ハイスクールD×D 魔術師達の狂騒曲 (グレン×グレン)
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プロローグ デュリオ・ジュズアルドの回想と、兵藤一誠の災難

そんなこんなで勢いで新連載を始めてみました。そろそろいったん未完を決定する必要がありそうだ……。


 

 

 デュリオ・ジュズアルドは過去の記憶を鮮明に思い出していた。

 

 というより、一瞬でそれを思い返していた。

 

―あー。これあれだ。走馬灯だ。

 

 ぼんやりと、デュリオはそう確信する。

 

 そんな思考の中、記憶の中のデュリオはもぐもぐと日本の魔改造料理の筆頭であるコロッケを食べながら、同じ戦災孤児の相談を受ける。

 

「……ぶっちゃけ、SE〇したいと思う時もあるわけよ」

 

「ぶっちゃけたねー。俺は教会の悪魔祓い(エクソシスト)見習いで、イルマ姉さんは現役の悪魔払いじゃないか」

 

 敬虔な信徒では考えられない暴言だが、デュリオは平然とそう返す。

 

 目の前のイルマ・ジュズアルドは、デュリオと同じ戦災孤児で同じ孤児院出身である。

 

 曰くPTSDで記憶が混乱しており、ファミリーネームを忘れたとのことで、デュリオが気前よく自分のファミリーネームを名乗っていいといってからの腐れ縁だ。

 

 なので、イルマがこういう発言をすることは何となく想像ができていた。

 

 イルマ・ジュズアルドは割と享楽的というか、娯楽を楽しむ性質である。

 

 飲酒可能年齢になったら確実に酒を飲むと断言し、飲酒の緩さにおいては先進国でも有数のイギリスに出向したときはワインからウォッカまで飲み比べたと豪語した猛者だ。喰い歩きが趣味の自分と一緒にこっそり訓練施設を抜け出して買い食いしたことなど数えきれない。ゲーム機をこっそり購入して持ち込んで、攻略ができなくなって相談されたこともある。

 

 ならば、当然色事にも興味を持って当然だろう。そういうお年頃でもある。

 

 そして同時に、それがどこか借り物めいた印象を抱かせることも少なくない。

 

 昔からこうなのだ。楽しむことが大好きに見えて、たいてい費用がかかりそうなものはかなり安上がり。総合的に見て、彼女にかかる金は多いように見えて孤児院でも低い部類だ。

 

「っていうか、イルマ姉さんは悪魔払いをやめたいだけでしょ?」

 

 なので、それとなく鎌をかけてみる。

 

「……どうなんだろうね」

 

 そして、それとなくごまかされた。

 

 イルマはデュリオと姉弟に勘違いされる緑色の髪をぼさぼさとかきむしりながら、天井を見上げる。

 

 その目は澄んでいるように見えて、どこか濁っている印象を見せる。例えていうなら、澄んでいるように見せかけた濁った眼だ。

 

「本当にさ、善行はしたいの。善行をして生きていきたいんだよねぇ」

 

 どこか切実な声が、イルマから漏れる。

 

 そして、同時に苦しげな声もまた、イルマから漏れる。

 

「だけどさ、アタシは絶対に教会(ココ)にふさわしくないって確信してる。それだけは断言できる」

 

 ……そして、本音が漏れた。

 

 要はそれが本音なのだ。

 

 イルマ・ジュズアルドは信徒ではない悪魔払いだ。

 

 善行をしたい。教会の施設に流れ着いた。そして、戦闘の才能が有った。

 

 だから、彼女は悪魔払いをやっている。

 

 だが同時に、彼女は信徒に向いてない人物なのだろう。少なくとも、彼女自身はそう思っている。

 

 故に、彼女はそう愚痴を漏らしたのだ。

 

「ま、イルマ姉さんは信仰心薄いだろうとは思ってたよ」

 

 特に責めるわけでもなく、その言葉がいつか出てくることを予期しているからこそ、デュリオは相違返す。

 

 なので、こんなこともあろうとかと頼んでいた相談者に話を振ることにした。

 

「……ってな悩みがあるみたいなんですけど、どうしたもんですかねぇ、先生?」

 

「ふむ、確かに能力と所属のみで信仰心の強さが必要なこの職をあてがったのは、施設の者たちの失敗ではあるな。戦士候補生デュリオよ」

 

 その声を聴いて、イルマは冷や汗を垂らした。

 

 当然だろう。教会の戦士が彼にこんなことを漏らしたなど、知られたらどんなことをされるかわからない。

 

 それほどまでの生きた伝説。現代を生きる悪魔払いたちの目標。生きた英雄とも称される人物なのだ。

 

 というか今の段階で助祭枢機卿である。恐れ多すぎる。

 

「す、す、ストラーダ猊下!? デュリオ、あんたなんて人物を連れてきてんの!?」

 

 心臓が止まりそうな勢いで、イルマはデュリオの胸ぐらをつかみにかかる。

 

 当然だろう。寄りにもよって悪魔払いが、悪魔払い上がりの枢機卿にして教育機関の代表格の前で「信仰心無いからこの仕事辞めたい」とも取れることを漏らしたのだ。

 

 大騒ぎになりかねない。

 

 しかし、その手を優しく止めながら、ストラーダはうんうんとうなづいた。

 

「うむ。信仰心がなくとも善行を積みたいというその考えそのものは、一定の賞賛を送るべきだろう。むしろそういうものを信徒たちの中に押し込んだことを謝罪する必要もあるかもしれん」

 

「きょ、恐縮です!!」

 

 思わぬ対応に、イルマはあわあわしながらも一礼する。

 

 そのイルマの目を、ストラーダは覗き込んだ。

 

 その目は何かを見透かし、しかし決して覗ききれない。

 

「……戦士イルマよ。何を抱え込んでいるのかはわからないが、これだけは伝えておこう」

 

 だが、何をどう抱え込んでいるのかだけは、付き合いの長いデュリオにも、慧眼を持つストラーダにもわかっていた。

 

 だからこそ、デュリオはストラーダに彼女に悩み事を相談されたときに手伝ってほしいといったのだ。

 

「……いずれ告解するときがあるのなら、その時は素直に話すといい。我らが神は厳しくもあるが、慈悲深くもあるのだから」

 

 その言葉にイルマは肩を震わせ、そして―

 

「……できれば、それができる覚悟が決まることを自分に望んでいます」

 

 ―そう、漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……戦士デュリオよ。大丈夫かね?」

 

 そして意識が目覚めたとき、デュリオはその記憶より少しだけおいたストラーダの顔を見ることになった。

 

「いやぁ。情けないところを見せましたね。子供たちには「デュリオは任務で当分会えない」とか伝えてくれると……」

 

「安心したまえ。傷はふさがっている」

 

 そう遮られて、デュリオは自分の体を再確認する。

 

 言われてみれば、痛みは引いているし出血も止まっているようだ。

 

 しかし、すごく疲れている。気を抜けば一瞬で気絶してしまいそうだ。

 

 どうしてこうなったのかをすぐに思い出す。

 

 何人かの枢機卿が、教会の重要地区の視察のために移動することになり、現役の悪魔払いで最強戦力の自分に護衛任務が下った。

 

 そして護衛任務を終えて観光をしようと思った時に、イルマに緊急の連絡を受けたのだ。

 

 彼女はストラーダに相談し他結果「悪魔払いとして致命的な欠落がある」として教会を表向き追放された。

 

 しかし実際のところはストラーダの弁護もあってはぐれ悪魔払い扱いを受けることなく、教会と契約をしたフリーランスの傭兵という形で、暗部案件の任務を引き受けることになったのだ。

 

 具体的には、教会と敵対している三大勢力の一角、堕天使側の依頼を中心に受けるフリーランス。

 

 双方から報酬をもらい、その六割を自分が世話になった孤児院に寄付しながらの毎日。そして、それゆえにデュリオは彼女についての想像を確信に買えた。

 

 イルマ・ジュズアルドの享楽は、見せかけだ。

 

 一見すると遊び歩いているように見えて、その実それは「遊んでいると思われたい」からしているだけ。その実態は下手な信徒をはるかに超えるほどに「善行」を望んでいる。

 

 強迫観念にも見えるその行動の理由を、デュリオは理解できない。

 

 だがしかし、彼女が本気であることだけはわかっていた。

 

 故に、彼女に助けを求められたときはすぐにそれに賛同した。

 

 曰く、はぐれ悪魔払いとしても離反したやつを追っていたら、人体実験の素体探しも兼ねた人身売買組織を発見したとのことだ。

 

 そして、「わかる中じゃ自分じゃないと対応できないことがあるけど、腕利きの囮が欲しい」と素直に言ってきたので、たまたま気づいた風に見せかけて近くまで来たのである。

 

 ……そして、不意打ちで脇腹に矢を喰らった。

 

 油断していたつもりはない。自分は現役の悪魔払いとしては最強クラスだと自負しているが、それでも格上がいる世界に生きている。

 

 だが、その相手はその中でも格が違った。

 

 神クラスの実力を保有するその相手との戦闘で、自分は何とか大打撃をあたえたがそのまま殴られて気を失っていた。

 

 内臓を損傷していたので、致命傷も覚悟していたのだが、いつの間にやらふさがっている。

 

「もう一度眠っても大丈夫だぞ。イルマが言うには「絶対に成功する臓器移植をしたようなもの」出そうだ。消耗は激しいが命に別状はない」

 

「いや、イルマ姉さんが心配なんですけどねぇ……」

 

 言われた意味も理解しづらいが、その治療をしたというイルマが心配だ。

 

 あの化け物みたいに強い男は危険すぎる。言っては何だがイルマでは一人で対応できるとは思えない。

 

 だが、ストラーダは安心させるように微笑んだ。

 

「安心したまえ。私とクリスタリディが近づいたことで形勢不利と見たようだ。もとより時間稼ぎが目的だったのか、すでにあの難敵は撤退したとも」

 

 ……安心すると同時に戦慄する。

 

 ストラーダとクリスタリディは、一線こそ引いているが教会最強格の戦士でもある。

 

 少なくとも、接近戦の技量ならデュリオをしのぐ猛者だ。戦士あがりで枢機卿にまで上り詰めたのは伊達ではない。

 

 そのストラーダがその状況下で難敵と断言した。それも、消耗しているデュリオを安心させる発言でだ。

 

 それほどまでの実力者だということだろう。下手をすれば、自分は死んでいてもおかしくなかった。

 

「それで、イルマ姉さんは……?」

 

「炎上した施設内に向かったようだ。クリスタリディもついているから大丈夫だと思うが……」

 

「……ええ、今戻りました」

 

 その言葉に振り向けば、そこには顔を青くさせながらも微笑みを絶やさないイルマがいた。

 

 20歳になるイルマは、少しだけ成長したその女性らしさと少女の残滓を残した顔に笑顔を張り付けて、一組の少年少女を抱きかかえていた。

 

「無事なようだな。クリスタリディは?」

 

「駆け付けた警官隊をごまかしています。この子たちは、警察に預けるにはいろいろと問題がありまして……」

 

 ストラーダにそう返すイルマは、抱えている二人の子供を悲しげに見てから、まっすぐな視線をストラーダとデュリオに向ける。

 

 その顔には、無理やり作った決意が見え隠れしていた。

 

「二人に、お話しするべきことが……いえ」

 

 そして、一瞬だけ目を伏せ―

 

「―私たちというこの世界の異分子について、法王猊下はもとより、セラフの方々にもお話しなければならないことがあります」

 

 ―告解を、無理やり始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして四年後、とある事件を兵藤一誠という若手悪魔は経験する。

 

 聖書の神が作り上げた、神器(セイクリッド・ギア)という異能。そのせいで堕天使に殺されることになり、悪魔に転生することになった少年。

 

 彼はいくつかのトラブルを経験したうえで、堕天使の運営組織である神の子を見張る者(グリゴリ)唯一のタカ派であるコカビエルによる、三大勢力の戦争再開のための騒動に巻き込まれる。

 

 そこで最大の禁忌である聖書の神の死を知りながらも、彼が宿す赤龍帝ドライグと対をなす、白龍皇アルビオンを宿した者が乱入したことで助かるが、問題が勃発している。

 

「……数日ぶりだね、赤龍帝。俺の名前はヴァーリというんだ」

 

 その白龍皇が、一誠ことイッセーの通う駒王学園に現れたのだ。

 

 白龍皇ヴァーリは、堕天使側の人間だそうだ。しかもイッセーよりよほど神器を使いこなしている。

 

 ついでに言うと赤龍帝と白龍皇は二天龍という異名を持つとても強いドラゴンであり、毎回毎回その力を宿した者は殺し合いをしているとのこと。

 

 なんでも三大勢力の殺し合いに割って入るほどの喧嘩を繰り広げている最中に、ブチきれて共同戦線をした三大勢力に魂を封じられてからいつもこうだという。実に迷惑だ。

 

 イッセーとしてはそんなことをする気は毛頭ない。彼は上級悪魔になってハーレムを作りたいのであり、そのための手柄も競技試合であるレーティングゲームや、仕事である悪魔としての契約で済ませたい。命がけの戦闘をして志半ばで死ぬなど勘弁だ。

 

 だが、白龍皇の方がどうだかわからない。

 

 思わず息をのむと、ヴァーリはふふっと面白そうに笑みを浮かべる。

 

「そうだね。隙だらけだし術の一つでもかけてみるのも―」

 

 そう言いながらヴァーリが手を伸ばした瞬間―

 

「悪ふざけはそこまでにしてもらおうか」

 

「こんなところで二天龍の激突などやめてもらおうか?」

 

 そのヴァーリの首元に、二振りの剣が突きつけられる。

 

 それを突き付けるのは、イッセーの同僚である転生悪魔の、木場祐斗とゼノヴィアだ。

 

 木場祐斗は、教会の非合法実験で死にかけたところをリアスに救われて転生悪魔になったもの。魔剣を生み出す神器である魔剣創造(ソード・バース)を進化させ、聖魔剣の担い手となった規格外の存在だ。

 

 ゼノヴィアはもともと悪魔払いだったが、コカビエルによって聖書の神の死を知らされたことで破れかぶれになって悪魔になった。伝説の聖剣デュランダルの持ち主であり、攻撃力ならば自分達の中で随一だろう。

 

 しかし、その二人に剣を突き付けながらもヴァーリは動揺すらしていない。

 

「やめておきなよ、気おされてるのがすぐにわかる」

 そう告げるヴァーリは、むしろ評価するように微笑む。

 

「格の違いが判るのは素質がある証拠だ。いつかは俺とも戦えるようになるだろう。……いまではないけどね?」

 

 そしてヴァーリは、半ば二人を無視するようにイッセーに視線を戻す。

 

「兵藤一誠。君は、自分が上から数えてどれぐらいか考えたことはあるかい?」

 

 全くない。

 

 上級悪魔になるだけの力があれば十分だと思っているし、世界最強になりたいなんて思ってもいない。

 

 少なくとも、主であるリアス・グレモリーの兄であるサーゼクス・ルシファーよりは弱いことは断言できる。

 

 そして、ヴァーリは返答を聞かずに空を見上げる。

 

「あの最強の魔王であるサーゼクス・ルシファーですら十番手に入ることはないだろう。そして、一位の座は不動だ」

 

「……それがお前だとでもいうのかよ?」

 

 この世界の常識について疎いが、少なくともヴァーリは相応に強いことだけはわかる。

 

 だからこその嫌味だったが、ヴァーリは静かに首を振る。

 

「残念だけど違う。まあ、いずれは分かることさ」

 

 そして、ヴァーリの視線はイッセーからずれる。

 

「彼は貴重な存在だ。しっかりと育ててくれよ、リアス・グレモリー」

 

 その言葉を受けた少女、イッセーたちの主である純血悪魔、リアス・グレモリーは、眷属である姫島朱乃や塔城小猫を引きつれ、静かにヴァーリをにらみつける。

 

「どういうつもり、白龍皇ヴァーリ。此処が私の管轄区で、三大勢力の会談の場所だと知っての狼藉かしら?」

 

 臨戦態勢のリアス達を無警戒の体勢で迎えながら、ヴァーリは肩をすくめる。

 

「本当にただの興味本位さ。この街にはアザゼルの付き添いで来ていてね。ちょっと暇をつぶしていたら、たまたま目についただけさ」

 

 その言葉に、イッセーたちは心のどこかで納得する。

 

 堕天使総督であるアザゼルは、遊び半分で正体を隠してイッセーに接触を図っていた。ヴァーリがアザゼルの付き添いになるような人物なら、似たような側面があってもおかしくない。

 

 とはいえ挑発ともいえる行動に警戒心だけは残していると、ヴァーリはリアスに再び視線を合わせる。

 

「過去、二天龍にかかわったものは碌な生き方をしていない。……あなたはどうなのだろうな、リア―」

 

 そしてその瞬間―

 

「おいおい。堕天使ってのはTPOってのもわきまえられねえのかよ」

 

 ヴァーリの首元に新たな切っ先が突きつけられる。

 

 問題は、それがリアスの眷属でないこと。

 

 そして、ヴァーリが一瞬で飛びのくと構えを見せたことだ。

 

 見れば、その表情には驚きの色があり、警戒と歓喜の感情が浮かべられている。

 

 そして、それをなしたのは一人の少年。

 

 実用性重視の頑丈な格好の、イッセーと大して変わらない年齢の少年が、明らかにデュランダルにも匹敵するだろうオーラの聖剣を突き付けている。

 

 そして、その気配に誰もが気付かなかった。ヴァーリですら反応が一瞬送れたほどだ。

 

「さっきがなかったとはいえ、俺が反応に遅れるとはね。……何者だい?」

 

 とてもうれしそうなヴァーリの質問答えたのは、少年ではない。

 

「はいはいそこまでにしときなよ。いい加減にしないと堕天使側が不利になると思うからさ」

 

 その言葉とともに、ヴァーリの肩に手が置かれる。

 

 今回も、ヴァーリですら反応が遅れていた。

 

 そして、それをなしたのは緑色の髪を二つにくくった少女の面影が残っている美女。

 

 不敵な表情を浮かべた女性は、聖剣を構える少年に笑みを浮かべながら、すぐにその視線をリアス達に向ける。

 

「どもっ! セラフのミカエル様からの依頼で会談にかかわることになったイルマ・ジュズアルドっていうよ! そっちのは弟子の麻宮鶴木ね?」

 

「うっす。なんか揉めてそうだったんで、サービス代わりに助っ人に入ったけど、余計だったかい?」

 

 不敵な表情を浮かべるその女性と少年の登場で、緊張感が生まれると同時に緊張が薄らぐという矛盾した状況が生まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日、世界の命運を左右した三人の英雄が邂逅した。

 

 現在過去未来において最強の白龍皇になると断言された、明星の白龍皇ヴァーリ。

 

 歴代最弱とされながらも、のちに歴代最優にして最強と称された、燚誠の赤龍帝兵藤一誠。

 

 そして、異界の法則をその身に宿し、聖騎士王の聖剣を扱うもの。騎士王剣の英雄、麻宮鶴木。

 

 世界の命運を左右したその戦いは、異界のその技術根幹となった戦いになぞらえて、こう呼ばれることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖杯戦争、と。

 




そんなこんなでとりあえずプロローグです。

デュリオ視点のプロローグはふつうないんじゃないかって感じですよね。ただ、教会関係者でかつイレギュラーに近い主人公たちなので、原作キャラとのかかわりを持たせようとするとこれが一番都合がよかったりしたんですよ。









そしてぶっちゃけここで言いますと、Fate/Apocryphaはこのストーリーというか方向性がある程度でもウケルかどうか探るための作品でもあります。いわばテストケースですね。

なので、原作からの追加要素は結構近くなります。そんなわけなので匿名はしないでそのままにしました。

さて、それではこの作品がケイオスワールドやイレギュラーズに続くことを祈って、今回はここまで


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プロローグ2 駒王会談

 

 その乱入者の存在で、結果的に状況は三つ巴の様相を見せる。

 

 駒王町を管轄する、悪魔の令嬢、リアス・グレモリー。

 

 その眷属であるイッセーにちょっかいをかけてきた、堕天使側に属する白龍皇ヴァーリ。

 

 そして、割って入ってヴァーリを牽制するミカエルに雇われたというイルマと鶴木。

 

 微妙な緊張感の漂うその中で、ヴァーリは何かに気づいたのか手を打った。

 

「ああ。確か教会の依頼を受けてスパイ活動を行っていたっていう、元悪魔払いのイルマ・ジュズアルドか。思い出したよ」

 

「お、アタシって結構有名? いやー。それほどでもないかなぁ?」

 

 堂々とうれしそうに笑うイルマに、ヴァーリは苦笑いを浮かべる。

 

「ああ。「ミカエルの使いっパシリならもっと安い金でこき使えばよかった」とアザゼルが愚痴を言っていたのを覚えている」

 

 その説明で、アザゼルがいい性格をしていることがよくわかってしまう。

 

 大半のメンバーが同乗の視線をイルマに向けるが、しかしイルマはうんうんとうなづいた。

 

「確かにね。実際教会からスパイ活動の報酬はもらってたし、いやぁ、あれはボってたわぁ」

 

 こいつもいい性格だな、オイ。

 

 皆の心が一つになったその時だった。

 

「なんやなんや! イルマ姉さんも鶴木もご苦労さんやなぁ」

 

 更に乱入者が現れる。

 

 そこに現れたのは、ラフな格好をした背の小さいくせに胸が大きい、かつ色黒の少女だった。

 

「遅ぇよアルマ。こっちが割と命がけでアホやらかしたバカに牽制入れてんだからよ、援護しやがれってんだ、援護」

 

「ええやんええやん。相手さんもその気はあらへんみたいやし、ここでお開きにするっちゅうんが一番ちゃうんか?」

 

 ぼやく鶴木に関西弁もどきでさらりと流したアルマという少女は、そして視線をヴァーリに向け―

 

「どっちにしたって、負けるとわかっとる喧嘩をするほどあほちゃうやろうしな?」

 

 -最大レベルの暴言をぶちかました。

 

「……へぇ?」

 

 気温が五度ぐらい下がった錯覚を、イッセーたちは覚える。

 

 白龍皇ヴァーリの力は圧倒的だった。少なくとも、彼が一蹴したコカビエルはリアス達が総出で挑んでも勝ち目が薄い相手だった。

 

 そんなヴァーリを相手に「確実に勝てる」と言外に告げたのだ。

 

 よほど自信があるのか、それともただのバカなのか。

 

 もし後者だとするのなら、このままだと本当に激戦が勃発するだろう。

 

 寒気を感じたイッセーたちだが、しかしヴァーリは肩をすくめると、背を向ける。

 

「確かにね。同時に君たち三人を相手にするのは、俺も分が悪いようだ。せっかく宿命のライバルに会えたのに、その目の前で死ぬのも味気ない」

 

 そう告げると、ヴァーリはそのまま歩き出す。

 

 そして、それが見えなくなったのを確認してから、緑髪を風に揺らさせながら、イルマはため息をついた。

 

 そして、一瞬でアルマにヘッドロックを仕掛けていた。

 

「ア~ル~マ~? 余計なことしてトラブルを生むのはやめてほしいんだけどな~?」

 

「あだだだだ!? せ、せやかてほんとのことやろ!? ウチら三人なら確実に勝てるって言ったんイルマ姉さんやんか!?」

 

「「う、羨ましぃ……」」

 

 悲鳴をあげるアルマだが、その顔はイルマの胸に半ば埋まっている。

 

 それゆえに、イッセーはそんな声を漏らし、そして被ったことに気づいて振り向いた。

 

 そこには剣をどこにしまったのか消してしまっている鶴木がいて、そして目が合った瞬間に通じ合った。

 

「羨ましいよな!!」

 

「ああ!!」

 

 そしてがっしりと手を握り合った。

 

「イッセー!」

 

「イッセーさん!」

 

 後ろからリアスとアーシアに頬をつねられたが、しかしこれは男のロマンである。

 

 理解を求める視線を男たちに向けるが、しかし反応は冷たかった。

 

 祐斗は苦笑しながら視線をそらしているし、なぜか鶴木は冷たい視線を向けていた。

 

「……一遍死ね。この裏切り者」

 

「なんでだぁ!?」

 

 思わず絶叫するが、しかしいつの間にか解放されていたアルマが、にやにや笑いながらイッセーを面白そうに見る。

 

「そらそんな別嬪はんたちとあんなことやそんなことしてもらってそうやからやろ。鶴木はウチとしかHなことしたことあらへんからなぁ」

 

 その瞬間、イッセーは一瞬で限界を超えた。

 

「……お前が死ねぇ!!」

 

「なんでだぁ!?」

 

 しかしその拳は鶴木にあっさり回避された。

 

 世界は無常に満ちているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなことを思い出しながら、イッセーは駒王学園で行われる三大勢力の会談に出席していた。

 

 あれから本当にいろいろなことがあった。

 

 リアスの眷属最後の一人である、引きこもりの女装男子デイライトウォーカー、ギャスパー・ヴラディの面倒を見た。

 

 その途中でアザゼルにまた接触され、意外なことにギャスパーの問題解決をおこなうためのアドバイスを提供された。

 

 そしてそのアザゼル達堕天使の血を朱乃が引いていることが発覚した。

 

 まあ朱乃が堕天使の血を引いているのはどうでもいい。堕天使には殺されたり街ごと吹き飛ばされかけたりからかわれたりといい思い出がないが、朱乃は朱乃である。

 

 なので朱乃が大好きなことに変わりがないのをは普通に告げたのだが、なぜか朱乃に泣かれてしまった。その後膝枕をされたらリアスに怒られた。

 

 先輩同士の後輩可愛がり合戦は時々大変だなぁと思ったりする。イッセーとしてはそれはそれでうれしいが、彼氏になってエロいことをしたいのである。

 

 まあそんなことを思いながら、リアスはイッセーに手を握られながら会談の場にいる。

 

 自分を握ると勇気が出るからということでリアスに握られているが、光栄かつヒャッホーなことである。

 

 なぜかミカエルの近くで参加している、イルマからはにやにや笑いとともにみられているが、どういうことだろうか。

 

「……以上で、私たちの視点によるコカビエルの起こした事件の全容を語り終えます」

 

「ありがとう。座ってくれて構わないよ」

 

 サーゼクスにねぎらわれ、一同は席に座り、そして話が進んでいく。

 

 まず真っ先に驚いたのは、アザゼルが真っ先に和平を持ち込み、そして首脳陣が抵抗なく受け入れたことだ。

 

 しいて言うなら「お前が切り出すか」とでも言いたげな表情を浮かべていたぐらいだが、実際問題アザゼルは戦争を望んでいないとコカビエルはこき下ろしていた。

 

 なので和平についてはとんとん拍子に話が進み、そして次はミカエルがイッセーの視線を向ける。

 

「そういえば。赤龍帝は私に聞きたいことがありましたね。会談も重要な部分は終わりましたし、ここで聞いてもよろしいでしょうか?」

 

「私は構わないが、イッセー君はセラフのトップに何を聞きたいのかな?」

 

「え、ええと……」

 

 サーゼクスまでもが興味深そうに見てきて、イッセーは一瞬躊躇する。

 

 どうしても教会や天界の重鎮と出会った時に聞きたかったことなので衝動的に聞いたが、このタイミングでいうことになるとは思わなかった。

 

 そして、視線を一瞬アーシアに向ける。

 

 それだけで、アーシアは理解してくれたようだ。

 

「イッセーさんのこと、信じてますから」

 

 ……これは、裏切れない。

 

「ミカエルさん。どうして、アーシアを追放したんですか?」

 

 その言葉に、全員がわずかにだがけげんな表情を浮かべる。

 

 当然だろう。和平がむすばれたこのタイミングで、教会の方針に喧嘩を売るような発言だ。

 

 だが、イッセーはアーシアの境遇を知ってから、堕天使以上に天界や教会に許せない部分を感じていた。

 

 そして、ミカエルが口を開こうとしたとき―

 

「ま、当然といえば当然かな」

 

 イルマが、ミカエルを制するように口を開く。

 

 そして、一歩前に出ると、ミカエルの方に振り向くとにカッと微笑んだ。

 

「だめですよぉ、ミカエル様。こういうピーキーな話題は、トップが自分からしゃべったらややこしいことになりますからねっと」

 

「じゃあ、あんたが答えてくれるのかよ?」

 

 機先を制された気がして、イッセーは少しむっとなる。

 

 ナイスバディなお姉さんということでイッセーはできればお近づきになりたいと思っている。だが、アーシアのことがかかわっている以上話は別だ。

 

 その敵意が少し混じった視線に対して、イルマはあえて涼しく受け流しながら目を向ける。

 

「常識的に考えなよ、赤龍帝クン。第二次世界大戦中に、日本で「アメリカの社長が首を吊りそうな勢いの会社に多額の寄付をしました!!」……なんて堂々とのたまったやつがいたら普通DISられるよ? 裏切り者ジャン? ……少なくとも、味方陣営だったから下手な敵より憎まれると思わない?」

 

「それが、何も悪いことをしてなくてもかよ?」

 

「それが悪いことと考えるのが、これまでの三大勢力の関係だっていってるの」

 

 イッセーの反論をそう切り捨て、イルマは真剣にまっすぐイッセーの目を見、そして周りを見渡す。

 

「このさい首脳陣の方々にも行っときますけど、これ絶対禍根生みますよ? 数十年かけて停戦条約から始めて段階的に和平するならともかく、いきなりじゃあ和平して仲良くしましょうだなんて、納得できない奴らはいくらでも出てくる。そのアーシアちゃんって子を追放したやつらとか、マジギレするんじゃないですか?」

 

 真剣な表情でそう告げるイルマに、サーゼクスもアザゼルもうなづいた。

 

「確かにそうだろう。主要な戦争継続派はすでに追放しているが、和平の方針に難色を示した貴族も多少はいた」

 

神の子を見張る者(うち)の幹部格で戦争継続はコカビエルぐらいだがな。ま、下の連中のなかには文句たらたらの連中は出てくるだろうよ」

 

「そゆこと。異形社会に赤十字の概念は存在しないんだよ、少年?」

 

 二人の言葉を追い風にし、イルマはさらに告げる。

 

「それに、主の死の影響は大きいんだよ。ぶっちゃけ、今の天界や教会の手に余ってるのが現状」

 

「……コカビエルが行ってた、システムってやつですか?」

 

 イッセーはふと思い出した。

 

 コカビエルは、聖書の神の死を告げた後こう言ったのだ。

 

 聖書の神が残した奇跡をもたらすシステムを、ミカエルたちが使って奇跡をもたらしている。

 

 よくやっているが、しかし神が生きていたころのような真似はできていないとも。

 

「はっきり言ってトラブル頻発でね。アーシアちゃんの神器は悪魔を治療できるって観点から信仰に揺らぎが生じるから、それがわかった時点で教会に置くわけにもいかないわけ。……ま、残酷だとは思うけど、世界ってのは基本そんなもんなんだよね」

 

 最後の発言はどこか寂しさが漂っており、イッセーは反論を一瞬とどめてしまう。

 

「ほんと、君はついてるよ? 平和な国に生まれて、立派な主に仕えられて。世界に食う者にも困る子供や、子供時から体を売らなきゃ生きていけない女の子がどれだけいるか……」

 

 その表情は先ほどまでの笑みが消え、どこか暗いものが漂っている。

 

「日本ですら極めて珍しいけどたまにいるんだから、そういうのが」

 

 その言葉に、一瞬だが誰もが何も言えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではそろそろ行動に移りますよ。……越境の超越者(ユグドラシル・メイガス)から派遣されたのですから、それ相応の動きを期待します」

 

「……無論だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、ミカエルが結局アーシアとゼノヴィアに頭を下げたり、アーシアとゼノヴィアはむしろ今の生活を気に入っていることを告げたりなどあったが、しかし会談はつつがなく進む。

 

 そして、話題はかつての三大勢力の戦争を引っ掻き回した二天龍に話題が降られる。

 

「俺は強い奴と戦えればそれでいい」

 

「それ、和平の場でいうセリフじゃないよね」

 

 白龍皇であるヴァーリの物騒な言葉に、イルマが半目を向けるが次はイッセーの番である。

 

 とはいえ、ただの下っ端程度の意識が強かったイッセーはすぐには考えられなかったが……。

 

「ちなみに、戦争になったら子作りができなくて戦争をやめればできる。……戦争になったらリアス・グレモリーを抱けないぞ?」

 

「和平オンリーでお願いしまっす!!」

 

 アザゼルの茶化しで即答だった。

 

「イッセー君、サーゼクス様がみておられるんだよ?」

 

 現四大魔王のトップ(リアスの兄)であるサーゼクスの前だということを祐斗に言われて思い出し、一瞬顔が真っ青になったのも笑い話だ。

 

「はっはっは。リアスと赤龍帝の子供ができれば、グレモリー家は安泰だね。そう思わないかい、グレイフィア」

 

「サーゼクス様。それはさすがに早すぎるかと」

 

「冗談って言わないんだ……進んでるね、グレモリー家」

 

 サーゼクスにピシャリという側近のグレイフィアの言葉の真意をさとり、イルマは軽く戦慄する。

 

 しかし、その表情がどこか真剣なものに変わると、イルマはミカエルに向き直った。

 

 そして、にこやかに今までの会話を見ていたミカエルもまた、真剣な表情になると周りを見渡す。

 

「……では、そろそろこちら側にとってのもう一つの本題に入りましょう」

 

「あん? なんかあるのかよ?」

 

 アザゼルがそう聞き返すと同時、ミカエルはすぐにうなづいた。

 

「ええ。できればアザゼル、あなたの力を借りたい事象でした。……ここにはいないアジュカ・ベルゼブブにも協力を仰ぎたいところです」

 

「……アジュカちゃんに?」

 

 ミカエルの言葉に、サーゼクスとともに魔王の座についている、外交担当であるセラフォルー・レヴィアタンが反応する。

 

 そして、ミカエルは神妙な顔でうなづいた。

 

「今の教会とセラフの技術でどうにかできない以上、和平がむすばれたのならば堕天使と悪魔の最高峰の技術者の力を借りるのが賢明ですから。……事態は、それほどまでの危険性を秘めております」

 

 その言葉に、首脳陣は全員が気を引き締める。

 

 そして、イッセーはよくわかっていなかった。

 

 具体的には、アジュカという人物がよくわからなかった。

 

「……イッセー君。アジュカ・ベルゼブブ様はお姉様とサーゼクス様に並ぶ、現四大魔王のおひとりです」

 

 それに気づいたのか、セラフォルーの妹であり駒王学園の生徒会長を務めるソーナ・シトリーが眼鏡を直しながら告げる。

 

「悪魔において最高峰の技術者であり、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を作り上げた人物でもあります」

 

「まあ、魔王の中じゃ一番魔王の仕事をいい加減にしてるやつでもあるだろうがな」

 

 と、そこでアザゼルが茶々を入れるが、しかしサーゼクスとセラフォルーは苦笑ですらない笑みを浮かべるだけだった。

 

「ファルビウムとどちらが不真面目だろうか?」

 

「丸投げと適当のどっちが不真面目なのかしらねん?」

 

 すさまじくイッセーは冥界の未来を案じたが、それは置いておく。

 

「それで? 俺やアジュカの力を借りたいってのはどういうことだよ? 何について調べたい?」

 

「具体的には、主の死によって発生した世界のひずみについてです」

 

 ミカエルはそういうと、視線をイルマに向ける。

 

 それに対してイルマは静かにうなづき、一歩前に出る。

 

「……私は、聖書の神の死によって生まれた世界のゆがみの影響で、ある特徴を持って生まれてきました。……まずは私の魂をここで調べていただければわかると思います」

 

「ふむふむ。どっこいしょと」

 

 いきなりアザゼルはどこからか機会を取り出すと、精査を始める。

 

 そして、サーゼクスとセラフォルーは特に驚くことなく覗き込み―

 

「「「……なっ!?」」」

 

 そして、三人は目を見開いてイルマに顔を向ける。

 

 その目は驚愕と、畏怖の感情すら見せていた。

 

「おい、イルマ・ジュズアルド」

 

 そして、アザゼルが代表してイルマに問いかける。

 

「……お前の魂、人間ではあるが明確に普通の人間じゃない。っていう魔力を生み出す人間なんてそうはいない。転生悪魔でも混血悪魔ないってんなら、いったい何者だ?」

 

 その言葉に、イルマは一瞬目を伏せると、真正面からアザゼルを見返した。

 

「私は、魔術使いだよ」

 

「魔術使い? 魔法使いではなく?」

 

 サーゼクスがそう聞き返すと、イルマは苦笑を浮かべる。

 

「その通り。肉体に魔術回路という固有の臓器を持ち、それを媒介にすることで魔力を生み出し魔術を使う…………この世界の外側の世界にいる異能保有者」

 

『『『『『『『『『『!?』』』』』』』』』』

 

 その言葉に全員が驚愕し、そしてイルマは続ける。

 

「たぶんだけど、聖書の神の死で世界がゆがんだのが原因かな? っていうか、ザ・クルセイドのメンバーは全員が魔術回路を持ってる」

 

「ゆえに、私たちは同様の存在を探し、記憶を保有するものたちを探していたのです。ですがレアケースであるのは間違いないので、いまだ彼女たちしか発見できていません」

 

 ミカエルの説明に、アザゼルはなるほどとうなづいた。

 

「なるほどな。それをばらしたから堕天使と縁を切ったってわけか。……で? お前はどうやってこの世界に来たのかわかるのか?」

 

「それが全然。っていうか、アタシってば二十歳ぐらいで一度死んでるはずなんだけど、気が付いたら子供の姿で孤児院いたんだよねー。元日本人なのにイタリアの孤児院とか勘弁してほしいっつーか」

 

 そう言って肩をすくめるイルマだが、すぐに表情を改めると、緊張感すらにじませる。

 

「問題は、間違いなく私と同様の奴がいて、しかもそいつは犯罪組織側でとんでもない強者を呼び出してるってことが問題なんですよ」

 

「強者? それって、私たちみたいに強いのかしらん?」

 

 セラフォルーの言葉に、ミカエルがうなづいた。

 

「最強格のエクソシストであるデュリオ・ジュズアルドが隙をつかれて死にかけ、ヴァスコ・ストラーダとエヴァルト・クリスタリディですら聖剣無しでは二人掛かりでも苦戦確実の相手です」

 

 その言葉に、明らかにアザゼルが嫌そうな顔をする。

 

 そして、ゼノヴィアもまた目を見開いた。

 

「歴代最強とすら称されるデュランダル使いのストラーダ猊下が、クリスタリディ猊下とともに挑んでも苦戦必須と!? そんな存在、もはや神の領域ではないですか!!」

 

「そ、そんなにぃ!?」

 

 あまりの狼狽ぶりにイッセーが驚愕する。

 

 そしてその瞬間―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 イッセーが違和感を感じたと同時に、時が止まった。

 




……書いておいてなんだけど、これ仕立て直したほうがいいような気がしてきた今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。









いや、いろいろと考えたんですが、ちょっとインフレ再現で困った事態が起きそうで、どうしたもんかと思案中だったりします。

……場合によっては仕立て直しも考えています。ちょっとご了承ください。


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