから火柱を作り、突撃した。

 

「見たところ炎を操る術を持っているようだが──相性が悪いんじゃないのかね?」

「はあああ!」

 

 火柱を刃にして斬撃を繰り出したところを、見計らっていたかのように多頭の水龍が顎門を開きつつ、素早い動きで体をくねらせると、鋭い牙で小瑠璃の脇腹に噛み付いた。

 

「がはッ……」

「コルリ様!」

 

 カウンターの形を取られ、そのまま水龍の頭部ごと壁に叩きつけられる。大質量のパンチを全身に受け、肺を圧迫された小瑠璃は血反吐を吐き、めり込んだ壁から水面に落ちた。ライアンは、自分の攻撃が小娘の肋骨を骨折させた手応えに、邪悪な笑みを浮かべる。

 

「あ……! ああ!」

 

 眼鏡のメイド──ユリは水飛沫を上げて小瑠璃に駆け寄る。掛ける言葉が見つからず、金魚のように口をパクパクさせていた。

 

「通りすがりなんだったら、見て見ぬふりをしていれば良かったのだ」

 

 ライアンは外道らしい理論を振りかざす。

 

「わ、私のせいで……!」

「はぁ……? あなたのせいなんかじゃない。悪いのは向こうでしょ」

「で、でも」

「……まあ、私もあんまり道草食ってられないし……そろそろ決めさせてもらうけど」

 

 そう呟き、小瑠璃は、膝と背中に両腕を滑り込ませ、眼鏡っ娘メイドを横抱きにすると机の上に飛び移った。隠し部屋を背にして。

 排水されることなくアクアウォールから水がいくらでも供給され続けるため、浸水しているのだ。増水による水位の上昇を危惧して高さのある家具を足場にしたかったのである。

 

(それに、氷漬けにされた他の人たちを巻き込むわけにはいかないし)

「私から離れないでくださいね」

 

 見たことのない光景に口を開けたままのメイドに、小瑠璃は一言忠告してから、シャルルを高々と天に突き上げ──最終通告をした。

 

「数々の許し難い所業、目に余りました。重ね続けた罪と悪事、今此処で焼き払いましょう」

 

 シャルルにオーラを流し込むと、灯る光が揺らめき……火柱は一層光度と火力を増して光の剣へと至る。

 目を焼きそうなほどの輝きを脅威と認識したライアンは、水龍を盾にする。しかし、すぐに驚愕に目を見開いた。光に照らし出されただけの水龍の身体から水蒸気の白煙を立ち昇らせているではないか。

 

(触れずとも蒸発させているのか!)

「そ、そんな馬鹿な……」

 

 衝撃的事実を受け入れられないまま、恐怖を振り払うように歯を食いしばって多頭竜を嗾けた。命じられた水龍は身を焼かれながらも小瑠璃に体当たりを食らえんと迫る。

 

「灰燼に帰せ! 迦楼羅之業火(カルラエン)!」

 

 振り下ろされた終の太刀は、多頭の水龍を真っ二つに叩き斬ると同時に消滅させ、ライアンと残った水すべてを邸宅の屋根ごと吹っ飛ばした。伯爵家の邸宅は、館の半分を瓦礫に変え、半壊した惨めな姿を海風に晒す。その後、ライアンは顔も衣服も煤だらけになって漁船の網に引っかかっていたところを発見され、警察に身柄を確保された。

 

「あ、あの……助けていただき、ありがとうございました。私、ユリ=ヤマダと申します」

「コルリ=カンベです。礼には及びませんよ。あの、実は私、急いでまして──」

 

 超高火力。故に圧倒的熱量。オーバーキル気味に変態伯爵を下した小瑠璃は、物言わぬ氷像に変えられた他の人々を全員解放すると、通報を受けた地元の警察官が駆けつける前に去ってしまわれた。曰く「急ぎの用事がある」そうだ。

 急ぎの用事、それは──

 

 1999年 1月7日

 ザバン市 ツバシ町 2-5-10

 

 ジャポンからクカンユ王国への飛行船ではハイジャックが勃発。立ち寄った港町では連続婦女暴行事件の現行犯。ドーレ港行きの船に乗れば、遭遇してしまった海賊一味と。

 以上3つの制圧戦にていずれも勝利を納めた小瑠璃が、二択クイズを経て辿り着いた一本杉。そこでは2メートルを超えるヒグマ3頭に襲われていたナビゲーターの凶狸狐(キリコ)一家(奥様・息子さん・娘さん)を救出し、ヒグマを炎で追い払って撃退に成功。

 数々の偶発的試練を乗り越え、小瑠璃はハンター試験会場に通じるエレベーターで下降している。出来立ての焼肉定食に舌鼓を打ちながら、シャルルに話しかける。

 

「ハンター試験って、会場に行くまでも大変なんだね……1万人に一人だなんて言われるのも頷けるよ」

「(これほど大変だったのはコルリ様だけだと思いますが)……そうですね」

 

 同行者がいないため、人目を気にせずに相棒と話せるのが小瑠璃は嬉しかった。ハンター試験を通してメイン4人と仲良くなりたいのが正直なところだが、如何せんコミュ障なので信頼関係を築く自信がない。

 

「コルリ様なら大丈夫です。心配ありません」

「そうかなぁ……でも私、前世から人付き合い下手だし」

 

 そう言いつつ、小食の彼女は余った焼肉と白米で握り飯を二個作り、食料を風呂敷包みにしまう。

 

「ホントは野菜も欲しいけど、ま、いっか」

「コルリ様はクラピカ様を好いておられるのでしょう?」

 

 何の脈絡もなく展開された話題。言い当てられた小瑠璃は、ガタン、と椅子から派手に転がり落ちた。

 

「……ま、まあ……前世は液晶画面どいてって散々言っておりましたが……」

「(何故当然敬語に)」

 クラピカは女子人気に支えられていると、小瑠璃はつくづく思う。

 

「……まあ、こうしてせっかく異世界転生できたんだから、想いは遂げたいなとは……思ってるけどさ」

(こればっかりは、私の頑張りどころ+奇跡でも起きなきゃ成就しないだろうなあ。そもそも『HUNTER×HUNTER』ってラブコメじゃないし)

 

「………………でも、やっぱり好きだから頑張りたい」

 

 クラピカだけでなく、「HUNTER×HUNTER」という作品が好きなのだ。

 死後に強まる念の作用で、蘇る事を選んだ。第287期ハンター試験を受ける事を決めた。人を助け、悪を打ち倒す行動を起こしたのも、自分がそうしたかったから。

 

「好きだから、頑張れると思うんだよね」

「……そうですね」

 

 もうその顔には、負の感情は一切なく。ただ冒険に心躍らせる無邪気な少女がいた。

 

「ッしゃー! 行くぞ!」

 

 改めて風呂敷包みとシャルルを背負い、胸の前で両の拳を握り締める。

 地下100階に到着し、エレベーターの扉が左右に開かれると同時に、けたたましく鳴り響いたベルの音に心臓が縮こまる。

 

「ただ今をもって受付時間を終了いたします」

 

「…………え?」

 

(まさかこれは、間に合わなかったパターン!?)

 どうなる小瑠璃。



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