同級生に誘われホイホイ参加したライブで狡知ソング唄ったらアイドルバンドに目をつけられた (オパール)
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ワンナイト狡知

Q.なんでこんなの書いたの?
A.知らない

Q.ベリアル好き?
A.いっぱいちゅき

Q.原作知識は?
A.二期だけ

そっ閉じ推奨


氷川日菜。高校二年生。

現役アイドル兼バンドのギター担当。

アイドルだけあって容姿は抜群。スタイルも良く、全国レベルの頭脳を持ち運動も大得意という、天から二物どころか二十物くらい与えられたんじゃねーのかこの人、と言わんばかりのハイスペック美少女。

 

彼女は現在、とあるライブハウスで行われているイベントに観客の一人として訪れている。

高校生とはいえ芸能人である彼女がおいそれとこんなとこに来て良いのか? と思う者もいるだろうが、生憎とこのジーニアスガールはそんな感性は持ち合わせていない。

 

この場にいる理由としては、同バンドのメンバーである大和麻弥に誘われてのこと。

何でも、このイベントに参加するバンドの一組に、珍しいというか超が付くほどレア物の楽器を用いているチームがあるらしく、技術もそれなりに高いらしい。

ぶっちゃけ日菜的には死ぬほど興味無い案件だが、あまりにも熱心に同伴を頼んでくるので、そこまで言うなら、と渋々ながらも了承した次第である(なお、他のメンバーは都合がつかなかったそうな)。

 

で。

 

「………」ムスー

「ひ、日菜さん……次、次ですからっ」

「ぜーんぜん、るんって来ない……」

「あわわ……」

 

隣で汗を流しながらアタフタ慌てるその姿に少しだけ溜飲は下がったが、ぶっちゃけ退屈極まりない。

言ってしまえば『似たり寄ったり』

自分達【Pastel*Palettes】も未だ発展途上ではあるが、それでもまだこちらのが全体的に上だと思うし、姉が所属している【Roselia】や高校の後輩達のチームである【Afterglow】に比べれば月とスッポンどころの話じゃない。没個性なバンドが多すぎる。

 

(麻弥ちゃんには悪いけど帰ろっかなー……おねーちゃんに会いたいし)

 

欠伸を噛み殺しながら、胸中でそうごちる。

残すバンドは一組。麻弥の目的のバンドだけだが、正直どうでもいいというのが本音だった。

 

それから少しの時間も経たず、ステージ上に例のバンドが姿を見せる。が、少々客席にてどよめきが起きた。

 

「……あれ?」

「? どしたの?」

「ああ、いえ。ボーカルの方が普段と違くて……」

 

その言葉に釣られてステージを見やる。

ボーカル、ギター、ベース、ドラムにキーボード。ごくごく一般的な構成のチームであるが、特に中央に立つボーカルの青年が目をひく。

整髪剤でガチガチに固められ、トサカかと思うほどに逆立てられた黒髪。吊り上がり気味な目付きと紅い瞳。整った顔立ちには薄く化粧も施されている。

が、それよりも気になったのは、こちらを見下しているような視線と蔑むような笑み。

 

この時点で日菜の中では「るんっ♪」と来ないどころか「どゅんっ…」という感覚が満ちていた。つまるところ最悪である。

 

そうこうしている間にバンドメンバー達が次々と自己紹介を終えていき、最後となったのはその「どゅんっ」男。

メンバー達からの催促の視線を背中に、観客からの好奇の視線を正面から浴びること十秒前後。

ざわめいていたホール内が静寂に包まれたのを見計らって、男は静かに、口角を吊り上げたその憎たらしい笑みのまま、口を開いた。

 

「……やれやれ、やっと静かになってくれた。アンタら、発情期か何かなのかい?」

 

ブーイング。当然だ。

 

「ッハハハ! オイオイ、図星だからってそうイキりたつなよ。……でもまぁ、ああは言ったけど、こんなとこに暇潰しに来るような連中なんだ。それくらい盛っててくれないと面白くない」

 

煽り立てるような言葉に罵声がより強くなる。

演奏隊の面々から「やめろ」と言わんばかりの視線が飛んでいるが、男はまったく意に介していない。

 

「でもまぁ、あんまり鳴かれ続けても萎えちまう。もっと静かな、抑えようとしても、どうしても漏れちまう声ってのもオツ(・・)なもんだ。そう思わないか?」

 

隣の麻弥の顔が何故か赤くなっているが、日菜としては何を言ってるかさっぱりわからない。というか―――わかりたくない(・・・・・・・)

 

「ん、オレの名前? 別にいいだろ。どうせオレが歌うなんて、この一回だけなんだ。一晩だけ、行きずりの関係なんてのも素敵だろう?」

 

どこまでもこちらを見下し、こき下ろすような言葉と表情に会場内のボルテージとフラストレーションは嫌でも上がっていく。

それすら面白いと感じているのか、男はそこから何も言わず、投げつけられるブーイングをニヤつきながら受け流していた。

 

「―――イイね。イイ塩梅だ」

 

そう言って、男は演奏隊へと目配せを。

呆れ返った顔をした各々が楽器を構え、準備は出来てると暗に告げる。

 

 

 

「―――オーケィ。ヤろうか……!」

 

 

 

そして

 

狂った宴(Parade's lust)が、始まる

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

―――全てが、最低最悪に狂っ(イカれ)ていた

 

静かな、だが力強い立ち上がりと同時に始まったその歌は、英語歌詞。

なるほど確かに、麻弥の言葉通り個人個人の技術は、このイベントに出ていたどのバンドよりも頭一つ抜けているように思える。

 

―――ただ、それら全てをただの添え物にしてしまうほどの歌唱力があった

 

英語が得意なのかどうかは知らないが、発音や息継ぎ等、全てがハイレベル。声だけ聞けば外人が歌っているのではと勘違いしてしまいそうなほどに。

気付けば、ブーイングを送っていた観客は皆、その演奏と歌声に耳を傾けている。

これだけならば、もしかしたら自分と同級生の、姉がいるバンドのボーカルと張れるのでは、と錯覚してしまいそうだった。

 

―――そんな思いを蹴り殺して唾を吐くかのような、最悪な歌詞

 

世に出回るポジティブな歌や創作を真っ向から虚仮にして否定するような内容。件の男は、それをさも楽しそうに歌っているのだから始末に負えない。

目線はどこまでも上からで、歌詞に合わせて変わる表情からは一切の『熱』を感じない。

平然と他者を騙すようなこす『狡』さと、それだけ出来る『知』恵の回りの良さ。

姉と家族、友人知人以外の他人には必要以上に興味を持てない日菜が、心から『嫌い』と思ってしまうナニカがそこにはあった。

 

そして、一気に曲の流れが変わる

 

 

 

―――達する、達する!!

 

 

 

もう聴いていたくなかった。

先に述べた通り、氷川日菜は天才だ。

数桁暗算なんて欠伸しながら出来るし、英文どころか他の国の言語での文章の和訳なんて朝飯前だ。

 

だから、英語で放たれるその最低最悪な、品性の欠片も無いワードとスラングの連続が、日本人にハッキリ理解できる言葉となって、耳から脳へと叩き込まれる。

隣の麻弥が心配しているようだが、脳内に反響する声と音と言葉がそれへの反応を許してくれない。

そして当然、観客の内の誰か一人が項垂れてようが、演奏を止めるような善人もいなければ、むしろ気付く者すらこの場にはいない。

 

彼女達以外の観客は、いつの間にかこの一曲に酔いしれてしまっていた。

 

 

 

気付いた時には、曲が始まってから数分が経過していたが、日菜にとっては地獄のように長く感じた数分だった。

ステージで演奏を続けるバンド。曲も終わりに差し掛かり、全員がミスをするまいと額に汗を浮かべながらそれぞれの楽器を掻き鳴らしている。

ボーカルの男も例外ではない。スタンドからマイクを取り外し、掌で額から流れ落ちている整髪剤混じりの汗を髪と共にかき上げ、終わりに向けてのフレーズを口遊んだ。

 

 

 

 

 

 

 

―――オレと姦淫しないか?

 

 

 

 

 

 

 

吐き気を抑えきれず、逃げるように人混みを掻き分ける。

後ろから誰かが声をかけてくるが、そんなの気にしていられない。一秒でも早くこの場から立ち去りたかった。

ホールを出る直前、室内を揺るがす甲高いシャウトと共に演奏が途切れ。

直後、男が発した言葉が嫌に耳にこびりついた。

 

 

 

「―――では、良いシュウマツを」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

その後はどうやって帰ったのか覚えていない。

気付けば自宅、自室のベッドで横になっていた。

スマホの通知を見れば、麻弥から心配と謝罪をする旨の文が送られてきていた。

震える指で何とか文章を打ち、それに返信する。

時間を見たが、もうとっくに日付を跨いだ時刻。

 

胃の奥でナニカがぐるぐる渦巻いている気がする。

元々、家族と仕事関係以外で交流のある異性などいないが、それでもああいうタイプは今まで見たことも無い。

他人の気持ちを察することに関しては人一倍疎い日菜だが、それを差し引いたとしてもあれは理解に苦しむ。理解したくないと言った方が正確だろうか。

 

(……ムカムカする)

 

結局その日は眠れず。

次の日、学校は休みだったが仕事も休む羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後。

 

「おっはよー!」

 

体調は快復し、教室のドアを開きながら大声で叫ぶ。

何人かが日菜に視線を向け、何人かは挨拶を返してくれた。

 

「おはよ、ヒナ」

「おはようございます日菜さんっ」

「あっ、リサちー! 麻弥ちゃんもおはよー!」

 

かけられた声に振り返れば、そこには柔らかく微笑む、自身と姉の共通の友人。【Roselia】の今井リサが麻弥を連れて立っていた。

 

「紗夜から聞いたけど、体調悪かったんだって?」

「んー、ちょっとね。でももう大丈夫だから!」

「あの、すみませんでした日菜さん。ジブンが無理に誘ってしまったばっかりに……」

「ううん、もういいよ。それにね、久しぶりにおねーちゃんが優しくしてくれて、すっごいるんっ♪ てしたから!」

「アッハハ☆ まぁ紗夜も何だかんだ言ってたけど、練習に集中できないくらい心配してたみたいだしねー」

「ほんと!?」

「ほんとほんと。リサ姉ウソつかない」

「ん~~~~……るんっ♪」

「あ、あはは……まぁ、元気になったようで何よりです。彩さんも千聖さんも、もちろんイヴさんも心配していましたし」

「あー、そっかー。みんなにも謝んないとね」

「はいっ」

 

 

 

「……それで、そんなに凄かったの? そのボーカル」

「ええ、まぁ。サポート、というか、臨時で入ったあの一回限りとのことらしいですが、歌はとても上手でした。MCもされたのですが……その、まぁ。ちょっと過激、と言いましょうか……」

「ふぅん? ……ん?」

「リサさん? ……ああ、映像も出回ってるんでしたね。そうそう、この方です」

「……んー。なーんか見覚えあるような……」

「お知り合いですか?」

「いや、同じバイトにいる人と似てるような気がしなくもないっていうか……いや、違うかな」

「そうですか……日菜さん?」

 

「……あたし、その人キライ」




続きます


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実際のところ

※加筆しました


『わりぃ。ライブ一人で歌って』

「は?」

 

バンドやってる同級生からそんな連絡が来た。

本番の前日だというのにこれである。

他のメンバー達には連絡済みらしく、理由を聞いたら彼女とハッスルしすぎて腰をイわしたというクッッッソしょうもない理由だった。なので二次元オタクとして鍛えてきた語彙力で可能な限りの罵倒の言葉を送ったが、今となっては後の祭り。

 

元々、一度だけで良いからライブでデュエットやろうぜ、みたいな話を持ちかけられて、不承不承ながら了承して練習も一緒にやってはいた。

ぶっちゃけ死ぬほど嫌だったけど。その日はNFOのイベントがあるから無理、と何度も言ったのに、時間も場所も弁えず土下座までしてきたものだから手に負えない。

前々からイベントは一緒に、と約束してたフレンドからの好感度を下げてまで受けてやる義理は無いのだが、断り続けた結果とうとう家にまで押し掛けて来たので受けざるを得なかった。

フレンド二名にその旨を伝えたところ、当然ながら片方は怒り、もう片方は軽い文面ながら残念に思っているであろうことはわかった。めっちゃやむ。ごめんよRin-Rinさんと我が魔王……

 

こっちはこうまでしたのに、誘ってきたバカはこのザマ。殺していいんじゃないかとも思うが、よくよく考えたらわざわざ殺人犯になってまで殺してやる値打ち無かったわ。

 

閑話休題。

 

どうしようもないので早々に諦めながら腹を括り、メンバー達とリハーサルに臨む。

ギターとキーボードが女子、ベースとドラムが男子という、ガールズバンドが幅をきかせるこのご時世には珍しい、男女混成ユニットがこのチーム。

どうでもいいことだがギター担当はドのつく変態。何あの指の動き、気持ち悪っ。リハなのにヘドバンしてるし。

全歌詞英語の曲とあって、発音と発声がすげー大変だった。それでも数をこなせば自ずと結果は出てくるもの。家で歌詞を見ながら音源をヘビロテしまくって、本職とまではいかないがそれなりのレベルにはなれた、と思う。

 

……友人とのカラオケでもない、不特定多数の人前で歌うとか、陰キャのオタクにはあまりにもハードル高すぎると思いません?

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「衣装あるなんて聞いてないんだけど」

 

当日。

とりあえず人前に出ても最低限恥ずかしくない格好でライブハウスに出向くと、「衣装あるから着替えて」と雑に言われた。

何がなんだかわからないままに着替えさせられ、化粧台に座らされて髪はガッチガチにされたし何かファンデーション的なナニカ塗られたし。

そしてこの衣装がまぁクセモノ。

何ぞのコスプレかってくらいに派手派手なやつ。何この襟周りや腰周りの羽。いらねーだろただのサポート的なポジションでしかねーんだぞオレは。あ、普通に着脱式かい。

あと何で胸なり腹なり露出させていくスタイル? やめてくれよ、オレ人様に見せられるような身体してないんだから。インナーは着るぞ。着るからな!?

 

 

 

そんな舞台裏であれこれが終わり、いよいよ本番が近付いてきた。大して広くもないホール。裏にいても観客達の歓談の声が聞こえてくる。

ちょっとだけ気になって、バレないように注意しながら袖から客席を覗いてみた。

 

(え、気持ち悪)

 

女ばっかり、っつーか女しかおらんやんけ。

男どこ? こ↑こ↓?

参加するバンドもガールズバンドばっかだし、男ってもしかしなくてもオレらだけ? 嘘やん。え、実は男からの需要無いとかそういうあれ?

 

(帰りてぇー……)

 

どれだけ心の底からそう思ったとしても、もう開始まで時間も無い。キリキリ痛んできた胃をどうにか黙らせつつ、控室で待つメンバーの元へと戻る。

 

その道中、ふと曲の歌詞を思い出す。

 

ドギツイ下ネタやスラングのオンパレードな例の曲、なんか既視感を覚えるので、とりあえず曲前のMCでそれに照らし合わせたネタでも入れてみよう。うん、そうしよう。

 

「後悔しやがれアホめ」

 

ここにいないバカに向けて呪詛っておいた。

バンドの評判が地の底に落ちようが知ったことか。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

(ゆるして)

 

いやごめん、本当にごめんなさい。

帰してください、帰らして、切に。

 

ステージの上に立ったは良いけど、これ思った以上に緊張する。無理、やだ、吐きそう。

まずめっちゃ見られてる。舞台から見るの全然違う。人多い、多くない? しかもボーカル普段と違うって当然バレてるから。サポートいるなんて告知してないだろうし、しかもそのサポートがよりにもよってソロなんだもの。

めっちゃざわついてる場内、緊張なんて抑えきれるわけもない。絶対変な顔になってるって今。口角吊り上がってるの自分でわかるもの。

 

駄目だ、ちょっと黙ってよう。

いま口開いたら絶対何か出る。

 

「……やれやれ。やっと静かになってくれた。アンタら、発情期かナニカなのかい?」

 

ブーイングぅ。いやそりゃそうだよね、出て来て早々にこんなん言う輩が受け入れられるわけないもんね。

でもオレもうやるって決めてるから、ゴメンナサイネ

 

「ッハハハ! 図星だからってそうイキり勃つなよ。……でもまぁ、ああは言ったけど、こんなとこに暇潰しに来るような連中なんだ。それくらいサカっててくれないと面白くない」

 

後ろからの視線もかっ飛ばされてくる罵声も痛い。

でも仕方ないよね、オレだってやりたくてやってるわけでも好きでこんなとこにいるわけじゃねーもの。

やりたいだけやらしてもらうから。

 

「でもまぁ、あんまり鳴かれ続けても萎えちまう。もっと静かな、抑えようとしても、どうしても漏れちまう声ってのも乙なもんだ。そう思わないか?」

 

悲鳴が聞こえた気がした。違う、抑えきれなくてどうしても漏れ出る声ってそういうのじゃない。

あと誰だ「死ね」っつったの

 

「ん、オレの名前? 別にいいだろ。どうせオレが歌うなんて、この一回だけなんだ。一晩限り、行きずりの関係なんてのも素敵だろう?」

 

ふえぇ……大ブーイングだぁ……

悪役(ヒール)のプロレスラーでもこうはならんやろ……帰りてぇなぁちくしょう

まぁでもここまで来ちゃったし。立っちゃったし、煽っちゃったし。ベクトル違うけど盛り上げちゃったし。

 

「―――イイね。イイ塩梅だ」

 

みんなを見る。呆れてたわ。当たり前だ。

 

 

 

「―――オーケィ。ヤろうか……!」

 

 

 

演奏開始からしばらくすると、あれだけ荒れ狂ってた観客達はみんな静かになってた。賢者タイムか何か?

これならやりやすい、頭に叩き込んだ歌詞を、演奏隊の伴奏に合わせて口遊む。

……にしてもやっぱひっでえなこの曲。

 

 

 

―――達する、達する!!

 

 

 

流れ変わったな(確信)

ここからもうほんとひで。下ネタ連発、こき下ろすというか扱き捨てるというかマスでもかいてろと言わんばかりのアレな内容である。

 

だがそれでも、少なくともオレはこの曲が好きだったりする。めっちゃ惹きつけられるし。

 

気付けば曲ももう終わりの頃。

これの和訳を知った時には鳥肌もんだったね。

 

 

 

―――オレと姦淫しないか?

 

 

 

何か一人くらい会場出ていこうとしてるけど、正直どうでもいいかなって。もうフィナーレだし。

なので最後の歌詞を終えると同時に全力シャウトしたった。我が声ながらうるせえ。

そして演奏も終わり、テンション高くなっちゃったんでマイクスタンドを蹴り倒したりしてみたり。

そのままマイクを手に右手で例のポーズを決めて

 

 

 

「―――では、良い週末を」

 

 

 

明日から連休だからね、仕方ないね。

 

終わったら大歓声でした。なにゆえ

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「あの馬鹿クビにするから正式にボーカルとして加入してくれると私達は嬉しい」

「なんで?」

 

例のド変態ギターからそんな話が来た。

何でもあのライブの映像が動画サイト等に出回ったらしく、どういうわけか『ボーカル変えろ』という声が相次いでるらしい。

腰痛が治って登校してきた例のバカは文句をつけてきたが、他の四人から総スカン食らって大人しく引き下がっていた。元々素行は悪かったからね。こないだの一件がトドメになったと見るべきだろう。

 

「いや普通にやだ」

 

当然である。

あの一回だけという約束だったはずなのに、何が悲しくて正式なバンドメンバーにならねばならんのか。

この数日、NFOのフレンド二人ともまともにチャット会話も出来てないから割と心は荒んでるぞぉオレは。そんなところにバンドに入れ? 嫌に決まってんだろ間抜けぇ。

 

何度も何度も頼み込んで来ているが、流石にこればかりは答えを変えるつもりは無い。

オレは陰キャオタクとしてこれからも過ごすんだ。陽キャ御用達(偏見)のバンカツなんてごめん被る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、何故か芸能人にカチコミされた




勘違いものって難しいんすね、ちぃおぼ


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